第8号 平成13年4月4日(水曜日)
平成十三年四月四日(水曜日)午前十時三分開議
出席委員
委員長 堀込 征雄君
理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君
理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君
理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君
相沢 英之君 岩倉 博文君
岩崎 忠夫君 小此木八郎君
金田 英行君 上川 陽子君
北村 誠吾君 栗原 博久君
小島 敏男君 後藤田正純君
七条 明君 園田 博之君
高木 毅君 西田 司君
浜田 靖一君 福井 照君
岩國 哲人君 大石 尚子君
古賀 一成君 後藤 茂之君
後藤 斎君 佐藤謙一郎君
津川 祥吾君 筒井 信隆君
永田 寿康君 楢崎 欣弥君
三村 申吾君 江田 康幸君
高橋 嘉信君 中林よし子君
矢島 恒夫君 菅野 哲雄君
山口わか子君 金子 恭之君
…………………………………
議員 津川 祥吾君
議員 筒井 信隆君
議員 三村 申吾君
農林水産大臣 谷津 義男君
厚生労働副大臣 桝屋 敬悟君
農林水産副大臣 松岡 利勝君
農林水産大臣政務官 金田 英行君
政府特別補佐人
(内閣法制局長官) 津野 修君
政府参考人
(厚生労働省医薬局食品保
健部長) 尾嵜 新平君
政府参考人
(農林水産省総合食料局長
) 西藤 久三君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 須賀田菊仁君
農林水産委員会専門員 和田 一郎君
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委員の異動
四月四日
辞任 補欠選任
浜田 靖一君 小此木八郎君
後藤 茂之君 後藤 斎君
佐藤謙一郎君 岩國 哲人君
永田 寿康君 大石 尚子君
松本 善明君 矢島 恒夫君
同日
辞任 補欠選任
小此木八郎君 浜田 靖一君
岩國 哲人君 佐藤謙一郎君
大石 尚子君 永田 寿康君
後藤 斎君 後藤 茂之君
矢島 恒夫君 松本 善明君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)
農業者年金基金法の一部を改正する法律案(筒井信隆君外二名提出、衆法第一一号)
――――◇―――――
○堀込委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案及び筒井信隆君外二名提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君、農林水産省経営局長須賀田菊仁君及び厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○堀込委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津川祥吾君。
○津川委員 おはようございます。民主党の津川祥吾でございます。
私は、民主党案の提出者でもございますが、政府案について幾つか質問をさせていただきます。二、三細かい点もございますし、また、農政全体の理念的な部分も若干質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、政府提出の農業者年金基金法の一部を改正する法律案では、これまでの政策年金としての農業者年金制度に重大なふぐあいが発生したために、抜本的に改革をして新たにつくりかえるというのがこれまでの御答弁の中であったかと思います。
しかし、そもそもなぜそのような改革が必要となってしまったのか。これまで御答弁いただいた中では、農業を取り巻く環境が大きく変化をしたからだという御答弁だったかというふうに思っておりますが、ただ、私どもといたしましては、まず、政府の改革案というものが、抜本的なものというよりは、むしろ手直しをした上で今後も同様な政策をとり続けるというようなものではないかなというふうに認識をするものでございます。
また、確かに環境は大きく変化をしたのでありますが、それに対する農業政策の失敗、つまり失政があったからこそこれまでの政策を大きく変えなければならないというふうな結果になったものと考えているところでございます。
昨日の参考人質疑の中でも指摘をされてきたことでございますが、これまで全体的な農業政策としては、生産調整をしながら同時に個々の農家の規模の拡大を図ってきたというわけでありますから、農業従事者が減少したのは、政府がこれまでとってきた政策の成果であり、いわば当然の結果であると言えるのではないかということでございます。少数の経営者で多くの生産を効率的にすれば、当然収益は増大いたしますが、年金の現役世代と受給者の数のバランスが崩れるということは自明のことでございます。
私は別に、なぜそんな当たり前のことがわからなかったのかということで政府を批判しているわけではございませんでして、このような、後になって考えれば当たり前だったというようなことは、実は民間企業の中にでも案外よくあることでございます。人は気がつくまで気がつかないと言われるゆえんでございますが、私が申し上げたいのは、今回の農業者年金の事実上の破綻というものに関しましては、単に年金制度の設計上のミスが大きな問題であったというよりも、農政全体の方向性の問題あるいは整合性の問題があったのではないかというところでございます。
今回の改正案の中でも、農業に魅力を感じて、やる気を持って農業に従事していただける担い手を確保したいと言っておきながら、一方で年金給付額はカットするということでは、どうもなかなか釈然としない。理由はどうあれ、農家の方々の信用を結果的に裏切るということになるわけでありますから、今後信用を回復するためには相当の努力をしなければならないというふうに考えるわけでございます。
まずは、今回なぜ年金給付額をカットしなければならないのか、十分に納得のいく説明が不可欠であろうかと思います。
そこで、改めてお伺いしたいわけでありますが、当初の案では三割カットというものであったのがなぜ九・八%になったのか、それぞれの数字の根拠をお示しいただきたいと思います。
○金田大臣政務官 津川先生から、なぜカットになるのかということ、三割カットが何で九・八%カットになったのかというお話でございますが、本当に年金財政が、農業者年金が破綻するということで、十一年の四月から、農林省そして厚生省の年金局長の配下の中で農業者年金制度研究会というのをつくって、この年金をどうやっていったらいいのか研究させていただきました。
十四年度には、年金基金、千四百四十億あるお金が払底するということがもう目の前にありましたので、どうやったらいいのかということを検討した結果、大方の議論のたたき台として、三割カットというのを大綱として出させていただいたのでございます。
なぜ三割カットになったのかということでございますが、これは昭和五十三年の最高裁の判決がありまして、どの程度であれば財産権が憲法違反にならない範囲で制約できるのかというような判決の考え方に沿いまして、これだったら憲法違反にならないだろうという形で検討させていただきました。
具体的に言えば、他の年金では自賄いしている老齢年金部分でございますが、これもどうしても国が支援していかなきゃならないけれども、せいぜいその程度で、半々、国が半分持って受給権者に半分持っていただこう、負担いただこう、カットさせていただこうということで計算した。
九百六十億くらいの老齢年金の単年度の支給部分の半分を年金受給権者に負担していただこうということで計算したら、三割カットという数字が出てきた。これは議論のたたき台としてお示ししたというのが状況でございます。三割カットについてはそういうことでございます。
○津川委員 九・八%の方をお願いします。
○金田大臣政務官 そして、この大綱で三割カットということをお示しして、大方の議論に付しました。そうしたら、各農業団体そして各方面から、そんなに大幅なカットということでは耐えられないという形で各団体からの意見がありまして、そして、いろいろな下部討議に付して、大体一割くらいのカットであれば何とか受忍の範囲内だというような御意見等々がありましたものですから、そういった中で調整して、国の負担部分を少し大きくして受給者の負担を受忍の範囲内、一〇%、そういった形で九・八%にぎりぎり工夫させていただいたという結果で今回の政府案になったわけでございます。
○津川委員 最初に三割というのがたたき台で出されて、その後農業者団体等といろいろ御議論なさった後で九・八%に変えられたということでございますが、先週からの委員会の中でも、農業者団体からの回答として、カットの額は一割以下にしてほしいという強い要請があったという御答弁がございました。
今も、そういったことでぎりぎりの判断で九・八%にされたということでございますが、ここで私がちょっと理解がなかなかできないのが、政府は三割で出した、農業者団体は一割にしてくれ、その三割と一割の間でぎりぎりの折衝をすれば、その両端も含めて途中のどこかでぎりぎりの折衝点というものが出てくるものではないかなというふうに普通は考えるわけであります。
ここでは一割よりもさらに少なくなっているわけでありまして、そもそも政府のその三割という数字にどのくらい意図があったのかなというところが非常に疑わしいというと言葉は悪いですが、なかなか理解できないというところでございます。
私などは、九・八なんという数字を見ると、ついついスーパーマーケットで九十八円とか二千九百八十円とか売っている心理的効果をねらった値引きなんかを連想してしまうわけでありますが、まさかそんなことではないというふうには思いますが、そうではないんだ、九・八という数字にはしっかりとした意味があるんだというところをぜひ御説明いただきたいと思います。
○金田大臣政務官 現場の声というのは、我々のもらっている年金を一円たりとも減らしてはだめなんだということが大勢でございました。しかし、そうはいっても、この新しい年金制度を維持していく上では、受益者と申しますか、それの負担はやはり国民のコンセンサスを得る上では避けて通れないところだろうということで、ぎりぎり調整したということで九・八にしたわけでございますけれども、三割についてもそれなりにいろいろな議論をさせていただいております。
例えば、高齢者の夫婦がどういった消費活動を行っているか、当時、平均として大体二十四万円一月かかるだろう、そうしたら、三割カットのときには大体一万円の収入減になる、この程度であれば何とか耐えられると思って三割カットをお示しして討議に付したわけでございます。
現場の声というのは憲法違反だとかいろいろな声の中で、五十三年の最高裁の判断も踏まえながら、このくらいだったら農業者の皆さん方の御理解も賜れるのではないかということで、いろいろな計算があるわけですけれども、九・八%という数字が出てきたわけでございます。これは、新法と旧法、旧年金者とはカット率が若干違いますけれども、平均で九・八%ということになったわけでございます。
○津川委員 現場の声を聞いてそうなったという話なんですが、今の御答弁で本当に農業者の方々が納得するのかというのが、また私は疑わしく思わざるを得ないわけでありますが、本当に年金給付額を、しかも既裁定の方々も含めてカットしなければならないのか。
先日も大臣に御答弁いただいたとおりでございますが、今回の件に関して農家の方々には一切責任がないというふうに明言されていらっしゃるわけでありますから、現場の方々がその声を聞いて、いや、それでも私たちはカットしていただいてもいいですというふうにおっしゃったのかどうなのか、ちょっとなかなか理解できないところでございます。
これまでも御答弁されてきたように、農業者年金制度が破綻を免れ得ない、あるいは事実上破綻しているというような状況にあって、農家の方々が一切責任を負担しないのは国民的同意が得られないのではないかということを給付額カットの論拠になされるなら、それこそ現場の声を聞いたのですかというふうに言わざるを得ません。
この現場というのは、農家というよりも一般の国民ということになるかと思いますが、まさかこの件に関して一般の国民に意見を聞いたかどうかはここであえてお伺いはいたしませんが、国民の同意が、コンセンサスが問題である、それが論拠であるというのであるならば、国民に対してはっきりと聞く必要があるはずでございます。
年金給付額はカットするが政策年金は継続するという方がよいのか、あるいは民主党案のように、これまで約束してきた部分に関してはしっかりと履行するけれども、今後は一般の方々と同じ程度の年金のみ維持して、特別な政策年金は新たにはつくらないという方が国民のコンセンサスは得られやすいのかどうなのか。
さらに言えば、事実上破綻した政策年金に形を変えて今後も公的資金を投入し続けることの方が、国民の同意はなかなか得られにくいのではないかなというふうに思うところでもございます。
また、長期的視点に立てば、政府案の方が財政支出が多くなるわけでありますが、この点に関して国民に対してどのように説明をされるのか、お伺いをいたします。
○松岡副大臣 津川先生、いろいろとケースを幾つも並べておっしゃっておられますから、なかなかどれにどう答えるかというのがちょっと整理がつかないのですが、私も、では総じてひとつお答えしたいと思うのです。
議論を積み重ねたのか、そしてまた国民の合意というよりどころ、どっちに重きを置いたのか、言ってみれば、両方をではどう兼ね合わせたのか、そういったことを金田政務官の質疑の中でもまだなお指摘をされておられるわけであります。
端的に言いまして、三割カットというのが一応事務方のたたき台として出てきた。これはまさに、単に事務的に整理をして、先ほど金田政務官が言いましたように、お互い折半だ、言ってみれば損をする部分はお互い折半だ、国と受給者が半々でやろう、五分五分だ、フィフティー・フィフティーだということが、一番数字的に言えば、これは一つの線ではないかというのが政府案としてのたたき台だった、私はこう思います。
ところが、それは、先ほどのお話のように、受給者からすれば、それはとんでもない、まさに自分たちとしては当然もらえるものと思ってきたのに、今になってそれはもらえないということはとんでもない、それはごうごうたる声が巻き起こるわけでありまして、私ども、当然そういったことを政治としてどう議論をするか。
このときに、これははっきり申し上げますが、団体の皆様方には、私どもは、責任を持ってひとつ末端現場までおろして、そして本当に農協は単協単位でしっかり議論をして積み上げて、その上であなたたちとして最終的には団体として、団体というのは単に団体としての中央部だけで役員だけで決めるという話じゃないのですよ、徹底して現場末端まで議論をして、その上でどうするのか。
当然のことながら、受給者、加入者の皆さんも、今の財政状態がこういう状態になっている、これは本当に身にしみて認識をされておられるわけでありますから、その中で一人で何人も抱えるというような逆構造になっておる中で、では自分たちとしてもぎりぎりどこを求めるのか、やはりこういったことで積み上がってきた議論なんですね。その結果、先ほど九十八円とか九百八十円とかおっしゃいましたけれども、せめて一割未満にしてくれないか、こういうようなことがやはり総意として出てきた。
それは二度三度、もう一遍フィードバックして徹底してやってくれ、こういう議論もまた団体側には私どもはお願いをしたわけでありまして、そして、例えば我が党の例でいいますと、我が党に年金小委員会、初代の委員長が谷津大臣ですが、それからずっと人もかわりまして、議論を重ねて、そこにも何度も現場代表、もう農家の皆さんの代表、地区別の人に来てもらって、議論もしたりいたしました。その結果、ひとつそういったことなら自分たちも総意として、大体みんなの、これは一般的な話として、その辺なら受け入れ可能といったようなことが最終的な整理だったわけですよ。
そこで、今先生がおっしゃいました国民の声を聞くべきじゃないか、それはどういう形で聞くかということについては、私どもは各界の代表という形で一応いろいろな意見を聞いております。専門家といいますか、学識者といいますか、そういった方々の意見も聞いたわけでありますが、マスコミ世論という意味でいいますと、私どもがああいった方針を党として出したときには、それは過保護ではないかとか、余りにもそちらに寄っているんではないか、こういうことでございました。
だから、そういった意味では、農業者の皆さんはそういった世論の中で、やはり農業サイドとしてみれば、これは、言ってみれば、この状況の中で許せる最大限やはり措置してもらったんだというのが団体側としての一般的な受けとめ方で、私は評価していただいている。
この前もいろいろなところに私どもが行って、いや、本当にああいういい形をとってくれた。そして、政策年金として――津川先生、ここで一つ大事な点は、ただ年金としてどうするかというだけじゃなく、農業というものを国民生活全体の中でどう位置づけて、その必要性、重要性についてどう認識してもらうかという、そこから来た政策年金。
こういったものとして、私は、国民の皆さんにも大方の御理解はいただけるし、また御理解をいただく努力はしていかなきゃならぬ、これがまだなお今日は課題だと思っておりますが、そういう意味で、先生の御指摘に総じた形で返させていただきますと、私どもはそのように評価いたしております。
○津川委員 最初のたたき台が責任を折半する形というので三割というのを出されたというのはよくわかりました。
ただ、国民の納得ということに関して、今副大臣は、有識者の方々にお話を伺った、恐らく有識者の方々であれば、農家の方々に責任がないのであるならば、農家の方々がこれをかぶる理由はない、ただ、マスコミ等で出たときには国民的に批判がある、そういったものが実際にあったというお話でございます。
しかし、またそもそも論になってしまいますが、今回の年金の行き詰まりに関して、農家の方々には責任がないということであるならば、国民の方々の批判の方がこれはやはりどこか間違っているわけです。
つまり、農家の方々に責任がないということを国民が理解していないんじゃないか。責任がある、あるいはその責任の所在を明らかにしないままに公的年金を導入すれば、それは当然国民は納得しませんし、怒って当然の話であります。しかし、農家の方は責任がないけれども責任をとれ、まさかそんなことを国民の方が言うはずはないのではないかなというわけであります。
少ないかもしれないけれども、多少は責任があるんじゃないかというような判断を国民一般があるいはするということであるならば、またそれは別の話でございますが、大臣がこの間おっしゃったとおりに、農家の方々には明らかに責任がないということであるならば、やはり国民の方々にもこれは責任がないんだということをはっきりと申される方が重要ではないかなと思いますが、お願いします。
○谷津国務大臣 過日もそういうことで私の方で答弁した中に、この件については農家には責任はないと私は申し上げておりましたし、また、今日までの見通し等につきまして少し間違った点があったということで、私は申しわけなく思っているということでございます。
そういう中で、今度のこの年金の改正につきましては、これは御案内のとおり、実は政策年金として取り上げられているものでございますから、この老齢年金のものはカットしない、そして政策的な年金である移譲の方、この辺については、これは国の公的資金が投入されておりまして、今回の改正によりましても三兆六千七百億ほど公的資金が投入されるということでありますから、これは国民の理解を得なければできないことでありますから、そういった面でそちらの方の分についてのカットをお願いしたわけでございます。
この件につきましては、先ほど副大臣が答弁されましたように、各団体にももう六カ月にわたりましていろいろ検討していただきました。当然のこととして、直接、受給者といいましょうか、そういう方たち、あるいは今掛けておる人たち、そういう人たちにも幅広く意見を聞いていただきましてこのように決定されたということを御理解いただきたいと思います。
○津川委員 また、もう一つ国民の方々に判断をしていただかなければならないというのが、今回のように年金制度が、それにかかわるようなものが事実上破綻したようなときに、どのような対処がよりベターかという点でございます。
昨日の参考人の方々からのお話でもございますし、あるいは大臣御自身もおっしゃったことでございますが、老後の安心を確保するということはもう大変重要なことでございます。あえて申すまでもないと思います。しかし、老後の安心という点では、実は民主党案でも老齢年金は当然継続するというふうに言っておりますから、少なくとも他産業並みの老後の安心は確保されると私どもは判断をいたしております。
政策的な意味合いはもちろんなくなりますから、金額的に少なくなるという点がございますから、その民主党案の分で老齢年金の金額が果たして十分かどうかということになりますと、また別の議論が必要なところかもしれませんが、少なくとも他産業並みの年金というものは確保できるわけでございます。
大臣はよく農業者の方々の生涯収入を他産業並みにとおっしゃっておられますが、私は生涯収入というのは、退職、リタイアされた後というよりも、現役世代の収入にこそ問題があるというふうに思っております。
したがって、民主党案では、現役の農家の方々の収入を確保できるように、直接所得補償ですとか強制的な減反の廃止などを主張しているわけでございますが、この点に関して、仮に政府案が通ったとしても、当然こういった別の政策はさらに必要なこととなると思います。この点に関しましては、まさに緊急を要することでございますが、また別の機会にちょっと時間をかけて議論をさせていただきたいと思います。
ただ、担い手確保という点に関しましてもこの部分が大きく関係しますので、若干質問をさせていただきます。
新たに設ける農業者年金制度で担い手を確保するということを政府案でうたっていらっしゃいますが、これだけではもちろん十分ではないというふうにお考えと思いますが、それ以外でどういったものを検討中なのか、具体的なものがございましたらお答えをいただければと思います。
○松岡副大臣 この年金以外に担い手確保の対策としてどんなことを考えておるか、こういう御質問でよろしいですね。
もちろんどの職業もそうだと思うんですが、やはりその職業を選択していくという、納得をする、満足をするというのはいろいろな要素があると思いますけれども、やはり一番大きなものは所得なんだろうと思います。そういう意味で、我々は生涯所得と。生涯所得の中には、やはり老後の所得と今現役で働いて取るもの、こういったトータルなんだろうと思います。そういう意味で、年金というものは、私どもこれを政策年金として位置づけて、生涯所得というものをしっかり他産業並みに守っていきたい、こう思っているわけであります。
では、その現役時代のときの所得はどうかということについては、これはもうまさに農産物の収入ということになるわけでありますが、これが今大変価格も下がっておるといったように、安定いたしません。そういたしますと、どうしても不安定であり、また、どんどん下がっていくというふうなことであれば、もうその仕事をやめようか、こういうことになるわけでありますので、今私どもはそこのところに、農政の流れというのが世界的にもやはり直接所得補償、こういったような流れになってきております。
価格を支持するよりも所得で補償をしよう。したがって、アメリカ型、ヨーロッパ型、いろいろなタイプがございますが、我々も日本型の所得政策を立てたい。そして、そのタイプもいろいろな中身が、要因がございますが、私どもは日本における農業、日本における農村、こういったものの働き、こういったものを日本型のものとして整理して、所得政策を打ち立てたい。
それはまさに他産業並みの所得確保ができるような、これは非常に難しい問題がございます。では、対象をどの範囲にまでするのかとか、どういう水準で、もちろん営農タイプも違いますから、では、どういうふうに分類をし区分けをして現場にぴたっと合わせた形にしていくのか、非常に難しい問題がございますが、そういったことを何としてもなし遂げなきゃいけない。
そして、やはり現役時代の所得が安定することによって、職業として選択をし、そしてまた農業の持っておるいろいろな機能、働きというのが国民生活全般を支えていく、こういったことが最大限に達成できるようにやりたい。
したがって、この所得政策というのは、一番大事な現役時代に働いたものに見合うものとして、これを何としてもやらなきゃならぬ。そのためには、必要な財源ということになります。これは本当に思い切ってガラガラポンで見直して、そしてその財源をしっかりとつくり出す。こういったことを、ことしの夏から来年の通常国会に向けて私どもはそれをつくり上げたいな、こんな思いで今作業をしておるということであります。
○津川委員 ありがとうございます。まさに今副大臣がおっしゃったとおりであろうかと思います。
ただ、まさに現役世代の所得が他産業並みにというのが目標ではございますが、現状はまだまだそこに至っていないからこそ政策年金ということになろうかと思います。
ただ、生涯所得が職業選択の重要な要素になり得るかといいますと、確かにそういう部分もあろうかと思います。例えば、新卒で公務員を希望される方の中に、私も公務員ですが、場合によっては民間よりも月給は安いけれども、定年まで確実に勤められるし退職金も間違いない、リスクの大きい民間企業よりも確実に生涯所得が保障される公務員の方がよい、そう言って選択される方もあるというふうに伺っております。
また、私の友人では、退職後も民間企業に再就職できるチャンスがあるので、まさに生涯所得として考えれば公務員の方が収入は多いのではないかと言って公務員になった人間もございます。
しかし、一方でフリーターと言われる若者が増加しているというのも現実でございます。彼らは、現在はそこそこの収入を得ているかもしれませんが、生涯所得という点から見れば、非常に大きなリスクをしょっているわけでございます。彼らの選択が賢明であるか否かは別にいたしましても、なぜ生涯所得が保障されているような公務員ですとか民間企業の正社員を選択しないのか。
彼らは公務員や民間企業の正社員になれないからフリーターになったのだという、もし御指摘があるようでありましたら、そうであるならば、なぜ農家にならないのか。つまり、生涯所得を保障するということは、確かに就農のインセンティブに全くならないということではないと思いますが、しかしながらそれは余り強くないのではないか、むしろ非常に弱いというのが現状なのではないかなというふうに感じるわけでございます。
さらに、今回、他産業並みの生涯所得を確保するはずだった農業者年金が事実上破綻してしまったというわけでありますから、今後は本当に農業でも生涯所得が保障されるかどうかさえ疑われても仕方がないところかと思います。
今回新たにつくられる農業者年金制度では、安全性が高いというふうにおっしゃっておられますが、これまでも同様に安全だというふうにおっしゃっていたわけでありまして、これまでの制度と比べて、どこが違うのか、どこがより安全になったのかというところを御説明いただきたいと思います。
○金田大臣政務官 これからどういう点が新しい制度になったら安定的になるのかということでございますけれども、従来、賦課方式をとっていたわけであります。賦課方式ということになりますと、現在の受給者、そして現在保険料を納めている方々と加入者の比率によって、大分負担の関係が不安定になってくるわけでございますけれども、これからは自分の積み立てたお金で将来、老後に受給させていただくのだということになりますから、そういった意味でも安定的な制度になっていくのだろうというふうに思っているわけです。
また対象が、従来だったら五十アールぐらいの土地を所有している人でないと入れないとか、あるいは任意で三反以上の方でないと入れないというようなことになっていたわけでありますけれども、これからは、農業に六十日以上従事する人であればみんな入れるようになるという形で、すそ野を相当広げさせていただいてもおります。
そういった意味で、従来の農業者年金から比べたら、新しい制度というのは、より安定的なものになっていくのだろうなというふうに考えているところでございます。
○津川委員 確かに、賦課方式から積立方式にすれば、制度そのものが破綻するというようなことはなくなるかなと思います。ただ、賦課方式と積立方式はどちらが安定的かというのは、一概に言えないという部分もございます。
積立方式にすれば、制度は確かに破綻しないかもしれませんが、そのかわりに、幾つかの状況が重なれば、掛け損が発生する危険性があるわけであります。そのこともちゃんと農家の方々に説明しなければ、仮にいろいろ状況が重なって掛け損が万一発生してしまった場合、また政府は農家に対してうそをついたのかというような批判がされる可能性もございます。
安全性あるいはそのリスクというものを正確に公表するということは農政の信頼を回復する上で大変重要なことであると考えますが、新しい制度での掛け損の発生の可能性について御説明いただけますでしょうか。
