衆議院

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第4号 平成25年11月8日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十五年十一月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 松本 剛明君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    石原 宏高君

      河井 克行君    木原 誠二君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      河野 太郎君    島田 佳和君

      田畑  毅君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    星野 剛士君

      武藤 貴也君    小川 淳也君

      玄葉光一郎君    長島 昭久君

      阪口 直人君    村上 政俊君

      岡本 三成君    杉本かずみ君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        三ッ矢憲生君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   農林水産大臣政務官    小里 泰弘君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  北崎 秀一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 広瀬 行成君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 金杉 憲治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡   浩君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 福島  章君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山崎 和之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 丸山 則夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 河野  章君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 南   博君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   山田  彰君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    片上 慶一君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    上村  司君

   政府参考人

   (国土交通省航空局交通管制部長)         重田 雅史君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 真部  朗君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     田畑  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑  毅君     黄川田仁志君

    ―――――――――――――

十一月七日

 社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

同月八日

 万国郵便連合一般規則(二千十二年のドーハ大会議において改正され、及び採択されたもの)及び万国郵便条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)

 郵便送金業務に関する約定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)(参議院送付)

 政府調達に関する協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官新美潤君、大臣官房審議官広瀬行成君、大臣官房審議官金杉憲治君、大臣官房審議官岡浩君、大臣官房審議官福島章君、大臣官房参事官水嶋光一君、大臣官房参事官山崎和之君、大臣官房参事官丸山則夫君、大臣官房参事官河野章君、大臣官房参事官南博君、中南米局長山田彰君、経済局長片上慶一君、領事局長上村司君、内閣官房内閣審議官北崎秀一君、内閣審議官澁谷和久君、国土交通省航空局交通管制部長重田雅史君、防衛省防衛政策局次長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玄葉光一郎君。

玄葉委員 おはようございます。玄葉光一郎です。

 岸田外務大臣におかれましては、国益、そして日本国の歴史、文化を背負って日々職務を遂行されているというふうに想像いたします。

 日本外交の基本姿勢についてお伺いをしたいと思うんですけれども、恐らく、日々職務を遂行する中で実感として感じておられるのが、パワーバランスの変化ということではないかと思うんです。

 岸田外務大臣もたしか二十年前の初当選ではないかと思います。私も二十年前に初当選して、やはり二十年前と明らかに違うのは、パワーシフトが起きているということです。それを日々、国際場裏で実感するという状況ではないかというふうに想像します。

 この間、小川さんがこの場で、世界各国の、特にアメリカと日本の世界全体のGDPに占める割合の話をしておられました。確かに、経済力だけ見ても、世界全体で七十二兆ドルある中で、かつては、米国一国で四割、日米で四割という時代もありました。今は日米で三割です。

 これからどうなるかといえば、やはりこの新興国の台頭というのは、このパワーバランスの変化、日米欧の相対的な力の低下というのは不可逆的だというふうに一定程度は言わざるを得ないというところがあるのではないかというふうに思うんです。

 この間、イアン・ブレマーさんという一九六九年生まれの若い方が、Gゼロということを言っていました。主導国のない世界、新興国の台頭、それぞれ新興国の価値観が違う、日本も欧州も自分のことで手いっぱい、彼が言うにはですよ。アメリカがコストとリスクをとれなくなってきた、アメリカと中国はフレネミーである、フレネミーというのはフレンドエネミーだということを言って、ある面、なるほどなという側面も若干ある。

 だけれども、こういう見方も含めて、このパワーシフトの真っただ中にあって、日本外交はそういったパワーシフトにどういう対応をしていくお考えか、基本的な姿勢をお尋ねしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、玄葉前大臣も私も、平成五年に初当選をいたしました。確かに、二十年前、初当選した当時のことを考えますときに、日本の置かれている環境、また国際社会のパワーバランスも本当に大きく変化したなと実感として感じております。

 その中にあって、まず、日本外交は、引き続き今日も基軸は日米同盟であるということは間違いないと思っております。ただ、あわせて、刻々と変化する国際情勢に応じて、日本の置かれている立場、状況、これについては冷静に判断をしなければいけないと思いますし、外交のアプローチもこうした状況の変化に合わせて変化させていく、こうした対応も必要であるということは感じております。

 外交を考える際に、地球全体を俯瞰しながらという言葉が最近よく使われますが、こうした地球全体を俯瞰しながら戦略的に外交を進めていかなければならないというふうに考えておりますし、自由民主主義、法の支配、さらには人権等の基本的価値を共有する国々との連携協力、こうしたものも大事にしていかなければならないと思います。そして、日本はもちろんでありますが、世界全体の利益の増進を図る、こうした考え方も重要だと考えております。

 いずれにしましても、日本一国でみずからの安全を守ることはできなくなっている。また、米国自身も、一国のみで国際社会の平和や安定を確保できる、こういったことは考えていないと思います。やはり、国際社会において、各国が連携をしながら地域や国際社会全体の安定を考えていかなければいけない時代が来ていると考えております。

 そういったことから、我が国におきましても、今の政権において、積極的平和主義、こういった考え方を改めて国際社会に訴えて理解を求めている、こうした努力を続けております。

玄葉委員 こういった大きなパワーシフトの中で、今、どう対応するかということについて丁寧なお答えがあったんですけれども、もちろん、日本自身の経済力を再生させる、これも大事だと思うし、例えば中国、韓国は、少子高齢化社会、かなり速いスピードで日本の後を追いかけていますから、真っ先にそれを日本自身が解決してみせるとか、そういったことも大事だと思いますが、事外交に関して申し上げれば、私も、日本自身の防衛力を強化したり、日米基軸のもとで日本の役割をさらに強化したり、それらがまず基本だと思うんですが、それらだけで果たしてこのパワーシフトに対応できるのかという危機感が実はあります。

 新興国のピークアウトというのは、国によって違いますけれども、恐らく二〇三〇年とか二〇三五年ぐらいまで続くんじゃないかと思うんですね。何でそれを補うのかということじゃないかと思います。勢力均衡、バランス・オブ・パワーという概念がありますけれども、これはやはり、冷厳な安全保障の状況を直視すれば、これはこれで私は大事だと思うんです。ただ、どうもそれだけではこれからの外交をやっていけるかなという思いが私にはずっとこの間あるんですね。その中で、では、日本は何をして、ある意味、穴を埋めるというか、そのパワーシフトに対応するのかということじゃないかと思っています。

 演説みたいになっちゃうんですけれども、きのうも私、丁寧に質問通告しましたので、おっしゃっていただいたのかと思うんですけれども、私も、法の支配とか民主主義だとか、平和をつくり育てるだとか、自由貿易だとか、欧米と日本である意味一緒に育んできたというか、やや日本はおくれて入っていったようなところも若干あるかもしれませんけれども、あるいは人間の尊厳なんかもそうかもしれないですね。

 人間の安全保障という概念を大事にしてくださいと、かつて外務委員会で私申し上げた記憶がありますけれども、そういう価値観というか、そういうものを、アジア太平洋あるいはアジアと欧州をコネクトさせる、連結させる、そういう役割を日本が持たなきゃいけないんじゃないか。ずっと私はそういうことを意識していました。十分な結果だったとは言いません。ただ、ずっと意識をしてきました。

 言葉をかえて言えば、ルールをつくる力というか、秩序をつくる力というふうに申し上げてもいいかもしれません。その力はソフトパワーです。そういうソフトパワーをやはり磨いていく。このアジア太平洋の秩序をつくるに当たって、まさに先ほどおっしゃったような民主主義、法の支配、あるいは自由貿易、人間の尊厳、こういったものを導入していく、その先頭に立つんだ、そういう気概が日本外交に一番必要なんじゃないか、特にこの東アジアのレジームにそれを導入するということが大事なんじゃないかというふうに思いますけれども、もう一言いただけますか。

岸田国務大臣 私も外務大臣の仕事をさせていただく中にあってたびたび申し上げておりますが、まず、外交において、三本柱として、日米同盟の強化、近隣諸国との外交推進、そして経済外交の推進、この三つの柱を立てて仕事を進めています。こうした三つの柱を中心として、まずは日本の国益をしっかり守っていかなければいけない、これを強く感じています。

 しかし、今おっしゃったように、それだけにとどまってはならないと私も思っております。先ほど申し上げた基本的な価値観、自由とか民主主義とか、法の支配とか人権とか、こうした基本的な価値観を共有する国々と連携する。さらには、やはりグローバルな課題について私たちの国はもっと積極的に貢献していかなければならない、こういったことも感じています。中東和平ですとか、軍縮・不拡散ですとか、保健ですとか環境ですとか、こうしたグローバルな課題に日本もしっかり汗をかき、貢献することによって、国際社会において我が国は存在感を示すことができるんでしょうし、おっしゃるように、アジアの地域そして国際社会において連帯や連携を生むことにつながっていく、こういった考え方も重要なのではないか。

 国益を守ると同時に、こうした課題に日本も積極的にかかわっていくことによって、日本の存在感や国際社会の連携に貢献していく、こういった考え方もあわせて持ち、努力をしていかなければいけない、こういったことについては強く感じております。

玄葉委員 後者のところはそうなんですけれども、多分まだ十分伝わっていないのかもしれないんですけれども、結局、このパワーシフトは、特にアジア太平洋で顕著だと思うんです。もちろん、ブラジルだとかトルコだとかも新興国として台頭してきていますけれども、やはり、この東アジア、アジア太平洋での新興国の台頭に本当にどうやってバランスさせていくのか、単なる従来のパワーだけじゃない形でバランスさせていくのかということだと思うんですね。

 私はそれをネットワーク外交と呼んだんですけれども、つまりは、いわゆるルール形成力というソフトパワーを磨いていく、そしてそれをもって、先ほど申し上げたような価値をこのアジア太平洋に上手に導入していく。これは日本の国益に直結すると思うんですよ。逆に言うと、それができなかったら、やはりなかなか日本は大変だなと思うんですね。

 ですから、これは、あえて抽象的な問い方をしているんですけれども、この分野に相当力を入れていかないと、これから十年、二十年、なかなか大変なことになるというふうに思いますが、いかがですか。

岸田国務大臣 まず、基本的に御指摘のとおりだと思います。

 ルール形成力というお話がございましたが、こうしたアジア太平洋地域の厳しい安全保障環境を初め、現状を考えますときに、この地域においてのパワーバランス、安定ということを考えるときには、やはり、経済のみならず、さまざまな分野におけるルールの形成に我が国が積極的にかかわっていく、こうした視点は大変重要だと思います。

 経済連携につきましても、TPP、RCEPを初め、今、さまざまな経済連携の動きがあります。その中にあって、我が国は、受け身ではなくして、このルール形成に積極的にかかわっていく、こういった姿勢が重要だと思いますし、それ以外の分野におきましても、我が国は、みずからルール形成に積極的に貢献する、参加をする、汗をかく、こういった態度は大変重要だと思います。そういったことを通じてもアジア太平洋地域の安定や繁栄に貢献していく、こういった考え方は大変重要だと私も認識をいたします。

玄葉委員 先ほど積極的平和主義という言葉が出ましたけれども、これは、これまでの日本外交と何が違うんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、今我が国の置かれている安全保障環境、またアジア太平洋地域の戦略環境は大変厳しいものがあり、これは一層厳しくなってきている、こうした現状を感じています。大量破壊兵器あるいは弾道ミサイルのような脅威も深刻化している、こうした現状にあります。加えて、サイバーですとか宇宙ですとか、国境を越えた新しい脅威も現実のものになっています。こういった状況におきまして、もはや我が国のみで我が国の平和を守ることは難しくなっている、まずこうした基本的な認識があります。

 よって、我が国は、地域や国際社会、こういった広い範囲の平和や安定をしっかり守っていくことによって我が国の平和や安定も守っていく、こうした考え方に立たなければならない。よって、我が国は、従来以上に地域や国際社会の平和や安定に貢献していく、こういった努力を行っていかなければならない。こうした考え方のもとに、この積極的平和主義ということを訴えさせていただいているわけです。

 従来とどこが違うのかという御質問ですが、もちろん、従来から、こうした考え方に基づいて、シリアに対する人道支援ですとか、あるいはイランの核問題につきましても平和的解決に向けて汗をかくとか、あるいは国連において人間の安全保障の考え方に基づいて貢献するとか、こうした努力は続けてきました。しかし、今、我が国を取り巻く環境が一層厳しくなる中にあって、改めて、こうした積極的平和主義という言葉を使い、我が国の姿勢を国際社会の中においてしっかりと説明していく、そして理解を求めていく、こういったことが必要なのではないか。こういったことから、積極的平和主義、こういった言葉を使いながら、我が国のこうした問題に対する姿勢の説明に努めている、こうしたことであります。

玄葉委員 そうすると、必ずしもこれまでの日本外交と大きく違うということよりも、これまでの日本外交の姿勢をより強化して、それを、積極的平和主義という言葉を使って印象づけつつ説明をする、そういう観点でこの積極的平和主義という言葉を使っているというふうに理解していいですか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、国際協調主義あるいは我が国の平和主義、この基本は、根幹は全く変わっておりません。しかしながら、状況が変化する中にあって、こうした問題に対する危機感や重要性、こういったことも踏まえて、我が国の態度をしっかりと国際社会の中で示していく、そして、より以上に、今まで以上にこうした貢献ができる、そして現実においてどういった貢献があるべき貢献なのか、こういったことも含めてしっかりと検討し、努力をしていく、こうした態度を大切にしていきたいと思っております。

玄葉委員 そうすると、今おっしゃった含意には、これまでよりも、例えば、集団安全保障により積極的に参加をしていこうということであるとか、あるいは武力行使の一体化論もやや限界に来ているので集団的自衛権の解釈を変えようとか、そういうことも含めて積極的平和主義という言葉を使っているということですか。

岸田国務大臣 積極的平和主義の考え方については、今申し上げたとおりであります。

 その考え方において、我が国はしっかりと国際貢献を行っていきたい。現実の国際社会、そして我が国の置かれている環境を見た際に、具体的に貢献するためには何が必要なのか、どういった制度や法律が必要なのか、こういった点でさまざまな検討を行っている、その中で、今おっしゃったようなことも今議論として俎上に上がっている、このように認識をしております。

玄葉委員 では、基本的には従来と変わらないんだが、それを強化するために、例えば、集団安全保障により積極的に参加をするとか、集団的自衛権の解釈見直しを含めて、それも検討しながら積極的平和主義というものを具体化したい、簡単に言うとこういうことですね。

岸田国務大臣 御指摘の集団的自衛権の議論につきましては、今まだ引き続き安保法制懇において議論が行われている、この議論の行方を見ながら、最終的には、政府としてどう考えるか、これを整理していかなければいけない、まだそういった段階にありますが、基本的には、変化する、そして厳しさを増しているこの我が国の安全保障環境の中で、我が国として具体的に何をするべきなのか、こうした考え方に基づいてさまざまな議論が行われている、このように認識をしております。

玄葉委員 私だったら、積極的平和主義を仮に説明するとすると、私が別に補う必要はないんだけれども、やはり、さっき申し上げたようなルール形成力でそういうソフトパワーを磨いて、日本の平和をつくり育てる力というものをさらに強化していくんだということをつけ加えて説明していくとこの言葉というのは意外と生きる可能性はあるというふうに実は私は思っていて、そういうものがないまま説明をしていくと、では今までと何が違うんだとか、単なる集団的自衛権の解釈を見直すということだねということに多分一般的な理解はなるんだろうなと。一応そういうふうに私としては思うので、提言として申し上げておきたいと思います。

