衆議院

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第18号 平成26年5月30日(金曜日)

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平成二十六年五月三十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    池田 道孝君

      石原 宏高君    河井 克行君

      木原 誠二君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    河野 太郎君

      島田 佳和君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    星野 剛士君

      武藤 貴也君    小川 淳也君

      玄葉光一郎君    松本 剛明君

      阪口 直人君    村上 政俊君

      岡本 三成君    青柳陽一郎君

      畠中 光成君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛副大臣        武田 良太君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武藤 義哉君

   政府参考人

   (内閣法制次長)

   (内閣法制局第一部長事務取扱)          近藤 正春君

   政府参考人

   (内閣府国際平和協力本部事務局長)        高橋礼一郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       香川 剛広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 秋葉 剛男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長谷川浩一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 和田 充広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   石井 正文君

   政府参考人

   (林野庁林政部長)    牧元 幸司君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 宮園 司史君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 真部  朗君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  伊藤 盛夫君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 岡  真臣君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     池田 道孝君

  青柳陽一郎君     畠中 光成君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     あべ 俊子君

  畠中 光成君     青柳陽一郎君

    ―――――――――――――

五月三十日

 中国及び中国周辺地域における人権弾圧問題等の解決に向けて、日本国政府からの働きかけを強化することに関する請願(西村眞悟君紹介)(第一一〇五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件(「安全保障の法的基盤の再構築」について)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件、特に安全保障の法的基盤の再構築について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官香川剛広君、大臣官房審議官秋葉剛男君、大臣官房審議官長谷川浩一君、大臣官房審議官和田充広君、大臣官房参事官山田滝雄君、大臣官房参事官下川眞樹太君、国際法局長石井正文君、内閣官房内閣審議官武藤義哉君、内閣法制局内閣法制次長第一部長事務取扱近藤正春君、内閣府国際平和協力本部事務局長高橋礼一郎君、林野庁林政部長牧元幸司君、防衛省大臣官房長黒江哲郎君、大臣官房審議官宮園司史君、防衛政策局次長真部朗君、経理装備局長伊藤盛夫君、地方協力局次長岡真臣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。左藤章君。

左藤委員 おはようございます。自民党の左藤章でございます。

 外務大臣におかれましては、おととい、きのうと委員会で、御苦労さまでございます。また、武田副大臣、大臣がシャングリラの方に行かれたので、ひとつよろしくお願い申し上げます。

 昨夜から、またきょうもそうですが、新聞、テレビに、日朝で拉致被害者の再調査に対する合意がなされた、こういうニュースが飛び込んでまいりました。この問題に当たっておられる外務省の局長級の方々はストックホルムで本当に御苦労なさっているんだなと、改めてその御努力に敬意を表したいと思いますし、前進をしたということはありがたいなということを思いますけれども、この中で、再調査をした時点で制裁を解除するとか、いろいろな話が出ております。実態は、安倍総理の会見、また官房長の会見を聞きながら精査するところによると、やはり慎重にやるような雰囲気もあるわけではあります。

 二〇〇八年にも、再調査をしながら、結果は何もなかった。そして、横田めぐみさんの遺骨と言われるものが、どうもDNA鑑定すると本物じゃなかった。こういう懸念、疑念もあるわけでありますし、拉致被害者の家族の方々の立場になれば、非常に期待もし、また不安でもあるんだろうと思います。

 そういう面で、この拉致被害者の問題、解除の仕方によってはどうなるのか。それによって、日本やアメリカ、韓国との、拉致に対するいろいろな制裁の問題を含めて、いろいろ懸念もされるわけであります。

 そういう面で、今回のことは今から調査をして進むわけでありますが、外務大臣として、これは大事な国としてのお立場として、どう考え、どうこれをやっていくのか、どう調査をして、慎重に制裁解除をしていくのか、また、アメリカ、韓国との連絡をしっかりと緊密にやっていただくと思いますけれども、その辺を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 今回の日朝政府間協議の結果としまして、北朝鮮側は、一九四五年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地、残留日本人、そしていわゆる日本人配偶者、そして拉致被害者及び拉致の疑いが排除されない行方不明の方々、こうしたものを含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を実施する、こうしたことを約束した次第です。

 これに対し、日本側としましても、こうした北朝鮮側の動きを踏まえ、諸般の事情を勘案した上、北朝鮮がこの包括的調査のために特別調査委員会を立ち上げ調査を開始する時点で、我が国のとってきた措置の一部を解除することといたしました。

 日朝双方は、今次政府間協議で確認した合意に従って具体的措置を速やかに実行に移すこととし、そのために緊密に協議していくこととしております。今後、北朝鮮側による迅速な包括的調査が行われ、拉致被害者の帰国を含め、拉致問題を含む全ての日本人に関する問題の早期解決に向け、具体的な成果、結果が得られることを期待しております。

 かかる具体的措置を含め、日朝双方がとるべき行動措置について文書という形で明確にお互いの意思を確認することができた、このことは大変意義が大きいと考えています。日朝間の諸懸案解決に向けた重要な一歩であるとは認識をしております。

 今後、こうした措置の実行をしっかりと確認していかなければならないと思っておりますし、また、委員の方から御指摘がありました、米国あるいは韓国、こうした関係国との間においても、今日までもしっかり連携をし、意思疎通を図ってきてはおりますが、今後とも綿密な連携や意思疎通に心がけていかなければならないと考えております。

左藤委員 ぜひ、慎重かつきちんとした方向性で頑張っていただいて、一刻も早く拉致被害者の方々が日本に帰国ができるように、ひとつお願いを申し上げたいと思います。

 次に、中国軍機の異常接近に対して質問をさせていただきたいと思います。

 実は、自民党として、二十八日の日に部会を開きまして、これに対する抗議の決議をしました。ちょっと読ませていただきたいと思います。

  去る五月二十四日午前十一時頃及び十二時頃、東シナ海の公海上空において、海上自衛隊のOP―3C及び航空自衛隊のYS―11EBが、それぞれ中国軍の戦闘機Su―27二機から五十メートルと三十メートルまで異常接近を受けるという事案が発生した。

  二機の自衛隊航空機は、いずれも平素から行っている警戒監視活動に従事していたものであり、こうした活動は国際法上及び国際慣習法上何ら問題のない正当な行為であって、中国側が指摘するような危険な行為や演習の妨害は一切行っていない。

  それにも拘わらず、中国軍機は、通常のスクランブル発進であれば行われるべき無線による接触等も行わず、空対空ミサイルを積み、自衛隊機を追い抜く形で異常接近した。

  幸いにも今回、自衛隊機及び隊員への被害は生じなかったものの、こうした行為は、我が国周辺海空域における偶発的事故を招きかねない極めて危険な行為であり、常軌を逸していると言わざるを得ない。

  また、中国は関連する国際法に従って、公海上空における飛行の自由を不当に侵害すべきではない。

  我が党は、中国が設定した「東アジア防空識別区」の撤回を引き続き求めると共に、今回の中国軍機による自衛隊機への異常接近を断じて許容することは出来ないとして中国に対して厳重に抗議し、国際法に従った自制的な行動を求めるものである。

  また、我が党は政府に対し、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、我が国周辺海空域における警戒監視活動に万全を期すよう、強く求める。

ということで、我々は決議文を表明し、そして官邸の方にも持っていったわけであります。

 そこで、お伺いしますが、今、この事件が起きた場所ですね、防衛省の方から、これは日中中間線のどの辺になるのか、その辺をちょっと教えていただければと思います。

武田副大臣 御指摘のように、二十四日に発生しました中国軍機による海自そしてまた航空自衛隊機に対する異常な接近というものは、東シナ海の公海上空におきまして通常の警戒監視活動を行っていた自衛隊機に対して、しかも短時間のうちに繰り返しなされたという点において、我が国周辺海空域における偶発的事故の発生につながりかねない、決してあってはならない危険きわまりない行為であるとまずは認識しておるところであります。

 当該事案は東シナ海の公海上の空域におきまして発生したものではありますけれども、それ以上の詳細につきましては、警戒監視活動に係る我が方の手のうちを明らかにするおそれがあることから、お答えを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、中国側に対しては、自制と責任ある行動を強く求めてまいる所存であります。

左藤委員 いろいろ発表できない問題はあるかと思いますけれども、やはり、飛行機の間が三十メーターしかないということは、しかも、スピードは、向こうの戦闘機というと時速八百キロ、もっと、マッハに至っているかもしれませんし、こちらの飛行機は大体四百キロ、ほんの風一つでばちゃっと当たってしまう、大事故になる懸念が非常に強いわけですね。

 こういうことがないように、当然、外務省としても強く言い、いろいろ抗議をしていると私は思いますけれども、この状況を、外務省は、抗議するだけじゃなくて、ホームページにも事実関係を掲載していただきたい。

 この前、南スーダンで、韓国の軍から、弾薬一万発を出してくれというので、日本は出したわけですが、それについて韓国はまた変なことを言ったものですから、我々が、ホームページに事実関係をしっかり掲載してください、こういうことを言ったことがございます。

 改めて、この中国軍機の接近について、外務省はホームページを含めてどういう対応をするのか。私は、ぜひ、日本語、英語、そして中国語で事実関係を掲載していただきたいと思いますが、外務大臣、いかがでございますか。

岸田国務大臣 まず、本事案につきましては、事案が発生した当日から外交ルートを通じまして抗議を行った次第ですが、事態の重要性に鑑みまして、私自身も改めて指示を出させていただきまして、二十六日夕刻、東京においては齋木事務次官が程永華駐日中国大使を外務省に招致し、また、北京におきましては木寺大使が劉振民外交部副部長を往訪し、改めて我が国として厳重抗議を行い、そして再発防止を求めた次第です。

 具体的には、日本側から、自衛隊航空機はいずれも平素から行っている警戒監視活動に従事していたものであり、このような活動は国際法上何ら問題のない正当な行為であって、日本側が危険な行為や演習の妨害を行っていたなどとする中国側の主張は我が国としては全く受け入れられない旨、また、中国側は、演習を実施するに当たっては、関連する国際法に従って、公海上空における飛行の自由を不当に侵害すべきではない、こういった内容で強く抗議をした次第であります。あわせて、不測の事態を回避、防止するために話し合うことが重要であり、防衛当局間の海上連絡メカニズムを早期に運用開始すべきである、こういった指摘も行いました。

 偶発的な事態の発生、これは誰の利益にもなりません。かかる事態の再発を防止し、緊張を高める一方的な行動を慎むよう、引き続き強く求めていきたいと考えております。

 そして、御指摘の対外発信でありますが、本事案に係る我が国の立場については、外務省の日本語及び英語のホームページに、齋木事務次官から程永華駐日中国大使への抗議を掲載させていただきましたし、また、在中国日本大使館の日本語及び中国語のホームページに、木寺大使から劉振民外交部副部長への抗議についての報道発表を掲載させていただいております。三カ国語での情報発信といった御指摘も踏まえまして、引き続き効果的な発信について努めていきたいと考えます。

左藤委員 北京のある少将が、撃墜されなかっただけでもありがたいと思えというコメントも出している状況でありますので、やはり、今大臣がおっしゃったことをしっかり世界にもPRする必要があるんだろうと改めて思いますし、ぜひその辺は国を挙げて努力をしていただきたい、このように思います。

 それともう一つ、中国軍機の異常接近に屈することなく、引き続き情報収集や警戒監視は続けることが大変大事だと私は思います。

 それで、防衛省の考え方を伺いますが、安全を確保しながら情報収集をする必要がある。二つの飛行機が出ていったんですが、これは武器は何一つありません。しかも、スピードも、残念ながら、時速四百キロとか、うまくいっても六百キロしか出ないんですが、戦闘機にはとても太刀打ちできないわけですね。これに対してどのような対応をしながら情報監視をするのか、副大臣からお答えをいただきたいと思います。

武田副大臣 仮に自衛隊機が何らかの危険にさらされるといった場合には、個別具体的な状況を踏まえつつ、まずは安全確保のための退避行動をとることになろうかと思います。

 詳細については、先ほどと同様、我が方の手のうちを明らかにすることとなりますから、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

左藤委員 ぜひひとつ、注意深く、そして情報をしっかりとりながら監視をし続けていただきたい、このように重ねてお願いを申し上げたいと思います。

 それと、話はかわりますが、私の地元の大阪のことで申しわけないんですけれども、実は、准看護師が殺害された事件がございました。そして、その容疑者と思われる方、日系ブラジル人だと思いますが、その方が日本から中国へ出国をしました。そして、そのパスポートは偽造パスポートであるということも踏まえ、大阪の警察から旅券法違反などで一応逮捕状を出しているわけですね。

 ところが、過日、上海にある日本の領事館に本人が出頭してきました。ところが、話によると、その方の身柄を中国公安当局に引き渡したと聞いておるが、それしか方法がなかったのかなと。向こうからわざわざ来たのですから、やはり大使館とか領事館というのは日本国に準ずる区域でありますので、中国やよその国の権益が入らない場所でありますので、私はしっかりと調査をしてほしかったんですが、この領事館はしっかりと外務大臣の指示を受けてやったのか、私はその辺をお聞きしたい。そして、現在まだ捜査中であるから詳しいことはお答えしがたいかもしれませんけれども、私は、しっかりと警察と外務省が連携して、この事件の解決に最大の努力をしていただきたい。

 マスコミによると、下手をすると、ブラジルに行ってしまったらもう逮捕できないんじゃないかと。ブラジルは、犯罪者を外国へ出さないという取り決めがありますので、その辺の外務省の方針というか、この事件に対してどういう意気込みか、捜査の内容ですからなかなか言いにくいかもしれませんが、お答えをお願い申し上げます。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの事件でございますが、御指摘のとおり、大阪市に居住する女性が行方不明となり、東京都内において被害者の御遺体が発見されたものであり、現在、警察において鋭意捜査を行っているものと承知しております。

 在上海総領事館に出頭した経緯、その後の中国側に渡した経緯等については、これは、具体的な捜査に支障を来す可能性がございますので、かつまた、今後どういうふうに協力していくかということにつきましては、個別事件に関する具体的な捜査協力に関することでもございますので、中国政府との信頼関係を損なうおそれもあることから、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、今回の対処に当たりまして、総領事館が本省とも連絡をとりまして対応してきたということは申し上げさせていただきたいと思います。と同時に、本件に関します国民の高い関心というものは承知しておりますので、外務省といたしましても、捜査当局と連携しながら適切に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

左藤委員 それ以上言えないんだろうと思いますけれども、外務省と警察がしっかりと連携をしながら中国当局と交渉をしていただきたい。これは殺人事件ですから、大変な問題でありますので、しっかりとしていかないと、日本の警察当局に対して国民が不信になっては困るわけでありますので、ぜひひとつ頑張っていただきたいと思います。

 きょうからシャングリラ会合が始まりました。このシャングリラ会合、大臣、また総理も行かれています。先ほど申し上げた中国機の異常接近の件について、防衛大臣は日英の防衛大臣会談もすると聞いておりますが、そういう中で、二国間や三国間でいろいろな会合で協議をする中で、この中国機の件、しっかりと状況を説明していただいて、こういうことが起きないように、関係各国と連携をとるべきだと思います。

 この辺、しっかりやっていると思いますが、防衛省からお伺いしたいと思います。

武田副大臣 今週末、小野寺大臣が出席するシャングリラ会合の機会にも、米国、豪州を初めとする関係国の国防大臣等に丁寧に説明し、改めて力を背景とした現状変更は認められない旨確認するとともに、関係国との緊密な連携を図っていきたい、このように考えております。

左藤委員 ぜひひとつしっかり頑張ってやっていただきたい、このように思います。

 さて、質問をかえますけれども、五月十五日、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会から安倍総理に報告書が提出されました。これまで、昨年、二十五年の二月から懇談会が始まって、実に一年と四カ月たつわけでありますが、七回にわたる会合で結論を出した報告書であります。

 私も読ませていただきました。集団的自衛権に関する議論のみならず、国連の集団安全保障への参加の問題、在外邦人の保護やPKOにおける制約の問題、そしてグレーゾーンの事態における対応のあり方について、極めて広範囲にわたっております。そして、平成二十年の六月ですが、第一次安倍内閣で開催された懇談会が提出した初めの報告書は、四つの類型についてのみ提案があったんですが、今回はさらに大幅に充実をさせている、私はこのように思います。

 そういう意味で、私どもも非常に高く評価しておりますけれども、外務省それから大臣としてこの報告書をどのように受けとめて、これからどう展開をしていくか、お考えをお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、今回の安保法制懇の提言ですが、昨年二月からこの五月十五日までの間、熱心に御議論をいただき、国民の生命財産また国の安全を守るために何をするべきかということにつきまして、近年の我が国を取り巻く安全保障環境の変化にも留意し、そして具体的な事例を踏まえながら提言をいただきました。この提言につきましては、専門的で現実的な議論を踏まえた貴重な提言であると高く評価をしているところであります。

 この報告書を受けまして、総理としましては、基本的な方向性を示し、そして今、与党におきましても議論を始めていただいているところであります。ぜひ、こうした議論も踏まえながら、政府としても方針を決定するべく努力をしていきたいと考えています。

左藤委員 その報告書の中で、やはり中核部分は、当然、集団的自衛権の問題になります。我が国を取り巻く北朝鮮の問題や中国の東シナ海、南シナ海でのいろいろな動き、力によるいろいろな動きがございます。当然、集団的自衛権があるのとないのとで日本の抑止力についてかなりの差が出てくるんだろう、あることが非常に抑止力になるんだろう、私はこのように思っております。

 この報告書の中で、集団的自衛権を認める憲法解釈上の根拠として、二つの考え方が提示されております。そのうちの一つの考え方は芦田修正論に基づくものと言われていますが、この芦田修正論とはどのようなものなのか、また、この二つの考え方について政府は今後どのように検討を進めていくのか、法制局、また内閣官房にお伺いをします。

横畠政府特別補佐人 芦田修正についてのお尋ねがございました。

 芦田修正とは、衆議院帝国憲法改正案委員小委員会において、芦田均委員長のもとで行われた憲法改正案の修正でございます。内容的には、憲法第九条第一項に「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、」という文言を、また、第二項に「前項の目的を達するため、」という文言をそれぞれ加えたことであると承知しております。

 この修正をめぐりましては種々の議論がございますが、芦田氏自身、昭和三十二年十二月五日の憲法調査会におきまして、「前項の目的を達するため」という辞句を挿入することによって原案では無条件に戦力を保有しないとあったものが一定の条件のもとに武力を持たないということになります、自衛のために武力を用いることは条約をもってしても憲法をもってしても禁じ得るものではない、「前項の目的」とは侵略戦争を放棄することを指す以外に解釈のしようがありませんなどと述べております。

 しかし、平成七年に公開されました同小委員会の議事録には、修正の趣旨がそのようなものであったとうかがわせるような記述はございません。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 安保法制懇の報告書では、二つの異なる考え方を示していただいたところでございます。一つは、芦田修正の経緯に注目をいたしまして、個別的か集団的かを問わず自衛のための武力の行使は禁じられていない、また、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動には憲法上の制約はないとする考え方でございます。

 しかし、この考え方は、これまでの政府の憲法解釈、すなわち、自衛のための必要最小限度の武力の行使や実力の保持までは禁じられていないとするこれまでの政府解釈とは論理的には整合しないため、政府としては採用できないと判断したところでございます。

 報告書のもう一つの考え方でございますが、これは、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという限定的な場合に集団的自衛権を行使することは許されるとの考え方でございまして、従来の政府の基本的な立場を踏まえた考え方でございます。政府としては、先般、記者会見でも示された総理からの指示に基づき、この考え方について今後さらに研究を進めていくこととしてございます。

左藤委員 今、内閣官房からお答えがありました。我々もしっかりとそれを詰めていきたい、そして、集団的自衛権も含めて日本の安全保障をしっかりやっていきたいと思います。またこれから我々も頑張りますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、武力の行使との一体化についてお伺いします。

 冷戦終了後、自衛隊は、カンボジアのPKOを皮切りに、インド洋における補給支援活動、それからイラクにおける復興支援活動など、世界各地で平和と安全のために汗を流してきました。そのための活動の根拠となるPKO法やそれぞれの特措法において、憲法九条の武力の行使の禁止に抵触しないよう、非戦闘地域などの法的枠組みを採用してきたのでございます。

 他方、報告書では、武力の行使との一体化につき、国際法上も国内法上も明文の根拠がないとし、もはやこのような考え方は採用すべきではないと提言をしております。報告書の提言も一理あると思いますが、他方、これまで積み上げてきた法的安定性の観点からも考慮する必要があるんじゃないか、このように思います。

 今後、政府として、武力行使との一体化についてどのように検討を進めていくのか、内閣官房からお答えをいただきたい。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 これまで、我が国による後方支援に際しては、我が国による後方支援が他国の軍隊の武力の行使と一体化することがないことを制度的に担保するため、一つの仕組みとして、個別の法律において非戦闘地域や後方地域といった仕組みを採用してまいりました。

 他方、安全保障環境が大きく変化する中、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、例えば、国際の平和及び安全が脅かされ、国際社会が一致団結して対応するときに、自衛隊が幅広い後方支援活動等で十分に貢献できるような法整備をすることが必要でございます。また、後方支援活動等を今まで以上に支障なくできるようにすることは、我が国の安全の確保の観点からも極めて重要でございます。

 武力の行使との一体化の考え方をもはやとらないとする報告書の提言をそのまま採用することは、従来の政府の立場に照らして難しいと考えております。

 他方、従来から政府が示してきた判断基準をより精緻なものとし、具体的に何が武力の行使と一体化する行為なのかを明確にし、どのような後方支援が可能であるか検討することは、今後の課題の一つでございます。また、従来から、非戦闘地域や後方地域という概念についてはさまざまな議論もございます。この点も含めた検討が必要ではないかと考えてございます。

 いずれにしても、現在、与党協議が進められておりまして、その結果に基づいて、政府としての対応を検討してまいりたいと思ってございます。

左藤委員 駆けつけ警護についてお伺いします。

 十五日の総理の記者会見で、具体的に事例を挙げて説明をされました。これは大変重要なことなんですが、政治が命じて、自衛隊員の方々を厳しい環境下でのPKO活動に従事させているわけですね。我々政治家は現場を知りません。しかし、何があっても現場が判断に困ることのないように、我々はしっかりと議論をする必要があると思います。

 そして、報告書においては、「自衛隊が国連PKO等の一員として、駆け付け警護や妨害排除のために国際基準に従って行う武器使用は、」「憲法第九条の禁ずる武力の行使には当たらないと解すべき」だと提言されています。まさに一考に値するものだと思います。

 現場を預かる防衛省・自衛隊としてはどうお考えでしょうか。

武田副大臣 御指摘の駆けつけ警護の論点ですけれども、現在でも、派遣されている部隊が直面する重要な問題であり、早急なる検討を要する課題であるというふうに考えております。

 現在、与党協議が進められておりまして、その結果に基づき政府としての対応を検討していくことになりますけれども、防衛省としては、具体的な立法措置の検討に当たっては、現場の部隊がしっかりと対応でき、隊員が判断に困らないように、運用の実態に即したものとしていくことが重要であると考え、我々としても、国会等の求めに応じて、引き続き現場の考え方についてしっかりと説明させていただきたいと思います。

左藤委員 次に、在外邦人の保護、救出についてお伺いしたいと思います。

 日本人、あちこち海外に行くのは一年間に千八百万人と言われますね。そして、移住する人、海外に住んでいる方が百五十万人もおられるわけであります。

 この前、城内政務官が大変御尽力いただいた在アルジェリアの邦人の問題、テロ事件がありました。大変御苦労だったと思いますけれども、このときに、自衛隊法を改正したんですね。輸送対象の拡大や、車両による輸送を可能としました。

 この報告書でもまた、救出のため我が国がどの程度できるか、そういうことを検討すべきだろうと、私どもも思いますけれども、政府はこの点をどう考えて、外務大臣はどうお考えなのか。

 そして、チャーター機や自衛隊機に加えて、人質救出のいろいろなノウハウというのは、やはり明るいのは警察もなんですね。そういう面で、今後、警察や海上保安庁の活用についても検討すべきだと思います。これは内閣官房からお答えをお願いします。

 では、まず外務大臣、お願いします。

岸田国務大臣 御指摘のように、今や、海外に住む日本人は百五十万人、さらに年間一千八百万人の日本人が海外に出かけていく時代であります。その中で、国民の生命財産、そして国の安全を守る、これは政治の重要な責務だと認識をしています。

 そして、政府としましては、在外国国民の保護、救出は、一般には領域国の同意を得て行われるものであると考えており、このような領域国の同意に基づく外国における邦人救出といった活動の本質は、領域国の同意に基づき、本来ならその国の警察当局等の機関がその任務の一環として行う治安の維持、回復活動をいわば代行する性格のものであると認識をしております。

 他方、そのような活動であったとしても、我が国の行為として外国の領域で行われる活動であり、自衛隊が任務遂行のために外国の領域で武器の使用をした場合には、それが国家または国家に準ずる組織に対するものであれば、憲法九条に禁ずる武力の行使に該当するおそれがあるというのが従来の政府の説明でありました。

 一方、武器使用の相手方が国家または国家に準ずる組織に当たらない仕組みを設定することができるのであれば、武器使用の権限を拡充することも憲法上許容される、このように政府としては説明してまいりました。

 こうした政府の考え方が現状においてどうであるのか、今、与党において協議が進められております。ぜひ、この協議の結果に基づいて、政府としても引き続き対応を検討していきたいと考えております。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 自国領内に所在する外国人の保護は、国際法上当該領域国の義務でありますけれども、緊急事態に際して在外邦人の緊急退避が必要である場合には、我が国政府が主体となって、チャーター機や自衛隊の航空機、海上保安庁の船舶による輸送も含むあらゆる手段の中から、最も迅速かつ安全な手段を選択して対応することとなります。

