衆議院

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第2号 平成26年10月15日(水曜日)

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平成二十六年十月十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 江崎 鐵磨君

   理事 齋藤  健君 理事 武田 良太君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 長島 昭久君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      井上 貴博君    木原 誠二君

      小林 鷹之君    河野 太郎君

      島田 佳和君    鈴木 俊一君

      薗浦健太郎君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    中根 一幸君

      星野 剛士君    武藤 貴也君

      玉木雄一郎君    津村 啓介君

      若井 康彦君    青柳陽一郎君

      阪口 直人君    岡本 三成君

      宮沢 隆仁君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   内閣官房副長官      加藤 勝信君

   外務副大臣        城内  実君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   防衛副大臣        左藤  章君

   外務大臣政務官      薗浦健太郎君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   防衛大臣政務官      原田 憲治君

   防衛大臣政務官      石川 博崇君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武藤 義哉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   上月 豊久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 豊田 欣吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 秀生君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水越 英明君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       丸山 則夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       鈴木 康裕君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  新村 和哉君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 鈴木 敦夫君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十五日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     井上 貴博君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     河井 克行君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 この際、中根外務大臣政務官から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣政務官中根一幸君。

中根大臣政務官 外務大臣政務官を拝命いたしました中根一幸でございます。

 先日の委員会を公務により欠席させていただいたため、本日、御挨拶を申し上げます。皆様の御理解に感謝を申し上げます。

 日本の平和とさらなる繁栄のために、粉骨砕身取り組んでまいります。

 特に、担当であるアジア大洋州、南部アジア、アフリカ諸国との関係強化に努めてまいります。また、ODAの戦略的活用、地球規模の課題の解決にも真摯に取り組み、邦人保護に全力を尽くしてまいります。

 土屋委員長を初め、理事、委員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

土屋委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長上月豊久君、大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房審議官下川眞樹太君、大臣官房審議官豊田欣吾君、大臣官房参事官滝崎成樹君、大臣官房参事官鈴木秀生君、大臣官房参事官水嶋光一君、大臣官房参事官水越英明君、北米局長冨田浩司君、中東アフリカ局アフリカ部長丸山則夫君、内閣官房内閣審議官武藤義哉君、内閣審議官藤山雄治君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官鈴木康裕君、健康局長新村和哉君、防衛省防衛政策局次長鈴木敦夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ッ矢憲生君。

三ッ矢委員 自由民主党の三ッ矢でございます。

 安倍政権発足以来一年と十カ月がたとうとしております。地球儀を俯瞰する外交ということで、総理もこれまでにもう既に四十九カ国お回りになったということでございますが、外務大臣におかれましても、精力的にいろいろな国を訪問されて日本の外交推進のために日夜努力されていることに、心から敬意を表したいと思います。

 ただ、地球儀を俯瞰するといっても、私の目から見ますと、地球儀にちょっと穴があいているんじゃないかという気がしておりまして、特に近いところで大きな穴があいている。

 私も、先月まで副大臣を仰せつかっておりましたので、アジアを担当しておったんですが、副大臣の間に、結局、中国、韓国、まあ韓国は国際会議で参りましたけれども、バイの関係で訪れることはできませんでした。やめた途端に党の立場で中国へ行ってまいりまして、そのこと自体がどうも今の日中関係を象徴しているような気がして仕方がございません。

 世界じゅう見回してみましても、それなりの大国ですね、日本も中国も韓国も。こういう国がお互いにナショナリズムをぶつけ合って、言ってみれば、ちょっといがみ合っているというような感じの関係になっているところというのは、ほかに余りないと思います。これは非常に異常なことだと思っておりまして、これをやはり何とかしないといけない。政府も同じ思いでおられるんだとは思います。

 最近、大型の民間の経済訪中団とか、あるいは、この週末には逢沢議運委員長が北京を訪問されまして議会外交、それから、私自身も先月末に北京に参りまして政党間交流、こういう関係で話を進めていきたいと。これに関しては、日中間で異存はないということを確認してきたわけでございます。

 一方、政府はどうかといいますと、大臣もミャンマーあるいはニューヨークで王毅外交部長と会談をされておりますし、最近は、これは新聞報道ですが、伊原局長が非公式に北京を訪問されたというような記事も出ておりました。

 また、ASEMがちょうど今開かれておりますが、安倍総理が李克強首相とか、接触の機会があるのかどうか、それはわかりませんけれども、十一月に北京でAPECが開かれる際に日中首脳会談が行われる見通しがあるのかどうか、その点の見通しについてまずお伺いしたいということと、同時に、日中関係の改善に向けた決意と今後の取り組みについてお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、三ッ矢委員におかれましては、外務副大臣として、そして、外務副大臣退任後も党の立場からも、日中関係推進に向けて御努力をいただいておりますこと、心から敬意と感謝を申し上げたいと存じます。

 日中関係、隣国でありますので、さまざまな課題が生じます。しかし、こうした課題があるからこそ、条件をつけることなく対話を行うべきだということを絶えず訴えてまいりました。

 日本と中国は、言うまでもなく、世界第二と第三の経済大国であり、この二つの国の関係が安定することは、両国の国民にとって利益であるのみならず、地域あるいは国際社会全体にとっても、平和や安定や繁栄に影響する大変重要な二国間関係であると認識をしております。

 こうした二国間関係について、安倍総理は、この十一月の北京APECの際に首脳会談を実現したい、こういった意欲を示してきています。一方、中国側も、日中関係改善に向けて、以前より積極的になってきていると受けとめています。しかし、現在のところ、御指摘のAPECにおける首脳会談については何も決まっていない、こういった状況にあります。

 私としましては、引き続き両国において、御指摘のような議員外交あるいは民間外交も含めまして、さまざまなレベル、ルートを通じまして、静かな努力を続けていかなければならないと思っています。私自身も、八月そして九月、二カ月連続しまして、王毅外交部長と意見交換をさせていただきました。

 APECまで時間は限られておりますが、ぜひ、引き続きこうした努力を積み重ねることによって成果に結びつけたいと考えております。引き続き全力で取り組みたいと考えます。

三ッ矢委員 私が先月参りましたときに、党の中連部の方とお話をしたわけですが、その中で、APECでの首脳会談そのものについて、できる、できないということはもちろん明確にはしていないんですが、やったとしても過大評価すべきではないということを向こうが一言言ったんですね。私は逆に、過小評価すべきではないんじゃないかということを申し上げました。

 いずれにしても、首脳同士が会うということに私はそれなりの意味があると思っておりますし、また同時に、党や議員外交あるいは民間の外交、そういう周りの動き、これも非常に重要だというふうに思っておりまして、そういう意味で、首脳会談の成否のいかんにかかわらず、そうした動きを加速化させていく必要があるんじゃないかなというふうに思っております。

 特に実務的な面での協力、これは、海上連絡メカニズム等についての協議も既に開かれておりますし、また、月内にもう一度やろうということになっているやに聞いております。それ以外にも、私は、例えば環境問題とかエネルギーの問題とか、あるいは社会保障、医療といった面での日中間の協力、これは非常に重要だというふうに思っておりまして、ぜひそういう面でも、政府のみならず、いろいろなルート、チャンネルを通じて、日中間の交流を深めていくべきだというふうに考えております。

 今少し言及いたしました、先月、日中高級事務レベル海洋協議が久々に開かれたわけでございますが、今後の見通しについて少しお伺いしたいと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のありました日中高級事務レベル海洋協議でございますが、九月の二十三日及び二十四日、中国の山東省青島市におきまして第二回会合が開催されまして、日中両国の海洋関係機関がともに関心を有する問題について意見交換を行ったところでございます。

 今回の会議は、平成二十四年五月に第一回会議をやって以来、二年ぶりに開催されたものでございます。

 今回の会合の中では、防衛当局間の海上連絡メカニズムの早期運用開始に向けて、協議を再開することにつきまして原則一致したところでございます。それ以外にも、双方の海洋関連機関の相互理解の増進、協力の強化及び意思疎通などの危機管理といった観点から、有意義であったのではないかというふうに考えております。また、今回の協議では、本年中または来年早期に次回の海洋協議を日本で開催するということについても一致したところでございます。

 先ほど御指摘のありました防衛当局間の海上連絡メカニズムにつきましても、中国側と必要な調整を早期に進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

三ッ矢委員 不測の事態に備えて、そうした両国間のパイプといいますかチャンネル、即座に対応できるようなチャンネルをつくっておくというのは非常に重要だというふうに考えます。ぜひ、できるだけ早い機会に、このメカニズムをしっかりと運用できるようにしていただきたいなというふうに思います。

 ちょっと話はかわりますが、同じ中国の関係なんですが、香港の情勢ですね。これは、一時鎮静化したかと思ったら、また大勢の方がデモに参加されているようでございます。これは、今後の事態の進展によっては、香港の中国化なのか、あるいは中国の香港化なのか、その始まりになってくる可能性があるのかもしれません。

 この点について、現在及び今後の情勢、それからまた中国の今後の体制というんでしょうか、その辺の影響についてどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 香港は、アジアの一大金融センターといたしまして、中国だけでなく、アジア地域全体の繁栄と発展に重要な役割を果たしてきているというふうに認識しております。

 我が国といたしましては、香港が引き続き一国二制度に基づく自由で開かれた体制のもとで民主的に発展し、我が国と緊密な関係をさらに維持発展させていくことを期待しているところでございます。

 また、我が国は、国際社会の普遍的価値である、自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要であるとの立場を一貫して述べてきておりまして、当然のことながら、香港についてもこの立場は変わりません。

 このような基本的立場に基づきまして、我が国といたしましては、現在の事態が平和裏に収束することを望んでいるところでございまして、香港における状況の推移を強い関心を持って注視しているところでございます。

三ッ矢委員 そのとおりだと思うんですけれども、これは事と次第によっては、香港と中国との関係にとどまらず、恐らく台湾と中国との関係ですとか、あるいは東アジア全体に影響が出てくる可能性が十分あると思うんですね。よもやと思いますけれども、ぜひ、どういうことが起こっても、どういう事態になっても日本政府としてしっかりとした対応ができるように、準備をしておいていただきたいなというふうに思います。

 民主化との絡みで、話が今度は韓国に移りますが、産経新聞のソウル支局長が、韓国の検察当局により名誉毀損で在宅起訴されました。昨日、さらにその出国禁止を三カ月延長する申請をすると。恐らく、きょうじゅうに結果というか結論が出てくるんだと思います。

 私の目から見ますと、およそ民主国家らしからぬ行動だというふうに思われますが、本件が今後の日韓関係に与える影響はどういうものなのか、また、本件を受けて、政府として今後の日韓関係をどのように進めていくつもりなのか、お考えを伺いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の件につきましては、以前から、報道の自由やあるいは日韓関係に影響を与えるという観点から、慎重な対応を韓国側に求めてまいりました。

 しかし、今般、産経新聞前ソウル支局長が起訴されたことは、報道の自由あるいは日韓関係の観点から極めて遺憾であり、そして、この事態を深く憂慮している次第です。そして、こうした考え方、立場につきましては、韓国側にしっかりと伝えておりますし、これからもしっかり伝えていかなければならないと考えています。

 そして、今後の日韓関係ということについて御質問いただきましたが、こうした本件も含めて、日本と韓国の間においてはさまざまな難しい問題が存在いたします。しかし、こうした問題があるからこそ、やはり日本と韓国は、しっかりと対話をし、そして意思疎通を図らなければならないと考えます。

 そして、それはさまざまなレベル、分野において行われなければなりませんが、何よりも、高い政治のレベルでの対話が求められると強く感じております。ぜひ、大局的な観点から、未来志向で日韓の二国間関係を進めていきたいと考えておりますし、来年は日韓国交正常化五十周年という大きな節目の年を迎えます。この節目の年をよい雰囲気で迎えられるように我々は努力をしなければならないと考えます。

 我々のこうした対話の呼びかけにつきまして、ぜひ韓国側にもしっかりと応じていただきたいと考えています。

三ッ矢委員 中国も韓国も同じだと思うんですが、日本側としては白紙で首脳会談とかに臨みたいと言っているんですが、先方から言わせると、どうも落書きしたのは日本だ、こういうようなことを言っておりまして、白紙じゃないんだと言っているんです。

 いずれにしましても、この件については、私は非常に、韓国の外務省のスポークスマンが、どうも、国内の司法手続の話なんだから余計な口を出すなというようなことを言ったようでありますけれども、事日本人の記者で、しかも言論の自由にもかかわる話でございますので、これはしっかりと外務省も対応していただきたいなというふうに思います。

 最後に、日朝関係についてお伺いしたいと思います。

 北朝鮮による拉致問題に関しまして、先般の瀋陽における会合では、特別調査委員会による調査の現状について十分な説明が得られなかったということのようでありますが、政府として、拉致問題の解決に全力を尽くすという観点から、調査を前に進めるためにも、政府関係者を平壌に派遣して調査の現状について聴取をしようとしておるのでしょうか。

 政府関係者の平壌派遣に向けた現在の検討状況をお伺いしたいと思いますが、これは、行かなければこの交渉は一時的にせよストップしてしまうと思いますし、行ってその調査内容の説明を受けて、ではその後どうするのかということは当然あるわけでありまして、これをそのまま持ち帰って検討するのか、あるいはその報告をするのか。

 なかなか北朝鮮側もしたたかでございますので、うかうかと術中にはまらないように十分注意をしてやっていただきたいというふうに思いますが、今お伺いした点について、御答弁お願いします。

中根大臣政務官 拉致問題につきましては、私がここで言うまでもなく、安倍政権の最重要課題でございます。政府としては、今後とも、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明及び拉致実行犯の引き渡しに向けて、対話と圧力、行動対行動の原則を貫き、全力を尽くす考えでおります。

 先般、二十九日に行われました日朝外交当局間の会合において、北朝鮮側から、先ほど三ッ矢先生がお話ありましたように、初期段階であり、具体的な調査結果を通報できる段階にはない、また、調査の詳細な現状について、平壌に来て特別調査委員会のメンバーに直接会って話を聞いてほしいとの説明がございました。

 政府としては、北朝鮮側の説明を踏まえ、調査の現状や結果を把握すべく、引き続き最善を尽くす考えでおります。また、北朝鮮に対して、迅速に調査を行い、速やかに、かつ正直に、この正直にというのは何度も安倍総理もおっしゃっておりますが、結果を日本に通報するよう強く求めてまいります。

 平壌に政府関係者を派遣するか否かということでございますが、今後の対応については、拉致被害者の御家族を初めとする関係各方面の御意見、これは与野党の先生方も含めた関係各方面の御意見にしっかりと耳を傾けながら、調査を前に進める観点から政府全体として総合的に検討してまいります。

三ッ矢委員 今般の日朝の協議につきましては、非常に世間の期待値も高かったんだと思うんですね。今後、結果がどういうことで出てくるのか、私もわかりませんけれども、先ほど申し上げましたように非常にしたたかな国でございますので、ぜひ政府側もしたたかにやっていただきたいなというふうに思います。

 ただ、これはちょっと心配しておりますのは、先ほど申し上げましたように、もし、調査団という言葉を使うのが適当かどうかわかりませんが、使節が行った場合に、調査の結果について向こうの委員会から話を聞いて、それをどうしていくのか。そこまで含めて検討されているとは思いますけれども、聞いてきたけれども報告しないというわけにもいかないでしょうし、かといって、持ち帰ってきて、何も言わないで検討だけしますというのもなかなか難しいと思いますので、その辺いろいろ難しい点はあろうかと思いますけれども、しっかりと対応していただきたいと思います。

 終わります。

土屋委員長 次に、木原誠二君。

木原(誠)委員 おはようございます。自民党の木原誠二でございます。

 一年ぶりの質問になりますので少々緊張しておりますが、よろしくお願いいたしたいと思います。

 時間が二十分と限られておりますので、きょうは主に二点に集中して質問させていただきたいと思っております。一つはODA、もう一点はいわゆる対外発信の強化ということについてお伺いできればというふうに思っております。

 まず、ODAについてでありますが、当委員会でも、この一年近くにわたりまして、とりわけ維新の小熊委員から累次にわたりましてODAについては議論があり、議論が大分深まってきたかなというふうに思っております。たしか小熊委員からは、選択と集中、そして拡大というフレーズをいただいておりますので、別に維新の党と歩みを一緒にするわけではないかもしれませんが、私もそのフレーズに従って少し質問させていただきたい、こう思っております。

 皆さん御案内のとおり、本年はODA供与開始から六十周年という節目の年であります。その節目の年に、大臣の非常に強いリーダーシップをいただいて、いわばODAの憲法とも言えるODA大綱の見直しについて、本年六月に既に有識者の報告書が出されているわけであります。

 この中で、私は、なかなか今回の大綱、大臣の御指導もいただいて、踏み込んだ内容があるなと思っているところが幾つかありますが、その中でもとりわけ、こういう記述があります。「ODAの重要性が増す中、我が国のODA予算について見れば、一九九七年以降減少し続けていることは深刻な問題として捉える必要がある。」ということが記述をされております。

 財務省はこういう記述はなかなか認めないものでありますが、今回、大臣も蛮勇を振るってこういう記述をしていただいた、まあ、有識者の報告書ではありますが、書いていただいているというところであります。

 この報告書を踏まえて、来年度予算の概算要求を見させていただきますと、ODAについては、前年度予算比九・二%増、金額でいいますと約四百億円の増。小熊委員が倍増とおっしゃっていましたから、なかなかそこまでは当然いかないわけでありますが、しかし、一割増というのは、非常に大胆な概算要求になっているかなと私は感じております。

 まず大臣に、総論として、ODA予算の増額に向けて、今後、外務省としてどういうふうに取り組んでいくか、所感を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、木原委員には、外務大臣政務官時代、このODAにつきましては、特に活用あるいは見直しについて精力的に取り組んでいただきました。感謝を申し上げます。

 ODAは、言うまでもなく、我が国の外交にとりまして重要なツールであります。そして、ODAは、国際社会の変化の中で、その役割、そして活用のされ方も変化をしております。

 前回のODA大綱見直しから十年以上がたち、時代の変化、そして国際社会の変化を受けて、ODAのありようについて見直していこう、こういった努力をしているわけでありますが、その中にありまして、もちろん、ODAのありよう、そして中身についてもしっかり見直さなければなりませんが、御指摘のように、ODAの量につきましても拡大をしっかり考えていかなければならない。

 我が国の外交にとって大切なツールでありますODAは、質においても、あるいは量においてもしっかりと見直しをし、そしてあるべき姿を追求していかなければいけない、こういった考えに基づいて、引き続きしっかり努力をしていきたいと考えております。

木原(誠)委員 大臣、ありがとうございました。

 少し個別具体的に、具体的というか個別論でお話を伺いたいと思います。

 今回の概算要求を拝見いたしますと、四つの柱をODAについては立てていただいております。普遍的価値の共有、それから成長のための戦略的ODAの充実、人間の安全保障、そして戦略的パートナーシップの構築、四つの柱を立てていただいておりまして、その四つの柱のうちの最後の戦略的パートナーシップの強化という中で、ODA卒業国に対する革新的スキームによる支援というものが入っております。さらっと書いてあるようで、私は結構重要なことだというふうに感じております。

 総理も、七月にカリブを訪問された際に、こんなことをおっしゃっております。いわゆるCARICOM諸国が抱える小島嶼国特有の脆弱性に鑑み、一人当たりの所得水準とは異なる観点から支援が重要と認識している、こういうふうに述べられております。

 私は、カリブ、CARICOMは非常に重要だと思いますが、それにとどまらず、ブラジル、トルコといった日本企業にとっても重要な投資先である新興国、こういった中進国以上の国についても、やはり単に一人当たりの所得水準にとらわれるのではなくて、もう少し広い意味で、外交的な観点から、円借款あるいは無償資金、グラント、あるいは技術協力を有機的に組み合わせて、しっかり援助する、そういう体制が必要だ、こう考えておりますが、御答弁をいただければと思います。

岸田国務大臣 御指摘のようなブラジルあるいはトルコといった新興国につきましても、開発の発展が見られる一方で、持続的経済成長を妨げる課題、あるいは地球規模課題を初めとするさまざまな開発課題を抱えております。

 よって、我が国としまして、これまでも、外交的観点から、相手国の置かれた状況等を個別具体的に検討して、効果的な支援を実施しなければならない、こういった努力を続けてまいりました。

 今後とも、御指摘のように、一人当たりの所得水準だけにとらわれることなく、各国の開発ニーズの実態や負担能力に応じて、ODAの各種スキームをしっかり活用しなければならないと考えます。

 あわせて、ODAのみならず非ODA手法、JBICのローン等、こういったODA以外の手法につきましても検討し、ODAそして非ODA、それぞれのツールを連携させながら必要な支援を考えていかなければいけない、具体的な対象国の実情にしっかり合った支援を考えていく、こういった方針で取り組んでいかなければならないと考えます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 私、申し上げたように、これは非常にやはり大切だというふうに思っております。

 今、私の手元に各国の所得水準のリストがございます。これを見ると、DACリスト掲載国、つまりODAを供与できなくなる国々の一歩手前の国、主に中進国から上の枠に入る国々でありますが、アルゼンチン、トルコ、ブラジル、メキシコ、マレーシア、まさに我々にとってこれからより重要になってくる国々がそこに掲載されているわけであります。

 今大臣の方から、JBIC等、非ODA資金の活用もというお話がございました。

 それは非常に重要だというふうに思いますが、私は、外交当局としても、この非ODAだけれども開発協力の予算というものの枠をやはり一定程度持っておくということが、これからの外交には極めて重要だ、こう認識をしております。そのことが、結果的には財務省あるいはJBICの牙城を侵すことにもなりますから、面倒くさい省際問題にはなる、こう認識をいたしますが、しかし、やはり一歩踏み込んで、そこはぜひ対応していただく、そのことが革新的スキームということの意味だというふうに思っております。

 これは大臣にお答えいただくのはちょっとまだ時期尚早かなというふうに思いますので、きょうは事務方にもお越しいただいていますから、その点について財務省当局とどんな議論、予算折衝中ですから細かくはお話しいただけないかなというふうに思いますが、感触を伺えればというふうに思います。

 結構です。それでは、これは私の意見として申し上げたということで、お許しいただきたいというふうに思います。

 私が非ODAの開発協力予算というのに非常にこだわりを持つ最大の理由は、先ほどもいろいろ議論がありましたが、中国の存在でございます。

 まず、これは通告していますのでお答えいただけるかというふうに思いますが、事務的に伺いたいと思います。中国が実施をする、中国によるODAの現状というものをお答えいただければと思います。

豊田政府参考人 お答えいたします。

 中国政府が本年公表いたしました対外援助白書によれば、二〇一〇年から二〇一二年末までの三年間の中国の援助実施額、累計で八百九十三・四億元、日本円に換算いたしまして約一兆七百二十一億円とされております。

 ただし、同白書においては、対象国別の実績、具体的案件の概要等の詳細な情報は明らかにされておらず、不明な点が多いことも事実でございます。

 なお、同国の援助実施体制につきましては、対外援助の主管部門は商務部でございまして、無償援助などを担当しております。また、借款の供与等につきましては、輸出入銀行が行っているということでございます。

木原(誠)委員 残念ながら、国別の供与額はよくわからない、総額も何から何が含まれているか実はよくわからない、実施体制もどこからどこまでがいわゆる援助実施機関なのかも実はよくわからないというのが中国の現状であります。

 この後、対外発信のことをお伺いしたいと思っておりますが、対外発信でも、これは非常に、私どもは中国にややおくれている面もある。軍事の増強もどんどん進んでいる。しかし、私自身は、同じぐらい深刻なのは、このODA、資金供与という面で中国と日本の間にかなりの差が出てきている。

 それで、その最大の要因は、やはり、中国が世界第二位の経済大国になったにもかかわらず、残念ながら、いわゆるOECDのDACという開発援助資金を出す国際的ルールに従っていない。したがって、我々でいうと、タイドでするのかアンタイドでするのか、さまざまな条件を付すのか、民主主義あるいはガバナンスの向上といった条件を付すのか、あるいはいわゆる譲許性、譲許率についても大分はっきりしないところがございます。

 私は、そろそろ、やはりこの中国について、他国のことではありますけれども、しかし、かなりの金額の援助供与国になっている以上、DACのルールにある程度入ってきていただく努力を日本としてもするべきではないか、そういう対話もぜひこれから始めていくべきではないか、こう思っておりますが、大臣の所見をいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、中国を含む新興ドナー国が開発途上国の貧困削減ですとか経済社会開発を支援する、このこと自体は望ましいことではあるとは思います。しかしながら、委員御指摘のように、やはりDACを初めとする国際的なルール、それから国際的な取り組みや基準、こういったものと整合的に援助が行われるべきであると考えます。

 中国を含む新興ドナー国も参加する国際的な開発協力の枠組みとしては、国連ですとか、世銀ですとか、あるいはG20、こういったものがあります。さらには、現時点では中国は参加してはおりませんが、他の南南協力の実施国や国際NGO、民間セクターを含む包摂的な開発協力の枠組みとして、効果的な開発協力に関するグローバル・パートナーシップがあります。これはことし四月に第一回の会合が行われましたが、その際に木原委員御自身が大臣政務官として御出席をされました。こうした枠組みも存在いたします。

 こうした枠組みを活用しながら、中国を含む新興国が、国際的な取り組みや基準、こういったものと整合的な形で援助を行うよう、我が国としましても粘り強く働きかけていかなければならないと考えます。