 その上で、シリアの問題は本当はじっくりやりたいんですけれども、きょうは余り時間もないので、二、三だけお聞きをしたいと思います。若干今の問題と関連させて、その部分だけ申し上げたいと思うんです。

 まず、一連のシリアの問題、シリアは、私が閣僚だったときも、まさに二〇一一年三月以来のアサド政権の市民デモへの大規模弾圧から始まっていますので、例えば、反体制派のグループと私も会ったり、いろいろしてきました。ペルソナ・ノン・グラータなどというようなこともありました。いろいろあったんですけれども、特にロシアのこだわりとかがあってP5がまとまらず、あるいは国際社会がなかなかまとまらずということがこれまでありました。

 それはともかくとして、一連の、一線を越えたとオバマ大統領が発言をして以来の、あるいはその直前からの、アメリカ、オバマ政権の判断あるいは結果、あるいは先ほど申し上げたような発言、これをどう外務大臣としてはごらんになっていますか。

岸田国務大臣 シリアの問題につきましては、玄葉前大臣も、東京でシリアの制裁に関する会議を主宰されるなど、大変積極的に取り組んでこられた。こうした御努力には心から敬意を表し申し上げたいと存じます。

 そして、こうしたシリアの動きについてですが、まずもって、シリアにおいては、化学兵器問題については一つの合意のもとに今努力が続けられていますが、基本的には、まだ通常兵器によって暴力行為は続いております。シリアの状況は、依然深刻な状況にあると認識をしております。やはり、暴力行為の停止、そして政治的な対話の開始、さらには非人道的な状況の改善、こういったことについて引き続き努力をしなければならない。シリアの問題は、化学兵器の問題にとどまらず深刻であり、そして今、引き続き継続している問題だと認識をしております。

 その中にあって、化学兵器問題に関する議論につきましては、結果として、米ロが合意する形で、外交手段によって解決を図ろうという動きが進んでいる、このことについては基本的に我が国も歓迎をしているところであります。そして、米国のその間のさまざまな動きあるいは評価についてさまざまな議論があることは承知しておりますが、その米国とて、まだ継続している、深刻化しているこのシリアの問題を一国で解決できるとは思ってもいないでしょうし、実際、それは難しいと思っています。

 引き続き、国際社会と連携して、国際社会全体でこの問題に取り組むことによって、暴力行為をやめさせ、政治対話を開始させ、そして非人道的な状況を改善する、こういった結果につなげていかなければならない、このように考えております。

玄葉委員 私は、一線を越えたと発言されたときに、同盟国の米国だから余り申し上げませんが、ただ、大丈夫かなと思いましたですね。やはり、本来必要な戦略的な曖昧さというのをある時点で捨てちゃって、これは本当に大丈夫かなと思っていました。その後は今おっしゃったとおりなんですが、結局、ロシアが一つの提案をして、やや渡りに船的に乗ったんですね。日本として、基本的には外交手段での解決ですから、歓迎なんだけれども、やはり、一旦軍事介入しますと言ってやめたというのは、日本国の同盟国である米国がそういう態度をとったことが、日本の抑止力という点で大丈夫かなというふうに思う人がやはり当然出てくるのではないかというふうに思っているんですね。きょうはこれは余り申し上げません。

 その上で、きょう聞きたかったのは、もしアメリカがこのときに軍事介入していたら、これは仮定の話ですけれども、あるいはこれからもあるかもしれないから、その場合の国際法上の根拠というのは一体どういうものになるんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、シリアの化学兵器の問題につきましては、国際社会がどのように対応するのかということにおいて、北朝鮮を初め、他の大量破壊兵器を持っている国々に対してメッセージを与えることになるということからして、我が国にとりましても、シリアにおける化学兵器に対する国際社会の対応は、これはもう決して遠い国の話ではなくして、我が国に直接影響する大変重要な問題だと認識をしております。そういった認識のもとに、こうした動きを注視し、対応を検討してきたわけであります。

 ただ、今、御質問は、武力行使が行われた場合に、その支持をする根拠は何かという御質問ですが、仮定に基づいてお答えするのはちょっと適切ではないのではないかと考えます。

玄葉委員 政府参考人はこの問題では来ていないですか。一般論として、こういった人道的軍事介入のいわゆる国際法上の根拠というのを答えられますか。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、イギリスについてでございますけれども、英国政府は、軍事行動への参加につきまして議会の承認を求める過程におきまして、シリアにおける軍事行動の合法性に関する法的立場についての見解を公表したというふうに承知してございます。

 また、今委員お尋ねの人道的介入についての政府の見解についてでございますけれども、一般に、人道的介入とは、他国で行われている非人道的なことをやめさせるために、武力行使を含め、当該他国に介入することを指すものというふうに考えられます。このような人道的介入につきましては、学説上は種々の意見があるというふうに承知してございます。

 我が国といたしましては、人道的介入がいかなる状況、条件のもとで、また、どこまで許されるのかという点につきましては、国際法上、いまだ形成途上の課題であるというふうに認識しております。

玄葉委員 これは恐らく、米国が軍事介入していたら、あるいはこれからするかもしれませんけれども、この国際法上の根拠というのが大きな問題になるんですよね。

 もう外務大臣御存じのとおり、正当化されるのは、個別的自衛権、集団的自衛権、そして集団安全保障しかないわけです、今のところ。そう言われているわけです。コソボの例が唯一ありますけれども、そのときに、人道に対する罪を理由に介入した、こういう経緯がある。

 私、きょうここで申し上げたいのは、日本政府の対応が悪いとかいいとかということを申し上げたいんじゃなくて、今あえて説明をしていただいたのだけれども、結局、こういうときに、イギリスは何と言ったかということなんですね。

 私、シリアの一連の経緯をずっと報道等で見ていて思ったのは、イギリスは、当然、イラクの戦争で大量破壊兵器はなかったという教訓を踏まえて、これもよしあしあるんですけれども、議会にかけたわけですね。そのときに、イギリス政府は、人道的介入の国際法上の根拠を説明したんですね。私、それは驚いたんですよ。

 先ほどおっしゃったように、まだ学説上は途上だというふうに申し上げてもいいと思うんですが、イギリスは、あのとき私、メモしたんですけれども、緊急かつ大規模な著しい人道上の苦難の存在、そのことの説得力ある証拠の存在、武力行使以外に代替案がないこと、必要最小限の武力行使であることということで、国際法上の根拠をイギリス政府として説明していたんですね。

 私、冒頭のことに関係して申し上げたかったことはこういうことで、要は、これもソフトパワーですよね。イギリスの外交というのは、何だかんだ言って、やはり各国とも一目、二目置いているというところがあると私は感じます。

 法の支配ということを、日本国として、日本外交として、これから極めて重視すべきだと私は思います。重視して、アジア太平洋にこの法の支配の秩序をつくり上げるというのは、やはり日本の国益にダイレクトに直結する、そういう問題だと思いますけれども、そういうときに、外交インフラとして、国際法の世界で日本国あるいは日本外務省が強くなるというのはすごく大事なこと。地味なように聞こえるかもしれないけれども、やはりすごく大事なことだと私は思っているんですね。これは本当に一例なんだけれども。

 これはすごく地道です。一朝一夕にはできません。十年とか二十年という中長期的視点でぜひ外務大臣に意識してもらいたくて申し上げたんですけれども、今も優秀な人たちが外務省には多いです。多いけれども、より本格的に、そういう人材、外交インフラとなる人材を、とにかく世界の一級だという人たちを育てるというのが、実は、中長期的に見ると、このパワーシフトに対応する上でも、本当の一例なんだけれども、非常に大事なことだというふうに思いますが、いかがですか。

岸田国務大臣 大変貴重な御指摘をいただいたと感じております。

 先ほど、ルール形成力ということで、経済連携の話とか安全保障の話をさせていただきましたが、その基盤となる法の支配において、国際法の世界において我が国がこのルール形成あるいは議論をリードする、こういったことは、さまざまなルールづくりの中においても大変基本的な課題だと、お話を伺っておりまして感じました。貴重な御指摘をいただいたと感謝申し上げます。

玄葉委員 外務省の中で、この国際法の分野で日本がさらに強くなるためにどうするかということについて、ぜひ一度検討してみていただきたいというふうに思います。

 その上で、日中の問題は、まさにパワーシフトの端的な例であります。十三億人の人口で、GDPは日本を追い抜きました。これから恐らく、アメリカを二〇二〇年あるいは三〇年に抜くのではないか。逆に、抜かないと言う専門家もいますけれども、でも、この中国の台頭に対してどう対応するかということであります。

 おとといの委員会でも出ておりましたが、一度、中国の海洋進出の状況を、南シナ海と東シナ海について、歴史的にこの外務委員会できちっと説明をしてもらいたいというふうに思います。

金杉政府参考人 お答えいたします。

 まず、南シナ海についてでございますが、一九五〇年代から、中国は、いわゆる九つの破線の内側の海域に関して主権を有しているという主張を開始いたしました。

 それを踏まえまして、例えば西沙諸島に関しましては、一九五四年にフランスが西沙諸島から撤退した後、五六年には西沙諸島の東側を事実上支配いたしました。そして、七四年には、ベトナムと交戦をして、西沙諸島全域を事実上支配するに至っております。

 続きまして、南シナ海、南沙諸島ですけれども、南沙諸島に関しましては、九〇年にソ連海軍がベトナムのカムラン湾から撤退を開始し、九一年から九二年にかけて米軍がフィリピンのクラーク空軍基地、スービック海軍基地から撤退を開始した後、九五年から、漁民の避難施設を名目に南沙諸島のミスチーフ礁に構造物を設置いたしました。これが、九九年ごろまでには、ヘリポートも備えた恒久的な施設に増強されております。

 それから、中沙諸島でございますけれども、二〇一二年の四月にスカボロー礁海域を航行していた中国漁船に対してフィリピン海軍が臨検を実施して以降、中国公船が当該海域に常駐する状況になっているということでございます。

 そして、こうした一連の動きの中では、中国の公船や海軍の艦艇がベトナムやフィリピンの漁船に発砲するといった事案も生じております。

 さらに、中国による管轄権の強化という観点からは、中国は九二年にいわゆる領海法を制定いたしまして、南シナ海の東沙、西沙、中沙、南沙の各諸島、さらには尖閣諸島も中国の領土だという表明をしております。さらに、二〇一二年には、西沙、中沙、南沙及びその海域を管轄する三沙市というのを設置したということは先生御承知のとおりでございます。

 それから、東シナ海でございますが、今御答弁申し上げたのと重複を避けて申し上げれば、まず中国の海上法執行機関の動向として、特に九〇年代以降から、日本の排他的経済水域において中国の海洋調査船が日本の同意を得ない調査を行うという事例が確認をされ始めました。また、二〇〇八年十二月には、中国の国家海洋局所属の公船二隻が尖閣諸島周辺海域に初めて侵入をし、その後、現在に至るまで合計七十一回に及ぶ領海侵入が発生しております。

 また、人民解放軍の動向としましては、二〇〇四年十一月に中国の原子力潜水艦が国際法違反となる我が国領海内での潜没航行を行ったほか、二〇〇八年十一月には、海軍の艦艇四隻が沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に進出したことが初めて確認をされております。その後、同様に南西諸島を通過して太平洋に進出する回数というのが年を追うごとに増加しているという状況にございます。

 加えて、中国のヘリコプターや固定翼機が海自艦艇に近接飛行を行ったり、あるいは火器管制レーダーが照射されたりといった事案が発生していることは先生もよく御承知のとおりでございます。

 以上でございます。

玄葉委員 ありがとうございました。

 海洋進出の意図はと聞くと、私のときも答弁しなかったので、背景を簡単に説明していただけますか。

岸田国務大臣 今答弁をさせていただきました中国の積極的な海洋進出の背景についての御質問ですが、一般的には、中国における海洋権益に対する関心の高まり、または領土、領海に対する防衛意識、さらにはシーレーンに対する関心の高まり、こういった諸要因が指摘されていると承知をしております。

玄葉委員 ちょっと時間がなくなってきたんですけれども、中国の外交政策というのは変化してきているんですかね。今までの延長線上なんですかね。

 韜光養晦という言葉をかつて中国は使っていた。要は、光を韜(つつ)み養い晦(かく)すということだから、能あるタカは爪を隠すんだということで、見えないように力を蓄えていくんだというのがこれまでの中国の外交政策の一つの特色をあらわす言葉だったのではないかというふうに思うんですけれども、どうもそうではなくなってきているのかなと思う側面も出てきている。

 核心的利益という言葉がありますけれども、これも、当初はチベット、台湾。そこから南シナ海に広がって、さらには東シナ海にも広がっているのかどうか、こういう議論がある。こういったことについてはどうですか。

岸田国務大臣 中国の外交政策が変化しているのではないかという御指摘ですが、中国の外交政策等につきましては、我が国は、大きな関心を持って動向を注視しております。

 その中で、例えば先月下旬ですが、共産党の会議におきまして、習近平主席の重要講話というのが行われ、その中で、今後の周辺外交の基本方針として、自国の最重要課題である経済発展のために、隣国との関係をよくし、パートナーとすること、隣国を安心させ、豊かにすること、隣国と親しくし、誠心誠意の対応をしていくこと、こうした発言があったこと、こういったことにも注目はしております。

 中国自体、従来から、平和的発展の道を歩むことを対外政策の基本として掲げているということでありますが、こうした最近の発言等を注視しながら、一方で、先ほど答弁させていただきましたように、周辺海域における海洋活動は活発化しております。我が国を含む地域、国際社会、共通の懸念事項になっているというのが現実としてあるわけです。

 ですから、こうした中国の言動については注目をしておりますが、言葉だけでなく、実際の行動においてどのような外交が展開されるのか、引き続き関心を持って注視をしていきたいと考えております。

玄葉委員 今、意思疎通はどうされていますか。

岸田国務大臣 日中の外交当局間においては、尖閣諸島をめぐる状況も含めて、さまざまな課題について、そしてさまざまなレベルにおいて、意思疎通を行ってきております。具体的な課題を通じて、そしてさまざまなレベルでの議論を積み重ねることによって、ぜひ高い政治レベルでの対話につなげていきたいということで、働きかけを続けております。

 ぜひ、個別の問題があるからこそ対話をしなければならない、こうした我が国の姿勢については、今後もしっかりと働きかけの中で訴えていきたいと思いますが、中国から、それにしっかりと応じてくる、こうした反応があることを期待したいと思っています。

玄葉委員 この間、米国の政府にこれまで入っていた方々、五、六名の方々と二日間にわたっていろいろ議論したんですけれども、その中で、一つの指摘として、例えば安倍総理は、これは、よしあしはいろいろあるんですよ。靖国の問題でいえば、かつて総理大臣のときに靖国に行かなかったことが痛恨のきわみだ、こういうふうにおっしゃった。私も、一衆議院議員のときは靖国神社へ行っているんですけれども、閣僚のときは行きませんでした。外務大臣もそうかもしれませんけれども。

 もし、意思疎通して何か前に進んで、靖国に行きましたみたいな話になっていくと、そういうことがあり得るということになったときには、これは韓国の問題にも言えるんですけれども、中韓は動けないというところもあるんじゃないかという指摘が米国側からありました。

 きょうはちょっと、もうあと五分しかなくて、小里さんに来てもらっちゃったのでそちらの質問に移りますけれども、そういう問題もいろいろ考えなきゃいけないし、また、私が申し上げてよいのかどうかというのはあるんですけれども、かつての一九三〇年代の日本もややそうだったんですが、結局、経済力を持ちました、軍事力を持ちました、でも、では国際社会全体をどうしようかとか、そういうところまでまだ責任感が及ばない状態が今の中国だというふうに私は思っているんですね。

