衆議院

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第12号 平成25年6月21日(金曜日)

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平成二十五年六月二十一日(金曜日)

    午前九時十分開議

 出席委員

   委員長 河井 克行君

   理事 岸  信夫君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 薗浦健太郎君 理事 土屋 品子君

   理事 原田 義昭君 理事 山口  壯君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      あべ 俊子君    木内  均君

      城内  実君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    島田 佳和君

      白須賀貴樹君    鈴木 憲和君

      高鳥 修一君    東郷 哲也君

      星野 剛士君    堀内 詔子君

      牧原 秀樹君    三ッ矢憲生君

      武藤 貴也君    務台 俊介君

      菊田真紀子君    玄葉光一郎君

      長島 昭久君    浦野 靖人君

      村上 政俊君    岡本 三成君

      山内 康一君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        鈴木 俊一君

   外務大臣政務官      あべ 俊子君

   外務大臣政務官      城内  実君

   防衛大臣政務官      左藤  章君

   防衛大臣政務官      佐藤 正久君

   政府参考人

   (内閣法制局第二部長)  林   徹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       香川 剛広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 柳  秀直君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山田  淳君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡   浩君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 正木  靖君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 和田 充広君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   石井 正文君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部審議官)            長谷 成人君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           宮本  聡君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    桝野 竜二君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事長)        田中 明彦君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十一日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     務台 俊介君

  島田 佳和君     堀内 詔子君

  星野 剛士君     鈴木 憲和君

  松島みどり君     白須賀貴樹君

同日

 辞任         補欠選任

  白須賀貴樹君     高鳥 修一君

  鈴木 憲和君     木内  均君

  堀内 詔子君     島田 佳和君

  務台 俊介君     河野 太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     星野 剛士君

  高鳥 修一君     松島みどり君

    ―――――――――――――

六月二十日

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五〇〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五〇一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五〇二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五〇三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五〇四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五〇五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五〇六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五〇七号)

 原子力空母の横須賀母港をやめることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一五八二号)

 中国及び中国周辺地域における人権弾圧問題等の解決に向けて、日本国政府からの働きかけを強化することに関する請願(田沼隆志君紹介)(第一五八三号)

 厚木基地でいかなる事情においても離着陸訓練を実施しないこと等に関する請願(志位和夫君紹介)(第一七八一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)(参議院送付)

 食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第一八号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

河井委員長 これより会議を開きます。

 北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件及び食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、参考人として独立行政法人国際協力機構理事長田中明彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として、外務省大臣官房地球規模課題審議官香川剛広君、大臣官房審議官柳秀直君、大臣官房審議官山田淳君、大臣官房審議官岡浩君、大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房参事官新美潤君、大臣官房参事官正木靖君、大臣官房参事官和田充広君、国際法局長石井正文君、内閣法制局第二部長林徹君、水産庁資源管理部審議官長谷成人君、経済産業省大臣官房審議官宮本聡君、海上保安庁次長桝野竜二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 都議会議員選挙の真っ最中でありますが、恐らくこれが今国会最後の質疑になると思いますので、しっかり質問をさせていただきますので、御答弁のほどよろしくお願いいたします。

 まず冒頭に、二つ、議題となっている協定について、それぞれ一問ずつ伺いたいと思います。

 最初に、食料・農業植物遺伝資源条約につきまして。

 外務省から説明を受けましたところ、これはそもそも、二〇〇一年の国連食糧農業機関の総会で採択をされて、そして二〇〇四年には発効して、今日までに百二十七カ国及びEUが締結をしている、こういうことであります。ことしが二〇一三年でありますから、率直に言って、日本としては出おくれた感が否めないんじゃないだろうかというふうに思うんですね。

 そもそもここまで時間がかかった理由について伺いたいと思います。私、基本的には、これは食料安全保障上極めて重要な条約だというふうに認識しておりますが、条約締結の意義も含めて、ここまでおくれてしまったこと、アメリカもそのようでありますが、御説明いただければありがたいと思います。

あべ大臣政務官 お答えいたします。

 我が国を初めとする先進諸国は、遺伝資源を用いて開発された成果物に関しまして、通常、特許権の付与が認められているところでございます。

 しかしながら、本条約は、知的財産権の取得にかかわる規定に関しまして、多数国間の制度から受領した植物遺伝資源を用いた発明に対して、特許権を付与することが妨げられるのではないかという懸念が実はございました。その懸念のために、我が国は、二〇〇一年の採択当時、米国とともに採択を棄権したということがございます。

 その後、同様の懸念を有していましたEU諸国が解釈宣言を付した上で本条約を締結し、今日に至るまで各国から異議が示されていないことによって、かかる懸念が払拭されたと判断するに至りました。

 また、我が国の本条約未締結により、近年、我が国の種苗会社による海外における植物遺伝資源の円滑な取得に影響が生じているということがございまして、この点につきまして、関係団体から、本条約の早期締結に向けた要望書が提出されていたところでございます。

 政府といたしましては、以上のような状況を踏まえまして、かつ、植物遺伝資源の保全及び持続可能な利用という本条約が有する意義に鑑み、本条約を締結することを必要と判断し、今国会に提出させていただいたところでございます。

長島(昭)委員 次に、北太平洋公海上の漁業資源保存条約について伺いたいと思います。

 北太平洋は我が国の漁業にとりまして大変重要な漁場だというふうに認識をしておりますが、我が国が本条約を締結する意義について説明していただきたいと思います。

岸田国務大臣 本条約が対象水域としております北太平洋の公海、特にこの海域に位置します天皇海山水域は、我が国の底魚漁業にとって最も重要な漁場となっております。また、この水域における我が国の底魚、ツボダイですとかキンメダイ、こうした底魚の漁獲量は、他の関係国等と比べて圧倒的に多いという現状にあります。

 したがって、我が国が本条約を締結することは、対象水域である北太平洋の公海における漁業資源の適切な保存及び管理に貢献するだけではなくして、我が国の漁業を安定的に発展させる上で大変重要であると認識をしております。こうした意義を同条約は持っておると考えております。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

 それでは、今国会、私がずっとこだわって質疑をしてまいりました自衛隊法の修正案についてお尋ねをしたいと思います。

 きょうは、佐藤正久防衛大臣政務官にもお越しをいただきました。ゴラン高原にも行かれ、また、イラクの人道復興支援にも部隊の司令官として行かれた、そういう、現場を知悉しておられるお立場から、ぜひきょうは、経験に基づく見識も含めて、御見解を伺いたいというふうに思っています。

 特に、私は、これは本会議でも取り上げさせていただきましたし、予算委員会あるいは安保委員会、外務委員会はこれが二回目でございますが、きょうは最後ですから、総仕上げというつもりで伺いたいと思っています。

 最初に申し上げますが、四月十六日の予算委員会で、安倍総理みずからが、この改正案は、クオートしますと、武装勢力に邦人が襲撃を受けている際、自衛隊の保護下にないと判断されれば救出に行けない、最高司令官としてじくじたるものがあると。これは佐藤政務官も同様の思いだろうというふうに思います。もちろん、外務大臣もそういう思いだと思いますが。あるいは、宿題はまだ残っている、こういう御発言をされました。

 ならばということで、私どもから武器使用基準についての修正案を与党側に過日提示をさせていただきましたが、どうも今国会中に議員修正ができそうもない、そういう情勢であります。

 しかし、総理が言われているように、宿題を片づけないと、海外における邦人の保護というものの実を上げることはなかなか難しい、私はこう思っておりますので、きょうは、秋の臨時国会につながる質疑をさせていただきたいというふうに思っております。したがいまして、外務大臣あるいは防衛省の政務三役も、安保法制懇の報告を待ってという受け身の姿勢ではなくて、国家安全保障を預かる政治家として正面から御答弁をいただきたい、このことを冒頭にお願い申し上げます。

 私たちは、修正案の中で、武器使用基準は、極めてシンプルに、警職法七条の準用でいくべきじゃないか、こういう提案をさせていただきました。そうしますと、警察権の行使を他国の領域でできるわけがないだろう、こういった批判が出ていまして、このための同意を領域国から取りつけるというのはほぼ不可能だ、したがって、事実上、陸上輸送はできないことになる、こういう批判が、防衛省内にも、あるいは与党内にもあるやに聞いております。

 そこで、大臣にお伺いしたいと思いますが、まず、議論の大前提として、他国の領域で自衛隊が活動を行うに際して領域国の同意が必要である、その理由は一体何でしょうか。

岸田国務大臣 まず、国家は、領域主権に基づきまして、原則として、その領域に所在する全ての人や物等について、これを規制する権能を持っております。

 国際法上、一般に、自衛隊の部隊等の政府機関が、主権国家たる他国の領域において、当該領域国の同意を得ずに活動することは認められておりません。自衛隊が他国領域で活動するためには、領域国の同意を得る必要があると考えております。

長島(昭)委員 そこで、これまで自衛隊は他国で活動してきた実績があるわけですけれども、自衛隊の海外活動で、領域国の同意は具体的にどのようにこれまで取りつけてきたのか、どの役所がどういう形で同意というものを取りつけてきたのか、お答えいただけますか。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたとおり、一般に、自衛隊を他国の領域に派遣する際には、外交チャンネルを通じて当該国の同意を取りつけた上で実施しているということでございます。

 一つ例を挙げさせていただきますと、例えば本年一月の在アルジェリア邦人に対するテロ事件の際に、邦人を輸送するために政府専用機を派遣したわけでございますけれども、この際は、在アルジェリア大使館からアルジェリア政府に政府専用機の機体情報、運航計画等を通報いたしまして、領空通過許可あるいはアルジェ空港への離着陸許可等を取りつける形で、先方政府から同意を取りつけたわけでございます。

長島(昭)委員 先ほど私、警職法七条の準用でいったらいいんじゃないかという話を申し上げました。そうしますと、警察権の行使が他国領域で行えるわけがないだろう、こういう批判があったというように申し上げましたけれども、別に私は司法警察権を行使すべきだと言っているわけじゃなくて、国民の生命身体を守るという行為、つまりこれは、言ってみれば行政警察権みたいなものじゃないか、そういう意味で、自衛隊にその限りで武器の使用を認めたらいいんじゃないか、こういう提案をしたわけです。

 今の新美さんの御答弁によりますと、では、武装した自衛隊を派遣するわけですけれども、自衛隊の武器使用の基準がどうであるのかとか、例えば、法制局がこだわっている自己保存を超えた武器使用を行うのか行わないのかとか、あるいは警察権の行使をするとかしないとか、そういうことを一々、つまり、武器使用に関する国内法上の性格を云々するような形で他国の同意を取りつけることは一体するのかどうか、ここもぜひお答えいただきたい。

 これは私は、非常に大事だと思います。これから自衛隊を海外に派遣する機会というのがまたふえてくると思うんですけれども、その際の基準になる重要な答弁になると思いますので、できればこれは外務大臣にお答えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

新美政府参考人 一般的に、自衛隊が他国の領域で活動を行うためには、国際法上、当該領域国の同意が必要なわけでございますけれども、その際の、相手国の同意を取りつける際の説明内容、これについて一概にお答えすることは困難でございますけれども、一般的には、相手国の求めに応じて必要な説明を行うことになります。

 したがって、必要に応じ、武器使用の国内法上の性格についても説明することはあり得ますが、例えば先ほど御説明いたしましたアルジェリア事件の際については、自衛隊の派遣の目的が邦人の輸送であったということもございまして、アルジェリア政府から自衛隊の武器使用に関する照会はございませんで、実際、武器使用の国内法上の性格などについての説明はしておりません。

岸田国務大臣 今御説明させていただきましたように、一般に、自衛隊が他国の領域で活動するためには、国際法上、当該領域国の同意が必要であるということであります。

 しかしながら、御質問にありました、自己保存を超えて武器使用を行うなど、詳細な説明についてですが、これにつきましては、必要に応じてということであります。ですから、必要に応じて説明することはあり得る、こうした現状にあるということでございます。

長島(昭)委員 輸送対象の生命身体を守るために警察比例の原則に従った武器使用を行うんだ、これは普通のことですから、もし説明を求められたら、そういうことをきちっと相手国に伝えれば済む話だというふうに私は思っています。そのことは今後の派遣にもかかわる話ですから、私ども委員としても、ぜひしっかり頭に入れておきたいというふうに思っています。

 さて、私、五月二十三日の本会議の質問で、いつものような三角構造ですね、襲撃をする加害者、それから助けを求めている邦人、そして自衛隊という、この三角構造においての武器使用の可否について質問をさせていただきました。輸送対象者である邦人を自己の管理下に置く行為、つまり、こうやって助けに行って、本当にもうちょっとのところで襲撃を受けた場合、三角構造にはなるんですけれども、この人たちを自己の管理下に置く行為についての武器使用の権限についてただしたわけです。

 ですから、ゲリラに拘束されたのを奪還するというようなことは、私は実は想定しないで質問したんですが、小野寺防衛大臣はこういうふうに御答弁されたんです。外国において拘束された邦人の救出、奪還といった任務を自衛隊に付与することについては、国際法や憲法の関係など、各種の課題があると考えておりますと。

 どうも、私の意図と、多少大がかりなオペレーションに多分なると思います奪還作戦とを、混同して御答弁なさったような印象を受けたんですけれども、先ほど申し上げたように、私が申し上げたのは、そういう奪還とか救出とかということではなくて、本当に目の前にいる、助けを求めている邦人、その人を輸送するために自衛隊がその場所に行くわけですから、それを管理下に置くときに襲撃を受けた際に、それを排除する、警告射撃をするとか、そういう武器の使用についてはどうですか、こういう質問をしたわけです。

 これは現場をよくわかっておられる佐藤防衛政務官にぜひお尋ねしたいんですけれども、現場から考えて、この二つはやはり違いがありますよね。そこの違いについての御認識をちょっと伺いたいと思います。

佐藤(正)大臣政務官 長島委員にお答えいたします。

 私も、イラクに派遣された当時、一人の指揮官としまして、現地に滞在しております邦人との連携をいかにとるか、与えられた武器使用権限の中で、外務省の事務所の方々と連携をとりながらいかに邦人を守るかということに意を用い、一度実際に、在外邦人等の輸送という形でクウェートの方に邦人を運んだこともございます。

 そういう中で、委員の今の御指摘ですけれども、確かに、救出、奪還、離れたところにいる人間を自衛隊が助けに行く、奪還をするというイメージと、委員が言われた、まさに自己の管理下に入ろうとしているという部分のイメージ、これは多分、私も委員と同じ問題認識を共有できるというふうに思っております。

 そういう中で、海外派遣中の隊員におきます武器の使用とか、あるいは邦人の保護という面では課題がまだまだあるということは当然認識しておりますので、今後とも、そういう制約の中でまた検討を進めていきたいというふうに思っております。

