衆議院

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第4号 平成13年3月15日(木曜日)

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平成十三年三月十五日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩崎 忠夫君

      岡下 信子君    金田 英行君

      上川 陽子君    北村 誠吾君

      栗原 博久君    小島 敏男君

      後藤田正純君    七条  明君

      園田 博之君    高木  毅君

      中本 太衛君    西田  司君

      浜田 靖一君    平井 卓也君

      福井  照君    松野 博一君

      古賀 一成君    後藤 茂之君

      津川 祥吾君    筒井 信隆君

      永田 寿康君    楢崎 欣弥君

      平岡 秀夫君    三村 申吾君

      江田 康幸君    黄川田 徹君

      中林よし子君    松本 善明君

      菅野 哲雄君    山口わか子君

      金子 恭之君    藤波 孝生君

    …………………………………

   農林水産大臣       谷津 義男君

   農林水産副大臣      松岡 利勝君

   文部科学大臣政務官    池坊 保子君

   農林水産大臣政務官    金田 英行君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   牧野 治郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育

   局長)          矢野 重典君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長

   )            澤田陽太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発

   局長)          酒井 英幸君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  岩倉 博文君     中本 太衛君

  上川 陽子君     平井 卓也君

  福井  照君     松野 博一君

  佐藤謙一郎君     平岡 秀夫君

  高橋 嘉信君     黄川田 徹君

同日

 辞任         補欠選任

  中本 太衛君     岩倉 博文君

  平井 卓也君     上川 陽子君

  松野 博一君     岡下 信子君

  平岡 秀夫君     佐藤謙一郎君

  黄川田 徹君     高橋 嘉信君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 信子君     福井  照君

    ―――――――――――――

三月九日

 激増する輸入野菜など農畜産物のセーフガードを発動させ、日本農業を守ることに関する請願(中林よし子君紹介)(第六二三号)

 国民の食料と地域農業を守るための緊急対策に関する請願(中林よし子君紹介)(第六二四号)

 米の投げ売り強要をやめ、食料自給率引き上げに関する請願(中林よし子君紹介)(第六二五号)

 食料自給率引き上げと食料の安全に関する請願(中林よし子君紹介)(第六二六号)

 自主流通米の値幅制限の復活に関する請願(中林よし子君紹介)(第六二七号)

同月十五日

 農業者年金改革案の中止に関する請願(中林よし子君紹介)(第六九二号)

 同(松本善明君紹介)(第六九三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林漁業金融公庫法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第三二号)

 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案起草の件




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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農林漁業金融公庫法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長小林芳雄君、農林水産省経営局長須賀田菊仁君、財務省理財局次長牧野治郎君、文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、厚生労働省職業安定局長澤田陽太郎君及び厚生労働省職業能力開発局長酒井英幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小平忠正君。

小平委員 おはようございます。民主党の小平でございます。

 きょうは、昨年の予算編成作業において、政府も総合融資の新規創設等に取り組んでまいりました。それらに関して、今回は公庫法の改正、これに関して私の方から質問をいたしますが、我が党からももう一人、平岡議員も質問しますので、私はまず前段、入り口の方を質問いたします。

 まず、新たな資金制度ができましたが、私は以前から農家負債対策の確立を強く求めてまいりました。特に、平成十一年、米価等の委員会、この審議の際には、これらの制度資金について、私は当時、玉沢大臣でありましたが、特にこの制度は農家にとって非常にややこしく、入り組んでおり、複雑である、また、借りづらい、使いづらい、そういう状況、批判が強くありましたので、もっと簡便化をして借りやすい制度に早急に体制を整えてほしい、そのことを強く要請をいたしまして、当時、玉沢大臣は私の要請に答えて、「融資の実態等を踏まえて、運用面も含めて検討してまいりたい」、このように答弁をいただいておりました。

 こんな経緯から、冒頭申し上げましたように、今回の公庫法改正は、私どもからいいますと十分とは言えませんが、前進していると一応評価はしたい、こう受けとめております。

 しかしながら、一方では、このような負債償還の負担軽減のための制度をつくらなければならなかった、こういうことについては、政府のこれまでの農業政策、農政に失敗があった、私はこのように思います。

 こんなことを踏まえて、私は、率直に今までの農政、反省をし、これからの二十一世紀農業に向かって前進しなければならぬ、こう思いますが、まず、これらについて大臣の基本的見解をお伺いしておきたいと思います。

谷津国務大臣 小平先生、日ごろ農政に対しましては大変な御示唆、御指導をいただいておりまして、心から感謝をしているところでございます。

 ただいまの御質問のありました件につきましてでありますが、農産物の価格政策につきましては、食料・農業・農村基本法に基づきまして、消費者の需要に即した農業生産を促進する観点から、農産物の価格が需給事情や品質評価を適切に反映して形成されるように、主要品目ごとに見直しを進めてきております。

 あわせまして、価格政策の見直しに伴いまして、農産物の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために、価格の下落の相当部分を補てんする経営安定対策等を講じていることは、先生も御案内のとおりであります。

 しかしながら、こうした中におきまして、農産物の需給が全般的に緩和基調にあること等から、これまでの規模拡大を進めてきた方の中には、経営に対する意欲と能力を持ちながら負債の償還の問題を抱えている者が存在するために、担い手の再生、育成を図る観点から、今回、負債対策を含む総合的な融資対策を実施することとしたところでもございます。

 今後とも、これらの施策を通しまして、需要に応じた農業生産が促進されるとともに、意欲ある農業者の経営の安定と発展を図られるように努めてまいりたいと考えておるところであります。

 なお、育成すべき農業経営に対しまして、経営を全体としてとらえて、その安定を図る観点から、価格の変動に伴う農業収入または所得の変動を緩和する仕組み等について、品目別の価格政策の見直しや経営安定策の実施の状況、農業災害補償制度との関係等を勘案しながら検討を進めていきたいというふうに思っているところでありまして、前にも、玉沢大臣のときにたまたま私も総括政務次官をしておりまして、先生のいろいろな御指摘の点につきましても、いろいろとその対策を練ってきたところでもございます。

小平委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 時間がございませんので、御連絡した質問順序を少し変えましたので、よろしくお願いしたいと思います。新政策から活性化対策、経営安定対策等々の経緯がありましたけれども、それは割愛いたしまして、早速今回の公庫法の改正について質問をいたします。

 まず、経営体育成強化資金、この新設でございますが、この資金は、いわゆる前向き投資資金と負債の償還軽減資金を一体的に融通すると。今までの各種の資金制度では、このように一体的に融通するというものはなく、この観点からは、今回の資金は農家の実態と要望を踏まえた資金である、そのように検討がされた、このように私は一応評価はしたいと思います。

 しかしながら、問題は、制度はつくったがなかなか融資が実行に移されない。過去にも多々ございましたが、またこのことが続くのでは意味がないと思います。要は、どのように運用するか、これが大きな問題であると思います。

 私は、負債の多寡などの形式的な基準のみによって融資を実行するのではなく、農業者の計画を具体的に見て、農業者の経営意欲と可能性を十分にしんしゃくをして、使いやすく、かつ経営の再建が図られるよう意欲ある担い手をいかに確保していくか、そういう観点から運用をすべきである、こう考えております。また、そのためには経営改善支援センターによる経営診断や経営相談、経営指導等が農家の再建に重要な役割を果たすもの、これは当然のことでございます。

 さらに、今の実効金利一・七%でございますが、他の制度との横並び、こういうことでお決めになったんでしょうが、農家の実情、すなわち農産物価格が低迷し、農家収入も厳しく低下をしている、こういう現状を考えますと、私は、やはり今の一・七%はそう歓迎される低金利ではないと。いわゆる高過ぎる、こういう指摘も既に出されております。

 そこで、今回新設される経営体育成強化資金の運用方針、これらについてお聞かせをいただきたいのと、また、あわせまして経営改善支援センターの構成、具体的役割、使命、特に私は、この中に農業の現場の実態を掌握している農業生産者、いわゆる農業専門家といいますか、現場をしっかりと掌握している、そういう構成にきちっとなっているか、こんなことも含めてお答えをいただきたいと思います。さらに、今申し上げました金利水準、税法上の問題はございますけれども、これについての検討もいただきたい、こんなことも含めてお考えをお伺いしたいと思います。大臣の基本的なことで結構です。局長、後で質問しますから。

谷津国務大臣 前々からこの問題につきましては先生からもいろいろと御指摘をいただいているところでありますけれども、先ほども先生の方からもお話がございました、要するに、わかりやすく、借りやすく、使いやすいというふうなものを基本に置かなければならぬというふうに思うわけでありまして、この辺につきましては種々検討させてもらいまして、その辺のところをしっかりと踏まえた今度の制度になっているところであります。

 特に大事なことは、貸し付けの基準を変えまして、設備費だとかそういうふうなものも含めたわけでありまして、そういった面では、これからの意欲を持ってやる方たちに対しましては万全が期せるような、そういう体制をつくらせていただいたところであります。

須賀田政府参考人 金利水準の御指摘でございます。一・七%という金利水準が、現下の情勢のもとではそう有利性がないのではないかというお話でございます。

 確かに現在、超低利の金利水準でございまして、際立った有利性という観点からは甚だ有利な水準にはなっていないということもまた事実でございますけれども、まず、農林公庫資金の中で最も政策性が強い、負債整理も行うことができるスーパーLという資金がございます。これの金利水準が現在一・七%でございます。

 それから、農林公庫の調達コストでございます財投金利を現下の情勢のもとで下回る融資というのが甚だ困難な状況になっているということがございます。

 それから、民間の、例えば、住宅ローンの長期の、十年の固定金利貸し出しの金利が現在三・三五%程度ということでございまして、現在のこういう金利の状況のもとでは財投金利水準に連動をするということで、一・七%というものを設定したものでございます。政府系金融機関の中でも最も低い水準であるということを御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。

 絶対水準というもので見た場合に、償還期限が二十年とか二十五年とか、最大の期限をとっておるわけでございまして、そういうことで考えれば、優遇されたものではないかというふうに思われます。

 また、農林公庫の農業者に対します貸付残高は、三%を超えるものが全体の六割を占めておりまして、この金利水準でも、借りかえによりまして償還期限が事実上かなり長くなるということを勘案すれば、償還負担というものの軽減が相当されるのではないかというふうに考えているところでございます。

小平委員 これについては、我が党もこれからさらに政府にも申していきたいと思います。ということは、今まさしく農業経営緊急事態であります。この機会にしっかりと整理をすることが、いわゆる後ろ向きの整理をきちんとすることが将来に向かって新たな展望が開けていける、このように私どもはとらえておりますので、これらについてはまた改めてお伺いもしていきたいと思っております。

 次に、もう一点の農業経営維持安定資金、これについてでありますが、新しくまたこれも創設されますが、これも、自作農だけではなくて、借地型や施設型の経営を含め営農負債の借りかえを行うための資金であり、自作農維持資金を拡充する、このように言われております。

 農業の実態を踏まえたものとして歓迎をするところでありますが、現場から見た場合、この資金を借り受けるということが経営が困難になった証左、このようにとらえられ、どうも借りにくい、そういう声も既に聞こえております。これは、系統資金であります農業経営負担軽減支援資金、これについても同様であります。これについてもまたこの後質問いたしますが、経営を効率化するためには、これらの資金への借りかえを大いに促進するべきだ、こう考えます。

 この点についてのお考えと、さらには、借地型等への融資の拡大、これについてでありますが、これまでは自作農ということで農地が担保になって融資が行われていたのでありますが、借地や施設では大した担保にならない、こういうことが言われます。したがって、この面から、当資金が活用されるのかどうか、これが大いに懸念されます。これについてどうお考えになるのか、お考えをお伺いしたいと思います。

須賀田政府参考人 まず、農業経営維持安定資金の問題でございます。前々から先生から、農村の現場で心理的な負担ということでなかなか借りにくいという御指摘を受けておりました。

 先生も御承知のように、この問題は、経営に対する意欲と能力がありながら負債の償還の問題を抱えているという者が多く存在するということに対処するために創設したものでございます。要は、意欲と能力のある農業者が経営の現状や課題等を十分認識をして、融資の返還可能性を含めまして的確な見通しを立てて、経営改善に主体的に取り組んでいただけるという場合には、この資金が円滑に融通されるようにしたいというふうに考えております。特に、農村の現場におきまして負債整理資金を借りることについて心理的な負担を感じることのないよう、十分な留意をしていきたいというふうに考えております。

 また、借地型経営、貸付対象を拡大したわけでございます。こういう借地型の経営をされている方の中には担保力が十分でない方も含まれておりますが、こういう方々の資金ニーズにも適切に対応していく必要があるというふうに考えておりまして、特に担保、保証人の徴求につきましては、経営実績、経営能力というものを勘案して弾力的な運用に努めていきたいというふうに考えているところでございます。

小平委員 今回、新たな予算措置もして、こういう融資制度をつくりました。問題は、これができましたが、この運用細目は政府の専権事項であります。ですから、そこのところが、今回、またひねくり回して、結果的には、非常に手続が煩雑、使いづらい、借りづらい、または指導もしづらい、こういうことにならないように、要するに、手続も簡便で、そして即決的に借りやすい、即座に対応できる、そういうことになるようにぜひ努めていただきたい、こう思います。

 あわせて、今の点についてもう一点。今私ちょっと触れましたいわゆる農業経営負担軽減支援資金、これは、私がかねてから指摘をしておりましたM資金、農家負担軽減支援特別資金、系統資金ですね、これと単に、農家と農業、たった一字が違っただけの資金で、中身は違うと言われますけれども、なぜこういうものが、これはたしか融資枠が四百億ですか、大きな額ですね、こういうものは果たして本当にM資金の繰り返しにならないのか、こんなふうに私は非常に危惧をいたしております。これは、従来のように、経営相談から融資また指導まで農協が中心になって行う、こういうことですね。ですから、これらについては、私も、今回は、また問題が再燃する、このように指摘をしておきたいと思います。

 したがいまして、これらについて、さらに基金協会とか経営改善センター、これらとの関係もありますが、本制度の運用に当たっては、きちんと、指導も大事ですが、本当にこの制度が有効に機能するのか、これについて、重ねてではありますけれども、御答弁いただきたいと思います。できたら大臣、いかがですか。

谷津国務大臣 先生御指摘のとおり、農協等のお話が今出たわけですが、これは農業者の協同組織といたしまして、地域農業の振興に積極的な役割を果たすのが農協の大きな役目であるというふうに私は期待しているところでありますが、本対策につきましても、敏速に的確な融資を行うことが非常に大事だ、先生の御指摘のとおりであります。

