第6号 平成13年3月28日(水曜日)
平成十三年三月二十八日(水曜日)午前十時三分開議
出席委員
委員長 堀込 征雄君
理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君
理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君
理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君
相沢 英之君 岩崎 忠夫君
梶山 弘志君 金田 英行君
上川 陽子君 北村 誠吾君
倉田 雅年君 栗原 博久君
小島 敏男君 後藤田正純君
左藤 章君 佐藤 勉君
七条 明君 園田 博之君
高木 毅君 西田 司君
浜田 靖一君 福井 照君
三ッ林隆志君 村田 吉隆君
古賀 一成君 後藤 茂之君
近藤 昭一君 佐藤謙一郎君
鮫島 宗明君 津川 祥吾君
筒井 信隆君 永田 寿康君
楢崎 欣弥君 三村 申吾君
江田 康幸君 高橋 嘉信君
中林よし子君 松本 善明君
菅野 哲雄君 山口わか子君
金子 恭之君 藤波 孝生君
…………………………………
議員 津川 祥吾君
議員 筒井 信隆君
議員 三村 申吾君
農林水産大臣 谷津 義男君
農林水産副大臣 松岡 利勝君
厚生労働大臣政務官 奥山 茂彦君
農林水産大臣政務官 金田 英行君
政府参考人
(農林水産省総合食料局長
) 西藤 久三君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 小林 芳雄君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 須賀田菊仁君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長
) 木下 寛之君
政府参考人
(農林水産技術会議事務局
長) 小林 新一君
政府参考人
(水産庁長官) 渡辺 好明君
農林水産委員会専門員 和田 一郎君
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委員の異動
三月二十八日
辞任 補欠選任
岩倉 博文君 左藤 章君
栗原 博久君 村田 吉隆君
園田 博之君 佐藤 勉君
後藤 茂之君 鮫島 宗明君
佐藤謙一郎君 近藤 昭一君
同日
辞任 補欠選任
左藤 章君 倉田 雅年君
佐藤 勉君 園田 博之君
村田 吉隆君 栗原 博久君
近藤 昭一君 佐藤謙一郎君
鮫島 宗明君 後藤 茂之君
同日
辞任 補欠選任
倉田 雅年君 梶山 弘志君
同日
辞任 補欠選任
梶山 弘志君 三ッ林隆志君
同日
辞任 補欠選任
三ッ林隆志君 岩倉 博文君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)
農業者年金基金法の一部を改正する法律案(筒井信隆君外二名提出、衆法第一一号)
農林水産関係の基本施策に関する件
輸入農林水産物に対するセーフガード暫定措置の発動に関する件
――――◇―――――
○堀込委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案及び筒井信隆君外二名提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君、農林水産省生産局長小林芳雄君、農林水産省経営局長須賀田菊仁君、農林水産省農村振興局長木下寛之君、農林水産技術会議事務局長小林新一君及び水産庁長官渡辺好明君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○堀込委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村太郎君。
○木村(太)委員 委員長、大臣初め皆さん、おはようございます。自由民主党の木村太郎です。
まず、きのう谷津農林水産大臣が、いわゆる三品目のセーフガードの暫定発動に向けて前向きに頑張るという決意を明らかにされたようでありまして、関係省庁に働きかけをしながらも、政府一体の中で、その中でまた農林水産省、谷津大臣がリーダーシップを発揮していただきまして、農家の期待にぜひこたえていただきますことを強く要望しておきたいと思います。
私、議題となった件で、政府案の農業者年金基金法の一部を改正する法律案について、政府に対してまず御質問してまいりたいと思います。
農業者年金制度というのは、昭和四十年代前半において、いわゆる二階部分の年金制度を持ち合わせていなかった農業者の大きな期待を集めて制定されたものだと思います。このような農業者年金制度は、農業経営の若返りと規模拡大、あるいは細分化の防止を促進する経営移譲を行った方に対して高い経営移譲年金を支給することを通じ、構造政策の遂行手段として一定の役割をこれまで果たしてきたことは事実だと思っております。
しかし、農業の分野でも、高齢化の進展や担い手不足等によりまして状況の変化が著しく、実質的には破綻状態に至ったことから、今回、抜本的に改革が行われることになった、こう思っております。
その検討過程において、我が自由民主党内においても小委員会を設置しまして、農業団体はもとより、現場の農家の方々の意見を集約しつつ、実に二年近くに及ぶ熱心な議論を通じて改革案を取りまとめてきたわけであります。
そこで、小委員会の初代の座長としても御尽力をいただいた御経験もある谷津農林水産大臣にお伺いしたいと思いますが、政府案について、どのような経過を経て取りまとめ、そして農家の皆さんの要望がどのように反映されているのか、まずお尋ねしたいと思います。
○谷津国務大臣 おはようございます。ただいまの木村先生の御質問に対してお答えを申し上げます。
今回の農業者年金制度の改正は、平成十一年の四月、当時の厚生省と農林水産省との共同で農業者年金制度研究会を設置いたしまして検討を開始したものでございます。その際、この研究会には、専門委員として受給者、加入者等十一名にも参加をいただきまして、これまで十二回の論議を重ね、平成十一年の十一月に中間取りまとめを行い、これをもとに各方面の調整を行ってきたところでございます。
また、農業団体におきましては、農業委員会系統、JA系統が受給者、加入者の生の声をくみ上げまして、平成十二年の一月から四月にかけまして意見集約を行いました。これを踏まえまして、昨年五月から七月にかけまして、地方の農業年金制度関係者と農林水産省との間で率直な意見交換会を計四回行いました。
また、自由民主党といたしましても、総合農政調査会に農業者年金等に関する小委員会を設置いたしまして、平成十一年六月から一年余にわたり計二十六回にわたる論議の中で、加入者、受給者からのヒアリングについても計三回を実施してきたところであります。
こうした農村現場からの意見の積み上げ等を踏まえまして今回改正法案を提出したところでありまして、特に、農業年金制度を再構築して継続すること、受給者の給付額の削減を最小限にとどめること、加入者に掛金の掛け損が生じないような単価を設定すること等の農村現場の切実な声を反映してきたところでございます。
○木村(太)委員 ただいまの大臣のお答えを聞いても、ここに至るまで現場の声あるいは農家、農業者の皆さんの声、あるいは団体の声を、数を考えてもかなり細かく意見聴取しながらまとめてきたんだなという印象を持ったわけであります。今大臣の答弁の中にも、生の声ということがありました。手続的にもあるいは実態的にも、政府案というものは農家の皆さんの意向というものを十二分に反映しているという印象を持ったわけであります。
そこで、民主党案が果たして農家の声を十分組み入れているのかどうかということをお尋ねしたいと思うわけですが、民主党の案をまとめるまでに、その検討の過程で、具体的に農家の方々あるいは農業団体の方々のヒアリングや意見聴取などどのくらい行ってきたのか、事実関係だけをお答えいただきたいと思います。
○筒井議員 今政府の方から生の声という話がありました。民主党の方は、各団体、総合して聞くということはしませんでしたが、各議員が各農家から直接いろいろな意見を聴取したわけでございます。
その結果、全体としては、支給額のカットはもちろん望まない、それから、農業者年金制度を望むどころか、逆に不信感の方が強い、そういう結果でございました。その結果は、また今までの農林省の調査結果とも合っているわけでして、農林省も、農業者のこの制度に対する不信が高まっている、信頼が低下している、これは認めているわけでございまして、その具体的な事実として、保険料の収納率が大幅に低下をしている、こういう事実がございます。
それに、さらに強調したいのは、農業後継者になった人で、農業者年金に加入資格がある人で、しかし加入していない人が五割を超えているという事実がございます。もし本当にこの年金制度を望んでいるならば、こういう事実結果は出てこない。(木村(太)委員「委員長、委員長」と呼ぶ)
○堀込委員長 ちょっと待って。
簡潔に答弁してください。
○筒井議員 こちらの方は、今、事実関係、こういうところからこういう判断をした、こういう結果を申し上げているのです。事実関係ですよ。こういう事実からこういう判断をしたという結果でございますから……
○堀込委員長 簡潔に答弁してください。
○筒井議員 はい。だから、私たちが個別に各農家から聞いた結果と、そういう数字はまさに合っている。だからこういう判断をしたわけでございます。
○木村(太)委員 委員長にお願いしたいんですが、私がお尋ねしたのは、農家や農業団体等にどういった意見聴取の仕方、どのくらいやってきたのかを、事実関係だけをお尋ねしたわけですから、そのことをそのままお答えいただきたいし、今の長い答弁の中では、個々の議員が現場の農家の皆さんと詰めた、そのことを言っておりましたから、それを答えていただければ、それで私は答弁として聞くわけですので、ぜひ委員長、適正な議事進行をお願いしたいと思います。
個々に聞くのでしたら、私たちも選挙区に帰りまして、現場の農家の方々、私のうちも農業をやっていますので、農村地域に住む者としても、個々に、我々自民党、与党の議員の皆さんも現場に帰って声を聞いている、十二分にそういった対応はしているわけであります。党としてどういう手続あるいは過程の中で意見を聞いてきたのかという事実関係を聞いたわけですので、きちっと答えていただきたいと思います。
でも、今の答弁を聞きましても、政府案をまとめるに当たっての谷津大臣の、政府側の取り組みと比べた場合でも、やはり政府サイドの、まとめるに当たって現場の声をつかみ取る手続そのものも政府案の方が十二分に汗をかいている印象を持ったわけであります。
そこで、次の質問に入りたいと思いますが、農業者の切実な願いであります新しい農業者年金制度、大臣にお伺いしたいと思います。
食料・農業・農村基本法が制定されまして、二十一世紀における農政の課題が明確に提示されたわけであります。現下の担い手不足と高齢化の進展の中においては、他産業並みの労働時間で他産業と遜色ない生涯所得を上げ得る効率的かつまた安定的な農業経営の確保、育成が重要な課題になっていると思います。
こうした政策課題に対応して、農業者の老後所得の充実を通じて農業者の確保を図る。このことを、今般、新しい農業者年金制度を措置し、農業者が老後の安定と安心を展望しながら農業にいそしむこと、これを目的にすることはまことに時宜を得た提案だと思っております。
こうした重要な使命を担う新制度において、幅広く農業者を確保する観点からも、どのくらいの加入者を見込み、どのようにその目標に取り組んでいくのか、大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
○谷津国務大臣 新しい農業者年金制度は、我が国の農業の担い手を幅広く確保する、そういう観点から、加入資格を緩和しまして、また、農地の権利名義を有しなくても、農業に従事する者であれば加入することができるとしておるところであります。
新制度移行後の当面の加入者数につきましては、現行制度からの移行予定者として保険料継続的支払い者等の約二十五万人、そして新制度に新たに加入する者といたしまして現行制度未加入認定農業者等の約四万人を加えまして、全体で約三十万人を見込んでいるところであります。
新制度への加入に当たっては、現行制度加入者や未加入者、新たに加入対象者となる配偶者あるいは後継者、そして施設型経営者等に対しまして法律案の内容の周知徹底を行うとともに、法律が成立するならば、わかりやすいパンフレット、あるいは農業者に重ねてPR等を行いまして、また関係団体と一致団結して、農業者に制度の趣旨、内容を御理解いただくとともに、各都道府県段階で将来への加入目標を定めて取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
○木村(太)委員 具体的な目標の姿が御披露あったわけですけれども、もちろん目標があっても、そのとおりにいかないときもあるでしょう。しかし、目標を持つことによって、その過程の努力の姿勢というのがやはり違ってくるわけでありますので、ぜひ大臣を先頭に、目標に向けて御尽力をいただきたいと思います。
そこで、大臣の力強い決意がありましたけれども、谷津大臣から見た場合に、我々の印象でいいますと、民主党案は、新制度は要らない、制度そのものを廃止するといった考え方があるようでありますけれども、このことを大臣はどう受けとめておられますか。
○谷津国務大臣 近年の我が国の農業の自給率、食料自給率の低下、あるいは耕地利用率のこれまた低下、そして耕作放棄地の増大等に対応いたしまして、国民に対する食料の安定供給を確保するためには、農業の担い手を確保することが喫緊の課題であることは申すまでもございません。農業の担い手を確保するためには、農業者の生涯所得の充実を図る、そして農業を職業として選択し得る魅力あるものとすることが必要であると考えております。
このためには、現役時代の農業所得のみならず、リタイア後の所得の重要部門を占める、これが年金所得ということになるわけですが、その確保を通じまして老後所得の充実を図ることも重要であると考えているところであります。
このために、平成十二年財政再計算とあわせまして、農業者年金制度のあり方につき幅広く検討するため、平成十一年四月以降、足かけ二年をかけまして、農業団体が農村現場の声を積み上げて行われた意見集約等を踏まえまして、現行制度を根源から見直しいたしまして、将来の年金を安心してもらえるよう積立方式に切りかえ、かつ、意欲ある担い手には保険料助成を行うという制度へと農村現場の要望を実現していくことに努めているところであります。
一方、民主党案は、新たな政策年金をつくらず、既存のみどり年金で十分としているところであります。しかしながら、新たな政策年金をつくらないとする民主党案では、これらの農村現場の要望にこたえ切れないのではないか、農業者の理解を得られないと考えているところであります。
○木村(太)委員 私も、全くもって大臣の答弁と同じ考えを持つものであります。我々は、やはり責任ある対応をしていかなければならないと思っております。
次の質問に入りたいと思いますが、次に、年金額のカットなし、あるいは全額国庫負担で処理という大変耳ざわりのよい民主党案について、その中身の現実性と責任性というものを伴っているのかどうか、お尋ねしたいと思っております。
民主党案では、既裁定の年金給付並びに経営移譲年金、農業者老齢年金及び死亡一時金の給付水準は現行の給付水準とする、また、国庫は、給付に要する費用につき、必要に応じて補助するとしておりますけれども、年金額のカットはなし、全額国庫負担で処理という大変耳ざわりのよい案となっております。
政府案は、担い手確保のためにも新制度を創設するとともに、旧制度においては給付の適正化を含む処理を行うものとなっております。これについては、先ほども言ったように、二年間にわたり現場の声をくみ上げつつ、関係方面とそれこそ血の出るような懸命な調整を行い、何とか農業者以外の国民の皆さんからも広く理解が得られるよう、ぎりぎりの結果として政府案は取りまとめたと思っております。
このような経緯を踏まえれば、年金給付の大きな国民負担をお願いする中で農業者自身に何らかの負担を求めないというのは、本当に国民一般に広く理解と納得が得られるのかどうか、甚だ疑問であります。こうした点について、政府側、松岡副大臣の御意見をお聞かせください。
○松岡副大臣 今御指摘ございましたが、実は私も、谷津大臣とともにこの二、三年来、この問題は自民党にありまして農業基本政策小委員会委員長という立場でずっとかかわってまいりましたし、いろいろな議論を積み重ねてきたわけであります。
そして、大変苦渋の中からも、またいろいろなあらゆる観点の突き合わせの中からも、きょう松下先生おみえでありますが、昨年の段階で、松岡、松下、太田提案、こういった形で私どもは一定の解決策というものを提示させていただきました。
これは、あらゆる農業現場、そしてまたあらゆる団体の皆さん方とのいろいろな数十回に及ぶ会合、そういったものを全部踏まえた上で提案をいたしたわけでございます。
その提案の中身は政府案の中に盛り込まれておるわけでありますけれども、今、木村先生御指摘の、民主党の提案についてどう思うか、年金額カットなし、こういったような御指摘であります。
きょうも鉢呂先生と私の対談的な形で農業新聞には出ておるわけでありますけれども、そういったことも踏まえまして、一言で申し上げれば、民主党のおっしゃっておるこの平成十三年十二月三十一日までに所要の法制の整備を行う、新規加入は認めない一方で、年金額のカットは行わず全額国庫負担で処理をする、こういう内容でありますけれども、このこと自体の中に大問題が実は含まれておる、私はこう思っております。
農業者年金基金の残資産は本年十月には底をつきます。民主党案はこれへの国庫の措置がないわけでありまして、年金財政が破綻をし、これはもう極めて実務的にも無責任であると言わざるを得ない、このように認識をいたします。
そしてまた、三千三百……(発言する者あり)黙って聞いてください、黙って。さらに三千三百億円に上る国庫負担、こういったことになりますと、足りなくなったからただ税金を使って穴埋めをする、果たしてこんなことで国民全体の理解が得られるのかどうか、こういった点について大変な問題があると思っております。
また、平成十四年一月現在で、民主党がおっしゃるような現行の給付水準ということにいたしますと、これは現在加入している四十五歳未満の方には掛け損という大変な大問題が生じるわけであります。掛け損というのはあってはならないということであり、農村現場、またそれぞれの皆さんから、絶対そのことだけはということでありまして、私どもはそういったことのないようにいたしております。
したがって、その点も、うっかりしていたということでは済まされないような大問題を含んでいるのではないか。(発言する者あり)私どもの見解を申し上げておりますから、お聞きをいただきたい。
そういったようなことでございまして、一言で言いますならば、今申し上げましたように、私は大変大問題を含んだ無責任な面もいろいろある、こういうふうに評価したいと思っております。
○木村(太)委員 先ほど来、私が耳ざわりのいい案だと言ったことと、副大臣の御答弁では大問題ということで、これもまた私と副大臣の認識が今の答弁でも一致したと思っております。
同じ視点から提出者にもお伺いしたいと思いますが、先日の本会議における提出者の答弁の中で、町長時代に加入を督励した身として、年金額のカットを農家にお願いできないと答弁しておられました。しかし、町長として農業者以外の町民の方にも信任を得ていたと思います。農業者以外の方々についても町長としては思いをしなければならないはずだと思います。
カットなしの民主党案によれば、他の町民の方々に一層の負担を強いるということになるのではないでしょうか。これらの町民の方々は、農業者年金が抜本的改革を必要とするに至ったことについて何ら責任はないわけでありますので、農業者年金に加入している方々以外の人たちに対し、今後の年金支払いに必要な費用すべてをお願いするという民主党案について、どのように説明されるのか、明確にお答えください。
○津川議員 年金額カットなし、それは農業者以外の方々に御理解いただけるのかという点についてお答えをいたします。
まず、金額が本当に民主党案の方が国庫負担が多いのかどうかということからお答えをさせていただきますが、政府案によりますと、給付適正化措置に伴う国庫負担の総額が約三兆六千億円、民主党案の場合ですと、減額しない分、カットしない分、既裁定者の部分だけで計算して二千百億円、あるいは未裁定者の方々も含めれば三千数億円になるかと。これは確定する金額ではございませんが、二、三千億円民主党案の方が多くなる。
その金額を農業者以外の方々にも負担いただくのが理解いただけるかどうかということでございますが、政府案と民主党案を比較させていただければ、政府案は新たな政策年金を設けるということでございます。この費用として年間約百四十四億円を計上するわけであります。
新しい政策年金、もし一年、二年でやめるならその金額でありますが、当然、今後も年金政策でありますから長く続けられることになろうと思いますが、例えば二十年ぐらい続けたとしても三千億円ぐらいになります。まさか二十年で年金をやめるという話にはならないでしょうから、六十年ぐらいという程度で金額を出させていただきますと、単純に掛けただけでも八千六百四十億円、約九千億円の支出があるわけでございます。
この金額を比較した場合でも、農業者以外の方々が感じる国庫負担の金額の多さ、それはむしろ民主党案の方が少なくなるということで、農業者以外の方々も御理解をいただけることと思います。
また、年金支給額をカットするということは、公的年金そのものに対する信用という部分も含めますと、農業者以外の方々に対してもこれは民主党案の方がむしろ御理解をいただける案ではないかというふうに考えるところでございます。
○木村(太)委員 いや、農業者の団体である各団体、あるいは私、今手元にあるのですけれども、これは全国農業新聞の三月二十三日の記事でありますけれども、それこそ農家サイドの団体の新聞にも、見出しとしてはもう全く民主党案に対しては評価していないような記事になっております。しかも解説の中には、具体策を示さずということで、全く民主党案を否定しているような記事でありました。ですので、今御答弁あったこと、それがそのとおりなのかどうか、農家、農業者団体が適切に判断してくれるものと私は確信しております。
そこで、最後にお伺いしたいと思いますけれども、民主党が提示されております農業を再生させるための魅力ある政策についてお尋ねしたいと思います。
先般、筒井議員が党を代表して、趣旨説明の中で、現行の生産調整制度を撤廃して食料安全保障戦略に基づく備蓄と農業者に対する所得補償を行うという構想を表明されましたけれども、この構想は、減反という重圧感から農業者を解放し、また国際貢献にもつながるというあたかもバラ色の構想に見えますが、私たちは大きな問題があると考えます。
まず、米の生産調整については、約一千四百万トンと言われる潜在的生産力が、約一千万トンという最近の我が国の国内消費を大きく上回っている中、これまで三十年にわたって実施されてきたわけであります。これを廃止した場合、需要量をはるかに上回る数百万トンに及ぶ米が国内市場にあふれ出ることは想像するまでもありません。
民主党は、これを海外援助に向けることにより国内市場から隔離することを考えておられるようですけれども、これに要するコストが極めて莫大になるという問題があるのではないでしょうか。
例えば、援助に国産米を用いる場合の内外価格差による差損だけを見ても、トン当たり約二十万円として百万トンで約二千億円、四百万トンだと約八千億円が必要となり、それ以外にも保管料や輸送料など経費が必要であります。
そこで、お尋ねしたいと思いますが、この援助に費やす費用、どの程度に具体的に見積もっているのか、だれに負担を求めるのか、お尋ねしたいと思います。
もう一つあわせて、具体的に援助の見通しがないまま国内生産の調整を放棄すれば、膨大な在庫を抱えることになると思います。そうなれば、米価の下落要因となるばかりでなく、水田の有効利用も進みません。最後は援助用に仕向けられるというのでは、おいしい米をつくろうとする農業者の努力についてもモラルハザードが生じてしまうのではないでしょうか。また、自給率の低い麦や大豆、飼料作物の水田における本格的な生産にもブレーキがかかり、看過できないわけであります。
そこで、民主党の構想による将来の稲作経営の姿と水田の有効利用の姿をどう考えているのか、このような構想の実現は民主党の基本政策であります食料自給率五〇%の実現とも果たして整合性を保てるのか、この二点をお尋ねしたいと思います。
私は、やはり水田というすぐれた生産措置を活用して、米のみならず麦、大豆等の本格的な生産を行い、少しでも食料自給率を上げていくことが正論と思いますし、そのためにも、現状を見きわめて、将来に向けて実現可能な現実性ある施策を打ち出し、取り組んでいくことが責任ある農政であり、責任ある政治と考えるものでありますので、この点を強く指摘しながら、最後の点をお答えいただきたいと思います。
○筒井議員 まず、国際備蓄の提案に関しては、政府自身が今WTO農業交渉で提案している中身でございます。そして、これの内容についてはまだ具体化されていないようでございますが、しかし、世界じゅうに日本政府として、農林省として提案している中身、これに私たちは賛成をしているわけでございます。
私は、さらに具体的に言えば、海外援助用の、援助の需要がたくさんあることも事実でございまして、これに関してはODA予算によって取り組むべきであるというふうに考えております。
そして、減反に関しては、政府は担い手確保、担い手確保と言いますが、三年に一度休んでくれ、そう言いながら農業の担い手になってくれと言ったところで、担い手が確保できるはずがありません。だから減反廃止を提案しているわけでございます。
そして、減反を廃止すればもちろん米価が大幅に下がりますから、そこで所得補償の本格的な導入、これも提案しているわけでございます。所得補償の財源に関しては、稲作経営安定対策あるいは減反補助で三千億円ほど現在使っておりますし、それからWTO農業交渉で黄色の農業保護助成額として七千六百億円ほどあるわけでございまして、農林省予算をそこにやはり集中すべきであるというふうに考えているわけです。
現在、農家のための予算は結構使っておりますが、日本の農政は農家から感謝されていると言えるか。全然感謝されておりません。それはやはり、そういうふうな減反を事実上強制しているからそういう問題点があるわけで、これが最大の原因だと思っております。
それから、今の質問で言うと、誤解があるようですが、減反政策、減反の事実上強制をやめるべきだと言っているんです。しかし、自主的にそれぞれの農家が、あるいは地域において、大豆とか小麦の耕作に合っているところはそっちの方に転作する、これは全然構わないわけでございまして、事実上の強制をやめるべきだと申し上げています。
○木村(太)委員 時間が来ましたけれども、質問したことに答えてください。委員長、お願いしますよ。質問したことに対して答えてください。時間が来ましたけれども、私が質問したことに答えてください、そのままに。
○筒井議員 先ほど、国際備蓄についての費用をどう考えているかという点ですか。その点ですか。
○木村(太)委員 いいですか。それでは、時間が来ましたけれども。
質問したことに答えてくださいよ。援助に費やす費用とかを具体的にどのように見積もりするかを聞いているんですよ。それと、民主党の五〇%という自給率に整合するのかどうかを聞いているんですよ。そのことを答えてくださいよ。
○筒井議員 だから、先ほど、海外援助用の国際備蓄に関してはODA予算によって賄うべきであると。そして、その金額が、百万トンで数千億円、二千億円を超える、これは現在の米価のことから計算すれば当然それが出てくるわけで、当然それを考えているわけです。しかし、先ほど申し上げたように、減反を廃止することによって米価も大幅に下がりますから、その費用はさらに大幅に下がるというふうに考えております。
それから、食料自給率の関係に関しては、先ほど申し上げたように、減反政策を、減反の事実上強制をやめろと言っているわけでして、麦や大豆の方に転作できる、自主的にそれをやることは構わないわけで、そのことによって自給率を高めることは、これは別に、自主的にさらに進めるわけですから、民主党の政策は自給率の高度化とは全く矛盾しておりません。
○堀込委員長 木村太郎君、質問時間が終わりましたので。
○木村(太)委員 答えていないことがあるんですよ。費用をだれに求めるかということをまだ聞いていませんよ。費用の負担をだれに求めるのか。
○筒井議員 国際備蓄、海外援助用に関してはODA予算によって賄う、所得補償に関しては現在の農林省予算の中で賄う、こういうふうに答えているじゃないですか。
○木村(太)委員 時間が来ましたので、委員長、最後にいいですか。
○堀込委員長 木村太郎君に申し上げます。
質問時間が来ましたので、質問をやめてください。
○木村(太)委員 いや、質問はもうしません。
委員長にぜひお願いしたいんですが、質問者の質問に対して具体的に答えがないときは……
○堀込委員長 木村太郎君、時間が来ましたので、質問をやめてください。
○木村(太)委員 委員長の進行もきちんとしていただきたいと思います。
○堀込委員長 それでは次に、古賀一成君。
○古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。
ただいま、冒頭、木村太郎委員より、我が民主党案に対します熱心なる御質問をいただきました。野党である民主党のこの提案に対しましてこれだけの質問を出していただいた、我々の案が相当いいものであると評価していただいておるんだと思っております。
それは、民主党のこの食料安全備蓄構想もさることながら、農業者年金基金法に関する案についても、民主党案、政府案に対抗し得る一つの案だと評価していただいておると私は思っておりまして、この農林水産委員会で与野党が両案を持ち寄ってこうして与野党やり合うというのは、大変いいことだと私は思っております。
そこで、きょうの法案でございます農業者年金基金法の改正についてるる御質問をしたいと思っておるわけですが、またこの前、本会議におきましても質問をさせていただきました。大臣の、大変珍しくといいますか、総理大臣、ほかの大臣に比べまして丁寧なる御答弁をいただいたと思って、その点は大変感謝をしております。
この点についてお聞きしますけれども、実は、私の地元の問題でございます有明海のいわゆる諫早湾干拓問題あるいは防潮堤の開門問題というものが、きのう第三者委員会が開かれて結論を見たことが新聞にも、あるいはきのうのテレビでも出ておりました。この点につきまして、やはり時間が切れる前にぜひお聞きしたいと思いますので、答弁をお願いしたいと思います。
私は、福岡県の柳川生まれでございまして、小さいころから有明海を見て育った男でございまして、秋にはハゼグチ釣り、春には毎年のように潮干狩りに行って、有明海の変貌あるいは漁師さんたちの誇り、そして最近における嘆きというものを本当にこの数十年聞いてきた男でありまして、そういう面では、御担当の農林省の皆様方よりも私は有明海というものを詳しく知っております。
そういう中から本格的にはいろいろな質問をしなきゃなりませんが、これは水産基本法の法律も出るやに聞いておりまして、そこでたっぷり時間をいただきたいんですけれども、今後のために重要な点だけに限ってきょうお聞きしたいと思います。
まず第一点でございますが、きのう行われましたいわゆる第三者委員会、有明ノリ不作対策関係調査検討委員会、結果が出ておりました。テレビでも報道されておりましたけれども、これについて、時期がはっきりしていない、あるいはその提言を受けて今後どうするんだろうということについて、依然疑心暗鬼がまだ残っております。
私は、一つの委員会の提言というものが解決へ向けての第一歩となればいいと思うんですが、逆に新たな混乱の始まりになるんではないかという可能性も含んでおる問題でございまして、この件につきまして、大臣、今後この諫早湾干拓堤防の開門について、いつ、どういう基本方針で臨まれようとしておるのか。きのうできょうの話でございます、ぜひお伺いをいたしたいと思います。
○谷津国務大臣 委員長を初め、この第三者委員会につきましては、学識経験者あるいは漁業者の代表によりまして構成されておりますが、これまで三回にわたりまして真摯な議論をいたしてきたところでありまして、それが取りまとめられたのがゆうべのいわゆる委員長の取りまとめでございます。
私としては、全幅の信頼を置いて委員長の取りまとめを最大限尊重してこのように実行していきたいというふうに思っておるところでございますけれども、ノリの不作等の原因究明を行うための本格的な調査をまずしなければならぬというふうに考えておるところでございますし、またそういう指摘もされているところであります。
