衆議院

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第7号 平成13年4月3日(火曜日)

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平成十三年四月三日(火曜日)

    午後二時三十一分開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      岩倉 博文君    岩崎 忠夫君

      金田 英行君    上川 陽子君

      北村 誠吾君    栗原 博久君

      小島 敏男君    後藤田正純君

      七条  明君    園田 博之君

      高木  毅君    西田  司君

      浜田 靖一君    福井  照君

      小林 憲司君    古賀 一成君

      佐藤謙一郎君    津川 祥吾君

      筒井 信隆君    永田 寿康君

      楢崎 欣弥君    三村 申吾君

      江田 康幸君    高橋 嘉信君

      中林よし子君    松本 善明君

      菅野 哲雄君    山口わか子君

      金子 恭之君

    …………………………………

   農林水産大臣政務官    金田 英行君

   参考人

   (農業者年金基金理事長) 鎭西 迪雄君

   参考人

   (早稲田大学法学部教授) 戸波 江二君

   参考人

   (全国農業会議所専務理事

   )            中村  裕君

   参考人

   (北海道農民連盟委員長) 信田 邦雄君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月三日

 辞任         補欠選任

  後藤 茂之君     小林 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 憲司君     後藤 茂之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)

 農業者年金基金法の一部を改正する法律案(筒井信隆君外二名提出、衆法第一一号)




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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案及び筒井信隆君外二名提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、農業者年金基金理事長鎭西迪雄君、早稲田大学法学部教授戸波江二君、全国農業会議所専務理事中村裕君及び北海道農民連盟委員長信田邦雄君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考とさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、鎭西参考人、戸波参考人、中村参考人、信田参考人の順に、お一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、鎭西参考人にお願いいたします。

鎭西参考人 農業者年金基金の理事長の鎭西でございます。

 農業者年金制度の実施部門を担っております立場から、制度の現状、果たしてきた役割、制度運営上の諸問題及び今回の改正案につきましての所見を申し述べたいと思います。

 まず、制度の現状でございますが、一つは、被保険者数でございます。高齢化の進展、農業構造の変化等に伴いまして、被保険者から受給権者への移行数が新規加入者数を上回ってきましたことから、被保険者数は年々減少傾向にございまして、平成十一年度末現在では二十七万六千人となっております。

 それから、受給権者数でございますが、受給権者数につきましては、平成元年度末に受給権者数が被保険者数を上回りまして、いわゆる成熟度が一〇〇%を超えました。その後、平成三年度以来七十万人台で推移しております。平成十一年度末現在では、受給権者の実数は七十四万九千人となっておりまして、成熟度も二七二%に達しておるわけでございます。

 それから、経営移譲率でございますが、このような状況のもとで、農業の担い手不足から経営移譲率が低下してまいっておりまして、新規裁定者に占めます経営移譲年金受給者の割合でございますが、平成七年度七七%でございましたものが、平成十一年度には六八%となっております。また、経営移譲の相手方の過半が制度的に農業者年金に加入できないいわゆるサラリーマン後継者ということになってまいっております。

 それから、次に保険料でございますが、保険料につきましては、制度発足当初は七百五十円程度でまいったわけでございますけれども、平成元年に一万円台、十一年に二万円台となっておりますが、このように負担が重くなってきたことは昨今の収納率にも影響していると考えております。

 年金財政でございますが、以上のような諸状況、現状を反映いたしまして、近年では、経営移譲年金につきまして実質全額国庫助成をいただいておりますものの、老齢年金につきましては、保険料収入と運用収入の合計では給付額を賄うことができませんで、不足分を資産の取り崩しで賄っている状況でございます。年度末資産の推移を見ますと、平成七年度末で二千九百二十八億円でございましたものが、平成十一年度末で一千四百四十九億円となっているわけでございます。

 農業者年金制度の果たしてきた役割について申し述べたいと思います。

 提案理由説明あるいは先般の質疑でも農水省の方からいろいろ御説明がございましたが、本制度は、農業者の老後保障と、経営移譲を通じます経営主の若返りによります農業経営の活性化、相続時におきます農地の細分化防止、経営規模拡大という構造政策上の役割を果たしてきたと評価をいたしているところでございます。

 次に、制度運営上の課題でございますが、一つは加入者の確保でございます。未加入者の加入を促進することは、農業者の老後生活の安定を図ることはもちろんのこと、年金財政の健全化を図るためにも重要でございまして、従来から加入促進推進員の設置等、業務の最重点課題として取り組んでまいったわけでございます。

 しかし、昭和六十年度以降、新規加入者数は年々減少する傾向にございます。その原因としては、一つは、専業農家の数が減少を続けているというのが一番大きな要因だと考えておりますけれども、年金財政の将来不安、あるいは的確な経営移譲ができるかどうかへの不安、さらには農業経営の先行きに対する不安、就業形態の変化等種々の要因がふくそうしていると思われます。

 平成七年の制度改正によりまして、農地の権利名義を有しない女性につきましても、家族間で経営協定を締結していれば加入資格を有することとされまして、平成八年度から十一年度にかけまして約三千六百人の女性が新たに加入されたわけでございますけれども、十一年度につきましては、制度改正が確実な情勢となったこともございまして、女性の加入者数は激減いたしまして三百五人ということになっております。

 それから、保険料の収納対策でございますが、保険料の収納率が年々低下傾向にあることに対処いたしまして、私どもといたしましては、基本的には自動振替あるいは前納を徹底すると同時に、未納者に対します納付の勧奨、それから収納促進推進員の設置、さらには、現在及び将来を見据えた、いわゆる合併をされた後の大型農協に対します収納率の向上指導等を実施してまいったところでございます。

 三点目に、業務の適正、的確かつ円滑な運営という点につきまして申し述べたいと思いますが、基金の業務は、その性格上、被保険者、受給者と長期間にわたりまして直接接触いたしまして、かつ、これらの方々の利害に密接に関係するものでございます。

 したがいまして、業務の運営に当たりましては、被保険者資格、受給者資格の確認、管理、保険料の収納、経営移譲年金の裁定、支給、そういった業務が適正、的確かつ迅速に処理されることが重要でございまして、農家との窓口となっていただいております農業委員会、農業協同組合の協力を得まして、従来からその徹底に努めてまいったところでございます。

 四番目に、制度改正につきましての政府案についての意見を述べたいと思います。

 今回の政府提出法案は、農業者年金制度につきまして、経営移譲率の低下、成熟度の上昇、保険料負担の増嵩などに対処いたしまして、制度の抜本改革を行ってこれを継続し、食料・農業・農村基本法の理念に即した政策年金として再構築するものでございますが、このことは、農業関係団体の要望に沿うものであるとともに、財政方式が積立方式に改められ、制度の長期的安定が図られるものでございますし、改正内容につきましても、農業、農村の実態に即したものと考えているところでございます。

 次に、制度の抜本改革に伴います調整措置につきましては、新しい農業者年金制度を創設するためのぎりぎりの受忍ということで、農業団体の意見集約を経たものでございまして、全体として国民一般及び農業者の理解を得られるものと考えておるところでございます。

 最後になりますが、以上、制度の現状、役割、制度運営上の課題につきましての概略を説明申し上げますとともに、改正法案に対します意見を申し述べましたが、今回の政府の改正案は、将来に向けて制度を安定させていくために早急に講ずるべき不可欠の措置と受けとめておりますし、また、内容が抜本的なものでございますので、百万人以上の関係者の方々に十分な周知徹底を行う必要がございます。

 これには、諸準備も含めまして、どうしても一定の期間を要するわけでございますので、今国会におきまして、できる限り早期に政府提出法案を成立させていただくよう、この機会にお願いを申し上げる次第でございます。

 ありがとうございます。

堀込委員長 ありがとうございました。

 次に、戸波参考人にお願いいたします。

戸波参考人 戸波と申します。

 早稲田大学で憲法の教育研究に携わっております。研究テーマは、人権の基礎理論及び人権の各論を担当し、研究しております。財産権、生存権について幾つか論文を書いた関係で、きょう招聘を受けたというふうに存じております。

 農業者年金についての意見ですが、ここでは、私は、憲法の立場から、一つには農業者年金制度をめぐる憲法問題、特に年金受給の切り下げの合憲性の問題を主としてお話しし、あわせて、二番目に農業者年金の政策上の問題、今後どう展望していくかということについて御意見を申し上げます。

 財産権の問題については、実は憲法学でも余り研究が進んでいるとは言えません。特に個別的な、今回のような年金の切り下げの合憲性というような問題について、あらかじめ議論があるというわけではありません。ここでは、従来の学説、判例を踏まえて意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、かたい話からですが、憲法の財産権の制限立法の合憲性という話から始めます。

 憲法の二十九条一項で、「財産権は、これを侵してはならない。」という規定があり、二項で、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」という規定があり、この一項、二項が今回の年金の切り下げと関係をしますが、いずれにしても、非常に抽象的な規定ですので、結論的に今回の年金の改革が違憲というところまでいくかどうかはわかりません。他方、しかし、政策的に見ますと非常に問題が含まれているというのが私の結論であります。

 まず、憲法二十九条一項に言う財産権というのは、これは通説ですが、所有権、物権、債権、無体財産権その他を含む、あらゆる財産的価値を含む、福祉受給権も含まれると解釈されておりますので、年金受給権は憲法上保護された財産権であります。

 しかし、財産権というのは、今回の年金受給権もそうですが、普通は法律で定められます。そうすると、法律で定められた権利が憲法違反となるということがあり得ないんじゃないかという御意見があるかもしれませんが、結論的に申しますと、そういう面もあります。

 つまり、法律でもって財産権が定められるという面がありますが、同時に、法律で定められた財産権が不合理な内容を持っている場合には憲法違反となるということで、実際に、昭和六十二年の森林法違憲判決という最高裁の違憲判決が出ております。特に、本件との関係では、一たん定められた財産権を事後的に不利益に変更するという措置が憲法違反となるかならないかという点が問題となるわけであります。

 財産権に対する制限の一般的な合憲性の問題ですが、現在の財産権は社会的な拘束性が強く、社会的に広く規制に服するということで、御承知のように、財産権規制立法はあらゆる面にわたっており、それらについては二項で言う公共の福祉に適合するということで、広く憲法違反ではないというふうに判断されております。

 それは、言いかえますと、財産権を制限する法律は合憲か違憲かを緩やかに判断するということで、余り違憲という結論が出てこないというふうに一般的には考えられておりますが、他方、財産権といいましてもいろいろ種類がありまして、特に個人の生活の基礎となるような財産権についてはそう緩やかではいけないんじゃないかという意見もあります。

 いずれにせよ、財産権の規制の目的、態様、程度あるいは規制される財産権の性質等々を考えて合憲か違憲かを判断していくということになります。

 その際に、違憲審査の基準として非常に重要なのが昭和五十三年の最高裁判決でありまして、この事件は農地法八十条に関しまして、農地改革の際に、旧地主から土地を買い上げてその土地を小作人の方に売り渡さないでそのまま保有していた土地について、小作人に売り渡さないということが決まった土地については旧地主が買い戻すという規定が農地法八十条でありまして、そのときに買収価格でもって売り渡すという規定があったんですね。

 しかし、御承知のように、農地改革のときの買収価格というのは非常に低廉ですから、その法律をそのまま適用しますと旧地主が莫大な利益を得てしまうということで、いろいろ社会批判などもありまして、法律改正でもって当時の買収価格から時価の七割というふうに変更したわけです。ですから、旧地主にしてみると、買収価格でもって自分の土地が戻ってくるところを時価の七割まで増額された、それは憲法違反だというのがこの判決で争われた事案であります。

 最高裁は、一つには、買収農地の売り払い価格の変更の合憲性の基準として、財産権の性質、どういう財産権が制限されることになったのか、それからどの程度不利益に変更されたのかという不利益の変更の程度、三番目になぜそのような変更がなされたか、特にそのような変更によって保護される公益の性質ということを挙げまして、その事件では、戦後、昭和二十年代から昭和四十年代、五十年代にかけて土地が高騰したという背景があり、それを旧地主に返還するのはおかしいだろう、それから社会的にそういうような土地というのはもっと公共に使ったらいいじゃないかという世論の批判などもあり、それを受けて売り戻しの価格を七割にしたのであるから十分な理由があるというのが最高裁の判決であったわけであります。

 以上のような前提から、今回の農業者年金の改正をめぐる合憲性についてどういう問題があるかといいますと、一つには、農業者年金制度というのが特別に年金制度の中に設けられているんですね、それが違憲ではないか、憲法十四条の平等違反ではないかというような観点が問題となります。これは今回余り議論はいたしません。

 むしろ問題なのは、年金のシステムを変えて、特に既に裁定を受けて受給されている方の年金額を一〇%カットするというのが今度の法案に入っていまして、そこのところの合憲性というのが一番問題となるだろうということであります。

 三番目に、新しく農業者年金制度を切りかえていく、新しい制度は合憲かどうかという問題もありますが、これも結論的には政策の問題ということですので、今回は余り触れる時間がありません。

 そういうわけですから、年金の一〇%削減の合憲性を考えるに当たって農業者年金というのはどういう特質を持っているのかということをお話ししなければなりませんが、大体前の参考人の方がお話しいただいたのでここでは省略します。

 大きな特徴が、年金なのか、それとも農業者あるいは農業経営に対する特別の政策的な給付なのかという二つの面を合わさって持っているというのが非常に特徴でありまして、しかも年金の現状が非常に厳しい、受給者が農業に関係した方に限られていること、それから成熟度が二七〇%に達して財源的に行き詰まっているというような事情などがございます。

 そういうことを考えますと、政策的な観点からしますと、必ずしも憲法違反というふうには言えないのではないかということでありますが、まず一つには、一般論ですが、国民年金一般に関して年金額の減額が合憲かどうかという問題であります。

 これは既存の財産権の変更であり、しかも年金給付については、国民があらかじめ拠出金を払って、それでもってその後老齢年金として幾らかもらえるという確定した額が出ているわけですから、それを切り捨てるということはやはりよほど強い正当化理由がなくてはいけないだろう。全くできない、すべて憲法違反だ、やはりこれは財政事情や何かがありますからそうは言えませんけれども、よほどの強い正当化理由が必要であるということであります。

 しかし他方、年金問題ですから、財源がなくなって出せなくなった、それでも借金してでも出せというわけにもいきませんから、どういうような理由でもって減額をするのかということが大切になるかと思います。

 それで、農業者年金の場合には、政策年金としての特殊性があり、国庫助成が既になされているということがあり、加入者数が非常に少なくて、それについては国庫補助によって優遇されているという背景があります。

 ですから、非常に特別だという前提で考えますと、財産権の性質としては減額は本来は許されないのですけれども、政策的年金として、特別のものとして考えることができるのではないか。それから、変更の程度は一〇%の自己負担を求めるということですが、全額国庫補助によって社会的な批判が起こることを回避するという点からすると、一応の合理性は認められるだろう。

 それから、保護される公益の性質としては、一方では農業者あるいは農業経営の保護を考え、他方で全額財政投入をするということによる国民の批判の感情に配慮するという点では、これも一定の理由があるだろうということで、直ちに憲法違反とは言えないのではないか。年金については、特に議会の裁量の幅が広いということも言えます。

 ただ、農業者年金を年金という観点から見ますと、今は、つまり農業者年金の合憲性というのは、農業者年金というのが政策的な年金で、農業の経営を維持安定させるためだという非常に政策的な観点からの違いなのですが、しかし他方、年金なんですよね。年金ということから見ますと、国民年金があり、厚生年金がありという年金体制の中で、農業者年金というのが非常に特異なわけであります。

