衆議院

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第4号 平成26年3月12日(水曜日)

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平成二十六年三月十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 渡辺  周君 理事 小熊 慎司君

   理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    赤枝 恒雄君

      秋本 真利君    大西 英男君

      木原 誠二君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    河野 太郎君

      今野 智博君    島田 佳和君

      渡海紀三朗君    東郷 哲也君

      星野 剛士君    武藤 貴也君

      村井 英樹君    玄葉光一郎君

      篠原  孝君    松本 剛明君

      阪口 直人君    村上 政俊君

      岡本 三成君    青柳陽一郎君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   内閣官房副長官      世耕 弘成君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山崎 和之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       香川 剛広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 柳  秀直君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 丸山 則夫君

   政府参考人

   (国土交通省航空局交通管制部長)         重田 雅史君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 山本 達夫君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十二日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     今野 智博君

  石原 宏高君     赤枝 恒雄君

  河井 克行君     秋本 真利君

  木原 誠二君     村井 英樹君

  小川 淳也君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     大西 英男君

  秋本 真利君     河井 克行君

  今野 智博君     あべ 俊子君

  村井 英樹君     木原 誠二君

  篠原  孝君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     石原 宏高君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官山田滝雄君、大臣官房参事官丸山則夫君、内閣官房内閣審議官山崎和之君、内閣審議官澁谷和久君、内閣審議官前田哲君、国土交通省航空局交通管制部長重田雅史君、防衛省地方協力局次長山本達夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玄葉光一郎君。

玄葉委員 おはようございます。

 本日は、三十五分という時間の中で、一つはTPP交渉につきまして、そしてもう一つは、首相の昨年末の靖国神社参拝、あるいは岸田外相御自身の靖国神社の参拝に対する考え方についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 まず、TPP交渉については、何点か確認をしておきたい、こういう趣旨でございますけれども、妥結の前に確認をしたいことが幾つかございます。一つは、交渉の現状に対する評価、そして見通しについてまずお伺いをしたいと思いますが、そのときに、せっかくなので、例えば全体のスケジュール感、手続なども御説明いただければと思うんです。例えば、最短で四月に大筋の合意を見たらば署名は秋ぐらいになるとか、各国の、例えば法制局の審査なんかがどのくらいかかるとか、そういうこともせっかくなので御説明いただけますか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 二月の二十二日から二十五日までシンガポールで行われましたTPPの閣僚会合、いわゆるルールの分野につきましては、これまで難しい課題が残されていたというものを含めまして、多くの進展があったと認識してございます。交渉現場にいる人間の感覚としては、大きな山を越えてゴールが見えてきたなという感じをしております。

 また、いわゆる市場アクセスと言われる分野につきましても、物品の市場アクセスだけではなくて、サービス、投資、政府調達、一時的入国など、全般にわたって全体会合でも議論が行われましたし、精力的に二国間の交渉が行われまして、実質的な協議が進められたということでございます。

 十二月と今回の二回にわたりまして閣僚が集まって熱心に議論をしたということを通じまして、やはり二十一世紀型の新しい経済連携協定をつくるんだという共通の機運と信頼関係が醸成されたというふうに感じております。

 我が国の報道を見ますと、次回閣僚会議の日程も決められず、長期化するのではないかというような、そういう報道ぶりでございますが、実際は、甘利大臣を初めとして多くの閣僚の御意見によりまして、次回の閣僚会議の日程をあえて決めず、今回の会議で出された方向性を踏まえまして、今後、分科会でありますとか、あるいは首席交渉官レベルでの詰めを行いまして、また、市場アクセスなどは必要に応じ二国間の交渉を精力的に行うということで、早期の妥結に向けて努力するということが確認されております。

 最終局面を迎えているわけでございますが、あえて閣僚会議などの日程を決めなかったということで、今後のスケジュールについては確たる申し合わせ等はございません。ただ、宿題が明確でございますので、今もまさに日米で、ワシントンDCで、私どもの担当者が参りまして、日米の物品の実務者の協議を行っているところでございます。また、各国も精力的にお互いの国を行き来してやっている、そういう話は聞いておりますので、なるべく詰めを行いまして、各分野の詰めがかなり見えてきたところで首席交渉官会合が開催される。そこでどこまで詰められるかの確認をした上で、閣僚会議をやるのか、それとも首席レベルで終わりにするのかということも含めて、それは今後、状況の中で判断されていくものと考えております。

 最終的にそういうレベルで内容について実質的に妥結ということがなされた後、御質問でございました、協定が成文を得る、いわゆる署名までどのぐらいかかるかということでございます。

 物によってかなり違います。物によってかなり違いますが、例えばウルグアイ・ラウンドの例で申しますと、妥結をしてから署名まで四カ月を要しております。ただ、このときは、かなり各国ともスピードアップして、リーガルスクラビングという法的なチェックの作業を相当迅速に行ったということでございますが、この手の大きなもので最も速い例ということでは、ウルグアイ・ラウンドの四カ月というのが実例としてあるということでございます。

玄葉委員 交渉姿勢についてもお尋ねをしたいと思います。

 私は、高いレベルの経済連携というのは必要だという立場であります。ただ、当然ながら、農業との両立を含めて、最大限の国益を実現しなければならない、こういう立場であります。同時に、野党第一党として厳しい姿勢で政府に対してチェックをすることこそ、むしろ日本国のTPP交渉を応援することになるというふうにも思っておりますので、改めてお聞きをしたいというふうに思っております。

 まず、自民党の衆議院そして参議院の選挙での公約、及び衆参の農林水産委員会の決議、これらと現在の政府の交渉姿勢との関連についてどのように考えればよいでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPPの交渉におきましては、国益と国益がぶつかり合い、大変厳しい交渉が続けられているわけでございますが、国会で何度も答弁をさせていただいているとおり、衆参の農林水産委員会の決議をしっかりと受けとめて全力で交渉に当たるというのが政府の方針でございまして、これは全く変わっておらないところでございます。

 また、自民党の公約との関係でいいますと、安倍総理大臣が国会で、「我々が選挙でお示しした公約はたがえてはならないと考えております。」と答弁されているところでございます。

玄葉委員 そうすると、まず、自民党の選挙公約には、「守るべきものは守り、攻めるべきものは攻める」、こういうふうに書いてございますけれども、この守るべきものとは一体何か、攻めるべきものとは何か、どうお考えになって交渉姿勢をとっておられるのか、御説明願います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 何を守り、何を攻めるのかということは交渉の中身そのものでございますので、これまでも国会でつまびらかな御説明は差し控えてきたところでございますけれども、衆参の農水委員会の決議の中で、農産物でありますとか、あるいはそれ以外もさまざまなことについて、こうしたことは守るべきだというような趣旨のことが書かれてございます。こうした決議の中身を十分踏まえた上で交渉を行っているところでございます。

 また、攻めでございますけれども、例えば市場アクセスのサービスですとか投資ですとか、我が国にとって、アジア太平洋地域においてグローバルなサプライチェーン、バリューチェーンを構築することに非常に意義のあると思われるところについて、各国のサービスや投資分野の市場アクセスの改善等について、私どもとしてはリクエストを行っているところでございます。

玄葉委員 冒頭申し上げたように、まあ、いずれは妥結をするだろうと、私は若干時間がかかるのではないかというふうに見ておりますけれども、そう思うのですが、その前に、やはり幾つか確認をしなきゃいけないことがある。

 それは、一つは言葉の定義なんですね。衆参の決議を読みますと、例えば一番最初にこういう項目が出てきます。「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。」

 こういうふうに出ているわけでありますけれども、例えば、この除外という言葉はどう定義するのでありましょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただいた決議でございますが、これは衆参の農林水産委員会が決議をしたものでございますので、そこで用いられている言葉の定義を政府としてお答えする立場にはないわけでございますが、あえて一般論で申し上げれば、関税撤廃などの原則に対する例外措置、除外も含めてでありますけれども、その具体的な扱いあるいは定義につきましては、個々のEPAあるいはFTAにおける交渉の中で決められるものというふうに認識してございます。

玄葉委員 そうすると、今の澁谷さんの話だと、通常のEPA交渉などでは、除外とか例外という言葉の違いというのは、あるいは定義もそうですけれども、明確ではなくて、その時々によって使われ方が違ってくる、そういう側面があるというふうに考えるべきなのではないかということでしょうか。

 これは、岸田外務大臣、よろしいですか。

岸田国務大臣 基本的には今申し上げたとおりですが、今回のTPP交渉における除外等の言葉の定義については、例えばこれは二〇一二年三月に、「TPP協定交渉の分野別状況」というのが政府から発出されております。要は、その時点での、我が国のTPP交渉参加前の情報収集の結果をまとめたものが政府から公表されていますが、その文書を見ますと、例えば除外という言葉については、「関税の撤廃・削減の対象としない「除外」」、そういう記述があります。あるいは、「将来の交渉に先送りする「再協議」」、こういったものを認めない、こういった記述があります。

 定義についてはそのときの交渉によって具体化されることになるとは思いますが、例えば定義ということの御質問をいただきましたことにつきましては、こういった文書も存在するということは御紹介させていただきたいと存じます。

玄葉委員 言葉というのは難しいなと思うんですよ。除外と例外というのは一体どう違うんだろうとまず思いますよね。例えば、これから関税の交渉をしていくときに、除外するというと、まさに、そもそも交渉の対象から外すというイメージがまず一つあり得る、少なくとも持つ人によってはあり得るわけです。

 ですから、先ほど、撤廃と削減という話がありましたけれども、要は、除外という言葉は、低関税化するとか、関税を削減するとか、そもそもそういうものの対象にもならないのである、アンタッチャブルなのである、こういうふうに考える人も私はいるのではないかというふうに思いますし、私は、最初、除外という言葉を聞いたときは、そういうことかなというふうに思ったんです。

 では、これは、今のお話でいくと、例えば三八・五%の牛肉が、日豪のFTA交渉で、今、下げるという交渉をしている、あるいは、TPP交渉で、この三八・五の牛肉の関税が二〇%台に下がった、あるいは一〇%台に下がった。これは果たしてこの農林水産委員会の決議の趣旨を踏まえたものと言えるのかどうか。これは解釈の問題かもしれませんけれども、いかがですか、極めて現実的だと思うんですけれども。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 交渉の現場で除外というカテゴリーがあるわけではございませんで、例えば、TPPに関しまして昨年二月に日米の共同声明が出されておりますが、その中で、「全ての物品が交渉の対象とされる」と断った上で、「最終的な結果は交渉の中で決まっていくものである」ということで合意されているものでございます。

 したがいまして、最初から交渉の対象から全く外すということではなくて、交渉のテーブルに着けた上で、これは甘利大臣も国会で何度も答弁されていますが、いわゆる聖域というものは交渉の中でかち取っていくものである、このように答弁されているところでございます。

玄葉委員 いや、わかっているんですが、私のときにも、まさにカークさんと話をしていて、物品については交渉の中で決めよう、こういうことを決めたんですね。そのとおりなんだけれども、私が現時点でちょっと確認しておきたいと思ったのは、撤廃と例外、あるいは聖域という言葉ですね。

 現実にこれから交渉で出てくるのは、ぐっと関税を下げよう、ゼロまでいかないけれども関税をぐっと下げようという議論というのは出てくると思うんです、私は。そのときに、今の言葉の定義とか、その言葉から受ける印象とかというのは実はとても大事になってくるので、そこの言葉の定義をきちっとしておいた方がよろしいのではないですか、少なくとも、現時点で政府が受けとめている言葉の定義をきちっとしておいた方がよいのではないですか、そういう趣旨です。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 全ては交渉の中で決まっていくことでございますので、日本国政府が何か言葉の定義をしているということではないんですけれども、たまたま専門雑誌に、これはおととい発売になった関税に関する専門雑誌で、学者の先生、東京大学の先生が書かれていることによりますと、いわゆる関税撤廃からの除外ということについてはこういうものが含まれるという、これは学者の先生の解釈でございますけれども、一つは、協定上何らの撤廃、引き下げについて約束しないもの、二つ目、関税を引き下げるが撤廃はしないもの、三つ、いわゆる関税割り当て等の措置をするものなどがいわゆる除外に含まれるんだということを、これは学者先生の論文でございますけれども、ここはさまざまな交渉の中で決まっていくものというふうに考えております。

玄葉委員 きょうのところはわかりました。現時点での受けとめがそうであると。

 ただ、おっしゃるように、多分、この言葉の定義というのははっきりしないんでしょうね。除外、例外、聖域、それぞれの言葉の定義がはっきりしないので、恐らく、妥結をしたときにさまざまな問題がこの言葉をめぐって起きてくるのではないかというふうに思います。

 最後に二つだけ簡単に注文しておけば、一つは、全体としてやはり情報をもっと出すべきである、国民の皆さんに対して出すべきであるというふうに思います。もう一つは、やはり最初の入場料というか、TPP交渉参加を日米で首脳同士で話し合ったときに支払ってしまった入場料が、本来、日本国として交渉の最大の切り札にすべきカードであったと私は今でも思っています。ですから、そのことが最後になって悪い意味できいてこないといいなということを念じているということだけ申し上げておきたいというふうに思います。

 その上で、首相の靖国参拝の方に移りたいと思います。

 岸田外務大臣は、昨年末の安倍総理大臣の靖国神社参拝について、どういうふうにお考えになっておられますか。

岸田国務大臣 まず、安倍総理の靖国参拝に際しての自身の思いにつきましては、既に総理自身が談話という形で発出をしております。その中で、国のリーダーとして、国のためにとうとい命をささげられた方々に尊崇の念を示すということ、そして、不戦の誓いを行う、こういった思いで参拝をした、こういった談話を発出しております。

 外務大臣の立場としては、まずはこの総理の真意をしっかり国際社会に伝えていかなければならないということで、この談話につきましては、八つの言語に翻訳をし、百二十の国に談話を送付し、八つの国際機関に対してもこうした談話を送付し、そして現地において説明をする、こういった努力を行いました。

 その説明の際に強調すべきことは、やはり、我が国の歴史認識あるいは外交姿勢、これは全く変化がないということであると考えております。我が国としましては、戦後六十九年にわたりまして、一貫して、民主主義あるいは自由、あるいは法の支配、こうした理念を大切にし、平和国家として歩んできましたが、この平和国家としての歩み、これはこれからも全く変化がないということ、こういった点をしっかり説明していかなければならないということで努力をいたしました。

 今後とも、国際社会に対する説明については、しっかり続けていきたいと考えています。

玄葉委員 岸田外務大臣御自身の靖国神社参拝に対する考え方もお尋ねをしたいというふうに思います。

 なぜ岸田外務大臣は靖国神社に参拝を、少なくとも外相としてされないのか、その理由についてもお伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、国のためにとうとい命を犠牲にされた方々に対して尊崇の念を示すということ、これは政治家として大変大切な姿勢であると認識をしております。その思いをどのように表現するのか、どのように具体的に表現するべき対応をするのか、こういったことについては、それぞれの立場において考えていくべきものだと思っています。

 私自身は、外務大臣として、安倍内閣の一員として適切に対応していきたいと考えております。

玄葉委員 適切にという意味は、外務大臣の在任中、行くことはない、こういうことですね。

岸田国務大臣 政治家として、国のためにとうとい命を犠牲にされた方々に対して尊崇の念をあらわす、このことは私も大事にしていきたいと思っています。そして、具体的な行動については、尊崇の念を示す示し方については、従来から、私自身は、外務大臣として適切に対応させていただく、このようにお答えをさせていただいております。これからもこのようにお答えしたいと考えています。

玄葉委員 先ほどおっしゃった安倍総理の昨年末の靖国参拝について、参拝それ自体、タイミング、参拝のありよう、そして環境整備、これらについて問題があったというふうにお考えですか。

岸田国務大臣 安倍総理の靖国参拝につきましては、その後、さまざまな意見や反響が国際社会の中であった、これは事実であると思っています。しかしながら、安倍総理の参拝に対する思い、真意ということにつきましては、自身が談話で表明されているとおりであると考えています。まずは、この真意についてしっかり説明をしていかなければならないと考えています。

