第12号 平成13年5月17日(木曜日)
平成十三年五月十七日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 堀込 征雄君
理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君
理事 滝 実君 理事 二田 孝治君
理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君
理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君
相沢 英之君 岩倉 博文君
岩崎 忠夫君 岩永 峯一君
金田 英行君 上川 陽子君
北村 誠吾君 後藤田正純君
七条 明君 園田 博之君
高木 毅君 西川 京子君
浜田 靖一君 林 省之介君
菱田 嘉明君 吉田六左エ門君
古賀 一成君 後藤 茂之君
佐藤謙一郎君 城島 正光君
津川 祥吾君 筒井 信隆君
永田 寿康君 楢崎 欣弥君
江田 康幸君 高橋 嘉信君
中林よし子君 松本 善明君
菅野 哲雄君 山口わか子君
金子 恭之君 藤波 孝生君
…………………………………
農林水産大臣 武部 勤君
厚生労働副大臣 桝屋 敬悟君
農林水産副大臣 遠藤 武彦君
農林水産大臣政務官 岩永 峯一君
政府参考人
(厚生労働省医薬局食品保
健部長) 尾嵜 新平君
政府参考人
(農林水産省大臣官房長) 田原 文夫君
政府参考人
(農林水産省総合食料局長
) 西藤 久三君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 小林 芳雄君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 須賀田菊仁君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長
) 木下 寛之君
政府参考人
(農林水産技術会議事務局
長) 小林 新一君
政府参考人
(食糧庁長官) 石原 葵君
政府参考人
(林野庁長官) 中須 勇雄君
政府参考人
(水産庁長官) 渡辺 好明君
政府参考人
(環境省環境管理局水環境
部長) 石原 一郎君
農林水産委員会専門員 和田 一郎君
―――――――――――――
委員の異動
五月十七日
辞任 補欠選任
西川 京子君 林 省之介君
同日
辞任 補欠選任
林 省之介君 西川 京子君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
水産基本法案(内閣提出第七五号)
漁業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)
海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)
農林水産関係の基本施策に関する件
――――◇―――――
○堀込委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長田原文夫君、農林水産省総合食料局長西藤久三君、農林水産省生産局長小林芳雄君、農林水産省経営局長須賀田菊仁君、農林水産省農村振興局長木下寛之君、農林水産技術会議事務局長小林新一君、食糧庁長官石原葵君、林野庁長官中須勇雄君及び水産庁長官渡辺好明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○堀込委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小平忠正君。
○小平委員 おはようございます。民主党の小平忠正であります。
本日は、新しく小泉政権がスタートしまして、農水大臣も武部農林水産大臣、北海道選出の大臣として、特に道東の、農業、水産あるいは林業、そういう地帯の御出身で、農政についても非常に御見識深い。私も、心から御就任をお祝い申し上げ、御健闘を心から御期待申し上げます。
昨日の大臣の所信を受けまして、きょうは早速質問でありますが、御案内のように、本日は大臣の所信に対する質問でありますので、政府参考人は関係ないのですが、初めての大臣の出番であり、事務方の皆さんが拝聴したい、そういう御希望もおありということなので、これを許しました。したがいまして、私が指定する以外は答弁に立たれないように、私は大臣に基本的にお伺いしますので、そこのところはまず冒頭に申し上げておきます。
そういう状況の中で、大臣は、小泉総理の意向を体しまして、昨日も所信がございましたが、このように御発言があったことを聞いております。全事業を、中止、拡充、縮小を含めて見直す、農政の構造改革を断行したい、このように強い意欲を示されているやにお聞きいたしております。構造改革の推進、事業の見直し等々について、我が党とも相通じるものもあります。そういう中で力強いリーダーシップを期待しております。
今申しましたように、小泉総理は、聖域なき構造改革に取り組む、内閣を改造断行内閣と、このように総理みずから位置づけをされたようであります。さて、この中で、昨日所信にもございましたが、循環型社会の実現、さらには食料自給率の向上に向け、農林水産業の構造改革を進め、農山漁村の新たなる可能性を切り開いてまいりたい。また、農業こそ最も構造改革を必要としている、このようにも大臣は就任直後の記者会見でも申し述べられております。
そこで、農政における構造改革とは何を意味するのか。その際、総理も痛みを伴う構造改革と言われておりますが、農業においては、痛みを伴うということはどういうことか。
それは、農業の分野でも、あるいは林業、水産を含めてでありますけれども、競争力の弱い農林水産関係者が切り捨てられ、あるいは地域が過疎化になっていくのか。また、ひいてはそのことが、我が国の大事な基幹であります農林水産業の衰退につながっていくのか、そんなことが一方では懸念されます。
こういうことを十分配慮してこの改革を進めていくことが私は肝要だと思いますけれども、これらについて、まず大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
○武部国務大臣 小平先生から激励を賜りまして、大変感謝にたえません。同じ北海道でございますし、先生も農政については大変造詣の深い指導者でございますので、今後とも御鞭撻、御指導のほどをお願い申し上げたいと思います。
ただいま、農政における構造改革ということについての御質問がございましたが、農業という分野で考えますと、いろいろな目的というものがあると思うのです。その中で、一つは、基本法でも示されておりますし、また基本計画でも明らかにしておりますように、日本の食料の自給率を四五%まで上げる、こういう計画を立てているわけでございます。
しかし、これは大変至難なことだと私ども認識しております。昭和から平成にかわるころ、このころは五〇%でした。このままの趨勢でいきますと、今四〇%でありますから、十年後は三八%ぐらいまでに落ち込んでいく。これを四五%に上げていくということでありますので、これは容易なことではありません。
これには、生産面あるいは食品産業の皆さん方の御協力、あるいは消費面におけるさまざまな政策展開、国民の理解と協力、こういったことが必要なんですけれども、食料の自給率を上げていくためには、食料自給の担い手、強力な経営体というものを育てていかなければならないと思うのです。
その一部は専業農家だと思います。さらにはまた、生産法人、有限会社、株式会社も含めて、今、先生御案内のとおり、農村はかなり高齢化しております。担い手の確保が非常に難しくなっておりまして、こういった方々は、一から十まですべて自己完結的に生産を続けるというのは容易な状態ではありません。ですから、酪農家のヘルパーとかあるいはコントラクターというものが導入されているわけです。そういうかなり小規模な方々に対しても、これを支援する組織があれば、やり得るわけですね。そして、自給率の向上に寄与できる人たちもおります。
それで、こういう経営体でありますとか、主業農家、とりわけ専業農家、日本が目指す食料自給率の八割の自給体制というものはこの人たちに将来担ってもらわなければならぬのじゃないのかな、私はこういう感じを持っているわけであります。あるいはもっと、九割ぐらいになるかもしれません。
しかし、農業の中では、私の親戚もそうですけれども、子供たちや孫たちに野菜を送ったり、あるいは米を送ったりということを楽しみにしている、そういう農家の方々もおります。あるいはまた、サラリーマンをやめて、ふるさとへ帰って農業をやろうとする人たちもおります。あるいはまた、家族で畑を借りて、そして休みなどに出かけていって、一緒にピクニックやハイキングをやるのと同じような気持ちで土にいそしむ、そういう形態もあると思うのです。
こういった方々はもっと拡大できると思っております。都市の方々に田舎を提供するということは、これからの新しい農山漁村の役割として私は十分その可能性はある、こう思っているわけです。
しかし、畑を管理してやったり、あるいは機械をリースしてやったり、さまざまな、自分じゃすべてやり切れないけれども、それを支援する組織といいますか会社、有限会社や生産法人とかそういったものがあれば、私は、小規模切り捨てなどということとは全く逆で、そういった方々に少し応援する体制ができれば、まだまだ一般の国民の方々が農業分野で元気に頑張れる、こう思っているわけであります。
私は、少し大それた夢を持っておりまして、一千四百兆円の個人金融資産、これを農村にどんと持ち込めないか、こう思っているわけです。
もともと日本文化の源というのは、自然の恵みに感謝する気持ち、あるいは自然の驚異を恐れる謙虚な気持ち、そういったところに発していると思うのですね。それを忘れているからこそ今日さまざまな問題が生じているわけでありまして、都市と農山漁村、都市と地方が一種の対流社会、これは単なる交流だけじゃなくて、地方の人々に、都市のエキサイティングな情報や知識を得るような、それにアクセスできるような、そういう環境づくりもしなくちゃいけませんし、都会の皆さん方に、田園とか畑づくりだとか花づくりだとかいったことが容易にできるような、都市と地方、農山漁村が共生する、そういう可能性があると思うのです。
