衆議院

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第12号 平成28年4月27日(水曜日)

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平成二十八年四月二十七日(水曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 岸  信夫君

   理事 島田 佳和君 理事 新藤 義孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 泰秀君

   理事 橋本  岳君 理事 小熊 慎司君

   理事 武正 公一君 理事 岡本 三成君

      井林 辰憲君    小渕 優子君

      大野敬太郎君    城内  実君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      今野 智博君    佐々木 紀君

      鈴木 隼人君    薗浦健太郎君

      辻  清人君    福山  守君

      松島みどり君    三ッ矢憲生君

      大島  敦君    吉良 州司君

      篠原  豪君    寺田  学君

      長島 昭久君    浜地 雅一君

      笠井  亮君    丸山 穂高君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        木原 誠二君

   外務副大臣        武藤 容治君

   財務副大臣        岡田 直樹君

   文部科学副大臣      義家 弘介君

   防衛副大臣        若宮 健嗣君

   外務大臣政務官      黄川田仁志君

   外務大臣政務官      浜地 雅一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宇山 智哉君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮川  学君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 牛尾  滋君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 吉田 朋之君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局南部アジア部長)      梨田 和也君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   高瀬  寧君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    林   肇君

   政府参考人

   (財務省主税局参事官)  田中 琢二君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   吉田 正紀君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 貝塚 正彰君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十七日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     今野 智博君

  三ッ矢憲生君     井林 辰憲君

  山田 美樹君     福山  守君

同日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     三ッ矢憲生君

  今野 智博君     佐々木 紀君

  福山  守君     山田 美樹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とチリ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

岸委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。武正公一君。

武正委員 民進党の武正公一でございます。

 質疑を行わせていただきます。

 まずは、冒頭、さきの平成二十八年熊本地震、そしてまた大分での地震で亡くなられた皆様に心からお悔やみを申し上げ、そしてまた、被災をされた皆様の一日も早い復旧復興を、また、お見舞いを申し上げたいと思います。

 さて、三月九日、質疑で外務大臣とやりとりをさせていただきまして、それについて、きょう質疑を、そして、文科委員会も開催のところですが、文科副大臣にもあわせて御出席もいただいておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、日本海呼称問題について、三月九日の質疑で、外務大臣から、調査の仕方などにつきましてはぜひ工夫をさせて検討をさせたいと考えますと、在外公館などを中心として働きかけ、努力は続けたいということで、また、当委員会でも、附帯決議では、「在外公館として各国並びに関係機関等への日本の立場の周知徹底と各種対応に努めること。」ということを決議いたしました。

 日本海呼称問題については、前々回、二〇一二年、民間企業、教科書、地図などへの調査を行いましたが、前回、二〇一四年は政府機関にとどまっております。今回、訓令も既に四月に発出をして、五月初旬までに締め切るということで調査を開始したというふうに聞いておりますが、どんな調査、そして対象などについて、外務大臣から御答弁をお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 日本海の呼称問題ですが、委員の方から先月御指摘をいただきました。それを受けまして、今般、在外公館に調査訓令を発出いたしました。そして、各国の政府機関や民間団体の文書、地図の表記を改めて調査することといたしました。

 対象としては、政府機関はもちろんですが、航空会社、メディア、あるいは教科書会社、さらには地図会社、こうした民間の企業、団体に対しましても調査対象として広げていく、こういった方針で臨んでおります。

 そして、相手のあることですが、回答につきましては、ぜひ五月中にもしっかり回答を得て整理をし、御報告をした上で、また今後の取り組みに資するよう取り組んでいきたいと考えます。

武正委員 もう既に訓令も発出したということなんです。五月中ということですが、私は五月初旬で締め切りというふうに聞いております。六月一日が会期末ですので、先ほども当委員会理事会でも話が出ておりますが、条約は、きょうこの後、質疑、採決ということになりますが、条約質疑の後には必ず一般質疑、こういうルールで当外務委員会が運営をされておりますし、特に、TPP法案、条約、これは継続審議ということで与野党合意をしておりますので、五月の外務委員会の審議を充実する中で、ぜひまた今の報告を外務大臣からお願いしたいと思います。

 また、特にサミットを控えておりますので、外務大臣におかれましては外交案件もいろいろ出てくるかと思いますが、国会のこうした外務委員会の審議に、ぜひ積極的に御対応をお願いしたいというふうに思いますが、あわせて、今の五月中の当委員会での御報告、そして積極的に外務委員会に御出席をいただいての対応、以上二点、伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、外務委員会の出席につきましては、外務委員会の理事会で御判断いただき、その指示に従い、誠心誠意対応させていただきます。

 そして、調査結果につきましては、先ほど申し上げましたように、今、五月中を目指して調査を進めています。ぜひ今国会で報告をするようにという御指摘でございますので、こうした御指摘も受けて、できるだけ早急に取りまとめるべく努力をしていきたいと考えます。

武正委員 なぜ、出席をというふうに申し上げたかというと、御承知のように、さきのG7外相会談の前、この外務委員会は、TPPの審議優先ということで開けなかったことがございますので、いよいよG7首脳会談がございますので、ぜひお願いをしたいというふうに申し上げたいと思います。

 続きまして、同じく三月九日、この質疑の中で取り上げました、お手元に資料がございますが、高等学校等修学支援事業費補助金について質疑を行わせていただきたいと思います。

 この高等学校等修学支援事業費補助金は、海外の日本人高校生への支援ということで、文部科学省さんが進めておられます。きょう文部科学副大臣もお見えをいただいております。

 さきの三月九日、この外務委員会で質疑を行った際、お手元の資料二ページですが、このときはまだ平成二十六年度の対象者しかわかっておりませんでしたので、実績は四十四名だ、海外で学ぶ日本人高校生、支給対象校は以下の七校であると。そして、新たな資料で、二十七年度は合わせて六十一名です。

 多分この七校以外に、海外で学ぶ日本人の高校生はたくさんいるんだろうという中で、しかし実態がわからないと文科省さんもお答えになっているという中で、外務大臣の答弁では、「在外公館として、高等学校レベルの教育の実態そして必要性につきましても、実態を把握する努力はしっかり行わなければならないと認識をいたします。」というふうに述べていただきました。

 そうした中で、まずは、文部科学副大臣がお見えです。今私が述べたような問題認識で、きょうおいでいただいております。すなわち、この七校以外の高校生にこの高等学校等支援事業補助金を支払うべきではないかという認識ですが、実態が把握できていないという文科省さんのお答え、一方、外務省さんでは外務大臣にこのようなお答えをいただいている中で、今の高等学校等支援事業補助金について、現状とそして今指摘をした点についての御認識を伺いたいと思います。

義家副大臣 お答えいたします。

 まず、日本から海外に留学している高校生についてでありますが、二つの条件がございます。一つは、日本国内に住所を有していること、二つ目は、日本の高等学校等に在籍し、授業料を払っている。この二つの条件を満たす場合は、高等学校就学支援金で支援を行っているところであります。

 同時に、これは、私が政務官時代、政権をもう一度いただいてから、所得制限を設けて、九百十万円でラインを引いて、浮いたお金で低所得者やあるいは海外で頑張っている高校生を応援しようということで財源を捻出して、二十六年度より、日本国内の高等学校等の生徒に対して授業料を支給する支援金と同等の支援を、国内の高等学校と同等の課程を有する、文部科学大臣が認定する在外教育施設の高等部に在籍する日本人高校生にも実施しているところであります。

 授業料の支援の対象を、文部科学大臣が認定する在外教育施設以外の現地の学校等に広げることについては、まず、対象生徒の特定と把握をどうするのか、それから、九百十万円がありますから、親の所得も含めて、かなりこれは大変な作業になりますが、一人一人特定して現在は支給しているところであります。

 二つ目、対象となる学校等の課程の状況等について、どのような方法で確認をとるか。例えば、今大きな問題になっている、ある通信制高校の授業内容が、外形的には行われているという形で来たわけですけれども、ふたをあけてみたら、就学実態のない中で就学支援金が支給されていた等々の問題もあるので、やはり、この中身、しっかりとした教育が行われていることを客観的に検証できるということも非常に重要なこともあると思います。しかし、海外で学ぶ子供たちを応援したいという思いは委員と一緒でございますので、それらを含めて慎重に検討してまいりたいと思っております。

武正委員 副大臣は、今留学と言われたんですが、資料の二ページにある六十一名を、今言われた留学という対象としてお答えになられたんでしょうか。

義家副大臣 委員御指摘の学校は、日本の学校法人がそれぞれの国につくっている高等課程であり、これは、文部科学大臣が日本の高等学校と同等の学校として認定している学校であります。

 それにプラスしまして、例えば、日本のAという高校にいながら一年間B国のCという学校に留学しているという生徒については、就学支援金の対象となっているという意味でございます。

武正委員 以前、文科省から留学についてはお知らせをいただけなかったので、きょう初めて知ったんですが、ちなみに、その留学者、支払っている対象者、人数がわかればお答えいただきたいと思います。

義家副大臣 申しわけありません。現時点でデータを持っておりませんので、早急に整理して、委員のもとに届けたいと思っております。

武正委員 私がお聞きしているのは高等学校等支援事業補助金の方でありまして、留学というよりも海外に住んでおられる日本人高校生。しかし、今七校に限定をしているという現状。今副大臣がおっしゃったように、実態がわからない。要は、多分十五歳から十八歳ぐらいだと思いますが、在外の日本法人の七校以外でどこで学んでいるのか。そして、今おっしゃったように、九百十万円の所得についてもわからない。だから支給できないということを文科省さんからお聞きした。その中で、外務大臣が、把握する努力はしっかり行わなければならないと認識をしているというお答えでございました。

 こういう御答弁をいただいて、また、先ほど触れた中で、外務大臣として今どのような対応をされているのか、お答えをいただきたいと思います。

岸田国務大臣 外務省として、在留邦人の実態を把握するということは大変重要な取り組みです。

 毎年、在留邦人につきましては、在外公館を通じて在留する邦人数の調査を行い、結果を集計し、そして公表しているところですが、現在行っている調査から、従来年代別に調べていた在留邦人数を年齢別に調べる方式に改めました。

 まずは、各国における高校に通う年齢層の人数把握を行いたいと思います。そして、その数字は本年六月にも発表したいと思います。そして、年齢を把握した上で、次の段階として、その就学先などさらなる実態調査を行う、そういった形で実態を把握していきたいと存じます。

 そういった実態を把握した上で、文部科学省で行っておられる就学支援を拡充するために必要な情報提供を行う、こうした取り組みを進めていきたいと考えます。

武正委員 文科副大臣に伺いますが、この支給対象校、二ページを見ていただきますと、千百六十五名生徒がいるわけなんですが、一、二年生に限ってみれば、どうでしょうか、七百七十八名、そのうち六十一名ですから、一〇%に満たないわけなんですね。察するに、やはりこの七校の保護者の方の所得は九百十万円を超えているというふうに推察をするわけでございます。

 日本の現在支給されている割合、平成二十六年度の数字ですが、百二十一万六千六百三十九人のうち九十三万五千九百二十九人、七六・九%、九百十万円以下で対象ということでありますと、やはり海外で学ぶ高校生の保護者の方の所得は高いということは当然推察ができます。

 ただ、今言われたように、外務大臣、一歳刻みで年齢の把握をすると。私は、五月完結というふうに外務省から聞いておりますので、発表は六月と今外務大臣がおっしゃられましたが、もう実態がわかるわけです。そうしたら、あとは、今度、在外公館が十五歳―十八歳の対象者に個別に連絡をとって、先ほどの、どういう高校に通っていますか、そしてまた、所得なども含めたいろいろな対応が可能になってきますので、私が聞くところでは、夏から秋にかけてさまざま、今文科副大臣がおっしゃられた実態がわかってくるのではないかと思っております。

 そうした上では、高等学校等支援事業補助金の対象を拡大していく、そうした前提条件がクリアされるのではないかというふうに思いますが、副大臣の御所見を伺いたいと思います。

義家副大臣 お答えいたします。

 もう一度整理いたしますが、日本の学校に在籍して海外の学校に留学している生徒の数については、これをすぐに把握できるところであります。

 二つ目としまして、委員御指摘のこの七校、これは既に認定しているところですので、把握しているところでありまして、一九九〇年あたり、バブルのころは実はもっと日本の高校というのは海外にあったわけですけれども、撤退等もあって、現在、日本の課程と同等の水準で原則指導要領どおりに行っていると認定しているのはこの七校で、恐らく、委員の御指摘の中の多くは、現地のインターナショナルスクール等に通っている生徒たち、こういうところも応援していくべきではないかという問題意識があるんだというふうに思います。