 その際に、やはり国際社会で、靖国神社そのものに対する認識等、さまざまな理解の度合いがあるというのも現実であります。そもそも靖国神社とはどういう神社なのか、そのことからしっかり説明をしていかなければいけない、こういった場合もあります。

 靖国神社には、第二次世界大戦において命を落とされた方々のみならず、第一次世界大戦、あるいは日露戦争、日清戦争、さらには一八五三年以降、明治維新、西南戦争等、国内の騒乱において命を落とされた方々も含めて二百四十七万人の方々が神社に祭られているということ、その二百四十七万人は男女の区別あるいは身分の区別なく祭られているということ、女性も五万人以上の方々が祭られていることなど、こうした靖国神社の実態から丁寧に説明した上で、総理の真意をしっかりと説明していく、こういったことが重要だと考えております。

 ぜひ、今後とも、こうした真意とあわせて、我が国の外交姿勢あるいは歴史認識は全く変わりないということ、平和国家としての歩みはこれからも変わらないということをしっかり説明していきたいと考えています。

玄葉委員 ちなみに、靖国神社は、先ほど明治維新の話がありましたが、あのとき、勝った軍の戦死者は祭られていますけれども、負けた軍の戦死者は祭られていないという事実もまたございますので、参考までに申し上げておきます。

 岸田外務大臣は、平成十八年八月二十五日、広島テレビ「テレビ宣言」というものに出演をされて、当時の小泉総理の八月十五日の靖国神社参拝についてどう思うかというふうに聞かれている。そのときの岸田外務大臣のお答えは、「靖国へ参拝すること自体の、国のために命をかけて時代に立ち向かった方に対する敬意を表するという意味では支持します。 しかし、総理大臣が参拝するかどうか、日にちも含めて、参拝の有り様、そして環境整備など、もっと丁寧な配慮が必要だったとは思います。」こういうふうにお答えになっておられます。

 安倍総理の靖国神社参拝について、小泉総理のときと同じように、もっと丁寧な配慮が必要だったと思われませんか。

岸田国務大臣 安倍総理の靖国神社参拝につきましては、先ほど申し上げたとおりに思っております。そして、このことについては、総理自身も国会の答弁等で申し上げさせていただいておりますように、ぜひ謙虚に、そして丁寧に、国際社会にしっかりと説明をしていかなければならない、そういった説明を続けていきたい、このように表明をされています。

 ぜひ、外務大臣の立場からも、今後とも謙虚に丁寧に、しっかりと説明をしていきたいと考えています。

玄葉委員 要は、平成十八年に岸田外務大臣は、当時、小泉総理大臣の靖国参拝について、一定の問題がある、つまり、もっと丁寧な配慮が必要だったと思っておられる、少なくとも当時は思っておられた。これは多分、外務大臣のホームページだと思いますけれども。でも、安倍さんの靖国参拝については問題ないと。小泉さんと安倍さん、どう違うんでしょうか。

岸田国務大臣 丁寧に説明していかなければならない、しっかりとした配慮もしていかなければいけない、この点においては全く同じだと考えています。ですから、安倍総理も、今後とも謙虚に丁寧に説明していきたい、このように表明されているんだと思っています。

玄葉委員 小泉さんの場合は、もっと丁寧な配慮が必要だったと思う、そういうふうにはっきり述べておられるので、まさに今、安倍さんに対しても、丁寧な説明がもっともっと必要だというふうに基本的には思っているということだと理解いたします。

 また同時に、何か記者会見の質疑を拝見しますと、靖国神社参拝というのは心の問題なのであるというふうにお答えになっているんですけれども、このときは、単に心の問題という一言で片づけられる問題ではないのだ、政治は結果責任だ、こういうふうに出ています。

 ですから、そういう意味で、恐らく岸田外務大臣には岸田外務大臣の思いがいろいろおありなのではないかというふうに推測するんです。これは立場上なかなか厳しいかもしれませんけれども、やはり私は、外務大臣として、総理大臣に、ここは意見具申を、その時々においてより積極的にすべきではないかというふうに思うのです。

 今回、私がとても気になっているのは、中韓の反発ということもさることながら、結局、例えばアメリカは、同盟国でありながら、失望したという表現を初めて使いました。ロシアも批判の声を上げて、ある識者は、この歴史認識の問題で、米国、中国、韓国、ロシアから包囲網をつくられてしまったということを述べている識者もいます。私は、やや当たっているというふうに言わざるを得ない、残念ながら。

 そして、例えばこれから日本国の最大の外交課題である中国と向き合うときに、ポイントは、結局、ルールで決める、同じルールで動こうということを呼びかけていくということに最後は尽きると私は思うんですね。そのルールで動こうというときに、日本だけが中国に対して言ってみても、残念ながら、私の経験上も、全て素直に聞く耳を持つ国ではありません。

 そうすると、国際社会をいかに味方につけて、中国に対して同じルールで動こうよということを言うかということだと思うんですね。そのときに、アメリカにそういう発言をされ、しかも、ヨーロッパなどから見たときにも、日本はどうしたんだというふうに見られているのが私は昨今のような気がしますね。

 自分の経験で言っても、アメリカよりも、例えばイギリスとかドイツとかフランスは、対中国との向き合い方、あるいは尖閣で起きている事態に対しての発言が、踏み込み不足なんですね、アメリカよりはヨーロッパというのは。何とか一歩踏み込んでもらいたいとすごく思うわけです。

 だから、今、国際社会を味方につけなきゃいけない極めて大事な時期だというふうに申し上げても過言ではないと思います。その時期に、何かアメリカとかヨーロッパにどんどん距離を置かれてしまうような行為をするということが、私は、外交上大変な損失になっているというふうに考えざるを得ないと思っていますけれども、いかがお考えですか。

岸田国務大臣 まず、厳しい外交環境あるいは戦略環境の中で我が国の外交を進めるに当たって、さまざまな国との連携あるいは意思疎通、さらには、ともに汗をかき、ルールをつくっていく、こうしたことの重要性は言うまでもないと考えています。

 そして、その中にあって、我が国の外交姿勢に理解を得るために、過去の問題、歴史の問題についても真摯に向き合うということ、これももちろん大事なことであります。歴史の問題につきましても、ぜひ謙虚に、そして丁寧に、我が国の考え方、そして我が国の今日までの取り組みあるいは立場、こういったものも説明していく、これも大事なことであります。

 しかし、それとあわせて、それ以上にまた大事なこととして、今がどうであるか、そして未来に向けて日本がどうであるのか、こういったことについてもしっかり理解を得ていかなければなりません。

 今日までの我が国の平和国家としての歩み、そして今、日本の国の外交姿勢や歴史認識等が全く変わっていないということ、そして平和国家としての思いもこれからも大事にしようとしているということ、そしてまた、未来に向けて我が国がさまざまなグローバルな課題にどのように積極的に貢献しようとしているのか、こういったこともしっかり説明することによって、トータルで我が国の外交を評価していただく、そのことによって、国際社会において我が国がどんな役割を期待されるのかを考えていただく、こういった姿勢が大事なのではないかと存じます。

 歴史の認識につきましても、しっかり説明は丁寧に続けたいと思いますが、ぜひ、現在において我が国がどういう状況にあるのか、そして未来に向けて我が国がどういった思いで臨もうとしているのか、こういったものもあわせてトータルで評価されるべく努力をしていきたいと考えています。

玄葉委員 アメリカの主要紙が、中国に対する最大のプレゼントであるというふうに報道しました。また、アメリカの外交委員長が、中国を利することになるだろう、こういうふうに発言をしました。

 これは私、靖国神社参拝がある前からずっと心配していたことでもあったんですけれども、何かまるで、中国のいわゆる世論戦の土俵の上で戦ってしまっている。こういった問題を日本側から持ち出すことが、中国にとても外交上つけ入るすきを与えているというふうに私は言わざるを得ないというふうに思っていまして、このことを改めて指摘をして、だからこそ外務大臣の役割は、特に日本国の総理に対して影響を与えるという意味での役割が、私は、対ほかの国ということもさることながら、どうもあるぞというふうに思いますので、そういう意味で、私は、外務大臣の奮闘を期待したいというふうに思います。

 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官香川剛広君、外務省大臣官房審議官柳秀直君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 よろしくお願いいたします。

 世耕副長官、本会議の関係もあってお時間が限られているということですので、副長官に関連する部分から始めさせていただきたいと思います。

 先般の北朝鮮のミサイル発射に関連をして、少しNSCのあり方ということについて議論をさせていただきたいと思います。

 まず、お手元にも参考資料で配りましたクロノロジー、既に前回もこれについては当委員会で我が党の玉木委員からも質疑をさせていただきましたが、確認をさせてください。

 この間、NSCの幹部が総理と直接話をされたことというのはあったのでしょうか。

世耕内閣官房副長官 この三月三日のミサイル発射の事案においては、NSCの局長が直接会うというよりは、防衛省からの第一報を受けて、これは事態対処・危機管理担当ということになりますが、内閣官房から直ちに秘書官を通じて総理、官房長官に第一報、速報が入っているというのが事実でございます。

松本(剛)委員 クロノロジーの方では、それから夜、そして翌日の官房長官記者会見まで記されていますが、この間、局長ないしはNSCの幹部が総理と直接お話をされる。まあ、この日は予算委員会もあって、なかなかあれだったと思います。ただ、この日も、たしか三月三日は、夕刻は総理は公邸にお戻りであったというふうに記憶をいたしておりますが、直接お会いになったことはあったのでしょうか。

世耕内閣官房副長官 まず最初に第一報が総理、官房長官のところに入りましてから、その後、まず、我が国に飛んでくるおそれがないということ、また、このミサイルが日本海に落下したと推定をされたため、内閣官房の事態対処・危機管理担当の方で、付近を航行する航空機や船舶に被害が生じていない、また、その時点でその空域、海域には航空機や船舶が存在していないということを確認いたしました。

 その後、NSCなどが中心になって、九時半、十四時、十七時五十分の三回にわたって、NSCと内閣官房内閣情報調査室、外務省、防衛省の幹部が集まるなどして、緊密に連携をして、議論をして、ミサイルの発射について分析を行うとともに、米国、韓国等のあり方について必要な検討、調整を行ったわけであります。

 ということで、飛んでくる可能性がない、そして、日本海に落下をして、付近を航行する船舶、航空機に被害が生じていないし、そこにその時点で船舶、航空機が存在していないということを確認したということでありまして、総理に直接会っているということはないというふうに思います。

松本(剛)委員 賢明な世耕副長官が大変長いお話をされるということ自身が、答弁が苦しいということではないかというふうに思っておるのですが。

 まず、私たちも、NSCは必要だということで議論をさせていただきました。その上で、きょうお手元にも、改めて、民主党が修正すべきだと御提案させていただいた点、四点を記載させていただいたんですが、さまざまな課題があろうかというふうに思います。

 今、直接お会いになったかどうかということをお聞きしたのも、当然、総理にお会いになるというところの間には、総理秘書官という、あえて申し上げればかなり大きな壁があります。率直に申し上げて、私も与党のときに、私自身が秘書官を務めようかと思ったことがあるぐらい、極めて重要な役割を果たしているというふうに思うわけですね。

 そうなると、やはりNSCということの性格上からすると、今回も、緊急事態の案件は防衛省の秘書官、そして警察、危機管理の秘書官の方に連絡が行ったというふうにお話をお聞きいたしました。夕刻の発表に先立つ説明は、防衛の秘書官から説明をされたというふうにお聞きをいたしました。全て秘書官経由になるわけですが、私は、NSCの局長は総理への直接のアクセス権を持つべきではないかというふうに思うわけでありまして、この点について、できたばかりのNSCでありますが、今後ぜひ、やはり局長は総理に直接アクセス権を持つような仕組みを副長官の指導のもとでおつくりいただきたいと思うんですが、御検討いただけないでしょうか。

世耕内閣官房副長官 民主党政権のときの外務大臣の御経験でいろいろお話をいただいたと思いますが、今、事実上、私も官邸で仕事をしている立場として、危機管理に関する総理へのアクセスというのは、既に極めて柔軟になっております。秘書官が壁になるというようなことはありません。特に谷内NSC局長は、ほぼフリーに出入りできる状態になっているというふうに私は認識をしております。

 ただ、このミサイルの事案のときは、初動の段階で専門家が我が国の安全保障に直接影響がないと判断をしたから直接会われなかったということでありまして、その他の、今も日々、外交上のいろいろな問題、安全保障上のいろいろな問題が起きていますが、これは全部、谷内局長が適宜入られて、総理に報告、相談をされているというふうに認識をしております。

松本(剛)委員 これ以上御答弁は求めませんが、やはりそういう情勢判断の結果にしても、局長が総理と短い時間でもお会いになって結論をお出しになるというのがNSCのあり方ではないかというふうに私は思いますので、ぜひそういった考えをしていただきたいと思います。

 もう一つ、私どもが今そこに提案させていただいた修正案の一のところであります。今の議論ともかかわってくるんですが、緊急事態の対処についてNSCがどうかかわるのか、どこまでかかわるのかということでございます。

 きょうお手元にはお配りをしてないんですが、実は、内閣官房のホームページというのがありまして、そこに、副長官補の仕事として、緊急事態の対処という絵が出ているんですが、この絵の中には実は国家安全保障局は出てきません。初動対処という中には出てきません。その下の文章で、国家安全保障会議が設置されて、平素から基本方針や重要政策の企画立案、総合調整を行うといったようなことが記されており、平素から緊密に連携協力するといったことが書いてあります。

 今度、国家安全保障局の内閣官房の説明を見ますと、緊急事態対処については、国家安全保障に関する外交・防衛政策の観点から必要な提言を実施する、こういうふうに書いてあります。

 となると、これを見る限り、緊急事態は、そのもののオペレーション、ないし緊急事態の対処そのものは、国家安全保障局の仕事でないという理解とも言えると思います。

 私が申し上げたいのは、民主党が前回修正提案したものもちょっとごらんいただきたいと思うんですが、これを提案をさせていただいた理由は、ラインを一本にしないと、緊急事態のときにあっちに行ったりこっちに行ったりすることそのものが、時間をかけることそのものがまずいんじゃないかと。ですから、私たちのその提案は、国家安全保障局も含めて、危機管理も含めて、ラインを一本にしたらどうだという提案をさせていただきました。

 率直に申し上げて、組織を変え、権限を変え、ポストを変えることについては大変な労力が要るということはよくわかります。わかりますが、やはり、まさに国家の危急存亡、安全にかかわる話でありますから、そこの交通整理をどうするのか。

 今の整理は、ひょっとしたら、緊急事態そのものの対処からはNSCは外す、ラインに入っていない、それならそれで一つの整理だと私は思います。今、入っているようで入っていないように見えるところをどこかで交通整理をしていただいた方がいいのではないかなというふうに思います。

 本来なら一つ一つ御質問して聞くべきなんですが、あらかじめ聞いたことで申し上げると、このクロノロジーでも、「防衛省から内閣官房等に第一報。」この「等」というのはどこですかと言うと、危機管理だと。自後、七時四十分ごろまで、「防衛省から、内閣官房等に」連絡。この「等」はどこですかと言ったら、副長官補、事態対処・危機管理室、NSC、内調、外務省などを指しますと。これを見る限り、NSCがふえたことで、緊急事態なのに連絡先が一個ふえただけということになっちゃうわけですよね。

 本当に、ミサイル事案であっても、万一の場合であれば、官邸に与えられた時間は数分あるかないかという世界だと思うんです。そうすると、本当にラインはぜひ一本にしておいていただきたいと思うので、副長官もお時間が限られていると思います、ぜひ、改めて、この事態対処のラインの交通整理、NSCもできたところですから、実務上も含めてお考えをいただきたいと思いますが、御所見を伺いたいと思います。

世耕内閣官房副長官 ここは少し見解が異なるところだと思うんですが、我々はやはり、危機管理監の仕事とNSC局長の仕事というのはちょっと専門性が違うというふうに考えております。

 危機管理監は、まさに国民の生命、身体、財産への被害を防止するという観点からプロとして仕事をしてもらう。そして、国家安全保障局長は、主に外交・防衛政策上の観点から、情報を分析して集約をして、そしてそれに基づいて、総理に報告をしたりアドバイスをしたりという形をとったり、あるいは関係機関の調整を行うという仕事でありますから、これはやはり二つ分けておいた方がいい。

