衆議院

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第6号 平成25年11月15日(金曜日)

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平成二十五年十一月十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 松本 剛明君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    井上 貴博君

      石原 宏高君    木原 誠二君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      島田 佳和君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    星野 剛士君

      宮内 秀樹君    武藤 貴也君

      簗  和生君    小川 淳也君

      玄葉光一郎君    長島 昭久君

      阪口 直人君    村上 政俊君

      岡本 三成君    杉本かずみ君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        三ッ矢憲生君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 秋葉 剛男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 宮園 司史君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十五日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     簗  和生君

  河井 克行君     宮内 秀樹君

  河野 太郎君     井上 貴博君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     河野 太郎君

  宮内 秀樹君     河井 克行君

  簗  和生君     あべ 俊子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官新美潤君、大臣官房審議官秋葉剛男君、大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房参事官山田滝雄君、防衛省大臣官房審議官宮園司史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笠井亮君。

笠井委員 おはようございます。日本共産党の笠井亮です。

 まず、日本・ハンガリー社会保障協定についてでありますが、私もハンガリーに三年間在住したことがございます。本協定の締結によって、社会保障制度への二重加入の問題や保険料の掛け捨て問題、これが解決されるということでありまして、両国間の人的交流を円滑化して、ひいては経済交流を含む両国間の関係の一層の緊密化に資するものであり、賛成であります。

 そこで、きょうは、障害者権利条約について質問いたします。

 本条約は、一九四八年の世界人権宣言に由来する国際人権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約を基礎として、障害者の人権と基本的自由を確保して固有の尊厳の尊重を促進することを目的として採択され、極めて重要な意義を持っていると思います。

 この条約にふさわしい国内法の整備が必要だということで、この間、関連法がつくられてきましたが、条約に照らせば、まだふさわしい国内法になっていないという声も強くあります。

 そこで、岸田大臣、その意味では、本条約の批准というのは、国として内外に障害者の権利保障を確実に進めていく、ある意味でスタートの宣言ということだと思います。政府として、批准後も、障害にかかわる全ての法律が権利条約の水準で進化発展していくように力を尽くすべきだと思うんですけれども、その点で、基本的なスタンス、立場を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、本条約は、障害者の人権ですとか基本的自由を確保する上で重要な意義を有していると認識をしております。そして、この条約がスタートになるのではないか、認識を聞きたいという御質問をいただきました。まさに、それにつきましては、そのとおりだと認識をしております。

 本条約の第四条に、経済的、社会的、文化的権利については漸進的に達成するものと規定しております。この規定を踏まえて、本条約締結後も、これらの権利の達成に向け引き続き努力していく必要があると認識をしております。

 外務省としましても、障害当事者の方々の意見も踏まえて、関係省庁と連携しつつ、条約の目的、理念の実現に向けて積極的に貢献していきたいと考えています。

笠井委員 そういう意味では、国内体制の整備などは当然だと思うんですが、関連法そのものに施行三年後の見直し条項などがあるということがあります。そういう際には、権利条約の水準にふさわしく見直すなど、不断に努力する、そういうことであるということでよろしいですね。

岸田国務大臣 しっかり取り組んでいきたいと存じます。

 具体的には、国連に設置された障害者権利委員会への国別報告の提出、委員会による提案、勧告への適切な対応、こうした取り組みをしっかりやっていかなければいけないと思っていますし、それとあわせて、国内体制につきましても充実に向けて努力をしていきたい、このように考えます。

笠井委員 本条約のもう一つの大きな特徴は、条約の作成交渉過程に当事者である障害者の代表が参加したことだと思います。素案作成に当たって、委員会審議に、世界の障害者団体、NGOの代表らが、その都度発言の機会を得て、日本を含む協議参加国の代表団の顧問に加わるなど、障害者の参加のもとに条約案の審議が進められた。

 こういうことについて、大臣御自身はどのように評価されているでしょうか。

岸田国務大臣 NGOや障害者団体の皆様には、交渉の段階からさまざまな形で御協力をいただいてきました。

 具体的には、ただいま御指摘もありましたように、専門的知見を有する障害者団体の代表が政府代表団の顧問として交渉に参加をしていただきました。また、交渉に先立って、障害者政策担当省庁とともに、障害者団体等と意見交換を行わせていただきました。