 御指摘の点、大変重要なポイントだと認識をいたします。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 あの四月の会議、残念ながら中国は結局参加をしなかったというような現実もございます。ぜひ取り組みをまた強化していただければと思いますし、内にあっては、繰り返しになりますけれども、中国と伍していく意味でも、非ODAの外務省としての開発協力予算というものは、ぜひこの予算折衝の中で何らかの芽出しをできれば大変ありがたいな、このように思っております。

 ちょっとODAを離れまして、いわゆる戦略的な対外発信ということについてお伺いをしたいというふうに思います。

 率直なところ、中国、韓国を初め近隣諸国が情報発信を極めて強化しているという中で、ややもすると、日本の対外発信はおくれをとってきたというのが現実ではないかというふうに思います。日本の正しい姿勢や考え方を国際社会に理解してもらうという意味でも対外発信の強化が急務だ、こう考えますが、まず大臣から総論的に、外務省として今後どう取り組んでいくか、お伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国として、我が国の立場あるいは考え方につきまして、国際社会の正しい理解を得るべく対外発信を強化していくこと、これは大変重要なことであると認識をいたします。

 外務省としましても、海外で誤解を生じるような報道等があった際には、在外公館から迅速に反論投稿を行う、こういった対応を行うなど、対外発信の努力を続けているわけですが、我が国の立場や政策を発信する際、適切なメッセージを構築するとともに、訴求対象あるいは発信のタイミングなどにも考慮しつつ、紙媒体あるいは電子媒体の使用、さらには写真や動画の活用といった発信手段、あるいは発信言語、こういったものも工夫しながら、戦略的に広報を展開していく必要があると考えております。

 来年度の予算の概算要求につきましては、外務省は、新たに戦略的対外発信予算としまして、日本の正しい姿の発信、あるいは日本の多様な魅力のさらなる発信、さらには親日派、知日派の育成、こういったものを含む約五百億円の増加要求を行っているところであります。ぜひ、従来の取り組みと合わせて、効果的な国際広報及び多様な魅力の発信をしっかり行っていきたいと思っております。

 私自身も、大臣としてしっかりと発信をしていかなければならないと思っていますが、在外公館の発信力強化等につきましては、やはり大使の発信力が大変重要だと考えています。大使、大使館におきまして、コンサルタントあるいはスピーチライター、こういったものをしっかり活用する、あるいは在外公館におきましてもホームページをしっかり活用するなど、具体的に、積極的な、そして効果的な対外発信に努めていく、こういった努力をしっかり続けていきたい、このように考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 ちょっと一点だけ具体的にお伺いをしたい。それはジャパン・ハウスということでございます。今回の概算要求の中でも、ジャパン・ハウスということの要求が出されていると承知をしております。中国の孔子学院、イギリスのブリティッシュカウンシル、フランスのアテネ・フランセ、いろいろあります。

 薗浦政務官が非常にこの点はさまざま御努力をいただいているというふうに思いますが、私は、これが単に大使館あるいはジェトロと同じような、焼き直しになってもいけないし、屋上屋を重ねるようなものになってもいけない、こう思っております。極めていい設計をしないと、結果的に無駄に終わるということがあろうかというふうに思いますが、今の政務官の御認識、取り組みについて御答弁いただきたいと思います。

薗浦大臣政務官 ジャパン・ハウスについて御質問をいただきました。

 まさに今、コンセプトづくりを含めて、中で詳細な検討をしておるところでございますけれども、このジャパン・ハウスについては、そもそも自民党の外交再生戦略会議から、対外的、戦略的な対外発信の強化が必要だということの御提言をいただきました。その提言も踏まえて、世界の主要都市に、広報、文化、それから外交の拠点となり得べきジャパン・ハウスを整備するということで、今、予算要求を行っているところであります。

 このジャパン・ハウスにつきましては、我が国の正しい姿の発信、それから我が国の多様な魅力の発信、加えて親日派、知日派の育成の実現を目指しておりまして、これについては、現地の意見、それから民間の知見を最大限生かしながら、いわゆる永田町、霞が関だけで考えるものではないという姿を今準備しておりますので、委員におかれましても、ぜひとも御支援をいただければと思います。

 以上であります。

木原(誠)委員 ぜひいろいろやっていただきたいと思いますが、やはり効果をどうやってはかっていくか、成果はどう出たか、どう見るかということも大変重要だというふうに思いますので、その点も踏まえてぜひ強化をしていただければと思います。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、岡本三成君。

岡本委員 おはようございます。公明党の岡本三成です。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、大臣、九月三日の内閣改造で外務大臣に再任をされましたことを改めてお祝い申し上げます。

 毎年毎年言われてきたことですけれども、安倍政権になる前は、外務大臣や財務大臣のような国際的な関係を重視しなければいけない大臣がころころころころかわってしまっていたので、そのこと自体が国益を阻害しているというようなことがよく言われておりました。

 私も、議員になる前、海外に長く住んでおりまして、例えばアメリカの国務長官が記者会見で他国との状況を話すときに、イギリスの外務大臣の何々さんと最近こういう話をしましてですとか、アジアにおいても、ある国の外務大臣の固有名詞を挙げて、こういう話題を話しましたということをよく発言されていたんですが、日本においては、日本の外務大臣と話をしましたということで、お名前が出ることというのはほとんど聞いたことがありません。

 とりもなおさず、かわり過ぎてしまっていて相手の顔と名前が一致しないようなことが多かったんだと思うんですけれども、その意味におきまして、少なくとも安倍政権が持続する間は、次もその次も、ずっと岸田外務大臣でいっていただきたいなということもお願いいたしまして、期待を込めてきょうは質問させていただきたいと思います。

 きょうは、大きく分けまして三点、時間の都合で優先順位を決めまして、ちょっと順番を変えさせていただきますが、初めに国連外交について、二点目にガイドラインの中間報告について、三点目に、もし時間があれば、イスラム国について質問させていただきたいと思います。

 まず、国連外交についてですが、安倍政権が掲げております積極的平和主義、私自身は大変すばらしい言葉だと思っているんですけれども、残念ながら、一部の諸外国には、軍国主義への回帰ではないかというような間違った捉え方、誤解をされているような国もあるように思っています。

 その意味で、私自身の期待としては、積極的平和主義というのは国連中心主義なんだというようなところに重きを置いたような発言、活動をしていただきたいという期待も込めまして、国連外交の質問をさせていただきます。

 明年、国連の創設七十周年を迎えまして、私たち日本としては、大切なイベントといたしまして、安保理の非常任理事国の選挙というものが目前に迫っているわけですが、アジア枠の中でバングラデシュが立候補を辞退されたということもあって、日本が非常任理事国にまた選ばれる可能性は非常に高くなってきたというふうに聞いておりまして、そのことでの外交関係者の方々の御努力は大変すばらしいなと敬意を表したいと思いますけれども、今まで、もう既に十回非常任理事国に選ばれております。これはブラジルとともにトップでありまして、今度選ばれると十一回、単独トップに躍り出るわけです。

 しかしながら、非常任理事国として日本がやってきた役割が、適切に十分な情報量で国民の皆様に御説明できていないところがあるのではないかというふうに思います。

 その意味で、既にもう二十年間非常任理事国としての経験があるわけですから、これまで非常任理事国として日本がやってきた実績は何なのかということを、初めに大臣の所見として伺いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国は、今日まで十回、計二十年間にわたりまして国連の安保理非常任理事国を務めてまいりました。国際社会の平和や安全、安定にしっかりと取り組み、幅広い分野で貢献してきたと考えております。

 例を挙げますと、これは数限りないわけですが、例えば二〇〇九年に北朝鮮が核実験を行った際には、日本は安保理の議論を主導し、より強い内容を含む決議の採択を実現いたしました。また、二〇〇九年から一〇年にかけての任期におきましては、イラン制裁委員会、PKO作業部会、あるいは文書手続作業部会、この三つの下部委員会の議長を務めました。

 こうしたことを初め、さまざまな課題におきまして、国際社会の平和と安全に我が国としましては積極的に貢献をしてまいりました。このことについては国際社会から高く評価されていると自負をしているところです。

 ぜひ、来年の非常任理事国選挙、確実に当選を果たして、より一層積極的に国際社会の平和やあるいは安全にしっかりと貢献をしていきたいと考えております。

岡本委員 非常任理事国に籍を持つことで、例えば情報量が圧倒的に違うですとか、そのインナーサークルにいることのメリットというのはよく理解をしておりますけれども、ただ、非常任理事国にいま一度立候補して当選を目指しているわけですから、次、もし選ばれることがあればこういうことをやっていきたいという具体的なビジョンをお示しいただくことも重要だというふうに思っております。

 仮に、次、選任をされることがあったら具体的にどういうことを目指して、どういう行動をしたいかということをお伺いしたいのと、加えまして、安保理改革もちょっととまっているような状況にあるわけですけれども、大変重要なポイントでして、私自身、安保理改革はなされるべきだと思っておりますので、いろいろなかかわっている国の思惑があることも十分存じ上げておりますけれども、安保理改革に対してどういう取り組みをされるかという所見をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、我が国としましては、安保理の非常任理事国に当選いたしました暁には、積極的平和主義の理念を実践し、国際社会の平和と安全にしっかり貢献していきたいと考えています。

 そして、今訴えておりますのは、五つの例を挙げて、当選の暁には貢献したい、こういったことを申し上げております。

 一つ目としましては、PKO及び国連の平和構築への取り組みに対する積極的貢献、二つ目としては、全ての女性が輝く社会の実現、三つ目としましては、唯一の戦争被爆国としての核兵器のない世界の追求、そして四つ目として、MDGs達成に向けた取り組み強化と、ポスト二〇一五年開発目標の策定を含む開発問題の解決により一層力を入れていくということ、そして五つ目として、国連活動の実効性と効率性をさらに高めるための安保理改革を推進していくということ、この五つを掲げているところです。

 御指摘の安保理改革につきましても、非常任理事国当選の暁にはぜひ貢献したい具体的な取り組みとして挙げさせていただいているところですが、安保理改革につきましては、国連は、来年、発足してから七十年を迎えます。七十年間、安保理の常任理事国を初めとする仕組みは全く変わっておりません。七十年間、国際社会は大きく変化したにもかかわらず、国連の基本的なこうした枠組みは変わっていない、こういったことを勘案して、ぜひ国連も二十一世紀にふさわしい形を追求しなければならない、こういった考え方に基づいて安保理改革にしっかり取り組んでいきたいと考えております。

 先月、九月ですが、第六十九回国連総会の際にも、G4、四カ国が集まりまして閣僚級会合を開きました。ブラジル、インド、ドイツ、そして日本、四カ国で閣僚会合を開きまして、国連創設七十周年の明年に向けてぜひしっかりと取り組みを強化していこう、これを確認したわけですが、G4を初めアフリカ諸国あるいはCARICOM諸国、こうした安保理改革の必要性について志を同じくする国々とぜひ協力しながら、改革実現に向けて我が国としましてもリーダーシップを発揮していきたいと考えております。

岡本委員 今大臣がおっしゃった非常任理事国入りを目指して世界に訴えている五つのポイントというのは、唯一の原爆被爆国であり、平和憲法九条を持つ日本であるからこそ訴える価値があるポイントだと思いますので、ぜひその姿勢を貫いていただければと思います。

 続きまして、国連に対する分担金の件についてお伺いをしたいんですけれども、お金そのものではなくて、大変な金額の分担金を毎年拠出しているわけです。私自身、その金額というのは適切だと思っておりますし、値打ちのある支出だと思っていますけれども、その分担金の原資が国民の皆さんの税金である以上、国連の中における日本の活動というのをもっとわかりやすく国民の皆さんに御報告、広報する必要があるのではないかというふうにずっと思っていました。

 この件については、昨年の十一月とことしの四月にこの外務委員会で大臣に御質問申し上げて、大臣からは、より具体的に広報が行えるような取り組みをしていきたいというふうな御答弁をいただきましたけれども、具体的に、国連活動を広報するような、例えば小冊子の作成であったりですとか外務省のホームページの改善であったりということをお願いしたわけですけれども、その現状がどのようになっているかということに関しまして御答弁をいただければと思います。

岸田国務大臣 岡本委員におかれましては、これまでも、国連外交あるいは我が国の国連活動に関しまして、国民の理解を得るべく対外情報発信を強化していくことが重要であるという御指摘をたびたびいただいてまいりました。こういった視点は大変重要だと認識をしております。

 岡本委員の御指摘を受け、今日までの取り組みとしまして、既に、外務省ホームページの、我が国の国連外交の取り組みに関する情報を集約あるいは充実させて、より見やすくするため、大幅に改定をしたという取り組みを行っております。

 そしてさらに、それに加えまして、これは十一月末を完成目標としておりますが、我が国の国連外交に関する取り組みについて広く報告、紹介をするための小冊子、今、作成準備を進めているところであります。

 ぜひ、小冊子をつくりまして、委員から御指摘ありました、国連における議論の中で我が国政府の立場をしかるべく発信している事実、あるいは国際機関で活躍する日本人職員、こういったものについてもしっかりと紹介する予定にしております。

 こういったツールを活用しまして、しっかりと情報発信を行っていきたいと考えます。

岡本委員 大臣のリーダーシップで大変な御尽力、前進をいただけたことを感謝申し上げたいと思います。

 ホームページに関しまして、私自身、昨日チェックをしてまいりまして、以前は、必要な情報に行くために十回ぐらいクリックしなきゃいけなかったんですけれども、今は、国連外交というバナーが外務省のトップページに来ておりまして、二、三回クリックすると行きたい情報に行けるという状況に大幅に改善をしておりまして、感謝申し上げたいと思います。

 また、十一月を目途に作成されようとしていらっしゃる小冊子についても、大変すばらしい内容で、一万部以上作成されるというふうなお話も伺いましたけれども、ぜひ、各地の小学校、中学校、高校にも、図書館に配付をしていただいて、今日本が目標としています国際公務員の数をふやしていくということに、小さいときからそのようなモチベーションを持てるような環境をつくっていただければと思います。

 ちょっと事務方の方に伺いましたら、一万数千部つくるための資金が日本円で二百万円ちょっとだと伺いまして、非常にコストパフォーマンスのいい活動ではないかなというふうに思っているんですね。

 その意味で、ことし大幅な前進をしていただく御予定なわけですけれども、例えば外交青書でも、その中で国連のことが書いてあることなんてもう本当に少しなんですね。ですから、このような小冊子を、ことしだけではなくて来年以降も継続的に作成をいただけるようなお願いをしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 ぜひ、この取り組みを重視して、継続していきたいと存じます。

 来年以降等につきましては、予算要求等の関係もありますので、今はっきり申し上げることはできないのかもしれませんが、いずれにしましても、継続するべくしっかり努力をしていきたいと存じます。そして、継続するのとあわせて、これを活用するべくしっかりと工夫をしたいと存じます。

 学校への配付等の御指摘もいただきましたが、可能な限り、さまざまな関係箇所に配付するということも考えたいと思っておりますし、何よりも、この小冊子につきましては、外務省のホームページに全文掲載するなど、しっかりとした活用を工夫していきたいと考えます。

岡本委員 続きまして、十月八日に発表されましたガイドラインの中間報告について何点か質問させてください。

 時間の関係で、二問に絞らせていただきたいと思います。

 まず一点目は、いわゆる周辺事態についてですけれども、今回、その文字が削除されております。

 もともと、周辺事態という概念に地理的な条件はなかったというふうな一貫した政府の答弁も理解をしていますけれども、周辺事態法の議論のときには、当時の小渕総理大臣は、周辺事態が起こる地域には限界があり、中東やインド洋で起こることは想定されないというふうに国会で答弁していらっしゃいますので、実は、皆さんの根底的な認識の中に、やはり周辺事態というのは地理的な制約はあるんだというふうな共通認識でここまで来たように私自身は理解をしております。

 その意味で、今回、言葉自体を削除したことにどういう意図があるのか、そして、最終的な報告書をつくる上で、どういうふうな内容にしていきたいのかということを御答弁いただければと思います。

岸田国務大臣 まず、今回の中間報告の中には周辺事態という用語を用いていないわけですが、しかし、これはあくまでも中間報告であり、このガイドライン見直しについては今後も議論が進みます。周辺事態という概念につきましても、今現在、最終的にこの扱いが決定されたということではない、これはまず申し上げたいと存じます。

 そして、このガイドラインの見直しにつきましては、まず一つは、我が国の領域あるいは国民を守るということ、そして、及び国際協調主義に基づく積極的平和主義に対応する、こういったものであると認識をしております。

 このガイドラインの見直し、最終的な形については予断をすることは控えますが、見直し後のガイドラインにおきましても、現行のガイドライン同様、日米両国の役割、任務や協力、調整のあり方については、一般的な枠組み及び政策的な方向性を示すという性格に変更はないと考えています。

 また、今回の中間報告の第三章の中にも明記してありますが、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは変更されない、こうした基本的な前提及び考え方に従う、こうしたことを明記しているわけですが、この点につきましても従来と変更はないと認識をしております。

岡本委員 続きまして、ガイドラインが最終決定されるための意思決定のプロセス、ガバナンス、誰がどういうふうに承認をして決めているのかということについて確認をさせていただきたいんです。

 もともと、ガイドラインの改定自体が2プラス2で合意をされておりますので、アメリカとの関係上、外務大臣並びに防衛大臣の指揮のもと、最終的には官邸で調整するということで、外交上はいいと思うんですけれども、国内におきましては、実際にこのガイドラインの中身を実行しようというふうに考えたときに、例えば尖閣地域の状況を考えても、海保もかかわってまいりますし、警察もかかわってまいりますし、さまざまな方々がかかわってまいりますので、その意味で、昨年設置されたNSCの中でしっかりと議論をされて意思決定をしていくというプロセスが重要ではないかなというふうに考えております。

 一方で、この国家安全保障会議の開催状況をホームページで見てみますと、ことしの九月十日に四大臣会合、そして十月三日に四大臣会合、それぞれ、トピックの一つに日米安全保障協力等についてということがあるだけで、今回のガイドラインの中身を議論していくためにNSCの会議が開かれたというふうな体裁にはなっておりません。

 このようなことの内容を議論して日本の安全保障全体を議論していくためにNSCというのはつくられたわけですから、そのこと自体を目的として、さまざまな大臣が自分の守備範囲の観点から議論をして、最終的に合意をして、責任の所在も明確にしていくということが重要だと思いますので、少なくとも最終の報告書、最終のガイドラインの改定の中身ができるまでのプロセスの中では、九大臣会合をしっかりと開いて、そこに権限と責任を明確に与えていくということが重要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 日米防衛協力のためのガイドラインの見直しに関する中間報告の内容につきましては、今御指摘ございましたけれども、その公表に先立つ九月十日、それから十月三日に開催されました国家安全保障会議四大臣会合において取り上げられまして、関係閣僚による議論が行われたところでございます。

 引き続き、七月一日の閣議決定を踏まえた安全保障法制の整備との整合性にも十分留意しつつ、今回の中間報告で示された枠組みと目的に沿って、さらにガイドライン見直しの作業を進めてまいります。

 その過程におきましては、国家安全保障会議が適時適切に開催をされ、関係閣僚による議論がしっかりと行われていくということになると考えてございますが、その具体的な進め方については、最終的には国家安全保障会議の議長たる総理の御判断になると考えてございます。

岡本委員 十七年ぶりの大切な改定ですので、議論すべきをしっかりと時間をかけて議論していただきながら、よりよいものの策定をお願いしたいと思います。

 以上で質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 岸田大臣、再任おめでとうございます。引き続き、日本外交のトップとして、しっかりかじ取りをしていただきたいというふうに思います。

 きょうは、まず本題に入る前に、左藤防衛副大臣に一点お伺いしたいと思いますが、江渡大臣は元気に職務されておられますか。これは笑い事ではなくて、昨日の安保委員会が質疑が中断をしてしまった、これは原因があるわけですね。

 防衛大臣というのは、二十五万自衛隊員のトップであります。国民の信頼を損ねることがあってはならない。今もなお、御嶽山の山頂付近では、自衛官の皆さんが腰まで火山灰につかって捜索活動を必死にしておられる。そういう中で、大臣の政治資金の問題が発生をしております。

 副大臣としてこの問題をどう捉えておられるか、そして、大臣に対してもし助言をされるとしたらどんな助言をされるか、お答えいただけますか。

左藤副大臣 今、長島先生からお話ありましたけれども、大臣は法にのっとって誠実にお答えすべく頑張っている、このように思っております。今おっしゃったようないろいろな疑念がないように彼もこれから頑張っていくと思いますので、しっかり支援をしていきたいと思っております。

長島(昭)委員 しっかり大臣に伝えていただきたいと思います。

 それでは、本題に入ります。

 今、最後に岡本委員から質疑がありましたガイドライン、先週の水曜日に日米防衛協力のガイドラインの改定作業中間報告が出されました。十七年ぶりの改定ということで、国民の皆様もそうですし、同盟国あるいは周辺国、国際社会全体が注目をしているというふうに思っております。

 それでは、外務大臣、それから防衛副大臣、そしてきょうは安保法制担当の防衛政務官にお越しいただいておりますが、それぞれ、今回のガイドラインのポイント、大臣なりのポイント、副大臣なりのポイント、あるいは政務官なりのポイントはどこにあるか、国民にわかりやすく説明をしていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、今回の中間報告は、昨年十月に開かれました日米2プラス2おいて合意をされたガイドラインの見直しにつきまして、これまで行ってきた作業について要約をしたということであります。

 これはあくまでも中間報告であり、最終的な結論はこれから引き続きまして議論を続けていかなければならないと考えていますが、その上で、今日までの作業において日米間で共通認識に達しているという点につきましては、大きなものを挙げますと三つあると考えます。

 まず一点は、日本の平和と安全の確保に関して、平素から緊急事態までのいかなる段階においても、切れ目のない形で、日本の安全が損なわれることを防ぐための措置をとることとしていること、これがまず一点。

 それから二点目として、地域及びグローバルな平和と安全のための協力について、より平和で安定した国際的な安全保障環境を醸成するため、さまざまな分野において協力を強化していくということ。

 そして三点目として、新たな戦略的領域である宇宙及びサイバー空間における協力を進めていくということ。

 この点につきましては、日米間で現在においても共通認識に達している、このように考えております。

 ぜひ、引き続きまして議論を続け、そしてこのガイドラインの見直しを、日米協力のあり方を検討していく上で、しっかりとしたものに仕上げていきたいと考えております。

長島(昭)委員 同じような答弁になるといけないので、防衛副大臣あるいは防衛政務官、つけ足すようなところがあったら、また別の観点でもしポイントがあるとしたら、補っていただけますか。

左藤副大臣 今外務大臣からお答えがございましたので、ほとんどダブりますので、あえて言うことはございませんが、今後は、この中間報告において示された枠組みと目的に沿って作業を進めていきたいと思っております。

 現時点ではどうなるかまだ詳しいことはわかりませんけれども、しっかり頑張っていきたいと思っております。

石川大臣政務官 防衛大臣政務官を拝命いたしました石川でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今、外務大臣、副大臣から御答弁のあったとおりでございまして、特段つけ足すことはございませんけれども、安保法制の検討とはしっかり整合性を踏まえてガイドラインについても検討を進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

長島(昭)委員 このガイドラインの見直しの作業というのは、実は私どもの民主党政権のもとで準備作業が始まりました。

 大体、九七年のガイドラインを思い起こすと、当時はアメリカ側からの要請に日本政府が応える、いわば受動的な形で始まりましたが、今回は我が方から、日本側から、そろそろガイドラインの改定をしようじゃないか、そういうことを当時の森本大臣の方からパネッタ国防長官に提案をし、それはぜひやろう、この十七年間の間に国際環境も大きく変わっている、こういうことで始まりまして、不肖私が副大臣のときに、十一月だったと思いますけれども、もうぎりぎりでしたが、ワシントンに飛びまして、当時のカーター副長官とキックオフの話し合いをさせていただいたということでございます。

 それを引き継いでいただいて、安倍政権のもとで今精力的に議論を進めていただいている、これは非常に有意義だというふうに思っています。

 そこで、これは報道でもさんざん議論されておりますけれども、現行のガイドラインにあった三つの領域が、別の三つの分野に今回移行しているんですね。三つの領域というのは、一つは、平素からの日米の協力、それから二番目が、日本が武力攻撃を受けた際の日米協力のあり方、そして三番目が、先ほど岡本さんから話が出ておりました、周辺事態における日米の協力のあり方、この三つがガイドラインの三本柱だったんです。

 それが今、今度の中間報告で明らかになったように、先ほどまさに外務大臣から説明があったように、まず、平素から有事に至るあらゆるステージで切れ目のない、シームレスな日米の協力体制を築いていこう、それから、日本の防衛だけじゃない、周辺事態だけじゃない、地域及びグローバルな平和と安定、安全のために日米が協力をしていく、そして三番目が、新しい戦略領域ということで、宇宙、サイバーが言及されているわけです。

 私は、この中からポイントを三つ挙げるとすると、一つは、やはり先ほど議論になりました、周辺事態という概念が、私個人としては、不要になった、必要なくなった、もはやそういう地理的な限定をかける必要がなくなった、日米協力というのは、日本の防衛、そして周辺事態、あるいはそれを超えたグローバル、あるいは地域の平和と安定に対して、これにどう日米で協力していくか、こういうふうにもう地平線が広がったということですね。これが一点。

 それからもう一つは、グレーゾーンも含めたシームレスな対応をしていく。まだ平時であるけれども、不穏な動きがあったときに適時適切に日米が協力体制に入るという、この二点目。

 そして三点目は、同盟国同士の協力だけでなく、プラス韓国であるとか、オーストラリアであるとか、あるいはインドであるとか、場合によっては多国間でやる、こういった協力のあり方がこれから拡大をしていく。