 普通は、年金は何千万という国民全体に関係するのですけれども、農業者年金については、受給者が七十万とかという非常に限られた人たちに対して、しかも七〇%が国庫補助になっているということは、ほかの年金では、基礎年金を除いてはそういう例が見られない。

 それから、年金制度全体のあり方からしますと、やはり年金の一本化というのが現在非常に重要な課題になっていまして、特別のグループの国民に対して特別の年金制度をつくってよいか。今の年金制度というのは、公平で透明でだれでも同じような形で年金を受けられるということを確立するのが、年金制度からすると本来のあり方ではないか。今、そのようにして年金制度の信頼を獲得しないと非常に困るのではないかということが、年金制度についての動揺が発している中での農業者年金の特殊性をどう見るかということがあります。

 そのように考えますと、一〇%の削減ということについても、年金という点でもってその一〇%の削減をしなくてはいけないかという問題になります。あくまでも政策的な観点から出てきた三千三百億、一応一〇%分を受給者の負担にしよう、それによって、財政投入に対する国民の批判を和らげようという政策的な観点から出てきた額ですから、本当にその一〇%をカットしなくてはいけないかという必要性がそうあるとはちょっと考えられないわけで、そうすると、年金制度から見ますと非常に問題があるということであります。

 最後に一分いただいて、まとめです。

 したがいまして、農業者年金制度というのは二面性があるのです。年金という面と農業経営の維持安定という二つの面があります。これはどちらをとるかという面で、この農水委員会の場では申し上げづらいのですけれども、基本的には私は、年金制度を確立するというそっちの方が大きな目的ではないか、それの方が今の国民の年金のあり方という点からすると大切ではないかというふうに政策的には考えられます。

 そうなりますと、農業の保護というのも、年金という形でするよりも、もっと違った実質的な農業経営者の方の保護という形でもって進むべきであって、果たして農業者年金という形での政策の維持というのが妥当かどうか、これは政策的にも疑問があるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

堀込委員長 ありがとうございました。

 次に、中村参考人にお願いいたします。

中村参考人 ただいま御紹介いただきました全国農業会議所の中村でございます。本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、御審議いただいております政府提出の農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして、賛成の立場から意見を申し述べたいと存じます。なお、時間の関係もございますので、要点のみ申し上げますが、御理解をいただきたくお願いを申し上げます。

 先生方の御尽力によりまして実現をいたしました食料・農業・農村基本法がいよいよ実施に入ってまいりました。農業者年金制度の改正は、この新しい基本法農政の将来を占う重要な政策課題であるというふうに認識をしているところであります。

 現行の農業者年金制度は、昭和四十年代前半の農業構造の中で、老後生活の安定に加えまして、農業経営の若返り、あるいは規模拡大を促進するという旧農業基本法の政策目的を達成するために創設されたものでありまして、これは先生方御案内のとおりであります。

 農民にもサラリーマン並みの年金をという農業者の切実な願いが結集をいたしまして、当時全国から三百六十五万人の署名を集め、政策年金として実現を見たものでありますが、制度化以来、私どもは、その実施、推進につきまして積極的に取り組んでまいったところでございます。

 制度が発足いたしましてから三十年がたちます。この間に九十八万人の農業者が総額で三兆七千億円の年金を受給いたしまして、農業者の老後生活の安定に大きく寄与をしてまいりました。

 また、若い後継者が新しい農業部門を開始したくても当時はできないというような農村の慣習の中で、三十歳代前半の後継者を中心に八十六万六千件の経営移譲が行われまして、この年金で一定年齢での経営移譲ということが農村に定着をしてきたことは、歴史的にも大きな意味を持つものであるというふうに考えておるところであります。

 さらに、農業経営の基盤でございます農地の規模拡大、特に細分化防止には大きな寄与をしたというふうに思います。

 しかしながら、農業構造が大きく変化をいたしまして、担い手不足あるいは高齢化、新規就農者の減少あるいは耕作放棄地の増加などが問題になりまして、経営移譲をしたくてもできない状況が急速に広まってまいりましたのも御案内のとおりでございます。

 また、年金の財政面でも、加入者が一人で受給者の二・七人を支えるという状況や保険料収納率の低下等を背景にいたしまして、年金基金の財政が非常に逼迫をいたしまして、このままでは近い将来基金が底をつくという事態に至ってしまいました。

 加えまして、昨今の農産物価格の低迷等もございますが、農家経済が非常に悪化をしてきておりまして、農業者の保険料の負担能力が限界に達してきているということもありまして、若い農業者からの魅力の問題、あるいは保険料を払って戻ってくるかどうかといった不安の声が聞かれるというのも事実でございまして、現行制度がそういう点から見ますと農村の実態と乖離をしてしまってきておるというのも事実でございます。

 こうした状況を踏まえまして、これまでも五年ごとの財政再計算が行われたわけであります。平成七年改正での見通しが甘かったのではないかというような御指摘もございます。

 私ども農業委員会系統組織あるいはJAグループも、加入の促進問題、それから収納率の向上につきましては組織を挙げて努力をしてまいったわけでありますが、先ほど申し上げましたような情勢に加えまして、日本経済そのものの低迷あるいは農家経済が非常に厳しくなっているということが大きく響きまして現在のような結果となり、大変残念に思っているところであります。

 こうした厳しい情勢を踏まえまして、私どもは組織を挙げて制度の見直しに取り組んでまいりました。その過程で、平成十一年十二月に農林水産省が明らかにしました三割カット、掛け損という制度改革大綱案には大変なショックを受けました。また、農村現場からの反発も大きなものがございました。

 そこで、農業委員会系統組織あるいはJAグループ、そしてまた加入者、受給者の組織でありますのうねん倶楽部の三組織はそれぞれ連携をいたしまして、改めて農村現場の声を聞くため、組織を挙げた意見集約に取り組んできたところであります。

 その結果、農業委員会で申し上げますと、農業委員会では総会を開き、あるいは都道府県農業会議では常任会議員会議を開いて決定をするという責任のある意見の積み上げを行ってまいったところであります。また、農協、JAグループにおきましても、組合長さんのアンケートあるいは組織の意見積み上げを行いまして、そして昨年の四月に三組織で全国的な意見の集約を見たわけでございます。

 この意見集約を踏まえまして、私どもはさらに農林水産省に申し入れを行いまして、三団体で代表十七名から成る意見交換の場を設置いたしまして、真剣に三カ月にわたり討議をしてまいりました。

 この過程では、実にさまざまな、そして切実な意見が数多く寄せられました。三割カット、掛け損といったこの農林水産省の改革大綱案を見直しまして、まず加入者それから受給者の方々の信頼を回復するということを前提にいたしまして、基本的には、一つには、新しい基本法のもとで積立方式に切りかえて政策年金として再構築をする、そして制度を継続する、こういうことが一点目でございますし、二つ目には加入者等の掛け損がないということ、そして三点目には受給者の負担は最小限に圧縮する、こういった集約を行ったのであります。

 今般、本委員会で御審議をいただいております政府提案の新制度につきましては、政策目的、財政方式、政策支援、現行加入者への支援措置、死亡一時金等の新たな仕組みにつきましては、これまでの意見集約を踏まえておると考えており、農村現場に受け入れられるものと存じております。

 また、現行加入者の掛け損につきましては、いかなる世代におきましても掛け損が生じないように措置をされておりますとともに、若い世代ほど年金受給開始までの期間が長きに及びますので、これを考慮いたしまして受給時までの年数を一・五%の複利で計算した年金単価の設定になっていることもございます。また、特例配偶者に対しましては特別の期間加算が措置されております。

 さらに、受給者の負担につきましては、ぎりぎり最小限とする意見集約に基づきまして、給付と負担のバランスも考慮して、平均で九・八%に圧縮をされ、また、老齢年金のみの受給者の方の年金はカットしないということになっております。

 このような経過を踏まえますと、政府提案の改正法案は、農業者が安心と希望を持てる政策年金制度として農村現場に理解されるものと考えておるところであります。

 一方、今回、民主党さんの方から提案が行われておりますが、この提案は政策年金としての農業者年金の廃止を前提としているというふうに思います。我々が積み上げてまいりました農村現場の意見とは異なるものだというふうに受けとめているところでございます。

 最後になりますが、新制度への円滑な移行と普及、定着を実現するため、今後私どもは一層取り組みを強化していく所存でございます。新制度と旧制度が長きにわたりまして併存するという事態もございますので、事務の簡素化とあわせまして、推進体制の強化につきましても特段の御配慮をお願いしたいとともに、農村現場の要望にこたえるために十四年一月一日からの実施をされますよう政府改正法案の早期成立をぜひともお願い申し上げまして、私の意見を終わります。

 よろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。

堀込委員長 ありがとうございました。

 次に、信田参考人にお願いいたします。

信田参考人 御紹介をいただきました北海道農民連盟の信田でございます。

 ゆうべ北見から出てきましたけれども、私、北見ですから、オホーツク海は流氷がまだ居座って、有名な観光船おーろら号が非常に利益を得て観光が活発に行われまして、私どもとしてはことしは寒い夏が来るのかなといろいろ心配しているところから参りました。

 私は、若干内陸ですから、北見の方で水田十町歩と畑三十町歩、この中にはハウス野菜など畑作物をつくって、家内と息子夫婦、孫二人の経営で、きのうも私は野菜のハウスのトマトの苗などを管理しながら、百姓をやっている一人でございます。

 実はつい先日、私のところの夕食の際、六人集まって食事を始めていたところ、孫が、四年生の男の子なんですけれども、春休みの間何日か塾に通うという話が出て、息子夫婦の方で進めていたのでしょうけれども、私は、兄ちゃん、そんなに勉強して何になるんだと言ったのですね。いや、僕一生懸命勉強して、パパの後継ぎをして農家をやるんだ、こう言ったわけです。

 一瞬うちの家族、そのテーブルがしゅんとなって、だれも答えないのですね。みんな顔をこういうふうに合わせて、それでしばらくの沈黙の時間が保たれた。これが四十町歩を経営している私のところの専業農家の家族の今の雰囲気なんです。将来、不安なんです。やってほしい、願いなんですよ。私も、息子がやって頑張っていますからありがたいのですけれども、孫にやらせたくない。息子がその子供に本気になって勧められないという実情なんです。

 そんなことで、私たち夫婦はことしから四十ヘクタールの農地、家屋、倉庫、まあ住宅も含めてでありますが施設、それから農機具、技術、これまでの伝統や地域のさまざまな関係、農業協同組合などのすべてを息子に移譲しました。農業委員会に行きましてすべての手続を終わらせました。したがって、私たち夫婦は来年から農業者年金だけが頼りなんです。息子とはいえ何から何まですべて経営を移譲してしまって、何も私ども夫婦二人は持っておりません。

 したがって、家内は本当に半泣きです。本当ですよ。今はまだ二人とも足腰が立って元気に手伝えますから、面倒を見てもらえると信じていますけれども、将来本当に面倒を見てもらえるのかなといって半泣きです、女性ですから。私は男ですからざっくばらんにどこかに、うば捨て山に捨てられてもいいというような考え方ですけれども、実は非常に不安を持っております。

 今の農業者経営移譲年金がなければ私は譲りませんよ、はっきり申し上げて。それから、土地も売りません。いや土地は売りますよ、息子でなくて個々に。切り売りして生活していこう。これが私の本当の腹の中です。

 私は実は、農業者年金制度が創設されまして、これは若いときでしたけれども、大いに期待を持って、政府は国民の理解を得て非常にすばらしい制度をつくってくれたということで、即加入をいたしまして二十六年になりました。当初、私が入ったのは四十六年ですから、経営が非常に苦しくて、こういう規模拡大もやっていましたから、毎年農協から借金をして年金を納めてきました。

 そのときの農協の組勘金利は、私のところは若干安くて八・何ぼだったんですが、年利九%なんかざらでした。酪農地帯で一割なんというところもあるぐらいですから、これは非常に高い金利で借金をしながら納めてきて、来年の四月から私は受給者になります。今は若干の待期者です。

 それで、私は、金もなくて学校に行けませんでしたから夜学で勉強しましたので、今、通算五十年間農業に就農しているんです。それで、まだ働けるんです。もしかしたら六十年ぐらい私は農業をやれるのかな。家内と結婚して来年で四十年ですから、四十年も二人で農業に、本当に朝の早くから、暗いうちから働いて今日の四十町歩経営にしてきたんですね。

 それで、今の農業者年金の部分ですが、幾らもらえると思いますか。五十年の私の就農、四十年二人で働いて、五万五千三百円です。公務員でしたら、これだけ働いて、家内と働いて二人でしたら、どういうことになるんでしょうか。私は、人のことは計算していませんけれども、大体はわかっています。しかも、政府案では、わずかこれだけの受給に対して九・八%削減するというわけですから、私たち仲間の農民としては断じて認めるわけにいかないというのが腹の中です。

 私たちの年代の農民は戦後の日本経済の復興に対してかなり貢献したと私は今でも自負しています。そのときの米は幾らでも、魚沼のコシヒカリよりまだ高く売れたとしても、食糧管理法で、私どもは国民のためとして、そこは法律に基づいて、安くとは言いませんけれども、それなりの貢献をして、地域や親戚やそして多くの国民のためにさまざまな努力をしてきたものというふうに自負している一人です。現在は、国際化の中で逆に安くなるのを保護していただいていることについても感謝はいたしますけれども。

 そういった中で、私たちの農民の中に、当初三〇%以上の削減案を諸先生方の御努力で九・八%になったんで感謝しているという仲間もたくさんいます。事実、ここにおいでのすべての先生方を初め、多くの関係者の御尽力で今日のこの政府案が出されていることに対して、私は心から感謝を申し上げておりますし、努力に対しては評価はいたします。

 しかし、私ども、よく考えてみました。もともと支給額等を削減できないものを無理やり削減したのではないかな、そういうふうに私どもとしては理解せざるを得ないと思っております。

 政府は、加入者減での財政上の理由としていますけれども、農業者年金制度化以後、国会は一貫して、私どもの見方としては、農業者の削減の構造政策とその予算を承認して事業を推進してきたんではないかな、その結果、加入者減ということは、政府としては好ましいことであったんではないかと思っています。成功した政策だった、こんなふうにも私どもとしては考えて、このこと自体についてはそれなりの、その時代時代の先生方の御努力に対して別に問題はなかったと思います。

 しかも、農業者年金は、御案内のとおり、当然加入の政策年金です。世界の先進国でも、地域や農業を守り、国民の食料安定供給のためにさまざまな政策を行っているわけでありますが、政策上約束した農民の年金を、充実することは聞いていますけれども、削減したという先進国などがあるのかどうか、私は調べておりませんし、そんな学もありませんからあれですけれども、この点についても国際化の時代に適合していないんではないか、こんなふうに思っています。

 したがって、私は、もし政府案が国会で承認された場合、国会はみずから遂行してきた政策で日本国憲法第十一条の国民の基本的人権や二十五条の生存権及び第二十九条の財産権を侵害することにもなりはしないか。非常に先進国の民主主義国家としてどうなのかなと疑念を持つ一人であります。

 私は強く訴えます。農業政策は、ひとり農民のためのものではありません。これは言うまでもございません。国民の命を自国で守り、地方を守り、文化、伝統をはぐくみ、真に国民の豊かさを創造するものである、こういうふうに私どもは信じております。このまま政府案が決定されれば、多くの脱退、解約、あるいはまた訴訟が起きるのではないかと私は非常に心配をしている一人でございます。

 北海道農業七万戸のうち六万戸で私たちは北海道農民連盟を組織しております。みずからが負担金を納入して活動している盟友のほとんどが専業農家です。農業者年金基金法の改正に当たっては、すべての農業者が他の国民と遜色のないように改善され、再構築されるものと信じてさまざまな運動をし、お願いをしてきたところでございます。