これをやるためには、やはり農山漁村の新しい存在価値というものをつくり上げていかなくちゃいけませんし、さような意味では、食料生産を専門的にやっていく、それには強力な、国際競争力も考えた上での経営形態というものをつくっていかなきゃいけません。しかし、農業そのものは、我々も自然界の一員としてみんなが大事にすべきことだ、こう思っておりまして、小規模な人たちを支援するような、そういう企業体などがバックアップする体制をつくっていけば、これも可能になるのじゃないか。
したがって、小規模切り捨てだとかいうこととは全く逆でありまして、規模の小さい農家でありますとか、農業をやりたい人々、そういう人たちにも拡大していく。そういうような考え方で、循環型社会の構築と食料自給率の向上に向けて、農林水産業の構造改革、また農山漁村の新しい可能性を切り開いていく、こういうふうに申し上げている次第でございます。
いろいろ御批判もあろうと思いますので、また御指導いただきたいと思います。
○小平委員 大臣の基本的な御姿勢を拝聴いたしました。
大臣は、特に道東の、北海道という地は専業農業が主体であります、そういう視点をもとに今お話しがあったと思うのですが、同時に、小規模経営ということに対しての配慮、当然だろうと思います。
また、今そういう民間資金の導入等々も御意見がございましたが、私は、単に甘えの構造ではなくて、やはり国家の基本的な産業ですから、必要な予算導入はぜひすべきであって、それについては国民の大宗の支持が得られる、それをまず基本に置いて進めていくことが肝要である、こう思っております。
今たまたま、次に質問しようと思いました自給率の問題、先におっしゃいましたが、確かに基本法で平成二十二年を目途に基本計画で四五%を目指す、そういう政府の姿勢がありますが、我が党は、最低でも半分、五〇%は自国で賄おう、そういう姿勢を持っております。わずか五%の違いかもしれませんが、ここは基本的な考えであります。
諸外国の先進国を見ますと、いわゆる一流国、先進国と目されるところはほとんどが、一〇〇%か、あるいはそれを超えているか、少なくとも七〇、八〇%、こういうのがいわゆる一流国と言われる条件、絶対条件であると私は思います。そんな意味では、我が国はまだまだお寒い状況ですから、それについてはもっと努力をされていく必要があると思うのであります。
もう一点、基本法を策定し基本計画を策定し一年が経過いたしましたが、そういう中で、この進展ぐあいがどうかということ、これについて重ねてお伺いしておきたいと思います。
あわせて、遠藤副大臣、レクはしませんでしたけれども、これは副大臣の御見識ですからよろしいと思うのですけれども、御就任されて、たしかあれは農業新聞でしたか、その中で、インタビューで、兼業農業の重要性を訴えておりましたね。私はそれも確かに大事だと思います。
私は、この際申しておきますけれども、別に御答弁を求めようと思いませんから。私は、我が国の農政、今日まで、戦前もそうですし、戦後続いてまいりましたが、特に、破綻を来し、また矛盾も重なり厳しいのは、専業、兼業を一律にした農政の展開といいますか、農業予算のあり方、つくり方、これによって矛盾があり、有効な予算の実行になっていない、こう考えておりました。
したがいまして、これからの農政は、専業、兼業というものを峻別して、そしてそれぞれに見合う農政を、例えばいろいろな助成対象にしても、あるいはいろいろな事業の枠組みにしても、それをきちんと明確に分けて進めていくことが、いわゆる専業農業あるいは兼業農業を含めて有効な方向になると思っていますので、そういうところで進めていただければ国民の理解も得られるし、また地域のためにもなる、私はこう思っております。
もし反論があれば御答弁いただきます。それを申し上げておきたいと思います。
まず、それでは大臣、どうですか、自給率の状況。
○武部国務大臣 自給率四五%というのは、基本計画、基本法は五〇%ということを目標にしているわけでありますので、これは今小平先生おっしゃったところと全く同じなのでありますが、現実問題として、この十年間で四五%に上げていくというのはなかなか容易ではありません。
米などはもう、主食は一〇〇%です。しかし、小麦でありますとか大豆、飼料作物、こういったものをさらに拡大していくというのは、耕地の問題もあります、なかなかそう簡単なものじゃありません。
また、消費の面でも、これから食生活のあり方ということについて国民の深い理解を求めていく必要があるのじゃないかと思うのですね。
私などはちょっと太りぎみでありますけれども、これはどうしてかというと、出されたものは全部食べなきゃならないという食習慣になれているわけであります。しかし、今の若い子たちは、食べ残し、これは中川先生が言った言葉ですから、失礼があったら訂正しますけれども、銀座のこじきも糖尿病などという中川先生がかつて言った言葉に象徴されますように、食品の廃棄物、もろもろ考えますと、やはり食料というものは貴重なものなんだというような、そういう消費面における国民の理解と協力も必要なのじゃないか、このように思っております。
しかし、強力に、今先生御指摘のように食料自給率を上げていくということについては、ただいまの専業農家、兼業農家に関連してまいりますけれども、本当に食料生産を本職と考えて、他の産業と同じように二十四時間、食料生産というものを考えて取り組んでいく、そういう考え方が定着していかなきゃならないと思います。副収入を当てにして、昼間はサラリーマンをやりながら、有給休暇や休みを利用して田んぼをつくったり畑をつくったりするということは、これは結構なことです。結構なことですが、そういう方々に食料自給率四五%の担い手として先頭に立ってくれというのはなかなか難しいんじゃないか。
そういう意味では、構造改革の一環として、食料自給率四五%に向けた経営形態、それは専業的な農家でありましょうし、法人経営ということも入ってくるでしょうし、また、小規模な農家、兼業農家の方々にもっと生産力、潜在的な生産力は持っているわけですから、それを高めるためには、こういった方々を支援する株式会社等が必要だということを申し上げているわけでございます。
考え方として、私はやはり、食料自給を目的にする経営形態、そうじゃなくて、生きがいを中心とするそういう農業というものがこれからたくさんあっていいと思います。それから、これは非常に可能性としてはどんどん出てくるんじゃないかと思いますね。
一億二千万国民が、みんなが農業にいそしむ、自然に帰る、そういうような自然と共生していくということになればそれはそれで非常に重要なことでありまして、そういう意味の予算措置というのも必要でありますし、農林水産省の今の補助事業を見ましても、予算を見ましても、細かく刻み込んだ予算措置じゃなくて、もっと大きく包括的な事業の中でいろいろ、北海道から九州までいろいろな農業形態があるわけですから、それに対応できるようなシステムに切りかえていく必要がある、私はこのように思っております。
なお、先般、農林水産省に、私が就任しましてから地方提案推進室というのを設置いたしました。これは、従来型の陳情行政を廃止しようということです。今まで、先生も御案内のとおり、我々も地方議会出身でありますけれども、農林省を朝から晩までぐるぐる陳情書を持って回る、こういうような、むだということはなかったかもしれませんけれども、そのことによって役所は仕事に集中できない、我々は陳情に行っても十分な話も聞いてもらえない。
こういう反省から地方提案推進室というのを設置しまして、そこに行けばワンストップサービスで、各局から優秀なスタッフを集めておきまして、そこで何でも相談できる、提案できるというような、そういうやり方に切りかえた次第でありますが、そういうようなことで、いろいろな形態、態様の農業にこたえられる農林水産行政にしていきたい、こういうことを考えている。
ちょっと余計なこともおしゃべりしまして申しわけありませんが、ぜひ御理解いただきたいと思います。
○小平委員 大臣も初めての農水委員会ですから思いのたけはいろいろとあるでしょうけれども、私も時間が限られていますので、ひとつそこのところは簡潔によろしくお願いしたいと思います。
今までのお話をお伺いしても、農業問題に寄せる関心の深さ、造詣の深さ等々、よく理解できます。具体的なこと等はこれからですから、私もこれから注意深くと思っております。
そこで、この夏には、経営政策大綱、これが大体取りまとめられるような、そういう方向にあると仄聞いたしております。ここ数年来、米の大幅な増加によって、転作を含めた農業のあり方等々が求められてきました。そこで政府は、麦、大豆を主体にしたそういう方向を打ち出しております。一つの方向でしょうが、私は基本的にはこれについては反対であります。
なぜならば、それは、地目を水田とそのままにしておきながら、しかし実際は畑だと。いわば本籍水田、現住所は畑という、これでは農家も混乱するでしょうし、また、大臣の地元はどちらかというと畑作地帯ですよね。ですから、それだけ稲作地帯で米がつくられずに麦、大豆等に転換すれば、言うなれば産地間競争というか玉突き現象というか、そういうことがさらに増加しますので、これは好ましい現象とは思っておりません。
そこで、そういう所得安定対策の対象となる農家をどうとらえていかれるのか、また、稲作経営安定対策を初めといたします品目別対策を、この関係をどう整理されるのか、そんなことを含めてお伺いいたします。
あわせて私の持論を申し上げますと、私は今、この国際社会に目を転じますと、いわゆる飢餓、栄養不良人口、これはもう増加の一途をたどっております。現時点でも、世界人口の中で八億余の人口が飢餓、栄養不良にあえいでおります。これはまさしく我が国の総人口の七倍の人口ですよね。そういう中でこれは、二十一世紀がスタートいたしましたが、今世紀の大きな国際問題になっていくと思います。民族紛争や宗教紛争、これらにあわせて食料問題というのは、これからの国際問題を語るときに避けては通れない大事な問題だと思いますね。