○金田大臣政務官 これから後、新しい制度に入っていただけるかどうかということを、四十万人以上の方々に大いに説明し、こういう危険もありますよという形で、丁寧な説明、パンフレット等々をやりながら、やはり入っていた方がいいのだろうなというような形の中で新しい制度をつくり上げてまいりたいというふうに思っております。
危険もあることは確かではありますし、基金の運用次第によってはいろいろなことがあるわけでありますけれども、そういったことについても公明正大にガラス張りの財政運営をしていくことが必要だろうというふうに思っております。
○津川委員 ありがとうございます。ぜひそういう丁寧な説明をお願いしたいと思います。
では、もう一つお伺いしたいのですが、この年金制度は、また政策年金でございますが、政府案のままでいけば、年金給付額を今回これまでの加入者の方々の分に関してはカットをするということでございますが、新たな政策年金における国庫負担の上乗せ分に関しては、ひょっとしたら将来においてもまたカットをすることがあり得るのか、それとももう二度と年金受給額をカットすることはないと言っていただけるのでしょうか。それはどうでしょうか。
○金田大臣政務官 先ほど副大臣も言われましたように、所得をどうやって確保していくかということがこれからの農政の大きな課題になるわけであります。七十を過ぎた後、リタイアした農民の方々を所得でしっかりと保障してやるということは直接補償では到底無理なわけでございまして、やはり生涯所得を保障してやるということになったら、年金の持つ意義というのは本当に捨てがたいものだというふうに思っております。そういった意味で、政策支援も、保険料について毎年百四十億からの支出をしながら、農家の皆さん方の所得支援という形でやっていきたいというふうに考えております。
将来、それがまたカットになるということは、今の段階で考えてはおりません。
○津川委員 今の段階から考えていらっしゃったらちょっと大変なことでありますが、当然それがないように努力をされるということであろうと思います。
先日の委員会の中で、あるいはきょうも大臣はこのような事態に陥ったことについてはっきりと謝罪をしていただきました。現役の大臣がはっきりと謝罪をされるということはそうそうあることではないと思いますし、谷津大臣の責任のある判断に、心から敬意を表して、高く評価をさせていただくところでございます。
私は大臣の謝罪というものは非常に重いものであると認識をいたしております。逆に言えば、謝罪などするようなことがそうそうあってはならないということでございます。したがって、今回のような事態に陥ったことに関して、大臣が謝罪をされたということは、二度とこのようなことを繰り返しはしないという強い決意表明と同義であるというふうに私は判断をいたすところでございます。
しかし、これからも政策年金として農業者年金基金を存続させるということであれば、やはり、その決意がはっきりとはなかなか具体的に伝わってこないというのも事実でございます。
お怒りにならないで聞いていただきたいんですが、例えば、後の大臣が頭を下げさえすれば、たとえ既裁定の年金給付額であっても九・八%はカットできるというように、今回の大臣の謝罪があしき前例として、谷津大臣の本意ではない形で残されてしまわないためにも、今回の謝罪と同時にもっと踏み込んだ抜本的な改革を行わなければ、なかなか大臣の決意というのは伝わってこないのではないかなと思うところでございます。
例えば、私ども民主党案のように、本来の年金部分を政策と切り離してより信頼性の高い年金に移行していただいた上で、政策的な部分に関しては、年金ではなくて現役世代の方々に対する直接的な政策に集中をしていくというくらいの思い切った見直しをするべきではないかというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。
○谷津国務大臣 今度の改正を御提案させていただくにつきましても、先ほどから申し上げておりますとおり、大綱案を出させていただきまして、それをたたき台といたしまして、団体そしてまたその団体の方たちは、直接、受給者あるいはまた加入者、そういう方たちとも幅広く議論をしていただきまして今日のこの提案になってきたわけであります。
少なくとも、先ほど副大臣も申しておりましたが、生涯所得ということを考え合わせたときに他産業並みという中の、また一部、年金を私どもは他産業並みの一つの概念の中に、二億二千万から二億七千万の範囲の中に、約三千万を年金の部分でというふうに考えておるところであります。そういうふうなものを確保するがために、私どもはしっかりとした年金制度というのを今御提案申し上げているところであります。
そういう中で、私は、長年見ている中で検討してきた結果、五年ごとに実はこれ、見直しと言ってはなんですがそういう検討をし、そのたびに国会にも御論議をいただいておりまして、当委員会においても、平成七年度のときの議論においては満場一致でこれを支持していただいたという経緯もあるわけであります。
しかし一方、十四年度には破綻に帰するような状況になってきたということについて、その見通しについて、私は本当に申しわけなく思っているわけであります。今後こういうふうなことがあってはならぬということは強く思っているわけでありまして、それなるがゆえに、長い間検討させていただきましてこの案を提示させていただいたということでございますので、その辺はひとつ御理解をいただきたいと思うわけであります。
○津川委員 ありがとうございました。
現役世代の方々に対する直接的な政策もやはり不可欠であるというふうな御認識もいただいていると思いますので、民主党案、私どもの提出させていただいた趣旨は一定の御評価もいただいているのかなというふうにも受け取らせていただくわけであります。ただ、どのような政策をとるにしても、政府案のような政策をとるにせよ、我々の民主党提出の法案をとるにしても、改革には、これまで何度もお話が出てきましたとおり、現場の声が不可欠でございます。
先週来の委員会においても私ども御指摘をいただいているとおり、私どもの民主党案の中には、必ずしも現場の声が担保されているわけではございません。しかし、私どもは、それぞれの農家の方々と直接お話をさせていただく中で、政府案が現場の声を積み上げてつくられてきたという点に関しては、なかなか実は納得しがたいものがあるというのも事実でございます。
現場の声をもって改革をするということはどういうことか。
実は、私もかねがね現場主義ということをずっと言わせていただいているんですが、現場の声を参考にして政府あるいは政治が何かを判断して実行するということではなくて、むしろ、現場が判断をされて、いかなる改革が必要でその手段はどういうようなものかとみずから判断をして実行される、政治はそのサポートを全力で行うというのが真の意味での現場主義というものになるのではないかなと私はかねがね訴えさせていただいているわけであります。
政治が何らかの指南をするというよりも、真実の瞬間という言葉もございますが、時の流れ、時代の流れの最先端にあります現場の方々においてこそ、今本当に必要な改革は何であるかがわかるわけでありますから、よりむだのない有効な手法を現場の方々は選択をすることができる、それが現場主義であると考えているわけでございます。
政府案では現場の声を積み上げられたと説明をされておられますが、まだちょっとなかなか理解できないのが、現場の方々は一円たりとも削られては困るという声が現場から出てきたのはよくわかるのです。ただ、現場の方々が、我々もかぶってもいいという意見が出たのかどうなのか、あるいはその現場の声をどの辺に政府案に反映されたのかということをお答えいただければと思います。お願いします。
○松岡副大臣 先ほどから私も何度も申し上げて、先般も申し上げたことですから、一貫性という意味で私の方から答えさせていただきます。
それはだれしも、自分が少なくなるものは一つも少なくならない方がいい、多くなるのは一つでも多くなった方がいい、これは人間の自明の理だと思います。しかし、置かれた状況なり周りのまた情勢なり、こういったことの中でぎりぎり最低限どこまではやむを得ないかというのは、それは消極的ではあっても、やはりそういった最終の判断というのはあるわけであります。
そういう意味で、他の年金につきましても、将来の受給額について、御案内のとおり厳しい一定の整理が昨年なされたわけでありますね。また、他のいろいろな分野においても、例えば金利の問題等もあるわけでありまして、そういった意味においても、なかなか厳しいいろいろな情勢がある。
こういうことからして、今、津川先生がおっしゃいますように、本当に心から納得をして、もうそれはよろしゅうございます、こういうことになるかならぬかということについては、それは私もそうはならないだろうと思う。
しかし、置かれた状況を、みんなでこの年金を守って、なおかつまた組み立て直してやっていくということになったとき、じゃ、自分たちが負担する部分、これは少ないにこしたことはない、できればゼロにこしたことはないけれども、どこまでやむを得ないかという議論は、現場でずっと積み重ねられてきた、またその積み重ねを我々は受けた。
これは、団体の皆さん方も責任を持って、それは地域によっては多少の違いはあるでしょう。しかしやはり、今例えば単協単位でそこまでの詰めがなかったら農協というのはもちません。農協役員、理事さんたちももちません。これは、我々がいつも現場で実感するところであります。
大臣も私も、現場サイズ、現場感覚、現場主義と言っておりまして、私どもも、例えば役所がつくった政策と現場とはサイズ的に合うのか、こういった点につきましては常に突き詰めておるところでございます。まさにそういった意味では、言い方や表現の仕方は違うかもしれませんが、先生がおっしゃっていることと我々の認識というのは一致しているんだろうとも思います。
今言ったようなことで、現場から、本当に現場も血のにじむといいますか、それこそ大変な苦労の中で議論を重ねて最終的な整理に至って、今日に至って私どもとしてはそれを受けとめた、こういうことであります。そして最終的な整理をした。
○津川委員 政府案の方に現場の声が入っているのか、私どもの案の方が現場の声に近いのか、これはここで議論してもらちの明かないことですし、どれだけ時間をかけたかといえば、当然政府の方が多くの時間をかけて手間をかけられたわけですから、それはそうと言わざるを得ないのかもしれません。
ただ、現場主義といったときには、現場の方々の意見というよりもむしろ、現場の方々の責任で現場の方々が率先してされるということになるかと思います。もちろん、今すぐ農政に関して、現場の方々にすべて責任を持ってあらゆる判断をして改革をしてくれというのもむちゃな話でありますし、単なる理想かもしれませんが、非常に非現実的な話ではございます。
しかし、今のように非常に困難に見える国内農業の立て直しも、実はその具体的なアイデアというものは既に現場の中にあると私は確信をいたしております。
担い手確保という点においてもまたしかりでございます。年金制度で政策的に誘導するといったことよりも、むしろ、農業そのものに強い魅力を多くの方々に感じていただくということがやはり不可欠であろうと判断するわけでありますが、これからの国際競争社会の中で、残念ながら、なかなか明るい展望を抱きにくいというのもまた一方で現実であろうかと思います。
ただ、実際の農家の中には、非常に苦しい中でも大変な努力をされて、割合うまくいっているという実例があるのもまた事実でございます。こうすれば万事うまくいくというような答えがあるわけではないかもしれませんが、現在のところうまくいっている、あるいは何とかなりそうだという例を多くの方々にも知っていただくということもまた重要であろうかなというふうに思います。
当然、それぞれの品目ですとか地域によって大きく条件は異なるわけでございますが、これからの国際競争の中で日本の農業がどれだけやっていけるかということをなるべく具体的に示すものがあれば示したい。
例えば、食料基地であります北海道での農業の成否というものが一つの指標になることかなというふうに思います。単なる規模の拡大だけでは国内農業は世界で太刀打ちするということはなかなかできないかと思いますが、少しでも規模のメリットを持っている北海道が現状どのような状況にあるのか。
私どもの民主党にも北海道選出の議員は何人もございますが、せっかくですから、金田政務官、日本の農業のこれからの可能性について御見解をいただければと思います。
○金田大臣政務官 御指名でございますので、御答弁させていただきます。
私も地元、北海道でございます。そういった形で、稲作農家がどんな状態になっているのか、畑作農家がどんな状態になっているのか、そして酪農の経営がどうなっているのかということでございます。
将来に展望を持てないというような声も歩いていてよく耳にします。そういったことにつきまして、今農政の大改革の途上でございまして、新しい農業基本法に基づいて、自給率の向上のために、おれたちが頑張らなければ自給率が上がらないんだよというような意欲のある農家というのは本当に、若干いることも事実でございます。
例えば、酪農につきましては、本州の方とは規模が大分違っております。五・七倍ぐらいの飼育頭数の肉牛関係者、そして本州と比べて二・三倍ぐらいの飼育頭数の乳牛酪農家、そういった方々がおります。ふん尿処理等々の大きな課題も抱えておりますけれども、これで加工原料乳価等々について一定の見通しもついたな、価格体系は、市場原理が入ってきたけれども大丈夫だなというような見通しも持っておりまして、これからは自動搾乳機を入れてみたいとか、もう少し頭数をふやしてみたいとか、コントラクターを使ってもう少し省力化をしてみたいとか、そういったような結構意欲のある酪農家がだんだん育ってきておることも事実でございます。
国際競争の中でいろいろな課題があります。畑作農家については今回の輸入野菜のために大変な打撃をこうむっていることも確かでございますけれども、対応策のよろしきを得て、皆さん方にしっかりと、将来展望が切り開けるような、そういった農政を展開してまいりたい、そしてまた津川さんの御協力も賜りたいものだというふうに思っております。
○津川委員 ありがとうございました。
私の選挙区は、昨夜大変大きな地震がございました静岡県中部の藤枝市ですとか島田市、川根町があるあたりなんでございますが、御存じのとおり、お茶どころでございます。もちろん米も大分つくっているところでございますが、例えば、北海道などが先頭を切って国際競争にも勝てる農業を実践しているということになれば、ほかの地域にとっても大いに励みにもなりますし、また大きな刺激にもなろうかと思います。
非常に困難を伴うことであるとは思いますが、農業者以外の方々の理解もいただきながら、日本の農業をあきらめずにしっかりと守り立てていくということが大変重要であると考えますので、決して問題の先送りなどすることなく、政府としても前向きな農業政策を当然とっていただきたいということをお願いするところでございます。
私の個人的な考えを若干披露させていただきますが、日本の農業の生き残りのかぎというのは、やはり消費者ニーズにどれだけ細かく対応できるかということであろうかと考えます。食品の安全性などの付加価値を高めるということによって安い輸入農産物に対抗できるのではないか。
実際、安全性を売り物にして成功している例もございます。ただ、それが全体的にブレークスルーしていないというのは、実は安全性あるいは生産者といったその他の情報がなかなか消費者にしっかりと正確に伝わらないというところがございます。技術的になかなか難しかったということだと思いますが、実はそれを解決するかぎがIT革命でございます。
e―Japan構想というのを聞いたことのある方もあると思いますが、消費者と生産者双方の情報のやりとりがそんなに困難にならなくなるということになれば、農家の方々が自己改革をすることで日本の国内の農業も立ち直る可能性は十分にあるんじゃないかと私は思いますから、その辺のところにもまず、政治としての大きなサポートも必要であろうかな、先見性を持ったサポートが必要であろうかというふうに考えているところでございます。
最後に、大臣に質問させていただきたいと思います。
そもそも論で恐縮でございますが、農政というものは、個々の農家を保護することによって日本の農業を守るということではなくて、農業というシステムを国内において維持発展させることによって個々の農家の経営を成り立たせるものではないかというふうに私は考えるところでございます。
だからこそ、今回の農業者年金制度においても、手直し的なことで継続をするということではなしに、抜本的な見直しが必要ではないかということで民主党案を提出させていただいたわけでございますが、この考えについて大臣の御見解をいただければと思います。
○谷津国務大臣 先生御指摘のとおり、我が国の農業におきまして、食料を安定供給するということ、そしてまた、多面的な機能を発揮できるような農業ということを考えた場合に、もう一方では、産業としての農業ということは非常に大事な点でございまして、そういった面では、農業者がいわゆる他産業と同じように、これを安定的な経営に持っていくということは大きな要素であるというふうに考えているところであります。
特に、先ほど消費者問題についてもお話がございました。私も、これは副大臣、政務官とも、きちっとした方向を出す必要があるぞという中において、この消費者対策というのは非常に大事な農林水産省としての政策のもとであるというふうに考えているわけでありまして、そういった面から、消費者とそれから生産者が共生すべきものだというふうに私ども思っているわけであります。
ですから、生産者側にとりましては、国民の健康を食の面から寄与しているんだというふうな大きな誇りを持って生産に当たってもらいたいというふうに考えておりますと同時に、一方、消費者にとりましても、国内でつくられたものが完全に消費できるような消費体制をとらなきゃならぬというふうにも思っているんです。
それには、国民の、いわゆる消費者のニーズに合う製品をつくらなきゃならぬということであると同時に、それはまた一方では、毎日毎日食べるものでありますから、できるだけ安く供給するというのも大きな要素であるんではないかというふうに私は思うんでございます。
そういうことを考え合わせますと、当然農家の側の、生産者側の所得というのが減ってくるわけでありますから、その辺のところは、国民の皆さん方の御理解を得ながら所得政策で対処していく。いわゆる価格といいますか、製品そのものは市場に任す、そしてまた、政策で所得というふうなものを確保していくことが大事かというふうに思います。
そういった面の農政の展開をそこに進めていきたいというふうに考えているわけでございまして、先生御指摘のとおり、何といっても農業者が経営としての農業というのをしっかりと確立させていくことがこれからの世界の農業に立ち向かっていく大きな要素の一つであるというふうに考えているところであります。
○津川委員 終わります。ありがとうございました。
○堀込委員長 次に、岩崎忠夫君。
○岩崎委員 おはようございます。自由民主党の岩崎忠夫でございます。
農業者年金制度の改正につきましては、去る三月二十八日の法案質疑と昨日の参考人に対する質疑でいろいろな角度からする論点がおおむね出そろったものと考えているわけでありますが、今回の改正は、農業者に係る年金制度の抜本改革を図るという数十年に一度の大改革であります。
そこで、私からは、制度改正に当たっての基本的な論点をおさらいしながら、松岡副大臣及び金田大臣政務官にお伺いをしてまいりたいと思います。
農業者年金は、若い後継者が相当数いる、農地が足りないといった昭和四十年代前半の農業構造の中で、農民に恩給をという声にこたえて、旧農業基本法の政策目的を達成するために創設された政策年金であります。今日まで、農業者の老後生活の安定、農業経営の近代化などに多大な役割を果たしてきたのでありますが、若い担い手が不足していることから、経営移譲しようとするにもできない、また加入者一人が受給者三人を支えるという根本的な問題に直面しまして、今回の抜本改革に至ったのであります。
抜本改革の成案を得るまでには、現場の農家の方々の意見を集約しながら、自由民主党、農林水産省及び農業団体の間で二年近くの真摯な議論がありましたことは、さきに我が党の木村太郎委員が述べられたとおりであります。
ここではまず、今日まで九十八万人に対して三兆七千億円もの年金を支給してきましたこの農業者年金制度が果たしてきた役割とその成果について、松岡副大臣の御認識をちょうだいいたしたいと思います。
○松岡副大臣 先生御指摘のとおりでございまして、農業者年金制度、これは四十五年にスタートをしたわけであります。いろいろな目的を持ってといいますか、まず、とにかく当時の状況のもとで農業の構造改革をなし遂げていく、その大きな一つのポイントとして、適期の経営移譲を通じて農業者の老後生活の安定、農業経営の近代化、農地保有の合理化、こういったことを大きなねらいとしてこの制度はやってきたわけであります。
先生がおっしゃいましたように、九十八万に対して三兆七千億とおっしゃいましたが、私どもは三兆八千億、こういったようなことで年金を支給する、こういったことで農業者の老後の生活の安定がまず図られてきた。
それから、三十代前半の後継者を中心に八十七万件、約九十万件にも達するような経営移譲が行われて、農業経営の若返りが図られてきた。そしてまた、百五十七万ヘクタールの農地が細分化されずに後継者に継承されてきた、そして十五万ヘクタールの農地が第三者に移譲される、こういったようなことで農地の細分化の防止、規模拡大にそれなりの寄与があった、このように評価いたしておるところでございます。
そしてまた、さらにこれらの成果につきましては、農業経営の若返り、農地等の生前一括贈与を受けまして贈与税の納税猶予を適用されている後継者を中心とした受贈者が四十から五十代、こういうことに対しまして、経営移譲を受けている後継者は三十代前半であるといったことからも、こういった比較を見て、その成果というものは評価されると思っております。
規模拡大も、一件当たりの農地移動面積が、農業者年金の第三者移譲の場合は、一般と比べまして都府県では四・一倍、北海道では二・六倍、こういったことからもそれなりの成果は上げてまいったものだ、このように評価いたしております。
○岩崎委員 ありがとうございました。
私も全く副大臣と同じように見ておりまして、この農業者年金、政策年金として相応の成果を確実におさめてきたと受けとめておりますが、何よりも農業者の生活安定に本当に寄与してきた、私はこのように考えているわけであります。
そこで、この農業者年金制度は、農業情勢の変化と年金財政の両面からこのままでは立ち行かなくなってきたわけでありますが、制度を大きく変えようとする場合には、当然これまでの制度がどうであったかを顧みることが必要であります。
そこで次に、農業者年金の制度設計と運営の評価についてお伺いをしたいと思います。
農業者年金の財政方式は、当初、積立方式で発足いたしましたが、昭和五十一年改正で農業者の強い要望を受けて経営移譲要件を緩和した結果、積み立て不足が発生しまして、五十六年改正で修正賦課方式に移行したものであります。
また、平成二年には既に農業者年金の受給者数が加入者数を逆転してしまっておりましたし、平成七年の財政再計算におきましては実績との乖離が非常に大きかったことなどを考え合わせますと、農業者年金を持続可能な制度として設計、運営していくことには当時いろいろ難しい点があったと考えているのであります。
去る三月二十二日の本会議におきます民主党古賀議員の質問において、古賀議員は、既に五十年代後半から破綻は予測可能であり、遅くとも平成元年前後には不可避と判断できたのに、なぜここまで放置してきたのでしょうかと、あたかも他人事のように述べておりますが、当然野党も五年ごとの財政再計算の機会に行われてきましたこれまでの改正に参画をしてきております。前回の平成七年改正におきましても、この農林水産委員会で政府原案を野党も含め全会一致で可決しているのであります。
このように、結果論で物を述べるのは大変簡単でありますが、そうした単なる責任追及論に堕することなく、絶えずよいものをつくっていくという建設的な前向きの立場で評価を行う、こういう観点から、そして健全な制度運営を図っていくという見地から、また新しい制度が長期的に安定した持続的な年金制度になることを願う立場からも、これまでの農業者年金の制度設計と運営についてどのように評価したらよいのか、松岡副大臣のお考えをちょうだいしたいと思います。
○松岡副大臣 先生の最初の御質問にもお答え申し上げましたように、私どもこの制度、先ほど内容を申し上げましたが、一定の成果を上げてきた、それなりに農政の進展に、また農業現場の改革に評価ができる、こういったことを申し上げたわけであります。
一方におきまして、大臣も先般来表明をいたしておりますように、いろいろな事態の推移の中で破綻を招かざるを得ないような状況になったことにつきましては、大臣も、農政を預かる責任者としてまことに申しわけなかった、こういったような真摯な立場からそういうことも申し上げたわけでございます。
私どもまさにそういう思いに立ちまして、さらに前進的な、建設的な農政というものを展開していく上でこの年金制度というのをどう位置づけるか、こういったことであります。
これは何といっても、先ほどからるる津川先生の御議論にもございますが、いろいろな要素がありますが、我々農業現場の皆さんとも話しておりましても、大きな要因の一つは所得、これがやはり大変重要なわけであります。
そういたしますと、そこがまた民主党案と私どもと違うのですけれども、私どもは、生涯所得というようなものを現役時代の所得と老後の所得というようなわけで、これを車の両輪、まさにそういう位置づけでとらえているところでございます。
そういった意味から、私どもは過去を反省しつつ、そしてまた問題点を十二分に整理しつつ、将来に向かって農業者の皆様方、特に意欲を持って効率的な経営をやっていこう、こういった方々に、まさに現役時代と老後と合わせて、本当に将来を見通して、一生を見通して、ひとつこれは頑張っていこう、こういったような大きな仕組みをひとつ提示しよう、これが今回の年金改正のねらいでもございます。そこに視点を当てて、私どもは建設的、前進的に今回の提案をさせていただいた、大きな観点からいえばそういったようなことでございます。
まさにそういった意味におきまして、内容的にも私どもいろいろな改善をし、そしてまた具体的な中身も盛り込んでおるわけでございますので、どうかこれから、先ほど金田政務官も言いましたように、十二分に現場の皆様方に説明が行き届き、そして御理解をいただいて、目指すすばらしい形に運営ができていくような努力を重ねてまいりたい、こう思っております。
○岩崎委員 大変ありがとうございました。
松岡副大臣の、問題を十分に整理して将来にきちっと立ち向かうという強い決意をお伺いしたような気がいたします。新しい制度が本当に農業者のために役立つこととなるように、制度をしっかりとつくり、かつ守っていっていただきたいとお願いする次第でございます。
次に、新たな政策年金として再構築する制度の緊要性についてお伺いしたいと思います。
現行の農業者年金につきましては、農業後継者の過半が農業者年金に加入しない、加入者一人が受給者三人を支えているなどの最近の農業を取り巻く情勢の変化と年金財政の状況から、制度の抜本改革を行って継続することとされたものであります。民主党案が主張する制度の廃止などといった議論は、農村現場でも、また農業団体と政府・与党とが議論を重ねる過程においても全く論外とされたものであります。
真摯な議論を重ねる過程で問題とされましたのは、専業的農業者として我が国農業を中核的に支えてきた農業者年金の受給者、加入者の信頼をどのように確保していったらよいのか、また制度の継続と支援の拡大を求めます農業者の声にどのようにこたえていったらいいのかといったことであったかと思います。
また、現行の農業者年金制度を積立方式に切りかえる際には、通常は、既に保険料が納められたことに対応する年金給付債務を負担しながら加入者は自己の年金部分も積み立てるといういわゆる二重の負担をしなければなりません。こうした加入者の二重の負担を回避するためには、改正法施行前の保険料納付済み期間に係る給付に要する費用はすべて国費で賄うこととする必要がありますが、そのことについて国民一般の納得が必要であります。
農業者優遇の批判を受けず国民一般の理解と納得を得るためには、将来的に三兆六千億円にも上る国民負担を仰ぐこととの均衡を図る観点からも、受給者、加入者に対しても一定の負担を求めざるを得ないではないかという関係者のぎりぎりの判断がそこにあったのではないかということであると思います。
このようにして、時代の要請と基本法の理念に沿った、農業者に魅力のある政策年金としての再構築が求められたのであります。
そこで、今回の制度改革の緊要性及び制度のねらい、また改革に当たっての基本方針などにつきまして、松岡副大臣のお考えを伺いたいと思います。