長島(昭)委員 そうしますと、今、別の概念だという私の認識を共有していただきましたけれども、別の概念の、救出や奪還といった任務でない場合における武器の使用について私は聞いたんですが、あのときの小野寺防衛大臣の御答弁は、すりかえと言ったらちょっと失礼かもしれませんが、救出、奪還という形の任務を自衛隊に付与することについては、国際法や憲法の関係など、各種の課題があると考えているという答弁だったんですが、そうでない、まさに自己の管理下に入れる、そういう行為における武器の使用については、政務官としてはどういう御答弁になるんでしょうか。

佐藤(正)大臣政務官 お答えいたします。

 まさに自己の管理下に入ろうとしているという状況においては、今我々の派遣隊員に認められております、自己の管理下における邦人等を保護するための武器使用の権限の中で対応をとるということになろうと思います。

長島(昭)委員 私は、わざわざ三角構造で説明をさせていただいたんです。それはどういうことかというと、自己の管理下に入れば、これは三角構造じゃなくて二点の関係になるわけです。襲撃する側と自衛隊に守られた邦人、こういう二点の関係になるわけです。それから逆に、襲撃する側が完全に邦人を拉致というか奪って、まさに彼らの管理下に引き込んだ場合にも、これも三角構造が崩れて、自衛隊と、賊を中心とする、加害者を中心とする二点の構造になるわけですから、三角構造が崩れて二点になった段階で、論理必然的に、自己の管理下に置く行為ということの意味合いというのは終わるわけですね。

 何が言いたいかというと、そうなる前の本当に一瞬のオペレーションなんです、私が言っているのは。つまり、邦人保護に係る必要最小限度のやむを得ざる武器の使用すら、もし許されないとしたら、これは、せっかく輸送に行ったとしても、例えば肝心なところで不測の事態が起こったときに本当に対応できるのかというところをぜひわかりやすく説明していただきたいんですね。

佐藤(正)大臣政務官 お答えいたします。

 いろいろなケースがあろうかと思いますけれども、邦人がおられて、そこに自衛隊が近づいた、まさに自己の管理下に入っているという状況においては、多分、そういう状況においてどういう形で武器が使えるかということの御指摘だと思うんですけれども、その場合においては、まさに自己の管理下に一瞬で入ってしまう可能性がありますよね。そういうときは、今までと同じような形で武器を使うことができますし、また、近づいたときに、我々が、隊員が撃たれた場合、それも同じような形で、今までの武器使用の権限の中で武器を使用することができる。まさに自己の管理下に入ろうとしている、本当に地域的に非常に近い状況においては、現在の武器使用権限の中でも対応できるという部分はあろうかと思います。

長島(昭)委員 ここは大事なところなので、法制局が来られていると思いますので伺いたいんですけれども、今まさに、近接性というか、地理的に近接した話になりましたが、例えば、輸送のために集合場所に向かっている、その途中で、今襲撃を受けています、こうなった場合、これはなかなか、自己の管理下に入っているか入っていないかというのは、距離的にはまだ入っていませんよね。こういうときに、実際、襲撃されているんですか、じゃあ、うちらは国または国に準ずる組織かもしれないので、自己保存を超えた武器使用につながるおそれがあるので、まだ自己の管理下にない邦人についてはさようならと、これで途中で引き返すんでしょうか。

 まず、現場の指揮官を経験された佐藤政務官に伺いたいんですけれども、こういう場合、手も足も出ないんでしょうか。

佐藤(正)大臣政務官 お答えいたします。

 私、そういう現場に立ち会ったことはございません。実際、邦人を助けるためにそこに近づく途中でそういういろいろな事象があったということは経験がございませんので、一概にお答えすることはできませんが、武器を使う場合、使わない場合、いろいろなパターンがあると思います。

 一般論として申し上げれば、できるだけ武器を使わない範囲で現地の方に到達する手段というものを、多分一義的には追求するんだろうというふうに思います。そういう中で、ぎりぎりの判断で、自分が撃たれれば自己保存型で武器を使える場合もあるでしょうから、いろいろなケースの中でどういう方策を追求できるかということを考えることになるのではないかなというふうに思います。

長島(昭)委員 さすが、ぎりぎりいっぱいの御答弁をいただいたと思います。

 法制局に伺いたいんですが、今のケースはどういうふうに法的に整理されるんでしょうか。

林政府参考人 お答えいたします。

 先日も予算委員会で私どもの法制局長官が御答弁申し上げましたけれども、武器の使用権限を、自衛官の保護あるいは管理のもとにない邦人の安全を確保する、すなわち救出をするというような場合に拡大することにつきましては、そのような武器使用は自己保存のための自然権的権利によるものとは言えず、国または国に準ずる組織に対して行った場合には、憲法第九条の禁ずる武力の行使に当たるおそれがあるという問題があることをるる述べているところでございます。

 したがいまして、例えば加害者との間で銃撃戦となるようなことまでを想定したものであるならば、武器を使用して邦人を救出するということにほかならず、先日の答弁で述べたものと同様の問題があると考えられるところでございますけれども、具体的な状況のもとで、そのような事態に至ることがないと見込まれる場合におきましては、自衛官が邦人に接近することまでが否定されるものではないと考えているところでございます。

 以上でございます。

長島(昭)委員 本当に現場感覚のない答弁だと思うんですが。

 それでは、佐藤政務官、一旦自己の管理下に置いて、その後、国あるいは国に準ずる組織に行く手を阻まれた場合には、銃撃戦をやって邦人を空港まできちっと運び込んで脱出するというオペレーションをやるんですよね。こういう場合は、今の法制局の答弁のように、武力の行使にはつながらない、武力の行使に当たらない、したがって合憲だと。さっきは、自己の管理下に入っていないから、同じように国に準ずる組織から攻撃を受けて武器の使用をしたら、これは武力の行使に当たる、しかし、一旦管理下に入れたら当たらない、これは合憲だと。

 その違いというか、それが合憲になる本質的な根拠というのは一体何なんですか。これはどういうふうに理解すればいいんですか。

佐藤(正)大臣政務官 お答えいたします。

 最初の、邦人を助けに行く前の段階における武器使用の部分については、邦人が自分の管理下に入っていないという状況ですから、これは邦人に対しての我々の自己保存、自然権の権利というのは行使できないという整理になろうかと思います。

 ただ、邦人を自己の管理下に入れた後、移動間に何らかの状況において武器の使用をしないといけないという状況においては、まさに自己の管理下にあるわけですから、これは自然権の権利という中で武器を使うことができるというふうに整理していると認識をしております。

長島(昭)委員 これは、先ほど申し上げた、本当に一瞬のことで、自己の管理下に入っていないけれども、しかし、これからまさに輸送に行って自己の管理下に入れようとしている、そういうときに襲撃が行われたら、それをせいぜい排除して輸送の任務を全うするというのがやはり現場の意識だろうというふうに私は思うんですね。それが、たまたま相手が国または国に準ずる者だった場合には武力紛争に発展してしまうおそれがあるという法制局の説明というのは、私はとても納得いかないんです。逆に、厳格な自己保存に基づいて、自己の管理下にある人たちだけを防護するために、仮に銃撃戦になってもそれは武力の行使に当たらないという、現象から見たらほとんど同じ現象なんですね。しかし、それが一方では武力の行使に当たり、もう一方では当たらない。

 これは外務省に伺いたいんですけれども、この二つの事象は国際法上評価に違いがあるんですか。同じように仮に武力紛争に発展した場合に、いやいや、我々は自己保存で武器を使用したんだからといって、効果として国際法上何か変わるんでしょうか。私から見ると、何となく国内の議論を国際舞台に持ち込んでいるような、そういう話に聞こえるんですけれども、いかがでしょう。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃったような事例につきましては、国際法上の評価につきましては、適法であるという意味において差はないと思います。

長島(昭)委員 これは適法なんですよ。法制局、よく聞いていただきたい。

 私が本質的な根拠は何かというふうに尋ねたのはどういう意味かというと、なぜこういうことが認められなければならないと我々が考えているかというと、これは正当防衛の一環だからなんですよ。まさに自己保存というのはそういうことですよね、正当防衛。仮に正当防衛だとしたら、これは刑法の話になりますが、自己または他人なんですよ。他人の権利が急迫不正の侵害を受けた場合には、これは守ることができるんですよ。だから、警職法七条にはそういうふうに書いてある。それから、準用すると書いてある海上保安庁法の二十条にはそのように書いてあるんですよ。

 ですから、これは、正当防衛に当たる場合は合憲だというふうに整理をしていれば、自己、それから、自己から少し拡大して自己の管理下にある者、あるいは武器等防護とか、何か拡大していく論理そのものが実は破綻しているというふうに私は思っています。ですから、恐らく臨時国会の一つのテーマになると思うのは、この正当防衛、自己または他人を防護するための必要最小限の武器の使用は憲法が禁じている武力の行使に当たらない、そういうすっきりとした論理をぜひ展開していただきたいというふうに思っています。

 もう時間がないんですけれども、最後にもう一点、国に準ずる組織にかかわる論点で、法制局の論理矛盾をちょっと指摘しておきたいというふうに思っています。

 もう一度、きょうお配りさせていただきました。ちょっとにわか仕立てで汚らしい資料になってしまいましたけれども、私の平成二十年十月の質問主意書、まさにこの三角構造の中で海上保安庁に認められている武器の使用について、国際法上、憲法上の問題をただしたものがこの左側。そしてもう一つ、その前に、法制局のロジックについてちょっとおさらいをしておきたいと思います。

 平成二十三年十月二十七日の参議院の外防委員会における梶田法制局長官の答弁です。ここにこう書いてあります。右側です。

 「我が国の公務員」、まさにこれは、自衛隊だけじゃない、海上保安庁も警察も一緒なんですね。「我が国の公務員がいわゆる自衛権発動の三要件が満たされる場合以外において武器の使用をすること、これが全て憲法第九条が禁ずる武力の行使に該当するかどうかというと、そういうわけではございません」「武器使用の相手方が先ほど言いました国又は国に準ずる組織であった場合でありましても、憲法上の問題が生じないという武器使用の類型がある」と、二つ類型を挙げています。一つのタイプがいわゆる自己保存のためのもの、そしてもう一つが武器等防護をするためのもの。

 さて、左側の、国籍不明の潜水艦及び不審船に対する海上保安庁による武器使用、保安庁法の二十条一項に基づく武器使用、これは排除されていない、殺人罪などを構成するような、つまり、さっき私が言った、襲撃するような、銃撃するような行為について、これを排除するための武器使用、これは法的に排除されていないというのが答弁なんです。

 法制局に伺いたいんですけれども、皆さんの先輩である梶田法制局長官が言ったこの二つのタイプ、自己保存または武器等防護、これはどっちに当たる武器使用を正当化する行為なんでしょうか。

林政府参考人 お答えいたします。

 ただいま先生から御指摘がございました質問主意書に対する答弁書におきましては、相手方が国籍を有していない船舶である場合、すなわち、公海上にあっても我が国の管轄権を及ぼすことができる場合において、海上保安官が、海上において我が国の法令上の犯罪を取り締まるため、海上保安庁法第二十条第一項に基づき当該船舶の乗組員に対して武器を使用することについて、国際法上問題となることはなく、また、憲法第九条が禁ずる武力の行使に当たることはないとお答えしたものと承知しているところでございます。

 このような武器使用は、我が国の統治権の及ぶ者に対して、我が国の公権力である警察権の行使として行うものであり、相手方が我が国の統治権の及ばない他国または国に準ずる組織であることが明らかな場合に、これに対してこのような武器使用を行うことは、警察権の範囲を超え、また、自己保存を超える武器使用である場合には、憲法第九条の禁ずる武力行使に当たるおそれがあるものと考えているところでございます。

 以上でございます。

長島(昭)委員 それがいいかげんな答弁だと言うんですよ。海上保安庁、海上保安官は、相手が国または国に準ずる者かどうかというのを、こういった事象に遭遇したときに一々事前に調べるんですか。まあ、答弁は求めません、もうそれは予算委員会で伺いました。そんなことは調べない、襲撃があったという、銃撃があったという外形的事象をもって、それに対して武器を使用するんだ、こう言っているんですよ。したがって、今の法制局の答弁というのは、政府の答弁の中で全然整合性がとれていない。どっちが正しいか、私はあえてここで問いませんけれども。

 すなわち、こういった状況の中で、適法な武器使用は許されるわけですよ。したがって、自己保存を超えるとか超えないとか、あるいは、相手が国または国に準ずる組織かどうかというのは、基本的には、こういうケースで事前にそれを確認することは求められていない。

 現に、平成十三年のあの九州南西沖の銃撃がありましたね。工作船、当時は不審船。国籍不明の船ですよ。それに対して、海上保安庁と銃撃戦になった。そして、向こうは沈没しました。引き揚げてみたら、北朝鮮の工作船だった。これは、さかのぼって、国だったから違憲になるんですか。ならないですよ。

 しかも、統治権が及ぶとおっしゃったけれども、では、国または国に準ずる者に対して、我が国の警察権、我が国の統治権は及ぶんですか。それだけお答えください。

林政府参考人 お答えいたします。

 公海上の船舶につきましては、その旗国の管轄権にのみ服することを原則とされているのであるから、国籍が明らかであって、それが外国なのであれば、それは通常、統治権が及ばないと考えているところでございます。

長島(昭)委員 だから、それは事前にわからないと言っているわけです。武器を使用するときに、あなたは国または国に準ずる組織ですかなんて言っている、そんな余裕はないんですよ。だから、あなた方の議論は、正直言って机上の空論なんです。しかも、政府の答弁の間でも整合性がとれていないんです。

 ですから、私は別に法制局を辱めるために質疑に立ったわけではありませんが、結論的に申し上げて、ぜひ大臣、これから臨時国会に向けての課題として、やはり、正当防衛とみなされるような環境における武器の使用ぐらいはきちっと認められるような法律をもう一回つくり直していただいて、そうやって現場の自衛官に頑張ってもらう、そういう枠組みをぜひ、私たちも協力いたしますので、しっかり考えてやっていただきたい。そのことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、黄川田仁志君。

黄川田(仁)委員 自由民主党の黄川田仁志でございます。

 今回、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。今回が私にとって外務委員会での初質問になりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 時間が短いですので、早速質問に入らせていただきます。

 まずは、北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約について質問を行います。

 本条約のターゲットとなる魚種は、主にキンメダイとクサカリツボダイです。お配りしております資料を見てください。この二つの魚種について、日本の漁獲量が突出して高いのがわかると思います。

 本条約に参加するとなると、この海域において日本の漁業がより大きく規制されるということになります。それにもかかわらず、日本が主導的な役割を果たし、条約をつくり、参加するのはどうしてか、その意義と利点を教えていただきたいと思います。

