衆議院

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第6号 平成26年3月26日(水曜日)

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平成二十六年三月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    石原 宏高君

      河井 克行君    木原 誠二君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      河野 太郎君    島田 佳和君

      渡海紀三朗君    東郷 哲也君

      星野 剛士君    武藤 貴也君

      吉川  赳君    小川 淳也君

      玄葉光一郎君    松本 剛明君

      阪口 直人君    村上 政俊君

      岡本 三成君    青柳陽一郎君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    小松 一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山崎 和之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  中村 芳生君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 相川 一俊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 丸山 則夫君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            田中  敏君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房危機管理・運輸安全政策審議官)            染矢 隆一君

   政府参考人

   (国土交通省航空局安全部長)           島村  淳君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十六日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     吉川  赳君

同日

 辞任         補欠選任

  吉川  赳君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官水嶋光一君、大臣官房参事官山田滝雄君、大臣官房参事官下川眞樹太君、大臣官房参事官相川一俊君、大臣官房参事官丸山則夫君、総合外交政策局長平松賢司君、内閣官房内閣審議官山崎和之君、内閣審議官前田哲君、内閣参事官中村芳生君、文部科学省研究開発局長田中敏君、国土交通省大臣官房危機管理・運輸安全政策審議官染矢隆一君、航空局安全部長島村淳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。星野剛士君。

星野委員 おはようございます。自由民主党の星野剛士でございます。

 本日は、質問の時間をいただきまして、まことに感謝をしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 質問に入る前に、またまた北朝鮮がミサイルを撃ちました。内閣官房からの発表によれば、本日、三月二十六日午前二時三十分ごろから同四十分ごろにかけて、朝鮮半島西岸、平壌の北約五十キロから、東方に向け、弾道ミサイル二発を発射した模様である、発射された弾道ミサイルはいずれも六百キロメートル以上を飛翔し、朝鮮半島の東約五百キロの日本海上に落下したものと推定される、なお、詳細については現在分析中である、こういう発表がありました。

 もし御所見があれば、外務大臣から一言いただければ。

岸田国務大臣 御指摘のように、本日午前二時三十分ごろから四十分ごろにかけて、弾道ミサイルが発射されました。現在までのところ、航空機あるいは船舶からの被害報告等の情報は確認されておりません。

 そして、総理から、本件につきまして三つの指示が出ております。米国及び韓国を初めとする関係諸国と連携を図りつつ、緊張感を持って情報収集、分析に努めること、航空機、船舶等の安全確認を徹底すること、そして国民に対して迅速的確な情報提供を行うこと、この三点の指示がありました。

 引き続き、情報の収集、分析、そして国民に対する情報提供に全力を挙げたいと考えております。

 外務省としましては、早速、北京の大使館ルートを用いて、先方に厳重に抗議を行いました。

 以上です。

星野委員 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず初めは、ウクライナをめぐる情勢であります。

 日本時間の二十五日未明に行われましたG7首脳会議におきまして、ロシアに向けたハーグ宣言が出されました。安倍総理も積極的に発言しておられたと聞き及んでおります。

 まず、このハーグ宣言の意義とその意味するところについて、岸田外務大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 今回のG7首脳会合ですが、内容としまして、まずはロシアへの対応、G8ソチ・サミットの扱い、そしてウクライナ支援、この三点を中心に率直な議論を行い、そしてハーグ宣言を発出するということとなりました。

 ウクライナ支援につきましては、日本として最大で一千五百億の支援を表明し、高く評価をされました。

 また、ロシアへの対応ということにつきましても、総理から、力による現状変更は決して許してはならない、こういったウクライナをめぐる問題は、単に一地域の問題ではなくして、特にアジアを含め国際社会全体にとって極めて重要なものであるということ、これを強調させていただきました。多くの参加者から賛同が得られた次第であります。

 引き続きG7として協調して行動していく、こういった点についても確認をさせていただきました。

 そして、ソチ・サミットの扱いにつきましては、現状では、本年のソチ・サミットに参加しないこと、そして、六月にブリュッセルで改めてG7首脳会合を開催すること、こういった確認をいたしました。

 日本としましては、今後ともG7各国としっかり連携をしながら、そして我が国も、日ロ間の二国間関係に基づいて、ロシアに対しても日本の立場をしっかりと伝えながら、この問題を平和的、外交的な解決に向けてしっかりと推し進めていかなければならない、このように考えております。

星野委員 ありがとうございます。

 既に日本は対ロ制裁を発表しております。そして、今回のハーグ宣言において、今後のロシアの行動いかんによっては追加の制裁も示唆しております。その一方で、強く自制を促し、また一定の道筋も提示をしていると思います。

 今後の日本の対応について今外務大臣からもお話がありましたけれども、改めて、日本はどういう姿勢でG7各国と足並みをそろえて、また、特に今後、日本外交の対応いかん、これについて質問をさせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、我が国は、十八日の日に、ロシアとの査証緩和化に関する協議を停止する、そして、新投資協定、宇宙協定及び危険な軍事活動の防止に関する協定、この三件の新たな国際約束の締結交渉を開始することを凍結する、このことを発表いたしました。このことは、我が国として、力による現状変更は認めない、看過することができない、こういった姿勢を示す措置であると考えております。

 そして、今後につきましては、ウクライナの情勢、そしてロシアの対応、さらにはG7各国の対応等をしっかりと注視した上で、適切に対応していかなければならないと考えております。

 我が国としましては、まずは、基本的にG7を初めとする関係各国と連携しながら、力による現状変更は容認しないという強い姿勢を示すとともに、こうした我が国の考え方を、昨年来の日ロ関係に基づいてしっかりとロシアに伝え、働きかけていく。そして何よりも、ウクライナ情勢につきましては、厳しい財政状況、経済問題が背景にあります。こういった状況に対しまして、IMF等とも連携しながらしっかり貢献していく、こういった方針で臨んでいきたいと存じます。

 ぜひ、この問題を平和裏に外交的手段によって解決するべく、貢献をしていきたいと考えています。

星野委員 ありがとうございます。

 外交で重要なことは、やはり、しっかりと基本スタンスを維持し、そしてそのスタンスが決してぶれないこと。対ロシア制裁における基本スタンスは米国やEUと同じ価値観を持つということであると思いますし、総理が何度も首脳会談でも強調しているように、力を背景とした現状変更は決して認めないというところに日本外交の基盤といいますか基本があるんだろうというふうに理解をしておりますので、ぜひ、その基本スタンスをしっかり守りつつも、日ロには首脳同士のしっかりとした信頼関係もあるわけですから、それを基盤にしっかりと日本の立場を伝え、そして平和裏の解決に向けて一層の努力を積んでいただきたい、このように思います。

 あえて質問はいたしませんが、その認識でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 委員のただいまの御指摘のとおり、我が国としましては、G7を初めとする関係各国としっかり連携をしながら、力による現状変更は容認しないという姿勢をしっかりと示していかなければならないと考えます。

 この問題につきましては、一地方の問題ではなくして国際社会全体の問題であるという認識に立って、しっかりと対応していきたいと考えております。

星野委員 ありがとうございます。

 ぜひ特定の国に今の言葉をしっかりと聞いてもらいたいなというふうに思いますが、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 次に、米国の世界戦略全般、外交全般についてお伺いをしたいと思います。

 オバマ大統領は、昨年の九月十日、テレビ演説で、内戦の激化するシリアへの対処方針を説明するテレビ演説ですね、結びの部分でこう述べております。ちょっと長くなりますが、お許しをいただきたいと思います。

 我々の理念や原則、そして安全保障がシリアにおいて危機にさらされている。最悪の兵器が決して使用されないことを追求する世界における我々のリーダーシップも危機にさらされている。米国は世界の警察官ではない。世界ではひどいことが起きており、全ての悪を正すことは米国が持てる能力を超えるものである。しかし、限られた努力とリスクにより、子供たちがガスにより虐殺されるのを防ぎ、よって我々の子供たちを長期的に安全にすることができるときには、我々は行動すべきである。これが米国を他国とは違う国にするものである。これが米国を特別な国にするものであると述べております。

 米国は世界の警察官ではないとの極めて重い言及もあることから、ややもすると難解な印象を世界に与えたと思います。

 当時を時系列的に追いますと、八月の二十一日にダマスカス郊外における空爆及び化学兵器の使用により多数が死亡したとの報道がありました。同じく八月の三十日、今度はケリー国務長官が、アサド政権が化学兵器を使用したと高い確信を持っている旨発言しております。翌日、八月三十一日、オバマ大統領が、シリア政権の標的施設に対して軍事行動をとるべきであると決定をいたしました。同時に、軍事行動をとるに当たり、議会の承認を求める旨発表をされております。

 ここから十日かかるんですね。この十日後の九月十日、今度はロシアのラブロフ外相が、シリアに、化学兵器を国際社会の管理下に移すよう要請をいたしました。シリアのムアッレム外相も、同提案を歓迎する声明を発表しています。

 全く同じこの九月十日に、オバマ大統領は、さきに触れたテレビ演説で、ロシアの提案を受けて外交努力を続ける間、採決を延期するよう、議会に、これは連邦議会ですが、要請をいたしました。まさに渡りに船だったのかもしれません。

 そこで、お伺いをいたします。

 一連の時系列の事実とオバマ大統領の発言を総合的に勘案して、どのように外務大臣は御認識をされているのでしょうか。

岸田国務大臣 オバマ大統領の発言あるいはアメリカの対応について、日本政府として何かコメントすることについては控えなければならない部分もあるのかもしれませんが、今のお話を聞いて思うことといたしましては、やはり、厳しい国際環境の中で、米国といえども、一国でこうした環境に対して対応するというのは難しい状況が存在しているのではないか、こんなことは感じます。米国も、やはり関係各国との連携を大事にしていかなければならないということだと考えます。

 このシリアの問題についても、その後の経緯を考えましても、ロシアとの協議があり、さまざまな関係国との連携のもとに対応が進められていきました。こうした難しい国際情勢についても、我が国もしっかりと念頭に協力を進めていかなければならない。

 今の委員のお話を聞いて思い浮かびますこととしては、まずはそういったところでございます。

星野委員 オバマ大統領が置かれている、または米国が国際社会の中で置かれている状況、大変難しいものがあるということは十分理解をいたします。ただし、これまで、好むと好まざるとにかかわらず、やはりこれは、特に冷戦後、米国が世界で果たしてきた主導的な役割というものは、国際関係を安定化させるために、または紛争などを未然に防ぐために、大変大きな役割を果たしてきたと私は認識をしております。

 そして、こうしたシリアの問題のときに、大変つらい状況の中で、最終判断を実は議会にも求めていた。そして、そこから延々と十日が過ぎ、膠着状態に陥った。世界はずっと注目をしているわけであります。そして、ロシアが主導する形で、こうしたシリアの化学兵器を国際監視のもとに移そう、それにシリアも同意をする。その同じ日に大統領がテレビ演説をして、国民の皆さんにお話をする中で、さっきお話ししたような、最後の結びの部分ですから、ずっとお話をしてきて、こういう提案があった、こういうふうにしようと思っている、こういう難しいところがある、それで、最後の最後で、先ほどお話をさせていただいたコメントがあるわけですね、世界の警察官ではないと。

 だから、ここは、これはわかりませんけれども、もしかすると、後から歴史上見た場合、あそこが一つの分岐点というふうに捉えられる可能性もある重い言及なのではないのかなと私は思って、あえて、外務大臣の苦しい立場もわかりますけれども、まずお話を聞いてみたいというふうに思いました。

 少なくとも一般的な印象からすると、このシリア問題、なかなか苦労している米国、またオバマ大統領、オバマ政権にロシアがカードを切って、また、そのロシアが主導する形で一旦おさまりを見せたということがあるんだというふうに思います。

 そして、このシリア後、またさまざまなことが起きました。一番大きな問題としては、今ウクライナで起きているこうした問題、そこに何らかの影響を及ぼした可能性も全く否定はできないんだというふうに思っております。

 そこで、この発言以降、今のウクライナの情勢、そしてロシアの強硬姿勢または国際法無視の現状、この辺を含めて、世界情勢全般も含めてどう御認識をされているのか、御所見をお伺いできれば幸いでございます。

岸田国務大臣 ウクライナ情勢につきましては、従来から我が国は、このウクライナの動きについて、ウクライナの主権ですとか領土の一体性が尊重されなければならない、平和裏に外交的手段で解決されるべきである、こういったことを申し上げてきました。そういった点からは、その後のクリミア編入等の動きについては、ウクライナの主権ですとか領土の一体性を侵害するということで、非難をさせていただいております。

 こうしたウクライナの動きを見ましても、昨今の国際情勢、米国一国では事態を解決することができない大変難しい状況にあると認識をしています。であるからして、より国際社会の連携が重要であるというふうに思いますし、我が国としても、国際協調主義に基づく積極的平和主義の考えのもとにしっかりと貢献をしていかなければならない、このように感じています。

 そして、確かに、米国といえども一国で国際問題を解決するということはできない厳しい状況にあるわけですが、その中にありましても、米国はやはりリーダーシップを発揮しているということは事実だと考えています。今回のウクライナ問題におけるG7の連携等を見ましても、米国はリーダーシップを発揮していると思いますし、また、アジアの状況を見ましても、オバマ政権のアジア重視という戦略は、我が国として歓迎すべき政策であると考えています。

 ぜひ、こうした難しい情勢の中でありますが、アメリカのリーダーシップにも期待しながら、我が国としても、引き続き、地域や国際社会の平和や安定のためにしっかりと貢献していく努力をしていかなければならない、このように感じています。

星野委員 大臣、ありがとうございます。

 全く認識は同じでありまして、私も、日本外交、日本の安全保障の基軸は日米同盟であります。それを大前提にしつつも、世界は日々変化をしている中で、積極的平和主義を掲げる安倍総理、また、我が国の政府またその外交、その中で、しっかりと自分たちの立ち位置と、動き回る世界情勢の中でしっかりとその責任を果たしていきたいと思いますし、私たちも与党としてしっかりそれを支えて前進させる、そのためにあえてお伺いをさせていただきました。