 また、多くの日本人が海外で活躍し、昨年一月のアルジェリアのテロ事件のような事態が生じる可能性がある中で、政府として、警察庁の国際テロリズム緊急展開班の派遣体制の強化等も含むさまざまな取り組みを進めているところでございます。

 その上で、政府としましては、今、外務大臣からも御説明がありましたけれども、安保法制懇の報告書の記載を踏まえまして、在外自国民の保護のうち、武器使用を伴う救出等についても対応できるようにする必要がないか、検討することが必要と考えてございます。

 いずれにいたしましても、現在、与党協議が進められておりまして、その結果に基づいて政府としての対応を検討してまいりたいと思っております。

左藤委員 ありがとうございます。

 しっかり検討して対応していただきたいと重ねてお願いを申し上げます。

 通告をしたいろいろな質問があるんですけれども、時間がないのではしょります。

 外務大臣にお願いでありますが、安倍総理がこの連休に欧州を回ったり、大臣も回られて、日本の積極的平和主義について、特に集団的自衛権の問題について丁寧に説明をされていると聞いております。これからもやはり、各国に行かれる、外務省としてもまた各国に集団的自衛権の説明を丁寧にしていただけますように、お願いを申し上げたいと思います。

 最後に、ちょっとお願いをさせていただきたいと思います。

 一点目ですが、この法的基盤の再構築についてですけれども、集団的自衛権にせよ、武力攻撃に至らない事態にせよ、PKOや邦人保護にせよ、いずれも、主として対応するのはやはり自衛隊なんですね。このことから、新たな仕組みや武器使用を含む権限について、先ほども申し上げたように、現場の自衛官が困ることのないように制度設計をすることが極めて重要でありますし、議論をしていくときに、これは我々が机上で空論をやってもしようがないので、現場の声をしっかり反映していただきたい。これが一つ。

 二点目ですが、集団的自衛権を発動する、武力行使に至らない事態において自衛隊に命令を発出する、PKOを派遣するなど、決断するのは国民の責任を得た我々政治家なんです。それが文民統制の根幹であります。そういうことになりますと、敏速に推移が政務三役に報告されて、事態に応じて的確に判断、対応できる仕組みになっていることが、エスカレーションラダーを政治がコントロールする観点からも必要不可欠でございます。このような制度設計を心がけていただきたい。

 第三点目です。自衛官が現場で安心して確実に任務を遂行するためには、法的安定性を確保することが大変重要であります。このためには、誰もが納得できる明快さ、そしてよい意味での過去、すなわち、これまでの政府の憲法解釈との整合性にも配慮したものが必要であります。

 今後検討を進めるに当たり、以上の観点について防衛省はどのようにお考えでしょうか。

 そして、この判断をするに当たって、政務三役の政治決定をしっかりとサポートできる体制が確保できなければならないと思います。今、大臣を補佐する機能を強化していく中で、防衛省改革、いろいろあると思います。しっかりと進めていただきたい。また、現状も含めて御返答をお願い申し上げたいと思います。

 以上です。

武田副大臣 御指摘の三点、大変重要なことであるというふうに我々も認識をいたしております。御指摘の三点を肝に銘じて、厳しさを増す安全保障環境の中で自衛隊に求められる任務、役割を果たし得るよう、しっかりと検討してまいりたいと思います。

左藤委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、岡本三成君。

岡本委員 公明党の岡本三成です。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず初めに、安全保障に対します私の基本的な考え方をお話しさせていただきたいと思います。

 私、日本を取り巻く環境は大きく変化しているというふうに理解をしておりますし、安全保障の環境は厳しくなっていると思っています。加えて、政治家の最大の責任というのは日本国民の生命と財産を守ることだということも共有しています。

 しかしながら、今話題になっておりますほとんどのケースというのは、現在、与党協議の中で実際に協議されています、グレーゾーンの整理をすることであったり、または集団安全保障に対する日本の役割を明確にすることであったり、最終的に、個別の話の中で集団的自衛権の中に踏み込むかどうか、そういう話の整理の中で、ほとんどのケースというのは、実は今の法体制の中でも十分に対応可能だというふうに理解しています。

 その中で、こういうプロセスを時間をかけてその状況を国民の皆さんにもごらんになっていただく、その上で、万々が一、今の法整備の中に不備があって安全保障の中に穴があいてしまっているということになれば、適切なプロセス、正式なプロセスをした上で法整備をしていくことが重要だというふうに思っておりますので、その認識の上で本日は質問をさせていただきたいと思います。

 まず、安保法制懇の報告と安倍内閣の対応についてお伺いをしたいと思うんですけれども、先ほども話題に出ましたいわゆる芦田修正論、三つのポイント、国連の安全保障への参加には憲法上の制約はないという考え方、そして二つ目には、必要最小限度の中には集団的自衛権も含まれているという考え方、三つ目には、PKOへの協力の武器使用は武力の行使には当たらないという考え方に関しまして、総理は五月十五日にこう述べられています。

 しかし、これらは、これまでの憲法解釈とは論理的に整合しない。私は、憲法がこれらの活動の全てを許すとは考えていません。したがいまして、政府としては採用できません。

 適切な御判断だと思います。

 一方で、国連の安全保障措置への参加は、これまでの憲法解釈とは整合性がないという理由で政府として採択しないというふうにおっしゃっているにもかかわらず、集団的自衛権の行使は、今までの憲法解釈とは全く整合性がないにもかかわらず、これは認めるというふうにおっしゃっている。

 そういう方針に関しまして外務大臣はどのようにお考えか、見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、安保法制懇におきましては、二つの考え方を示していただきました。

 一つは、いわゆる芦田修正の経緯に着目し、個別か集団的かは問わず自衛のための武力の行使は禁じられていない、また、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動には憲法上制約はない、こういった考え方でありました。

 しかしながら、この考え方につきましては、武力の行使や実力の保持が認められるのは自衛のための必要最小限度に限られるとするこれまでの政府解釈とは論理的に整合しない、こういったことから、政府としては採用できない、このように判断した次第であります。

 そして一方、集団的自衛権の議論でありますが、報告書のもう一つの考え方は、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという、限定的な場合に集団的自衛権を行使するということ、このことが従来の政府の憲法解釈に言う必要最低限の中に含まれるという考え方を報告書は示したわけですが、この考え方についてぜひ研究を進めていきたい、こういった考え方を総理は示したわけであります。

 後者の考え方につきましては、従来の政府の基本的な立場を踏まえた考え方であるからして、これについて研究を進めたいという判断をした次第であります。こういった考え方に基づいて、今、与党において御議論をいただいております。

 ぜひ、丁寧な議論を行うことによって、政府としましても、方針をしっかりと決めていきたいと考えております。

岡本委員 五月十五日の総理会見で総理がパネルを使って御説明されたことに関しまして、これは私、ちょっと頭の整理をしたいと思いますので伺いたいんですけれども、イメージされているのは朝鮮半島有事だと思いますが、もしそういう有事が隣国で起こったときに、日本人の命を守るために米艦船が日本人を乗せて日本に運んでくださるとき、その米艦船が仮に攻撃を受けた場合に、日本は守らなくていいのか。問題意識はすごく共有をします。そのとおりだと思います。

 これは、朝鮮有事だといたしますと、今既に朝鮮半島は戦時中でありますから、韓国には朝鮮国連軍がいます。日本にも横田基地にはその後方司令部があるわけですけれども、もし、物理的に日本が米艦船を守ることになって、北朝鮮と交戦ができるということになりますと、総理がやらないとおっしゃっている集団安全保障への参加そのもの、つまり、これはもう既に今、戦時中なわけですから、もしそこで戦争が再開されてしまえば、国連安保理の決議なく反撃をすることができるわけですから、北朝鮮に対して日本が交戦をした時点で集団安全保障の中に日本が参加をするというふうな理解になってしまうと思うんですが、ここはどういうふうに整理したらいいんでしょうか。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の総理がパネルで説明された事例でございますけれども、これは、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守る、現実に起こり得るあらゆる事態に対して切れ目ない対応を可能にするという問題意識のもとで示されたものでございまして、特定の地域を念頭に置いているものではございません。

 また、総理は、記者会見において、安保法制懇の報告書に示された二つの異なる考え方のうち、いわゆる芦田修正論は、これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合せず、政府として採用できない、自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してない旨を明確に述べております。

 その上で、総理は、政府としては、報告書の考え方のうち、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという、限定的な場合に集団的自衛権を行使することは従来の政府の憲法解釈に言う必要最小限度の中に含まれるという考え方について、今後さらに研究を進めるとの基本的方向性を示したところでございます。

 現在、与党協議が進められておりまして、その結果に基づいて政府としての対応を検討し、憲法解釈の変更が必要と判断されれば、閣議決定をしていく考えでございます。

岡本委員 同じ質問を事務方の方に昨日お伺いいたしまして、これが特定の国を限定したものではないということであれば、では、具体的に日本の隣国でどの国が考えられるんですかというふうに申し上げましたら、それは考えることはできませんというふうにおっしゃっていましたので、もし本当に朝鮮有事以外のことを想定できるというふうに思っていらっしゃるのであればぜひお答えいただきたいと思いますけれども、時間もありませんので、次の質問に行かせていただきます。

 集団的自衛権の行使と日米安保条約の片務性について確認をしたいというふうに思います。

 これは、第二次安倍政権が始まったときに、総理は記者会見で、日米関係こそが最も重要な関係であり、日米安全保障条約をより強固にしていくことが重要だ、それゆえに、万々が一、北朝鮮が核弾頭を積んだミサイルを米国に飛ばしたときに、日本が迎撃可能なときに迎撃をしなければ、その時点で日米関係は終わってしまうというふうな趣旨の発言をされました。私もそういう問題意識は共有いたします。

 その意味でお伺いをいたしたいんですが、日米安保は、米国が日本の防衛義務を負うかわりに、日本は、米国を防衛できない状況の中で、基地を提供する義務というのを負っています。いわゆる片務条約になっているわけですけれども、もし、日本が集団的自衛権を行使できるようになって、米国の防衛もできるようになったときには、日米安保条約の中身も変えていくような必要が出てくるかもしれませんし、そうなりますと、基地提供が日本の義務ではなくなる可能性が出てきます。

 実際、私、沖縄の方とお話をしますと、集団的自衛権が行使されれば沖縄から米軍基地はなくなるんですよねとおっしゃっている方がいらっしゃいます。これは、総理が会見のときにおっしゃったように、米国との関係を強化することに最も高い優先順位があるのであれば、米国が日本に望んでいる優先順位の高いものから日本は提供していくような必要性があるんじゃないかと思うんですね。

 私が考えている米国の優先順位の高いところに、例えば、沖縄の普天間を辺野古に一日も早くスムーズに移動してほしいという高い優先順位と、集団的自衛権の行使の議論自体は歓迎しますという、その優先順位を比べたときに、仮に集団的自衛権の行使というものが日本の中で盛り上がって、それがゆえに、沖縄の基地の平穏な移転ということに時間がかかってしまう、それが不可能になってしまうということであれば、相手方が望んでいる優先順位とは整合性がないように思うんですけれども、この点、どのようにお考えになりますでしょうか。

岸田国務大臣 今、お話を伺っておりまして、幾つかの要素が絡んでおりますので、少し整理して申し上げたいと思います。

 まず、日米同盟、日米安全保障条約の中身ですが、第五条におきまして、日本に対する武力行使に対して日米で共同で対処する、こういったことが定められています。そして、第六条におきまして、日本の安全のため、そして極東の平和と安全のために米国が日本の施設・区域を使用することを定めております。よって、日米安全保障条約は、日米の義務は同一ではありませんが、バランスがとれているというのが我が国の基本的な認識であります。

 そして、日米安全保障条約を改正することもあるのではないか、こういった御指摘もありました。

 これは、我が国としまして、今、国民の生命あるいは暮らしを守るために安全保障の法的基盤がどうあるべきなのか、こういった議論を行っているわけですが、この議論の結果、日米安全保障条約の義務を拡大するとかいうようなこと、要は日米安全保障条約の改正というようなことを考えてはおりません。

 そして、沖縄の問題についても触れていただきました。

 いずれにしましても、こうした我が国を取り巻く厳しい安全保障環境の中で、我が国としましては、まず我が国自身が防衛力を適切に整備することを考えていかなければいけないわけでありますが、あわせて、日米で協力しながら、連携しながら、日米同盟の抑止力を向上していかなければならない、このことはこれからも全く変わらないと考えております。そのために在日米軍の再編の問題もどうあるべきなのか、こういったことで一つ一つ具体的なものを考えていくべきだと考えております。

岡本委員 沖縄の皆さん方の中には、お互い守り合えるようになるわけですから、この基地提供義務が緩和されることを期待し、その結果、基地提供が義務でなくなったときには沖縄の地には基地がなくなるというようなことを期待されている方も多くいらっしゃるということを、ぜひ改めて言及させていただきたいと思います。

 私はそうなるべきだとは思っておりません。思っていないがゆえに、より強固な安全保障の状態をつくるために、そういう沖縄の方々も納得できるような説明を今後していくべきだというふうにお願いをしたいと思います。

 続きまして、憲法解釈の変更という手段についてお伺いをしたいと思います。

 昭和五十八年の二月二十二日、衆議院予算委員会で、当時我が党の書記長でありました市川議員の憲法解釈の変更に関する質疑の中で、当時の法制局長官角田さん、この後、この方は最高裁の判事にもなられた方ですが、こう答弁されています。「仮に、集団的自衛権の行使を憲法上認めたいという考え方があり、それを明確にしたいということであれば、憲法改正という手段を当然とらざるを得ないと思います。したがって、そういう手段をとらない限りできないということになると思います。」というふうに述べていらっしゃいまして、この種のやりとりについては、この後たびたび国会で論戦になっておりますが、法制局の答弁は常に一貫しています。

 こうした政府の見解は今も変わっていないというふうに私は期待をしていますけれども、改めて新法制局長官の横畠氏に見解を伺いたいと思います。お願いいたします。

横畠政府特別補佐人 憲法の解釈につきまして論理性及び整合性を維持することは重要であり、便宜的、意図的に変更することができないということは当然の前提でございます。詳しくは、平成十六年六月十八日の島聡衆議院議員に対する政府答弁書でお答えしているとおりでございます。

 その上で、集団的自衛権の行使等に関する問題につきましては、安倍総理が今後の検討の進め方についての基本的方向性を示されたことを受け、現在、与党協議が進められており、その結果に基づいて政府としての対応を検討することとなるものであり、政府としての対応はまだ決まっていないものと承知しております。

 内閣法制局として、その検討の過程におきまして適切に意見を申し上げることとなると考えているところでございますが、現時点で予断的なことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

岡本委員 この同じ昭和五十八年二月二十二日の衆議院予算委員会で、我が党の市川書記長は、角田法制局長官に先ほどの質問をして、集団的自衛権の行使を認めたいのであれば憲法改正以外の手段はありませんという答弁を引き出した後に、そこに同席をしていらっしゃった安倍外務大臣に、今の安倍総理のお父様でいらっしゃいますが、同じ質問をされています。安倍外務大臣は、私も全く同感であり、つまり憲法改正をしなければ集団的自衛権の行使はできないと思っていますというふうにおっしゃっていますので、このことはぜひ事実として指摘をしておきたいと思います。

 最後に、外務大臣にお伺いしたいと思います。

 なぜ憲法改正ではいけないんでしょうか。なぜ憲法の解釈の変更ということを初めに言及されてスタートしていらっしゃるかということについて、私はどうしても納得がいかないんですね。いわば、王道のプロセスではなくて、初めから、筋が悪いとは言いませんけれども、王道ではないプロセスを言及しながら、そのプロセスで集団的自衛権の行使を議論していきますということ自体に私は物すごく違和感があります。

 私は、日本国憲法はすばらしい憲法だと思っています。短期間でつくられた憲法なのに、これほどまでにすばらしい憲法にでき上がっているのは奇跡的だと思っているんですが、時代の流れ、状況の変化によって、このすばらしい憲法をもっとすばらしい憲法にしていくことはできると思っているんですね。その意味で、適切な理由であれば憲法改正はすべきだというふうに思っています。

 今の与党協議のプロセスを全て国民の皆さんにもごらんになっていただきながら、先ほど一番初めに申し上げたように、その議論の結果、やはり法整備に穴があるというふうに、私たちも納得をして、国民の皆さんも納得することがもしできたとすれば、当然、今のルールの中でも衆参の三分の二以上の議員の方々は賛成すると思いますし、そういう議論の過程をごらんになっていただいた国民の方の過半数も賛成される可能性は十二分にあると思っています。

 であるがゆえに、王道のプロセスを踏むことによって、五十年以上も一貫して全くぶれない政府解釈をしてきたことを貫いていきたいと思いますし、ましてや、今まで長い時間をかけてつくってきた政府の解釈が、一国会のたった十九人の閣僚の方のサインだけで変更ができるということに関しては、それこそが、何かグレーなところがあるんじゃないか、早急にして隠したいことがあるんじゃないかという国民の皆さんの不安をあおって、あらぬ疑いをかけられてしまうようなリスクを残してしまうというふうに思っています。

 国民の理解が得られないまま勝手に政府が変更することには断じて納得できないですし、また、外務大臣といたしまして、このようなプロセスで憲法の解釈を変更するというようなことを諸外国の方がごらんになったときに、この国は本当に大丈夫なのか、今までどおり信頼をかち得ることが諸外国からできるのか、名誉ある日本の立場を確保することができるのかということを、ぜひおっしゃっていただきたいと思います。御見解をお聞かせください。

岸田国務大臣 まず、国民の命、暮らしを守るために、政府としましては、あらゆる事態を想定して切れ目のない体制をつくらなければいけない、こういったことで、今、安全保障の法的基盤について御議論をいただいております。

 そして、具体的な例を挙げて、与党において議論をスタートしていただいているわけですが、その中にあって、御指摘のように、考え方として、具体的な例の中で、まずは今の法的解釈、憲法解釈において可能なものについて御議論をいただき、その上でさらに必要な対応があるのではないか、こういった物の考え方で御議論いただいているということであります。

 そして、安保法制懇の報告書につきましては、先ほども答弁させていただきましたが、二つの考え方が示され、芦田修正に基づく考え方については、従来の我が国の政府の考え方との論理的整合性、あるいは法的安定性、こういったことから考えて、これはとることができない。一方、もう一つの考え方、我が国の安全に重大な影響を及ぼす場合等、限定的な場合に集団的自衛権を行使することは従来の政府の憲法解釈に言う必要最低限の中に含まれるという考え方については、研究をしていこうということになりました。この部分については、従来の政府の基本的な立場を踏まえた考え方であるからして、研究をしていこう、こういったことになったわけであります。

 こういったことで、引き続き今、与党において議論を続けていただいております。ぜひ、丁寧な議論を行い、その上で政府の方針を決定したいと思っています。

 そして、諸外国に対する説明についても御指摘がありました。この点につきましても、特に外務省は、大きな責任を持ってしっかり説明をしていかなければならないと考えています。

 そして、我が国の立場についてしっかり正確な御理解をいただかなければいけないと思いますが、その中身は、我が国が、戦後六十九年、平和国家として歩んできた基本的な立場、これは変わらないということをしっかり説明しなければいけないと思いますし、我が国が今議論していることは、他の国ができないようなことをやろうということは決して考えていないと思います。他の国が国際社会の平和や安定のために対応していることの中で、限定的に、我が国として国民の命や暮らしを守るために必要最低限どの程度まで対応するべきなのか、こういった基本的な考え方に基づいて議論が行われていると認識をしておりますが、この点につきましても、誤解のないようにしっかりと説明をしていかなければならないと考えます。

岡本委員 十分な議論が終わった後に、もし、憲法改正ではなくて解釈の変更ということをとられる理由が、憲法改正では時間がかかるということであれば、憲法改正のための手続をスピーディーにすれば半年ぐらいでできますので、やればいいと思います。もし、十九人の閣僚は理解できるけれども日本国民は理解できないであろうというふうなことを万が一にもお考えであれば、日本国民は賢明でありますから、適切なことに対してはしっかりとした判断をされるというふうに思いますので、そういう国民を愚弄したような考え方がもしおありになるのであれば、捨てていただければと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。

鈴木委員長 次に、玄葉光一郎君。

玄葉委員 玄葉光一郎です。

 集団的自衛権の問題について質問したいと思うんですけれども、きのうの晩、日朝の合意が発表されました。通告をしておりませんけれども、一、二、外務大臣にお尋ねをしておきたいというふうに思います。

 私も二〇一二年に四年ぶりに政府間協議を再開させたときの責任者の一人であるわけであります。守秘義務もありますから、当時のことを余り申し上げることはできませんけれども、今回の合意の内容について、いわば予測の範囲内というふうに申し上げてよいのだろうというふうに思っています。

 素直に期待をしています。全ての特定失踪者を含む拉致被害者の帰国が実現できるように全力を尽くしていただきたいというふうに思っております。

 一、二、気になるのは、一つは調査を開始する時点で制裁を解除するという内容なんですよね。これは、最初に合意内容を聞いたときに、おやっという感じを持ったところであります。普通は、調査状況を見て、成果を確認した上で制裁を解除するのが普通ではないかというふうに考えますけれども、この点についてはいかがですか。

岸田国務大臣 まず、基本的に、今回の合意に基づいて再調査を進めるに当たりまして、しっかりとした成果を上げなければいけない、結果を出さなければいけない、これは当然のことだと思っています。

 そして、今回、特別調査委員会の設置で合意したわけですが、特別委員会が調査を開始する時点で、北朝鮮側から、特別委員会の組織、構成、あるいは責任者、こういった具体的なものについてしっかりした通知をもらった上で調査を開始するということを確認しています。

 そして、これは文書の中で確認しているわけですが、拉致問題の調査に関しまして、調査の状況を日本側に随時通知する、こういったこと、さらには、調査の進捗に合わせ、日本側の提起に対し、それが確認できるよう、日本側関係者による北朝鮮滞在、あるいは関係者との面談、さらには関係場所の訪問を実現し、そして関係資料を日本側と共有し、適切な措置をとる、これを文書で確認した次第であります。

 こういったものをまず文書でしっかり確認し、そして何よりも、調査の開始時点で実効性のある組織を確認し、その上で、我が国としての措置の一部を解除していこうということを今回決定した次第であります。

 結果としてしっかりとした成果が上がるべく、こういった対応で全力を尽くしていきたいと政府は考えている次第です。

玄葉委員 先ほど申し上げたように、一つの考え方ではあると思うんです、調査開始時に制裁を一部解除する。ただ、普通は、成果を見て、成果が出たら解除していくという考え方をとるのではないかと思うんですね。

 逆に申し上げれば、もし最初に制裁を解除して、そのいわゆる権威ある特別委員会が調査を開始した、そうすると、残念ながら一定の期間を過ぎても成果が出ないとなれば、当然これは再び制裁を戻す、解除した制裁を戻す、こういうふうに考えていいわけですね。

岸田国務大臣 まず、先ほど申し上げましたように、特別委員会の調査が開始する段階で、しっかりとした調査委員会の体制、組織、責任者を確認する。そして、それ以前に、既に文書におきまして、日本側としてこの調査にどのようにかかわってくるのか、これを確認しているわけですが、その上で我が国として措置の解除を考えるわけですが、これはあくまでも一部であります。我が国が現状行っている措置の一部をその段階で解除するということで合意した次第であります。

 ぜひ、まずは、しっかりと特別調査委員会の権限ですとかあるいは体制について確認をし、調査を進めていきながらも、しっかりと我が国としまして調査の中身を把握するべく努力をしていきたいと思いますが、その上で、この調査の状況をしっかり確認し、我が国として、成果が上がるべく適切に対応していくということについては、状況を見ながら考えていくべき問題であると考えています。

玄葉委員 簡単に申し上げれば、やはり最初から、一部制裁といっても、一部といっても結構な制裁解除を思い切ってしているなという印象なんですね。人的往来の規制措置、送金報告、携帯輸出届け出の金額に関して北朝鮮に対して講じている特別な規制措置、及び人道目的の北朝鮮籍の船舶の日本への入港禁止措置、これを解除。

 これが解除されて、しかし、委員会の報告を聞いてもなかなか成果が出ないというふうになったときには、再びこの制裁を科していくということですね。逆に言えば、思っていたとおり、いや、思っていた以上の成果が出てきているというふうに判断すれば、逆に制裁をさらに解除していく、そういうことなんじゃないんですか。

岸田国務大臣 今回の日朝協議における合意ですが、これは、まずは北朝鮮側からこうした問題解決に向けて強い意思を表明し、そして対象も、全ての日本人にかかわる問題を対象とし、そして、この対応につきましても、より具体的なものをしっかり明記する、こういった文書を確認したという意味で、これは意味があったと思います。

 まずは、この一致した内容につきまして、お互いがしっかりと果たすべき義務を果たしていく、これが何よりも重要だと考えています。そして、そのために全力を尽くした上で、内容についてしっかりと評価し、そして、必要であるならば、さらなる対応を考えていくというのが物の考え方の順番ではないかと存じます。今の段階で早々と、こうであったらどうかというようなことを申し上げるべきではないと思います。

 まずは、しっかりと一致した内容を追求し、その上で、状況をしっかりと把握し、対応していく、こういった方針で臨んでいきたいと考えています。

玄葉委員 非常に慎重な答弁なんですけれども、簡単に言えば、物の対応の基本を伺っているということでありまして、制裁カードを有効にどう活用するかということであります。