 というのは、日本から親の転勤で途上国等に行ったとき、なかなか現地の学校に通うということはできないと。しかし、一方で、日本人学校もなかったりする。そんな中で、現地のインターナショナルスクールに入って学んでいるという子は一定数いるんだろうなというふうに思いますし、それが大体どの程度いるのか、これは外務省に今調査していただいていますが、把握した上で、所得及び財源の問題も検討し、今後慎重に進めてまいりたいというふうに思っております。大変重要な指摘でありまして、ありがとうございます。

武正委員 慎重にということですが、十八歳に選挙権も引き下がる中、文科省を中心に、主権者教育も昨年十二月から始めていただいております。また、今回の附帯決議でも、「選挙権年齢を十八歳以上に引き下げることを踏まえ、小中高校生をはじめ若年者に対し、周知徹底とともに主権者教育の充実を進めること。」と、在外公館法で附帯決議もありますので、文科省におかれましては、ぜひ慎重に、そして大胆に前向きにお取り組みをお願いしたいと思います。

 それでは、文科副大臣、どうぞお引き取りください。ありがとうございました。

 最後に、オバマ大統領の広島訪問についてかなり具体的な報道が次々に出され、昨日あたりは、報道では、オバマ大統領は広島を訪問する、岩国に寄って、そして広島へというような報道まで出てくるところでございます。あわせて、広島で、二〇〇九年のプラハ、核なき世界の演説のような、そうした演説をされるのではないのかというところまで出てまいりました。

 お手元に、非核兵器地帯条約の資料をお配りしておりますが、さきのG7外相会談では、声明を七カ国の外相が発出しております。その中で、

 五核兵器国による中央アジア非核兵器地帯条約の議定書への署名又は批准を歓迎し、五核兵器国が、可及的速やかに議定書への署名に至るよう、東南アジア非核兵器地帯条約締約国との協議を継続するとのコミットメントを歓迎する。我々は、中東における核兵器及びその他の大量破壊兵器・運搬手段のない地帯という目標を達成するための新たな地域的対話を求める。

こういった声明も発出をしております。

 北東アジアでは、非核兵器地帯条約というのは、北朝鮮あるいは中国、こうした動向から、なかなか日本から提起、提案というのは難しいということは理解をいたしますが、オバマ大統領の広島訪問について、また、そうした演説ということも言われる中で、こうした非核兵器地帯条約についての外務大臣としての認識と、あわせて、オバマ大統領の広島訪問についても、現状、どのような状況であるのか、伺いたいと思います。

岸委員長 岸田外務大臣、簡潔にお願いします。

岸田国務大臣 まず、世界の指導者に被爆地を訪問してもらい、被爆の実相に触れてもらうということは、核兵器のない世界をつくっていこうという国際的な機運を盛り上げる上で大変重要なことであると認識をしております。

 そして、委員御指摘のようにさまざまな報道が出ていることは承知しておりますが、これは基本的に、米国政府あるいはオバマ大統領御自身が決定されることでありますので、これについて、具体的に何か日本政府として申し上げるのは適切ではないと考えます。

 そして、非核兵器地帯条約についてでありますが、一般的に言えば、全ての関係国の同意が得られる、あるいは適切な保障措置が伴っているなど、条件がそろった地域において非核地帯が設置されること、これは核不拡散等の目的にも資するものであると考えますが、ただ、北東アジアにおいては、北朝鮮の存在もあります、なかなか、関係国の意見が一致する、こういった条件にまでは至っておりません。

 まずは、北朝鮮が核開発を放棄する、こうした方向に向けて関係国と協力していくことが先決ではないかと考えます。

武正委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、北朝鮮については、拉致、核、ミサイルへの対応と、そしてまた対話と圧力ということで、しっかりとさまざま方策を探っていただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

岸委員長 次に、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とチリ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官宇山智哉君、大臣官房参事官宮川学君、大臣官房参事官牛尾滋君、大臣官房参事官吉田朋之君、アジア大洋州局南部アジア部長梨田和也君、中南米局長高瀬寧君、欧州局長林肇君、財務省主税局参事官田中琢二君、国際局次長吉田正紀君、国税庁長官官房審議官貝塚正彰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岸委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉良州司君。

吉良委員 おはようございます。

 きょうは条約審議ということでありますけれども、各論に入る前に、一般質疑をちょっとさせていただきたいと思います。

 まず最初は、先ほど武正委員からもございましたけれども、オバマ大統領の広島訪問。

 大臣の方で、日本側からコメントする立場にはないということで、これ以上突っ込んでも難しい立場だろうと思いますので、そこはもうあえてお聞きしません。本来、私が初めてこのことを聞くのであれば、大臣の見通しと期待というものをお聞きしたかったのでありますけれども。

 もう大臣の答弁は求めませんけれども、私の方から一点、元外務省の政務官、副大臣をやっていた立場としては言うべきではないことかもしれないんですけれども、あえて今野党という立場で言わせていただくと、今回そのタイミングではない、また、近い将来もそうではないだろう、だけれども、遠い将来は、やはり米国に原爆投下についての謝罪をしてもらいたいと私自身は思っています。もしオバマ大統領の広島訪問が実現すれば、それに向けての第一歩になるんだろうというふうに思っております。

 このことについてはもちろん、米国を責めるというよりも、まずは我が国が、さきの大戦を始めたことに対する深い反省が必要なんだろうというふうに思います。

 もうここにいらっしゃる皆さん方には釈迦に説法かもしれませんけれども、一九八五年の、ドイツ敗戦四十周年の記念日に、ワイツゼッカー当時の大統領が、過去を忘れる国民は未来を持たないという有名な演説を行っております。

 昨年のこの外務委員会でも、私は、さきの大戦において、どの国の人たちがどれぐらいの犠牲者が出たのかということについて、私が調べた限りの数字を発表させてもらったわけですけれども、御承知のとおり、ドイツは敗戦後、引き揚げ時に三百万人という人たちが難民となり犠牲になっています。

 そのことも念頭に置いた上で、ワイツゼッカー大統領は次のように言っています。戦後のドイツ難民の苦難は到底言葉に尽くせないけれども、その苦難の原因は、ドイツが戦争に負けたことにあるのではなく、ドイツが戦争を始めたことにある、このことを取り違えないでほしいと訴えています。

 そして、国境の意味を変えなければいけないということも同時に訴えていて、今まで我々は国境をめぐって血を流してきた、しかし、これからの国境は、諸国民を分け隔てるものではなく、諸国民をつなぐかけ橋にならなければならない、ドイツ敗戦四十周年記念の演説の中でこのように言っているわけであります。

 そして、このドイツのワイツゼッカー大統領の演説を受けて、当時、もともとは占領されて、最初過酷な目に遭ったチェコ、そのチェコのハベル大統領が、ドイツ難民に対して行ったことに対して、自分たちもまたドイツ人に対してひどい仕打ちをしたことを認めなければならない、このように言っております。

 そういう意味で、先ほど言いましたように、原爆投下されたこと、大臣の地元でもある広島の方々、多くの方が犠牲になり、その後、復興に大変な御努力をされたことはよくわかっておりますけれども、日本が再度、戦争を始めたことに対する深い反省をした上で、将来的には米国に原爆投下の謝罪をしてもらいたい、私自身はこのように思っているところであります。

 大臣はどう思いますかと言っても、答えられないですよね。一言、何か。では、お願いします。

岸田国務大臣 過去については、さまざまな議論があることは承知しております。

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、国際社会において核兵器のない世界を実現するために議論をリードしていく、こうした大きな責任を担っていると考えます。

 そして、昨年のNPT運用検討会議あるいは国連の議論の場等において、我が国は、核兵器のない世界を実現するために、世界の政治指導者、あるいは青年、若い方々に、被爆地を訪問してもらい、被爆の実相に触れてもらうことは大変重要であるということを呼びかけてきました。

 しかし、これは決して過去に焦点を当てるのではなくして、世界の指導者が被爆地を訪問し、被爆の実相に触れる、こうした指導者たちは国際社会において大きな発言力や存在感を持っているわけですから、こうした方々が被爆の実相に触れて、自分の目で、心で被爆の実相に触れ、物を考え、そして発言していただくということは、国際社会において核兵器のない世界をつくっていこうという機運を未来に向けて広げていく大きな力になるのではないか、このように考えて呼びかけている次第であります。

 こうした思いで、引き続き世界の指導者や若い方々に被爆地を訪問してもらうことを呼びかけていきたいと考えます。

吉良委員 大臣のお考えにはもう全く異存はありませんので。

 先ほど言いましたように、現在、近い未来ではなかなか難しいと思いますけれども、先ほど私が申し上げたことを外務省全体としても考えていただければ、このように思っております。

 もう一点、条約審議に、各論に入る前に、G7のことについてです。

 これも私の一方的なお願いになりますけれども、私の前々回の質問で、今は価値観外交を前面に押し出す時期ではないのではないかという話をさせてもらいました。前回の委員会でもやはり、同僚の大島敦議員が同じように価値観外交についての疑問を呈したと思っています。

 G7については、事務方の努力で、アジェンダ設定から声明の内容に至るまで、もうほとんどが下準備されているというふうに思っておりますが、私が、前々々回かな、申し上げたように、テロ対策というものも今回の大きなアジェンダになってくると思いますけれども、その際に、自由と民主主義、これを前面に出して、これを共有する人たちが中心になってというような考え方ではなくて、多様性を認める、多様性の尊重、特にそれぞれの国、民族の歴史、文化、伝統を尊重していくということが世界平和であり、テロの将来的な撲滅につながるというようなことを、ぜひG7の中では提起していただきたい、このように思っております。

 これはもう一方的に申し上げるということで、大臣の答弁は難しいと思いますので、ぜひ聞いておいていただければと思っています。

 それでは、条約の中身について議論をしたいと思います。

 まず最初に、根本的なことですけれども、日独租税協定、また日・チリ租税協定両方にかかわることでありますけれども、投資所得に対する源泉地国課税というものが、源泉地国の恒久的施設を通して得た事業利得に対して源泉地国の課税権を認めるようになったその経緯、そしてその背景にある考え方、哲学についてお聞きしたいと思います。

黄川田大臣政務官 まず、一般的なお話をさせていただきますと、租税条約の国際標準であるOECDモデル租税条約では、源泉地国が課税できる所得の範囲を限定することにより二重課税を回避しております。

 委員お尋ねの事業利得については、源泉地国に支店等の恒久的施設がない場合には源泉地国での事業はまだ本格的ではないと考えられる、このため、恒久的施設がある場合に限り、当該恒久的施設に帰属する利得に対して源泉地国の課税権を認めることとしております。

 なお、居住地国と源泉地国両方において課税がなされる場合においては、居住地国においてこのような二重課税を回避するための調整がなされております。

 我が国がこれまでに締結した全ての租税条約において同様の事業利得に関する規定を設けております。今後も、租税条約を締結するに当たっては、同様の規定を設けるよう交渉していく考えでございます。

吉良委員 それでは、日独租税協定の中で、今黄川田政務官から話のあった源泉地国課税について、OECDのモデルとしてもそのことを認めているということでありますけれども、今回、源泉地国課税の限度税率が下げられるということになったわけですけれども、下げる方向になった背景についてはいかがでしょうか。

宮川政府参考人 お尋ねの日独租税条約の件でございますが、ドイツにつきましてはOECD加盟国であります。基本的にOECDモデル租税条約に即した内容といたしました。

 具体的には、第一に、親子会社間の配当所得について源泉地国における低い税率、五%での課税をより受けやすくし、さらに一定の場合には源泉地国における免税を導入いたしました。また、第二に、利子所得につきましては源泉地国課税の限度税率を設定せず、原則免除といたしました。

吉良委員 もう少し突っ込みたいところがあるんですけれども、最初に費やしてしまって時間がなくなりましたので、そこの突っ込みはやめさせてもらいます。

 今答弁の中であった本支店間の内部取引ということでありますけれども、これをより厳格に認識して課税対象とする、こういうことが今回の条約の意図に入っているというふうに思っています。

 私自身も商社に勤めていて、特に米国に駐在しているときというのは、米国会社と、米国会社ももちろん現地法人なんでありますけれども、それと東京本社との取引の際に、当時はよく移転価格とかいう言い方をされておりましたけれども、それで非常に実務的にも苦労した経験があります。

 そういう意味で、本支店間が、ある意味では意図的にどちらかに多くの利益を持っていく、または持ち帰るということを避けるために独立企業原則というものを設けているんだというふうに思いますが、その定義等についてはもう問いません。

 各論で恐縮でありますが、輸出入取引の中の建て値、どういう通貨で取引をするかということについて、本支店間で、親子間で円なら円で取引をする、米ドルなら米ドルで取引をするということを決めること、これは独立企業原則にのっとっていると言えるのかどうかについて答弁いただきたいと思います。

田中政府参考人 お答えいたします。

 外国の本店と日本の支店との取引、いわゆる本支店間取引が独立企業原則にのっとっているかどうかということにつきましては、本支店間取引が独立した事業者間の通常の取引条件に従って行われているかどうかということにより判断いたします。

