衆議院

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第10号 平成27年5月15日(金曜日)

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平成二十七年五月十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 大野敬太郎君

   理事 島田 佳和君 理事 辻  清人君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      小田原 潔君    小渕 優子君

      大塚 高司君    河井 克行君

      木村 弥生君    小林 鷹之君

      佐々木 紀君    鈴木 隼人君

      薗浦健太郎君    渡海紀三朗君

      豊田真由子君    中川 俊直君

      星野 剛士君    松島みどり君

      三ッ林裕巳君    宮川 典子君

      宮崎 謙介君    武藤 貴也君

      緒方林太郎君    吉良 州司君

      鈴木 貴子君    長島 昭久君

      青柳陽一郎君    木内 孝胤君

      岡本 三成君    穀田 恵二君

      宮本  徹君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   防衛副大臣        左藤  章君

   外務大臣政務官      薗浦健太郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  片山 一夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高田  潔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡田  隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 伊藤 直樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 豊田 欣吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 秀生君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   高瀬  寧君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            秋本 茂雄君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 武藤 義哉君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 鈴木 敦夫君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十五日

 辞任         補欠選任

  薗浦健太郎君     木村 弥生君

  渡海紀三朗君     宮崎 謙介君

  中根 一幸君     小田原 潔君

  穀田 恵二君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     中川 俊直君

  木村 弥生君     宮川 典子君

  宮崎 謙介君     渡海紀三朗君

  宮本  徹君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 俊直君     三ッ林裕巳君

  宮川 典子君     薗浦健太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ林裕巳君     豊田真由子君

同日

 辞任         補欠選任

  豊田真由子君     中根 一幸君

    ―――――――――――――

五月十二日

 特許法条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特許法条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官岡田隆君、大臣官房審議官伊藤直樹君、大臣官房審議官豊田欣吾君、大臣官房参事官滝崎成樹君、大臣官房参事官鈴木秀生君、北米局長冨田浩司君、中南米局長高瀬寧君、内閣官房内閣審議官片山一夫君、内閣審議官高田潔君、海上保安庁警備救難部長秋本茂雄君、防衛省大臣官房審議官武藤義哉君、防衛政策局次長鈴木敦夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉良州司君。

吉良委員 おはようございます。

 前回の質問時に、さきの大戦を踏まえて、また検証しながら、中国ともっと仲よくしていくべきではないかという議論を進めさせていただきたい、その際の自分の立ち位置、問題意識について、頭出しとして披露させていただきました。

 その中で、さきの二二防衛大綱作成にも、隣にいる長島昭久議員とも深くかかわったという話もさせてもらいました。

 その中で、今我が国を取り巻く国際環境、特に安全保障環境というのが大きく変化をしている、その大きな変化の最大の要因は、中国の経済的、そして軍事的な台頭であるということを私自身申し上げました。そして、中国の軍事的台頭に対してはきちっと備えをしなければならないという話をさせてもらったわけです。ちょっと言い方をかえると、中国が我が国の安全保障上の潜在的な脅威になり得る可能性があるということを披露させてもらったわけであります。

 脅威とは何か。釈迦に説法になるかもしれません。質問通告していないので私の方で答えさせてもらいますと、軍事的な意味における脅威とは、ある国家また国家群が、特定の国家、国家群を攻撃、侵略する意思とそれを裏づける軍事力、能力を備える場合に、攻撃、侵略される立場に立つ国家、国家群が、攻撃、侵略する国家、国家群を脅威と認識すること。これが軍事的な意味における脅威という定義であります。

 すなわち、脅威という概念というのは、その国が意思と能力を持つかということにかかわってくると言えると思います。

 今、中国は、経済的発展を背景に、十分な能力、軍事力を持つに至っている。その能力に対しては、我が国も能力で備える必要がある。そういう意味で、今、安倍政権も進めている自主防衛力の増強、例えば防衛費の増額であるとか、また、日米同盟の強化、この方向性というのは決して間違っていないんだというふうに思います。

 個人的な見解になりますけれども、集団的自衛権の行使容認ということについても、私自身は、結果的に日米同盟をより強固なものにして、日本の安全と平和を守ることができる、つまり、抑止力をより高めることによって日本の平和と安全が守れるということであれば、地域概念、地域的な限定をすべきだというふうには思っておりますけれども、集団的自衛権の行使容認というのもあってしかるべきだというふうに思っています。

 私の演説の場ではないですが、少しお聞きをいただきたいと思います。

 その件で、安倍政権の集団的自衛権行使容認の議論について、思うところをちょっと言わせていただくと、最初から余りにも専門的な議論に入り過ぎている。やれ、邦人を輸送している米艦を防護するにはどうするのかとか、ペルシャ湾の機雷を掃海するにはどうすればいいのかとか、米国に向かったミサイルを撃ち落とすにはどうすればいいのか。いきなり、専門的、各論に入り過ぎているというふうに思っています。

 私自身が、地元において、この集団的自衛権行使容認の是非について地区集会、お茶の間集会等を開いて、有権者に説明をする際に、一方では、先ほども申し上げましたけれども、中国の経済的、軍事的台頭、特に、ここにいらっしゃる皆さんは御承知のとおり、人民解放軍の接近阻止、領域拒否戦略、A2AD戦略と言われるような、米軍に対する抑止力、攻撃力を高めるというような軍事的な目的というようなことを披露する。

 また、尖閣における問題、東シナ海における問題、こういうことを一方ではきちっと説明するんですけれども、同時に、この後披露させてもらいますけれども、終戦時に日本の軍人、民間人が中国からスムーズに引き揚げることができたという話、そして、中国に対する備えが必要だという話をした上で、集団的自衛権というのは、決して、世間、一部野党が言うように、集団的自衛権の行使容認イコール戦争への道まっしぐら、戦争する国になるんだという議論とは限らないと。

 今の東アジア、日本を取り巻く環境の変化に照らせば、かえってそのことが戦争を回避できる、絶対戦争をしないで済むという抑止力の向上につながるんだという話をすると、実は有権者の皆さんは、結構、自分が言うのもなんですけれども、目からうろこだということで、そのことについての理解は、そうかと。集団的自衛権というものも、すぐ、それイコール戦争への道ということではなくて、戦争をしない、日本の平和をより守れるということにつながるんだということで、聞く耳を持ってもらえるというふうに、私自身は自分の地元活動の中で実感をしています。

 そういう意味で、安倍政権は、さっき言いましたように、いきなり専門的な各論に入る以前に、単純明快な、抑止力を今言った環境変化に対して高めることによって、戦争をしない、そして平和を守れるということをもっともっと強調すべきではないかというふうに思っています。

 ちょっと話は集団的自衛権というようなことで横にそれましたけれども、この件については、また次の機会、また別の機会に、また同僚議員が論戦を挑むことになろうかというふうに思っています。

 私がきょうここで申し上げたいことは、先ほど言いました、脅威とは意思と能力である。そして、能力については、今申し上げましたように、きちっと備えをする必要がある。自主防衛力であり、日米同盟の強化である。

 一方で、意思については、これは、とことん我が国の方から中国に対して、自分たちは中国と友好関係を築いていきたいんだということを本気で手を差し伸べていくという必要があるんだというふうに思っています。その相手の意思を減ずるということについて、安倍政権というのは、ある意味では少し力の注ぎが足りないのではないかという問題意識を持っています。

 きょうは、そういう意味で、中国の意思を絶対に持たせないための友好関係を築く、その一助になるのではないかと私自身が思うことについて、提案をさせていただきたいというふうに思っています。

 その中で、前回も少し頭出ししましたけれども、中国に対して随分と迷惑をかけたということの反省が必要だと思っていますが、前回聞いて明確な回答がなかったんですが、いま一度、第二次世界大戦における世界的な犠牲者の数、特に犠牲者が多かった国、そしてその犠牲者の数について、外務省の見解をお聞きしたいと思います。必ずしも、外務省の正式な見解ということは出せないということであるならば、仄聞といいますか、こういうふうに言われているという数字でも結構です。外務省の見解をお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、先ほど来委員の方から、中国についていろいろお話を聞かせていただきました。

 中国による不透明な軍事力の拡張ですとか、あるいは力による現状変更と言えるような動きにつきましては、地域の多くの国々にとりまして懸念であると我々は認識をしております。そして、一方で、中国が平和的に発展していくことは、我が国にとってもチャンスであり、そして国際社会にとっても歓迎すべきことであると思っています。

 ぜひ、我が国としましても、国際社会と協力しながら、中国が法の支配を尊重し、そして平和的に建設的な役割を国際社会において果たしてくれるように、日本としてもしっかりと働きかけ、促していく、こういったことは重要だと思っております。

 それを申し上げた上で、御質問にお答えさせていただきます。

 第二次世界大戦における犠牲者について御質問をいただきましたが、犠牲者の数につきましては、さまざまな議論がありますし、さまざまな数字が存在いたします。ただ、戦争の範囲についても、それぞれの統計、さまざまのようであります。対象がそれぞれ異なるので、比較すること、あるいは正確な数字というものをお答えするのは難しいところではありますが、きょう、委員の方からも幾つか数字を資料として挙げていただいております。

 例えば英国においては、英連邦戦死者墓地委員会として四十五万人という数字を犠牲者の数として挙げておりますし、米国におきましては、退役軍人省の数字として二十九万人という数字が挙がっておりますし、ポーランドにおきましては、政府機関であるポーランド国民記憶院の数字として五百六十万人という数字が挙げられております。また、ソ連におきましては、ロシア国防省の推計で二千七百万人という数字も挙がっております。

 こうした数字が存在するということは承知をしておりますが、ただいま申し上げましたように、対象とする戦争、戦闘についても違いがあるようでありますし、数字のとり方もさまざまのようですので、こうした数字があるということは承知しておるものの、我が国として正確な数字を何かお答えするというのは難しいのが現状ではないかと考えております。

吉良委員 大臣の御答弁の中で、冒頭、強調して、懸念だというお話がございました。私も、民主党政権時代に外務大臣政務官と副大臣をやっておりましたので、そのときは決して脅威という言葉は使いません。あくまでも懸念であり、潜在的なということでありますけれども、私自身は、きょう、全体のトーンの中で、潜在的な脅威になる可能性があると冒頭申し上げました。脅威という言葉をあえて使いましたけれども、全体のトーンとしては、中国ともっと友好関係を築いていくべきだというトーンで話をしたいと思っておりますので、あえて今、野党の立場で脅威という言葉を使わせてもらったことは御了解いただきたいというふうに思います。

 その上で、答弁はないかと思っていましたけれども、いろいろな数字についても答弁をいただきました。今大臣からもございましたように、皆さんのお手元にも、国会図書館調べということで、「第二次世界大戦における戦死者数」、右の方に出典を書いております。ということで、本当に想像を絶するような犠牲者を出した悲惨な大戦であったというふうに言えると思います。

 その中で、きょう特に話題にしております中国について、前回も申し上げましたけれども、あの第二次大戦が終わるころ、終わった直後というのは、米国と英国を除いてほとんど政府というものが壊滅状態にあったので、正確な数字をなかなかつかめなかった。特に、犠牲者が一番多かったと言われているソ連、中国においては、その中でも特に犠牲者数を把握するのは難しい。それだけに大きな幅があるということは、私自身も十分承知をしております。

 ただ、その上で、私自身が調べたところの数字をあえて披露させていただきますと、お手元の数字にありますとおり、中国においては、軍人及び民間人を合わせて、死者だけではなくて死傷者約三千五百万人という数字が出ております。

 必ずしもこの道の専門家ではないんですが、元東京大学教授の坂井栄八郎先生という方が、平成二年の学士会の会報、論文の中で、極めて具体的な数字を挙げております。それは、中国においては、軍人、将兵六百四十万人、民間人五百四十万人、合計すると一千百八十万人になるわけですけれども、これだけの犠牲者を出したというふうに論文の中で発表されております。

 繰り返しますけれども、幅があるんだろうとは思いますけれども、ある種それだけ大きな犠牲者がいたということは推定できるというふうに思っています。

 岸田大臣、いま一度、中国にこれだけの犠牲を強いたということについて、大臣の見解をお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 第二次世界大戦、さきの大戦における我が国の行動につきましては、歴代内閣において申し上げておりますように、我が国として大きな反省に立たなければならないと考えております。

 こうした反省に基づいて、戦後七十年間、我が国は平和国家として国際社会の平和や安定に貢献してきたわけでありますし、そして、これからもしっかりと貢献していこうという思いを新たにしています。

 こうしたさきの大戦における反省ということにつきましては、これからも決して忘れてはならないと考えます。歴代内閣のこうした考え方については、しっかり引き継いでいく考えであります。

吉良委員 私がこのように何回もお聞きする背景は、先ほども言いましたように、一般の有権者と話をしているときに、例えば最初のうちは、尖閣の問題、東シナ海の問題、または専門的なことを知っている人は南シナ海の問題を捉えて、中国はけしからぬという声が非常に多いわけですけれども、日中戦争、十五年戦争と言われますけれども、この間に中国の人たちでどれぐらいの犠牲者が出たのかという話と、この後言います、徳をもって恨みに報いよという有名な蒋介石演説も一つの要因として、復員、引き揚げがスムーズにいったという話をすると、途端に感情的ナショナリズムともいうんですか、そのトーンがぐっと変わってくるんです。中国には随分迷惑かけたんやなとか、中国にも感謝せないかぬな、こういうような話に変わってくるんですね。

 私は、日中関係をよりよくするものについて、これからまた議論をしていきたいと思いますけれども、一つは、日本人の対中好印象度を上げていく必要があるんだというふうに思っています。その際に、きちっと、今申し上げた、どれだけ迷惑をかけたのかという数字的な押さえも必要なんだろうというふうに思っています。

 今、私の方から申し上げましたけれども、日本として、日本人の対中好感度を上げていく必要があるというふうに思っています。ということは、決して今よくないんだという理解でありますけれども、日本人の対中感情、また中国人の対日感情について、外務省が把握している数字がありましたら披露いただきたいと思います。

中山副大臣 日本人の対中感情に関しましては、内閣府が外交に関する世論調査というものを実施いたしております。昨年十二月に公表されました最新の調査によりますと、約一五%の対象者が中国に親しみを感じる、約八三%の対象者が親しみを感じないと回答しております。

