衆議院

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第9号 平成25年6月12日(水曜日)

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平成二十五年六月十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河井 克行君

   理事 岸  信夫君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 薗浦健太郎君 理事 土屋 品子君

   理事 原田 義昭君 理事 山口  壯君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      あべ 俊子君    小倉 將信君

      川田  隆君    木原 誠二君

      小林 鷹之君    河野 太郎君

      島田 佳和君    東郷 哲也君

      星野 剛士君    牧原 秀樹君

      松島みどり君    三ッ林裕巳君

      三ッ矢憲生君    武藤 貴也君

      菊田真紀子君    玄葉光一郎君

      長島 昭久君    浦野 靖人君

      村上 政俊君    岡本 三成君

      山内 康一君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務大臣政務官      あべ 俊子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       芝田 政之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       香川 剛広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 金杉 憲治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 正木  靖君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    伊原 純一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           常盤  豊君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    桝野 竜二君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  伊藤 盛夫君

   参考人

   (株式会社国際協力銀行代表取締役副総裁)     渡辺 博史君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     川田  隆君

  黄川田仁志君     小倉 將信君

  松島みどり君     木原 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     三ッ林裕巳君

  川田  隆君     城内  実君

  木原 誠二君     松島みどり君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ林裕巳君     黄川田仁志君

    ―――――――――――――

六月十一日

 投資の促進及び保護に関する日本国政府とパプアニューギニア独立国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とコロンビア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 投資の促進及び保護に関する日本国とイラク共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

 社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

同日

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇四五号)

 同(笠井亮君紹介)(第一〇四六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇四七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇四八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇四九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇五〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇五一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇五二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 投資の促進及び保護に関する日本国政府とパプアニューギニア独立国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とコロンビア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 投資の促進及び保護に関する日本国とイラク共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

 社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

河井委員長 これより会議を開きます。

 投資の促進及び保護に関する日本国政府とパプアニューギニア独立国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とコロンビア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の促進及び保護に関する日本国とイラク共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 投資の促進及び保護に関する日本国政府とパプアニューギニア独立国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とコロンビア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の促進及び保護に関する日本国とイラク共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました投資の促進及び保護に関する日本国政府とパプアニューギニア独立国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十二年九月以来、パプアニューギニア政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十三年四月二十六日に東京において、我が方外務大臣と先方外務貿易移民大臣との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、主に、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護を定めております。

 この協定の締結は、我が国とパプアニューギニアとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とコロンビア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十一年四月以来、コロンビアとの間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十三年九月十二日に東京において、我が方外務大臣と先方商工観光大臣との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護に加え、投資の許可段階の内国民待遇等についても定めております。

 この協定の締結は、我が国とコロンビアとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、投資の促進及び保護に関する日本国とクウェート国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十二年四月以来、クウェートとの間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十四年三月二十二日に東京において、我が方外務副大臣と先方外務次官との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、先ほど御説明したコロンビアとの間の協定と同様、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護に加え、投資の許可段階の内国民待遇等についても定めております。

 この協定の締結は、我が国とクウェートとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成十九年三月以来、韓国政府及び中国政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十四年五月十三日に北京において、我が方外務副大臣が、経済産業大臣の連署とともに、韓国側外交通商部通商交渉本部長及び中国側商務部長との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、先ほど御説明したパプアニューギニアとの間の協定と同様、主に、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護を定めております。

 この協定の締結は、我が国、韓国及び中国の間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、投資の促進及び保護に関する日本国とイラク共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十三年九月以来、イラクとの間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十四年六月七日にバグダッドにおいて、我が方在イラク大使と先方国家投資委員会委員長との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、先ほど御説明したパプアニューギニアとの間の協定並びに韓国及び中国との間の協定と同様、主に、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護を定めております。

 この協定の締結は、我が国とイラクとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、社会保障に関する日本国とインド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十三年七月以来、インドとの間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十四年十一月十六日に東京において、我が方外務大臣と先方駐日大使との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、我が国とインドとの間で年金制度に関する法令の適用について調整を行うこと及び両国の年金制度の加入期間を通算することによって年金の受給権を確立すること等を定めるものであります。

 この協定の締結により、年金制度への二重加入の問題の解決等を通じ、両国間の人的交流が円滑化し、ひいては経済交流を含む両国間の関係がより一層緊密となることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上六件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

河井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

河井委員長 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房国際文化交流審議官芝田政之君、大臣官房地球規模課題審議官香川剛広君、大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房参事官金杉憲治君、大臣官房参事官正木靖君、北米局長伊原純一君、文部科学省大臣官房審議官常盤豊君、海上保安庁次長桝野竜二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

牧原委員 おはようございます。牧原でございます。

 きょうは、こうした質問の機会を与えていただきまして、理事を初め皆様には感謝申し上げます。

 私はもともと、日本とアメリカ、あるいはヨーロッパ等で弁護士をやっておりまして、議員になったときにも、国際経済戦略をしっかり進めたいというのが大きな一つの目的でございました。今は亡き中川昭一政調会長が御存命だったとき、政調会長だったときに、実は、経済戦略をもっとしっかり立てようということで、党内にそういう専門の特命委をつくっていただきまして、きょうお越しの岸先生が事務局長になっていただいたりしたんですけれども、そのときに、要するに、今やっているEPAと、それ以外にも、投資協定、そしてこの間やった租税、それから社会保障協定、こういうものをしっかりと組み合わせてやっていかないと、日本は物すごくおくれをとっているということを実は指摘させていただいた次第でございます。

 それから十年近くたって、きょうは投資協定ですけれども、きょうお手元に資料をお配りさせていただきましたが、投資協定だけでいっても、今のところ、発効したのは十五、そして経済連携協定、EPAの方の投資が入っているものをカバーしているもので十個ということなので、合計で二十五です。二〇〇五年当時ですから、当時に比べればかなり進んできたとは思いますが、残念ながら、右のところにあるように、ペルーが二〇〇九年の十二月に発効して以来、実に三年強、この投資協定の発効というのはなかったわけでございます。

 きょう議題になっていますパプアニューギニア、これは二〇一一年四月に署名したものですから、実に、署名をしてから二年たって、きょう、ようやくこうして質疑に入り、何とか発効に至るかどうかということなので、こんなことをやっていたら、本当に、シンガポールとか韓国、シンガポールよりは三周半、韓国には二周半、日本はこういうところでおくれをとっているんじゃないかと私は思います。

 今、交渉中というのを見ても、すごくいっぱい交渉中で、現場の方が大変だとは思いますけれども、日本は、これからやはり、我々のすばらしい技術、物づくり等々でしっかり世界に進出していく、あるいは、サービスなんかもすばらしいわけですから、こういうようなところで環境を整えていくことをしっかりやっていただきたい、このようにお願いをする次第でございます。

 ところで、今回対象になっているのは、パプアニューギニア、イラク、コロンビア、クウェート、日中韓、それぞれ大切だろうとは思いますし、加速しているという点では大いに評価できるわけですが、他方で、例えば南米ということでいうと、ウルグアイなんかは交渉中となっておりますけれども、ブラジルやアルゼンチンというのは、EPAも交渉していないし、二国間投資協定も交渉していない。アフリカでいえば、モザンビークは署名済みですけれども、あるいは今回のTICAD等でもガーナ、ケニア等と交渉開始というふうになったみたいですが、アフリカの中で、例えばナイジェリアとか南アフリカとかというのは、EPAも二国間投資協定も交渉の対象になっていない。中東でいえば、我が国と結びつきも深いアラブ首長国連邦だとか、あるいは、戦略的に言えばイスラエルなんかも検討はできるんじゃないか、こう思います。

 このような交渉を進めるに当たりまして、どういう戦略で優先順位をつけているんでしょうか。大臣でしょうか、よろしくお願いします。

岸田国務大臣 まず、委員御指摘のように、我が国は、世界の経済成長をみずからの成長にしっかり取り込むために、対外そして対内直接投資の拡大を重視しなければならないと存じますし、そのために、投資協定ですとか、あるいは投資章を含む経済連携、こうしたものにしっかりと取り組んでいかなければならないと認識をしております。

 そして、こうした投資協定等の締結の相手国の選定ですが、さまざまな要素を勘案しなければならないと考えます。我が国からの投資実績、あるいは将来に向けた投資拡大の見通し、これも重要ですし、我が国経済界からの要望、さらには我が国経済外交の方針との整合性、さらには相手国側のニーズ、さらには国情も大変大きな要素になります。

 こうした要素を総合的に勘案して、選定とか優先順位を考えているというのが現状であります。

牧原委員 恐らくいろいろな事情があろうかと思いますけれども、今、交渉中がたくさんございますけれども、今私が申し上げたような、ブラジル、アルゼンチン、南ア、それからナイジェリア等々の、人口が五千万人を超えて、これからも大変ふえる可能性もあって未来が大きい国というのは、余り特定すると問題がありますけれども、ぜひ視野に入れていただきたいと存じます。

 今指摘をさせていただいたように、二国間の投資についてのルールの決め方というのは、二国間投資協定以外に、現在、日本では、EPAを使ってやって、TPPなんかも、今、七月から実際に交渉に入ろうとしているわけでございますけれども、このEPAを進めるのか、それとも二国間投資協定をやるのか、投資についてのルールを相手国と決めるに当たっては、EPA、あるいは投資協定、BITですね、どういう戦略で進めているのか、これもお答えください。

岸田国務大臣 御指摘の投資協定、そして投資章を含むEPAですが、これまで我が国は、十五カ国・地域と投資協定を締結し、十カ国と投資章を含むEPAを締結しております。

 このEPAと投資協定の違いですが、まず、EPAの最大の特徴は包括性です。投資のみならず、知財ですとか競争ですとか、政府調達、税関手続等、幅広い分野において貿易・投資の自由化あるいはルールづくりを進め、締結相手国との間で緊密な経済関係を構築すること等を目的としている、これがEPAです。

 一方、投資協定は、今申し上げたような幅広い分野に関して直ちにEPAを締結する状況にはありませんが、我が国企業の投資先として重要性を有する国との締結を目指す、こうしたことであります。

 相手国の、あるいは地域の状況も踏まえつつ、投資協定、そして投資章を含むEPAの締結、それぞれ積極的に取り組んでいきたいと考えております。

牧原委員 今答弁をいただいたとおりで進められているんだと思いますけれども、私は、このEPAの話ですね、現在、先ほどの資料では真ん中あたりに、オーストラリア、GCC等々、交渉中というのが並んでおりますけれども、これまで空白だった地区について、EPAももう少し積極的に進めていくべきじゃないか。

 先ほど申し上げたように、ブラジル、アルゼンチン等はウルグアイ、パラグアイとメルコスールというのをつくっております。ウルグアイと投資協定を交渉中であるということですけれども、果たして、こういう国に対して、ウルグアイとのBITを一番最初に先行させるというのはどれほどの意味があるんだろうか。それよりは、交渉は難航していますが、既にヨーロッパ等ともFTAを進めているメルコスールと思い切って交渉をスタートするという戦略の方が正しいんじゃないか。

 先日のTICADでも、これはアフリカ南部の地区ですね、こういう地区とEPAも検討みたいな話をしていましたけれども、このアフリカとも、思い切ってそういうようなことを可能性としてやっていく必要もあるんじゃないか。もちろん、そこまで至らないようなところとはBITでまずやって、特にモザンビークなんかは、当然、今、資源が大変あって急がなきゃいけない話だと思いますけれども、省庁の壁を越えて、交渉する人員の方も大変だと思いますので、ぜひそういうめり張りをつけてやっていただきたい、こういうことをちょっと提案させていただきます。

 この投資協定の中身にちょっと入ります。

 いろいろなことがありますが、今、TPPでも最大の話題の一つになっているのが、投資家対国家の訴訟の枠組み、いわゆるISDと言われているものですね。これがあるからこそ、日本企業がほかの国に行って、特に投資協定を結んでいる国というのは、どちらかというと日本が投資をしたくて、相手の国家としては、何か勝手なことをされてしまう危険があって、そのリスクをヘッジするためにこういう紛争解決協定を結んでおくということだと思いますが、TPPで反対をされている方の多くが、日本国家が訴えられることを非常に懸念されているという状況にあります。これはアメリカが対象国家として入っているからですが、当然、こういう国家とISDを結んだ場合には、そういう国家の投資家から日本が訴えられる可能性というのはあるわけです。

