衆議院

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第7号 平成26年3月28日(金曜日)

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平成二十六年三月二十八日(金曜日)

    午後二時二十一分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    石原 宏高君

      小田原 潔君    河井 克行君

      木原 誠二君    黄川田仁志君

      河野 太郎君    島田 佳和君

      田野瀬太道君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    星野 剛士君

      武藤 貴也君    小川 淳也君

      玄葉光一郎君    松本 剛明君

      阪口 直人君    村上 政俊君

      岡本 三成君    青柳陽一郎君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   経済産業大臣政務官    田中 良生君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    小松 一郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 相川 一俊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   北野  充君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           梶島 達也君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     田野瀬太道君

同日

 辞任         補欠選任

  田野瀬太道君     小田原 潔君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     小林 鷹之君

    ―――――――――――――

三月二十七日

 米軍への思いやり予算の中止等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官山田滝雄君、大臣官房参事官下川眞樹太君、大臣官房参事官相川一俊君、大臣官房参事官大菅岳史君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長北野充君、農林水産省大臣官房参事官梶島達也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本剛明君。

松本(剛)委員 松本剛明でございます。

 きょうは、一時間、時間をいただいておりますので、幾つか大臣に、質問というよりお願いをさせていただきたいと思っています。よろしくお願いをいたします。

 まず、ちょっと通告を申し上げていないんですが、今後、当委員会でも条約の審議を順次行うことになろうかというふうに思っております。個々にどうということではないんですが、私自身も感じてきたところでもありますし、改めて今国会で取り上げる条約の説明を伺っている中で感じたことでありますので、お聞きをいただいて、お願いをさせていただければと思います。

 率直に申し上げて、この国会にかかる条約もかなり専門的なものも多数ありますので、個別具体の中身を全て把握するということはなかなか簡単なことではないというふうに思います。また、関連法案が幾つか審議をされていますように、個々の条約の中身については、外務省というよりは、当該所管の省庁がかなり詳しくかかわっているものも多数あろうかというふうに思っておりますが、やはり交渉の最前線に立つ外務省には、大枠、何が交渉の焦点になっていて、何がとれて何がとれていないのかといったようなことは、きちっと把握をしていただく仕組みが必要かなというふうに思っております。

 わかっていないとは申しませんけれども、やはりある程度、いわば霞が関のルールもあって、なかなか専門的なところには口を出しにくいというところがあるのかもしれませんが、国と国同士のやりとりでありますので、やはり国全体として、ここはとる、とらないといったような判断があったり、また、総合的に見て、ある分野においては、国際的な流れ等も含めて、一定程度譲らざるを得ないといったようなことがあったときに、それを何らかの形で、また別の機会には我が方にとってメリットのある形でとる。これは、同じ省庁の中とは限らない分野も当然出てくると思います、国と国同士の間の、分野が別の形でも。

 そういうことを考えると、何がとれて何がとれていないのかというのは、ぜひ外務省がきちっと把握をしていただけたらなというふうに思っております。

 また、これは各省庁にお願いをした方がいいのかもしれないというふうに思っていますが、例えば経済的な条約の場合、この条約を結ぶことによって大体どのぐらい我が国にメリットがあるのか、これを、定性的な説明は今までも幾つかあるんですけれども、定量的な説明は、確かに今まで、これが合っていたじゃないか、合っていなかったじゃないかと後々言われるといったようなことが繰り返されてきたがために、定量的な説明を出すことを大変嫌ってきた傾向があることは我々も一定程度理解をいたしますが、これから先、やはり、そのことが合っていたか合っていないかというよりは、このぐらい見込んでいたけれどもそうならなかった、では、そこの原因がどこにあるのかということで次なる対応を考えるという手がかりも含めて、そういう形で出していただけたらなというふうに思っております。

 例えがいいかどうかわかりませんが、霞が関の中で、予算を通じて財務省は各省の状況をある程度把握、掌握をしているというふうに感じておりますが、やはり国際的な分野については、外務省がかなりの部分を把握しているという形をぜひとっていただきたいという思いも込めて申し上げました。

 条約交渉に関して三つ目は、もうかねて申し上げてきていることですが、特に経済条約などはかなり専門的になるので、人員体制などは、ぜひ、外部の人材、他省庁の人材も含めて、十分な体制をとっていただくようにお願いをしたいと思っております。

 お願いだけですので、次へ進んでもよろしければ。では、よくお願いをさせていただきたいと思います。

 この委員会でも取り上げさせていただきましたが、安重根の記念館の問題を取り上げたいと思います。

 当初取り上げたときも申し上げましたが、こういった問題は、残念ながら、既に建設されたという事実があります。これは、取り上げ続けていかなければ、いつの間にか既成事実化するということがあります。

 きょう改めて取り上げさせていただいたのも、先般のオランダにおける中韓の会談でこのことが取り上げられているということでありました。しかも、韓国側の大統領府の発表の文書でありますが、私がこの発表の文を読む限り、中国側がこのことを取り上げているというふうにも読める発表にもなってきております。

 一部には、この中国の施設は地方の政府が建てたものであるしといったような話もありましたが、主席が首脳会談で取り上げる以上はそういった言い回しは通用しないわけでありますから、やはりそういったところで取り上げたことを捉まえて、ぜひ我々としては言うべきことを言うべきではないかということが一つ。

 それからもう一つは、もちろん、この行為に対する評価そのものが、根本的に私どもと立ち位置が違っているというふうに思っております。そのことを大前提としつつ、同時に、殺人という方法による行為を評価する、顕彰するといったようなやり方というのは、主張の内容とは別に、手段としても認められるものではない。とりわけ、これから将来に向けて、こういった手法を改めて顕彰するというやり方は認められないということをぜひ強く言っていただきたいと思っておりますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 安重根記念館についての御質問です。

 この安重根に関する立場ですが、まず基本的に、日本と中国及び韓国との間では、立場、考え方、さらには評価、これは全く異なっていると考えております。そしてその上で、前世紀において起こったこうした事件について、一方的な評価に基づいて、韓国と中国が連携して国際的に主張を展開する、こういった動きは、地域の平和や協力の構築に資するものではない、これはしっかりと我が国の考え方、評価として申し上げておかなければなりません。このような立場につきましては、これまでも、中国、韓国両政府には伝えてきているところであります。

 そして、安重根につきましては、殺人ということを顕彰するというような考え方はいかがかという御指摘もありました。安重根については、伊藤博文公を殺害し、そして死刑判決を受けた人物であります。我が国の立場としては、我が国の国内法における犯罪者ということになります。

 こうした人物であるということも含めて、我が国の立場、評価、こうしたものはしっかりと説明をしていかなければならないと思いますし、中韓には、今申し上げましたように、今までも累次我が国の立場を伝えてきているわけですが、国際社会においても、こうした我が国の考え方、そしてこの事件について説明をしていく努力はしていかなければならないのではないかと考えます。

松本(剛)委員 この問題は、しかるべき形で解決をされるまで私も取り上げ続けていきたいと思っておりますし、ぜひ、外交の場においても、我が国は民主主義国家であり、議会における要請といったものも無視できないものがあるので、こういったことも踏まえてということで対応していただきたいということをお願い申し上げて、次の問題に行きたいと思います。

 既に当委員会に付託をされておりますが、原子力協定について順次議題に付されるものというふうに承知をしております。内容については、趣旨説明、提案理由も前国会において行われておりますので、私どもにおいても議論をしてまいりました。国会においても何度か取り上げられてきておりますが、まず、トルコとの協定における濃縮に関する規定について伺いたいと思っております。

 昨年十一月の当委員会におきましても、大臣は御答弁をいただいております。これは私から申し上げるまでもなく、両国の書面による合意がある場合は認められる、こういう趣旨の規定になってきておりますが、大臣においては、我が国は認めることはないと考えているといったこと、そして、日本の外務大臣が国会の委員会の場ではっきり申し上げているということは重たい、こういう趣旨で御答弁をいただいておるわけであります。

 これは、相手国にも既に日本の意思はお伝えになっているということでありましたが、どのレベル、どの段階でお伝えになっているかということをまずお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 トルコとの原子力協定につきましては、核不拡散の観点、さらにはトルコの原子力政策、また国際的な議論、こういったことを総合的に勘案しながら協定交渉を行ってきました。そして、御指摘のトルコにおける濃縮、再処理に係る規定につきましては、トルコとの交渉の結果、御指摘のような規定ぶりになったものであります。そして、今までも国会答弁等で再三申し上げておりますように、協定の対象となる核物質のトルコ国内における濃縮、再処理に関する我が国の立場は、濃縮、再処理を認めるつもりは全くないというものであります。

 そして、それをどのレベルでトルコに伝えてきたのかという御質問でございますが、今日までも、例えば日・トルコ原子力協定交渉、何回も行われてきたわけでありますが、こうした交渉の場におきまして、我が方の交渉団長からトルコ側の交渉団長に対して伝達をしてきております。

 交渉団長を務めたレベルでありますが、具体的には、我が方は、外務省の軍縮不拡散・科学部長ほかとなっております。一方、トルコ側は、その回によって異なっておりますが、トルコの原子力庁長官ほかが団長を務めているということであります。お互い、こうしたレベルを通じまして、我が国の立場について直接伝えているということでございます。

松本(剛)委員 これは記録か書面かには残っているというふうに理解してよろしいんでしょうか。

北野政府参考人 今大臣から御答弁申し上げましたように、交渉の場におきまして、我が方交渉団長から先方に対してしっかりとこれを伝えております。我が方の中での記録というところにこれをきちっととどめているということでございます。先方との間でそれを書面で交わしたということはございませんけれども、我が方としてしっかりと確認をしているということでございます。

松本(剛)委員 しかるべき立場の人が伝えているということは、決して軽いというふうには私も思いませんが、やはり濃縮の部分というのは、我が国にとっては極めて重要なポイントであるということも間違いないというふうに思います。

 大臣御自身はとりわけ不拡散の問題には御熱心だろうと思いますが、私どもも不拡散には取り組んでまいりましたし、日本としても、不拡散については最も熱心に取り組んでいる国だという評価を受けていると思いますし、これからもそうあり続けるべきだというふうに思っています。