鈴木副大臣 先生御指摘のとおりに、北太平洋の公海における我が国の底魚の漁獲量、これは、資料を提出していただきましたけれども、他の関係国と比べて、圧倒的に高いものがございます。

 特に、この海域には天皇海山という水域がございますが、その水域は我が国の底魚漁業にとって最も重要な漁場でございます。

 しかし、一方におきまして、二〇〇六年に、我が国は国連公海漁業協定というものを締結したわけでありますが、その中におきまして、海洋環境の保護及び過剰漁獲の防止等を規定するとともに、重要な漁業資源の保存管理のために、地域漁業管理機関を通じた協力を行うということが定められているところでございます。

 我が国といたしましては、こうしたことを背景に、みずからの底魚漁業権益を将来にわたって安定的に確保するとともに、責任ある漁業国として、国際的な海洋資源の管理に貢献すべく、北太平洋漁業資源の持続可能な利用を促進する本条約の作成を主導したものであります。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 簡単に言うと、パラダイムシフトといいますか、国連公海漁業協定というものができて、今までは公海自由の原則といいますか、公の海は自由に使用していいということになっていたんですが、そういう協定を結ぶことによって、公の海でもしっかりとした管理がなければ漁業をしてはいけないというような風潮になってきたということで、そこに日本が積極的に参加することによって、日本が漁業をしやすいようなルールづくりを行っていくということだと思います。

 そこで、本条約において、当初の交渉参加国は、日本、韓国、ロシア、アメリカでありました。そのときに議論していたよりも管理水域が東側に拡大したというのと、あと、底魚のみでやっていたものを、上の海域も含む魚種をふやしたということで、中国、台湾、カナダも参加国に加わってまいりました。

 そこで、多国間交渉において、日本がコンセンサスを取りつけ、新しく設置される委員会において、先ほども言いましたけれども、日本が主導しているわけですから、日本によりよいルールづくりを細部にわたってするためにも、そのあたりの戦略、どういうふうにつくっていくか、戦略というものがあったらお答えいただきたいと思います。

正木政府参考人 お答えいたします。

 先生今御指摘のように、本件条約交渉は我が国が主導したわけでございますが、二〇〇六年の当初は、底魚のみを対象とし、交渉参加国も日本以外は韓国、ロシア、アメリカの三カ国のみでございました。

 他方、漁業資源の持続可能な利用を確保するための効果的な資源管理に当たりましては、対象の魚種を限定せず、包括的に海洋生態系及び関連する他の魚種も対象とすることが長期的な漁業資源の保存に資するものであり、また、これまでの関連の国連決議とも合致しているということで、そのような考えのもとに日本も主導した結果、本条約の対象魚種及び対象水域を、先ほど御指摘のように、拡大し、それに伴い、中国、カナダ、台湾も条約交渉に取り込むこととしたものでございます。

 したがいまして、日本としましては、このような交渉経緯も踏まえて、将来にわたっての漁業資源の持続可能な利用を確保するために、関係国などとも協議をしつつ、でき上がります委員会におけるルールづくりといったものをしっかり主導していきたいと思っております。

黄川田(仁)委員 しっかりとルールづくりを行っていくということは至極当たり前のことなんです。

 私が提出しております資料の二番目に、北太平洋におきますサンマとアカイカの漁業の実績があります。これを見ていただきますと、サンマに関して言えば韓国と台湾が物すごくとっている、アカイカに関しては中国が物すごくとっているということでございます。日本のサンマというのは、沿岸でとっておりますので、一見関係ないかに思えますが、やはりこの海域において、アカイカについてもそうですが、乱獲されますと、日本の沿岸漁業にも影響があるのではないかという指摘もございます。

 ですから、この漁業協定のルールづくりにおいて、しっかりと、サンマについては韓国、台湾をターゲットにして、乱獲を防ぐ、多くとらせない。また、アカイカについては中国をしっかりと、条約ですから、相手がこんなのはのめないといって逃げてしまってはどうしようもありませんが、取り込む形で、そして、中国の乱獲状態にあるかもしれないものを規制していくという形で、戦略を持ってやっていただきたいと思います。

 それについて、いかがでしょうか。

正木政府参考人 今先生御指摘ありましたように、近年、こういった北太平洋におきまして、底魚漁業に従事する漁船数の増加が底魚の資源状況を損なう可能性というのは非常に高いと思います。また、サンマやアカイカのような底魚以外の資源の漁獲量の拡大が、底魚資源にも、また生態学的に影響が及ぶことも十分懸念されます。

 そういった点も踏まえまして、条約が締結された暁には、日本は、その委員会の中で、しっかりとルールを守るように関係国にも働きかけていきたいと思っております。

黄川田(仁)委員 ぜひとも、国益をとっていくんだという強い意思がルールづくりには必要だと思いますので、その辺をしっかりと踏まえて進めていっていただきたいというふうに思います。

 また、漁業以外でも、外務省の取り組みとして私が注目しているものに太平洋・島サミットがあります。これは日本が積極的に開催している国際会合の一つでございます。そのことについて少し質問をさせていただきたいと思います。

 太平洋島嶼国と友好関係を深めることは、日本の海洋政策上、非常に重要であります。三年に一度の割合で既に六回開催されておりますが、政府の開催方針の変遷や成果、フォローアップの状況を教えてください。また、次回以降のサミットに向けて新たな方針等がありましたら、御提示をいただきたいと思います。

あべ大臣政務官 委員にお答えいたします。

 日本はこれまで、太平洋・島サミットの六回の開催を通じまして、首脳レベルで関係を一層強化しているところでございまして、持続可能な開発と島嶼国の脆弱性の克服、さらには、海洋漁業やエネルギー、環境・気候変動分野での協力、さらには、貿易・投資、人的交流等の促進、国連改革を含む国際場裏における協力といった分野で、地域全体の繁栄と関係強化に取り組んできておりまして、参加国から高い評価を得ているところでございます。

 こうして得られた評価におきまして、島嶼国の親日感情の強化、さらには国際場裏における日本の支持基盤の強化、水産物や天然ガスといった資源の安定的供給地の確保といった成果につながってきていると考えているところでございます。

 また、ことし十月、太平洋・島サミットの第二回中間閣僚会合を東京で開催する予定でございます。

 今後も、国ごとに異なる事情、また、この地域との貿易・投資、資源開発に関する協力を促進する観点も踏まえながら、昨年の第六回太平洋・島サミットで採択いたしました沖縄キズナ宣言、これに基づきまして、ODAも活用しつつ、持続可能な開発、また、防災、海洋問題を初めとする五分野の協力を進めていく考えでございまして、このことを通じまして、太平洋島嶼地域全体との関係を一層強化してまいりたいというふうに思っております。

黄川田(仁)委員 太平洋島嶼国・地域と一層の協力関係を築いていきたいというお言葉をいただきましたが、先日、六月初めにTICAD5がありまして、アフリカにおいて資源獲得、アフリカに積極的に投資をしていこうというような形でアフリカもやっております。

 南太平洋におきましても、こちらは三年に一回やっておりますから、より日本は力強い形で、南太平洋島嶼国も、浅い海でございますし、資源開発、日本の今の海洋戦略に非常に適している海であり、また、伝統的に日本と仲がよい親日国が多いところでございますから、この太平洋・島サミットをしっかりと活用して、戦略的にやっていっていただきたいと思います。

 また、アフリカと同様、近年、中国がこの太平洋島嶼国に対して積極的にアプローチしているというふうに聞いております。また、日本の太平洋・島サミットに似たものが中国で開催されるとの情報もありますので、外務省で何か得ている情報がありましたら、教えていただきたいと思います。

柳政府参考人 お答えいたします。

 中国は、二〇〇六年四月に、フィジーにおきまして、中国・太平洋島嶼国経済協力フォーラムという名称で、日本の島サミットのような会議を開催しておりまして、当時、温家宝首相が出席し、太平洋諸国の複数の首脳も参加しております。そのとき、中国は、三年間で約三十億人民元、当時のレートで約四百四十億円の優遇借款等の供与を発表したと承知しております。

 また、最近、先生御指摘のとおり、報道におきまして、次回の中国・太平洋島嶼国経済協力フォーラムを年内にも中国国内で開催するという情報はございます。

 本件につきましては、まだそれ以上のことはわかっておりませんが、引き続き情報収集に努めてまいりたいと思っております。

黄川田(仁)委員 今、中国でのサミットが年内にもというお話だったんですけれども、私がちょっと聞いている話だと、九月あたりということなんですが、十月に日本の中間閣僚会議がやられるということで、日本に来て、その情報をもってして、中国に行って、帰る、そういうような、日本がやられている情報が出ていかないように、また、中国でやったサミットの状況をしっかりと外務省も情報収集してくるというような態度が望まれると思います。

 私が聞いているのは九月ということなんですが、その辺はいかがなんでしょうか。

柳政府参考人 お答えいたします。

 私ども、必ずしも時期を明示的にはまだ聞いておりませんで、時期が固まったかどうかという点も含めて、引き続き情報収集していきたいとは思ってございます。

 年内ということしかまだ承知しておりません。

黄川田(仁)委員 その開催時期も含めて、日本が利用されないように、逆に中国を利用して日本の国益にかなうように、しっかりとそのあたりもやっていっていただきたいというふうに思います。

 海に囲まれている日本にとって、海は切っても切り離すことができません。国家を構成する重要な要素と言ってもいいと思います。日本の食文化を守るために漁業はとても重要であり、当該条約の締結に向けて積極的に関与してきた外務省、水産庁の姿勢を私はとても評価しております。

 しかし、日本の国益を守るために必要な海洋分野は非常に多岐にわたっております。漁業という限られた分野だけでなく、複数の分野にわたって、そして大局的な海洋政策を行ってほしいと思っております。

 副大臣、そのあたり、海洋政策、もっと包括的にしっかりとやっていくという決意をいただきたいと思います。

鈴木副大臣 先生が御指摘のとおりに、我が国は周辺を海に囲まれた海洋国家でございます。それだけに、御指摘のとおり、多岐にわたる海洋政策、これはとても大切なものである、そのように認識をいたしております。

 我が国としては、国連海洋法条約その他の国際約束に基づき、また、海洋の持続可能な開発及び利用を実現するための国際取り組みの中で、国際的な協調のもと、海洋の平和的かつ積極的な開発及び利用、それと、海洋環境の保全との調和を図る新たな海洋立国を実現することが大切なことであると認識をいたしております。

 また、海洋を、自由かつ平和で、法の支配が貫徹する世界人類の公共財として保ち続けることは、我が国の国益にもかなうことであります。こうした国益を実現するために、海洋分野における各国との国際的連携を強化するとともに、関連の国際法規を遵守して、法の支配に基づく国際海洋秩序を確立することを目指すべきであると考えております。

 また、そうした海洋秩序の確立を目指すべきとの理念、これを国際社会で共有する、そのことに向けまして、引き続き主導的役割を発揮してまいりたいと考えております。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 国際関係の分野において、この海も、先ほど中国の話をさせていただいておりますが、中国が海にも進出してくるということで、漁業の世界も乱獲が懸念されるということがございますので、そのあたりをしっかりと念頭に置いて、副大臣、大臣、外務省、頑張っていただきたいというふうに思っております。

 北太平洋漁業資源保存条約の件に関してはこれで終了いたします。

 もう一つの案件であります、食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約について、私の意見を述べさせていただきたいと思っております。

 先ほど長島議員からお話もありましたが、この条約に関して、十年近くの歳月を経てようやく締結となったということになっております。これは、先ほど答弁でもありましたように、EU諸国が解釈宣言を行って、その経過を観察して、本条約を締結しても大丈夫であると判断したということであります。

 周りの様子をうかがいながら用心深く進むということももちろん大切でございますが、しかし、これからの日本の外交の姿勢においては、後追いではなく、しっかりと情報収集を行って、独自の判断と主体的な行動をとるよう努めていただきたいと思います。

 そのことを強く希望いたしまして、本日の私の質問を終了いたします。ありがとうございました。

河井委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、きょう議題となっております二条約につきましては後ほど質問させていただきたいと思いますが、その前に、二つのテーマについて鈴木外務副大臣初め皆さんにお尋ねをしたいと思います。

 なお、二十分と時間が限られておりますので、政府参考人の皆さんも、質問通告に基づいて御出席いただいているんですけれども、場合によっては御答弁いただけないことになるかと思いますけれども、あらかじめ御了承いただきたいと思います。

 一つは、今回のG8サミットの際に日英首脳会談が行われまして、イギリスとの間で、安倍総理が、安全保障また防衛協力を強化しようということで合意をされたわけでございます。その一つに、日英間の防衛装備品等の共同研究開発・生産に関する枠組みということについて合意をされたわけでございます。

 私は、今回のこの合意というのは、これからの、イギリス以外の他国との枠組みを考える意味でも、やはり非常にきちっとした枠組みをつくっていかなければいけない、そういう観点から質問をさせていただきたいと思うわけでございます。

 日本政府は、民主党の野田政権時代に、二〇一一年十二月ですけれども、それまでの武器輸出三原則等を緩和して、防衛装備品の国際共同開発・生産を認めることを決定されたわけでございます。

 今回、その武器輸出三原則等の新たな原則に基づいて、アメリカ以外の国と防衛装備品の共同研究開発に踏み出すのは初めてのケースになるわけでございます。

 今回の日英だけではなくて、先日、六月の初頭に来日されたフランスのオランド大統領との間でも、安倍総理は、防衛装備品の協力についてこれからしっかり構築していこう、そういうことも言われておりますから、イギリスを初め欧州諸国が日本の技術力に非常に興味を持っておられますので、今回のようなケースがこれからさらに広がっていく可能性は当然あると思うんですね。

 その最初のケースとして、日英の防衛装備品等の共同研究開発・生産に関する枠組みというのが極めて私は大事になってくると思っておりまして、今回、この日英間の防衛装備品の共同研究開発・生産に関する枠組みをどのようなものにされるのか、まず、外務省の考え方を確認しておきたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたように、先般の日英首脳会談におきまして、防衛装備品等の共同開発等にかかわる枠組みにつき実質的に合意し、具体的案件として、化学防護衣の性能試験・評価手法に関する共同研究を実施していくことに合意したわけでございます。

 この枠組みは、日英両政府が参加する防衛装備品等の共同開発等にかかわる事業のために、日英間で移転される武器等の取り扱いに関する法的枠組みを設定するものでございます。具体的には、移転される武器等の第三国移転や目的外使用に係る厳格な管理を規定することとしております。

 本枠組みは、防衛装備品等の共同開発等に関して米国以外の国との間では初めて作成するものでございまして、我が国の安全保障に資するほか、日英間のより緊密な防衛協力等に寄与するものと考えております。