 その際に、国家が訴えられた場合、一体、この紛争は誰が担当して、そして、例えば訴訟費用みたいなものは誰が負担するということになるのか、ちょっと、手続的な話ですけれども、教えてください。

正木政府参考人 先生御案内のように、日本は、一九七八年以降、国家と投資家の間の紛争解決手続を含む投資関連協定を締結していますが、今までのところは、日本が仲裁を提起されたことはございません。仮に国際仲裁を提起された場合には、当該仲裁に係る費用の負担を含め、関係省庁において適切に対応していくことになると思います。

 この関係する省庁がどこか、あるいは費用負担がどうなのかという点につきましては、まさにその国際仲裁の案件に応じて異なってくると思いますので、現時点で断定的に申し上げることは難しい状況でございますが、いずれにせよ、政府として適切に対応してまいりたいと思います。

牧原委員 ごめんなさい、今の話は、何々省が負担をするとかいう話ではなくて、国家として負担をするのか、あるいは、場合によっては民間の人が負担をするということもあるということですか。ちょっと、もう一回教えてください。

正木政府参考人 今申し上げましたのは、どこの省庁が負担するかという点については案件によるので今申し上げられないということですが、当然のことながら、国が被告となった場合には、国がその費用というものは負担することになると思います。

牧原委員 恐らくそうだと思うんです。

 要は、国家として訴えられた場合ですから、国民の税金が訴訟費用になるということだと思いますが、例えば、今、このルールに入っているICSIDはワシントンDCにあります。したがって、このICSIDに、責任は多分、外務省の紛争の関係の人、そして関係する分野の省庁の責任者の人、あるいは、さらにそれが複数にまたがれば、複数省庁の担当した人みたいな人がついて、そして合い議をしながら準備書面をつくったりしてやる。それで、出張に行くわけですね。

 しかも、仲裁ですから、仲裁人を選任したら、その仲裁人の費用も恐らく負担がかかってくるということになります。これは、結構有名な弁護士なんかがついていますので、高いです、正直。それから、日本語じゃなくて英語になる可能性が大きいので、アメリカの弁護士なんかを雇って、専門家を雇ってという可能性があります。

 こういうような、費用も非常に莫大にかかる可能性もあるというようなことも含めて、特にTPPに関してなんですけれども、このISDについて非常に不安感が大きいということもありますので、ぜひ、起きないだろう、起きたらそのとき考えればいいんだみたいなことじゃなくて、今も言ったように、やはりそれなりの枠組みをしっかりと考えておいていただきたい。予算も、なるべくここから出すということも含めて考えておいていただかないと、TPPのときにISDについて説明できないということになると思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 このISDについて私は専門で、WTOの紛争、実際、政府で弁護もやっていたんですけれども、WTOの紛争解決手続というのは、歴史的に見て、国際紛争の解決手段として最も成功した手続であると言われております。

 理由は幾つかあるんですけれども、その大きな理由の一つは、一審はアドホックに、つまり、紛争が起こったら、三人のパネルをそのときそのときに応じてピックアップして決めるということなんです。これはいわゆる仲裁と同じです。

 もう一個は、その上に上訴審、アペラット・ボディーというのがあるんですけれども、これは、七名のえりすぐられた、この人がいわゆる最高裁裁判官みたいな形なんですが、本当に納得ができるという七人が選ばれていて、上訴すると、その七人のうちから三人が選ばれて決めるという仕組みがあって、実際、過去にも、パネルで決めたものが上訴でひっくり返っているという例は少なくありません。

 この、二審制になっている、あるいは日本国内の裁判は三審制ですけれども、そうなっているということが、紛争当事者にとっては安心感を与えることになると思います。

 しかし、現在の投資の紛争解決手続というのは、残念ながら、一回やったら終わりということになると思いますが、まず、一回やったら終わりになるということについて、そのとおりであるか、この辺についてどう考えているかについてお答えください。

正木政府参考人 御質問の点でございますが、先生御指摘のとおり、国際仲裁である投資仲裁は、WTOの仕組みと異なりまして、上訴の仕組みはございません。

 これは、仲裁におきましては、紛争当事者がみずからの事情に理解のある仲裁人を選定する一方で、仲裁人が下す判断を受け入れることをあらかじめ約束するということにより、迅速に事案を処理することを可能としており、その意味で、合理性を有する制度であると考えております。

牧原委員 これは、実際やってみればよくわかるんです。私も仲裁を何回もやったことがあるんですけれども、仲裁は、一人はこっちがいい人、一人は向こうがいい人を選ぶんですね。その人がやる分には納得できるんですけれども、三人目というのは大体合意できないので、その紛争の主体が指名するという形になります。しかし、その人が、ああ、この人はいいねと思うのは、必ずしもそうじゃない場合がある。特に、負けたら、あいつのせいだということになるんですね。

 特に国家が訴えられる場合というのは、WTOと同じで、非常に大きい話です。だからTPPのISDをあれだけ多くの方が御心配されている話なので、私は、これを機に、投資に関する紛争がこれだけ世界に広がっているわけですから、DCにあるICSIDに全てを委ねるんじゃなくて、国連ルールも適用可能なんですけれども、日本から、上訴審のようなものを設置するということで、一回提案してみたらどうかというふうに思います。

 TPPの枠内だけでも、例えば十二カ国なら十二カ国から一人、この人が一番詳しいという人、常任の人を出しておいて、アドホックではなくて、当事国以外の三人が選ばれて上訴を受け付けるような仕組みを提案したらどうかというふうに思いますので、ぜひ御考慮のほど、よろしくお願いします。

 最後ですが、国家が負けた場合に、その国家がやらないという場合があるんですね。これは実はWTOでもありまして、WTOの場合には、リタリエーション、つまり制裁措置を打つことができます。日本も、バード修正法案という案件で、アンチダンピング税について不当な手続があって、アメリカは負けたんですけれども、撤回しないで、これは私が担当していたんですが、日本が初めて制裁措置を打ったということがございました。結果、相手にプレッシャーがあって撤回するということになるんですね。

 この投資協定の場合でも、相手国が敗訴してもこれを守らない、俺はお金を払わない、例えばルールを変えない、こういうふうになった場合はどうなるんでしょうか、お答えください。

正木政府参考人 御質問の点でございますが、投資協定に基づきます仲裁の判断につきましては、もちろん、国際約束でございますので、それに従って締約国は誠実に履行する義務を負います。

 なお、執行を確保するためのメカニズムとしましては、先生御案内のとおり、ICSID条約、国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約に基づく仲裁ということでございますれば、その条約の締約国は、仲裁判断を自国の裁判所の確定判決とみなして、それによって課せられる金銭上の義務を自国の領域内で執行することを約束しております。

 いずれにしましても、こうした点も踏まえつつ、我が国としましては、投資協定に基づく義務が誠実に遵守されるよう、相手国に働きかけてまいりたいと思います。

牧原委員 今のことも理論的にはそのとおりなんですが、現実、あのアメリカや幾つかの国で、WTOのルールで負けても守らないという例、皆さんもいっぱい御存じだと思うんですね。これは、守らなかったら意味がないわけですから、その辺、先ほどの例もそうですが、実際に起きたらどうなるかというシミュレーションをしっかりと組んで、そしてそれを説明していただくことをもっとしっかりやっていただきたい、このことをお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、岡本三成君。

岡本委員 公明党の岡本三成です。

 質問の機会を頂戴いたしまして、委員長ほか理事の皆様、本当にありがとうございます。

 本日は、まず初めに、六月七日、八日に行われました米中首脳会談について質問させていただきたいと思います。

 二日間にわたりまして八時間、大変異例なスピードで行われた、タイミングでもあったと思いますけれども、この首脳会談終了後、安全保障を担当されているドニロン大統領補佐官、この方が記者会見で、今回の会談を通じて、両首脳は、大変幅広い、前向きな議論を展開できたというふうに評価をされております。

 今回の米中首脳会談全体を踏まえまして、その背景ですとか評価、大臣はどのようにされていらっしゃるか、初めにまずお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の米中首脳会談ですが、六月の七日から八日にかけて米国カリフォルニアにおいて行われました。米中二国間及び国際社会が直面する諸課題について意見交換をしたと承知をしております。

 まず、米国と中国、この二カ国が相互に関与を進めるということは、地域及び国際社会の平和と安定という観点からして、望ましく、歓迎したいと思っております。

 同盟関係にある日米両国ですが、この首脳間会談に先立ちましても、緊密に意思疎通を行ってきました。米中首脳会談におきましても、米国側は我が国の立場を踏まえながら対応したものと理解をしております。

 我が国としても、今後とも日米同盟を強化していくべく努力をしていきたいと思いますし、中国との間でも、個別の問題が全体の二国間関係に影響を及ぼさないように、戦略的互恵関係の原点に立ち戻ってしっかりと対応していきたいと考えております。

岡本委員 ありがとうございます。

 報道によりますと、七日の夕食会でオバマ大統領が習国家主席に対しまして尖閣の問題について触れられておりまして、アメリカは主権にかかわる問題にはいかなる立場もとらないけれどもと前置きをされた上で、日中両国は話し合いを通じて現在の緊張を和らげるべきだというふうなアドバイスをされたというふうに報道されております。

 日米の同盟関係をもとに、米中首脳会談の前に、日本側からアメリカ側に対して、何か、このようなことを議題にしてくださいですとか、このようなことをアドバイスしてくださいというような事前の話し合いというのはあったのかなかったのかということをお伺いできればと思います。

岸田国務大臣 日米間の詳細なやりとりについては控えさせていただきたいと思いますが、日米両国は同盟関係にあります。本件首脳会談の開催前にも、緊密に意思疎通は図ってきました。そして、こうした意思疎通を踏まえて、米国は、我が国の立場をしっかり踏まえ対応したと理解をしております。

岡本委員 この会談に同席されたという中国の外交問題を統括されているヨウケツチ国務委員、この方が記者会見をされておりまして、その席で、習主席は、一部の国が挑発的な行為をやめ、対話による解決の道に戻るように希望するというふうなことをおっしゃったみたいです。内容についてはどうかなと思うところがありますけれども、いずれにしても、対話による解決の道を希望するというふうに習主席がオバマ大統領におっしゃったというようなことを記者会見でおっしゃっています。

 細かな話はできないという今のお話でしたけれども、同盟関係をもとに、首脳会談の後に、どのような詳細な議論がなされたかというような、報告と言うと言葉は適切じゃないかもしれませんが、情報が米国からどれぐらい来ているのか来ていないのかということをお伺いできればと思います。

岸田国務大臣 米中首脳会談につきましては、会談後、外交ルートを通じまして、さまざまなレベルでこの内容について米国から情報を得ております。

岡本委員 このように、議題の一つが尖閣諸島をめぐる緊張を緩和するということであって、それに対してオバマ大統領からもメッセージが投げられ、習主席からもそれに対応するような形で、対話を望むというようなことがあったわけです。

 実は、この米中首脳会談、さかのぼって六月七日から今日まで、尖閣諸島近辺での中国公船の領海侵犯のニュースを私はほとんど聞いたことがないんですけれども、ここ最近の中国公船に関する領海侵犯の状況について教えていただけますでしょうか。

桝野政府参考人 統計的なことをちょっとお話しさせていただきます。

 昨年九月十一日の国有化以降、中国公船がこの海域によく参っております。二百七十三日あるのでございますが、これで割ってみますと、領海侵入が大体一七%の日、接続水域に参りますのが七二%の日で参っております。

 ここ一カ月をとりますと、実は五回、領海侵入をしておりまして、一七%弱なので、これに近いことは近いのでございますが、ここ二週間ぐらいでとりますと一回しか来ておりませんので、そのような領海侵入がここ二週間少なくなっているというのは事実でございます。ただ、延べてみると、波の一つかなという感じもいたしております。