 ですから、冒頭申し上げたように、法の支配を導入するということを初め、ルールをつくる、東アジアの将来をクールヘッドで、毅然と対応しながらクールヘッドでやはり日本は説いていかなきゃいけない。そこに、さらにいろいろな意思疎通で、これも譲れないところは絶対譲れないので、そこの一線をきちっと守りながら知恵を出すということをどこか適切なタイミングでやっていくということなんだろうなというふうに思います。きょうはもう指摘にとどめます。

 最後に、TPPでありますけれども、たくさんTPPは質問があるんですけれども、きょうは一つだけお聞きしたいと思います。

 非常に摩訶不思議なことが起きているのは、何か報道で、重要五品目の五品目に当たる五百八十六品目ということがよく出ているんですけれども、五百八十六品目って何ですかと聞いたら、一切資料も出さない。私はちょっと信じられない現象なんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。

小里大臣政務官 お答えをいたします。

 これまで我が国が締結をしたEPA、FTAの中で関税撤廃をしたことのない品目の中から、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源、いわゆる重要五品目と言われる分野に分類をし、合計をしたものが五百八十六ラインであるということであります。

 これは我が国の立場で分類をしたものでありまして、相手国には伝わっておりません。したがって、これが明らかになれば、相手国にとって我が国の立場を予断し得る、そして交渉上不利益をこうむることになる、そういうことであります。

玄葉委員 これは実際上はどういう状況かというと、関税譲許表というのは、そもそも英語で全部出ています。これはプロが見れば大体想像できます。もちろん、五百八十六にこれが入っているのか入っていないかというのはもしかしたらわからないかもしれないけれども、でも、ほとんど想像できるんですね。それをあえて、何か隠して交渉しますというのは、私からすると、何てナンセンスなことをやっているんだと。はっきり言って五百八十六のレベルじゃないですからね、現実は。だから、そんなことにこだわる必要はない。

 もっと言うと、何か、西川さんにも出していないというわけです、部会というか調査会で聞くと。あり得ないでしょう、そんなこと。あり得ないと思いますよ。私、西川さん以外の当事者にも何人か直接聞くと、もう知っていますよね、現実は。見ていますよね。

 だから、余りそういううそを重ねちゃうと、本当に国民の皆さんから、この問題で結論が出たときに、私は信頼されなくなると思う。

 だから、政府・与党一体化という議論が当然あるんだから、与党の要路にいろいろなことを説明するのはある意味当たり前なんですよ。私はそう思う。だから、与党の要路には説明しますが、秘密保持の観点からあとは出しませんとか、やはりもっと誠実に向き合った方が私はいいと思いますが、いかがですか。

小里大臣政務官 うそにうそを重ねるとおっしゃいましたが、そのことには私は反論がございまして、まさに先生が御指摘をいただきましたように、プロが見てもわかりにくいところはあるんです。我々が見ても、米に含まれると思っていたラインが砂糖にあったり、それから砂糖に含まれると思っていたラインが五百八十六品目以外にあったり、これは実に複雑であります。もしそこを明らかにすれば、例えば五百八十六ラインが明らかになれば、我が国が最センシティブとしている品目、ラインが全部明らかになる。すなわち、我が国の弱みが相手に伝わってしまって、そこをつけ込まれるおそれがあるということでございます。ほかにもいろいろ理由はありますが。

 また、西川委員長のことをお尋ねでございます。彼について言えば、あえて最近になって情報を提供するまでもなく、頭の中にあると思います、常日ごろから。

 また同時に、今回、この厳しい交渉を、政府・与党一体となって国益を守っていく交渉をしていかなければならない、そのための決議をしたわけであります。まさに、その決議に基づいて、政府・与党一体となってこの交渉に臨む、そのために必要な情報については可能な限り与党側には提供しておるということであります。

玄葉委員 うそという言葉を使ったのは、本当に、西川さんにも一切出していません、ここの、私たちに出している、当時の民主党の部会に出しているのと同じです、こう言ったんですよ。それは本当だなと言うと、本当ですと農水省の方々がおっしゃったのは事実です。だから、それは明らかなうそだろうと私は思うんです。

 やはり必要な情報は要路に出せばいいと思うんです。その上で検討するのは当たり前の話だし、僕は、五百八十六というのに余りこだわる必要はないと思いますよ。本当に国益に一番合致する品目かどうか、そういうことをきちっと精査して対応すればよいのであって、余りそんな瑣末なことで情報を隠すということをする必要はない、そんなことは全然別に弱みじゃない、だから意味がないというふうに私は思います。

 私、これから特定秘密というのはあると思うんです、これは特定秘密保護法案とは別だといっても。実際に職務をしていて、特定秘密というのは出てきます。だから、本当に漏らしちゃいけない、秘匿すべき秘密というのはあるわけです。だけれども、その判断を大臣がやるわけですね。あるいは役所がやるわけですね。そういうときに、何だ、この五百八十六品目まで隠すのか、秘匿するのか、そういう人たちにその裁量を全部与えるのかということになれば、本当に大丈夫なのかと、これは普通に考えてもなりますからね。

 だから、やはり秘密主義が過ぎるというのが私の今の率直な思いなので、そのことを忠告として申し上げて、若干オーバーして申しわけありませんでしたけれども、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 私も常々、先ほどの玄葉委員が質問の最後でおっしゃっていた、いわゆる役所のレトリックといいますか、これがこうだからこうですよね、だからこうですよね、だからこうなんですと、結局、役所側の論理といいますか論拠、論の立て方が、私は今、沖縄における普天間の基地問題と非常にオーバーラップして聞こえました。

 負担を軽減する、しかし普天間の固定化があってはならない、だから辺野古に持っていきます、もうこの言い方の繰り返し。固定化があってはならないのは、誰が考えてもそうである。しかし、その固定化をどこに持っていくのかということは、新たな負担になるはずだ。その負担を沖縄にまた持っていくのかというふうなことが、答えに窮するところだと思います。

 ですから、我々は、その負担そのものの軽減を日米の2プラス2でしっかりと話し合ったり、あるいは、日米合同委員会という専門的な地位協定の下部組織、委員会がそれぞれありますから、そこでしっかりと話し合いをする。そこで得られたさまざまな状況によって、では、変化していく東アジア、世界全体の状況にどう日本とアメリカが協力をしていくのかというふうなことが本当のレトリックの答えにならないと、いつまでたっても、あれはありません、これはありません、それは出していませんというふうな話の中では、国民は絶対に納得しない。今、玄葉委員の質問と答弁者のやりとりから、この矛盾は、やはりしっかりと政治が応えていかないといけないというふうに感じました。

 なぜなら、子供たちも見ているこの日本の政治の状況が、これから未来、本当に明るいものになるのであれば、私は、きょうのこの外務委員会での質問と答弁もまた大変有益になるものというふうに信じて疑わないからです。我々は、時間を弄するのではなく、我々の誠意を国民のために尽くす、そのことに、言葉に思いを込めて、言霊を込めて、誠心誠意取り組んでいきたい。まずそのことを冒頭申し上げておきたいと思います。

 では、質問に入らせていただきます。

 前回の外務委員会でも質問させていただきました、せんだって、十月三日に、「より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」という、2プラス2、日米安全保障協議委員会の共同発表がありました。前回もいろいろと質問させていただきましたけれども、きょうは、先ほどのレトリックではないんですが、大まかな確認がされた「概観」というところの言葉を少し拾ってから質問させていただきたいと思います。前略、中略、後略、いろいろありますが、私が特にここは押さえておきたい、確認しておきたいというところを先にお話しさせていただきます。

 「一九九七年の日米防衛協力のための指針の見直し、アジア太平洋地域及びこれを超えた地域における安全保障及び防衛協力の拡大、並びに在日米軍の再編を支える新たな措置の承認を基礎としていく。」ということで、双方の国は確認をしています。

 「日本の安全保障政策は、地域及び世界の平和と安定に対する日本の長年にわたるコミットメントや、国際社会が直面する課題への対処に一層積極的に貢献する意図を反映し続ける。」「日本は、日米同盟の枠組みにおける日本の役割を拡大するため、」「国家安全保障会議の設置及び国家安全保障戦略の策定の準備を進めている。さらに日本は、」「さらに」ですよ、「さらに日本は、集団的自衛権の行使に関する事項を含む自国の安全保障の法的基盤の再検討、防衛予算の増額、防衛計画の大綱の見直し、自国の主権の下にある領域を防衛する能力の強化及び東南アジア諸国に対する能力構築のための取組を含む地域への貢献の拡大」等々というふうにあるわけですね。

 つまり、先般の2プラス2は、今まさにアジアのパワーシフトが起きているということに日本がどうするのかということをアメリカと改めて確認したということなんですが、今、NSCの設置に関する、これは衆議院を通過いたしまして、参議院に送られております。続いて、特定秘密保護法案の審議にもう早速入っておりますけれども、まさにこの2プラス2の確認文書に書かれているとおりに状況が進んでいるということを考えると、これは紛れもなく、ここに書かれているレトリックどおりに事実が、ファクトが進められているということは、これは疑いのない部分であると思います。

 その中に積極的平和主義という先ほどの大臣の言葉を当てはめていくと、なるほどというふうなこともまた、国民の皆さんに、理解といいますか、こういう流れだねという概観的な姿見は見てとれるのではないかなというふうに思うわけですね。その中身はこれから議論する必要があるとは思うんですけれども。

 「日本及び米国は、最先端の能力のために資源を投入し、相互運用性を向上させ、兵力構成を近代化し、同盟における役割及び任務を現在及び将来の安全保障の現実に適合させる」ということになり、「両国の同盟は、その広範な課題について協力を拡大、深化させることを目的」とするというふうなことになるわけです。

 ですから、これから日本は一体どういうことをアメリカと一緒に、あるいはアメリカの肩がわりとなってやらなければいけないのかということが、私は、この2プラス2の文書を本当に国会議員の皆さんでしっかりと精読をして、その中から、一つ一つの問題、課題を丁寧に丹念に国民の立場から議論をしていく、決して、拙速な委員会運営ですとか、あるいは、何か法案を成立させないといけないという大義名分のもとにレトリックをこねくり回すようなことはしてはいけないのではないかということを、自戒の念を込めて、そのことをあえてこの文脈から読み取っていく努力をしたいというふうに思います。

 では、質問させていただきます。

 今回のこの2プラス2の共同発表で、沖縄から日本国外の場所に移転されることが再確認されている件についてお伺いいたします。

 閣僚は、二〇一三年四月の沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画に示された、施設及び区域の返還を確保するとのコミットメントを再確認しています。これはフェーズフォーの「在日米軍再編」というところに書かれているんですが、閣僚は、約九千人のアメリカ海兵隊の要員が沖縄から日本国外の場所に移転されることを再確認したという、その文言について確認をしたいと思います。

 この九千人のアメリカの海兵隊要員のうち、その内訳、軍人及び家族などの内訳、それから日本国外とする場所、あるいはその場所に移転する時期、これについて現在の計画はどのようになっているのか、お伺いいたします。

真部政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の記述に関しましては、昨年四月の2プラス2共同発表におきまして「約九千人の米海兵隊の要員がその家族と共に沖縄から日本国外の場所に移転される」とされたことを再確認いたしたものでございます。この点は、当時の共同発表におきまして、沖縄における米海兵隊の最終的なプレゼンスを再編のロードマップに示されたものとするとされているとおりでございますが、在日米軍の抑止力を損なうことなく沖縄の負担軽減を最大限図るとの観点から、移転する人数を約九千人としたものでございます。

 その内訳に関しましては、約四千人がグアム、それから、その残りの約五千人がハワイ等に移転する、そういう旨の説明を米側から受けておるところでございます。

 また、同じく内訳に関しまして、これらの人数には、軍属それから家族は含まれておりません。

 それからあと、時期でございますけれども、今般の2プラス2の共同発表におきましては、これら部隊のグアムへの移転が二〇二〇年代前半より開始される旨の記述が行われているところでございます。移転のより具体的な時期につきましては、米国においてさらに引き続き検討されていくものというふうに認識をいたしております。

玉城委員 ありがとうございます。

 真部次長は沖縄防衛局の局長も務めておられましたので、沖縄の現状については、私たちもたくさんの意見交換をさせていただきました。

 今あった発表が、一番新しい米側との確認だと思います。

 そもそも、平成十八年、二〇〇六年、再編実施のための日米のロードマップ、これは、ライス国務長官、ラムズフェルド国防長官、麻生外務大臣、額賀防衛庁長官のこの再編のロードマップのときには、約八千名の第三海兵機動展開部隊の要員とその家族約九千名は、部隊の一体性を維持するような形で二〇一四年までに沖縄からグアムに移転するということがそもそもでした。

 これは、八千名の兵隊と九千名の家族ですから、約一万七千名ということで、一万七千名から九千名に実質上数字は下がったというふうに見られがちなんですが、私は、そこは違うと思うんですね。そこはレトリックをうまく読み取っていけば、今まではパッケージになっていた、辺野古の移設、グアムへの移転がパッケージなっていたものを、アメリカ側がそれを解きほどき、リパッケージして、もう我々は、西太平洋、東アジアに展開をするということを含めて、よりローテーションできる部隊、家族を含まないローテーションできる部隊をグアムに移そう、ハワイに移そう、あるいはオーストラリアにも、ダーウィンの近くにオーストラリアの基地を使用して回していこうという形に、事実、それが進められていくということになっているわけですよね。

 そうすると、沖縄には、その部隊、家族なりがある一定残ることになるわけですが、この米軍再編が進むことによって、日本の安全保障環境、特に抑止力の低下を懸念する意見などなどが出ています。これについてはどのような見解をお持ちでしょうか。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今委員御指摘になりました、抑止力の維持が確保されているのかという御質問でございますが、そもそも在日米軍の再編と申しますのは、我が国を取り巻きます安全保障環境における日米同盟の重要性に鑑みまして、抑止力の維持と、沖縄を初めといたします各御地元の負担の軽減を図る、これが大きな目的でございます。これを施策として実施されているところでございます。

 また、委員御指摘の先月の2プラス2の共同発表におきましては、在日米軍のプレゼンス、これが抑止力を維持し、日本の防衛と地域の緊急事態への対処のための能力を提供し、また、同時に政治的に持続可能であり続けることを確保するものということを強調されているところでございます。

 この共同発表におきまして示されたとおり、委員も御承知のところだと思いますが、沖縄にはMV22を配備したほか、P8哨戒機、また、グローバルホーク無人機及びF35Bといった、高度な能力を持つ装備を日本国内に配備または展開させることとしております。

 こうした取り組みは、我が国及びアジア太平洋地域の安全に寄与するものと考えているところでございます。委員御懸念の、在日米軍再編の進展に伴い日米安全保障体制に基づく抑止力に影響が出るというような認識は全くございません。

玉城委員 国交省の皆さんには、恐らくラプコンの質問までは行けないのではないかと思いますので、あらかじめお断りをしておきたいと思います。

 なぜなら、今、若宮政務官が答えていただいたことは、次に私が質問しようと思っていたことなんですが、抑止力を維持するということと整備を増強させるということがイコールであってはおかしいレトリックになるんですね。

 抑止力の維持というのは、現状維持で構わないんです。しかし、抑止力を増強するというためには、新しい装備なり部隊なりを展開する。それは、MV22オスプレイのティルトローター中隊の二個編隊が、CH46、老朽化した中型ヘリと置きかえられた。これは機材を置きかえたのであって、新しい装備への展開ではないと、これまでも安全保障委員会あるいは外務委員会でも語られてきている答弁であります。つまりそれは、古い機体から新しい機体にかえたんだよということなんですね。