 それでは、最後の質問になりますが、一連のお話を聞かせていただいて、今、私たちが最も懸念をするのは、残念ながら、中国の海洋進出、そしてその背景にある極めて不透明な軍備拡張。ここ最近だけでもありとあらゆることが起きておりますし、領海侵犯、領空侵犯なども数え上げれば切りがありません。

 そうした中で、東シナ海の問題、南シナ海の問題全般について、きょうは時間も限られておりますので、特に南シナ海をめぐる動きについて。

 南シナ海でも、中国の海洋進出そしてさまざまな行動が関係諸国と大きな摩擦も生んでおりますけれども、その点について日本政府としてどのように認識をされているのか、御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 我が国としましては、力による現状変更は容認することはできず、法の支配に基づいて行動することが地域における国際秩序の維持発展にとって重要だということを従来から申し上げてきました。そして、南シナ海においても、国連海洋法条約を含む関連国際法を遵守するとともに、南シナ海においては、それぞれの国がみずからの主張に関する国際法上の根拠を明確にするべきであるということを求めてきました。

 こうした主張を行ってきましたし、さらには、南シナ海においては、中国とASEANとの間において、COC、法的拘束力のある行動規範妥結に向けての議論が進んでいます。こうした議論が進むこともぜひ期待をしたいと考えております。

 いずれにしましても、法の支配に基づいての行動を南シナ海の地域においてもしっかりと今後とも求めていきたいと考えています。

星野委員 ありがとうございます。

 次にお伺いしたいのは、今もASEANという中で言及がありましたけれども、特にフィリピンが、南シナ海をめぐる中国との紛争を国連海洋法条約の上の仲裁手続に付しております。

 私はこれは大変重要な動きだと思いますし、今るる外務大臣が述べられました、まさに法的根拠、国際法、我々が中国に言っていることは、力を背景とした現状変更は決して認めない、しかも、その行動には、今言及もありましたように、国際法上の根拠を明確にしなさい、そういうことができない大国などはあり得ないと私自身は思っております。

 まずそうした国際法を守りなさい、まず国際法に適した行動をとるべきだと繰り返し我が国は主張しておりますけれども、その文脈の中で、今回、フィリピンが仲裁手続に付したということは重視をすべきだというふうに思っているんですが、全般を含めて外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、フィリピンと中国は、国連海洋法条約の締約国です。そして、フィリピンは、条約上の仲裁手続にのっとって中国を提訴したものと承知をしています。

 こうした国連海洋法条約の手続を活用して国際法に基づく問題の平和的な解決を目指すということは、地域における法の支配に基づいた国際秩序の形成に資するものであると考え、我が国としましては、こうしたフィリピンの対応を支持しております。ぜひ、地域の関係各国におきましても、こうした法に基づく問題解決の姿勢に対して支持が広がっていくことを我が国としても期待していきたいと考えております。

星野委員 ありがとうございます。

 るるお話を聞かせていただきました。この中国の海洋進出、国民の皆さん方も大変関心をお持ちになって注視をしている問題でもありますし、私は、これは私見ですけれども、残念ながら、中国は、経済大国にはなりました。しかし、大国になればなるほど、それは、国際法をしっかりと遵守する、一千年前、二千年前の話じゃありません、この今の現代社会の国際ルール、国際法をしっかりと遵守するという姿勢を世界に見せて初めて、大国として、誇りあるリーダー国として世界から認められるんだと思います。

 私は、その点をあえて何度でも強調させていただきたいと思いますが、ぜひその方針に沿って日本外交を前進させ、国民の生命財産を守るという外交の大変崇高な目的に向かって邁進をしていただきたいと心からお願いをいたしまして、私の質問を終了させていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 おはようございます。

 早速質問をいたしますが、まず最初に、今、星野委員からも指摘のありました、冒頭話のありました、未明の北朝鮮のミサイルの発射でございます。

 このミサイルの発射について、NSCは招集をされたのか、されるのかということ、それから、北朝鮮の発射はここのところ立て続いていますが、本日はこれで飛ぶことはないと判断しているのか、あるいは、きょうもまだ予断を許さない、今後も予断を許さないというふうに見ているのか、この点について、今現状のことを教えていただきたいと思います。

山崎政府参考人 本日午前二時三十分から四十分にかけて、弾道ミサイルが北朝鮮によって発射されました。

 発射された弾道ミサイルは、いずれも六百キロメートル以上を飛翔して、朝鮮半島の東約五百キロメートルの日本海上に落下したものと推定しております。詳細につきましては、現在分析をしているところでございます。

 現在までのところ、航空機や船舶からの被害報告等の情報は確認をされておりません。

 この発射の事案を把握してから、官邸の危機管理センター……(渡辺(周)委員「いや、そんなことより、NSCを開いたのか、開くのかと聞いたんだ」と呼ぶ)

 NSCについてでございますけれども、ハーグにおられます総理それから官房長官にお諮りをしておりまして、また、現在、アメリカ、韓国等とも連携をしております。

 その中で、国家安全保障会議の開催につきましては、現時点においては予定しておりませんけれども、必要と判断される場合には開催するということになる可能性はございますが、現在のところ、国家安全保障会議の開催については予定をしておりません。

渡辺(周)委員 こういうときのためにNSCをつくったんじゃないんですか。どうして予定していないんですか。その理由を教えてください。

山崎政府参考人 三月三日に、やはり北朝鮮による弾道ミサイルの発射事案がございました。その際にも、国家安全保障会議は開いておりませんけれども、総理及び官房長官、関係閣僚に対して事実等の報告をし、必要な指示をいただき、本日についても関係省庁間で局長級会議を開催しておりまして、政府としての対応は、その手続において、きちんと進められておると思いますので、現在のところ、国家安全保障会議を開催することは予定していないということでございます。

渡辺(周)委員 ちょっとよくわからないんですね。

 局長級会議は開かれたから、それで今のところは対応できているということのような御趣旨の今の答弁ですが、NSCを開くか開かないかというのは、重ねて言いますけれども、ミサイルが公海上に六百キロも飛んでやってきたわけですね、こんなときに開かなくていつ開くんですか。

 これはどういう基準なんですか。ちょっとそこをちゃんと答えてください。

山崎政府参考人 国家安全保障会議は、総理が議長のもと、関係閣僚の間で議論をしていただくということで開催されるものでございます。

 お尋ねの、その基準というか、どういう場合に開くかということでございますけれども、これは、総理、官房長官等にお諮りし、また、実際仕事を進めていく面で、閣僚レベルで集まっていただく必要があるかどうかというのを、個別具体的にその時点で判断をして決めていくということにしております。

渡辺(周)委員 ちょっとびっくりしたんですね。ここのところ、大変な数の、おびただしい数のミサイルが、公海上に届いたものもあれば、領海内で打ったものもある。短距離から今回のような中距離、ノドンと言われていますけれども、こういうものが飛んでいるのに、あの鳴り物入りでつくったNSCが全く開かれていない、この点について、大臣、どうお考えですか。

 それから、さっき質問にちょっと答えてもらっていないんですけれども、例えば、きょうはもうこれでミサイルが飛ぶ心配はないと今判断しているのか、あるいは今後はどうなんだ、もっと言えば、これは発射されたところが移動型なのか固定型なのか、どこから飛んできたか、いろいろなことを分析していると思うんですけれども、それでは、今どこで分析しているんですか。NSCはやらない、関係省庁の協議をしているのであれば、どこが今これを分析しているんですか。

 もう一回それを説明して、その後、大臣にちょっと伺いたいと思います。

山崎政府参考人 分析するに際しましては情報収集が必要でございますので、それにつきましては、防衛省、外務省、内閣情報調査室等において情報収集が行われ、その上で、それぞれの機関で分析が行われ、かつ国家安全保障局にも報告、及び我々としても分析を行うという形になっております。

岸田国務大臣 まず、外務省としましては、今回の事案を深刻に受けとめて、早速、北京の大使館ルートを通じまして、北朝鮮には厳重に抗議したところであります。

 そして、NSCの開催についての御質問ですが、NSCの開催については官邸の判断ということでありますので、外務大臣の立場から直接申し上げるのは控えますが、NSCを中心に、引き続き情報収集、分析に当たっているわけでありますので、今後の情報や判断次第ではNSCの開催もあり得るものだとは考えております。

渡辺(周)委員 この問題ばかりをやるつもりもないので、あした私は安全保障の委員会でも質問いたしますから、続きはまたそちらの委員会でもやらなければいけないと思います。

 我々もNSCの法案には賛成をしました。そして、情報の一元化、判断の一元化をすることで速やかに国家としての意思決定ができるような仕組みをつくるべきだということについては主張をしてきて、我々の主張も取り入れられながらできたわけでございます。

 それが、今回の事例のときに、どういう基準かわからないけれども、とにかくNSCは開かれない。それは、官邸で、今総理がオランダに行っているから開けないのか、しかし、それであっても、当然、臨時代理の方はいらっしゃるし、官房長官はいるわけですから、この点については直ちに対応すべきだと思います。

 何よりも、先ほどおっしゃった中に、それぞれで何か情報収集して分析しているというけれども、そういうことをなくすためにこれは一元化したんじゃないんですか。だったら、はなからつくらなくても同じじゃないですか、結論が。ぜひそのことについてはもう一回御答弁をいただきたいと思います。

 今後はどのように見通していらっしゃいますか、本日も含めて。

 実は、この間質問をしましたけれども、あのときは、日本政府が発表したのが何と十六時間たってからでしたね、三月三日のときに。あの間も、何も知らされていない民間の飛行機や船舶はそのエリアにいたわけですよ。そのときに航空会社等には連絡をしたのかとあの当時言ったら、情報収集の能力がわかってしまうのでその点について対応しなかったけれども、言われてみればそうだから、今後対応を考える。

 今回は、きょうの朝五時台に各航空会社に国土交通省を通して連絡が行ったというふうなことでありますが、その点について、本日、これからの対応、あるいは安全に対する呼びかけ、情報提供、きょうも含めて今後どうなっていますか。その辺について伺います。

染矢政府参考人 国土交通省としましては、関係省庁局長級会議におきましてミサイルの発射に関する情報を確認後、先ほど先生の御指摘のとおり、直ちに、本邦及び外国航空運送事業者並びに海運事業者団体に対しまして連絡及び注意喚起を実施したほか、海上保安庁からは航行警報の発出を行っております。

 今後とも、引き続き状況の変化に注意してまいりたいと考えております。

渡辺(周)委員 それで、ちょっと蒸し返すようですけれども、前回のときにもこれは議論しました。三月三日の発射のときです。

 六時二十分と六時三十分に発射されて、その後、韓国の国防部では定例記者会見で発表がされた。しかし、残念ながら、日本で発表されたのは、事実関係の公表は二十三時四十五分であった。その間、一体何をしていたのかということ。

 そしてまた、今回その反省を、国会で我々が指摘をし続けたこともやはり今回の早朝の対応につながったんだということについては、一定の理解をしますけれども、あの当時、なぜ判断をしなかったのか、なぜそうやって今回できたことを前回はやらなかったのか。あのエリアを飛んでいる飛行機や船舶に対して、今お話のあったような、電話連絡をするなりメールを送るなり、あるいは航行警報を出すなり注意喚起を促すなり、今回はスピーディーにやれたわけですね。前回なぜできなかったのか、そのことについて。

 今回もそうですけれども、あのとき意思決定が本当に即座にされたのかどうか。今回はその反省を踏まえたと思いますけれども、前回から今回はこれだけスピーディーに変わったということは、どういうことなんですか。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 前回も御説明を申し上げましたが、この種の事案のときに、その事案の内容によってさまざまその対応も変わってくるということが言えると思います。前回申しましたように、一般的に申し上げてインテリジェンスの観点がございますので、公表していくかどうかというのを慎重に判断することになります。

 ただ、今回の場合には、ピンナップの方でも書かせていただいておりますが、半島の西側から発射したということもございます。それから、射距離も前回よりも若干長うございます。そういったことも踏まえて関係局長会議で議論した結果、事実関係だけでもこれは早急に公表することが適切であるという判断になりまして、総理、官房長官の御了解もいただいて、今回の対応といたしたということでございます。

渡辺(周)委員 それは多分、前回、前々回の委員会でこのことを何度もやって、私の部屋にも来ていただきました。私だけじゃなくて同僚議員からも同じような指摘が、他委員会でもたしかあったと思います。

 それだけに、情報を入手したことや、あるいは、どういう手段で情報を入手したかということまでは別にしゃべらなくてもいい。ただ、こういう事実があって、今後そのエリアを航行する航空機なり船舶なりはやはり注意されたし、それによって当然判断するわけですね、事業者は。やはり、そのことはしっかり徹底していただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 ちょっとこの問題だけではなく、ほかの質問も幾つか用意しておりますので、ぜひこのミサイル対応には遺漏なきように努めていただきたい。そして、知り得た情報は、もちろん手のうちを知らせないように、ただ、事実としてはやはり国民に対してしっかりとした情報を速やかに、早急に意思決定をしてやっていただきたい、そのことも申し上げたいと思います。

 さて、同時刻に開かれていた日米韓の会談でありますけれども、このことについてお尋ねをいたします。

 この日米韓の会合で安倍総理が、オバマ大統領には英語で挨拶はしなかったけれども、朴槿恵大統領に対しては韓国語でわざわざ挨拶をするような、あえて気を使ったというふうに映ったわけなんですが、今回の三者会談、朝から報道を見ておりますと、朴槿恵大統領は終始かたい表情で、韓国側からすれば、日本のあの安倍総理と同席したことだけでも国内的に大変な批判にさらされるんじゃないかというような見方をする方もいますけれども、今回の日米韓会談の成果、そして、あわせて、来月中旬、日韓で局長級協議を行う方向でも事務レベルで合意をしたということも報じられているわけです。

 これは、テーマとして、三者協議では歴史問題は取り上げられなかったけれども、局長級協議では慰安婦問題を協議するというようなことになっているわけでございますが、こういう合意がされたのかどうか。つまり、事務レベルにおいて、いわゆる慰安婦問題の協議というものが始まるのか。その点については、大臣、いかがでしょうか。どのような報告を受けていますか。