 その趣旨からしますと、この条約の文言がこういう形になったということそのものが、いわゆる日本にとってのスタートラインのひな形とは既に交渉の結果で違っているというふうに思いますが、やはりそこを、きちっと我が国の姿勢というものを担保するという意味では、この後、この条約が国会の審議を経て例えば批准をされる場合、批准書を交換するとか、トルコとこの件に関して接する機会が出てくるというふうに思います。

 そういった機会に、高いレベル、もしくは何らか先方にも残る形で伝えるといったようなことを、これはきょうの段階で即答でお返事いただけるとは思えませんが、我が国政府としてこういう姿勢を示したということが、今お話があったのは、外務省のいわば省内の記録の範囲だというふうに思います。相手方に伝えたことも含めて公開の形で伝わるようにするということは、不拡散の最前線に立ってきた我が国としての姿勢を示すという意味でも重要だというふうに思いますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国にとりまして、不拡散の問題につきましては大変重要な課題であり、原子力の平和利用の安全に我が国としても貢献するに当たりましても、不拡散の観点は重視しなければなりません。

 こうした我が国の立場、考え方については、今日までも、今申し上げましたように累次相手に伝えているところでありますし、我が国の姿勢としましても、私、外務大臣を初め関係者が国会の公の委員会の場でたびたび答弁をさせていただき、そして国会の議事録に記録をとどめる、こういった形で再三確認をさせていただいてきました。

 しかしながら、おっしゃるように、今後とも、この考え方、立場につきましては、さまざまな場でトルコ側に確認をしていかなければならないと考えております。

 この協定の中においても、日本とトルコは、引き続きまして原子力の安全につきまして協議をする場を設ける、こういった中身が盛り込まれておりますが、そういった場等も通じながら、さまざまな機会を捉えて我が国の立場は伝えていくよう努力をしたいと考えます。

松本(剛)委員 最後にもう一度、この件についてお願いだけしておきたいと思います。

 ぜひ、相手側に伝わったこと自身が残るという形で、双方の国々、両方の当事国を一定程度やはり、拘束と言うと言葉が悪いんですが、簡単にはできないということを双方がかなり強く認識しているということが残っていかなければ、文章だけ読めば、これはポジティブに書いてあります。さまざまな経緯があって、恐らく、推測ですが、ネガティブな表現も暗にあった中で、トルコ側の立場ということではポジティブな表現にならざるを得なかったのであろう、これは私の勝手な推測でありますけれども。であるからこそ、逆に、このことは、双方で、少なくとも日本側は合意をする意思がないということは双方が知っているということが明らかになっているということは一つのポイントではないかと思いますので、ぜひそのことを強くお願いしたいと思います。

 もちろん、公開で、議事録の残る場で、しかも国権の最高機関で大臣がおっしゃったことですから、意思としてそのことを覆そうと思っておられるとは毛頭考えておりません。ただ、その上で、ぜひ、そういったことの対応が可能かどうかの御検討は引き続きお願いをしたいと思っております。

 原子力協定について二つ目は、今大臣が言及をされましたが、安全性についての協議を行うという形になってきております。

 この部分について、もちろん、双方主権国家でありますし、相手国の規制のあり方、立地についての考え方、エネルギーの政策、相手国の主権に基づくさまざまな政策にどこまで我が国としていろいろなことが言えるのかということについては、外交を担う立場からはさまざまな配慮もあろうかというふうに思います。しかし、原子力に関して、特に平和利用に協力するに当たっては、私どもは、少なくともこの間は、不幸にして起こってしまった事故、このことを乗り越える、その知見を共有するということも平和協力の中の一つにあったと理解をします。また、我が国の持つ高い技術力そして知見を生かすという趣旨もあったというふうに思います。

 このトルコに限らず、アラブ首長国連邦に限らず、これから原子力を導入しようという国である以上は、当然、実務上積み重なってきた知見といったものはないわけでありますから、他方で我が国はこれを共有することを使命としているということであると、かなり積極的に、そして、個々のテーマについても、相手国の安全性を高めることに関しては相当積極的に関与すべきだというふうに私としては思っております。

 この安全性の協議について、取り組む姿勢、そしてもし今具体的に進められていることがあるのであれば、そういったことも含めて、外務省、そして原子力の運営にかかわっている経産省からお話を伺いたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力発電の安全性の確保ということにつきましては、一義的には相手国政府の責任において判断をされる、そのような事項であろうかというふうに考えております。

 一方、政府といたしましては、原子力協力を行うに当たりまして、原子力安全の重要性ということについては十分に認識しつつこれを行うということであるべきだというふうに考えております。また、今委員からも御指摘がありましたように、福島第一原発事故の経験と教訓というものを世界と共有することによって世界の原子力安全の向上に貢献をしていくということは、我が国としての重要な責務であるというふうに考えているところでございます。

 これを踏まえまして、具体的に、今から申し上げる幾つかのことを行っておりますし、また、先ほど委員御指摘の協議の中で、そのようなことをさらにやっていきたいというふうに考えているところでございます。

 まず第一点といたしましては、我が国が近年署名、締結をいたしました原子力協定においては、相手国との間で、幅広い範囲における協力の分野というのを定めております。そしてその中で、原子力の安全というのも協力の分野の一つというふうにした上で、情報交換などが行える仕組みというふうにしております。

 トルコとの協定におきましては、トルコというのが地震が発生することがある国であるということ、それからまた、トルコにおきまして具体的なプロジェクトが想定されているということも考慮いたしまして、先ほどからお話が出ておりますように、原子力の安全の向上のための定期的な二国間協議に関する規定というのが設けられております。これを活用するというのが第一点でございます。

 第二点でございますけれども、政府といたしましては、原子力安全の重要性ということを踏まえまして、二〇〇六年に発効しましたユーラトムとの原子力協定以降の協定におきまして、原子力安全の関連条約に関する規定というものを原子力協定の中に設け、原子力安全に関する国際的な枠組みの強化ということに貢献をしようということで取り組んでまいっております。具体的にトルコについて言いますと、トルコに対して我が国はその時点でまだ締結しておらず、引き続き課題でございます放射性廃棄物等安全条約の締結というものを働きかけてきているところでございます。

 第三点でございますけれども、我が国は、原子力発電所の新規導入国に対する人材育成、法制度支援といったことを通じまして、原子力安全の向上を支援するということでございます。具体的には、原子力安全規制体系の制度整備、それから原発の安全な運転管理のための人材育成といった取り組みでございます。

 私どもとしましては、このような取り組みを通じまして、相手国における原発の安全性の確保ということに貢献をしていきたいと思っておりますし、また、そのようなことを、先ほどからの議論にございます協議の場を通じて、先方とも話をしていきたいというふうに考えてございます。

田中大臣政務官 お答えいたします。

 松本委員御指摘のとおり、福島第一原発事故の経験、教訓、こうしたものを世界と共有していくということは、やはり必要不可欠なことであります。その上で、原子力安全の向上ですとか、また平和利用、こうしたものに貢献する、これはもう我が国の責務であると考えるものであります。

 その上で、原発の安全確保でありますが、これは当該発電所が立地する国が行うこと、これは国際的にも確立した考え方であります。

 我が国としても、事故から得られた教訓を生かしながら、我が国の原子力協力を求める新規原発導入国に対しては、原子力の安全を担う人材の育成ですとか、あるいは制度整備等の面で、最大限貢献をしていきたいと考えております。

 そして、特にトルコとの原子力協力についてでありますが、経産省としては、トルコ側から今高い期待が示されております我が国の地震に関する技術を活用しまして、建設予定地におけます地震動評価等の調査を今実施しているところであります。また、事故の知見も踏まえた原発の安全な運転管理のための人材育成等への支援、こうしたものも行っていくものであります。

 こうした取り組みを通じて、我が国としても、トルコにおける原発の安全性確保に最大限貢献をしていきたいと考えております。

松本(剛)委員 御答弁としてはそうならざるを得ないんだろうと思います。また、先ほど冒頭に申し上げたように、当然、主権国家でありますから、一義的には相手国の判断ということそのものを根本から否定するつもりは全くありません。

 ただ、事故の教訓というものも、幾つかというか数限りなくあろうかというふうに思いますが、例えば一つ申し上げると、実は、私が政策責任者をさせていただいていました当時、もう十年近く前になりますが、民主党で、原子力を規制する組織というのは当時はまだ保安院という形でありましたが、もっと第三者的な形でなければいけないのではないかという提言を出させていただいたことがあります。関係の方々のところも回りました。事業者の会社の方々、そして私どももかかわりのある、事業者で働いている労働組合の方々、そして有識者の方々とも話をしました。率直に言えば、当時は皆さん全く否定的でありました。しかし、本当に残念な事故を経て、やはりこれはつくらざるを得ないのではないかということで、今、原子力規制委員会が設置をされております。

 そして、まだ国民の信頼を得る途上だと思いますが、安全が確認できたものに限って動かしていく、逆に言えば、安全が確認できなければ動かさないこともあり得るという立場をとりながら規制委員会はこれから行動していくことになるんだろうというふうに思うわけですが、先ほど申し上げたように、これまで原子力を導入したことのない国であっても、事故を経験した我が国の立場から考えれば、確認をした結果、建てるべきでない、もしくはつくるべきでないものであればとめるべきだといったような姿勢も含めることが必要だということをしっかり伝えることも含めて、このこと自身は、組織のあり方とか規制のあり方ということは、主権国家といえば立ち入り過ぎだと言われる可能性もないわけではないと思います。

 しかし、拝見をしている限り、総理とエルドアン首相、大臣とダウトオール外相の間も、たび重なる接点、交流の中で一定以上の信頼関係があるものと私どもは期待をいたしておりますし、真の友人というものは、立ち入ったことを言うようだけれどもと言いながらも、言うべきことはきっちり伝えることが大変重要なことであるというふうに思っております。

 そういう意味であえてこのことを取り上げさせていただいておりますので、大臣におかれても、トルコの場合、先ほども北野部長からも指摘がありましたが、地震等を含めた自然環境も我が国に近いものがあるわけですから、もちろん、今トルコを取り上げましたが、アラブ首長国連邦も同じでありますが、ぜひそういう姿勢でこの安全協議に取り組んでいただきたいということを強くお願いしたいと思います。