 ですから、もう一回確認しますけれども、成果が出なければ制裁を戻す、つまり、制裁解除を戻す、あるいは制裁をさらに科す、成果が思っていた以上に出れば、より解除していく、そういうことは十分考えながらこれから対応していくということでよろしいですね。

岸田国務大臣 具体的な対応について今の時点で申し上げるのは適切ではないと思いますが、いずれにせよ、最大限の成果を上げ、そして北朝鮮側から最大限前向きな態度を引き出すために最も効果的な対応を考えていきたいと思います。

玄葉委員 二〇一二年は弾道ミサイル発射があって中断に至りましたけれども、これから軍事挑発も十分あり得るというふうに思いますが、そうなった場合の対処方針は決めておりますか。

岸田国務大臣 北朝鮮に対しては、従来から対話と圧力の方針のもとに臨んできました。圧力の部分につきましては、人、金、物、こういったものを絞り込むことによって、北朝鮮の経済状況を考えますと、一定の効果があったと考えています。

 そして、その上で、一年四カ月ぶりに対話を再開し、そして今日、再調査の実施ということで一致をした次第であります。こうした合意に基づいて、北朝鮮の前向きな対応をしっかりと引き出していきたいと考えております。

 今後の対応につきましては、状況を踏まえまして、最も効果的な対応を引き出すべく全力を挙げていきたいと考えております。

 北朝鮮の挑発行為等につきましては、引き続き各国と連携しながらしっかり対応していきたいと考えています。

玄葉委員 やはり、弾道ミサイルあるいは核実験、こういう挑発は、こういった交渉の最中も、あるいは調査委員会が調査をしている最中もあり得ると思います。やはり、そのときの対応というのをあらかじめ、外に向けて発表する必要はないと思いますけれども、考えておく必要があると思うんですけれども、その点についていかがですか。

岸田国務大臣 今後の状況の変化等について、今の段階で予断的に申し上げることは控えなければならないと思いますが、あらゆる事態に対応するべく対応を考えておくということは重要なことではないかと存じます。

 ぜひ、しっかりと状況は注視していきたいと考えます。

玄葉委員 それでは、本日の本題に移りたいと思います。

 集団的自衛権のことでありますけれども、先日、岡田衆議院議員が予算委員会で安倍総理と質疑をしていた、その質疑の模様を聞きました。そのときに出ていて、まだよくわからないところが何点かあるのですが、きょうは一点だけ質問したいと思います。つまり、近隣有事の際の米艦船初め他国の船舶による邦人輸送の問題であります。

 安倍総理としては、どの国の船であれ、邦人が乗っていれば、それは、日本はその攻撃排除のために、いわば守りをしなければならない、こういうふうにおっしゃったわけであります。当然そうだと思うのですが、問題は、これは集団的自衛権の行使という形で説明できるのかどうなのかということがこの間も話題になったわけであります。

 米艦は当然説明できるのでありますが、他国籍の船舶というのは、邦人が乗っていて日本に向かっている、その他国籍の船舶を日本国が守ろうとする、その船舶への攻撃を排除しようとするのは、これは集団的自衛権の行使によって行うものなのでしょうか。

 事前に通告をしておきましたので、政府を代表して正確な答弁をしていただきたいと思います。

武藤政府参考人 安倍総理は、五月二十八日の衆議院予算委員会において、次のような趣旨のお答えをされております。

 一つは、米国のみが集団的自衛権の対象になるわけではない、二つ目、退避する邦人がどこの国籍の船に乗っているかにかかわらず、我々は退避する邦人の命を守る責任を負っている、それから三つ目として、我々は何をすべきかを検討する必要があるということでございます。

 いずれにいたしましても、お尋ねの件につきましては、個別具体的な状況によるものでございまして、一概に申し上げることは困難でございます。

 現在、まさに与党協議が進められているところでございまして、以上のような観点も含めて、具体的事例に即して検討してまいりたいと思っております。

玄葉委員 ちょっと今のは全く答弁になっていないと思うんですね。きちっと丁寧に通告をしたんです。

 もう一度申し上げますけれども、米国以外の他国籍の船舶への攻撃排除というのは集団的自衛権の行使で説明可能ですかというふうに聞いているんです。全然質問に答えていない。

鈴木委員長 では、質問に答えるように。

 内閣官房武藤内閣審議官。

武藤政府参考人 我が国による集団的自衛権の行使ということについては、まさにそのことについて、現在、安保法制懇の報告を受けまして、与党とも協議を進めているところでございますので、今の段階で結論を申し上げるということは控えさせていただきたいと思っております。

玄葉委員 ちょっと待ってくださいよ。抽象論とか観念論で議論しないようにしましょうと言ったのは総理大臣ですよ。具体的な事例で議論しましょうと。しかも、私は、朝鮮半島とか、具体的な国の名前を挙げていないんですよ。

 一般論で答えてくださいと言っているのに、それも答えられませんというのは、これはさすがに、私はかなり温厚な方だと思いますけれども、これは委員会を続けられないですよ。

岸田国務大臣 今の御質問を聞いておりまして、ちょっと私の考えを申し上げますが、今委員が挙げられた例につきましては、米国であれA国であれB国であれ、どの国であっても、今の我が国の憲法解釈、個別的自衛権においては対応できないという問題意識について総理は記者会見の中で言及し、これでいいのかという問題提起をし、ぜひ議論をしてもらいたい、こういう発言をされたものと私は承知をしております。

玄葉委員 そこの部分はわかるんですよ、そういう問題提起だったということは。

 ただ、今それを、いわば今は何もできないので、日本国として、これから研究をして、それを可能にしようではないか、こう言っているわけですよね。それを可能にするときに、これは集団的自衛権の行使によってそれが可能になるのですかということなんですね。まさにそのことを今、国会とか与党で協議しましょうということだと思うんです。

 まさにそのことずばりをお聞きしているわけで、それを私は事前にきのう丁寧に説明して、私もよくわからないから、きちっと政府として整理をして説明してほしい、こういうふうに申し上げたはずなんですね。

山田政府参考人 この点については、先日、内閣委員会で御説明したことでございますので、それに従って御説明申し上げます。

 一般国際法上、ある船舶に攻撃が加えられた場合に、それを排除するために武力を行使する、個別的自衛権を行使できるのはその船舶の旗国であるということが原則でございます。

 したがいまして、米船または他の国の船舶でありましても、攻撃を受けた船の要請または同意に基づき、我が国が、我が国自身が武力攻撃を受けていないにもかかわらず、それを排除するために実力を行使した場合は、これは我が国による集団的自衛権の行使というふうに国際法上は評価される可能性が高いものと考えております。

玄葉委員 山田さん、もう一回。

 要は、集団的自衛権の行使の要件というのは、今おっしゃったように、ある国が武力攻撃を受けました、その武力攻撃を受けた国が要請または同意をしなければならない。これは、たしかICJのニカラグア判決で明確に述べているんですよね、国際法上。

 そうすると、今、旗国主義とおっしゃったんだけれども、例えば、世界の船はパナマ船籍なんというのが多いわけですよね。現実に日本人を退避させるなんというケースは、パナマ船籍の船に乗ってくるなんというケースはこれから多々出てくる可能性は高いんですね。十分想定されるケース。

 そうすると、パナマに対して同意または要請を求める、こういうことになるんですか。

山田政府参考人 国際法上は、旗国がまず第一義的に個別的自衛権を行使する立場にあるというのが原則ではございます。

 ただし、これは個々具体的な事案に基づいて判断すべき点でございまして、例えば、その船をある別の国がチャーターしたような場合、それで運航しているような場合だとか、また、その船にある特定の国の人が乗っている場合であるとか、また、攻撃者の意図が明白に、ある特定の国を攻撃する意図を持って、その国の方々が乗っておられる船舶を攻撃したということが明示されている場合とか、さまざまな要素を判断した上で評価していく必要がございます。

 ですから、原則は旗国でございますが、ただ、それ以外の国に対する組織的、計画的な武力行使が行われたと評価し得るに値するような状況があれば、それはそれ以外の国に対する武力行使と評価し得る場合もございます。

玄葉委員 では、そうすると、例えば米国がチャーターしましたといったら、米国の要請または同意でいいということを多分今おっしゃったんでしょう、ある意味。そういうこともあり得ますと。まだはっきりはわからぬけれども、個別具体的にこれから状況全体を見て判断することになるということなのでありますけれども、ちょっとまだここは政府の見解が、一言で言うと、定まっていないというふうに思いますね。

 ですから、私が申し上げているのは一般論ですから、つまり、集団的自衛権の行使をする、しない、そのことを申し上げているわけではなくて、一般論として、他国籍船舶の攻撃排除も集団的自衛権行使という形で説明が可能ですかということなので、まさに一般論なんですね。

 だから、この一般論としての政府の見解を、外務委員会として、これはきちっとまとめて提出してもらうというふうにしてもらえないですか、委員長。

鈴木委員長 理事会において協議いたします。

玄葉委員 それでは、その次に、五月十五日、安倍総理の記者会見を聞きました。そのときに、先ほども岸田大臣が答弁をされておられるように、法制懇で示された二つの考え方のうち、一つは芦田修正論なるものであって、この考え方はこれまでの憲法解釈と論理的に整合しないので採用しない、こういうふうにおっしゃった。

 一方で、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときには限定行使が許される、憲法の前文、憲法十三条の趣旨から、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要最小限度の武力行使は許されるという考え方については研究を進めるのだ、こういうふうにおっしゃったわけであります。

 確認をしたいんですが、そうすると、これまでの憲法解釈と論理的に整合する範囲でのみ集団的自衛権の行使というものを限定的に容認していく余地があるということでの研究を進めるというふうに理解をしてよろしいんですね。

岸田国務大臣 今、論理的に整合する範囲で議論を進めるのかという御質問でありました。

 その範囲という意味について、ちょっと私も定かではありませんが、少なくとも、今御紹介いただいた二つの考え方、後者について、我が国としましては、論理的な整合性、法的安定性ということを重視し、そして従来の政府の基本的な立場を踏まえた考え方であるから研究を進めていこうという判断をした次第であります。

玄葉委員 逆に言うと、これまでの憲法解釈と論理的に整合性がとれない、そういうさまざまな事例が出てきたら、仮にそれは日本国にとって必要性があるというふうに感じても、これについては、いわば集団的自衛権の行使について、これまでの憲法解釈と論理的に整合性がとれないので認められない、こういう結論になるということですね。

岸田国務大臣 事実、安保法制懇の報告書の中で、芦田修正に基づく考え方については、これまでの政府解釈と論理的に整合しないということで、採用できないと判断しているわけであります。

 政府としましては、論理的な整合性あるいは法的安定性、これは大事にしていきたいと考えています。

玄葉委員 この集団的自衛権の行使の問題で議論がなされるときによく引用されるのが、一九七二年の政府見解と一九八一年の答弁書であります。

 これも全て質問通告してありますので、法制局長官にお答えをいただきたいと思いますけれども、一九八一年の答弁書は、集団的自衛権の行使は必要最小限を超えるから憲法上許されないというふうに述べているわけであります。

 今回の研究の余地があるというふうにされているのは、簡単に言えば、自衛のための必要最小限の集団的自衛権は許されるのであるという考え方について研究を進めるということだと私は理解をしていますし、個人的には私も一つの考え方だと思うのでありますが、ただ、この一九八一年の答弁書は明確に、集団的自衛権の行使というのはその範囲を超えるものであって、その範囲を超えるというのは、その前の文章で、「自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。」と。

 もし、必要最小限度の集団的自衛権というものを許容するということになったときには、この一九八一年の憲法解釈の答弁書というのは、見直しをするというか、変わるというふうに考えてよろしいのですか。

横畠政府特別補佐人 御指摘のありました、昭和四十七年の参議院決算委員会に提出された政府統一見解や昭和五十六年の稲葉誠一衆議院議員に対する政府答弁書で示しております憲法第九条に関する従来からの政府の基本的な考え方は、憲法第九条は、その文言からすると、国際関係における武力行使を一切禁じているように見えるが、憲法前文で確認している国民の平和的生存権や、第十三条が生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は国政の上で最大の尊重を必要とする旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第九条が、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることまでをも禁じているとは解されず、いわゆる自衛権発動の三要件を満たす場合に武力を行使することは例外的に認められているということでございます。

 このような武力の行使は、国際法上、個別的自衛権の行使に当たるものであり、他方、集団的自衛権は、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利であり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とするものであるため、そのような武力の行使は憲法上許されないと解してきているところでございます。

玄葉委員 先ほど申し上げたように、私、かなりわかりやすく申し上げていると思うんですけれども、八一年の答弁書は、必要最小限度を超えるから憲法上許されない、こういうふうに言っているわけです。

 今研究しようとしているのは、必要最小限度の集団的自衛権は許されるということについて研究を進めていくと言っているわけで、仮に、その研究が進んで、必要最小限度の集団的自衛権はあるのだというふうに認めていくということになれば、さっき申し上げた八一年の答弁書の内容というのは、当然、見直しが図られたということになるのですねと聞いているんです。

横畠政府特別補佐人 いわゆる限定的な場合における集団的自衛権の行使の問題につきましては、現在、安倍総理が示した基本的方向性に基づきまして与党協議が進められており、その結果に基づいて政府としての対応を検討することとなると承知しておりまして、現時点でお尋ねそのものについて予断的なことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

玄葉委員 いやいや、私、もう一回ちょっと聞きますけれども、もちろん、質問というのは、当然、一定程度の仮定を置かないと質問できない、一般論として聞いているというふうに理解をしてもらえばよいのであって、これから研究が進んで、さっき申し上げたようなものはまさに研究の本質でしょう、つまり、必要最小限度の集団的自衛権は、自衛のためだったら、我が国の平和と安全に重大な影響があって、我が国の存立を全うするために必要だったら許されるのだということについて研究を進めるわけですから。

 そうしたら、さっき申し上げたような八一年の答弁書はそれを真っ向から否定しているわけなので、当然、そこは変わるんですねと聞いているんです。

横畠政府特別補佐人 繰り返しになりますが、具体的にどう変わるか、あるいは変わらないかなどについて現時点でお答えすることは、お許しいただきたいと思います。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 内閣法制局長官に申し上げますが、なるべく御質問と回答がかみ合うように、具体的に答えるように努力してください。

 内閣法制局長官。

横畠政府特別補佐人 純粋に一般論としてお答えいたしますが、基本的な部分は変えないということはもう方針でございます。仮に、全く仮にでございますけれども、結論が変われば結論は変わるということであろうと思います。

玄葉委員 こういうことでしょう。つまりは、憲法前文だとか憲法十三条の趣旨を踏まえていく、我が国の平和と安全、存立全う、こういう今までの一種の基本法理というものは変えないのだということを多分今おっしゃったんだと思う。

 その上で、最後の部分の結論、つまり、その結果として、自衛のための必要最小限の集団的自衛権は憲法上許されるのだというふうに変われば、その部分の結論はまさに変えざるを得ない、こういうことですね。

横畠政府特別補佐人 ただいま一般論としてお答えしたとおりでございます。

玄葉委員 そういうことなんだろうと思います。

 きょうはそれ以外もたくさん質問通告をしておりましたが、時間が参りましたので、もう一問だけ。

 一つは、武力行使との一体化論、このことについて、安保法制懇は、これは採用すべきではないということを示しました。それに対して安倍総理は、安保法制懇の意見はとらないということで、武力行使の一体化論というものをいわば否定はしないという中で、判断基準をより精緻化するというふうに答弁をいたしました。非戦闘地域、後方地域、こういった概念も言及がありましたけれども、これをもっとわかりやすく具体的に説明していただけますか。

 例えば、周辺事態において、例えば戦闘作戦行動準備を行っている米軍の戦闘機に対して給油、整備ができないというふうに今の周辺事態法ではなっているわけであります。なぜならば、武力行使との一体化があり得るからというのが理由であります。

 こういった戦闘作戦行動準備中の米軍に対して給油、整備ができない、万が一そういう事態になったときに、今申し上げたようなことが起きれば日米同盟関係を大いに損なうことになるので、この武力行使の一体化論についてはもう少し判断基準をいわば明確にして、精緻化して、その結果として、今申し上げたような戦闘作戦行動準備中の米軍機の給油そして整備、こういったものは可能になるようにしよう。簡単に言えば、こういうことですね。

岸田国務大臣 御指摘のように、安保法制懇の報告書における、武力の行使と一体化の考え方はもはやとらないとする考え方、これは従来の政府の立場に照らして難しいとした上で、これまで、後方支援に関しまして、我が国として武力の行使と一体化することがないことを担保するための仕組みとして、非戦闘地域あるいは後方地域、こういった考え方を採用してきました。

 この点につきまして、後方支援について今まで以上に支障なくできるようにすること、これは極めて重要であるという考え方に立ってこの議論をしていくべきである、このように考えております。

 ぜひ、こうした考え方に基づいて、これからしっかりと丁寧に議論を進めていただくことを期待しております。

玄葉委員 私は、周辺事態で、戦闘作戦行動準備中の米軍機に給油、整備ができないというのは、日米同盟上、やはり問題はあると思っているんですよ。だから、この部分については、やはり柔軟に、武力行使の一体化のところできちっと解決をしていく必要があるというのは私の考え方でありまして、外務大臣としては基本的にはそういう方向で検討がなされるべきだとお考えですか。

岸田国務大臣 我が国としまして、今後とも、国際貢献そして後方支援につきましても、今まで以上に支障なく進めていくためにはどうあるべきなのか、こういった考え方で議論を進めることは大変重要だと考えております。

玄葉委員 最後に、南シナ海のことで、安倍内閣総理大臣が記者会見でおっしゃったのですが、記者の質問にお答えになられて、南シナ海の状況に、この集団的自衛権容認によって、日本の役割、貢献がどう変化するとお考えでしょうかと。直接お答えになっていないのですが、「私たちが検討をするのは、まさにこのような状況でありました。このような状況が発生したとき、日本人の命に危険が迫っているにもかかわらず何もできなくていいのかということであります。」「安全保障の分野では様々な事態が起こり得るわけでありますが、今、申し上げましたように、私たちが検討しているのはこうした事態である」と。

 そうすると、この南シナ海の今のパラセル、スプラトリー、あるいはスカボロー、こういう状況があるわけでありますけれども、今回の集団的自衛権のいわゆる行使容認の研究、限定容認の研究によって、この南シナ海での日本国の役割、貢献に変化というのはあるのでしょうか。

岸田国務大臣 総理の発言について、詳細、今まだちょっと確認をしておりませんが、我が国としましては、今、南シナ海において発生している事態、これは国際社会全体の関心事項であると認識をし、そして、まさに我が国として、こういった力による現状変更等は許してはならない、こういったことをまず念頭に発言されたのではないかと存じます。

 そして、我が国の国民の生命、暮らしを守るために、あらゆる事態に対応するべく切れ目のない法的基盤をつくっていかなければならない、こういったことが重要であるということを表明されたのではないかと存じます。

 我が国の対応につきましては、今与党において議論を始めていただいているわけですが、ぜひ政府としましても、こうした丁寧な議論の積み重ねによってしっかりとした方針を確定したいと考えています。

玄葉委員 一般論で最後に聞きます。

 南シナ海の状況がこういう状況にございます。仮に、A国とB国の紛争が生じて、米国がB国の支援に出たという状況というのは私はあり得ない話ではないと思うんですけれども、具体的に言うともっとわかりやすいんですけれども、余り特定の名前、特定の国を挙げてもいけないと言われますから、あえて一般論で聞いているんですが、そうしたらば、A国が、米国が入ってくるのを防ぐために、南シナ海に機雷を敷設した。その機雷の掃海を米国から日本は頼まれた。

 もし、今回、集団的自衛権の限定容認というものが実現をして、戦闘中も機雷掃海ができるということに仮になった場合は、今のような事態、つまり、機雷掃海というのは、南シナ海だけではなくて、むしろホルムズ海峡ばかり言われていますけれども、海上交通路の要衝なわけですけれども、南シナ海で仮にそういうことが起きた、そして米国から要請を受けたなどという場合は、機雷掃海を行うという可能性は否定はできないというふうに考えていいですね。

岸田国務大臣 もちろん、今の議論は特定の事態や地域を念頭に置いて議論しているものではありませんが、我が国としましては、我が国の国民の命、暮らしを守るために、あらゆる事態に備えるため、切れ目のない対応をするために、法的基盤のありようについて議論しているわけです。

 あくまでも、我が国の安全にとって重大な影響がある場合、こういった限定的なケースにおいて、集団的自衛権の行使等が必要最低限の範囲内に入るのではないかという考え方について研究を進めているところであります。こういった考え方に基づいての研究において、今の例についてもどのように考えるかというのが定まっていくものだと考えております。

 いずれにしましても、これは、我が国の国民の命、暮らしを守る、こうした大きな、大切な目的のために、政府として、政治として、どうあるべきなのか、真剣に考えていきたいと考えます。

玄葉委員 時間が来ましたので、今度またゆっくりやりたいと思います。どうもありがとうございます。

鈴木委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 よろしくお願いをいたします。

 御通告を申し上げておりませんが、大臣、昨日あった拉致問題について、中身については、私もお聞きをしたいことは先ほど玄葉委員からありましたので、お願いだけしておきたいと思います。

 何人かのスタッフは、私のときから部下であった者も含めて、大きな努力をして、一つのステップを上がったんだろうというふうに思いますが、御家族の方々の思いなどを思えば、ぜひ大きな前進をかち取っていただきたいというふうに思いますし、このことは、党派を超えて、全ての人の一致する思いでもあると思います。受けとめる重みは大変大きいと思いますが、御尽力をいただきますように、冒頭にお願いを申し上げておきたいと思います。

 それでは、安全保障の議論に入りたいと思いますが、ここまでの当委員会そして各委員会での議論を聞いている中で、ぜひ丁寧な議論をお願いいたしたいというふうに思っております。

 今回は、幾つかの事例が挙げられて、こういった事例にどう対処するのかという形で議論が行われてきているわけでありますが、やはり国民にとっても、その事例というのはどんな事例なのか、今、玄葉さんからも、なかなか外交上のこともあって、特定の国を挙げるわけにはいかないとはいいながら、そこは丁寧にぜひ説明をしていただきたいと思います。

 委員会などでも、こういった事例が本当に起こるのかというような議論が何度か行われているときに、大変残念ですが、総理初め政府の方から、では起こらないと言えるんですか、そういう切り返しをされることがよくありますが、それではなかなか議論は建設的には進まないと思います。やはりこういうことが考えられるのではないかということを丁寧に説明をいただきたいというふうに思っております。

 一昨日の予算委員会だったかと思いますが、ではそういう事例は起こらないと言えるんですかと、正確な文言はちょっと私も覚えていませんが、それでは危険な状況が発生をしたときに頭を砂に突っ込むダチョウのようではありませんかといったような表現があったように記憶をいたしておりますが、念のため申し上げておくと、ダチョウは大変耳がよくて、敵が近づくと頭を砂に突っ込むのは、むしろ情報収集をするためだということもあります。

 英語では確かにそういう言葉もあるようでありますが、私も大事な国だと思いますし、内閣も大事な国だと思っているオーストラリアの国鳥はエミューというダチョウ科の鳥でもありますので、いわば余りこきおろすような表現をとらずに、丁寧に説明をしていただきたいと思うのがまずこの議論の一つであります。

 二つ目は、ここでの御説明でも、政府側から、今与党で協議をしておりますというお話がよく出てまいります。与党で協議をいただくのは、もちろん、政党政治、議院内閣制ですから、ぜひ御議論をいただいたらいいと思いますが、これだけ重要な話を、しかも国会という国民の皆さんが聞いている場でされるわけですから、与党で協議をされているので答えられませんという形は、やはりそれでは説明にならないのではないかというふうに思います。

 ましてや、先ほども与党の側の方からもお話がありましたし、私は、きちっと安全保障上の要請に応えるべきだという立場から、しかし、国民の皆さんの理解も必要だという立場からあえて申し上げますが、内閣だけで決めていいのかというような批判がある中で、さらに言うと、与党の協議だけで決めていいのかという批判にもつながりかねないところがありますので、与党の協議を理由にして説明を回避するということはぜひ避けていただきたいということをあらかじめ申し上げておきたいと思います。

 その上で、きょうは、今皆さんのお手元にも資料を配らせていただきました。個別具体的な事例があって、それに安全保障上の要請があって、これにどう応えるかという視点が必要だということは、当然、我々国民の生命財産を預かる者としては考えなければいけないところだと思います。同時に、これは憲法にかかわることでありますから、憲法の論理性、整合性との関係が必要だというのが先ほどの法制局長官のお話でもありましたし、法的安定性も含めて、このことも必要だということもよくわかります。

 その憲法の論理的、整合的な説明を、少しきょうは概念的な話になると思いますが、議論をしていきたいと思っております。

 先ほど、玄葉さんとの議論でも、議論の結論から言えば、結論が変わるなら当然今までの結論とは変わるんだ、そういう御説明でありましたが、スタートがもし一緒だとしても、結論が変わるなら、どこかでプロセスが変わらなければ当然結論は変わらないわけでありますから、どこでそういう議論になったのかということをきちっと見る必要があると思っております。その意味では、私は幾つかの点で論理の組み立てを再構築する必要があるところもあるのではないかなという視点でお話を申し上げていきたいと思います。

 それからもう一つ、同時に、この委員会で私は何度かお聞きをさせていただきましたが、国際法から見た視点ということもこの議論をしていただくのに大変重要ではないかというふうに思っております。

 当然、国際法との関係で整合的でなければいけないという法の立場からもそうでありますし、また、政治的、外交的にも、例えば個別的自衛権の範囲であるとか集団的自衛権の範囲であるとか、武力の行使に当たるとか当たらないとかいったものについても、我が国の解釈では武力の行使に当たらないんだ、我が国の解釈ではこれは個別的自衛権なんだ、こういうふうに言ったとしても、一般的に国際法から見れば、いやいや、それは集団的自衛権でしょう、いや、それは武力の行使に当たるのではないですかと評価をされる。