 以上でございます。

岡本委員 最後に中国交船が領海侵犯をしたのは何月何日でしょうか。

桝野政府参考人 五月二十六日でございます。

岡本委員 今の統計はどういうことかというと、過去九カ月間で合計四十六回の領海侵犯が行われておりますので、月に直しますと、ざっくり一月五回です。最大の月は昨年十二月の八回、最小の月はことし三月の三件だというふうに思いますけれども、つまり、毎月コンスタントに五回ぐらいは領海を侵犯していた公船が、この二週間は一回も入ってきていないということです。

 これは何を意味しているかというと、私自身、中国と働いてきたこともありますけれども、中国人というのは、国際世論を大変気にする、特に国家レベルですと、私たち日本人が思っている以上に国際世論に敏感であります。したがいまして、私が思うに、米中首脳会談、特に、米国を中心として世界がこのアジア海域における緊張緩和を望んでいるときに、その話し合いの前後で領海侵犯をするようなことがあってはいけないということで慎んでいるのではないかなというふうに私は理解をしているんです。

 もしそうであれば、今後、六月十七日、十八日にはイギリスでG8サミットも行われますので、この席で、外務大臣そして総理から、国際社会に向かって、またはG8の参加国のメンバーに向かって、この問題を新たに提議しながら、この海域での緊張緩和を国際世論としていくような取り組みをぜひお願いしたいというふうに思います。その中で、特にオバマ大統領と安倍総理の日米首脳会談を実現させるような事前準備をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 委員御指摘のように、国際社会における広報戦略といったものは大変重要だと考えております。

 まず、中国による尖閣諸島への公船派遣等、力による現状変更の試みには、毅然かつ冷静に対応していかなければならないと考えています。国際法の遵守等、基本的なルールの重要性について国際社会としっかり共有していかなければいけない、こういったことで、従来からも、外務省としても、総理、外務大臣を初め、各国の大使等も含めて、さまざまなメディアへの対応を行ってきたところであります。

 そしてその上で、G8において対応を考えるべきではないか、こういった御指摘をいただきました。

 G8につきましては、どのような会合が持たれ、そして、それに合わせてさまざまな二国間関係も取り沙汰されておりますが、具体的な日程等については今調整中であります。

 ただ、そうした場を通じまして我が国の立場をしっかり国際社会の中で示していく、明らかにしていく、こういった視点は重要だと考えます。こういった視点で、具体的にどのような対応を行うのか、しっかり検討していきたいと考えています。

岡本委員 ありがとうございます。

 諸外国のさまざまなメディアの報道等を見ておりましても、いい悪いにかかわらず、中国、韓国という国は、国際世論の中でどれだけ自国のプレゼンスを上げるかということに本当に時間、お金を割いております。その意味から、我が国も、対抗ということではないですけれども、そこに勝負を決する重要なポイントがあるのであれば、もっとエネルギーを割いていただきたいなというふうに切に思います。

 続きまして、今回議題になっております協定について質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど牧原委員からも御指摘がありましたように、協定の締結、全体的にスピード感が遅いなというのが私の率直な意見でございます。

 しかしながら、その問題意識を持って役所の方にも今まで質問をしてきたときに、常に答えとしてお伺いをしたのは、適切なタイミングで適切に協定の締結はやっておりますと。つまり、実際に日本の企業がそこに行くようなタイミングに合わせて、または、社会保障であれば、その国で働く日本人の方がある程度の数になったとき。ですから、現在の協定の中でも、実数としては、つまり実利としては、ほぼほぼ大きなものが獲得できていますというふうな御説明を受けてきたんです。

 もしそれが本当であれば、適切な協定が結ばれているにもかかわらず、諸外国と比べまして、GDP比で対しますと、日本の企業の海外に対する、対外の直接投資というのは圧倒的に少ないんですね。適切な土俵ができているにもかかわらず、その土俵の上で相撲をとる人は誰もいないという状況になっています。誰もいないというのは言い過ぎですけれども、諸外国に比べまして大変に少ない。

 一方、成長戦略からも、他国から我が国に投資をしていただくことは非常に重要なんですけれども、対内直接投資についてはもっと悲惨な状況になっておりまして、全世界の、これだけ大きなGDPを占める我が国に対する対内の直接投資は一%レベル。全世界で行われている投資の一%ほどしか我が日本には投資をされておりません。

 十分な協定が結ばれていて、土俵ができていて、それが適切に運用されているのであれば、何ゆえに、それを利用して投資をする方、投資をされる方というのがこのように少ない現状になっているか、その認識、分析をまず教えていただければと思います。

岸田国務大臣 御指摘の直接投資ですが、まず、日本の対外直接投資は、二〇〇五年以降、リーマン・ショック後の一時期を除きまして、基調としては増加基調にあります。対外直接投資残高は、二〇〇六年末が約五十三・五兆円、そして二〇一二年末が八十九・八兆円、こうした拡大を示しております。

 これに対しまして、我が国に対する直接投資は、御指摘のように、諸外国と比べて大変低い水準にあります。二〇一一年末時点の対日直接投資残高対GDP比は三・九%ですが、各国、英国におきましては四九・八%、カナダが三四・三%ですから、こうした国々と比べて大変低い水準にあるということです。

 産業界からは、こうした実態に対して、国内の投資・事業環境が世界水準になっていない、やはりこうしたことが原因だという指摘もされております。

 こうした対内直接投資を活性化するためには、さまざまな努力が必要だと考えています。

 先般、安倍総理も、六月五日ですが、成長戦略に関するスピーチを行いました。その中で、国家戦略特区の創設ですとか、外国人でも安心して病院に通える環境ですとか、インターナショナルスクールの充実ですとか、こうした環境を整備する方針を示したところですが、こうした点につきまして、我が国としてもしっかりと環境整備をしていかなければならない、こうした認識を持っております。

 あわせて、日本を魅力的な生産拠点、投資先とするための高いレベルの経済連携、こうしたものにも取り組んでいかなければならないと考えております。

岡本委員 ありがとうございます。

 ただいま御答弁いただきましたように、協定を結ぶというのは、そういう意味では必要条件ではあるけれども、投資を日本に持ってくるための十分条件にはなっていないということで、その御認識を大臣御自身もお持ちで、それをよりよい環境にするためには、他の省庁とも連携したような魅力の増大ということをおっしゃっているわけですから、もしそこに問題点があるというふうに御認識であれば、そこに関しても次の一手というのを早急にお示しいただくような御尽力をいただければと思います。

 最後に、先日行われましたTICAD5についても一言御質問させていただきたいと思います。

 このTICAD5の最後に、安倍総理から、今後五年間にわたりまして、我が国からアフリカに対して、ODAで一兆円レベル、官民合わせて三兆円を超すような投資をしてまいりますというふうな記者会見をしていただきましたけれども、実は、アフリカ諸国で既にプレゼンスを高く保っているような国、例えば中国であったり韓国という国は、その国の首脳がアフリカに出向いて信頼関係を結びながら、投資の機会また支援の機会というのを見出してきたというような現実がございますので、我が国でTICADが行われていること、これはすばらしいことだと思いますけれども、総理そして外務大臣を初め、我が国からアフリカに足を運ぶということにも、まず、ぜひ御尽力をいただきたいと思います。

 その上で、ナイジェリアの中央銀行総裁は、フィナンシャル・タイムズの記事でこのようにおっしゃっています。

 中国はアフリカから一次産品を奪い、工業製品を我々に売りつけている。まさにこれは植民地主義の本質の一つだ。

 いわゆる批判をしていらっしゃるんですね。つまり、ある意味、大きな金額をアフリカに投資することが経済支援のように見えているけれども、アフリカの方からごらんになると、それは植民地支配の一角のような経済支援のように見えるという御批判をされております。

 我が国の今後の支援がそのような形でアフリカの方々に受け取られないようにするために、お互いがウイン・ウインになるように、そして日本独自の価値観というようなものを十分に共有できるような支援の体制にしていただきたいと思うんですけれども、今後の投資に関します基本的な我が国のポリシー、そしてお互いが利益を享受できるような形というのをどのように考えていらっしゃるか、御答弁をいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、アフリカの現状を見ますときに、成長の大陸としての大きな可能性を強く感じます。そして、今委員御指摘になられましたように、アフリカとの関係、支援、連携につきましても、やはりウイン・ウインの関係をしっかりとつくっていかなければいけない、このように考えます。

 そして、TICADプロセスの中でも感じましたことは、アフリカからは、我が国に対する期待、評価は大変高いものがあり、その中にあって、従来の援助から、やはり投資に対する期待が高まっている、こうしたことを感じました。そして、この投資ということの真意ですが、要は、単なる援助ではなくして、技術移転とかあるいは雇用、こういったものを生み出す支援であってもらいたい、こういったことだと感じています。

 そして、あるアフリカの首脳からは、安倍総理に対して、職場に倫理を持ち込んだのは日本だけだという声もありました。要は、時間をしっかり守るとか、それから、アフリカにおいては日本語のカイゼンという言葉が職場システムとして大変評価されている、こういった実情もあります。

 こういった日本独自の支援のあり方をしっかりと大事にし、今後、他の国の支援との違いを出し、日本の成果や評価につなげていかなければならない、こんなことをこのTICAD5を通じて感じたところです。

 ぜひ、こうした思いを大事にしながら、このTICADプロセスも二十年の歴史を刻んだわけですが、この歴史を踏まえて、将来に向けて、日本のアフリカ支援の成果につなげていきたいと考えております。

岡本委員 ありがとうございます。

 アフリカ支援に関しましては、量だけではなくてその質を国際社会に評価していただけるような支援をお願いいたしまして、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 おはようございます。日本維新の会の浦野です。よろしくお願いをいたします。

 まず最初に、投資協定について、これは質問といいますか、前回、外務委員会が行われてからかなりの時間が経過をしております。なぜ開かれなかったかというのは、与野党の間のいろいろな協議で開催ができなかったというのは重々承知はしておりますけれども、この投資協定に関しては、一度、前回の解散前に提出をされて、解散をすることによって廃案ということになっているものも含まれております。

 私、外務省の方々から、この協定については特段、各党、反対とかそういうのもなかったということで、できれば通していただきたかったということです。

 では、なぜ各党が反対もしていないものが通すこともできないのか。それは、ただただ政治の責任だと私は思います。

 これは、与党が悪い、野党が悪いと私は言っているんじゃないんです。本来、何の異論もない部分に関して、ほかのもめる部分があって、ほかの条約とか、いろいろな政治的な駆け引きで、例えば委員会が開かれない、例えば本会議が開かれない、そういったことによって本当に必要とされているこういった条約等の大事な法案が廃案になってしまう、こういう事態は私は避けていかないとだめだと思うんです。

 外務省の職員の皆さんに、この際、政治家に文句を言ったらどうですかと言ったんですけれども、それについては回答がありませんでした。ただ、恐らく、こういった仕事に時間を割いて一生懸命努力をされている方々にとっては、その方々からすれば、本当につまらない、そんなこと話し合いで決められへんのかというような部分だと思うんですけれども、そういったことを乗り越えて、これからこういったことに関して、政争とは別に、必要な条約、必要なものに関しては通していくというふうな姿勢をとってもらいたいと思うんです。

 その件に関して、どなたか、政府の立場としてどうお考えか、答弁をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 国会の進め方、また委員会の持ち運びにつきましては、委員長を初め理事の皆様方に御判断いただくことだと存じますので、それについて私から何か申し上げる立場にはないとは思いますが、今議題になっております投資協定等につきましては、世界の経済成長あるいは活力を我が国に取り込むために、対外、対内投資は大変重要だと考えております。

 こうした協定の重要性は強く感じるところであります。ぜひ審議をお願いさせていただきたい、これが政府としての立場でございます。

浦野委員 私も地方議会出身で、各党異論がないものに関して採決できないというのは、地方議会ではあり得ない話なんですね。これが、国会になると、それこそ数を数えれば切りがないほどそういった法案が存在をしているというのが現状です。その部分は、私たち日本維新の会も、国会改革の一環として、そういう反対のない部分に関しては前に進めていきましょうと。

 もちろん、判断が各政党で分かれるような重要案件、例えばTPPなんかでもそうですけれども、そういったものに関しては、議論を深めるために、やはり委員会を開いてやるとか、そういうのはしないといけないと思うんですけれども、そういったもの以外の法案は、ぜひささっと進められるように、これは私は国会の中で与党、野党が協力をすればできることだと思っています。