岸田国務大臣 まず、日米韓の首脳会談でありますが、二十五日十八時三十五分ごろから四十五分間、日米韓首脳会談を行いました。

 内容としましては、北朝鮮問題を中心とする東アジアの安全保障について議論をし、そして三カ国の緊密な連携が重要であるということにおいて一致をしたということでありました。この会議は、こうした東アジアの安全保障環境に対する議論として非常に有意義な会議であったと認識をしております。

 あわせて、日韓間に関する今後の影響ですが、今回の日米韓首脳会談は、安倍総理と朴槿恵大統領が初めて直接の会談に臨む機会となりました。ぜひ、我が国としても、今回の会議が第一歩となって、今後、大局的な観点から、重層的な未来志向の日韓関係の構築に向けて日韓間の対話が進んでいくことになることを期待したいと考えておりますし、韓国側にもこうした思いをしっかりと受けとめてもらいたいと考えています。

 そして、御質問として、日韓間で局長級協議が行われるのではないかという御質問がありました。

 今日まで、日韓間においては、両国関係の重要性に鑑みて、大臣、次官、局長等、さまざまなレベルで意思疎通は行ってきましたが、今後、具体的に日韓間で局長会議を立ち上げるという予定等については何ら決まったものがないと承知をしております。

渡辺(周)委員 韓国側の報道の中に、既に、二十一日、先週金曜日に、局長級協議に向けて調整中だと韓国政府が明らかにした、これは韓国のメディアが韓国政府の言っていることを書いているわけですから、どこまで真実かわかりませんが、局長級協議については、韓国側が提起をして、日本からは真剣に誠意を持って臨むという反応があったことを明らかにした。それから、韓国外交部の当局者は、日本が誠意を持って応じると言っているので、最善の努力をして実質的な結果が出るようにすると話した。何をもって問題解決とするかについては、被害者が望む、納得できる解決策というんですけれども、今の大臣の話だと、まだ決まっているわけではない。

 しかし、けさの報道では、今回の三者会談が実現したことを受けて、局長級協議を四月中旬にも行うことを合意したことを明らかにした、日韓外交筋と産経新聞が、日本のメディアが書いているんですけれども、これについて、韓国側も早くから、先週のうちから、局長級会合が開かれる、そして、日本側が真剣に誠意を持って臨む、誠意を持って応じるということで、合意をしたのかという韓国側の言い分。そして、いわゆる慰安婦問題を協議する局長級協議がきょうこの時点でセットされつつあるということなんですが、今のお話を聞いていると、大臣の答弁では、そうではない、まだ決まっていないとおっしゃいますが、それでよろしいんですか。

岸田国務大臣 我が国は従来から、日韓関係は大切な二国間関係であるということで、対話のドアは常にオープンだと言い続けてきました。そして、先般も、次官あるいは局長間で意思疎通に努めてきたわけですが、御指摘のように、今回、日米韓首脳会談の開催に当たって、具体的に日韓間で局長級協議を立ち上げる、こういったことは何も決まっていない、そういった予定は決まっていないと私は認識をしています。

渡辺(周)委員 大臣が認識をされていないということは、ないと思うんですが、しかし、もうこういうことが、日韓外交筋ということは韓国側も含めていますので、韓国側がそういうふうに情報をどんどん流しているのかどうか、これはぜひ確認もしていただきたいと思うんです。

 私、実は非常に気になることをこの後申し上げたいと思うんですが、来年、日韓基本条約が五十周年を迎えます。これは御存じのとおり、基本条約の見直しということを公然と言う、例えば韓国の政府系のシンクタンクからもそういう声が出る、あるいは国会議員からも出てくる。

 過去にも、三十周年のときには、日本に解釈の変更を要求してきた、四十周年のときには、当時、公になっていなかった慰安婦問題に関して日本の法的責任の見解というものを発表したわけですね。つまり、節目節目に合わせて、この日韓基本条約に対して、韓国側は、何回かいろいろなことが提起される中で、今度、五十年という節目で、韓国側がいわゆる第二条の修正を通じて全体の解釈の見直しを求めてくるのではないか、何らかの新たな提起があるのではないかということが言われております、これは韓国内でも。

 そこで伺いたいのは、この日韓基本条約五十年に向けて、条約を見直すというような動きが韓国側にあるのか、あるいは、下話として、日本の外務当局に対してそういう何らかの働きかけなりがあるのかどうか、その点はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国としましては、一九六五年に締結された日韓基本関係条約を初めとする日韓国交正常化のための諸条約、これは現在の日韓関係の基礎をなすものであると考えております。そして、この点は韓国政府も同様の認識であると承知をしております。

 よって、日韓間、政府間においてこうした条約の見直しについて具体的なやりとりがあるということは全く承知しておりません。

渡辺(周)委員 恐らく韓国は、過去の請求権というものは決着済みだということに対して、多分、これを覆すような何らかの発言をされる、もうそういう発言をされている方もいるわけですから、そういう何らかの動きがあるのであろう。

 ちょっと話は中国の方に飛びますけれども、中国で強制連行訴訟、二月二十六日に、日本の地方裁判所に当たる北京市第一中級人民法院というところに訴状が提出をされました。

 これは、中身からいうと、中国人元労働者とその遺族が、旧三井鉱山と旧三菱鉱業を相手に、四十人の方が、一人当たり百万元、およそ千六百五十万円の賠償と、日中の主要新聞に謝罪広告をせよということを訴訟を起こした。そうしたところ、二月二十六日に訴状を提出して、三月十八日に正式に受理をされた。

 これまでも中国国内ではこういうことがあったんですけれども、さまざまな政治的配慮もあったのでしょう、それから、投資環境というものに対する、やはり海外企業の投資ということを考えれば、そこに対しての何らかの考え方があったのか、これまで受理されてこなかった。ところが、ここへ来て、受理をされたわけでございます。

 そうすると、数カ月後には訴訟が始まるとなったときに、これは当然、中国の裁判所で裁判が起こされるわけであります。聞くところによりますと、原告側弁護士に言わせれば、強制連行されたという人は三万九千人いる。これがあちこちでこれから訴訟を起こすという中で、日本では司法が独立していて、三権分立の我々の国家組織の仕組みの中では考えられないんですけれども、中国の場合は、裁判所も共産党の指揮下にあるというふうに思うと、結果はおのずと見えてくるわけでございます。ここで、韓国でも、やはりかつての連行された方々からの訴えが起きる。

 日本では、これはもう二〇〇七年の最高裁で、既にこの問題については条約で、あるいは日中共同宣言で、あるいは、韓国といえば日韓基本条約で、この問題は国家としても個人としても決着がついているんだというような判例が出ているわけですが、日本ではそれが通っても、相手国では、それがもう一回、いわゆる歴史をもう一度、裁判、司法の場に出すということ、歴史をめぐる法廷闘争、これが始まったと言わざるを得ないと思うんです。

 中国と韓国がもう一度さかのぼって共闘している、黒竜江省ハルピンの駅にできた安重根の記念館では、これは習近平氏と朴槿恵大統領が握手をしながら歴史問題で共闘しているんじゃないかというふうにも報じられていますが、今、この両国の動きを見て、また、今回、こういう司法の場を使って、日本に対して、もう一度歴史闘争を法廷で行おうとしている、この点について日本は備えができているんでしょうか。いかがですか。

 もっと言えば、まず、中韓が共闘していると理解をしているのかどうか、あるいは、していないのか。そして、今後こうしたことが起きてくるということについて、どう備えているのか。最終的には、私は、韓国でいえば、日韓基本条約の五十年に合わせて請求権というものを復活させようというふうに、そのための準備をしていると思うんですけれども、これに対して日本の国は備えができているんでしょうか。いかがですか。

岸田国務大臣 まず、中国ですが、御指摘のように、二月二十六日、御指摘の訴訟が裁判所に提起されて以降、政府として関心を持って注視してまいりました。

 先般、同裁判所において訴状が受理されたことは、中国国内で類似の事案を誘発することにもなりかねず、これは日中間の戦後処理の枠組み、あるいは日中経済関係へ大きな影響を与えるのではないか、深刻な懸念を持たざるを得ないと考えております。

 さきの大戦に係る日中間の請求権の問題については、日中共同声明発出後、存在しておらず、日本政府としては引き続き注視をしていきたいと考えております。

 そして、韓国との間におきましても、日韓間の財産、請求権の問題については、日韓請求権・経済協力協定により完全かつ最終的に解決済みであると認識をしております。この点については、韓国側にも、これはたびたび、累次にわたって伝えているわけでありますし、この認識においては、韓国政府もたびたび表明しているとおり、同じ認識に立っていると我々は理解しております。

 ですから、韓国の問題につきましても、これは韓国の国内問題であり、韓国政府のしっかりとした対応を求めていかなければならない、このように考えております。

 そして、中韓の間で共闘が行われているのではないか、こういった御指摘でありますが、安重根記念館など、こうした連携の動きを展開することは地域の平和と協力の構築に資するものではないと我々は考えております。

 引き続き、動向は注視していきたいと思いますし、今申し上げました我が国の考え方、立場についてはしっかりと説明をしていきたいと考えています。

渡辺(周)委員 今、深刻な懸念というお言葉を使われました。深刻な懸念というのは、かなり事を重要視しているということの危機のあらわれだというふうに思います。

 それで、気になったのは、注視をしていくではなくて、やはり司法制度が我が国と違うんですね。ちょっとお尋ねしたい。中国の裁判所というのは共産党の指揮下にあるんですか。これはどういうふうに大臣は御理解をしていらっしゃるでしょうか。

 それから、もしお答えになれなかったら、答えられる方に答えていただいてもいいんですけれども、一九九〇年代に日本国内で幾つも中国の強制連行訴訟というものが起こされました。しかし、さっき申し上げたように、二〇〇七年四月の最高裁の判決によって、ことごとくその訴えというものは退けられてきた。この結論は、当然、韓国も中国も共有していると我々は思うのですが、しかし、ここへ来て、歴史をまた法廷に持ち出すという手法が両国で今こうやって起きてくると、やはりこの問題についての我が国の立場というのは、両国のみならず、国際社会に対してもしっかりと伝えていかなければいけないと思うんです。

 そのことについてどう取り組んでいくかという、注視というよりも、やはり積極的にかかわって、我々の主張を言わなきゃいけない。これは前から言っているんですけれども、正しいことは必ずいつかみんなが理解してくれるみたいな日本型の思いを持っていますと、まさに情報戦に負けてしまいますので、そこをどう取り組むかということが一つ。

 それから、またこういう訴訟が頻発をすれば、企業は大変なダメージをこうむりますし、もっと言えば、全くアウエーの中で、中国の裁判所で起こされたことに対して日本の企業がどう対応するかということについて、これは本当に企業だけで対応できる問題なんだろうかということをやはり心配するわけですね。企業サイドのみでできるのかどうか。

 この点については、やはり国としてある程度、そういう波が押し寄せてくるということを念頭に、対応を考えておくべきだと思いますけれども、いかがですか。注視という言葉でいいんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、最初の御質問で、中国の裁判所についてですが、私の認識としては、中国の裁判所も中国の共産党の指導のもとにあると認識をしております。

 そして、後段の御質問ですが、おっしゃるように、こうした中韓での動きは、戦後のさまざまな国際的な枠組みに対する大きな影響を及ぼすことになるのではないかと考えますし、国際的な経済関係についても影響が想定される、大変重大な事案ではないかと認識をしております。

 御指摘のように、注視するだけではなくして、こうした状況については積極的に国際社会にも発信し、理解を求め、そして我が国の立場に対して理解を得るべく努力をしていかなければならない、こうした課題であると考えます。

渡辺(周)委員 今後予想される我が国に対する歴史の法廷闘争が、これは恐らくすごい勢いで来るのであろう。そういう危機感を持った上で、やはりそこは、外務省のみならずですけれども、対象となる企業あるいは周辺国も含めて、当事国はなかなか理解していただけないでしょうけれども、まさに西側の国々に対して、この歴史的決着についてはしっかりと説明をしていただきたい。

 そして、日韓基本条約の五十年に向けて、韓国から請求権の何らかの見直しということがあっても、これはやはり今までどおりの日本の立場を貫いていただいて、そして、その問題についてはもう決着済みであるということはしっかりと国際社会にも理解をしていただけるように努力をしていくべきだろうと思います。

 十分しかございませんので、国際社会における、これもいろいろなことをもっと聞きたいんですが、時間がありませんので、かいつまんで伺いますが、先ほど星野委員も冒頭に取り上げられた、今回のクリミアをめぐる我が国の立ち位置、我が国の追加制裁ということについては日本国はどう考えているのか。

 他国では、これはそれぞれ事情があります。我が国も、やはり北方領土の交渉の問題、解決しなければならない大きな問題がありますので、非常にこれは悩ましいところだと思います、板挟みに遭っていることは私もよく理解をしております。

 その上で、さはさりながら、西側の一員として、我々はやはり歩調を合わせなければいけないという中で、どの国も持っている悩ましさは一緒だとは思いますが、今後、追加制裁をするということは考えているのか。また、どういうことになれば、ハーグ宣言の中でありますけれども、一つの改善が見られる、日本側としてはターニングポイントはどことお考えかということ。

 それから、今現在ではG8の体制というのを崩壊させちゃいけないと思うんですけれども、G8がG7になる。しばらくの間は日本として、ある意味では日ロ間の関係が一時的にはちょっと悪くなるということを覚悟の上で、やはりG7の中で活動していくしかないんだと思いますが、その現状について、大臣、率直なお考えはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、ウクライナ情勢につきましては、我が国としては、ウクライナの主権あるいは領土の一体性が尊重されなければならない、そして、力による現状変更は容認してはならない、こういった思いをG7を初め関係各国と共有して、そして、二度にわたるG7共同声明、二十四日にはハーグ宣言、こうしたものを発出して、国際社会に向けて、日本の思い、G7各国と共有している考え方、これを明らかにしております。

 今後とも、こうしたG7を初めとする関係国との連携を重視しながらこの問題に取り組んでいかなければならないとは考えていますが、あわせて、昨年来積み上げてきた日ロ関係が存在いたします。この関係に基づいて、ロシアに対して、我が国としてもこうした考え方や立場をしっかり伝えていく、自制と責任のある行動を求めていく、これも大切なことであると考えております。