そういうときに、私は、今我が国が国際社会に向かってなし得る最大の貢献策は何かというと、食料の提供ではないかと思います。これは決して近隣諸国にも脅威を与えない、喜んでもらえる。
現に今、正常な国交関係のない北朝鮮に対してはいろいろと援助の手を差し伸べておりますよね。これにはいろいろと異論もありますが、また、かつてはインドネシア、これもありました。また、東南アジア等々では――大臣、難しい質問でありませんのでちょっとお聞きになっていてください。そういう中で、東南アジアを中心として、あるいはアフリカも中東もそうでしょう、こういう飢餓にあえぐ国が多いわけですね。そういう中で、日本が先人が努力をして土地改良をして、そしてつくってきたこの農地を有効に活用しなければ、これをいたずらに放置すれば、三年たてば農地は原野に戻ってしまいます。
また、前段申し上げたように、転作をすれば玉突き現象、産地間競争も激化する、そういうことを考えると、いかにして過去につくった水田を大いに利用して、そしてその余るものをいかにまず合理化をしてコストダウンを図って、低廉な米の生産体制を、価格体制ですね、これをつくっていき、そして、そこは政府の指導もこれありですよ、そういう援助スキームを我が国が率先してつくる。
かつてケネディ・ラウンドで、これはずっともう数十年前ですけれども、アメリカは小麦を軸にしたいわゆる援助スキームをつくりましたよね。それは確かに国際社会に向かって救済の手を差し伸べるということですけれども、一方では、これははっきり、アメリカが自国のあり余る小麦の、いわゆる余剰小麦をどう消化するか、そして国内の小麦生産農家をどう救済するか、それが根底にあったわけですよね。
ですから、これは同じように、今回我が国は、前回のウルグアイ・ラウンドで我が国は米の部分自由化を認めざるを得なくなり、しかもさらには、政府は米の完全自由化をしたわけですよね。そういう中で、今後このWTO、これは後またちょっとこれについても触れますけれども、いよいよこの交渉、今年どう進んでいくか、今非常に難しい段階にありますけれども、これは新しいWTO交渉を含めて、この米の問題をきちんと処理すること、これが私は大きな問題だと思っております。
そんな私の個人的な見解も申し上げながら、今のこの状況、先ほど申し上げた経営政策大綱、これが取りまとめられていく方向と聞いておりますけれども、これらを含めて大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
○武部国務大臣 先生御指摘のように、これまで投資してきた基盤は、これは大事にすべきだというふうに私は思います。耕作放棄地も随分出てきておりますけれども、あの根室原野を切り開いてすばらしい牧草地に切りかえ、しかし、離農によって、二、三年たてばカバが生えて、もう牧草地としての役を担えないような、そういう状態になっていくということを考えますと、本当に、今まで投資してきたことは、しっかりこれを生かしていかなければならぬということは、基本的に全く同感です。
ただ、米の問題につきましては、自給率を上げていくということになれば、加工米を除けば主食米は一〇〇%自給しておりますし、加工米を入れても九五%ということになっておりますし、さらに、田んぼをそのまま残しておくということは、将来何かが起こったときに米だけは、そういう考え方は成り立つと思いますけれども、これから自給率を上げなきゃならない大豆とか小麦とかあるいは牧草とか、やはりそういったところに力点を置いていかなきゃならないことなんだろうと思います。
それから、今の援助米の話。確かに、おっしゃるとおり、地球上で八億の民が栄養失調や飢餓に苦しんでいるわけでありますから、将来、人口が今世紀半ばには九十億を超えるということを考えますと、やはり国際的なスキームというのをつくる必要があるんだと私は思うのです。
私は、先般ベトナムに参りまして、向こうの方で外務大臣から言われたのは、北朝鮮への援助米を何とかベトナムから買ってくれないか、こういうお話でありました。そういうことなどを考えますと、やはり国際的なスキームをつくって、飢餓や栄養失調を撲滅していくというような考え方で食料が全地球に安定供給されるというようなことを、WTOの協定の中でどういうことができるのかということを検討の上、そういったことは先生お考えのようなことも踏まえてやるべきだ、このように私は思っております。
また、経営政策大綱につきましても、法律が、育成すべき経営体、こういうふうに言っておりますから、育成すべき経営体というのは、ちょっとニュアンスとして誤解を招く言葉だなというふうに私は思っているのですけれども、しかし、いろいろなタイプの経営があってしかるべきだ、こう思いまして、専業もあれば兼業も、二種兼もございます。そういったものをさまざま研究会の方でも議論されておりますので、その結果を踏まえて、夏ごろまでにきちっとしたい、こう思っております。
ただ、このことについて私が農林水産省に申し上げておりますのは、研究会で結論が出てしまってから我々がああだこうだと言うやり方をしたくない。したがいまして、私自身が一つの見識をまとめて、逆に研究会の方に私どもの方から、これは私の私的な勉強会みたいなものをつくってもいいと思います。私の名前で出すということは、大臣の考えを出して、そこで否定されてしまうということは問題かもしれませんので。
しかし、従来のそういう行政システムにとらわれずに、むしろ積極的に、農林水産大臣、私個人でも結構です、こういうような考え方を持っているんだということを提案して、そして研究会で議論してもらうというようなやり方も考えてみたいと思います。これは、立法府においても、常にそういったことを御議論いただくのは非常にありがたいことだ、こう思っておりますので、ぜひ、今後ともいろいろ御指導、御指摘いただきたいと思います。
○小平委員 これは質問に言っておりませんでしたけれども、土地改良区の問題で一点、ちょっと触れさせていただきます。
先般、土地改良区における党費等の立てかえ問題が露呈いたしまして、衆参それぞれ農水委員会や予算委員会等々でこれに対する質問がございましたが、それについて、政府としてその調査を行い、中間取りまとめが昨日公表されました。その資料が、プレスリリースですか、これが手元にも届いております。たまたまきのうのきょうなものですから、通知はしておりませんでしたけれども、一言触れさせていただきます。
私は、このような公共性が強い団体でこのような行為があったということ、これはやはりゆゆしき問題ですし、もっと申し上げますと、法的にも問題がある、こうとらえております。
そこで、政府の中間取りまとめ、これも、何か説明を聞きますと、約一カ月程度の調査期間を見込んでいたが、なかなか都道府県等々、また土地改良区の数も多い、全区の調査が終了するにはもう少し時間が必要だ、こんなことで今回、中間的な調査結果の公表となっておりますが、これらについて、この支出状況の資料は配られておりますが、また地域によって多少のばらつきがあるようであります。これについて指摘をさせていただきますが、これは大臣でよろしいですか。
○武部国務大臣 御指摘の点は、まことに遺憾千万、このように思います。
それから、私も、何でこんなにおくれているんだということを注意いたしました。決算期でありますとか人事の異動だとか、そういうようなことを言っておりましたけれども、当初から一カ月ぐらいということでやっているのですから、指導機関は都道府県ではありますけれども、こんなことはこのままじゃだめだ、徹底して指導するようにということを申し上げております。立てかえ分については、やはり早期に返還されるよう土地改良区に対しても指導しているところでございまして、引き続き都道府県を通じて指導を徹底させたい、このように思いますし、最終的な取りまとめにつきましても、極力急ぐように私からも指示したいと思います。
○小平委員 これは、特に今、公共事業、農業土木を含めて、いろいろと世間の耳目を集めている分野であります。したがって、なおのこと、公正、そして厳正にこのことが、調査結果を出して、そしてこれを国民に理解を求めないと、今後に問題を残すと思います。
私は、基本的に、土地改良事業というのは重要だと思っているのです。これなくして農業の未来はないと思います。これは大事な分野です。であるがゆえに、しっかりと、国民各層からそういう疑惑の目で見られないように進めていただきたいと思います。
また、政府は、今通常国会で土地改良法の改正もしようということを目指しているわけでしょう。これも幾つか問題点はありますが、そうであるならば、これもいずれ委員会で審議になるのか、今はそういう前にありますけれども、なおのことこの問題は、政府にも強く、しっかりと指導をし、こんなことが二度とないように進めていただきたい、このことを申し添えておきます。
次に、私がここに立ちますと、どうしても、この農業情勢の厳しさ、そういう中で生産農家が、経営というか営農にあえいでいるどころか、もうそれ以上に、生活苦というか、いわゆる生活保護を受けなきゃならない、そんなことまでやらなきゃならぬ状況にまで追い込まれております。ですから、私はこの発言席に立ちますとどうしてもこれについて避けて通れません。したがって、もう少しこれについて私の思いを大臣にお伝えいたします。
実は、私は、民主党として、農業経営の再建法を議員立法として提出いたしました。今まだつるされている状況です。特に、自民党が総裁改選をされて約一月間、この通常国会、空転がありまして審議が滞っておりました。政府サイドも抱えておる法案の処理にきゅうきゅうとされておるでしょう。