 それだけに、私たちの期待を、言葉はきついけれども裏切る内容に政府案はなっているので、強く反対をいたしたいとともに、支給削減は絶対に行っていただきたくない、こんなふうに思うところであります。

 なぜかと申しますと、国会で承認して遂行された農業政策が、その結果、加入者が減って財政破綻だというので、農民の責任は私は全くない、国会と政府の責任だ、こんなふうな観点から納得ができないわけであります。

 また、平成七年の年金財政再計算の加入者設計のミスがあったのではないか。あわせて、国際化に向けた構造政策を強化して急激な農家減少を生み、村と地域社会を崩壊しまして、今地域社会と村は危機に立っているわけでありますが、若者が村をどんどん出ていくことを加速してしまっております。

 しかも、他の公的年金と比較しても、夫婦単位で保険料負担と受給額とあわせて一千五百八十万円相当、私どもの計算では格差があります。また、専業農家がほとんどの北海道では、期待度が高く、加入はもちろん地域によっては一〇〇%、総体でも九〇%以上の加入で、断じて後退は認めることができないのです。

 二世代、三世代家族の、私のところもそうでありますが、農業を持続するために、農民の老後の安心を保障することで、とりわけ村と地域社会を再建する、そのためにも農業者年金、老齢年金を含む確定年金の全額を保障すべきだというふうに私は強くお願いをするところであります。

 また、政府案では、担い手にシフトした政策支援で多くの加入要件をつけております。これは農業者を選別するというふうに私ども生産現場では強く批判をしている、私まで怒られておるところであります。委員長、何やっているんだと怒られているわけですが、農民はこれは全然納得していないところであります。国民のために食料を供給する農民を公平、平等にやはり支援する、これが本当の意味の政策年金ではないかと思います。

 さて、新農基法では、消費者、農民そして地域社会の三位一体で国民の命と環境の政策を築くことにしましたんですね、皆さんのお力で。いわゆる食料安定供給、多面的機能の発揮、農業の持続、農村振興と、いずれも農民が安心して村で持続して営農できるかどうか、これにかかっているわけであります。

 しかし、政府案のように受給額を削減したり、暗に脱退者を促すような政策支援の選別ととられるようなやり方では、新農基法の理念から考えてもこれは受け入れがたいのではないか。

 そこで、私は、せっかく御努力いただいている皆さんにただ反対するだけではなく、二十一世紀の地球環境や地域社会、文化、伝統を未来に持続させ、日本国の均衡した発展、これは都市と地方のことを指しているわけでありますが、このために政策提言をさせていただいて、終わりにしたいと思います。

 三点あります。まず最初に、村と農民を守り、他の国民との均衡ある年金に近づけるために、近づけるというのも遠慮がちなんですけれども、これはひとしくと言いたいところでありますが、定住年金を加算年金として創設していただきたいと思います。

 これは、地方分権によって地方自治体が制度主体となって、対象者は農業を引退する男女、農業に従事した労働者で、就業年数に応じて支給するという定住年金制度であります。

 条件としては、農業を営み、従事した者が、同じ行政区域内で将来とも定住する者に市町村が年金を加算していく、これを国が支援する。EUでは、これを実施して非常に高い効果を上げて、村意識と地域社会が成り立っているとも聞いています。

 もう一つは、これまでさまざまな問題を言っていますけれども、私のところもそうでありますが、なぜ農業者の若い人たちの加入が減っているかの中には、農業者が農業者年金をまずきちっと信頼をして、安心して加入できる制度内容はもちろんでありますが、やはり所得がしっかりしていて保険料を支払っていけるかどうかというところが非常に問題でありまして、このためには、国際化に対応した農民に対する直接所得補償を農業基本法の三条、四条に基づいて確立していただきたい。現在政府などが御検討いただいておりますが、これを急いでいただきたい。

 最後ですが、前段に憲法第十一条の基本的人権に抵触するのではなどと大げさに申し上げましたが、現在の農業者年金は、夫が死亡しても妻に遺族年金が適用支給されていない現状でございます。これが若干基本的人権に触れるのではないかと私どもは考えております。

 他の国民の年金に比べて農業者を軽視した政策であり、一緒に働いて食料を生産してきた家族に対して、平成二年と平成七年の衆参の附帯決議に基づいて遺族年金の適用をしていただきたい、こういうふうに最後に提案をさせていただいて、年金制度がさらに充実したものに再構築されることをお願い申し上げて、私の意見表明とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

堀込委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村誠吾君。

北村(誠)委員 私は、自由民主党の北村誠吾でございます。

 本日は、参考人の四人の皆様方、本当に貴重なお時間をお割きいただきまして、ここまでお運びいただきましたことに厚く御礼を申し上げます。

 ただいまは、それぞれ研究や体験に基づく、私も初めてお聞きするような御意見等も承ることができました。本当にありがとうございました。順次、短い時間でありますけれども、御質問をさせていただきます。

 まず、鎭西参考人にお尋ねをさせていただきますが、御意見の中で大筋理解をすることができたわけですけれども、ともかく農業者年金基金の実施機関の代表者として、これまで制度にかかわってこられた立場からお考えになって、先ほども信田参考人の方からも御意見がございましたが、このような状況に立ち至ってしまったという原因、そして、新たな制度をこういう形で立ち上げていくんだというふうな状況に来た、ここら辺のことについて御意見があれば率直に承りたいなと思いますけれども、いかがでしょう。

鎭西参考人 農業者年金制度につきまして、国が制度を設けまして管理運営してきた立場、それから、今までも五年ごとの財政再計算等を契機に国会での御審議をお願いして、できる限りの運営改善を図るために制度改正を行ってきた、そういう御事情、並びに、今般抜本的改革を進めざるを得ない、こういう事態に至ったことにつきましての農水大臣のお気持ちについては、先日の本委員会の御審議の中で農水大臣が直接御答弁されているところでございます。

 国の制度設計と管理のもとで制度の実施機関としての責任を有する私ども基金におきましても、農業者の信頼を得ることを基本に、業務受託機関、農業委員会、農協でございますが、その協力を得まして、年金への加入促進対策、保険料の収納促進対策などに最大限の努力をしてきたところでございます。

 しかしながら、先ほど申しましたような諸般の事情というものの中で、今回抜本的見直しが避けられない事態になったということにつきましては、基金の業務を受託し、各地域で加入促進等に尽力してこられました農業委員会あるいは農協の担当者の方々、あるいは加入者や受給権者の方々、これらの方が制度改正の検討の過程におきまして大変苦しい立場に立たされたということについて、我々としても厳しく受けとめているところでございます。

 ただ、先ほど農業会議所の中村専務の方からの御意見もございましたが、農業団体の意見集約を経まして、全体として、国民一般及び農業者にも理解を得られるぎりぎりの形で、長期的に安定した制度としてこの改正案を国会に提出できたということを基金としても大変重く受けとめております。

 法案の早期成立をぜひ図っていただきまして、法案が成立の暁は、農業者の信頼回復を図りつつ、新制度が円滑に実施できるよう、現行制度からの円滑な移行といったものを中心にいたしまして準備を進めてまいるということが、私ども実施機関でございます基金それから受託機関の責務と認識しているところでございます。

北村(誠)委員 次に、中村参考人にお尋ねをいたします。

 先ほどお話もございまして、大筋理解をいたしているわけですけれども、確認の意味で再度お尋ねをしたいというふうに思うのです。

 ともかくこの農業者の老後所得を確保するための年金が制度として今後とも必要であるかどうか。今、鎭西参考人からも一般の国民にも理解がきちっと得られるようにというふうなお話もあったわけですけれども、こういう大きな論点の一つとなっております。

 こうした事柄に関して、先ほどの鎭西参考人のお話にもありましたように、農村の現場で、いろいろな方々の意見を、農家、農村、農業経営体あるいは農業法人、それぞれ意見を集約して、積み上げて今日のこの形になるようなことの努力をしてこられたというお話もあったわけですけれども、具体的に例を挙げられれば、どのようなやり方で聞いた意見をどのような形で取りまとめたか、そこら辺を少し、詳しい話があれば、事例としてでも結構でありますからお示しをいただきたい。

中村参考人 今先生御指摘いただきました意見の積み上げの方法でございますが、実は、先ほども申し上げましたけれども、平成十一年の十二月に農水省の大綱が出てまいりまして、ああいうふうなことになったわけでございます。

 これは大変だということで、農業委員会そしてまた農協、あるいはのうねん倶楽部、これは加入者、受給者の組織でありますが、この三組織がそれぞれに現場におろしました。そして、三カ月にわたる意見集約をいたしまして、その立場から、去年、十二年の四月に持ち寄りまして、意見の集約をした。さらにその上に、三カ月かけまして行政とも詰めを行ってきたということであります。

 その中でも、この新しい制度につきましては、農業委員会の意見としましても、八割は新しく再構築してくれ、こういう意見が出てまいりまして、先ほど申し上げましたが、農業委員会では総会も開いて責任ある意見ということでまとめてきましたので、先ほど私が申し上げました意見は、現場からの責任を持てる発言というふうにとっていただいても結構だというふうに思います。

北村(誠)委員 今、中村参考人から説明をいただきましたけれども、とにかく農村の現場において、新しい制度の実施機関として、農業委員会、農業委員が全国におよそ六万ほど、職員かれこれがそれぞれ三・五人平均でおるというふうなことでありますから、これがぜひ円滑に新たな制度に移行していくということのためには、相当皆さん方が努力をしていただくという体制を整えないと、スムーズな移行というふうなことなども難しいところがあるのではないかと思いますので、ぜひその点のいろいろな取り組みについてしっかり当たっていただきたいなという期待をいたしております。

 次に、戸波参考人にお尋ねをさせていただきたいのです。

 大変難しい事柄でありまして、不勉強な私には非常に理解するところ、まだまだこれからさらに、先生の本も読ませていただきつつありますけれども、ぜひそのようにして勉強させていただきたいと思っております。

 率直に申し上げて、るるお話がありましたが、今回の法案における年金額の引き下げということが、民主党さんが主張するように、違憲というふうに言えるのかどうかということについては、先生から確かに丁寧な説明があったと思いますけれども、簡潔に、率直にお尋ねして、どうでしょうか、違憲と言えるというふうなところについては。

戸波参考人 結論的には違憲とは言えないのではないかというふうに申し上げました。

 財産権の制限について、さっき申しましたように、財産権の性質、変更の程度、保護される公益の性質という三つの基準から考えますと、基本的には今回の農業者年金の性質はやはり政策年金というふうに考えざるを得ないんですね。それで、特別の農業の保護、維持という観点から国庫助成が行われている、一般の年金と比べて非常に違うのではないかということです。

 したがって、政策的に投入された部分について、政策的な観点から、一〇%について受給者の方に御負担いただくという選択というのは政策的にはあり得るところであります。

 それから、変更の程度、一〇%を多いと見るか少ないと見るか、これは御議論があるかと思いますけれども、現在七〇%で三兆幾らの負担を求める、だけれども、三千三百億の負担を受給者の方に要求するということを考えますと、それほど多いということではないということ。

 それから、昨今の住専等々への公的資金の投入についての社会的な批判を考えますと、これから農業者年金を丸々国庫助成によって維持するということについての社会的批判を避けるという公益というのは一応認められるということですので、結論的にはどうも憲法違反とは言えないのではないか、こう考えております。

 ただ、政策的に、やはりこれは年金ではあるんですよね。最後の参考人の方からお話がありましたように、やはり年金額の切り下げというのはよほどの合理的な理由がなければ許されない。

 今回の農業者年金については、政策年金として農業の特別の経営のための保護なんだという形の年金として合憲性が辛うじて認められるということで、実際の年金がこういうような形で行われて、しかも一〇%の削減がなされるということになるとかなり憲法上も憲法違反だという問題は出てくるのではないかというふうに考えております。

 ですから、微妙は微妙です。この農業者年金についても、年金と見るのか政策的な農業経営の維持というふうに見るのか、かなり大きな分かれ目ではないかというふうに考えております。

 結論的には、どうもやはり違憲とまでは言えないんじゃないかということでございます。

北村(誠)委員 戸波参考人、ありがとうございました。

 一応違憲とまでは言えないんじゃないかというふうなことで、今後また政策のとり方というふうなことで進めていく事柄かなというふうに理解をいたします。

 信田参考人にお尋ねをいたします。

 信田参考人は、先ほど流氷のお話もいただきましたが、北見の方で、たしか稲作の北限ではなかったかというふうに思いますけれども、長年農業に従事されて、多くの仲間の皆さんと大変な御努力を重ねてこられ、指導的な立場で御活躍であるということをお聞きしております。敬意を表する次第であります。

 そして、昨年の夏以来、北海道農民連盟の方で、先ほど直接お話を提言として聞かせていただきました、農業者年金制度を新たな政策年金として再構築することという提言、そしてまた、農村地域で老後の生活を定住して営む農業者に対して新たな定住年金法の制度を整備するようにというふうなことで提言しておることをかねて聞いておりましたが、直接お言葉として耳にすることができました。内容についても、簡潔に御説明をいただきましたので、またこれは勉強を今後させていただくというふうに思います。

 ただ、まず一つお尋ねしたいことは、国民年金基金制度、すなわちみどり年金で農業者の老後生活は十分であるという民主党さんの主張に対して、信田参考人はどのような感想をお持ちでありましょうか、これが一点。

 もう一つは、農業者向けの新たな政策年金は要らないというふうに、私は民主党さんの主張を審議の経過の中から理解をしておるわけでありますけれども、その点について、信田参考人のお話を聞く中で、おおむね私なりに感想を持つことはできましたけれども、よろしければこの二点についてお聞かせをいただければありがたい、よろしくお願いします。

信田参考人 農業者である私に温かいお言葉をいただきまして、先生にお礼申し上げたいと思います。私自身、真摯に国民のために北の国で頑張っている一人でありまして、本当にありがとうございます。

 さて、民主党のみどり年金に関してですが、私ども、みどり年金につきましては、もう施策としてできているもので、私どもの仲間にも加入している人もおりまして、この年金自体については必要なものというふうに思っております。

 今の農業者年金が施行された目的その他から考えて、私どもとしてはみどり年金の方向にどうのというのでなくて、これはこれとして価値はありますけれども、今の農業者年金を後退させないということと、充実させて本来の目的を達成していただきたいということでございまして、政党の皆さんがさまざまな提案をされることに対しては私は尊敬するだけで、これについてどうのという気はさらさらありませんところでございます。

 ただし、今日の農業は、米をつくる人が八割、その他は何割とか、画一的な農業でなくて、さまざまな形態で、みんな知恵を絞って農業を営んでおります。したがって、さまざまな年金に個人的な希望で加入していく、そういう選択肢があっても私はいいのかなというふうには思っているところです。

 それから、新たな政策年金は要らないという考え方ではなしに、私どもとしては、新たな年金でなくて、農業者年金として内外ともにきちっと価値のあるもの、しかも国民と平等の受給なり、制度が充実したもので村を守ったり国民のために食料を供給する、安定生産としてやっていく、そういう意味合いのものを一貫して求めているもので、これを新たにというのか、再構築というのか、充実というのかはさまざまなとり方があろうかな、こんなふうに思っているところでございます。

北村(誠)委員 どうもありがとうございました。

 私は信田参考人の今のお考えであれば、個人的には、相当生意気ですけれども、一緒にやらせていただけるというふうな気持ちがいたす次第であります。

 もう質問も終わりにいたさなければなりませんけれども、私どもの地域の農業従事者、また今度のこの新制度が、法案が一日も早く成立することによって法律となり、そして実行されることを新聞報道等の知らせによって知ることのできた農業後継者並びに農業にかかわりのある者たちが、大変この新しい制度のスタートに期待をしております。