 そして、あわせて、この問題を平和裏に解決するためには、背景にウクライナの厳しい経済状況、財政状況が存在いたします。これに対してしっかり貢献していこうということで、先日のG7首脳会談におきましても、一千五百億の貢献を発表し、高く評価されたわけであります。

 こうした姿勢は今後とも大事にしていきたいと考えていますが、ロシアとの関係、制裁につきましては、先日、十八日、我が国としての措置を発表させていただきました。これは、力を背景とする現状変更の試みを絶対看過しない、こういった姿勢を示す意味で重要であったと考えていますが、今後どうするかにつきましては、先日のハーグ宣言の中にも、ロシア側に対しまして、ぜひ責任ある行動を求めるという内容を含んでおります。ロシアには明確な選択肢がある、状況を緩和するための外交的な道筋は引き続き開かれている、我々はロシア政府がこれらの道筋を選択することを望んでいる、こういった内容が盛り込まれています。

 ロシアの対応をしっかり注視し、そしてウクライナの情勢、さらにはG7の対応等もしっかりと注視した上で、我が国としては今後の制裁等の対応については考えていかなければならないと思っております。

渡辺(周)委員 具体的には、他国からは、例えば公務員の渡航禁止などというかなり厳しい措置も行う、そういう中で、足並みをそろえ過ぎて、我が国のこれまで積み重ねてきた日ロ関係の中での領土交渉というものが頓挫するということはやはり避けたいというのはわかりますし、かといって、西側の一員として日本だけが足並みを乱すようなことがあってもならないという意味になると思うんです。

 この問題は非常に悩ましい問題であるということは非常によくわかっております。このことで何か揚げ足をとろうなんということも思いませんが、今後、このことは、また事態の展開とともに議論をしたいと思います。

 残り三分で、ちょっと北朝鮮の話にまた戻りまして、締めたいと思います。

 今回、今月三十、三十一日に開かれる北京での日朝協議、外務省局長による協議についてなんですが、これは拉致問題は議題ですね。

岸田国務大臣 一年四カ月ぶりに再開いたします日朝の局長級協議ですが、この協議におきましては、日朝間に存在するあらゆる問題につきまして取り上げられることになると想定しております。

 そして、これはそもそも一年四カ月前まで存在した日朝の局長級協議の再開でありますので、従来どおり、あらゆる問題が取り上げられると思いますし、我が国にとって拉致問題は大変重要な問題であるということは当然のことだと考えております。

渡辺(周)委員 相手方は、拉致問題は解決済みなんだという回答をこれまでもずっと繰り返してきました。しかし、ここで再開に応じる。そしてまた、先般、横田めぐみさんの御両親がモンゴルでキム・ウンギョンちゃん家族と会うことができた。なかなか詳細については我々ははかり知れないわけですが、大臣は、今回のモンゴルでの横田御夫妻のお孫さんとの面会についてのいろいろな、プロセスはいいです、中身についてある程度詳細な報告を受けているのかどうかということがまず一つ、中身は聞きません。

 それから、やはり北に変化が今あらわれてきているのかどうかということですね。北朝鮮の中に変化があらわれてきているのかどうか。そこは率直にどうお考えですか。どう受けとめていますか。

岸田国務大臣 まず、横田御夫妻がこのたび、お孫さん御家族と面会をされたことにつきましては、長年横田御夫妻は望んでおられたことでありますし、今回こうした面会が実現したことは私自身もよかったと思っております。内容につきましては、把握できる範囲で私も報告を受けております。

 そして、北朝鮮の対応に変化があるのかという御質問についてですが、確かに、こうした面会の実現あるいは日朝赤十字会談の開催等、こうした対話ということについて、具体例が報告され、行われているわけですが、一方で、ミサイルですとか核、こういった問題につきましては北朝鮮側に変化を今感じることはできません。引き続きまして、非核化に向けて、あるいはミサイル開発を断念すること等において、真摯な具体的な対応は感じることができません。

 我が国としましては、拉致、核、ミサイル、この諸懸案を包括的に解決するべく努力をするというのが基本方針であります。ぜひ、こうした諸課題を包括的に解決するために、しっかりと北朝鮮にメッセージを送っていかなければならない、このように認識をしております。

渡辺(周)委員 終わります。

鈴木委員長 次に、村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 この点は通告いたしておりませんけれども、北朝鮮が弾道ミサイルを発射いたしましたので、この点について大臣に伺ってまいりたいと思います。

 まず、北朝鮮が今回、弾道ミサイルを発射した意図というのはどのあたりだとお考えでしょうか。

岸田国務大臣 今回の弾道ミサイル発射の北朝鮮の意図につきましては、現在、事実関係について引き続き情報収集、分析をしている段階でもありますし、そもそも、意図について私から明確に申し上げる材料は持ち合わせておりませんが、この問題につきましては、我々は深刻に受けとめ、北京の大使館ルートを通じて、既に厳重に抗議をしているところであります。

 弾道ミサイルの発射ということになりますと、国連安保理決議違反でもありますし、日朝平壌宣言にも反することであるということでありますので、我々としても深刻に受けとめなければならないと考えております。

村上(政)委員 今回の弾道ミサイルの種類についてはどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 私が受けている報告によりますと、我が国としてはまだ引き続き今分析中だということであります。ただ、韓国の報道では、ノドンだという報道がされたということを聞いております。

村上(政)委員 韓国国防省はノドンだと発表しておりますけれども、日本政府としては引き続き確認中ということでしょうか。

岸田国務大臣 我が国もさまざまな情報収集を進めていますが、まだ、我が国として正式にこのミサイルの種類を発表したとは承知しておりません。

村上(政)委員 それから、北京で日朝の間で局長級協議が行われる予定になっていると承知いたしておりますけれども、これに対する影響はありますでしょうか。

岸田国務大臣 日朝の局長級協議におきましては、日朝間にありますあらゆる問題が取り上げられることになると考えております。

 北朝鮮に対しましてしっかり働きかける、こうした貴重な機会であること等を総合的に勘案して、現時点では、日朝の局長級協議の日程について、何ら変更は考えておりません。

村上(政)委員 先ほど、最初の御答弁の中にもありましたけれども、今回の北朝鮮の弾道ミサイルの発射と、それから国連安保理決議あるいは平壌宣言との関係について、もう一度御答弁をお願いいたします。

岸田国務大臣 今回、弾道ミサイルでありますので、そもそも、国連安保理決議におきましては、弾道ミサイルにつきまして、これは明らかに決議違反だというふうに理解をしております。

 そして、日朝平壌宣言におきましても、これは弾道ミサイルに限らず、日本に対して脅威を与えるこうしたミサイルに対しましては日朝平壌宣言違反になると承知をしております。

村上(政)委員 大臣からは、北京でのルートを通じて北朝鮮側に抗議をしているというふうな御答弁がありましたけれども、我が国として、こういった北朝鮮の今回の行動、挑発行為というのは、国連安保理決議に違反する、あるいは日朝平壌宣言に違反するという点も含めて、厳しい抗議あるいは北朝鮮側に対する申し入れというものを行っているのでしょうか。

岸田国務大臣 ちょっとその文言まで詳細を確認はしておりませんが、今申し上げました我が国の立場についてはしっかり伝えているものと考えております。

村上(政)委員 北朝鮮が今後ともこういうふうな弾道ミサイルの発射といった挑発行為を続ける可能性については、大臣としてはどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 北朝鮮につきましては、一部対話の動きがあるのは事実でありますが、こうしたミサイル開発あるいは核開発については変化の兆候は見られないと考えております。

 よって、今後につきましても、予断を持って考えることは控えなければならないと思っています。

村上(政)委員 最初の質問と少し重なりますが、今回の北朝鮮の挑発行為と、それから、今回、ハーグで開かれた日米韓首脳会談、あるいは米韓軍事演習との関係というものについてはどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 今御指摘の点について、明確な関係を示す材料は何も持ち合わせてはおりませんが、時期的に重なる部分があるというのは事実であります。

村上(政)委員 今回のこの事案に関する質問は最後にしたいと思いますけれども、北京での抗議というのはどういうふうなレベルで行っておられるのでしょうか。

岸田国務大臣 北京の大使館ルートを通じて厳重な抗議を行ったわけでありますが、レベル等については、この場では控えさせていただきたいと存じます。

村上(政)委員 控えるというのは、公表できないというお考えでしょうか。

岸田国務大臣 抗議の内容については、詳細は控えさせていただきたいと思いますし、それとあわせて、レベルについても控えさせていただきたいと思っています。

村上(政)委員 引き続き、この問題については厳しい対応をお願いしたいと思います。

 北朝鮮の今回の弾道ミサイルに関する質問は、これで終わりたいと思います。

 次に、きょう、小松長官においでいただいておりますので、質問を何点かさせていただきたいと思います。

 入院される前に何度かこの委員会で質疑をさせていただいて、退院後初めて質疑をさせていただくわけですけれども、まず最初に、法制局の役割について確認したいと思います。

 内閣法制局というのは、私の理解では、内閣の一部局であって、また、内閣法制局の設置法三条三号に基づいて意見事務を行う、内閣に対して法令の解釈についてのアドバイスを行う機関であるというふうに理解しております。

 他方、世間では、あるいはメディアでは、法制局を、法の番人あるいは憲法の番人というふうな言い方をして、あたかも法制局が憲法であったり法令の最終的な解釈権を持っている、あるいはそういったものをチェックする機能を持っている、そういった機関であるというふうにも言われております。

 しかしながら、先ほど私が申し上げたように、法制局は内閣の一部局でありますし、また、内閣に対しては助言を行うような機関でありますので、最終的に内閣が決定する法令あるいは法案に対する審査というのは国会で行われるわけでありますし、また、審議を経て成立した法案については、最終的には、それが憲法と合致するかどうかは裁判所、司法の手に委ねられるというふうに私は考えます。

 こういった点、長官も同じような認識でありますでしょうか。

小松政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 基本的には委員の仰せのとおりだと思いますけれども、やや正確を期させていただくとすれば、内閣法制局の所掌事務は内閣法制局設置法第三条に書いてあるわけでございます。

 そのうち、委員は三号の「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。」というところだけを御言及になりましたけれども、これを一般には意見事務と称しておりますけれども、これと並びまして、そのほかに細かなことはございますが、重要なもう一つの柱というのは、第一号に書いてあることでございまして、「閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること。」ということがございます。

 この事務全体を審査事務と呼んでおりますが、今読み上げましたところの「所要の修正を加えて、」というところは、俗に職権修正と言われておりますけれども、例えば法律案、政令案等を審査いたしまして、全く純粋に法制的な観点から、内閣法制局が、こういうことであるべきだということであれば、閣議に付す前に職権で修正をする権限もあるということでございます。

村上(政)委員 そのような観点からすると、一般的に言われている憲法の番人というふうな言い方というのは不適切であるというふうに私は考えますが、長官は同じような認識でしょうか。

小松政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 憲法の番人という言葉が、いろいろな方から使われることが多いと思いますけれども、それぞれの方がどういう意味合いで憲法の番人という言葉をお使いになっているということがつまびらかでございませんので、私がそれについてお答えをする立場にはございません。

村上(政)委員 昨今、集団的自衛権に関する議論というものが国会の内外で非常に活発に行われているわけでありますけれども、私自身、集団的自衛権が我が国が行使できるように憲法解釈を変更していくべきであるという立場です。

 しかしながら、例えば、長官の前任というか、何代か前の法制局長官の阪田雅裕元長官は、非常に活発にこういった動きに対する反対活動をなさっている。

 小松長官は「実践国際法」という非常に大部ですばらしい著書を書かれているわけですけれども、この阪田元長官も最近、「政府の憲法解釈」あるいは「「法の番人」内閣法制局の矜持」といった著書をいろいろと書かれておられるようであります。

 長官自身は、この阪田元長官の著作についてお読みになったことはおありでしょうか。

小松政府特別補佐人 最近、阪田元長官が、「政府の憲法解釈」という御著作と、それからもう一つ、「内閣法制局の矜持」という題名だったと思いますけれども、二冊の著作をお書きになっていらっしゃるということは承知しております。

 そのうちの後者については読んでおりません。前者につきましては、ぱらぱらと言っては失礼ですけれども、中身を拝見いたしました。

 これは基本的に、政府の従来の国会答弁でございますとか質問主意書に対する答弁書でございますとか、そういうものをまとめたものでございまして、元長官御自身の私見というものはそこに加えられていないというように感じた次第でございます。

村上(政)委員 集団的自衛権をめぐる議論を考える際に、この阪田元長官の著作というのは参考になるものだというふうにお考えでしょうか。

小松政府特別補佐人 いずれにいたしましても、もう退官をされて、純粋に一個人の立場におられる方でございまして、この二冊目の本を私はお読みしておりません。

 アマゾン・ドットコムの紹介欄によりますと、こちらの方は個人としての私見をかなり述べておられるというやに拝見いたしましたけれども、前者の方につきましては先ほど申し上げたようなことでございまして、公務員についてはもちろん退職後も守秘義務がかかりますので、その中に守秘義務の対象になるようなことが入っているということであれば、これは問題があるわけでございますけれども、私が理解している限りは、先ほど申しましたように、公開されている国会答弁でございますとか答弁書でございますとか、この問題に関しては無数と言っていいほどのものがございますので、元法制局長官を務められたという知見に基づいて、一個人としてこれが重要だろうというものをおまとめになったということで、それを有用かどうかということを私がコメントする立場にないわけでございます。

村上(政)委員 次に、三月十一日の参議院の予算委員会で、小松長官は、安倍総理は自民党が野党時代に決定した国家安全保障基本法を提出する考えはないと思うというような答弁をなさったと承知いたしておりますが、この答弁の真意というのはどのようなところでしょうか。

小松政府特別補佐人 これは、御指摘の答弁をいたしました後、他の委員におきまして御指摘を受けまして、何度か御答弁を申し上げている次第でございます。

 私が申し上げたかったことは、総理が国会答弁でおっしゃっているのは、現時点で申し上げることができるのは、政府としては、安全保障の法的基盤の整備に関する有識者懇談会からの報告書が提出された後、内閣法制局の意見も踏まえつつ、与党とも相談の上、対応を検討した後、閣議決定を行う考えであり、その上で必要があれば関係法令の改正などについて取り組むことになるお考えである、こういうことを言いたかったわけでございます。