 ただし、今おっしゃるように、これがばらばらに動いてはいけませんから、内閣危機管理監とNSC局長というのは緊密に連携をしていくということが非常に重要だと思っています。

 今回の三月三日のミサイルの事案に関しても、危機管理監とNSC局長、緊密に連絡をして、全く問題なく初動対処ができたというふうに考えております。

松本(剛)委員 初動対処云々について幾つか、しかし、連携が早かったこと、連絡が早かったことそのものは、先日の当委員会でも我が党の玉木委員も評価をすべきだと。ただ、対外公表のプロセスとか、これをどこで決めるのかということについての役割分担がどうなっているんだということをお聞きさせていただきました。

 御答弁としてはそうならざるを得ないと思いますが、ぜひ、先ほどの総理へのアクセスの問題、それから役割分担をどう考えるのか。まさに今お話がありました、当然、役所ですから、使命があって役割があって、危機管理監はこういう役割、安全保障局長はそういう役割、だからこういうふうに分担しているんですという答弁になると思います。

 しかし、もうよくおわかりのとおり、安全保障は、国民の生命、身体、財産を守ることであって、裏表というか、一体であることももう御承知のとおりであるというふうに思いますので、その点、今後どういうふうにしていくかということ。先ほど申し上げましたように、分けてどちらかに一回集めるというのも一つの考え方だと思いますし、我々のように一本に集めるという考え方も私はあると思いますが、さっき申し上げたように、連絡先がふえるだけということにならないように。

 そして、私自身は、このNSCの改正法の議論をするときには、やはり各省の設置法も含めて、所管の交通整理といったようなものをきちっとするべきではないかという問題意識を持っていたわけですが、今のところ、そこの部分がまだ制度上は重複しているかに見えるようなところが、これ以上、何らかの大きな事態のときの混乱ないしはマイナスにならないようにということを願って、不断の制度の改善をしていただくように要請をいたしまして、もしお言葉があれば一言いただいて、どうぞ御退席ください。

世耕内閣官房副長官 当然、重大な危機において、情報の流れのおくれとか対応のおくれというのがあってはなりません。

 NSC、まだこれはできたばかりの組織でありますから、当然、その運用面において、常にPDCAサイクルを回してよりよい対応ができるように努めてまいりたいというふうに思っております。

松本(剛)委員 本来であればお聞きしたいことがまだたくさんあるんですけれども、どうぞ、お約束の時間ですので。

 引き続き、このNSCについて、あと二、三点お聞きをしてまいりたいというふうに思います。

 今の役割分担ということでいくと、特にこういった危機の状況でいきますと、まず、情報が入ってくるというのがどういう形でトップまで行って関係のところに伝えられるのか。その情報を踏まえて、何らかの対応なり判断なりを誰がどこで責任を持ってするのか。そして、その判断がおりた際には、今度は関係する部署にどのようにこの指示をしっかり広げていくのか。では、その司令塔を誰がするのかということになろうかというふうに思います。

 ちょっと確認をさせていただきたいんですが、このクロノロジーの九時三十分、十四時、十七時五十分に、関係省庁局長、課長級会議というのが何度か行われています。NSCで行われたというふうに聞いておりますが、主宰者は誰だったんでしょうか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘がございました会議につきましては、場所といたしましては、内閣官房の国家安全保障局において会議を行っております。それぞれの会議で出席者は違っておりますけれども、司会は、国家安全保障局長ないしはその代理が行いました。

 関係省庁から出席をしておりますけれども、事態対処・危機管理室も内閣官房の一部で、先ほど先生から御指摘がありましたように、我々その時点で連動して機能しておりましたので、内閣危機管理監ほか危機管理室の職員も積極的に参加していたということでございます。

松本(剛)委員 山崎審議官、苦しいのはわかるんですけれども、学校の評価じゃないんですから、積極的に参加していましたとかというような話ではないと思うんですね。

 今申し上げたかったのも、ここへ来ると、何かNSCが主宰して対応しているんですね。先ほどの世耕副長官と私とのやりとりだと、この間の緊急事態は、情勢を判断した結果、危機管理の仕事だということになったということに近い話だと思うんです、局長が総理とも直接お会いになっていないという話で。

 ですから、私が交通整理をしてくださいと言っているのはこういうことなんです。この間は事態室がおやりになるのだったら、一日、二日の間はもうずっとそれ一本でやっていただいたらいいと思いますし、その後、いろいろ問題が起こってくる中で、総合的な外交、防衛の安全保障政策をやるということで、ある時点からNSCに移すというなら、それもそれでわかりますけれども、これを見る限り、どこが中心になってやっているのかというのが、入れかわり立ちかわりのような感じに見えてくるわけです。

 これは、現段階では、できたばかりということもありますし、関係されている人々の人的な連携も含めて対応された部分があるんだろうと思いますが、組織、制度をつくるということ、しかも危機管理、緊急事態に対する制度をつくるということであれば、やはり、本当に一本でぴしっとした形、その場その場の臨機応変を当てにするのではない形にぜひしていただきたいというふうに思います。

 この前の玉木委員との質疑、審議官ともされておられましたけれども、最終的に公表は外交的な判断ですべきではないかという趣旨の御答弁だったというふうに理解をいたしておりますが、これも、NSCが判断をしたと明確になっていない、どこが判断したのかよくわからない説明のまま終わっているというふうに思います。

 多分、今の段階で御答弁は難しいと思うんですね。どこがどう整理するのかということを、もう一度、分担をぜひ見直すということを考えていただきたいというふうに思いますので、このことはお願いだけさせていただくということでよろしいでしょうか。もし何かあればお聞かせいただきます。

山崎政府参考人 私ども、今回の事態に対しては、先ほど副長官から答弁がございましたような認識でございますが、御指摘のとおり、迅速に動いて効果的な対応をするということは常に求められておりますので、今回いただきましたいろいろな御指摘も踏まえながら、さらに努力をしていきたいと思っております。

松本(剛)委員 事態への対応ということで、一つお伺いをしたいんです。

 この二月も三月も、また、この日に限らず、残念ながらミサイルが発射されている事案があるという状況になってきていますが、確かに、情報収集をするということと、情報収集ができているということを公開するかどうかというのは、情報収集能力の問題にもかかわってくるので、収集をしたから全て公開しろと言えないということは我々もよくわかります。

 ただ他方で、ミサイルが海に向けて発射をされる、もしくは空に向けて、海に向けて落ちるということになると、当然、民間航空機であるとか船舶であるとかに対してはどう連絡をするのかという問題が出てきてもおかしくないというふうに思います。

 先日、私どもの会議でそういった問いもさせていただきました。本件、対外的にも発表される内容であるけれども、こういったミサイルの発射事案があったという事実を民間航空機であるとか船舶とかに伝える必要はなかったのかという議論がありましたが、改めてこれについて伺いたいと思います。

前田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回もそうでありますが、北朝鮮からミサイルが発射されて、我が国に飛来するおそれがある場合等には、国民の生命財産を守るという観点、それから安心、安全の観点から、可能な限り迅速に必要な情報を発信するように心がけるべきでございますし、これまでもやってきたというふうに考えております。

 ただ一方で、今回の事案に関しましては、先生よく御存じのとおり、北朝鮮は事前に、航行制限区域の設定であるとか各国関係当局への事前の通知、こういったことを行っておりませんでした。我々としては、発射の蓋然性も考えますし、それからノータム、これは航空情報でございますが、ノータム等を発出することによって国民あるいは事業者にさまざまな影響を与えるわけでございますので、そのあたりを総合的に勘案して判断をしていくということになります。そして、今回の場合には、こういったことを考えた上で、発出をしないということにいたした次第でございます。

松本(剛)委員 私どもの会議でお聞きをさせていただいたときも同趣旨の答えでしたけれども、大変恐縮ながら、率直に言うと、あらかじめ何らかの警報が出ていたらそれは伝えるけれども、もう撃っちゃったものを今さら言ってもしようがないし、大げさになるからもう言わないというようなお話に聞こえますが、民間の航空機や船舶の立場からすれば、こういうことがありましたよという情報でも、やはり届けるべき情報ではないかというふうに私は思います。

 発出をする必要がないという判断は、どこで、誰の責任でされたのかということを説明できますか。

前田政府参考人 お答えいたします。

 発出しなかった趣旨というのは、先ほど御説明をしたとおりでございます。

 今回の場合、日本海方面などのように広範囲を対象として一般的な航行警報あるいはノータムを発すると無用な混乱を招くこともあるであろうということを、これは関係省庁が集まって協議をする中で判断してまいったというふうに考えております。

 ただ、いずれにしても、先生の御指摘が今ございましたけれども、国民への情報発信という観点は、やはり極めて重要なことは言うまでもないと思います。こういった点についても今後引き続ききちんと努力をして、遺漏のないように努めてまいりたい、このように考えております。

松本(剛)委員 時間も限られていますから、これ以上申し上げません。岸田大臣そして若宮政務官、ぜひ政務のレベルでも今の議論をお聞きいただきたいと思うんです。

 結局、各省の実務レベルで調整をして、連絡をしないということをお決めになっている。航行情報、ノータムというふうに皆さん置きかえて御説明をされています。これは確かに警報を発するいわば公式のものであります。私が申し上げたのは、それにとどまらず、ミサイル発射の事実も含めて情報提供を、我が国の政府として我が国の空運、海運の交通関係に知らせる、そういう方法もあるわけであります。公式のノータムとか航行情報が、確かに一定の手続にのっとって全世界に広げるということが、これはある意味でこの先の警報ですから、どこに撃つかわからないとかと言うことができるかもしれません。しかし、実際に撃たれた。それで、最初に申し上げました、もう撃っちゃったんだから、今さら警報を出せないんだからしようがないという時点で今さら出すのは大げさだとか、そういうような御説明のようにお聞きをします。

 やはり、まさに我が国の国民の生命財産を守る、また、我が国にとどまらず、東アジアに一定の責任のある我が国としては、一定の情報を、政府内の、いわば軍事上の情報としてだけではなくて、安全上の情報としてどう提供するのかということも視野に入れて、そして、どこで判断をして、どう決めるのか。今も結局、ですから、どこで判断をするのか。それも私は、NSCならNSC、事態室なら事態室に一本化して、きちっと決めて、速やかに出していただきたい、そのことを問題提起させていただいているということでありますので、ぜひそのことを、きょうこういう議論があったということも内閣官房の中に持ち帰っていただいて、交通整理をしていただきたいというふうに思います。

 特に何かなければ、私は時間がないので次の問題に行かせていただきたいと思いますが、よろしいですか。

 それでは、中国の防空識別圏の問題について議論させていただきたいと思います。

 先日もここで、安重根記念館のことでも申し上げました。こういった問題は常に取り上げ続けて、しっかりやっていきたいと思っておりますので、これは主として外務省にお願いをすることになろうかと思いますが、若干議論をさせていただきたいと思います。

 今回、ちょうどこの週に、国際民間航空機関、ICAOの理事会が開催をされて、そこで御議論をいただいたというふうに承知をいたしております。たしか十一月の理事会でも発言をされ、日本の発言に留意をするということになっていたというふうに思いますが、今回は、米国との連名で書簡を出したというふうにお聞きをいたしております。この書簡を出したことの外交的な意義について、また、この間の理事会での取り組みについて御説明をいただけたらというふうに思いますが、よろしくお願いします。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 国際民間航空機関の理事会が行われまして、公海上における飛行の自由と防空識別圏との関係につきましてのICAOの事務局の専門的な見解を求める書簡を、先生もおっしゃられましたとおり、米国との連名で提出いたしました。

 その際、ICAO事務局にはしっかりと検討するよう要請いたしまして、同日の理事会におきまして、書簡を米国とともにICAO事務局に提出した旨の発言を行いました。

 以上でございます。

松本(剛)委員 提出した書簡は、期限を切って返事をもらうとか、そういう形にはなっているんでしょうか。

香川政府参考人 書簡の中には、特にデッドラインといいますか、このときまでに回答をいただきたいということは明示してございません。

松本(剛)委員 お手元にお配りをした資料の裏側を見ていただくと、今、公海上の航行の自由という話がありましたけれども、多分、ICAOでは、FIR、飛行情報区の問題ではないかというふうに思います。皆さんにも御参考までに見ていただけたらと思いますが、領海、領空とこのFIRとは全く別物と思っていただいた方がいいのではないかというふうに思っております。

 実は、あえて大きいのをつけたのも、尖閣の島の一部は台北の飛行情報区になっておりますから、ただ、私が発表を見る限りでは、自国のFIRの外側にある民間航空の運航を指示、制限する権限があるのかという質問を出されたというふうにお聞きをいたしております。

 お手元にお配りした地図にも、これは私どもが線を引いたので、細かいところは若干ずれているかもしれませんが、大きく申し上げたら、中国のこの中国防空識別圏の下に、読みにくいんですが、SHANGHAIという字が青い字で書いてあると思います。この区域が実は上海のFIRの区域になります。明らかにこれを越えて、我が方の福岡のFIR、そして台北のFIRに入ってきているわけであります。

 こういったことをどこまで認めるのか、そして民間航空機に対してどこまで指示する権利を認めるのかということについては、ぜひこのICAOでも、もっと共感を得られるように強力に運動していただきたいと私は思うんです。発表によると、主要国から日米の対応に賛意が示されたというふうに出ていますが、どのぐらいの形になっているのかということが一つ。

 そして、十一月からのICAOの議論は、我が方としては進展があったというふうに考えているのかということが二つ目。

 三つ目は、今後これはどういうふうに取り組んでいくのかということ。

 以上三つ、お答えをいただけたらと思います。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、このICAOの理事会は、今回はクローズドセッション、非公開のセッションになっておりまして、個々の国の対応については公開しないということになっておりますので、そこは差し控えさせていただきますけれども、日米のこの書簡につきまして日本から紹介しましたところ、支持をして賛意を表明してくれる国がございました。

 それから、昨年十一月からの理事会における、この問題について議論していきましょうということにつきましては、今回、ICAOの事務局に技術的な見解を求めるということで、一定の進展が見られているものだというふうに思っています。

 ですから、今後は、このICAOの事務局の回答等も踏まえまして、関係国と連携をして取り組んでまいりたいというふうに思っております。

松本(剛)委員 やはり、ぜひこういう国際的なルールはきちっと守られなければいけないという意味からも、このICAOでの取り組みというのも極めて重要だというふうに思っております。

 関連して一つ、これは御要望だけさせていただきたいと思いますが、まさに皆さんごらんいただいたように、これは台北のFIRがあるんですが、台湾はメンバーではないはずなんですね。昨年の十一月は議長の特別ゲストということで招待されたが、今回の三月は招待されていないというふうにお聞きをいたしました。

 台湾自身は、やはり安全にもかかわることなので、何らかの形で参加をしたいという意思があるのではないか。これは報道ベースで、私も直接確認をしたわけじゃないんですが。我が国としても、やはりこれは極めて技術的な問題であるので、政治的な問題とは切り離して、台湾の参加は認めるような形で動くべきではないかと思っておりますので、このことは、私の意見としてそれだけ申し上げておきたいと思います。

 最後に、大臣と若宮政務官にもおいでをいただきました。私は、この問題をぜひ今後も、例えばARFの場面であるとか、防衛政務官にお見えをいただいたのも、ADMMプラス、拡大ASEAN国防相会議というのがこれから夏に向けてあるというふうに思います。あらゆる場面でこういった問題を安全にかかわる問題として取り上げていくべきだということを私からは御要請させていただきたいと思いますので、それぞれコメントをいただいて、私の質疑を結びとしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、御指摘の東シナ海防空識別区につきましては、東シナ海における力による現状変更であり、事態をエスカレートさせるものでもありますし、また、不測の事態も招きかねない大変危険なものだと認識をしております。

 加えて、我が国固有の領土であります尖閣諸島の領空を、あたかも中国の領空であるかのごとき表示をしているという点からも、我が国としては決して受け入れることはできません。こういった立場については、引き続きしっかりと中国に伝えていかなければなりません。

 あわせて、御指摘のように、この認識や我が国の立場は、関係各国としっかり共有をしていかなければなりません。そういった点から、昨年も、日・ASEAN特別首脳会談においてもこの問題を取り上げましたし、既に昨年もARFでこの議題は取り上げていたと記憶しております。

