衆議院

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第10号 平成13年4月11日(水曜日)

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平成十三年四月十一日(水曜日)

    午後零時一分開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 松下 忠洋君 理事 小平 忠正君

   理事 鉢呂 吉雄君 理事 白保 台一君

   理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩倉 博文君

      岩崎 忠夫君    金田 英行君

      上川 陽子君    北村 誠吾君

      栗原 博久君    七条  明君

      園田 博之君    高木  毅君

      西田  司君    浜田 靖一君

      林 省之介君    福井  照君

      古賀 一成君    後藤 茂之君

      佐藤謙一郎君    津川 祥吾君

      筒井 信隆君    永田 寿康君

      楢崎 欣弥君    三村 申吾君

      江田 康幸君    高橋 嘉信君

      山田 正彦君    中林よし子君

      松本 善明君    菅野 哲雄君

      山口わか子君    金子 恭之君

      藤波 孝生君

    …………………………………

   農林水産大臣       谷津 義男君

   農林水産副大臣      松岡 利勝君

   農林水産大臣政務官    金田 英行君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    田中  均君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    寺澤 辰麿君

   政府参考人

   (水産庁長官)      渡辺 好明君

   政府参考人

   (水産庁次長)      川本 省自君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力

   局長)          奥村 裕一君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  小島 敏男君     林 省之介君

  高橋 嘉信君     山田 正彦君

同日

 辞任         補欠選任

  林 省之介君     小島 敏男君

  山田 正彦君     高橋 嘉信君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 水産基本法案(内閣提出第七五号)

 漁業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)

 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)




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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、水産基本法案、漁業法等の一部を改正する法律案及び海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として水産庁長官渡辺好明君、水産庁次長川本省自君、外務省経済局長田中均君、財務省関税局長寺澤辰麿君及び経済産業省貿易経済協力局長奥村裕一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三村申吾君。

三村委員 無所属クラブの三村申吾でございます。

 昨今のトレンドとは逆になりますが、用意した原稿に基づいて質疑をさせていただきます。

 海はよみがえるか、水産日本は二十一世紀に生きられるか、この大きなテーマに、大臣初め水産庁、そして当委員会の皆様方ともども取り組む時を得たことに、大きな責任感と気概とを感ぜずにはいられません。

 多くの漁業者の皆さんが心から待ち望んだ水産基本法がこうして今国会に上程され、審議される運びとなったわけでございます。昭和三十八年制定の沿岸漁業等振興法以来、四十年近くの年月を経て、ここに水産資源を有限な生態系の構成要素ととらえ、それゆえに資源管理の大切さを掲げた本法とそれをまとめ上げました当局に、まずもって私といたしましては敬意をささげるものでございます。

 大正時代の末に若き童謡詩人の中の巨星と西条八十から称賛され、二十六歳で夭折した金子みすゞという詩人に「大漁」という詩がございます。

  朝やけ小やけだ 大漁だ

  大ばいわしの 大漁だ。



  はまは祭りの ようだけど

  海のなかでは 何万の

  いわしのとむらい するだろう。

という詩でございます。

 早朝、朝焼けの海辺、村落じゅうの漁師やその家族たちが総出で網を豪快に引く。朝の日差しに何万もの銀の塊が跳びはねて光り、網のぐるりではカモメが乱舞する。その反面、海中では家族を失ったイワシの弔いがあるんだろうなと、みすゞは両者をひとしい目で見ている。あるいは、生のため、生きるために命を奪っていく悲しみをみすゞは思っているんでしょうか。

 そういった文学的解釈はともあれ、このような光景が我々の海辺から失われつつあります。地びき網が辛うじて残る私の出身の青森の浜辺ですら、この豪快で、漁民もその家族も心躍る大漁の光景がめっきり少なくなりました。だからこそ、資源循環、資源管理の時代という共通の思いを抱きながら、海よ、よみがえれと心に念じながら、以下、何点かにわたって御質問を申し上げます。

 さて、谷津農水大臣、大臣は昨日の提案理由の冒頭で、「我が国の水産政策は、これまで、昭和三十八年に制定された沿岸漁業等振興法に示された方向に沿って、他産業と比べて立ちおくれていた沿岸漁業及び中小漁業の発展とその従事者の地位の向上を図ることを目標として展開され、関係者の多大な努力もあり、漁業の近代化、生産の効率化等に一定の成果を上げてきたところであります。」そのようにおっしゃっておいででございます。

 ここで、認識を調整すべくお伺いをいたします。いわゆる沿振法を廃止し、水産という大きな視点から基本法を制定することになるといたしましても、沿岸漁業の存続こそが水産の原点であるということを忘れてはいけないと考えます。沿岸漁業の振興がおろそかになってはいけないと考えるのでございます。

 そこで、今後の水産政策における沿岸漁業の振興と活性化についてのお考えをお伺いしたく存じます。

谷津国務大臣 今後の水産政策におきましては、水産業全体を国民に対する食料の供給産業ととらえまして、すべての漁業部門だけではなくして、加工あるいは流通業を含めましてその健全な発展を図ることが大事であるというふうに考えているわけでございます。

 こうした考えに立ちまして、昭和三十八年に制定した沿岸漁業等振興法にかえまして、水産物の安定供給の確保あるいはまた水産業の健全な発展を理念に据えた水産基本法案を提出したところでもございます。

 また、今日の沿岸漁業は漁業生産量の約四割、それから漁業生産額の五割以上を占めている部門でありまして、その振興の重要性については十分に認識をしておりますし、いささかも変わっているところでもございません。

 このために、水産基本法におきましては、増養殖の推進、小規模経営等の事業の共同化の推進、あるいは人材の育成確保、漁村の総合的な振興など、主として沿岸漁業の振興を念頭に置いた数多くの政策の方向づけをしているところでございまして、現場の実態に即しながら今後ともその振興に努めていく考えでございます。

三村委員 現場に従っていろいろ振興していくということで、ありがたく思います。

 それでは、以下、基本法のほかに他の二法案も関連してきますので、三法にまたがって随時質問を続行させていただきます。

 さて、底びきやまき網などの沖合漁業は、沿岸漁業や水産資源の循環に必ずしもいい影響を与えていない、悪影響を及ぼしていると漁業者や学者からたびたび聞くところでございます。水産基本法のもとで資源管理に取り組むに当たって、例えて言えば底びき、まき網漁業の操業ラインを沖合八キロから十キロに設定するなど、沿岸漁業と沖合漁業のすみ分けにつきまして措置する必要があるのではないかと考えておるのです。

 そこで、きょう、お答えをいただく前に、ちょうどいい実例がございますので、私は、青森の尻屋崎というところの例をお見せしたいと思います。古い話で永田先生にはわからないと思うのでございますが、昔、「喜びも悲しみも幾歳月」という映画にもなったのですが、その尻屋埼灯台がある場所でございまして、本州最北端というような場所になります。

 寒立馬という冬でも放牧されている馬とか牛がその岬にはいわば放し飼いにされているのでございますが、地元の漁師さんたちが言うには、ここ尻屋では馬や牛が底びきにひっかかって持っていかれるんだというのでございます。なにまた人を担いで冗談を言っているのかと笑い流していたんですが、あるとき、おまえ、笑っていないでこれを見ろと見せられた図面に、ここに尻屋埼灯台があるのでございますが、この図面に驚きました。

 実は、底びきのラインというものが陸地、灯台のところにございまして、牛や馬が確かにひっかければ引けるのでございます。馬なんかはよく海に入って遊んでいるわけでございますから、漁師さんたちが言うとおり、ひょっとすれば網に引かれるわけで、先ほどの金子みすゞがこれを見たら詩を書く前にひっくり返ったと思います。

 ということで、長官から先ほどのすみ分けにつきましての部分、そして大臣からは単純に御感想をいただければと思う次第でございます。

渡辺政府参考人 沖合底びきそれからまき網、両方合わせますと、日本の水産物供給の三分の一ぐらいを占めておりますので、今先生がおっしゃいましたように、沿岸の釣りその他とすみ分けをしていく、あるいは共生をしていくということが大事でございます。ただ、やはり沖底やまき網というのは漁獲の力が非常に強いものですから、どうしても弱い沿岸漁民との間で紛争を生じやすいというふうな実態がございます。

 すみ分けをしていく上で、法律上、制度上の共生をするやり方と、それから自主的な資源管理をするやり方と、双方ございます。法的共生の点でいきますと、現況では、各地域で、キロでいいますと距岸五キロから十キロに周年禁止ラインをつくっているケースが多うございますし、それから、産卵あるいは生育期であります夏のシーズン、これは七、八月になりましょうか、全面操業禁止というふうなのが実情でございます。

 それ以外にも、結局のところ資源を枯渇させないということで、小さな魚をとらないような目合いの制限であるとか、さらに一歩進んで、沿岸の漁業者との間で自主的な管理の協定を結ぶというふうな方向が探られております。これからは漁獲努力量の設定という問題もございますので、そういう中でどういったすみ分けができるかということも検討いたしたいと思います。

谷津国務大臣 今先生の御質問を承っておりまして、その灯台守の、時には厳寒の地で、人里離れたところで、そういう姿を私も実は映画を見まして感動を覚えた一人であります。

 そういうところでございますが、今先生の御指摘は、沿岸漁業とそれから遠洋漁業とのすみ分けということでもありますし、また、底びき網がそこの動物に対しまして、これは寒立馬という話がございましたが、そういうものに害を与えるというようなこともございます。

 そういうふうなものも今お聞きしまして、私は、すみ分けというのをしっかりやらなければならない、あるいは、時期とか何かそういうようなものもきちっと分けなければならないのではないかなと今直観的に思ったわけでございます。

三村委員 大臣、長官、ありがとうございます。多分牛や馬はひっかかりませんので、そのぐらい線引きに問題があるということです。

 すみ分けという言葉をいただきました。大変ありがたく思うわけでございます。例えばスルメイカなんかは、大臣認可の沖底を引く連中と知事認可の一本釣りが同一漁場でいつも資源を取り合ってトラブルが続いております。地方分権からも、それぞれの県の前沖を引く場合はこれからは知事認可という形がいいのかなと思うわけでございますが、御検討いただければと思う次第でございます。

 さて、次の質問に移らせていただきます。

 今回の漁業法改正において設置されます広域漁業調整委員会、大いに期待をいたしております。そこにおいて、資源管理への取り組みにつきまして漁業者間の調整が行われると思います。先ほどもお話ししましたように、沿岸の漁業者と沖合の漁業者がそのメンバーに公平に入るように配慮すべきである、そう考えるわけでございますが、この委員会の委員の選任につきましてどのようにお考えか、お知らせいただければと思います。

渡辺政府参考人 広域漁業調整委員会は、名前のとおりかなり広域をカバーいたします。太平洋全部、日本海から九州西部、それから瀬戸内と、三つつくる予定にしておりますけれども、この委員会自身は、やはり今おっしゃられましたようなバランスと公平性の確保というのは必ず必要だろうと思います。

 そういう意味で、沿岸の代表、それから沖合の代表、そして学識経験者、こういう構成になりますけれども、現場に近づけば近づくほどより一層平等な運営なり構成というものが求められますので、この広域漁業調整委員会の中に運用面では部会のようなものを設けまして、そういうところでは沖合、沿岸の関係者の数を同数とするという運用をしてはどうかというふうに現在考えております。

三村委員 どうもありがとうございました。同数ということで、時の氏神、水産庁、学識経験者の皆様方に公平公正な判断を今後ともお願いしたいと思います。

 さて、今回新たに漁獲努力量管理制度、TAE制度の実行に当たりましては、漁獲努力可能量の配分などにおいて、国と都道府県との間や漁業者との間において、やはりこれもまた利害関係の調整が必要となり、大変困難が予想されるわけでございます。この取り組み方針についてお知らせいただければと思います。

渡辺政府参考人 今回の基本法の御審議を通じまして、この基本法の中に、水産政策審議会というものを設置させていただくことになっております。

 基本計画と申しましても、基本法の基本計画ではなくて、いわゆる海洋生物資源の保存及び管理に関する法律に基づく基本計画でありますが、その基本計画は、この水産審議会へ諮問をすることになっておりますし、また、必要に応じて、今回の漁業法の改正によります広域漁業調整委員会におきましても、この漁獲努力量の上限であるとか種類別の配分量、これを事前に調整することにいたしております。

 もちろんこういう話は、そこに諮問をしたから、調整をお願いしたから済むということではございませんで、それより前の段階として、関係者の方々が体制をつくって自主的にその計画をつくり上げていくというプロセスが大事でございますので、その点につきましては、既に十三年度から走らせているところでございます。

三村委員 既に準備に入っているということで、よろしくどうぞ調整の方をお願いする次第でございます。

 そこで、このTACにしてもTAEにいたしましても、幾ら漁獲量や漁獲努力量の管理を強化いたしましても、小型魚、小さい魚がとられてしまっては資源の再生産に結びつかないわけでございます。今後、資源管理を実効あるものとするためには、量での制限ではなく、魚のサイズを基準とする規制措置というものが必要になってくるのではないかと考える次第でございますが、そこにつきましての水産庁の御見解を承りたく存じます。

渡辺政府参考人 御指摘のとおりだろうと思います。

 小型の魚それから稚魚は、これから生育をして次の世代の子供をたくさん産むわけであります。それらが単に全体の量の一つという形で規制をされるだけではなくて、そういった稚魚や小型のものがとられないように、再生産が可能になるように、例えば漁業法の世界で、漁具の網目の規制であるとか、稚魚の育成期には禁漁の時期を設ける、あるいは育成場所については禁漁区を設けるというふうなことを進めてきているわけであります。

 今回、広域漁業調整委員会の仕組みもつくらせていただきますので、そういう中で、小型魚の採捕抑制ということも含めて、それが縦糸だとすれば横糸は全体の漁獲努力量ということで、縦横合わせて成果が上がるように努めたいと考えております。

三村委員 縦横合わせて成果を上げたいということでございました。とにかく魚は大きくなればなるほど価値も値段も上がりますし、生態系、小さいうちにとらないでおれば資源循環の方にも結びついてまいります。何とぞ努力を現実のものとすべくよろしくお願いする次第でございます。

 実は、今似たような話になるのでございますが、まき網漁業、特に今経営が苦しゅうございます。卓越年級群、要するに資源量が多い群の小型のサバも捕獲するために、サバ資源の再生産に結びつかないという難点があったりしまして、ノルウェーから八戸港に輸入されたサバが奈良に行って柿の葉ずしになるというようなことも、最近多々そういう例になっております。

 そこで、資源をふやすための休漁対策という話になるわけでございますが、今後、資源管理を強化し、資源回復を図るに当たっては、減船、休漁等漁業者の痛みを伴う取り組みが避けられないと存じます。国といたしましては、これを緩和するために、経営安定対策、直接補償とまで申しませんが、経営安定対策を講ずる必要があると存じます。大局的観点から、大臣からお話を承れればと思います。

谷津国務大臣 先生御指摘のとおり、非常に周辺海域における資源が枯渇をしていると言ってはなんですが、そういう方向にあることは御指摘のとおりであります。

 今後、水産資源を的確に管理していくためには、我が国周辺水域における資源状況が悪化していることにかんがみますと、資源の回復を計画的にあるいはまた総合的に進めることが重要であるというふうに考えております。

 これがために、本年度からは資源回復を図るための計画の作成に取り組みまして、十四年度からこれを実施していきたいというふうに考えております。この計画に沿って行われる減船あるいは休漁等の措置については、中長期的には資源状態の回復によりまして漁業経営の改善になるものではありますけれども、短期的には漁業経営に著しい影響を及ぼす場合もあり得るというふうに考えておるところでございます。

 このために、資源回復を図るための計画に基づく減船あるいは休漁等の実施にあわせまして、その影響を緩和するための施策を講ずる必要があるというふうに今思っておりまして、その検討に入っているところであります。

三村委員 長官の方にお尋ねしたいと思いますが、策を講じるということは、いわゆる休漁、減船補償の何か法律に向けての準備ということでございましょうか。

渡辺政府参考人 現状から考えまして、特段の法律が要るとは思っておりません。予算上の措置でいいのだろうと思うのです。ただ、予算上の措置として、これまでは減船をする場合には減船の恩恵をこうむる残存者にかなりの負担を求めました、そしてそこに国が足すという形ですが、むしろそれを、漁法別ではなくて魚種全体に広げて負担を幅広くしたらどうかという議論も実は行っております。

 それから、負担の時期について、そのときにすぐ負担をするのか、それとも資源が回復した時点で戻していくようなやり方があるのかというふうなこともございまして、手段としてはいろいろ考えられますので、それはこれから早急に検討したいと思います。

三村委員 確かに田んぼ、畑と違いまして、まさしく海のものでございます。なかなかその年その年の資源の状況あるいはどういう休漁対策が一番好ましいかということ等、設定していくのも難しいことと存じますが、対策を講じながら資源管理していくために、休漁補償、減船の補償ということも創設していきたい、考えていきたいという言葉と受け取らせていただきます。

 さて、資源を増大させまして漁獲が伸びましても、魚価が低ければ漁業経営は成り立ちません。価格安定対策の一環としても漁業共済制度の重要性は増していくものと考えられます。義務加入制度と国庫補助率の見直しなどということもまた今後大変重要なことになっていくと思いますが、その詳細についてはまた後日の機会に伺うといたします。

 実は、漁業共済につきまして、百トン以上の漁船漁業者に対する国庫補助制度が必要なのではないか。その中でも、特に最も苦しい状況にございますのが中型のイカ釣りの船、百トンから百三十九トンという部分が、かつては補助制度があったわけでございますがなくなってしまった、このあたり復活を考えながら、全体的にどのようなお考えをお持ちか、お知らせいただければと思います。

渡辺政府参考人 率直に申し上げまして、現状ではその点はなかなか難しいというふうに言わざるを得ないわけでございます。

 といいますのは、財源が限られている中で、その財源をだれに重点的に活用するかということになります。財源を広く薄くということになりますとなかなか効果もございませんので、結局のところ経営基盤が弱い、掛金の負担能力が小さいというところにその負担軽減という意味で助成をしているわけでございます。

 ただ、共済制度全体をこれから見直しをしなければならないと思っております。といいますのは、今までと同じ路線ですと、やはり母集団が縮む、魚価が低迷する、漁獲量が減るという中で、出る方が多く魅力が少なくなってきておりますので、どういうてん補方式がいいかという根っこからもう一度検討し直そうと思っておりますので、そういう中で、だれにどのような形で助成をしていくかということも検討課題だろうと思います。

三村委員 水産基本法とともにこの共済制度についても根っこから考え直していこうという強い意欲に感謝をする次第でございますが、現場では今現実に困ってございます。何とぞ早期にその状況につきましての検討を進めていただければと思う次第でございます。

 長官、大変ありがとうございました。

 さて、話が全く変わっていくのでございますが、私どもよく漁業者と懇談会をしていく中で、漁業者の方々から言われることがございます。それは、いわゆる売買や流通というものを扱える人材というものを自分たち漁業者の中からも育成していきたいという話でございます。確かに漁業経営安定のために、単に魚をこれまでのようにとっていけばいいということではなく、消費者のニーズに対応したりする必要もある。

 そこで、漁業者そのものが販売能力を高めるための施策というものが、昨今IT国会もございましたが、いろいろな形の、人材の育成もあるでしょうし、販売能力を高めるための施策の強化というものが必要になってくると存じます。御見解を賜りたくお願いします。

渡辺政府参考人 漁業者にとってこれから、今先生がおっしゃられた販売能力を高めるあるいは付加価値を向上させるということは必須の道だろうと私は思います。コストを下げるか付加価値を向上することによって、できるだけ漁業の生産現場に近いところにお金を落としていくということなんだろうと思います。

 日本の漁業生産は二兆円、輸入を入れて三兆七千億ですけれども、恐らく流通、加工、販売、サービスまで入れますと十兆円以上の産業になっております。

 そういう中で、まず販売能力の問題としては、古い歴史を持っておりますけれども、水産物の産地市場を統合してもう少し機能的に使っていこうということが一つ挙げられます。それから、漁業者と加工業者が連携をして売り込みをする。それから、コストを下げるという点が挙げられます。さらには、一歩進みまして、漁業者自身が消費地市場なり個々の御家庭と直接結びついて産直をするというふうなケースで、すべてを同じ道に乗せるわけではありませんけれども、実情に即してそういうことを使い分けていく、そこに漁業者サイドにより多くのお金が落ちるということになろうかと思っております。

三村委員 長官のお答え、ありがたく思うのですが、直接的に漁業者及びその子弟の方々が流通とか販売の仕方を学んでいくような機会をつくってあげるというのでしょうか、学校とまで言っていいかどうかわかりませんけれども、そういう方策について何かお考えはございませんでしょうか。

渡辺政府参考人 やはりポイントは優良事例に学ぶということだろうと思います。幾つか優良事例がございます。

 一つだけ申し上げますと、かつては、とれたものをそのままトロ箱なりおけに入れて市場で競りにかけていた、これを大中小の魚に分けることによって、大は大なりの値段がつくようになった。あるいは、その時点で漁師さん方はみんな家に引き揚げるけれども、お母さんたちがそこで一定の加工をすることによって付加価値がつく、また引き取り手の方もそういう手間のかからないものが来ます。

 生きているものは活魚として仕分けていくというふうなことを一つ一つやっていることによってそこの産地なり漁業者の方々の所得がふえているという実例もございますので、やはり優良事例に学ぶ、それを自分の置かれた環境に突合させて自分のところでは何をやるかという道を選ぶのが早い道ではないかなというふうに思います。

三村委員 みずからを助くる者を助くべきだという御意見と思います。何とぞ今後ともそういう優良事例等含めまして研修する、研さんする機会を与えていただければと思う次第でございます。

 また別の質問に移らせていただきます。輸出でございます。

 私は青森なんでございますが、私の青森や鉢呂先生の北海道はホタテというものが非常に重要なものでございます。ホタテの缶詰を初めといたしまして、一・五次加工でもいいのですが、そういった水産物の輸出を促進するために、我が国の水産加工業者が輸出先国の衛生基準、非常にHACCP、難しくなっておりますが、それに対応できるようにするための環境整備が必要であると思っておりますが、ここにつきましてのお考えはいかがでございましょうか。

金田大臣政務官 委員御指摘のとおり、水産物の漁業生産段階あるいは加工段階、それから市場段階、そしてまた流通段階等々において、衛生基準というのを欧米の方から強く求められております。こういった要請にこたえるためにも、HACCP方式を広く現場段階に浸透させていかなきゃならないということで一生懸命取り組ませていただいているところであります。

 まず品質高度化総合対策事業というようなことで、大日本水産会等々を実施主体として、いろいろなマニュアルの作成とか講習会用のテキストとか、そういった講習会等々を各段階で開いてこういったことをやらせていただいております。十三年度については一億二千二百万ほどの予算を組ませていただいております。

 また、実際にHACCP方式で衛生管理を徹底するということになりますと、各種の施設のつくりかえ等々が必要でございます。こういったことで、水産物の産地流通加工施設の高度化対策事業というようなことでいろいろな補助をさせていただいて、補助率は大体二分の一ないし三分の一でございますけれども、十三年度につきましては十七億円の事業費をもってこういった各種のHACCP対応の施設の整備を奨励させていただいているところでございます。

 これからも水産庁挙げて衛生管理等々について努めてまいりたいと思っております。

三村委員 水産庁挙げて衛生管理等々に努めていきたいということでございましたから、この高度化対策事業につきましてもさらに資金的な面でもいい形で支援をいただける、そういうふうに受けとめたく存じます。

 さて、水産加工品の原料原産地表示の問題につきまして質問させていただきます。

 現在、加工品の原料原産地表示がワカメ、サバ、アジ、ウナギだけになっているようでございますが、大変実は不自然だなと思っております。対象を限定するのでなく、基本的にすべての水産加工品について原料原産地表示を行うようにすべきでないかと考えるんですが、当局の御見解を求める次第でございます。

渡辺政府参考人 根っこのところには、何ゆえ表示をするのかという問題があります。これはケネディの唱えた消費者の権利じゃありませんけれども、消費者の知らされる権利、選ぶ権利、これが根源にあって消費者の選択に資するということに始まるんだろうと思うんです。ですから、その場合には、表示の信頼性それから実行可能性を十分点検しながら順次進めていくということが必要だろうと思います。

 水産物、水産加工品でいえば、原料の差別性があるものについては表示をした方がいいだろう、それから誤認をもたらすおそれのあるものについては表示をした方がいいだろう。逆に言いますと、余りにも複雑な表示になってかえって消費者にわかりにくくなるとか、点検、検証ができないようなものについては慎重にならざるを得ないわけでありまして、ケース・バイ・ケースで、一つ一つ可能性を検討しながら順次のせていくという方式をとりたいと思っております。

 現在水産庁では、水産物表示検討会を設置いたしまして、具体的に原料原産地表示の基準策定を行っていくべき品目を決定いたしております。その中で所要の手続に次第にのせていく。現在のところでは、パブリックコメントを聴取中のものがかつお削りぶしというふうになっておりますし、それ以外のものにつきましても、順次必要に応じた検討を行っていきたいと考えております。