 ところが、今政務官がいみじくもおっしゃったのは、私が次に質問しようとしていたことなんですが、より高度な能力を日本国内に配備することが地域の安全に一層寄与するとしている装備の中に、二〇一四年春からはグローバルホーク無人機のローテーションによる展開を開始すると米空軍の計画にあるということを、いみじくも今政務官はお答えになりました。

 それからもう一点、アメリカの海兵隊によるF35B、これは恐らく垂直離着陸のハリアーの後継の機能を有するF35だと思いますが、そのアメリカ国外における初の前方配備となる、二〇一七年のこのF35Bの配備の開始などが列挙されているわけですね。

 つまり、今までなかったグローバルホークという無人機が日本国内に配備される。それも、空軍ですから、東洋一の空軍基地はどこにありますか。沖縄ですね。何という基地でしょう。嘉手納基地です。嘉手納に配備される予定になっているということが私たちはこの文脈から読み取れると思うんです。そして、海兵隊のF35B、ハリアーの訓練の常駐基地はどこでしょう。普天間基地ですね。海兵隊の滑走路を有する基地ですから。

 ですから、それを考えると、日米同盟による抑止力の強化が新しい戦略的な兵器の前方配備と不可分であること、そのことによる米軍の基地体制の機能強化と国民への新たな危険負担の増加にほかならないことは事実なんですね。

 ここで、これまでさんざん答弁で語られてきていた負担の軽減というレトリックはどう解決するのかということ、すぐその矛盾に突き当たるんです。だから、このレトリックの使い回しはそろそろもう通用しないというところに来ていると私は思うんですね。

 なぜなら、やはりこれまでも、先ほどからずっと、東アジアの情勢はこういうふうになってきていますよという、まるで危機感をあおるような言い方がされていて、米軍は予定どおりに財政的な計画にのっとってグローバルホークを配置し、そしてF35Bに換装していく、置きかえていく。これもまた、言い方からすると、新しい兵器の投入ではない、前方の兵力を削減してより高度な無人機を飛ばすから、よりリーズナブルな安全保障に寄与していくんだということになっていく。こういうふうなやり方をしていると、いつまでたっても本当の抑止力の正体というものは見えてこないのではないかなと思うんです。

 では、これはぜひ外務大臣にお聞かせいただきたいと思いますが、こういうふうな展開が、もし、空軍が嘉手納基地を対象に、海兵隊の航空基地が普天間を想定していることであれば、沖縄県民は到底受け入れられるものではないと思います。この安全保障の米軍側の展開に関して、先ほど政務官がお答えになったことについて、外務省として、あるべき外交の、安全保障の取り組みとして、どういうふうな方向性で確認をすべきだというふうにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 先ほど来、質疑、やりとりを聞かせていただきまして、抑止力の維持と装備の拡充についてお話がありました。その関係について御議論がありました。そして、それと沖縄の負担軽減との関係ということでありますが、まず、我が国としましては、沖縄の負担軽減についてはしっかりと結果を出していかなければいけない、これは、間違いない、重要な課題だと認識をしております。

 当初、日米2プラス2について触れていただきました。その日米2プラス2において、日米両国が、この厳しい安全保障環境、変化する戦略環境の中で同盟関係に基づいてしっかり協力をしていく、そして両国は大きな責任を担っている、こういったことで一致をいたしました。

 この日米2プラス2につきましても、東京で、日米外務官僚、防衛官僚、フルメンバーで開催するのは初めてのことであります。二月に日米首脳会談が行われてから後、我が国は日米同盟強化のためにさまざまな努力を続けてきましたが、今回の2プラス2において、日米同盟の強化に向けての大きな前進を見ることができたと存じます。

 この関係に基づいて、沖縄の負担軽減についてしっかり結果を出していかなければいけないと思っていますし、沖縄の負担軽減を果たすことこそ、日米同盟を安定させることにつながると考えております。そういった考えのもとに、引き続き沖縄の負担軽減のために努力をしていきたいと考えております。

玉城委員 ありがとうございました。

 きょうはもう時間ですので、最後に沖縄の言葉を一つ紹介しておきたいと思います。

 イラランミーンカイ、イッチャンという言葉があります。出られない穴に潜り込んでしまった、にっちもさっちもいかなくなっている状態のことをイラランミーンカイ、イッチャンといいます。そのときに沖縄の人は何と言うか。クサーンカイ、サガレーと。後ろに下がりなさい。入った穴は後ろにしか出られないんです。だからそれは、新しい出口を考えないと、前に前に進むことしか考えていないと、出口は見つからないという教訓なんですね。

 ですから、沖縄の基地問題も、中国との外交の問題も、イラランミーンカイ、イッチャッサーヤーということを考えたら、少し広くステップバックして、いろいろな俯瞰をぜひ行っていただきたい。

 最後にそのお話をさせていただいて、終わりたいと思います。ありがとうございました。ニフェーデービタン。

鈴木委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 おはようございます。日本維新の会、小熊慎司でございます。

 玄葉委員また玉城委員の大変ハイレベルな質疑の後、緊張しておりますし、また、先日の外務委員会でも、玄葉前大臣が若いころに使われた言葉で、外交こそ国益という意味では、大変さまざまな常任委員会がありますけれども、この外務委員会、特に、前大臣、元大臣もそろっていて、大変すばらしいメンバーに恵まれて、また日本のこれからのしっかりとした進路について質疑ができるということは、大変すばらしい委員会に所属をさせてもらっているということを冒頭申し上げます。

 玄葉委員の中にもありましたけれども、日本を取り巻く外交のあり方として、先ほど大臣と玄葉委員とのやりとりを本当に感動しながら拝聴しておりました。

 積極的平和主義といったもののあり方というのは、一部うがった見方が、海外も含めて、先ほどの議論にもありました集団的自衛権の部分も含めて、あるわけでありますけれども、先ほど大臣と玄葉委員とのやりとりの中で民主主義とか法の支配とか、まさにこうした世界の普遍的な価値観で日本の外交をしっかりやっていって、周辺諸国と連携を図っていくということがしっかりと打ち出されていかなければいけないというふうに私も思っております。

 そうしたさなかで、これはある意味では関係者にとっては大きな話ですけれども、外交全体からいえば小さな出来事かもしれませんが、北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約、いわゆる北太平洋公海漁業資源保存条約、この条約の中の大きな目的である北太平洋漁業委員会の設置に関して、準備会合が九月十日から台湾の高雄で開かれ、そこで全会一致でこの委員会の事務局については日本に設置をされるということが決まったというふうにお聞きをしております。

 先回の通常国会のこの委員会の中でも、この誘致に関してしっかりと取り組んでいくべきだということを私は主張させていただき、その結果が出たということでもあります。特に、この条約は日本が先導して取り組んできたものでもありますし、地域漁業管理機関としては日本に設置されるのは初めての機会でもあるわけであります。

 この設置が決まりましたから、今後、この設置を受けて、まさに先ほどから出ている、大きな意味では民主主義とか法の支配とか、この太平洋地域の中でしっかりと価値観を共有していく、小さなことではありますけれども、こうしたことを積み上げていくことが積極的平和主義のまさに証左になるのではないかというふうに思っております。

 そこで、この設置に対する取り組み、設置後もまた日本が主導していくということであるでしょうから、今後の取り組みについてお伺いをいたします。

片上政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のとおり、北太平洋漁業委員会の事務局につきましては、本条約作成に当たってのこれまでの我が国の貢献を踏まえて、東京への設置が九月に決定されたところでございます。

 今後、条約の発効後に開催される第一回北太平洋漁業委員会会合で正式に承認されることになりますけれども、我が国としては、引き続き、北太平洋漁業資源の適切な利用の促進を主導するとともに、責任ある漁業国として、国際的な海洋資源の管理に貢献していく考えでございます。

小熊委員 ぜひこの取り組みを、この北太平洋漁業委員会だけではなくて、まさにこの積極的平和主義という、先ほど大臣と玄葉委員とのやりとりで確認した、そうしたしっかりとした普遍的な価値観のもとに、この案件だけではなくて、日本がこの地域においても世界においても、そうした価値観を広めていく、そこで、今回のこの条約の委員会設置のように、リーダーシップを発揮していくという、外交全体に広げていくことが、先ほどの大臣の積極的平和主義のまさに具現化につながるというふうに私は思います。

 そこで、この案件だけではなくて、まさにこうした案件の成功例を積み上げていくということをぜひ大臣においてはやっていただくことが、世界の皆さんに対しても、この積極的平和主義に関してはうがった見方がありますから、これに対する、まさに違うんだ、そういうことではないんだということの証左にもなりますから、ぜひ、外務大臣、日本の外交のリーダーシップとして、こうした成功例を積み上げていくべきだというふうに思いますが、御見解をお願いいたします。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国は、今後とも地域や国際社会の平和と安定そして繁栄のためにしっかりと貢献していかなければならない、こうした時代だと強く認識をしております。

 その中にありまして、御指摘の北太平洋公海漁業資源保存条約、これは北太平洋漁業資源の適切な利用を促進する責任ある漁業国として、国際的な海洋資源の管理に貢献する、こうした意味で大変重要な条約だと思いますし、その事務局が東京に設置されるということが決定したこと、これは大変重たいものがあると思っています。

 こうした具体的な努力を通じまして、先ほど申し上げました大きな貢献につなげていきたいと考えます。

小熊委員 ぜひ、この成功例を一つにとどめることなく、ほかの分野に関しても、世界の中での日本のあり方として、ぜひ努力を積み重ねていっていただきたいというふうに思っております。

 次の質問に移ります。

 先日の委員会でも触れましたが、河井前委員長を先頭に、この夏には私も視察団の一員として、ブータン、インド、ミャンマー、タイと訪問させていただきました。大変意義のある視察団でありましたし、河井委員長、また原田委員、あと公明党の佐藤茂樹委員、また副大臣になられた岸副大臣と大変メンバーにも恵まれまして、野党では私だけではあったんですが、大変配慮いただいて視察ができました。

 また、その際に、この間はブータンの話をさせていただきましたけれども、インドはデリーとバンガロールとムンバイに行って、いろいろな日系企業の方々、邦人の方々ともお話をしてきましたけれども、御承知のとおり、今、インドへの日系企業の進出は七百から八百ぐらいになっているとは思いますけれども、年々ふえていっているわけであります。

 その中で、あそこも州によっていろいろな、法律が違ったり、ルールが違ったり、税制もすごかったり、あと、言葉もそれぞれ違って、まさに混沌としているカオスの国だなというふうに思いましたけれども、またそれがパワーになっているという部分も感じてきました。

 このインドに企業が進出することに関してのリスクというものは、事前にわかるわけですね。税制がなかなか複雑である、州によっていろいろな取り決めが違う、言語も違う。でも、これは事前にしっかりと準備して支援をしていけばかなう問題でもあるんです。

 私、いろいろ考えて、インドに企業が進出する際の一番のリスクとは何だろう、これはちょっと逆説的なんですけれども、進出しないことがリスクだと思うんですね。今これだけ経済成長が著しくて、なおかつ、ほかの国がどんどん進出している。ここで日本がとるべき利益が失われているというリスクの方が大きいと思うんです。進出するリスクよりも進出しないリスク、これはしっかりと政府として後押しをしていかなければいけないというふうに思っています。

 今、企業進出はふえているということを、視察から帰ってきた後にインドの大使公邸でちょっとレセプションがあったので、私も参加していろいろな状況も聞きました。

 年々ふえてはいるんですけれども、特に気になったのはバンガロール。これはインドのシリコンバレーというふうに言われていながら、さまざまな製造業の方々も言っているんですけども、人材を集めるのが大変だと、普通の製造業は。ところが、IT企業は、特にソフト分野はすごい人材が集まるというんですよ。五十人募集しようと思ったら何百人も応募がある。

 ところが、ここにソフト関連の日本企業が行っているというのは、我々が会ったのは本当にソニーさんだけだったり、びっくりしたのは、IBMの企業の全世界の社員の三分の一がそこにいると聞いたり、もう欧米各国はバンガロールにかなり進出しているんですよ、ソフト分野は。日本はここが非常に少ない。

 河井委員長からもいろいろ御指導いただきましたけれども、森総理のときからこれをやるべきだということでやっていたのに、結局、数年後に我々が行ってみたら進出していなかったという事実に驚愕をいたしました。特に、このバンガロールのIT分野への企業進出がおくれているということを実感してきたわけであります。

 そうした背景を踏まえながら、この企業進出に対する支援策についてお伺いをいたします。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 先生は御自身でインドをお訪ねいただいたわけでありまして、私より多分詳しく御存じだと思います。

 釈迦に説法でございますけれども、御指摘のとおり、インドは十二億人という人口を抱えておりまして、近年、若干伸び悩みの感はございますけれども、それでも依然として五%程度の経済成長、実績を上げておりまして、日本企業にとって非常に有望な市場であるという、これはもう間違いございません。

 我が国の企業がインドに進出しておる数をちょっと調べてみましたら、一年前の数字で恐縮でございますが、九百二十六社でございます。ことしの数字は間もなく出てくると思いますけれども、毎年ほぼ百社ふえているというような状況でございまして、それでもまだまだこれは拡大の余地はあるんだろうというふうに考えておるところでございます。

 そうした認識のもとに、我が国の企業の進出をやりやすくする。これは、あらゆる機会を通じて、さまざまなレベルでインド側に対する働きかけも行ってきておるわけでございますが、岸田大臣も、ことしの三月に、向こうの外務大臣に対しまして、インドにおけるビジネス環境の整備について一層努力してくれという要請をしたところでございます。

 特に委員からも御指摘ございました税制とか、それから外資規制の緩和、それから金融関係、これも規制がございまして、もう少し日本を含めた外国企業が進出しやすいような全体としての環境整備、これをぜひ早くやってほしいという話をしてございます。

 それからもう一つは、ODAを通じた協力で、これはインフラの整備を通じて日本企業を側面からといいますか、もちろん、インド自身の成長、発展に資するということがあるわけでございますけれども、我が国の企業にとりましても仕事のしやすい環境づくりに役立つであろうということで、これも御承知だと思いますが、特に貨物専用鉄道、ムンバイ―デリー間、これは大きなプロジェクトでございますけれども、こういったインフラ整備等を通じて日本企業のインド進出に資するように努めているところでございます。

 今後とも、これらの努力を複合的に行っていくことによりまして、さらに一層、日本企業がインドに進出しやすいような環境づくりに積極的に努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。

小熊委員 時間ですので、残余の質問は午後に移します。

 ありがとうございます。

鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時三十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時四十四分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小熊慎司君。

小熊委員 午前中に引き続きまして、インドの件ですけれども、副大臣の答弁があったとおり、企業進出が大変伸びているところではありますが、午前中にも言及させていただいたとおり、我々視察をしたバンガロール、これはITの先進地で、大変各国の企業も集まっている中で、ほかの製造業は、まあまあバンガロールに日本企業も行っているんですが、せっかくのITの頭脳が集積している地域であるにもかかわらず、日本のそうしたITのソフト関連産業が出ていなかった。

 日本政府としてもここは取り組みを従前からしていたはずなのに、それが顕著に数字として出ていないという実態を見て、先ほど、午前中では、出ていくリスクより出ていかないリスクを日本経済、日本の企業自体が負っちゃっているなというのを本当に実感して、これはまずいなという思いをしてきました。

 この点に絞って、再度お伺いいたします。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 先生に午前中御質問いただいて、慌ててちょっと実態も調べてまいりました。

 この地域、御指摘のとおり、IT関連の環境として非常に整っている。インドの方は数学が得意なのかどうかわかりませんが、非常にIT関係で有能な方が多いというふうにも伺っております。