 福島委員からのお尋ねを受けて行いました私の答弁が、安倍総理の答弁は憲法解釈の変更を行うという結論を出しているものを述べたものではない、ましてや、国家安全保障基本法を国会に提出するとかしないとかということについての考え方をお述べになったものではないと理解しているという趣旨で申し上げたかったわけでございますけれども、そこのところは、私の言葉が足りないのか余ったのか、はっきり言って非常に拙劣な答弁ということで、誤解を招いたということで、おわびを申し上げるということを何度か答弁している次第でございます。

村上(政)委員 私が考えるに、集団的自衛権というものは、そもそも我が国を取り巻く安全保障環境を考えたときに必要であるわけですけれども、集団的自衛権というもの自体がやはり国家の安全保障政策の中の一部分をなすものであって、これだけを取り上げて議論したりしても、若干、木を見て森を見ずの議論になると思いますし、やはり、外交・安保政策全体がどのようにあるべきか、あるいは我が国としてどのように進んでいくべきかということの中で集団的自衛権というものも位置づけられるべきだと思います。

 そうした観点からすると、安全保障に関する基本的な法制というのは、集団的自衛権を考える際にも、また我が国を取り巻く安全保障環境を考える際にも、非常に有用なものだと思うんですけれども、安全保障基本法、どのような名称で呼ぶかどうかは別にして、安全保障をめぐる基本的な法制というものは有用だというふうに私は考えますが、長官も一般論として同じようにお考えでしょうか。

小松政府特別補佐人 内閣法制局設置法に基づきましても、内閣法制局は政策問題について何かを申し上げるという立場にございませんので、今の御質問につきましては、私どもの所掌を超えた問題であるというふうに理解しております。

村上(政)委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 自民党の中で、石破幹事長を本部長として、安全保障法制整備推進本部というものを設けられるというふうに報道で私は承知いたしております。この自民党の中での議論において、法制局は何か役割を期待されているというふうにお考えでしょうか。

小松政府特別補佐人 これまでのところ、私が承知しています限りでは、党の方から、例えば従来の憲法解釈について御説明をするようにとか、そういう御指示を受けておりません。

村上(政)委員 引き続き、集団的自衛権の問題についてこの委員会でも質疑させていただきたいと思いますし、また、小松長官にも今後もいろいろと質疑をさせていただければと思います。

 きょうは、小松長官との質疑は終わりたいと思いますので、もし必要であれば御退席いただければと思います。ありがとうございました。

 引き続きまして、大臣、いろいろとお伺いしたいと思うんですが、よろしいでしょうか。

 安倍総理のハーグでの発言なんですけれども、G7の首脳会合の後に、総理は記者団に対して次のように述べておられます。私から、力を背景にした現状変更は断固として許すことはできない、この問題は、ウクライナの問題にとどまらず、特にアジアなど国際社会全体の問題だと申し上げた、私の考え方に対し複数の国から強い賛同の意見が表明されたというふうに述べられました。また、内外記者会見でも同じような趣旨のことを総理自身が発言されているというふうに承知しています。

 この、特にアジアなど国際社会全体の問題だというのは、どのような意味で、どういった趣旨で発言されているものでしょうか。

岸田国務大臣 ロシアによる一方的なクリミア編入は、これは明らかな国際法違反であり、今の国際社会において、このような力を背景とする現状変更は認められるものではありません。

 今回のG7首脳会合におきまして、アジア地域においても力を背景とする現状変更の動きが見られることを念頭に置きつつ、安倍総理から、ウクライナ問題は一地域の問題ではなくアジアを含めた国際社会全体の問題であることを指摘し、そして各国から賛同を得た次第であります。

 安倍総理の発言につきましての趣旨は、以上のように理解しております。

村上(政)委員 前回の委員会の質疑で、私は、ウクライナ情勢の東アジア、アジア太平洋地域に対する影響という観点から何点か御質問させていただきましたので、こういった私の問題意識と今回の総理の御発言というのは一致しているものだと私は感じておりますし、これは東アジア地域に対して非常によいメッセージとして伝わるのではないかと思っております。

 具体的に、アジアにおける力を背景にした現状変更の取り組みというものは、具体的な動きを何か念頭に置いておられるのか、あるいは具体的な国を念頭に置いて発言されているものなのでしょうか。

岸田国務大臣 東シナ海あるいは南シナ海の状況につきましては、委員御案内のとおりであります。安倍総理としては、こうしたアジア地域においての動きを念頭に発言された次第であります。

 発言に当たって、具体的な国名等は何も申し上げておりませんので、私から、その発言について、具体的な国名等を挙げることは控えさせていただきたいと存じます。

村上(政)委員 普通に考えれば、中国の東シナ海あるいは南シナ海における動きを念頭に総理は御発言なさっていると私は理解しますが、そのような趣旨でよろしいということでしょうか。

岸田国務大臣 東シナ海、南シナ海を初め、アジア地域における動きを念頭に発言されたものと考えております。

村上(政)委員 我々の周辺の安全保障環境というのは、先ほど来お話しさせていただいているとおり、またこの委員会で議論されているとおり、極めて厳しいものがあると思います。そうした東アジアの安全保障に特化して今回この日米韓の首脳会議が行われたわけであると思います。こうした日米韓の枠組みというのは東アジアの安定に対して極めて有用なものだと思いますし、そういった認識で三カ国の首脳が一致したというのは非常によかったことだと思います。

 今回、ハーグで、日米韓、そういった特定の問題に特化して首脳会談を行ったわけですけれども、今後、同じような方式で、日韓の間で、安保協力あるいは東アジアの安全保障に特化して首脳会談を行うお考え、あるいは用意というのはあるでしょうか。

岸田国務大臣 今回、日米韓の首脳会談が実現をしました。北朝鮮問題を初めとするアジアの安全保障環境を考えますときに、日米韓の連携は大変重要であると従来から認識しておりましたし、今回、この三カ国で首脳会談が実現したことは大変意義あることであると考えております。

 そして、今回の会議におきまして、安倍総理は初めて朴槿恵大統領と首脳会談に同席するということであります。ぜひ、今後の対話の第一歩としたいと考えております。

 ただ、具体的なテーマとか対話のやり方について、今の段階で何か決まっている、あるいは想定している、こういったものはありません。この大切な二国間関係に鑑み、ぜひあらゆる分野において対話の可能性を探っていくべきだと考えています。

村上(政)委員 今、私から一つの方式というか一つの方法を提示させていただいたわけであります。日韓関係の打開というのは、我が国の国益あるいは東アジアの安定にとって極めて大事だと思いますし、またアメリカもそれを非常に強く望んでいるんだと思います。

 具体的な方式について、あるいはやり方について今念頭にない、あるいは、私が今一例として挙げたことについても特に今のところお考えではない。

 では、具体的にどのような打開策、日韓関係をどのように打開していくのか、それについて何か具体的な方式、方策というのはお考えでしょうか。

岸田国務大臣 日韓関係は、言うまでもなく、我が国にとって最も大切な二国間関係の一つであり、また、日韓関係が安定していくことは地域や国際社会の平和や安定にもつながるという点で、二つの国は大きな責任を担っていると考えております。そういったことから、従来から、大局的な見地に立ち、重層的で未来志向の二国間関係、日韓関係をつくっていくべく努力をしなければならないと認識をし、さまざまなレベルで意思疎通あるいは対話を積み重ねてきました。

 残念ながら、首脳レベルでの対話が実現しなかったわけですが、今回、日米韓三カ国の首脳会談ということで、安倍総理と朴槿恵大統領が初めて顔を合わせるということになりました。これをぜひ今後の第一歩にしたいと考えております。

 こうした積み重ねに基づいて、今後、具体的に対話の方策について検討していかなければならないと思っています。

村上(政)委員 大臣、重ねてのお尋ねで大変恐縮なんですけれども、具体的に今後考えていることは何でしょうかというふうにお尋ね申し上げているわけです。

 今後、具体的にどのような打開策なりというのは、どのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 両国の対話のあり方については、今日までも、大臣レベル、次官レベル、あるいは局長レベル、さまざまなレベルで意見交換を行ってきました。今後の具体的な対話のあり方については、今日までのさまざまな積み重ねの結果を踏まえて考えていかなければならないと思っています。

 ぜひ、引き続きしっかりと検討した上で、具体的なものを明らかにしていきたいと思っています。

村上(政)委員 もう一点だけ日米韓の首脳会談についてお伺いしたいんですけれども、東アジアの安全保障について三首脳で話し合ったということですが、概要なり発表なりでは北朝鮮問題について話し合ったということですけれども、東アジアの安全保障を考えたときに、特に日米韓で共通して懸念されるのは、先ほど大臣がお話しになったような東シナ海での動き、特に、ここ何カ月かで考えると、北朝鮮の問題以外であれば、防空識別圏の問題、これは昨年、我が国にとっても極めてゆゆしき事態でしたし、また韓国にとってもこれは受け入れられないような事態であったというふうに考えます。

 こういった防空識別圏の問題ということも日米韓の首脳の間で話し合いをされたのでしょうか。

岸田国務大臣 会議の詳細について、出席者の発言に関しまして詳しいところを私から申し上げることは控えなければならないと思いますが、会議の中では、北朝鮮問題を中心に、安全保障関係について議論が行われたということであります。

 また、我が国の方から、日朝政府間協議を再開する予定であることを含めまして、日朝関係の現状について説明するとともに、今後も、透明性を確保しつつ、北朝鮮問題に関する日韓間の連携を一層強化する重要性についても申し上げたということであります。

 御指摘の点につきましては、私自身はその議論の中にあったかどうか承知をしておりません。

村上(政)委員 承知をされていないのか、あるいは明らかにできないのか。明らかにできないということであれば、それは首脳会談の中身ですので、それはそれで結構だと思うんですけれども、これは御存じないのか、明らかにできないのか、どちらなのでしょうか。

岸田国務大臣 いずれにせよ、公にされている部分以外、詳細については、首脳会談の中身は控えさせていただきたいと存じます。

村上(政)委員 東アジアの安全保障といえば、やはり中国の問題をどのように扱うかということも当然入ってくることだと思います。もし、日米韓の今回の首脳会談で中国の問題について話し合うことがなかったのか、あるいはできなかったのであれば、それはひとえに、残念ながら、日韓関係が脆弱な状態であるということに起因することだと思います。

 日米韓の枠組みがうまく機能しないとするならば、やはりこれは我が国にとっても、安全保障協力上、非常に懸念される問題だと思いますし、残念ながら、日韓関係が脆弱であるというのは現在の政権の責任であるとも思いますので、この点についてはしっかりと取り組んでいただかなければならないんだと思います。

 ちょっと話題をかえて、先ほど渡辺先生から御指摘のあった中韓の首脳会談、これはハーグでも行われたわけですけれども、中韓の首脳会談に対してはどのような評価、習近平国家主席とそれから朴槿恵大統領の会談に対する評価というのはどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 中韓の首脳会談、こうした他国の首脳会談について、私は何か申し上げる立場にはないとは存じます。

 ただ、一般論として、国のトップ同士が意思疎通を図るということは、その二国間の関係を安定化させる上で重要なことではないかと認識をいたします。

村上(政)委員 官房長官からは、中韓の間で安重根の記念館について話し合われたことに対して懸念を表明されていると思いますが、外務大臣はこれについて論評できないというのはいささかそごを感じますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたのは、一般論として、二国間の首脳が会談することについて申し上げました。

 そして、今回の中韓の首脳会談において、安重根記念館などにおいて連携をしていこうといった動きを展開すること、このことについては、地域の平和と協力の構築に資するものではないと私も考えております。

村上(政)委員 安重根の記念館というのは、こういうものが設置されるというのは極めてゆゆしき事態だと思います。松本先生の御先祖様ともかかわる問題だと思いますし、また、私自身、北京に二年間おりましたけれども、中国で安重根という人を知っている人がいたかというと、私の知る限りでは、そういったことを話題にする人もなかったですし、一般の人が関心を持っているようにも私には感じられませんでした。

 そういった点から考えると、今回、ハーグで中韓の首脳が安重根の記念館について話し合った、あるいは、この問題は、朴槿恵大統領が中国を訪問したとき以来提起されている問題ですけれども、これは、我が国にとっては、歴史カードとして利用されるおそれのある非常に深刻な懸念だと思いますし、また、こういった動きを押しとどめなければならないというふうに思いますが、我が国としては、この安重根の記念館に対して撤去を求めたり、この問題について懸念を表明する以上の対策あるいはお考えというのはあるのでしょうか。

    〔委員長退席、左藤委員長代理着席〕

岸田国務大臣 まず、安重根につきましては、我が国と韓国においては評価が全く異なっております。こうした前世紀の事件につきまして一方的な立場を主張するということは、日韓二国間の関係においても資するものではないと考えています。

 そして、我が国としては、こうした我が国の考え方につきまして、引き続き国際社会にしっかり説明をしていき、理解を求めていく、こういった努力はしなければならないと思っています。

 いずれにせよ、大切な二国間関係を進展させるために建設的な対応を求めていきたいと考えています。

村上(政)委員 国際社会に対して十分に説明していくといった御答弁だったと思いますが、私は、残念ながら、大臣が非常に深刻に受けとめていらっしゃるのかどうか疑問に感じざるを得ないと思います。

 例えば、今、中韓の首脳会談について評価を伺っても、まず一般論についてお話しになったり、そこはすぱっと、やはり官房長官と同じようなラインで、この問題についてきちんと、深刻な状態であるというようなことをおっしゃっていただかないと不十分な対応なんじゃないかなと懸念いたします。

 最後に、ロシアとの関係について簡単にお伺いしたいと思います。

 今春に予定されている大臣自身のロシア訪問というものは、どのように今後取り計らっていかれるおつもりでしょうか。

岸田国務大臣 二十四日に開催されましたG7の首脳会談におきまして、ハーグ宣言というものが発出をされました。そして、これを受けて、G8の外相会合はことしは開かれることがなくなると認識をしております。

 ただ、この宣言の中には、ウクライナ情勢をめぐりまして、引き続き、ロシアによる状況を緩和するための外交的道筋、これは開かれているとされております。ロシアに対しまして、外交的な責任ある行動を求めている次第であります。