 中国人の対日感情につきましては、昨年九月に公表された民間の調査で、中国人の約一一%が日本に対しましてよい印象、約八七%の方々がよくない印象と回答をしているものがございます。なお、同じ調査によりますと、日本人の約七%が中国に対してよい印象、約九三%の方々はよくない印象と回答をいたしております。

 政府といたしましては、先生御指摘のように、悪化した日中両国の国民感情を改善していくことというのは、極めて重要な課題だという認識でおります。先日のジャカルタでの日中首脳会談におきましても、我が方の安倍総理から、国民の間の相互理解こそが良好な日中関係の基礎であるという旨を御指摘申し上げさせていただき、さまざまな分野の対話、または交流を積み重ねていくことで習近平主席と一致を見出せたというところでございます。

吉良委員 ありがとうございます。御回答いただきました。

 私の方で調べた結果も、今、中山副大臣が御指摘になったとおり、日中双方とも好印象を持っている人が少ないというふうに理解をしております。ただ、同時に、このままでいいのかということについては、改善を望むという双方の国民が七割を超えるというデータも出てきております。

 そういう意味で、これを本当に国を挙げてやっていかなければならないというふうに思っているんですが、現時点で、外務省として、外交当局として、日本人の対中好感度を上げるため、というより日中関係をよりよくするための具体的な方策というものを、どのようなことをされているのか、お答えいただければと思います。

薗浦大臣政務官 日中双方のいわゆる国民感情、こういうものを改善していくためには、やはり、一つには人的交流をいかに拡大していくか、それから文化交流をいかにやっていくかという、いわゆるそのレベルでのお互いの交流というのが非常に大事だというふうに考えております。

 人的交流については、これまでもさまざまな招聘事業を行ってきておりますけれども、特に今、JENESYS二・〇と呼ばれる事業、これは、平成二十六年度は千七百人ほどの中国の若い青少年をお招きしましたけれども、このプログラムによって日本人の同世代の方々と交流をしていただく、それからクールジャパン、いわゆる日本のものに触れていただく等々、体験をしていただきました。結果として、この方々がお帰りになられるときにアンケートをとっておりますけれども、非常に対日感情が大きく改善をして御帰国いただいているという結果が数字であらわれております。

 したがって、こういう政治的な雰囲気にかかわらず、文化交流も含めて、対日、我々の国に対する理解を促進するために行事を行うこと、また交流を続けていくことが非常に重要だろうというふうに考えておりますので、ことしもさらに多くの青少年を招聘する予定にしております。

 直近の動きで申し上げますと、少し改善の動きが見えるということも踏まえながら、こうした事業をさらに拡大し、国民感情をお互いに改善するように努めてまいりたいというふうに考えております。

吉良委員 ありがとうございます。

 おっしゃるように、とかく中国本土では反日教育が行われている中で、実際に日本に来た中国の人たち、特に若い人たちは、全然自分の思っていた国と違う、日本人と違うと、好印象を持って帰ってくれるということなので、急がば回れでこの地道な活動をやっていくしかないというふうにも思っております。その意味でのこの種事業の拡大というのは全面的に支持いたしますので、もっと強力に推し進めていただきたいというふうに思っています。

 先ほど言いましたが、好感度を上げるときに幾つも材料がある。その中で、終戦当時の日本の復員、引き揚げにおいて、一方では、ソ連が八月九日という終戦間際に攻め込んできて、五十七万五千人というシベリア抑留者を出したのに比べて、中国本土においては、華北、華中、華南、ここからの引き揚げは、十カ月から一年数カ月において極めてスムーズに行われたというふうに言われております。

 言われておりますから、実際そうだという歴史的事実がありますけれども、中国において復員、引き揚げがそれだけスムーズに行われたことについて、外務省の見解についてお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 当時の中国からの引き揚げにつきましては、七十年近くの月日がたっておりますので明らかでない部分もありますが、一つは、ポツダム宣言の中に第九項というものがありまして、武装解除した日本兵の家庭への復帰を保障するとされております。軍人軍属の復員については、基本的に同宣言に基づいて実施されたと理解をしております。

 そして、中国からの引き揚げの実態については、引揚援護庁が昭和二十五年に作成した資料には、二百五十万の軍民の引き揚げはわずか一年数カ月をもって極めてスムーズに完了し、しかも、この地区における人員の損喪率は五%にすぎなかったと記述がある、こうしたことを承知しております。

 いずれにしましても、中国からの引き揚げがスムーズであったということにつきましては、さまざまな要素があり、そしてさまざまな要素が重なっているとも思いますし、また、さまざまな関係者の支援ですとかさらには努力、こういったものがあったものと承知をしています。

吉良委員 今、ポツダム宣言第九条ということを述べられました。おっしゃるとおり、ポツダム宣言九条にはそのように書いています。

 ただ、ここにいらっしゃる皆さんはみんな政治家の皆さんで、選挙を経てバッジをつけておられるわけですけれども、例えば、自民党の支援組織の人が応援してくれていたというときに、あなたは支援組織だから当然でしょうというようなことを言うのか。ではなくて、支援組織であったとしても、いやあ、あなたのおかげで、おかげさまでとお礼を言いますよね。

 ポツダム宣言に書いてあって、それをやったんだから当然でしょうと。人も組織も、やはり、あなたがやったのは当然じゃないかと言われるより、ありがとう、あなたのおかげでと言われると物すごく好感度が増す、元気が出るというのは当たり前ですけれども、引き揚げがスムーズにいったのはポツダム宣言九条に書いてあるからと、それはないんじゃないでしょうか。

 そういう意味で、今お触れにならなかったですけれども、それこそ、宏池会の先輩、大平正芳元外相、総理が、命がけで田中角栄元総理と行った日中国交回復、なぜしようとしたか。

 あの当時は、まさに台湾派とそれから日中国交回復派ということで、大きな論争があったということは承知していますけれども、その中で、台湾派が強い支持をしていた当時の蒋介石総統によるいわゆる以徳報怨演説、徳をもって恨みに報いよという演説が、相当に日本の復員、引き揚げのスムーズな完遂に功を奏したのではないかと私自身は思っております。

 この以徳報怨演説について外務省としてどのように捉えておられるのか、お聞きできればと思います。外務省というか、大臣。

岸田国務大臣 先ほどの答弁で、中国からの引き揚げがスムーズに進んだことの理由として、ポツダム宣言第九項を一つ挙げたわけですが、これがあるから全てうまくいったと申し上げているつもりはありません。これもありました。それ以外にもさまざまな要素がありました。さまざまな関係者の努力がありました。そうした努力の積み重ねの結果として、御指摘のようなことがあったということを申し上げたのでありまして、第九項があるから全てうまくいったと申し上げたつもりはありませんので、その点はぜひ御理解いただきたいと存じます。

 その上で、御指摘がありました国民政府の蒋介石主席によります以徳報怨演説についてですが、当時の蒋介石主席が、一九四五年の八月十五日にラジオを通じて、日本に報復してはならず、無辜の人民に汚辱を加えてはならない、こうしたスピーチを行われました。

 これは、中国国民に対し、日本人に対する寛容を訴え、在留日本人を人道的に扱う方針を示したものだと思いますが、こうした結果、多数の邦人が無事日本に引き揚げることができた、こうした見方があることは承知をしております。

吉良委員 ありがとうございます。

 これもお手元に配らせてもらっています。

 イトクホウオンと読む方もいらっしゃるし、書物によってはイトクホウオンと仮名を振っている書物もありますけれども、イトクホウエンが正しいということで、私の方はイトクホウエンという言葉を使わせてもらおうというふうに思っています。

 お手元にそのことを配付させてもらっていますが、要点としては、今大臣からもございましたが、旧悪を思わず、人に善をなすが我が民族伝統のたっとい徳性である、日本人民を敵とせず、横暴非道な武力を用いる軍閥のみを敵とすると一貫して言明してきた。言いかえるならば、中国大陸にいる軍人も一般人も、向こうの言葉で言えば、戦争指導者の犠牲者なんだ、だから、我々と同じように犠牲者なんだから、害を加えることなく帰してやれ、こういうふうに言っているわけですね。

 そして、今もありました、報復してはならず、まして敵国の無辜の人民に汚辱を加えてはならない。実は、その前に自分たちは加えられた、加えられたけれども、日本人に対してやってはならないと言っているわけですね。そして、暴行をもって敵の暴行に応えるならば、あだ討ちはあだ討ちを呼び、永遠に終わらない。この部分をもって、実際は、徳をもって恨みに報いよという言葉がこの演説の中で出てくるわけではないんですが、その趣旨で、徳をもって恨みに報いよと言われているというふうに承知をしております。

 私自身は、やはりこの蒋介石の、当時の総統のラジオ演説、そしてそれが当時の国民政府、また軍の幹部に徹底されていたことが、スムーズに引き揚げ、復員が完了した大きな要因だろうというふうに思っています。

 私自身は、このときのことを今、中国に対してお礼を言う材料に使えないかと思っているんです。

 先ほども言いました、集会をやったときに一般の人たちにこの話をすると、正直感動します。七二年当時の論争のときは、皆さん震えが来るぐらい感動して、台湾に対する恩義を強調したと理解していますけれども、この話を今一般の人にすると、当時、国民政府がどうだ、今、共産党政府がどうだ、そういうことは関係ないんです。中国の人にその当時大変温情を受けて、その結果、多くの日本人がシベリア抑留のようなことがなく無事に帰れて、そして大陸から引き揚げてきた人たちが日本の戦後復興に多大な貢献をした、こういうふうに受けとめるんですね。

 先ほどのポツダム宣言、このことについては、岸田大臣の意図はよくわかりましたので私の方で理解しましたけれども、この件を例えば外務省の皆さんにお話しすると、それは当時の国民政府のことでとか、例えば日華平和条約は今の中国共産党政権は認める立場にないですとか、専門的なことをずっと言って、このことを持ち出すことはかえってマイナスにすらなるというような見解もございます。

 専門的な観点からいくとなかなか難しいんだろうということは容易に想像がつくんですが、我々政治家としては、そういうような専門性をあるときは思い切って捨象して、もっとアバウトな形で、さっき言った日中関係を改善できる材料に使えるのであれば、思い切って専門性を排除する。要は、当時の中国の人たちの温情に対して感謝するんだというような持っていき方ができないかというふうに思っているんです。

 これは、先ほど来言っていますように、中国に対しては一方的にこちらが、あの当時ありがとうございましたということになるかもしれませんが、この事実を日本の人たちが知ることによって対中好感度がずっと増すんです。知らない人が多いということが一点と、専門的な知見を持っている人が、失礼ながら多くはいないので、今言った、ざくっと当時の中国の人たちに救われたという印象を持つんです。

 そういうようなことを今持ち出すことによって対中好感度を上げていくということについては、どうなのかというふうに思っています。

 繰り返しますけれども、時にアバウトさが必要。小泉元総理が、自衛隊の行くところが非戦闘地域だとおっしゃいました。時にはあれくらいの無謀さというかアバウトさがあってもいい。

 今回も、今言った専門的なことを言い始めると、これは対中好感度を上げるための材料に使えないんですよね。だから、一般の人に理解してもらう、そして中国にも少しでも日本の誠意を伝えるという意味でこの話を使えないかということについて、岸田外務大臣、どう思われますでしょうか。

岸田国務大臣 終戦時に海外に在留していた邦人を早期に引き揚げさせることは、まず、当時の我が国の国民にとりまして最大の関心事であったと考えます。

 邦人引き揚げに対する中国の人々を初めとする連合諸国の支援に対しては、昭和二十二年十一月八日の参議院本会議において、当時の芦田外務大臣が感謝を表明しております。また、御指摘の蒋介石主席の演説につきましても、昭和四十六年に佐藤栄作総理が、終戦当時における蒋介石総統が日本国民に示された、いわゆる暴に報いるに暴をもってせず、徳をもってしたという、その事柄は、やはり長く我々の記憶に存するところである、こうした発言をしておられます。

 こうした終戦時の邦人の引き揚げに当たってさまざまな関係者の努力があったことは、しっかり我々は認識をしなければならないと思いますし、御指摘の演説についても、私たち日本人としてしっかり認識をしておくことは大事であると考えます。

吉良委員 認識についてはありがたいと思っていますけれども、プロ同士が専門的な知識、見地を背景に話をすると、今言ったように、かつて結んだこの条約に抵触するだ、そして、繰り返しますけれども、中国とはいっても当時は国民政府だと。まあ最近、関係が経済を中心に良好になっていますけれども、やはりメーンランド中国と台湾という問題もあり、このことを持ち出すことが、決して現中国政府との関係改善に役立つかどうかわからない、こういう部分もあるというのは承知しているんですが。

 繰り返しになりますけれども、今大事なことは、私どもも民主主義国家ですので、対中好感度がずっと増していけば、おのずと中国に対する関係改善というのは、政府としても、今よりももっと本気になってくるはずなんですよね。そうしなければいけないということになります。そういう意味で、この話を何らかの形で外交の場に持ち出すということは、対中関係もさることながら、対日本人の好感度を上げる、繰り返し言っておりますけれども、その効果があるということなんですね。

 そういう意味で、この話を、今言った、微に入り細に入り、専門的な見地からああだこうだ言うのではなくて、もっとアバウトな形で利用できないでしょうかということについて、もう一度お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 終戦後の邦人の引き揚げにつきましては、多くの方々の努力がありました。そして、そのさまざまな努力や貢献の中に御指摘の演説もあると思います。

 こうしたさまざまな努力、歴史については、我々日本人としてしっかり認識をしておかなければならないと思いますし、その認識に基づいて、現在におきましても各国との関係を考えていく、こうした考え方は大変重要であると認識をいたします。

 具体的に、どの事実をどう取り上げてどのようにお話しするか、こういったことにつきましては、いろいろと考えていかなければならないのかもしれませんが、基本的な考え方として、御指摘の演説を初めとするさまざまな関係者の努力については、我々日本人として、しっかり受けとめ、認識を引き継いでいかなければならないと考えます。

吉良委員 これも繰り返しになりますけれども、日中の例えば外相会談の場においてでも、今言った、専門的な話を持ち出すとうまくいきませんけれども、当時も中国の国民の皆さん、中国の人たちに大変な温情をかけていただいてありがとうというような言葉でいいんですよね。ぜひ、そういうことを岸田外務大臣が先方に伝えたということを日本の国民に知らせてほしい。