 この件は、これぐらいにしておきたいと思います。

 次に、世界一大きな授業二〇一三というのがこの間ありました。聞きますと、私、最初はこの授業に声はかかっていなかったんですけれども、たまたま、これの運営スタッフのボランティアの大学生が、実は私が地方議会にいたときにインターン生として来ていた学生が運営スタッフとしてかかわっているということで、急に、その当日連絡がありまして、ぜひ参加してもらえませんかということだったので、行ってまいりました。

 外務省も後援をされていますので、よく御存じだとは思うんですけれども、これは、聞くところによると、五年目だと。要は、初期教育分野にウエートをもっと置いてください、ODAとかの予算を割いてくださいという世界的な運動なんですけれども、この五年間ずっとやってきた。外務省も後援してやってきた。これは、各党声がけがあって、各党から数名の国会議員の先生方がお見えになって、この授業に参加されておりました。

 五年目ということだったので、この間、どのような努力を政府、外務省として行ってきたか、お聞かせいただけたらと思います。

あべ大臣政務官 この世界一大きな授業、私も参加をさせていただきましたところでございます。

 近年の我が国の基礎教育分野の支援、一億ドル前後で推移をしておりまして、教育、特に持続可能な開発を実現するためにも、私ども、人間の安全保障の観点から重要だというふうに考えております。

 また、我が国は基礎教育を含む教育分野の支援を重視しているところでございます。しかしながら、非常に厳しいODA予算でございまして、そういう中、支援額は横ばいでございます。ミレニアム開発目標の達成に向けまして、二〇一〇年に包括的な教育の協力政策を策定いたしまして、効果的な教育分野の支援に取り組んでいるところでございます。

 特に、基礎教育に関しまして、スクール・フォー・オールという支援モデルを私ども提示しておりまして、学校、コミュニティー、行政が一体となりまして、包括的な学習環境の改善を行いまして、全ての子供が質の高い教育を受けられることを目指しております。

 委員が御出席された国会議員のための世界一大きな授業、五月七日に私も出席させていただきましたが、その取り組みを外務省といたしましても高く評価しておりまして、この世界一大きな授業で基礎教育の重要性が指摘されていることも踏まえまして、引き続き行ってまいります。

 実は、TICAD5におきましても、六月一日にプラン・ジャパン及び教育協力NGOネットワークの共催で、女子教育に関するサイドイベント、これが開かれたところでございます。

 私も出席させていただきましたが、やはり何といっても家族計画の問題がある、貧困の問題があるというところで、教育全般必要でございますが、特に女子教育、これが貧困から脱出するためには必要ではないかと私ども考えておりまして、引き続き効果的また日本らしい支援を行ってまいりたいというふうに思っております。

浦野委員 これはまさに米百俵の話だと思うんですね。やはり今、予算の限られている中で、どこにウエートを置いて投資をしていくか。もちろん、相手国からは、そういうことよりもインフラ整備に出してほしいという要望とかがたくさんあるというのは私も存じております。

 ただ、そこを、いや、そうじゃなくて、これから国を支えるのは教育なんだ、まさに女性を含めた皆さん方の教育水準を高めていく、それがまず将来の投資につながるんだということを、やはり政府としても訴えていっていただかなければならないと思います。

 私は非常に残念に思っていることは、どういう声がけをされているのか、私は運営スタッフから話を聞いて、よし一回行ってみようということで参加しました。各党、超党派、ほとんどの政党の方はいらっしゃっていました。ところが、全員で十人ちょっとしかいらっしゃいませんでした。

 本当にこれを進めるのであれば、もっといろいろなたくさんの国会議員の方々に参加をしていただかないと、この世界一大きな授業があったことすら知らない国会議員の皆さんが大半だと思います。そんな中で、高校生の皆さんが、自分たちの時間を割いて、わざわざ我々のために授業をしてくれるわけですね。

 私は、この高校生の皆さんに申しわけないなと思うんです。やはり、高校生の皆さんからしたら、国会議員の前で自分たちの意思を、意見を表明できる、直接訴えられる、こういった機会というのは非常に重要だと思うんですね。それを受けとめる我々国会議員としても、こんな数人で参加するものなのか、それは、そのときどういうふうな声がけをしているのか僕もわからなかったので何とも言えないですけれども、ただ、次にこれをやるときは、ぜひ国会全体で取り組んでいただけたらなと思っております。

 この件については、これからODAの中で、初等教育とかの分野にウエートを置いていく努力をぜひしていただきたいと思います。そうじゃないと、毎年わざわざやってくれている高校生の皆さんに本当に申しわけないと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、川口代議士が中国へ行かれた際に、滞在の延長をされました。その後、国会でもめにもめていろいろありましたけれども、この滞在を延長した成果というのはもちろんあったんだと思うんですけれども、政府としてどういった報告を受けておられますか。

金杉政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、川口元外務大臣は、四月二十三日から二十五日にかけて、アジア平和・和解評議会、APRCと称しておりますけれども、その団体の一員として中国を訪問し、ヨウケツチ国務委員を含む中国側関係者との間で会合を行ったというふうに承知しております。

 中国側要人を含む中国側関係者との意見交換において、中国側から、例えば領土に関する中国側の立場について発言があった際に、川口元外務大臣が意見交換に参加をして我が国の考え方を伝えることができた、そういう報告を受けておりますので、その点については有意義であったというふうに私ども評価しております。

 以上でございます。

浦野委員 有意義であったということなんですけれども、では、これから中国政府に対し、我々日本政府としてどういった成果を上げていくと。

 その滞在、あそこまでもめたにもかかわらず、それを延長してまでやったということに関して、日本政府は中国政府に対してどのようなことをこれから求めていくということになるんでしょうか。

岸田国務大臣 さまざまなルートを通じて我が国の考え方を中国を初め関係諸国に伝えていく努力、これは重要だと考えています。

 そして、こうした努力を積み重ねながら、日中関係、我が国にとりまして最も大切な二国間関係の一つであります。この世界第二と第三の経済大国の関係は、この地域、国際社会の平和と繁栄にも大きく影響してきます。こうした大切な二国間関係、この個別の問題が全体に影響を及ぼさないように、大局的な見地からコントロールしていかなければならない、こうした考えであります。

 ぜひ、こうした積み重ねを行いながら、そして、現実、さまざまな具体的なテーマで意思疎通を行ってきています。環境大臣会合ですとか、防衛当局間の意思疎通ですとか、日中韓FTAですとか、こうしたさまざまな具体的な課題において意思疎通を積み重ねてきています。こうした積み重ねをさらに高い政治レベルでの意思疎通、対話にしっかりつなげていきたいと考えております。

浦野委員 委員長解任の話題ばかりが新聞報道でされてしまいまして、本当の中身という部分に関してほとんど我々も聞けなかったというのが現状ですので、そこら辺をよろしくお願いいたします。

 続きまして、飯島参与の訪朝について、前回の外務委員会からかなりの時間がたってしまいましたから、いろいろと話は出てきておりますけれども、新聞報道等でもありますけれども、いろいろと成果はあった、政府としても成果があったということをおっしゃっています。

 では、それを受けて、今現在、どういう話が進んでいるのかということをちょっとお聞かせ願えますか。

岸田国務大臣 飯島内閣参与は、五月十四日から十七日まで、北朝鮮の平壌を訪問し、北朝鮮当局者と会談したと承知をしております。

 事柄の性質上、現時点でこの評価について断定的に申し上げることは控えたいと存じますが、我が国としては、いずれにせよ、対話と圧力という方針のもとで、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイル、こうした諸懸案を包括的に解決するべく取り組んでいく方針、これは全く変わっておりません。

 拉致につきましては、我が国として、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、また拉致に関する真相究明、そして拉致実行犯の引き渡しに向けて全力を尽くしていく所存であります。

 こうした点については、総理及び官房長官から、飯島参与に対し事前に確認しているところであり、これらを十分踏まえた上で対応されたと理解しております。

 そして、その後の動きとして、北朝鮮をめぐりましては対話という動きがあるわけですが、こうした対話の動きにつきましても、ぜひ、非核化を含む諸懸案の解決に結びつくものでなければならない、北朝鮮の真摯な具体的な対応が求められる、このように考えております。

浦野委員 ぜひ、拉致被害者の皆さん方も、早く解決をしていただきたい、これはもう日本政府として、日本国民として、みんなが思っていることだと思いますので、この件についてはしっかりとやっていただきたいと思います。

 続きまして、在日米軍の不祥事についてお話を聞かせていただきたいと思うんです。

 佐世保でもありました。ついこの間、在日米軍の司令官が更迭をされました。いろいろな不祥事について報告等があると思うんですけれども、政府として把握している情報を聞かせていただきたいと思います。

伊原政府参考人 米軍人等による事件、事故につきましては、一件一件に被害者や御家族がおられ、その方々の御心痛を察するに、一件一件が大変深刻な問題であるというふうに認識をしております。

 私ども、こういった問題が発生してしまった場合には、日米合同委員会の合意に基づきまして、日米双方で迅速に通報し合う、そういう事件・事故通報体制というのを確立しております。

 外務省といたしましては、そういった枠組みを通じて情報を把握しております。一件一件につきまして、そういう事件、事故が発生いたしましたら、その再発の防止等について米側に対してしっかりと申し入れを行っているということでございます。

 個々の案件につきましては、残念ながら、最近も、五月に入りましても、横須賀、沖縄市、あるいは沖縄の読谷、そういったところで住居の侵入とかあるいは飲酒にまつわる事件とか、そういったことは散発をしております。

 米側におきましても、夜間の飲酒規制措置や一定の階級以下の米軍人に対する夜間外出禁止措置を含む指針を導入しておりますけれども、私どもとしても、引き続き、米側に対して、さまざまな機会を通じて事件、事故の防止を働きかけて取り組んでまいりたいというふうに思っております。

浦野委員 佐世保の件でも、普通これが国内の日本人と日本人の犯罪であればすぐに表面化するんですけれども、たしか数日たってからこのことが発覚していたと思います。

 今回、在日米軍の司令官が更迭されたというニュース、これは更迭された理由が非常に重い理由でしたけれども、そのことについて、政府としてはいつごろからそういったことを把握されていたのか、これはわかりますか。

伊原政府参考人 まず、佐世保の事件につきましては、これが女性に対する性的暴力事件でありましたこともあり、情報の取り扱いについては慎重を期す必要があるということで、詳細について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

 それから、在日米軍司令官の停職処分の件につきましては、私ども、報道でも承知しておりますが、同時に、米側からも事情については説明を受けております。

 ただ、この件につきましては、引き続き米陸軍が調査を進めているというところであると承知しておりますので、まずはそういった米側による措置を注視していきたいというふうに思っております。

浦野委員 米軍司令官の件ですけれども、きのうネットで、その被害に遭われた方が日本人女性だということが流れていますが、それは確認できますか。

伊原政府参考人 今先生御指摘の点について、私どもも報道では承知しておりますけれども、詳しい中身につきましては、先ほど申し上げたとおり、米陸軍が今調査をしておりますので、その結果を受けて、きちんと報告を受けたいというふうに思っております。

浦野委員 報道ベースですから、私も報道ベースで話をさせていただくんですけれども、上官だった司令官から性的暴行を受けた、強制的に受けたということで、今回こういうことになっているわけですね。

 それが事実であるなら、司令官といいますとかなり階級の高い方です、先ほど佐世保の件もありましたけれども、一定の階級以上の人以外は外出禁止だとかそういうふうな措置をとっているということですけれども、階級関係なしにそういった女性に対する問題が起きているわけですね。これはもちろん、被害者が日本人女性だからというのは一番大きな問題ですけれども、女性に対する人権侵害なわけですね。

 私、個人的には、ふだん、女性の人権侵害やとわあわあ騒いでいる人たちがこういうことに関して全く無関心なことがちょっと信じられないんですけれども、例えば、これが本当に報道されているような事実があったとしたら、それなりの立場にある方の女性に対する人権侵害だということになれば、これは政府としても非常に大きな問題になると思うんですけれども、いかがですか。