我々立法府は政府の下請機関ではございません。したがって、政府が出します法案に対しては取捨選択をし、これは審議をしよう、これは審議に値しない、そんなことを申し上げながら、立法府が主導権を持って進めていきたい、こんな思いでいっぱいでありますが、どうも与党の皆さんは少しく我々と考えが違うようでありまして、政府が出した法案を粛々と進めていく、そんなことが感じられます。それについて私は問題だと思っておりますが、私の今申し上げましたことは、そんな意味で、我々、党としてこの国会にこんな考えを持って出したわけです。
その中身は、今、農業経営が非常に厳しい状況にあります。そういうところで、昨年の予算編成で私どもの主張も政府はある程度勘案いたしまして、これは前をたどると前の玉沢農水大臣の時代に私がM資金の不条理さを訴えて、もっと農家の皆さんが活用しやすい、喜ばれる、そして簡便に使いやすい、そういう制度資金を整理しろ、そんなことをお訴えしたことがありまして、それについて検討をしましょうという大臣の御答弁がありましたが、それらを受けて、当時経済局を中心にこの作業に入られたといいます。
昨年末の予算編成で、そのような意欲ある担い手に対する支援対策がつくられました。そういう中で、新たな制度資金として、経営体育成強化資金、さらには農業経営維持安定資金、これらを新規に創設し、農業経営の改善に役立ててもらいたいという、そんなことが出されまして、これが予算委員会終わりまして、今制度化されております。
これは一歩前進と私は評価いたしておりますが、しかし、問題はやはり、この低金利の今日、当時は二%という金利、何か最近では実行金利も一・六%まで下がっているようでありますけれども、これでも今の市中金利に比べるとやはり高過ぎます。少なくともこれらを、今年度は税制上のこともありますから無理でしょうけれども、来年度に向かって、一%を切るぐらいの方向で、資金を借りてもこの償還等に苦労しないように改善方を進めていただきたい。そういうことを思いまして、これらについての提案というか、負債軽減対策を出しているところであります。
そしてもう一つは、現在、離農する農家を対象にして農地保有合理化法人等が離農者から農地を一時買い上げ、それらをまた担い手に貸し付ける、これは五年間、十年間という、そういう制度があります。そういうのがあるけれども、まだまだ不十分である。
したがって、私どもは、離農する農家を対象じゃなくて、これからも営農を続けていきたい、そういう農家も、かつて政府が出した新政策、それから、いわゆる食管法の改正によって米価が低迷した、さらには米の完全自由化でもって価格が下落している、こういう状況。
もう一つは、当時の農業情勢の中で、当然、あの時代は、新政策を出された時代は、政府の施策に従って営農を拡大しようと意欲的に取り組んだときは、バブルの時代というか地価が高かったわけですね。その時代に農地を高い価格で購入し、今こんな状況、惨たんたる状況ですよね。ですから、農地の流動化も進まない。もうダブルパンチです。そういう中で、幾ら営農にしっかり取り組んで、計画をしっかりつくって農業にいそしんでおられても、この負担が大きくかぶさっていて、営農に大きな支障を来している。
したがって、この農地の問題、今申し上げた土地改良等々の償還の問題も含めてですけれども、これは、農地のいわゆる償還に対して買い取りの問題、これを解消してあげることが私は大事ではないか。
そうなると、営農を続ける農家に対しても、政府がそれを一時買い上げをして、そして意欲ある農家にはそれを貸し出して、そして、小作というか賃貸料を取って営農をしてもらい、いずれその農家が力がついてくればそれを買い戻す。そういうようなことも考えながら、この枠をもっと拡大していこうではないか、こんなことを骨子に出しました。
大臣も御就任早々でありますからまだ詳しくこのことは、今抱えています政府案等々でいっぱいでしょうから、詳しく承知されていないと思います。したがって、こういうことを申し上げて、今後よく検討していただきたいのでありますけれども、担当局長からでも結構ですから、これについての見解をひとつよろしくお願いしたいと思います。
○武部国務大臣 最近、小平先生労作の民主党案についても少し勉強させていただきました。
ただ、農林水産省としては、今回成立した農林公庫法の改正法を確実にまず実行していきたいという考えであることを申し上げたいと思います。また、農地を国が買い上げてそれを農業者に、当事者に貸し付けるということは、個別経営の処理に国が直接関与するということから極めて困難だと思うんですね。
ただ、私も、北海道でもいろいろなそういう今先生が御指摘のような事情をたくさん聞いております。したがって、農地の流動化を進め、農地を集約して生産性の高い農業を実現するために、農地を保有する何らかの組織というものを新たに検討する必要があるんじゃないか、こういうことでは認識は先生と近いんじゃないか、こう思っております。
それだけに、農業を続けたいという人が、経営者としてそのまま続けるというようなことはできないとしても、それこそ生産法人の構成員になったり、有限会社やそういう新たなる組織の一員として農業をやっていく、農業にかかわっていく、携わっていくということや、そういった既存の農家だけじゃなくて、若い方々がそういう会社に入ることによってそこでいろいろな農家の農場経営を担っていくというようなこと、いろいろな方法があるんじゃないかと思っております。
問題は、これからの新しい、農地を集約し流動化させ、そしてより規模の大きな生産性の高い農業というものを実現していく方法というのは、農地の保有あるいは土づくりも含めて、これの利活用ということについては新たな視点で考えていく必要があるような気がいたします。
ただ、負債整理を何とかするために国が買い上げるということは困難だと思うのです。ただ、新たな組織をつくって、そこで買い上げるとか借りるとか保有するとか、いろいろな考え方はあるのじゃないかと思います。
○小平委員 大臣、負債を国が肩がわりというのは困難と言われましたけれども、農家がみずからの営農の失敗に起因して負債を抱えたのだったら、もちろんその農家個人の責任で対策を講ずるべきです。私が言っているのは、そうじゃなくて、その負債の原因になったものが農政にある。
例えば新政策の推進、例えば国際競争力に伍していけるように規模を拡大する、個別経営体は約三十ヘクタールの農業をいそしむとか、そういう農政に従って、方向に従って営農が拡大した、そういう中において生じた負債、これは一にかかって農家個人の負債じゃなくて、やはり国の手法の誤りですから、農政の失敗ですから、失政ですから、それについては結果責任というものをしっかり持ってその救済策を講じるべきだ。そういう意味で申し上げているのであって、そこのところの整理が必要だと私は思います。
実は、きょう私用意しましたのは、WTOの問題、それからセーフガードの問題、さらにはこれから行われます各法案について少しく触れたい、こう思っておったのですが、大臣は参議院の方に就任あいさつに行かれるということで、十時と伺っておりますので、気持ちよく送り出したいと思います。したがって、私も時間前に終わります。
最後に一点、これらの問題は時間もないので飛ばしまして、この後お昼からは水産基本法関係法案の審議が行われます。そこでいろいろと同僚議員からも質問がありますので、ひとつよろしく御審議をいただきたいと思うのであります。
これらを含めて、今回、小泉改革断行内閣が誕生したのですから、しかも気鋭の、農業に非常に造詣の深い大臣が就任された。したがって、従来とは違うのだと。であるならば、今まで前大臣のもとに出しておったこの法案をただそのまま何もなしに再提出といいますか、出してくるのは芸がないというか、主体性がないというか、私は、少なくともそれは一回吟味をし直して、武部カラーを出してくるのが当然であって、これだったら、大臣がかわっても何の違いもないのじゃないかとだれしも思いますよ。そこについて非常に疑問を感じます。
そして、さっき申し上げましたように、我々は立法府です。したがって政府が、どうしても政府というのはその専門のところにおりますから、いろいろとやっていると割と突っ込んでくるけれども、我々から見ると少しく視野に欠けている面があるのじゃないかということをあえて指摘しておきます。
そういう中で、立法府は政府の下請機関じゃないのですから、堂々とそこのところは新たな展開をされて、法案を出し直すと言ったら変ですけれども、何かそういう変化があってもいいと思うのですが、ほんの一つの変化もないのですね。これについて私は非常に疑問を感じるのですけれども、どうでしょうか。これについて大臣は全然疑問を感じずに残っている懸案の法案を処理されるのですか、疑問を感じないのですか。
○武部国務大臣 今国会に提出されている法案は、水産基本法、さらに林業基本法、農協改革二法も土地改良法も含めまして、すべてが構造改革にかかわる重要法案でございます。それに関連する法案でございまして、私どももこれまでこの法案の策定に十二分に関与してまいりました。
したがいまして、まずは、私どもが強力な改革断行内閣の一員として仕事を進めていくためにも、今国会に提出されました法案について、立法府の審議の充実と、なお速やかなる成立に向けて御協力いただきたい、かようにお願いを申し上げたいと思います。その上で武部新農林水産行政というものを展開してまいりますので、御鞭撻、御支援のほどをお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。
○小平委員 ありがとうございました。
時間ですので終わりたいと思いますが、きょうは、そんなわけで、政府高官そろって出席いただきましたが、私は今、こういう国会審議のあり方を問い直す中で、大臣あるいは副大臣を含めて我々とそれぞれ質疑応答するという、今までは局長さん初め皆さんが指名なしに出てきて答弁いたしましたが、それは今後はぜひやめていただきたい。しかし、きょうのように、武部大臣のもとで農林行政を皆さんやっているのですから、こういう大事な委員会、そこに出席をし、陪席をし、そのやりとりを聞くこと、これは結構だと私は思いますので、きょうは、そういう意味においては、この一時間という時間非常に我慢されたか、座っておられて御苦労さんでした。出番もなく恐縮ですけれども、そんな意味で、私は、新しい委員会のあり方を問うていきたい、そんな思いもあります。本当に御苦労さんでした。