 こうした障害者団体等による貴重な貢献もあって、本条約は、障害者の人権、基本的自由を確保する上で大変重要な意義を持つ条約になったものと考えております。

 また、国連総会のアドホック委員会の際にも、連日、多くの障害者、NGO関係者の皆様方の参加あるいは傍聴をいただいた、こういった点も指摘しておきたいと存じます。

笠井委員 今大臣言われたように、日本政府の交渉代表団顧問の肩書で外務省とも協議を重ねてきた日本障害フォーラム、JDFの代表なども、そうした当事者である障害者の参加が原則として貫かれたということが大事だったというふうに述べておりました。条約の行方に注目する世界の障害者団体の間では、私たちを抜きにして私たちのことを決めないで、これが合い言葉になって、日本の障害者運動でも共通したスローガンになってきたと思います。

 そこで、もう一問、岸田大臣、関連なんですが、この精神というのは、条約の第四条三項の規定にも反映されていると思います。日本政府として、今後のことですけれども、本条約を実施するための法令や、それから政策の作成あるいは実施において、また、障害者に関する問題についての意思決定の過程において、障害者と今後とも緊密に協議をして、障害者を積極的に関与させる、当然、その立場で臨んでいくということでよろしいですね。

岸田国務大臣 NGOあるいは障害当事者の方々からは、条約締結に先立つ国内法整備の過程でも、障がい者制度改革推進会議あるいは障害者政策委員会等を通じて貴重な意見をいただきました。

 政府としましては、これらの貴重な意見をできるだけ反映させるよう努めてきたと認識をしておりますが、今後とも、本条約が意思決定過程への障害者の積極的な関与を定めている、こういったことを踏まえまして、障害者団体との連携につきましては、本条約の効果的な実施において、しっかりと大事にし、取り組んでいきたいと考えます。

笠井委員 しっかり取り組むということで、やっていただきたいと思うんですが、本来、この条約審議自体が、やはり障害者団体、NGOの代表を参考人として招いて意見を伺う機会になるべきだったと考えております。そのことを理事会でも再三提案いたしましたが、実らなかったのは残念であります。

 当事者の皆さんから、総合支援法制定後も解決されていない利用者負担の問題、あるいは障害程度区分や介護保険制度の優先原則の問題など、さまざまな御意見、要望、要求が寄せられております。

 そこで、限られた時間なので、これは副大臣にお答えいただけると思うんですけれども、一つだけ取り上げますが、障害者への差別をなくすための実効ある法制度確立をという要望、要求でございます。

 この点でいいますと、本条約の第五条では、平等及び無差別について、障害者の権利の平等を確保し、障害に基づくあらゆる差別を禁止することを規定しております。そして、障害者の権利の平等を実現していくために、合理的配慮が提供されることを規定しています。

 ことし六月には障害者差別解消法が成立しましたが、本条約の批准を踏まえて、今後の課題もあると思うんです。例えば、何が差別かの定義、それから、必要かつ合理的な配慮は本条約の合理的配慮と同様であること、さらには、合理的配慮の不提供というのが差別であることなどを明記すべきという要望、要求も強くあります。

 外務省としても、そういう当事者の意見をしっかり受けとめて、条約に照らして必要な見直しを着実に行うように、これはもちろん当該の直接の所管がありますが、そういう省庁との連携を強めるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 先生御承知のとおり、障害者差別解消法というのは、この条約の締結に向けた障害者施策の整備の一環でございます。障害者基本法の差別の禁止に関する条項を具体化したものであるというふうに承知しておるところでございます。

 また他方で、この法律の内容に対して障害当事者の方々からさまざまな意見が寄せられていることも承知しております。その一方で、この法律は、現段階では、反映できる障害者の御意見を最大限盛り込んで作成されたものというふうに認識をさせていただいております。

 この条約の締結後、外務省としては、障害当事者の方々の御意見も踏まえながら、関係省庁と密接に連携しつつ、条約の目的、理念の実現に積極的に貢献してまいりたい、このように考えております。具体的には、国連に設置された障害者権利委員会への国別報告の取りまとめ、あるいは委員会による提案、勧告への適切な対応にしっかりと取り組んでいきたいと思っておりまして、また、これらのやりとりの周知広報等も積極的に実施していく所存でございます。