三村委員 順次進めていくということで、大いに期待します。よろしくお願いする次第でございます。

 さて、今度は輸入の問題に若干触れたいと思います。

 IQ制度でございますが、これは、無秩序な輸入による悪影響を緩和するとともに、水産資源の保存管理に重要な役割を担っておりますので、その維持を図るとともに、対象に水産物の調製品も加えるべきでないかと考えます。見解を求めます。

渡辺政府参考人 現況を申し上げますと、IQ制度を水産物についてとっている国は、主要国の中では日本だけでございます。我々としては、この制度はぜひ今後ともその役割なり機能が守られるように、最大限の努力をいたしたいと思っております。

 調製品の中でも、例えば昆布調製品のように一部IQの対象になっているものもございますけれども、これを拡大する可能性はどうかというふうに問われますと、WTOの新ラウンドの立ち上げを控えまして、各国からは非常に厳しい声が出ております。日本のIQ制度そのものを廃止しろという声の方が強いわけでございまして、なかなか拡大という方向に行くのは難しいかな。しかし、現状の制度をできるだけ守るように最大限努力をいたしたいということを今思っております。

三村委員 長官、大臣、心からお願いいたします。

 さて、時間があれなんで少し飛ばせていただきまして、女性の問題でございます。

 昨今、女性の水産業及びこれに関連する活動への参加の確保ということが、男女共同参画社会ということもございますが、本基本法の方にも盛られてございます。女性が積極的に水産業にあるいはそれに関連することに参加していくための環境整備に向けた取り組み方針について、お知らせいただければと存じます。

金田大臣政務官 水産業、水産加工業、漁村における女性の立場につきましては、今回の水産基本法の二十八条にも述べさせていただいているところでございますけれども、女性が本当に笑顔で働けるような漁村を何とかつくっていきたいという思いでございます。女性が働きやすい環境整備ということで、いろいろな施策も講じさせていただいているところでございます。

 大体、水産業そのものの主体のところにつきましては、女性の占めている割合は一六・八%ということで、なお男性中心の社会でございます。また、漁業協同組合の正会員というようなことになると、女性の占めている割合は五・五%にすぎないわけでございます。それから、水産加工場になりますと急にさま変わりになりまして、六七%ぐらいが女性の働き手を期待しているわけでございます。

 いろいろな形の中で、各都道府県を通じまして漁村における女性の漁業者活動の支援体制をつくらせていただいております。各都道府県に、こういった女性の働ける講習会、そういったものなどもやらせていただいております。

 また、沿岸漁業改善資金というようなことで無利子の融資等々をやらせていただいておりまして、特に家事を女性の方が受け持っておりますので、台所だとか浴室だとかトイレの改善等々に無利子の融資を行うなど、女性が漁村で働きやすい環境をつくるためにこれからも頑張ってまいりたいというふうに思っております。

三村委員 まさしく、どの産業、特に一次産業はそうなんでございますが、女性の力を大きくかりていかなければいけないという実態がございますし、また、一つの漁村集落を維持していくためにも女性がともに働いていけるという形をつくっていくことが本当に必要と存じます。今後とも、より一層の強い努力をお願いする次第でございます。

 そしてまた、女性と同様に、実は漁業には定年というものがまず元気な限りにおいてはございません。年はとっても、体が動く限りにおいてはいそ根の漁業で働ける。要するに、高齢者が生きがいを持って漁業に今後とも従事していける、高齢者に優しい漁港づくりなど、高齢者が漁業をまた支えていける、働く喜びをともに味わえる、そのような環境整備が必要と存じますが、その点につきましてはいかがお考えでございましょうか。基本法の方にもございます。

金田大臣政務官 漁村に占める高齢者の割合というのが、大体四人に一人、二七%ぐらいが六十五歳以上の高齢者でございます。そしてまた、六十歳以上というようなことになりますと、四二%ぐらいが漁村に占める高齢者の割合というようなことでございます。いろいろな産業を通じまして、大体六十五歳以上の三分の一くらいが働いている高齢者で占められているわけでございますけれども、漁村におきましては、大体高齢者の四分の三が現実に漁業に従事しておられる方だということで、相当高齢者の方々が現実に生涯労働というようなことで漁村では大分まだ現役で働いておられるという実態がございます。

 また、漁港づくりあるいは漁村づくりというような形の中でも、公共事業の中で防風施設をつくったり、荷揚げ場のところで高齢者も寒風にさらされないで網外しの作業ができるとか、そういった作業ができるような優しい漁港づくり、それから干満差があるようなところでは、大分高低差が出てくるものですから、浮体の物揚げ場みたいなものをつくってみたり、段差のない歩道等々、いろいろなことでバリアフリーのような形の中でできるだけの工夫なども凝らさせていただいているところであります。

 これからもまた一生懸命に、高齢者の占める割合、そして現役の割合が漁村ではすごく多いものですから、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

三村委員 しっかり対応してくださると約束していただきました。ありがたく存じます。

 さて、山と海との関係の部分につきましてお願いしたいと存じます。

 林業基本法審議も近々と存じ上げるわけでございますが、水産資源の増大の原点はやはり森にもあると思います。森からの栄養分は、川を通して海の方に注ぎますし、海藻を繁茂させ、幼稚仔保有物を形成するわけでございます。よって、豊かな漁場は豊かな森づくりということで、最近河口沿岸の漁協の方々が河川上流に植林する運動等も行われているわけでございます。そしてまた、これは従来からでございますが、魚つき保安林というすぐれた制度もあるわけでございます。

 これらのことを支援継続していくことがぜひとも必要であるわけでございますが、豊かな漁場づくりのため、河川周辺の森林の保護等、川上から川下まで通じた環境保全ということを進めるべきではないか、そう考えます。林野、水産連携という総合的な観点になりますので、大臣の御所見を伺いたく存じます。

谷津国務大臣 森は海の恋人という言葉がありますように、漁業は自然環境に大きく依存している産業でもございます。

 良好な漁場環境を確保するためには国民全体の理解と協力を得ることが大事でありまして、森あるいは川、海を通して、今先生おっしゃいましたように、川上から川下に至る幅広い環境保全型の取り組みが非常に重要であるということから、これを推進しているところでもあります。実は、教科書にも載っておりまして、これは気仙沼周辺の県でありますけれども、そこで植林をして、それがまたワカメの再生に非常に大きな役に立ったということもございます。

 こういうことから、本年度から、豊かな漁場づくりのために漁業者が河川流域等で行う森づくり活動に対しましても、支援を行っているところでもございます。

 水産基本法案におきましても、漁場環境、それから生態系の保全の重要性等の認識に立ちまして、水産動植物の生育環境の保全及び改善につきまして規定をしているところでもございまして、今後とも、森、川、海を通じた幅広い環境保全の取り組みについて、関係省庁とも十分に連携をし、また一方、当省内でもございますけれども、林野庁と水産庁もそういった面ではひとつ一体となってその辺のところを図っていきたいということも考えているところであります。

三村委員 林野庁とも一体にということでございました。

 また林業の基本法の際にもいろいろお伺いしなければと思っておりますが、まさしく河口部の組合の方々が、みずから本当に森づくりが海づくりだと頑張っている次第でございます。これはまた国民的理解を広めていかなければいけない課題だと思いますが、水産庁、林野庁が連携しながら、促進をお願いする次第でございます。

 さて、漁村におきましては、遊漁案内あるいは観光、民宿というものも重要な収入源となっており、漁村の振興のためには、こうした分野への支援によりまして都市と漁村の交流を推進する必要があると考えます。基本法の中にもこういったことがうたわれておりますが、それに対しましての御見解を賜りたく存じます。

渡辺政府参考人 所得機会の向上を考える上で、本業といえる漁業なり、その流通、加工、販売、サービスということもさることながら、今先生から御指摘がありました都市と漁村の交流というのは非常に大事なことでございます。

 現実の数字から見ましても、釣り人の数が年間三千三百万人、潮干狩りに五百万人、それから漁村地域の直売店を活用された方の数が二千万人という大変な潜在的なマーケットを持っているわけでありますので、そういうことが可能になるような条件整備をする必要があるというふうに思っております。

 例えて言いますと、フィッシャリーナのようなものをつくって都市の方々が来やすくする、あるいは直売店をその中に含めていく、そういった施設整備をする、それから漁村に来たときに漁村の景観を楽しめるような親水空間をつくっていく、それから漁村地域で過ごせるような余暇活動をつくる、もろもろそういったことがございます。そして、何よりも、漁業者の方々とこういう方々が共存できるように利害の調整をする、マナーを守るように啓発をするということが大事でございます。

 水産の公共事業でも、あるいは非公共でも、そういう面での条件整備をするために、ハード、ソフトの事業をこれからも重視していきたいと考えております。

三村委員 連携につきまして、徹底していってくれると伺いました。ありがたく存じます。

 さて、先ほど聞きそびれまして若干話が戻るのですが、高齢者が非常に漁業の方に従事しているという話と関連してくるのでございますが、沖合、遠洋漁業の現場、要するに、漁労長を初めとした幹部船員の育成確保という問題でございます。

 漁業という分野が、この日本の国の中でも、私どもは一生懸命頑張ってほしいと思うのでございますが、なかなか人材が集まってこない。その人材の育成確保が重要な問題となっております。

 このことを図るために、六つの都道府県等に設置されていると伺っているのでございますが、漁業研修機関に対する支援というものを充実させるべきではないか。と申しますのは、農業関係はもう全国にございまして、それぞれに支援があるわけでございますが、少なくとも水産に頑張っている都道府県に対する支援というのでしょうか、漁業研修機関に対する支援というものをどのようにお考えか、長官、よろしくお願いいたします。

渡辺政府参考人 漁業を振興していく上で、一つは漁業に従事する方の数をしっかり確保してふやしていくということがあります。それから、漁業の場合には、特に漁船漁業ですとリーダーが必要でありますので、リーダーの育成ということが大事であります。ボリュームの確保とリーダーの育成ということになります。

 今先生から御指摘がありましたように、北海道、青森、静岡、佐賀、宮崎、この五つの道県に各道県が主体的に運営をする漁業研修所が設置をされております。

 我々もこの動きを非常に重視しておりまして、その研修内容について充実が図られるような方向での指導もしておりますし、平成十二年度も、研修用の機材の整備について助成をしたところでございます。例えば、GPSプロッターであるとか魚群探知機、こういったものをそこに助成いたしまして設置をする、これの使い方をしっかり習熟してもらう、こういうことをやっております。

 これからも、そういう活動について、施策の充実を図っていきたいと考えております。

三村委員 人材の育成のために施策の充実ということを伺ったわけでございますが、私は、町長時代に、よく漁師さんたちが出稼ぎに北海道とかに行っていまして、その定置網の現場等に行ったんですけれども、驚きました。

 潮を見たり、ことしの潮はこうだから網はこうつくるんだぞとか、まさしく高度な技術蓄積産業である、そのように思いました。その網のつくり方、網の据えつけ方、ことしの潮はこうだから深さはこうして何ひろでどうするとか、そういった点がやはりわかって今までの日本の漁業というものがここまで進んできたということでございます。

 GPSとか探知機その他につきまして、機器につきましての支援もそうでございますが、何とぞ人材育成ということに、特に漁労技術者育成ということにつきましては、格段の御配慮をいただければと思う次第でございます。

 さて、多面的機能につきまして御質問いたします。

 水産業、漁村は国民への水産物供給以外に、沿岸地域の経済社会の維持発展、国民への健全なレクリエーションの場の提供、あるいは海難救助、環境保全、景観形成のほか、固有の文化の伝承など、本当に多くの役割を担ってきたわけでございます。生きる場でもあり、また、人づくりの場でもあったわけでございます。

 水産業や漁村の有しますこの多面的でかつ公益的な機能について、もっと積極的にPRすべきでないかと考えるわけでございますが、大臣から御所見を賜れればと思います。

谷津国務大臣 水産業や農村につきましては、水産物の供給以外にも、今先生御指摘のように、健全なレクリエーションの場の提供、あるいはまた沿岸地域の環境保全とともに、海難救助への貢献、あるいは防災、あるいは国境の監視、さらには伝統文化、漁村の持つ、あるいは海の持つ文化というものについて非常に、そこの住民の生活の安寧のためにも、あるいはまた、その地域の持てる特殊的な状況の中からはぐくまれてきた文化というのはすばらしいものがあるというふうに私は思っておるわけでありまして、そういう多面的な機能を有していることを昨年度も漁業白書の中でも紹介したところでもございます。

 今後、水産基本法の示す方向に沿いまして、水産業や農村が国民生活あるいは国民経済に果たす役割につきまして、都市住民を含む国民の理解が得られるように、また関心が深まるように、いろいろな対策をやっていきたいというふうに思っているわけであります。

 それには、各種広報、あるいはインターネット等による積極的な情報の提供、あるいはまた水産業や漁村の有する多面的機能に関する意向の把握等の調査を行うとともに、都市対漁村といいましょうか、そういう交流を促進していかなければならぬというふうに考えております。

 また、小中高校生に対しましても水産教育の実施等をやっていきたいというふうに思っておるわけでありまして、こういう中から、漁村あるいは周辺の持つ多面的機能というのを国民の皆さん方にも多く理解をしていただきたいというふうに考えているところでもあります。

三村委員 今回の水産基本法におきましても、この多面的で公益的な機能、私はもっと重要な場所に位置づけてほしかったということを個人的にも考えているわけでございます。

 私どもの地域に、例えば漁港の整備一つとってみましてもいろいろな世間的誤解があるというんでしょうか、漁港の存在そのものが、一つの集落を維持するだけじゃなくて、そのことによってたくさんの人たちがそこで生きていける、文化を伝承していける、それもまた福祉にも、あるいは教育にも、文化の面でもつながってくるということがございます。

 この漁村の持つ、あるいは漁村といえばもう漁港がつきまとうわけでございますが、漁港等の持つ多面的で公益的な機能ということにつきましては、何とぞもっと強い気持ちで大きく訴えていただければと水産庁長官にも強くお願いする次第でございます。

 それでは、時間も迫ってまいりましたので、最後の質問となりますが、委員長、またポスターを開いてよろしいですか。

堀込委員長 どうぞ。

三村委員 ちょっと楽しいポスターを持ってまいりました。おむすびの絵と牛乳の絵があるわけでございますけれども、日本食生活協会で今つくっているポスターでございます。

 朝食をとらない人たちが若い世代に非常にふえている。その中で、おむすびを食べながら牛乳も飲もうよということを勧めるということを一緒に私どもやってきているわけなんでございますが、せめて朝食には、有明のノリも入っているでしょうし、サケが入っていたり、おかかが入っていたり、かつおぶしが入っていたり、いろいろなものが入る可能性があるわけでございますが……(発言する者あり)梅干しも必要ですね。水産でございますので、魚でタラコを忘れていました、タラコもだと思いますが。

 要するに、水産物の安定供給の確保ということが今回大きな問題となっておりまして、我が国固有の魚食文化を将来にわたって継承し、国民の健全な食生活維持に寄与していかなければならないと思いますが、消費者サイドでは、若い世代を中心に魚離れが進んでおります。

 これを食いとめるために、このポスターをスタートしてもうあれですが、魚食普及の取り組みをこういう何らかの形で進めていくべきだと思うのでございますが、その点につきまして御所見を賜れればと思います。

谷津国務大臣 日本型の食生活は、栄養のバランスがとれた、健康面で非常にすぐれているということで、これは外国からも高く評価をされているところでもございます。動物性たんぱく質を摂取するに占める魚介類というのは非常に比重が高いというふうに思っておりまして、こうした食生活の形成に貢献している、それは水産物であるというふうに思っておるわけであります。

 ところが、最近どうもこの栄養のバランスが偏ってきている、脂質が多くなってきているというふうなことも言われているわけであります。生活習慣病がそれがために増加しているというふうに見られているところでもございまして、こうした問題に対処するためにも、魚食の普及に関する施策を推進することは非常に大事なことではないかなというふうに思っておるところであります。

 このためには、具体的に申しまするならば、学校給食の担当者等を対象とした水産物の消費拡大に対する普及あるいは啓蒙、これも行わなきゃならぬと思いますし、また水産物のすぐれた栄養の特性、あるいはいろいろな調理の仕方があると思いますが、そういうところについての情報の提供等を推進してまいりたいというふうに思っておるわけであります。

 今後とも、そういった普及を積極的に進めていきたいというふうに思っておりますので、先生の方からもひとつよろしく御指導のほどお願いを申し上げます。

三村委員 一生懸命、サケを食べたり、タラコを食べたり、イカを食べたり、私もおむすびも食べますけれども、牛乳も飲まなければと思っていますし、梅干しも食べろと筆頭理事から言われましたので、それも食べながら頑張っていきたいと思います。

 ただ、魚食文化、やはり魚を食べる国民であってこその水産でございます。何とぞ盛り上げていく方向性を示していただければと思う次第でございます。

 さて、本日、谷津大臣を初めといたしまして政府の皆様方と真摯な質疑の時間を持てたことを私自身は感謝いたしたいと思っております。納得できましたもの、また自分自身強く今後とも研究させていただきたいもの、それぞれにあったわけでございます。

 昨年、谷前農水大臣から、地獄網はよくないという言葉で、トロール、底びき漁法ということに対しての見解をいただいたときにも大変感激いたしたわけでございますが、今回、海のない群馬の選出の谷津大臣からも深く、沿岸を初めといたしまして、漁業にも御理解をお示しいただいたことは喜びでもございました。

 そして、これはあくまでも個人的感想でございますが、正直申しまして、今回基本法を通じまして、漁業に対しての未来という概念が、ゆうべもけさもこの基本法を読んだのですが、自分にはよくわかりませんでした。

 法律でございますからそういうものであるのでしょうし、ああそうかなとそこで思ったことは、漁業の未来ということにつきましては、政治家である私どもが法律の先にきちっとしたビジョンを描いて示さなければいけないのかなというふうに、むしろ自分の問題としての結論とした次第でございます。つまり、未来とは自分自身に課せられた課題でもあると感じた次第でございます。

 そこで、今後とも未来をともに語りたく、大臣におかれましては、こうしてきょう質疑応答できたものですから、新内閣におかれましても、ぜひ御留任賜りまして、水産についてさらなる御研さんをいただき、水産振興にも御尽力をいただきますことを心から願いまして、きょうは大変いい質疑の時間をいただきましたことをまたあわせて感謝して、本日の質問を終えます。

 大変お世話になりまして、ありがとうございました。

堀込委員長 次に、筒井信隆君。

筒井委員 今の三村さんの質問に関連して確認したい点がございます。質問通告しておりませんが、今の質問に関連しておりますので、ちょっとお聞きをしたいと思います。

 一つは、今多面的機能を大臣も極めて重視されているという答弁をされました。この多面的機能については、農業においても林業においてもまさに強調されていて、新農業基本法、食料・農業・農村基本法においても、また今提案をされております森林・林業基本法においても、この多面的機能を基本的理念として明確に掲げております。だけれども、今度の水産基本法においては基本的理念として全く挙げられておりません。それほど重視されているなら、なぜそういう区別をしたのでしょうか。

谷津国務大臣 区別をしたというわけではございません。水産、そしてまた海、そして漁村の持つ多面的機能という面につきましては、実は私どもとしましても、農業や林業と同じような、似ている面があるわけでございまして、特に水産につきましても、先ほどから御答弁申し上げておりますように、レクリエーションの場あるいはまた海難救助あるいは監視といいましょうか、そういうような面で非常に多くの機能を持っておる点もあるわけであります。

 一方、港の持つ、あるいは漁村の持つ、そしてまた海の持つ詩情的な面といいましょうか、いろいろ日本でも、詩もありますが、あるいは歌もつくられておりますけれども、こういった漁村とか海にかかわるそういう歌の中にも多く取り上げられているわけであります。

 特に、私個人から見ても、この詩情的な面から見ると、この海の持つ本当に大きな機能というものは人々にも安らぎの場を与えているという面もありまして、そういった面で、私どもはこの多面的機能という面については十分に認識をしながら、それを今この中でも強調させてもらっているということで御理解をいただきたいと思います。

筒井委員 私が聞いているのは、それほど重視されているならば、なぜ農業や林業の基本法と同じように基本的理念としてこの基本法に位置づけなかったか、なぜここに基本的理念として規定しなかったか、こういう質問でございます。

渡辺政府参考人 現実の上での熟度といいますか、そういう話が一つございます。

 それから、もう少し丁寧に申し上げますと、水産業なり漁村の持つ多面的機能というのは、水産や漁村そのものが物理的に果たしている機能ではなくて、漁村に人が住んでいるからこそ行われている機能でございます、国境監視にしても、海難救助にしても、海の掃除にしても。そういうふうなことで、水産業の振興、漁村の振興というものがあって、そこから出てくるものでございます。

 ですから、理念の中には水産物の安定的供給と並んで水産業の健全な発展があり、水産業の健全な発展の中にはその基盤としての漁村の振興というのがうたわれておりますから、論理の上ではそこに理念として含まれているというふうに思うわけであります。

 それから、先ほど冒頭申し上げました熟度の点につきましては、計算上の数字の問題なり国民の認識の問題というのはやや食料・農業・農村あるいは森林・林業に比べてステップが遅いというふうに思いますので、そういう点からいいますと、まず我々がやらなきゃならないのは、国民的な理解や合意を得ること、そのために啓発活動、情報提供を進めていくこと、そして、それを手がかりとして多面的機能に関する施策を充実させていくこと、こんな論理で全体が構成されておりますので、三法それぞれ置かれている環境も違いますし、構成も違いますので、決して軽視をしているわけではない、重視をしておりますけれども、位置づけとしてはそこに置きましたというふうにお考えをいただきたいと思います。

筒井委員 熟度それから多面的機能の趣旨がほかの場合とちょっと違う、水産業そのものが発揮している機能ではない、これは確かに理解できるものでございますから、その点で確かに農業や林業の場合と違う点があると私も思っています。

 ただ、今の熟度の点に関しては、こういう基本法に制定して、それをはっきり明確に打ち出すことによって、かえって熟度が高まる、国民の理解が高まる、こういう面もあるのじゃないですか。

渡辺政府参考人 階段を一気に駆け上ることで、言ってみると、基本法というのは国民的コンセンサスを条文にしたものでございますから、現時点において、いろいろな活動や調査を通じて、ここまでであるならば国民としてはこういうことを期待し、望み、コンセンサスが得られるというものを書くのが望ましいというふうに法制上は考えまして、それを素直に文章にしたということでございます。

 もちろん、これから先、この基本法が長い期間水産業なり漁村に関する基本的法制として続くわけでありますので、その過程で十分に成長をさせていきたいというふうに思います。

筒井委員 もう一点、三村さんの質問と関連して確認したいのですが、水産業と林業も極めて重視されていると、先ほど林業との密接な関連性も答弁をされました。

 新農業基本法においては、水産業と林業との密接な関連性とそれに対する振興の配慮を基本法上規定しているのですが、この水産基本法では、農業や林業との密接な関連性やそれに対する振興の配慮についての規定が全くないのですが、これはどうしてでしょうか。

渡辺政府参考人 二つ申し上げたいのですけれども、一つは、水産庁の基本法でもなければ農林水産省の基本法でもないものですから、この各条の頭はすべて「国は、」ということになっておりまして、例えば「水産動植物の生育環境の保全及び改善」というようなところは、「国は、」「必要な施策を講ずる」ということになっておりまして、それは林野庁にもそれから農林水産省全体にも課された課題だというふうに思っております。

 それから、食料・農業・農村基本法とこの水産基本法との関係について言えば、例えば食生活の問題、水産の世界からは水産物、魚類を食材として出しているわけでありますけれども、そういった食生活の課題については、基本的なことは食料・農業・農村基本法の哲学をそのままこの世界にも日本型食生活という形で持ってくるというふうに構成をされておりまして、一つの基本法ですべてのことを全部網羅するわけではなく、食料・農業・農村基本法があり、環境や森林、林野の問題について言えば、これから出てくる森林・林業基本法がある。それらを総合して国としての基本的政策の中心に据えるというふうに御理解いただければと思います。

筒井委員 今、理事からも指示があったのですが、きょうは自民党の皆さんが総裁選で忙しいのか欠席が多いようでございまして、一応別でございますから、ぜひその点は御配慮をいただきたいと思います。私も余り大きなことは言えないのですけれども、ぜひその点の御配慮をお願いしたいと思います。

 では、質問の方に戻ります。

 今は質問通告のない質問だったのですが、最初に、水産食料の安定供給と自給率の問題についてお聞きをしたいと思います。

 今たまたまお聞きしました多面的機能や林業等の関係性については、農業基本法や何かとは別な、独自な道を――独自な道というか、向こうでは規定しているのにこっちでは規定していない、こういう形をされているのですが、自給率に関しては、全く逆に、この基本法においても、自給率の向上の目標を掲げる、こういう規定になっておりまして、この点で農業との違いをどういうふうに意識されているのか、この点なんですけれども、最初に、まず数字を確認しておきたいと思います。

 食料・農業・農村基本計画では、平成九年の食用魚介類の自給率が六〇%だった、これを平成二十二年に六六%に上げる、こういう目標を掲げております。この後、数字の関係で、この農業基本計画では平成九年に六〇%になっておりますが、平成十一年に六五%になっている、食用魚介類の自給率が。この事実をちょっと、まずその点を確認したいんですが。