 そういうことから、融資後の経営改善の実行等につきましても、営農指導を適切にしていくことが重要であると考えております。また一方、農業信用基金協会に対しましても、本対策につきましては、趣旨を十分に徹底させまして、そして敏速、的確な資金の融通が行われるように指導していきたいというふうに考えております。

小平委員 次に、今回の法改正、創設にあわせて、政府の財政投融資制度、この趣旨に沿った改正を行うとなっておりますね。これは、つまり郵便貯金や年金積立金は資金を自主運用することになっており、農林公庫もみずから債券を発行し資金調達を行うことになっております。

 しかし、農林公庫の目的は、農林漁業者に対して必要な長期、低利の資金であって、一般の民間金融機関からの融通が困難なものを融通する、ここに大きな目的があると思います。もちろん、農林公庫の業務についての効率化が促進されることは必至でありますし、必要なことでありますが、しかし、公庫の役割として一番重要なのは、農林水産業に必要な資金が円滑に融通される、このことでありまして、単に高い市場評価を得るためだけに融資判断を厳しくして、その使命を忘れてはならない、こう思います。

 このことについて、大臣の指導方針、これをお伺いしておきたいと思います。

谷津国務大臣 先生御指摘のとおり、農林公庫の目的は、農林漁業者に対する長期、低利資金の融通にある、そのとおりでございます。

 そういうことから、農林公庫は、農林漁業の特性に対応いたしまして、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期そして低利の資金を融通することを目的としているところでございまして、今回、農林公庫の資金調達方法を拡大いたしまして、そして財投機関債を発行できるようにすることとしているところであります。それによって、農林漁業者に対する長期、低利資金の融通に支障を生ずることのないように十分に留意していく必要があると考えているところであります。

 このために、初年度である十三年度の債券発行額は、財投機関債と政府保証債を合わせて三百億円、それから農林公庫の資金調達の約一割にとどめておるところでありまして、十三年度は、調達コストが上昇しないように、比較的短期の、五年程度の償還期限の債券を発行することとしたいと思っているところであります。

 十四年度以降の財投機関債の発行につきましては、十三年度の発行の状況等を踏まえまして検討していくこととしておるところでありますけれども、農林水産省といたしましては、公庫に対しまして、今後とも、農林漁業者に対する長期、低利の資金の融通に支障を生ずることのないように十分に指導していきたいと考えております。

小平委員 次に、今回の公庫法とは直接は違いますが、今政府で取り組んでおります農業経営所得安定対策、これについてお伺いします。

 これは松岡副大臣も鋭意取り組んでおられますが、これについて、政府は、農産物の価格の変動に伴う農業収入または所得の変動、これを緩和する仕組みについて検討する、こういう大方針を立てている。これにのっとって、本年二月ですか、農業経営政策に関する研究会を発足させました。そして、経営を単位とした農業経営所得安定対策、これを検討されて、この夏場までには政策大綱を策定したい、こう伺っております。

 こういう中で、我が国農業を担う意欲ある担い手、これを大いに育成、確保する、これにあわせまして、消費者を含めた国民一般の十分な理解の上に立った政策の確立が必要である、私は今こう考えておりますが、これらについての作業の進捗状況、そして主な問題点、これらをぜひお答えいただきたいと思います。

松岡副大臣 お答えいたします。

 今小平先生御指摘の点でございますけれども、まず所得対策、一言で所得対策と言っておりますが、これの背景といいますか、前提といいますか、そこから申し上げます。

 とにかく、いわゆる新農業基本法では、生産というものを、まず自給率をもって、それを根拠に作物ごとに明示をする、それによって、何をどれぐらいつくっていいかといったことをはっきりさせる。そこで、生産は大きなそういう目安が一つできるわけでありますが、では価格はどうなるか。価格は、これは消費者との関係もございますから、市場にゆだねて、市場原理の導入と言っておりますが、これによって、価格はそこに任せる。そうなりますと、では所得はどうなるのか、こういうことでありまして、所得は政策で守る、こういうような生産と価格と所得の関係を位置づけているわけであります。

 その場合、では所得は政策で守る、世界の中でも、直接所得政策に大きくかじを切ってきたし、またそっちを目指しているというのが現状でございます。アメリカ型の所得政策、またヨーロッパ型の所得政策、いろいろあるわけでありますが、そういう中で、私は、我が国といたしましても、日本型の所得政策をまずしっかり打ち立てる必要がある、こういったような観点から、政府・与党一体の中で取り組んでいるわけであります。

 そういう状況の中で、この夏ごろまでにひとつ政府としての政策大綱をつくり上げたい、今こういう予定を立てて作業を進めておるわけであります。政府といたしましては、先生も今御指摘ございましたように、農業経営政策に関する研究会を二月に立ち上げまして、二月二十二日に第一回、またこの三月二十八日には第二回、月一回程度やりながら、夏ごろまでにひとつ大綱を整理していきたいな、こういうスケジュールを一応組んでおるところでございます。

 そこで、考え方なりイメージといったような点でございますが、いずれにいたしましても、私ども、農業というものは、食料生産はもとよりでありますが、水を守り、また緑をはぐくみ、そして環境全体をつくり上げるといいますか、維持していくといいますか、こういう国民生活にとって基本的な土台となるいろいろな役割、使命を担っておるわけであります。

 したがって、それを発展させていくには担い手が大事でありまして、そこで担い手の所得というものが大事になるわけであります。そうなると、当然のことながら、他産業に比して遜色のない所得がないことにはこの担い手というのはなかなか確保できない、そういうことで、他産業並みの所得水準をひとつ目指したい、こういうふうにまず基本的に思っております。

 そこで、他産業並みということになりますと、年金と実際の生産物にかかわる所得、生涯所得ということになるわけでありますが、この生産にかかわる所得につきましては、私ども、これからまず、経営体としての対象をどうするか、これが一つ問題になってくると思います。いろいろな整理がございますが、問題になってくるということで、どこまでそれを対象の範囲にするか、こういったことも一つ整理していかなければいけない問題だと思っております。

 いずれにいたしましても、そういったことで、今後作業を進めながら、まさに担い手が安心して、それだけの所得がきちんと確保されるのなら農業をしっかり頑張っていこう、こういうような仕組みをひとつつくり上げていきたい、こう思っておりますので、またよろしく御指導方もお願いしたいと思います。

小平委員 歴代の大臣ございましたが、私は、今回は谷津大臣、松岡副大臣また北海道の金田政務官、久々に農業に精通した大臣、副大臣だと思います。今の意欲を本当に実現できるように、思いは野党、与党、違いますけれども、通じるものはあります。ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 次に、我が党同僚議員にまた質問が行くのですが、ちょっと一点だけ、質問通告しておりませんけれども、この際ぜひお伺いしておきたいのであります。

 今、欧州で口蹄疫が非常に蔓延いたしております。これが全欧州にも広がるし、あるいは南アメリカ、豪州等にも、そういうことも今ささやかれております。私も、かつて肉牛経営をやっておりましたこともありまして、口蹄疫の怖さというものは承知をしておる一人でありますけれども、我が国のこれからの状況、また政府の取り組み、これについて、簡潔で結構ですから、ぜひお伺いしておきたいと思います。質問通告ありませんでしたけれども、よろしいですか。

谷津国務大臣 欧州における口蹄疫の件でありますが、実は英国そしてフランスにも発生したということで、これにつきまして、我が国としても対応をしっかりやっていかなきゃならぬというふうに考えておるのです。

 これは先生はもう御案内ですから省きますけれども、我が国の対応につきましては、これまで、口蹄疫が確認された場合は、あるいはそれを疑う例が認められたというふうな場合は、即座に輸入を禁止しておりまして、その侵入を防止しているところでもございます。

 また、本病は、狂牛病と違いまして、感染すれば明らかな症状が出ること、それからEU内でサーベイランス体制が整備されていること、またEU諸国から日本までの距離が非常に長いということ等、船積み等の後に何らかの懸念が生じても一定の対応ができる、そういう状況の時間的な確保がなされているということもございまして、今後とも情報収集を行いまして、個々の国々について発生の状況を見きわめながら、敏速な対応に努めていきたいというふうに考えているところであります。私も、この情報を聞きまして、しっかり日本国内で体制をとるようにということを指示したところでもございます。

小平委員 終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。よろしくお願いします。

 今回の農林漁業金融公庫の新しい融資制度、これは、意欲ある担い手支援の一環として農業経営資源活用総合融資を創設し、その中で経営体育成強化資金あるいは農業経営維持安定資金といったものをつくるわけでございますけれども、これらの融資制度というのは、いわば借金返済のための融資制度というような側面を非常に強く持っているということであろうと思います。

 そうした背景をちょっと考えてみますと、農家の方々が営農資金の借り入れによってかなり大きな負担を負ってしまったということもございますし、それから土地改良負担金の支払いで大きな負担を負っているというような事情があるということであろうと思います。

 この土地改良負担金の問題については、これまでも農水省で土地改良負担金総合償還対策事業というようなことを実施して、農家の方々の負担を少しでも軽くしていこうということで努力されておられるというふうに私も承知しておるのですけれども、昨今いろいろな報道で、栃木県の土地改良区、これは全部で三百六十三地区、改良区があるようでございますけれども、この多数の土地改良区から、自民党の支部とかあるいは自民党系の政治団体である栃木県土地改良政治連盟に、党費や会費が支払われているといったような報道がなされております。

 また、その中身を見ますと、自民党の支部への党費の支払いというのは年間一千万円強にも上る、あるいは、栃木県土地改良政治連盟の会費の支払いというのは年四百万円にも上っているというようなことになっているようであります。

 こうした、一方で農家の方々が非常に大きな負担金の支払いで苦しんでいるという状況の中で、土地改良区はこんなことになっているということについては非常に問題があろうと思うのですけれども、農水省としてはこうした件についてどのように実態を把握しておられるか、これをまずお聞かせ願いたいと思います。

谷津国務大臣 農林水産省といたしましては、報道を受けて直ちに栃木県に事実を確認したところであります。

 これは、南摩土地改良区それから塩山土地改良区において、理事長等自民党員の平成十二年度の党費六名分、合計二万四千円を土地改良区の会計から支出をしている事実、支出をしたというのがわかったわけでありますけれども、それに対しましては、これは既に土地改良区に全額返還されているという事実についても報告を受けているところであります。

 なお、栃木県におきましては、当該土地改良区の過去の会計について調査を行うとともに、県内の全土地改良区についても調査を実施しているというふうに聞いているところであります。

 農林水産省といたしましては、栃木県の調査の終了を待ちまして、早急にこの点について適切な対応をしていきたいというふうに考えております。

平岡委員 少し、中身を聞くというよりは制度的な問題も聞いてみたいと思うのです。

 今、全額返還されているというふうに御発言があったようですけれども、これは、だれからだれに対してどういうふうに返還されているということを意味しておられるのでしょうか。

谷津国務大臣 これは、土地改良区から出された六名分、この方たちが自分たちで、四千円ですか、集めて土地改良区に戻したということを聞いております。

平岡委員 そうすると、土地改良区については、これは党費の立てかえであったというような位置づけになっているのだろうと思うのです、今の処理は。

 土地改良区がこうした党費の立てかえということをすること自体、これについては法令上どのような問題があるのでしょうか。

谷津国務大臣 先生御案内のように、土地改良区は土地改良法に基づいて設立されているものでありまして、一定の地域の農業者が強制加入となる団体であります。また、自由な脱退ができない団体でもあるわけでございます。さらに、その行う事業に要する経費については、組合員に対する強制徴収権が付与されているということでもございます。

 このように、土地改良区は性格的に極めて公共あるいは公益性の強いことから、その行う事業については、土地改良法上、土地改良事業及びこれに附帯する事業に限定されているところであります。

 このような法人の性格から、土地改良区自体が党費を支出する等の政治活動を行うことは認められておりません。また、土地改良区の役員がそのようなことを行うことは、土地改良法第十九条の二の第一項の規定、これは役員の義務規定ですね、これに違反しているものと考えております。

平岡委員 先ほどの大臣の御答弁では、鹿沼市の南摩と塩山の土地改良区についてそういう事実が県の方から報告があったということでありましたけれども、報道によりますと、もっとたくさんの土地改良区が同じような状況になっている。あるいは、今御説明ありませんでしたけれども、自民党の党支部に対しての党費の支払いだけではなくて、県土地改良政治連盟に対してやはり土地改良区の方から年間四百万円にも上る会費が支払われているというような状況があるということであります。

 この土地改良区というのは、税法上見ますと、農林漁業金融公庫と同等の公共法人という位置づけになっております。それだけ高い公共法人であるわけであって、政治的な中立性あるいは政治活動の公正さ、政治活動に対する姿勢というようなものは、厳に公正なものでなければならないというふうに思っているわけであります。

 それで、今御答弁の中に、栃木県では県内の改良区について似たような事例がないかどうかということの調査をするというようなお話でありましたけれども、この土地改良区について見ますと、かなり全国的にも、先ほど言いました土地改良政治連盟についても全国的な組織もございます。そういう意味で、それぞれの、他の県においても似たような事例があるというおそれもあろうと思うのですけれども、そういう観点から全国的に実態調査をすべきであるというふうに思いますけれども、農水省はどのようにお考えでしょうか。

谷津国務大臣 個々の土地改良区の指導は、御案内かと思いますが都道府県の自治事務でありますので、都道府県に協力を求めながら、報道されたような事例の有無につきまして調査を行うように事務方に強く指示をしたところであります。

平岡委員 栃木県にとどまらず、全国的な実態調査をぜひ行っていただきたいというふうに思います。

 それから、先ほど、土地改良区から支出された党費については役員の方から土地改良区の方に戻したというような御発言がありました。

 新聞報道で、写真で写っている領収書を見ますと、土地改良区あてに領収書が切られているというような形になっておりまして、本当の実態がどうだったのかということは、立てかえではなくて本当に何か土地改良区が負担しているというようにも思えるわけであります。

 先ほど申し上げましたように、土地改良区の公共的性格からすると、この土地改良区から出されているものについては自民党の党支部から返還を求めるというように指導すべきであると思いますけれども、そうした指導はしていただけますでしょうか。

谷津国務大臣 土地改良区からどのような形で支出されたかというのは私の方でもよくわかっていませんが、今先生のおっしゃるように、土地改良区に対して領収書が切られていたということにつきましては、土地改良区の中からそういう金を出すことは違法でありますから、まずそれは直さなければなりません。何人分か、出された名前もわかっているはずでありますから、まずそのお金につきましては土地改良区に返納をすることが大事だろうというふうに思います。