 それは、紛争当事国なのか、関係国なのか、同盟国かも含めて、そこで理解がずれると、私たちはこう思っているのにということだけでは説明がつかなくなってくるわけですから、やはり国際法との整合性ということもぜひお聞きをしていきたいというふうに思っております。

 何度か議論をさせていただきましたが、長官がかわられたもとでの新たな法制局の体制ということなので、ちょっと念のため確認をしていきたいと思いますが、お手元に色刷りの表を配らせていただいたんですが、この箱のところで、武力行使は国際法上も禁じられている、そして、我が国の憲法も武力の行使を認めていない。この青線で引いた大きな箱をイメージしてください。この境界線に何があるかということを議論し出すと、またかなりいろいろ出てきますのであれですが。

 しかし、武力の行使は禁止されているけれども、この右下にあるように、自衛権は、その中で、国際法上は行使をすることができるというふうに、2の分野も3の分野も4の分野もできるというふうに考えられている。しかし、我が国の憲法では今のところはこの4しかできないというふうに考えているのが我が国の今の憲法解釈だというふうに私は理解をしております。

 そこで、法制局にお聞きをしたいと思うんですが、我が国の憲法では、前文、十三条を引かれて個別的自衛権というのを認めているわけでありますが、十三条、前文を引いてきて、個別的自衛権が認められるということはわかります。しかし、個別的自衛権しか認められない。つまり、憲法の要請からくる、前文、九条、十三条を総合的に考えて、この3と4の間に線があるんだとこれまで言ってこられました。しかし、ひょっとしたら、その線は2と3の間ではないのかというのが今研究をしていることではないかというふうに思うんです。

 九条、十三条、前文を合わせて、なぜ3と4の個別的自衛権しか認められないという論理になるのかということが、何度か私はここで議論をさせていただきましたが、そこは、いやいや、もうそもそも憲法は個別的自衛権しか認めていないんだと論理の飛躍があるように私は思っているんですけれども、もう一度、法制局の御説明をいただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 憲法九条に関する従来の政府の見解ということでございます。

 今、十三条の問題あるいは前文の問題等がございましたけれども、まず基本として、九条の文言自身が、およそ国際関係における武力の行使を一切禁じているというふうに見えるというところがまず出発点でございまして、その中でも、前文で確認している国民の平和的生存権とか、あるいは十三条の生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利というのを国政上で最大の尊重を必要とするという趣旨を踏まえると、さすがに全部できないということではなくて、憲法九条が、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることまでは禁じているとは解されない。ただ、それは無制限ではなくて、やはり相当の九条の制約の中での例外的な措置である。

 そうなると、やはり、これまでの政府としては、いわゆる自衛権発動の三要件というもの、すなわち、我が国に対する急迫不正の侵害があること、我が国に対する武力攻撃が発生したことというものが非常に大きい要件としてかかり、第二要件あるいは第三要件がございますけれども、この三要件を満たす場合だけに武力を行使することが例外的に認められる。

 あくまで例外的に認められる範囲は無制限には広がっていかないという前提で、そういう解釈を従来は政府はしてきたということでございます。

松本(剛)委員 率直に言って、答えになっていないと思います。

 例外的であるとか限定的であるということは、日本国憲法を通して理解をすれば、私もそうだと思います。ですから、あえてきょうこの表でも2、3、4とさせていただいたのも、2と3の間にやはり線があるんだろう、限定的というのはわかります。つまり、国際法上は固有の権利として認められている2、3、4を丸々日本国憲法が認めているとは考えにくいのではないかということについては、私も同意をいたします。

 その上で、繰り返しになりますが、例えば、一昨日の予算委員会で法制局長官がこうお答えになっているんです。「平和主義をその基本原則とする憲法が、自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、」そこはいいですね、「それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて許容されるもの」、こう答えておられるんです。

 この言葉を分解していくと、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという事態というのは、前文や十三条から導かれると思いますが、外国からの我が国に対する武力攻撃であって、急迫不正のという言葉は、前文や十三条からは少なくとも直接は出てくる文言ではないと思うんですね。これが、おっしゃったように、自衛権の三要件なんです。

 今おっしゃったのは、我が国の憲法は限定的にしか自衛権を認めていない、その限定的なのは個別的自衛権の三要件なのであるから、個別的自衛権しか認めていない。つまり、個別的自衛権の三要件を最初からいきなり持ってきて、それで個別的自衛権しか認めていない。これは、いわば個別的自衛権を認めることありきでの論理でしかなくて、急迫不正とか、それがどこから出てきているのかということは御説明になっていないと思いますが、多分、御答弁を求めても同じことになると思いますので、その点を指摘だけさせていただいて、次の質問をさせていただきたいと思っております。

 それでは、この表で見ていただいたときに、既に国際法局には前にも確認をさせていただきましたが、一般的に国際法で武力の行使は禁じられている、しかし、認められる、もしくは武力の行使のいわば違法性が阻却をされるケースとしては、自衛権が発動される場合と、安保理決議に基づく措置が行われる場合とがある、この二つがあるという理解でいいというふうにこの外務委員会でも議論をさせていただきました。その点だけ確認をしておきたいと思います。

石井政府参考人 端的に申し上げると、委員がおっしゃるとおりでございます。

 繰り返しになりますけれども、憲章二条四項で、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、」「慎まなければならない。」というふうに書いてございます。一方、憲章七章下での安保理の決定もする場合、それから自衛権の行使の場合には、武力の行使が正当化されるということでございます。

松本(剛)委員 法制局にお伺いをしたいと思いますが、そうすると、先ほどの御説明で、この表でいうと4は認められているというのが現行解釈であるということでありました。現行の解釈で、5と6の安保理決議に基づく措置による武力行使は憲法は認めていないという理解でよろしいんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 いわゆる自衛権の発動の三要件と申しておりますけれども、個別的自衛権という国際法の概念ではなくて、あくまでも日本の自衛する措置としての権利という意味だと私は理解しておりますけれども、そういう意味では、国際法上の概念と憲法上の概念とは全く無関係というんでしょうか、もちろん国際法上違法なことを憲法がするということはできませんので、国際法合法の中で、あくまでも憲法に合致することをするということでございます。

 したがって、安保理決議がどうこうとかいうことは憲法との関係では全く直接的な判断には関係なくて、あくまで先ほど申しましたような三要件というものを理解し、それに当たらない場合についてはできないし、当たる場合には武力の行使ができるという二分法でございますので、そういう意味では、安保理決議がどうこうというのは憲法を判断するときの要素には直接は関係ないというふうに理解しております。

松本(剛)委員 そうしますと、今のお話でいくと、国際法上で言うところの個別的自衛権、これも通常三要件と言われますが、それと、我が国の憲法で言うところの、認められている個別的自衛権とは全く違う概念である、こういう理解でよろしいんですか。

近藤政府参考人 やや言葉が足らなかったかもしれませんけれども、政府が従来から解しております憲法九条の解釈の中で認められるというような武力の行使をする事態というのは、国際法上で評価すれば、いわゆる個別的自衛権というものとして評価される。

 あくまでも、国際法と憲法における評価は、違う法体系でございますから、それぞれのどういう概念に当たっていくかというと、憲法の中で認められるものは、国際法でいえば個別的自衛権として認められているものだろう、こういう関係、法的にはそういうことかなというふうに理解しております。

松本(剛)委員 そういうお話になるのかなと思いました。

 ちょっと見にくいんですけれども、実は、お手元に配らせていただいた表で、6のところで個別的自衛権から広がる形で点線をつけさせていただきました。

 恐らく、今おっしゃった話は、安保理の決議があろうがなかろうが、我が国に認められている武力の行使の権利があるというのは、この4と6は入るんだというお話をおっしゃっているという理解、つまり、安保理決議があった場合でも、我が国の憲法上認められる武力の行使があり得るという理解でよろしいんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 この6の部分というのが、ちょっと私ども、今まで4の部分というものは、これまでも政府の中でもそういう議論をしてきました。6という状態が一体どういう状態なのか、これまで、具体的にどういう事態がこういうことになるのか、申しわけございません、そこは具体的にイメージがございませんでして、ちょっと具体的な事例との関係で判断していかないと、いわば、こういう状態がどういう状態で起こって、そのときに三要件が満たされた状態でいるのかいないのか、その辺を含めて考えていかないと、一概に観念論だけでお答えするのは非常に難しく、国際法上どういう整理をされるのかも私どもよく承知しておりませんし、ちょっとにわかにお答えはしにくいと思います。

松本(剛)委員 きのう、この表をあらかじめお渡しして、中身も御説明をして、例えば、我が国が個別的自衛権を発動せざるを得ない状況で、実際に発動しましたが、国際社会が極めて速やかに動いて、直ちに安保理決議が行われて、国連の決議に基づく措置がとられることになった、そういうケースは十分にあり得ると思うんですね。

 そうなると、国際法から見れば、自衛権の発動から安保理決議の措置に移るんですよ。これは確かに、措置は、今いろいろなケースがあり得るし、当初の国連憲章が想定をしていた措置というのが必ず行われるというか、むしろまだほとんど行われていないというのが実態だと思います。ですから、安保理決議に基づく措置、特に憲章上で言うところの措置というのは何なのかというのはさまざまな解釈があるところだと思いますが、憲章の文言を読む限りは、自衛権の発動は措置がとられるまでの間。

 そうすると、自衛権が発動している段階と安保理決議に基づいて措置がとられている段階、これは、あえてきょうは概念論をさせていただきますというのは、きのうも通告で申し上げました、これがこんなケースだ、あんなケースだと言い出せば、いろいろなケースがあり得ますが、法律は、やはり論理的に、こういうパターンはどうなのだということを詰めて考えていかなければいけない。

 今、次長がおっしゃったように、いや、そもそも全然別なのでということをおっしゃられたら、先ほど申し上げたように、こういう国際的な問題は、国際法、国際社会の理解と我が国の理解とが、用語が違っていたり説明が違っていたりするということはよくないんじゃないですかということを冒頭に申し上げたのは、そういうことなんです。

 今の点について。

石井政府参考人 私からは、国際法上の観点から、五十一条の自衛権とそれから安保理決議の場合とがどういう関係になるかということについてまず御説明をできればと思います。

 委員御指摘のように、国連憲章五十一条では、安保理が「必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」ということが書いてございます。

 一方、では、安保理が集団安全保障措置をとった場合、それ以降、五十一条の定める個別的または集団的自衛権の権利を行使し得なくなるかといいますと、それはそれぞれの具体的な状況によって異なってくるので、一概には言えないと思います。端的に申し上げると、両方が併存する場合というのもあり得るかと思います。

 例えば、特定の安保理決議で、その中に、集団安全保障をやりながらも、各国の固有の自衛権の存在を想起しつつといったような言及がある場合がございまして、両方併存していることを想定しているような場合もございます。したがって、一概には言えないということになると思います。

松本(剛)委員 おっしゃることはこれまでの事例でもあることはよくわかります。その意味であえて申し上げましたが、いわば国連憲章が当初に想定をしたような形の集団安全保障措置がとり切れていないということも、そういうことを生じさせている背景にはあると私は理解をしております。

 他方で、いろいろな過去の積み重ねによってこの国連憲章というのができていて、自衛権の発動については、集団安全保障措置がとられるまでの間であって、安保理に報告をするという義務も課すことによって、言うなれば、自衛権の濫用を防ごうというのが国連憲章の根本的な考え方だと私は思うんですね。それは極めて平和を大事にする考え方であろうというふうに思う。

 やむを得ず、今おっしゃったように、併存というのか、完全な集団安全保障措置になり切れていない以上、事態を正面から捉えれば、両方併存のような、つまり、安保理決議で決めたような措置をとりつつも、集団的自衛権なり個別的自衛権での措置をとっていかなければ実態として排除できないケースがあるということでそういう決議があることはわかりますが、最終的には集団安全保障措置によって何らかの侵害を排除することを目指しているのが国連憲章のはずだと思うんですね。

 だから、きょうはあえて観念論を少しさせていただきますと言いましたが、そういう国連の考え方からいえば、自衛権の発動は、むやみに、そして無制限ではなくて、集団安全保障措置がとられるまでの間とあえて決めていることにも、やはり私は大事な意義があると思う。

 そうすると、では、その意義があって、実際に、そういう集団安全保障措置によって、侵害の回復であり排除を行うことができるような措置がもし行われるようになった場合、それはやはり憲章の基本に立ち返って、自衛権の発動ということは終わらなければいけないはずなんですね。そのときに、日本国憲法で、いわば我が国にかかわる事態であったときに、どう説明をするんですかということを聞いているんです。

近藤政府参考人 自衛権の発動の三要件というのは少し誤解を生みやすい、先ほど申しましたように、自衛権は別に国連憲章上の個別的自衛権ということをすぐ指しているわけではなくて、日本を自衛するためということですから、日本があくまでも憲法上いわゆる自衛権発動の三要件が満たされているという状態であるならば、直ちに、国際法上に位置づけ、あるいはそういうことを続けることが国際法上違法になるということなら、それはまた別問題ですけれども、そこのところは、憲法との関係でいうと、国際法上の正当性の理屈というのは変わり得るのかもしれないというふうに、私は今まで研究したことはございませんけれども、従来は先生のお示しの4の部分しか考えておりませんので、6の部分というのは余り議論をしておりませんけれども、そこは、日本として憲法との関係では合憲性は担保された状態で、あとは、国際社会との関係、国際法との関係でそれが違法になるなら、そういう行為はできないということになるのかなと思いますし、それが安保理の決議の中にも埋め込まれてもできるということであれば、それは続けることは国際法上可能であろう。憲法上は多分そこに差はないんだろうと私は思います。

 済みません、やや私見が入りまして恐縮でございます。

松本(剛)委員 私は、憲法の平和主義が基本だと思いますので、その意味では、あえて5と6で点線もつけさせていただきました。

 一般的な国々にとっては、安保理の決議の措置があれば違法性が阻却されるわけですけれども、我が国の憲法がこの5と6を丸ごと全部認めていると考えるものではないという考え方はあってしかるべきだと思いますし、そうだと思います。

 しかし、そのときに、実は今回はあえて個別的自衛権のところから点線を引かせていただきましたけれども、少なくとも国際社会、国際法では、この5と6の違法性の阻却の理由は、自衛権ないし自衛権に準じた説明はしないんですよ。

 これは、実はいろいろ考えてこの紙をつくっておりまして、自衛権と安保理決議に基づく措置の高さを変えているのも、事によっては、安保理決議に基づく措置の場合はかなり広い範囲の手段を認めるケースもある、決議の内容、読み方次第ですけれども、どういうふうに考えるかということがありますが、あらゆる措置をとるといったようなものもあります。

 自衛権は、ほかに適当な手段がなく、均衡性の原則も厳しく問われるわけでありますが、国際社会として集団安全保障措置で決めた場合には、まず何よりも総力を挙げて排除し回復をするという考え方が先に立ってもおかしくないわけですから、ここの大きさを変えてみたんですけれども、では、我が国がそこまでやるのかどうかということはきちっと議論した方がいいと思います。

 きょう、あえてそのことをお話しさせていただいたのも、6についてはほとんど議論、研究されていないということでありましたけれども、もう一度憲法から、では、どこで線を引かれて、どういう理屈で、そして、冒頭あえて申し上げたのも、国際社会で国際法の上からも通用する考え方で説明をするようにしていただかないといけない。

 我が国がこれから国際社会でも一定の責任を果たしつつ、なおかつ、我が国には平和主義があり、憲法があるんだということもきちっとわかっていただく。多くの国にとって、日本のこれまでの平和の歩みというのはやはり高く評価をされていると思いますので理解されると思いますが、理解されるような説明をどう組み立てるかということを、ぜひこの機会にきちっとつくっていただきたいということを申し上げなければならないと思って、少し観念論になりますけれども、こういう表をつくらせていただきました。

 もう一つ議論をさせていただきたいと思いますが、左側のところへ行きたいと思います。

 海賊、PKO、まあ、対テロはちょっと事態が複雑になりますからあれですが、武力の行使に当たるのか当たらないのかという話であります。もちろん、個別の対応とか決議の内容とか、PKOでも与えられた任務によって細かくいろいろ議論をしなければいけないんですが、少し抽象論でお話をさせていただきます。

 PKOの武器の使用というのは、一般的には武力の行使に当たらない。これもこの外務委員会で私が議論をさせていただきましたので、政府の答弁をもう一度確認しますと、「国連PKOのような国内の治安維持型の活動の本質は、領域国の同意に基づきまして、本来であればその国の警察当局等の機関がその任務の一環として行う治安の維持や回復活動をいわば代行する性格のものだと考えております。 このように観念されますPKOの活動は、国際法上は国連憲章二条四項で禁止される武力の行使には当たらない」、これは五月の十四日の議論であります。

 二条四項に当たる武力の行使には当たらない。これは、武力の行使を実は確認していませんというか、この表では書いていませんが、少なくとも国際法で言うところの武力の行使からいくと、実は、PKOをあえて武力の行使にかけて13、14と書きましたが、国際法から見たら14はないんだ、武力の行使の外なんだというふうに説明をされていますが、憲法解釈では、武力の行使と一体化をするおそれがあると言っているということは、14番があるんだと言っている。

 そうすると、この武力の行使の枠が、我が国の憲法が言う武力の行使の枠と、国際法の国連憲章二条の4で言う武力の行使と違うのか、それとも、このPKOの考え方が違うのか。

 まず国際法をお聞きした方がいいですか。多分、国内法の話だと思うので、日本国憲法の武力の行使と国際法の武力の行使が異なるのか、PKOの武器の使用というのが武力の行使と一体化するおそれがあるということは、国際法上はそういうふうに考えていないんだけれども、ここも定義が違うのか、そこを御説明いただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 PKO活動についてのお尋ねでございましたけれども、従来から、PKO活動についての政府の考え方は、これは、国連安保理等の決議に基づいて国連が組織し、国連の統括のもとに行われるものではあるが、そうであるとしても、これに参加する各国の活動がそれぞれの主権に基づく活動であるということが否定されるわけではなく、我が国自衛隊の活動については、それが武力の行使に当たるというのであれば、憲法九条のもとでは許されないというのが従来の解釈でございます。

松本(剛)委員 恐縮ですけれども、その答弁、私の別のものの答えだと思うんですけれども。

 私は、PKOについて、二つ、武力の行使の枠というのがどの範囲なのかということと、そもそも、先ほども国連PKOと言われるように、PKOの主体というのは通常は国連だと考えているけれども、今の現行法の解釈では、我が国の行為であるがゆえに憲法の制約を受けるんだ、こう言っておられるということで、主体の問題と武力の行使の範囲の問題と、二つ通告をさせていただきましたが、今、主体のことについての御答弁だったというふうに思います。

 武力の行使の範囲が国際法と我が国では違うんですかということをお聞きしています。

    〔委員長退席、薗浦委員長代理着席〕

近藤政府参考人 申しわけございませんが、国際法のところについては、私ども、詳しくきちっと比較することができません。

 今まで、憲法上の考え方でございまして、まさしく今申し上げましたように、PKO活動であるとしても、それは我が国の活動が否定されるわけではないので、我が国自身の憲法の制約を受ける。したがって、相手が仮に国または国準等と敵対をしながらお互い攻撃をし合うような状態になれば、それはあくまでも武力の行使に当たり得るというのが従来の政府の見解でございます。

石井政府参考人 前後いたしまして恐縮ですが、国際法上の位置づけは、委員おっしゃったとおりでございます。

 PKOのような治安維持型の活動の本質は、領域国の同意に基づいて、本来ならその国の警察当局等の機関がその任務の一環として行う治安の維持、回復活動をいわば代行する性格のものということでございまして、二条4で禁止されている武力行使には当たらないというふうに国際法上は考えられております。

松本(剛)委員 時間が限られてきましたが、この上の海賊のところを見ていただきたいと思います。

 実は、このことも国会で何度も議論いたしました。我が国の憲法の考え方が国際法の考え方と必ずしも一致をしないのであれば、海賊に対する対処であっても、今まさにお話があったように、国または国に準ずる者が相手であれば、憲法の考え方からいえば、武力の行使に当たるのではないかという議論がなされてきました。しかし、それは警察活動だから当たらないということで、今、我が国の解釈でも、この12の部分はないという解釈になっているというふうに理解をしております。

 おりますが、その延長線からいけば、先ほども申し上げたように、少なくとも国際法上は、位置づけは、領域国の同意に基づいて、本来であればその国の警察当局などの機関がその任務の一環として行う治安の維持や回復活動をいわば代行するんですよね。海賊とそんなに論理構成が違うわけではないのに、PKOのときは急に国または国に準ずる者が出てくる。

 海賊のときも議論しました。相手が国または国に準ずる者であるという可能性が理論的にはありますよね、そのことはどうするんですかということの議論があったときには、そもそも海賊行為を行うということそのものが国または国に準ずる者とは認められないのでという説明であったというふうに私は理解をしておりますが、PKOも分類からいけば警察活動なんですよ。だから国際社会では武力の行使に当たらないと言っている。なぜここで海賊と違う説明になるのかということが説明できるんでしょうか。

 そして、もう時間がないのであえて申し上げておきますが、冒頭に申し上げました、武力の行使という同じ言葉を使い、自衛権の三要件という同じ言葉を使い、またPKOとか海賊についてもほぼ同じ用語を使いながら、我が国の憲法の用語と国際社会、国際法の用語は違うんですという説明をするのは極めて好ましくないと思いますので、この機会にガラス細工の説明は整理をされるべきだというふうに思いますが、最後に御答弁を伺いたいと思います。

近藤政府参考人 海賊について御質問がございましたので、そこの点についてお答えをします。

 御承知のとおり、海賊については、今、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律という形で日本としては海賊対処をしておりますけれども、これは、国連海洋法条約により許容される範囲内で、我が国の警察権、我が国の統治権の中である警察権を公海上まで及ぼして、我が国の犯罪を取り締まる、我が国の法執行として海賊を取り締まるということでございますので、完全に我が国の警察権に基づく活動であるというふうに理解をしております。

 他方、PKO活動は、先ほど国際法局長からも、当事国の警察的な活動であるということではございますけれども、あくまで我が国の統治権の及ばないところでございますから、国外の領域でございますので、やはりそこは、統治権に基づく警察権の行使と、類似の行為ではあるかもしれませんけれども、あくまで主権の中の世界ではない世界とは、やはり法律上は同一には論じられないというふうに、私ども、従来から御説明してきておるところでございます。

松本(剛)委員 海賊のときに、国際海洋法条約ということで、国際法は関係ないといいながら、海賊の違法性のときだけ国際海洋法条約を持ってくるんですよ、法制局は。

 それだったら、全体を国際法の枠組みと論理的、整合的なものに、論理的、整合的は法制局が大好きな言葉ですけれども、国際法ともやはり論理的、整合的にぜひしていただきたいと思いますし、今、領域、主権という言葉をつくられましたけれども、またこれは新たなガラス細工の複雑な仕組みができちゃいますよ。本当に整理をされるべきだというふうに思います。

 そのことを強く申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

薗浦委員長代理 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 国際情勢に関する件、安全保障の法的基盤の再構築についていろいろと質問をさせていただきたいと思います。

 きょうは、委員のお手元に、十五事例など細かなポンチ絵や、それから主な関連条文、基本的な問題意識等々が記されている資料が配られております。私も改めてその内容を拝見させていただいてはおりますけれども、きょうは特に、細かいそれぞれの事案についてではなくて、全体的な確認という点で質問をさせていただきたいと思いますので、答弁もまたよろしくお願いいたします。

 さて、総理の私的な諮問機関であります安保法制懇の報告に基づいて、総理が五月十五日に、政府の方針といいますか、考え方を述べられたわけです。岸田外務大臣、この五月十五日というのが、国民の皆さんにとってというよりは、沖縄県民にとって大変重要な日であるということは御存じだと思います。その日に総理の会見を聞いて私が真っ先に思いましたのは、やはり今、現下にある米軍基地の状況や安全保障の環境、大変厳しい環境にあるということは認識しつつも、これから、こういう政府の解釈の拡大あるいは憲法に対するさまざまな国民的な議論というものを本当にしっかりやっていただきたいということを改めて思った次第です。

 といいますのは、五月十五日といいますのは、一九七二年、沖縄が、二十七年間の米国の施政権下から日本の施政権に復帰をした日であります。私たち沖縄県民が祖国復帰の日というふうに呼んでいる特別な日です。それは何に復帰をしたかというと、やはり、日本という社会が安定して営まれているその根幹たる理念、日本国憲法に復帰したんだというふうに私たちは学校で教わりました。そのとき私は中学一年生だったと思います。

 そういうことを考えますと、この五月十五日に総理が行った会見は、日本国民の皆さんはもとより、県民にとって、実は大臣が所属をしていらっしゃる自由民主党の支援者にとっても、非常に大きな、悩ましいといいますか、そういう日になるのかなというふうな声を私も地元で聞かせていただきました。

 つまり、国民的な議論をこれからしっかりと進めていくことにおいて、五月十五日に安倍総理が記者会見を行ったことに関しては、本当にまさにそのスタートにしてほしい、国民議論のスタートにしてほしいということを強く願うのであり、その解釈を一方的に容認する、もしくは、憲法の理念や、私たちがずっと大切にしてきたはずの政府の見解や国会での議論を乗り越えていって、いわゆる今までの専守防衛の形ではない、また新たな、安倍総理の望んでいるいわゆる双務性のある日米同盟ですとか、あるいは自分たちの国も必要であれば外国で血を流す努力をしなければならないとか、考え得るさまざまな危機に対する国民の意識というものがどこにあるのかということを、私は、改めてまたこの憲法の議論、安全保障の議論を通じてしっかりと考えていただきたい、そういうことをまず冒頭申し上げたいというふうに思います。