 もし一言あれば。

岸田国務大臣 おっしゃるように、原子力の安全性の確保につきましては、一義的には相手国政府の責任において判断する事項ではありますが、やはり我が国として、福島第一原発の事故を経験した、その際の貴重な知見ですとか経験、これはしっかりと国際社会と共有しなければなりません。その際に、少なくとも科学的あるいは客観的な事実やデータにつきましては、冷静にしっかり相手に伝え、安全性の確保に向けてしっかり貢献をしていく、こういった態度は重要であると認識をいたします。

 ぜひ、言うべきことは言う、そして原子力の平和利用の安全につきましてしっかり貢献する、その中にあって我が国がしっかりと信頼を得られる、こういった結果につなげていきたいと考えます。

松本(剛)委員 私自身も一定の期間政府の中に籍を置かせていただいて、何か始めたものをやめるということは大変重い決断が必要だということはよくわかります。ですが、やはり原子力の安全ということに関してはその勇気も持つようなことが必要だということも含めて、しっかり御尽力をいただくように御要請を申し上げて、次のテーマに参りたいと思います。

 政務官、どうぞ、もしよろしければ御退席ください。

 次は、昨今、集団的自衛権の議論がさまざま行われておりますが、集団的自衛権そのものの議論についても申し上げたいことがありますが、幾つか出ていますので、関連して幾つかお聞きをしていきたいと思います。

 まず、国連憲章の敵国条項についてですが、この解釈で敵国というのはどこを指しているのかということを確認したいと思います。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 国連憲章上、敵国の国名が特定されているわけではございませんが、一般には、第二次大戦当時に連合国と交戦状態にあった日本、ドイツ、イタリア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドが旧敵国に当たると考えられております。

松本(剛)委員 少なくとも我が国は敵国に当たると考えられているということではないかというふうに思います。

 次に、お手元、委員の皆様にも、参考資料で五十三条、七十七条、百七条と配らせていただきましたが、いわばこの規定を使うことができる国はどこなのかということであります。例えば、我が国が対象であるとすれば、我が国が使うということは想定をされないというふうに思いますが、使うことのできる国はどこなのかという解釈が政府としてあれば、お知らせいただきたいと思います。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 理論的には、これらの敵国とされる国と交戦状態にあった全ての国連加盟国がかつては援用していたと考えております。

 ただ、この旧敵国条項につきましては、九五年の国連総会で、既に死文化しているとの認識を示す決議が採択されております。また、二〇〇五年の国連首脳会議では、憲章上の関連する条項における敵国への言及を削除するとの加盟国の決意を示す成果文書が採択されております。

 したがって、現在におきましては、いかなる国も旧敵国条項を援用する余地はもはやない、このように考えております。

松本(剛)委員 解釈上、主体となり得る国はないということなんでしょうか。

山田政府参考人 先ほど申し上げましたように、九五年の総会決議及び二〇〇五年の国連首脳会議の成果文書がございますので、現在では、いかなる国も旧敵国条項を援用する余地はないというふうに考えております。

松本(剛)委員 適用の余地がないという解釈は、我が国の解釈なんでしょうか、国際的な解釈なんでしょうか。

山田政府参考人 先ほどの、まず国連の首脳会議の成果文書、二〇〇五年ですが、これはコンセンサスで採択されております。また、九五年の国連総会の決議も、一部に棄権した国はございましたけれども、いかなる国も反対することはなく、大多数の賛成によって採択されております。

 したがって、旧敵国条項が既に死文化されている、この点については国際社会におけるコンセンサスがあると考えてもよいのではないかというふうに思っております。

松本(剛)委員 九五年の総会決議ですが、英語を拝見すると、もはや使われていない状態になっていることを認識するという、形容詞で表現をされています。これは、規範性、使ってはいけないというふうには私には読めなかった。適用の余地がないというふうに我が国政府が解釈していることは理解をいたしますが、総会の決議で、これはもはや使うべきものではないというふうに決議をされたというふうには読めないのではないかというふうに思います。

 もはや使われていない状態になったと認識をしているというふうに、死文化しているという言葉をどう解釈するかなんですが、規範性を持って言っているのか、状態を認識していると言っているのか、決議についてまず確認をしたいと思います。

山田政府参考人 九五年の決議でございますけれども、まず、前文におきまして、五十三条、七十七条、百七条の敵国条項は死文化していることを認識しとされております。英語はオブソリートという言葉が使われております。

 さらに、主文の三におきまして、敵国条項を削除することによって、将来に向けて効力を有するものとして国連憲章の改正を行うために、国連憲章第百八条に規定する手続を将来の最も至近の適当な会期において廃止する意図を表明すると。

 したがって、単にオブソリートという認識を表明しただけでなくて、この条項は将来改正されるべきものであるという意図が表明された形になっております。

松本(剛)委員 将来改正されるべきものであるとすれば、改正されるまでは有効だということになりますよね。死文化という言葉をどなたが訳されたのか知りませんけれども、我が国の訳ではそのようになっていますが、状態をあらわしているにすぎない、現在使っていない、将来改正をすべきである。とすれば、現段階では、その条項そのものは生きていないというふうに断言は少なくともできない。

 我が国は適用の余地があるべきものではないと考えているということは私も承知をしていますけれども、全ての国がそのことを共有できているものだという決議、成果文書だと見るべきなのかどうかという、その評価をお聞きしたいと思います。

山田政府参考人 死文化されたという決議上の文言は先ほど御紹介したとおりでございますけれども、ただし、日本政府としましては、死文化したとはいえ、この旧敵国条項の削除を求めていくべきであるという立場を守ってきております。

松本(剛)委員 整理をすると、今の段階では使われることがないものである、したがって将来削除をすべきである、我が国も努力をしていると。しかし、現在、この条項が何らかの事情で有効に活用されることがないとは言い切れないということに今とどまったのではないかと、議論をさせていただいて思うわけであります。

 もし御意見があれば、今私が申し上げたことで、そうであると言わざるを得ないのであれば、私の判断でそのように理解をさせていただいて、先へ話を進めていきたいと思っております。

 なぜこのことをお聞きするのかといえば、最近になっても、ロシア外務省は、北方領土に関連してこの百七条を持ち出してくることが決して少なからずあります。昨今も、恐らく日ロ間ではさまざまな形での交渉が活発化していると思います。その前も、公式、非公式も含めてかなりの接点がある中で、私も中身を申し上げるわけにいきませんが、対外的な場面でも、例えばラブロフ・ロシア外務大臣は、ラジオの番組で説明をするときに百七条を持ち出してきているわけであります。

 全く今使えないものであればなかなか持ち出しにくいところがあるのではないかというふうに思いますが、いまだに援用されるということを考えたときに、やはりこのことを何らかの形ではっきりさせるべきではないかというふうに思いますが、ロシアが援用していることの認識、これをどのようにお考えになっているでしょうか。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、かねてよりロシアは、北方四島に対するロシアの主権、これは、ヤルタ協定等により国際法上確定され、百七条により合法化された第二次大戦の結果に基づくものであるというふうに主張しております。

 これに対して、我が国としましては、ヤルタ協定は、当時、一部の連合国首脳間で戦後処理の方針を述べたものにすぎず、連合国間での領土問題の最終処理につき決定したものではない、また、そもそも日本はヤルタ協定には参加していない、いかなる意味においてもこれに拘束されることはない、こういった主張を展開し、したがって、百七条は、ロシアによる北方四島の占拠にいかなる根拠も与えるものではないし、関係のない規定であるという主張を展開しております。

松本(剛)委員 双方の主張は私もそれなりに理解をいたしているんですが、この敵国条項がこういう形で持ち出されるということを考えると、先ほど、我が国は削除を求めていると言いましたが、これを本当にどうするのかということを考えるべきではないかということで、あえて取り上げさせていただいております。

 もう一つ、中国についてであります。

 これは見方がさまざまあろうかというふうに思いますが、京大の中西先生が、昨年だったかな、雑誌で取り上げておられます。私も同種のことを感じるところがあったわけですが、二〇一二年九月の国連総会における一般討論演説で中国のヨウケツチ外務大臣が述べていますし、その後、累次にわたってそういったことを述べているのは、日本の行動というのは、尖閣の国有化は中国の主権を侵害する侵略行為だ、第二次大戦後の国際秩序を破壊する、そして国連憲章の原則と精神に違反する、こういった主張を繰り返しているわけですね。

 このことをそのままいくと、死文化されている、つまり、使われていないけれども、日本の行動によって改めて事情が発生したら、五十三条、百七条は使われるという主張を展開する布石としてこういう発言をしているのではないかというのが中西先生の見方であります。私は、全面的にそのことが今可能かどうかわかりませんが、外交のレベルにおいても、当然、中国も、ロシアの百七条の主張であるとか、さまざまなものは十分に研究をしているというふうに思います。

 そのときに、五十三条、百七条があるのかないのかというのはかなり根本的な問題になってきますし、今、私が有効かどうかとお聞きをさせていただいたのも、死文化しているという状態は共有をされているというふうに承知しています。今使われていないという状態が共有をされている。そして、他方で、改正を求めているという状況であります。

 少し角度を変えてお聞きをしますが、この敵国条項を、例えば両国の間で使うことはないといったようなことを日中間で議論したことがあるかどうかというのは、今わかりますでしょうか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 私どもが承知している限りでは、中国政府が我が国との間でこの旧敵国条項に言及したことは、これまでのところないというふうに承知しております。また、中国自身、いわゆる旧敵国条項の死文化を確認した一九九五年の総会決議の採択において賛成票を投じております。

松本(剛)委員 まず第一の点は、あってからでは遅いんです。第二の点は、総会決議にどこまで規範性があるのかというのは、今、議論の結果、私は、規範性がないということで終わったというふうに認識をしています。その意味では、賛成をしているということと、今後、彼らが、状況が変わったと言って援用するということが相矛盾するとは言えないと言われてもやむを得ないところがあるのではないかというふうに思います。