どうもありがとうございました。
○堀込委員長 次に、木村太郎君。
○木村(太)委員 私の地元は今、田植えが始まっておりまして、また、その水面には白いリンゴの花が映え映っている季節を迎えております。この時期に、小泉内閣発足に当たりまして、武部農林水産大臣、遠藤副大臣、岩永政務官には、御就任に当たって、心から敬意を表したいと思います。
我が国の食料自給率が四〇%を切ろうとする危機感の中で新しい農業基本法がスタートしまして、平成二十二年にまず四五%まで回復させようということで、その目標に向かってスタートしたところであります。
ところで、都道府県ごとの自給率というものを調べた場合に、一〇〇%を上回る県は五道県しかありません。私の地元青森県は一二七%で全国第四位という位置づけであります。一位はもちろん武部大臣の北海道の一七九%、そして遠藤副大臣の山形県は一三二%の第三位というふうになっておりまして、こういったことからも、大臣、副大臣、政務官の御活躍を期待したいと思っております。
総理は、所信表明の中でも、農林水産業の構造改革を進めるというふうに触れました。また、きのうの大臣の所信の中でも同じようなことを述べられております。小泉総理は、我が国の経済についても構造改革なくして景気回復はないというようなことも主張されておりますし、具体的な施策についてはこれから二カ月ぐらいでまとめたいということも述べられております。
谷津前大臣から引き継ぐこともあろうかと思いますが、農林水産業の構造改革というのは何なのか。農業者、漁業者、水産業者、林業者、そして国民の皆さんが農林水産業の構造改革とは何なのかという問いを持った場合に、これだというふうに答えられるような具体策というものを、武部・遠藤・岩永ビジョンと称してもぜひまとめてみてはいかがかな。
私が言いたいのは、何十ページものペーパーになるようなものをまとめてほしいとかそういう意味でなくて、国民の皆さんから農林水産業の構造改革とは何なのかという質問があったときに、これですというふうに答えられるような、そして理解をいただけるようなものをぜひまとめるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○遠藤(武)副大臣 各県ごとの自給率をまとめられ、それぞれの地域の実情、とりわけ農業の実情に詳細な見識をお持ちの木村委員の御質問でございます。一部激励がございました。
農業にとっての構造改革、これは非常に悩ましい問題であります。一般的な産業構造改革という場合には、金融の面にしろあるいは経済的な論理にしろ、究極には今の日本では人減らしにつながっていく一面がございます。しかし、農業の場合は、非常に零細で、しかも農業所得を主とするものでない農家群というものを非常に多く抱えた、三百二十四万戸という農家がおられるわけで、まずこういう農業構造をどうするか。
さらに、生産基盤だけじゃなくて、流通から食生活の構造に至るまで、非常に広範多岐な構造問題を抱えているわけであります。したがいまして、いわゆる数の論理でいくのかということをなかなか切り込めないでいるのが今の農政の抱える問題じゃなかろうかと思います。
御激励いただきましたように、小泉総理から与えられた農業分野における構造改革とは何ぞやということを私どもも一応考えてはおりますが、こういう委員会の場で、私はこう思うがどうだというふうなことを積極的に御示唆いただければ大変ありがたいと思っております。
なお、先ほど少数切り捨てかというふうなお話もありましたが、それらも含めて、数か価格か、あるいは消費構造なのか、そうしたことを今考えているところでございます。
○木村(太)委員 次の質問にも、今言ったことにも関係してくると思いますが、農林水産省は、農業に関して、夏までに経営政策大綱というものをまとめる予定と聞いております。これは、これまでの価格政策から所得政策に転換するというイメージが生産者サイドにはあります。そして、意見として、大きな期待を寄せる一方、小さな経営体はなくなってしまうのではないかというふうに危惧する声があるのも事実であります。
我々も党内で大いに議論をしてまいりたいと思いますが、遠藤副大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○遠藤(武)副大臣 いわゆる農業経営政策、一面、所得政策の意味合いを持つことは事実であります。ただ、三百二十四万戸もある農家を選別するということが果たして可能なのかどうか、いや、選別することに対する正当性というものを持ち得るかどうかという根本の問題があろうかと思います。と同時に、国際関係を抜きにして考えられませんから、これがいわゆる緑の政策に当たるかどうか、そういう問題もあろうかなと考えているところであります。
しかし、夏ごろまでには明示できるように今作業を進め、既に三回ほどの学識経験者等による研究会を行っておりまして、次の研究会には私自身も参会をさせていただいて思うところを述べてみたい、こう思っているところでございます。
○木村(太)委員 時間がもうなくなりましたので最後の質問をしますが、最近外務大臣や外務省がマスメディアを通じてもクローズアップされておりますけれども、農林水産業に関しても、セーフガードの暫定的な発動もありましたし、あるいはWTOの閣僚級の農業交渉がこの秋にはあるというふうにも聞いております。我が国の農林水産業を国際競争の中でどう導きながら、そして交渉の場でどうPRしていくのか、お尋ねして終わります。
○遠藤(武)副大臣 一部私見もまざりますが、WTOというのは、要するに農産物も含めまして自由な取引を全世界に普及させよう、こういうことでございます。ある意味では例外的な措置としてセーフガードを認めている。しかし、このセーフガードの制度が今後未来永劫に続くようなものじゃなくて、むしろそうした保護主義的な政策というものはもう十年するかしないかのうちに悪とみなされるようなほど国際的な自由貿易になっていくのではなかろうかというふうに考えます。
そうすると、そういう国際競争にたえ得る農業政策というのは何かということは絶えず問われなきゃならぬ。圧倒的に日本が問題になるのはやはりコストなんですね。コストイコール生産性なんです。ですから、今さら私が木村委員に申し上げるまでもなく、国際競争力に勝ち得るための価格競争、コスト低下、それを支える生産性、こうしたものを柱としたいわば農業生産政策というものを考え、かつまた自由貿易なんだ、そういうことを念頭に置きながら今後も政策を進めなきゃならぬかな、このように考えているところでございますので、御指導賜りたいと存じます。
○木村(太)委員 終わります。
○堀込委員長 次に、白保台一君。
○白保委員 武部新大臣それから遠藤副大臣、岩永政務官、大変おめでとうございます。皆さんのもとで農政が運営されていくわけでございますので、ぜひ頑張っていただきたい、このことをまず申し上げたいと思います。
そこで、昨日も大臣の発言ということで、大臣の所信が述べられました。本来ならば大臣がこちらにおられて、皆さんにお聞きしていかなきゃならないところですが、大臣のもとで、遠藤副大臣、一緒になって新しい農政を切り開いていくわけでございますので、認識とそしてまた取り組み等について、若干基本的な問題でございますがお聞きしておきたい、こういうふうに思います。
そこで一つは、改革断行内閣、こういう言葉をあいさつの中にも使っておられるわけでございますが、先ほど大臣も答弁の中で、今国会提案されている法案等、新たな改革を目指す法案であるということでございました。まさにそのとおりだと思います。それで副大臣、大臣のもとで、この改革断行内閣、農水省として具体的にどういうことなのかというふうに御認識を持っておられるのか、その辺のことをまずお聞きしたい、このように思っています。
○遠藤(武)副大臣 小泉総理がおっしゃる構造改革断行、農業における構造改革というのは何かというと前提となる条件がいろいろあるわけです。
まず、我が国の気候、風土、地勢でありますね。高温、多雨、多湿、非常に狭小な耕地面積、さらには耕地面積が狭小であるがゆえに非常に生産性が低い。また、言ってみれば数の問題があるんです、非常に多種多様である。こういう前提条件があって、生産基盤から食生活の構造に至るまで改革を断行するというのはなかなか容易ではない。だから、生産基盤の構造改革から進めるのか、農業におけるいわゆる全般的な、当面する、総理がおっしゃる循環型社会といいますか、そうした面にスポットを当てて、そこだけを何とかやってみろとおっしゃっているのか、この辺は大臣を通して総理にも詰めなきゃならぬ問題があるのではなかろうかと思っております。
いずれにせよ、農業において構造改革を進めなければ国際競争にはたえられないということだけはわかっているので、おっしゃられることはよくわかっているつもりでございます。
○白保委員 そこで、改革断行内閣のその次に出てくるのが、循環型社会の実現という文言が出てまいります。食品リサイクル法やあるいはまた家畜の廃棄物の処理、そういったもの等もございますが、この循環型社会の実現を目指していきたい、こういうことですが、これについての御認識、取り組みについてもまず伺っておきたいと思います。
○遠藤(武)副大臣 白保委員御存じのとおり、今我が国最大のテーマの一つが循環型社会の実現ではなかろうかと思います。大量生産、大量消費そして大量廃棄であります。
農業の面でこのことを考えると、循環型社会を実現するためのキーパーソンは、私は農業ではなかろうかなと思っております。いわゆる農業の世界に片仮名が入り込んでから日本の農業はおかしくなったのではなかろうかと思います。何か、プラスチック、ビニール農業と。わらであれ何であれ、農業生産の過程から生じる生産資材やエネルギーは全部捨て切り、投げ捨て、そして結果、コストの高い農業にしてしまった。