 そして、その後の処理につきましては、これはしっかりと修正をしておく必要があるのではなかろうかなというふうに思います。

平岡委員 今、大臣非常にいいことを言われました。

 先ほど、立てかえであったから理事長が、例えば役員が土地改良区に戻せばいいというものではないというふうに思います。やはり、本来土地改良区は立てかえをすべき立場にもない。そういう意味では、やはり自民党の支部からちゃんと土地改良区に戻して、そして本来、個人として自民党の党員になってその党費を払うという人が、自分が直接自民党の支部に対して支払いをする、こういうことでなければならないというように私は思います。

 そういう意味で、土地改良区に対しては、県を通じてしっかりとした指導をしていただきたいというふうに思います。これをまずお願い申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 先ほど、同僚の小平議員の方から、今回の融資制度をつくるに至った農政の責任ということについて質問がありまして、大臣の方からお答えになりましたので、私は、その部分はちょっとおきまして、今度は別に、その制度の枠の中で、これまでの融資制度というものがどのように行われてきたのかということについての若干の疑問点を提示させていただきたいというふうに思っておるわけであります。

 営農資金についていえば、農家が農業投資を行う場合に、いろいろな専門家の方々が農家の方々に対して経営相談などをされるということだろうと思いますけれども、そのうち、農協も今回の新しい制度の中でも経営相談などにあずかる立場として登場しておるわけです。

 農協というところは、一つは確かに農家に対して適切な経営指導をするという立場にありますけれども、もう一つは、農協という金融機関がそれぞれの農業者に対して融資をしていく、つまり営業活動を農協が行っているわけです。農協の一つの方針としては、やはり預貸率が非常に低いですから、できるだけ多くの融資をしていきたいというようなこともあろうかと思います。

 そういう意味でいきますと、お互いに利益の相反する人たちが一つの組織の中にいて、農家に対して対応しているというようなことで、こうしたことが今起こっている農家の借入金が増大しているということにもつながっているのではないかというふうに思うわけであります。

 そういう点からいきますと、この経営相談とそれから融資における場合の相談というものについて、きちっと分離をして行っていく必要があると思うのですけれども、まず最初に、農協のこれまでの業務運営のあり方についてどのようにお考えなのか、それから私が今提案申し上げた分離して行うべきではないかということについて、御答弁をお願いします。

松岡副大臣 結論的に申しますならば、平岡先生の御指摘のとおりでありまして、まさに経営指導、営農指導といったことと、また金融面の営業といったようなことにつきましては、全く分離して行われるべきである、それは全くそのとおりでありますし、私どもも、間違ってもそういったそしりを受けることがないような指導をしっかりしていかなきゃならぬし、また今日までもそれを徹底してきたところでありますが、さらにその徹底強化を図っていく、こういうような思いでございます。

 そして、では、今日までにそういった両者の関係においておかしな点はなかったのかということでございますけれども、私どもそういったようなことはないように努力をしてきたつもりでありますし、また現場におきましても、そういったようなことはあってはならないことであった、このように思っております。

 ただ、先生の御指摘のような点がもし現実に具体的な例としてあるとするならば、それはそういったものをしっかりとらえて対処していかなければならぬ、このように思っておるところでございます。

 いずれにいたしましても、これは営農、経営というふうなものがあって、それに対して必要な融資を最小限効率的な範囲で受けていく、これが基本でありますので、その基本にのっとって、これからもなお一層適切な指導もしてまいりたい、このように考えております。

平岡委員 今副大臣の方から、問題があるようなケースが具体的にあるのならば適切に対処するというようなお話がありました。実態をよく把握していただいて、そうした問題がある場合には適切な指導をしていただきたいということをまずお願いしておきたいと思います。

 次に、今回の融資制度につきまして、経営体育成強化資金あるいは農業経営維持安定資金というのは、目的はそれぞれありますけれども、その目的あるいは目的の一つに、借金返済のために借金をするという形の仕組みになっているわけであります。

 通常、借金を返すために借金をするということになれば、世の中借金地獄ということになってしまうわけでございまして、こうした心配がこの制度においてないのかということをどのように認識しておられるか、御答弁いただきたいと思います。

松岡副大臣 実は、ウルグアイ・ラウンド対策のときも、私ども、農家の借金というものがどういう実態にあるかという整理から始まったわけでございますけれども、農家の農業的な借金というのが、大ざっぱに言って約三兆円程度ございます。その中で、専業農家なり一種兼業農家なり農業を主とする人たちの借金というものは約一兆二千億程度、その時点でありますけれども、大体そういうものであった。

 したがって、あのとき、外交交渉によって自由化ということを結果的に受け入れて、そういう自由化という方向に行くという中で農家が打撃を受ける、それをやはり国家として救わなきゃならぬというのがウルグアイ・ラウンド対策だったわけでありますが、その中で今の一兆二千億の農業を主とする人たちの借金、これのまさに半分程度は負債を軽くしよう、こういうことで、金利の安い借りかえ資金なり、政策的な、前向きなといいますか発展的なといいますか、それも含めたスーパーLとか、そういったもろもろを含めまして、約六千億の言ってみれば借金を軽くし、前向きに頑張っていける、こういう制度を一つつくったわけであります。

 ただ、実態といたしましては、なかなかその償還につきまして十分ではなかった点があったのもこれは事実でございますが、そういった反省もさらに含めまして、私ども今日、今回提案をいたしておりますようなこういう新しい資金をまた創設するということでございまして、これがまたさらに借金地獄に陥っていくような、そんなことになりますとこれは本末転倒であります。

 したがいまして、決してそういったことにならないような、これがまさに、負債が軽くなって、そしてまた農業に向けて頑張っていけるようなそういう方向に持っていきたい、こういうようなねらいでつくったことでございますので、今後は、今日までの反省点も十分踏まえながらなお一層適切に対処していきたい、このように思っております。

平岡委員 そこで、これらの両資金について言うと、融資を受ける、そして、これをもってして今まで借り入れていた高利の営農資金の返済を行うということで、いわば期限前償還をすることになるわけであります。通常、期限前償還をする場合には、融資機関の方は手数料を取ったり、あるいは何らかのペナルティー的なものを取るということになるわけでありますけれども、今回のこの両資金の創設に伴って、既存の今まで借りているものについて期限前償還をするような場合、どのような手数料とかペナルティーとかがあるんでしょうか。

須賀田政府参考人 従来から、農林公庫資金につきましては、相手方が農林漁業者である場合には、繰り上げ償還に伴います先生言われたような違約金の徴収は行っておりません。また、系統原資の制度資金でございます農業近代化資金でございますとか農協系統プロパー資金についても、農業者が繰り上げ償還を行います場合には違約金を取っていないというふうに承知をしております。

 したがいまして、今回の新資金の創設によりましても、農家が営農負債の借りかえを行う場合には、繰り上げ償還に伴います違約金を支払うというようなことはするつもりはございません。

平岡委員 今農家の方々がこういう借金の状況に置かれて苦しんでいるという状況なので、できるだけ借りかえの負担というものが生じないように、今言われたような手数料の件もありますけれども、手続面でもぜひスムーズな、返済といいますか融資といいますかが行われるようにお願いしたいと思います。

 ただ、今お聞きしますと、非常に魅力的な融資制度になっているのかもしれません。そうなりますと、今、来年度予算で予定している融資枠、経営体育成強化資金については三百億円、あるいは農業経営維持安定資金については二百五十億円という枠設定になっているわけでありますけれども、これが足りなくなってしまうんじゃないかというおそれもありますけれども、これに対してはどのようにお考えになっておられますでしょうか。また、不足するような場合の対応はきちっとできるんでしょうか。

須賀田政府参考人 私ども、融資枠を設定いたします場合には、およその資金需要というものを推定いたしまして限度枠を設定しておりますので、この枠内で対応可能だというふうに考えておりますけれども、万が一不足するというような場合には、公庫資金の中でいろいろなやりくりをして対応するというふうにしたいと思っております。違う資金の枠、余り使われないような枠をこちらに移動するとか、そういうような工夫を凝らしながら対応していきたいというふうに考えているところでございます。

平岡委員 せっかくつくろうとしている制度でありますので、資金不足、融資枠不足というようなことが生じないようにやっていく必要があるんじゃないかというふうにも思いますので、その辺はよろしくお願いしたいと思います。

 それから次に、今農家が借入金負担について非常に苦しんでいるという状況にあるということでありますけれども、それを逆の側面から見てみますと、農林漁業金融公庫についてはかなりの延滞債権が生じてしまっている。農林漁業金融公庫の財務状況が悪化しているんではないかというようにも考えられるわけですけれども、農林金融公庫の延滞債権の現状というのはどういうふうになっておりますでしょうか。

須賀田政府参考人 農林公庫の六カ月以上延滞債権、十一年度末で九百六十六億円ということになっております。他の政府系金融公庫の中で比べますと、農林公庫の延滞債権が総貸付金残高に占める割合が十一年度で二・三七%ということでございまして、政府系金融機関の中では中位程度ということになっておる状況にございます。

 先生も御承知のように、農林公庫、先ほど来御議論ございますけれども、農林漁業の振興を図るために、民間金融機関では対応困難な長期、低利の資金を融通するという目的を有しておりまして、この中には、率直に申し上げましてリスクの高いものも含まれておりますことから、ある程度は延滞債権が発生するというのもやむを得ないような状況にあるのではないかというふうに考えている次第でございます。

 そういう中でも、こういう延滞債権の発生をできるだけ抑制するという観点から、公庫の方におきまして、経営内容を実質的に踏まえました適切な融資審査というものを行いますとともに、融資後も、貸付先の経営状況等を的確に把握しながら経営指導を行っておるというような対応をしているところでございます。

 また、延滞が発生したというような場合には、償還期限の延長等の条件緩和に弾力的に応ずるというようなことをとっておりまして、借入者の経営の立て直しというようなものも支援するというような対応も行っているところでございます。

平岡委員 延滞債権、ある程度はやむを得ないというお話でありましたけれども、政策的な融資であります、やむを得ないという点もあろうかと思いますけれども、できる限りこれを発生させないということも非常に重要なことだろうと思います。そのためにいろいろ対策を講じておられるんだろうと思います。

 そこで、今回の新しくできますこの経営体育成強化資金、あるいは農業経営維持安定資金というものでございますけれども、既に延滞状態に入っているそうした農家の方がこの融資制度を利用したいというふうに来た場合には一体どういうふうになるのか。

 これは、例えばかつての中小企業対策の中では、信用保証協会が、新しくできた保証制度であるにもかかわらず、既存の保証債務の返済をしない限りは自分たちは新しい保証をしないんだというような形で、政策意図が大分ゆがめられてしまったというようなこともあったわけでありますけれども、この点について今、新しい融資制度をつくるに当たってどのようにお考えになっておられるか、お教え願いたいと思います。

須賀田政府参考人 今般創設されます負債整理資金の対象になる方々でございますけれども、現在負債の償還に支障は生じておりますものの、計画に即して経営改善を図れば、経営を安定させ負債の償還も可能となるというふうな見込みのある方を対象にするということにしているところでございます。したがいまして、現在延滞を生じているということであっても、そういう負債整理資金の借り入れができないというものではないというふうに考えております。

 ただ、具体的に、延滞を生じている方が今回創設されます負債整理資金の借り入れをしようとする場合には、まず、その延滞に至りました経営上の問題点は何かとか、あるいは経営改善を図るために必要な事項は何か、経営改善計画の実行可能性はあるか等々、主体性を持って真剣に検討していただくということが前提になろうかというふうに考えている次第でございます。

平岡委員 今の御答弁では、延滞を生じさせていることをもってして融資が受けられないということではないんだということであったと思います。

 通常の金融ルールからいうと、なかなか、そこまで踏み切るということについては勇気の要ることだろうと思いますけれども、ただ、農家が置かれている実態を考えると、やはりこれらの新しくつくる融資のきめ細かい実行ということについて考えていかなければいけないというふうにも思います。農家の方々にとって不便を生じさせないように、よく相談に乗って対応していただきたいということをお願いしておきたいというふうに思います。

 そこで次に、民事再生法の適用の問題についてお伺いいたしたいと思いますけれども、昨年の四月一日から民事再生法が施行されまして、昨年の臨時国会でも、小規模個人再生ということで、小規模事業者で、無担保再生債権の総額が三千万円を超えないものについては、非常に簡便な手続で民事再生が図られていくというようなことになっているわけであります。

 農家についても、この民事再生法の適用が排除されているわけではありませんで、農家に対してもこの民事再生法の適用が行われるというケースがあろうかと思うのですけれども、公庫からの借入金を有している農家がこの民事再生法の手続を進める、あるいはほかの債権者によって進められていくというような事態になったときに、一体、農林漁業金融公庫はどのように対処すべきであると考えておられるのか、その辺について、大臣、お答え願います。

谷津国務大臣 民事再生法は、先生御案内のとおり、債務の縮減に関する再生計画に債権者の多数の同意を得ること等を要件としておりまして、債務者が破綻する前に経営の再建を図ることを目的としているものでございます。

 農林公庫の貸付先である先生御指摘の農家が、民事再生法の仕組みを活用して債務の縮減を図ろうとする場合には、公庫としては、同法の手続に従いまして、再生計画の実行可能性や債務者の農業経営に対する意欲等を総合的に勘案して、個々の案件ごとに賛否の判断を行うこととしておるところでございます。

 なお、農林公庫としても、再生が可能であるならば、破綻処理よりも再生の方が回収額がふえるのではないかと通常は考えられるのでございまして、このことを十分に踏まえて判断するものとしておるところであります。

 また、債権者の多数によって再生計画が決議されれば、農林公庫は、これに従って債権の縮減等を行うこととなっております。

 なお、負債農家が、再生計画に基づいて債務を縮減した上で、今回創設する負債整理資金を利用することも可能でございまして、こうしたことを通しまして、意欲ある農業者の経営の立て直しの支援をしていきたいというふうに考えております。

平岡委員 今民事再生法の適用に当たっての公庫の対応方針についてお伺いいたしましたけれども、四月一日から施行されているわけでありますけれども、農家について民事再生法の適用があったものはございますでしょうか、またその中で農林漁業金融公庫が貸し付けをしている農家があったでしょうか、その辺、事実関係をお聞かせ願いたいと思います。

須賀田政府参考人 農林公庫が融資をしております貸付先で民事再生法の手続を申し立てた案件が二件ございます。いずれも法人経営でございまして、一つが、キノコ栽培を行っております合資会社でございますが、これは、債権者が六十二名、負債総額一億六千万余というような経営でございました。申し立てはしたのですけれども、再生計画達成の見込みがないということで、遺憾ながら、棄却ということになっております。

 そしてもう一件が、酪農を行っております法人ということで、若干経営内容を見ますと、過大な投資をしていたということと、飼養しておりました牛に病気が発生をいたしまして、改めて乳牛の導入をしたということで支出がかさんだというようなケースでございました。これは現在手続中でございます。今までのところ、この二件でございます。