 では、まず、安保法制懇の報告書に関する件から内閣官房国家安全保障局にいろいろ質問をさせていただきたいと思います。

 今回、この法制懇の報告をもとに政府が示した事例、お手元にあります十五事例、集団的自衛権が八事例、PKO等が四事例、グレーゾーン三事例に対することについてまずお聞きしたいと思います。

 そもそも、事例を細かく挙げて、こういうことができないんだということを挙げておりますけれども、この具体的に挙げていること、確かに今、さまざま議論が必要であるということを考えつつも、現行の国内法制は、例えば、自衛隊法、武力攻撃事態対処法、周辺事態安全確保法、それからPKO法などなど、現行でも対応できる法制度整備は十分行われていると思います。

 現行法制に基づく現実的な対処の可能性についてまずお伺いしたいと思います。

    〔薗浦委員長代理退席、委員長着席〕

武藤政府参考人 お答えいたします。

 事例集に挙げられております十五の事例は、先般の総理の記者会見において示されました、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守る、現実に起こり得るあらゆる事態に対して切れ目のない対処を可能とするという問題意識を踏まえつつお示ししたものでございます。

 これらの事例については、それぞれの事例の概要で説明されてございますけれども、現在の憲法解釈、あるいは、御指摘のようなさまざまな現行法制もございますけれども、そういう現行法制のもとでは切れ目のない対応ができなかったり、実施可能な活動に制約があったり、そもそも対応できないというものが挙げられてございまして、今後、与党協議で具体的事例に即して検討を進めて、その結果に基づいて政府としての対応を検討していきたいと考えております。

玉城委員 これまでも、さまざまな事態を想定して、それぞれの法律、あるいは憲法、もともとは憲法の条文、理念に合致するかどうかということでの法整備が行われてきた。そういうことを考えますと、できないことを一つ一つ挙げていくとこの十五事例にとどまらないという声を多く聞くわけですね。

 事実、この十五事例を政府が挙げてきたことについて、あたかもこれだけであるかのようなイメージを国民の皆さんは持っていらっしゃるかもしれないんですが、総理は国会での答弁で、この事例からさらに乗り越えていってどんどん答弁もしていらっしゃる。ということは、この十五事例に限らず二十でも三十でも事例を挙げる、つまり、できないことを挙げれば、さらに、その解釈や適用できないこと、あるいは集団的自衛権でないと、法整備をしないと、あるいは憲法の解釈を変えないとできないんだということがどんどんどんどん出てきてしまうということが予想されるわけですね。

 では、その適用が拡大することに対する歯どめをかけるのは、一体どこで、どの時点でかければいいのかという疑問もあると思います。そのことについて見解をお聞かせください。

武藤政府参考人 政府としましては、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増します中で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、あらゆる事態に切れ目のない対処が可能となる国内法制を整備する考えでございまして、与党協議会に提出をいたしました事例集に挙げられた十五の事例も検討いたしますし、これ以外を検討しないということではございませんけれども、ただ、今の委員の、集団的自衛権の行使が認められる場合が歯どめなく拡大するのではないかという御指摘については、二十八日の衆議院予算委員会において、類似の御質問に対して、総理は次のような趣旨のお答えをされました。

 まず、集団的自衛権の行使は権利であって義務ではないので、仮に限定的な場合に集団的自衛権を行使することが憲法上許容されることになったとしても、これを自動的に行使することにはならない。また、集団的自衛権を行使するためにはこれを裏づける法整備も必要となるが、その法整備においては、国会の関与も当然議論されるものと思われる。そのような法整備を行った上で、実際に集団的自衛権の行使を行う場合、政府は、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要かといった観点から重大な判断を行うこととなるが、戦後七十年近く一貫して平和国家としての道を歩んできた民主主義国家である我が国においては、その判断は慎重の上にも慎重を期して行われることになる。

 そういうことでございますので、集団的自衛権の行使が認められる場合が歯どめなく拡大するということでは必ずしもないと考えてございます。

 いずれにいたしましても、現在、与党協議におきまして以上のような観点を含めまして検討いただいているということでございますので、その結果に基づいて政府としての対応を検討し、憲法解釈の変更が必要とされれば閣議決定をしていくというふうに考えてございます。

玉城委員 歯どめなく広がっていくものではない、集団的自衛権が行われるものではないというふうなことがあり、そして、議論が行われたら閣議決定をしていくというふうなことですが、実は、五月十七、十八日の共同通信の世論調査によりますと、集団的自衛権の行使容認に対して、賛成が三九%、反対が四八・一%です。そして、憲法解釈の変更については、賛成が三四・五%ですが、反対は五一・三%です。

 つまり、そのように、集団的自衛権に関してさまざまな議論はするけれども、本来であれば、もともとは、私は、解釈によらない、憲法改正こそがしかるべき手続だろうというふうに思うわけですね。

 では、この解釈によらない、憲法改正手続をとるべきであるということについての政府の見解はどのようになっていますでしょうか。

武藤政府参考人 憲法改正の是非につきましては、国民的な議論の深まりの中において判断されるべきものと考えてございます。

 先般の記者会見において、総理は、紛争から避難する邦人を輸送する米国の船舶を守ることができないといった具体的な事例を挙げながら、このような場合に国民の命を守ることができないとの課題を示されました。政府としては、国民の命と平和な暮らしを守るために、切れ目のない対応を可能とする国内法整備をする必要があると考えているところでございます。

 もとより、政府の憲法解釈には、論理的整合性や法的安定性の確保が必要でございます。そのような観点から、安保法制懇の報告書の提言のうち、個別的か集団的かを問わず自衛のための武力の行使は禁じられておらず、また、集団安全保障措置への参加といった国際法上合法な活動への憲法上の制約はないとする提言は、政府として採用できないというふうにしているところでございます。

 他方、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるという限定的な場合に集団的自衛権を行使することは許されるという考え方について、さらに研究を進めるということにしているところでございます。与党協議においては、政府から与党にお示しした具体的な事例集に即して、さらに検討を深めていただいているところでございます。

玉城委員 我が国に重大な危機が及ぶということは、まさにこれは自衛権発動の際の三要件に従えば、それはおのずと判断されるところだというふうに思うわけですね。我が国周辺における事態への対処、それから今おっしゃったような自衛権発動の際の三要件、これが遵守されるということであれば、今までの憲法解釈、政府の解釈というものは一貫できるものというふうに思います。

 その三要件などの遵守姿勢については、政府としての見解はどのようにお考えでしょうか。

武藤政府参考人 自衛権発動の三要件についてでございますけれども、憲法第九条のもとにおいて許容される武力の行使については、政府は従来から、いわゆる自衛権発動の三要件に該当する場合、すなわち、我が国に対する急迫不正の侵害があること、つまり我が国に対する武力攻撃が発生したこと、これを排除するために他の適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことに該当する場合に限られると解しているところでございます。

 先般の記者会見で総理から、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるという限定的な場合に集団的自衛権を行使することは許されるという安保法制懇の考え方について、さらに研究するよう指示が出されたところでございます。これを受けまして、現在、与党協議が進められているところでございまして、その結果に基づいて、いわゆる自衛権発動の三要件を含めまして政府としての対応を検討して、憲法解釈の変更が必要と判断されれば閣議の決定を行うということになると考えてございます。

玉城委員 私が所属します生活の党は、個別的であれ集団的であれ、自衛権はその国が持っている自然権であるというふうに解釈をしております。そのように理解をしております。ですから、今までの政府の見解の中でできなかったことや、本当に我が国や我が国民に対して及ぶ危険があれば、それは当然、その状況の中で対応できるように、これまで解釈を積み上げてきていると思います。それもまた、さらにさまざまな法律の整備によってそれをきちっと守ってきているというふうな姿勢こそが、私は、日本が世界に貢献できる、本当に最も平和的、積極的平和主義はまさにそれに基づくものでなければならないというふうに思うわけです。

 しかし、この間、その流れを見てみますと、今、政府が十五事例を示したように、まず議論をし、そしてある程度議論が煮詰まったなと思ったら閣議決定をするというふうな形ですね。そして、閣議決定をした後、国会で審議をしていただきたいというふうなことですから、何らかの法案にして出そうということだと思うんですが、一政権で重大な憲法の解釈を閣議決定で決めて、そしてさらにそこから議論をさせるというのは、私は手順が逆ではないかと思います。

 しかし、もし閣議決定をして国会に提出するという姿勢であるのであれば、閣議決定に付する時点における国民議論がまだまだ不十分であるという、先ほどの世論調査のアンケートの数字のような、国民の側から、不十分である、こんなのはまかりならぬということになった場合の判断責任について、政府はどのようにお考えでしょうか。

武藤政府参考人 集団的自衛権等に関する問題につきましては、国民の高い関心も踏まえまして、これまでも、国民の代表である国会において御議論をいただいて、政府としても丁寧な説明に努めてきたところでございます。

 総理は、五月十五日の記者会見において、今後、国会においても議論を進め、国民の皆様の理解を得る努力を継続していく旨を述べておられます。今後とも、政府としては、国会での御説明を通じるなどして、国民の皆様に対しても丁寧に説明を行ってまいりたいと考えております。

玉城委員 外務大臣に、通告はしていないんですが、一点、見解をお聞かせください。

 総理は、最初は、いわゆる与党協議も含め、国会での議論は、閣議決定の前の議論は、期限ありきではないというふうにおっしゃっていたんですが、どうも、きょうのこの資料の中にもありますけれども、五月三十日の毎日新聞ですが、安倍晋三総理は答弁で、年内を目指す日米防衛協力の指針、いわゆるガイドライン改定に間に合うように行使容認などの閣議決定を行いたいという考えを示しています。

 期限がないと言いながら、実は年末のガイドラインに合わせたいということは、既にその日程的なスケジュールに沿って、ある程度もう議論を尽くしましたというふうな手法をとってしまうのではないかということが国民からも懸念されると思います。

 つまり、今答弁いただいたように、まだまだ国民議論は十分煮詰まっていないという段階において、しかし、年末のガイドラインに反映させないといけないので、その前に何か決定をしなきゃいけないというふうな形になると、これは、政府の姿勢として、国民にとって甚だ大きな波紋を投げかけるものである。つまり、こういう考えを述べるということが、日本の外交にとっても大きな影響を及ぼすものというふうに私は思います。

 大臣、その点について、この年末のガイドラインにどうしても合わせなければいけないということについて、大臣なりの見解で結構ですので、お聞かせいただけますか。

岸田国務大臣 今現在、国民の生命、暮らしを守るためにはどうあるべきなのか、我が国としまして、切れ目のない、すき間のないしっかりとした法体制をつくっていかなければならない、こういった問題意識のもとに議論が進められています。こうした議論は、国民にもしっかり理解され、そして丁寧に進めていくべきものであると考えています。

 そして一方、昨年十月の日米2プラス2において、日米の防衛協力の議論の中で、ことしの年末までにこのガイドラインの見直しを行う、こういったことについて一致をしているというのも事実であります。

 ガイドラインにつきましてこうした日米の合意はあるわけでありますが、しかし、基本的には丁寧に議論を行わなければいけない、期限ありきではない、これは従来から申し上げているとおりであり、変わらないと考えます。

玉城委員 ガイドラインの協議については、私はしっかりと進めるべきであるというふうに思います。そういう備えをするということは必要なことだと思いますが、であれば、さらに、今回、安保法制懇から出され、そして総理が政府の見解、考え方を示した事例についても、本当に現行法制でできないところであれば、現行法制のどういう点を整備するべきか、個別的自衛権でできることはどういうことなのか、警察権でできることはどういうことなのかということをさらに時間をかけてしっかりと議論をする、そのためには、地方公聴会、中央公聴会なども開いて国民の声もしっかりと聞くというふうなことも、私は、政府としてとり得るべき努力の一つではないかというふうに思います。ぜひそのことは私から意見として申し上げたいと思います。先ほどの答弁はどうもありがとうございました。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 今度は、米軍再編と展開、配置に関する件で質問させていただきます。

 防衛省に伺います。

 米軍は、アジアのリバランス政策を発表し、それについてさまざまな展開をしていく、配置をしていくということを言っております。あるメディアによりますと、日本、韓国、オーストラリアなどの同盟国との関係を再強化して軍備力の配備を最適化することで、斬新でコストが低く、フットプリントの少ないプレゼンスを目指すということ、そして、イラクからの部分撤退などとともに、全面撤退とあわせて打ち出してくるのがこのリバランス政策であるというふうに報道されております。

 では、この米軍のアジア・リバランス政策と関連して、我が国の自衛隊の体制等の整備における影響はどのようなことが考えられるのか、お伺いいたします。

真部政府参考人 今委員御指摘のとおり、米国は、アジア太平洋地域を重視いたしまして、この地域におけるプレゼンスを強化する、いわゆるリバランス政策を進めております。このことは、地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、その平和と安定にとって極めて重要であるというふうに考えております。

 防衛省といたしましては、このような政策を進めます米国との間で、共同訓練とか演習、あるいは共同の情報収集、警戒監視活動など、事態対処や中長期的な戦略を含めまして、各種の運用協力及び政策調整を一層緊密に推進することといたしております。

 このような中で、今、自衛隊の体制あるいは防衛力整備につきましては、基本文書として防衛大綱がございます。この防衛大綱の中では、今申し上げたようなリバランスに関する認識、それから防衛協力を深めていこうという方向性、こういったものについては既にいわば織り込み済みでございまして、そういう意味におきまして、リバランス政策が進展することによって、例えば防衛大綱を変更しなければならないといったようなことにはならないだろうというふうに私どもは考えておるところでございます。

玉城委員 では、続いて今度は、アメリカとフィリピンとの軍事協定への署名に関連してお伺いしたいと思います。

 フィリピンと米国との軍事協定署名が四月二十八日に行われております。これまで、もうフィリピンから撤退した米軍ではありますが、この協定によって、米軍は、フィリピン軍の全ての基地を使用することが可能になる、補給、装備の物資を常備する施設の建設や、航空機や艦船の巡回派遣も可能となるというふうなことなどなど、このフィリピンと米国との軍事協定署名など、こういう軍事連携が同盟体制の拡大を予測させるものになるのではないかと思います。

 では、関連して質問させてください。

 このフィリピンと米国との新軍事協定への署名によって、自衛隊に対する対処展開などの要請などが拡大していくのかどうか、そのことについてお伺いいたします。

真部政府参考人 先月の二十八日でございますが、今委員御指摘のとおり、米国とフィリピンとの間で、米軍のフィリピンにおけるプレゼンスの強化などを目的といたしますところの米比防衛協力強化協定が署名されたというふうに承知をいたしております。こういうものによりまして米国がアジア太平洋地域におけるプレゼンスを強化していくことは、地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、その平和と安定にとって極めて重要なことであると考えております。

 他方、現在までのところ、米側より我が国に対しまして、この米比間の協定に関連した協力要請といったようなことについては特に寄せられていないところでございます。

 いずれにいたしましても、防衛省といたしましても、引き続き米比間の安全保障に関する協力の動向には注目してまいりたいと思っております。

玉城委員 自衛隊に関しては特にないということではありますが、では、このアジア・リバランス政策について、在沖米軍の配備における大規模な変動などが行われるというふうなことになりますでしょうか。そういうことについてお聞かせいただきたいと思います。

真部政府参考人 米軍は、アジア太平洋地域の中で、リバランス政策の一環といたしまして、例えば、オーストラリアにおけるローテーション展開、あるいはグアムの軍事的な拠点としての強化というようなことをもう既に進めつつあるところでございまして、この米比間の協定もそういった全般的な動きの中の一環であるというふうに理解をいたしております。

 そういう意味におきまして、これをもって何か大きな方向性が変わるとか、むしろ、従来の方向性がさらに進んでいるということだろうというふうに理解しております。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、質問を最後に切りかえたいと思いますが、久米島沖のアメリカ軍の演習の件について質問させてください。

 今月の二十一日、久米島沖で大きな爆発音とキノコ雲が確認されたことについて、アメリカ軍は二十一日午前に訓練を実施したことを明らかにしておりますが、島の人たちによりますと、これまでにない大きな震動や音、そして、鳥島射爆撃場のある島の北の方角でキノコ雲のような煙が高く上がったということが目撃され、地元メディアでも報道されております。

 このことについて、この演習状況の確認及び地元自治体への説明等、防衛省の方が行っているかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の件につきましては、報道を受けまして、現地の沖縄防衛局から現地の米軍に確認をいたしましたところ、五月二十一日の午前十時から十一時までの間、鳥島射爆撃場におきまして米軍の航空機が訓練を実施していたとの回答がございまして、五月二十二日に沖縄県及び地元久米島町に対して情報提供を行ったところでございます。

 なお、鳥島射爆撃場におきます演習の予定につきましては、四月十七日、これは前の月の四月の十七日でございますけれども、現地米軍から沖縄防衛局に対しまして、五月四日から三十一日、時間につきましては朝の六時から二十四時までの間に演習を実施する旨の通報がございまして、米側から連絡がありました同じ四月十七日に、沖縄防衛局から、第十一管区海上保安本部、地元自治体、それから関係漁業組合等に対してお知らせをしているところでございます。

玉城委員 以前にも、UFO騒ぎが報道されたときに質問させていただいたときとほとんど答弁が一緒なんですね。つまり、どういう訓練が行われたのかというふうなことぐらいは住民に伝えないと、何も伝わらない中で音と震動と煙を目にしてしまったら、この不安は絶対に拭えないんです。米軍は細かいことを言わないけれども、少なくとも、こういう訓練でした、ですから事前に伝えたとおり影響はありませんということぐらい、ぜひしっかりと伝えていただきたい、そのことをお願いしたいと思います。

 では、時間が来ましたので、最後に、若宮政務官、きょうは同席をいただいておりますので、一点、改めて申し入れをさせていただきたいと思います。

 せんだって、二十八日に、米軍基地従業員の賃金未払い訴訟の控訴断念を求める申し入れをさせていただきました。これは、お話しさせていただいたとおり、いわゆる雇用主が日本政府、使用者が米軍という環境の中にあって、非常に不安定な身分、あるいは職場環境のさまざまな問題の中で一生懸命頑張っていらっしゃる従業員の方々に対して、年休がどのように行使されようとも本来なら問題ないところに、その年休が認められなかったということに対しての裁判になっております。これについては、付加金の支払いを求めた訴訟があって、全面的に判決で認められたということも政務官にお伝えしたとおりでございます。

 ぜひ、その件について、この判決の趣旨をしっかりとお酌み取りいただきますよう、改めてまた申し入れと確認をさせていただきたいと思います。お願いいたします。

若宮大臣政務官 玉城委員におかれましては、先般も防衛省の方にお出ましをいただきました。また、日ごろより、駐留軍の皆様方の労働環境につきましてのいろいろな御尽力に感謝申し上げるところでございます。

 委員御指摘の本件につきましてですが、おっしゃるとおり、本年の五月二十一日、那覇地方裁判所が、賃金の減額分また付加金等のいずれにつきましても原告側の請求を認める判決を言い渡した、これはおっしゃるとおりでございます。

 この件につきましては、判決内容を精査いたしまして、先般もいろいろ御指摘、御要望いただきました件も含めまして関係機関と調整いたしました結果、昨日でございますが、控訴しないということで決定をいたしました。

 以上でございます。

 今後とも、どうぞまた、御支援、御指導のほどよろしくお願い申し上げます。

玉城委員 ありがとうございました。

 ぜひ、安全保障を支える皆さんのためにも、また今後とも御尽力くださいますよう、感謝とお願いを申し上げまして、終わらせていただきます。

 ニフェーデービタン。ありがとうございました。

鈴木委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 きょうは、まず最初に、質問通告はしておりませんでしたが、ストックホルム日朝外務省局長協議におきまして、全ての日本人を対象として包括的かつ全面的な再調査の実施を北朝鮮が約束をするということで、拉致問題及び北朝鮮に今住んでいる、北朝鮮にいらっしゃる日本人の方々の帰国の可能性が開けたということでございます。このことに関しては、関係者の方々、これはもう長い歴史の中で努力をされてきた全ての方々の努力の成果だと思います。

 これは質問ではないんですが、私、前回の外務委員会のときに、北朝鮮と中国の国境地域に行ってリサーチをしたことに基づいて、五十分間質問させていただきました。

 繰り返しになりますが、昨日、安倍総理のメッセージの中では、全ての拉致被害者の家族がお子さんたちを抱き締める日が来るまで私たちの使命は終わらない、こういったメッセージがございましたが、私は、拉致被害者の方のみならず、一九五九年の十二月からの帰国事業によって、現地、北朝鮮に行かれた方々、大変な苦労をされて、今なお生きて日本に帰りたいと思っていらっしゃる日本人の配偶者の方々、また、第二次世界大戦後に残留日本人という形で現地に残っていらっしゃる方々、そういった方々の帰国も、これはまさにセットで政府としては強く要望をいただきたいと思います。

 前回の質問でも申し上げました、国境地域でさまざまな貿易に携わっている方々の話を聞いたところ、新しい体制になって、とにかく、国民を食べさせていかなければこの体制はもたないという強い危機感を今のリーダーは持っている。

 ですから、これは、日本が妥協しない、しかし、柔軟な対応をすることによって、日本の国籍を持った方々の帰国の可能性が本当に大きく広がってくると思います。ぜひ頑張っていただきたいと思いますし、同時に、どのような調査を行っていくのか、また、北朝鮮による調査、ここに調査の正当性をしっかりと担保する第三者も加わるのかなどの実効性を担保するための働きかけを同時に行って、何としても成果を上げていただきたいと思います。

 この件、お願いをいたしまして、まずは、大臣の思いをぜひお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 今回の日朝政府間協議によりまして、御指摘の、一九四五年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地、残留日本人、そしていわゆる日本人配偶者、こういった方々の調査、拉致被害者及び拉致の疑いが排除されない行方不明の方々とあわせてしっかりと調査を行う、こうした全面的な調査について約束をした次第であります。こうした調査を開始することで合意したということは重要な一歩であると認識をしております。

 そして、御指摘のように、特別調査委員会が設置されるわけですが、この委員会の実効性がしっかりと確認されなければなりません。

 そのために、今回の合意の時点で、調査におきまして、日本側にしっかりとした内容を通知する、さらには、調査の進捗に合わせて、日本側の提起に対し、それを確認できるよう、日本側関係者による北朝鮮滞在、関係者との面談、関係場所の訪問を実現させ、関連資料を日本側と共有し、適切な措置をとる、こういったことについても既に文書で確認しているわけですし、そして、特別調査委員会がスタートするまでの間において、こうした権限を持った委員会の組織ですとか構成ですとか責任者、こういったものを明らかにし、これを日本に通知してくる、こういったことについても一致をしたわけであります。

 こういった仕組みを通じまして、特別調査委員会の実効性をしっかりと確保していきたいと考えております。

阪口委員 この件に関しては、与党も野党もなく、日本人の命を守るということ、同時に、これは大変に重大な人権問題でもありますから、国際社会と一致協力をして解決に向けて努力をするということを、ぜひ、まさに我々と一体となった努力を行ってまいりたいと思います。

 次に、先日、安倍総理が安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告書に基づいた説明をされました。私は、その中で、PKOの駆けつけ警護に的を絞って質問をさせていただきたいと思います。

 まず、安倍総理が説明をされる中、冒頭で、カンボジアの平和のために活動中に銃撃をされて命を落とされた中田厚仁さん、そして高田晴行警視の話をされました。安倍総理におかれては、先日、カンボジアを訪問されたときには、プノンペンのウナロム寺院にある中田厚仁さんの墓前にも行かれて手を合わされたということで、私は、これは本当に、野田総理あるいは皇太子様ともども、二十年前のこういった若者の貢献と死に対して、総理が思いを持って対処してくださること、非常に感謝をしております。

 一方で、私は、まさに一九九二年から三年にかけてのカンボジアPKOにおいて、中田厚仁さんと同僚として活動を行っておりました。その中で、総理がこの中田さんの例を挙げたことについては、現場の状況に照らし合わせると、私は違和感を感じることもございます。当時、PKOの現場にいたという視点から、駆けつけ警護を取り巻く状況がどういうものかということをぜひ一緒に考えたい、そういった視点で質問させていただきたいと思います。

 まず、中田厚仁さん。総理は、突然武装集団に襲われたとしても、日本の自衛隊は彼らを救出できない、見捨てるしかない、そういった言い方をされましたが、実際には、中田さんが活動されていたコンポントム州というところは、自衛隊が駐在をして活動していたところから二百キロ以上離れた、全く異なる場所での活動だったんですね。それで、移動中に道路で待ち伏せをされて、銃撃をされた。正直、そこに自衛隊が駆けつけて命を救えたかというと、そういう余地はなかったと思います。

 一方で、私も中田さんと研修中のルームメートでもありましたので、いかにPKOの活動の中で命を守るかということについてはさまざまな話をしました。

 当時のカンボジアのPKOは、いわゆる初めての複合型のPKOではありましたが、紛争四派の和平協定に基づいて、国連は軽装備の武装しかしていなかったんですね。ですから、国連カンボジア暫定統治機構に対して、国連の展開が生み出したさまざまな矛盾点に対する一般のカンボジアの方々の不満というものもかなり顕在化をしていて、そういった中で中田さんの事件が起こってしまったということであります。