 ちょっと調べてみましたら、日本からこの地域、バンガロールに進出しております企業のうちで、実はIT関係の会社は六社ございました。その規模がどの程度なのか、ちょっとそこまで調べがつかなかったんですけれども、多分、それなりに日本のIT関連の企業も関心を持ってこの地域に進出するなり、あるいは注視をしておるというのは事実であろうというふうに思っております。

 ただ、こんなことを申し上げるのもなんですが、やはり最終的には企業の判断で進出されるかどうかということでございますから、我々はその進出される企業に対して側面から支援申し上げる。例えば、制度面とかで何か課題があるのかどうか、それについては調査を行ったり、あるいは申し入れを行ったりしてまいりたいというふうに思っておりますし、また情報提供をして、進出希望といいますか、意欲のある企業に対しての支援を引き続き行ってまいりたい、このように考えている次第でございます。

小熊委員 支援の制度とか、そういう部分は実は足りているのかもしれない。もちろん、日本の企業がどんどん海外に出ていって、国内が産業空洞化しても仕方ない話なんですけれども、ただ、世界のこうした趨勢を見ると、しっかり世界経済に食い込んでいって、逆にパイが大きいところを獲得していくことによって国内の経済も潤っていくということ、また、それを各国やっています。

 あと、やはり、感覚的ですけれども、どこの地に行っても、中国はもちろん大きい国で、人口も大きいんですけれども、韓国のプレゼンスも、人口は半分しかいないのに、やはりこのアジア地域というのは多くて、考えると、日本は本当に大丈夫かなというのがあります。

 今、副大臣、いいことを言いました、意欲のある企業。実は、その意欲すらも出ていないんじゃないか。日本人は内向きと言われますけれども、企業自身も内向きなのかもしれないですね。

 これはきょう答えが出るわけじゃないので、もう一度企業の進出支援を洗い出ししながら、企業意欲がなぜ出ないのか、これは企業文化によるところで政治が関与すべきじゃないかもしれませんけれども、そうした背景もしっかり分析をしていかないと、せっかく政府として制度をつくる、条件を整えても、それを利用してもらわないのであれば、こうした世界の利益を日本の利益に変えていけない、また、日本の力も世界で発揮を、還元をできないということになってきますので、そうした部分までちょっと踏み込んで今後分析をして、対策をとっていただきたいというふうに思っております。

 次に移りますけれども、また、ミャンマーの方にも行って、ミャンマーはこれからですけれども、もちろんインドと違ってカントリーリスクがあります。

 とりわけ、やはり言っていたのは、この後の総選挙で政権交代した場合にどうだろうというのは、日本だけではなくて、ほかの国も、新しく民主化をして各国も注目はしていますけれども、私自身がメディア等で触れた、ほかの国がどんどん進出していますよという感じも意外となくて、インフラ整備のおくれもあるんですけれども、各国まだちょっと様子をうかがっているというのはあります。それは、いろいろな条件整備が整っていないからというところがあるんですけれども。

 とりわけ、ミャンマーでの問題というのは、まさに知財の部分なんですけれども、商標や著作権といったものが、海外のものを国内で認めていないという、ちょっとミャンマーの法的な問題がありますから、そうした部分について着目しながら、どうミャンマーに進出していけばいいのか。また、地価の高騰もあって、在外公館の職員さんなんかもアパートを借りるのに本当に大変だというのもありました。

 そういったこともありますけれども、そういった点を踏まえて、それでも、これからの国ですから、そこに大きなチャンスはありますので、このミャンマーに対しての企業進出の支援について改めてお伺いをいたします。

岸田国務大臣 まず、ミャンマーにつきましては、今、ミャンマー国内におきまして、民主化ですとか法の支配、さらには国民和解また経済改革、さまざまな改革努力が続けられています。まず、我が国としては、こうした改革努力をしっかり支援していきたいと考えています。

 あわせて、ミャンマーは、今世界じゅうから注目をされ、これから生産拠点として、また市場としても大きな可能性があると認識をしています。ぜひ、ミャンマー自体の持続的な発展と、そして日本経済がともに資する、こうしたウイン・ウインの形を実現できるような経済協力、関係強化を図っていかなければならない、このように認識をしております。

 こうした認識のもとに、具体的には、まず、経済関係全般の促進ということで、五月には、安倍総理がミャンマーを訪問させていただきました。そして、九月には、ミャンマー外相と外相会談も開かせていただきました。全体の協力関係をしっかり確認する、さらにはODAによりましてインフラ整備あるいは人材、さらには制度整備、こういった支援を特に中心に行っております。

 また、日・ミャンマー共同イニシアチブ、これは現地の大使館においての枠組みでありますが、こうした枠組みを通じまして投資環境整備に関する協議を現地で行っているとか、さらには、二国間の投資協定の交渉も進めておりますし、現地大使館におきましても、日本企業の支援ということで、さまざまな相談に応じている、こうした具体的な対応を進めているところです。

 こういった対応を通じまして、ぜひ、ミャンマーの持続的な発展と我が国の経済に資する、この二つの目的をしっかり果たしていきたいと考えています。

小熊委員 まさに大臣の答弁は制度支援といったものですね。まさに、先ほど御指摘させていただいたとおり、商標とか著作権とか、ここが非常におくれている国でもありますし、そこで日本企業が進出しても、不利益をこうむることも想定をされますし、また、午前中の質疑であったとおり、民主主義とか法の支配とか、こうした共通の価値観、世界の普遍的な価値観のもとに積極的平和主義を進めていくという観点からも、ミャンマーに対する制度的な支援といったものは、まさに必要だというふうに思っています。

 ぜひ、そうした観点で、ミャンマーにおける日本のプレゼンスを上げていけるように、これから努力していただきたいと思います。

 特に、やはりインドとミャンマー、ブータンもそうでしたけれども、こっちの太平洋側というか、こっち側のアジアの国とまたちょっと違った国情、雰囲気はあるんですが、いずれにしましても、このアジア地域の中で、別に敵視するわけではありませんが、中国、韓国という大国というか、発展した国がある中で、それぞれの国が、やはりそれらの国の中でいろいろな活動をしている、進出をしている中において、日本に対する期待というのが非常に大きいわけであります。

 そういう意味では、これはもっと、遠慮せずに、今度大臣はインドへ行かれるんですよね、ぜひ、こうした南アジア地域への対策というのは、今以上にとっていっていただきたいなというふうに思っております。

 続きまして、前回の通常国会でもちょっとやったんですが、オーストラリアについて、大臣は行きましたけれども、総理、ぜひオーストラリアに早く行った方がいいという話もさせてもらいました。

 この九月には政権交代もしました。これまでのオーストラリアの前政権は、どっちかというと、対日的な政策は、より中国を重視していたのかな。あと、私も若手議員交流プログラムで訪れたときに、各党、グリーンズまで含めて、小さい政党まで含めて、捕鯨の話もしましたけれども、非常に厳しい意見を聞いてきた中ではありますが、新しい政権下においては、また違った日本に対する意識を持っているなというふうに私自身思っています。

 政権交代をしましたし、また、先ほど言った、太平洋地域は、アジア地域だけではなくて、オセアニア地域との連携をどうとっていくかということが、この太平洋地域全体の平和と繁栄を構築していくという意味では、やはりこの地域、オーストラリアを中心とするオセアニアというのは非常に重要な地域になってきます。

 そこで、政権交代されたオーストラリア政府、新政権との連携強化についてお伺いをいたします。

岸田国務大臣 オーストラリアとの連携強化についてですが、まず、日本とオーストラリア、まさに基本的な価値あるいは利益を共有する戦略的パートナーであります。

 そして、委員御指摘のように、太平洋島嶼地域を含むアジア太平洋地域に対して大きな役割を豪州、オーストラリアは果たしております。我が国を取り巻く戦略環境、今変化し、そして厳しさを増す中にあって、このオーストラリアとの協力関係を一層強化することは大変重要なことだと思っています。

 そして、御指摘のように、あれは九月ですか、アボット保守連合政権がスタートしました。

 新しい政権との関係ですが、九月にスタートしましてから、私も、ニューヨークそして東京で、二度、ビショップ新外務大臣と日豪外相会談を行いました。そして、ブルネイにおきまして、日米豪、アメリカのケリー長官も含めて、三カ国で外相会談を行いました。そして、十月九日には日豪首脳会談も行いました。九月にスタートしましてから一カ月の間、毎週のようにトップレベルでの意思疎通を図ってきた、新政権との関係を確認してきた、こういったことを積み重ねてきました。

 ぜひ、こうした新政権との間で、日豪関係を新しい段階に引き上げる、そういった意気込みでしっかりと関係を深めていきたい、このように思っています。

 安全保障面はもちろんですが、日豪EPA、TPPあるいはRCEP、こうした経済連携につきましても、しっかり関係を強化しなければなりません。また、青少年交流を含めた人的交流につきましても、これはオーストラリアの方でも新コロンボ計画という計画を打ち出しておられますが、我が国もしっかりと人的交流、青少年交流、実績を上げていきたい、このように思っています。

 こういったことを積み重ねて、ぜひ戦略的パートナーシップを強化していきたいと考えています。

小熊委員 そのためには、先回の国会でも御提案申し上げましたけれども、こうした地道な取り組みをしながら、ただ、今ほど大臣からも出ました、TPPの参加国でもあり、まして、今また交渉しているRCEPの参加国でもある、こうした点も考えて、また安全保障上の重要性も考えれば、先回から再三申し上げているとおり、やはり総理のオーストラリアの訪問を果たす時期がもう来ているのではないかな。政権が交代したばかりですし、スタート時に行くということが、日豪の関係強化に、まさに象徴的にもなる。

 地道な積み重ねも大事ですよ。総理は結構外交を一生懸命やっていますけれども、ここが抜けているわけですよ。これは、オーストラリア側からいえば、そこまで来ているのに何でこっちに来ないのと本当に言っていましたよ、五月に行ったとき、オーストラリア政府の方々が。

 やはりこれは本当に早急に御検討いただきたいというふうに思いますし、いろいろな機会でほかの我々の仲間も、きょうは阪口委員も本会議場で言いましたけれども、政府の外交日程の足を引っ張るような国会運営は我々は望んでいないんだ、どんどんちゃんとやってくれという立場でもございますので、ぜひ総理のオーストラリア訪問、大臣、どうでしょうか。

岸田国務大臣 まず、答弁に先立ちまして、先ほど、日米豪三カ国の外相会談、ブルネイで行ったと申し上げたようですが、実際はインドネシア・バリで行っておりました。ちょっと訂正させていただきます。

 その上で、今の御質問ですが、総理のオーストラリア訪問、戦略的パートナーシップ関係にあるオーストラリアを訪問するということは大変重要なことだと認識をしています。

 実際、記録を見てみますと、二〇〇七年に、当時の安倍総理がシドニー・APEC出席という形で訪問しておりますが、二国間訪問としましては、二〇〇二年の小泉総理までさかのぼるということであります。

 こうした大切な二国間関係を考えますときに、我が国トップの訪問をぜひ実現したいと思います。さまざまな日程調整が必要かとは思いますが、ぜひ可能性は追求したいと思います。

小熊委員 岸副大臣も、議員になる前に、民間人時代にオーストラリアで仕事をしていたという話も聞いていますから、兄弟で行ったらまた盛り上がるんじゃないかなと思いますので、ぜひ早急に具体化をしていただきたいというふうに思っています。

 次に移りますけれども、いわゆる国連改革であります。

 まさに、今回私が視察に行った国々でも、インドもありましたけれども、常任理事国入りとか、こうしたことを、どうだと、ブータンの国王からも、ぜひそれは支援したいというような話も私たちいただきました。

 それはそれとして、一方で、国連の職員の日本人の数が、お金を出している割には、金を出しているから全ていいというわけじゃないんですけれども、各国と比較しても非常に少ないという中で、これからの外交を考えれば、政府のあり方と、あと国連との連携という意味でも、これはもっともっと増員をしていかなければいけないというふうに私は考えます。そうした御意見を提言しているのも、数々の機会にほかの委員からもあったというふうに思います。

 改めて、国連職員の日本人の増員の取り組みについてお伺いをいたします。

石原大臣政務官 小熊委員にお答え申し上げます。

 まず、国連で働くことを希望する若手日本人を政府の負担で国際機関に派遣するジュニア・プロフェッショナル・オフィサー、JPOの派遣制度を今実施しているところであります。

 次に、国連で働くことを希望する日本人に対し、国際機関への就職に役立つ情報の提供や、国連のポストに応募した際の面談のアドバイス、そういう支援を行っております。

 また、さらに、潜在的な候補者の発掘や育成のために、社会人等を対象とした採用試験対策の実施等を外務省の方で支援しているところであります。

 政府としては、国連で働く日本人職員をふやすために、引き続き努力を行ってまいります。また、同時に、国連との対話、連携を一層強めてまいりたいというふうに考えております。

小熊委員 JPO、今言及がありましたけれども、これが結果が出ていないんですね。その研修が終わった後に正式に採用されている人が、結果が出ていないんですよ。だからこの問題を提起しているんですね。今までの取り組みではだめなんですね。

 最近、正職員になってくる、専門職になってくるのは若干ふえつつあるんですけれども、今の若手を見ると、今後、二十年後とか三十年後を見ると、減っちゃうんですよね、多分、上級職に上がっていく人たちのパイが小さいですから、今入っている人たちの。近年、JPOの後で正職員になっていくのも減っているんじゃないですか。特段の効果が出ていないと思うんですよね。

 そこを変えていかないと職員数はふえていきませんし、今の若手の職員を見ていくと、これから幹部級に育つそのもののパイが小さいんですよね。先細りしていくなということがもう予想されているんですね。これは喫緊の課題だと思います。

 本当に今真剣にこの対策を打っていかないと、金だけ出して、何もならない。日本のために国連に金を出しているんじゃなくて、世界の平和のために出しているんですけれども、これがうまく回っていかないということになってきます。

 JPOのあり方も、これは二年ですよね、二年から三年に引き上げるとか、そこからの橋渡しをどうするとか、そこまで含めて踏み込んだ改革が必要だと私は思いますけれども、改めてお願いします。

石原大臣政務官 本制度が始まった昭和四十九年から平成二十四年までの累計で、約千三百五十名の派遣をJPOとしてしております。毎年大体三十名程度を新規派遣しているんですが、JPOの経験者のうち、おおむね五割から七割が国際機関に採用されて、現在、七百六十四名の国連関係機関日本人職員のうち、三百三十名がJPOの経験者であります。

 小熊委員御指摘のように、JPOの人が採用が減っているのかというのは、ちょっと、済みません、私、調べていないんですけれども、必要があれば御報告をさせていただきますが、国連での勤務というのは、高い語学力と専門知識が必要とされることや、数年ごとに、空席になったポストを渡り歩いていくような雇用形態であるものですから、なかなか難しい面があって、また、固まって務めた方がだんだん退職をするようなタイミングとかにもなっている中で、全体的に日本人の国連関連の職員数がふえていないという現状があります。

小熊委員 私は、ここにいろいろな対策が必要だと思うんです。

 二つあって、JPOの応募も減っているというふうにちょっと伺っているんですけれども、そういう意味では、中高生の国際理解教育といったものもしっかりしていくということが必要でしょうし、国内における国連の役割を、そこで一生懸命働いている日本人たちのことももっとどんどん伝えていくことによって、日本人に、そこにやりがいを見出すような、青少年に、そこに志を見出せるような、夢を見出せるような、そうした教育分野での啓蒙というか働きかけも必要だと思います。