そういう中で、委員長の取りまとめの中に、先生もあるいはお読みになったかと思いますけれども、まず大事なことは、水門をあけて何がわかるのか、水門をあけなかったならば何がわからないのか、それが一つの目安として出されているわけでございまして、水門をあける前にいろいろと湾内の方の調査をしっかりやってほしいということが一つ。
それと、水門をあけた場合に、いろいろな、中から出てくるような、あるいは浮泥があるかもしれぬということで、そういう面のアセスもやってほしい、環境評価をやってほしい。
そしてまた、一方では水門をあけることによって水位がずっと上がりますから、そういった面で災害が起きないように防災のこともちゃんと見てほしい。
いろいろそういう注文が十一項目にわたって出ておるわけでありまして、そういうものをしっかりとやって、それから後に水門をあけて調査するということになるんではなかろうかと思います。
そういうことから、そういう調査あるいはアセス、こういう時間が必要でございまして、そのものが終わって、ちゃんと資料が出てきたならば、それによって私どもは水門をあけて調査をしていきたいというふうに考えているところでございます。
なお、十月に網入れが行われるということでございますから、その前にやはり中間取りまとめをしなければならぬというふうに思っておるところでございまして、それがための調査は既に一月の二十三日から始めておりますし、それから二月の二十三日からは、これは環境省も入りまして、環境省ともどもに調査をさせてもらっておりますし、あるいは四県にも参加をしていただいて調査をしているところでございます。
そういった面につきましては、今まで調査した、これからまたその調査に基づきましてそういった中間取りまとめも早く出させていただきまして、そして十月の網入れに万全を期していきたいというふうに考えているところであります。
○古賀(一)委員 時間の関係で、この点、余り詳しく追い詰めるというか質問できませんけれども、ただ、今までの大臣の答弁で、一点だけ、はっきり申し上げておきたいことがあります。
この前、菅直人幹事長と一緒に農林大臣室に参りましたときも、九月に調査をまとめる、こういう話がありましたけれども、きょうの今の答弁にもございましたが、この点は、網入れは確かに十月なんですが、次の、ことしの秋の網入れについての準備というのは、もうことしの三月から始まっているんです。
私は毎週帰りますと、漁民の方が来られます。農林水産委員会でやるということもありまして、そのときに、三月、四月に、我々は次の漁期のための資金の借り入れをしていいのか、網に種つけをどうするか、貝殻つけをどうするか、みんな悩んでいるんです。
したがいまして、その点、今までの御答弁、御説明によりますと、何か九月末までにやって十月まで間に合わせればいいという感じがずっと受け取られるんですが、この点は絶対そうじゃないんです。
漁民の方は、今この段階で、要するに農林省が原因究明する、それは時間がかかるでしょう、そのときに、有明海再生に向けて、わかったものを万全の体制でやるというその信頼感がないことが彼らのいら立ちであり、混乱の大もとなんですね。この点は、もう三月から既にこの秋の網入れの準備が始まって悩んでおるということをしっかり大臣も水産庁の方も肝に銘じていただきたい、私はかように思います。
もう一点、これは質問ではございませんが、第三者機関という名前をいつも言われますが、これは予算費目としては国土総合開発の調査調整費だと思うんですよ。国土開発を、それ行けどんどんとは言いませんが、進めていく予算費目でこの有明海の環境調査をするということに、私、基本的な疑問を持ちます。
環境庁が環境省になったんですから、本当の意味での二十一世紀の環境行政を拡大しよう、充実しようというその中で環境省が生まれた。私は、環境省の予算で堂々と、大規模に長期的にやっていく、それが本当の政治の対応だと思うんです。国土調査調整費をもらって、水産庁の音頭でやっていくということそのものに、当初からの私は限界を感じますが、これは質問ではございません。次の問題に移ります。
これは余り目立たない話ですけれども、諫早湾干拓事業、とりわけ特にきょうの質問は、防潮堤防、あの七キロに及びます防潮堤防の技術的な面について、私は何点かお聞きしたいと思います。
まず、基礎工事ですね。あれだけの堤体を、七メーターに及ぶ高い堤防を、あの下は粘土、干潟という、潟というあの軟弱土壌の上につくったわけでありまして、当然、私は基礎工事というものが施されておると思うんですね。その形態はどういうものであったのか。
話によれば、砂をとっている。そこに基礎として砂を相当海中投入をしているという話を聞きます。その砂というものをどこから持ってこられたのか、そして、有明海の水質に影響があるだろうと言われているセメント、これはどれだけ使われたのか、この点について、これは事務方の局長にお伺いをいたしたいと思います。
○谷津国務大臣 先生、先ほど質問ではないというふうに申されましたけれども、一つお答えしておきたいことがあるのです。
実は、覆砂とか酸処理剤の指導とか、こういうふうなものもやらなければならぬというふうに思っておりまして、特に覆砂等については、予算を倍にしましてこれを実施していきたいと思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。
○木下政府参考人 お答えしたいと思います。
まず、潮受け堤防あるいは内部堤防の基礎地盤の工法についてのお尋ねでございます。潮受け堤防の地盤改良につきましては、サンド・コンパクション・パイル工法を採用いたしております。サンド・コンパクション・パイル工法といいますのは、粘土層の基礎地盤に砂を筒状に打ち込むものでございます。粘土層を砂に置きかえて基礎地盤の排水性を改善することによりまして地盤支持力を増加させる地盤改良工法でございます。
また、内部堤防でございますけれども、この地盤改良工法につきましては、プラスチック・ボード・ドレーン工法を採用いたしております。プラスチック・ボード・ドレーン工法につきましては、基礎地盤にプラスチックのボードを打ち込み、それによりまして基礎地盤内の水分がプラスチックのボードを通じて排水されるということで地盤の改良を行うものというふうに承知をいたしております。
それから、二つ目の御質問でございます。潮受け堤防工事で使用した砂の採取場所のお尋ねでございます。潮受け堤防工事におきましては、堤防の盛り立て材につきまして、諫早湾湾口部の採砂地から採取をした砂を使用しております。
また、基礎地盤改良工法として先ほど御説明申し上げましたサンド・コンパクション・パイルにつきましては、工事を請け負いました業者が購入した砂を使用いたしております。場所につきましては、壱岐島周辺それから西彼杵半島沖などにおいて採取した砂を使用しているということでございます。
それから、三点目のお尋ねでございます。セメントの使用量でございますけれども、私ども今、どの程度のセメントを使用したかという数値については持ち合わせておりませんけれども、諫早湾干拓工事の中で、天狗鼻の樋門などの工事における生コンクリート、それから内部堤防の盛り土においての改良材としての石灰、それから天狗鼻の樋門などの工事あるいは地区内の道路、排水路の工事においてセメント系の改良材を使用いたしております。
これらの工事におきましては、コンクリートの打設、改良材の攪拌等を陸上において行っておるというところでございまして、調整池にコンクリートあるいは改良材が直接溶出することはないというふうに考えておりますけれども、いずれにいたしましても、工事の段階におきましてきっちりとチェックを行いながら使用しているという状況でございます。
○古賀(一)委員 今その中で、もう一回、再度お聞きしたいのですけれども、諫早湾の湾口部から採取した砂の量というものはどの程度と見込まれますか。
○木下政府参考人 諫早湾湾口から採取した砂の量でございますけれども、約二百六十万立米ということでございます。
○古賀(一)委員 私は、この点について、この諫早湾干拓事業の思想を見たりという感じがするのです。先ほど大臣が覆砂事業をやられるとおっしゃいました。私は、本当にそれはありがたい話だと思っております。
私が平成二年に初当選したとき、そのときから実は有明海の陥没問題というのがもう大問題になり始めておりまして、私は一生懸命動きまして、実は、通産省が有明海の沿岸漁業に関する調査費を一億六千万円つけてくれたのです。そして水産庁といさかいがあったのです、漁業に関して何で通産省が金をつけるかと。
それで私は、水産庁にもお願いし、県庁も中に立って、三者一体となって、まあそうけんかせぬでくれと。海は病んでいる、漁民は困っているという中で、実は、通産省のその調査と同時に水産庁が覆砂事業をやってくれたのです。当時二億円でございました。それは本当に絶大なる効果があったのです。
それほど実は有明海が今、いろいろな意味で病んでおりますが、その最大の問題の一つが実は砂なんですね。それは、筑後川から流れてくる砂が少なくなったのじゃないかとか、いろいろな議論はあります。つまり、ヘドロ化した、とりわけ海底陥没のある地域はもう、浮遊した小さいものがゆらゆら行ったり来たりする中で有明海の海底陥没の中にたまっていく、窒息をする、貝が死ぬ、そういう状況だったのですね。そこに砂を戻しただけで有明海があれだけよみがえるというのを私はもう見に行きました。それほど実は砂の存在というのは重要なんです。
ところが、先ほど諫早湾湾口部とおっしゃった。これは有明海で有名な野崎の洲というところなんです。ここはずっと禁漁区だったのです。そこに行くともう、北海道の川を上るサケが群がって上るがごとく魚がいるような本当の意味での有明海の産卵場であり、有明海の聖地と言われた、漁民が一番大切に、長崎県側も福岡県側も佐賀県側も、あそこは大切なところだからとらないという、そこが野崎の洲なんです。それが、砂がたくさんあったのです。
そこに実は、今の話で、防潮堤防をつくるぞ、基礎が要るぞ、何かよい洲はないかとなって、聖地と言われたところの砂を、今のお話で二百六十万立米採取した。ここに、私はもう、堤防まずありき。単に、防潮堤防で仕切ったことによって干潟を殺したとか干し上げたとかそれだけじゃなしに、工事の段階で、有明海の聖地と言われたところの、一番大切なところを実はとっているのですね。
私は、これは大変な、諫早湾干拓事業というものが、自然とか漁業とか環境とか、そういうものにどれだけ配慮してやってきたかということをまさにこれがシンボルとしてあらわしていると思うのですよ。
この点につきまして、私は、この十年大変な苦労をしてきた、そしてまた水産庁がやってくれたことに評価もしていた、それがこういう形で踏みにじられたような感じがするのですが、私のそういう指摘というものに対しまして、ひとつ大臣、これは質問通告していませんし、初めて聞かれた話でもあろうかと思いますが、どういう御所見をお持ちでしょうか。
○谷津国務大臣 ただいま古賀先生は、地元なるがゆえのお話がございました。
そういったことで、魚の卵の産み場と言ってはなんですが、そういう大事なところの砂をとったというふうなことでございますけれども、いずれにしましても、そういった面も含めまして、全面的に調査をさせていただきまして、今先生がおっしゃるようなそういう現実があるとするならば、そこも復元させることもやらなければいけないんじゃないかというふうに考えるわけであります。
○古賀(一)委員 これはもう質問をしませんが、私も実はもとは建設省の役人でございまして、河川局にもおったことがあるので洪水調節というものに非常に関心があるのですが、きょう詳しく聞くと農業者年金も聞けなくなるので、今鉢呂理事の方から、おい、農業者年金も頼むという話がありましたのでこれは後日の話にします。
もう一点は、私は、諫早湾干拓事業のいわゆる調整池の洪水調節機能というものに対して、いわゆる海辺の横に洪水調節用のポケットをつくるというその意味が今でもわからないのですね。これはもう詳しく述べませんが、今後、水産基本法等いろいろ、時間もあるでしょうから、きょうはちょっとはしょります。予告編としてちょっと申し上げておきたいと思います。
それで、農業者年金の問題に入りたいと思いますが、この前の本会議場で、私、農業者年金法のいわゆる基本設計がおかしかったんじゃないかということを申し上げました。今でもそう思います。
それは、先ほど農業者団体にどれだけ聞いたかというような話もありましたけれども、農業者団体の方は結局、農林省のスキーム、こういうふうにしたいという中で、その枠の中でみんなこう意見を出したりお願いをしたりしているわけでありまして、今農林省に求められておるのは、もっと大きく、総合的に考えた、もっとダイナミックな農政だと私は思うんです。
そこで、私は、この農業者年金に限って言うならば、ひとつ大きく三つの問題点があったんじゃないかというのを指摘したいんです。
第一は、この間も申し上げましたけれども、構造改善政策という位置づけをこれに課しておったということですよね。年金制度で若返りを図ろう、あるいは年金政策で経営規模の拡大を図ってもらおう、老後の安定もさることながら、そういう政策、目的を課したところに大変な無理があったということが一点です。
二点目は、いわゆる財政方式ですね。かつては積立方式、それから今度修正賦課方式になって、また今度は積立方式にします。破綻のたびに変えて、また当初のメニューに戻ったということ、この財政方式に対する基本的な疑問点が二点目。
そして三点目は、私はこれは今でもわからないんですが、経営移譲年金というシステムは、ざっと七百五十億円の国費を全額投入してあげますよ、六十五歳までに息子に譲りなさい、そういう思想ですよね。それを年金政策で息子に早く譲ることを誘導しようというのが経営移譲年金だったと思うんですね。
これがこの破綻の一つの大きい原因になっておるわけですが、私が非常に不思議に思うのは、この高齢化社会、少子化社会、とりわけ農業に関しては高齢化が著しい、後継ぎが著しく少ない、こういう人口構造とトレンドの中で、何で六十五歳は早く引退しろという政策を今でもとろうとしているのかということが私は非常にわからないんですね。
むしろ、六十五歳以上の方もあるいは若手も、あるいはUターンしてくるサラリーマン経験者も、みんなひとつそれぞれの知恵を出しながら、規模拡大して付加価値の高い農業をしようじゃないかというところに農業政策の基本を持ってくるべきときに、あくまで個人農家を頭に置いて、おじいちゃんが威張っておる、息子がなかなか後を継ぎたがらない、ばりばり働けるのに、年金でつって早う引退してもらおうと言わんばかりの政策というのは、基本的に言って、今の日本の人口構造からいって合わないんじゃないかという気が私はするんです。
そこで、まず、ちょっと順番は逆になるかもしれませんけれども、なぜ六十五歳で経営移譲年金を渡すから早く引退しろという設計を農林省がこの農業者年金制度という政策でこだわってこられたのか、その理由というものは何であろうかというのを改めてこの際お聞かせをいただきたい、かように思います。
○谷津国務大臣 現行の農業者年金制度は、昭和四十年代の農村における過剰労働の存在、そして農業の零細経営という実態を踏まえまして、旧農業基本法における農業構造の改善に関する施策といたしまして、老後生活の安定とともに、農業経営の近代化、そしてまた農地保有の合理化を促進するために設置されたものであります。そして、経営移譲年金の支給によりまして、国民年金の支給開始年齢である六十五歳までの経営移譲を通して、若返りあるいはまた農業経営の近代化を推進してきたものでございます。
他方、御指摘のとおり、農業をめぐる情勢は著しく変化をいたしました。そして、農業人口に占める六十歳以上の者の割合が昭和四十年の二二%から平成七年には六三%に増大するなど、農業就業人口の高齢化が進んでいるところでございますが、基幹的農業従事者は昭和四十年の八百九十四万人から平成七年には二百七十八万人に減少するなど、担い手不足が著しく進展してまいりました。このような中で、高齢者の中にも現役で農業を続けている者が多く見られるようになってきたのでございまして、そういう状況変化等が生じてきておるところであります。
このような点を踏まえまして、担い手の確保を目的とする新制度においては、政策支援に係る年金を受給する際、年齢制限を撤廃したところでございます。
○古賀(一)委員 今、人口構成の話が出ましたけれども、実は、四十年代とは言いませんが、少なくもこれはもう平成冒頭に当たっては、人口構造から見ても、あるいは加入者、あるいは経営移譲率、いろいろなトレンドから見ても完全にこの年金は成り立たないとわかっていたと私は思うんですね。
だから、私は、この際、六十五歳以上の方を本当にどう農政で位置づけようとしておられるのか。あくまで賦課方式の年金方式というのは続いていくわけですね。そういう意味では、経営移譲年金制度は六十年から七十年続くんでしょう、残務整理として。そうしたら、あくまで六十五歳は早く引退してくれと言わんばかりのこういう発想でやるのか。
私は、それじゃいけないと思う。むしろ、六十五歳もばりばり働ける者は働いて知恵を出してくれという思想で農政を動かしていかない限り、絶対同じような轍を農政は踏むと私は思うんですね。この点は今でも、大臣の答弁がありましたけれども、納得できません。やはりそういう大転換というものを図るべき時代じゃないかと指摘をしたいと思います。
その関連で、これからの農政は、今まで江戸時代あるいはそれ以前から続いてきた個人農家、それを前提に農林省はほとんどの政策を組み立ててきたと私は思うんです。しかし、国際化あるいは情報化、いろいろなもう恐るべき農業の、あるいは農林省の力ではいかんともしがたい時代の変化というものが実は起こっておりまして、そういうものに農業が対応していくには、一番重要なのは農業の経営主体論だと思うんです。もう個人の農家でおじいちゃんから息子に早く譲らせるようなことは小さいことだと思うんです。
むしろ日本の農業あるいは農家が考えるべきは、中国の野菜がどれだけの規模であってどれだけ売りに来る、アメリカの米が今日本の米の何分の一で生産している、そういった本当の相手ですよ。本当の敵と言ったらきつい言葉ですけれども。それに対応して、日本の農業、その土台は経営主体ですから、これがどうあるべきかという議論を私は真剣にしなければならぬと思います。その点が大変農林省サイドでこれまで手が薄かったと私は思うんですね。
実は、平成二年に私が初当選したころ、農政部会がありまして、当時の局長さんに言いました。何で株式会社でやるというような法律をつくらないんだと。そのときの答えが、いや、三井物産とか何とか商事が鹿児島の土地を買って、農業をやって、将来転用したらもう農業はめちゃくちゃになりますとおっしゃったから、いや、そういうことが許されない法律をつくればいいじゃないかという話をしたんですが、その後、時が六、七年たって、新しい法人という話になってきました。本当にタイミングがいつも遅かったなと思うんです。
そこでちょっとお聞きしたいんですが、私が大変関心がございますのは、ことしの三月一日からいわゆる株式会社で農業ができるという体制になってきたんですね。これは現状においてどう推移しておるか。そして、今後農林省として、この株式会社という経営主体をどういうビジョンと戦略を持って対応していこうとしておるのか。ちょっとお聞きをさせていただきたいと思います。
○須賀田政府参考人 先生御指摘の、農地法におきます農業生産法人に株式会社形態を追加するという改正法、この三月一日に施行されたばかりでございまして、現時点で私どもが得ている情報によりますれば、株式会社化をした農業生産法人は一法人にとどまっております。その内容は、農業生産だけではなくて、農産物の加工、販売といった多角的な経営を行っている法人でございます。
今後どうするかという問題でございまして、法人経営としての株式会社の形態、そのメリットといたしまして、多くの人が参加できて資金調達が容易になる。それから、人材の確保でございますとか、販路の開拓でございますとか、そういう面で非常に有利であるというようなメリットがございます。
したがいまして、資本力はないけれども経営手腕のある方にふさわしい形態ではないかというふうに考えておりまして、今後、大規模経営を中心に、次第に増加していく可能性があるものというふうに考えているところでございます。
○古賀(一)委員 現段階では一つの会社しかないということでございますが、農業法人は、あといろいろ種類がございまして、基本的に言えば拡大の方向だろうし、この株式会社というのが、石川県の事例がうまくいって、各農協であるとかあるいは農業青年にこういうノウハウが伝わっていけば、私は相当広がっていく、あるいは広がらざるを得ない流れだと思うのですね。
そうした場合に、実は、年金の問題に入るのですが、我々民主党は、これまでの賦課方式による年金は残務整理としてやって、いわゆる憲法上保障された財産権ではないかと。既裁定の、あなたには幾らやるよといって既に払っていたその年金は、憲法上、二十九条に言う財産権ということで、侵害してはならない。そういうことであるから、これはきちんと年金政策の信頼性もある。ちゃんと政府は、国は約束を守って、憲法侵害の可能性があるそういう事後法による削減というものはやめて、払っていこうという思想でひとつまとめておるのですね。それは年金政策全体に対する影響も考えての総合的判断であります。憲法問題もこれはある。
そしてもう一つは、では今の三十代の若い人はどうすればいいんだという問いかけがございましたけれども、それは、私はみどり年金で一つ受け皿があると。そしてもう一つは、今法人化の話が出ましたけれども、既に、株式会社組織でやるやつは厚生年金という年金の受け皿があるんです。
それで、Uターンサラリーマンが、法人化とかそういうのがあって、将来農業に参画しよう、それも厚生年金という土台があるんです。そして、ことし問題になりました、いわゆる農林年金と厚生年金のいわゆる統合問題、これも今度統合が決まったわけでしょう。そうすると、これもまた厚生年金という受け皿もあるんですね。
したがって、後ほど聞きますけれども、将来どれだけ加入するか私はわからないと思う。こういう新しい積立方式による年金制度で、十年後、二十年後、まだ、加入者が、三十万人と見込んだけれども、十万人しかなかった、評判が悪いということで、またこれがとんざするというようなことじゃなしに、もうすっきりと国民年金、そして厚生年金というものに、法人化等を通じて、農林年金との統合も合わせて受け皿がある。既にみどり年金という制度もある。
もうこれで年金政策として完結させて、そして先ほど話題に出ましたような法人化であるとか、あるいは減反政策撤廃とか、本当の農業の本質部分に農林省というものはエネルギーを傾注し、総合力を発揮してもらいたいと私は思うのです。我々民主党の考えは、基本的にそういうことなんです。
それで、農林大臣なり農林省にお聞きしたいのは、新しい積立方式の加入者の件でございますけれども、先ほど三十万人という話がございました。これまでの制度が強制加入であった、にもかかわらず恐るべき激減ぶりを示してきた。そして、去年、おととし、農業者年金三割カットという提案を政府は大綱案という形でされた。こんな、約束を破って、今までくれると言っていたものを、何、三割もカットするということで大騒ぎになりました。
そして今度は九・八%という法案が出たのですが、恐らくこれで、農業者の農業者年金に対するいわゆる信頼度というのは、もう地に落ちたとまで言わなくても、相当下がっていると私は思うのですね。
したがって、私は、この加入者というものは本当に三十万人入るのだろうか、五分の一、六分の一じゃないかということを懸念するわけであります。この点、単なる試算で、うちは三十万人と見込んでいますよ、二十五万人プラス新規加入四万人、そういう単なる試算で済む話じゃないと私は思うのですが、その確信というか根拠というか、そういうものについてもう少し、なぜ三十万人で大丈夫だというところを御説明いただきたいと思います。
○須賀田政府参考人 新制度の加入者数の見込みでございます。
先生御承知のように、新しい農業者年金制度は旧制度と異なりまして、加入資格を大幅に緩和するということで、農地に権利名義がなくとも農業に従事するという要件があればだれでも加入できるということにしているわけでございます。そうすることによりまして、これまで加入の対象でなかった配偶者でございますとか後継者でございますとか、施設型の経営をなさっている方でございますとか、そういう方面に加入の範囲が広がるわけでございます。
それから、新しい制度では、いろいろな現場での御不満を踏まえまして、いろいろな面での改善をしております。死亡一時金でございますとか、そういう面での改善をしてございますので、まず、現行制度からの移行の予定者といたしまして、若くて長期に保険料を払っていない方は脱退をされるかもしれませんけれども、それ以外の方は新制度に移行するのではないかということで、約二十五万人を新制度移行者として見込んでいるわけでございます。
それから、新たに加入をされる方といたしまして、認定農業者でまだ未加入の方でございますとか、これから認定農業者になられる方でございますとか、そういうことで、かた目に見て約四万人ということを見込みまして、全体で約三十万人という推定をしたわけでございます。
今後ますます、新制度の基本的な取り組み、メリットを御理解いただけるように普及に努めていきたいというふうに考えている次第でございます。
○古賀(一)委員 これは先のことですから、三十万人見込める、いや三分の一の十万人だろうと言ってもしようがないのですが、これまでのいわゆる財政試算ほか制度の運営、恐らく委員会で、研究会でこうなりますという提示をしてきた中で、政府の審議会の委員の先生も、しようがない、そんなものかということでこの制度を構築してきたと思うのですね。それがこれだけことごとく見込み違いであったということは、やはり政府の責任なんです。
だから、今回、私ははっきり申し上げますが、三十万人と言ったならば、三十万人やるだけの仕組みというものを、政府はきちっと、農林省は打っていかなきゃならぬと思うのです。
しかも、それは現場の農業委員の方が大変苦労しているんですよ。これだけ落ち込んできた新規加入者も、現場において、若者よ、農林省がつくった、国がつくったこういう安定したいい制度、だから入ってくれよと誘って誘って入ってもらっても、しかも強制加入でもこれだけ減ってきたのですね。
そういう農業委員会の方々等は、今度、方式は変わったけれども、まずひとつ入ってくれというふうにまた苦労しなきゃならぬと思うのですよ。それは現場の苦労は大変なものだと思う。それ以前に、私は、農林省サイドの責任は、努力というものはもっと大きいと思います。これは、今後の加入者の推移を見きわめますけれども、私は、それに対する大変大きな懸念というものを表明して、最後の質問に移りたいと思います。
順番が前後しましたけれども、先ほど木村委員の方から、私が本会議場で提案しました、いわゆるアジア食料安全保障構想といいますか、そういうものを申し上げました。コストの話も出ました。私は、今まだ十分勉強していません。ただ、生産調整に関する費用あるいは稲作経営安定化資金に関する費用、そして政府の今行っている備蓄の費用等々を簡単に足しても四千億を超えます。超えるんです、一年間ですよ。
こういう新しいもみによる備蓄の構想はお金がかかるだろうと。もちろんかかります。私は、単に農業とかあるいは減反政策だけを考えているんじゃなくて、きのうも本会議でありました、ロシアとの問題、もう戦後何十年たってもらちが明かない。
私は、例の北方四島に、山の中腹あたりに、直径百メーターでも二百メーターでもいいのですが、穴をぶち抜いて、あの寒冷地であれば、冬はもう寒過ぎるぐらい寒い。夏だって、この前科学技術委員長として北海道に行き、雪冷房システムを見た。夏でももう五度の室温が、ファンを回すだけで冷房以上なんです。あるのですね、私は驚きましたけれども。
そういったいろいろな知恵を糾合して、日ロが議論をして、そして将来のアジアに対する食料安全として、日ロ一緒にとりあえず共同事業で安全保障というものをやろうじゃないか、中国も一緒にやろうじゃないかといったときに、私は初めて日ロ関係の新しい一ページが開けると思うし、これもまた、中国とかロシアとか連合して東アジアの、あるいはアジアの食料安全保障ということを考えることによって、最大の食料輸出国、食料輸出を戦略としているアメリカと私は対抗できると思うのです。
だから、そういう外交、日ロ問題あるいは減反問題、農業問題、そういうものを全部含めたときに、私はこれはコストじゃあらわせない膨大な意味を持つだろうと思っているのです。
そこで、これはまだ私も詳しく全部のコストを試算する時間はありませんでしたけれども、大ざっぱに言って、既に四千億以上のものがかかっている。ODAという予算の費目もある、一兆円を超えるものもある。
どうでしょうか。これはひとつ事務的に一回しっかり論議をしていただいて、もちろん、全部米にしろ、減反を全部やめて自由にしようという仕組みにはならぬと思うのです。大豆も必要、それはいろいろな政策のポリシーミックスになると思うのですが、これは本当に真剣に農林省として試算し、計算してみて、そのフィージビリティーというものを検討すべき大変な構想だと私は思っております。
この点について、農林大臣はこの前こうおっしゃいました。多額の費用を要する、稲作農業の構造調整にはつながらないという点はあるものの、一方で国際的な食料安全保障の立場からは検討すべき課題、こうおっしゃいましたけれども、もう一歩踏み込んで、ひとつ計算してみようじゃないか、そういうお考えをぜひ持っていただきたいと私はお願いをしますし、大臣の御所見をこの際、最後にお聞きしたいと思います。
○谷津国務大臣 本会議でも御答弁申し上げておるところでありますけれども、先生御指摘のように、実はWTOの日本の提案の中にも国際備蓄といいましょうか、そういうものも必要ではないかというふうに提案をしているところであります。
これは、随分前から実はこの問題は討議されているところでありまして、FAO等におきましてもそういう議論が出ておりますし、私たちも、実はそういう会合に行きますれば、国際備蓄ということについていろいろと日本としての考え方というのも提案しているところであります。
ただ、先ほどもお話が出ましたけれども、膨大な費用がかかるということも一つではあります。それから、ここで備蓄をするということになりますと、ジャポニカ種を必ずしも食べておりませんから、インディカ種のところが多いですから、そういうふうな問題もございますし、もちろん費用の問題もございます。
こういった面については、国際的な合意を得る必要が大いにあるというふうにも考えておりますが、日本としてそういうものを検討するのは非常に大事なことだろうというふうにも思いますので、今先生の御提案のございました点についても、十分私どもも考えの中に入れていかなければならぬというふうに思っているところでもございます。
○古賀(一)委員 時間が参りましたので、これで終わりますが、この点については、私も十年来の一つの信念でございまして、今後いろいろアプローチをしてお願いをしたり、やります。ひとつよろしくお願いを申し上げます。
以上で終わります。
○堀込委員長 次に、筒井信隆君。
○筒井委員 先ほどの継続した質問で一つ確認したいのですが、この高齢者社会において六十五歳でなぜリタイアさせようとするのかという質問に対する答えが、結局、六十五歳でリタイアさせるような政策はとらない、そういうお答えでしたか、大臣。
○谷津国務大臣 先ほどの答弁で申し上げましたのは、政策支援に関する年金を受給する際に年齢要件を撤廃しましたということでありまして、これは経営継承をすればそこで支給開始だということでありまして、年齢は撤廃したということであります。
○筒井委員 だから、旧制度においてもそうですが、今政府が提案している新制度においても、六十五歳でリタイアすることを促進する、誘導する、こういう結果になっていますね。
○谷津国務大臣 そこは、先ほども申し上げましたとおり、継承したときにいわゆる支給開始をするということでありますから、そういう意味においての六十五歳は撤廃したということであります。
○筒井委員 原則として、政策支援の金額に対応する年金支給は六十五歳までに経営移譲することを条件に支給する、政府提案はこうなっているわけでございます。保険料に対応した部分は、これは年齢要件だけで支給する、こうなっております。
だから政策支援のことを考え、見てみますと、六十五歳でもうリタイアしろ、こういうことを促進する、こういう政策結果になっているわけでございます。まずその事実関係、違うと言われるのなら、答えてください。
○松岡副大臣 我が国の年金制度全般が六十五歳というのを一つの基準としておるわけでありまして、そういったことの整合性から、私どもは一応六十五歳というものを今御提案しておりますようにやっておりますが、これは全体的な整合性という観点であります。