○松岡副大臣 今先生からも、先生のお考え方、また先生自身が政治的な立場でこのことについて取り組んで経験をされてきたお立場からいろいろ御指摘があったわけでありますが、私もその御指摘、全くそのとおりだというふうに思います。そして、先生のお尋ねであります今回の制度改革の緊要性と制度のねらい、また改革を進めていくに当たっての基本方針についてどうか、こういうことであります。
これを大きな一つくくり方で申すならば、私は、今回の改正は、農業の持続的発展の実現のため、長期安定的で、かつ担い手の確保に資する制度にするということでありまして、緊要性という点につきましては、今日までの議論の中で、とにかくこういう状態に立ち至った、したがって一日も早くこれを前進的、建設的な、そして農業現場の皆さんが意欲の持てる、希望の持てる、そういったものを提示しなきゃならないということで、その必要性から今回の改正となったわけでございます。
そしてまた、制度のねらいでございますけれども、これも先ほど先生の御指摘の中にも十二分に尽くされておりましたように、やはり農業というものが国民生活にとって必要不可欠、大変重要な、国民生活のまさに土台である。こういった農業を振興、発展させていくために担い手の皆さん方の確保、こういうことになりますと、何度も申しますが、生涯をトータルととらえまして、そしてそのトータルの中の老後という部分、若いとき頑張ったから老後はこれだけの安心した生活がちゃんとできていく、そういう老後にまで及んだ見通し、こういったことがどうしても必要でありまして、そこが基本的なねらいである、こういうふうに私は思っております。
これを、現役は現役、老後は老後、それぞれ別々でやればいいじゃないかということになりますと、なかなかそれは、言ってみれば全体を通じた安心感というものはやはりないのだろうと私は思う。そこが我々政府の案と、先ほどから津川先生からも御指摘いただきましたが民主党案との大きな違いではないか、こういうことでございます。
基本方針につきましては、まさに新農業基本法の基本方針に即しまして効率的かつ安定的な農業経営、こういったことを目指して私どもは、農業現場が大きく進んでいきますような、そういった方向に持っていきたい、こういうことでございます。
そこで、農村現場の要望の実現に努めながら現行制度を根源から見直しまして、将来の年金を安心してもらえるよう、受給者数、加入者数等に左右されにくい積立方式を採用した、これは従前から言っておることであります。
それによって長期的に安定した制度にする、そしてまた、意欲ある担い手には保険料の助成を行いまして、喫緊の課題となっております担い手の確保に資する制度としたい。先ほど政務官も言いましたが、十二分に万全に説明、または広くこれを末端まで浸透させる努力をいたしまして御理解を得たい、このように思っております。
○岩崎委員 どうもありがとうございました。
新制度は、そのように担い手確保を政策目的として農業者のために再構築されました政策年金であります。言うまでもなく、現下の我が国農業は、これまで我が国農業の中心を担ってきました昭和一けた世代の農業からのリタイアが進みつつあります。新規就農者も少なく、危機的な担い手不足に陥っていると言っても過言ではありません。
このため、新しい基本法に基づき、先ほどから答弁もちょうだいいたしておりますが、その確保のための政策が求められるところであります。基本法農政は担い手の確保を得て初めて実現できるものでありますし、それには農業者年金をきちんと用意することが大事であると思います。
そこで、金田大臣政務官に、担い手確保対策を農政全体としてどのように進めようとし、その中で新しい政策年金をどのように位置づけようとされているのか、そのねらいについてお伺いします。
○金田大臣政務官 岩崎先生御指摘のとおり、農業者、新規担い手をどうやって確保していくのかというのは、農政全体の大変な大きな問題でございます。これにつきまして、農林省を挙げて取り組ませていただいているところでございます。
いろいろなことをやらせていただいております。各都道府県を通じまして新規就農の説明会を催したり、あるいはそういう募集を受け付けたり、あるいは職業安定所、大阪、名古屋、東京等々について、農業がこういう農家を求めておりますよという職業紹介をしたり、あるいは新規就農をする際に研修のための補助金を上げたり、あるいは農業者大学校における新しい研修を実施したり、あるいは新規に就農するということになりますと、いろいろな融資制度を用意しておりまして、無利子で四千万までとかというような形で新規就農者に御融資申し上げる、あるいは債務保証してあげる、そして新しい農政、担い手対策のためにいろいろとやらせていただいているわけであります。
ようよう政策の効果も上がってきておりまして、毎年一万一千人ぐらいの新規就農者を確保できておるところでありますが、まだまだ足りません。そんなことで、この政策について強力に進めていかなければならないというふうに思っているところでございます。
それで、この新規就農と農業者年金の位置づけでございますけれども、やはり老後の所得がしっかりと保障されているよ、そして農業者年金について、農業を続けていっていれば保険料の補助金も出るよ、保険料を国がかわって納付してあげるよというようなことは、新規就農者確保のためにも大きな魅力でございます。
何といっても他産業並みの所得が確保されるために、年金の持つ意義というのは大きゅうございまして、こういった中で、農業者年金をしっかりと支えながら、新しい新規就農者の確保のための大きな力になり得るものだというふうに思っているところでございます。
○岩崎委員 ありがとうございました。
担い手確保のために農政の各般の施策をフル出動させて万全の体制でそれに取り組むということでありまして、農業者年金はそのための大変有力な手だてだとお伺いしたわけであります。
次に、農業者年金の財政方式についてお尋ねしたいと思います。
新制度は、確定拠出型の積立方式をとることといたしているわけでありますが、そのことによって制度が長期的に安定した持続的なものになったと言えるでございましょうか。現行制度も当初は積立方式で始まり、途中で賦課方式に変わったわけでありますが、そのために今日に至ったとも聞いているわけであります。
物価上昇等の局面が来れば、また賦課方式に変更することがあり得るのではないかと心配する人もありますが、松岡副大臣、こうした懸念についてどう考えているのか、お伺いしたいと思います。
○松岡副大臣 全くそこのところが一番問題であります。確定拠出型の積立方式、これは安定的で持続的な制度と言えるか、また、賦課方式に変更することは将来ないのかあるのか、こういったお尋ねでございますが、賦課方式、積立方式、それぞれ突き合わせますと、いろいろ利点、欠点を持っております。
しかし、今日までのいろいろな経過の中で、また問題点等の整理の上で、私どもは、この新制度におきましては、農村部における高齢化の著しい進展、そして、そのもとで長期的に安定した年金制度とするためには加入者数や受給者数に影響を受けにくい年金財政の仕組みとして積立方式がベターである、こういったことからこのような方式を今回採用した、こういうことでございます。
そして、いろいろ突き合わせの結果、これは今言いましたような理由もありまして、長期的に安定した持続的な制度だというふうに私どもは判断をいたしたわけでございます。
また、過去、物価スライドの導入等により年金負担が大変かさみまして、その結果やむを得ず賦課方式に変更したことが今日の財政破綻の原因となったということも先生御指摘のとおりでございます。したがいまして、今後、賦課方式に切りかえるということはやらない、こういう方針でございます。
○岩崎委員 次に、新制度の政策支援について伺いたいと思います。
農業者年金は、農業を魅力あるものにするための重要な柱でありますし、とりわけ若い担い手に安心で魅力ある制度としてつくることが必要でありますし、そのために新制度においては公的年金の二階部分に政策支援が導入されたものと考えているわけであります。
このような政策支援については、農業者向けの年金だけにあるのはけしからぬという向きもございますが、その必要性、ねらいにつきまして、北海道は農業者年金の加入者も多いと思いますが、金田大臣政務官の見解をお伺いしたいと思います。
○金田大臣政務官 何としても、この政策年金、農業者年金という制度は基本的に維持していただきたいというのが農家の皆さん方の御要望でございました。そのためには若干の給付額の減というのもやむを得ないというようなことで、この農業者年金を維持してまいるわけであります。
そういった中で、やはり何といっても、意外と自分は将来農業をやってみたいという方々が大分潜在的にいるというふうに我々は見ておりまして、こういった中で、新しい農業者年金には保険料について政府の政策支援があるんだよということは、本当に大きな魅力になっていくものだというふうに考えております。
老後がしかるべき所得が確保される、そういったこと、それから現役時代に保険料の助成があるんだよというようなことは、新しいこれからの農業に従事する人、また今従事している、まさに日本農業の主力部隊と申しますか、そういった農業者の方々にとって大きな力になり得るものだというふうに思わせていただいているところでございます。
○岩崎委員 ありがとうございました。
いろいろ、新制度が円滑に運営されるためには、農業者はもちろん、多額の国民負担を担っていただく一般国民の理解を得ることが何より大事でありますし、また、現行制度と新制度が相当長期にわたって併存することになりますので、受給権者、加入者はもちろん、市町村現場で混乱がないようにしなければなりませんし、また、制度が安定的に持続可能なものとなるためには、加入者をしっかり確保しなければなりません。
政府、農業団体等による制度の周知徹底をよろしくお願い申し上げたいと思いまして、時間がありませんので、最後のお尋ねにしたいと思います。
最後に、筒井議員外の提案になります民主党案について、政府側にお尋ねをしたいと思います。
このような大変難解な法律につきまして、対案を作成しようとされましたその労は多とするものでありますが、民主党案につきましては、制度の継続を求める農業者の気持ちを無視するものでありまして、とても農村現場から受け入れられるものではない。そういう実質的な判断のほかにも疑問点が多々ございまして、到底実行可能な制度改革案たり得ないというのが率直な感想であります。そこで、問題点を幾つか指摘したいと思います。
まず、そもそも政府案の対案たり得るのかどうかという点についてであります。民主党案は、農業者年金基金法の附則に「検討」と題する一条を加えまして、法制の整備に際して規定すべき主要項目のみを列記し、平成十三年十二月三十一日までに具体的な中身の法律をこれからつくるといたしているのであります。
すなわち、実際に制度改革を立案した政府案は百二十五ページにも及びます大部の法律でありますけれども、民主党案はたった二ページの、これから検討すべきであるという検討規定を書いたにすぎないものであります。いやしくも年金制度の改革案という名に値するものとはとても言えないと思うのであります。
例えば、年金給付財源をとりましても、農業者年金基金の残資産が本年三月末には一千億円を下回る状況となっている中で、農業者年金の年金給付には毎年一千六百億円も要しているわけでありまして、ことしの十月には残資産が払底すると見込まれているのであります。
このため、政府案におきましては、これに備えて追加の国庫助成を措置いたしておりますが、民主党案においては、こうした点に対する措置も全く考えられておりません。また、民主党案を実現するために必要な平成十四年一月から三月分までの予算措置ももちろん講じられておりません。
さらに、民主党案においては、附則第十二条第一項に、「平成十三年十二月三十一日までに、この法律の改正その他所要の法制の整備が行われるものとする。」こういうふうに規定しておりますが、この「所要の法制の整備」というのは、一体だれがこれを行うのか。立法府の責任で行うのか、それとも民主党が責任を持って行うのか、全く不明であります。
そもそも、法制の整備に当たりまして、民主党案の附則第十二条第二項に掲げられている措置を講じた場合には、平成十三年度予算案の変更が不可欠となると考えますが、予算案の成立後にどのようにして予算の変更を行うのか、全く理解しにくいのであります。
このように、農業者年金をめぐります現下の厳しい状況を直視することなく、単なるポーズか、あるいは問題の先送りをしようとしているにすぎない民主党案には、みずから立法に当たる立法者として制度改正にまじめに取り組む姿勢をそこに見ることはできません。全くの無責任とのそしりを免れることはできないかもしれません。
政府案の対案とは到底なり得ないのではないかと思いますが、松岡副大臣はこれをどのように受けとめておられますか、お伺いして終わります。
○松岡副大臣 今先生、いろいろ事実的な問題点について御指摘をされました。そのことを私どもも大体同じような整理で受けとめておりますが、さらにそれに加えまして、一応、私どもなりの一定の民主党案との関係について申し上げたいと思います。
まず、それは公党の作成された対案でありますから、敬意を表したいと思いますし、その労は多とするものでありますが、一応、私どもとの基本的な差異は、新しい政策年金制度を構築しないとしていること、これは全く現場の願いといいますか要望と正反対である。
二つ目としまして、年金額のカットは行わず、全額国庫負担で処理する、こういうことを内容とされていること。
これにつきましては、農業者年金制度を再構築して継続をするということ、民主党案はそういう意味で現場の声にこたえていないということは今申し上げましたが、民主党案はさらに、実質的に農業者年金制度を廃止、こういうようなことを言っておられます。
そしてまた、年金額のカットなし、全額国庫負担で処理、これは大変耳ざわりのいい案でありますけれども、年金額のカットなしとすれば、さらに三千三百億円に上る国民負担をお願いせざるを得なくなる。とても国民一般の理解は得られないのではないか、このように私どもとしては思います。
それから、時間がないからもう言いませんが、いろいろ米の問題につきましてもおっしゃっておりますが、整合性という上で全く、援助とかおっしゃっていますが、穀物協定もありますし、国際価格との内外価格差、こういったものの国民負担というのはどのようにお考えになっておられるのか等々、議論をすればこれはいろいろな問題点がまだまだいっぱい指摘をできると私は思っております。
以上であります。
○岩崎委員 以上で質問を終わりにいたします。
○堀込委員長 次に、白保台一君。
○白保委員 大事な法案でございますから、大臣がおられた方がよかったわけですが、参議院の対応でございますので、そこはそれとして、松岡副大臣、そしてまた金田大臣政務官にしっかりとお答えをいただきたいと思います。
二十八日、昨日と、参考人の陳述、質疑も踏まえて、多くの質問がなされました。したがって、私は、前々から気になっている基本中の基本の問題について何点かお伺いをしていきたいと思いますが、その前に、国民の声、そしてまた農業者の現場の声、こういったものが非常に大事でございますし、そういう面ではどのように支持を得られるのかという議論も多々ありました。
そういう面で、農業会議の皆さん方や多くの皆さん方が長い間議論をされて、積み上げて、この政府案は早急に成立させてもらいたい、そういう声も受けとめております。そういう面では、早い質疑の終局、そして成立を目指すことは極めて重要な問題であろう、こう思います。
このことを踏まえて、その上でお聞きしたいと思いますが、抜本的な改正をしなければならない、このことは、多くの反省と、そしてまたこれからの未来展望というものをきちっと踏まえて行われるわけでありますが、その前に、農業者年金は、旧農業基本法の政策目標を達成するために、昭和四十五年ごろから大変な議論がなされて、私も当時農水委員会の理事の秘書をやっておりましたから、よくその三十年前の熱気というものを覚えております。ところが、その後だんだん様子がおかしくなってきて、これはいかがなものか、こういうようなことを思っておりました。
ただ、その前に、四十九年の社会保障制度審議会の答申で、もう既に財政の悪化を予告する答申がなされております。そして、これは途中微調整的なものはあったにしても、現実には、その答申で警告を、予告といいますか警告といいますか、発せられたにもかかわらず、微調整的なもので今日に至った。これはやはり、冒頭にも申し上げましたように、反省と責任というものが当然あって、そこから今度は農業者の納得のいく、そういう新たな制度というものがスタートするのだろう、こういうふうに思うわけです。
したがって、この反省点と責任という問題について、まず松岡副大臣からお聞きしたいと思います。
○松岡副大臣 今白保先生から、当時白保先生はこの農林水産委員会に在籍された先生の秘書をされておったということで、もう十分に経過等につきましても、私どもなんかよりはるかにお詳しいわけでございます。そういうお立場からの今御指摘でありますから、本当に私ども真摯に受けとめてと思っております。
大臣も申し上げましたように、いろいろな今日までの経過の中で、反省すべきは大いに反省をし、そしてまた本当に、政策の責任者としてこういった事態に立ち至ったことについては、まことに申しわけない、深くおわびを申し上げる、こういった表明をした次第であります。まさに私もそのように受けとめております。
○白保委員 しつこいようですけれども、四十九年は、既に、農業就業人口の減少の問題だとか、あるいは農業者の高齢化の問題だとか、あるいは年金財政の悪化ということも指摘されていたと思うのです。
それが根本にあって今日に至ったということについては、なぜそれを早いうちに抜本的な手の打ち方ができなかったかというのは、これからの将来のことを考えたときにこの反省の問題というのは極めて重要な問題だと思うのですが、なぜ今日に至ったのか、このことについてはいかがですか。
○松岡副大臣 先生の御指摘に、私どもも先ほど、反省すべきは反省し、そしておわびを申し上げるべきはおわびを申し上げ、それを最大限に生かして今後に対処していきたい、こうしたわけでありまして、先生の御指摘は御指摘としてしっかり受けとめながら、十二分に対処してまいりたいと思います。
○白保委員 この問題に関連しまして、政策年金については、四十九年の答申で、本制度に対する本審議会の基本的見解は、四十五年その創設に当たり述べたところであるが、以来いまだ日は浅いとはいえ、今日なおその疑念が払拭されるに至っていないという文言があるのです。
その文言は、こういうのを年金というのかなという、年金に対する疑念というものが社会保障制度審議会の中で議論されて、疑念という言葉を使われているわけでありますね。疑念というふうに言葉を使われて、政策年金、そういうことだからそれでよしというふうにしてこられたんだと思いますが、この払拭されないという疑念に対する農水省としての対応といいますか説明というものは、どのようになされてきたのか。
これから先続くことですから、この際きちっと整理しておいた方がよろしいのではないのかな、こう思いますので、このことをまずお聞きしたいと思います。
○須賀田政府参考人 先生御指摘の、昭和四十五年それから四十九年の社会保障制度審議会の答申の中に、農業者年金制度につきましての疑念の表明がございます。
その内容でございますけれども、昭和四十五年の審議会答申の中が「国の農業政策的要請があるとしても社会保障制度としての年金制度のあり方になお疑念が残る点がある。」これを四十九年の答申にも引っ張っておるわけでございまして、要は、この指摘は、構造政策という農政上の課題を、社会保障制度という手法で取り組んでいくことについての疑念というふうに私どもは理解をしておるところでございます。
これを受けまして、我々の中でいろいろ議論をいたしまして、要は、年金といいますのは、現役時代に保険料を支払いまして、老後に年金として受給をする、そういうことによりまして老後の経済的リスクに対応して生活の安定を図る、こういうものでございます。
これを農政上の政策手法として活用をいたしまして、農業経営の若返りと農地の細分化防止、規模拡大という当時の農政上の課題に対応するのに望ましい年金の支給開始要件というものを設定いたしまして、農政上の政策誘導を図ったのが農業者年金制度でございます。
その後、いろいろ農業構造の変化がございまして、五年ごとの財政再計算等を契機にいたしまして、制度改正、運用の改善に取り組んできたところでございます。
新規加入者の見込みの違い、保険料の収納率が見込みより落ちたこと、それから運用利回りが見込みより著しく低下をしていること、こういう結果が今回の制度改正に至った要因というふうに認識をしているところでございます。
○白保委員 後の方の答弁は、聞いていない話まで答弁されましたが、そこで、年金の問題なんです。
それで、年金というのは、一般的に公的年金と私的年金というものがあります。公的年金というのは、法律で定めて、強制的な形でもって、制度をきちっとして入るのが公的年金なのだろうと思います。
私的年金は、それぞれの立場に合わせて、それぞれの計画をつくって加入するという、税制上の問題はあったにしても、強制力はない、みずからの判断というふうな形に分かれてくると思うのですが、この政策年金というのは、公的年金、私的年金、どちらの範疇に入れていくのですか。
○須賀田政府参考人 今、年金の性格論についてのお尋ねでございます。
まず、公的年金でございます。
公的年金の定義は必ずしも明確ではございませんが、いわゆる我が国で公的年金と言われているものを見ますと、三つぐらいの特徴があるのではないか。
一つが、いわゆる年金の一階部分と二階部分をカバーしているということ。それから二つ目に、法律により基本的な制度の仕組みを決めているということ。三つ目に、その年金事業を政府または公的なセクター、公的な機関が運営をしているということ、こういうような共通性があるのではないかというふうに思っております。
そして、農業者年金はこの公的年金との関係でいえばどういうものに当たるかというふうに考えますと、国民年金の二階部分をカバーいたします農業者向けの公的年金ではないかというふうに、公的年金との関係では私どもは理解をしております。
それから次に、政策年金という点でございます。
政策年金についても定義が決まっているわけではございませんが、実態的に、我が国でいわゆる政策年金と称しているのは農業者年金のみでございます。
農業者年金が政策年金と称しておりますのは、この制度の目的が、社会保障としての単なる老後の安定ということだけではなくて、農政上の政策課題を目的にしているためということでございます。
具体的には、現行の農業者年金制度は、老後の安定と並びまして、農業経営の若返り、あるいは農地の細分化防止、経営規模の拡大というものをねらいにしておるということでございまして、そういう政策性に着目をいたしまして、他の公的年金には見られない国庫助成が行われているものというふうに理解をしております。
○白保委員 年金白書などを見ていますと、政策年金というのは年金制度の体系の中には組み込まれていない、そういうことなんです。
今、公的年金のことについて、三つのカテゴリーといいますか、それを分けて話をされました。大体、公的年金というのは、法律で定められて、ほぼ強制的な加入というか、そういう形になっていくわけですけれども、一番大事なことは、今回の改正の中で、制度の加入の問題についてお伺いしていきたいと思いますが、この制度の加入について、これまでは現行の制度は当然加入、こういう形でありました。これから改正していった場合に、どのような形になりますか。
○須賀田政府参考人 現行の農業者年金制度は、適期の経営移譲を通じて農業経営の近代化と農地保有の合理化を図るということを目的にしております。
要は、零細多数の農地所有構造を若くて規模の大きな経営を主体とした農地所有構造に転換していくということをねらいとしておりました関係上、一定面積以上の農地所有者については当然加入、強制加入としてその目的を図ろうとしたわけでございます。
一方、新しい制度でございますが、近年、担い手の脆弱化、耕作放棄地の増大等が見られる中で、やはり担い手の確保ということが課題になっているわけでございます。
特に、効率的かつ安定的な農業経営を目指す意欲ある担い手について、長期にわたる営農活動を支援していくということが農政上の課題でございまして、新しい年金制度におきましては、目的を担い手の確保へ改めまして、特に意欲ある担い手についてはその保険料負担を軽減するという政策支援をすることとしておるわけでございます。
したがいまして、この制度は、旧制度のように農業構造の変革というものを企図したものではございませんで、したがいまして、制度上は年金の加入については、それぞれに人生設計を有しておると考えられる担い手の自由な選択にゆだねるということで、任意加入制をとっているところでございます。
○白保委員 私が申し上げたいのは、当然加入で反省しなければならない見込み違い等もあったと思います。にもかかわらず、任意加入でこれからの見込みというものはしっかりとした形でもって成り立つのかどうか。そのことが非常に大事なことでありますから、その辺について、見込み、そしてまたその方法等をお聞きしたいと思います。
○松岡副大臣 もうおっしゃるとおりでありまして、私どもも、そこのところが一番大きな議論のポイントの一つといいますか、この問題の一番、言ってみれば原点でもあると思います、先生の御指摘のとおり。
そういったような中でこういった方向をとったわけでございますが、そこはまさにその魅力といいますか、加入していただく方々がそういった魅力というものを十二分に理解をされまして、御理解いただいて、そして本当に将来の農業の担い手としての位置づけのもとで考えればこれが一番いい自分たちにとっての選択だと。
こういったような形で、なぜ任意かということにつきましては先ほど局長が申し上げたとおりでありますけれども、そういう努力を、そしてまた末端までの浸透というものを、精いっぱい私どもは最大限の努力を払いながら達成をしてまいりたい。
先生の御指摘は、もう全くの根本的な問題でありますから、そのことを十二分に私どもは認識して進めていきたい、このように思っております。
○白保委員 この法改正に至るまでの間現場から積み上げてこられたと同じように、この問題は大変重要な問題でございますから、しっかりとした啓蒙、そしてまた活動を通じてやっていかなければならないだろう、こう思います。
金田大臣政務官には、長い間お待たせしましたが、政策効果についてお答えをいただければと思います。もう最後になりますが。
○金田大臣政務官 新しい農業者年金の政策効果いかんという御質問でございます。
これからの努力もあるわけでございますけれども、我々、やはり担い手をしっかりと育てていかなければならない。日本農業をしっかりと担える主力部隊を構成していかなければならない。
その中で、老後、リタイア後の生活を支える年金というものをしっかりとしたものにしていただいて、ああ、老後も安心してやっていけるのだ、そういった一つのインセンティブがこの農業者年金で与えられることによって、新しい農業を職業として選択する可能性が少しでも多く広がっていくのだろうと思います。
まさに、今農家の皆さん方が将来展望を見失いつつある現状の中で、さあ、この年金に入れよ、こう言っても、果たして入ることを決断していただけるのかどうか。いろいろなこれからの啓蒙活動等が相当大きくなってくるわけでございますけれども、そういった中で、しっかりと取り組ませていただきたいというふうに思っている次第でございます。
○白保委員 終わります。
○堀込委員長 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時五十一分休憩
――――◇―――――
午後零時五十分開議
○堀込委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。鉢呂吉雄君。
○鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄でございます。
農業者年金基金法案の政府案また民主党案ということで、精力的に審議を続けておるところでございます。
午前中もお話があったとおり、立法府はこの間、五年ごとの再計算で農業者年金の法案を賛成してきたという経緯もございます。今ここに現行の農業者年金が実質破綻をするような状況、そしてまた農業者年金、年金というのは五十年、百年の単位でその設計をするというような長い形で安定化をしなければならない。
そういう新たな農業者年金を新設、創設をするのかどうか、そういう非常に大事な時点でありまして、私ども立法府の人間としても、過去の経緯を踏まえて、そうであればなおさら慎重に、しかも本質をつく議論をさせていただきたい、このように考えております。
まず、きょうは大臣を主体に、金田政務官、それから厚生省の副大臣、また法制局の長官、それぞれに御答弁をいただきたいと思います。一義的には谷津農水大臣に御答弁いただくように、競合しないように大臣に一元化をいただきたい、このように考えます。