 いずれにしましても、関係省庁と密接に連携をとりながら不断の努力をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。

笠井委員 締結してからというのがまた新たな段階になるわけで、それにふさわしくということをぜひやる必要があると思うんです。

 関連して、さらに、解消法でいいますと、事業者による合理的配慮の提供は努力義務とされておりますけれども、これを義務とする、あるいは、中立公正な第三者機関の設置で差別救済をすべきだという要求、要望も強くあります。

 例えば解消法をとってみますと、二〇一六年度の施行予定で、その三年後に見直すということを言っているわけでありますけれども、そういう点では、批准を機会にそれらを早めることも含めて、今の答弁に関連すると思うんですけれども、やはり、関係省庁とも連携して、当事者の意見も踏まえてしっかりと今後臨んでいくということでよろしいでしょうか。

三ッ矢副大臣 そのとおりでございます。

 これは、障害者基本法を改正して、障害者あるいは障害者関係団体の方々から、あるいは有識者等から構成されます障害者政策委員会というのが設置されておりまして、ここがいわばモニタリング機能も持っておるわけでございます。そういう機関との連携、こういうものを活用させていただきながら私どもとしては不断の努力を重ねてまいりたい、このように考えております。

笠井委員 最後になりますけれども、本条約を含めて、一連の人権条約に伴う個人通報制度の問題であります。

 これは、日本が受け入れていないということで、選択議定書を締結したいということになっておりますけれども、人権条約に認められた権利を侵害された個人が、国内で裁判などの救済措置を尽くしても権利が回復されない場合、救済の申し立てができるというこの制度は、条約の実効性を確保するという上で非常に大事だというふうに思いますし、当事者からも強くこのことが求められております。

 去る十一月十三日の審議の中で、岸田大臣は、幾つかの検討課題があるということで、現在、個人通報制度関係省庁研究会を開催して検討を行っている旨の答弁をされました。

 実は私、四年前にこの委員会で女性差別撤廃条約の選択議定書について質問したときにも、外務省の答弁は、研究会を開催、検討を行っていると、同様のことを答弁したわけでありますけれども、結局、ずっとそういうことが続いているわけですよね、研究会をやっていますということで。関係省庁、いろいろな意見があるんですと言っているわけです。

 改めて伺うんですが、どの省庁が集まって、いつから、どのようなことについて研究、検討してきて、今どういうことになっているのか、そして、一体いつまでかかるということでやっているのかということについて、これは大臣の御答弁に関連したので、お願いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、この研究会、どういった省庁が集まっているかという御質問ですが、内閣府、法務省、文科省、厚労省、国交省、農水省、総務省、防衛省、こういった省庁が集まっております。

 そして、どのような議論を行っているのかという御質問でございますが、この個人通報制度について、平成十一年十二月から関係省庁との間で検討を続けているわけですが、これらの検討の中では、他の人権諸条約に基づき設置された委員会等に対する他国の個人通報事例における委員会や関係国の対応、こうした実例につきまして研究をしてきております。

 そして、この見通しも御質問いただきましたが、現時点では、今後の確たる見通しを申し上げることは難しいと考えております。先日も答弁させていただきましたように、我が国の司法制度あるいは立法制度との関連において、まだ解決しなければいけない、整理しなければいけない課題は残っていると考えております。

笠井委員 各国それぞれいろいろ制度はありながらも、多くの国が今これに入っているという状況の中ですので、課題を解決することというのは非常に大事なことになっているし、急がれなきゃいけないと思うんです。

 今挙げられました関係省庁との間でいろいろと研究会でやっているということなんですけれども、そういう点では、特にその中でも外務省の役割というか、条約を直接担当する外務省としてのイニシアチブが求められているんじゃないかと思うんですね。

 外務省は、二〇一〇年四月に省内に人権条約履行室を立ち上げて、引き続き、各方面から寄せられる意見を踏まえつつ、同制度の受け入れの是非について真剣に検討を進めていくということで、人種差別撤廃条約の七回、八回、九回の政府報告の中で述べているわけであります。