 一般論として申し上げれば、取引を自国の通貨建てで行う場合、取引の相手側が為替リスクを負担することになりますが、独立企業原則のもとでは、こうした為替リスクをどちらが負担するのかも取引条件の一つとして考慮した上で取引価格が決定されるものと考えられます。

 いずれにいたしましても、本支店間取引が独立企業原則にのっとって行われているかどうかは、個々の取引の条件に照らして判断する必要があるということでございます。

吉良委員 今そのような答弁でありました。

 一般論としては、今の答弁で間違いないんだろうと思いますけれども、資料をお手元に二枚配付させてもらっておりますので、ちょっと見ていただきたいと思います。

 一つは、貿易取引通貨別比率(平成二十二年下半期)というもの、もう一つは、同様の資料でありますけれども、平成二十七年の下半期というものであります。

 平成二十二年は、まだ円高の時期でありますけれども、見ていただければわかるように、世界的な平均でいいますと、これは輸出ですけれども、米ドル建てが四八・九%、日本円が四一%。アジアに限ってみれば、日本円がトップに躍り出て四九・二%、米ドルは四八・七%になります。一方、輸入を見た場合、世界平均で、米ドルが七一・七%、円は二三・六%。アジアで見ても、米ドルはほとんど変わらず七一・五%、円が二七%であります。

 それから、二十七年も一緒に見ていただきたいと思いますけれども、二十七年になると円安が進んできております。そうなってくると、日本からの輸出についての米ドル建ては五三%、五年前に比べて五%ふえています。そして、円建ては三五・五%、六%も減少しています。

 今は企業が外貨を保有できるようになった。米ドルポジション、今どれぐらいあって、どういうポジション調整にしようかということを企業が意思決定できるようになっている。

 同時に、アジアを中心に、日本企業も世界的なサプライチェーンを構築しておりますので、ある意味では、さっき言った自分の外貨保有のポジションを見ながら、そして、その当時の為替を見ながら、どの通貨で取引をするのが最もその企業にとって有利かという判断をしていることになります。そのことも、通貨建ての比率が変わってきているということでも十分想像がつくわけですし、実際それをやっているというふうに聞いております。

 ですから、私自身は、日本企業が今言った親子間のときにより有利になるような通貨を選んで契約をするということは、基本的に何の問題もないし、独立企業原則にものっとるんだろうとは思うんですけれども、一方で、本来、独立企業原則というのは、そういう意図的なものを排除して、極めて客観的に、誰がどう見ても納得がいく、そういう基準なんだろうというふうに思うんですね。

 先ほども答弁がありましたように、私ども貿易をする際に何が一番大きなリスクかというのは、誰が為替のリスクを負って、そのヘッジをどこでどうするのかなんですね。自国通貨でやれるのは一番いいに決まっているわけです。しかも、それが親子であればわざわざ為替リスクを、親であれ子であれ、負う必要がないわけですから。そういう意味で、私は、今の日本企業の動き等を支持するわけでありますけれども。

 一方では、通常、親子間ではない企業と契約をする際にはどの通貨でやるかというのはまた一番大きな交渉事でありまして、それを、ある意味で、親子間ではそのまま、その企業グループにとって最もいい通貨で決められるということについて、本当に企業独立原則にのっとっているのかなということを再確認したいのであります。

 もう一度答弁をお願いします。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたとおり、取引を自国の通貨建てで行う場合、取引の相手側が為替リスクを負担することになるということでございますので、独立企業原則のもとでは、こうした為替リスクをどちらが負担するかということも取引条件の一つというふうに捉えまして、他の、一般に独立した企業間が契約を行う際の条件等も考慮した上で取引価格を決定させていただくというふうに考えております。

 以上でございます。

吉良委員 租税協定には直接かかわりはないのでありますけれども、今委員の皆さんにも見ていただいた貿易取引通貨別比率、これを見てちょっと私が一点指摘しておきたいことは、今アベノミクスは、ある意味では、円安誘導とまでは言いませんけれども、異次元とも言われるような金融緩和によって事実上円安誘導をしています。

 でも、この数字を見ていただきたいと思います。平成二十二年下半期のこれを、再度、もう一回見てください。

 日本からの輸出については米ドルがほぼ四九%、輸入が七二%、差し引きすると二三%、これが、輸入における米ドルポーションが残るわけです。仮に輸出入が同じ額だったとしたときに、合算して、差し引きすると、輸入におけるドルポーションが二三%残る。

 輸入ですから、そして米ドル建てですから、円をドルにかえて払わなければいけない。そのときに、国富の流出はどちらが大きいのか。ましてや、ここしばらくずっと、輸出よりも輸入の方が多いという状態が続いているわけです。輸入における米ドルポーションは、二三%どころかもっと大きくなります。これが、円高がいいのか、円安の方が国富の流出という点においてはどちらなのかというのは、明らかだと思います。

 まあ、円安、円高、どちらがいいのかということについては、例えば、今観光客で沸いていますけれども、インバウンドがふえるとか、ただ貿易だけではないそういう部分もありますので、一概に、円安がいい、円高がいいということは差し控えますけれども、今言いましたように、少なくとも、貿易において、今の日本の実情を考えたときには、米ドルポーションが輸入として残る、これについては、円高の方が少なくとも国富の流出は少ないということについては指摘をしておきたいというふうに思います。

 もう時間がなくなって、いろいろ政府委員の方に来ていただいて大変恐縮だったんですけれども。

 最後に、日独租税協定、そして日・チリ租税協定、両方にもかかわることなんですけれども、源泉地国課税についての配当課税の限度税率、それから利用料の限度税率というものは、一体どういう考え方、背景で決まっているのか、そこについてお答えいただきたいと思います。

宮川政府参考人 お尋ねの限度税率の水準に至った考え方、背景についてでございますが、我が国が租税条約を締結するに当たりましては、二重課税を回避する、そして、国際的な投資、経済交流を促進するという基本的観点から臨んでおります。

 したがいまして、配当、利子、使用料といった投資所得に対する源泉地国の限度税率を可能な限り引き下げるという方針としております。

 その上で、租税条約の具体的な内容につきましては、第一に相手国との経済関係、第二に日本及び相手国がほかの国との関係で締結している租税条約の内容等を総合的に勘案いたしまして、相手国との交渉の中で合意するようにしてきております。

 以上でございます。

吉良委員 もう時間が来たようなので、ちょっと一点だけ。委員長、恐縮です。もう短目に。

 日・インド租税協定の中で、利子免除対象機関をふやす、JICA、JBIC等が入ったということ、これは非常にいいことだと思っていますが、外務省に、今後のこととしてお願いがあります。

 ODA案件で日本の企業が受注をした際に、当該国における付加価値税があった場合、最終的にはODAの取り決め上還付されるというか、免除されることにはなっているんですが、一時的には、立てかえてといいますか、払うんですね。いずれ還付されるということになるんです。

岸委員長 吉良委員、時間が過ぎておりますので、もうおまとめください。

吉良委員 はい。

 私ももう相当実務的に苦しんできましたけれども、途上国になれば、いつ返ってくるのか、またその手続が、交渉が物すごく大変なんです。その間の金利負担はその受注企業がしなければならないんですね。

 このことというのは大変な負担になりますので、ぜひ、この利子の免除とあわせて、そういう付加価値を一時的に課せられるのであれば、付加価値を最初から免除してもらうということについても相手国から同意を取りつけていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

岸委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも、三カ国の租税条約に関連して質疑させていただきます。

 まず、そもそも、我が党としても私自身も、租税条約を結んでいくべきだというのは賛成でございますし、どんどんやっていただきたいというのは大前提にございます。ただ、細かいところを含めまして、まず全体像のお話を伺った上で、細かいところを伺っていきたいというふうに考えているんですが。

 今回の三カ国の条約ですけれども、いずれも、租税条約をそもそもなぜ結ぶかというところに、二重課税を防ぐというのが大きな目的の一つでございますので、そのための規定がもちろん入っている。

 まず、この二重課税がそれぞれ三カ国でどれだけ起きているのかというのは、額等を含めて客観的な把握ができていらっしゃるんでしょうか。それぞれの国で現状どれぐらいの金額の二重課税が発生していて、そして今回の改正でそのうちどれぐらいの回避ができるものなのかというのは、通常、審議に当たって純粋に気になるところだと思います。そのあたり、まず外務省、お答えいただけますでしょうか。

宮川政府参考人 お尋ねいただきました三条約についてでございますが、三条約いずれにおいても、源泉地国の課税対象所得の範囲や限度税率を確定する規定が盛り込まれております。また、二重課税を居住地国において除去することや、条約に適合しない二重課税が生じた場合の相互協議について規定されております。これらによって二重課税の回避が図られるわけでございます。

 具体的にどの程度の二重課税が生じていて、今回の条約の締結によってどの程度それらが回避されるかを、金額で現時点で定量的にお示しするのは、各企業の経営の御判断がそれぞれございます。そういった要因に左右されるため、なかなか難しいのが現状でございますが、近年締結いたしました租税条約の実績を見ますと、相手国に対する直接投資の額、もしくは相手国に対する日本の進出企業の数というのは、条約の発効前と発効後を比べますと増大しております。日本企業にとって、二重課税の回避を含む確実な経済的メリットがあったものと認識しております。

丸山委員 今のを客観的に聞いていて、やはり数字なり客観的な資料がないと、本当に結ぶべきかどうかも含めて、わかりにくいと思うんですね。

 さっきの、例えば例で出された、直接投資の額が条約を結ばれた後と前で伸びているんだという話もありましたけれども、統計上、その因果関係があるのかどうかがわからなければ、果たして、その条約を結んだからふえたかどうかというのは、客観的には言えないですね。

 恐らくその国との関係で二重課税があるだろうと。だからこそやらなきゃいけないというのはわかるんですが、しかし、国として、国家として、あるだろうじゃ私はまずいと思っていまして、その国と結ぶ上で、どれぐらいの額、それは一円単位で聞きたいわけじゃなくて、どれぐらいの、億単位なのか何十億単位なのか、それともほとんどないのかぐらいは、やはりある程度持った上で、そしてその条約を結んで、それによってというならわかるんですけれども、それなしに結んでいかれているということに対しては、少し気になるなというのが、最初、質疑の前に、外務省さんとやりとりさせていただいたときに感じたところでもありますし、今改めて、正式に答弁いただいて、感じるところでございます。

 現状としては、ないということですけれども、でも、客観的に捉えていくというのは国民の皆さんにとっても大事なことだと思うんですけれども、何かできないのかどうかということと、検討も含めて、ちょっとお伺いしたいんですが、どうですか。

宮川政府参考人 今後のことでございますが、政府としても、先生御指摘の点を踏まえまして、租税条約締結による経済的効果を何らかの形でお示しする方法を検討してまいりたいと思います。

 御参考までに、対外直接投資について、オランダの例を申し上げますと、二〇一一年の発効後、二〇一三年にかけまして倍増、九八・九%の増加という数字が手元にございます。

丸山委員 ぜひやっていただきたいと思います。

 オランダの例を挙げていただきました。もちろん条約も関係するのかもしれませんけれども、例えばいろいろな要因が多分出てくると思うんです。統計学の中で基本だと思うんですけれども、その要因の因果関係というものの説明が難しいかなと今のお話ありました。例えばオランダだったら、景気動向によってもそれは変わってくるでしょうし、オランダじゃなくても、例えば日本の国との関係だけじゃなくて、他国との関係上、戦争だったらどうかとか、そういう状況だとか、因果関係の分析も含めて、ぜひとも、経年的に上がったというだけじゃなくて、しっかりやっていただかないとわかりにくいかなというのは率直に感じたんですけれども。

 しかし、何らかの形で検討していきたいということでございますので、しっかりやっていただきますようお願い申し上げます。

 そういった意味で、租税条約、決して、最初に申し上げたように、けちをつけたいわけでもないですし、しっかりやっていただきたいというのは一緒でございます。お願い申し上げます。

 租税条約に関連して、条約、直接ではないですけれども、もう一つ。

 二重課税を回避していくというのが一つの目的です。もう一つが大きな目的として、やはり税逃れを防いでいくというのも租税条約の大事な目的の一つだと思います。

 そういった意味で、昨今、いわゆるパナマ文書に関し世間をにぎわせております。今月に正式なものが出るんじゃないかという報道もあるんですけれども。まず、このパナマ文書については、実はきのう、財務委員会で財務大臣にはお伺いしているんですが、外務省としても正式にお伺いしたくて、パナマ文書に対して、外務省のまず見解を、どう思っていらっしゃるか、見解はどうかということと、そして、いわゆるタックスヘイブンにおける租税回避というのが国際的にも今議題に上がっているところだと思うんですけれども、これについて、各国とどのように協力体制を組んでいかれるのか、外務大臣、お答えいただけますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、パナマ文書ですが、この全容については、今現在、まだ全て明らかにはなっていないと承知をしています。聞きますと、五月十一日にも、国際ジャーナリスト連合、こういった組織がまた情報を提供するというようなことが予定されているとも聞いています。今後ともこうした動きをしっかり注視して、パナマ文書について、実態を把握して、政府としてもしっかり考えていかなければならない、このように思います。