まず、大臣、この農業者年金の企画、設計、運営というものの第一義的な責務はどこが担うのでしょうか。
○谷津国務大臣 これは農林水産省でございます。
○鉢呂委員 大臣は、先週二十八日の山口わか子さんの御質問に対して、今回の経過について、平成十二年の財政再計算の結果を見ますと、過去行ってきたような、現行制度の継続を前提とした制度改善では年金財政の破綻を免れることはあり得ないというふうな認識に至ったということで改正案を提出したということでございますけれども、その御認識でよろしいのでしょうか。
○谷津国務大臣 そのとおりです。
○鉢呂委員 実は、社会保障制度審議会、この制度、農業者年金は、四十五年の五月に国会で可決、成立をして施行されたわけでありますけれども、昭和四十五年以来、四十九年、五十一年、五十三年、五十五年、五十六年、六十年、平成二年、七年と、社会保障制度審議会、昔は国民年金審議会ともいった時代もあったようでありますけれども、この農業者年金に対する答申をしておるところであります。
私、全部見させていただきましたけれども、すべて、四十五年の当初から「国の農業政策的要請があるとしても社会保障制度としての年金制度のあり方になお疑念が残る点がある。」という表現をしてきていまして、いわゆる年金と農業政策との関連。
それから同時に、先ほども白保委員から御指摘ありましたように、四十九年、五十一年からは財政的な問題についての根本的な指摘をしておるところであります。例えば五十年十二月の審議会で、「安易な財政運営により、将来財政状態が窮迫化」することがないよう、「今後とも完全積立方式の原則を堅持し、長期にわたる健全な財政運営を確保する必要がある。」と、ここまで言っておるわけであります。
あるいはまた、その直後の五十六年の改正で、従来の完全積立方式を放棄して、修正賦課方式に移行したわけであります。
その際も、五十六年の二月の答申で、農業者年金制度は、「年金保険という形態をとる限り、長期的財政見通しに立脚することが不可欠である。今回の財政再計算の結果によれば、近い将来、」これは二十年前、昭和五十六年に指摘しているのですけれども、「近い将来、年金財政上ゆゆしい事態が生ずることは必至とみられるので、この際、農業者年金制度そのもののあり方について、抜本的検討を行われたい。」昭和五十六年に指摘をしております。
過去のことでありますから、しかし、農水省として、この指摘に対してどのような抜本的な検討を加えたのか。先ほどの白保委員の質問に対しても、私は答えておられなかったというふうに見えますけれども、どのような抜本的な改正を検討されたのか、御答弁いただきたいと思います。
○谷津国務大臣 今先生御指摘の社会保障制度審議会で指摘されたもの、今手元に持っているわけでありますけれども、確かに先生御指摘のとおり、そういった抜本的な検討を行われたいというようなことが五十六年二月九日の答申においてもなされておるということを承知しておるところであります。
そういった面で、農業者年金制度については、農業政策上の有効性あるいは公的年金制度としての社会的な妥当性等について、社会保障制度審議会から御意見をいただいておりますことは今先生のおっしゃるとおりでございますが、今般の政府案の取りまとめに当たりましては、実は厚生省あるいは――当時の厚生省ですね、それと農林水産省と共同で、学識経験者をメンバーとするところの農業者年金制度研究会で何回も協議を重ねまして、そして今日のこの制度改正ということになったわけであります。
これは今までも御答弁申し上げておりますとおり、十四年度には破綻になる可能性もあるということから、これを基本的に変えるということで、そこで抜本的改正と私どもは申し上げておりますのは、もう既に御案内かと思いますけれども、積立方式に変えたということが一つございます。
それからもう一つは、九・八%の、これは移譲年金分をカットする、これは公的資金が入るものですから、三兆六千七百億が入るものですから、そういうことで国民の皆さん方にも負担をかけるということから、九・八%のカットと言ってはなんですが、そういうふうなことをとったというようなことで、基本的にそういった面の改正をさせていただきまして、そして御理解をいただきたいということから、変えたということでございます。
○鉢呂委員 現在の改正は別として、当時、このような指摘をされておったにもかかわらず、根本的な検討を加えておらなかった、その原因についてもう少し大臣からお言葉をいただきたい。これは大臣が率直に謝りますという、言葉で謝るのは簡単であります。しかし、その破綻の原因なり、あるいはその理由なりをきちんと把握をして明らかにしておく必要がある。
そういう点で、例えばその後に、四年後の昭和六十年にも同じ答申をされておりまして、本制度について、先ほど言ったような制度の抜本的検討を要請してきた。「しかるに、その後見るべき対応がなされないまま今日に至り、」「国庫負担を投入しても年金財政の確立は望み得ない状態」になっておる、これも昭和六十年の話であります。今からもう十五年前の話であります。
何がこのような、抜本的改革をしないで今日まで来てしまったのか、やはりもう少し政府の反省も込めて、どこに原因があり、どういう形で今日まで来たのか。我々も大変重い立法府としての責任があると思います。
今の農水省の担当幹部に聞きましても、何か、国会で通ったから、審議はされたからというようなことをなされています。きのうも、大変残念ながら農業者年金基金の最高幹部がみずからの責任については一切語らないと、きのうも質問者からこの点、鋭く指摘があったのですけれども、無責任体制で今日まで来たのではないか。
後でまた説明しますけれども、我々、今回の国会の議事録も全部見させていただきました。皆さんから、非常に甘い設計、甘い見通し、共産党さんからも前回、平成七年の議事録が示されました。非常に甘い新規加入の見通し、こういうものが示されました。
私ども国会というのは、もちろん議院内閣制でありますから、政府にかかわることもありますけれども、基本的にやはりチェックすべきものが甘かったのではないかという反省も込めて、この間の経緯について、やはりきちんとした原因なりその間の経過というものを示すべきである。この点だけとってみても、生半可でいきますとこの議会を私はこのままやれないというぐらいの大きな意味合いがある、このように考えます。
○谷津国務大臣 今、私も年次別の答申を見ているわけでありますが、先生御指摘のとおり、昭和六十年におきましても、「早急に本制度の趣旨、目的にまでさかのぼって、根本的な検討を行うことを強く要望する。」というふうな答申がなされておるところであります。
農林水産省といたしましては、農業者年金制度の設計、運営をする立場にあるために、不断に農業者年金をめぐる財政状況等について整理、検討を行ってまいりまして、その都度必要な制度改善を行いながら、健全な制度運営を図っていく責務があるというふうに考えております。
これがために、これまでも五年ごとに財政再計算等を契機に、その置かれている農政上、年金財政上の課題のもとで、加入者の促進とか給付体系の見直しとかあるいは保険料の引き上げ等、できる限りの運営改善を図るための制度改正を行ってきたところであります。
しかしながら、新規加入者の激減あるいは保険料収納率の低下等が続きまして、農業の担い手の減少と高齢化が著しく進展する中で、現在、農業者年金は、受給者が七十五万人、そして加入者が二十八万人と大幅に受給者が上回っているということで、その成熟度が二七〇%というふうな財政上極めて厳しい状況に陥ってきたわけであります。
そういうことから、十二年度の財政再計算等を見ましても、過去に行ってきたような現行制度の継続を前提とした制度改善では年金財政の破綻を免れることはあり得ないと認識するに至ったわけでございます。
今先生の御指摘のように、この問題については、農水省としてもその都度、五年ごとの見直しの中でやってきたわけではありますけれども、その結果が十四年度には破綻するような、そういう状況になったということについては、その見通しにおいて誤りがあったと私は思っておるわけでありまして、そういった面では申しわけなく思っているところであります。
そういう見直しの中におきましても、いろいろと国会等でも御審議をいただいてきたところではありますけれども、少なくとも、こういう状況になってきたということは、私といたしましても申しわけなく思っておるというふうに考えております。
○鉢呂委員 最近のいろいろな状況の変化ということではなくて、昭和五十六年ないし六十年に、制度としての抜本的なところにおいて欠陥があるのではないかと。
午前中も言われました、利回りが予定利回りを下回ったとか新規加入者が少なかったとか収納率がどうであったかとか保険料は幾分かずつ上げてきたとかいうような、最近の事例ではなくて、例えば、昭和五十一年に経営移譲年金の要件を大幅に緩和いたしました。
今までは農地を、所有権移転をしなければならなかったものに加えて、いわゆる使用収益権でこの経営移譲年金をやる、今大体サラリーマンに移譲するのがほとんどじゃないですか。
あるいはまた、積立方式を放棄して賦課方式に変えた。当時もいわゆる高年齢層が非常に高いですね。今も四十歳以上の現役加入者で九割を占めているんです。これは後の新しい年金制度についての私の指摘にもつながるんですけれども。
いずれにしても、単に最近、谷津大臣の年金委員長当時から始まって出てきた問題ではなくて、もっと、五十年代の、そこのところのやはりきちんとした大胆な改善を加えなかったことに今日の問題点があるのではないか、そこをきちっと認めていくことが必要じゃないか。どうですか。
○谷津国務大臣 御指摘の点を申し上げますと、実は、一つの政策といたしまして、規模拡大を図ってくるということになりますれば、当然そうなりますと加入者というのは減ってくる。そこへ持ってきて、受給者といいましょうか、そういう人たちはかなりそのまま残ってくる、そういう制度上の、あるいは政策上の、その辺に矛盾が出てくるということは実は指摘をされても仕方がない、私もそういうふうに考えているわけであります。
そういう中で、この年金制度を今日まで、どうあるべきかということで五年ごとの見直しをしてやってきたんですが、根本的には、そういうふうなことで規模拡大を図ってくれば、当然そこには加入者というのでしょうか、納入者が減ってくるわけでありまして、その辺のところに大きな欠点が出てきたというふうに指摘をされても、そのとおりだというふうに私は思っております。
○鉢呂委員 いずれにしても、平成七年の審議のときにも、将来、五年間で六千人から始まって新規加入が一万六千人までにふえるんだ、したがって、平成三十年にはこの農業者年金財政が健全化するんだ、均衡化するんだというようなことを我々に提示をして、我々もこういう短時間の中でありますから、もっと時間をかければ相当のところをやれるんですけれども、やはり閣法の提出責任者の言う中でこれを了として成立をしたわけであります。
したがって、やはり当時の、この財政破綻を再三審議会で指摘をされて、なおかつ今日まで単なる小手先の改革だけで済ませてきて破綻に陥れた、この責任はやはり農水省として重いものがあるというふうに思いますけれども、この確認をとりたいと思います。
○谷津国務大臣 平成七年における当委員会の審議の状況を実は見させていただきました、議事録も読ませていただきました。確かにその中で、農林水産省としての説明の中に今御指摘のような点があったことは承知をしておるところでございます。
そういった面での見通しが少し間違っていたのではなかろうかというようなことを私は率直に認めざるを得ないというふうに思っているわけでありまして、まことに申しわけなく思っているわけであります。
○鉢呂委員 大臣のその御答弁は、私は、今後の新しいこの年金制度、あるいは今経過的な措置で行う、この措置をどのようにするのか、ここに本当に真剣に生かしていく必要があるというふうに思います。
私ども民主党案、先ほど指摘があったように議員立法であって、政府案がなかなか出てこないということから始まりましたから、二段階構えで、年金の年金額を記載するのに膨大な、政府でさえ八カ月その間にかかっておるわけでありますから、その辺の不完全さというものをみずから思いながら、しかし、やはりそこは根本的な議論という形で対案を用意させていただいたところでございます。
この今日までの破綻の責任あるいは原因というものをきちっととらまえるならば、私ども、財産権の憲法問題についても、過去にいろいろな判例はない、あるいは、財産権でありますから、ある程度柔軟性があって、違憲という形で、明確な形で突き進むのはなかなか問題点もある、そう承知しながら、しかし、やはり相当の本質的な問題があるということで、それらを含めて、これまでの破綻の責任なり原因ということを踏まえて、これから質問をさせていただきたいと思います。
まず、今回の既裁定の年金額、あるいはまた現役加入者、待期者の経過措置、この点についての憲法二十九条二項との関連について質問をさせていただきたいと思います。
三月十三日の、私の質問主意書に対する内閣の答弁書が出たわけでありますけれども、これによれば、五十三年の最高裁の判決に基づいて三つの基準を想定して、それに照らして許容されるというふうなことでございます。
しかし、実際にその五十三年の判決は、この三つについて具体的にそこに照らし合わせて判決をするというよりも、二つの具体的な基準に基づいて判決を出しておるのであります。筒井先生からもお話がありますように、一つは、当初の予想をはるかに超えた経済的事情の変化、二つ目は、変更しなければ他との余りにも均衡を失して社会経済秩序に好ましくない影響を及ぼし不合理であること、この具体的な二つの判断でこの判決はなされておるわけであります。
一つ目の、これを年金財政に当てはめてみますと、当初の予想をはるかに超えていたのかということになりますと、私は、今ほど大臣からも御答弁いただいたように、この関係は当初から予想し得た、政策当局がこの改善を怠ってきた、ここに原因があると言わざるを得ません。
農地に関しては、戦後の農地改革から膨大にこの価格が騰貴した、これは予想し得ない状況であることはだれでも認めるところであります。しかし、今回の農業者年金の財政破綻というのは、数度にわたる第三者機関が指摘をしてきた経過がございます。そのことからいけば、この経済的な事情の変化ということは当たらないのではないかというふうに思うわけでありますけれども、法制局の長官がいらしていると思いますけれども、長官の御答弁をまずいただきたいと思います。
○津野政府特別補佐人 お答えいたします。
この昭和五十三年七月十二日の最高裁判決でございますけれども、これは、財産権の事後的な制約に関しまして、公共の福祉に適合するものである限り違憲とは言えないという原則的な考え方を示しているわけでございます。
そして、その判断基準といたしましては、これは質問主意書に対する答弁書でもお答えいたしましたが、一たん定められた法律に基づく財産権の性質、その内容を変更する程度、これを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案いたしまして、その変更が合理的な制約として容認されるかどうかであるということをまず基本的な原則として判示しているわけであります。
五十三年の判決における、今御指摘ありましたけれども、当初予想をはるかに超えた事情の変化があったこと、あるいは、変更しなければ余りに均衡を失し極めて不合理かつ適正を欠く結果となることという点につきましては、これは、先ほど言いました原則的な考え方の三番目の判断基準であります、財産権を変更することによって保護される公益の性質を総合的に勘案する際の考慮事項の一部をなしているものだと考えられるわけであります。
この判決では、農地改革の際に国が買収いたしました農地をその後において売り払う際の対価が論点になったわけでございまして、御指摘のような二つの事項を考慮する必要があったというふうに考えられるわけでございます。
他方、今回の既裁定年金の引き下げ措置につきましては、本制度をこのまま継続するとするならば、現役世代の負担能力を超える大幅な保険料引き上げは不可避でありまして、世代間において著しい不公平を生じることから、未裁定者にも年金額の引き下げによりまして応分の負担を求めることといたしますとともに、今回の抜本的改革が必要になったことについて、これは直接的に責任のない一般国民に三兆六千億円もの負担をお願いするということの中におきまして、現に受給している受給者につきましても、老後の生活の安定への寄与のみならず、農業経営の近代化とか、あるいは農地保有の合理化といった農業上の政策目的の達成、こういう特別の性格を有し、かつ全額国費で賄われている経営移譲年金につきまして、この法案により定めております程度の額の御負担をお願いするということが財産権に対する合理的な制約として認容されるかどうかというところが論点であります。
御指摘のような当初予想を超える事情の変更があったかどうかといったような点につきましては、今回の問題を考えるについては直接重要な論点にはならないというふうに考えているわけでございます。
○鉢呂委員 それは、次の二つ目の、他に比べて不合理だということも同じような御答弁になるのかなと今推測をいたしました。いわゆる三つの判断基準の三つ目の保護される公益性ということとの関係で、今回の場合は、社会経済上の予期しないこととか他との不利益だという判断をとるものではないというふうに聞こえるわけであります。
しかし、やはり、この五十三年の判決からいって、果たして予想し得なかったことなのか、あるいは他と比べてどうなのかということを私ども見ますと、今大臣の御答弁からもありましたように、これは当然予想し得たことでありますし、それから、他と比べてということになりますと、他の公的年金はこのような既裁定者の減額をしておらないということからいけば、甚だ答弁書については問題性がある、私はこう思わざるを得ません。
そこで今、特殊農業政策上の性格を有しておるという言い方があったわけでございます。そこで、一昨年の、十一年の十二月に農水省が改革大綱、農業者年金についての大綱を示されました。この中では、平均三〇%の削減ということで、その中に五%の老齢年金の削減というのが入っておったわけであります。答弁書は「答弁を差し控えたい。」ということでありますけれども、長官、この老齢年金についてどのように見ることがいいのか、御答弁願いたいと思います。
○津野政府特別補佐人 お答えいたしますと、先ほど最高裁判所の判例の基本的な考え方というようなものについての御説明をしたわけでございます。
そして、今御指摘がございました、農業者老齢年金についても五%削減とか、あるいは一昨年の十二月には、既裁定年金額を平均三割削減するとかというような農業者年金制度についての改正の農水省が作成した一つの案というものがあったようでございますけれども、これは、法案として具体的な制度内容を法制局に対して提示されたものではございません。
これはあくまで農林省が検討の過程において一つの案として示されたものであると考えておりまして、政府案として決定されたものは、今回の法案が政府案として決定されたものでございます。
したがいまして、御指摘の点につきましては、憲法に照らして許容されるか否かという点について、具体的な内容に関しまする農林水産省からの詳細な説明を受けたこともございませんし、また、現在政府案が示されている段階におきましては、内閣法制局としての判断をお示しする立場にはないというふうに考えております。
○鉢呂委員 それは少しおかしい話で、先週の山口委員の質問に対して須賀田政府参考人は、今回の「大綱の中で年金額の引き下げということを言っておりますけれども、これは、この研究会」というのは、局長は農林省というふうに言っていますから、農林省と厚生省の局長の研究会、農業者年金制度研究会のその論議、「この研究会が、先ほど申しました五十三年七月十二日の最高裁判例を引きまして、そこで示されました判断基準を踏まえて、先ほど申しました合理的な制約かどうかという関係の判断を踏まえた上で大綱として示したものでございます。」その間を抜きまして、「経営移譲年金では三割、それから農業者老齢年金も五%というふうなカットで大綱としてお出しをしたのですけれども、」ということで、「憲法に照らしても許容されるものではないかということで提案をしたものでございます。」ということでございますから、長官が言うように、内閣が二つあるのかどうか知りませんけれども、憲法判断をしながら五%老齢年金のカットを打ち出したわけであります。
大臣、今のはどうですか。
○谷津国務大臣 ただいま御指摘のありました件は、実は、農業者年金制度改革大綱案としまして、これは十一年の四月だったと思いますが、それから開催しました農業者年金制度研究会での論議を踏まえまして、農林省としてまとめたものでございます。
しかし、これはどこまでも農林省独自の判断でやったものでございますから、これを法制局の方に行っていろいろ検討していただいたというようなことはございません。
○鉢呂委員 そういうことを聞いておるのではなくて、この五%カットは農水省としては憲法問題をクリアしているのかしていないのか。クリアしているというふうに答弁をされているのですけれども、その確認をしたいわけです。
○谷津国務大臣 当時の農林省といたしましては、これはクリアしているという判断をしましたから、そういうことで大綱を提案したということであります。
○鉢呂委員 法制局長官、今の大臣の答弁に対してお答え願いたいと思います。
○津野政府特別補佐人 これは、繰り返しになって恐縮でございますけれども、あくまで農林水産省が示した試案でございまして、結局政府としては採用しなかったわけでございますから、お尋ねの、試案が憲法上許容されるか否かというような点につきまして、当局といたしましては、具体的に詳細を承知しているわけでもございませんから、お答えする立場にないということでございます。
○鉢呂委員 それはおかしい話で、この大綱案は農水省として正式に提示をし、私どもも、それは農水省の正式な案として見させていただきました。しかも、パブリックコメントもして、御意見もいただいたものであります。
まさか憲法違反のようなものを出すはずがないわけでありまして、法制局長官として、これを合憲だと言えない理由があるのですか。それとも何か、正式に来なかったら答弁できないんですか。きちっと、委員長、お取り計らい願います。
○津野政府特別補佐人 先ほどの大臣の御答弁等をお伺いしておりましたが、結局は、これは最高裁判所の五十三年七月十二日の判決、これの基準に従って、農水省において、あるいは研究会とかおっしゃられましたけれども、そういうようなところにおいていろいろと御議論をされて、その上で、農林水産省としての考え方としては、憲法上の問題はないというふうにお考えになったんであろうと思います。
この辺につきましては、これは制度全体の枠組みを常に私たちは精査しておりまして、一つの、例えば農業者老齢年金、それについての五%カットの問題だけを取り出して議論をするのではなくて、あくまで制度全体がどういうふうになっているのか、そういうようなことを詳細に検討いたしませんと、私たちの立場から、具体的にこれがいいとか悪いとか、憲法上どういうことになるのかというようなことをお答えすることはできないということを申しているわけでございます。
○鉢呂委員 その全体的なことは、私説明してもいいですが、時間がないので。
農水省として示されたわけであります、全体で三割。この経営移譲年金については三五ないしは二五%、そして同時に老齢年金としては五%。この全体像の中で判断はできないんですか。判断できるじゃありませんか。明確に答えてください。
○津野政府特別補佐人 実は、今おっしゃられたような、非常に法案の体をなしていない段階でこういうようなことを内容とすることはどうかということ自体では、やはり実体的な判断はできないわけであります。
我々、法律を出します場合には、必ず、法案としてどういう格好になってくるのか、その法案の中身として、経過措置はどうなっているのか、あるいは全体の枠組みが合理的なものであるのかどうか、いろいろな観点から詳細に検討しなければいけないわけでありまして、大枠を示した程度の内容につきまして、法制局といたしまして、これが憲法上いいとか悪いとか、そういったような判断をすることはできないものであるというふうに考えております。
○鉢呂委員 農水大臣はどのような形でこの五%が合憲であるという、その根拠をお示しください。
○谷津国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、年金額の引き下げについて、研究会では、昭和五十三年の七月十二日の最高裁判所判決に示された判断基準によって判断すべきという検討結果になりまして、これを合憲ということで大綱を提案したのです。
具体的に申し上げますと、年金額の引き下げ措置を講じない場合には、遅くとも平成十四年度には年金財政が払底し、そして、現役世代の負担能力を超える大幅な保険料引き上げ、あるいはまた多大な国民負担、これは数兆円規模になると思うのですけれども、いずれかが不可欠となることから、年金額の引き下げの水準は、経営移譲年金の場合には月額五千円から一万一千円程度、農業者老齢年金の場合には月額五百円から一千円程度で、いずれも高齢夫婦世帯の消費支出の数%にとどまり、農業者の老後の生活の安定が直ちに脅かされるものではないことから、財産権に対する合理的な制約として、憲法二十九条に照らしても許容され得るものとして提案したものであります。
○鉢呂委員 今の農水大臣の御答弁で、長官はどのように判断されますか。
○津野政府特別補佐人 これは、先ほどからお答えいたしておりますとおり、農水省がお示しになった政府案ができるまでの検討過程における一つの試案であるというふうに考えておりまして、それにつきまして私どもが詳細な検討をしたわけではございませんので、そういうことについて私どもから御答弁するのは差し控えたいということでございます。
○鉢呂委員 今回の私の質問書に対する答弁書は、そのことをベースにして答弁を差し控えたいというふうになっておるわけであります。
当然、農水省がどういう意図で、どういう全体像で一昨年出したのか、そのことについて、法制局としては不誠実である、私から言わせればそう言わざるを得ません。同じ内閣として、それは一つの案だったとかたたき台だったとか、そういうような形で答弁を繰り返すというのは非常に残念であります。
年金という、老齢者の生活そのものであるだけに、特に老齢年金、今も大臣が言われた、数%だから直ちに生活に影響しないというようなことは初めて聞きました。
皆さんの答弁書は、経営移譲年金については、生活の安定の寄与のみならず、そういう特殊的な政策の性格を有しているということに依拠して組み立てておるわけであります。老齢年金は、まさに基本的には掛金者の掛金で運用している、同時に生活そのものであるという形からいけば、今の大臣の答弁はそのまま当たらないのではないか。
質問外でありますけれども、厚生省の副大臣、これに対して感想でよろしいですけれども、御答弁願いたいと思います。
○桝屋副大臣 突然のお尋ねでありますが、私ども厚生労働省は公的年金を所管しておる立場でございます。
政策年金として運営をされております農業者年金について意見を申し上げる立場ではないということを申し上げたいと思います。
○鉢呂委員 突然の質問でありましたから容赦をしますけれども、甚だ不満でございます。
特に、今回の、きのうの参考人でも、これは憲法学者というのは余り多くないのです。さっきも私言いました。財産権については必ずしも判例も多くない。また、財産権ですから、一定の柔軟性もある。しかし、個人の生活そのものにかかわるようなものについては、厳格にこれを審査する必要がある、ここまで述べておりまして、普通であれば憲法違反になる、ただ、農業者年金というその政策的な手法によれば、これはそこまで言えるのかなという厳しい対応をしておるのであります。
同時に、一〇%カットというようなこと自体は、極めて政策的、政治的に出されてきたことである。直ちに影響を与えないと言っておりますけれども、私は、非常に大きな影響、いや、経営移譲年金を見ても、最大三五%、こんなカットは非常に問題があります。
同時に、きのうも先生と問題になったのは、手法は、政策的な手法、経営移譲ということにかかわる政策的なものであるけれども、受給される農業者は、これはまさに厚生年金よりもずっと下回るものでありまして、生活そのものに資している年金額であります、受給される方。まさに年金そのものであります。政策的なものと、それから年金そのものの両面の性格がある、先ほども御答弁ありましたけれども。そのことをもってすれば、やはり相当重大性を持ってこの削減というものを考えなければならない。
時間がだんだんなくなりますからちょっとはしょって話しますけれども、同時に、もっと大きな今回の問題点は、従来からずっと他の公的年金と同じようにやってきたいわゆる物価スライド、所得スライド、所得スライドはなくなりましたけれども、物価スライドが、今回の既裁定者についてもあるいは今後の経過措置に対してもこれがなくなるということであります。