 対中好感度を増していくことが日中関係改善の第一歩である、そのために、あらゆる材料を持ち出してきて、さっき言った、時には専門性を排除して、使える材料は何でも使って、対中改善に資するようにする、このことが大変重要であると思っておりますことを再度申し上げて、私の質問を終わります。

土屋委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 横田基地へのCV22オスプレイの配備の問題について質問いたします。

 自治体、住民への頭ごなしでの配備通報について、横田基地の地元の福生市長は、寝耳に水、通達だからのめと言われても無理がある、この地域を預かる者として、これ以上の基地強化は受け入れられない、こう語っていると報道されております。横田基地周辺でも全国でも、怒りと不安の声が広がっております。

 まず、経緯について、きょうは大臣に伺いたいと思っております。

 この間、CV22オスプレイの日本への配備の報道のたびに、日本政府は聞いていないという態度を繰り返してきました。二〇一三年七月、カーライル米太平洋空軍司令官が横田基地が一つの候補地だと発言したときに、菅官房長官は記者会見で、米側から通報はない、聞いていないので、実現性はないと思っていると述べました。そう言っておきながら、横田へのオスプレイ配備が通報されるということになりました。

 岸田大臣に聞きますが、一体いつ、CV22オスプレイが横田基地に配備される、こういう打診があったんでしょうか。

岸田国務大臣 日米間におきましては、アジア太平洋地域の兵力態勢につきまして、日ごろから幅広く議論を行っているところですが、今般、米政府内での検討、調整を完了したことから、十一日に、日本政府に対して接受国通報という形で正式な通報がありました。そして、翌十二日、発表されたものであります。

宮本(徹)委員 接受国通報まで岸田大臣は知らなかったわけじゃないですよね。寝耳に水だったんですか、大臣も。事前に打診があったんじゃないんですか、横田に配備することについて。

岸田国務大臣 アジア太平洋地域における兵力態勢につきましては、日米間におきまして、さまざまな発言があり、またさまざまな議論があり、幅広い議論が今日まで行われてきました。しかし、正式に接受国通報がありましたのは、今般、十一日であったと承知をしております。

宮本(徹)委員 幅広くいろいろ議論してきたということで、では、実際は、正式なのは十一日だけれども、ない、ないと記者会見だとかいろいろなところで繰り返しながら、隠れて話し合ってきたということなわけですね。

岸田国務大臣 議論は当然行ってきましたが、正式な通報は、今回、十一日に行われたものであると承知をしております。

宮本(徹)委員 では、今まで、ない、ないと言っていたのは、国民に対してうそをついてきたということになるわけですよ。

 次に行きます。

 この間の報道では、四月二十七日の2プラス2の共同発表のときに、アメリカ側はこの文書にオスプレイの横田配備を盛り込むよう提案したが、地元との調整に時間を要するとの日本側の指摘を受け、見送っていた、こういうふうに報道されておりますが、これは事実でしょうか。

岸田国務大臣 今回の2プラス2の機会も含め、アジア太平洋地域の兵力態勢については日米で幅広く議論を行っております。

 今回の2プラス2、四月の二十七日に開催をされました。この時点での共同発表においては、「最も現代的かつ高度な米国の能力を日本に配備することの戦略的重要性を確認した。」こうした記述を明記しているところであります。

 そして、その後、五月の十一日に正式な通報があった次第であります。

宮本(徹)委員 その最も高度な能力というのがオスプレイの話だったということですか。

岸田国務大臣 これは共同発表に書いてあるとおりであります。具体的な兵力についての記述は、この共同発表の中にはございません。

宮本(徹)委員 そうですね。共同発表の中には、嘉手納へのP8哨戒機配備の問題、グローバルホークの三沢飛行場への配備の問題、輸送揚陸艦グリーン・ベイの配備だとかF35の配備の話はあるわけですけれども、オスプレイの話はないわけですよね。

 そこではどういう話をしたんですか。オスプレイを書き込ませなかったということなんですか。

岸田国務大臣 会議の中身について詳細なやりとりを明らかにすることは控えなければなりませんが、2プラス2の場におきまして共同発表ということで確認をした内容は、先ほど申し上げたとおり、「最も現代的かつ高度な米国の能力を日本に配備することの戦略的重要性を確認した。」こういった点のみであります。

宮本(徹)委員 だから、それを書き込ませなかったわけですけれども、横田へのオスプレイの配備の話も出たわけですよね、2プラス2では。結果で、まとまっている文書は見ているからわかりますよ。横田への配備の話は出なかったんですか。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、会議の中身につきましては、一致した点、明らかにした点につきましては共同発表という形で公にさせていただいております。

 国際会議における常識として、詳細なやりとり、相手の発言については控えなければならないと思いますが、いずれにしましても、CV22オスプレイに関しまして、日本政府に対して接受国通報という形で正式な通報があったのは五月十一日であります。

宮本(徹)委員 結局、その詳細は明らかにできないということで、こそこそと日米政府で話し合って、何を話したかということも国民には何にも明らかにしない、そして配備という結論だけを国民に押しつけていく、こんなやり方はとんでもないと思いますよ。

 2プラス2の共同発表に入れようが入れまいが、配備を認めるということになったら結果は同じであります。日本政府がやるべきは、共同発表の文書に入れないということじゃなくて、配備を断る、こういうことなんじゃないんですか。

 CV22オスプレイの日本配備の話が持ち上がって以降、一体、日本政府はこの間、どういう姿勢でアメリカ側とこの問題について話し合ってきたのかということが問われていると思います。

 二〇一三年七月にカーライル氏が横田基地が候補地だと述べた際に、横田基地周辺の五市一町から配備検討の撤回を求める要望書が岸田大臣宛てに出されておりますが、これは御存じですか。

岸田国務大臣 さまざまな発言があり、さまざまな議論があり、そしてさまざまな御意見の開陳があったわけですが、いずれにしましても、正式通報は五月十一日でありました。それまでにつきましては、さまざまな議論があったわけでありますが、正式な通報を受けたものでなく、正式に決定したものではなかったと承知をしております。

宮本(徹)委員 そういうことを聞いているんじゃない。さまざまな議論があったんじゃなくて、ここに私は持ってきましたけれども、立川、昭島、福生、武蔵村山、羽村、瑞穂、五市一町、外務大臣岸田さん宛てに、二〇一三年七月三十日、横田基地配備についてというのが出ているわけですよ。これは御存じないんですか。

岸田国務大臣 要請につきましては、私自身が受け取っております。

宮本(徹)委員 受け取っているわけですね。読まれたわけですよね。

岸田国務大臣 当然のことながら、要請書は読んでおります。

宮本(徹)委員 この要請書の中には、「CV22の横田基地への配備検討の撤回を求めるものであり、日本政府におかれましても、米国政府に対し、このことを強く求めるよう要請します。」と書いてありますが、こういう意見、要請書が出ているというのを、この間、アメリカとのやりとり中でアメリカ側には伝えたんですか。

岸田国務大臣 具体的な内容については控えますが、幅広く議論は続けてまいりました。

宮本(徹)委員 別に、詳細なことを明らかにしろと言っているわけじゃないんですよ。これを伝えたのかどうかということなんですよ。それぐらい答えてくださいよ。

岸田国務大臣 アジア太平洋地域の兵力態勢について、幅広く議論を行ってきました。

 具体的に何を伝え、何を議論したか、詳細については控えたいと存じます。

宮本(徹)委員 全く納得できない答弁ですよ。

 これぐらい、伝えたということが言えないということは、伝えなかったということですか、それが答えられないということは。

 結局、読んだけれども地元自治体の要請は握り潰した、こういうことですか。

岸田国務大臣 さまざまな関係者から、さまざまな要請はいただいております。その要請を踏まえて、日米間で幅広く議論を行いました。

宮本(徹)委員 自治体は、日本政府にこういうものを要請すれば当然アメリカ側にもその要請は伝わるだろうと思って、出しているわけですよ。これを伝えないのであれば、一体どこの国の政府なのかということが問われると思います。

 オスプレイは、MV22を沖縄に配備するときも大問題になりました。仮にこのオスプレイ配備が安保条約六条に係る事前協議、藤山・マッカーサー口頭了解の対象に入っていないとしても、これだけ大きな問題なんですから、安保条約上の事前協議とは別の形だとしても、配備の是非について、地方自治体の意見も聞いて、アメリカ側と事前に協議する、こういうことをやるべき課題だったというふうに思わないんですか。

岸田国務大臣 日米間におきましては、兵力態勢につきまして幅広い議論を行ってきました。

 そして、CV22でありますが、我が国を取り巻く安全保障環境が大変な厳しさを増す中にあって、高い機動力と広範な活動範囲を有するCV22を我が国に配備することは、日米同盟の抑止力、対処力を向上させ、そして、アジア太平洋地域の安定に資するものであると考えます。我が国の平和や安定のためにも、これは重要であると認識をしております。

 そして、その中にあって、御指摘のような、地元に懸念が存在するということ、これは承知をしております。

 政府としましては、地元に与える影響力を最小限にとどめるよう、必要な協議を行っていかなければならないと認識をしていますが、このCV22の配備が実際に始まるのは、約二年後、二〇一七年後半の予定と承知をしています。

 ぜひ、米国側にも適切な対応をしっかり求めていきたいと思いますし、あわせて、地元側にも丁寧に説明を行っていきたいと考えます。

宮本(徹)委員 これから丁寧に説明とかそういうことを言っているんじゃなくて、地元は配備の撤回をもともと求めてきたわけですよ、来てくれるなということを。

 先ほど、地元の懸念は承知しているという話でしたけれども、地元の懸念を承知しているんだったら、地元も含めてよく話し合って、アメリカ側とこういうのはどうするのかと事前に話し合うべきじゃないですか。何で地元の頭ごなしにこういうことをやっているんですか。

岸田国務大臣 日米間で、兵力態勢につきましては幅広く議論を行ってきました。そして、五月十一日、正式に米国側から通報がありました。これから、この二年間の期間の中でしっかりと米国側に地元に対する影響を最小限にとどめるよう求めていかなければならないと思いますし、そのために必要な協議をしっかり行いたいと考えています。

宮本(徹)委員 だから、配備するべきかどうかというのこそ、本来地元の意見も聞いて協議しなきゃいけない問題だったんじゃないかということを私は言っているわけですよ。

 結局、安全保障の問題は政府間の話だ、何でも日米同盟優先で、地方自治体の意見なんか聞く耳を持たない。これは、今、沖縄で起きている問題と全く同じじゃありませんか。全くけしからぬ話ですよ。もう本当に、安保体制のもとで感覚が麻痺しているということを言わざるを得ないというふうに思います。

 アメリカから通報を受けて、ただ自治体に伝えていくというのだったら、日本政府というよりもアメリカの政府の一機関ということになるじゃありませんか。安倍さんがこの間アメリカに行って、希望の同盟だということを言っていますけれども、こういうやり方をされたら、基地の周辺の住民は絶望の同盟と言わざるを得ないというふうに思います。

 こういう地元自治体、そして住民を置き去りにしたような対応は絶対に許されないということを強く申し述べておきたいというふうに思います。

 もう一つお伺いしますけれども、オスプレイ配備の接受国通報を受けて、菅官房長官は記者会見で、オスプレイを我が国に配備することは、日米同盟の抑止力、対処力を向上させ、アジア太平洋地域の安定にも資すると述べ、歓迎した、こういう表現で一斉にメディアでも報道されました。

 地方自治体の意見も伝えず、そして配備を歓迎したということは、もしかして、この話し合いの過程で、日本の側から、CV22、日本に配備してくれと言ったんじゃないかと勘ぐらざるを得ないんですけれども、そういう経過はあるんですか。日本の側からアメリカに、CV22、来てくださいと言ったことはありますか。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、日米間の兵力態勢における幅広い議論は行ってきました。その上で、五月十一日、米国側から我が国に対して正式な通報があった次第です。

宮本(徹)委員 それは、日本側から要請したことはないということで確認していいんですか。

岸田国務大臣 幅広い議論の詳細については控えますが、米国側が我が国に対して通報をしてきました。

宮本(徹)委員 結局、アメリカに配備を求められて、嘉手納周辺の自治体も要らない、横田周辺の自治体も要らないというものを、自治体住民よりもアメリカの意向を優先して受け入れていった、そういう対応をとったということじゃありませんか。本当に許しがたいと思います。

 次に、CV22オスプレイの安全性について、この間、調査、確認をどう行ってきたのかという点についてお伺いしたいと思います。

 アメリカの国防総省のプレスリリースを見て驚きましたけれども、こう書いてあります。CV22オスプレイはすぐれた運用面での安全性についての記録を有する非常に高度な航空機であると言っております。

 先日の防衛省からの説明でも、最新のオスプレイの重大事故率、MV22、今、沖縄に配備されているものが十万飛行時間当たり二・一二に対して、CV22は七・二一と三倍以上も事故が多いわけですよね。

 これで果たしてCV22というのが、すぐれた運用面での安全性を有すると言えるんですか。絶対言えないと思いますが、この認識はどうなんですか。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のCV22の件ですが、米国は、全ての信頼性、安全性基準を満たすと判断して、二〇〇七年にCV22の運用を開始しました。

 一方、日本政府としては、MV22の沖縄への配備に際し、二〇一二年に、日本国外で生じたMV22及びCV22の事故の調査結果について独自に分析評価を行うことにより、機体の安全性を確認しております。

 また、同年九月の日米合同委員会合意において、これらの事故を踏まえた十分な再発防止策がとられていることを確認するとともに、地域住民に十分な配慮がされ、最大限の安全対策がとられることを日米間で合意しております。

 以上の点等を総合的に勘案し、日本政府としては、我が国におけるMV22の運用について、その安全性を十分に確認されたものと考えております。

 CV22は、MV22と任務が異なるため、搭載装備に一部異なる部分がある別機種ですが、両方とも機体構造及び基本性能、これはエンジンとか飛行システムの基礎なんですが、これが同一であることから、MV22について確認された機体の安全性はCV22にも該当するものと考えております。