一方、私どもは、青年就農法等も今から三、四年前になりますか、改正をいたしまして、知事が認めれば六十四歳まで新規就農も可能な、いわゆる高齢者の新規就農というものも支援をしていく、そういう政策もとっているわけであります。そして今大臣が答弁もいたしましたように、この政策年金のそういったような要件につきましても年齢制限は撤廃をする、こういったことであります。
まさに年金制度全体の整合性、それと農業者としての六十歳を超えたり六十五歳を超えたりした人の中でも、なお担い手として意欲的な人たちもまたやっていける、こういう両方を我々は立てておるわけであります。そういうことで御理解をいただきたいと思います。
○筒井委員 どうも質問の趣旨を理解されていないようで、先ほどの民主党の案に関しても、どうも理解されていない答弁をされておられます。
民主党は全世代で掛け損が生じないということを前提とした提案をしているのに、さっきは何か掛け損が生ずることを前提としたような答弁をされていましたので、今回の質問も、私が言っている趣旨は、六十五歳という年齢要件で支給するのは別に全然何も問題ないんです、ほかの年金もみんなそうなんですから。
私が言っているのは、六十五歳までに経営移譲したら年金を支給するという政策支援対応部分の年金支給なんです。経営移譲を要件として年金支給するということは、六十五歳あたりでリタイアしろ、これを促進する効果になるわけでして、高齢者社会においてこうしていることがどうなんだという質問なんです。だから、高齢者は六十五歳でリタイアしろと言っている趣旨でないとすれば、それをちゃんと答えてください。
○松岡副大臣 そこのところをぎりぎり右か左かということで問われれば、それは右か左かということで、きっぱり右です、左ですとは言えない部分はあります。
ただ、私どもは、国民全体のあらゆる年金制度はありますが、その年金制度全体との整合性の中で考えれば、六十五歳を一定の基準としなきゃならぬ。これは私どもの見解としてというよりも、そういう事実に照らして私どもはそういう基準をとらざるを得ない、こういうことでありまして……(筒井委員「質問の趣旨を理解していない」と呼ぶ)いやいや、あなたの趣旨に対して、これは恐らく平行線でありまして、とっているかとっていないかということであるならば、それはとっております。六十五歳というものを決めている。
だけれども、それはリタイアを促進するためにとっているんじゃない。まさに年金制度としての、年金を運営していく上で、その六十五歳以上を老齢者というか、年金の該当者ということで、これは国民全体、国全体の制度がそうなっているんですから、それに合わせている、それだけのことです。
○須賀田政府参考人 先生御指摘の政策支援にかかわる年金、いわゆる特例付加年金でございます。法律上、「六十五歳に達した後、農業を営む者でなくなつたとき。」と規定しておりまして、六十五歳という年齢要件は撤廃しておりまして、みずからのライフサイクルに合わせてリタイアする時期から年金が支給されるというふうになっているところでございます。
○筒井委員 だから私は言っているので、六十五歳になってからリタイアすれば政策支援に対応する部分は年金を支給しますよ、こういう、リタイアすることを促進する、そういう政策結果になっているだろうという質問なんです。六十五歳支給を要件にしているのは別に何の問題もないんです。
そういう新年金制度は今度の食料・農業・農村基本法の趣旨にも反するんじゃないか、この質問をいたしますが、新しい基本法で高齢者の活用、高齢者にもますます元気で仕事をしてもらう、こういう方向性をきちんとやるんだということは、二十七条でしたか、新しい基本法で出ているわけでして、そう考えますと、経営移譲を要件として年金を支給するという要件、これは新しい基本法に反するんじゃないか、少なくともそれと矛盾するんじゃないか、これを撤廃すべきではないか、こういう質問です。
○須賀田政府参考人 基本法の理念から申し上げますと、農業の持続的発展を支えるために、担い手の確保ということを目標に掲げておりまして、まさに新しい年金制度といいますのは、この担い手の現役世代の負担を軽減しながらずっと長期にわたり営農をしていただくというための制度として構築をしているところでございます。
そして、問題の経営継承の話でございます。やはり農業資源を継承していくということは、基本法に言います農業の持続的発展のためには必要不可欠であるということでございまして、その際、先生言われましたように、最近は、高齢者の方も生涯現役ということで生きがいを持って働いておられるようにするということを一つの政策にしておるわけでございまして、新制度においては、高齢化の進展に応じまして、六十五歳以降に経営継承した場合でも国庫補助分の年金を支給するということにしております。
それから、何か受け手がいないんじゃないかというような御心配に対しましては……(筒井委員「そんなのは聞いていないですから。質問にない。今聞いていない、それは」と呼ぶ)それで、農業経営資源は、やはり農業の持続的発展のための、円滑に継承していただきたいということを前提にした制度でございます。
○筒井委員 持続的発展の条項ではなくて、基本法をちょっと読んでみますが、第二十七条「国は、地域の農業における高齢農業者の役割分担並びにその有する技術及び能力に応じて、生きがいを持って農業に関する活動を行うことができる環境整備を推進し、高齢農業者の福祉の向上を図るものとする。」
しかし、これが経営移譲を年金支給の要件にするならば、年金をもらうためにはやはりやめなきゃいかぬのですよ、生きがいを持ってやりたくたって。そういう要件は撤廃すべきじゃないかというのが私の趣旨なんです。
確認しますが、政策支援に対応した年金をもらうためには、これは農業をやめなきゃいかぬでしょう、やりたくても。この点、どうですか。
○須賀田政府参考人 政策支援年金の受給の要件といたしまして、農業経営をやめたときというふうな要件にしているところでございます。これは、次世代の農業者の確保ということも念頭に置かないといけないし、農業の持続的発展のためには、その経営資源が円滑に継承される、これは基本法の中にもございます、そういうところもやはり念頭に置いて規定したものでございます。
○筒井委員 今、次世代のというまた別の、担い手の若返りは前の、現行農業者年金が政策目的としたもので、今はそんなのは問題じゃない、担い手そのものがいない。だから、担い手の確保に今度政策目的を変更したんでしょう。それは、その担い手には高齢者も含むわけですよ、基本法の趣旨からいえば。高齢者が生きがいを持って農業をやっているならばどんどんやってほしい、これが基本法の趣旨なんですよ。
だけれども、今度の要件ですと、生きがいを持ってやりたくたって、年金をもらうためにはやめなきゃいかぬ、こういう条件をつけているのが問題だと言っているんです。
大臣、どうですか、これは撤廃しませんか。
○谷津国務大臣 先生、今、農業基本法の精神と、それから年金の、いわゆる継承年金というか、そういうふうになった折の矛盾点があるんじゃないかというのが御指摘だろうというふうに思うんです。
これは、先生、確かに、生きがいを持って農業ができるようにする、これには年齢制限がないぞというようなことも意味するわけでありますから、しかし一方、年金をもらうためには、六十五歳あるいは継承したときに年金がもらえるという、まあ年齢は多少その辺は違ってくるけれども、ずっとやっていきたい人が、それでは年金をもらいたいということになってくるならば、やることがとまっちゃうじゃないかというのが御指摘だろうというふうに思うんです。
確かにそういう点は私どもの中にもあるわけでありますが、しかし、先生、これは、やはり新たな担い手を確保しなければならぬという点もございます。そういった中で、例えば年金をもらっておっても農業というのがそれではできないのかということになれば、それは、補助的農業であれ何であれ、これはできることではありますから、その辺のところはひとつ御理解いただきたいと思うんですよ。
○筒井委員 六十五歳、年齢を要件にして支給するのは全然構わないです。それだけにしろと言っているんです。そして、担い手がいてそこに移譲したい人は、六十五歳になってからだっていつでも移譲すればいいんですよ。それは自由にやればいいんです。
だけれども、農業を生きがいを持ってやりたい、しかし年金ももらいたいという人に関しては、農業をやめるか年金をもらうかどっちか選択しろ、こういうことを要請するのがおかしいんじゃないか、農業をやりたくたってやめなきゃいかぬ、これをやめるべきだと言っているんです。
○松岡副大臣 先生のおっしゃる御趣旨は、気持ちとしても、またおっしゃっている内容についても十分理解をいたしております。しかしながら、やはり年金制度全体との整合性ということがありまして、では、先生がおっしゃるようなことで他の分野においてもそれが成り立つのなら、これは一つの整合性としてあると思いますが、私どもとしては、他の年金との整合性においても、やはりそこの区切りはきちんとしなきゃならぬというのが一つであります。
それともう一つ、選択制度。
それは選択制です。ですから、我々は、青年就農法、新規就農についても、今はもう定年、今の五十、六十というのは随分若い、そういった点から、例えば五十五で都会で仕事をやめたとしても、田舎に帰って、おやじが七十、八十でもういよいよやめるというときに、それから就農も可能というようなこともあえてつくっておるわけでありまして、まさに選択制の中で高齢者も十分に位置づけていく、こういうことで、私どもは全体としてそういう組み合わせをとっているわけであります。
○筒井委員 他の制度との整合性と言われますが、政策支援に対応した年金は、経営移譲を要件に支給するというのはこの農業者年金だけなんですよ。ほかなんかそんなのは何にもないんですよ。他との整合性との関係を言えば、六十五歳支給、年齢要件だけにすればいいんです。
そして、私は、もうこれだけで質問を続行するわけにはいかないので、まだいっぱい聞くところがあるので、要するに、私が言いたいのは、生きがいを持ってまだ農業をやりたい人に対して、それからも続けることができる、こういう政策にしなきゃいかぬ。それが新基本法の趣旨に合っているんだという趣旨なんです。そしてまた、実際に、この農業者年金研究会でも、委員からそういう意見が出ているでしょう。
その部分だけちょっと読み上げてみますと、農業経営者が高齢化した、しかし、皆さん寿命が大幅に延びて、年をとられても大変元気でいるという方に農業経営に従事してもらうことも考えなければいけません。だから、政府案に対して批判ですよ、これは。それが農林省が設置した、あるいは厚生省が参加しているこの委員の中からもそういう声が出ている。これはやはりもう一回また検討していただきたい。これはほかの質問ができなくなるから、次に……。
○松岡副大臣 先生の御指摘は、私たちも気持ちとしては十分受けとめて、ただ、今申し上げましたように、他の年金との整合性とか、そういう制度的な問題があるものですから、こういう区切りとしているわけです。今後、その先生のお気持ちも御指摘も十分受けとめながら、将来に向かっては、我々、どういうふうにこれを整理できるのか、その課題として受けとめていきたいと思っております。
○筒井委員 本来の質問に戻りますが、私が最初にまず聞きたかったのは、この政策効果はあるのかという点なんです。これも農業者年金研究会でも出されたと思うんですね、こういう意見が。社会保険として年金制度はもう成り立ち得ないと、加入者や受給者の数から見ても、今後の動静から見ても。問題なのは、多額の国庫助成を投入して、この政策目的、政策誘導に効果があるのかどうか。この費用対効果、これをやはり厳密に分析しなければいけない、こういう点だろうと思うんですね。
そして、現行農業者年金制度の場合には、創立当時、若い担い手がたくさんいて、なかなか経営移譲しない。だから、経営移譲したら国庫助成が入った年金を支給しますよというメリットを与えることには、それは一定の効果は考えられる、結果として効果は余り出てこなかったですけれども。しかし、政策年金として、政策目的として私は成立し得たと思うんです。
だけれども、今度は、担い手そのものがいない。高齢者が経営を移譲したくとも移譲する相手がいないときに、高齢者に、いや移譲すれば年金支給しますよというメリットを与えたところで何のインセンティブも与えない。若い担い手、若いどころか、担い手確保に関する年金支給は何の効果も発揮しないのではないか、まずこの点からお聞きします。
○谷津国務大臣 近年は、我が国の食料、農業をめぐる情勢は、先ほどからも話が出ておりますけれども、食料供給力の低下、それからまた耕作地利用の低下、そしてまた放棄地等の増大等によりまして、非常に厳しい状況の中にあります。
こういう中で、国民に対する食料の安定供給を確保するという面におきましては、農業の担い手の確保ということは非常に必要な面がございまして、これらの担い手が長期間効率的な、あるいは安定的な農業経営を営んでいくことが重要ではないかというふうに考えておるところであります。
このような経営の確保のためには、現役時代の農業所得の向上を促進するということと同時に、リタイア後の所得を確保して、これを展望しながら一方では農業経営に従事していただくということが重要ではないかというふうに思っておるわけでありまして、こういう観点から新制度の創設になってきたところであります。
こうした中で、望ましい担い手ということにつきましては、国庫が保険料の一部を負担することによりまして現役時代における保険料負担の軽減を図る、そして、その者が老齢期に農業の持続的な発展に必要な経営継承をしたときに国庫補助分を特例付加年金として支給するとしておるところでありまして、これによりまして、老後所得の充実を図って、最も望ましい担い手の確保に資していきたいというふうに考えておるところであります。
また、老齢期の経営継承につきましては、農業経営資源の継承は農業の持続的発展のために必要不可欠であるというふうに考えておりまして、現下の農業情勢のもとでも円滑な継承が図られるように、担い手不足の中で特定農業法人などの集落営農の育成あるいは農地保有合理化法人の活用などを推進するとともに、新制度におきましては、高齢化の進展に対応して六十五歳以降に経営継承した場合でも国庫補助分の年金を支給することから、政策支援を受けた者からの経営継承は可能であるというふうに考えているところでございます。
○筒井委員 今、両方ともごっちゃにして言われているんですが、確かに、保険料に関する政策支援をする、これは間接的には私、政策目的として効果があると思うんですね。しかし、その効果が現実に出るのは二十年、三十年先の話ですよ。二十年、三十年先の話でこういうふうなメリットがあるよということでもって担い手が確保できるかというと、もうそれはほとんどゼロ、それに関しては私、ゼロとまでは言わないけれども、極めて薄い。それが現行農業者年金の方で証明されていると思うんです。
例えば、今、そうじゃないというあれがあったので、具体的な数字として、農業後継者で加入資格がある人、この人たちは、今までだって自分が経営移譲すれば何十年か後には経営移譲年金が全額国庫補助で出てくる。それから、そのうちの一部は、今三割ぐらい保険料免除される制度がある。こういう制度があったって加入しないのが半分以上なんですよ。未加入率は五二%なんです。
そこで、そういう何十年か先のメリットがあったって、それを本当にありがたいと思わないで加入しない人が半分以上を占めている、そういうことを本当に政策としてやっていいのか。だから、この効果というのは、今政策支援して二十年、三十年先にメリットがありますよという効果は物すごく少ない。ゼロとは言わないけれども、少ない。費用対効果を考えてもやめるべきだ。その点が一点。
それから、さっき言った年金を支給しますよというメリットを与えることは、これは今度の担い手確保という政策に関しては、全く効果ゼロでしょう。この二点だけお聞きします。
○須賀田政府参考人 先生御指摘でございますけれども、先生御承知のように、年金制度の特徴といたしまして、一つは長期的であるということ、それから負担先行型であるということ、三つ目の大きな特徴として属人的であるということ、こういうことが政策支援手法としての年金制度の特徴でございまして、こういう特徴を踏まえながら、意欲ある担い手に対して保険料の負担軽減を長期的に支援をしていくということによりまして、その担い手が長期的に営農継続が可能になる、こういう仕組みにしておるところでございます。
特に、自営農業者は被用者年金におきます事業主負担がないわけでございまして、一般的に公的年金の保険料負担が重いわけでございます。したがいまして、現役時代の保険料の軽減措置というのは相当効果があるものというふうに私どもは考えておるところでございます。
○筒井委員 相当効果があると考えたって、どうも農林省の今までの見込みに関しても甘いし、大体、実績から見て、さっき言ったように、資格があって今度の新制度の政策支援以上の支援をもらえる人でさえ半分以上加入していないですよ。その中で、どうして効果があるなんということが言えるんですか。
これは全く根拠のない、単なる断言であって、そんなことで年間百四十四億、これももっと大幅に上がるかもしれないけれども、こんな税金を使う必要は、まさに費用対効果から考えても必要ない、これが民主党の考え方でございます。
それから、今度の新積立方式は確定拠出型ですよね。だから、運用によっては元本割れの可能性もあるし、また、二十年、三十年先になって幾ら年金を支給するか、この金額は約束できないですね。そのことが一つ。だから、元本割れの可能性、幾ら支給するか約束できませんよということを明確に言って募集をしなければなりませんね。
もし、いや、絶対元本よりもいっぱい、必ずもらえますなんと言ったらこれは詐欺になりますから、だから、元本割れのおそれはありますよ、幾ら給付するか結果を見なきゃわかりませんよということを言って説明しなければならないと思うんですが、その点、どうですか。
○谷津国務大臣 新制度において、年金の原資の積み上げは、本人の保険料とその運用収益によって決定されるということでございますけれども、基金が行う資金の運用の成績が年金の原資の額に大きな影響を与えるので、資金運用のあり方は極めて重要だというふうに考えております。
このために、資金の運用については、農業者年金基金において、安全かつ効率的な運用が可能となるような運用方針の構築を行うことが最重要課題の一つであるというふうに考えておりまして、そのために、農業者年金基金に対しまして十分な指導監督を行ってまいりたいというふうに思っているわけであります。
具体的には、運用の対象となる資産の構成について、一般に元本保証があり、安全確実な資産である国債等の国内債券と、長期的には国内債券以上の収益が期待される国内株式等の各投資対象資産の特徴とバランスを十分に吟味して、できるだけ低いリスクで一定の収益が期待できる最適な資産の組み合わせが図れるよう指導してまいりたいと考えているところであります。
農業者に対しましては、運用資産状況について情報公開するとともに、そのような運用の基本的な仕組みについてきちんと説明しつつ、加入推進に努めていきたいというふうに考えているところであります。
また、もう一つ、元本割れの可能性についての説明の件でございますけれども、先ほども御説明申しましたとおり、新しい農業者年金制度については、運用対象となる資産の構成について、なるべく運用リスクを抑えるような資産構成比率とするとともに、農業者に対しましてそのような仕組みについてきちんと説明をしつつ、加入推進を行う所存でございます。
その上で、年金財政の仕組みとして、極めて長期的に安定的であること、政策支援があること、税制上の優遇措置があること等を十分に説明することによりまして、他の年金よりも有利である点に魅力を感じていただくよう、一定の加入者を確保してまいりたいというふうに考えております。
○筒井委員 それは、運用が成功することを当然望むし、そのためにやるわけですが、しかし、見込みどおりにいかない場合が多々ある。現行農業者年金に関してでも、当初五・五%の運用利回りを見込んでいた。しかし、平成二年からずっともう二%台で終わっている。まさに見込みどおりにいかない例の具体的な例なわけでございまして、だから、元本割れの可能性がある、このことはきちんと説明しなければいけない。今、これはきちんと説明されるというふうにお答えいただいたわけですね。
そうした場合に、では、多くの加入者が本当に見込めるのかという点でございます。
もうこの農業者年金制度に対する不信感があることは農林省も認めている。信頼が低下していることは農林省も認めておりますね。この点が一つ。
それから、今回のこの農業者年金の改正の経過で、カットだとかなんとかでもって一定の混乱があって、これでさらに農業者年金制度に対する不信が高まっている。そして、全体として農業者が物すごい大幅に減少している。その上に、今申し上げた確定拠出型、年金額が幾らになるかわからない、そして元本割れの危険性さえある。実際に今まで、見込みが間違った具体的な例がある。こういう場合に、ほとんど、多くの加入者は見込めない。
この場合の基準になるのが、先ほど申し上げた、農業後継者で、そして加入資格があって、この人たちも加入すれば同じように多額の国庫補助を受けるわけです。保険料も、そのうちの一部は、三割ぐらい免除されるわけです。今度の新制度以上の国庫補助を受ける可能性がある人たちでさえ、先ほど申し上げたように、五二%が加入していない。保険料の収納率も今低下している。そうしますと、見込めるのはせいぜい、今までのそういう実績から考えて、今度の政策支援対象者が合計で二十四万人だそうですが、やはりその半分以下、せいぜい十万、よくて十万ではないか。
具体的な根拠から、今までの根拠から考えるとそうなるんですが、どうも、先ほどから三十万人とかなんとかと言われている、これは具体的な根拠がない単なる希望にすぎないわけじゃないですか。
○須賀田政府参考人 多々御指摘でございます。
私ども、今回の新たな農業者年金制度を仕組むに当たりまして、確かに、先生言われるように、農村の現場から給付の制度につきましていろいろ御批判がございました。
主たるものだけ取り上げましても、農村の現場から要望のあった事項といたしましては、やはり加入要件が非常に厳しいので緩和をしてほしい、それから保険料負担というものが非常に割高感がある、それから死亡一時金、こういうものの改善をしてほしい、掛けた保険料が戻るように積立方式に改善をしてほしい等々の声が寄せられました。今回提出しております改正法案は、こうした農村現場の声にこたえる形で、大幅な改善をしているところでございます。
それから、確定給付型と異なりまして、拠出型ということで、加入時に将来の年金が確定しないという面は確かに今回の年金制度はあるわけでございますけれども、年金支給開始までに運用実績に応じて年金原資を積み上げまして、それを原資として年金額を確定するということとなりますと、確定給付型と異なりまして、必要な運用利回りの変化に伴います新たな年金債務というものは発生しにくい仕組みでございます。
そういう意味では、年金制度としては非常に安定したものになるのではないかというふうに考えておりまして、先ほど申し上げましたけれども、配偶者、後継者、それから施設型の経営者、こういう新たな掘り起こしもいたしまして、何とか三十万人という数字は確保していきたいというふうに考えておるところでございます。
○筒井委員 さっきの利回りも、五・五%の見込みが二%台でずっとこの十年間ぐらいきている。大幅な見込み違いが農林省にあった。この加入者数に関しても前科と言ったらおかしいですが、あるわけで、本会議場でも質問しましたが、平成七年の再計算で見込んだ一万四千から一万六千が、実績はその十分の一に終わってしまった。こういう、物すごい見込みが甘い。
実際に、そういう中でますます加入者数は、先ほど言ったように、厳しい状況の中にある。だから、参議院の農林調査室も、政府が想定している加入者数が確保できない事態も想定される、当然こういうふうなことを言っているわけです。
どうも断定的に言っているんですが、そういうことは今後やめていただきたいと思うんですね。何か甘い見込みを出して、それでもって何か政策をやって、それで最後、見込みを間違えました、間違いでしたと。見込みもまた大幅に間違っているんですよ、これ。
これもさっきの研究会でそういった指摘があったようですが、ある程度の見込み違いはいい、仕方がないと。余りにも大幅な見込み違いをずっと今までやってきた。その大幅な見込み違いが当然予測されるものでもって政策を決定して国庫補助も出している。そして結果として間違いでしたと。こういうやり方はもうやめていただきたいというふうに思います。
だから民主党の方は、全国民共通の基礎年金と、国民年金基金の一つであります農業者用のみどり年金、この二階建て体制にすべきだ、こう主張しております。
みどり年金は確定給付型でございまして、この方が現在の農家から見たら理解されやすい。しかも、これは公的年金ですから、掛金全額が社会保険料の控除の対象になりますし、それから支給年金は公的年金等控除の適用の対象になりますし、それから遺族一時金も非課税になる、そういう有利さを同時に持っているわけでございます。
今度の政府提案の新制度と違う点は、要するに政策支援がないという点だけでございまして、それ以外は全くみどり年金の方に不都合はない。この基礎年金とみどり年金の二階建て体制、あるいは先ほど古賀議員が質問したように法人化などして、あるいは農業従事者の中で厚生年金に入る人もいるかもしれない、こういう体制で十分じゃないか。それで何で不都合があるんだ。
政府案だと、さらにもう一つまた別な政策年金をつくる。ますます複雑化する。年金制度として、民主党案で一体どういう不都合が出てくるのか。これがもしありましたら、答えてくれますか。
○谷津国務大臣 まず、農業者の生涯所得のうちの引退後の所得の確保を図るために、新しい年金制度を構築してほしいという農村現場からの切実な要請に何らこたえていないことが最大の問題点というふうに考えております。
私どもとしましては、先ほどから答弁しておりますように、多くの方たちからの意見というのも聞いております。そのために、全国で申しますと、相当、数限りないと言ってはなんですけれども、そのぐらいの多くの意見聴取の場を設けましていろいろとやってきたところであります。
そして、現在の農業者年金加入者で年金等の給付の要件を満たさない者についてはみどり年金に移行する措置を講ずるということのようですが、これについては、移換金の問題等をどう措置するのか、そのような措置にみどり年金の加入者、受給者の方々や、一般国民の理解が得られるのかという点が問題であるというふうに考えております。
○筒井委員 どうも、先ほどもそうですが、松岡副大臣もそうだったんだけれども、大臣も民主党案を理解されていない。年金支給を受けられない人がみどり年金に行くみたいなことを言っておられましたが、そうではなくて、みどり年金の方に今の現行農業者年金制度から移行することができる、こういう移行制度をこっちは今設定しているわけです。
だから、民主党案でいいますと、後で質問の中で答える予定にしておりましたが、現行農業者年金にそのまま加入して、一〇〇%、カットなしの年金を受給することを選択する人もいるだろう。それから、脱退して脱退一時金を、今までの支払い保険料総額を一〇〇%受け取る人もいるだろう。それから、そういうことを選択しないで、みどり年金の方に移行をする、これを選択する人もいるだろう。この移行措置を法的に制定する。そのためには国民年金法の改正が必要になってくるわけです。
その場合には、脱退一時金相当額、つまり、今まで支払った保険料総額をみどり年金の方に移行する。この移行措置は、みどり年金も積立方式ですから、賦課方式の場合よりずっと易しいわけでございまして、何の問題もないというふうに考えて、ただ、今は質問ですから、これが民主党案の説明でございます。
いずれにしろ、今の答えだと、民主党案の二階建て体制で何の不都合も具体的には指摘されなかったというふうにお聞きをいたします。
それから、今度のカットの財産権侵害という点でございますが、特に私が強調したいのは、既裁定者に関してまでカットする。厚生年金の五%カットが決まりましたが、あれは既裁定者を避けているわけです。あれは除いているわけです。今度、農業者年金に関しては、既裁定者に初めて踏み込んでカットする。この既裁定者の権利をどういうふうに考えておられるか、こういう点を聞きたいと思うんです。
大体、年金の受給権というのは、要件が全部成立すれば当然に年金の受給権は発生をいたします。しかし、手続的に、その受給権が発生したことを確認してほしいという請求を出して、つまり裁定という請求を出してそして裁定をする。裁定する場合には、受給要件が全部そろっているかどうか審査するし、それから年金額は幾らになるのか、こういう計算もする。それを確認した上で裁定の通知を出すわけです。年金証書も出すわけです。
つまり、裁定した人に関しては、もう権利は具体的に中身も全部決まっている。その前の段階では単なる期待権とか、まだそんなに中身がはっきりしていないということがあるかもしれませんが、裁定者に関しては、もう権利が具体化されていて、中身も決まっていて、政府はその金額を支給しますよという約束を改めてしているんですよ。
加入した時点でも、法律を通じて、これこれの年金額を支給しますから加入してください、それを信じて加入して保険料も払ってきたわけですが、単なるそれだけじゃなくて、もう一度それを裁定によって確認しているんですよ。それほど具体化されている権利、これをカットするのは、やはりまずは財産権の侵害ではないかということを主張しているわけでございます。
そして、最高裁判所の判例を根拠に挙げているわけですが、最高裁判所の判例は、本会議の趣旨説明でも主張しましたように、当初の予想をはるかに超える著しい経済的、社会的事情の変化、これがあることが一つの要件になっていますね。それは認められると思うんですが、今度の場合に、当初の予想をはるかに超える、予想を超えるですよ、著しい社会的、経済的事情の変化があったと言えるかどうか。この点、どうですか。
○須賀田政府参考人 先生御指摘の最高裁判所の大法廷判決は、昭和五十三年七月十二日付の判決だというふうに受けとめております。この判決、財産権の事後的な制約について原則的な基準を示しているというお答えを本会議で大臣から申し上げたところでございまして、事後の法律によりまして、財産権の不利益変更が許容されるための公共の福祉、そういうものに適合するようにその法律が……(筒井委員「時間がないから、質問だけに答えてください。事情の変化があったかどうか」と呼ぶ)はい。
そういうことでございますから、先生御指摘の、当初予想をはるかに超えた事情の変化、あるいは、変更しなければ余りにも均衡を失して極めて不合理かつ適正を欠く結果になるというのは、私、この判決を、中を読んだわけでございますけれども、これは、個別具体的な事案に即しまして、時価に比べて著しい低廉な売り払い対価は社会経済秩序の形成という公益上好ましくない、こういう内容の判決でございまして、財産権を変更することによって保護される公益の性質というものを総合的に勘案する際の考慮事項の一部をなす、個別具体的な事案に即した事情だというふうに私どもは受けとめております。
○筒井委員 端的に答えてほしいんですが、著しい、予想をはるかに超えた事情の変化が最高裁判所の要件になっていますが、今回の場合それがない、これがはっきりしていると思うんです。
具体的に言いますと、昭和五十年ごろから農業者年金の加入者は減少して、受給権者が急増してきた。そして、平成元年ごろを境にこれが逆転した。それまで一直線に加入者が減少して受給権者がふえてきたわけで、一直線にずっとなってきて、平成元年ごろ交差したんですから、そこから逆転したんですから、もう十年どころか二十年前から予測されていた。それから、昭和六十一年ごろから単年度収支の赤字がずっと続いてきたわけです。
だから、少なくとも、平成元年ごろ受給者と加入者の数が逆転した、一直線でずっと変更してきて逆転した、この十年ぐらい前から今度の財政危機の問題はもう見込まれていたはずだ。全く予想をはるかに超えた事情の変化とはどうしても言えない。
そのことは参議院の農水委員会の調査室もこう言っていまして、当然加入者の減少は見込まれていたはずであり、結局、制度の抜本的見直しが行われずに来たことが現在の事態を招いている要因の一つとも言えるだろう、まさに予想をはるかに超える事情変更なんて全くなかった。
そして、もう一つの、時間がありませんから私の方で言いますが、最高裁判所の基準が、当初の約束どおり支給したならば極めて不合理、不適正になる、こういう事情がある場合に当初の約束を変更してもいい、こういうような骨子になっているわけです。
しかし、今回の場合、当初の約束どおり支給したら極めて不合理、不適正になるのか。当初の約束どおり支給したならば、平均九・八%のカットなし、これが月にすると二千円から四千円のカットなしということになりますが、これをカットなしにしたら、極めて不合理、不適正になりますか。この辺、どうですか。