このことは、厚生副大臣御案内のとおり、経済成長を二、三%に持っていくという中で、しかもこの厚生年金というのは、長い年月かけて掛金を掛けて、そして給付をされるという仕組みであります。ここに物価スライドをとらないということは、この一〇%、三〇%以上の大変大きな意味合いがある。
例えば、今三十五歳の方が十五年掛けてきました、しかし受給されるのは六十五歳です。間々いろいろあります。年金を渡り歩くような職業についている方はあるんですけれども、しかし、物価スライドを全くここでとらないということは、例えば、三十五歳の方が三十年後に受けても、今、年金額がここで確定しているんです、年金表で確定しているんです。その年金額をもらっても果たして年金に値する金額になるのかどうか。私は、大変問題がある。
大臣、この点についてはどうでしょうか。
○谷津国務大臣 農業者年金制度につきましては、加入者一人が受給者三人を支えるという財政状況のもとで現行制度をこのまま継続した場合には、先ほどから申し上げておりますとおり、遅くとも平成十四年度には年金財政が払底すると見込まれるというふうな状況にあります。
これに対処しまして、現役世代の負担能力を超える大幅な保険料引き上げをしたとしても、結局、未納者の増大等によりまして制度の破綻は避けられないことから、今回、制度の抜本的改革を行うこととしまして、その一環として物価スライドも廃止することとしたものであります。
物価スライドの廃止につきましては、一般の自営業者のための上乗せ年金である国民年金基金におきましても物価スライド措置が講じられていないこと、そしてまた、農業者年金制度について今回の措置を講じることによりまして、加入者の負担能力の限界を超える保険料の大幅引き上げや、農業者年金の破綻に直接責任のない国民一般の財政負担をさらに増大する、これは約二千億円の国庫負担増が見込まれるわけでありますが、これが回避されることから、既裁定者の受忍の限度内の合理的な制約でありまして、やむを得ないものと考えているところであります。
○鉢呂委員 私の質問に正確に答えていただきたいんです。いわゆる物価スライドをとらないということはどのぐらいの影響があるのか、皆さんが二、三%の経済成長を考えておる中で物価スライドをとらないということはどのぐらいの影響があるのか、これを答えていただきたい。――それでは、ちょっと答弁は後でよろしいです。
法制局長官、今ほど、私、戸波教授のきのうの発言、いわゆる年金の、しかも既裁定というものを削減するということは極めて大きな、重要なものである、違憲の疑いがある、そこまで教授は述べておるわけであります。あるいは、一〇%カットというようなことは無謀であるというような形で表明をされています。一般的でもよろしいですけれども、いわゆる老齢年金の既裁定額のカットについて、憲法とのかかわりでどのような見解を法制局として持っているか、御答弁願いたいと思います。
○津野政府特別補佐人 年金一般についてのお話でございました。
年金一般についての既裁定年金額の削減というような問題につきましては、これは答弁書でもお答えしてあると思いますが、国民年金とか厚生年金制度等の公的年金制度における既裁定年金額の取り扱いというものにつきましては、法理的には、昭和五十三年七月十二日の、先ほども申しました最高裁判所大法廷判決の趣旨等を勘案して、やはりこれは判断されていくべきものであろうというふうに考えているわけでございます。したがいまして、一般的な年金についての考え方はこれに尽きるわけでありまして、やはり法理的なところはそうである。
あとは、現在、公的年金についての既裁定年金額の切り下げとかそういうことについてどういうふうに考えているかというようなことでございますけれども、これは農業上の政策目的を持っておりますし、また、給付に必要な財源を専ら国庫助成で賄っております経営移譲年金とは異なりまして、社会保険方式のもとで、現役世代が納付する保険料を財源の基本にして給付に必要な費用を賄う世代間扶養の仕組みでこういった国民年金とか厚生年金等の公的年金は運営されているわけでありまして、また、成熟度も農業者年金のような状況にはないというようなことから、現在の両者の置かれている状況は非常に変わっているわけでございます。
そういったことから、今回の農業者年金の削減といったようなものとそういった一般的な年金の切り下げといったようなことについて、同列に論ずることはできないというふうに考えているわけでございます。
○鉢呂委員 桝屋副大臣にお尋ねしますけれども、他の公的年金も、特殊性を今農業者年金に言われましたけれども、このような既裁定に対して削減というものが今後あり得るのかどうか、厚生省としてどう見ておるのか、お答え願いたいと思います。
○桝屋副大臣 お答えをいたします。
先ほどからの委員とそれから農水省との議論をずっと聞いておりまして、一つは、やはり、共管で厚生労働省も一緒に今までやってきたわけでありまして、大きな問題だなというふうに感じさせていただいております。
今、今回の農業年金の改正、こうしたことが公的年金で起こり得るのか、引き下げというようなことがあるのかというようなお尋ねであったかと思います。
国民年金あるいは厚生年金等のいわゆる公的年金につきましては、先ほど法制局長官からもお話がございました、社会保険方式のもとで賦課方式で設計をされているものでありまして、世代間扶養の仕組みで運営をされているということ。それから、成熟度も決して農業者年金のように著しく高いという状況にもありません。さらには、先ほどから説明がありましたように、政策目的を持っております農業者年金と、私どもが所管をしております国民年金、厚生年金は、置かれている状況は大きく異なっているわけであります。
そうした観点からいたしますと、既裁定年金の取り扱いにつきましては、やはり昭和五十三年最高裁の判決の趣旨、これが一つあるんだろうと思いますが、これに加えて、今申し上げたような状況の違いなどのさまざまな要素を十分念頭に置いていくことが必要であろうというふうに思っております。
こうしたことを考えますと、今、下げることがあるのかというお尋ねでありますけれども、そうした問題に加えて、公的年金については、さらに将来に向けて年金制度を取り巻く社会経済状況は、これまたさまざまに変化するわけでありまして、どういう前提をもって今後の年金を語るかということで、一概には私は申し上げられないというふうに思っているわけであります。
公的年金額が下がるというようなことは、政治家としてもなかなか考えられない事態ではないか、このように思っておるところであります。
○堀込委員長 鉢呂委員、先ほどの質問に大臣が発言を求めていますが、いいですか。谷津農林水産大臣。
○谷津国務大臣 先ほどの物価スライドの件でありますけれども、平成十二年財政再計算で用いた物価上昇率、年率一・五%という前提に立てば、現在六十五歳の受給権者が平均寿命八十三歳まで受給した場合の累積物価上昇率は三一%程度となりますが、物価スライドの廃止によりまして、この物価の上昇に見合った年金額の上昇がないこととなります。
しかしながら、一階部分の国民年金の物価スライドによりまして、その影響は相当程度緩和されるものでございまして、年金額の高い加算つき経営移譲年金を受給していても、物価上昇率一・五%という前提に立ちますれば、物価上昇分の六割はカバーされるということであります。
また、近年の物価上昇率から見て、短期的に大幅な物価上昇は見込みにくい中で、受給者も、農業者年金には物価のスライドはないという前提で老後生活の設計をやり直すことが可能と思われます上に、十八年、これは六十五歳から八十三歳ということですが、十八年という長期にわたり、なだらかに農業者年金の実質的価値が減じていくものであるというふうに考えます。
こういうことから、物価スライドを廃止しても大きな影響は生じないと判断したところであります。
○鉢呂委員 それは非常に甘い判断で、最近の、デフレにもうなっているわけですから、そこは大変大きな禍根を残しておる。
ですから、私ども、皆さんからいろいろな指摘がありますけれども、単なる清算ではなくて、みどり年金を中心として、場合によっては、経営体を変えれば厚生年金に継続、移換をしていく。
大臣は、移換は大変でしょうというような答弁があったわけですけれども、決してそれは全く困難なわけではなくて、今の政府案は、これまでの年金、掛けたそのものを全くこれで途絶しちゃう。
さっき言ったように、三十五歳の方は十五年掛けただけで、三十年後の、どんな物価水準になっているかわからないけれども、もう今の時点の年金額になってしまう。運用もしないという形ですから、これは非常に年金としては性格を弱くするものである。
私どもの方は、みどり年金ということでありますけれども、そこでは運用もしていく。もちろん物価スライドはしません、物価スライドはしませんけれども、きちんと運用していく。
そのことは、年金というものを考えたときに、今は皆さん、またこれは一から始めることになります。制度としては同じ名称ですけれども、中身としては全く新たに、積立方式で、一年生から始まるのです。
先ほども私が言いましたように、これはもう五十年、百年をきちんと設計しなければ、また十年やそこらでやめるとかどうとかということにならないだけに、そういう長期的な観点を持って、あるいは年金の一元化と言われています。
今、厚生省の副大臣もいらっしゃいますからあれですけれども、もう農業者年金は別の農業政策上の問題だということで、全く厚生省からも冷たくあしらわれておるのですけれども、問題は、やはり年金の一元化というものにどうつなげていくのかどうか。余り特殊なものをつくっておったのでは、長い間には全くそれが、どんどん農業者は減る運命にあります。先ほど言いましたように、九割以上が四十歳以上の加入者です。
今、きのうの農業会議の話では、もう対面相談もして強引に、あのぐらいであれば、当然加入年金の、今の時代にもっと熱心にやってほしかったのですけれども、任意加入なのに強制的なことをやるようなことを言っていますけれども、まさに加入者がどんどん減っていく、これは任意でありますから。
そうなった場合に、この制度の存続あるいは政策支援の効果というものが私は問われる。そういう長い目、大きい目で見たときに、果たして政府案でいいのか。単に農業者は継続性ということで新たな制度をつくることに、要請したのかもわかりませんけれども、私どもは、そこに大変大きな課題を持っておる。
時間がなくなりますので、最後にもう一つの質問でありますけれども、大臣は先週の答弁で、この九・八%の削減に関して、今後さらに削減することは想定していない、こう御答弁されたのです。しかし、先ほどの金田政務官は、今は考えていないというような表現でした。
私は、本当に削減をしないのであれば法律的にきちんと担保しなければ、またぞろ財政が困難だということで、三割という第一次案もあったわけでありますから、これが削減される可能性が非常にあるのではないか。
大臣が削減をしない、大臣答弁だからということでなくて、どうこれを担保するのか。私は、法律に明記すべきである、そこまで思うのですけれども、御答弁願いたいと思います。
○谷津国務大臣 農業者年金制度改革につきましては、平成十一年の十二月に議論のたたき台としまして、農業者年金制度改革大綱において、既裁定年金の平均三割カット等を示しました。その後、これをもとにしまして、受給者あるいは加入者の生の声や年金制度関係者の意見を積み上げまして、十二年の四月に意見集約がまとめられたということでございます。
この意見集約においては、受給者の年金の水準については国が支えることを基本としつつ、受給者の負担を最小限に圧縮することとされたところでありますが、この最小限の負担につきましては、農業団体より一〇%以内との意向が示されたことから、農業者と国民双方の理解と納得を得られるためのぎりぎりの水準として、最終的に九・八%の既裁定年金額の削減をお願いしたところであります。
こういうことを考えまして、今御説明したとおり、今回の九・八%の既裁定年金額の削減は、農業者にも国民一般にも理解を得るためのぎりぎりの水準というふうに認識しておりますものですから、今後これより年金額を削減するということは考えておりません。
○鉢呂委員 公的な担保措置という話はなかったわけで、大臣がどのぐらい強調しようとも、世の中が変われば、財政がどんどん厳しくなれば、さらに削減されるということがあってはならないし、そのことをきちんと法律的に明記すべきである。私はもっと、本当はこの三倍ぐらい質問をしたい、金田政務官にも予告をしておったのですけれども、大変申しわけなく思っています。
ただ、こういう形が北海道で、もう三月中からこういうパンフレットを持って、「生まれかわる農業者年金制度」というようなことで、大々的に農業会議が相談会とか会合を開いてやっております。
私は、今国会の審議されている最中、何か民主党が国賊のようなことで言われている向きもあるようでありますけれども、決して――いや、この中でですよ。国会で法律を審議しているさなかに、こういうものを持ち歩いて会合をやる。
私はけしからぬと思いますけれども、同時に、筒井さんも言われたように、もっとこの新しい制度についてもきちんと、問題のある点については触れるべきであるということからいけば、例えば、現行制度よりも大きく影響を受けることはありません、「加入者や受給者の数により大きく影響を受けることはありません。」とか述べておるのですけれども、実際に物価の変動や運用の変動によっては掛け損やそういうものが生ずる可能性があるというようなことについても、きちんとやはり大きく掲げて、理解を求めるということがなければならぬ話だ。
小さく、これも質問してみないとわからないなという形で、「年金化後の利回りや死亡率の変動により差が生じた場合の取扱いは今後検討されます。」今後検討されますというようなあいまいなことで、我々普通の目では見えないような小さい字で書いていますね。
ですから、百歩譲っても、やはり公正な判断をしていただけるように奨励をすべきであるし、ましてや国会の審議についてはきちんとした場で行うというふうにしていただきたい、このように考えます。
終わります。
○堀込委員長 次に、一川保夫君。
○一川委員 私の方から引き続き農業者年金基金の一部改正についての質問をさせていただきますが、大分いろいろな議論が出尽くしたという感じの中での質問でございますので、ある程度確認を込めた質問になろうかと思うのです。
それで、本日、特にいろいろなやりとりを聞いておりまして、農業者年金制度というもののこれまでのいろいろな経過とか、またその基本的なところのいろいろな詰めみたいなところが若干甘いのではないかなという印象を素直に持っております。
昨日も、参考人のいろいろな御意見を聞かせていただく中で、先ほどの話題にもちょっとのっておりましたけれども、農業者年金を直接扱っている責任者なり全国農業会議所の幹部の方の発言を聞いておりますと、どうも農業者年金制度のこれまでの果たしてきた役割なり、またこれからの新しい制度に対する見通しといいますか、そのあたりが非常に楽観的であるという印象を素直に持っておりますし、また、これまでのいろいろな、農業者年金がこういった状態に追い込まれたということに対する反省を込めた責任というのですか、そういうものが非常に薄いなという感じを率直に受けました。
そういう面では、これから新しい年金制度がもしスタートしても、そういった点では当事者の認識が非常に甘いという面では、私は非常に心配をいたしているわけでございます。
そういう基本的な認識の中で、先ほどの鉢呂委員の質問と若干重複する部分はありますけれども、基本的なところの確認をさせていただきたい、そのように思っております。
まず第一点は、基本的なところですけれども、今回の、政策年金制度だというふうに言われているわけですけれども、この政策目的そのものを大幅に変えているという印象を持ちます。
これまでの農業者年金制度は、御案内のとおり、農業経営の近代化といううたい文句、これは経営者をできるだけ若返りを図っていきたいということだろうというふうに思います。また一方、農地保有の合理化を果たしていきたい、皆さん方がこの制度の成果としてよく説明されますけれども、農地の細分化を防止するとかあるいは規模拡大を図っていくんだという、従来のそういう目的があったと思うのですね。
それが今回は、新しい農業基本法の理念とか今日の農業情勢等を一つの背景としまして当然そういう転換を図るんだろうと思いますけれども、農業者の確保という面に特化したそういう政策目的にしているわけでございます。
このあたり、大臣にちょっとお聞きしたいんですけれども、従来の農業経営の近代化とかあるいは農地保有の合理化というような政策目的は、もう年金制度ではちょっと無理だという判断に当然立たれたからこういう目的を変更されたのかもしれません。
そのあたりのお考え、それと、これから新しく政府が提案をされているこの制度というものがスタートした場合の、従来の政策の連続性といいますか、あるいはまたそういった農政としての一つの整合性といいますか、そういったところを大臣は基本的にどのようにお考えでしょうか。
○谷津国務大臣 農業者年金制度は、昭和四十年代の農村におきます過剰労働力の存在、あるいは農業の零細経営という実態を踏まえまして、旧農業基本法における農業構造の改善に関する施策として、老後生活の安定とともに農業経営の近代化、これは先ほど先生が言われた若返りとかあるいは農地保有の合理化、これは細分化防止あるいはまた規模拡大を促進するために措置されたものでございます。ですから、若い担い手への経営移譲を政策支援のある年金の支給開始要件としていたものでございます。
一方、農業をめぐる情勢は著しく変化をしてまいりまして、農業就業人口に占める六十歳以上の方の割合が昭和四十年の二二%から平成七年には六三%に増大するなど、農業就業人口の高齢化が進んでまいりました。そういうことから、基幹的農業従事者が昭和四十年の八百九十四万人から平成七年には二百七十八万人に減少するなど、担い手不足が著しく進展しておりますことから、担い手の確保は喫緊の課題ということになってまいったわけであります。
このために、若い担い手への経営移譲という考え方にかえて、意欲ある担い手の確保のための保険料負担の政策支援という考え方に改めることにしたわけでございます。
○一川委員 そうしますと、従来の農業者年金制度がねらっていた経営者の若返りという一つの政策目標、それからもう一つ、農地保有の合理化といいますか、規模拡大を含めたそういう観点、現実は所有権での規模拡大というのはなかなかうまくいっていない、借地的なそういう農地の拡大はある程度進んでいると思いますけれども、こういったようなところはほかの制度に譲るというふうに理解してよろしいんですか。
○谷津国務大臣 いろいろな制度もございますけれども、そういうふうなものを加味しながらこれを進めていくということでございます。
○一川委員 私も、今回のこの制度改正の中で、この目的変更というのはある面では非常に重要な意味を持っているというふうに思いますし、今回のこの質疑の中でも、果たして農業者の年金制度でもってこういった政策課題をうまく成果を上げることができるかどうかという面でのいろいろな心配される意見がたくさん出ているわけでございます。
そういう面では、これからこの制度がもしスタートした場合は、それぞれで農家の皆さん方と接触をしながらいろいろな説明をされると思いますけれども、私は、やはり基本的に、前からちょっとお話しさせてもらっていますように、新しい基本法のもとでの農政全体、農業の構造を改善していくという全体の政策の中で、この農業者年金制度というのはどういう位置づけに、どういう役割を果たしていくのかというところをもっとわかりやすく説明できる状態にしておかないとまずいなというふうに思います。
今農協の窓口へ行けば、この農業者年金、それからみどり年金、それからJAがあっせんしているいろいろな共済的なもの、いろいろなものが窓口にあるわけです。そういう中で、農業従事者に対してどういう勧め方をしていくかというのは、この前の質疑の中で大臣は、今回のこの制度が一番有利なんだというようなこともちょっとおっしゃいましたけれども、ではほかの制度は一切要らないのかというようなことでもないと私は思います。できるだけ、農業者といえどもやはりいろいろな選択肢を与えていくということが基本的にないとまずいなというふうに考えているわけです。
そこで、先ほどもちょっと議論が出ましたけれども、いろいろな年金制度全体における農業者年金というものも一つの大きな課題であるような気がします。
公的年金、私的年金の話も出ていましたけれども、そういう年金制度全体の中で、二階建ての部分の一部を農業者を対象にしたこういう制度をつくるんだという位置づけになっているわけでございますけれども、こういう公的年金制度という一つの枠内だと私は思いますけれども、こういう枠内で農業者だけがこういう年金制度を持つということに対しての位置づけといいますか、そのあたりの基本的な考え方を農水省はどのように考えていらっしゃいますか。
○金田大臣政務官 農業者年金、まさに公的年金と位置づけさせていただいているわけでありますが、農業に従事する人の二階建て部分をカバーする公的年金だというふうに位置づけさせていただいております。
我々、これから所得政策に取り組んでいくわけでございますけれども、農家の皆さん方の生涯所得を他産業並みに、遜色のない所得を確保していくということを展開してまいりますときに、やはり七十歳あるいは八十歳というような、リタイアされた農家の皆さん方の所得をどうやって確保していくかということになってまいりますと、直接補償ということはなかなか難しゅうございまして、やはり年金分野でそういった所得を保障してやる。
まさに緑の政策でございますので、こういった制度もしっかりと公的年金として、二階建て部分を確保していきますよ、守ってまいりますよという公的年金の位置づけ、政策年金として、若い担い手を育てていく上でもこういった年金での措置というのが必要だ、そういった位置づけで、公的年金の中で政策年金として位置づけて運用してまいりたいというふうに思ってございます。
○一川委員 私は、年金制度というのは今現在、政府の基本的な年金制度の取り組み方を見ておりましても、まだ恒久的なしっかりとした制度というものは成り立っていないというふうに思っております。
基本的には国民全体に対する老後のセーフティーネットという見地からすれば、農業者だけ抜き出してそこに何か年金制度をつくっていくというやり方は、私は余り、これから国民全体の皆さん方に説明するときには、非常に説明しづらい問題ではないかなというふうに思っております。それは、農業に対する他の政策で力強くそれを支援していくということはあっていいと思いますけれども。
そういう面では、今政府も、我々が強く要求しておりますけれども、社会保障全体に対する明確なビジョンを示してほしいということに対する明快な答えもないわけですけれども、やはり人生設計をもっと描きやすい姿に持っていくというのは、農業者も含めて、そういう制度の中で将来的にしっかりとカバーしていくということが大変大切ではないかなというふうに私は思っているわけです。
そういう観点で見ていきますと、年金制度全体というものは、今後また新たに再構築されていく可能性というのは十分あると思うのですね。今民主党案として提案されている一つの問題点というのは、私も割とポイントをついていると思いますけれども、既存のそういう年金制度にうまく切りかえできるような措置を講じていく道もあるじゃないかということ。
それからまた、前回私もちょっと指摘させてもらいましたように、既存の年金に入っている人が、ではまた新しい農業者年金に入りたいという気持ちがあった場合どうするか、その道が開かれていないということを考えてみましても、将来的に公的年金制度というものを政府全体としてもう一回再編成、再構築していく段階で、農業者年金制度というものはその中に組み入れていくことを考えてもいいと私は思いますけれども、そのあたりは農林大臣はどのようにお考えですか。
○谷津国務大臣 新しい農業者年金は、農業の担い手の確保が先ほど申し上げましたように喫緊の課題となっていることに対応いたしまして、農業者の生涯所得の充実を図り、そしてまた農業を職業として選択し得る魅力あるものにするための措置であるというふうに思っておるわけであります。
このように、新制度は老後生活の安定とともに農業者の確保を目的としておりまして、この考え方の根幹は維持していく考えでございます。したがって、仮に公的年金制度全体の見直しがあったといたしましても、必ずしもそれに合わせて見直しを行うべきものとは考えておりません。ただ、将来公的年金制度全体の見直しが行われることとなった場合との御指摘でございますけれども、その具体的内容と農業者年金制度への適合性等を踏まえた上で対応していくこととなるものと考えてはおります。
なお、新制度は、関係方面との幅広い議論の積み重ねの上で、農業者の確保という農政上の課題に対処するために創設することとしたものでございまして、新しい農業者年金を他の公的年金と統合することは今考えておりません。
○一川委員 今この段階で、具体的な中身もまだ何もない段階で、統合するとかしないとかいう具体的な返事をもらうこと自体は無理かと思いますけれども、ただ考え方として、公的年金制度の全体の姿をまた再構築するという段階では、やはり農業者を対象とした年金制度もそういった中で大いに議論することは大変大事なことではないかなというふうに私は考えます。
また先ほど、これからの新しい担い手確保、農業者を確保するという観点のお話がございますけれども、やはり国民全体から農業者あるいは農業者がやっている仕事、要するに農業というものに対してしっかりと理解される、国民全体のそういう合意形成の中で支えてもらっているという意識がない限り、農業に対する生きがいというのは私は出てこないと思うのです。
農業者だけが何となく身勝手なことをやっているというような印象を与えている限りは、農業という産業に若者がこれからじゃんじゃん入ってくるということはだんだん期待できなくなるというふうに私は思いますので、やはり国民全体が理解できる中で、国民の期待するような農政が展開できるということが基本になければならないというふうに思っております。
昨日の参考人の中にも、今大臣が答弁されたと同じようなことをおっしゃる方もたくさんいました。確かに、老後の安定という面では一つのやり方だと思いますけれども、基本的には、現役の農業に従事する方々がしっかりと意欲が出るような政策ですね。
それは、今どういう作物をつくるにしろ、一生懸命額に汗して頑張れば何かそれなりの報いがある、その還元があるというような仕組みがない限りはなかなか難しいという面が基本にあると思いますので、そういう点も含めて、これから農水省の方にはしっかりとした対応をお願いいたしたいというふうに思います。
そこで、若干事務的な話というか、ちょっと確認のためにお聞きします。
先ほど、みどり年金の話がちょっと出ましたけれども、加入者は二万人台だというふうにお聞きしていますが、もともとみどり年金の役割というのですか、その期待というものはどこにあったのですか。それから、今回の政府が提案されている新しい農業者年金制度とみどり年金との関係というのは、一切関係がない、一切そういうことは検討しなかったということなのか、全く関係ないというふうに理解していいのか、そのあたりをお願いしたいと思います。
○須賀田政府参考人 一つは、みどり年金の評価でございます。
先生御存じのように、みどり年金の加入資格は、年間六十日以上農業に従事した者ということになっておりまして、これまでの農業者年金に加入資格のなかった一定規模未満の農地の権利名義しかない方の老後生活というものに一つは貢献をしてきた。
それから、特に平成七年の農業者年金制度の改正前に、農業者年金制度に加入することができなかった配偶者の方々に対しても上乗せ年金への加入の道を開いてきたということで、農業者が自主的に参加してその成果を享受する年金制度ということで、その老後生活の安定に役割を果たしてきたというふうに評価しております。
今後、両年金がどうなるかということでございます。今後はともに、国民年金の第一号被保険者であります農業に従事する者というものを対象にするわけでございます。
ただ、一方で農業者年金は、農業者の老後生活の安定を通じて担い手というものを幅広く確保する政策年金であるという性格があるわけでございます。一方で、みどり年金はこれまでどおり、自営業者共通の老後生活の安定を目的とする、専ら社会保障の観点からの年金で、その給付内容も自主的に定めるということになっておりますものですから、ややその目的と役割は異なっておるということでございます。
私ども考えますのに、農業に従事する者の態様、いろいろな態様があろうかと思います。経営者として、いわゆる担い手として働いている方、補助労働者として従事している方、いろいろな態様があろうかと思いますけれども、特に農業者年金の政策支援の対象にならない方々にとって、みどり年金へ加入していくという選択が考えられるのではないかというふうに考えております。