平岡委員 現在、実績は多くはないようでありますけれども、これからもある程度出てくるということが見込まれるとも思います。

 そうなると、今農林漁業金融公庫が置かれている状況を見ますと、かなりの補助金を一般会計から入れてもらっているというような状況にもあって、こうしたものに積極的に応じていくと、農林漁業金融公庫の財務の健全性にも支障を来してしまうというような事態があろうかと思うのです。

 逆にまた、農家の再生ということが図られるのであれば、ぜひ積極的に協力してほしい、そういうジレンマがあるわけなんでありますけれども、特に、民事再生法の適用によって、貸付金が減額になる、あるいは金利の減免が行われるというようなことで、公庫の財務状況に影響を与えるようなケースの場合、どのように対応していかれるおつもりなのか、その辺についての農水省のお考えをお示しいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 ただいまの先生の御指摘のとおりでございまして、金融機関の健全性の確保という面から見ますと、農林公庫は一般会計から補給金を仰いでいる金融機関でございますので、できる限りその貸付債権が傷つかないようにするということが重要でございますけれども、一方におきまして、やはり農林漁業専門の政府系金融機関でございます。

 農林漁業者の経営が立ち直れば、やはりその返済を受けることによって農林漁業金融公庫もメリットを受けるわけでございますので、民事再生法の運用に当たりましては、本来、農林公庫は、貸し付けに当たりまして第一次抵当を設定しておりますので、別除権の行使というものが可能な金融機関ではございますけれども、やはり農林漁業者の経営の立て直しということを第一義に置いて対応していきたいというふうに考えている次第でございます。

平岡委員 ぜひ、農家の再生という視点を十分に配慮して運用していっていただきたいというふうに思います。

 次に、財投機関債の発行の件についてお伺いいたしたいと思います。

 今回の農林漁業金融公庫法の改正の柱の一つが、やはり財投制度の改革に伴うものであろうと思います。公庫が市場から資金を自己調達することができるようにする、あるいは自己調達をするために、公庫が市場からの信認を得られるように、今回必要な法律改正を行おうとしているわけですけれども、このこと自体は、公庫がみずから常に業務運営の効率化を心がけていかなければならないということにつながっていくということで、私としては歓迎すべきことであるというふうに考えているわけでありますけれども、しかし、この十三年度予算の状況を見ますと、本当の意味での財投機関債である政府保証のつかない財投機関債というのは百五十億円で、公庫資金調達の全体のわずか五%にしかすぎないというような状況であります。

 これに対して、一方では、少な過ぎるという批判もあろうかと思います。他方で、先ほどの小平議員からもお話があったように、長期、低利の融資をする機関として、財投機関債に頼っていくことについてのいろいろな問題点もあろうかと思いますけれども、農林漁業金融公庫が財投機関債によって資金調達することについて、どのように農水省としてお考えになっているのか、また平成十四年度以降の発行方針としてはどのように考えておられるのか、大臣、御答弁をお願いします。

谷津国務大臣 農林公庫は、十三年度におきまして、先生御指摘のように、財投機関債百五十億円、そして政府保証債が百五十億円、合わせて三百億円の債券発行を予定しておるところであります。

 債券の発行規模につきましては、農林公庫はこれまで債券発行の経験がないことから、その初年度である十三年度においては、円滑な発行を図るために、資金調達、十三年度が二千九百億円でありますが、その一割に相当する額の発行を行うこととしているところでございます。

 十四年度以降の発行方針につきましては、十三年度に発行する債券の消化状況等を踏まえて検討していきたいというふうに考えておるところでありますが、そのためにも、まず十三年度における三百億円の債券の円滑な発行に取り組みまして、市場からの資金調達のノウハウの蓄積を図ることが重要ではないかというふうに考えているところであります。

平岡委員 平成十三年度から財政投融資制度が大きく変わったということで、いろいろと試行錯誤的なことも農林漁業金融公庫にはあろうかと思います。

 財務省の方にお伺いいたしたいと思うのですけれども、こういう形で財政投融資制度が変わってしまいましたけれども、農林漁業金融公庫の資金調達のあり方として、財投機関債を農林漁業金融公庫が発行していくことについてどのようにお考えになっているか、どのような御方針を持っておられるか、お伺いしたいと思います。

牧野政府参考人 お答えいたします。

 農林公庫が債券発行をされるということは、財投改革の趣旨に沿って資金調達手段を多様化していくという意味で非常に結構なことだと思っております。そのことによって、先生も今おっしゃられましたように、業務運営の効率化とか、そういったことが進んでいくというように期待しておりますので、そういう意味で大変好ましいことだと考えております。

 発行規模につきましては、今大臣からお話がございましたように、今まで御経験がなくてという事情もありますから、まず、急にやっても格付を、財投機関債で出そうと思えば格付をとる必要がありますから、それがすぐにとれるかとかそういう問題もございますので、最初は、前半については政府保証つきでやっていただく、その後には財投機関債を約一割、百五十億出していただくということかと存じております。

 こういう発行規模については、今申し上げたようないろいろな、初めてであるというような状況を踏まえると、努力していただいたということで、一定の評価ができるのではないかというふうに考えております。

 今後につきましては、発行に必要なノウハウが公庫に蓄積されていかれるわけですので、財投機関債、さっき申し上げたような意味がございますので、その調達が拡大されていくということは結構なことだというように期待いたしております。

平岡委員 財投機関が財投機関債を発行されるということについては両面があって、一つは、やはりそれぞれの機関の効率化をより図っていくための市場の監視というものを図っていかなければいかぬというような側面、それからもう一つは、やはり政策金融機関として、本来、一般の金融機関から融資が受けにくい方々に対して政策的な融資を行っていくということで、どちらかというと、財務の面からいうと一般の金融機関と比べれば不利な状況にあるというようなことで、そういった両側面があろうかと思います。

 市場の人たちのお話を伺いますと、財投機関というものが財投機関債を発行するときに、その債券に対してどのように格付といいますか信用度合いというものを判断するかということについては、これは、例えば農林漁業金融公庫が本当に国民に支持された農政政策の一環として融資制度をしているということであるならば、仮に農林漁業金融公庫が大きな赤字を抱える、あるいは政策的に補助金が、あるいは補給金というものが必要になってきても、それは政府が支えてくれる、国民の支持に基づいて政府が支えてくれる、こういうものがあれば市場はそれを信認するはずだということを言う方もおられます。

 そういう意味で、むしろ農林漁業金融公庫の経営のやり方の健全性だけにとどまらず、農林漁業金融公庫にどのような農業政策金融を行わせるのか、行わせると言うと失礼ですが、行うような形を政策的につくっていくのかが非常に重要なポイントになるのだろうと思います。その点について大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

谷津国務大臣 確かに先生の御指摘のとおり、政策の方向というのがまずしっかり打ち出されるということが大事なポイントの一つだろうというふうに考えます。それと同時に、格付がしっかりされるためには、経理の内容といいましょうか、そういうものをしっかりやること、それから公庫そのものの体質をしっかり踏まえていくということも格付の上に大事な要素になっていくのではなかろうかなというふうにも思います。

平岡委員 政府も農水省も、国民に支持される農政政策というものをぜひ実行していただきたいというふうに思います。

 さっきの話にちょっと戻りますけれども、今回の財投改革では、農林漁業金融公庫は財投機関債を新たに発行するという機関として登場してきたわけであります。それ以外にも、たしか二十機関くらいが財投機関債を平成十三年度において発行するというような状況のようでございます。

 そこで財務省にお聞かせ願いたいと思うのですけれども、今後の財政投融資のあり方として、財投機関債についてはどのような考え方に基づいて発行していくことを進めていくのか、財政投融資の全体の中での財投機関債の位置づけというものについてこれからどのようにしていかれようとしているのか、その辺をここで紹介していただきたいというふうに思います。

牧野政府参考人 御質問のありました今後の財投機関債の発行をどうするかということでございますが、財投機関債につきましては、先ほどから申し上げておりますように、その発行を通じて市場のチェックを受け、それによって各機関が業務の効率化を図っていただくという意味がございます。これがまた今回の財投改革の大きな成果といいますか、一つでございますから、やはりそういう意味では、今後ともこの財投機関債の発行というのを努力してやっていただきたいというように我々は考えております。

 それでなおかつ資金調達が無理だという場合につきましては、やっておられる業務が本当に民業補完のために必要なものであるかとか、あるいは将来の国民負担がどうなるかという政策コスト分析ですとか、償還の確実性ですとか、そういったことを徹底して見直しを行いまして、真に必要だという場合には、財投債によって調達した資金を貸し付けするということでやってまいりたいというように考えております。

平岡委員 財政投融資については、ここに財政投融資リポート二〇〇〇というのが手元にあるわけですけれども、これをちょっと見せていただきますと、それぞれの財投機関についての政策評価、政策コストの試算といったようなことも財務省の方では行われているようであります。

 中身を見ますと、農林漁業金融公庫についていうと、向こう二十二年間にかかる政策コストというのが四千七百九十二億円、これだけかかるというような評価がされているのであります。

 この評価自体は、ほかの金融機関に比べるとかなり高いコストがかかってきているというような評価がされているわけでありまして、多分財政投融資を預かる財務省においても、このようなコストのかかる金融機関に対してどのように対応していくのかということについてはいろいろ難しい問題もあろうかと思いますけれども、農林水産業の置かれている状況というものを十分に踏まえていただいて、適切な資金計画の作成をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

堀込委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。

 一回生でありますので、よろしくお願いいたします。

 一昨年の平成十一年七月に、食料・農業・農村基本法が施行されました。この基本法に則して、食料の安定供給の確保、農業の多面的機能の発揮、農業の持続的発展及び農村の振興を図っていくことが、国民そして農業者等の関係者にとって喫緊の課題になっております。

 また、同法二十一条においては、「国は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するため、営農の類型及び地域の特性に応じ、農業生産の基盤の整備の推進、農業経営の規模の拡大その他農業経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずるもの」としております。

 また一方、農林水産省によりますと、自主流通米の六十キロ当たり銘柄平均価格は、昨年、九四年産米に比べて二五%も下落しました。野菜も、中国産のネギや生シイタケ、ニュージーランドのタマネギ、韓国産のピーマンなどの輸入が急増し、一部の輸入野菜は昨年、国内産に比べて四〇%前後の安値で入荷いたしました。そのため、我が国の農業経営は深刻な打撃を受けております。

 御案内のとおり、主業型農家の農地は、米国で約二百ヘクタール、欧州で二十から三十ヘクタール、日本では約一・五ヘクタールと一けたずつ小さくなっております。このような状況下、経営規模の拡大を図りつつ、安価な海外農産物価格と競争すべく農業経営の合理化を図ることは、極めて厳しいわけであります。そのような意味でも、今回、農林漁業金融公庫法を改正し、意欲ある担い手に対するきめ細かな経営支援を行うのは極めて重要であると私も思っております。

 そこで、最初に大臣にお尋ねいたしますが、最近、農林水産省は、頑張っている農家、農業法人などの意欲ある農業者を対象に、同じ地域で働く他産業従事者並みの生涯所得を確保できるような施策を検討中と聞いておりますが、その内容は主にどのようなもので、何のための所得補てんであるのか、先ほど小平委員さんからもお話がありましたが、私からも改めてお尋ねいたしたいと思います。

谷津国務大臣 先ほど松岡副大臣が小平委員に対しまして答弁をしておりますけれども、農業の持続的な発展を図るためには、その主たる従事者が地域における他産業従事者と遜色のない水準の生涯所得を確保し得る効率的また安定的な農業経営を育成することが大事であるというふうに考えているところでありまして、これらの方々が農業生産の相当部分を担う農業構造を実現していくことが大事ではないかというふうに思っているところであります。

 このために、効率的に、そして安定的な農業経営を育成していく、そういう観点から、育成すべき農業経営に対しまして諸施策を重点的に、また集中的に講じることが必要ではないかというふうに思っているところでございまして、これら諸施策の見直し、再編の検討をそれがために行おうとしているところでございます。

 また、その一環といたしまして、育成すべき農業経営の経営全体をとらえまして、農産物価格の変動に伴う農業収入または所得の変動を緩和する仕組み等につきましても、我が国の品目別の価格政策の見直しや経営安定対策の実施の状況、それから農業災害補償制度との関連等を勘案しながら、検討をただいま進めているところでございます。

黄川田委員 農産物の価格形成は市場にゆだねるということで、先ほどのお話のとおり、価格支持から農家の所得補てんへという政策転換が欧米では趨勢になっております。また、食料の安全保障の面からも、国内産農産物の確保も重要であります。そこで、農家の経営所得安定対策については、ばらまきではなくて、政策の一貫性と透明性を強く求めておきたいと思います。

 私は、住民の目線で、地方行政の面から、最近の農林漁業問題を深刻なものととらえております。地方から見詰めると、確かに国においては多くの農業施策が行われてきました。しかしながら、農産物の価格の下落が続き、農家経営が厳しさを増していることに対して、個々の政策は理解できますが、短期的視点で考えられているものが少なくなく、かつ、それらの間でどう整合性が図られているのかわからないのが実情であります。

 最低限これだけは守るという基本理念に欠けていると私は思っております。中長期的視点で問題解決の方策を考えることが重要であります。それは、意欲のある担い手の育成であります。

 私の地元の岩手県では、最近、農業担い手育成中長期ビジョンを策定し、施策の対象を児童生徒が農業に対するあこがれを形成する段階、高校生、大学生等が職業として農業を選択する段階、就農に必要な技術、資金、農地等の準備をする段階、就農し、経営管理技術を高めながら実施する段階の四段階に区分し、それぞれの段階に応じた適切な対策を講じることにしておるということであります。

 確かに、国は基本法で、第二十五条から第二十八条で、人材の育成及び確保、女性の参画の促進、高齢農業者の活動の促進、農業生産組織の活動の促進を掲げております。しかし、実態として、平成十一年度勤労者平均所得六百九十万円に対し、農業所得は百十四万円であり、前年に比べても八・四%も減少しております。

 農家の若者は、このような経済的に苦しく、過酷な労働を伴う親たちの生活を見て育ってきておりまして、生きがいを持って農業を担うことにちゅうちょをしているのであります。新たに農業経営に参画しようとする意欲のある若者は、余り多くはありません。そのため、地域における担い手として四十万人を目標とする認定農業者は、現在十六万程度にとどまっていると聞いております。

 そこで、意欲のある担い手の育成を目指して、職業教育、職業訓練に関して、幾つかお尋ねいたしたいと思います。

 最初に、文部科学省に職業教育についてお伺いいたしたいと思います。

 今国会で学校教育法の改正と教育関連の法律改正において、社会奉仕活動等を含めた職業教育面への取り組みはどのように扱われているのでしょうか。また、教育改革国民会議ではどのような議論がなされたのか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。