 今後とも、こうした我が国の立場や認識を国際社会と共有するという視点から、御指摘のようなADMMプラスですとかARF、こうしたさまざまな議論の場でこの問題を取り上げ続けることは重要だと考えます。引き続き努力をしていきたいと思っております。

若宮大臣政務官 松本委員におかれましては、外務大臣も御経験され、またお父様も防衛庁長官をなさっておられたということで、外交、安全保障に関しては非常に御造詣が深く、これからも御支援、御指導をいただければと思っておるところでございます。

 御質問に関してでございますが、中国による東シナ海の防空識別区の設定に係る一連の措置について、東シナ海におきます現状を一方的に変更して、事態をエスカレートさせ、現場の海空域におきます、まさに今外務大臣からも申し上げました不測の事態を招きかねない危険なものであると認識をいたしております。

 こうした問題意識のもと、アジア太平洋地域におけます唯一の政府主催の国防大臣会合であります、御指摘のADMMプラス等の場を最大限活用いたしまして、地域全ての国々にとってまた共通の関心事項でもございます、極めて重要な、確立された国際法上の一般原則であります、公海上空におけます飛行の自由の確保につきましては、あらゆる機会を通じまして関係諸国との共通認識を醸成していくということは、まさに委員御指摘のとおり、有益であるものと認識をしております。全力で取り組んでまいりたい、そのような覚悟でございます。

松本(剛)委員 きょうのNSC問題、そしてこの問題も、いずれも、大臣、政務の指導力、リーダーシップが極めて重要な問題だと思っていますので、ぜひ私の問題認識に御理解をいただいて、今後指導力を発揮いただくようにお願い申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

鈴木委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 昨日は、東日本大震災から丸三年が経過した、大変に特別な一日でありました。今なお原発事故の影響が、被災者の方々の生活に大変に大きな影響を与えていることを改めて認識した一日でもございました。

 きょうは、同じく重大な原発事故の影響をいまだに受けており、また、国際社会において大変な懸案事項にもなっているウクライナ情勢を中心に質問をさせていただきたいと思います。日本政府の基本的な姿勢、認識、そして今後に向けた戦略について質問させていただきたいと思います。

 まず、私は、ウクライナ情勢に対する日本政府の対応の仕方は大変に難しいと思います。国家主権、国際法の遵守、また人権問題、さらに日ロ関係、日米関係という、どれも大変に重要なさまざまなポイントがある、これは一つとして無視することはできません。ただ、それらが互いに矛盾をしている面もあり、その中で、賢く、かつ、日本として国際社会にこの状況の打開に向けたメッセージを発する、貢献をする、そういった視点が必要なんだと思います。

 簡単におさらいをすると、二月二十三日、ウクライナの議会が、与党地域党も含めて、職務不履行を理由にヤヌコビッチ大統領解任を決議し、トゥルチノフ大統領代行が就任をしたということになります。そして、首都キエフを野党勢力が掌握した結果、二月二十七日、旧野党勢力による新内閣が誕生、ヤツェニュク首相代行が内閣を率いるということになりましたが、これは五月二十五日までの暫定内閣になる見込みであります。

 ロシアのプーチン大統領は、ウクライナでの体制変革の正統性を否定し、ロシア系住民の保護と国益を守るという目的で、ウクライナのクリミア自治共和国への介入を行っている。一方で、大統領職を追われたヤヌコビッチ氏は、この政権交代をクーデターとみなして非難をしているという状況でございます。

 まず、これらの状況を踏まえて、日本政府としては今のウクライナの暫定政権の正統性をどのように見ているのか、まずは大臣にお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、ウクライナ情勢については、ただいま委員から御紹介いただいたとおりであります。国際社会が注目をし、そして事態も大変流動的であると認識をしております。

 その中にありまして、ウクライナ暫定政権の正統性について御質問いただきましたが、我が国としましては、現状、ウクライナにおいて、政府承認の問題が生じているとは考えておりません。我が国としましては、トゥルチノフ大統領代行のもとでの暫定政府はウクライナを代表する政府であると認識をしております。

阪口委員 私もウクライナ人の友人もおりまして、現地の方々にもさまざまな意見を聞き、また、さまざまな情報とあわせて現地の情報について思いをめぐらせているんですが、いろいろな意見があります。東西対立というのも一つの見方ですが、しかし、ヤヌコビッチ政権、また、一貫して続いている政治腐敗に対する大変な不満が国民のデモの大きな要因であったということ、これも大事な視点だと思います。

 ところが、当初は比較的平和的なデモが、急進的な幾つかのナショナリスト政党がそこに加わったことによって、治安部隊と衝突するようになり、多数の死者が出るようになりました。こういったことを考えると、これはクーデターであるという見方、幾つかの国からはそういった見方も呈されております。

 今、新しい政権の正統性に対しては特に疑義を唱えるものではないということでございましたが、政権移行のプロセスについて外務大臣はどのようにお考えなのか、また、一連の動きの中で日本政府はどのような貢献をしたのか、この点についても説明をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 政権移行の過程についてですが、ウクライナにおきましては、同国議会の決定によりまして、トゥルチノフ最高会議新議長が同国大統領代行に就任をしております。そして、ウクライナにおける大統領としての職務は、同大統領代行がウクライナ国内法に従って行うこととなっていると認識をしております。

 ウクライナの暫定内閣につきましては、反ヤヌコビッチ大統領の運動にさまざまな政党、関係者がかかわっています。委員御指摘のとおりであります。しかし、ウクライナ国内法に従って、最終的に最高会議の承認を受けているというふうに認識をしておりますので、我が国としましては、先ほど申し上げたように、今の暫定政権がウクライナを代表していると認識をしております。

 そして、我が国としてどんな貢献をしてきたのかという御質問でありましたが、我が国としましては、こうしたウクライナの混乱を受けて、三月二日に、まず外務大臣談話を発出させていただきまして、その中で、ロシアにおいて、ウクライナ国内において軍を動かすことを連邦院が承認したという動きがありました。この動きに対しまして深い憂慮と懸念を表明する、こういったことを行いました。

 そして、翌日、三月三日にG7の共同声明が発出されました。我が国としましては、この共同声明に参加するという形で、G7とともにこの問題について考え方を発出したということであります。

 そして、それ以外の貢献として今我が国として考えておりますのは、ウクライナのこうした混乱の大きな背景としましては、ウクライナの厳しい財政状況があります。現在、ウクライナ政府とIMFの間で協議が行われていますが、財政破綻に対する経済的な支援につきましても、ウクライナとIMFの協議を見ながら、我が国としましてもしっかり貢献をしていきたいと考えています。

 あわせて、このウクライナ情勢については、政治対話と、そして国内の透明性が重要だと考えています。

 これに対しましては、OSCE、欧州安全保障協力機構、我が国はパートナーと位置づけられていますが、OSCEとして、ウクライナ情勢の政治対話あるいは透明性を確保するために、ミッションを派遣するという動きがあります。このミッションの費用につきましても、我が国としまして、十万ユーロの拠出を表明しております。

 こうした政治対話や透明性確保の動きに関しましても、我が国として貢献をしていくことを表明させていただいているということであります。

 それ以外、関係各国ともさまざまな意思疎通を図りながら、情勢を注視し、我が国として適切に対応していきたいと考えております。

阪口委員 今さまざまな御説明をいただきましたが、例えば、三月の二日、アメリカのオバマ大統領、フランスのオランド大統領、またドイツのメルケル首相などは、プーチン大統領と直接電話会談を行っているんですね。私としては、ここに安倍首相が入っていないということ、これは、今、日本が置かれた状況を考えると、非常に残念にも思います。五回にわたってプーチン大統領とこれまで会談を積み重ねてきたわけですから、このウクライナ情勢に関して日本がイニシアチブをとっていく上で、こういった機会に日本の考え方をしっかり伝えること、やはりこれは重要であったと思います。

 なぜ安倍総理はここに入っていないのか、あるいは外されているのかということ、これが最初の質問です。

 一方で、この中で、今、岸田外務大臣がお話しされたように、メルケル首相がOSCEを通して調査ミッションを派遣するという提案をして、これをプーチンさんは受け入れた。これは私は、メルケルさんによるこの問題解決のための大きな貢献だと思います。

 日本は、二十五万ユーロのうち十万ユーロ、大変に大きな財政的な貢献をするということではありますが、しかし、私としては、やはりこういった提案をする、そしてプーチン大統領を説得するというような、そういった貢献もしてほしかったなと思っています。

 その上で、このOSCEのミッションについてですが、ここに実際に日本人が入っていく、あるいはミッションの内容について、十万ユーロを出すわけですから、日本として何らかの要望、また主体的に内容について提案をしていくということ、これはあるのか、あるとすればどのような内容なのか、教えていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、ロシアに対する働きかけについての御質問ですが、我が国としましては、このウクライナ情勢については、あらゆる当事者が自制と責任のある行動を通じて平和裏に事態が収拾されなければならないと考えております。そのために、国際法を初めとする法の遵守、あるいはウクライナの主権あるいは領土の一体性、こういったものが尊重されなければならない、こういった考え方を表明しております。

 こういった考え方をしっかりとロシアにも伝えていくということ、これはもう当然重要なことだと思っています。これまでさまざまなレベルを通じてこういった考え方は伝えてきましたが、昨晩、私も、ロシアのラブロフ外相に電話をかけさせていただき、一時間にわたりまして日ロ外相電話会談を行わせていただきました。

 その中で、私の方からは、まずは、ウクライナ暫定政府とロシアが直接対話を行うべきであるということ、さらには、これからクリミアですとかあるいはウクライナ東部に対しまして国際監視団を送ること、こうした国際監視団を受け入れるということが重要であるということで、平和的な収拾に向けて働きかけを行わせていただきました。

 現状、プーチン大統領に対して直接安倍総理が連絡をとる予定はありませんが、さまざまな形を通じまして、ロシアに対しましても我が国の考え方はしっかりと働きかけていく、平和的な収拾に向けて努力をするべきだという考え方を働きかけていく、こういった点は大変重要だと考えております。

 そして、二点目の質問としまして、OSCEのミッションに対して我が国としてどのようにかかわっていくのか。

 予算的な面は先ほど御紹介いただいたとおりであります。二十五万ユーロのうち十万ユーロを拠出するわけでありますが、このミッションそのものについてのかかわりについては、本ミッションには日本などのパートナー国からの新規参加は想定されていないというのが現状であります。本ミッションの重要性に鑑み予算は拠出いたしましたが、本ミッションに直接人的な貢献は想定されていないというのが実情であります。

 しかし、こうしたミッション以外にもさまざまな活動が検討されていると承知をしておりますので、ぜひ、現地の情勢ですとか、あるいはOSCEの活動状況を踏まえつつ、いかなる貢献ができるのか、人的貢献も含めてどのような貢献ができるかについては、今後とも検討していきたいと考えています。

阪口委員 今御説明いただいた二点目について、私の考えをお話ししたいと思います。

 実は、私自身が、一九九六年にボスニア統一選挙が行われたときに、日本政府からOSCEに派遣をされて、当時の選挙におけるテクニカルアドバイザーのような形で、ボスニア統一選挙に対する助言をした、そういったミッションの一員でありました。

 当時、恐らく三十人ぐらい、いわゆる民間人の方々が一時的に外務省の一員になってボスニアに派遣をされた、そういう枠組みの中で仕事をさせていただきました。私も当時は民間人であったんですが、国連等でのこういった民主化支援の経験に基づいて、オーストリア大使館に書記官として配属をされて、そこからボスニアに出張、そういった形で活動しました。

 やはり、顔が見える貢献をするということを考えると、OSCEというのは欧州を中心とした組織ではありますが、十万ユーロも拠出をするということにふさわしい、人的貢献もセットで考えること、これはぜひ検討していただきたいと思うんですね。

 やはり、こういった問題について、先ほどから申し上げております、本当に日本にとっても重要な問題ではありますが、ただ、この地域において、日本人が現地の文化、歴史の中で現地の方々に誤解をされるような歴史というのは少ないと思います。むしろ、日本に対する印象というのは私は極めていいと思っていますので、何とか日本人の専門家にも入って活躍していただけるような交渉、これは行う価値があると私は思っております。

 最初の点について、安倍総理は特にプーチン大統領と話す予定はないということですが、私はぜひ話す機会をつくるべきだと思っています。

 やはり、対ロということを考えたときに、領土問題に対するさまざまな議論、またエネルギー問題等々、これまで積み上げてきたものを、今回の何らかの意思決定によって、もしかしたら日ロという関係の中ではそれを崩してしまう危険性もあるかと思います。

 一方で、日本は、国家の主権を守る、国際法を守る、また、さまざまな人道的配慮も行う、これは譲れないんだということをきっちりと安倍総理自身がプーチン大統領に説明をして、いずれの決定をしたとしてもそこに生じる政治的リスクというものを最小にするには、やはりこれまで積み上げてきた信頼関係に基づく首脳同士の会談というものも必要だと思います。

 この点、ぜひ岸田外務大臣からも、総理そして官邸に対して、先ほどの点も含めて御助言いただければと思っているんですが、この点についてはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 我が国のウクライナ問題における考え方を、今日までの日ロ関係を背景に、ロシアにしっかりと説明し、働きかけていくという考え方、これは大変重要な考え方であると思っております。

 そして、昨晩も日ロ外相電話会談を行いましたが、今後、ウクライナの情勢、大変流動的であると思っております。ぜひ、現地の状況も見ながら、適切に考えていきたいと思っております。

阪口委員 今、暫定内閣が成立をして、五月二十五日の大統領選挙に向けてさまざまな動きがありますが、このウクライナの暫定内閣について、その閣僚のメンバーなどを見ると、大変に興味深いことがございます。

 まず、ティモシェンコ元首相が総裁を務める祖国という政党からは、首相代行、また副首相、内務大臣、国家安全保障国防評議会のトップなどが就任をしている。ティモシェンコ元首相の影響力が大変に強い内閣になっているかと思います。

 一方で、ナショナリスト政党とされるスボボダ、自由という意味だそうですが、そこからも閣僚が出ている。

 一方で、最初に申し上げた、デモが大変に過激になっていった中で大きな役割を果たしたとされるヤロシュ氏は閣僚には入っていないという状況でございます。

 一方で、五月の大統領選への出馬を表明したビタリ・クリチコ氏、彼は世界ヘビー級のチャンピオン、それも大変に長い間にわたって防衛を重ねた世界チャンピオンで、国民的な英雄でもありますが、このビタリ・クリチコ氏が率いる改革を目指すウクライナ民主連合、ウダル党、ウダルというのは一撃という意味らしいですね、このメンバーは一人も閣僚には入っていません。ウダル党というのは四十議席を獲得して第三の政党でありますから、野党連合の中に入っていないというのは、私はちょっと不自然に思うところもございます。

 ところが、その理由として、二月初めにアメリカのヌーランド国務長官補とパイエト駐ウクライナ大使が、ウクライナ野党勢力の今後の人事について話し合っていた。その内容がユーチューブに流出をして、この中で、ヌーランド氏が、クリチコが政権に入るのはよい考えではないということを言っている。こういった内容が、これはもう本当に世界じゅうに出回っております。私も簡単にユーチューブにアクセスして聞くことができました。ヌーランド国務長官補は、経済に関する経験や政治の経験があるヤツェニュク氏が首相になるのはいいけれども、先ほどのスボボダの党首のチャフニボク氏とクリチコ氏は外にいればいいというようなことを言っているわけでございます。

 この点、国家主権、我々が守るということを非常に大切にすべきだと考えている。日本もそういう方向性で今後さまざまな態度を決めていくと思いますが、国家主権という点で見ると、アメリカ政府がウクライナの政権転覆を支援する、あるいは、少なくとも、それを踏まえて、新閣僚の人事について介入をするというんでしょうか、結果的にそのとおりになったわけですから、介入する、これはある意味、新政権の正統性というものに対する疑義のベースになる、こういった国際社会の批判の裏づけになっていると私は思うんですけれども。

