衆議院

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第2号 平成27年3月25日(水曜日)

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平成二十七年三月二十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 大野敬太郎君

   理事 島田 佳和君 理事 辻  清人君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      秋本 真利君    井上 貴博君

      井林 辰憲君    小渕 優子君

      大塚 高司君    大見  正君

      小林 鷹之君    今野 智博君

      佐々木 紀君    白石  徹君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      渡海紀三朗君    中根 一幸君

      中村 裕之君    星野 剛士君

      松島みどり君    宮路 拓馬君

      武藤 貴也君    務台 俊介君

      緒方林太郎君    吉良 州司君

      鈴木 貴子君    長島 昭久君

      青柳陽一郎君    木内 孝胤君

      岡本 三成君    赤嶺 政賢君

      穀田 恵二君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   内閣官房副長官      加藤 勝信君

   防衛副大臣

   兼内閣府副大臣      左藤  章君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   防衛大臣政務官      原田 憲治君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  斉藤 和重君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 杵渕 正巳君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   上月 豊久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 豊田 欣吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            上村  司君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    齋木 尚子君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   秋葉 剛男君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    三好 真理君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 辰己 昌良君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 山本 達夫君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     務台 俊介君

  佐々木 紀君     今野 智博君

  薗浦健太郎君     中村 裕之君

  星野 剛士君     助田 重義君

  松島みどり君     宮路 拓馬君

  穀田 恵二君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     佐々木 紀君

  助田 重義君     秋本 真利君

  中村 裕之君     井林 辰憲君

  宮路 拓馬君     松島みどり君

  務台 俊介君     河井 克行君

  赤嶺 政賢君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     星野 剛士君

  井林 辰憲君     井上 貴博君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     大見  正君

同日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     白石  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  白石  徹君     薗浦健太郎君

    ―――――――――――――

三月二十四日

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長上月豊久君、大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房審議官豊田欣吾君、大臣官房参事官滝崎成樹君、北米局長冨田浩司君、中東アフリカ局長上村司君、経済局長齋木尚子君、国際法局長秋葉剛男君、領事局長三好真理君、内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣審議官藤山雄治君、内閣参事官斉藤和重君、法務省大臣官房審議官杵渕正巳君、防衛省大臣官房審議官辰己昌良君、地方協力局次長山本達夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 外務委員会、初バッター立ちということで、よろしくお願いを申し上げます。

 私は出身が外務省でございまして、平成六年入省、平成十七年にやめまして、それから十年弱が過ぎております。平成六年四月一日、外務省の門をたたいたことを今改めて思い直しているところであります。

 本日は所信に対する質疑ということで、外務大臣に質問でありますが、これは直前の通告になりましたけれども、外務大臣に一つ御答弁をいただきたいのが、先般、南フランスの非常に山がちな地域、私も地図を見てみましたけれども、非常に山がちなメオラン・ルベルという町があります。そこの町でジャーマンウイングスのフライトが墜落をして、そして死者が相当出ている。フランスの交通担当閣外大臣によれば、生存者はいないというようなことも閣外相は言っておられます。

 この件に関しまして、事実確認と、さらには日本政府の対応について御答弁をいただければと思います、外務大臣。

岸田国務大臣 御指摘の案件ですが、三月二十四日、現地時間十一時ごろになりますが、バルセロナ発デュッセルドルフ行きジャーマンウイングス九五二五便が、南フランス、アルプス山脈に墜落をしたということを承知しております。

 そして、多くの乗員乗客が命を落とした可能性が高いという情報に接しており、大きな衝撃を受けると同時に、心から哀悼の意を表し申し上げたいと思います。そして、乗客名簿の中に、二名、日本人と思われる名前が確認をされています。

 現地には、今、フランス、ドイツの関係者が向かっていると承知をしていますが、こうした関係各国とも連携しながら、今、情報収集とそして安否確認に、日本国政府としても全力を挙げて取り組んでいる、こういった状況にあります。

 引き続き、情報収集に努めていきたいと考えています。

緒方委員 日本人の方が二人含まれているのではないかということでありまして、邦人保護の観点から、遺漏なきように何とぞよろしくお願いを申し上げるところであります。

 それでは、質疑に入っていきたいというふうに思います。

 最初に、安全保障法制の件からスタートをさせていただきたいというふうに思います。

 私が、三月五日、予算委員会で質問をした際に、安全保障法制関係で中谷国務大臣の方から、資料の三枚目にあります、そのような答弁がありました。記録に残す観点から、ちょっと読ませていただきます。

 やはり、いかなる事態においても国民の命と暮らしを守り抜くということ、そして、国際協調主義に基づいて国際社会の平和と安定のためにこれまで以上に積極的に貢献するために閣議決定を行ったわけであります。

 まず、一、武力攻撃に至らない侵害の対処、二、国際社会の平和と安定への一層の貢献、三、憲法九条のもとで許容される自衛の措置といった、安全保障法制全般の課題について検討を行い、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法整備を進めているところであります。

 このうち、第三の、憲法九条のもとで許容される自衛の措置については、我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変化をしまして、他国に対する武力攻撃であったとしても、我が国の存立を脅かすということも現実に起こり得るということを踏まえて、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福の追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき、そして必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されるという判断に至ったわけであります。

 これが中谷大臣の答弁でありました。

 防衛担当の副大臣、おられると思いますが、これは、政府の統一見解ということでよろしゅうございますか。

左藤副大臣 そのとおりでございます。

緒方委員 外務大臣もそれでよろしゅうございますか。

岸田国務大臣 今読み上げていただいた部分に関しては、政府の見解だと承知しております。

緒方委員 この答弁の前の問いというのは、私は、昨年七月一日の閣議決定の骨子はいかなるものですかという問いに対して、この答弁をいただいております。昨年七月一日の閣議決定の骨子についてはいかなるものですかというその問いに対するこの答弁であります。

 ここで質問をかえたいと思います。問い一に戻ります。

 村山談話、河野談話についてお伺いいたします。

 村山談話、河野談話の骨子というのはいかなるものですか、大臣。

岸田国務大臣 村山談話、河野談話の骨子ということですが、それぞれ多くの内容を含んでおります。

 それぞれ丁寧に説明をしなければならない御質問かと思いますが、安倍内閣としましては歴代内閣の歴史認識全体を引き継いでいるわけですので、河野談話、村山談話の内容についても、安倍内閣はしっかり引き継いでいるものだと承知をしております。

緒方委員 七月一日の閣議決定についての骨子については、これだけ詳細に述べていただけるんですよね。これだけ詳細に述べていただいて、そして、この村山談話と河野談話の骨子がいかなるものですかという、これは質問通告いたしております。

 片方についてこれだけ詳細に答えている以上、村山談話、河野談話の骨子について、質問通告もいたしておりますので、もう一度答弁を願います、外務大臣。

岸田国務大臣 まず、河野談話につきましては、平成三年十二月から平成五年八月までの関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断し、そして、慰安婦問題に関する政府の見解として、当時の河野洋平内閣官房長官から発表したものであります。

 そして、村山談話につきましては、平成七年八月十五日に、戦後五十周年の終戦記念日に当たっての政府の見解として、村山富市当時の内閣総理大臣から発表したものであります。

緒方委員 それは経緯ですよね。ただの経緯だと思います。それは、中身について全く踏み込むことなく、ただのこういうふうにつくりましたという経緯であって、骨子というのは、広辞苑等々を見ますと、全体を構成する重要な部分と書いてあります。中身の、全体を構成する重要な部分として骨子という言葉が定義されているわけでありまして、もう一度お伺いをいたします。

 村山談話、河野談話のその骨子というのはいかがなものですか、大臣。

岸田国務大臣 まず、河野談話の骨子としましては、さまざまな調査、聞き取りを行った上で、当時の政府として、慰安婦問題についてどのように考えたか、その見解について取りまとめた、これが河野談話であります。

 村山談話につきましては、戦後五十年に当たりまして、政府として今日までの日本の歩みについて見解を取りまとめた、そういった内容の談話だと承知をしています。

緒方委員 何度も申し上げますが、それはただの経緯でありまして、例えば閣議決定でいいますと、これこれこういう経緯で自由民主党と公明党が協議をした結果、こういうふうにまとまりました、それを閣議決定いたしましたというだけのものです。

 しかし、予算委員会で、私の質問に対して中谷国務大臣は、骨子はいかがなものですかと聞いたら、中身にこれだけ踏み込んで骨子について答弁をされておられます。この中身の濃さの内容を村山談話、河野談話でも骨子について述べるべきだと思います。もう一度お願いします、大臣。

岸田国務大臣 先ほど経緯とおっしゃいましたが、談話の内容において、しっかりと考えなければいけない点について、どういった存在であるかということについて申し上げた次第であります。

 そして、その説明の詳しさということについて御指摘をいただきました。

 ボリューム等において同じぐらい説明をしろということになりますと、ちょっといま一度整理をする必要があります。改めてお答えをさせていただきたいと存じます。

緒方委員 これは質問通告しているんですよね、質問通告しているんです。このことを聞きますと言っているにもかかわらず、もう一度検討するというのは、それは明らかに準備不足だと思いますし、先ほど岸田大臣が言われた話、例えばですけれども、大学受験で、村山談話をぱっと見せてこれの骨子を書きなさいと言って、岸田大臣のような答弁をすれば零点ですよ。それはただの経緯であって、中身に全く踏み込まずに、これこれこういう経緯でつくられましたということは、これは骨子とは、恐らく日本語の定義として言わないと思います。

 質問通告していないのであれば、これはお答えできませんということだと思いますけれども、質問通告しているんです。もう一度、大臣、骨子について大臣の答弁をお伺いいたしたい。

岸田国務大臣 骨子について御質問いただきました。

 今、私が答弁させていただいておりますのは衆議院の外務委員会であります。外務委員会の場で政府として答弁をさせていただく、これは大変重たいものだと思います。

 河野談話、村山談話、政府としてしっかりと引き継いでいるものではありますが、その内容についてどのように整理をして答弁するのか、その点につきましては、しっかりと精査した上でお答えしなければならないと存じます。

 質問通告をいただいていた、そのとおりであります。河野談話、村山談話、どういった談話であるかという質問通告をいただいていたのはそのとおりでありますが、この趣旨につきまして、今御質問がありましたような十分な趣旨を理解していませんでしたので、その精査をしていなかったことについてはおわびを申し上げますが、談話の内容についてのお答えは、今申し上げたようなことで、改めて整理をさせていただきたいと存じます。

緒方委員 この後、議論をしようと思っていましたけれども、質問できないんですよね、これ以上。

 自分たちが推進したいと思っている、政府として推進したいと思っている閣議決定の内容については、骨子はいかなるものですかと聞けば、それが何ら問題なくぶわっと出てくる。全く同じ問いなんです。村山談話、河野談話の骨子はいかなるものですかという全く同じ問いを、仕立てをしているにもかかわらず、片方についてだけはぶわっと話をされる、そして、片方については経緯をだらだらと述べられて、それ以上についてはお答えできない。これはおかしいんじゃないですか。

岸田国務大臣 御質問についてですが、確認しましたところ、緒方委員の方から、質問主意書として同旨の質問を受けております。そして、政府として正式に閣議決定した答弁の中身が、私が先ほど答弁させていただいたような中身となっておりました。ですので、この場では、質問主意書に対する政府の答えの内容をもってお答えする準備をしていたところであります。

 その答弁について、また不十分だという御指摘をいただきました。それ以上のことにつきましては、改めて、これは精査してお答えする必要があるかと存じます。

緒方委員 私は、この件について質問主意書を出しています。事実上のゼロ回答ということでありました。ゼロ回答です。

 読み上げますと、今言った質問に対して、「お尋ねの「河野談話」は、平成五年八月四日に、慰安婦問題に関する政府の見解として河野洋平内閣官房長官から発表したものである。 また、お尋ねの「村山談話」は、平成七年八月十五日に、戦後五十周年の終戦記念日に当たっての政府の見解として村山富市内閣総理大臣から発表したものである。」

 骨子を聞いて、これだけしか答えていないんですね。

 そもそものこの主意書答弁が不誠実なんですね。聞いていることに対して、中身を答えることなく経緯だけを答えている。これがおかしいから、ではほかのところで聞いたらどうなるんだろうと思って聞いてみたら、中身についてだあっと、資料でお配りしたような感じで、非常に詳細に答弁をいただいている。これはダブルスタンダードじゃないですかね。

 全く質問の仕立て自体は同じであります。それに対して、自分たちが推進したいものについては一生懸命答えるけれども、自分たちとして少しいろいろな思いがあって控えたいと思うものについては、その答弁をただの経緯論で済ませてしまう、ここに今の内閣の姿勢があらわれているというふうに思いませんか、大臣。

岸田国務大臣 先ほど、河野談話、村山談話につきましては、本日も、質問主意書にお答えした基本的な内容をもとにお答えをさせていただきました。

 そして、七月一日の閣議決定の内容につきましては、その際発表した文書等をもとにお答えをさせていただきました。

 別に、その説明の仕方に何か理由とか背景があるとは考えてはおりません。

緒方委員 いや、説明とその仕方について特段の背景があるわけではないと言っていますが、今、政権として、村山談話、河野談話については全体として引き継ぐと言っている、ここで骨子について答えたら、では骨子ぐらいは受け入れているんですねというふうに聞かれる、それが嫌だからこの骨子についてはゼロ回答にしている、そういうことじゃありませんか、大臣。

岸田国務大臣 それは御指摘は当たらないと思います。

 再三お答えしていますように、安倍内閣としては、歴代内閣の歴史認識全体を引き継いでいるわけですので、河野談話全体そして村山談話全体、これもしっかり引き継いでおります。どの部分を引き継ぎ、どの部分を引き継がないか、そんなことはありません。全体として引き継いでおります。

緒方委員 しかしながら、それであれば、骨子を答えるはずですよね。それであれば、こんな答えはしないはずですよ。

 骨子というのは、先ほど言いました、広辞苑において書いてあるのは、全体を構成する重要な部分と書いてあるんです。その全体を構成するための重要な部分を書き抜くことができないだけの理由を今外務大臣が言ったとは、とても思えません。

 何か裏の背景が、何か答えたくない理由があるから、こうやって経緯論で、単なる、何月何日に誰々が発表したものであるというふうになっているんじゃないですか。その裏の意図があるからこういうふうになっているわけであって、その答弁はだめですよ、大臣。もう一度答弁ください。

岸田国務大臣 まず、御指摘の点は当たらないと思っています。

 先ほど申し上げました、村山談話、河野談話、全体を引き継いでいます。ですから、どの部分を引き継ぎ、どの部分を引き継いでいない、そういったことではなくして、全体を引き継いでいるわけです。

 ですから、全体を引き継いでいる、御説明するとしたら、本体そのものを説明しなければならないわけですが、その中で、骨子といって、どの部分だけ逆に引き抜くということになりますと、これは誤解を与えることにもなりかねません。ぜひそれは丁寧にやらなければいけない問題ではないかと思っています。

 いずれにしましても、御質問の趣旨、また委員の思いにつきまして、質問主意書の答弁に沿ってお答えを準備させていただくことで対応させていただくよう準備をしたわけでありますが、御指摘の点、これが不十分だということにつきましては、御指摘を受けて、検討しなければならないと思っています。

緒方委員 ある文書の一部だけを書き抜くことは誤解を与えるからと言いますけれども、しかしながら、閣議決定の骨子について答えてくれと言われれば、これだけいろいろな文書から書き抜いたものをやっているわけですよね。これは、しかし、先ほど言われたとおりです、政府の統一的な立場ですかと聞いたら、副大臣も、そして外務大臣も、それはそうですと言われた。矛盾していませんか、大臣。

岸田国務大臣 河野談話、村山談話についての御質問は、質問主意書を委員からいただきました。そして、それについて政府としてお答えを用意し、それを閣議決定しています。この閣議決定した政府としての答弁以上のことを答えるということになりますと、それなりの丁寧さが必要だということを申し上げているわけであります。

緒方委員 これは堂々めぐりで、繰り返しになりますけれども、私が出した質問主意書に対してほぼゼロ回答なんですよ。この質問主意書に対する答弁というのは、役所側というか政府側全体の、おまえの質問になんか答えてたまるかというような強い意思を感じるわけですよ。おまえの質問になど答えてあげないというふうに私は受けとめました、骨子など述べてたまるかというふうに。この文章から受けとめるところは、そういうことですよ。

 そこまでやるからには、何か裏があるということだと思いますよ。経緯だけが書いてあるわけです。

 外務大臣、お約束をいただきたい。昨年七月一日の閣議決定の骨子に相当するぐらいの中身の厚みを持って、内容に踏み込み、それについて政府として骨子を出す、そしてそれを時間を区切る、このことをお約束いただけますか。

岸田国務大臣 政府として責任を持ってお答えする際には、しっかり丁寧に精査した上でお答えしなければなりません。

 どのようなお答えが可能なのか、これは検討したいと思います。

緒方委員 いや、それはだめですよ。閣議決定の、昨年七月一日、安全保障法制に関するものについては、相当に中身に踏み込んでその内容を要約し、そして、これが全体を構成する上での重要な部分ということでの骨子を答弁していただいているわけです。そして、今、答弁で、それは裏打ちしていただきました、政府の統一的な立場ですということで。

 これと同じぐらいの内容の厚みを持って、内容的にですね、経緯ではない、内容の厚みを持って、村山談話、河野談話の骨子を御提出いただけるということで、もう一度答弁ください。

岸田国務大臣 先ほど委員御自身がおっしゃいました、質問主意書と同じ質問をここでしたということでありました。

 同じ質問を受けて、政府として、質問主意書に責任を持って答弁を用意し、そして閣議決定をしたわけであります。それを超えてお答えするということであれば、私としても、責任を持ってお答えするためには丁寧に検討することが必要だということは御理解いただきたいと存じます。

緒方委員 だから、それじゃだめだ、それじゃダブルスタンダードでしょうと。政府全体として、あるものについては中身にかなり踏み込んで、そしてそれを要約する形で骨子を答弁しているにもかかわらず、もう片方の、政府として必ずしも推進したいわけではないのではないかと思う、そういうものについては、同じ中身の厚みを持って答えてください、政府統一見解として答えてくださいと言ったら、いや、丁寧にやらなきゃいけない、いや、閣議決定を超えるためにはいろいろ丁寧にやらなきゃいけない。

 丁寧にやらなきゃいけないのはわかります。丁寧にやった上で出すということをここでお約束ください、大臣。

岸田国務大臣 委員からの河野談話、村山談話に対する質問に対するお答えも、閣議決定した上でお答えをしています。そして、七月一日の政府の見解、これも閣議決定されたものであります。

 閣議決定をし、政府として責任を持ってお答えをした、その答えを超えてお答えをするということにつきましては、政府として責任を持って検討してお答えしなければいけない、これはぜひ御理解いただきたいと存じます。

緒方委員 お約束いただけないということですか。

岸田国務大臣 今申し上げました、閣議決定を超えてお答えをするためには、政府の一員としてこれを慎重に検討した上でお答えさせていただきたいと申し上げております。

緒方委員 いや、それは、委員長、この件ですけれども、先ほどから申し上げているとおりです。昨年七月一日の閣議決定については詳細に骨子を述べ、そしてそれが政府の統一見解であるというところまでお約束をいただいているんです。それに対して、同じく、少なくとも村山談話については閣議決定をしている、文書の性質として閣議決定をした文書について、骨子を出してくださいということをお願いしているにもかかわらず、なかなか、その件については慎重な検討が必要だというその答弁に徹している。これはおかしいと思いませんか。

 理事間で協議をいただいて、ぜひ。

土屋委員長 今、意見がかみ合わないということでございますので、理事間で引き取りまして、協議をさせていただくということで御理解いただきたいと思います。

緒方委員 意見がかみ合わないんじゃないんです。意見がかみ合わないんじゃなくて、私はちゃんと全部、理を尽くして言っているんです。私の言っていることの理屈が通らないのであれば、通らないとぜひ言っていただきたい。けれども、私はちゃんと全部、順番を追って、理屈を追ってお話をさせていただいています。理屈が合わないんじゃない。これは、何かどこかで、答弁をしたくない、見解を示したくないというその裏の意図が働いているんじゃないかというふうに思えるわけであります。

 大臣、必ず出すと、何らかのものを、内容に踏み込んで、骨子を出してくれという質問に対して、必ず出す、期限を切ってということをお約束ください。もう一度。

岸田国務大臣 私も政府の一員であります、閣僚の一人であります。そして、政府として責任を持って閣議決定した内容を超えてお答えする際には改めてよく検討しなければならない、これは当然のことであり、こうした立場を踏み越えては、これは政府としての一体性を保つことはできません。ぜひ、こうした立場を御理解いただきたいと存じます。

 そして、御指摘の点につきましては、閣議決定を超えて何かお答えするとしたならば、慎重に検討させていただきたいと思います。

緒方委員 慎重に検討した結果、出していただけるんですね、大臣。

岸田国務大臣 検討をし、そして、これは政府全体として閣議決定をした答えについてさらにお答えするわけでありますので、しっかりと確認した上でお答えいたします。

緒方委員 最後、お答えしますという答弁がありました。また次の機会にこれは大臣にお話をさせていただき、早急に、この外務委員会で次に質問に立つときぐらいまでには見解をまとめていただいて、政府統一見解としての閣議決定、閣議決定をするかどうかわかりませんけれども、政府統一見解を示していただくようにお願いを申し上げます。

 それでは、質問を移りたいと思います。

 いわゆる東京裁判についてお伺いをいたします。

 東京裁判については、日本国との平和条約、いわゆるサンフランシスコ平和条約第十一条におきまして、日本は東京裁判を受諾したという表現がございます。ここにおける裁判、英語でジャッジメントと言われるものについてはいろいろな議論が行われているわけでありますが、そこの資料を見ていただきますと、一枚目であります。かつての政府参考人答弁として、このような答弁がございます。