矢野政府参考人 昨年十二月に取りまとめられました教育改革国民会議の最終報告におきましては、職業教育につきまして、「職業観、勤労観を育む教育を推進する必要がある。」といたしまして、このため、職業教育の教育内容の充実や、職場体験、また就業体験の積極的な実施等について提言がなされたところでございます。

 文部科学省におきましては、この最終報告を踏まえまして、今後の教育改革の全体像を示すものとして二十一世紀教育新生プランを策定いたしまして、職業教育の充実につきましても、その一つとして位置づけたところでございます。

 具体的には、先ほど御指摘がございました学校教育法の改正を行いまして、就業体験を含めました学校教育における体験活動の充実を図るとともに、農業高校生等のインターンシップの促進や農業大学校との連携など、職業教育の充実のための施策を講じることといたしているところでございまして、今後とも、これらを通じて職業教育の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。

黄川田委員 若者の農業経営に夢を抱かせる根本は高校の職業教育のあり方にあると私は思いますが、昨今の少子化の影響もあり、学校、学科の統廃合が行われつつあるのではないでしょうか。

 そこで、農業高校数はこの十年どう推移し、また、卒業生はどう変化してきているのでしょうか。そしてまた、農業経営をより魅力あるものとすべく、農業高校教育において過去どのような工夫、改善が行われてきたのか。また、将来の教育改革にどう取り組む所存か。あわせて文部科学省にお尋ねいたしたいと思います。

矢野政府参考人 農業に関する学科を置く高等学校の数は、平成二年では四百三十四校でございましたが、十年後の平成十二年では三百八十二校に、また、その生徒数は、平成二年が十五万四千人でございましたが、平成十二年には十一万五千人となっているわけでございます。

 少子化等の影響によりまして生徒数の減少等があるわけでございまして、農業に関する学科を置く高校の数及びその生徒数は、先ほど申し上げましたようにこの十年間で相当減っているわけでございますが、ただ、全高等学校数、また全生徒数に占める割合はほぼ横ばいであるという状況にございます。

 また、御質問の卒業生の進路状況でございますけれども、平成二年で見ますと、大学等が五・九%、専修学校等が一五・九%、就職が七五・九%でございましたが、これが平成十二年の卒業生で見ますと、大学が約倍の一一・一%、専修学校が二五・七%、就職が五一%となっているわけでございまして、大学等へ進学する者の割合が増加し、一方で就職者の割合が減少している、こういう状況にあるわけでございます。

 さらに、農業高校の改善のための取り組みについての御指摘でございましたが、私どもといたしましては、魅力ある農業高校づくりを進めますためにこれまでもさまざまな改革を進めてまいっておりまして、特に教育内容の改善を中心にさまざまな改革に努めてまいっているところでございます。

 最近の主要な施策といたしましては、平成十一年に高等学校の学習指導要領を改訂いたしまして、バイオテクノロジーの急速な発展、あるいは地球環境問題、さらには農業、農村に期待される機能の多様化などに対応した教育内容の改善を図りますとともに、農水省と連携をいたしまして、農業高校と農業大学校との継続的なカリキュラムのあり方についての検討を行いますとともに、また、就業意欲を高めること等を目的とした先進農家等でのインターンシップ等を進めているところでございまして、こうした施策を通じまして、今後とも、農業の担い手となる人材を育成するために、魅力ある農業教育の推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。

黄川田委員 また、関連いたしまして、全国に五十四校ある高等専門学校でありますが、そこで農業教育はどのように扱われているのでしょうか。例えば、農業土木、農業機械などの技術教育を行う学科はあるのでしょうか。農業の法人化を促進する上でも必要と思われますが、将来改革していく見通しはいかがでしょうか。さらに、各都道府県には農業大学校がありますが、それらは以上の職業教育と具体的にどう関連づけて運営されているのでしょうか。あわせてお伺いいたしたいと思います。

矢野政府参考人 高等専門学校についてのお尋ねでございますが、高等専門学校の教育内容は主として工業系統であるわけでございます。平成三年に、高度な専門的職業教育を受ける機会を拡大するという観点から、それまでの工業及び商船以外に経営、情報などの分野の学科も設置されてきているところでございますけれども、これまでのところ、地元やあるいは関係業界等からの要望もないこと等もございまして、現在、農業分野の学科は設置されていないところでございます。

 この農業分野の学科を設置することにつきましては、農業にかかわる人材のニーズ、あるいは地元の意向、さらには五年一貫教育で行うことの是非、また、大学や高等学校等における農業教育の役割及びその教育機関の配置状況等、さまざまな観点からこの問題については検討する必要があると考えているところでございます。

須賀田政府参考人 農業大学校は私どもの所管でございますので、私の方から御答弁申し上げます。

 現在、先生言われましたように、四十一道府県に農業大学校が設置されておりまして、農業高校の卒業生で農業を担いたいというような方々に対しまして、農業の技術、知識を習得させるための実践的な研修教育を行っております。

 先生言われましたように、農業高校と農業大学校が連携して、体系的かつ継続的に研修教育を進めていくということが大変重要でございます。そういうことで、文部科学省と連携をいたしまして、授業の連続性というようなことに配慮したカリキュラムの調整、それから職員の人事交流、こういうものを行っております。

 それから、農業大学校において、現役の農業高校生を対象とした実務実習、こういうものを実施しております。また、農業高校の卒業生が農業大学校に入学しやすいように、推薦入学枠というようなものも設定をしておるところでございます。

 よろしくお願いをいたします。

黄川田委員 学校は時代を映す鏡でありまして、農業が元気なときは農業関係のいろいろな学校が出てくる、そして高度成長時代に商船であるとかあるいは高等工業学校ですか、それらが元気を出す。少しく今第一次産業、元気がないので、農業関連の学校もぜひとも元気を出していただきたいと思います。

 次に、同様な観点から、職業訓練について厚生労働省に幾つかお尋ねいたしたいと思います。

 まず、公共職業能力開発施設においては、農業の担い手の育成にかかわる職業訓練がどのように行われているのでしょうか。その実態はいかがでしょうか。また、今後どう対処されるつもりでしょうか。

酒井政府参考人 お答え申し上げます。

 公共職業訓練におきましては、産業構造の変化が進む中で、産業の人材ニーズや受講者の訓練ニーズを勘案して必要な訓練コースの設定を行っているわけでございます。農業分野につきましては、離職者訓練を中心といたしまして、主として園芸科ということで全国で百五十三のコースを設けているところでございまして、年間約千五百名の方を対象に訓練を行っているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、今後とも、農業分野の人材ニーズ等の的確な把握に努めまして、必要な人材の育成に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

黄川田委員 失業率が四・九%までに高まり、五%台も危険視される昨今であります。労働力需給のミスマッチ解消の観点からも、農林水産省と連携をとりながら、厚生労働省も就農を促進すべきではないかと考えますが、厚生労働省の見解はいかがでしょうか。特に、今後、農業の法人化が促進されていく中、農業経営や農業技術にすぐれた意欲のある若手の新規参入者が多く望まれるところでありますので、改めてお伺いいたします。

澤田政府参考人 厚生労働省といたしましては、雇用対策の一環として、一昨年から、農業への就職、就農を支援しているところでございます。

 具体的には、東京、大阪、愛知の拠点となります公共職業安定所に農業等就職相談コーナーを設けまして、就農に関するきめ細かな職業相談を行っております。あわせまして、農林水産省の御協力を得ながら、就農準備校などに関します詳細な情報提供等も行っているところであります。

 このコーナーを昨年十二月まで約一年間に御利用いただいた方、二千七百名強に上っておりますが、実際に農業に就職された方は、残念ながら十五名という状況でございます。しかしながら、都市生活者を中心に農業への関心が高まっていることは先生御指摘のとおりでございますので、私どもも、今後とも農林水産省と協力して、このコーナーを利用しつつ、農業への就農を、就業を支援していきたい、こう思っております。

黄川田委員 それでは次に、農林漁業金融公庫法の改正案について幾つかお尋ねいたしたいと思います。

 最初に、これまで農林公庫資金が農林水産業の発展に果たしてきた役割はどのようなものがあるか、大臣の御認識はいかがでしょうか。

谷津国務大臣 農林公庫は、自然条件に左右され、また収益性が低いといった農林漁業の特性に対応いたしまして、農林漁業の生産力の維持増進、また食料の安定供給の確保に必要な長期、低利の資金を融通することを目的としておりまして、これまでその融資業務は農林漁業の振興に大きな役割を果たしてきているものと私は思っております。

 例えば、農業分野について見てみますと、農業生産の主体となるところの農業主業農家の約三割が公庫資金を利用した経営改善に取り組んできております。また、圃場整備事業のうちの公庫資金を利用した事業が全体の三割強に達しておりますなど、農業の振興に不可欠な経営基盤の強化、それから生産基盤の整備等に公庫資金が活用されているところでございます。

 また、食料供給の面では、国産の牛乳の五割、それから鶏卵の四割、マグロ類の六割、ミカン、果樹の四割が公庫資金の利用者によって供給されておりまして、国民への食料の安定供給に大きく寄与しているものと考えております。

 さらに、食品加工、流通向けの融資につきましても、中山間地域の活性化、農林漁業との連携等に資するよう行われておりまして、例えば卸売市場等の六割が公庫資金が利用されておるなど、国内農林漁業との密接な関係を有する食品産業の振興にも貢献しているものと考えております。

 今後とも、食料・農業・農村基本法に基づく効率的そして安定的な経営体の育成等の政策課題に対応する上でも農林公庫資金の役割は重要であるというふうに考えておるところでありまして、こうした点を踏まえながら、今回創設する資金を含めた公庫資金の円滑な融資の実現に努めていきたいというふうに考えております。

黄川田委員 最近の経済動向を反映し、各種の金融機関の不良債権処理はなかなか計画どおりに進んでおらないようであります。そこで、さきにも質問がありましたけれども、確認の意味で、農林公庫の不良債権額は現在どのぐらいで、かつ総貸付残高に対する比率はどのぐらいでしょうか。また、他の政府系金融機関と比較して中位程度ということでありましたけれども、債権放棄はどのようにしているのでしょうか。お伺いいたします。

谷津国務大臣 先ほどの答弁で、ちょっと私間違って数字を言ったようでありますので、ちょっと補正させていただきたいと思います。圃場整備のうち公庫資金を利用した事業が全体の三割と申したようでありますが、これは八割でございますので、これを修正させていただきます。

 ただいまの御質問の農林公庫の六カ月以上の延滞債権は、十一年度末で九百六十六億円となっております。延滞債権が総貸付残高に占める比率は二・三七%でございまして、政府系金融機関では中程度に位置しているわけでございます。

 また、農林公庫は、農林漁業の振興を図るために、民間金融機関では対応困難な長期、低利の資金を融通することを目的としておりまして、この中にはリスクの高いものも含まれていることなどから、ある程度延滞債権が発生することもやむを得ないものと考えておるところであります。

 そうした中で、延滞債権の発生をできるだけ抑制するために、公庫においては、経営内容を踏まえた適切な融資審査を行うとともに、貸付先の経営状況を的確に把握し、また、経営指導を行うなどの対応を行っているところでございます。農林水産省といたしましても、農林公庫の審査体制の充実、融資後の経営指導等について適切な指導を行っていきたいと考えております。

黄川田委員 時間が残り少なくなってまいりましたので、最近の担い手の経営をめぐる事情と金融措置についてお伺いいたします。

 今後、担い手対策を進める観点から、制度資金の役割をどのように考えておりますか。また、その中で、今回の総合融資はどう位置づけられるのか、大臣の御見解をお尋ねいたします。

谷津国務大臣 食料・農業・農村基本法の目指す効率的かつ安定的な農業経営の育成のためには、経営意欲のある農業者が創意工夫を生かした農業経営を展開できるようにすることが最も重要であると考えておるところであります。こうした観点から、創意工夫を生かしやすい制度資金を中核とする農業金融の果たすべき役割は極めて重要であるというふうに思います。

 今回の総合資金におきましては、こうした観点から、認定農業者、積極的な経営展開を行おうとする方、それから不振な経営状況を改善しようとする方などを、個々の経営の実情に応じまして、きめ細かい低利融資が行えるようにしていきたいというふうに考えております。

黄川田委員 終わりに、ウルグアイ・ラウンド対策としての農家負担軽減支援特別対策の効果と問題点はいかがでしょうか。先ほどから質問されておりますが、お答えいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 農家に対する負債対策といたしまして、営農負債を一括借りかえを行います農家負担軽減支援特別資金、それから、制度資金の毎年の返済資金を融通いたしますいわゆるリリーフ資金等をウルグアイ・ラウンド対策として設けまして、償還負担の軽減を図ってきたところでございます。

 このような対策によりまして、負債整理に取り組んでいる農家の実態調査をしたわけでございますけれども、年の償還額が約四分の一程度に軽減されますとともに、借入金金利が平均で三%強低下する、五%を超えていたものが二%台になるというような状況が見られておりまして、農家経済の改善に大きく寄与してきたというふうに認識をしているところでございます。

 しかしながら、この従来の負債整理資金では、例えば、公庫の負債整理資金が、農地をお持ちの自作農の方だけが対象で、借地型あるいは施設型の方が対象になっていなかった、あるいは、いわゆるリリーフ資金では、毎年の償還額の借りかえしかできなかった、それから、負債整理資金の借り受け者については前向きの投資というものが行われがたかったというような問題も指摘されておりまして、こういう問題に対処するために、今般、そういう問題にも対応できる新資金を創設したところでございます。

黄川田委員 単なる借金返済対策だけに終わらないようによろしくお願いいたしたいと思います。

 二〇〇〇年の世界農林業センサスによりますと、男子生産年齢人口のいる専業農家は一六・八%減っております。逆に、男子生産年齢人口のいない専業農家、すなわち老人専業農家は二〇・八%もふえております。また、一九九五年までふえていた販売額一千万円以上の農家も減少に転じております。農家らしい農家ほど減っているのが現状であります。地域の担い手は大きく減少しております。このような厳しい現状を踏まえ、農政の抜本的な改革を指摘しまして、時間でありますので質問を終わります。

堀込委員長 次に、中林よし子君。

中林委員 私は、まず、農林漁業金融公庫法の一部改正案について質問をいたします。

 今回の改正は財投改革の一環であるわけです。このことによって農林漁業金融公庫は財投機関債である農林漁業金融公庫債券を発行できることになります。そのことが果たして農林漁業者にとっていいことなのかどうなのか、これが問題だというふうに思います。