 今後、本枠組みの早期署名に向けて最終的な調整を進めていく所存でございます。

佐藤(茂)委員 今、新美大臣官房参事官から御答弁いただきましたように、この中でやはり一つポイントになるのは、二〇一一年の十二月二十七日の、政府の「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての内閣官房長官談話の中でも複数回にわたって強調されているんですけれども、例えば、その部分を引用いたしますと、「当該案件への参加国による目的外使用や第三国移転について我が国政府による事前同意を義務付けるなど厳格な管理が行われることを前提として、防衛装備品等の海外への移転を可能とすることとする。」そのように述べられているんですね。

 要するに、この談話では、あくまでも厳格な管理が行われることが前提である、特に具体的に、目的外使用や第三国移転について我が国政府による事前同意を義務づけるなどの厳格な管理を行うということを基準、そのように述べているわけでございまして、これは、この段落のもう一段前にも同じことを繰り返して、この内閣官房長官談話では重ねて言われているというぐらいに強調されているわけでございます。

 今回の初めてのケースとなるこの枠組みにおいて、今強調いたしました目的外使用や第三国移転について我が国政府による事前同意を義務づけるなどの厳格な管理を、どこまでこの協定の中で担保して、歯どめがこういうようにきいていますよという、歯どめの実効性をどのように確保しようとしているのか、具体的に御答弁をいただきたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、この枠組みにおきましては、移転された武器等につきまして、国際連合憲章の目的及び原則以外の目的のために転用してはならない、また、移転を行った政府の事前の同意なく第三者に移転してはならないということについて、国際約束として義務づけることとしております。

 そしてまた、事前同意につきましては、これは事前同意の具体的な形式までこの枠組みは規定しておりませんけれども、基本的に、書面をもってきちんと確認するということを考えております。

佐藤(茂)委員 ぜひ事前同意も、口頭で終わらせるのではなくて、今述べられましたように、やはり書面できちっと、どういう同意を得たのかということが記録に残るような形できちっとやっていただきたい、そのことだけ申し上げておきたいと思います。

 もう一つ大きなテーマとして、今回のG8サミットで大きな焦点の一つとなりましたシリア内戦への対応でございますね。

 結局、結論としては、政治的な解決という点では、米欧日とロシアの溝が埋まらずに、なかなか有効な手だては打ち出せなかった、そういう印象が一つございますけれども、しかし、ぎりぎりの線で、シリアの停戦を目指す国際会議の早期開催というものを目指すことで合意されたわけでございまして、ぜひ、日本を初め各国首脳というのは今回の合意実現へ最大限努力をしていただきたい、そのように考えるわけですが、もう一つは、政治的解決とともに、各国が可能な限りの人道支援を進めていくということも私は必要だと思うんです。

 今回の合意の中で、G8首脳は、計十五億ドルをシリアと近隣国の人道支援のために拠出することで合意をされました。その際に、安倍総理は会議で、シリアの国内避難民や難民を支援する一千万ドルの緊急無償資金協力、もう一つは、周辺国の難民を受け入れておられる代表の国であるヨルダンに対して一億二千万ドル相当の円借款供与を表明された、そのように概要でお聞きしております。

 もう一つ気になったのが、反体制派掌握地域への支援を我が国の貢献として表明したということも外務省のペーパーで速報でいただいております。

 これは、安倍総理がサミットに向かわれる前に、岸田外務大臣が記者会見でも明らかにされたと報道されておりますけれども、シリアの反体制派に対する医療分野や保健分野の支援を積極的に行う、そういうことなのかどうなのかも含めて、というのは、今まで日本は余り旗幟を鮮明にされてこなかった、人道支援でも。だから、そういう反体制派に限ってというようなことを特にされていなかったわけです。

 今回、六月十一日、あるいは安倍総理がサミットで表明されたということになると、やはり今までの人道支援の考え方から一歩さらに新たな展開をされようとしているのかなという印象を受けたわけでありまして、シリアの反体制派に対して直接支援を行うというのは、これから初めてのケースになるわけですね。

 G8サミットで表明された日本のシリアへの人道支援策の全貌と、そして、その考え方や狙いについて、政府の見解をぜひお伺いしたいと思います。

鈴木副大臣 G8サミットにおいて、今、佐藤委員の御指摘のとおりの支援策が総理から打ち出されたわけであります。

 そのうち、ヨルダンにつきましては、ヨルダンが難民を受け入れる、大変に厳しい財政事情の中でも受け入れ、それによる電力やあるいは水の供給で大変な負担になっているということに鑑みて支援を行う、こういうことであります。

 そしてもう一つ、先生の御指摘のように、シリアの国内における反体制派の支援ユニットや現地NGOなどと協力をしながら、現地の人々の人道ニーズに対処するために、保健等の分野の支援に取り組むということも表明をしたわけであります。

 このシリア反体制派との協力した支援につきましては、我が国として今回初めてその方針を決定したところでありますが、これは、シリアの一部地域を反体制派が実質的に管理をしていること、当該地域には国際機関を通じた人道支援がほとんど到達していないこと等の事情を考慮して、当該地域の住民の人道ニーズにできる限り応えることを目的としたものであります。

 主要国も同様の支援を実施し始めており、我が国としても、現地のニーズに詳しい反体制派の支援ユニットや現地NGOなどと協力しながら、まずは保健等の分野の支援に取り組んでいく考えであります。

佐藤(茂)委員 それでは、本題でございます条約につきましてお聞きをしたいと思います。

 今既に長島委員また黄川田委員からも御指摘がございましたけれども、食料・農業植物遺伝資源条約の件について確認をしておきたいと思います。

 今回、先ほどからありましたように、この条約というのは、二〇〇一年の第三十一回の国連食糧農業機関総会で採択をされたわけであります。

 しかし、その際に、我が国は、本条約の第十二条三項(d)において、全部読むと長くなるので、特に引用しますと、「いかなる知的財産権その他の権利も主張しないこと。」そういうことで終わっている規定があって、植物遺伝資源についていかなる知的財産権も主張しないとの規定が、植物遺伝資源を用いて特定の遺伝子に特許権を付与することを妨げるのではないかとの知的財産権に関する懸念から採択を棄権した、そういう経緯があるわけですね。

 二〇〇一年ですから、それからもう十一年半経過して、今回、国会提出という形になっているわけですけれども、条約の条文は変わっていないにもかかわらず、この国会に提出された理由というのは結局何なのか。二〇〇一年に懸念を持たれた、知的財産権に関する懸念というのはクリアされたのかどうかも含めて、どういう事情の変化があったのか、ぜひ外務省の考え方をお伺いしておきたいと思います。

あべ大臣政務官 委員がおっしゃるように、私ども、実は懸念がございました。特に、本条約に関しての知的財産権の取得にかかわる規定に関しまして、多数国間の制度から受領した植物遺伝資源を用いた発明に対して、特許権などを付与することが妨げられるのではないかという懸念でございました。

 そうした中、本条約の採択のときには、我が国が懸念を有していた規定につきまして、EU諸国が、自国の知的財産権制度には影響しないという解釈宣言を付した上で本条約を締結したところでございます。

 これに対して、これまでのところ、ほかの締約国から異議は申し立てられていないところでございまして、また、我が国の本条約未締結により、近年、我が国の種苗会社による海外での植物遺伝資源の円滑な取得に影響が生じているところでございます。この点につきまして、関係団体から、本条約の早期締結に向けた要望書が提出されております。

 こうした経緯を踏まえまして、政府といたしまして、我が国の懸念は払拭されたというふうに判断するとともに、植物遺伝資源の保全及び持続可能な利用という本条約が有する意義に鑑み、本条約を締結することが適切と判断いたしまして、今国会に提出させていただきました。

佐藤(茂)委員 今、あべ大臣政務官から経緯を御答弁いただいたんですが、そうすると、二〇〇四年にEU諸国等が、日本も同様に懸念を表明しておりましたこの第十二条三項(d)について、自国の特許制度に影響を及ぼすものではないとする、そういう解釈宣言を付して本条約を締結したわけでございますが、我が国も、今回締結するに当たって、EUと同様の解釈宣言を付して本条約を締結される、そういうことになるというように考えていいのかどうか、確認をしておきたいと思います。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国もEU諸国と同趣旨の解釈宣言を行う予定にしております。

佐藤(茂)委員 そういうことであるならば、結果論でございますが、EU諸国が解釈宣言を付して締結されたのは二〇〇四年なんですね。それからもう九年たっているわけです。

 二〇〇四年の時点で、同様に知的財産権の懸念をしていたEUと、日本もEUに合わせて、同様の解釈宣言を付した上で採択に加わるというやり方をなぜとられなかったのか、そのことについてお伺いしたいと思います。

香川政府参考人 先ほどあべ政務官が御答弁申し上げましたように、二〇〇四年のEU諸国が付した解釈宣言について、一定期間、他の締約国の反応を見きわめる必要がございまして、異議が申し立てられなかったということがありまして、それを踏まえて、政府としては、我が国の懸念は払拭されたというふうに判断した次第です。

佐藤(茂)委員 一定期間にしても、九年というのは余りにも長いと思うんですね。先ほど黄川田委員も指摘されておりましたけれども、他の周辺諸国の様子を見ながらこういうものをやるという、アメリカとの関係もあったんでしょうけれども、やはり外交の主体性というものをもう少し持っていただいた方がいいんじゃないかなという感じはいたします。

 その上で、もう一つの条約であります北太平洋漁業資源保存条約について、簡単に質問させていただきたいと思います。

 今回のこの条約というのは、二〇〇六年四月から日本はこの交渉において暫定事務局を務めて、暫定的な保存管理措置の草案も策定するなどの、まさに日本主導の条約と言えるかと思うんですね。

 この条約がつくられると、北太平洋漁業委員会を新たに設立して、そして、その委員会が保存管理措置を正式に策定する、そういう形になるんですが、しかし、実際には、今まで、日本の働きによりまして、暫定保存管理措置というのが二〇〇七年から合意されて、以後、逐次改定されてきて、現実に存在しているわけです。

 この暫定保存管理措置の日本の漁業活動に与えてきた影響はどういうものなのかということをまず確認しておきたいのと、そしてまた、条約発効後に北太平洋漁業委員会が保存管理措置を策定する際に、今までの、今現に存在している暫定的な保存管理措置を継続されようという意思を日本としては強く持っているのか、それとも、やはり、やってきたけれども、いろいろ限界があって、もっと強化すべきだとか、いろいろそういう判断をされているのか。

 そのあたりについて、今の率直な政府の考え方をお聞きしておきたいと思います。

長谷政府参考人 我が国は、北太平洋公海域における遠洋底びき網漁業と底魚漁業について、二〇〇九年から、操業隻数の上限の設定ですとか産卵期の自主休漁、それから一部海山、海域での操業禁止等の暫定措置を自主的に講じてきているところでございます。

 科学的根拠に基づき海洋生態系を保護するこれら措置は、関係する我が国漁船にとって操業の一定の制約、負担ということは事実ではございますけれども、長期的な漁業資源の保存及び持続的な利用を確保することを目的としており、結果的に当該海域における我が国底魚漁業の操業機会の確保に寄与してきているものと認識しております。

 この暫定措置は、我が国漁業の漁獲対象種あるいは海洋生態系に与える影響を評価した上で設けられたものでありまして、科学的な根拠に基づく適切な措置であると現在考えております。

 条約発効後は、その時点での入手可能な最良の科学的情報に基づきまして、今までの暫定措置を踏まえまして、条約に基づいて設置される北太平洋漁業委員会において改めて保存管理措置が採択されるというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

河井委員長 ここで速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河井委員長 速記を起こしてください。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時二十九分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時五十分開議

河井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーでございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件、条約第一七号について。

 これまで、漁場の規律化を図る意味における地域的漁業管理のための枠組みの構築について、特に北太平洋地域の機関などの設置が求められてまいりました。今回提案されている条約の締結によって、漁業資源の管理を初め、締約国間における漁業ルールの取り決めなど、さまざまな進展が図られることに期待するものであります。

 一方、この条約によって、締結国間の漁獲活動などの情報管理の共有や生態系へのアプローチなど、新たな調査協力体制及び制限するための取り決めなども協力体制を厳格にとるということが予想されます。

 まず、本条約締結による海洋資源の管理体制について、どのような取り組みがなされるのか、伺います。

正木政府参考人 お答えいたします。

 本条約の発効に伴いまして、北太平洋における漁業資源の長期的な保存及び持続可能な利用を確保することを目的として、北太平洋漁業委員会が設立されます。

 委員会は、最良の科学的情報に基づきまして、漁業資源の長期的な持続可能性を確保するための保存管理措置を採択いたします。保存管理措置の具体的な例としましては、総漁獲可能量の制限、禁漁期間及び禁漁区域の設定などが考えられます。

 これを受けまして、締約国には、採択される措置を遵守し、また、当該措置の実効性を損なう活動に従事しないことが義務づけられます。

 こうした委員会で採択された措置の締約国による遵守を通じまして、北太平洋の漁業資源の管理体制がしかるべく確保されると考えております。

玉城委員 では、この条約締結による日本の漁業関係者へ与える影響等について、どのようなことが考えられるのか、お伺いいたします。

正木政府参考人 本条約が対象水域としています北太平洋の公海、特にこの海域に位置します天皇海山水域は、我が国の底魚漁業にとって最も重要な漁場となっております。

 したがいまして、我が国が本条約を締結し、この条約が発効することは、対象水域でございます北太平洋の公海における我が国にとっての重要な漁業資源の適切な保存及び管理の徹底のみならず、我が国漁業関係者の経済的な利益の安定的な維持にとって極めて重要であると考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 それでは、次に、食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約の締結について承認を求めるの件、条約第一八号について伺います。

 先ほど長島委員から、日本がこの条約締結までに相当の時間を要しているが、なぜそのようにおくれたかということについて質問がございました。私も質問を立ててありましたので、重複するということで、この質問については割愛をさせていただきたいと思います。

 この食料及び農業のための植物遺伝資源の保全及び持続可能な利用のために定める措置の本条約は、国際連合食糧農業機関、FAOの植物遺伝資源に関する国際的な申し合わせが一九八三年に採択、その後、生物多様性条約との整合性などの見直しがあって、二〇〇四年に発効した経緯がありますが、本条約では、多数の国々による植物遺伝資源の取得の促進や、公正かつ衡平、つまりバランスですね、衡平な利益配分がうたわれています。

 このような背景をもとに、本条約の締結における日本の植物遺伝資源に対する今後の影響について、どのように資するものであるかを伺いたいと思います。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 本条約は、食料安全保障の観点から、重要な植物遺伝資源の保全や、先生御指摘のとおり、持続可能な利用を促進するものでございます。本条約によりまして、植物遺伝資源の取得を容易にして、その利用から生ずる利益を公正、衡平に配分する制度も定めております。