 「この極東国際軍事裁判に係る平和条約第十一条におきましては、英語正文でジャッジメントという言葉が当てられておりますが、このジャッジメントにつきましては、極東軍事裁判所の裁判を例にとりますと、この裁判の内容すなわちジャッジメントは三部から構成されております。この中に裁判所の設立及び審理、法、侵略、太平洋戦争、起訴状の訴因についての認定、それから判定、これはバーディクトという言葉が当てられておりますが、及び刑の宣言、これはセンテンスという言葉が当てられておりますが、このすべてを包含しておりまして、平和条約第十一条の受諾が単に刑の宣言、センテンスだけであるとの主張は根拠を有さないものと解しております。」という、この答弁、ここに引用してありますのは平成十年の答弁でありますが、この後、何度か政府参考人答弁でこの答弁が行われております。

 サンフランシスコ平和条約の第十一条の裁判という言葉については、これは裁判ではなくて判決と読むべきだ、判決と読んだ上で、例えば死刑、例えば無期懲役といったような、その刑の宣告だけを受け入れたものであって、裁判全体を受け入れたものではないという議論も一部にございます。

 ここで、外務省秋葉局長、お願いいたします。基本的に、ここに書いてある答弁というのがこれまでの政府の見解であり、現在もこの答弁が政府の統一見解ということでよろしゅうございますか。

秋葉政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の答弁で述べられている政府の立場に変わりはございません。

緒方委員 ということは、刑の宣告だけを受け入れたわけではないということでございまして、そうすると、次の質問が出てきます。

 さまざまな、起訴状の訴因とか、そういったものの中にはいろいろなことが書いてあります。東京裁判の判決というのは、ここにある三部の部分全部を合わせますと千ページを超える非常に大部な、そして詳細にわたっているものであります。その一つ一つについて、その逐一について日本は受諾をしている、そういう理解でよろしいですか、外務大臣。

岸田国務大臣 御指摘の資料の中にもありますように、極東国際軍事裁判所のこの裁判、ジャッジメントの内容となる文章、三部から構成され、裁判所の設立及び審理並びに根拠法、そして侵略及び太平洋戦争等における事実認識、そして起訴状の訴因についての認定、判定及び刑の宣告、これ全てが含まれていると認識をしています。

緒方委員 私の質問は、それを全て、逐一受け入れているということでよろしいですか、大臣。

岸田国務大臣 まず、法的にはさまざまな議論があるということは承知しておりますが、我が国は、この平和条約第十一条により当該裁判を受諾しており、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にはないと考えています。

緒方委員 異議を述べる立場にないということでありますが、そうではなくて、異議を述べるということでは、英語にはそう書いてありません。別に、ノーオブジェクションとかそういうことが書いてあるわけではなくて、ジャパンアクセプツであります、受け入れていると。

 そして、別に、一部を受け入れているとかそういうことではなくて、ジャッジメント全体、全てを受け入れているというふうに解釈できるわけでありますが、ここに書いてある、さまざまな、先ほど事実認定等々ございました。それらも含めて、東京裁判のその裁判、ジャッジメント全体を逐一受け入れているという理解でよろしいですか、大臣。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、この三部構成全てを受け入れているわけですが、事実認定を含めて逐一認めているのかという御質問でございますが、我が国は、サンフランシスコ平和条約第十一条の受諾により、その個々の事実認定等について、積極的にこれを肯定するとか、あるいは積極的に評価するという立場に立つかどうかということは別として、少なくとも、裁判について、不法、不当なものとして異議を述べる立場にないというのが従来からの立場であり、これを今もしっかり堅持しています。

緒方委員 一つ一つに評価をするものではないということでありますが、そもそも、英語におけるアクセプトという表現というのは、英語の辞書を引いてみますと、一定の評価を持って受け入れる。ただありがままを受け入れる、そういう言葉ではありません。大体、英語の辞書で引いてみると、アクセプトという言葉は、同意した上で受け入れるとか、前向きにとか、それが有効であるとか、そういう表現で受け入れているものであります。

 何か、積極的に評価するとか評価しないとかいうことではないと言われましたけれども、アクセプトという言葉自体にそういう意味が含まれるんですよね、アクセプトというのは。何らかの評価をした上で受け入れている。ただありがままに、はい、そうですといって受け入れているものではないというふうに英語では理解をされます。

 もう一度お伺いをいたします、大臣。東京裁判のジャッジメンツについては、別に、では、評価するとかどうかというのも先ほど言われましたけれども、逐一それを受諾しているということでよろしいですね。

岸田国務大臣 アクセプトの意味、辞書等にはさまざまな解説があるのかもしれませんが、我が国としては、サンフランシスコ平和条約第十一条のアクセプトを受諾と訳しており、極東国際軍事裁判等の裁判について受諾した結果、我が国として、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にない、このように理解をしております。

緒方委員 日本語で受諾と訳して、受諾という意味がどうだとかいうことは、これは通用しないんですね。サンフランシスコ平和条約の正文は、英語、フランス語、スペイン語、この三つであります。日本語は正文を構成していません。なので、英語から判断するしかないんです。

 アクセプトという表現は、一定の評価を持って受け入れているというのが英語の普通の解釈の仕方でありまして、私が聞いているのは、アクセプトがどうかとかいうのを抜きにして、その東京裁判のジャッジメントの中にあることを逐一受諾いたしておりますねということです。もう一度答弁ください。

岸田国務大臣 日本語文の地位につきましては、条約テキストにおいて明らかにされていることから、日本語がたとえ正文でないにしても、正文に準ずる地位を有するものであり、日本語文についても、サンフランシスコ平和条約の規定として確立しているものと考えられる、こういった位置づけにされています。

 いずれにしましても、我が国の今の御指摘の点についての理解は、極東国際軍事裁判所等の裁判について受諾した結果、我が国として、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にない、このように理解をしている次第です。

緒方委員 異議を述べる立場にないということでありますが、では、言い方を変えます。

 逐一異議を唱える立場にないですね、大臣。

岸田国務大臣 逐一という意味をちょっとすぐに理解できませんが、いずれにしましても、我が国として異議を述べる立場にないと思いますので、どんな形でも異議を述べる立場にないと考えます。

緒方委員 では、ここの極東国際軍事裁判所の裁判、ジャッジメンツのところにおいて、それについて、どの部分であろうとも異議を唱えることはないということでよろしいですね。

岸田国務大臣 この極東軍事裁判については、どの部分についても、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にないと考えます。

緒方委員 どの部分についても異議を唱えるものではないということで大臣から答弁をいただいたというふうに理解をいたしました。

 それを踏まえて、ちょっと切り口を変えて質問をしたいと思います。

 この今言われた大臣の見解、そしてさらには先ほど資料で配りましたものも含めてでありますけれども、これは、現在、第三次安倍内閣であります、第二次、そして第二次改造安倍内閣においても、その立場は堅持されていたというふうにお思いになられますか。

岸田国務大臣 政府の立場は従来から変わっていないと認識をしています。

緒方委員 第二次安倍内閣で閣僚をやっておられた、現自由民主党政調会長の稲田朋美さん、最近、いろいろなところで、東京裁判について、主文については受け入れたけれどもと。主文というのは、恐らく言いたいことは、私がさっき言った、この答弁にあるところの恐らくセンテンスだと思います。死刑とか、さらには無期懲役とか、そういったところだけを受け入れたものであって、それ以外については、疑義があるという表現は使っていませんけれども、かなり強い形で疑義を表明しておられる。

 これは、政府の立場ではありませんね。

岸田国務大臣 政府の立場は先ほど申し上げたとおりであります。

 先ほど答弁で申し上げましたように、ジャッジメントの内容となる文章、三部構成になっておりますが、その全てを含めているというのが我が国の立場であります。

緒方委員 それが第二次政権においてもそうだったということは、当然、内閣は連帯責任でありますので、当時国務大臣であった稲田朋美さんもその立場を踏襲していた、いたはずである、そういうふうに理解してよろしいですか、大臣。

岸田国務大臣 閣僚としては、内閣としての方針に従って対応する、これは当然のことであります。

 ただ、政調会長としての発言について、何かコメントする立場に私はありません。

緒方委員 ということは、閣僚の時代は、今大臣が答弁されたような、そして私が申し上げたような内容について、その立場を踏襲し、それに従っていたけれども、閣僚を離れてしまったら、いや、それは自分は従わないと言っているに等しいわけですね。非常におかしいんじゃないかと私は思います。

 このサンフランシスコ平和条約の解釈というのは非常に多岐にわたりますけれども、きょう、結構明確に述べていただいたと思います。裁判の射程について、これで、かつて答弁があったもので間違いがない、単なる刑の宣告、センテンス、バーディクト、その一部だけを取り出すものではなくて、東京裁判の三部構成になっているもの全てを受け入れ、そして、そのいかなる部分についても異議を唱えないということで大臣から答弁がありました。

 これについて、大臣、引き続きこの件を受諾しているということで続けていっていただきたいと思いますし、今の政権でもこれは引き続き堅持をしていくということで、最後の確認です、お願い申し上げます。

岸田国務大臣 おっしゃるとおり、内閣として引き続きこの立場は堅持してまいります。

緒方委員 では、質問を移したいと思います。

 安保法制について、もう一回戻りたいと思います。

 私が国会で質問をした際に、中谷大臣は、幾度となく、既存の見解の基本的な論理に従って七月一日の閣議決定というのを行ったんだ、既存の政府見解の基本的な論理に従った上で閣議決定を行ったというふうに言っております。

 政府にお伺いをいたしたい。副大臣、その理解でよろしいですか。

左藤副大臣 そのとおりでございます。

緒方委員 では、その既存の政府見解というのは何かといえば、一九七二年参議院決算委員会に対する政府の提出資料、さらには、一九八一年の、きょうの二枚目の資料に取り上げております、抜粋しておりますが、衆議院議員稲葉誠一君提出「憲法、国際法と集団的自衛権」に関する質問に対する答弁書、恐らく該当部分はこれだと思いますのでこれで抜粋をいたしましたが、ここに述べられた見解の基本的論理に従った上で今回の七月一日の閣議決定が行われている、そういう理解でよろしいですか。

岸田国務大臣 おっしゃるとおり、今回の閣議決定は、昭和四十七年の政府見解の基本的な論理に基づいて行われています。

緒方委員 それでは、安保法制担当の副大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 稲葉誠一君、「憲法、国際法と集団的自衛権」に関する質問に対する答弁書というのがございます。これのどの部分が基本的論理を構成しているというふうにお思いになられますか、副大臣。

左藤副大臣 この稲葉先生に対する答弁書の第二番目の段落でございますが、その中に、憲法第九条のもとにおいて許容される自衛権の行使は、我が国を防衛するための必要最小限度の範囲にとどまるべきであると解しております、この点がそうだと思います。

緒方委員 では、もう一度聞きますが、その後の、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであり、憲法上許されないと考えているという部分は、そもそも政府の方が言われる基本的論理を構成していないという理解でよろしいですね、副大臣。

岸田国務大臣 おっしゃるように、この集団的自衛権云々の部分は、基本的な論理には含まれていないと理解しております。

緒方委員 ということは、今政府が言っていることというのは、こういうことなんです。この文章があって、政府はこの文章の基本的論理に従っています、そして、その結果として集団的自衛権が行使できるんですというふうな、そういう論理構成をしているわけですよね。それは、それでよろしいですか。

岸田国務大臣 昨年の七月一日の閣議決定においても、昭和四十七年の政府見解、そして今、資料で御指摘になられた答弁書、こうした基本的な論理に基づいて結果を導き出しております。

緒方委員 けれども、この文章を、例えばこの件について詳しくない方に、これが既存の見解ですと見せ、そして、私はその基本的論理に従っていますと言い、その結果として集団的自衛権を行使することができますというふうに説明すれば、恐らく、日本国民の九九%以上の人が頭にはてなマークがつくと思うんですよ。

 国民に対する説明のあり方として、この文章を全部見せれば、基本的な論理というのは、多分、文章全体が一つの論理を構成しているというふうに見るわけでありまして、これを全体を見て、そして、基本的論理に従っているんだ、だから集団的自衛権が行使できるんだというその説明というのは、国民の理解を促すものになっていないというふうに思いますけれども、いかがですか。

岸田国務大臣 これは改めて説明しなければなりませんが、昭和四十七年の政府見解、そして御指摘のこの答弁書も同じでありますが、その基本的な論理とは、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置は、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、そして、これらの権利を守るためにやむを得ない措置として初めて容認されるものである、これが基本的な論理であります。

 そして、その論理に当てはめるために実際何が必要とされるかという議論の中で、当時においては、ここにありますように、集団的自衛権は認められない、個別的自衛権だけだということでありました。

 しかし、その後、国際状況の変化の中にあって、新しい脅威が発生する、そして国境を越えてさまざまな脅威が飛んでくる、どの国であっても、一国のみでは国民の命や暮らしを守ることができない、こういった状況判断に基づいて、国民の生命、自由及び幸福追求の権利を守るために何が求められるかという考え方に基づいて、その帰結として集団的自衛権の一部が求められる、これが今回の議論の骨格であると考えています。これをしっかりと説明しなければならないと私は考えております。

緒方委員 別に、そうしていること自体を、その中身自体について私が何かしたいというのではなくて、これを見せて、基本的論理に従っていますと言って、その結果として集団的自衛権を行使できますと言って、国民は理解をしてくれるというふうに思いますか。

岸田国務大臣 過去の質問に対する答弁ですとかさまざまな政府見解、大変難解な部分があるのも事実でありますが、それをぜひしっかり整理して、国民に丁寧に易しく説明するのがやはり政府としての役割だと考えます。

 先ほど申し上げました基本的な考え方をしっかり整理し、国民の皆様方に御理解いただくよう努力をしたいと考えます。

緒方委員 そもそも、基本的な論理というのがそういうものだということ自体が、そういう分類をして、一、二とあって、最後、これが当てはめだというその手法自体が、それ自体が一つの解釈なんですよね。解釈としてこういうふうに文章を切り分けているんですということ自体が、それが一つの解釈論なのであって、その解釈論というのは、多分、大半の国民には理解されないと思います。

 この文章をこういうふうに切って、ここまでが基本的な論理で、ここから下は基本的な論理ではありませんと言うこと自体が、政府が今回の結論を導き出すために編み出した一つの解釈論であって、それがいいとか悪いとか私は言っているんじゃないんです。いいとか悪いとか言っているのではなくて、そうではなくて、それは国民に理解されないでしょうと。それは国民に理解されないです。

 この文章を見せて、基本的論理に政府は従っているんです、その結果として集団的自衛権が行使できるんですというその説明を行うこと自体が、国民を惑わす行為だというふうに思いませんかというふうに聞いているんです。もう一度。

岸田国務大臣 昨年七月一日の閣議決定は、あくまでも、国民の命と暮らしを守るために今現実において何が求められているのか、こういった発想に基づいて議論を行った帰結であります。そして、この基本的な論理は、先ほど説明させていただいたとおりであります。

 当てはめの結果、現実において国民の命や暮らしを守るために何が求められているのか、これは政府としてしっかり説明をし、ぜひ国民の皆様にも御理解をいただかなければならないと思います。御理解をいただきながら、ぜひ政府の対応を進めていきたいと考えています。

緒方委員 では、岸田外務大臣の考えとして、これまでの政府の、七月一日以前の政府見解としていろいろ理屈を述べた後、最後に、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであり、憲法上許されないと考えているというふうに書いてある文章を国民に見せ、そして、その基本的論理に従って、その結果として集団的自衛権を行使することができるという理屈というのは、国民にわかりやすいものだというふうに思いますか。

岸田国務大臣 今の政府、そして七月一日の閣議決定の踏襲しているこの基本的な論理について、最もわかりやすい資料としては、昭和四十七年の政府見解であると思っています。御指摘いただいた資料もそれに触れている部分でありますが、よりわかりやすい資料を活用しながら、国民の皆さんにしっかり説明をしていかなければならないと存じます。

 昭和四十七年の政府見解、先ほど申し上げました、国民の生命、自由及び幸福追求の権利、これをしっかり守るための措置は認められるべきである。そして、その当てはめの結果として、今の現実においては、集団的自衛権の一部も認められるべきであるというこの帰結に至った。こうしたことにつきましては、わかりやすい資料を活用しながら、しっかり説明をしていきたいと考えます。

緒方委員 そもそも、私も外務省条約課にいましたのでよくわかりますけれども、外務省で安全保障法制をやっているときに、一九七二年、昭和四十七年のその見解を余り引用したことがなかったんですね、ほとんどなかったと思います。事実上使っているのは、一九八一年、稲葉誠一議員に対する質問主意書答弁というのが、逆に、これしか見たことがなかったぐらいでありまして、恐らく、七二年の見解を使っているのは、先ほど言われた根底から覆されるという部分が載っていて、これはいいわと思ってそこを使ったということだと思います。

 それはともかくとして、この件は非常にわかりにくい。国民の大半は、今までの見解を見ると、それ自体で一つの論理を構成している、全体が一つの論理を構成していて、そして、その結果として集団的自衛権が行使できるというふうに言われてしまうと、頭に絶対にはてなマークがつくと思います。そういうふうに今大臣が言われたような切り分けをしていること自体が、それ自体が一つの解釈なんです。

 既存の政府見解の基本的な論理に従ってというその言い方、私はやめるべきじゃないかと思います。いかがですか。

岸田国務大臣 まず、我が国政府として、昨年七月一日の閣議決定に至ったその考え方、この基本的な論理、これはしっかり説明をしなければなりません。

 そして、わかりにくいという御指摘がありました。その点については、謙虚に我々も考えてみなければならないと思いますが、この基本的な論理をしっかり説明できなければ、国民の皆様方に御理解いただけることはないと思います。ぜひ、この基本的な論理、そして、そこから導き出した帰結として、集団的自衛権の一部を認める必要があるという結論に至った、この点につきましては丁寧に説明を続けていきたいと存じます。

 今後、こうした閣議決定に基づいて、政府としましても、安全保障法制の整備を行い、国会において議論をお願いすることになります。この議論等を通じましても、ぜひ丁寧にわかりやすく説明を続けていきたいと考えます。

緒方委員 国民の大半は、これまでの既存の見解を見て、その基本的な論理に従っていると言われて、そして、集団的自衛権が行使できるというその説明の流れを、恐らく理解しないと思います。

 何か、これまでと大して変わっていないんですよ、これまでの考え方と変わっていないんですよと言いながら、けれども、結果のところではがらっと変わっているということを多分国民は感じていると思っていまして、この基本的な論理に従ってというのは、私は、国民を惑わせる非常によくない表現だと思います。そして、少し強い言い方をすれば、国民に、惑わせた上でよくわからないうちにこの件を通していこう、そういう意図を感じないわけでもありません。

 正しく、今行われている、その既存の見解の理屈の部分、論理の部分だけを基本的な論理と呼び、そして、先ほど左藤副大臣からもございました、途中から後についてはそもそも基本的論理を構成するものではないのだというその手法自体が、それが一つの解釈論なのであって、しかも、その解釈論というのは、恐らく、大半の国民、九九%の人は理解をしないというふうに思います。

 この件は、安保法制の議論をしていく上で、細かい議論の、そのさらに一歩手前のところの基本的な考え方として私は非常に問題が多いと思っておりますが、質問時間を終えましたので、これは後日の課題ということでさらにやらせていただきたいと思います。

 本日は、本当にありがとうございました。

土屋委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 外務大臣は就任から二年を超えて、聞くところによりますと、現職の議員の外務大臣では在任期間最長ということだそうでありまして、宏池会の大先輩の宮沢外務大臣の在任期間を超えた。ただ、大平さんは四年やっておりますので、しばらく頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは、質問に移りたいというふうに思います。

 一昨日ですか、沖縄で新しい翁長知事が大変重大な決断をされたようでありますが、非常に気がかりであります。

 報道によれば、沖縄防衛局に対して、今やっているボーリング調査、去年の八月からやっているボーリング調査の停止を指示した、従わない場合には、仲井真前知事が承認をした埋め立て、これを不承認にするということも視野に入れている、その前段階として、岩礁破砕許可を取り消す意向を表明した、こういうことでありますが、まず、防衛省から現状の報告をいただきたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 一昨日、二十三日、沖縄防衛局は、沖縄県知事から、代替施設建設事業に係る岩礁破砕等の許可に関し、同県による調査が終了し、改めて指示するまでの間、海底面等の現状を変更する行為の全てを停止するよう指示する旨の文書を受領いたしました。

 これを受けまして、昨日、二十四日、沖縄防衛局職員が沖縄県庁を訪問し、本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕に当たらないこと、今般指示でコンクリート製構造物の設置が許可申請外の行為であるとしたことは、以前より沖縄県が沖縄防衛局に対して示していた内容に反すること、沖縄県内で国を事業者として行われた同種事案においても、本件と同様のアンカーの設置は岩礁破壊許可手続の対象とされていないこと、一部区域におけるアンカーの設置を理由に全ての施行区域における全ての現状変更行為の停止を求めることは不当であること等の説明をいたしました。

 防衛省といたしましては、これらの理由から、一昨日、二十三日の沖縄県知事の指示は無効なものであり、現在行っている作業を中断する理由にはならないとの考えを同県に説明させていただき、その旨を記載した文書を手交いたしました。

 また、本件指示自体が無効なものであることを明らかにするため、昨日、二十四日、沖縄防衛局長から農林水産大臣に対しまして、審査請求書及び執行停止申し立て書を提出したところであり、今後、法令にのっとって適切に審査されると認識をしております。

 これらのことを含めまして、防衛省といたしましては、必要な措置を適宜適切に講じ、粛々と作業を進めてまいりたいと考えております。

長島(昭)委員 一昨年の十二月に、仲井真知事が埋め立ての申請に対する承認を与えましたね。そして、昨年の八月に岩礁破砕を許可した、こういう経緯だと思いますが、その際に、破砕許可のときに九項目の条件がついており、場合によって取り消す可能性がそこに記されている、こういう報道があるんですが、その点はいかがですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、破砕許可に当たっては幾つかの条件がつけられたところでございます。

 一方、本件破砕許可につきましては、水産資源保護法という法令の趣旨にのっとった形で運用されるべきものというふうに考えております。

 その観点から、先ほど申しましたように、本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕に当たらないこと、また、これまでの沖縄県と沖縄防衛局との調整の経緯に反する内容の御指示をいただいているということから、今回の沖縄県知事からの御指示は無効なものであるというふうに判断しているところでございます。