 ただ、我々は、本当に、現地の言葉を覚えて、住民の中に飛び込んでいって、そこでコミュニケーションを常に図ることで、仕事をよりよく行っていく、また、そうやって信頼関係を構築することが安全対策上最も重要であるという考え方に立っておりましたので、我々としては、できる限りの自助努力をすることがまず第一で、中途半端に武器を持った部隊がそういった状況にかかわるというのは、むしろ危険を増すことになってしまうのではないか、そういった思いも持っておりました。

 私自身、実は、活動中に銃撃、襲撃をされたことがございます。大変に幸いなことに、何とかその状況を切り抜けることができたんですが、その理由を自分なりに分析すると、自分たちは丸腰であって、襲撃してきた武装勢力に対して危害を与えることはないんだということと、自分たちは平和のために来たんだということ、これが、結果的に、そのとき、物はとられましたけれども、命をなくすまでの事態にならなかった決定的に大きな要因だったと思います。

 つまり、あくまでも平和活動であって、当事者にはならないんだということをしっかりと相手に伝える、活動の中で知らしめていくということが非常に大事だという、現場での活動の中で私が感じたことをまず御理解をいただいて、その上で質問させていただきたいと思います。

 まず、PKO自体が、一九九二年から三年にかけての当時から、かなり変容しているかと思います。最近のPKOは、武力行使権限を安保理から委託された多国籍軍といわばさまざまな協力を一体的に行って、役割分担をしながら進めることが多くなってきております。

 その場合、一方で、平和執行のために武力行使をする多国籍軍と、平和のために来たPKO要員とが同じに見えてしまうんです。一体的に活動しているから、それはもうしようがない面もあるんですが、特に地元の方々にとっては、同じように外国から来た要員ということで、同じように見えてしまう。

 その中で警護をする。警護をするということは、その襲われている人に対して自衛措置をとるということですね。目の前の人を助ける、これは、私はもう本当に自衛隊として必要な任務だと思うんですよ。しかし、そこで、ある意味、武力行使を行うことで、まさに現地の人にとっては、敵だというように見られる状況をつくりかねないんですね。

 ですから、PKOにおける駆けつけ警護にはこういったさまざまなリスクがあるわけですが、まず、このリスクについてどのように思われるのか、単純に目の前の人を助けるという正義の行動に終わらないということを認識した上で、お考えを伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、委員の体験に基づいたこうした御議論につきましては、大変貴重なお話だと思います。ぜひ、こういった御議論も参考にしながら、議論を丁寧に進めていかなければならないと考えます。

 そして、PKOの現場においてはさまざまなケースがあり、そして、時代とともに現場も変化しているという御指摘がありました。

 ただ、PKOにおいて、日本人の若者を初めとするNGO職員あるいは国連のPKO要員等を緊急時に守るためにとることができる対応、現行法のままでいいのかということについては、関係者の皆様方も含めて多くの方々から指摘をされてきたということは事実であると思います。こういったさまざまな御意見や議論を踏まえて、あらゆる事態に備えるために議論を深めていかなければいけない、こういった認識で議論を進めているところであります。

 そして、リスクについて御質問いただきました。

 御指摘のような考え方についてもしっかりと冷静に検討はしていかなければならないとは思いますが、ただ、現実を考えると、PKOのいわゆる駆けつけ警護、我が国以外の国は全てできるわけであります。ほかの国は全てやっている中でリスクが高まっているのかということも考えた上で、我が国としてこの問題についてどう対応するのか、これを丁寧に議論していくべきではないかと考えております。

阪口委員 今大臣がおっしゃった、我が国以外は全てやっているという説明、確かにそうだと納得する部分もありますが、しかし、PKOというのは、本当に、そのPKOがいわゆる平和執行型の多国籍軍と一体になったPKOなのか、あるいはいわゆる伝統的なPKOなのかによって、事前に国連憲章に基づいてどのような目的でPKOを展開するのかということが決められた中で、当然その中での任務が決まってくるんだと思うんですね。ですから、ほかの国がやっているから日本がやらないことはないんだという説明は、少し誤解を与える可能性があるのではないかと思うんです。

 この点については、小泉政務官はいかがお考えでしょうか。

小泉大臣政務官 阪口先生の現場に基づく、また実体験に基づくお話、大変勉強になりました。説得力もあって、真剣に聞いていましたけれども、そのリスクに関しては、やはり一番とってはいけない姿勢というのはゼロリスクの考えだと思います。やはり、リスクがあることを承知の上で阪口先生御自身も現地に行かれたと思います。そして、PKOの現場で頑張っている自衛隊員も、そのリスクはしっかりと踏まえた上での活動をしていると思います。

 そういった中で、できる限りのリスク低減をする対策というのは間違いなく必要なことでありますので、今回、この駆けつけ警護におきましては、与党の方でこれからも議論されますし、その結果に基づいて政府としてはしかるべき対策をとっていく、そういった認識で、今後、議論もしっかりと踏まえていきたいと思います。

阪口委員 ありがとうございます。

 少し具体的な質問をしてまいりたいと思いますが、PKOの参加五原則、もう繰り返すまでもないと思いますが、一応確認いたしますと、紛争当事者間の停戦合意、受け入れの合意、中立的立場を厳守すること、以上の原則のいずれかが満たされない場合は速やかに撤退をすること、さらに、要員の生命が大変危機的な状況になったときに必要最小限の自衛的措置は可能である、こういった五原則がございます。

 今私が申し上げたいのは、中立的立場を厳守するということなんですね。どういうPKOになるのかということにもよりますが、駆けつけ警護によって、相手国に存在する何らかの武装勢力と対峙をして、仮に、日本人を救出するために武力を行使して、そして、自衛的措置の結果とはいっても、相手を殺してしまったということになった場合、戦争というのは、どんな戦争もそうですけれども、全ての紛争当事者というのは自衛のためだと言って戦争を始めるんですね、結果的にそこで人が殺されたとなると、日本のPKO部隊もそうです、そして日本のNGO関係者も含めて、その報復のターゲットになるリスク、つまり、もう中立ではなくて、完全に当事者になってしまうというリスクがあると思うんですね。

 安倍総理が説明をされたときに私は違和感を感じたのは、見捨ててもいいんですか、救えなくてもいいんですかとおっしゃる一方で、このリスクを全く語られなかった。私は、これは本当にたまたまの経験ではありますけれども、PKOの現場が、最初は和平協定の合意のもとに行われていたものであっても、それがだんだんと、カンボジアでいうと、ポル・ポト派がそこから離脱したことで、選挙までに少しでも自分たちに有利になるように、紛争各派が事実上の内戦状態になってしまった。当初の前提とは全く違う中で活動する中で、当事者になるということがいかに大きなリスクなのか、これはぜひ重く受けとめていただきたいんですね。

 その上で質問させていただきますと、まず、現在の法律では、国または国に準ずる組織である場合、武装勢力ですね、その場合は駆けつけ警護というのは可能なんでしょうか、不可能なんでしょうか。まず、お答えいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、自衛隊あるいは日本がPKOに行った場合に、今認められているのはPKO法二十四条の自己保存型の武器使用でございますけれども、武器使用する相手が国または国に準ずる組織であった場合は、憲法九条で禁じられている武力の行使に当たるおそれがあるということで、そういった武器使用権限は現在のPKOでは認められておりません。

阪口委員 それでは、国または国に準ずる組織ではない場合、言ってみれば、いわゆるテロ組織であったり、武装したゲリラ集団であった場合、この場合は現在ではどうなのか、また、今の議論の中で、こういった集団に襲われたときの対処というのはどのように考えられているのか、この点について伺いたいと思います。

高橋政府参考人 現在の政府の制度でございますと、先ほど議員御指摘のとおり、PKOを派遣するときの五原則の中で、停戦の合意あるいは当事者の受け入れ同意というのがあるわけでございますけれども、それでも、万が一でも、相手方が国または国に準ずる組織であった場合には、憲法違反の武力行使のおそれがあるということで、自己保存型以外の武器使用は禁じられておるわけでございます。

 したがって、仮に、現在、そういう状況に遭遇した場合には、自衛隊は駆けつけ警護も含めまして自己保存型以外の武器使用はできませんので、状況によると思いますけれども、例えばそういう任務を遂行できる仲間の部隊の応援を求める、あるいは現地の治安組織の出動を待つといったような対応が一応考えられるかと思います。

阪口委員 五月十五日の安倍総理の説明だけでは詳細は理解できなかったんですが、例えば日本人がいわゆる武装勢力に襲われたときに、PKOに展開している自衛隊が何とか駆けつけて警護できるようにするということが今回の目的であると理解してよろしいんでしょうか。その点、お答えいただきたいと思います。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 これまで、PKOにおける武器使用は、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものとして認められてきたところでございまして、政府としても、これまで駆けつけ警護については、これを国または国家に準ずる組織に対して行ったときは憲法九条が禁ずる武力の行使に該当するおそれがある一方、武器使用の相手方が国家または国家に準ずる組織に当たらない仕組みを設定することができるのであれば、武器使用権限を拡充することも憲法上許容されると説明してきております。

 こうした仕組みをどのように設定することができるかが今後の検討課題の一つであると考えておりますが、現在、与党協議が進められておりまして、その議論も踏まえつつ、政府として検討を進めていく所存でございます。

阪口委員 わかりました。

 今の御答弁に基づいて、もう一つ問題提起をしたいと思うんですが、先ほど申し上げた、私自身が銃撃、襲撃をされた状況というのは、実は、政府軍の制服を着ている、しかし、当時のカンボジア政府からは給料は支払われていない、要するに、もう破綻した国家の中で給料はもらえない、いずれ動員解除されることがわかっているけれども、でも武器は持っている、そういう状況で、まさに自分たちが食べていくために盗賊化した、そういった武装勢力でした。

 ですから、彼らの所属が国軍なのか、あるいはいわゆるもう国軍ではない武装勢力なのかというのは、多分、彼ら自身も含めてわからない状況だったと思うんですね。つまり、国や国に準ずる組織に所属している襲撃者なのかそうじゃないのかなんというのは、これはわからないんですよ。

 その中で、もし駆けつけ警護が可能になったときに、どういう基準で判別をして対応するのか、そういう議論というのは行われているのかどうなのか、まずはお答えをいただきたいと思います。

武藤政府参考人 まさに、安保法制懇の報告を受けまして、ただいまの駆けつけ警護の問題等につきましても、具体的な事例に沿って検討を始めた、与党とも協議をしているというところでございますので、まさにこれからの検討でございますが、具体的な事例に沿って検討していきたいと考えております。

阪口委員 正直、官僚答弁というか、官僚の方ですから仕方ないとはいえ、実際、政務にかかわる方々、大臣、政務官、副大臣ときょう来ていらっしゃいますが、今の点についてはどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 PKOの駆けつけ警護について、今、議論が、検討が行われている最中ではありますが、その際の論点、重要なポイントがまさに委員の御指摘になられた点ではないかと考えます。

 国または国に準ずる組織との線引きの問題、この問題について検討してみるという考え方も一つの考え方ではないか、このように考えます。

阪口委員 今のお答え、ちょっとよくわからなかったんですが。

 では、もう少し実例を挙げてお話しすると、私自身も、例えばパキスタンにおいて、オサマ・ビンラディンが潜伏していると言われていたアフガニスタンとパキスタンの国境地域で平和構築活動を行っていたことがあるんですが、そのときなどは、本当に現地の方々の服装を着ていました。私は、ひげを伸ばそうと思ってもなかなか、ひげが濃くないものですから、現地の人に見えていたかどうかはともかくとして、少なくとも現地の人の思いを受けとめて活動しているんだ、そういったこちらの立場、そして思いを伝えるためにはそういったことも必要だ、そういった判断だったんです。

 まあ、これはわからないですよ。正直、議論することは大事だけれども、人の命を救えるのかどうかという瞬時の判断をする中で、その人が正規の政府の軍に所属しているのかどうなのか、あるいは現地の人なのか日本人なのかというのは、これは簡単には区別はできません。できませんが、一つ確実に言えることは、自衛的措置といえども、そこで武器を使うことによって当事者になってしまう。当事者になって、仮に現地の方を殺してしまった瞬間から、現地に展開している自衛隊の方々、また多くの日本人の方々も攻撃のターゲットになる可能性があるということなんですね。

 ここはもちろん、仮にそういうことが起こったとしても、その状況について説明をすることによってそういった状況を変える努力、これはすべきだと思いますが、実際、現地にいると、そういった判断を瞬時にすることは大変難しいし、そういった判断をするための材料をどこに求めるのか、これは大変に難しいと思います。

 ですから、その中で駆けつけ警護を行うというのであれば、私は、先日の安倍総理の説明、繰り返しになりますが、助けなくてもいいんですか、見捨てるしかない、いいんですか、そういった感情の訴え方というのは、これは危険だと思うんですね。このあたり、いかがお考えでしょうか。

武田副大臣 これは、現場が直面する大変重要な問題であります。

 我々としては、よくよく現地で活動をされておりますNGOの職員の方々と緊密な連携をとりながら、平素から情報交換しながら、間違いなきようやっていくわけでありますけれども、必要な安全をみずから確保する上で、今委員御指摘の点は非常に重要な視点であると思います。

 安倍総理が先日おっしゃられたことについては、緊急事態のときに、要するに、近くに自衛隊はいて、そして自衛隊は我が国の国民を助ける能力がありながら制度により助けられないような事態が発生した、これでいいのかということを恐らく提言されたんだと思うんですね。その提言に基づいて今から我々は議論をしていかなくてはならないわけであります。

 とにかく、先ほど申しましたように、現場が直面する重要な問題でありまして、そうした緊急事態対応の際に自衛隊が判断に困らないように、我々は今から何をすべきかということを議論を煮詰めていきたい、このように考えています。

阪口委員 まさに徹底的な議論が必要だと思うんですね。

 憲法解釈の変更によって、集団的自衛権、またこういったPKOの駆けつけ警護などについてのルールを変えていく、これは、今まさに、いつこういった周辺の事態が起こるかわからない中で、スピード感を持った対応をする必要性というものも私も理解はしています。

 とはいうものの、本当にこれは戦後の日本にとっての大きな分岐点でもあるわけですから、あらゆるリスクというものを徹底的に議論する、その上で、やはり私は、できる限り国民の意思というものも問いただしていく。

 本当は、私は、こういう問題こそ国民投票で、全ての国民が一つのテーマについて徹底的な議論をして、自分の責任で一票を投じるということが、日本の民主主義を成熟させる、民主主義を鍛えていく上で非常に意味があるのではないかと思っているんですが、ここはそういった議論ではありませんが、どちらにしても、この問題について、現場の状況に基づいたあらゆるシミュレーションというのが必要だと思うんですね。

 ですから、さまざまな理念、理想はあるかもしれませんけれども、あらゆるシミュレーションをこの国会の場で行っていくということの必要性を申し上げて、私も引き続きこのテーマで月曜日にもまた質問したいと思いますが、ぜひ、そういった議論を今後ともども行ってまいりたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 委員会室ではさまざまな雑音、騒動もありますが、きょうは心静かにいろいろと伺ってまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 今回、安保法制懇の報告書が出されて、集団的自衛権を中心にさまざまに議論されているものと承知いたします。本日は、新しい法制局の長官にもおいでいただきまして、法制局の考え方というものを中心にさまざまに伺ってまいりたいと思っております。

 まず、集団的自衛権についてなんですけれども、この集団的自衛権が、現在、我が国は行使できないというような考え方を内閣として、行政府としてとっておられるというふうに私理解いたしております。

 他方、この内閣が集団的自衛権を行使できないと考える根拠は何かと考えたときに、これは、今までに歴代の内閣が積み重ねてこられた憲法九条に対する解釈であったり、あるいは政府として国会の場で答弁されてこられたこと、あるいは質問主意書に対する答弁など、そういった今までの積み重ねというものがあって、そういった内閣の憲法解釈、行政権としての憲法解釈が、今、我が国が集団的自衛権を行使できないという裏打ちとしてあるというふうに理解いたしております。

 こういった私の認識で相違がないのか、我が国が集団的自衛権を行使できないのは、根拠は内閣の憲法解釈であるというふうに理解いたしておりますが、これで間違いないでしょうか。

横畠政府特別補佐人 これまでの憲法第九条に関する政府の見解でございますけれども、憲法第九条は、その文言からすると、国際関係における武力の行使を一切禁じているように見えるが、憲法前文で確認している国民の平和的生存権や、第十三条が生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は国政の上で最大の尊重を必要とする旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第九条が、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることまでを禁じているとは解されず、いわゆる自衛権行使の三要件を満たす場合に武力を行使することは例外的に認められていると解しております。

 それは歴代政府の見解でございますし、国会においても累次御説明をさせていただいているところで、国会における議論の積み重ねもあるものと承知しております。

村上(政)委員 今長官から、内閣としての憲法に対する理解、前文、九条、あるいは十三条の幸福追求権というものに対する理解を述べられて、歴代の内閣の憲法に対する解釈、そして、そういったところから集団的自衛権というものは行使できないというような結論を導いていただいたわけであります。

 こうした歴代の内閣の考え方、内閣がどのように憲法を理解するのかということ、内閣の憲法解釈と言えると思いますが、これが一体どこの範囲まで及んでいるのかということについて次にお伺いしたいと思います。

 内閣の憲法解釈というものが、それは拘束する範囲が内閣が行使する行政権のみにとどまるのか、あるいは、広く、我々が今籍を置いております立法府や、あるいは裁判所、司法権まで拘束するのか、三権分立の中でどの範囲まで内閣の憲法解釈が拘束しているのか、これについてはどのようにお考えでしょうか。

横畠政府特別補佐人 もとより、行政府としての憲法の解釈は、国会や裁判所が憲法をどのように解釈するかを拘束するものではございません。

村上(政)委員 今の御答弁で明らかになったように、内閣の憲法解釈というのは、当然にその内閣のみを拘束する、行政権のみを拘束するということで、今我々が籍を置いているような立法府あるいは司法まで含んでいるということではないと思います。

 私も何度か質疑をさせていただいて明らかになっているように、この憲法解釈というのは最終的には司法で判断していただく、最高裁判所がその憲法解釈というものは果たして妥当なのかどうかを判断するというふうに理解いたしております。

 次に、集団的自衛権の行使を明文上で禁止している法律が我が国に存在しているかどうかについて伺いたいと思います。

 先ほど、最初の質問で長官からお答えいただいたように、我が国が集団的自衛権を行使できないとするその理屈というのは、今までの歴代内閣が憲法をどのように解釈してきているのかといったところがよりどころになっていると思います。

 他方、集団的自衛権の行使というものを明示的に法律の中で禁止しているのかどうか、そういった条文を持つ法律があるのかどうかという点はいかがでしょうか。

横畠政府特別補佐人 集団的自衛権の行使につきましては、先ほどお答えしたとおり、憲法上許されないと解してきているものであり、御指摘のような集団的自衛権の行使を明文で直接禁止する法律は存在しません。

村上(政)委員 集団的自衛権の行使を明文上禁止する法律はないというお答えだったと思います。

 我が国の法体系の中でどのように考えていったらいいのかということを次に議論させていただければと思います。

 我が国の法体系の中で、当然に憲法が最高法規であって、最も上位に位置している。その次に法律というものがあって、我が国では立法府、国会がこの法律というものを定めていくということで、憲法、そして立法府が定める法律の範囲内において、大臣もおられる内閣あるいは行政が政治を行っていく、行政権を行使していくということだと思います。今お話ししたような筋道が三権分立の中で存在している。

 他方、集団的自衛権を行使できないとする根拠というのは内閣の憲法解釈にあるということであって、では、考えてみると、我が国の中で、法律と内閣の憲法解釈というものは一体どういう関係に立つのか、我が国の法体系の中で、法律と内閣の憲法解釈というのはどちらが優位に立つのか、この点はいかがでしょうか。

横畠政府特別補佐人 言うまでもなく、我が国の法体系上、憲法は国の最高法規であり、法律に優位するものでございます。

 その上で、行政府による憲法解釈は、みずからの職務を適正に執行するために行うものであり、先ほどもお答えいたしましたが、それが国会や裁判所の憲法の解釈を拘束するものではございません。また、法律を破るというものでもございません。

村上(政)委員 法律を破るものではないということは、法律が上位に立つということなんだと思います。

 では、今明らかになったように、憲法と法律の間では当然に憲法は優位する、そして、法律と内閣の憲法解釈の中では法律の方が優位するということが、今の御答弁の中で関係性がはっきりしたんだと思います。

 次に、集団的自衛権を行使できないとする内閣の憲法解釈、では、これは何なのかということについてお尋ねしたいと思います。

 これは法律でもないし、法律よりも劣位するものであるし、当然、憲法そのものではない。我が国は、法律の考え方として、憲法であれ、法律であれ、条文に基づいて考えていく。例外的な法分野を除いては慣習法というような考え方をとっていませんし、成文の憲法典が存在しますので、その条文に書いてあることに基づいて我々は行動していくというふうな法体系になっていると承知いたしております。

 そういった考え方、当然、今御紹介したように、そして委員各位もよく御存じのとおりだと思いますが、これは、イギリスのような成文の憲法がなくて、さまざまな慣習法なり不文の憲法典みたいなものがどんどんできていくといった考え方をとっていない。

 では、そういった我が国の中において、内閣の憲法解釈といったものはどのような意味合いなり性格、あるいは位置づけというものを有しているのか、この点についてはいかがでしょうか。

横畠政府特別補佐人 先ほどもお答えいたしましたが、内閣、行政府による憲法の解釈は、行政府がみずからの職務を適正に行うために行っているものでございます。当然、憲法に従って行政は行われるべきものであり、その行政を適正に行うためには憲法を適正に解釈する必要があるということでございます。

村上(政)委員 今のお答えは、内閣の憲法解釈というものは、内閣が行政実務を遂行していくために、そういった必要に応じて内閣が憲法解釈を行っていくということなんだと思います。

 他方、内閣の憲法解釈というものが、非常に今まで過度に重んじられてきたのではないかということについて、私は次にお尋ねしていきたいと思います。

 というのも、今質疑の中で再三申し上げているとおり、憲法あるいは法律ではない、内閣の憲法解釈はそういったものではない、法律的な性格を持っているわけではない、今までの歴代の内閣が憲法をこのように理解するといった、積み重ねてきたものであるというふうに理解しております。

 そういった、憲法あるいは法律の明文の規定にもかかわらず、内閣が憲法解釈のみで行政権の行使を制限するというのは、私はこれは過度な抑制じゃないかなと思います。

 今申し上げたように、憲法あるいは法律の中で明示的に集団的自衛権というものが行使を禁じられているわけではないということは、今までの質問で明らかになったことだと思います。他方、集団的自衛権というのは、こういった内閣の憲法解釈ということによって今行使できないという状態にある。

 内閣がみずからを、憲法の解釈というものだけで行政権の行使というものを制限する、こういったあり方というのは、行政権の過度な抑制になるのではないかと思いますが、この点はどのようにお考えでしょうか。

横畠政府特別補佐人 行政府において憲法を解釈するわけでございますけれども、それはいわゆる立憲主義の原則を初め、憲法第九十九条が公務員の憲法尊重擁護義務を定めていることなども踏まえ、その権限を行使するに当たって憲法を適正に解釈していくことは当然のことであり、このような行政府としての憲法の解釈において、最高裁判所の判断が示されているものについてはそれを尊重すべきは当然でありますが、最高裁判所の判断が示されていないものについても行政府の責任において適正に解釈を行う必要があるわけでございます。

 逆に言いますと、憲法を適正に解釈しない場合には、行政府が憲法違反を犯すということになってしまうからであります。

村上(政)委員 私が指摘したかった問題というのは、これは今再三お話ししているように、我が国の法体系の中では、憲法があって、法律があって、その憲法や法律の理解に基づいて行政権を行使していくというやり方が本来想定される姿なんだと思います。法律というのも、もちろん憲法の解釈の範囲内において法律が定められているということだと思います。

 そういった筋道というものがはっきりしている中での権力の行使であったりあるいは権力の抑制であったりということは私も非常に納得がいくんですが、今お話ししてきたように、集団的自衛権という範囲の中においては、憲法があって、そして内閣としての憲法解釈があるだけで、内閣の憲法解釈というものによって行使できないとしている、法律というものは明示的に集団的自衛権というものの行使を禁じているわけではない、こうした非常にある種いびつな状態があって、こうした法的基盤の抜け穴、そして整備されていないそうした法体制のすき間というものが今存在しているんだと思います。

 そういったすき間を安保法制懇は埋めていく必要がある、そこに法律的な枠組みをはめ込んで、しっかりと我が国の安全保障を守るために、そして我が国の平和と繁栄を守るために自衛隊が行動できるように、そういった法制をはめ込んでいくという問題意識、私と同じような問題意識ですけれども、そういったことが報告書の中で書かれているというふうに思います。

 ちょっと質問の角度を変えてみたいと思います。内閣と国会の関係、行政権と立法府の関係について伺いたいと思います。

 国会が内閣の憲法解釈とは異なる憲法解釈に基づいて立法した場合、内閣及び内閣法制局は、もともととっていた内閣の憲法解釈を捨てて、新しい法律の憲法解釈に従うのかどうかという問題です。これは、国会と内閣の関係がどのようになっているのかということにかかわるんだと思います。

 すなわち、今お話ししてきたように、今まで内閣はこういった憲法解釈というものをとってきた、その中で、内閣も憲法というものはこのように理解しているというふうに述べてきたという状態がある。しかしながら、国会は、いや、違うんだ、国会として、立法府としては、憲法の条文なり理解については違った考え方を持っているんだ。これは別に、先ほど質問させていただいて御答弁いただいたとおり、内閣の憲法解釈というものは、行政権だけを拘束するのであって、我々立法府までは及んでこない、立法府が内閣と異なる憲法に対する理解をしても、それは当然に構わないことなんだと思います。