伊原政府参考人 一点、事実関係だけ補足をさせていただきますが、今回、ハリソンという少将、彼自身が性的暴行の被疑事案に関与したということではなくて、司令官として、そういった事案について調査をしたり、あるいは適切に報告する、そういう職務を怠った疑いがあるということで陸軍長官によって停職処分とされたというふうに聞いております。

 ただ、これは、現時点では、そういった疑いがあるということですので、先ほど申し上げましたとおり、事実関係の詳細については今米陸軍によって調査をされているということだと承知しております。

浦野委員 この件は、日米同盟で今まで築いてきた信頼関係を壊しかねない、これこそ本当に壊しかねない事案だと私は思っています。もちろん、こういう話が出てくると、地位協定の話も必ずセットで出てきます。私たち日本維新の会、あらゆるタブーに挑戦をしておりますので、私どもは議論はしないといけないと常々考えております。

 この件、いつごろ事実関係が確認されるのか、非常に興味を持っております。日本政府としても、このことについては、アメリカ政府及び米軍に対して、きっちりと報告をしていただきたいというふうに、ちゃんとした外交ルートを通じて伝えていただきたいと思うんですけれども、外務大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 まず基本的に、こうした事件、事故につきましては、我が国としてもしっかりと防止に取り組んでいかなければいけないと考えています。米軍人・軍属等による事件・事故防止のための協力ワーキング・チーム、CWTの開催など、さまざまな取り組みを進めていかなければならないと存じます。

 そして、こうした事件も含めて、さまざまな実態について情報を把握していかなければならない、そして米側ともしっかりと意思疎通を図っていかなければいけない、御指摘のとおりだと思います。

 ぜひ、さまざまな情報収集、そして意思疎通には努めていきたいと考えています。

浦野委員 この件は、日本政府としても、大きな問題として、これからアメリカと話をしていただけたらと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 最後にですけれども、世界各国から人材育成のために大学へたくさんの方々を受け入れております。これは、ODA枠で受け入れている人数と、あと文科省がいろいろ事業として受け入れている部分がありますけれども、その数字をお願いいたします。

常盤政府参考人 お答え申します。

 日本で受け入れている外国人留学生は、平成二十四年五月時点において約十三万八千人でございます。このうち、大学において受け入れている外国人留学生数は約十一万人という状況でございます。

浦野委員 TICADでもありましたし、先ほどの世界一大きな授業とつながる部分があるんですけれども、こういう教育分野でアフリカなどからもっとたくさんの方々に大学に来てもらって勉強していただく、このことをこれからもっともっと積極的に取り組んでいっていただけたらと思うんですけれども、いかがですか。

岸田国務大臣 TICAD5の会議を通じまして感じたこと、先ほど日本らしい支援ということについても触れさせていただきましたが、ODAを含むさまざまな日本の具体的な支援につきましては、一つはインフラ整備、そしてもう一つ大きな期待が寄せられたのが人材育成でありました。この二つは、具体的な日本の支援として、アフリカから強く期待が示されたところであります。

 ぜひ、その二つのうちの一つ、人材育成という部分について、我々はしっかりと取り組んでいかなければならないと存じます。そして、その中に、御指摘になった留学等も重要な要素として含まれると考えております。

浦野委員 最後になりますけれども、日本の得意分野、これは恐らく、大臣がおっしゃったようなソフトの部分、人材育成、これはまさに世界でもトップクラスだと思うんですね。こういった日本の特徴をやはり世界に広げていく、そしてさらに、日本で学んでいただくことによって、日本のよさ、そういったところも自然と学んでいただけるわけですから、こういった取り組みはさらに進めていただきたいと思います。

 それでは、質問を終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

河井委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として株式会社国際協力銀行代表取締役副総裁渡辺博史君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として防衛省経理装備局長伊藤盛夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 きょうは、この時間、一般質疑ということで、先ほどは投資協定あるいは社会保障協定の質疑でしたけれども、ぜひ、世界全般を見渡して、どういうふうになっているかをいろいろと教えていただきたいと思っています。

 きょう、わざわざJBICの渡辺さんにお越しいただきました。今、世界の中で金融が持っている意味というのは国際政治の中で非常に大きいと思いますので、私はきょう、渡辺さんからぜひ、元財務官だったというバックグラウンドも踏まえながら、教えていただければと思う趣旨で、お忙しいところ来ていただいて、本当にどうもありがとうございます。

 今、お配りしてあるというか、参考のために、ロイターの記事が手元にあると思うんですけれども、この記事について、順番に教えていただければありがたいです。

 表題は「中国は不良債権処理や年金支払いで米債売却の可能性=渡辺JBIC副総裁」というふうになっています。その中で、二行目に、「中国が銀行や地方政府の支援や年金支払いのために米国債の売却を検討する可能性があり得ると指摘」されたということが出ています。

 この辺について、渡辺さんの御所見をさらに敷衍して教えていただければと思います。お願いします。

渡辺参考人 お答え申し上げます。

 その前に、これから申し上げることは、特段、国際協力銀行の役員としてということではなくて、私の個人的見解ということで述べさせていただきます。

 このロイターの記事は、二十五分ぐらいしゃべったものをまとめてありますので、そういう意味で、少しつながりが直接的になっているかもしれませんけれども、表題に即して申し上げますと、まず、中国の場合には、今世紀の初めにかなり銀行の不良債権が積み上がっていったんです。その後、中央政府が努力をして引き下げをしていったんですが、やはり、二〇〇八年のリーマン・ショックの後に、中国も景気を刺激しなければいけないということで、地方政府がさまざまな投資をやり、あるいは中央政府も国債の発行をしてまで投資を行ったわけですけれども、それが必ずしも効率のいいところに回っていたわけではない。

 それから、地方政府の場合、その後、若干惰性がついて、もうそろそろやめてもいいようなタイミングであってもなおかつ投資を続け、そのときに、地方の銀行あるいは中央の銀行の地方の支店に、ある程度一緒に金を出せという形で資金手当ての割り振りをしたものがありまして、これがかなり今不良債権化しているのではないかというふうに言われております。

 銀行業監督委員会の方でも、既に、二〇〇五、六年に比べると、かなり比率が上がっているということが言われておりますし、外の方の見方は、多分、中国政府の発表しているものより何倍か多い不良債権があるのではないかということが言われているというのがまず一つございます。

 それから、もう一つは年金でございますけれども、中国の場合は、日本と同じような形で高齢化がかなり進行しておりますし、特に一人っ子政策をとっていたということから、ある程度の時期からはかなり日本より早目に高齢化が進んでいくということになりますと、年金制度もつくり上げられているわけでありますが、制度をつくりましたのが比較的遅かったものですから、過去においてまだ支払いがないときにどっと積み上げておいてそれを取り崩していくという日本型の期間というのはそう長くはとれない。かなり早く、年金の支払いが始まった瞬間から、いわゆるペイ・アズ・ユー・ゴーで、毎年払うものは毎年調達しなければいけないという時期に入ってくるということが予測されております。

 そのときに、もちろん若い人から保険料を取る、あるいは増税をするということもありましょうけれども、必ずしもそういうことが許されない場合には、何らかの形で調達をしろというプレッシャーがかかってくるだろうというふうに言われておりまして、一つのやり方は、どこの国でもそうですが、とりあえず国債でということを考えるわけでありますけれども、国内的にこれからさまざまなことをやるのに、国債の発行をそういう年金の支払いだけに回せるかどうかということについて若干懸念がある。

 それから、国内で調達をするのか海外で調達するのかという、そこの選択はあるわけで、とりあえず今のところ中国についての信認というのは余り崩れておりませんので、今世紀に入ってから、かなり大規模に海外で国債の発行をしておりますけれども、最近、少し中国の今後の政治あるいは経済情勢について懸念が示されている中で、国債の発行が外でもなかなかしにくいということになりますと、年金の支払いに必要な資金の調達を、保険料の引き上げ、あるいは増税、あるいは国債の調達ということで必ずしもうまくいかない時期が来るおそれがあるというふうに言われております。

 そうなりますと、どこでもよく議論があるんですが、外為の準備の方を結構今持っております。公式ベースでも四兆ドルありますし、それから、既にCICや何かに委託したものも含めれば五兆ドル近く持っているわけでありますから、これを使えという話は必ず出てくるだろうということがあります。

 特に、中国の場合は、銀行の不良債権処理については、今世紀の初めに、外準から資本注入をするということを既に先例としてやっておりますので、そういうことがあり得るというのは、かなり高い確度でみんなが懸念しているわけであります。

 そうなりますと、外準を売るということは、かなりの部分を米国債で持っております、もちろん日本の国債も持っているわけですが、圧倒的なウエートを米国債で持っておりますので、その外貨準備を使ってそういう年金の支払い、あるいは不良債権処理のための資本注入のために資金を使うということになりますと、その段階において米国債を売るということが起こってくる可能性がある。

 それをなるべくやらない、あるいはやるにしても、非常にいわゆる秩序立って、どかっとまとめて売ることなしに、マーケットを散らさないようにしてほしいという話は、我々もあるいはアメリカ政府も既に中国としているわけでありますが、そうはいっても、せっぱ詰まったときに何が起こるかということについては我々としては少し準備をしておかなければいけないということで、少なくとも、先進国側のマーケットを持っておりますG7等においては、そういうことについてもある程度頭の体操というか準備をしておかなければいけないというのが、ここで書いていただいた趣旨でございます。

 長くなりましたが、申しわけありません。

山口(壯)委員 三段目のところに、「渡辺副総裁は中国経済について「銀行の不良債権が増加し、地方政府も赤字が出ており、中央政府が補てんする必要がある」と指摘。また「今から一、二年先には積み立て不足の状態で年金の支払いが始まる」とし、資金調達手段が課題になると指摘。中国経済の成長率が鈍化すれば中国が債券を発行しても国際投資家がどの程度買うか不透明なため、外貨準備の「米財務省証券を売ることがあり得る」とし、「国際社会としての対応をG7などでまとめて議論する必要が出てくる」との見方を示した。」今説明を聞いたところは、この部分ですね。

 この「米財務省証券を売ることがあり得る」という、この部分が一番私の目を引いたところです。

 どういう根拠でこういう見方ができるのか、少し私にはわからない面がある。これは相当なメッセージだと思います。これをやるということのインパクトは米ドル基軸通貨体制にもかかわるんじゃないかと思います。その辺はいかがでしょうか。

渡辺参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたように、資金が不足をしたときに、四兆ドルあるいは五兆ドルという形で積み上がった外貨準備を使えという判断をしたときには、その外貨準備というのは、まさに外貨で持っているわけでありますから、それを人民元にかえなければいけないという手続になるわけですが、そのときには、持っている外貨建ての債券あるいはその他の資産のものを売却するというメカニズムになる。

 そういう意味でいいますと、やはり、先ほど申し上げましたように、かなりのウエートのものが米国財務省証券であるということは、彼らは発表はしておりませんけれども、世界の金融市場ではそういうふうに思われているというところから、そういうことが起こってくるというふうに私どもとしては思っているわけであります。

 ただ、その場合に、どういう形で売却をするか、あるいはどの程度のマグニチュードで毎月あるいは毎四半期ごとに売却するのかによって、マーケットに対する影響はかなり違ってくるわけでございますけれども、やはり、そういうことについては、既に世界の市場、特に債券市場は非常に今ナーバスになっているといいますか、いろいろな情報で振られる状況になりやすくなっているところもございますので、そういう面については、実際に売り始めてから起こってくることと、それから、売るだろうという思惑がもう少し高まってきたときに起こること、そういうものを少し峻別して我々として対応していくことが必要だろう、そういうことを申し上げたつもりでございます。

山口(壯)委員 中国がお金が足りないからアメリカの国債を売る、これはどういうエビデンスに基づいての観測なんでしょうか。

渡辺参考人 必ず売るという意思決定をしたかどうかということについてのエビデンスを私は持っているわけではございません。

 今申し上げたような形で、国内の資金調達を補完するために外貨建てで持っている資産を売却するというときには、今申し上げたように、そのかなりの部分が米国財務省証券でありますので、それは売られる可能性が高いだろうということであります。

