衆議院

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第2号 平成13年2月27日(火曜日)

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平成十三年二月二十七日(火曜日)

    午前十時七分開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩崎 忠夫君

      梶山 弘志君    金田 英行君

      上川 陽子君    北村 誠吾君

      栗原 博久君    小島 敏男君

      後藤田正純君    七条  明君

      園田 博之君    高木  毅君

      中本 太衛君    西田  司君

      浜田 靖一君    福井  照君

      古賀 一成君    後藤 茂之君

      佐藤謙一郎君    津川 祥吾君

      筒井 信隆君    永田 寿康君

      楢崎 欣弥君    三村 申吾君

      江田 康幸君    高橋 嘉信君

      中林よし子君    松本 善明君

      菅野 哲雄君    山口わか子君

      金子 恭之君    近藤 基彦君

      藤波 孝生君

    …………………………………

   農林水産大臣       谷津 義男君

   農林水産副大臣      松岡 利勝君

   厚生労働大臣政務官    奥山 茂彦君

   農林水産大臣政務官    金田 英行君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局食品保

   健部長)         尾嵜 新平君

   政府参考人   

   (農林水産省生産局長)  小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長

   )            木下 寛之君

   政府参考人   

   (林野庁長官)      中須 勇雄君

   政府参考人

   (水産庁長官)      渡辺 好明君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  岩倉 博文君     梶山 弘志君

  金子 恭之君     近藤 基彦君

同日

 辞任         補欠選任

  梶山 弘志君     中本 太衛君

  近藤 基彦君     金子 恭之君

同日

 辞任         補欠選任

  中本 太衛君     岩倉 博文君

    ―――――――――――――

二月二十七日

 農林漁業金融公庫法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第三二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件




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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長小林芳雄君、農林水産省経営局長須賀田菊仁君、農林水産省農村振興局長木下寛之君、林野庁長官中須勇雄君、水産庁長官渡辺好明君及び厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村太郎君。

木村(太)委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の木村太郎です。

 きょうは二十一世紀初めての農林水産委員会においての質疑ということでありまして、トップバッターを務めさせていただくことにまず感謝申し上げたいと思います。

 農林水産業に精通されております谷津農林水産大臣あるいは松岡、田中両副大臣、また、金田、国井両政務官、これまでも政治家として農林水産業に心しながら歩んでこられまして、そういった方々が大臣初めおのおののポジションにつかれて今現在既に御活躍されているということを心強く思っておりまして、今後一層の御活躍を御期待申し上げたいと思います。

 大臣の所信にありました、新鮮で安全な食料を安定的に供給することは国の基本的な責務である、私は、この所信を聞きまして、我々委員会においても、献身的な議論を通じて、そしてまた、農業、林業、水産業に携わる方々に対しても思いをしてまいりたいと思っております。

 まず、私は、緊急性あるいは現在進行形的な課題の解決に向けて、二、三御質問をしてまいりたいと思います。

 その一つは、有明海のノリの不作についてであります。谷津大臣も一月の二十九日に視察されたということで、既に具体的な行動に入っているようであります。ただ、ここ二、三日、福岡県の有明海の漁連の方々を中心に、九州の農政局に直接折衝の行動をし、またその後、諫早湾の干拓工事の中止を求めて座り込みをしているという、実力行使に出ているようでありますが、このことの事態打開に向けての取り組みはどうなっているのか、まずお尋ねしたいと思います。

谷津国務大臣 ただいまの木村先生からお話がありました有明海の干拓事業の件でありますけれども、福岡県の有明漁連の皆さん方が、二十二日に潮受け堤防の管理事務所に、そして二十三日には九州農政局に対しまして抗議行動を行いました。それから二十四日と二十六日、また本日も諫早湾干拓の工事現場で工事用の出入り口を封鎖しておりまして、私もこの間、ずっと休みも大臣室に参りまして、そこで現状の把握をしておったわけであります。

 実は、二十二日のときについては、あそこの干拓を視察したいというふうな申し入れがあったものですから、どうぞ見てくださいということであそこに入っていただいたわけであります。

 いずれにしましても、今回のノリの不作の状況というのは甚大でありますので、このような行動をとられることにつきましては、私は、実は誠意を持って当たっていかなければならぬというふうに考えているところでございます。ですから、現場の工事事務所の関係者あるいはまた九州農政局の局長初め皆さん方に、誠意を持ってこれに当たるようにということを指示したところでございます。

木村(太)委員 現場では座り込みが続いているようでありますし、今大臣の答弁では、誠意という言葉が光って答弁がありました。

 私は、そこで、大臣の所信の中にもありましたけれども、緊急的に調査をしている、さらにこれから総合的な調査も実施していくんだ、できれば九月末までに中間取りまとめというものをしたいと所信表明にも触れられておりましたけれども、この間においても調査する中で明らかになってきたことは、今の大臣の答弁にあったとおり、誠意を持って情報開示というか、お伝えしていくようなことも大事ではないかなと思っておりますが、この点もお聞きしておきたいと思います。

 また、あわせて、この調査が今後進むにつれて、いわゆる水門との因果関係というのが明らかになってくると思いますし、そのことが明らかになってくるにつれて、有明海の漁場環境の改善に向けた今後の具体的な対応というものが判断されてくると思っております。ただ、私は、大事なことは、水門をあけるべきという声ももちろんありますけれども、一方では、防災の視点から、あけないでくれという意見も大きいことも見逃してはならないと思います。

 ゆえに、最初から結論ありきの対応ではなく、調査をしながら、そして因果関係を突きとめながら、その中での対応というのが大事であり、判断が求められると思いますが、大臣の今後の対応についての御所見をお伺いしたいと思います。

谷津国務大臣 ただいま先生御指摘のとおり、これはしっかりと調査をすることが大事だというふうに私は考えているところです。ですから、一月の二十三日に緊急的な調査をさせました。それから、二月の二十三日からは、潮流を中心とした調査に入っているところでもございます。これは四県の関係者も一緒に調査に入っております。

 そして、第三者委員会、これは実はきのう委員を発表させていただきまして、三月の三日、土曜日でありますけれども、第一回目の委員会を開かせていただく。この委員会におきましていろいろな意見が出るだろうというふうに思います。そういう中で、もし水門をあけて調査したい、すべきであるということであるならば、私は水門をあけるということもやぶさかではありませんし、また、ここによって、工事を中断してもそういう調査をしたいということであれば、私は、これまたそれに従ってやっていきたいというふうに思っているところであります。

 要は、九月に中間取りまとめをしたいというふうに思っているんですが、できるだけ早くこれも発表していきたいと思いますし、それは、十月にノリ網を入れますから、その準備等もありますから、できるだけ早くこの中間的な発表をさせていただきまして、ノリ網を入れるのに支障のないようにしていきたいというふうに考えているところであります。

 しかし、一方で、今先生御指摘のように、水門をあけますと、場合によっては毎秒六メーターぐらいの流速で出入りする状況もありますものですから、それによる災害も起こるのではないかというふうに懸念をされているわけでありまして、私は、その辺のところをしっかりと調査をさせていただいて、それによって水門もあけるようにしていきたいなというふうに思っているわけであります。

 ですから、この件につきましては、いずれにしましても、第三者委員会で決められればそのように対処していきたいというふうに考えているところであります。

木村(太)委員 第三者委員会を設けること自体、大臣初め皆さんの誠意ある対応だと思いますので、その姿勢で、大臣のリーダーシップを発揮してこの問題にも取り組んでいただきたいと思います。

 次に、実は私、地元は青森県でありまして、ことしは大変な豪雪になっております。気象庁はこの冬を暖冬と予報しておりましたけれども、ふたをあけてみますと、地元の例でいいますと、きのう現在まで、累積の降雪量が九メートル六十五センチを超えている、そういう豪雪でありまして、気象台の観測史上八番目という状況になっております。よって、ハウスの倒壊など、既に農作物や農業施設等にも被害が生じております。

 私ども、地元の被害状況しかまだ知り得ておりませんので、これはもちろん青森県だけでなくて、全国的にことしは雪が多い冬となっておりますから、全国的な被害状況はどうなっているのか、また、農林水産省としての対応をどうとられておられるのか、お聞きしたいと思います。

谷津国務大臣 一月の上旬からの降雪によりまして、東北、北陸及び関東地方を中心に、二月の二十三日現在、ハウスに約二十四億円、農作物、果樹等には三十二億円、合計五十六億円の被害が発生しているという報告を受けております。

 今回の雪害の対策といたしましては、ビニールハウス等について、農業共済金の円滑かつ迅速な支払いが行われまするように関係団体を指導しているところでありますし、また、被災農業者に対しましては、自作農維持資金や農林漁業施設資金、災害復旧のものですが、こういうもの等の低利の制度資金を融通したいというふうに考えておるところであります。

 個別の経営事情に応じまして、既に貸し付けがなされている貸付金につきましては、償還猶予等が図られるように関係金融機関等に指導しているところであります。

 農林水産省といたしましては、今後とも被害状況の把握に努めまして、適切に処理していきたいと考えておるところであります。

木村(太)委員 ぜひ適切なる対応をお願いしたいと思います。

 もう一つ、緊急性というか現在進行形的な課題についてお尋ねしますけれども、農林水産物の輸入増加というのが際立ってきている昨今であります。特に野菜等に関するセーフガードの発動を求める声が日に日に高まってきておりまして、ネギ、生シイタケ、畳表の三品目については既に調査を進めているようでありますが、松岡副大臣におかれては、いろいろな形でもう精力的に行動に入っているようでありまして、中国や、あるいはこの週末には韓国の方にも飛び、日本の今の状況を説明しながら、そしてまた、相手国に対して対応を求めておられるようでありますけれども、その感触というのはどうであったのか。

 そして、今後の対応というのをどう考えているのかお尋ねしたいし、あわせて、現在調査中の三品目以外にも農林水産物の中でセーフガードの発動が求められる可能性が高まっている品目があるのかどうか、お聞きしたいと思います。

松岡副大臣 先生御指摘のとおりでございまして、近年、農産物の中でも特に野菜の輸入が急増いたしておるという状態でございます。特にまた昨年はそのことが大きく影響を与えまして、大変国内産の産地が大打撃を受けた、このような今状況になっております。

 そこで、この問題に臨む基本的な認識といいますか、基本姿勢でありますが、産地が大打撃を受けますと、生産システムといいますか、崩れてしまう。そのことによって、安心で安全な生産が国内でなくなってしまう。そして、ひいてはそのことが消費者にまた大変な打撃を与えていく。したがって、どうしても生産と消費というのは安定的な形で推移していくことが大事であります。

 そういったような観点から、国内の安定的な生産を確保して、また消費に資する、こういうことでございますが、そこで、今先生御指摘のとおりの三品目につきまして、セーフガードの調査に政府として入っておるところでございます。

 それはそれといたしまして、一番輸入増のもとになっております中国と韓国、これをそれぞれ二国間でどうするか、こういうようなことでございまして、昨年の十二月、韓国の方から私の方に会談の申し入れがございました。そこで、二国間でひとつ円満な解決を図ろうではないか、こういう申し出でもございました。そういうようなことを受けまして、それでは実務者協議というものをつくって、そしてお互い需給をきちっと見通しながらひとつ対応していこう、こういうことでございました。

 また、中国の方も、ことしになりましてでありますが、二月六日に対外貿易合作部、アメリカでいうUSTR、通商代表部に相当するものでありますが、そこの副大臣がお見えになりました。会談をこちらの方からお願いをして持ったわけでございますが、そこでも、両国の友好協調を図る、そういう方針のもとに円満な解決を図っていこう、こういったことで合意をいたしまして、そこでまた、日中の間でも実務者協議というものを設置して、そして解決に向けて協議を進めていこう、こうなった次第であります。

 そういうもとで、韓国でも二月五日に実務者協議をやったところでありますが、私自身、先週の土曜日、韓国はまだ週休二日制じゃなくて土曜日は役所があいているものですから、向こうの韓長官それから金次官に直接お会いをいたしまして、日韓の今後の進め方を一定の合意をしてきたところであります。

 いずれにいたしましても、両国とも、お互い双方に共存共栄が図れるような、そういう円満な解決を図っていこうということで一致をいたしたところでありまして、実務者協議をしっかりと進めながら国内産の生産も一定の安定が取り戻せるような、そういった方向に持っていきたい。今谷津大臣のもとで、そういった方向に向かって私ども、大変努力を進めておるところでございます。

 両国の反応いかんということでありますが、ただいま申し上げましたようなことで、私は、お互い協調的にやっていこう、そういう大変望ましい反応をいただいたな、このように思っております。まあ問題はこれからでございますが。

 そこで、では三品目以外はどうなのかという御指摘でございますけれども、今三品目以外に、トマト、ピーマン、タマネギ、ニンニク、ナス、木材、合板、干しシイタケ、ウナギ、ワカメ、カツオ、合計、三品目足しますと十四品目になりますが、この三品目以外の十一品目は、これを監視品目ということで指定をいたしておりまして、注意深く最大の関心を持ってその動向を見守る、そしてその動向によって必要ならば政府調査に早速入っていく、こういう体制を今とっておるところでございます。そういう体制をとりながら、先生御指摘のような、今後に向けた安定した国内生産そして消費に対して寄与していくことができる、こういう方向で取り組んでいきたい。

 以上であります。

木村(太)委員 副大臣の御答弁を聞いても、実際みずから行動しながら、情熱を持って取り組んでいる姿を感じまして、ぜひ今後の対応というものを御期待申し上げたいし、さらにまた、答弁ありましたとおり、三品目以外の十一品目についても、注視しながらも必要に応じて適切に、また適時に対応していただきますことをお願いしておきたいと思います。

 それでは次に参りますが、大臣の所信の中で、例えば食生活指針の普及、定着、あるいは食品流通の合理化を図るためのITの活用、あるいはバイオテクノロジー等の革新的技術の開発、リサイクルの促進、農業、農村の体験活動などなど、こういったことにも触れられているわけであります。

 こういった施策を展開するに当たっては、農林水産省だけではなく他の府省、厚生労働省あるいは総務省、文部科学省など他の府省との連携というものもやはり大事でありまして、その連携があってまた施策の効果というのが最大限に引き出されるものと思います。

 時折しも、一月六日から中央省庁の再編がスタートしたときでもありまして、私、これは個人的な意見でありますけれども、農林水産省の中に、いろいろな施策を展開するに当たって他の府省が加わった連絡協議会的なものを常設しておいて、そして農林水産省の施策というものを強力に進めることも大事じゃないかな、こう思うわけであります。

 再編されました関係府省間との連携協力体制というものをどう考えておられるのか、お尋ねしておきたいと思います。

谷津国務大臣 農林水産省が単独で講ずるものももちろんあります。そのほか、食生活の指針の普及とか農業に関する教育の振興あるいは農村の総合的な振興など、あるいは今回の、今松岡副大臣から説明のありましたセーフガード、こういうふうなものについては政府として調査等の関係を各府省と密接な連携をとらなきゃならない、あるいは協力をしていかなきゃならない、そういうふうに総合的に展開することが必要であるというふうに考えているところであります。

 特に、このために、個別の施策分野についての関係府省との協議等を通しましてその連携を密にするとともに、農林水産省といたしましても、この基本計画の策定と同時に、政府を挙げて基本計画の着実な推進を図ることが必要であるというふうに考えております。また、総理を本部長、官房長官と農林水産大臣を副本部長といたしまして、全閣僚をメンバーとする食料・農業・農村政策推進本部を内閣に設置しておることも御案内のとおりでございますので、これからもこうした場を通じまして引き続き関係府省との連携を強めて、その施策の実行に当たっていきたいと思っておるところであります。

木村(太)委員 総理を本部長にそういった会議もあるということでありますけれども、事務レベルでもその体制というものをぜひ密にしていただきまして、農林水産業の施策の展開を図っていただきたいと御期待しておきたいと思います。

 次に、林政の改革大綱というのが昨年の十二月に取りまとめられまして、いわゆる新林業基本法案というもの、あるいはまた、水産基本政策大綱というものも同じくまとめられまして、水産基本法なるものが今国会に提出される予定にありますけれども、もちろん、今現在法案の作成の努力が続いていると思っております。

 この法律案がこの委員会でも提出されたときには本格的に議論されていくと思いますけれども、私、林業というのは特に親子三代にわたって行う産業でもありますし、あるいは水産業においては、同じ第一次産業の中でも水産業に関して基本法という名称がついた法律というのが今現在存在しなかったこと自体不思議だなという思いもありますけれども、その分、この両法律案が国会に提出されまして、議論することを、また成立に向けて取り組むことを本当に期待しているものであります。

 詳しいことはその法案が提出されたときの議論にするとしても、この両基本法案提出に向けての決意というものをいま一度お尋ねしておきたいと思います。

谷津国務大臣 今御指摘がありましたように、林業基本法の問題、それからもう一つは水産基本法の問題、二つこの国会に出す予定にしているところであります。

 特に、森林に対する国民の要請が公益的機能を中心に多様化あるいは高度化する一方で、林業の採算性の悪化等によるところの森林の適切な管理が行われなくなってきておりまして、森林の多様な機能の発揮に支障を生ずることが危惧されているところでもございます。

 このために、林政の基本的な考え方を木材生産を主体としたものから森林の多様な機能の持続的発揮を図るものに転換することといたしまして、この考え方を基本に本国会に林業基本法の改正法案を提出するところとしているところであります。

 また、水産基本法でありますが、我が国水産業については、本格的な二百海里時代を迎えるとともに、資源の状況の悪化や担い手の減少、あるいは高齢化が進展するなど、内外の情勢が大きく変化をしております。

 こうした中で、水産物の安定供給を初めといたしまして、豊かな国民生活の実現にとって不可欠な役割を果たす我が国の水産業や漁村の健全な発展を確保していくためには、諸情勢の変化に即した政策の抜本的な見直しが必要であるというふうに考えておるわけであります。こうしたことを考えまして、水産基本法を提出する次第であります。

木村(太)委員 基本法でありますので、我々も法律案が提出された時点で大いにまた議論してまいりたいと思います。

 次に、WTO交渉についての取り組みについて問いたいと思います。

 昨年の十二月に、交渉の日本提案というものを取りまとめたわけであります。これは我が国の今後の方針というものを示したことになりますけれども、そこでお尋ねしたいのは、今後、交渉に臨むに当たって何がネックになりそうなのかということをお聞きしておきたいと思いますし、あわせて大臣の力強い決意というものを御披露していただきたいと思います。

谷津国務大臣 今お話がありましたように、昨年の十二月の二十一日に日本提案をWTOに提出したところであります。

 我が国の農業交渉においては、多様な農業の共存が基本的な目標でございまして、国内生産を基本とした食料の安定供給や農業の持つ多面的機能への配慮、それから輸出入国間の不公正の是正の必要などを強く主張しているところであります。

 実は、日本提案に対しまして、これは二月の五日、六日でございましたか、農業の会議が行われまして、ここで各国から提案がなされたものに対しましていろいろな意見がありました。我が国の提案に対しましては、少し後ろ向きではないかというふうな意見を言う国もあります。また、フレンド国等においては、日本提案を支持する国も多数あるわけであります。

 いずれにしましても、日本の国益を守るために、私どもはしっかりとこの辺の交渉を完成させたいというふうに思っております。

木村(太)委員 ぜひ大臣のリーダーシップを発揮しまして、交渉でありますので相手側があります。いろいろなことを戦略としてももう既にお持ちだと思いますし、また交渉の現場においても場面場面においての取り組みというのが求められると思いますので、大臣初め農林水産省あるいは政府一体となった交渉の成功というもの、日本側の考え方が伝わるように御努力を御期待しておきたいと思います。

 次に、私、選挙区が青森県でありますので、日本一のリンゴの生産地であります。大臣はリンゴが好きかどうか、あるいは一日一個ぐらいは食べているかどうかお聞きしておきたいと思います。

谷津国務大臣 私、好きかどうかと言われると、好きな方になるでしょうね。実は、私は、リンゴそのものを食べるのはあれなんですが、ジューサーでそれをつくって毎日一杯ずつ飲んでいますから、そういう面からいくと、物すごく量を食べていると言ってもいいのではないでしょうか。

木村(太)委員 西洋のことわざに、一日一個のリンゴは医者要らずということわざがありますので、ぜひ、一日一個を賞味していただきまして、しかも、医学的にもなるべくリンゴの皮はむかないでそのまま食べる、丸かじりがいいようでありますので、お勧めしておきたいと思います。

 そこで、お尋ねしたいんですけれども、十三年度予算案に果樹経営安定策の創設が盛り込まれました。その中を見ますと、需給調整を前提としております。これは私も理解できますが、ただ、実際、温州ミカンとリンゴを比べた場合、ミカンは表裏というものがはっきりしておりますが、リンゴの場合はおおむね九十万トンから九十五万トン、そのうちの半分が青森県産ということで、結果的に需給調整をしているという生産者サイドの自負みたいなものがあるわけであります。よって、この違いをどう制度の中に出すのか。

 さらに、実は、地元の県で二年前からこういった制度をスタートしております。生産農家から見ますと、国が創設するわけですから、県でやっていた制度よりもさらに充実するものと期待しておりますけれども、その点をお聞きしまして、質問を終わりたいと思います。

小林政府参考人 リンゴの十三年度からの新しい対策でございますが、今お話ございましたように、一つは、温州ミカンやリンゴを対象にいたしまして、需給調整をまずきちんとやっていただく、その上でさらに価格の変動があった場合には、価格安定対策ということで影響緩和のための措置を講ずる、こういった柱になっております。

 その際に、リンゴにつきましては、今先生お話ございましたように、従来からの品質を高めるという意味で、摘花、摘果といった着果量の適正化、これは各地でやっておられます。これが基本技術ということで進めておりますので、今後、全国的な立場でこの需給調整対策をやっていくわけですけれども、そういう各地での取り組みも生かしながらきちんとした対応をしていきたいというふうに考えております。

 それから、今回、いわば国の対策として位置づけられますが、従来、各県では単独事業が行われておりました。そういった単独事業を国全体の対策としてまとめていくことによりまして、何がメリットかということでございますけれども、最大のメリットは、この需給調整といったことが国全体、各地一緒になって行われる、これによって政策効果が非常に高まるんじゃないかというふうに考えております。

 また、あわせまして、これまで県単では、県なりあるいは市町村から生産者に対しまして補助がされておりますが、それに国の補助も加わるということで生産者負担は相当減るはずでございまして、これも大きなメリットというふうに考えておるところでございます。

木村(太)委員 終わります。

堀込委員長 次に、鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 おはようございます。民主党の鉢呂吉雄でございます。

 きょうは、谷津農林水産大臣の所信表明に対する御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、谷津農林水産大臣、九四年以来四回目の農水関係、三回の政務次官を経て、農水大臣御就任おめでとうございます。また、松岡副大臣、金田英行政務官、それぞれ、私は、農林水産関係の最強のメンバーがこの森内閣の農林水産関係を担っておる、このように考えております。

 森総理の施政方針演説、簡単な三つの項目、食料の需給関係あるいはまた水産基本法、林業基本法に触れただけでありました。私は、そういう面で非常に、森総理の就任したときの所信表明も、ほとんど農業、林業、水産関係なし。今回もそういう関係で、ある面では基本法を制定あるいはこれからするという大変大事な時期、また、二十一世紀という新たな世紀を迎えて、地球規模的に見ても、環境問題あるいは世界的な食料供給という観点からいっても、大変大きな意味合いを持つ農林水産関係だろうというふうに考えておるところであります。

 そういう中で、実際の新農政は、一九九二、三年、あの新農政、新政策が出たころから新たな展開をしておると思います。ウルグアイ・ラウンドも決着いたしました。国際化、市場化、ある面では、また環境問題が出てきました。そういう面で、もう十年近く、新たな路線が出てきておると思うんですけれども、必ずしも順調にいっているとは思いません。これは大臣も思うとおりであります。あと、後ほどWTOの関係にも触れさせていただきます。

 ただ、私は率直に評価をいたしたいのは、この間の経営所得安定対策、これの検討に入りました。あるいはまた、野菜のセーフガードについて、いろいろな環境の中で正式の調査に入りました。率直に言って、これは政治の力のなせるわざでないかなと私は思っております。

 我々はよく言うんですけれども、役所というのは、これまでの慣例あるいは全体的なことを考えるという、ある面ではそういう面で保守性が高いのでありますけれども、それを乗り越えて対応していくというのが、国民主権の政治の果たす役割である。大変困難性はあると思いますけれども、そういう方向に私は持っていく必要があるな。そういう観点で、きょう大臣に質問をさせていただきたい、このように考えております。

 大臣の所信演説は、必ずしも訴えるところ、さまざまな問題がありますから、そういう点では、いろいろなところに触れるという点ではわかるわけでありますけれども、何が大事か、このことを端的に大臣の言葉で言っていただきたい、このように思います。

谷津国務大臣 私は、このたび農林水産大臣を拝命するに当たりまして、二つのことを、自分の考え方の、あるいはまたその点について実行すべきであるというふうに考えました。この件につきましては、松岡、田中副大臣あるいは政務官とも、それは相談をしているところであります。

 その一点は、何といいましても、農業、林業、水産業、これは今非常に厳しい状況にあるわけであります。この厳しい状況にあるものを何としても打開したい。それがためにはどういう施策のものが必要なのか。

 その中の一つに、先ほどお話がありました所得政策ではありませんが、そういうふうなものも必要であってくるであろう。そして、何といってもこれから、二〇〇〇年を越えて二〇二五年ごろになりますれば、世界の食料の事情が一変をしてくる。いわゆる不足の状況になってくるであろうということが予測されているわけでありますが、そのときになって日本が急に増産体制に入るといったって、これは無理だ。今からきちっとその辺を見詰めながら、きちっとした対策を打っていかなきゃならぬということが一点であります。

 それからもう一点は、農水省の今までの大きな仕事の中に、今申し上げました農、水、林、この進展を図ることは当然でありますけれども、もう一つ大きな問題として、消費者対策、これが非常に大事だというふうに私は思っているわけであります。

 国民の健康を食の面から寄与している、これが農水省の大きな仕事の一端であるということから、食の安全、あるいはまた供給面を安定的に行う、それには輸出入問題もこれは絡んでくるわけでありますから、そういった面で消費者対策というものもしっかりとやる必要があるということで、この二点を私は強調して農水省の省議においても主張したところであります。

鉢呂委員 その共通性は、私ども全員が持つというふうに思っております。

 今回の総理大臣の施政方針演説に対する各党の党首クラスの代表質問、従来に比べて大変農林水産関係の質問が各党から出ておったことに、私は特筆をすべきである。私の党も、鳩山代表に、総理大臣の農業関係は非常に少なかった、粗末であったということを提言いたしまして、即刻入れさせていただいて、各党ともそういう面では今大臣が言われたような点に立って、どうしていくかという観点に私は立っておると。

 ただ、残念ながら、それが日本の全体のものになっておらない。森総理大臣の所信表明演説、ものつくり大学を入れるのは簡単に入ったかもわかりませんけれども、農林水産関係を入れるということは大変な形で、国全体のものになっておらない。ここはやはり大臣は、政治力、行動力を発揮すべきだし、国民の側に立って、今言われたことによって何を起こして具体化をしていくかということについて、勇気を持って役所を指導して実践をしていただきたい、このように考えております。

 そこで、大臣の所信表明で、まさに大臣のお言葉だろうというふうに思ったんですけれども、最後のところで、常に現場の声に耳を傾け、生産に携わる方々が将来に向け希望を持って歩んでいけるよう全力を尽くしてまいる考えであります、このように述べておるわけであります。

 まさに、諫早湾のあの漁民の行動、私もこの二、三日の点はマスコミしか知りませんけれども、ノリ養殖関係の漁民の方は大変なつらい思いの中で直接行動をしておる。現場の農政局長あるいは現場の所長さんもある面では大変つらい思いをしているんですけれども、やはり、そんな電話で大臣がそのお役所の局長に指示するのではなくて、三月二日に来るという話も聞いておりますけれども……(発言する者あり)一日ですか。やはり大臣がきちんとした現場の声を聞いて、まさにこの場合でいいますと、生産に携わる方々というのはノリの漁民でありますから。

 もちろんそれは災害の問題もあります、環境の問題もありますけれども、ことしの九月に結論を出せばいいというものでは全くありません、これは。ノリを正常な形にするには、今すぐ結論を出しても、来年のノリは必ずしもいい状態のものができないかもわからないわけですから。

 そういう面で、干拓事業を一定期間中止をしても、それは工事にとっては差し支えはないわけでありますから。しかし、今やっている、継続してずっと来たからということで皆さんがなかなか中止できないのかもわかりませんけれども、そこはきちんと中断をする、中止をするということについて、やはり大臣は結論を出すべきである。審議会の見解があればそれに従うというのは一つの方向でありますけれども、やはりひとつ中止をして、養殖についての、どういった方向になるのか、いい方向に回復するということであれば、それは非常にいい形でありますから、そういうことを決断をすべきである。

 それは、三月一日であれば三月一日に、やはり漁民の、生産者の立場に立って一たん中止をする。あるいは水門についても、これを開くということであれば、開くことを決断して、その中で、どういった方向があるのかということの検討を審議会でお願いする。今までの手法は、審議会に検討させるといいながら、その審議会の検討するほとんどは役所主導できているということについて、やはりそこはその考えを変えなければ、なかなかこの国は変わっていかない、こう思うわけでありまして、大臣の所信を求めたいと思います。

谷津国務大臣 有明の件につきましては、私が最初から申し上げておりますのは、まず現場主義、これは有明だけではないのですが、私は、農政を実行するに当たりましては、現場主義が一番大事であるというふうに考えておるところであります。そして、この有明の問題につきましても、私は、目線を漁業者と同じにしろということを申し上げているわけでありまして、そこでいろいろな対策を打たなきゃならぬぞというふうに思っているわけであります。

 そこで、第三者委員会をつくらせていただきまして、きのうその委員会のメンバーを発表したところでありますけれども、これも、農水省の方から委員の選任をしてはならぬ、推薦を受けろということで、四県の推薦あるいは漁業組合の推薦を受けた方たちをお願いしたわけであります。

 そして、もう一つは、肌で感じている人たちを入れなきゃいかぬぞということから、漁業組合の方から推薦を受けまして、四人の漁業組合長が入ったわけでありますけれども、私は、これだけではいかぬ、もっと、実際に漁場に出て、そこで実際に仕事をしている人たちが長年の間やっておる、その人たちが肌で感じているものがあるわけだから、そういう人たちの意見もこの委員会で発議できるようにしてほしいということで、この委員の中には入っていないけれども、その人たちも来て意見が言えるようにしてもらったわけでございます。そして、三月の一日に有明海の、これは福岡の関係の方たちが私のところへ来るということであります。