長島(昭)委員 無効なものであるという政府の主張はわかるんですけれども、この岩礁破砕の許可の取り消しをひっくり返すことは事実上できるんでしょうか。

 沖縄県は何と言っているかというと、岩礁破砕許可を取り消せば政府側はボーリング調査を行うことができない、そういうふうに主張しているんですが、これをひっくり返すことはできるんでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 防衛省といたしまして、今申し上げましたように、本件沖縄県知事の御指示は無効であるというふうに判断をいたしましたことから、昨日、農林水産大臣に対しまして、先日の沖縄県知事の指示は無効であり、取り消しを求める内容の審査請求、そして、審査請求の裁決までの間、沖縄県知事の指示の効力を停止するよう求める執行停止の申し立てをしたところでございます。

 その理由といたしましては、繰り返しになって恐縮でございますけれども、本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破壊に当たらないこと、今般指示でコンクリート製構造物の設置について許可申請外の行為であるとしたことは、以前より沖縄県が沖縄防衛局に対して示していた内容に反すること、沖縄県内で国を事業者として行われた同種事案においても、本件と同様のアンカーの設置は岩礁破壊許可手続の対象とされていないこと等を挙げさせていただいているところでございます。

 今後、農林水産大臣におかれまして適切に審査が行われることを防衛省としては期待しているところでございます。

長島(昭)委員 期待はわかるんですけれども、農水大臣がその処分の取り消しをするまでの間、防衛省として、ボーリング作業は続行することになるんでしょうか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄県漁業調整規則におきましては、海上ボーリング調査は、沖縄県知事と協議をすることを前提に、原則として、岩礁破砕許可を要しない行為として整理をされております。

 このため、沖縄防衛局は、沖縄県と協議の上、海上ボーリング調査につきまして、岩礁破砕の許可は不要である旨の回答を受け、その後、工期等を変更するに当たっても、沖縄県から協議不要との回答を得て調査を行っているところでございます。

 これらのことを踏まえますれば、海上ボーリング調査は岩礁破砕許可に基づく行為ではないことから、引き続き粛々と進めてまいりたいと考えております。

長島(昭)委員 これは、外務大臣、新しい知事が誕生しました、ああいう形で、前の仲井真さんとは全く百八十度政策が違う知事が誕生されたわけです。これは、政府からすれば、やりにくい知事さんだと思いますよ。しかし、これが直近の沖縄の民意でもあるんですね。そういう知事さん、沖縄の民意を代表する知事さんと、きょう、加藤副長官もおられますけれども、今のこの安倍政権、真摯に向き合ってこられたのかなということを私は非常に疑問を持っているんです。

 外務大臣、新しい知事さんとお会いになったことはありますか。

岸田国務大臣 翁長知事とは、知事に就任されてから後はお会いしたことはありません。

長島(昭)委員 官房長官がこの件は主管されていると思うんですけれども、総理もお会いになっていない。官房長官もまだお会いになっていないと思いますよ。外務大臣も、それから防衛大臣もお会いになっていない。つまり、安倍政権の主要閣僚、沖縄に対して向き合っている主要閣僚で、新しい知事といまだに、もう半年近くたっても、まだどなたもお会いになっていない。

 これは、私は正常な状況ではないと思います。外務大臣としてどう思われますか。このままでいいと思われますか。こういったことも、恐らく、そういう行き違いが、亀裂がどんどんどんどん拡大していった結果ではないかというふうに思うんですが、外務大臣としていかがですか。

岸田国務大臣 まず、さまざまな課題に対する取り組みは、法律に基づいて行われなければなりません。

 しかしながら、やはりこうした政治的にも重要な課題につきましては、関係者の意思疎通あるいは信頼関係が大変重要であるということは言うまでもありません。相手のあることではありますが、こうした意思疎通、信頼関係の構築には努力をしながら課題に取り組んでいかなければならないと存じます。

 そして、閣僚として翁長知事にお会いしていないという御指摘をいただきました。たしか山口沖縄北方担当大臣はお会いさせていただいていると思います。また、私自身は、お会いするとしたならば、恐らく、まず事務的に調整が行われることと思います。調整が行われて、合意ができれば、お会いすることはぜひ考えてみたいと思っております。

長島(昭)委員 今、大臣、大事なことをおっしゃいました。法律に基づいて行わなければならないが、やはり相互信頼というのは非常に大事だ、こういう御指摘だったと思うんですが、私も全く同感です。この基地の問題というのは、特に沖縄の基地の問題は、これだけ負担をされているわけですから、私たちも政権時代、苦しみましたけれども、やはりアメリカとの信頼関係もさることながら、沖縄県との信頼関係は本当に大事だと思います。

 その点において、二〇一三年の十二月十七日、つまり仲井真知事が、埋立申請に対する承認を行う直前に東京に来られて、総理と官房長官にお会いになって、四項目の要請、これは沖縄政策協議会に対して要請したことになっていますが、一つは、普天間飛行場の五年以内の使用停止、牧港の補給地区の早期返還、日米地位協定の改定、これは環境条項だと思いますけれども、そして、オスプレイの訓練を県外分散、推進する、この四点だというふうに認識しておりますが、これは今も生きているんでしょうか。これは大事な四項目だと思います。

岸田国務大臣 御指摘の要請につきましては、政府として全力で取り組んでおります。相手のあることではありますが、できることは全て行う、これが現在も政府の基本姿勢であります。

長島(昭)委員 それで、その中で、第一項目の普天間飛行場の五年以内の運用停止、これを最初に私は聞いたときに、実は非常に違和感を持ちました、本当にできるのかなと。

 大臣、できることは何でもやる、これは総理の答弁もそうなっているんですよ、日本政府としてできることは全て行うと。しかし、沖縄から四項目を受け取って、これはただ受け取っただけなんですか。相手もあることなので、一応相手には伝えておくよという程度なんですか。それとも、もう少し高い、強いコミットメントがある話なんですか。そこをまず一点伺いたいと思います。

岸田国務大臣 当然のことながら、政府としましても、こうした要請を受けて、真剣に受けとめ、取り組まなければならない課題だと考えております。

 そして、御指摘の要請も含めて、沖縄の負担軽減につきましては、翁長知事を含む全国の知事の協力があってこそ初めて実現するものであると考えています。普天間飛行場の五年以内の運用停止など、この御要請についても同様であると考えています。

 ぜひ、政府としましては、沖縄の負担軽減、政府にとりましての最重要課題のうちの一つであると認識をしております。米国側ともしっかりと協議をし、取り組んでいきたいと考えています。

長島(昭)委員 では、ちょっと事実を伺いたいんですけれども、この五年間というのは、起点はいつなのか、そして、期限はいつなのか。政府としてどういう認識ですか。

辰己政府参考人 お答えします。

 起点につきましては、二〇一四年の二月ということで考えております。

 そういう前提のもとで、先ほど外務大臣からお話があったように、できることは全て行う、これが政府の基本精神でございます。

長島(昭)委員 期限はいつですか。起点が二〇一四年の二月、終点は、期限はいつですか。

辰己政府参考人 二〇一四年二月から五年ということで、二〇一九年二月、五年後ということになると思います。

長島(昭)委員 これは、政府のコミットメントなんでしょうか。

辰己政府参考人 この普天間飛行場の五年以内の運用停止につきましては、先ほど来御説明しているように、政府としてはできることは全て行う、こういう考え方で臨んでいるということでございまして、これまでも、KC130の十五機全機を岩国飛行場に移駐する、あるいはオスプレイの県外における訓練をするなど、できることは全て行うという姿勢で取り組んでいきたいと考えております。

長島(昭)委員 では、大事なことを聞きましょう。

 運用停止という、その言葉の定義はどう認識していますか。

辰己政府参考人 普天間飛行場の危険性の除去を少しでも早く実現する観点から、仲井真前知事からの普天間飛行場の五年以内の運用停止の御要望については、官邸に設置された会議体や個々の会議などを通じて、地元の意向を伺いながら進めてきている、そういう状況でございます。

長島(昭)委員 全然答えていないですね。

 防衛副大臣がおられるから、防衛副大臣、お願いします。運用停止の定義、お願いします。この認識が一致していなかったら、コミットメントもくそもないですから。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 これは、政府全体で連携しつつ、さまざまなレベルで地元との対話を行っていく中で、知事との対話の機会が設けられていくものと考えておりますけれども、その際に、日本の安全保障や普天間の位置づけを含む沖縄の負担軽減といった全体像で話をしている中で、今おっしゃった状況、停止というのは、運航の停止だと思っています。

長島(昭)委員 運用の停止。運用の停止というのはどういうことですか。運航、運用、もう一度お願いします。もう一度お願いします、大事なことだから。

左藤副大臣 運用停止です。ごめんなさい。

長島(昭)委員 いやいや、済みません、運用停止の定義を聞いているので、運用停止ですと答えられても全く納得できません。

 ちなみに、沖縄県は、県議会で沖縄県が答えているんですよ。沖縄県の定義は、米軍機が普天間の上空を飛ばないこと。これを五年間でできますか。

左藤副大臣 この点については、先ほど政府委員から答えがあったように、官邸に設置された会議体や個別の会談などを通じて、地元の意向を伺いながら進めていきたいと思っております。

長島(昭)委員 これを答えないと先に進めないんですよ、副大臣。外務大臣。

岸田国務大臣 運用停止につきましては、起点と終点につきましては先ほど答弁があったとおりであります。

 そして、運用停止の定義につきましては、従来からの議論を見ますと、沖縄関係者と官邸におきまして、これまでも普天間飛行場負担軽減推進会議等さまざまな会議が設けられてきました。こうした会議等を通じながら、沖縄県の関係者としっかり意思疎通を図った上で、運用停止というものの内容について、確認する、すり合わせる、こういった方針で臨んでいたと承知をしています。

長島(昭)委員 私が最初に、五年間で運用停止するということを聞いたときに違和感を持ったのは、まさにこの点なんですよ。沖縄の人たちと一緒にこれから定義についても考えていきましょうという今の大臣の御答弁を百歩譲って受け入れたとしても、では、アメリカ側はどう考えるかなんですよ。

 さっきから大臣がおっしゃっているように、相手があることなんですよ。アメリカとすり合わせもしないで、まさか沖縄との、沖縄の要望を受け取って、約束らしきものをしてしまったんですか。これは、下手すると空手形になりますよ。大臣、そこはどうお考えなんですか。

岸田国務大臣 沖縄負担軽減につきましては、当然のことながら、米国政府とも緊密に意思疎通を図りながら対応してきております。

長島(昭)委員 答えになっていないんですけれども、では、防衛省に聞きましょう。

 要するに、運用停止ということは普天間飛行場の機能が停止するということですよね。それは、新しい辺野古の代替施設ができて移設が完了する前に、普天間の機能を停止することはできるんでしょうか。

辰己政府参考人 繰り返しになりますが、この普天間飛行場の五年以内の運用停止につきましては、相手のあることではございますが、できることは全て行う、こういう政府の方針に基づいて一生懸命やっていきたいというふうに思っています。

長島(昭)委員 防衛の専門家に伺いたいんですけれども、移設が完了する前に、普天間から辺野古に、辺野古かどうかわかりませんが、今の海兵遠征軍の、アメリカの海兵隊の機能が移駐される前に、移設される前に、運用を停止することは可能ですか。

辰己政府参考人 普天間には、今もいろいろな機能がございました。

 まず、先ほど申したように、その一つは固定翼の機能でございます。固定翼の大部分を占めるKC130、この十五機については、全機、昨年の八月、山口県、岩国市などの協力を得て、岩国飛行場に移駐いたしました。

 それから、オスプレイですね。

 オスプレイにつきましては、これは自治体の協力を得ながら、沖縄県外における訓練などを初め、できることは全て行うということでございまして、そういったことを含めまして、できることは全て行うという姿勢で取り組んでいきたいと思っています。

長島(昭)委員 いいですか、沖縄の人たちは、飛行機が飛ばないこと、これを期待しているんですよ。今の話は全然違う、訓練の移転なんというのは。そんなものは、前からずっとやってきているんですよ。

 では、基本的なことを言いましょうか。

 まず、先ほど私が申し上げたとおり、埋め立てがまだ始まっていない、ボーリングも継続できるかわからない、こういう状況ですよ。うまくいって、順調にいったら、この八月から、夏から秋ぐらいにかけて埋め立て始められるかなという状況でした。着工してから完成するまで、何年かかりますか。

辰己政府参考人 現在の計画では、二〇二二年またはそれ以降ということでございます。

長島(昭)委員 運用停止が先ほど二〇一九年の二月とおっしゃっていましたね。運用停止が二〇一九年の二月。基地が完成するのが、どんなに早くたって二二年の前半。

 日米で統合計画、二〇一三年の四月に合意しました、これは二二年に移転完了と明記されています。それから、二〇〇六年のロードマップを、二〇一二年の四月、2プラス2の合意で修正しました。ここには、普天間からグアムへの移転完了は二〇二四年と書いてあります。それから、アメリカの国防総省が米議会に提出をした在沖縄海兵隊のグアム移転に関するマスタープランによれば、普天間は少なくとも二〇二三年まで継続使用し、二四年に辺野古新基地へ移設する見通し、こう明記されている。

 さっきの二〇一九年二月までに運用停止というのは、どういう約束ですか。

岸田国務大臣 沖縄からの要望、五年以内の運用停止の要望ですが、この五年以内の運用停止の要望も含めて、さまざまな内容が盛り込まれています。

 こうした要望全体に政府として真剣に応えなければならないということで、先ほど答弁の中にもありましたように、KC130の全機移駐ですとかオスプレイの訓練移転、これはできることからどんどん進めているところであります。

 そして、運用停止の定義につきましては、先ほど申し上げました、引き続き沖縄の関係者とさまざまな会議等を通じて意思疎通を図った上で明らかにしていかなければならない課題だと思っています。

 こうした全体をしっかり受けとめて、政府としては引き続き、できることは全てやる、そういった思いで努力を続けていきたいと思っています。

長島(昭)委員 我々も総理大臣の県外、国外という発言にかなり振り回された経緯もありますので、そういう経験も踏まえて私はあえて忠告を申し上げたいと思いますが、余り実現可能性のないことをお約束されて、かえって沖縄県の皆さんの期待を失望に変えてしまって、そしてできることもできなくなってしまうということを、ぜひ注意していただきたい。

 また、アメリカ側も困惑していますよ。

 報道によれば、昨年の十月二日、日米合同委員会が開かれた、その直前に、九月十七日に、菅官房長官、官房長官は内閣改造で沖縄基地負担軽減担当大臣も兼務されている、そういうお立場で、五年以内の運用停止時期を沖縄側に明示されたんですね。二〇一四年を起点として、二〇一九年二月初めまでに運用停止することを初めて明言した、こういう報道になっているんですね。

 それを聞いた米側は、こう言っているんです。一九年二月の運用停止という一方的な発表に驚いた、米側と調整もなく発表したことは迷惑で、米国を困った立場に追いやると。しかも、さらに米側は、それまで日米両国が二二年を現実的としてきた経緯に触れて、移設がですよ、辺野古沿岸部の代替施設が完成し移駐するまで、普天間の運用は停止できないとはっきり言っているんですよ。そして、一九年二月の目標設定をめぐり、今後も外交ルートを通じて反対していく、こういう日本側のやり方は同盟の流儀に反すると。

 外務大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 今の発言、米側の誰の発言なのか、一度確認はしてみたいと思いますが、我が国としましては、沖縄の負担軽減につきましては、翁長知事を初めとする全国の知事、あるいは関係者の協力なくして実現するものではないと思っていますが、あわせて、米国の協力なくして実現はしない、これは当然のことであると思っています。

 ぜひ、こうした関係者の理解を得るべく、結果を出すべく、しっかり努力をしていかなければならないと思っています。

長島(昭)委員 大臣もおわかりだと思いますが、この件は本当に慎重にも慎重を期して進めていただきたいというふうに思います。そのことを申し上げて、次に行きたいと思います。

 先週末、ソウルで日中韓の外相会談が行われました。前回が二〇一二年、ちょうど野田政権、私も補佐官で、一緒に北京に参りました。温家宝総理との間で、東シナ海をめぐってかなり厳しいやりとりがあったのを今でも覚えております。三年ぶりの開催で、ちょっと中身を聞きたかったんですが、先を急ぎたいと思います。

 その中で、日韓の外相会談をやりました。その日韓の外相会談において、主要な議題、特に日韓の二国間に横たわる主要な議題について、もう少し絞って聞きます。特に岸田外務大臣の方から提起をされた議題はどんなものがあったでしょうか。

岸田国務大臣 日韓の外相会談につきましては、今回で尹炳世長官とは五度目の会談になりますが、今日までのさまざまな対話、信頼関係に基づいて、充実した意見交換ができたと考えております。それぞれの具体的な関心事についても議論を行い、二国間関係あるいは地域情勢についても率直な意見交換ができたと思っています。

 そして、私の方から提起した課題としましては、旧民間人徴用工をめぐる裁判の問題、産経新聞前ソウル支局長の起訴をめぐる問題、あるいは日本産水産物の輸入規制強化、こういったあたりが大変重要な課題として挙げられるのではないかと考えています。

長島(昭)委員 その中で、私がきょう取り上げたいのは、産経新聞の前ソウル支局長、今、起訴という話がありましたけれども、もちろん、起訴をされたことにも、その起訴事由を見たときに非常にびっくりしましたが、これは長期に出国停止になっているんですね、ずっとこれまでの間。もう七カ月以上、出国できない状態が続いているんですね。

 この点についてもう少し詳しく、外務大臣の方から尹炳世長官に対してどういうお話をされて、先方はどういう回答をされたのか、伺いたいと思います。

岸田国務大臣 この問題につきましては、報道の自由、表現の自由、さらには日韓の二国間関係の観点からも大変重要な、深刻な課題であり、韓国政府に対して適切な対応を求めたところであります。

 そして、裁判そのものもそうなんですが、特に出国禁止措置につきましては、韓国の国内法におきまして、出国禁止というのは行政処分であるということを踏まえた上で、韓国政府に対しまして対応を求めたところであります。

 それに対する韓国側の反応につきましては、今、現時点では、私の方からつまびらかにすることは控えさせていただきたいと思います。

長島(昭)委員 今大臣がおっしゃったように、これが起こったのが、事件といいますか、記事がネットに配信されたのが八月の上旬です。去年の八月八日にソウルの中央地検からいきなり出頭命令が出されて、それ以降、七カ月以上も出国禁止処分が八回にわたって延長されている。これは行政処分ですよ。

 そして、せんだって、今や被告になっているわけですけれども、加藤さんという支局長さん、行政手続の取り消し請求の訴訟を起こされました。その訴状にこう書いているんですよ。

 その訴状では、原告になりますからね、原告は、被告の、被告のというのはその行政処分を行った側の、処分により、日本への出国が不可能であり、原告の私費で家賃を負担し生活しているため、出国停止期間が延長されることによる経済的負担は非常に大きい状況です。ここから先が大事。また、原告は三人の子供を養う一家の家長です。ことし長女が大学に入学するなど、思春期の原告の子供たちは、父親である原告と多くの会話を交わし、心を通わせ合う必要性が非常に大きい時期ですが、出国が停止されている原告は、経済的な状況等を考慮すると、家族と顔を合わせることが事実上厳しく、一度も会っていませんよ、それによる原告及び家族の精神的苦痛も甚大なものです、こう書かれている。

 大臣、まあ相手の反応はおっしゃらなかった、大臣がどのぐらいの強い口調で尹炳世長官に迫ったのか、それはわかりませんが、これまで七カ月間、外務省として韓国政府に対して、まさに大臣いみじくもおっしゃった、これは司法ではなくて行政処分ですから、どういう働きかけをしてきたんですか。

岸田国務大臣 この問題につきまして、当然のことながら、我が国政府としましては、さまざまなレベル、さまざまな機会を通じまして我が国政府の懸念を伝えてきました。残念ながら、今日まで何ら事態が改善していないということ、まことに残念に思っています。

 裁判そのものにつきましても、表現の自由あるいは報道の自由、日韓関係、こういった観点からも大変重大な、深刻な課題ではありますが、特に出国が禁止されているということ、このことにつきまして、特に適切な対応を求めたところであります。

 韓国の出入国管理法は、法務部長官が同法に規定された一定の外国人に対して出国を停止できる、こういった規定になっています。こうした行政の対応が規定されているわけですので、そういった点も踏まえて、韓国側に適切な対応を求めたところであります。

 そして、日韓の間においてはさまざまなレベルの対話を続けているわけですが、特に、ほぼ月に一回行われています局長級協議、この局長級協議におきまして、具体的な課題についてやりとりを行っています。この局長級協議におきましては、当然のことながら、毎回取り上げ、我が国の問題意識、遺憾の意をしっかり伝えているということであります。

長島(昭)委員 何度も言っています、遺憾の意を表明しています、政府から聞こえてくるのはそういうメッセージだけなんですよ。本当にどういう働きかけが行われているのか。

 もちろん、さっき大臣おっしゃったように、表現の自由、報道の自由の問題も、これは極めて大事。つまり、こういうことが続けば萎縮効果が出ますから、際どい報道をしようとチャレンジするケースが少なくなると思いますよ。これは別に産経新聞だけの話じゃない、朝日だって、毎日だって、読売だって、外国のメディアはどのメディアでも、みんな注目していますよ。

 加えて、この出国停止、行政処分なんですよ。

 法務省、きょう来ていただいていると思いますが、我が国で裁判を受けている被告、身体を別に当局から拘束されていない、身柄を拘束されていない状況の中で、こんなにも長期間出国を停止するような、そういう法制度、我が国はどうなっているんですか。我が国はこういうようなことはありますか。あり得ますか。

杵渕政府参考人 お答え申し上げます。

 入管法上、重罪、具体的には死刑または無期もしくは長期三年以上の懲役等に当たる罪につき訴追されている外国人、また、これらの罪に関し勾留状等が発せられている外国人につきましては、関係機関から通知を受ける場合には、その者の出国の確認を二十四時間に限り留保するということができます。