 こういうことによって何が得られるかといえば、これはもちろん日本の平和と独立を守るということは一番のコアですけれども、プラス地域の秩序、あるいは日本の大きな意味での安全、安定というものが確保できるというふうに思うんですが、大臣の御所見を伺いたいと思います、今私が申し上げた点について。

岸田国務大臣 御指摘の点も含めて、今回の中間報告、あくまでも現時点での議論を取りまとめたものであります。周辺事態等の地理的な要件等につきましても、まだ最終的に考え方が決まったものではありません。

 逆に、グローバルな協力につきましても、従来から日米間においては日米が主体的に取り組んできた協力、多くの実績がございます。ハイチの地震ですとか、フィリピンにおける台風、アデン湾におけるさまざまな取り組みなど、こうしたグローバルな協力は今までも存在したわけであります。

 いずれにしましても、引き続きましてこの中間報告において示された方向性を踏まえながら議論を続け、そしてガイドラインの見直し、しっかりとしたものに仕上げていかなければならないと考えています。

長島(昭)委員 周辺事態についてはまだ結論が出ていないということですが、ここは結構大事なポイントだと私は思っています。

 というのは、七月一日の閣議決定、この閣議決定で、集団的自衛権と呼ぶか個別的自衛権と呼ぶか、これは別にして、我が国が直接攻撃を受けていないケースであっても自衛権を行使する場合がある、こういうことを初めて政府が憲法解釈をして、そういう方針を打ち出したわけですよね。

 今まで周辺事態というのが必要だったのは、必要だったというか、周辺事態の考え方はどういう考え方か私なりに解釈すると、我が国が直接攻撃を受けていない事態、つまり我が国の存立とは余り関係ない、しかし、朝鮮半島で何か起こったり、周辺で何か起こったときに、アメリカが出動してやる、日本の基地を使う、日本の支援を求めている、まあ、お手伝いしてあげるかな、極めて当事者意識が薄い概念だったんですよ。

 ところが、今回は、我が国が攻撃を受けていないけれども、我が国の存立にかかわるような事態があり得る、そういう事態においては、いろいろな条件はついていますけれども、自衛権を発動する。つまり、自分たちと一緒に行動している緊密な関係にある国を支援して武力を行使する可能性があるわけですね。こうなってくると、まさに周辺事態と今まで言われていたもの、対米支援で済ませていたことが、まさに我が国が当事国となる、そういう考え方になったんですね、今回。わかりますよね。それだけ当事者意識が出ているということなんですね。

 それは、先ほどまさに小渕総理の答弁を引用されましたけれども、小渕さんはああいうふうにおっしゃいましたが、周辺事態という概念はもともと地理的な概念ではなかったわけでありまして、何が言いたいかというと、本当に真っ当な議論がこれからできるようになったんですね。周辺事態という何か自分たちの周辺に物事を引きつけて考える考え方だけではなくて、もちろんそれも大事ですよ、直接危害が加えられる、あるいは加えられるおそれがある、こういう事態も大事ですけれども、それを超えた事態においても日本は当事者意識を持って、アメリカと協力するときは協力する、ほかの国と協力をするときは協力する。

 そういう意味で、今回、思い切って周辺事態という概念を取っ払って日米のガイドラインの改定作業に入っていくということは、私はこれは非常に大事なポイントだというふうに思うんですが、その点、外務大臣に伺いましたので、左藤防衛副大臣、防衛を担当する副大臣として、この周辺事態の考え方、これまでの考え方、そして、今後あるべき日米協力ということを考えたときに、周辺事態というものの考え方をどう捉えるか、御所見を伺いたいと思います。

左藤副大臣 確かに、周辺事態というのは、今までと違って、これからどうなるかというのは、日米協議、ガイドラインの中でしっかり協議をしていかなきゃならない事項でございます。

 しかし、今、長島委員がおっしゃったいろいろな事態に備えてどうするか、これは正直言って、今、日米間で協議をしていきたいと思っておりますので、しっかり長島先生の御意見も踏まえながら頑張っていきたいと思っています。

長島(昭)委員 それでは、もう少し深いといいますか、非常に重要な問題について外務大臣に御所見を伺いたいと思うんですが、私は、なぜこれだけガイドラインの見直しが必要か、あるいは今言った周辺事態にこだわらずに、もう少し日米の協力の幅を広げる必要があるかと考えたときに、これはやはり日本を取り巻く国際環境の変化というのを挙げざるを得ませんね。そして、それは言ってみれば、地政学的に見れば、地殻変動のようなことが今起こっています。大きく二つ挙げることができると思う。

 一つは、中国の台頭です。二十五年連続で、軍事力、二桁の伸びを維持して、今日本の防衛費の三倍近くに膨れ上がっていますし、アメリカの国防費に比べればまだ四分の一ですけれども、このまま二桁で伸びていけば、十五年以内に四倍になるわけですね。こういう勢いを持って今中国が出てきている。そして海洋進出、南シナ海、東シナ海、こういった状況が一つ一方にある。

 そしてもう一方は、アメリカの退潮傾向。リバランスとかピボットとか言っておりますけれども、財政的な制約があって、私から見ると、この地域へのプレゼンスに対して相当程度支障を来している、こういうふうに思うんですね。

 この二つの地政学的な地殻変動があるから、日本がもう少しこれまでよりも積極的な、まさにプロアクティブな役割分担というものを担っていかなければならないと思うんです。

 外務大臣から伺いたいのは、一つは国際秩序の維持、この地域における国際秩序をどうやって維持していくか、そしてもう一点は、日本の安全保障をどう確保していくか、この二つの観点から、今起こっている中国の台頭、そしてアメリカの退潮傾向、この二つの地殻変動にどう対応していくべきだとお考えでしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国を取り巻く安全保障環境、一層厳しさを増しているという認識の中にあって、中国に対しましては、責任ある、そして建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守しながら行動するよう引き続き促していくということ、このことにつきましては、地域の平和あるいは繁栄、安定にとって極めて重要だと考えています。

 まず基本的には、我が国として、引き続き日中戦略対話あるいは日中安保対話といった安全保障分野の既存の対話の早期再開、あるいは不測の事態の発生の回避、防止のための枠組みの構築に向けて中国側への働きかけは続けていかなければならないと考えています。

 この観点から、九月に日中高級事務レベル海洋協議が約二年ぶりに再開され、防衛当局間の海上連絡メカニズムの早期運用開始に向けて協議を再開することで一致したこと、これは有意義なことだと思っています。

 そして一方、米国ですが、アジア太平洋地域における米軍のプレゼンスに関しては、これまでオバマ政権は、リバランス政策として、この地域を重視する政策を継続する旨繰り返し表明してきております。厳しい財政状況の中にある、御指摘のとおりでありますが、この財政状況の中にあっても、この地域において必要となる能力の維持等に努めてきていると認識をしており、このことは我が国としまして歓迎をしております。

 我が国としましては、引き続き、まずは我が国自身の防衛力を適切に整備する、そして中国に対しましては、引き続きましてしっかりと働きかけを行っていく、そして米国との関係においては、日米安全保障体制のもと、米軍の前方展開を維持し、その抑止力を確保する、こういったことが重要であると認識をしております。

 我が国としまして、我が国の安全保障環境の厳しさを考えますときに、そういった大きく三つの取り組みを重視していかなければならないと考えます。

長島(昭)委員 中国の台頭については二つ問題があると思っているんです。一つは急速な軍拡ですね。それからもう一つは、南シナ海あるいは東シナ海で見られるような、力を背景にした、みずからのルールとか主張を強要していく、そういう姿勢であります。

 そこで、一つは、左藤防衛副大臣に伺いたいんですが、ちょっと要素分析したいと思うんですが、A2ADという考え方がありますね。アンチアクセス・エリア・ディナイアル、これは接近拒否というふうに呼ばれていますけれども、こういう能力を今中国は着々と構築をしている。これを副大臣としてどういうふうに分析をしておられるか、御所見を伺いたいと思います。まず一点。

左藤副大臣 先生御存じのとおり、A2ADについては、これはいろいろ、国際法の秩序の維持とかいうものについて我々も頑張っているわけですが、中国が継続的に高い水準で防衛費を増加している、これは先生おっしゃるとおりです。軍事力を広範かつ急速に強化しておりますが、その一環として、いわゆるA2ADの能力の強化に取り組んでいると見られております。

 我々はどうしても東シナ海、南シナ海での活動を注視して、海洋における利害が対立する問題をめぐっては、力を背景とした現状変更の試み等、高圧的とも言える対応を示していますが、我々はそれに対してしっかりと対応させていただきたいと思っております。

 そういう中国の動向について、不透明さも相まっておりますけれども、我が国を含む地域、国際社会の安全保障の懸念になっておりますけれども、我々はしっかりと冷静な対応をして、平素から情報収集そして警戒監視活動に万全を期していきたいと思っております。

長島(昭)委員 ちょっと私の質問の仕方が悪かったのかもしれないんですけれども、日本の安全保障にとって、それから地域の秩序維持にとって、中国が営々と築き上げてきたA2AD能力というのはどういう問題があるのかというところを説明していただきたかったんですけれども。

左藤副大臣 それは、我々の領空、領海を含めた、非常に懸念をしているところでございますので、それについてはやはりしっかりと対応していきたい。これは注視をしないと大変なことになる、このように思っていますし、哨戒機を含めたいろいろな監視活動、そして米軍との連絡をしっかりやっていきたい、このように思っております。

長島(昭)委員 A2ADというのは、例えば、潜水艦であるとか、ミサイルの距離が延びた、あるいは精度が高くなった、巡航ミサイルあるいは弾道ミサイル、こういった飛び道具が急速にふえてきて、接近拒否というのは、つまり何の接近ですか、アメリカが接近してくるのを、これを拒否する、排除する、なるべくアメリカが近くに来ないようにする、こういう能力だと私は理解をしているんです。

 この深刻なところは、例えば一九九六年に台湾海峡危機というのがありました。台湾で総統選挙が行われる。当時は、李登輝さんが二期目で初めて民選選挙に打って出たわけですけれども、そのときに、李登輝さんがまた総統になると独立運動が高まってしまうということで、中国は台湾海峡で盛んにミサイル演習をして、台湾の国民に対してプレッシャーをかけたわけですね。ブラフをかけた。しかし、そのブラフをはねのけて、台湾の国民は李登輝さんを選ばれたわけです。

 そのときに、アメリカは、当時、クリントン政権でしたが、横須賀にいたニミッツ、それから中東にいたインディペンデンス、二つの空母部隊を台湾海峡に急派しまして、そして、中国に対して、逆に、もうこれ以上やるならただじゃおかないぞ、こういうブラフをかけ返したわけです。それで、中国は屈辱的に引き下がる、こういうことが九六年の時点であったわけですね。

 では、十数年たった今、同じようなことが起こったとして、オバマ大統領は同じように、つまり、何の不安もなく二つの空母部隊、二つじゃなくてもいいですよ、三つでも四つでもいいですけれども、そういう空母部隊をこの近海に自信を持って派遣することができるかどうか、これはいかがですか、副大臣。十八年間の間に中国が営々とアクセス拒否の能力を築き上げてきた。十八年前と同じような状況でアメリカは対応できるかどうか、いかがでしょう。

左藤副大臣 そういう中国の活動でございますけれども、やはり自国の防衛等のため、可能な限り遠方の海空域での敵の作戦を阻止することや、自国の領有権に関する主張の強化、こういうことをどんどんやっておられますけれども、我々も、しっかりそれに対応するために、アメリカとしっかりとプレゼンスをやっていきたい、このように思っていますし、今おっしゃったときにアメリカがどう動くか、これは正直言ってまだきちっと詰めておりませんけれども、我々は、そういうときに対応できるように、しっかりアメリカと連絡をとりながらやっていきたい、このように思っております。

長島(昭)委員 本当にこれは深刻だと思います。九六年の段階では、例えば最新鋭の潜水艦を中国は数隻しか持っていなかった。今は四十隻近くになっていますね。それから、巡航ミサイルなんかを持っている駆逐艦、最新鋭の駆逐艦も、当時は数隻でしたけれども、今やこれは四十隻近くになっている。あるいは第五世代の戦闘機、これも向こうは開発を進めて、我々と同じぐらいの、第四世代、四・五世代の戦闘機は当時はほとんどなかったのが、今はもう三百機、四百機のオーダーになっている。

 こういう深刻な状況の中で、しっかりやるというのは確かにやっていただきたいと思いますよ。日本とアメリカでしっかり連携をとりながら、こういうものとのバランスをきちっととって、安定的な軍事バランスというものを維持していく、こういう努力をぜひしていただきたいというふうに思います。

 これは外務副大臣に伺いたいんですけれども、もう一つの問題は、南シナ海で起こっている問題ですね。国際法を無視とは言いませんけれども、ゆがめて、そして力によって自国の主張やルールというものを押しつけてくる。

 例えば、一昨年の四月、フィリピンとスカボロー礁でにらみ合った。あるいは、ベトナムとこの夏やりましたね。そして、きのうの新聞ですか、西沙諸島、パラセル諸島で、最大の島であるウッディー島に二千メートルの滑走路を中国はつくった。そして、ベトナムはこれを主権侵害だといってクレームをしている。

 これは全て、一九九二年に中国が領海法というのを制定して、南シナ海のほとんどをカバーする、九段線と呼ばれていますけれども、この九段線に基づく彼らの行動、彼らから見れば領海をきちっとしていくという行動の一環だと思うんですが、この九段線、これは国際法上根拠があるんでしょうか。

中山副大臣 御質問ありがとうございます。

 まず、中国においては、国防予算の急速な増大を背景に、十分な透明性を欠いた形で軍事力の増強が進められており、我が国を含む国際社会の共通の懸念事項となっていることは言うまでもない、委員の御指摘にもあるようなお話が事実明白でございます。

 また同時に、東シナ海や南シナ海におきましても、必ずしも既存の国際法秩序とは相入れない独自の主張に基づいてさまざまな海洋活動を活発化させており、これも我が国を含む国際社会の共通の懸念事項となっているというふうに思います。

 こうした中国側の活動の意図について断定的に申し上げるのは難しいとは思いますけれども、中国国内での海洋権益に対する関心の高まり、また、領土や領海の防衛、シーレーンに対する関心の高まり等の諸要因がその背景として指摘されていると承知をいたしております。

 我が国といたしましては、地域の平和と安定及び繁栄のためには、中国が責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守し、国防政策の透明性を向上させていくことが重要と考えており、安全保障分野で関係国と連携しながら中国側に働きかけをしていく構えであります。

 中国側の九段線の主張については、国際法上の根拠が曖昧であるとの指摘があり、南シナ海における領有権などをめぐる東南アジア諸国との主張の対立を生んでいる要因にあるということは、先生もお読みになられている平成二十六年版防衛白書の七十二ページに記載をされております。

 そしてまた冒頭、先生から外務大臣の方にも質問があったシームレスな対応は、逆に我々政治家の側にも求められていると思います。政権交代があって与野党が入れかわっても、安全保障政策、国民の生命と財産を守る政策ということが不変ないようにしていかなければならない。委員の御尽力に心から敬意を表したいと思います。

長島(昭)委員 こういう深刻な状況の中で、アメリカがしっかりしていればそれほど心配もないんだろうと思うんですが、その肝心のアメリカがどうもおかしくなっている。経済的には非常にまだまだ活力がありますし、人口もふえているし、技術力も維持していますので、アメリカが衰退している、そういう言い方は私は当たらないと思いますけれども、問題なことは、アメリカは、口ではリバランスあるいはピボットとか言っているんですが、実態を本当に伴っているのかどうかということなんですね。

 外務大臣に伺いたいのは、先ほどリバランスというお話をされましたけれども、もともと、このリバランス政策というのは、二〇一一年の一月に、当時のクリントン国務長官が、フォーリン・ポリシーという雑誌にアジアピボットという言葉を初めて使って、アメリカのアジアへの関与を強めていく、こういう方針を出し、そしてその年の十一月に、オバマ大統領が、APECの後、バリでEASがあって、その前のタイミングを使ってオーストラリアの議会で演説をして、具体的に、アジアできちっとアメリカはこれからも関与し続けるということを世界に表明した。

 それから三年たっているんですけれども、何かアメリカが特段この地域への関与を強めた、あるいは具体的な行動としてそういうことを示した、こういう事例はあるんでしょうか。

岸田国務大臣 我が国としましては、アメリカが引き続きリバランス政策を堅持していると認識をしております。

 具体的に行動等で示しているのかという質問でありますが、例えば本年三月、米政府が公表しました四年ごとの国防計画見直し、QDR二〇一四において、アジア太平洋地域へのリバランス政策の堅持を再確認するとともに、同地域における海軍力を初めとする抑止、対処能力の強化、近代化、そして米海兵隊のグアム移転、拡大抑止を考慮した核能力の維持等、いずれも我が国及び地域の平和と安全にとって不可欠な取り組みが継続されること、これを明らかにしているということであります。

 また、米海兵隊についても、即応性のある遠征軍として、紛争の抑止、同盟国やパートナー国への安全保障、世界じゅうの危機への対処のため前方展開を維持すること、こういったことを明らかにしているということでございます。

 米国の国防省予算要求におきましても、米政府としては、QDRに沿って作成した上で、基礎予算額約四千九百五十六億ドルに加えて、米軍の即応性維持と兵器等の現代化を目的として、現行の法律に定める要求上限額とは別枠として二百六十四億ドルの増額要求を行っている、こういったことも承知をしております。

 こういった点を我々としても注視した上で、米国のリバランス政策、引き続きまして維持されているということ、これを歓迎しているという次第でございます。

長島(昭)委員 外務大臣、言葉より行動なんですね。本当にそういうことが目に見えてあらわれてこなければ、これは抑止力にならないわけでありまして、今の大臣のお話を聞いても、予算要求をしたとか、そういうふうに公式の文書に書いてあるとか、ちょっと言葉が先行しているところが危うい感じがしたんですが。

 防衛副大臣に。アメリカは引き続き議会が内向きな傾向があると私は懸念しているんですけれども、例のシークエストレーションという予算の強制削減、まだ今でも生きているのだと思いますし、十年間で国防費を一割削減するという、その方針はまだ撤回されていないと思います。今外務大臣から御紹介いただいたように、国防総省としては予算の増額を要求していますけれども、実際承認をするかしないか、これは議会であります。この財政制約がもたらすアメリカの前方プレゼンスに対する影響、どういうふうに防衛省として認識されていますか。

左藤副大臣 長島先生おっしゃった懸念はあるんですが、実は、御存じのとおり、二〇一四年及び一五年の米会計予算の強制削減は超党派予算法により緩和されたものの、今後、二〇一六年米会計年度から強制削減が再開する可能性があります。その影響はしっかり見ていきたいと思っております。

 しかし、現実、本年の三月に、先ほど大臣が言われたQDRでは、アジア太平洋地域のリバランスを継続するための努力を優先するということを言及しておられます。そして、具体的にはどうかといいますと、アジア太平洋地域の海軍前方展開部隊の追加配備や、空軍ISR戦力の展開に取り組むこととしております。

 そして、我が国との関係は、昨年の十月の2プラス2共同発表でも示されているとおりでございますが、米国は、日米同盟が世界及び地域の安全保障上の課題に対処することができるよう、軍事力を強化する意図を有する旨を明確にしております。

 そういう考えのもとに、米国は、2プラス2発表以来、P8哨戒機の嘉手納基地への配備、そして無人偵察機、グローバルホークの三沢飛行場への一時展開といった取り組みを進めておられます。そして、本年四月には、ヘーゲル国防長官は、二〇一七年までに新たに新設のBMD対応型イージス艦を日本に前方展開する計画を発表しております。

 こういうことを注視してまいりますと、これからの動きはもちろんしっかり見ていかなきゃなりませんけれども、引き続き、米国の我が国及びアジア太平洋に対するコミットメントには変更がないと考えております。しっかりまた折衝をさせていただきたいと思っています。

長島(昭)委員 そういうことで、中国が台頭し、そしてアメリカが退潮傾向にあるということを前提にすると、ますますこの地域の平和と安定のために我が国が果たすべき役割というのは大きくなっていくんだろうというふうに思っています。

 今アメリカで深刻なのは、もちろん財政の制約もありますけれども、やはりアメリカ国民が、十年間のテロとの闘いで相当な犠牲をアフガニスタン、イラクで出しましたので、厭戦機運が高まっているわけですね。ですから、国際秩序を維持していこうというウイルというか意思、リゾルブと言った方がいいかもしれませんね、かたい意思、こういうものが希薄化しているということが私は非常に懸念されるんです。

 ピューリサーチという国際的にも有名な、アメリカでは一番権威の高い世論調査会社があります。一九六四年以来、毎年毎年米国民の世論調査をやってきた。その中にこういう項目があるんですね。国際社会で起こっている出来事についてアメリカは関与すべきかどうか、こういう項目があるんです。六四年以来ずっと、毎年毎年とってきて、去年の調査結果で、国際社会で起こっていることはそれぞれの国に任せて、アメリカはなるべく関与を控えるべきだ、こういう意見が初めて五〇%を超えたんです。

 六四年の調査をとり始めたころは、そういう意見は大体二〇%ぐらいでした。ベトナム戦争の後、少し上がって、それでも四〇%ぐらい。あるいは冷戦が終わって、また上がって、四〇%弱。初めて五割を超えた。これだけアメリカ国民自体がアメリカの国際関与というものを控えるようにという、そういうプレッシャー。

 そういう中で、私はオバマ政権特有のリーダーシップの欠如かと思っていたんですが、やはりそういう国民の根強い政府に対する意識というものが反映されて、エジプトでもリビアでもシリアでも、あるいはイラクも、こんなになるまでオバマ政権は対応することができなかった。ウクライナでも結局散発的な制裁を科しているだけでありまして、この点を考えると、本当に、自分の国は自分で守る、もちろんそうですけれども、この地域の秩序の維持というものに対して、日本はより多くの意識と責任を割いていかなければならない、このように思っているんです。

 大臣、そういう意味でいうと、私は中国ばかりやり玉に上げるつもりはありませんけれども、中国の台頭というのが、まさに地政学的な地殻変動ですから、これには私たちは相当意識を割かなきゃいけない。

 そういう観点から見ると、言葉尻を捉えるようで恐縮なんですが、岸田大臣の所信表明、所信の御挨拶の中に近隣諸国との関係という項目があって、第一に、近隣諸国との関係の強化です。日中関係は、最も重要な二国間関係の一つです。中国の平和的な発展は、我が国にとっても大きなチャンスです。隣国であるがゆえにさまざまな課題が生じるのは当然です。さまざまな分野、レベルで対話を行い、戦略的互恵関係の実現を目指していきたいと思います。こう書いていますね。一方で、尖閣諸島では、断固として守り抜く。

 次は韓国なんですね。韓国とは、困難な問題はありますが、今後ともさまざまなレベルで積極的に意思疎通を積み重ね、大局的観点から、未来志向の重層的な関係を構築します。竹島についてはしっかりやります。

 中国との文脈と韓国との文脈を比べると、何かパラレルというか、私から見ると、中国の台頭のもたらす我が国を初めとする地域の秩序に与える影響というのは物すごく大きい。そういう中国をどうこれからマネージしていくか、中国とどう対応していくかというのは、私はもう一段深い洞察と政策的な配慮というものがあってしかるべきだと思うんです。

 地域の安全、それから我が国の安全保障、この二つを考えて、中国との関係、韓国とはちょっと違う、もう少し次元の違う中国との関係というのをどう捉えていくか、外務大臣、お答えいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、韓国も中国も我が国にとりまして大切な隣国であり、やはり隣国であるがゆえに問題も生じますが、条件をつけることなく対話を進めていかなければいけない、こういった基本的な考え方は持っております。しかしながら、御指摘のように、日中関係と日韓関係を単純に比較するということはできないと思っております。

 中国におきましては、先ほど来さまざまな議論が行われています。不透明な軍事予算の増大ですとか、必ずしも既存の国際法秩序と相入れない独自の主張に基づいて海洋進出を行うなど、こういった点につきましては国際社会共通の懸念事項であると認識をしております。こういった動向につきましてはしっかりと注視をしていかなければなりません。日本と中国との関係をどう安定化させるかということは、国際社会の平和や安定や繁栄にも影響してくる、こうした大きな責任を担っている二つの国の関係でもあると認識をしております。

 一方、韓国との関係を考えますと、日本も韓国もともにアメリカの同盟国であります。戦略的な利益は共有しているというふうに考えておりますし、そういった視点から、未来志向で大局的な観点から二国間関係を考えていかなければならない、こういった関係であると考えます。

 このように、日中関係、日韓関係は単純に比較することは困難であり、それぞれの国との関係の、それぞれの重要性や特徴をしっかりと認識しながら我が国として対応していかなければならないと考えます。

長島(昭)委員 もう時間がないんですけれども、最後にガイドラインの意義にもう一回戻りたいと思うんですが、こういった二つの巨大な地殻変動が起こっている。そういう中で、その地殻変動に対応するためには、一つは、中国が、これ以上横暴なといいますか、国際法をゆがめたり、あるいは力によって一方的に自己の主張や自分たちのルールを押しつけてくる、そういう行動を自制する、あるいは、こっちからいうと、諫止、ディスエージョン、抑止、ディターレンス、こういうことをしていくことが一つ大事。

 と同時に、アメリカがもし今のプレゼンスのレベルを維持するのに四苦八苦しているんだったら、アメリカが簡単に引き下がらないように、アメリカをつなぎとめておく、そういう努力もあわせて行わなければいけない。