 この条約の締結によりまして、我が国の遺伝資源の利用者が海外から植物遺伝資源を入手することが容易になるというふうに考えております。

 新品種の開発がそれで促進をされ、結果として、我が国農業の競争力強化や関連産業の振興に資するというふうに考えております。

玉城委員 ありがとうございました。

 多国間におけるこういう取り決めについては、ぜひ、全体の利益、当然ですけれども、我が国の利益も含めてしっかりと後押しをしていただきたいというふうに思います。

 それでは、次に、日米地位協定に関する件についてお伺いをいたします。

 米空軍嘉手納基地に隣接する沖縄市の市サッカー場の芝生張りかえのための工事現場から、土の中に埋められて遺棄されたと見られるドラム缶十数本が見つかったということが、六月十七日までに報告が上がり、六月十八日に地元で報道されています。

 この沖縄市サッカー場一帯の場所は、一九八七年八月に返還された米空軍嘉手納基地の一画で、ドラム缶は米軍の遺棄物の可能性が高いと見られています。

 さらに、このドラム缶には、世界最大規模の総合化学品メーカーとして知られる、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー、ダウ・ケミカル社の社名が記載されていることが現場調査で判明しています。ダウ・ケミカル社は、ベトナム戦争当時に米軍がベトナムで散布した猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を供給していた最大手企業であることから、臆測と不安が県民に広がっています。

 今回の沖縄市における埋棄ドラム缶の件について、まず防衛省に伺います。現時点でどのように把握していらっしゃるか、お聞きいたします。

左藤大臣政務官 今先生からお話がありましたように、昭和六十二年の八月三十一日に嘉手納飛行場の返還地は返還されたんですが、その地から発見された空のドラム缶については、六月の十四日に沖縄市から連絡を受けて、防衛省の職員が現地を確認したところでございます。

 これを受けて、沖縄防衛局からアメリカ側に対して、ドラム缶の使用の有無、当該返還地が返還前にどのような用途で使用されたかについて照会をしたところでございます。

 昨日、ドラム缶の使用の有無については不明であること、また、返還前の当該地域の土地の建物の存在に関する記録がないという答えが参っております。

 この回答に対して、沖縄防衛局としても、周辺の住民の不安の早期解消のためには詳細な米軍の情報が必要と思いますので、再度調査を依頼しているところでございます。

 また、事実関係の確認と並行して、駐留軍跡地から発見されたことに鑑み、ドラム缶の内容物や土壌汚染の調査に向けて準備を行っており、今月中には契約を締結してやりたい、このように思っております。

 なお、本年の一月、米国の国防省が沖縄における米軍の枯れ葉剤の使用等の可能性について実施した調査報告書によれば、沖縄において枯れ葉剤を荷揚げ、また保管、使用、もしくは埋設された、また、沖縄向け、もしくは沖縄経由で運搬されたことを裏づける記録は確認されなかったんです。

 そのことを踏まえながら再度調査をさせていただきたいと思いますけれども、これは、沖縄市との調整の上、しっかり、敏速に適応させていただきたいと思っております。

玉城委員 確かに、アメリカ側の調査報告、あるいは、それを受けて防衛省、外務省では、運んだ覚えはない、使った覚えはない、埋めた覚えはないという答弁がこれまでも繰り返されてきておりますが、しかし、事実、恩納村、北谷町などでも、土中に埋められたPCB汚染のために、その土地が長く使えなかったということがあるわけでございます。

 この事実に基づいて、私は、ダイオキシンを含む枯れ葉剤であるかどうかということはまた別の機会に譲りますけれども、これまでも基地返還跡地からはさまざまな有害物質が発見されていますが、日米地位協定では米軍側に原状回復義務を課しておりません。

 他方、一九七三年、日米合同委員会での「環境に関する協力について」は、「米軍施設・区域に源を発する水、油、化学物質乃至その他の物質により汚染が発生し、よって地域社会の福祉に影響を与えていると信ずる合理的理由のある場合、県又は市町村若しくはその双方は、地元の防衛施設局との協力の下、米軍現地司令官に対して調査を要請することができる。調査の結果は、可能な限り速やかに県又は市町村若しくはその双方に通知されることとする。」というふうに決められています。

 そして、さらに、二〇〇〇年九月におけるニューヨークで行われた2プラス2でも、環境原則に関する共同発表では、「日米の関連法令のうちより厳しい基準を選択するとの基本的考えの下で作成される日本環境管理基準に従って行われる。」「日本の関連法令上の基準を満たし又は上回るものとなる。」これは通称JEGSと言われておりますが、「JEGSを見直し、二年ごとに更新するための協力を強化する。」等々、やはり環境汚染に関してはアメリカ側も協力をするというふうに言っているわけですね。

 ですから、この地位協定第三条の環境に関する協力、2プラス2の環境原則に関する共同発表に鑑みて、日本政府は、基地返還跡地から発生するあらゆる遺棄物等について、今後は明確に責任ある対応をとるべきだと考えますが、外務省に伺います。

岸田国務大臣 まず、米軍施設・区域における活動に起因する環境問題、これは周辺住民の皆様方にとりまして重大な問題であるということは、まず深く認識をしております。

 そして、これまでも、この在日米軍施設・区域に係る環境問題に関しては、日米合同委員会及びその合同委員会のもとに設けられました環境分科委員会の枠組みを通じまして協議、対処してきております。

 そして、御指摘の事案につきましては、先ほど防衛省から説明がありましたように、今、引き続き事実関係等について確認中でありますし、また防衛省自身も、ドラム缶の内容物、土壌汚染調査に向けた準備を行っているということであります。

 ぜひ、外務省としては、これらの結果もしっかり踏まえた上で、米側そして関連省庁ともしっかりと連携しながら、本件についてもしっかり適切に対応していきたいと考えております。

玉城委員 私がなぜ日本政府側が県民のためにしっかりとやるべきであるというふうに言っているかは、もう外務大臣も御存じのことと思います。

 日米両政府は、本年四月、米空軍嘉手納基地飛行場以南の土地の返還計画を発表しています。計画によれば、速やかに返還六十五ヘクタール、県内で機能移設後に返還八百四十一ヘクタール、海兵隊の国外移転後に返還百四十二ヘクタールプラスアルファ、合計で一千四十八プラスアルファヘクタールという大規模なものになるんですが、米軍に原状回復義務が課されていない以上、明確な日本政府の責任において、可能な限りの地上及び地中における探査計画を立てた上で、土地の返還スケジュールどおりにこの調査も進めなければならないのではないかと思うんですね。

 私、きょうは資料を配付しておりませんが、もう見たら一目瞭然、これだけ返ってくるわけです。これだけの中には、普天間基地の中にダイオキシンが埋められていたというジャーナリストの調査などもありますので、決して日米両政府が発表している現状ではないということが、さまざまな方からの証言によって明らかにもなっております。

 ですから、これらを含めた今後の返還予定地に関する事前の立入調査について、米軍側へ調査計画を明示して、早急に取り組まなければならないのではないかと思います。その見解を伺います。

岸田国務大臣 政府としましては、返還前の立入調査につきまして地元から強い要望があるということ、これは承知しております。

 この在日米軍施設・区域への公的な立ち入りにつきましては、これまでも一九九六年の日米合同委員会合意に基づいて実施されてきており、また、跡地利用の観点からは、いわゆる跡地利用特措法に基づきまして、関係地方自治体による駐留軍用地での調査、測量の実施に関し、国があっせんをするということとされております。

 そして、加えて、返還前の環境調査のための米軍施設・区域への合理的な立ち入りを含む環境に関する合意に関しましては、二〇一〇年及び二〇一一年の2プラス2において、日米間で検討するとされております。

 ぜひ、可能な限り早期に合意に達せられるように、引き続き検討していき、こうした地元の心配に応えていきたいと考えております。

玉城委員 人類の後継に関することですから、ぜひしっかりと責任を持って取り組んでいただきたいと思います。

 時間が参りましたが、あと一点だけお願いをしたいと思います。

 今回の沖縄市におけるドラム缶遺棄物の調査によって確たる判断がなされるまで、もしくはサッカー場工事が再開されるまでの間は、沖縄市、指定管理者、土木施工業者を初め、関係者への十分な補償にも政府が対応、配慮を尽くすべきではないかと思料いたします。簡潔にお答えいただきますよう、お願いします。

左藤大臣政務官 今先生の御質問ですが、今詳細な事実関係は確認中であること、また、今後、ドラム缶の内容物、そしてドラム缶が発見された付近の土壌について調査を実施する予定があることから、これらの結果を踏まえながら、今先生のおっしゃることを踏まえながら、沖縄市との調整の上、今後の対応にさせていただきたいと思っております。

玉城委員 質問を終わります。ありがとうございました。ニフェーデービタン。

河井委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 日本維新の会の小熊慎司です。

 まず、北太平洋公海漁業資源保存条約についてお伺いをいたします。

 これまでの質疑にもありましたとおり、この条約は、対象地域での海洋資源の利益、国際的な利益また日本の国益に関して、非常にこれが確保される条約であり、また、この条約に関しては、さまざまな委員が御指摘のとおり、日本が主導してやってきたところでありますし、条約を各国が締結、発効後には、またさらに日本のリーダーシップが求められるところであります。

 この件に関しまして、条約が発効されていけば、事務局をどこに置くかということが課題になってまいります。これはまさに日本のリーダーシップで行ってきた、提案してきた条約でもありますので、参加国の中には、我が国にと言っている国もあるやに聞いております。そうした中で、この条約の意義、また効力をしっかり発揮していくためにも、今後の日本の立場としては、しっかり事務局を誘致して日本に置いて、さらにそのリーダーシップを発揮していくべきだというふうに考えているところであります。

 そこで、この事務局誘致の取り組みについてお伺いをいたします。

鈴木副大臣 小熊委員御指摘のとおり、この条約は、我が国がこれまで主導してまいりましたし、それから、暫定事務局も我が国が担って貢献をしてきたところでございます。

 政府といたしましては、北太平洋漁業資源の適切な利用の促進を主導するとともに、責任ある漁業国として国際的な海洋資源の管理に貢献する、それが我が国の漁業権益の安定的な確保につながる、こういう思いがございますので、北太平洋漁業委員会の事務局を我が国に誘致したい、そのように思っております。

 今までも、事務局が誘致、決定されるように、さまざまな機会を捉えて働きかけ等をしてまいりました。予定では、本年九月に事務局設置都市の決定ということが予定をされておりますので、引き続き、関係国への働きかけに取り組んでまいりたいと思っています。

小熊委員 具体的に言えば、韓国が事務局を誘致したいという意向もあるようでありますので、今副大臣がおっしゃられたとおり、関係国としっかりとした交渉をして、韓国に置くこと自体が問題とは言いませんけれども、やはりこれは日本に置くことがこの条約のためにもいいというふうに思いますので、この取り組みはしっかりしていただきたいというふうに思いますし、九月にはそうした吉報が聞けるように、努力を期待申し上げて、次の質問に移ります。

 食料・農業植物遺伝資源条約に関しては、二〇〇四年にほかの国も発効して、とりわけ日本とアメリカが、特に特許のことについてちょっといろいろ心配な点があるということで、様子をうかがってきたところであります。それから数年たった中で、そうした危惧はなかったということが確認された。また逆に、この条約を締結しないことによって、農業界においてのさまざまなふぐあいもまた出てきたということで、これはやはり結ばなきゃいけないという判断に立ったというふうに聞いております。

 ただ、この条約そのものというよりも、こういう、状況に応じて条約の締結がおくれるというのは、その時々の政府の判断、また関係する業界団体のさまざまな利益を考えたときの判断で、それは適正な判断だというふうには思うんですけれども、今国会でも、私も参議院の外防にいて、この条約、まだ通っていなかったんだなというものが多数あって、二年もかかって何とかたどり着いたものもあれば、まだまだ積み上がってきているものもあるわけであります。

 対外的な関係の中のこともありますし、ほかの国においてはもうとっくに二年前に国会を通っているよというものもあって、日本は何をやっているんだろうという、ある意味国益を失している部分もあるというふうに思います。これは、政府だけではなくて、我々国会のあり方というのも考えていかなければならないわけでありますけれども。

 どの条約に関しても、協定等に関しても、しっかり質疑、審議をして検討していかなければならないわけでありますが、現実的には、条約、協定というのは、事務的な書きかえがあったり、そんなに質疑が、必要でないとは言いませんけれども、これは速やかな判断でできるものもあるわけであります。

 国会の状況等は大臣のあれではありませんけれども、やはり条約に関しては、対外的な日本のイメージや、またそのプレゼンスにもかかわることでありますから、これは我々、自分自身にも問いかけなければいけないことではありますけれども、こうした条約、協定といったものは、速やかに国会で判断をして、そして国際的な利益、国益を確保していくということが重要であるというふうに私は思いますし、もうこれは、お互いの党、与党、野党関係なく、党利党略ではなくて、また、国会の戦術上の道具にするということは私はあってはならないというふうに思っております。

 そういう意味では、今国会ということではなく、今後、どういった条約とか協定とかが出てきて、これを速やかにやっていくためにはどういうふうに外務省として取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

岸田国務大臣 政府としましては、国会で承認を得るべき条約につきましては、署名など所要の準備が整ったものから順次国会に提出させていただき、早期締結を目指すという考えでおります。

 その上で、署名済みあるいは交渉中であって、今後国会に提出する可能性のある条約の例を分野別に挙げさせていただきますと、現時点では、経済連携協定が九件、原子力協定が二件、投資協定が九件、社会保障協定が四件、租税条約五件となっております。さらに、人権分野では障害者権利条約がありますし、また、環境分野では、水銀によるリスク削減のための水銀に関する水俣条約案が本年一月に交渉国の間で合意されております。

 政府としましては、これらの条約の早期締結を通じて、国益の増進を目指すとともに、国際社会におけるルールづくりに積極的に取り組んでいきたいと考えております。

 ぜひ、本日お諮りしております二件につきましても、御審議、御承認のほど、よろしくお願いいたします。

小熊委員 我が党は、是々非々でしっかり冷静に取り組むということ、国会に対してはそういう姿勢で臨んでいる党でもあります。与党にいるときと野党にいるときとでそうした国会戦術が変わるということが、外交上、やはり質疑においてあってはならないというふうに思いますし、外交といったものは、党派を超えて日本の国益を確保するという意味では、私も、一国会議員、また一政党の所属議員としては、こうした条約、協定に関してはいたずらに国会の道具にしないということを改めて申し伝えさせていただいて、外務省としての取り組みも一層の努力をお願い申し上げて、次の質問に移ります。

 二〇一五年に締結を目指しているRCEP、東アジア地域包括的経済連携ですね、また一方で、TPPも議論があるわけでありますけれども、これは、マスコミ等、また国民の間の議論等を見ていても、TPPに関してはいろいろな議論がされているところでありますけれども、このRCEPに関しては議論が高まっていないんですね。