 今回の条約締結を契機にしながら、やはり早急に結論を出していくということで、確たることを言うのは難しいという御答弁だったんですが、やはり大臣として、外務省としてのイニシアチブというか、そういう点でいうと、ぜひ、各国の状況もあるし、この条約の重要性に鑑みてということで、これぐらいまでにはやろうじゃないかということも含めて、やはり示しながらまとめていくという役割を果たすべきじゃないかと思うんですけれども、そこはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、個人通報制度につきましては、人権関係の諸条約の実施の効果的な担保を図るという趣旨から、注目すべき制度だとは認識をいたします。

 そして、検討を続けているわけですが、この議論の中で、国内の確定判決と異なる内容の見解が示された場合、あるいは裁判係属中の事件についての見解が示された場合、あるいは通報者に対する損害賠償や補償を要請する見解が示された場合、あるいは法律改正を求める見解が委員会から示された場合、こういった場合にどう対応するのか、我が国の司法制度や立法政策との関係でどう対応するかを検討しなければいけないということになるわけですが、これらの問題はかなり慎重な検討を要する、こういったことで議論が続いていると承知をしております。

 これはそれぞれ大変重たい課題でありますので、今の時点で具体的にいつまでという見通しを申し上げるのは、なかなかこの場では難しいと認識をいたします。

笠井委員 課題があるということですが、やはり外務省の役割は大きいと思うんです。

 もともとのこの通報制度の趣旨自身が、人権条約に認められた諸権利を侵害された個人が、国内でいろいろと救済措置を尽くしても回復されないときの申し立てということでありますので、そこに立ったときには、当然やはり、それに照らしていろいろな問題を解決しながら、きちっと入っていくということでやっていく必要がある問題だと思うんですよ。

 この個人通報制度というのがそういう形でクリアできれば、受け入れるということになれば、これは女性差別撤廃条約を初めとして一連の問題に全部かかってくるわけですから、ここは本当に人権を保障する上で大きな課題になってくると思います。ぜひ外務省としてのイニシアチブを発揮していただきたいと思います。

 条約の批准となれば、これからがいよいよ重要であります。世界で当然の流れとなっている障害者の権利保障を実現させるために、政府として違憲訴訟の和解もしたわけでありますので、政権がかわっても、政府には基本合意や骨格提言を尊重する重い責任があります。とりわけ、当事者の意見があらゆる場で反映されるように、政府としてもこの条約批准を契機にさらに力を尽くすことを強く求めまして、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 まず、障害者の権利に関する条約について御質問をさせていただきたいと思います。

 障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することなど、国内における障害者施策と、世界的に連携することによって国際協力をなお一層進めていくことに対する期待が大きく膨らんでいくものと思われます。

 では、大臣、我が国におけるこの条約批准の意義と、それから、ここに至るまで、どのような経緯があったかをまずお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 本条約につきましては、障害者の人権あるいは基本的自由を確保する上で重要な意義があると認識をしております。

 そのため、我が国は、条約の起草段階から積極的に参加し、本条約の署名につきましても、条約採択後、速やかに行った次第であります。

 他方、本条約の締結については、国内の障害者団体の皆様方の御意見も踏まえまして、まずは、障害者制度に係る改革を進めた後に行うということになりました。

 その方針のもとに、平成二十三年度の障害者基本法の改正を初め、本年まで、障害者に係る国内制度の改善に集中して整備を進めてきた、こういったところであります。

 ぜひ、本条約を締結することによって、我が国の取り組みが一層強化され、国際協力が一層推進されることを期待したいと考えております。

玉城委員 その条約を批准する観点から、先ほど大臣からもお話がありましたが、国内法の整備がこの間行われてきていると思います。

 その国内法がどのような形で整備されたのか、条約を批准するという側からの視点で、ぜひその点について御説明と、そして、さらなる取り組み等について御所見があればぜひお伺いしたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたように、まず、条約を締結するという観点からの国内法整備につきましては、この条約の中で、新たな概念あるいは制度といたしまして、一つ、合理的配慮の否定を障害に基づく差別に含めること、そしてもう一つ、条約の国内実施を監視するための枠組みを設置すること、この二点を定めております。