 この点について、まず、ユーチューブをごらんになったかどうかということと、今私が申し上げたアメリカの国務長官補のこういった発言が閣僚人事に多大な影響を与えた、この二点について大臣の御所見をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 いろいろ御指摘をいただき、興味深くお話を聞かせていただきました。

 御指摘のユーチューブにつきましては、私自身は拝見しておりません。よって、その発言も、どんな雰囲気の中で、どんな状況での発言か、それを私自身確認しておりませんので、この場では発言は控えたいと思います。

 ただ、御指摘のように、ウクライナの暫定政権にはさまざまな政党の関係者が参加をしています。いろいろな政党や関係者がかかわっているわけですが、いずれにせよ、この政権につきましては、ウクライナの国内法に従って、最高会議で承認を受けているものと承知をしておりますので、今の暫定政権、ウクライナを代表しているという認識においては、先ほど申し上げたとおりでございます。

阪口委員 大臣の立場上、そのような答弁になるのかなとは思うんですけれども、ただ、例えば、プーチンさんとお話をする、そして日本の立場を説明するときに、やはり一連のさまざまな点についても我々は把握しているんだということをしっかりと説明することも大事だと思うんですね。

 要するに、これは私がウクライナ人の友人などと意見交換をする中で感じていることなんですが、多くのウクライナ人は、政権交代をしたとはいえ、これまで本当に政治不信の原因になっていたさまざまな腐敗がここで解決されたとは思っていないということであります。

 このティモシェンコ氏も、まさにさまざまな腐敗が理由で投獄をされていたという経歴もございます。この中身についてはこれから明らかになっていく、あるいは身の潔白が証明されるという展開になる可能性がないとも言えませんけれども、ただ、国の資産を相当私的流用していたということは言われている。

 ですから、政権が東西でかわっただけで、同じことになってしまうのではないか。また、閣僚の構成がティモシェンコ氏の影響が大変に強い、そして背後に欧米がいるというのは、オレンジ革命によって成立をし、残念ながら、国民の期待を裏切った、その結果、ヤヌコビッチ政権が生まれたという前回の構造と余り変わりがないということもあるかと思います。

 ですから、私は、日本こそがこのような状況をしっかり踏まえた上で、また、先ほど申し上げたように、とにかく現地の人々の話を聞く、調査をする、そういったミッションにも積極的に人を出して、その上で、やはりプーチンさん、またウクライナの新しい内閣、トップの方々との関係もしっかりと踏まえて、日本としての立場を明らかにしていくということが必要だと思います。

 とにかく、私としては、これまで築いてきたもの、特に領土問題、エネルギー問題を初めとする日本の利益とも大いにつながっているものを、立場を貫くことによって犠牲にしてほしくはない。そのための対話の機会、特に現地の方々との機会、これはもうとにかく大事にしていただきたいと思うんですね。

 ですから、私は岸田大臣の立場もわかりますし、なかなか慎重な物言いをせざるを得ない立場というのはわかるんですけれども、とにかく、私が申し上げたこと、これは私の考えですから、それが全て正しいと言うつもりもありませんけれども、そのあたり、しっかりと安倍総理ともコミュニケーションをした上で、全ての当事者との関係を大きく損なうことなく、しかし、日本としての独自の外交ができるような、そういう素地をつくっていっていただきたいと思います。

 その上で、私がやはり大変に懸念を持っているのは、こういった外交を行う上で、安倍総理の靖国神社の参拝がさまざまな制約要因になっているのではないかということでございます。

 先ほど玄葉前外務大臣から、アメリカの主要紙には、この靖国参拝というのは中国への最大のプレゼントである、そういうふうに書かれていたということの紹介がありましたが、本当に日本がさまざまな外交をする上での制約要因になり、また、中国や韓国にさまざまな外交カードを与えてしまった、そういった印象を私は持っております。

 さまざまな外交をする際に、この靖国参拝での影響を岸田大臣はどのように感じていらっしゃるか、お聞きをしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、安倍総理の靖国参拝につきましては、先ほど来答弁の中でも申し上げさせていただきましたが、安倍総理の真意をしっかり丁寧に説明していく、そして、我が国の外交姿勢、歴史認識、そして平和国家としての歩み、これは変わらないということ、これを特にしっかりと強調しなければならないと考えています。そして、こういったことが、我が国の外交の基軸であります日米同盟を初めさまざまな外交関係に影響が生じないようにしなければならないと考えています。

 そして、日米同盟について申し上げるならば、昨年来、さまざまな点で日米関係の協力体制は深化していると考えています。首脳会談あるいは日米2プラス2、さまざまな機会において日米同盟は強化され、そして、この二国間関係のみならず、中東和平ですとか、シリア問題、あるいはイランの核問題、こうしたグローバルな課題においても具体的な日米協力が進んでいる。

 こういったことから、日米同盟は揺るぎないものであるというふうに認識をしておりますし、先般、二月七日に、私もワシントンで日米外相会談に臨ませていただきましたが、この外相会談の場でも日米同盟が揺るぎないものであるということを確認させていただきました。

 ぜひ、今後とも我が国の外交姿勢が変わらないということはしっかり説明していきたいと思いますが、ことしも、オバマ大統領の訪日など、さまざまな政治日程があります。こういった機会を通じまして、我が国の外交姿勢が変わらないということ、そして、日米同盟を初めさまざまな大切な外交関係は揺るぎないものであるということ、これをしっかりと確認をしていきたいと考えています。

阪口委員 ぜひ、その点についてはさまざまな厳しい状況を乗り越えて、日米関係、これを強固なものにしていく努力を続けていただきたいと思います。

 三月六日には、米国が対ロシア経済制裁、これは、ビザの発給制限や、ウクライナの介入に関係する人物の米国への渡航禁止と米国内での資産凍結を発動しました。EUも、外交が進展しない場合、米国と同様の制裁を検討すると言っております。

 恐らく、日本にも同調しろというような圧力というんでしょうか、そういった声が高まってくるのではないかと思いますが、あくまでも日本として独自の考えに基づいた外交をする。靖国問題でアメリカに対して外交上失点をしたからしようがなくということではなくて、なぜ日本がそのような選択をしたのか、プーチン大統領を初めこのウクライナ問題に関連する全てのアクターに説明できる状況をぜひつくっていただく努力をお願いしたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 きょうは、岸田大臣に、外務大臣としての理想というかそういったこと、あるいは日本外交の基本的な姿勢ということについていろいろとお伺いしていきたいと思います。

 私ども野党の議員として外務委員会でいろいろ質疑をさせていただいて、いつも大臣から非常に丁寧な御答弁をいただくことに感謝をしながらも、やはりいろいろな制約がおありの中で、大臣としてどういうふうにお考えなのかということがなかなかいま一つ感じられないときもあるように私自身感じておりまして、きょうは岸田大臣の個人の思いというか、そういったこともいろいろとお伺いできればなというふうに思っております。

 まず初めに、岸田大臣が、我が国の明治以来の外務大臣の中で、最も尊敬しておられる外務大臣というのは誰なのか、なおかつ、御自身の中で理想の外務大臣というのはどういうふうなあり方ということをお考えなのかということについて、まずお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 理想の外務大臣は誰かという質問につきましては、正直言いまして、よく整理して冷静に考えたことはありませんが、私で、日本の国、百四十三代目の外務大臣だと聞いております。その歴史の中で本当に多くの先輩方が活躍をしてこられました。

 その中で、例えば、外務省に足を運びますと、陸奥宗光公の銅像が幾つもあること、最初に足を踏み入れたとき以来、大変印象的でありました。陸奥宗光公は、日清戦争のときの日本の外務大臣、あるいは不平等条約改定に努力をした外務大臣として高い評価を得ている、これが外務省における銅像の設置のありようにもつながっているのかな、こんなことを感じたことがあります。

 それ以後も、日露戦争のときの小村寿太郎外務大臣ですとか、あるいは、日中国交回復のときに尽力されました大平正芳外務大臣ですとか、また、我が広島の先輩、郷土の先輩としましては、宮沢喜一外務大臣あるいは池田行彦外務大臣、こういった先輩方がおられます。

 誰が一番かとかいうことは考えたことはありませんが、百四十三代目の外務大臣として、多くの先輩方の歴史を振り返るときに頭をよぎりますのは、今申し上げたような先輩方の名前であります。

 そして、理想とする外務大臣の姿についてどうかという御質問もいただきました。

 これも、明治以来の日本の置かれている外交状況は、時代とともに大きく変化をしてきました。また、日本の国の国力ですとか国のありようも大きく変化をしてきました。その時々において求められる外務大臣像というのは当然変化しなければならないとは思っております。

 しかし、そういった中にあって大事なことは、国際社会全体をしっかりと見回す大局観というものは持ち合わさなければならないのではないか、また、さまざまな政策課題においても、やはりバランス感覚というのは大事なのではないか、そして、こうした緊迫した情勢であればあるほど、やはり冷静な判断が求められるのではないか、こういった点は、いつの時代にあっても、どんな状況にあっても、大切な要素なのではないかと考えております。

 いずれにしましても、今言った御質問について、ちょっと平素から整理をして考えたことはありませんでしたので、とりあえず、御質問を受けまして、思いますところを申し上げさせていただきました。

村上(政)委員 ありがとうございます。

 どういうふうなことを考えながら日々外交に当たっておられるのかということが私自身よく伝わってまいりました。

 例えば、外務大臣として名前を挙げられた方々の中に、小村寿太郎であったり、あるいは日中国交正常化の場面であったり、非常に国論を割るような、不平等条約あるいは日中の国交正常化といった、国内の世論との関係も非常に難しい局面での外務大臣というお名前もありました。

 また、外務大臣として求められる能力であったり資質として、大局観であったり、バランス感覚であったり、冷静な判断ということをお話しくださって、私も、非常にそれが重要であるし、また、それをふだんから心がけて職務に当たっておられるということも感じております。

 次にお聞きしたいのは、日本外交のかじ取りと国内世論の関係についてお伺いしたいと思います。

 先ほどから出てくる場面というのは、国内の世論との関係でも難しい場面というのがあったと思います。例えば、日本外交の現状を考えましたときに、やはり国内では、特にネットでの世論を中心として、過激な世論があったりもします。その中にはやはり、周辺国との関係において、過激な言動であったり、あるいは過激な行動を好む、そういった世論もあると思います。

 ただ、やはり、そういったものを全て外務大臣として受け入れることは当然できないと思いますし、国内の世論との関係と、それから周辺国との関係、あるいは同盟国との関係、あるいは友好国との関係というものをバランスをとりながら御判断なさっていると思います。

 そういった意味で、外交と国内世論というものは非常に密接に結びついている。ある種、国内世論の強い後押しを受ければ、外交を推進していく際に非常に大きな力添えになると思いますし、他方、我が国の国益と国内世論が矛盾するときは、極めて国内世論というのが大きな障害になる場面も出てくると思います。

 そういった点を踏まえて、国内の世論というものを常にどのように意識されながら外交のかじをとられておられるのか、あるいはどういった点において困難を感じるときがおありになるのかということについてお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 実際、外務大臣という仕事をしてみて、課題によっては、国内で感じている雰囲気と海外に出て受ける雰囲気と少しギャップがある、差がある、こういったことを感じる課題も存在はいたします。こうした国際世論と国内世論についてしっかりとすり合わせなければいけない、調整しなければいけない、こういったことを感じる場面もあります。

 しかし一方で、委員御指摘のように、しっかりとした外交を進めるに当たって、国内世論、国民の理解や支持なくしてしっかりとした外交を進めることはできません。やはり、国内の世論、国民の理解や支持の重要性というのも強く感じるところであります。ですから、やはり、外務大臣の立場としては、国内の世論、国民の理解、支持、これをぜひ大事にしていかなければならない、このように感じています。

 ですから、国外における雰囲気と国内における雰囲気、その差があるとしたならば、やはり、こうした違いについても丁寧に説明責任を果たしていく、こういった努力が求められるのではないかと思います。

 いずれにしましても、外交というのは、国民の理解や支持をいただき、国民とともに一体となって進めていかなければならない課題だと考えています。

村上(政)委員 国内の世論を味方につけながら進めていかれるという点、また、理解を得るためにいろいろな説明責任を果たされていくという点、私もそうだと思います。

 他方、今大臣からお話あったとおり、国外での雰囲気、外務大臣としてさまざまに海外に出られて感じられる雰囲気とそれから国内の雰囲気であったり世論の間の矛盾というものも、やはり外務大臣としてお感じになられるということ。

 具体的に、そういうふうな矛盾を感じられる課題であったりテーマというのはありますでしょうか。

岸田国務大臣 具体的に大きな課題において感じるということではありませんが、さまざまな課題、例えば国際貢献ということを考えましても、さまざまな日本の貢献について、国際社会においていかに高い評価を得ているかということについて、国内においてもやはりもっとしっかり理解していただき、国際貢献の大切さについて国民の皆様方にも理解や御支持をいただかなければならない、こんなことを感じる場面があります。

 日本は、外交において、まずは、みずからの国益を守る、国益を最大限にするために努力をしなければならないわけですが、あわせて、グローバルな課題に取り組んでいかなければならない。中東和平やシリア問題、イランの核問題等、こうしたグローバルな課題にしっかり取り組んでいくことによって存在感を示していかなければならないと考えていますが、こうした日本の貢献は、国際社会において、国内で感じる以上に高い評価を得ているのではないかと感じる場面があります。

 今後とも、我が国がグローバルな課題においてしっかりと貢献する、国際協調主義に基づく積極的平和主義を進めていく上においても、こうした国際的な評価と国内における国民の理解と、しっかりとすり合わせることによって、より強力な外交を進めていくことにつなげていきたいなと考える場面があります。

村上(政)委員 そういった国際協力、グローバルな課題に対していかに我が国が貢献していくかという点、これは我が党の小熊委員もいつもお話ししているようなODAのことにも代表されるように、例えばODAをふやしていって、やはり我が国の存在感を高めていくということは大事だと思います。

 ただ、他方で、なかなかそれは納税者の理解を得にくい、あるいは、私は大阪が選挙区ですので、大阪の有権者の皆さんは金銭感覚が非常にすぐれている方が多いものですから、そういう意味で理解をなかなか得にくい点も地元を歩いていて感じますが、やはり、選挙区の中で、有権者の皆さんに、機会を捉えてそういうことも私自身も説明していきたいと思います。

 少し話題をかえまして、ウクライナ情勢が、東アジア情勢に、ひいては我が国を取り巻く安全保障環境に対してどのような影響を与え得るのか、どのようにお考えでいらっしゃるのかという点についてお伺いしたいと思います。

 きのう、ラブロフ外相と電話会談をなさって、私も外務省のホームページで概要を確認させていただいて、力を背景とした現状変更は受け入れられないということを先方にお伝えになられたということは非常に重要な点だと思っています。

 今までの外務大臣談話を拝見していると、ウクライナの領土の一体性であったり、主権を尊重しなければならないという点については言及されてきたと思いますが、この点については今まで言及がなかった。これはもしかしたら私の確認不足かもしれませんが、昨日はそういった言及があったという点、非常に大事な点だと思います。

 翻って、東アジア情勢を考えたときに、我が国は常にこの点を中国に対して強調している。力を背景とした現状変更は受け入れられない。この点は、先ほど松本先生から質疑のあった防空識別圏の問題についても同じですし、あるいは尖閣諸島をめぐる状況、ひいては東シナ海をめぐる状況という点、これについて、力を背景とした現状変更は我々としては絶対に受け入れられない、これは阻止していかなければならないという点だと思います。

 しかしながら、このウクライナでの情勢が、このままロシアが力を背景とした現状変更を仮に達成した場合、中国も、こうした状況を見て、東アジアにおいて、東シナ海であったりあるいは南シナ海において、力を背景とした現状変更の試みをより強く打ち出してくるおそれがあるのではないかなと私自身は心配しています。

 大臣はこの点については懸念をお持ちでしょうか。

岸田国務大臣 我が国の置かれている戦略環境、東アジアにおける外交戦略環境は大変厳しいものがあります。

 そういった中にあって、従来から、我が国は力による現状変更は認めないという考え方をしっかり示しております。法の遵守の重要性等、我が国の考え方を示しているわけです。そういった我が国としまして、これはウクライナであれ、国際社会のどこにあっても、力による現状変更は認めるわけにいかない、こういった考え方をしっかり示していくことは大変重要なことだと思っています。