○須賀田政府参考人 私どもの考え方といたしましては、この年金額の引き下げを講じることによって、加入者の負担能力の限界を超える保険料の大幅な引き上げや、国民一般の負担のさらなる増加というものを避けることができるという理由で、財産権に対する合理的な制約というふうなことで、憲法に照らしても許容されるものというふうに考えているところでございます。
○筒井委員 全然終わっていませんが、時間が来たので終わります。
○堀込委員長 次に、鮫島宗明君。
○鮫島委員 ただいま、前のお二人の民主党の委員から、年金法の改正についてさまざまな問題点が出されましたが、政府案では、この年金制度の変更によって国民負担の総額が幾らになるというふうに見積もられているのか、政策負担分と支給額分を含めてお幾らになるというふうに見積もっておられるでしょうか。
○須賀田政府参考人 今回の改正案では二つございまして、一つが、現行制度の処理に係ります今後の給付に要する費用といたしまして、政府案によりますれば三・六兆円程度というふうになると見込んでおるところでございます。
それから、もう一つ、新制度の政策支援に要する費用でございます。先ほど来、その数についてはいろいろ御議論ございますけれども、政策支援対象者を我々は約二十四万人と見込みまして、平成十四年度の予算におきましては三十六億円、これを単純に平年度化いたしますと年間百四十四億円ということになるわけでございます。
この新制度は、長期的に安定した制度として、担い手の育成、確保という農政上の重要課題を推進するものでありまして、いわば終期の設定を予定していないものでございまして、トータルでどのぐらいになるかということは推定できないものであるということを御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。
○鮫島委員 百四十四億、単純に六十年間かかるとすれば、それだけで八千六百四十億という巨額になるわけですけれども、国民にそれだけの負担を強いる場合に、国民の側から見れば、農業者年金基金が、ポートフォリオを駆使して、それだけの投資実績を上げるだけのすぐれたファンドマネジャーを一体抱えているのかどうかというのは、国民の側からは大きな関心です。
もしそんな有能なファンドマネジャーをこれまで抱えていたのなら、基金の運用がこれほど行き詰まることはなかったはずで、その意味では現在そういうファンドマネジャーはいない。そのファンドマネジャーがいないところに対して、三・六兆円と、さらに八千六百億有余の国民負担額を主張するというのはかなり難しい話だということをぜひ御理解いただきたいと思います。
国民各層に理解していただけるような、そういう形をとらない限り、年金に限らず、農業そのものが非農業者の理解なしには成り立たないということをよく御理解いただきたいと思います。
ちょっと本題から外れるのですが、その趣旨で、農業の側からできるだけ情報公開をし、また農業サイドでポジティブな要素を出していくという意味で、実は今問題になっているトウモロコシの遺伝子組み換え品種スターリンクのことについて、何点かお聞きしたいと思います。
既にマスコミ等で報道されておりますが、スターリンクがアメリカで食品として許可されていない理由を簡潔にお願いいたします。
○西藤政府参考人 お答えいたします。
スターリンクについては、品種の開発者とされるアベンティス社から米国環境保護庁、EPAに対して承認申請が行われておりまして、飼料用としての安全性は確認されたものの、食品用としての安全性は先生今御指摘のとおりいまだ完了していないという状況にございます。
私ども、具体的には、スターリンクが産出するたんぱく質Cry9Cについてアレルギー性がないことの確認が不十分であるということで、食品としての承認が見合わされているというふうに聞いております。
○鮫島委員 スターリンク中に含まれる、組み込んだ遺伝子から出たたんぱく質の成分がアレルギーを発症するおそれがある。アメリカでは既に混入食品で四十四人が体の不調を訴えているということが新聞にも報道されているとおりでございます。
ところが、これは、入れた人工的な遺伝子からできたたんぱく質の問題でこういう問題が起こることは恐れられていたのですが、心配されていたことが現実化した初めての例ではないかと思いますけれども、問題となっている遺伝子Cry9Cがスターリンク以外の品種にどの程度使われているのか、あるいは、自然の交配でどの程度の品種にこの問題遺伝子が入ってしまっているのか、現在わかっている範囲でお教えいただきたいと思います。
○小林(新)政府参考人 Cry9Cの遺伝子が導入されましたトウモロコシ、いわゆるスターリンクでございますが、アメリカにおきます二〇〇〇年作付用の種子として三十三品種が承認されていたというふうに聞いております。これらの品種につきましては、現在、米国での栽培は行われていないわけであります。
また、米国におきます二〇〇一年作付用種子の一部に同遺伝子が含まれる種子が混入していたとの報道がございまして、米国農務省にその点につきまして確認したところ、その事実を認めておりまして、当該種子につきましては、米国政府及び種苗会社が検査の上、回収、廃棄を行うとしております。
なお、米農務省におきまして、Cry9C遺伝子が混入した種子の品種の数につきましては明らかではないというふうにしております。
○鮫島委員 確かに、スターリンクという名前で呼ばれている品種以外にも、三十三品種にこの問題遺伝子が既に使われている。ですから、そういう意味では、スターリンクという品種だけをチェックしていても、それ以上にかなりこの遺伝子が拡散してしまっている危険性があるわけです。
これまでアメリカから日本に輸入されたトウモロコシ由来製品、飼料、食品両方あると思いますけれども、その検査結果で問題遺伝子がどのぐらい含まれていたのか、あるいは、その問題遺伝子の遺伝子産物がどのぐらい含まれていたのかの検査結果をお知らせいただきたいと思います。
○西藤政府参考人 食品用のトウモロコシにどの程度だということで、私ども、厚生労働省が直接、食品の安全性ということでチェック体制がございます。
食品用トウモロコシへのスターリンクの混入検査は、日米間のプロトコールに基づいて行っていますが、米国から輸入されたトウモロコシ十八検体中七検体からスターリンクが検出された旨が昨年の十一月にございました。このため、プロトコールがあった以降、日米で共同でやってきておりまして、六回、三十検体の総サンプルのうち三検体から検出されたという状況がございました。
それで、原因究明とその改善措置に関する協議が進められまして、本年の二月二十一日、再協議について日米間の合意が得られております。検査精度を上げるためにサンプル採取数を引き上げる等の措置が講ぜられまして、その結果、その後入ってきたものからは、検査結果はまだ一度でございますが、検出されていないというふうに聞いております。
○鮫島委員 本来、食品としての利用が禁止されている問題遺伝子由来のたんぱく成分が、かなり高頻度でトウモロコシの食品中から発見されているという問題がありますけれども、恐らく飼料についても、新聞報道では既に六〇%のトウモロコシの飼料サンプル中でこのスターリンク、問題遺伝子産物が発見されたという報道もなされているところでございます。
この問題というのは、ある意味でいえばWTO体制で出てきた二つの問題の一つ、一つは口蹄疫とかプリオンとかいう問題、それからこのスターリンクというような問題遺伝子があっという間に世界に拡散してしまう。これが今、食料、食品の国際化に伴って問題が一気に国際レベルで出てくるという非常にシンボリックな出来事ではないかというふうに思います。
私も、かつてこの遺伝子組み換えの研究の分野におりましたけれども、当時一番恐れていたのが、こういうトウモロコシや菜種のような花粉が百メートルも二百メートルも飛んでしまうような作物の遺伝子組み換えで、人間の健康に害を与えるような遺伝子がコントロール不能な状態で生態系中に拡散した場合に、これを制御する手段が現代の技術ではない。
したがって、こういうことが生じないような十分な事前の措置がとられていなければいけないということを私どもは大変、もう今から十五年ぐらい前ですけれども、ところがこの一番恐れていたことが起こった。言葉としてはジーンポリューション、遺伝子公害なり遺伝子汚染という現象が、まさに今、有史以来初めてアメリカで勃発したということではないかと思います。
御承知のように、トウモロコシは新大陸を代表する大変すぐれた作物でして、インカ帝国の文化を支え、インカの神の贈り物という扱いを受けてきた作物ですし、日本でいう、いわばお米が神からの授かり物として日本文化と深くかかわってきたように、南米のインディオの文化とこのトウモロコシは深くかかわってきたわけです。
こういう神からの授かり物を人間の浅知恵でいじって、そしてトウモロコシ全体を汚染するというかなり今危険な局面に差しかかっていると思いますけれども、現在、アメリカにおいてこの問題遺伝子の消去あるいは問題遺伝子の抑制、これ以上広がらないということについてどういう措置がとられているのか、お教えいただきたいと思います。
○小林(芳)政府参考人 スターリンクにつきましては、昨年来、アメリカの政府の方でいろいろな対応をしております。
一つは、買い上げ措置、二〇〇〇年産のスターリンクにつきまして、政府の方から直接買い上げしようという動きがございまして、これで大体九九%が回収されたのではないかというふうに言われております。
また、昨年の十月には、アメリカの環境保護庁、EPAですけれども、そちらの方に対して、いわゆるスターリンク社の方が、スターリンクの栽培承認をやっておりましたのを取り下げまして、したがいまして、現在、アメリカでの栽培は行われていないということでございます。
また、私どもの方に輸出されるえさ用のトウモロコシにつきましても、先ほど食品についての輸出前のチェックの話がございましたが、えさ用につきましても同様に、十二月十八日に日米間でそのやり方を合意いたしまして、アメリカのトウモロコシの輸出前検査に係る対策をやっている。その結果、陰性のもののみが私どもの方に輸出されてきている、そういった状況でございます。
○鮫島委員 今、必死にこのスターリンクから出た遺伝子の対策がとられていることだと思いますけれども、先ほど、最初の技術会議の局長さんの御答弁にもありましたように、三十三品種にこの問題遺伝子が使われている、それから花粉を通じて混入しているものは実は何品種に入ったかわからない。
もうすぐ作付のシーズンに入ると思いますけれども、ことし作付されるトウモロコシの種子中にこの問題の遺伝子、虫を殺す機能を持ったたんぱく質の遺伝子ですけれども、この遺伝子が混入している可能性があるのではないかという指摘がありますが、これについてはいかがでしょうか。
ちょっと解説しますと、この虫を殺すたんぱく質の遺伝子というのは大変小さな遺伝子で、四、五十種類あることも知られていまして、今、大豆でもトウモロコシでもトマトでも、かなり多くの作物に大変使いやすい遺伝子として使われておりますけれども、これは哺乳類、人間や動物には害がないと従来言われていたのですけれども、たまたまアベンティス社がスターリンクに使ったCry9CというこのBtトキシンだけが人間に対しても毒性を持っていた。
これはできてみて初めてわかって、しかもかなり栽培が広がってしまって、花粉が飛び散ってからこのようなことがわかったという特殊な状況にあることを考えれば、この遺伝子が、ことし新たに植えつける、先ほど九九%回収したと言いましたけれども、新たに作付する種の中にまざっていないと言えるのかどうか、この点についての見通しはいかがでしょうか。
○小林(芳)政府参考人 今先生からのお話にございましたように、このCry9C、こういったものがどういう段階で混入してくる可能性があるのか。
いろいろな形態が考えられるわけですけれども、一つは、風によっての花粉の伝播があるわけで、これは、要するに圃場段階でどうやってそれを防止していくかということでございますし、また生産者がその種子を生産する過程でほかのものときちんと分別していく、そういった対応がきちんとできるか。
また、さらにはその後の保管とか搬出入における管理の適切さということがポイントになろうかと思っていますが、その中で、アメリカの方の対応ですけれども、アメリカ農務省では、先ほど申しましたようなCry9Cの影響を受けたトウモロコシについては買い上げということのほかに、種子会社の方でそのCry9Cの検出のための検査をやってもらう、それに対してアメリカ農務省が監視するといったことも行われています。
また、種子会社の方の対応としましても、その組織団体の米国種子貿易協会というのがありますが、そちらの方でも検査を行って、混入の判明したトウモロコシ種子については販売を行わない、そういった方向を出して、また販売する際にはそういったものが入っていない旨の証明書を交付するというようなこともその団体側の対応として発表されているといった状況でございます。
したがいまして、先ほども申し上げたような圃場の段階、それからいろいろな管理の段階等々の対応をいかにきちんとするかということによることでございまして、そういう意味での対策を万全にやってもらうということが第一の前提だと思っております。
○鮫島委員 ことしの三月一日のワシントン・ポストに、ことしまく予定のトウモロコシの種からこの問題遺伝子が発見されて、慌ててその作付前に回収されたという事例が既に報告されています。
スターリンクがまざっているかどうかというよりも、この問題遺伝子が拡散してしまっていることがまさに問題でして、例えば、日本でもそろそろ四月になればスイートコーンを育てる農家がたくさんいると思いますけれども、今日本で使われているトウモロコシ、ゆでたり焼いて食べるスイートコーンの種は一〇〇%海外、しかもそのうちの九八%はアメリカで交配されて開発された品種ですから、昨年の秋に収穫されてことし新品種としてさまざまな名前で日本に持ち込まれるわけですけれども、こういう中にも自然交雑によってこの問題遺伝子が入っていないという保証はないわけです。
ですから、その意味では、これまで以上の監視体制を継続的に続けないと、この遺伝子がトウモロコシの世界から退場するまでの間は、かなり厳密な長期的な監視が必要だということを私は提案しておきたいと思います。
この遺伝子組み換えの農作物をつくる、あるいは栽培する、食品として利用することに関して、ガイドラインが整備されているはずです。文部科学省段階の、実験段階のガイドラインと、それから農業用に利用する場合のガイドラインと、さらに、それを食品として利用する場合の安全性の審査があるわけですけれども、今回の失敗は、入れる遺伝子の産物が食品としての適性があったのかどうか、あるいは人畜に本当に無害だったのかどうかの遺伝子の事前の評価が不十分だった。
今の農水省のガイドラインの方では、栽培していいかどうかの評価だけで、食品としての適性の評価は厚生労働省の食品衛生法でやりますというふうになっていますけれども、これは、かなりの量をつくってから、実際食品としてマーケットに出る前に初めて厚生労働省で検査する。
そうすると、既にそのときに、実はその遺伝子は問題だったというふうに、今度のようなことがあっても、もう花粉は日本全国に飛び散っちゃっていますというおそれがあるわけですから、ぜひガイドラインを見直していただいて、環境に対する安全性と食品についての安全性の事前評価を同時に行えるようなことをお考えいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○松岡副大臣 ただいま鮫島先生のお話を伺っておりまして、さすがに専門家で、御見識、本当にそのとおりだというふうに思いながらお伺いしておったところでありますが、今の御指摘の、例えば食品衛生として、また農産物としての環境に与える、そういった点、事前審査を同時に行うべきではないか、私も望ましい姿としては全くそのとおりだろうと思います。
ただ、現状におきましては、技術的な点等もございまして、そこが同時に行えないような、今おっしゃったようにそういう実態になっているものですから、これはもう今後、大いに検討課題として、先生の御指摘を踏まえて我々も取り組んでいきたい、そのように思います。
○鮫島委員 今の問題も含めて、先ほどちょっと申し上げましたけれども、今日本は、東から問題遺伝子に攻められ、西側からは口蹄疫、プリオンに攻められているという、ある意味では大変不安な状況にあるわけです。
アメリカは恐らく、トウモロコシはアメリカの農業の稼ぎ頭ですから、国益を守るために情報隠しは平気でやってくると私は思います。その意味では、なかなか水際の検査で、もう既にいろいろな品種がまざってバルキーな状態で港に運ばれて、それから検査するというのでは手おくれです。
私は、先進国の中で日本が非常におくれていると言われている国際食料検査官の配置、日本向けの食料を生産し出荷しているところの現地に定点観測としての専門官を配置して、そして、その専門官のサインがなければ日本に輸出できないというような、アメリカの食肉検査官制度に類する仕組みをこのWTO体制下でつくっていかないと、東からはスターリンク、西からは口蹄疫、プリオンという、この状況に安心して対応できないのではないかと思います。
国内にかなりの数の食糧検査官がいると聞いておりますので、食管法もなくなった今日、ひとつそういう方々の人材の活用も含めて、ぜひ国際食料検査官制度を前向きに御検討いただきたいと思います。
最後に、大臣から一言いただければ。
○谷津国務大臣 先生、専門的な御見識をお持ちでありますし、またみずから研究にも携わったというお話を今聞きまして、先生の一つ一つの御質問というものは、私自身にも身にしみ込むような感じで、今承っておりました。
食品の安全性や食料の安定供給に対する消費者や一般国民の関心が高まっております中で、この輸入の食料につきましては、安全な食料の安定的な輸入を確保するためには重要な行政課題であるというふうに、私もその点認識をしているところであります。
このために、農水省といたしましては、米、麦、トウモロコシ等の主要農産物等について、海外の生産状況、あるいは価格の動向、そして需給見通し等について、情報の収集とか、あるいは分析を行っているところでございます。
また、輸入食料について、厚生労働省が行う食品衛生法に基づく検査のほか、特に米麦については、食糧庁が残留農薬等の検査を実施しておりまして、安全性が確認されているものを買い入れるということにしているところであります。
こういう各般の措置を講じているところではありますけれども、今先生が御提言いただきました点につきましても、細かい点は承知をしておりませんけれども、輸入食料の安全性等の確保に係る省庁間の任務あるいは権限の調整が必要なこともございますし、また、新たな行政組織の新設に伴う行政コストが過大なものになるおそれがあることも考えられます。
また、具体的な実施に係る相手国との調整を要する事項もあるものと考えておりますけれども、先生の今の御指摘のございました点につきましても、私としましては、考えなければならないかなというふうに思っているところであります。これからそういう諸点について検討する必要があるというふうに考えておるところであります。
○鮫島委員 どうもありがとうございました。納税者に優しい農政をぜひお願いいたします。
○堀込委員長 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時三十六分休憩
――――◇―――――
午後一時二十二分開議
○堀込委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。江田康幸君。
○江田委員 公明党の江田でございます。この農林水産委員会では初めての質問になります。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、政府案についてお伺いいたします。
農業者年金制度は、制度発足当時、当時の旧農業基本法に則して、農業構造の改善のための施策の一つとして位置づけられておりました。しかし、決してこの年金制度だけで構造政策をやるということではなかったと理解しております。
大臣にお伺いいたしますが、今回の抜本改革では、年金財政上の問題だけでなく、農政上の問題からも抜本改革が必要ということを聞いておりますが、まず、農政上の改革の必要性についてどのような整理をしておられるのか、明確に御説明をいただきたいと思います。
○谷津国務大臣 農業者年金制度は、昭和四十年代の農村における過剰労働力の存在あるいは農業の零細経営という実態を踏まえまして、旧農業基本法における農業構造の改善に関する施策として、老後生活の安定とともに農業経営の近代化、そしてまた農地保有の合理化を促進するために創設されたものでございます。
本制度は、今日までに、九十八万人に対しまして三兆八千億円の年金を支給するなど農業者の老後生活の安定、そしてまた三十歳代の前半の後継者を中心に八十七万件の経営移譲が行われるなど農業経営の若返り、そして百五十七万ヘクタールの農地が細分化されずに後継者に継承されたということ、そしてまた十五万ヘクタールの農地が第三者に移譲されるなど農地の細分化阻止、規模拡大に寄与してきたところでもございます。
しかしながら、その後、農業をめぐる情勢が著しく変化をいたしまして、基幹的な農業従事者が昭和四十年の八百九十四万人から平成七年には二百七十八万人に減少するなど、担い手不足が著しく進展をしてまいりました。また、農業就業人口に占める六十歳以上の方の割合が、昭和四十年の二二%から平成七年には六三%に増大するなど、農業就業人口の高齢化が進んできておりますなど、大きな変化があらわれまして、担い手の確保が喫緊の課題となっております。
このため、これまでの農業経営の近代化、そしてまた農地保有の合理化という目的にかえて、担い手の確保という目的に資する制度とするための改正を行おうとしているところでございます。
○江田委員 今大臣から答弁がございましたように、担い手確保のための施策として改革するということでございますが、一昨年七月に、旧農業基本法にかわり食料・農業・農村基本法が成立し、その具体化のための施策を農水省で検討しているところと承知しております。この農業者年金の新制度は、食料・農業・農村基本法の中でどのように位置づけられる施策であるのか、改めてこれについて明確な答弁をお願いいたします。
○谷津国務大臣 平成十一年七月に成立いたしました食料・農業・農村基本法は、今後の我が国の農政の基本理念を明らかにしております。具体的には、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、また農業の持続的な発展、それから農村の振興の四つであります。
このうち、これらの基本理念を実現するための重要な要素といたしまして、基本法第四条では農業の担い手の確保について定めているところでございます。新制度は、これを受けまして、農業の担い手の確保のため老後の安心と安定を支えるものとして創設されるものでございます。
さらに、基本法の第二十一条は、農業の持続的な発展を図るために、効率的かつ安定的な農業経営の育成を通しまして、こうした農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造の確立に向けた施策を講ずるべき旨規定をしております。
新制度におきましては、このような農業経営を目指しまして、努力する意欲ある担い手に対しまして保険料負担を軽減する政策支援を講じますとともに、また農業経営の改善に専念できるようにしているところでございます。
○江田委員 ありがとうございました。
では、これまでの農業者年金制度は、年金制度の中で特別に国費を入れ政策年金としてやってこられました。今回、その政策目的の変更を含め、抜本的な改革のための政府案が提示されたわけでございますが、私は、農業は国の基本であり、農業について特別なこのような制度を用意する国民的な意義は変わっていないと思います。
食料の安定供給ばかりでなく、地方経済の中核であり、さらに国土や環境の保全、水源の滋養、景観の保全など農業の多面的機能を考えるときに、我が国にとって農業は国の基本であり、骨格であると考えます。そのためにはまず農業の担い手の確保が重要である、そのように私も思います。
新制度が担い手確保のためにどのように効果を発揮していくと期待しているのか、この点は重要でございますので説明していただきたいと思います。
○谷津国務大臣 御指摘のとおり、国民に対する食料の安定供給やその確保、あるいは農業、農村の有する多面的機能の発揮を図るためには、農業の担い手確保、育成が重要な課題であるというふうに考えております。そのためには、農業を職業として選択し得る魅力あるものとしていかなければならないというふうに思っておるところであります。
農林水産省が昨年の三月に公表いたしました農業経営の展望におきましては、望ましい農業経営の姿といたしまして、主たる従事者の生涯所得が他産業従事者と遜色のない水準である二億二千万から大体二億八千万を確保し得る農業経営の育成を展望しているところでございます。
その際、生涯所得の確保のために、現役時代の農業所得の向上を促進する一方、リタイア後の問題がございますが、リタイア後は、補助的農作業による所得とあわせまして年金による所得確保を織り込んでいるというところでございます。
このために、農業者の就農期あるいは経営改善期等の現役時代の経営の発展段階に応じた担い手対策を講じるとともに、今回の農業者年金の改正におきましては、望ましい農業経営を目指す意欲ある農業者に対しまして保険料助成を措置する等、現行制度にかわる新たな政策年金制度を措置しまして、他産業並みの生涯所得の確保に資するものとしているところでございます。
これによりまして、意欲ある担い手が老後生活の安定を展望しながら農業経営に取り組んでいただけることになるとの期待をしているのでございまして、この辺のところもひとつ御理解をいただきたいと思います。
○江田委員 今大臣の答弁にもございましたが、今回の農業者年金の改正は農業の担い手の確保に効果があるということでございます。
これは質問ではございません。私の考えであり、公明党のやってきた検討でございますが、補助金漬けと批判を受けることもある日本の農業でございますが、農業の担い手である農業者に対する財政支援は程度の差こそあれ先進各国が行っており、その批判は当たりません。
この中で、今回の農業者年金の改正と同時に、我が党が重要と考え、検討を進めているのは、農家や担い手の直接所得支援制度の創設でございます。これまでの営農不利地域に限らないアメリカ型の直接所得補償でございます。二〇〇一年度の予算では、農水省は三兆四千億円ございますが、このうち一兆七千四百億円が農地の基盤整備を中心とした公共土木工事であり、農家自体を潤すというよりも土木建築業界、農機具機械業界を潤してきたという指摘もございます。
むだと、このように指摘されているこうした予算を農業者への直接所得補償に充てて営農意欲向上を促していくことが、担い手の育成、日本の農業の再生に大変に重要と考えていることをここで政府にも指摘をしていきたいと思います。
さて、その上で、このような考えを持っておる公明党も検討している総合的な農業対策の中で、今回の農業者年金法の改正について、民主党案についてお伺いをいたします。
民主党は、新制度は要らない、また、担い手の確保は年金手法ではなく現役時代の施策で行うべしとの御意見でございます。その民主党案によりますと、一定の支給要件を満たさないために、経営移譲年金も農業者老齢年金も脱退一時金も死亡一時金も給付を受けない人にはみどり年金に移行させる措置を講ずるということでございますが、まず一定の支給要件とは何か、これを満たさない人とは具体的にどういう人たちを想定しておられるのか、またどのような移行措置を講ずるのか、具体的に説明をしていただきたいと思います。
○筒井議員 少し誤解があるようでございまして、一定の支給要件を満たさない場合にみどり年金への移行措置をとるというふうには、民主党は言っておりません。支給要件を満たす人でも選択ができる、支給要件を満たす人が現行農業者年金を一〇〇%カットせずに受給することもできるし、それから脱退をして脱退一時金を受領することもできます。
そのいずれもしない人はみどり年金の方に移行することができる措置を講じますということでございまして、移行する場合には、今までの支払い済み保険料の総額、これが移行されますし、今までの保険料の支払い期間、これも移行されます。現金としては基金から基金への移動でそれが可能かと思います。だから、その三つのいずれでも、現行農業者年金加入者は選択をすることができる、こういう趣旨でございます。
その結果、民主党案によりますと、全国民共通の基礎年金とみどり年金、それから現行農業者年金、これは支給業務だけ存続することになります。
平成十四年一月一日時点で凍結をして、現行農業者年金の加入者からの保険料の徴収もしません、新規募集も停止しますから。それで、今までの保険料支払い等に対応した年金の支給業務だけが存続する、こういうふうな体制になるわけでございます。だから、大きく言えば二階建て体制。ただ、途中、そういうふうに現行農業者年金が経過措置として存続する。
それから、先ほど質問にもありました、例えば農業者で法人化した場合に厚生年金に加入する必要もあるだろう、こういうものがありますが、大きくは二階建て体制の年金体制でする。
そして、担い手確保という政策は年金とは別の政策で確保する。その年金とは別の政策には、今現在政府もやっております融資とか債務保証、あるいは研修とか指導、こういうのもあるでしょうが、より抜本的なものとして、減反廃止と所得補償。今、所得補償は、先生主張されまして、考え方は全く一緒でございます。そして国際備蓄、これも政府が提案しているものでございます。
それら抜本的な農政の改革によって担い手の確保を目指すべきだ、こういう提案でございます。
○江田委員 支給要件は選択制であるということのお話がございました。私、先ほどから民主党案に対する質問、それに対する答弁を聞いていてよくわからないことが次の質問でございます。
御存じとは思いますけれども、私も厚生委員会に今所属しております。農協職員等の農林年金の厚生年金への統合がございました。その統合では、相当な時間と関係者の大変な御苦労があったと存じております。特に、農林年金からの移換金を幾らにするかで、農林年金側と厚生年金側で相当もめたわけでございます。
みどり年金は、御承知のとおり、先に年金額が決定しておりまして、それに必要な掛金が加入年齢ごとにあらかじめ決まっている制度であるのはよく承知のことであります。農業者年金の加入者が単に新規にみどり年金に加入するということでないとしますと、そこへどうやって途中から入っていけるのか。みどり年金の加入者、受給者に迷惑のかからないやり方でやらないと、これは大変なことになるわけであります。
その具体的な移行措置についてどのように考えておられるのか、具体的に、明確にお示ししていただきたい。
○筒井議員 農林年金の場合は厚生年金と制度そのものが合併、統合する場合でございまして、今度の民主党の提案の場合は、制度そのものの合併ではないというところで、本質的に全然違いがございます。農業者年金に加入していた人が、それぞれ個別に希望者がみどり年金の方に移行するという形でございますから、その二つの場合は全然違う形でございます。
そして、移行する形は、先ほど申し上げましたが、今までの農業者年金における保険料の支払い総額、これを持っていく、それから、保険料の支払い期間を持っていく、その形でみどり年金における積立方式での計算ができるわけでございまして、この形でもって移行しますから、みどり年金への迷惑は全くかからない。
ただ、今農業者年金の場合、空期間がありますから、それをどういうふうな形で移行するか、これは今後の検討の問題だと思いますが、これを移行しない限りは、まさに全くみどり年金の方に何の迷惑もかからない、こういうふうに考えております。
○江田委員 そのように申されますが、少なくとも現行制度の中で、現行の農業者年金制度はもう積立金が使われておりまして、千四百億でございましたでしょうか、ほとんどそのくらいしか残っていないのでございます。そして、現在受給されている方々には、その制度のままで、もちろん政府案として九・八%カットの上で受給を保障していくということでございますが、そちらの方にも使わなくてはならない。
そういう積立金がないような状況で、加入している方々がみどり年金に行くその原資は全くないのでございますが、このようなことを、全くみどり年金側に迷惑がかからないというふうに言ってよろしいのかどうか、そこら辺についてお願いいたします。もう時間がございませんので、簡潔に。
○筒井議員 積立金が全くない中で、しかし政府案はその支払い済み保険料の何倍もの支給もするということを予定しています。それから、九・八%カットで、その予算が三兆六千億円程度、これから六十年、七十年の間に予定しているわけでございます。