 また、JPOの終わった後に、出口の部分がなかなかマッチングしていかないということもありますから、ここの改革もやはり必要だというふうに思います。

 外務省の中に、国際関係機関の幹部職員になる選対委員というのがあるというのを最近知ったんですけれども、外務省に選対委員があるというのもなかなかすごいなと思ったんですが、であるならば、幹部職員の対策だけではなくて、そこに行くまでに、そういう国連職員になって経験を積んでいくということも必要ですから、やはりまず、国連職員をふやす、実際的にふやしていく、本当にここはシビアに対策をとっていくべきだというふうに思っています。

 一朝一夕にはこれは結果は出ませんけれども、ぜひこうした増員に向けて本気で取り組むことが、今言った積極的平和主義、外交のまさに具現化の一つだというふうに私は思いますし、国連はまた日本の政府とは別なんですけれども、こうした国連の職員と外務省の職員との連携をしていくことで、そうした積極的平和主義といったものがまさに達成していくというふうに思います。

 単純に日本人をふやせふやせと就職活動のために私も言っているわけじゃないんですよ。日本の目指すべき外交の方向性、午前中、玄葉前大臣と現大臣の本当にすばらしい質疑、それを、では具体的に実行していく上での一つの方策としてこうしたことが必要でしょうということで、これは、日本の政府の取り組みというのを今後しっかり行っていただきたいというふうに思いますし、これは数字であらわせるわけですから、ぜひふえていくようにお願いをして、次に移ります。

 次は、大臣の所信にも、「ODAを戦略的に活用します。」私は、何回も言っていますが、ODAはもう倍増してもいいというふうに思っています。玄葉前大臣のときに、私は参議院のときにこれを質問したら、ちゃんとV字回復しましたと。金額的にはV字ではなくてプチ回復ぐらいなんですけれども、下がっていたのがちょっと上がったというのはよかったというのはあります。

 ちょっと退席しましたけれども、松本大臣のときに、ちょうど震災のときでしたから、私はあの判断はよくなかったと思うんですね。ODAの予算を補正で減らしたんですね。

 私はそのときODAの参議院特別委員会の委員でしたから、有志一同で、これを減らすな、震災があったとしても、これはチャリティーじゃないんだ、減らさないで、しっかり予算は確保していかなきゃいけないという署名をして、本当に残念なあれでしたけれども、当時の参議院のODAの委員長は、この間、亡くなられました中村博彦議員でありました。中村議員を先頭に、官邸に提言書を持っていったんですね。

 そのとき、私も福島県で被災地の一つですから、すごい抗議の電話も来ました。震災が起きて困っているのに、何で海外に金を出すんだと。でも、チャリティーなら出さなくてもいいんですが、これはそうではないんです。世界の利益、日本の国益ということを考えれば、ODAというのは無駄なお金じゃないし、逆に、日本が災害にまみれようとも、日本の発展、世界の発展を考えれば、これは減らすべきじゃなかったんですね。

 あのとき減らしてしまったあの判断は、日本人全体に、やはりそうだ、ODAはチャリティーなんだから減らして当たり前だというような印象を与えてしまった。実際、そういう発想から、抗議の電話、ファクス、本当にお叱りの意見がいっぱい来ましたけれども、ここはやはり、日本人全体にODAのあり方というのはまだまだちゃんと理解されていないなということがあります。

 なおのこと、今、ODAの予算は、ひところから比べれば、プチ回復をしたとはいえ、全然足りていないわけでありますから、特に来年度のODA予算は、今要求している段階で、要求ベースでどのぐらい回復しているのかお聞きをいたします。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 確かに、先生のおっしゃるとおり、実は一九九七年がODAの予算のピークだったんですね。以降、十六年間で約半減しております。

 今、若干下げどまっているというお話がございましたが、まさにそのとおりでございまして、二十五年度の予算では、ODA関係で実はプラス〇・七%だったんですね。来年度、我々としてはこれを大きく回復させたいというふうに思っておりまして、一一・七%増の要求をさせていただいておるところでございます。

 いずれにしましても、ODAというのは、日本の外交手段、ツールとして非常に大きな役割を果たすものでございますし、この使い方も、日本再興戦略というのがございますが、その中に三つ書いてございます。

 一つは、経済分野での国際展開の支援、これは、民間企業が海外に展開していく場合に、典型的なのはインフラの整備とかODA等のマッチングといいましょうか、両方で、日本の企業が進出しやすいように、またその相手国にとってもメリットがあるように、しっかりとこれを支えていくというのが一つ。それから、好ましい国際環境の構築、抽象的でございますけれども、いろいろな面で日本もお友達が欲しいわけでございますので、そういう面での役に立つツールでもございます。最後に、人間の安全保障の推進。この三本の柱を目指してODAを活用させていただくということを考えております。

 今後とも、必要な予算が確保されるように、ぜひ先生も御支援のほどよろしくお願い申し上げたいと思います。

小熊委員 私は本当に、極端に、もう倍増してくれというぐらい言いたいです。そのぐらいやらなきゃ、もうこれまでのおくれは取り返せないと思います。

 あと、今、さまざまな国が被支援国から逆に支援国になってきている現状もあります、特にこのアジア地域は。そういう意味では、一日の長がある日本が、被支援国から今度は新しく支援国に変わるそうした地域に、そのリーダーシップを発揮するという意味でも、これはやっていかなければいけません。

 あと、やはり、いろいろな海外視察をしたときに、特にJICAの、私の家内もOBなんですけれども、青年海外協力隊の職員が現地で頑張っている。それは、いろいろな技術を教えたり、教育に携わったり、いろいろ開発をしたりということなんですけれども、でも、どの国の人としゃべっても、どういうところが日本はすぐれているか、技術とかじゃなくて、日本人として普通に生活している姿がすごいと言うんですね。

 となると、外務省の皆さん、済みません、下手な外交官や我々議員が行ってその国の人と仲よくするよりも、そうした普通に真面目な青年たちが、その国で偉業をなし遂げているわけじゃないんだけれども、普通に生活をして、その国の中で働いている、ボランティアをしているということだけで日本のプレゼンスがすごい上がっているなというのを感じました。

 これは、JICAの支援も含め、ODA全体、もちろん無駄なものは、効率の悪いものは考え直さなきゃいけませんけれども、これを倍増することによって、一一%なんて言っていないで、倍を要求したら五〇パー上がったぐらい、そんな甘くはないとは思いますが、そのぐらいの勢いでやっていく、それだけの意味があると思います。

 私は、ほかの国の国際協力支援よりも、どの国よりも私は日本の国際支援はピカ一だと思っていますから、これはどんどんやってください。予算要求もどんどんやって、それはもう党派を超えて支援したいと思いますので、今回は予算要求は終わっていますけれども、ぜひ来年、政権がどうなっているかわかりませんが、また大臣が引き続いていれば、鉛筆をなめて、もうちょっと大きい数字を書いてやっていただくことをお願い申し上げて、また次に移ります。

 ちょっと時間が迫ってきましたので。

 この後、実際の質疑に入りますが、ちょっと確認をしておきたいので、日本とトルコの原子力協定についてなんですけれども、今回、この国会に、委員会にはまだあれですが、アラブ首長国連邦との、二つありますが、特段、この二つの国の協定の違いは、トルコとの場合は八条、UAEは九条、いわゆる再処理の部分に対する規定の部分がこれは大きく違っています。

 このトルコとの協定の八条について御説明をお願いいたします。

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 日本とトルコの原子力協定の八条におきましては、協定の対象となります核物質につきまして、「両締約国政府が書面により合意する場合に限り、トルコ共和国の管轄内において、濃縮し、又は再処理することができる。」というふうに規定されております。

 これは、すなわち両締約国政府が合意しない限り濃縮または再処理されないということでございまして、この文言につきましては、トルコ側の事情やトルコの原子力政策等も踏まえまして、両政府間の交渉の結果、合意されたものでございます。

小熊委員 UAEの方は合意された議事録はあるんですね。トルコの方はないんですけれども、これは何でですか。

広瀬政府参考人 御指摘のとおり、アラブ首長国連邦との原子力協定には、合意議事録及び交換公文がございます。

 一般的に申し上げますと、条約の締結に関しまして、条約の解釈や運用の細目等に関する了解を記録にとどめますために、条約とは別に合意議事録や交換公文が作成されることがございます。

 トルコにつきましては、合意議事録や交換公文等の内容、特に合意議事録についての内容でございますけれども、協定の本体の方に書き込めるところは書き込んだ、その結果、条約とは別に合意議事録や交換公文が作成されていない、かような状況でございます。

小熊委員 UAEの方の議事録を見たんですけれども、これも協定と重なる部分もあるんですが、丁寧につくっているわけですよ。その前のヨルダンのものもちょっと見てみたんです。これは外務省のホームページにもちゃんと堂々と載せているんですよね。それを見たって、織り込んでいるんだけれども、あえて議事録をちゃんと残しているんですよ。

 特に、今回のトルコは、八条については、その背景から何から含めてこれは議事録をつくってもらわないと、協定に織り込みましたというレベルの話ではないというふうに私は思いますし、特に問題をはらんでいるのにつくっていないということは、邪推と私は言いたくないんですけれども、何かやはり片腹痛いんだろうということを推測せざるを得ないんですよね。堂々とつくればいいんですよ。

 だって、ほかのものの議事録を見ると、重なっていますよ。重なっていれば要らないんじゃなくて、重なっていてもつくっているじゃないですか、ほかの国とのは。

 なおかつ、トルコから言われたとしても、大臣は与党の会合の中でも絶対日本は書面にサインしないと言っていますが、だったら、交渉の中でUAEの九条と同じような条文にすればよかったんじゃないんですか。

広瀬政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしましては、協定の対象となる核物質のトルコ国内におきます濃縮、再処理を認めるつもりはございません。この考えにつきましては、日・トルコ原子力協定の交渉の過程におきましても、トルコ側に伝達してきているところでございます。

 いずれにいたしましても、濃縮、再処理につきましては、協定上は、両締約国政府、すなわち日本とトルコの両政府が合意しない限り濃縮または再処理されないということでございます。

小熊委員 トルコがそれを入れたいということは、再処理したいから入れたいんですよ、日本はしないと言っていても。する気がなかったら、ほかのものと同じになるじゃないですか。これは、やはり譲歩したんですよね。

 大臣がサインしないというんだったら、条約そのものを、再処理しないということにしておけばいいじゃないですか、両国の書面上の合意があればなんということをやらずに。トルコはやりたいから入れてくれと言っているわけでしょう。やはり、それは認めちゃいけなかったんですよ、大臣はサインしないといろいろなところで言っていますけれども。

 逆にこれは、この後、禍根を残すと思いますし、私がトルコ政府の側だったら、やりたいという思いがあるということを仮定すれば、折に触れ、サインしてくれサインしてくれと来ますよ。サインしないと言うしかないんでしょうけれども、ではこの案件をやってと、逆に駆け引きにされたりもするんじゃないかなというふうに、外交カードを与えてしまったなというふうに思います。

 大臣、サインしないというかたい意思があるんだったら、条文そのものが、そんなことを書く必要がなかったんじゃないですか。大臣、どうですか。

岸田国務大臣 まず、協定の条文そのものにつきましては、それぞれの協定を締結する国との交渉の中で一つ一つ積み上がっていくものだと存じます。

 今回、御指摘の点につきまして、トルコにおいてはそうした規定が行われていないというのは、そういった条約を積み上げる過程の結果だと考えています。

 いずれにしましても、これを認める際には、両締結国が書面をもって認めなければならない、こういった形には間違いなくなっております。書面を通じて改めて認めない限りは、こうしたことは実現しない。我が国は認めることはないと考えておりますので、実質的には我が国の思いはしっかり実現できると考えています。

小熊委員 だから、そこまでかたい意思があるんであれば、交渉でもここは絶対的に譲れないところだったと思うんですよ。まして、唯一の被爆国である日本がですよ。

 トルコはやりたいわけですから、だから入れろとなっているんですから。ほかの国は求めてきていないから再処理しないとなるわけですよ、ほかの条約を見ても、条文を見ても。

 ここの部分で、それは、今後の政権がどうなるかわかりませんけれども、未来永劫、外務大臣が署名しない、時の政府が書面に合意をしないと言っても、可能性を示してしまったということが私は大きな問題だと思っているんですね。

 ここは、そこまで、署名しないと確固たる意思であるんだったら、最初からそういう条文にしない方がいいんですよ。そこは交渉の過程でも譲っちゃいけないことだったと思うんですよね。

 今後、それが、本当に、サインをしないことの事実の積み上げがずっといくのかもしれませんけれども、ここ、可能性をゼロにできなかったということは、日本の外交上、これは大きな禍根を私は残したというふうに思います。

 そこまで強い、かたい意思があるんであれば、交渉の過程でも私は譲っちゃいけない条文だったと思うんです。大臣、再度お願いします。

岸田国務大臣 御指摘の点につきましては、そういった考え方、そういった懸念につきまして、しっかり受けとめさせていただきたいと存じます。

 しかしながら、この問題につきましては、先ほど申し上げましたような積み上げによって条文ができました。そして、実際これを可能にするためには、書面を通じて両締結国が認めない限り実現しない形にはなっています。

 そして、その一方の締結国であります日本の外務大臣がこうした国会の委員会の場ではっきり申し上げているということは、重たいことではないか、重く受けとめていただきたいと考えております。

小熊委員 私、世の中に絶対はないというふうに思っていますから、これは、だから、そこまで強い意思があるんであれば、交渉の過程でそんな条文にしなきゃよかったでしょうという話なんです。

 これは、利益をとるために、ひよったんですよ、トルコに。いろいろなところは押したり引いたりありますけれども、でも、ここの部分はやはり、私は、日本としては、駆け引きの中で、交渉の中で譲歩しちゃいけない、まさに、私の地元に、ならぬことはならぬという言葉がありますけれども、これを貫くことが、日本の今までのさまざまな歴史的背景を含めても、象徴的な条文だったんじゃないかなというふうに思っています。

 大臣がそこまで、言葉は重たいと言いますけれども、そんなんだったら、もっと手前でやっておかなきゃいけなかったんです。

 この後の質疑、協定の質疑の中でまた再度やりますけれども、ぜひ、そういうところは大変問題があるということを指摘して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、杉本かずみ君。

杉本委員 外務大臣、連日、大変重責のところ、お疲れかと思いますし、改めて、けさほどの玄葉前大臣とのやりとりを聞かせていただき、また、今いらっしゃいませんが、元外務大臣の松本筆頭もいらっしゃいます。

 ちょっと客観的に申し上げると、与野党に外務大臣の経験者がいらして、そして質疑をしていただくということは、私が、政治に参画させていただいておりますけれども、かねてから願っておりましたイギリスのシャドーキャビネットのような、それが実質的に、大臣の仕事をされた方がある意味で厳しく見ているというような形で日本の国会が機能をし始めているということは、大変喜ばしいことであり、また、今後もこういった形での、重たいポストをいろいろな方が経験され、そして御苦労も大変多いこともシェアされていると思いますので、そういった国会であっていっていただきたいとお願いを申し上げます。

 その上で、安倍総理も岸田大臣も、よく法の支配というお言葉をおっしゃいます。先ほどの質疑等でも、基本的価値観を共有する国々というようなことでお話がございました。国際的には普遍的価値ともいうかと思っております。

 この法の支配、きょうは質問はいたしませんけれども、法の支配という概念は、やはりあくまでも立憲主義という理解であっていいというふうに私は思っておりますので、直近、審議に入りました特定秘密保護法において、保守本流の岸田大臣にあられては、やはり今後、与野党の修正協議等も入っていくかと思いますけれども、例えば、アメリカの秘密のランクは、トップシークレットとシークレットとクラシファイドがあったかと思いますし、また、アメリカにおいては、公文書館の保全監察局等の存在がきちっとあるというような機能がある中での秘密保持という流れであるということを十分御認識いただく中で、内閣の一員として、ぜひさらに御活躍をいただきたいとお願い申し上げます。