 私は一月の二十九日に現場を見てまいりまして、その状況は非常にひどいというふうに一言で言えるぐらいひどいものでありますから、私はその点に立って、これはできるだけ早くその状況を判断してもらうと同時に、その原因を究明してもらって、それに対処する必要があるというふうに考えているわけであります。

 ただ、先ほど木村先生からも御質問の中にありましたけれども、実は長崎県におきましては、あの水門をあけることは絶対反対だ、あるいは工事を中止することは絶対反対だというふうな、そういう強い要請も来ているところであります。

 しかしながら、私は、第三者委員会におきまして水門をあけて調査をしたい、あるいはまた工事を中断して調査をしたいということであるならば、いずれもそれはそのとおりやっていただくことが大事だというふうに考えておるわけであります。これにつきましては、農林省の事務当局におきましてもみんな協力的でありますものですから、必ずや、そういった面ではしっかりとした調査ができるというふうに考えているところであります。

 そして、調査の結果、これは十月に網入れが行われるわけでありますが、中間報告を九月末までというふうに言っておりますけれども、できるだけ早くその辺を取りまとめていただきまして、中間報告をさせていただきまして、そこで即座に対処していきたいというふうにも考えているところでもございます。

 また、大事なことは、私は有明湾をやはりよみがえらせなきゃいかぬ。あそこは宝の海だというふうに皆さん方はおっしゃっているわけでありますが、私もまさにそうだろうと思っておりますから、これは総合的に調査をしていただいて、あれをよみがえらせましょうよ、私はそういうことで全力を挙げていきたいと思っております。

鉢呂委員 いずれにしても、そのような観点からいきますと、後から人工的につくられた施設であります。やはりそれを調査委員会で、必要とあればということでありますけれども、必然的に、それがない状態でどういう変化を起こすのか、水門をあけたり工事を中止するということについて、大臣の指導性、リーダーシップをぜひ求めておきたい、このように考えます。

 きょうは、KSD問題ですとか森内閣の退陣問題とかをやろうと思いましたけれども、これは後に譲りまして、もっと重大なことでやっていきたい、このように考えております。

 WTOの農業交渉についてであります。

 日本は、この包括的な、多角的な貿易交渉、WTO全体の交渉に臨んでおるのでありますけれども、その方向がなかなか見えません。

 同時にまた、今回、二月の五日から七日にかけて、日本政府提案に対する各国の発言があったわけでありますけれども、四時間ぐらいで、三十カ国で二十一カ国以上が、日本の提案に対して大変厳しい、ある面では前回のウルグアイ・ラウンド以上の厳しい反応である、このように私ども受けとめております。ウルグアイ・ラウンドに逆行、後退しておる、犯罪的である、あるいは多面的貿易に対する冒涜であるというような、言葉も非常に過激な形で言っている。この間、日本政府、農水省もこの関係で各国に対する働きかけをいろいろやってきたと思いますけれども、その効果がなかなかあらわれておらないというふうな感じもするわけであります。

 私は、もう一回、日本のこのWTO対応というものに対する方法、戦略を仕切り直して考えてみる必要がある。日本提案はそれでよしとしても、果たして、WTOの農業交渉の中で日本提案が受け入れられる余地が本当にあるのかどうか、そこから戦略的な交渉の仕方というものを考える必要があるのではないか。

 特に、三月、日米の首脳会談があるというふうに言われています。私は、本当に農水大臣が、この交渉の重大性を考えたときには、日米首脳会談と同時並行的に、アメリカの農務長官や、もちろんブッシュ大統領にも、このWTOの多角交渉といいますか包括的交渉にアメリカが入り込んでいくように、あるいは、やはりアメリカが相当の主導権を持っておるわけでありますから、アメリカに対して日本の立場、アメリカも九六年農業法から相当程度変わった形になってきておりますから、そこのあたりもついてやはりアメリカ等に対しても積極的な働きかけをするべきだ、あるいは多数派工作も、まだまだ発展途上国等に対する働きかけが弱い。

 大臣や副大臣が専属で、まあ大臣が専属というわけにいかないでしょうけれども、副大臣や政務官が四人もいるわけですから、もと言ったら怒られますけれども、二人ぐらいはこの農業交渉に専属で当たるというぐらいの決意がなかったら、なかなかこれは面倒なことになるというふうに思いますけれども、その辺の決意なり戦略を聞かせていただきたいと思います。

谷津国務大臣 それは先生のおっしゃるとおりです。実は、この間の農業委員会の会議におきましても、厳しい指摘がされたということについては承知をしております。

 実は私も、一月の十四日から、EUあるいはスイス、そしてローマ、これは国連機関がありますから、そこへ行きました。それから松岡、田中副大臣もこれまた各国に行きました。それから政務官二人も行きました。そして、近々、班を編成いたしまして発展途上国等にも行くつもりでございますが、こういったことで、日本の主張の点をしっかりと理解してもらうということで精力的に努力をしていきたいというふうに考えているところであります。

 特にEUとは、この間もラミー委員が参られましたけれども、日本としっかりと提携をしてやっていきたいというふうなところもございます。ただ、EUとの間に多少の違いがあるわけでありますけれども、違いは違いとして、お互いに理解をし合いながら提携をしていきたい、その戦略もひとつ相談をしていきたいという話もございました。また、発展途上国をできるだけEUと日本で回って、そして理解を求めるように動こうではないかというふうな話し合いもさせていただきまして、ともに歩こうということになりましたものですから、私どもは班を編成してすぐに発展途上国にも行くということになっておるところでございます。

 そして、大事な問題は、やはり農業がお互いの国で発展できるような、そして、どうしても自給をやりたい、やるということについての共通の場もあるわけでありますから、そういった面もしっかりとお互いに意見交換をしながら、日本の提案に対してちゃんと理解をしてもらいたいというふうに思っているんです。ただ、今回はその枠組みを提案したところでありますから、これからいわゆる個別の話に入っていくと思うんですが、しかし、まず枠組みをしっかりと理解して、この辺に沿ってこれからの交渉に入っていきたいと思うんです。

 そういった面で、アメリカにも私どもは積極的に行きまして、日本の主張を理解してもらえるように努力していきたいというふうに考えておるところでございますので、ぜひひとつ御支援をお願いするわけでございます。

鉢呂委員 アメリカの新しい農務長官のベネマンさんが、アメリカの上院農業委員会公聴会で、やはりアメリカも、農業者が直面する課題は大変複雑で困難だ、低価格、悪天候等の中で政府は農業者に手を差し伸べてきたが、これからもこの努力をし続けることが重要であるというようなことで、非常に国内的には共通する部分があります。

 先般、私も、オーストラリアの農業担当の公使が訪ねてきて、民主党の農業政策はいかんということでお話をしましたら、オーストラリアのオレンジジュース、これも中南米のオレンジジュースの輸入に悩まされておるというような話をしていまして、これは先進国同士のいろいろ共通性も私はあるのではないか。もちろん、発展途上国との対話というものを続ける必要はありますけれども。

 ですから、そういう形を、農水省としての戦略をもう一回、日本人は内向きですから、単に何かやっていればいいというような感じで、相手に対して本当の影響力を与えておらない結果になっておるのではないか。最後に詰まるところはウルグアイ・ラウンドのような形になりがちですから、ぜひ、副大臣、政務官も、そういう形で、戦略を持って継続的にやっていく必要がある、私はこのように考えております。答弁は要らないです。

 そこで、次に移りますけれども、谷津農政が目指すものということで、この所信表明にもあるわけでありますけれども、食料の自給率の向上が大切だということの中で、その目標達成に向けて何を努力していくかということで、生産者、消費者の共生というようなことにも触れておりますけれども、私が目新しいのは、この中で、食料自給率の向上のためには、生産者、食品産業の事業者、消費者等の関係者と一体となった取り組みが不可欠であるというような文言があります。

 そこで、大臣はあるところで、あるところと言っていいか、JAの四会長の中で、先ほど言ったように、四五%の自給率は決して満足できないで、中長期的には七〇%、八〇%に持っていかなければならない、こういうふうに言っておるわけでありますけれども、私の見ているところは、現状の四〇%を維持することも現実的にはなかなか困難な、カロリーベースではこれ以上はなかなか下がり得ないかもわかりません。しかし、いわゆる総生産額というような形でいけば、昨今の野菜の輸入の増加、こういうことからいけば、いろいろな見方がありますけれども、日本の最近の状況は、生産額からいったらもっと落ち込んでいるのではないか、そうも言えるわけであります。そういう面で、その自給率を上げるというのはなかなか難しい状況であります。

 同時に、いわゆる食品加工関係の事業者というものとの接触は必ずしも多くない。必ずしも強くはない。これは行政のはざまでないところで進んでいる面もあるかもわかりません。しかし、私は、国内で食料を供給したいということからいきますと、その辺の食品加工業界との接点というのはないのかどうか。

 いわゆる、今中国、韓国等からも開発輸入だと。日本の商社等が向こうに行って、日本の技術、日本の資材で、そして安い労働力で製品をつくって、商品、食品、農産物をつくって、日本に輸入するという状況でありますから、まず、この食品産業の事業者と一体的にやっていくんだ、具体的には何を大臣は想定されておるのか、お伺いをいたします。

谷津国務大臣 私は、私のこれは一つの信念的な考え方なんでありますけれども、日本でつくられたものを完全に消費者の皆さん方に食べていただくということが、まず大事なことであるというように考えているんですが、その中に食品の加工というのが大きなウエートを占めますよということを申し上げているところなんです。

 例えば、私は、この間精麦の関係の方たちに申し上げたのでありますけれども、ASWというオーストラリアから輸入されている麦ですが、これはいわゆる単品ではありません、ブレンドされているものなんです。ですから、日本においても、精麦の会社がブレンドということについてもっと研究してよろしいんじゃないか。どうにも日本のものはだめだというふうな前提から輸入に頼っておるけれども、そうではないだろうということから、この辺の研究をもっとやってもらいたい。そうなれば、今日本の麦はパンはほとんど無理だというふうに言われておりますけれども、そういう中で、パンだってできるはずだというふうに思うんです。

 今イネゲノムの研究が日本では世界で一番進んでいるんですが、この間研究所に行きまして私は申し上げたんですが、麦もやってくれないか、そして、麦をそういうことで育成することによって、パンに加工できる麦ができるはずだ、そういったことでお願いもし、やりましょうというようなことも言っていただいたのであります。

 私は、もっと日本の製品の、農産物の加工という面でいま少し研究してやっていくならば、もっともっと需要がふえてくるという考え方を持っておるものですから、そういった面で農産物の加工、それと生産者、そして消費者というのは共生すべき中にいるぞということを考えまして、そういうふうに申し上げているところであります。

鉢呂委員 まだ具体性がないんですけれども、要するに、開発輸入業者等は、これは中国の方も言っていたそうですね、日本の消費者が要望しているから入れるんだ、あるいは日本の商社が来て、こういうものをつくるから入れるんだと。

 ですから、そういう点について、開発輸入する、その観点についても、どういった、規制と言ったら言葉が過ぎるんですけれども、今現在では、去年もあったようですが、ミニトマトが、日本で使われない農薬が韓国のもので使われておるとか、そういうものについて、もう少しきちんとした秩序立てをする法体系というものをつくれないのかどうか。そういう強制的なものでなくても、もっと開発輸入に対する、なかなか面倒ですけれども、いわゆる国内の生産で日本の食料を賄っていくんだ、それは全部賄うわけじゃなくて、そういう中で、輸入食料品、原材料との関係で、きちんとした方策ができないのかどうか、私はやはり相当考えてみる必要があると。

 例えば、去年の七月から生鮮食品の原産地表示が法制化いたしました。しかし、御案内のとおり、食品加工の原材料の原産地はいまだ法制化されていません。例えば、梅干し一つとってみても、紀州の梅干しということなんですけれども、その原料の梅が中国からほとんど来ているとか。これについてきちっと表示をすれば、国内の消費者は、まだ国産品を使いたい、食べたいという意識が非常に強いんですから、なぜ、食品加工製品についてのいわゆるその原材料の原料表示というものをきちんと、何年以内にやるというようなことを農水省としては公約できないのかどうか、この点についての御答弁をいただきたいと思います。

松岡副大臣 先生御指摘のとおり、昨年の七月から、JAS法を改正いたしまして、原産地表示というのは、これはいわゆる生鮮野菜等でやっておるわけであります。

 今また鉢呂先生おっしゃいましたように、では加工品についてはどうなんだ。これは、私ども随分議論をしてまいりまして、政府・与党一体の中で、私もその場合、谷津大臣と一緒に党の中で議論もしたわけでありますが、例えば紀州の梅は、中国に同じ梅の木を持っていって植えて、そこでとったものを持ってきて紀州で加工すれば、加工地が原産地になる。例えば鳥取のラッキョウも、中国のものを持ってきて鳥取で加工すれば、加工地が原産地表示になる。それはやはりけしからぬし、いかぬ。

 こういうことで、私どもは、原料原産地というものを表示する、そういうことで、十月一日からまさにそのように表示をするということを今整理を、これはしっかりとしておるところであります。そしてまた、漬物につきましても、いろいろなものが入っておりますが、やはり可能な限り、最大限、原料の産地というものを、加工にしても表示をさせる、こういう形で今最終的な整理を、これは終わっておるところでありまして、今言いましたようなことで、技術的に可能なものは、私どもはこの四月一日からの表示の中できちんとそれを明示していく、このように思っております。

 重ねてつけ加えますと、これからの課題でありますけれども、やはり安全性というものは、今最大の問題であります、狂牛病の問題もありますし。恐らく世界の流れというものはそういった方向に、やはり大変大きな流れが、関心がいくんじゃないかと思います。それにどう対応していくかということでは、私は、品質表示とかそういった面も含めて、先生がおっしゃるように、これからそういった対応をしっかりしていく、その辺の考えは全く一緒だ、このように思っております。

鉢呂委員 いろいろ問題はあるんでしょうけれども、主要な原材料は、その原産地、原産国を表示する、これにやはり踏み切るべきだ。それは、何十種類の原材料が入っているんですけれども、例えば五割以上の重量を持つものとか限定をして、その原産国、原産地を表示するということは可能だと思って、よろしくお願いいたしたいと思います。

 さて、米飯給食の推進です。この中で、自給率の向上には日本型の食生活というふうな話を大臣の所信表明にも書いてあるんですけれども、日本型食生活を一挙にといっても、なかなかこれは行政が強制できるものではありませんけれども、やはり子供というのは未来の日本の食生活を形づくってくる過程にあって、その給食が、米の割合が現在も全国週二・七回というのでは、余りにも少な過ぎる。

 多い県であっても、平均ですけれども、四回にはいかないわけで、最低は神奈川県の一・八回ということで、これぐらいは、これぐらいというのはおかしいんですけれども、米飯給食、五日あるか、六日あるか、一週間のうちの全部、ほとんどを米によって行うという、やはり政府全体で、先ほど大臣は、内閣に食料・農業・農村の基本政策の基本法に基づく対策本部があるわけでありますから、文部省やあるいは総務省等々と連携をとって、これは何年以内に必ずこうしますというプログラムをきちっと出していただきたい。

 いつまでもどうだこうだと、与党の中からも出ても、最大限努力するというふうなことであっては、自給率を高める、日本型食生活という農水省の看板が実現できないというふうに私は思いますから、きょうちょっと、具体的に答えてください、いつまでにやりますと。

谷津国務大臣 いつまでにやりますということをここで答えろといっても、私もそれはちょっと時間を置かせていただきたいと思うんです。

 特に米飯給食につきましては、一番大事な問題というのは、私は、学生が食べる、いわゆる子供たちが食べるものにまずうまい米を出せということを言っているんです。それでなじんでいくと言ってはなんですが、大事だろう。新米が出たら、まず新米を出しなさいというふうなことを申し上げているわけであります。

 これにつきましては、今、文部科学省ともいろいろ打ち合わせをしているわけでありますが、炊く設備に対しまして助成をするとか、あるいはまた学校給食用の器具の購入の支援をするとか、あるいはまた備蓄米の無償交付をするとか、こういうことをいろいろ対応しているところであります。何せ都市部において非常に低いのでありまして、この辺のところの対策をきちっとやらなきゃいかぬと思うんです。

 これはやはり私どもが、各都道府県の教育委員会等にも直接お願いをしなければならぬと思うんですけれども、それよりも何よりも、好ましい食生活のあり方を、今いろいろとキャンペーンもやっているところでありますが、まさにそういった学生の食べる給食の中に、米がいかに大事な要素であるかというふうなこともしっかりと知っていただいて、そういう中から米飯給食の回数をふやしていくことが大事ではなかろうかなというふうに思っているところであります。

鉢呂委員 関連がありますから、表示の問題でありますけれども、例えば、全農というJAの中央団体があるんですけれども、昨年の十二月十八日に、切り干し大根、千切り大根が、国内のシェアは四割ぐらい、外国が六割ぐらいで、その国内のシェアの六割ぐらいは宮崎経済連の切り干し大根。ところが、全農がその宮崎経済連の名前をかたって、袋そのままを使って、内容物はどうも輸入物ではないかというような疑いのあるものを販売し、明らかになったということで、全農という農業者のためにあるところの団体が、場合によっては外国のものをその中に詰め込んでという形で、一部の新聞には、大きな問題で、まだ最終的な決着はしていないと。

 例えばその原料が、どこから持ってきたのか、宮崎の業者から持ってきたと言っているんですけれども、そんな黒ずんだものを出すはずがないとか、不正競争防止法に違反をするような事例なんですけれども、農水省がやはりきちんとした指導を徹底していただかなければ、不当表示というか、その表示が農業団体まで、ある面では蔓延しておるんじゃないか。

 卑近な例は、米でよく言われるんですけれども、例えば、魚沼産のコシヒカリが生産量の数倍出回っている。私は毎回ここでやるんですけれども、そのときには、食糧庁はしっかりやりますということですけれども、毎回不当表示というか、にせの表示が出るのでありまして、私は、やはりそのことの体制もきちんと整える段階に来ておるのではないか。

 私ども民主党は、今、国の内外、国際的な形で大変輸入量も多いわけですから、食品の流通、あるいは農産物の生産過程にも踏み込んだ監視員、これは厚生省と農水省のはざまのような形になっていまして、もう厚生省は定員削減ですから、先ほど狂牛病の話を副大臣しましたけれども、そういうものが過失で入ってきたときには、複雑な流通段階では、もうほとんど消費者の口に入っておるということにもなるので、水際できちっと監視をするということが日本の体制では全く整っておりません。

 今、ヨーロッパではああいうふうに吹き荒れているから、対岸の火事のように見えますけれども、日本はそれ以下だというふうに、これは皆さんだれでも思うと思うんですね。ですから、そんな役所の縦割りの定員の削減でできないのであれば、きちっと農水省が全体の役所を束ねて、例えば食糧事務所というものが今再編の過程にあるのであれば、そういうものをきちっと充てるとか、これは本当に日本の危機管理になるかもわかりません。去年の雪印問題も、あれぐらい消費者を不安に陥れました。死亡事故がどんどん出るような、そういうものが出たときに、本当に日本は危機管理どころでない、国民の皆さんを不安感に陥れてしまうと思うんですね。

 ですから、こういうものも含めて、全農に対する徹底した、それこそ真相解明と、真相解明という意味は、原料の産地特定や再発防止の具体策について、きちっと農水省は指導すべきである。あるいは、この表示を含めて、食品全体にかかわる流通監視のような形をとるべきだと思いますけれども、大臣の御所見をいただきたいと思います。

谷津国務大臣 全農の切り干し大根の件でありますけれども、最も信頼されなければならない、生産者側に立つ全農であります。その全農がこういうようなことでやられたということについては、私は怒りすら覚えているわけでありまして、これは徹底的に究明すると同時に、今後こういうことのないようにしっかりとやってもらうように今指導をしているところであります。

 特に考えなきゃならないことは、今米の話もありました、こういうことで、四月一日からJAS法に基づきましてきちっと表示をしなければならぬということでございますが、その表示の中身について、実は事前に、五百八十カ所ぐらいだったかな、ちょっと数字は覚えてないですが、そのくらい、直接調査に今入っておるわけでありますが、そういう中で、実は、表示と中身が違うものも正直言いまして出てきたわけであります。

 こういうことは消費者に対する詐欺行為だと私は言っているんです。こういうことをやってはいかぬ。やはりきちっとした表示のもとに、その中がきちっとやられてなければ、これは安心をして食べられない、あるいは信頼をしてそれを買うことができない、こういうことにもなるわけでありますから、みずから襟を正していかなければだめだよというようなことを申し上げておるわけでありまして、そういうことがきちっとできれば、私は消費もまた伸びていくというふうに考えているわけであります。

 この辺のところについては、実は私ども農林水産省の中に、政治主導というわけではございませんけれども、副大臣・政務官会議というのを持ちまして、この辺のところもしっかりとやれるように、今指導もし、またそれなりに行動もしているということでございまして、この辺のところをこれからも十分に監視しながら、何といっても消費者から信頼される、そして本当に食べてよかった、買ってよかった、そういうふうなものにしていかなければならぬというふうに考えているところであります。

鉢呂委員 ついででありますから、全農が昨年、新聞報道によれば、十四億円の所得隠しで国税庁に摘発されたという問題も起きています。これも、いわゆる加工米等、価格を下げに持っていきたくないというようなこともあったのか、リベート還流といいますか、後で実勢価格に基づいて売り先に還流する、これは自主流通米の価格実態をねじ曲げるものであり、しかも、それが一部には県経済連の悪いところにその利益を還元したとかいうようなことが言われていまして、やはりその辺もきちんとした、共計販売というのはある面ではそういうことになっては全く困るわけでありますから、全農が肥大化することによって日本の産地競争やあるいは資材の価格低減に対しておかしな形にならぬように、農水省としても監視をきちっとしていただきたい、こう思います。

 そこで、きょうは総括的なところでありますから、日本の米の転作制度について若干お話をさせていただきたいと思います。

 昭和四十五年からこの制度が始まって三十年、この間、調べてみますと、補助金として五兆七千億のお金が使われております。しかし、米の消費は一向に伸びないということで、ことしあたりは百万ヘクタールを超える転作を行うという形で、なかなか転作というものを変えることができない。しかも、事実上、強制的な手法によって行われるということで、主産地を含めてこの転作制度については大きな批判があるというふうに私どもは思っています。

 これをやはり抜本的に変えていく必要があるのではないか。私ども民主党も今そこに真剣に焦点を当てておるところでありまして、従来型の転作制度では農家の意欲も出てこない。北海道あたりも、大規模にしろといっても、その後からどんどん転作をしろということではどうにもならない。

 私は、二つ提言があるんですけれども、一つは、今まではずっと単位面積当たりの奨励金、転作奨励金というものを交付してまいりました。どうもそれは、つくるのはいいんだけれども本当に販売作物として、あるいは飼料にしても家畜のえさとして本当に利用されておったのかなと。むしろ、ある面では、やはり単位収量当たりの奨励策に変えて、本当に本格的な生産ということであればそういうものが消流、販売できるというふうに変えていく必要があるのではないか。

 あるいは、転作そのものをやはり自主選択制のものにしていくという形で、むしろ、米というものに、ある面では日本の水田というものが方向があれば、本格的な飼料米というものについて踏み込んでいく、あるいは、日本の備蓄なりあるいは食糧の海外援助というものについてこの米というものを活用していくという方向にやはり踏み切るべきではないか。

 今のようにその場しのぎで、また米が余るからといって転作をするという方法は一回見直す必要があるのではないかというふうに大臣に訴えるわけでありますけれども、御所見を伺いたいと思います。

谷津国務大臣 今鉢呂委員のおっしゃることは、一つの見識だというふうに私も理解をするところであります。

 確かに、適地適作ということもございます。そういうことから、もう一つは、もう米しかできないような地域もあるわけであります。あるいはまた、転作もできる地域もあるわけであります。それからもう一つは、うまい米のできるところとそうでもないところも実はあるわけであります。

 こういうことを、農水省も随分前でありましたけれども、そういう日本全体の土地の状況とか何かを航空写真によりまして、航空写真というか宇宙の方から撮って、それでそれをつくってあるんですね、そういうものが。ですから、そういうふうなことでそれを生かさなきゃいかぬじゃないかというのを私は今言っているわけでありますが、聞くところによりますと、これは既に県の普及所あたりには全部回っているというふうに言っているわけでございますから、その普及所あたりもその辺のところを十分に生かす作物の作付というんでしょうか、生産というものをやっていかなきゃならぬじゃないかというふうに思うんです。

 ただ、いろいろなところから、やはり地域に即した事情があって、希望が出てくるわけでありますけれども、しかし、これはやはり協力をいただいて、国としてしっかりとその辺のところを見据えて作付等をやっていく必要があるというふうに考えているわけでありまして、今の飼料作物等においても、これは一つの見識というふうに考えておりますし、またこの点についても農水省としてもいろいろと今進めているところでもございますから、そういった面はもう一度この辺のところを抜本的に見直しをしてやる必要があるというふうに、私個人は今そういうふうに考えているところなんです。

鉢呂委員 大臣の個人の見解はもう大臣の見解ですから、その方向でやっていただきたい、このように考えます。

 それから、流通業との関係ですけれども、先ほども若干触れましたけれども、最近、農水省が発表した小売段階の価格差、生産段階に比べて二・七八倍に小売価格がなる。例えばキャベツなんかは四・六二倍ですとか、トマト三・八七倍、タマネギ三・六九倍。まさに日本の東京の食品はヨーロッパとかニューヨークに比べて非常に高いというたぐいのものの中に、やはり流通関係の価格が非常に高くて、生産者段階の比較ではない状態であらわれてくるんですね。これはもう昔から言われておるんですけれども、なかなかこれは手をつけられない。

 大臣も若干所信表明で書いてありますけれども、この程度の卸売市場の設備投資だとか情報の提示だとかだけでは、情報化の推進だけではなかなかうまくいかない。もっとやはり農水省として、なかなか手のつけにくいところはいっぱいあります。命令でやれるようなところではありませんから、流通関係は。しかし、もっとやはりやることはあるのではないか。

 私も、こう田舎と東京を回っていますと、東京のスーパーで見ればばか高いですね。幾らふるさとが安い価格でも余り安くならないんですね、高いときはそれはもちろん高いですけれども。産地が安くなっても安くならない構造があるんです。やはりそこは農水省と一致して、もう一回、大臣、副大臣、政務官でメスを入れていただきたいものだ、何がやれるかということがありますから。

谷津国務大臣 実は、その点につきましては、くしくも今委員の方からも、副大臣、政務官のところでもとお話がありましたが、副大臣・政務官会議のところで、まさにそこに今メスを入れるべく検討しているところなんです。

 これはちょっと次元が違う話ですが、私は、今度の輸入問題、セーフガードの点について、こういうのを調べてほしいと言ったことがあります。それは、輸入されてきたものが、要するに日本の水際で揚がった価格、これはいろいろな経費もかかりますが、その価格と農家が庭先で出す価格、これによって実際に最後に売られている店頭価格というのを全部比較してみてくれというようなことで、その数字をいただいたわけであります。

 国内の流通の面では、かなりの経由を通っていくものですから、かなりの倍率になっています。先ほどお話がありましたように、二・七、八倍に行っちゃうんですね。ところが、輸入の方はどうなんだというふうに見てみますと、実はそんなに行ってない。

 それで、最後の末端のところで売られるときには、例えばスーパーなんかはマージンを取るのにパーセンテージを掛ける。元が高ければパーセンテージを掛ければまたそれが高くなるというようなことで、格差がますますついてくる。こういうふうなものもありましたものですから、そういった面にも少しメスを入れていく必要があるだろう。流通の関係を、しっかりとその辺をもう一回見直してやる必要があるであろう。

 この点については、今松岡副大臣のところで検討しておりますから、その辺のところの経過をちょっとお話ししてもらいたいと思います。

松岡副大臣 それでは、せっかくの御指定でありますからお答えしますが、問題認識は鉢呂先生の認識と私ども全く一緒でありまして、生産地では安いんだけれども、消費地に来てみるとえらい高い。では、中身がどうなっているのか、ここにやはりメスを入れる。

 ただ、いろいろ調べてみますと、これはまたちょっと答弁が長くなって申しわけないんですが、最終価格を一〇〇とすると、その中の生産段階の割合というのはもともと四分の一でしかない。これはトータルですけれども、物によってはいろいろ違いますが。したがって、言ってみれば、七五%が流通として経費が乗せられておる。

 確かに、流通で金がかかるようにはなっているんですね。スイカなんかでも、昔は一個で買っていたものが今幾つかに切りますから、そしてまたこれは包みますから。そういったコストもかかっているということになればそれはしようがない点もあるんでしょうが、どうしても七五%も流通経路で経費がかかる、ここはやはりどうするか。

 今ここで答えが言えればもう検討しなくてもいいんですが、私ども、やはりそういった問題認識で、そして流通経費を安くすることが生産の方にも還元できて消費者にも還元できる、こういうひとつ何かきちんとした対策を立てていきたい、こう思っておるところであります。

鉢呂委員 次に、稲作経営安定制度の改革の問題です。

 今回、九八年から始まりましたから、二〇〇〇年の一定の試算値も農水省から出されました。大臣、今、資金造成が二〇〇〇年産に向けて一千六百四十八億あります。前年の積み残しの五百八十六を入れて一千六百億ありました。

 今回、農水省の試算は一千五百億程度出てしまう。今までは、ある程度繰り越しができたんですけれども、ほぼ全部使うぐらいの形で、要するに、去年産は非常に価格が低迷をして補てんをせざるを得ないという形になるようでありまして、おおむね特別支払いも入れて六十キロ当たり二千円程度支払うことになるだろうというふうなことが言われております。

 ただし、魚沼産の産地のような従来高いところは五、六千円を補てんしなければいけないということで、一般的な、例えば北海道のようなところは相変わらず千四百円程度ということで、非常に苦しい状態になっています。これは、問題は、皆さんも基準補てん単価をいろいろ工夫して、四苦八苦して、ことしは去年と変わらないようにするとか、制度の当初からいけばまさに基準価格をいろいろ工夫してつくってきておる状態です。

 私は、始まってこの三年、四年ですから、もう一度見直していただきたい。見直す手法は、基準補てん価格というものを従来の三カ年過去の自主流通米の価格の平均値だ、これはどう見ても、下がればずっと基準価格が下がっていくということで、やはり農家経営にとっては、全く市場化にいってしまったわけですから、政府米がそんなにどんどん買えるという、もう全く政府米はいきませんから。