 そういう二つの努力の交差点にあるのが、私は、今回の日米ガイドラインの見直しだ、あるいはその中での日本の役割拡大だ、こういうふうに思うんです。

 防衛副大臣、今度の中間報告に前回とはちょっと違う文言が幾つか出ているんですが、特に私が注目したのは、アセットプロテクション、防衛装備品の防護、十五事例に合わせていえば米艦防護、こういったことになるんだろうと思うんですけれども、今申し上げた、中国に対して抑止を働かせながらアメリカのプレゼンスをきちっと引きとめておく、そういうものを達成するためにガイドラインがあるとすれば、このアセット防護というような考え方は今の文脈の中でどう防衛省として捉えているのか、国民にわかりやすく解説していただければありがたいと思います。

左藤副大臣 今、ガイドラインでアセットの話が出ておりますけれども、アセットとは、一般に、自衛隊や米軍の任務遂行のために有する艦艇、航空機といったものを含む概念でございます。中間報告では、日本の平和及び安全の切れ目のない確保のために日米がとる措置にアセットの防護を含み得ることとしております。

 この防護については、安保法制にかかわる先般の閣議決定にも、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍部隊に対して武力攻撃に至らない侵害が発生した場合の同部隊への武器等の防護に関して言及されており、我が国の平和及び安全の確保にとって重要な協力分野であると考えています。

 今後のガイドライン見直しについても、こうした点を踏まえ、アセットの防護に関する日米協力のあり方についてさらに検討していきたい。それと、長島先生おっしゃったように、しっかりこういうことをやることによって、日米がしっかり協力するんだ、それが抑止力になる、このように我々は思っております。

長島(昭)委員 今の御説明でよくわかるんですが、そういう戦略的な意味合いが非常に強いと思うんですね。中国に対しても抑止力を働かせながら、アメリカと協力をして、地域の安定に寄与する。

 これは最後にしたいと思いますが、石川防衛政務官に伺いたいんですけれども、そういう観点からすると、つまり、グローバルな視点であるとか、リージョナルな視点であるとか、地域の安全保障あるいは地域の秩序を守っていく、そういう視点が、閣議決定に至る集団的自衛権をめぐる与党協議の中では、何か忘れ去られているような印象を私は持ったんですね。

 それは、個別的自衛権というか集団的自衛権というか、これはそれぞれのとり方があろうかと思いますけれども、まさにあそこの閣議決定で出ていた文言ですね。国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に限って自衛権が行使できる。つまり、そうした事態に至るまで、集団的自衛権は持っていても行使はしない、こういうふうにもとれるわけですね。

 これは、私は先ほどからずっと言ってきた、中国というふうに名指しするつもりはありませんけれども、抑止力というものを高めるという観点からすると、ちょっと自己中心的というか、自分が攻撃される、あるいはそれと同等なことが起こらない限りそれに対して対応できないということをあらかじめ国際社会に宣言してしまうことになるということを私は懸念するんですが、石川政務官、防衛省の立場から、この点についてどうお考えでしょうか。

石川大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほど来、先生から御質問いただいております中国の動向あるいはアメリカの国防費削減のお話等は、私ども防衛省といたしましても、しっかりと注視しながら、かつ中国の対応については冷静かつ沈着な対応を心がけつつ、平素の情報収集、警戒監視活動等に万全を期していきたいと思っております。

 御指摘の閣議決定に関しましては、今回、与党、自民党、公明党の間の協議を踏まえて、先ほど御指摘のありました、地域の、グローバルな、またリージョナルな課題等も踏まえつつ、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために政府として何をなすべきかという問題意識のもと、濃密な議論を行ってきたものと承知をしております。

 その閣議決定の中で加えられました文言につきまして、第一要件に、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることということが新三要件の第一要件に入ったわけでございますが、この新三要件を満たす場合には、従来の政府見解の基本的な論理に基づく必要最小限の自衛のための措置として、武力の行使が憲法上許容されると判断するに至ったものでございます。

 以上でございます。

長島(昭)委員 この問題は非常に大事なんです。法律論、憲法論としても大事なんですが、やはり安全保障論、戦略論としても大事なテーマなんですね。

 ですから、これは、アメリカと協議をする前に、本来は国会で相当審議をして、安保法制をこれから変えていくのだったら、その方向性、骨格ぐらいはきちっと示した上で堂々とアメリカと議論するような、そういう順序で臨まなければいけないと私は思っています。

 その点も含めてこれから引き続き議論させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 これで議論を終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、若井康彦君。

若井委員 民主党の若井康彦です。

 外務委員会、初めての機会ですので大変新鮮な気持ちでお話を聞かせていただいておりますが、さきの岸田外務大臣の所信表明、これについて幾つかお話を聞かせていただきたいと思います。

 まず第一に、なぜか一番最後のところに、戦略的な対外発信を抜本的に強化するとおっしゃったわけですが、この一行だけで、そのくだりがありません。

 外交というのは、要するに、相手に働きかける、そして相手からの働きかけに応えていく、その二面だろうと思うんです。その意味で、この対外発信というのはまさに外交の一番の基本だというふうに思うわけですが、ここにあえて戦略的という言葉をつけられた、これについてはさまざまなニュアンスというか意味を付加しておられるんだと思うんですが、それについてもう少し具体的にお聞かせを願いたいと思います。

    〔委員長退席、三ッ矢委員長代理着席〕

薗浦大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘いただきましたとおり、先般の本委員会における外務大臣の御挨拶において、戦略的な対外発信を抜本的に強化していくということを申し述べました。

 これに関しましては、四つの柱を軸として予算要求をさせていただいております。一番目は、我が国日本の正しい姿を発信すること。二つ目が、我が国日本の多様な魅力のさらなる発信を行うこと。三つ目が、親日派、知日派をそれぞれにおいて育成すること。四本目の柱が、在外公館長、在外公館による発信のさらなる強化。この四つの柱を主に強化することとしまして、約五百億円増の要求を行っているところでございます。

 加えまして、従来の取り組みもあわせて拡充を行い、対外的な発信を効果的に行っていく考えでございます。

若井委員 今これに関しまして、大臣は、この間、国際的な協調に基づく積極的平和主義と地球儀外交の展開によって、日本が世界の中で存在感と自信を取り戻してきた、このように述べておられるわけです。そのこと自体は大変結構なことだと思うんですけれども、問題は、この存在感と自信、これが本当に自他ともに認められるものになっているかどうか、その辺が問われているのではないか。

 このことについてはどなたも異論はないと思うんですが、その意味で、今政務官が御説明になられた四本の柱、確かに大事かと思います。ただ、ここにありますこの四つの柱でありますけれども、五百億の予算を要求されておられるというお話でしたが、この四つの柱というのは、実は今に限ったことではなく、常日ごろから外交の一番の仕事として、基本として取り組まれてきたことだというふうに私は思うんです。

 我が国が諸外国に対してさまざまな対外発信をしているというのは、歴史が始まって以来常に行われてきたことでありますし、最近でいえば、ノーベル賞の受賞もあり、あるいは世界遺産も、富士山だ、日本食だ、あるいは富岡の製糸場だ、ありますけれども、それだけでは、今日のこの激動する世界の状況の中で、情報を対外発信しているとは言い得ないんじゃないか、このことを私は常日ごろ感じております。

 この今日の刻々と変化をしていく、大変に厳しい、ある意味でいうと難しい状況の中にあって、我が国が、国としてしっかりとしたこの状況に対しての対処のあり方、そういう意味でのメッセージというものが評価をされるんだろう。その意味で、この基本的なスタンスをしっかり定めた上で、わかりやすく、効果的に、しかるべき対象に対して有効なポイントを上げていかなきゃいけないというふうに思うんです。

 そういう意味で、この四本の柱、結構でございますけれども、率直に言ってもう少し、時代性といいますか、今日の状況について敏感に、しかも的確に、有効に発信をしていくということが大事だと思います。

 この四本の柱の中に何かそういうものがおありだと考えておられますか。

    〔三ッ矢委員長代理退席、委員長着席〕

薗浦大臣政務官 発信の仕方等々については先生御指摘のとおりでありまして、ただ、我々としましては、従来もこうしたことに取り組んでまいりましたけれども、現状分析として、今、国際社会においてパワーバランスがかつてないほど急激に変化をしているという認識がございます。加えて、特に新興国の存在感が国際場裏においても高まっておりますので、我が国の主張を改めて国際社会に浸透させ、また我が国の立場への支持を集める、こうした外交を推進するという立場、必要性を我々は極めて感じているという、まず現状認識があります。

 それから、現代性というお話がありましたけれども、我が国の立場、政策の発信を行う際に、まず我々として適切なメッセージを構築すること、それから誰に訴えるのかという意味で訴求対象、いわゆるオーディエンス、それから発信のタイミング、これも考慮をしなければならないということを認識しております。

 また、昔と違いまして、紙媒体だけではなくて電子媒体、また写真、動画といったような発信手段もいろいろ駆使をしなければなりませんし、言語についても考慮をしなければならない。

 また、我々だけが発信をするのではなくて、第三者によって我々の主張を発信していただくという重層的かつ複合的な発信を戦略的にやっていくという意味において、この四本の柱を特に重要視しております。

 中でもこれということを、先生今御指摘いただきました点においては、いわゆる在外公館、これにおいて発信力を強化したいということで、大使などに広報の専門家、またコンサルタントを配置して、こういう積極的かつ効果的な対外発信に努めてまいりたいというふうに考えております。

若井委員 大臣、今政務官から、我々の主張を伝えるための枠組みをこのような四本の柱でつくるんだというお話でしたが、端的に言って我々の主張とは何なのか、その点についていかがでしょう。

岸田国務大臣 我々の主張、何よりも我が国の姿が正しく伝えられなければなりません。そして、我が国の魅力につきましてもしっかりと発信しなければなりません。そして、我が国の政策自身も正確に伝わらなければなりません。

 こういったものを含めて、我が国の主張、立場としてしっかり対外発信することが重要ではないかと認識をいたします。

若井委員 この問題については、禅問答みたいになってしまうかと思いますので、これぐらいにして、今後さらに議論を重ねてまいりたいと思います。

 この今の柱の中にありますODAの活用について、二、三お聞きをさせていただきたいと思います。

 ODAを戦略的に活用して、国際開発課題、気候変動問題等に積極的に取り組む、そうおっしゃっているわけですが、その具体的な内容についてお聞きをしてまいりたいと思います。

 先般、国土交通委員会の派遣で、私はエルサルバドルという国に視察に行ってまいりました。一九六八年から我が国はエルサルバドルに海外青年協力隊を送ってきた、もう既に五十年近い海外協力、国際協力の実績があるという国であります。面積が四国ぐらいのところに六百万の人口と、非常に小さい国なので、我が国のこうした国際協力の中では、余りこの間話題になってこなかったような気もするんですけれども、相手側の対応の仕方から考えて、大変に大きな意義が、また私もあるというふうに感じました。

 非常に長い間、内乱があって、国はもう本当に混乱をきわめているわけですけれども、政府の三番手と言われる国道を管理している大臣に直接御案内をいただいて、我が国がこれまで積み重ねてきた協力の現場、そして、当時、山崩れで、いわゆるパン・アメリカン・ハイウエーというんですか、南北を結ぶ国道が分断をされているところを、JICAが今お手伝いをしながらその回復に当たっている、そういう現場でしたけれども、大変に見えないところで有効な役割を果たしてきたものと思います。

 それも含めまして、政府として、これまでODAが果たしてきた役割をどのように認識しておられるのか、今後、これをどのように見直していくのかということ、それはこれまでの成果の上に立ったことだと思いますので、その辺、簡単にお聞かせをいただきたいと思います。

薗浦大臣政務官 まずは、遠方までODAの現場を御視察いただきましたことに感謝を申し上げます。

 私の方から、これまでの果たしてきた役割について、まず答弁申し上げます。

 まず、アジアを初めとする途上国の安定、それから発展に大きく貢献するとともに、我が国にとりましても、途上国とのきずなを強めて、国際社会における我が国の地位を向上させる上で、確かな成果を上げてきたというふうに認識をしております。また、平和で安定した国際環境という、我が国の発展にとって極めて重要な状況をつくり出すために、大いに役立ってきたところだと認識をしております。

 以上です。

岸田国務大臣 ただいま政務官の方から、今日までのODAの果たしてきた役割を答弁させていただきました。質問の後半の今後の方向性について、私の方から答弁させていただきます。

 ODA大綱、前回改正されたのが二〇〇三年ですので、既に十年以上たっております。その間、日本及び国際社会は大きく変化をいたしました。ODAに求められる役割も変化をしております。そしてさらに、来年を期限とするミレニアム開発目標、MDGs後の新たな開発目標に向けた国際的な議論も今既に開始されております。

 こうした中で、我が国としまして、ODA大綱の見直しに向けた検討を行っているところであります。六月に有識者会議の報告もいただきました。

 ぜひ、今後とも議論を続け、非軍事的手段による平和の希求、あるいは人間の安全保障、さらには自助努力支援、こういった点を重視しながら、我が国の開発協力の基本理念を大事にしながら、議論を進めていきたいと考えております。

若井委員 この間、六十年に及ぶODA、我が国のみの国際協力の成果とは言えないかもしれませんが、ASEANは大変に発展をし、経済的にも大きな役割を果たすようになっている。そして、その中には中国も含まれておりますし、そこが今後、地球の、そしてアジアの発展の上にどのような役割を果たしていくかということも大きな課題になってきていると思います。

 我が国のODAの予算が年々減ってきている、そうした現実もございますけれども、世界の、ASEANの、あるいは東アジアの経済的な発展、これをもたらしているODAの位置づけ、そして我が国が果たすべき役割、大きな変化を余儀なくされている、そういう状況かと思うんです。

 今後、ある意味で需要に対して供給の方が非常に小さくなった、そういう観点から、どのように役割を再編していくかということが一番の課題かと思いますけれども、見直しの中でどのように位置づけておられるのか、そこについてお聞かせ願いたいと思います。

岸田国務大臣 見直しの中にあっても、基本的な考え方、非軍事的手段による平和の希求ですとか、人間の安全保障ですとか、自助努力支援、こうした考え方は引き続き重要だと考えています。

 しかしながら、委員御指摘のように、国際社会は大きく変化をしています。ODAに求められる役割も変わってきています。そして、何よりも、ODAを考える際には、民間を初めオール・ジャパンでこうした国々に対する支援を考えていかなければならない、その中でODAがどんな役割を果たしていくのか、こういった視点も大変重要なのではないかと考えます。

 このように、現在の国際社会、アジアを初めとするさまざまな地域社会において日本のODAが果たす役割というものを考えながら、しっかりと見直し作業を進めていかなければならないと存じます。

 国際社会においては、新興国の支援等もどんどんと行われているわけですが、単に額を争うだけではなくして、量においても、質においても、日本独自のODA政策というものをしっかりと示していく、こういった基礎となるようなODA大綱の見直しを進めていきたいと考えています。

若井委員 そこで、お聞きをしたいと思いますけれども、最近、中国の提唱によりまして、アジアインフラ投資銀行、この間も議論が出ておりましたけれども、この構想が非常に大きな検討の課題になっているということを仄聞しております。

 我が国の政府として、この中国が主導するAIIB、これについて、どのようなスタンスで取り組もうとしておられるのか。報道によれば、我が国はこれには参加をしない、そして、周辺諸国についても参加をしないように示唆をしているというような報道もありますけれども、その点について、大臣、どのようにお考えになっておられるでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のAIIB構想ですが、昨年十月、中国の習近平国家主席が東南アジアを歴訪した際に表明したものだと承知をしております。

 この構想につきましては、我が国として、まずは、このAIIBに先立って、ADBを初めとする既存の国際開発金融機関が存在いたします。こうした既存の国際開発金融機関に加えて、新たな国際機関を設立する付加価値があるのかどうかという点、あるいは、一国が非常に大きな出資割合を占める機関が、国際機関と名乗るに値する公正なガバナンスを確立できるのかという点、さらには、債務の持続可能性を無視した貸し付けを行うことにより、他の債権者にも損害を与えることにならないか、こういった点を含め、慎重な検討が必要であると考えております。

 以上の点も踏まえまして、日本政府としましては、AIIBへの参加について慎重な立場であります。

若井委員 先ほど来議論になっておりますとおり、世界における、例えばインフラの投資の需要というのは飛躍的に拡大をしている、そしてまた、今お話があったADBとか、そうしたこれまでの既存の枠組みの中では、それに十分対応し切れるのかどうか、そうした問題もあるかと思います。

 そうした中で、毎年一兆ドルを超えるという世界の、あるいはアジアのインフラ投資に対して、新しいそうした供給元が出てくるということ自体は、私は、ある意味でいうと、歴史の流れでもあり、また、これまで我が国が行ってきたODAの成果でもあるというふうに思うわけですけれども、慎重な立場というのは、そうした流れについてほかの道筋を考えようとしておられるのか、あるいは、AIIB、これについて、条件をつけて、ある意味で参画をする、あるいは協力をする、外側から支援をする、さまざまな対策があると思うんです。

 これは、ある意味でいうと、先行の投資として、我が国としても一歩前へ踏み出すべき課題ではないかというふうに思いますけれども、重ねて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 インフラ整備に対するさまざまな国々の要求というものがますます大きくなっているというのは事実であります。

 しかしながら、こうしたインフラ整備に対する要求に対しての融資等に関しましては、従来から、既存の多くの国際金融機関があり、この金融機関のもとで、さまざまなルール、秩序のもとに、さまざまな取り組みが行われてきております。

 こうした既存のルールや秩序、こういったものはしっかりと大事にされなければなりません。こうした基本的なルールや秩序をしっかりと守った上で、増大するインフラ整備に対する需要にどう応えていくのか、この点、大変重要だと考えております。

 そういった観点から、AIIB構想につきましては、先ほど申し上げました諸点について、我が国として慎重な検討が必要であると考えているところであります。こういった点から、慎重な立場であるということを申し上げているわけです。

 ぜひ、今後とも、こうしたインフラ整備の需要に対してどう応えていくのか、責任ある議論を進めていかなければならないと考えています。

若井委員 我が国の姿勢いかんにかかわらず、この問題はある程度前へ進んでいく話だろうと私は予想をいたしますけれども、それについては、最低限、しっかりと我が国としても見守っていく必要があるというふうに思います。

 余談ですけれども、さきのエルサルバドルの隣のニカラグアに中国が資金を出して、第二の大西洋、太平洋運河を開削するという話もあるようですが、現実的に、お金の話でありますから、きちんと筋が通った話になるかどうかは別問題。

 そのような意味で、さまざま出てくる開発案件、そしてそれに対する投資、市場の状況によって淘汰もされていくと思いますし、その点については、この間の中国の国際協力の不明瞭性、先ほどからお話にありますけれども、そうしたところも含めて、一定の時間を経過する中でもう少し具体的な方針が見えてくるのではなかろうか、そのように思います。よろしくお願いいたします。

 ちょっと時間がなくなりました。

 前もってお話はしてないんですが、十二日の新聞で、国連から我が国に対しても、あるいは加盟国に対して、エボラ熱、エボラ抑止の資金拠出の要請がございましたけれども、これについて我が国としてどう対処するのか、一言、できればお願いしたいと思います。

城内副大臣 我が国のエボラ出血熱への対応としましては、安倍総理が国連総会演説で表明したとおり、総額四千万ドルの追加支援を行うというものであります。まずは、国際機関等を通じて、ギニア、リベリア、シエラレオネ等の西アフリカ地域において、感染国における感染拡大の防止のための支援を行うとともに、感染者の保健衛生上のケアの提供等、幅広い対応のための支援を行う考えであります。

若井委員 ありがとうございました。

 ほかの質問については次の機会に。どうもありがとうございます。

土屋委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 維新の党の小熊慎司です。

 若井委員のエボラを引き継いで質問したいと思います。ここも野党共闘がちゃんとできているなと。

 まず、エボラ出血熱の対策についてですが、これは本当に猛威を振るっていて、今のペースですと、一週間に千人以上犠牲者が出ている状況ですが、直近のWHOの発表であると、恐らく、ことしの十二月初旬には一週間で一万人の犠牲者が出るという予測すらも出ているところであります。

 今ほど若井委員の質問でもあって、政府の対応もありますし、また、政府におかれましては、国内の対策としては、感染症法改正案を閣議決定されているところでもあります。

 ただ、これは、アフリカだけではなくて先進国にも犠牲者が出始めているという現状の中においては、国際的な連携も非常に必要だというふうに思っています。国内の対応というのは、一義的には恐らく厚労省の所管にはなるとは思うんですけれども、やはり国際連携といった点において、外務省としての取り組み、情報収集とか、また国際機関との連携、各国との連携といったものを含めて、外務省としてはどのように対応していくのか、お聞きをいたします。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 まず、私もODAを担当する政務官として、先ほど木原前任の政務官、委員が御質問ありました。小熊委員におかれましては、今回も質問に入っておりますが、ODAについての大変御所見があり、御活躍をされているということを伺っております。選択、集中、拡大というキーワードで、また、それに関してもいろいろと御指導、御助言をいただければと思います。

 さて、先ほどいただきました、エボラ出血熱の流行に関して日本政府としてどのような支援を行っていくのか、また、WHOとの連携に限らず広く日本の支援について伺いたいとの旨でございますが、エボラ出血熱の流行は、国際社会の平和と安全に対する脅威であり、これは国際社会が一丸となって取り組むべき課題でございます。

 このような認識のもと、安倍総理は、あらゆる施策を講じる準備があると発表しております。各国が約束した支援の早急な具体化と実施が喫緊な課題であり、総理が国連総会にて発表した総額四千万ドルの支援のうち二千二百万ドルは、既に、WHO等への拠出のため、現在、手続を進めているところでございます。

 人的貢献については、既に延べ四名の専門家をWHOを通じ現地に派遣しているが、より多くの日本人専門家をWHOのミッションに派遣できるよう、WHOと調整中でございます。

 そして、個人防護具については、供与を表明した約五十万セットのうち、一部が既に現地に到着しております。また、日本企業が開発し、感染後の治療に効果の見込める候補薬を提供する準備もございます。

 現地の人々の目に見える形で、支援を継ぎ目なく行うべく、引き続きあらゆる支援策を加速させていく所存です。よろしくお願いします。

小熊委員 本当にあらゆる対策をとらなきゃいけないんですが、今回、この問題を取り上げましたのは、WHOに関しましては、とりわけ日本人は国際機関というといいイメージを持ってしまうんですけれども、国境なき医師団からも、このエボラの対策の認識の甘さ、実態把握がおくれていたというところがWHOに関して指摘をされているところでありますし、WHOの事務局長補でさえ、エボラ出血熱には経済的な力学が働かないと言ってしまっているんですね、ことしの八月に。

 結局、アフリカ諸国で起きたことで、犠牲者が置いていかれたみたいなところにもなっているんだというふうに思いますけれども、WHOがいろいろな寄附金を集めている中で、製薬会社等のお金もかなり入っていますから、そうした、もうかる、もうからないということでいろいろな対応が出てしまったという側面を指摘されてもしようがないという部分が、実は、今回の広まった一つの要因かもしれないんですね。

 そういう意味では、日本政府も、WHOといろいろ連携をしていくときに、本当に純粋にこれをどうするかというところをしっかりと捉えてやっていかないと、そういう製薬会社等のまさに利権のためにWHOが動いてしまっているということはしっかりと注視をして、対応をとっていくべきだというふうに思っていますので。これまで起きてしまったことは残念ながら取り返しがつかないわけでありますけれども、こうした国際的な各国との連携、またWHOを初め国際機関との連携の際にも、しっかりと相手の状況を把握した上で取り組んでいかないと、結局はちゃんとした効果が上げられないというふうに思っています。

 このWHOの負の部分というのはしっかりと外務省としても見据えた上で、対応をとっていただきたいというふうに思いますが、再度答弁をお願いいたします。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 WHOとの連携がどのようになっているか、その利権を含め、相手の状況をしっかり把握してとの御質問の趣旨だと思います。

 まず、エボラ出血熱の対応においては、専門的な知見を有する国際機関との連携はやはり不可欠でございます。日本は、WHOを含む各種国際機関と緊密に連携をとってきている状況でございます。

 WHOとの間では、これまでも財政支援、物的支援、人的貢献につき、先ほどお話もありましたが、協議を重ね、支援を実施してきているところでございます。具体的には、財政支援では総額七百十五万ドルの支援を行っており、感染者特定、症状管理、感染予防、国内ロジスティクスといった分野を今対象としております。また、日本は、WHOの枠組みを通じて既に四名の専門家を現地に派遣しているところでございますが、さらにより多くの日本人専門家をWHOのミッションで派遣できるよう、WHOと調整中でございます。

 いずれにおかれましても、利権、いろいろ含め、相手の状況をしっかりと把握しながら、密に連絡をとりながらやっていきたいと思っております。

小熊委員 そうした連携の中でいろいろなまずい点があれば、しっかりとWHOに、日本としても、これは人もお金も出していくわけですから、効果が上がるようにしていただきたいというふうに思います。

 次に移ります。

 先月来日をされましたインドのモディ首相との首脳会談の際に、もう日本としては合意をしていたところでありますけれども、今回、モディ首相が訪米をされて、そして日米印外相会談を実現していくということが合意をし、確認をされたところであります。今、アジア太平洋地域でのいろいろな複雑な国際関係の中で、日米印が連携をしていくということは大変重要なことでありますけれども、この実施に向けての取り組み、また、日本としての狙いといったものをお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の日米印の外相会談につきましては、九月一日、モディ首相訪日時に行われました日印首脳会談において、その開催を追求することで合意をしております。そして、その後、この九月三十日に行われた印米首脳会談においても、日米印の協力の重要性が確認され、日米印外相会合の開催を追求することで合意をした次第です。