そういう場合、循環型社会をという観点から農業を見詰めるならば、やはり農業の再生という面から考えても、農業生産過程の中で生み出し得るエネルギーや資材を十分に使いこなして、なおかつ、他分野において廃棄されたものまで農業の分野で吸収し得るという社会、それが人間の社会に貢献できる農業の姿ではなかろうかなと認識しておるところでございます。
○白保委員 余り時間がありませんので最後の質問になるかもしれませんが、この大臣発言の中には農業経営の問題やその他多くの問題がございますが、ただいまの御答弁とも関連してきますけれども、自給率の問題ですね。自給率の問題で、生産者、食品産業の事業者、消費者、この関係が一体となった取り組みが不可欠であると。まさにそのとおりで、前の大臣の際にもこの自給率の問題は相当議論がありましたし、私も議論をさせていただいたわけでございます。
それについて、今の御答弁の中にもありましたように、片仮名が入ってきておかしくなったというこの部分は、またある面では消費者の問題等もあります。一方的に生産者だけという話にはなりませんし、これは三者が一体となった取り組みがあってこそ、初めてこの至難と言われる目標を達成することは可能となっていくわけでありますから、その三者に対して具体的にどう取り組んでいっているのかということは非常に大事な問題なのです。その辺の御認識を副大臣に御答弁いただきたい、こう思います。
○遠藤(武)副大臣 先ほど、小平委員の議論に対しまして、大臣は自給率についてお答えいたしておりました。中身はいささか私とは違うかもしれませんが、いわゆる現在の四〇%を平成二十二年までに四五%に自給率を高める。これはカロリーベースであります。穀物ベースでいけば現在は二七%、これを平成二十二年にどれぐらいにするかというと、三〇%程度の目標です。ハト麦なんというのはもう眼中にもない自給率構想であります。
私は、こうした実態というものを国民に全部オープンにすべきではなかろうかと。日本人は、今一日に二千五、六百カロリーであります。当然このような高い数値にするには、油脂類、肉類などが入っているわけです。飢餓にあえぐアフリカ諸国の人々にとって、一日の摂取量二千五百カロリーで自給率四五%を目指すなんというようなことは、腰が抜けるほどの数字ではなかろうかと。
やはりこれは、先生おっしゃるとおり、まず生産者もさることながら消費者が、我が国の食料の自給率、ひいては安全保障とまで言い切れるかどうかは別としても、消費者自身、国民自身が真剣に考えていかなければならぬ問題だという御指摘等を受けとめまして、国民の皆さん方に周知徹底されるような方策を考えてまいりたい、このように考えておるところでございます。
○白保委員 以上で終わります。
○堀込委員長 次に、金子恭之君。
○金子(恭)委員 21世紀クラブの金子恭之でございます。
このたびの小泉内閣の発足に伴い就任されました武部大臣、遠藤副大臣、岩永政務官におかれましては、農政に精通されている方々ばかりでございます。このたびの所信表明の中で、改革の名に値する施策を積極果敢に推進する、常に現場の声に耳を傾け、国民の皆様に広く支持される政策の展開に向け全力を尽くすというふうに述べておられます。農林水産業を取り巻く状況は非常に厳しいものがございます。手腕を発揮され、リーダーシップを発揮されて、農林水産行政の推進に御尽力いただきますようにお願いいたします。
まず、副大臣にお尋ね申し上げます。
大臣の所信の中に述べておられます当面の大きな問題の一つにセーフガードの問題がございます。このセーフガードの暫定措置の発動につきましては、私の地元でも非常に農家の方々には喜ばれているわけでございます。
しかし、このセーフガードの発動というのは、あくまでもようやく第一歩を踏み出したにすぎません。これからが大事なわけでありまして、セーフガードが発動されている期間に、いかに国内対策を充実して生産性の向上や品質の向上、またはコストの低減、流通システムの改革等々、やらなければいけないことが多くあると思います。
そういう中で、今回暫定発動されておられます三品目につきまして、構造調整をどのように進めていかれるおつもりなのか、副大臣にお尋ねいたします。
○遠藤(武)副大臣 金子委員おっしゃるこのセーフガードという問題は、我が国の政府にとってもガードでありまして、非常に厳しいものでございます。この問題につきまして、まだ大臣とすり合わせいたしておりません。非常に大きくて、また深刻な問題でございます。ですから、ここは私見とお受けとめいただきたいのです。
三品目について生産者側から非常に強い要請があって暫定措置を発動した、こういうふうに私は引き継いでおります。しかし、いわゆるWTOは自由貿易の世界を世界各国が認め合ったという前提に立っているわけでありまして、いわゆる貿易の制限措置というものが今後十年、二十年、三十年と維持し得るものかどうかということは、また別であろうと思います。つまり、逆に言えば、自由貿易の世界にたえ得るような商品的農産物を生産できるかどうか、こういうふうな問題になってこようかと思います。
次に控えておる水産物の問題等もございまして、これは日本の食料国家戦略の一環としてとらえて、少しく皆様方の御意見をでき得る限り聴取しながら考えていかなければならぬ問題ではなかろうかな、そのように考えており、かつ、このようなセーフガードが自由貿易の国際社会の中で再々発効されることがないようなことを、我が国は農政としても通商政策としても考えていかなければならぬのではなかろうかな、このような認識をしているところでございます。
○金子(恭)委員 時間がありませんので、できるだけ早急に政府内で、その措置、具体的な政策について御提案いただきますようにお願いいたします。
続きまして、今回暫定発動された三品目につきまして、セーフガードの暫定措置を発動したことに対します諸外国の反応はいかがでございますか。その状況を教えてください。
○遠藤(武)副大臣 アメリカなどはかなり強い懸念を示していることは御承知のとおりであります。
肝心の中国でございますが、今のところ、事務レベルで接触を図っておるところでありまして、いわゆる政治家レベル、政府のトップレベルで机の上にのせるという状況にはありません。今後、なお粘り強く、話し合いによる解決というものを目指して、中国政府側の事務方同士のまず第一段階の協議というものを今促進させているところでございます。
○金子(恭)委員 このセーフガードの一連の流れではない問題でございますが、少し同じように考えられている節がありますので、その点についてお尋ねいたします。
輸入植物検疫が四月の一日から強化されておるわけでございますが、新聞等によりますと、事実上の輸入制限ではないだろうかというような報道がなされ、消費者、外食産業等につきまして、品薄になり価格の値上がりがあるのではないかという懸念が叫ばれているわけでございます。
私は、今、食物の安全性が大きな問題になっているという中でございますので、当然の措置だと考えておりますし、そのことについては消費者、外食産業の方々にも御理解いただけるのではなかろうかなというふうに思っているわけでございますが、これが諸外国からの輸入制限であるというようなことについて、御答弁いただければと思います。
○小林(芳)政府参考人 植物検疫の関係でございます。
今、先生御指摘ございましたように、グローバル化の中で、一方で消費者の皆さんを初め、食の安全性に非常に関心が高まっておりまして、植物、動物を含めて検疫をきちんとやってほしいという要請があるわけでございます。
ただ一方で、植物検疫で申しますと、非常に野菜の輸入が急増いたしまして、港によりましてはここ五年間で五倍にふえるというようなケースもございます。そういたしますと、片方で人員の体制整備とか、いろいろな機械の導入とかをやっておりますが、一どきに多くの輸入の申請が参りますと、きちんとした検査をやっていく上で非常に難しいというような事態もあるわけでございまして、そういったところをやはりきちんと検疫をしながら進めていきたい、そういった状況でございました。
そういう意味で、この四月一日、新年度から、こういった状況を関係の皆さんに十分わかっていただこうということで、一つは、この四月と十月につきまして、植物検疫のそういった私どもがやっている趣旨なり状況をわかっていただく、これは輸入に携わる業者の皆さんを含めて理解していただこうということの強化月間にしております。
それからあわせまして、先ほど申しましたように、特定の港で件数が最近非常にふえたことにつきましては、一定の件数の限度というのもございますので、その標準型をお示しいたしまして、それを超えたような場合には翌日にその検査が回るケースもあり得ます、そういうときにはやむを得ないのでよろしく御了承していただきたいというようなこともあわせてお話しいたしました。
そういうことでございまして、あくまでも植物検疫そのものの適正な実施ということを、私ども、今現場の実態を踏まえながら進めているということでございます。
それから、そういう中で、四月、結果的に一部の港で翌日回ししなければいけないというケースも出てまいりましたが、その際には、翌日きちんと早目に対応するということでやっておりますので、今先生の方からも御指摘ございました、それによって価格が上昇するとかそういったような事態にはなっていないというふうに考えておりますが、引き続き、関係の皆さんの理解を得ながら着実に進めていきたいというふうに考えているところでございます。
○金子(恭)委員 時間が参りましたので、最後の質問をさせていただきます。最後にもう一度、遠藤副大臣に御質問させていただきます。
セーフガード暫定措置を発動したこの三品目、畳表は九九・九%、ネギは九八・八%、生シイタケは九九・九%、中国からほとんど輸入されているわけでございます。
先ほど副大臣からも、中国との話し合いを進めるということもお話がございました。また大臣の所信の中でも、「今後、政府調査の結果を踏まえ、本措置への移行を検討するとともに、主な輸入先国である中国との協議を継続してまいりたいと考えております。」というふうに述べられているわけでございます。