 かかる観点から、条約の締結という観点から、平成二十三年に障害者基本法を改正いたしまして、新たな概念、制度を導入いたしました。

 具体的には、条約を踏まえて、合理的配慮の否定という概念をこの法律に導入いたしますとともに、障害者、障害者関係の団体、有識者などから構成される障害者政策委員会を法律に基づいて設置したわけでございます。

 そしてさらに、条約を締結するという担保の観点に加え、まさに政策的な観点から、委員からも御質問ございましたが、先ほど大臣からも一部御説明いたしましたとおり、障害者総合支援法の制定、障害者差別解消法の制定、そして障害者雇用促進法の改正など、障害者にかかわる国内法令を集中的に整備してきたわけでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 月並みですけれども、ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、我々について考えるなら、我々なしでは考えられないということが基本になっていると思います。

 ややもすると、日本のノーマライゼーションの考え方は、障害を持っている人と健常の方というふうに区別して、それぞれのサービスといいますか、それぞれについて法体系なりあるいは教育なり医療なりを考えていきがちなんですが、しかし、一番肝心なのは、障害を持っている方も持っていない方も、一緒にその能力を最高点に高めていくというための医療であり教育でなければならないというふうに私は思うわけであります。

 そこで、この権利条約の批准による我が国のインクルーシブ教育への取り組みをお伺いしたいと思います。

 実は、二〇〇七年十二月に、全国に百十九の賛同団体を持つ、障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワークというのがございます。そこで、障害者権利条約におけるインクルージョンとは、障害のある人を排除しない、エクスクルージョンしないという意味だというふうに求められております。「社会や学校から排除されてきた障害のある人がこれ以上排除されないために各国に法制度として実施すべきことを規定したのが障害者権利条約であり、現時点での人権の到達点といえるものである。」というふうに記されています。

 インクルーシブ教育とは、障害児者を排除しない教育であり、障害児者を排除しないために、障害児者は排除されないための社会全体の力をつけていく、それがインクルーシブ教育。つまり、社会全体が力をつけていくために、この条約の批准というものは我が国にとっても大変重要な批准になるであろうというふうに本員は思料するわけですね。

 そこで、この権利条約の批准による、これからの我が国のインクルーシブ教育への取り組みについてお伺いしたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 委員まさに御指摘されましたとおり、障害者を包容する教育制度、いわゆるインクルーシブ教育システムにつきましては、この条約の二十四条に規定されております。

 これは、障害のある児童が、その潜在能力を最大限に発達させて、自由な社会に効果的に参加できるようにするという教育理念に根差しているものと理解しております。

 その意味するところは、本条に基づき、これも委員御指摘されましたように、障害のある児童と障害のない児童とが可能な限り一緒に教育を受けられるように配慮するということだと理解しております。

 政府といたしましては、これを具体化するために、平成二十三年に障害者基本法を改正いたしまして、改正後のこの法律では、可能な限り障害のない児童生徒と障害のある児童生徒がともに教育を受けられるよう配慮しつつ、必要な施策を講じるべきことが定められております。

 また、中央教育審議会の報告も踏まえまして、本年八月には学校教育法施行令を改正いたしました。これは、改正前は、障害のある児童生徒さんの就学先の決定について、特別支援学校への就学を原則とし、例外的に小中学校への就学を可能としていたわけでございますけれども、改正後は、個々の児童生徒の障害の状態等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みになったと理解しております。

 これらの制度改革の方向性というのは、条約の目的や理念に沿ったものであると考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 ややもすると、例えばお年寄りの方々とか、あるいは障害を持っている方々が社会参加をする機会を逸してしまうということがこれまでにもあったと思います。ただ、それは、高齢者の方々や障害者の方々に対しての配慮だということが前面に立っていたんですが、実は、その配慮そのものは、一緒にみんなで考えるということが全ての基本であるというふうに思います。