 これがあるから、変な話かもしれませんけれども、認定農業士として自分もその資格を得ようというふうな一念発起をした若者もおります。そして、今まで入ることを逡巡しておった者も、今度はこれだけ国が、あるいは国民的な理解を得て、新しい、本当に抜本的な制度としてスタートするから新規に加入しよう、また一方、これまで加入しておった方々が、どのように自分たちは移行していくんだろうかというふうな不安もまた聞かれております。

 それぞれ参考人の方からお聞かせいただきました事柄を、また政府は政府としてきちっと受けとめていただくように、我々も訴え、一日も早くこの新しい農業者年金制度がスタートをするように進めてまいりたいと思います。

 本当にきょうは貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 終わります。

堀込委員長 次に、筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。

 きょうは四人の参考人の皆さん、貴重な意見を大変ありがとうございました。

 最初に中村専務さんにお聞きをしたいと思います。

 担い手の確保を政策目的とする新しい年金制度、この効果があるのかという点についてお聞きをします。

 効果として考えられるものは二つございます。経営移譲して年金を支給するよという点と、保険料の二割から五割を十年から二十年間補助するよ、国庫助成するよ、この二つが考えられるわけでございます。

 現行農業者年金に関して言えば、確かに、現行農業者年金制度が創設された当時は若い担い手がたくさんいた、しかし高齢者がなかなか経営移譲しない、そういう場合に、経営移譲すれば年金を支給するよというのは、経営移譲することによって経営移譲にインセンティブを与えますから、若い担い手確保に、担い手の若返りという政策目的に効果があるということが言えると思うんです。

 しかし、現時点においては担い手そのものがいないわけでして、経営を移譲したくてもする相手がいないわけですから、そういう現時点において、経営移譲をすれば年金を支給するよということが、まずその点、政策目的に効果があるとお考えでしょうか。保険料の方に関してはまた別に聞きますので。

中村参考人 担い手対策として効果があるかということだろうと思いますが、これはいないということは別にいたしまして、新しい担い手をどうつくっていくのかという問題があります。

 それは、やはり他産業に比べて遜色のない生涯所得、これは農業をやっている間、それから引退をしてからの老後生活、これが所得として保障されるということがなければ、やはり職業として選択をするときに迷うのではなかろうかということで、新たな農業の担い手をつくり出すということにおいて、一つ効果があるだろうと思います。

 それと、担い手がいないという御意見がございますが、経営移譲の相手、今度の新しい年金制度で仕組まれようとしておりますのは、従来の経営移譲とは異なり、簡単にといいますか、地域で専業農家でなくても担っていけるという方たちにも経営移譲の相手方になれるという仕組みをつくり出して、経営の継承をしていくということを含めて今検討していただいておるところでありまして、そういう新しい担い手の創出もしながら、経営移譲も行い、年金受給もできるということが考えられるというふうに考えております。

筒井委員 もう一点の保険料に対する国庫助成は、国庫助成が保険料について二割から五割あるんだから担い手になろう、そういう気の一つの原因になるかどうか、極めて疑わしいと思うのでお聞きしたいのです。

 特に現行農業者年金の場合でも、農業後継者で加入資格がある人がどのぐらい加入しているかというと、五割を切っているわけでございまして、五割以上の人が未加入です。これはもう保険料の二割とか五割の補助どころか、経営移譲年金は全部国庫助成ですから、年金額そのものの五割以上が国庫助成です。

 しかも保険料に関しても、中核農家に関しては三割の保険料の減免、あれは国庫補助と一緒のものですから、そういう物すごい恵まれた立場にある人でさえ未加入者が五割を超えている。これは、二十年、三十年先の年金をもらえる、そのための保険料を国庫助成するよ、それがあるから担い手になろうというその原因の一つにもなかなかならないのじゃないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。

中村参考人 一つは、保険料の問題は、今度は保険料に助成をして担い手をつくっていこう、こういうことでありますが、被用者の場合は事業主負担がございます。

 今の現状で申し上げますと、例えば保険料が、農業者年金、国民年金、付加保険料で一カ月三万四千百四十円でございますし、これは奥さんと入っていますと六万八千二百八十円、これに後継者が入りますと十万円を超えるという保険料になってまいります。

 したがって、これは事業主負担もないわけでございますから、丸々自分で出さなければいかぬということから見ますと、今回の、いろいろな段階がありますが、それぞれ所得のない層、若いときには手厚くということで、その保険料を国が見る、こういうことでございますので、非常に政策効果があるし、期待ができるというふうに私は考えております。

 ただ、意見集約の中で、当時の対象者の問題あるいは補助率の問題は議論がございまして、もう少し対象者は拡大すべきである、あるいは手厚い支援をするべきであるという御意見がありまして、それは意見集約の中で今のような状況まで来た、こういうふうに理解しております。

 そういう意見集約から見ましても、それぞれ受け入れられる、また、そういうふうに加入者、受給者も含めまして見ているというふうに考えております。

筒井委員 私は、今言った二点、いずれを検討しても政策効果はないと思うんですが、ただ中村専務さんがそのことをお認めになるはずがないので。

 私としては、これが説得力があるとすれば、政策効果なんかないのだけれども、政策年金と言わなければ国庫助成はとれない、そういうところが一定の実情の、やはりそれはそれなりの説得力があるのかなとも思うんです。

 しかし、そういう点で国庫助成を農業界が受けるというのはやめるべきで、本来、今民主党は減反廃止とか本格的な所得保障とか等々を提案しておりますが、その本格的な所得保障、そういうものの中に集中をしてやるべきであるというふうに考えておりまして、何か別の方の形から国庫助成をとるというのは、私は結局農政としてはとるべきではないというふうに考えております、その点は質問ではありませんが。

 もう一点だけ質問したいのですが、今度、既裁定者に対しての年金カットがございました。この既裁定者を含めて年金カットをするのは初めてでございまして、厚生年金でさえ――厚生年金でさえと言ったらおかしいのですが、厚生年金も五%カットをしましたが、あれは既裁定者を避けて期待権者だけのカットにしたわけでございまして、やはり既裁定者に関しては、権利ははっきりしているし、政府もそれを明確に約束している権利である。受給権である。

 もちろん、年金の要件が全部充当すれば年金請求権、受給権が出てくるわけですが、その受給権が出てきたことについて政府は改めて裁定によって確認している。そういう権利については、やはりカットをするのはおかしいのではないか。この点についてどう考えられるか。

 それで、単なる期待権と既裁定者の受給権との違いについてどう考えておられるか、ちょっと御意見をお聞かせいただきたいと思います。

中村参考人 お尋ねの件でございますが、私といたしましては、これは法律論からはうまく話ができないし、これは今先生からお話があったようなことだろうと思っております。

 いずれにしましても、この既裁定者の年金をカットするということにつきましては大変なことであろうというふうに考えておりますし、農村現場におきましても、我々は意見集約の中で大変な反発もありました。大きな反響があったのは事実でございます。

 ただ、意見でも申し上げましたけれども、今回の制度改正につきましては、大前提は、新しい農業者年金制度をつくってほしいというのが受給者も含めての最も大きな要望であります。政策年金として続けてほしい、こういうことでございまして、そういうことからいきますと、今度の制度は、自分のものを掛けて自分でもらうということになりますので、今入っている方は全部国が負担をしていただく、老齢年金まで含めていただくという大変な財政を伴う問題でもございます。

 したがいまして、そういう過程におきまして、受給者の方々からも、新しい制度をつくるためには我々もぎりぎりの負担はやむを得ないという御意見が出てまいりました。これはぎりぎり最小限という意見集約でございます。

 そういうことでありまして、自分たちも一定の負担をして国民の理解も得て、若い人たちが安心できる制度にしてもらいたい、そうしてくれという強い要望でございまして、そういう観点から、我々も最小限、ぎりぎりというところで御理解が得られるものというふうに判断をし、また、そういう確認も何回もしてこういう選択をしたということでございます。

筒井委員 ありがとうございました。

 戸波先生にお聞きをしたいと思います。

 先ほど、昭和六十二年ですか、森林法の最高裁判決についても一言言及されました。今回もそうなんですが、事後的な変更なんですが、一たん法律で決まった受給権を今度の新法でカットする、変更するという問題です。

 この森林法の場合も、一たん法律で定められていた権利、あの場合は民法のようですが、それがその後森林法で一部制限をする、これが財産権の侵害に当たるかどうかというのが問題になった事案というふうに聞いております。これは、結論的には違憲であるという判断をされた判決ですね。

戸波参考人 森林法の事件は、一たん決まった財産権について事後的に法律で制限したというのとはちょっと違いまして、森林法の事件というのは共有森林の持ち分の分割請求に関する事件です。

 兄弟がある森林を相続しまして、四男が三男に対して自分の持ち分について分割請求をした、ところが、森林法百八十六条という法律は二分の一以下の持ち分権者の分割請求を認めていないという、その規定の合憲性が争われたわけであります。

 しかし、民法上は原則として持ち分権者はいつでも持ち分に応じて分割請求できるということになっているので、それとの関係でもって、その森林法百八十六条で何で二分の一以下の持ち分権者が分割請求できないのかということが争われたわけであります。

 立法目的については、いつでも持ち分権者が自由に分割請求できるとすると森林が細分化されてしまう、その結果、森林の保全、維持に支障を来して、最終的には森林経営の健全な発展が阻害されるという立法者側の理由が、そんな理屈はないんじゃないかということでもって憲法違反となったものであります。

 しかし結論的には、要するに、不合理な立法で、何で二分の一以下の持ち分権者に認めていないのかという理由がないんですね。その結果、裁判所は結論として違憲としたというわけであります。

筒井委員 そうしますと、民法で共有物分割請求権が全共有者に認められていた、それを森林法で一部制限した、その制限の理由は森林の規模の細分化を防ぐ、こういう政策目的があった。これがしかし違憲であるという判断ですね、今のことをまとめますと。

 それで、今回の政府の挙げております昭和五十三年の最高裁判決ですが、その場合に、これは今度結論としては合憲という判断がされた。農地法に関係したものですが、合憲と判断した直接の理由として二つの条件を挙げていますね。

 その一つというのは、当初の予想をはるかに超えた著しい社会的、経済的な事情の変化があって、そして、当初の約束どおり支給したならば極めて不合理、不適正になる、だから、当初の約束の変更は合憲である、こういう判断でしたね。

戸波参考人 御指摘のとおりで、昭和二十年代の土地の買収価格というのは、一反が鮭三匹というふうに言われるほど非常に低廉な価格でもって政府が旧地主から土地を買い上げました。それを、時価でもって買い戻すということになると、昭和四十年、五十年代の土地騰貴、地価の高騰の後の莫大な土地の利益が非常に安いお金でもって旧地主に戻ってしまう、それはおかしいじゃないかということと、それから、一般国民にとってそのような利益を旧地主に還元するのは納得できないということの二つが大きな理由でありました。

筒井委員 それで、今回の農業者年金の場合に、当初の予想をはるかに超えた著しい経済的、社会的事情の変化があった、こう判断されますか。その点はどうでしょうか。

戸波参考人 既に、農業者年金の財政破綻というのはもう二十年ほど前から起こっていますし、それについて著しい変化があったということは言えません。

 特に、一〇%の既裁定者についての支給額カットということは、政策的に決定されたものですから、事情の変化によってやむを得ないということではありません。

筒井委員 それで、もう一点の、九・八%のカットをせずに当初の約束どおり支給したら極めて不合理、不適切になるという事情があるというふうに判断されますか。その点はどうですか。

戸波参考人 それについてもありませんと言わざるを得ませんで、正確な数字はちょっとあれですが、今までのまま支給しますと三・八兆の支出が必要だ、そのうち三千三百億について、一〇%分を受給者に求めるということであります。

 その三千三百億をなぜ政府が財政支出できないかということの理由は、結局はそれは、政策的に国民の納得を得るためだということでありますが、財政上の理由もありませんし、そのような政策的な観点から年金額をカットするということは、年金としては極めて不適切ではないかと考えられます。

筒井委員 大変ありがとうございました。

 次に、信田参考人に一点お聞きしたいと思います。

 新年金制度、積立方式で確定拠出型ですから、幾ら年金額が支給されるのか、それははっきりしない、あるいは運用によっては元本割れのおそれもある、こういう新しい制度が今度政府案で提案されているわけですが、こういう制度ができた場合に、多くの加入者は見込めるというふうに見られますか。その点どうでしょうか。

信田参考人 この点につきましても、政府案が出まして、私ども組織は、それぞれの仲間の中で御議論をいただいたところでございますが、先が見通せない中で、確かに、納めた額を下回らないということについては理解はしますけれども、それならほかにでもいろいろあるのではないか、必ずしも新しい年金に加入しなくてもいいというのが大方の今議論しているところです。

 もちろん、これから中身は、さまざまな要件がありますから、これらについては今批判が非常に高くて、それらも含めると、もっと将来に対しての不安が高まるのではないかという中で、要件については納得いかないという農民が多いわけですから、今先生がおっしゃられるように、これは非常に加入者が不安を持って、先ほど私の方からもお話し申し上げたように、かなりやめる方が加速度的に出てきはしないかと心配している一人でございます。

筒井委員 鎭西さんにまだ聞いていないので、一点、既裁定者の受給権と、そうではない単なる受給権に対する期待権と、この区別はどう考えておられるか、その点だけちょっとお聞かせいただきたいんですが。

鎭西参考人 私も、法律の専門家では必ずしもございませんので、的確にお答えできるかどうかあれでございますが、従来の法律解釈でございますと、既裁定年金は確定した債権である、それから、加入者の期待権はあくまでも期待権で、したがいまして、他の公的年金の場合も農業者年金の場合も大体そうでございますが、今先生おっしゃったように、加入者の負担と給付のバランスを悪くする形で年金財政の長期安定化を図ってきた、こういうのが最近の年金制度の姿ではなかったか、一面そういうふうに見ることができると思います。

 しかしながら、農業者年金制度につきましては、先ほど意見陳述で申しましたように、平成元年度に既に成熟度が一〇〇%を超えたという中で、かなり保険料をアップする形によりまして、負担と給付を、結果的には若い加入者にしわ寄せするという形で実施をしてきたということなんだろうと思います。

 その結果、負担と給付のバランスというのは非常に悪くなりまして、若い人を中心にして、現行農業者年金制度についての魅力あるいは将来についての不安というのが高くなってまいりました。従来のような手法で農業者年金制度を健全に維持するということになりますと、それこそ巨兆の国費を投入するというようなことをせざるを得ない。

 しかも、それで、では、果たして賦課方式が維持できるのかということになりますと、今までの実績から考えますと、現役とOBとの関係はだんだん悪くなってきておる。こういうことで、ここに至って抜本的改革をせざるを得なくなったんだろう、このように理解をしております。

筒井委員 ありがとうございました。終わります。

堀込委員長 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、参考人の方々、御苦労さまでございます。

 ただいま、農業者年金制度の実施機関を預かる立場とか、また農業者の意見を集約する立場などから、それぞれ今回の改正案について所見を述べていただきました。

 さきの本委員会でも申し上げましたが、農業は国の基本であって、やはりその骨格である。食料の安定供給ばかりでなく、地方経済の中核であって、国土や環境保全、水源の涵養、景観の保全など、水田を中心とした農業の価値が再認識されるようになってきております。

 農業者年金制度は、昭和四十年代に創設されて、老後生活の安定、農業経営の若返り、農地の細分化阻止、規模拡大に一定の役割を果たしてきたことは事実でございます。しかしながら、先ほどの話にもありましたように、農業をめぐる情勢は著しく変化して、担い手不足、高齢化が進んできておりまして、日本の農業の再生のためには担い手の確保が喫緊の課題ということになっているかと思います。