 そういう中で、基準価格のとり方を、そういう自主流通米の実勢三年間ということから、やはり一定の生産費を賄う固定的な価格で、ずっと永久とは言いません、三年なり五年は今の現状で見て、生産費所得を補償する価格で固定して、それに対して実勢の自主流通米の価格の差額を補てんする。これは、アメリカ等を見ても固定支払いになっているんですね。日本のように非常に市場にも連動させる、このような仕組みは安定したものになりません。

 ぜひ、そこは大臣として踏み込んでいただきたい、このように思いますけれども、いかがでしょうか。私も時間がなくなりました。質問の趣旨、わかりますか。

松岡副大臣 先生の、ある一定期間安定的に固定をしろ、それがやはり農家経営にとって、また農業者がいろいろ選択していくときに大きな目安として非常にそれは必要なことではないか、それは、私どもも全く同じような認識で受けとめております。

 おっしゃるように、稲作経営安定制度は、私ども、上がるときもあれば下がるときもある。したがって、その平均として三年で八割が補てんできれば、これはいざというときはそれで救えるんじゃないかと思っておりました。ところが、見直してくれとおっしゃるように、現状はどちらかというと下がりっ放し。したがって、際限なくどこまで下がるのかというのが今農家の実感であります。そこに心配も不安もある。そこで私どもは、見直しをして、新しい形にするまではひとつ固定をしようということでことしは固定をしたわけであります。先生がさっき御指摘のとおりであります。

 したがって、先生がおっしゃったような御指摘を踏まえて、私どもも、三年がいいのか何年がいいのかという議論はありますけれども、ある一定の安定した水準で、目安がしっかりと、経営者が安心してやっていける、こういった方向に持っていきたい。

 経営所得安定対策というこれからの大きな方向の流れの中でも、そういう価格水準と組み合わせて、私どもが目指していますのは、やはり大々的な直接支払いの方に大きくかじを切っていかなきゃならぬという方向は将来はそうだろうと思っていますので、今そういう方向の中で、これは最大の課題として検討していく。今のところこのような答えしか申し上げられませんが、そういうことであります。

鉢呂委員 最後に、野菜のセーフガードの関係であります。この間の取り組みはよしとしながら、暫定発動も辞せずという考えも表明されております。

 ただ、このセーフガードの政府調査の基準というものが、一定の数字的なものでやっておるようでありますけれども、私は、もう少し農水省も、六品目を財務省なり通産省、今は経済省ですか、そこと協議をして三品目という形で正式の調査に入ったわけでありますけれども、残りの三品目、北海道あたりは、タマネギ、ピーマン、トマトのほかに、ニンジンですとかカボチャ、ゴボウについても非常に大きな影響を受けておりますから、それらについて、三品目以外についてどう対応していくのか、積極的にセーフガードという形で調査をし、発動をすべきでないかと思いますけれども、見解をお伺いして、終わらせていただきたいと思います。

谷津国務大臣 この三品目以外ということですが、先ほど松岡副大臣が答えておりましたけれども、トマト、ピーマン、タマネギ、ニンニク、ナス、木材、それから合板、それから干しシイタケ、ウナギ、ワカメ、カツオ、三品目を加えますと十四品目になりますが、この十一品目については監視をしていく必要があるということで、しっかりと今監視をしているところであります。

 そして、これはセーフガードをかけるような項目に入ってくるということになれば、財務省あるいは経済産業省と相談をして調査に入るというふうに、いつもそういう体制をとっているところであります。

鉢呂委員 終わります。

堀込委員長 次に、白保台一君。

白保委員 農林水産大臣の所信表明を受けまして若干の質問をしたい、このように思います。

 大臣の所信にありましたが、我が国の農林水産業と農山漁村は、食料の安定供給、国土や自然環境の保全、文化や多面的な機能、新鮮で安全な食の供給など、国民の生命を維持し、心身ともに健康たらしめるような、その基本的な責務がある、こういうようなことでございました。

 当然のことでございますが、そして同時に、人間と環境は共生していかなきゃいけない、こういうことも所信の中にございました。また、所信の中には、生産と消費との共生という理念が盛り込まれております。特に共生ということは大変大事なことでございますし、二十一世紀はまさに尊厳のある生命を基盤とした共生の世紀であろう、こういうふうに私どもも考えるところでございます。

 そこで、二十一世紀における農政の基本指針が制定され、この基本理念を具体化するために、昨年の三月に食料・農業・農村基本計画が策定されました。その政策を着実に推進することを高らかに宣言しておるわけでございますが、このことについて順次伺ってまいりたい、このように思います。

 まず初めでございますが、食料の自給率の向上対策についてであります。

 食料の安定供給の確保のために食料自給率向上に向けた取り組み、基本計画の中で自給率の目標が明確に定められております。食料の自給率の低下傾向に歯どめをかけるため、目標を明確に掲げて、その目標に向けて着実な向上を図っていく期間を平成二十二年度までと決めて、その計画期間内において関係者が取り組むべき食料消費及び農業生産における課題を明らかにし、その目標課題に果敢に挑戦、四五%の自給率の目標まで持っていくということでありますが、果たしてこの目標達成が、先ほども議論もありましたが、できるのかどうか、こういった議論が多くあります。

 平成十二年度は四〇%の横ばいでしょうか。国の基本である食料の安定供給は、抜本的な改革なくしては無理ではないかという懸念を持つわけでありますが、こういう思いを持ちながら伺いますが、自給率の目標に対して、基本的な考え方、それについて、まず生産者及び消費者の両面にわたる国民参加型の取り組みが重要であるとの考え方であります。

 その具体的な実践方法、その具体的な問題をどうするのかということについて、まずお聞かせいただきたいと思います。

谷津国務大臣 先生御指摘のように、国民参加型の取り組みの推進が大事だというふうに私も思っておるわけであります。

 食料の自給率は、国民の食料消費が国産でどの程度賄われているかということを示す指標でありまして、国内の農業生産だけではなく、国民の食料消費のあり方によって左右されるものであることから、その向上のためには、生産者それから食品産業事業者、それと消費者等関係者が一体となって、国民参加型の取り組みが不可欠であるというふうに考えているところであります。

 具体的には、生産者サイドにおいては、耕作放棄地の解消や利用率の向上、そしてまたコストの低減と消費者ニーズに対応した生産、つくりやすいものをつくるのではなくて、やはり消費者ニーズに合うものをつくるということですね。

 それから、食品産業事業者サイドにおいては、販路開拓や新製品の開発の取り組みを通しまして農業サイドとの連携を強化していかなきゃいかぬと思っています。それから、消費者の適切な商品選択のための原産地表示等を徹底して行うことが大事だというふうに思っております。

 また、消費者サイドにおいては、我が国の農業や食料供給事情についての理解、そしてまた栄養バランスの改善や、食べ残しあるいは廃棄の減少等食生活の見直しをすることが大事であるというふうに考えておりまして、こうした課題に一体的に積極的に取り組んでいくことが必要ではないかなというふうに思っておるわけであります。

 政府といたしましても、こうした関係者の取り組みを促進するために、生産面においては基本計画に即した具体的な施策、例えば農地や担い手の確保、あるいは技術の開発、普及等の推進に努めているとともに、消費面におきましても、文部科学省や厚生労働省と連携をしながら、食を考える国民会議を中心といたしまして、食生活を見直す国民的運動を展開していきたいというふうに考えておるところであります。

白保委員 消費者の問題、そしてまた生産者の問題、非常に抱える課題というものは多いと思います。

 私も、実は大分前に、代議士の秘書をやっておるころに、よく農水省が、コンピューターが出たころに、適地適作とかいろいろ言ってやってまいりましたけれども、結局、農業が抱える問題というのは、ずっと引っ張って今日まで来ているようなところがありますね。

 したがって、自給率を向上させるために、今生産者にどういうふうな方向性を示すのかという問題、そしてまた一方で、やはり消費者がどういうニーズを持っているのかという問題、しっかりとこれが合っていかないと、かつては適地適作と言いましたけれども、今度はきちっとマッチングしていく方法がなければいけないんじゃないか、こういうふうに思いますし、先ほどの御答弁のように、ぜひ果敢にこれは推進をしていただかなきゃならないな、こう思います。

 もう一点伺いますが、例えば平常時、いわゆる平時、そういうときだけではなくして、不測の事態あるいは非常時といいますか、そういった事態が生じた場合でも最低限必要な食料を供給し得る食料供給力の確保はどうしていくのか。また、不測の事態というのはどういうことを想定されているのか。この辺のことについても伺いたいと思います。

谷津国務大臣 食料は、人間の生命を維持することに欠くことのできない基礎的なものであることから、不測の要因により需給が逼迫した場合、そのような場合も最低限度の供給を確保していく必要があることは、先生の御指摘のとおりであります。

 そのために、平素から、国内外の食料需給等に関する情報の収集、分析、そしてまた農地、担い手の確保、農業技術水準の向上、それから農業生産資材等の確保等を通しまして、我が国の食料供給力の維持向上等に努めているところでございます。

 また、国内需給が相当の期間著しく逼迫する場合のことにつきましては、初動対策として備蓄の適切な活用がございます。それから、価格の監視や情報提供等による価格の安定といわゆる流通の適正化というのも大事な要素であると思います。さらに、長期間継続する場合における熱量効果の高い作物への生産転換、あるいは生産資材、これは種とか種苗、肥料あるいは農薬、それから飼料等の確保が大事ではないかというふうに思うんです。

 こうした対応を行うことによりまして、これらの対応を機動的に行うための今マニュアルを作成しようとしているところであります。

白保委員 大臣も委員会で大変活躍されたわけですが、私も県議会当時、沖縄ですから亜熱帯ですから、この際、将来の食料確保のために種子をしっかりと確保する必要があるだろう、しかも種子も原原種じゃなきゃだめだよと。ほかの国は、来るべき二十一世紀に向かって、日本では少子化というふうに言われていますが、国際的には人口爆発の時代が来るかもわからない、そういうときにどうやって食料を確保するかといえば、種子の確保だろうと。

 こんなことで、県議会でも随分と議論をしたことがあるわけでございますが、やはり不測の事態というものは、国民生活を維持しなきゃいけないわけですから、そういったことも含めて、しっかりとした戦略的なものを持って取り組まなきゃならない、こういうことを申し上げたいと思います。

 そこで、次の問題なんですが、我が国の食料自給率が年々低下して、供給熱量ベースで四割程度と、先進国の中で最も低い水準となっているというふうに聞いております。基本的には、食料として国民に供給される熱量の五割以上を国内生産で賄うことが適当と言われておりますが、さらなる目標達成への具体策、これについてどのように考えておられるのかお聞きしたいと思います。

谷津国務大臣 先生御指摘のとおり、先進国では我が国が一番自給率が低いのですね。先進国の自給率を見ますと、イギリスでは八〇%、ドイツでは一〇〇%、それからフランスや米国やカナダやオーストラリアでは一〇〇%をはるかに超えておりまして、我が国は本当に主要先進国の中で最低の水準となっておりまして、我が国の食料自給率の向上を図ることは極めて重要な問題であるというふうに私は考えております。

 ですから、食料・農業・農村基本計画におきましても、食料自給率の向上に向けた関係者の取り組みを通しまして我が国の食料供給力の向上が図られることは非常に重要であるというふうに位置づけているわけでありまして、我が国の食料自給率が年々低下している中で、国民の多くが、我が国の食料事情に最近不安を抱いている方もかなりあるわけでございます。こういうことを踏まえまして、基本的には、食料として国民に供給される熱量の五割以上を国内生産で賄うことを目指すことが適当としているところであります。

 しかしながら、平成二十二年度における食料自給率目標については、実現の可能性あるいは関係者の取り組みなど、そしてまた施策の推進への影響等を考慮して定める必要があるのではないかということから、四五%というふうにされたところであります。

 政府といたしましては、まず平成二十二年度における四五%の食料自給率目標の達成に向けて、生産、消費両面から所要の施策を講じていくことになっておりますけれども、食料自給率の向上に向けた関係者の一体となった努力が進めば、この延長線上において五割という食料自給率も見えてくるのではないかと私は考えているところであります。

白保委員 大変しつこいように聞こえるかもしれませんが、今大変自信を持って、胸を張って言われたのですが、もし、これはちょっと厳しいかな、こう懸念されることがおありでしたらお聞かせいただきたいと思うんですが、そういったことはありますか。目標達成が無理かな、できない、もしそういったことがあるならば、どういった要因があるか。

谷津国務大臣 これは私は、一つは、先ほども申し上げておるんですけれども、消費者と生産者の共生というのは非常に大事な要素の一つだというふうに考えているんです。ですから、国内でつくられたものをきちっと消費していただくということが大事であります。

 そこで、私はいつも申し上げるんですけれども、つくりいいものをつくるのではなくて、消費者が求めるもの、そういうものをきちっとつくっていくことが大事なんだ、これが基本だというふうに考えております。

白保委員 これから農政を進めていく中で大事なのは、やはり担い手の問題が非常に重要な問題であろう、こう思います。それで、担い手に関する経営支援対策についてお伺いしたいと思います。

 農業の持続的な発展に関する施策でありますけれども、農業構造の確立を図るための総合的な経営対策の一環として、意欲ある担い手に対し、経営実態に応じたきめ細かな支援が求められております。これに対応できるように、対策費として今回、農業経営資源活用総合支援対策として融資枠二千百億円ですか、これが計上されております。

 これは、意欲ある担い手に対する経営支援と優良経営資源の活用を推進し、効果的かつ安定的な経営体の育成を図るためのもの、このように伺っておりますが、具体的な内容とそれぞれに使われる金額、その意欲ある担い手の対象というのはどういうものを言うのか、これを教えていただきたいと思います。

松岡副大臣 まず最初に、先生御指摘の、意欲ある担い手の対象はどういうものであるか、こういうことでありますが、いわゆる新農業基本法二十一条におきまして、持続的な農業の発展ということを最終的に目指すために、望ましい農業構造を確立する。

 その望ましい農業構造というのは何によって構成されるかでありますが、これに対しまして、効率的かつ安定的な農業経営によって農業生産が相当部分担われるような農業構造を確立するんだ。

 そこで、この効率的かつ安定的な農業経営というのはまた何かということでありますが、これはまさに、主たる従事者の年間労働時間が他産業並みで、また生涯所得も他産業並み、そういったことが達成されるような農業経営の姿を目指そうとする人を意欲ある人、こう位置づけたい。

 そこで、具体的には、家族農業経営として大体どれくらい見込めるかということでありますけれども、平成二十二年、基本計画の目標とする年次におきまして、家族農業経営で大体三十三万から三十七万ぐらい、そしてあとは法人経営の方で三万から四万、約四十万前後の経営体で担っていこう、これは一応の整理としてそう思っておるわけであります。

 こういった人たちに、先ほど先生がおっしゃったような支援をしっかりやっていこうということでございますが、まずとにかく、積極的な農業経営、経営展開をやっていただくために、就農段階におきましては、青年農業者に対して農業技術、経営方法の研修教育等就農支援対策をやる。

 そして、経営改善過程におきましては、認定農業者に対する農地の利用集積の促進、スーパーL資金等の低利資金の融通、大区画圃場の整備等生産基盤の整備等を支援する。

 また次に、担い手のリタイアに伴う農業経営の継承段階におきましては、農地保有合理化法人によるリース農場の活用、そういったことで経営の発展段階に応じて支援対策をやっていこう。

 そしてまた、これに加えまして、新たに、個々の農業経営の実情に応じた積極的な経営展開、そして負債整理に対する総合的な融資ということで、先ほど先生おっしゃいましたが、二千百億円の融資枠をもちまして、これをスーパーLに加えまして、認定農業者育成確保資金、これは融資枠二百億ということで系統資金を使うわけでありますが、これの創設によりまして認定農業者向け資金の充実を図った。

 そしてまた、経営体育成強化資金といたしまして、これも公庫資金を使いまして融資枠三百億でありますが、これの創設によりまして、前向きな投資資金と償還負担軽減資金との一体的な融通をやっていこう。

 さらに三つ目といたしまして、農業経営維持安定資金、これも融資枠二百五十億円、公庫資金であります。さらにまた、農業経営負担軽減支援資金としまして、系統資金で融資枠四百億円。こういうことでございまして、支援策を今言ったようなことでやっていこう。

 さらにまた、老後の問題があるものですから、これに対しまして、農業者年金制度の抜本的な改革を図って、充実を図っていこう、こういうような支援策をひとつ体系的にやっていこうということでございます。

白保委員 時間が参りましたので、最後になりますが、有明海のノリ養殖不作問題について細かく伺おうと思っておりましたけれども、時間がありませんので、まとめて申し上げておきたいと思います。

 原因究明の問題、これは一日も早い方がいいので、いつきちっとしたものが出るのかということが一つあります。それからもう一つは、今支援策として金融問題で支援をしておりますが、現況よりももっと前に進んでいってしまうようなことがあった場合には、さらに金融的な支援策を講じることを考えておられるのかという問題。それからあと、産業振興の立場から、水産資源の回復、増大などの事業を速やかに行うということも言われておりますが、この点も含めて、ひっくるめてお伺いいたしたいと思います。

谷津国務大臣 それは非常に収入が激減をしているわけでありますから、これはまず共済でできるものは早く共済でやるように、今指導しているところであります。

 また、無利子の貸し付けもやっていますが、実はこれは県とのもありますものですから、県議会の方で今急いでその点のところもやっているようでありまして、万全の対策をしていきたいと思うのです。

 それと、調査なんですが、私は、今おっしゃるように、九月の終わりごろから十月に網入れがあるんですが、その準備はもっと早く、前からやっているわけでありますから、その準備をしているときにちゃんと出せるようにしろと、そういうようなことで、今強く、そういった面で調査についても早めるように申し入れているところでもございます。

白保委員 終わります。

堀込委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五分開議

堀込委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。一川保夫君。

一川委員 谷津大臣の所信に対する質問をさせていただきます。

 午前中も幾つか質問があった中で、重複する箇所があるかもしれませんけれども、私なりに、確認を含めて、御質問をしたいというふうに思っております。

 まず、かねてからこの委員会でもいろいろ話題になっておりますけれども、生産調整という、政策といいますか、この問題、自分なりにも、農政の中でも余り前向きな政策でないという気持ちを持っておりますし、また農村地域とか農家の皆さん方と話をすると、ほかの農政のいろいろな話題よりもこの生産調整の話題というのが、結構皆さん関心を持って、いろいろな話をされるケースが非常に多いわけです。

 最近、大臣なんかも当然自民党の中のいろいろな農政関係を担当されていて、一生懸命例えば米をつくってもその豊作を喜べないというのが今の現状でございますし、また翌年大きな生産調整がかかってくるんではないかとか、あるいはまた価格が下がっていくんではないか、そういう不安感だけが募ってしまって、一生懸命農業に取り組んで単収を上げるというような、その意欲が出てこないというのが今日の状況なんですね。

 ですから、こういうことをいつまでも続けているというのもちょっと情けないことなので、私は、御存じのとおり、この生産調整、いろいろな名称はありますけれども、昭和四十四年、昭和四十五年と緊急的な措置を講じて以来、四十六年から具体的に政策として、例えば稲作転換対策というものからスタートしました。

 その間、例えば水田総合利用対策とか水田利用再編対策とか水田農業確立対策、それから水田営農活性化対策、それから新生産調整推進対策、それから緊急生産調整推進対策、それと今、水田農業経営確立対策というふうに八つも、政策というか、そういうものの名称を変えながら、実質は同じようなことをやってきておるわけです。

 この間、例えば水田利用再編対策は、通算しますと九カ年に及んでいるわけですね。それから、その次の水田農業確立対策は、六年間に及んでこういう対策がとられているわけです。

 こういう政策は、その都度その都度やむを得ずやってきたんだろうと思いますけれども、本来、生産調整と名を打つような政策をやらなくても、農家の皆さん方が自由に自分のつくりたいものをつくって、それが我が国の食料を安定的に供給するという姿に持っていけば一番理想的な姿なんですけれども、しかし、今農家の方々も、先ほど言いましたように、自分のつくりたいものもつくれない、また、主食である米というものをつくれば、先ほど言ったようないろいろな不安感が出てくるという中で、もう三十年間こういう政策が続いているわけです。

 昭和四十五年ごろですから、そのころ農林水産省に入省した方も、ある程度の方はもう退官されていく、そういう段階ですね。この三十年間やってきた政策がなかなかまだ実を結ばないといいますか、何かそんなような感じを私はするわけです。要するに、そういったしっかりとした構造改革的なものがまだなされてきていないというような印象を受けるわけです。

 昨年もああいう緊急的な措置として対策がとられたわけでございますけれども、やはりああいう緊急対策そのものも、当時私もちょっと言いましたように、大して自慢できる政策じゃないと思うのですね。

 やはり恒久的な政策がうまくいっていないからああいう緊急的な措置をとらざるを得なくなってくるということでございますので、大臣、長年いろいろな面でこの農政関係を担当されていたわけでございますけれども、二十一世紀という一つの時代の節目を通過しようとしているわけでございますし、三十年間もこういう政策をやってきたわけでございます。

 ここで、新たな時代に向けて、この生産調整というような政策を、何か従来の発想の延長線じゃない考え方で見直す時期に来ているような気も私はするわけですけれども、まず、この三十年間の生産調整という政策を大臣はどのように評価されておりますか、そのあたりからお聞かせ願いたいと思います。

谷津国務大臣 先生御指摘のとおり、この生産調整につきましては、いろいろ私も御意見等を農家の方々から聞くわけであります。

 米の生産調整は、大幅な需給ギャップが顕在化してきた、先生が今おっしゃいました昭和四十年の中ごろから三十年間にわたり実施しているものでありますが、この間、需要に見合った生産を誘導することによりまして、米の需給及び価格の安定に寄与したものと私は評価をしているところであります。

 また、米の生産調整の一環として、麦あるいは大豆、野菜、飼料作物等の他作物への転換を誘導することによりまして、優良な生産装置である水田の有効利用にも役立ってきたものと認識をしているところであります。

一川委員 今ほど、いろいろな価格面だとかほかの作物へのいろいろな誘導だとか農地の有効利用的なことにも寄与してきたであろうというようなお話でございました。

 確かに、ある程度その時点で農家の所得といったようなものに対して配慮した政策であろうかというふうにも思いますけれども、では今の状態をずっと続けていいかどうかということになると、私はやはり幾つかの課題があるような気がするわけです。

 この政策を続けてこられて、先ほどのような一つの見解も確かにあるかもしれませんけれども、では、我が国の農業が本当にこの政策のもとでしっかりと発展してきたかどうかということを見た場合に、必ずしもそういう発展の基盤がまだつくられてはいないんではないかという感じがするわけです。

 確かに、その場、その時点においてのそれなりの対応策というのはあったんだろうと思いますけれども、本当に力強い我が国の農業ということからすると、この生産調整という政策は必ずしも十分寄与してこなかったんではないかというふうに思うわけですけれども、そのあたり、大臣、もう一回お聞かせ願いたいと思います。

谷津国務大臣 確かに、生産調整ということになりますと、全国一律で大体調整をしてもらっているわけでありますけれども、適地適作ということもございます。米しかできないような、そういうところもあるわけでありますが、そういうところに生産調整と称して生産を制限するということにつきましては、私も非常に心の痛むところがあるわけでございます。

 そういう面からいいますと、やはりしっかりとした、適地適作ということに根をおろした生産ということになってまいりますれば、米ではなくして、あるいは麦とか大豆とかそういうふうなものを、生産の適地というものもあるわけでありますから、そういった面では、私は生産の方向に誘導していくことも大事なことではなかろうかというふうに思っているわけであります。

 そういった面を考え合わせますと、この生産調整そのものをずっと続けていくことが果たしていいのかどうか、これも確かに、その点については私も考えるところがございます。そういった面で、これから日本の国内のそういった適地あるいはまた適作というものについて、しっかりと根についた、そういう生産体制をつくっていくことが必要ではないかというふうには考えておるところであります。

一川委員 今ほど、大臣の御答弁の中で、個人的な見解かどうかわかりませんけれども、大臣自身もいろいろな問題意識を持たれていると思いますけれども、農林大臣としまして、これから一つのそういう方向づけみたいなものを出していただきたいというふうに私は希望するわけです。

 生産調整という制度から脱却していくという中で、農家の皆さん方には、基本的にはつくりたいものをつくっていけるような体制に持ち込んでいく、そういう中で、なかなか所得的にも十分なものが確保できないというようなこととか、あるいは価格面での何か対応策が必要だということであれば、それなりの政策があっていいと私は思うんです。

 基本的に、先ほどおっしゃったように適地適作ということも最も自然な作付体系だと私は思いますから、そういうことも念頭に入れながら、また立地条件、非常に排水のいいところ、悪いところ、日当たりのいいところ、悪いところ、いろいろなところがたくさんあるわけですけれども、全国ほぼ画一的な政策でやってきた生産調整というやり方を、これからはそうじゃなくて、やはり適地適作的な思想の中で、本当にその地域に適したものを、つくりたいものをつくれるような、そういう農政にぜひ転換していただきたいというふうに私は思うわけでございます。

 今大臣は、そういうことを念頭に入れた方向での政策を考えていきたいような趣旨のお話がございましたけれども、今、現時点で、生産調整というような制度を半強制的に実質やられておるわけですけれども、大臣は、こういう制度をもしやめたといった場合にはどういう事態が発生するというふうに大体お考えですか。

谷津国務大臣 米については、依然として潜在的な生産力が需要を大幅に上回っているということについては、先生も御案内のとおりだろうと思うのです。

 このような状況のもとで、もし生産調整を取りやめるということになったとするならば、大幅な供給過剰が発生するんではなかろうかな、そして、価格がさらに下落をしまして、生産農家にとって大きな痛手となることが懸念されるのではないかというふうに私は思うんです。

 このような事態が続きますると、生産段階のみならず、流通の各段階においても混乱を生じかねない、そしてまた消費者に対する米の安定的な供給にも重大な支障を来すのではなかろうかというふうに私は考えるのです。

 このため、米の需給安定を図る観点から、今後とも生産調整を着実に実施することが必要であると思いますけれども、その中においても、適地適作というのはやはりしっかりと確立していくことが大事かなというふうに私は思っております。

一川委員 農家の方々でも、本当に専業的に大規模にやっている農家の方々の御意見なりと、それから兼業農家の割と自家販米的なものをつくっておる皆さん方と、いろいろな面で意見が異なるというのは私も承知しております。しかし、これから本当に意欲を持って、意欲を持ちながら今農業に取り組んでいる方々の意見というのは、やはりつくりたいものをつくれるような体制にしてほしいというのがそのベースにあるような気も私はしますし、また、そのことに伴ういろいろなリスクとか乗り越えなければならないような課題というのは、農家の皆さん方も十分承知しているわけです。

 だから、そこのところは、ある面ではやはり一つの、苦しいかもしれませんけれども乗り切る時期が必要ではないかなという感じも私はいたしますので、ぜひ大臣にもそのあたりの問題意識を十分持っていただいて、これからの新しい時代に向けての、新しい、力強い農政をぜひ展開していただきたいということを強く御要望しておきたいというふうに思っております。

 さて、またそういう問題にも関連いたしますけれども、食料の備蓄問題というのも、今日もう一回点検をして、場合によってはもっと備蓄する量をふやしてもいいんではないかという考え方を私は持っているわけです。

 それは、今、政府等がこれまで答弁されているような適正備蓄、百五十万トンプラス・マイナス五十万トンというような言い方でされていますけれども、それは、平成五年当時のああいう不作的なものが二年ほど続いた場合のことを想定したというような答弁が当時あったような気もしますけれども、私は、そういう一種の異常気象的なものというのは、これは日本でも、最近、ああいう大きな火山の噴火での大被害とか、それから都市部周辺の農村地帯でのああいう水害とか、従来ちょっと想像しなかったような局部的な大きな災害というのが割と頻発しているような感じを受けるわけです。これを世界的にまた見てみますと、これまた方々で毎年異常気象に伴うような大きな出来事が発生しているわけです。

 そうしますと、まず、日本の国内でも、通常であればとれるものがとれなくなるという可能性はだんだんあるような気もするわけですね。それとまた、国際的にそういうことがあるとすると、日本が今安定的に輸入している農産物が、場合によっては正常に来なくなる危険性も私はだんだんふえてきているような気もするわけです。そのほかにも、いろいろな国際的な紛争のもとで輸送手段が遮断されるとか、いろいろなことを考えればいろいろな不安感が募るわけでございます。

 ですから、現在、政府がおっしゃっている百五十万トンプラス・マイナスの備蓄をいろいろと考えた当時からしますと、国内外ともにいろいろな状況変化、また異常気象的なこと、自然災害的なものがちょっと変わってきているのではないかということを考えますと、私は従来の備蓄の考え方にこだわる必要はないのではないかというふうに思いますけれども、そのあたり、大臣、いかがでしょうか。

谷津国務大臣 食糧法においては、不測の事態においても、主食である米を消費者に安定的に供給するために、今おっしゃいましたように、百五十万トンを基準として一定の幅、これはプラス・マイナス五十万トンで運用することになっておるわけであります。

 その備蓄体制については、全国十二カ所の政府倉庫のほか、全国各地に所在している食糧庁の指定倉庫、約一万カ所と言われているわけでありますけれども、それにおいて備蓄をしているところでありまして、地域的な災害にも十分対応できるというふうに思っておるわけであります。

 また、備蓄量をふやすことにつきましては、過去二回の過剰米処理に多額の財政負担を要したことや、備蓄に係る保管経費等の財政負担が伴いますので、過大な備蓄の存在が米価の低下圧力となることも勘案しなければならないというふうに思いますので、適切ではないのではないかなと私は考えておるわけであります。

 また、先生が今御指摘をなされました、食料を通しての紛争も起こってくるというふうなこともまた指摘をされておりますし、また、水の問題等、ですから、食料の問題がこれから大きく紛争の問題になるのではないかというふうに指摘をされているわけであります。ですから、WTOの我が国の提案の中の一つの思想の中に、実は国際備蓄というのも必要ではなかろうかなというふうな面も考えておるところでもございます。

一川委員 ちょっと大臣と見解が私は違うんです。

 今のお話を聞いている限りでは、今のままで十分じゃないかというようなお話でございますけれども、やはり先ほどの、いろいろな最近の動きを見ておりましても、日本の国内の備蓄体制をもっと強化する、備蓄の量もふやしていくという方向で検討することが、これは農家のため、農業者のためということよりも、国民全体のための問題ですから、そこのところは、国民の皆さん方にしっかりと説明していけば、私は合意形成が図られる分野ではないかなという感じもいたします。