 さらに、米国は、我が国でのCV22の飛行運用に際して、MV22に関する合同委員会合意を含む既存の全ての日米間の合意を遵守する旨を明言しております。

 これらのことから、政府としては、我が国におけるCV22の運用の安全性は、MV22と同様に十分に確保されると思っております。

 それから、先ほど事故率の話がありました。

 この事故率については、そもそも、安全記録の一つの指標にすぎず、これのみをもって安全性を評価することは適切でないと考えています。

 また、米国からは、十万飛行時間に達しない段階で有意な事故率を算出することは困難である旨説明を受けておりますが、この点、二〇一四年九月末時点のMV22の総飛行時間が約十八・九万時間に達している一方、CV22の総飛行時間は四・二万飛行時間にとどまっております。なので、MV22との比較に適したCV22の有意な事故率を算出することは困難でございます。

 その上で、あえて機械的にCV22の事故率を計算すると、先ほどお話ありましたように七・二一になりますが、一般的に、航空機の事故率は飛行時間の増加とともに低減するものでございまして、CV22については、今後とも、この数値は低減していくと考えております。

宮本(徹)委員 でたらめなことばかり言われても困るんですけれども。

 まず、事故率のことをおっしゃいましたけれども、MV22に比べて今でも三倍以上高いわけですね、七・二一。ちなみに、戦闘機でいえば、F15は一・八八、F16は一・九五と、他の米軍機に比べても、この七・二一というのは非常に高い数字なわけですよ。

 四・二万時間しか飛んでいないからと言いますけれども、仮に、これから十万時間まで無事故で飛んだとしたって、もう既に重大事故を三回起こしていますから、三以上になるんですよ。そうしたら、MV22よりもずっと高い数になるじゃないか、事故率は。何を言っているんですか。

 もう一つお伺いしたいのは、これは防衛省の資料です。MV22を導入するときの防衛省の資料。今までCV22について、どう説明してきたか。

 CV22は、特殊作戦という独特の任務所要のため、より過酷な条件下で訓練活動を実施、より過酷な条件下での訓練活動によりMV22より高い事故率を示していると推察と書いているわけですよ。

 機体の安全性がどうのこうのと言いましたけれども、アメリカの文書は、運用面での安全性を確認したと書いてある。

 運用も含めて、この事故率というのは出てくるわけですよ、機体だけじゃなくて。特殊作戦をやっているから事故率が高いと今まで防衛省自身が言ってきたんですよ。この認識は変わったんですか。変わったんだったら、いつ、どういう確認をしてこの認識が変わったのか、答えていただきたいと思います。

鈴木(敦)政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一二年にMV22を沖縄に配備するに際しまして、防衛省は当時、CV22の事故率がMV22の事故率に比較して高いということにつきまして、今御指摘があったように、より過酷な条件下での訓練活動により、MV22よりも高い事故率を示していると推察するとか、飛行時間が浅いことから、事故率に占める各事故の割合は高くなるですとか、今後、飛行実績を積み重ねる中で徐々に飛行事故率は低下していくと推定というような評価をしているということでございます。

 そして、当時は、やはりMV22の沖縄配備ということを中心にこうした安全性というものを検討させていただいたわけですが、今回につきましては、当然、CV22の横田配備ということでございます。その中で、CV22の横田飛行場への配備に際しまして、最新のCV22の事故率について改めて確認、検討しました。

 そうしたところ、過去発生した、御指摘があった三つの重大事故、いわゆるクラスAの飛行事故というものにつきましては、例えば、さまざまな訓練、こういうものが原因で発生したものであるということ。それから、やはり、飛行時間が四・二万飛行時間にとどまっており、十万時間には達成していない中で有意な数値を算出することは困難であることとか、それから、二〇一〇年の九月の段階では、これは一五・五九という事故率でございました。これが現状の七・二一まで着実に低下しておるということから見れば、今後もCV22の総飛行時間が増加すれば事故率は低減する見込みであるということで、改めて評価をしているというものでございます。

宮本(徹)委員 結局、事故率の話しか出てこないわけですよ。今回、事故率以外に何か確認したものがあるんですか、CV22の問題で。事故率の話は、私が言ったとおり、MV22よりも、十万時間これから無事故で飛んだって高いんですよ。事故率以外に何か確認したんですか。

鈴木(敦)政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、CV22につきましては、三件の重大事故ということで、クラスAの飛行事故が生じております。

 一つは、二〇〇九年三月、ニューメキシコで起きました事故でございます。これにつきましては、事故原因というものが出ておる。一つは、訓練飛行中、除氷の装置から脱落したボルトを左エンジンが吸い込み損傷したということで、機体は安全に着陸しているというふうなことで、これは被害総額は百十五万五千ドルというようなものでございます。これは、実は、今の基準にしますと、クラスAの事故には相当しないということでございます。ただ、これにつきましては、対策が、定期的にボルトを確認するように整備手続を修正しているというものでございます。

 それから、二件目の二〇一〇年四月、アフガニスタンで生じました事故につきましては、これは作戦任務中ということでございます。これにつきましては、指揮官の判断でその機体は爆破処理しておりますので、事故原因は不明でございますが、これはいわゆる作戦任務中に起きた事故であるということ。

 それから、二〇一二年六月、フロリダ州で起きました三件目の事故、これにつきましては、まず、非常に人為的なというか、そういうものが原因ということで、いわゆる事故原因は操縦者の機体間の相対的な位置の誤認識ということで、この事故教訓を踏まえた訓練の徹底ですとかマニュアルの見直し等をしております。

 したがいまして、こうした事故は生じておりますが、それについての対策がしっかりとれているということで、安全性は確認されているというふうに認識しております。

宮本(徹)委員 結局、事故率の話以外、何にも出てこないわけですよ。今の話も、二〇一二年に調べたときの話でしょう。MVオスプレイを配備するときに調べたときの話なわけですよ。そのときに、同じ資料で、過酷な任務だから事故率は高いんだと言っているわけですよ。この認識がどう変わったのか、何でこれが変わったのかと聞いているわけですよ。何の説明にもなっていないじゃないですか。

鈴木(敦)政府参考人 二〇一二年に、当時発表させていただきました安全性の確認というものは、やはり、MV22を中心とした、MV22の事故、その中に、二〇一二年にCV22の事故がございました。

 したがいまして、その件につきましても当時御説明をさせていただいたということではありますが、今回は、今私が申し上げた三件は全てCV22にかかわるところの事故調査、事故原因、それからその対策というものでございますので、これはCV22の安全性を確認したという作業でございまして……(宮本(徹)委員「そうじゃなくて、それを出した上での、その説明を」と呼ぶ)

土屋委員長 手を挙げて言ってください。

宮本(徹)委員 何を言っているんだ。その分析結果とあわせて発表したのがこの防衛省の資料でしょう。二〇一二年九月十九日ですよ。そういうCV22の事故原因まで調べた上で、危険な訓練、過酷な訓練をやっているから事故率が高いと言ってきたわけじゃないですか。

 もう質問時間が来ちゃいましたから続きをやらせていただきますけれども、これは納得できないですよ、全く。

 きのう閣議決定で、海外で戦争する国づくりということで、今、安倍政権全体が進もうとしておりますけれども、はっきり言って、このガイドライン、そして横田へのCV22オスプレイ、全体、一体のもので、地球規模で、日米一体で戦争協力体制を進めようとしているもので、絶対許されない。

 横田基地へのオスプレイの配備の撤回を強く求めて、質問を終わります。

土屋委員長 ただいま、岸田外務大臣は、参議院の本会議に出られますのでしばらく中座いたしますが、委員会は続行いたしますので、よろしくお願いいたします。

 次に、秋葉賢也君。

秋葉委員 おはようございます。自由民主党の秋葉賢也です。

 岸田大臣もいなくなりましたけれども、三十分間、穴埋めさせていただきたいと思います。

 まず、質問に入る冒頭、台湾が日本からの食品の輸入規制をさらに一層強化するという大変残念な事態に直面をし、震災から四年がたって、五年目になるわけでありますけれども、これまでカナダやミャンマーなど十三カ国が輸入規制の解除に応じていただいている一方で、いまだに三十カ国を超える国々が、日本からの、被災地の農産品に限らず、輸入規制をしているという現実がございます。

 このゴールデンウイーク中も、外遊いただいた閣僚初め、さまざまな機会に、それぞれの国の要人に対して、輸入規制の解除、あるいは、輸入規制の解除を決めた国におきましても、条件つきで、産地証明あるいは放射能の検査証明、こういうことが要求されているわけでございます。

 ぜひ外務省におかれましても、外務省に限らずですけれども、これは閣議の中でも取り上げていただいているはずでございますが、さまざまな外国の要人との会談の機会には、日本からの食品関係の輸入規制の解除ということについて申し入れを行っていただきたいなというふうに思います。

 特に、産地証明書とか放射線検査証明書は、本当に、はっきり言って、国内では完全に基準値内にその数値がおさめられているわけでありますから、全く問題ないんだということをしっかりと御理解いただく努力をこれからも重ねていただきたい。

 そして、特に台湾との問題では、残念ながら物別れに終わったようでありますけれども、粘り強くこれからも交渉していっていただきたい、そのことを強くまず冒頭お願い申し上げたいと思います。

 また、次に、北方四島のいわゆるビザなし交流について、今年度最初に予定をされておりました十五日からのものが中止になったというふうに伺っております。ロシアの外務省から、まだ関係機関の調整が完了していないということの理由で、十五日から二十二日までの期間、中止の通達が来たということでございます。

 御案内のとおり、このビザなし交流は、かつてゴルバチョフ大統領が訪日の折に提案をいただいて、そして平成四年から始まってきた事業でございます。日本側からの訪問は、昨年度までで三百十三回、延べにすると一万二千二十三人が訪問をさせていただいているわけでございまして、私も、昨年、国後に訪問させていただいたところでございます。

 日ロ間の相互交流、そしてまた島民を交えたさまざまな成果を生んできた事業がこういった形になってしまいまして、今年度の第一回目がこういう形になって残念に思っておりますけれども、今回のこの状況を外務省としてはどのように受けとめて、そして、今年度は、さらにこれから五回以上予定もあるわけでありますが、ことし予定をされているビザなし交流の日程に影響がないのかどうか、冒頭伺っておきたいと思います。

中山副大臣 先生から御指摘のとおり、ちょうど五月十三日の夕刻、ロシア側から、五月十五日から十八日までの四島交流、また五月十九日から二十二日までの自由訪問につきまして、ロシア側内部の調整が完了しておらない、実施できないという旨の連絡を受けました。これを受けまして、内閣府及び実施団体と調整をいたしました結果、これら二つの事業を中止せざるを得ないという結論に至りました。

 我が方といたしましては、これまで鋭意実施に向け調整をしておりましたところ、ロシア側の内部事情によりましてこれら事業を中止せざるを得なくなった状況に関しては、非常に残念であるというふうに考えてございます。また同時に、我が方といたしましては、五月下旬以降の四島交流事業が予定どおり実施できますよう、鋭意調整を行っていきたい、先生の御懸念を払拭できるように私どもの方も尽力してまいりたい、そのように考えてございます。

秋葉委員 今、副大臣から内部事情というお話があったんですが、もし差し支えなければ、どんな理由でこういう事態に至ったのかお示しいただければと思いますし、その理由によっては、五月以降のことし予定をされていたものが、しっかりと、これからは調整が可能になって、実現できる見通しが強いのかどうかということも含めて、どんなロシア側の事情だったのか、お聞かせをいただきたいと思います。

中山副大臣 御指摘の点に関しましては、ロシア側の方からは、内部手続が完了しておらないという以上の説明は得られてはおりません。また同時に、後段の部分で先生御指摘になられました、今後のいわゆる四島交流を含めたさまざまな事業につきましても、先ほど来御答弁申し上げていますように、鋭意努力をしてまいりたい、そのように考えてございます。

秋葉委員 わかりました。これ以上申し上げることはございませんけれども、いずれにいたしましても、安倍総理とプーチン大統領の個人的な信頼関係というのは大変強いものがあろうかと思いますし、日ロの首脳会談の際には、二島返還論のような話もプーチン大統領から持ち出されている、そういう状況もございます。

 もちろん、ロシアの国内事情を考えれば、ウクライナの問題を初め、いろいろ我が国のロシアに対するスタンスのとり方、難しい問題もあろうかと思いますけれども、これからの日ロ関係の進展を考えたときには、やはり日本にとってこの北方四島の帰属の問題というのは重要な問題でございまして、これを将来しっかりと解決して平和条約を結ぶためにも、このビザなし交流というのは大変大きな意義があるわけでございますから、ことし予定されていたものの今後が中止されることのないように、外務省としても、これから綿密な連携をしていただきたいということを強くお願いしておきたいと思います。

 次に、先般、四月二十五日に発生をいたしましたネパールでの地震についてお伺いしたいと思います。

 死者が八千二百五十名を超えており、全壊の家屋も約三十万棟ということで、大変甚大な被害になったわけでありまして、犠牲になられた皆様方に改めて哀悼の誠をささげたいと存じます。

 日本政府の支援の状況を見ておりますと、四月二十六日には救助チームが派遣をされ、女性の御遺体を発見されたり、あるいは、医療チームも、二十八日に出発をし、九百名近い診療を実施するなど、一定の成果を上げていただいておりますことを高く評価したいと思いますけれども、しかし一方で、今回、その迅速性ということについては、多少、今後の対応の改善ということが必要だった面があるんじゃないかなというふうに思っております。

 東日本大震災に限らず、大きな災害が起こったときには、七十二時間ということがよく言われます。人命救助のタイムリミットがいわゆる三日間だと。ですから、災害が発生をして三日以内に駆けつけて救助を行うということに希望が見えてくるということで、特に、救助チームにおかれましては、医療チーム以上にそうした迅速性が大変重要になってまいります。

 しかし、今回、カトマンズの空港が中継基地の中心になったわけでありますが、滑走路や駐機場の数がやはり限られている等々の事情でなかなかスムーズな着陸ができなくて、日本からの飛行機も一旦バンコクを経由するなど手間暇がかかってしまったわけであります。これは、さまざまな他国との調整、あるいはそうした物理的な限界ということもございますから、これをもってけしからぬということを申し上げるのではないんですけれども、やはり七十二時間という時間軸を大事にしながら、機敏な対応、機動性の高い対応ができるように、これからしっかりと対応していただきたいと思うわけでございます。