渡辺政府参考人 食用魚介類の自給率は、平成五年が六四%、平成九年が六〇%、そして平成十年が五七%、十一年が五五%でありますが、それらはいずれも食料需給表から引いてまいりました数字でございますので、ベースとしては食料・農業・農村基本計画において用いられた魚介類の数値と同列のものであります。

筒井委員 そうすると、農林省が出した資料は、あれは数字の間違いですか。六五というふうに書いてありますね。

渡辺政府参考人 今私の手元にある食料・農業・農村基本計画第七表、品目別食料自給率目標というところでは、食用魚介類が、平成九年度六〇%、参考、平成十年度五七%、平成二十二年度六六%というふうになっております。

筒井委員 いや、農林省が出したこの水産基本法案参考資料、ここでは平成十一年度の自給率が六五%と記載されているんですが、本当は間違いですか。

渡辺政府参考人 食用と非食用を合わせた魚介類全体と、食用という考えがあるわけでございまして、恐縮でありますが、食用と非食用を含めた魚介類全体では、平成九年七三%、平成十年六六%、平成十一年六五%と相なります。

筒井委員 わかりました。

 そうしますと、農業基本計画でこういうふうな自給率の目標が定められている。それをまた水産基本計画でも定めるとしたのは、これは同じことをもう一回言うということですか。どういう関係になりますか。

渡辺政府参考人 もちろん、食料という意味で水産物もその一構成要素でありますから、食料・農業・農村基本計画との調和を図る必要はございます。

 ただ、水産物の世界での自給率というのは、多々ますます弁ずというものではございませんで、日本の置かれた漁場の中でサステーナブルユースが図られながら進むその最高のところをとったらどうなるかというふうな数字になりますので、向上することはもちろんでありますが、できるだけ高く、いっときの高さを求めて後が続かないということではない、そういう自給率の目標を定めて関係者に知らしめる必要があるだろうというふうに思っております。

 もちろん、作業は先行しておりますので、食料・農業・農村基本計画との調和ということは十分念頭に置いて調整をする必要があろうかと思います。

筒井委員 調和というよりも、全く同じ数字になるんでしょう。自給率の目標として、別な独自の数字を出すんですか。

渡辺政府参考人 もう少し端的に申し上げますと、例えば目標年次をいつにするかというふうなことで変わってまいる可能性はございます。それから、当然五年ごとにローリングするわけでございますので、そういったプロセスで、トレンドの中には入っているけれども着地点の数字が違うことはあり得るというふうに思います。

筒井委員 それはわかりました。

 その際に、指標はカロリーベースでやるんですか、数量でやるんですか。特に、魚は低カロリーの高たんぱくというふうに言われておりますが、指標はどういうものでやられる予定でしょうか。

渡辺政府参考人 今考えておりますのは、まず、魚介類と海藻類には分けなきゃいけないと思います。それから、指標は重量ベースということでやりたいと思っております。

 といいますのは、御承知のとおり、大変多様な食生活になっておりまして、上位のものを足し上げましても、五種類で四割程度というふうな状況でございます。それから、農産物のように、主食という概念がございません。さらには、畜産物のように、海外からの穀物を畜産物という製品に換算をするというふうな状況にもないわけでございますので、当面、一番端的な目標としては、重量ベースで表示をしたいというふうに思っております。

筒井委員 その自給率は、農業における自給率とは大分意味が違うと思います。農業は、まさに限られた狭い国土での農地の中でいかに生産性を上げて自給率を高めるかという問題でございますが、水産業の場合には、日本周辺はまさに世界三大漁場の一つだと言われている。それから、経済水域、EEZも世界第七位。さらには、その自給率の場合の国内生産というのは、別に公海でやってもあるいはほかの国の経済水域で操業したとしても、日本の漁船がとったものが国内生産に入ると思うんです。

 そういうような点で、農業の場合とは全然本質が違うものだと思いますが、それについてはどう考えられますか。

渡辺政府参考人 おっしゃるとおりだろうと思います。

 とにかく日本は広大な四百五十万平方キロという水域を抱えております。このとらの子の水域が資源の状態が悪くならないような形で使っていく、その最高限度のところを漁獲として求めていくわけでありますので、そういう点でいえば、多々ますます弁ずではなくて、将来ともに安定して持続できるような自給率ということになろうかと思います。

 それから、冒頭おっしゃられました、フラッグを持った船であればどこでとっても国産ということになりますが、その点についてはもう少し我々は検討は必要だろうと思います。ただ、実際上の問題として、今日本の水域外でとっておりますのは十数%の重みでありますので、その取り扱いをどうするかということは、今後また検討いたしたいと思います。

筒井委員 それで、そのような自給率を向上する、だれがどういうふうな方法で、どこがどういうふうな方法で自給率向上のための行動をするんでしょうか。その点説明していただきたいと思います。

渡辺政府参考人 もちろんこの点も、漁獲なり生産という部分と、それから消費という部分と両方あると思います。漁獲なり生産の部分について言えば、一番大事なことが、結局、周辺水域の水産資源の適切な保存管理、サステーナブルユースということであります。

 それから、基本法の中にもうたわれておりますけれども、増養殖の推進、これはもう当然オール国産ということになりますので、そういう意味で、増養殖の推進や資源の生育環境の保全、改善ということにもつながろうかと思います。さらに、もう少し言えば、海外の漁場の開発の可能性も若干残っております。

 これらを通じまして、これを支える担い手をきちんと育成する。担い手がきちんとした持続的な生産を行えるような形態に仕上げていくというのが、生産面なり漁獲面の行うべき施策であろうかと思います。

 もちろん、消費の面では、俗な言葉で言う高い魚をどんどん輸入したり養殖をして食べればいいというものではなくて、もう少し健康や栄養に対する知識を高めて日本型の食生活を定着させていくということで、日本国において供給可能な水産物、これを消費していただくことによって、需要と供給両面から自給率の向上が図られるのではないかと考える次第であります。

筒井委員 そうすると、国内生産をふやすという中で、今挙げられたものでは、日本の排他的経済水域、EEZの中での生産効率を上げるというのは、自給率向上のための行動としては含めていないんですか。

渡辺政府参考人 漁獲効率といった場合、例のTAC法の方でも提案をさせていただいておりますけれども、漁獲可能量とそれから漁獲努力量、これの制限は当然やっていきたいと思っております。とらの子の資源を食いつぶすわけにはいきませんので。

 そういう中で、例えば、一経営体当たり最大の努力、そして最小のコストというふうな政策をとりますれば、経営体としても成り立ちますし、供給も安定をするわけでありますので、そういった道は当然とり得ると思います。

筒井委員 国内の生産を上げて漁獲努力量をふやしていけば、そのままいけば資源の枯渇を招くおそれがあるし、また逆に、資源の管理をきちんとやっていけば漁獲量は減るという、ある意味で二律背反といいますか、矛盾することを同時にやっていかなきゃいかぬと思いますが、その関係はどういうふうに考えておられますか。

金田大臣政務官 基本計画の中で自給率の目標数値も定めることにいたしております。また、資源回復計画、そういった中で、TAC制度それからTAE制度等々でやはり過剰な漁獲能力を削減していくという方策もとるわけでございまして、何とか資源を枯渇させない形の中で、資源管理と申しますか、自給率の向上等々も図りながら、過渡的には下がらなきゃならないときもあるかもしませんけれども、そういったのを基本計画の中でしっかり将来を指し示していこうというふうに考えております。

筒井委員 はい、わかりました。

 それともう一点は、もう一つの方の、輸入を減らすというか消費をふやす、消費の方向性を変える、つまり、高級魚をそんなに消費しないで、日本近海でとれるような魚をたくさん消費する、そういうふうな形の消費者に対する一定の宣伝といいますか、仕向けといいますか、それはどういうふうな形でやっていかれる予定ですか。

渡辺政府参考人 ここ十五年ぐらいになりましょうか、やはり水産物、特に青物が持っている栄養健康特性というのがございます。EPAあるいはDHAですか、そういったものが相当大きく取り上げられまして、その抽出物が健康補助食品として売られているくらいでございます。

 ですから、そういう点をしっかり啓発し、教育をすることによって、消費者が健康にいい、地場の物を食べて健康が増進するというふうな食生活になっていく。

 もしくは、これは農産物と共通しますけれども、食べ残しその他をできるだけしないような形、これは供給サイドでもそういう加工なりの仕方をしなければいけませんけれども、そういうこととあわせまして、消費生活、食生活を徐々に切りかえていく中で国産の物が消費をされていくということは可能性として高いと思います。

筒井委員 そういう方法で自給率の目標を定めて向上を目指すというのが今回の方針のようですが、過去を見ますと、自給率が大幅に下がってきた歴史でございます。魚介類に関して言うと、昭和四十八年ごろまでは自給率は一〇〇%を超えていた。それが、現在は六五%ぐらいにまで、もう一直線でこれも低下をしてきた。なぜこういうふうな低下の状況になってしまったのか、その間何か対策は講じられてきたのか、この点についてお答えいただきたいと思います。

谷津国務大臣 水産物の自給率は、先生御指摘のように、かつては一〇〇%を超えておりました。近年では六割程度に低下しておりますが、平成十一年度では五五%まで実は低下をしました。

 水産物の自給率の低下の主な原因としましては、我が国の周辺海域における資源量の状況が非常に悪化した、あるいは海外漁場における規制が非常に厳しくなるといいましょうか、強化されたということもありまして国内生産が減少した一方で、また、国民の水産物の需要がちょっと変わってきまして、イワシとかアジ等の大衆魚から、エビとかマグロとか、そういう国内生産では賄い切れないような、高級といいましょうか、中級といいましょうか、そういう魚に変化したことが大きな原因でありまして、それがために輸入がふえてきたということがあるのではないかと思うわけであります。

 こうした中で、これまでも資源の適切な管理による資源の維持増大等に努めてきたところではございますけれども、今回、水産基本法案では、自給率目標を設定することによりまして、これは政府だけではなくて、漁業者、消費者等の関係者がそれぞれの課題に一体となって取り組んでいく必要があるということで、その向上を目指してこれからもいろいろと対策を打っていきたいというふうに思っているところであります。

筒井委員 今まで自給率の向上を目的にしていたとすれば、これだけ急激に下がってきた際にどういう対策を行ってきたか、具体的な中身をお聞きしたいと思うんです。

 その際に、今も言われましたように、大衆魚から高級魚の方に消費の志向が変わってきたことが自給率が下がった一つの理由だ。例えば、その一つとして、エビが物すごく今、ほとんど輸入されているわけですが、このエビの輸入に対する対策なんというのは具体的に何かされてきたんでしょうか。

渡辺政府参考人 歴史的なことを申し上げますと、エビについては早い段階からフリーにしておりますので、そういう点で、もうその大宗を海外に依存する、そういうふうな実態にございます。

 ただ、やはり沿岸近海物については、これはできるだけ資源の確保と国内で供給をということでIQ制度が設けられまして、沿岸漁民にとって必要な魚種については輸入の規制を行っているところでございます。

 それから、もう一つ申し上げたいのは、それよりも何よりも、やはり沿岸の漁民たちが自分の生産を効率よく最大限に力を発揮できる、そういう形態をつくるような対策が望まれておりますし、これからも必要だというふうに思います。

筒井委員 今の長官の説明ですと、沿岸近海物に関してはある程度の対策をとってきた、エビだとか高級魚に関しては事実上とってこなかったというような答弁だと思いますが、結局自給率も、高級魚を含めて自給率を定めたところで、余り意味ないんじゃないですか。食料安全保障の観点からいってもエビでなくたっていいわけで、あるいはマグロでなくたっていいわけで、そうじゃない、あるいは近海物に限るとか、魚種によって自給率を定めるとか。

 要するに、私が言いたいのは、高級魚を含めた形の自給率の設定をして、その目標を定めて、その向上を図っている、これが今回の方針のようですが、それは余り意味ないんじゃないかという点に関してはどうですか。

渡辺政府参考人 大変難しい御指摘なんですけれども、日本人の文化といいますか、食生活の伝統といいますか、そういうことから考えますと、非常に多種多様の水産物を食べております。

 これは、欧米でいえば牛肉や豚肉のいろいろな部位を食べているということと似ているわけでありますけれども、上位の五品目を並べても、類という区分でも四割ぐらいにしかなりません。エビといってもいろいろなエビがあるわけでございます。

 ですから、そういう中で漁業者に端的な目標を与えるとすると、魚介類と海藻類とを分けた、代替関係もあるわけでありますので、そういった目標がふさわしいかなというふうに思っております。

 お言葉を返すようでありますけれども、牛肉の世界でも、松阪牛とそれからオーストラリアの輸入ビーフが同じ自給率の計算に入っているというふうなこともございますし、やはり端的な目標を与える方が、特に沿岸の漁業者の生産活動の指標として望ましいのではないかなというふうに思っております。

 これからどういう表示をするのかは、自給率目標を設定する際にまた具体的に検討したいと思います。

筒井委員 だから、今の答えだと、かえって私の方の質問、私の主張に合うかと思いますが、端的な目標を沿岸漁業者等に与えた方が、より理解されやすい。やはり、沿岸近海物に関する自給率だとか魚種による自給率の方が、今の答弁からいってもより理解されやすいのじゃないか。

 ただ、その場合問題になるのは、もちろん近海物、沿岸物を挙げた場合に、その自給率向上をやると、どんどんそれをとることだけが前面に来ちゃうと、資源管理の観点からかえってマイナスになりますから、長期的な観点から自給率の目標、自給率を向上させるという方向性を明確にしなくちゃいかぬですが、しかし、それにしても、高級魚や何か含めて全部一緒にして出すよりも、今言った近海物、沿岸物それぞれ端的な区別をした、魚の中身による区別をした自給率の目標を設定した方がいいということになりませんか。

渡辺政府参考人 非常に難しい議論だと思います。例えばエビ一つをとりましても、クルマエビ、タイショウエビからイセエビに至る、あるいはブラックタイガーの自給率というふうなものを設けることが果たして意味があるのかどうか。それから、アジとイワシとサンマ、サバ、そういうものをそれぞれ別々に出すのがいいのかどうか。では、沿岸物だけでどうやって束ねればいいのかという技術上の問題もあります。

 ですから、御指摘は御指摘として、ある意味で考えさせられるような点も多いわけでありますけれども、さてそれが漁業者の指標としてふさわしいものかどうかという点については、いま少し勉強が必要かなと思います。

筒井委員 それをぜひ検討していただきたいと思います。

 ただ、どうも、新農業基本計画の方ではそれを全部ごっちゃにしていますので、そういう議論もそもそもなかったのじゃないかと思うんですが、大臣、今の点に関してはどういうふうに思われますか。

谷津国務大臣 私も、今先生の御指摘を聞いておりまして、非常に難しいなと思う点があるのです。それは、イワシを例えて申し上げさせていただくと、かつて四百万トンぐらいもとれていたときもありましたね。今、非常に減っている。あるいは、サンマなども非常にこの動きが激しい。

 そうなりますと、沿岸漁業としてやっているときに、そういうのが目標としてやっても別な事情によって確実にとれないという状況等もありまして、この辺のところを目的でやれといってもなかなか難しい、いわゆる計算し切れない、そういうものが自然現象の中であるわけであります。そういった面は本当に、先生のおっしゃることも十分わかるわけでありますが、非常に難しい計算もしなきゃならぬということとか、あるいはまた、農業などの場合におきましてはある程度見込みというのがきちっと計算されますけれども、漁業については、最近そういった面で豊漁、不漁といいましょうか、そういうのは余りにも激しい状況にあるだけに、非常に難しいというふうに思うわけであります。

 しかしながら、一方、自給率を上げていくためにはそういったようなものを超えていろいろと対策も打たなければならぬということでもありますだけに、よくその辺のところは検討しなければならぬというふうに思っております。

筒井委員 わかりました。

 今、農業と違って、漁業の方がわからない、実際に予測もつかない面が農業以上にある、そういうふうに思うんですが、その関係で、資源の管理あるいは持続的資源の利用、この方の質問をさせていただきたいと思います。

 今度、TAC制度にプラスして、TAE、漁獲努力量の管理制度、これを創設したわけでございまして、なぜTAC制度だけじゃだめだったのか。結局、TAC制度の場合にはいろいろな資源の調査、評価、科学的な知見、これが要求されるわけですが、今の話にもありましたように、魚の実情についてどうもそんなにわかっているわけではない。

 例えば、この前だれかの質問にもありましたが、日本周辺の水産資源の主たるものは二百数十種類あるけれども、資源評価が行われているのは四十種程度にすぎないと。こういう状況なものですから、TAC制度の対象とできる科学的知見がなかなかそろっていない、よくわからないものだから、では、わからない部分はTAE制度でもって管理しようという方向に変わった感じがしないでもないのです。

 だから、結局は、科学的評価、資源の評価、それを本来もっともっとやるべきなのを、それをやらないで、TAE制度の方に逃げ込んだという面があるような感じがしますが、その点はどうでしょうか。

渡辺政府参考人 わかっていないのか、わかっているのかという点なんですけれども、わかっていることはわかっているのです。それは、総体として資源が低位にあって減少の傾向にあるというふうなことはわかるわけです。それが、しかし、一体何トンとったらこの後だめになり、何トンまでなら再生産が可能かという、かゆいところまで届かないというのが第二グループなんですね。第一グループはTAC制度できちんとしておりますから、七魚種についてその数量を万トン単位あるいは千トン単位まで出しているわけです。

 そこで、TACと漁獲努力量規制の差なんですけれども、TACの方は、言ってみるとアウトプットをきちんとカウントするという話です。傾向がわかるものについてはインプットを抑えていれば、この傾向に合わせた投下資本を絞っていくことで結果として資源全体がうまく回っていくだろう、こういうふうに考えたわけでございます。

 もちろん、今先生御指摘ありましたように、魚種と系群の資源状態の調査が四十種八十系統群だけでいいのかどうかという点については、対象魚種の入れかえの問題なり追加の問題、水産の総合研究センターも独立行政法人として大きくなりました。また、機動的にもいろいろなことができるようになりましたので、そういう場を通じて充実させていきたいと思っております。

筒井委員 今どのぐらいの量かがわかっているという話がありましたが、なぜ資源が減少したか、漁獲量が減少したか、この原因はなかなかわからない場合が多いと思うんです。

 資源が減少した理由としては乱獲なども一つあるだろうし、あるいは資源の周期的な変動、マイワシなどはそうではないかと言われておりますが、それもあるかもしれないし、よくわからないけれども自然現象的なものもあるかもしれないし、あるいはスケソウダラのように公海における漁が禁止された、こういうことによる漁獲量の減少というのもあるだろうし、資源の減少自体はわかっても、要するに原因が余りよくわからない、こういう実態ではないですか。

渡辺政府参考人 原因をパーフェクトにつかむということは今先生がおっしゃったとおりかと思います。自然変動もあれば生息環境の悪化の問題もあります。

 しかし、減少の重要な原因の一つとして、漁獲圧力の上昇、これは私は明らかにあると思います。この二十年間ぐらいの例えばエンジンの出力、総出力数なり一船隻当たりの出力を見ましても、二割増し、四割増しという状況です。そういう状況の中で、とろう、とろうとする努力の結果が水産資源の悪化につながったということは間違いないわけでありますから、そのとろうとする努力のところを抑えることによって資源の状態を戻していく、回していく、そういうことが可能になるというふうに私は思っております。

 もちろん、水温の問題、潮流の問題、黒潮の蛇行の問題、そういうことも全部これから一つ一つ勉強しなければいけないとは思いますけれども、漁獲圧力の上昇というのはやはり大きな要因であるというふうに思います。

筒井委員 上品に漁獲圧力の上昇と言われますが、要するに乱獲ですね、平たく言えば。ただ、例えばマイワシなどに関しては、これは完全に乱獲が原因だと言えるのですかね。周期的変動だという説もあるのじゃないですか。

 それからさらには、これも本当かどうかちょっと聞きたいのですが、鯨に関しては、南氷洋のミンククジラなんて物すごく今ふえている。しかし、全然とれないものだからどんどんふえて、この鯨がイワシを初めとしたいろいろな魚をすごく食べているから減っているのだという説もあるようですし、要するに、乱獲だということがそれほど明確ですか。

渡辺政府参考人 御指摘があったことの一番最後の点については、私どもも全く同じ考えであります。イワシを食べているかどうかは別にして、相当人間が食べるべき物を特に北西太平洋の鯨類は食べている、これは看過できないという点は賛同いたします。

 それから、マイワシの問題についていえば、確かにそういった自然環境の影響が主だとは思いますけれども、イワシとサバ、サンマ、アジ、こういう魚種は競合し、あるときはどちらかが卓越し、あるときはどちらかが減少するということになっておりますので、自然原因だけではなくて、生態系上の問題もあると思います。

 それから、明確に言えますのは、やはり漁獲圧力の上昇というのは、装備その他を見ても明らかであります。例えば秋田県沖のハタハタの例でいえば、減少が看過できない状態になって、三年間これを休漁することによってハタハタが戻ってきたというふうな実例もございますので、そういうふうなことを通じまして、漁獲圧力を減少せしめていく、漁獲努力量に制限を加えるというのは有効な手法だろうと考えます。

筒井委員 おっしゃるように、もし乱獲が原因であるというふうに漁業者にも理解されているとすれば、このTAE制度を導入して減船だとか休漁だとかあるいは操業停止命令だとかをやることに理解は得られると思うのですね。それはやむを得ないと、政策の必然性は感じますから。だけれども、原因について科学的な調査を明確にしないでそういう減船あるいは操業停止とかをやったところで、漁業者には理解されないと思うのですね。

 だから、資源の減少の厳密な調査というのは、たとえTAE制度をとったとしても引き続いて必要だと思いますが、その点についてはどうですか。

渡辺政府参考人 御指摘のとおりであります。

筒井委員 それから、TAC制度は、現在いわゆるオリンピック方式でされている。要するに、総量を決めてそれを超えたらもうとらないという方法なわけです。船別割り当て方式のTAC制度もあるようでございまして、船別割り当て制度をやればこういうTAE制度は導入しなくて済むのじゃないですか、その点はどうですか。

渡辺政府参考人 論理的にはそういうことも一部可能であります。ただ、我が国の実情を見ますと、漁業者の数、それから漁船の数、漁法の多様さ、こういうものを考えますと、それぞれ漁業者別、船別に割り当てをきちんとするというふうなことが実行可能性としてふさわしいのかどうかというふうに思っております。

 一部の国ではそういったやり方もとっておりますが、我が国ではむしろ最終的な出口で絞るという方がTACの制度としては適しておりますし、資源状態が必ずしもかゆいところまで手が届くようにわからないものについては、漁獲努力量という入り口のところを締めることで、有効な資源管理が行われるというふうに考えます。

筒井委員 各国と言われましたが、各国ではかえってオリンピック方式の方が少ないのじゃなかったですか、船別割り当て方式等々をとっている国の方が多いのじゃないのですか。その点と、確かに、船別割り当ては、船ごとの割り当てですから面倒なところがありますが、漁協にほとんどの船は属しているわけでございますから、漁協の協力、管理、これを求めることによってその面倒くささは結構半減、半減以下になるのじゃないのですか、その二つの点。

渡辺政府参考人 もちろん各国によって漁業の許可制度も違いますし、漁船の隻数なり大きさというのも違ってまいりますので、そういう点で国別にいろいろ事情が変わっているのはもちろんでございます。

 ですから、今オリンピック方式をとっておりますのは、中国、アメリカ、カナダ、スペイン、フランス、こんなところであります。それ以外の国につきましては、個別割り当て方式なり譲渡性個別割り当て方式というふうな形で行われております。

 それから、漁協の管理でありますけれども、もちろんこの資源管理のための計画をつくります際には、関係の漁業者に入っていただきまして、むしろもっと望ましいのは、協定を結んでいただきましてつくり上げますので、関係する方々の合意のもとでいわば実行が図られる、そういう手法をこのたびはとらせていただきたいというふうに考えております。

筒井委員 そうしますと、今挙げた国がオリンピック方式で、それ以外は船別割り当て方式等ということであれば、船別割り当て方式の方が国の数としては多いですね。その点が一つ。

 それから、今船別譲渡割り当て方式も挙げられましたが、それは私は主張しておりません、金で権利を買うみたいな感じになりますから。それではなくて、船別割り当て方式の検討をしたらどうだというふうに申し上げているのです。その点確認した上で、今の点をちょっと。

渡辺政府参考人 各国で漁業実態が違うということを前提にいたしまして、私の持っているものでは二対一ぐらい、あるいはもう少し、三対一ぐらいの感じでございます。(筒井委員「数でどっちが多いのですか」と呼ぶ)個別割り当て方式が二から三、そしてオリンピック方式が一、こんなぐあいかなと思いますけれども、ちょっと限られた資料でございますので。

筒井委員 はい、わかりました。

 それから、資源管理の関係で、きのうですか、質問でもちょっと出ましたが、資源管理の費用負担の割合をどういうふうにしていくかという点をちょっと確認したいのですが、漁業者と遊漁船業者と遊漁者、それぞれどういうふうな資源管理に関する費用の負担を考えておられるか、それをお答えいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 まず、今の点が端的に問題になりますのは、栽培、放流をした場合のケースが大きいかと思います。例えば、北海道でいえばサケ、相模湾あたりでいえばマダイというふうなことになると思います。