 もう一点、小松長官にも来ていただいていますので、この点についてまた引き続き議論の機会をいただいたら、していきたいと思いますが、大臣に一つお願いをいたしたいと思います。

 このことは、国連憲章の改正にかかわるということで、決して簡単ではないということであります。今お話があったように、まずお聞きをすれば、これは削除すべきものだということで我々も求めてきていると大体御答弁をいただいているんですが、さらにもう一つお聞きをすると、高村大臣のが一番わかりやすいわけですが、簡単に変えられる改正ではないので安保理改革等の状況を見ながら、大臣も同趣旨の御答弁を昨年されていると思いますが、いわばセットでやりたいということでお話をいただいております。

 今大臣から安保理改革等の見通しについてコメントをいただこうとは思いません。簡単なことではないと思いますし、コメントすること自身が容易なことではないので、そこについて言及を求めるつもりはありませんが、私自身も、何らかの安保理改革に至る道筋について多少なりとも努力をしてきたつもりでありますが、他方で、今申し上げたように、この敵国条項については、諸般のことを考えると、かなり喫緊の課題だと思ってもいいのではないか。

 その意味では、きょう冒頭に、大臣にいろいろお願いをしたいと言ったのは、今ここで方針転換を決めていただくということは簡単ではないと思いますが、従来は、いわば安保理改革と敵国条項の国連憲章改正案件をセットで取り組むというのが事実上の考え方であったというふうに思いますが、本当にそれでいいのか。敵国条項だけでも早急に見直すということを改めて検討する必要があるのではないか。

 そのことは、あえてロシア、中国のことを持ち出したのも、我が国を取り巻く安全保障環境等を考えても、先ほど、中国からそういうことを言われたことはないということでしたけれども、言われてからでは遅いわけでありますので、ここの方針をどうするか。

 来年は、国連七十周年といった節目でもあろうかというふうに思います。また、冒頭に旧の敵国をお聞きしたのも、少なくとも旧の敵国と言われている国は我が国を含めて複数存在するわけでありますから、そしておっしゃったように総会の決議そのものがあれだけの賛同を得たことを考えれば、ぜひそういうことを御検討いただきたいと思います。早急に改正ができない場合でも、この条項が適用されるべきでないということを、何らかの形で、我が国の考えではなくて国際的な考えにするということも必要ではないかというふうに思います。

 これは、この問題を取り上げて、この数日間、私がちょっと思いついただけでありまして、専門家の方にお聞きをしておりませんが、例えば、国連は、総会ないしは機関から国際司法裁判所に勧告的意見を求めるということもできる仕組みになっているというふうに理解をいたしております。

 その意味では、この五十三、七十七、百七、三つの条文の法的な位置づけというのを何らかの形で国際的に早急に確認できるような形に手を打つということをぜひ御検討いただきたいということをきょうは申し上げて、このことについては終わりたいと思いますが、大臣、もし御所見があれば。

岸田国務大臣 旧敵国条項につきましては、我が国の理解としましては、先ほど来説明しておりますように、死文化したものと理解しておりますが、それに対しまして、先ほど来、委員の方からさまざまな問題提起がありました。この問題提起については、傾聴に値する議論ではないかなと、興味深く聞かせていただいてきました。

 我が国の方針につきましては、委員の方から御指摘がありましたように、旧敵国条項につきましては国連憲章の改正を伴う、そして、国連憲章の規定上、この改正はかなりハードルが高いものであるからして、同じく国連憲章の改正が必要となります安保理改革の議論とあわせて国連憲章の改正を進めていく、こういった考え方を従来からも申し上げてきたところであります。

 特に来年は、国連発足七十周年という大きな節目を迎えます。国連も創設してから七十年という月日を迎えるわけでありますが、その間、国際情勢は大きく変化いたしました。にもかかわらず国連の体制が全く変化しないということが、十二分に時代の変化に対応しているんだろうか、そもそも国連が時代の変化の中で実質的に対応できる体制であるのだろうか、こういった指摘もさまざまなところからされているところであります。

 ぜひ、国連改革を伴う安保理改革の部分は、この七十周年の節目を迎えるに当たりまして、より大きな覚悟で取り組まなければならないと思っていますし、あわせて敵国条項についても取り組みたいと考えております。

 ただ、委員の御指摘は、それ以外に何か工夫するものがあるのではないか、こういった御指摘でございました。私も不勉強でありますので、そうしたほかの具体的な工夫があるものかどうか十二分に承知しておりませんので、その方法があるものかどうか、一度自分なりに考えてみたいと存じます。

松本(剛)委員 安保理改革も極めて重要なテーマだというふうに思っておりますので、また、私自身も携わってきたこともあって、決してこれを軽くするというようなことにつなげてはいけないということは承知しております。

 その上であえて申し上げれば、安保理改革によって、我が国のいわば外交力が増すということも含めて、我が国にとってメリットが大きいと思いますが、先ほど申し上げた敵国条項の問題は、きちっとこのことに、死文化しているということに規範性を持たせ、なおかつそのことを何らかの形で国際的に共有するということが担保されていなければ我が国の主権に対して大きなデメリットがあるという緊急性、危機感を思うところがあったので、きょうあえて取り上げさせていただきましたし、両者を切り離すことがどちらかを軽いということにするということかどうかというのは、戦略的にもさまざまなお考えがあろうかというふうに思いますが、改めてこの問題についての危機感をお持ちいただきたいということをお願い申し上げて、次の問題に行きたいと思います。

 若干時間が押してきておりますが、小松長官にわざわざ御足労いただきましたので、一、二議論をさせていただきたいと思います。

 PKOの参加についての憲法の解釈について幾つかお伺いしたいと思います。

 国際的な平和協力を積極的に進めるべきだと私も論理的には考えております。他方では、私も、自身が最終的に直接決定をしたわけではありませんが、南スーダンのPKOに自衛隊の皆さんに行っていただくことについては、一定程度、道筋をつけることについては関与いたしました。我が国の若人を含めた自衛官の皆さんに、リスクも含めて、必ずしも全ての条件がそろっているとは言えないPKOに行っていただくということの判断は極めて重い判断だということを十分認識した上で、改めて伺いたいと思います。

 いわゆる集団安全保障、これは、国連軍、PKO、多国籍軍が集団安全保障と言えるかどうかというのはいろいろ議論があろうかというふうに思いますが、この関連において、少なくとも今、我が国の法体系においては、PKOに参加した場合も、我が国は、自身の行為である、したがって憲法九条の適用を受ける、こういう構成になっているというふうに理解をしております。つまり、国連の指揮のもとで、国連の名において、国連において行われるものであるとすれば、我が国の行為でなければ我が国の憲法九条の対象にはならないということになろうかというふうに思います。

 現段階ではそういうふうに解されていると理解をしておりますが、その解釈、確認をしたいと思います。

小松政府特別補佐人 今の御質問について端的にお答えを申し上げますとすれば、従来から政府が申し上げておりますことは、PKOは国連の統括のもとに行われる活動でございますが、これに参加する各国部隊等の活動は各国の主権に基づく活動である、したがって、当然、我が国の部隊がそれに参加するということであれば、憲法九条を含めて、その枠内で行われなければならないということを申し上げているところでございます。

 一点だけ、冒頭で、いわゆる集団安全保障とPKOとの関係につきまして、私、もしかしたら聞き間違えたかもしれませんけれども、PKOが集団安全保障の一環であるという御発言であったかなというふうに聞きましたけれども、そこのところにつきましては若干の留保がございます。

松本(剛)委員 ちょっと時間がないのではしょってお話をさせていただきますが、制裁的な活動を誰がするのか、それをPKOという意味でどうするのか、そういうさまざまな議論があるということはよく承知をいたしております。

 お聞きしたかったのは、PKOに参加している我が国の自衛隊の活動は我が国の行為であるということの前提で、武器使用の権限であるとか九条のさまざまな解釈が成り立っているというふうに思いますが、例えばこれは、統括のもとということですが、法に基づけば、指図がある、指揮とは異なる指図があるといったような整理になっているというふうに私は理解をしておりますが、これは、国際的に見れば、いずれも指揮ではないかという見方もあるというふうにも承知をしております。

 そこで、一つお聞きをするのは、例えばジュネーブ条約など武力紛争に関連するさまざまな法規がありますが、PKOに適用される場合、この主体は国連なんでしょうか、各国なんでしょうか。多国籍軍であれば間違いなく各国ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

小松政府特別補佐人 大変申しわけございません、突然の御質問でございますので、私、手元に資料がございませんけれども、今の御質問は、ジュネーブ条約とPKO要員との関係につきましては、これは国際法上の問題でございますので、私の所管ではございませんので、大変恐縮でございますけれども、外務省からお聞き取りを願えればと思います。

松本(剛)委員 わかりました。それでは、機会を改めて外務省にお聞きをさせていただきます。

 申し上げたかったのは、国際的に見て、PKOというものが、国連のという形で見られているのか、各国のという形で見られているのかということから見れば、私は、このジュネーブ条約も、国連のという形で適用されるという解釈が大勢ではないかというふうに理解をしておりますし、国連のということであれば、我が国の行為としてPKOの活動を九条の対象にするということそのものを少し議論する余地があるのではないかということでお話をさせていただきましたが、何かありますか。

小松政府特別補佐人 お時間をとって恐縮でございます。

 冒頭申し上げましたとおり、PKOは国連の統括のもとに行われる活動でございますが、参加する各国部隊等の活動は、各国の主権に基づく活動である、これが従来の答弁でございます。

 もしお許しをいただければ、ごく短く、代表的な答弁、これは衆議院安保委員会、平成十三年十一月二十七日、津野内閣法制局長官の答弁でございますが、

  国連平和維持活動でありますけれども、これは国連安保理決議等に基づきまして国連が組織し、国連の統括のもとに行われるものでありますが、このことは国連が各国から派遣された要員に対する指揮監督権を有することを意味するものではありませんで、国連は各国から派遣された部隊や要員の配置等の調整に関する権限を有するにとどまるものであるというふうに理解しております。

  したがいまして、PKOに派遣された自衛官は我が国の公務員として活動するものであり、自衛隊の部隊の活動は我が国の活動そのものでありますから、当然憲法の枠内で行われるべきであるというふうに考えております。