○一川委員 ちょっと局長の答弁も、余り自信のなさそうな答弁なんですけれども。
現実、農家の主婦の皆さん方も、みどり年金に入っている方も場所によってはそれなりにいらっしゃるわけでございますけれども、どうもそういった面で、各末端で、これからのこういう制度というのは、何かちょっと受け取る側は混乱するんじゃないかなという心配がいろいろとございます。
本当に農業に従事する者を対象にそういった年金制度を構築するということであれば、みどり年金に今既に加入をされている方も含めた何か検討があってよろしいのではないかなという感じがするわけですけれども、そこのところは、これ以上お聞きしてもなかなかいい答弁も出てこないと思いますので、今後の課題とします。
次に、きのうも農業者年金基金理事長さんに参考人として来ていただきましたけれども、これはちょっと事前に余り通告していないのですけれども、農業者年金基金というこの組織の中に今どれぐらいの人が働いているのですか。わかりませんか。
○須賀田政府参考人 現在、九十一人の職員を抱えております。
○一川委員 私は、先ほどちょっと触れましたように、この理事長さんのいろいろな発言を聞いておりまして、非常に甘いなというふうに思っております。そのときにちょっとちらっと思ったのは、いや、この年金の受給者、年金を九・八%カットするんだったら、年金基金で働いている方々もそれぐらいカットをして頑張るという気構えで農業者に説明に入るんだったらまだわからぬでもないですけれども、どうもそういった感じでもないみたいですし、こういった組織そのものの今後のあり方ということにも非常に私は影響すると思います。
実際問題、この新しい制度を検討される段階で、こういった保険料の設定という考え方の中に、予定した見込みというんですか、加入予定者、目標の数が、ある程度目標を達しておればまだしも、だんだん加入者が減ってくる、当初予定していたよりも何か大幅に加入が見込めないといったようなときには、これはどうなっていくんですかね。保険料が上がっていくんですか、給付水準はだんだん下がっていくんですか、それからまた、この組織をもっとスリム化していくのですか。そのあたり、どういう考え方になるんでしょうか。
○須賀田政府参考人 今回新たに創設いたします新制度は、積立方式の確定拠出型の年金制度でございますので、加入者の人数等に左右されにくい安定した年金財政の方式でございます。
仮に加入者が期待どおりの人数とならなかったといたしましても、加入者の将来の年金水準に影響が出るような事態にはならないと考えておりますけれども、やはり一定のロットがなければ運用もなかなかうまくいかないであろうし、運用が思うとおりいかない場合には年金水準に響いてくるわけでございます。
そういうことで、私ども、新制度の加入資格というものが、年間六十日以上農業に従事した者という制度で、任意加入制ということで始めるわけでございます。
現在、対象になる人でどのぐらいの人がおられるかということでございます。
六十歳未満で年間百五十日以上農業に従事する、いわゆる農業専従者と言われる方が、今、六十歳未満で七十四万人おられるわけでございますので、まずはこのような方々をターゲットとして、新制度の内容の普及、PR、加入への取り組みといったものに取り組んでいきまして、それ相応のロットを確保したいということでございます。
それとは別に、やはり農業者年金基金は特殊法人でございます。特殊法人改革というようなことが今言われておりますけれども、しかるべきスリム化等には、それとは別にまた取り組んでいくべき課題ではないかというふうに考えております。
○一川委員 これから少子高齢化社会に、もう突入してしまっているわけですけれども、今ほどの、専業的に農業に従事する方々が七十四万人ぐらいですか、そういう数も当然これからだんだん減っていくと思うんですね。こういった年齢構成の中、しかも農業を取り巻く厳しい情勢の中で、また、農業そのものはもっともっとコストダウンを図っていく、あるいは効率化を図っていくというような一つの農政の中で規模拡大を図っていくということになれば、私は、やはり農業に専業的に従事する対象者というのはだんだん数は減っていくと思うんです。
そういう中で、一方、約九十人ぐらいの職員を抱えたそういう組織があるということは、だんだん実態が農家の皆さん方にわかってまいりますと、何だ、あの人たちを養うために我々はやっているのかというような変な誤解を受けてしまう可能性というのは私はあると思うんですね。
だから、そこのところをやはり、物事を先取りしながら、本当に厳しい中で農業者が頑張っているということをしっかりと踏まえた政策というのは、やはり農水省もしっかりと指導していただきたいというふうに心からお願いを申し上げる次第でございます。
そういう面では、農家にいろいろな面の負担がかかってきているわけでございますので、この農業者年金制度は、ある面では今日の農政の一つの大きな政策の課題を映し出す鏡でもあろうかと思いますので、そういう面で、今議論された問題について今後の農政に生かしていただきたい、そのように思っております。
ちょっと時間の関係で、私は、今、農業関係者が非常に関心を持っている時事的なテーマについて二、三、農水省に確認の意味で御質問をさせていただきたいと思うんです。これは当然、農業に従事している皆さん方も大変強い関心があるテーマでございますので、ひとつよろしくお願いしたいと思うんです。
まず第一点は、セーフガードの問題でございます。
これも、畑作農家の皆さん方にとって、またそれと関連するいろいろな農産物もありますけれども、今、政府の調査品目として、ネギとか生シイタケとか畳表ということで調査に入ってきたわけでございますけれども、今現在、これへの取り組み状況といいますか対応状況。
それから、先日のこの委員会でも決議を出しております。暫定措置を速やかに発動してほしいという趣旨のお願いもしているわけでございますけれども、今、きょうこの時点で状況がどうなっているかということと、今後どう取り組んでいく方針なのか、そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。
○松岡副大臣 今先生から御質問の点につきましては、今国会におきましても、国会始まって以来、予算委員会の分科会や、また一般質疑を通じまして、それぞれ与野党双方から一番関心を持ってただされた点でございます。
そこで、農林水産省におきましての現在の状況でございますが、とにかく、もう御案内のとおり、輸入の増加によりまして大変国内の生産が打撃を受けておる。そしてまた、生産が打撃を受け、生産地がつぶれるということになりますと、ひいては将来にわたって消費者の皆様方の安定的な消費というようなものが侵されてくる。こういったことで、消費者、生産者双方の相互利益を守っていく点からも安定的な供給を確保していく、そういった点でもこのセーフガードというのは非常に重要であります。
そこで、具体的に申し上げますと、昨年の十二月の二十二日から三品目につきまして、ネギ、生シイタケ、畳表でございますが、政府調査を農林水産省から要請いたしまして、財務省、当時はまだ大蔵省でございましたが、経済産業省、当時の通産省、三省一体となって調査を進めてきたところであります。
三月二十二日の時点で一応一定の区切り的な調査の整理がつきまして、三月の二十三日に公表をいたしたところでございます。そして、公表いたしましたその調査結果に基づきまして、私どもといたしましては、これは今現在で暫定発動ということにしないと取り返しのつかないような事態になってくる、こういったような判断をいたしました。
そこで、私どもとして、こういった判断に立って、財務それから経済産業両省にもお願いをし、三月の二十七日にそのような判断をした上で、三月の三十日に、先週の金曜でございますが、農林水産、財務、経済産業の三大臣で協議をいたしました結果、セーフガード暫定措置について、その発動に向け具体的内容等につき事務方に早急に検討させる、発動ということを前提にといいますか、発動に向けて早急に事務的な詰めをさせる、このことを各大臣が一致いたしました。そして、その旨、それぞれの事務方に指示をしたところでございます。
そしてまた、事は外交との関係もございますので、速やかに、外交関係、またいろいろな他の関連等もございますので、関係の閣僚にもお集まりをいただいて、この方針をきちっと確認していく、今こういう状態でございます。
そして、具体的な事務手続を今進めておる中身といたしましては、その暫定措置をどのような内容でするのかといったことについて今詰めておる、こういうことでございます。
そのほか、他の品目におきましても、例えば、この三品目に加えまして、トマト、ピーマン、タマネギ、ニンニク、ナス、加糖調製品、木材、これは製材品と集成材ということになりますが、それから合板、干しシイタケ、ウナギ、ワカメ、カツオ、この合計十五品目を対象品目として監視していく、こういったことで私どもは体制をとっておるところでございます。
一方、そうはいいましても、これは国際間の、特に中国との関係におきましては、いろいろ報道等でもなされておりますように、また中国の反応等もございますので、私どもは、二国間については鋭意誠意を持って円満な解決に向けてさらなる努力を重ねてまいりたい、今このような状況でございます。
○一川委員 今の御答弁の中で一点確認させていただきますけれども、今関係大臣でもって、一つの確認の中で、暫定措置の方向で検討を指示されたということは、あとは何かタイミング、要するに、外交上、いろいろな国際的な関係でタイミングを見ているというふうに理解するのですか。
○松岡副大臣 タイミングを見ているということではなくて、手順を踏んで、こういうことでございます。
したがって、進め方として、一定の手順を踏んでということがどうしても必要なものですから、例えば、三省で、発動すべきという立場に立つことを決めたわけでございますが、しかし、外交の関係もあり、また例えばその他の、中国等からの反応によっては、報復という言葉も使われたりしているものですから、そういった関連のところにもそれなりに御理解と御納得をいただいて、そういう意味の確認をしておかなきゃならぬ。こういったような意味において手順を踏んでおるということで、タイミングを見ているということではございません。
なるべく、暫定発動が必要と判断したわけでありますから、放置すれば取り返しのつかない事態になる、こういう前提に立っておりますので、可及的速やかに、こういう意味であります。
○一川委員 御存じのように、もう四月に入りまして、いろいろな面で農作業が始まっている段階ですから、そういう面では、今いろいろな手順を踏んでおられるということなんですけれども、効果的な発動を強く期待しておきたいというふうに思っております。
さて、その次に、これも一時期大変報道をされましたけれども、有明海のノリの不作等の問題でございます。
この問題も、関係者によっては言い方がいろいろとあるわけですけれども、先日、三月二十七日ですか、第三回の不作対策の関係調査検討委員会が行われて、委員長からもそういう報告がなされたわけでございます。
それを受けて農水大臣もいろいろと発言されていらっしゃるわけですけれども、この有明湾のノリの不作に対する対策、また三回目のあの委員会の報告から踏まえて、農水省としては、それをどのように受けとめて、どういうふうに取り組んでいくということで今臨んでおられるのか、まずそこからお聞きしたいと思います。
○谷津国務大臣 有明海の答弁をする前に、今副大臣の方のちょっと補足をさせていただきます。
今財務省で検討させておりますのは、実は暫定措置というのは関税しかかけられないのですね、そういうことですから、どういう関税にするかというのを急いで決めてほしいということ、それと、WTOに説明をしなければなりませんから、どういう説明をするかというのをきちっとつくる。
急がせておりまして、今副大臣の言うように、できるだけ早く暫定措置がかけられるような方向で進めたいということでやっているということを御理解いただきたいと思います。
また、ノリの生産に対する支援策ですが、これは、ノリの漁家といいましょうか、ノリ漁業者に対しまして、地元自治体との協力によりまして無利子化等の金融特別措置の円滑な実施と並行いたしまして、水産基盤整備事業によりまして、地元の要望を踏まえまして、まず漁場環境の保全、創造を図るための覆砂、砂をやるわけです、また、堆積物の除去や二枚貝の生息の場の確保のための干潟等の造成などの施策を今行っているところであります。
また、第三者委員会の提言に沿いまして、十三年度からは、有明海の海域環境やあるいはノリ等の不作の原因究明を目的とした総合的な調査を実施いたしまして、第三者委員会にも諮りながら、九月を目途に、可能な限り早く中間取りまとめを行いまして、その結果を公表したいというふうに考えておるところであります。
またさらに、この中間取りまとめにおきましては、あわせて漁場環境のモニタリングあるいは漁場管理体制の強化や適正な養殖技術等による対応を早急に検討していただきまして、万全の対策を講じてまいりたいと考えておるところであります。
○一川委員 この問題がいろいろと報道された折にも、大臣は、要するに、予見を持たないで、しっかりと科学的な調査を踏まえて、それを受けて農水省として決断をしていきたいというような趣旨のことを何回かお聞きしたことがあります。
そういう面では、今、九月を目途に一つの中間報告をいただいて、そこでまた一つの対応をしていきたいということなんですけれども、もう一点、この問題と深くかかわったような報道で、報道は非常に激しくやっていますが、諫早湾干拓事業の水門をあけるかあけないかということがよく言われております。この問題は、今農水省はどのように考えておられるのですか。
○谷津国務大臣 先生、先ほど申しておりました先月の二十七日の第三者委員会における委員長の取りまとめにおきまして、現地調査につきましては、水門の常時開門は技術的に克服すべき問題がございまして、まず閉めたままで十分な調査を行って現状把握を行うことが必要であるということから、水門を閉めたままの調査をまず徹底的にやってほしいということでございます。
そして次に、将来、比較のために、また干拓地の機能を知るために排水門を開門する必要が生じると思われるが、排水門をあけることによりまして被害を生ずることのないように、開放前に環境影響評価、アセス等を行うとともに、環境対策を十分に施すことが求められているわけでございます。
また、排水門をあける際には、考慮すべき点として九項目にわたりましていろいろな、それを調査してほしいということもありまして、あるいはその開放の、あけたり閉めたりする方法としての検討すべきこともまた十項目が示されたわけであります。
農林水産省といたしましては、これらに対する具体的な対応について、技術的な面あるいは費用の面、こういうものがありますから、そういう観点から早急に検討してまいりたいというふうに考えているところであります。
○一川委員 ある新聞だと思いますけれども、自民党の幹部の方が、何か早急に排水門を開門して調査する、心配せぬでいいというような趣旨のことを発言された旨の記事をちょっと見たことがありますけれども、今そういうことは特段決めたということじゃないのですね。
○谷津国務大臣 ですから、第三者委員会の提言に従いまして、私どもはそれを尊重してやっていきたいというふうに考えているところであります。
○一川委員 そうすると、先ほど大臣も答弁されましたように、実際に排水門を開いて調査するまでにいろいろと検討しなければならない事項が幾つかある。それをやるには恐らく物理的にそれなりの期間が必要だということだろうと思うのですけれども、そういう必要な調査なり検討をするのに大体どれぐらいの期間を要するというふうに考えておられますか。
○谷津国務大臣 ですから、まず閉めた状況の中で調査をしてくれということでありますから、同時に、あけるときのいろいろな九項目あるいは十項目のそういうものをちゃんと調査をしてあけてほしい、あるいはそういう災害が起きないようにしてあけてほしいというようなこともありますし、また、中にあります堆積物といいましょうか、そういうのがあけたときに流れ出したときにどういう影響を与えるかということを考えれば、事前にそういうところのものを調査して、もし必要があるならば堆積物もあるいは除去しなければならぬということもあろうかと思います。
そういうこともございますので、今、いつというふうなことになりますと、ちょっと申しかねますけれども、とにかく急いでやってほしいということだけは事務方にも申し上げているところでありまして、そういった面では早急にこれをやるということで今検討しているところでございます。
○一川委員 今回のこの問題に関して、有明湾に面する地域の皆さん方なりそこで漁業をやっていらっしゃる漁業者の皆さん方が、激しく対立しているというような図式がある面では見えてくるわけでございまして、大変不幸な状況だと思います。
そういう面では、今大臣も言われていましたように、この問題はやはり科学的、技術的な根拠の中で、できるだけ早期に、関係者はもちろん、国民全体にも、今回のこの不作問題というものを、また有明湾全体の今後の再生という観点からも、わかりやすいそういう結果をぜひ早目に公表していただきたいということをお願いしておきたい、そのように思います。
それで、最後になりますけれども、もう一点、四月から米の品質表示制度がスタートしたわけです。JAS法に基づく新たな品質表示制度ですね。
これを受けて、新潟の魚沼産のコシヒカリが、この前の自主流通米の価格形成で、対前年比の価格の伸び率からすると百四十何%という伸び率を示した。価格にすると、六十キロ当たり三万五千円台だ。片や、例えば北海道地域とか九州地域からの米は、逆に対前年比九一%か二%台に落ちてきておる。
国内産の自主流通米の中でも、価格が倍半分というような状態に格差が開いてきておるわけですけれども、こういう状況というのを農水省はどのように分析されていますか。そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。
○谷津国務大臣 この価格表示というのは、四月一日からJAS法に基づきまして表示制度が適用されているところでありますけれども、実はこの前に、これは二月からだったですか、ブレンドの状況とか、あるいは表示どおり実際に販売をしておるのかどうかということで、調査をさせてもらっているのです。五百八十四件の業者といいましょうか、そういうところを調べましたところが、実はかなりの部分が表示どおりにやっていないというふうな結果が出ました。
このことにつきましては、非常に遺憾でございまして、やはり消費者に対しましてきちっと表示どおりのお米であってほしい、またそうでなければならぬというふうなことから、注意等もしたわけであります。
そういった面で、この表示制度によりまして指摘をしそして勧告をし、なおかつそれに従わない場合は公表しますよというようなことでやっておるわけであります。
そういうさなかに、実はこの二月の市場におきまして、五千三百円だったと思いますが、魚沼のコシヒカリが上がった。それからまた、三月になりましたら七千三百円上がりまして、両方合わせまして一万三千円ほど上がりまして、三万五千円台に入ったということでありますが、実はこれは私はちょっと異常だろうと思うのです。
これは私の個人的な想像なんですが、あるいは買い占めに走った人がいるんじゃないかなという感じを持ったわけでありますが、これはちょっと異常だというふうに思っているわけです。
それにあわせまして、食味のよい米といいましょうか、そういう銘柄米というものが漸次上がってまいりまして、過去四回にわたってずっと上がってきているわけなんです。
ところが、一方、食味の悪いといいましょうか、そういった面で市場性がないというふうに言ったらいいのでしょうか、そういうものが少しずつ下がってきているということで、いわゆる消費者の選択がやはりそういった自分で欲しいというふうな米の方向にだんだんとシフトをしていっているというところから、こういう価格形成になってきたのではなかろうかなと思うわけでございます。
これから生産者においても十分その辺のところを考えて作付をしなければならぬという、これはある意味においては警鐘を鳴らしているのじゃないかなというふうにも思うわけであります。
○一川委員 これで私、質問を最後にさせていただきますけれども、今ほどちょっと大臣も答弁で触れられましたように、一部買い占め的なことがあったのではないか、ちょっとそういう想定もされます。
需要者、消費者のそういう消費動向からして、価格がある程度品質のいいものにシフトしていくということは、それは当然考えられることなんですけれども、流通段階にいろいろな仕事をされている方々が、変な思惑でそういうものの値段をある程度、操作までいくはずはないのでしょうが、とんでもない、今回の魚沼米のように価格が上がっていくということに対して、本当にこれは消費者の需要がそういうふうにさせたのか、何かそこに別の力が働いておるのではないかなという感じもちょっとするのです。
そこのところがやはり、米の消費をこれから拡大していくというのも一つの大きな施策の中の一つですから、余り米の価格のぶれが大き過ぎると、消費者に逆にまた不信感を持たれてしまう危険性もありますので、そこのところは、自主流通米の価格ですから、農水省がコントロールするわけでもないわけですけれども、またいろいろな関係業界の方、関係者の方にそういった適正な指導をひとつよろしくお願いをいたしまして、若干時間は早いですけれども、私はこれで質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○堀込委員長 午後三時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後二時四十分休憩
――――◇―――――
午後三時五十四分開議
○堀込委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。中林よし子君。
○中林委員 これまでの農業者年金法の審議で一番やはり問題だというふうに大きくクローズアップされたのが、財産権である年金受給権の問題だというふうに思います。
そこで、非常に単純な質問なんですけれども、既裁定年金額の引き下げが裁判でこれまで争われたことがありますでしょうか。
○須賀田政府参考人 既裁定年金額の引き下げが裁判で争われたという事例は、私ども承知をしておりません。
○中林委員 民主党の鉢呂議員の質問主意書に対する政府答弁書は、既裁定年金額の引き下げが財産権の侵害に当たらない理由の一つに、昭和五十三年七月十二日の最高裁判所判例を挙げております。
この判例は、農地法に基づく国有農地の売り払いが旧所有者に対しては時価の七割相当額とした自作農創設特別措置法が違憲には当たらないというもので、これは、農地法施行後に地価が高騰し著しく高くなったために、一般の土地取引に比較して余りにも均衡を欠き、社会経済秩序に好ましくない影響を及ぼすこと、しかも国有財産は適正な対価で処分されるべきものであることなどから、公共の福祉に適合する判断ということにしております。
この国有農地の売り払いにかかわる判例が、今回の年金額の引き下げが財産権の侵害に当たるかどうかを判断する上でどのような関連があるのか、事案としては全く別のものだと思うわけですけれども、その関連性を明らかにしてください。
○須賀田政府参考人 ただいまお話しの昭和五十三年七月十二日の最高裁判所の大法廷判決は、先生今御指摘のように、国有農地を旧の地主に売り払うときの対価が争われた事案でございます。
ただ、この判決は、一たん定められました財産権を事後に法律で不利益に変更する場合に、それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り、これをもって違憲の立法ということができない。その場合に、その変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかというところの原則的な基準として、一つが一たん定められた法律に基づく財産権の性質、それから二つ目がその内容を変更する程度、三つ目がこれを変更することによって保護される公益の性質、これを勘案して判断すべきであるという判示をしているわけでございます。
年金受給権も、憲法二十九条に規定する財産権でございますので、この一般基準として判示されました基準に照らして判断するのが適当ではないかというふうに考えている次第でございます。
○中林委員 今説明を受けたように、公共の福祉に適合するかどうかということのいわば基準を示したにすぎないというふうに思います。だから、この判決があるからということで今回の例も合憲だ、こういうふうには言えない、私はそう思うんですけれども、これは確認できませんか。
○須賀田政府参考人 この判決で示されました基準、これに照らしまして我々として判断したものでございます。
まず、財産権の変更の程度が、その引き下げの幅が農業者の老後の生活の安定を脅かさない、僅少のものであるということ、そして、給付金額を国庫負担している経営移譲年金について引き下げを実施するものであること、そして、保護される公益として、加入者の負担能力の限界を超える保険料の大幅引き上げとか国民一般の負担のさらなる増加を避けることができることということを解釈いたしまして、憲法二十九条の許容する範囲内ではないかという解釈をお示ししているところでございます。
○中林委員 財産権、特に憲法二十九条二項にかかわる裁判で違憲判決はあるのかということを最高裁に私は聞いたわけですけれども、きのうの参考人も紹介しておりましたけれども、昭和六十二年四月二十二日に、森林法百八十六条が共有森林につき民法二百五十六条の分割請求権を制限していること、これからして森林法が違憲だ、こういう判例があります。
この判例では、規制目的が公共の福祉に合致するものであっても、立法の目的を達成するための手段として必要性もしくは合理性に欠けていることが明らかであって、立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えている場合、その効力を否定することができる、そういうことで違憲としております。
今回の改正案の法目的は何か、これは農業者の老後の保障だ。老後の保障を達成するための手段として老後の生活費に充てる年金額をカットする、これは立法目的を達成するための手段として必要性もしくは合理性に欠けてはいないか、このことが問われているというふうに思うんです。
先ほどその三つの基準に今回適合していると言うんだけれども、法の目的からすると、老後の保障というちゃんとした目的があるわけですね。だから、それを目的達成するためには、当然財産権の侵害に値するというふうに私は思うんですけれども、法制局、この点はいかがでしょうか。
○津野政府特別補佐人 お答えいたします。
今先生が御指摘されました判例でございますけれども、これは昭和六十二年四月二十二日の最高裁判所の大法廷判決でございます。
これは、財産権について立法府が社会全体の利益を図るために加える規制、具体的には、この問題につきましては、森林の細分化を防止するということによって森林経営の安定を図るという、当時の森林法における共有物分割請求権の制限についての判決であるわけであります。
この判決は、このような規制について、規制目的が公共の福祉に合致するものであっても、規制手段が右目的を達成するための手段として必要性もしくは合理性が欠けていることが明らかであって、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該立法が憲法二十九条第二項に違背するというような判示をしたところでございます。
ところで、今回の既裁定年金額の引き下げでありますけれども、これは、年金という金銭給付を受ける財産権の法律による変更が、憲法第二十九条に照らしまして許容されるかどうかということが論点になっているわけであります。
この点につきましては、民法上の権利の行使を規制しました旧森林法の第百八十六条の規定の合憲性というものについて判断した昭和六十二年の最高裁判所判決において論じられている権利とは、論点となります財産権の性質が異なるものであるということがおわかりと存じます。
そこで、農業者年金制度につきましては、昭和四十年代の農村におきます過剰労働力の存在とか農業の零細経営という実態を踏まえまして、農業構造の改善に資する施策として、老後生活の安定とともに、農業経営の近代化及び農地保有の合理化を促進するために創設されたものであります。しかしながら、農業者年金制度につきましては、加入者一人が受給者三人を支えるというような財政状況のもとにおきまして、現行制度をこのまま継続した場合には、遅くとも平成十四年度には年金財政が払底すると見込まれる状況にあるところであります。