 ただ、先ほど申し上げましたように、その外貨準備の中には日本国債も持っているわけでありますから、それについても売られるということはもちろんあるとは思いますけれども、今中国が持っているいわゆる外貨建ての構成の中でいえば、やはり、ユーロあるいは円建てで持っているものに比べて、米ドル建てで持っているものが多い。

 そのときには、やはり最も深みのある債券市場を構成しておりますのが米国の財務省証券でありますので、長いもの、短いものも含めて、かなりのウエートで持っているということが今推測されておりますので、売られるときには、そういう意味では、米国財務省証券のシェアが大きいだろうということですので、米国財務省証券だけを狙い撃ちして売るというつもりで申し上げたつもりはございません。

山口(壯)委員 アメリカの国債を売るということに、これは多分、論理的というか、むしろ渡辺さんの頭の中で考えられたんだろうなと。今のお話を伺って、エビデンスということではなくて、渡辺さんの頭の中で考えられたんだろう。

 その場合に、世界の金融システムへのインパクトは、その言葉以上に重いものがあるように私には見えるんです。その辺はいかがでしょうか。

渡辺参考人 お答え申し上げます。

 それはまず、実際に売りに出るかどうかということと、それが起こるタイミングがどういうことかということだと思います。

 仮に、きょう現在、そういうことが起こったとすれば、先ほど申し上げましたように、世界の債券市場は非常に今ナーバスになって、かつボラティリティーも高くなっておりますので、そういうときにもしアクションをとるということになれば、かなりのインパクトが出るのではないかと思っております。

 昔、我が日本国の橋本総理大臣が若干それに類したことをおっしゃったときに、ニューヨークの市場は大きく荒れた。実際には売らなかったわけでありますけれども、それだけでも、ニュースでもそれだけ動くということがありますから、今のようなマーケットでいきますと、かなりインパクトがあると思います。

 ただ、アメリカの経済自体はこれからどういうふうになっていくかわかりませんし、とりあえず、私は、ことし、来年は、アメリカの経済は比較的堅調であろうと思っておりますので、そうなれば、米国債の中の国内市場へのいわゆるプレッシャーというのはかなり弱まってくるということになりますと、アメリカの債券市場がそれなりの強みを持ってくるというときには、マイナスのインパクトは小さくなると思います。

 ただ、それにしましても、先ほど申し上げましたように、何兆ドルも持っているものがどれだけ出ていくかということの思惑というのは、マーケットは先走りをしていろいろ考えるということになりますと、それについてはある程度、冒頭に申し上げましたように、オーダリーに、ある程度まとまった金額をどかっとやるのではなくて、少し散らしていくとか、そういう類いのメッセージを出していかないとマイナスのインパクトがあるだろうということで、非常に処理を間違ったり、あるいは、全くせっぱ詰まって突然何かやるといった場合には、かなりのインパクトが債券市場に出てくるということは、まさに委員御指摘のとおりだというふうに思っております。

山口(壯)委員 このメッセージが、某銀行のナンバーツーの方、別に、ほかの方が言われるのであれば、私はそんなに注目しなかったんです。ただ、元財務官でおられる渡辺さんが発言されているので、これは相当な重みがあるなということで私は注目した次第なんです。

 ドル基軸通貨体制にもこれは相当な影響があり得ると思うんです。今、中国が一番アメリカの国債を持っているわけですね。昔は日本が一番持っていましたけれども、今、中国が持っている。いわゆるドルについても同じですけれども。

 そういう意味で、その中国がこうだろうというメッセージが日本の中から出てくるということについてのインパクトというのは、いろいろなものがあるんですけれども、先ほど私が申し上げた、ドル基軸通貨体制についてもこれは大きな影響があるんじゃないのかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

渡辺参考人 割合、短期的な影響としては、通貨の強さ、あるいはランクづけということに影響するというふうには思っておりません。

 つまり、何が基軸通貨であるかということは、全体としての使い勝手、それからそれぞれの通貨の今の力ということをベースに考えますので、仮に売られたときに、米国の証券市場、それはひいては為替に影響が出るにしても、では、今ドルにかわる基軸通貨というものが世の中に存在をしているかということになりますと、そこはちょっとまだかわり得るものがないのではないか。

 二〇〇五、六年には、何となく、ユーロが非常に強かったので、あのときには、ユーロが単独ではないにしても、デュアルで、二つ基軸ということがあり得るということを思っていた人も結構いますけれども、実際上、その後のユーロの動向を見ていますと、なかなかそうはならない。

 では、それにかわって、今、時々、中国の担当者が、二〇四〇年あるいは二〇五〇年にはドルにかわって人民元がということを言っておりますけれども、先ほど申し上げたように、もし米ドル債を売らなければならない状況になっているときの中国の経済の強さというのは、多分かなり悪くなっているわけでありますから、そのときにその国の通貨である人民元がドルにかわって基軸になるということはなかなか考えにくい。

 ですから、私は、まだしばらく基軸通貨としてのドルというのは存在すると。

 これは、昔、ポンドが基軸通貨であって、それがドルに移行していったわけですが、イギリス経済が世界のナンバーワンから落ちても、その後、三十年ばかりはポンドが中心で動いていた、それがやっとドルになったという経緯がありますので、そういうことからいいますと、今でもまだアメリカ経済というのがナンバーワンで、これが、このままうまくいって、中国の成長率が六%、七%が続いたとしても、二〇三〇年、四〇年でやっと中国が並ぶということからいって、その段階において直ちにドルの基軸通貨体制に影響があるというふうにはならないと思っています。

 ただ、私は、前から申し上げているように、非常に脆弱になっているドルですから、余りドルをいじめないような形で、みんなで大事にしてやっていく、これが多分、今の国際通貨体制の一つの道ではないか。

 その中で、どういう形の通貨のものを入れていくかということについて改めて協議はしなければいけませんし、もしどうしても単独通貨というのが非常に不都合であるということであれば、いわゆるSDRのようなものを新たにつくり直していくことによって、世界のいわゆる標準通貨単位というものを改めて考えなければいけないというふうに思っておりますが、今回の、私が申し上げた、中国が財務省証券を売ることによって、直ちにドルの優位性あるいは基軸通貨性が損なわれるというふうには思っていないということでございます。

山口(壯)委員 渡辺さんとしては、そういうところまでの影響は与えたくないというお気持ちを今言われたんだと思いますけれども、ただ、アメリカは、国防予算もすさまじい額を減らさなければいけないほど、例の議会と行政府とのやりとりの中でせっぱ詰まっているわけですから、この辺のメッセージの持つ意味というのは非常に大きいものがあり得るという心配を私はしています。

 先ほど言われたように、中国がいろいろなことを言っていますね、二〇〇九年の三月でしたか、周小川さん、人民銀行の総裁が、SDRでやろうかというようなことも言っていました。

 あれは去年の二月でしたか、メキシコでG20の外務大臣会合があったときに、私も代理で行かせてもらって、そのときにいろいろな外務大臣が堂々と言っていたわけですけれども、ある大臣は、ドル基軸通貨体制は死んだ、デッド、いや、相当なメッセージだなと。実はほかの外務大臣からもそういう発言がかなり相次いで、そこにはクリントン女史が、国務長官がいたわけですけれども。

 世界の動きというのは、確かに、今の国際通貨体制で大丈夫だろうかという気持ちをひた隠しに隠しながら、とりあえずドルでもってやっていこうかということだと思うんです。

 我々も円高で相当悩みました。これも、現実には国際通貨体制のある意味で弱みが出てきているようにも思います。では、これから円安傾向が続くかというと、必ずしもそうは言い切れない面があると思うんです。日本が国債をたくさん発行すれば国債の価格が下がって、利率が上がれば円が高くなるということは大いにあり得るわけですから。

 そういう意味で、国際通貨体制をどういうふうに持っていくのか。ドル基軸通貨体制だけで大丈夫かという気持ちは確かにあると思うんですね。ただ、ほかにかわり得るものが今のところはまだないから、では、とりあえず。ただ、中国がアメリカの国債を売るという、このメッセージというのは相当ないろいろなインパクトがあると思うんです。

 例えば、米中サミットが行われましたけれども、米中というのは我々が思っているよりも相当近づいている、あるいはさらに近づいたと見た方が、これは正確な見方なんだと思うんですね。

 その際に、これは、渡辺さんにもう少しいていただいて、岸田大臣にお聞きしますけれども、要するに、これは、ある一つの見方は、中国包囲網作戦というのは必ずしも功を奏していなかったんだ。要するに、我々は例えば、我々というか、私の発想は少し違いますけれども、ミャンマーあるいはインドを手当てし、中国をある意味で囲むような発想があったのかもしれません。しかし、もう完全に中国はそれを打ち破って、アメリカとがっちりくっついている。正直、日本の総理の位置よりも相当中国の位置は今アメリカと近いですね。

 その中で、図柄としてはこういうことじゃないですか。韓国の大統領の朴さんがこの間ワシントンに行って、これも相当距離を縮めてきた。それから、中国の習近平さんが今回オバマさんと会って、もっともっと距離を縮めた。それから、今度は朴さんが中国に行くという話がありますね。中国は韓国にとっての最大の貿易のパートナーですから、そういう意味で、いろいろなつながりを強くしようというのはある。では、韓国とアメリカ、中国とアメリカ、韓国と中国、この三つが物すごく連携を強めていると見るのも、非常に私は客観的な見方だと思うんです。

 では、日本はどこへ行ったのか。米中韓で戦略対話をやっていこうという話が今回の米中の中であったやにアメリカからも聞こえます。なぜか日本の報道にはなくて、共同通信が一つ流しただけです。

 この辺について、岸田大臣、日本が中国囲い込み云々というのはどちらかというと時代おくれじゃないのか、もう少し違う見方をした方がいいんじゃないのかというふうに私なんかは思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、もとより我が国の外交政策は、特定の国を囲い込むとか、そうした特定の国を念頭に外交を進めているわけではありません。大きく変化する安全保障を初めとする戦略環境の中で、やはり基本的な価値あるいは基本的な利益を共有する国々としっかり連携をしていく、これが重要だと考えております。

 そういった中にあって、関係国がさまざまな意思疎通を行う、対話をしていく、こういったことは地域や国際社会の平和や安定のために資する動きであり、これは歓迎すべきことだと思います。

 その中にあって、我が国の立場ですが、我が国も、今申し上げました方針のもとに、日米同盟を初め関係国との意思疎通に努めているところであります。

 日中関係あるいは日韓関係、こうした二国間関係にあっては、事実、難しい局面も存在いたしますが、こうした国々とも、個別の問題を大切な二国間関係全体に影響を及ぼさないように、しっかりと大局的な観点でコントロールしていかなければいけないということで努力を続けています。そして、環境ですとか安全保障、あるいは北朝鮮など、さまざまな具体的な課題において意思疎通を図っているところであります。

 我が国だけ何か外されているというようなことではないと考えております。

山口(壯)委員 大臣、国会答弁ではそれでいいんです。だけれども、実際に外交を進める中では、もっともっと敏感になっていっていただいた方がいいと思います。

 それは、今、オバマさんと習近平さんが遠いと思っている人は世界で一人もいません。現実に、その近さというのは相当なものがありますよ。単に中国がアメリカの国債を一番たくさん持っているとか、そういう次元をはるかに超えていますよね。

 先ほど、ドニロンさんの話も出てきました。彼は今回卒業するようだけれども、私も、戴秉国さんとは、この間、国務委員のときに相当長い時間、三時間ですけれども、ずっと話した中で、やはり彼らはドニロンさんとも相当話をしているんですね。これは例えば一時間とか二時間じゃありません、数時間ですね。だから、私の三時間というのも、十一時から二時だったから、昼飯を抜いてやったので、そういう意味で、もっともっと本当は長くというところだったんでしょうけれども、私も飛行機がもうすぐ出ますのでということでその場で打ち切らざるを得なかったけれども。

 既に米中は物すごく意思疎通ができているんですね。米中の戦略対話というときに、閣僚がずらっと並んで、中国もずらっと並んで、日本と中国の間でやっている、あるいは日本とアメリカの間でやっているものとは桁が違います。中国のアメリカに対する思い入れも相当大きい。