 まず一つ目は、そういうことで、迅速性ということについてどういうような認識を外務省として持っているのかということ。

 そして、二つ目に、今回のこの震災に対して、日本政府も、合計いたしますと一千四百万ドル、円に換算しますと約十六・八億円を拠出いただいているわけであります。これは、もちろん国民の税金でありますから、大変な額を拠出いただいておりまして、これも評価できるものだと思いますけれども、その一方で、この金額の水準というものが妥当なものなのかどうかということについて、また別の評価をしていくことも大事じゃないかなというふうに思っております。

 と申しますのは、他国の状況を見ておりますと、英国が二千三百万ポンド、日本円にして四十二・五億円。二番目に多いのが米国の二千六百万ドルで約三十一億円。EUとして約三十億円。四番目に多いのがノルウェーなんですね、十九・五億円。五番目がオーストラリアの十八・八億円ということになっております。

 ネパールは、アジアの重要な、主要メンバーで、まさにアジアの中の一員でありまして、日本も、五三年以来、ミャンマーへのODA支援を皮切りに、アジア地域では本当に断トツの貢献をこれまで積み上げてきたわけであります。

 そうしたアジア圏域の大国でもある日本が、世界の中で見ますと拠出額が第六位に甘んじているというのはいかがなものかと。日本という国のプレゼンスを考えたときに、残念ながら、この金額は必ずしも妥当な金額とは言えないんじゃないか、そういう認識を持たざるを得ないわけであります。

 あわせまして、救助ということの機動性なり迅速性というものがどうであったのかということ、そして、今回、ネパールに対して拠出した十六億円という金額が、他の国と比べて、そして日本のアジアにおけるプレゼンスということを考えたときに妥当なものであったのかどうかというこの二点について、外務省の見解を伺っておきたいと思います。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 二つ御質問をいただきましたけれども、まず一点目で、今回、緊急援助隊の、特に救助チームが現地に入るまでに時間がかかったんじゃないかという御指摘をいただきました。

 我が国の国際緊急援助隊救助チームは、委員の方からもお話があったように、四月の二十六日に日本を出発しまして、まずチャーター機でバンコクに入りました。その後、翌日の二十七日に、バンコクから商用機でカトマンズ入りを試みたんですけれども、その商用機がカトマンズ空港の、先ほど委員の方から御指摘のありましたようないろいろな理由で混雑していて、着陸許可が得られないということになりまして、最終的にこの救助チームのカトマンズ到着というのは二十八日になってしまったということです。

 これは、カトマンズ空港が地震の影響を受けて、管制を含めた人員体制に不十分な点があったということによるもののようでして、日本よりも到着がおくれてしまった各国の支援チームというものも複数存在したというふうに聞いております。

 この間、政府としましては、ネパール政府に、救助チームの乗った商用機が少しでも早く着陸許可がとれるように、少しでも早くこの救助チームが迅速にカトマンズ入りできるように、最大限働きかけを行ってきたということがあります。

 ただし、先ほど委員の方から御指摘がありましたように、救助チームはとにかく迅速に入ることが何よりも大事だということもありますし、今後、同じような災害についての支援ということが必要になってくることもありますので、今回の経験をいい教訓にして、迅速な対応がとれるようにということに努めていきたいというふうに考えております。

 それから、もう一つ、日本が決定した緊急無償資金協力の千四百万ドル、約十六億八千万円の額が適当な額であるかどうかという御指摘をいただきました。

 この緊急無償資金協力による支援というのは、国際機関を通じて行うことを決めております。実際には、食料とか医療とかシェルター、保健、水・衛生など、人道上緊急に必要な分野への支援を、緊急医療チームが活動しているシンドゥパルチョーク郡という、被害が甚大であった地域において実施するということを考えております。

 現在、できるだけ早く実施できるように、ネパール政府あるいは関係の国際機関と調整を行っているところですけれども、この額がこれで十分かどうかというところについては議論があるということは承知していますけれども、アジアの仲間に対する協力ということもありますので、今回の緊急人道支援のみならず、今後の復旧復興の段階に至るまで、切れ目のない効果的な支援を、さすが日本だと言われるように、可能な限り行っていきたいというふうに考えております。

秋葉委員 今、可能な限り行っていきたいという力強い言葉をいただきましたので、きょうはちょっと大臣も今いらっしゃいませんけれども、やはり、アジアの中で日本のプレゼンスということを考えたときに、拠出額が六位に甘んじているというのでは、残念ながら説得力がないなというふうに思わざるを得ません。今後のネパールでの復旧復興の過程の中で、状況を見ながら、必要に応じて追加の対応もぜひ検討していっていただきたいものだというふうに思っております。さすが、やはり日本だと言われるような対応。

 また、もちろん、その一方で、その原資となりますのは国民の皆さんからお預かりをしている税金でありますから、国民の皆さんから見ても、これは必要な負担だなということを御理解いただく努力も、同時に忘れてはならないというふうに思っております。ぜひ、これからのネパールでの復旧の状況をしっかりとにらみながら、誠意ある対応を求めておきたいと思います。

 また、次に、この間、ゴールデンウイークを挟んで、さまざまな外交日程がメジロ押しだったわけでございます。連休前には、十年ぶりのアジア・アフリカ会議、いわゆるバンドン会議が開催をされました。安倍総理のメッセージも、ともに平和と繁栄を築くというすばらしいメッセージを発することができたのではないかなというふうに思っております。

 日本は、TICADを早い時期に開催するなど、アフリカ地域に対しても早い時期から取り組みをしてまいりましたけれども、今回の安倍総理の演説の中で、後半の方、「最もダイナミックで、最も成長の息吹にあふれる大地。それこそが、アジアであり、アフリカであります。 アジア・アフリカはもはや、日本にとって「援助」の対象ではありません。「成長のパートナー」であります。」そして、「来年のTICADは、初めて、」横浜ではなくて「躍動感あふれるアフリカの大地で開催する予定です。人材の育成も、インフラの整備も、すべては、未来への「投資」であります。」という大変すばらしいメッセージを発していただいたなというふうに思います。

 また、この会議を利用して、エジプトやヨルダン、インドネシア、バングラデシュ、中国、まあ中国とは二回目の首脳会談になりますね、イランを初め、六カ国以上の首脳と会談ができたというのも大変大きな成果であったろうというふうに評価をしておりますけれども、外務省としてどのように総括をしているのか、時間が余りありませんから、簡単に評価をお聞かせください。

中山副大臣 今回の会議におきましては、世界の成長センターとして発展を続けるアジアと躍動する大陸アフリカの各国首脳が一堂に会する十年ぶりの会合であったというふうに考えております。アジア、アフリカ地域の首脳とともに、世界の平和と繁栄を推進するための協力のあり方について、しっかりと充実した議論を行いました。

 安倍総理からは、我が国のこれまでのアジア・アフリカ協力の実績、今後の取り組みについて訴えつつ、六十年前のバンドンの精神を想起しつつ、アジア、アフリカの国々が、ともに生き、ともに立ち向かい、ともに豊かとなる、そのために、アジア、アフリカが結束すること、日本は、六十年前にバンドンで確認された原則を、さきの大戦の深い反省の上に、いかなるときでも守り抜く国であろうと誓ったこと、そして、ともに豊かになるため、アジア、アフリカの成長を牽引する人材育成、今後五年で三十五万人の人材育成支援を行うことを表明し、各国の賛同を得たと考えてございます。

 この会議で、アジア、アフリカと協力しながら国際社会に貢献する日本の姿勢をアピールする上で非常に有意義であったというふうに思いますし、御指摘のとおり、バイの会談におきましても、エジプト、ヨルダン、インドネシア、バングラデシュ、中国、イラン、六カ国と有意義な二国間の会談を行えた、そのように考えてございます。

秋葉委員 大変充実した会議であったと思いますし、日本の思いというものもしっかり伝わったのではないかと思いますが、これからも、こうした国際会議の中では、日本のメッセージというものがしっかりと伝わるということだけではなくて、可能な限りバイの会談も実施をしながら、二国間協力、二国間の信頼関係というのを醸成していくということに努めていただきたいと思います。

 また、ゴールデンウイークは、安倍総理も、すぐ米国の訪問ということがございました。本当に今回の米国の訪問というのは、これも大変大きな成果があったのではないかなというふうに思っております。

 振り返ってみますと、日本の総理が長期間米国に滞在するというのは、調べてみますと、過去二十年間を見てみますと、一九九九年の小渕総理のとき以来と言ってもいいんですね、一週間ぐらいいるというのは。野田総理のときにも二日間ホノルルの滞在、その前の鳩山総理のときがやはり二日間、G20のサミットでピッツバーグ二日間。そういう意味では、小泉総理が二〇〇六年、九年前になりますけれども、これが三日間で、ワシントンDCに加えてメンフィスにも行ったということがございました。

 やはり、どうしても国会の日程等もこれありで、首脳外交、特に米国との関係というのは中でも重要なわけでありますけれども、常に短期間であることが多い中で、今回は、ワシントンDCに加えて、ボストン、そしてロサンゼルス、サンフランシスコということで、米国にとっても主要都市である、また、ギャラップ調査などでも、米国人にとっても人気の都市をほとんどカバーしていただき、それぞれでさまざまな成果を上げていただいたということ、大変高く私は評価をさせていただきたいというふうに思います。

 特に、二つのハイライトがあったんだろうと思います。

 一つは、やはりオバマ大統領との首脳会談。これも近年になく約二時間に及ぶ長い会談で、発言の比率を見ておりますと、六、四で安倍総理の方が押している感じがいたします。そして、オバマ大統領みずから安倍総理をリンカーン・メモリアルにお連れいただく、あるいは、公式晩さん会では総理の地元の地酒を振る舞っていただくなど、まさに、安倍総理とオバマ大統領の個人的な信頼感、また、きずなというのもこれでかなり深化したのじゃないかなというふうに思っております。

 戦後七十年の節目に当たって、まさに、いかに日米同盟というものがアジア太平洋地域のみならず世界の平和と安定に貢献してきたかについて十分確認をされ、今後もともに連携しながら、自由や民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値観の上に立ってさらに連携を強化していくということが確認されたというのは、大変重要な意味がございます。

 また、もう一つのハイライトは、日本の総理大臣として初めて上下両院合同会議での演説が実施をされたということでございます。

 これも、私も全文、もう演説後すぐに読ませていただきました。「希望の同盟へ」と題したこの演説、もう十数回を超えるスタンディングオベーションがあった、あるいは、議長も涙ながらに聞き入っていただいたということ、本当に、安倍総理の力強い演説、そしてまた、もちろん内容そのものが米国の政治家の心を捉えた。そして、翌日に報道された各紙の米国内のメディアの報道ぶりを見ても、おおむね好意的な高い評価が多かったというふうに思います。

 これを契機に、さらに、国内では安保法制の議論もいよいよ始まります。やはり、世界の平和と安定のためには日米同盟の連携の強化というものが最も重要な課題になってくるわけでありまして、今回の訪米を契機としてさらに強化をしていかなければなりませんけれども、外務省として、今回のこの安倍総理の訪米というものを、さまざまなポイントがあろうかと思いますけれども、どのように評価をされているのか、ちょっと時間もございませんので、端的にお答えをいただきたいと思います。

中山副大臣 ありがとうございます。

 今回の総理の訪米、これは、戦後七十年の節目にふさわしい、非常に有意義な訪問になったと感じております。

 中でも、日米首脳会談、安全保障やTPPといった二国間の課題の進展を確認するとともに、地域情勢やグローバル課題、こういったものへの対応でも引き続き緊密に連携していくことを確認し合えたというふうに思います。

 同時に、先生御指摘のとおり、安倍総理は、日本の総理として史上初めて、米連邦議会上下両院合同会議で演説を行わせていただきました。演説におきましては、かつて戦火を交えた日米が強固な同盟国となり、ともに地域と世界の平和と繁栄に貢献してきたことを振り返らせていただき、また、人類が直面する課題に対して、日米が手を携えて希望の同盟として貢献していくという力強いメッセージを伝えることができ、大変有意義であった。総理の名前を拝借して恐縮ですが、まさに安心の安に倍と書いていますから、安心の倍返しというぐらい倍増させていけるんじゃないかと思っております。

秋葉委員 時間もございませんけれども、最後に、岸田外務大臣が、初めて日本の外務大臣としてキューバを訪問していただきました。また、その際には日本企業者も多数同行いただいたわけでありますけれども、その際に本格的な無償資金協力の開始を伝達いただいたわけでございます。

 去年、議連の皆さんにもキューバを訪問いただいたということでございますが、このキューバ、私の地元仙台藩にとっても大変ゆかりがございまして、四百年前に伊達政宗が支倉常長を通商の実施を願って派遣した地でありまして、毎年さまざまな交流もさせてきていただいているところでございます。

 やはり、キューバという国を考えますと、北朝鮮との交流が非常に密接にあるということもございます。

 そこで、二つ、時間も限られておりますので、端的にお伺いをしたいと思います。

 一つは、今回の岸田外相の訪問時に約束をした無償資金協力、医療分野を中心に検討していきたいということは伺っておりますけれども、どういった分野を対象にこれから実施をするということを考えているのかということが一点。

 そしてもう一つ、せっかく今回、外相の訪問を、こうした機に、北朝鮮とのやはり拉致問題の解決の協力ということを具体的に要請していくべきだと思っておりますが、今回の会談では大臣からそうした具体的な要請をしたのかどうか、そして、これからどうこれを要請しフォローアップしていくのかということ、この二つを端的に答えていただきたいと思います。

中山副大臣 ありがとうございます。

 外務大臣として初めてキューバを訪問し、ロドリゲス外相、ラウル・カストロ国家評議会議長、フィデル・カストロ前議長と会談したほか、国際経済関係を担当するカブリサス閣僚評議会副議長とも会談を行わせていただきました。

 先生御指摘の、昨年末以来のキューバをめぐる国際情勢の変化、昨年の日・キューバ交流四百年、こういったものを通じまして、両国の関係の発展を総合的に勘案し、本格的な無償資金協力の開始を表明した次第です。

 具体的には、キューバ政府からの要請を踏まえまして、我が国の援助方針等にも照らし、医療機材整備案件、これを本格的な無償資金協力の第一号候補として検討することといたしました。今後、医療機材整備案件の実現に向けました調査を本年秋ごろに開始し、その結果を踏まえて、案件の詳細について検討を行っていく予定といたしております。