 先ほどから御答弁でずっとあったわけですけれども、本来、農林漁業金融公庫というのは市中金融機関では難しい農林漁業者に対する低利かつ長期の貸し付けを目的としています。ですから、その目的を果たすためには低利かつ長期の資金が必要になるわけで、それを従来は財投資金で賄ってまいりました。それに対して財投改革では、特殊法人が必要な資金を金融市場で財投機関債を発行することによって調達するということを原則としております。

 これで果たして低利かつ長期の資金貸し付けの機能を守ることができるのかということを、大臣に基本的なお考えをお伺いしたいというふうに思います。

谷津国務大臣 農林公庫の役割については、先生ただいま御指摘がありましたように、農林公庫法の第一条におきまして、農林漁業者に対しまして、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期、低利の融資を目的とするというふうに規定をされているところであります。

 今回、農林公庫の資金調達の方法を拡大いたしまして財投機関債を発行できるようにすることとしておりますけれども、それによって農林漁業者に対する長期、低利資金の融通に支障を生ずることのないように十分に留意していく必要があるものと考えておりまして、先生の御指摘のとおりであります。

 このためには、初年度である十三年度の債券発行額は、財投機関債と政府保証債を合わせて三百億円と、農林公庫の資金調達の約一割にとどめておりまして、十三年度は、調達コストが上昇しないように、比較的短期の五年程度の償還期限の債券を発行しようとしているところであります。

 今回の改正によって農林公庫の目的は何ら変更しているものではないので、十四年度以降につきましても、十三年度の発行状況等を踏まえながら、農林漁業者に対する長期、低利資金の融通に支障を生ずることのないように十分に留意していきたいと思っております。

中林委員 大臣はそのように見解を述べられましたけれども、例えば、今回廃止される自作農維持資金の金利がありますが、これは年利五%を上限とすることが法定されているわけです。低金利の現在では、公庫貸出金利は財投預託金利を若干上回る程度の一・七%になっています。これは、優良大企業の長期設備資金に適用されている長期プライムレートより貸出金利を抑えております。歴史的には、財投預託金利より低い金利で貸し出し、逆ざやを発生したこともございます。このように、市場ベースであり得ない貸し付けを、農林漁業の生産力の維持増進のため、国から利子補給などを受けながら今日まで行ってまいりました。

 ここに市場評価が入り、効率化を持ち込んでいくならば、今は政府保証をつけるなどとおっしゃっているわけですけれども、長期的に見た場合、貸し付けにも市場原理が導入されることにつながって、金利の低金利あるいは長期ということが崩れていくのではないか、こういう強い危惧を感ぜざるを得ません。

 少なくとも、今回改正の法文上は、その歯どめになる条項は盛り込まれていない。それであるならば、低利、長期というこのことを保証することは、一体どこで保証されるのでしょうか。

須賀田政府参考人 農林公庫法の貸し付けに関する規定は、別表を含みまして多くのところに規定がございます。そこでは、基本的には、償還期間あるいは金利の上限を決めておりまして、その上限の範囲内で金利その他の貸し付け条件を決めるというふうになっております。

 この貸し付けに当たります規定につきましては、従来どおり運用をしていくということで、改めてその規定の改正はしておりませんけれども、これは、我々としては、調達の金利のコストの多寡によらず貸し付け条件は従来どおりの運用方針で行っていくということにしているところでございます。

中林委員 確かに目的規定のところには低利、長期ということがちゃんとあるわけですけれども、しかしながら法文上は五%を上限とするということになっているわけですね。そうなると、低利というものをどう見ていくかということが問われる。

 五%ならばオーケーですよということになれば、今、一・七%でそれでも高い、こういう声が出ている中で、五%まで法律で決められているんだからそこまでは市場評価にさらされる中で上げても大丈夫だよという方向になりはしないかということも懸念されるわけですね。

 では、その歯どめは、一体今回の改正であるのか。別表にはありますと言うけれども、別表は別表でありまして、法文上は限度額が五%ということになっているわけですから、大臣、その歯どめについてもう一度お答えいただきたいと思います。

谷津国務大臣 これは今先生が御指摘のとおり、第一条にきちっとした目的が書いてあるわけであります。また、別表においてそれを運用することになっているわけであります。

 少なくとも、五%を上限にするということになっておるわけでありますけれども、現在借入金のある方はこれを借りかえて、もっと有利な資金の調達ということになるわけでありますけれども、そこには、やはり一つの政策的な目的を持った農林漁業金融公庫の資金でありますから、そういう目的に合わせて考えた場合には、必ずしも最高の五%というふうなものに持っていくのではなくして、そこには政策的なものが当然維持されてもよいのではないかというふうに思っておりますから、そういった面では、金利はその中で考えられているものと考えておるところであります。

中林委員 財投機関債を発行して市場の評価にさらされるということになると、やはり効率化などが求められて、どうしても、長期、低利という、今までずっと農林漁業金融公庫が果たしてきた役割、その目的に逆行する、そういうおそれがやはり出てくるということを私は指摘し、同時に、大臣に、本当に農林漁業者にとって悪い影響が出ないよう、ぜひその点をお含みおきいただきたいということを申し上げて、次の質問に移りたいというふうに思います。

 そこで、農林漁業金融公庫資金に関連した問題なんですけれども、前回の大臣所信質疑で私が取り上げた問題なんですけれども、新規就農者、とりわけ新規学卒就農者及び青年就農者の問題を農業予算との関連でお聞きしたわけです。そこでも指摘をしてまいりましたけれども、深刻な農業情勢のもとで日本の将来を考えたときに、青年の新規就農者を抜本的にふやすことはやはり急務だというふうに思います。ところが、予算を見ると、わずか三十億円の新規就農予算で、抜本的に青年の新規就農がふえるという予算にはなっておりません。

 青年の新規就農の壁は大変厚いものです。住宅の問題だとかあるいは経営が安定するまでの経営資金の問題、何よりも生活費が確保できるかどうか、こういう問題が立ちはだかっています。しかし一方、農業でもうかるならば、農業で経営が成り立つならば、農業をやりたい、参入したい、そういう青年が私たちの想像以上に多いことも確かだというふうに思います。

 そこで農水省として、現在の農林漁業金融公庫を初めとする無利子融資を中心とした新規就農支援対策、これが中心になっているわけですね。そうではなくて、私は、EUで行われているような直接資金援助、それによる新規就農対策に切りかえていく必要があるのじゃないか。前回の質問で、その財源として農免農道の特定財源、これは、農政がどんなに変化しようともそのまま農免道に使われている、こういうことでございますので、これを充てて、新規就農支援に抜本的な対策として真剣に取り組む必要があるのではないかというふうに思うので、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

谷津国務大臣 先生今御指摘のありました農免道路の件ですが、この前もそういう御指摘をいただいたわけでありますが、農道の整備は、高生産性農業を促進し、また農業の近代化そしてまた農産物の流通の合理化を図るために、農村環境の改善に資するのを目的としてやっているところであります。

 前にも申し上げたのでありますが、農業にいろいろな自動車等を使うわけでありますが、そういうところのガソリンにかかる税金については、特定財源といたしまして、実は道路にみんな使われてしまうわけであります。そうなりますと、農家の人たちに還元されてくるものがないわけでありまして、それがためにこの農道の整備はやっているわけであります。

 都市に比べまして道路の整備の水準が非常に低い農村地域における農道整備は、農業の生産性向上に大変な寄与をしているということもありますし、また農村地域の生活環境の向上という面においても大きな役割を担っているというふうに考えるわけであります。このように、農道整備は新規就農者対策などの諸施策の基礎となるというふうに私は考えておるわけでありまして、こうしたインフラの整備をしっかりとやっていくことも重要なことではないでしょうか。

中林委員 私、それは違うと思うのですね。農道ができても、そこで本当に営農をやりたいという就農者がいなければ何の役にも立たないということだと思います。

 今、農道については、一般農道もありますし、ほかの農道もあるわけです。私、島根県ですけれども、多分農道の率は全国一ではないかと思うほど、これは一般の人たちが通って、もはや農業だけではなくして生活道路になっているという側面が当然出てきているわけです。

 この農免道を私が取り上げたのは、農水省と財務省との関係だというふうに思うのです。それだけの特定財源があるならば、これを思い切って、二〇〇一年度の予算では三百七十一億円もあるわけですよ、これを新規就農者、とりわけ青年の新規参入者に対して支援をしていく、こういうことがなければならないというふうに思いますが、もう一度、予算のあり方として真剣な検討はいただけないか、このことについての御答弁を求めたいと思います。

谷津国務大臣 確かに、農道と、いわゆる特定財源であるところの道路の財源という問題がそこにあるかもしれませんけれども、少なくとも新規就農者対策といたしましては、就農希望者の利便性に配慮した窓口の一元化、あるいは研修生の受け入れ農家に対する機械とか設備の無償貸与、それから次代を担う青少年に対する農業教育の充実、こういうものを図っておりまして、そうした新規の就農対策については総合的に推進しているところであります。

 それと、今、農道に使われる金をそっちに回せということでございますけれども、これはやはり目的が違うものでございますし、しっかりとしたそういった周辺整備をしていくことも、これまた農業の発展に資するものというふうに考えておるところであります。

中林委員 どうしてもここのところは意見がすれ違ってまいりますけれども、やはり私は、今本当に新規就農者が求めていることは、先ほども言いましたように、資金の問題ですよ、生活ができるかどうか。ここは、ある程度生活ができる見込みがつくまでは、一定の支援がなければできないというふうに思います。

 私は、前回の質問のときにも、三十五年先には本当に営農する人たちがいなくなるのじゃないかという今の農業の危機的状況の中で、どう新規参入者を獲得するかということを農水省挙げて真剣に考えなければならないというふうに思いまして、大臣に、一体大臣の認識の中で、農水省の政策順位として新規就農対策がどのくらいな順番に位置づけられているのか、総合的な対策をとっているとおっしゃいますけれども、わずか三十億円でできると考えていらっしゃるのか、そこをお伺いしたいと思います。

谷津国務大臣 新規就農対策というのは、最重要課題として私どもは取り組んでいるところであります。先生今、三十億円のという話がございましたが、融資その他いろいろな対策もやっておりますし、今、総合的にその対策をやって新規就農者に対する対応を考えているところでもございます。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

中林委員 最重要課題というのは、一、二位を争う、そういう重要課題だというふうに受けとめたわけですね。

 総合的な融資対策として三十億円なんですよ。私は、政府からどのくらいの対応をしているのかということで事前にお伺いすれば、そういう融資制度も含めて大体三十億円程度ということなんですね。だから、それよりももっと多いということでは決してありません。

 では、具体的にお伺いしたいというふうに思います。

 この問題で、昨年、青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法案、この審議がございました。当時、我が党の藤田スミ議員が就農促進に関する広報活動の状況を質問いたしました。青年が一番テレビを見ている時間帯にCMを流せないのか、こういう質問をして、藤田議員は、農水省は三兆四千億円の予算を擁していて、政府米古米の販売促進のたくわえくんのCMは流せても、青年に新規就農を呼びかけるCMは流せないのですか、大臣の政策優先順位からいっても、青年就農促進のCMをもっと積極的にやるべきではありませんか、こうただしたわけです。

 私、先日、農水省の担当者に聞いたところ、こういうソフト面の予算はわずか六億円程度しかないということで、CMがそういう時間帯に流せないというお話だったのですけれども、大臣、このときに玉沢大臣は、一番いい時間帯にコマーシャルを流す、こういうふうにおっしゃっているわけですね。

 一体、青年就農促進のためのCMの予算がなぜいまだに組めないのか、その点についてお答えいただきたいと思います。

谷津国務大臣 当時、私、総括政務次官をしておりまして、藤田先生と玉沢大臣とのやりとりをこの場で私も聞いておりまして、そのことはよく知っておるところであります。

 新聞、テレビ等のマスメディアを利用した広報活動については、新規就農を促進する上で大変効果的であるというふうなことは私も認識をしているものでございます。

 このために、農林水産省の広報及び政府広報を利用したテレビ番組の放映や、全国紙あるいは求人専門誌などへの掲載、あるいはJR、地下鉄等の車内広告等を通しまして、新規就農の事例や施策の紹介をしているところであります。

 また、特にテレビに関しましては、農林水産省が提供を行った平成十二年四月二日の十六時から十六時五十四分の「大地に夢咲かせて スーツを脱いだ勇者たち」の全国放送のほか、農林水産省の話題提供に応じて放送された多くのテレビの番組がございまして、テレビ放送の活用を図っているところであります。私の記憶によりますと、あのときの質問等も踏まえて、かなりこの点についても積極的に今行っているところでございます。

 今後とも、マスメディアに対しまして情報提供や取材協力を行う等によりまして、テレビの報道番組や新聞の特集記事等を通しまして、幅広く新規就農者のPRに努めていきたいというふうに考えております。

中林委員 大臣は、この議論をよく聞いて知っているとおっしゃっているわけですね。それならば、藤田議員はそのときにどういう提案をされたかというと、大体、青年就農のテレビコマーシャルは土曜日の朝六時十五分から十五分程度の放映で、ほとんど若者が見ていない時間だと、だから、若者がよく見る時間のコマーシャル、これをやっていただきたいというふうに言い、「そうすると、これからテレビをつけたら、一番私たちが見るような時間帯に、そんな一遍にと言いませんが、時には、やはり青年就農促進に力を入れているなと思われるようなコマーシャルの一つも出てくる、こういうふうに思っていいんですね。」こういうふうに議員が念を押すと、当時の玉沢大臣は、「思ってよろしいと思います。」こういう答弁でした。

 今、大臣は一つの番組の紹介をされましたけれども、しかし、それだけではやはり非常に足りない。今後、この趣旨を生かしていただいて、本当に農業につきたい、こう思えるような時間帯、そして予算枠をとっていただいて、やはりテレビのコマーシャルというのは大変な力を発揮しますので、ぜひそういうふうに取り組んでいただきたいと思いますけれども、もう一度御答弁、よろしくお願いします。

谷津国務大臣 確かにあのとき、藤田先生は、六時十五分から十五分ぐらいでは若い人たちは寝ていますよとおっしゃったのもこの耳に残っております。そのときに、玉沢大臣は、そういうふうなことで、一番時間帯のいいときに政府広報等を通してやったらどうかというふうなことのお話もございましたものですから、そういうふうに思ってよろしいと思いますというふうに答えたのも、この耳に残っております。

 私どもとしましても、この点につきましては、これからも政府広報等を通じまして、あるいは、場合によっては農水省としても独自なそういう面もこれから考えの中に入れまして、しっかりその辺をやっていきたいなというふうに思っております。

中林委員 予算のあり方の問題で、前回私の質問に対して、大臣は、農林水産予算を抜本的に変えていかなければならない、こういうふうにおっしゃって、農林水産予算の抜本的見直しをされることを明らかにされたわけです。