 日本近海、太平洋側を見ましても、いわゆる遊漁による、釣り人による漁獲が無視できない状況になっておりますので、まずその資源管理には、当然のことながら遊漁等も含めて計画を立てなければいけないと思っております。もちろん、TACを考えましたときにも外国漁船の漁獲というのは計算に入っておりますから、それとは別の意味で、釣り人による漁獲というものも資源管理の中に組み込まなければならない。

 その場合に問題になりますのが、放流、栽培をした資源をとっていることになるのではないかという点であります。栽培、放流には当然費用がかかりますので、それは回収をしたいというお気持ちが漁業サイドには強くございます。

 この点は、まだまだこれから詰めていくべきことが多いので、基本法の中にも書かせていただきましたけれども、漁業者以外の方の採捕という点につきまして協力義務を課しておりますから、それを制度上どう具体化するか、費用負担という形で今は一部協力金のようなこともとられておりますけれども、もっと堂々と取るようにするのかどうか。そんなことも含めまして、非漁業者による採捕についての制度化を、ここ一、二年をめどに検討したいと考えております。

筒井委員 次に、担い手の育成確保に関してお聞きしますが、担い手の重要なものとして、中核的漁業者協業体という言葉が出てまいりまして、既にそれが進行しているようですが、この中核的漁業者協業体というのは、別に共同経営体でなくてもいい、流通の点に関してだけ協業体をつくればそれでもいい、生産に関しては別々でもいい、非常に緩やかな協業体を考えておられるようでございます。この協業体を担い手の中核としてこれから育てて漁業振興に当たるという方針のようですが、水産基本政策検討会の報告書では、こういう協業体という方向性は全く出ていなくて、個別の経営体の育成という方向が出されていたと思うのですが、それが、それほど時期がたたないうちに協業体の育成という方向に明確に変わった、この理由はどこにありますか。

谷津国務大臣 漁業におきましては、生産基盤である漁場は共同で利用しておりますね。そういうことから、資源を管理していきながら安定的に漁業を営むためには、地域の関係漁業者間で漁場の共同利用という取り決めを行うことは不可欠であるというふうに考えておるわけであります。

 このために、漁業の担い手の育成において、これは個別の経営体を相互の連携なくして育成することは効果的ではないというふうに考えておるわけでありまして、こういう面から見て、女性や高齢者との間の適切な役割分担も図りながら、経営体を地域のまとまりの中で集団的に育成していくことが効果的ではないかというふうに考えておるところであります。

 こういう経営体の育成に当たっては、漁業の生産コスト削減のための協業化、あるいは経営基盤の強化のための法人化、そして漁獲物の付加価値の向上等によって所得の安定を図っていくことが大事なのではないかということでこれを推進することにしたものでございます。

筒井委員 推進した理由はいいんですが、報告の段階では、そんなに時期が離れていないのに、全く個別の経営の育成という方向を出されていたのに、突然といいますか、そんなに時期を置かないで協業体の育成の方に変わった。なぜ変わったのか、こういう点をちょっと聞きたいのです。

渡辺政府参考人 一昨年の十二月に農林水産省が出しました政策大綱、この中には協業体という言葉が使ってあります。

 それで、今の浜の実情を考えますと、人は足らない、高齢化をする、経営規模は小さいということですから、その三つを克服しなければならない、そのための手法としてやはり協業体というのが望ましいのではないかというふうな結論になったわけでございます。

 先生御紹介ありましたように、それはリジッドな枠組みを決めるものではなくて、非常に緩やかな結びつきから法人というかたい結びつきまでいろいろなケースが考えられますけれども、冒頭申し上げました、人が足らない、高齢化をしている、小さい、浜で中心になってくれる人がいないという状況を考えますと、協業体つくりが一番近道ではないかと考えた次第であります。

筒井委員 私の質問の趣旨には答えていないんですが、報告とは違ったものを上げたということを言うのははばかられるのかもしれないので質問はこの程度にしておきますが、この協業体が、要するに生産が共同、経営が共同でなくてもいい、流通とか販売が共同でもいいし、生産組合化の必要性もないという緩やかな協業体だとすると、ほぼ漁協、漁業協同組合がそれなんですよね。漁協がそういう形を今とっているわけで、漁協と中核的漁業者協業体との関係はどういう関係になるんですか。

金田大臣政務官 そういうことでございますけれども、何とかして若手を中心とした積極的な取り組みをするグループをつくってまいりたい、そして協業化によって生産コストも下げてまいりたい、それから法人化等々も進めてまいりたい、また加工や直販による漁獲物の付加価値を向上させるような仕組みも考えてまいりたい。

 まさに漁組と同じようなものではないか、こうおっしゃいますけれども、やはりそこは営利団体として、あるいは青年部の活動団体としてこういう過程が、中核的漁業者協業体というようなものもしっかりと育てていくことも必要だというふうに考えさせていただいたわけでございます。知事等々がそういった基本方針をつくりまして、そして協業体を認定していくというような新しい仕組みとして考えさせていただきました。

 あと、漁組との連携も極めて必要でございます。そういった漁組との関係も考えながら、漁組とも相談しながらこの協業体を育てていくことがこれから必要だと考えております。

筒井委員 機能はほとんど漁協と同じような形だと思いますが、明確に違うのは今言われた若手という点、協業体の要件としては五十歳未満の青年漁業者が代表であることが絶対の第一の条件になっていて、これがないと協業体とは言えない、これが漁協と全然違う。つまり、若返りだという点が一番大きな違いだと思いますが、それでよろしいのですね。

渡辺政府参考人 もちろん高齢者を排除するものではありません。高齢者の方々のお知恵もかりながら、いわばマイスターとしてそういう立場になっていただきたいわけですが、やはりこれからの将来を託するということになれば、若い者が地域を引っ張っていくということが大事だろうと思います。

 それから、漁協との違いで一番大きいのは、漁協自身は漁業生産活動を行うことについて相当な制限があります。いわば組合員の営業活動と重なるわけであります。しかも漁協はこれからだんだん大きくなろうとしていますから、生産の担い手、経営の担い手としてはこういった漁業者の協業体というところがスタートではないかと思います。

筒井委員 はい、わかりました。

 五十歳未満の青年漁業者が代表である、これは高齢者を排除する趣旨じゃないと私も思いますし、こういう政策は必要かなと思うんです。しかし、農業の場合も一緒なんですが、高齢者が漁業に一生懸命取り組むことができるということを目指す、これが今度の基本法の思想でもあるわけですが、条文にも載っているんですが、これとの関係で非常にちょっと微妙なところがあると思うんですよね。ただ、私も反対ではありませんので、その点難しいところがあると思うという点だけ指摘しておきたいと思います。

 それから、そういう協業体に対して政策を集中する、優遇措置を幾つかとるという形のようでございますが、結果としては選別になるんですよね。五十歳未満の青年漁業者が代表である協業体に対してだけとられる優遇措置というのがある、こういう、選別とは言わないと思いますが、認めないと思いますが、結果としては選別となるし、同じ漁村の中で選別としてやはり見られる、この点の難しさについてはどういうふうに思っておられますか。

渡辺政府参考人 地域から離れてそういう漁業者が、あるいは漁業者の協業体が成り立つかというと、それはそうではないのであります。地域なり関係漁業者に支えられてこの方たちがその地域の中でリーダーとなっていくということであります。

 したがって、その地域関係者の合意のもとでこういったことを進めていくということでございますから、都道府県の基本方針の中でそういうことをきちんと定めて、そしてみんなが、この人たちに託していくのならばいいではないか、そういう納得ずくで政策を進めるということでございます。

筒井委員 その政策が、補助事業、中核的漁業者協業体育成事業と沿岸漁業改善資金の貸付対象範囲の拡大の対象にする、こういう二つの優遇制度がこの協業体には与えられるということでございますが、その場合に、これは確認なんですが、協業体全体に対してと協業体に属している経営体、この両方とに優遇措置が与えられるという点でございますね。だから、協業体に属していない経営体には一切与えられない、こういう確認でよろしいのですね。

金田大臣政務官 協業体に対して集中させていきたいというふうに考えているところでございます。

筒井委員 いや、協業体に集中なんだけれども、こういうさっきの優遇措置、改善資金の融資だとか、これは、協業体そのものに出される場合と協業体に属している個別の経営体に与えられる場合と両方あるでしょう。

渡辺政府参考人 個別の漁業者に対して一切行わないということではなくて、共同すればそこに、言ってみると漁船でいえば十トンまでだったのを二十トンまで認めるとか、貸付限度額を上げるとかということであります。そういうふうにおとりいただきたいと思います。

筒井委員 だから、まだ今質問していないことにまで答えられたんだけれども、質問していたかな。協業体そのものに対する措置、それから協業体に属している個別の経営体に対しても、両方とにこの優遇措置を与えるという意味ですねという確認です。だから、結局、そのことは、協業体に属していない単独の経営体には一切与えられませんねという確認です。

渡辺政府参考人 ソフトの費用に関して言えば、協業体そのものに助成が行われるということになります。

筒井委員 それ以外の融資に関しては、協業体に属している個別の経営体にも与えられるでしょう。

渡辺政府参考人 融資をする場合には、当然貸し付けの相手方が人格を持っていなければなりませんので、法人であればそれでよろしいと思いますが、いわゆる仲間で集まりましただけではだめなので、そのときには、一応形は、個別の経営体に対して、一括してなのか、幾つかに分けてなのか、与えられ、結果としてそのグループ全体の貸付限度額なりが一定の上乗せがされているという形になると思います。

筒井委員 もう時間がないので最後の確認、さっきも言っている確認なんですが、協業体に属していない単独の経営体に関しては、どんなに意欲と能力があろうがなかろうが、そこにはそういう優遇措置は与えられませんね。

渡辺政府参考人 通常の改善資金の通常の貸付限度額、貸し付け要件が適用されます。

筒井委員 変な形で答えないでください。今、協業体に与えられる優遇措置として二つのものが挙げられているでしょう。それは、協業体に属していないものがどんなに意欲、能力があっても、属していない単独の経営体に対しては与えられませんねという質問なんです。

渡辺政府参考人 繰り返しになりますが、優遇措置は与えられません。

筒井委員 まだまだ聞きたい点はありますが、時間が参りましたので以上で終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、山田正彦君。

山田(正)委員 自由党の山田正彦です。

 私は、今いるところが五島とか壱岐、対馬、いわゆる長崎県の離島、言ってみれば漁業で食べているところの出身でございまして、今本当に漁業は大変疲弊してしまったと申しますか、いわばかつての漁獲量、この水産庁の資料によりましても、十四、五年の間に約三分の一に漁獲量は落ちて、しかも輸入が二・五倍ぐらいにふえた、その中で魚価も大体半分ぐらいに下がった。これじゃやっていけないのは当たり前でありまして、今漁民の悲鳴が聞こえるというのが実情なんです。

 その中で、実はEU諸国において、いわば漁師の皆さん方、外国から、ノルウェーから安いサバが入る、そういったときに、国境措置、いわゆる関税とか輸入課徴金とか、そういったものをどうしているのか、それを政務官にお聞きできればと思います。

金田大臣政務官 EU諸国につきまして、特別の輸入制限措置を設けております。五つの種類の魚につきまして、ニシン、タラ、メバル、エビ、スケソウ、これらの魚種ごとに参考価格というものをEU諸国では決定してございます。

 この参考価格というのは、過去三年間の主要卸売価格の三割ないし八割の価格で決めているんですけれども、域外からの輸入水産物の国境価格がこういった参考価格を下回って出てきた場合には、そしてかつ輸入量が急激にふえているというような場合には、引き下げた関税をまたもとへ戻す、譲許税率まで上げることをやれるようになっておりますし、またWTO協定の範囲内で、内外価格差みたいなのを、関税に似たようなものですけれども、賦課金という形でかける、こういった輸入措置を講じているところでございます。

山田(正)委員 今参考価格と申しましたが、EUでは農産物についての国境措置というのもそれぞれやっておるようですが、魚介類についても、さっき言ったいわゆる国境措置、すなわち、参考価格よりも下回ったら、それなりに関税をかけるかあるいは課徴金をかけるかして、国内に入るときには参考価格よりも安く魚介類が入ってくることは防いでいる、そういう理解でいいわけですか。

金田大臣政務官 そういう理解で結構でございますけれども、実際の運用としては、WTOのセーフガードの要件を満たしていた場合のみ発動可能となっているのが実態だというふうに承っております。

山田(正)委員 私が調べた限りでは、EU諸国においては、いわば生産者が再生産可能な価格、いわゆる参考価格を欧州委員会、EUの委員会でもって毎年定めていく。毎年定めていって、その価格より下がったらすぐに、例えば日本のセーフガード発動にしても、私は実はもう六年前から言ってきたんですが、なかなか実現しなかった。ところが、それをすぐに毎年発動して、輸入を水際でとめて、漁民にとって、いわば輸入によって日本のように魚介類が安くなってしまうということを避けてきておる、こう思うのですが、それについて大臣、日本もそのような関税措置をとる気持ちはありませんか。

谷津国務大臣 今金田政務官から申し上げましたけれども、EUにおきましても近年ではWTOのセーフガードの協定の要件を満たす場合にのみ発動可能というふうになっておりますので、我が国におきましても、今先生から御指摘がございましたけれども、そういうふうな感覚の中でやらなきゃならぬかと思うんですが、これはまたいろいろな要件がありますし、いろいろな条件がありますものですから、そういう面についてはよほど慎重に当たらなきゃならぬというふうに思っています。

山田(正)委員 大臣はWTOの範囲内でと言っていましたが、EU諸国もWTOに入っていて、WTOの中でもってそういう措置をしている。今大臣はいろいろなものがあって慎重にやらなければいけない、そういう言い方をしましたが、どういういろいろなもろもろがあって、EUもWTOに入っていて日本も入っていてなぜそういうことができないのか。

谷津国務大臣 実は、一月に私がEUに行ったときに、こういうことについてEUのフィッシュラー委員からも聞いたわけでありますけれども、実際EUはそういうふうなことを今日までやったこともある、しかし最近においては、そういうのはやはりWTOのセーフガードの要件の中でやるんだというようなことを言っておりまして、現実的には今余りやっていないという話も聞いておるわけでございます。

 日本におきましても、そういう条件のWTOの構成国でありますから、そういった面は十分に配慮しながらやらなきゃならぬということでございますので、そこは御理解いただきたいと思います。

山田(正)委員 今大臣は大変大事な発言をされ、議事録にとどめられるわけですが、EUでは事実上やっていないんじゃないか、そういうことを。私の調べている限りでは、EUは毎年参考価格を欧州委員会で決めながら、そして国境措置については確実にそういう措置を施している。大臣はやっていない。どちらが正しいか、それはまた次の機会で……

谷津国務大臣 EUでは参考価格はやっていますが、実際にそれを発動してやっているというのは最近ないということを、フィッシュラーもそう言っていました。

山田(正)委員 いずれ、大臣の今の発言は大変重要ですので、私も後日調べた上ではっきりさせたいと思っております。

 いずれにしても、韓国において、実は私ども、島の方でイキダイの養殖をやって、今は養殖業も大変厳しいので韓国に輸出した。どんどん輸出できたのですが、突然、これは九四年だと思うのですが、韓国が輸入のタイに対していわば関税一〇〇%をいきなりかけてきた。これはWTOに対して違反ではないのか、それが許されるのか。そして韓国は今どうしているか。通告しておったはずですが、お答えいただきたいと思います。

 できるだけ政務官か大臣にと、私が通告した場合だけ水産庁長官にと言っておりますので、質問の通告はしておりましたから、政務官にお答え願います。

金田大臣政務官 韓国は、一九九二年から、水産物の輸入数量制限、IQ制度の段階的な撤廃に伴いまして、その影響を緩和するための措置として、タイを初めとする品目につきまして、調整関税として関税引き上げを実施したものでございます。タイについては、一九九二年から一〇〇%の関税が課せられたと承知してございます。

 また、調整関税の税率は段階的に引き下げられておりまして、二〇〇〇年現在、タイについては七〇%の関税が課せられております。

山田(正)委員 今おっしゃった、WTOの中のいわば調整関税対象品目だ、そういうお答えだったと思うのですが、調整関税品目であれば、いわば関税をどのようにでもできると。そして、韓国はいまだに、イカにしてもウナギにしてもエビにしても、あるいはスズキにしても、七〇%とか三五%とか八〇%とか、高い関税を設定している。

 この関税の問題、国境措置の問題ですが、では、日本を取り巻く中国は、例えば日本からの魚に対して平均して幾ら関税をかけているのか、日本は中国とか韓国に対して幾ら関税をかけているのか、韓国は今どれくらいの関税を一般にかけているのか、EUはどうなのか。その四つの国についての比較を、副大臣か政務官かどちらか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。

松岡副大臣 山田先生からのお尋ねでございますが、輸入水産物に対する国境措置ということについて、それぞれ国別にどうなっているか、こういうことだと思います。

 平均税率で申し上げますが、日本は四・一%、御案内のとおり一部魚種には輸入数量制限がございます。韓国は一三・六、数量制限なし、一部魚種に調整関税制度がある。中国では三八・九%、数量制限はございません。EUは一〇・二%、数量制限はなし、こういうことでございます。なお、この税率平均は加重平均でございます。中国は単純平均、こういうことでございます。

 以上であります。

    〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕

山田(正)委員 今お話しのように、日本の漁民にとっては、韓国や中国やEU、ノルウェーから入ってくる魚に対しては、わずかに四・一%の関税しかかかっていない。ところが中国は、こちらから中国に輸出するときには約四〇%の関税、韓国にしても、先ほど言ったように、調整品目等で十一種類でしたか、イキダイとかあるいはイカとかそういったものに対しては七〇とか八〇%とか、かなり高い関税をかけている。

 そういった意味で、国境措置というものを、これからIQのことは聞いていきますが、ほとんど日本においてはなされていない。関税の問題というのは、当然日本はこれから本気で取り組んでいかなければ、それは漁業者にとっては本当に今大変なことになっている、ここらにも影響があるのではないか、これはひとつ十分考えていただきたい、そう思います。

 次に、先ほどから話しておりましたIQ品目、輸入貿易管理令で自由な貿易が認められていない、数量に制限がある、このIQ品目とはいかなるものであるか、大臣、端的にお答えいただきたいと思います。

谷津国務大臣 IQの対象となっている品目でございますけれども、これはアジ、サバ、イカ等十七品目となっております。

山田(正)委員 この十七品目については、どういう場合に輸入できてどういう場合に輸入できないのか、数量制限がなぜあるのか、それについて、大臣、端的にお答えいただきたい。

谷津国務大臣 これはIQ品目につきましては、まず資源の確保ということが一つあるわけであります。それからもう一つは、我が国におきまして必要とされるもの、不足と言っては何ですが、そういうふうなものに対しての輸入ということの枠をはめているわけであります。

 しかし、この問題につきましては、海外とのいろいろな問題等もありまして、現在、国内生産の不足している部分だけを輸入割り当てをしている輸入品だけではなくて、海外とそういうふうな問題もありましてそういう対応もさせてもらっているということを御理解いただきたいと思います。

山田(正)委員 大臣、もぞもぞと小さい声で言ったのですが、国内が不足している場合に輸入できる制度、これがIQ制度、そう考えてよろしいのですか、そうではないのですか。

谷津国務大臣 精神といいますか、原則的にそういうふうになっているわけでありますけれども、いろいろと海外との問題等もありまして、そういった面も踏まえているということも御理解いただきたいということであります。

山田(正)委員 では、不足の場合しか輸入できないということは、IQ品目に関しては、本来、原則輸入できないものである、水産庁が輸入貿易管理令に基づいて輸入の割り当てをした場合にのみ輸入できる、そう解することが間違いか否か、大臣、明確に答えてほしい。

谷津国務大臣 制度としては間違っておりません。そのとおりです。

山田(正)委員 では、それが実際に実行されているかどうか、大臣、お答えいただきたい。

谷津国務大臣 そういう点につきまして、先ほどから申し上げておりますとおり、海外とのいろいろな関係もあります。それから、WTOとのこれからの交渉等もある大事な時期だけに、いろいろとそういうものを考慮しながらやっているということも御理解いただきたいと思います。

山田(正)委員 先ほどお話しのように、韓国にしてもあるいはEU諸国にしても、びしびしと輸入に対してはきちんとした形での国境措置をとってきている。ところが日本は、IQ品目がありながら、まさにWTOで認められていながら、それについては不足分だけ輸入と。

 実際に私も輸入貿易管理令を調べてみましたが、確かに輸入割り当てがなければ絶対に輸入できないことになっている。水産庁が割り当てをしない限り一匹も輸入できないようになっている。ところが、どんどん入ってきて、今や輸入の魚で日本はあふれ返っている。松岡副大臣、どうお考えでしょうか。

松岡副大臣 大臣も言いましたとおり、このIQ品目というのは、先生がもう何度も御指摘されておりますように、原則は足りない分、不足分を入れる、そういう制度として成り立っていることはそのとおりであります。

 ただ現実問題として、需給というのはいろいろ動向がございます。また、諸外国とのいろいろな過去もあるし、これから将来も含めてまた関係があるわけでありまして、そういった意味では、AマイナスBイコールCというような形のようにびたっと数字で割り切ってそれで終わりということになっていない。

 そこらにまたいろいろな、今私が言いましたような需給や諸外国との関係や、そういったような要因も含めて判断をされておる、こういった事実になっているということはまた先生が御存じのとおりでもあります。

山田(正)委員 松岡副大臣は、中国に対して輸入野菜のセーフガードの適用等で大変頑張られた。そういう意味で私は大変尊敬しているのですが、この漁業の問題に関しては、もう決められている制度の実現すら、いろいろなことがありましてというようでは大変情けないな、そう思ったところです。

 実は、私も調べてみました。サバをとってみますと、これは一九八六年はわずかに一万一千トンしか輸入されていない。先ほど筒井議員が食料自給率のことを話しておりましたが、今は幾ら輸入されているかと申し上げますと、サバをとって言えば、十七万トン輸入されている。

 先ほど私の方で大臣、副大臣、政務官にお配りした資料を見ていただければわかるのですが、価格におきましては、サバについては、九〇年にキロ当たり百十八円だったものが九六年、九七年、五十九円まで下がった。

 そしてそのころ、九五年から九六年、九七年、九五年四十六万が、九六年には七十六万、九七年には八十四万トンと国内生産がかなりふえているのに、輸入量は、九七年十九万トン、九八年は二十万トンと、かつて一九八六年にはわずか一万トンしか輸入していなかったものを、国内の生産がどんどんふえているのにかかわらず、IQ品目だったら不足分しか輸入できないと大臣はそう明言しておきながらどんどん輸入した。

 これはいわばIQ品目制度すなわち輸入貿易管理令に反する、いわゆるWTOにおける日本の権利に対して全く水産庁は反したことをし、漁民に多大な損害を与えた、そういうことにならないか。ひとつ大臣、明確にお答え願いたい。

松岡副大臣 このIQの問題でありますが、先ほど私が御説明、答弁を差し上げましたときに、野菜では何かしっかり頑張ったのにこちらの方ではあるものさえ守らないじゃないか、がっかりしたとおっしゃったのでありますが、この魚のIQというのは、今現在、我が国だけであります。

 世界の数ある国の中で日本だけしか実はこれは持っていない。逆に言いますと日本にだけしか残っていない。非常にこのWTO交渉の中でも厳しい苦しい、これを守るということは大変な状況にございます。そういう中で、我々はこれを何とか守っていこうと今努力をWTOの場においても最大限やっておるわけであります。

 そういう状況の中で、やはりIQを守りながら相手の国の要望やいろいろな積み重ねた状況というものを、単に先ほど私が算式的にその年のAマイナスBイコールCということだけで決めるわけにはまいらぬと言ったのは、それはそのときだけの需給で言うならば、年によってもいろいろなばらつきがあります。したがって、そういうような意味で、国内の需給動向と、IQという国際的には我が国だけが今唯一残っている制度として大変な攻撃の的になっておる中で、いろいろ全般的なことを勘案して、総合判断してその量は決めておる。守ることに主眼を置いて、やはり我々はそういう判断をしておる。ここは逆によく理解いただきたいと思うのです。

 以上であります。

谷津国務大臣 実はこの件については、EUからの輸入が多くなったのですね。なぜそういうふうになったかということは、実はEUがこのIQの問題についてパネルに提訴するという話がございまして、今副大臣が御答弁申し上げましたとおり、私どもとしましては、このIQだけは何としても守っていきたいというふうな考え方がありまして、EUとはずっと今日まで連携をしながらWTO交渉に当たっているわけであります。

 これは農業部門でありますけれども、実は水産につきましてもそういったことでずっと今打ち合わせをしているところであります。何としてもEUと連携をしながらやりたいということもありまして、こういうふうなことになったということはひとつ御理解をいただきたいと思うのです。