 また同時に、拉致問題に関しましては、これまでも日・キューバ政策対話等におきまして取り上げております。五月二日に行われた日・キューバ外相会談におきましても、問題解決に向けた理解と協力を要請いたしましたところ、ロドリゲス外相は、拉致問題については、これが日本にとって機微で重要な問題であることは十分理解している、対話によって拉致問題が解決することを望む、キューバができることがあればやっていきたいという旨、御答弁を賜っております。

 今般、キューバ政府とは、国際場裏における協力強化のため、新たに日・キューバ国連対話を立ち上げることで合意をしております。こうした場を含めて、あらゆる対話を通じて、拉致問題を初めとする諸課題について議論を深めてまいりたい、このように考えております。

秋葉委員 時間が参りました。終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

土屋委員長 それでは、速記を起こしてください。

 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党と山本太郎となかまたち、玉城デニーです。

 きょうは、安倍総理の米国議会での演説に関する内容から質問をさせていただきたいと思いますが、先ほど各委員から、この総理の米国上下両院合同会議における演説について、非常にさまざまな、評価と申しますか意見が述べられていることと思います。

 私も、実は、その演説をテレビを通して聞き、さらに、その演説の全文をダウンロードして、もう一度、さまざまな、コンテクストといいますか文脈でどのようなことが語られているのかということを拝見させていただきました。私が率直に思うのは、非常に饒舌な内容でありながら、しかし、さまざまな問題が露見された演説ではなかったかなというふうに思うわけです。

 例えば、第二次大戦のメモリアルを訪れた場面を語っているシーンがありますが、「幸福な人生を送っただろうアメリカの若者の、痛み、悲しみが宿っている。家族への愛も。」というふうなくだり、あるいは、「私はアメリカの若者の、失われた夢、未来を思いました。 歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。」というくだり、「先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼を捧げます。とこしえの、哀悼を捧げます。」というくだりは、非常に胸に迫るものがあるなということを感じます。

 そして、「アメリカと戦後日本」については、さきの大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻んだ。みずからの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目を背けてはならない。これらの点についての思いは、歴代総理と全く変わるものではない。アジアの発展にどこまでも寄与し、地域の平和と、繁栄のため、力を惜しんではならない。

 このように、この部分部分を取り上げて見てみますと、非常に、今、我が国がアジアのリーダーとしてしっかりと役割を果たしていくということが総理の考えの中にもおありなのかなというふうにも思います。

 しかし、その一方で、その次のくだりはTPPです。「自由、民主主義、法の支配、私たちが奉じる共通の価値を、世界に広め、根づかせていく」「その営為こそが、TPPにほかなりません。」「単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意義」「TPPを一緒に成し遂げましょう。」という、さもTPPはもう成立したんだという宣言に等しい論調があるわけですね。

 しかし、まだTPPは結論が出ていないはずです。しかも、与党自民党は、さきの選挙でも、TPP参加表明は反対というポスターを出し、公約を守るということを宣言していらっしゃいました。そのことを考えると、与党の中からこの問題に対して果たしてどのような意見が出ているのかということについては、私はそのことを改めて問いかけてみたいという思いもあります。

 そして、その次は、農業協同組合の仕組みを抜本的に改めるということです。「ただ前だけを見て構造改革を進める。この道のほか、道なし。」

 これも、農協改革を国会に提出する前に、もう演説で述べていらっしゃる。そのことについても、疑義はないのだろうかということです。

 さらに、私が、ここからは質問させていただきたいと思いますが、「日本は豪州、インドと、戦略的な関係を深めました。ASEANの国々や韓国と、多面にわたる協力を深めていきます。 日米同盟を基軸とし、これらの仲間が加わると、私たちの地域は格段に安定します。」そして、戦略的拠点の一つとして期待されるグアム基地整備事業に二十八億ドルまで資金協力を実施すると述べた後で、「アジアの海について、」というくだりがあります。

 「私がいう三つの原則をここで強調させてください。」とおっしゃっています。「第一に、国家が何か主張をするときは、国際法にもとづいてなすこと。第二に、武力や威嚇は、自己の主張のため用いないこと。そして第三に、紛争の解決は、あくまで平和的手段によること。」と言っています。

 このアジアの海、総理がおっしゃる三つの原則は、まるで相手があってその相手に対して述べられているかのような印象を受けますが、この三つの原則についての見解をまず伺いたいと思います。

中山副大臣 まず、その前に、委員長初め玉城先生そしてまた各委員に、この委員会の運営に関して、大臣が冒頭出席できないということで御配慮賜ったことに、心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 総理が議会での演説におきまして言及をした海における法の支配の三原則、これは太平洋からインド洋にかけましての広い海を念頭に置きつつ申し述べさせていただいたものという解釈、理解でございます。特定の海域や国、そういったものを意図したものではございません。

 海洋国家である我が国は、法の支配に基づきます、開かれた、安定した海洋の維持発展に向けまして、引き続き主導的な役割を果たしていきたい、そのように考えてございます。

玉城委員 その次のくだりでは、そのためにこそ、日米同盟を強くしなくてはならないというふうに述べられています。「安保法制の充実に取り組んでいます。実現のあかつき、日本は、危機の程度に応じ、切れ目のない対応が、はるかによくできるようになります。 この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟は、より一層堅固になります。それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらす」「戦後、初めての大改革です。この夏までに、成就させます。」とおっしゃっています。

 先ほどの答弁を聞いていますと、非常にアジア全体の、インド洋から太平洋にかけての平和に寄与するのであるというふうなことの三つの原則だということが答弁でおっしゃられたわけですが、しかし、この夏までに安保法制を大改革するということを、これもまた、昨日の閣議決定の前に、アメリカで述べていらっしゃるわけですよね。

 この安保法制の成就について、ここまで言い切るということ、確かな抑止力をもたらす、抑止力は、その抑止力の強さに応じて相手に対して不信、不安をあおるということも、その側面もあると思います。しかし、夏までに成就させると言い切ってしまっている、そのことの説明について伺いたいと思います。

中山副大臣 安倍総理は、平和安全法制につきまして、今国会における成立を図る旨、国会等においてこれまでも繰り返し申し述べさせていただいておるところであります。

 先般の米国議会上下両院合同会議におきます演説の御指摘の部分に関しましても、安倍総理は、改めてその決意を申し述べさせていただいたという認識であります。

 また、さきの総選挙におきましては、昨年の七月一日の閣議決定に基づきまして、平和安全法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げさせていただき、国民の皆様方の審判を受けたところであります。

 国会審議に当たっては、多くの国民の皆様にその趣旨を御理解いただき、幅広い御支援が得られますように、わかりやすく丁寧な御説明を心がけさせていただきたい、そしてまた、誠意を持って今国会での法案成立に向けまして努力をしてまいりたい、そのように考えております。

玉城委員 選挙の公約で述べられたこと、それを真摯に実行していきたい、そのことであれば、私は、さきの選挙で辺野古移設反対を訴え、民意を得て当選させていただきました。ですから、沖縄では、今、知事の選挙公約について政府がどのように真摯に対応していただくのかということ、我々がさきの衆議院選挙で公約に掲げたことに対してどのようにそれを酌み上げようと努力をしていらっしゃるのかということも、あわせて、私は、選挙の上での公約でその約束を果たしていくというコンテクストにおいてでありましたら、私からもそのような意見を述べさせていただきたいなというふうに今思った次第でございます。

 さて、もう一つ質問させていただきます。

 ちょっと速記をとめていただいていいですか。

土屋委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

土屋委員長 速記を起こしてください。

 続けさせていただきます。今大臣がお戻りになりましたので。

 玉城デニー君。

玉城委員 ありがとうございます。大臣、どうぞ息を整えられてください。

 さて、安倍総理の米国議会演説の内容について、あと一点質問させてください。

 この演説の締めくくりは、米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはならないというコメントです。米国国民を代表する皆さんに対して、「私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。」ということでおっしゃっていますが、実は、その前の「日本が掲げる新しい旗」というコンテクスト、文脈では、「テロリズム、感染症、自然災害や、気候変動。日米同盟は、これら新たな問題に対し、ともに立ち向かう時代を迎えました。」と言っています。

 立ち向かう対象にテロリズムということを挙げ、そして米国とともにどこまでも突き進んでいく、それが果たして希望だというふうに海外の国民や各国からは映るのでありましょうか。そのことが、この演説の締めくくりに、希望の同盟という、非常に、その一言で締めくくろうとすることに関しては、私は、最後に、ううん、それなのかなという思いがいたします。

 その気持ちは、委員の皆様それぞれお持ちだと思いますが、私は、戦後二十七年間、米国の施政権下で生活を送った者にとって、その施政権下の中での生活がどうであったかという沖縄の現状を考えると、決して希望だけではなかったということを申し述べたいと思うんですね。昔も、今も、将来も、希望でなくてはならないというその意見には賛意を持ちますものの、果たしてそれが希望のみであったのかということに対しては、非常に大きな疑問を持たざるを得ません。

 この希望の同盟について、日本の姿はどのように映るのかということを改めてお伺いしたいと思います。

中山副大臣 かつて戦火を交えました日米両国、戦後、和解を果たして、今現在、強固な同盟国となっております。まさに、ことしは戦後七十年目の節目であり、それに、ともにアジア太平洋地域や世界の平和と安定に貢献をしてまいった。安倍総理の議会演説では、こうした日米の歩みを振り返るということとともに、今後も、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的な価値観の上に立ちまして、両国が手を携えて地域や世界への貢献を続けていくとの強い意思を表明させていただいたということだと考えております。

 希望の同盟という言葉に関しましては、総理のそのような強い決意をあらわしているもの、そのように考えております。

玉城委員 では、次に、日米安全保障協議委員会の共同発表について、大臣も戻られておりますので、お伺いしたいと思います。

 四月二十七日、当然ですが、岸田外務大臣も参加されて2プラス2が行われ、その共同発表が行われています。

 まず、大臣にお伺いいたします。この2プラス2共同発表の意義についてを伺えればと思います。

岸田国務大臣 今次2プラス2ですが、戦後七十年を迎える本年、安倍総理の訪米と相まって、未来に向けた日米同盟の力強い決意を内外に示すものとなりました。

 2プラス2会合後に発出した共同発表におきましても、日米を取り巻く安全保障環境を踏まえ、新ガイドラインの公表を初めとする安保・防衛協力や在日米軍再編に係る取り組みを日米で一層強化し、日米同盟の抑止力、対処力を高めていく、こういった点で一致をしております。

 具体的には、日米四閣僚として新ガイドラインを了承し、公表いたしました。この新ガイドラインは、近年の日米の連携の強まりと協力の広がりを反映しております。新ガイドラインのもとで今後取り組みを進めつつ、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化し、日本のみならず地域の平和と安全を一層確かなものにしていく考えです。

 そして、もう一つですが、一層激しさを増すアジア太平洋地域の安全保障環境も踏まえ、我が国の安全や国際の平和と安全の維持に対する同盟としての決意を再確認した上で、幅広い二国間の安保・防衛協力の推進や在日米軍再編等について引き続き緊密に連携していく、こういった点を確認いたしました。

 こうした点において一致をいたしましたが、ぜひ、この成果を踏まえて、日米間の協力をさらに進めていきたいと考えております。

玉城委員 この2プラス2の共同発表の中では、さまざまなといいますか、いろいろな場所に、「日本が国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の政策を継続する中で、米国は、日本の最近の重要な成果を歓迎し、支持する。」と、歓迎し、支持するというコメントで文末がくくられているところが幾つかあるんですね。

 歓迎し、支持をするというふうなことは、あくまでも日本側から提案、提起をし、アメリカ側がその協議を歓迎し、あわせて、日本のその考えは支持をするということなんですが、例えば、「二〇一四年七月の閣議決定を反映する当該法制を整備するために現在行われている取組を歓迎し、支持する。」ということですが、この安保政策は歴史的転換であるという、けさの新聞各紙の見出しにも、戦後の大転換であるということが見出しで躍っているわけですね、語られているわけです。そういうことを歓迎し、支持するという米国のその姿勢は、その発言は、米国側からすると当然かもしれません。

 しかし、その一方で、この歓迎と支持されるということについて、まだこれから議論していこうという日本の、我々の、本邦の姿勢として、果たしてそれは国民に今支持されているのかどうかということをどのように説明されるのかということを伺いたいと思います。

岸田国務大臣 今回の2プラス2におきまして、我が国が取り組んでおります、国際協調主義に基づく積極的平和主義の理念のもとに、地域や世界の平和と安定、あるいは繁栄に積極的に貢献していく、こうした我が国の取り組みに対して歓迎と支持が示されたことは、意義あることであると思っております。

 そして、今御指摘の点について、支持、歓迎が行われたということについてどのように考えるかということですが、いずれにしましても、今回の2プラス2において了承いたしました新ガイドラインの中においても明記されていることですが、こうした日米の取り組みは、それぞれの憲法、そしてその時々において適用されている法令に従うということは当然のことであります。これは明記されているところであります。

 安全保障法制につきましては、これから丁寧に国会において議論を行っていかなければなりません。しかし、いずれにしましても、その議論につきましては国会の議論に委ねなければならないわけですが、こうした日米の取り組みについてはそうした法令の審議にしっかり従うということについては、日米両国にとりまして共通の認識になっていると考えております。

玉城委員 大臣に御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 私がこの歓迎と支持ということの確認をさせていただいたのは、先ほどの、総理の米国議会での演説の件で話をさせていただいたんですが、つまり、国会に提出、提案をする、そして国会の審議を進めていく、その以前に、既に、ある種一つの流れがもうでき上がっているかのようなその文脈の中で、歓迎され、支持されているということは、国民からすると、それはまだこれから議論をすることではないかというふうなことなんですね。つまり、順序が逆ではないかということです。

 つまり、ガイドラインを決めて、安保法制を国会に付して、それから国民に説明をするということではなく、まず、国民に我が国の日米同盟の姿というものを説明し、そして、さまざまな法制議論を経て、もしそれが成立するのであれば、それに従ってガイドラインを日米で協議するということではないかというのが私の認識なんですね。

 そのことについて、先に歓迎と支持を表明されるということは、果たして、国民からすると、まだそういう段階ではないのではないかという疑問も生じているのではないかというふうに思った次第であります。