 そのことが、ひいては農家の皆さん方ももっと意欲を持って農産物を生産することに励みが出てくるわけでございますし、やはり国民全体のそういうバックアップがあるということになれば仕事にも生きがいが出てくるわけでございます。

 この備蓄問題も、私はやはり国際的な今の食料需給というものを、専門的な皆さん方も、十何年間もすると食料は逼迫するというような見解を持つ学者の人たちもいらっしゃるわけでございますし、また逆に、日本がある程度備蓄体制を強化すれば、よその国で万一のことがあった場合に日本で備蓄したものを海外へ出すというようなことだって、当然将来的には考えてもいいわけでございます。

 そういう観点でこの備蓄問題というのを、先ほど全国一万カ所ぐらいのそういった指定倉庫に備蓄できるようになっているというお話もありましたけれども、こういったものもできるだけ地方分散をして備蓄体制を強化するということも、その視点からすると非常に大事なことではないかなというふうに思っております。

 それともう一点確認したいのは、こういう不測の事態、先ほどちょっと触れましたような、災害、本当に身近な問題でいけば、災害の問題とかあるいは不作の問題に関連して食料が不足ぎみになるといったときの対応策、それから、もう少し長期的に見ればいろいろな考え方が出てくるわけですけれども、理想的なカロリーを摂取するのはもちろん大事なことですけれども、最低限これぐらいのカロリーベースで生活ができるという中で、国民の皆さん方に、そういういろいろな不測の事態があったとしても心配は要りませんよというような何かメッセージを農水省は出す予定はないんでしょうか。そのあたりをお聞きしたいのです。

松岡副大臣 先ほどから備蓄問題のお話、今先生の御指摘があるわけでありますが、ちょっとやはり内容を整理して議論をする必要があるんだろうと思っております。

 といいますのは、百五十万トンを一つの水準にしてプラス・マイナス五十万トンということで、一つの在庫、これは米としてやったわけですが、そのとき、いろいろな検討をいたしました。例えばFAOの一つの基準もありまして、それから見ても大体百五十万トンだなと。それと作況指数、こういったものがうんと悪かったとき、またはうんとよかったとき、それはばらばらでありますが、相当悪くなったとしても大体これくらいあれば、そういういろいろな検討をして百五十万ということにしたわけです。

 先生からすると、もうちょっとこれを拡大して、そして世の中の、やはり国際的な将来見通しも含めて変化してきているんだから、もっとふやせばいいんじゃないか、こういう話があります。確かに、私どももきちんとそこのところはとらえているつもりであります。

 というのは、一億人ずつ毎年人口がふえていく。そして、例えば中国をとりましても、十二億、いずれ十三億と人口が伸びていく。そして、経済成長、物すごく発展を遂げておりますから、食生活がどんどん変化して高度化していく。

 そういう中で、今中国人が一人当たり食べている年間の肉の量というのは、アメリカ人の週末二日分でしかない。それが、十二億、十三億の人が、どんどん経済成長することによって食生活が肉に移行していく。それは物すごい倍々ゲームで肉の消費がふえていけば、それに必要ないわゆるえさとしての穀物、これが大変な消費になってくるであろうというところからして、これは相当食料需給というのは逼迫してくるんじゃないか、こういったような見通しもあるわけであります。

 したがって、そういった意味で、そこをどう見通すかというのは先生のおっしゃるとおりだと私も思いますが、では、米に限っていえばどうかということでありますならば、先ほど言いましたように、私は、日本にあってはこの百五十万トンという適正在庫、これがやはりあくまでも基本として、今後も十分これで適切ではないかと思っております。

 逆に、これ以上になりますと、まさに在庫圧力ということで、これは生産に対して物すごい価格暴落等の打撃を与えていく、こういったようなことでございますので、その点はひとつそういう整理で私はいいんじゃないかと思っています。

 あと、その後、いざというとき、不測のときどうするか、こういう問題でありますが、そこで食料自給率を何としても四五%ということにいたしましたのは、一番いいのは、本当にほとんど供給するぐらい、国内で賄うぐらいやれという議論もあったんですけれども、しかし、何といってもやはり現実性、実現可能、こういったものを考えますと、二十二年の段階でどうしても、二〇一〇年では相当の努力をして四五%だ。そして、それくらいを確保しておけば、カロリーベースでもある程度の国民の皆さんに供給というものができる。

 そして、その延長線上に、将来は五割以上、とにかく何としても半分以上は国内で、こういったようなことを目指すんだ、そういうことでありまして、そのような意味では、そういったことが国民の皆さんへのやはりメッセージと言えるのかなというようなことでございまして、今の時点ではそのような整理ではないか、私はこう思っております。

一川委員 そのあたり、またこれからいろいろな機会に、またいろいろと具体的な資料でもってお尋ねしていきたいと思いますけれども、私は、基本的な考え方として、せっかく国際的ないろいろな動きとか、日本国内における国民の皆さん方の気持ちも、午前中のお答えにもありましたように、要するに、こういった食品の安全性も含めて、日本の国民の食べるものは極力国内で生産するということについてのコンセンサス的なものは、消費者の皆さん方も徐々に理解は深まってきているというふうに思います。

 一方では、本当に予期しない凶作に遭遇したとか、あるいはまた外国から入ってくるはずのものが何かの理由で入ってこなくなったというようなことも含めて考えますと、今私は米のことを中心に言いましたけれども、そういう備蓄体制というのは、私は、やはり全国に分散をしてそういうものを用意しておくということは、一種の地域振興的な役割にも一部なるかもしれませんし、そういう面では検討してもいい政策ではないかなという感じを持っております。そういったところは、今後いろいろな機会にまたお尋ねしていきたいというふうに思っております。

 その次に、私は、今度土地改良法の見直しをされるというふうに聞いております。御存じのとおり、土地改良法という法律は、大変歴史のある、また法律のボリュームも大変ある、一般の人が読みづらい法律だと思いますけれども、こういった制度も含めて若干見直しをかけるという話を聞いておりますけれども、そういう中にあって、その基本に土地改良区という組織があるわけです。

 これは、今回の新しい食料・農業・農村基本法を受けた基本計画の中でも、こういった関係団体を統合整理していくという中でいろいろな見直しをうたっていたと思うんですね。それを受けて、今現在こういう土地改良区という組織を、合併を促しながらいろいろと整理されてきているというふうに思いますけれども、このあたりの現状というのはまずどうなっているのか、お聞きしたいと思います。

谷津国務大臣 平成十二年の三月末における土地改良区の数は、七千百三十七地区あります。このうち、地区面積が百ヘクタール未満のいわゆる零細、小規模な土地改良区が約半数を占めております。また、都市化あるいは混住化等の進展によりまして施設の維持管理費が増加するなど、土地改良区の事業運営基盤が弱体化している傾向にあります。

 このような中で、土地改良区は今後とも土地改良施設の中心的な管理主体として重要な役割を担っているところでありますけれども、その事業運営基盤を強化することが重要ではなかろうかというふうに考えております。

 このため、従来から、土地改良区の統合整備に対する助成や、あるいは土地改良施設の整備補修や管理技術者の育成に対する助成、そういうものを行っているところであります。

 それから、平成十三年度予算案におきましても、土地改良区の合併に対する支援措置の拡充を行うこととしておりまして、さらに、今国会に提出予定の土地改良法の一部改正法案においても、土地改良区の役割の一層の発揮を図るための措置を講ずることとしております。

 いずれにしましても、今、土地改良区におきましては、だんだん、管理費といいますか、管理の方に非常にウエートがふえてきていることも事実でございますし、また環境等にも大変な寄与をしている面もありますから、そういった面を踏まえまして、土地改良区の事業運営基盤の強化を図っていきたいというふうに考えております。

一川委員 今ほど、全国で七千余りのそういう土地改良区があるということでございまして、これも大小、本当にいろいろな大きさのものがあると思いますけれども、今大臣も触れられましたように、この土地改良区というのは、基本的には土地改良施設を維持管理している団体だ、また新たな事業を推進している団体でもあるわけでございます。

 私自身も、そういった団体のいろいろなこれまでの動きを見ておりましても、土地改良区のリーダーになる人、理事長になるような人というのは、終戦後、農村地帯を何とか立て直ししたいという思いで、相当若くしてリーダーになられた方というのは結構いたわけですね。その人たちは、ずっと長年やってこられて、もうそろそろリタイアされているわけです。

 では、今の専業農家的な人、中核農家的な人に、農村地域全体をリードするような人が出てくるかといったときに、これまた非常に難しい現象なんですね。これは、自分自身の農家経営だけでもう精いっぱいだ、地域のため、人のため、そんな余裕はありませんというふうな人がまた結構おりますし、それがまた意外と、大規模な農業をやっている人はその地域の皆さん方とうまくやっているかといったら、ちょっとうまくやっていないケースもありまして、そういった農村地域の農業団体のリーダーになるには、農業に専業的に意欲を持ってやっている人というのは意外となりづらいケースもあるわけです。

 そういうことを考えますと、必ずしも、こういった土地改良区という組織も、人材も十分育っていないのではないかなという感じが私はするわけです。

 私たちの地元なんかでも、見ておりますと、市町村長さんみたいな人が土地改良区の理事長を兼務するケースというのは非常にふえてきております。これは、そういう農業関係の投資に対する市町村の負担を少しでも肩がわりしてもらうという面ではプラス面もありますけれども、しかし、土地改良区本来としての、農業用水の水利権をしっかりと守っていくとか、あるいは優良な農地をしっかり守っていく、そういう気迫を持ったリーダーがいないとやはり農業というのはちょっと危ないなという感じも私は受けるわけでございます。

 大臣あるいは副大臣、それから政務官にも、そのあたり、土地改良区の人材を育成するという観点で、またいろいろな政策を点検していただきたいというふうに思います。

 やはり、本当に地域のそういった農業に関するリーダー的な方をしっかりと育てていくということは、私はある面では非常に大事な課題ではないかと思いますし、今だんだん、その土地改良事業を通じて造成された施設は当然ふえてきておるわけですし、また、かつて造成したものもだんだん今更新をしなければならない、そういう時期にも到達しているものもたくさんあるのですけれども、しかし、場所によっては、その更新をするエネルギーさえなくなってきているという状態ですよね。

 特に中山間なんかに行けば、川から水をとっている取水施設とか、あるいはそこからとった水を引っ張る水路とか、規模の小さいものもありますけれども、本来であれば、そういうものはちゃんと維持管理をしながら更新すべきだというものはたくさんあると思いますけれども、残念ながら、その負担金はなかなか払い切れないというようなことも含めて、そういったものをリードする人たちがだんだん減ってきたということも言えるんだろうと思いますので、そのあたりを十分また念頭に入れていただいて、私は、公共性の高いそういう土地改良の施設等につきましては、基本的には農家負担をかけないような仕組みをもっと徹底した方がよろしいのではないか。

 農家の私有財産に直接かかわるような問題については、これは受益者負担というのがありますから当然のことでございますけれども、個人の力では直すこともできない、そういうものについては、基本的には地域の皆さん方もいろいろな恩恵にあずかっているわけです。農業以外の方でも農道を通るわけでございますし、また排水路にはいろいろなものが流れていくわけです。また、農業用水といえども、単に農産物にかける農業用水だけではなくて、地域用水として、景観的にも、またいろいろな面に貢献しているわけですから、私は、やはりそういう公共性のあるものについては、個々の農家の負担をとらないような仕組みにぜひ力を入れていただきたいというふうに思いますけれども、そのあたり、ひとつよろしくお考えをお聞かせ願いたいと思います。

松岡副大臣 まず、結論的に申し上げますと、先生御指摘になられましたように、これは方向としては私どもも同じ方向にあると思っております。

 この問題につきましては、本来、一川先生はもともと御専門でありますから、私どもよりお詳しいわけでありますが、その最初のときは、やはり個々の私有財産といった側面がどうしてもあるということで、それに照らして、受益者負担、こういったようなことからスタートしてきたわけでありますが、その後の時代の変遷と同時に、これはもう御案内のように、いろいろ公共性といった面について着目して、そしてこの負担の軽減を図っていく。

 例えば、基幹的な農道等につきましては、おっしゃいましたように、一般的な交通の利用が多くなってくる、そういった面については、受益者に負担を課さずに、まさに地方公共団体の負担にとどめる、そういったようなケースが今はほとんどだろうと思っております。さらにまた、そのほか、最近はいろいろな維持管理が大変だといったような面につきましても、その助成の内容、政策というのは、相当充実を図りつつやってきておる。

 しかし、まだなおこの負担感というものにつきましては、非常に農家の負担感の重いものがございまして、要請は軽減ということで、何とか軽減を図ってくれということが強いわけであります。したがいまして、私どもといたしましても、極力そういった方向に向かって、今後は施策のより一層の充実を図っていくべきだし、まずそういう方向を目指していきたい。財源等との問題もありますが、可能な限り、その辺はそういった方向に向かうような努力をしてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

一川委員 ぜひ、個々の農家に余り負担の過重にならないような、そういうまた見直しをお願いしておきたいというふうに思います。

 それと、また大臣に見解をお尋ねするわけですけれども、今度の土地改良法の改正の中で、その目的の中に、聞くところによりますと、環境と調和するというような、そういうことに配慮した形に持っていきたいという言い方がございました。私も、そういった環境に配慮した土地改良事業というのは大賛成でございますし、今日的な重要な要請でもあろうというふうに思うわけです。

 先般、長野県の田中知事が脱ダム宣言ということを突然宣言されたということが大きく報道されました。私は、あの知事がああいうことをおっしゃる前に、もう自分なりにいろいろと農水省の、今いろいろな大きな、例えば諫早湾干拓事業みたいなものがシンボル的にいろいろな面で批判を受けておりますけれども、農水省独自としての、何か自然と共生できるような、自然と調和したような、そういうこれからの政策みたいなものをもっと国民にアピールしたらどうかなという感じをかねがね思っていたわけです。

 この前の長野県知事の脱ダム宣言というものは、一つの知事としての基本理念であろうかと思いますけれども、ある面ではちょっと参考になるような考え方が私は入っているんではないかと思うのです。

 それは、あそこは水源県でございますから、そういう面では、自然の中にコンクリートの塊はつくりたくないという素朴な気持ちも当然あるわけですけれども、やはりこれから長い先のことを考えれば、もうそろそろそういったコンクリートで固めたダムをつくるのは脱却したらどうか。そういう中で、できるだけ自然と調和しながら、共生をしながら、別の対策でより住みやすい地域をつくっていきたい。

 それは、流域で水源涵養とか、あるいはそういう流域の植林みたいなものを徹底してやりながら、山自体をもっと災害に強い、そういうものにつくりかえていくというようなこともちょっと触れられておりましたけれども、森林関係の基本法の見直しの中でも、今度林野庁関係は、そういった森林の持つ多様な機能に着目しまして、そこのところをもっと政策的に力を入れていきたいという姿勢を打ち出すというふうに聞いておりますけれども、そういうことと非常に共通するところがあるわけです。

 私は、農水省が、先ほどの土地改良事業なんかでも、お話を聞きますと約二十カ所ぐらいの直轄でダムをつくっておられる。そういう中で、五カ所ぐらいがコンクリートのダムをつくっておられる。

 今つくっておるものは仕方がないとしましても、これから計画をし、つくっていくというものがもしあるとすれば、その脱ダム宣言じゃないんですけれども、そういったコンクリートダムというようなものは極力実施しないで、伝統的に農水省が取り組んできたような、ああいうフィルダムといいますか、そこにある材料を使ってダムをつくるアースダムとかロックフィルダムとかいう工法がありますけれども、そういうようなもので極力対応するとか、また、林野庁といろいろな面で提携をしながら、流域の水源涵養的な機能を増加させるというようなことも含めた制度というか考え方が、当然これから大事になってくるというふうに私は思います。

 こういうような最近の動きについて、大臣はどのような所見を持っていらっしゃいますか。お聞かせ願いたいと思います。

谷津国務大臣 今お話のございました長野県の田中知事の脱ダム宣言ですね、これについては、私もつぶさにまだ知っているわけではないですけれども、ただ、私が政調会長代理のときに、この公共事業の見直しの中に実はダムというものについても一つ検討の対象にしたわけなんです。

 そのときに、今、田中知事は農業だけではなくて、ほかの、一般のダムも含めての話というふうに思うのですけれども、最近、水を必要とする都市部において、リサイクルといいましょうか、そういうものが非常に進んでまいりまして、必ずしもダムの負担をしてダムをつくる、ダムから取水するというふうな要望が減ってきているということなんですね。そういうことから、かなりのダムの中止というのを提言させてもらったわけであります。

 特に、農林省でつくるダムということについては、私は地域の特性に合った、そういう環境との調和に配慮しながらつくる必要があるだろうというふうに思うんです。しかし、ダム等によって、水源の確保ということも選択肢の一つであるということは十分にわかるわけでありますから、そういった面は、先ほどお話がありましたように、林野庁とも提携をしながら、森林の持つ多面的な機能もあるわけでありますから、そういう中で水源としての機能も果たしておるわけでありますから、そういうふうな調和をとりながらダムもつくっていく必要があるだろうと思うんです。

 そういう中で、必ずしもコンクリでなくてもできる面が幾つもあるわけでありますから、そういう点を十分配慮しながら、私は、環境との調和をとれる、そういうダムをつくるということは非常に大事なことだというふうに考えております。

一川委員 今、大臣の考え方、非常に前向きな御答弁だと思いますけれども、私も、農林水産省が今やられているいろいろな公共事業等が、ほかの省庁がやっている公共事業に比べて特段そんなに変わったことをやっているとは思いませんけれども、何か非常に批判されるケースが多いわけですね。そこのところは、農水省の皆さん方も反省するところは十分反省していただきたいわけです。

 やはり農林水産省らしい、そういう何か新しい政策めいたものを、こういう時期にしっかりと打ち出すということも、ある面では国民の皆さん方に農林省のいろいろな農政を、また理解を求める場合でも、非常にやりやすい状況になるわけでございますので、ぜひそういうことにも配慮していただきたいなというふうに思っております。

 それから、先ほど大臣は、やはり水をためる必要がある場合にはやむを得ないケースもあるのではないかというお話もございました。しかし、従来から、御存じのとおりため池というものも方々にたくさんあるわけですし、ため池そのものが十分生かされていないケースもあるわけです。

 ああいう規模の小さいようなものを幾つもつくっていくということからすると、先ほどの水田の利活用にも関係するわけですけれども、中山間地帯で今耕作放棄地がふえているということを考えてみた場合に、例えば、そういう地域の耕作が放棄されそうな水田を、逆に一種のため池的な施設に改造をしながら貯水池として使っていくということも、場所によっては可能じゃないかというふうに私は思います。

 それから、もし、そういうことが、後でまた万一農地にすることが必要なときが来れば、また戻せるような構造にしておけばいいわけでして、そういう面では、中山間地域のそういう耕作放棄になりそうな地域の水田の活用ということも、大きなダムをつくるのじゃなくて、小さなダムを、ダムというかため池をたくさんつくっていくというような発想も、今の時代、一つの考え方ではないかな。

 また、そういうため池の中の水面を生かして、いろいろな水耕栽培的なものも、今やろうと思えばできる時代でございますので、その地域の特産物もつくっていけるということでございますので、ぜひまたそのあたりを考えていただきたいというふうに、まず要望しておきたいと思います。

 それから、最後になりますけれども、今の林政改革という、林野庁のそういう関連の、林業なり森林なり木材産業なりといったようなものをこれからしっかりと抜本的に見直しをかけていきたいという大臣の所信がございました。私自身も地元で小さな森林組合の役員の一員でもあるわけですけれども、最近、御存じのとおり、林業で生計を立てていくということは、まず、基本的には不可能な時代です。

 そうかといって、全国の七割をカバーする森林というのは、大臣のお話のように、単なる木材供給だけじゃなくて、国土保全を初めとした、国民生活を非常に安全に守るという観点での多様な機能をたくさん持っているわけでして、その機能を発揮させるためにも、森林そのものを善良に管理していく必要があるという観点で、基本的な、理念の見直しから始まって、いろいろな制度の見直しを考えていらっしゃるというふうに思いますけれども、まず大臣に、今の林政を取り巻く課題というものを基本的にどういうふうにお考えでしょうか、そのあたりからお聞かせ願いたいと思います。

谷津国務大臣 森林に対する国民の要請が多様化してきておりますし、また高度化しております。そういう中で、林業採算性の悪化等がございまして、林業生産活動が停滞をしておりますし、また、森林の多様な機能の発揮に支障が生じているのではなかろうかなというふうにも危惧しているところであります。

 このために、従来の木材生産を主体とした政策から、森林の多様な機能の持続的発揮、これを図ることが大事な目的であるというふうに、政策の転換をさせていただきたいと思っているわけであります。

 そういう面から、多様な機能の持続的発揮のための森林の適切な管理、それから、森林資源の持続的利用を担う林業あるいは木材産業の進展を図らなければならぬ、それから山村の振興、これを基本としまして政策の展開を図ることとしておるところでありまして、林政改革大綱及びそのプログラムを昨年末決定しているところでございます。

 今後は、これらの問題を基本にしまして、林業基本法の改正法案等の取りまとめをするとともに、森林整備の方向を明確化すると同時に、機能に応じた森林施業の推進及び事業化の重点化を図っていきたい。それから、地域の林業の担い手の育成あるいは確保と受託によるところの施業、経営の集約化を図りたいということです。それからまた、関係省庁との連携によりまして、山村の定住条件の整備等の施策を図っていきたいというふうに考えているところであります。

 いずれにしましても、森林の持つ機能というのは大きなものがあるというふうに私は考えております。特に、COP6の中でもこれはまだ話がまとまっていないのでありますけれども、シンク等を見ましても、森林に対する吸収源のいわゆる三・五ぐらいの話も今出ているわけでありまして、そういうふうな面を見ていますと、こうした森林の整備とかなんかというのは非常に大事な要素になってくるものでありますから、その点にも着目しながら、しっかりと施策を展開していきたいと思っております。

一川委員 私も、今この時期に、若干遅いといえば遅いのかもしれませんけれども、こういった森林の問題、林業の問題を基本的に見直しをかけていくというのは大変重要なことでございますので、ぜひしっかりとした政策を打ち出していただきたいというふうに思うわけです。

 私も、こういった従来の木材供給を主体とした政策から、先ほどおっしゃったような、多様な森林の持つ機能を十二分に発揮できるような体制に持っていきたいという基本的な考え方は、そのとおりだというふうに思います。

 ただ、では、そういうふうな管理をしっかりやってもらうためにどうしたらいいかという具体的な政策がまた一方で大変重要になってくるわけでして、私は、そういう中にあって、個々の林業家と称する人はだんだん減ってきたわけですけれども、そういった人たちで何かやれといっても、なかなか難しいわけですね。

 そうなると、やはり今ある森林組合みたいな組織をもっと強化するなり、いろいろな面で指導しながら、森林組合という組織にその地域の森林の管理をしっかりとしていただくような体制、場所によっては、森林組合でない別の組織があるのかもしれませんけれども、私の身近なところを見ている限りでは、森林組合の果たす役割というのは、これからの高齢化社会の中では非常に大きいのではないかなという感じもするわけでございます。

 また、定年退職を迎えたような方々も、そういう損得を抜きにして、自分の山に入って山を管理していきたいというような方も中にはいらっしゃいます。しかし、そういう人たちにある程度、いろいろな面で技術的なことを指導していくというのは、やはり森林組合みたいなものがないと非常に難しいというふうにも思います。

 そういう観点で、森林組合のこれからの役割というものについて、どういうふうに期待もされ、どういうふうな施策を展開していこうというふうに考えておられますか。そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。

松岡副大臣 先生からお尋ねでございますが、森林の持っている多面的機能、これを守っていくためには、やはりどうしてもある一定以上の森林に対する手入れ、これが不可欠であります。

 ところが一方、現在は非常に林業活動というのは停滞をしておる。何ゆえ停滞をしているかといいますと、木材価格が低迷をいたしておりまして、採算が合わない。したがって、山の手入れがなかなか滞っておって、山が荒れ果てておる。こういう状況にあって、国民の求めるものと山の働きというものがまさに今逆になりつつある、こういうことが大変問題だと思っております。

 そこで、ちょっと全体的な話になりますが、先ほど先生からいみじくも御指摘ありましたその基本認識は、私どもも全く、政府も一緒だと思っておりますが、農林水産業、これは今の地球に優しいとか環境に優しいとかいう言葉にあらわされますような、そういう思想というか考え方に一番ぴったり合った分野なんだろう、私はこう思っております。

 例えば水一つにいたしましても、水田が果たしておる貯水能力、洪水を防止するまさに洪水調節能力、こういったものすべて、今あるダムの総量を上回っておりまして、また、森林はもっとまたいろいろな広がりの中で、そういったものをより以上に発揮いたしておる、こういう一番大もとにある森林でありますから、それをしっかりとしていくということは、一番根本であります。

 そして、森林があって、農地があって、市街地がある、こういうことにいたしますと、幾ら下流を整備しても、一番上が整備されなければどんどん崩れてくる。こういう理屈からいたしましても、森林を守っていくということは一番大事な根本である。

 そういう中で、先ほど言いましたように、林業活動が停滞しておる、個々の林業経営者というのは、なかなか個人の力では、木材価格の低迷等の中で、とても経営に無理な点が出てきておる。そういった意味から、私は、個々の森林所有者をかわった形で、総体的にとらえて、地域全体の中で担っていく、そういう位置づけが森林組合じゃないかな、こういうふうに思っております。

 それともう一つは、地域全体を一体としてとらえまして、そして、やはりその総合的な森林の管理というか取り扱いをしていく、こういう意味での森林組合の役割というものは非常に重要だ。そういたしますと、どうしても森林組合の足腰を鍛えるような各般の政策の、新しい展望を含めましてやっていく必要がある、このような認識でございます。

 先生のおっしゃるような方向で、しっかり私ども、森林組合の充実を図っていく、こういうことだと思っております。

一川委員 では、私の質問はこれで終わらせていただきますけれども、最後に農水省の方に補足的な要望でございますけれども、一つは、今の林業関係で私たちが地元でよく聞く話題の中に、今、木材の国内自給率は二〇%ぐらい、八割方は外国から入ってきている、しかし、外国からそんなに安定的に八割もこれからずっと入ってくるかねということを見通した場合には、私は、そこのところはちょっと無理があるんじゃないかという話をさせてもらっているんです。

 やはり、国内でこういった森林に入ってこれからいろいろな面で管理をしていこうという人たちにある程度中長期的な見通しを教えてあげるということは、ある面ではまた非常にやりがいが出てくるところがありますので、そういうところはまた農水省も、ある時期にそういうものを、的確なメッセージを出していただきたいなというふうに思います。それが一点です。

 それからもう一つは、高齢化社会という中にあって、私は、農業とか林業という産業というのは、ある面では非常に高齢者対策に寄与する分野ではないかというふうに思います。それは、高齢者、六十五歳になればもう現役から引退だというふうに言ってしまう世界もありますけれども、私は、農業なり林業は六十五歳を過ぎても堂々とまだ働ける方がたくさんいらっしゃいますし、また、そういう役割をしっかりと評価してあげる。

 もう今は農水省もそういう高齢者の担い手みたいなものをだんだん政策の中に織り込んできていらっしゃいますのでいいわけですけれども、この前スタートしたああいう介護制度も、私は、やはり畑仕事とか山に入っていろいろなことをすることによって介護のお世話にならない、そういう健全な高齢者がたくさんこれから農村地帯にふえてくる、そういう世の中にぜひしてほしいというふうに思いますので、これはむしろ厚生行政を農業サイドでカバーしていけるような、そういう政策を農水省の方もぜひ力強く推進していただくことをお願いしまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

堀込委員長 次に、松本善明君。

松本(善)委員 農水大臣に、WTO協定についての日本提案を中心に少し伺いたいと思います。

 その前に、やはり、今の日本の農業についての状況認識、私は危機的状態にあるというふうに思っております。農水大臣もうなずいておられますが、これは超党派的なものじゃないか。

 茨城県の藤代町の農業委員会の意見を紹介しますと、WTO協定が結ばれてから六年が経過したが、このまま続けば日本農業は完全に崩壊することが明らかになった、こう言っています。

 中身的には、このままいくと、水を失い緑を失い、洪水や山地崩壊だけでなく集落も崩壊し、これまでの土台の上に構築されたお祭りを初め民俗文化も崩壊すると。

 これは大臣も御同意と思いますが、協定締結前は自民党の皆さん方もみんなそう言っておられたんですね。私、思い出しますけれども、当時の、協定批准のときの大河原農水大臣、そのちょっと前は自民党は野党でしたけれども、当時、協定をやったら取り返しのつかないことになる、こういうふうに言っておられた。それが私、現実のものになってきていると思う。

 今度の協定交渉というのは、これを打開するものでなくちゃいかぬと思うんです。今、自殺の激増、農家戸数の激減、これは本委員会でもいろいろ指摘をされていることですし、廃業しようとしても、借金を返すために田畑を売ろうとしても買い手がない、捨て値で売ったら借金も返せないと途方に暮れている農家があるという状態なんですね。これを打開する。日本の提案がそれにふさわしいかどうかという問題なんですね。

 私は、第一に輸入農産物の激増、第二に生産者価格の大暴落、第三に農家の経営と地域経済の破綻、そして第四に食料自給率の低下を招いてきたこの事態を打開することができるかどうかということが問題だと思うんです。大臣どう思いますか、この日本提案でこれが打開できるかどうか。

谷津国務大臣 松本先生御指摘のように、私どもは、今度のWTO交渉によって、その結果によっては日本の農業の何十年というのを位置づけちゃうというふうに思っているわけであります。それだけに、ガット・ウルグアイ・ラウンドのあのときの結果を私どもは痛烈に反省をしているというところでございまして、この件につきまして、何としても日本の国益を守るためにしっかりと交渉を成立させていかなきゃならぬというふうに考えているわけであります。

 それには、最初から各論をやるとそれだけに集中する危険があるものですから、まず枠組み、例えば輸出国と輸入国との不平等を公正なものにしなければならぬ、あるいは食料安全保障というものをしっかりと位置づけていかなければならぬぞ、あるいは農業の多面的機能をしっかりと配慮したものにならなければならぬぞというようなことから、この提案をしているところであります。

 ですから、まず日本の提案を理解してもらうことが大事でございますから、そのためにEUとも連携をとってやろうということにもなってまいりましたし、またフレンズグループとも、日本の提案を理解しておる国々ばかりでありますが、これももっとふやしていかなきゃならぬということで、発展途上国等にもこれからずっと働きかけをいたしまして、日本提案に対する理解を深めてもらいたいということで努力をしていきたいというふうに思っているところでございます。