 これは、賛成、反対、それぞれいろいろな業界、団体によって違いますし、国民の間でもいろいろな意見が取り交わされているところであります。昨年の選挙でも、私は賛成の立場で選挙に臨んで、いろいろな反対意見もいただいたところでありますが、他方で、RCEPに関して議論を投げかけると、それは何だみたいな感じになって、TPPに反対している業界もRCEPには全然目を配っていないというような状況も見受けられています。

 本当に、日本の国益、また、貿易を促進して国益を得ていく、また国際社会を進展させていくという冷静な議論をするのであれば、TPPとRCEPをしっかりあわせて議論していくということが必要なんですけれども、そういうふうになっていないというのが現状であります。

 そこで、最初に、これはマルチの貿易協定でありますけれども、TPPとRCEPの相違点について改めてお伺いをいたします。

正木政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のとおり、RCEPは、ASEAN十カ国に加えまして、日本、中国、インド等六カ国が交渉に参加する広域の経済連携でございます。昨年十一月のASEAN関連首脳会議の機会に交渉立ち上げが宣言され、五月九日から十三日まで、第一回の交渉会合が開催されたところでございます。

 TPPの方も、先生御案内のとおりに、これから日本が参加するわけですが、現在十一カ国が参画するアジア太平洋地域の広域経済連携でございます。

 それぞれの相違点ということでございますが、幾つか申し上げますと、まず、妥結の時期につきまして、TPP協定につきましては、既に二〇一〇年三月から交渉が開始されておりまして、本年中の交渉妥結が目標とされているのに対しまして、RCEPにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、本年五月に第一回の交渉会合が開催されたところでございまして、二〇一五年末ぐらいまでの交渉妥結が目指されているという点が異なると思います。

 もう一つは内容面でございますが、TPP交渉参加国は、高いレベルの自由化にコミットして交渉に参加しているのに対しまして、RCEP交渉では、参加国が、まず、それぞれある既存の自由化レベルを基礎として、高いレベルの関税自由化の達成を目指している。また、各国の個別かつ多様な事情を認識して交渉が行われるとされている点で違いがあるかと思います。

小熊委員 私の認識では、RCEPの方はTPPよりは高い自由度、何が何でもというわけではなくて、配慮するということですけれども、基本的には、参加国の中の発展途上国、低開発国といったものに配慮するというところが第一義的で、高いレベルの自由度を目指していくというのは、そこの原則はRCEPにもあるというふうに私は認識しているんですけれども、そこは間違いないですか。

正木政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、RCEPはASEANの国々が含まれておりますので、発展段階が違う国々もありますので、そういったところへの配慮というものも当然必要になると思いますが、RCEP自身は、物品貿易に加え、サービス、投資、知的財産を含む包括的でバランスのとれた高いレベルの経済連携を目指すということで一致しておりますので、今申し上げましたような各国の発展段階の違いというものも踏まえながら交渉していくということだと思います。

小熊委員 そういう意味では、何人かの方と議論していると、RCEPは緩いから大丈夫だろうということで議論になっていないんだろうというような認識もあるので、そういうことではないと。これはしっかりと冷静な議論が必要ですし、自由貿易を促進していくという意味では、速度の違い、レベルの違いは出てくるとは思いますけれども、貿易が進展するということには変わりがありません。そうした中で、メリット、デメリットがやはり生じてくるというふうに思います。

 そこで、このRCEPで今交渉している中で、日本の国にとってデメリットになるのではないかと懸念をされている課題についてお伺いをいたします。

正木政府参考人 お答えいたします。

 メリット、デメリットという御質問でございますが、まだ第一回交渉を行ったばかりですので、今の段階で、どういう点が日本にとってプラスかマイナスかというのは時期尚早かと思いますが、当然のことながら、これから交渉していくに当たりましては、日本の国の利益を守るべく、攻めるところは攻め、守るべきは守るという姿勢でいきたいと思いますし、このRCEPの国々がカバーしている地域というものは、非常に広い、日本経済、日本企業にとっても重要な地域でございますので、ここの関税削減以外のルールづくり、こういったものに積極的に取り組むことによりまして、日本企業の活動を支援し、また、特に貿易・投資がさらに促進されるとともに、地域の中におけるサプライチェーンの拡大ということを目指して交渉していきたいと思います。

 まだ第一回交渉が終わった段階ですので、今の段階で、どういう点がプラスかマイナスかというのは時期尚早だと思いますが、いずれにせよ、御指摘も踏まえまして、今後、日本の利益をしっかり守って交渉していきたいと思います。

小熊委員 そういう意味では、このRCEPには中国が入っていますので、今、いろいろな形で食の安全といったことも議論されていますし、これは全体の話ではないですけれども、食の安全に関しては、中国のものに関しては、非常にいろいろな事案が散見をされますし、過去にもいろいろな事件、事故がありました。そういう意味では、食の安全といったものも、RCEPの中ではしっかりと議論をしてこなければなりません。

 また、TPPの方だと、例えば遺伝子組み換えに関して、反対者は盛んに議論をするんですけれども、RCEPでも食の安全を議論していかなきゃいけないんですよ、本当に。そういう意味では、とりわけTPP反対者においては、本当に冷静に議論しているというふうには私には思えないんですね。そこで危惧するのであれば、RCEPの方でも、同じような観点から危惧されることを指摘してもらってこなきゃいけない。

 貿易の協定に関してはやり廃りで議論をして、選挙でそれを武器にしていくということがあってはならないわけでありますよ。今、与党においても地方と党本部との違いでいろいろ言われていますけれども、RCEPで農協関係の人に、RCEPに賛成ですか、反対ですかと言っても、よくわからないみたいなことを言うんですね。

 本当にこの日本の国益また国際的な貿易のあり方というのを議論しているのであれば、TPPに賛成、反対だけ言って、RCEPは看過してはならないということなんです。でも、そういう状態なんですよ。

 そういう意味では、これはある意味では国益、国民の利益に直結してくる問題でありますので、しっかりとした議論の高まりをしていかなければいけないと思いますし、そういう意味で、貿易のあり方、RCEPの取り組みのあり方を国民的議論に高めていくためには、今後、どのような対策をとられていくのか、お伺いをいたします。

岸田国務大臣 御指摘の、RCEPに関しまして国民の議論を盛り上げていく、大変重要な点だと存じます。

 今日までも、政府においては、与野党の関連会合等を通じまして、政権としての姿勢、取り組み、あるいは交渉の進捗状況を説明させていただくとか、あるいは、外務省のホームページ等でこうしたRCEPにつきましても掲載させていただいているということではありますが、ぜひ今後とも、交渉ですので公開できることできないことはありますが、公開できることにつきましては、進捗状況に応じましてしっかりと国民の皆様に情報を提供していく、こういった姿勢は重要だと考えております。

 そしてその上で、しっかりとした強い交渉力を持って国益を守っていかなければいけないと思っておりますし、そして、こうしたRCEP、TPPを初めとする他の経済連携と互いに刺激し合い、ダイナミズムが働いていく、そしてそのことによって地域の成長を日本に取り込んでいく、こうした戦略的な経済連携の進め方が重要だと存じます。こうした我が国の戦略的な取り組みについても国民の皆様方に理解していただけるよう、しっかりと説明していかなければならないと考えています。

小熊委員 これは、特にASEAN、まさに経済的に発展している地域を含んでいますし、今のままでは、二国間の協定で、逆にビジネス上複雑なことになって不利益をこうむっている部分もありますから、これはしっかり取り組んで、また、国民的な理解も得つつ、国内対策もしっかりしていくという意味では、TPP、RCEPともに日本の外交力、交渉力が問われているところでありますので、しっかりと取り組んでいっていただきたいということと、やはり冷静な議論が展開されるように、今大臣がおっしゃられたとおり、交渉事ですから出せない部分もありますけれども、しっかりとした情報開示、情報発信といったものをしていっていただきたいというふうに思っております。

 では、次に移ります。

 パリの方で航空ショーも行われましたけれども、今、長年の悲願であった日本初の国産ジェット機も誕生したところでありますし、もちろん、国産じゃなくても、国外の航空機に関しても日本の技術また日本の製品といったものが数多く使われているところでありますから、航空機産業といったものは、日本の国内において多くの雇用を生み出し、また、多くの技術的な財産も蓄積をしていく重要な産業の一つでもあるというふうに私は認識をしているところであります。

 しかしながら、一方で、こうした日本の技術力、またさらに、初の国産ジェットが誕生した中で、これがこれからどう育っていくかということを考えたときに、日本の取り組みとして、各国での航空ショーですね、イベントとしてというよりは、見本市みたいなものが開催をされておりません。例を挙げれば、二〇一〇年にイギリスで行ったものは、そのとき、一般公開が二日間だけでありましたけれども、関係者のものが五日間開かれて、全部の売上高が四兆円を超える、そうした航空ショーであったんですね。ほかの国でも、韓国でもシンガポールでもやっています。過日、この間フランスでもありました。

 これは、経済的な効果も非常に上がるというところでもありますので、今後の取り組みとしては、日本にしっかりとこうした航空ショーを誘致して航空関連産業の進展に努めるべきだというふうに思いますけれども、その取り組みについてお伺いをいたします。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のように、航空ショー、特に国際航空ショーは、我が国の非常にすぐれた技術を国内外にアピールして、我が国の航空機産業のビジネスチャンスを拡大する大変有効な場だと考えております。

 実は、我が国においても、国際航空宇宙展というものが定期的に開催されておりまして、昨年名古屋で開催され、これは十三回目を数えております。三十二の国・地域から約十六万人の参加を得て、もちろんパリのエアショーには及びませんが、盛大なイベントになったものと承知しております。

 経産省といたしましては、まさに委員御指摘のとおり、こうした国際航空ショーの開催を引き継ぎ支援して、我が国の航空機産業の発展に貢献したいと考えております。

小熊委員 日本の国産ジェット機、小型の分野でありますけれども、もちろん、この小型ジェット、ほかの国も取り組んでいて、これから国際競争上も激しくなってくる。今回のパリでも大分商談がまとまったようではありますけれども、やはり航空機の開発は長いスパンをかけてやりますから、これは長期の取り組みになってきます。

 そういう意味では、産業としての裾野も大きい、長期の雇用にも発展していくという意味では非常に重要でありますので、これからまさに日本の技術力をもって、また、日本の技術力が国際的に広まっていくということは、環境に配慮した開発もしていますから、環境の面でも国際的な利益につながってくると私は思いますので、こうした航空機産業が進展していけるような、そうした売り込みの機会をしっかりと今後拡大していく、取り組んでいくということをぜひとも御期待申し上げる次第でありますし、実現に向けて早期の予算化をして、そうすれば予算審議もすっといくと思いますから、ぜひよろしくお願いをいたします。

 次に移ります。

 今、株価もそうですけれども、為替もいろいろ乱高下していて、円高から円安の振れ幅が大きい中で、これは経済的にも、円高がいい、円安がいいという議論もありながら、いろいろ議論されているところであります。一方で、国連負担金なんかはそのリスクをとるような仕組みもあるようでありますけれども、ODAに関して、円安が進んでいくと、例えば同じ一億円をODAで拠出しても、ドルに換算しちゃうとやはり目減りするというようなことが多く出てきますし、円の振れ幅が大きければ大きいほど、またODAの金額が大きければ大きいほど、その金額の差が大きく出てきてしまうわけであります。

 国際的に日本が果たすべき役割には大きな期待が寄せられておりますし、多くの効果も上げているんですが、一方、金額で、あれっ、減らしたのかというような見方も、それは為替リスクがあるということは認識しつつも、やはり単純に金額が減ったという場面が出てきてしまう部分もあるというふうに思います。

 そこで、ODA等のこうした国際支援に関しての為替リスク対策についてお伺いをいたします。

岸田国務大臣 無償資金援助、技術協力といった二国間のODAについては、予算計上が円建てで行われておりますので、予算の執行段階で初めて外貨建ての支出額が確定するために、現時点で円安の影響を具体的な金額で示すことは難しいですが、御指摘のとおり、円安がODAの執行に与える影響は、引き続き十分留意する必要があると考えております。

 ODAは、我が国の最も重要な外交手段の一つです。我が国が好ましい国際環境をつくり、日本経済の活性化に貢献し、そして日本の信頼、プレゼンスを高める上で極めて重要なツールでありますので、ODAのありようについてはぜひしっかりと対応していかなければならない、このように思っております。

 ことしの予算につきましても、今後、ドル建てで行われたものが為替によって影響が出たとしたならば、制度として財務省で補填するということになっております。また、円建ての場合は、そもそも実質的に目減りすることが考えられます。こういった事態に対してどう対応していくのか、真剣に考えなければなりませんし、こうした状況を踏まえて来年度の予算についても考えていかなければいけない、こうしたことだと思っています。

 こうした政府の取り組みについては、先日も経団連から、しっかりとした取り組みを要請する、こういった要請書が届いております。

 ぜひ、こうしたODAにおける為替リスク対策の重要性をしっかり認識しながら、具体的な対応を考えていきたいと思っております。

小熊委員 前政権下でも、ODAの戦略的な取り組みを検討しているときに、為替リスクをヘッジする仕組みの整備をしていかなければいけないということはもう既に検討しているんですね。これは、その都度、単年度で対応していくということではなくて、やはり前政権下でも指摘をして取り組むということをしているわけでありますから、まさに仕組みとしてこの為替リスクをしっかり軽減できる、のみ込んでいく、恒久的というか、長期の計画に合致するような仕組みの整備をしていかなければいけないんですね。

 ですから、今、答弁はいただきましたけれども、これはやはり、早急に仕組みの検討をすべきだというふうに思います、単年度でその都度補填をしていくとかというリスクの回避の仕方ではなくて。

 そういう点について、もう一度、その体制整備ですね、仕組みとしての整備、これが必要だというふうに思いますけれども、大臣、お願いします。

岸田国務大臣 為替の動きにつきましては、予算等を組む際になかなか十分に予測できない部分は存在いたしますが、現状においても、先ほど御説明申し上げたように、財務省における補填等、制度は存在いたします。こういった制度は十二分に活用しなければならないと思いますし、昨今の大きな為替の動き等を考えますと、さらに必要なものがないか、こうした問題意識は持っていかなければならないと存じます。

 引き続き、状況を見ながら、必要な対応をしていきたいと考えます。

小熊委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 あとは、ODAの予算をどんとふやせば多少の差なんというのはのみ込めると思うので、そこもぜひ努力をしていただきたいというふうに思います。

 また、過日、私、オーストラリアとの若手議員交流プログラムで、超党派でオーストラリアの方に訪問してまいりました。大臣も一月に行かれたわけでありますけれども、行った中で、やはり日本以上にオーストラリアが、日本に対する期待、また連携をしたいという思いが感じられましたし、また、今ほどお話ししたTPP、RCEP、貿易の関係、また、太平洋地域を取り巻く安全保障の課題についても、やはり日本とオーストラリアとの連携というのは今後ますます結んでいかなければならないというふうに私も認識をさせていただいたところであります。