このため、今回の既裁定年金額の引き下げ措置につきましては、一つは、農業者年金制度の破綻を回避しつつ、その存立を図るとともに、加入者の負担能力の限界を超える保険料の大幅な引き上げを回避する観点から、また未裁定者にも年金額の引き下げという応分の負担を求めるとともに、今回の抜本的改革が必要となったことについて、直接的な責任のない一般国民に三兆六千億円もの負担をお願いするというような状況の中で、本年金制度における受益者たる既裁定者にも、受給者が農業経営の若返りや農地の規模拡大といった一定の農業上の政策目的の達成に貢献した者に限られており、単に農業者の老後生活の安定の寄与のみを目的とするものではなく、また現在では全額国庫助成で賄われているといった特別の性格を有する経営移譲年金につきまして、この法案で定めた程度の額の負担をお願いするという内容であるわけであります。
これにつきましては、目的と手段との間に必要性と合理性があるものと考えております。したがって、六十二年判決に照らしても妥当なものであるというふうに考えているところでございます。
○中林委員 結局この法案を出すには法制局を通るわけですから同じような考えに陥っているというのは否めないわけですけれども、私は、やはりこの法の目的が老後の保障と、農業者にとっては大変大きな意味合いを持っているということを考えれば、これまで大臣の御答弁もあるいは今の法制局の御答弁を聞いていても、要するに年金の引き下げということは内容を変更するという規定に入るわけですけれども、月額二千円から四千円で、高齢夫妻世帯の消費支出の一%にとどまり、農業者の老後の生活の安定が直ちに脅かされるものではない、これで大丈夫なんだと言っているわけです。
しかし、きのう、我が党の松本議員も参考人質疑のときに紹介しておりましたけれども、福島県の生活できる農業者年金を求める県北の会が要望書を出しております。この要望書を見ると、
私どもは生命維持に欠くことの出来ない食糧の生産、国家安定の基となる農業に従事し、地域社会の保持発展に努めて参りました。
この営々とした労苦に対して、老後の保障ともなる農業者年金を減らすということは承服し難い事であります。
年金加入を勧められた折りには、国が責任を持つ公的年金だから、決して不利にならないと説明され、疑うことなく積金をして今日に至っております。
後にもあるわけですけれども、こういう切実な声です。
あるいは、農業新聞でも紹介されております静岡のミカン農家、六十四歳、この方が、この年になると医療費も何かとかかる、妻は年金をまだ受け取っていないので一割削減でも厳しいものがある、こういうことを言っているわけですね。
だから、九・八%程度削減、この判断ということは、高齢者の夫妻にとってはわずかなもので許容できると答弁されているわけですけれども、こういう本当に生々しい農家の皆さんの声にどのようにおこたえになるんでしょうか。
○谷津国務大臣 年金額の引き下げ率につきましては、農業団体との論議の中で受給権者に受け入れられる引き下げ率が平均で一〇%未満であるということ、また他の年金制度で自賄いとされている農業者老齢年金を含めまして、将来の年金給付費を国庫が負担することから、国民一般の理解が得られる程度の年金額の引き下げが必要であること等を踏まえまして、既裁定年金の平均の引き下げ率がぎりぎり一〇%未満となる水準とすることが妥当と考えたものでございます。
今般、受給権者の方々に年金額の引き下げという負担をお願いするという形で抜本的改革を進めざるを得ない事態に至ったことについては、まことに申しわけないというふうに思っているところでございます。
しかしながら、今回の現行制度の処理について、農業者年金の破綻に直接的な責任のない国民の理解を得るためには、受給権者についても、今回の制度改革に伴う国民負担、これは約三兆六千億円、さらなる増大といたしまして二千億円を回避するためにも、全額国庫助成で賄われている経営移譲年金に限定をさせていただきまして、農業者の老後生活の安定を脅かさないわずかな額、これは国民年金を合算して考えると年金給付額の二ないし三%のカットにつきまして、年金額の引き下げという負担を求めることもやむを得ないものというふうに考えているところであります。
○中林委員 今国民の間では老後の不安が物すごく増大しております。これは決して農業者だけではありませんけれども、しかし、農業がここまで経営が困難になっている中で、せめて農業者年金だけはと思っていた人たちに、今回の九・八%の削減というのは到底納得のいくものではありません。
日本の経済危機、それは消費不況を改善しない限り回復できない、これは専門家の共通した認識になっております。そうであるならば、やはり年金額を削減するなどということではなくして、責任のない農業者あるいは国民に負担を押しつけるのではなくして、むだなところを削って、それで国が手だてをする、このことが当然過ぎる結論だというふうに思い、九・八%の削減を撤回されるよう要求し、次の問題に移りたいと思います。
私は、農業者年金に女性の加入の道を開いたのはよかったけれども、最近になってから加入者が激減している、この問題に着手をしてみました。年金制度そのものにも問題はありますけれども、それ以前に、女性農業者の置かれている現状、それが非常に大きなネックになっているなということを改めて感じざるを得ません。
そこで、女性農業者問題についてお聞きしたいというふうに思います。
農業者の六割は女性が担っている、ここをちゃんと農水省の政策の柱に据えていただかなければならないというふうに思っております。男女共同参画基本計画では、生涯を通じた女性の健康支援の観点から、リプロダクティブヘルス・ライツという、これはなかなか女性の間では共通語になってまいりましたけれども、要するに生涯を通じた女性の健康支援、こういうことですけれども、位置づけられました。これは農業女性の分野でも大変重要な課題であります。しかし、実際には農村は非常におくれた現状にあるのが実態です。
昨年農水省が出した農林水産業・農山漁村における少子化対策推進ビジョンでも、その点については女性農業者の現状を踏まえた上で、母性保護の観点に立った産前産後、乳児期の労働、休暇等のあり方などについて、農林水産業における労働の特殊性や他産業の女性労働者の就業制限の状況を踏まえ、専門的見地から、農林水産業を職業としている女性が他の職業についている女性と比較して劣ることのないようにすることが重要である、こう指摘をして、これは非常に大切な指摘だと私は思います。
それで、私は農家の女性の皆さんのお話を随分聞いたのです。そうしたら、こういうお話が出ました。三人子供を産んだが、どの子供のときも出産間際まで二十キロのトマトの箱を持っていた、こういうお話もありました。それから別の方は、産後の休暇は地域のしきたりで二十一日と言われていたが、実際は農繁期にぶつかって、手伝ってと言われると人手もないし断り切れなかった。こういう状況が続いております。
女性の健康が問題になるのは出産のときだけではありません。農村女性は生涯を通じて、夏には直射日光にさらされ、冬は寒い戸外で作業をし、年間を通じて重い荷物を持つ上に家事労働の負担もあるという、他産業の女性とはかなり違った厳しい状況にあります。そういう視点に立って、農村女性の健康支援が必要だというふうに思うわけです。
もう既に子育てを終えていても、若いころ、産前産後休まずに作業をして流産したという方々も本当に多いわけですね。茨城県のレンコン農家の方がおっしゃっていたのですけれども、冷たい畑につかって仕事をしたり、泥を水で落とす作業などを続けていると体が冷えるため、女性のほとんどが婦人科系の病気になっている、こういう大変な訴えをされております。
しかし、農水省にこの農村女性の健康に関する独自の実態調査があるのかとお聞きしたのですけれども、長い間されていないということが判明いたしました。当然、こういう生涯を通じた女性の健康支援、これを男女共同参画基本計画の中でも高く位置づけているならば、改めて農水省独自の調査が必要だと思いますけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。
○谷津国務大臣 実は、昨日も女性の参画会議があったわけでありますけれども、私もその協議の内容を聞いておりまして、農林水産業の、あるいは農山漁村の地域で活性化のために非常に貢献している女性、そしてまた意欲的な活動をなされております女性が、一層そういったものを発揮し、担い手として活躍するためには、いろいろな対策も必要でありますし、また、そういう働き場といいましょうか、そういうものを一層提供するということも大事である。
特に農村で働く女性は、農作業をしたほかに育児あるいはまた家事ということで、正直なことを申し上げますと、むしろ男の方よりも働いている時間がそういう面を含めると長いのではないかなというふうに私も思うわけでありまして、その過重は大変なものがあるというふうに思っているわけであります。
そういった中から、今御指摘のありましたそういう調査というのは私は必要であるというふうに考えるわけでありまして、そういうふうなものの実態を知って初めてまた次のいろいろな対策が打てるということでありますから、先生の今御指摘になりました点については、私はそれをやることは大事であるというふうに考えます。
○中林委員 ぜひ調査をお願いいたします。
そこで、私が本当にたくさんの方から聞いた話で、具体的施策を迫りたいというふうに思います。
この方は、千葉県の方にお住まいの方なのです。小学校六年生、四年生、三歳の子供を持つお母さんです。困るのは機械を使うときや消毒作業のとき。幾らうちで遊んでいなさいと言っても、一人にして置いてくるから、どうしても親の近くまで出てきてしまう。結局、軽トラックの運転席に乗せて、窓を閉めておいたりとか、畑のそばに置いて目を配るしかない。消毒のときはやむを得ずおじいさんに一人でやってもらう。うちに連れて帰ったりもする。消毒のときはおんぶしてやるわけにもいかないし、こういうときに預かってもらえればと。頼めるところもないし、本当に自分が休むわけにはいかない、こういう切実な声でした。
それから、これも別な女性ですけれども、忙しいときは、御飯を食べさせてまた出荷に行ったりとか、午後十一時ぐらいまで、起きている間せわしなく、座る暇もない。ときにはだれかにかわってと思う。お盆もお彼岸もお正月もない。今の時代のせいでスーパーも年じゅうやっている。初荷を出すにはお正月も働かなければならない。お正月は売れる時期だから仕方がない。三百六十五日お休みがない。こういう声です。
それから、これは二人の子供を持つお母さんです。雨の日でも何かしら作業はあるし、忙しいときは御飯の支度をするのもとても大変で、だれか手伝ってと思う。そういう意味では家事ヘルパーなどいいアイデアだ。この間は忙し過ぎて小学生の子供が熱を出したのに気づかず、元気で遊んでいると思っていたら突然吐いて高熱でふらふらだったと、お母さんの切ない胸のうちを言われました。
これは福島の酪農農家で四歳、一歳二カ月の子供を持つお母さんです。出産のときも仕事の内容は変わらない。休めないし、ほかに農家の奥さんの知り合いもいないので自分でもどうしていいのか全くわからない状態だった。どうしても無理しがちで、仕事にかわりがいないので休んでいいよと言われても実際には休みづらい、こういう声です。
今大臣に聞いていただいているのは、みんな三十代、四十代、小さいお子さんを持って一生懸命専業農家として働いている女性たちです。
これは、山形の方の人ですけれども、妊娠中でも力仕事はあるし、収入になると思うからやるけれどもと。軽トラックに揺られ、車の揺れが激しくて、こんなに振動があっていいのかと心配になったり。平気で直射日光に当たったりして、自分も暑いし、赤ちゃんはどうなのかなと思ったり。知識がなく農薬散布の仕事をしたり、特にどれがいけなくてどれがオーケーだというのがわからない、不安だ。自分のうちで散布していなくても、隣でたくさんまいていると飛んでくるし、子供には害はないのだろうか、母乳はと不安でたまらない。農村で安心して子育てできるように支援してほしい。こう言いながらも、農村の女性は元気だ、こうもおっしゃっております。
そういう方々に対して、農水省の女性対策の概要を見せていただきました。予算の中身も見せていただきました。二〇〇一年度の予算で、女性農業者のライフステージに応じて出産、育児期に当たる女性の農業経営参画が可能となるよう、女性農業者経営参画新規事業を立ち上げていることはとてもいいことだ。
今言われているように、母性保護のためのセミナーの開催だとか、ベビーシッターの登録だとか、各種ヘルパー制度の整備だとか、相談マニュアルをつくるとか、そういうことは今訴えられた女性たちの思いを酌んだ方向だというふうに思ったのです。
しかし、方向性はいいのですけれども、予算が一億円。これでは何もできないのではないか、こう思うのですけれども、今後の大幅増額を検討していただけませんでしょうか。
○谷津国務大臣 農山漁村の女性、男女の共同参画の推進をする観点から予算等もとっておるところでありますけれども、いずれにしましても、男女、社会の対等な構成員としていろいろな活動をなさっておる、そして、特に女性の場合は農林漁業関係においては経営に参加している割合が非常に高いということで、またそれも評価をされているところでございます。
そういった中で、女性農業者みずからがライフステージに応じて、出産あるいは育児期に当たる女性の農業経営参画が可能となるような経営管理等の研修、母性保護のためのセミナー等の開催、あるいは今先生おっしゃいましたベビーシッター等の登録等、家事と育成の両立を支援する仕組みを整備するとともに、またその指標あるいは目標の策定、そういうものに向けましていろいろやっているところではあります。
いずれにしましても、農業経営に携わっているために非常にいろいろな面で御苦労いただいているという点もあるし、また一方、育児、家事のためにもそういった面で大変な御努力をいただき、お疲れも大変だろうというふうに思うわけであります。
そういう観点を踏まえまして、農林省といたしましては、従来から男女が対等のパートナーであるとの認識のもとに、家族内でのいわゆる役割分担あるいは労働の配分等を明確にする家族経営協定の促進とか、あるいは女性の従事割合の高い収穫あるいは調製作業環境の改善、例えば野菜を出荷するときの車つきのいすとか荷台の導入とか、いろいろな対策をやっておるわけであります。
また一方、ハローワークとの連携によりまして、農作業の補助労働力確保のための環境整備等に取り組んでいるところであります。
そういう中で、今先生から予算が少ないのではないかというふうなおしかりを受けたわけでありますけれども、私もいろいろとこの辺のところも検討させてもらいました。そういった面で、適切な予算の措置ということも大事ではなかろうかということでありますので、私はこれからもそういった面の予算の獲得にも努力していきたいというふうに考えるところであります。
○中林委員 農業者の六割を女性が占めている、こういう観点から、置かれている状況がここまで過酷になっているということにかんがみると、少々の増額ではだめだ、もう大幅な増額を要求しておきます。
次に、この四月一日から新しいJAS表示が始まりました。消費者の関心も非常に高いのですが、とりわけ遺伝子組み換え食品の表示はさまざまな点から問題点が指摘されております。
まず、表示が適正に行われているかどうかの検査をどのように担保しているのかという問題です。特に遺伝子組み換え作物を不使用の場合は、表示なしか、任意表示で遺伝子組み換えでないとの表示となるわけですが、この部分がちゃんと守られているかどうか、これが重要だというふうに思います。
そこで、検査にかかわる予算、検査人員、体制、検査計画、これを明らかにしてください。また、この検査結果を公表することが必要だと思いますけれども、時間が非常に限られておりますので、端的にお答えください。
○西藤政府参考人 遺伝子組み換え食品の表示問題についてお答え申し上げます。
私ども、先生御案内のとおり、この四月一日から遺伝子組み換え食品の表示をお願いするわけでございますが、その実効上の担保措置ということで、私ども、農林水産消費技術センター本部及び横浜、神戸のそれぞれのセンターにおきまして分析機器の導入を既に図ってきております。約十名の職員で分析に当たりたいというふうに思っております。
分析に要する費用につきましては、十三年度の予算で約一千四百万円を計上させていただいております。
また、その結果の公表についてのお尋ねでございますが、DNA分析の結果については、その検査件数の総数及び遺伝子組み換え物が含まれていると検出された件数、また、その適切な分別生産流通管理が行われていたかどうかについての書類確認の結果とともに公表する方向で検討しているところでございます。
○中林委員 もう一つ漏れがあります。検査計画。
○西藤政府参考人 今申し上げたつもりですが、御指摘は多分、遺伝子組み換えの表示のないもの及び遺伝子組み換えでないという表示をしているものについて、具体的に私ども、先ほど申しました消費技術センターで食品を買い上げて分析するという予定でおります。
○中林委員 農水省から事前に計画を聞いたのですけれども、大体三百検体以上という、これは間違いございませんね。
○西藤政府参考人 先ほど申しました予算措置の中でできるだけ三百検体以上の検査をしていきたいというふうに考えております。
○中林委員 農水省だけではなくして、遺伝子組み換え食品については、四月一日から表示だけではなく食品衛生法に基づく規制がかけられることになっております。
これは厚生労働省にお聞きしますけれども、検査予算、検査体制、検査人員はどのようになっているか、お答えください。
○尾嵜政府参考人 輸入時の検査を実施することにいたしますが、検疫所におきまして実施いたします関係の予算につきましては、平成十三年度予算におきまして、検査のための機器整備等の費用としまして新規に一千六百八十万円の予算が認められたところでございます。
また、検査の体制につきましては、横浜及び神戸にございます輸入食品・検疫検査センターにおきまして検査を実施する旨、各検疫所の方に具体的な検査の方法等について既に通知をしておるところでございます。平成十三年度におきましては、輸入届け出件数の五%を目途としてモニタリング検査を実施する予定にしております。
なお、この検査体制の関係の人員につきましては、十三年度は定数増がございませんで、既定の定員の中で必要な検査体制の確保を図るということで考えておるところでございます。
○中林委員 私は、所信質疑のときにも明らかにしたわけですけれども、今、農水省も厚生省もモニタリング検査ということになっているわけですね。それでは、検査結果が出たときには、食品の場合はもう既に私たちのおなかの中、こういうことになっていて、とても検疫検査とは言えない代物だというふうに思います。だから、なぜ検査結果が出るまで輸入を認めないという命令検査の対象としないのか、それを明らかにしていただきたい。
それから人員体制や検査予算も、今お聞きすると、厚生労働省も農水省もともに極めて少ない。体制も人員も少ない。これはふやす方向で今後する考えはないのか。それぞれ、厚生労働省は副大臣、それから農水省は大臣の方にお答えいただきたいというふうに思います。
○桝屋副大臣 厚生労働副大臣の桝屋敬悟でございます。今、厚生労働省関係、二つお話をいただきました。
一つは、水際検査等につきまして人員が少ないのではないか、強化すべきではないか、こういう御指摘であります。
御指摘のとおり、輸入食品の監視業務については極めて重要な観点でありまして、食品衛生法に基づきまして全国三十一の検疫所で実施をしているところでございます。食品等の輸入届による審査及び検査、それから輸入食品の衛生確保に関する指導、さらには食品等の輸入事前相談などを行っているところでございまして、違反する食品等については廃棄、積み戻し等の処分を行っているところであります。
二、人員でありますが、先ほど答弁をさせていただきましたけれども、委員はふやせというお話ではありますが、現在三十一の検疫所で二百六十四名で対応しておりまして、まさにこの十年ぐらいで百名ぐらい増員をしているわけであります。順次増員をするということで体制の強化を図ってきたところでございます。
今後とも、引き続き輸入食品の安全確保に万全を期すとともに、輸入食品の実情に即した必要な検査体制の確保に努めてまいりたい、このように思います。
それからもう一点、命令検査でありますが、恐らく委員はスターリンク等を頭に置かれて、なぜ命令検査を行わないのかという御指摘ではないかと思いますが、私どもも一番スターリンクの問題が頭にあります。
この点については、日米双方で合意したプロトコールに基づいて、米国のトウモロコシの積み込み地におきまして、千五百トン程度のはしけ単位すべてで、採取する検体の量を二千四百粒にふやして検査が実施されておりまして、日本向けに輸出される貨物から採取された検体について日米双方でスターリンクの確認検査を行っているところであります。
いろいろ問題がありましたが、我が国に輸出されるトウモロコシについてスターリンクが混入されないように管理されている、こういう状況になっているというふうに理解をしているところであります。
もちろん、この四月から安全性審査が食品衛生法上義務化されたことに伴いまして、我が国の輸入時にモニタリング検査を開始することとし、未審査であるスターリンクが混入しないよう万全を期すこととしているところでございます。
○谷津国務大臣 先ほど西藤総合食品局長からの答弁がありましたように、まず東京、横浜、神戸の三カ所の農林水産消費技術センターに整備されているDNAの分析のための機器を活用いたしまして、約十名の職員により、年間三百件以上の食品の分析を行う。
また、農林水産消費技術センターにおいては、遺伝子組み換え食品の検査、分析、あるいは分析技術の改良、事業者に対する指導等に要する経費として約一千四百万円を予定しておりますけれども、まずこの辺を見まして、それによってまた対処していきたいというふうに考えております。
○中林委員 厚生労働副大臣から今御答弁いただいたんですけれども、これは本当に今遺伝子組み換えの問題で消費者は不安に駆られております。
なぜ水際検査ができないのか。命令検査は、九五年の食品衛生法改正のときに、それまで規制していたものを取っ払って規制緩和をやった。その当時は、命令検査があるから大丈夫だよといった厚生省のずっと態度だったんですよ。それが、ここに至ってなぜ命令検査ができないのか。
これは別に国がするわけじゃなくて業者にやらせるだけの話ですよ。それをやらないで、なぜアメリカとの関係で、お互いにやっているから大丈夫だと。水際でやらないで、何の保証もありません。第一、この間は、アメリカで検査したのと日本で検査したのは全然違うものが検査されていた、こういうことがあったわけですね。
だから、九五年の法改正のときに当時の厚生省の言われていたことが全然今守られていないということですし、それから、四月一日から規制が義務づけられるということになったにもかかわらず、人員がふえないということでは、本当に安心して私たちは物が食べられないという状況でございますので、この点、もう一回お答えいただきたいというふうに思います。
○桝屋副大臣 お答えをいたします。
人員について再度御指摘がありましたけれども、全体に厳しい総定員法の中で、私どもも、確かに平成十二年度ふやすことはなかなか難しい状況であったわけでありますが、漸次、先ほどから申し上げておりますように、相当数ふやしてきているということもこれまた御理解をいただきたいと思います。もちろん今後とも、輸入の食品等の状況を見ながら、必要なことは検討していきたいというふうに思っているところであります。
それから、御指摘の命令検査につきましては、先ほどもお話を申し上げましたけれども、アメリカとの体制は、いろいろありましたけれども、双方、今申し上げたように、新しいプロトコールに基づいてやっていきましょうということになっているわけであります。
それで、命令検査については、当然ながら、そうしたモニタリング検査の中で幾つかの事例が出てくれば、食品衛生法の違反という状況が出てきたものについて行うものでありまして、過去の違反状況等といった違反の蓋然性なども考慮しまして判断をして実施しているものであります。今後のモニタリング検査結果等を踏まえて適切に判断をしてまいりたい、このように思っております。
○中林委員 以上で終わりますけれども、食の安全ということは本当に農水省も厚生労働省も肝に銘じて、体制を組んでやっていただきたいということを要望して終わります。
○堀込委員長 次に、菅野哲雄君。
○菅野委員 社民党の菅野哲雄です。
参考人質疑も含めて三日目になりますが、最後の質問となりました。これまでの議論で多くのことは理解しつつも、まだまだどうしても納得できないという部分があります。そういう点を大臣あるいは政府に問いただしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
まず、私どももずっとこの間問題視してきた点なんですが、政府として農業者年金を三〇%削減するという方向を明示して、それから最終的に九・八%、それから脱退一時金についても八〇%としてきたわけでございます。そして、この間の議論の中で、大臣も含めて多くの議論がなされて、政府の答弁は、最終的に九・八%、八〇%。九・八%の問題は、農業関係団体と協議の末、そして国民理解が得られる線ということでこの九・八%というものが設定されてきたという一貫した答弁なんですね。
そして、憲法論議についても、五十三年の最高裁判決があるからそれも大丈夫なんだということなんですが、実はきのうの参考人質疑の中で、農業団体じゃなくて農業を営んでいる人がどう参考人で発言しているかというと、憲法第十一条の基本的人権の問題や二十五条の生存権の問題や二十九条の財産権の問題、これらを用いて、本当にこれらの観点からいっても九・八%の削減は認められないと言って力説していたというふうに思います。農業者団体と農業者との間の乖離がここに存在しているということもあるわけですね。
そういう意味では、これまでの九・八%の議論の中で、憲法論議も含めて、本当に農民の立場に立った議論というものをどう政府としてやってきたのか、この点を問いただしておきたいというふうに思っています。
○谷津国務大臣 年金額の引き下げ幅につきましては、まず、平成十一年の十二月に幅広い論議のたたき台といたしまして農林水産省が提案した農業者年金制度改革大綱は、同年の四月から開催した農業者年金制度研究会での議論を踏まえまして、昭和五十三年七月十二日の最高裁判決で示された判断基準に則しまして、経営移譲年金あるいは農業者老齢年金を含めた受給額を全体として平均三割カットとすることの原案をつくったわけであります。
しかしながら、この平均三割という引き下げ幅については、農業団体から批判が強く、農業団体との論議の中で受給権者に受け入れられる引き下げ率が平均で一〇%未満とされたわけであります。
この間の経緯につきましては先ほどから何回も答弁しておりますけれども、いろいろな議論を踏まえさせていただきました。団体にも、あるいはいろいろな方々にも聞かせていただきまして、その意向を確認したわけでありますけれども、約六カ月間かけました。
そういう中で、農業会議所とも何回もやりとりがございまして、もう一回聞いてくれないか、あるいはどういうような考えがあるのかと二、三回やりとりがありまして、その間、その団体におきましても農業者の意見をいろいろ聞いたと思いますし、これは受給者あるいは加入者等の方々からも聞きますし、またこれから担い手となる人たち、そういう若い人たちからも多分聞いたというふうに私どもは聞いておりまして、そういう中から、いわゆる一〇%以下にしてほしいということで九・八%とさせていただいたわけであります。
また、政府におきましても、既裁定年金額の引き下げについては、農業者の老後の生活の安定への寄与のみならず、農業上の政策目的の達成という特別の性格を有しているものでありますから、その財源を専ら国庫助成で賄っている経営移譲年金を引き下げの対象とすること、それから、世代間の給付と負担のバランスを考慮いたしまして、旧法の経営移譲年金受給権者と新法の経営移譲年金受給権者とで引き下げ率に差を設けること等の配慮をすることによりまして、農業者にも国民一般にも理解いただける結論として、最終的に既裁定年金額の引き下げ率を平均九・八%としたところでありますので、御理解をいただきたいと思います。
○菅野委員 農業者年金がこういう状況になる経過についてはもう一回後ほど議論したいと思うのですけれども、結局、大臣がこの委員会で答弁しているように、今までの経過の中で、こういう事態になったというのは政府の本当に判断の誤りで、今となってみては申しわけないの一言でしかないということが言われていたというふうに思います。
それで、参考人の戸波さんがきのう言っていたのですが、減額する明確な理由、必然性はないんだというふうに言っています。
というのは、大臣が申しわけないと言うことの裏というのは三兆六千億円の公的負担なんですね。これを認めてくださいということですから、そういうことを言いながらも、申しわけないと言いながらやっているのです。そして、一方では、九・八%という額が三千三百億だということも明らかになっていますね。