 先ほども論議がございましたが、再度、鎭西理事長にお聞きいたします。

 新制度が農業の担い手確保のためにどのように効果を発揮していくと期待されているか。また、民主党案のように、担い手の確保は年金ではできない、新制度は担い手確保の政策年金にはなり得ないという意見がありますが、本当に新制度は要らない、制度そのものを廃止するといった考えがいいのか。そこら辺のところを忌憚のない意見をお願いいたします。

鎭西参考人 まず、今回の農業者年金制度におきます新制度につきましては、先ほど来、私あるいは農業会議所の中村専務が申し上げましたように、二年ぐらいにわたります、大変真剣な現場からの意見の積み上げ、何回かのフィードバックということを経まして、農業サイドの意見の集約というべきものが出たわけでございます。

 その非常に重要な一点は、農業サイドとしては、抜本的に改革していただいて、政策年金として新しい年金制度を再構築していただきたいというのが非常に強い要請であったと承知しております。

 それと同時に、そのかわりに、したがいまして、受給者、加入者に対する受忍というものは、最小限これは負担せざるを得ないだろうということで、そういういわばパッケージとして、農業団体が全体として新しい制度案に賛成された、こういう経緯があるわけでございます。

 私は、この経緯を考えますと、それを重く受けとめて、ぜひこういう形で政策年金として再構築をしていただきたい。

 それから、これは実施機関としての私の立場から申し上げるということではございませんが、農業が他の職業に比して若い人に魅力が薄いと言われている一つの側面というのは、明らかに、生涯の稼得がやはり低い、退職金もない、年金も低い、こういうことでございます。

 先ほど担い手の御議論がございましたが、私は、あくまでも個人的な見解でございますけれども、生涯を通じて他産業並みの生涯稼得というものが得られることが、若い青年が農業に就農する、あるいは農業という職業を選択する非常に大きなインセンティブになるんだろうというように考えておりまして、その意味からも担い手対策の非常に大きな基本の政策になる一つであろう、このように考えているところでございます。

江田委員 今申されましたように、生涯を通じて他産業並みの所得が得られることが担い手確保のためにも非常に重要であって、新制度はそれを充足しているというような御意見だったかと思います。私もその意見に賛成でございます。いろいろ理屈はございますけれども、あと、農業者の方々、現場がどう考えているかが重要でございます。

 これも再度のお伺いになるかと思いますが、先ほど、制度の抜本改革に伴う調整措置については新制度を創設するためのぎりぎりの受忍であり、農業団体の意見集約を経て農業者、国民の理解を得られるものとのことを申されました。

 これは中村専務理事にお伺いいたします。

 かなり苦労して意見を集約されてきたと思いますが、これまでどの団体からどの程度の意見を聴取して、どのような意見が得られたのか、再度ここで明確にお願いいたしたいと思います。

中村参考人 先ほど来申し上げておりますように、三つの組織で意見の集約をしてまいりました。一つは農業委員会、一つはJAグループ、そして加入者、受給者の組織でありますのうねん倶楽部でやってまいりまして、農業委員会系統につきましては、ほとんどの農業委員会から意見が出てまいっております。一〇〇%近いと思って結構だと思います。

 それから、農協の方も同じように、一緒にやったところもございますし、同じような格好で意見が出てまいっておりますし、のうねん倶楽部は二十八組織ほどでございます、だからこれも千幾つかの町村から意見が出ているはずであります。

 そういう意味ではかなり幅広くやりましたし、今まで我々もいろいろな農政活動をやっておりますが、こういう積み上げ方、非常に時間をかけ、丁寧に、意見をとっては返す、意見をとっては返すというやり方をしたのはこれ以外には記憶にないほどにきめの細かい積み上げをしてまいってきたと思っております。

江田委員 ありがとうございます。

 今ありましたように、平成十一年の十二月ぐらいからもう論議をされていることであるかと思います。それだけ長く、また深く議論をされて、農業者、現場の声をお聞きされた。

 やはり九・八%カットなどの調整措置は我慢しながらも、新制度は担い手を確保して自分たちの安心と希望が持てる政策年金として農業現場に理解されているという意見の集約が行われた、これが農業の担っている方々の御意見である、ここが非常に大事なことだと私も思いますので、委員の皆様、また参考にしていただきたいと思います。

 次の質問でございますが、これは鎭西理事長にまたお伺いしたいと思います。

 実は、さきの委員会で、これは自民党の木村委員の質問でございましたが、幅広い担い手の確保という観点から新制度への加入者はどのくらい見込めるかというのを大臣になさいました。大臣は、現行制度からの移行予定者として保険料継続的支払い者の二十五万人、そして、新制度に新たに加入する者として現行制度未加入認定農業者の四万人を加えて、全体で三十万人ぐらいを見込んでいますというお答えがございました。

 私、思いますに、これが実現されるためには、今回の抜本改革の意義を丁寧に農業者の方々に説明し、理解を得ることが重要であるかと思います。

 このための具体的な方策はこの新制度が通って政府から出てくるかと思うんですが、これらについて実施者としてどのように考えて進めていこうとされているか、鎭西理事長、よろしくお願いします。

 また、答えられれば、これらを通じてこの三十万人は確保できると自信はございますでしょうか。

鎭西参考人 ただいま申されました新制度におきます当面の加入の見込みといいますかこれの数について、先般の本委員会の御審議でいろいろと審議がなされたということは私も承知しております。

 それで、十一年末でございますか、大体二十八万人弱というのが現行加入者でございますし、それから現在は、御承知のとおり、土地利用型農業で一定の面積のある方に限りまして当然加入、任意加入制をしいておりますが、いわゆる非土地利用型と申しますか、畜産部門それから果樹、蔬菜、園芸作物部門、花卉部門、こういった農業サイドがこれからは新しく入ってくる。

 こういうことでございますので、我々といたしましては、政府がそういう形で見込んでおられる当面の加入目標数というものを、両農業団体との連携をしながら何とか実現させるように努力をしていく必要があろう、このようにまず考えているところでございます。

 そのためには、先ほど申しましたようになるべく早く法案が成立していただきまして、私どもは諸資料をつくりまして全国会議、ブロック会議あるいは県内におきます幾つかの説明会といったものを皮切りに、今考えておりますのは、あくまでも法案を早く成立していただくという前提でございますが、夏から秋にかけまして、全加入者に対して、現行制度でどれだけ保険料を納めておられる、脱退すると幾らもらえる、それから引き続き加入するとどういうことになり、こういう要件のある人には国庫支援が受けられますといったような情報を丁寧にきちっと説明いたしまして、場合によっては何回か相対で御説明するという機会を持ちまして、きちっと御理解の上、納得ずくで現在の加入者の大宗が新制度に移行していただく、こういう姿を描いております。

 あとは、非土地利用型農業者につきまして、現在は現行制度のいわば枠の外でございますので、これの加入対象者をどういう形でシステマチックに把握するのか、そういうことにつきまして農業団体あるいは農政当局の御指導を得ながら総力を挙げて取り組む必要があろう、このように考えているところでございます。

江田委員 ありがとうございます。

 ぜひ、農業者お一人お一人の理解が得られますように、これは丁寧に行うことが重要と思われますので、どうぞ着地を間違えないようによろしくお願いいたします。

 最後の質問でございますが、これは鎭西理事長と中村専務理事にお聞きいたします。

 民主党案の根底には、新制度は担い手確保の政策年金にはならないという考えがあるかと思います。担い手確保は、年金とは別に、減反廃止と直接所得補償でやるべしと言っておられます。

 さきの委員会で、私は申し上げました。公明党、我が党としても、これまでの営農不利地域に限らないアメリカ型の直接所得補償は非常に重要であると考えております。二〇〇一年度の農水省の予算三兆四千億円のうちに農地の基盤整備にこれまで使われてきた一兆七千億円の予算を、そういう公共事業、農地整備の方ばかりでなく、農家への、また農業の担い手の方々への直接所得補償に充てて、営農意欲向上を促していくことが担い手の確保、日本の農業の再生には重要じゃないかなという議論をしております。

 それと、減反廃止ということで民主党さん言われますが、この限定的な生産調整というのは米価下落を防ぐ重要な施策でございまして、代替作物のセーフガードによる海外輸入規制とともに現状では必要な措置である、計画性を欠いている民主党さんの減反阻止の考えには我々は賛成はできません。

 そのように考えてきますと、農業の今後の担い手の確保、また農業の再生ということは年金だけでは当然ございませんで、そういうもろもろの今後の検討課題である直接所得補償制度も含めて総合的な政策の中で対応していくと、この新制度は政策年金として担い手の確保や農業の再生に非常に有効に働いてくる、そういう相乗効果を期待するわけでございます。

 この点について、鎭西理事長、中村専務理事のお考えがあればお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

鎭西参考人 先ほど申しましたように、新しい基本法のもとで農業の担い手を確保するというのが喫緊の課題になっているわけでございます。

 担い手の確保策、いわゆる構造政策を初め農政の分野でいろいろあろうかと思いますが、私は、その一つとして、やはり若い人に農業が魅力のある職業である、若い人が農村、農家出身でなくても、非農家、非農村出身でも職業として選択する、こういうことがこれから非常に重要になってくるのだろう。

 そのためにはやはり、老後の所得も含めた生涯稼得というものについて、他産業と遜色のないものである必要がある、そのためにはどうしても私は年金手法というのが担い手対策の重要な一環になるのだろう、このように考えているところでございます。

 それから、現実の問題といたしましては、今回の意見集約に当たりまして、後ほど中村専務から御説明があろうかと思いますが、農村現場の声を集約いたしました農業団体のある意味では総意ということで、新しい農業者年金制度を再構築していただきたい。

 これが既裁定年金あるいは現行加入者に対する最小限の負担とセットになった、いわばパッケージとして受忍できるぎりぎりのものとして農業サイドが切望しているわけでございますので、ぜひこの形で早期に実現をお願いいたしたい、このように考えているところでございます。

中村参考人 今先生がおっしゃったとおりだと思います。総合的に相乗効果があらわれるということです。年金も今お話がありましたようなことでありますし、特に今度の新しい基本法のもとでは、市場原理の中で農業もやっていく、こういうことでございますから、大変厳しい条件になってまいります。

 そういうことで、今経営単位といたします所得対策も検討はされているということであります。それも一環だろうと思いますし、特に年金はその一翼を担う大きな柱であろうというふうに考えておるところであります。

江田委員 ありがとうございました。

 これまでのお話を聞いて、実にこの新制度が他産業並みの生涯所得の確保を可能にする、そして、意欲ある担い手が老後生活の安定を展望しながら農業経営に取り組んでいける制度である、担い手の確保においては非常に有効な制度であるということを参考人の先生方からお聞きし、それをまた農業者のお一人お一人がそのように理解をされているということを私も理解させていただきました。

 新制度が一日も早く今国会で成立をできるように強く望むものでございます。本日はありがとうございました。

堀込委員長 次に、一川保夫君。

一川委員 自由党の一川保夫でございます。

 きょうは、参考人の皆様方、御苦労さまでございます。もう既に参考人の方からの考え方なり、またこれまでの質疑の中でおよそ参考人の皆さん方がどういうお考えを持っていらっしゃるというのは大体わかっているわけですけれども、そういう中で質問するのも大変しづらい面もあります。

 私は、基金の理事長さんとそれから中村専務理事さんのお話を聞いておりまして、確かに何か今までの年金制度に対する評価といいますか反省というのが何かあるようなないようなところがちょっとあるような気がするのです。

 もう少し農業団体の責任者として、なぜ今日こういう状態になってしまったかということに対するそういう反省点みたいなものとか、あるいはこれからの新しい年金制度が何かあたかもバラ色的なことを考えていらっしゃる、ちょっと楽観的なところもあるなという感じも受けるわけですね。

 私は必ずしも、農業者、農村で農家、農業をそれなりに一生懸命取り組んでいる方々は、そういう楽観的なものじゃないと思うのです。先ほど参考人の信田さんがおっしゃったような考え方も当然あるわけでございます。

 そのあたりの基本的な認識が、これまでの現行の年金制度というものが果たしてきた評価というものは、そんなに評価していいのかどうかなというところがちょっと私自身も非常に疑問に思うところがあるわけですけれども、そんなあたりも一言ずつ、もう一回お二方にお聞きしたいわけです。

鎭西参考人 先ほども御答弁いたしたわけでございますが、年金制度の制度の設計あるいは管理運営者としての国の立場につきましては、先般の本委員会の御議論でもなされたとおり、大臣の御答弁もあったとおりで、繰り返しませんが、私ども実施機関という立場、これは国の制度設計と管理のもとに実施機関として適切にこれを執行していく、こういう責任があるわけでございます。

 我々は、受託機関でございます農業委員会と農協の全面的な協力を得まして、今まで、特に加入者が減少してきましたものですから加入促進対策、あるいは就農率も悪くなってきたということで就農促進対策に最大限の努力をしてまいったわけでございます。

 農村、農業をめぐる状況が非常に厳しく変化してきた中で、地域によりあるいはそれぞれの担当者によって濃淡はございましたが、総じて言えば、私は、受託機関の担当の方々は一生懸命努力されたのだろう、その努力には限界があったのだろう、このように考えているところでございます。

 しかしながら、今回、こういう形で国民の一般の負担あるいは加入者、受給者の負担ということを求める中で抜本的見直しが避けられない事態に立ち至ったということにつきましては、私どもも実施機関として非常にこれを厳しく受けとめておりますし、制度検討の過程の中で一生懸命やった地域あるいは一生懸命やられた担当者ほど苦しい立場に立たされてきたということについて、十分我々としても認識するところでございます。

 ただ、結果的には、先ほど来何回か私なり中村専務の方からお話申しておりますけれども、農業団体の現場の意見を踏まえた形での意見集約というものが出ました。

 新しい政策年金として再構築する、そのかわり、加入者、受給者も最小限の負担は受忍するという形で、ぎりぎりの形でいわば総意が得られたということでございますので、これをなるべく早く成立させていただきまして、農村現場におきます不安というものを解消して新しい気持ちで新制度の信頼を確保すべく、受託機関と一体になってこれを進めていくというのが我々基金の責務である、このように認識しているところでございます。

中村参考人 先ほどの意見のときにも申し上げたところでありますが、今先生御指摘のように、楽観をしているのではないかというお話がございましたが、決して我々も楽観はしておりませんし、非常に厳しい中で綱渡り的にやってきたというのも事実でございます。

 いずれにしても、この抜本的な制度改革をやらざるを得ないというのは、二点からあると思います。

 一つは、これまで、役割、給付に伴います老後生活の問題、これは受給者に会いますと、とにかく戦後の最大の善政であるというふうに評価をしておりまして、農村現場では非常に喜んでおられる、こういう実態がございます。

 そしてまた、特に四十年半ばにできました当時の農村の実態は、後継者の確保の問題、花嫁の確保の問題、嫁としゅうとの問題、いろいろな問題が家庭内にもございました。

 それを我々は、三十年代から家族協定農業ということを通しまして、いろいろ浸透を図ってまいりましたが、これと年金が、今度は年金という形で結びつくことによりまして定着し、一定の親子関係、あるいは嫁としゅうとめの関係等も改善され、または経営移譲されて、新しい部門が開始できるという効果を持ってきたことは、先ほど申しましたように、農村現場にはかなり評価をされてきたということでございます。

 いずれにしましても、そういう担い手が非常に減ってしまった、経営移譲ができないような状況になってきた。

 これは、先ほど平成七年の改正を甘く見ておったのじゃないかということでありますが、我々農業委員会も農協も、あのぐらいの数がないととても農村現場、農業生産はもたないということから、ああいう数字を掲げ、これを運動論として、担い手とし、また年金に加入させていく、こういう努力をしてきたことも確かでございます。これは、必死の努力をしてまいりましたが、結果的にはそういうことでございます。