 オーストラリアは、ことし総選挙が行われて、恐らく政権交代をするだろうというふうに言われているような状況下でありますけれども、そのオーストラリアを訪問した際に、大臣に来ていただいたのは非常によかったことだという評価もオーストラリア側から受けたところであります。

 オーストラリアは、東日本大震災のときに、一番最初に政府のトップが来ていただいた国でもあります。また、アジア地域での連携、オーストラリアは非常に重要な位置を安全保障上も占めていますから、これはやはり、今、総理も外務大臣も、訪問してさまざまな外交を行っていることは認識をしているところでありますが、総理がまだオーストラリアに行っていないんですね。これは、選挙が終わって、新しいオーストラリア側の政権ができたときには、非常に重要なパートナー国として、総理はぜひ訪れて日豪関係のさらなる連携に努めるべきだというふうに私は思いますし、また、オーストラリア側もそれを多くの方が望んでいる声も、私も訪問したときに聞いてまいりました。

 この総理の早期のオーストラリア訪問について、対応をお伺いいたします。

岸田国務大臣 オーストラリア、豪州につきましては、私も一月に訪問させていただきましたし、私もかつて、日豪若手議員交流プログラムに参加させていただいて、この一員として訪問させていただいた経験もあります。

 日本と豪州、ともに米国の同盟国であります。基本的な価値、そして利益を共有する戦略的パートナーであると認識をしております。

 豪州は、太平洋島嶼地域を含むアジア太平洋地域の平和と安定に大きな役割を果たしておられます。地域の戦略環境が大きく変化する中にあって、我が国としても、豪州と協力関係を一層強化していくことは大変重要であります。

 そして、御質問の総理大臣の豪州訪問ですが、二〇〇二年の小泉総理、そしてシドニーAPEC出席の際の二〇〇七年の安倍総理以来、実現していないという状況にあります。

 先ほど申し上げました豪州の重要性に鑑みて、さまざまな外交日程も踏まえつつ、そして先ほど御指摘があった九月の豪州での総選挙の日程等も考慮しつつ、総理の豪州訪問の可能性、ぜひ検討していきたいと考えます。

小熊委員 ぜひよろしくお願いします。

 あと、これは通告はしていませんけれども、在外公館のスクラップ・ビルドの件に関して、豪州は、ヨーロッパの枠組みの中で人員整理がされてしまっているんですね。それでは非常によろしくないので、ASEANという地域の位置づけ、またオーストラリアの位置づけから考えれば、そうした先進国の枠組みとしてオーストラリアの日本の在外公館の体制を考えるのではなくて、やはり太平洋地域の中にあるオーストラリアの在外公館のあり方として、外務省の在外公館のあり方、人員のあり方は体制整備をしていかなければいけないということを御指摘申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河井委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 食料・農業植物遺伝資源条約とともに、北太平洋漁業資源保存条約についても、我が党は賛成の立場であります。

 そこで、国際的な海洋環境の保護、保全とのかかわりで、放射能汚染水の海洋放出問題について岸田大臣に質問したいと思います。

 東京電力が二〇一一年四月に実施した福島第一原発の放射能汚染水の海洋放出というのは、海洋環境への影響から、国内のみならず、近隣諸国からも強い懸念が表明されました。

 この東電の対応について、当時の松本剛明外務大臣は、二〇一一年四月十五日の当委員会でこう答弁されております。

 国連海洋法条約上もロンドン議定書上も、投棄という言葉の定義だけを取り上げれば、廃棄物等を船舶等から海洋に処分する行為等ということで位置づけており、言葉でいきますと、これらの条約等に言う投棄には当たらないということになります。

  しかし、低レベルとはいえ、放射性物質を含んだ水を放出せざるを得なかったということは大変残念なことでありますし、また、あらゆる発生源からの海洋汚染を防止するという一般的な義務を定めている国連海洋法条約の趣旨に必ずしもかなったものでない

 これが松本大臣の当時の答弁でありますが、岸田大臣のこの点でのお考えはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、事故当初の放射性物質を含む水の海洋への放出につきましては、我が国はまず、国際社会に対してしっかりと情報提供を行わなければいけない。最大限の透明性をもって迅速かつ正確な情報提供を行うこと、このことにつきまして、外務省としても意を用いて対応を行ってきたところです。

 国連海洋法条約上、いずれの国も、海洋汚染を防止する一般的な義務を負っております。この義務のもとに国連海洋法条約に規定が設けられているわけですが、先ほどの御質問の中にもありましたように、事故当初の福島第一原発からの放射性物質を含む汚染水の放出は、こうした国際法上の義務との関係では問題とはならないという認識でありますが、引き続きまして、政府としましては、情報提供あるいは透明性の確保等、こうした経験を生かしてしっかりと対応していくことはまことに重要な点だと考えております。

笠井委員 ことし三月九日に、我が党の志位委員長とともに私自身も福島第一原発を視察いたしましたが、放射能汚染水が毎日四百トンもふえ続けて、このままいったらあふれ出してしまうという瀬戸際の危機的状況にある。こうした中で、東京電力は、国内のみならず近隣諸国からも強い懸念が表明された汚染水の海洋放出について、事故当初という話が先ほどありましたけれども、再び実施する動きを見せている。

 例えば、ことし一月二十四日の原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会ですけれども、ここでも、東京電力の原子力・立地本部の担当者はこう発言しております。最終的には処理水の海洋放出を、「関係者の皆様の合意を得ながら、そういった活動ができれば、ここについても一定の余裕ができるのかなというふうに考えてございます。」このように述べながら、当時の検討会では、「海洋への更なる放射性物質放出」、そういう見出しもある中で、資料まで用いて説明をしているわけです。

 岸田大臣は、こうした東電側の最近の海洋放出の動きを御存じでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の動きも含めて、我が国として、しっかりとした情報提供、透明性の確保に引き続き努力をしていかなければいけないと考えています。

笠井委員 情報提供と透明性の確保だけでいいのかという問題になります。

 東京電力は、五月七日の記者会見でも、関係者の理解が得られたら海に放出したいと述べるなど、繰り返し言及をしているわけなんですね。

 六月十三日には、いわき市で、放射性汚染水対策として、敷地内でくみ上げ海に放出する地下水バイパス計画なるものを県漁連にも説明をしております。

 福島第一原発の汚染水に含まれる放射能総量を計算しますと、水素爆発などで大気中に放出されて大変な被害をもたらしている放射性物質の十倍にもなる。幾ら除去施設を通してもトリチウムなんかは除去できないし、既に地下水にも放射性物質が含まれていると報告をされているわけです。

 だから、海洋放出の動きに漁業関係者からも強い憤りが表明をされているところであります。とんでもない話、念入りにやったところで放出は認められない、そして、出荷規制がかかった魚が今まだ数十種類もある中で、余りに現場の事情を知らない、少し風評被害が落ちついてきたのに、また食べられないというふうにされてしまうと。

 福島第一原発では、つい先日も、二号機の海側にある観測用の井戸で採取した地下水から、国の海への排出基準を上回る高い濃度のストロンチウムとトリチウムが検出をされたわけですね。

 安倍総理は、四月二十三日の参議院予算委員会で、ふえ続ける汚染水については根本的な解決を図らなければならないというふうに答弁されています。

 そこで、岸田大臣、国連海洋法条約の締約国であって、海洋環境を保護、保全する義務を負っているのが日本政府、その外務大臣として、透明性とか情報提供にとどまらず、汚染水の海洋放出については絶対に行うべきでないという立場に立つべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 委員御指摘のさまざまな指摘や不安については、謙虚に受けとめなければならないと存じます。

 そして、そうした不安を払拭するべく、しっかり努力を行い、そして、国内外の理解を得るべく努力をしていかなければいけない、これは当然のことだと思っています。

笠井委員 努力というのは出さないということで、そこのしっかりした立場に立たなきゃだめだと思うんです。総理、関係大臣と協議して万全の対策をとることを求めたいと思います。

 そこで、残された時間ですが、今週の衆議院本会議でイラクとの投資協定が可決をされましたが、この際、岸田大臣のイラク戦争に関する考え方を確認して伺っておきたいと思います。

 昨年十二月に、前民主党政権のもとで、外務省は、「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」というのを報告しております。その中で、この検証作業というのは、日本政府が米英等の武力行使を支持したことの是非について検証の対象とするものではないということを前提としておりますけれども、岸田大臣もこの対応を引き継ぐという立場でしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、二〇〇三年のイラク戦争につきましては、昨年十二月に、外務省として検証を行い、その主なポイントを発表させていただきました。

 事後的に言えば、イラクの大量破壊兵器が確認できなかったとの事実については厳粛に受けとめる必要があると考えておりますし、その発表で指摘されております情報収集・分析能力の強化、こうした外交力強化に向けた課題についてはしっかり取り組んでいきたいと存じます。

 そして、イラク戦争後の復興支援について、我が国の取り組みについては、イラク政府、国民から高い評価を得ていると認識をしております。

 こうした状況の中で、さらなる検証等は考えていないというのが現状であります。

笠井委員 伺いたいのは、日本政府が米英等の武力行使を支持したことの是非についてはなぜ検証の対象としないんですか。

岸田国務大臣 我が国が武力行使を支持するに至った当時の問題の核心は、クウェートを侵攻して国際社会の信用を失っている中で、査察への協力を通じて大量破壊兵器の破棄をみずから証明すべき立場にあったイラクが、即時無条件の査察受け入れを求める安保理決議に違反をし続け、そして、大量破壊兵器が存在しなかったことをみずから積極的に証明しなかった、ここが核心であると考えています。

 外務省としては、そういった点も踏まえた上でこの検証を行ったわけでありますし、政府としてさらなる検証を行うことは考えていないという現状にあります。

笠井委員 核心というように問題をちょっとそらして言われたんだけれども、十年前のイラク戦争開戦当時の小泉首相が、大量破壊兵器の存在と国際テロ組織アルカイダとの関係というアメリカの言い分がありましたが、それをそのまま受けてというか、うのみにしてというか、開戦を支持して自衛隊を派遣して、米軍によるイラク占領を支援したということは明確だと思うんですね、経過から見ると。

 岸田大臣も先ほど、結果的にイラクの大量破壊兵器が確認できなかったという事実については事後的に厳粛に受けとめなければならないというふうに言われました。つまり、そういう確認なしにイラク戦争を支持して自衛隊を派遣したということは認めるんですね。

岸田国務大臣 先ほども申し上げたように、事後的に言えば、イラクの大量破壊兵器が確認できなかったとの事実については、厳粛に受けとめる必要があると考えております。

笠井委員 要するに、確認なしに支持をして派遣したということであります。

 先ほど、核心はと言って、みずから証明すべき立場にあったイラクがという話を言われて、積極的に証明しなかったんだと言われたけれども、そらしちゃいけないと思うんですよ。日本として主体的に確認せずに支持して派遣したわけですね、結果的に、事後的にという話でありましたけれども。その根拠、大義が事後的には事実でなかったことがはっきりしたわけで、そのことがいいことだったと思うのか、あるいは、よくなかった、問題だったとは思わないんですか。その点はいかがですか。

岸田国務大臣 先ほども申し上げたように、事実については厳粛に受けとめた上で、発表等で指摘されているさまざまな外交強化に向けた課題についてしっかりと取り組んでいく、この点が我が国にとって大変重要だと考えますし、その方針で取り組んでいきたいと考えております。

笠井委員 事実を受けとめたら、その事実がなかったのに支持したわけですから、派遣したんだから、そのためにも検証が必要だと思うんですよ。

 イラク戦争の大義とされた大量破壊兵器保有情報の誤りについて、当時のブッシュ米大統領自身も、大統領在職中の最大の痛恨事というふうに述べました。ところが、外務省の報告書でも、大量破壊兵器が存在しないことを証明する情報を外務省が得ていたとは確認できなかったということで、戦争の根本的な問題を曖昧にしたままであります。

 二〇〇七年五月のイラク特措法延長の際の附帯決議というのがありますが、ここでも、「イラク戦争を支持した当時の政府判断について検証を行う」としているわけであります。これが、政権交代があってもいずれも行ってこなかったわけでありますから、日米両政府の武力行使を支持したことの是非を含めて、そうした附帯決議も受けてイラク戦争の徹底総括、検証をやるというのは、これは国会から言われているわけですから、政府として、外務省として当然やるべきことじゃないんですか。

岸田国務大臣 そういった指摘もあるので、昨年十二月、検証を行い、そして検証のポイントを発表したと認識をしております。ぜひ、ここで指摘された外交課題について、我が国として今後適切に取り組んでいきたいと思っております。

笠井委員 その指摘というのは当時の政府判断についての検証なわけで、そこのところをそらして、やらずにということではだめだと思うんですよ。

 イラク戦争は、武力行使の根拠となる国連安保理決議もなくて、国連憲章の平和のルールを踏みにじった上に、大義とされた大量破壊兵器も存在しなかった。だから、ブッシュもブレア元イギリス首相も、間違った戦争ということを事実上認めざるを得なくなって、国際社会は、大義なき侵略戦争だと言っているわけであります。唯一反省がないのが日本政府であります。

 そういう点では、最近のシリア問題など、今後の日本外交の対応が問われる今こそ、この問題でもきちっと検証と反省が必要だ、このことを重ねて指摘して、質問を終わります。

河井委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 きょうは、JICAの田中理事長、お越しいただきましてありがとうございます。ちょっと参議院の都合で時間変更になりまして、大変失礼いたしました。

 まず、教育分野の日本のNGOが、教育分野のODAについての四つの提言をまとめて、日本政府、財務省、そしてもちろんJICAにも行っていると思いますが、この教育分野のODAについてのNGOの四つの提言、これについて聞きたいと思います。

 恐らくJICAの中でも、理事長のところまでなかなか全部の情報が上がるとも思えませんし、恐らく外務省も、NGOの提言が大臣のところまで行っているかどうか、正直ちょっと疑問に思っております。よくて国際協力局長、悪くすると首席事務官ぐらいまでしか上がっていないんじゃないかと思わなくもありませんが、この四つの提言、JICAの田中理事長は、きょうの委員会にお呼びするまで、以前に目にされたことはありましたでしょうか。

田中参考人 教育分野については、私、重要だと思っておりますので、この四つの提言をいただいたということは認識しておりました。

 ただ、「未来への投資 教育協力を改善するための十のポイント」という提言のベースになったもの、これは、今回、外務委員会にお招きいただけるということで、改めて読み直したところでございます。JNNEの提言については、いずれも重要な事項であるというふうに認識しております。