ここなんです。三兆六千億における三千三百億、これで本当に国民の理解を得て、そして大臣がこれまで申しわけなかったということの意味がこういう数字で議論されているところに、私はまだまだ議論が足りないなというふうに思うのです。
農業者の気持ちを本当にわかっているとすれば、抜本的な改革をしたということであれば、今までの既裁定者は最低限救うんだという、憲法の観点からいってもそういう政治判断をとるべきだと私は思うのですけれども、この点について再度、大臣、率直な気持ちをお聞かせ願いたいと思います。
○谷津国務大臣 先生御案内のように、今回の改定は、まず老齢年金の方はさわらないということで、経営移譲年金、これは今先生のお話の中にありましたように、公的資金が投入されるわけであります。それが約三兆六千七百億というくらいになるわけであります。
これは全く農業者年金、農業に関係ない一般の国民の方たちの税金の負担の中で行われるわけでありますから、その方たちの御理解を得られなきゃならないということもございまして、そういうことから経営移譲年金のところだけをひとつ下げさせていただく、それで平均九・八%になるんだということで、この辺のところはひとつ御理解いただきたいというふうに思うわけであります。
○菅野委員 この部分は、私どもとしては九・八%はどうしても認めるわけにはいかない。後でまた理由も申し上げますけれども、そういう立場を貫かせていただきたいというふうに思っています。
それからもう一つは、脱退一時金の八〇%の問題です。
これは、私は、新しい制度に移行する場合に、加入者に本当の意味でのどうするのかということの選択の自由を与えるべきだというふうに思うのですね。八〇%にしたということの明確な理由というのはどこにあるのかというのがなかなかわかりません。そして、逆に言うと、二〇%損するから今の制度に残っていなさいという意味合いを持たせたとしか思えないんじゃないのかなというふうに思うのです。
そうじゃなくて、新しい制度は新しい制度として発足させていくんだということであれば、私は、選択の自由というものを本当の意味で与えるべき、その加入者にとっての選択に任せるべきだというふうに思っています。そういう意味では、八〇%という形をどうしてもとらざるを得なかった理由、これをはっきりとさせていただきたいというふうに思います。
○須賀田政府参考人 まず、脱退一時金でございます。
現行制度のもとでは、保険料というのは年金の給付財源として受け取っているものですから、掛け捨て防止という意味合いで、現行制度の脱退一時金は納付済み保険料総額の三割程度としているところでございます。
しかしながら、今回は、現行制度を廃止して新しい制度を設けます。先生御指摘のように、今回の改革でこれまで期待していた年金とは違うものができる、脱退一時金を受給して自力で老後生活を再設計したいという要望は十分考えられるところでございます。そして、そのためには、老後生活の再設計に資するという観点から、現行の脱退一時金制度を大幅に改善するということにしたわけでございます。
そして、具体的にどういう考え方で設定をしたかということでございますけれども、今回の制度改正で新たな年金単価ができるわけでございますけれども、この年金を仮に六十五歳から平均寿命まで受給をするという際の生涯受給総額と、それから現時点で脱退したい、そうすると現時点で脱退して一時金として前払いを受けるわけでございますけれども、そこから平均余命まで一定の割合で運用する総額と、この将来六十五歳から平均余命まで受ける生涯受給額と今のような考え方の運用総額はイコールになるように考えますと、納付済み保険料総額の八割という数字が出てくるわけでございます。
そういうことで設定させていただきましたので、加入者を引きとめるようにする政策というふうには私どもは考えておりません。
○菅野委員 わかりました。
そういう意味では、この農業者年金という言葉なんですね。また、もとに戻りますけれども、年金制度において、既裁定の部分が引き下げられたという部分が、私は先ほど桝屋厚生労働副大臣が答弁していたのを聞いていて明確ではないなというふうに思うんです。
農業者年金も公的年金だという議論がずっとされていますけれども、この既裁定の部分を、農林大臣として、これがほかの公的年金に波及するという考え方をどうとっておられるのか。これは農業者年金の部分のことだけなんですよという農林大臣としての認識で今日まで来ているのかどうか、その辺をはっきりさせていただきたいと思います。
○谷津国務大臣 農業者年金につきましては、加入者一人が受給者三人を支える構造、いわゆる成熟度が二七〇%もいっておりまして、現行の方式を維持すれば、遅くとも平成十四年度には支払い不能となることが確実と見込まれるという異例の事態となっておるわけでございます。このため、農村現場の声や関係方面との調整を行いまして、現行制度を抜本的に見直すこととしたところでございます。
具体的には、今後の年金支払いについて国民の負担をお願いする一方で、既裁定者にも、単なる老後生活の安定のみならず、農業上の政策目的の達成という特別の性格を有する経営移譲年金の引き下げをお願いすることとしたところでありますが、現行制度の処理を行うこととするために、今回の引き下げ措置は農業者年金特有の事情によるもの、そういう認識を持っておるところでございます。
また、他方、国民年金あるいは厚生年金等の他の公的年金は、社会保険方式のもとで、現役世代が納付する保険料財源を基本として給付に必要な費用を賄う世代間扶養の仕組みで運営していること、また、成熟度も農業者年金のような状況にはなっていないことなど、現在の両者の置かれている状況は大きく異なっているというふうに考えます。
このため、他の公的年金については、今回の農業者年金の削減と同列に論じることはできないというふうに考えております。
○菅野委員 それでは、今の答弁をしっかりと受けとめておいて、次に移りたいと思います。
一つは、今までも議論してきましたけれども、農業者年金の位置づけなんですね。今も大臣がおっしゃったように、これは他の公的年金とは性格が異なるものなんだという位置づけでずっと答弁してこられているし、今もそういう答弁がなされています。
そして、これまでの議論の中でも、ここをはっきりさせておきたいと思うんですが、年金なのか政策支援なのかということがどうしても、両輪でやっていくんですよという答弁なんですけれども、ここを私は、もう農業者年金という言葉じゃなくて、政策支援だというふうに位置づけても過言ではないんじゃないのかなというふうに思っています。
そして、かつては年金だという意味合いを持たせながら、厚生大臣も主務大臣の中に入っていたんですね。今度の改正では農林大臣だけが主務大臣になるというふうな改正もなされていて、そして、年金という性格を持たせればこの改正はしなくてもよかったはずだという理解に私は立ちます。
そういう意味で、私は抜本的改革をここまでしたんだったならば、これは政策支援のものなんですよ、制度なんですよという位置づけにすべきだというふうに思うんですけれども、これらについて、大臣、どう思っていますか。
○須賀田政府参考人 大変微妙な御質問でございます。
農業者年金は年金制度でございます。基本的には国民年金の二階部分をカバーする農業者向けの公的な年金であるという性格は維持をしているわけでございます。
他方で、やはり年金手法、長期にわたる、そして負担が先行する、属人的なものである、そういう年金手法を活用いたしまして、望ましい経営体を目指す農業者の保険料負担の軽減という仕組みを通じて、一つは現役時代の保険料負担の軽減、それからもう一つは老後におきます所得の確保ということを図るということをねらいにいたしまして、そういうことを通じて担い手の確保を図るという政策にしたわけでございまして、過去よりも、専ら農政上の要請から創設をされた要素が強いということで、農業政策を推進する観点から年金手法を活用したというものでございます。
なお、厚生労働省の所掌の中に年金の調整という事務がございますので、その観点からいろいろ口出しができるというふうにはなっているわけでございます。
○菅野委員 そういうことをずっと繰り返してきたから今日の状況をもたらしたんだというふうに思います。
だから、そういう抜本的な改革をしたんだということであれば、もう一歩踏み込んで、年金という手法を活用した政策支援だということでずっと言ってきていますね。これは政策支援が主なんですね。このことをはっきりと、この農業者年金が破綻した以降、これから創設していこうとするときには、私は政策支援が主になったんだというとらえ方をしていかないといけないというふうに思っています。
この部分を幾ら議論してもまた進まないですから、これから五年あるいは十年先にまた大きな議論になると思うんですけれども、現時点での問題提起として、年金手法を使った政策支援というのはもう終わりにしていかなきゃならないということを私は強く求めておきたいというふうに思っています。
それで、なぜこのことを言うのかというと、次の問題に移るんですが、積立方式の持つ矛盾というのを政府としては、今回この積立方式に移行するに当たって、どう考えているのかということをしっかりと議論しておかなきゃならないというふうに私は思うんですね。
過去、農業者年金は昭和四十六年から積立方式でやってきました。そして、五十六年に賦課方式に変更しました。そして、今回また積立方式ですね。積立方式から賦課方式にいって、今回、抜本的な制度改革によって積立方式にしますと。それでは、なぜ積立方式から賦課方式にせざるを得なかったのか、この点の議論が本当にしっかりなされたのか、ここが大きな問題点じゃないでしょうか。
政府としては、この一連の農業者年金の問題で、この積立方式、賦課方式をどう総括しているのか、ここを明らかにしてください。
○須賀田政府参考人 先生御指摘のとおり、農業者年金の財政方式、当初は加入者数等に左右されにくい積立方式というものであったわけでございますけれども、昭和五十六年改正で賦課方式へ変更したところでございます。
その背景でございますが、まず昭和四十九年改正で導入をいたしました物価スライド措置によりまして、年金給付額が非常にかさんだわけでございます。そのような中で、昭和五十六年改正当時、経営移譲率が急激に上昇をいたしました。四十五年、当初四割ぐらいを想定していたんですけれども、八割ぐらいになったわけでございまして、単価の高い経営移譲年金が出ていったということでございます。
そうしますと、年金財政の健全性という観点からは、世代間扶養のために現役世代の保険料を相当引き上げるということが必要になったわけでございますけれども、現実には農家の負担能力を勘案して段階的な引き上げを行うというなだらかな賦課方式に変更をいたしまして、国庫助成だとかいろいろな仕組みも併用をしながら、こういう問題に対応しようとしたわけでございます。当時の事情からすれば、こういう方式に変更したというのはいたし方なかったのかなというような感じがいたします。
それ以降、幾多の運営改善努力をしてきたわけでございますけれども、結局、今から考えますと、賦課方式を財政方式として採用したことが、農村における高齢化という問題に対応できないということで農業者年金が実質的に破綻したという大きな要因の一つであったというふうに認識せざるを得ません。したがいまして、今後、再度、賦課方式に切りかえるということはいたさない所存でございます。
○菅野委員 先ほど民主党の鉢呂委員の方もこの点をずっと議論して、あるいは白保委員も議論していて、当時の社会保障制度審議会の答申が四十五年あるいは四十九年、五十年、五十一年というふうになされたときにそのことに対応していれば、さっき言った、農水大臣がここで謝らなくても済んだのだと思うんです。
三兆六千億円を国民負担に求めなくてもいいのだ。でも、ここまで来たときに、その議論をやるから、私どもだって三兆六千億支出するのはだめだというところまでは言いかねるというのが全委員の率直な気持ちだと思います。
そのときに、抜本的改革をやるこの時点で、二度とそのことを繰り返すまいという決意を固めなければ、これではまた同じようなことが起こるのではないのかなというふうに思うんです。それが、積立方式から賦課方式に移行したときの理由がそこに存在するわけですから、妥協の産物だと思います、当時の中で。今回もそういう形で進んでいったならば、将来に禍根を残すのじゃないのかなというふうに思うんです。
そして、それでは積立方式の問題点がどこにあるのかということを議論したときに、やはり金利の変動、あの農業会議所のパンフレットを見たときに、二%、三%、四%でこうなりますというふうに言っていますね、金利の運用利率によって大きく受取年金が左右される、こういうものがあります。あるいは、財政再建を図るということでインフレ政策をやっていく。そういう経済政策の中で、この積立方式をとっていいのかという議論がどうなされたのかということだと思います。
きのう参考人に、私はきょう質問をするに当たって、このことも聞いてみました。参考人ですから、明確な答弁が返ってきませんでした。政府として、今の経済状況において、積立方式をやって、将来、絶対二度と過ちを繰り返しません、そして今局長が賦課方式には絶対二度としませんということを言っていますけれども、今の時点でということだと思うんです。
この点の議論をどうなされてきたのか、そして今後理解をどうしていくのか、再度、大臣、答弁を願いたいと思います。
○谷津国務大臣 先ほど鉢呂先生からも御指摘がございまして、この社会保障制度審議会のを再び今手元で見ているのですが、それは毎回開かれるたびに実は指摘をされてきておるわけでありまして、六十年の三月一日に、先ほど申し上げましたが、「早急に本制度の趣旨、目的にまでさかのぼって、根本的な検討を行うことを強く要望する。」そういう指摘も受けているわけであります。
そういう中で、五年に一遍ずつ、ずっと見直しをしたり、またいろいろな改正をしたりしてきたわけでありますが、先ほど局長からも答弁をいたしましたけれども、いずれにしましても、今後については、過去の幾多の運用改善努力にもかかわらず、賦課方式を財政方式として採用したことが農村における高齢化に対応できないで実質的な破綻に至ったということで、まことに申しわけなく思っておるところであります。
再度、そういうことから賦課方式に切りかえるということはもう一切行わないというふうに思っているわけでありますので、そこのところをひとつ御理解をいただきたいというふうに思うわけであります。
○菅野委員 先ほども鉢呂委員が指摘していましたけれども、まだ国会論議中に、もう具体的に農業者年金の制度を普及するためのパンフレットができていて、そういうふうな状況の中にあって、そして大臣が今言ったにしても、例えば運用利回りの問題、それから経済変動が今後どうなっていくのかの問題、これは、先ほどどうして積立方式から賦課方式にしたのですかというと、予想を超えた経済の変動が生じたからそうせざるを得なかった、そしてそれに対処するために、積立方式でずっとやっていくためには、積立金を倍にしなきゃならないという状況も生じたからそうしたのだという。
幾らそうしないと言っても、経済の状況においては、積立方式というものがそういうものを含んでいる制度だということにおいては、いずれやめるという決断をしたときには大臣の言うように問題はないと思います。あるいは、政策年金じゃなくて年金のみの制度であるというふうにしたときには、それは全体の中に吸収されていくような状況をつくり上げればいいわけですから、問題はないというふうに思います。
そこに今回の積立方式にしたということの大きな問題点があって、これについても、私どもとしては、今後大きな議論として行っていきたい、このことを申し上げておきたいというふうに思います。
それからもう一つ、私も、去年の六月に当選して以来、この農水委員会で議論をさせていただきましたけれども、根本的な農業政策を初めてやったときには、緊急米価対策ということで、緊急政策として提示するのはおかしいのじゃないか、本当に基本としての農業の政策をぴしっとつくるべきじゃないか、毎年毎年、緊急緊急という形の対応をしていくのですかということを質問させていただきましたが、それではやはり私はおかしいと思うんですね。
そういう意味では、この年金制度を抜本的に改正するときに、農業従事者が納得するような方向性を提示していって、こういうふうなものとして提示していって理解を求めていくという姿勢が必要なのじゃないのかなというふうに思っています。そういう意味では、生涯所得保障を先ほども議論をされていましたけれども、これを是が非でも政府としては導入していくのだという方向で今検討をなされているというふうに思うんです。
先ほどの答弁では、ことしの夏までに一つの方向性をつけて、そして来年の通常国会までに間に合わせたいという決意表明がなされて、一定程度理解をするのですが、やはりそこは早目に、範囲等もあるわけですから、どういう制度を導入して、どういう形での直接所得補償制度にしていくのかということを提示しても、関係団体との協議が、必ず農業者年金と同じような形で行わなきゃならない実情があると思うんですけれども、本当に来年の通常国会までにそれを仕上げるという農林水産省の決意と用意があるのかどうか。このことだけをお聞きしておきたいと思います。
○松岡副大臣 今私どもはそういう最善の、最大の努力を払っているというこれからの心構えを先ほどは申し上げたわけでありまして、おっしゃるとおり、これは大変な議論を巻き起こすことになるんだろうと思います。対象範囲一つをとってみても、どこまで対象とするのかしないのか。また、水準はどうするのか。私どもは大筋としては他産業並みの生涯所得、こういうことを言っております。
これにしましても、我が党の議論の中でも、他産業というものを、ではどのようにとらえるのか。農業者というのは単なる従業員でいいのか、まさに経営主でもあるのではないか。これはいろいろな要因がありますから、私どもは、この夏までに、一つ政府としての大綱はぜひとも整理をしたい。
そして、当然、それを整理すれば、早く間に合えば次の通常国会というのが視野に入ってくるわけでありまして、その辺は一日も早く、農業現場の皆様方にこたえるために、一番早い段階としてはそこら辺を目指したい、こういったことを言ったわけでありまして、最善の努力を払っていくということであります。
○菅野委員 やはり、農家で働く人たちが本当に農業に安心して従事できる状況、あるいは若者が本当に担い手として農業に従事できる、この仕事をしていって本当に将来にこういう成果が残ってくるんだというところの制度があるということが、私は、今日の第一次産業、農業と言わないんです、第一次産業全体に課せられた任務であるというふうに思いますから、とりあえず、農業の部分で政府はこれから重大な決意を持って取り組んでいただきたい、このことを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
○堀込委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
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○堀込委員長 これより両案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。古賀一成君。
○古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。
私は、民主党・無所属クラブを代表して、民主党・無所属クラブ提出の農業者年金基金法の一部を改正する法律案に賛成、政府提出の改正案に反対の立場から討論を行います。
今回の政府提案に係る改正案は、これまで政府が再三にわたり制度の見直しを図る機会がありながらも、それを先送りし、財政上の破綻を招いたことから提出されたものです。
受給者と加入者の数が逆転し、経営移譲しようにも若い担い手がいないこと、経営移譲の相手方の過半がサラリーマン後継者であること、農業後継者の半数が農業者年金に加入していないことなど、制度の基盤そのものが崩れ、財政上の破綻が十二分に予測可能であったにもかかわらず、みすみす見直しに着手すべき時期を逸したものでございます。
また政府案は、財政が完全に破綻し、どうしようもない今日の状況に立ち至って、賦課方式から積立方式への抜本改革と称し、新たな農業者年金をスタートさせる一方、既受給者等には受給カットを行うものであります。
今回の政府案は、憲法が保障する財産権侵害の強い疑念を内包するものであり、少なくも国が設計し、運営してきた年金について事後法で既裁定受給額を削減することは、今後の年金制度への国民の信頼感を損なうことにつながりかねません。
一方、民主党案は、既受給者等の受給額はきちんと約束を守り、国民の権利を保障することが、今後の年金政策や農業政策に対する信頼を維持するとの見地に立つものであります。
そして、年金によって経営規模拡大や若手就農者の確保を図ろうとする、これまでの政策効果が見込まれない農業者年金制度はやめ、農政の重要課題の一つである担い手確保については、年金という手法ではなく、もっと本質をついた農業活性化政策でやるべきと提案するものであります。
これから新規にあすの日本の農業を担おうとする人は、三十年後の老後の年金が充実しているから農業をしようとするのではありません。農業に展望と生きがいがあるからやりたいと考えるのであります。年金で担い手を誘導するような弱々しい農政は、結局加入者低迷に終わるのではないかと危惧するものであります。
老後の不安に備える年金制度については、みどり年金という既存の制度を活用することを提案します。また、農業の法人化が進めば厚生年金にも加入できます。それらの制度へ円滑に移行できるようにしようとするのが民主党の提案であります。
以上が、民主党案に賛成し、政府案に反対する理由です。
私たちは、今新しい農政を創造すべき岐路に立っていること、その決断を迫られていることを指摘し、私の討論を終わります。
以上です。(拍手)
○堀込委員長 次に、中林よし子君。
○中林委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の農業者年金基金法の一部を改正する法律案並びに民主党案に対して反対の討論を行います。
政府案は、第一に、既裁定年金額を平均九・八%減額するものであり、受給者や加入者である農民に負担を押しつけることには賛成できません。
農業者年金の財政基盤が崩壊したのは、政府が農産物の自由化や価格の引き下げなどで日本農業を衰退させてきたからにほかなりません。大臣は、農民には何の責任もないことを認める答弁をしました。そうであるならば、国が責任を持つべきです。
また、一九九五年に行った財政再計算の見通しは、新規加入者の激減に見られるように、大きな見込み違いをしました。大臣は、この点について、全く申しわけないと国民に謝罪したのであります。
政府みずからの責任を認め、農業者には何らの責任はないのに、どうして老後の生活費に当たる年金額が削減されなければならないのか、全く道理がありません。
第二に、公的年金は、これまで既裁定年金額を減額しないという原則がありましたが、今回の改正により、初めてこの原則が破られることになります。政府は、憲法二十九条第二項との関係で、既裁定年金額の引き下げ措置は財産権に対する合理的な制約として許容されるとの見解を示しています。これでは、年金財政が悪化すれば、国は年金額を減額することができることになり、ほかの国民年金や厚生年金にも波及しかねない問題です。
第三は、国庫補助による保険料負担の政策支援措置は、その対象を認定農業者でかつ青色申告者に限っています。こうした選別政策には賛成できません。どうして制度上全く異なる税制の仕組みを支援対象の基準にするのでしょうか。意欲のある人はみんな大事な農業の担い手との立場で、区別なしに、現に生産を担っている農家が安定的に経営を営み、安心して老後生活を送れる施策を農政の基本に据えるべきです。
また、民主党案は、既裁定年金額を減額しないことや、また脱退一時金については保険料の総額を支給するなど、当然の措置で評価するものですが、農業者年金制度を清算することについては、農業者の中で合意が得られているとは言えないこと、また、農業者年金にかわる年金として挙げられている国民年金基金のみどり年金では、農業者の老後生活を保障していく上でまだ十分ではないことから、賛成できません。
以上で、反対の討論を終わります。(拍手)
○堀込委員長 次に、山口わか子君。
○山口(わ)委員 社会民主党・市民連合の山口わか子でございます。
私は、政府提出の農業者年金基金法の一部を改正する法律案に反対する立場から討論を行います。
この農業者年金の改正案は、第一に、年金の根幹ともいうべき賦課方式を積立方式へ転換していること、第二に、公的年金制度として初めて支給額の減額を導入していること、第三に、脱退者に対して積立保険料の八〇%しか返還しないものであることなど、重大な問題点を幾つも抱えています。
法案に反対する第一の理由は、受給者の年金を約一割削減するというこの改正案が、憲法が保障する財産権の侵害に当たるのではないかという懸念が払拭できないということです。政府は侵害には当たらないとしていますが、納得のいく理由が明確に示されたとはとても思えません。三割カットであっても財産権の侵害には当たらないという政府答弁に至っては、何をか言わんやでございます。
反対の第二の理由は、農業者年金がこのような事態に立ち至ったことに対する政府の反省が見られないということです。
なぜ今、このような改正案を提出しなければならないのでしょうか。一九九五年の財政再計算のときには、既に加入者は三十七万二千人であったにもかかわらず、受給者は七十四万七千人に達しており、加入者は受給者の二分の一という状況でした。一人で二人の受給者を支えていることになりますが、現在は一人で受給者三人を支えなければならない構造になっています。財政破綻が目に見えていたにもかかわらず、抜本改革を見送ってきたことが今日の事態を招いているのであり、農林水産省の責任は免れません。
反対する第三の理由は、この改正案によって、加入者や受給者の国に対する信頼が根底から揺らぐということです。
生産者は、国の運営する年金だからこそ安心して農業者年金に加入し、保険料を払い続けてきたのだと思います。そこにはおのずから国に対する信頼がありました。この信頼を無視すれば、農業者年金制度が政策年金であるだけに、生産者に農政不信を増幅させることになることは明らかです。
そればかりではありません。農業者年金の減額措置が、ひいては公的年金制度全体に拡大適用されるのではないかという国民の不信にもつながりかねません。
反対の第四の理由は、農業者の高齢化、新規就農者の低迷、後継者難という現状の中で、この年金制度が果たして将来にわたって維持できるのか、全く不透明だということでございます。
改正案では、将来にわたって三兆五千七百億円の財政負担を行い、加入者へのさまざまな支援を行って政策年金としての制度を維持しようとしています。しかし、平成十一年十二月の大綱案では、受給者の年金を平均で三割カットし、四十六歳以下の加入者には掛け損が生じるという改革案が示されました。
この当初の大綱案からしますと、今回の改正案でも早晩、年金支給額の減額、保険料の増額といった事態に立ち至るのではないかということは当然考えられることです。しかも、新たな制度の加入方式は任意加入です。農業者の確保という政策目標を達成するための加入方式がなぜ任意となるのか、私には理解できません。
最後に、民主党案について言及します。
私としては、民主党提出の修正案は、これからの農業者年金制度の一つの方向性を示すものだと思っております。しかし、農業者年金制度の政策目標の大きな柱だった後継者確保の視点は、民主党案ではどうなるのでしょうか。
この点が修正案とともに明確にされているのであれば、社民党としては民主党案に賛成できたのですが、今の時点では、民主党案ではこれが明らかにされていません。農業者団体が民主党案に賛成できないという立場をとっておられるのも、恐らく社民党と同様の理由からだと思います。
したがいまして、残念ですけれども、民主党案にも賛成できないということを申し上げ、私の反対討論を終わります。
ありがとうございました。
○堀込委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○堀込委員長 これより採決に入ります。
まず、筒井信隆君外二名提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○堀込委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
次に、内閣提出、農業者年金基金法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○堀込委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
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○堀込委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時二十四分散会