 それからもう一つは、もともとこの年金は積立方式で発足しているのは御承知のとおりでございまして、それが例の物価の上昇によりましてスライド制を導入しなければならないということで、昭和五十六年に賦課方式に切りかえました以降、いわゆる給付と負担のバランスが崩れました。

 それを、国庫助成、それから保険料の引き上げ、それから給付の見直しということで対応をしてきたわけでありますが、これでもなかなか対応し切れなくなってきたというのが農村現場にあるということは、先ほども申し上げたとおりでございます。

 いずれにしても、保険料がこれ以上はもう、農業者としては限界の水準にきておりますし、若い方々にもなかなか理解を得られないということから、抜本的に改正、改築をしろ、こういうことが現場から出てきた、意見の集約で出てきたわけでございます。

 そういうことでございまして、我々も農協とともに現行制度につきましても努力をしてまいりましたが、以上申し上げました二点のようなことでこういう状況になったということにつきまして、先ほど私も残念ということを申し上げましたけれども、いずれにしましても、そういう状況の中で何とか抜本改革をお願いし、農村現場にこたえていただきたいということでございます。

一川委員 こういった年金に関係するような政策とか、今も国政全体の中で公的年金等のあり方について大変議論がある真っ最中でございまして、そういう面では、私は信田参考人とそれから戸波教授にお聞きしたいわけです。

 公的年金、その他の年金的なものも含めて、全体の年金の中でこういった農業者年金というものは本来どうあるべきなのかというところが、我々にも十分理解、納得できない面もちょっとあるんですけれども、そこのところに対する一つの考え方をお聞かせ願いたいというのと、特に信田参考人は先ほど来ちょっと問題点を指摘されておりましたけれども、今回の新しい農業者年金制度というのはどこが一番心配なのか、そこのところをまた少しお聞かせ願えれば非常にありがたいと思っております。

戸波参考人 年金制度全般との関係での農業者年金のお話ですが、先ほども若干触れましたように、農業者年金制度はいわゆる農業者のための上積み、国民基礎年金の上の上積み年金でありまして、厚生年金とか共済年金のようなかなり一般的なサラリーマンが入っている年金のほかに、特に農業者の後継者の確保という形から政策的に設けられた年金であるということは御承知のとおりであります。

 しかも、加入者につきましては、これも何回かお話が出ていますように、二十七万人、待期者十七万人、受給者七十五万人という規模でありますので、国民年金、厚生年金とも何千万という加入者を抱えているのに比べて非常に規模が小さいということであります。しかも、それに対して国庫補助が、平成十一年に七百五十五億円補助が出ております。

 そうしますと、これは年金制度としてはやはりかなり特異な年金というふうに見るべきで、だからこそ政策的に国庫助成をしたり、あるいは年金額の受給をカットしても違憲とは言えないんじゃないかというのが私の意見であります。

 ここの農水委員会で申し上げるのははばかられることですが、農業者の方の、農業の確保も非常に日本の死活を持っているのと同時に、年金制度というのもやはり日本の骨格なんですよね。その観点からしますと、農業者年金の制度をどう見るかというときに、農水委員会とかやはり農業を確保するという視点からすると非常に重要ですけれども、全体の年金制度の中でどう位置づけてどういうふうにこれから運営をしていくのかということは、もうちょっと違った、もうちょっと広い年金制度、国民年金の制度の全体との議論も必要なのではないかというふうに考えております。

信田参考人 本来どうあるべきかということは、これは農業者の立場で考えるべき問題ではないと私は強く思っています。これは、国民が地方をどう考えるのか、自分たちの食料をどうしようと考えているのか、そしてそこに働く農業でなくて農民を国民がどう扱うのか、その視点で本来考えればおのずから結論が出てきて、これを政策年金とすべきか、あるいはそうすべきでないかなども、そこのところにきちっとした議論をする必要があるのではないか。

 それから、問題点につきましては、私どもは、まずこの制度に対して期待を持ってきた加入者に対する削減が一番問題であって、さらに、その削減はもちろんでありますけれども、新しい年金の問題点は、要件をつけておりますけれども、この要件に対して私どもの仲間の農家の皆さんが非常に不満なんですね。

 なぜ農民は所得の問題やさまざまな手続の問題でこういうふうに国の方なりが見るのか、農民はそういう立場の職業であったり国民なのかどうかというところに問題があって、むしろ額とかそういうことよりも農民自身をどういうふうに国なりが扱おうとしているのかに不満と反対の意見を私どもは表明しているわけであります。そういう考えでございます。

一川委員 今回の農業者年金基金制度の問題というのは、そういう面では年金制度全般にかかわるような課題でもございますし、また、農政全体の中で農業者の確保という観点から今政策的に年金制度をスタートしようとしているわけだけれども、どうも農業政策全体の中で今回の改正するところがどういう位置づけになっていくのかというところが、全体像がしっかりと描かれていない中での議論なわけでして、そういう面ではちょっと心配な面が我々もあるわけでございます。

 私は、民主党案の中でも、そういう面では現行制度の反省を踏まえて新しい年金制度がスタートするに当たって割とポイントをついた点を指摘されているというふうに思います。

 そういう面では、これからの重要な課題だというふうに私は思いますけれども、これからの農業全体という中で、先ほど中村さんがいろいろと何回もお話しされていますけれども、これからの若い人に農業に魅力を持ってもらうためにも生涯所得的なものを確保していきたいというようなお話がございました。

 これはまさしく一種のセーフティーネットといいますか、補完的な機能だと思いますけれども、私は、確かに農業所得というのは、要するに一生懸命頑張れば頑張っただけ所得にはね返ってくるという制度が基本にないとだめだと思うんですけれども、そこのところが基本的にちょっと今は見えづらい。

 それは、我々の今回のこの委員会の中でも指摘されていますように、例えば現行行われている生産調整という、つくりたいものがつくれない、果たしてこういう制度がいつまでも続いていいのかということ、もっと別の発想で、別の観点でそういうものをフォローする考え方があっていいんじゃないかということも当然議論される時代でございまして、そういう面では、農政本流の恒久的な施策というものがしっかりと見えてこない中で年金制度を議論しておるわけでございます。

 中村参考人にそのあたり、農政の本来の構造改革的な施策というものが、中身は非常に広いですし深いわけですから全部が全部議論できないわけですけれども、そういうことに対する問題意識をどのように持っておられますか、ちょっとお話を聞かせていただきたいと思います。

中村参考人 新しい食料・農業・農村基本法は四つの理念を掲げておりますが、我々は、あの四つの理念は非常に理解し、また大事なものだと思っております。したがいまして、農業の国民的役割、国家的役割というのがかなり明確になってきたというふうに理解をしております。

 この中で、あの中にもございますが、担い手をどういうふうに確保していくかという問題が一つの大きなテーマでありまして、その一環として我々は新しい農業者年金制度を位置づけてほしい、これがまた農村現場の声でもあるということでありまして、それを我々は今度は国民のレベルでのものにしていただきたいということで今国会の審議をお願いしているというふうに理解をしております。

 したがいまして、この新しい基本法の中で農業経営はいろいろな形がとられていくと思います。多分法人経営、我々農業生産法人、青色申告もずっとやり、努力すればもうけられるという経営をいかに育てるかということについても努力をしてまいっておりますが、いずれにしましても、将来の農業経営像はやはり家族農業経営が主体になっていくと思います。

 したがって、先ほど来申し上げましたような生涯所得の問題は、農業に携わっているとき、また引退したときを通じて他産業の方と遜色ない生涯所得を得られるということをつくり出していくことが大事であるというふうに思っておりまして、大きな枠組みとしてはそういうふうに考え、これは新しい基本法のもとでこれから始まるところであろうというふうに理解をしております。

一川委員 私もこれで質問を終わりにしたいと思いますけれども、今回四人の参考人の皆さん方に大変貴重な御意見を聞かせていただきましたこと、御礼を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

堀込委員長 次に、松本善明君。

松本(善)委員 日本共産党の松本善明でございます。

 四人の参考人の皆さん、御苦労さまでございます。

 まず、中村参考人の方から。

 中村参考人の御意見では、意見集約をずっと農業団体でやってきたから農村の現場では受け入れられているとか、安心と希望の持てる制度だというふうに述べられました。信田参考人の御意見は、真っ正面からそれを否定した御意見ですね。これは農業の現場の意見としての一端ではあろうと思いますけれども、私もいろいろ実際に農業をやっていらっしゃる方の御意見を聞いて、一つ紹介します。いわば超党派的な意見です。

 昭和三十年代に福島農蚕高校を卒業した農業者が中心となって参集した農業者年金受給該当者が、生活できる農業者年金を求める県北の会というのをつくり、これは農蚕高校が福島県の県北にあるから、それで、そこの会長の渡辺賢一さんという人にもお聞きをしました。

 数が折り合いがつかなくて、ここにも参考人として来ていただきたいと思ったのでありますけれども、その方の要望をちょっと読んでみますと、

  今般、いよいよ受給の資格を得て、心躍らせてきましたが受給額の削減をはじめ、制度そのものの大幅変更が伝えられております。

  私どもは生命維持に欠くことの出来ない食糧の生産、国家安定の基となる農業に従事し、地域社会の保持発展に努めて参りました。

  この営々とした労苦に対して、老後の保障ともなる農業者年金を減らすということは承服し難い事であります。

到底納得できない。

  年金加入を勧められた折りには、国が責任を持つ公的年金だから、決して不利にならないと説明され、疑うことなく積金をして今日に至っております。

この支給額の削減というのが実際に農業をやっている人たちの物すごい不満と怒りになって、国にだまされた、そういう気持ちになっているんですよ。私は、淡々と中村参考人が先ほどああいうようなことを言われましたが、とても信用できない。

 農水省は、なぜ平均九・八%減額になるかというこの委員会での質問の中で、いわばさじかげんで決めたというようなことです。その一つに、きょうもいろいろおっしゃっていますが、農業団体側から一〇%未満という強い要望があったという。

 それで中村参考人にお聞きしますが、これはだれの意見なのか。機関で決定をしたのか。受給している人、受給しようとしている人の意見をどう把握しているのか。私が聞いた範囲では、信田参考人もそうですけれども、到底納得なんかしていないですよ。どういうふうにして集約したんですか、機関決定したんですか。

中村参考人 意見の集約につきましては、先ほど来申し上げておりますように、農業委員会、農協、そして加入者、受給者の組織の三つの系統で積み上げを行ってまいりました。

 それで、出てまいりました意見の集約は、先ほど来申し上げているようなことでございますが、それは多様な意見があったのは事実であります。

 八割は新しい政策年金として構築をしろということ、それから一%は廃止というのもございました。その中間は、七、八%は多分現行制度を維持ということだろうと思っておりまして、我々は、若い人たちが安心できる制度にしよう、またそうするべきだという意見を前提に、どういう仕組みがいいのか、どういう政策支援がいいのかということを含めて意見の集約をしてきたことは事実でございます。

 それから、一〇%以内みたいな数字の集約はしてございません。

松本(善)委員 機関決定したのかと聞いたらお答えはなかったので、そういうことでなくて、やはり政治判断をしたんじゃないかというふうに思うんですね。

 やはり今の実際に農業をやっている人たちの意見を広く実際に聞いている様子は私はないように思う。上の方の人たちの意見を集約した、集約したと言っているけれども、現実にもらう人はもう本当に怒っていますよ。私はあなた方の集約というのは非常に表面的なものだろうと思います。

 今の中村参考人の御意見について、信田参考人はどのようにお考えになりますか。

信田参考人 意見陳述者に対する意見は申し上げませんけれども、松本先生がおっしゃられるように、生産現場の意見集約に対しては、農業会議などが自分たちでアンケート用紙をつくったものに対して答えています。私もその一員でしたが、私は直接答える機会はなかったんですけれども、そういう中でなされたものというふうに思っています。これに対して、削減が反対とか賛成というような項目がございませんから、私はどうだったのかなと、このとり方に対しては。

 そういう意味で、私どもの不満は、先ほど自分の家の状況を申し上げて言いましたように、掛けるときに大変だったんです、過去本当に。何千円、一万円月掛けるにも借金して、ひどい人は延滞金利まで払って年を越したわけですから、そうして払った人たちは一〇%とか一%とか三五%、そういう問題でなかったんですよね。そのことを御理解いただいていると思いますけれども、そういうので反対とかなんかというよりも怒りだったんですね。

 そういうことで、私どもも、息子らも含めて、今各地で非常に説明されていますけれども、説明に対してはみんな無言で横を向いていますね。そういうのが現状でして、果たしてどうなるか。私は、基本的にこういう政策年金が失敗することを求めておりませんから、そういうふうにならないように、こうやって先ほどから現場の声を申し上げておりますので、中村専務の答えに対してはコメントはありませんけれども、そういう現場の実態だけでお答えにさせていただきます。

松本(善)委員 鎭西参考人に伺いますが、きょうも加入者の減少とかあるいは保険料の納入の問題等で年金財政が悪化したというようなことを述べられましたけれども、一九九五年の財政再計算の見通し、特に新規加入者の見込み違いについて、大臣はこの委員会でも大変申しわけないというふうに、陳謝といいますかそういう立場で答弁をされました。そしてその責任が農業者にないことを認めました。

 これは農業者には全く責任がないことなんですよね。年金財政が悪化した理由として、大臣は、七万人という未加入者が多いこと、四人に一人が保険料を支払えないために収納率が低いことも挙げていました。きょうもそういう趣旨のお話がありました。

 鎭西参考人に伺いたいのでありますが、この点については、一九九八年に会計検査院から、当然加入なのに未加入者が多いことや収納率が低いことなどについて指摘がされて、改善が求められていたと思うんですね。

 一体それに対してどう対策を講じてきたのか。基金としての責任をどう認識しているのか。何か新制度を通すことが農民の期待にこたえるというようなことを言っていますが、基金の責任を何と考えているんだろうか、私はその辺をちゃんとはっきりしなければだめだと思うんですよ。どうお考えですか。

鎭西参考人 先ほど来御答弁申し上げておりますように、国の制度設計、運営という中で、私ども基金としては年金事業の実施機関ということで、現場における窓口業務というものは農業委員会系統、農協系統に受託ということでお願いしてやってまいったわけでございます。

 ただいまお話しの平成七年度の財政再計算の見通しと実績の違いというものについては、先般の委員会でも大臣が申されたとおり、相当乖離が出ております。このことにつきましては、私どもといたしましては、大変農業情勢、農村の事情が厳しくなっている中で、受託機関の担当者の方は相当努力をしてこられたというように私は考えているのですが、その努力の限界と申しますか、そういうことがやはりあったのだろうというように考えております。

 ただ、委員ただいまおっしゃいました、長年にわたって保険料をきちっと納めてきた加入者、それから受給者の立場になっている方々、この方々には、年金の現在の姿あるいは抜本的改革をせざるを得なくなった背景については全く責任がないわけでございます。

 そういう方々のお気持ち、それから、受託機関で熱心に地域で加入促進なり収納促進に取り組まれてきた方であればあるほど制度改正の検討の過程で大変苦しい立場に立たされたということについては、私どももこれは厳しく受けとめておるところでございます。

 ただ、先ほど来申しましたが、農業団体の意見集約というものを経まして、国民一般、農業サイドがぎりぎり受け入れられるような形で新しい制度ができたわけでございますので、一日も早くこれは成立をしていただいて、我々受託機関ともども、これの準備作業に鋭意努めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。

 それから、十年に会計検査院から、主として加入促進、収納促進についていわゆる処置要求というのを受けております。私ども、それを受けまして直ちに、十年の三月三十一日付でございますけれども、理事長通知というものも発しまして、収納促進、加入促進に対して具体的な指導を行っております。