そのうちの一部分が脱退一時金でございまして、今までの保険料支払いの総額でございまして、これが、全員脱退したとすれば一兆円なんですね。政府案の三兆六千億円よりもずっと少ないんです。今までの保険料の総額を持っていくわけですから、財源は、そこにあります政府案よりももっと財政負担が少なくて済む、こういう形になります。
○江田委員 時間がなくなりましたけれども、農業施策としてそのような考えが果たして通るのかどうか。農業の担い手を守る、育成するというようなことには全くならないと思います。参考としては聞いておきますが、具体性、正確性には問題ありと理解させていただきます。
以上でございます。
○堀込委員長 次に、一川保夫君。
○一川委員 私の方からも、今回の農業者年金基金法の一部改正に関する法律について、政府側とそれから民主党の方にもお尋ねしていきたいというふうに思います。
まず最初に、政府の方に基本的なところをお聞きしたいと思っております。もうこれまでの質疑の中で幾つかいろいろな具体的なやりとりがありましたので、できるだけ重複は避けたいというふうに思っております。
そこで、今回の農業者に対する年金というこの制度をまた新たな制度に組みかえて存続をしていくという基本的な考え方でございますけれども、従来の農業者年金に関する制度というのは、政策目的としましては、そのほかにも、農業経営そのものを近代化するとか、あるいは農地保有のそういった合理的な形に持ち込んでいきたいというようなことも含めた政策目的があったというふうに思います。
今回は、農業者を確保する、担い手を確保していくというところの目的に特化して、こういう制度を存続していきたいということになっているわけですけれども、どうもそのあたりがもうちょっと私が理解できないところもあるんですけれども、そういうふうに目的を絞り込んだというところについてお考えをお聞きしたいと思います。
○谷津国務大臣 近年の我が国農業の食料供給力の低下、先ほどからこれも申し上げておるんですが、あるいは耕地利用率の低下、そしてまた耕作放棄地の増大等によりまして、国民に対する食料の安定供給を確保するためには農業の担い手を確保することが重要であると考えております。
その点から、農業の担い手を確保するためには、農業者の生涯所得の充実を図り、そして農業を職業として選択し得る、そういうことが非常に大事だというふうに思っているんです。それには何といっても担い手を確保しなければなりません。
そういうことで、担い手を確保するためには、先ほどから申し上げていますけれども、農業者の生涯所得をきちっとしていかなきゃならないということでありまして、そういった面でこれが必要だというふうに考えているわけであります。
昨年三月に農林水産省が公表いたしました農業構造の展望におきましても、基本法で言ういわゆる効率的かつ安定的な農業経営の具体的な姿といたしまして、主たる事業者一人当たりの生涯所得が他産業従事者と遜色ない、いわゆる他産業並みの所得が得られるような経営を確保することを目標としているところであります。
その中では、リタイア後の所得、これも重要な部分を占めておるというふうに考えておりまして、年金所得で確保することが大事だというふうに思っているわけであります。
そういうことから、担い手の農業所得の向上に資するような、いわゆる農地の利用集積の促進、あるいは農業技術、経営管理能力の向上等を促進していかなければなりませんし、担い手が老後生活の安心と安定を展望しながら農業生産活動に従事できるよう、農業者のための新たな年金制度を創設することとしたところでございます。
こうした生涯所得の充実を図る観点から、農業者のための年金制度を措置することによりまして、その老後の所得の充実を図りながら農業の担い手の確保に資することとしたのがこの法案でございます。
○一川委員 そのあたり、またこれからいろいろ議論させていただきますけれども、これまでの農業者年金制度というのは、先ほど来いろいろな御指摘がありますように、いろいろな面で大きな見込み違いをしてきておる。
それと、我が国の農業の構造改善というものにどの程度役割を果たしてきたかということが、ちょっと、余りはっきりとそれを説明し切れないように、いろいろな面で我が国の農業の構造的なものが脆弱化してきておるわけですね。
もしこういう年金制度的なものがなかりせば、それがもっとひどくなっていたという言い方があるかもしれませんけれども、ただしかし、こういった制度を当時スタートする折のいろいろな制度の趣旨、またいろいろなねらいということからしましても、どうも余り大きな寄与というものがなかったのではないかなという感じも、私は個人的にも思っております。
今回、農業者を確保していくという観点にある程度絞って物事を考えてみた場合に、ではこれまでの農業者年金制度というのは、先ほどちょっと触れましたように、農業経営の近代化だとか、あるいは農地保有の合理化的なこともあわせた目的を持っていたと思いますけれども、では、農業者を確保するという観点から見た場合に、これまでの年金制度というのはどの程度寄与してきたのかな。
現実問題、もう農業従事者の数というのは減ってきておるわけだし、物すごく高齢化してきておるわけだし、そういう面では、今までの年金制度というのはどの程度成果があったのかというところの評価をもうちょっと明確にお聞かせ願いたいと思います。
○谷津国務大臣 農業者年金制度は、昭和三十六年に制定されました旧農業基本法の目標を達成する施策の一つとして昭和四十五年に創設されまして、農業者の老後の生活の安定と農業構造の改善に一定の役割を果たしてきたと思っております。
本制度は、今日までに、九十八万人に対しまして三兆八千億円の年金を支給するなど、農業者の老後生活の安定、そしてまた三十歳代前半の後継者を中心に八十七万件の経営移譲が行われるなど、農業経営の若返り、そしてまた百五十七万ヘクタールの農地が細分化されずに後継者に継承されまして、そして十五万ヘクタールの農地が第三者に移譲される等、農地の細分化の防止、規模拡大に寄与してきたというふうに思っております。
これらの成果については、農業経営の若返りについては、農地等の生前一括贈与を受け、贈与税の納税猶予を適用されている後継者を中心とした受贈者が約四十歳から五十歳代であるのに対しまして、経営移譲を受けている後継者が三十歳代前半であること。
それで、規模拡大については、一件当たりの農地の移動面積が、全体の農地の権利移動の平均が都府県で〇・二九ヘクタール、あるいは北海道で四・一ヘクタールであるのに対しまして、農業者年金の第三者移譲の場合が都府県では一・一六ヘクタール、それから北海道では十・九四ヘクタールでありまして、それぞれ、都府県で四・一倍、北海道で二・六倍となるなど、他の施策だけではできなかった効果を発揮しているものと考えております。
○一川委員 私は、先ほど来いろいろな質疑の中で大臣もお答えになっておりますけれども、担い手対策というのは当然年金制度だけじゃない、あくまでもこれは、どちらかというと補完的な役割を担うような制度であろうというふうに思っておりますし、担い手対策、農業従事者の確保という観点からすれば、本来は本格的な政策が当然あるのがしかるべきだし、また、農業に従事する方々もそこを期待しているわけです。
そういうことを考えますと、この年金制度というものは、担い手確保、農業者を確保するということを余り大上段に掲げてもなかなか難しい面があるのではないかという感じは持っております。
私自身は、農業者を確保するということは、今民主党の方々も問題提起されていますように、やはり農業に対する働きがいといいますか、そういうものが根底にない限りはだめだと思うし、また、農業関係以外の国民全体の皆さん方が、農業という産業に理解を示し、また農産物というものに対してやはりそういう問題意識を持った中で、農業に従事している方々に対して支援しているという国民的なコンセンサスというのは非常に大事だと思うんですね。
そこのところがしっかりとしたものができ上がってくれば、所得が多少低くても、やはり働きがいがあるということがある程度自覚できれば、私は担い手というものはおのずとある程度確保されていくというふうに思うわけです。
そういう観点からすると、これから新しい農業基本法を受けたもろもろの農政の施策を具体的に展開されていくわけですけれども、どうも全体の姿が見えない段階で個別にいろいろな制度が先走りするわけですけれども、では、この農業者年金制度というものがどういう役回りをこれから担っていくのか。
また、それに投入する国費、国庫支援、国庫負担というものはどの程度が妥当なのかというところの判断が、なかなか我々もつきがたいところがあるわけですけれども、そこのところの基本的なお考えは大臣はどのように考えていらっしゃいますか。
○谷津国務大臣 先生御指摘のように、確かに、農業に携わる者が誇りを持ってといいましょうか、そういうような面で、農業というのがどういうふうな形で国民、国家に寄与していくかというようなことについて、その哲学をしっかり持つということは大事だというふうに私も思います。
そういった面から申し上げまして、私も、この農業政策の一つの政策の中に、農業をやられる方が、とにかく自分たちのつくったものが国民の健康を維持するために寄与していく、あるいは生命を維持するために食料というのがいかに大きな価値あるものであるかということの認識のもとに農業政策が出されなければなりませんし、農業者にもその意識というのが十分にあってこそ初めて再生産につながるし、また農業というものに誇りを持ってくるだろうというふうに私は考えているところであります。
そういう面からいいますと、この農業者年金というものは、今先生が補完的な役割ではないかというふうなお話をなされたわけでありますけれども、私もそういう側面はないとは申しません。
しかし、少なくとも、農業をやっていくために、老後のことも考えていった場合に安心して農業に携わることができる、あるいはまた担い手が出てこられる、そういうふうな政策というのもまた重要な課題でございますから、そういった面の中において、この農業者年金制度というのを今改正させていただいて、そういったものに資するための大きな糧になるというふうにも私は考えているわけでございます。
そういった面で、これからの農業というのが、これまででもそうでありますけれども、私は何回も申し上げますが、国民の健康を維持する、それは食料によって、食べ物によって維持するんだ、我々はそれを供給しているんだ、そういう誇りある農業ができるような施策に持っていかなければならぬというふうに考えているところであります。
○一川委員 私は、先ほどちょっと触れましたように、農業者を確保していく、担い手を確保していくという施策は、要するに相当幅広いものがあって、大臣もおっしゃっているように、農業そのものに魅力を感ずる、また働きがいがあるというようなものに持っていかない限りは、基本的にはその問題は解決しないというふうに思います。
そこで、この農業者年金制度ということに関連して民主党の方にちょっとお尋ねしたいのは、要するに、農業者相手のこういう年金制度というものは、今回民主党の案では、新たなものはつくりませんと。しかし、いろいろな自由選択があるわけだけれども、農業者の方々を対象にして、どういう年金制度が望ましい、本来あるべきだというふうにお考えなのか。それは既存の年金で十分足りるんだというふうなお考えなのか。そのあたりの問題意識といいますか、ちょっとそこのところをお聞かせ願いたいと思います。
○三村議員 一川先生にお答えいたします。
問題意識ということでございますが、私どもの対案につきましては、新規の加入というものを受け付けないということにしましたが、この農業者年金の新たな制度につきましては、現在の農業者年金基金の加入者に対しましては、保険料納付済み期間を他の年金基金制度に移行する際に組み入れるということを措置いたしております。
移行先の一つとして、けさほど来、みどり国民年金基金ということを挙げておりますが、これはそもそもが農業従事者の老後の生活の安定のためにつくられた制度であり、今回政府が改正案で提示している積立方式の年金制度でございます。
みどり国民年金基金は平成三年に発足した制度でございますが、これら既存の制度を有効的に活用しながら、複雑化している年金制度を整理しつつ、農業者の年金制度を保障していくという考えでございます。
また、移行措置というものを非常に重要に考えておりまして、その移行措置をなぜ設けるか。現在、農業者年金基金に加入している方々の年金に継続性というものを持たせ、年金制度そのものが持つ将来への期待というものを保障しなければいけない、そのように私どもも考えるわけでございます。
政府案では、新制度によって、従来の賦課方式の年金と今後の積立方式の二本立てとして、旧制度分の将来受給額は掛け損を生じないように支給するというふうになっているわけでございますが、その条件には物価スライドというものが考慮されていないわけでございます。例えば現在三十五歳の加入者ならば、三十年後になって、三十五歳当時の納付済み保険料に相当する額に応じた保険料を受け取るという形になります。
私どもが提案するところは、旧年金制度の清算を行い、また年金制度そのものの信用を回復するという方向性を目指しております。
○一川委員 民主党側の問題意識もそれなりに、現行のいろいろな制度なり、これから政府が目指そうとする新しい制度のそれぞれの課題的なところにある程度メスを入れた考え方だというふうに思います。
要は、これからの年金制度、日本国民全体を対象とする年金制度のあり方というのは国家的にも重要な課題でございますし、そこの基礎的な部分をどうするかとか、あるいは二階建て、三階建て的な議論をどうするかということが今まだ解決された段階でもございませんし、そういう面では、いろいろな面で今試行錯誤している段階かなという感じがするわけです。
私は、新しいこういった年金制度的なものというのは、やはり国民の皆さん方の選択にある程度ゆだねるというような、弾力性を持たせた方がよろしいんではないかということを基本的に思っているわけです。
そこで、今回、政府の提案されている年金制度というものは、先ほど来触れていますように、担い手確保ということに相当こだわったような言い方をされていますので、そのことに関連して、若干具体的なお話を聞きたいわけです。
きょうも幾つかこれに類似した質問があったわけですけれども、今現在、新規に就農する方というのは、全国的な動向というのはどのような動きになっているのか、そのあたりと、ではこれからの見通し的なものをどのように描いておられるのか、まずそこをお聞かせ願いたいと思います。
○須賀田政府参考人 新規就農者の動向についてのお尋ねでございます。
いろいろな就農形態があるわけでございますけれども、このうち、将来、効率的かつ安定的な農業経営の担い手になることが期待される、いわば青年就農者、三十九歳以下の新規就農者でございますけれども、この新規就農者の動向につきましては、平成二年四千三百人を底にいたしまして、近年増加傾向で推移をしておりまして、平成十一年には約一万二千人というふうになっているところでございます。
昨年三月に私ども、農業構造の展望というものも発表いたしまして、平成二十二年を目標年次といたしまして、家族経営、法人組織経営合わせまして約四十万経営体という担い手を確保することを目標にするということとしたところでございます。
この目標を達成するためには、世代交代がございますので、毎年約一万三千人程度の新規就農者が必要ということでございますので、現時点で大分近づいておりますけれども、まだまだその目標には達していないという状況でございます。
○一川委員 また、その問題とも関連しますけれども、これは平成十年だったと思いますけれども、青年等の就農促進法、これは略称ですが、こういった法律で、新規就農者に対するいろいろな支援措置みたいなものの対象年齢を広げるという法律改正を一遍したことがあると思います。
あの法律を改正した後の成果というのは、どの程度上がっていますか。それはいかがでしょうか。
○須賀田政府参考人 平成七年に制定されました青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法、これは先生御指摘のように平成十年に改正をいたしまして、四十歳以上の方もこのような各種施策の対象にするということにしたわけでございます。
現在、中高年、四十歳以上の方の離職就農の動向でございますけれども、とみに増加をしておりまして、平成十年が五万三千人、十一年も五万三千五百人というふうに増加傾向にある状況でございます。
○一川委員 大幅にふえていると言う割には、そんな大きな数字でもなかったような気がしたんですけれども、徐々にふえておる、そういうことでしょう。
それとあわせまして、これは新しい農業基本法にもうたっておりますけれども、先ほど来どなたかの質問に出ておりました、高齢者をもっと農業の中で活用すべきじゃないかというお話。
これは農業だけじゃなくて、日本の産業全体の中でも、これからの高齢者の活用の仕方というのは重要な課題だと私は思いますし、特に農業なり林業なりというのは、前にもちょっと触れたことがありますけれども、高齢者の方々が幾らでも活躍できる場がある。また一方では、女性の皆さん方にももっと農業という産業の中で活躍していただきたいということでの施策をこれからも展開されるということなんです。
そういう高齢者向けのいろいろな政策、それから女性向けのそういう政策と、今回のこの農業者年金制度というのは、もろにどういう関係があるかというのはちょっと私もわかりませんけれども、そのあたりは、お互いにうまく両立するというふうに当然理解するわけですけれども、高齢者に対する対策、女性に対する対策と、今回の農業者年金制度というものは、どういう関連があるんですか。そのあたりの連携的なものはどうなっているのか、そのあたりを説明願いたいと思います。
○須賀田政府参考人 高齢者と女性対策でございます。
私ども、基本的には高齢者の方々も農村社会における重要な一員ということでございまして、生涯現役を目指して、その活動を促進するということで対策を講じているところでございます。具体的には、若い担い手と役割分担をしながら、軽作業等を通じまして農業へ貢献をしていただく、あるいは地域社会の伝統文化の継承というような役割を担っていただくことにしているところでございます。
また、女性は農業就業人口の六割を占めておりまして、農業の重要な担い手でございます。女性につきましては、みずからの意思で農村社会や農業経営への参画を促進するということを旨として、いろいろな対策を講じていくということにしているところでございます。
この高齢農業者あるいは女性農業者と、新しい農業者年金制度との関連でございます。基本的にはこの新しい農業者年金制度において、今申し上げましたような高齢農業者、女性農業者がより自由に活躍できるよう所要の改善をしているところでございます。
まず、従来までの旧制度のような農地の権利名義を加入資格とするのではなくて、農業に従事する人であればだれでも加入可能ということにしたことが大きな前提でございます。
そして、高齢者の方につきましては、特例付加年金、政策支援のあります国庫負担の年金でございます。これは先ほど来お話ございますように、これまでのように六十五歳までに経営移譲を行うということを画一的に促進するということは改めまして、みずからのライフサイクルに合わせてリタイアする時期を選択できる。
これは先ほど来ちょっと議論がございますけれども、経営の主宰をやめて、補助的作業にみずから従事するということでも年金は出るわけでございます。
そういう補助的な作業による所得と年金受給を行いながら、老後の生活の安定を図っていただけるようにしたというのが高齢者対策でございますし、また経営合理化に努めております認定農業者と共同で農業経営に参画いたします配偶者につきましては政策支援の対象とするというようなことで、この高齢農業者や女性農業者がより自由に活躍できるように、所要の改善を行っているところでございます。
○一川委員 そこで、先ほど大臣が、ほかの委員の答弁の中に、今回の農業者年金、新しい制度は、ほかの年金制度よりも有利なんだ、だから農家の方々にこれから説明に入れば大いに加入していただける期待があるというような趣旨の御答弁があったと思いますけれども、ほかの年金制度よりも有利だというところをもうちょっと具体的に説明していただけませんか。何が有利なんですか。
○須賀田政府参考人 端的に申し上げますと、意欲ある担い手の方々に対しまして保険料負担の軽減について国庫助成があるということが大きな一つでございます。
それから、これまで、ほかの年金と違いまして、死亡一時金を改定いたしまして、納付済み保険料額とその一定の運用金を死亡一時金とするというふうに改善をしたということでございます。
そして、これはいろいろ御議論がございますけれども、掛けた保険料が確実に戻るような確定拠出型の積立方式に変更したという点などが、安定した年金制度になっているものというふうに思っているところでございます。
○一川委員 これは農業者年金だけでもないようなところもございますけれども、そこで、民主党の方からの案は、先ほど来出ていますように、今回は新しく加入するような制度はつくらないということでございますけれども、政府の原案をつくられるときに、当然いろいろなことを検討されてきたと思います。既存のいろいろな年金制度等の統廃合とか、いろいろな連携を図るとか、何か切りかえていくとかというようなことも含めた、そういう年金全体の中での農業者年金のあり方みたいなところは当然議論されてきたのだろうと思いますけれども、そのあたりの経過はどのようになっていますか。
○須賀田政府参考人 率直に申し上げまして、現行の農業者年金制度の将来のあり方をどうするかということについては、いろいろな御意見が出まして、いろいろな角度から検討をしてまいりました。一番極端な議論としては、廃止してしまったらどうかというようなこともございました。
ただ、廃止という点に関しましては、担い手の確保ということが農政上の喫緊の課題になっている、そのためには、現役時、それから引退時を通じまして他産業並みの所得水準を確保することが非常に重要なこととなっているということが一つ。
それから、このような状況のもとで、所要の政策支援を行いまして、担い手の確保を目的とする新たな年金制度の創設ということにつきまして農村現場から切実な要請が寄せられてきたという状況がございまして、これを廃止するということをせずに、今回、新たな政策年金を創設したということでございます。
また、先ほど来いろいろ御議論ございました、みどり年金との統合というのは考えられないかという点もございました。
先ほど来御議論ございますように、みどり年金は、農業者を対象といたします職能型の国民年金基金の一つといたしまして、ゆとりのある老後を送ることを目的としているものでございます。財政方式は、自己が納付した保険料とその運用益を年金として受給する積立方式を採用しているところでございます。
一方、旧の農業者年金制度といいますのは、農業経営の近代化と農地保有の合理化に寄与することを目的とした政策年金でございまして、財政方式も、現役世代が年金給付世代の年金給付に必要な費用を賄う賦課方式を採用しているということで、両方の制度が非常に違うということで、両者を統合するということは困難であるというふうに考えたところでございます。それが、御提案を申し上げております今の新たな農業者年金制度となったわけでございます。
○一川委員 そこで、ちょっとそれに関連して確認するわけですけれども、今現在、みどり年金に加入されている方が三万人ぐらいいらっしゃるというふうに聞いていますけれども、そういう皆さん方で、では今度の新しい農業者年金制度の方へ、そっちへ切りかえたいというようなことがもしあった場合には、それはどういう対応をされるんですか。
○須賀田政府参考人 基本的には、農業者年金の方へ入られますと、国民年金基金の資格を喪失されるということになるわけでございます。
先ほど来御議論ございます、まず、加入資格については、年間六十日以上農業に従事した者ということで、両年金は同じ、新しい農業者年金とみどり年金は同じ加入資格でございます。
ただ、確定給付型の積立方式ということで、幾ら年金をもらえるかということが初めから明らかになっているのがみどり年金でございまして、掛金が一定の予定利回りをもとに算定されることになりますので、実際の運用利回りが予定利回りを下回った場合には、現役世代の掛金引き上げで対応せざるを得ない、現役世代に迷惑をかけるような仕組みになるわけでございます。
それに比べまして、新しい農業者年金制度といいますのは、積立方式の確定拠出型ということで、原資の運用がそのまま年金制度になるということで、入った時点で幾らもらえるかという年金額は不明なんですけれども、財政としては安定しているということです。
基本的には、そういう特質を考慮しながら、農業者の方に選択していただくということになろうかと思いますけれども、政策支援があることを除きましても、年金制度の安定ということから見れば、新しい農業者年金制度の方が安定しているのではないかというふうに我々は考えているところでございます。
○一川委員 要するに、農業者を対象とするようなこういったいろいろな制度があるとした場合に、先ほど大臣もおっしゃったように、今度の新しい農業者年金制度は非常に有利なんだということをアピールされるということであれば、それは今までみどり年金に入っている方も、では、この際移ろうかという気持ちにも当然なるわけです。
そういう農業者に対する、もっとわかりやすいいろいろな考え方を導入していかないと、それがひいては年金制度そのものに対する不信感がますます募ってしまう。それが過去の、我々の十分反省しなければならないところでございますので、これからの農業者に対するこういった制度の説明の仕方を相当留意していただかないとまずいのではないかなというふうに思っております。
そこで、民主党の方に再度ちょっと確認するわけですけれども、民主党さんの方から出されたいろいろな要綱の中を見ておりますと、今、十分具体的に詰まっていない部分もあるわけです。要綱の何項だったか忘れましたけれども、基準日までにその他所要の法制の整備を行うとか、他の年金制度への加入措置その他必要な措置を講ずるというような言い回しで書いておられますけれども、そこのところは、先ほど来ちょっと議論が出ているようなことかもしれませんけれども、もうちょっと整理してお話ししていただけますか。
○三村議員 お答えいたします。
私どもの案は、農業者の老後生活の安定という観点から、既存のみどり年金、全国農業みどり国民年金基金を活用するということは、先ほど申し上げました。このみどり年金基金は、国民年金法に基づき、事業者を対象とし、基礎年金の上乗せ年金を給付することで老後の所得保障の充実を図ることを目的として、平成三年五月一日に創設されたものであります。
私どもの案では、農業者年金の加入者及び待期者のうち、その意思によってでございますが、農業者年金にかかわる年金や一時金の給付を受けない方について、あるいは農業者年金制度における納付済み保険料、保険料納付済み期間等をみどり年金へそのまま移行させる、そして年金を受給することができるという移行措置、これは国民年金基金制度にかかわる特例措置というものと非常に類似すると思いますが、それを講じようとするものでございます。
要するに、移行するということ、それから継続措置をきちんととっていくということを大変重要視した案でございます。
○一川委員 では最後に、ちょっと大臣に決意を込めての御答弁をお願いするわけです。
私は、先ほど来触れていますように、我が国のこれまでの農業構造の変化、端的に言って、そういったものは我が国の農家数の大幅な減少とか、またその中身は兼業、専業いろいろな推移があろうかと思うんです。
それから、農業に従事する方々が大幅に高齢化をしてきている、それとまた耕地の利用率も非常に低くなってきている、耕作放棄地がふえているとか、また農地の所有権の移転は余りなされていなくて利用権、借地権が非常に拡大してきている、こういう現象があるのは御存じのとおりでございます。そういった中で、私自身も、農村というのは今非常に活力が低下してきている、また、農業そのものに対する意欲も減退しつつあるというふうな感じすら受けるわけでございます。
そういうときにこの農業者年金制度というのも、ある面では、間接的な効果というお話もさっきございましたけれども、補完的な役回りを果たすということはある程度期待できるところでありますけれども、本来の本格的な農政というものがどうも何となく先行き明るい展望が見出せないという中で、農業に従事する皆さん方が不安感を持ち、農政に対するいろいろな不満を持っているわけです。
我々も問題意識としては、今の農政の中では生産調整という政策は一番大きな課題だというふうに思いますし、つくりたいものをつくれない、つくって豊作になっても喜べないという現状でございますし、これが本当に私は正しい農政ではないというふうに思います。
そういう面で、農業者年金基金法の一部改正という法律でございますけれども、ある面では今日の農政全体を映し出す一つの法律でもございますので、これからの農政の大臣としての取り組みの基本的な考え方も含めて、今回の法律改正に対する御所見を伺いたいというふうに思います。
○谷津国務大臣 我が国の農業につきましては、経済社会情勢の著しい変化等の中で、食料の自給率の低下、あるいは農業就業人口の減少あるいは高齢化の急速な進展といった問題が生じております。
こうした状況を踏まえまして、今後の日本の農政の基本理念を明確に示すため、平成十一年七月に食料・農業・農村基本法が新たに制定されまして、さらに翌年の三月には、新基本法の理念を具体化するための今後十年間の農政のビジョンというべき基本計画を策定したところでもございます。
この新たな基本法及び基本計画に基づきまして、二十一世紀における我が国農業の持続的な発展と農村の振興を通じまして、国民に対する食料の安定的供給の確保と多面的な機能の発揮が十分に図られるよう、食料自給率の向上に向けた取り組みを初めといたしまして、各種の施策を総合的かつ積極的に進めていくという考えでおります。
先ほどから、先生の農業に対する御見識は非常に高いところでございますけれども、私どもは先生の意図するところと全く同じだというふうに考えておりますので、これからもひとつよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。
○一川委員 以上で終わります。どうも御苦労さまでした。
○堀込委員長 次に、中林よし子君。
○中林委員 日本共産党の中林でございますが、きょうは民主党案についてはお聞きいたしませんので、もしよろしかったら、一時間でございますので、席を外していただいても結構でございます。
政府案についてお伺いをしたいというふうに思います。
今回の改正に至った理由として、大臣の提案理由説明の中で、「農村における高齢化が著しく進展していることにかんがみ、経営移譲を通じて農業経営の若返りを促進するよりも、中高年齢者を含めた幅広い農業者を確保することが重要となっております。 また、現行制度においては、加入者数に対する受給者数の割合が高まり、今後、受給者を支える加入者の負担が著しく大きくなることが見通されております。」こういう理由を述べているわけですけれども、なぜこういう事態になったとしておられますでしょうか。
○谷津国務大臣 現在、農業者年金は、受給権者七十五万人が加入者二十八万人を大きく上回っておりまして、いわゆる成熟度が二七〇%を超えるという財政的には厳しい状況になっております。
これは、高度経済成長に伴いまして、農業に比べ他産業の生産性が著しく向上したことから、他産業への労働力の移動が予想を上回る水準で推移したこと等を背景といたしまして、農業の担い手が著しく減少いたしました。
また、都市部に比べまして農村のインフラの整備や利便性が著しく劣る事態となったことから、農村部において人口の減少や高齢化が進展したという農業構造上の大きな変化が原因というふうに私は考えております。
このため、今後の年金制度を構築するに当たりましては、受給者数あるいは加入者数等に左右されにくい積立方式を採用して、長期的に安定した制度とすることが肝要であるというふうに考えておるところであります。
○中林委員 なぜこうなったのかという事柄の、現象面については大臣がおっしゃったとおりですけれども、そこのさらなる原因については後で質疑をさせていただきたいというふうに思います。
そこで、一九九五年財政再計算の見通しから実績が大きくかけ離れました。特にひどいと思いましたのは、新規加入者。これが、一九九九年、一万四千人の見込みに対して、実績はわずか千六百九人。余りにも違いが大きい。なぜこのような大幅な見込み違いが起きたのでしょうか。