 その際に、新規就農対策予算、これを重点的な課題として、直接資金援助ができる、そういう新規就農対策も含めて、やはり御検討が必要なのではないか。

 昨年、青年就農等に関する法案のときに出された農水の調査室からの資料の中の、フランスの就農助成制度の概要というのを見ますと、新規就農のためにいろいろな、地域によって違いますけれども、山岳地域では、年間というか新規のときに三百四十三万円助成をする、それから配偶者のときは、山岳地帯では四百五十一万円相当の助成をするという、その他いろいろ、もろもろの資料があるわけですけれども、そういうことがあるわけですので、こういうことも含めて新規就農のために真剣に予算の面でも取り組むという検討をいただけますか。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

谷津国務大臣 先生は今、フランスの例を引かれたわけでありましたけれども、我が国においては、農業という職業につくことに着目して助成金の交付を行うということは、ほかの産業とのバランスを考えてみますと、なかなか困難と考えているところなんです。

 これがために、新規就農者への最大限の支援策といたしましては、就農支援資金等の無利子資金の貸し付け、あるいは農地、機械・施設を一体的にリースする事業の推進等に取り組んでいるところでありまして、また一方では、就農支援のための環境整備といたしまして、都府県の農業大学校等における技術習得等の実践的な研修教育の実施、あるいはまた研修生受け入れ農家に対する機械・施設の無償貸与等も含めて、総合的に支援の施策を講じているところであります。

 そういう中で、所得政策を含めまして、一つの方向を打ち出すべく今検討を行っているところでありまして、それがためには、この農業予算そのもののあるいは抜本的な見直しにつながっていくのではなかろうかなというふうにも思っているところであります。

中林委員 その見直しの中にぜひ今提案したことも含めていただかないと、離農者が加速度的にふえている中で、就農者がふえているとはいえ、非常にわずかなんですね。だから、そういう意味では、本当に農水省の最重点課題にふさわしい予算の検討をお願いしたいというふうに思います。

 セーフガードの問題なんですけれども、政府調査三品の暫定セーフガードについて、二月二十三日の予算委員会で大臣の見解をただしました。このとき、大臣は、「この調査の過程において明白な証拠があるという仮の決定、いわゆるそういう証拠がしっかりと出てきたということになりますれば暫定的なセーフガードをかけることができる」、こうお答えになりました。それから二十日が過ぎました。そして、調査終了まであと一週間、三月二十二日まで一週間という状況になっているわけで、暫定セーフガード発動の方向で検討を進めていらっしゃるとは思うのですけれども、その点を明らかにされたいと思います。

谷津国務大臣 実は、予算委員会でお答えしたときには三月の二十二日だったですか、調査資料を各地に送ったその集計がなかなかおくれておりまして、一部かなり、五〇%にも至っていない面があったわけです。正直言いまして、私どもの方から催促をむしろさせていただきまして、最近になりましてかなり、その答案と言っちゃなんですけれども、そういうものが戻ってきております。今、その分析をしているところでございまして、その客観的なデータの評価をしなければなりません。

 そういう状況でありますから、今すぐここで答えられる状況ではありませんが、取り急いでやっておりますので、そのときに明白な証拠があるという仮の決定ができるということになっておりますものですから、輸入の増加が重大な損害を与えているということがはっきりしてまいりましたならば、私どもは暫定措置の発動についてはやぶさかではないというふうに考えております。

中林委員 暫定セーフガードに踏み切るということは、やはり農家の人たちが、待っておれない、そういうことにこたえる道筋です。だから、なるべく月内にも決断をぜひやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 最後に、遺伝子組み換え飼料の安全性についてお伺いします。

 現在の遺伝子組み換え飼料については、行政指導ベースの安全審査にとどまっており、食品衛生法に基づく安全審査になっている遺伝子組み換え食品に比べても農水省の方は立ちおくれております。

 農水省にある組換え体利用飼料等に関する懇談会、第四回が開かれ、ここにその議事次第、議事録みたいなものを私いただいているのですが、今月の三月八日に開かれております。この懇談会の中身を見ても、こういう意見がたくさん出ております。それは、「飼料についてもスターリンク等未審査のものを水際で止めるためには法的義務化が必要。」「食品であれ、飼料であれ、義務化すべき。」それから「国民に安心してもらえるものを供給することが必要。法的義務化してもらった方がよい。」などなど。

 この飼料用についても、安全性の確保及び品質の改善に関する法律に基づく安全審査になるよう、急いで法改正をする必要がある。特に、この飼料については、アメリカが大変ずさんな検査を行っている以上、アメリカの事前検査に依拠しようとしているような輸入飼料の検査体制では、国民の健康は守れません。直ちに、この意見にたくさんあるように、法改正と日本独自の水際での検査体制の確立を行うべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

谷津国務大臣 先生の御指摘にありました懇談会は、昨年の十一月からずっと開催をしているところであり、また検討を進めているところであります。

 先般、三月八日に懇談会を開催いたしましたところ、多くの委員から法的義務化が必要であるとの意見等、種々の意見が出されました。これらの意見を踏まえまして、次回懇談会が三月二十六日に予定されておりますので、ここで中間取りまとめをお願いすることといたしております。

 さらに、懇談会の検討結果を農業資材審議会において検討いただくことになるのでありますけれども、私といたしましては、これらの検討をできる限り急ぐように指示しているところでありまして、いずれにしても、遺伝子組み換え飼料の安全性の確保のための検討結果を踏まえて、適切に処理していきたいと思っております。

中林委員 時間が参りましたけれども、その検討を踏まえてということなんですけれども、そうすると、省政令の改正ということで、食品衛生法と同じように、入ってきたものを禁止させていくことができる、そういう法的なことができるということになるわけですので、ぜひ、改正の方向で頑張っていただきたい。もう一言だけお願いします。

谷津国務大臣 いずれにしましても、懇談会それから検討会、その方向を見定めて、私の方では対処していきたいというふうに思っております。

中林委員 終わります。

堀込委員長 次に、山口わか子君。

山口(わ)委員 山口でございます。農林漁業金融公庫法の一部を改正する等の法律案について御質問をさせていただきます。

 今まで多くの方から御質問がございまして、同じような質問になってしまうと思いますけれども、最後ですので、確認の意味でお答えをいただきたいと思います。

 まず最初に、今回の法律改正ですが、農村基本法の目指す効率的かつ安定的な農業経営の育成を図るために、意欲ある担い手に対してきめ細かな経営支援を行うためのものだということでございますが、農水省は、農林公庫資金がこれまで果たしてきた役割をどのように評価しておられるのか、また、担い手育成や経営支援、農家負担軽減対策などにおきまして、これまでの融資制度ではどこに問題があったのか、お答えをいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 まず、これまで農林公庫資金が果たしてきた役割でございます。

 先生も御承知のとおり、農林公庫資金は、自然条件に左右され、収益性が低いという農林漁業の特性に対応をいたしまして、その生産力の維持増進あるいは食料の安定供給確保というために必要な長期、低利の資金を融通するという目的を有しております。

 具体的にこれまで果たしてきた役割を見ますと、例えば、農業分野におきましては、農業生産の主体となります主業農家の約三割が公庫資金を利用している、また圃場整備事業のうち公庫資金を利用している事業が全体の八割強ということでございまして、経営基盤の強化でございますとか、生産基盤の整備に公庫資金が活用をされているわけでございます。また、食品産業向けの融資につきましても、中山間地域の活性化あるいは農林漁業との連携といった面で、生産サイドと結びついた資金利用がされているわけでございます。

 これまで、例えば、負債整理資金についてどのような問題があったかということでございます。従来の農林公庫の負債整理資金は、自作農のみが対象でございまして、借地型あるいは施設型の農業経営が対象になっていなかった。あるいは、いわゆるリリーフ資金として制度資金の借りかえも行われておったわけでございますけれども、これが、対象となりますのが毎年の償還額、その年に来た償還額の借りかえしかできなかった。それから、負債整理資金を借りている方には、なかなか前向き投資のための融資が行われていなかった等々の問題が指摘をされておりました。

 今回、負債整理資金の大幅な見直しを行いまして、借地型、施設型の経営も貸付対象にし、あるいは、制度資金の償還負担というものをより一層軽減するという観点から、最高十年間の計画期間中の償還額を一括前倒しして融資できるようにした、あるいは、負債整理と前向き投資を一体的に融資できる資金を創設した等の改善を行ったところでございます。

山口(わ)委員 ただいまお答えをいただきました内容についてですけれども、今回の改正では、今お答えがありましたように、新たな農業経営資源活用総合融資ですとか、認定農業者育成確保資金、農業経営維持安定資金などが創設されるわけですが、資金の名称が、推進から確保に、そして自作農や農家から農業経営に変更されているわけです。

 先ほど御説明いただきましたので確認の意味ですが、これまであった資金制度と新制度の違いはどこにあるのか、資金相互の違いがどこにあるのか、それぞれの貸し付けをする場合に、どのような対象者を想定しておられるのかをお伺いしたいと思います。

須賀田政府参考人 今回の創設されます新資金でございます農業経営維持安定資金は、これまでの自作農維持資金が対象としていた自作農に加えまして、先ほど申し上げましたように、借地型、施設型経営も対象に加えたわけでございます。それから、食料・農業・農村基本法等の趣旨に従いまして、多様な担い手を育成するということで、農家だけではなくて法人経営も融資対象としているという趣旨を明確にするということが指摘されていたわけでございまして、資金の名称として、自作農、農家という言葉を用いなかったのはそのためでございます。

 したがいまして、この資金内容でございますとか貸付対象者は、従来より拡充をされているものでございます。

山口(わ)委員 そういう拡充された部分をやはりきちっと説明をしていただければいいんじゃないかというふうに思っております。

 農水省が作成した統計によりますと、農家の借入金というのは年々増加をしているわけです、それは先ほどからいろいろな質問に出ておりますけれども。本当に、借金漬けになってしまっていまして、借金を返済するために仕事をやっているようなものになってしまっているわけです。人間だれでも借金するということは気持ちのいいものではありませんし、できることなら借金をしないで農業経営ができれば一番いいというふうにだれでも思っていると思います。特に農家の皆さんは、まだまだ歴史的な経過も社会的にも古い感覚をお持ちですから、特に借金については精神的なショックもあるのではないかというふうに思っております。

 農水省は、新たな農業経営資源活用総合支援対策ということで、公庫資金の創設で担い手の育成ですとか経営安定、農家負債の軽減について、そういう借金をしている皆様に対してどのような効果、どの程度の効果を見込んでおられるのか、御説明をいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 食料・農業・農村基本法の第二十一条におきまして、「効率的かつ安定的な農業経営」、これは、我々は、主たる従事者の一人当たりの生涯所得が他産業と遜色のない水準を上げ得る経営というふうに解しておりますけれども、そういう経営が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造を確立するということが規定をされておるわけでございます。

 そして、昨年の三月に農林水産省が公表いたしました農業構造の展望におきましては、効率的かつ安定的な農業経営の具体的な姿といたしまして、家族農業経営で三十三万から三十七万経営体、法人経営で三万から四万経営体というものを育成するということを平成二十二年を目標年次として展望しているところでございます。

 一方で、現実の姿を見ますと、やはり、先生御指摘のように、例えば平成十一年末の主業農家の借入金、平均で六百三十三万円ということでございます。地域的には、北海道が千九百五十一万円、都府県が四百七十五万円ということでございまして、平均的に見ましても、現下の厳しい農業情勢のもとで借入金対応は増大をしている状況にございます。

 こうした問題に、今回創設されます経営体育成強化資金あるいは農業経営維持安定資金がどのような役割を果たすかということでございます。

 数量的にどうのこうのということは申し上げられませんけれども、これまで以上に農家の負債問題に適切に対応し、農家負担の軽減あるいは意欲ある担い手の育成によりきめ細かな対応をすることとしておりますので、そういう意欲ある担い手の育成に資するものというふうに期待をしておるところでございます。

山口(わ)委員 いずれにしましても借金をすることには変わりがないというふうに思いますので、できれば借金をしなくても済む、そういう農業経営ができるような農水省としての施策もぜひこれからしていただきたいというふうに思っています。

 続きまして、この新たな公庫資金については、今御答弁がありましたように、期待と需要が多くなるというふうに思っておりますが、そこで、私も素人ですので、素朴な質問で大変恐縮ですけれども、意欲ある担い手とはどういう人たちのことを指すのか、そこをちょっと御説明いただきたいと思います。

 なぜかと申しますと、今でも黙々とまじめに今の仕事、農業だけを一生懸命やっている皆さんもいらっしゃいますし、それから、今、現状の仕事で手いっぱいという、それでも精いっぱい農業をしていらっしゃるという方もいらっしゃるわけで、こういう農家というのを意欲ある農家というのかどうか、あるいはその意欲ある農家というものの判断基準はどこにあるのか、農水省にこうした農家は融資の対象にならないという基本的な考え方があるのかどうか、お伺いしたいと思います。

須賀田政府参考人 いわゆる意欲ある担い手と我々は使っておりますけれども、厳密な定義があるわけではございません。

 我々が資金等で使っております意欲ある担い手といいますのは、先ほど申し上げました基本法で定めます効率的かつ安定的な農業経営、すなわち、主たる従事者の一人当たりの生涯所得が他産業と遜色のない水準の生涯所得を上げ得る経営を目指す経営、これを意欲ある担い手というふうにとらえまして、具体的な資金の対象としては、例えば現実の制度としては、認定農業者制度がございます。これは目標を持って生産性の向上に取り組む経営でございますので、そういう経営を育成していく、そのための資金制度、スーパーLでございますとか今度新たにつくりました資金でございますとか、そういうもので現実には育成確保をしていきたいというふうに考えているところでございます。

山口(わ)委員 この意欲ある担い手というのは、伺ってもちょっと抽象的で、実際に現場で農家の皆様が担い手と認定していく上でいろいろな不都合が出ないように、ぜひよろしく御配慮をいただきたいと思います。

 農業経営資源活用総合支援対策の一環としまして、都道府県経営改善支援センターなどで、普及センターとか農協、融資機関や各分野の民間専門家の連携と役割分担の中で、経営診断や経営相談を実施していくことになっています。担い手を育成していくためにはこのような経営支援や指導を行う体制の整備は大切だと思います。

 そこで御質問したいと思いますけれども、新たな資金制度の融資を受けようとする場合には、この支援センターに事前に相談をしなければならないのでしょうか。システムとしてはどのようになっているのかをお伺いしたいと思います。実際にはこの支援センターが、意欲ある農家とそうでないと思われる農家を選別するとか、新たに融資を受けられる場合にも農家の生活全般にわたって口出しをするようなことがあるのではないかという心配がございますので、その点についてお伺いしたいと思います。