 私のロシア訪問につきましては、具体的な日程、今の段階では何も決まっているものではありませんが、今後とも、こうしたロシアの動向、そしてウクライナの情勢、そしてG7を初めとする関係各国の対応、こういったものを注視しながら、総合的に判断していくべき問題であると考えています。

    〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕

村上(政)委員 その御答弁の意味というのは、G8外相会合というものの契機を捉えてロシアを訪問するということはないが、二国間関係の文脈で、二国間訪問という形でロシアに、モスクワに行く可能性はあるということでしょうか。

岸田国務大臣 ロシア訪問等、ロシアとの対話につきましては、現状、具体的な日程は何も決まっておりませんが、ウクライナ情勢は今後とも引き続き流動的であると考えています。

 どういった状況になるのか、こうした情勢につきましてはしっかり注視をしていかなければならないと思います。その上で総合的に判断する課題であり、今の段階で断定的に申し上げることは控えなければならないと思っています。

村上(政)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 結いの党の青柳陽一郎でございます。

 本日は質問の機会を二十分いただきました。ありがとうございます。

 早速質問に移りたいと思います。

 まず一点目は、日越関係についてお伺いしたいと思います。

 先日の質問の際も申し上げましたが、岸田大臣は日越友好議員連盟の幹事長を務められておりまして、日越関係の重要性についてはよく御存じのとおりと思います。御存じのとおり、ベトナムにとって日本は最大のODA供与国であり、経済、貿易、政治など、ビジネスの関係は現在とても良好ということでございます。

 先週は、ベトナムのサン国家主席が国賓として訪日され、大変すばらしい国会演説もありました。そして、この機会に日越首脳会談を実施し、日越共同声明を発表されたということでございますが、この昨年来続いている日越外交関係樹立四十周年の、友好年の締めくくりの事業として大きな成果があったのではないかと評価しておりますけれども、まず、今回のサン国家主席の訪日について、成果と意義をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 三月の十六日から十九日にかけまして、チュオン・タン・サン・ベトナム国家主席が国賓として来日をされました。天皇皇后両陛下との御会見、国会演説、また安倍総理との首脳会談等が実施をされました。

 今回の訪日を通じまして、昨年、日越友好年、日越外交関係樹立四十周年という大きな節目を迎えて二国間関係は強化されたわけですが、その二国間関係、従来、戦略的パートナーシップと表現をしていました。今回、それをさらに引き上げて、広範な戦略的パートナーシップという新たな言葉を使って二国間関係を表現するという、新たな次元へと発展させることで一致をさせていただきました。

 これを踏まえまして、地域の平和と安定に向けた連携、あるいはウイン・ウインの経済関係の構築、さらには文化、スポーツ等を通じた相互理解の促進、こういったものが一段と進んでいくことを期待したいと考えております。

青柳委員 ありがとうございました。

 ちょっと重ねてお伺いしますが、今回、戦略的パートナーシップを広範な戦略的パートナーシップに格上げして新たな次元の協力関係を築くということですが、より具体的に教えていただきたいと思います。

岸田国務大臣 今回のサン国家主席の訪日に当たりましては、日越首脳会談におきまして、事後的に共同声明を発出いたしました。この共同声明の中に盛り込まれた成果としましては、一つは、海洋安全を含む政治、安全保障分野での協力を強化することで一致した。また、経済分野では、円借款の交換公文及び農業、教育、保健・医療分野の協力文書の署名、交換が実施された。また、文化、人物交流面では、同分野の協力に関する定期協議の場の設置に向けて協議を進めることで一致をした。こういったものが挙げられると考えています。

 今回の訪日中には、サン国家主席の国会演説も実施をされました。あらゆる分野において二国間関係が進展していること、これを内外に強く印象づけた訪日であったと考えております。

 また、サン国家主席は、東京のみならず、茨城県あるいは大阪府も訪問していただき、交流の裾野の拡大、こういったものも実感できた訪日であったと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 経済だけでなく、今、大臣の答弁にありました、政治や安全保障、国際犯罪、サイバーセキュリティーまで踏み込んで、ああいうベトナムのような社会主義国、共産主義国と協力関係を築いていくということは、新しい次元の協力関係だと思います。引き続きしっかりやっていただきたいと思っております。

 さらに同時に、人材育成や文化交流も相互理解を深める上でとても重要な要素であるということは、大臣も同じ認識だと思いますし、そういう意味では、今回の共同声明に人材育成が明確に位置づけられ、あるいは、文化交流というところでは、実は、私がベトナム政府と協力して、毎年事務局長として十万人規模で実施しているんですが、日越交流の最大の事業であるベトナム・フェスティバルについてもしっかり共同声明の中に位置づけていただいたということで、これについては感謝申し上げたいと思いますし、これは毎年九月に開催しておりますので、ぜひことしは大臣にもお越しいただきたいと思っているところでございます。

 そこで、安倍総理は、新たなアジアの文化交流政策として、文化のWAプロジェクトというのを今回提唱されたと聞いておりますが、この文化のWAプロジェクトというのは新しい提案だと聞いておりますので、どういう内容のものでしょうか。

 私は、せっかくこういう新しい交流事業をやっていくのであれば、従来のような紋切り型の交流活動ではなくて、ぜひ柔軟な発想で新しいことにもチャレンジしていただきたいと思いますが、こうした期待を込めまして、この文化のWAプロジェクトについて、参考人の方からで結構ですので、お聞かせいただきたいと思います。

水嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 青柳委員におかれましては、先ほど委員の方から御紹介ありましたベトナム・フェスティバルだけではございませんで、ベトナムの方で実施をされてございますジャパン・フェスティバルの実行委員会の副委員長も務められるということで、文化交流に尽力をされていらっしゃると承知をしております。

 御指摘の文化のWAプロジェクトでございますが、これは、昨年十二月の日・ASEAN特別首脳会議におきまして、安倍総理から、新しいアジア文化の創造を目指すべく、国際交流基金内にアジアセンターを立ち上げて、二〇二〇年までを目途に実施をするということで発表いたしたものでございます。

 この政策におきましては、総額三百億円以上の事業規模を見込んでおります。その中で、芸術、文化の双方向の交流事業、それから日本語学習支援事業の二事業を軸として進めていきたいと考えております。

 この文化のWAプロジェクトの実際の運営あるいは進め方等につきましては、活用の方針も含めまして、現在、国際交流基金を中心に準備、検討を進めております。

 同プロジェクトのあり方につきましては、さまざまな事業へのニーズあるいは要望、これらを踏まえながら、ベトナムを含みますアジアにおける文化交流を大いに促進させるべく、外務省といたしましても、国際交流基金と密接に連携をしながら検討してまいりたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 次の質問に行くところでしたが、今ちょっと私のプロジェクトについても言及していただきました。ありがとうございます。せっかくなので、それについても少し紹介させていただきたいと思います。

 今回の共同声明でも、スポーツの交流というのも明記されております。そして、オリンピックムーブメントをアジアを初め世界に広めていくということも明記されたということでございますが、このオリンピックというのは、当然のことながら、国家の一大プロジェクトであり、さらに、大きなビジネスチャンスでもあるわけでございます。

 私は、当然政府としても考えていらっしゃると思いますが、ASEAN地域へスポーツビジネスをより輸出していくべきだ、スポーツでの国際貢献をすべきだと考えております。これはまさに政府として取り組んでおられるクール・ジャパン戦略の狙いとも一致する部分もありますし、さらに広い意味でいえば、インフラビジネスの輸出にもつながるというふうにも言えると思います。

 具体的に言えば、これも私がお手伝いしているプロジェクトなんですが、サッカーのJリーグのアジア戦略について少し紹介させていただければと思います。

 Jリーグというのは、近年、ASEAN各国のサッカーのレベルアップを無償でサポートするということをやっております。この無償のサポートを通じて各国との交流を深めている。こうした活動が実ったことによって、昨年の八月に、ベトナムの国民的なサッカーのスター選手を獲得した。Jリーグのコンサドーレ札幌というチームが、初めてベトナム人のサッカー選手をJリーガーとして獲得したわけでございます。

 ベトナムでは、このサッカー選手、レ・コン・ビン選手といいますが、このレ・コン・ビン選手を通じて、日本の北海道あるいは札幌という言葉、場所について国民の半数が知ったということでございます。というのも、レ・コン・ビン選手の活動、行動を連日ニュースで報道しているということでございますし、この報道によって、北海道の道民の温かい声援とか、あるいは、おもてなしという言葉もベトナム国民が知ったことによって、好感度がとても上がった、急上昇したというのが事実としてあります。

 さらに、昨年十月七日に、まさに安倍総理が先週訪日したサン国家主席と会談した際も、このレ・コン・ビン選手のことが話題に上がって、とても場が和んだということでございます。

 こうした報道が続くことで、日本の地域の知名度が上がる、観光地が有名になる、名産品が有名になって、さまざまなコンテンツがベトナムあるいはASEAN地域で露出することによって知名度が上がって、実際に物販が拡大していく、それがさらにはビジット・ジャパンにもつながってくるということで、昨年は訪日するベトナム人が後半すごくふえたという、実際の数字にもあらわれているということでございます。

 さらに言うと、先ほど言っていただいたジャパン・フェスティバルというのを、私、昨年十一月にベトナムで開催しまして、そこで、ベトナムでは初めて、Jリーグのパブリックビューイングというのをホーチミンでやりました。衛星でつないでやりました。これも現地では大変大きく報道されて、大きな成果があったわけでございます。

 こうしたことが、ベトナムだけでなくて、今、ASEAN各国で種まきをしている、こういう状況でありますが、こうしたスポーツによるクール・ジャパンの推進であるとか国際貢献、国際交流、これが日本のイメージアップや、まさにビジネスチャンスにも実は大きくつながっているという状況でありますが、こうした取り組みを支援するスキームは、今、残念ながら余りありません。あるいは、現地の大使館に相談しても、大使館の業務は大変忙しいのでわかるんですが、割とそっけないということでございますので、こうした新しいスキームについても、大使館の機能を活用させていただくとか、こうした取り組みについてぜひ御支援をいただきたいと思っております。

 これは、何かコメントをいただくことはできますか、大臣なり、参考人の方でも結構ですが。

岸田国務大臣 御指摘のように、スポーツや文化を通じて交流を深め、そして日本のイメージアップにつなげていく、この視点は大変重要な点だと存じます。

 今委員の方からJリーグの取り組みについて御紹介がありました。私も先日ミャンマーを訪問させていただきましたが、昨年十二月、SEAゲームというASEAN諸国のスポーツ大会が開催されましたが、そのときのミャンマーの女子ナショナルチームの監督は日本人でいらしたという話を聞いて帰ってきました。

 このように、さまざまな国において、さまざまな取り組みを通じましてスポーツ、文化交流が進んでいるというのを実感しておりますし、そしてその効果はまことに大きいものがあるというのを実感しております。

 今、そういった取り組みを支援する具体的な枠組みが存在しないという御指摘がありました。そういった御指摘もしっかり踏まえまして、具体的に何ができるのか、前向きにこれは考えるべき課題だと認識をいたします。

青柳委員 どうもありがとうございます。ぜひ御検討いただきたいと思っております。

 最後に、北朝鮮の情勢、拉致問題についてお伺いしたいと思います。

 本日の未明、ミサイルが発射されたということについては、きょうの質疑でいろいろな委員の方が質問されていましたので、それについてはもう時間の関係上割愛させていただいて、私の方では、例の国連の人権理事会の件について少し質問させていただきたいと思います。

 先週十七日、ジュネーブで開催中の第二十五回人権理事会で実施された北朝鮮COIとの対話において、飯塚拉致被害者家族会代表が、拉致の事実や北朝鮮の人権問題に対して明確なスピーチを行いました。そして、現在も行われている国連理事会が、今まさに二十七日から二十八日にも、我が国とEUで、北朝鮮人権状況決議案というのが採択されるという状況だと聞いておりますし、この決議案自体は、当初のものより大変強い内容になっている。私も拝読させていただきました。

 ぜひこの決議案を、できるだけ多くの賛成票を得て決議していただきたいと考えておりますが、まず、この人権理事会での評価をお聞かせいただきたいと思っております。

平松政府参考人 お答えいたします。

 人権委員会における調査委員会との対話というのが十七日行われまして、その中におきまして、日本からももちろん政府としての意見を述べましたけれども、今回は、飯塚繁雄拉致被害者家族会代表より、全ての拉致被害者が家族のもとに戻り、北朝鮮の住民が人間の尊厳を回復できるよう国際社会のさらなる努力を求める旨の発言を行いました。

 政府としては、代表がこのような機会に発言を行ったことが、拉致問題に対する国際社会の関心の一層の喚起と理解の促進につながったと思って、大変歓迎している次第でございます。

青柳委員 ありがとうございます。

 人権理事会で決議した後、さらに国連総会あるいは安保理によるICCへの付託にまで持っていっていただきたいというのが家族の方の願いであり、解決につながるんだと思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 それを申し上げまして、私の質疑を終えたいと思います。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 岸田大臣にまず伺いますが、昨年十月の2プラス2、日米安全保障協議委員会で、二〇一四年の春から、つまりことしの春から、グローバルホーク無人機のローテーションによる展開を開始するとの米空軍の計画を確認していると思うんですけれども、これは具体的にどのような計画なのか、お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、昨年十月の2プラス2の共同発表におきまして、より高度な能力を日本国内に配備することが、戦略的な重要性を有し、日本及び地域の安全に一層寄与することを確認した上で、二〇一四年春からグローバルホーク無人機の日本国内へのローテーション展開を開始させる計画を確認いたしました。

 これを受けまして、本年一月二十二日、在日米軍司令部から外務省に対しまして、米空軍が現在グアムを拠点に運用しているグローバルホーク二機を、本年五月ごろから十月ごろにかけて三沢飛行場に展開する予定であるとの通報があったところであります。

 その後、実際のグローバルホークの安全運用に向けて、米軍と我が国の関係当局との間で必要な調整が行われてきているところであると承知をしております。

笠井委員 この米軍の大型無人偵察機グローバルホークでありますけれども、地元自治体あるいは住民からは、今回の配備が一時的なものではなく恒常的な配備につながるのではないかなどの懸念が出ております。