 少しここのところのニュースを見ますと、やはり昨晩だけでも地球は回っていて動いているなというふうに感じております。

 ECBは、〇・五から〇・二五に基準金利を引き下げました。アメリカのGDPが発表され、七―九の数字は年率換算で二・八パー、市場の予測は二・〇ということで、これは前期比でございますけれども、そういった形で、若干、予想より上回ったりする中で、また個人消費は、予想一・八のところを一・五に下振れというような状況で、アメリカの経済もヨーロッパの経済も若干怪しくなってきている感じがあります。

 また一方で、日本は、たしか何かの指数が発表がありましたけれども、好調な数字が出ているやに聞いていますが、懸念されるのは消費税の駆け込み需要といったところなのではないかという危惧も少し私は持っております。

 そんなことで、世界が動いている中で、内閣府が行った調査によると、北方領土問題に対する世論調査の結果発表で、問題の存在を知っていると答えた方が何と八一・五%まで上ったということで、前回調査、二〇〇八年の二・三ポイント増ということで、微増という報道にはなっていますけれども、日本国内の方々にもかなり御認識をいただいているんだなということを北方領土問題について感じさせていただいています。

 るる申し上げて恐縮なんですが、冒頭、ちょっと細かい話を、これは質問の順序を変えて申し上げたく存じます。

 実は一昨日、またいらっしゃらないんですが、松本筆頭も幹部のお仕事をされていますが、ボーイスカウトの議員連盟というのがございまして、その世界大会、世界ジャンボリーに向けて、日本に今回、各国のボーイスカウトを支援する議員の方々がいらっしゃって、一昨日には首相官邸で歓迎レセプションが行われまして、安倍総理も御出席され、御挨拶もされました。

 そんな中での小さなやりとりなんですけれども、どこの国のどなたとは申し上げませんが、ある大陸の方が私に、実は、日本に来たので、三、四日いる、それで、ぜひ日本の車を買いたいんだけれどもどうしたものかな、こう言われました。私は、そこの場には外務省の方がいてくださるのかと思って事務局に聞いたんですが、残念ながら、文科省の方しかいらっしゃらなかったという状況がございました。

 利益供与だったり便宜供与などというのを望んでいるわけではないんですけれども、ちょっと私には十分な情報がなかったですし、そういったことに対して、各国の要人である国会議員に対して、あるいは、そういった方に限らずですけれども、日本ならではのおもてなしではありませんけれども、外務省さんがきめ細かく対応することによって、各国の要人から日本の評価を上げていただいて、日本のプレゼンスを高めていただく、そんなことをしていただく必要はやはりあるのではないかと感じました。

 ちょっと僣越であるし、それはどうかという御意見もあるかもしれませんけれども、ぜひともそういったアコモデーションというか、テークケアというか、あるいはヒューマン・クオリティー・マネジメントなのかもしれませんが、そういったことも意を配っていただきたいとお願い申し上げます。

 それでは、質問の中で挙げさせていただいた、またこれは細かい話なんですが、小熊さんからはJICAの予算増について話がありましたけれども、さらにおりまして、外務大臣が持っていらっしゃる一般旅券の発給の権限、発行権、これが、旅券法三条一項と、それから地方自治法二条九項一号で規定されて、第一号法定受託事務とされて、地方に事務が渡されております。

 例えば、私の地元の愛知県では、県民生活部県民生活課愛知県旅券センターというのが事務を行っています。でも、私の地元は一宮でございますけれども、私の地元で感じることでありますけれども、その所在地が、県の問題だと言えば一言なんですけれども、新しく駅ビルができて非常に便利になっているんですけれども、そちらに入居することはなく、古い大事な商店街があるんですが、そこの南側に、駅から五分程度離れたところに、民間ビルの中層階に入居しているということで、意外と地元の人間も知らずに、名古屋まで行って旅券を発行してもらったりしているというような実態がございます。

 利便性とか認知度とか、そういった問題を考えた場合に、やはり、民間の方々に大いに海外に行っていただいて日本のプレゼンスを高めていただく、こういった意味からも、旅券の発行について、外務省として、地方公共団体に対しての助言なりを今後していこうというような思いがあるかどうか、お伺いしたいと思います。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、一般旅券の発給の申請の受理、作成、交付等は、現在、地方自治法の法定受託事務とされております。

 お尋ねの、旅券に関する法定受託事務を実施するための旅券事務所の場所ですとかサービスをどうするかという問題につきましては、基本的には、御指摘のとおり、住民に対するサービスの向上、あるいは利便性の向上という観点、それに加えまして、例えば事務所の賃借料といったコストが適切であるかといったようなさまざまな観点から、都道府県のそれぞれ知事に、自主性、自律性を持って御判断をいただいているところであります。これが地方自治法の重要な考え方であると我々も考えております。

 したがいまして、我々、不断に地方の事務所とは意見交換をさせていただいておりますので、そういった御指摘も踏まえまして話をしていきたいと思いますが、極端に住民のサービスにとって問題があるというような場合を除きまして、地方自治の精神から、指示とか指令を出すということまではなかなかできないということについてはぜひ御理解を賜りたいと思っております。

 以上でございます。

杉本委員 指示とかという領域ではなくて、そういう範疇ではなくて、ぜひ助言をしていただいて、安倍政権、実行内閣そして日本の活性化ということでありますので、きめ細かく、戦略特区もあるんですけれども、今あるものを生かして元気をつけていくという意味からも、また利便性を高める意味からも、ぜひそんな形で動いていただければと思っております。

 次に、小熊代議士から御質問があった、原子力協定にかかわる関係で出た、トルコについてでございます。

 十月二十八、二十九日と安倍総理はトルコを訪問されました。改めてその狙い、成果を教えていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、安倍総理は今回の訪問におきまして、十月二十九日、歴史的大事業であり、日・トルコ協力の象徴でもありますマルマライ・プロジェクトの開通式に出席するとともに、日・トルコ首脳会談に臨みました。

 首脳会談におきましては、政治面、経済面そして文化・教育分野、こうしたさまざまな面で両国の一致を見ることができました。

 政治面におきましては、シリアあるいはイランなどについて率直な意見交換を行い、安全保障面での対話を深めていく、こういったことを確認いたしました。

 経済面におきましては、同行した日本企業関係者とともに経済関係強化の方策の議論を行い、そして、この関係で、同日、日本企業を中心とする民間企業とトルコ政府との間でシノップ原発に係る商業契約の合意に至りました。

 また、文化・教育の分野におきましては、日・トルコ科学技術大学設立に向けた取り組みを進めることでも一致をいたしました。

 こうした政治、経済、文化・教育の分野とあわせて、例えばエルトゥールル号乗組員の子孫の方々あるいはテヘラン邦人救出機パイロットの方々、こういった方々の表敬を受けるなど、草の根レベルでの関係強化にも取り組んだ次第であります。

 今回の訪問で、改めて両国の首脳の個人的信頼関係を深めるとともに、この両国間の具体的な協力につきまして着実に進展ができた、確認ができた、こうした成果があったと認識をしています。

杉本委員 ありがとうございます。

 お話しいただいて、経済交流が結構進んでいるという感じがございます。

 そんな意味から、ちょっと私の記憶が古いのかもしれないんですけれども、トルコという国は、実は地震国であり、免震技術が発達しているとは余り感じられなかったり、あるいは鉄道網という意味では、イスタンブールからアンカラ、イズミールといった、首都だったり第二の都市、第三の都市、こういった交通手段がバスを主体に形成されていたかと記憶しているので、ちょっと、そうじゃなくて、もう鉄道を随分敷いて、世の中は進んでいるんだということであったら私の間違いで申しわけないんですけれども、そんな意味からも、日本の建築技術、免震技術、あるいは鉄道、それこそ新幹線、そういったものもビジネスチャンスがあるかと拝察いたします。

 小熊代議士からはちょっと御指導いただいていますけれども、トルコの電力網については、配電のところについて配電ロスが随分ある、スマートグリッド的な技術のサポートも十分可能だというようなことも昨日教えていただきました。

 そんな意味からも、原子力がちょっと着目され過ぎておりますので、石炭火力も我が国は高度な技術を持っていたりということで、茂木大臣もそういうことをおっしゃったりされますけれども、そういった分野についてもさらに日本のビジネスチャンスが広がるように、外務省の皆様にもお力添えをいただきたいとお願い申し上げます。

 次に、ちょっと原子力にかかわることで、原子力の平和利用という論拠から、積極的に、原子力発電の輸出について、民間企業をサポートする形での原子力協定ということになっているかとは思いますけれども、一方で、福島を我々は抱えており、これから四十年、もっと、百年かもしれませんが、かかるわけでありますし、その廃炉処理といったものがどうなっていくかというのがまだ見えていない状況でございます。

 今、四号機の使用済み核燃料について、移送をするといった議論にも、それが始まったとか、時間がかかるとかいうような報道もされていますけれども、こういった使用済み核燃料も、国内においては、原子力施設そのものに保管されているような状況が大宗でございまして、最終処分場の話は完全に宙に浮いた状況にございます。

 そんな中で、よく例示されますし、環境委員会の委員の方々は視察に行かれていたかと思いますけれども、フィンランドのオンカロを初め、最終処分場を持つ先進的な国々があるわけでありまして、原子力発電所の輸出という観点からではなくて、最終処分といった観点からの原子力のノウハウの交流というか、むしろ教えていただくことが多いのかもしれませんし、最終的には、受け入れていただくということも視野に入れられたらなとも思っておりますが、こういった点についての現在の政府の展望なり考え方を教えていただきたいと思います。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 放射性廃棄物の最終処分というのは、どの国でも大変大きな重たい課題になっておるところでございます。

 フィンランドはこの分野で非常に進んだ取り組みをされているというのは、我々ももちろん承知しておるわけでございますが、ただ、放射性廃棄物の安全で確実な処分というのは、原子力の便益を享受する国が、要するに自国で、発生した国において処分するべきというのが国際的な共通認識であろうかと思います。

 なお、フィンランドの場合に限って申し上げましても、フィンランドの原子力エネルギー法という法律がございまして、フィンランド国外で生成された核廃棄物をフィンランド国内で処理、貯蔵、廃棄することを禁じております。

 したがって、委員からお話がございました、日本で発生した放射性廃棄物をフィンランドで受け入れてもらうというのは、フィンランドの国内法に照らしてもちょっと難しいのではないかなというふうに考えます。

杉本委員 現時点では難しいということ、私も共有させていただきたいと思います。

 ただ、国会にはもういらっしゃらないんですが、小泉元総理が、最終処分場は日本には難しいんだということをはっきりとおっしゃっているような状況下にあって、一部の方々では、今調査して、できるんだということをおっしゃっている議員の先生も知っておりますけれども、現実はやはり大変厳しい状況だと思いますので、そういった意味からは、そういった国々が国内法を持っているという状況も、いろいろな交渉過程の中で、今後の話ですから、変化も起きることもあるかもしれないので、そういった道も探っていくことをお願いしたいと思っております。

 それでは次に、日中、日韓関係のことについて少しだけ触れたいと思います。

 韓国が、福島の魚介類を初めとして対日の海産物について、輸入規制をさらに強化して、証明書を要求したというような報道があって、まことに残念に感じておりますし、先般、日韓議連の幹事会でお邪魔して、ちょっと教えていただいたところだと、韓国側の議員の方々も大変苦慮しておられて、魚を扱っている韓国の業者の方々も本当に売り上げが落ちてしまって、韓国の国民の皆さんが非常に風評を気にし過ぎるというか、非常にセンシティブになっていて、魚を食さなくなってきている、これが実情だというようなことを言われ、非常に残念に感じました。

 しかし一方で、またこれも報道で恐縮ですが、杉山外務審議官が、日中韓の外務次官級の協議をソウルにおいて行った際に、アジアの平和と安定のためには三カ国の連携が必要だ、延長されたままとなっている首脳会合の開催に向けて引き続き努力する、こういうことを確認してきてくださっているようでございます。そんなことで、るる問題がある中で、一つ一つ我々は解決していかなければならないと思います。

 そんな意味から、問題をあえて取り上げるのは決して本意ではないんですけれども、外交は継続性、あるいは、逆に、何らかの国家としての意思を変更するチャンスが政権交代であるというふうに私は感じております。

 そんな意味から、今いらっしゃいませんけれども、前政権が取り組まれ、我が国の領土である尖閣諸島の土地を民間から買い取って国有化をされたということが昨年の九月十一日という日付においてあったわけでありますけれども、現在の安倍政権、岸田外務大臣におかれては、その実施の時期、行為についてどのように認識をされているかを確認させてください。

岸田国務大臣 まず、尖閣諸島につきましては、歴史上も、また国際法上も我が国固有の領土であり、我が国は現に有効に支配をしており、そして領土問題は存在しない、これが我が国の基本的な立場であります。

 よって、前政権の国有化の判断の時期ですとか当否につきましては、こうしたことにはかかわらず、日本国内で所有権の移転、本来、他国との間で何ら問題を惹起すべきものではない、このように認識をしております。

 よって、今の政権において、現状そして未来に向けて、個別の問題があったとしても、しっかりと二国間関係全体をマネジメントしていかなければいけない、このように考えております。

杉本委員 そこで、ちょっと話はそれるかもしれないんですが、ここにいらっしゃいませんが、石原環境大臣にもお願いしたいと思っておりますが、四日ほど前、十一月四日に、千葉県で、PM二・五の大気一立方メートル当たり一日の平均濃度が国の暫定指針を超える可能性があるということで、県内全域の住民に外出を控えるようにと初めて注意喚起を行ったというふうに聞いております。

 日本国の国民の皆様の健康を考えると、外務省として、環境省と緊密に連携していただきながら、近隣の国々、殊に本件については中国になると思いますが、我が国の環境技術であったり、公害を乗り越えてきた歴史といったものを踏まえたこの技術力、こういったことから、ぜひ環境問題で支援ができるのではないかなというふうに考えております。

 これも、さきの民主党の方々とみんなの党と有志で中国を訪れた際に、中国側の学者の方からも提起されていた話なんですが、環境問題で外交ルートを通じて何らかの貢献をということをこちらから働きかけてはいかがかと思いますが、大臣はいかにお考えになられるでしょうか。

岸田国務大臣 近隣地域における大気汚染につきましては、関係国と共通の理解を形成しながら、ぜひ、我が国の知見とかノウハウ、こういったものをしっかり提供していくことが重要だと認識をしています。

 そういった考えのもとに、今日まで、具体的な協力としまして、多国間の取り組みとして、本年五月に開催された日中韓三カ国環境大臣会合がありますが、この大臣会合におきまして、政策対話を設置することで合意しています。

 また、本年九月のASEANプラス3環境大臣会合におきまして、大気汚染に関するアジア地域での協力を推進することを我が国から提起し、参加各国から賛意を得ている、こうした動きがあります。

 また、ODAを通じて、近隣国において、PM二・五を含む大気汚染物質の排出を削減するための支援、これはもう既に実施をしております。

 引き続きまして、御指摘のように、環境省など関係省庁とも連携しながら、近隣地域における大気汚染対策、しっかりリードをしていきたいと考えています。

杉本委員 時間となりました。ちょっと残余の質問を残しましたが、また次回の一般質疑でお願い申し上げます。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 冒頭、まず委員長に申し上げたいんですが、金曜日の本会議の散会後の委員会設定というので、条約の趣旨説明もあるからということで、一般質疑ということで入れられましたけれども、きょう、議場を見ますと、特に与党席、がらがらなんですよね。