山田(正)委員 最初にお話しいたしました、WTOに加盟しているEUがいわゆる国境措置でもって参考価格を毎年欧州委員会で決め、この参考価格は、私が調べたところでは漁業者の国内相場に準じている。先ほどの答弁で政務官のそのような答弁がございました。いわゆる国内の相場に準じて参考価格を毎年決め、それより安く魚が入ってくる場合にはいわば関税を上げる、引き戻す、もしくは課徴金をかける。それでもって守っている。

 ところが、日本はそれをやっていない。そのかわりIQ制度というのを残した。韓国はどうしたかというと、輸入関税調整という名目の中で、域内には一〇〇%の関税が、今七〇%あるいは八〇%とか四〇%とか、そういう関税で守ってきている。言ってみれば、自由に関税を上げ下げしながら各国からの輸入の魚がどんどん入ってくるのをとめている。

 ところが日本は、このIQ品目をさらに見ていただきたい。イカにしても輸入量が昨年、モンゴウイカはIQには含まれていませんのでモンゴウイカを除くイカの量でいきますと、これは大臣、副大臣に私資料を配っていますから見ていただければわかると思います。これでいきますと、国内生産量は昨年、九九年、四十九万トンと九八年よりもかなりふえている。それなのに輸入量はモンゴウイカを除いて四万八千トンから六万二千トンと逆に上がっている。イカはどんどんとれたのに、それを上げてきている。

 しかもこの数字で見ると、IQ枠を一万トン近く超えて輸入されている。これはどういうことか。日本は法治国家なのか。水産庁は何をしているのだ。これはひとつ松岡副大臣にお答え願いたい。

    〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕

松岡副大臣 事実関係だけお答えいたしますと、IQを超えて一万トンふえている。これは年としては、年ですか年度ですか、IQで割り当てを決めているわけでありますが、決めたものと入ってきたものとずれがありまして、その結果、例えば前の年の分のものがその年に入ってきた、そういったようなことで一万トンふえておる、このような事務方の整理であります。

山田(正)委員 小学生が、きのう小遣いをもらった、それが残っておったと。そんな答弁で、では、IQ品目は国内生産がすごくふえたのに輸入量をふやした、これについてはいわばIQ制度、いわゆる輸入貿易管理令に反するじゃないか、これに対してはどうお答えですか。

松岡副大臣 IQそのものについてふやしたということについては、先ほどから申し上げておりますように、原則としては足りないものを割り当てる。しかし、先ほど言いましたように、日本だけしか残っていないこれをまさにそのとおりだけやってしまえば、攻撃を受けてそのもの自体もなくなってしまう。

 したがって、その突き合わせの中で、守るためにはある程度の我々は対応を弾力的にやって、反対を、賛成までとは言わないが、とにかく絶対反対でこれをつぶされることのないように、そういう政治判断をしているということであります。

山田(正)委員 IQ品目は日本だけ残された、残されたと言うけれども、では、ヨーロッパ、EUにおける参考価格制度に対する国境措置、端的に言いますと、いわゆる国内価格よりも安い輸入のイカとかアジとかサバが入ってきたら国内の価格に合うまで関税を上げる制度、その制度をとればいいじゃないですか、日本は。(松岡副大臣「今のところとっていません」と呼ぶ)では、IQ品目をきちっと実行すればいいじゃないですか。

松岡副大臣 とればいいじゃないかとおっしゃったわけでありますが、今日までのいろいろな国際交渉の中で、今までの経過としてはこういう形になってきたわけで、IQ品目は日本は堅持してきたわけであります。これは、水産業界やそういったところからもこれだけはぜひ守ってくれということで、私どもはこれを守ることを第一義にやってきて今日守ってきた。

 それでまた、今おっしゃったヨーロッパの話のことについて、ではそっちの方をとればいいじゃないかということについては、これは今時点ではとっておりませんから、今後の課題ということでどうなるかということは別にして、今時点ではとっていないということであります。

山田(正)委員 IQ品目を守って本当に不足分だけ輸入するということを徹底してやれば、別にヨーロッパみたいに参考価格を下がる分についてはそれだけ関税をかけなくたって、課徴金をかけなくたっていいわけで、それを全く日本はやってこずに、輸入の魚だけがこの十四、五年の間に二・五倍ぐらいまでふえてしまった。そして当然、筒井議員が先ほど聞いた自給率も下がっていった。まさにこれは水産庁の責任でこうなった。大臣、いかがですか。

谷津国務大臣 先ほどから欧州委員会で決める参考価格の話が出ておりますけれども、実際それを決めているときは、三割から八割ぐらいかな、それぐらいまで実は低い数字で見ているんですが、現実に、先ほど言いましたように、実はこれはWTOで言うセーフガードの基準に合っていない場合は発動していないんでありまして、今やっていないということであります。先生はそれを調べてみるとおっしゃっていましたが、ぜひ調べてみていただきたいと思うんです。

 そして、実はイカの件につきましても、先ほどサバのときにも申し上げたわけでありますが、非常にEUが監視品目にしておりまして、イカも場合によってはパネルに提訴するというようなことを言っております。

 そういうことに対しまして、何回も申し上げますけれども、何としても我が国としてはIQ制度を守りたい、IQ制度をどうしても次期のWTO交渉において確保していきたいという考え方があるものでございますから、そういった面で、EU等のそういう関心事項に対しても、自給のこともありますけれども、そういうものを見ながら輸入しているということについての御理解をぜひお願いしたいと思うんです。

山田(正)委員 大臣の先ほど言っていることについての事実関係は後ほど委員会で明らかにさせたい、そう思っております。

 先ほど、IQ制度そのものが残っていて、全く実際には機能していないで残しておいて、それに対して、パネルに訴えられるとか。松岡副大臣にお聞きしたいんですが、これはパネルに訴えられる要件が日本にあるんでしょうか。もし仮にパネルに訴えられたとして、何らかの罰則があるんでしょうか。

松岡副大臣 パネルに訴えられるか訴えられないかというのは、これは訴えられるような状況がなければ訴えられないんです。

 そういうことではなくて、これから、いつになりますか、最終的には、日米首脳会談では今年いっぱいに、また世界全体の大きなコンセンサスとしても何とか今年いっぱいぐらいには次期WTOを包括的に立ち上げる。

 包括になるのかどうかも含めてですが、そういう状況の中で、とにかく今世界各国から日本に対して言われておりますことは、IQは日本だけしか残っていないんだからこれはやめろ、大変な今そういう強い強い指摘を受けております。

 そういう状況の中で、我々としては、ではどこを味方として、何とかこの日本のIQだけを守っていく戦略をとっていくか、こういうことの中で、今言いました、全く原理原則、びたっと原則どおり厳密にやれない実態、それはまさに、先ほど政治判断と言いましたが、WTOのもとでこれを守ることを一義に考えるなら、ある程度の幅のある言ってみれば運用、相手の求めにも応じて味方としてこのことを支持してもらう、そのためのことも含めてこれはやってきておる、こういうことであります。

 今お尋ねの、提訴されるのかされないのかということについては、今時点でされるようなものはないと思っております。

山田(正)委員 今時点でというか、各国それぞれ、私も法律家でありますが、調べたって提訴されるようなそういうおそれは全くないのに、これはヨーロッパから提訴されるんじゃないか、大臣が先ほどから、何とかIQ品目を残したい、しかもパネルに訴えられるんじゃないかと。

 松岡副大臣はよく御承知のとおり、パネルに訴えられたとしても何らかの罰則があるわけじゃない、これは。実際、米の輸入のアクセスの問題にしても、政府は輸入アクセス量は義務だとはっきり言いながら、実際委員会の答弁で、実は義務ではなかった、最小限度の輸入機会であったと。

 言ってみれば、あれだけ七十何万とかという輸入をする必要はなかった、法律的に、国際法上。ただ日本政府がそう勝手に解釈して、どんどん入れてきて、減反減反を国民に強要した。

 私の今の発言がうそなのかどうか、それも含めてお答えいただければありがたいんですが、そういった意味では、まさに日本は輸入の農産物、水産物に対して、言ってみればWTOという国際社会において各国がそれぞれ国境措置をやっているのに、日本だけ、WTOでこうなっているから仕方がないんです、仕方がないんですと言いながら、日本の漁業と農業はだめになった。これはいかがですか。

金田大臣政務官 山田先生御指摘でございますけれども、EUのとっている参考価格制度、本当に、大臣からもお話し申し上げたように、セーフガードの条件を満たさない限り実行していないということもございます。

 それから、我々、十七魚種につきましてIQ制度をしっかりと守っているわけでございます。先ほど、スライスで、枠がちょっと、年度の区切り方があっていろいろな数字があるわけですけれども、この配分枠、IQ枠というのはしっかりと我々守ってきているわけでして、IQ枠以外のものは入ってきていない。

 そういったことがあるものですから、我々の何か水産行政の誤りがあって価格が下落したというようなことは当たらないのかなというふうに思わせていただいております。

山田(正)委員 今の御答弁はだれが聞いたって納得できない、そう思います。

 では、中国に対してお聞きしたいと思うんですが、私ども、五島とか壱岐、対馬、あのかいわいにおりますと、長崎とか福岡の魚市場、ここには毎日、中国の運搬船がどんどん魚を運んでいっては水揚げしている。

 その中で、中国の魚介類の輸入というのは殊に最近、際立ったものがある。この中国の輸入に対して、今政務官が手を挙げていますので、どう考えられるか、ではまずそれからお聞きしたいと思います。

金田大臣政務官 確かに、中国の漁獲高は近年相当伸びております。また、日本に対する中国からの水産物の輸入につきましては、一九九一年が約二十万トンでございましたけれども、十二年度でございますが、二〇〇〇年には約五十七万トンという形で、この十年間の間に二・八倍に達しているわけでございます。

 そういった中で、大分国内価格への影響が、十七のIQ品目については別といたしまして、ほかの価格については相当下落しているものがございます。例えば、大きな輸出の第一番目で、中国からの日本への輸入ということでございますが、ウナギの調製品、それからワカメ等々があって、国内価格に相当の影響が出てきているわけであります。

 これにつきましては、我々、監視品目といたしまして、状況を常にモニタリングしながら監視しておりますし、また、財務省それから経済産業省につきまして、このウナギ、ワカメにつきましてはセーフガードの発動のための調査をやるように要請しているところで、三月十四日の日にそういった行動もしながら、国内の産地を守っていこうという形で取り組ませていただいているところでございます。

山田(正)委員 中国からの輸入の魚に対して、言ってみれば大変な魚介類の値下げ要因になっている。それで西日本の沿岸の漁民というのは本当に食べられなくなってきている。そういう状況にあったときに、韓国はWTOに加盟しながら、日本からの養殖タイの輸入に対して一〇〇%関税をいきなりかけた。

 では、日本は中国に対して、副大臣にお聞きしたいのですが、中国はWTOに加盟していない、そういう中国に対して魚の関税を一〇〇%今日本がかける、いわゆる日本の生産者の保護のために、漁業者の保護のために。これはできないのかできるのか、それをお聞きしたい。

松岡副大臣 今、私ども、先ほど金田政務官が申しましたが、ウナギとワカメについてセーフガードの政府調査に入るように要請をしたところだ、そしてそれを求めている、こう申したわけでありますが、セーフガードの発動というのは、おのずとWTO上の要件がございまして、この要件を満たした場合に我々はできる、こういうことでございます。

 中国は入っていない。中国は入っていないといたしましても、私ども日本は、自由貿易立国という中でWTOの協定に加盟をしている加盟国でありますから、相手が加盟国でないから何をしてもいい、こういうことは世界の常識上、また日本の立場としてそれはとるところではない、こう思います。

 したがって、今困っているから、ただ単に相手に一〇〇%かけるということは、全くルールに基づかない措置になってしまいますので、ルールに基づいて、その要件を満たすとしたらそれはできるわけでありますし、そして関税率が何%かということも、これまた一定のルールに従っておのずと計算上出てくるわけであります。

 先生のお尋ねは、私は前提を置かれておるのか置かれていないのかわからぬものですから、今二通り申し上げたわけであります。今の時点では魚種もまだ特定されておられませんから申し上げたわけでありますが、今の先生の御質問に対しては、この二通りのお答えをするしかないな、こう思っております。

 それと、先ほど米の話をされました。これはちょっと私どもも立場上も、また名誉のためにも申し上げておきたいと思うのですが、ああいうミニマムアクセスというやり方、あの当時私どもは全く正反対で、山田先生が私みたいな立場で、私が山田先生の立場みたい、あのとき私ども自民党は野党でございました。

 そして、あのとき私もジュネーブまで行きました。ドゥニー調停案、こういうものが出て、あれは細川内閣で三度の国会決議が無視されてやられたわけでありますが、これはある一定の協定上の遵守義務はある、こういう取り決めとしてなされたものだ。輸入しなくてもいいものを政府がどんどん入れて、その結果国内で生産調整をやって苦しんでおる、やらなくていいものをやったから苦しんでいるのではないか、これはちょっと、この協定上の位置づけとして全く違う。

 それはいろいろ意見はありますよ。我が党内にもいろいろあります。守らなくても、戦って、クロになるかどうか知らぬが、クロになるまでの間でも守れるのだからやればいいではないかという強硬な意見もあります。

 しかし、貿易立国日本として、協定上、私どもは当時反対だったわけでありますが、政府が認めたものは、それを同じ国として引き継いで守っていくという立場の上で、これはやむを得ないことでありますし、また、これは協定の順守義務ということで、私どもは、入れなくていいものを入れているのではない、やむなく、不承不承ではありますが、これは守らざるを得ない、こういうことであります。

山田(正)委員 ミニマムアクセスは政府の義務として守らなければならないという副大臣の考えのようですが、これは大変おかしいのではないか。

 九五年、韓国も、同じミニマムアクセスの中で、五万トンという枠の中で、実際に入れたのは一万トンしか入れていない。調べていただきたい。

 あるいは、ミニマムアクセスで、同様にアメリカ自体も、いわゆる乳調製品でもって、私の記憶で少し間違いがあるかもしれませんが、三百何万キロリットルの輸入のミニマムアクセスを、実際に守ったのは一万キロリットルだったと私は記憶しているのですが、それがミニマムアクセスである、国際的に。

 大臣そして副大臣は、日本の農業、水産という大事な国政を預かりながら、それくらいのことも知らないで、日本は遵守しなければならない、自由貿易立国なんだ、だからどんどん輸入して、漁民、農民を苦しめなければいけない、こんなばかなことがあっていいのか。

松岡副大臣 農林水産、谷津大臣を初め、私も金田政務官も預かっておりますが、誇りに満ちて、私どもは日本の農林水産を守ると思ってやっております。また、だれよりもそういったことについては我々は国際的にもしっかり活動もしてきたし、やり抜いてきておると思っております。

 そのことを冒頭申し上げますが、韓国は、私ども過去を調べております。中林先生からも過去そういった点は御指摘があったことでありますけれども、韓国は、通関のとらえ方によって、一言で言うとカウントの仕方によって違いがあるようでありますが、これをきちんと精査いたしますと、やはり決められた年度別の数量はきちんと平仄が合っておる、こういうことを私どもは確認をいたしております。

 だから、先生が見られたのは、例えば先ほど小遣いの話をされましたが、あれと似たようなやり方で、そこだけ見れば一万トンだろうけれども、トータルとしてよく精査してみればきちっと年度ごとの約束は守っておる、このように我々は確認をいたしております。

 今、私も、その点についての資料をいま一度確かめろ、こう言っているところでありますが、私の記憶では、ざっと大筋で申し上げまして以上のとおりでありますから、そこは私どもも、向こうはうまくそうやってすり抜けてというかやらないで国内を楽にしているのに、日本はばかみたいに、それこそがんじがらめで守って国内は苦しんでおる、けしからぬではないかといったようなことは当たらないと思っております。

山田(正)委員 私も委員会の質問を調べさせていただきましたが、農水委員会の中で、はっきりと外務省の大島さんが、これは当時の委員長が、義務なのか、ミニマムアクセスは義務でないのかと確認しているときに、そうではなくて、輸入の機会である、チャンスである、そういうことをはっきりと答弁しておりますし、私自身はその委員会議事録を確認させていただきました、義務ではないということも。そういった意味では、副大臣及び大臣の見解とは大きく異なるようです。

 それでは、これはまた後に回すことにしまして、先ほど話しておりますこの漁業の問題で、外務省の経済局長かだれかにお聞きしたいと思うんです。

 中国は言ってみればWTOに入っていないから、日本として中国からどんどん安い魚が入ってくる。中国は三八・四%という関税をかけながら、日本は四・一%しか関税をかけていない、中国のものに対して。中国に入るときは約四〇%の関税がかかっている。これはまさに不平等である。

 そんなときに、WTOに入っていない中国に対しては、セーフガードとかいろいろなことを問題にせずに、四〇%なり一〇〇%に関税をかけるということは日本の水産庁の責任者として当然やれることじゃないのか。今ここで四〇%なり関税をかけ、あるいは一〇〇%なり中国の輸入の水産物に対してあしたからでも関税をかけることが国際法上間違いなのか、それは許されるのか、それをはっきり答弁いただきたい。

田中政府参考人 お尋ねの点でございますけれども、これは松岡副大臣が御答弁をされたとおりでございます。

 すなわち、中国はWTOのメンバーではいまだございません。したがって、WTO協定上、純粋に法的にどうかと言われれば、法的問題点は少なくとも考えられない。しかしながら、これは逆も真でございまして、中国側にも同じような原理が法的にはあるだろう。

 それから、先ほど松岡副大臣が御答弁になりましたように、日本は世界で二番目の経済大国としてWTO協定の遵守義務というのはございますし、相手がWTOの非加盟国であるということをもってWTOに反した措置をとるというのはいかがなものかということ、それから、現在WTOとの関係で、中国が今加入交渉の途中でございます。まさにそういう観点からいっても、WTO協定に準拠した措置をとるということなのではないかというふうに思っております。

山田(正)委員 私が答えてほしいのは、中国は日本からの水産物の輸入に対して約四〇%の関税をかけている、三八・九%。今日本は中国からの輸入の魚介類に対して四・一%の関税しかかけていない。中国はWTOに入っていない。日本の本当に零細な漁業者を守るために、中国に対して四〇%なり一〇〇%の関税をかけることは国際法上認められるのか、認められないのか、そのことについてだけイエスかノーかをはっきり答えてもらえればいいんです。もう一回答えていただきたい。

田中政府参考人 国際法上、いろいろな観点から検討する必要があると思いますけれども、WTO協定上どうかということを言われますならば、WTOの非加盟国であるということからして、WTOのルールに縛られるものではないということです。

山田(正)委員 ということは、四〇%なり一〇〇%関税をあすすぐやったとしても、国際的に別にとがめられることはない、法的に違反するものではない、パネルに訴えられるようなものではない、そう解していいのかどうか。時間もないので、イエス、ノーだけで答えていただきたい。

田中政府参考人 先ほど申し上げましたように、中国との関係においてはWTO協定上の問題はありません、非加盟国ですから。ですけれども、日本はWTOのメンバーでありますから、そういう観点から、今のセーフガード協定でも選択的なセーフガードというのはとれないことになっていますから、そういう措置というのは日本は遵守していく必要があるだろうということを申し上げている次第でございます。

山田(正)委員 どうもはっきり返事しないので困っているんですが、時間だけはたっていきますから。

 私はきのう、外務省のあなたの部下と打ち合わせをしまして、一体どうなんだ、僕が考える限り、これはあすやったって別に問題ないだろう、そうしたら、国際法上、法律的にはそうなります、そうはっきりお答えいただいているんです、これは。ただ、今の局長さんの答弁は回りくどい答弁で、言ってみればそういう趣旨だと解していいものだ、そう思います。

 時間もないので、先に進めさせていただきます。

 では、中国との問題というのは、WTO加盟を前にして、アメリカもそれぞれがバイ交渉、いわゆる二国間の交渉をやってきた。その中で、アメリカは中国との間にいわゆる経過的な特別のセーフガード、言ってみれば向こう十二年間、中国に対しての輸入のものについては、アメリカは何百%でもあらゆる農産物から工業産品に対して関税をかけることができる、そういう特別の条約を締結したと聞いておりますが、その真否はいかがですか。

田中政府参考人 委員お尋ねの経過的品目別セーフガードということでございますけれども、これは米中間だけということではございませんで、今まさにジュネーブで議定書の交渉が行われておりますけれども、これはWTOのメンバーであればどの国にも適用になるだろうという合意、これについての交渉が行われているということでございます。

 WTOの原則上、セーフガードというのは差別的にかけてはいけないということになっていますけれども、この考え方というのは、中国がWTOに加入することによって輸入の急増等非常に攪乱的なことになる場合に、中国に対して、これは中国だけに対して品目を問わず一定の要件の中でセーフガード措置がとれるようになる。もちろん、この前に二国間協議をしなければいけないということにはなっております。ただ、これはまだ最終的には合意されたわけではございません。

山田(正)委員 どうも先ほどからはっきり言わないんですが、そういう契約がバイ交渉、二国間でできているのか、できていないのか、それだけ答えればいいので、あと余分なことは答えなくていいわけです。

 委員長、ちょっと答えについて明確に答えるように注意してください。

田中政府参考人 米中合意をもとにして、ジュネーブで多国間の合意にしようという作業が行われているということでございます。

山田(正)委員 ということは、十二年間、そうして特別な関税を中国の産品に対してはできるということの合意は成立したわけですか。

田中政府参考人 合意は全体の議定書がまとまったときをもって合意ということだと思います。

 それから、十二年というのは、特定の措置を十二年間続けてとるという趣旨ではなくて、この規定そのものは一種の時限立法で、この規定自身は十二年間の間認められる、そういう観点から現在交渉が行われているということでございます。

山田(正)委員 私が調べたところでは、二国間の交渉は成立した。ただ、日本は中国との間に、外務省として、農水省として、そういう二国間の、例えば中国の産品、農産物、水産物、いろいろなものが入ってくるときに、これでは日本の農業も漁業もやっていけないんだ、特別な経過的セーフガードはやはり必要だ、そういうところで今まで外務省、水産庁はそういう交渉をしたか否か、したことがあるのかないのか、それをお聞きしたい。

田中政府参考人 まさに繰り返しお答え申し上げていますように、WTOの今の枠組みの中では、二国間がそれぞれ交渉を行っていって、それをすべての国に均てんするという交渉をもう一回やるわけでございます。

 ですから、先ほど委員が御指摘になった米中の合意に基づく経過的な品目別セーフガードというのも当然日本にも均てんされるべきだという観点から交渉を行った次第でございます。

山田(正)委員 アメリカと中国はそういう交渉をして合意に達した、それを日本も利用させていただく、そういう根性。日本はなぜ中国に対して、日本みずからはそういう交渉をしたのかしていないのか。今までしなかったならしなかったでいいわけです、その事実だけを聞いているのですから。事実だけを明らかにしていただきたいと思うわけです。

田中政府参考人 水産物に特定した上での交渉というのはやっておりません。

山田(正)委員 農産物に対して、工業産品に対して、あるいは陶磁器とかタオル等に対して、中国と経過的セーフガードの交渉をしたかどうか、それについてお聞きしたい。

田中政府参考人 これもまた先ほど申し上げましたけれども、今の議定書づくりをやっている、まさに議定書づくりというのも交渉でございますけれども、この中で、経過的品目別セーフガードというのは特定の産品に限ることなく経過的な措置として認められる、こういうことについて日本も主張をし、それが認められるに至っているということでございます。

山田(正)委員 私の質問に答えてくれていないのですが、アメリカが二国間交渉で得た交渉の成果を日本もその議定書の中で利用させてもらう、そういうことは私も調べたし、言っていることはよくわかります。

 ただ、私が調べた限りでは、日本の外務省も水産庁も、中国との間に、中国からそういう産品が入ってくると日本も困るから、十二年間なら十二年間だけでもいい、その間に関税を何百%にでもしよう、そういう交渉を持ちかけたことがあるのかないのか。もしそれに対して答えられないようだったら、私はこの質問を続けることはできません。

田中政府参考人 これも先ほどお答え申し上げましたけれども、水産物とか農産物に特定してそういう交渉を日本がやったということはございません。

 ただ、どこの国もそうでございますけれども、そういう二国間協議というのは並行して行われていって、それを最終的に議定書にまとめていくという作業があるわけで、その中でアメリカも日本のとった措置を利用しますし、それはそういう枠組みでやっているということでございます。

山田(正)委員 そういう交渉はやっていないと今はっきり言いましたが、大臣も副大臣も政務官もお聞きだったと思います。これは大変残念なことに、言ってみれば、日本の農水省はその程度のものでしかない。

 中国はほぼ四〇%の関税を日本のものに対してかけている。日本は四・一%しか関税をかけていない。先ほど松岡副大臣が、いわゆる日本は貿易立国として公平な立場での貿易を遵守していきたいというお気持ちがあるならば、当然日本も、あしたからでも、少なくとも四〇%、中国並みの関税あるいは韓国がかけている関税並みに関税をかけるということはやるべきことじゃないのか。

 それをやらずに、まさに漁業者、農業者は今大変なことになりつつある。水産庁も農水省も外務省もやるべきことをやらずに、この水産基本法、抽象的なことをただ羅列して、こうします、ああします、こんなむだなことに物すごい時間と経費をかけながら、即やらなければいけない大切なことを怠ってきて、まさに日本の漁業も農業も今ついえようとしている。