須賀田政府参考人 農林公庫資金等の融資に当たりましては、基本的には金融機関が定めております融資の基準に適合すれば借り受けが受けられるわけでございます。ところが、現実を見てみますと、経営の現実の状況の認識でございますとか、経営改善の目標の達成の見通しでございますとか、あるいは融資の返済の可能性でございますとかで、借り受けしたい人と融資する方の意向がなかなか一致しない、それが融資が遅延するあるいはトラブルが起こる原因になっておるわけでございます。やはり、融資の返済可能性、経営改善見通し、こういうものを借り受けられる人が客観的にも見通せるような目標を持って経営改善に主体的に取り組んでいくということがこの融資の前提になろうかと思うわけでございます。

 そういう意味で、経営改善支援センター、あらゆる分野の方々に集まっていただきまして、経営診断あるいは経営改善に向けたあり方等について支援をするという体制になっておるわけでございまして、決してこれに相談しないと融資できないというわけではございませんけれども、やはりそういう的確で迅速な融資を受け得る一助となるのではないかということで、我々はこういう経営改善センターを設けているところでございます。

山口(わ)委員 実際に借りたい人は、自分自身では一生懸命経営を努力していこうと思っている人たちだろうと思いますし、意欲を持って農業を進めていこうと思っている人たちなんですけれども、実際に現場でそういうふうに、例えば選別をされてしまったのではないかとか、やはりこんな状況では借りられないんじゃないかというような不安を抱くようなことがないように、ぜひ農家の立場に立って支援をしていただけるようにしていただきたいというふうに思っております。

 私としましては、この資金制度が有効に活用されまして、それぞれの所期の目的が達成されるように願っているわけですけれども、これらの資金が果たして目的達成のために有効に使われるかどうかということが心配になります。例えば、借金の負担を軽減するためにまた借りかえ融資を願っている農家に迅速に融資されることになるのかどうかということも心配になるわけです。

 確かに、新たな資金制度は農家にとっては喜ばしいとは思いますが、しかし、幾ら新制度の資金が創設されても、そうでなくても農家は多額の借金を抱えているわけです。その農家にさらに融資をするというようなことになりますので、普通ではなかなかこういうことは考えられないと思います。そういう農家が不安を抱くような心配というのがあるのでしょうか。先ほどからいろいろ御答弁をいただいていますが、再度お答えをいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 確かに、先生おっしゃるように、多くの借金を抱えている農家は将来に不安を持っているということでございまして、この新しく創設をいたしました負債整理資金が迅速かつ適切に融資されるためには、やはり経営上の問題点あるいは経営改善計画の実行可能性というようなことについて、先ほど申し上げましたような経営改善支援センターであらゆる分野の専門家から診断を受ける、それで可能性が出てくれば融資機関に融資申し込みをするということで、適切な融資が実施されるようにしたいというふうに考えております。

 特に、やはり担保力が十分でない方も含まれておられるというふうに思うわけでございまして、この点に関しましては、農林公庫資金について、担保、保証人の徴求につきましては、画一的に行わずに、経営実績、経営改善努力、こういうものを勘案した弾力的な運用に努めるよう指導していきたいというふうに考えているところでございます。

山口(わ)委員 今お話がありました担保の件についてですけれども、今、土地などは担保物件の価値は非常に下がっているわけです。しかも、多くの農家は、現在抱えている借金で、既に自分の土地などは担保に入っているだろうと思われます。担保物件の価値の下落が著しい場合の措置や、新たな担保がない場合に保証人がいない場合の融資はどうなっていくのでしょうか。このあたりの手当ては考えていらっしゃるのでしょうか。つまり、新たな担保や保証人は求めない、農家に新たな負担を求めないということになるのかどうか、お伺いしたいと思います。

 農家は、連帯し合って相互に保証人になっている場合が多いわけですが、新たに借金をしても事業が立ち行かなくなった場合に、連帯している人に迷惑がかかることを心配しまして、心理的に借りられないという人もいるのではないかというふうに思うわけです。意欲ある担い手に対するきめ細かな経営支援を行うということですから、こうした借りたくても借りられない人たちへの対策というのも大切だと思います。農水省におかれましては、この新たな資金制度でそのあたりをどうしようとしていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

須賀田政府参考人 基本的に農林公庫資金は設備資金でございますので、融資の対象となる物件が担保にとれるわけでございます。それを超えるような部分につきましては、先ほど来申し上げておりますように、借り受け者の経営実績あるいは将来性、こういうものを積極的に評価いたしまして、融資対象物件以外の担保負担をできる限り軽減するというふうなことを基本的には指導していきたいと思っております。

 それから、農林公庫資金を農協に転貸して貸し付ける場合には、農業信用基金協会の債務保証が可能でございますので、このようなものも利用していただけるよう進めていきたいというふうに思っております。ちなみに、こういうようなことは既に農林公庫を通じて指導をしておりまして、公庫資金の中には担保も保証人もなしで借り受けている例もあるわけでございます。

山口(わ)委員 銀行の不良債権もこれから自主的に回収していかなければいけないということも出てきまして、私の地域でもいろいろな相談を受けるわけですが、なかなか信用基金協会も、信用基金協会が貸せるわけではないのですけれども、なかなか保証をしていかないようなケースも出てきているようでございます。農家の皆さんは、やはり何といっても厳しい財政状況にあるわけですから、その辺は十分酌んでいただいて、借りることがそんなに精神的な負担にならないように、ぜひ御配慮をいただきたいというふうに思っております。

 続きまして、農水省ではJAS規格に基づく有機農業の推進ということを進めていらっしゃるというふうに思っていますが、有機農業や無農薬農業に転換しようとしている担い手への融資は想定されておりますでしょうか。

谷津国務大臣 有機農業の件でありますが、有機農業や無農薬農業等については、生産者の方々がさまざまな工夫をなされております。そういう中で、消費者の健康あるいは安全志向等に対応する農業生産のあり方の一つとして、私は重要であるというふうに考えております。

 これがために、農林水産省といたしましては、有機農業等の振興とJAS法に基づく有機農産物の表示制度を車の両輪といたしまして、有機農業への取り組みを強力に今進めているところでございます。具体的には、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律によりまして、金融あるいは税制上の支援の措置やあるいは技術情報の提供、堆肥散布によるところの土づくりに要する経費への助成等の措置を今講じているところであります。

山口(わ)委員 ありがとうございました。今消費者の一番望んでいるのは、何といっても有機農業、特に無農薬農業を望んでいるわけですし、やはり安心して安全な食品を食べられるような農業の確立というのは、これからも大変重要になってくると思いますので、さらに支援対策を講じていただければありがたいと思っております。

 最後ですが、一昨年に引き続きまして昨年も、お米の生産者価格は急激な値崩れを起こしています。このような事態が毎年続くようなことになりますと、稲作農家は完全に崩壊してしまうのではないかという心配をしております。生産者は既にもう水田面積の三分の一に達する生産調整を三年間にもわたって実施しているわけで、それにもかかわらず価格暴落が起こっているということは、やはり政府の需給調整政策が機能しているのかどうか、こういう心配というのは、私に限らず全農家の皆様が抱いておりまして、いろいろなところでそのことを私は言われるわけです。このような状況が続きますと、農業に対する魅力もなくなってきますし、農水省のおっしゃいます担い手の育成も極めて難しくなってくるのではないかというふうに思っております。

 お米に限らず、先ほど中林委員もおっしゃったように野菜なども大変暴落をしておりまして、農水省の出していらっしゃる統計を見ても、がたっと減ってきているというようなこともございますので、こうしたことに対する対策を、大臣、最後にお答えいただきたいと思います。

谷津国務大臣 農産物の価格政策につきましては、食料・農業・農村基本法に基づきまして、消費者の需要に即した農業生産を促進する観点から、農産物の価格が需給事情や品質評価を適切に反映して形成されるように、主要品目ごとに見直しを今進めているところでございます。

 あわせて、価格政策の見直しに伴いまして、農産物の価格の著しい変動が、先生おっしゃいました育成すべき農業経営に及ぼす影響が出てまいりますから、これを緩和するために、価格下落の相当部分を補てんする経営の安定対策を今講じているところでもございます。

 今後とも、これらの施策を通しまして、需要に応じた農業生産が促進されるとともに、意欲ある農業者の経営の安定と発展が図れるように努力していきたいというふうに考えております。

山口(わ)委員 私も、実は農家から直接お米を買っております。つい先日も、今まで三十キロ買って一万円だったのですけれども、去年までは一万円だったのですが、先日買いましたら九千円と言われてびっくりしまして、本当に気の毒だなというふうに思ったのですが、やはり、生産調整をしても本当に農業が継続できるし、将来にも夢があるというふうに思えるような農業をしていかない限り、やはり農家の人たちは、あいている田んぼを見るたびに悲しい思いになってしまいますので、意欲ある農業ができるような施策、具体的な施策をこれからもぜひ実現していただきたいというふうに思っていますし、農業が確立されない限り日本の国は私はだめになっちゃうというふうに思っていますので、ぜひその辺は強力に推し進めていただきたいと思います。

谷津国務大臣 先生今おっしゃったように、育成すべき農業経営というのが大事であろうと思うのでありまして、経営を全体としてとらえまして、そしてその安定を図る観点から、価格の変動に伴う農業収入または所得の変動を緩和する仕組み等につきまして、その品目ごとの価格政策の見直しや経営安定対策の実施状況、あるいは農業災害補償制度との関連を勘案しながら、この辺についてはしっかりと検討していきたいというふうに考えております。

山口(わ)委員 どうもありがとうございました。

堀込委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。

松本(善)委員 私は、日本共産党を代表して、農林漁業公庫法の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。

 本改正によって、公庫は財投機関債を発行できるようになり、市場評価による効率化と称して、公庫の運営に市場原理が持ち込まれることになります。

 公庫は、産業基盤の弱い農林漁業者に対して、毎年一般会計より九百億円前後の利子補てんを受けながら、低利かつ長期の貸し付けという、市場ベースでは到底成り立たない業務を行っております。ここに市場原理を持ち込めば、農林漁業に対する長期かつ低利の融資を行うという公庫の目的に反することが発生しかねません。

 実際、農協は、金融のグローバル化に対応し、市場原理の中で市中金融機関と対等に競争していける体制を構築する必要があるとして合併を進めておりますが、この中で、たくさんの負債を抱えた農家への離農勧告など、深刻な事態が生まれております。農林公庫への市場原理の導入によって、同じような問題が起こりかねません。

 新設される農業経営体育成強化資金、農業経営維持安定資金の二つの資金は、現行の制度の使途、用途を拡充したもので、農家の負債軽減の強い要望に沿ったものであります。しかしながら、食料・農業・農村基本法路線の規模拡大政策に沿ったものであるので、本日の質疑でも明らかになりましたように、現行の制度では貸し出しの前提としていない経営診断や経営相談等を受けなければ貸し付けを受けられず、必ずしも使いやすい制度になったとは言えません。

 以上、反対の理由を述べて、討論を終わります。

堀込委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、農林漁業金融公庫法の一部を改正する等の法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、岸本光造君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブの六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブを代表して、農林漁業金融公庫法の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    農林漁業金融公庫法の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、意欲ある担い手を確保することにより、「食料・農業・農村基本法」の目指す効率的かつ安定的な農業経営体を広範に育成し、地域の特性に応じた望ましい農業構造が確立されるよう、左記事項の実現に努め、もって我が国農業の持続的発展に万全を期すべきである。

      記

 一 農業経営資源活用総合支援対策において、農家負債の負担軽減等が円滑になされるよう、農家の立場に立った経営診断・相談の的確な実施など、経営体育成強化資金、農業経営維持安定資金等の農業経営資源活用総合融資の資金を適切に融通するための万全の体制を整えること。

   また、これら資金の貸付けに当たっては、個々の農業経営の実情に応じ、迅速かつきめ細かな融資がなされるよう、融資手続きの簡素化・合理化を図るとともに、物的担保や保証人の徴求について弾力的な運用に努めること。

 二 農業経営資源活用総合融資の資金の融通を受けた者等に対し、実情に応じた着実な経営改善が図られるよう、農業改良普及センター等の指導に万全を期すること。

 三 農業経営資源活用総合融資の資金の融資枠については、今後の資金需要を踏まえつつ、適切に確保すること。

 四 意欲ある担い手を育成・確保するため、農地保有合理化事業を一層推進するとともに、経営を単位とした農業経営所得安定対策の確立に向けての検討を促進すること。

 五 農家負債の現状にかんがみ、農家に対して民事再生法の適用がある場合には、農林漁業金融公庫も農家の実情に応じて適切な対応をとること。

 六 財投機関債の公募発行による資金の自己調達を行うに当たっては、農林漁業金融公庫の業務運営の一層の効率化を期するとともに、農林漁業者に対して一般の金融機関が融通することを困難とする長期かつ低利の資金を融通する同公庫の使命が損なわれることのないよう、十分に留意すること。

  右決議する。

 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて既に委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略をさせていただきます。

 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

 以上です。(拍手)

堀込委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣谷津義男君。

谷津国務大臣 ただいま法案を可決いただきまして、まことにありがとうございます。

 附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

堀込委員長 次に、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、理事会等において協議いたしました結果、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得ました。

 それでは、本起草案の趣旨及び内容につきまして、委員長から御説明申し上げます。

 乳業施設資金融通制度は、酪農及び乳業の健全な発展に資するため、乳業を営む者に対し、農林漁業金融公庫から、その乳業施設の改良、造成等に必要な資金を融通することを目的として昭和三十六年に創設されました。

 自来、本制度による貸付実績は、平成十一年度までに四百二十三件、約六百一億円に上り、中小乳業を中心とした乳業の近代化及びこれを通じた酪農の健全な発展に大きな役割を果たしてまいりました。

 しかしながら、我が国酪農・乳業の安定的発展を図っていくためには、牛乳及び乳製品の製造販売コストの低減を強力に推進し、我が国乳業の国際競争力の強化を図ることが重要な課題となっております。

 また、先般の加工乳等に起因する食中毒事故の発生を契機として、牛乳及び乳製品に対する信頼の回復が強く要請されており、牛乳及び乳製品について、流通も含めた施設の近代化が喫緊の課題となっております。

 本案は、こうした課題にこたえるため、本年三月三十一日をもって期限切れとなる本資金に係る臨時措置をさらに平成十八年三月三十一日まで五年間延長するとともに、本臨時措置の対象として、牛乳または乳製品の流通に必要な施設を加えようとするものであります。

 以上が、本案の提案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

堀込委員長 お諮りいたします。

 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております起草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とするに決定いたしました。

 なお、ただいま決定いたしました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会




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