 そのような場合を除き、身柄の拘束を受けずに裁判中の外国人の出国を差しとめることができるといったような規定はございません。

長島(昭)委員 外務大臣、二十四時間ですよ、日本の法令は。もちろん、韓国の法令とは違うと言われればそれまでかもしれませんが、常識的に考えて、証拠隠滅をするおそれがあるとか、あるいは、出国したらどこに行っちゃうかわからないとか、こういうことでもあれば、百歩譲って、別かもしれません。しかし、日本の主要紙のソウル支局長までやった方ですよ。これだけ世界が注目しているわけですよ。国外に逃亡してどこかいなくなってしまうなどあり得ないじゃないですか。

 場合によっては日本政府がそういう、加藤支局長がどこか行かないようにきちっとギャランティーをする、だから出国はさせなさいと。行政処分なんだから。韓国の入管法によれば、法務部長官が出国停止の延長を許可することができるとなっているわけでしょう。まさに大統領府、そしてそのキャビネットの一員である法務部長官ですよ。行政と行政の関係じゃないですか。

 日韓が最も大事な隣国関係だとすれば、過去の問題とかいろいろありますけれども、しかし、現在進行の、日本人の身体、移動の自由を奪っているこの状況、外務大臣、不退転の決意でこれを解決するとこの外務委員会の場でお約束ください。

岸田国務大臣 御指摘のこの裁判の問題、特に出国禁止措置は、先ほど申し上げました表現の自由、報道の自由、さらには行動の自由にかかわる重大な問題ですが、さらに、現状を見ますときに、人道上の問題であるとも認識をいたします。そういった思いでしっかり対応しなければならないと存じます。

 そして、この問題につきましては、国際社会もさまざまな反応をしています。ソウルの外信記者クラブも、韓国検事総長宛ての公開書簡で深刻な憂慮を表明していますし、アメリカを初め各国も表現の自由等の重要性を指摘しております。

 我が国としましては、こうした国際社会に対してもしっかりと思いを訴えていかなければなりません。その関係で、今月二日ですが、現在ジュネーブで開催されております第二十八回人権理事会におきまして、我が宇都外務大臣政務官を派遣させていただきまして、スピーチを行わせていただきました。日本として、報道の自由は民主主義の基礎をなすものであり、ジャーナリストは書いた記事によって恣意的に罰せられるべきではない、こうした訴えを行ったところであります。

 ぜひ、国際社会あるいは国連の場等を通じましても、適切な機会にこうした働きかけを行っていきたいと考えます。

長島(昭)委員 人権理事会でのアクションは極めて適切だと思います。

 ただ、今、表現の自由の話だけしかされませんでしたけれども、それも大事ですよ、精神的自由の根幹をなすものですから大事ですけれども、身体の自由も奪われているということですよ。この点もぜひ国際社会で訴えていただきたい。

 私が何でこんなにしつこく聞くかというと、外務省の本件に対する姿勢というのは、ちょっと弱いというか真剣味に欠けている気がするんですよ。

 例えば二月十三日に、一番最近の出国停止処分の延長があったとき、そのときの外務省の外務報道官のコメントがここに出ているんですよ。報道、表現の自由と日韓関係の観点から極めて遺憾だ、韓国側が何の措置もとらず、事態が何ら改善していないことはまことに残念で、引き続き適切な対応を求めていく。

 これはコメントとしてどうですか。残念だ、引き続き適切な対応を求めていく。もう少し毅然とした表現を使えないんですか、外務大臣。そういう指導をされた方がいいと思いますよ。全く伝わらないですよ、これでは。

 しかも、報道、表現の自由と日韓関係の観点からと言っているけれども、今問題なのは、身体の自由ですよ、移動の自由ですよ。出国できない、家族と会えない、こういう状況が起こっている。

 この点、外務大臣、ぜひしっかり指導をしていただきたいと思います。

 最後に、この点で伺いたいんですけれども、先日、自民党の大実力者である二階総務会長が、千数百人の日本の、企業関係者かどうかわかりませんが、連れて韓国を訪問しているんです。ちょうど二月十三日なんですよ。そして、にこやかに朴大統領と会談されているんですよ。

 しかも、安倍総理は、メッセージを託しているんですよ、二階総務会長に。日本国民はみんな心配している、自由に日本に渡航し家族と会えるようになることを望む、これを伝えたことになっているんです。

 そのときに、外務大臣、ここから大事、朴大統領はこう言ったというんですよ。問題は司法の場に移っており、司法の判断に委ねるしかない。

 これは事実誤認ですよね、外務大臣。いかがですか。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、出国禁止の部分に関しては、行政のかかわる問題であると考えています。

長島(昭)委員 これは本当に行政処分ですから、しっかり、外務大臣からもそうですし、日本政府全体、きょうは副長官がお見えですから、副長官にも一言伺いたいと思います。

 この点について、本当に速やかに、日本政府として、韓国政府に対してきちっと行政処分の撤回を求めていただくこと、お約束いただけますか。

加藤内閣官房副長官 今、外務大臣からもお話ありましたように、政府としても、これまでも、そうした表現の自由、行動の自由に加えて、身体の自由も含めて対応してきたところでありまして、引き続き、そうした今のお話も含めて対応させていただきたいと思います。

長島(昭)委員 これは特段のアクションをぜひ起こしていただきたい。

 安倍政権は、第一次政権のときから、価値観外交、こういうことを標榜してきたし、国家安全保障戦略の中にもそういう表現があります。これは本当に基本的人権にかかわる重要な価値の問題でもあると思います。

 人権、人道の観点から、外務大臣のしっかりとしたリーダーシップを求めて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 維新の党の小熊慎司です。

 質問をさせていただきます。

 まず初めに、先日、アメリカのオバマ大統領夫人が来日をされて、また、非常にいい来日、成果も上がったというふうに思いますが、その成果の一つとして、安倍首相の昭恵夫人とともに、女子教育推進に向けた日米協力に関する文書を発表されて、この分野について、今後、世界で協力をし合って支援をしていくということをうたっていきました。

 女性の社会進出、これは安倍政権のテーマの一つでもありますが、世界経済フォーラムの男女格差のランキングでいうと、日本はめちゃくちゃ低い、先進国の中でも低いわけであります。

 ただ、四つぐらいの指標の中で、教育分野は、日本は国際的にも女性に対しては高い点数を実はつけられているところであります。社会進出に関しては、日本はまだ努力をしていかなきゃいけない部分はありますけれども、女子に対する教育というのは世界の中でも高い評価を得ているところでありますから、そうした日本の経験を持ってアメリカと協力して、女性の教育支援というのをこれからやっていくということは、非常に時宜にかなっているし、日本の果たす役割、任に合っているというふうに思いますけれども、これは具体的に今後どうしていくのかというのをまずお聞きいたします。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 先ほどもお話ありました、先般、ミシェル・オバマ大統領夫人が訪日の機会に、安倍昭恵総理夫人とミシェル夫人を招いて、女子教育支援に関する日米共同行事が開催されました。

 また、同行事開催の機会に、女子教育支援に関する日米協力のファクトシートを発出したわけであります。

 同ファクトシートにおいては、日本は、女児、女性のエンパワーメントとジェンダーに配慮した教育関連分野で、二〇一五年から三年間で四百二十億円以上の政府開発援助を実施し、米国は、二〇一六年度予算要求において二・五億ドルの関連予算を盛り込むことを表明いたしました。また、青年海外協力隊と米国の平和部隊との間の、途上国での協力等を含めた日米協力を打ち出したところでございます。

 先ほど先生もおっしゃいましたように、従来から日本に知見、経験のある教育支援分野での日米協力は、女子教育支援に関する国際社会の機運を高める上でも、また、日米によるグローバルな協力を一層進展させる上でも、有意義なものであると考えております。

小熊委員 そのとおりです。

 これをしっかりやっていくためには、気合いだけではいけないわけですよ。かかるものがあるわけです。

 そこで、新たにいろいろな取り組みをしていくんですけれども、限られた予算の中でやっていくしかないんですが、来年度のODA予算について、過日、予算委員会でも質疑をして、財務大臣にもちょっと質問しましたけれども、ODA予算のさらっとした概要を、大臣か政務官でも。

岸田国務大臣 ODA予算ですが、当初予算につきましては、過去四年間連続で増額となっています。そして、今審議をお願いしております来年度予算につきましても、対前年度比で八億円、〇・二%増となる四千二百三十八億円を計上しております。

小熊委員 増額とはいっても、それはちょっと過大広告に近い表現ぶりで、民主党政権のときに、減らしていったのをV字回復した、こういう言葉、元の玄葉大臣も言っているけれども、V字回復でもなくて、返し針ぐらいの、ちょっと変わったぐらいの話ですし、〇・二%ですよ。今、円安の中の為替のことを考えると、なかなかこれは増額なんという言葉を、大臣、胸張って言えませんよ。

 選択と集中、最近ずっと言い続けましたら、拡大という言葉を大臣も使っていただけるようになってきましたから、だんだん寄り添ってきたなと思ったんですが、具体的には出ていない。

 いろいろな分野で、日本は世界への支援をしますと。総理もいろいろな国際会議の場面でいろいろなことを言っています。いいことなんです、それは。世界に対する支援のあり方として、時代に応じた新しい取り組み、CARICOM諸国にまたやるとか、この間も防災会議があったけれども防災分野でやるとか、今回の女子教育支援というのもいいことです。ということは、やらなきゃいけないことがふえているんですね。

 もちろん、ODA、質をしっかりしていかなきゃいけないわけでありますけれども、やらなきゃいけないこと、取り組むべき課題、日本がそうやって表明している。これはスクラップ・アンド・ビルドでやっていたんじゃだめなんですよ、支援は継続性も大事ですから。まして、ODA卒業国でさえ、やはりその脆弱性に目を向けて支援をしていきますと言っているわけですよ。さらに守備範囲が広がっているのに、増額といったって〇・二%、微増では、とても、これは表紙だけ立派で中身がないのと一緒なんですよ。

 もっと本気で、財務省との闘いもあるんでしょうけれども、日本のODAの意味づけというのは、だから、まだちゃんと位置づけされていないと思います、政治の上においても。たびたび言っていますよ、国民においてもこれはチャリティーだと思っていますから。だから、日本が何かあったときは出さなくていいということなんです。これは国家戦略、世界戦略なんですよ。

 そういうことも含め、大臣、今回増額と言っているけれども、私、今まで大臣が答弁してきて、そうですねと、拡大もちょっと言葉を使っていただきましたけれども、全然形になっていないんですよ。今回の予算の反省を踏まえて、もう一言お願いします。

    〔委員長退席、三ッ矢委員長代理着席〕

岸田国務大臣 御指摘のように、この円安傾向等を考えますと、増額になったといえどもこの程度の増額では実質的に十分ではない、これは御指摘のとおりだと思います。

 選択と集中と拡大というこのフレーズ、ここ二年間、委員の方から毎回御指摘をいただいてきました。私も時々使わせていただいております。この拡大の部分につきましても、引き続き追求をしていかなければならないと思います。

 ODAを初め国際協力、これは我が国の外交にとりまして最も重要なツールのうちの一つであり、これをしっかりと戦略的、効果的に活用していかなければなりません。額においてもしっかりと引き続き努力を続けたいと思いますし、あわせて、ODA予算、補正予算ですとかあるいは他の有償資金協力の枠組み、こういったものもしっかりと組み合わせながら、効果的、戦略的な使い方を考えていかなければなりません。

 内容においても、また対象においても、ぜひ効果的なありようについてもしっかりと検討を続けていきたいと考えます。

小熊委員 私、ODAをふやした方がいいというのは、幾つかの意味が実はあるんです。

 日本は、人口が減少して、ある意味縮小していく国家になっていきます。だからこそ、今まで以上に世界とのかかわりを努力しないと、下りのエスカレーターに乗っているのと一緒なんですよ。現状を維持しようとしたら、それは、とどまっていることというか、下がっていくだけなんです。今まで以上に世界とのかかわり、この分野について拡大をしていくということをやっていかないと、人口が減少して国力が下がっていく、留学生、行く留学生も少ない、入ってくる留学生も少ないという今現状もあるわけです。

 こうした状況を踏まえれば、より意識して世界とどうかかわっていくかということをやらなきゃいけないからこそ、ODAをもっと充実させていくということが必要だという意味で言っています。

 あと、もう一点。特に、このアジア地域においては、かつてのODA支援されている国が、逆に、経済的に豊かになって支援する側に回ってきています。特にアジア地域は激しい。そういう中で、いろいろな各国、世界への国際的な支援をしている国がありますけれども、やはりそれは自国のためで、嫌らしい意味でやっている部分もあるのも見受けられます。日本も多少、全く日本の国益に関係ないということではないんでしょうけれども、本当に純粋な意味で国際支援しているというのは、私は日本が一番だと思っています。

 そういう意味では、具体的に言えば、中国、今経済的に発展をして、いろいろな国で支援しています。私もいろいろな海外調査に行ったときにそれも見ますけれども、もちろんいい支援をしている場合もありますが、やはり乱開発につながったり、その国の文化を壊したり、また、そういう国で法の整備がされていなければ、労働者をどかっと中国が連れてきてそのまま置いていっちゃう、それも、大臣わかるとおり、見受けられているわけですよ。

 だから、このODAの世界で世界のリーダーシップを発揮していくというためにも、ほかの国が経済的に豊かになってやり始めていく、めちゃくちゃなこともしているわけですから。まさにODAのスタンダードをしっかり日本が示していって、世界のほかの国の見本となる。そして、本当に、ここは別に、中国だ、日本だなどと競争する世界でもないわけですから、みんなで世界をよくしていこうという分野で、そういう方向に価値観を共有していく先頭に立たなきゃいけないんです。

 でなければ、日本のODA、財政が大変だから減らしていっても、ほかの国がそういう傍若無人なやり方でやっていって世界が混乱したら、乱開発が進んだりなんかしたら、結局は日本の不利益にもつながってくるわけですよ。

 そういう大きな視点に立って考えると、これはやはりきちっと取り組まなきゃいけない。それは財政状況はあるんですけれども、あえてそこは出していく。そして、日本の利益にもなるというつながりを外務省がしっかり見せていないんじゃないですか、これは政治のステージでも、国民に対しても。

 そういう意味において、もう一言お願いします。

岸田国務大臣 御指摘の点、大変重要であると認識をいたします。

 国の外交にとりまして、みずからの国益を守る、あるいは国益を増進する、これは大変重要な課題でありますが、それにとどまってはならないと思います。やはり、国際社会とのかかわり、グローバルな課題にしっかり貢献することによって我が国が国際社会で評価され、そして、そのことがひいては我が国の国益にもつながる、こうしたことでありますので、ぜひ、国際社会とのかかわり、こうした協力等につきましても、財政厳しい中でありますが、しっかり取り組んでいかなければなりません。

 そして、予算においても、厳しい予算の中で最大限努力をしなければならないと思いますが、御指摘のとおりに、どのような国際協力を行うのか、これが大変重要だと考えます。他の国の国際協力との比較において、日本らしい質の高い協力を実現しなければならない、こういったことから、昨年、十二年ぶりにODA大綱を改めて、国際協力大綱というものを定めました。

 その基本的な考え方ですが、一つは、こうした国際協力において、やはり民間も含めたオール・ジャパンで取り組まなければいけないという考え方。そして、二つ目として、こうした協力に当たっては、従来のODAの物差しにおいてODA卒業国と言われている国に対しても対象を広げる、要はターゲットを拡大するということを考えなければならない。そして、もう一つの視点として、単に一方的な支援を行うのではなくして、相手方とのウイン・ウインの関係、ともに発展するという協力でなければならない。この三つの考え方を新しい国際協力大綱の柱として掲げました。

 ぜひ、こうした考え方に基づいて、質の高い国際協力ができるように、我が国として引き続き努力をしていかなければならない、このように考えます。

    〔三ッ矢委員長代理退席、委員長着席〕

小熊委員 ぜひ、その際は、〇・二%、日本風に言えば何厘の世界ですよ。倍増とまで私は言いたいんだけれども、一割増とか、何割ふえましたぐらいのことをこれからやっていかなきゃいけないし、大臣、国際協力大綱というのは開発協力大綱……(岸田国務大臣「済みません」と呼ぶ)そもそも、そこから大臣、しっかりやっていただきたいというふうに思います。

 今、まだ私、見ていませんけれども、「風に立つライオン」という協力隊員の映画の予告編だけで、私、泣いてしまいましたけれども、ああいうのも逆に倍増して、若者たちに世界に飛び立ってもらうというのも考えていくような時期にあると思いますから、ぜひ今後、この予算、だから、やるべきことは、それは誰も否定しません。私も否定しません、そのとおりです。

 やる上では、その財源が必要ですよという話で、言うだけ言って、中身を見たら薄っぺらなことをやったって、結局はしようがないわけですから。そこをしっかり、徹底してこの財源の確保に向けて、私も与野党の立場を超えてこれを応援しているわけですから、ぜひお願いを申し上げます。

 次に移りますけれども、過日、仙台で行われました国連防災世界会議の成果についてお伺いするんです、そこは端的でいいんですが。

 実は、これは問題点があって、特に私の地元の福島県では、この成果については一定の評価はするんですけれども、非常に残念だったのは、これは複合災害です、今回の東日本大震災。それを踏まえて、その知見を生かして日本が世界発信をするということで、誘致をして会議をやったわけでありますけれども、地震、津波、原発事故の複合災害です。

 しかし、総理がそこで言及したのはたった一言ですよ。何が、日本の知見、経験を踏まえてこういう防災に資しますと言っても、大事なところを抜かしてやっているんですよ。この世界会議、成功した部分もありますけれども、ここをスルーというか、一言しか言及しなかったということは、非常に問題があると思います。

 総理も言葉では、どの政治家でも、私だって言いますよ、福島の復興なくして日本の再生なしと。言葉だけじゃないですか。ここをちゃんと言っておかないと、東日本大震災の知見を踏まえて世界に発信していくということにならないんですよ。

 これは、ちょっと反省した弁をもらいたいと思います。

岸田国務大臣 今回の第三回国連防災世界会議ですが、世界百八十七カ国の代表の参加を得て会議を進めることができました。これは、さまざまな政策に防災の視点を導入する、防災の主流化を推進することに資することができたと考えています。

 安倍総理から仙台防災協力イニシアティブを発表し、防災社会に関する日本の知見と技術を国際社会と共有する、こうした方針を打ち出しました。また、数多くの開催されたパブリックフォーラムでも、日本の知見と技術を発信いたしました。

 しかし、その中にありまして、原子力災害について、言及、取り組みが不十分だったのではないか、こういった御指摘をいただきました。

 防災、災害につきましては、安倍総理は、ステートメントの中で、東日本大震災と福島第一原発事故を踏まえ、さらなる防災投資に取り組む姿勢を打ち出しました。また、分科会の一つ、技術災害の中で原子力の災害も取り上げられ、我が国の参加者から、原発事故の教訓あるいは原子力防災の取り組みについて説明をいたしました。

 さらに、原子力災害ということでの取り組みとしましては、関連事業として、原子力災害を扱ったシンポジウムあるいは展示が開催されたほか、会議参加者を対象に、福島第一原子力発電所へのツアー等が実施をされました。

 このように、この会議におきまして、東日本大震災から復興の発信、そして被災地の発信につなげる重要な機会にすることができたと考えておりますが、その中にあって、この原子力災害の扱いにつきまして、不十分だという御指摘につきましては謙虚に受けとめ、今後の参考にさせていただきたいと考えます。

小熊委員 そもそも、我々維新の党は、昨年立ち上がって、旧日本維新の会のとき、あと、一緒になった結いの人たちもそうですけれども、原子力輸出に関しては慎重な態度をとっています。

 その原発輸出に関して、首相は、原発事故の経験と教訓を世界と共有する責務という言葉を使って、だからこそ輸出していくんだということを言っているんですけれども、言葉だけで、実際のところへいくと、それはちゃんとやはりなっていないということなんです、今回の会議の言及が少なかったということは。

 今後、いろいろな国際会議、防災関係のときには、地震、津波だけではなくて、これは複合災害ですから、ここをしっかりもっとクローズアップして、日本の今の、まだ終わっていない、現在進行形の災害でもありますから、しっかりと情報発信をしていく、この知見を世界に広めていくということを意識してやってもらわないと、地震、津波だけで終わられたのではたまったものじゃありませんから、ぜひやっていただきたい。

 その際に、この後、再来月、五月には島サミットが福島県のいわき市で開催をされます。このテーマの一つも、島嶼国の支援、連携といったことが大きくはなっているわけですけれども、この間もサイクロンでツバル等が被害を受けて、大臣のもと、リーダーシップを発揮して薗浦政務官をすぐ派遣していただきました。とにかくここでも、島サミットの防災の、災害に対する取り組みというのは多分語られるというふうに思いますから、ぜひ、今回の防災会議の反省を踏まえて、この島サミットでも、東日本大震災がテーマになるところでは、しっかりこの原発事故災害に対する発言、言及をしなければならないと思いますので、この島サミットに対するその点についての取り組みについてお伺いをいたします。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 本年の五月二十二、二十三日、福島県いわき市において、太平洋島嶼国各国の首脳をお迎えして、第七回の太平洋・島サミット、PALM7を開催いたします。二カ月後に迫ったサミットに向け、今月四日には高級実務者会合を開催し各国政府と意見交換を行ったほか、開催地である福島県いわき市とも連携しつつ、首脳をお迎えするプログラムの調整を進めるなど、鋭意、準備を進めている段階でございます。

 今回のPALMは、被災地の力強い復興をアピールするとともに、防災、気候変動や持続可能な開発に関する日本と太平洋島嶼国との協力関係を一層強化する重要な機会でございます。太平洋を共有する仲間である太平洋島嶼国と日本とのパートナーシップを新たな次元に高めるべく、引き続き、今委員が言われた原発の話も含めて、しっかりと準備をさせていただければと思います。

 よろしくお願いします。

小熊委員 長い答弁、ありがとうございました、最後の一行だけでもよかったんですけれども。まあ、しっかりここをやっていただきたい。

 また、あと、脆弱性を考えてODA卒業国にも支援していくという、これは総理もたびたび言っているんですが、例えの例で、CARICOMの話が先立っているんですよ。総理からもCARICOMの話、いろいろな、所信でも、言及しているのはCARICOMなんですね。

 でも、この南太平洋、本当にまさに御近所ですよ、このところも同じようなことなのに、言っていませんから、それは各国の大使も気にしていました、島嶼国の大使の人たちも。言っているのは我々も対象に入っているんだよねというのがありましたから。