 このことについては、また後日、改めて委員会で質問させていただければと思います。

 最後に、もう時間が来てしまいましたので、一点。

 キャンプ・シュワブのゲート前では、連日、市民が平和的に新基地建設反対の抗議行動を行っています。しかし、先日、海上保安官が、車に立ちはだかった市民の体を押さえ込む、そういうニュースが実は流れております。きょうは、特に資料は配付させていただいておりません。

 ところが、私が海上保安庁法を、その法律をくまなく見てみたんですが、どこにも、海上保安官が陸上でこのような、特に平時における警察行動を行使するということは書かれていないわけですね。読み込めないわけです。

 しかし、明らかに、これは動画の中の一場面を写真として捉えられたものではあるんですが、こういうふうな海上保安官の行き過ぎた行為は、例えば、ボートの転覆でありますとか、あるいはさまざまな海上における過剰な対処行動が非常に問題になっております。そのことについて、多くの県民が不満と不安を抱いております。

 この陸上における海上保安官の行動、今後の対応についてどのようになさるものなのか、伺いたいと思います。

秋本政府参考人 お尋ねの件につきましては、五月五日の午前でございますが、海上保安庁の車両複数台がキャンプ・シュワブのゲートを通過しようとする際、複数の抗議者が車両の前に寝転ぶ等の行為を行ったため、通行ができなくなる事案が発生いたしました。

 さらに、付近公道の交通が妨げられ、また行為そのものも危険であったことから、安全確保のための緊急的な対応として、抗議者を安全な道路脇に移動させたものでございます。

 この際、抗議者が激しく暴れるほか、再び車両の前に飛び出そうとする等危険な状況であったことから、当該行為を制止しております。

 以上でございます。

玉城委員 予測される行動をとめるために対処するということは、あくまでも冷静を保って対処するということが常であると思います。現場の状況によっては確かにその現場判断があるかと思いますけれども、この一連の動画の流れを見ると、明らかに、道路上で足を固めているという場面が見られます。移動させるのに足を固めているということを、別の保安官がそれを解除している、つまり、やり過ぎだという怒号の中で、その行為が双方から非常に危ない状態であるというふうに言われているわけですね。

 ですから、どのような場合にあっても、極めて冷静に、そして安全に対処するということを重ねてお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

土屋委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 維新の党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、四十分の時間をいただきました。ありがとうございます。

 質問に移ります前に、十三日の外務委員会が流会いたしました。これは大変残念なことだと思います。安倍内閣はこれまで国会の軽視というのがたびたび指摘されておりますが、今後、この外務委員会でも国会対応をぜひしっかりやっていただきたいなということを、まずはこの点を指摘しておきたいと思います。

 それでは、質問、議論に移ってまいりたいと思います。

 昨日、安保法制の関連法が閣議決定されまして、総理も記者会見されました。本件については、また別の機会に、ぜひ質問の機会をとりたいと思いますが、後ほど、ガイドラインについて伺いたいと思います。

 その前に、本日はまず、先般、きょうも議論がありましたけれども、訪米の成果と課題について伺ってまいりたいと思います。

 安倍総理、岸田大臣初め閣僚や関係者の皆様が四月末から訪米されました。この訪米についての報道ぶり、二年前あるいは昨年の日米首脳会談のときの報道ぶりから比べると、明らかに成果が強調されていると思います。正直、私も、野党の立場ではありますけれども、この訪米自体、大変大きな成功だったと思いますし、大きな成果があったと思います。安倍総理の言葉をかりれば、両国関係はかつてないほど強固になり、同盟は力強く復活したということを述べられておりますが、こうした成果自体は私も認められると思います。

 そこで、外務大臣から改めて、この訪米の具体的な成果、そして、この報道ぶり、二年前あるいは昨年、特に昨年は、首脳会談が行われました、国賓としてオバマ大統領を迎えました、しかし、共同記者会見で共同声明すら発表されないという状況から、今回は、成果の大きい首脳会談だと言われておりますが、何が昨年の首脳会談と変わったのか、こうした点について具体的にお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、前回の総理訪米ですが、第二次安倍政権が発足した直後、一昨年の春、安倍総理は訪米をされました。そして、その訪米以後、日米両国は、安全保障ですとか、あるいはTPPですとか、こうしたさまざまな課題を進展させるとともに、地域情勢、あるいはエボラ出血熱を初めとするさまざまなグローバルな課題についても対応し、緊密に連携してきました。こうしたことを通じまして、日米同盟を着実に強化してきたと思います。そして、その間、安倍総理は、オバマ大統領との個人的な信頼関係も深めてきたと認識をしております。

 今回、このような積み重ねを経て、今般の日米首脳会談では、日米両国が、戦後、和解して、強固な同盟国となり、ともに地域と世界の繁栄に貢献してきたことを確認することができました。

 前回の訪米との違いについて御指摘がありましたが、今回の訪米が高く評価されているのは、やはり前回の訪米から今回の訪米の間に、日米間においてさまざまな分野、取り組みを通じまして努力が積み重ねられ、成果が上がり、そして、こうした積み重ねの結果が今回の訪米の評価につながっていると考えております。

 いずれにしましても、総理が訪米され、そして史上初めて米連邦議会上下両院合同会議においても演説を行いました。こうした日米同盟の強固さを内外にアピールできたことは、大変意義あることであったと受けとめております。

青柳委員 ありがとうございます。

 今の具体的な成果については、これから伺ってまいりたいと思いますが、今のお話にありましたとおり、一つ一つの積み重ねがあって、より大きな成果になったんだろうというのは、私もそう感じるところであります。

 安倍総理と安倍内閣は、安倍総理が就任当初から、日米同盟を再生する、失われた日米同盟のきずなの回復を外交関係の最重要課題とするということを記者会見その他で述べられてきたわけでありますが、再生あるいは回復、失われたきずなということですから、そもそも日米関係はこの第二次安倍政権が発足する前は壊れていたという認識ですが、この壊れていた原因はどのように分析されていますでしょうか。

岸田国務大臣 第二次安倍政権が発足する前の出来事でありますが、沖縄の負担軽減等を通じまして、日米間におきましてはさまざまなやりとりがありました。それも含めてさまざまな議論があったわけでありますが、そういった状況を捉えて、より強固な日米同盟の必要性が指摘をされておりました。

 そういった指摘を受けて、第二次安倍政権としましては日米同盟の強化に取り組んできたわけでありますが、政権発足前の事情とかその原因については、私の方から触れる立場にはないと考えております。

青柳委員 でも、結局、再生したとか、失われたきずなと明確に言っているわけですから、これはそういう状況があった、そういう状況を分析せずに回復とか強固な同盟を結んでいくというのは現実的には不可能なんじゃないかなと思いますが、岸田大臣は非常に手がたい答弁ばかりなので、これ以上再質問はしません。

 要は、前の政権は、端的に言えば、約束したことを実行しなかったことがあるので、そういう信頼関係、きずなが失われたんじゃないかというのは言えるのではないかなと思います。

 ということは、つまり、今回の首脳会談で約束したことを、あるいは議会で演説して公約したこと、決意を示されたことを、日本に帰ってきてこの国会で、あるいはTPP交渉で履行できなければ、きちんと合意できなければ、また同じように、せっかく今回復した信頼が失われるということになるんじゃないかなと思います。

 ということは、今回、この日米ガイドラインの改定、TPP交渉、当然しっかりとやらなきゃいけないんだと思いますが、これができなければ、同じように信頼を失うというリスクをしょったことになるんじゃないかと思いますが、そういう認識を持たれますでしょうか、大臣。

岸田国務大臣 御指摘のように、訪米に当たって、この日米首脳会談あるいは米国議会での演説を行い、そこで発言したことを実行できなければ信頼にかかわるという御指摘は、これはしっかりと受けとめなければならないと思います。

 ぜひ、こうした日米ガイドラインにおいて期待されている方向性につきましても、しっかりと実現できるように努力をしていかなければならないと考えております。

 ただ、例えば、この議会演説の中で、安全保障法制について今国会において成立を図る旨発言したということについて、これまでも再三指摘をいただいておりますが、こうした発言につきましても、総理の決意を示したものだと受けとめておりますし、そうした新ガイドラインにつきましても、おのおのの国の憲法あるいはその時々に施行されている法律に従うということは明記をされています。こうした裏づけとなる法律に従うということについては、日米の共通認識になっていると思います。

 ぜひ、そうした状況を踏まえて、政府としましても、これから国会において丁寧に、真摯に安保法制の議論等に臨んでいかなければならないと考えています。

青柳委員 当然、これから安保法制の議論が始まっていくわけですし、また後ほど触れますが、まだ国民の中では理解が全く進んでいないわけでございまして、しっかりとした説明責任を果たさなきゃいけない。

 ただ、その前に決意を示されるというのは、これまでの政権も、別に安倍総理に限ったことではないですから、それ以上非難するつもりはありませんが、ただ、あそこで述べられた、TPPにしろ、ガイドラインにしろ、安保法制にしろ、こうした約束を履行されなければ、実行しなければ、同じようにまた信頼を失ってしまうというリスクをしょっているという認識はぜひ持っていただきたいなということで、質問させていただきました。

 それでは、具体的に、日米のガイドラインの改定について、今回の改定の大きなポイントとなるところについて参考人から説明していただきたいと思います。それともう一つは、そもそも、ガイドラインというのはどういう位置づけのものなのか。条約ではない、約束だということなんですが、どのぐらいの重みがあるものなのか、わかりやすく御説明いただきたいと思います。

中山副大臣 ありがとうございます。

 新ガイドラインにつきましては、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中で、日米両国の防衛協力につきまして、一般的な大枠、そして政策的な方向性、これを見直すため、そしてまた更新するためのものであります。

 主なポイントといたしましては、まず第一に、ガイドラインの中核的役割たる我が国の平和そして安全の確保のために、自衛隊の能力向上、日米間の運用面、こういった協力の進展、そういったものを踏まえながら、平時から緊急事態に至るまでの切れ目のない形で協力することといたしております。

 第二に、これまでの同盟の協力の進展を踏まえまして、地域の、グローバルな平和と安全のために、第三国との協力を含めまして、さまざまな分野におきます日米協力のあり方につきまして記述をいたしております。また、新たな戦略的領域でもございます宇宙、それからサイバー空間、こういった中での協力のあり方も新たに記述をいたしております。

 そして、第三番目のポイントといたしましては、日米協力の実効性をより一層高めるために、同盟の調整メカニズムの強化、それから、共同計画の策定、更新、こういった問題に取り組むこと、そしてまた、装備、技術、保全、こういったものを含む情報面での協力も進めること、そういったものを明記いたしております。

 今後も、新ガイドラインのもとでの取り組みを、より一層幅広に日米協力を推進することで、日米同盟の抑止力、そしてまた対処力が一層強化されるものと考えております。

 こういったガイドラインの重みという後段の部分に関しては、説明をさせたいと思います。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 ガイドラインと申しますのは、日米の防衛協力についての一般的な大枠及び政策的な方向性を示す、そういうものでございまして、日米両国政府の意図を表明する文書、そういう性格のものでございます。

 そこで、重みということでございますが、このガイドラインについては、いわゆる日米の2プラス2、日米両国双方の外務大臣、防衛大臣、四者が集まって、その検討を指示し、また、最終的にこれを採択したというものでございまして、そういう重みがあるものというふうに認識しております。

青柳委員 ですから、そういう重みというのは非常に重いというふうに理解しましたが、そういう認識でよろしいでしょうか。

鈴木(秀)政府参考人 日米双方の二閣僚、合計四閣僚が採択されたものでございますので、そういう重みがあるものということでございます。

青柳委員 すごく重みのあるものだと思いますが、このガイドラインについて、今回の改定したものをきちんと履行していこうと思えば、昨日閣議決定された安保法制の改正が必要になってくるという理解でよろしいのか。逆に言えば、もしこの安保法制が通らなければ、このガイドラインは履行できない、そういう理解でよろしいんでしょうか。

鈴木(秀)政府参考人 ガイドラインとこの法制との関係についてのお尋ねでございますけれども、新ガイドラインにも明記されておりますとおり、この新ガイドラインというものは、日米いずれの政府にも、立法上、予算上、行政上その他の措置を義務づけるものではありませんし、また、法的な権利または義務を生じさせるものでもございません。

青柳委員 ただ、今答弁があったように、非常に重い合意だということですし、そもそも、今回の日米関係、日米同盟の復活というには、このガイドラインが大きな役割といいますか、大きなポイントだったと思いますから、このガイドラインを読んでいけば、日本の現行の法では対応できないと思われる箇所が幾つもあるわけですから、このガイドラインを履行しようと思えば、安保法制の改正が必要だという理解でよろしいんでしょうか、大臣。

岸田国務大臣 日米両政府は、これまでも、新ガイドラインと安保法制との整合性については、腐心をし、努力を続けてまいりました。

 そして、今度の新ガイドラインの中にも明記をされておりますように、この新ガイドラインは憲法あるいは法令に従うということ、当然のことであります。

 ぜひ、この国会におきましても、安保法制の議論につきまして、政府として丁寧に説明をし、真摯に議論に応じ、成立に向けて努力をしなければいけない課題であると考えております。

青柳委員 ちょっと今のお答えがわかりにくいんですけれども、このガイドラインで新しく改定されたポイントは、現行法ではこれを履行できないんじゃないかというのが私の質問なんですが、今の答弁は、国内の法令に従ってガイドラインを合意しているというのは、ちょっと矛盾しているんじゃないかと思うんです。

 今回新たに改定されたことを履行しようと思えば、今の安保法制では足らないから、今回改正するのではないんですか。

岸田国務大臣 新ガイドラインの中においては、一定の枠組みあるいは政策の方向性が明らかにされています。それを実現するために、日米両国政府には努力することが期待をされています。

 それに応えるために、安保法制の議論を行い、法律の成立に向けて努力をしなければいけないと考えています。

青柳委員 ですから、この国会で仮に安保法制が成立しなければ、このガイドラインは履行できないということですね。

岸田国務大臣 これから国会での議論をお願いする政府として、この議論の行方について予断を与えることを申し上げることは控えなければならないと思いますが、国会の議論、大変重たいものがあります。法律の行方、成立については、国会の議論に委ねなければなりません。