○須賀田政府参考人 一九九五年、平成七年の財政再計算時におきます新規加入者数の見通しにつきましては、そのとき、直近の新規加入者数が七千人強とやや増加基調にあったということと、当時の新政策におきます農業構造の展望の中で、新規就農者を一万三千から一万五千というふうに見込んでいたというようなことを考慮いたしまして、平成八年度の八千人から次第に増加して、平成十二年度以降は一万六千人と見込んでいたわけでございます。しかしながら、実績は、先生御指摘のように平成十一年で千六百人ということでございます。
その原因につきまして、私ども、農業委員会を通じまして行った調査によりますと、未加入の理由として、年金に魅力がない、あるいは年金制度の将来に不安がある、保険料の負担が苦しい、二十年以上加入できるかどうか不安等々の調査結果がございました。
見込みと実績に乖離が出た理由としては、予想に反して新規就農者が伸び悩んだという事情もございますけれども、やはり農業者年金の保険料の割高感でございますとか、将来に対する不安感等が背景にあるものというふうに認識せざるを得ないというふうに思っているところでございまして、このような点につきまして種々考慮の上、新制度を構築したところでございます。
○中林委員 ちょうど一九九五年のこの財政再計算の見直しのとき法改正が行われて、当委員会で審議がされております。この財政再計算のときの、当時の構造改善局長の野中氏がこのように述べておられます。
「今後についてということでございますが、この追加の国庫補助とそれから若干の保険料の引き上げをお願いしてございますが、同時に、新規加入者の増加というようなことが相まちまして、今後徐々にこの財政は改善をしてまいりまして、平成三十年ごろには、受給権者が被保険者数を上回るというような逆転状態も解消されまして、年金財政は安定的に推移をしていくものというふうに見通しをいたしておりまして、」こういう大変、将来は洋々たる年金の姿を答弁しているわけです。
余りにも食い違いがあるということでは政府の責任は重大だというふうに思うんですけれども、その点、大臣、いかがでしょうか。
○谷津国務大臣 農林水産省は、農業者年金制度の設計、運営をする立場にあるために、不断に農業者年金をめぐる財政状況等について整理あるいは検討を行って、必要な制度改善を行いながら、健全な制度運営を図っていくのが責務であるというふうに考えております。
平成七年の財政再計算に基づく見通しに基づきまして、保険料の段階的な引き上げ、あるいは追加的な国庫補助による経営移譲年金の全額国庫補助、あるいは農業者年金加入者等の配偶者に加入の道を拡大する等、できる限り運営改善を図るための制度改正を行ってきておりまして、国会での御審議を願いながら来たところでもございます。
しかしながら、見通しが実際と大幅に乖離してきたことから、平成十二年財政再計算の結果を見ると、過去に行ってきたような制度運営の改善では年金財政の破綻を免れることは到底なし得ないと認識されるに至ったものでございます。
すなわち、その置かれた環境のもとでできる限りの運営改善努力をしてきたものの、結果的に見れば、農業構造の変化や年金加入者等の見通しが十分でなかった面があったと認識せざるを得ないと考えております。
今般、国民の皆様や加入者あるいは受給者の方々に御協力を得て、抜本的改革を進めざるを得ない事態に至ったことにつきましては、私といたしましては、率直に申し上げまして申しわけなく思っております。
○中林委員 つまり、政府の見通しの甘さ、それ以後思うように加入者が伸びなかった、そういうことに対しての手だてが打てなかったということで、反省の弁を述べられたというふうに思うのです。
では、なぜこういう見込みができたかということですけれども、先ほども局長の方から新農政が基盤にあったというふうにおっしゃいました。平成四年の新しい食料・農業・農村政策の方向において、平成十二年には他産業並みの労働時間で他産業と遜色のない所得水準を確保し得る個別経営体三十五ないし四十万戸、組織経営体四ないし五万戸が地域農業の基幹となる農業構造の展望を掲げており、このような農業構造が確立、維持されるためには、毎年一万五千人程度の新規就農者が確保される必要がある、こういうふうに新農政では見通ししていた。これが基盤になって見込みの一万六千人が出たということは間違いありませんか。もう一度確認させてください。
○須賀田政府参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、このときに直近の新規加入者が七千人強でやや増加基調にあったことに加えて、今先生の述べられました新政策での新規就農者数の見通しを考慮いたしまして、私どもは、平成七年時点の財政再計算時における将来の見通しとして一万六千人というものを見込んでいたところでございます。
○中林委員 そうなりますれば、新農政というものがどんな結果をもたらしたのか、これは単に新規就農者の数の見通しの甘さを示しただけではないというふうに私は思うんですね。だから、新農政そのものが破綻しているというのがこの数字でも端的にあらわれているのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○須賀田政府参考人 新規就農者のことに限って申し上げますと、新政策で示されました新規就農者数を確保するために、青年就農者等促進法の制定でございますとか、その他の就農支援のための総合的措置が講じられておりまして、将来に向かって徐々に就農者が確保されるものというふうに見込んだものでございますけれども、この見込み自体としては、当時としては妥当な判断ではなかったかというふうに考えております。
現に、現在の新規就農青年者数というものが、平成十年一万一千人、平成十一年一万二千人と増加をしてきているところでございます。
○中林委員 新規就農者の見込みについての今の御判断がありました。しかし、私も政府の方からいろいろ資料をいただいておりますけれども、確かに、最近若干ふえつつはあります。しかし、さまざまな施策をしてもこの程度かということしかないし、現に農業者年金への加入というのはまるで低いということは、私は新しい食料・農業・農村政策の方向というものがやはりネックになっていたのではないかというふうに思わざるを得ません。
そこで、問題は、農業者が高齢化する一方で、若い人が農業に参入しないというところにあると思うのです。国が責任を持って農業を発展させ、若い人が参入できるよう農業を展望あるものに変えていく、ここがなければ、どんなに数値を上げてもそれは追いつかないというふうに思います。
だから、財政悪化に至った責任は、農業を展望あるものに変えなかった農政そのものにあると言わざるを得ない、そのように思いますし、また、新規就農者が見込んだとおりにならなかった問題の一つとして、保険料の徴収を困難にした。つまり、保険料が高過ぎる、農業収入に比べて保険料が高過ぎる、ここに農政の責任がある。つまり、新農政に基づいて、どんどん農産物の自由化をし、農産物価格に市場原理を導入し、農業経営を悪化させた、こういう農政の責任があると、大臣、お考えになりませんか。
○谷津国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、今日まで、農政に当たりましていろいろと政策を展開してきたところであります。そういう中において、著しく人口の移動があったと言ってはなんですが、他産業の方に行く人たちもいるというふうなことからその変化が大きく、あるいは、老齢化が早く進展をしている、いろいろな要素があって今日を迎えているわけであります。そういう中で、農政においていろいろと施策の展開をしてきたところであります。
しかし、今日、こういうふうな状況になってまいりましても、新規の就労をする方も最近急速に伸びてきておる、こういう事実もございますから、それをもって、今、農政の責任において、先生は、はっきり言うと失敗だというふうに言いたいんでしょうけれども、そういうふうな状況にあるとは私は思っておりません。
○中林委員 それならば、農業者に今回のような財政破綻の責任があるんでしょうか。私は、農業者には何らの責任はないというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○谷津国務大臣 農業者年金制度は、現在、加入者が約二十七万五千人です。それから、受給者が七十五万人という年金集団構成となっておりまして、現行の方式を維持するとするならば、遅くとも平成十四年度には支払い不能、いわゆる破綻となる事態が確実であると見込まれるという、制度の発足のときには想定し得なかった農業構造の著しい事情の変更が生じてきました。
農業者の方々は、担い手の非常に弱い点といいますかそういう点、あるいは高齢化といった農業構造の変化について責任を有するものではない。しかしながら、農業者年金の運営に関しましては、未加入者が約七万人いること、あるいはまた保険料収納率が毎年低下をしてまいりまして、四人に一人は保険料を支払っていない現状であること等が年金財政を悪化させている要因ではないかというふうにも考えているところであります。
〔委員長退席、小平委員長代理着席〕
○中林委員 大臣の口から、農民には責任がない、このようにおっしゃいました。加入していても払っていない人がいるということはおっしゃいましたけれども、それは保険料が高かったり、その他の要因に帰するものだというふうに思います。
農民に何の責任もないということになれば、今回招いた財政破綻の犠牲を農民が受けるということは、やはり道理に合わないというふうに思います。だから、不足財源は国の責任においてなさるべきではないのでしょうか。その点、いかがでしょうか。
○谷津国務大臣 農業者年金制度につきましては、加入者一人が受給者三人を支えるという財政状況のもとで、現行制度をこのまま継続した場合には、遅くとも、先ほど申し上げましたとおり、平成十四年度には年金財政が払底する、もう底をつくと見込まれている状況であります。
これに対処いたしまして、現役世代の負担能力を超える大幅な保険料の引き上げをしたとしても、結局、未納者の増大等により制度の破綻は避けられないことから、今回、既裁定年金額の引き下げ等の自主的な努力を前提にいたしまして、国民負担により今後の年金支払いを行う等を内容とする抜本的改革を行うこととしたものでございます。
このような今回の現行制度の処理につきましては、国民の理解を得るためには、既裁定者について、今回の制度改革に伴う国民負担、約三兆六千億円でございますけれども、そのさらなる増大を回避するために、全額国庫助成で賄われている経営移譲年金に限定をいたしまして、農業者の老後生活の安定を脅かさないわずかな額について、年金額の引き下げという負担を求めることもやむを得ないものと考えているところでございます。
○中林委員 そういうふうに言われるのは、私は日本だけじゃないかというふうに思いますね。
けさほど方の論議の中でも、多少フランスなどの農業者年金の例が出されておりましたけれども、フランス、大臣御存じだと思うんですけれども、農業者年金というのがございまして、これは二つありますよね。
農業者老齢年金、これは六十歳から支給。それから、これはEU関連ですけれども、早期退職年金、これは六十歳までで退職される方。これは全額国庫補助で支給されるということですし、農業者老齢年金では、二割が保険料で賄い、八割は国庫補助とそれから人口調整措置ということで、これは国民連帯という、働く者の連帯という考えで、農業者が減ればその分を働く者も一部負担していくというやり方ですよね。
それからドイツ、これは全額国庫補助になっておりまして、フランスと同じように二本立てになっていて、農業者老齢年金は六十五歳から、それから生産中止年金といって、これもEU関連ですけれども、六十五歳まででやめる場合は全額国庫補助で支給するというものです。年金支給財源は、保険料収入が二二・五%、あと七七・五%は全額国庫補助で行っておるんです。
それは、もちろん農業の歴史的な背景も家族構成も違いはしますけれども、やはり農業というものの国民的な役割、そこにかんがみて、これだけ、農民に犠牲を押しつけるのではなくして、全額国庫補助でやっているということですから、ぜひ、今回のように農民に何の責任もないにもかかわらず負担を押しつける、そういうやり方について、私は本当に納得ができません。
年金財政が悪化したからといって、責任のない受給者にどうして負担を求めることができるのかということで、先日、私のところに、ぜひ国会で取り上げてほしいというメールが参りました。少し長いんですけれども、読み上げさせていただきます。
国民年金や厚生年金などの公的な年金では、これまで、既に年金をもらいはじめた人の年金の実額はけっして減らさないという慣例がありましたが、この慣例をはじめて破ることになること。これでは、公的年金の加入者に、財政が悪くなれば国は年金額を減らすのかと大きな不安を与え、農業者年金にとどまらず国民年金や厚生年金にまで悪影響を及ぼすのは必至です。農業者年金は、後述の農林年金などとは違って
これは、あと農林年金のことも書いてあるんですが、そこは省きます。
農林年金などとは違って保険料の額も年金の額も法律で定められています。財政悪化は昭和の頃から問題となっていたことで、その責任は放置してきた農林省と旧厚生省にあるはずです。なぜ国の政策に従って義務加入した農家が、しかもわずかな額の年金に頼って生活している農家が年金を減らされなければならないのでしょうか。
こういう訴えなんですね。
大臣、この訴えにどのようにおこたえになるでしょうか。
○谷津国務大臣 今先生お読みになりましたお手紙でございますけれども、農業者年金が今日迎えているということにつきましては、先ほども申し上げましたとおり、私といたしましては、本当に申しわけなく、率直におわびを申し上げたところでございます。ですから、今回の改正によってそうしたことのないようにしっかりやっていきたいということで提案をしているんだということも、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
○中林委員 厚生労働省、来ていただいているわけですけれども、今の訴えにあるように、公的年金制度で年金額がカットされるのは、農業者年金が今回初めてなんですね。
農水省の説明を容認すれば、行く行くは国民年金にも波及するのではないか、こういう不安がどうしても国民の間には出てまいります。厚生労働省も、年金財政が悪化すれば農水省と同じように年金額をカットする、こういう方向なのでしょうか。
○奥山大臣政務官 お答え申し上げます。
厚生年金並びに国民年金等につきましては、社会保険方式のもとで、現役世代が納付する保険財源を基本にして給付に必要な費用を賄う世代間扶養の仕組みで運営しているものであります。成熟度も、農業者年金のように著しく高い状況には二つの年金はありません。農業上の政策目的を有して、給付に必要な財源を専ら国庫助成で農業者年金は賄っており、その成熟度も著しく高い状況にある経営移譲年金とは置かれている立場が大きく異なっているところであります。
既裁定年金額の取り扱いにつきましては、このような状況の違いを十分に念頭に置くことが必要であると考えております。
このような状況の違いがある中で、平成十二年度の年金法改正に当たっては、厚生年金の報酬比例部分の給付の適正化に際して従前の年金額が保障されるよう措置したところでありまして、現時点において、今回の農業者年金の改正が国民年金や厚生年金に波及するものとは考えてはおりません。
○中林委員 波及しない、このように言明をいただきましたので、私は今回農業者年金がカットされていいとは決して言っていないわけで、厚生年金も国民年金もカットされないよう、将来的にぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。
政務官、どうもありがとうございました。結構でございます。
続いて、農業者年金の問題でお聞きするわけですけれども、農水省は当初、昨年ですけれども、三割カットということを打ち出されました。今回、年金給付額を平均九・八%減額するというふうにされているわけですけれども、この算定根拠はどこにあるのでしょうか。
それと同時に、脱退するとき、自分が納めた保険料が八割しかもらえないという今度の制度改正、農業者には責任も何にもないのに、制度が変わるということでこんなに減額されるということに対して、特に八割しか保障されない脱退一時金の問題ですけれども、やめるのであるならば、自分が払ったものは全額返してほしい、こういう要求もあります。
なぜ、九・八%の減額、あるいは自分が納めたものを脱退するときに八割しかもらえないのか、それぞれその算定基準をお示しいただきたいと思います。
○須賀田政府参考人 まず、年金額の引き下げ率についてのお尋ねでございます。
我々、農業団体との議論の中で、受給権者に受け入れられる引き下げ率が平均で一〇%未満という強い要望がございまして、一〇%未満ということをまず基本的に受け入れたわけでございます。
他方で、他の同様の年金制度、いわゆる二階建て部分では、自賄いとされておりますような農業者老齢年金を含めて将来の年金給付費の全額を国庫が負担するということから、国民一般の理解が得られる程度の年金額の引き下げが必要であるという相反する要請がございました。
このような要請をいろいろ踏まえて検討をした結果、既裁定年金の平均の引き下げ率がぎりぎり一〇%未満となる水準とすることが妥当と考えたものでございます。
特に、世代間の給付と負担のバランスというものを考えますと、ありていに言いますと、古い人ほど少ない負担で多くの給付を受けている、新しい人ほど大きな負担で小さな給付ということでございますので、そういう世代間のバランスも考慮をしまして引き下げ率に差を設けた結果、既裁定者平均で九・八%の引き下げ率となったものでございます。
また、特例脱退一時金についてのお尋ねでございます。
現行制度が継続していれば年金受給が可能であった人に支給する脱退一時金の水準でございます。基本的には保険料は年金のために使うのがその目的でございますけれども、今回の改革によりまして、これまで期待していた年金とは異なることから、脱退一時金を受給して自力で老後生活を再設計したいという希望等にこたえるために、現行では納付済み保険料総額の三割程度とされておりますこの一時金の水準を大幅に改善するということにしたわけでございます。
その水準の根拠でございます。現行制度の加入者が今回の制度改正によりまして受給することとなります農業者老齢年金を、仮に一時金として前倒しして受給することを想定いたしまして、将来年金として受け取る生涯受給総額を現在価格に一定利率で割り戻すという作業をいたしますと、将来の年金受給総額を現在価格に直しました結果、給付と負担の比率が〇・八になりますことから、納付済み保険料総額の八割ということにしたところでございます。
○中林委員 結局、農水省は最初にそういうのを出して総反撃を食らった、そこでもう一度やったときに、団体の意見ももちろんあったでしょうし、それから与党の意見ももちろんあったでしょう、そういう中から余り科学的な根拠のない九・八%、八割という数字、まさに算定根拠はさじかげんだ、悪い言葉で言えばそうじゃないかというふうに私は思うんですね。
いろいろなものを勘案して、このようにおっしゃるわけですけれども、そういういいかげんに算定されたものを農民に負担として押しつけることは、私はやはり納得がいかないというふうに思うんですけれども、大臣、この算定基準がないものを押しつけることについての御見解を伺いたいと思います。
○谷津国務大臣 今局長からも御答弁がありましたように、この点につきましては、団体等多くの方たちからの御意見というのも聞きまして、それで決められたものでございます。
当初、三〇%カットというふうなお話が今ありましたけれども、そういう中で、農業団体の方たちあるいは農協、あるいはまた農業会議所あるいはこの農業委員会、そして受給者の方々、そういう方たちからもいろいろな御意見を聞いて、そういう中で出された御意見に沿った形でつくられたということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
○中林委員 沿った形といいますけれども、農業者年金に入っている皆さんの声は、それはやはり、こんな削減をのみ込むことじゃなくて、今までどおり保障をする、これが最初の契約ですから、その契約はちゃんと守るということが必要だというふうに思うんですね。だから私は、農家に押しつけるんじゃなくて、先ほどから言っているように、その分についてはちゃんと国が責任を持って見るべきだ。
今までの見通しの甘さ、あるいは私どもは、農政の責任、これも当然その背景にはあるというふうに思いますので、この点ではどうしても、幾ら御答弁いただいても、そうしますとはおっしゃらないというふうに思いますので、この点は私どもとは意見が全く合わないし、農民の気持ちにも沿わないものだということを強く申し上げておきたいというふうに思います。
次に、民主党の鉢呂議員の質問主意書に対する総理大臣の答弁がございます。
これは私はやはり納得がいかない答弁だというふうに思うんですね。この答弁に、「財産権といえども、公共の福祉を実現しあるいは維持するために必要がある場合に法律により制約を加えることが憲法上許されるときがあることは、これまで累次の最高裁判所の判例において示されてきたところである。」と、最高裁の全然違うような判例を持ち出して、これで違憲ではないという答弁をされているわけですけれども、私は、本当にこれは疑問が残ることなんですね。
というのは、公共の福祉を盾に、これはもう黄門様の印籠と同じじゃないか。どんなことがあろうとも公共の福祉論が出ていくならば、どんな年金でも、先ほど厚生労働省は国民年金や厚生年金は引き下げないとおっしゃったわけですけれども、しかし、この公共の福祉論がまかり通っていくならば、そういう国民との契約もほごにされる、そういう中身を持っているものだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
〔小平委員長代理退席、委員長着席〕
○谷津国務大臣 年金受給権は財産権であり、一般に、財産権は基本的人権として憲法により保障されておるものでございます。
しかしながら、公共の福祉を実現し、あるいは維持するために必要がある場合には、法律によりまして合理的な範囲内で財産権に制約を加えることは憲法上許容されるという基本的考え方が、累次にわたる最高裁判所の判例により示されているところであります。
このうち、本会議のときにも御答弁申し上げたのでありますが、昭和五十三年七月十二日の最高裁判所大法廷判決は、財産権の事後的な制約について、原則的な基準を示しております。
すなわち、この判決では、法律で一たん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り、これをもって違憲の立法ということはできず、その場合、当該変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかということは、一たん定められた法律に基づく財産権の性質やその内容を変更する程度、さらには、これを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって判断すべき旨、判示しているところでございます。
今回の年金額の引き下げ措置につきましては、この最高裁判決で示された基準に沿って検討いたしますと、年金額引き下げの対象となる年金は経営移譲年金のみとしているが、これは、老後の生活の安定への寄与のみならず、農業経営の近代化や農地保有の合理化といった農業上の政策目的の達成という特別の性格を有し、その財源を専ら国庫助成で賄っているものであること、そして、年金額引き下げの水準は月額二千円から四千円で、高齢夫婦世帯の消費支出の一%程度にとどまりまして、農業者の老後の生活の安定が直ちに脅かされるものではないこと、年金額引き下げ措置を講じることによって、加入者の負担能力の限界を超える保険料の大幅引き上げや、国民一般の負担のさらなる増加を避けることができることから、今回の引き下げ措置は、財産権に対する合理的な制約として、憲法第二十九条に照らしても許容されるものと考えております。
○中林委員 今、長々と御説明になりましたけれども、要は、公共の福祉というこの一言ですよ。それで、それに整合性があればという話なんですけれども、この公共の福祉論を持ち出せば、私どもは、どんなに政府といろいろな約束事をしても、後の法律で変えられて、それをほごにされても、公共の福祉という言葉で片づけられかねない。
今回の鉢呂議員のこれに対する答弁書、これではとても納得のいくものではございません。だから、この点については、今後参考人の御意見も聞かせていただきながら、やはり憲法に抵触する、そういう中身を今回の九・八%カットするということなどは持っているんだということを指摘しておきたいというふうに思います。
そこで、新しい今度の改正される制度の中で、政策支援というものを持ち込んでいます。今回の改正案で目的を変更されました。農業者の確保ということを非常に大きく出しております。その目的を達成するためということで、意欲ある担い手への政策支援を行うということで、意欲ある担い手とは、認定農業者で青色申告をしている者、こうなっているわけです。
意欲ある担い手というのが認定農業者で青色申告をしている者、それはなぜこの人が意欲があるというふうに認定されるのか。意欲があっても認定農業者にならない人もいます。意欲があっても青色申告をしない人もいる。それにもかかわらず、そこで意欲ある担い手という仕分けをしていく。認定農業者は今十六万人ぐらいですよね。主に農業をやっている農家戸数は五十万戸。それからいうと、認定農業者というのはわずか三〇%にすぎません。そこからさらに限定していくという理由が私はわからないわけです。
なぜこれが意欲ある担い手というふうにされているのか、お答えいただきたいと思います。
○須賀田政府参考人 新制度におきます政策支援の対象者の考え方でございます。
私ども、新制度におきます政策支援の対象者といたしまして、基本的に、担い手の中でも特に長期にわたって我が国農業を支え、国民に対して食料を安定的に供給していくと見込まれる者ということで、まずは目標を掲げて経営改善努力を行うということが一つ、それからきちんとした経営管理を行っている、そういう意欲ある担い手に対して政策支援をするというふうにしたところでございます。
すなわち、意欲を持って経営改善に取り組む担い手であることが客観的に確認できるというのは、認定農業者、認定就農者でございますし、簿記記帳等を行いまして自己の経営状態を客観的に把握をして、常に経営管理の点検、分析を行い得る者として青色申告者である、この二つの要素を満たす人を政策支援の中核的な対象者というふうに置いたところでございます。
○中林委員 客観的に判断し得るということでそこに置いたという話なんですけれども、青色を選ぼうが白色を選ぼうが、認定を受けようが受けまいが、それは農業者の自由なわけですよね。実際に納税額までもうかっていない農家が今は多いわけですよ。国税庁の調べで、青色申告を税務署長に申請した農業者は三十三万人余りいるわけです。しかしながら、実際に納税した農業者は八万人程度なんですね。だから、毎年青色申告するとも限らない。
こういう不安定要素を持っているわけですが、なぜ、税制上の仕組みをこの担い手の中に持ち込んでくるのか、全く手法が違うんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○須賀田政府参考人 ここのところは非常に議論のあったところでございますけれども、これから農業経営を行います場合に、いろいろな、例えば融資でございますとか、そういうものを受けて経営を発展させていく場合に、やはり基本的には経営管理をきちっとしている農家でなければ、今後のそういう発展可能性、あるいは長期営農の継続性というものが確保できないであろうということで、いろいろな観点から考慮、検討を加えました場合に、きちっと記帳を行いまして自己の経営状態を管理している者としては、やはり税務上の青色申告というものしかなかったということでございます。
そういうことで、常に経営管理能力を有する客観的な指標として、この青色申告という要件を課したところでございます。
○中林委員 私は若干、税金の計算をする部署に五年間ほどいたわけですね。だから、青色申告と白色申告の違いというのはよくわかるわけですが、日本の場合は申告納税制をとっております。だから、事業者はどちらを選ぼうが、それは事業者自身が判断をするものです。
白色申告をしている農業者であっても、自分の経営がどのようになっているかというのはきっちり計算して、毎年申告もしている人は多いわけですよ。そういう人を私はたくさん知っている。しかも、そういう人は意欲のある担い手です。それを青色で判断するなどということはよくないというふうに思うんですね。
だから、認定農家で青色申告する、こういうような縛りをかけること自体が、これが意欲ある担い手だなどというようなことを農水省が考えているならば、私は大変大きな間違いだというふうに思うんです。
大臣、その青色申告をしていなくても、意欲のある農業経営者というのはたくさんいるじゃありませんか。それなのに、なぜそれを支援策から外していこうとされるのか。その点について、納得のいく御答弁をお伺いしたいと思います。
○須賀田政府参考人 技術的なところでございますから、私の方から御答弁を申し上げます。
先生御指摘のように、自分の経営の管理というものを税務上の観点から見ますと、青色も白色もあるわけでございます。
ただ、帳簿をきちっと備えつけている、あるいは申告時にきちっとした添付書類を出すという観点からは、私ども、比較してみたんですけれども、やはり青色申告でないとなかなか自分の経営管理というものを客観的に把握できていないのではないかということで、青色申告という要件を課したわけでございます。
ただ、現在は青色申告を行っている認定農業者ではない人でも、そういう青色を行うんだということを目指して努力している人も、一定の条件下で政策支援の対象とすることにしております。
私どもとしては、そういうことで、そういう青色申告、ちゃんとした経営管理を目指して努力をしていただきたいというふうなことも政策支援の対象にしておるわけでございますので、何とぞ御理解を願いたいというふうに思っている次第でございます。
○谷津国務大臣 青色申告をやっている方をなぜ対象にするか、あるいは、そうではなくても意欲を持ってやっている人は同じではないかという御指摘でありますけれども、この青色申告をやられている方は、今答弁の中にありましたように、帳簿をきちっとつけておられる、そして、農業とて経営ということが非常に大事な面でもございますから、そういう面で、税務署がそれを見ているわけであります。
また一方では、青色申告をやられておる方にはいろいろな控除という面もありますし、いろいろな面で経営もしっかりやられているというふうなことを考え合わせまして、そういった面でこれを対象としたということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
○中林委員 青色申告している人は、それなりの控除はあります。しかし、それは農業者が選ぶわけですよ。青色にして控除をたくさん受けたい、そっちの方が自分の経営にとっては得策だと思えばそういう方を選ぶでしょうし。だから、それが要するに、農水省が、今度の農業者年金に対する、保険料に対する政策支援ということで選別をする手法として税制上の区分をそこに持ち込んでいくということは、どうしてもなじまないというふうに思うんですね。
先ほど局長の答弁で、現在青色申告をしていなくても、将来青色申告をしたい、こういうふうにする人は対象に含めるんだというふうにおっしゃるわけですが、将来といって、あと三年先ぐらいには青色にしたいといっても、しなかった場合は、その支援のお金は返さなきゃいけないんですか。
○須賀田政府参考人 現在の仕組みでは、返還は求めませんけれども、将来の年金は支給されないということになっているところでございます。
○中林委員 それでは全然、何か、さもそういうような人も含めて対象になっているんですよと懐の深いような御答弁をいただいたかと思ったんですけれども、何のことはない、ちゃんと青色申告をしなきゃいけないという縛りはしっかりかかっているわけですから。
そんなことで限定をしていけば、今度の政策支援対象者数をどのくらいにするかということで、農水省は、二十三万五千人程度だ、こういうふうにしているわけですね。そのうち、現在の制度の移行者が十九万二千人、新規加入見込み者は四万三千人というふうに見込んでいらっしゃいます。
本当に、認定農業者、それも市町村によって全部基準が違うんですよ。そういうものを含みながら、しかも青色申告というさらなる限定をつけて、新規加入者が四万三千人になる、こんなことは、私は、とても確保できるような気がしないわけですよ。こういう限定をつければつけるほど、加入しづらくなるんじゃございませんか。あなた方がねらっていらっしゃることよりも逆行する、こういうふうに思わざるを得ないんですけれども、そのおそれはないと言い切れますか。その保証はどこにありますか。