 そしてタックスヘイブンについてですが、タックスヘイブンによる租税回避に対処すべく、OECDあるいはG20等の場では、BEPSプロジェクトや金融口座情報の交換に関する議論、こういった国際的な協力が行われています。日本としましても、こうした国際的な協力の議論に積極的に参画するとともに、タックスヘイブンとされる国、地域を含め、各国に関係機関の決定、勧告及び提言の確実な国内実施を働きかけるなど、今後ともリーダーシップを発揮していきたいと思います。

 それに関しまして、四月二十日に日・パナマ首脳会談が行われました。その際に、OECDが策定した金融口座の情報交換のための国際基準へのパナマのコミットを確認しました。パナマがこれをコミットするのは初めてということでありますが、こうしたこととともに、両首脳は、自動的情報交換の規定を含む日・パナマ租税情報交換協定の正式協議を早期に開始する、こういったことについても合意をしているということであります。

丸山委員 報道ベースで見るところでは、日本人らしき名前もリストの中にあるということでございます。今後、出てきた中で政府として対応されていくということだと思うんですけれども。

 日本人のそもそものお国柄というか感覚として、やはり、しっかり税金は納めなきゃいけないとは皆さん思っていらっしゃいます。しかし、公平性があるかどうか。特に累進課税なんか見ても、お金持ちの方からもしっかり取ってほしいというのが、恐らく国柄でそういう制度になっていると思います。そういった意味で、お金持ちの方が税逃れをしているんじゃないかというところに対しては、かなり国民の皆さんも敏感に見ていらっしゃると思いますし、関心を持っていらっしゃると思います。

 節税ではなく、もし脱税みたいな形で法逃れというものがあるのならば、それはしっかりと取り締まらなきゃいけない、それは国税庁でございますけれども、取り締まらなきゃいけないと思います。そして、法に抜け穴があるのであれば、それが公平性に資するものかどうかをしっかり検討していく必要性もあると思います。

 これは外務委員会というよりは財務委員会の方で質疑していきたいんですが、しかし、そうした中でも、外務省の役割、このパナマ文書においては、国と国との関係で非常に大事な役割を担っていただくことになると思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 そして、今回、三カ国との租税条約が本日、質疑でございます。

 これまでどれぐらいの国と租税条約を結んでこられたのかというのを調べますと、ちょっとほかの国に比べて少ないんじゃないかなというのを率直に感じたところです。

 例えばフランスなんかは、調べた資料では百四十四カ国ぐらい、イタリアは百十六、カナダは百十八とか、主要国は軒並み百以上結んでいる国も多々ある中で、日本は六十から七十ほどだというふうに聞いているんですが、まず、これが正確かどうかも含めて、もし数字があれば教えていただきたい。日本がどれぐらい、今結んでいるもので、それがどうなのかというのも、客観的な数字がもしあれば。

 そうじゃなくても、そもそもの、日本として、政府として、この数についてどう捉えているのか。多いと捉えているのか、少ないと捉えているのか。現状についての政府の見解をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 我が国が締結している租税条約ですが、数からいいますと六十五となっています。御指摘のように、数だけ比べますと、他の主要国と比較して必ずしも多くはないと認識をしております。

 ただ、しかしながら、相手国との経済関係の度合いを初めとする事情を考慮しつつ、租税条約ネットワークの拡大に努めてきた結果、そのネットワークは我が国からの対外直接投資先の九割以上を既にカバーしている、こうした実態にもなっています。

 また、政府としては、租税条約の新規締結、もちろんこれは重要だとは思いますが、これのみならず、既に租税条約を締結している国との間で、現在の経済関係を踏まえて既存の租税条約を見直すこと、これも重要だと認識をしております。締結した条約の数のみを他国と比較して租税ネットワークの実効性を評価するのは必ずしも適切ではないと考え、新規締結と既存の条約の改正、この両方に積極的に取り組んでいく、こういった姿勢が重要ではないかと考えます。

丸山委員 確かに、改正も含めてやっていただく必要があると思います。

 直投の九割を押さえているというお話でしたので、これをどう上積みしていくかとともに、内容の充実を改正も含めて図るというのは正論だと思いますし、しっかりやっていただきたいんです。

 一方で、貿易とかを見ても、主要国、例えば十カ国ぐらいで半分以上を占めるのが日本の特徴だったと思うので、そういった意味で、数を全く意識しないというのも変だと思います。

 もう一つは、先ほどオランダの例を挙げていただきましたけれども、今の外務省の見解だと、オランダは、条約を結んだことで投資額がふえたということでございますので、今は少ない国でも、結ぶことでふえるというのが、多分政府としての見解だと思います。

 そういった意味で、潜在的な、伸びる需要がある、そして潜在性があるというところは先駆けてやっていくというのは、恐らく、この国を発展させる上でも、経済発展のためにも非常に重要だと思います。そういった意味で、恐らく、ほかのフランスやイタリアというのはどんどん結んでいるんじゃないかなというのが、背景として私は思っています。

 数だけにこだわるべきじゃないというのは一理あります、おっしゃるとおりです。しかし、数もしっかりと見ていただきたいなというのが率直なところでございますので、よろしくお願い申し上げます。

 残りの時間で少し細かいところに入っていきたいんですが、その前にもう一つ、今回の三つの条約ではないんですが、最近ニュースで、ベルギーとの租税条約の交渉の発表があったんですけれども、その記事を見ました。ちょっと先ほどの続きになってしまいますが、その他の国についての進捗状況、言える範囲でお伺いしておいて、細かいところに移りたいんです。

 今九割を押さえているという話がありましたけれども、特に、政府として、次にどこの国との交渉に向けて進むのが重要と考えているのか、その他の国の進捗状況も含めまして、言える範囲で構いませんので、教えていただけますか。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、租税条約は、企業の海外展開に向けた環境を整えるものでございまして、日本企業支援のための重要なツールであると考えております。

 こうした考え方に基づきまして、我が国は、近年、租税条約のネットワークの拡充に取り組んできておりまして、過去七年間で、二十三本の二国間租税条約、一本の多数国間租税条約を締結してまいっております。

 さらに、現在も、経済界から要望が高いアジア地域、それから中南米地域、こうした国を含む多数の国との間で、租税条約正式交渉開始の可能性を視野に入れまして、財務当局間の協議を行っているというところでございます。

 引き続き、新規の租税条約の締結、既存の租税条約の改正のための交渉に積極的に取り組み、租税条約ネットワークのさらなる拡充を図ってまいりたい、このように考えております。

 なお、先ほど申し上げました、当局間の協議の具体的な相手国につきましては、相手国との信頼関係の観点もございまして、現時点におきましては具体的には申し上げられないことを御理解いただければと思っております。

 以上でございます。

丸山委員 外務大臣、参議院本会議があるというふうに聞いていますので、御退席いただいて結構でございます。

岸委員長 外務大臣は御退席いただいて結構です。

丸山委員 この後、細かい内容でございます。外務大臣、御退席いただいて構いませんし、続きをここからやっていきたいんです。

 具体的内容はもちろん答えられないというのは当然だと思います。しかし、その前に質疑の中で言っていただいたように、いろいろな国とやるということと、そして、要所を絞って、改正が必要な国とはやっていくという方針で、しっかりとこの先もやっていただきたいと申し上げます。

 では、細かいところへ入っていきたいんですが。

 まず、チリとの租税条約で、徴収共助の規定が今回は盛り込まれていないと思うんですが、この理由をまずお伺いできますでしょうか。

高瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、条約の具体的な内容につきましては、相手国との交渉の中で合意されてくるものでございます。

 その上で、日・チリの租税条約につきましては、チリ側が徴収共助を実施するためには国内法令の改正等が必要であるということでございました。これを踏まえまして交渉を行った結果、今般の条約には徴収共助規定は導入しないことといたしたところでございます。

 今般の条約ではこの規定を導入しておりませんが、政府としては徴収共助制度の導入を可能な限り積極的に進めていきたいと思っております。

 以上でございます。

丸山委員 条約で、交渉で、相手国があることでございます。今のお話は明確で、相手国が国内法の改正が要るということで、恐らく難色を示されたんだろうということです。こちらとしては要求したけれども今回としては入るに至らなかった、今後ともこれはしっかり言っていくという、すごくわかりやすい御答弁だったと思います。

 もう一つ、細かいところでいえば、インドとの租税条約の改正の方でございます。こちらにも、例えば仲裁規定が盛り込まれていないと思います。これの理由についてはいかがですか。

梨田政府参考人 インドとも、やはりチリと同様、交渉の結果こういうことになりました。

 大きな理由としては、仲裁規定というものが今までインドが結んでいる租税条約の中に一切盛り込まれていない、初のケースということで、なかなかインド側の理解を得るということに時間がかかるということで、今回は仲裁規定を盛り込まなかったという経緯がございます。

丸山委員 インドとの条約の仲裁規定のケースでは、国内法云々というよりは、相手国側がほかの国と結んだことがない、なので日本だけ特別にというのは交渉の中で難しかったということだと思います。そういったケースも恐らくほかのところでもあって、その交渉の中で落ちていったところだと思いますけれども、では、それは今後は、改正の中では引き続き日本側としては入れていきたいということは変わらないし、求めていくということでよろしいんですか。

梨田政府参考人 インドについて、再び改正の時期を今申し上げることはできませんけれども、仲裁制度というのは非常に役に立つ、事案の迅速な解決に資する制度だと考えておりますので、先生御指摘のとおり、これからは仲裁手続をなるべく新規あるいは改正の時期に盛り込んでいきたいという考えを持っております。

丸山委員 よろしくお願いします。

 今回のチリとインドの租税条約なんですけれども、いわゆるOECD承認アプローチ、AOAが盛り込まれていないなというのが一番気になるところなんですけれども、これについては全体的な話になるのかもしれませんが、どのように御回答になりますでしょうか。

梨田政府参考人 AOA、OECD承認アプローチという内容でございますけれども、これは、租税条約において、進出先の国は相手国企業に対して支店や工場といった恒久的施設がなければ課税することができないというのが原則であって、かつ、その課税対象というものは、恒久的施設から出てきた帰属する所得のみに課税するということで制限している、これが原則でございます。これがAOAルールでございます。

 これをより明確にする観点から、二〇一〇年にOECDモデル租税条約が改定されました。AOAというものの定義をより明らかにするということで、これを受けまして、日本は平成二十六年の通常国会で、まず最初に英国との租税条約改正議定書において、新たな規定であるOECD承認アプローチ、AOAを初めて導入しました。また、今回、今御審議いただいているドイツでも導入するということで決めたところでございます。

 率直に申し上げまして、チリ、インドとは、このAOAというのが非常に先進的な規定でございまして、両方の国ともAOAは、先ほど申し上げましたとおり、彼らも一回もまだやったことがないということなので、将来の課題として捉えていきたいと思っております。

丸山委員 時間が来たので、終わります。

岸委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時四分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時十六分開議

岸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。篠原豪君。

篠原(豪)委員 よろしくお願いします。民進党の篠原豪でございます。

 さて、初めに全体について伺いたいのですけれども、岸田大臣が百八十六回国会で、租税条約、投資協定さらには社会保障協定は企業の海外展開を推進するに当たって環境を整備する際大変重要なツールであると認識をしている、こうした条約あるいは協定の交渉については経済関係等の二国間関係そして経済界からの要望、相手国の制度を総合的に考慮し選定し交渉を行っているというのが現状で、これからも優先度の高いものから順次交渉を行い日本企業の海外展開に資する総合的なビジネス環境の整備に努めていきたいと考えておりますと述べられております。

 経済界からは、繰り返し、ビジネス環境の整備、改善を図るため、協定インフラと言える投資協定、社会保障協定そして今回の租税協定、この三つについて、引き続き締結促進をお願いしたいというふうに要望が出されています。

 そこで、このような経済界からの要望を踏まえて、日本企業の海外展開に資する総合的なビジネス環境整備のために、今後、租税条約だけじゃなくて、投資協定、社会保障協定の、経済関係の条約締結に向けて、どのような方針、戦略を持って取り組んでいくおつもりか、まず最初にお伺いします。

岸田国務大臣 御指摘のように、投資協定、社会保障協定そして租税条約、こうしたものは、ビジネス環境を整備し、日本企業を支援するために大変重要なツールであると考えています。

 経済界からもさまざまな要望が出されているわけですが、その上で、今後の方針としまして、まず、投資協定に関する取り組みとしては、残る主要な地域であるアフリカや中南米の国々との間でも積極的に交渉を進め、スピード感を重視し、協定の締結を加速させていきたい、このように考えています。