 今回、誰がこの習近平さんとオバマさんの演出をしていったかというのは私も全部わかっているけれども、中国側の思い入れというのはすさまじかったですよ。その人を私は外務省に紹介したつもりだけれども、なかなか今そのことが実っていないのは非常に残念ですけれども。

 そういう中で、中国との対話を外務大臣としてどのように切り開こうとしているのか。安倍総理が、対話の窓は開かれている、これはアクションではありません。どういうふうにアクションをとっていかれようとしているのか。向こうからメッセージは相当出てきていますよね、もう対話してもいいんだ、やりたいと。先ほどの岡本さんの質問の中でも、中国公船の動きが少し意識的か無意識的か少なくなっている、これもあるんでしょう。

 だから、そういう意味で、日本としてどういうふうにそれに反応していくかということは外交の基本の一つです。窓が開かれているというメッセージだけでは私は足りないと思うし、それ以上の気持ちを岸田大臣は持っておられると思います。どういうふうに開こうとされていますか。

岸田国務大臣 日中間に関しましては、まず現状、高い政治のレベルでの対話が実現できていない、これは事実であります。

 ぜひ、安倍総理も繰り返しておられるように、対話のドアはオープンである、こうした対話については我々はしっかり前向きに対応していかなければならないと思いますが、そのためにやはり環境整備が重要だと思います。こうした高いレベルでの政治の対話を実現するための環境整備をまず考えなければいけない。そして、そのために日々積み重ねを今行っております。

 具体的な課題、環境ですとか安全保障ですとか、こうした課題において、さまざまな日中間の意思疎通、そして対話を積み重ねているところです。

 こうした具体的な課題の意思疎通、対話を積み重ねながらしっかり環境整備を行い、そして、その間もさまざまな外交ルート、さまざまなレベルにおいて意思疎通を図りながら環境整備を図り、そして政治レベルでの対話につなげていきたいと考えています。

山口(壯)委員 環境整備ということで、今度は日中韓投資協定を踏まえたFTAの話とか、いろいろなことを今思い浮かべられているんだと思いますけれども、必要なのは政治のリーダーシップなんですね。政治家としてのメッセージなんですね。この部分が、環境整備で役所の人にやってもらうというのは、それはもう一番大事なことの一つです。だけれども、もう一つは、岸田大臣あるいは安倍総理からの会ってみたいというメッセージがどうしても私は大事だと思っています。

 今は、どっちかというと、先にロシアへ行こうか、先に中東へ行こうか、先にミャンマーへ行こうか、中国、韓国を避けながら順番にずっと来ているというところが私には少し気になります。そこにはやはり政治家としてのメッセージが必要になってきていると思って差し支えないんじゃないかと思うんです。

 そういう意味で、岸田大臣として、先ほどはまだ、正直、役所が用意した答弁の枠の中で答えられていますけれども、やはりそこはもう少し切り開いていかれないと、中国は既に日本の頭越しにアメリカとぐっと近くなっています。そこら辺をやはり見ていただきたいなと思うんです。

 渡辺さんに私がお聞きしたかったのは、米中がそうやってぐっとなっているときに、アメリカの国債を中国が売るんじゃないかというのは、むしろアメリカにしたら、えっ、ちょっと俺、そんなことを本当にやられるとすごく困っちゃうなという気持ちを持った人もおられると思うんです。渡辺さんはそういうことは望んでいないんだということを先ほどお聞きしましたので、それはそれでわかりました。

 そういう意味で、これからどういうふうに持っていくかという中で、G8の中でも尖閣のこととかいろいろ心配していると思うんです。アメリカは、日本と中国、韓国が仲よくしてくれよ、TPPとか日中韓とかいろいろ合わさった中で、アジア太平洋で経済を盛り返したいんだから、自分たちの経済も盛り返したいんだからというふうに思っていると思うんですね。

 だから、そうすると、TPPについても、中国が相当前向きになっているという話もあるんです。それは大臣の耳にも入っていると思います。中国がTPPについて前向きというのは、私自身、党の中でいろいろとまとめていたときに、俺たちが決断しないと中国は絶対入ってくるぞというところで、話したこともよくありました。それがやはり現実だったんだなと。

 中国の気持ちとしては、TPPについて、何も敵視していないどころか、あるいは自分たちが疎外されるというふうに捉えているどころか、中国の中で、習近平さんがこれから腐敗をなくしたり、いろいろいわゆる改革をする中で、TPPというのはむしろいい外圧になるなという議論すら出てきているわけですね。

 だから、それを考えると、日本として、中国とアメリカがぐっとくっつき、韓国とアメリカが物すごく距離を縮め、あるいは韓国と中国がさらに首脳会談をしようとしているときに、日本がどういう手を打つかというのは非常に基本的なことですから、その辺を、岸田大臣、さらに考えてくださいということです。

 それに関連してですけれども、G8のサミットで、今度、戦場における女性というのが議題になるやにうわさで聞いているんですが、その辺はそういうことなんでしょうか。

岸田国務大臣 先日、G8の外相会談がロンドンで開催されました。私も出席をさせていただきました。

 ことしのG8、議長国は英国でありますが、あの外相会談の場でも、ヘイグ外相の方から、紛争時における女性の人権に関して大きな関心が示され、そして、議題の一つとして取り上げていく、こういった意向が示された、こうしたことはありました。

山口(壯)委員 外交的には、例の韓国の、あるいはほかのところもありますけれども、慰安婦の問題とそれが結びつかないようにうまく仕分けをしていくことが極めて大事だと思っていますけれども、どうですか。

岸田国務大臣 その点に関しましては、日英外相会談の場で、時間をかけてヘイグ外相と話し合いをさせていただきました。

 こうしたヘイグ外相の関心は、あくまでも現代、そして未来に向けて、紛争の中で女性の人権が損なわれている、こうしたことに対して国際社会としてどう取り組んでいくのか、こうしたことであるということでありました。

 我が国としても、そうした考え方に賛同し、ぜひしっかりと努力をしていきたい、こういった意向もしっかり示させていただきました。

山口(壯)委員 今私が申し上げたことを踏まえて、そのようにするんだという答弁だと思いますから、そうしてください。

 特に、この慰安婦の問題というのは、白人の問題がかかわっているんだと私は思っているんです。というのは、インドネシアがオランダ領だった戦時中に、日本軍が行って、そこでオランダ人を一ところに集め、十七歳以上の女性は別のところに行く、それで、現実に慰安婦になった。強制性がなかったなんというのは全くの虚構ですよね。白人のオランダ人が、応募して、あるいは経済的に困って、日本兵の相手はしません。だから、そういう意味では、強制性があったかどうかなんて争うのは愚の骨頂ですから。

 特にアメリカが物すごくきつい反応をするのは、オランダのこの慰安婦の問題がその向こうに隠されているからなんですね。

 これは、ある意味で、いろいろな人の知恵でパンドラの箱を閉じているわけですから、そこは、岸田外務大臣が今言われたように、未来に向けて考えていくというところに焦点を当てていく方が、私は外交的には極めて賢明だというふうに思っています。

 このオランダの話、インドネシアの話については、いろいろな話が隠されているように思います。例えば、イギリス人の慰安婦も本当はいたんだ、だけれども、イギリス人の名誉にかけてそんなことは認めたくもないというところで、ないことになっている。でも、現実にはあったという話もあるわけですね。

 だから、そういう意味では、韓国あるいはフィリピンの話だけではない、ある意味で我々がむしろ伏せている話、人種間の話というのもそこに隠されているように私には思えますから、ここはもう極めてデリケートな話として、間をかいくぐっていただきたいと思うんです。

 岸田大臣は私とは考え方が似通っていると私は思いますけれども、政権全体としてそういう方向に向かうように外務大臣のリーダーシップを私は期待したいと思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 過去、歴史においては、多くの戦争があり、その中において多くの女性の方々の人権が損なわれてきました。ぜひ二十一世紀は人権侵害のない世紀にしなければならない、そういった思いで我が国は平和外交を進めてきております。

 ぜひ、そういった思いで、未来に向けて、我が国としても人権を守るために努力をしていかなければならないと思っております。

 慰安婦の問題については、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされたこうした方々のことを思いますときに、本当に心から胸が痛みます。こうした思いは、歴代内閣とともに、現内閣も共有していると考えております。

山口(壯)委員 渡辺さん、きょうはお忙しいところをわざわざおいでいただいて、ありがとうございます。大事な話をたくさん聞かせていただいたと思いますし、本当に感謝します。

 以上で質問を終わります。

河井委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 普天間基地の辺野古移設問題に関連して質問したいと思います。

 政府は、ことし三月二十二日に、公有水面埋立申請書を提出いたしました。これに対して沖縄県は、四月十二日、十三項目三十三件の補正を要求し、五月三十一日、沖縄防衛局は補正書を提出いたしました。今後、沖縄県は、これを審査した上で、三週間の告示、縦覧を始めるということで、その際に補正の内容は公表するとしております。

 沖縄県が補正で求めていた埋め立てに使用する土砂の採取場所や土量、搬入経路については、防衛局が提出した補正書で、埋め立てに必要な土砂量は約二千百万立米、うちシュワブ内から約四百万立米採取をし、残りは県外から調達するとして、調達先を地図で示して、土砂量も明記しているとの報道がございます。

 そこで、防衛省に確認しますが、この埋め立てに使用する土砂の採取場所や土量、搬入経路について補正書では報告しているのか。しているなら、どのような概略になっていますか。

伊藤政府参考人 先生にお答えします。

 沖縄県は、埋立承認願書の補正に関しまして、購入砂及び岩ズリ等につきまして、採取場所、採取量及び搬入経路を具体的に記載することを求めておられました。

 岩ズリ等の購入する土砂につきましては、公有水面埋め立ての承認を得られていない中で、土砂購入に係る契約等を締結しておりませんけれども、埋立工事の計画に当たりまして想定しました具体的な土砂採取場所等について、補正した資料について記載しているところでございます。

笠井委員 概略がどういうものかという中身は、書いてあるということしか言わないんですけれども、中身についてはないですか。

伊藤政府参考人 補正書の中身につきましては、県の方で公告縦覧の手続をとられるというふうに承知しておりますので、本日、私の方から言及することは控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 岸田大臣、この土砂の採取場所については、よそからの移入、あるいは汚染有害物質の搬入で海の生態系それから環境が変化するんじゃないかという危惧が、環境団体、県民、市民からも出されている。つまり、辺野古移設問題にかかわる重大な問題の一つであります。

 そこで、防衛省に幾つか事実を確認したいんですが、この土砂等の資材調達について何点か聞きます。

 二〇一〇年二月二十六日の予算委員会で、私、質問の中で、普天間飛行場の移設に関する工事等の発注について取り上げました。

 その中に、二〇〇九年三月、沖縄防衛局は、埋立事業にかかわる二つの関連事業を発注している。一つはシュワブ資材調達検討業務、もう一つはシュワブ資材調達調査業務であります。これらの事業報告書が二〇一〇年三月に提出されておりまして、これはそれぞれかなり分厚いものでございますが、私、ここに持ってまいりました。

 これらの事業の目的と業務の受託者、それから委託料について報告してください。

伊藤政府参考人 先生御指摘のとおりに、普天間飛行場代替施設建設事業に係ります資材調達に関連しまして、沖縄防衛局は、平成二十年度に、シュワブ平成二十年度資材調達調査業務、シュワブ平成二十年度資材調達検討業務の二件の業務を委託いたしました。

 このうち、資材調達検討業務につきまして、まず目的でございますけれども、本事業において使用される埋立土砂等の主要建設資材の調達手続等について検討するとともに、沖縄防衛局が開催した、外部有識者による主要建設資材の調達に係る検討委員会において提言を得ること等を目的といたしております。また、受託者につきましては、当時の財団法人防衛調達基盤整備協会でございます。業務委託料につきましては、一千九百四十二万五千円でございます。

 それから、シュワブ資材調達調査業務につきましては、目的は、普天間飛行場代替施設建設事業において必要な主要建設資材の調達、供給に関する情報を調査、収集することでございまして、受託者は株式会社日本港湾コンサルタント、業務委託料は二千四百十五万円でございます。