松本(善)委員 事態の認識はどうも共通しているようでありますけれども、提案ですね、先ほど紹介をいたしました藤代町の農業委員会は、具体的な提案としては、例外なき関税化をやめて農畜産物を自由化の対象から外してほしい、外すべきだ、価格補償など農業生産への援助は各国の自主性に任せる、食料の安全基準を自主的に決めるのも各国の主権に属することである、先ほどの前提意見をもとにしてその点を要求しているんですね。私はやはり、これはもっともだと思うんです。

 それで、この事態を打開するについては、日本提案は、多様な農業の共存という基本的哲学、これは所信でも農水大臣、おっしゃったことですが、それを本当にやるというためには各国の農業主権、食料主権を認めることが不可欠の前提になるんじゃないか。その主権が侵害されたときは、それを正してこそ食料主権が成立するんではないか。そのことを藤代町の農業委員会も求めているんですね。

 農業主権、食料主権を認める、これは主権の問題だということについて、農水大臣の御認識を伺いたいと思います。

谷津国務大臣 先生のおっしゃる農業主権あるいは食料主権という概念が、私にもちょっとはっきりわからない点もあるわけでありますが、多分考え方は同じだろうと思うのは、やはりその国においては国の歴史的な背景もあります、それから気候風土、いろいろなものがあると思うんです。

 そういう中で農業が営まれていくと思うんですけれども、少なくとも自分の国で食べるもの、自分の国でそういう食料をちゃんと自給できるようにするのが私は基本的なものでなければいかぬというふうに考えるんです。しかしながら、やはり自分の国でできないものもありますから、そういうのは貿易の中においてやっていく必要があると思います。

 我が国におきましても、これからの世界の食料事情というのを考えると、これはFAOでも指摘をしておるんですけれども、二〇二五年前後には相当不足をしてくる懸念があるというふうに言われているわけであります。最近では、近くの中国があと五年もしますとどうも食料不足になってくるのではなかろうか。

 先ほど松岡副大臣が申したとおり、経済が発展する、あるいは食料の食べ方のあれが変わってきて肉食の方に進んでいくとするならば、相当の穀物を必要としてくるということになりますと、中国でも間もなく農業生産において自給が賄えなくなってくる。

 例えば一%中国で足らなくなっても、日本の一%と中国の一%は人口比率が十倍も違うわけですから、日本に換算するならば一〇%も不足するような事態になってくると、世界の市場の、米で言うならばほとんど中国は買わなきゃならないような事態になってくる。そういうことを考え合わせると、日本がいつまでもこうした多くの輸入に頼っているということはとてもできません。

 そういうことを考え合わせますと、やはり自給をしっかりと、自給率を上げていくということはもう近々の大事な要素になってくるというふうにも思っておりますものですから、そういう面を踏まえて、私は、WTO交渉の中に日本の哲学としてそれをしっかりと理解してもらうようにしていきたいというふうに考えております。

松本(善)委員 議論を進めていくと、どこで農水大臣と意見が分かれることになるかはわかりませんが……。

 多様な農業の共存ということの中に、食料主権、農業主権というのが一応含まれているというふうに伺いました。しかし、そうなると、日本提案に重大な問題がありますのは、例外なき関税化をいわば唯一正当な手段だということで、国や品目の実態に配慮をして関税水準に柔軟性を持たせる、こういう提案であります。

 日本提案は、基本的重要事項で農業が市場の機能のみでは律し切れない、こう主張しているわけですから、関税水準の柔軟性だけではなくて、食料主権を守るために米を例外なき関税化の対象から外す、こういう提案をすべきではないか。うなずかれたんですが、私はそれをやはり日本提案の中心に置くべきではないかと思いますが、どうお考えですか。

谷津国務大臣 WTOの農業協定は、先生も御案内のとおり、すべての農産物を対象といたしまして、しかも関税化を行うことを原則としているわけなんですね。そういうことですから、このような原則は、アメリカにおきましても、あるいはEUにおいても、加盟国がみんな受け入れていることでありまして、我が国だけが米を本協定の適用の対象から除外しろということは、国際約束から見ましてもこれはなかなか難しいのではなかろうかと思うのです。

松本(善)委員 それでは、今まで農水大臣が言われてきたことが、一般論では言っても、実際に食料主権を守るということにはならない。今の現状では、それはやはり米崩壊ですよ。あなたも最初、そういう状態にあると言っていた。来年だって米価が大暴落しないという保証がないでしょう。

 政府は、そういう毎年毎年緊急政策だけやって、それも減反中心で、つくらなければ金を出すという、何か税金で農業をつぶしているような感じを持つ状態ですよね。そういう状態を変えないと、私は、日本農業を守れない。そういう施策をとることができるということが主権ということではありませんか。

 外国がどう言おうと、日本の国の安全だとか日本の国の国土を守るとか、そういうことについては断固やる、自分たちのところの主権を守るということは一国でもやらなければならぬ、そういう性質のものとしての認識が、農水大臣、この米の問題ではないんじゃないですか。

 市場原理万能で、全部それでやっていくんだということになったら、それが原則だということでいけば、いかに美辞麗句で総論を農水大臣が言われましても、農家の人はだれも納得しないですよ。ああ、いいことをやってくれそうだなんてだれも思わない。そんな声は一つも聞こえてこない。どう思いますか。

谷津国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、まず今回は枠組みの提案を日本はしたわけなんです。そういう中で、今私どもがEUに行きましても、あるいはアメリカに行きましても、あるいはオーストラリア、この間はニュージーランドの農林大臣が来ていろいろ話し合いをしたのでありますけれども、日本みたいに、いわゆる生産調整、米の生産を制限しておって、なおかつミニマムアクセス米としてこんなに大量に入れなきゃならないような、ガット・ウルグアイ・ラウンドのときの約束になっているわけなんですけれども、こういう国がありますかというようなことを私どもは訴えているわけであります。大体の国において、びっくりするんですよ。そういうことを知らない国がいっぱいあるんだ。

 ですから、私どもはこれを訴えながら、しかも、生産調整というこんな過酷なものを農家の方たちに制限を与えておきながら、一方で米の輸入をするということが理解できますか。生産者からしてみれば、これはとても耐えられない問題なんですよと。

 ですから、私どもとしましては、最初は枠組みの提案をしましたけれども、枠組みの一つの方向が決まりますれば、これからいよいよ今先生がおっしゃったようなことを積極的に提案させてもらい、そしてまた、その中で何としても日本の国益を守れるようなものをかち取っていかなければならない。これは不退転の気持ちで私どもはやるつもりでありますので、ぜひ応援をお願いします。

松本(善)委員 ちゃんとした提案をされていれば応援するんですけれども、やはり弱いぞ、それではだめだぞということはちゃんと批判をしておかないといけない。

 今言われたミニマムアクセス米の問題で、それがいかに過酷なものであるかということは大臣も今言われました。だけれども、日本提案は、ミニマムアクセスの仕組みには基本的に問題があるといって改善は求めている。しかし、具体的な提案になりますと、品目ごとの柔軟性の確保であり、約束数量を減らしてほしいと言うだけ。基本的に問題があるというのならば、ミニマムアクセス米そのものの廃止を何で求めないのか。

 余剰米、余剰米と言うけれども、私、大原農水大臣が言われたことを今でも覚えておる。輸入しながら減反するのはナンセンスだと。もうだれでもそう思いますよ。余剰米ができるというのなら、輸入をやめればいい。それをちゃんと主張し、確保することが主権じゃないですか。違いますか。

谷津国務大臣 先生のおっしゃるように最初からミニマムアクセス米のことで提案をしますと、恐らくそこに議論が集中しちゃうと思うんですよ。日本は集中攻撃を受けることになるんじゃないでしょうか。

 そうなってきますと、なかなか日本の考えていることを確保するというのは難しいと思うんですよ。ですから、まず枠組みをきちっとそこで決めさせてもらって、先生、その話はそれからですよ、私はそう思うのです。

松本(善)委員 今のお話は、善意にとれば二段構えで、将来は廃止を要求するということになるのかもしれません。そうでしょうか。

谷津国務大臣 今からWTO交渉の手のうちを明かすわけにはいきません。

松本(善)委員 そこまで、私はやはり旗を掲げる必要がある。といいますのは、今国際舞台では、WTO協定の閣僚会議の決裂以来、やはり大きく変わっていますよ。私は、主権という観点から強力に主張すると同時に、国際情勢の変化、例えば開発途上国での、ハバナで行われました七十七カ国の宣言とか、それから九月のミレニアムサミットの宣言、それぞれアメリカの市場原理万能主義、グローバル化による弊害の批判が相次いで、そして公正な世界経済秩序の確立を求めております。それが私は世界の流れだと思うんですよ。

 世界の食料生産は二十世紀には大きく発展をしましたが、やはり食料輸出国、アメリカなど少数国に集中した。多国籍企業の流通支配、それを背景とした貿易自由化などによって非常に大きくゆがめられて、そして、九五年に発足したこのWTO協定は、多国籍穀物メジャーなどの横暴を一層ひどくした。開発途上国を含む輸入国の農水産業に大きな打撃を与えて、輸出国を含む世界の家族経営は深刻な危機に直面する。

 アメリカでもみんなそうでしょう。家族経営はみんな深刻です。そして、やはり私は、この現状を放置できぬ。これを国際的にも変えなければならぬ。それは八億の人が今なお飢餓状態にあるということで、何よりもこの貿易ルールはだめだということの証明ですよ。それを変えるということが必要です。

 それと、やはり先ほども、人口、世界的な食料不足の問題を大臣お話しになりましたけれども、二十一世紀の国際的な課題として食料生産と分配、これは貿易のあり方の改善ですよ。それから、やはりWTO農業協定の抜本的な改定。これはもう不可欠だと思います、世界の食料問題を解決する上で。

 私は、やはりこの五年間の日本の現状、それから世界の現状を見ますと、食料、農業を貿易最優先、市場任せにしてはならぬということを証明していると思うんです。やはり今求められるのは、各国の食料主権の尊重。日本だけじゃないですよ。食料主権というのは、もう開発途上国中心にやはり徹底的に要求になっている。それから、家族経営を基本とした農業の発展、環境と両立する持続的な農業の保障、食料の安全性確保など、こういうルールを確立しなければならない。やはりその先頭に日本は立つべきです。

 そういう点で、一般論だけでなくて具体論としても旗を掲げるべきだ、私はこういうふうに思うんですよ。いかがでしょう。

松岡副大臣 今大臣とそれから松本先生のやりとりも聞いておりまして、さらにまた今松本先生の御指摘もいただきまして、大臣とも隣同士で話しておったんですが、認識は全く一緒であります。

 そして、どのように思っているかといいますと、私ども、今度日本提案というものを、谷津大臣を先頭にチームを組んで説明に回ったんですが、こういったことをEUやいろいろな国に訴えてまいりました。もちろんアメリカにもこれからやります。

 それは何かというと、二十一世紀は、私は、人口問題、これは七十億、八十億となってくる。そうなりますと、まさに人口問題、食料問題、環境問題というのは、これは限界に近づく、地球の限界に近づく世紀である。したがって、その限界をどう乗り越えるかという、やはりそういった面で、まさに水と緑と食料、これを生み出す農業、林業というものはあらゆる地域で成り立たなきゃならない。まずこういった農政というものがちゃんと成立するようなWTOのルールでなきゃならぬ。こういったことをまず言って訴えておるところであります。

 そして、その次に、先生おっしゃいましたように、ウルグアイ・ラウンド合意は合意として、その後どういう問題状況が起きてきたのか、やはり今日までの検証をすべきだ、こういったことを言っているわけであります。

 そして、私も谷津大臣とのやりとりを聞いて思ったんですが、アメリカに行きましたときも、どこの国のどの品目のどの貿易の歴史に、余ったものをなお金を出して買わなきゃならぬような不合理な取り決めがあったのか、こういったようなことにつきましても私どもは徹底してこれはやり合っておるわけでありまして、そういうような意味でも、まず枠組みとして、交渉の枠組みをしっかりさせる、そのもとで、今言ったように、今度はミニマムアクセスの問題はミニマムアクセスの品目別の問題として、私どもは徹底した取り組みを大臣が言ったようにしていく。

 ただ、ここで余りに中身を言ってしまいますと、まさに、何だ、日本は何を考えているんだと、またその入り口のところで今度はいろいろこちらの思いが通らないことになってしまいますものですから、ここは一つの戦略的、戦術的な面も含めて、こういうスタンスをとっておる、私どもはそう認識をいたしております。

谷津国務大臣 松本先生、全く先生と私どもの認識は同じなんですよ。

 ですから、この問題につきましては、単に、日本の考えておること、これを日本だけでやったんじゃ、だめ。これはやはりEUなり、あるいはアメリカなり、あるいはまたケアンズ・グループなり、あるいは発展途上国なり、多くの国々がこの認識を同じにしてもらうことが大事なのでありまして、そのために私どもは、各国を回ってこの日本の考え方というのを主張して、それに賛同を得られるように今努力をしておるところでありますので、その辺、ぜひ応援をお願いしたいと思うのです。

松本(善)委員 ミニマムアクセス米でちょっと議論をしましたが、これはやはり価格政策を充実させるという点でも同じです。これは時間がないからちょっとやりませんけれども。

 私は、やはり国際情勢の大きな変化を、ちょっと認識が不足なんじゃないかと思いますよ。そんな及び腰じゃだめなんじゃないか。日本は主権を守るために断固たる態度なんだということがわからないと、だめ。

 それで、その例として言いますが、セーフガードを効果的に発動できるように見直すということを求めているでしょう。もしこれが本当にそうだったら、今やはりセーフガードを求める要求は物すごいでしょう。それについて果敢な態度を政府が示さないと、それは国際場裏でそんな見直すなんといったって、やはり及び腰だということになる。

 農業三品目については、中林さんの予算委員会での質問で、大臣、暫定発動やぶさかでないというふうに言われて、これはこれで結構ですけれども、ワカメももう深刻ですよ。

 今はモニター調査の対象にしかなっていませんけれども、昨年は乾燥ワカメの輸入量は過去最高。気仙沼の本吉町では初入札が塩蔵で四割暴落、三陸ワカメは採算割れの大暴落で、養殖漁業は存続の岐路に立たされている。岩手県漁連、宮城県漁連、全漁連連名のセーフガード発動の要請では、輸入ワカメのシェアは八〇%近くになっている。ワカメ漁業の粗収入は四五%減少。これはもう、すぐ三省協議でWTOに通告する、調査に入るべきじゃないか。それこそ私は暫定発動だってやらなきゃいかぬと思うんですよ。

 これは、農水大臣の見解を聞きたいと思います。

谷津国務大臣 先生御指摘のとおり、今、ワカメそれからウナギ、こういうものが約八割を輸入ということで、急増しております。こういうことで重大な損害をこうむっておることは、私どもも認識をしております。

 ですから、今監視を続けているところでありますけれども、この監視の中でこういったセーフガードが発動できるようなものが出てきたならば、これは私どもは財務省あるいは経済産業省と相談をいたしまして直ちに調査に入るというふうに考えているところであります。

松本(善)委員 ワカメについて、発動前提の調査に入るという考えはありませんか。

谷津国務大臣 今監視を続けているところでありまして、その辺のところはいま少しその資料を集めたいというふうに考えております。

松本(善)委員 そのうちにワカメの漁業者はつぶれちゃうんですよ。本当にこれはやはり時間との勝負ですよということを言っておきたいと思います。

谷津国務大臣 実は、先生、例えば野菜とかこういうワカメとか、時間との勝負だというお話がありましたが、こういう腐りやすいものとか何かというのは、今のWTOの中の考え方でいうと、余りにも長期の調査が要る。これはちょっとおかしいじゃないか、もっと短期間にそれが発動できるようにしなきゃならぬということで、今私どもも提案をしているわけでありますけれども、しかしながら、日本におけるこの状況を見ましたならば、私どもは、短期間でも発動できるような、そういう体制をとっていきたいというふうに考えているんです。

松本(善)委員 だから、見直しはいいけれども、今できる範囲で可能な限りのことはやっているという姿勢がなければだめだと言っているんですよ。

 それから、これは私は大問題だと思うんですが、やはりセーフガードにとどまらず、NHKのスペシャルをごらんになったかと思うのですが、韓国などは国家政策として日本市場への農産物の輸出を推進しているわけでしょう。松岡さんなんかは韓国へ行っていろいろ言われていると思うのですけれども、私は、話はそう簡単につかないだろう、国家政策なんですから。

 それで、これは韓国だけでなくてあらゆる部門で、タオル業界もそうでしょう。水産物もそうです。伝統工芸品の漆器なんかもそうですよ。そういうところで、言うならば、国内需要ではなくて日本へ輸出するためにやって、そして日本から開発輸入との関係で技術もとる、そういうことになっている。日本は自由市場の対象になっているわけです。

 それに対して一体無防備でいいのか。そういうことをしたら日本の産業はみんなつぶれてしまうのですよ。これについては、やはり本格的な対策をする、開発輸入に対してもきちっと規制をする、日本の産業を守るという姿勢がなければならない。

 私は、その点での議論を深くするという時間はないかもしれませんけれども、閣僚として、農産物だけではなくて日本の産業を守るという観点で、農水大臣はどういう見解をお持ちであるか、伺いたいと思います。

松岡副大臣 閣僚としての大臣のお話の前に、まず、ありとあらゆることをやれということは、全く私どもそのとおりだと思っております。

 昨年の秋から、これはもう徹底して私どもはそのことを求めに求めて、政府・与党の協議の中で、そして初めて、本邦初演と言われるような昨年の暮れの調査に踏み切ったわけであります。

 今回韓国に参りまして申し上げてきましたのは、日本だけを特定にねらうような形で輸出助成をするということは、たとえ途上国の立場で認められている方法としても、それはひょっとしてWTOに反するのではないか、そういうものまで我々は受け入れなければならぬということになるのかどうか、極めて強い疑念を持つ。そういったことも含めて我々は、そのときはそのときなりの決断をするといったこともやりとりの中ではいろいろ言ってきております。

 ただ、おっしゃるように、非常に今無防備、こうおっしゃいましたが、しかし、植物検疫、動物検疫、また食品衛生検査の問題もあるわけでありまして、今、大勢から見たときにもうそれも限界に近づきつつある。こういった点も踏まえまして、私どもはありとあらゆる方法を総動員してこれに対処していく、そういう強い強い姿勢を持っております。こういったことだけは、ひとつ強く私どもも訴えておきたいと思います。

谷津国務大臣 今、松岡副大臣の言われるとおりでありますが、もう一つ私どもは、実は非常に言いづらい話でありますが、こういうこともやっているのです。

 実は、種とかなんかは日本から向こうへ出しているのですね。私はこれは問題だ。言うならば、日本で立派な、優秀な種をつくっても、それが即座にもう行っているというのです。ですから、私は、種苗業者を実は間もなく集めるのですけれども、そこではっきり言おうと思うのです。言うならば、日本の秘密な、一つの企業秘密と同じじゃないのか、それをじゃんじゃん出すとは何事だと。

 それだけではなくして、この間、中国で私どもは意見交換をしてきたわけでありますけれども、その中でも中国側から、日本は、要するに合弁会社でしかできないものを全くえたいの知れない商社が来てじゃんじゃんつくらせているというようなことまで言われてしまったのですよ。

 そういうことを考えますと、私どもとしては、それは中国で取り締まってくださいよというふうに出席した課長は申してきたということでありますけれども、国内も、たとえ商売とはいいながら、もっと哲学を持ってやってもらいたいということを私は断固として言おうと思っているのです。

松本(善)委員 ごもっともです。言うならば、日本の中に産業スパイがいるようなものです。それは大企業が果たしている場合もある。私は、哲学だけじゃなくて、私ども盛んに言うのですが、ルールのある資本主義と。国民経済、地域経済を守るという点での規制を断固としてやらなきゃだめ、そういうことを要求しておきます。これはまた、ちょっとここだけで議論が済むぐらいの小さな問題ではありませんから、このぐらいにしておきます。

 もう一つ、競りの問題をちょっとお聞きしたいと思うのです。

 私は、今の仲卸とか競りをやっている方々、仲買人の皆さんともいろいろ懇談をしてみますと、例えば、仙台でホウレンソウ一束三、四百円のときに、大きなスーパーが仲買人に、目玉商品として売るから一束九十八円の取引を求める、それで、コマツナなどを含めて二日で三百万円損をしてしまった。そしてさらに、そのスーパーにやるのならおれのところもやってくれと言って、同様のスーパーが要求してきて、六百万円損失したのです。

 それはどういう形で回収するかというと、町の八百屋さんやそれから生産者に来る。これを放置しておいたら、競りもなくなりますし、それから町から八百屋さん、魚屋さんがなくなります。それから生産者も大変な打撃です。量販店だけがひとり勝ち、こういうことになるのです。

 私のホームページにもメールがいっぱい来ます。それで、大根が二百円ぐらいなのが三百五十円で競りに出ている。出荷のときに一〇〇だったら四〇は公平な場に出てこない、そういう訴えが来ている。これは量販店中心ですけれども、それに対するきちっとした規制がなかったら、競りもなくなりますし、市場がなくなる。例えば気仙沼なんて、市場がなくなったら町はつぶれますよ。そういう重大問題が起こっている。

 これについて、農水大臣はどういう把握をし、どういうことをしようとしているか、聞きたいと思います。

松岡副大臣 今の御指摘の問題、私たちも重大に受けとめておりまして、副大臣・政務官会議でも、このことは重要案件の最たるものとして今私ども検討いたしておるところであります。

 端的に申し上げまして、量販店の意を受けた買い受け人、買参人ともいいますが、この人たちが後ろから仲買人を言ってみれば支配下に置くというか、コントロールするというか、耳元でささやくというか、そういったことで、例えば公正な取引がゆがめられているような実態があるという指摘もあります。

 したがって、そういう実態がいかなるものか、まずそこをきちんと整理をした上で、卸売市場を保護、所管する農林水産省として、そういう公正な取引が阻害されるような市場のあり方というものには断固としてメスを入れる、私どもはそういったような方針で実態をしっかりつかもう、こういうことで今取り組んでおるところであります。御指摘の点は十二分に認識いたしております。

松本(善)委員 質問を終わります。

堀込委員長 次に、中林よし子君。

中林委員 松本議員の方が、WTO次期交渉を含めた日本の農業を守るための海外対策について主に質問をされました。

 そこで、私は、国内対策の一番基本である来年度農林水産予算の問題、この点について質問をしたいというふうに思います。

 五年ごとに調査、発表される世界農林業センサスで、二〇〇〇年の日本の農業、農村実態が明らかにされました。それによると、総農家戸数は三百十二万戸で、五年間で実に三十二万四千戸が離農したことになります。そのうち販売農家が二百三十三万戸で、この五年間で離農した農家は三十一万四千戸で、離農した農家のほとんどが販売農家であったということがわかりました。販売農家の離農農家数の前期比は、この十年間で、十五年前から五年ごとですけれども、最初の五年がマイナス一〇・四%、次が十年前になりますけれども一〇・七%、そしてこの五年間がマイナス一一・九%と年々加速度的に農家が減ってまいっており、これで類推すると、実にあと三十五年で日本から農家がなくなってしまう、こういう計算も成り立ってまいります。

 とりわけ私は深刻だというふうに思いますのは、農業労働力の高齢化が一層進んで、農家人口の六十五歳以上の割合が二八・六%と、五年間で実に三・九ポイント増大しております。日本の総人口の六十五歳以上の割合は一六・七%ということから見ると、農家の六十五歳以上の割合というのは、もうそれだけ見ても非常に大きいということです。私は、今後日本の農業を本当に担っていく人たちがいるのだろうか、こういう不安さえ抱かざるを得ません。

 実際に、耕作放棄地がこの五年間で四万八千ヘクタール増加しておりまして、全体で二十一万ヘクタールにまでなりました。これまで私は、四国の耕地面積に匹敵するものだと言っていたのに、新たに和歌山県、大阪府の耕地面積を加えた面積が耕作放棄地になってしまった。

 こういう農業情勢のもとで、本当に農林水産予算が、その半分以上が公共事業に占められている。来年度の予算でも五一・一%を占めるということを見たときに、本当に農業が成り立っていくためには、私ども日本共産党は一貫して、農林水産予算のあり方として、価格補償だとか所得補償だとか、そういうところに予算の重きを重点的にやっていく必要があるのではないか、こういう提案をし続けてまいっているわけですけれども、大臣は、来年度のこの予算でいいとお考えなのかどうか、基本的な考えを聞かせていただきたいと思います。

谷津国務大臣 我が国の農業、農村の現状を見ますと、先生御指摘のとおり、外国と比べましても、面積が非常に小さいですね。それと、生活環境の整備の水準が非常に立ちおくれていることも、先生御案内のとおりだろうと思うんです。そういう現状から、整備を図っていかなければならない面も多々あるわけであります。

 特に、米の生産調整等をやっております関係から、ほかの、大豆とかあるいは小麦とかというふうなものを生産できる基盤も整備しなきゃならぬということになると、現在まだ五一%ぐらいの整備率ですから、これも汎用化をもっと図らなきゃならぬという面もあるわけであります。また、農村の整備の中には、集落排水等もやらなきゃならぬということから考えますと、まだまだ公共事業に対する需要というものは非常に大きなものがあることは、御案内のとおりであります。

 また一方では、所得政策というものも私どもは視野の中に入れまして、その検討会も発足させて、今、鋭意検討しているところでありますが、そういうふうな一つの所得政策。

 これにはいろいろな意見があるんです。実は、所得という面で見ると、それに安住してしまう面があるぞ、それよりも、それは収入という面で考えた方が、今度は収入の中で努力をすれば所得がそれだけ残っていくというような面で、そういう面の考え方もあるというふうな、いろいろな面もありますけれども、少なくとも、私どもは再生産につながるような所得の確保をすることが非常に大事だというふうに考えているんです。

 ですから、私はいつも申し上げるんですが、国民に安心して食べられる食料を安定的に供給する、もう一つは、毎日食べるものでありますから、できるだけ安く供給するということも大事な要素の一つだと私は思うんです。

 そうすると、生産面から見ると、そこに乖離が大きく出てくるわけでありますから、その辺のところを、国民の皆さん方の御理解を得て所得政策に転ずることも非常に大事なことだというふうに考えております。

 そういうことを考え合わせますと、大きな政策の大転換になるわけでありますから、当然、予算の面もそういうふうになるわけでありますが、ただいまの段階におきましては、まだ所得政策的なものがこれからでありますので、何年後になるかというと、私どもは、十四年という説もありますし、十五年にならないとしっかりしたものができ上がらないぞというものもあります。

 所得政策をやる場合には、共済の問題とかなんか、いろいろありますから、そういうものも含めて検討していただいて、そういう段階になった場合には、予算の面も大転換を図らなければならない、抜本的に変えていかなければならぬというふうにも私は考えているところであります。

中林委員 何年先になるかわからないということでは、今、五年ごとの農業センサスの数字を示しました。加速度的に、このままいけば本当に農業の担い手もいなくなるんじゃないか、それから農地そのものもなくなるんじゃないか、こういう危機感を持っているからこそ、今転換をすべきだ、このように提案をしているところなんです。

 私は、谷津農水大臣が、公共事業をチェックするということで、中海干拓事業中止のいわば引き金を引いていただいたということで、大変期待も申し上げているところなんです。しかし一方で、そういう干拓事業を中止しながら、公共事業で、もう要らないよというような予算が相変わらずついてきているということで、私は、農道の問題にメスを入れるべきではないかというふうに思うんですね。道路が通っていても、そこで生産するものがなかったら、道路の意味はなくなってしまいます。

 広域農道予算、来年度五百七十二億円と、前年比わずか十一億円減額にされております。さらに、私は農免農道について見たいというふうに思うんですけれども、これは三百七十一億円と、前年比微動だにしておりません。抜本的メスをここにこそ入れるべきだというふうに思っているんです。

 そこで、農免農道の仕組み、これについて簡単にお答えいただきたいと思います。

木下政府参考人 農免農道の整備事業につきまして御説明を申し上げます。

 農林漁業用に係る揮発油の税金でございますけれども、昭和三十九年、古うございますけれども、衆議院予算委員会で、揮発油税の道路特定財源としての性格、それから農林漁業用軽油に対する軽油引取税の減免措置との均衡の観点から、揮発油税を減免すべきという議論がなされたわけでございます。

 この中で、減免対象者が極めて多数に上る、また、製造業者、販売業者の手続が煩雑等々の理由によりまして減免の実施が極めて困難という中で、農林関係予算に相当額を農業用道路予算として計上するというふうにされたわけでございます。四十一年七月でございますけれども、衆議院大蔵委員会で、この旨決議をなされております。

 このような経緯を経まして、昭和四十一年度でございますけれども、農林漁業用揮発油税財源身がわり農道整備事業、いわゆる農免農道整備事業が創設されたというわけでございます。

 具体的な内容でございますけれども、毎年度の農林漁業用揮発油税の減免相当額を算定いたしまして、極力その額に見合うよう所要額を計上しているところでございまして、平成十三年度は、御指摘のように三百七十一億円を計上しております。

谷津国務大臣 先ほど、所得政策について、十四年になるか十五年になるかわからぬと私は答えたんですが、実は、これは副大臣・政務官会議で早急に検討するようにと言っておりますので、大体あるようでありますから、答弁を削除させていただきます。

松岡副大臣 先生が加速度的にやれ、こうおっしゃったわけでありますが、私どももできるだけ早く、急いでやろうと思っております。

 そして、ねらいはいわゆる新農業基本法のもとで、三つのかかわりといいますか、まず生産、自給率をもとにして、品目ごとに生産はしっかりと目標を持ってやる。しかし、価格は市場原理といいますか、そういった形にゆだねていく。そうなると、では所得はどうなるか。ここが、まさに政策でもってここを支えよう。こういう考え方でありまして、世界の流れも直接支払いへと大きくシフトしてきておりますから、アメリカ型、ヨーロッパ型、いろいろあります。

 我々も日本型ということで、これは思い切った、抜本的な予算の組み替えもやって、そして所得政策を打ち立てよう。この夏ぐらいには、一定の役所としての大綱的なものをまとめ、それから、それをもとにして、順次ということになると思いますが、できれば次の概算要求までに何を盛り込めるのか、少なくともその年の通常国会なりそういったところにはある一定の整理ができるように、こういうような作業日程を、これは大特急の場合でありますが、目指してやっておるということでありますので、ひとつまた御理解を賜りたいと思います。