 租税条約についても、さらなるネットワーク拡大を図るとともに、既存条約を改定していく考えでおります。

 そして、社会保障協定については、相手国の社会保障制度における一般的な社会保険料の水準や、相手国における在留邦人及び進出日系企業の具体的な社会保険料の負担額等も踏まえて、優先度が高いと判断される国から順次交渉または協議を行っていく方針であります。

 いずれにしましても、交渉体制の強化、関係省庁間の連携、こうしたものを一層強化しまして、政府一体となって交渉を進めていきたいと考えます。

篠原(豪)委員 投資協定と社会保障協定は租税条約に比べて少ないということで、先ほど、アフリカ、中南米地域にこれから傾注して力を入れていただくということですので、ぜひしっかりとやっていただきたいと思います。

 次に、パナマとの租税情報の交換協定締結に向けたことについてお伺いいたします。

 租税条約は、国際的な二重課税を回避または脱税や租税回避行為等の対処によって、我が国の締結相手国との間で健全な投資、経済交流を促進することを主な目的としているものだと思います。他方で、我が国は、このような租税条約だけでなくて、租税に関する情報交換を主な内容とする条約をタックスヘイブンと言われている地域と締結してきているのだと思います。

 タックスヘイブンは、ちなみに言いますと、税率が他国に比べて著しく低いか課されない国や地域で、これは日本語ではいわゆる租税回避地と言われています。有名なところでは、パナマや英領バージン諸島、ケイマン諸島などがあるんだと思います。このタックスヘイブンに関して、二〇一六年四月公表されたパナマ文書、これはやはり世界的に注目をされているんだと思います。

 パナマ文書は、報道によりますと、パナマの法律事務所のモサック・フォンセカから流出した内部資料で、ドイツの有力紙である南ドイツ新聞の記者が匿名の情報提供者から情報を入手し、そして、同社も含めて世界各国の報道機関が加盟するICIJ、国際調査報道ジャーナリスト連合に提供して、約一年をかけてこれを分析した内容を、四月三日ですか、ホームページに公開したものだというふうに理解しています。

 流出したデータ量は新聞二千六百年分に相当する膨大なもので、同事務所が設立を手伝ったペーパーカンパニーの登記簿や顧客と交わした契約書類、電子メール、画像など千百五十万点もあるということで、これは非常に膨大だということです。パナマ文書で名前の挙がった政治分野の方々、もう五十カ国以上、百四十人に上っていて、資産隠しを疑われた国の首脳が辞任に至るなど、これはもう本当に波紋が大きく広がってきているんだと思います。

 先ほどの委員の質疑で少しありましたけれども、このパナマ文書が注目される中、本年の四月二十日に開催された日・パナマ首脳会談において、安倍総理は、国際的な租税回避問題に関して各国が国際的協調の枠組みの中で対応をすることの重要性をおっしゃられて、その一環として、OECDが策定した金融口座の情報交換のための国際基準へのパナマコミットメントを確認して、そして両首脳が当該情報交換に必要な自動的情報交換の規定を含む日・パナマ租税情報交換協定の正式協議を早期に開始することで合意したということは、先ほども外務大臣がおっしゃられたとおりだと思います。

 合意については御答弁されましたので、では、この協定締結に向けて、政府はどのような方針で臨んで、そして交渉に対してどのような見通しをお持ちなのか、岸田外務大臣にお伺いいたしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、四月二十日、日・パナマ首脳会談が行われ、委員御指摘のような合意に至りました。

 我が国は、国際的な脱税及び租税回避行為への対処並びにこれらを行おうとする者に対する抑止効果を幅広く確保するために、租税に関する情報交換ネットワークの拡充に取り組んでおります。

 パナマとの間の租税情報交換協定でありますが、これは、相手のあることではあるものの、今申し上げました基本方針に基づいて、可能な限り早期締結に向け取り組んでいかなければならない課題だと認識をしております。

 ぜひ、そういった方針に基づいて、精力的に交渉に臨みたいと考えます。

篠原(豪)委員 もうこれで世界が注目をしている、どこの国も本当に、先進国もこれからいろいろなことが起きてくるのかもしれませんけれども、日本としてもしっかりといろいろなことに対応できるように、こういう状態になっていますので、対応していただきたいと思います。よろしくお願いします。

 次に、BEPSプロジェクトに関する政府の対応方針についてお伺いをしてまいります。

 リーマン・ショック後に財政状況が世界的に悪くなっていって、近年、各国は、これは日本もそうだと思うんですが、より多くの国民負担を求めていくということになっていくんだろうと思います。

 その中で、グローバル企業が国際的な税制のすき間や抜け穴を利用した節税対策によって税負担を軽減している問題が顕在化をしてきたのが、このパナマ問題もそうだと思うんですけれども。

 租税回避の世界的な例を見てみますと、アメリカの多国籍企業である、あるコーヒー屋さんの英国法人においては、一九九八年に英国で事業を開始して以来、三十億ポンド、約四千五百億円の売り上げがあった。多額の損失が同時に計上されたため、法人税の納付額がわずか八百六十万ポンド。四千五百億円の売り上げに対して十三億円の納付額であったということであります。この会社は英国の議会に呼ばれて、結果的には二千万ポンドの法人税を支払うことになったというふうに聞いています。この支払いは法的な根拠がなかったものだというふうに聞いています。

 こういった問題に対応するために、OECD、経済協力開発機構の租税委員会が、二〇一二年の六月に、税源侵食と利益移転、いわゆるBEPSプロジェクトを立ち上げました。三年ちょっとたってから、二〇一五年九月にBEPSの最終報告書が取りまとめられており、そしてG20の財務大臣会合で報告がなされています。

 この最終報告書の公表を受けて、麻生財務大臣が、「BEPSプロジェクトの合意を着実に実施することを期待する。」そして、「日本としても、引き続き、実施に向け適切な対応をしていく。また、BEPSプロジェクトの成果が広く国際社会で共有されるよう、引き続き国際的な議論を先導し、途上国を含む幅広い国とOECDや関係する国際機関が協調するポストBEPS枠組みの構築に貢献していきたい。」との談話を公表しています。また、岸田外務大臣も、「多国間協定の作成という取り組みを行うということになった際には、ぜひ協力をしていきたい」というふうに発言をされています。

 他方で、経済界からは、過度の事務負担や情報開示等による課税リスクと手続のコストを増大させないように十分な配慮を要望したい、そして、BEPSのガイドライン実施においては企業実務を十分考慮した各国共通の実施規則、制度が整備されることが望ましいといった意見が出ております。

 そこで、きょうは財務副大臣にいらしていただいています。お忙しい中、ありがとうございます。

 このBEPSプロジェクトに関して、政府は、これまでの国際的な議論から、みずからの貢献をどのように評価しているのか。また、課税リスクと手続のコストを増大させないように十分な配慮を要望するといった経済界からの意見を踏まえて、今後、具体的にどのように議論を先導して進めていくおつもりかということについてお伺いさせていただきたいと思います。

岡田副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のBEPS、これを、日本政府として、まず、みずからどのように評価をするかというお尋ねがございました。

 これは、麻生財務大臣、かねてから非常に強い問題意識を持ってきたところでありまして、G20財務大臣会合においても強いリーダーシップを発揮してきたと存じますし、課税逃れの防止に向けた政治的な流れというものを生み出すことに貢献したというふうに考えております。また、財務省の浅川財務官が、OECD租税委員会の議長として議論を主導いたしまして、困難で非常に多岐にわたる議論を二年という短期間で取りまとめたということもございます。

 日本の貢献は客観的に見て評価されるべきものと考えておりまして、現に国際社会においてもそのような評価を受けているものと認識しております。

 また、経済界の御要望、御提言を踏まえた今後の議論の進め方という御下問がございました。

 BEPSの議論に当たりましては、課税の公正性、公平性の観点から、課税逃れは許されないという基本的な考え方を中心としながら、一方で、健全な経済活動を阻害すべきではないという点、また制度の円滑な執行を心がけるべきであるという点も含めて、これらのバランスに留意しながら、経済界からの意見も踏まえて議論をまとめてきたところでございます。

 今後、BEPSプロジェクトの成果を広範に実施するための取り組みを行っていくべく、今後とも日本として国際的な議論をリードしてまいりたいと存じます。

篠原(豪)委員 ありがとうございます。

 もう一つ、BEPSの行動十五。多国間協定の策定に関して規定がありまして、全加盟国が採用する中核的規定と加盟国が選択できる規定とで構成されています。つまり、多数国間協定の規定に従って、加盟国間の二国間租税条約の規定が部分的に改正または追加されるとしているわけです。

 この多国間協定の策定に関して、先ほど経済界からのお話はしっかりと聞いてという話もいただきましたけれども、経済界からは「課税強化の項目のみならず、紛争解決についても、ひろく関係国に成果物を共有するメカニズムとして機能することを期待する。」といった要望があるというふうに聞いております。これは経団連ですね。

 そこで、このような経済界からの要望を踏まえて、政府はどのように多国間協定の策定に協力し、またその議論に参画していくつもりなのか。これは、外務大臣及び財務副大臣にお伺いさせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 先ほども委員の方から御指摘がありましたような多国籍企業の租税回避に対応するために、BEPSにおいては勧告を行いました。租税条約上の特典の濫用の防止など一連の措置を勧告したわけですが、これらの措置の実施に当たり、世界には三千以上と言われる既存の租税条約があるわけですが、こうした三千以上の租税条約を個別に改正するということになりますと、これは膨大な時間を要することになります。よって、この多数国間租税協定の策定作業がOECD中心に行われているというのが現状です。

 これまでBEPSプロジェクトを先導してきた我が国としては、御指摘の紛争解決メカニズムの検討も含めて、この多数国間租税協定策定の作業をぜひ主導していきたいと考えます。

岡田副大臣 財務省といたしましても、経済界から紛争解決に係る御要望をいただいておることを承知してございます。租税条約に関連する紛争を解決するための相互協議手続をより実効的なものとすることは、予期せぬ二重課税を防ぎ、また企業の予見可能性を高める上で重要な取り組みというふうに認識をいたしております。

 したがって、租税回避防止のためのその他の規定と同様に、紛争解決手続の実効性を高めるということが重要と考えて、この多数国間協定の策定作業に積極的に協力をしてまいりたいと存じますし、現に日本は、多国間協定策定のためのビューロー会合、いわゆる運営会合に参加をしておりまして、いわばインナーと申しますか、そういう立場で積極的に努力をしてまいりたい、このように考えております。

篠原(豪)委員 よろしくお願いします。

 このBEPSプロジェクトについては、財務省の資料にあったんですけれども、その最終報告によりますと、この行動計画十二は、租税回避を抑制するとともに出現した租税回避スキームに速やかに対処するため、プロモーター及び利用者が租税回避スキームを税務当局に報告する制度、いわゆる義務的開示制度の策定について検討するというふうになっておりました。

 この義務的開示制度に関しては、我が国は、今後の対応として、各国が勧告を踏まえて所要の措置を講ずる、我が国においても勧告の内容を踏まえこの義務的開示制度の導入の必要性を検討するとしています。

 他方で、これはやはり経済界、関係してくるわけですから、これについて、導入を検討する際には、少なくとも租税回避を行うアグレッシブタックスプランニングに従事していない大多数の企業が事務負担を負わない制度とすべきである、仮にタックスプランニングの報告義務を我が国においても導入する場合には、報告義務をプロモーターに課すべきであるというふうな御意見が出ております。

 そこでお伺いします。

 義務的開示制度の導入に関しては、政府は、経済界からの意見を踏まえて、今後どのような検討を進めていくおつもりか。お伺いさせていただきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、義務的開示制度は、租税回避の抑制及び速やかな対処のため、税理士や会計士等のいわゆるプロモーター及び利用者が租税回避スキームを税務当局に報告する制度でございます。

 現在、米国、英国、カナダ等の国々で同制度が導入されておりまして、BEPSプロジェクトの勧告を踏まえ、我が国としても、制度の導入の可否を含め検討するということにしているところでございます。

 大企業や富裕層による課税逃れは、課税の公平性を損ない、納税者の信頼を揺るがす大きな問題と認識しておりまして、本制度を導入するかどうかは現時点では決まっておりませんけれども、本制度が課税逃れを抑止するために有力な手段であるということは認識しております。

 今後、仮に、本制度の導入について具体的な制度設計について検討するということになった場合には、経済界からの御意見も参考に、適正な課税と健全な経済発展、さらには効率的な執行という、さまざまな要素のバランスを勘案する必要があるというふうに考えております。

篠原(豪)委員 経済界からは、現場でやられている方々で、実際にそれが本当にどれぐらいの負担になるのかというようなこともいろいろとあると思いますので、そのプランをつくるときには、しっかりと、机上の何とかではなくて、実態に合った、ちゃんとしたものをつくっていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 次に、我が国政府の租税条約の締結方針について少し伺いたいんですが。