 そうした内閣とは異なる憲法解釈に基づいて、国会が、立法府が新しい法律をつくる、もしその法律が通った場合、果たして内閣や内閣法制局はどのような行動をとるのかということです。

 我が国においては、議院内閣制をとっていますので、行政権と立法府というものは極めて融合的であって、今であれば自民党と公明党が連立与党で多数を占めておられる。この中においては行政権と立法府が対立的になるという場面は極めて少ないとは思いますが、三権分立の中で、国会と内閣が、立法府と行政権がどのような関係にあるのかということを確認したいと思います。

 もう一度質問を述べますが、国会が内閣の憲法解釈とは異なる憲法解釈に基づいて立法した場合、内閣及び内閣法制局は、もともとの従前の内閣の憲法解釈を捨てて、新しい法律の憲法解釈に従うのか、この点はいかがでしょうか。

横畠政府特別補佐人 憲法第七十三条は、内閣は、国会が制定した法律について、これを誠実に執行すべしと定めております。

 それを前提として、一般論として、憲法の規定の解釈に密接な関係のある内容を含む立法と政府の関係についてでございますが、平成十七年十月二十一日の藤末健三参議院議員に対する政府答弁書等でもお答えしているとおりであり、

 憲法の規定の解釈に密接な関係のある内容を含む法案であれば、成立に至るまでの国会の審議の過程で、当該法案の前提となる憲法の規定の解釈に関し、当該規定の文言、趣旨との整合性、当該規定の立案者の意図、立案の背景となった社会情勢、さらには国会において積み重ねられてきた当該規定の解釈をめぐる議論との関係等について十分な議論が行われ、これらの点につき国民に十分説明された上で当該法律が成立することとなると考えられ、また、その過程で、議院内閣制の下、法律の執行に当たる政府の意見も十分に聴取されることが期待される。政府としては、国会が制定した法律について、これを誠実に執行することは当然である。

とお答えしております。

村上(政)委員 ということは、今の法制局長官の御答弁で明らかになったように、内閣は国会が定める法律に基づいて行政権を行使するわけですから、新しい憲法解釈に基づいて、あるいは国会の憲法解釈に基づいて新しい法律ができれば、当然にその法律に従って行政権を行使する、そして、古いもともとの内閣の憲法解釈が上書きされていくというその筋道がはっきりしたんだと思います。

 これは完全に仮定の話ですが、例えば、今、国会で集団的自衛権の行使を認めるという法律をつくって、成立させてしまえば、内閣が今までどのような憲法解釈をとってこられたかにかかわらず、集団的自衛権を行使できるというふうな状態にすぐさまなるんだと思います。

 ただ、先ほどお話ししたように、我が国においては、議院内閣制をとっていて、行政権と立法府が極めて近く、また融合している関係にありますので、そういった状態というのは直ちには想定されませんが、論理的には、我々立法府が内閣とは異なった憲法解釈をとって、それに基づいて立法すれば、内閣もそれに従うということになるので、今お話ししたように、集団的自衛権を認める、行使できるというのは、法整備をすれば、それが、今まで内閣としてどのような憲法解釈をとってこられたかにかかわらず、すぐさま有効になるという道筋がはっきりしたんだと思います。

 次に、またちょっと行ったり戻ったりで恐縮ですが、内閣の中で、行政権の中でどのように憲法解釈というものを定めていくのかということについて伺いたいと思います。

 今、安倍政権としては、そして岸田大臣としては、閣議決定を経て、さまざまに集団的自衛権の問題を含めてお考えになっていかれようとしておられると思います。

 では、きょうの私の大きなテーマでありますけれども、そもそも、内閣が内閣の憲法解釈を変える場合、これはどういうふうな手続を踏まなければならないのか。必ず閣議決定を経なければならないのか、あるいはそうではないのか。内閣が内閣としてのみずからの憲法解釈というものを変更する場合、これは閣議決定を経る必要があるのかないのか、この点についてはいかがでしょうか。

横畠政府特別補佐人 内閣法第四条第一項は、「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。」と規定しております。閣議決定と申しますのは、内閣がその意思決定を行う最高の形式であろうと思います。

 他方、内閣による憲法の解釈あるいはその変更について、その手続や方式を定めた規定はございません。

村上(政)委員 これは、憲法解釈をどのように変更するのかということは、とりたてて法律の中で決められているわけでもありませんし、どのような手続を踏まなければならないということが法定されているわけではないと思います。

 したがって、内閣が自分の憲法解釈を変更する場合に閣議を経なければならないとか、別に経なくてもいいとか、これは決まっていないということは今の御答弁でも明らかになったと思います。そういった今までの手続論というのは、るる述べさせていただいて、明らかになってきたとおりだと思います。

 私として申し上げたかったのは、やはり、今、集団的自衛権の議論が非常に盛んになってきている。これは、安倍総理、そして岸田大臣が提起されている問題で、我が国の安全保障にとっても極めて重要ですし、また外交政策にとっても大事ですし、日本外交にとっても非常に重要な課題だと思います。こうした課題をどのように解決していくのかの根本的な考え方、あるいは憲法の中での位置づけとかというのがちょっと曖昧になっているんじゃないかなという問題意識を持って質問させていただいたわけです。

 今までお話しさせていただいたとおり、今我が国が集団的自衛権を行使できないとなっているのは、これは内閣の憲法解釈に基づいているわけであって、この内閣の憲法解釈というのは、行政権、内閣は拘束するけれども、我々の立法府や、ましてや、最終的に憲法解釈について、それが憲法に合致するかどうかを判断する司法権、裁判所、最高裁は拘束しない。

 そして、我が国の中で、集団的自衛権の行使を明文上に禁止しているそういった法律はない。

 また、我が国の法体系の中で、では、憲法と法律と、それから今お話ししているような内閣の憲法解釈というのはどういう関係なのかというと、これは当然、憲法があって、法律があって、内閣の憲法解釈というのは憲法や法律を破ることができない、そういった性格のものではないということ。

 そして、集団的自衛権を含めて内閣がとっている憲法解釈と、それから我々のこの国会が行う憲法解釈、これが対立した場合どうなるのかといった質問をさせていただいたところ、国会が内閣とは異なる憲法解釈に基づいて法律を定めた場合は、それは内閣あるいは内閣法制局が、新しい法律として、その背後にある憲法解釈に従うということ。

 これは、同じようなことを視点を変えてお話ししているだけなんですけれども、すなわち、この中で、憲法と法律と内閣の憲法解釈の関係性、あるいは三権の中で国会と内閣がどのような関係にあるのかということがわかってきたと思います。

 最後に、こういった手続論はおいておいて、さて、では次に、もし仮に、内閣として集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を打ち出した、これからそのようになっていくと思いますし、私も、なるように期待いたしますが、その仮定のもとで質問させていただきたいと思います。

 内閣として新しい憲法解釈を打ち出した、集団的自衛権の行使はオーケーだ、ただ、そういう場合に、憲法解釈は変更したけれども、集団的自衛権の行使を担保するような法律がない、そういった期間というのは必ず生まれてくると思います。

 内閣として、閣議決定を経るかどうかというのは別にして、経るか経ないかというのは別に法定されているわけではないのでどちらでもいいということですが、非常に重要な政策なので、恐らく閣議決定によるんだろうと思いますが、内閣が閣議決定に基づいて集団的自衛権の行使を認める、憲法解釈を変更すると安倍総理、そして岸田大臣が打ち出された、しかしながら、まだ集団的自衛権を実際にどのように行使するのかというような法律が決まっていない場合、決まっていないすき間の期間というものが必ず生まれてくるんだと思います。

 今お話ししてきたように、集団的自衛権というものは自衛隊がどのように動くかということですので、自衛隊が法律に基づかずに勝手に動き出すというのは、これは我が国において考えられないことですし、法律がなければ自衛隊も動けない、そして集団的自衛権も行使できない。

 では、どうするんだ。この期間に集団的自衛権を行使しなければ我が国の安全を確保できないような事案が発生する、これは論理的な可能性としては発生することはあり得ると思うんですけれども、内閣が憲法解釈の変更をした後に、法律がまだできていない、この期間に集団的自衛権を行使しないと我が国の平和と安定を守れないような事案が発生した場合というのは、一体どのように対応されるのでしょうか。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 まさに今、与党協議の行われているところでございますので、その結果を予断することを申し上げることは差し控えたいと思いますが、全くの一般論として申し上げますと、今御指摘もありましたけれども、憲法解釈上許容されている武力の行使であっても、これを実際に発動するためには、これを裏づける法整備があくまで必要であるということでございます。

村上(政)委員 そのような裏づけをする法律というのは必要である、私もそう思うんですよね。

 今お話ししたようなすき間の期間が生まれないように、そもそも、今、内閣としての憲法解釈自体も変更されていないので、今そういった集団的自衛権を行使しないと我が国を守れない事案が発生したらどうするのかという問題もありますし、また、憲法解釈を岸田大臣も含めて内閣が変更されても、これはぜひ安心をせずに、速やかにそういった懸念を払拭していただく必要があると思います。

 私がお話しさせていただいたようなすき間の期間、こういった懸念を払拭するためにも、内閣だけで決めるのではなくて、閣議決定やその法整備に向けたスケジュールを明らかにしつつ、国会で議論をして決めていくべきではないかというふうに私は考えますが、この点はいかがでしょうか。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 現在、与党協議において協議が進められているところでございますが、政府としては、その結果に基づいて政府としての対応を検討し、憲法解釈の変更が必要と判断されれば閣議決定していく考えでございます。また、政府としての対応を実施するために必要な法案は、準備ができ次第、国会にお諮りすることになります。

 現時点でこれらのスケジュールをお示しすることは困難でございますけれども、いずれにしても、集団的自衛権等に関する問題については、これまでも国民の代表である国会において御議論をいただき、政府としても丁寧な説明に努めてきたところでございます。

 今後とも、政府としては、国会での御説明を通じるなどして、国民の皆様に対しても丁寧に説明を行ってまいりたいと考えているところでございます。

村上(政)委員 お聞きしたかったことは以上であります。

 きょう明らかにしてまいりましたのは、前半ではやはり憲法解釈。内閣の憲法解釈というのは一体何なのか。今までるる国会において答弁されてきたことの積み重ねだということは私もわかりますが、憲法でもない、そして法律でもない、そういったもので本当に我が国の重要な政策というものが縛られていてもいいのかという問題意識。

 あるいは、立法府として、内閣の憲法解釈に我々は別に縛られないということは、これははっきりしていますし、きょうの質疑の中でも明らかになったことだと思います。

 我々立法府は、内閣の憲法解釈に拘束されるわけではない、内閣がどのように憲法を解釈していようが、我々立法府はそれとは異なった考え方を持つことができるし、また異なる憲法解釈に基づいて立法することもできる。

 新しい法律ができてしまえば、これは内閣としても、あるいは内閣法制局としても、新しい法律に、そして新しい憲法解釈に従われるということもはっきりしたと思います。

 我々立法府としては、こういった今までの内閣の憲法解釈というものを尊重しつつも、やはり我が国の安全保障環境を考えて行動していかなければならないと思いますし、きょうは時間の関係で岸田大臣に質問することはできませんでしたが、岸田大臣におかれましても、また内閣におかれましても、我が国の平和と繁栄を守るために、さらに、お体に気をつけられながらお仕事を進めていかれますようにお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 本日はありがとうございました。

鈴木委員長 次に、畠中光成君。

畠中委員 結いの党の畠中光成です。本日は、外務委員会での質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 中国の海洋進出や朝鮮半島情勢など、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増していることは言うまでもなく、この東アジアにおける我が国の対応が世界全体のリスクとならないように、慎重に取り組んでいかなくてはなりません。

 国民の生命、我が国の領土の守りを万全にするために、法制上の落ち度がないかを検討すること、これは極めて重要なことでございます。事集団的自衛権の行使容認については各党各会派いろいろなお考えがあるかと思いますけれども、先日、安保法制懇の報告と総理の会見がありましたけれども、その説明あるいは説得力、これはやや不十分だったのではないかというのが私の感想であります。私のような、慎重ではあっても行使容認を排除しているわけではない、しっかり議論して、真っ当な考え方の上に立って、最小限でも必要性を見出していこうという立ち位置の者にとっては、応援したくてもなかなかしづらい、そういうような説明だったのではないかというふうな感想です。

 説明責任は政府側にあるわけですから、ぜひその点を御理解いただいて、会期も残り限られてきておりますので、国会においては、ぜひ引き続き徹底した審議をお願いしたいと思っています。

 さて、きょうは、集団的自衛権を中心に大臣に質問をさせていただきたいわけでありますが、この集団的自衛権というのは、安全保障上の要請側からの議論と、一方で、憲法の制約側からの議論、これを両方から考えていかなくてはならないというふうに思いますが、まずは憲法側の観点から質問をさせていただきたいと思います。

 集団的自衛権の行使容認において、二つの表現の仕方というのがあると思います。一つは、それは解釈改憲だという言い方と、もう一つは、解釈の変更によってそれを行うんだ、こういう二つの言い方が、国会議員の間でも、あるいは新聞報道でも、言葉の使われ方が二通りあるように思います。

 これは法律用語ではないと思いますけれども、このそれぞれの二つの違いについて大臣はどのようにお考えか、お聞かせください。

岸田国務大臣 解釈改憲と解釈の変更、この二つの違いですが、解釈改憲という用語について法令上定まった定義があるとは承知しておりませんが、憲法の合理的な解釈の限界を超えて、本来なら憲法の条文自体を改正しなければ実現できないような結論を導き出すことをいうと考えられます。

 他方、憲法の解釈の変更につきましては、政府は、昭和四十年に文民に関する政府の見解を変更した例があるとおり、これまでも憲法の解釈の変更を行う可能性について否定はしていないところでありますが、いずれにしましても、再三申し上げておりますように、政府の憲法解釈には論理的整合性あるいは法的安定性の確保が必要であると認識をしています。

畠中委員 私は、解釈改憲というのは、今大臣がおっしゃられたとおりの認識で、同じ認識を持っておりまして、いわば憲法に規範というのがあって、この規範を超える内容を解釈によって変えるというのが解釈改憲であって、一方の解釈の変更というのは、あくまで憲法規範の枠内のものであるという違いがあると思っています。

 確認の意味でお聞かせいただきたいんですが、安保法制懇の報告や総理の会見等、今行われている集団的自衛権をめぐる議論というのは、憲法規範を超える解釈改憲ではなくて、あくまで憲法規範の枠内での解釈の変更だ、こういう理解でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 政府として再三説明をさせていただいておりますが、憲法の解釈につきまして、論理的整合性、法的安定性、これが重要だということを申し上げてきております。これはあくまでも解釈の変更であると認識をしています。

畠中委員 よくわかりました。

 よく、集団的自衛権の行使を認めるのならば憲法改正が筋だ、こういう議論があるわけでありますけれども、私は、それはやや粗い議論かなというふうに思っておりまして、あるいは別の議論なのかなというふうに思っております。

 といいますのも、憲法九条は戦争を認めていない、しかし、自衛権、言うならば国際法上の自衛権と言いましょう、これは、もともと国家が持っている主権の一部なわけでありまして、本来は憲法九条とは無関係なのだと思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

岸田国務大臣 国連憲章上、どの国も、主権国家として、個別的自衛権そして集団的自衛権を持っているという規定になっていると承知をしております。

畠中委員 憲法の話をしますと、憲法の一番の根幹というのは言うまでもなく基本的人権の保障にある、これを守るために自衛権というのが存在する、私はそう思っております。ただし、我が国の憲法において、必要最小限度の範囲ということで、自衛隊の存在とともに個別的自衛権が認められている。しかし、集団的自衛権というのは、御承知のように、持っているけれども行使できない、これが今の解釈であるわけであります。

 この持っている集団的自衛権というのは、国際法上全ての国家にあるものですから、集団的自衛権を量であらわすのが適当かどうかはともかく、いずれにせよ、その全部を我が国は持っている、こういうことだと思います。しかし、現在の解釈では、集団的自衛権は全部フルで持っているけれども、行使についてはできない、すなわちゼロである、こういうことだと思うんです。

 では、お聞きしたいんですが、現在検討されている解釈変更によって国際法上の集団的自衛権全部を行使できるのか、あるいは、先ほどお聞きしましたが、憲法規範の枠を超えてしまうからあくまでそれは限定的なものとなるのか、大臣、お答えください。

岸田国務大臣 今議論されている中身ですが、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときという限定的な場合に集団的自衛権を行使することにつきまして、我が国が従来認めてきた必要最低限の範囲内に含まれるかどうか、こういったことについて議論が行われていると承知をしております。

 我が国が議論しておりますのは、今申し上げたように、あくまでも限定的な集団的自衛権が、我が国の従来の憲法に対する考え方、必要最低限の範囲内に含まれるかどうか、こういった議論について研究、議論が続けられていると承知をしております。

畠中委員 今大臣がおっしゃられたのは、私は同じ認識であります。

 この集団的自衛権の議論というのは、私は二段階あるというふうに思っています。すなわち、憲法規範によるそもそもの歯どめ、どこまでが憲法上可能なのかという議論が一つ。

 そもそも歯どめの議論を初めからやるのはおかしいというふうにおっしゃられる方もいますけれども、まずこの国会で行うべき最大の議論というのは、憲法上どこまでが可能なのかということが一番大事なことだろうと思います。すなわち、憲法規範にどの程度、集団的自衛権の行使を容認できるすき間が認められるのかという議論が今一番大事なのだろうというふうに思っています。

 すなわち、第一段階は、憲法による集団的自衛権の歯どめというのは、全部なのか限定的なのか、あるいはゼロなのか、こういう第一段階の話があります。そして、解釈変更によって変えられる部分と憲法改正を経ずしては変えることのできないそもそもの憲法規範、その両者のすき間を議論する、これが第一段階です。第二段階は、これはまさに、法律によってどのような制約を設けるかという歯どめ。この第一段階、第二段階というのがあると思います。

 これは重ねた質問になるかもしれませんが、この第一段階の憲法の規範の枠内におさまる集団的自衛権の行使のすき間というのはどの程度あると思われますか。大きい、小さい、いろいろな表現があると思いますけれども、大臣、お答えください。

岸田国務大臣 先ほど申し上げたように、今、我が国の安全に重大な影響があるという限定的な場合において集団的自衛権を認めるということが、従来我が国が認めてきた必要最低限の範囲内に含まれるかどうか、こういった議論を行っているわけですが、今、現状においては、必要最低限の中に限定的な集団的自衛権の一部でも含まれるかどうか、そのものにつきましても、まだ結論は出ておりません。よって、どの程度含まれるかどうかということも含めて、今の段階では結論は出ていないと承知をしております。

 ぜひ、これから、しっかりとした与党の議論等を踏まえて、政府としての方針を確定したいと考えています。

畠中委員 すなわち、今の大臣の御答弁から察するに、今議論されているこの集団的自衛権の行使容認というのは、ゼロから限定的、この幅の中の議論だろうというふうに思うわけであります。すなわち、全部というのは憲法規範を超える話であって、これはなかなか難しいだろうということなんだろうと思います。冒頭に申し上げたように、解釈改憲という言葉が使われるケースもありますけれども、ある意味、解釈改憲という言葉の使い方は間違いなのであって、解釈の変更というのが正確な言い方なんだろうというふうに思うわけであります。

 この憲法規範の枠を超えない限定的な集団的自衛権でありますが、一方で、憲法改正をして集団的自衛権を認めるべきだという意見もあるわけであります。私は思うんですけれども、憲法規範を超える集団的自衛権の行使を容認しようとするのであれば、当然、憲法改正が必要だ、しかし、現在の憲法規範の枠内の限定的な集団的自衛権を容認しようとするのであれば、解釈の変更でも可能だと。しかし、その程度という言い方はちょっと語弊があるかもしれませんが、その範囲の集団的自衛権の行使容認を憲法の改正によってやろうとしてしまうと、私はむしろ、大きく日本が変わってしまったんじゃないかというふうに対外的にもとられてしまう、それぐらいの大きな変更という意見も一方ではあって、そのとおりでもあるんですけれども、しかし、憲法規範上はそのような考え方をすべきではないかというふうに思っています。

 そこで、大臣、お聞かせください。憲法改正と集団的自衛権、今、私の意見を申し上げましたけれども、大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

岸田国務大臣 今回の安保法制懇の報告書の中には、まず、大きく二つの考え方が示されました。一つは、いわゆる芦田修正論に基づいた考え方が示され、もう一つは、先ほど申し上げました、我が国の安全に重大な影響がある場合等、限定的なケースにおいて集団的自衛権を認めるという考え方は従来政府の考えていた必要最低限の範囲内に入るという考え方、この二つの考え方が示されました。前者は従来の政府の憲法解釈との整合性においてとることはできない、後者においては研究を進めていこう、こういったことになったわけです。

 いずれにしましても、論理的整合性あるいは法的安定性といったものをしっかり重視しながら議論を進めていく、こういった姿勢は重要であると認識をしております。

畠中委員 今大臣と議論させていただきましたように、憲法規範のすき間の部分に、最小限の、限定的な集団的自衛権のすき間があり得るかどうかということを国会でしっかりと議論をしていかなくちゃいけないというふうに思うわけでありますけれども、それが、私は、決して大きくない範囲なんだろう、結構小さいすき間なんじゃないかというふうな考え方を持っております。そうであれば、現状認められている個別的自衛権を、適正化といいますか、個別的自衛権の範囲を広げることによって対応可能かもしれない。ここの両者の考え方というのを比較検討していくという作業も重要だろうと思います、きっと与党間でもされているんだろうと思いますけれども。

 結論はいかなることになったにせよ、こういった下から積み上げていくステップというのは極めて重要だと思うんです。しかしながら、ここのところの政府・与党のいろいろなお話を聞いていると、特に安倍総理の発言等を聞いていると、まず集団的自衛権の行使ありきで、下からの積み上げというのが余り感じられなかったというふうに思いますので、ぜひ、こういう積み上げのステップアップをしていきながらの議論をお願いしたいと思っています。

 さて、時間も限られておりますので次の質問に移りますけれども、仮に集団的自衛権が認められた場合の発動要件についてお伺いしたいんです。

 個別的自衛権の場合は、御承知のように、我が国に対する急迫不正の侵害があること、これを排除するためにほかの適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこととあります。これは極めて厳格かつ明快な要件でありまして、戦後、我が国は、一度もこの個別的自衛権を発動してこなかったわけであります。

 集団的自衛権の場合は別途発動要件が必要になってくるわけでありますけれども、安保法制懇で出てきた報告書では、「我が国と密接な関係にある外国に対して武力攻撃が行われ、その事態が我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときには、我が国が直接攻撃されていない場合でも、その国の明示の要請又は同意を得て、必要最小限の実力を行使」とあります。

 この中で「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性」というのが気になりまして、これは個別的自衛権の発動要件に比べて極めて曖昧模糊としたものではないでしょうか。我が国と密接な関係にある国の明示の要請あるいは同意、これについては極めて明確なわけなんですけれども、重大な影響を及ぼす可能性というのは非常に曖昧だというふうに思います。

 もちろん、安保法制懇の報告の中には、そのような場合に該当するかについては、「我が国への直接攻撃に結びつく蓋然性が高いか、日米同盟の信頼が著しく傷つきその抑止力が大きく損なわれ得るか、」など、「その他」という言葉を含めて、総合的にではありますが、判断基準が示されています。

 要は、皆さんが一番気にされていることだと思うんですが、密接な関係にある国から要請があれば出ていかざるを得ないとも読み取れるのではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、御指摘の集団的自衛権行使のための要件につきましては、安保法制懇の最終報告書において要件として挙げられていた項目です。政府としましては、この報告書を受けて、基本的な方向性を示した上で、与党の議論も経た上で、そもそも集団的自衛権を行使するべきなのかどうかも含めてこれから議論を進めていくことになります。ですから、まだ何も決まっていないわけでありますし、ましてや行使するかどうかも決まっていないわけですから、要件につきましても、今の段階では具体的なものが確定したものではないということであります。

 そして、その上で申し上げますが、仮に集団的自衛権について行使するという判断が行われたとしても、それを行使するためには具体的な法律が必要になります。法律を国会で御審議いただいて、国会の御判断をいただいて承認、成立しなければ、集団的自衛権は具体的に行使することはできないわけです。

 そして、集団的自衛権は権利であって義務ではないわけですから、法律ができたとしても、実際に行使するかどうか、これは時の政府の重大な判断が求められるわけでありますし、それとて、国会においてしっかりと御議論いただき、国会のさまざまな批判にも耐えられるしっかりとしたものでなければならない、こういったことであります。

 ですから、仮に集団的自衛権行使を認めるということになって、それにさまざまな条件がつけられたとしても、その条件に当たるかどうか、その判断等は、今申し上げましたさまざまな過程を通じてしっかりと慎重に判断されるものであると認識をしております。

畠中委員 わかったようなわからないような気持ちでおりますけれども、時の政府の判断ということは、要は、逆に言えば、要請があったら断りづらい、そういうことも十分にあり得るともとれる御答弁だったんじゃないかなというふうにも思うわけであります。

 ですからこそお聞きしたいんですけれども、逆に、密接な関係にある国から要請があっても、我が国の安全に重大な影響を及ぼさない事例、これは要請があったとしても我が国の安全に重大な影響を及ぼさないんだという、集団的自衛権を発動しない事例というのはどういったものが考えられますでしょうか。

岸田国務大臣 我が国と密接な関係にある国からの要請、これは、先ほど申し上げましたように、安保法制懇の最終報告書の要件には書いてあります。これは、そもそも国際法上の集団的自衛権の要件から引いてきたものではないかと考えておりますが、この要件につきましても、密接な関係にある国は、あらかじめ決めておくものではなく、条約関係等も必要ない、こういった解釈が国際法上行われています。