このとおり答弁してございます。

松本(剛)委員 与えられた時間が迫っておりますので、大変恐縮ですが、もう一度時間をいただいたときに続きをさせていただきたいと思います。

 改めて今回取り上げさせていただいたのも、このPKO、参加五原則も含めて、三年間の民主党政権でも、その前の自公政権でも議論をされてまいりました。

 例えば、参加五原則の中立性という話があります。PKOそのものもやはり随分変わってきたというふうに思います。中立というのは、どちらの紛争当事者にもくみしないということがいわば中立だろうというふうに思いますが、昨今のPKOが派遣をされる状況においては、一方が紛争をいわば助長している、もしくは国際的なルールに違背しているとも、国連の決議の中である程度判断をされた形でPKOが出ているケースもあります。そうなってくると、中立性という概念についても考えていかなければいけないというふうに思うわけです。

 そういった判断がある中で、国連として活動していくということになってきた場合には、これも答弁が、従来のPKOは国際紛争解決の武力行使だ、こういうことになっていたわけですが、今申し上げたような中立性という考え方も大きく変わってきつつある中では、この考え方も変える議論をすべきではないか。そして、今お話をさせていただいたように、誰の行為なのかということも、そのことを考えれば余地があるのではないか。

 もう一つ、これは問題提起だけさせていただいて、また次回の機会にお聞きをしたいと思います。

 海賊対処ということで議論させていただきました。テロの問題もあって、いわば警察という分野が随分軍事に近づき、軍事という分野が、治安維持、海賊対処など警察に近づいているという今の傾向は、間違いなく指摘できるというふうに思います。少なくとも海賊対処のときは、国際的な秩序に違背する海賊という行為に対する警察活動であるから認められるんだ、基本的にはそういう論理であったと思います。ですから、国であるとか国に準ずる者であるとかいうことにかかわらずということも議論させていただきました。

 治安維持、テロへの対策というのも、分類すれば警察活動だということにもなってくる。そうすると、PKOの任務いかんによっては警察活動だという説明ができるものも出てくるのではないかという問題意識を持ってきょう議論させていただきたかったんですが、ちょっと敵国条項で時間をとりまして、御足労いただいたのに余り議論を深めることができなかったことをおわびしながら、次回以降のお願いをさせていただいて、質問時間を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 日本維新の会の小熊慎司です。

 常日ごろ、ODAに関しては選択と集中と拡大ということを言い続けておったんですが、昨今悲しいニュースが入ったのは、インドネシアでの火力発電事業について丸紅が賄賂を贈っていたということで、アメリカに罰金を払い、外務省としても丸紅のODA事業の参加を九カ月間停止するということがあります。

 世界的な腐敗認識指数で見ると、いろいろな国があって、確かにそういう途上国においては指数が高い国がありますから、私も海外へ行っていろいろな関係者と話すと、賄賂の世界というのが本当に現実にあるというのはもちろん認識はしております。でも、そういう中でしっかりと日本のODAをやっていかないと、こういう事件が起きてくると、国民に対しても、ODAというのは格好いいことは言いながらやはりダークな世界があるんだ、非常にイメージを損なうことだと思うんですね。

 丸紅さんも、罰金を払ったからそれでオーケーということではなくて、これはやはり日本の名誉を傷つけたことだというふうに私は思っています。

 外務省としては、まず、今回の事案に関しての認識、また再発防止等を含めて、またこれからのイメージ回復、名誉回復を含めて、ちょっと対応をお伺いいたします。

石原大臣政務官 小熊委員にお答え申し上げます。

 大変残念な事案でありますけれども、委員が言われたように、丸紅株式会社が米国連邦海外腐敗行為防止法違反を認め、米国司法当局との間で司法取引を行って有罪を認めたことは、外務省としても大変遺憾に思っております。

 今般、外務省及びJICAとして、それぞれの関連規定に基づき、措置の実施を決定し、一昨日から十二月の二十五日まで九カ月間、丸紅株式会社の無償資金協力、円借款及び技術協力の各事業への入札参加は認めない、そういう措置をとらせていただきました。

 お尋ねの点について、今回の措置について、同企業が実施済み、または事業継続の案件は対象とはなっておりませんけれども、こういうことが起こらないように、しっかり監視を強めてまいりたいというふうに思います。

小熊委員 ぜひ、再発防止もしなければならない。また、国内外に向けて、日本のODAがしっかりとやっているんだと、これはイメージを損なわれたわけですよ、これはやはり高めていかなければならないんですよね。こういうことが起きると、私も本当に、拡大しろ拡大しろと言っても、おまえは何を言っているんだとやはり言われちゃいます、こういう案件は。おまえも何かもらっているのかとまで言われるかもしれないんですよ。全然ないんですけれども。

 だから、そういう意味では、イメージ回復も含めて、これはしっかり取り組んでいかないと、まさに、これまでも質疑してきましたけれども、ODAに対する認識が、まだまだ国民の間では理解が深まっていない状況であります。単なるボランティアだと思われているという部分もありますし、また、そういう意味では、今回の事案は非常に私は重いというふうに思っていますので、再発防止はもちろんですけれども、ぜひイメージ回復、さらに国民の理解を深める、ある意味ではピンチをチャンスに変えるきっかけとして捉えて、この事案は決して軽い事案ではないというふうに思っていますから、ぜひそこは認識して、今後、しっかりとその再発防止、またイメージ回復といったものに努めていただきたいというふうに思っています。

 次に移ります。

 この間の委員会でも、ODAに絡んで、小さな国々が、国民の所得が上がってくればODAの対象国じゃなくなってくる。でも、小さい島や国によっては、人口が小さい、経済規模が小さい、また自然災害等が起きて脆弱であるから、ODAの対象国として、また新たな基準において支援をしていってほしいという話をして、前向きな答弁もいただきました。

 そうした国々の一つの集まりとして、小島嶼国開発会議、いわゆるSIDS、これが、第三回がことしの九月、サモアで行われます。

 昨年、外務省がサモアとも文書を取り交わして、一億円ぐらいある中で、それをそっちにも使うということですけれども、これはもう具体的にどんなふうに使っていくかというのは決まったのでしょうか。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 小熊委員が御指摘になった一億円は、国際会議に要人が来られますので、その移動手段としてのマイクロバス二十台、これは日本の三菱ふそう製というふうに聞いておりますけれども、購入に充てられるというふうに認識をしております。

小熊委員 また、この間お聞きしたんですけれども、外務省またJICAの方で、サモアのODA案件の調査として来月職員を派遣するということも聞いております。これはサモアのODA案件についての調査だと聞いてはいるんですが、せっかく行くんですから、また、SIDSへの支援みたいなことをしっかり現地の人とやりとりする、そういう機会というのは職員の出張中にありますか、やるべきだと思うんですけれども、どうですか。

大菅政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、四月に派遣しますのは、太平洋地域環境計画のもとにつくります太平洋気候変動センター建設計画、この件につきましてSPREP側と協議を行い、協力内容を詰めるということが主たる目的ではございますが、そう簡単に職員が行き来できる場所ではございませんので、当然ながら、来るSIDSの国際会議、この関係の意見交換もさせてくるようにいたします。

小熊委員 それぞれの国はちっちゃいわけですけれども、カリブの方とかまたアフリカの方とか、本当に多くの国が集まる国際会議ですから、ぜひこれは、日本がしっかりと支援している、日本のプレゼンスを上げていくためにも、より積極的に、その行った際にまたいろいろなオーダーがあれば、これはどんどん日本政府としても応えていかなければいけないというふうに思います。

 そうした場合の補正予算の措置とかは大いに私は賛成していきますから、ぜひ、どんどん現地の状況を聞いて、しっかりとこの会議が成功するのに日本が寄与できるように、情報収集に努め、その上で対策はまた大臣の手元で練っていただきたいなというふうに思っている次第であります。

 さらに、前回も青年海外協力隊の件をお聞きしました。また、この間、帰国隊員、シニアボランティアを含め、政務官も行って、私も感謝状贈呈式へ行ってきましたけれども、この間この委員会で質疑した後、青年海外協力隊のOBである私の妻にえらく指摘を受けました。

 聞くところによると、今、OBの方のJOCAの方で、有名な作家の湊かなえさんもOBですけれども、彼女の脚本か何かで青年海外協力隊の映画化も進んでいる、それで、どんどん認識を広めていくというのはもう進んでいるんだということを妻からも聞いたんです。

 きょう資料でもお示ししていますけれども、職種によって、応募数が多い職種はいいんですけれども、私も、青年海外協力隊の枠を広げろ広げろと言うのは簡単だったんですが、よくよく見ると、応募率の低い職種、たしかこれはそれぞれの国から要請があったものに応える、我々が無理やり押し売りするわけにもいきませんから、その要請に応じてしっかりその人材を派遣していくということがその国のためですから、となると、要請が全然満たされていない職種が結構あるんですね。

 この点をどうしていくかという対策を個々にやっていかなきゃいけない。人材発掘や、またそれぞれの職種の現場に応じた対応策というのは必要になってくるというふうに思いますけれども、とりわけ応募率の低い職種に対してどのようなアプローチをしているのか、対策をとっているのか、お聞きをいたします。

大菅政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、青年海外協力隊事業におきましては、例えば保健師ですとか理科教師それから家畜飼育、こういった分野、職種につきましては、途上国からの要請数に比べまして応募者が少ないという現状がございます。国内の関係機関に働きかけをする等して、人材確保に向けた取り組みを行っております。

 具体的には、例えば保健師でございますと日本看護協会に個別具体的に協力のお願いに上がるですとか、理科教師であれば教員採用情報のウエブサイトに協力隊募集の広告を載せる、それから、家畜飼育でございましたら畜産専門誌にまた広告を出す、そういった工夫をしておるところでございます。

 さらに、隊員募集の説明会、この回数が若干低くなっておりますので、また、去年ぐらいから説明会の回数をふやす、さらに、説明会の中でも、現場で実際に活動を行っている隊員とテレビ電話でつないで、より魅力的な説明会にする、こういった工夫を行っているところでございます。