 まず、我が国としましては、この合意を歓迎したいと思っております。

 日米印三カ国の協力、これは、我が国が地域と国際社会の平和と安定に、より積極的に貢献するに当たりまして、大変重要な枠組みであると認識をいたします。我が国としまして、この日米印の枠組みを積極的に活用して、そして、その発展に積極的に協力をしていきたいと考えます。

 具体的なタイミングについては、ぜひ、適切なタイミングでの開催に向けて調整を行っていきたいと考えております。

小熊委員 これは、それぞれの国のいろいろな思惑もあるんですけれども、実現をしっかりとして、その後も、一過性に終わるんじゃなくて、しっかりと活用していかなければいけないと思います。

 さらに、この日米印の積極活用という中での、またその派生するところとして、総理も行っていただきましたけれども、オーストラリアとの連携で、この三カ国にプラス豪州を交えた形でやっていくといったことも、これはアジア太平洋地域においては必要であるというふうに思いますし、オーストラリアの中でもそうしたことが指摘をされているのも私は聞いているところであります。

 また一方で、モディ首相との首脳会談で、実現には至りませんでしたけれども、この枠組みを活用しながらも、インドとの外務・防衛閣僚協議、2プラス2ですね、これは先月の訪日の際には日本側が提案されたというふうに聞いていますが、設置には至らなかったんですけれども、とりあえずはこの日米印の枠組みを活用しながら、豪州とどう連携をとっていくのかという点、一点ですね。また、その枠組みの中でしっかり連携をとっていきながら、日印の2プラス2の設置に向けても派生的に努力していかなきゃいけないというふうに思うんですけれども、そこについてはどうでしょうか。

岸田国務大臣 インドあるいは米国、さらには豪州等、こうした民主主義ですとかあるいは法の支配といった基本的な価値観を共有する国々との連携、大変重要だと認識をいたします。また、経済、安全保障を初め、さまざまな課題、分野におきましても、こういった国々との連携は大変重要だと認識をしております。ぜひ、今回合意をされましたこの日米印外相会合を初め、さまざまな枠組みを通じてこうした国々との連携協力を進めていきたいと考えています。

 そして、日印の2プラス2についてお触れいただきました。

 日印2プラス2につきましては、たしかインドは、どの国とも2プラス2は行っておりません。また、日印の間においては、次官級の外務、防衛の協議が存在したと思いますが、インドが行っているこういった協議は日本とだけであったと、たしか、記憶しております。

 こういった日本とインドの関係につきましても、ぜひ大事にしていきたいと考えております。

小熊委員 今回の枠組みの中の、また一方の問題として、これは対中国というのがそれぞれ、アメリカと中国との関係、インドと中国との関係、また日本と中国との関係というのも、その三カ国の枠組みの中の一つの課題としてまたあるというのも事実だというふうに思います。

 ただ、そこは各国によって、対中国というのは、微妙にずれている部分もあるし、一致している部分もあるというふうに認識をしているところでありますので、そういった意味でも、しっかりこの枠組みを維持、活用しながら、共有できない部分も確かにある、分野もあるとは思いますけれども、一致する部分については、しっかりとそれが発展して、さらに連携強化になっていくように求めていきたいと思いますし、大臣も最初に答弁していただいたとおり、早期の実現に向けてぜひ努力をしていただきたいというふうに思います。

 次に移ります。

 この委員会でも何回か質問させていただいて、日本の取り組みについてしっかりとやるという政府の姿勢も確認されたところでありますけれども、ことし九月の一日から四日に行われた第三回小島嶼開発途上国国際会議、SIDSの会議が、これは日本もしっかりと支援をされて成功裏に終わったということは、関係国の大使から私も直接お聞きをしているところでありますけれども、この評価について、まず初めにお伺いをいたします。

城内副大臣 常日ごろ小熊委員がサモアを初め小島嶼国の開発に力を入れていることに、まずもって感謝申し上げます。

 この第三回SIDS国際会議、これにつきましては、九月一日から四日、サモアの首都アピアにて開催されました。

 この会議におきまして、SIDS特有の脆弱性、特に気候変動問題対策の重要性が共有されたところであります。また、成果文書として、今後のSIDSを対象とした取り組みを示すSAMOAパスウエーが採択されるなど、極めて有意義な場でありました。

 我が国は、この会議の準備段階から積極的に関与し、例えば、昨年、国連事務局のSIDS信託基金に五万ドル拠出をしたり、あるいは、サモア政府に対しまして、会議参加者の移動に用いるバス購入のための一億円のノンプロ無償を提供する、そういった形で関与いたしました。

 また、会議本番におきましては、気候変動、防災及び保健分野における我が国の支援策について紹介しつつ、今後三年で同分野における五千人の人材育成を行う旨発表したところであります。

 今後も我が国として、SIDSの抱える課題の重要性に鑑み、SIDSとの連携強化に努めてまいりたいと考えております。

小熊委員 本当に成果の上がった会議だったと思いますし、その中で日本のプレゼンスも上がったし、役割も関係国にしっかりと伝わったというふうに思いますけれども、今回この会議で話し合われた、まさに気候変動とかという部分についても、きょうは答弁は求めませんが、従来質問しているSPREPへの対応といっても、まさにその路線の中ですから、これは今はうまく進んでいるというのは聞いていますけれども、しっかりと速やかにこれも実現を図っていただきたいというふうに思っています。

 このSIDSに関して、その脆弱性ということが今副大臣からも答弁がありました。

 実際、国連の中で公式にカテゴリーとしてあるのは後発開発途上国、LDCであって、この中に、重なってはいますけれども、このSIDSとか、内陸開発途上国、LLDC等が含まれてはいるんです。このLDCから卒業する、その卒業前の移行期間も設けられておりますし、卒業後の移行期間も設けられて、対応はしているところではあるんですけれども、今このSIDSのカテゴリーで言われている脆弱性といったものも、これは実際数値化してカテゴライズされているわけではないというのは私も知っています。なかなか難しいというところがあるんですけれども。

 ただ、こうした、非常に国力の弱いというか先進国とは違う背景、ちっちゃい国といったものを今後どうしていくのかというのは、非常に重要な国際的なテーマだと思いますし、以前もCARICOMのことを質問させていただいて、その後政府も対応をとったということは、きょうの木原委員の質問でも明らかになっているとおりですね。

 そのCARICOMだけではなくて、こうしたLDCの卒業、卒業するといったときの移行期間はありながらも、では、その移行期間でうまく発展につながっているかといえば、卒業した国々を見れば、いまだに脆弱性といったものは解消されていない。それは、小規模な国である、また、島嶼国とか内陸の方で地の利が悪いということで、気象のさまざまな影響も受けてしまったりするというところで、脆弱性の解消になっていないんですね。

 数字上はLDCを卒業するんです、数字はするんですけれども、国民一人当たりの経済的な発展とかを見ても、これは非常に弱いという点があります。

 今回、CARICOMへの支援も決められたというところもありますので、国際的な枠組みの中では卒業というスキーム、仕組みはあるんですけれども、実態としてはその国の脆弱性は解消されていないという点に鑑みて、日本政府としては、外務省としては、卒業した国々の実態についての対応、認識といったものをお聞きいたしたいと思います。

城内副大臣 まさに御指摘のとおりでありますが、OECD開発援助委員会、DACというのがございます。そのDACの基準上、一人当たりのGNI、すなわち国民総所得が一万二千二百七十六ドルを超える国に対する援助は、ODAとしてはカウントできなくなるんですが、まさに小熊委員御指摘のとおり、カリブ小島嶼国等、災害に弱いとか、あるいは都市部と内陸部で貧富の差が大きいとかありますので、そういった特有の脆弱性を抱える国々に対して、具体的には、卒業国であるバハマとかトリニダードトバゴとかバルバドスとかありますけれども、そういった国に対しても、一人当たりの国民所得とは異なる基準から支援を行うことが重要であるというふうに、同じ認識をしております。

 また、中東の湾岸諸国等に対しては、相手国のニーズに応え、先方に相応の負担を求めつつ、日本の技術やノウハウ、例えば海水を真水に変える技術とか、あるいは廃棄物処理の技術とか、そういったものをコストシェア技術協力という形で実施していく考えであります。

小熊委員 一方で、後発開発途上国の側にも問題があるのも事実です。

 このLDCのカテゴリーに入っていればいろいろな恩恵を受けられますから、わざととまでは言いたくはないんですが、そこから卒業しないようにしてしまっている傾向も、これは指摘をされているのも事実ですから。

 ただ、そういう意味では、日本のODA、援助という中には、その国の、地域の自立ということをしっかりとうたっているわけでありますけれども、逆に、自立をしたくない、国際的な恩恵を与えられていた方が楽だ、そういう雰囲気というか、国によってはそんな考えで怠けてしまっているというか、自立しないようにして、恩恵をずっと維持していこうとする傾向も見受けられるのがあります。

 自立した方がこれはいいんだ、自立すべきなんだ、自立するためにしっかり支援をそこまで我々はするんだということが、ある意味理解をされていない、伝わっていないという残念な側面もあるわけでありますから、これは、ODAの戦略的な活用とともに、自立をしっかり促していく、自立を実現させていくということがやはり必要だというふうに思います。

 今のこのスキームの中では、数字上は自立しているんですけれども実際は自立していないから、こういう問題が出ているというふうに思いますし、実際、卒業になってしまったサモアからも、日本政府に対して、関税の優遇措置をまたさらに延長してくれということが文書として届いていて、日本としては、WTOの厳格なルールで例外を認めないで対応しているから、それはできませんということは明確に打ち返してはいます。

 とはいえ、卒業したサモアの今の経済状況が本当に自立した経済になっているか、盤石な経済になっているかといえば、そうではないわけでありますから、違った仕組みの中で、しかも、そういった対象国が甘えの構造にならない形で、さらに、自立に向けた、脆弱性を解消していくという支援、新たな考え方、支援の仕組みも打ち出していかなければ、この問題は解消されないというふうに思うんです。

 新たなスキームの支援策というのを考えるべきだと思いますけれども、これについてはどうでしょうか。

城内副大臣 小熊委員御指摘のとおり、経済協力はいろいろな形がございまして、無償協力、有償資金協力、あるいは技術協力とありますが、まさに自立支援という観点から、やたらと無償をやるというのではなくて、例えば、しっかりと人材育成をして、中長期的にしっかりとした組織と機構を持って自立させていく、そういうような施策も当然考えております。

 いずれにしましても、ODAは我が国にとりまして最も重要な外交手段の一つでありまして、これについてはしっかり取り組んでいく所存であります。

小熊委員 あと、特にこのLDCに関しては、国連の開発政策委員会、CDPで所管していますので、こういう国連を通してでも、新たな国際協力のあり方といったものをしっかり日本政府としても国際社会に提案していく必要があると思います。

 そういう意味では、カテゴライズも、明確な基準があったとしても、なかなかそれにはまらない国もあったり、現状と合わない部分もありますから、まずそうした状況把握をしながら、しっかりと対応を今後とっていただきたいというふうに思っています。

 次に、木原前政務官からも御指摘のあった戦略的ODA、まさに選択と集中と拡大ですね。きょうは、大臣からも拡大という言葉を明確に使っていただいて、非常に心強く感じているところであります。

 まあ、増加に転じているとはいっても、これは現状では、円安傾向の中で為替リスクもありながら、微増ではやはりまだまだ足りません。本当は倍増が狙いなんですが、でも、いきなりというわけにはいかないんですけれども。

 ODAの事業拡大は、もちろん質もしっかり、これは税金を使うわけですから、していかなければいけないんですが、量をふやしていかなければなかなか効果が上がらないというのは、今、一カ国だけの支援ではなくて、まさに面的な地域への支援といったものもされているところでありますから、そういう意味では、質もしっかりしながらも、やはり量も確保していかないとその成果は上がらないわけであります。

 副大臣になる前、城内副大臣も、こういう質問をすると、いい質問だというふうに声援を送っていただきましたが、政府に入ったらそれは変わったということがないというふうに思うんですが、あえて副大臣にお聞きします。この選択と集中と拡大、副大臣としてはどう取り組んでいくのでしょうか。

城内副大臣 今、小熊委員御指摘のとおり、質とともに量も大事でありますし、選択と集中というのもしっかりきめ細かくやっていく必要があります。

 いずれにしましても、ODAは我が国の最も重要な外交手段の一つ、先ほど申し述べたとおりでありますが、政府としては、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく方針であります。

 また、外務省としては、ODAを通じ、国際社会の抱えるさまざまな問題に取り組み、平和と繁栄に貢献していくことは、我が国に対する国際社会の信頼を強化し、国際社会における発言力を維持強化する上でも不可欠と考えており、一層積極的に、戦略的にODAを活用するために必要な予算がしっかりと確保されるよう最大限努力していく考えであります。

小熊委員 内容はいいんですけれども、何かおとなしくなっちゃったなというような。

 きょう、大臣は、拡大という言葉を使っていただいたんですよ。今の副大臣の答弁は、拡大という言葉は入っていませんでした。拡大について。

城内副大臣 御指摘のとおり、非常に我が国にとって大事な外交上のツールでありますので、外務省としては、拡大するようにしっかりと予算確保に向けて努力していくことをここに表明いたします。

小熊委員 これは、ODAに関してはほかの委員も同じだというふうに思いますし、ちょっと資料としては配っていないんですが、今月の月刊誌で、尊敬する長島委員が、外交や安全保障についてはニュアンスやアプローチの違いはあっても、共通軸を持つことは自然なことだと思うということを、与野党を超えてそういうふうにやるべきだということを超有名な月刊誌の中でインタビューに答えているんです。

 私も、やはり外交や安全保障は、もし政権がかわったとしても、大きく百八十度変わったり、急ハンドル、急ブレーキをかけるようなことがあってはいけないというふうに思いますし、この外交、安全保障に関しては、与野党の枠を超えてしっかりと取り組むということが国益に資することだというふうに思っているところであります。

 そういう意味では、このODAの取り組みも、私も政府の足を引っ張ることなく、外務省の応援隊として、今ほど答弁にもありましたとおり、これはやはり、今さまざまな地域紛争、またいろいろな社会の課題というのもグローバル化していて、国境を越えた課題にもなっているところであります。

 きょうは、そこはちょっと質問は避けますけれども、私も前の農水大臣の林さんのもとで国際連帯税といった議連にも入って、そういった中でも、国際的な支援のお金をどう集めていくかというようなことも今調査研究をしているところでありますけれども、このODAに関しては、ことし日本は六十周年という割には、ちょっと国民にまだ認知度が足りていない。いろいろなイベントをやっていますけれども、それぞれのイベントは大事なイベントなんですが、規模とか国民向けのアピール度としては非常に少なくて、これは国民の理解がなければいけないところであります。

 一方で、クールジャパン戦略で何かホームページに十五、六億円使っているなんということがあるのであれば、そういうお金を、ODAのまさに認知度を上げるためにもっと使っていかなきゃいけないところだというふうに思います。

 六十周年ということで、通常国会の中でも大臣に質問したところではありますけれども、本当にこの節目の年にしっかりとした基軸、そして、増額はされているとはいえ、それは本当に微増ですから、本当に日本が今後ODAにしっかりと取り組んでいくということを国内外にお示しをするまさにきっかけとなる年でありますから、きょうは、大臣、副大臣ともに拡大という言葉を使っていただいて、ようやくこれが定着してきて、あとはこれが数字に反映をしなければなりませんから、今後に御期待をするところであります。

 これまでの質疑の中でも言っていたとおり、これは民主党政権でありましたけれども、震災の年にODAを削ったときには、国民の中では、日本が困っているんだから当たり前だろうというのが国民の理解でした。これは超党派でODAを削るなということをやったんですけれども、すごいバッシングに遭いました。やはり国内の理解、ODAの意味づけといったものは、残念ながらまだ進んでいません。私も、地元に帰って、ODAの意味は盛んに説明しているところであります。

 そういう意味でも、この六十周年を契機に、やはり国民向け、国内向けの理解をさらに促進していかないと、選択と集中と拡大も実現をしませんので、この国内向けの取り組みといったものをちょっと今お聞きしたいと思います。

城内副大臣 小熊委員御指摘のとおり、六十周年という節目に向けて、外務省としてもまさに今、我が国のODAのみならず、日本政府のやっていることの発信力ということを先ほど薗浦政務官も答弁しておりましたけれども、そういったことの一環として、国民にこのODAというものがいかに重要であるかということを、小熊委員の御指摘を踏まえて、さらに周知して徹底するよう最大限努力する考えであります。

小熊委員 これは、概算要求のときに本当は三倍ぐらいどんとやって、それで二倍ぐらいでおさまればいいのかなと。そんな簡単なことではないんでしょうけれども、そのぐらいの迫力を持って、ぜひ拡大路線、お願いしたいというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなりましたが、最後に、中根政務官、就任されて御尽力されているところ、これから期待をしたいところでありますけれども、過去も含め、ちょいちょい、新聞、マスコミ等でいろいろお騒がせをする場面もこれまでありましたが、やはり、ぜひ、政務官になられた、とりわけそこは脇を締めて頑張っていただきたいというふうに思いますし、ある意味、外務関係の政務官というのは日本を代表する役職でもありますから、今後ともさらに襟を正して頑張っていただきますことを御期待申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

土屋委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

土屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。青柳陽一郎君。

青柳委員 維新の党の青柳陽一郎でございます。

 この国会から所属政党名が変わりましたけれども、前通常国会に続きまして、外務委員会の委員として頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 また、岸田大臣におかれましては、大臣の再任、まことにおめでとうございます。お祝い申し上げます。

 岸田大臣の堅実な仕事とそつのない国会答弁が高い評価を受けていることの左証だと思いますけれども、ぜひこの国会では大臣のお考えを思い切り披瀝していただきたいと期待しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、安倍政権の外交については一定の評価をしていました。地球儀を俯瞰する外交ということで、多くの成果を上げているのではないかと思えたからです。

 しかし、安倍政権が発足して間もなく二年を迎えようとしていますが、ここに来て、安倍外交の問題点あるいは課題が顕在化してきているのではないかと心配しております。

 我々野党の国会議員は、外交の分野であっても、あるいはオール・ジャパンの取り組みであっても、指摘すべきは指摘し、そして批判すべきは批判しなければいけないという立場で、国会でしっかり議論をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、質問に移りたいと思います。

 まずは、北朝鮮による拉致問題について伺います。岸田大臣の本件に対する現状の認識を改めて伺いたいと思います。

 大臣、現在、この日朝協議について、当初の想定どおりいっているとお考えでしょうか。想定のとおりでないとすれば、何が想定のとおりでないのか、そして、それはどこに原因があるのでしょうか。お答えください。

岸田国務大臣 北朝鮮との間にあるさまざまな課題につきましては、対話と圧力の方針のもとに臨んでまいりました。

 国連安保理決議に基づく制裁に加えて、我が国独自の制裁を発動し、そして圧力を加えてきたわけでありますが、ことしに入りまして、一年四カ月ぶりに対話を再開することとなりました。そして、その対話の中で、拉致問題を含む全ての日本人にかかわる問題について、特別調査委員会を立ち上げるということになった次第であります。

 そして、北朝鮮の対応につきましては、先月二十九日に日朝外交当局間会合が行われ、北朝鮮側からは、初期段階であり、具体的な調査結果を通報できる段階にはないということ、また、調査の詳細な現状については、平壌において特別調査委員会のメンバーに直接会って話を聞いてほしい、こういった説明がありました。

 政府としましては、こうした北朝鮮の説明を踏まえながら、調査の現状あるいは結果を把握するべく引き続き最善を尽くす考えであります。北朝鮮に対して、迅速に調査を行い、そして速やかにかつ正直に結果を日本に通報するよう強く求めていかなければならないと考えています。

 今回の北朝鮮側からの説明を受けてどう対応するかということにつきましては、平壌に政府担当者を派遣するかどうかも含め、拉致被害者の御家族を初めとする関係者、各方面の御意見をしっかりと伺いながら、調査を前に進める観点から、政府全体として総合的に検討していきたいと考えます。

 引き続き、調査等においてしっかりと結果を出すべく努力をしていきたいと考えています。

青柳委員 私がお伺いしたのは、前の国会からもこの問題について取り上げましたけれども、当初の予定どおりいっているのかどうか、いっていないんだとすれば何が問題なのかということをお伺いしたんです。その件についてもう一度お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 特別調査委員会の最初の報告、通報につきましては、当初、夏の終わりから秋の初めということで日朝間で共通の認識を持っていたところであります。具体的なタイミングについて決まっていたわけではありませんが、今回、北朝鮮側から十分な説明が得られていないことについては残念に思っています。

 ぜひ、引き続き北朝鮮側には迅速な調査、そして速やかかつ正直な通報を求めていきたいと考えています。相手のある話ではありますが、我が国の考え方、そして立場はしっかりと北朝鮮側に伝え続けていかなければならないと考えています。

青柳委員 我々日本国民は、拉致問題に対して一番厳しい内閣ができた、拉致問題の専門家、これが多くそろった内閣ができた、この安倍内閣が日朝政府間合意を行って、それに基づいて北朝鮮が調査委員会を立ち上げた、そして、日本はその立ち上げたことを確認して制裁を解除した、安倍内閣がこうしたことを判断したんだから、事態は必ず動くだろう、やっと扉が開いたんだろう、これは家族初め我々国民の多くが期待した、これは間違いないと思います。

 官房長官は一年を待たずして解決すると明言しましたし、今大臣から説明のありましたとおり、第一次報告については夏の終わりから秋の初めには行うということで合意ができていたということなんです。しかし、現実は、今大臣が説明したとおり、このとおりに全くなっていない。北朝鮮の、いつものとおりといいますか、これまでの対応、これは振り回されていると言わざるを得ないのではないかということを心配しているわけです。

 さらに、北朝鮮の専門家いわくは、拉致被害者や特定失踪者などの多くは北朝鮮の国の管理下にあるので、リストは出そうと思えばすぐに出せるはずだということが、これは専門家の多くが指摘していることです。それが、最初の合意からもう既に四カ月たった今でも何も出てきていない、こういう状況です。

 このままこの交渉を続けていくのか、それとも一定のところで再度制裁をかけるのか、あるいは交渉をやり直すのか、こういう選択肢というのを持ち合わせているのかどうか、これもお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 北朝鮮との課題解決につきましては、従来からも、対話と圧力、さらには行動対行動、こうした方針で臨んでまいりました。これからも、この方針に基づいて対応していかなければならないと考えております。

 調査につきましては、引き続き迅速な調査、そして正直かつ速やかな通報を求めていかなければならないと思っておりますが、いずれにせよ、調査を前に進め、そして結果を出すためにはどうするべきなのか、こういった観点から、政府全体として総合的に判断していかなければならないと考えます。

 この方針で、引き続き北朝鮮としっかりと対応していきたいと考えています。

青柳委員 先ほど来、大臣の答弁の中に、対話と圧力という言葉が何度も出てきております。私の懸念は、日朝政府間の合意ができて以降、対話と圧力の中で、圧力をかけていくということがもう忘れ去られて、対話に重きを置き過ぎる余りに、北朝鮮のペースに巻き込まれているのではないかということを危惧せざるを得ない、こういう状況だと思います。

 例えば、七月には三回にわたってミサイルを北朝鮮は発射しています。このときも、制裁発動をするというようなことを検討されたんでしょうか。私にはそういうことは感じませんでした。

 北朝鮮が国際社会の平和に対してチャレンジしてくるのであれば、あるいは我が国に対して誠意のない対応をとり続けるのであれば、いつでも制裁を復活するんだという選択肢は持ち続けなければいけないんだと思います。北朝鮮の時間稼ぎはもう許されないんだと。

 政府には、いま一度、対話と圧力といいつつも、この圧力をきちんと持っているんだという姿勢を示していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 我が国は、北朝鮮に対し、対話と圧力の方針で臨んでまいりました。国連安保理決議に基づく、国際社会と協調する形で行っている制裁に加えて、我が国独自の制裁を発動し、圧力を加えてきました。北朝鮮の厳しい経済状況を考えますと、こうした制裁は一定の効果があったと認識をしております。

 そして、その上で、一年四カ月ぶりに対話を再開したということであります。そして、特別調査委員会の立ち上げに合わせて、我が国独自に発動している制裁の一部について解除する、こういった対応をとったわけでありますが、我が国の制裁自体も、主要な部分については依然そのままであります。

 ぜひ、今後とも、この対話と圧力の方針で臨んでいきたいと思っておりますし、北朝鮮側に対しましては、核実験あるいはミサイルの発射等が行われた場合には、現在行われている北朝鮮との話し合いにつきましても大変深刻な影響を及ぼすことになる、こういった我が国の方針につきましては再三北朝鮮側に伝えているところであります。

 ぜひ、こうした方針で、引き続き対話と圧力の方針で臨んでいきたいと思っておりますし、いずれにしましても、拉致、核、ミサイル、諸懸案を包括的に解決していく、こういった方針は従来どおり変わらず追求していきたいと考えています。

青柳委員 さらに伺いますが、北朝鮮の特別調査委員会について伺いたいと思います。

 そもそも、本年五月二十九日の日朝政府間合意から七月四日の北朝鮮特別調査委員会の調査開始表明までも、既に時間がかかり過ぎているのではないかという指摘もありました。しかし、政府の説明では、この北朝鮮特別調査委員会のメンバーについて評価できるということで制裁解除に踏み切ったというふうに理解をしております。