 それで、ぜひやってもらいたいということでやって、やりくりしながら、こうやって質問も準備してやっているわけですけれども、私の質問を聞けと言うつもりはありませんが、つまり、委員会というのは、条約審査もあるけれども、やはり国会はチェック機能なので、こうやって大臣、外務省との関係でしっかりと議論をしなきゃいけないので、この点はしっかりと理事会でも話し合ってもらいたいし、今後の理事会協議の中でも、こういう状況をつくってもらったら困ると思うんですが、委員長、お願いします。

鈴木委員長 笠井先生もオブザーバーで理事会に参加しておりますので、理事会で協議したいと思います。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。改めて申し上げますが。

 原子力協定にかかわって質問したいと思います。

 まず外務省に伺いますが、日本が原子力協定を締結、批准している国というのは現在何カ国・機関になっているか、その数と相手国、機関名を答弁してください。

石原大臣政務官 笠井委員にお答えいたします。

 我が国は、米国、英国、カナダ、豪州、フランス、中国、欧州原子力共同体、ユーラトム、カザフスタン、韓国、ベトナム、ヨルダン及びロシアの十二の国、機関との間で原子力協定を締結しているところであります。

笠井委員 その中で、日本の企業が原発のプラント建設の受注に向けて具体的な商活動を進めている相手国は幾つで、どこかというふうに掌握されているでしょうか。

石原大臣政務官 お答えいたします。

 現在、我が国と原子力協定が発効している十二の国と機関のうち、一、我が国企業が原発建設に応札し、または、二、我が国企業が原子炉の納入を計画している原発建設事業が明らかになっている国は、ヨルダン、ベトナム、英国、米国、中国に加え、ユーラトムに加盟しているリトアニア、フィンランド、チェコであるというふうに承知しているところであります。

笠井委員 うち、原発建設に関する入札の応札が明らかになっている国、そして、その結果、日本企業が、いわゆる優先交渉権ですね、排他的交渉権の獲得に至った国というのはどこかというのはわかりますか。

石原大臣政務官 入札の結果、日本企業が優先交渉権の獲得に至った国は、リトアニアと中国です。

 なお、フィンランドとチェコは、入札審査中の状況というふうになっております。

笠井委員 リトアニア、中国は、福島の東京電力第一原発事故前の協定に基づくものでありますが、そういう状況です。

 そうしますと、今、日本とヨルダンの原子力協定というのが福島原発事故後最初に締結された協定の一つでありますが、ヨルダンの原発建設計画に日本企業が参加をして、そしてこの協定というのは、当時議論しましたが、外務省が、ポンチ絵も配って、積極的な原子力ビジネス展開が可能となる、まさにそういう法的枠組みだと説明していたものであります。

 事故直後の二〇一一年四月十三日の当委員会、まさにこの委員会室でこの協定承認の採決を予定していたんですが、その前の理事会で、そこの理事会室で私自身も主張しまして、福島原発の事故がレベル7になった翌日にこんな協定を承認すれば国際的な信頼を決定的に失うだけだということを強く主張して、採決が見送りになりました。

 外務省は、ヨルダンでの原発受注をめぐって、日仏とロシア、カナダが入札をしているので何としても協定の承認を急いでほしいということで、繰り返し説明をしておりましたけれども、同年八月の参考人質疑でも承認すべきでないという意見が相次いで、次の国会に持ち越されて、同年十二月になって、ついに批准が強行されたというものであります。

 このヨルダンの原発建設については一昨日の当委員会でも取り上げられましたけれども、岸田大臣、今、同国初の原発建設の排他的交渉権、いわゆる優先交渉権はどうなっているか、説明してください。

岸田国務大臣 ヨルダンの原発計画につきましては、ロシア企業が排他的交渉権を獲得したと承知をしております。

笠井委員 福島事故後に協定を締結したわけですが、入札の結果、優先交渉権を日本は獲得できなかったという最初のケースがヨルダンであります。

 ロシア側の受注が確定すれば競争に敗れることになるわけでありますが、今回の決定について、ヨルダン政府は文書も発表して、私もいただきました。こういうアラビア語のものですが、ヨルダン原子力エネルギー委員会で配付された資料ということで、その中で、技術的、経済的、財政的観点を考慮し、そして、ヨルダンの国益に資する原子力技術供給者を選択する重要性からということで、主に三つの点を挙げて、ファイナンス、他国での実績、安全性の観点ということを挙げておりますけれども、それぞれについて具体的にどのように述べているでしょうか。

岸田国務大臣 ヨルダン政府が原発の排他的交渉権をロシア企業に付与した要因につきましては、基本的にこれは民間企業の商活動ですので、私ども詳細については承知はしておりませんが、その上で、今御指摘のように、ヨルダン政府自身がこの要因につきまして言及をしております。

 その詳細を確認いたしますと、一つは、ファイナンスについては、ロシア企業が四九%の出資を提案していること、二つ目として、他国での実績については、ロシア企業が提案している炉型と同じ技術を用いた原子炉が既に複数稼働していること、三つ目としまして、安全性の観点については、ロシア企業が提案している技術の安全性は国際的にも評価されていること、この三点をヨルダン政府が挙げ、説明をしていると承知をしております。

笠井委員 安全性という点で国際的にも評価されていると今紹介もありましたが、関係国際機関というような形で書いてあると思うんですが、それはどこのことでしょうかね、評価した相手は。

岸田国務大臣 済みません、御質問は、国際関係機関とはどこのことかという御質問かと聞いたんですが、国際関係機関というのはどこの部分を指しておられるんでしょうか。

笠井委員 安全性の評価について、関係する国際機関からの評価というようなことがあると思うんですけれども、それがどこかなと思いまして。

岸田国務大臣 もちろんこれはヨルダン政府の発表でありますので、評価した国際機関がどこかということは、私ども、詳細はちょっと承知しておりません。

笠井委員 これはぜひ、大事なビジネスだし、それのために協定が必要だと外務省がずっとやってきたことなので、それにかかわる問題でこういう結果になった。それは、是非は別ですよ。我々は輸出というのは反対ですけれども、しかし、確認していない、ヨルダンの方が言うことだからというので、そのままでいいのかという感じがするんですね。

 外務省自身が、入札で日仏合弁企業が勝つためにはどうしてもこの締結が必要だと言った件ではないかと思うんですが、私は、それぐらいのことは、どういう形でどこから評価されてどうなったかというぐらいは、出先の大使館もあるわけだし、政府に確かめるということもやらないんですか。

岸田国務大臣 確かに、ヨルダン政府は、排他的交渉権を付与した要因の中に安全性についても触れておられるわけですが、まず、その安全性の観点につきましても、これはロシア企業の提案が国際的にも評価されているということであって、我が国の安全性がロシア企業に劣っているということではないと思っております。

 少なくとも三つ、大きな要因が掲げられています。こうした要因を総合的に判断した上で、どの企業に排他的交渉権を付与するかという判断をしたと認識をしております。

笠井委員 三つの要素があるから総合的に勘案して判断ということで、多分そう言われるんじゃないかと思ったんですが、しかし、その中には安全性の観点ということがあるというのは間違いないわけで、ヨルダン政府が安全性の観点から日仏合弁企業のアトメア社に優先的交渉権を与えなかった背景には、福島第一原発事故があったんじゃないのか。そういう点についてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。

岸田国務大臣 臆測で物を申し上げるのは控えたいと存じますが、我が国は、福島第一原発における経験や知見、これをしっかりと国際社会と共有していきたい、こういった思いをしっかり訴えてきました。技術的にも、原子力の安全に関しましては、国際的な評価にたえ得る最高レベルの技術を所有していると認識をしております。こういった点は、しっかりとヨルダン政府にも御理解いただいていると考えています。

笠井委員 いや、しかし、比べて評価されなかったのが日本でありますので。臆測でというふうにおっしゃいますけれども、締約した相手国ですよね、ヨルダンは。そういう点でいったら、大臣御自身がこの七月にもヨルダンのヌスール首相やジュデ外相とも会談された際に、日本としてヨルダンの原子力発電所建設計画に貢献できると確信している、そこまで言い切られたわけで、私はちょっとおかしいんじゃないかと思うんですよ。

岸田国務大臣 まず、安全性につきましては、我が国は、しっかりと国際的な原子力の安全に貢献できる高いレベルの安全性に関する技術を所有していると考えています。それ以外、ファイナンスを初めさまざまな要因に基づいて今回の判断が行われたと承知をしております。

 今回、排他的交渉権が付与されたわけでありますが、今後、最終的な結論がどういったものになるのか、しっかりと注視をしていきたいと考えています。

笠井委員 今回、排他的交渉権を獲得したロシアのロスアトム傘下の原発輸出企業のASE社によりますと、福島原発後の二〇一一年三月二十九日に、ヨルダン政府は、事故の原因となった事象、故障を考慮した、つまり福島事故ですね、この原因となった事象、故障を考慮した安全分析を入札パッケージに含めるよう参加企業に要請してきたということでありますが、大臣は、ヨルダンがそのことを重視してきたことを御承知だったでしょうか。その後の大臣ですから、外務省としても承知していたかということで、大臣は聞いていらっしゃるかどうか。

岸田国務大臣 基本的には、これは民間企業の商活動の中での交渉であります。そうしたさまざまなやりとりがあったのだとは思いますが、私自身は、そうした今御指摘の点までは承知はしておりません。

笠井委員 相手国との関係で七月に行かれたときにも、外務省なり現地の大使館がそういうレクもきちっとして、大臣にもそういう経過も説明するのが当たり前だと思うんですが、承知されていないと。

 ロシアのエネルギー業界のウエブサイトも、ことし十一月二日付で、ヨルダン側は、二〇一一年三月二十九日、入札参加者に対し入札のオファーの提供に関する照会に変更を加えた、特にその中に、日本の福島原発事故を考慮して、提案された設計の分析を組み入れることが求められた、こういうふうに指摘をしております。

 そういう要求がヨルダン側からあったのは明らかだと思うんですね。それも承知せずに、七月に行かれて、日本としてヨルダンの原子力発電所の建設計画に貢献できると確信していると言い切られたというのは、私はちょっと、なかなかだなと思うんです。

 ところが、結果として、今回の排他的交渉権の決定に当たって、三つの要素とか、いろいろ勘案とか、日本はすぐれているとか言われるけれども、結果としては、安全性という問題が大きなメルクマールの一つになって日仏合弁企業は受けることができなかったわけで、そういう点でいうと、ヨルダン政府が、今回の企業選定に当たって、福島原発事故を受けて安全性ということを非常に重視していた、これはそうだと思うんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 当然のことながら、ヨルダン政府は、原子力発電所計画におきまして、安全性は重視していたものと存じます。

 しかし、安全性に加えて、ファイナンスですとか、あるいは他国での実績、炉型の問題等、さまざまな要素を勘案して総合的に判断を下されたものと承知しております。

笠井委員 今、ファイナンスと、お金の問題も言われたんですが、三菱といえば、アメリカのカリフォルニア州の原発をめぐって、廃炉を決めたアメリカの電力会社が、損害は数十億ドル、つまり数千億円と主張して、原因となる放射線漏れを起こした蒸気発生器を納入した三菱重工グループが、契約上の上限を超えて賠償するように求められている問題があります。福島の事故の後、安全性に対する要求が高まる中で、事故が起きた場合の損害賠償リスクも問題になっているわけであります。

 安倍総理は、世界一安全な原発技術を提供できるなどと言って、原発輸出を成長戦略の柱に位置づけてトップセールスに回っておられますけれども、福島の事故の後、原子力協定による最初の原発建設を目指していたのがヨルダンであります。事故は収束しておらず、日々深刻化する汚染水問題すら解決できないのに、日本の原発技術を幾ら強調して安全だ安全だと言っても世界の納得は得られない、その一つの例がヨルダンじゃないですか。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、ヨルダンに関しましては、先ほど答弁させていただきました要素を総合的に勘案されて判断されたものだと存じます。

 しかしながら、基本的に我が国は、福島第一原発における悲惨な経験、そして知見、技術、これをしっかりと国際社会と共有する、こうした大きな責任があると考えております。ぜひ、今後とも、我が国の原子力安全に関する高い技術を世界と共有することによって、原子力発電所の安全に貢献していきたいと考えています。

笠井委員 私は、安全性が確認されたら原発輸出はオーケーだと言っているんじゃないんです。私たちは、あの事故を体験して、まさに今大臣が言われたみたいに、悲惨な経験をした。これを国際社会と共有するということが大事であって、私は、逆に、相手が売ってほしいと言っても、やめた方がいいよと、福島の事故を体験した日本の政府としては世界に向かって言わなきゃいけない。一たび事故が起こったら取り返しがつかない、収束できない、汚染水だって深刻だと、予算委員会でも私も質問いたしました。そういう点でいったら、今、日本が言うなら、原発はもうやめよう、まして地震国ではというのを、トルコにも言わなきゃいけないのが日本政府だと思うんです。

 いまだに避難生活を送る福島の被災者からは、自分の国の事故を収束できない、あるいは収拾できてもいないのに、よく海外に原発を売れるものだ、被災した国民のことをどう思っているのかと、怒りの声が上がっております。

 私も予算委員会でもただしたりもしましたが、岸田大臣、今政府がやるべきは、やはり輸出でも再稼働でもない。総理を先頭に、文字どおり国が前面に出てやるべきことは、全責任を持って汚染水対策を初めとした事故収束に総力を挙げることじゃないか、そういう点での内外の英知を結集することじゃないかと思うんですが、そこの点はいかがですか。

岸田国務大臣 まず、我が国は、汚染水を初め、事故の収束に向けて政府一丸となって取り組まなければならない、これは御指摘のとおりだと思います。

 あわせて、我が国は、この貴重な知見や技術をもって、国際的な原発の安全にしっかりと貢献をしていきたいと存じます。そしてその際に、相手国の意向、相手国の事情、こういったものをしっかりと踏まえた上で、我が国として具体的な貢献をしていくべく努力をしていきたいと考えています。

笠井委員 終わりますが、一丸となって政府がやるべきは、本当に、事故の収束、汚染水問題、あるいは被災者の皆さんに対する除染、賠償という問題が最重要で、それにこそ総力を挙げるべきだ、そして、あの経験をしたんだったら、世界に向かっても、相手に売ってくれと言われても、売りませんよ、やめましょうよと言ってこそ日本だということを重ねて申し上げて、質問を終わります。

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十一年十一月以来、ハンガリー政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十五年八月にブダペストにおいて、私と先方外務大臣との間で、この協定の署名を行った次第であります。

 この協定は、我が国とハンガリーとの間で年金制度、医療保険制度等に関する法令の適用について調整を行うこと及び両国の年金制度の加入期間を通算することによって年金の受給権を確立すること等を定めております。

 ハンガリーに派遣される駐在員等は、ハンガリーの国内法の改正により、来年一月一日以降、社会保険料の二重払い及び掛け捨てを行わざるを得なくなるところ、この協定の締結により、これらの問題の解決が図られます。その結果、両国間の人的交流が円滑化し、経済交流を含め両国間の関係が一層緊密化することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十八年十二月に国際連合総会において採択されたものであります。

 この条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等について規定しております。

 我が国は、平成十九年にこの条約に署名した後、本年の通常国会に至るまで、障害者に係る国内法制度を整備してきたところであります。この条約の締結により、障害者の権利の実現に向けた我が国の取り組みが一層強化され、また、人権尊重についての国際協力が一層推進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十九分散会


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