 これは今後の対応でいいんですけれども、やはり折に触れ、脆弱性で支援していくんだというのは、CARICOMを例に出すのもいいんですけれども、しっかり、南太平洋の島嶼国とか、またアフリカの周辺も島嶼国がありますけれども、そうしたこともきちっと言及しておかないと、CARICOMだけなのかという情報発信になってしまいますから、そこはちょっと注意して、発言に気をつけていただきたいなというふうに思っています。

 次に移るんですけれども、大臣所信でもあった経済外交の強化、これは非常に必要ではありますが、グローバル化した社会の中で、日本の経済をどう世界の中で発展させていくかというのもしっかりやらなきゃいけないことで、これは狙いはいいんですけれども、過日の予算委員会でも、農水大臣に、攻めの農業、これもいいよと。だけれども、ハンディを背負っている地域があるわけです。それは、福島県を初め輸入規制をかけられている地域です。

 これは、世界と戦っていきましょう、用意ドンとやっても、とりわけこの輸入規制、外務省また関係省庁の努力によって、誤解を理解に変えていって、どんどんこれを緩和している、規制を外している国がふえているのも事実です。しかし、この禁輸措置が色濃く残っているのは、実は、一番経済的につながりのある東アジア地域の国々が残っているわけです。こういう中で、経済連携を強化しましょうといっても、また地方創生の中でも、その地域もどんどん輸出してくださいなんといっても、できない部分があるわけですよ。

 過日の農水大臣への質問は、そういうことを考えての攻めの農業という支援策はあるのかと言ったら、ないんですよ。ないから聞いたんですけれども。でも、その後、農水大臣は、すぐ職員を派遣していただいて、いろいろ話し合いをさせてもらって、今後どう対応していくかというのは、ちょっと今前向きな取り組みをしていくとなりましたけれども。

 外務省においても、いろいろな、ODAを通じて、また企業の進出であるとか輸出入とか、あと今インバウンドでもやっていますけれども、これすら規制をかけられて、空港が再開されないとかあるわけですよ。こうしたハンディを持った地域は、この経済協力の強化というのはどうやっていけばいいんですか。そういうメニューが、今、外務省にも明確なものはない。被災地のいろいろな支援というのは、外務省のメニューに多少はあるんですが、実際は、食べ物の分野は少ないんです。工業製品の部分はいろいろな支援があって、福島県でもいろいろな事業採択の事例はありますけれども、食べ物の分野は、実はほとんどないに等しいんです。

 こういう中で、世界経済でハンディを背負った地域はどうやっていけばいいんですか。新しいメニューを考えるべきだと思いますけれども、どうでしょうか。

中根大臣政務官 まず、輸入規制撤廃に向けた取り組みについてのお話を少しさせていただきます。

 政府としては、関係省庁、機関が緊密に連携し、安全管理や出荷制限等の我が国の措置について、各国政府等に正確な情報を迅速に伝達し、科学的根拠に基づき輸入規制の緩和及び撤廃を行うよう、粘り強く働きかけを行っているところでございます。また、外務大臣、私を含め政治レベルでも、要人往来や会談等あらゆる機会を捉えて、積極的に申し入れを行ってきているところでございます。

 外務大臣が本部長を務める日本企業支援推進本部においても、風評被害対策を含む日本企業の海外展開支援を一層強力に進めるよう、全在外公館に対して訓令をしているところでもございます。

 こうした取り組みの結果、岸田外務大臣の就任以降に規制撤廃を実現した国、四カ国を含め、計十三カ国が規制を撤廃しております。また、EUは二度にわたって規制の見直しを行い、シンガポールが福島県産の輸入停止の縮小を含む規制緩和を行うなど、各国で規制を見直す動きが見られております。

 三月十二日には、飯倉公館におきまして、岸田外務大臣、内堀福島県知事の共催によるレセプションを開催いたしました。これは小熊委員も協力していただいたと伺っております。これらの開催などにより、風評被害払拭に向け、このときも、在京の外交団等約二百二十名の参加に対し、福島県産の食材を用いた料理等を提供し、福島県産の食品の安全性に対して理解を求めたところでもございます。

 このような被災地を初めとする地方との連携も含め、引き続き、輸入規制の緩和、撤廃に向けて、粘り強く働きかけを行ってまいりたいと考えております。

小熊委員 だから、その方向性はいいんですよ。それをどんどん撤廃に向けて努力してもらうのはそうです。今までもしていることも否定もしません。成果も上がっているのも否定もしません。

 ただ、もう用意ドンと始まっていて、でも、ハンディがあるところをどうするのという話なんですよ。そのハンディをなくしていく努力をしてもらわなきゃいけない。現状あって、もう競争に入っているわけですから。これはどうやって支援するのと。ハンディのない地域と、ハンディのある、福島県だけじゃなくていろいろな隣県もはまっていますから、輸入規制は国によって。そういうふうに用意ドンとやらされているわけですよ。では、農産物を売ってくださいと。いや、売れないんですよ、規制がかかっているから。

 撤廃に努力します、そのとおり。でも、規制している状況でどういう支援をするんですか。規制のかかっていない県、エリアと、規制のかかっているエリア、同時に競争させられたって、こっちはハンディがあるわけですよ、一〇〇パー売ったって一〇〇パー売り切れないわけですから。そこのゲタを履かせる何かメニューが必要でしょうということですよ、輸入規制がかかっていないほかの地域のものと。それは今ないんです。明確にないんですよ、外務省も農水省も。

 だから、それをつくるためにどうしたらいいかという問題解決のために、これからいろいろな支援策を考えなきゃいけないと思うんですけれども、その支援策、取り組みますか、しませんかということです。

岸田国務大臣 御指摘の点は、まず、外務省としての取り組み、先ほど、風評被害の払拭、あるいは禁輸措置への対応、大臣政務官から説明をさせていただいた次第であります。

 そして、今の御指摘の点につきましては、内容によりまして、政府全体として取り組むべき課題だと思います。ですから、外務省としては、外務省としてやるべきことをしっかりやるわけですけれども、今、ゲタを履かせて云々という御指摘がありました。その部分は、国内政策として政府全体として取り組むべき課題だと思います。

 ですので、政府全体としてそれは検討をしなければならないと思いますが、その上で、さらに外務省として取り組んでいることをつけ加えるとしたならば、例えばビザの緩和につきまして、被災地につきましては他の地域と異なる取り扱いをすることによってより海外からの観光客をふやすなど、そういった取り組みは行っています。このように外務省としてやるべきことはしっかりやりたいと思います。

 御指摘の点につきましては、国内政策として政府全体として取り組むべきものだと考え、検討していかなければと思います。

小熊委員 それは政府全体でやるんですけれども、誰が音頭をとるのといったら外務省なんですよ。国際的なこういう風評被害、こういうものに対応するのは外務省なんですから。外務省がきっちり中心となって、関係省庁、音頭をとってやっていただきたいと思います。

 だから、今言ったとおり、観光客をふやすといっても、民間航空会社が飛ばしたいと言ったって福島空港と上海便が復活しないとかいうこともあるわけですよ。だから、ふやすといったって、そういうこともハンディを背負っていますから、それをしっかりやっていただきたいということ。

 あと、過日、防災世界会議、これからやる島サミットでも、福島県の関係者としゃべったら、もはや安全ですと情報発信してもなかなか理解を得られないから、こういう国際会議等をしっかり福島県でやって情報発信していくことが風評被害の払拭、また理解につながるということもありますから、こうしたこともあわせて考慮に入れていただいて御支援をいただきたいというふうに思います。

 もともと政府が、この原発事故災害は前面に立つと言っていて、立っていないんですよ。だから、安倍総理の支持率は高くても、復興に関することは七割以上の人が評価せずとなっているのは、そういうことですから。しっかりとそれを見据えて、今後対応をとっていただく。

 そして、特に、世界とのかかわりの中での情報発信は外務省が主役でありますから、担うべき任ですから、政府全体としてやると言っても、対外におけるこうした対応は、ぜひ岸田大臣がしっかりリーダーシップを発揮して、ほかの省庁の先頭に立って引っ張っていただくことをお願い申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 維新の党、木内孝胤でございます。

 本日は、経済外交に焦点を置いて質問させていただきたいと存じます。

 岸田大臣は、外交演説あるいは国際情勢における報告の中で、三つのことを柱に外交を展開すると述べられています。

 一つ目は、日米同盟の強化、そして二つ目は、近隣諸国との関係強化、三つ目の柱に据えておりますのが、この経済外交の強化でございます。

 日本の経済を振り返ってみますと、過去二十年間、失われた経済などと言われております。

 お手元に資料をお配りしておるんですけれども、これをちょっとごらんいただきたいんですが、日本は過去二十年間、説明するまでもなく、ゼロ成長の状況が続いております。当然、成熟した国でございますので、ある程度低成長というのはやむを得ない部分がございますが、実は一九九五年時点、日本は中国の七倍の経済規模がございました。あるいはロシアと比べても、十七倍の経済規模がございました。

 一方で、こうした中国やロシアというのは、約十三倍あるいは七倍、経済が倍増しておりますので、今となっては、中国においては、日本の経済規模を二〇一〇年には抜き去り、現在は二・二倍、あるいはロシアも、日本の大体半分の経済規模となっているわけでございます。

 ほかの国、例えばアングロサクソン諸国も、英米でございますけれども、これも、大分成熟しているといいながら、二・三倍とか二・四倍、こうした経済水準で成長を遂げておりますし、あるいは、より成熟していると言われています欧州なども、一・五倍とか一・八倍成長しております。

 この数字を示しているのには一つ意味がございまして、やはり日本の立ち位置というものを客観的に見ていただきたいというふうに思っております。

 今回、私は、大臣が経済外交を柱とするということを大いに歓迎しております。中身を見てみますと、例えばトップセールスをするとか、ODAをしっかりと活用するとか、官民一体でいろいろ推進するとかおっしゃっていますが、いま一つ実はちょっと具体策が見えないものですから、大臣のおっしゃる経済外交の具体策についてお伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、私は引き続き、外交の三本柱の一つとして経済外交を掲げております。

 そもそも、今の政権、安倍内閣にとりまして、日本経済の再生、そしてその先の発展に資する戦略的な経済外交、これは我が国にとりまして最重要政策の一つであります。こうした経済に取り組む安倍内閣の方針をしっかりと支える上においても、外交の面からしっかりと努力をしなければいけない、こういった考えに基づいて経済外交を柱の一つとして掲げています。

 そして、その中身ですが、大きく言いまして三つ考えています。

 一つは、我が国の経済発展に資する経済的な環境整備、これが一つ。そして、日本のさまざまな企業が海外に出ていく、こうした海外に出ていくのを支援する、こうした努力。そして、我が国にとって必要な、観光客、エネルギー、必要なものを取り込んでいく、この取り込んでいくをしっかり支援していく。大きく分けてその三つが柱になると考えています。

 さまざまな国際フォーラム等における議論をリードするとか、包括的で高いレベルの経済連携を推進していく、こうした経済環境整備、これは大変重要だと思っています。たしか、今我が国としましても、八つほどの経済連携を同時並行的に交渉を進めています。こうした経済連携自体も、相互に刺激し合い、ダイナミズムが働くことを期待したいと思いますが、こういったことを通じまして、我が国にとって好ましい経済環境を国際社会の中につくっていく、これは一つ大変重要なポイントだと思います。

 そして、我が国の企業が海外に出ていくことを支援していく、こういった観点から、私自身、本部長を務めさせていただきまして、日本企業支援推進本部、こういった組織を外務省の中に立ち上げまして、日本企業のさまざまな相談につきましてもワンストップでしっかり受けとめさせていただき、そして、在外公館を含めてオール外務省でしっかりとこうした海外進出を支援させていただく、こういった取り組み、日本から出ていく動きを応援していく、これも大きな柱であり、二つ目の大きなポイントだと思います。

 そして、三つ目のポイントとして、必要なものをしっかり取り込んでいく、そういったことから、例えばエネルギー外交においても、より供給先を多様化することによって、より廉価なエネルギーを日本国内に取り込んでくる。さらには、多くの観光客、二〇二〇年までに観光客二千万人を安倍政権としては目指しているわけですが、こうした観光客の取り込み、さらには対日直接投資の増大、こうした必要なものを外から取り入れていく、こういった取り組みも大変重要な取り組みだと思っています。

 このように、日本の経済再生を掲げる安倍内閣を支援するために、経済外交をしっかりと三本柱の一つとして掲げ、この三本柱の中に、今申し上げました環境整備と、日本から出ていく動きを支援する取り組み、そして日本に必要なものを取り込んでいく取り組み、この三つを中心にしっかりと経済外交を進めていきたいと考えております。

木内(孝)委員 当たり前のことを当たり前にやるということは、非常に大切なことだと思います。海外に出る企業を支援したりとか、正直言って、こんなことは三十年、四十年来、外務省はやり続けてきたことですし、わざわざ三本柱の一つに経済外交というのを据えるのであれば、今までにない何か新しいことでも入っているのかというような期待感もありましたのですが、正直、率直に申し上げて、残念な答弁というのが私の印象でございます。

 経済外交といった場合、これは必ずしも外務省の所管ではないところもあるわけですけれども、現在、アジアインフラ投資銀行が話題になっております。これは、世界の金融秩序、これをどういうふうに変えるのかという非常に大きなテーマだと思っております。

 大臣は、わずか五年間ではありましたけれども、金融機関にも勤務された経験もありますし、私は、大臣が経済外交とおっしゃるからには、こうした例えば人民元が国際化をしようとしているさなかに、どうやって日本がこれを取り込むのか、あるいはどういう新しい秩序をつくるのか、こういうことが大臣に求められている経済外交であり、まさに戦略的な経済外交とおっしゃるのであれば、こういった点を一言二言述べていただきたいという期待がありました。

 そういう意味でいうと、今まで三十年間、四十年間やり続けてきた当たり前のことを繰り返すだけで、しかも、この喫緊の課題であるアジアインフラ投資銀行につきましては、これからお伺いしたいんですが、アメリカ、日本は明確に慎重姿勢を従来から言っているわけでございます。官房長官答弁もそうですし、麻生財務大臣もそうです。岸田外務大臣も、これに関して非常に慎重姿勢であるというのを幾度となく答弁されていらっしゃいます。

 一方で、今月に入りましてからイギリスが参加表明をしております。あるいは、G7諸国のうち、英仏独伊、これも参加表明されております。

 おととしの十月にこの構想を中国が発表してから、一体どのような働きかけをしてきたのか、どのような情報収集をしてきたのか。これは一言で言いますと大失態じゃないですか。これは後追いでこれから入るということですか。審査基準が明確でない、ガバナンスが明確でない、中国に主導権を握られるかもしれない、こうした新しい金融国際組織をつくるかもしれないとさんざん言われてきた中で、大臣はこれに関してどういう手だてを打ってきたのか、どのように財務大臣と連携をしてきたのか。

 正直言って、先週来のニュースで、イギリスが急に参加を表明したことによって慌てふためいているというようにしか私は見えません。過去一年半、大臣のこれに関する取り組み、アジアインフラ投資銀行の構想に対する取り組み、情報収集、これをお聞かせください。

岸田国務大臣 まず、先ほど、経済外交について当たり前のことしか言わなかったという御指摘をいただきましたが、この三十年間とおっしゃいましたが、三十年間の間、国際社会は大きく変化をいたしました。プレーヤーも大きく変わりました。経済をめぐる環境、大きく変化したのは委員御自身がよく御存じだと思います。その中で当たり前のことができるかどうか、これは我が国にとりまして大変重要なことであります。

 ぜひ、時代の変化の中にあってもしっかり対応できるように、経済外交はしっかり進めていきたいと考えています。

 そして、AIIBについて御指摘をいただきました。

 中国政府は、このAIIBの目的として、アジアのインフラ等への投資を推進することを通じて、アジア地域の経済発展と地域経済協力を促進することにあると説明をしております。

 しかしながら、まず我が国の立場を申し上げるならば、日本の参加につきましては、公正なガバナンスを確立できるのか、あるいは、債務の持続可能性を無視した貸し付けを行うことにより、他の債権者にも損害を与えることにならないか、こういった点を含めまして、慎重な検討があるということ、これをずっと申し上げてきました。今現在に至っても、中国側から、こうした透明性あるいは意思決定につきまして、明確な説明は受けておりません。そして、こうした問題意識は、引き続き中国側にしっかりとぶつけていかなければなりません。

 今日まで何をしていたのかという御質問でありますが、今申し上げた視点から、国際社会、欧米各国、さまざまな国々と連携をしながら、この問題を検討してきました。

 そして、英国、ドイツ等が参加を表明いたしました。御指摘のとおりでありますが、この英国、ドイツ等であっても、今申し上げました中国の透明性あるいは意思決定、ガバナンスにつきましては問題意識を持ち、その立場から引き続き中国側に働きかけていく、こういった努力を続けていくということについては引き続き表明しておりますし、変わっていないと思います。

 今、我が国は我が国の立場でありますが、我が国の立場にあっても、引き続き、英国、ドイツ、そして米国を初め関係各国としっかり連携しながら、このAIIBというもののガバナンス、透明性、意思決定等につきまして明らかにするべく、しっかり働きかけを行っていかなければならないと思っています。

木内(孝)委員 かなりのんきな、危機感のない答弁という印象を持ちましたが、英仏独伊、参加表明しているんです。入れば、ルールをつくるときに一緒につくることもできるんです。三月末に創業メンバーになるかならないかという明確なデッドラインがある中で、今の答弁というのは全く期待外れです。

 そうした中で、日本として三月末までにこのAIIBに入るのか入らないのか。さっきおっしゃっていたような懸念点があることは十分承知しております。しかし、この懸念点というのは一年以上前からわかっていた懸念点で、そうした事態を踏まえて、ほかの国は入るけれども日本は入らないという御決断をするんですか。あるいは、ここ一週間ぐらい、財務大臣とどういう膝詰めの議論をしてきたのか。この二点、お聞かせください。

岸田国務大臣 我が国としましては、先ほど申し上げたAIIBの問題点、これを明らかにしなければならないと思っています。現状において、慎重な立場は変わりません。

 財務大臣と連携をしてきておりますし、引き続きしっかり意思疎通を図っていきたいと思っています。

木内(孝)委員 これは国際金融の問題でございますので、やはり今の世界の国際金融の体制のリーダーであります米国との連携、情報共有、これも大切なことだと思っております。

 アメリカもAIIBに対して非常に慎重な姿勢をとり続けてきたと思います。一方で、報道にありますとおり、ほかの国際金融機関と共同融資をするなど、そうした報道も出ております。

 そこのアメリカとの情報共有あるいは連携体制について、状況をお聞かせください。

岸田国務大臣 アメリカにつきましてもさまざまな報道があることは承知をしています。例えば、シーツ米財務次官が本年一月に発表した寄稿文において、AIIBと既存の国際金融機関との協調融資の重要性について言及したということであります。

 これ自体は新しいものではないとは思いますが、いずれにせよ米国政府からは、新たに設立される国際金融機関はガバナンス等に関する高い基準を満たす必要があるという米国政府の今日までの基本的な立場は全く変わっていない、こういった説明を受けていますし、我が国としてもそのように認識をしております。

木内(孝)委員 変わっていないとおっしゃいますけれども、イギリスが参加してから、あるいは英仏独伊が参加すると決めてから、状況の変化というのはないんですか。ここ一週間で状況は大きく変化していると思います。その後、アメリカはスタンスを変えていないということでよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 米国政府、基本的な立場は変わっていないと説明を受けていますし、そのように認識をしております。

木内(孝)委員 そういう状況のようでございますので、アジアインフラ投資銀行についてはこの程度にしたいと思います。

 先ほど小熊委員からもODAの問題等で話がございましたけれども、予算をふやしたといいながら、こちらの図、二枚目にございますとおり、日本のODA予算というのはこれだけ減り続けているんです。日本の国力が、経済の面でいえば、相対感でいえば非常に低下しているという厳しい現実がございます。

 こういう厳しい現実がある中で、これだけ国際金融秩序を変化させるこういう事態において、しかも英独仏伊が参加表明をしている中で、私は、外務大臣は危機感がなさ過ぎると言わざるを得ません。これは、もしかしたら財務大臣が所管だから、外務大臣としては余り、自分の担当ではない、そのような問題意識があったのか。主管大臣は財務大臣というお考えということでよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 厳密な意味での主管については確認はしたいと思いますが、AIIBは、国際金融社会におきまして今大きな注目を集めています。そして、今、インフラ整備につきまして国際社会において大きな需要があるということ、これは事実であります。

 こうした問題にかかわる問題でありますので、外務大臣としましても、財務大臣と緊密に連携をしながら対応しなければいけない課題だと認識をいたします。

木内(孝)委員 創業メンバーになるかならないか、今月いっぱいがデッドラインのようでございます。私は、中に入って、きちんとガバナンスを強化したり、あるいは体制を日本に有利な形に持っていくというのも一つの選択肢だと思っております。細かい中国サイドの情報は私どもは持ち合わせておりませんけれども、あと残された一週間の間に、日本政府としてどういうふうに対応するのか、今後、明確にしていただければとお願いをいたします。

 質問をかえて、大臣の所感の中で、国際機関における日本人職員の強化、グローバル人材の育成、こういうことをおっしゃっております。

 今、なかなか、円安にもなり、例えば一定金額のODAの予算も、ドル建てで見たら約五割減価しているというのが現実でございます。それだけ日本の国民の血税を使ってODA予算として確保したとしても、海外から見ると、円安のために、これが五割減という形でしか評価されていないのが現実でございます。こうした中で、予算をふやすというのは、現実問題、限界があるというのも実態でございます。

 私、かねてから申し上げていることでございますけれども、日本というのは、さまざまな国際機関に対する拠出額が非常に多うございます。当然、経済の規模が大きかったから。例えば国連関連の組織でいえば、約三万人職員がいるという認識でございますけれども、日本の負担額というのは一〇%を超えております。現在の日本人の職員の割合、これは現状どれぐらいで、今後どういう働きかけをしてこれを伸ばそうとしているのか、これをお聞かせください。