小熊委員 今対策をしていてこれだけなんですよね。特にこの理科教師なんというのは、百二十九も来ていて二十七ですよ。今のような努力の延長線でこれが満たされるとは到底思えませんし、きのうの本会議でも我が党の村岡代議士が、農業高校を出る子供たちが何万人もいて、実際の農業者数は何百人しか就労していかない、それは農水委員会の中で岩永議員が言った話を出していましたけれども、そういう状況なわけです、それぞれの現場で。

 これも、私は同じような話になってくると思います。高校を卒業して、大学を卒業して、いきなり協力隊に行くというのも、なかなかこれは大変、まあ、うちの妻はそういうふうになって行ったんですけれども。ある意味では、高校や大学とかと連携して、まさに一定程度研修、農業なんかは一年ぐらい研修させてから出すという協力隊の仕組みもありますけれども、そういう教育現場にまで踏み込んで若者を触発していく、逆に人材育成していく。農業分野なんというのは、協力隊どころか、今言ったとおり、農業高校を出ているのに農業に進まないという現状の中なんですよ。

 これは、単に情報発信をしていきます、細かく説明していきます、協力を要請していきますということだけでは、やはり事足りないと思うんです。ある意味、協力隊の隊員の応募数が少ないということは、これは外務省だけの取り組みではなくて、日本全体として人材育成がなされていないという一つの証左だというふうに捉えてもいいんじゃないかと思います。

 そういう意味では、これは安倍総理のもとでも、留学生をふやしましょう、また、来ていただく留学生もふやしましょうと今やっているところでありますけれども、まさに人材育成という観点から捉えていかないと、通り一遍の努力では、私はこの応募者数が埋まっていかないというふうに思いますし、さらに、私は拡大論者ですから、拡大したはいいけれども人材がいなかったということでは、何のための拡大だということにもなってきますから、ぜひ、まさに教育現場まで踏み込んで、逆に人材育成をしていく。

 あとは、これは民間企業とかも含めて、協力隊に行くことに一つのインセンティブを与えるようなことをしていかないと、やはり集まってこないなというふうに思っています。とりわけこの理科教師なんかは、やはり文科省としゃべって、先生になった人の途中の、行けばこうなっていくという、県庁に行って、そこから出世コースに行くばかりが能じゃない、そんな仕組みをやはりつくっていかなきゃいけないというふうに思います。

 しっかりと、人材育成、またさらにいろいろなインセンティブを働かせていくということが必要ですし、さらに踏み込めば、高校、大学、新卒者も一定程度行かせる。その場合は、逆に研修期間を多く、今までの数カ月ではなくて、もっと長い期間、国内研修はさせなきゃいけないかもしれません。

 そういったところまで踏み込んでいかないと私はふえていかないというふうに思いますけれども、どうですか、そういった方向性、取り組みについては。これはもう政治家の範疇ですね。

岸田国務大臣 御指摘の青年海外協力隊の募集に対する応募についてですが、今お話を聞いておりまして、こうした青年海外協力隊の募集の分野のみならず、我が国全体を考えましても、こうしたあらゆる分野において幅広い人材が存在するというのは、我が国、そして社会自体が活力を持つためにも大変重要な視点ではないかと考えます。ですから、こうした幅広い分野に厚い人材が存在する社会をつくっていくという基本的な考え方は、ぜひ、関係省庁はもちろんですが、国全体としても取り組んでいく課題ではないかと存じます。

 その中にあって、青年海外協力隊の人材ということにつきましても、人材育成の観点から、教育を初め幅広い関係者の協力を得て人材育成に努めていく、こういった努力は基本的に重要な視点ではないかと存じます。

 具体的にどうするかということにつきましては、いま一度よく検討し、調整もし、協議をしていかなければならないと存じますが、基本的な考え方といたしましては、委員の考え方は私も同意するところであります。

小熊委員 いい答弁をありがとうございます。

 その同意していただいたのを実現するためにも、外務省の予算も拡大をしていかなければいけませんので、大臣、これからまたさらに努力をよろしくお願いいたします。

 次の話題に移りますけれども、今農業の話も少し出しましたが、今、TPP交渉とか、いろいろな貿易交渉があります。そういう中でも、とりわけ農業団体から、貿易交渉に関しては、TPPのみならず、いろいろな反対の声を聞きます。そのときに、いわゆる食料の安全保障といった観点から農業分野の門戸開放を反対する、そういう論点に立脚する方々もいるわけであります。

 もちろん、カロリーベースで計算すれば、もう四割前後になっていますから、では、これが極端に回復するのかといえば、御承知のとおり、今のカロリーベースの食料自給率でいえば、大幅に日本人の食生活を改善しない限り、肉を食べているということであれば輸入飼料がほとんどですから、そういうことを考えれば、大幅には改善はしていきません。

 まして、人間が食べる穀物自給率というのは、それだけをとってみれば、実際は数十年来、高い水準ではあるわけです。でも、いろいろな多様性のある食生活を支えるという意味では、カロリーベースの食料自給率で語るということは国の責務ではある、一つの視点ではあるというふうには思います。

 そうであるならば、ほかのいろいろな国々、いろいろな土地柄があって、いろいろな農業形態がありますから、やはり食料自給率が必ずしも高い国ばかりではないわけです。ほかの国がどういうふうにやっているかといえば、例えばスイスみたいな国においては、食料自給率というよりも、外交をちゃんとやって、いろいろなルートで輸入生産物を確保していこうという方針で食の安全保障といったものを考えている国もあります。

 また一方で、これはある意味ではその負の部分も多いんですけれども、今、ランドラッシュとかランドグラビングとか、農業の法人や農業者が海外に進出をしていって、そこで大規模な農地を取得するか借りて、そして自国の方に安定的に供給をしていくということもやっていますし、日本の企業の中でもそういうふうにやっているケースも年々ふえてきてはいますが、国によっては、農地取得のために補助金を出してやっている国もあるんですね。

 日本においては、例えば企業の海外進出には外務省が中心となっていろいろ支援をしているんですけれども、農業分野といったものは特に目立ったものがあるのは私は見受けられなかったんです。

 まず第一番目の質問ですけれども、まさに食の安全保障という観点から、これは自国の食料自給率を上げていくということも重要です。これは農水省さんがしっかりやっています。だけれども、また安定的な輸入対策というのもしていかないと、現実論として一〇〇%自給率ということにはいきませんから。安定的な輸入対策というものに関してはまずどのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員言われるように、我が国はカロリーベースで食料の約六割を海外からの輸入に依存しております。国内の農業生産の増大を図ることを基本としつつも、輸入による食料の安定供給を確保していくことが重要であるというふうに考えます。

 そういう中で、食料の輸入は民間ベースでの取引が基本ではありますけれども、政府としても、例えば農業市場情報システム、AMISといった国際的枠組みへの参加により、安定的な国際農産物市場の形成等の側面支援に努めるとともに、食料輸出国との全般的な二国関係の強化も図っているところであります。

 また、世界全体の食料生産の促進等により、グローバルな食料安全保障を強化し、価格の安定を図ることが我が国の食料安全保障にとっても重要との観点から、国際機関とも連携しつつ、国際協力を行っているところであります。

小熊委員 それは本当に教科書どおりの答弁なんですね。

 それをやっていくときに、選択肢として、先ほど申したとおり、ランドラッシュといった選択肢を積極的に日本政府が進めていくのか、あくまでも全く自由にしていくのか。先ほどお話ししたとおり、国によっては進出する農業者に支援をしているわけです。日本は、農業ではなくて、普通の製造業とかそういうところが進出するときに支援していますよね。

 では、こういった一次産業に対して、今後、支援をするのか。これはどうですか、今後の課題として。

梶島政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員からお話のございました農地の取得あるいはリースといった形で農業生産をしていくということにつきましては、これまでも、とりわけ家畜の餌とか、それから油脂原料となる大豆やトウモロコシ、こういったものを中心に、農業投資関連の情報提供あるいはODAの活用といったもので、実際に、例えば日伯セラード開発といったものに取り組んできたところでございます。

 そうした取り組みに加えまして、最近は、国内市場が高齢化、人口減少といったことで縮小していく中で、海外市場の成長を取り込んでいこうということで、農業者あるいは農業生産法人あるいは民間企業というものの海外進出が進んできております。ここは御指摘のとおりだと思います。

 そういう中で、市場開拓という観点だけではなく、いざというときの我が国への安定供給にも貢献するんだ、そういう観点にも着目いたしまして、ODAなどとも連携しつつ、生産、加工、流通、貯蔵、こうした技術は民間企業が持っております、そうした民間の活力も活用するという観点で、フードバリューチェーンを構築していこうということを現在政府内で検討してございます。

 そうした方向を目指して今後とも進めてまいりたいと思います。よろしく御支援のほどお願い申し上げます。

小熊委員 今後の検討の中でしっかりとそれは結果を出していかなければいけないんですけれども、ただ、実は今、私自身がこれを推進するという意見を持っているわけではないんです。

 やはり、やり方によっては、例えば、国内で付加価値をつけて海外に輸出していくものが、現地でもいいものがつくれちゃったとなれば、逆輸入してしまうというケースも出てくる場合もありますし、または、日本のために相手国の農地を大規模開発して荒らしてしまう、その相手国が飢餓に遭って食べられないのに、それを日本に持ってきてしまう、そういう側面が出ないように、これはやはりウイン・ウインの関係でやっていかなければいけないというふうに思っています。そういう意味では、製造業やそういうのだって、それはウイン・ウインの関係で進出しているわけであります。

 ただ、これは、事やはり土地に絡む、農業に絡むというのは、非常にそれは根源的なテーマでもありますから、こうした進出を支援していくという場合には、現地の国とあつれきを生まない、また、ある意味では、ブーメランで、せっかく日本のいいブランドが売れなくなる、そういったことも含めて、慎重に検討しつつも、ただ、やはり、その選択肢をほったらかすのではなくて、逆にやっていく、選択肢をとらなきゃいけない部分ではあるんですけれども、ぜひ、そういったことを考慮しながら進めていっていただきたいというふうに思います。