 こういった一貫した考え方を示していくことが、国際社会に対しても、また、我が国の周辺国に対しましても、我が国の考え方、立場を正しく伝えることになるのではないかと考えています。

村上(政)委員 このウクライナ情勢を見たときに、もう一つ私が気になるのは、住民投票という手段を使って現状変更をするおそれがある。住民投票をして、現地の住民が独立なりあるいは他国に対して併合されることを望むならば、住民の意思だということでそれを正当化するというような手法がまかり通りかねない状況になっていると思います。

 これを、先ほどの話と同じく、東アジアに投影した場合、中国が我が国に対して、あるいは周辺国に対して、同じようなことをする可能性が中長期的にあるのじゃないかなということを私は心配しております。

 例えば、中国とロシアの国境線というのは非常に長いものですから、沿海州あるいは極東はロシア人がどんどん減っている。逆に、中国人は、人口がどんどんふえて、人口が膨張して、中国人が極東にどんどんどんどん流れ込んでいけば、そこで現地の中国人とロシア人の摩擦が起きて、最終的には人口比が逆転して、極東に移り住んだ中国人が住民投票によって独立あるいは中国に併合されることを望むような意思表示をする、それに対して中国政府が介入するといったことも将来起こり得るんじゃないか。あるいは、我が国に対しても、そういう手法を使って我が国の領土の主権に対して挑戦をしてくる可能性もあるのじゃないかなということを私は心配しております。

 外務大臣はいかがでしょうか。これは現職の外務大臣として、そうであるということはなかなかおっしゃりにくいとは思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、クリミア自治共和国のロシア領編入に関する住民投票の実施についてですが、ウクライナの憲法においては、領土を変更する際には国民全体で投票を行うという定めになっていると承知をしております。ですから、今回のクリミアにおける住民投票は、ウクライナの憲法との関係において、これは問題があるのではないか、このように認識をしております。

 いずれにせよ、こうした法の遵守、さらにはウクライナの主権、そしてウクライナの領土の一体性、これは尊重されなければならないと考えています。そういった視点でクリミアにおける住民投票も見ていきたいと存じます。

 三月十六日に投票が行われると承知していますが、投票が行われた後、何が起こるのか、こういった点も含めて、今申し上げました、法の遵守とウクライナの主権と、そして領土の一体性の尊重という観点から注視をしていきたいと考えています。

村上(政)委員 最後に、我が国とそれから中国の国際社会の中における位置づけということについて、お考えをお伺いできればと思います。

 中国は、国際秩序に対して我が国があたかも挑戦しているかのようなイメージ、あるいはそういった発言、それは、例えば外務大臣がミュンヘンに御出張なさったときもそういった発言は先方からあったと思います。我が国があたかも第二次世界大戦後の国際秩序に対して挑戦しようとしているかのような位置づけを与えようとしている。しかし、これは我が国としては絶対に受け入れることはできないし、我が国としては反論していかなければならない。

 他方、我が国としては、やはり中国が東アジア地域あるいはアジア太平洋地域においてさまざまなトラブルを起こそうとしている、力によって現状変更を企てていて、また、さまざまな周辺国との間で領土をめぐる争い等を繰り広げているといったことを国際社会にわかっていただかなければならないというふうな、我が国とそれから中国の間での、国際社会の中でのそれぞれの位置づけをめぐる争いというのが今展開されているんだろうと思います。

 この点、外務大臣は私と同じような認識をお持ちでしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国の戦後六十九年の歩み、自由と民主主義、あるいは法の支配を尊重しながら平和国家として歩んできた歩み、そして今日の国際社会における貢献等を冷静に見ていただければ、国際社会としても、我が国が戦後秩序に挑戦しているなどという指摘が全く当たらないということは、これは十分御理解いただけるものだと思っています。

 ぜひ、我が国のこうした歩みは全く変わっていないということ、そして、今後とも、国際協調主義に基づく積極的平和主義によって、地域や国際社会の平和や安定や、そして繁栄に貢献していくんだという姿勢についてはしっかり説明をし、我が国の考え方、立場について正確に御理解いただけるよう努力をしていきたいと考えております。

 そして、中国との関係ですが、確かに日中間には難しい問題、局面が存在いたしますが、日本と中国、世界第二と第三の経済大国です。この二つの国の関係が安定することは、これは二つの国の国民の利益であるばかりではなくして、地域や国際社会にとっても大きな利益につながります。両国は国際社会に責任を負っているんだということもしっかり念頭に、大局的な見地から戦略的互恵関係を進めていかなければならない、これが基本的な我が国の考え方です。

 そのために、ぜひ、さまざまなレベルでの意思疎通、協力関係を積み上げていかなければいけない、そして高い政治のレベルでの対話につなげていかなければならない、こういったことを我が国としては主張しています。

 ぜひ、中国にもこうした我が国の考え方を受け入れていただき、両国間での政治対話を実現していきたいと我々は考えています。

村上(政)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 結いの党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、また質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。通告した内容、また、これまできょうの質疑であったことと重なる部分も多いんですけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 私も、まずはウクライナ情勢について伺ってみたいと思います。

 ウクライナ情勢につきましては、本日もそうですし、私も先週の外務委員会でも質問いたしましたけれども、極めてゆゆしき事態が続いているという認識であります。

 ロシアによるクリミア自治共和国の実効支配、これが国連決議もなく、あるいは自衛戦争でもないという形で実際行われているという現実があります。そして、それが再び冷戦構造に突入するというリスクもあるわけでございまして、ウクライナ情勢については、ぜひともしっかり国際社会と連携して、ロシア側に自制を求めていくということが当然必要であると思っております。

 報道によれば、クリミア自治共和国議会は十一日にウクライナからの独立を宣言して、ロシア連邦の構成主体となることを既に決議している、ロシア側でも連邦が編入するということを容易にする法律案を準備しているということで、クリミアを実際併合するということに向けた動きが活発化しているということでございます。そしてさらに、今週末の三月十六日にクリミアの自治権を拡大すると言われていますが、実際にはロシア編入についての住民投票が行われる可能性が高いということも報道されているわけでございます。

 我が国は、これまでもいろいろありましたが、直近では、三月六日に岸田大臣がドイツと英国の外相と電話会談しまして、金融支援を表明する、あるいは、七日に安倍総理がオバマ大統領と会談し、日米で緊密に意思疎通していくということで一致した、ウクライナの支援を確認しているということでございますし、昨晩も岸田大臣とロシアのラブロフ外相とが電話会談を行っているということで、政府の一連のこうした取り組みについては評価をしておりますけれども、実際、G7各国が制裁というのを表明している中で、我が国は一貫して金融支援、あるいは政治改革、経済の自立という姿勢に徹しているわけでございます。

 制裁について全く踏み込んでおりませんけれども、我が国の役割としては、引き続きこうしたことに徹していくのかどうか、まずは大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 ウクライナ情勢につきましては、我が国の基本的な考え方につきましては、平和裏に収拾されるべきであるということから、あらゆる当事者が自制と責任を持って対応をしていくべきであるということ、そして法の遵守、主権と領土の一体性、こういったものが尊重されなければならない、こういった考え方に立っています。

 こうしたことから、各国に対して、平和裏に事態が収拾されるために努力するべきだ、こういった思いを申し上げると同時に、ウクライナのこうした混乱の背景には財政危機、経済の問題が存在するということで、経済支援を検討し、そして、あわせて、この収拾に当たっては、国内における政治対話と、そして、実際、国内でどういう状況になっているのか、透明性重視だということで、OSCEのミッションにも協力していこう、こういった対応をしているところであります。

 今後、ウクライナの情勢はまだまだ流動的だと考えております。

 制裁についてどうかという御質問をいただきましたが、この制裁につきましても、各国でさまざまな議論が今行われています。ウクライナの現地の状況と、そして国際社会のこういった議論をしっかりと注視しながら、我が国として適切に考えていく課題だと認識をしております。

青柳委員 実際、クリミア自治共和国の議会はもう既に独立を宣言しまして、今週末の住民投票でもロシア編入への可決がなされる可能性が高い。

 こういう状況になったときに、G7各国、日本以外の各国は、恐らく追加の経済措置を表明する可能性が高いということが指摘されておりますけれども、こうした事態になっても、今おっしゃられた方針で変わらないんでしょうか。もう一度答弁をお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 ウクライナの情勢、例えばこのクリミアの情勢につきましても、三月十六日に住民投票が行われること、これは決定をされているようですが、住民投票が行われた後、何が起こるのか、こういったことについては引き続きしっかり注視をしていかなければなりません。こうした具体的な動きを受けて国際社会がどのように反応するか、こういった点もしっかり踏まえながら、我が国としまして、制裁については適切に考えていかなければならない課題だと思っています。

 ぜひ、今後とも、ウクライナ情勢については深刻な懸念と憂慮を持ちながら状況を注視していきたいと考えています。

青柳委員 ありがとうございます。

 ただ、日米の関係、日・EUの関係、そして日ロの関係、これはそれぞれ今いい関係を築いてきているんだと思います。そして、このウクライナの問題は、微妙なバランスの上に日本の対応があることは理解しております。

 であればこそ、安倍政権は、日ロ関係、首脳会談を五回も開いてきた、本日の質疑でも多々出ておりますが、だからこそ、今こそ安倍総理とプーチン大統領のホットラインを活用して会談を行う必要があるんじゃないかと思いますが、こうした会談の調整を大臣としても積極的に行っていくべきかどうか、私はまさに活用するときだと思っておりますが、いかがでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 大臣の方から、本件について、平和裏に解決するために活動していくんだ、行動していくということについてはお答えをさせていただいたところでございます。

 既に委員の方からも御指摘いただいたように、三月六日、ドイツ、イギリスの外相との電話会談等もやらせていただいている中で、これまた委員からも御指摘いただきましたが、三月十一日の夜には、岸田外務大臣とラブロフ外相との電話会談を行いまして、ウクライナ暫定政府との直接の対話、あるいはまたクリミア及びウクライナ東部への国際監視団の受け入れ等によって平和的収束を働きかけたというところでございます。

 首脳レベルでの働きかけはどうかということでございましたが、現時点ではこれを予定しているということはございませんが、いずれにしても、さまざまな外交ルートを通じて、これからも平和裏に収束されるようしっかりと活動してまいりたい、このように考えております。

    〔委員長退席、左藤委員長代理着席〕

青柳委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、このウクライナ情勢、引き続きしっかりフォローをお願いしたいと思っております。

 次の質問に移りたいと思います。

 北朝鮮拉致問題について伺いたいと思います。

 これも先週質問させていただきましたけれども、国連調査委員会、COIの最終報告書を受けまして、北朝鮮の人権問題、拉致問題を解決するための一つの大きなチャンスが訪れているということは事実だと思います。

 この報告書をフォローして実効性あるものにしていくまさにチャンスが、今開かれている国連人権理事会であり、一つの山が、三月十七日の北朝鮮、COIとの対話、そしてさらに、今月末の人権理事会での決議に向けて日本政府が今ドラフトしている案、これは当初からさらに踏み込んだ強い内容の決議案に変わってきているということを聞いておりますが、これをしっかり人権理事会で決議していただきたいと思っているところであります。

 このCOIの報告書のフォローと、この決議案、人権理事会で決議していただいた後、これは、人権理事会はあくまでも途中経過であって、さらに総会、そして安保理で決議して、制裁なりICCに付託するなど、しっかり実効性あるものにしていただきたいと思っておりますが、今の日本政府の戦略といいますか方針、安保理の決議まで見据えていただいているのか、こうしたことについて、関係者はまさに今関心を持って見守っているところであると思いますが、今お話しできる範囲で、どのように進めていかれるのか、戦略をお聞かせいただきたいと思います。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 御指摘いただきました北朝鮮における人権に関する国連調査委員会、COIの報告書でございますが、拉致問題を含んだ、まさに北朝鮮における人道状況について詳述をしていただいているというものでございまして、我が国として歓迎をするとともに、まさに真摯に受けとめているという現状でございます。

 今委員からもお話しいただきましたとおり、まずはジュネーブにて開催中の第二十五回国連人権理事会において、我が国はEUとともに、主提案国として、勧告の内容をできる限り反映した北朝鮮人権状況決議案を提出するということが、まず最初のハードルというか、課題だろうというふうに思っております。そのために全力で取り組んでいるところでございます。

 今委員の御質問は、その後の、実際にそれをどう実現していくかということでございますが、我が国といたしましては、本件決議案が北朝鮮による具体的な行動を求める国際社会の新たな意思表示につながるよう、とにかく関係国、そして国連とも連携しながら、しっかりと役割を果たしていきたいというふうに考えております。

 まずは、この勧告の内容がきちっと決議案に反映をされるということについて、当面、全力投球をさせていただきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 ただ、今、安保理まで含めてしっかり決議していくんだという言葉がなかったのは少し残念なんですが、当然、お考えになってくださっていると思いますけれども、しっかり安保理で決議していただくということが実効性の最大の担保だと思いますので、お願いしたいと思います。

 ただ、安保理で決議となると、やはりこれはロシアと中国が当然キーになってくると思います。特に今、日中関係というのが大変冷え込んでしまっているというのは事実だと思います。安倍政権になってから、首脳会談や外相の会談は全く行われていないという現状であります。

 そんな中、今月二十四日には、オランダのハーグで核セキュリティーサミットが開催される。このサミットには、中国は習近平主席が参加する、あるいはオバマ大統領も出席する、そして、報道によれば、米中首脳会談はもう既にセットされたということが報道されております。

 この核セキュリティーサミットには安倍総理も出席するということで調整されているということでございますが、この機会に、日中首脳会談、日米首脳会談、日韓首脳会談、あるいは日米韓首脳会談、こうした機会を利用して積極的に調整するべきだと私は考えております。

 今、こういう調整が当然行われていると思いますが、この調整状況はどうなっているのか、お話しできる範囲でお聞かせいただきたいと思います。

    〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 御指摘の核セキュリティーサミット、オランダのハーグにて開催されるという予定でございますが、その重要性を十分考慮しながら、現時点におきましては、核セキュリティーサミットへの出席者についてはまだ鋭意検討中というところでございます。

 その上で申し上げれば、現時点において、その意味で、日中首脳会談の具体的予定があるということはないというのが今の状況でございます。

青柳委員 ありがとうございます。

 それでは、日中関係について引き続き伺いますが、三月五日から中国の全人代が開会されておりますが、この中で特に目を引いたのは、中国の国防費、軍事費の伸び率と総額であります。

 中国の国防費は、毎年二桁の伸び率、ここ十年で四倍、二〇一四年は明らかにされている金額だけで十三兆四千億円、実際にはさらに大きな数字と言われているわけであります。この数字は、米国に次いで世界で第二位。さらに、特に近年は、海洋進出、力による支配といいますか、力による現状変更の拡大を狙って、海軍の予算が突出してふえているというのは明らかであります。

 こうした中国の海洋進出、力による領土の拡大が明らかになっている今、この日中の冷え込んでいる関係をどのように打開されていくのか、大臣の御見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 中国のこうした不透明な軍事費の増強ですとか、あるいは力による海洋進出につきましては、我が国のみならず、地域における共通の懸念事項であると認識をしております。こうした動きに対しましては、ぜひ、法の支配ですとか透明性の確保、こういったものを働きかけていきたいと思っております。

 そして、日中関係につきましては、基本的に、日中関係は我が国にとりまして大切な二国間関係のうちの一つであり、両国は地域の平和や安定や繁栄に大きな責任を負っています。

 ぜひ、大切な二国間関係を安定させるべく協力を進めていかなければならないと考えていますが、実際、今、日中間には大変難しい問題があり、難しい局面の中にあります。しかし、だからこそ、こうした二国間のさまざまな意思疎通、協力が重要なのではないかと考えています。

 例えば、防衛当局間における海上連絡メカニズム等、既に合意されているにもかかわらず運用が開始されていない、こういった課題もあります。こうした実務的な協力関係を一つ一つ積み上げることも重要でありますし、また、環境を初めさまざまな課題においての協力関係も積み上げていきたいと思いますし、何よりも、日中関係の間には年間四百八十万人の人の行き来があり、文化、スポーツ等、さまざまな交流が存在をいたします。こうした積み重ねによりまして、難しい問題があるからこそ、政治の高いレベルの対話につなげるべく努力をしていかなければならないと考えています。