山上政府参考人 お答えいたします。

 まず、委員お尋ねの数でございます。

 国連関係機関ということで申し上げれば、全職員約三万二千人でございますが、このうち日本人は約八百人ということで、約二・五%ということになります。御指摘のとおり、我が国の国連分担金の拠出率が一〇%強ということを考えますと、依然として日本人職員は少ない状況にあるということでございます。そのため、日本の国際貢献の担い手となる人材の支援、育成は重要な課題だと私どもとしても受けとめております。

 そこで、政府として何をしているかということでございますが、国際機関の日本人職員増強のため、主として三つの事業に取り組んでおります。

 一つが、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー、JPO派遣制度でございます。これは、国際機関勤務を希望する若手の日本人の方を、政府の経費負担により、原則二年間国際機関に派遣いたしまして、勤務経験を積む機会を提供することにより、国際機関の正規職員への道を開くことを目的とする制度でございます。このJPO派遣制度を利用して、若手日本人の送り込みに努めていることが一つ。そして、二つ目には、国内への広報活動、日本人の応募を支援するということ。三つ目には、日本人の潜在的候補者の発掘、育成というものでございます。

 これら三つの事業に加えまして、日本人職員の採用、昇進に向けた支援も行っております。これは、具体的に申しますと、例えば、国連関係者など要人往来の機会に、国際機関の長や幹部に対して、私どもとして働きかけをする、あるいは在外公館を通じて関係者へ働きかけをするということでございます。

 最後に、今後どうしていくかということでございますが、外務省といたしましては、さらに、先ほど申し上げたJPO、この派遣者をふやしていきたい、さらには、応援、支援の強化をやって、日本人職員増強を推進していきたいと考えております。

 ちなみに、JPO関連の予算としましては、来年度予算では大幅な増額をお願いしておりまして、今年度予算約十一億強であったものを、来年度予算では十六億四千六百万円ということでお願いをしておる次第でございます。

 目標といたしましては、先ほど申し上げました現在約八百人の日本人職員を、二〇二五年までには一千人までふやすことを目指しておるところでございます。

木内(孝)委員 本当に予算が限られている中で、こうした国際機関に日本人の職員を派遣して、国益をかけていろいろ発信していくということは、極めて重要なことだと考えております。

 引き続き、この八百名を二〇二五年までに千名、いささか謙虚な目標かなという気もいたしますけれども、せっかく一〇%強の負担をしているわけですから、一般的な基準、聞くところによりますと、一〇%を拠出していれば六、七%ぐらい職員がいてもおかしくないということであるとすれば、六、七とまでは言わなくても、せめて五%、八百名を千六百名くらいにする目標というのを今後掲げていただければと思います。

 私も、以前、外務委員会に所属して視察等をさせていただいたときに、いかに多くの日本人の方々がこうした国際機関で働いているのかというのを拝見しておりますので、ぜひともこうした職員の増加に努めていただければと思います。

 先ほど少し触れたわけですけれども、二〇一一年の十月、一瞬、ドル・円の相場というのは七十五円の円高水準をつけました。現在、百二十円前後まで、ピーク時から見ますと約六割減価しております。ピークから見たら六割ということですけれども、そうでなくても四割、五割は円安になっているわけで、先ほどは、ODA予算が海外あるいは受け手から見たら目減りしているのではないかということを指摘したわけですけれども、私が一つ心配しておりますのは、在外公館で勤務している大勢の職員の方のことを心配しております。

 私は、職種は違いますけれども、銀行に勤めていたころに、七年半、海外勤務をしておりましたが、やはり円高になると得をしたり、円安になると損をしたり、生活水準が著しく低下をしたりすることがございます。

 これは生活水準だけならいざ知らず、例えば接待交際費、例えば地元の有名な社交場みたいな、それが時としてゴルフ場であったり、時としてブリッジをやるクラブであったり、いろいろあるわけでございますけれども、予算がどんどん削られているので、日本人は三十年間入っていたこうした社交場から追い出される一方で、別の国、新興国が新たに入ってくる。

 こういう事態が、現実問題、今起きていまして、国内においては何でもかんでも予算を切れという話ではございますけれども、やはり四割、五割円安になったという状況を踏まえて、激変緩和措置、円安にかかわる激変緩和措置を、先ほどの小熊委員のODAともかかわるわけですけれども、ここはぜひ目くばせを大臣としていただきたいと思いますけれども、御所見をお願いいたします。

上月政府参考人 まず、事務的なことからお答えさせていただきます。

 御指摘のとおり、円安局面になりますと、予算編成は大変厳しいものになります。特に、在外公館の経費ですとか、あるいは国際機関への支払い等、こういったことについて外務省の予算が一定の影響を受けているというのは、まさに御指摘のとおりでございます。

 例えば、最近でも、去年とことしで比べますと、円安が進んでおりますので、支出官レートで申しますと、平成二十六年度予算が一ドル九十七円だったのが、平成二十七年度では一ドル百十円まで上がっていて、このことでも対応が必要になっておりますが、その中で、厳しい財政事情でございますけれども、二十七年度は対前年比二・九%増の六千八百五十四億円の予算をお願いしておりまして、この中で足腰予算の強化や戦略的対外発信の強化等を実現しているところでございます。

 少しわかりやすく一例を挙げさせていただきますと、円安の影響を受ける在外公館の事務所、公邸の借料につきましては、本年度百三十億円から来年度百四十四億円で、十四億円の増を要求しておるところでございまして、こういった形で必要な予算の計上に努めているところでございます。

 いずれにいたしましても、こうした予算を効果的に活用することで、しっかりとした外交を展開していきたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。

木内(孝)委員 本当にいろいろ御苦労なされながら、やりくりをして、国益をかけた外交に努めていただいていることに感謝を申し上げます。

 次の質問に移りたいんですが、大臣は、外交演説の中でも、対外的な発信力を強化するということを一つおっしゃっています。

 一つ、日本の人道支援において、ここ十年間の歴史を見ますと、日本のアフガニスタンへの支援というのは、金額的なことも含めて、それなりに大きな成果を上げているというふうに認識をしております。二〇〇一年以降、総額で五十五・二四億ドル、日本円にして約五千四百億円。いろいろ報告を受けていますと、例えば識字率が向上したりとか、あるいは就学率が向上している、非常に多くの日本の職員の方が御努力されている。かつ、国連等を含めた国際機関とも連携をしながら、大きな成果を上げているというふうに認識をしております。

 日本の人道支援実績、人道支援に徹しているということも、私は中東外交における日本の外交の強みの一つではないかというふうに思っております。七十年間、戦闘行為で一人も人を殺していない、これも日本外交の一つの大きな強みではないか、私はそのように思っております。

 大臣にお伺いしたいのは、こうしたアフガニスタンにおける活動実績をきちんと発信していただくことが一つと、あと、逆に、支援をしている過程で、さまざまな経験、要するに、実は優先順位としては、インフラ整備より教育を優先すればよかった、あるいはその逆であったり、いろいろ現場の声があろうかと思います。こうしたアフガニスタンへの支援の実績、経験を踏まえて、今後の中東外交に生かせる教訓等がございましたらお聞かせください。

岸田国務大臣 まず、アフガニスタンへの支援ですが、御指摘のように、我が国としまして、今日までさまざまな取り組みを行ってきました。これまでの取り組みからは、アフガニスタンの安定のためには、食料、衣料等の人道的な支援、あるいは治安の改善に加え、主要産業である農業の発展や教育等の社会経済基盤の整備が重要である、こういった教訓も得られているところであります。

 今後とも、過激主義を生み出さない、安定した社会の構築に向けて支援を実施していかなければならないと思いますが、こうした中東の平和と安定、これは我が国にとりましても、エネルギー安全保障を初めさまざまな観点から重要であると思っていますし、そして国際社会全体にとりましても、平和と繁栄にとって極めて重要であると認識をしています。

 そして、アフガニスタンを初めとするさまざまな支援を通じまして、人材開発支援ですとか技術協力等を通じた若者の失業対策、あるいは格差是正に向けた取り組み、あるいは難民、避難民に対する人道支援、こうした非軍事分野に貢献してきたわけでありますが、このことは国際社会からも、あるいは中東諸国からも高く評価されていると認識をしています。

 中東地域におきましては、御案内のとおり、ISILの活動を初め過激主義の動きが大変懸念されています。我が国としましては、中庸が最善という考え方をしっかり実践するべく、最前線で過激主義と対峙している穏健イスラム諸国への人道支援をさらに拡充して、日本の責任を果たしていきたいと考えています。

木内(孝)委員 今大臣から、中庸な活動が大切だというコメントをいただきましたけれども、まさに、日本というのは、現在の中東における国境線が引かれたとき、ある意味、ほとんどかかわり合いがなかった国でございます。この歴史をひもとくと、極めて複雑怪奇で、現在の中東外交にも直接的な影響がある話でございます。その中で、日本というのは、まさにそうした問題から一定程度距離を置いている、非常にすぐれた立場だと思っております。

 大臣におかれましては、こうした非常にバランス感覚のとれたことを今までやっていると思いますし、今回のISILの件につきましても、私は、いろいろ言われておりますけれども、非常にいい対応をとったのではないかというふうに高く評価している一人でございます。

 ぜひとも、日本の中庸さ、穏健さ、こうしたことを今後の日本の外交に生かしていただきたい。そして、今後、七十年の歴史認識あるいは靖国の問題、さまざまな話、先ほども緒方委員の方から話がございましたけれども、私は、今の政権というのは、ややもすると、誤解を招く可能性のある言動をされる方が、総理あるいはその周辺にいると思っております。私は外務大臣に、そのかじ取りといいますか、外交当局として、変な方向に踏み出さない、そうしたことをしっかりとバランス感覚のある外務大臣に期待しているところでございます。

 以上をもちまして質問を終えたいと思います。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、三ッ矢憲生君。

三ッ矢委員 自由民主党の三ッ矢憲生でございます。

 外務委員会もやっと質疑が始まりまして、ほっとしておるところでございます。

 ちょっと質問通告していないんですが、シンガポールのリー・クアンユー元首相が三月二十三日にお亡くなりになりました。二十九日には国葬も予定されておるようでございますが、人口わずか四百万、今五百万ぐらいですか、面積にして、淡路島、あるいは山手線の内側ぐらいの面積しかない国で、戦後、あの国をここまで引っ張ってきて、世界有数の、今や先進国、日本よりも一人当たりGDPも高くなっておりますが、そういう国に育て上げた、私はアジアの大政治家だというふうに思っております。

 そういう意味で、巨星落つという感が非常にいたすわけでありますが、このことに関しまして、大臣、もし何か御所見というか御感想があれば、お伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 たしか、シンガポールはことし建国五十年を迎えたと承知をしています。そして、リー・クアンユー元首相はこの建国の父として、シンガポールにおいて多くの国民から尊敬を集めてきたのみならず、地域におきまして、関係各国からも、アジアにおける偉大な指導者として高い尊敬を集めてこられた、偉大な人物でいらっしゃったと認識をしております。

 大変残念なことに、このたびお亡くなりになられたわけでありますが、こうした訃報を受けて、世界各国のリーダー、指導者が大変大きな反応を示しています。こうした各国の大きな反応を見ましても、リー・クアンユー元首相の存在の大きさを改めて感じるところでございます。

 改めて、我が国としても、心から御冥福をお祈り申し上げたいと存じます。早速、安倍総理もシンガポール大使館に弔問に足を運んだ次第でありますし、また、今週末の国葬におきましても、しかるべきレベルの出席者を検討していきたいと考えています。

三ッ矢委員 日本にとってのお手本にすべき面となかなか難しい面と、両方あると思いますけれども、非常に大きな足跡を残された方でありますし、自伝なんかを読んでみますと、リー・クアンユーさん自身が日本軍とのかかわりでどういう思いをしたのか、あるいはどういう経験をしたのかということも非常に詳しく書いてございますので、我々、少し勉強をさせていただいたらいいんじゃないかなという気がしておりまして、余計なことでございますが、冒頭、大臣に御感想を伺った次第でございます。

 それでは、質問に入らせていただきますが、まず最初に、日中関係についてお伺いしたいと思います。

 ちょうど今、きょうまで、自民党の谷垣幹事長、それから公明党の井上幹事長の訪中団が中国に行っております。私も本来は同行する予定だったんですが、外務委員会の運営をめぐりましていろいろございましたので、そちらは遠慮しまして、こちらを優先いたしまして、今回は見送った次第でございます。

 向こうでいろいろ要人ともお話をされたようでございますが、兪正声さん、あるいはトウカセンさんともお話をされたようでございますけれども、与党間交流を再開させようということで合意を見たようでございます。それから、日中の防衛協力の対話とか、先般は大臣も日中韓の外相会談、その中で王毅外相とも会談をされたというふうに聞いておりまして、言ってみれば、周辺はいろいろ動き始めたなという気がしております。

 これは議員交流も含めて、また、来週は、福田元総理あるいは二階総務会長もフォーラムで向こうに行かれるようでございますし、連休のころにはまたいろいろな方が交流をされるというふうに聞いておるところでございますが、やはり最後は首脳同士の話だと思うんですね。

 これに関しましては、昨年のAPECの会合の折に、習近平主席と安倍総理が短時間、会談というか、対話をされたということはございますけれども、本格的な首脳会談がまだ行われていないわけでございます。

 先般の日中韓の外相会談の折に外務大臣は直接王毅さんともお話をされたと思いますし、幹事長も帰ってこられたら恐らくまた総理にも報告に行かれると思うんですが、今後の日中関係改善に向けての方向性というんでしょうか、見通しといったらいいかもしれませんが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、最近、日中関係につきましては、さまざまな動きが存在します。

 今月十九日には、四年ぶりに日中安全保障対話が行われました。そして、二十一日には、御指摘をいただきましたように、日中韓外相会談を行い、それに合わせて日中外相会談も、昨年の十一月以来四カ月ぶりではありますが、これで王毅外交部長とも四回目の会談、意見交換になりますが、こうした会談を行いました。そして、与党幹事長一行が訪中をし、中国側との意思疎通を図られております。

 こうした動きをどう考えるか、それから今後どう首脳会談に結びつけていくかということですが、二十一日に開催されました日中外相会談、王毅部長との会談の際に、もちろんさまざまな課題について議論をし、意見交換をいたしましたが、その中で一つ一致したこととして、昨年十一月の北京APECの際の日中首脳会談あるいは外相会談を機に、さまざまなレベル、さまざまな分野においてようやく日中関係を改善させようという流れが生まれつつある、日中双方の努力によりそういった流れが生まれつつあるということはまず一致したんです。ただ、まだまだこれは十分ではない、まだまだ不十分であるということから、こういった流れを定着させるべく一層努力をしなければならない、こういった点においては日中間で一致をしたと受けとめています。

 こういった考え方に基づいて、引き続き努力をしていかなければならないと存じます。

 与党幹事長一行の訪中は、議員外交という面からも、あるいは与党間の交流という意味からも大変意義あることであったと思いますし、二十一日の日中外相会談におきましても王毅外相の訪日を招請いたしました。それ以外にも、さまざまな分野、レベルにおいて意思疎通を積み重ねていきたいと思いますし、そのことによって両国の首脳間において頻繁に意見交換を行う、条件をつけることなく率直に意見交換を行う、こういった雰囲気をしっかりつくっていくことが重要なのではないかと考えます。

三ッ矢委員 どうも、歴史認識の問題とか、いろいろ注文といいますか、懸念も表明されておるようでございますけれども、私はやはり、ぜひ、この流れを変えないというか、むしろ加速していただくように特段の政府側の努力をお願いしたいというふうに思っております。

 戦後七十年の談話をどういう格好で出されるのか、どういう内容になるのか、全く私もわかりませんが、いろいろなことを考慮して、ぜひ外務省としてもしっかりと、この点、フォローをしていただきたいなというふうに思う次第でございます。

 次に、日朝のことについてお伺いしたいと思います。

 私自身も副大臣をやっておりましたときに、昨年の七月でございますか、日朝協議再開ということで、特に調査を開始しようということで、その合意を見て、いよいよ日朝が動き始めるのかなという期待感が非常に大きく前面に出てきたわけでございますが、残念ながら、夏の終わりには調査の結果が出るんじゃないかとか、あるいは年内にとか、あるいは一年以内にとかいう話で、どんどんどんどん、結果が出ないまま、事態が余り動かない、そんな状況が続いておりまして、国民にとりましても、我々にとりましても、正直言いまして失望の連続だったというふうに思います。

 最近、どうも余りニュースにもならなくなって、一体この大事な問題はどこへ行ってしまったんだ、どうなっているんだろうというのが正直なところだと思います。

 昨年の当局間合意からもう間もなく一年を迎えようとしているわけでございますけれども、当局間交渉の現状と今後の見通しについてお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 北朝鮮との関係、特に拉致問題につきましては、安倍内閣の最重要課題であると認識をして取り組んできております。

 そして、北朝鮮との交渉に当たっては、対話と圧力の方針、そして行動対行動の原則、こうしたものを重視しながら臨んできました。

 そして、圧力の部分につきましては、従来から、我が国としまして、国連の安保理決議等に基づき、国際社会とともに圧力を加え、そして、加えて、我が国独自の制裁を加えてきたわけであります。

 そして、ようやく昨年三月ですが、一年四カ月ぶりに対話の方を再開したということでありました。そして、対話を積み重ねてきているわけですが、五月のストックホルムでの日朝政府間協議におきまして、拉致問題を含む日本人に関する問題について特別調査委員会を立ち上げるということで合意をし、調査を進めているところでありますが、御案内のとおり、その通報が現状行われておりません。

 引き続き、政府としましては、北京の大使館ルート等を通じまして北朝鮮との連絡を行い、そして、一日も早い、迅速な特別調査委員会の通報を働きかけているところであります。引き続きましてこうした働きかけを行うことによりまして、一日も早く具体的な北朝鮮の対応を引き出したいと考えています。

三ッ矢委員 多分その程度のお話だろうなとは思っていましたが、ぜひ頑張ってやっていただきたいなと思います。もうこれ以上失望させないように、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思う次第でございます。

 最後に、日米関係について若干お伺いしたいと思います。

 安保法制についての議論もこれから国会で始まってくることになろうかと思いますが、これは、当然のことながら、日米同盟関係と表裏一体の部分があるわけでございます。特に、日米ガイドラインの見直しですね。総理も四月の二十六日からですか、訪米されるということで決まったようでございますけれども、それに合わせて恐らく2プラス2の会合も開かれるんだと思います。今回の総理訪米の恐らく一つの大きな目玉がガイドラインではないかというふうに思っております。

 一つお伺いしたいのは、安保法制の審議は恐らく連休明けになるのかなと私は想像しておるんですが、その前にガイドラインを決めるということになろうかと思います。そうすると、安保法制の中身をある程度先取りした格好でガイドラインの内容を決めるのか、そこはこれからの議論かもしれませんが、ガイドラインの詰めぐあいがどうなっているのかということと安保法制との関係、これについての御所見を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、ガイドラインの見直しにつきましては、昨年十二月の2プラス2共同発表にありますとおり、ガイドラインの見直しと日本における安全保障法制の整備との整合性を確保すること等の重要性を再確認した上で、日本における法制の整備の進展を踏まえながら、本年前半のガイドライン見直し完了に向けて議論を深めている、こういった状況にあります。

 そして、ガイドラインにおきましては、日米両国の協力に係る役割、任務について一般的な大枠及び政策的な方向性を更新することとしておりますが、その際に、先般の閣議決定で示された新たな憲法解釈その他の内容を適切に反映するということにしております。

 そして、ガイドラインの見直しと関連法制の前後関係については、とりたてて何か決まっているものではありませんが、見直し後のガイドラインのもとで行われる取り組みが、その時々において適用のある自国の憲法及び法令に従うこと、これは当然のことであります。

 また、見直し後のガイドラインは、日米いずれの政府にも、立法上あるいは予算上または行政上の措置をすることを義務づけたり、あるいは法的権利または義務を生じさせるものではない、このように認識をしております。

 こういった認識のもとに、両者の整合性を保ちながらしっかりと作業を続けていきたいと考えております。

三ッ矢委員 時間になりましたので、もうこれでやめますが、最後にちょっと要望を一つだけ。

 今までのガイドラインというのは、どちらかというと日本からアメリカに対する一方的な協力なんですね。ぜひ、双方向になるようなものにしていただきたい。私の特に関心のある例えば横田の問題とか、そういうことに関しても、ガイドラインが改定されるわけですから、双方向のものになるようにぜひ御配慮をお願いしたいと思います。

 以上でございます。終わります。

土屋委員長 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 公明党の岡本三成です。

 午前中のラストバッターですので、皆様、お疲れかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

 ラストバッターであるがゆえに、既に何問かの御質問に関しては前の登壇者の方とかぶる部分はありますが、よろしくお願いいたします。

 まず初めに、先週末の日中韓の外相会談につきまして、三年ぶりに開かれたということで、大変高く評価をさせていただきます。

 その上で、会談終了後の共同メッセージで、「歴史を直視し、未来に向かう」と発表されております。この後、中国の王毅外相は、メディアに対しまして、歴史を正視すれば、侵略の史実や植民地支配を否定できないというふうに述べていらっしゃいます。

 岸田外務大臣は、この委員会の所信演説の中でも、ことし戦後七十年で、さきの大戦の深い反省を踏まえつつ云々と発言していらっしゃいますけれども、大臣から考えましたときに、歴史を直視すると過去の日本の行動は侵害と植民地支配であったと認識していらっしゃるのかどうか、まず初めにお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の日中韓外相会談における共同発表、これはまず、三年ぶりに文書を取りまとめることができたことは重要であると思っています。そして、その中に、「歴史を直視し、未来に向かう」、こういった表現を盛り込ませていただきました。

 まず、この表現自体ですが、これは過去の日中韓サミットにおいても使った表現であります。また、昨年十一月の日中間での四項目の確認の中にも同じ表現を使っています。この同じ表現を今回踏襲したということであります。

 そして、その歴史というのは、七十年前の歴史、これはもちろんでありますが、我が国日本が、戦後、さきの大戦の反省に基づいて、自由や民主主義や法の支配といった基本的な価値を大事にしながら平和国家として歩んできた七十年間、さらには、一九七二年、日中関係が、国交正常化してから後、先輩方が努力することによって、今日、三千億ドルを超える貿易量、そして五百万人を超える人の行き来を実現した、こうした努力も含めて歴史と捉えるべきだと考えています。そして、これは日本だけではなくて、三カ国が努力すべきものであるという内容にしております。