 そこで、防衛省に伺いますが、外務省からの通告を受けて関係自治体に連絡したということでありますけれども、配備の理由についてどのように説明したんでしょうか。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 委員御指摘のグローバルホークの一時展開ということにつきまして、昨年十月の日米2プラス2の共同発表におきまして、二〇一四年の春からグローバルホーク無人機のローテーションによる展開を開始するという米空軍の計画について明記をされているところでございます。

 その後の日米間の協議を踏まえまして、本年の一月二十二日、在日米軍から外務省に対しまして、米空軍が現在グアムを拠点に運用いたしております無人偵察機のグローバルホーク、これを本年五月ごろから十月ごろの予定で三沢飛行場に一時展開するということの通報がございまして、同日、私ども防衛省から、関係自治体、三沢市、東北町、おいらせ町、六ケ所村、青森県へ御説明させていただいたところでございます。

 具体的には、アメリカからの通報の内容に加えまして、グローバルホークの概要、これは例えば、高度五万フィート以上で航行するとか、無線通信及び衛星通信により地上から操縦することですとか、あるいは、三沢飛行場への一時展開の趣旨、それから、この展開の意義、効果、運用効率の向上によって我が国の安全保障あるいは日米同盟の強化につながる点ですとか、また、三沢飛行場での運用の方法でございますが、通常は週二回程度の運用を今予定いたしているということについても説明を行ったところでございます。

 また、どうして三沢かということにつきましては、この一時展開の場所を三沢飛行場にした理由につきまして、アメリカ側においては、やはり米国本土あるいはアジア太平洋地域全体の空軍の各基地を検討されたようでございますが、その上で、やはり五月ごろから十月ごろというのが台風等々の天候の影響が非常に大きいということと、それからグローバルホークの運用に必要な施設設備等々、さまざまな観点から総合的に検討した結果、この三沢が選ばれたということで承知をいたしているところでございます。

笠井委員 小野寺防衛大臣が二月一日、地元での会見で、恒常的なものあるいは固定的なものではない、台風を避ける時期の使用ということでの要請であり、あくまでも一時的な使用と理解しているというふうに述べておりますが、本当にそういうことなんですか。

若宮大臣政務官 委員今おっしゃられましたように、現在、グアム島のアンダーセン米軍基地を拠点といたしましてグローバルホークを運用しているわけでございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、どうしても、夏の期間、台風等々で活動がかなり制約を受けるということで、本年の五月ごろから十月ごろの予定でグローバルホーク二機を三沢飛行場に、これは一時展開ということで承知をいたしているところでございます。

笠井委員 今、本年のと言われましたが、米側から、ことしだけじゃなくて来年も同じような要請が来る、あるいはそういう通告が来るということはないと断言できますか。

若宮大臣政務官 天候のことでございますので、確かに、五月ごろから十月ごろということで、これは一時展開ではあるんですが、やはり台風というのは毎年この時期に参ります。グアム島自体も、やはりこの時期に毎年のように台風に見舞われるということでございますので、現時点の計画といたしましては、翌年以降も行われるものというふうに認識をいたしてございます。

 また、他方、おっしゃられたように、本年二月一日の記者会見で防衛大臣から申し上げたとおり、この展開につきましてはあくまでも一時的なものであるという認識に変わりはございません。

笠井委員 翌年以降もあると。

 では、グローバルホークがその期間、夏ごろから秋にかけて、悪天候や緊急時で三沢基地を使えなかった場合、つまり、出たけれども帰投できない、戻ってこられないというような場合にはどうするんですか。

若宮大臣政務官 そういったケースもあり得ないことではないと思っております。

 三沢にどうしても戻れないという場合につきましては、一時展開をしていますグローバルホークは、気象条件によってやむを得ず最寄りの基地を使用するということも考えられますが、通常ですと、三沢を拠点とすることで同飛行場を使用する、原則としてはそういうことで承知をいたしております。

笠井委員 最寄りということは、八戸に自衛隊の航空基地がありますけれども、そこが一つ念頭にあるのかもしれませんが、では、それにとどまらず、あるいは民間空港も含めて、青森県内以外のところも限定されないということになりますか、最寄りというのは。

若宮大臣政務官 どうしてもという非常事態の場合も含めますと、気象状況等さまざまなことが考えられますので、やはり最寄りの基地を使用するということは考えられるかと思います。

笠井委員 民間も否定しないというのは重大だと思うんですけれども。

 夏前から秋にかけて、つまり、この期間は、渡り鳥のように、ことしだけではなくて来年以降も毎年三沢基地にやってくる、天候条件、あるいはいろいろな条件が悪ければ、それ以外、青森県外も含めて使うことがあるということであります。民間空港も否定されませんでした。半ば米軍のグローバルホーク二機が日本に常駐するようなものだ、どこに行くかもわからない。

 地元からは、グローバルホークの安全性にも不安が出されております。小野寺大臣は、昨年五月二十九日、グアムのアンダーセン基地を訪れた際の記者会見で、グローバルホークの安全性についてはかなり確信を持ったという報告を受けている、こう述べておりますけれども、誰が何をもって確信を持ったということで大臣は報告を受けているんでしょうか。

若宮大臣政務官 委員御指摘のとおり、昨年五月に小野寺大臣がグアム島の方へ訪問いたしまして、視察をいたしてございます。

 その能力につきましては、アメリカの太平洋軍より説明を受けております。その際に、アメリカ側からは、グローバルホークが、情報収集、警戒監視、偵察を任務といたします高高度滞在型の無人偵察機として非常に有能な航空機であるという説明を受けております。

 また同時に、グローバルホークに対しまして、安全性について小野寺大臣がみずからアメリカ側にも質問されまして、今回三沢の飛行場に一時展開する予定の機種につきましては、これまでに重大な事故は発生していないということで確認をいたしているところでございます。

笠井委員 グローバルホークについて、それでは、一九九八年二月に飛行開始がされたと思うんですが、それ以来、この十五年間ということになりますが、何件の事故があったでしょうか。

若宮大臣政務官 アメリカ空軍のホームページにおきましては、グローバルホークにつきましては、いわゆるAクラスというかなり重大な事故というのは六件発生していると承知いたしております。ただ、この六件といいますのが、全て、今回三沢に参りますブロック30という機種よりも前に製造された型式でございまして、また、特にこの六件のうちの四件につきましては、開発中あるいは試験の段階で発生したものでございます。

 いずれにいたしましても、三沢に参ります予定のブロック30のグローバルホークにつきましては、これまで重大な事故等は発生いたしておりません。

笠井委員 今、重大な事故というふうに限定つきで言われたんですけれども、まさに言われたようにクラスAということで分類されているわけであります。ただ、クラスAだけではなく、Bの中にも墜落するという事故があって、それは、被害の大きさとか、いろいろな被害の影響の広がりの中身によって分類分けしているのがアメリカですけれども、私が持っている米空軍の安全センターの資料を見ますと、これは二〇一三年十二月五日付ですが、今、クラスAで六件と言われましたが、それ以外にクラスBというのが三件、グローバルホークがこれまでに起こした事故件数というのは合わせて九件となっているんですけれども、そういうことでよろしいんですね。

若宮大臣政務官 委員御指摘のとおり、クラスBというのは三件でございますので、合計九件ということになるかと思います。

笠井委員 では、そのクラスBという中に、今言われた日本に今度来ようとしている、ブロック30型と言いましたけれども、それはないんでしょうか。

若宮大臣政務官 まことに恐縮なんですが、アメリカ側の方で公表していないものですから、クラスBの内容につきましては、現時点では私どもではまだ知る由がない状態でございます。

笠井委員 確認していないと。

 クラスAの重大事故はほとんどが開発期間だと言われましたけれども、しかし、二〇〇三年に量産されてやってきて、いろいろ型を改めたりした後も事故はなくなっていない。開発あるいは改良しても事故が繰り返されているという状況であります。

 例えば、二〇一一年八月にアフガニスタンのジャララバードでグローバルホークが墜落事故を起こしておりますが、死傷者はなかったというものの、住宅二棟が被害を受けたということで、これはクラスA、先ほど若宮政務官がおっしゃったような重大事故に分類されています。これは、さっきブロック30とかいろいろなことを言われましたが、どういう型式のものが墜落したということでしょうか。

若宮大臣政務官 今委員御指摘の二〇一一年のアフガニスタンでのグローバルホークの事故でございますが、これはまず、ブロック20の機種でございます。それからまた、アメリカ側の説明によりますと、機体の安全性自体には特に問題がなかったんですが、部品の取りつけ不良による電源系統及び飛行制御系統にふぐあいがあったということで報告を受けております。

 いずれにいたしましても、今回のブロック30につきましては重大な事故というのは特に発生をしておりませんし、また、旧来の機体における問題につきましても、機体の改良によりましてさらなる改善が進められているところでございますので、委員御指摘のような事故等の教訓を踏まえまして、さらに徹底的にいろいろな面で教育を高めていきたいと思っております。

笠井委員 そういう改良、改善がされたというふうに言われたんですが、それはすぐ米軍はやるはずなんですね。

 やった後も、翌二〇一二年の六月十一日に、米海軍が発表しましたが、メリーランド州の、アメリカ本土です、パタクセントリバー基地所属のグローバルホークが、同州のソールズベリーの海岸付近で訓練飛行中に墜落したという発表がありました。こういう事故があった。幸いにしてというんでしょうか、沼地やそういうところだったものですから、住民や家屋などがなかった場所だったので、甚大な被害がなくてクラスBに分類されておりますけれども、これがもし市街地だったら大変だというので、私もCNNの映像を見ましたけれども、衝撃的なものでありました。

 しかも、翌年に米海軍が調査報告書を出していまして、三百ページ以上になるのでぱらぱら見たんですけれども、この中では、つまり、今回はこういうことだったけれども、大惨事になり得るものだということを書いているんですね。だから、そういうことになっていて、しかも、原因については、メカの問題があると同時に人的ミスもあると。つまり、遠隔操作することによっていろいろなことが起こっているんだということが言われているわけで、機体の性能だけじゃないという問題も言われています。こういうことが起こっている。

 では、これはどういう型式のものだったんでしょうか。

若宮大臣政務官 今委員が御指摘になりました、アメリカ側でも発表されております二〇一二年六月十一日のメリーランド州パタクセントリバー海軍飛行場近くでの訓練飛行中の事故の件でございますが、これは、右側の、多分もう御存じだと思いますが、いわゆるV形の尾翼のかじの面の作動の装置が機械的にふぐあいがあったというのが原因だったようでございます。

 同機はブロック10型でございまして、ブロック20、30、40という、更新していきます、バージョンアップした機体では、同装置でのふぐあいというのはこれまでは発生していないということで報告を受けております。

笠井委員 開発して、要するに導入した時期という問題と、導入してブロック10、20、30とあるんだけれども、いろいろなトラブルがあったときにはそれを改良、改修するわけでしょう。それをまた次のものに反映しているということになるので、今度起こった、ブロック10だから古いままかというとそうじゃなくて、その後、改良、改善を加えているのにまた起こっているということだと思うんですよ。

 三沢に展開予定のブロック30型、これは大丈夫だ、重大事故はないと言われますけれども、では、10型、20型というものと安全性能上どこがどう違うというふうに、現時点、つまり、ブロック10、20だってその後改善、改良はしているわけですから、安全性能上どこがどう違うというふうに認識していますか。

若宮大臣政務官 御指摘の点はごもっともでありますが、具体的なところの詳細内容につきましては、今、アメリカ側からまだ説明を受けていないところでございますので、現在この場ではお答えを差し控えさせていただければと思っております。

笠井委員 三沢に展開するブロック30型というのは、二〇一〇年の九月からグアムに配備されたものであります。防衛省があたかも最新型のように言われるわけですけれども、さらにその後、40型とかそれ以上のものがあって、防衛省所管の財団法人ディフェンスリサーチセンターの「米空軍の無人航空機に関する動向」というレポートによれば、このブロック30というのは、「二〇一一年五月に運用試験評価オフィスによって「低い信頼性」のために「運用に適当でない」と判断された。」とあります。しかも、パネッタ前国防長官が、もうブロック30については、いろいろな費用もかさむし、これ以上導入しないとまで言われている。

 つまり、ブロック30には今のところまだ重大な事故がないといっても、何の安全性の証明にもならないんじゃないか。つまり、三沢に配備されても絶対大丈夫、安全で事故はないと断言できないと思うんですよ。

 そこで、もう時間が来ましたので、最後に大臣に伺いたいんですけれども、そうした事故について、やはり今、お答えできないというようなことで防衛省も言われた点があるんですが、つぶさにつかみもしないで、あるいはきちっと細かいところまで確認しないで、どうやって安全性に確信が持てると大臣が言っちゃうのかなと思うんですよね。そういうことによって地元の自治体、住民が納得すると思うかという問題で、展開をするということで2プラス2で確認するというんだったら、やはりこういうことについてきちっと詳細に実態をつかんで承知していたのか。そして、こういうことが確認もできずにやったということは非常に重大じゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。

岸田国務大臣 グローバルホークにつきましては、ただいま防衛省からもお話がありましたように、過去の事故を受けて、機体の改良により改善が図られるとともに、隊員教育の徹底等の対策も実施されてきたと承知をしております。

 そして、グローバルホークにつきましては、無人機でありますが、有人の航空機と同じく管制の指示に従って航行する機能等を備えており、また、既に米国、欧州を初めとする他の国においても運用されております。また、実際の運用に際し、米軍は我が国の管制の指示に従って運航することとなっているほか、飛行場の使用や安全性の確保のために我が国関係当局との調整を経た手続に従い運用することとなっております。こうしたことから、他の航空機と同様に安全運用が確保されていると認識をした次第であります。

 いずれにしましても、米軍が我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきこと、これは言うまでもありません。政府としましては、必要に応じ、米軍に対し、安全面に最大限の考慮を払うよう今後とも働きかけていきたいと考えています。