 締結の方針については、我が国の産業界のニーズや我が国課税権の適切な確保等の観点を総合的に勘案して、企業の海外展開の支援に資する租税条約のネットワーク拡充の取り組みを加速し、またその実現に向けて関係当局の体制強化を進めるというふうにしています。日本再興戦略に書いてあります。

 経済界からの要望としては、優先的に契約を望む国として、EPA、経済連携協定、投資協定を締結済みあるいは交渉中であるミャンマー、チリー、ペルー、モンゴル、アルジェリアなど、資源開発であるとかインフラ関連の大型プロジェクトを有する中南米、アフリカ諸国、また、台湾は経済関係が密接だという理由で挙げられています。加えて、租税条約締結国の中で、租税条約のより高水準化への要望を行う優先国として、インド、インドネシア、カナダ、韓国、シンガポール、タイ、ドイツ、中国、ブラジルなどが挙げられております。

 そこで、先ほどの委員のお話の中には、今、二重課税の回避、脱税及び租税回避等への租税条約が六十五の地域にとどまって、ネットワークが百近くあると。欧米に比べれば、例えばフランスであるとかイギリスというのは、英国は百カ国以上に既に達している、先進国の中でおくれをとっているという指摘があるので、ぜひ頑張っていただきたいと思うんです。

 経済界が、各国・地域の貿易・投資障壁の改善に関する提言の中で優先的締結を望む国に挙げている、今申し上げたミャンマーとかペルーとかモンゴル、アルジェリアといった国との条約の締結に関して政府は今どのように考えているか、お伺いさせていただきます。

梨田政府参考人 委員御指摘のとおり、租税条約の締結については、相手国との経済関係や、締結によって生じ得る効果などを総合的に考慮しながら進めてきています。また、新規締結のみならず、既に締結している条約のうち、経済関係の実態に即した内容のものとなるよう改正していく取り組みも重要です。

 今御指摘のような国につきましては、我が国との投資、経済交流の一層の促進に資する租税条約の実現が見込まれる場合には、条約の締結に向けた取り組みを進めていく考えでございます。

 ミャンマーは既に政府一丸となって取り組んでいるところでございますけれども、その他お尋ねのあったペルー、モンゴル、アルジェリアといった租税条約については、経済界から御要望をいただいていることは承知しておりますので、先ほど申し上げたような諸点を総合的に考慮しながら検討していきたいと考えております。

篠原(豪)委員 ミャンマーについては強く取り組んでいるということでしたけれども。これは三ッ矢先生が外務副大臣のときだったと思うんですけれども、ミャンマーには優先順位を高くしてやっていくんだということで特におっしゃられていますので、その交渉状況についてお伺いさせていただきたいと思います。

梨田政府参考人 お答え申し上げます。

 ミャンマーにつきましては、これまでも、累次の首脳会談あるいは外相会談などの機会を通じて、租税条約の早期締結に向けた働きかけを行っているとともに、財務当局間の意見交換なども行っております。

 御承知のとおり、昨今、ミャンマーは新政権がまた立ち上がったということもあり、改めて新政権にも働きかけを促進していきたいと考えております。

篠原(豪)委員 もう一点確認しておきます。

 先ほどの、租税条約のより高水準化への要望を行う優先国として挙がっているところの部分なんですけれども、これは具体的にはインドネシア、カナダ、韓国、シンガポール、タイ、中国、ブラジルと申し上げましたけれども、この高水準化への要望についても、今どのようになさっているのかということをお伺いさせていただきたいと思います。これは大臣にお伺いします。

岸田国務大臣 政府としましては、租税条約の新規締結はもちろん大事だと思っておりますが、それのみならず、既に租税条約を締結している相手国との間で、経済関係の実態に即した内容となるよう改正していく取り組みも重要であると認識をしております。

 高水準化への要望が寄せられている国ということで、今委員の方から、インドネシア、カナダ、韓国、シンガポール、タイ、中国、ブラジル、こういった国々を御指摘いただきましたが、こうした国に関しては、現時点で具体的に交渉を進めているわけではありません。しかしながら、中国、インドネシア等の国との間においては、国際会議等の場を利用して、租税条約を含む国際課税全般について意見交換を行っている、こうした状況であります。

 引き続きまして、新規締結と改正、両方に積極的に取り組んでいきたいと考えております。

 御指摘の国につきましても、交渉は行ってはおりませんが、こうした意見交換を行っております。積極的に意思疎通を図っていきたいと考えます。

篠原(豪)委員 これは提言が出たのが多分去年の十一月のことだと思いますので、まだこれからということだと思いますので、しっかりと頑張ってやっていただきたいなというふうに思っております。

 次にお伺いしたいのが、日本とインドの租税条約で、利子の免除対象機関を整備したということになっておりますので、その点について伺います。

 この日・インド租税条約の改正議定書は一九八九年に発効していて、二〇〇六年の六月、これが一部改正されておりまして、インドとの現行の租税条約の内容を改正するために、二〇一五年四月から政府間交渉を行って、今回の国会に提出されたというものであります。

 源泉地国、所得が生じた国における利子に対する租税の免除対象となる機関に、独立行政法人日本貿易保険、それとインド総合保険公社及びニューインディア保険会社が追加されるということになるというふうに聞いています。

 それで、日本輸出入銀行と海外経済協力基金が統合されてJBIC、株式会社国際協力銀行が設立されたことと、あと、国際協力事業団が組織再編されてJICA、独立行政法人国際協力機構になったことを受けて、対象機関の整備を行っています。

 ちなみに、JICAですけれども、二〇〇一年の十二月に行政改革推進事務局の特殊法人等整理合理化計画というので、長いですね、特殊法人である国際協力事業団を独法化するということが決定されて、二〇〇三年に発足したものです。

 JBICの方を見てみると、二〇〇八年十月に国際金融業務が政策金融公庫の国際金融部門として継承され、その前に輸出入銀行と海外経済協力基金の統合、二〇一二年の四月に発足しています。

 そこで、まず、二〇〇六年のインドとの間の租税条約改正において、対象機関の整備をその時点で、JICAは二〇〇三年ですから、行わなかったということについての理由をお伺いしたいと思います。

梨田政府参考人 委員御指摘のとおり、二〇〇六年の改正時点において、既に発足していた国際協力銀行及び国際協力機構について、既に組織再編、統合、名称変更が行われていたことは事実でございます。

 これを部分改正においてあえて行わなかったということは、それ以前に、組織再編、統合について、別途インド側に通知を行っておりました。そういう意味では、JICA及びJBICともども引き続き免税対象機関であることがインド側との間で確認され、実質的問題は生じていなかったということから、あえて二〇〇六年では行わなかったということが事実関係でございます。

 今回改めて、名称変更を今回の改正でお願いしているところでございます。

篠原(豪)委員 今、免税措置が適切に行われていたということだと思うんですけれども、十年以上経過している中で、これは本当にJICAとJBIC、当時の国際協力事業団、日本輸出入銀行そして海外経済協力基金、これについてしっかりと適切に行われていたのかということを、外務省と、あと財務省にも、ちょっと最後にお伺いをさせていただきたいと思います。

梨田政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたとおり、国際協力機構及び国際協力銀行につきましては、事前に日本側からインド側に通知を行ったことにより、利子免税対象機関であることを確認し、免税措置というものは継続して適切に行われたものと承知しております。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 今、梨田部長の御説明のとおりと認識しております。

篠原(豪)委員 済みません、最後に一つだけ伺ってもいいですか。

岸委員長 篠原君、もうまとめてください。

篠原(豪)委員 わかりました。

 一つ、気になっているのが、租税条約について、経済界からは日独については最優先でやってくれという話があったんですが、この改正要望から署名に至るまで七年間かかっております。

 これはどういうような理由でかかったのかということもあるんですが、やはりこういうものというのは時間がかかってしまっては、手を挙げられてから結構長い期間だと思いますので、もちろんいろいろな難しい交渉はあるということは承知していますけれども、これから、外務省もそして財務省もあわせて、こういう経済界の要望に対しては、しっかりとスピーディーに対応していっていただきたい、それも現実的にやっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

岸委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、日・ドイツ租税協定、日・チリ租税条約、そして日・インド租税条約改正議定書について質問いたします。

 これら三条約は、源泉地国における投資所得課税について減税ないし免税等を措置するというものとなっております。

 外務省の概要説明を見ますと、背景ということで、それぞれ、経済界から強い改正要望あり、あるいは、我が国経済界から租税条約の新規締結に向けて強い要望ありなどと特記をされております。

 そこで、岸田外務大臣に伺いますが、具体的には、経済界、いつ、どこから、どのような強い要望が出されてきたんでしょうか。

岸田国務大臣 政府として、経済界から受けてきた要望ですが、内容としましては、租税条約一般または個別の租税条約について、国際的な二重課税の排除、そして投資所得に対する源泉地国課税の軽減に資する、こうした理由から、締結あるいは改正、こういったものについて要望を受けております。

 そして、御質問は具体的にいつそういった要望を受けたのかということですが、まず、経団連からは、二〇一五年九月八日ですが、平成二十八年度税制改正に関する提言という要望をいただいています。日本貿易会からは、二〇一五年九月十六日、平成二十八年度税制改正要望という要請をいただいています。そして、日本商工会議所からは、二〇一五年九月十六日、平成二十八年度税制改正に関する意見という要望をいただいています。また、貿易・投資円滑化ビジネス協議会からは、二〇一五年十一月十三日、各国・地域の貿易・投資障壁の改善に関する提言、こうした要望が寄せられております。

笠井委員 一連の租税条約の背景に、投資に係る税のコストの低下を求めるという、日本の経済界、財界の強い要求があるということであると思います。

 もう一点ですが、脱税あるいは租税回避行為の防止にかかわってであります。

 先ほど来の答弁、質疑もあったので改めてここでは質問いたしませんが、タックスヘイブンに関する秘密ファイル、パナマ文書は、多国籍企業による税逃れの一端を暴いているということだと思います。

 OECDのBEPS、税源侵食と利益移転対策の考え方というのは、私も見ましたが、経済活動が行われたところで課税する、これが基本になっている。欧州には一般的反租税回避ルールが既に法律に取り入れられているわけでありますが、日本でも、最終報告書の内容を、やはり法律に書き込む、あるいは条約にも取り込んで、意図的な税逃れは違法ということを明確にすべきだと思います。

 また、欧州委員会は国別報告書の公開に踏み切ったわけでありますが、日本においても、少なくとも、日本企業がどこのタックスヘイブンに投資して、どんな事業をしているかの公表は義務づけなければならないというふうに考えます。これらのことは強く指摘をしておきたいと思います。

 なお、TPP協定については、いろいろ議論がやられてきたわけですが、日本共産党としては、今国会継続審議ではなく、きっぱりと廃案にせよと明確に求めているところであります。

 そこで、別の問題を質疑したいと思うんですが、多国間の共同訓練について伺いたいと思います。

 防衛省統合幕僚監部の去る四月二十二日付の報道発表によりますと、来月五月二十二日から六月四日の間、モンゴルで、多国間の共同訓練、GPOIキャップストーン演習、それからカーンクエスト16ということに参加するというふうにあります。

 若宮防衛副大臣、お越しいただいていますが、キャップストーン、カーンクエストというのは、何を目的とする訓練で、それぞれの訓練、演習に自衛隊はどの部隊から何名参加するということになっていますか。

若宮副大臣 お答えさせていただきます。

 今、委員が御指摘になりましたように、本年の五月の二十二日から六月の四日の間、本来、二〇〇三年から、委員御承知のとおりだと思いますが、アメリカとモンゴルとの共催ということで始まりました共同演習でございますけれども、カーンクエストに参加をする予定でございます。本年、今もお話しになりましたこのGPOIキャップストーン演習を兼ね合わせまして実施をする予定でございます。

 この訓練に、陸上自衛隊及び統合幕僚監部から約五十名が参加をする予定でございまして、国連PKOに係る指揮所訓練や実動訓練等を実施する予定でございます。

 また、本訓練の参加ということでございますが、自衛隊の国連平和維持活動にかかわります各種能力の向上を図るとともに、これは参加国、かなりの数参画してまいりますので、相互理解の増進や、あるいは各国との信頼関係の強化に資するものであろうというふうに考えるところでございます。

 特にことし、このカーンクエストとGPOIキャップストーンの演習を兼ねてやるということでございますけれども、これはアメリカが、平成の十六年、二〇〇四年でございますけれども、国連PKOへの支援要請というのはかなり増大をしてまいっている状況にございました、こういったことから、世界で国連PKO要員を育成しようということを目的として、委員御指摘のGPOI構想というのが立ち上げられたのは御承知のところだと思いますが、その一環といたしまして、平成十八年、二〇〇六年より、その年のGPOIの計画を総括するために、キャップストーン演習というのを実施いたしているところでございます。

 今回、このカーンクエストというのがGPOIのキャップストーン演習を兼ねるということになっておりますが、この趣旨といたしましては、カーンクエストの演習項目の実施を通じまして、本年のGPOIの計画を総括しようということが目的ということでございますが、その背景の詳細等については、私どもはお答えする立場にないので、御理解いただければと思っているところでございます。