 そして、侵略あるいは植民地支配、これについて御質問いただきました。

 こうしたことにつきましては、歴代の内閣において位置づけているわけであり、これを我が内閣として全体としてしっかり引き継いでいるわけであります。植民地支配あるいは侵略を否定したことは一回もございません。

岡本(三)委員 大臣には外交戦を展開していただいているわけですから、我が国がどう思うか、そしてそのカウンターパートである両国がどう思うか、また国際社会がどのように評価するかということまで考えて、さまざま行動をいただいているというふうに思います。

 ちなみに、今回の日中韓外相会談、外国のメディアではどういうふうに報道されているかといいますと、全体として前向きな報道がなされているんですが、ただ、残念ながら、多くのメディアにおいて、ここまで関係をこじらせた主な要因は日本にあると言及をされています。

 例えばアメリカのワシントン・ポスト、ここ数年、中国と韓国が日本に厳しい態度をとっているのは、二十世紀前半に日本が行った中国での侵略行為や韓国での残忍な植民地支配を覆い隠そうとする動きが見られるからだというふうに報道しています。また、イギリスのBBCは、今回の外相会談が三年間にわたり行われなかったのは、安倍総理の靖国参拝が主因であり、原因は全て日本にあるというふうに報道しています。

 このようなさまざまな外国のメディアの評価も考えましたときに、より一歩、今回の外相会談を受けた日本からのアプローチということを大臣にとっていただきたいというふうに思っているんですね。

 この共同メッセージの中では、首脳会談におきましても「開催すべく引き続き努力」というふうになっていますけれども、今申し上げたようなワシントン・ポストやBBCでは、七十年談話が夏に発表される前にそのような首脳会談が起こる可能性はとても低いというふうに報道しています。それが世界の共通の認識になってしまっています。であるがゆえに、今こそ日本のイニシアチブでポジティブサプライズを起こすときではないかなというふうに思っているんですね。

 そこで、最も三カ国首脳会談に対して慎重な姿勢をとっていると言われている中国に対して、先ほどの三ッ矢委員の発言にもあるように、今与党の幹事長が訪問をされて、大変によい会談を展開されて、きょう帰国されるわけですけれども、早々に大臣御自身がもう一度中国に乗り込んでいかれて、これは、王毅外相は招聘はされていますけれども、大臣御自身が行かれて、日本の行動によってポジティブサプライズを起こして、世界が思っているよりも物すごく早いタイミングで三カ国の首脳会談が実現するというような行動を起こしていただきたいと思っているんですけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国としましては、従来から日中韓のサミットを重視してきました。その中で、今回、日中韓の外相会談において共同文書をまとめ、その中に、最も早期の都合のよい時期に開催すること、これを三カ国で確認できたことは大変意義があったと思っています。具体的な時期、場所等につきましては、ぜひ、これからしっかりと調整をしていきたいと思っています。

 そもそも、この日中韓外相会談のプロセスそのものが、日中韓サミットの準備として位置づけられてきた経緯があります。その日中韓外相会談が行われたわけですので、韓国との間においては、昨年来、外相会議を開催して、サミットの早期開催につなげていきたいという思いを共有しております。

 引き続き、中国、韓国としっかりと意思疎通を図りながら、サミットの早期開催に向けて努力をしていきたいと思います。もちろん、我が国としましても、それに向けてしっかり努力をしなければならないと思いますが、サミットの開催には、中国、韓国の協力も必要であります。ぜひ、三カ国で協力することによって、この日中韓のサミットを実現したいと存じます。

 日中韓、この三カ国を合わせますと、今や、世界のGDPの二五%を占める大変大きな存在になってきております。この三カ国の関係安定のためにしっかり努力をしていきたいと考えます。

岡本(三)委員 世界のどの国が見ても、この三カ国の首脳会談は日本の積極的なイニシアチブによって早期に実現できたというような行動をぜひお願いしたいと思います。

 続きまして、AIIB、アジアインフラ投資銀行について質問させていただきます。

 先ほども、維新の木内委員の質問に大臣はお答えいただきましたが、私は、この一週間、アメリカのスタンスは急激に変わってきているというふうに認識をしています。

 もともとは、一月、二月ぐらいには、例えばルー財務長官は、米国主導の多国間の枠組みに挑戦をしている許されない企画だというふうにおっしゃっていますし、ラッセル国務次官補は、高い水準のガバナンスと透明性が重要であり、それを満たされていないというふうにおっしゃっていましたが、先ほど大臣が言及をされたシーツ財務次官、これはレポートを出された後に、今週になりまして、三月二十二日、ウォールストリート・ジャーナルのインタビューに答えていらっしゃいます。そのインタビューの中では、オバマ政権は、中国政府に対して、世銀やアジア開発銀行と共同でAIIBに出資をする提案もしたというふうに具体的に述べられています。

 それに呼応するように、一昨日、二十三日には、アジア開銀の中尾総裁、北京を訪問されていまして、李首相と面談をしていらっしゃいます。その中で、AIIBの成立は地域の経済発展の需要に沿うもので、ADB、アジア開銀も協力を始めたいというふうにおっしゃっています。

 私は、当然、この動きは、ADBと競合してはいけないということで、日本がアメリカと歩調を合わせながら、これまでさまざまなスタンスを慎重にはかってきたということは評価しますし、そうしなければいけなかったと思いますけれども、この一週間、急激に変わってきているアメリカのスタンス、世銀、ADBのスタンス、これは全て認識をされていて、同じ歩調で日本も修正している、行動をとっている、ちゃんと連携をとっているというふうに認識してよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 先ほども答弁させていただきましたが、AIIBにつきましては、日本政府として、公正なガバナンスの確立ができるか、あるいは、債務の持続可能性を無視した貸し付けを行うことにより、他の債権者にも損害を与えることにならないか、こうした点を含めまして、慎重な検討が必要であると考えています。この立場は、今現在全く変わっておりません。

 そして、アメリカの動き等について御指摘がありました。

 先ほど申し上げましたように、報道等は承知しておりますが、米国政府に確認をいたしましたところ、政府として何か新たな提案を行ったという事実は全く認められておりません。新たに設立される国際金融機関はガバナンス等に関する高い基準を満たす必要がある、こうした米国の基本的な立場は全く変更はない、こういった説明を受けています。我が国としてもこのように承知をしております。

 こうした米国としっかり連携をしながら対応を考えていきたいと思っています。

岡本(三)委員 ちゃんと連携をとっていただいているのであれば安心をいたしますけれども、私は何を危惧しているかというと、イギリスやフランスやドイツが参加を表明した後に、実は日本が知らないところで一歩先に同盟国のアメリカも参加を表明して、最後に日本だけがラスト・マン・スタンディングになっていまして、後から最後の一人として参加を表明するというようなことが万々が一にあってしまいますと、その後の日本の発言力また日本企業が受ける恩恵等々に大きな支障を来すようなリスクがありますので、その平仄だけしっかり合わせていただきたいというふうに期待をしております。

 私自身は、三月末までに参加をすれば、これは創業メンバーで、仕組みづくり、ガバナンスについても発言できます。これは来週の火曜日が期限ですから、まだアメリカも新しい動きをとる可能性はあると思っていますし、それに合わせて日本も一週間しっかりと検討して決断していただきたいんですけれども、その次に六月末のラウンドというのがあります。

 このラウンドまでに参加するかしないかということで参加をすると、その時点ではオーディナリーメンバーになりますので、ちゃんとした活動の枠組みの中に入っていけるということもありますから、拙速に判断していただく必要はないんですけれども、特にアメリカとのコミュニケーションはそれこそ毎日毎日とっていただきながら、日本だけが置いてきぼりになるというようなことがないということをぜひお願いしたいと思います。

 アメリカや日本が突きつけた質問に対して、中国もメンツがあるでしょうから、回答状は送ってきておりませんけれども、さまざまなメディアに対してその回答になるようなことを発言しています。例えば、ウォールストリート・ジャーナルには、中国が案件について拒否権を発動することはないというふうに発言をしたりとか、ガバナンスについても、さまざまな国際標準を、西側の国際標準とは違うかもしれないけれども、取り入れていくような準備もあるというふうに発言していますので、そういうことも収集をしながら最終的な判断をしていただきたいと思うんです。

 私個人としては、早目に参加をして、そしてそのAIIBのルールづくりにも参加をして、ADBにも共同で入っていただいて、日本の企業のビジネスチャンスを最大化して、アジア地域のインフラの構築の発展に貢献をするような一翼を担うべきだというふうに思います。

 大臣、先ほど既に一度答弁をされましたが、日本の目線に合って、米国とも歩調が合うようなことがあれば、決して否定することなく、参加についてもオープンに考えていく、そのつもりでいるということを最後御答弁いただければと思います。

岸田国務大臣 まず、この課題において米国との連携、意思疎通が重要だという御指摘は、そのとおりだと思います。ぜひ今後ともしっかり連携を図っていきたいと考えます。そして、今の御提案につきましても、貴重な御提案として参考にさせていただきたいと存じます。

 いずれにしましても、先ほどAIIBの担当大臣は誰かという議論もありましたが、確認いたしましたら、主管は財務省だそうでありますが、外務省としましても、財務大臣としっかりと連携し、この問題に当たっていきたいと考えます。

岡本(三)委員 終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時四十分開議

土屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、外務大臣の質問も用意しておりますが、まずは、きのうから大きなニュースになっております辺野古の新基地建設問題について質問をしていきます。

 昨日、沖縄防衛局は、沖縄県の翁長知事が出した、沖縄県による岩礁破砕行為にかかわる調査終了までの海底面の現状変更停止指示に関して、農林水産大臣に審査請求書と執行停止申し立て書を提出いたしました。

 防衛省に聞きますが、何のために、どういう内容の文書を提出したんですか。

原田大臣政務官 お答え申し上げます。

 先日、二十三日に、沖縄防衛局は、沖縄県知事から、代替施設建設事業に係る岩礁破壊等の許可に関し、同県による調査が終了し、改めて指示するまでの間、海底面の現状を変更する行為の全てを停止するよう指示する旨の文書を受領いたしました。

 これを受けて、二十四日、沖縄防衛局職員が沖縄県庁を訪問して、本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破壊に当たらないこと、今般指示でコンクリート製構造物の設置が許可申請外の行為であるとしたことは、以前より沖縄県が沖縄防衛局に対して示していた内容に反すること、沖縄県内で国を事業者として行われた同種事案においても、本件と同様のアンカーの設置は岩礁破壊許可手続の対象とされていないこと、一部区域におけるアンカーの設置を理由に全ての施行区域における全ての現状変更行為の停止を求めることは不当である等の説明を行いました。

 防衛省としては、これらの理由から、二十三日の沖縄県知事の指示は無効なものであり、現在行っている作業を中断する理由にはならないとの考えを同県に説明させていただき、その旨を記載した文書を手交いたしました。

 また、本件指示自体が無効であることを明らかにするため、二十四日、沖縄防衛局長から農林水産大臣に対して、審査請求書及び執行停止申し立て書を提出したところであり、今後、法令にのっとって適切に審査をされると認識をいたしております。

赤嶺委員 沖縄県が今回求めてきたのは、臨時制限区域内での立入調査であります。ボーリング調査に関して、岩礁破砕の許可ではなく協議の手続がとられたのは、ブイやフロート設置に伴って岩礁破砕が行われることはないということが前提にあったからです。

 ところが、沖縄防衛局がボーリング調査に伴い設置した大型のコンクリートブロックによってサンゴ礁が破壊された事実が明らかになりました。そのため、岩礁破砕の許可権者として、実態把握のために、臨時制限区域内を含めた調査の実施を求めてきたのであります。調査の実現のために防衛省が努力するのは当然であります。

 ところが、防衛省は、米軍基地への立ち入り許可手続を定めた九六年の日米合同委員会合意を送りつけて、県が米軍に申請すべきだと回答しました。その後、米軍は、運用上の理由を挙げて立ち入りを拒否いたしました。その一方で、沖縄県ではなく、嫌疑をかけられている、疑いをかけられている防衛省が臨時制限区域内で調査を行っている事実が明らかになりました。防衛省もそのことを私の質問でも認めました。

 防衛省の側に、調査に対する極めて不誠実、非協力な姿勢があったために、今回の指示に至ったのであります。被害を受けたサンゴ礁の実態把握のための調査なのですから、その実現のために努力するのが防衛省のやるべきことではありませんか。

原田大臣政務官 先般、沖縄県から外務省に対して、改めて臨時制限区域への立ち入り申請がされたということは承知をいたしております。

 三月二十三日、沖縄県から沖縄防衛局に対して、県による円滑な調査が行えるよう責任ある対応を求める旨の通知を受けたところでございます。

 この再度の立ち入り申請の可否についても、日米間の所要の手続に従い、米側により判断をされたものであることから、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。

赤嶺委員 基地への立ち入りというのは、沖縄県が、戦後の歴史の中で、基地を原因とする大きな被害、それに対して自治体の立入調査を認めろということで、その立入調査のためのあっせんの義務が外務省、防衛省にあるということは、これまでの沖縄県と政府とのやりとりの中でも明らかにしていかなければいけないと思いますが、ただ、沖縄県が求めたのは、サンゴ礁がその場所で破壊されているのではないかという、そこを調査させてほしいということであったわけですよ。

 政府は、辺野古の新基地建設について、普天間基地の危険性の除去が目的だと言いますが、今のような政府の対応を見て、一体沖縄県の誰がそれを信じると思いますか。まさに、今のやり方は、県民不在、基地建設ありきの対応であります。結局、米軍のために新しい基地をつくってやる、それが本当の目的ではないのかと指摘せざるを得ません。

 そこで、昨日、沖縄防衛局が沖縄県に提出をいたしました見解について聞きます。

 岩礁破砕の許可に関する根拠法は、水産資源保護法第四条第二項であります。そこで、都道府県知事が水産資源の保護培養のために必要があると認めるときは、規則を定めることができるように定められています。この規定に基づいて、沖縄県が定めているのが沖縄県漁業調整規則であります。これは確認できますね。

山本政府参考人 お答えいたします。

 水産資源保護法第四条第二項第五号の規定を根拠として都道府県漁業調整規則が定められているというふうに承知をしております。

赤嶺委員 まさにここでは、水産資源保護法に基づいて沖縄県の漁業調整規則が定められているわけです。

 水産資源保護法が、水産資源の保護培養のために必要な措置について、国が定めるのではなく都道府県に委ねているのはなぜですか。その点は防衛省はどのように認識していますか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 水産資源保護法の趣旨にのっとりまして、法定受託事務として都道府県規則に委ねられているというふうに理解をしております。

赤嶺委員 水産資源保護法は、その権限を都道府県に委ねているわけです。

 水産資源保護法の解説を見ますと、こう書かれています。水産資源の保護のために付するこれらの制限または禁止については、「一、全国一律になし得るものであっても、その内容は具体的事情に応じて随時変更することを要するため、具体的規定を立法技術上省令に委任することとし、二、また、各都道府県ごとになすべき制限又は禁止についても、その内容はきわめて複雑で一律に規定することは困難で、かつ、その内容は具体的事情に応じて随時変更することを要するものが多いため、具体的規定を立法技術上規則に委任することとしたものである。」

 このように書かれていますが、この点は防衛省もお認めになりますね。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 大変恐縮ですけれども、現在手元に資料がございませんので、その点についてお答えすることは差し控えさせていただきます。改めて確認の上、御回答させていただきたいというふうに思います。

赤嶺委員 あなた方は、水産資源保護法に基づいて、沖縄県は違法なことをやっていると決めつけているじゃないですか。その根拠を聞かれたら、今手元にないからというのは、そもそもおかしいんじゃないですか、それは。

 沖縄県は、県漁業調整規則に基づいて、岩礁破砕の許可を判断する際の具体的手続について取扱方針を定めています。

 そこでは、「主旨」としてこのように規定しています。

  沖縄県は百六十の島嶼から成り立っており、これら島々の周辺には沖縄の海を特徴づけるサンゴ礁が発達している。サンゴ礁は地形的にも生態的にも砂浜、干潟、藻場などの浅海域と一体となり、本県における海洋生産の基盤を成している。

  本県水産業は、これらサンゴ礁などが持つ大きな生産力を拠り所としており、これらの海域は本県水産業の重要な基幹作目であるモズク養殖の場であるとともに、多くの有用な魚介類が生育する重要な場所である。

  これらの海域は、本来、永続的に保全されるべきものであるが、数十年来の地域振興、産業振興等に伴う埋立や各種の工事により、大きな面積が消失し、本県水産業が低迷する一因となっている。

  このことに鑑み、岩礁破砕など海域を改変する行為については、水産動植物の保護培養を図り、県民へ良質な水産物の供給を継続していく観点から、細心の注意を払う必要がある。

こう取扱方針の中には、沖縄の水産業にとってどんなにサンゴ礁が大事なものであるか、岩礁破砕に際してはこれについて細心な注意を払うべきだということを取扱方針の中に書いているわけです。

 沖縄県の岩礁破砕取扱方針は、サンゴ礁に囲まれた沖縄県の特殊性に基づいて定められたものです。沖縄県の漁業調整規則はそうした沖縄県の特殊性に基づくものだということは、防衛省、認識しておりますね。

山本政府参考人 お答えいたします。

 水産資源保護法の趣旨に基づきまして、各都道府県におきまして漁業調整規則が定められていると承知をしております。

 沖縄県におきましても、沖縄県の規則として基本方針等が定められているというふうに承知をしております。

赤嶺委員 法律に基づいて沖縄県でも規則が定められている、その規則に基づいて取扱方針が定められ、そしてそこでは岩礁破砕とサンゴの関係についても述べられている、そういうことでよろしいんですよね。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 各都道府県規則において定められていると承知をしておりますけれども、他方、水産資源保護法という法の趣旨に鑑みますと、岩礁というものにつきましては、海域における地殻の隆起形態であり、この隆起形態を変化させる行為が破砕であるというふうに考えております。

赤嶺委員 沖縄県は、水産資源保護法に基づいて規則が定められ、そのもとに岩礁破砕取扱方針が定められている、それはサンゴ礁に囲まれた沖縄県の特殊性に基づいたものである、これを読まれたことはありますよね。

山本政府参考人 お答えいたします。

 はい、拝読したことはございます。

赤嶺委員 こういう法に基づく規則や方針がありながら沖縄県が違法だと言うのは、これは確信的な行為であると思いますよ。知らずにやったことではなくて、知っていて、自分たちの違法性に頬かむりして沖縄県を違法者扱いにする、これは許されないですよ。

 沖縄防衛局は農水大臣に不服審査請求を行いましたが、もともと、岩礁破砕の許可については各都道府県に委ねられています。それも、各県によって事情が大きく異なっているからです。しかも、米軍新基地建設の是非が、水産資源の保護や漁業者間の利害調整を目的とした漁業調整規則の解釈をめぐって問われる事態になっている。これは、漁業調整規則がそもそも想定していないものであり、こんな話を持ち込まれて、水産庁も本当に今困っていると思います。

 重ねて伺いますが、沖縄県漁業調整規則の有権解釈権は沖縄県にあると思いますが、その点はいかがですか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 都道府県漁業調整規則の解釈については、各都道府県が御判断されるというふうに考えておりますけれども、他方、都道府県漁業調整規則は水産資源保護法に基づくものでございますので、その水産資源保護法にのっとったものであるかどうかということについては、同法を所管されます農林水産大臣において判断されるものというふうに承知をしております。

赤嶺委員 沖縄県の規則や取扱方針、今まで一度も農水大臣や農水省から違法だと言われたことはありません。あなた方が、基地をつくりたいがために、これは違法だということで無法にかみついて、水産庁に持ち込まれている。こんな恥知らずな場面が起こっているということを、あなた方はよく自覚すべきであります。

 さっきの皆さんの見解も、沖縄防衛局の見解の第一に、岩礁破砕についての理解を沖縄県が誤っている、こういって挙げております。岩礁とは、海域における地殻の隆起形態であると規定していますが、この点については沖縄県漁業調整規則に具体的な定めがありますか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 具体的な定めはないと承知しております。

赤嶺委員 具体的な定めはないのに、先ほど、沖縄防衛局は岩礁の定義なるものを持ち出してきているわけですね。

 何が沖縄県漁業調整規則に定める岩礁に該当するかは、沖縄県にその判断の権限があるのではありませんか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 岩礁につきましては、水産資源保護法の趣旨からいたしまして、先ほども申し上げましたように、海域における地殻の隆起形態であり、この隆起形態を変化させる行為が破砕であるというふうに理解をしております。

赤嶺委員 漁業の保護、水産業の振興にとって、海を、海底をどう守っていくか、これは、同じ魚でも魚の呼び名が違うように、さまざまな、具体的、個別的に判断されなければいけないので、それで、水産資源保護法に基づいて漁業規則が各県において定められ、そして、沖縄県にとって何が海底を守る上で大事か、それはサンゴ礁だということをさっき、取扱方針に明記されているとおりであります。

 今まで農水省から何も言われなかった。それを、突然、基地をつくりたい防衛省が違法だと言い出してきている。全く納得できる話ではないと思います。

 防衛局の見解の中で、アンカーの設置について、「本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕に当たらない。」このように述べていますが、これは国の見解にすぎない、防衛省の見解にすぎないと思いますが、この点はよろしいですね。

山本政府参考人 お答えいたします。

 防衛省といたしまして、先ほど申し上げましたように、水産資源保護法の趣旨からして、岩礁とは、海域における地殻の隆起状態であり、この隆起形態を変化させることが破砕であると解しております。

 したがって、本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではないことから、岩礁破砕に当たらないというふうに理解をしております。

赤嶺委員 漁業や水産業に知見を持たない防衛省が、知見をいっぱい持っている沖縄県の農水部に対して、岩礁とはという一方的な見解を押しつける、その是非を農水省との間でやりとりする、政府との間でやりとりする、そこで、本当に公平だというぐあいに県民が思うと思ったら大間違いです。政府が法律まで自分勝手に解釈して県民に基地を押しつけようとしている、そういうぐあいにしかなってまいりません。