笠井委員 時間が来ましたから終わりますが、私は、安全性の問題で、それで大丈夫だなどということはとても言えないと思うんですね。地元の方々は納得しないと思います。何よりも、住民の安全という点でも、それから、けしからぬことをやる国がある、だからといって基地機能を強化するということをやれば、これは北東アジアの緊張を高めるということになってしまう。そういう点でも、ミサイルの配備や展開はやめさせるべきだ、断るべきだということを申し上げて、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 国際情勢に関する件について、きょうは、核セキュリティーサミット、岸田外務大臣のバングラデシュ、ミャンマーの二カ国訪問について、それから難民問題についてなどを質問させていただきたいと思います。

 三月二十四日、二十五日の二日間にわたり、オランダ・ハーグにおいて、五十三カ国と国連など四機関が参加して開催されたハーグ核セキュリティーサミットについてまず質問いたします。

 二〇〇一年九月十一日に起きた米国同時多発テロ以降、国際社会が新たな重要課題に緊急性を持って対応するため、オバマ米国大統領の提唱によって開かれてきておりますこのサミットですが、今回のサミットにおける参加の意義、並びに安倍総理が発出したコミットメントの内容についての説明をまず伺いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の核セキュリティーサミットですが、これは、首脳レベルで、世界的な核不拡散・核軍縮の推進のため、核テロ対策強化に関する各国の基本姿勢や取り組み状況、国際協力のあり方について議論する重要な場だと認識をしております。唯一の戦争被爆国かつ原子力先進国である日本として、積極的に貢献する意義は大変大きいと認識をしております。

 そして、安倍総理のコミットメントの内容について御質問をいただきましたが、ポイントとして三点あります。

 まず一点目は、核物質の最小化と適正管理については、日本原子力研究開発機構にある高速炉臨界実験装置にあります高濃縮ウランとプルトニウムの全量撤去処分を含む日米首脳共同声明を発表いたしました。また、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則の堅持を表明いたしました。

 二点目としまして、日本国内の取り組み強化については、原子力規制委員会の設置などによる体制強化を紹介し、核物質や関連施設の防護体制につき国際的な知見を得るために、IAEAのミッションを受け入れることを表明しました。

 三点目としまして、国際貢献の強化については、輸送セキュリティーに関する有志国の取り組みの主導や、東海村にある核不拡散・核セキュリティ総合支援センターによる各国の人材育成、能力構築への一層の貢献、これを表明いたしました。

 こうした内容のコミットメントを表明することにより、我が国のリーダーシップを示すことができたと考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 我が国では、保障措置、セーフガードですね、それから原子力安全、セーフティー、核セキュリティー、セキュリティー、いわゆるスリーSの確保を一貫して推進していくということで、その基本的な方向性も出されているというふうに承知しております。

 さて、福島第一原発事故による放射性物質の拡散及び汚染による重大な事態は、核燃料及びそれを保有する施設のセキュリティーの重要性について大きな警鐘を鳴らしたものと考えられます。総理コミットメントでは、原発の再稼働プロセスが進む中にあってもというふうに述べられていますが、三・一一事故後、その後の対応の状況と原発の再稼働との関連性については、どのようなことがセキュリティーの前提となりますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、核セキュリティーにつきましては、核テロや関連犯罪の対策を強化するということであります。よって、原発の再稼働の是非の議論とは関係なく、既存の原発の防護のみならず、研究用あるいは医療用などでの原子力利用も含めて不断の取り組み強化が必要だと認識をしております。

 総理は、核テロ対策強化をしっかり行っていくという趣旨で発言をされておられます。なお、安倍総理は、我が国は、福島第一原子力発電所事故の経験も踏まえ、原子力安全とともに、核テロ対策に役立つ教訓を各国と共有している旨も述べております。

玉城委員 先ほど大臣の答弁の中にありましたが、核不拡散・核セキュリティ総合支援センターについて、これは文部科学省に質問したいと思いますが、我が国を初めとする各国の核セキュリティーへの取り組み、特にアジアを中心とする地域における核セキュリティーについてどのような役割を担うものであるのか、この核不拡散・核セキュリティ総合支援センターの役割そして運用について伺います。

田中政府参考人 先生御指摘の核不拡散・核セキュリティ総合支援センター、ISCNというふうに申し上げていますが、これは、二〇一〇年四月の第一回核セキュリティーサミットにおいて、我が国が、アジア諸国を初めとする各国の核セキュリティー強化に貢献するため日本原子力研究開発機構に設置するというふうに表明をし、それを受け、二〇一〇年十二月に設置をしたものでございます。

 ISCNは、国際原子力機関などと協力をしながら、これまで活動を開始してから三年間でございますけれども、約四十カ国の国等から千五百人を超える国内外の核セキュリティー分野の人材育成支援ということを実施してきてございます。その七割がベトナムあるいはマレーシア等のアジア諸国の方々で、本分野に従事をしておられる方々ということでございます。

 具体的には、核不拡散に関します国際的枠組みのあり方、あるいは保障措置制度について、例えばバーチャルリアリティーなどを使って実際のトレーニングをするというようなことを実施してございます。また、核セキュリティー強化に有用な核物質の鑑識あるいは検知等の最新技術開発ということもあわせて実施をしているところでございます。

 これらの活動成果につきましては、それぞれの核セキュリティーサミットにおいて報告をしてございますし、昨日あるいは一昨日に、先生御指摘のとおり、第三回核セキュリティーサミットが開催され、そのときにも我が国から報告したということでございます。

 文部科学省といたしましては、国際的な核セキュリティー強化に貢献するため、ISCNにおける活動を拡充し、各国の人材育成ということに引き続き貢献していきたいというふうに考えているところでございます。

玉城委員 ありがとうございました。

 では、続いて岸田外務大臣の二カ国訪問について質問いたします。

 三月二十一日から二十三日にバングラデシュ、二十四日にミャンマーを訪問された件についてですが、この二カ国訪問に関するそれぞれの内容について御説明をお願いいたします。

岸田国務大臣 御指摘のように、バングラデシュ、ミャンマーを訪問させていただきました。

 まず、バングラデシュですが、日本の外務大臣として八年ぶりに訪問し、ハシナ首相表敬及びアリ外相との会談を行わせていただきました。

 バングラデシュとの関係、伝統的に極めて良好な二国間関係が存在いたしますが、この関係を強化するべく、政治、安全保障、経済そして経済協力、また人的、学術交流、こうしたものを含む包括的パートナーシップ構築に向けて努力することで一致をいたしました。

 そして、ミャンマーの方ですが、本年は日・ミャンマー外交樹立六十周年の節目の年になっています。また、ミャンマーは、本年、ASEANの議長国を務めることになっております。こうしたミャンマーを訪問させていただきまして、テイン・セイン大統領あるいはワナ・マウン・ルイン外相等との間で、幅広い二国間関係の強化ですとか、ASEAN関連会合に向けた連携、さらにはミャンマーの少数民族との和平、こういった分野につきまして協力をしていくことで一致いたしました。

 バングラデシュとミャンマー、この両国はちょうど南アジアとASEANの結節点に存在する国であります。戦略的な要衝にある国だと認識をしておりますし、また近年、経済的な大きな潜在性を示す、こういった動きもありますし、また、歴史的に親日国であるという点も特徴であります。こういった点を勘案して、ぜひ、内閣としましても、政権としましても、関係強化に努めていきたいと考えております。

玉城委員 親日国であるという関係性は、これは企業活動にとっても大変有利な場所であるというふうに私も思います。

 日本のこの両国における経済活動、特に民間企業の進出には、より効果のある積極的な協力関係の推進も求められるものと思われますが、この民間経済関係の支援についてどのように考えていらっしゃるか、伺います。

岸田国務大臣 バングラデシュとミャンマー、こうした国々は、歴史的に親日的な雰囲気を持つとともに、今後の有望な生産拠点、市場として世界じゅうから注目を集めています。日本の企業にとっても期待は高いと感じております。日本企業の進出数も、バングラデシュではこの七年間で約三倍の百七十六社、ミャンマーでは二年間で約二倍の百四十一社に増加しております。

 こうした期待の高い両国でありますが、一方で、エネルギーの安定供給あるいはインフラ整備など、克服すべき課題も多いと考えております。

 バングラデシュでもこうした投資環境整備について協力を要請したわけでありますし、また、バングラデシュにおいては総額約一千二百億円の円借款の供与を決定する旨伝えましたが、この中には、高効率石炭火力発電所建設などエネルギーの安定供給に資する支援も含まれております。このようなODAを通じた投資環境改善も進めていきたいと考えています。

 ミャンマーにおきましては、特にテイン・セイン大統領に対しまして、鉄道、電力等のインフラ整備に対する我が国官民による協力の進展への期待を表明するとともに、昨年十二月に署名しました投資協定の早期締結及び着実な実施、投資環境の課題について話し合う日・ミャンマー共同イニシアチブの活用、あるいは国際入札の透明性の確保等について提起をいたしました。

 これに対しまして、テイン・セイン大統領からは、投資許認可手続の電子化等を通じて投資環境整備に努めたい、こういった反応がございました。

玉城委員 ありがとうございました。

 ミャンマーでは、このほか、先ほども大臣の答弁にありましたとおり、我が国の支援事業として、世界食糧計画、国連児童基金、国連難民高等弁務官事務所などと連携して少数民族を支援するというプログラムがあるということですので、この件に関しましては、また後刻委員会で改めて深く質問をさせていただきたいと思います。

 続いて、難民問題について進めさせてください。

 人間の安全保障を重要な外交の柱の一つとして位置づける我が国において、人道支援に関する対応と国際貢献との関係から伺います。

 まず、難民の地位に関する条約における条約難民などの人道支援の現況について御説明をお願いいたします。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 ミャンマーからの条約難民等の受け入れについては二つのカテゴリーがございまして、一つがいわゆる条約難民、これは直接ミャンマーから日本に来た方々です。もう一つは第三国定住難民、これはタイを経由して日本に来られた方々でございます。

 前者につきましては、平成十四年に閣議了解及び難民対策連絡調整会議決定がございまして、それに基づきまして、平成十五年度からさまざまな支援計画、例えば日本語教育、社会生活適応指導、職業あっせんなどを行ってきておるところでございます。

 また、第三国定住難民、タイを通じて来られた方々につきましては、平成二十年度の閣議了解に基づきまして、平成二十二年度から五年間、一年間に約三十名程度の受け入れを行ってきております。この方々に対しましては、来日前の支援としましては三週間の出国前研修、来日後の定住支援としては約百八十日に及ぶ総合的な定住支援プログラムを実施してきているところでございます。

玉城委員 平成二十年十二月の閣議了解と決定に基づいて、アジアで初めての第三国定住難民の受け入れ国として、平成二十二年から第三国定住難民の受け入れをしているという現況でございます。

 これは、五年間を区切りとするパイロットケースとして、タイ国内の難民キャンプに滞在する難民を対象に行ってきておりますが、これまで受け入れたパイロットケースに鑑みる課題としてどのようなことが取り上げられているか、伺います。

岸田国務大臣 今日までパイロットケースとして進めてきた結果見えてきた課題ということで御質問いただきました。

 長年タイの難民キャンプで生活していたミャンマー人の第三国定住難民が、定住支援プログラム後に地域社会に溶け込み、安定した生活を営むことができるようにするには、定住先自治体そして就労先との連携あるいは協力、これが非常に重要だという点を指摘しなければなりません。この観点から、第三国定住難民の受け入れに意欲のある地方自治体等を引き続き開拓していくことが課題であると認識をしております。

 本年一月の閣議了解において、平成二十七年度以降は本事業がパイロットケースでなくなることを踏まえまして、外務省としましては、第三国定住難民のしっかりとした定着を目指しつつ、引き続き定住先における自立を支援してまいりたいと考えています。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、今度は内閣官房に質問させてください。

 この課題への対応及び今後の受け入れ体制等について策定するためとして、難民対策連絡調整会議のもとに、難民問題に関する有識者等から成る第三国定住に関する有識者会議が置かれ、第三国定住の意義、定住支援のあり方など、今、外務大臣の答弁にありましたように、さまざまな論点についてこの会議でも討議が行われています。

 その会議の取りまとめとして、本年、平成二十六年一月、今後の方針について報告が出されておりますが、その有識者会議からの意見並びに提言についてはどのような報告があったか、まず御説明ください。

中村政府参考人 まず、お尋ねの提言でございますが、ミャンマー難民を第三国定住により受け入れる意義は低下しておらず、パイロットケース終了後の平成二十七年度以降における方針につきまして、ミャンマー情勢等を注視しつつ、第三国定住難民の受け入れを継続すること、随時見直しを図っていくこと、タイのミャンマー難民に加え、マレーシアのミャンマー難民を年一回三十人、家族単位で受け入れること、定住支援等について一層の充実を図ることなどが示されました。

 この提言を受けて、本年一月の閣議了解により、平成二十七年度以降も第三国定住事業の実施を継続し、マレーシアのミャンマー難民を受け入れること、パイロットケースにおいて受け入れたタイのミャンマー難民が相互扶助を要件として親族を呼び寄せられるようにすることを決定したところでございます。

玉城委員 これからの対応については、定住のための支援プログラム、それから就労支援と就労先の確保、定住地域の選定などのほか、定住先地域における支援対策として、地域定住支援員などのように、難民と、地方自治体や地域コミュニティー、あるいはその家族の子供たちが通学する学校、あるいは就労先との調整役など、より細やかな支援のための枠組み、取り組みとして、さらに細部にわたる連携が必要かつ重要になってくると思われます。

 有識者会議の報告等も踏まえて、平成二十七年度以降もさらに受け入れを広げていくということであれば、これからは、地方自治体や民間企業、あるいはNPOなどの民間団体などへの支援の協力あるいは連携などをどのようにつなげていくものとするのか、その方向性及び見解などを伺います。

中村政府参考人 御指摘いただきましたとおり、有識者会議におきましても、定住支援において、地方自治体、NGO、NPO、民間企業等とのより一層の連携などが示されたところでございます。

 御紹介いただきましたが、これまでも地域定住支援員を配置するなどを行ってきたところではございますけれども、有識者会議報告書の提言を踏まえまして、今後も、関係行政機関を中心に検討して、地方自治体、NGO、NPO、民間企業等とのより一層の連携強化に努めてまいりたいと思います。

玉城委員 ありがとうございました。質問を終わります。ニフェーデービタン。

鈴木委員長 次回は、来る二十八日金曜日午後二時理事会、午後二時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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