中林委員 私どもがいつも所得政策をという提起をしたときに、財源はどうするんだという話をよく与党の側からやじなどで聞かれるわけですね。そこで私は、今具体的に、ではこういうところを削ったらどうかという提起をさせていただいている最中なんです。

 今局長が御答弁されましたように、農免農道は、揮発油税の道路特定財源と同様に、農道建設特定財源となってきているわけですね。それがオートマチックに農道建設が進められる。三十五年間たっている、農業情勢がどんなに変化しようともその金額というのは本当にオートマチックにずっと、多少の増減はありますけれども、ほとんど変わらずきているという状況です。農道は、広域農道もあるし一般農道もあります。だから、もう農免農道はこの際本当に見直しをして、これで、所得補償などそういうところに抜本的に回す。

 例えば中山間地の直接支払い、これは大いに充実させなきゃならないと私どもは思うわけですけれども、三百三十億ですよ、それを上回るのが農免農道の財源になっているわけですね。だから、それをそういうところに上乗せしていくとか、あるいは新規就農、これに対する予算はもう泣くほどの予算しかないのですね、三十億円、いろいろなところをかき集めても。だから、そういうところに使うべきじゃないかというふうに思うのですけれども、今見直し検討を始めているとおっしゃっているのですけれども、大臣、ぜひ見直していただきたいと思います。

谷津国務大臣 この道路財源、揮発油税もそのうちの一つでありまして、いわゆる特定財源なんですね。これは、入ってくるものは、目的が決まっていますから、それに使わなければならないということになっているわけでありますけれども、この問題に手を加えるときには、税制上の問題がありますゆえ、それを変えない限りちょっとできないということになりますから、その点に対しまして私どもはやはり意見を述べていかなきゃならぬというふうに考えているわけであります。

中林委員 揮発油税のこの導入のいきさつについては、減税措置などがあるから、難しいからということで、それに見合うようなものをという感じでやられて、減税そのものではないわけですから、そこの法改正だ何だということは要らないだろう、大蔵省との折衝の話だというふうに私は思いますので、ぜひ提案したいというふうに思いますのは、新規就農者の予算の増額の問題なんですよ。

 それで、来年度、これはどういうふうに計画しているかというのをお聞きしたら、もうほとんど融資なんですね。これではやはり、思い切って農業に飛び込んでいこう、こういう気持ちになかなかなりにくい。

 昨年、青年就農等の法案審議のときに、調査室の方からフランスの就農助成制度という資料が出されました。これなどを見ると、山岳地帯など、新規就農しようと思えば三百四十三万円助成されるとか、あるいは配偶者だったら四百五十一万円助成されるとか、そういうことですから、ぜひこれは担い手問題として増額を要求しておきたい。これは答弁はよろしいので、よろしくお願いいたします。

 そこで、厚生労働省に来ていただいておりまして、スターリンクの問題についてお伺いしたいというふうに思います。

 昨年から日本でも、未承認の遺伝子組み換えトウモロコシ、スターリンクが再三にわたって、日本に到着した食用トウモロコシから検出されております。それも、日米両国政府間の取り決めでは、アメリカが輸出の際事前検査を行い、検査の結果スターリンクが検出されていないもののみ輸出されることになっていたわけですけれども、それにもかかわらずスターリンクが検出された。なぜこのようなことになったのか、簡単に説明していただきたいと思います。

尾嵜政府参考人 平成十二年十一月の日米合意に基づきまして、日米双方の当局がそれぞれ確認検査を実施してきたところでございますが、一月末までに、三十検体中三検体におきまして、両国での検査結果が一致をしなかったということがございました。

 このため、私ども、日米担当部局間で原因究明及び再発防止に関する協議をその後進めておりまして、二月の二十一日までにスターリンクトウモロコシの低レベルの混入が原因であるというふうに考えられたために、今後は、米国のトウモロコシの積み込み地におきまして採取する検体の量をこれまでの千二百粒から二千四百粒にふやし、米国における検査の精度を高めるということで、スターリンクの混入の防止を図ることにしたところでございます。

 御指摘ございました日本に輸出するトウモロコシにつきましては米国ではすべて検査をしておる、その証明がついておるというのは、別の問題でございますが、お話をさせていただきたいと思っております。

 なお、今回の協議におきまして、モニタリング検査のために日本に送られましたトウモロコシの検体は米国内で流通しているトウモロコシから採取したものだということが確認されましたために、今後、検査のために日本に送られるトウモロコシの検体というのは、日本向けのトウモロコシから確実にとることを今回再確認いたしたところでございます。

中林委員 今まで再三、輸出前検査もやっているし、同じものが日本に送られて、それで検査するんだから大丈夫、大丈夫と言ってきたんだけれども、実は違ったものがそれぞれ検査されていたというような、だから私は、本当に水際でそういう日本で未承認のものを食いとめない限り、これは信頼ができないというふうに思うんですね。

 動植物検疫では二重検疫というのはもう当たり前になっているんだけれども、人間の口に入るものについては、モニタリングなどというようなことで、もう入ってしまって、後で、いや、違っていました、入っていました、こういう事態になっているわけですよ。

 そこで、奥山政務官に来ていただいているわけですけれども、私は、今回のことで、四月一日から厚生労働省は遺伝子組み換え食品を規制する、こういうことになるわけですから、水際検査である命令検査、これをぜひやるべきだし、そして踏み込んで言えば、食品衛生法そのものを、やはり水際検査を厳しくする、規制を含めた抜本見直しをすべきだというふうに思うんですけれども、この二点、お答えいただきたいと思います。

奥山大臣政務官 お答えを申し上げます。

 安全性の未審査の遺伝子組み換え食品が国内で流通しないようにするためには、先ほどの、本年四月から、安全性審査を義務化するとともに、検疫所においてモニタリング検査を開始することといたします。

 このためには、現在、適正な検査体制の確立に向けて具体的な準備を進めているところでありまして、安全性未審査の遺伝子組み換え食品が輸入されないように万全を期してまいりたいと思います。

 また、本年四月以降、万が一安全性未審査の遺伝子組み換え食品が発見された場合には、現行の食品衛生法において廃棄、回収命令等の行政処分等の対象にできるものでありまして、厳正に対処をしてまいりたいと思っております。

中林委員 食品衛生法で、これは国がやるんじゃなくて、事業者に命令検査を出せるわけですから、これはぜひ厳しくやっていただきたいし、それから農水省も、飼料を輸入しているわけですよ、これは食品衛生法よりももっと緩やかな感じになっているので、水際の検疫体制を強化されることを要求して、質問を終わりたいというふうに思います。

堀込委員長 次に、佐藤謙一郎君。

佐藤(謙)委員 民主党の佐藤謙一郎です。

 きょうは農水大臣とこうやって一時間質疑をさせていただきますが、かつての先輩議員として、私自身環境問題をやっていたときから、谷津農水大臣の御見識には私としても御尊敬を申し上げていたわけでありますが、公共事業の見直しということで、自民党の政調会長代理として、私ども民主党からすれば合格点には値しないと思いますけれども、自民党の中ではよくやったな、そういうふうに考えているところでございますが、この公共事業の見直しの中で、私はきょうは、諫早干拓事業とそれからノリ不作問題、それからもう一つは、川辺川の国営土地改良事業を取り巻くいろいろな諸情勢と漁業権の問題について質問させていただきたいと思います。

 私は、ついこの間、大臣の地元の群馬県に行ってまいりました。これは、八ツ場ダムというダムの建設計画を中止すべきだということで、私自身現場に行ってまいりましたし、ここ二、三週間、あちこちの公共事業の現場を見てまいりましたら、今までは、環境破壊とそれから地元の分担にたえられない、そうした負担にたえられない、そういう議論があったわけですが、ここに来て、やはり生活圧迫といいますか、生活に響く、そういう問題があちこちで出ております。

 例えば長良川の河口堰では、三重県の亀山市で水道料金が一気に五倍になってしまった。一トン当たり三百八十円の水道料金が、長良川河口堰のために二千六十円になってしまったというような、そういう議論もありますし、地元の館林自身が水道料金三倍になる、あるいは山形県の鶴岡の月山ダムが二・五倍というふうに、生活を直撃している、そうした事態があちこちで見られるわけであります。

 まさにこの有明海の問題というのは深刻で、私は、諫早干拓の事業がいろいろと言われていたときに、何度か地元に行って、大変つらい不毛な議論、ムツゴロウか人命か、そういうくだらない議論に落とし込められたことが大変許せないと思っております。もっとも、人命かムツゴロウかといった、そういう不毛な議論をされていた方に生態系ということがどこまで御理解をいただいていたんだろうか。

 まず、きょう冒頭に、環境問題に非常に造詣の深い谷津大臣に、この諫早干拓が生態系に及ぼす影響というものをどういうふうに考えておられるか、そして、今回のノリの不作ということに生態系の問題からどういうふうに関連づけて御説明いただけるか、まずお聞かせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

谷津国務大臣 先生も専門的な立場から今の御質問でありますが、同じ立場でずっと勉強も一緒にやった仲間でもありますものですから、そういった上の御質問だろうと思うんです。

 諫早干拓について申し上げますと、これは、実は四百年ぐらい前から、ここについては災害もあるということもあって、潮どめ堤防とまではいかなくても、随分そういった工事をやってきているんですね。何回も何回も繰り返してやってきました。そのときに農地もつくってきたという経緯があるわけであります。

 今回のときももっと大きな計画もあったようでございますけれども、金子農水大臣のときだというふうに聞いておりますけれども、三分の一にして潮どめ堤をあそこにつくったということの経緯の中で、長崎県から見ますと、やはり農地の確保というのは非常に大事だということでありますが、諫早干拓につきましては、実は目的の中の一つに、やはり災害防止ということも実はうたわれているわけでありまして、何か後からくっつけたような話を最近されるわけでありますが、そうじゃなくて、ちゃんと目的の中に最初から入っているわけであります。そういう中で干拓事業というのが進められてきたということも、先生もこれは御案内だろうというふうに思うんです。

 それと、生態系との関連でありますけれども、生態系というのは、単にあそこの干拓だけではなくて、もっと大きな面から見ていく必要というのもありますね。そういった面で、有明湾全体の中から見なければならない点がございまして、そういう面で、それでは諫早干拓がどういうふうにそれに影響を与えてきているかということは、今度、第三者委員会をきのう立ち上げましたものですから、そういった面で、その中で私は議論されるだろうと思うんです。

 もしそういうようなことで生態系そのものにも大きな影響を与えているというふうなものであるならば、これは干拓だけではなくて、ほかの面も含めて私はあるというふうに考えておる一人でございますから、そういった面を徹底的に調査していただきまして、やはり生態系が変わるような、そういうふうな問題というのは、もっと議論をし、そしてまたその辺のところを深く認識もしていかなきゃならぬ、私はそういうふうに考えているところであります。

佐藤(謙)委員 この問題では、例えば一九九三年ですか、生態系の消滅はもはややむを得ない、環境の創出を望みたい、高田前知事がこんなことを言っているわけでありますけれども、私がここでまず議論をさせていただきたいと思いますのは、二月の八日の予算委員会で、私どもの菅幹事長と谷津大臣とのやりとりの中で、予断を持たないで調査をしようということでやりとりがありましたけれども、私は、もちろん予断を持たないということは結構なことですけれども、こういうふうに考えるんです。

 所沢のダイオキシンの問題もそうでしたけれども、物事には二つ考えがあって、何か悪いものが確実に人間の健康被害の犯人であるということが証拠づけられるまでとにかく突っ走っていこう、そういう考え方からすれば、所沢の問題で恐縮ですけれども、焼却炉をとめるということではなくて、本当に健康被害、子宮内膜症ですとか新生児の死亡率、そうしたものとの因果関係がはっきりわかってから焼却炉をとめてもいいんじゃないかという考え方と、いや、社会的な蓋然性で、どうしてもこうした健康被害ということにどうも因果関係がある可能性が高いというときに、焼却炉をとめて事態の真実というものを考えていこう、そういうことを私は、そのどちらをとるかという政治姿勢が今問われていると思うんですね。

 官僚に任せれば、それは法律にのっとって、デュープロセスでやっていこうとするわけですけれども、僕は、谷津大臣はこの問題について緊急に調査をすると言っていただいているのはありがたいんですけれども、今説明をしたように、予防原則、とにかく疑わしかったら立ちどまろう、そういう政治姿勢を持つべきだろうと考えていますが、今までの谷津大臣とのいろいろな議論の中で、谷津大臣はそうした考え方をお持ちのように私は感じておりましたが、その辺についてはどうでしょうか。

谷津国務大臣 実は、先生の考え方とそんなに変わっていないんです。

 と申しますのは、この諫早の件につきましては、あそこの水門をあけろという考え方がありますね。私は、それも実は予断だと言ったんです。それから、あけないというのも予断だというふうに私は申し上げたんです。実は、役所の中におきましても、あけないというふうな、技術的な問題でそういうのがあるんだと言うから、それは予断だぞということで、まかりならぬと私は申し上げているわけであります。

 また一方、長崎県は、絶対にあれはあけてはいかぬというふうに強く要望も来ているんです。あるいは、あそこの工事はじゃんじゃん進めてほしいというふうな強い要望も来ているんです。そういうはざまに今私はいるわけなんですね。

 そういう中で、もしあそこをあけますと、御案内のとおり、水位が六メーターも違うんですよ、干満の差が。日本で何か一番干満の差が大きいところなんだそうでありまして、あれをあけますと、毎秒六メーターぐらいの、流れのきついもので一斉にあの中へ入っていくというふうな事態もあるということでありますから、私は、早くのうちから、あけた場合にどういう問題が起きるのかというシミュレーションもやってほしいということを早々と事務局に頼んだわけなんですね、それをやってくれと。

 そして、先ほど申し上げましたように、四百年ぐらい前から、あそこは小さな潮どめ堤防等もつくってまいりました。そして、四年前、あそこに潮どめ堤防ができ上がってからというものは、前の潮どめ堤防がどういうふうに稼働するかというふうな問題もあるんです。

 実は、あけっ放しになってきたまま六メーターもある水位のものが入ってきますと、諫早湾の周辺の住宅に水が入る危険もあるわけでありますから、そういうものを考え合わせますと、やはりそういうふうなものを万全に調査して、そういう災害が起きないようなものを早くちゃんとしておかないと、あそこの水門もあけられないという状況もあるわけでありますから、第三者委員会で水門をあけてくれ、そして調査したいと言ったときに、これから調査をしましてあけますよなんと言ったら、一カ月も先になったら、何をやっているんだと、またおたくの方からは非難をするんじゃありませんか。ですから、そういうことのないように、私どもは早くからそういう対応もしているということなんです。

 しかし、これをあけるか、あけないかということについては、調査の面において必要ということになってくるわけでありますから、そういうふうに第三者委員会が判断したならば、あけて調査することが必要だ、私はこういうふうに言っているわけであります。

佐藤(謙)委員 この間の、きのうですか、予算委員会での速記録ですけれども、今何が原因であるかということは、正直言いましてまだわからないわけでありますから、総合的に調査をしてもらうことが大事だと。しかも、これを早くやってもらいたいという御答弁の中で、ことしの十月になりましたらまた網を入れなけりゃならない、しかし、準備ということを考えると、もっと早く一つの中間報告をして、安心してノリ網が入れられるような、原因をまず確かめて、それをやることが大事だというふうに考えておりますと。

 やはり我々が一番深刻に考えなくちゃいけないのは、ことしの秋のノリの芽つけというものは大事だろうと思うんですけれども、そのタイムリミットというのはいつだとお考えですか。これは中間報告をするというふうに、中間報告を求めておられるわけですけれども、このタイムリミットをお示しください。

谷津国務大臣 ノリの網入れが十月ごろということは、実は漁業者の皆さんからも私も聞いております。しかし、その準備もあるということも聞いております。

 そういうことを考え合わせますと、できるだけ早く中間報告をしてもらわなければならぬということで、実はこの第三者委員会も、最初は十三年度からというふうに申しておったのでありますけれども、これも早めなけりゃいかぬということから、きのう、委員会のメンバーを決めていただきましたし、また三月の三日には第一回目のそういう委員会も開いていただいて、早くそういったものを出してもらうということで私どもはお願いをしているところであります。

佐藤(謙)委員 そのタイムリミットを示していただきたいと思います。――いや、きょうは僕はすべて大臣にお願いをしていることですので、大臣、お願いします。(谷津国務大臣「専門的なことだから、ちょっとわからないので」と呼ぶ)いや、大臣がやはりお答えいただきたいと思います。

谷津国務大臣 おたくはいつだと思っていますか。

佐藤(謙)委員 私は、今すぐにでもあけなければ間に合わないというふうに考えております。

谷津国務大臣 すぐにあけるということになった場合に、災害が起こってもいいんですか、あの諫早湾の方の。そういうことがあるから、今、事前に私どもは調査をさせているんですよ、それでいつでもあけられるように。そのときになってすぐにあけられないような状況をつくってはいかぬと思うから、今からいろいろなシミュレーションをやっておいてほしいということを私は一月ぐらい前にも命令しているんですよ。

 それと同時に、もう一方では、先生、長崎県なんかは、今、絶対あけちゃ悪いと言っているんですよ。そういうことも頭に入れながら、私は、第三者委員会があけてくれ、そして調査するんだと言ったら、私自身が長崎県に行って説得しなきゃならない、そういう立場にもあるということをひとつ御理解いただきたいんですよ。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

佐藤(謙)委員 それでは、谷津大臣、先ほどの私に対する質問と同じように、災害があったらどうされるんですか。

谷津国務大臣 ですから、そういう二次災害がある可能性がありますから、今、前につくられておる潮どめ堤があるんですよ。それは自動的に開閉できるようになっているんだそうです。ですから、そういうふうな面を、今機能するかどうか全部調べてほしいということも含めて、それから、六メーターも干満の差があるわけですから、そういう場合に秒速六メーターぐらいで水がなだれ込んでくるわけです、あるいは外へも出ていくわけですから、そういうときに何か破壊されるようなことがないかどうか、そういうことも含めて、実は建設された方も呼んでそういう機能を今調べているという状況であるということを御理解いただきたいんです。

佐藤(謙)委員 これは我々は、私どもの菅議員からもお話をしているように、干潮時にとにかく水門をあけて水を入れるということは、いささかも災害とは無縁の話だろうと思います。

 そこで、今度の第三者委員会が、項目の中に水門をあけて調査しようと言われたら、大臣は調査をすると言っておられるわけですけれども、それでは、災害に対して万全の備えをしてからでなければ、幾ら第三者委員会が水門をあけて調査しようとしても、おあけになれないということですか。

谷津国務大臣 ですから、そういうことのないように、事前に全部調査してくれということを私は命令しているんです。そういうことですから。

佐藤(謙)委員 その命令の答えは、タイムリミットはいつになるんでしょうか。

谷津国務大臣 私のところへもう二、三回説明に来ております。そういうことで、あと二、三、あそこを建設した会社も呼んで、水門の強度というんでしょうか、そういうものがどういうふうなものであるかということの報告はまだ受けていませんが、そういうことも今聞いておるということでありますから、そう遠い先ではないと思います。

佐藤(謙)委員 そう遠くないということであれば、第三者委員会が中間報告をなるべく早めて出すということになれば、五月でも六月でも水門をあける用意はあるということですね。

谷津国務大臣 あなた、何を言っているんですか。そんな遅くやろうと思っていないよ、私は。

佐藤(謙)委員 わかりました。(発言する者あり)いやいや、そういうことを聞き出したく、僕は質問をしたわけですけれども、ですから、今私はタイムリミットということを言っているので、すぐにでも出せるということですね。

松岡副大臣 佐藤先生は、大臣ということで私はお呼びじゃないかもしれませんが、お聞きをして申し上げますが、私どもは、悪いですが、先生も環境は御専門に随分取り組んでこられたかもしれませんが、少なくとも専門家ではない、環境工学にしても何にしても。私どももそうです。

 したがって、調査委員会にありとあらゆる立場からの専門の先生方を網羅し、かつまた漁業者の代表も私どもは要望に応じまして全部網羅して、そしてそういう調査委員会のもとで本当にあけてやらなきゃだめだ、ではどういうことが、あけ方も含めて必要か、そして今度は、災害の問題も含めて、工学的な専門の先生も入っておられるわけでありますから、その先生方がそういったあらゆる角度から検討されてあけろとなれば、それはすぐにでもあけられるような準備をしておくというのが今の大臣の答えであります。

 したがって、そういう準備に我々も入っておる、農林省として。だから、これは、調査委員会の先生方の求めに応じて私どもはすぐ即断できる態勢をとっておるということであります。

谷津国務大臣 私は、本当に被害を受けている漁民と同じ目線で物を考えているんです。ですから、第三者委員会がいつどこであけて調査しろというふうに言ったときに、すぐにあけるつもりでいるんです。そんな、五月だの六月だの、先のことは頭にありません。

佐藤(謙)委員 いや、私は、もっと早く一つの中間報告をしてという、そのタイムリミットのことについて触れたわけでありますけれども、これは一日でも早く、私が冒頭申し上げたように、私の考え方は今すぐにでもあけるべきだというふうに言っているわけでありますから、その辺はお取り違いのないようにお願いしたいと思います。

 とにかく、漁業被害の方々のためにどうしたら一番いい方法があるのかということをともに議論するわけでありますが、そこで、残念ながら、ノリの不作の原因というのは、やはりいろいろな複合的なものがあろうかと思います。気象条件を挙げる方もおられますし、筑後大堰の問題を言われる方もおられる、熊本新港にさかのぼる方もおられますし、そういう意味では、やはり一つ心配なのは、干拓事業の大量の海砂をとる、採砂というんですか、これも一方ではタイラギとかアサリの激減につながったということを言われる方がおられるわけです。

 ここで、私は、公共事業というのは、国民のためにやらなければいけない公共事業、こう言われながら、なぜこんなに国民に不人気なのかと考えますと、そのうちの一つに、どうも公共事業というものをやろうとする主体の官庁が、だましやおどしで住民にいろいろと接している実態というのがあるわけですね。

 後で議論をしますけれども、例えば、川辺川の利水訴訟の問題をとってみても、御承知のように、百人近い死んだ人の同意署名が存在をしたとか、あるいは第三者が無断で同意署名をとったりとか、一番私ども許せないのは、水代はただだとか、あるいはその事業に参加するかしないか、後からでももう一度自由に選択できるんだ、そういう言い方で同意書をとってきたようなケースも、こうした土地改良事業ではあったわけです。

 そんな中で、いかがわしいだましとかおどしの中で、ちょっと質問をさせていただきたいのは、最近、日刊ゲンダイで「農水官僚が“買収工作”」、こういう記事が出てきているわけでありますが、まず、今申し上げました海砂の採砂の問題で、どうもこの辺の有明海海域のほとんどの海砂の採砂は有明商事という会社が一手に担っているというふうに聞いておりますけれども、その辺のことは御承知でしょうか。

谷津国務大臣 一般的に、請負契約工事における問題につきましては、この採砂、分布等の規格の品質等を示しながら、請負業者は個別の工事を行うようになっておりまして、この試験の成績書等を監督職員に提出をしてやることになっておるわけであります。

 今、お話がありました有明商事ですか、これは、私は報告を受けていないんですが、ちょっと細かいことなので、答弁させます。

木下政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、請負契約工事において使用する材料でございますけれども、工事の特別仕様書におきまして、粒度分布等の規格あるいは品質を示し、請負業者は個別の工事を行う際に試験成績書等を監督職員に提出いたしまして、規格あるいは品質を満たしているかどうかという承諾を受けるというふうにされているわけでございます。したがいまして、納入されます海砂、砂の材料が規格あるいは品質を満たしているかどうかがポイントでございます。

 したがいまして、先生御指摘の材料の納入業者あるいは納入価格につきましては、私ども、承諾の対象としていないというところでございます。

佐藤(謙)委員 私の知る限りでは、この小長井町の有明商事が独占しているということで、干拓事業における砂の納入業者とその価格がどうなっているかということは、後で御報告をいただきたいと思います。

 それからまた、二月九日の日刊ゲンダイで、農水官僚が反対漁民に対して買収工作を行ったということで、九州農政局の幹部の関与が報じられているわけですけれども、実は、いつでも自分は委員会で証言をしていいという元小長井漁協の組合長がおられます。午前中の環境常任委員会では、参考人として呼ぶように理事会に求められておりましたけれども、この方が、実は干拓事業所長に、一九九五、六年に、技術顧問になってくれないか、月七十万円とにかく出すからと言って、反対運動の中心人物であったこの方を籠絡しようとされたということであります。その当事者の方からもお話を聞いておりますけれども、こういう事実は御承知でしょうか。

谷津国務大臣 この報道があったことは、実は私は承知しているんです。私も驚きまして、この報道に関しまして直ちに調査に入るように申し渡しました。その結果、反対していた地元の漁業組合に対し、ゼネコンの十社に月七十万円で技術顧問とならないかと持ちかけたというような文書がありましたものですから、その点について徹底的にちょっと調べてくれということを申し上げましたところ、そのような事実は一切確認できないというふうな報告がございました。

佐藤(謙)委員 元小長井の漁業組合長は、自分は確かにそうしたことを言われた、こう言われておりますので、当委員会でも参考人として呼んでいただければ、理事会で御協議願いたいと思います。

堀込委員長 後刻理事会で協議をさせていただきます。

佐藤(謙)委員 それから、この諫早干拓については、この小長井の漁業組合の組合長さんだけじゃなくて、反対運動をして本当に自分たちの漁場を守ろう、自分たちの将来の仕事を守っていこうとする人たちに対して、例えば工事現場の請負業者として会社をつくったらどうかというような提案をして、そういう人たちを反対しづらい形にしようということで幾つかの会社がつくられたというふうに聞いております。そうしたことは、もしも事実としたら、そういうことはよいことではないと大臣はお考えですか。

谷津国務大臣 今の先生の御指摘のようなことがあったとするならば、それはよいことではないのは当然のことです。

佐藤(謙)委員 それでは、そうした籠絡の手口というのを私はあちこちから今回聞いているわけですけれども、それは諫早干拓をしようとする人が反対派に対して行っていることでありますけれども、例えば、これは川辺川のことで恐縮なんですけれども、今月の二十二日に、川辺川に関連する幾つかの団体が、川辺川のダム事業促進協議会に対してこういうことを言っています。

 これはちょっと後先になって、後のことを先にちょっと申し上げて恐縮なんですけれども、川辺川ダム事業に関しましては、二月二十八日の球磨川漁協の総代会開催が予定されていますけれども、その総代に対して、推進の立場をとるように、一部の市町村長やその関係者が直接もしくは間接的に圧力をかけているという情報があって、現実には今月、二月二十日付の新聞報道によると、山江村、球磨村、深田村、上村の村長は、賛成するよう働きかけたということを認めていることが明らかになっているわけでありますけれども、こうした心理的圧迫を与え得る行為が許されていいと大臣はお考えでしょうか。

谷津国務大臣 どういうところで町村長さんがそういうふうな働きかけをしたかということについては、私も今初めて聞いた話でありますからよくわかりませんけれども、少なくとも、そういう事業をやるときに、いろいろな賛成、反対ということについて、心理的な圧迫によって賛成の方に回させようとか、あるいは、逆に反対の方に回させようとかいうのは、私は余り好ましいことではないと思います。

佐藤(謙)委員 ここではまた、今月の十八日に人吉市で開催された総決起集会で、これは推進派の総決起集会で、旧建設省OBである林田衆議院議員が、後輩に対して暴力的にでもやらせたい、そういう決意でございますと述べているというふうにこれは新聞報道でもあるわけですけれども、こうしたことは望ましいことだとお考えですか。

谷津国務大臣 その件も私は初めて聞くことでありますけれども、もしそういう事実があったとするならば、それは好ましいことではないですね。

佐藤(謙)委員 こうしたことというのは情報が錯綜するわけですから、ひとつ私の尊敬する大臣としては、やはり公共事業というのは国民のためにあるんだというそれぞれの思いでやろうとするならば、手続でこうした誤解を与えるようなことがあってはいけないと私は思うんですね。どうか大臣、一度この辺調査をしていただいて、そういうことがあるかないかの事実関係をしっかりと把握していただきたいと思います。

 それと同時に、実は私も、民主党の対策本部、一月の二十五日に私どもも有明海漁業被害対策の本部をつくったわけですが、その翌々日の二十七日にノリ被害の環境調査団ということで、これはまた有明海の方に戻るわけですけれども、行きました。民主党のそういう集会ということで、二百人ぐらいの漁業関係の方々、漁家の方々にお集まりをいただいたわけですが、そういう方々に対して漁業組合長が口々に、民主党のそういう集会なんかに行くなといって圧力を加えた、そういうことがあるわけですけれども、そういうことはいいことだとお考えですか。

谷津国務大臣 先生、この有明海のノリあるいはまたヒイラギ等を初めとするいろいろな海産物等の問題について、この被害状況について、私は党派がどうのこうのじゃないと思うんですよ。この間も私は申し上げたんですが、私が視察に行ったときに党派的な発言があったものですから、こういうことは被害者に対して失礼ではないかというふうに申し上げたわけでありまして、そんな、この党がやるから行っちゃいかぬの何のというのは、私はもってのほかだと思いますよ。

佐藤(謙)委員 そうだと思います。今までの谷津大臣の姿勢からいって、やはりその辺かなり厳しく今までも対応されてこられた大臣だというふうに私は考えておりますので。ところが、こうしたことがすべて本質をわきに追いやってしまうことになりかねないと私は危惧をしているところでございます。

 そこで、この有明海の問題が、大臣は第三者委員会をきのうつくられて非常に前向きに先ほど答弁をしていただいたわけですが、森総理にしても、今までトーンダウンをしているんじゃないか、そういう心配があったので、先ほど来質問させていただきました。

 そこで、この有明海の問題が、隣の不知火海、八代海においても何か同じような被害がこれから川辺川ダムについてあるのではないか、そうした懸念が出てきているわけでありますけれども、これは、川辺川ダム自身は国土交通省の所管ですけれども、ここで球磨川にダムをつくると、影響補償における被害率が七四%という数字が出てきているわけなんです。

 この七四%というのは、これは熊本一規明治学院大学教授が試算をされたわけでありますけれども、今、この八代海、不知火海の漁業組合の人たちは、今月の一日ですか、三十七漁協が集まってダム対策委員会というのをつくられたというふうに聞いているわけでありますけれども、こうした球磨川、川辺川の川の濁りがどっと押し寄せてくると、アユなどの漁獲高に大変大きな影響が与えられる。