 そこから既に数カ月たっていますが、この調査委員会のメンバーについての情報収集についてはどのぐらい整理されているんでしょうか、本当に北朝鮮特別調査委員会に一定の権限が付与されていて、そしてこれは金正恩とのつながりもある、意思疎通できるということまで確認がとれているんでしょうか、この北朝鮮の特別調査委員会のメンバーに任せておけば拉致の捜査が解決に向かうという確証を得ているんでしょうか、その辺の情報の整理について伺いたいと思います。

 さらに言えば、例えば、調査委員会のトップであります徐大河委員長、これは国防委員会の幹部であり、国家安全保衛部副部長を務めていると言われていますが、この徐大河氏がどういう人間なのか、本当に権限が付与されているのか、金正恩とのつながりがあるのか、こういうことについてきちんと情報を持っているんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

滝崎政府参考人 特別調査委員会についてのお尋ねでしたので、私の方からお答えをさせていただきます。

 これまで、北朝鮮側からは、この特別調査委員会については、最高機関である国防委員会から特別の権限を付与されていて、そのような権限に基づいて全ての機関を対象に調査を進めることができるという説明を受けております。

 実際問題といたしまして、国防委員会というのは最高指導機関であるということで、今申し上げたように、特別調査委員会に特別な権限を付与しているわけですけれども、責任者は国防委員会や国家安全保衛部の幹部という、今先生から御指摘があったとおりですし、それから、国家安全保衛部、人民保安部、人民武力部といった北朝鮮の主要機関がその参加機関に含まれているという体制を整えておりますので、そういう意味では、きちんとした調査がなされるというふうに我々は考えております。

 ただ、具体的にこれ以上の詳細については、インテリジェンスにかかわる事柄ですので、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにせよ、大事なことは、日本人に関する全ての問題、とりわけ最重要課題である拉致問題について、問題解決に向けて具体的な進展があるということだというふうに考えておりますので、先ほど大臣から申し上げたように、北朝鮮側に対しては、迅速に調査を行って、速やかにかつ正直に結果を日本に通報するようにと強く求めていきたいというふうに考えております。

青柳委員 ありがとうございました。

 ただ、一部の報道によれば、今度の平壌への派遣、調査団を派遣するかどうかの判断の一つに、調査委員会のトップの徐大河氏に会える見通しがついたから派遣に踏み切れるという報道も一部ありました。

 だとすれば、こういう一人一人の情報について、北朝鮮側からの説明に対して日本側でも情報の裏づけがきちんととれているかどうかというのは重要なことだろうと思いますが、これはインテリジェンスにかかわるということだったんですが、きちんと整理されているということを期待しておりますので、しっかりやっていただきたいと思っております。

 次に、今申し上げました平壌への調査団の派遣についてお伺いしたいと思います。

 岸田大臣、もう既に平壌へ調査団を派遣するということをお決めになったんでしょうか。今のお考えをお聞かせください。

岸田国務大臣 現状、拉致被害者の家族の皆様方を初めとする関係各位の御意見をしっかり承らせていただいている、こういった状況であります。この御意見等もしっかり踏まえながら、引き続き、調査を前に進める観点からどうあるべきなのか、政府全体として総合的に判断をしていきたいと考えています。

 そういった方針で検討を進めた上で、結論をこれから出していくことになります。

青柳委員 これは、維新の党も拉致対策本部を立ち上げましたし、私も政府・与野党の連絡機関のメンバーに入れていただいていまして、いろいろな方のお話を聞いておりますが、賛否両論、当然あると思っております。ただ、派遣するのであれば、しっかり果実をとってきていただきたいと思っておりますので、そこは御期待申し上げるところであります。

 次に、北朝鮮の関係で、国連の方の人権状況決議について伺いたいと思います。

 本年二月の北朝鮮の人権状況に関する国連調査報告書、そして三月の人権理事会での決議、これは、拉致問題それから北朝鮮の人権問題を国際社会に知らしめるという意味では大変大きなインパクト、大きな成果があったのではないかと思います。この国連への取り組みも引き続き手を緩めるべきではないというふうに私は考えております。

 そこで、改めて伺いますが、北朝鮮の人権問題の国連への対応について、今まさに国連の総会が開かれているところでありますが、この取り組みをお聞かせいただきたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 委員御案内のとおり、国連総会におきましては、日本が主導いたしまして、二〇〇五年から九年連続、北朝鮮の人権状況決議というものが採択されておるわけでございます。現在開催中の国連総会、第六十九回でございますが、ここにおきましても、我が国はEUとともに人権状況の決議案を提出すべく調整を行っているところでございます。

 考慮要素としては、今委員から御指摘がございました国連調査委員会、COI報告書の勧告をできる限り反映したものとする、それから、拉致問題を含む北朝鮮の人権侵害を解決するためにいかなる方法が効果的なのか、こういった観点もよく踏まえて調整を行っていきたいと考えております。

 もちろん、現在関係国と調整中ということでございまして、詳細な文言について今この場で申し上げるわけにはいきませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、報告書に盛り込まれた勧告というものをできる限り反映したものとすべく、しっかりと日本としては努力していきたいと思いますし、当然、我が国としましては、この決議案が北朝鮮による具体的な行動を求める国際社会の新たな意思表示につながるよう、関係国、国連とも連携しつつ、積極的、主体的な役割を果たしてまいりたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 今の答弁のとおり、きちんとした内容の決議をつくっていただいて、しっかり決議していただきたいと思っております。間違っても、対話が進んでいるから内容が甘くなるというようなことはないようにしていただきたいと思っております。

 そしてまた、国連総会での決議についてはコンセンサスあるいはまた多数で採択されるのではないかと思っておりますけれども、この決議が採択された後、これを実行するあるいは実効性を担保するためには、さらに先の取り組みが必要だと思いますが、これについてはどのような取り組みをされていくおつもりでしょうか。

山上政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、決議の内容が着実に履行されるということは重要でございます。

 やはり、我が国といたしましては、繰り返しになりますけれども、この決議案が北朝鮮による具体的な行動を求めるようになる、そうした国際社会の意思表示となるように役割を果たしてまいりたいと考えております。

青柳委員 安保理への提案はされるんでしょうか。

山上政府参考人 決議案の取り扱いにつきましては、関係各国と現在調整中のところでございますので、今この場でかくかくしかじかと申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

青柳委員 決議案が総会で採択されても実効性は担保されないわけでございまして、具体的な制裁を発動するためには安保理の決議が必要だと思いますので、ぜひ、そこまでやるんだという気迫を見せていただきたいと思います。それが北朝鮮に対する圧力になるのではないかというのは関係者の多くが指摘している点だと思いますので、ぜひ頑張ってやっていただきたいなと思っております。

 それからもう一点、このCOIの報告書あるいは決議案の中に、北朝鮮の政治犯収容所、強制収容所の問題、その存在が指摘されております。報告書の中には、収容所四カ所に八万人から十二万人の政治犯が収容されているという指摘がされております。

 この中には日本人もいる可能性だってあるわけでございまして、今回の日朝の政府間の合意あるいは交渉過程の中で収容所の問題について一切触れられておりませんが、この収容所、事態が進展すると大変大きな問題になるのではないかと思いますが、残念ながら、今ほとんど触れられておりません。

 拉致問題の全面解決には、この政治犯収容所の問題についても避けては通れないのではないかと思いますが、本件に対する取り組みをお聞かせいただきたいと思います。

滝崎政府参考人 今委員御指摘のとおり、COIの報告書には、「政治犯収容所及び収容者の数は死亡や一部釈放のため減っているが、現在も四カ所の大規模政治犯収容所に八万〜十二万人の政治犯が拘束されているとみられる。」という記述がございます。

 五月の日朝政府間協議の合意においては、北朝鮮側は、全ての日本人に関する調査を包括的、全面的に実施する、最終的に、日本人に関する全ての問題を解決するという意思を表明しております。

 これを受けて北朝鮮が七月に立ち上げた特別調査委員会は、全ての機関を対象とした調査を行うことができるという特別の権限が付与されていまして、それで、調査も開始されているということですので、先ほども申し上げましたけれども、政府としては、北朝鮮に対して、迅速に調査を行って、速やかにかつ正直にその結果を通報するよう強く求めていくということでございます。

青柳委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、この拉致問題に一番厳しい姿勢で臨んできた安倍内閣がしっかりと、これまでの方針どおり、対話と圧力というのをいま一度確認していただいて、対話に頼り過ぎて北朝鮮に振り回されるということがないようにいま一度確認していただいて、全面解決に向けて、これはもう本当にオール・ジャパンで取り組んでいくことだと我々も思っております。

 しかし、やはり政府の取り組みにちょっと危うい点があれば、これは指摘せざるを得ませんので、どうぞよろしくお願いしたいと思っております。調査団を派遣するのであれば、きちんと確証が得られる、ここまではきっちり交渉して、その上で派遣していただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

 ちょっと時間の関係で次の問題に移りますが、大臣の所信の中で、日本の外交の三本柱は、日米同盟の強化、それから近隣諸国との関係強化、経済外交の推進、この三つが大臣の所信の中では日本外交の三本柱であるということで所信表明がなされたわけであります。

 この三本柱の一つ、近隣諸国との関係強化の中で、先ほど午前中の質疑では長島委員が日中関係、中国の台頭問題に触れておりましたが、私は日韓関係についてお伺いしたいと思います。

 大臣の日韓関係についての現状の認識、それから日韓の課題、それから日韓関係の打開に向けた戦略をぜひお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、韓国は重要な隣国であります。良好な日韓関係、これはアジア太平洋地域の平和と安定にとっても不可欠であり、我が国としては、大局的な観点から、重層的で、そして未来志向の日韓関係を構築するべく、引き続き粘り強く努力をしていかなければならない、このように考えております。

 日韓関係においては、まだ一度も日韓首脳会談、二国間での首脳会談が開催をされておりません。現時点で日韓の首脳会談に関して見通しがあるわけではありませんが、以前から申し上げておりますように、我が国のスタンスとしては、対話のドアは常にオープンであります。

 私も、先月、ニューヨークにおいて、また八月にはミャンマーにおきまして、尹炳世長官と会談をさせていただきました。今日まで合わせて四回、尹炳世長官とは日韓外相会談を行わせていただいておりますが、それ以外にも、次官級協議あるいは局長級協議、さまざまな実務レベルにおいての会合も積み重ねてきているところであります。

 日本と韓国の間においては、歴史認識あるいは領土問題といった難しい問題は存在いたしますが、こうした難しい問題があるからこそ、条件をつけずに高い政治のレベルで直接対話をすることが重要だと考えております。

 ぜひ、粘り強い対応をしたいと思っておりますし、韓国側にもこうした対話の呼びかけにしっかり応じていただきたいと考えております。そのことによりまして、来年、日韓国交正常化五十周年という節目の年をよい雰囲気で迎えられるよう努力をしていきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 この問いについては、さきの通常国会でもお伺いしました。答弁はほとんど変わっておらないわけです。

 それから、最新の世論調査といいますか最新の調査では、日本人は嫌韓感情がどのぐらいあるかということで、六割が韓国に対して嫌な感情を持っている、韓国は日本に対して七割が嫌な感情を持っているという調査がありました。

 今、首脳会談に向けて努力されているということもわかりましたし、ハイレベルな対話が必要だということもわからなくはないんですけれども、首脳会談を開いて我が国は何を得ようとしているのか、ちょっと国民の皆さんにわかりやすく説明していただきたいと思います。

 必ず韓国は、要人と会えば、先ほど大臣がおっしゃられた慰安婦の問題、歴史認識の問題、竹島の問題を出してくるわけです。我が国はこの問題を絶対譲るわけにはいかないわけです。しかし、一方で対話が必要だ。対話をして何を得ようとするのか、ぜひ国民の皆様にわかりやすく説明していただきたいと思います。

岸田国務大臣 先ほども申し上げましたように、日本と韓国の間においては、歴史認識ですとか領土問題といった難しい問題が存在いたします。こうした問題は、どこの国でも同じでしょうが、やはり国民世論に敏感に影響し、そしてエスカレートしがちな問題であります。

 こうした問題があるときだからこそ、外交交渉を行う者、政治家である者は、国民世論とともに拳を振り上げたのでは、これは関係を安定化させ、推進することはできません。こういった問題があるからこそ、外交にかかわる者、政治家たるものは冷静に話し合わなければなりません。冷静に話し合うことによって、こうした二つの国、大切な隣国関係を安定化させることこそが両国の国民にとっての利益であるという考え方に基づいて、粘り強く話し合うことが何よりも重要なのではないか、このように考えます。

 こうした日韓関係の現状を考えますときに、今申し上げた姿勢で、外交にかかわる者、そして政治家たるもの、話し合いを呼びかけなければならないと思いますし、ぜひ韓国側にもそういった姿勢に応じてもらいたいと強く願っております。

 日韓関係、さまざまな基本的な利益や価値観を共有する大切な隣国関係です。年間五百万人以上の人間が行き来する、経済、文化、スポーツ、安全保障を含めて、さまざまな分野において大切な隣国関係です。こうした二つの国の関係を安定化させるべくしっかりと外交に臨んでいかなければならない、改めて強く感じているところであります。

青柳委員 大変わかりやすく誠実な答弁だったと思います。ありがとうございます。

 最後にもう一件お伺いしたいと思います。産経新聞の加藤前ソウル支局長の起訴の件についても伺いたいと思います。

 ソウル中央地検は、朴槿恵大統領への名誉毀損で、産経新聞の加藤前ソウル支局長を在宅起訴しました。これは明らかに言論の自由の侵害であります。

 そこでお伺いしますが、本件に関して、日本政府はしっかりと対応をとれたのか。そして、本件は外交上の懸案事項になるのでしょうか。韓国はこれは法的手続の問題だとしておりますが、我が国の立場を明確にしていただき、毅然とした対応をとっていただきたいと思いますが、大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 本件につきましては、日本政府として、韓国政府に対しまして、累次にわたりまして懸念を伝え、そして慎重な対応を求めてまいりました。こうした懸念を伝えてきたわけですが、にもかかわらず同支局長が起訴されたこと、このことは報道の自由及び日韓関係の観点から極めて遺憾であり、事態を深く憂慮している旨厳重に申し入れたところであります。

 ぜひ、この問題につきましては、韓国側に対しまして、我々の懸念、憂慮をしっかり伝えることによって適切な対応を求め続けていかなければならないと考えております。

 今後とも、我が国の立場、考え方はしっかり伝えていきたいと考えます。

青柳委員 中根政務官にも通告した内容があったんですが、時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、宮沢隆仁君。

宮沢(隆)委員 よろしくお願いします。次世代の党、宮沢隆仁であります。

 私は議員としては一年生なんですが、昨年から厚労委員会、安保委員会、そしてこの外務委員会に初めて参りました。

 実は私は脳を扱ってきた医者なんですが、この外務委員会こそ政治の最も重要なポジションであろうと認識しておりまして、政治というのは脳を使った総合格闘技であるという言葉もあるくらいなんですが、特にその中でも外交というのは、相手があることですので、非常に難しいものであろうと。そういう意味で、私は、この外務委員会に来ること自体を非常に楽しみにしておりました。

 そして、もう一つは、多分、外交学という学問があるんだろうと思うんですが、医学と同様、恐らく学者の先生もたくさんいらっしゃるでしょうし、教科書なんかもつくったら物すごい厚みになるんでしょうから、プロフェッショナルの外交をやっていらっしゃる方々にはもちろんかなわないことは重々承知しているんです。

 ただ、いわゆる一般人の感覚、すなわち国民の感覚というのは物すごく重要だと思っています。例えば、法曹界の裁判員制度もそこから来ておりますし、医療界でもたまに、医療従事者は患者の視点を忘れるということもありますし、あとは、文科省ではレーマンコントロールという言葉もありますね。

 そういう意味で、私は、本日は、ちょっと前まで普通の国民だった人間として、どっちかというと、野党というよりも国民として質問をさせていただきたいと思います。

 そこで、最初の質問は、余りにファンダメンタルかもしれませんが、外交とは何かという問いかけをさせていただきたいと思います。

 まず、資料一をごらんになっていただきたいんです。

 私も外務省のホームページをあっちこっち飛んで読ませていただいたんですが、一つ、おっと思ったのは、外務省の「よくある質問集」の中のナンバーツーに、「日本の外交には戦略が無いという批判がありますが、外務省はこの点に関してどんな取り組みをしているのですか。」と。

 これは非常に謙虚で結構なことだなと思ってこれを眺めていたんですけれども、ただ、この答えがちょっと、余り満足いかなかったんですね。最終的には、外交を展開しております、それから、強化に努めていますということだったんです。

 実は、あっちこっち、ネットの世界でも論文等でも、日本の外交は戦略がないとか、いま一つ問題があるみたいなことを書いてあるところがあったんですね。これは私の意見じゃなくて、そういう記載があったんですけれども、その点に関しては、官僚の皆さんあるいは大臣を含めて、どのようにお考えになっているかをちょっとお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 外交において、しっかりとした戦略を持って外交を展開するということ、これは大変重要な取り組みであると認識をしております。

 私自身、外務大臣一期目から、日本外交の三本柱ということで、三つの柱を掲げさせていただいてまいりました。日米同盟の強化、近隣諸国との関係推進、さらには日本の経済再生に資する経済外交の推進、この三本柱を掲げてきた次第です。こうした三つの柱を中心に、日本の国益を守り、そして増進する、こういったことは大変重要だという認識のもとにこの三本柱を掲げさせていただいてまいりました。

 そして、戦略という意味では、この外交の三本柱を中心に国益を増進すること、もちろん重要でありますが、それだけでとどまっていたのでは不十分だということも申し上げてまいりました。

 こうした三本柱を中心に日本の国益を増進することとあわせて、環境ですとか、あるいは防災ですとか、軍縮・不拡散ですとか、中東和平ですとか、こうしたグローバルな課題にしっかり日本が貢献する、汗をかくという姿勢も重要だということを申し上げてきました。

 こうしたグローバルな課題に貢献することによって、日本の国の国際社会における存在感を高め、そして発言力を高め、そしてそのことによって我が国にとって好ましい国際環境をつくっていく、こういった視点も重要であるということを申し上げてきました。

 戦略的な取り組みということで、私自身、この外交の三本柱プラスグローバルな課題への取り組み、こういった方針を掲げて外交を進めてきた次第ですが、二期目に入りましても、引き続きましてこうした基本を大事にしながら、それに加えて戦略的な対外発信等、さまざまな取り組みを進めていきたいと考えております。

 戦略の重要性、御指摘のとおりであり、私自身は、今申し上げました戦略的な取り組みを進めていきたいと考えております。

宮沢(隆)委員 ありがとうございました。

 先ほど、青柳議員の後半の質問のときにもかなり似たような、いわゆる外交哲学的なことを述べていただいて、私は実は非常に感じ入りまして、ぜひ外務省で、今大臣の述べられたことをここへ載せたら国民はかなり満足するんじゃないかと思いますので、よろしくお願いします。

 それから、次の質問なんですが、これは資料がウィキペディアで申しわけないんですけれども、ちょっと読みます。

 外交は、本来、政府間の交渉を指し、秘密裏に行うのが慣習である。民間外交や議員外交はセカンドトラックと言われ、これを外交と呼ぶか否かについては疑問を持つ専門家もいる。

 ウィキペディアは誰が書いたかわからないんですが、こういう考え方もあるということなんだろうと思うんですね。これは、ある意味、政府間外交、議員外交、民間外交の三つの柱があるとしたら、やはり最初の政府間外交だけだよねというようなことを言っているんだろうと思うんですね。

 その三つの柱をどのようにお考えかということも、ちょっと岸田大臣に御意見を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 今、国際社会におきましては、グローバル化の進展等によりまして、我が国が直面する外交上の課題、あるいは関係者、ますます多様化しています。その中で、我が国の国益を引き続き守り、増進していくためには、行政府に限らず、立法府、民間関係者、こうした方々も含めたオール・ジャパンでの取り組みが重要であると考えます。

 そういった中で、我が国の外交の一翼を担う議員外交あるいは民間外交、こうした外交が果たす役割はますます高まっているのではないか、このように感じております。特に、議員外交につきましては、それぞれの議員の方々が、それぞれの訪問先において、議員としての立場から、さまざまな高いレベルの御意見、広報、交流活動に従事していただいていると考えております。このように、議員外交、民間外交、そして政府間外交、オール・ジャパンで臨むことが重要だとは考えます。

 もちろん、当然のことながら、外交において最終的な責任を持つのは政府であると思っています。その基本を前提としつつ、戦略的に、議員外交、民間外交、あるいは政府間外交、こうしたものをしっかりと展開していく、こういったことの重要性はますます近時高まっているのではないか、このように認識をしております。

宮沢(隆)委員 よくわかりました。

 このセカンドトラックという言い方は余りよろしくない、この三つの柱が全てが機能して外交をやっていくんだという理解でよろしいですか。はい、わかりました。

 その中で、ちょっと議員外交にフォーカスしたいと思うんですが、資料の二をごらんいただきたいと思います。

 ここに我が党の中田議員が写っているんですが、何をやったかといいますと、これは、九月に六人の議員がフィリピンに行きまして、そして、主に安全保障に関するいわゆる交渉、話し合いをいたしまして、最終的には、ここに写っているのは、真ん中で握手しているのはビアゾン下院国防委員長なんですけれども、何を共同文書としたかといいますと、海洋における法の支配を推進するための協力に関する共同文書というのを、議員同士でサインもして、ペーパーにいたしました。

 いわゆる我々野党の一つが、このように一つの国に行って、このような外交をするということは、現地の外交官の人たちもこういうのは初めてだと言っておりまして、非常に彼らも刺激になったし、勉強にもなったと。我々議員も勉強になりました。実は私、ちゃんとしたこういう外交はこのときが初めてだったんです。

 二〇一三年の一月十八日、ジャカルタのASEANで安倍総理がスピーチしようとしたら、アルジェリアの事件が起こってできなかったという、「開かれた、海の恵み 日本外交の新たな五原則」というのがあります。その中で、これはもちろんアジア中心のお話なんですが、五つをまとめますと、普遍的価値を浸透させる、それから、法とルールによる海の支配、三が、自由でオープンな経済を活性化する、四が、文化のつながりの充実、五が、未来を担う世代の交流。まとめるとこういうことなんですね。これは非常に結構な宣言だと私は思います。

 私が一つ言いたいのは、我々がフィリピンで行ってきたことは、この二番目の法とルールによる海の支配というものを推し進めようということで行いました。これは中田委員がブログ等で主張しているんですが、従来の野党の外交というのは、どっちかというと、その当時の政権の反対のことを向こうで言ったりとか、ちょっと足を引っ張ろうとかという形のことが多かったんじゃないか、でも、この次世代の党はそうではないと。まさに安倍総理が述べられた法とルールによる海の支配を推し進めよう、バックアップしようという意図で言っております。

 ということで、多分、向こうの議員たちも同調してくれて、十人ぐらいの議員がサインをしてくれました。

 こういう外交の仕方もあるんだなというのを、私、ビギナーとして非常に勉強になりました。

 それで、これはちょっとうちの党の宣伝だったんですが、議員外交というのを改めて私が国民だったときの目線でちょっと評価をさせていただきますと、四つぐらいにまとめたんですが、重層型の多チャンネル外交というのが今の現状だろうと思うんですが、若干の混乱があるんじゃないか、統制し切れていないんじゃないかということですね。

 一方で、例えばうちに猪木議員がいるんですが、独自のスポーツというチャンネルを持っている。それを政府が生かし切れていないんではないかというのが私の印象です。

 それからもう一つ、いわゆる議員を引退した方、総理大臣を引退した方が独自外交をやられているようなんですが、それが、国民の目で見ていると、何か日本の国益を損ねているように見えるんですね。

 それからもう一つは、議員ですから仕方ないんですけれども、議員が落選した途端に、ある国とのパイプが突然ぷつんと途切れる。これも、例えばその党で統制していればそういうことは起こり得ないはずですので、そこをうまく制御できないものかというのが印象です。

 以上、四つぐらい、私、一気に挙げましたけれども、こういう視点についてはどのような御意見をお持ちでしょうか。これは参考人ですかね。

上月政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今幾つか、四点、共通の点でございますけれども、大臣申しましたように、オール・ジャパンの体制での外交を展開する必要がある中で、議員外交が果たす役割は高まってきているという基本認識がございます。

 その上で、今いろいろな議員の皆さんの御見識に裏打ちされた意見は、各議員間の交流においてもそれぞれ大きな意味を持つ、それまでの見識、御経験が非常に役立つケースもあると存じます。

 しかし、同時に、我が国の外交政策に対して他国から誤解を招くような事態は回避すべきだと考えておりますので、今、国益を損ねる云々、御指摘ございましたけれども、やはり誤解を招くような事態は回避すべきと考えておりまして、政府としては、議員の皆様に政府の立場を適切に理解していただくべく今後とも努力を重ねるというのが、全体として共通する点かと思います。

 その上で、今幾つか御指摘いただいた点についてお答え申し上げますが、重層型のチャンネルによる混乱ということについて、やはり独自のチャンネルを持っている議員の方の役割というのは、我々も重要と考えております。しかし、同時に、それが我が国の外交政策に対して他国から誤解を招くような事態、これはやはり回避すべきじゃないか。その意味で、そういった動きについては、政府の立場はどうかということについては地道に御説明しているところでございます。

 また、引退議員による独自外交の問題について御指摘がございました。議員在職時からの人脈等を活用していただいて、御引退後も国際交流等に御貢献いただいている事例も存在しますので、一概にどうだというのはちょっと差し控えたいと思いますけれども、これがまた同様に、先ほどの個別の外交政策に対する他国からの誤解を招くような事態、これについてはやはり回避すべきだ、こういうふうに考える次第でございます。