 今、核家族化が進み、おじいちゃん、おばあちゃんのいない御家庭で子供たちを育んでいらっしゃるお父さん、お母さんに、おじいちゃん、おばあちゃん、あるいは隣近所の高齢の方々がかけるその言葉一つで、子育ての中にもたくさんのヒントがあったり、あるいは障害を持っていらっしゃる方々の声が、実はふだん生活している私たちに気づかないようなものを気づかせてくれたりというものが、この社会の中では非常にたくさんの場面が生まれていると思います。その場面を生かすためにも、教育の分野で外務省も世界各国とぜひ連携をして取り組んでいくということを常に志していただきたいというふうに思います。ありがとうございます。

 では、残りの時間を、それ以外の件についてお話を伺いたいと思います。

 まず、二〇〇七年、日米両政府が締結しました軍事情報包括保護協定、ゼネラル・セキュリティー・オブ・ミリタリー・インフォメーション・アグリーメント、これを略してGSOMIAと申します。このGSOMIAについて、その内容をまずお聞かせください。

石原大臣政務官 玉城委員にお答え申し上げます。

 日米軍事情報包括保護協定、GSOMIAは、主として日米間で相互に提供される防衛関連秘密情報を、受領する側が国内法令の範囲内で適切に保護するための手続を定めたものであります。

 本協定の締結により、防衛関連秘密情報を日米間で相互に提供する際の秘密区分、表示、送付方法等についての共通の手続が整備され、明確化されました。この結果、日米間の防衛関連情報の交換をより円滑、迅速に行うことが可能になっております。

玉城委員 では、この協定上の日本側との具体的な協力体制についてお聞かせください。

秋葉政府参考人 具体的に申し上げますと、アメリカにおいてトップシークレット、シークレット、あるいはコンフィデンシャルとされているものを、同等な保護を与えるべく日本でもそれらの情報に対して保護を与える、すなわち機密あるいは極秘あるいは秘という、それぞれの対応するカテゴリーを決めまして保護を与えるという体制を整えております。

玉城委員 ちょうど私も委員として参加をしておりますが、NSCの設置法案は衆議院を通過いたしまして、それから今、特定秘密法案が特別委員会で審議が行われております。

 実は、二〇〇七年八月のGSOMIAの締結が、今お話にありましたとおり、やはり軍事情報の機密性をより高めるという点で、今現在行われている特定秘密法案との関連性が非常に強いのではないかというふうに思料されるわけですね。その点についてお聞かせください。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、特定秘密法案ですけれども、情報漏えいに関する脅威が高まっている状況や、外国との情報共有は情報が関係各国で適切に保全されることを前提に行われていることに鑑みれば、我が国の安全保障に関する情報のうち一定のものを適切に保護する制度の整備が不可欠というところから今審議がされているところであります。

 日米軍事情報包括保護協定、GSOMIAは、日米間で相互に提供される秘密軍事情報について、受領する側のそれぞれの国内法令の範囲内で適切に保護するための手続を定めたものであります。限定的というか、日米間の軍事情報という限られた部分になるわけであります。

 ですから、一般論として、両方とも我が国の政府の情報保全が強化になるんですけれども、直接的に特定秘密保護法案とGSOMIAが関係するものではなくて、ただ、特定秘密保護法案が御承認をいただければ、日米間の両国にとっての情報共有が質、量、双方の面でより幅広いものとなるというふうに期待されているものと考えております。

玉城委員 ありがとうございました。

 まさに、万事、今審議が行われている法案でもありますので、それとの関連性はまた別途、特別委員会の方でも質問をさせていただければというふうに思います。

 このGSOMIAが、そのお互いの、特にアメリカと日本という関係性を考えると、やはり日米同盟の関係は非常に強いものを、それはもう誰でも知っていることではあると思うんです。

 では、現場の状況についてちょっとお伺いしたいと思います。

 自衛隊と米軍の共同運用体制など、このGSOMIAの協定を締結して以降、どのような連携体制になっていますでしょうか。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今御答弁させていただいておりますが、日米間におきましては、従来から、日米安保体制のもと、平素から、各種事態に際しまして日米が共同して対処するための検討や、あるいは日米共同訓練などを実施するとともに、日米双方の部隊運用に係るさまざまな情報交換を行うなど、緊密な連携を行っているところは委員御承知のところでございます。