 これは、国土交通省の試算ですと、建設期間を八年間とすると、大体一年間十五億の漁獲高から算定をして、九十億円ぐらいですかね、八年間で。九十億円ぐらいの漁業的な損失というのがあるというわけでありますけれども、この被害率の七四%、つまり二六%しかとれなくなるという、そうした推計。

 私、例えば海にヘドロが堆積して、富山県の黒部川、それから富山湾の関係にすごく似ているなというふうに思うんですけれども、あそこは、出し平ダムというダムと宇奈月ダムの連携排砂が今言われていて、ダムから排砂を実験的にやろうとしていて、ヒラメ漁業が壊滅的な打撃を受けているところですけれども、どうもこの八代海、不知火海がその二の舞になるのではないか、そういう懸念があるわけで、その辺のことについて谷津大臣はどういうふうに対策を講じておかなければならないというふうにお考えでしょうか。あるいは、漁業調査をそちらの方もしていかなければいけないというふうにお考えでしょうか。

松岡副大臣 今の御指摘の、有明海と同じような観点でまた八代海にも不知火海にもいろいろ被害が及んでいくんではないか、また、ダムとの関係でどうなのか、こういう御指摘があるわけでありますが、有明海と違う点は、八代海、不知火海というのは、ああいう諫早湾の干拓が、ああいう潮どめ堤防みたいなものが、何か明確な今までと違ったものができたとか、そういったことは全くないわけなんですよね。だから、逆に言うと、そういうことも含めたときに、では八代海、不知火海にどうしてこれだけの被害が出るんだろうかとか、逆の点からの疑問もまたいろいろ呈されているわけであります。

 したがって、今、川辺川がダムができたときにどうなるかというのが、八代の漁協、三十七漁協の皆さん方の大変な関心事ということが新聞でも地元でも報道されております。私も熊本ですから、そういった皆さん方の心配に接する機会が多いわけでありまして、これにつきまして、漁協の皆さんがつい近いうちに何か上京されまして、こちらにお見えになるという話も聞いております。

 したがって、御心配の点や御不安な点を十分お聞きしながら、農林水産省、まさに漁業を、水産業を所管する立場として、これはどのように対応していくのか、そこは私どもは大臣にも申し上げておるところでありますが、十分皆さん方のお話をお伺いしながら、農林省としてできることは積極的に対応していきたい。

 そしてまた、国土交通省との連携等も必要であるならば、そういった点も、その心配や不安をぬぐうような方向で農林省がどういう取り組みをするのか、これをきちんとやっていきたい。

 今はそういう考えでいるということですね。

佐藤(謙)委員 それは、結果によっては漁業調査を十全にやることも検討していただけますね。

松岡副大臣 それは、必要ならばやはりやらなきゃならぬのだろうと思っております。

佐藤(謙)委員 ここで有明海から八代海、不知火海の話になるわけですけれども、川辺川の利水事業について二、三ちょっと御質問をしたいと思うんです。

 土地改良法では、事業の計画変更を行う場合、事業認可時と同様に受益者の三分の二以上の同意取得が義務づけられているわけでありますけれども、現場では、実際の指導としては九〇%以上の同意をとるようになっているわけですね。去年九月に判決が出た利水訴訟においては、先ほど申し上げましたように、だましのテクニックということで百人の死者が署名をしたり、第三者に署名をさせたりというようなことがあって、この同意署名のとり方というのが非常に今問題になっているわけでありますが、現実には、対象農家四千名のうちの二千百名近くの方々が原告や補助参加ということになっているわけで、その点で、川辺川の利水事業は判決評価によっても不十分な事業じゃないかと私は考えるわけです。

 これは今の水産庁長官が構造改善局長のときにいろいろと議論をさせていただいたわけですけれども、結果として、死亡者百人とかいろいろな瑕疵があったけれども、そういう人たちを除いても三分の二には達しているということで、原告敗訴ということになったわけですけれども、これは、これからの土地改良法の改正も含めてしっかりとした議論をしていく場合に、やはり九〇%以上の同意をとるというそうしたレベルというものは大事だと思いますし、これはそういう意味からいって不十分な事業であると私は考えていますけれども、大臣の御見解をお示しください。

谷津国務大臣 先生御案内のとおり、土地改良法八十七条の三の第一項の規定によりまして、国営土地改良事業計画につきましては規定がされているわけなんですね。

 そういう中で、先生今お話がありました農業排水事業については、これは資格者が三千九百二十二名に対して同意者が三千四百十七名で、同意率が八七・一%、それから区画整理事業については、資格者数が千四百七十六名に対しまして同意者数が千三百四十三名で、同意率が九一・〇%、農地造成事業については、資格者数八百八十一名に対しまして同意者数が八百四十一名で、同意率は九五・五%ということになっておりますが、こういった面で、私は、この事業につきましては進めるべきであるというふうに考えております。

佐藤(謙)委員 その辺は、今の御説明を承りましたけれども、現実には二千百名の原告と補助参加があって、事業の計画変更に伴って、同意をかつてしていた人たちの多くが利水事業に反対をして訴訟まで起こしているわけですね。かつて渡辺当時の構造改善局長は、これだけ大きな利水事業について、きのうは賛成したけれどもきょうは反対だと言う、そうちょくちょく変えられてはたまったものではない、そういう御意見でありましたけれども、現実に、正当な手続というのであれば、今の農家の意識というものを再調査すべきではないかというふうに考えています。

 それと、大臣は特に、政調会長代理の時代に川辺川のダムについて視察をされたり、この問題に対しても非常に積極的に取り組んでこられたわけで、調査しておられるということを考えると、その辺のことも含めてこの問題についてどういう御見解をお持ちなのか、お示しいただければと思います。

谷津国務大臣 今お話がありましたように、私、政調会長代理のときに川辺川ダム、たまたまあそこに知り合いがおるものですから、その車に乗せてもらいましてずっと見てまいりました。そしてまた、反対派の人たちも私の方へ訪ねてまいりましてお会いをしました。反対派の人たちは、自民党の代議士が会ってくれたのは初めてだとそのときも言われましたが、その意見もいろいろと聞かせていただきました。

 そういうふうな面も含めまして、私も視察したときの非常に参考意見になったわけでありますけれども、この国営川辺川土地改良事業につきましては、平成六年度に実施した計画変更の手続の有効性をめぐって、今お話がありました訴訟の問題が起きました。そういうことで、この事業計画についての変更が有効に成立していることが昨年の九月の判決で出たわけでありますけれども、こういうことに従って、私どもは個々の受益者の意向をもう既に聞いているわけでありますから、こういうことに対して考えを変えるつもりは今のところございません。

佐藤(謙)委員 やはりそれは私は承服しかねるといいますか、まあ大臣がそういうふうに言われるのはわからないでもないことですけれども。

 私も随分周辺農家を歩かせていただきました。本当にだまされたと言う人もいれば、自分が浅はかだった、本当にもう少し勉強していれば同意なんかしなかったと唇をかむ人もいるわけで、やはりそういう人たちの思いを考えると、一度決めたことはもう変えないんだということではなくて、柔軟に、谷津大臣の今までの行動の仕方というのはやはりそういうものも包含した、温かく彼らに接するという、そういう物の判断というのがあっていいんじゃないかと思うんですね。

 特にまた、まだ着工していない事業については、これから土地改良法の改正の議論があるわけですけれども、その対象にすべきではないかというふうに思うんですが、大臣はどうお考えですか。

谷津国務大臣 先生御指摘のとおり、実は私が行きましたときでも、水は要らないと言う方もおりました。そして、自然にもう入ってきているのであるから、これはあえて金を払ってまで工事をやってもらいたくないと言う方もおりました。また一方では、これを早く進めてほしいと言う方もたくさんおりました。

 そういう中で私も今の質問を受けているわけでありますけれども、少なくともこういうふうなものについては、財産等もいじくるわけでありますから、そういう中でしっかりと同意を得た上でやらなければならぬということは私も十分承知をしているところでありますけれども、土地改良法に盛られておる基準からいくならば、これは当然実行できる、そういう範囲の中に入っておるということも私は認識をしているところであります。

佐藤(謙)委員 これはまた土地改良法の改正の議論で続けさせていただきたいと思います。

 次に、漁業権の問題なんですが、やはりここで非常に私ども、現地に行って漁業組合のあり方というのが改めて問われているんだなというふうに考えているわけです。

 川辺川の球磨川漁協、大体千八百人ぐらいおられるわけですが、そのうちの四百八十七人が総会開催を要求した。これは水協法で、組合員の五分の一が総会の開催を要求すると二十日以内に開かなければいけないということであったわけですけれども、そういうことを一切無視して、今、漁業補償契約締結の同意というものを今月の二十八日、つまりあしたの総代会の特別決議で決めてしまおう、そういう動きがあるというふうに聞いております。これについては、総代会の前に総会をやらなければいけないという県の勧告、県の漁政課の勧告を無視するもので、こういうことが果たして許されるのかということが問われているわけです。

 大臣にお聞きいたします。この総代会の特別決議が三分の二でいいのか、あるいは全漁協員にすべきなのか、水産庁の今までの通達では全員の同意をとるべきだというふうに指導しているというふうに聞いておりますけれども、この辺についての大臣の御見解をお示しください。

渡辺政府参考人 法制度上の問題とそれから指導上の問題とということでございますが、法制度の問題からいきますと、漁業法あるいはいわゆる水協組合法上には漁業補償に関する法的手続はありません。

 ただ、唯一、漁業権を全面的に放棄をするという場合には、総会もしくは総代会において特別決議が必要だということですので、総会であれば、正組合員の半数以上が出席して三分の二以上の賛成を得るということです。それから、総代会であれば、出席者のうちの三分の二以上の賛成があればこれはできるということになっています。しかし、その後、今先生がおっしゃいましたように、総会が開かれてそこで違う決議がされた場合にはそれが有効だ、制度上はそういう流れになります。

 したがって、三分の二もしくは次の総会における決議というのが有効なんですが、ただ、水産庁のこれまでの指導として、漁業補償契約ということになりますから、これはやはり円滑に進める意味で全員の同意をとるべきであるというのが私どものここ三十年ぐらいの指導でございます。

佐藤(謙)委員 全員の同意をとるべきだろうと私も思っております。

 それと、球磨川漁協は、先ほど申し上げましたように、県の指導による総代会開催前の総会勧告というのを無視して行われようとしているわけですけれども、あした、つまりこの時点で開かれた総代会での決議というのは本当に有効なんでしょうか。

渡辺政府参考人 もう少し端的に申し上げますと、総代会が招集されてそこで特別決議がされればそれ自身は有効でありますが、その後再び、例えば、総会の招集について組合員から請求があって二十日以内に総会が開かれ、違った決議がなされれば、それがまたその時点において有効性を持つ決議ということになります。

佐藤(謙)委員 ちょっと堂々めぐりになっちゃうんですが、仮にあしたその特別決議が通ったとして、前々から漁協組合員の方々が総会をやれと言っていて、これは県の勧告も無視して総会の前にあした総代会をやるわけですけれども、その後二十日間、あしたから二十日間、とにかく総会をやれと言っても総会を開かなかったら、これはどういうことになるんでしょうか。

渡辺政府参考人 先ほど勧告という話が出ましたが、勧告はあくまでも行政上の措置でございます。

 今先生がおっしゃられました総会招集の請求に応じない場合、これは水協法におきまして、行政庁が組合に対して必要な措置をとるべき旨を命ずることができるというふうになっておりまして、例えば、命令に従うべきである、役員の改選等を命ずる、そういったことが命令として出せることになっております。また、組合が総会招集の請求に応じない場合には、役員は二十万円以下の過料に処せられる、こういうことになっております。

佐藤(謙)委員 そういうぎりぎりのところまで追い込み合うことじゃなくて、どうか大臣が主導権をとっていただいて、この問題にもいい結論が出せるような方策を検討していただければというふうに私は期待をしているところでございます。

 私、有明海の方に行っていろいろと感じたことは、これは大臣がよく言われているように、とにかく漁民に聞け、現地のそういう方々の意見を聞こうということ。そして逆に、私自身も漁民の方々の方がよっぽど長期的に物を考えておられるなということを感じました。潮位が変わる、あるいは潮流の方向が変わる、去年はあそこでこういう魚が、とれてはいけないような魚がとれたんだというようなことを彼らが口々に言い合って、本当に自分たちにとって大事な海であるということを我々に訴えかけてくれました。

 これは、役所は役所でやはり法律の手続というものがあります。しかし、この間テレビで、ここ二、三日前からデモですとかいろいろな形で九州農政局に行かれた漁民の方々の真剣な表情を見れば見るほどに、これは政治家として大臣が決断をする、そういう場面が来たのかなということで、私自身、大変期待を申し上げているところです。

 一つ、先ほどの質問で申しわけなかったんですが、私もいろいろな議論の中で、タイムリミットの問題で、中間報告によってあけるのではなくて中間報告のためにあけるという、その辺の事実関係を少したがえて質問してしまったことをおわびしたいと思いますが、大臣のもとで一刻も早いそうした解決を私は望むところでございます。

 それと、今回、有明海と川辺川ダムの問題以外に一点だけ。私はライフワークで食の安全ということをやってまいりました。食品衛生法の改正、あるいは一気に食の安全基本法というようなものをつくっていくべきだろうというふうに考えているわけです。

 前回も質問をしたんですけれども、前回は学校給食のパンの問題で、お子さんは給食を拒否することができないわけでありますから、それだけに、子供たちの食生活というもの、学校給食については我々大人が万全の上にも万全の安全性というものを確保しなければいけないというふうに思っていたわけです。実は、北海道を中心に学校給食の中から、クロルピリホスメチルとかマラチオンとか、有機燐系の殺虫剤がしばしば検出をされてきて、そしてそれが地域地域で問題になっているという指摘を申し上げたのです。

 今回は佐賀市、やはりきょうは九州づいているわけですけれども、佐賀市で市立小中学校の給食用パンの材料を、ことしの四月から、どうもこうした有機燐系殺虫剤が入っている疑いのある輸入小麦粉から国産小麦粉へ切りかえていく方針を佐賀市が決めたというふうに聞いております。

 こうした域内消費推進というんですか、地場農産物の域内消費推進という立場と給食の安全性追求を目指しての転換ということでありまして、これを私は大変望ましいことだと思っておりますけれども、こうした動きがさらに全国に波及して自給率の向上につながることを期待しているものの一人ですが、こうした佐賀市の取り組みに対する大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

谷津国務大臣 佐賀市では、本年の四月から、市内の小中学校の給食パンに国内産の小麦を導入するということを決めたというふうに聞いております。国産小麦粉を利用したパンを給食に利用するということは、国内産小麦の実需を確保しまして自給率の向上のために大きく寄与するものと私は高い評価をしているところであります。農林水産省といたしましては、このような取り組みが全国的に普及するように、国内産小麦の品種改良や加工の技術といいましょうか、そういうものの開発を進めていく所存でございます。

 新潟県では米の粉でパンをつくって学校給食に出しているということも聞いておりまして、あるいはまたパンに三〇%ぐらい米の粉を入れてつくっている。この間も試食をしてみましたけれども、ほとんど変わりませんね。こういったことで、本当によいことだというふうに思っておりますので、これをぜひ推進していきたいというふうに考えております。

佐藤(謙)委員 前向きな御答弁、ありがとうございました。

 佐賀市の場合は、やはり微量な残留農薬というものが検出されている。そこからスタート。例えば、交通事故でだれか児童が事故を起こしてから横断歩道をつけるということじゃなくて、ちょっとした兆候からこうしたことに前向きに取り組んでいただくこと、それが食の安全につながっていくんだろうというふうに私は考えております。大変前向きなお答え、ありがとうございました。

 もう時間が来ましたので、最後にひとつ資料要求だけさせていただきたいのです。

 私はずっと全国の大規模林道問題にかかわってきたんですけれども、林野庁が大規模林道事業において新たに四区間、たしか四区間だったと思いますけれども、新規着工要求を行っております。

 資料を見ますと、いずれも費用対効果の結果、一を上回っているというふうに書いてございますけれども、その詳細な根拠をぜひともお示しいただきたい。特に、森林の公益的機能に関しての算定資料をぜひ出していただきたい。それはこれからの森林行政を考える上で非常に大きな意味を持っていくんだろうと思いますので、その辺、よろしゅうございますか。

谷津国務大臣 私への報告ですと、既に先生の事務所にお届けしてあるというふうに聞いておるんですが、もし出していなければ、これから出させますので、よろしくお願いいたします。

佐藤(謙)委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

堀込委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党・市民連合の菅野哲雄でございます。二点について、大臣の考え方をお聞きしておきたいと思います。

 第一点目は、社会民主党として、二月の八日、九日、実際には八日の日ですけれども、国会議員六名の団を組んで有明のノリ被害の状況を視察してまいりました。地元四県の関係者とも行動をともにしながら視察してまいったんですが、率直な感想として、百聞は一見にしかず、行って見ることによって地域の状況が本当にわかりましたし、ノリ漁業者も含めて、漁業関係団体も含めて、漁民が非常に大きな危機感を持っているということを痛感してまいりました。

 そういう意味では、これからの対策として、緊急対策と長期的な視点に立った対策、これを分けて議論していかなけりゃならないんじゃないのかなというふうな思いでいるわけです。

 そして、今までも多くの議論がなされましたから、その質疑でおおよそわかりましたけれども、一つは、緊急対策として行われなきゃいけないのは、ことしだけのノリの被害であればそんなに慌てることはないと思うのです、こんなことを言っては語弊がありますけれども。ただ、先ほども大臣が答弁していますけれども、ことしの三月、四月ごろから準備にかかって、九月、十月に網を入れるわけですよね。そうしたときに、ことし、二〇〇一年度も本当にノリがとれるんだろうかという不安なんですね。

 この不安を早急に解決していくということが緊急の課題であろうし、当面、多くの生活困難に陥っている人たちもおります。多くの負債を抱えながらノリ漁業をやっていますから、そういう意味では、生活支援という部分をどうしていくのか。

 この部分は、国と地元四県の一連の対策というものは説明を受けているからわかります。ただ、そうじゃなくて、本当にこれは今までの負債にまた負債を抱えるわけですから、幾ら利子が安くといえども、また無利子といえども、元金は返さなきゃならない、こういう状況にあるわけですから、だから、補助金として国から出してもらえることはどうしてもできないのかというのが強く訴えられた部分です。そういう意味では、そういう面について、これからの緊急的な課題として措置できないのかな。

 そしてもう一つは、これから教育にも大きな影響が及んでくると思います。大学に進学する人たちへの対応、あるいは高校生への対応とか、そういう部分をどう考えているのか。この生活支援について、考え方をお示しいただきたいと思います。

谷津国務大臣 私も、一月の二十九日に行きましたときに事の重大さを痛感したわけであります。そういった面で、被害を受けたノリの養殖業者に対しては、災害の発生原因が明確でない中ではありますけれども、災害どきにおける金融対策としては、過去最大限の支援を講ずることとしたところであります。

 そして、無利子貸し付けの件でありますが、これは、国と県があるものでありますから、県が県議会で議決をしないとだめであります。できるだけ早くこれを議決していただいて融資ができるようにしてあげたいと思いますし、私の考えの中には、これは松岡副大臣とも相談したんですけれども、それがなくても中間的に出せないかというようなことすら今考えておるわけでございます。

 また、こうした対策に並行いたしまして、原因の究明の調査や良好な漁場の環境をつくることも大事な仕事でございまして、関係者の皆さん方の将来に対する不安がないように、そういう万全を期してまいるつもりであります。

 なお、生活支援の件についてでございますけれども、生活福祉資金の借り入れや、災害に対しては日本育英会の奨学金の利用も可能であると聞いておりますので、関係省庁とも協力をいたしまして、被害漁業者の支援に万全を期していきたいというふうに考えておるところであります。

菅野委員 現地の人たちの不安というのは、ノリの被害が一次災害とすれば、そういう生活不安からの二次被害、あるいは子供たちへの三次被害、そういう形で広がっていくことに非常に大きな危惧を抱いているわけです。そして、多くの方々とお話し合いする機会もありましたけれども、そういうことを訴えられてきておるわけですから、ぜひ、国が地元とも十分協議しながら万全の措置を講じていただきたいというふうに思います。

 それから、先ほども申し上げましたけれども、二〇〇一年において、ことしにおいて本当にノリが作付できるんだろうかという不安なんですね。先ほどからの議論をずっと聞いておりましたけれども、調査にはかかります、そうでしょう。しかし、対策をどう講じていくのかというところが、調査結果を待たないと対策も立てられないというのが実情なんですね。そして、大臣は、早期の調査結果を求めていきながらということを言っていますけれども、調査と並行して対策をとっていかなければならないというふうに私は思うんです。

 そういう意味での、原因究明の方向はわかりましたけれども、それと並行した地元対策をどのように考えておられるのか、現時点での考え方をお知らせ願いたいと思います。

谷津国務大臣 その点は非常に大事な問題でありまして、例えば、第三者委員会で調査に入って、すべての調査が終わってからその報告を受けるというのではなくして、中間でその都度調査の結果を出していただきたいというふうに私はお願いをしておるところであります。

 そして、その結果ここに原因があるんだというふうなことが出てくるならば、すぐ対策を打っていかなければならぬ、そういうふうに考えておるところです。

菅野委員 そういう意味では、この原因究明と対策というのは並行で、そして、これは一朝一夕に、対策としてすぐ手を打ったからそれで効果が上がるというものは、こういう海洋、有明海の中ですぐ出てくるというふうには、私は自分の経験から考えられないんです。

 それで、先ほどからも議論がありましたけれども、水門をあけるということも、調査対象の中で、その件もわかりました。そして、これからの対応についても大体わかりました。

 ただ、私は、先ほど松本善明委員が気仙沼、気仙沼と言ったのですが、私、気仙沼出身なんです。それで、気仙沼湾も有明海と同じように閉鎖性水域の湾を持っているんですね。そして、昭和四十六年ころから異常に赤潮が発生いたしまして、ノリの養殖をやっていたんですが、やはり壊滅的被害を受けて、ノリ漁業は気仙沼湾から全部撤退してしまったという経過を持っています。

 それから、赤潮の発生する原因を調査して、そして、有明海に比べればもう百分の一にも満たないと思うのですが、小さな湾ですけれども、湾内のヘドロしゅんせつをやったり、昭和四十八年から公共下水道に着手してやったり、そして今、二十五年経過しているんですけれども、やっと湾内の水がきれいになって、そして魚も戻ってくるというような状況になっているんですね。そういう長期の取り組みが行われて、もとに戻ったとは言い切れません、でも、やっと魚が戻ってくる湾に戻ったんですね。

 そういうことを考えたときに、あれだけの広大な湾の中で、こういう現象が起こっていることですから、私は、一つは、その関連する県や市町村と連携をとって調査研究する機関というのを国として設置していきながら、この有明湾全体を蘇生するような長期の取り組みというものが必要なのではないのかなというふうに思っています。

 その点について、大臣、少し勇断を持った決断を下す必要があるのではないのかなというふうに思っているのですが、いかがでしょうか。

谷津国務大臣 今、先生から調査機関をというお話がございましたが、これは西海区水産研究所というのが既に長崎市にありまして、そこで今担当してずっとやっているわけでございます。そして、この有明海をやはりもとに呼び戻すということが、私は大事な仕事だろうというふうに思うのです。

 それには、今おっしゃったように、いろいろな原因があるかもしれません。この二十世紀後半の環境破壊の中に、あるいは有明海もそれに該当しているかもしれません。そうなりますと、長期的な問題も当然出てくるわけでありますから、かつて瀬戸内海をそういった面でやった経緯がありますから、私の頭の中にもそういうふうなものを想定しておることも事実であります。

菅野委員 今ある機関でもって対応をとれるということじゃないと思うのです。これから、こういう被害が起こって、こういう実情が発覚したときに、やはり湾を取り囲む市町村と、あるいは県、四県にまたがるわけですから、その四県と連携をとっていくということは国の機関じゃないと難しいというふうに思います。それで、そういうところが機能していればいいのですけれども、では機能を持たせる体制をどうとっていくのかというのが、これは非常に重要なことだと思うのですね。

 諫早湾の問題にまた返りますけれども、そういう機関を設置していきながら、そして諸外国の例というのがあると思います。

 韓国での水門、あるいは、私もぜひ調査に行ってみたいなと思うのですけれども、オランダでもそういう実例がある。干潟が閉じられて、そして干潟がなくなったときにどういう現象が起こって、その後に水門をあけたときにどういうふうになったのかという事例が身近にあるし、世界各国にもあると思うのですけれども、それを調査して、そしていろいろな形を、長期的な部分も含めて、そして韓国の例でいえば、やはりもとに戻るためには三年、四年かかったということですから、すぐの形で結果として出るわけじゃないですから、そういうことも必要なんではないのかなと思うのですが、大臣の見解をお聞きしておきたいと思います。

谷津国務大臣 実は、韓国の件につきましては、一月の十二日だったかな、ちょっと日にちは間違っているかもしれませんが、韓国の農林大臣が来まして、実は韓国としても公共事業の見直し等をやらなきゃならぬので、参考になるかどうかということで、私のところに訪ねてまいりました。そのときに、今のところの話も出ました。いろいろ聞いてみますと、有明の、いわゆる諫早とは条件が大分違うようであります。しかし、これは、やはり私どもは参考としてきちっと検討していく必要があると考えております。

菅野委員 諫早湾の問題は、私は、現地調査してみて、本当に一つの原因じゃないということを痛感いたしました。そして、例えば三池炭鉱の海底崩落の問題とか、あるいは雲仙・普賢岳の噴火の問題で湾口がふさがれたんじゃないのかとか、あるいは筑後川の水量の問題とか、あるいは養殖漁業を高度に伸ばしてきましたから、かつては半分くらいの生産量が、機械を導入することによって、海を使って本当に高度の生産量を上げた、これは価格との関係で生産量を上げなければ追いつかないのですから。そういう状況をつぶさに見させてもらいました。複合的なものがあるというふうに思います。

 そういう意味では、これから第三者機関の調査委員会を設置するということですから、農水省としても、地元の意見を率直に取り入れるような配慮をしていただいて、そして調査して、長い期間をかけて有明海をよみがえらせるような取り組み、それと同時に、先ほど一番冒頭に申し上げましたように、漁業者が生活不安に陥ることのないような取り組みをしていただきたい。このことを、この問題の最後にお願い申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、二点目は、先ほど松本委員も取り上げていたのですが、ワカメの問題です。これは、実は二月八日、九日に九州にワカメの調査に行ったのですけれども、その前日の二月七日に、二〇〇一年産、ことしのワカメの初入札が行われたのですね。先ほど松本委員は、四五%の減少というのは一九九九年から二〇〇〇年にかけて、去年の生産高で、価格で、四五%の減なんですね。初入札の状況は、この四五%減の中で、また三割減です。

 こういう状況にあるというふうに私は聞いているんですけれども、水産庁長官がおられますけれども、暴落の原因をどう認識して、どのように国として現状に対処していく考えなのか、これを冒頭お聞きしておきたいと思います。現状認識をぜひお聞かせ願いたいと思います。

渡辺政府参考人 御指摘のとおり、十二年産を中心に価格が急落をいたしまして、関係の方々が極めて深刻な状況にあるということは認識をしております。

 御案内のとおり、ワカメの国内市場に占める輸入品のシェアというのが八割以上というふうに推定をされますので、そういう意味では、輸入品の増加、輸入量の増加というものがこのワカメの国内産の価格の下落に何らかの影響を与えたという可能性はあるものと考えております。

 ただ、価格の動きと数量の動きを見ますと、これは必ずしもパラレルではございません。そういう実情がございまして、セーフガードを発動するためには、輸入の増加と国内価格の低下の因果関係を客観的に証明する必要がございますので、私ども今、こうした状況を踏まえまして、実態調査やヒアリング、関係県に対する調査、関連する要因の分析を進めながら、輸入増加と近年の国内価格低下の因果関係の把握に努めているところでございます。

菅野委員 先ほど大臣も答弁しているのですけれども、そういう監視品目になっています。

 それで私は、暴落の現状という表現で言ったのですが、一九九九年、二〇〇〇年、二〇〇一年初入札、この一連の関係をどういうふうにとらえているのですかということを水産庁長官に聞いているのです。ワカメの価格、それは平均値でいいですから、大体、九九年の価格と二〇〇〇年の価格とことしの二〇〇一年の初入札の価格がどういう推移をたどってきているのですかということをぜひ答弁していただきたいと思います。

渡辺政府参考人 ワカメの年度というのはまたがりますけれども、九、十年度、これがピークでありますが、国内産の価格がキログラム当たり百九十二円、十、十一年度が百九十円、十一、十二年度に入りまして急落、百二十円という状況で下落傾向が続いているというのが実情でございます。

 そういう中で、先ほど申し上げましたように、輸入のシェアが、十一、十二年度が七九・二%、九、十年度のピークのころには七五%でしたから、恐らくは輸入数量の増加、シェアの拡大がいわゆる引き金になったのではないかというのが私どもの推定なんですが、先ほど申し上げましたように、輸入量がずっとふえている中で価格も上がってきたものですから、この因果関係がなかなか説明しづらい。その点をもう少し解明をしたいということで実態調査と、それから同時並行的に、経済産業省あるいは財務省と事務的な協議は進めております。

菅野委員 水産庁長官、私が質問しているのは、三陸産ワカメの暴落の現状ということです。

 これは私の資料なんですけれども、ここに、例えば宮城県産の塩蔵ワカメなんですが、塩蔵ワカメをとっていっても、宮城県平均で、一九九六年からずっと二〇〇〇年まであるのですけれども、キログラム当たり、九八年で七百七十四円、それから九九年で七百三十八円、二〇〇〇年で四百六十九円という数字が塩蔵ワカメで出ているのです。いいですか、七百七十四円、七百三十八円、そして四百六十九円というのが去年の平均価格なんです。そして、ことしが三百円台にもうなってしまっているのです。

 そして、有明海のノリが不作だ、不作だということで、実際に四〇%と言っていますけれども、このワカメの現状は有明海のノリどころじゃないという現状なんです。そういう現状を正しく認識して、そして対策をとらなければ有明海と同じようにワカメの生産者が引き継いでいかなくなっているという現状に今追い込まれているということをどう認識しているのですかということを私は聞いているのですけれども、もう一回答弁していただけますか。

渡辺政府参考人 済みません。私の説明がちょっと不親切だったかもしれません。

 今先生がおっしゃられたのは、多分湯通し塩蔵ワカメのしんつきの共販価格、こういうことだろうと思います。ワカメの統計はしん抜きとしんつき、また乾燥で違いますので、そういう意味で、今の先生の価格は湯通し塩蔵ワカメしんつきの共販価格に非常に近い。