 以上です。

笠井委員 そのカーンクエストに約五十名ということでありましたが、その派遣要員の内訳はどうなっていますか。

若宮副大臣 失礼しました。

 カーンクエスト16には、中央即応集団からの教官の要員として八名、それから東北方面隊から一個小隊規模の部隊を約四十名ほど、計大体五十名をめどに実動訓練に派遣しますとともに、指揮所訓練には中央即応集団から二名が参加するということでございます。

 以上でございます。

笠井委員 このカーンクエストでは国連PKOに関する実動訓練を実施するということでありますけれども、東北方面隊というのが今ありました。これは、二つの師団、それから十三個の方面総監直轄部隊と機関から編成されていると思うんですが、そのうち今回のカーンクエストには東北方面隊のどの部隊から何名参加するということになりますか。

若宮副大臣 お答えさせていただきます。

 東北方面隊からは、第九師団第五普通科連隊の隊員が参加をする予定となっております。

笠井委員 このカーンクエストに陸上自衛隊の方面隊が参加するのは今回が初めてだと思うんですけれども、その理由は何ですか。

若宮副大臣 去年から実動部隊が演習には参加をさせていただいているところでございますが、部隊が、東北方面から行くのはことしが初めてということになろうかと思います。

笠井委員 陸上自衛隊の方面隊が参加するのは初めてだと思うんですね。

 東北方面隊は、防衛省のローテーションに従えば、南スーダンのPKOに第十一次要員としてことしの年末にも派遣されることになるということだと思うんですが、今回のカーンクエストへの訓練参加というのは、そのことを想定してのものではないんですか。

若宮副大臣 まず、通常の、九次、十次、それから十一次と、南スーダンへのPKOの派遣隊、随時派遣をさせていただいているところでございますが、委員御指摘の東北方面隊が、一応、この十二月から予定をしております南スーダンのPKOに派遣されるということがまだ決まっているというわけではございません。

 また、このカーンクエスト16におきまして、いろいろとそのための準備をしているのではないかというような御指摘ではございますけれども、訓練に当たる要員の装備や訓練状況などさまざまな要素を総合的に勘案いたしまして、東北方面隊から部隊を派遣すること、これは、もちろん今、熊本の、例えばですけれども九州の災害対応でも日本全国から各部隊が参加をさせていただいて、いろいろな救命救難に当たっているところでございますが、本来業務のもちろん国防という任務も、各部隊、これは陸だけじゃなく、海も空も含めて、怠りなく、大丈夫な状態を構えつつ、支援に当たっているという状況でございまして、さまざまなローテーションの中での判断ということになってこようかと思いますので、そのあたりは御理解いただければと思っております。

笠井委員 中谷大臣、副大臣も含めてですが、この間、再三にわたって、現地に行くに当たっては訓練が前提なんだと言われた中でのこういうことに参加する。

 しかも、東北の方面隊について言うと、南スーダンに行くかどうかまだ決まっているわけじゃないということを言われましたが、既に東北地方では、自衛隊員の家族から、息子が十一月に南スーダンに向かうということになったという話が出て、そして、近所の青年の命を奪っていいのかという声が広がっている。実際にはそういうことで進んでいるんじゃないですか。

 防衛省の記者説明資料によれば、昨年実施されたカーンクエストでは、仮想国、仮想の国を想定した各種の実動訓練が行われたということでありますが、その中で、自衛隊の訓練部隊は、訓練場を宿営地に見立てて五つの課目に参加したとあります。

 一つは巡察。二つ目に検問。三つ目に車両縦隊行動、車両移動間の襲撃対処要領を演練する。それから四つ目に第一線救護ということで、宿営地の歩哨が敵勢力の攻撃で負傷した場合等を想定し、火力で援護しながら負傷した隊員を安全地帯に素早く下げ、応急処置を施す。そして五つ目の課目が、米国等の教官が隠蔽した爆発物を捜索するということで、IED、即製爆発物対処という五つの課目に参加したとありますけれども、そのとおりでしょうか。

若宮副大臣 今委員が御指摘になられたとおりでございます。

笠井委員 それは昨年ですが、では、今回はどんな課目の実動訓練を実施し参加するのか、自衛隊が。昨年と同じ課目でしょうか。

若宮副大臣 まず、このカーンクエストの実動訓練といいますのが合計で九項目ございます。今委員も御指摘になりましたように、巡察、包囲捜索、検問、暴動対処・交付書任務、国連指定施設警備、車両縦隊行動、移動検問、第一線救護及び先ほど御指摘のありました、爆発物を対処いたしますIED対処ということになってございます。

 ただ、ことしは、このカーンクエスト16の実動訓練はこの中で、私ども自衛隊といたしまして参加いたしますのが、巡察と検問と車両縦隊行動、それから移動検問、第一線救護、そしてIED対処、この六項目に参加をする予定というふうになっております。

笠井委員 それでは確認ですが、今言われた中で、九項目あるということを言われましたが、カーンクエストでは、自衛隊が昨年参加した五つの実動訓練のほかにも幾つかあるということで九項目挙げられましたが、米軍、モンゴル軍などによる、ライオットコントロールというふうに呼ばれる暴動対処、この訓練が行われたと。行われたことは間違いないわけですね。

若宮副大臣 去年も同じように行われておるところでございます。

笠井委員 この暴動対処、ライオットコントロールですけれども、国連の建物から食料を強奪しようとする群衆を米軍が鎮圧対処する訓練ということで、相手と交戦の危険が伴うものでありますが、こうした訓練にはこれまで自衛隊は参加しなかった、参加することはできなかった。しかし、安保法制が施行された今日、この訓練にも参加が可能になったということになるんじゃないですか。その点はどうですか。

若宮副大臣 今委員御指摘になられたんですが、私ども自衛隊といたしましては、この実動訓練のうち暴動対処、ライオットコントロールでございますが、これに参加する予定はございません。

 また、暴動対処といいますのが、実際に、群衆が例えば集会をしていて、これは昨年の例でございますけれども、それが徐々にだんだんと激化して暴動に発展をしていくような段階になる、さらに、そうしますと通常の警察の能力を超えてくるような状況でちょっと抑え切れないような状況になってきてしまっている、こうした中で、施設の警備や防護というのが果たしてちゃんと維持できるであろうかどうかというのを演練で訓練するというふうに私ども聞いております。

 この対処を私どもとしては見ておりまして、これは参加しているわけではございませんので、総合的な判断のもとで、またいろいろな、一つの、見ることによって、こういったいろいろな、さまざまな、世界情勢、国際情勢、非常に激動の中でございますので、ある程度状況の把握ということをしておくことは必要でなかろうかなというふうに考えているところでございます。

笠井委員 自衛隊はこの暴動対処には参加していないし、参加の予定はないということでありました。それで、総合的判断ということで、これからいろいろなことがあるかもという話だったんですが。

 私が伺ったのは、安保法制が施行されたわけなので、安全確保業務とか新たな任務を付与された、それから、武器使用の問題もあるということでいえば、施行された今日、こうした暴動対処の訓練にも参加が可能になったのではないか、法制上。この点はどうですか。

若宮副大臣 昨年成立をいたしました平和安全法制に基づきますさまざまな任務につきましてでございますが、基本的には、平和安全法制及び内部規則等の内容につきまして、まず隊員個人に対しても周知徹底をすること、それからまた、必要な個々の訓練、演練を充実していかなければいけないというふうにも思っております。

 これはまた具体的な検討も進めてまいりますが、この演練の内容につきますまた諸外国との、特にPKOの問題ですとかは、調整、あるいは装備品、アセットの維持整備等、さまざまな準備が必要となってまいります。

 恐らく、三月にもう施行したんだからいろいろなことができるようになったんじゃないかというふうに、多分委員の御指摘であろうかと思うんですが、そのあたりは、やはり慎重にも慎重を重ね、隊員の安全確保はもちろんのこと、きちっとした日本の法律に基づいて、できること、できないこと、もちろん、では現段階で何ができるのかというふうにおっしゃられれば、最大限、私ども防衛省・自衛隊として、法に基づいて、できることをきちっとやっていこうということには変わりはないんですが、今後も、そういった姿勢で準備を怠りなく進めてまいりたいというふうに、慎重にも慎重を期してまいりたい、この気持ちは変わらなく思っております。

笠井委員 私の問いに答えていらっしゃらないんですね。規則の周知徹底の話とか、演練を充実していくとか、諸外国との調整、アセット準備が必要だということは、それはそれであれなので。

 私が伺ったのは、今、法律上できること、できないことという話も言われたけれども、法制上はそういうことができるようになったんじゃないんですかと。あとはいいですよ、いいですというか、いろいろ訓練するとか、あるいは周知徹底はあるとしても、法制度上は。そういうふうなことができないという障害はなくなったということなんでしょうということを聞いたんです。

若宮副大臣 今委員が御指摘になられました、法制上できるかできないかというお話でございますけれども、特に、やはり個別の、では、この案件で、こういう場面で、この状態で、どういった状況の中で私どもがそこへ出向くことができるかどうかというのは、またその都度、総合的に勘案して判断をすることになろうかと思いますので、そのあたりにつきましては、個別具体的な内容がもし具体的にあった時点で、しっかりと検討させていただくことになろうかと思います。

笠井委員 総合的に判断をする、個別具体的な話で。法律上はできるかどうかということを聞いたので、できないというふうには言えないわけですね。

 では、伺いますが、二〇〇三年から始まったカーンクエストですけれども、当初、米軍とモンゴル軍による二国間の小規模な訓練だったと。先ほど二国間だというお話がありましたが。米国が二〇〇六年以降、多国間訓練に拡大していったものだということであります。

 そこで伺いますが、このカーンクエストには在日米軍、沖縄の在沖米軍からも参加実績があると思うんですけれども、どの部隊が参加をしているでしょうか。

若宮副大臣 これはアメリカの太平洋軍が公表いたしております情報でございますが、昨年、米軍からは三百名ほど参加をしておりまして、これには、アラスカに駐屯しております陸軍及び州兵に加えまして、当時、第三海兵機動展開部隊にローテーション展開しておりました第二海兵隊からの参加が含まれていたというふうにされております。

笠井委員 ここに二〇一〇年の二月の防衛省文書がありますが、「在日米軍及び海兵隊の意義・役割について」というものであって、公表文書であります。

 この二十一ページのところに、海兵隊の概要、3MEFの主な訓練ということで、一覧の中に「カーンクエスト 合同運用訓練(モンゴル) 第三海兵師団 第三海兵後方支援群」というふうにありますけれども、こういうことで参加してきた実績があると。

 先ほど、昨年のことでは、アラスカ、それからローテーションでやっていた第二という話がありましたが、第三についても、そういうことで実績がある、沖縄から行っていたということはそのとおりでよろしいんですね。

若宮副大臣 昨年の件は今お答えさせていただきましたが、それ以前の米軍の資料につきましては、ちょっと手元に今資料を持ち合わせておりませんものですから、また後日お知らせをさせていただければと思っております。

笠井委員 私、きのう質問通告、こういう形での委員会設定になりましたけれども、やりました。そのときに、このことは聞くということで言ってあったので、きちっと確認してもらいたいと思います。

 これは、防衛省のホームページに出ている公表資料であるので、何か、わかりませんとか、今答えられませんじゃないと思うので、きちっと答えてください。これですから。

若宮副大臣 繰り返しで恐縮でございますが、昨年の件につきましてはお答えさせていただいたんですが、それ以前の件につきましては、ちょっと今手元に資料がございませんので、後日またお答えさせていただきたいと思っております。

笠井委員 後日じゃなくて、きょうきちっと答えてください。僕はきのう、このことを聞きますよと。日本の在日米軍、沖縄はどうなっているかということを含めて聞きますよということを言いましたから、在日米軍からのことについては。

若宮副大臣 きのう委員のもとにお伺いをした防衛省の者がお伺いした内容につきましては、参加実績の詳細という項目というのはお話し向きがなかったというようでございますものですから、いずれにしましても、今手元に数字等資料がございませんので、また後日お届けさせていただければと思っております。

笠井委員 大変困りますね。

 きのう私のところに見えた防衛省の職員の方、言われたので言いますけれども、在日米軍から参加しているんじゃないですかというふうに質問したら、参加していることについては承知していないと答えたんですよ。でも、私はこのことを聞きますよと聞いたんですよ。調べたら、ちゃんと防衛省が公表しているホームページに出てくるわけですよ、こうやって。防衛省の問題でしょう。だめです、これじゃ。

若宮副大臣 まことに申しわけございません。

 委員、きのう恐らく、私どもの者がお伺いしたときにそういった御指摘をされたのかと思っておりますが、私の手元にはどうしても資料がないものですから、後日お届けに上がりたいと思っております。