 議員が落選された場合の弊害等の問題につきまして、なかなかコメントの難しいところでございますけれども、できるだけ外交の継承性というものを生かしながら取り組んでいくことが、オール・ジャパンの外交の取り組みとして重要かと存じます。

 以上でございます。

宮沢(隆)委員 岸田大臣も同じコメントということでよろしいですね、同じ意見ということで。

岸田国務大臣 当然、基本的には政府として答弁させていただいております。

 議員外交の重要性の高まりにつきましては、先ほど申し上げたとおりであります。ぜひ、議員外交の重要性に鑑み、そして、そのメリット、そしてこの価値が十二分に発揮できるように、政府としても環境整備に努めることも重要ではないか、このように考えます。

宮沢(隆)委員 もしかしたら、僕はすごいタブーみたいな質問をしているのかもしれないですね。

 僕は今、本当は野党というより国民として、混乱するような外交をやめてほしいと思っているんですね、議員をやめた方とか。少なくとも、政府と何らかの交渉、交流を持って、意見をある程度統一して政府として送り出していただけるなら、僕は非常に結構だと思うんですけれども、極端なことを言えば、議員をやめた方の外交は禁止するとか、そのくらいやっても僕はいいと思うんですよ。じゃないと、ちょっと国民にとっては、正直言って迷惑ですね。多分、僕はいろいろな偉い方々の批判をしているのかもしれないんですが、ちょっとそこは真剣に考えていただいた方がよろしいと思います。

 ただ、野党は野党で党として独自にやるのは、僕は、もちろんこれは結構だと思うんです。ただ、野党もやめて、与党もやめて、議員でないという方が突然行ってどこかの国で仲よくしちゃったとか、そういうのは多分、恐らく皆さん方が一番困るんじゃないかと思うんですね。だから、その辺はコントロールを、コントロールと言うと語弊がありますかね、うまくやるようにしていただきたいと思います。

 では、次にちょっと移らせていただきます。

 先ほど、外交の戦略ということで大臣から非常にいいお話を聞いたところなんですが、私が自分なりに、外交の戦略というのは何か、日本がやっている今までの外交と違う戦略というのがあるものかというふうな視点で、あっちこっち調べてみました、ネットが中心なんですけれども。

 そうすると、その中で、行ったこともない国なんですけれども、ベトナムという国が出てきまして、だんだんこのベトナムの外交というものにどんどん引かれていきまして、大分私なりに勉強しちゃいました。資料三に、「ベトナム外交の戦略と手段」ということで、あっちこっちの資料から引っ張って、まとめていきました。

 一つ一つちょっと読んでみますと、一番は、ベトナム外交は押したり、引いたり、おどしたり、融通無碍の超現実的主義。それから三番に行きまして、ベトナム軍及びベトナム人の持久力と精神力の強さ、戦術の巧みさ。それから四番、硬、これは戦い抜く精神力で、それから軟、外交力の顔を使い分けて大国を振り回す術、すべ。それから五番、大国と対峙する際に、必ずもう一つの大国を引き込む。六番、大国に容易に武力行使させない態勢を築く一方、首脳往来を絶やさない。七番、かつての仇敵でも、必要であれば外交、軍事協力を加速。これはアメリカのことを言っているんですけれども。

 以上をまとめると二番の長い文章になるんですが、その二番の上から四番目の行からですね。結局、ベトナムというのは、ある意味、ベトナムが今困っているのは中国なんですけれども、中国を多国間対話の枠組みに取り込み、武力衝突を回避し、同国の影響力を牽制する、そのためにいろいろな国を引っ張り込んでいる、こういう外交の仕方をしているんですね。

 もちろん、日本とベトナムは、地政学的な特徴も違いますし歴史も違いますので、別に僕はベトナムをまねしましょうと言っているわけじゃなくて、こういうダイナミックな外交もあるんだなというのが非常に私には印象に残りました。

 このような外交をやっている国があるということを念頭に置いた上で日本の外交を見たときに、どのようにお感じになっているかというのをちょっとお聞きしたいと思います。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 まず、ベトナムの外交戦略について、どういうふうに考えるかということでございますので、お答え申し上げます。

 ベトナムは、特に、一九八六年、ドイモイ政策開始以降、全方位外交を掲げ、日米両国を初めとする政治体制の異なる国との間でも、委員おっしゃいましたように、積極的な外交を展開してきております。また、伝統的な協力関係を有する中国、ロシアとの間でも良好な関係維持に努めているほか、ASEAN等の多国間の枠組みにおいても、近年、活発な行動を行ってきております。

 このように、ベトナムは、各国と幅広く友好的な関係を築くとともに、国際社会で積極的な役割を果たすことにより、自国の平和と発展に有利な国際環境の創出に努めているものと考えられております。

 それをもとに、ベトナムの外交政策、我が国の外交政策の違いは何かというのが御質問の趣旨だったと思いますが、まず、日越両国の置かれている国際環境が異なるために、一概にこれを論じるということは非常に困難であるかと思っております。いずれも、各国との良好な関係の維持発展に努めつつ、地域、国際社会の平和と繁栄に貢献しようとする姿勢は一致するものと考えております。

宮沢(隆)委員 そうですね、余り過激なことは言えないだろうと思うんですが。

 私がベトナムの専門家の官僚の方に聞いたところでは、ベトナム人というのは中国人以上にしたたかであるということを言っていました。もちろん、そんなにベトナム人と同じようになる必要はないと思うんですけれども、こういうしたたかさというのは、そろそろ日本人も身につけ始めてもいいんじゃないかなというのが、私の、一議員というより一国民としての印象ですね。

 それから、今もう一つ尋ね忘れたんですが、南シナ海ででは、ベトナムはちいちゃな島に、十数カ所ですか、軍人、民間人を少しずつ送り始めているらしいんですね。既成の事実にしちゃっている。こういう戦略をベトナムという国はとっているんですけれども、先ほども質問にありましたけれども、日本はこういう戦略というのをとれないものか、あるいは今後とる予定があるかどうかということについてはいかがでしょうか。

中根大臣政務官 南シナ海の問題は、地域の平和と安定に直結し、我が国を含む国際社会全体の関心事項でございます。我が国としては、各国が緊張を高める一方的な行動を慎み、法の支配の原則に基づき行動することが、国際秩序形成にとって非常に重要なことと考えております。

 このような観点から、御案内のとおり、安倍総理は、シャングリラ対話で、海における法の支配の三原則、一、法に基づく主張、二、力を用いない、三、平和的解決を提唱し、法の支配が貫徹されることを重視していることを改めて強調いたしました。

 そしてまた、こちらにおられます岸田外務大臣からも、八月のASEANの関連外相会議の際も、各国に対してこれを訴えたところでございます。

 さらに、我が国は、法の支配を確保すべく、関係国に対し、人材育成などを通じ、海上法執行能力の強化という観点から、協力を実施してきております。

 我が国としては、引き続き、法の支配が貫徹されるよう、米国やほかの同志国と緊密に連携していく、また、中国が国際的な規範を遵守、共有しながら、地域やグローバルな課題に対して、より建設的かつ協調的な役割を果たすよう、働きかけていく所存でございます。

宮沢(隆)委員 そう強硬には出られないというのはわかるので、その辺はお任せいたしますが、ぜひ、ベトナムという、そういうスタンスもあるんだということを念頭に置いて、お願いしたいと思います。

 そして、この次は慰安婦問題に入ります。

 余り事件の本質にはちょっと入らないかもしれないんですが、ある教育関係の教授のお話を聞いたところ、慰安婦像が設置されているアメリカのある町とかそういうところで、韓国系、中国系の子供による日本人の子供へのいじめが何かふえ始めているというお話がありまして、どのくらいの頻度で、どのくらいの数で、何カ所で行われているかというデータは、僕は今持ち合わせていないんですけれども、いずれにしても、少しずつ深刻になり始めている。

 それで、領事館等がそのデータをとり始めているというのは官僚の方からも聞いたんですが、これが本当に現地で暮らしている子供や家族に重大な問題になる前に、何とかしなきゃいけないだろうと思うんですね。

 そのための対策として、私が考えただけでも、領事館機能を更新するとか、中国の孔子学院のようなもの、先ほどお話があったジャパン・ハウスがそうなんですかね、そういうものを活性化するとか、それから民間活動への資金援助、これはちょっと部署が違いますけれども、NHKの国際放送の見直し等、述べられている学者の方もいるんですけれども、この点に関しては何か対策はとられておられるでしょうか。中根政務官、よろしくお願いします。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 まず、日本政府としては、御指摘の米国を初めとする諸外国において、各民族系が平和と調和の中で共生することを希望しており、出身国間の意見の違いが持ち込まれることは適切ではないと考えております。

 慰安婦問題に関連しまして現地の在留邦人の子女に対するいじめがあるとすれば、極めてゆゆしき問題であり、到底看過できるものではございません。

 外務省は、在外公館を通じ、現地の在留邦人とともに連携し、関連情報の収集に努めており、そのような事実が確認された場合は、現地司法当局や公安当局に対して、邦人子弟の安全確保への協力を要請するなど、即座に適切に措置を講じる考えであります。

 引き続き、在留邦人の安全の確保に努めていきたいと思っております。

宮沢(隆)委員 鋭意努力はされていると聞いておりますので、情報を集めるだけではなく、パラレルに対策をどんどん講じていっていただきたいと思います。そのための予算がふえるのであれば、私は、それも結構ではないかと思います。

 それからもう一つ、この後は、この間、予算委員会でうちの山田幹事長から大臣に質問がありましたクマラスワミ報告についてです。

 これの詳細を述べていると時間がなくなっちゃいますので、私の質問だけ端的に申しますと、当時の外務省は、このクマラスワミ報告に対する反論をなぜすぐに撤回し、非公開としたのか、それが一点ですね。それから、これは誰の判断で撤回したのかということ。それからもう一つは、今後のことですが、この反論、全く同じものでなくてもいいかもしれませんけれども、改めて再掲載する意図はないのでしょうか、この質問です。よろしくお願いします。

岸田国務大臣 まず、御質問のクマラスワミ報告書ですが、一九九六年二月に国連に提出をされました。そして、我が国は、翌三月、一九九六年三月に、日本政府の見解等を取りまとめた文書を作成し、国連に提出をしました。

 そして、その後に、同報告書に言及する、女性に対する暴力撤廃と題する決議が国連人権委員会において採択されることになりました。この採択に当たっては、このクマラスワミ報告書を歓迎するという肯定的に捉える決議になるか、あるいは単にこの報告書に留意するというふうにとどまる決議になるか、これが問われた次第であります。

 そして、我が国としましては、各国に説明する際に、我が国が提出した、先ほど申し上げました一九九六年三月に提出した文書が詳細過ぎるという指摘を受けて、我が国の立場についてできるだけ多数の国の理解を得ることを目指して、簡潔な文書を改めて作成し、国連に提出をしました。

 結果としまして、各国の理解を得て、同報告書に留意するという表現にとどまる決議におさまったというのがいきさつでありました。

 こういったことから、先ほど申し上げました前者の文書、詳細過ぎるという指摘をされた文書については、非公開にという扱いにとどまったというのが経緯でありました。

 そして、その判断は誰が行ったのかということでありますが、当時の状況を外務省として総合的に判断し、決定をしたものであると認識をしております。

 そして、今後の取り扱いにつきましては、政府としては、今後とも我が国の立場への国際社会の理解を得るために、積極的、戦略的に対外発信に取り組むとしておるわけですので、国際社会の理解を得るのに何が最善の方法かについて、引き続き検討を進めていきたいと考えております。

 そして、その中で、本文書の公開の是非についても検討したいと考えております。

宮沢(隆)委員 ぜひ検討をお願いしたいと思います。そのためであれば、我々の政党も幾らでも協力いたします。

 では、大体私のしたい質問は終わったんですが、非常に私にとっても有意義な質問時間でありました。

 私が感じたのは、先ほど安倍総理が述べられた五原則、それを見ていると、結局、これからの外交というのは、先ほど選択と集中という言葉が出ていましたけれども、その領域に入っていかないと、ボリュームが多過ぎて、例えば外務省だけで全てというのは、恐らく大変で無理でしょうし、それこそ本当にオール・ジャパンでやっていかなきゃいけない。そのためには、やはり分野を分けていって、特化してやっていくというのが賢明ではないかなと思います。

 それからもう一つは、これは私のちょっと持論を、最後に短いレクチャーをさせていただきますが、私が脳外科医になった理由は、脳に興味があってなったんですけれども、その脳を駆使するのがまさにこの外交であるということで、この外務委員会を希望しました。

 最近の脳の使い方の最先端のお話をいたしますと、脳というのは一つの道具と考える。それは、機能は四つに分けられて、本能と感情と知性と直観、この四つを日々、人はうまく駆使しながら使い分けていると言われています。従来は、その中で意識というのがあって、意識はその中に含まれると思われていたんですが、意識というのはそこからちょっと取り外して、意識というものが、さっきの四つのファクターを第三者として見て自分の脳を評価して、それで自分の脳を使い分けるというようなことをやっています。

 これはアメリカの方が書いた本からとった話なんですが、ハーバードとかああいうところを見ていますと、政治の世界、経済の世界に神経科学が入ってきておりますので、これからの日本政府もぜひそのようなスタンスで政治を進めていっていただければと思います。

 これで終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、岸田外務大臣に伺いますが、日米軍事協力の指針、ガイドラインの見直しに関する中間報告についてであります。

 この中で、政府が七月一日に閣議決定した内容をこの指針見直しに適切に反映し、日米同盟を強化するということで述べられておって、そして、その中で、六つ目の項目だと思うんですけれども、グローバルな平和と安全のための協力ということで、対象分野に後方支援というのを挙げております。その理由は何か、伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、今回のガイドラインの見直しの中間報告ですが、我が国の安全保障環境、また一層厳しさを増しています。ミサイル開発、核開発等の脅威は深刻化しておりますし、宇宙、サイバーを初めとする新しい脅威も登場しております。

 こういった環境の中にあっては、どの国も一国のみではみずからの安全、安定を保つことはできない、やはり地域や国際社会全体の平和や安定を考えた上でみずからの安全保障も考えていかなければならない、こういったことで積極的平和主義という考え方を我が国も進めようとしているわけですが、今回のこのガイドラインの見直しの中間報告は、我が国のみずからの領域、国民を守るのとあわせて、こうした積極的平和主義に対応する、こういった考え方に基づいてこの中間報告を取りまとめております。

 こういった考え方の中にあって、さまざまな後方支援を初めとする我が国の取り組みを考えていかなければいけないわけですが、いずれにしましても、今回の報告は中間報告であります。さまざまな課題につきまして引き続きまして日米でしっかりと議論を積み重ね、しっかりとした最終報告に向けて努力を続けていきたいと考えています。

笠井委員 従来のガイドラインは、周辺事態に際しての自衛隊の米軍への支援というのは後方地域支援に限るということで、非戦闘地域での支援に限るというふうにしてきたわけですが、ところが、今度の中間報告では、後方地域という言葉が一切消えてしまっている、見当たらない、後方支援という言葉に置きかわっているわけですけれども、この後方支援という言葉に置きかわった理由について伺っているんですが、大臣、いかがですか。

冨田政府参考人 まず、中間報告の性格自体について、ただいま大臣から御答弁申し上げたとおり、これはあくまで中間的なものでございますので、先生が御指摘になったような用語の問題も含めて、これからの検討の中で決まっていくものだというふうに考えております。

 特にこの段階で、あの用語を使う、この用語を使うということについて、余り重きを置いて我々今作業しているわけではないということでございます。

笠井委員 重きを置いているって、相当これは議論になった問題なんですよ。後方地域だとか非戦闘地域とかという問題ですね。その言葉があれこれじゃなくて、中間的なものだからと言うけれども、あったものがなくなった理由を聞いているんです。

 つまり、これは、七月の閣議決定にあったように、これまで自衛隊が海外で活動できる地域を後方地域、非戦闘地域に限定してきた枠組みを取り払って廃止してしまって、従来、戦闘地域とされてきた場所であっても他国への支援活動、後方支援ができるようにする、そういうことなんじゃないんですか。

 これは、あれこれの用語がどうかという問題じゃないんですよ。相当これは議論があって、その中で言ってきたことであって、今、佐藤さんもそこで笑っていらっしゃるけれども、まさにそういう問題ですよ。そういう問題について、いや、一々言葉があるからないからというものじゃなくて、あったのが何でなくなっているんですかと聞いているんですよ。

 これは結局、従来、戦闘地域とされた場所であっても他国への支援活動をやれるようにということで日米で話している、そういう形での中間報告になっているということじゃないんですか。

冨田政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、今の時点では、あくまでこれは中間報告でございます。したがって、先生から御指摘のある、地域、グローバルの協力についても、項目を列挙させていただいているのみでございます。

 これは単に、後方支援のみならず、平和維持活動、国際的な人道支援・災害救援活動等、とりあえず項目を列挙させていただいているというところでございますので、その中で今後どういう活動をしていくかということについては今後の作業の検討課題、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。

笠井委員 項目を列挙した中に、従来あった項目がなくなって、違う言葉になっているわけですよ。その理由を聞いているんです。

冨田政府参考人 これは、先ほど大臣からも御答弁があったように、前回のガイドラインから我が国を取り巻く国際環境が大きく変化をしているということ、それから、前回は九七年でございますけれども、その後、日米間ではグローバルな場面も含めてさまざまな協力の実績を積み重ねてきております。例えば、二〇一〇年のハイチ地震であるとか、フィリピンの台風被害に対する支援等、日米が協力している広がりというものがございますので、そういったものを踏まえながら、今後、最終報告で検討していくメニューを考えている、そういう項目が先生御指摘のところで列挙してある、こういうふうに御理解をいただければと思います。

笠井委員 おかしな話ですね。

 では、もう一個聞きますが、中間報告では、従来のガイドラインにあった周辺事態という言葉も消えてなくなっています。日本と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生し、七月一日の閣議決定の内容に従って日本の武力の行使が許容される場合における両政府間の協力について詳述するというふうにしておりますけれども、周辺事態という概念を書かなかったのはなぜですか。

冨田政府参考人 先生御指摘のとおり、今回の中間報告では周辺事態という用語は用いておりません。

 他方、繰り返しで恐縮でございますけれども、これは中間報告の段階での取り扱いでございまして、これをもって見直し後のガイドラインにおける周辺事態概念の扱いが決定されたということではございません。

笠井委員 中間報告でも、これまであったことが消えてなくなっているというのは重大問題でしょう。

 閣議決定というのは、日本に対する武力攻撃の発生時だけじゃなくて、日本への武力攻撃がなくても、他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、海外での武力の行使、集団的自衛権の行使ができるとしているわけです。

 この周辺事態という言葉の削除というのは、従来のガイドラインにあった地理的な制約ととられるものですら取り払って、閣議決定に従って、国民の権利が根底から覆される明白な危険があると時の政府が判断すれば、世界じゅうの米国の戦争に日本が支援する、こういう方向での検討をして、中間報告を出しているということじゃないんですか。

冨田政府参考人 繰り返しになりますけれども、周辺事態という用語は中間報告の中で用いておりませんけれども、その取り扱いというのはまだ決定しているわけではございません。

笠井委員 なぜ用いていないかを聞いても、その理由は一切言わないというのはおかしいと思うんですよね。

 私は、九七年の改定のときに参議院議員で、当時、内閣委員会あるいは特別委員会もその後ありました、北米局長、条約局長や、それから防衛省の局長なんかとも、あるいは大臣ともさんざん議論したんですが、安全保障環境の変化という、あのときも大きな変化といってやったわけですよ、九七年の。そのときだって相当時間をかけてやったわけで、そういう中で、周辺事態というふうに言って、それをやってきたわけでありますけれども、結局、従来のガイドラインにあった二つの制約を取り払って、地球のどこにでも出かけていって、戦闘地域でも活動することになるという、極めて重大な内容を含むそういう今度の再改定を日米の両政府間の交渉だけで進める。

 まさにこの間、国会でさんざん議論してきた、その結果、政府はそう言ってきたのに、なぜ今度は一切入っていないのかというと、理由も言わないんですよ、中間だからって。こんなやり方というのは、国民不在、国会不在、民主主義を踏みにじるものにほかならないと私は思います。

 ガイドラインの再改定に向けた作業を直ちに中止することを強く求めたい。

 さて、この問題はまたさらに議論になると思うんですが、きょうはもう一つ。

 岸田大臣、先週になりますか、十月八日の記者会見で、中間報告を取りまとめたSSC、日米の外務・防衛局長級協議の話題に触れて、地域情勢や沖縄の負担軽減を含む在日米軍再編について意見交換を行ったというふうに説明をされましたが、このSSCでは、具体的に、沖縄県の辺野古新基地建設についてはどのような意見交換をされたんでしょうか。

岸田国務大臣 十月八日に東京において開催されました局長級の日米安全保障高級事務レベル協議、SSCにおいては、地域情勢、また沖縄の負担軽減を含む在日米軍再編について意見交換を行いました。

 こうした意見交換を行ったわけですが、この議論の詳細、具体的な詳細については、米側との関係もありますので、明らかにするのは控えなければならないと考えています。

 いずれにしましても、沖縄県内には在日米軍の施設・区域が依然として集中している中、沖縄の負担軽減は最優先で取り組むべき課題であるという認識をしており、米国との間においても累次の機会にさまざまなレベルで意見交換を行ってきているところです。

 四月の日米首脳会談においても、我が国から協力を要請し、そしてアメリカ側からも、沖縄の負担軽減に引き続き取り組みたい、こういった発言があったところでありますし、また、七月に私自身もケリー国務長官と電話会談を行いました。また、八月にも、当時の岸外務副大臣がワーク国防副長官との間でも意見交換を行い、沖縄の負担軽減に向けて協力を要請しております。

 このように、引き続き、できることは全て行う方針のもとで、沖縄の負担軽減に取り組んでいきたいと考えております。

笠井委員 政府も、そして大臣も、事あるごとに沖縄の負担軽減を口にされますけれども、米海兵隊の太平洋基地司令部が昨年まとめた戦略展望二〇二五、ここにございますけれども、こういう基地運用計画書には、辺野古の新基地建設について、政府あるいは大臣の説明と全く矛盾する内容が記されておりますが、大臣はこの計画書というのは御存じでしょうか。

冨田政府参考人 そういう報告書が出ているということは承知しておりますけれども、たまたま今手元に持っておりませんので、内容については、申し上げるのはちょっと控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 大臣に伺ったら、局長が今大臣に成りかわって言われて、大臣ではないと思うんですが、承知していないということですか。

岸田国務大臣 報告書の中身までは拝読しておりません。

笠井委員 この米海兵隊の基地運用計画、戦略展望二〇二五には、辺野古の新基地建設に伴って、航空機や船舶による人員、物資の輸送機能の向上、中部訓練場の飛行高度制限の見直し、家族住宅の整備などを行うということが記されております。

 例えば、新基地を建設するキャンプ・シュワブと同基地に隣接するキャンプ・ハンセンにまたがる、通称なんですけれども、中部訓練場の上空で、米海兵隊が航空訓練のために設定している飛行制限の高度について、こうあります。海兵隊は日本政府とともに特別空域を再設計し、制限の見直しに取り組むとあります。そして、その見直しによって米軍にはさらなる空域が提供されるというふうに明記をされております。

 こうした事実からも、既に米側との間ではこういう協議が進められていたんじゃないですか。どうでしょうか。

冨田政府参考人 大変恐縮でございますけれども、報告書が手元にございませんので、先生のおっしゃったことを確認するすべがございませんので、それについて協議を行ったかどうかということについても、御答弁は現時点ではできません。

笠井委員 報告書について、今手元にあるかどうかを聞いているんじゃなくて、報告書に書いてあるような、アメリカの海兵隊がそうした空域の再設計をして制限の見直しに取り組むといって、さらなる空域が提供されると明記している、これを日本政府とともにやるというふうに言っていることについて、さっきのSSCでいうと、冨田局長もそこに出席しているわけですよね。そして、沖縄の基地の負担軽減を議論していたわけでしょう。そういうときに、そういうことも含めて話が出ているかどうかの問題なんですよ。そういうことをやっているんじゃないですかと聞いているんです。

 この報告書を知っているか、ここに書いてあるかどうかを聞いているんじゃなくて、書いてあることで米軍がやると言っていることを、実際、日本政府と協議しているんじゃないですかと言っているんですよ。やっていないならやっていないと言ってください。

冨田政府参考人 当然のことながら、米国とはこの普天間の移設のあり方についてさまざまな角度から協議を行ってきておりますけれども、その具体的内容については、米側との関係もございますので、つまびらかにすることは差し控えたいと思います。

笠井委員 ほら、協議をやっているわけですよね。

 報道によると、米海兵隊は、空域の高度拡大について、二〇一〇年に日本政府側に、議論するのに適切な時期はいつかと打診をして、今後数年のうちにこの問題に対処することで合意したということを明らかにしておりますが、そういうことじゃないんですか。

冨田政府参考人 繰り返しでございますけれども、今先生が御指摘になった論点につきまして、確認するすべがございませんので、御答弁は控えさせていただきます。

笠井委員 確認するすべじゃなくて、いろいろな意味で協議している中にこういうことがあるかどうかを聞いているわけで、局長は当事者なんですよ。

 米海兵隊によれば、日米政府間では、現在、シュワブ上空で高度六百十メートルまで、ハンセン上空で高度九百十四メートルまで飛行制限空域としているものを、最大、二倍以上の千二百十九から二千四百六十九メートルの高さまで引き上げるというわけであります。