 そして、日米ガイドラインにつきましては、その法律に従うという当然のことが明記をされているわけですし、逆に、この新ガイドラインは、予算を初めさまざまな義務を生じさせるものではないということも、ガイドラインの中において、第二章「基本的な前提及び考え方」という部分に明記をしているところであります。

青柳委員 このぐらいのこともなかなか正面から答えていただけないのであれなんですが、時間も限られていますので、このガイドラインの中身について数点だけ確認させていただきたいと思います。

 先ほど、中山副大臣の答弁でも、切れ目のない安全保障を行っていく、切れ目のない対応をしていくというのが一つの今回の改定のポイントだということで御答弁いただきましたけれども、それでは、今、現状の法制では切れ目があるということですから、この今ある切れ目について国民の皆さんに説明していただきたいと思います。今ある切れ目とは何なのか、それを今回のガイドラインでどういうふうに変えたから切れ目がなくなったのかについて、ぜひわかりやすく御答弁いただきたいと思います。

中山副大臣 ありがとうございます。

 我が国を取り巻く安全保障環境がより一層厳しさを増している中で、新ガイドラインにおきましては、日米協力のもと、平時から緊急事態までのいかなる段階におきましても、切れ目のない形で、日本の平和及び安全を確保するための措置をとることといたしております。

 具体的には、新ガイドラインにおきまして、まず、平時から利用可能な同盟調整メカニズムの構築、そしてまた、平時から相互後方支援や相互のアセットの、装備品などでございますけれども、防護、それから、我が国が武力攻撃を受けるに至っていない場合の米国に対する武力攻撃に対処するための日米協力。

 新ガイドラインのもとでの自衛隊の活動といったものが、我が国憲法及び法令に従って行われることは当然でございますけれども、新ガイドラインに示されたこれらの取り組みを通じまして、平時から緊急事態までのいかなる段階におきましても、切れ目のない形で、日米が適切に連携できるようになることは、日米同盟の抑止力及び対処力の強化に資するものであるというふうに考えてございます。

青柳委員 今、国民の皆さんも我々国会議員も非常に関心が高いこの安保法制です。安倍総理あるいは大臣が発言するときには、切れ目のない法整備を行っていくということで、常にその切れ目のないということをおっしゃられるんですが、具体的にその切れ目がどこにあるのかというのが、明確にまだ我々にもわかっておりません。

 その切れ目、わかりやすく、ちょっともう一度御答弁いただきたい。どことどこに切れ目があるのでそれには対応できない、だから今回こういう法律をつくってそれを手当てしたんだというのが、これは重要なことだと思いますので、ぜひわかりやすく御答弁いただきたいなと思います。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 新ガイドラインにおいては、平時から緊急事態までのいかなる段階においても日本の平和と安全を確保するため、切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応を強調している、そういうところでございます。

 具体的に申し上げれば、例えば、日米の対応に関連して、第四章の柱書きには、「平時から緊急事態までのいかなる段階においても、切れ目のない形で、日本の平和及び安全を確保するための措置をとる。」ということが書いてございますし、B節には、日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態のみならず、当該事態にいまだ至ってない状況において、両国のおのおのの国内法令に従ってとり得るものを含む、平時からの協力措置を継続するとともに、追加的措置をとるということが書いてあるわけでございます。

 具体的に、今現在どういう切れ目があるからということではなくて、切れ目のないような形でこれに対応するということで、今回のガイドラインを決めさせていただいたということでございます。

青柳委員 今の参考人の答弁は、切れ目があることではないとおっしゃられたんですが、それでは、わざわざ切れ目のない安保の法体系をつくっていくんだという総理の答弁と何か矛盾しているような気がします。

 この問題はこれからも取り上げてまいりたいと思いますが、ほかにもちょっと聞きたい論点がありますので、伺ってまいりたいと思います。

 このガイドラインのもう一つの改定のポイントに、「日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処」のところについて、これまでも議論がありましたとおり、地理的概念はないということでしたが、地理的概念がない、地理的制約がないということでよろしいのかどうか。その場合は、どこでどういうふうに歯どめをかけていこうとされているのか。地球の裏側という議論もよくありますけれども、本当にどこまででも行くというのが、今回のガイドラインの切れ目のないことに入るのかどうか。ここについても御答弁いただきたいと思います。

岸田国務大臣 今回の新ガイドラインにおきましては、「当該事態については地理的に定めることはできない。」ということが明記されています。

 この新ガイドラインにおける日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態は、あくまでも事態の性質に着目する概念であって、当該事態が地理的に生起する場所についてあらかじめ定めることはできない、今申し上げました記載は、このことを示したものだと認識をしております。

 そして、歯どめについて御質問がありましたが、この新ガイドラインのもとで行われる自衛隊の活動が、我が国の憲法及び法令に従って行われる、これは当然のことであります。そして、自衛隊の派遣については、我が国として、みずからの国益に照らし、我が国の国民の命や暮らしの安全という観点から、主体的に判断するものであると考えます。

 よって、無制限にこうした対応が広がるということはないと考えています。

青柳委員 今の御答弁の中では、結局、政権の裁量で決められるというふうにしか聞こえないんですが、では、具体的にどこで歯どめがかかるんでしょうか。

岸田国務大臣 今回の安全保障法制、平和安全法制の議論ですが、この議論は、あくまでも我が国の国民と命を守るためのものであります。

 そして、総理のきのうの記者会見の中でもありましたように、まずは、我が国として、外交を通じて好ましい国際関係をしっかりつくった上で、万が一の場合に備えてさまざまな備えをしていかなければならない、こういったことで新しい体制を考えています。そして、その体制が切れ目のない体制であることが抑止力につながる、こういった考え方を示させていただいています。

 歯どめにつきましては、あくまでも、こうした安全保障法制、平和安全法制の基本的な考え方に基づいて、しっかりと歯どめがかけられるものだと考えています。

青柳委員 まだ依然としてよくわからないんですけれども、この議論はまた、安保法制の委員会が立ち上がりましたら、やらせていただきたいと思います。

 もう一点、ガイドラインについて、引き続き伺ってまいりたいんですけれども、「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」という項目もございますけれども、これは、「米国又は第三国」とありますけれども、米国以外の第三国として対象となっている国はあるのでしょうか。そしてまた、逆に、なければ、どこでも入るということなんでしょうか。ここの対象となる国についての規定についても、御説明いただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、御指摘の対象となる国ですが、この新ガイドラインの中には、我が国以外の国、すなわち米国または第三国に対する武力攻撃に対処するため、日米各国が国際法及びおのおのの憲法や国内法に従い、武力の行使を伴う措置をとることを決定する場合であって、我が国が武力攻撃を受けるに至っていないとき、日米が緊密に協力する、このように記載をされています。

 我が国と密接な関係にある他国については、新三要件に関する政府の説明のとおり、一般に、外部からの武力攻撃に対し、共通の危険として対処しようという共通の関心を持ち、我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国、これを指すとされています。

 具体的にどの国がこれに当たるかということについては、あらかじめ特定されるものではなく、武力攻撃が発生した段階において、個別具体的な状況に即して判断されるとされています。

 いずれにしましても、我が国が武力行使をすることが可能になるのは、新三要件を満たした場合だけという歯どめを設けてあります。

青柳委員 その国というのは国家ということでよろしいんでしょうか。

鈴木(秀)政府参考人 ガイドラインに書いてありますとおり、米国または第三国、あるいは我が国と密接な関係にある他国ということでございます。

青柳委員 例えば台湾は入るんでしょうか。

鈴木(秀)政府参考人 御指摘のところでございますけれども、御答弁申し上げましたとおり、あらかじめ、どのような事態、どのような国がこれに当たるかということを特定されているものではございませんので、武力攻撃が発生した段階で、個別具体的な状況に即して判断されるということでございます。

青柳委員 個別具体的な状況で判断するのはわかるんですけれども、今、国とおっしゃられたので、台湾は国として、どう判断されるのかということについてお伺いしたかったんですが、そろそろ時間も来ましたので、こういう点についてはまた安保法制で確認させていただきたいと思います。

 いずれにしても、私は別に全部が悪いというふうに批判しているわけではなくて、当然、日米同盟は重要ですし、改定されたガイドラインをきちんと国民の皆さんが理解をした上で、国の平和と安全を図っていくために必要なんだという理解を得ていくということは非常に重要だと思いますし、あるいはもう一つ、日本の国際貢献、これも非常に重要なことだという認識は私も一致しているところです。

 しかし、こうした安保法制の進め方、あるいはちょっと前のめりだという意見もありますので、ここは国民への説明責任をきちんと果たしていっていただきたいということを改めて申し述べたいと思います。

 残された時間、少しTPPについて伺ってまいりたいと思います。

 このTPP、西村副大臣の発言で大分混乱いたしました。我々維新の党も、民主党さんと共同してTPPの情報公開法案というのも提出させていただいております。

 西村副大臣自身は、やはり、国会議員に一定程度あるいは定められた範囲で情報公開をしていく必要性については認められていると思います。

 岸田大臣にお伺いします。

 国民生活あるいは関係団体にとってとても重要な影響のあるこのTPPの交渉について、情報公開について、大臣はしていくべきだと考えられているのかどうか、あるいは、考えられているということだと思いますが、その場合はどのようにこの情報公開について取り組んでいかれるおつもりなのかについてもお伺いしておきたいと思います。

中山副大臣 まず、ワシントンDCでの西村内閣府副大臣の発言に関しましては、制度上の違いから米国と同一の対応は困難であるが、そのような前提や制約の中で、我が国として今後どのような情報提供の工夫ができるかということを引き続き検討していきたいという思いを申し述べられた旨であるというふうに理解しております。

 しかしながら、発言に関する報道につきましては、西村副大臣は、真意が伝わっていなかったと考えたことから、誤った印象を与えた表現につきましては撤回をさせていただき、反省の意を明らかにした上で、改めて真意を説明したと承知をいたしております。

 政府内では、情報提供のあり方につきまして、どういう工夫ができるか、常に悩みながら検討を行っておりますけれども、米国と同様に交渉条文案を国会議員が閲覧できるようにすることは我が国においては困難であり、この点につきましては政府部内でそごはないというふうに考えてございます。

 そしてまた、御指摘のTPP交渉に関する情報提供のあり方につきましては、秘密保持の制約の中でどういう工夫ができるか、これも常に悩みながら検討を行ってきております。

 TPPに関する国内での情報提供については、各国がそれぞれの国内制度に即しまして秘密保持契約の範囲内で対応することとされているのは、委員も御承知のとおりだというふうに思います。

 我が国と米国では、制度が特に大きく異なっている点が幾つかございます。また、米国と同一の対応は困難であるというふうにも考えております。

 政府としましては、これまでも国会等で丁寧な説明を心がけてきたところではございますけれども、秘密保持の制約のもとで、TPP交渉の現状等につきましても今後も丁寧な説明をしていきたい、そのように考えております。

 情報提供のあり方については、どのような工夫ができるのか、各国の状況も踏まえながら、さらに検討してまいりたいと考えております。

青柳委員 大体想定どおりのお答えだったんですけれども、これまでのTPPに関する答弁は、丁寧に、何も答えていなかったわけでございまして、ぜひ情報公開のあり方についてはしっかり御検討いただきたいと思いますし、今、公開できないというふうに述べられた理由についても、国会でも秘密会という方式もありますし、必ずしも全部できないということではありませんから、ぜひもう一歩踏み込んだ検討をお願いしておきたいと思います。

 時間も参りましたので、最後に一問伺います。

 AIIBの問題で、政府は引き続き参加にはネガティブな立場だと思いますが、それそのものについては、私もそんなに異を唱える立場ではございません。

 ただ、最近の論文や社説等で、AIIBにネガティブな立場をとるのであれば、だからこそ、よりTPPの交渉が重要になってくる、中国を、自由と貿易の枠組みづくり、新しいルールづくりにぜひ入れ込むべきだ、TPPを日米で早く妥結してTPPの大枠をつくり、さらに中国を交渉のテーブルに引きずり込むということが、AIIBに入らないのであれば、TPPの枠組みに中国を取り込んでいくというのが一層重要だろうという論が散見されておりますが、最後に、大臣にお伺いしたいと思います。

 こうした、中国を新しい貿易の仕組みづくり、ルールづくりに引き込んでいく努力について大臣の御所見を伺って、質問を終えたいと思います。

岸田国務大臣 まず、世界第二の経済大国となった中国が、法の支配あるいは国際社会のルール、こうしたものを尊重する形で平和的に発展することは、我が国にとりましても大きなチャンスだと思いますし、これは国際社会の利益につながると考えます。

 その中で、AIIBにつきましては、これまでも立場を明らかにしておりますように、公正なガバナンスの観点から、あるいは債務の持続性の観点から、慎重な見きわめが必要であるという立場は変わっておりません。

 引き続き、関係各国と連携しながら、中国と対話をしていかなければならない課題であると認識をしております。

 そして、一方、御指摘のTPPですが、TPP自体は、決して中国を意識して議論を行うものではない、つくるものではないと思っております。TPPは、人、金、物、こうした要素がアジア太平洋地域の中で自由に行き来する経済圏をつくることを目指すものであり、これは多くの国々にとってモデルとなるものであると認識をしております。

 ぜひ、我が国としましては、新たなルールづくりを主導していきたいというふうに思っていますが、結果として、TPPは地域の繁栄をもたらし、地域の安定に資する戦略的な重要性も有しております。ぜひ、こうしたルールづくりを行うことによって、TPP非加盟国にとっても繁栄につながる、こうした結果につなげていきたいとは考えております。

青柳委員 ありがとうございました。終わります。

     ――――◇―――――

土屋委員長 次に、特許法条約の締結について承認を求めるの件及び商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 特許法条約の締結について承認を求めるの件

 商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました特許法条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十二年六月にジュネーブで開催された外交会議において採択されたものであります。

 この条約は、特許出願等に関する手続について締約国が求めることができる要件等について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、特許の保護を国際的に促進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、商標法に関するシンガポール条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十八年三月にシンガポールで開催された外交会議において採択されたものであります。

 この条約は、商標等に係る登録の出願及び登録に関する手続について締約国が求めることができる要件等について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、商標等の保護を国際的に促進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

土屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十七分散会


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