○須賀田政府参考人 まず、政策支援ということで国費がつぎ込まれるわけでございますので、そこには何らかの政策性というものが必要になってくるわけでございます。
そういうことで、意欲、それから経営管理をきちっとやってほしいという二つの要件を担い手の要件として出しているわけでございまして、経営管理をきちっとやっているところをどこで見るかという外形標準として、税務上の青色申告という手法をここで採用したということでございます。
きちっとした経営管理の外形標準として青色申告をすること、また、それを三年後、あるいはその後で、そういう青色申告で認定農業者になり得るような人も対象にするということとしておりますので、そういう対象にしている以上はやり遂げていただきたいというのが私どもの考え方でございます。
○中林委員 国費を投じるからということが理由だとおっしゃるわけですね。それならば、認定農業者ということも、これは融資などが有利になる制度ですよ。これも政策的な制度ですね。だから国費が一定程度ここにも渡っていくという話だと思うんですね。だから、国費だからということで限定して、限定していくことは、私は、農業の問題に関してはあり得ない。
大臣、自給率を四五%にするという目標を掲げていらっしゃいます。この意欲ある担い手に農業者年金の支援策をこういうふうに限定して、限定して、わずかなところへ保険料に対するわずかな支援をやっていこうということで、本当に農業に意欲を持って、自給率向上に果たして資することができるのか。
私は、今やるべきことは、こういう限定をするんじゃなくて、もっと幅広い方々への支援策をすべきではないか。つまり、私は認定農業者だけでいいとは言いませんけれども、認定農業者というのは一定の計画を出して認定されるわけですから、それで十分じゃないか。これで意欲ある農家、担い手だというふうに市町村が認めていくわけですから、もうそれで十分じゃないですか。
この点、検討していただけませんか。大臣、いかがですか。
○谷津国務大臣 私は、意欲ある農業者というものにつきましては、担い手というものについても同様に思っているわけでありますけれども、先ほども申し上げましたとおり、少なくとも、農業とて経営であります。
ですから、一方では農業生産、農産物の生産というものについての技術を磨き、あるいはまたいろいろなノウハウを持ってやるのも一つでありますし、また一方では経営ということも非常に大事なものでございますから、そういう経営という面を考えてみた場合に、私は、青色申告というふうな形は非常に大事な要素の一つでもあるというふうに考えておるわけであります。
そういう中で、今度の農業者年金の一つの対象にそれをしていくわけでありますけれども、まさにこれから農業のいわゆる担い手としての自分の将来をそれぞれ確実にするためには、経営という面をしっかりと身につけてやることも大事でありますから、そういった面でこの辺のところを対処しているんだということを御理解いただきたいわけであります。
○中林委員 青色申告が必ずしも条件にはならなくてもいいという検討をしていただくという答えになるかと期待をしたわけですけれども、どうもその答弁はいただかなかったんですが、しかし、農業をやっていらっしゃる方々はわかるんですよね。もちろん青色申告をしている人たちもいるんですけれども、やはり意欲を持って一生懸命やっている人というのは、認定農業者に認定されるような計画を作成する、それに基づいてやっても、なかなかそうはならないという今の農政の実態があるというふうに思うんです。
そこへもって今回、政策支援をやるんだという農水省の、一応これは農業者年金の新たな制度の中の一つの宣伝でしょう。宣伝というか、こういうものもあるよと。若い人たちもぜひ入ってほしいというものだと思うんですよ。そうであるならば、こういうふうに限定されるということでは、私は、今新しい基本法のもとで食料自給率だと、いろいろな計画を持っているんですけれども、それはとても達成するとは思えないわけです。
だから、この年金そのものが持っている問題というのは、こういう担い手確保に何かそういう政策支援という国費を投じて誘導していこうというものを持ち込んで、今回も改正案の中にあるわけですけれども、それ自体が大きな矛盾を引き起こしていくのではないかというふうに思わざるを得ないんですね。だから、この制度そのものに限界があるのではないかというふうに思います、担い手確保の問題では。その点についてのお考えはいかがでしょうか。
○谷津国務大臣 近年、我が国の農業の食料供給力の低下、先ほどからこれは申し上げているんですが、あるいは耕地利用率の低下とか、あるいはまた耕作放棄地の増大等に対応して国民に対する食料の安定供給を確保するためには、本当に農業の担い手を確保することが重要であることは再三申し上げているところであります。そのために、農業者の生涯所得の充実を図る、そして農業を職業として選択し得る魅力あるものにしていくことが必要であるというふうに思っておるわけであります。
ですから、効率的かつ安定的な農業経営が確保すべき生涯所得については、農業経営の展望において、他産業に従事する者と遜色のない水準の所得が示されていることが大事でありまして、その中で、リタイア後の所得の重要部分、これは年金所得ということになるわけでありますが、それを確保することが大事であるというふうに考えておるところであります。
そういうことから、生涯所得の充実を図る観点から、農業者のための年金制度を措置することによりまして、その老後所得の充実を図りながら農業の担い手の確保に資するとしたものが今回の農業者年金法の改正の部分であります。
さらに、今後においては、効率的かつ安定的な農業経営を育成するために、経営政策全体の見直しや、あるいは再編についても検討していきたいというふうに考えております。
○中林委員 質問時間が参りましたので、終わりますけれども、私は、農業をやりたい人はすべてが担い手、こういう観点から農政を進めていただきたい。政策的な誘導でやれば、必ず矛盾がそこに起きてくる。だから、根本的に農業で食べていける、農業経営が安定する、その方向への農政の転換を求めて、質問を終わります。
○堀込委員長 次に、山口わか子君。
○山口(わ)委員 社会民主党の山口わか子でございます。
私は、政府提案に対しての質問をさせていただきたいと思います。随分きょうは朝からいろいろな形で御答弁をいただいておりますけれども、確認の意味で、もう一回御答弁をいただければと思います。
今回の改正案につきましては、たくさんのいろいろな問題点を抱えているというふうに思います。一つは、年金の根幹ともいうべき賦課方式を積立方式へ転換していること、そして二つ目は、公的年金制度としては初めて支給額を減額していること、それも九・八%ですから約一割の減額ということになります。三つ目は、脱退者に対しまして納付済み保険料の八〇%しか返還しないということなどでございます。これは、農林水産大臣が所信で表明されておりました農業者の信頼を得ることを基本とした抜本改革とはほど遠いものではないかというふうに思っております。
それにしても、農業者年金制度が政策年金としては既に破綻しているのではないかというふうに思うんですが、長い間これを放置してきた政府の責任は大変大きいのではないかと思います。一九九五年の財政再計算のときには既に受給者は七十四万七千人であったにもかかわらず、加入者は三十七万二千人と受給者の二分の一にすぎなかったわけです。一人で二人の受給者を抱えていたわけですから、それが現在は一人で受給者三人を支えるという構造になってきています。
こうした財政破綻が目に見えている中であるにもかかわらず、抜本改革を見送ってきたということが今日のこういう事態を起こしてきたのではないかというふうに私は思うのですが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○谷津国務大臣 農林水産省といたしましては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、農業者年金制度の設計、運営をする立場にあります。そういう状況から、健全な制度運営を図っていく責務があるというふうに考えております。
このために、これまででも五年ごとに財政再計算等を契機に、その置かれた農政上あるいは年金財政上の課題のもとで、加入の促進やあるいは給付体系の見直し、あるいはまた保険料引き上げ等のできる限りの運営改善を図るための制度改正を行ってきておりましたが、その過程では、いつも国会での御審議をお願いしてきたところでもございます。
しかしながら、新規加入者の急激な減といいましょうか、そういう激減がありました。それから、保険料収納率の低下等が続きました。そして、平成十二年の財政再計算の結果を見ますと、過去行ってきたような、現行制度の継続を前提とした制度改善では年金財政の破綻を免れることはあり得ないというふうな認識に至ったものでございます。
このような経緯の中で、農林水産省がその置かれた状況のもとでできる限りの制度改善の努力をしてきたといたしましても、結果的に見れば農業構造の変化や年金加入者数等の見通しが不十分であったということは認識せざるを得ない、そういうふうに私は考えておるわけであります。
今般、国民の皆さん方や加入者、受給者の方々に負担をおかけいたします、そしてその御協力を得る形で抜本的な改革を進めざるを得ない事態に至ったことにつきましては、私といたしましては、率直に申し上げまして申しわけなく思っております。
○山口(わ)委員 加入者、受給者の皆様は、国の運営する年金だからということで安心して農業者年金に加入をして、保険料を払い続けてきたのだと思うんですね。そこにはやはり、おのずと国に対する信頼があったのだと思うんです。この信頼を無視すれば、農業者年金制度が政策年金であるだけに、農業者の間に農政に対する不信を増幅させることになりかねないというふうに思うんです。
今大臣が率直に反省をなさっていらっしゃいましたけれども、やはり農業者年金の皆様が減額措置が今度は行われるわけですから、ひいては公的年金制度全体に拡大適用されるのではないかという不信につながりかねない問題だと思うんです。これはあくまでも、ほかの年金とは少し違って、政策年金ということで切り離してはいらっしゃると思うんですけれども、農民の人たちあるいは国民の人たちにしてみると、もしかしたら私たちの普通の国民年金もあるいはほかの年金も減額されるのではないかという不信感がこの制度によって起こり得る可能性も十分あるかというふうに思っていますが、その辺につきましてどういうふうにお考えをしていらっしゃるのでしょうか。
○谷津国務大臣 農業者年金制度改革の検討に当たりましては、食料・農業・農村基本法農政を推進するに当たってその原点が、何よりも国民皆様方の理解のもとで農業者の信頼を得ることであるとともに、このような基本姿勢に立ちまして食料・農業・農村基本法の理念や政策の展開方向に即した形で農業者年金制度の抜本的な改革を行うこととしたところでございます。
このために、農業者の確保に資するよう農業者のための年金制度を措置し、意欲を持って農業に取り組む担い手に対して政策支援を行いますとともに、また、抜本改革に伴う調整措置について、当初の三割の負担を九・八%の負担に圧縮しましたほかに、いかなる世代においても掛け損が生じないようにするなど、その措置を講じたところでもございます。
今後とも、農業者年金制度の設計、運営に責任を有しておりますところの農林水産省といたしましては、制度をめぐる農業情勢や財政状況等を不断に整理、点検しながら、長期的な、そしてまた安定した制度となるように努めてまいりたいというふうに考えております。
○山口(わ)委員 今農業を経営していらっしゃる皆様にとりましては、とにかく三万五千円くらいになるわけですか、月の保険料を払っていくわけです。これは大変なことですので、本当に将来、これだけの保険料を払っていって大丈夫なのかという不安があると思いますので、その辺はこれからもぜひ農民の皆様の期待を裏切らないような政策をしていただきたいというふうに思っております。
この改正案では、将来にわたりまして三兆五千七百億円という財政負担をするわけです。加入者へのさまざまな支援を行って政策年金として制度を維持しようとしているわけですけれども、先ほどから何回も皆様のところでお話が出ていましたように、農業者も高齢化してまいりましたし、新規就農者も本当になかなかふえてこない、後継者難という中で、積立年金制度として毎年どの程度の新規加入者を見込んでいらっしゃるのでしょうか。
果たして政策年金制度として将来にわたって維持できるのかどうかというのが大変心配になります。こうした意味で、トータルな財政見通しがどうなっているのか、御所見をお伺いしたいと思います。
○須賀田政府参考人 新しい農業者年金制度につきましては、まず一つは、加入資格を大幅に緩和したということで、農地に権利名義を持っていなくても農業に従事する者であれば加入できるという制度に変えたということでございます。これで施設型経営の方あるいは配偶者の方、後継者の方も広く加入できるという制度に変えたということが一つでございます。
それから、農業者年金に何か不安がある、将来に不安があるというような声も聞きますので、まさに先生御指摘のように、積立方式で確定拠出型というふうに財政的にも安定した制度に変えたという点もございます。
さらに、もろもろの政策支援でございますとか、死亡一時金の改善でございますとか、もろもろの改善をしているわけでございます。
そういうことで、新制度移行後の当面の加入者数、先ほどからいろいろ御議論ございますけれども、私どもとしては、現在の加入者二十七万のうちから、恐らく六十歳以上の方と、それから長期に保険料を滞納されている、これは一万人ぐらいおられるわけでございますけれども、そういう方は脱落をされて、残りの二十五万人が新制度に移るのではないか。それから、認定農業者ではございますけれども未加入の方々等が、新しい制度のよさを意識していただいて、まずは四万人程度入るのではないかということで、全体で当面、約三十万人を見込んでおるわけでございます。
私どもとしては、法律成立以降、この新しい制度の有利性、メリット、よさを普及いたしまして、できる限りの加入が図られるように努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
○山口(わ)委員 三十万人というお話を聞きましたけれども、今までの経過から見ましても大変加入者は減ってきているわけですね。そして、女性の場合は、年金に加入できる道が図られてきたとはいうものの、当初は少しは多かったと思うんですが、平成十一年度では三百人ぐらいしか女性の加入がないということですので、本当にこんな状況になって、これから将来、夢を見て、この年金なら入ろうかなというふうに思うのかどうかというのは私は大変心配になると思います。
その辺は、これからもぜひ皆さんが夢を持てるような年金に、今度の改正があったからすべて将来ずっと改正がないということは、ある意味では改正が悪い方向へ行くのかもしれませんが、ないと思いますので、これからもぜひ担い手が夢を持てるような政策年金であることを祈っていきたいと思っています。
平成十一年の大綱案では、先ほどからお話がありましたように、受給者の年金は平均で三割カットということで大変問題になったわけですけれども、四十六歳以下の加入者には掛け損が生じるという改革案が示されたわけですけれども、この当初の三割という大綱案から九・八%カットという改正案になったいきさつというのはどのようなものだったのか、なぜその三割カットが一割カットになったのか。
あるいは、三割カットという大綱案からいたしますと、今回の改正案でも、また年金の支給額が減額されるのではないかとか、保険料がふえていくのではないかという不安があるわけですね。これだけ減ったからもっと減るのではないかという不安よりは、むしろもっとふえるのではないかという不安につながるのではないかというふうに思うんですが、こうした事態にならないという保証はあるのでしょうか。
○谷津国務大臣 農業者年金制度改革につきましては、平成十一年の十二月に、議論のたたき台といたしまして、農業者年金制度改革大綱案において、既裁定年金の平均三割カット等を示したところであります。その後、これをもとに、受給者あるいは加入者の生の声や年金制度関係者の意見などを積み上げまして、これは約六カ月かけまして意見の集約を取りまとめたところでございます。
この意見集約におきましては、受給者の年金の水準については国が支えることを基本としながら、受給者の負担を最小限に圧縮することとされました。この最小限の負担につきまして、農業団体より、一〇%以内との意向が示されたことから、農業者と国民双方の理解と納得を得るためのぎりぎりの水準といたしまして、最終的に九・八%の既裁定年金額の削減をお願いしたところでございます。
また、今御説明いたしましたとおりに、今回の九・八%の既裁定年金額の削減は農業者にも国民一般の方にも理解を得るぎりぎりの水準と認識しているところでございまして、今後さらに年金額を削減することは想定しておりません。
○山口(わ)委員 本来でしたら、九・八%の削減も二〇%のカットも、したくはないし、してはならないというふうに思っているわけです。
民主党の方からもいろいろ御説明がありましたけれども、この受給者の年金を削減するということは、他の公的年金制度への影響が大きいばかりではなくて、民主党がおっしゃっていますように、やはり憲法が保障する財産権の侵害に当たるということで、国を相手に争う動きすらあると言われています。
農林水産省は、この年金のカットと憲法第二十九条が保障する財産権との関係をどのように考えていらっしゃるのか。財産権の侵害には当たらないのか。農林水産省として、年金減額を撤回するとか脱退一時金を全額保障するという考えはないのか。先ほどはぎりぎりの選択というふうにおっしゃいましたけれども、さらにもう一回お伺いしたいと思います。
○須賀田政府参考人 既裁定年金額のカットと憲法で保障する財産権の侵害との関係でございます。本委員会で大臣から何回か御答弁申し上げました。
まず、年金受給権というものが財産権であることは間違いないものでございまして、一般的には、財産権は基本的人権として憲法において保障されているわけでございます。ただ、これを事後的に法律で不利益変更できるのかどうかというところにつきましては、公共の福祉を実現し、あるいは維持するために必要がある場合にはできるということが累次にわたる最高裁の判例によって判示をされておるわけでございます。
そして、五十三年の七月十二日の最高裁判所大法廷判決がこの財産権の事後的な制約について原則的な基準を示しているわけでございまして、一つが、一たん定められた法律に基づくその財産権の性質はどうか、二つ目が、その内容を変更する程度はどうか、三つ目が、これを変更することによって保護される公益の性質はどうか、こういうことを総合的に勘案いたしまして、それらの変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかをその三つの考慮事項で判断すべきということが判示をされておるわけでございます。
それに照らして今回の年金額のカットを検討いたしますと、まず、財産権の性質でございます。年金額の引き下げとなる年金といいますのは、老後の生活の安定という目的ばかりではなくて、農業上の目的に従いまして出している経営移譲年金、しかもこれは、財源は専ら国庫助成で賄っているものであります。そういう経営移譲年金を引き下げたということでございます。
二つ目に、内容を変更する程度でございますけれども、年金額の引き下げの水準というのは、高齢者夫婦世帯の消費生活の一%程度ということで、農業者の老後の生活の安定が直ちに脅かされるものではないということ、変更の程度が軽微ではないかということ。
そして、年金引き下げによってだれが保護されるかということでございますけれども、やはり加入者の負担能力の限界を超える保険料の大幅引き上げというものが避けられますし、国民一般の負担のさらなる増加というものが避けられるということで、これらを総合的に勘案いたしまして、憲法二十九条に照らしても許容されるものという判断をしたところでございます。
○山口(わ)委員 憲法に保障されるこの基本的人権といいますのは最低の保障だと私は思うんです。これがやはりきちっと守られて初めて私たちは安心して生活が送れるし、安心して農業ができるわけで、たとえ九・八であろうと二〇%カットであろうと、憲法に保障されている最低の私たちの権利を奪うという点では、やはりこれは非常に問題があるというふうに私は考えております。
それでは、この大綱案の三割カットは財産権の侵害に当たるのか当たらないのか。この程度なら財産権侵害に当たらないと考えているのか。もう一回お答えください。
○須賀田政府参考人 一昨年の十二月に、私ども、農業者年金制度改革大綱というものをお出ししたわけでございますけれども、これは、先ほど来申し上げております厚生省と農林省の局長の研究会、農業者年金制度研究会の論議を踏まえて、幅広い論議のたたき台として一昨年の大綱の中で提案をしたものでございます。
この大綱の中で年金額の引き下げということを言っておりますけれども、これは、この研究会が、先ほど申しました五十三年七月十二日の最高裁判例を引きまして、そこで示されました判断基準を踏まえて、先ほど申しました合理的な制約かどうかという関係の判断を踏まえた上で大綱として示したものでございます。
その中身は、年金額引き下げ措置を講じない場合は、遅くとも平成十四年には年金財政が払底し、現役世代の負担能力を超える大幅な保険料引き上げかまたは多大な国民負担のいずれかが不可欠となるということとして、年金額の引き下げの水準として、経営移譲年金では三割、それから農業者老齢年金も五%というふうなカットで大綱としてお出しをしたのですけれども、これは、先ほどの判例で示された考慮事項に照らしましても、やはり現役世代の負担の大幅な増額が避けられる、あるいは多大な国民負担が避けられるということで、私どもとしては、憲法に照らしても許容されるものではないかということで提案をしたものでございます。
ただ、この大綱は幅広い議論のたたき台として作成されまして、その後の議論を経て今回の政府案に集約されたものでございまして、この政府案についての論議を進めていただくことが建設的ではないかというふうに考えているところでございます。
○山口(わ)委員 何か随分長く御答弁いただいたのですが、この額の問題で財産権を論議するのはおかしいというふうに私は思っていますし、額が少なくても当然これは憲法に保障されている財産権にやはり当たるわけですから、そういった意味では、これは国民の皆さんにきちんと合意をしてもらわないと大変なことになるのではないかなというふうに私は思っています。
改正案では、これまでの後継者確保から農業者の確保に政策の目的が変わったわけですね。任意加入という制度になったわけです。ですけれども、この農業者の確保という政策目的の年金だということと任意加入ということは、これは両立するんでしょうか。何か相反するような感じに私は受け取れるんですが、このことについてどうお考えですか。
○須賀田政府参考人 農業者年金の現行制度、旧制度と申しましょうか今の制度は、農業者の老後の生活の安定と福祉の向上ということに加えまして、適期の経営移譲を通じた農業経営の近代化と農地保有の合理化ということを目的としているわけでございます。
これは、この制度が創設されました当時、多くの土地利用型の、しかも零細な経営がございました。その中から、若返りと構造改善のための農地流動化によりまして担い手を育成していくということが農政上の課題であったところでございます。
そのために、土地利用型経営の担い手を育成していくということから、一定面積以上の農地を有する人には当然加入になっていただきまして、農地保有の合理化に資すると認められる一定面積以上の農地についての経営移譲について年金を支給するということにしていたわけでございます。これは、当時のそういう農業事情からの要請でございました。
一方、現下の農業情勢のもとでは担い手の脆弱化が進んでおります。こういうことに対処するために、農業の持続的発展を支える農業生産活動に従事する者の確保ということが至上命題になっておるわけでございまして、新制度は、こういう老後の所得の確保を通じた生涯所得の充実によって農業の担い手を確保するというふうに目的を変えざるを得なかったということでございます。
今後、農業を職業として選択し得る魅力あるものにするためには、農業者の自発的な意思に依拠し、みずから創意工夫を生かした経営を展開できる環境を整備するということが求められておりますので、新制度におきましては、農業者の自主性を尊重し、任意加入制としたものでございます。
○山口(わ)委員 何かおっしゃっていることが私にはよくわからないんですけれども、やはり農業者の確保というのと任意加入というのは相反するわけですね。任意加入というのは入っても入らなくてもいいということですから、農業者の確保にならないんじゃないかなというふうに私は思っているものですから、ちょっと今の考えは私にはよく理解できませんでした。
そこで、では、政府のおっしゃる政策目的、農業者の確保ということと任意加入ということですが、この目標をどういうふうに達成するおつもりなのか、農水省としては加入者の促進のためには何か積極的な活動を行うおつもりなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
○須賀田政府参考人 私ども、今度の新制度で、加入要件を農業に従事する者というふうに大幅に緩めたわけでございます。現在、こういう対象になる人がどのぐらいいるかといいますと、マクロで約八十万人おるわけでございます。
新制度への加入に当たりましてはこういう人たちをターゲットにいたしまして、特に、新たな掘り起こしといたしまして、配偶者、後継者、施設型経営者、こういう人たちに対しまして法律案の内容を周知徹底する、法律が成立すればそういう人たちに重ねてPRをする、また各都道府県段階で将来の加入目標を定めて取り組む、こういうことで加入推進に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○山口(わ)委員 これまでの農業者年金制度の政策目標の大きな柱だった後継者確保、今回の改正案で政策目標となっている農業者の確保、そのことにつきましては、やはり年金制度ではなくて農業政策を通じて行うべきだという議論もあるわけです。
政府の今回の改革案につきましては、政策年金としての性格を維持するというふうになっておりますけれども、このような議論で今後農政が本当に成り立っていくのかどうか。これだけいろいろな形で今までの年金制度の欠陥がたくさん出てきているわけで、政策年金として農業者年金が果たす役割がきちっとあるのかどうか。農業者年金を廃止すべきだという議論もありますので、私はその辺が一番心配になるわけです。
ですから、政策年金として農業者年金の果たす役割が本当に将来あるのかどうかという点について、御答弁をお願いします。
○松岡副大臣 どの仕事でもそうでありますが、人によっては、所得に関係なくもうそのことが好きで好きでたまらないからとか、いろいろな考え方といいますかケースはあると思います。やはり一般的には、ほぼほとんどと言っていいほど、仕事をしてそれに対して幾らの対価といいますか所得があるか、これが一番の魅力といいますか、仕事の選択になるんじゃないかと私は思いますし、また、私どもも今日までいろいろな議論をしてまいりましたが、やはりそこのところが一番求められている点であります。
したがいまして、これを二つに分けますと、老後と、そしてまた老後に至るまで働いて収入を得る、この二つに分かれると思うんですが、やはり何といっても、若いとき頑張って、そして、所得ももちろん重要でありますけれども、老後を安心して安定して生活できるというのがこれまた最大の重要なポイントだ、私はこう思います。
そういった点から、今回も、私自身も、党の立場も含めまして三、四年、新農業基本法、それから年金問題も含めまして議論してまいりました。もう何十回となくやったわけでありますが、新農業基本法のときにも、年金は絶対きちんとした形で頼むぞ、こういったことも言われたわけでありまして、そういったことを総合いたしますと、どうしても老後の年金というのは、職業選択の上で一番最大の重要な項目だ、私はこう思います。
そういう意味で、今回、私どもは、他産業並みの生涯所得といったようなことをこれから必ず実現していくような所得政策をとっていこう、そういったことで今その検討に入っておるわけであります。アメリカ型の所得政策もありますし、ヨーロッパ型の所得政策もあります。それももろもろ私ども勉強してきたところでありますが、そういう中で所得政策もしっかり打ち立てていこうと思っています。
あわせて、今度は老後の所得ということになりますと、どうしても年金ということで対応していく。したがって、働いて得る収入としての所得政策と老後の所得政策、まさに車の両輪として、私どもはこれを一体的なものとしてとらえてしっかりしたものにしていく。これが、間違いなく農業を選択する、また頑張っていくという上で大変効果があるものだ。
したがって、今回出しました私どもの案は、今日までもいろいろな議論を重ねてきた中で、ほぼほとんど私どもが対応いたしました農業現場の皆様方からは、非常にいい案をつくってくれた、自分たちとしても非常に満足だ、私ども大体そのように受けとめております。
○山口(わ)委員 時間になりました。今まで農業をやっている皆さんは大変苦労して一生懸命夢を持ってやってきたんですが、とにかく四割も減反しなければいけない、野菜をつくっても安くたたかれる中で、年金もカットということになりますと本当に夢も希望もなくなってしまうわけですから、そういった意味では、農家の皆さんを支えていただくような農政をこれからもぜひよろしくお願いしたいと思います。
ありがとうございました。
○堀込委員長 次に、菅野哲雄君。
○菅野委員 農業者年金法案について、今、山口わか子委員が政府案に対して質問をいたしましたけれども、私はこの三十分を使って、民主党案について率直な意見交換をし合いたいと思って、質問させていただきたいというふうに思います。
今まで政府案、民主党案、いろいろな議論がございました。ただ、農業者年金について民主党案が提出されなければならない今日的事情というのはあると思うんですね。年金法案ですから、これからずっと末代の制度をつくっていこうとしているわけですね。そういう意味では、三十年後、四十年後の将来をどう見越していくのか、この視点が大切であるというふうに私は思っています。
一九九五年の改正のときは、私は国会の中に席がありませんでしたから、政府案には後で質問しますが、後で見て、計数の見通しの甘さゆえに今日の状況になっているということははっきりしていると思うのです。
そういうところも踏まえて、この民主党案、私どもと相談しないで党独自でやったという経過はありますけれども、提出するに至った経緯について、その中で政府案に対する認識というものをどのように持っておられてこの提出に至ったのか、そこを率直にお聞かせ願いたいというふうに思っています。
○三村議員 お答えいたします。
農業者年金につきましては、確かに、かつて恩給的支給であるとか経営移譲によって農地の細分化を防いだ努力ということで評価すべきであった、そのように認識する次第でございますが、近年、先生も御存じのとおり、食料・農業・農村基本法制定にかかわる過程から、農政上の課題として俎上に上がっており、重大な関心を持って政府の対応を注目しておりました。
農業者年金をめぐりましては、以前から、財政状況の悪化のみならず、加入者が減少している、経営移譲したくても担い手がいなくてできない、経営移譲の相手方の過半がサラリーマン経営者である、保険料収納率が低下しているといった問題がもう顕在化、日常化しており、政策効果が不十分な状況になっており、制度として存続させることを疑問視する意見が大変にあったところでございます。
そこで、政府は、農業者年金制度のあり方につき検討するため、平成十一年四月に設置した農業者年金制度研究会においても、農業者年金制度の政策効果に対する疑義が呈され、財政的にも制度的にも破綻しているとの認識から、名誉ある撤退を図るべきとの指摘もなされていた、そう承知いたしております。
こうした中、平成十一年十二月には、農林水産省より、農業者年金を新たな政策年金として再構築するとともに、既裁定年金額の三割カット、年齢階層によっては掛け損を生じるなどを内容とする大綱案が示され、農業者に大きな不安感を与えるなど、現場が大変な混乱を来したことは御案内のとおりでございます。
そこで、政府は、平成十二年八月に至り、年金額のカット幅を九・八%に縮減するとの考え方を示したわけでございますが、三割であっても九・八%でもカットされることに変わりはなく、本会議における趣旨説明でも明らかにいたしましたとおり、これが憲法の保障する財産権の侵害に当たるというふうに考えられます。