 そこで日本の成功事例をしっかりつくって、これは、ほかの国によっては、アフリカやまたロシアの方でも極端に買っているわけですよ。本当はランドラッシュとランドグラビングというのは余りいい言葉ではありません、土地の奪取とかという言葉ですから。行った国のところで日本のランドグラビングはなんて言われないように、土地を買いあさっている、借りあさっていると言われないようにするためにも、しっかりとした方向性の中でこれを進めていかなければいけません。

 日本がそうした成功事例を示すことによって、今、この分野において、この政策は国際社会の中では少し乱暴な状況が続いているというふうに私は思っています。紳士的な対応じゃないと思っています、特にアフリカの国においては。だから、日本がしっかりとしたお手本を示していくという意味では、早急に日本のプロジェクト、日本のプロトタイプをつくって、しっかり世界の基準にしていくということも、そういった使命も負ってぜひともこれから検討していただきたいというふうに思います。今後もこれは前向きな議論としてやっていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 時間がなくなりました。ウクライナの件ですけれども、これは委員会でもずっと続いています。

 先日、我が党の部会の中でも外務省の方からウクライナ情勢について説明を聞いたときに、この委員会でも多少出ていますけれども、やはり一番多かった議論というのは、これを新たな世界の秩序にしてはいけないんだということです。

 現実、いろいろな制裁をこれからしていくでしょう、ほかの国とも連携をしながら。でも、ロシアが実効的な活動を、許しがたい行動をしてしまっている。これを武力で排除するという選択肢は、多分日本においてはないわけです。それと、解決のためには地道な時間はかかるんですけれども、では、一方で、明快な結果が出てくるかどうかというのも、なかなか見えてこないというところが苦しいところでもあります。

 さはさりながら、これは本当に諦めずに取り組んでいかなければいけないんですけれども、これがほかの方に飛び火していかないようにするということのためにも、これは日本とロシアのお互いの国益もありますよ、北方領土を返してもらうことも含めて。あと、私も委員会で説明したガスの開発も含め。しかしながら、やはりここは、まさに法と正義、そうした価値観を日本がちゃんと守っているんだという意味では、厳しく対処していくということが対ロシアにとっても必要ですし、これをほかの地域に飛び火させない、このクリミアのルールを新しい世界秩序にしてはいけないという意味でも必要だというふうに思います。

 それは総理も言っているところでありますけれども、ここはより強く言っていかなければいけないんじゃないですか。とりわけアジア情勢というのは、今、ある意味、波が静かな状態ではありませんから。

 そうした観点に立って、厳しくやっていく、そこは一歩も譲らない、飛び火もさせない、こうしたロシアのやり方を今後の慣例にさせないということを、大臣に改めてお聞きをいたします。

岸田国務大臣 ウクライナ情勢につきましては、ロシアによるクリミア編入、これは国際法違反であり、ウクライナの主権あるいは領土の統一性を侵害するものとして非難するというのが我が国の立場であり、力による現状変更は認めないということを強く表明しています。

 こうした考え方は、二度にわたるG7共同声明、そして、先日、二十四日に発出されましたハーグ宣言にも、我が国は参画するという形で国際社会に発信をしているところであります。

 そして、先日行われましたG7の首脳会談の場においても、安倍総理からは、アジアの厳しい安全保障環境も念頭に、この問題は一地方の問題ではなくして国際社会全体の問題であるという考え方を表明し、多くの参加者から賛同を得たという報告を受けていますが、こうした考え方は、まさに委員の考え方にも一致する考え方ではないかと受けとめています。

 ぜひ、今後とも、我が国はこうした考え方をしっかりと国際社会に表明していかなければならないと思いますし、G7を初めとする関係国とも連携していかなければなりません。

 あわせて、ロシアと日本、これは昨年来の積み重ねてきた二国間関係があります。この二国間関係に基づいて、ロシアにも直接こういった考え方、立場をしっかり伝えていく、働きかけていく、こうした対応も我が国の独自の対応として考えていくべきではないか、このように考えます。

 いずれにしましても、こうした力による現状変更は認めないという考え方は、これからもしっかりと発信をしていくべき内容であると考えます。

小熊委員 時間が来ましたので終わりますが、飛び火をさせないという意味では、国際社会と連携して、我々が言っていることと同じことを中国にも言わせることが重要だということが肝なんです。この案件は中国も一緒でしょう、これはまずいと思うでしょうと言わせていくということが大事だと思います。

 これは日本と中国だけでやりとりできる話ではないので、まさに国際社会の中で、中国もこっち側の価値観にこのクリミアの事案で引き込んでいくということもやっていくことが、ある意味、飛び火をさせないということになってきますから、そういった方面での努力もぜひお願いをして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 きょうは、積極的平和主義という言葉について大臣のお考えを聞きながら、平和に向けて日本としてどのような貢献ができるかということについて、昨今のさまざまな国際情勢における問題を提示しながら考えてまいりたいと思います。

 まず、私も少し平和学という勉強をかじったものでございますから、この積極的平和あるいは積極的平和主義という言葉については、いろいろと思うところがございます。

 平和学においては、積極的平和という言葉は、消極的平和とセットで、単に国家間の戦争や地域紛争がない状態に加えて、社会における貧困や差別などの社会的構造が生み出す暴力がない状況である、これが、ノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥングが定義した言葉でありまして、平和学の世界の中ではこの定義が一般的に使われているということでございます。

 ですから、積極的平和主義というのは、こうした積極的平和を志向する姿勢について指しているということが言えるかと思います。

 一方で、現在の安倍政権は、国家安全保障戦略の基本理念として積極的平和主義という言葉を、二〇一三年十二月十七日に国家安全保障会議及び内閣の閣議で、外交、安全保障の基本方針として決定をいたしました。我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく、そういった文脈の中で使われております。

 ですから、最初に私が申し上げた、平和学における、暴力を生み出す構造的要因をなくしていくということとは異なる意味で、安倍政権はこの積極的平和主義という言葉を使っていると私は感じています。

 岸田大臣は、まず、この言葉の定義についてどのように考えていらっしゃるんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、委員の方から御紹介がありましたノルウェーの平和学者ガルトゥングの消極的平和、そして積極的平和、こうした定義につきましては、先ほど委員の方から御紹介いただいたとおりだと承知をしております。

 一方、今我が国は、国際協調主義に基づく積極的平和主義という考え方を我が国の外交、安全保障の基本理念として掲げております。

 この積極的平和主義の中身につきましては、我が国としましては、アジア太平洋地域を初め国際社会全体の平和と安定あるいは繁栄に貢献することにより我が国の平和や安定も確保していく、こういった考え方のもとに、今まで以上に積極的に国際的な貢献に努めていく、寄与していく、こういった考え方であります。

 そして、この考え方につきましては、これも御指摘がありました、昨年末発表いたしました我が国の国家安全保障戦略の中に総合的な施策を明記しております。我が国の能力、役割の強化、拡大、日米同盟の強化、国際社会の平和と安定のためのパートナーとの外交・安全保障協力の強化、国際社会の平和と安定のための国際的努力への積極的寄与、地球規模課題解決のための普遍的価値を通じた協力の強化、そして国家安全保障を支える国内基盤の強化と内外における理解促進、こういった施策を進めていく、これが我が国の積極的平和主義の内容であると理解しております。

阪口委員 今の御説明を聞くと、従来の積極的平和、平和学で使われている定義に加えて、さらに、平和を執行していく、そういった措置も含めた、要はより幅広い意味を持っている、こういった解釈でよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 どちらが幅広いかというのは、一概に言うのは難しいのかもしれませんが、我が国の積極的平和主義というのは、我が国の今置かれている厳しい安全保障環境、さらには昨今の新しい状況変化、例えば宇宙ですとかサイバーですとか、容易に国境を越えてくる新しい脅威の登場、こういったことを考えますときに、どの国も一国のみではみずからの平和や安定を確保することはできない、やはり、地域ですとか国際社会全体の平和と安定を確保することによってみずからの安定も確保する、こういった考え方に立たなければならない。よって、我が国も今まで以上に積極的に地域や国際社会の平和や安定に貢献していこう、こういった考え方に基づいて、この積極的平和主義という考え方を我が国の外交・安全保障政策の基本方針として掲げたというふうに考えております。

 どちらが広いか狭いかはわかりませんが、従来、委員のおっしゃる平和学における積極的平和と重なる部分も多いのではないかと思いつつ、まずはこの我が国の考え方について、しっかり国際社会で理解を得るべく、丁寧に説明していくことにも努めていきたいと考えております。

阪口委員 ここは、日本語で言うと全く同じ言葉であるということが生み出す、いわば誤解というか、言葉が同じだからこそ、安易に使ってしまうということがさまざまな誤解を生むケースがあるということには注意をすべきだと思います。

 一方で、これは英語表記で言うと、平和学で言うところの積極的平和はポジティブピースという言葉を使います。外務省などではプロアクティブ・コントリビューション・フォー・ピースということで、使い方が違うんですね。

 ただ、私が本当に気をつけなければいけないと感じていることは、平和学における積極的平和というのは、とにかく、紛争などが生み出す構造的暴力、この構造自体を変えていく、なくしていく、これが大きな目的であるのに対し、先ほど私、平和執行型ということを申し上げましたが、積極的にその地域の安定を求めていく、その中で武力行使も肯定するという方向になった場合、実際には構造的暴力を生み出す要因をつくり出していくことにもつながりかねない。このあたりは本当に心していかなければいけないと私は非常に強く思っています。

 一方で、昨年九月二十六日の国連総会で、安倍総理はこのようにおっしゃっています。積極的平和主義の立場から、PKOを初め国連の集団安全保障措置により積極的に参加できるように図ってまいりますということであります。また、国連の活動にふさわしい人材を我が国はたゆまず育てていかなければいけないと考えています。これは安倍総理のスピーチであります。

 私も、国連の安全保障措置とは何かということを改めて調べてみたんですが、基本的には、平和の脅威となる国への金融措置などの経済制裁のほか、いわゆる武力行使も含まれるんですね。具体的には、例えば、クウェートに侵攻したイラクを撤退させた湾岸戦争の多国籍軍、これなどは国連による安全保障措置であるとされています。まさに、こういった武力によるさまざまな措置、武力行使また経済制裁というのは、これは本当に構造的暴力を生み出す要因をつくり出しかねないと思うんです。