 御指摘の日米軍事情報包括保護協定の締結によりまして、日米が秘密軍事情報の交換を行う際の秘密区分、表示、送付方法などにつきまして共通の手続が整備をされたため、本締結前と比べまして、日米間の機密情報の交換がより円滑に、また迅速に行うことが可能となったところでございます。

 自衛隊と米軍との間の運用の詳細につきましては、お答えは差し控えさせていただきますが、引き続き、日米間で一層緊密に意見交換や情報共有を図り、我が国の防衛に万全を期してまいる所存でございます。

 以上でございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 当然、軍事機密はどこの国にとっても最高機密になるということは、もうこれは疑いのないところではありますが、しかし、その一方で、軍事機密ではない情報などがいろいろな形で網かけをされてしまうということは、つまり、国民にとって知る権利を失ってしまう、失わされてしまうというふうなところにつながりかねません。

 そこで、今度は、国家安全保障と情報への権利に関する国際原則についてお尋ねしたいと思います。

 これはグローバル・プリンシプルズ・オン・ナショナル・セキュリティー・アンド・ザ・ライト・ツー・インフォメーションと申しますが、七十カ国以上、五百人以上の専門家の助言を得て、二十二の団体や学術機関によって起草され、本年、二〇一三年六月十二日に発表された原則です。国家安全保障と情報への権利に関する国際原則と呼ばれております。これは南アフリカの首都ツワネで開かれた会合で完結したことから、通称ツワネ原則と呼ばれるようになりました。ぜひ覚えておいていただきたいと思います。

 安全保障環境における世界規模で見た平和的基点として、今後、各国側からの正式な取り組みが期待されると思います。その中を幾つか少し紹介をさせていただきたいと思います。これは完全な訳文ではありませんが、ピース・フィロソフィー・センターが独自に行った和訳でございます。

  「国家安全保障と情報への権利に関するツワネ原則」は国家安全保障への脅威から人々を守るための合法的な努力を危険にさらすことはなしにどうやって政府の情報への公的アクセスを保証するかの問題を扱います。

  これらの原則は国際法、国内法とその運用に基づくものです。この分野に関連する法律や政策の起草、改正、施行に関わる人々に指針を提供するために作られました。

 その中で、原則の九条にはこうあります。

  政府は防衛計画、兵器開発、諜報機関によって使われる情報源など狭義の分野で合法的に情報を制限することができる。また、国家安全保障に関連する事柄について外国政府から提供された機密情報も制限することができる。

とあります。

 一方、原則十のAでは、

  しかし、政府は人権、人道に関する国際法の違反についての情報は決して制限してはいけない。これは、現政権より前の政権下における違反行為についての情報、また、自らの関係者あるいは他者により行われた違反行為について政府が所持する情報についても当てはまる。

というふうにあります。

 さらにもう一点、紹介いたしましょう。これは原則の三十に掲げられていますが、

  人権侵害の被害者がその侵害行為への対応策を求めたり得たりすることを阻害するような国家機密や他の情報を、政府が秘密のままにすることは許されない。

というふうになっております。

 ですから、このように、全てを機密にするのではなく、積極的に国民に開示する情報があってこそ国家の機密は守られるというふうに考えていただきたいと思います。

 そこで、最後に一点、もう時間になりましたが、このツワネ原則と日本との国際社会におけるこれからの関連性についてお尋ねしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の国際原則、このツワネ原則は、米国のオープンソサエティー財団が本年六月に発表した政府情報への公的アクセスに関するものとも承知をしております。

 国家安全保障に係る情報を保護する体制の確立と、人々の知る権利や取材の自由への十分な配慮のあり方については、これまでも、委員御指摘のこのツワネ原則を初め、さまざまな議論があったことは認識をしております。

 外務省としましては、現在、情報漏えいに関する脅威が高まっていること、一方、情報の共有は、各国が情報をしっかり保全する、こういった体制ができていることを前提として行われていること、そして、その一方で、今御指摘ありましたような、国民の知る権利あるいは報道の自由への配慮が重要であるという認識、こういったものを踏まえて、ぜひ今後適切に対応を考えていかなければならない、このように認識をしております。

玉城委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。ニフェーデービタン。

鈴木委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前九時四十三分散会


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