 大臣、私の質問時間は終わりました。最後に、大臣はその問題に対して明確にお答えして、終わりたいと思っております。

谷津国務大臣 この水産基本法案につきましては、一つの理念を持って今提出をさせてもらっておるところでございまして、水産業の発展ということと、それからもう一つは、国民に安定的なそういうものの供給というものを踏まえてのことでありますし、また一つは、多面的機能という面についてもその哲学の中に入れているわけであります。

 一方、今先生がおっしゃいましたような、いわゆるWTOに加盟している我が国といたしまして、このWTOの、一つの日本の国の立場というんでしょうか、そういうものを超えて、相手国がWTOに入っていないのだから、それだったらば、そういうようなものに四〇%からの課税をすぐにかけろよというふうなお話でありますけれども、御案内のとおり、今農産物等についてセーフガードをかけるべく、そういうことできのう閣議でも決めていただいたわけです。

 そういうさなかだけに、この問題については、先生の御意見は御意見として承りますけれども、慎重に対処しなければならぬというふうに考えております。

松岡副大臣 今日までのいろいろな貿易、工業も農産物もいろいろな分野があるわけでありますが、その貿易の歴史の中で、日本は貿易立国ということをとってきて、私は、各国との総体的な中で、今日の税率というのが決まってきたと思います。日本は、守るべきはしっかり守るために、私は最大の努力をしてきたと思っております。

 そしてまた、私どもが外国へ行きましても、農産物はこれ以上我が国は輸入できない、したがってあなたのところもこれ以上日本に要求することはやめてくれ、こういう話をしょっちゅういたすわけでありますが、そのとき彼らが必ず言うことは、朝起きました、歯を磨きました、サンスターです、何かニュースを聞くためにつけました、ナショナルのトランジスタだし、また日本の何とかというテレビです、車に乗って行きます、日本のトヨタです、起きて寝るまでほとんど日本産ですと。

 こういうことの中で、私は総体的に物事は決まってきたのだろうと思いますし、私も政治家として、では全体的な中で、農林水産物がひょっとすれば一番しわ寄せを受けたのではないかというような思いも強く持っております。しかし、そういう中から、もはや最低限、これ以上は、我々は守り抜いていかなければならない、こういうような立場に立って私はやっているわけであります。

 三年前でしたか、クアラルンプールでAPECがありました。このときも、アメリカは林産物、農産物については自由化を強硬に求めてまいりました。しかし、私どもは頑張りに頑張り抜いて、政府・与党一体の中で、そして最終的には、たとえ首脳会談に上がったとしても、これは小渕総理をもって反対をするというところまで決めて守ってきたわけであります。

 山田先生の御指摘をずっと聞いておりますと、山田先生は本当に頑張っておられることには敬意を表しますが、山田先生たち側が水産を守って、何か知らぬけれども、こちらに並んでおる私どもが守っていないような、そういう対比にも受け取られかねないものですから、ここは一言御理解も深めて、あえて私どもの立場も申し上げさせていただきたいと思って、こういうことを今答えとさせていただくところであります。どうか御理解も賜りたいと思います。

山田(正)委員 時間が参りましたので、一言言って終わりたいと思います。

 今農業も漁業も本当に大変疲弊している状況に来ている。ここは、野党だから与党だからではなく、それこそ与野党一体となって、いわゆる国境措置、そしてヨーロッパ、アメリカがやっている支持価格制度、そういったものを早急にとり、日本の農業と漁業をここで守らなければ、こんな法律を、幾らこれにエネルギーを費やしても一緒だ、それを言って終わらせていただきたいと思います。

堀込委員長 次に、松本善明君。

松本(善)委員 農水大臣に伺いますが、私は、数年前に岩手県の宮古の市長さんに、もう現職ではないんですがお会いして聞いた話は、陳情の最初が、脱サラで農業をやる人はいるけれども、脱サラで漁業をやる人はいないんだ、これをひとつよく知ってもらいたいと。漁業がいかに深刻な状況になっているかということを私は目を開かされた思いがいたしました。

 農業についても、前の質問でこれが崩壊寸前の状況になっているということについては農水大臣もお認めになりましたけれども、漁業はもっと深刻な状況です。漁獲の減少、魚価安、漁場の悪化など農業以上で、生業として成り立たない。中小漁業会社も厳しい。自給率も、一九八五年の九六%から九九年の六五%まで低下しておる。水産基本政策検討会の報告では、現在の沿岸漁業就業者数二十四万人が、十年後には十四万人まで減少し、しかも高齢化が進行するという試算も報告をしている。本当に深刻な状態になっていると思うんですよ。

 基本法制定に当たって、まず何よりも、水産業が今日ここまで衰退してきた原因を明確にしないと、その対策が立たないと思うんです。

 私は、大臣が本会議で、水産物の輸入増加は、周辺水域の資源状態の悪化などによる漁獲量の減少や所得水準の向上による消費者ニーズの変化等の事情による、我が国沿岸で漁獲される魚種を中心にIQ制度による適切な輸入枠を設定するなど、市場原理だけで律するような政策をとってきたわけではないと答弁されたわけでありますけれども、国民は、食料は国産でという強い要求を持っているのが実態だと思います。

 農水省自身が昨年六月に行った水産基本政策大綱に関する消費者アンケートでも、水産資源を回復する過程で漁獲規制等により価格が上昇した場合でも、資源管理に取り組んでいる水産物を購入することも含めて国産を求めると答えた人が合わせて八一・一%。輸入の増加をすべて国民のニーズに解消するのは間違いではないかと私は思います。

 日本の漁業を守るという視点の政策が弱かったから自給率も低下をしているんじゃないか。沿岸漁業就業者数も減少しているんじゃないか。この原因をあいまいにしたのでは、正確な対策が立たないと思います。その点について、農水大臣、いかがお考えでしょうか。

谷津国務大臣 先ほどから答弁をさせてもらっておるのですが、我が国の水産業をめぐっては、漁業経営の悪化とか担い手の減少、高齢化の進展、それから漁村の活力低下など、大変厳しい状況にあることは、先生の御指摘のとおり認識をしているところであります。

 このような状況に至った原因でございますけれども、我が国の周辺水域において過剰な漁獲、それから漁場環境の悪化等から資源の状態が非常に悪化をしてきておりまして、漁獲量が減少してきているということであります。

 また、新たな海洋秩序の導入あるいは定着に伴いまして海外の漁場における規制が強化されてきたことに加えまして、食料の消費水準の飽和化といいましょうか、それに伴いまして水産物の需要が横ばい傾向に転じたことや、円高の進行、あるいは国民の水産物の需要の変化等に伴いまして、水産物の輸入が増加したことなど、いわゆる沿振法の制定時には予測し得なかったような状況が見られるというふうに思います。

 これに対しまして、政策や生産現場が必ずしも的確に対応し得なかったのではないかというふうに私は考えているところであります。

松本(善)委員 生産現場の責任にしたのでは、私はやはりぐあいが悪かろうと思いますね。昨年の二月二十三日にソウルで、国際農林水産業議員連盟の設立総会が開かれて、水産業も含む共同声明を発表している。松岡副大臣も副会長に選ばれていますよ。

 この声明の五項では、「連盟は、消費者のニーズを含む各国の農業、林業及び水産業の調和のとれた共存及び持続可能な発展並びに食糧安全保障の確保のために絶ゆまざる努力を行い、世界の平和と繁栄に貢献する。」六項では、「連盟は、加盟国間の紐帯を強化し、農業、林業及び水産業分野における公正な貿易秩序を確立し、WTO及び他の国際交渉において食糧輸出国及び輸入国の見解の間に均衡を達成する方策についての絶ゆまざる探求を行うことを決意する。」というふうにあります。

 これは、水産物輸出入の国際ルールは今のままではぐあいが悪い、やはりこれを変える必要があるということを言っているんじゃないんですか。先ほども議論がありましたように、やはり、輸入の問題について真剣に取り組まないと対策にならないんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。

谷津国務大臣 先生も御案内かと思いますけれども、水産物、林産も、実はWTOでは鉱工品と同じ扱いの中に入っているんです。ですから、これは別だというふうにずっと主張してきたわけであります。

 しかし、この間、シアトルの会議におきましては、やはりその枠の中でということに決まったわけでありますけれども、少なくとも農業と同じように水産物も、その地域、国によりまして状況、条件というのが随分違うわけであります。

 そういうふうな面を踏まえますれば、今先生御指摘のように、水産物の貿易問題というのは、やはり食料安全保障と言ってはなんですが、そういうふうな問題も踏まえ合わせるならば、私どもは、今のルールでいいのかどうかということについては、日本としても相当の疑問を持っているわけでありますから、今度のWTO交渉におきましても、その点を踏まえまして、しっかりと交渉に当たらなきゃならぬというふうに考えているところであります。

松本(善)委員 水産物については価格支持の制度がないんですね、調整保管事業だけ。輸入の増加だとか景気の低迷など、長期にわたる魚価の下落に対応するためには、直接補償だとか収入保険などの経営安定対策を検討すべきではないかと思います。これは、WTO協定の国内支持に抵触するんでしょうか。あわせてお答えいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 漁家経営の安定的な発展という観点から、今回の基本法にも幾つか特徴のあるポイントを盛り込ませていただいております。

 一つは、資源管理を行った結果生じる不利益、これに対してやはり何らかの措置を講ずるべきであるということ。

 それから二つ目には、災害による損失の合理的な補てんということで、御承知のとおり、漁業共済にはP掛けるQという漁獲共済がございます。そういった点でいえば、収入を補償するシステムでありますので、この点についてもう少し工夫ができないか、そういったこと。

 さらには、価格の変動に対してどのような措置がとれるかといったようなことを盛り込ませていただいておりますので、これから先どういうことをするかということについても、じっくり検討させていただきたいと思います。

 ただ、後半で先生が御指摘になった直接所得補償、収入保険という部分は、農業の分野であればグリーンのものとそうでないものがはっきりしておりますが、水産の世界ではどうもその辺は、やれるかやれないかという点も含めまして、これから立ち上がるであろう水産物交渉の中で決まっていくと考えております。

松本(善)委員 私は、答弁を聞いていますと、ちょっと手ぬるい感じがするんですよ。漁業をやっている人にとっては、本当に死活の問題に直面しているんですね。やはり、可能なことはすべてやってほしい、こういう状況じゃないか。

 直接補償、収入保険、今から検討すると。何のために農水省、水産庁があるんだろうか。そんなことはとっくの昔に研究して、障害があるならそれを国際的に除く、できるんならどんどんやるというふうにしなけりゃだめなんじゃないですか。農水大臣、どう思いますか。

谷津国務大臣 例えば、農業の所得補償というのは、国土保全とか環境とか、そういうふうな多面的機能を非常に有している。水産業においても、私どもは、そういう多面的機能というものについては、先ほどから御答弁申し上げておりますように、重視をしておる一つの、業種と言ってはなんですが、水産業あるいは漁協のやっておる役割、そういうふうなものも見ているわけであります。

 今先生御指摘のように、今の水産業の状況を見ますと、安定的に国民に対しまして安全な魚を供給するという大きな目的を持ってやっている漁業者の人たちが大変な苦境に立っているということも実は私どもも認識をしておるところでございますから、今長官の答弁の中にもありましたように、そういう面も踏まえながらこれを検討しなければならないのではなかろうかというふうなことも今考えているところであります。

松本(善)委員 直接補償や収入保険などの経営安定対策をやるという意思があるのかどうか。あれば、これはWTO協定との関係はどうなんだと研究しなければならないし、それはもう関係ない、抵触しないというなら直ちにやらなければならない。その意思があるのかどうか聞きたいと思います。

谷津国務大臣 ですから、これはいろいろな条件がありまして、例えば農業等においてはやっているわけでありますが、しかし、漁業の中におきましてもそういう要素というものが私はあるんではないか。

 今度の法案の中におきましても、多面的機能等も、そういうものも見ているわけでありますから、そういう中で、国民に対して安定的に供給できるというふうな大きな使命も実は漁業者も持っているわけでございますので、そういう中をいろいろと勘案をして検討させてもらいたいというふうに今申し上げているところであります。

 そういういろいろな条件等を踏まえて、その中に合うということでなければ、なかなかそういうようなことの補償というのは、直接補償と今先生はおっしゃっているわけですが、それに該当できないと思いますけれども、そういうものも含めて今検討してみたいと考えておるということで御理解をいただきたいと思います。

松本(善)委員 もう一歩という感じがしますけれども。

 基本法の十九条では、「水産物の輸入によって水産資源の適切な保存及び管理又は当該水産物と競争関係にある水産物の生産に重大な支障を与え、又は与えるおそれがある場合において、特に必要があるときは、輸入の制限、関税率の調整その他必要な施策を講ずる」ということになっております。特に必要がある場合というのは具体的にはどういうことを意味しているんですか。

渡辺政府参考人 前段の輸入制限でありますけれども、条文は今御指摘のとおりといたしまして、具体的には、今のケースでいいますと、ICCATなどの国際機関の勧告に基づいて輸入制限をする、マグロのケースでありますけれども。それから、現行やっておりますIQ制度に基づく輸入制限、こういうものを念頭に置いております。

 それから、二点目でありますけれども、関税率の調整、水産物の輸入が急増をして、そのために国内の生産者に重大な損害が生じている場合にはその調整を行う、こういうことを想定いたしております。

松本(善)委員 やはりこの関係は非常に大事だと思うんです。

 今マグロの話も出ましたのでマグロについて伺いますが、水産庁から資料としてもらった日中マグロ協議結果概要によりますと、中国側は、IUU漁船に対して市場を提供し続けている日本こそIUU活動を奨励しており問題だ、便宜置籍船の活動を奨励していると。それで、文芸春秋四月号のルポによりますと、昨年十一月、モロッコで開催されたICCATの国際会議で、日本もそういう鋭い指弾を受けて警告を発せられた。

 この中国の主張、ICCATの国際会議での状況、これを報告してもらいたいんですが、やはりマグロについて言うならば、どういう船がとっても日本が買う、これが障害になっているんだということが国際的に指摘をされているんだと思うんです。状況の報告と、そしてそれについての我が国の対策、それをお答えいただきたい。

渡辺政府参考人 ICCATの場、それから二国間でも話をしておりますけれども、中国側の主張は、まだまだ自国のマグロ生産というものは世界のマグロ漁獲全体からすれば小さなものなんだから、もっと我々に枠を与えるべきである、船を与えるべきである、こういうことであります。

 一方、国際ルールは守らなければいけないということについて当方は強く主張しているわけでありますけれども、その点については、便宜置籍船問題につき特にいろいろ自分らも検討したいけれども、データが必ずしも十分ではないというふうなことを言っております。

 私どもは、やはりマグロの市場、特に刺身用のマグロの市場というのは唯一と言っていいと思いますけれども日本ですから、日本を目がけて各国が輸出をしてくるというのは、一定程度そういう状況でありますけれども。それはやはり、資源の管理という国際機関での監督下、一定のコントロールのもとでやらなければいけないと思っておりますから、でき得れば世界のマグロを漁獲し得る海がこういった国際的な資源管理機関によってカバーをされるというふうな状況に向けて日本が努力をするということであると思います。

 そういう状況の中で、メンバーになっていない国あるいは規律を守らない国からの輸入に対しては、これを強く抑制するという方向がこれから強化をされていくべきものと考えます。

松本(善)委員 そういう方向ということですが、今、水産庁は商社や流通業者に便宜置籍漁船から買わないように不買指導をしている。これまでの経験から見ると、やはりこの指導では廃絶できるわけがない。やはりどうしても輸入規制しない限り解決をしないんだと思う。

 特に、庶民の口に上るメバチ、キハダは、国際規制のないインド洋だとか中西部太平洋などの漁獲が適正漁獲量を大きく上回っている。ここの、日本船に対する漁獲の規制あるいは外国船に対する輸入規制、こういうことがどうしても必要なんではないかというふうに思いますが、どう思いますか。

渡辺政府参考人 規制のあり方というのは、順次国際的枠組みの中で強化をしていく方向、これは正しいと思います。ですから、でき得る限りメンバーになってもらうように、でき得る限り世界の海をカバーするように国際機関を強化していくことだと思います。

 ルールを破る、もしくはメンバーになっていない国からの輸入の抑制については、これまでもやってきましたが、それを強化した形で実施をする。例えば、現在考えて実行に移しておりますのは、船の前歴証明というものがない限り確認をしないというふうなやり方をとろうといたしております。そういうふうなやり方をすることによって実効がこれまで以上に上がっていく、そういうふうに思います。

松本(善)委員 いろいろな工夫をして、ホワイトリストの話でしょうが、そういう工夫もしていると思いますけれども、やはり、どこであろうととった場合には日本が買う、それが国際的な非難の対象にもなっているんですね。特に、国際的な規制のないインド洋などでのキハダとかメバチとか、そういうものに対しては、やはり日本が自主的に規制をしない限りは、これは規制できないんじゃないか。

 マグロ資源が減ってきているということは盛んに言われております。メバチマグロは各海域でとり過ぎで、大西洋等は八万トンが適正なのが十万から十一万トン、刺身マグロは全量日本だ、ずっとそういう輸入が続いているわけですが、やはりこの輸入の水準を日本が規制しなければいかぬ。特に台湾から正式加盟国になろうとしている中国に移りますと、この規制は難しくなるというのです。

 どこの国の旗でとろうとも、過剰漁獲にならないようにするということをやはり日本は真剣に考えなければならぬのじゃないだろうか。そのためには、国際規制のない地域での問題でいえば、日本が自分の主権の範囲で輸入の規制をやるということが必要になってくるのじゃないだろうか。農水大臣の見解を伺いたいと思います。

谷津国務大臣 私も、実はマグロについてはFAOの方で、一つの漁獲についての制限と言ってはなんですが、そういうのを出したときに、日本は減船措置をいたしました。

 そのときに、日本の船をどこかの国の名前にして便宜置籍船にして、それでマグロの漁獲をしたというようなことを聞いておるわけでありますけれども、それを買う日本が問題じゃないかというふうなことも指摘をされておるわけであります。そういった面では、そういった船でとられるマグロを日本が購入するということについては、もうそれはやめてほしいということで、何度もそういうことで注意あるいは勧告もしているところでございます。

 一方、こういった国々がないわけではなくて、そういう中でいろいろと私どもも苦慮しているわけでありますが、今松本先生御指摘のように、この面については、資源の確保ということを考え合わせるならば、この辺についてはしっかりと日本としても意思を持って、その辺のところの購入をやめるという形をとらなきゃいかぬじゃないかというふうに私は思っているところであります。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

松本(善)委員 本当にそれをやってほしいのですけれども、森内閣もそう長くないという状況であれなんですが、私は、それは記録にも残りますが、やはりこれは再々ここでも議論されているセーフガードの問題と同じように、開発輸入と同じ性質を持っている。

 便宜置籍船も、もとはといえば日本船だ、買うのも日本だ、これはだれも知っていることなんですね。だから、便宜置籍船のいわば元凶が日本の中にいる、やはり本気で日本がその対策に取り組まない限りは、それは幾ら外国にいろいろ言いましても事は進まないのじゃないか。

 今、ある程度決意を述べていただいたのですが、どこに障害があるのでしょうか。農水大臣がそう思ったら本当はそうできなくちゃいけないのですけれども。

谷津国務大臣 これは自由貿易国でありますだけに、この点については非常に難しい点もあるのですが、ただいま農産物等について今セーフガードのお話も出されたわけでありますが、確かに開発輸入というのがかなり多いということは、私どもも御指摘のとおり認識をしているところであります。

 ですから、種の販売業者をしている方等も呼びまして、その辺のところの指摘もさせてもらいましたし、実は商社も呼びまして、私どももその辺のところの実態等も調べさせてもらいましたし、そういうふうに、国々に対しては、会社といいましょうか、そういうところに注意を喚起したわけでありますけれども、私は、これは個人的な意見になるかもしれませんけれども、少なくとも商売においても理念があっていいというふうに思っているのです。

 ですから、そういう中で国内の農家が大変な打撃を得る、その打撃を得る元凶がどこにあるかというと、我が国にあったということであってはとんでもないことなんだよというようなことで、そういった面は一つの理念、哲学を持って商売もやってほしいということを私は言っているわけであります。

 まさに今、マグロの問題におきましても同じ状況にあるように私も感じておりますから、これは注意を喚起するだけではなくして、何らかの方法をあるいはとらなければならぬのかなと個人的には今思っているわけでありますけれども、少なくとも、やはり私はそういう面では倫理観を持った商売であっていいのではないかというふうに思うわけでありまして、これからも十分にそれを留意しながら注意していかなければならぬというふうに思っているところであります。

松本(善)委員 本当にきちっとやりませんと、将来マグロの刺身は食えなくなるということも杞憂ではなくなると思うんですね。これは検討するというお話で、これも水産庁もその気になって取り組むべきだと思うんですよ、今までの惰性にとらわれないで。私はそのことを強く要求しておきます。

 それで、セーフガードの問題、これはやっと暫定発動ということにネギやシイタケ、イグサについてはなりました。この機会ですから、本格発動の見通しはどうでしょう。

松岡副大臣 制度といたしまして、本格発動の前に暫定発動、こういったことがあるわけでありますが、それは本格発動に至るまで待っておったのでは取り返しのつかない事態になるおそれがある。ここはまさに判断でありますけれども、ある一定の突き合わせによって取り返しのつかないおそれがある、こういう場合は暫定発動するわけでありますが、今回私ども、この暫定発動の期間を二百日という、暫定発動の期間としては最大の幅をとりました。

 そして、本格発動に向けた調査というものは、これはこれとして一方並行的に進めてまいります。そして、資料は資料として整えながら、この暫定の二百日間の経過を見ながら、これは今後適時適切に判断していくことになるであろう、こういうことでございます。

松本(善)委員 私は、これは日本の食料についての輸出入のルールについて変えていく第一歩になるということじゃないか、そういう点では非常に重要だと思います。

 水産物であるワカメ、ウナギについて伺いますが、本会議では大臣は、三月十四日に、政府調査を開始するよう財務、経済産業の両大臣に要請したというふうに答弁をしていらっしゃいます。もう既に一カ月近くたとうとしているのですが、両省はどうなっているのでしょう。一日も早く政府調査に入るべきではないかと思いますが、いかがでしょう。

渡辺政府参考人 三月十四日の調査開始要請を受けまして、現在、これら二品目の調査開始の可否につきまして三省間で鋭意協議、検討しているところでございます。

 もとより、データを充実させるということがこの発動に向けての一番大事なことでございますので、そういった資料収集もしながら検討しているところというふうに承知しております。

松本(善)委員 ことしのワカメの初入荷は、生産者の期待むなしく全面安で、塩蔵物で十キロ平均で三千四百二十一円、昨年より二千円安いという。去年も四月で操業を打ち切ったが、ことしもこれでは漁に出る意欲もわかない、どのように生活していったらいいものか、頭の中は真っ白だ、こういうワカメ漁民の気持ちなんです。

 そこで、すぐ急ぐべきだと思いますが、財務省、経済産業省、どうなっているのですか、それぞれお答えいただきたい。

寺澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、本年三月十四日に、発動に係る調査を協議に基づき開始するよう要請がございまして、セーフガードの要件の立論上の問題点につきまして、現在、農林水産省、経済産業省及び私どもで共同して、協議、検討を行っておるところでございます。まだ、農林水産省におきまして実態調査等の検討が進められておりますので、この結果を踏まえて判断をさせていただきたいと思っております。

奥村政府参考人 私どもも三月の十四日に農林水産大臣の方から、御指摘のウナギ及びワカメにつきましてセーフガード発動に向けての調査要請がございました。今財務省の寺澤局長の方からも御答弁ございましたように、今三省一体となりまして、このセーフガードに向けた調査を開始するに足る十分な証拠があるかどうかについての検討を鋭意いたしておりますが、この中で農林水産省の方で現在実態調査をさらに進めておられまして、それも踏まえつつ、三省で鋭意検討を行ってまいっているところでございます。

松本(善)委員 これは、鮮度が落ちやすいし、在庫費用もかさむ水産物へのセーフガードの発動というのは、今のようなのんびりした検討では間尺に合わないのですね。これは、そういう実態を全く知らないというか、本当に日本の国民の産業、生活やその他を考えているんだろうかと率直に今の答弁を思うと思いますよ。

 これは機動的に行えるよう調査手続も簡素化すべきだと。暫定発動を考えているかどうか、農水大臣に。

谷津国務大臣 松本先生御指摘のように、農産物とか水産物というのは腐食しやすいという特性を持っておるものですから、長くかかって調査なんかしているということになりますると、これはなかなかセーフガードをかけられる要件を満たすようなことはでき得ないということも考えております。そういうことで、実は、WTOに対する日本提案の中にもこの点を指摘しまして、できるだけ期間を短くしなければいけないというようなことで提案をしているところであります。

 まさに先生今御指摘のとおり、私は、できるだけ早く調査をして、できるだけこの辺については対応ができるようにしなければならぬということで今しりをたたいているというふうな状況でございまして、こういう腐食しやすいというものについては、まさに時間との勝負という言葉はちょっと適切ではありませんけれども、そういうこともありますものですから、それに急がせているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