 このあたり、大変矛盾しているように思うんですが、大臣はこの点についてはどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国の外交、安全保障の基本方針である積極的平和主義におきましては、我が国自身の安定、安全を守るためには、まずは外交手段が中心でなければならないと考えておりますし、あわせて、万が一のために、我が国として国を守る体制についてもしっかりと備えておく、こういった基本的な方針であると認識をしております。

 あわせて、先ほど申し上げましたように、地域や国際社会全体の安定を守ることによって我が国の平和や安定を守っていく、こういったことから、国際社会の安定のためにより貢献していかなければならないわけであります。そして、貢献の手段として、今御指摘がありました、さまざまな手段が想定されます。その際に、我が国としては、当然のことながら、国際法の範囲内で協力をしていくわけでありますし、国連を初めとするさまざまな国際社会の枠組みの中で連携をしながらこうした平和や安定を確保するために貢献をしていくということになります。

 具体的な手法につきましては、その時々の事態に応じて判断しなければなりませんので、一概に申し上げるわけにはいきませんが、いずれにしましても、国際社会と思いをしっかりと共有しながら、理解を得ながら、丁寧に進めていく課題であると考えています。

阪口委員 外交においては、特に外務大臣の役割は、まずは、さまざまな紛争解決において、武力を使うのではなくて、とことん外交努力、話し合いによって解決をする、これを中心に据えるべきだと思います。その上で、幾つか具体的な事例をもとに質問をしたいと思うんです。

 つい三月二十四日にミャンマーに行かれました。そこで、テイン・セイン大統領、またワナ・マウン・ルイン外相と会談をされたということでございます。

 まず、外務省のレポートを読ませていただいたんですが、この中でも積極的平和主義という言葉を使われています。これは外務省の報告書にそのように書かれているんですが、「少数民族との和平に向けた「積極的平和主義」の下での我が国からの支援等について、率直な意見交換を行い、各分野で協力を進めていくことで一致。」したということでございます。

 繰り返しになりますが、私は先ほど大臣には外交努力を中心にと申し上げたその理由は、構造的暴力をなくしていくということにとりわけ力を入れていただきたいということなんですね。

 そういった考えに基づいて、この中で、来年の総選挙についても意見交換をされたということですが、来年のミャンマーの選挙というのは大変に世界が注目する選挙になると思います。この中で、日本としてどのような貢献をするのか、このことについては意見交換というのはあったんでしょうか。

岸田国務大臣 先日、ミャンマーに行かせていただきました。

 日本とミャンマーは、ことし、国交樹立六十年を迎えることとなりました。また、ミャンマーは、ことし、ASEANの議長国の役割を果たすことになります。ASEANと南アジアの結節点に存在し、そして経済発展の可能性が指摘をされ、もともと親日的なミャンマーとの関係、我が国にとりましても大変重要な関係だと認識をし、御紹介いただきましたように、大統領、外相、あるいはアウン・サン・スー・チー議長を初め関係者と意見交換をさせていただきました。

 その中で、少数民族との停戦、和平の達成、これも大変重要な課題だと認識をし、積極的平和主義のもとで当事者をしっかり後押しさせていただく、こういった考え方や具体的な施策についても紹介し、意見交換をさせていただきました。そして、あわせて、来年の総選挙の重要性も指摘をし、そして、選挙を前にしまして、憲法改正が行われるかどうか、これも世界じゅうが注目をしております、このあたりの見通しにつきましても意見交換をしてきたところであります。

 憲法改正が行われるかどうか自体が来年の選挙の行方を大きく左右する、こういったこともあります。こういったことから、やはり、ミャンマーにおいても、憲法改正を初めとする法の支配という考え方が重要だという考え方を私の方からも伝えさせていただき、ミャンマーにおける法の支配の拡充、充実のために我が国として何ができるのか、こういったことは申し上げさせていただきました。

 例えば、ミャンマー民主連盟の議長でありますアウン・サン・スー・チー議長は、現在、ミャンマーにおきまして、下院の法の支配・平和委員会の委員長という立場でありまして、法の支配センターというものをミャンマー国内で主導されているということでありますので、こうしたセンターに対しまして講師を派遣するなど、我が国としても協力をしていきたい、こういったことも申し上げさせていただきました。

 御指摘の、来年の総選挙を大きく左右する憲法改正を初めとするミャンマーにおける法の支配確立のために、我が国としましても引き続き協力をしていきたいと考えております。

阪口委員 ミャンマーという国は大変な経済発展の可能性がある国ですから、日本として、経済の面で協力をする、またインフラ整備などに協力をする、これは大変重要だと思います。

 ただ、積極的平和主義という言葉を使うからには、本当に繰り返しになりますけれども、現在、内戦状態が完全に全土において終了したわけではない、ただ、一時に比べると、少数民族との和平がかなり進んだ状況にある、この状態をもとに戻さない、さらに、全ての少数民族が平和プロセスに参加をして、そして総選挙に無事に投票ができるようにしていく、そういった努力というのは、積極的平和主義を掲げる以上、日本としては本当に中心に据えて行うべき努力の一つであると思います。

 そういう意味では、私は、少数民族とミャンマー政府の間の仲介役を積極的に努める、これは日本政府というよりは、前にもこの仲介ということでは議論させていただきました、オール・ジャパンで行うべきことだと思いますけれども、そういった仲介努力、そして選挙制度改革や憲法改正などに資する、そういった法の支配の強化のための努力ということもより積極的に行っていただきたいと思います。

 私も、二年前の一月九日に、アウン・サン・スー・チーさんと意見交換をさせていただくことがありました。そのときは、本当に日本に対する民主化支援の大きな期待がスー・チー氏の口から述べられました。ただ、最近かなりトーンダウンしているようにも思います。

 今、法の支配センター、法の支配委員会に専門家を派遣する、これはすばらしいことだと思いますが、私は、彼女が日本に対して抱いている期待というのはもっと大きいと思います。この点でよりアクティブな貢献ができるような、そういった措置をぜひ進めていっていただきたいと思います。

 次に、先ほど、安倍総理の国連総会における演説の一文を引用しました。国連の活動にふさわしい人材を我が国はたゆまず育てなくてはいけないとおっしゃっているわけでございます。

 ところが、今この言葉とは矛盾する政策を行っていることも事実なんです。平和構築や開発の現場で活躍できる人材を育成する場、本当に現場で活動する国連ボランティアを育てる国連ボランティア計画への予算が大幅にカットされてしまって、東京の国連ボランティア計画の事務所もなくなってしまう、そういったことを私聞きました。

 まず、なぜ、こういった積極的平和主義を現場で担う人材を派遣する、育てる機関、この予算をかくも大幅にカットしてしまうのか、大臣の見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の国連ボランティア、UNVにつきましては、平和構築や開発の現場で活動しておられ、積極的平和主義の観点からも、これは重要なパートナーであると認識をしております。これまで、日本人ボランティア派遣事業、平和構築人材育成事業、ユース・ボランティア・プログラム等の協力事業を実施してまいりました。

 UNVは、本年一月、UNV戦略枠組み二〇一四―二〇一七を策定し、基礎的社会サービス、防災、平和構築、青少年、ユース等を重点分野に掲げました。これらは我が国が重視する課題とも共通をしております。

 こうしたUNVにつきましては、ぜひ今後も協力関係は重視していかなければならないと思いますが、予算につきましては、御指摘のように、大幅な削減ということになっております。

 厳しい財政状況の中で、また、さまざまな国際機関との協力の中でこうした厳しい決断をせざるを得なくなってしまったこと、これは大変残念なことでありますが、こうしたUNVの重要性と今後の協力の大切さ、これは認識しておりますので、ぜひ、今後に向けては、予算についても引き続き確保に努めていきたいと考えております。

 なお、東京事務所が閉鎖されるということでありますが、UNVとの協力関係の重要性に鑑みて、UNVの機能を東京に維持することは我が国も重要だと考えております。

 現在、この問題につきましては、国連開発計画、UNDPの駐日代表事務所に統合する方向で実質的な活動を維持する、こういったことができないか、今関係者と調整をしているというところでございます。

阪口委員 私自身も国連ボランティアとして紛争地域の現場で数年間活動したことがあるんですが、本当に、なかなか外務省の方々では行けないような、いわゆる危険地帯においても、多くのUNV、国連ボランティアが今なお活動しております。また一方で、私も聞いてびっくりしたんですが、外務省の職員の方、外交官の方がUNVに出向して、現場でさまざまな平和に貢献する活動を行っている、そういう事例もあると聞いております。

 これは人材育成、現場とのネットワークづくりということでも大変重要な役割を果たしてきたわけでございます。私としては、こういったUNVが果たしてきた役割を、特にこの積極的平和主義を行うという観点からも、ぜひ大事にしていただきたいと思いますし、とりわけ、通常予算による予算の拠出が難しいということであれば補正予算、これは決して大きな額じゃないんですね、例えばUNDPの予算と比べると、本当に二桁ぐらい違う予算でこれまで運営されてきたわけであります。

 重要性ということを考えれば、補正予算を拠出することで、どのような形であってもこのUNVの機能を損なうことがないような措置をぜひ積極的に講じていただきたいと思うんですが、この点については、大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、UNVとの協力は人材育成の観点からも重要だと認識をいたします。

 UNVとの関係を戦略的に強化するため、三月十八日、ディクタスUNV事務局長との間で、ボンにおいて第一回UNV戦略対話も実施をいたしました。ぜひ、UNVの戦略枠組みに沿って、日本とUNVのパートナーシップを強化していきたいと考えております。

 そして、そのための予算の確保、これも努力をしなければなりません。補正予算という御指摘もありましたが、具体的に何ができるのか、いま一度検討したいと考えます。

阪口委員 ありがとうございました。

 ぜひ、この点、お願いをするとともに、私としても、平和構築の現場で活動する人材の育成、また、その育成の重要性ということについては今後もこの委員会などで提言をしていきたいと思いますので、ぜひ大臣もこの点についての問題意識を強く持っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、来る四月二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十五分散会


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