 ぜひ、中国側にも我々のこういった考え方を受け入れていただきたいと考えています。

青柳委員 ありがとうございます。

 最後に、一分になってしまいましたけれども、もう一つ、重要な国でベトナムがあります。せっかくなので、日越関係についても伺いたいと思います。

 日越関係については、岸田大臣も日越友好議連の幹事長ということで、改めてこの重要性については確認の必要はないと思いますけれども、来週、ベトナムのサン国家主席が国賓として訪日される、国会演説も予定されているところであります。

 この機会に、安倍政権が発足して初の日越共同声明を発表すると聞いておりますが、ベトナム側も言っていることですが、日越外交関係四十周年を経て、次の次元の、高い次元の日越関係をつくっていきたいというふうに述べておられます。

 この日越共同声明の今回の最大の目玉になるようなものは何になるんでしょうか。それを最後にお伺いして、質問を終えたいと思います。

岸田国務大臣 日本とベトナムとの関係につきましては、昨年、日越友好協力四十周年という節目の年に当たり、両国間の戦略的パートナーシップとしての関係、あらゆる分野で深めることができたと振り返っています。

 そして、今般、サン国家主席の国賓としての訪日が予定されております。ぜひ、昨年を通じて強化された戦略的パートナーシップを一層進展させるよい機会にさせていただきたいと考えております。

 御指摘のように、三月十八日には国会演説も予定されております。

 また、今回の首脳会談においては、安倍総理の打ち出しております文化のWAプロジェクトを含む文化交流の促進等もしっかりと確認をしたいと考えております。

 そして、成果文書についてどうかという御質問でございますが、今回のサン国家主席の訪日の意義については今申し上げたとおりでありますが、成果文書の中身については今まだ調整中でありますので、ちょっと具体的に今この場で申し上げることは難しいとは思いますが、今申し上げました考え方に沿って、ぜひ、内容の充実した成果文書にするべく、ぎりぎりまで努力をしていきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございました。

 終わります。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 ウクライナ情勢をめぐって質問いたします。

 ウクライナのクリミア自治共和国の議会が、三月六日、ロシアへの編入を求める決議を採択し、この十六日に住民投票を実施することを決めました。さらに、昨十一日、クリミア自治共和国の議会とセバストポリ市議会は、いわゆる独立についての宣言を採択して、住民投票で結果が出ればロシア連邦加入を申し出るとしております。

 こうしたことで、ウクライナへのロシアの介入は新たな事態に入っていると思います。ロシアの国会も、編入を可能とする法改正を準備しているとされています。

 外務省はこの事態をどう見ているでしょうか、端的にお答えください。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 クリミア自治共和国のロシア編入に向けた動きは、ウクライナの領土の一体性の観点から問題があると考えております。我が国として、深刻な懸念と憂慮を持って事態を注視しているところでございます。

笠井委員 今回の住民投票の実施決定という事態を受けて、これまでクリミア半島へのロシアの軍事介入を批判していた国連安保理理事国を含む欧米諸国などは、クリミアの編入を違法とする批判を強めていると思うんですけれども、どんな状況でしょうか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 各国の反応でございます。

 ウクライナをめぐるロシアの行動につきましては、これまでさまざまな反応が示されており、一概にお答えすることはなかなか困難でございますけれども、具体的な例を申し上げれば、例えば三月一日のウクライナにおけるロシア連邦軍の使用権原に関する連邦院の決定に関しては、英国は深く懸念、それからEUは遺憾であるという旨述べております。また、最近では、三月六日、これとはまた別のコンテクストでございますけれども、オバマ大統領が国際法の違反を非難すると発言したと承知しております。

笠井委員 違法とする批判を強め、そして、住民投票はロシアがクリミア自治共和国を併合する道を開くものだ、それを回避せよという声も強まっていると承知しております。

 岸田大臣、今回の編入問題について、各国からの批判の根底にあるのは、国家としてのウクライナの承認なしにクリミア自治共和国の編入が可能なのかという疑念であります。クリミア自治共和国議会の決議後に開催された安保理会合では、多くの国が、編入問題での住民投票の実施について、ウクライナ憲法に対する完全な違反という声を上げております。

 そこで、大臣、一国の一地域が一方的に分離独立、他国への編入を決めるということは、国際的に認められることなんでしょうか。

岸田国務大臣 クリミア自治共和国での動きにつきましては、まず、ウクライナの領土の一体性という観点から問題があるというふうに考えておりますが、あわせて、ウクライナの憲法との関係においても、ウクライナの憲法におきましては、領土の変更につきましては国民全体での投票が求められています。その憲法との兼ね合いにおいてもこれは問題があるのではないか、このように認識をしております。

 住民投票を行うこと自体は、国際法との関係においてたちまち問題が生じるものとは認識をしておりませんが、住民投票が行われた後、どのようなことが行われるのか、これについては注視をしていかなければならないと存じます。その辺の動きが御指摘のような国際法との関係においてどのような関係にあるのか、深い憂慮と懸念を持ちながら注視をしていきたいと考えています。

笠井委員 外務省に伺いますが、今回の場合、クリミア内のロシア人以外のウクライナ人、あるいはタタール人など少数民族との話し合いとか、あるいはウクライナ中央政府との交渉といった民主的な手続というのが行われていると認識しているのか。行われていないんじゃないかと思うんですけれども、その点はどうでしょうか。

丸山政府参考人 お答えいたします。

 今回の分離や編入に関する住民投票自体というものは、国際法に関しては、特にこれは禁止されていないということは、先ほど大臣から答弁したとおりという認識でございます。

笠井委員 私が聞いているのは違うんですね。そういう形で編入とかという動きに対しての話で、きちっと少数民族やウクライナ中央政府との交渉といった手続というのがあるのかないのか、どういう認識に立っているかということを聞いているんです。

丸山政府参考人 失礼いたしました。

 私どもといたしましては、今回の住民投票というものが、ウクライナの憲法上、さまざまな問題があるということは承知しております。

笠井委員 やられていないということなんですけれども、何より問題なのは、事態がロシアの軍事的圧力のもとで進んでいるということであります。ロシアがクリミアに展開している軍の規模というのは二万人とも三万人とも言われておりますが、そうした中での住民の自由な意思表明などあり得ないという問題。

 大臣、結局、クリミアの分離とロシア編入というのは、ロシア政府も認めてきたウクライナの主権と領土保全の侵害となって、事態をさらに複雑にするだけじゃないかと思うんですが、どういう認識をお持ちでしょうか。

岸田国務大臣 まず、ウクライナ国内における今回のロシアの動きにつきましては、国際法、あるいはロシアとウクライナの間で交わされている地位協定、こういったものに照らしても問題があるのではないかと考えております。ぜひ、こうした国際法を初めとする法の遵守、そしてウクライナの主権そして領土の一体性、こういったものはしっかりと尊重されなければならないと我々は考えております。

笠井委員 この間、国連の安保理会合では、ロシアのチュルキン大使が、少数派のロシア系住民がウクライナ暫定政府に弾圧されようとしているなどとロシア軍の活動を正当化しようとしているのに対して、安保理の各国代表から主権侵害とする批判が集中したんじゃないかと思うんですけれども、そういう議論があったかどうか、外務省、いかがですか。

丸山政府参考人 国連におきまして今委員御指摘のような議論があったことは承知しております。

笠井委員 例えばイギリスは、主権、独立、領土の一体性への明確な侵害、国際法違反であり、二十一世紀の世界でこのような国際法違反は許されないと批判いたしました。リトアニアも、ウクライナのどんな事態も軍事侵略を正当化できないとするなど、軒並み厳しい批判であります。

 ロシアとウクライナは、ソ連崩壊後、相互の主権と国境を尊重する協定を締結している。ウクライナの核兵器を撤去する一九九四年のブダペスト覚書では、ロシアを含む核保有国がウクライナの独立、主権、現国境を尊重する、こう明記しておりますね。いかがですか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のブダペスト覚書は、ウクライナが米国、ロシア連邦、英国との間で交わした覚書であり、ウクライナが核拡散防止条約に加盟するに当たり、核兵器を放棄するかわりに、ウクライナの領土を保全する旨等を規定したものと承知しております。

 具体的には、第一条に、米国、ロシア連邦、英国は、ウクライナの独立、主権及び現在の国境を尊重することを約束することを確認する旨規定されております。また、第二条には、米国、ロシア連邦、英国は、ウクライナの領土一体性及び政治的独立に対する武力の行使等を行わない義務を確認する旨規定されております。

笠井委員 さらに、一九九七年のロシア連邦黒海艦隊駐留の地位及び条件に関する協定でも、主権尊重と内政不干渉をうたっていると思うんですが、いかがですか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のロシア艦隊の地位と駐留条件に関する協定は、ロシア黒海艦隊のウクライナ領における駐留に関する条件等を規定するものでございます。

 ウクライナの主権に関しましては、第六条第一項において、ロシア連邦黒海艦隊は、ウクライナの主権を尊重し、その法令を遵守して、ウクライナの内政に干渉しないと規定しております。

笠井委員 大臣、ロシアの軍事介入がこれらの協定に違反するのは明白じゃないかと思うんです。

 また、国連憲章は、いかなる国の領土保全または政治的独立に対する武力行為も禁止をしている。これにも反するということは明らかじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 このロシアの行動については、三月三日にG7の共同声明を発出しております。この中において、こうしたロシアの行動につきましては、国際法上、そしてロシアとウクライナの地位協定等に照らして問題であるということを指摘しております。我が国もこのG7の共同声明に参画しておりますので、同じ認識に立っております。

笠井委員 事の発端はウクライナの政変でありますが、これに対して、ロシアのプーチン大統領は、三月一日に、ロシア系住民や軍人軍属を保護するとして、ウクライナの政治社会情勢の正常化までロシア軍をウクライナ領内において使用すると表明をして、これを、ロシア連邦院、上院も承認した。

 三月三日には、我が党の志位委員長はこの問題で党の見解を発表いたしまして、アファナシエフ駐日ロシア大使と会談して、ウクライナ政府の同意も国連安保理決議もないもとでの軍派遣は国際法上許されず、明らかな侵略になるとして、軍事介入の中止を求めました。

 岸田大臣、ウクライナ政府の同意も国連安保理決議もない、このもとでロシア軍を派遣して軍事介入を行うことは、ウクライナの主権と領土保全を侵害するものであって、明らかな侵略となる、そういうことじゃないかと思うんですが、いかがですか。

岸田国務大臣 三月一日にプーチン大統領がロシア連邦院に対して武力使用の承認の申請を行い、そして連邦院が承認したことにつきましては、三月二日に、私自身、大臣談話を発出させていただきまして、深刻な懸念と憂慮を表明いたしました。この点については、英国、EU等も、深い懸念あるいは遺憾の意を表明しております。こうした思いにおきましては、国際社会と我が国は思いを共有していると考えております。

笠井委員 外務省に伺いますが、国連総会が一九七四年に採択した侵略の定義に関する決議というのがありますが、その第一条では、「侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する又は国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使であって、この定義に述べられているものをいう。」というふうに言いながら、第三条の中で、侵略行為ということで幾つか列挙しておりますが、その中に、他国の港や沿岸の封鎖、駐留軍の合意に反する使用、武装集団、非正規軍の派遣への関与、こういうことについても侵略行為とされている。そういうふうに書いていると思うんですけれども、いかがでしょうか。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の一九七四年に採択されました国連総会決議第三三一四号においては、侵略の定義及び侵略行為について、御指摘のような規定が設けられております。

 他方、この決議は、法的拘束力を有するものではなく、あくまでも、安保理が個別具体的な事例に関して侵略行為の存在を決定する際の指針、ガイドラインとして定められたものでございます。

笠井委員 法的拘束力の問題を今私は聞いているんじゃなくて、具体的な問題に即してということですから、具体的な問題に即せば、今回の場合、まさにこの国連決議に当てはまるという事態が進行しているということであります。

 大臣、そういう点では、ロシアに対して、軍事介入はやめよ、やれば侵略になるとはっきりと正面から言うべきじゃないかと思うんですが、なぜそれをはっきり言われないんでしょうか。認識を共有しているとか、先ほどからG7の話をされますが、軍事介入はやめよ、やれば侵略になるよと、なぜきっぱりそれを言わないんでしょうか。

岸田国務大臣 ロシアに対する働きかけは、こうした混乱が発生してから後、さまざまなレベルで行ってきましたが、昨晩、私自身、ロシア・ラブロフ外相と一時間にわたりまして電話外相会談を行わせていただきました。その際にはっきりと、こうしたクリミアにおける住民投票あるいはウクライナ東部における緊張の高まり、こうしたものに対して問題提起をし、懸念を表明し、そして、平和裏に事態を解決させるべきである、力による現状変更は許されない、こういった思いを伝えさせていただきました。

 あわせて、今回の事態を平和的に収拾するためにはロシアとウクライナ暫定政権との直接対話が重要であるということ、そして、クリミアあるいはウクライナ東部に対しまして国際監視団を受け入れるべきである、こういった働きかけを行わせていただきました。

 ぜひ、こうした働きかけを受けて、ロシア側も事態を平和裏に収拾するべく努力をしていくことを求めていき続けたいと思っています。

笠井委員 認識を共有すると言っているEUや欧米諸国を見ますと、例えばEUの三日の外相理事会などでは、ロシアの行動を侵略行為だとすると明確に述べながら問題を言っているわけでありまして、各国からそういう声が上がっている。しかも、どの国も、今の事態を、ロシアの行動を支持していないわけでありまして、誰が見てもそういう事態だというわけであります。ロシア側はロシアの軍人軍属のために必要だとも言いますけれども、そのためにウクライナ全域にわたってロシアが軍を展開することになれば、これは国際法違反の侵略になる。

 大臣、いろいろ問題がある、それから一体性の問題とかいろいろなことを言われますけれども、しかし、はっきりとここは、ロシアによる軍事介入を中止して、事態をエスカレートさせないようにと、一刻を争ってそれを強く求めるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。解決のためにもそれが必要だと。

岸田国務大臣 我が国としましては、ウクライナの同意なくしてウクライナの領域で軍隊を運用するということ、これは、ロシアとウクライナとの間の一九九七年の地位協定を初めとする国際法上の義務に反すると考えております。

 侵略に当たるかどうかという御質問ですが、現時点での状況につきましてはまだ十分に明らかになっていないことからして、侵略に当たるかどうかという判断には至っておりませんが、いずれにしましても、ロシアに対して、国際社会と協調しながら、平和裏の事態収拾、そして自制や責任ある行動を求めていく、こういった働きかけはしっかりと続けていかなければならないと思っています。

笠井委員 私が今聞いたのは、ウクライナ全土にわたってとにかく軍を展開することになれば、これは国際法違反の侵略になる、軍事介入をやっていけば侵略になるということをしっかり言うべきだと言っているわけでありまして、現時点でどこまでという話をしているわけじゃないんですね。

 それで、そこの現時点の認識を、問題だと言いながらも、やったらなりますよということをはっきり言わなきゃいけないということを私申し上げているんですけれども、あくまでそのことを言われない。欧米など各国が声を上げても、そこまできっぱり、安倍政権そして日本として言えない。

 侵略の定義は国際的にも定かでないというようなことを安倍政権はよく言われますけれども、そういう立場では世界政治に対応できない、そんな外交ではだめだと私は強く感じております。

 ウクライナ問題は、外部からのいかなる軍事介入も排して、そして、ウクライナ国内の当事者間の対話で平和的に解決することが求められている。そのためにも、日本政府として、軍事介入をやめよ、侵略になりますよと、きっぱりした態度をとるべきだ。このことを強く求めて、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーでございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 きょうは、米軍関連の事件、事故について幾つかただしたいと思います。

 まず、嘉手納基地所属のF15戦闘機の風防ガラス落下事故についてお尋ねいたします。

 米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が、四日午前、嘉手納基地から北西側に位置する北部訓練空域内、嘉手納基地から約百五十キロメートルの海上で訓練中に風防ガラスを脱落させた模様で、このF15機は、ガラスが外れている状態のまま基地へ帰投、着陸しています。