 この要件については今申し上げたとおりでありますが、そもそも我が国は、集団的自衛権を行使するかどうかそのものも含めて、その要件等につきましてもまだ何も確定していないわけでありますから、この段階で、具体的な要件について、断りづらくなるのではないかとか、そういったことについてどう考えるかとかいうことを今の時点で申し上げるのは困難であると思いますし、適切ではないと考えます。

畠中委員 なかなかお答えづらいということは理解はするものの、今現在議論が行われている、その過程でも少しはお示しいただければなというふうに思うわけであります。

 具体事例というのが十五個出ましたね。総理の紹介ということで、邦人輸送中の米輸送艦の防護という事例を出されました。

 ちょっとお聞きしたいんですが、この具体事例について、事例の八つ目の邦人輸送中の米輸送艦の防護と、具体事例の九つ目、武力攻撃を受けている米艦の防護、この違いというのは一体何なんでしょうか。

岸田国務大臣 政府としてお示しをさせていただいた十五の例の八例目と九例目の違いについて御質問いただいたということでありますが、これは、問題意識については、それぞれこの資料の中で触れております。

 邦人輸送中の米輸送艦の防護につきましては、「紛争下で命の危険がある日本人や米国人を輸送する米国の輸送艦を守れなくてよいのか。この船に乗っているかもしれない子供や母親たちを助けられなくてよいのか。」これが問題意識であります。事例九、武力攻撃を受けている米艦の防護、これは、「我が国にも武力攻撃が行われかねない状況下で、我が国の安全を確保するには米艦防護などの米国への協力により米軍の態勢を増強することが不可欠であるのに、それができなくてよいのか。」これがこの二つの問題意識の違いだと考えます。

畠中委員 問題意識というのは確かに違うわけでありますけれども、あくまでこれは、現状の安保法制上の何に問題があるかということのための事例なわけですよ。問題意識は、それはどなたでも多種多様あるわけでありますけれども、あくまで安保法制上、この事例八と事例九というのは、結局のところ、言っていることというのは同じなんじゃないかなというふうに思います。

 すなわち、事例八で邦人を乗せているということ、だからこれは、在外邦人の救出であったり在外邦人の保護、こういったところを言いたいのかなとも思ったんですが、そうでもない。よくわからないというのが私の感想で、わざわざこの八と九、安保法制上どういう違いがあるのかなという疑問点でありました。

 ちょっと時間になりましたのであれですけれども、こういった具体事例をもっとお話ししたかったわけでありますが、私、ぜひお願いをしたいのが、こういう具体事例というのは、集団的自衛権行使の初動の話なわけでありますよね。ですから、本来、国民の皆さんが知りたいのは、集団的自衛権を行使した後どのようなことがあるか。それは、当然やり返しもあるわけであります。その覚悟というのが我々政治側にあるのか、あるいは国民の皆さんにこういった説明をしっかりできるのかということが極めて重要だと思っておりますので、ぜひ今後の国会審議の充実をお願いしたいと思っております。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、岸田大臣に端的に伺いたいと思いますが、二〇〇一年のアフガニスタン戦争、報復戦争、それから二〇〇三年のイラク戦争の際には、日本は自衛隊を送った、派兵をしたわけでありますけれども、このときは、憲法の歯どめがあったから、給油とか給水などの活動にとどまって、戦闘地域に行って武力を行使することはできなかったということであります。しかし、集団的自衛権の行使を可能にして、そして米国からの要請があった場合に、今度は、ああいうようなときに米国から要請があったら、日本がそれを断れるのか。端的に言ってそれはどうなのか。いかがですか。

岸田国務大臣 まず、集団的安全保障の議論において、我が国として、戦闘地域に行って武力を行使する、こういったことはないということ、これは総理が既に五月十五日の記者会見で明らかにしております。そして、集団的自衛権の議論において、限定的な集団的自衛権の行使が可能なのかどうかについて研究をするということを明らかにした次第であります。

 この結論はまだ出ていないわけでありますが、仮に行使を認めるということになったとしても、これを行使するためには具体的な法律が必要になります。そして、この法律の制定、成立に際しては、国会の慎重な御議論を経なければならないわけです。そして、そこでできた法律によって制限がかかった上で、時の政権が権利を行使するかどうかを判断することになるわけです。集団的自衛権は権利であり義務ではないわけでありますから、高度な判断が求められることになります。それについても、国会の、そして国民の厳しい目が注がれることになるわけであります。

 国民の命あるいは暮らしを守るためにどうあるべきなのか、こういった基準に基づいてしっかりとした判断が行われるわけでありますから、具体的な事例に即して判断することになるかとは思いますが、必要がない場合においては、時の政府のイエスかノーかのしっかりとした判断が下されるものだと承知をしております。

笠井委員 五月十五日の会見を言われましたけれども、この間、予算委員会の質疑の中では、海外で武力行使しない、それから戦闘地域に行かないという歯どめを残すのかと言ったら、安倍総理は、残すとは言われずに、逆に検討するんだということを言われているわけで、外して戦地まで行くことまで認めるという、それが可能か検討するんだという話だったわけであります。しかも、今大臣の答弁を伺っていても、断れるということについてははっきり答弁をされないわけであります。

 大臣、日米同盟は大事だ、それから、この議論の中でも、日米同盟を強化するんだということも言われている。そうなると、米国の側が集団的自衛権行使の要請をする、それに対して、いろいろなことを言うけれども断るということになると、行使できるというふうになっているのに断るということを言うと、日米同盟の信頼が著しく傷ついてその抑止力が大きく損なわれるというふうな判断をした場合に、結局のところ、断れないということになるんじゃないですか。日米同盟は大事、強化すると言いながら、これを断わっちゃったら信頼が崩されるとなったら、断れないという話になるんじゃないですか。そこはどうですか。

岸田国務大臣 今議論しておりますのは、我が国の国民の命や暮らしを守るために我が国の安全保障の法的基盤をどうするのか、どうあるべきだと考えるのか、こういった議論を行っているわけであります。我が国自身によって我が国のために議論しているわけでありますから、これは、米国であれどの国であれ、他国のために議論をしているわけではありません。我が国のしっかりとした基準に基づいての判断が下されるべきものであると考えています。

笠井委員 アメリカ側は繰り返し集団的自衛権行使を認めろというようなことで言ってきながら、そうしたらもっとこういうことがやれるのにということを繰り返しやってきたわけで、そうした同盟関係を前提にしながら物を言ってきたときに本当に断れるのかということが厳しく問われてくるんだと私は思います。そして、はっきり断れるというふうには答弁されない。

 そこで、具体的に話をちょっと聞いていきたいんですけれども、防衛省に伺います。

 政府は、安保法制懇の報告書を踏まえた議論を進める一方で、米国の要請に応えられるように、既に、集団的自衛権の行使を前提とした自衛隊と米軍との共同訓練、こういうのをやっているんじゃないですか。

若宮大臣政務官 前提とした訓練というのは一切行っておりません。

笠井委員 間髪入れず否定されましたが、本当にそうか、具体的に聞きたいと思います。

 航空自衛隊は、毎年、米空軍が実施するレッドフラッグ・アラスカ、RFAと呼ばれる日米共同訓練に参加をしておりますけれども、この訓練に日本が参加する目的は何か、そしてこの訓練にいつごろから参加しているでしょうか。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 航空自衛隊といたしましては、部隊の戦術技量及び日米共同対処能力の向上を目的といたしまして、アメリカ空軍がアラスカで実施いたしております演習、委員御指摘のレッドフラッグ・アラスカでございますが、参加をいたしてございます。

 この演習におきましては、アラスカの恵まれた訓練環境のもとにおきまして、司令部での戦闘計画の立案から、航空機の発進及び帰投に至る一連の航空作戦を演練いたしているところでございます。また、航空自衛隊では、この演習には平成八年度から参加をいたしておりまして、現在までのところ十七回参加をいたしているところでございます。

笠井委員 この訓練の実施場所はどこですか。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 アメリカ空軍の演習のアラスカ州アイルソン空軍基地及びエレメンドルフ・リチャードソン米軍統合基地に参加部隊が展開いたしまして、両基地周辺の訓練空域におきまして飛行訓練を実施いたしているところでございます。

笠井委員 アラスカの広大な空域を用いて訓練が行われているわけですが、昨年八月に実施された訓練には、航空自衛隊から、どの程度、どの部隊が参加したのか、訓練規模はどれぐらいだったのか、その演習期間と参加部隊、訓練規模と、航空機の機種と機数をお答えください。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 演習期間につきましては、八月九日から八月二十四日でございます。また、昨年八月に実施されましたこの演習には、私どもの航空自衛隊の第六航空団からF15戦闘機を六機、警戒航空隊からE767早期警戒管制機を一機、それから第一輸送航空隊からC130H輸送機を三機、参加させていただいております。

笠井委員 参加規模は何人ですか。

若宮大臣政務官 失礼いたしました。

 合計で約三百十名でございます。

笠井委員 自衛隊のF15戦闘機も参加しているわけですね。

 それで、F15というのはアラスカでの訓練にいつごろから参加していますか。

若宮大臣政務官 F15は、平成十五年度から参加をいたしてございます。

笠井委員 それでは、昨年八月の訓練には、ほかにどの国からどれだけの規模が参加してこの訓練をやっているでしょうか。

若宮大臣政務官 昨年の訓練では、私ども日本以外では、韓国それからオーストラリアが参加をいたしてございます。

 ただ、それぞれの国から参加をいたしました機種や機数につきましては、当該国家との関係から、お答えを差し控えさせていただければと思っております。

笠井委員 オーストラリアと韓国だけですか。

若宮大臣政務官 私ども以外には韓国とオーストラリアでございます。

笠井委員 さっきありましたが、アラスカ州のアイルソン空軍基地のホームページを見ますと、昨年の訓練には、米空軍の現役、予備役、州空軍、陸軍、海軍、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国から、六十機以上の航空機と二千六百人以上の将兵が参加というふうにあります。このアラスカの訓練がいかに大規模だったかというのがうかがえると思うんです。

 アラスカでの共同訓練には、航空自衛隊のF15とともに、これまでに米軍のB52戦略爆撃機が参加したことはありますか。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 このレッドフラッグ・アラスカに参加をいたしております米軍機の種類につきましては、その年ごとに調整が行われておりますために、必ず参加をするというわけではないですが、B52が参加をした年もございます。

笠井委員 米太平洋軍のホームページを見ますと、昨年八月のアラスカでの訓練について説明があります。これを見ても、アラスカでの訓練内容を見ますと、米軍主導の多国籍空軍による攻撃訓練だというふうにあります。

 これに航空自衛隊のF15が参加をしているということでよろしいですね。

若宮大臣政務官 私ども航空自衛隊といたしましては、あくまでも部隊の戦術技量及び日米共同対処能力の向上ということが目的でございます。この目的のためにアラスカにて実施をさせていただいております。

笠井委員 目的はそういうふうに説明するんでしょうけれども、そういう共同訓練に参加しているというのは間違いないですね。

若宮大臣政務官 レッドフラッグ・アラスカに参加していることは事実でございます。

笠井委員 では、アラスカでの訓練で、航空自衛隊は具体的にどのような訓練をするんでしょうか。

若宮大臣政務官 昨年の八月に実施をいたしましたレッドフラッグ・アラスカにおきましては、私どもの航空自衛隊では、防空戦闘訓練、空中給油訓練及び戦術空輸訓練を実施いたしました。

笠井委員 米太平洋軍のホームページによれば、その訓練には、積極的に相手国の領地に進攻し、航空戦力の破壊、撃滅を目的とするOCA、オフェンシブ・カウンター・エアと呼ばれる攻勢対航空訓練も含まれております。

 航空自衛隊がこのOCA訓練に参加したことはありますか。

若宮大臣政務官 先ほど申し上げましたが、航空自衛隊は、あくまでも部隊の戦術技量と日米の共同対処能力の向上ということが目的でございますので、米軍の指揮下に入っての何か訓練ということではございません。

笠井委員 このOCAには、相手国の航空機への直接攻撃、滑走路などの航空基地への攻撃、それらを支援する兵たん施設への攻撃などがあります。ここには、空対空の戦闘力を余り持たない爆撃機を戦闘力が高い戦闘機が援護することが含まれるわけですけれども、そうした訓練に航空自衛隊が関与したことはあるのかないのか、いかがですか。

若宮大臣政務官 私ども航空自衛隊の戦闘機がそういった形の直接援護するようなシナリオに基づく訓練をいたすことは、実施は全くございません。

笠井委員 このOCAの主力には、地形などに左右されず、広い行動範囲と強大な突破力を備えた爆撃機が用いられるとされておりますけれども、アラスカでの訓練で航空自衛隊が米空軍の爆撃機の援護訓練を行ったことは一切ないということでよろしいですか。

若宮大臣政務官 はい、ございません。

笠井委員 それでは伺いますが、ここに、防衛省が提出した航空自衛隊の月刊誌で「飛行と安全」という雑誌があって、二〇一二年七月号のコピーがございます。航空安全管理隊が編集をして航空幕僚監部が発行するものでありますけれども、この月刊誌に掲載された「統合・共同訓練参加時の着意事項」と題する文書がありまして、その中にはこのようなことが書いてあります。

 「統合・共同訓練は、普段は飛行しない場所で、違う部隊と、通常は使用しない用語及び英語で意思疎通を図らなければならず、いつもとは違う不慣れな訓練なのだ」ということが書いてあって、その中で、それを実施するためには、日常と違う訓練と認識をして、相違する不安全要素となる事項をあらかじめ見出して、それに応じた対策を事前に講じておくことが重要だということで、不安全要素を三つ挙げて、その一つに、言葉の壁、ランゲージバリアということを挙げている。

 そして、それに対する対応ということで、この中ではこういうことが書いてあります。

 「RFAにおけるOCA(攻勢対航空)ミッション中における出来事です。」つまり、攻めていく、敵に向かってやっていくという訓練の出来事ですと。

 航空自衛隊のF15編隊は、B52のEF(援護戦闘機)として果敢に先陣を切って経路を啓開し、粘り強く戦闘を継続してB52を援護し続けているつもりでした。しかし、気が付くとB52は、とうの昔に任務を達成して他の編隊と共に帰投してしまっていました。残された航空自衛隊編隊は、退却時に他の編隊から支援を受けることができず、不必要な被撃墜を受けてしまいました。この失敗は、作戦の計画や事前ブリーフィングがすべて英語で実施されるため、B52の爆撃が成功した時点で各編隊が一斉退却する計画を正しく理解できていなかったことと、「爆撃成功、退却」のMC(ミッションコマンダー)のボイスを聞き取れず、帰投開始の時機を失ってしまったからです。

 つまり、攻め込んでいくというOCAの訓練をやって、B52をエスコートしてF15でやったんだけれども、言葉が聞き取れずに、気がついてみたら自分だけが残っていて、そして撃墜されるという訓練になっちゃったと。やはり言葉の問題は大事だということで、もっと英語を勉強するというだけじゃなくて、そういうところの言葉というのをぱっとつかんでやれるようにしなきゃだめだとかということが詳しく書いてあるわけでございます。実際の体験について書いて、教訓化しているわけです。

 この記述からも、アラスカで行われたOCA、攻勢対航空訓練で、航空自衛隊のF15が米軍のB52による戦略爆撃機を援護する訓練に参加した。参加したから、実際、こういうことで失敗したんだという体験談を書いて教訓化している。これは明らかなんじゃないですか、どうですか。

若宮大臣政務官 今委員が御指摘になりました「飛行と安全」の二十四年七月号、確かに、平成二十一年十月のレッドフラッグ・アラスカに参加いたしました空自隊員の寄稿による記事が掲載されているところでございます。

 同年のレッドフラッグ・アラスカは、例年と同様で、やはり航空自衛隊の戦闘機、早期警戒管制機が参加をいたしてございます。防空戦闘訓練等を実施したところでございます。また、特に防空戦闘訓練では、空自の戦闘機とアメリカ空軍の爆撃機が一つの空域内で訓練を実施いたしたのも事実でございます。

 しかしながら、このような訓練におきまして空自の戦闘機が実施をいたしますのは、戦術技量の向上を目的とした防空戦闘のみでありまして、空自の戦闘機が直接、委員が御指摘になったようなアメリカの爆撃機を援護するというようなシナリオに基づいて訓練を実施するということはあり得ないというふうに考えているところでございます。

 また、この実際に書かれました記事の中に書いております、委員も御指摘になっております援護戦闘機といった表現、あるいは当該演習で使用した事実というのは、やはり確認をされてございません。したがって、現在御指摘になりました記事につきましては、一部、執筆者の主観がつけ加わっているものではないかなというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、この「飛行と安全」という部内誌につきましては、基本的には執筆者個人の見解を示しているところでございまして、私ども防衛省の公式の見解というわけではございません。

笠井委員 この文章の筆者というのは、小松基地所属の第六航空団の第三〇六飛行隊の一等空尉ということで、一等空尉というといわゆる幹部自衛官でありますけれども、そうした立場にある者が、航空自衛隊員の安全意識の高揚と安全知識の向上を図って事故の未然防止に資することを目的とするという雑誌文書に、しかも、航空安全管理隊の編集、航空幕僚監部発行の文書に、そういう雑誌にありもしないことを載っけたと。

 主観だと言われましたけれども、それは考え方の問題じゃないですよ。参加したといって事実について書いているわけです。そうしたことを、ありもしないことを掲載して、そのまま載っちゃったと。個人と言いますけれども、これは個人的な雑誌じゃないですよね。航空自衛隊の発行しているものですよね。そういうのもチェックなしで通っちゃって、そんなことはあり得ないんだったら、事前にチェックして、あなた、勘違いじゃないですか、そんな訓練はやっていないんじゃないですか、そんないいかげんなことを書いたら教訓にもならないでしょうと言うのが当たり前だけれども、ちゃんと通って載っちゃっているわけでしょう。個人の責任にして、ありもしないことをやったというだけの話にするんですか。

若宮大臣政務官 委員御指摘のとおり、その「飛行と安全」という雑誌は、航空自衛隊の隊員の安全意識の高揚と安全知識の向上を図る、確かに、事故を未然に防止することを大きな目的としてございます。

 この投稿記事につきましても、基本的にはやはりあくまでもこの執筆者個人の見解でございまして、個人の見解ということで、航空自衛隊自体の公式見解ではないということでございます。

笠井委員 見解というのは、これに対してどう思うかとか、考えを述べるのが見解であって、これに参加したということについては、見解じゃなくて事実の問題なんですよ。違うんだったら、違うと言ってこんなのは載せなきゃいいわけですよ。実に苦しい答弁だと思うんです。

 では、伺いますけれども、この「飛行と安全」というのは、隊員の安全意識の高揚と安全知識の向上、それから航空事故の未然防止に資する目的ということで言われましたけれども、その目的以外での使用というのは認められているんですか。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 では、速記を起こしてください。

 防衛大臣政務官。

若宮大臣政務官 委員御指摘のとおり、隊員の安全意識の高揚と安全知識の向上を図り、事故の未然防止に資するというのが目的でございますが、これに限定ということではございません。

 これは、省内では各地に配られてございまして、それぞれの航空自衛隊の中で、全員ができるだけ、いろいろな問題意識、実体験での冷やりとしたことや、そういった反省点、あるいは今後の注意点などにつきまして、ある意味、個人の自由な観点から述べることでさまざまな注意が喚起できるのではないか、そういった趣旨のものでございますので、そのような形で共有ができて、次の何かのステップのときにはお互いに防止できればな、そういった趣旨でございます。

笠井委員 まさに、言われたんですけれども、失敗の事例集でしょう。実体験なんですよ。つまり、自分がF15に乗っていてB52をエスコートしてやった、そうしたら失敗したという話なんですよ。まさに、実体験と言われた、そのとおりのことが書いてあるわけですよ。

 「飛行と安全」というのは、そうした目的外使用を禁じられているものであります。しかも、基本的には、守秘義務を負う自衛隊員限りを対象とした文書ということでよろしいんですか。

若宮大臣政務官 委員御指摘のとおり、基本的には部内での小冊子ということでございます。

笠井委員 だから、執筆者の個人的な見解と言うけれども、まさに失敗の事例集で、実体験を書いたもの。

 見解というのは、もっと英語について熟達しようとか、ぱっと短い言葉でも受けとめられるようにしようとかというのが彼の見解であって、OCA訓練に参加したのは、見解ではなくて実体験の事実なんですよね。それは否定されなかった。

 大体、航空自衛隊内で厳格な扱いの内部文書に、幹部自衛官が好き勝手に、ありもしないことを教訓として書いたなんてことはあり得ないと思うんですよ。そんなことを聞いて、ほかの人が学んで、もともとうそだった、そんな話にならないわけで、そんなことをやったら大変ですよね、自衛隊。

 逆に、そうした内部文書だけに、執筆者も正直にありのままを書いたというのが自然であって、編集者も、疑問も持たず、当然と思ったからそれが記事に出たということなんじゃないですか。

 大臣、先ほども指摘したんですけれども、このOCA、攻勢対航空というのは、航空攻撃訓練、いわゆる敵航空基地攻撃訓練のことであります。そのことは、防衛省防衛研究所の戦争史研究国際フォーラム報告書でもこう解説されています。自主積極的に敵機をその飛行場の空地で捕捉、撃滅することを目的としたもので、陸軍が呼称した航空撃滅戦とほぼ同義に使われていると。

 そうした訓練に航空自衛隊のF15が参加をして、B52による戦略爆撃の援護を行う、こういうことがあったということでいえば、これは集団的自衛権を前提とした訓練そのものじゃないかと思うんですけれども、どうお考えですか。

岸田国務大臣 まず、冒頭、先ほどの私に対する質問において、委員の方から、集団的自衛権を認めることになったならばアメリカの要請を断れないのではないか、それに対してはっきりとノーということが言えると言わないという御指摘がありました。

 改めて申し上げますが、仮に集団的自衛権の行使を認めると仮定した場合、あくまでも我が国は主体的に判断するわけですので、ノーと言うべきときにはしっかりとノーと言う、このことについては改めて申し上げたいと存じます。

 その上で、今の御質問に対しまして、この部内誌においての記事のありよう、それから実際の訓練のありようについては、今いろいろなやりとりがありました。私自身、実際のところは十分に承知はしていないわけでありますが、少なくとも、現在、現時点で行われているわけですから、これは現行の憲法解釈の範囲内で実施されているものだと承知をしております。ですから、集団的自衛権との関係において問題が生じるものではないと考えています。

笠井委員 現行の憲法解釈の範囲内で、こういう形で敵地を攻撃するのにエスコートして自衛隊が訓練を一緒にやるということはできるんですか。

岸田国務大臣 ですから、実態については、部内誌の記載等についていろいろ議論があり、そして実際はどうなのかということについて今やりとりがあったと承知をしております。

 ですから、実際のところは私は承知をしていませんが、少なくとも、今この時点で訓練が行われているわけですから、現行の憲法解釈の範囲内で行われるべきものであるということ、これは当然のことだと思っています。

笠井委員 ですから、現行の解釈で言えばそういう訓練はやっていないのが当然だというふうになるわけですね、大臣で言えば。

岸田国務大臣 実際の訓練も現行の憲法解釈の範囲内で行われているものだと承知いたします。

笠井委員 それと違うことをやっているというのが私が今示した話であって、だから、それが間違っていると言うんだったら、防衛省、これは、そんなことはやっていなくて、こんな論文は間違っていて、事実と違うんだとはっきり言えばいいけれども、先ほど実体験と言ったんですから。そういうことをやっているんですよ。

 大臣、ノーと言えない話とさっき言われましたけれども、このノーと言えない話というのは、前だったら、つまり、今の憲法解釈でいけば、海外で戦闘行動はやらない、それから武力行使しないとあったから、だから、それをやってくれと言ったってはっきりと断れたんだけれども、今度は、その解釈を変更したら、できるじゃないかとなったときに本当に断れるかという問題なんです。そこに日米同盟が絡んでいる、そういう問題なんですよ。

 最後に一問だけ大臣に申し上げます。

 日本政府が憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使容認を打ち出したことについて、アメリカはどうかというと、米海軍のグリナート作戦部長が五月十九日にワシントンで講演して、集団的自衛権の行使が認められたら、将来的には、NATO加盟国と同様に、米軍と自衛隊もそういう形で共同作戦をやれることになるというようなことで期待をしているわけですね。日米がさまざまな任務で一つの部隊として共同運用できるようになる、こう言っているわけですね。

 アラスカでの米空軍との共同訓練も、OCA作戦などで米軍との共同運用を見越した先取りということになってくる。今度、集団的自衛権の行使容認ということになると、まさにそういう方向になってくるんだ、そういう問題についてはどうですか、最後。

岸田国務大臣 我が国が今行っている議論は、我が国の国民の命、暮らしを守るために安全保障の法的基盤がどうあるべきであるか、こういった議論を行っております。我が国が主体的に議論を進めるべきものであって、他国からどうこう言われるものではありません。

 そして、仮に集団的自衛権の行使を認めるということになったとしても、これはあくまでも、我が国の国民の命、暮らしを守るために必要なのかどうか、これを基準にしっかり考えていくべきものであると考えます。他国から強制されるものではないと考えます。

笠井委員 時間になりましたので終わりますが、国民の命と暮らしを守ると言うんだったら、そのためには戦争できる国に絶対してはならない、集団的自衛権の行使容認、その先取りさえ行って、海外で戦争する国への大転換を憲法解釈で強行することは許されないということを強く主張して、きょうは終わります。

鈴木委員長 この際、御報告いたします。

 安全保障委員会との連合審査会は、来る六月二日月曜日午前九時から開会することとなりましたので、御了承願います。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十三分散会


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