 それでいいますと、宮城県で言えば、平成十年、これがピークですが、キログラム五百五十円、十一年は四百九十二円、そして十二年は二百八十二円、こういう現状で、相当下落が激しいということでございます。

菅野委員 農水大臣、今の現状、先ほど言ったのと同じなんですが、しん抜き、ワカメのしんを抜いたかついたかによって値段は違っているのですが、今水産庁長官はしんつきで言ったのですが、五百五十一円、四百九十二円、二百八十円、これは手元の数字なんです。これは去年までの数字なんです。だから、おととしから比べれば五百五十一円から二百八十円ですから半減なんです。そして、ことしがまた初入札でこれ以上、三割下がっていると言っていました。

 そうすると、どういうことなんですか。有明海のノリの被害は、福岡で、あるいは佐賀、熊本、長崎はそんなに減になっていませんけれども、四割減とかいう状況の中で、今大激論になっているのです。三陸産ワカメも同じような状況だということの認識を私は大臣にとっていただきたい。そういう認識の上に立ったときに、地元からいろいろな要請が来ると思うのですけれども、それに対して今後どう対処していくのか。

 私は、ノリとワカメを同じに取り上げたというのは、そういう状況にあるということの認識に立っていただきたいということを申し上げたくてやっているのですけれども、大臣いかがですか。

谷津国務大臣 実は、私のところにもそういった実情についてのいろいろな陳情も含めまして数字等もいただいております。これは三陸の方ばかりでなくて、北海道の方も実は参られました。

 そういう状況でありますから、今監視品目に当たっているところでありますけれども、そうした数字が出てきたところで、私どもは財務省それから経済産業省と相談をいたしまして、政府調査に入るようなそういう方向に持っていかなければならないというふうにも考えているところであります。

菅野委員 確かに、セーフガードというのは一時的な有効手段であるということは、私も、ぜひセーフガードを発動して暴落を緊急避難的に抑えていただきたいということは強く要望したいのですけれども、私は、これは緊急避難的措置であるというふうに思います。

 そして、今日的なそういう第一次産業全体を取り巻く状況と言っても過言ではないと思うのですけれども、これからのワカメの養殖漁業も含めて、沿岸漁業も含めて、漁船漁業、山も話したいのですけれども、そっちは森林・林業基本法もあるし、水産基本法の中でももう一回議論していきたいと思うのですけれども、こういう現実が今存在しているわけですから、こういう現実をどう解消していって将来に展望を持てる水産業にしていくという理念をどう盛り込むか、そして、具体的な方策をどう盛り込むのかというのが、今出そうとしている水産基本法に求められている課題ではないのかというふうに思うのです。

 これらについて、大臣、水産基本法をこれから提出なさろうとしておりますから、その理念にどう盛り込んでいくのか、こういう現実に対処する方策をどう盛り込んでいく考えなのか、これをお聞きしておきたいというふうに思います。

谷津国務大臣 水産基本法の中にそうした精神というのはしっかり入れていきたいと思うのです。そして、今度は基本計画の中でそれがさらに実施できるようにしっかりやっていきたいと思いますので、ぜひ御指導いただきたいと思います。

菅野委員 先ほども申し上げましたけれども、本当に価格暴落によってその産業自体が衰退して、そして後継者がいなくて産業をなくしていったならば将来に大きな禍根を残すという状況に今ありますから、緊急避難的なぜひ対応を滞りなくとっていただきたい、このことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

堀込委員長 次に、山口わか子君。

山口(わ)委員 社会民主党・市民連合の山口わか子でございます。

 農林水産大臣の所信表明を伺いまして、これからの農業をどう確立していくのか、正直に言って私にはまだ具体的には見えてこない部分が多々あることを感じました。

 大臣の所信表明の中で、健康で充実した生活の基礎となる食料について、新鮮で安全なものを安定的に供給することは、国の基本的な責務であるというふうにおっしゃいました。また、日本の農林水産業及び農山漁村が希望にあふれ、活力に満ちたものとなるよう、施策を積極的に展開するというふうにも言われました。

 しかし、今農業に従事している皆様は、本当に農業に対しては夢も希望もだんだん失ってきてしまっているのが現状ではないかというふうに思うんです。特に、戦後、食料難のころは、本当に、お米を生産しよう、食料難を何とか解消しようという、農家の皆様がやはり荒れた土地を開墾して、そして山も棚田にして、大変な苦労をして今の日本の食料難に当たってきた。そういう農家の皆様が、今この生産調整をせざるを得なくなって、結果として三割以上のお米をつくれなくなったわけですから、そのショックというのははかり知れないものがあると思います。

 特に中山間地では、耕作放棄地がかなり出てまいりまして、棚田も、特に私は長野県なものですから、棚田がもうたくさんあって、非常に風景としてもよかったんですけれども、最近は棚田がどこにあるのか、草ぼうぼうで見当たらなくなってしまったというのが現状です。そういう昔ながらの田園風景を本当に何とかしなければいけないんじゃないかというふうに思っているわけです。

 こうした中で、確かに生産調整は必要かもしれませんが、しかし、農業しか経験のない方がたくさんいらっしゃるわけで、こういう方にとりましては死活問題ではないかというふうに思っていますし、麦や大豆や野菜をつくればいいというふうに言っているわけですけれども、これも安くたたかれていまして、生活を支えるのにはなかなか苦労が多い、そんな農家も多いのではないかというふうに思うわけです。

 長野県内でも、昨年、危機突破要請大会というのがございまして、私も参加させていただきましたけれども、本当に農家の皆様は、よく我慢しているというふうに思うくらい大変な状況にあることを私も知ったわけです。

 こんな状況を見たときに、若い人たちがこれから本当に担い手としてやっていけるのかは、多分若い人たちの目には、そんな農家の実態ならもう私たちは手を引いた方がいいんじゃないかというふうに思うんじゃないかというふうに思うんですね。結果として、高齢者とか女性だけが農家に残されて細々と農業をしている現状ではないかというふうに思うんです。

 これからやはり日本の安全な食料を供給するということを見たときに、本当にこの現状でいいのかどうなのか、大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

谷津国務大臣 今の農業の置かれている立場、一次産業と言ってもいいと思うんですけれども、そういうものが非常に厳しい中にあることは私も十分認識をしているところであります。そして、精神論で農業をやれといったって、正直言ってこんなのは無理ですよ。ですから、再生産につながるような意欲のある農業をやるようにするには、やはり基本的には所得というのが大きな要素になってくるだろうというふうに私は思うわけであります。

 そういった面で、先ほども松岡副大臣も答えましたけれども、この所得政策というものをできるだけ早く取り入れて、そして意欲を持って再生産に当たれるような、そういう体制をとっていきたいというふうに考えているところであります。

山口(わ)委員 私も農家の方とかなりおつき合いがあるわけですが、農家の方にとって農業をやるということが一番の生きがいなんですね。ですから、実際に農業ができなくなったときに農家の皆様がどんな思いをしているのかということを、非常に私は胸が痛むわけですね。

 例えば、今農家の中には、本当に高齢者の、お年寄り夫婦しかいない家庭が多いわけです。農業も、三割以上の減反ということもありまして、野菜をつくるにもなかなか意欲がなくなってきている中で何をしているかというと、本当にうちの中で一日ぼうっと暮らしている人たちが非常にふえてきているわけです。そんな中で、私が心配するのは、これからやはり介護という問題が非常に大きくなってくるわけですけれども、何にもしないことによって人工的に介護せざるを得なくなる、寝たきりの方がふえていくということも非常に心配しているわけです。

 そういう農村の高齢化の実態、そしてやはり高齢者がどんな生活をしているのかということを、そういう現状をどのくらい把握していらっしゃるのか、少しお話しをいただきたいのと同時に、遊休の農地が大変ふえておりますので、所得政策というふうにおっしゃいましたけれども、今本当に農家の所得の現状というのはどうなっているのかをちょっとお知らせいただきたいと思います。

谷津国務大臣 私が答弁したほかにまた局長の方から答弁させますけれども、農家の所得ということでございますけれども、私どもは、他産業並みの所得というものを確保したいというふうに思っておるところでありますが、現状においては、私は、正直言ってほど遠いものがあるというふうに考えておるわけであります。ですから、これからいろいろな対策、施策を展開しなければならないわけであります。

 そういった中におきましても、やはり今お話がありましたように、農業者というものは、私は、本当に、それが好きと言っては失礼ですが、そういうものでやっていると思うんですよ。しかも、農業というのは、天候あるいは土壌、あるいは水、あるいはまた麦一つにも生命を持っているものですから、そういう面で、ある意味においては生物学者みたいな、そういうものも含めながらやらなきゃならないということで、大変な能力と知力を必要とするのが農業であるというふうに私は思うんです。ですから、やはりそれに見合うだけの所得を確保しなきゃならぬというふうに私は考えているところであります。

 あとは局長の方から答弁をさせます。

須賀田政府参考人 農村におきます高齢農業者、六十五歳以上の農業者の方々の割合でございますけれども、平成十二年におきまして、農業就業人口の五三%がこういう方々に当たるわけでございます。手元に数字がございませんけれども、恐らく全産業平均だと七%か八%じゃないかというふうに思っております。それに比べて著しく高齢化が進んでおるということでございます。

 また、介護という面から見ますと、私どもが持っております統計によりますれば、要介護世帯の割合でございますけれども、大都市が二%足らず、一・九%程度に対して、郡部が三・八%ということは、約倍ということでございます。

 我々としては、農村におきます高齢の方々が生きがいを持って農作業に取り組んでいただきたいというふうに思っておりまして、それに対する支援もいろいろ考えておるわけでございますけれども、やむを得ず介護を必要とするという方々に対しましては、やはり農村部におきます農協が中心となって、ホームヘルパーその他の助け合い運動でこれに対応するというふうなことを考えているところでございます。

山口(わ)委員 今おっしゃられましたように、確かに高齢化が進んでおりますし、そして、今農業を奪われてしまった農家の皆さんにとっては、本当に生きがいがなくなってきている、そんな現状で、先ほど大臣がおっしゃいましたように、やがては食料難に耐えられるような日本の農政を確立していきたいというお話ですが、今、農業のノウハウを持っている皆様はほとんど高齢者なわけですね。

 この高齢者の皆様が生きているうちに、本当にこのノウハウをきちっと引き継いでいく、そして農業を確立していく道筋にしなければいけないのではないかというふうに思っているんですけれども、農家の皆様の生きがい対策といいますか、農家の高齢者の皆様がこれから後輩に引き継いでいくいろいろな施策をする必要があるのではないかというふうに思っているんです。

 例えば、家族農業を基盤とした集落営農の活性化ですとか、高齢者の熟練した技術をどういうふうに後継者に引き継いでいくことができるかとか、あるいは学校教育に生かすことなど、地域でできることがたくさんあると思うんですね。

 うちの方の学校でも、田んぼにカモを放しまして、そのカモによって有機栽培をするというようなことを実は近所の農家の高齢者の皆様に指導をしていただいて、もちろん田植えから稲刈りまで、非常に生きがいを持って学校教育に参加をしていただいているお年寄りの方がたくさんいます。

 そういうふうに、長年養ってきたいろいろな農業の知恵を学ぶという側面について、もっと具体的な施策で支援ができないものかと思うんですが、そういう支援についてはどの程度政策の中に入っているのか、お願いいたします。

須賀田政府参考人 ただいま先生おっしゃられましたように、高齢者の方々、長年培った経験や知識があるわけでございます。農業生産面でも、若い担い手と役割分担をしながら、生きがいを持って取り組んでいただくということもさることながら、先生今おっしゃられましたように、地域社会活動面で栽培技術等を児童に指導する、あるいは自分が持っております名人芸といいましょうか、こういうものをそれを必要とする地方に行って伝承するというような取り組みが現実に見られているわけでございます。

 このために、我々はそういう活動を支援するということで、一つは、そういう名人芸を持っている高齢農業者の人材バンクというものを設置いたしまして、そこへ登録して、求めに応じて行っていただくようにする、あるいは優秀な高齢者活動に対する表彰、発表の機会を確保する、それから、高齢者が栽培技術でございますとか地域文化を伝える体験教室を開催するといった事業を仕組んでいるところでございます。

 今後とも、そういう方向で高齢者の活動の場づくりというものを進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

山口(わ)委員 大変いい政策をなさっていらっしゃるとお聞きしましたんですけれども、実は、平成十三年度の予算をちょっと見せていただきました。

 この予算によりますと、ソフト面、公共事業がかなり、先ほどからありますように五一・二%もありますが、非公共事業の中で特に女性とか高齢者に対するいろいろなソフト事業、これはソフトしかないわけですが、全体の非公共事業の中の比率を見ますと、たった〇・五%しかないわけですね。

 そして、新規農業者に対する支援も一・七%くらいしかないということで、本当にいいことを言われているんですけれども、これだけの、高齢者に対する補助額だけでも七十三億ということですから、全国にこういうものを広げていった場合には、本当にそれぞれの市町村でそういう支援事業ができるのかどうかという点では、非常に私は心配になります。

 ですから、もっともっと本当に生きがいが持てるには、もう少しやはり支援策であるならば予算をつけていくべきじゃないかというふうに思っていますし、見ますと、ほとんど、お金を借りる事業が多いですね。

 ですから、そういう支援策にもっともっと力を入れていけば、お年寄りが一生懸命地域の中でいろいろなことを指導することによって、ただ単に所得政策といいましても、そういう指導をすることによって例えば収入が得られるようなことがあれば、物すごい生きがいになるのではないかというふうに思っているんですが、その辺は、きょうはお答えいただかなくても結構ですが――お答えいただけますか、よろしくお願いします。

須賀田政府参考人 平成十三年度予算ということで先生にお出しをいたしました女性、高齢者対策、ソフト中心の事業でございますけれども、確かに七十三億円でございます。それでも、例えば平成四年、これが四億四千万のレベルだったわけでございますので、ここ十年間で十倍以上ということに、我々としては精いっぱい努力をしておる。

 しかも、この七十三億のほかに、例えば女性、高齢者の農業活動支援施設、これは構造改善事業でございますとか山村振興事業でございますとかでメニューの一つとして入っているわけなんですけれども、それをちょっと計上できませんので、予算としてお示しはしていないわけでございます。

 ただ、女性が農業就業人口の約六割、高齢者が農業就業人口の約五割でございますので、基盤整備でございますとか農村の活性化でございますとか個別の生産対策でございますとか経営対策、そういうものの受益もされているということについては御理解を賜りたいというふうに思っています。

 とはいうものの、高齢者、女性のニーズがすべてこれで事業化しているかというと、我々としても、まだまだ足りないというふうに思っております。女性問題、高齢者問題のニーズを酌み取って、できるものから事業化をしていきたいという姿勢で臨みたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

山口(わ)委員 女性が生きがいを持てて、高齢者も生きがいが持てるような施策を取り入れていただく、これからはやはりそういうソフト面での努力というのはすごく大事だというふうに私は思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 それから、私は最近心配になっておりますのは、最近というか昔からそうなんですが、農業に従事している人の健康破壊がかなり進んでいるというふうに思います。農業がもたらす健康破壊というのが、特に多いのが骨とか筋肉系の疾患が多いわけですね。

 疾患と言われるんじゃなくて、だんだん摩滅しちゃって動かなくなっちゃったというのが非常に多いわけですが、私なんかもよく農家へ訪問しますと、ひざ関節がはれ上がっちゃって、全然、立っているか寝るかしないとどうにもならない、玄関でのあいさつができないという方が八割以上はあるわけです。

 そして、背骨が、滑り症といいますか、そういう方が非常に多くて、腰が真っ二つになっちゃって、手押し車で引かなければ田んぼへも行けないという人たちがあるわけですが、これは明らかに農家、農業従事者に特異的に多いわけですね。

 例えば、ほかの産業ですと、こういうのは労働災害の対象になるわけですけれども、農業についてはそういう補償というのは今のところないわけですね。これを特定して災害補償にするというのは大変難しいと思うんですけれども、そういう農業従事者の健康破壊について、農林水産省として何かできる手だてがおありなら、ちょっと教えていただきたいと思います。

須賀田政府参考人 確かに、高齢の農業者の方、窮屈な姿勢をずっととり続けるだとか座り続けるだとか前屈をして何回も重いものを運ぶとかで健康を害されるという事例を我々も承知しておるところでございます。

 そこで、我々のできることといたしまして、一つは、高齢の方々の作業環境の改善、例えば、野菜の出荷調製のときに車つきのいすで行うとか台車で行うだとか、そういう指導をしたり、あるいは高齢者に合った栽培方法、いわゆる矮化でございますけれども、果樹の低樹高栽培でございますとか、あるいは労働を軽減するために農作業ヘルパーといったものの運用を図っていく、あるいは高齢者にも使いやすい機械を開発していくというような面で、農林省としてできるだけの措置というのはこれまでとっているところでございます。

山口(わ)委員 そういう作業環境の改善も非常に大切だと思いますけれども、厚生労働省と連携をとりながら、早目に健康診断を行う、健康管理を行う中で、やはり医療に結びつかないようなことも考えていく必要があるのじゃないかと思っています。長野県の場合は特に農村医学が非常に盛んでして、早くから農村医学の充実を図りながら、農業に従事している皆様がなるたけそういうふうにならない予防措置というのを全体としてやっているわけです。

 こういうことも非常に大切だと思いますし、農業をやるにも苦痛になるようではいけないと思いますので、この辺は、そういった面でも、より悪くなっちゃってから直すというのじゃなくて、やはり早目に予防措置をしていく、そして作業環境も改善しながらそういうふうにならない努力をしていくという二つの側面でこれからもぜひ進めていただければありがたいというふうに思っています。

 それから、高齢者のためにいろいろな施策が試みられているようですけれども、今心配なのは、先ほど野菜のこともありまして、生産をしたものがどうしても廃棄されてしまうという状況も出てきているわけですね。長野県でも、去年の調査で、キャベツ、タマネギ、セロリが二千三百十八トンも廃棄されたということなんですが、私たち消費者から考えますと、何てもったいないというふうに思うわけです。

 特に、生産地で廃棄されなくても済むような、例えば消費者の口に何とか入るような、そういう工夫も必要じゃないかというふうに思っているのです。例えば長野県の場合は朝市というのをやっていまして、生産した人が直接市場へ持っていって消費者の口に入るような、そういう取り組みもされているわけです。

 ですから、確かに、一度にたくさんできれば廃棄せざるを得ないというか、売る方が安くついちゃってとても市場まで持っていくということはできないにしても、そういう、直接現地で、農業生産地で消費者と結びつくような活動も必要じゃないかと思うのですが、そういうことについて、農林水産省として地域に指導をされているのでしょうか。それから、そういう予算措置がされているのか、お聞きしたいと思います。

小林政府参考人 今先生からお話がありました野菜の産地廃棄でございます。キャベツ、タマネギ等を対象にやっておりますが、これは、供給がふえまして市場で野菜の値段が非常に下がったという場合に、農家の経営の安定の観点から、要するに供給を減らして値段を戻すということで、そういう趣旨でやっております。これは基本的に、産地の出荷団体の判断で始まって、国の方からは一定の助成をするという仕組みでございます。

 これは、今申し上げましたように、あくまで市場から生産物なり野菜を隔離しまして、それで値段と経営の安定を図るという仕組みなものですから、その市場へまた野菜が出てくるとなりますと、本来の趣旨にちょっと反するということでございます。

 そういう意味で、せっかくのつくったいい野菜を、むだじゃないか、有効利用ができないか、まさにそういった考え方はわかるのですけれども、本来の価格安定を図るという目的からして、今申し上げましたような形でやっている、そういう状況でございます。

山口(わ)委員 せっかく大臣も、安心できる農産物を供給するという、所信表明にもありましたように、やはり消費者が望んでいるのは、日本の中で生産された、そして安全な食物を食べたい、これが消費者の強い要望ですので、できるだけそういうことを、情報公開か何かすればある程度消費者の耳に入るんじゃないかというふうに思っているのです。

 実は、私どものところでもタマネギがたくさんできまして、タマネギを現地販売といいますか、それを有線放送で流して皆さんに来ていただいて、そしてタマネギを掘って持っていってもらって、詰め放題詰めれば幾らというような感じで、消費者に協力してもらいながらそのタマネギを消費してもらうというようなこともやっているわけなんですけれども、そういう工夫も、お答えは結構ですので、これからぜひしていただきたいというふうに思っております。

 続きまして、減反政策がもたらす水環境の悪化ということでちょっとお伺いしたいと思うのですけれども、今四〇%になろうとしている減反の中で、やはり水を張らなくなってしまうわけですね。耕作放棄地になって、水を張らなくなってしまう田んぼが非常にふえてきまして、水の循環が実は大変心配されるわけなんです。

 今、現状を見ますと、私どもの方では、ちょうど松本、安曇野というところは地下に物すごい水のタンクがあるわけなんです。その水タンクが循環をしまして、そして、田んぼに水を揚げるとかワサビの栽培とかいろいろなことをしているわけなんですが、今、この水位がだんだん下がってきちゃったという問題で非常に悩んでいるわけです。

 考えてみますと、田んぼに水を張らなくなったというのが一つと、公共下水道が進んできまして、一たん地下水でくみ上げた水が使われて、全部今度は終末処理場で処理をされて川に流れていってしまうということで、直接そこの地域にはなかなか浸透しづらいというようなことが一つと、それから、今、広域排水事業が進んでいたり、河川なんかも全部三面張りになっていまして、ほとんど地下に浸透しないというようなことがありまして、その三つの要素で、将来、本当にこの水の循環は崩れてしまうんじゃないかという心配を非常にしているわけなんですね。

 その減反された田んぼに水を張るということも、本当にこれはせつない対策ですけれども、そのくらいでもせめてしないと、これは本当に将来、私たちの子孫に禍根を残すんじゃないかというふうに思っているんです。

 そういった意味で、地球環境を守るこの水対策についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、大臣にお伺いしたいと思います。

谷津国務大臣 地球環境問題に絡めて、水対策というお話でございました。

 先ほども申し上げたのでありますけれども、確かに、水というのは非常に貴重なものになってきているわけでありまして、日本の場合は比較的得やすいものですからまだその認識は低いのでありますけれども、この辺については、これから十分に対応を考えなきゃならない問題であるというふうに思っているんです。

 御指摘の水張り水田につきましては、湿田地帯におきましては、生産調整の円滑な推進と水田の国土保全といいましょうか、そういう機能を維持するために、平成七年度から水張り水田を導入しているところであります。

 水張り水田については、先生今おっしゃったように、湿田といいましょうか、そういうふうなところにあるわけでありますけれども、本来、麦とか大豆とか、そういうような本格的な生産が可能な地帯におきましては、生産調整の態様としては、そういう大豆をつくってください、あるいはまた麦をつくってくださいというようなことでいろいろ指導をしているところでありますけれども、今先生がおっしゃった水張り水田については、生産調整の手段の一つとして一定の役割をしているというふうに私も認識しているわけでございます。

 生産者団体とともに連携を図りながら、適切に取り組んでいく考えでございます。

山口(わ)委員 どうもありがとうございました。終わります。

堀込委員長 次に、金子恭之君。

金子(恭)委員 私は、21世紀クラブの金子でございます。

 新しい世紀を迎えたとはいえ、農林水産業にとって非常に厳しい状況が続いていることは御承知のことであります。

 その中で、先日大臣の方から所信をお伺いいたしました。その中で、二十一世紀における我が国農林水産業及び農山漁村が、希望にあふれ、活力に満ちたものとなるよう、各般の施策を積極的に展開してまいりますと力強く表明されました。私も非常に心強く思いましたし、リーダーシップを十分に発揮されて、農林水産行政の推進に向けて御努力されますことを心よりお願いする次第でございます。

 私は、まず一般セーフガードに関連して質問させていただきます。

 実は私、先月、地元の地域農業の後継者である若い方々を中心にした農家の方々十数名と一緒に韓国に行ってまいりました。そして、韓国の農業地帯であります釜山それから金海市の農家を三軒、これは、トマト、パプリカ、そしてイチゴ農家でございました。そして、金海市の農業研修センターにも行って現場を見させていただき、また意見交換をさせていただいたわけでございます。

 予想はしておりましたけれども、ハウス等の施設の充実、また生産技術の高さ、コストを低くするための努力、安全性の基準の設定、そしてびっくりしたのが、いろいろな日本の市場動向調査を非常にきめ細やかに行っていらっしゃるその情報収集力、改めて日本の農家にとって脅威であるとの認識を新たにしたわけでございます。

 我が国の農家にとって、減反政策の中、御苦労されて、いろいろな作物に取り組みをされ生産をされているわけでございますが、ところが、近年、外国からの輸入農産物の急増により価格が下落し、我が国の農家は大きな打撃を受けているわけであります。

 その中で、一般セーフガードの発動に向けて今調査が行われているわけであります。当初六品目あった中で、タマネギ、ピーマン、トマトが調査の開始に至らなかったのは残念でございますが、その中で、日本の九割の生産をやっております八代の畳表、そして生シイタケ、ネギというのが一般セーフガードの調査を開始されたというのは非常に農家にとって明るい材料でありますし、期待を持ってそれを見守っているというのが現状だろうというふうに思います。一日も早く調査を終了されて、セーフガードを発動していただきたいということを強く要望させていただくわけであります。

 そこで、私、週末に地域に帰りまして、農家の方々と意見交換する場が多くございます。その中で、新聞やマスコミ等で一般セーフガードのことについては御存じの方が大半でございますが、中には一般セーフガードのことを十分に認識されていない方もございます。

 一般セーフガードというのが輸入野菜等について困っている農家を救済するということについては認識はあるのでございますが、その中で、関税の引き上げとか輸入数量制限があるというのは御存じであります。

 その中で、発動する期間、原則四年以内で、延長しても最大八年以内ということになっているわけでありますが、中にはこの期間が発動されてずっと続くのではなかろうかというふうに思っていらっしゃる方もあるわけでございますし、また、輸出国から対抗措置があるということも御存じない方が中にはいらっしゃるのも事実であります。

 発動期間についても、期間内に、措置内容について、関税を下げたり数量をふやしたり、段階的に緩和をしなければいけない、そしてその中で構造改革を進めていかなければいけないということが、この一般セーフガードに課せられた問題であろうというふうに思います。

 その中で、このセーフガードについて農家の方々の期待が大きいだけに、セーフガードが終了しても依然として現状と変わらなければ、もう失望感も非常に大きくなり、農業をやる意欲もうせてくるのではないかなというふうに思っております。

 現在でもいろいろな農家の方々に施策を講じていただいているわけでありますが、その中で、価格が下落し、そしてセーフガードの調査要件の中に入ってきているネギ、生シイタケ、畳表についてでございますが、現在どういう国内対策を行っていらっしゃるのか。また、セーフガードが発動された場合にどういうことをやろうとされているのか。発動されてから考えるのではもちろん間に合わないわけでありますし、調査の内容次第であるということも承知しております。その中でお聞かせいただければと思います。

小林政府参考人 ネギと畳表についてまず御説明申し上げます。

 野菜につきましては、御承知のように、輸入急増ということがございまして、それを受けまして、昨年の十一月三十日でございます、緊急野菜対策を決定いたしました。この中で、品質の高い野菜の生産を推進したいということで、いろいろな対象事業の規模としまして三十億円の緊急支援対策、こういったことを進めております。また、一方では、コストを下げるための耐候性ハウスでありますとか、それから予冷、保冷施設、こういった機械施設の整備、また植物検疫体制の整備というようなこともあわせて進めているところでございます。

 いずれにしましても、この対策は、各般にわたるいろいろなことを組み合わせてやっていくという必要があると考えておりまして、今後ともいろいろな取り組みを強化していきたいということでございます。

 それから畳表でございますが、畳表につきましても品質のよい畳表、最近、新品種の、ひのみどりというのがありますけれども、これの普及をしていきたいということで、これは年々普及率も高まっておるようでございます。また、新しいいろいろな生活の体系といいますか、それに合わせた形での、置き畳でありますとかイグサの和紙でありますとか、そういった新しい用途の開発というようなことも進めております。

 さらには、特に小中学校での余裕教室に畳を導入しまして、子供たちにそういったものに親しんでもらうというようなことも進めておりますが、いずれにしましても、こういった畳表になれ親しむということと、それから新しい品種の普及なんかを通じまして、品質のよい畳表の生産へ向けた取り組み、こういうことに対しまして引き続き支援を強化していきたいというふうに考えておるところでございます。

中須政府参考人 生シイタケについてお答えを申し上げます。

 シイタケを含めたいわゆるキノコ類の振興ということにつきましては、従来から、作業の機械化を促進して生産コストの低減を図る、あるいは高品質、高収量な種菌の開発とか導入、さらには品質管理の向上、流通の合理化、こういった各種の生産者の皆さんの取り組みに対して支援を行う、こういうことに努めてまいりました。

 これからの対策としては、引き続きという部分もあるわけでございますが、特に、やはり低コストで安定的な供給体制の整備を図るという意味で、各種の共同利用施設等の整備を図る。同時に、新しい技術、低コストの技術開発ということを促進する必要があるだろう。それからもう一点は、産地表示の適正化など、消費者の視点に立った情報提供を十分行う、それと同時に、それを通じて需要の拡大を図っていく。こういう点に力点を置いて進めてまいりたい、こういうふうに思っております。

金子(恭)委員 あっという間に持ち時間が終わりそうなのでございますが、ぜひ、このセーフガードに対して万全の体制で臨んでいただきますようにお願いします。

 最後に、このセーフガード政府調査三品目以外の取り扱いについて、大臣からお答えをいただいて、私の質問を終わらせていただきます。

谷津国務大臣 輸入の増加によりまして、国内の農林水産業に影響を及ぼすおそれがあるというふうになりますと、監視していく必要があります。

 そういうことで、そういうのが認められた品目については、セーフガードの検討に必要な情報を常時収集していく体制を整備することが大事でありまして、現在、政府調査三品目のほかに、先ほども御答弁申し上げましたけれども、トマト、ピーマン、タマネギ、ニンニク、ナス、それから木材、合板、干しシイタケ、ウナギ、ワカメ、カツオにこれら三品目を加えて、十四品目を対象としているところであります。

 この体制下で、当該産品の輸入動向や価格の動向等を監視しているところでありますけれども、これに基づきまして、輸入の増加により国内産業への重大な損害を与えているということがわかりましたときには、政府調査を開始するに足る十分な証拠がそこで見つかりますれば、私どもは、財務省あるいは経済産業省と相談をいたしまして、セーフガードに係る政府調査を実施するということにいたしておるところであります。

堀込委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会




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