 先ほど来御説明いたしましたように、加入促進推進員あるいは収納促進推進員の設置だとか、あるいは、基金の役職員がチームを組んで重点市町村にお伺いして現地要請に回るとか、そういうようなことまでやってまいっているところでございまして、受託機関の皆さんは一生懸命取り組んでこられた、このように私は考えておるところでございます。

松本(善)委員 一生懸命やったと言ったって、結果的にそうならないのだから、その責任をどう感じているかという問題なのですよ。農民の皆さんから見たら、あなたの話では納得しないですよ、一生懸命やったけれどもだめだったと。原因は何だと考えているのか、あなた方の責任はどう考えているのかということを答えてほしいのですよ。

鎭西参考人 おっしゃるとおり、平成七年の財政再計算による見込みと実績が異なったわけでございますが、未加入者がまだ七万人いると申しますけれども、例えば当然加入資格者のベースで申しますと二万四、五千人というオーダーでございます。

 基本的には、やはり農業情勢なり農村環境の変化によりまして専業農家の集団が非常に少なくなってきた。その中でも入っていただく方は大半入っていただきまして、非常に難しい事情にある方、これは経済的な問題、あるいは、土地を持っておられても自営業者でございますと、御承知のとおり農年制度の場合は当然加入ということで、本人は農業者の意識がないというような方も一割ぐらいその中にいらっしゃいます。そういう非常に難しい方が残ってきた結果、その努力にかかわらず、なかなか実績が上がらなかった。

 ただ、抜本的改革をせざるを得なくなったこの背景、そのことは加入者なり受給者に責任がないわけでございますので、私ども、実施を担当してきた立場といたしましても、大変これは厳しく受けとめているところでございます。

松本(善)委員 あなたにばかり聞くわけにもまいりませんが、やはり先ほど来農業をめぐる情勢が厳しいという話が出ていますけれども、この委員会でも農業は崩壊の危機にあるというのは超党派的認識ですよ。農水大臣もそう言っているのだから。それは、あなたのような形の対応でいくと、私はまた削減ということが起こりはせぬかと思うような感じです。これは二度とそういうことが起こらないようにしようというような決意は全然感じられないのですね。

 そこで、戸波参考人にお伺いしたいのです。

 具体的な今回の問題についての憲法上の御意見というのは、大筋わかりました。一九七八年の最高裁法廷の判例との関係でもお話しになったのですが、私がお伺いしたいのは、年金受給権も財産権ですね。そうだとすれば、これが公共の福祉で二十九条でかかってくるということになれば、厚生年金とか国民年金とか、それから共済年金だって年金受給権ですから、一般論でいけば全部削減することが憲法違反ではないということになり得るのかどうか、そこはどうお考えになっているのか、これが一つ。

 もう一つは、農業者年金は政策年金だけれども、切り下げという点は憲法上疑問があるということは先ほどおっしゃいました。今回のものについてはなかなか憲法違反と言いにくい、こうおっしゃったのですけれども、この切り下げも、先ほど申しましたように、今、このままのやり方でいけば農業は崩壊するかもしれない、そういう状況のもとだったら、それは将来の問題はまたこんなことが起こるかもしれない。

 私は、切り下げの問題について、これは程度問題なのか、どういうふうに憲法論との関係で――一番農業者が問題にしているのは、国が約束したものが切り下げられるというのは、国として詐欺ではないか、おかしいではないか、ここが中心なんですよ。この問題についての憲法論をどうお考えになっているか、その二点を伺いたい。

戸波参考人 簡潔にお答えします。

 他の年金、厚生年金等々の切り下げについてですが、すべて違憲になるというところまで、つまり国側の財政が完全に赤字で破綻してしまったというようなことがないわけではありませんから、合憲となる場合が全くないとは言えませんけれども、一般の年金について受給権者が、去年が十万円でことしが九万円にすると言ったら、恐らくこれは普通ですと憲法違反になると思うのですね。何で農業者年金についてならないのかというと、農業者年金制度そのものがかなり政策的に立てられたものであるというのが私の認識で、必ずしも違憲とは言えないのではないかということであります。

 その点について二つちょっと補足させていただきますと、一つは、政策年金として農業者年金というのがうまく機能したのかどうなのかというのが、実はきょうの議論でも必ずしもはっきりしない。むしろ、今までの経過を見ると、加入者はふえないし、未加入者は多いし、それから実際に農業の経営移譲というのがうまくいっているかというと必ずしもそうではない。

 そういう中で農業をいかに強くするかというものに対して、この年金制度がうまく機能したのかどうかということの議論というのをもっとしていいのではないかというのが、私のちょっと外野からの意見であります。

 それともう一つは、政策年金と言いましたけれども、実は、これは受給者の農民からすると年金そのものなんですね。その点をとらえると、実は、特に既裁定者についての一〇%カットというのは、先ほどの厚生年金の受給カットが憲法違反となるということとの関係で言いますと、場合によっては違憲という判断さえ出かねないような非常に厳しいカットではないかということであります。

 特に、年金制度というのは、やはり国民の信頼、年金制度全体についての基盤だとか、年金加入者の信頼確保というのがありますから、それで掛金を払って年金の受給権ができたときには幾らもらえるということははっきりしている。期待権の場合は若干変化はありますけれども、少なくとも受給している方についての減額というのはよほどの理由がなければ正当化されない。

 そして、さっきも申しましたように、一〇%削減の理由が非常に政策的に出てきたものでありますから、果たしてこれで十分な理由になっているのかなっていないのかというのは非常に疑問であり、受け手の方の立場からすると、何でカットされるのかということについての十分な説明はできていないのではないかという気はします。

 しかし、憲法問題として言うと、やはり農業者年金の特殊性、そもそもこの年金制度が農業者の方をどうするか、農業の今後をどうするかという政策的な観点ということを考えれば、辛うじて合憲と言えるのではないかということであります。

 御指摘はそのとおりで、特に受給権者としての農民の方が、受給している一〇%カットについて納得がいかないというのは当然であり、それは政策問題として全額給付という方向もとり得る、そんなに大きな問題ではないのではないかと思うのですけれども、それは国会の場で御議論いただくということになるかと思います。

松本(善)委員 終わります。

堀込委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 参考人の方々、大変御苦労さんでございます。私で六人目ですので、大体四人の考え方について理解をいたしましたし、また、あしたもこの委員会で質疑がありますから、その質疑の参考に十分させていただけるなという思いをいたしております。ただ、基本的なことを、重複する部分があるかもしれませんけれども、再度私からも質問させていただきたいというふうに思っています。

 やはり私ども、何といってもこの農業者年金の改正法律案で一番問題点にしなければならないのは、これは中村参考人にお聞きしたいのですけれども、三〇%を九・八%で、今も議論になっていますけれども、正直言って落ちついたという表現を使っていいんだと思うのですね。

 ただ、三〇%から九・八%になった、あるいは脱退一時金が八割という形になった、このことがやはり今回の改正で大きな問題点だったと思うのですが、関係団体としてこのことを、先ほど、私たちも基本的に思っているのは、基本的人権の問題あるいは生存権の問題、それから財産権の問題、こういう立場に立ってどう議論してこられたのかなという思いなんです。

 それともう一つは、いろいろな形で議論がなされておりますけれども、この農業者年金の他の公的な年金への波及がどうなっていくのだろうかという心配が一つあるわけですね。この農業者年金だけでとどまって、今も参考人の質疑の中で厚生年金の話も出てきていますけれども、このことの重みというものを関係団体としてどう議論してきたのか。

 それは、個人個人から見れば三〇%が一割になったからこれでやむを得ないという気持ちになっていくという部分はわかるのですけれども、本当にこの農業者年金、年金として議論していく関係団体として、このことをどう議論してこられたのか。ここで参考人としての見解をお聞きしておきたいと思います。

中村参考人 先生お話しのように、特にこの既裁定年金のカットにつきましては、我々も先ほど来お話し申し上げましたように、特に十一年の十二月の政府の改革大綱をもらったときには物すごいショックを受けましたし、私どもそのものが年金の受給者組織の事務局を担当しております。したがいまして、受給者の方と会う機会もございますし、今度の意見集約につきましても、この受給者組織と一緒になって議論をしてまいりました。

 繰り返し申し上げますが、いずれにいたしましても、抜本的改革をせざるを得ない状況は皆さんが認識をできる。そのときに、なぜカットなのかという問題もありました。そして、ただ問題は、政策年金として今後どう選択をするかという問題がまず大前提になりまして、そこで、その議論では八割が、将来若い人たちが入れる、安心できる年金に財政方式を切りかえて再構築をすべきだというのがまず確認をされました。

 そこで、三割カットという問題を一方に抱えながら、これはとても受け入れられない問題だということで、特に受給者組織からは物すごい反発でございまして、我々もなかなか現場に行けないぐらいの反発がございました。

 そういう集約をし、若い人たちが安心できるという新しい制度にするためには我々受給者も一定の負担が必要ではないかというところまでこぎつけまして、これがまた国民にかなりの負担を、これから全部、今の加入者、受給者のすべての負担を国民にしていただくということもありますので、そういう国民合意を得るということからも我々がぎりぎりできる負担はやはりするべきではなかろうかというところに行き着きまして、それが結果的に九・八ということになったということでございまして、先生おっしゃいますように、他年金への波及という問題も、これはいろいろ議論が出てまいりました。

 しかし、政策年金として仕組んでいく、廃止はわずか一%でございましたので、何とか続けたいということからせっぱ詰まった中で生じてきた率であろうというふうに理解をして、またそれが理解されてきたというふうに思っております。

菅野委員 やはり妥協の産物だということで、ここに、既裁定部分を減額するという部分の問題点というのが本当に深く議論されて今日に至ってきたのかというところが、国民合意とかいうことなんですけれども、国全体を考えるときに制度としてどうあるべきかの議論からやはり出発すべきだったというふうに私は思っています。

 それからもう一つ中村参考人にお聞きしたいのですが、ずっと今までの前の人たちの議論を聞いていました。答弁も聞いていました。そのときに、これまでの農業者年金のたどった方式が、最初は積立方式ですね。賦課方式になりました。今度積立方式という形にまたもとに戻ります。そうしたときに、前回の積立方式をどう総括しているのかなということですね。

 そして、これからこの農業者年金を二十年、三十年継続していったときに、その状況が前回の状況に立ち至ったときにどうしていこうとしているのか、このことがやはり今の制度改革で、抜本的改革といいますけれども、その議論が先が見えないから、どうなっていくのかの先が見えないですから、特にこれからの経済政策をとるときに、インフレ政策になったときにこの積立方式が本当に有効に機能するのでしょうか、そういう不安も多くの人たちが持っていますから、理解が深まっていかないのじゃないのかなというふうに思っています。

 抜本改革というのですが、制度を全体的に議論してきた関係団体として、この積立方式の将来的見通し、私が一つだけ言いましたけれども、将来的見通しをどのように持っておられるのか、そしてどう定着させていくのか。この視点をはっきりさせていかないと、この農業者年金の議論というのは深まっていかないのじゃないのかなと思うのですが、意見をお聞きしておきたいと思います。

中村参考人 現行の年金が積立方式から五十六年に賦課方式に移ったことにつきましては、先ほどの物価の問題等からせざるを得なかったということでございまして、いわゆる後代負担で年金をやってきたということでございますが、やはりこれからの年金は後代負担はなかなか無理であろうというふうに見通しを、意見の集約のときにも検討してきたわけでございまして、自分たちの掛けたものは自分たちのもとに戻ってくるという仕組みにやはり改めるべきであろうと。

 ただ問題は、元本割れするような問題が起こるということについては、やはり運用等透明性の中で対応していただく、これは基金の運用の問題でございますから、そういうことでお願いをするということで、やはり後代負担が非常に難しい時期に入ってきているということと、それから保険料に対します政策部分の、事業主負担のかわりというふうに我々は言っておりますが、そういうもので仕組んでいただくということに今集約をしてきた、こういうことでございます。

菅野委員 非常に難しい選択だと思います。それで、積立方式にするときに、それでは現在の低金利政策、これがいつまで続くかわからない。それと同時に、今、日銀を中心として本当に経済全体を持っていこうとしている方向性と現時点の積立方式に移行するという部分と、ここを考えたときに、幾ら農業者年金加入者に積立方式にしたから残ってくださいと言っても、こういう政策をみんな国民は知っていますから、そういう中で、一方では加入者の増を図りますということを言いながら、矛盾がいっぱい存在している中でこの制度を継続していったならば、私は将来に禍根を残すというふうに思っているということです。

 このことをやはり、あしたも質問の時間がありますから、きょうは参考人からそういう言葉を聞いて、なかなか明確な回答が返ってこなかったというのは、難しいことですから回答はよろしいです。そういう問題点を内在しているということをしっかりと受けとめていただきたいと思います。

 次に、戸波参考人にお聞きしますけれども、先ほど意見陳述で、農業者年金の問題、本当に年金だろうか政策支援なのだろうかという疑問点を披瀝されましたし、私どももそう思っているわけですけれども、農業者年金も一本化の方向に持っていくべきだという議論を展開されておりますね。そして、九・八%は減額する必然性は私はないと思いますと、三兆六千億、三千三百億の例を出しながら述べられておりますけれども、ここに至るもうちょっと詳しい考え方を示していただきたいというふうに思っています。

戸波参考人 申し上げづらいことですけれども、やはり年金制度は、先ほど申しましたように、全国民的な課題であります。農業を強化、維持するというのも非常に重要な全国民的な課題なんですが、やはり国民年金制度をどうするかというのも同じように重要な課題であります。

 そこでの方向というのは、やはり国民が同じような制度に入って同じように給付を受ける、その制度がしっかり財政的に支えられて、老後の生活を送れる十分な給付を受けるというのが基本原則だと思うんです。

 今まではいろいろな歴史的ないきさつでもって年金が分かれており、厚生年金、国民年金と分かれているのを統合し、それから共済年金や何かも統合の方向で何とかしようという形になっております。

 そういう中で、農業者年金という形の特別の措置、これをどう見るかというのは、この場では皆さんは、農業のためにはやはり安定して生活ができるように農業独自の年金が必要なんだというふうに御判断されている、それは妥当な判断であると思いますし、妥当といいますか、農業をどうにかする、きっちり維持するという判断それ自体は妥当だと思います。

 けれども、果たして年金制度に組み込んで、年金という形でもって処理してよいかという問題と、昨今出ておりますように、農業者年金、あるいは今度できる新しい農業者年金という形でもってうまく機能するのかという二つの点から、それでいいのかなという疑問がございます。

 ただ、これは農業をどうするかということとの関係の政策問題であります。それで、政策問題については、今の目的の点と実際に手段としての効果の点と、いろいろしんしゃくされて判断される。

 私も直接には、どの程度農業者年金が機能し、これから機能するのかということを判断するだけの材料がありませんから何も申し上げられませんけれども、農業の強化というためには違った政策なり、もっと違った実質的な強化の方法ということを模索する。年金制度としては国民全部がかぶるような一体とした年金制度を構築した方が妥当ではないかというのが私の意見であります。

菅野委員 わかりました。

 それでは、最後に信田参考人にお聞きしますけれども、現場の声として、先ほど前の人たちへの答弁を聞かせていただきました。やはり現場で働いている人には、本当に農業を、国民全体が農家をどう見ているのか、この温かい気持ちというものが、そしてそこを支えていく国民全体の声がなければならないという言葉、私どもも本当に思いは同じなんですね。そして、これからもある意味では現行の給付でもって続けていっていただきたい、一割といえどもカットしちゃ困るんだという率直な気持ち、私どもと同じなんです。