岸委員長 笠井委員、きのうのレクがどういう内容でされたか私どもわからないんですが、それは防衛省の公表の資料の中に含まれているということなんですが……(笠井委員「では、これを差し上げますから、これでやってくださいよ。この文書は防衛省のホームページからとっているんですから。ここにありますから、読み上げてくださいよ」と呼ぶ)

 若宮副大臣。

若宮副大臣 委員が既にお手持ちということで、本当に、まことにたび重ねて恐縮でございますが……(笠井委員「差し上げますから、これでやってくださいよ」と呼ぶ)もう早急に、また時間を置かずに、委員のもとに御説明を申し上げますので、どうぞ御了承いただければと思っております。

笠井委員 ここにありますので。これはにせものでも何でもありません、防衛省のホームページからとったので。では、提供しますから、これで何ページと申し上げるので、読んでください。

岸委員長 なかなかそういうわけにもいかないと思いますので……(笠井委員「いやいや、それだったら質問が先に進まないもの」と呼ぶ)

 防衛省、その数字は持っていないんですか。若宮副大臣。

若宮副大臣 まことに申しわけございません。

 今、笠井委員がお持ちの資料、ちょっと私の手元にございませんものですから、まことに申しわけございません、できるだけ早くにお届けに上がりたいと思っております。

岸委員長 防衛省の方で資料は用意できますでしょうか。

 若宮副大臣。

若宮副大臣 たびたび申しわけございません。

 今、大急ぎで確認いたしておりますので、しばしお待ちいただく形をとってもらえれば。申しわけございません。(笠井委員「はい。では、待ちます」と呼ぶ)

岸委員長 笠井君、とりあえず先の質問をするわけにいかないですか。(笠井委員「だって、それがないと何もないもの。それでもうすぐ終わるわけですから」と呼ぶ)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

岸委員長 速記を起こしてください。

 若宮副大臣。

若宮副大臣 大変失礼いたしました。

 恐らく笠井委員が御指摘になられているのは、二〇一〇年に公表されている米軍の方の資料のことをお話し向きではないかなと思っておりますが、確かに、在日米軍の沖縄の海兵隊部隊が主な訓練の項目として、カーンクエストの方に参加をしたということの発表がなされているところでございます。

岸委員長 笠井君、時間が来ておりますので。

笠井委員 委員長、それはないでしょう、幾ら何でも。僕だってちゃんと時間は協力しようと思っていたけれども、向こうですよ、防衛省ですよ。

岸委員長 まとめていただいた方がいいと思います。

笠井委員 いや、まとめてといったって、これを聞いて……

岸委員長 速記を最後とめておりましたので、もう。

笠井委員 だめですよ、それじゃ。それはちょっとひどいよね。僕は、審議にちゃんと協力してやっていますからね。

岸委員長 進めてください。

笠井委員 では、沖縄のどの部隊ですか。第三海兵師団、第三海兵後方支援群、そういうふうになっているかどうか。そして、その二つの部隊というのはどんな部隊で具体的に編成されているか。

若宮副大臣 まことに恐縮でございます。

 沖縄の第三海兵師団と第三後方支援群でございます。(笠井委員「それはどこの部隊で構成されているんですか」と呼ぶ)

岸委員長 笠井君、指名をしておりません。

 もう時間が過ぎておりますので、質問には入らないでください。

笠井委員 いや、最後は大臣に一問聞きますから。

 キャンプ・シュワブやハンセン、瑞慶覧などに……

岸委員長 もう質問の時間が過ぎております。おまとめください。

笠井委員 いや、ちょっとひどいですね。大臣にこれを聞かなきゃいけないと思ったので。

 アメリカ軍と一体で、いろいろな形で、こういう形で南スーダンPKO派遣を想定したものをやっているんじゃないかということについては、まさにそういうことになるんじゃないか、安保法制に基づいて。ということで大臣に伺いたいと思うんですが、そこはもう最後だけ。

岸委員長 では、岸田大臣、簡潔に。

岸田国務大臣 御指摘のカーンクエストですが、いずれにしましても、我が国の法律に基づいて、その枠内で対応しているものであると考えます。

 結果としまして、国連PKOに関する能力の維持向上のみならず、参加国との相互理解の増進、信頼関係の強化にも資するものと思いますし、また、日・モンゴル間の防衛協力の活発化という観点からも意義があるものであると認識をいたします。

岸委員長 笠井君、時間が過ぎております。

笠井委員 こういう形で、戦後初めて、自衛隊が殺し殺される道へと踏み出していることはやはり重大だと思います。

 安保法制はきっぱりと廃止せよということを申し上げて、質問をきょうは終わります。

岸委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党と山本太郎となかまたちの玉城デニーです。

 きょうは、租税協定三本、ドイツ連邦共和国との協定、チリ共和国との条約、インド共和国政府との条約を改正する議定書についてですが、まず、租税条約の目的が、第一に、国際的な二重課税を排除することにより締約国間の経済的交流を促進させること、第二に、租税や租税回避行為を防止するために締約国間の協力の枠組みを設定することなどなど、その目的がありますが、それぞれの相手国によってその協定の内容も当然おのずからその性格を帯びてくるものというふうに思います。

 さて、ドイツとの租税協定についてお話をお伺いいたします。

 今回、ドイツとの租税協定を全面的に改正し、両国間の緊密化する経済関係を反映して投資交流のさらなる促進を図るということも目的であろうと思料されるわけですが、今回のドイツ協定で全面的改正に至った問題点というものはどこにあるのかをお聞かせください。

黄川田大臣政務官 ドイツの現行租税協定はとても古いものでございまして、一九六七年に発効されたものであります。一九八〇年及び一九八四年に一部改正が行われているものの、締結から約五十年経過しており、主要先進国との間の租税条約で全面改正を行っていない数少ない例であります。したがって、経済界からは現行協定の改正について強い要望があったところでございます。

 また、日独両国が租税協定締結に当たって参考にしているOECDモデル租税条約でも、累次にわたる修正がなされております。その修正については、租税条約の適用に関する紛争の円滑な解決を図ることを目的とする仲裁手続の採用や、情報交換や徴収共助といった税務当局間の協力枠組みなどが強化されてきました。

 これらを踏まえて、両国政府において現行協定を全面的に改定する必要性が認識され、政府間交渉を経て、二〇一五年十二月に東京において新協定への署名が行われたところでございます。

 今回の改正により、源泉地国において親子会社間における配当に対する課税の限度税率が一〇%から五%または免税となり、利子及び使用料が免税となっております。また、OECDモデル租税条約に沿って、事業利得に関する新たな規定、仲裁規定及び徴収共助規定を導入するとともに、脱税等の防止のための税務当局間での情報交換の対象を拡充することなどを盛り込んでございます。

玉城委員 国際間のやりとりは本当に多岐にわたり、情報も高度化していきますので、そのためには、署名に至るまでの話し合い、協議が非常に重要だろうというふうに思います。

 今回、三本提案されていますが、ドイツ租税協定が平成二十七年十二月十七日署名、チリ租税条約が本平成二十八年一月二十一日署名、インド租税条約議定書が平成二十七年十二月十一日署名、この三本がともに平成二十八年二月二十六日に国会提出、そしてきょう委員会審議、この後採決の予定というふうなことで考えておりますが、署名から短期間で批准に向けての目的というものについて、いま一度確認をしたいと思います。

岸田国務大臣 三本の租税条約の取り扱いについて御質問いただきましたが、そもそも租税条約は企業の海外展開に向けた環境を整えるものでありますし、日本企業支援のための重要なツールであります。経済界からも大変要望が強いものであります。

 こうしたものを踏まえて、我が国は、近年、租税条約のネットワーク拡充に取り組んでいるわけですが、こうした経済界からの期待感も踏まえて、スピード感を持って取り組んでいかなければならないと考えております。

 その中にあって、この三本の租税条約について申し上げれば、ドイツとの租税協定は、経済関係の実態に照らし、投資所得への源泉地国課税の水準が高くなっている現行協定を三十年ぶりに全面改正するもので、経済界から早期の実現を求められているものであります。

 また、チリ、インドとの協定も、それぞれ、近年の現地進出企業の増加等の背景から、経済界の期待は大変高いものがあります。

 さらに、インドとの協定の改正議定書に関しては、インド側が既に国内手続を完了しております。我が国の手続の完了を待っている状況であります。

 こうした背景を踏まえて、政府としまして、ぜひ今国会で承認をいただきたいと思っております。そのことによって、経済界、相手国の期待にしっかり応えていきたいと考えます。

玉城委員 次に、国税庁に伺います。

 実は、これは財務金融委員会での附帯決議、二〇一六年三月一日、所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議ですが、「高水準で推移する申告件数及び滞納税額、」そして「経済取引の国際化・広域化・高度情報化による調査・徴収事務等の複雑・困難化に加え、」等々ということにありまして、「国税職員の定員確保、職務の困難性・特殊性を適正に評価した給与水準の確保など」などについて「特段の努力を払う」ということにありますが、しかし、国税庁定員と申告の件数の資料などを見ますと、この平成二十四年から二十七年にかけては、いわゆる定員が減ってきております。

 それに加えて、やはり、先ほどもありますとおり、国際間のやりとりは、経済取引の国際化や、情報通信技術化を利用した取引の市場がどんどん拡大している、そのために、条約を、さらにどんどん協定などを進めていこうということなんですが、この組織強化と職員の体制における目標と、現場の実務との乖離を来していないかということについて、国税庁に質問いたします。

貝塚政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から御指摘いただいたように、税務行政を取り巻く環境を見ますと、経済取引の国際化、それから複雑化、高度化により、厳しさが増しております。さらには、毎年度の改正によって税制の複雑化などに的確に対応する必要が出ており、大きな課題となっております。

 このような状況で、国税庁としましては、事務の増大や複雑困難化の状況を踏まえまして、ICT等を活用した事務の効率化、それから、実地調査以外の手法も適切に組み合わせた調査事務運営に取り組むとともに、職員の適切な配置にも努めまして、限られた人員のもとで、効果的、効率的な事務運営を図っているところでございます。

玉城委員 では、外務省にもお伺いいたします。

 もう時間が来ましたので、最後の質問にさせていただきます。

 条約発効に伴う、こういう税を扱う職員、国税職員の負担がふえることに対して、外務省から財務省へしっかりとその要求を出しているのかどうか、お答えください。

黄川田大臣政務官 委員にお答えいたします。

 外務省としては、財務省や国税庁に対して職員の増加を求める立場にはないということをまず御理解いただきたいと思います。

 その上で申し上げれば、租税条約を担当する部局の体制については、平成二十五年六月に閣議決定した日本再興戦略において、租税条約のネットワーク拡充の取り組みを加速するとともに、その実現に向けて関係当局の体制強化等を進めるということになっております。

 この関連で、外務省は、従来より、租税条約の締結を推進するため、関係部局の体制強化を図ってきております。

 例えば、平成十六年以降、国際法局に租税条約専任の担当官を置くとともに、平成十八年からは、同局に経済分野の条約締結等に特化した経済条約課を新設し、他の経済条約交渉の知見等も集約して、より効率的かつ実効的に対応できる体制としております。

 さらに、財務省においても、租税条約交渉に対応する部局の体制強化が図られてきたと承知しております。

 政府としては、今後も引き続き財務省や国税庁とも連携しながら、租税条約への対応に当たって必要な体制を整え、租税条約のネットワークの拡充に努めてまいりたい、このように考えております。

玉城委員 ありがとうございました。

 財務省への質問は、一つ取り下げさせていただきます。ありがとうございました。

 ニフェーデービタン。ありがとうございます。

岸委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

岸委員長 これより各件に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、日・ドイツ租税協定、日・チリ租税条約、日・インド租税条約改正議定書の三つの条約に反対の立場から討論を行います。

 これら三つの租税条約は、投資所得課税に係る源泉徴収税率を減税ないし免税を含めて措置するためのものであります。これは、日本の大企業とその海外子会社が、当該国内の外資優遇税制のメリットを十二分に受けつつ、その上、租税条約により投資に対する源泉地国課税が劇的に軽くされるなど、税制優遇措置を二重、三重に享受することを可能とするものであります。

 日本経団連は、税制改正に関する提言などで、租税条約について、国際的な二重課税の排除を行うことは我が国企業の海外における安心かつ確実な事業展開に欠かせない、投資所得に係る源泉地国課税を軽減することは海外からの資金還流及び国内における再投資という好循環の実現に資するなどと、投資に係る税コスト低下を要求しています。

 我が党は、海外進出した多国籍企業が源泉地国においてもうけに応じた税負担をすべきとの立場から、租税条約の大企業優遇税制に反対してきましたが、今回の三条約は、まさに国際課税分野における日本の大企業優遇税制を国内外でさらに拡大強化するものにほかなりません。

 以上を表明し、三つの租税条約への反対討論とします。

岸委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

岸委員長 これより採決に入ります。

 まず、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岸委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とチリ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岸委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岸委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

岸委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十二分散会


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