さらに、農業者年金は政策年金として破綻しており、これを新たな政策年金として再構築することは、農業者の理解はもとより、国民一般の理解においても難しいものと考えられます。
こうしたことから、農業者の老後生活の安定は、既存のみどり年金制度の普及、定着等を基本としつつ万全を期すこととし、農業者年金制度につきましては、今後さらに検討を進め、既裁定年金額を保障しつつ新たな加入を停止する措置を講ずるため、別途法制の整備を図ろうという案を取りまとめたものでございます。
○菅野委員 みどり年金の問題については、後でもう少し突っ込みたい、議論したいと思いますけれども、私どもも、この農業者年金の問題においては、将来にわたっての財政論議をきちっとしておかなければならないという立場を貫いているわけです。
一つは、政府案に対して、先ほど山口委員も言ったんですが、九・八%カットの問題等を含めて、私どもも大きな問題点としてとらえているわけですけれども、それ以上に、年金財政の問題を含めて、将来見通しを正確にお互いに議論し合って国民の前に明らかにしておく必要があるというふうに思っています。
それで、民主党案における今後の財政見通し、政府案と、今政府から示されておりますけれども、三・六兆円、あるいは新政策、二十四万人について三十六億円という形が示されておりますけれども、これらに対する見解と、今後民主党案でいった場合の財政計画をどう持っておられるのか、見通しを示していただきたいと思います。
○津川議員 お答えいたします。
もう本日も何度かお答えをしたところでございますので簡潔にお答えをさせていただきますが、まず、農業者年金制度改革にかかわる国庫負担については、民主党案では、既裁定年金額のカットを行わないために、政府案よりも既裁定で二千百億円、未裁定の方々も入れますと大体三千億円ぐらい多くなる。しかしながら、新たな政策年金として再構築しないために、政策支援にかかわる国庫補助、年額で約百四十四億円と試算されておりますが、それがない分、政府案よりも民主党案の方が、財政負担は概算で、約六十年で六千億円ほど少なくなると試算されております。
したがいまして、長期的には国庫負担は政府案よりも少額となる、また、現在の農林水産予算を組み替えることで効率的に配分すれば十分財源は確保できるものと考えております。
以上です。
○菅野委員 そうですね。年百四十四億円の部分が出さなくて済むということですから、そういう意味においては、二十年先を見越して、四十年先、トータル的なバランスをとりながら、単年度でどう前倒しでとっていって政策に振り向けるかということが、これは可能だということなんですよね、民主党案においては。
私は、その点をやはりはっきりとしておかなければいけないというふうに思っています。一つ、今回の改正案で、政府案で進むとすれば、将来にわたっての国民負担がどんどん多くなっていってしまうよという状況だけはここで言えるんだというふうに思っております。そう理解していきたいというふうに思います。
ただ、そういう意味で、まだ民主党案がいろいろな議論の中で経過をたどってきていますけれども、そういう大きな将来計画の上に立っているんですが、それじゃ、今政府が言っている担い手対策をどういう政策でもってやっていくのか。
さっき副大臣が答弁していたように、収入がふえなければその産業につく人はいないというのは、これははっきりしていることですね。そのことに対する民主党の考え方、年金にかわって、それじゃ具体的な案をどのように持っているのかということを議論しておかないと、私はなかなか理解が進んでいかないんじゃないのかなという気はいたしますから、その考え方をお聞きしておきたいと思います。
○津川議員 担い手確保というものは、確かに、現在農業をされている農業者の方が今後もその農業を続けていただくということも重要でありますが、大きくは、新規就農者をどれだけふやすかということであろうかと思います。
委員も当然御存じのことと思いますが、就農希望者そのものは必ずしも少なくない、しかしながら新規就農者というものはなかなかふえていかないというのが現状でございます。なぜかと申しませば、平たく言えば、なかなか農業はもうからないからだと言っていいかと思います。先ほど政府の方からも、生涯所得を他産業並みにというお話をしておりましたから、政府の見解も恐らく同じというふうに私は思います。
したがって、いかに農業を魅力的なものにしていくかということが大変重要なわけでありますが、大局的に申し上げれば、魅力ある職業というのは、まずよいものをつくる、そして社会に対して大きく貢献をして、さらにもうかるということであろうかと思います。
農業の場合は、よいものといえば、安全性の高いもの、そしておいしいものということになろうかと思いますが、そういったものをつくりながら、しかしながらもうかるということになるならば、それは消費者のニーズにどれだけきめ細かく対応することができるかということが不可欠であろうかと思います。
そこで、現在民主党が用意しておりますのは、一つには、国が主導で行ってまいりました事実上の強制的な米の減反については選択制としていく。それからまた、そこで米は増産されるでしょうから、その分に関しては備蓄制度の確立を図っていく。また、選択制を導入するとともに、麦、大豆などの基幹作物については、目標をしっかり設定した上で自給率も五〇%を目標としていく。
また、直接的なものといたしましては、農業参入の規制緩和、あるいは農業生産法人の育成や農業以外からの新規参入の方々の支援というものを直接に行う。それから所得政策といたしまして、農業生産物の自由化の影響を最も大きく受ける専門的専業農家、それから有機農業などの環境保全型農業に取り組む農家、あるいは条件不利地域の定住対策、そういった三つを条件に、それぞれの法律に基づく明確なルールのもとで直接的な所得補償を実行していくというものがございます。
もちろんこれから政府も、先ほどおっしゃっておりましたが、民主党案としても、抜本的な改革という細部についてはこれから詰めていかなければならないものがございますが、方向性としては、多様な消費者ニーズにきめ細かく対応し、安全でおいしい食料を生産する、そういった農業経営をサポートするように農政を抜本的に構造改革する。結果的に必要で十分な担い手を確保するという政策をとっていくべきだと考えております。
○菅野委員 基本的には、大臣もいますから、農業に関する危機的な認識、それから将来はこうやっていかなきゃならないという方向性は、ここにいる政党政派を問わず、基本的には同じなんですね。同じだというふうに思います。
そういう意味では、本当にこれから基本的に農業をどう維持発展させていくのか。そして国土保全をどう図っていくのか。そういう政策を政府と一体となってやっていかなきゃならないという部分ですが、この政策は、私は五年、十年で達成できるものじゃないというふうに思うんですね。だから、十年、二十年あるいは子供や孫の代までかかる取り組みだというふうに思うんです。
そういう意味では、民主党の、長期視点に立っていただきたいし、財政論議も含めて、そういう観点から農業の担い手の確保という部分を、長期的にわたって、財政支援も含めて政府が早急にやらなければならない課題だというお互いの認識は一致しています。そういう意味では、ぜひ農業者年金にかかわっての一つの大きな議論展開をし合いながら、新たな方向をつけていきたいなという思いなんです。
ただ、財政論議とも含めて、担い手の確保の政策も含めてなんですが、もう一つ、民主党案で私どもすんなりこないという部分は、二段階で農業者年金の法改正を行っていくという提案をしています。
附則でもって今回は対処していって、あと平成十四年の一月一日まで具体的に細部については詰めていきますということなんですが、何をどの時点で、どういう方向でやっていくのかというところが具体的に示されない限り、今の民主党案というものが全体に支持を受けていかないという危惧をいたすのです。
私どもも、そこがないがゆえに、それじゃどういう形でそれをやっていくのか、そしてどの段階でどういう議論をしていってやっていくのかというところが見えない限り、この法律案というものが世間で認知されるような状況にはなっていかないんじゃないかという危惧をいたすのですが、今の考え方を述べていただきたいというふうに思います。
○三村議員 私の方からは、今事務的に段階のことを御答弁いたします。
当方の案は、年金法の改正を二段階で提案しているということでございますが、今回提出させていただいた改正案の成立後、直ちに検討作業に着手する、そして平成十三年十二月三十一日までに法整備を行うということでの提案をさせていただいております。
また、法制度の検討に当たりましては、現在の加入者等に現行水準の年金額を保障すること、新たな年金制度を創設せず、みどり年金への加入を進めることを基本として、農業者はもとより、国民一般からも改めて広く意見を聴取しつつ法案として取りまとめ、年内の成立を期するという段取りを考えております。
○菅野委員 政府案に対して民主党案ですから、そういう対案を出したという意味はわかるんですが、そのプロセス、政府・与党じゃないですから、民主党としてこれからも具体的な中身として議論していくんだろう、そして理解を求めていくんだろうと思うんですが、そこを単に、この制度を廃止してみどり年金に移行してもらっていって、あとはそれだけで事は済みますという問題じゃないというふうに思います。
それで、前に戻りますけれども、それじゃ政策として、ことしの政策年金にかわるものとして具体的な政策をどう展開していくのか。さっきの部分ですね。包括的に言われたんですが、当面はこういうこともやっていきますということを具体的に示していかない限り、私は理解が深まらないというふうに思うんですが、再度その点について答弁願いたいと思います。
○筒井議員 政府案も二本柱によって成り立っております。
経過措置として、年金支給額等をカットする、これが一本目の柱。二本目の柱が、新しい政策年金を創設する。こういう点でございまして、この二本とも、政府案に賛成するわけにいかない。
まず、支給額のカットは、先ほどから言われておりますように、憲法違反、財産権の侵害であると同時に政府の約束を破ることであり、国民の政治やあるいは年金制度に対する信頼を全く喪失してしまう、こういう点であります。
それから政策年金の創設という点に関しては、政策的な効果は全然なかったじゃないか。実証的に、今までの、現行農業者年金もそうですし、それ以上に今度の担い手確保という政策年金は効果が全くない。それにこれから六、七十年、一兆円をかけて国庫補助をする、税金をかける。これは、費用対効果から考えてもやめるべきだという観点から、私たちもだから反対をしているわけですから。
私たちの民主党の対案もまた二本柱でございまして、支給額等はカットしない、約束どおり一〇〇%支給する。そして、政策年金はやめる。誤解しないでいただきたいんですが、年金制度をやめるとは民主党は全然言っていないわけでして、政策年金はやめる。
だから、先ほど松岡副大臣が言われたのは、老後の生活の点を心配されている。老後の生活の点の心配だけならば、これはまさに政策年金要らないわけです。通常の年金制度をいかに充実するか。だから、先ほどの答弁から見れば、民主党案と全然矛盾しない答弁でございまして、政策年金を出している点で私たちは反対をしているわけでございまして、だから、今度の農業者年金に関しては、その二本柱で提案をしている。
この二本柱の提案に関しては、農林省も本音では民主党案の方がすっきりしていると評価しているというふうに聞いておりますし、それに財政的にも、先ほどから提出者が答えておりますように、財政負担が民主党案の方が大幅に少ない。だから、ぜひ御賛成、採決をいただきたい、こう言っているわけでございます。
ただ、今度の農業者年金制度と違うもう一点あるのが、担い手確保という政策年金を私たちは提案しておりませんから、それは別の政策で実現をすべきである。この別の担い手確保の独自の政策というのは、もちろん今まで政府がやっております債務保証とかあるいは融資とか、さらには研修とか指導とかあるいは情報の伝達とか、いろいろな方法はもちろんさらに充実してやると同時に、もっと抜本的なことをやらなきゃ担い手確保はできない。
その抜本的なものの一つが減反の廃止である。大体、担い手になってほしい、農業の担い手になってほしいと言いながら、なった後で、いや三年に一回休んでほしい、こういう形じゃ担い手が確保できるはずがないわけでございまして、だから減反廃止を提案している。
しかし、減反を廃止した場合には、もちろん米価が大幅に下がって、農家の所得が下がりますから、やはり所得補償政策、これは先ほど公明党さんからも賛成いただきましたが、これを本格的に導入しなければならないし、この財源は、現在の農林省予算三兆四千億円の中で十分賄うことができる。具体的な項目を挙げて説明をしたところでございます。
それでもまだ余剰米が出てくる。余剰米に関しては、今政府がWTO農業交渉の中で正式に日本の提案として出しております、食糧援助、国際備蓄の制度化をすべきであるというふうに提案をしているわけでございます。
以上です。
○菅野委員 わかりました。ただ、農業者年金制度は廃止なんですよね。政策年金としての廃止じゃなくて、農業者年金制度を廃止するんですね。だから私は、そこに若干の無理というか、無理というんじゃなくても、そして一方では、既裁定者の部分は継続していくという考え方ですから、そこには、三兆六千億円は、同じように国費は投入していきますという制度と理解しているんです。
そうしたときに、それではどういう形で既裁定者の部分を維持していくのか。何らかの形でこの仕組みを残していくという形に切りかえていかないと、先ほど公明党さんの質疑等を聞いていて、私も、違うんじゃないのかなと思ったのですが、農業共済制度と混同しているような気がするわけです。だから、その辺の整理をぴしっとしておく。そして、それでは既裁定者の部分をだれがどう責任を持ってやっていくのか、このことをはっきりさせていただきたいというふうに思うのです。
○筒井議員 今の質問の点では、政府案と一緒でございます。現行農業者年金制度は、平成十四年一月一日時点で凍結をして、その時点から保険料も徴収をしない、新規加入も停止する、それで、今までの保険料支払い等に対応した年金の支給業務だけを存続させる。その支給業務のこれからの予算が三兆六千億円というのが政府の提案です。
これは政府の財源ですが、民主党案の場合には、それに三千億円ほど七十年間の間にプラスされるという点でございます。この三千億円ほどの財政負担が民主党案だと多くなるわけですが、それは先ほど申し上げた、新年金制度、政策年金制度を創設しないで、それがほぼ七十年の間に一兆円ほどかかるわけですから、そのうちの一部を、一兆円のうちの三千億円ほどを、カットしないための増加分の財源に充てる、こういう提案でございます。
だから、政府案によりますと、今後みどり年金があって、それから現行農業者年金制度の経過措置として七十年ぐらいずっと存続して、それで積立方式がもう一つある。三つも農業者関係で年金が存続することになるわけでして、極めて複雑になる。民主党案の場合には、みどり年金と、それから現行農業者年金制度が七十年間ほど存続する、二階建て部分に関してはこういう二本立てになる、こういう中身でございます。
○菅野委員 わかりました。今も出たんですが、三十年間も一つの農業者年金制度として、昭和三十四年ですかね、定着してきたものを移行するというところの難しさというのがあると思うのです。そこを乗り越えていかなきゃならないという立場は、私どもも十分理解するんです。
ただし、みどり年金の議論をしていますが、みどり年金制度と今度の政府案の農業者年金の制度というのはほぼ同じだというふうに思いますけれども、これへの理解と、どうやって移行させていくのかというところの議論をしっかりしておかなければならない課題だというふうに私自身とらまえているんですね。
その農業者年金とみどり年金との関係をどうとらまえて、今後みどり年金への移行をどのように図っていこうとなされているのか、言葉ではわかるのですが、具体的な方策として示していただきたいと思います。
○筒井議員 政府案ですと、現行農業者年金制度が残って、さらに新たな積立方式の政策年金制度ができる。この三本柱になるわけでございますが、民主党案では、現行農業者年金制度が残って、それとみどり年金がある。この二つがしばらく続くわけでございまして、現行農業者年金制度を全部みどり年金の方に移行するとは全然提案しておりません。
ただ、現行農業者年金の加入者は選択的に、個別にみどり年金に移行できる措置を講ずる。だから、現行農業者年金に加入している人は三つに分かれるだろう。一つは、これからも引き続いて、六十年、七十年にわたってかどうかわかりませんが、現行農業者年金の年金支給を受けるという人、それからもう脱退してしまう人、それからもう一つは、今までの農業者年金で支払った保険料、その保険期間を持ってみどり年金の方に移行するわけですね。このみどり年金の方に移行する人と、三者に分かれるということでございますから、民主党案は、現行農業者年金制度をみどり年金の方に移行する案とはまた違うわけでございます。
○菅野委員 民主党案について質問させていただきましたけれども、やはり一つの、こうやって法案を対置させて議論することの大切さというのはあるというふうに思っていますし、政府案が、先ほどからも議論がなっていますけれども、このまま制度として継続していけばいいのですが、制度が破綻したときに、見通しが甘かったというような状況になったときにどう対処するかというときに、政府案も安全弁をとっていると私は思うのですね。
賦課方式から積立方式にやったというのは、安全弁としてとっていると思うのですけれども、そういうところも踏まえて、これから参考人等も含めて議論し合いながら、私もこれからも議論を続けていきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わります。
○堀込委員長 次に、金子恭之君。
○金子(恭)委員 21世紀クラブの金子恭之でございます。
大きな制度の改革においては、制度を支えてきた現場の声を十分に聞き、それをいかに反映できるかが重要であると考えます。今回においては、加入者、そして受給者を初めとする農業関係者の意向であります。
今回の農業者年金制度の抜本的な改革については、政府におかれましては、二年有余にわたり、関係者の意向を反映させるために、かつてないほどの十分な議論を積み重ねられ、現場においては、農業委員会や農協等と組織討議が活発に行われ、ようやく合意がなされ、取りまとめられたわけでございます。そして、地元の多くの農業者の方々、また組織の方々から、私が地元に帰りましたときに、早く新制度を成立させてくださいというような要望を受けるわけであります。
私は、農業者年金基金法の一部を改正する法律案に対しまして、政府案、民主党案双方に質問させていただきます。
まず、政府案について伺いたいと思います。
食料・農業・農村基本法が制定されて、農村現場においても、日本農業の未来を構築するためにも、その具体策が求められております。現場を歩いてみると、農業後継者の不足、そして農業者の高齢化が痛いほど感じられます。これまでの農業者年金基金法では経営の若返りを政策目標にしておりましたが、現実は極めて厳しいものがあります。まさに、担い手の確保、育成なくしては日本農業の未来はありません。
そこで、政府に伺います。
政府は、新たな制度を担い手対策として位置づけられておられますが、担い手対策としてなぜ年金制度を整備することが必要なのでしょうか、お答えください。
○須賀田政府参考人 最近におきます我が国農業情勢の変化、すなわち食料供給力の低下、耕地利用率の低下、耕作放棄地の増大等の事態に対応いたしまして、国民に対する食料の安定供給を図っていくということのためには、先生御指摘のとおり、何よりもまず農業の担い手を確保することが重要でございます。
農業の担い手を確保するためには、やはり農業者の生涯所得の充実を図りまして、農業を職業として選択し得る魅力あるものにしていくことが極めて必要でございます。
昨年の三月に我が省が公表をいたしました農業経営の展望におきましては、基本法で言います効率的かつ安定的な農業経営の具体的な姿といたしまして、主たる従事者一人当たりの生涯所得が他産業従事者と遜色のない水準の所得を上げ得る経営を確保するということを目的としているところでございます。その中では、生涯所得の一環といたしまして、リタイア後の所得の重要部分を年金所得で確保するということにしているところでございます。
政策的にいいますと、担い手の農業所得の向上に資するように、農地の利用の集積とか、農業技術、経営管理能力の向上等を促進することのほか、担い手が老後生活の安心と安定を展望しながら農業生産活動に長期間従事できるように、農業者のための新たな年金制度を創設することとしたところでございます。
○金子(恭)委員 ありがとうございました。
引き続き、政府にお伺いいたします。
今回の政府案においては、農村現場の現状に即して、加入要件を、農地の権利名義を有する者から農業に従事する者に改められました。そして、一定の要件を満たす意欲ある担い手に対しては国庫助成を伴う政策支援を行うこととしておりますが、農業者の確保という制度目的に照らして、どのような効果を発揮すると考えておられるのか、お答えください。
○須賀田政府参考人 新しい農業者年金制度でございます。農業者のための年金制度を措置することによりまして、その老後所得の充実を図ることを通じて農業の担い手の確保を図ることを目的としているものでございます。
中でも政策支援につきましては、担い手の中でも、特に長期にわたって我が国の農業を支え、国民に対して食料を安定供給していくことと見込まれる者でありまして、目標を掲げて経営改善努力をするとともに、きちんとした経営管理を行っていく意欲ある担い手に対しまして、安心して老後生活を送ることができるよう、現役時代における保険料負担の軽減を国庫助成の形で行いますとともに、この政策支援分の年金につきましては、老齢時に経営継承した際に特例付加年金として支給するということにしているものでございます。
このような政策支援によりまして、長期にわたって我が国農業を担っていくと期待される意欲ある担い手の保険料負担の軽減と老後所得の充実が図られて、その確保に資するものと考えておるところでございます。
○金子(恭)委員 次に、民主党にお伺いいたします。
恐らく、農政を考える者として、担い手対策が日本農業の重要な課題であるということは共通の認識であると思います。今政府からは、担い手対策の一環として政策年金を整備することが必要だとの説明を受けました。また、これまでの質疑の中でも出てまいりましたように、農業関係者の意見集約においても、新たな基本法のもとで政策年金の再構築が求められております。
そのような状況の中で、民主党として、政策年金が必要でないとされた理由を御説明いただきたいと思います。
○三村議員 御答弁させていただきます。
農業者年金をめぐりましては、同じ答えになるんですが、以前から、財政状況の悪化のみならず、加入者が減少しているということがございました。また、経営移譲したくても担い手がいなくてできないという状況がございました。また、経営移譲の相手方の過半がサラリーマン後継者であるという現状がございました。保険料収納率が低下しているという問題が顕在化しておりまして、政策効果が不十分であり、制度として存続させることを疑問視する意見があったところであることは、先生も御承知と思います。
また、政府が農業者年金制度のあり方につき検討するために平成十一年四月に設置した農業者年金制度研究会においても、農業者年金制度の政策効果に対する疑義が呈され、財政的にも制度的にも難しい状況になっているとの認識から、名誉ある撤退を図るべきとの指摘がなされていたことも御承知と存じます。そこで、現行の農業者年金制度が政策年金としてはうまくいかなかったというふうに考えざるを得ないのでございます。
政府案のように、担い手確保のための年金手法の活用という方式をとろうとしても、どれだけの母集団を確保できるか、疑問を禁じ得ないのでございます。
また、政府案において、担い手確保として大きく効果を発揮するとされております政策支援、特例付加年金につきましては、農地の所有権移転等農業経営の廃止が要件とされております。しかしながら、現行の制度にあっても、経営移譲したくても担い手がいなくてできないという状況にあり、政策支援部分の年金化に結びつく農地の所有権移転が円滑に行われるのか、甚だ疑問であると思っております。
こうした状況下にあっては、担い手確保の施策としての年金手法は政策効果を予想どおり適切には発揮し得ない、そう考えた次第でございます。
○金子(恭)委員 引き続きまして、民主党にお伺いいたします。
その流れの中で、先日の民主党案の提案理由説明の中で、高齢者の生活は基礎年金とみどり年金という二階建て体制で確保します、そういうふうに御説明がございました。
みどり年金は、国民年金基金の一つであり、確定給付型の積立方式の年金であると承知しております。平成十一年度末において国民年金基金の全加入者は七十二万人、その中でみどり年金の加入者はわずかに二万人強であり、しかも頭打ちとなっているのが現状でございます。加入資格を見てみますと、年間六十日以上農業に従事した者、しかも農業に関して企画や経理等を行った場合も含めるとなっております。
そういうことを考えますと、加入しやすい年金であるにもかかわらず加入者が増加しないのは、ある意味、このみどり年金が魅力がないからではないかなと考えます。今後、その加入が大幅に増加するとも思えないわけでございます。
民主党案では、政策年金をやめて、みどり年金で農業者の老後生活の安定を図ろうとされるのだと考えますが、みどり年金で農業を魅力ある職業とすることが可能であるとお考えになっておられるんでしょうか、お伺いいたします。
○筒井議員 政府の政策年金に反対しているのは、政策効果がほとんど望めないからでございます。政策効果がほとんどないものに何でそんな多額の税金を使うんだ、現行農業者年金でも政策効果はなくなってきた、それに関しても税金をいっぱい使っているのにまたこれで使う、だから私たちは反対をしているわけでございます。
年金によって政策誘導することに無理がある、それは困難だ、これがはっきりされているわけでございますから、政策年金はやめる。しかし、農業者の老後の生活を考えた年金は必要である、そう考えた場合に、みどり年金が公的年金として存在をしているわけでございまして、みどり年金もまた保険料の掛金は社会保険料控除の対象になるし、支給年金は公的年金等控除の対象になるしといういろいろな優遇措置を受けている、こういう公的年金があるんだから、それを普及、定着させろと。
そして、そのみどり年金に関して、加入者が今現在二万人程度じゃないかという指摘がございましたが、現在、みどり年金の加入資格の点で、農業者年金に加入している人とか、あるいは農業者年金へ当然加入の人は、みどり年金の加入資格はありません。だから今、農業者の多くの人は、農業者年金に加入したり、あるいは当然加入の資格を持っている人ですが、そういう人たちはみどり年金に加入する資格がないわけでございます。その中で二万人なんですから、私はこの数はそういう状況の中では結構多いと思っているんです。
今度は、民主党案では、そういう農業者年金に加入している人、当然加入の人もみどり年金に加入する資格は出てくるわけでございますから、政府案のように、三十万人とは言いませんが、これは政策支援がありますから、しかし、現状よりも大幅に増加することは間違いないというふうに考えております。
○金子(恭)委員 今御答弁ございましたが、私は、みどり年金それから新制度を考えた場合に、やはり国庫助成を伴う政策支援を行うべきだという考えは変わりません。
最後に、谷津大臣にお伺いいたします。
先ほども申し上げましたように、担い手対策というのは農政の重要な課題でございます。本日の質疑の中でも、政府案が担い手対策として重要な役割を持つということがわかったわけであります。これからの農業を背負っていく後継者は、将来にわたって農業に対して希望と意欲が持てる政策を熱望しているわけでございます。
農林水産大臣として、農業者年金制度も含めて、今後どのような担い手対策を講じていかれるのか、御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
○谷津国務大臣 農業の担い手を確保するためには、農業者の生涯所得の充実を図ることが大事であると思います。そして、農業を職業として選択し得る魅力あるものとしていくことが、これまた重要でございます。このために、現役時代の農業所得の向上とともに、リタイア後の老後所得の充実を図るよう各般の施策を講じていくことが必要であるというふうに考えているところでございます。
具体的には、これまで就農に当たっては農業技術や経営方法を実地に習得するための研修教育や、機械あるいは施設の導入等のための資金の手当て、そしてまた、経営改善に当たっては、農地の利用集積の促進あるいはスーパーL資金等の低利融資の融通等を行ってきました。
また、リタイアに当たっては、円滑な経営継承に資するよう、農地保有合理化法人によりますところのリース農場の活用等、経営の発展段階に応じた担い手対策を講じてきたところでもございます。
さらに、今後におきましては、効率的な、そして安定的な農業経営を育成するために、農業経営政策全般の見直しや検討をしなければならないというふうに思っているところでもございます。
今回の新たな農業者年金制度によりまして、生涯所得の一部を構成する老後所得の充実を図りながら、これらの施策と相まって生涯所得の充実を図ることによりまして担い手対策に万全を期していきたいというふうに思っているところでございます。
――――◇―――――
○堀込委員長 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、二田孝治君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブの七派共同提案による輸入農林水産物に対するセーフガード暫定措置の発動に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。二田孝治君。
○二田委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブを代表して、輸入農林水産物に対するセーフガード暫定措置の発動に関する件の趣旨を御説明申し上げます。
まず、案文を朗読いたします。
輸入農林水産物に対するセーフガード暫定措置の発動に関する件(案)
昨今の野菜等の輸入急増は、国内の農家等に深刻かつ致命的な影響を及ぼしており、食料・農業・農村基本法において、食料自給率の向上が明確に位置付けられ、国内の農業生産によって対応することが基本とされる中、このままでは生産体制の崩壊につながりかねない状況に立ち至っている。また、安全で良質な国産品による安定供給を求める消費者の視点からも極めて重要な問題である。
このため政府においては、現在、ネギ、生シイタケ、畳表の三品目について、一般セーフガードの発動に向けた調査を行っているところであるが、今年に入ってからも、輸入の増大、価格の低落等、状況は一層厳しさを増しており、多くの農家は春の作付けを前にして、早期にセーフガードを発動すべしとの声を日増しに強めている。
よって、政府は、緊急の対応なくしては生産体制そのものの崩壊につながりかねない状況に立ち至っていることを十分に参酌して、ネギ、生シイタケ、畳表の三品目について、WTO協定に基づく一般セーフガードの暫定措置を速やかに発動すべきである。
右決議する。
以上の決議案の趣旨につきましては、委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。
以上、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
○堀込委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
二田孝治君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○堀込委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
この際、ただいまの決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣谷津義男君。
○谷津国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力を尽くしてまいる所存でございます。
○堀込委員長 お諮りいたします。
ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、来る四月三日火曜日午後二時二十分理事会、午後二時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時四十八分散会