松本(善)委員 WTOの提案をしているということですけれども、やはり今できる暫定発動もしないと、ぐずぐずしているというのでは国際的にも迫力がないのですね。やはり国内で今のワカメ、その他について至急進めるということをどうしてもやらなければいけない。

 それからもう一つ、欧米や韓国は独自の体制を持って、関連の生産者団体にも申告の権利があるようになっていますね。日本は、専任の調査体制もないし、申請できるのは政府機関だけになっている。やはりこれは変えないとだめだと思う、もっと機動的にできるように。

 農産物の場合は、農水省の事前調査、財務、経済産業省と今のような三者合意、今の答弁を聞いてもわかるように、こういうのろのろしているうちに時期を失してしまうわけですよ。やはり膨大な調査を経ての三者協議を必要とする、そういうような発動に至らせない二重三重のルールが国内にあるわけです。

 国際的なルールも変える必要がありますけれども、それはもちろん必要ですし、だけれども、国内でそういう二重三重のなかなか発動できないような制度になっている、これをまず変える必要があるんじゃないですか。その点は農水大臣、いかがでしょう。

松岡副大臣 このセーフガード、なかんずく暫定の問題も含めまして、初めてであります。長い日本の貿易の歴史の中で、これは初めてであります。宮澤財務大臣もいろいろな思いがあったのだろうと思いますが、事の真意は別として、感無量であるということもおっしゃっておりました。そういうようなことでありまして、今までやったことがないものを今回やった、こういうことでございます。

 したがって、先生御指摘のように、その辺の体制がどうなっているか、そしてまた調査自体も機動的になっているのか、こういったようなことについては、私どもこれはやはりこれまでを翻って、今回のやったことを踏まえて反省またはさらに整理すべきは整理して、体制というものを日ごろからきちんとしたい、その点では、先生御指摘の点につきましては私ども十分今回のことを一つの経験として対処していきたい、こう思っておるところでございます。

 それと、先ほど水産物暫定どうかこうか、こうおっしゃいました。これにつきましては、私も、実はウナギは熊本の人が全国の会長をやっておりまして、その厳しさ、実態というものについては常日ごろからいつも身近に実感をいたしておるところでございます。したがって、先生と同じ、ある意味ではなおそれ以上の身近なお話をいつもいつも聞くものですから、私ども自覚は持っておるところであります。

 たまたま役所が答えましたのは、実務的な整理の立場から答えたのでそこのところの真意が伝わらなかったかもしれませんが、今とにかく大臣が言いましたように大特急でこれをやっておる。そして、あわせていろいろな調査体制というものも我々は今後に向けて、しっかりとしたそのあり方も、またやり方もきちんと取り組んでいく、こういうことでございますので、よろしくお願いをしたいと思います。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

松本(善)委員 関連してですが、ワカメやカキの輸入物は、国産物とまぜられて店頭に並べられて消費者の口に入るのが一般的だと言われている。生でさえも三陸産、石巻産と表示されているのに、外国産が混入している。加工物になりますと、中身は外国産が圧倒的ニーズになっているというふうに言われている。国産物も輸入物も偽りなく原産地が表示をされ、消費者に選択してもらうならば、国産物が少々高くとも買ってもらえる、こんなに価格が暴落しないで済むというふうに漁民はそこに自信を持っているのですね。

 厚生労働省は、生カキについて、国産カキと外国産カキを混合し、同一包装で販売しないことという通達を出していますけれども、ワカメについて、少なくも原産地とその数量のパーセントの表示を義務づけるべきだと思いますが、どうでしょう。

渡辺政府参考人 御案内のとおり、JAS法に基づきまして、品質表示が輸入品にも義務化をされております。生鮮食品につきましては十二年の七月から、加工食品につきましても十三年の四月からこれが適用されておりますので、輸入される生鮮水産物におきましては原産地、それから、輸入される水産加工食品におきましては原産国名の表示が義務づけられております。私どもは、その表示ルールの徹底に努めてまいりたいと考えております。

松本(善)委員 基本法案の漁業の位置づけの問題について伺います。

 基本法案は、水産物の供給、資源利用からこの位置づけはやっていますけれども、漁業、水産業は、やはり国民の生存と生活基盤にかかわる基幹的な食料産業で、地域の経済や集落の維持、国土環境の保全に欠かせない役割を持った産業としてしっかり位置づけるべきではないか。

 漁村の市町村からの意見書というのもたくさん出てきておると思いますが、そういう、水産業を国民食料の安定供給を担う国の基幹産業として位置づけることを柱とした水産基本法の早期制定ということを要望している意見書がたくさんありますけれども、どうしてそういうふうにしなかったのでしょうか。

谷津国務大臣 今後の水産政策においては、先ほどから御答弁申し上げておりますように、水産業全体を国民に対する食料の供給の産業としてとらえているということでございまして、すべての漁業部門のみならず、加工それから流通、こういう面も含めましてその健全な発展を図ることが重要であるというふうに思っておりまして、その基幹となるものは漁業であるというふうに私どもは認識をしているところであります。

 水産基本法案におきましては、その基本理念を水産物の安定供給の確保と同時に水産業の健全な発展としておりまして、水産物が健全な食生活等の基礎として重要なものでありますから安定的に供給されなければならないという規定の上で、国民に対する安定供給については我が国の漁業生産の増大を図ることを基本とすることとしておるわけでございます。

 そういう点から、我々は、水産物の供給における漁業及び漁業生産の基幹的な位置づけは明確になっているというふうに思っているところでございます。

 なお、この基本理念を具体化するための施策の方向づけにおいても、効率的なそしてまた安定的に漁業の経営を育成する、また漁業経営を担う人たちに対しまして人材の育成確保、そして基幹産業としての漁業の発展に関するものを重点的に規定しているというふうに考えております。

松本(善)委員 少なくも法文上はそういうふうにしっかりなっていないんですよね。

 それで、今の御答弁は、漁業や水産業を国民の食料を支える産業という位置づけで国が責任を持って発展させなければならない、こう考えているということでしょうか。

谷津国務大臣 そういうことでございます。

松本(善)委員 それじゃ、多面的機能について伺います。

 大臣は、本会議の答弁では、漁業、漁村の多面的機能は、今後、豊かで安心できる国民生活の実現に向けてその重要性はますます増大しているというふうに述べられたんですが、そうであるならば、なぜ新農業基本法のように基本理念の中にこれをちゃんと書かなかったんだろうか。

 一九九九年八月の水産基本政策検討会報告では、我が国経済社会の重要性として、我が国水産業、漁村は単なる経済活動にとどまらない多面的な機能を有しているということを冒頭で明記していた。これを理念のところで新農業基本法と同じように何で書かなかったのかということがどうしても疑問なんですよ。なぜなんでしょう。

谷津国務大臣 水産業や漁村が有する多面的機能については、今後、豊かで安心できる国民生活の実現に向けましてその重要性が増大しているということが言えると私は思います。その機能の内容や重要性については、国民の理解や支持がまだ必ずしも十分に深まっているというふうには言えないところがあるというふうにも思っておるわけであります。

 このために、まず、水産業や漁村が多面的機能を有することを基本法案に明確に規定した上で、この機能について国民に正しく理解され、そして適正に評価されるよう、情報提供を初めとする施策の充実を図っていくとの政策方向を示したということでございます。

松本(善)委員 そうしたら、国民に啓蒙するためにも、水産基本政策検討会の言っているように、やはり理念の中に多面的機能をきちっと入れればますますいいじゃないですか。どうしてそれができないんだろうか。どういう経緯でそんなことを、何のための水産基本政策検討会かと思いますよ。真っ先にそれを検討会の報告は言っているわけなんだけれども、それが何となくずっと端っこに行っちゃうんですね、答弁ではおっしゃるけれども。私はその辺がどうしても疑問なんですよ。

 まずは情報提供で啓蒙だというんだったら、これはもう理念の中へ入れるという方向に変える前提でやっているのかどうか、最初から腰が引けていたのではぐあいが悪いんじゃないかと私は思うんですが、どうですか。

渡辺政府参考人 大臣からもお答え申し上げたんですけれども、食料・農業・農村基本法と森林・林業基本法におけるそれぞれの多面的機能というのは、ほかの基本法にあるからここでも引くという同じものではない。

 水産業及び漁村の持つ多面的機能といった場合には、それを担う漁業者、地域住民がいて初めて果たされるものであります。そういう意味で、今回の理念には骨が太い柱二つを、水産物の安定供給の確保として、その水産物の安定供給の確保の中も、例えば資源管理とかそういうものが含まれます。それから、水産業の健全な発展の中には漁村の振興というものが図られます。

 漁村地域が振興し、そこに漁業関係者が安んじて生活をすることによって多面的機能が果たされる、こういう意味で、条文のどこに多面的機能を位置づけるかということを法制度上検討した結果、後の方で、まずは国民的コンセンサスを得ながら、情報提供から始めて機能について御理解をいただこうという位置づけにしたわけでございます。

松本(善)委員 そういう単純な答弁をしちゃだめなんで、新農業基本法にあるから入れろなんてそんな単純なことを言っているわけじゃないんですよ。水産基本政策検討会では最初に位置づけですよ、きちっと。やはり理念の中にきちっと位置づけなければこれは腰が据わらないんですよ。

 まだ国民が理解をしていないから漁業の問題はまだもうちょっと後からだというような姿勢ではもう間に合わない。そこのところがやはり姿勢の問題として物すごく弱いんじゃないかと思うんですよ。大臣、どう思いますか。

谷津国務大臣 姿勢の問題を問われたわけでありますけれども、水産業といいましょうか、あるいは漁村の持つ、あるいは海の持つ多面的機能というものについては、先ほどから申し上げておりますとおり、国民の理解が少ないというふうに思っているわけでありますが、だからこそ、むしろ理念に入れてそういう理解を求めていく必要が大事ではないかというふうな先生の御指摘であります。

 気持ちとしては私も十分にそれは理解できるわけでありますが、まずは、こういったものを理解してもらうための一つの方策としてこういうふうな取り扱いをさせていただきまして、そういう中で水産業あるいは漁港の持つ、あるいは漁村の持つ多面的機能というものを国民の理解を求めていくということが大事だというふうに考えております。

松本(善)委員 これは、ただ理念というか条文のつくり方の問題にとどまらないんですよ。例えば離島だとか遠隔地の条件不利地域のやはり存続にかかわる重大な問題。

 いや、これから情報提供なんだ、啓蒙なんだといっているのと、いや、漁業はそういう位置づけなんだ、多面的機能を持って、国土の保全だとかそれから食料の安全保障とか、そういう大事な産業なんだということでいけば、それは条件不利地域だとか離島なんかに対する対策がすぐできるわけなんですよ。その具体的な違いも出てきます。

 私は、条文のことだけいつまでも言っているわけにもいきませんが、もし本当に精神がそうだったら、中山間地支払い制度のような制度、所得補償の制度を漁村に適用する考えはありませんか。

谷津国務大臣 食料安全保障の一端としまして、魚といいましょうか、そういうふうなものが非常に安定的に国民に安全に物が供給されるということは非常に大事な要素であります。それを担っているのが漁業でございますから、十分にその辺のところについては私どもも認識をしているところでございますので、先ほども御答弁申し上げましたけれども、そういった面を踏まえながら、この件につきましても検討してみたいというふうに考えているところであります。

松本(善)委員 担い手の話が出ましたので、担い手のことを伺います。

 育成の対象を政府は経営意欲のある漁業者に絞るとしています。水産政策大綱では、中核的漁業者協業体の認定と施策の集中など、農業政策の認定制度の導入を提起している。どういう漁業者に支援をするのか。これでいくとやはり切り捨てられる漁業者が出るんじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょう。

渡辺政府参考人 先ほどもお答えをしたんですけれども、浜の状況というのは、人が不足している、高齢化をしている、規模が小さい、これが大きな特徴であります。

 これを打破して効率的、安定的な経営をつくり上げていくためには、漁業の実態からいって、共同、協業から始まって、地域地域の実情を考えながら、法人化をするということもあり得るだろうと思います。いろいろな選択がありますけれども、とにかく集まって規模を大きくし、効率をよくしていかない限りは発展はないだろうという立場に立っております。

 その際、高齢者や女性の方々にも一緒にそのグループの中に入っていただいて支え合いながら、地域としての合意の中からそういうリーダーの発展を支えていく、一緒に生きていくということを考えているわけでありまして、切り捨てというふうなことを意図しているものではございません。

 したがいまして、この資金につきましても、例えば漁船の規模、貸付限度額の拡大についてはそうした協業体に優遇はいたしますけれども、そのほかの方々には通常の融資をするというふうな仕組みをとりたいと考えております。

松本(善)委員 実際の施策を見ないとわかりませんが、効率的な漁業をつくるというのは、これは一般的に言えばそうなんですけれども、非常に危険を感ずるので、これはちょっとこれからの施策の様子を見たいと思います。

 しかし、中核的漁業者を仮に十四万人としますと、年間三十万トン生産しても四百二十万トンしかとれない、国民一人当たり年間七十キロ食べるとすれば八百五十万トン必要だという試算がありますが、これでは足りないんじゃないか。やはり食料安全保障という観点からするならば、もっと漁業についての援助といいますか、振興を考えないといけないんじゃないかと思いますが、いかがでしょう。

谷津国務大臣 先生の御指摘のとおり、漁業の振興を図るということを考え合わせれば、もっと強力なそういった施策を展開しなきゃならぬというふうに考えているところでございます。

 一方、沿岸漁業等におきましても、この周辺で、枯渇をしていると言ってはなんですが、資源が非常に枯渇をしている。これを栽培漁業あるいはまた養殖漁業等によってやらなきゃならない点も多々あるわけであります。そういった面で、総合的な面を見ながらその辺のところをしっかりとやっていかなきゃならぬというふうに考えておるところであります。

松本(善)委員 総合的に見て、漁村の崩壊というのが放置できない状態になっている、非常に緊急な問題なんだということを指摘しておこうと思います。

 若手をどう確保していくか、これはやはり漁業をやることで収入が確保されるということが前提であります。これは漁業界内の自助努力に頼るべき問題では決してないと思います。

 宮城県の漁業経営安定対策本部が、遠洋漁船上級幹部後継者となる高卒新規漁船乗組員が皆無になってしまったことは遠洋漁業の将来を左右しかねない最重要課題として、資格取得、養成への助成措置、常設研究センターの設立、奨学金制度の創設などを求めております。

 将来の若い漁業の担い手をつくるためにどうしても不可欠なものはやはり公的資金を導入してもやるべきではないかと思いますが、いかがお考えでしょう。

渡辺政府参考人 御指摘にありましたように、漁業従事者全体のパイを広げるということがこれから先漁業の発展に不可欠であります。現状を見ますと、新規学卒で年間六百人新規就業がある、それからトータルでも千三百人という状況ですから、これではちょっと次世代に向けてうまく回っていかないと思います。

 ですから、人を募集する、またそれに足るだけの魅力のあるものにすると同時に、新規に入ろうとされる方々には、例えば無利子の資金を貸し付ける、それから地域でリーダーになっていく人に対しては一定の研修をする、そういったことがこれからは強化をされていくべきものと考えております。またいろいろと検討いたしたいと思います。

松本(善)委員 貸し付けだけじゃなくて、漁協を窓口にして、後継者、新規参入者に一定期間の技術習得や生活費、休日確保の助成金を直接支給する、そういう青年漁業者の支援制度を創設すべきではないか。今は支援といってもほとんどが貸し付けなんですね。やはり本格的に漁業を守ろう、農業を守ろうということになれば助成をする、貸し付けじゃなくて支給するという方向に踏み切るべきだと思いますが、農水大臣、どう思いますか。

谷津国務大臣 この点につきましては、ほかの産業との関係もございますし、そういう中で考えなければならない点でありますが、先生が申されていることは私どもにとりましても十分にわかるわけでございます。

 しかしながら、一方においては、先ほど申し上げましたとおり、ほかの産業との関連もあるということも一つ御認識をいただきたいと思うし、またもう一つ、逆の面から見れば、水産物を安定的に、国民の健康保持のためにも、食の面から寄与しているという面から見ると、大変な役割も担っているわけでありますから、そういう中で私どもも考えの中の一つに置かなければならないのかなというふうな思いもするわけでありますけれども、この点につきましてはまた検討させていただきたいと思います。

松本(善)委員 ほかの産業とのバランスと言われますけれども、いわゆる農業だとか水産業についての多面的機能というのは、例えば食料の安全保障とか国土の保全とか、いわば税金で援助をしてもやってもらわなければならない産業なんです。ほかとはバランスが違うんですよ。やはり国として守らなければならない。それは国土を守る、国民の食料を守るという仕事なんですよ。そこのところがしっかり据わりませんと、私は農業の崩壊や水産業の崩壊を防ぐことはできないと思うんです。

 それは、政府が先頭に立って、こうだ、これは必要なんだということでそういう施策を打ち出さないと、これは皆、今、いつやめようかと思っているんですよ、農業だって漁業だって。やめどきを考えているというときですよ。それは大変な事態なんだ。それに対してやはり希望が持てるという政治にしなければ、日本の国土が崩壊するんですよ。日本の国民の食料の安全が保障されないんですよ。率直に言って、そこの自覚が私はどうしても施策の中で弱いように思うんです。

 そこのところは、農林水産省の省内にもやはりそういう仕事をやるんだという気迫が私は感じられないと思う。むしろ、これはもうしようがない産業なんだというような惰性を感じてしようがないんですよ。そこを抜本的に変えないとだめだと思うんですけれども、どう思いますか。

谷津国務大臣 総じて、一次産業といいましょうか、そういう中に農業とか水産業とかというものが、食料の安定供給という大きな使命を持ってなされている産業でありますだけに、今先生が御指摘になったような、それを国民の食料の安全保障という面から考え合わせるならば、私はその御指摘は非常に重要だというふうに思っているわけであります。そういった面で、この件につきましては十分に検討しなければならない項目であるというふうに考えております。

松本(善)委員 終わります。

堀込委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社民党の菅野哲雄でございます。

 今、四時間かなり議論がなされて、関連する部分はあると思いますけれども、基本的な考え方を述べながら質問をさせていただきたいというふうに思います。

 水産基本法、本当に待ちに待った法律案だというふうに私は思っております。農業や林業に基本法があって、なぜ水産業にだけは基本法がないのだろうかという国民の声にこたえてこういう状況までこぎつけたことをうれしく思うのです。

 ただ、沿岸漁業等振興法にかわって水産基本法という形を今回つくりました、そういう意味では、漁業基本法ではなくて水産基本法という名称にもなっているのですね。さっき大臣は、基本的には漁業基本法だという回答はしていますけれども、そうではなくて、水産加工や流通部門も含めた水産業全体を包括的に対象にしたものという今回の法体系だというふうに思っています。

 この点からすれば、漁業だけではなくて、水産加工あるいは流通も含めて相互に発展していかなければ、水産業全体が発展していかないのだという立場はわかるのです。ただ、これまでなぜこの水産基本法がそういう立場でつくられなかったのかということを思うとき、漁業や流通あるいは水産加工業、後で触れますけれども、加工業者は原料が安ければいいのですけれども漁業生産者は高ければいい、そういう状況のもとで、相互に関連し合って、そして相反する部分があるものですから、私は、この水産基本法を包括的な基本法としたときに、そこをどう調整していくのだろうか。

 そして、今政府が進めている経済政策は規制緩和の方向なんですね。どんどん自由競争を標榜していて、そして一方では、利害を調整していかなければならないという法体系をつくろうとしている。ここの調整が私は非常に難しいものがあるというふうに思うのですけれども、この辺に立った政府の見解をお聞きしたいというふうに思います。

谷津国務大臣 漁業、水産加工業とそれから水産流通業は、漁業が天然資源である魚介類等を採捕する、あるいはまた、加工、流通業が漁業サイドにとっての漁獲物の最大の仕向け先となるとともに、魚介類等を消費者ニーズに対応して多様な形態で加工して供給するということも大事なことでございまして、両者は相互に関連して、国民に対する水産物の安定供給の役割を果たしているものと考えております。

 確かに両者は、先生御指摘のとおり、水産物の売り手と買い手との関係に立っておりますものですから、必ずしも常に利害が一致するものではないと思います。そういう中で、近年の消費者ニーズの高度化あるいは多様化の中で、漁獲から加工、流通の各段階での安全性の確保や原産地等の的確な表示、あるいはさらに、漁業者による加工、流通面の取り組み等に対する付加価値といいましょうか、そういうものが求められておりまして、漁業と加工、流通業との連携が一層重要になってきているのではないかなというふうに思うわけでございます。

 そういう点から、この水産基本法案におきましては、水産業全体の発展の政策方向といたしまして、国民の需要に即した漁業生産や水産物の加工あるいは流通、また、それらの漁業、加工あるいは流通等の連携について、規定をしっかりとしておかなければならぬということからこの規定になったところであります。

菅野委員 私が聞いているのは、だれがどのような形で調整を図っていって、そして加工業者は、先ほど言ったように安ければいい、そういう方向を追求するのですね。それで、生産者は経営が成り立つように一生懸命努力している段階なのですが、それは魚価の低迷やあるいは水産物価格が低迷している状況の中で、今日的な漁村集落の崩壊までつながっていっていますから、それを国として立て直していこうというのが今回の水産基本法の柱だと思うのですね。今日出してきているというのが、そういう現状認識の上に立っているというふうに思うのです。

 そういう立場からすれば、加工業者と流通業者をある意味では漁村集落が成り立つような形で説得していかなければならない、調整していかなければならない課題が存在していると思うのです。それで、そういう課題が存在しているのをだれがどういう形でやっていこうとしているのか、国の責務としてどのような形でやっていこうとしているのか、このことをはっきりしておかなければいけないと思うのですが、いかがですか。

谷津国務大臣 これは先ほども申しましたとおり、基本的には漁業者というところにあるわけであります。そういう中で、今先生御指摘のとおり、加工業者あるいは流通業者、こういう人たちとの間に相反する意識が動くということは私もわかるわけであります。

 しかしながら、どこまでも魚をきちっととってそれが生計として成り立つ、あるいはまたそれが産業として成り立つというふうな方向をきちっとさせておかなければ、これは加工もできなければそれは流通もあり得ないということでありますから、私どもとしましては、そこを重点にいろいろな指導をしていかなければならぬというふうに考えているところであります。

菅野委員 そういうふうになったときに、問題を指摘しておきたいのですが、やはり規制緩和あるいは自由競争を標榜している中では、私はいつまでたっても浮かんでこないのではないのかな。

 それで、先ほどから大きな議論になっていることは、やはり第一次産業総体は、この自由競争、規制緩和の方向の中では生き延びられていかないのではないのか、そういう意味では、ある程度規制をかけていって産業全体を育成していくような方向での取り組み、国の施策というものをきちっと出していかなければ産業全体として成り立っていかないのではないのかというふうに思うのですね。

 このことをどうしていくのかなというふうに考えたとき、やはり政府の大きな決断というものをしなければならない状況に今日的にあるという認識に立って、ぜひ実のあるものにしていただきたい、このことを強く要望しておきます。いいです、うなずいておられますから。

 それで一つは、沿岸漁業等振興法に基づいて漁業がやってまいりました。それで漁業というものは価格が、魚価の低迷ですから、量をとってきて価格の安い部分をなりわいとして成り立つように埋めてきたという状況があると思うのです。

 そういう中から、先ほどもずっと言われていますけれども、資源の問題ですね。政府はこの減少の原因を本当に漁獲量だけに問題転嫁してはいけないのではないのかなというふうに私は思っていますけれども、この漁獲、漁業資源の減少の原因をどのようにとらえていて、そしてまた今後の資源回復を図る努力をどのように行っていくのか、水産庁長官、考え方を示していただきたいと思います。

渡辺政府参考人 もちろん一つだけの原因で漁業資源が減っているわけではありません。もちろん二百海里の中でも、カツオとか例えば放流をしているシロザケのようにかなり高位な水準にあるものもございますけれども、多くのものが今非常に低い水準にあります。

 三つぐらい理由としては挙げられますけれども、一つはやはり漁場環境が変化をしたということです。これは、沿岸域の開発、藻場、干潟の埋め立て、それから海砂利の採取、自然海岸の減少、こういったようなことが相当あろうかと思います。

 それから、御指摘がありました漁獲能力の向上、先ほどエンジン出力の話をして、ここ二十年ぐらいの間に総体でも船一隻当たりでは二割ぐらい上昇しているという話を申し上げました。

 それに加えて、水温だとかえさの変化、こういう環境変化、特に浮き魚は環境変化に影響されやすいのでそういった点が考えられようかと思いますけれども、その薬として、対処方針として一番やはり大きいのが資源の回復計画だと私は思います。

 資源の回復計画の中でやはり一定の漁獲努力量を削減いたしますし、場合によればより一層の培養もする、環境の保全もするというふうなことで、痛みも伴いますが、その部分については何らかの手当てをしながら資源の回復を早めるということだろうと思います。

 もちろん水産基盤整備事業もございますので、藻場や干潟の造成、魚礁の設置、そういうこともあわせて行っていきたいと思っておりますけれども、いずれにしても、今当面やらなければならないのは、漁獲努力を一定限度に抑え込んで持続的な生産を可能にするということであります。