 途上国の基礎教育、これは重要な課題であって、最近改善してきた面もあって、学校に通っていない子供の数は一九九九年に一億七百六十万人だったわけですが、二〇一〇年には六千百万人まで大きく減ってまいりました、これもMDGsに向けたものだと思いますけれども。

 ただ、まだ課題は非常にございます。質を上げなければいけないし、中退率、留年率の改善とか、成績を上げなきゃいけないということで、今後も引き続いて基礎教育に関する国際社会からの支援は重要で、JICAとしても途上国のニーズに応じた適切な支援を行っていきたいと思っております。

山内委員 一気に次の質問までお答えいただいたようですけれども。

 これについて、JICAの基本的なスタンスをお答えになったわけですけれども、特にNGOの提言を見ると、例えば低所得国にもっとシフトすべきだと。外務大臣にもぜひ同じことを申し上げたいんですけれども、どうしても日本は友好国のASEAN諸国など中所得国向けの援助が伝統的に多くて、もっと最貧国、低所得国に援助をシフトしてもらいたい、これもNGOの要望の一つです。

 それからもう一つ、JICAに特に関係してくるのは、技術協力だけではなくて、もっと財政支援、教育セクターの財政支援に力を入れてほしい。これはJICAのスキーム上難しいところもありますけれども、多くの国際的なNGOがみんな言っていることです。

 何かというと、やはり、JICAのプロジェクトというのは、どうしてもプロジェクトベース、ミクロの点になりがちでありまして、その点をもっと面にしていくためには、セクター全体にお金を突っ込んでいく、あるいは、同じ専門家を送るにしても、個別具体的な教科の専門家を送るとかよりも、むしろ教育セクター全体を見渡せるような、そういう専門性の高い専門家を送って、そしてお金を流して、お金を末端まできちんと流れるようにモニタリングをする。理事長の隣の佐久間さんは、昔、インドネシア教育省でそういうお仕事をされていたと理解しておりますが、そういう、どちらかというと、顔が見えなくなってしまうかもしれませんが、財政支援を重視すべきであるというのがこのポイントだと思います。

 日本は、どちらかというと、ODA広報というと、顔の見える援助、日本人の顔の見えるのがいい援助だ、そういう発想が強かったんですけれども、NGOが言っていることは、そういう顔が見えるかどうかよりも、効率、効果をもっと大事にしましょうと。外国人の人件費がどうしても高くなってしまう、日本人の専門家を置くと、一人当たり、オーバーヘッドまで入れると、年間千五百万、二千万かかってしまう、それよりは、もっと現地の人材を生かしましょうということだと思うんですね。

 そういった提言について、JICAとして、何かNGOの皆さんに対してメッセージがあればお願いしたいと思います。

田中参考人 山内先生、JICAの仕事をよく御存じでいらっしゃいますので、私の方から細かいことを申し上げる必要はございませんけれども、このNGOの御提言の、基礎教育分野においても財政支援を活用していくということについては、JICAとしても十分認識しておるつもりでございます。近年では、バングラデシュとかザンビアなどで、教育セクターにおいて、理数科教育に係る技術協力と組み合わせた無償資金協力による財政支援を実施しております。

 私は、やはり個人的には、顔の見える援助というのは非常に大事で、これが開発途上国の人と日本人との間にきずなをつくるという面でも重要だというふうに認識しておりますけれども、必要な資金は、とりわけ低所得国においては重要だと思っておりますので、このような財政支援と技術協力を組み合わせてやっていくということが重要だと思っております。

 今後、円借款も使って、基礎教育分野でも教育セクター支援のためのローンというようなものを今考えておるところでございます。ことしの四月に、円借款制度改善ということで、人材育成支援分野を含めて優先条件の適用金利を下げました。現行が〇・五五から一・二〇%だったのを、〇・〇一から〇・六%というふうに下げました。

 このような円借款を使って、教育セクターへの支援のローンというものも技術協力と組み合わせてやっていければいいんじゃないかと思って、今準備を進めておるところでございます。

山内委員 教育セクターの円借款というのは非常にいいポイントだと思います。どっちかというと、日本は箱物の学校建設とかばかりやってきましたけれども、本当に必要なのは、学校よりも、場合によっては教員の給与であったりするわけです。

 途上国へ行くと、どこに行ってもお寺かモスクかキリスト教会はありますから、いざとなれば、先生さえいれば教育活動は成り立つんですけれども、どうしてもODAは箱物にこだわりがちでしたが、そういう円借款のセクターローンというのは非常にいいと思います。

 しかも、それもプロジェクトベースで箱になるということではなくて、学校の先生の給料、教科書の購入費、そういう経常経費の支援に充てられるような円借款というのは、もし普及していけば、非常に途上国にとってもありがたい制度だと思います。

 そのときに、ちゃんとモニタリングしていないと何に使われるかわからないからこそ、非常に専門性の高い、教育セクター全体を見られるようなシニアな専門家というのを送っていく。そこで日本人の顔を見せればいいのであって、必ずしも学校の教室レベルで日本人が算数を教える必要があるかというと、私は甚だ疑問に思っております。

 むしろ、先生を送るんじゃなくて、先生の先生になり得るような人を送るのであれば、日本人の顔を見せるという効果はあるかもしれません。しかし、末端の教室レベルに一人当たり人件費何百万もかかる人を送るというのは、恐らく効率性の意味で非常に悪いと思います。

 途上国へ行くと、学校の先生の給料も月百ドル、二百ドルの世界ですから、そういうところに日本の若者が行って教えることに、多分、美学としては価値があるかもしれませんけれども、効率性という意味では非常に問題があると言わざるを得ません。

 そういう援助をやめましょうというのが、実はこのNGOの一つの裏に隠された意図かなというふうに思っております。

 したがって、顔が見える援助が必ずしもいつもベストとは思いませんので、そういう円借款のようなやり方、あるいは、プロジェクトじゃなくて、プログラム型のローンというのをもっとやっていくということは、方向性としては非常に正しいと思っていますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

 それから、今度はちょっと外務大臣にお尋ねをしたいと思います。

 大臣には何度かお聞きしているかもしれませんが、教育援助が少ないということで、基礎教育の援助、日本は援助のうち〇・五%しか基礎教育にお金をかけておりません。これはOECDのDACの平均が二・一%ですから、日本は教育を重視しているといいながら、実は基礎教育には余り力を入れておりません。

 NGOの提言は、基礎教育に一〇%ということを言っております。提言で一〇%、DACの平均が二%、日本が〇・五%。これはちょっと少ないなと思いますので、ぜひ基礎教育の割合をふやしていくということをお願いしたいと思います。

 これについて、大臣、一言いただければと思います。

岸田国務大臣 我が国は、二〇一〇年の国連総会において、包括的な教育協力政策を発表するとともに、教育分野全体で二〇一一年から五年間で三十五億ドルの支援を行うことを表明し、そしてこれを着実に実施してきております。

 そして、今基礎教育について御質問いただきましたが、教育のためのグローバルパートナーシップ、GPEは、低所得国の初等教育普及を支援する国際的な枠組みであり、教育協力政策においてもGPEに対する支援を重視していきたいと考えます。

 二〇一一年のGPE増資会合以降、これまで我が国は一千四十七万ドルの拠出を行っております。引き続き、GPEに対する支援を重視し、取り組んでいきたいと考えています。

山内委員 GPEへの拠出を重視していただけるということで、非常にありがたいと思います。これも、GPE、グローバルパートナーシップ基金、これはNGO業界全体の要望として上がっていることですので、ぜひともこの金額をふやしていただきたいと思います。

 それから、JICAの理事長にお伝えしたいんですけれども、実は、セクターローンとか財政支援というのは必ずしも顔が見えない援助とは限りません。イギリスのDFIDは、結構末端の自治体までお金がおりるセクター援助をやっているので、そのモニタリングにイギリス人のチームは結構田舎の末端の学校までしょっちゅう顔を出しているので、意外と顔が見える援助になるんですね。

 別に技術協力で箱物を建てなくても、経常経費の支援をしても、その後ちゃんとモニタリングをする人に日本人を送っておけば、変なことに使われないし、末端までおりていって、意外と顔の見える援助にもなるので、財政支援というのは顔が見えないかというとそうでもないということを、実はJICAの専門家の人に教えていただいたことがありました。

 ぜひ、イギリスの例のように、テクニカルなものから、もうちょっとお金の援助へというふうに変えていっていただきたいなというふうに思います。

 それから、ちょっとこれはJICAの仕事ではありませんが、田中理事長の御感想をお聞きしたいんですけれども、JICAも発行に一部お金を出して、エデュケーション・フォー・オールのモニタリングレポートというものを出しております。これは発行者にJICAも入っています。

 その中に、日本政府に対する批判があります。これは前に外務大臣には質問させていただいたことなんですけれども、日本とドイツとフランス、この三つの国が批判されているポイントがあります。それは、教育援助の余りにも多くの割合を国費留学生に充てているからということです。

 それで、途上国のNGOの人たち、あるいはこういう国際機関から言わせると、国費留学は援助じゃないとまでNGOの人は言っております。なぜかと言うと、大体、途上国で日本に留学できるというのは富裕層のお子さんが多いです。ぶっちゃけた話をすると、有力者の息子だったりということが非常に多いわけですね。そうすると、本当の意味で基礎教育援助にはならないパターンが多いということを言われております。

 だから留学生を減らせとは言いませんし、文科省の留学生はJICAの予算ではないので、特にどうこうしろということではないんですが、例えば、このモニタリングレポートの指摘では、ネパール人一人を日本の大学に留学させるお金があったら、二百二十九人にネパールで中等教育を受けさせることができる。一人大学に送るのと二百二十九人中等教育に送るのと同じ金額だ、だから、もう少し留学生の費用を削ってでも、もっと中等教育とか初等教育、基礎教育にお金をかけるべきだというのが趣旨だと思うんです。

 こういう指摘について、元大学教授の田中理事長、どうお考えでしょうか。

田中参考人 先ほど来申し上げましたように、基礎教育、中等教育は大変重要だと私は思っております。

 ただ、他方、今御紹介いただきましたように、私も大学の教員でありましたので、やはり初等中等教育も重要ですが、高等教育やあるいは研究協力を向上させるという意味の国際協力も必要だと思っております。

 それから、私も国費留学生の指導教員を何人もやってきておりますけれども、大変恐縮ですけれども、先生御指摘のようなクオリティーが低いというのはほとんど見ない。やはり、国際協力あるいは教育、研究開発の観点からいっても、国費留学生に選ばれてきた留学生が、その国に帰って、その国に貢献するということもあるというのは、私は個人的にそういうものだというふうに思っております。

 それから、留学支援については、国際協力という観点に加えて、日本の外交的な観点というのもあるんじゃないかというふうに認識しておりますので、やはり望ましいのは、国際協力に関する予算全体をふやしていただいて、留学生を減らしてどちらかを伸ばすというよりは、全体をふやして基礎教育、中等教育もふやしていけるという形になっていくのが望ましいかなと私は思っております。

 そのために、先ほど来申し上げましたような、円借款制度をかなり柔軟に使っていくというようなことが私は大事じゃないかと思っておるところでございます。

山内委員 私も留学生自体はもっとふやしていいと思うんです。円借款、留学生借款みたいなのもマレーシアとかインドネシアでやっていたと思いますので、こういったものをもっとアフリカとか中近東にふやしていくということも必要だと思います。

 実は、毎年四十億ぐらい中国からの留学生に国費留学を使っているんですけれども、中国みたいな日本より豊かな国の留学生に税金をかけるのはいかがなものかと毎年予算委員会で指摘しているんですけれども、なかなか減らない。

 そういった意味では、同じ受け入れるにしても、もっと最貧国とか、もっと経済状況の悪い国を重点的に受け入れるということを、ぜひ文科省にも、外務省は予算は関係ありませんが、大使館枠がありますので、ぜひ配慮していただきたいと思います。

 JICAの中でできることは、そういう円借款を使った留学生、円借款はロットが小さいと余りやりたがらないと思いますけれども、きめ細やかな円借款ができればいいんじゃないかな。五十億、百億の円借款の方が担当者は楽なんですけれども、五億円の円借款をたくさんやった方が本当は効果的になると思いますので、きめの細やかな円借款案件をふやしていくといったことも必要ではないかなというふうに思います。

 それから、もう一つ、援助のアンタイド化ということをNGOからは求めております。もちろん、無償資金とか技術協力は今でもタイド一〇〇%だと思いますけれども、円借款に関しては日本は昔からアンタイド化をずっと進めてきました。

 教育分野ではもっとアンタイド化すべきだということが国際社会の議論としてあるわけですけれども、これについて理事長はどのようにお考えでしょうか。

田中参考人 このNGOからの御提案では、アンタイド化を促進せよということでございます。

 円借款部門においては、基本的には、一般アンタイドということでやっております。

 ですから、原則としましてこのような方向であるというのは日本の方針だと思いますけれども、議員御指摘のように、日本の技術協力というようなものは、教育分野に限ってみれば、比較優位を生かしたような形で行っておるわけで、こういう面は、できる限り日本の知見、経験を生かすという形でやっていければいいんじゃないかというふうに思っておるところでございます。

山内委員 そろそろ時間なので、最後に、田中理事長に質問というか、半分は意見ですけれども、申し上げたいと思うんです。

 JICAは、これまでずっと援助実施機関ということでやってきたと思うんですけれども、どちらかというと、これからは、援助を直接JICAが実施するよりも、援助を実施するNGOとか、企業とか、地方自治体の都市間の交流とか、そういうほかの、JICAではない第三者が援助をやるのを応援する、援助促進機関のような役割に変わっていった方が、より予算も効率的に使えるし、より相手国の市民社会を巻き込んでやっていく、そういう援助ができるんじゃないかと思います。

 JICAが実施機関だから何でもかんでも自前でやろうとすると、日本人の顔が見える援助になりますけれども、援助効率は悪くなる、費用対効果は悪くなるということでありますから、今後は、援助実施促進機関へと、もっと脱皮していくというか、自己の役割をもう少し変えていく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、それについて、最後に一言あればお願いします。

田中参考人 議員御指摘のとおり、JICAは援助の執行機関でございますけれども、JICA法上も、市民参加協力事業は本来業務の一つでございますので、現在、さまざまなNGO、市民団体の方、それから地方自治体、大学、民間企業、こういうさまざまな関係の、志を同じくするような団体と一緒に協力するというのは、私ども、今後さらに推進してまいりたいと思っております。

 具体的には、NGO・JICA協議会というものを今定期的に開催して、私もできる限りこのNGO・JICA協議会に参加して、直接意見を伺いながら、さらに草の根技術協力事業というようなものを、これまでのところ、かなりふやしてきておりますけれども、今後もさらにこのような形の、多くの関係団体と一緒になってやっていくということを、私、促進してまいりたいと思っております。

山内委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

河井委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河井委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河井委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


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