 今回の事故の内容の詳細及び原因等について米軍からどのような報告があったのか、防衛省に伺います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの事故につきましては、去る三月四日、米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が、通常訓練中に、沖縄から約八十マイル、これは約百四十八キロメートルに相当いたしますけれども、北西の海上で風防を紛失したものでございます。

 米側からは、安全調査の結果、損傷のあった箇所が確認されたとの連絡を受けておりますが、事故の原因につきましては、米側において引き続き調査中であると承知をしております。

 米軍が一時的に停止をしておりました嘉手納基地所属のF15戦闘機の飛行につきましては、米軍による安全調査の結果、同基地所属全てのF15戦闘機の安全性が確認され、また、通常の整備を行った後、事故において損傷が確認された箇所を再度チェックするという追加的な予防措置を講ずることとした上で、今月十日から再開されたところでございます。

 防衛省といたしましては、F15を含む軍用機の飛行、運用に際しましては、これまで以上に公共の安全に妥当な配慮を払うとともに、安全対策に万全を期すよう、飛行再開に当たって改めて申し入れており、引き続き、米軍機の運用に際しまして安全管理の徹底を求めてまいりたいと考えております。

玉城委員 まず、そのチェックをした結果、安全性が確認されたということではあるんですが、実はF15戦闘機は、これまでにも風防ガラスを脱落する事故を起こしております。この類似の事故等について、どのようなものがあったのか、改めてここで確認をしたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 本件事故と類似の事故といたしましては、同じF15でございますけれども、風防が紛失したものといたしまして、昭和五十八年六月二日と平成九年五月三十日に嘉手納基地で発生したもの、それから平成十四年四月二十四日に沖縄南東海上約八十マイルの地点で発生したものがございます。

 また、そのほか、平成十四年四月十七日には、米軍普天間基地所属のCH53Eの燃料補助タンクが同基地の滑走路上に落下するという事故が発生をしております。

玉城委員 やはりこのように、過去に三度、風防の脱落事故を起こしている。

 事件、事故発生の都度、県並びに基地所在市町村、例えば嘉手納基地ですと、嘉手納飛行場における三市町協議会、沖縄市、嘉手納町、北谷町で構成している三連協など、あるいは各政党などから抗議と要請が繰り返されてきている実態があります。

 しかし、改善策が一向に見られないという現状と、さらに深刻な点は、今回の風防ガラス脱落事故後も、米軍から、所属戦闘機の点検が終了し、安全性が確認されたという、先ほどの説明のとおりですが、F15戦闘機の飛行及び訓練がきちんと原因究明がされないまま再開されたことに問題があります。

 沖縄県からも求められていた原因究明までの飛行停止に関して、米軍から事故の原因についての報告はされていないとのことであります。過去に三度もの風防ガラス脱落事故を起こしているにもかかわらず、それらの事故原因についての調査結果も報告されていない、外務省沖縄事務所の副所長もそのようにコメントをしております。まことにもってゆゆしき事態であると言わざるを得ません。

 これまでの事故原因がなぜ報告されていないのか、報告されていないことについて外務省の見解を伺います。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 先ほど答弁がございましたように、米軍機の運用につきましては、公共の安全に妥当な考慮を払って行わなければならない、これは申すまでもないことでございます。

 この観点から、今回のF15戦闘機の風防ガラス紛失事故に対しましても、政府として、米側に対して遺憾の意を伝えるとともに、事故原因の究明と再発防止を申し入れたところでございます。引き続き、米側に対して万全な安全対策と事故原因の究明を働きかけていく考えでございます。

 米軍航空機の事故原因に係る調査につきましては、通常数カ月を要するということでございまして、米国から今回の事故の原因について説明が得られた際には、地元に対してしかるべく報告を行いたいと考えてございます。これまでも、例えば本年一月、昨年発生いたしましたF15戦闘機及びHH60ヘリコプターに関する米軍の事故原因の調査結果が取りまとめられたことを受けて地元に速やかに伝達したところでございますので、そのような対応をしてまいりたいと考えております。

玉城委員 過去の、八三年、九七年、二〇〇二年の風防の脱落事故の原因は実は報告されていないということになっていますので、報告されているものとされていないものがあるということもまた大きな問題であるというふうに考えざるを得ません。

 さて、このように、陸上、海上などへの米軍機事故に起因すると思われる落下物もしくは浮遊物について、もし万一、陸上及び海上などで、民間の自動車であれ船であれ、そのような災害、事故が起こった場合、どのような対応をとることになっているのかについて、その処理及び補償等について防衛省にお伺いいたします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 一般論で申し上げますと、我が国の領域、領海におきまして損害が生じた場合におきましては、日米地位協定第十八条五項等に従いまして、我が国が被害者からの請求を受け、米側と協議の上で賠償額を決定し、被害者の同意を得て賠償金を支払うこととなっております。

玉城委員 一般論では確かにそのようになると思います。

 しかし、過去に沖縄は、米軍のヘリから落ちてきたジープ、トレーラーで圧死した事件ですとか、これが民間地域に及ぶということを考えると、本当にその不安は尽きないわけでありますね。

 沖縄県周辺の米軍の訓練に起因する事故の不安が尽きないことが実はまた惹起されております。米海兵隊普天間基地所属ヘリの着艦失敗事故について質問したいと思いますが、五日の夜、米軍普天間基地所属の第三十一海兵遠征部隊所属のAH1型ヘリコプターが、本島沖合で夜間訓練中に揚陸艦デンバーへの着艦に失敗、甲板上に右側に傾いている状態でいることが接岸した船で確認されています。また、今月の二日には、同じく普天間基地所属のMV22オスプレイ一機が、嘉手納基地に緊急着陸後、白煙を上げる事故が発生しています。

 このように異常な事態が連続して発生していることについて、これ以上何らの改善も見られないことが続いた場合、県民の不安と不満はさらに大きくなってしまい、日米安全保障体制そのものを毀損させてしまう重大な事案になることは明らかですが、しかし、政府や外務省、防衛省にそのような危機感が全く感じられない。

 県の資料を見てみますと、これは、沖縄の米軍及び自衛隊基地の統計資料集、沖縄県知事公室基地対策課が出している資料ですが、これまでに、平成二十四年十二月末現在で、復帰後の米軍航空機関連事故は、固定翼機、ヘリコプターを合わせて五百四十件起きています。うち、人身事故は二十四件、ヘリコプターによる死亡三十二人、固定翼機による死亡二人、あるいは、F15の事故は百七十九件、CH53は二十六件などなど、このように、本当に事件、事故が絶えない。そのことにもっと危機感を持っていただきたい。

 事故等における報告及び連絡、再発防止等について、日米間の責任者協議はどのように行われているか、これは外務省にお伺いしたいと思います。

木原(誠)大臣政務官 今先生から御指摘いただきました米軍の軍人軍属等によるさまざまな事案、また空軍機を含めた事案について、地元の皆さんが大変懸念を持ち、そしてまたそれが日本全体にとっても、日米安保体制にとっても非常に重大な事柄であるということは重々承知をしております。

 その意味で、米側に対しましては、日米合同委員会を含めて、さまざまな場面を通じて、とにかく再発防止をしっかり求めていく、このことに取り組んでまいりたいと考えております。

玉城委員 沖縄には、国の出先機関として、外務省は沖縄担当の高田稔久特命全権大使及び沖縄事務所、防衛省は防衛省沖縄防衛局をそれぞれ設置し、外交及び安全保障に関する調整業務を遂行しているものと思われますが、これは県民も理解をしております。

 しかし一方で、政府関係省庁、外務省沖縄事務所と沖縄防衛局と地元自治体、先ほども私は、沖縄市、嘉手納町、北谷町で構成する三連協の名称も挙げて、どうなっているのかということをお尋ねいたしましたが、特に沖縄県や基地所在自治体とはどのように協議しているのか全く見えないというのが、実は県民の偽らざる印象だと思います。

 防衛省、外務省にそれぞれ、どのように協議をしているかについてお伺いいたします。

若宮大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 今委員が御指摘になりましたさまざまな状況、案件、沖縄防衛局や在沖縄米軍、また関係自治体との間では、米軍人軍属等による事件、事故の防止を図ることを目的といたしまして平成十二年十月に設置をされました米軍人・軍属等による事件・事故防止のための協力ワーキング・チームにおきまして、米軍人軍属等による事件、事故に関する対策についての協議が行われてございます。

 また、沖縄防衛局におきましては、公共の安全または環境に影響を及ぼす可能性のある事件、事故が発生した場合に行われます現地の米軍からの通報を受けたときには、委員おっしゃるように、関係自治体への速やかな情報提供に努めているところでございます。

 いずれにいたしましても、私ども防衛省といたしまして、米軍人・軍属等による事件・事故防止のための協力ワーキング・チームに沖縄防衛局からしかるべき者を出席させることなどを通じまして、引き続き、皆様方関係自治体との連携をしっかりと図っていきたい、このように考えておるところでございます。

木原(誠)大臣政務官 お答え申し上げます。

 今、防衛省からもお答えがございましたが、外務省といたしましても、この米軍人等による事件、事故の問題に取り組んでいく上で地方公共団体との協力が極めて重要である、このように考えてございます。私どもも、日ごろから、外務省の沖縄事務所を通じて、事件、事故に関する地元への情報提供に努めているところでございます。

 また、米軍人等による事件、事故に関する、政府と沖縄の関係地方公共団体が参加する具体的な協議の場として、例えば日本政府と沖縄県の担当者が米側との間で在沖縄日米危機管理会議を開催して、航空機事故発生時の対応について議論を深めている。あるいは、このほか、先ほど防衛省からもありましたが、米軍人等による公務外の事件、事故防止を図ることを目的に、米軍人・軍属等による事件・事故防止のための協力ワーキング・チームを沖縄において開催してきているところでございます。

 今後とも、地方公共団体を含む関係者との協議を重ね、事件、事故の防止に取り組むとともに、事件、事故への迅速な対応、また情報提供が確保できるように努力してまいりたいと考えております。

玉城委員 こういうふうにさまざまな取り組みをしていること、それはもちろん、防衛省、外務省が、不断に、住民、地域自治体との信頼関係を構築していきたいということで取り組んでいただいているものと思います。しかし、先ほども申しましたとおり、事がこれだけ立て続けに起こっているということは、我が国の安保体制そのものを毀損するような問題であるという深い認識が必要であるというふうに思うわけですね。そのことから考えますと、あらゆる事態を想定した場合、これは、政府全体、全省庁あるいは関係省庁全てを網羅して捉えるべき問題ではないかというふうに思料いたします。

 省庁内及び省庁間での問題解決に対する協議についてはいかがでしょうか、外務省にお伺いいたします。

木原(誠)大臣政務官 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘いただいたとおり、これは、ひとえに外務省ということだけでなく、政府全体として取り組むべき課題であるということについては全くおっしゃるとおりかというふうに考えます。その意味で、関係省庁間の連携を十分にとっていきたい。特に事件、事故への対応に当たりましては、警察庁、海上保安庁、そして防衛省を含む関係省庁が迅速かつ適切に対応できるよう平素から協議を重ねておりますが、さらに進めてまいりたいと思っております。

 具体的には、例えば、沖縄において、関係省庁の代表者を構成員とする沖縄県在日米軍事故対応に関する合同協議会を開催し、主として在沖縄の米軍関連事故発生時の現場における政府としての迅速な対応に係る体制の強化に向けた議論を続けているところでございます。

 外務省として、引き続き、関係省庁との連携を強化しつつ、事件、事故の防止に取り組むとともに、繰り返しになりますが、関係省庁との連携を強化して事件、事故に迅速に対応できるよう取り組んでまいりたいと考えております。

玉城委員 全国紙ではなかなか、沖縄で起こっているこういう事件、事故が報道されない。ですから、国民には全く知らされていない。そういうことが一番問題なんですね。だからこそ、私は、地元のこういう記事を参考にしたり、あるいは調査をしたりして、国民の皆さんにその実態を知らしめるべきであるという意味から、こういうふうに委員会で質問させていただいているということを念を押して申し上げておきたいというふうに思います。各委員にもぜひその点を御考慮いただければというふうに思います。

 では、時間が少なくなりましたので、外務大臣に所見、見解を少し伺いたい点がございますので、お願いいたします。

 去る二月十五日付のアメリカ・カリフォルニア州の地元新聞、UTサンディエゴ紙とのインタビューで、アメリカ海兵隊最高司令官のエイモス総司令官が、海上を拠点とした作戦行動が今後より重要になると答え、同盟国の中でさえも、彼らの土地を占拠し、基地をつくることは歓迎されなくなっているという見解を披瀝しています。さらに、海上拠点の部隊をふやし、同盟国に立ち寄ってともに訓練しながら、日常の影響を減らすことが可能だというふうに述べているんですね。

 つまり、懸案になっている辺野古の基地は必要ないということが、こういうふうに現場の総司令官、総司令官は総指揮官ですから、日本でいうと総理大臣に当たるぐらいのポストの方ですけれども、その方がそういうことを披瀝している。このことについて、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の報道については承知をしていますが、個々の報道の内容について、立ち入って政府の立場からコメントすることは控えたいと存じます。

 ただ、政府の立場、考え方は、従来どおり、日米安全保障体制に基づく在日米軍の抑止力、これは、我が国の安全、ひいては地域の平和と安定に欠くことができないものであると認識をしております。特に、東アジアの各地域に近く、迅速な展開が可能な沖縄に駐留する米国海兵隊は、その高い機動力、即応性等を通じて、在日米軍の抑止力の重要な一翼を担っていると認識をしております。

 日米両政府においては、現在の在日米軍再編計画が、米軍のプレゼンスについては、抑止力を維持し、日本の防衛と地域の緊急事態への対処能力を提供し、政治的持続可能性を確保するものと認識をしております。こうした考え方は、昨年十月行われました日米2プラス2の場においても、日米両政府の間で確認をしているということであります。

 ですから、さまざまな意見があることは承知しておりますが、ぜひ、引き続き、地元の皆様方の理解を得ながら、現在の計画に従って着実に在日米軍再編についても進め、抑止力を維持しながら、沖縄の負担軽減に全力を尽くしたいと考えております。

玉城委員 二〇一二年の米軍再編、見直しで、沖縄から九千名余りの部隊が海外に展開する。そうすると、残っている実数は定かではないんですが、米軍はより小規模の部隊にシフトしてもいいと考えているので、二千名から三千名ぐらいの規模が沖縄に残ればいいというふうに考えている。つまり、そういう再編にシフトしているということを押さえておく必要があると思います。

 もう時間が来ましたので、最後に一点、質問させていただきます。

 仲井真県知事は、普天間基地の五年以内の運用停止を政府の方に要望し、政府も最大限取り組むというふうに答えられています。きょう質問いたしました事件、事故の内容について、相対的にその事故を減らすために、このような抜本的な対策、つまり、もう基地を使わない、訓練を県外に移転する、あるいは国外に移転をするというふうな形で実質的に航空機あるいは戦闘機、ヘリの数を減らし、そこで運用する時間や日数を減らしていく、その方が抜本的な対策になるのではないかというふうに思料いたします。

 最後に大臣の見解をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、昨年十二月の安倍総理との会談において仲井真知事から示された沖縄負担軽減策につきましては、政府を挙げてやることは全てやるという方針のもとで、しっかりと努力をしていかなければならない課題だと認識をしております。

 事件、事故への対応ということにつきましては、もちろん、大変重要な課題であると認識をしておりますし、先ほど来議論の中に出ておりますさまざまな関係者の努力、こうした不断の取り組みが重要であると認識をしております。

 私も、昨年十月ですが、沖縄を訪問させていただいた際に、ウィスラー在沖縄四軍調整官と会談させていただきましたが、その際に、この事件、事故の再発防止の問題については取り上げさせていただきまして、議論を行い、そして働きかけを行わせていただきました。

 ぜひ、沖縄全体の負担軽減についてもしっかり取り組むとともに、この事件、事故への対策につきましても引き続きしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

玉城委員 終わらせていただきます。ありがとうございました。ニフェーデービタン。

鈴木委員長 次回は、来る十四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十九分散会


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