 ところで、今回、防衛省が提出した審査請求書と執行停止申し立て書の提出を私は求めておりますが、まだ提出されておりません。いつ提出するんですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 現在、審査庁でございます農林水産省に提出をし、審査をいただいている段階でございますので、防衛省の方から現時点における御提出は差し控えさせていただきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 それは、提出しないということですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 審査庁における審査がございます。その審査の公平性を担保する必要があるというふうに考えておりますので、現時点におきまして防衛省から御提出をするというのは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 審査庁というのは農水省のことですよ。防衛省と農水省の、政府と政府のやりとりしている内容について県民には明らかにしません。こんなことが許されるんですか。提出すべきですよ。いかがですか、政務官。

原田大臣政務官 今、赤嶺委員から御指摘のあったことも考慮しなければならないと思いますけれども、今直ちに答えることができるのは、今担当者からお話があったことに尽きるということで御理解をいただければと思います。

赤嶺委員 何も明らかにしないで、審査の過程も見せないで、防衛省がいろいろ、防衛省も、官邸も含めてですよ、今回の問題は。それが大きく後ろに控えているだけに、政府間で、農水省が審査庁でございます、公平に審査されますと言っても、これは絶対に納得できるものではありませんよ。政府と政府の間で秘密裏にやりとりしても、それは全く我々は納得できるものではない、公開すべきだ、直ちに提出すべきだということを強く申し上げておきたいと思います。

 沖縄県と話し合いの場も持たないで、政府の一員である農水大臣に不服審査請求を出したことは、これは極めて不当なことであります。この問題については、またあしたも、安保委員会もありますので、きょうの答弁を精査させていただいて、引き続き追及していきたいと思います。

 次に、米軍機による部品落下の問題について質問をいたします。

 沖縄県内で米軍機から部品などが落下する事件、事故が相次いでいます。防衛省に、ことしに入って以降に発生した事案の概要、事故原因について説明していただきたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 沖縄県におきます米軍機による部品落下につきましては、ことしに入ってから六件の連絡を米軍から受けております。

 具体的には、一月十五日に普天間基地所属のAH1Wからミサイルポッド等が落下した旨を翌十六日に、嘉手納基地所属のHH60が同基地に帰還後、通信コードの先端部を遺失していたことが一月二十三日に判明した旨を同月二十六日に、嘉手納基地所属のF15が同基地に帰還後、左垂直安定板の先端部を遺失していたことが二月四日に判明した旨を翌五日に、嘉手納基地所属のEP3Eが同基地に帰還後、ヒンジ・アクセス・パネルを遺失していたことが二月十二日に判明した旨を翌十三日に、三月十二日に普天間基地所属のMV22オスプレイがアルミ製の部品を遺失した旨を三月十六日に、嘉手納基地所属のRC135Vが同基地に帰還後、ファイバーグラス製の部品を遺失していたことが三月十六日に判明した旨を翌十七日に、それぞれ連絡を受けたところでございます。

赤嶺委員 落下場所について明らかになっているのは、いかがですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 具体的な落下場所が明らかになった事案はないというふうに承知をしております。

赤嶺委員 そうすると、報道にありました一月十五日のミサイルポッド落下、これも場所は不明なんですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 一月十五日のAH1Wヘリがミサイルポッドを落下した事案でございますけれども、落下の具体的な場所の特定はなされておりませんけれども、出砂島射爆撃場の水域内であるという連絡を受けております。

赤嶺委員 それ以外の場所の特定はできていないということですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 それ以外の事案につきまして、米軍から具体的な場所についての情報は得られておりません。

赤嶺委員 事故原因に関して、部品のふぐあいという説明がありますけれども、なぜそのようなふぐあいが発生したかについての説明は米側からあったんですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 六件の事案のうち、二月四日に判明をいたしましたF15が左垂直安定板の先端部を遺失した件及び三月十六日に判明したRC135Vがファイバーグラス製の部品を遺失した件につきましては、当該遺失した部品に何らかの問題があった旨の回答が米側から得られておりますけれども、これ以上の情報は現時点では得られておりません。

赤嶺委員 ことしに入って六件、部品落下事故が起きて、事故原因そのものがわからないというケースが四件、そのうち三件は米側から何の回答も来ていません。二件は部品のふぐあいという説明ですが、なぜそのようなふぐあいが発生したかについても判然といたしません。

 そもそも、部品落下、航空機からの落下事故について、事故原因について日本側への通報は義務づけられているんですか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 平成九年に日米で合意した在日米軍に係る事件、事故の通報手続におきましては、事件、事故の発生場所や被害状況などについて通報することとされておりますが、事件、事故の原因について通報することが義務づけられているわけではございません。

 他方、米軍機による部品落下につきましては、住民の方々に大きな不安を与えるものとしてまことに遺憾であり、再発防止の徹底などとあわせて、原因究明についても米側に累次求めているところでございます。

赤嶺委員 外務大臣に伺いますが、今防衛省から説明があったように、ことしに入って以降、三カ月もたたないうちに六件の落下事故が発生しています。

 渡名喜村の出砂島射爆撃場の海上に落とされたミサイル発射装置は、重さ二百キロ以上に上ります。こんなものが頭上に落とされたら、一体どういうことになるか。一歩間違えれば大惨事であります。しかも、事故原因さえ明らかにされていません。にもかかわらず、同型機による飛行は継続されています。

 部品などの落下事故は昨年から頻発していますが、昨年三月以降、この一年余りの間に、AH1Wヘリが揚陸艦への着艦に失敗した事例を含めて十六件発生しています。

 外務大臣は、米軍機からの落下事故が頻発しているという認識はありますか。いかがですか。

岸田国務大臣 航空機からの落下物は重大な事故につながりかねないものであり、まことにこうした事態は遺憾であると認識をしております。

 そして、こうした部品落下事案の発生につきましては、先ほど、ことしになって発生した六件を含めて、そうした事案が発生していること、承知をしております。

 外務省としましては、こうした事案が発生した都度、遺憾の意を伝え、原因究明あるいは再発防止を求めているところですが、こうした事案が発生した都度ではなくして、平素からもしっかりと、安全確保、地元住民への配慮、米軍活動に対しましてしっかりと求めていかなければならないと認識をしております。

赤嶺委員 再発防止に努めて平素から努力しても、事故は頻繁に繰り返されるわけですね。こうした事件、事故が発生するたびに、事態は、政府の再発防止といっても、何も変わらないわけです。

 ことしに入って以降の事例をとっても、普天間基地所属のヘリとオスプレイ、嘉手納基地所属のヘリと戦闘機、米本土から飛来した電子偵察機など、軍種、所属基地、機種を問わず多発しています。しかも、地元自治体が抗議決議、意見書をもって政府に要請する、要請しているそのやさきにまた事故が発生する、この繰り返しであります。

 沖縄県の翁長知事は、この数カ月間どんなに抗議し原因究明を求めてもいい形で返ってこない、MV22オスプレイ、RC135V、F15と全ての機種で起きる、どう対応したらいいのかと述べています。

 外務大臣に最後に伺いますが、これだけ繰り返される以上、米軍が駐留を続ける限り米軍機による事件、事故は避けられないということではありませんか。

岸田国務大臣 事件、事故はあってはなりません。外務省の立場からは、日米合同委員会等さまざまな機会を使って、安全面への配慮、これからもしっかりと働きかけをしていきたいと考えております。

赤嶺委員 終わります。

土屋委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党と山本太郎となかまたち、玉城デニーです。

 国際情勢に関する大臣所信について、安倍政権の外交姿勢等々も含めた上で、きょうは大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 まず、その外交姿勢については、外交強化の三本柱ということについて、先般、その所信の中で、日米同盟、近隣諸国との関係、経済外交強化等について述べられています。この所信で述べられた外交強化の三本柱について、幾つか質問をさせていただきます。

 まず、第一の柱として、日米同盟をあらゆる分野で強化すると掲げております。これは、ガイドラインの見直し、迫ってきておりますけれども、そのガイドラインの見直し、それから、幅広い安保・防衛協力による抑止力の強化、これは安保法制のさらなるまた見直しなども含まれての内容かというふうに思料いたします。さらに、米軍再編合意に基づく沖縄の負担軽減、そして、日米地位協定の環境補足協定の署名などなどとなっております。

 実は、この環境補足協定の実質合意は昨年十月二十一日で報道されておりますが、返還が予定されている在日アメリカ軍基地に地元の自治体が事前に立入調査する権利などを認めた新しい協定をアメリカ政府と実質合意したと発表になっています。岸田外務大臣からは、米軍施設・区域への立入調査や日米環境基準のより厳しい条件を適用といった項目を盛り込み、従来の運用改善とは一線を画すものであります、地元の御期待に沿う成果が上げられたと考えているということで述べられています。

 この間、実は、沖縄県からはさまざまな日米地位協定の見直しに関する要請が、るる、累次にわたり、あるいは総体的に、項目的に行われております。

 平成十二年、二〇〇〇年の九月十一日、日米安全保障協議委員会、2プラス2による環境原則に関する共同発表などが、この環境補足協定などのはしりといいますか、そういうふうな項目で進んできているものと思います。

 二〇〇一年は、当委員会では日米地位協定の見直しを決議するということもありまして、この間、私が資料で取り寄せました沖縄県のホームページによりましても、実に、本当にたび重なる、地位協定の抜本的な見直しを中心とした各項目ごとに対する見直しの要請が行われております。

 そして、二〇〇九年、政権交代が起こりましてからは、民主党、社民党、国民新党の与党三党連立政権合意で、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む。」ということも示されています。

 さらには、これは、このホームページの記述で一番新しいところですと、平成二十六年、二〇一四年、昨年の二月十一日、環境補足協定に関する日米両政府間の協議が始まったということがあります。

 ここまで説明をさせていただいたのは、実は、沖縄県民にとって、いや、これは実は国民全体にとって、この地位協定の見直しというのは、非常に長きにわたり横たわる重要な問題だというふうに私は思うわけですね。ですから、本来であれば、この地位協定の見直しは、各項目ごとあるいは総体的に、現況の基地負担の軽減あるいは日米安全保障の中での国民の生命財産を守るということに資することに浴しているかどうか、つまり国民にとって偏ったものになっていないかということをしっかりとやはり見直すべき重要な問題であるというふうに思います。

 そこで、この点を踏まえて質問をさせていただきます。

 この日米地位協定における環境補足協定の署名に関する現況の進捗状況について伺います。

岸田国務大臣 日米地位協定につきましては、今日までさまざまな要望をいただいてきました。そして、運用改善という形で対応を続けてきたわけですが、今回、日米地位協定の歴史の中で初めて環境補足協定を作成するということで、日米で取り組みを続けてまいりました。

 御指摘のとおり、昨年十月に、日米両国のまたは国際的な環境基準のうち、より厳しいものを採用する米側の基準の発出、維持、そして文化財調査を含む返還予定地の現地調査や、環境事故の際の調査のための立ち入り手続の作成、維持といった規定を明確な形で含む協定の案文について実質合意を行った次第です。

 そして、その後の作業ですが、この協定のもとで作成する施設・区域への立ち入りのための手続を定める文書、この文書の作成を両国で協議を続けている、こういった段階に入っています。

 相手のある話ですし、まだ協議が続いておりますので、現時点で具体的な署名時期は確定はしていませんが、ぜひできるだけ早い署名に向けて両国で協力を続けていきたいと考えています。

玉城委員 米軍の好意的配慮をもってその立ち入りの調査などを行うというふうな現況にあっては、早期の跡地利用についての計画に大いに支障を来すということがこれまでも言われておりますので、その署名に関しては、日本側からも早期の署名についての提起といいますか、促しをぜひともお願いしたいところであります。

 続いて、外交強化の三本柱の第二には、近隣諸国との関係強化、第三の柱には、経済外交の強化を挙げています。きょうは、この中で、経済外交における日本企業支援の強化分野について詳しくお伺いしたいと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 日本企業の海外展開に向けた官民連携は、諸外国の成長を日本の成長に取り込んでいく上で極めて重要と認識をしております。

 日本企業が拡大する国際市場において十分に御活躍いただけますように、岸田外務大臣を本部長といたします日本企業支援推進本部を外務省に立ち上げ、経済界の御意見を直接伺いながら、日本企業のためのビジネス環境整備を含む各種の取り組みを進めてきております。

 在外公館では、大使、総領事が先頭に立ちまして、日本企業への各種の情報提供や外国政府へのいろいろな働きかけを行ってきております。また、在外公館施設を、日本企業製品の紹介や地方創生に向けた発信、日本食、日本産酒類の普及、農林水産物の輸出促進などのために積極的に活用してきております。

 また、企業の安全確保の観点も大変重要と認識をしております。全ての在外公館に日本企業支援窓口を設置しておりますけれども、進出先における安全確保については、日本企業からの御相談に応じ、この企業支援窓口が、必要な場合には相手国政府や関係機関への申し入れなども行ってきているところであります。

 さらに、海外に進出をしておられる企業関係者を含む邦人の安全確保のために、在外公館と在留邦人代表者との会合でございます安全対策連絡協議会なども開催をいたしているところであります。

 こうした取り組みを通じまして、進出企業や在留邦人の方々のさらなる安全確保に万全を期しつつ、日本企業の海外展開を外務省として一層積極的に推進していく考えでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 経済外交における日本企業への支援、実は朝のテレビの報道番組でも、アジアインフラ投資銀行の件について、さまざまな、紹介といいますか、これから日本政府、企業がどのようにして展開をしていくのかについて懸念を持っているというふうな内容もありました。その件に関しては、また後刻、委員会の中で質問をさせていただければと思いますが、ここでは、続いて、テロ対策の強化についてお伺いしたいと思います。

 去る十八日、チュニジアの首都チュニスにある博物館で、イスラム過激派、アンサール・シャリアが関与したと思われる銃撃テロが起こりました。多数の犠牲者が出たんですが、これに関連して、ISILが犯行を認める音声声明をネット上に出してもおります。

 このテロで、日本人三人の方が亡くなり、三人の方が負傷するという、犠牲者も出ています。

 この件について、お悔やみとお見舞いを心から申し上げたいと思いますが、いかなる目的があっても、非道、非情なテロ行為は断じて許せないというふうに言わなければなりません。

 大臣に伺います。このチュニジア、チュニスの博物館テロについての所見をお伺いいたします。

岸田国務大臣 三月十八日に、チュニジアの首都チュニス市郊外にあるバルドー国立博物館において、武装集団によるテロ攻撃が発生し、チュニジア政府によれば、外国人二十名を含む二十一名が死亡、四十三名が負傷いたしました。そのうち、邦人三名が命を落とし、三名が負傷されました。そして、昨日、三名の方の御遺体が帰国され、空港に中山外務副大臣が出迎えた次第であります。

 改めて、亡くなられた方々に哀悼の意を表し申し上げると同時に、負傷された方々の一日も早い回復をお祈りしたいと思います。

 そして、いかなる理由があるにせよ、こうしたテロ行為、これは強い憤りを感じますし、断固非難いたします。

 そして、政府、外務省の立場としましては、まずは、今後とも在外邦人の安全確保に万全を尽くさなければならないと考えますし、あわせて、国際社会と連携して、テロとの闘いを進めていかなければならないと考えております。

玉城委員 周辺国と比較して治安がよく、民主政治が定着する中で、このような無差別テロが起こる可能性というのは全く予測できないこともあります。しかし、歴史、宗教、文化、社会、暮らしなどに鑑みて、それぞれの国や地域に根差した考え方を持って、今後、日本から、では、どのような支援を行っていくのか。

 大臣所信の中では、過激主義を生み出さない社会構築への支援を訴えております。どのように考えていらっしゃるか、あわせて見解を伺います。

岸田国務大臣 日本にとりましても、国際社会にとりましても、中東の平和や安定をしっかり取り戻すということ、これは大変重要な課題であります。最前線で過激主義と対峙している穏健イスラム諸国を支援すべく、人道支援など非軍事分野において、今日まで我が国は貢献してきましたが、こうした取り組みは、多くの国々、中東諸国からも評価されているところであり、ぜひこれからもしっかりと続けていきたいと考えております。

 そして、先般、シリアにおいて邦人テロ殺害事件が発生しました。これを受けまして、私の方から三つの取り組みを打ち出させていただきました。一つはテロ対策の強化、そして二つ目として中東の安定と繁栄に向けた外交の強化、そして過激主義を生み出さない社会の構築支援、こうしたものを掲げました。

 過激主義を生み出さない社会の構築の支援の部分ですが、この部分に、技術協力等を通じた若者の失業対策、あるいは格差是正に向けた取り組み、あるいは教育支援などの取り組み、こういったものをしっかりと盛り込んで、中庸が最善、こういった考え方を実践していきたいと考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 この後、二つ質問を予定していたんですが、一つ、在沖海兵隊の情報流出問題については、また後刻、質問をさせていただける機会に持ち越したいと思います。

 辺野古の移設問題について、続いて伺いたいと思います。

 きょうは、委員会でもこの件についてはさまざまな討議が行われたと思います。二十三日、沖縄県の翁長雄志知事は、沖縄防衛局に対し、名護市辺野古沿岸部で進められているボーリング調査を含めた海底面の現状を変更する行為を全て停止することを文書で指示しました。

 翁長知事のこの岩礁破砕取り消しに関する防衛省の見解をお伺いいたします。

原田大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 二十三日、沖縄防衛局は、沖縄県知事から、同県による調査が終了し、改めて指示するまでの間、海底面の現状を変更する行為の全てを停止するよう指示する旨の文書を受領いたしました。

 防衛省としては、ボーリング調査を含め、代替施設建設事業に伴う岩礁破砕等に係る手続については、沖縄県知事が定める沖縄県漁業調整規則等を踏まえ、同県と十分な調整を行った上で実施をしており、このような文書が提出されたことは甚だ遺憾でありますが、いずれにしても、海上ボーリング調査等の各種作業については、環境保全に万全を期して最適の方法で作業を進めてまいりたい。

 また、当該指示文書を受けて、二十四日に、沖縄防衛局職員が沖縄県庁を訪問して、本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕には当たらないこと、今般指示でコンクリート製構造物の設置が許可申請外の行為であるとしたことは、以前より沖縄県が沖縄防衛局に対して示していた内容に反すること、沖縄県内で国を事業者として行われた同種事案においても、本件と同様のアンカーの設置は岩礁破砕許可手続の対象とされていないこと、一部区域におけるアンカーの設置を理由に全ての施行区域における全ての現状変更行為の停止を求めることは不当であること等の説明を行いました。

 防衛省としては、これらの理由から、二十三日の沖縄県知事の指示は無効なものであり、現在行っている作業を中断する理由にはならないとの考えを同県に説明させていただき、その旨を記載した文書を手交しました。

 また、本件指示自体が無効なものであることを明らかにするために、二十四日、沖縄防衛局長から農林水産大臣に対し、審査請求書及び執行停止申し立て書を提出したところであり、今後、法令に沿って適切に審査されると認識をいたしております。

玉城委員 今のコメントの最後の方だけを少し復唱しながら確認をします。

 この翁長雄志知事の作業停止指示を不服として、農水省に行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止申し立てをしたということについて、法律に詳しい関係者は、行政不服審査法は、第一条で、行政庁の違法、不当な処分などの行為について、国民に不服申し立ての道を開くことであり、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的としているというふうに定義されていると言っています。

 つまり、国は国民ではないわけですね。逆に、国がやっていることが、国民によって選ばれた知事の示した判断に対してそういうことを行うということは甚だおかしいというふうに、もう本当にみんなが疑問に思っているということを、あえて申し上げなくてはなりません。

 基本的に、国が民間事業者と同じ立場という前提なら申し立てできますが、本来、国民の権利を保護するための法律であり、国が行っていることは、まさに、沖縄県民からすると、違法な状態をまたさらに続けていくのかということの疑念が高まっていくだけなんですね。

 さらに、この問題について、非常に私は、もうデッドエンドというか、暗礁に乗り上げている、浅瀬に乗り上げて動かなくなっているボートではないかというふうに思うぐらい、では誰がそのボートを助けるのかというふうに思うんです。

 しかし、報道番組では、政府高官が、官房長官がこの件で翁長知事と会うことはない、訴訟になって争っているうちに基地ができる、それだけの話だ、工事はとめない、法廷で会えばいい。どなたが言ったのかわかりません。二十五日の地元紙の報道によりますと、二十三日のこの翁長知事の発言を受けて、翁長知事のわび方を見て今後会うかどうか決めるなどというふうなコメントが官邸から伝わってくるわけですね。こういう姿勢では、絶対にこの問題は解決しません。

 大臣、最後にお伺いいたします。沖縄県に対するこの間の政府対応の問題点の本質的なものとは、大臣、どのようにお考えでしょうか、お答えください。

岸田国務大臣 今御紹介いただきました発言、誰の発言か私は承知はしておりませんが、私の立場からは、具体的な対応については、防衛省を初めそれぞれの担当箇所が責任を持って法律に基づいて対応するものであると承知はいたしますが、やはり、こうした政治的な大きな課題を含む問題につきましては、法律に基づいてしっかりと手続を進めることはもちろん大事でありますが、あわせて、それにかかわる関係者、さまざまな形で意思疎通を図り、信頼関係を築きながら物事を進めていく、こういった点も大変重要なのではないかと思います。

 ぜひ、そういった姿勢は今後も大事にしていくべきだと考えます。

玉城委員 大臣が今お答えいただいた姿勢を、我々が民主主義国家に生きる者として国民に広くしっかり示していくという姿勢をぜひ見せていただくことをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

土屋委員長 次に、内閣提出、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。

 改正の第一は、在グルジア日本国大使館の名称及び位置の国名を、それぞれ在ジョージア日本国大使館及びジョージアに変更する等の規定の整備を行うことであります。

 改正の第二は、在レオン及び在ハンブルクの各日本国総領事館を新設するとともに、同総領事館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の基準額を定めることであります。

 改正の第三は、既設の在外公館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の基準額を改定することであります。

 以上の改正内容のうち、在勤基本手当の基準額の改定については、平成二十七年度予算と一致させて行うため、四月一日から実施する必要があります。

 以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

土屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十七日金曜日午前八時三十分理事会、午前八時三十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十五分散会


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