御承知のとおり、中国というのはWTOにまだ加盟していらっしゃらないわけであります。そういう意味では、そのルールにのっとってどの程度やれるかどうかわかりません。セーフガードはこれから永遠に続くわけでもございませんし、そういう意味では二国間の話し合いというのは非常に大きな問題ではなかろうかなというふうに思っております。
そういうことも踏まえて、今後どのように中国と対応していただくのか、その辺をお伺いさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。
○遠藤(武)副大臣 セーフガードについて、非常に御理解のある認識をいただいておりますことを大変多とするところでございます。
中国との関係につきましては、非常に緊密な関係が経済関係としてあります。我が国は、ある意味では貿易立国として経済的に成り立っているわけです。農業の分野でトラブルが起きるとその他の分野へさらに大きな波及をする、例えば自動車の部品であるとか繊維製品であるとか。つまり、危うい基盤の上に成り立った貿易経済立国だというふうに言えるかと思います。
したがいまして、セーフガードというものは、我が国の経済全般を見渡しながら今後とも考えていかなければならない問題を含んでいる。つまり、そのことが、農業の分野でいえば、生産者団体などに御理解をいただくような努力がこれから必要になってくるのではなかろうかと。ただ、守るためにセーフガードを発動する、しかしこれは連発がきかないものですからということをやはり生産者の方々がわかっていただいた上で、競争力の強い農業を営んでいくという取り組みが必要だ、このように認識しているところでございます。
ありがとうございました。
○堀込委員長 次に、高橋嘉信君。
○高橋(嘉)委員 自由党の高橋嘉信でございます。
武部新大臣、遠藤副大臣、岩永政務官の御就任に祝意を表する次第であります。また、御期待を申し上げている次第であります。
今日の農業情勢を取り巻く環境は非常に厳しく、国際化の流れ、また価格の低迷など、全くもって大変な状況にあることは論をまたないところであろうと思っております。そのかじ取り役、まさに中心的な役割を果たしていただくわけでありますから、何とぞ思い切った政策の中で、この課題解決、打開をしていただきたい、かようにお願いを申し上げる次第であります。
それではまず、きのうの大臣所信表明、就任時の農林省でのごあいさつの中にもあったと聞いておりますが、先ほどからお話を聞いておりますと、構造改革について、いろいろな委員が質問されましたが、どうも何かまだ輪郭が私は見えないのであります。思い切った構造改革をという話をそのときになされておりますけれども、具体的なものがおありなのかどうか、また、重点的にどういった点を指し示してお話をされたのか、その辺のところを大臣からお伺いいたしたいと思います。
○武部国務大臣 御激励を賜りまして、ありがとうございます。思い切った構造改革というのは、かなり多角度、多様な面からの構造改革が種々必要だろう、こう思っております。
まず第一に考えなければならないのは、基本法または基本計画に沿って、農業の分野で考えますと、やはり競争力のある農業生産体制というものをつくらなければいけない。この担い手はやはり専業農家でありますとか、あるいは新たなる経営形態、これは法人等が入ると思います。こういった分野が恐らく将来、日本の食料を自給する八割以上は担っていくんじゃないか、このように思っております。
今までの農政は、北から南まであるいは多種多様な農業経営形態があるわけでございますけれども、一言で言うと、総花的になっているような気がいたします。どこに重点を置き、どこに集中して投資をするかというようなことがあいまいになっているんじゃないか、このように思います。この後先生から、ではほかのものは切り捨てるのかというお話が多分出ると思いますので、そのときにお答えいたしますけれども、第一はそういうことです。
やはり、競争力のある、足腰の強い、生産力のある経営形態というものを考える。これは個々の農家だけじゃありません。専業農家は言うまでもないけれども、個々の農家ひとりではそれにたえ得るような経営というものはなかなか難しいでしょうから、個々の農家でやり得る人たちについては、支援するシステムというものをしっかりしようということでございます。しかし、生きがい農業とかさまざまな分野もありますので、それはそれで分けて考えて政策展開をしていこうということでございます。
それからもう一点は、先生も問題意識を持っておられるようでございますけれども、例えば農協に例をとって考えますと、農業協同組合精神というのは、一人は万人のために、万人は一人のためにというところに出発点がありました。しかし、今日、国際化という流れの中で、市場原理も導入していかなきゃなりませんし、また、結果として自己責任原則というようなことが建前になってきておりますので、農協の改革についても、もう発想を変えなきゃならぬというようなそういう考えを持っております。
林業についても水産業についても同様のような考え方でありまして、なかなか、一言で言うには私の能力では難しい面がありますけれども、とにかく、農林水産業として二十四時間これに取り組んでやっていける人たち、こういう人たちに思い切った力を与えるというところに、集中的に、重点的に支援していく、投資をしていくというようなことで御理解いただければ、かように思います。
○高橋(嘉)委員 大臣のお話しになられているのは、たしか農林省でつくっている農業構造の展望の中にある四十八万の主業農家、それにおいて八割の生産量を構築するという体制を念頭に置いてのお話ですか。いずれ、思い切った構造改革というのであれば、専業農家育成論を主体にしているようでありますけれども、例えば、それであれば基盤整備はいつまでにやられるのか、規模はどれぐらいをめどにしていらっしゃるのか、その辺のところも含めてちょっとお伺いしたいんですが。
○武部国務大臣 私は、四十万とかそういうような考えはしておりません。今申し上げましたように、専業農家ということで考えるならばもっと少ないと思いますね。しかし、兼業農家や、この兼業農家というものの考え方も、こういう統計のとり方でいいのかという疑問を私は持っておるんですが、家族経営というものですべて賄い切れるようなそういう客観的状況にあるのかということをまず現実問題としてとらえなきゃならぬと思います。
しかし、農業をやりたい、農村で頑張りたいという人たちはいるわけです。その人たちを切り捨てるわけじゃありません。その人たちは、自分で、帳面から資材の購入から何から何まで、苗づくりから作付から収穫から、そしてこれを加工して付加価値を高めて出荷する、そこまで全部やり切れるわけがないんですね。しかし、そういったものを支援する企業体、経営体があれば、その中で構成員の一人として幾らでもやり得ると思うんです。
もう酪農のヘルパーなんというのは実際そうですね。あれは、苦しくて、特に農家の主婦の過長労働などということが問題でヘルパー事業が入っていったわけですね。それから、コントラクターというのもそうですね。酪農家が、酪農家だけじゃありませんけれども、牧草の採取から何から何まで、酪農家ひとりではやり切れない。結局、アウトソースしているわけですよ。それは現状では農業の範疇にないんですね。
だから、そういったものを支援するビジネスというものは、これからはどんどん地域につくっていくことは可能だ。現に私どもの地元では、建設業が農業をやろうとしていますよ。それは、好んでやるんじゃなくて、農協が大変だ、農家が大変だ、助けてくれと。
もともと、建設業に従事している人の中には、農家をやっていた人たちがいるんですよ。その人たちの話を聞くと、我々が耕作をすれば三分の一の時間と労働でもっときちっとした畝をつくることはできますよと、技術的に。そういう人たちがいるわけですから、そういうものを農村地域社会につくっていけばいいんですね。
そして、その中の一員として農業を、自分は経営者じゃないけれども農業が好きだという人、自分の力で一から十までできないけれども、かなりの部分を支援してくれる、サポートしてくれる、そういうものがあればまだまだ続けられるという人たちもいると思うんです。
ですから、ちょっと短い時間で説明はしづらいものがありますけれども、かなり多様な考え方というものが展開できるんじゃないのか、私はこのように思っておりますから、小農切り捨てだとか兼業農家を切り捨てるだとか、そういうことじゃありません。
しかし、今先生からの御質問にお答えするとすれば、それこそ日本の食料の八割ぐらいまでを担うのは四十万戸なんかというものじゃないんですね。もっと小さい、少ない分野で私は担い得ると思っております。
○高橋(嘉)委員 大臣にお伺いします。
私は、農業に対しての新規就農の機会、これは当然必要ですし、推し進めるべきものと思っておりますので、私がお伺いしているのは、つまりどれぐらいの規模を目標にされているのか。北海道は圃場の整備率が九割と非常に高いです。全国的に標準区画であれば五七%、水田で見ればそのような状態にありますけれども。僕が御質問申し上げているのは、どれぐらいの規模にまでしようとしているのか。
一反歩から三反歩になった、そして一町歩になった、それではそれだけの専業農家を育成して核となる経営体をつくろうというのであれば、大体これぐらいの規模という話でないと八割という数字は出てこないと思うんですが、いかがでしょうか。
○武部国務大臣 お答えします。
農業経営の十年程度後の具体的な姿というのは、農林水産省で農業経営の展望というものを策定しておりますが、ここでは、家族経営で十から二十ヘクタール程度、現行では主業農家における耕地面積、北海道では十二・三ヘクタール、都府県では四・七ヘクタールでありますね。
これを十から二十程度に、また、北海道の畑作についていいますならば、家族経営で四十ヘクタール程度、今日では二十四、五超ですね、そういうふうに考えておりますけれども、これは家族経営の農業経営を考えた場合の想定ですから、これが組織的な経営といいますか、ビジネスでやるとなればまた違ってくると思うんです。