 そういう意味では、今の現行の受給者はそういう思いなんですが、ただ、若い人たちが現場でこの新しい制度にどういう思いを持っているのか、ここが抜本的改正になった農業者年金のこれからの将来を占うというふうに思っています。

 それで、一方では条件をつけながら加入要件を拡大しているという矛盾した部分もあるわけですけれども、現場の中にいて、この新しい制度に対しての若い人たちも含めての声というのがどういう状況になっているのか、お聞かせ願いたいというふうに思っています。

信田参考人 若い人たちの意見は、今非常に統一されたものがない時代です。なぜかというと、今の農業は、それぞれの個々の知恵を絞って、その地域で画一的な農業をやっていなくて、それぞれ工夫をして頑張っておるために、非常に農業に対する考え方がばらばらといいますか、非常に先を見越して違う方向でいっていますために、若い人たちが統一してこういう考えというのは少ないといいますか、固まっておりません。

 しかし、私ども北海道においては、農業政策上、一応分類されて固まっていますから、そういう中で考えますと、ほとんどの人が言うのは、年金を言う前に自分たちの経営所得が将来確保されるのかどうか、本当に世界と競争して我々のことを考えてくれようとしているのかどうかというところが統一的な考え方、これはほとんど狂いがないですね。

 その上で国民が、先ほど申し上げましたように、我々農業者に対して、年金とか社会保障とか、自治体も含めて地域でどういうふうにしようとしているのか、そういう考えがほとんどでございます。

 そういう意味で、私どもとしては、意見をいろいろ聞いた上で、これからも持続してその村に住みたい、そういうところに視点があるように考えられますために定住年金を提案させていただいたところでございます。

菅野委員 終わります。どうもありがとうございました。

堀込委員長 次に、金子恭之君。

金子(恭)委員 21世紀クラブの金子恭之でございます。

 参考人の方々には、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 まず、信田参考人にお伺いいたします。

 この厳しい農業事情の中、信田参考人におかれましては、実際農業現場で一生懸命に努力されていますことに対しまして、心より敬意を表する次第でございます。その中で、将来の不安の中で孫にも勧められないというようなことをお話しされました。本当に残念なことだというふうに思っております。

 その中で、他産業従事者と遜色ない水準の生涯所得を確保すべく、農業経営の育成をすべきであるというふうに申されました。私も同感でございます。その中で、このことを実現するために、担い手対策として今回の新制度が提案されたというふうに理解しているわけでございます。

 今回の農業者年金制度の抜本改革につきましては、政府案にしろ民主党案にしろ、いずれの案にしても巨額の財政資金を投入することとなるわけでありますが、この点につきまして、どのように国民全体の理解を得ることが重要だというふうにお考えか、お伺いいたします。

信田参考人 この点につきましては、大変難しい問題でございます。なぜならば、私どもは、生産現場で毎日自分たちの家族を守るために、自分が生きていくために鋭意農作業そして生産に励んでおります。それが自分たちのためになるとか地域社会や日本全体にいろいろなるという、そこまで高度な考え方を持ち得ないような状況の中で頑張っているために、今の財政事情とか国の全体の中のことを考えてまでやれないわけでございます。

 しかし、さりとて、政策年金としてこれまで私ども信頼をし、期待をしてやってきた以上、現実として、政策の結果こうなったにせよ、ここに目を向けないで避けてただ何か言っておけばいい、こういうことではございませんので、私どもとしては、国民の多くの税金を支援としていくことに対して国民の皆さんにどう理解されていくかということは、食料をきちっと安定的に供給する農民自身の責任がまず先に来るのではないか。

 そういうために、先ほど言いましたように、その村できちっと持続した農業をやれるような政策とみずからの覚悟が必要だということを訴えた上で、そこが並行していくのであって、どちらかに頼ったら自分たちがよくなる、そういう甘いものではないというふうに考えておりますので、ぜひ先生方の皆さんの国民全体を考えた、そういう視点の中での御検討を賜りたいものだと思っています。

金子(恭)委員 ありがとうございました。今参考人からお受けした言葉を私どもも胸に秘めて、頑張っていきたいというふうに思っております。

 続きまして、戸波参考人にお伺いいたします。

 現場を歩いていますと、昔は戻りがよかったというような声もよく耳にいたしますし、また、農業者年金については、これまで受給額に比べて保険料が大幅に引き上げられてきました。先ほどの鎭西参考人のお話では、制度発足当初は七百五十円、平成元年に一万円台、十一年に二万円台となり、負担がどんどん重くなってきたわけであります。

 そのような状況にあっても、年金受給権というのは受給期待権より保護されるべきだというふうにお考えなのか、それをお伺いいたします。

戸波参考人 年金につきましては、二〇〇〇年に厚生年金、国民年金の大幅な改定がありまして、国庫助成を基礎年金の二分の一に上げるかわりに、六十五歳支給とか適正化率を五%にするとか、いろいろ改革がなされました。

 期待権といいますか、これからの年金をどうするかというときに、一方では、財政的な限界だとか今までの掛金の運用だとかということを考えて、実質的な負担増というのは避けられないところでございます。しかし、問題は、既に受給をされている方の年金額を減額する、既裁定者について年金額を減額するというのは重大問題であります。

 ちょっとお時間をいただいて恐縮なんですが、先ほどの五十三年の農地の売り払い価格を七割に上げたという事件につきまして、実はもう一つエピソードがありまして、それは、将来にわたって、旧地主の方が、自分の買収された農地を自分に返してくれという請求をしていない人がこれから請求する場合は七割だ、それは合憲だと言ったのですね。

 しかし、問題は、既に売り払いの申し込みをした人について七割にしちゃうと憲法違反じゃないかという議論が実はあったんですよね。そのとき最高裁は、それでも事情変化があったんだから合憲だと言ったんですけれども、私などは、やはり既に申し込みをしている人については憲法違反と考える余地があるのではないか。

 ただ、普通の売買契約と違いまして、農地の売り払いというのは、行政が一たん土地を買い上げて、その土地についてどうするかという決定を待って売り払いをするということですから、旧地主が自分の土地について売り戻してくれという請求をしたとしても、まだ行政的な決定がおりていないから売り払いの義務は生じていないんだという形の論理構成をとらなければ憲法違反じゃないんじゃないかという議論が実はありました。

 それと関連しまして、既裁定者について今までの額を一〇%カットするということについては、何遍も申しますけれども、年金としますとゆゆしき問題でありますけれども、憲法問題として違憲とまでは、政策的なものがありますから、今度の農業者年金の政策的な観点からすると違憲じゃないとしましても、実はこれは非常に重要な問題で、その点について十分に政策的に議論をして一〇%という数字を出して、それでもって農民の方にも納得いただいたという措置がとられているかどうかというところについては、先ほど申しましたように、個人的には非常に疑問を持っております。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、中村参考人にお尋ね申し上げます。

 先ほどの意見陳述、またこれまでの質疑の中で、組織討議、また意見集約が十分行われているということがよくわかりました。

 私も、地元に帰りまして、農業委員会の方々また現場の方々から早く法案を通してくれというような御意見も聞いているわけでございまして、その中で、昨年の十一月に農地法の改正のときに中村参考人にはこの場で質問させていただいたわけでございます。

 今農業委員会にとって、農地法に引き続き大きな課題といいますか、大きな役目というのが農業委員会に課されているわけでありますが、農業委員会においては、業務の拡大とか、またその業務を適切に執行し得る体制を整備しなきゃいけない、そういう意味では組織改革をやっていかなければいけないということをこの前言っていらっしゃったように理解しております。

 その大変な中で、農業委員会系統としては、今度の新制度に対して普及、定着のためどのような活動を展開されるおつもりなのか。先ほど来お話を聞いていますと、これまでの制度においても未加入者の加入促進とか保険料の収納を上げる方策とか真剣に取り組んで、これからもやっていくということを言われましたが、その点についてお聞かせください。

中村参考人 私どもは、制度をつくり上げてきたときの運動の中心母体でもございまして、この制度についてはかなりの責任を持ってまいりました。したがいまして、先ほど来先生方からいろいろな御意見を伺いましたけれども、我々も全く同じ気持ちで、泣く思いでの意見集約をしてきたことも事実であります。

 今度の新しい制度をつくっていただくということについても、農村現場での合意を得ていると思っておりますので、これについて我々も最大の努力をしなきゃいかぬというふうに思います。

 ただ、今度は加入も強制ではございません。任意加入になってまいりますから、まだまだ、早く法案を通していただきまして、我々は一人一人の方と相談をしなきゃいかぬと思っております。あなたは今やめれば幾らもらえます、続ければこういう格好でこのくらいもらえますということも一人一人に当たらなければいかぬかと思っております。

 それとまた同時に、政策支援がございますから、今あなたは政策支援の対象にならない、こうやればなりますよということも言って、そしてその場合は幾らの保険料の助成がございますということを一人一人に当たっていく必要があるし、またそういう責任を我々は持たなきゃいかぬというふうに思っております。

 農水省の方も三十万人という目標を持っているようでありますが、我々も当面この目標は必要だろうと思っております。まだまだ農村現場では不信感というのもあるのも事実だろうと思っておりますので、今申し上げましたように、現在調査を進めております、どんな状況にあるかということは。進めて、四月中にはその報告を全部とることにしております。

 それを踏まえて一人一人の方と相談をして、加入を継続していってもらいたいということで、新しい制度を円滑に運用できるようにしてまいりたいという努力について、農業委員それぞれがやはり腹を引き締めてやらなきゃいかぬというふうに思っております。

金子(恭)委員 引き続き中村参考人にお尋ねします。

 私は次にどの程度の加入者を見込んでいらっしゃるかとお聞きしようとしたのですが、今のお話であれば、これから調査をして、その中でどの程度かというのをこれから推測していかれることだろうと思います。

 昨年の農地法の改正案の中で、担い手対策といいますか、新規就農者を確保するためにいろいろ努力をされているということはお話がありました。都道府県の農業会議に昭和六十二年から新規就農ガイドセンターを設置したり、また、三者合同で農業法人合同会社説明会とか新規就農相談会を開いていらっしゃる。それによって非常に大きな成果をおさめていらっしゃるということもそのときお聞きしたわけであります。

 今回の新制度についても担い手対策というのは非常に大きな、重要な課題でございます。その中で、農業委員会系統として農業者年金制度以外にどのような施策が必要であるとお考えになっているのか、お聞かせください。

中村参考人 担い手問題、新しい基本法、一つの手段でございますし、四つの理念を持って、国民の合意を得ながら担い手をつくっていくのは、また我々団体の役割でもあるというふうに考えております。

 ただ、今の状況は、やはり市場原理の中で農業経営をやるということも事実でございまして、大変今厳しい選択を迫られているわけでありますが、そういう中で頑張っていける農業者をつくる一つの手段としてこの年金が役割を果たすであろうということを、これは生涯所得の問題、まさに職業選択として、選べる職業としてこの年金が支えになるであろうというふうに考えております。

 これも一つの大きな柱でございますが、今市場原理のもとで考えを検討されております経営単位の所得の安定対策の問題、これも重要な政策であろうと思いますし、さらには税制の問題、あるいは農地制度もあろうと思いますが、すべて担い手に集約をされてくると思います、政策そのものが。ただし、その中でも大きな役割を果たすのは農業者年金である、こういうふうに承知をしておるところでございます。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、鎭西参考人にお伺いいたします。

 先ほど、意見陳述の中で、農業者年金制度の経緯とか、また、未加入者の存在、保険料収納率の低下等の問題を抱えるに至った要因、また、今後の対策について述べられたわけでありますが、実施機関として今回この事態に陥った責任については十分受けとめているというような御発言がありました。

 新制度について今後の取り組みが注目されるところでございますが、政府案による新しい制度につきましては、資金運用がこれまで以上に重要になってくると思われます。農業者年金基金には、経験の蓄積とか人材などから見て、正直申し上げて大丈夫かなということを言われる方もいらっしゃいます。この点につきまして、農業者年金基金として、今後どのように取り組まれるおつもりなのか、お聞かせください。

鎭西参考人 新しい農業者年金制度におきまして、積立金の運用というのが極めて重要な仕事になるわけでございます。積立金の運用につきましては、政府提案で御提出しております法律の第五十四条に基本的な考え方が書いてありますけれども、「政令で定めるところにより、安全かつ効率的にしなければならない。」というプリンシプルが書いてあるわけでございます。

 私どもそれを受けまして、加入者が将来にわたりまして年金給付を確実に受けることができるように、長期的視点に立った安全確実な運用ということを基本にやっていく必要があろう、このように認識しておるわけでございます。

 そういうことを可能にいたしますような、いわゆる運用の基本方針というものを適正に策定して実施していく必要があると考えておりますが、この基本方針の策定に当たりましては、高度な専門的知見あるいはノウハウが必要でございますので、外部の専門家の助言なども得つつ策定してまいる考えでございます。

 また、新制度におきますこの積立金運用の重要性ということにかんがみまして、基金の組織を再編いたしまして、現行の組織定員の範囲の中で積立金運用のための担当部門を強化するというようなことについても意を用いまして、適切な運用に万全を期す所存でございます。

金子(恭)委員 ありがとうございました。

 最後に、鎭西参考人に御質問して終わらせていただきます。

 地元の農業委員会関係者とかJAの関係者の方から農業者年金制度の話を聞きますと、異口同音に手続の煩雑さが何とかならないものかということをよく言われます。今後、農業者年金制度を円滑に運営するためには重要であろうというふうに思います。その場合、事務の簡素合理化に努める必要があると思われます。

 この点について、農業者年金基金としてどのように取り組みをされるのか、また、組織として農業者年金基金のスリム化についてもどのようにお取り組みされるのか御質問して、終わらせていただきます。

鎭西参考人 おっしゃるとおり、年金事業というのは、その性格から、多数の者を長期にわたって対象にしているということとか、あるいは個人個人の権利義務に大変大きな影響を及ぼすということでございまして、資格の確認、あるいは裁定手続などにつきまして特に事務に厳密さが要求される、そういう性格の仕事でございます。

 ただ、おっしゃるとおり、私どもブロック会議あるいは地方に出かけても、受託機関の担当者から、もっと簡素化できないのかという声が非常に強いわけでございまして、従来からも、そういう受託機関の担当者の声を受けまして、事務の簡素合理化、あるいは諸届けの様式の統一だとかいろいろなことをやってまいったわけでございます。

 新制度におきましては、例えば農地保有要件がなくなるなどの資格要件がある意味では緩やかになるというようなこともございますので、十分農業団体あるいは主務省とも連携をいたしながら、特に現場の受託機関の担当者の過剰負担にならないように意を用いまして、事務執行に当たってまいりたい。

 なお、こういう観点から、新しい制度におきます保険料収納は原則すべて自動振替ということを考えているところでございます。

 それから、組織のスリム化ということでございますが、今申しましたようなことで、私どもの仕事は大変厳密を要する仕事でございますが、現場の事務のかなりの部分を農業委員会系統あるいは農協系統に委託して行っている、こういうことでございまして、本部自身はかなり現在でも簡素な組織になっているわけでございます。

 しかしながら、これからも十分そういう観点、それから今回の制度改正、新しい制度が再構築されるわけでございますが、当分の間、旧制度と新制度が並行するということでございまして、多分現場の業務量というものはかなり増大するだろう。

 担当者も相当意識的にも負担感というものが増すのではないかということを我々も十分考えておりますので、そういった方々の負担感というのをなるべく避けるように、事務の簡素合理化、あるいは基金本部の組織といたしましても、現行の組織定員の範囲内で、例えば先ほど申しました資金の運用部門を強化する等、めり張りをつけた再編整備というものを行ってまいりたい、このように考えているところでございます。

堀込委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明四日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十分散会




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