菅野委員 大きいのは、私は、漁獲だけではなくて、今日的に環境の変化というものが相当なウエートを占めているのじゃないのかなというふうに思います。そういう意味では、この環境の変化というものが端的にあらわれているのが今問題になっている有明海だというふうに思いますね。あそこは本当にノリだけではなくて水産資源がほとんど枯渇状態になっているという、現地に行って見てきて感じたのですけれども、それは環境の変化だというふうに思います。

 それで、例えば有明海は閉鎖性水域ですから、閉鎖性水域における環境の変化にどう対応していくのかということがこれから議論されなければならないというふうに思うのですが、これは多くの時間をかけて調査に入りましたから、私は、有明海のことを考えるときに、やはり瀬戸内海で赤潮が発生して壊滅的被害を受けたあの経験があるわけですから、それをもとに対策を早急にとるべきではないのかなというふうに思います。

 それと同時に、環境の変化に対応するときに、やはり縦割りではいけないというふうに思います。省庁横断的に一緒になって対策を立てていかない限り、この環境変化に対応した漁場の回復というものが図られていかないのじゃないのかなというふうに思います。

 そういう意味では、ぜひ有明海を、これからの閉鎖性水域の今後の環境改善のために、私は、専門的にやる国の機関を地域につくって、県や市町村や国と連携をとりながら、国といっても各省庁との連携をとりながらやる機関を設けるべきではないのかなという考えを持っているのですけれども、このことに対する見解はいかがでしょうか。

谷津国務大臣 先生今この瀬戸内海の話も出されましたが、瀬戸内海も赤潮が異常発生したということで環境破壊が行われているということから、特別立法をもちましてあそこの再生を図っているところであります。

 今有明海のお話がございましたように、私も、これは長い間かかって環境破壊をされてきているのではないかということから、単にノリだけではなくして、タイラギを初めそういった水産物も大変な被害を受けているという状況等から考え合わせるならば、これは総合的にいろいろと対策を練らなければならぬだろうというふうに思っております。

 当然農林水産省だけではなくして関係各省もありましょうし、また県等もあるわけでございますから、そういった面で私はあそこにやはり一つの法律をもってやる必要があるというふうに考えているところであります。

菅野委員 わかりました。やはり瀬戸内海での経験はあるわけですから、それを生かすような、そして有明海に端的にあらわれたのですけれども、今日日本における閉鎖性水域の環境というのは本当に徐々に徐々に、かなり急テンポで悪化しているというふうに思います。それを、きのうですか21世紀クラブの人も質問していましたけれども、そこをトータル的に考えていく一つのモデルケースにしながら全国展開を図れるような体制をつくっていただきたいというふうに思います。

 それから、資源の減少のもう一つの大きな原因は資源のとり過ぎという状況があります。そこは私もわかるのですが、私も宮城県の気仙沼出身ですからマグロ漁船を二割減船でやって、気仙沼に約六十隻船を置いているので約四十隻、減船して、そして地域経済が非常に大きな打撃を受けました。

 ただ、減船に至る経過については、国からあるいは県から大きな支援をいただいて、そして地域経済は本当に影響が最小限で済んだというふうに総括していますけれども、思っていますけれども、そういう状況の中でやはり乗り切ってきました。痛みを伴うこともしなければ資源の回復というものが図られていかないということも重々承知しているわけです。

 ただ、TACの話になりますけれども、やはり資源回復のために操業規制を強いるということは、それだけのものを国としてぴしっとした形で支援していかなければ、漁業者に理解は得られないのじゃないのかなというふうに思います。

 先ほど、その点については十分これから検討しますという答弁がありますけれども、このことは早急に制度化を図る必要があるのじゃないのか。そして、資源を確保するというところが緊急の命題だとすれば、そのことを通じて協力をもらっていく、早急の対策として位置づけなければならないというふうに思うのですけれども、この点についての考え方をお示し願いたいと思います。

渡辺政府参考人 御指摘のとおりでありまして、基本法案の第十三条の二項に、「国は、前項に規定する施策が漁業経営に著しい影響を及ぼす場合において必要があると認めるときは、これを緩和するために必要な施策を講ずるものとする。」と明示されております。

 確かに長期的には資源が回復するわけでありますけれども、短期的には漁業経営に著しい影響を及ぼす場合もあり得るわけであります。私たちは資源回復のための計画を十三年度に取り組みまして、十四年度からは実施をする考えでおりますので、それに合わせまして必要な施策とその支援方途を講じてまいりたいと思っております。

菅野委員 ここに水産基本政策改革プログラム、平成十一年の十二月につくったものがあるのですけれども、資源管理体制の整備という形から今後の指定漁業の一斉更新に向けてやっていくという方向があるんだと思うのですけれども、トータル的に、単に所得補償だけじゃなくて、ある意味では漁船の数等も含めて見直ししていく中でというとらまえ方がここにあるのです。

 ただ、先ほどから言っているように、自由競争の社会なんですね。そこを管理していくというときに非常に無理があるというふうに私は思うのです。そして一方では、減船が成功したという、マグロ漁船において減船に応じたというのは、マグロ業界が本当に魅力がなくなってしまったのですね。そして最後には、先ほども議論になっていますけれども、マグロ漁業が、後で触れますけれども、なくなっていくのじゃないのかなという危機感さえ持たれている状況です。

 そういう意味では、減船という方向の一つの手法もあると思うのですけれども、ぜひ、やはり所得補償という部分を念頭に置きながら施策の展開を図っていく必要があるというふうに思うんですけれども、後でも触れますけれども、その視点に立ってぜひ施策を展開していただきたいというふうに思っています。

 それからもう一つは、資源の枯渇の状況で大きいのは、やはり一網打尽という漁法が入ってきているんですよね。そして、漁船漁業者も含めて、漁法による対立というのも一方では資源が枯渇していますから顕著になってきているんです。例えばカツオ漁でいえば、カツオ一本釣り漁業という漁法もありますし、あと、まき網という漁法もあって、まき網漁船が一網打尽にとっていく姿の中から一本釣り漁業とまき網漁業の対立というのが起こっているのが現実でございます。

 ここら辺をどう調整していくのか。やはり資源を確保するという観点から、漁法も本当に整理していかなきゃならない時代に差しかかっているんではないのかなというふうに思いますけれども、漁法についてどういう見解を持っておられるのか、お聞きしておきたいと思います。

渡辺政府参考人 資源が減少する、これにこたえて漁獲努力量をふやす、技術を向上させる、その結果さらに資源が悪化する、これが長い漁獲減の歴史、資源減の歴史ですね。漁法の面でも、今先生おっしゃいましたように、例えば小型の底びきのように、そろばんこぎとかチェーンこぎとかいって、海底の形が変わるような漁法までひところはありました。それから、大型のトロールでも、オッターをつけて網がよく広がるようにするというふうなこともありましたが、それはだんだんに、やはり資源に優しくないということで改善、改定を加えてきているわけでございます。

 底びきの例がよく出ますけれども、これらの効率を重視した漁業の中でも、資源保護の観点から、夏場の時期には、産卵期あるいは稚魚の育成期でありますので操業を禁止する、あるいはここはもう一年じゅうとらないようにしよう、さらには稚魚をとらないように網の目合いを大きくしようというふうなことを、漁具の面でも操業のやり方の面でも加えてきているわけです。

 もっと大事なことは、やはり沿岸の釣りその他の漁民と共生、すみ分けをしなければなりませんので、資源管理協定というのもここ十数年いろいろできておりまして、そういった方向を強化しながら全体としての漁獲努力量の規制の網を大きくかける、網を大きくかけて全体の資源を減らさないようにした上で今度はできるだけ稚魚はとらないという、縦と横の関係をつくっていくのがこれからは大事だと思います。

菅野委員 水産基本法ができるわけですから、今の視点をぴしっと貫いていって、資源全体をどう回復させていって、そして漁業そのものがどう発展していくのか、これから皆さんと見守りたい、私どもも努力していきたいというふうに思っています。

 ただ、資源の回復が図られるという状況と同時に、やはり魚価が物すごく低迷しているという現状なんですね。私いつも言うんですけれども、地元のことを話して申しわけないんですが、気仙沼魚市場というのは第三種漁港で、毎年三百億円を水揚げしているんですね。水揚げ高が毎年三百億円です。ここ二十年、三百億なんですね。このことを申し上げれば、いかに魚価が低迷しているか。二十年の中で物価上昇がどれくらいあったのか、このことを考えれば、産地の市場で約六百億から七百億ぐらいの水揚げにならない限り経営は維持できないという現状なんですね。それが、またことしも三百億達成、三百億と、毎年横並びです。こういう現状が、魚価の低迷というところがあるというふうに思います。

 それでは、魚価の低迷の原因は何なのかというふうになったときに、この水産基本法の二条三項にこう書いているんですね。国内生産と輸入を適切に組み合わせる施策を展開していくというふうに書いているんですね。国内生産と輸入を適切に組み合わせる施策を展開していく、このことをだれがどこでやっていこうとしているんですか。先ほど山田委員がこのことを徹底して議論しましたけれども、水産業全体の低迷という部分をどう打開していこうとしているのか、そしてだれがどう調整していこうとしているのか、このことをお答え願いたいと思います。

松岡副大臣 何といいましても、水産物は国民生活、食料の一環として大変重要なものでありまして、この安定供給ということについては、これは政策的な課題として、また責任として、極めて重いものがあるわけでございます。したがって、国民への水産物の供給につきまして、国内生産の維持増大を図っていくということは一つの大きな基本であります。しかし、それでなお足りない場合には、やはり何といっても必要なものの輸入の確保を、あらゆる努力を払って確保していく、この二本立てになるわけでございます。

 したがって、先生から、自由競争の中で、自由な中でどうやって、だれがそこを適時適切にちゃんと調整を図っていくのか、こういう御指摘でございました。しかし、言葉としては実はそういうふうにしか言いようがないわけであります。そこをどういうふうに現実の問題としてやっていくかということについては、これはまさにいろいろな政策的な方法またやり方というものを私どもは本当に努力をしながら組み合わせてやっていく、こういうことであります。

 では、輸入が入り過ぎた場合どうするか、こういう先生は御懸念も含めて今魚価の問題ととらえられたんじゃないかなと私は思うわけでありますが、私ども、なるべく秩序ある国内生産の増大とそしてまた秩序ある輸入の確保、こういったものを目指しましたとしても、場合によっては秩序が崩れたり、またはそういうことが崩されたり、いろいろあるかもしれません。

 そういったときには、輸入に対しまして、先ほど山田先生からも御指摘があったわけでありますけれども、私どもは一般セーフガード、WTOの国際的なルールに定められました、そこで認められましたやり方といいますか、それに従ってやはり一定の調整を図っていく、そして魚価の安定も最大限図れるように取り組んでいく、こういったことになろうと思います。

菅野委員 水産基本法の立場は、先ほど言ったように、漁業という立場を一歩乗り越えて、流通、加工も念頭に置いた基本法であるというふうになっていますから、こう書かざるを得ないんですね。安定供給という立場は消費者や加工業者が求めている施策なんですね。それで、加工業者の立場からすれば、先ほど言ったように原料は安ければいいという立場を貫くわけですから、安定供給と、原料が安ければいいという立場を貫こうとすると輸入に頼らざるを得ない。そうすると、漁業、漁村で生産している人たちの立場は崩壊、なりわいとして成り立たなくなっている、この構図なんです。

 この構図をどう打ち破っていくかということがこの水産基本法にかけられた大きな命題ではないのかな。ここがはっきりしていないのですね。そうであれば、かえって沿岸漁業等振興法の方がはっきりしている、漁業者をいかに振興していくのかという立場ですから。そういう意味では、国民に安定供給という立場、あるいはそういう立場からこういう政策をとらざるを得ないということなんですが、一歩譲っても、漁業者の立場をどう守っていくのか、この視点が明確になってこの言葉が出てくるのだったらいいと思うのです。そのことをどう考えているのか。

松岡副大臣 そこは、国内生産の維持そしてまた増大を図っていく、これを第一義に考えておりまして、そしてその上で輸入の確保、こういうことを言っておるわけであります。そこに、当然ながら、漁業者の保護といいますか、国内生産の保護といいますか、それはしっかりと位置づけているというふうに私どもは考えております。

 そこで、これは何の問題でもそうなんですが、その分、先ほどおっしゃいましたように、加工業者からすると安い方がいい、こういったことになったときに、そこをまた主眼に置きますと、では国内の漁業生産は割に合わないということでなくなってしまう。例えば、野菜でも何でもそうなんでありますが。

 そうすると、将来どうなるか。では、安い本当に安心で安全なものが際限なく外国から国内の求めに応じて持ってきてくれるかどうか。なかなかそうはならないわけでありまして、そうなると、国内のものがなくなってくれば、今度は簡単に安く安全で安心では売ってくれない、したがって、どうしても国内の生産というものは最大限確保しておく必要がある。私は、それが国民生活に、長い目で見て、消費者の利益も踏まえた一番いい一つの方向なのだ。

 これはいろいろな人に理解をしてもらわなければならぬと思っております。加工業者にも、また消費者にも理解をしていただきながら、今言いましたような国内生産を第一義とするということを我々は貫いていく、安定供給を図っていく、こういうふうに取り組んでまいりたいと思っておるところであります。

菅野委員 先ほどからも多く議論になっていますけれども、漁業そのものが本当に大変な状況であるという認識は同じだと思うのです。それで、そういう中を回復するために、今言ったような消費者の理解を得ながら、なりわいとして成り立つような施策を展開していかなければならないという部分もあると思います。

 ただ、そうはいうものの、本当に今担い手がどういう状況になっているのか、先ほどからずっと議論されています。私も本当に身近に漁村社会を見ていますから、どういう状況なのかというのは手にとるようにわかるのですね。

 そして、一つは、漁船漁業は、船に乗る人が若い人でいなくなっているのです。そして今、外国船員を乗せているというのが実態なんですね。それと同時に、沿岸漁業者も、本当に五十代、六十代以上の人たちしか沿岸漁業に携わっていないのですね。そして、兼業漁業と言っても過言ではない状況になっています。

 それで、あともう一つ端的に言っておきたいのですが、水産加工業者、これも高齢化を迎えているのですね。水産加工業者は、女性のパートタイマーで成り立っているのです。そのパートタイマーの人たちは、五十代、六十代の人が今水産加工業者のパートタイムで働いているのです。若い人たちが職につかないですから、あと十年したらどうなるのだろうかという水産加工業者の悩みもあるということなんです。

 このことをとらえていって、総合的な施策を展開しなければならないのではないのか。先ほどからも議論されていますけれども、農業においては、直接所得補償制度を導入するべく検討に入ったと、この間の委員会で、質疑の中で答弁されています。まさに、水産基本法を制定する段階でも、そのようなことをすぐにでも検討しますという状況に施策として持っていかない限り、私は、業界全体が枯渇してしまうのではないのかな、衰退してしまうのではないのかなというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。

谷津国務大臣 先生御指摘のとおり、総合的な対策といいますか施策を展開しなければならぬというふうに思うわけであります。

 そういう中で、先ほどから漁業というものについての理念が実は欠けているのではないかというふうにおっしゃっているわけでありますけれども、これは、漁業部門全体と言ってはなんですが、加工、流通業も含めまして、その健全な発展を図ることは当然ではありますけれども、その基幹となるのはやはり漁業であるということだけは間違いのないことでございます。

 そういうことから、この法案におきましても、水産物の安定供給の確保、あるいは水産業の健全な発展というのを明記しているわけでございまして、それにあわせまして、水産物供給における漁業及び漁業生産の基幹的な位置づけというものも明確にしているところであります。

 そういう中で、安定的な水産物の供給というものにつきましては、非常に厳しい状況にありながらもいろいろと今やってくださっているわけでありますが、一方、松本委員からも御質問がありましたけれども、そういった面について農業と同じように、言うならば所得政策というのでしょうか、そういうようなものも考えられないかというふうなお話と今同じような考え方で御質問なさっていると思うわけであります。

 そういった面では、環境にいろいろな面で資する、あるいはまた農業には、国土の保全のために資するというふうなものの中において、私どもとしましては、そういう多面的な機能の中で非常に大きな役割を果たしているということから今検討に入っているのがその所得補償の問題でございます。

 水産業におきましても、そういった面では、食料安全保障という面から見ても、あるいは多面的な機能という面から見ても、農業と同じような立場にあるのかなというふうにも思っておるわけでございますから、そういった面で、今先生がおっしゃったような面についても検討をしていかなければならないのかなというふうに今考えているところであります。

菅野委員 先ほど若干情勢を言ったのですけれども、漁船員が、船に乗る人たちがもうほとんどいないのですね。そして、こういうことがあと十年続けば、幹部の人も船からおりなければならない状況なんです。一時的には外国船員でもって対処していますけれども、外国船員だけでは漁労技術が継承成っていきませんから、船を廃船せざるを得ないという状況に追い込まれていくのではないのかな、こういう危機感を持っています。そういう意味では、二割減船という施策もすんなり受け入れたというのは、受け入れる状況があったからだというふうに私は思うのです。

 漁船員も含めて、どう対処していかれるのか。私は、農家総体への所得補償という形と漁船員に対する施策の展開をどうしていったらいいのかということを真剣になって検討しなければいけない、そして、国民に水産たんぱく資源を供給するという立場を国の施策として貫くのであれば、若い漁船員に本当にお金を出してでも乗ってもらうような形を形づくらなければいけないのではないのかなというふうに思います。

 それから、水産加工を本当に継承していくために、若い人たちが加工業者に入っていかないということは、労働条件が本当に整っていないんだというふうに思うんですね。そういうところの加工業者にそのことを促していくだけの指導監督というものもしていかない限り、食品の加工技術というものも継承成っていかないような気がしてならないわけです。

 だから、ぜひ大臣、漁船漁業者の現状をどう認識なさっていて、これからどう漁船漁業というものを維持発展させていくのか、水産庁長官でもいいんですけれども、どう考えておられるのか、この辺を明確にしていただきたいというふうに思います。

渡辺政府参考人 漁業就業者全体が高齢化の道をたどっておりますけれども、漁船漁業の場合、六十歳以上の割合が昭和五十三年、二百海里がしかれて直後の時期にはまだ一〇%でした。それが今日、平成十年では四一%というふうな状況になっています。

 ですから、これはやはり漁船の乗組員に対して魅力のある職場と魅力のある所得を提供できるかできないかということなんだろうと思うんです、なかなかにきつい仕事でありますから。

 そういう点でいいますと、やはり今急いでやらなければいけないのは、減船のことも含めまして、資源をきちんと管理をし、回復をして、その一漁船あるいは一乗組員当たり、きちんとした漁獲高と所得を得られるようにすることというところに尽きるのだろうと思います。その間、減船もしくは休んでいる時期に対しては、それぞれ工夫をして一定の支援をしていくというふうな仕組みが必要なんだろうと思うんです。

 今日の状況ですと、漁業界全体で、先ほどもお話ししましたが、新規学卒六百人、全体でも千三百人しか新規就業がないんですね。パイが小さくなっていく産業というのは、やはり周りからもそういう目で見られますので、そこが大事なことだろうと思います。

 それから、ちなみに水産加工の話を申し上げますと、これも浜の状況を見ていますけれども、やはり先生おっしゃったように、ほとんどが中高年の女性の方々が魚を開いています。ですから、これから先どうなるのかなということについては私どももそう思います。

 これも、やはりそういう条件のいい、浜に近いところにあるわけですから本来は勤めやすいんですが、条件のいい職場と条件のいい手取りを与えられるかどうかということですから、工夫なりコスト削減なり、付加価値を高めることで魅力をもう一度回復をしていくという努力をしたいと考えております。

菅野委員 私は、先ほどからも議論になっていますけれども、漁業経営体を大きくしていけば解決する問題ではないというふうに思っています。そして、そういう漁村集落を維持発展させていく中から業界全体を後世に伝えていく、そういう施策が私は求められているんだろうなというふうに思っています。

 そして、先ほど水産庁長官が言ったように、すぐそばで就業できる状態を確保していくことがやはりこれからの水産業界、漁業全体を維持していく大きな原動力になるんだろうなというふうに思っています。

 それで、ぜひハード的な面、ソフト的な面、先ほども答弁なさっておりますけれども、漁村集落をどう維持していくのか、そして、お年寄りから孫までがその地域社会で生活できるような体制をつくっていくことこそ私は大きな命題ではないのかなというふうに思うんですが、水産基本法においては、生活環境の整備とか福祉の向上ということしか言葉としては表現されておりませんけれども、そうじゃなくて、農村集落と同じように、どう漁村集落を維持していくのか、このことの具体的な施策を早急につくるべきだというふうに思うんですけれども、これらについての見解をお聞きしておきたいと思います。

渡辺政府参考人 我が国の実情を見ますと、海岸線五キロに一つ漁業集落があるというふうなことでございます。これが歯抜けのようになりますと、先ほど来議論になっております多面的機能も果たせなくなるわけでありますので、そういう点で、今回の水産基本法は、第三十条二項に、これまでのような振興に加えまして、水産業の健全な発展のほかに、「景観が優れ、豊かで住みよい漁村とするため、地域の特性に応じた水産業の基盤の整備と防災、交通、情報通信、衛生、教育、文化等の生活環境の整備」云々と書いてございまして、所得機会の向上と生活環境の整備、これをやはり重点を置いてやっていくべきものと思っております。

 所得機会は、先ほど来申し上げておりますけれども、漁業そのものから得られるもののほかに、加工、流通、サービス、販売、そして都市との交流、こういう中で所得機会が出てくるわけでありますので、そういう方向に都会の方々がやってこられるようなハードの整備とそれからソフトに対する支援を行っていく、もちろんこの場合には、農林水産省だけではなくて、関係府省との連携が必要であると考えております。

菅野委員 今までずっと一連に申し述べてきたことはここに尽きるのですが、なりわいとして成り立つような施策の展開をどうこの水産基本法ではっきりさせていくのか。このことがやはりはっきりしていないと地域社会というものも崩壊していくんだという考え方ですから、これからも議論しますけれども、その立場を貫いていきたいというふうに思います。

 それから、最後になりますけれども、実は雪印乳業の問題で、HACCPの対応ということで、HACCPに対して大きな関心を寄せました。これは食品流通業界ですから、HACCP対応をこれからぴしっとしていかなければならないという水産業界全体にかけられた大きな命題だというふうに思っています。ここに乗りおくれると業そのものも本当に展開できなくなっていくんじゃないのかなというふうに思うんです。

 実はこのHACCP対応で、産地魚市場である私の地元の気仙沼魚市場でこのHACCP対応をしようとしたんですね。そうしたら物すごい膨大な経費がかかるという状況が起こって、これは国の施策の展開を待たなければなかなかHACCP対応はできませんよという状況になっています。ただ、このことを放置しておいて先送りにすれば産地魚市場としての使命が失われてしまうという、一方ではあるんですね。

 気仙沼のことを言いましたけれども、これは全国に共通する課題だというふうに思っています。これへの対応を今後どのように展開していかれるのか、見解をお聞きしておきたいというふうに思います。

渡辺政府参考人 魅力のある水産物、各種ございますけれども、やはりポイントになるのは新鮮、良質、安全ということだと思います。今先生から指摘がありましたHACCPの話はこの三つ目の安全というところでございます。

 一方、水産加工業の実態を見ますと、九九%が中小零細であります。したがって、HACCP方式を導入し、整備をする上で大変な負担になっているというのは私どもも強く認識をしております。

 もちろん、自分で何でもということになりますと遠回りになりますので、マニュアル化をするとか講習会を開くとか、そういったことをやると同時に、ここに水産食品品質高度化総合対策事業というのがございますが、大水を通じまして、一億数千万円の予算で施設の整備に至るまで支援をしているところでございまして、今後もこの点は大事でありますので、充実をしていきたいと考えております。

菅野委員 水産業界全体、水産加工業者は当然なんですが、卸売業者も含めてHACCP対応が迫られているんですね。だから、築地市場においてもHACCP対応が迫られている。そういう流通も含めた状況の中で、安全、安心という体制をどう形づくっていくのか、このことが今求められているということです。

 そういう意味においては、待ったなしの状況ですから、国の施策の展開をぴしっとしていかない限りこの業界全体の発展というのはあり得ないのだということを訴えておきたいと思うんですね。そういう立場に立って、これからどう施策の展開をしていくのか、このことを再度お聞きしておきたいと思います。

渡辺政府参考人 当然、流通の方も強く認識をしておりまして、そういった各種の多様化、高度化する流通、消費システムに的確に対応するような、HACCP手法も含めた施設整備等に助成を行っております。これは、地方公共団体、水産業協同組合、中小企業等協同組合等に対しまして、十三年度から始まります予算でありますけれども、十七億五千二百万円、そういった助成事業も行っているところでございます。

菅野委員 ちょっと細部の部分は後の議論に移しますけれども、水産業界全体がどう発展していくのか、水産基本法を提出したということはそこが念頭にあるわけですから、水産業界全体を衰退にしないような施策の展開をぜひお願いしておきたいし、そういう立場に立って、これからも再度議論をさせていただきたい。

 本日は、これで終わらせていただきます。ありがとうございます。

堀込委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会




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