笠井委員 この二つの事業で合わせて約四千三百五十七万円税金が投入されている。この二つの事業の結果、報告書というのは、当然のこととして、三月に提出した公有水面埋立申請書に生かされている、こういう理解でよろしいですか。

伊藤政府参考人 二つの報告書をいただきました。それにまた、防衛局の方でつくりました外部有識者の検討委員会というところでもさまざまな御議論をいただきまして、そうしたものをもとにして提出をさせていただいております。

笠井委員 生かされているということであります。

 その上で、まず、資材調達検討業務の方ですけれども、この事業は、今報告がありましたように、埋立事業において使用される資材の調達手続等について、どんな方法でやるかを検討しているものであります。沖縄防衛局は、普天間飛行場代替施設建設事業資材調達検討委員会を設置して、そこでの審議を経て、調達手続等の提言を得ることとしております。

 この報告書では、アセスとの整合性、環境影響評価書との整合性について、事業者みずからが行う埋立材料の採取は本事業に係る環境影響評価の対象となるが、購入などそれ以外の方法による埋立材の調達については環境影響評価法の対象とはならない、本事業に係る環境影響評価準備書においては、埋立土砂の調達は購入によることとしており、調達を行う上でこの原則をたがえることはできないというふうに述べておりますが、なぜこうしたことを原則とするということになっているのか、説明してください。

伊藤政府参考人 これは、先ほど御説明しましたように、シュワブ資材調達検討業務報告書自体は、委託をして、委託先で報告書として提出いただいたものでございます。

 原則という言葉をなぜ使ったかということは、そういうことを勘案して私どもで考えなければお答えができないと思いますが、ここは、先生御承知のように、環境影響評価書との整合性について記述しているところでございますから、そういう法体系を配慮して記述をしたということだと思います。

笠井委員 つまり、シュワブ内から調達する土砂以外は購入土砂で調達する、それが、たがえることのできない原則とこの報告書にあるということは、埋立事業のアセスとはかかわりなく、法体系ということですから、外から土砂を持ってくるということになるわけであります。

 この資材調達検討業務では、大規模埋立工事の類似事例として、関西国際空港二期工事事業、中部空港建設事業、羽田空港D滑走路建設事業、岩国飛行場滑走路移設事業の調達手続について検討しております。

 検討委員会は防衛局が設置したものでありますけれども、この審議では、AからEということで五つの案について審議を行って、その後、三つに絞り込んで、最終的に二つの案について検討委員会の結論として提言をしているということだと思うんですが、結論で提言された二つの案というのはどういうものですか。

伊藤政府参考人 先生御承知のように、最初、AからEという案がありまして、それからAからDという案に移っておりますけれども、最終的に二つに絞った案というのは、埋立工事施工業者みずから土砂等供給業者を選定し、資材調達について契約、調達する方式と、事業者が土砂等供給業者を指定し、埋立工事施工業者が指定された当該土砂等供給業者と資材調達について契約し、調達する方式でございます。

笠井委員 調達手続について、この二つの案、今言われた案を提言した検討委員会は、あわせて、埋立材等の受け渡しについて、土場渡し、あるいは現場渡しについて限定しないということで、つまり、資材を近傍の積み出し港で引き渡すか、あるいは資材を工事現場で引き渡すかは限定しないということで、事業者において検討、決定されるものとしております。

 三月に沖縄防衛局が提出した公有水面埋立申請書では、どちらの調達手続で埋立事業を実施することにしているのか、また、埋立材等の資材の受け渡しについてはどちらで実施することにしているのか、どうなっているんでしょうか。

伊藤政府参考人 先ほど御説明しましたように、三月の状況はこれから公告縦覧されることになりますので、ここで詳細を言及することは差し控えたいと思いますけれども、いずれにしましても、本事業に係る埋立土砂等の調達方法、資材の受け渡し方法等につきましては、今後、公有水面埋め立ての承認を得られました時点で、公平性、透明性などを確保し、環境等も勘案して、これまでの経緯も踏まえて、適正に決定してまいりたいというふうに考えております。

笠井委員 認められたらこれからだという話だったんですが、ではそこで、次に資材調達調査業務について聞いてみたいと思います。

 この業務の目的は、これまた先ほど報告がありましたように、各種資材について、どこからどれだけ調達が可能かを調査、収集しているものだと思います。具体的には、七県の資材調達業者に対してヒアリング調査を実施していると思うんですが、七県というのはどこですか。また、それぞれどれだけの地域と資材調達業者を調査したのか、この中の内容について報告ください。

伊藤政府参考人 シュワブの資材調達調査業務におきましては、アンケートやヒアリングによる調査を行っておりまして、その項目についての御質問だと思いますが、まず事業所の概要、それから土砂等の採取場所の状況、過去十年間の出荷量の実績、将来五年の予定出荷量、採取可能量、岩ズリ保有量及び出荷可能量、それに参考販売価格でございます。

笠井委員 七県とはどこか、そしてそれぞれどれだけの地域と資材調達業者を調査したのか。質問したことに答えてください。

伊藤政府参考人 調査対象としました地域及び供給業者につきまして、石材は、沖縄から四国にかけまして十三地区、二十七社を対象に、埋立材は、六地区、八社を対象といたしております。

笠井委員 県名はどこかと聞いているんですが。県名を言ってください。

伊藤政府参考人 石材につきましては、沖縄、鹿児島、熊本、長崎、福岡、香川、埋立材等につきましては、沖縄、鹿児島、高知であります。

笠井委員 最初に聞いているんですけれども、なかなか県名を言わない。書いてあるんですよ。ようやく言うんですか。そこまでいろいろ既に調べているわけです。

 この調査では、埋立材等の供給元を検討して、月別必要量が約百万立米のピーク時においては、全ての地区から調達しても供給し切れないというふうに述べて、その量は八カ月で約九十万立米に達して、最も多い月で十六万立米というふうに報告をされております。

 この数値というのは、埋立工事の実施時期とのかかわりで変動の可能性もあるとは思うんですけれども、調達しても供給し切れない問題について、三月の埋立申請ではどんな対策が検討されているんですか。

伊藤政府参考人 繰り返しの答弁になりまして恐縮でございますが、三月の埋立申請の補正を経ました状況については、これから公告縦覧でございますので、詳細について言及させていただくことは控えさせていただきたいと思いますけれども、実際にピークのときに資材を供給し切れなくなった場合の対応につきましては、本事業に係る環境影響評価書に記載されております埋立土砂につきまして、現時点において、主に使用を予定している岩ズリ等のほか、ダム堆積土やしゅんせつ土を含む建設残土等、あるいはリサイクル材等につきまして、その時点におきます発生状況を踏まえて、そうした供給し切れなくなった場合に具体的に検討していきたいというふうに考えております。

笠井委員 この資材の調達調査によりますと、輸入資材についても検討しております。

 報告書によると、輸入資材について、我が国では、石材や砂の、要するに海砂輸入に関する法的規制がなくて自由に輸入できる、しかし、植物防疫法上、土が付着したものについては輸入できないために、現地で洗浄する等の注意が必要で、土の付着が否定できない陸砂や川の砂などは植物防疫法の対象となっているということでありますけれども、この点については、三月に提出した申請書では、輸入資材についてはどのような扱いになっているんですか。また同じように、これは言えないという話ですか。

伊藤政府参考人 申請書につきましては、先ほどと同じような答弁をさせていただかざるを得ないと思いますが、輸入資材についての御懸念に関しましては、先生おっしゃるような、埋立土砂の調達に際しまして、有害物質混入等の土壌汚染の対策や、土壌汚染に係るさまざまな環境基準の規定を満足する土砂を用いるという考え方でやっておりますので、外来生物混入等の対策としまして、生態系に影響を及ぼさないような土砂を用いていきたいというふうに考えておりまして、土砂調達先を決定するに当たりまして、こうした状況を勘案して、当該土砂の搬入に当たって、定期的に試験等により確認することといたしたいというふうに考えております。

笠井委員 そういうものが混入しないという話があって、輸入の話もそうですが、それから沖縄以外から持ってくる場合もそうですが、それについては、大丈夫だというのは誰がどう判断してやるんですか、評価の問題は。

伊藤政府参考人 まだ公有水面埋め立ての願書を提出したところでございまして、沖縄県から判断をいただいておりませんけれども、当然、事業を行う者が責任を持って判断していくべき問題だと考えております。

笠井委員 この調査では、資材の種類として、海砂あるいは陸砂、シラス、岩ズリ、コンクリート用の骨材等について、各県と地域業者に調査を進めて可能性の検討を行っているということでありますが、その上で、資材調達の前提条件として、資材の調達は開発予定地を検討の対象から除外する、ただし、沖縄本島の開発予定地は除くとするなど、十二項目の前提条件を確認しておりますけれども、その主な条件というのはどういうものですか。

伊藤政府参考人 先生御指摘のとおり、十二項目の条件を考えております。

 そしてそれは、沖縄本島以外の開発のところから調達しないということ、調達地区の選定に当たりまして、辺野古、事業現場に近い地区を優先させるということ、それから、各地区からの調達量等の算定に当たりましての前提条件を詳細に規定しております。

笠井委員 大臣、今聞いていただけたと思うんですけれども、最後に伺いたいんです。

 埋め立て業務を具体的に検討、調査するというふうにしていきますと、これは沖縄県がこれからだという話があって、中身はまだ、沖縄県との関係という話も言われましたけれども、しかし、既に具体的に調査検討も、防衛省自身が発注もして、そういうこともやってきている。

 そうやっていくと、そもそも埋め立て自体が環境に影響ありとされてきている上に、沖縄以外から持ち込み使用する土砂に汚染有害物質が含まれている可能性、あるいは、よそから土砂を移入することで、世界に誇る沖縄の豊かな自然環境が変化する可能性というのも出てくる。具体化すればするほど、そういう問題というのがどうなのかということが問題になってくると思うんです。

 これらも含めて、安倍内閣による埋立申請など、沖縄県民の頭越しに力ずくで基地強化を押しつけるということに対して、やはりオール沖縄の大きな怒りがますます広がっているということだと思うんです。

 大臣、そういう中でも、そういうことがあってもあくまで強行するという姿勢で臨まれるんでしょうか。

岸田国務大臣 本日も笠井委員の方から、土砂、埋め立て、また資材調達等、さまざまな課題について御指摘をいただきました。こうした御質問についても真摯に耳を傾けていきたいと思いますが、やはり何としても申し上げたいことは、さまざまな課題はありますが、普天間飛行場の固定化はあってはならないということであります。普天間飛行場の移設を含む在日米軍再編につきましては、現行の日米合意に従って進めながら沖縄の負担軽減を実現していく、これが政府の方針、立場であります。

 地元においても引き続き厳しい声があるということは十分承知しております。しかし、一日も早く返還が実現され、負担が軽減されるために、引き続き、しっかり地元の理解を得るべく説明責任を果たしていかなければならないと思います。

 また、先日も、嘉手納以南の土地の統合計画を公表させていただきました。こうした負担軽減の実際の姿を一つ一つ積み重ねていくことによって、政府の方針に対する理解も得ていかなければならないと思っています。

 こうした努力を続けながら、ぜひ引き続き沖縄の負担軽減に努めていきたいと考えております。

笠井委員 時間になったので終わりますけれども、資材調達の問題というのは、環境アセスに含まれていない問題なんですね。

 大臣は、きょうの報道でも、六月二十三日の沖縄の戦没者追悼式に防衛大臣とともに出席する方向で、今、政府側から沖縄県側に打診をされているということでありますけれども、本当に追悼の気持ち、そして沖縄県民の気持ちということで臨まれるということであるならば、私は、固定化がだめだったら危険な普天間基地は無条件撤去すべきだし、負担はだめですから、負担軽減だったら、むしろ、嘉手納以南の問題、統合計画は負担軽減にならないというのが現実ですから、そういう意味では、危険な普天間基地無条件撤去ということ、しっかりとやはりそういう方向に切りかえるということを改めて強く求めたいと思います。

 以上で質問を終わります。

河井委員長 次回は、来る十四日金曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十五分散会


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