 実際、戦略展望二〇二五にも、中部訓練場の高度制限をレイズする、引き上げるということで訓練が向上するというふうに述べております。はっきり書いてある。米側は、辺野古沖を埋め立てて建設する新基地に加えて、上空でも行動範囲を拡大することで、米軍の訓練空域と水域を一層広げようとしていることが読み取れるわけであります。

 さらに看過できないのは、この訓練空域の高度拡大の狙いであります。

 戦略展望二〇二五には、責任区域、AORにおける次世代主力戦闘機の導入に向けて、日本政府が提供する特別使用空域の利用拡大に取り組むというふうに説明しております。

 この次世代主力戦闘機について、米国防総省側は、マスコミの取材に対して、域内でのF35ステルス戦闘機の運用性を高めるため、訓練空域を利用可能な状態に整備する必要があるというふうに述べて、既に日米間では協議は始まっているというふうに言っております。

 辺野古の新基地もF35の運用対象だと認めている、そういうことなんじゃないですか。大臣、どうですか、これは。

冨田政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、御指摘の点について確認できませんし、それから、先ほど申し上げたとおり、普天間移設に関して米側とさまざまな形で協議をしておりますけれども、その詳細についてつまびらかにすることは、アメリカとの関係で、差し控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 いつもそういうことを言って、結局、出てきたら、もうやりましたという話になるわけですよ。

 辺野古の新基地でのF35ステルス戦闘機の運用問題については、私、ことしの二月の二十一日と、それから三月七日の当委員会で指摘もし、岸田大臣の見解をただしたことがありますけれども、それが事実だったということがこの米海兵隊の戦略展望二〇二五からも明白になったということだと思うんですよ。

 以前にも指摘をしましたが、辺野古新基地の建設に伴って政府が二〇一一年に沖縄県に提出した環境アセスでは、F35戦闘機というのは対象機種に含まれておらず、住民の生活や自然環境などへの影響は全く調査をされていない。これは間違いないですね。大臣、これはいかがですか。

冨田政府参考人 大変申しわけございませんけれども、御指摘の資料は手元に持ち合わせておりませんので、御答弁は差し控えさせていただきます。

笠井委員 あるかないかを聞いているんですけれども、こういうことも知識を持たずにアメリカと交渉しているんですか、協議しているんですか。

冨田政府参考人 委員会で御答弁する以上は、正確を期したいということでございます。

笠井委員 この間のSSCでも、負担軽減の問題についてアメリカと協議した、アメリカ側も要求を持っている、それを出しているはずです。そういう問題についていろいろ協議していて、局長は、もうあらゆることについてきちんと情報はあるし、この問題についてはどうなのかぐらい、知らなかったらアメリカとの交渉になんかならないですよ、協議に。

冨田政府参考人 米国との協議の内容につきましては、先ほど外務大臣からも御答弁申し上げたと思いますけれども、その詳細についてこの場で御説明するということは差し控えさせていただきたいと思います。

笠井委員 岸田大臣も先ほど言われたし、総理も繰り返し負担軽減なんだということを言われているわけですよ。

 つまり、沖縄に新基地をつくることによって負担がどうなるか、どれだけ減るのか、どこがどうふえるのか、拡大するのか、あらゆる問題について説明できなかったら話にならないじゃないですか。最大の目玉なんでしょう、政府だって。負担がどうなるかというのはポイントじゃないですか。

 具体的なこういう問題について、アセスに入っているのか入っていないのか、これぐらいの話も答えられないという話になるんですか、今、政府、大臣も含めて。私だって前もやりとりしましたよ、この問題。

冨田政府参考人 大変恐縮でございますけれども、今先生から具体的に御指摘があった点については、事前に御通告いただいていない点でございます。私の方も、この負担軽減についてはさまざまな形で取り組んでおりますけれども、委員会の場で御答弁するためには、正確を期して御答弁をしたい、こういうことでございます。

笠井委員 私は通告をいたしました、負担軽減問題について聞きますよと。そうしたら、負担軽減をめぐっては論点はあるわけですよ。米側の要求もあるわけですよ。それについて具体的にどうかということで、これは基本的なことで、イエスかノーかぐらい答えられないのか、アセスがあるかないか。正確といったって、やっているかやっていないかの話ですよ。

 まさに、本当に沖縄県民、日本国民が、一体、新基地というのはどうなるのかといって、なっているわけです。まさに、アセス自体の前提がどうなるかで変わってくる重大問題について聞いている。

 そして、F35といえば、アメリカのフロリダ州では、エグリンの基地周辺で訓練拡大が計画されたけれども、住民らの反対で中止に追い込まれた経緯がある。また、ことし六月末に、同じくフロリダ州で起きたエンジン出火事故を受けて、翌七月に全機が飛行停止になるなど、安全性にも重大な問題が、本国アメリカで指摘されている問題ですよ。

 そういうものを日本に配備する、それで沖縄にやってくる、それで、それを使うために空域という話が議論になっているというものについて、そういうことは協議中だとか、あるいは通告がないから答えられないという話にならないと思うんですよ。私は、これは国家主権、国の主権に関する問題だ。

 大臣に最後に伺いますが、そもそも、沖縄はおびただしい制限空域と海域に囲まれていて、制限空域の総面積は九万五千平方キロメートル、沖縄の県土の四十二倍にも及んでいる。それをさらに拡大するということになると、それはやはり負担軽減にならないということになりますよね、拡大することは。それはどうですか。

岸田国務大臣 まず、沖縄につきましては、日本の国土の〇・六%の地域に在日米軍の施設の七四%が集中している、こうした状況にあります。こうした負担を軽減するために、我が国として、最優先で取り組んでいかなければならない、当然のことであります。

 そして、普天間基地の移設等におきまして具体的な作業を進めているわけでありますが、具体的な負担軽減につながるかどうかという評価につきましては、面積のみならず騒音など、さまざまな観点から沖縄の負担軽減について考えていかなければなりません。

 ぜひ、さまざまな視点から、沖縄の負担軽減につながるような結果をしっかり出していきたいと考えています。

笠井委員 米軍の制限空域の拡大、彼らがこれをやりたいと計画しているということについて言うと、日本にとっては、自国領域の主権を制限して、そして負担軽減を求める県民の権利にさらに制約を加えることを意味いたします。

 米海兵隊の戦略展望二〇二五は、辺野古新基地の建設に伴って、県民を締め出す空間を一層広げるという訓練空域の拡大を通じて、機能強化を図ろうとする米側の戦略を改めて浮き彫りにしていると思います。

 そういう意味でも、新基地建設に断固反対の立場を表明して、きょうの質問は終わります。

土屋委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 先ほど来の笠井委員と北米局長並びに外務大臣とのやりとりを聞かせていただいて、きょうは通告をしていませんので、この沖縄における負担軽減についてはまた改めてしっかりと議論をさせていただきたいと思いますが、しかし、それにしても、アセスが行われて、それを県知事が了承したことを前提に、国は強引に辺野古への新基地建設を進めているという厳然たる事実があります。

 そういうことを考えると、本当にアセスの中に不備があったのかなかったのかということについては、いかなる場合であろうとも、資料を手元に置いて、しっかりと答えられるようにする、それが政府としての当然の、国民の代表たる、この外務委員会の委員に対する真摯な答弁ではないかというふうに思います。

 ぜひ、そのことをしっかりと、準備を万端整えていただきますようお願いを申し上げたいと思います。

 では、気を取り直して質問をさせていただきます。

 まず、総理の外国におけるスピーチ、演説について質問をさせていただきたいと思います。

 総理は、去る九月、第六十九回国連総会で、安倍内閣総理大臣の一般討論演説というのを行っております。この中では、いろいろな目標を掲げておりますけれども、一番の日本国総理としての目的というか言いたかったことは、この段落にあるのではないかと思います。

 日本は八十番目の国として国連に列した一九五六年以来五十八年の長きにわたって、国連の大義にみずからをささげ、その努力において人後に落ちない国であると確信する、そしてさらに、二十一世紀の現実に合った姿に国連を改革して、その中で日本は常任理事国となり、ふさわしい役割を担っていきたいと考えているということを言っておりますが、いろいろなことを言っている中で、実はこの一点が最も言いたかった内容ではないかなというふうに思います。

 その内容について、では、どのようなポイントから質問させていただくかということについて、まず、この国連演説の、不戦の誓いというフェーズを紹介させていただきたいと思います。

 ここには、日本の未来は、既往七十年の真っすぐな延長線上にありますということで、国連発足七十周年を明年ことほぎたいということであらわれていますが、そこで、不戦の誓いこそは日本の国民が代々受け継いでいく、育てていくものです、紛争がその居場所を我々の心と生き方の中から失って初めて、平和は根をおろしますと、しっかり不戦の誓いということをここで述べられています。そしてさらに、その後の段落では、しかも、人の心からウオーカルチャーをなくそうとし、労を惜しまぬ国であると、そう申し上げ、約束としますというふうにおっしゃっています。

 この国連演説の中で、あえてここで、この不戦の誓いの理念とウオーカルチャーの根絶を総理が演説の中に盛り込んだその目的とは何でしょうか。

岸田国務大臣 安倍総理は、ことしの国連総会の一般討論演説におきまして、来年、国連創設七十周年を迎えるに当たり、日本として、これまでの約七十年間の平和国家としての歩みを継続していく意思を改めて確認し、積極的平和主義の考えのもと、これまで以上に世界の平和と安定に積極的に貢献していく、こういった決意を表明いたしました。

 御指摘の演説の箇所につきましては、これまでの平和国家としての歩みをしっかり引き継ぎつつ、これまで以上に積極的に国際貢献を行っていく、こういった考え方を示したものであります。

玉城委員 この総理の不戦の誓いという言葉が実は安倍総理から消えたのではないかというのが、国内のさまざまな場所で、この不戦の誓いが織り込まれていなかったというふうなことを私も仄聞しております。

 やはり、国連の演説の中でこういうふうに不戦の誓いを述べるということは、日本国の方針そのものを示したことであるということに関しては、私は大変意義深いものがあるというふうに思っている次第でございます。

 続いて、女性のエンパワーメントについて伺います。

 女性のエンパワーメントの活用について、女性の地位向上のための支援、これは、女性の地位向上を主眼とし、三年で三十億ドルを超す支援を実施すると約束し、これまでの一年間で既に半分以上の十八億ドルを実行したというふうに述べられています。

 これまでのこの努力についてどのようなことが行われたのか、御答弁をお願いします。

中山副大臣 ありがとうございます。

 委員御指摘のとおり、昨年の国連総会の一般討論演説で総理が表明しました三年で三十億ドルを超す支援につきましては、既に昨年の一年間で約十八億ドルを実施いたしております。

 うち女性の社会進出や能力強化のための支援の具体例としましては、パキスタンにおける中等教育施設整備を通じた女子就学率の向上、アフリカにおける女性起業家の活動促進のための研修及びバングラデシュにおける女性のビジネススキルアップを通じた生計向上のための支援等を行っております。

玉城委員 後ほどまたアフリカ連合でのスピーチの件に関しても、その件に関連して聞かせていただきたいと思います。

 続いて、ODAの件について伺います。

 きょうの委員会でも、選択、集中、そして拡大という、このODAに対する期待と申しますか、やはり日本にとって、諸外国に対してしっかりとした信頼関係を打ち出していくためのODAについては、さらに力を注いでいくべきであるという各委員からの意見が述べられておりました。

 この総理演説の中では、本年、そのODAの政府開発援助を始めて六十周年の節目を迎えるという中にあって、質の高い成長、法の支配の確保、平和で安定した社会の実現などを、改めて我が国ODAの重点目標として強調したいというふうに、新しい指針を示していきたいというふうに述べられています。

 この新しい指針についてですが、これまでのODAのいわゆるあり方について大幅に変化させるものであるのか、つまり、もっと縮小しようとするものであるのか、それともさらにスケールアップ、更新しようとするものであるかについて、その内容をぜひお聞かせください。

中山副大臣 お答え申し上げます。

 総理が国連総会の一般討論演説で述べられたとおり、ODA六十周年に当たる本年、ODA大綱の見直しを進めているところであり、本年六月に提出されましたODA大綱見直しに関する有識者懇談会の報告を踏まえ、現在、政府部内で検討をしているところであります。

 新大綱の具体的内容につきましては、いまだ政府部内で検討中ではありますけれども、一つ、質の高い成長とそれを通じた貧困撲滅、二つ、グッドガバナンスや法の支配の確保、平和、安定、安全の強化等の発展の前提となる基盤の強化、三つ、地球規模課題への取り組みを通じた持続可能で強靱な国際社会の構築の三点は、有識者懇談会の報告におきましても重点課題として指摘されており、政府といたしましても、これを土台にした検討を行っております。

 今後、政府案がまとまった段階でこれを公表し、広く国民からの御意見もいただきつつ新たな大綱の策定を目指す考えでありますので、どうか御指導賜りますようによろしくお願いいたします。

玉城委員 ありがとうございます。

 この総理の国連演説の中では、唯一の戦争被爆国として、被爆七十周年となる明年のNPT運用検討会議で、議論を主導していく覚悟ですというふうにも述べられています。

 ですから、そういうふうに核のない世界をつくるためにも、そして、ODAがよりその地域の自立につながっていく方向性であるためにも、日本らしく、しっかりと国際社会に対して明確なメッセージを出していただきたいというふうに思います。

 続いて、本年一月、アディスアベバ、アフリカ連合の本部でのスピーチについてお伺いいたします。

 このスピーチで、冒頭、総理は非常に心励まされるコメントを発していただいています。ネルソン・マンデラ南アフリカ共和国元大統領の足跡に思いをいたしという段落に続いて、人は希望を失ってはならない、失うとき、人は、運命にみずから働きかけることをやめ、その奴隷と化してしまう、そういうふうに、マンデラ氏は生涯を通じ、その身をもって、私たちに教えてくれたのだと思いますというコメントを出しています。

 つまり、これこそが、諦めずにしっかり頑張ることによってみんなが発展していくという、まさに、総理が今国会の冒頭で述べていた、やれば、できる、そういう思いに通じるものなのかというふうな感がいたします。

 そこで、その中で、今度はこのAU本部における演説の中から、日本はアフリカ開発銀行と一緒につくるEPSAで円借款を行っております、そこで、二〇一二年に五年で十億ドルを拠出するという約束をしました、今回、同じ期間、つまり二〇一二年に五年間で十億ドルと言ったのを、二倍の二十億ドルにしますというふうにおっしゃっていますが、この目的についてお知らせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 我が国は、まず、二〇〇五年、G8グレンイーグルズ・サミットに引き続いて、二〇一二年のG8キャンプ・デービッド・サミットにおいて、アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアチブ、EPSAのもとで、新たに今後の五年間で十億ドルを上限とする円借款供与を表明いたしました。

 このEPSAの目的ですが、アフリカのさらなる成長のためには民間セクターの発展が不可欠との認識のもと、アフリカ開発銀行との協調融資や同行を通じた民間セクター向けのツーステップローンを通じてアフリカの民間セクター開発を包括的に支援すること、これがEPSAの目的であります。

 よって、御指摘の我が国の取り組みにつきましても、アフリカの民間セクター開発を包括的に支援すること、これが目的であると考えております。

 こうした認識につきましては、昨年の六月に行われました第五回アフリカ開発会議、TICAD5におきましても、アフリカ各国と我が国、認識を一致しているところでございます。

玉城委員 ありがとうございました。

 時間がありませんので、次に、エボラ出血熱の対応についてお伺いしたいと思います。

 WHOは、二次感染防止へ体制強化をということでニュースを発しておりますが、エボラ出血熱やその疑いによる死者がこれまでに四千四百人を超え、感染者の数は今週中に九千人に達するとの見方を発しています。そして、医療従事者がエボラ出血熱の患者からウイルスに感染したと見られるケースが相次いだ原因などについて、こうした二次感染を防ぐため、各国が医療機関の体制を強化することが必要だという認識を示しています。

 そして、総理は、先ほど紹介いたしました国連総会における討論演説の冒頭でも、このエボラ出血熱との闘いということについてしっかり述べておられます。

 アフリカにおける健康問題に対処するため五億ドルを準備しているということ、そして、健康、医療に携わる約十二万人を対象にして教育プログラムを始めること、さらに、WHOの一員として専門家を派遣し、資金の援助総額五百万ドル、そして、その防護具を約五十万着供与、総額で四千万ドルに上る追加支援などなどを挙げておられます。

 ここで大臣にお伺いいたします。このエボラ出血熱に関する国連演説における取り組みの具体的な内容があれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

中山副大臣 玉城デニー委員御指摘のとおり、エボラ出血熱の流行は国際社会の平和と安全に対する脅威であり、国際社会が一丸となって取り組むべき課題であります。このような認識のもと、安倍総理は、あらゆる施策を講じる準備がある旨を発表いたしました。

 各国が約束した支援の早急な具体化と実施が喫緊の課題であり、総理が国連総会にて発表した四千万ドルのうち二千二百万ドルは、既に、WHO等への拠出のため、現在手続を進めているところであります。

 人的貢献につきましては、既に延べ四名の専門家を、WHOを通じ、現地に派遣しておりますが、より多くの日本人専門家をWHOのミッションに派遣できるよう、WHOとも調整をいたしております。

 個人防護具につきましては、供与を表明した約五十万セットのうち一部が既に現地に到着しております。また、日本企業が開発し、感染後の治療に効果の見込める候補薬を提供する準備もあります。

 現地の人々の目に見える形で支援を継ぎ目なく行うべく、引き続きあらゆる支援策を加速させていくということでありますのと同時に、委員からはタイムリーな御指摘だというふうに思います。

 特に、本日、十五日午前十時から約二十五分間、安倍総理はバラク・オバマ米大統領と電話会談を行ったところであります。両者間において、エボラ出血熱の流行は国際社会の平和と安全に対する脅威であり、国際社会が一致して取り組むべき課題だということを確認しました。安倍総理より、この問題に対する日本の支援を説明した上で、あらゆる支援を加速化させていく旨説明をし、これに対し米大統領からは、日本の支援に対する謝意が表明され、今後も日米で緊密に連携してこの問題に対応していくことで一致いたしております。

玉城委員 そうなんですね。

 実は、本当に大変悲しいことではありますが、アメリカでも、初めてエボラ出血熱と診断された方が亡くなっています。この方は、リベリアを出国する直前に、十九歳の妊婦さんが病院行きのタクシーに乗るのを介助した。この妊婦さんは、実はこの日の夕方に亡くなっているんですね。エボラ出血熱による死亡と診断されています。その後、一連の出入国では、このアメリカで亡くなった男性は感染症状を呈していなかったんですが、出国五日後の九月二十四日ごろから発熱が始まっていったということで、結果的にはお亡くなりになったということです。

 一つ質問を飛ばしまして、厚生労働省の感染防止の徹底に関する取り組みを伺いたいと思います。

 厚生労働省のホームページにもエボラ出血熱に関するQアンドAが載っています。例えば、せきやくしゃみを介して人から人に感染するインフルエンザ等の疾患とは異なり、簡単に人から人に伝播する病気ではありません、症状のない患者からは感染しません、空気感染しませんというふうなことも含めて、この機会にしっかりと国民の皆さんに注意を喚起する、そういう徹底した取り組みも必要ではないかと思います。厚生労働省、そのお考えがあれば伺います。

新村政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の西アフリカにおきますエボラ出血熱の流行につきまして、厚生労働省といたしましては、感染経路や予防方法などを含め、QアンドAを作成し、ホームページにおいて広く情報提供を行っているところでございます。今委員から御紹介いただいたとおりでございます。この中で、エボラ出血熱が、インフルエンザなどとは異なり、血液などの患者の体液と接触することにより感染する疾患でございまして、国内で流行する可能性が低いことなども周知をしております。

 また、検疫所におきましても、ホームページによるエボラ出血熱に関する情報提供を行っております。

 また、出入国者の方に対しては、ポスターなども活用して、エボラ出血熱の発生状況等について注意喚起をしておりますし、また、発生国への滞在等が把握できた在留邦人の方に対しましては、企業、団体などを通じて、エボラ出血熱の予防などの必要な情報提供を実施しております。

 厚生労働省といたしましては、引き続き、WHO等の関係機関とも連携しつつ、国際的な感染動向を注視するとともに、その状況も踏まえ、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

玉城委員 国際機関との連携、本当に欠かせない協力だと思います。国境なき医師団からも、二次感染の深刻な問題などの報告も上がってきております。

 ぜひ、海外のみならず国内でもさまざまな形でしっかりと告知をし、この対策について万全を期していただきたい、そのことをお願いしておきたいと思います。

 では、最後に、時間まで、日米防衛協力のための指針見直し中間報告について伺います。

 まず、外務大臣に伺います。

 九七年のガイドラインから改正される、今回の中間報告の時点における重要な点、改正する期限などについてお伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、今回の中間報告ですが、これまで日米間でガイドライン見直し作業を行ってきたものを要約したものであって、これをもって見直し後のガイドラインが決まったものではありません。ですから、今の時点で現行のガイドラインとの比較をするというのは適切ではないと思いますが、少なくとも、今の時点で日米両政府が共通認識に達している点としまして、午前中も答弁させていただきましたが、三点挙げられるのではないかと考えています。

 日本の平和と安全の確保に関して、平素から緊急事態までのいかなる段階においても、切れ目のない形で、日本の安全が損なわれることを防ぐための措置をとることとしているということ、また、地域及びグローバルな平和と安全のための協力について、より平和で安定した国際的な安全保障環境を醸成するため、さまざまな分野において協力を強化していくということ、そして、新たな戦略的領域である宇宙及びサイバー空間における協力を進めていく、こういった点については共通認識に達していると考えております。

 引き続きまして、このガイドラインの枠組みと目的に沿いまして、しっかりと議論を進めていきたいと考えております。

 スケジュールにつきましては、御案内のとおり、昨年十月の日米2プラス2の際に、本年末までにガイドラインの見直しを行う、こういった点で一致をしているところであります。まずは、スケジュールとしては、今確認されているスケジュールに基づいて努力をしていかなければならないと考えています。

 そして、その際には、ガイドラインの見直しと我が国の安全保障の国内法制の整備、これにつきましてしっかり整合性を保つということについて、しっかりと留意しておかなければいけない、しっかりと努力をしなければいけない、このように考えています。

玉城委員 防衛省、外務省、特に防衛省の安全保障に関するペーパーを読んでみますと、シームレス、継ぎ目、切れ目のない、そういう政策をとっていくというふうなことが必ず出てきます。

 現行の指針では、平時、周辺事態、日本有事の三つの事態について、日本への侵攻や朝鮮半島有事を想定した自衛隊と米軍の役割分担をそれぞれ定めているということで、この周辺事態の区分けをなくしているということが、実は、きょう配られました外務調査室の十月九日付日経新聞の記事でも、こうやって載っています。

 そして、自衛隊が何をどこまで担うのかわからないという曖昧な点も多いということ、オーストラリアや東南アジア諸国連合を念頭に、地域の同盟国やパートナーとの安保協力の推進もうたっているなどなど、この改正によって、米軍を含む他国軍への支援、地理的制約の撤廃、それから装備強化など、際限のない安保環境が想定されていくことに対しては、さまざまな懸念が生じております。

 中間報告の中でこれだけの懸念があるわけですから、これからさらにもっと審議はしっかりと深めていかなければならないと思いますが、その想定されていく懸念に対して、防衛省の見解を伺います。

原田大臣政務官 お答えを申し上げます。

 今回の中間報告では周辺事態という用語は用いておりません。他方、中間報告の段階であり、これをもって見直し後の指針における周辺事態概念の扱いが決定されたということではございません。

 また、例えば第六章では、地域、グローバルな協力について記述をしておりますが、これは、日米両政府が、より平和で安定した国際的な安全保障環境を醸成するため、さまざまな分野で二国間協力を強化するといった考え方に基づき、日米両国の協力分野に含まれ得るものを挙げたものであって、挙げられた分野について、あらゆる状況において常に協力をするといったことを意味するものではございません。

 いずれにせよ、自衛隊の派遣につきましては、我が国として、みずからの国益に照らし、主体的に判断するものであります。また、我が国の平和及び安全の確保や国際社会の平和と安全への貢献とおよそ関係なく自衛隊を派遣することはございません。このため、自衛隊の活動が際限なく拡大するということはございません。

玉城委員 もう時間ですので、最後の質問になりますので、あえて確認と念押しをさせていただきたいと思います。

 この中間報告の中で、「基本的な前提及び考え方」「見直し後の指針及びその下で行われる取組は、次の基本的な前提及び考え方に従う。」ということで、この三ポツ目に、「日米両国の全ての行為は、各々の憲法及びその時々において適用のある国内法令並びに国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われる。」その次です、「日本の行為は、専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる。」と明記されています。

 専守防衛、非核三原則、これが我が国がこれまでしっかりと守ってきた一番大きな柱だと思います。これこそが、最初に私が申し上げた、総理の不戦の誓いと根を一にするものなんですね。しかし、今回の中間報告は、その根底、みずから根切りをしている、その大木をみずから倒さんとするような根切りをしているような、そういうことがあちらこちらに見受けられるわけです。

 この専守防衛、非核三原則等、これまでの基本理念との整合性について最後にお伺いいたします。

岸田国務大臣 御指摘の専守防衛そして非核三原則等は日本の基本的な方針であります。今回のこのガイドライン見直し中間報告においてもそれを明記したところであります。

 昨年十二月の、我が国において初めて策定いたしました国家安全保障戦略の中にも、専守防衛あるいは非核三原則、これは明記されているものと認識をしております。

 こうした基本原則はこれからもしっかり守っていかなければならない、このように考えます。

玉城委員 終わります。ニフェーデービタン。ありがとうございました。

土屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時六分散会


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