特に、私、つけ加えて申し上げますと、今、第一次生産者の農業生産というのは四分の一程度じゃないでしょうか。四分の三はほかの人たちが農業に関連して御商売をやっているんですよ。だから、生産面だけなんですね。
ですから、今後は、個人では、家族経営では、生産、流通、加工、あるいは外食産業だとかそういったところまで手を伸ばせないでしょう。しかし、これが生産法人なり有限会社なり株式会社というような組織的な経営を何人かの方々でやるとすれば、これはまだまだ所得をふやすことができるはずなんです。大体、日本フードサービス協会というところの傘下の外食産業の皆さん方の売り上げは十兆円です。大体農業の売り上げが九兆円余りですね。
ですから、ああいったところにも積極的に入っていくためには、耕作は家族経営ということになりますけれども、それは流通だとか加工だとか、ほかの分野まで農業の関係でもっと拡大していこう。
言うならば、私は、専業農家を育てるということと違って、今までの専業的な経営をやっている皆さん方に、他の分野にも手を出してください、それは個人ではできなくたって、仲間と一緒になれば、あるいは組織的な経営体というものをつくればできるではないですか、そういうふうなことにチャレンジしていくという道が一つあるのではないか、このように思っておりまして、これは私の考えの一端を申し上げただけでございまして、参考にしていただきたいと思います。
○高橋(嘉)委員 私は、三百二十四万戸と言われる現在の農家戸数、これを非常に心配されているようですけれども、切り捨てとかなんとかという言葉は一度も使っておりませんけれども、大臣の、要は骨格となる今後の我が国の農政のあり方、その辺の背骨の話を聞かせていただきたいということであります。
さっき、十から二十ヘクタールという話ですが、それであれば、私の部落は五十町歩くらいですが、三人か五人もいれば、あとは農家の人たちはいなくなってしまいますけれども。
要はそういうことで、僕がこれから後に申し上げたいのは農村社会論につながる話でありますので、そういう認識として基本法もやろうとしているのはわかっておりますけれども、僕は、そういった中で農村社会が本当に成り立つのだろうかという懸念を抱いております。
今、五人から六人ぐらいの専業農家の、しかも年もとってきている人たち、五十から六十の人たちが、部落の伝統を守る、あるいは郷土芸能、いろいろごみの処理から下水の清掃からやったりしているような状態であります。そういった中では、農村社会の連携とか農村文化の伝承というものは残っていくのでしょうか、その辺の大臣のお考えをお聞きしたいのです。
○武部国務大臣 私は、そのことが一番心配ですし、一番大事なことだ、こう思っております。
同時にまた、現実問題として、都市と農山漁村ということを考えた場合に、これも変な例かもしれませんが、林間学校で子供たちが困るのは便秘するということなんだそうですよ。つまり、林間学校は水洗トイレでないということなんです。ところが、今、都会の子供たちは大体みんな日常は水洗トイレになっているんですね。
これから、所信表明でも申し上げましたように、都市と農山漁村が共生する、都市の役割の一部を農山漁村で担っていくということが私は大事だ、こう思っておりまして、その際には、やはりコミュニティーの再編成、集落の再編成ということも当然視野に入れていかなくちゃならないと思います。
そのことは非常に抵抗があると思います、本州府県は。先祖代々の土地で、社があって、そして鎮守の森があって、そこに地域の文化があるわけですから、それを集落を再編成するというのはなかなか容易ではないと思うのです。
しかし、これから新たなるコミュニティーということを考えたときに、年をとった方々は今の姿が一番いいのかもしれません。しかし、ここに若い人たちが定着していく、あるいは新たに居住者を求めていく、農村と都市との間を行ったり来たりできるような、そういう関係を構築していく、いわゆる循環型社会の構築ということでございますが、そういうことを考えたときには、私は、集落の再編とか新たなるコミュニティーを農村につくっていく、そういう積極的な考え方を強く押し出していかざるを得ないのではないか。その中で、郷土芸能だとか文化だとかというものを守っていく。
そんなことは到底難しいよ、向こうの村とこっちの村と、先祖代々、ひもといてみれば、顔も見ない、言葉も交わしたことない、そういう敵と味方で、源平の時代から考えればこうなんだから、そういう話はあるかもしれませんが、やはり二十一世紀の農山村ということを考えたときには、大事なものを残しながら、しかも残すためにも、そういった新しいコミュニティーというものをつくっていく、そういう考え方に切りかえていかなければならないのではないのかな。
いつでも、どこでも、だれでもが同じ条件下で生活し、仕事をしていく、ナショナルミニマム的なものをやはりきちっと確保していく、その上に立って、これまでの伝統芸能だとか文化というものをどういうふうに守っていくか。
私は北海道出身ですから、あるいは本州の先生方とか、そこに大きなそごがあるかもしれません。あるかもしれませんが、そんなふうな考えを持っている次第でございます。
○高橋(嘉)委員 大半が家族経営という我が国の実態、そして中山間地域の生産量、労働人口、年齢、高齢化も進んでいる、そういう中山間地域が農業の大半、四割以上と僕は記憶しております。そういった状態の中で、専業農家を育成していく。それは必要かもしれません、経営体を株式化したり、足腰の強いものという再三のお話がありましたけれども、中山間地域についてのお考えはいかがですか。
○武部国務大臣 農業や林業の多面的な機能ということを考えると、それは中山間地域を大事にすることが環境の復元や保全につながる話でありますし、このことにお金をかけるというのは、投資をするというのは、また農業を守るということとは違った意味で大事だと思うのです。
私は、そういう意味では、中山間地域だけではなくて、平場の畑作地帯にありましても所得補償とか、いわゆるドイツやフランス型のデカップリング、中山間対策というのはオーストリア型のデカップリングというものを参考にしておりますけれども、環境重視のデカップリングということは当然考えていかなければならないと思うのです。
これは、農業経営という生産面とは違って、緑を守る、自然を守る、環境を守るというような考え方から、私は、極めて大事なことであって、このことについての投資は優先してやっていくということが地球温暖化防止という観点からも大事だ、こう思っております。
○高橋(嘉)委員 それでは、そういうお話であればお尋ねしたいことがありますが、耕作放棄地を憂うべき事態というふうに認識されているようなお話がありましたけれども、それであれば、今、生産の手段としての中山間地域というとらえ方でないとした場合、どんどんそれに対しては貢献していきたいというお話であれば、一反歩二万一千円の直接支払いの額は十分なものであるとお思いですか。
さらに、中山間地域に生産手段を求めざるを得ない、そして昔からの田畑を所有して――僕は、大臣が就任時の農林省内でのごあいさつの中に若い人、若い担い手という言葉があったので、先ほどの質問のほかにもう一つお聞きしますが、若い担い手、これは後継者を意味しているのかなと思ったわけであります。以前は後継者という言葉が躍っていたのでありますけれども、最近になって、担い手、担い手と。
担い手という概念はどういうことだと前に御質問したら、意欲だという話でした。六十五歳でも意欲があれば担い手、それはそれでいいかもしれませんけれども、僕は、そういった中で、大臣は本当に後継者の育成に視点を当ててきてくれているのかなという期待を抱いたのでありますが、その点はいかがなんですか。
以上、二点まずお聞きいたします。
○武部国務大臣 直接支払い二万一千円が十分かどうかということについては、私はちょっと時間をいただきたいと思います。絶対十分でないという意見もありましょうし、さまざまな状況下で二万一千円ということがやむを得ない、そういう考え方もあろうかと思います。
ただ、中山間地域を守っていくというのも、私の考えは、何も個々の農家の方々にそこに張りついてやる、そういう考え方だけにこだわる必要はないんじゃないかと思うんです。そういう意味で、組織的な支援といいますか、法人化ということもあると思うんです。管理は、何も一人一人そこにいなきゃならぬということじゃありませんで、そういう法人がやり得る場合もあると思うんです。
それから、担い手ということについても、これは経営者ということだけが担い手だとは思っておりません。民間会社に若い社員が入ってくるということも、この人たちも担い手だと思います。
農業の分野で、法人やあるいは専業農家に、今も私どもの地域でも若い人たちが入っていますね。こういう方たちが、三年、五年経験を通じて、自信も得て、本人もさらにやる気を起こして、そして、自分の子供ではないけれども、これだけしっかりした男なら――女というのは余り、僕も現実見ていませんから男と言うので、これは差別用語じゃありませんで、御理解いただきたいと思いますね。現地で聞いている話です。
この男に農業をやらせよう、まあ息子に帰ってこいと言ったけれども、なかなか帰ってこない、うちの息子に跡を継がすよりもこの男にうちの農場をやってもらった方がいい。私は、そういう意味では、大胆に、息子だから親の跡を継ぐというようなそういう考え方も発想を変えなきゃならぬじゃないかと思いますよ。
やはり親子でもきちっと譲渡してもらったり、売買したりとかという関係で継いでいく、経営を移譲していく。ですから、法人なんかになりますと、優秀な経営者を入れることもできるし、または継続性もあるんですよ、法人の場合には。個人経営の場合には、その人がやめちゃったら、あとは耕作放棄地になっていくわけですよね。
だから、そういうように、誤解を招くといけませんからこれ以上申し上げませんけれども、今後委員会で十二分に議論させていただきたいと私の方から思います。先生方何人か笑っておられる方は、そんなことは絵にかいたぼたもちだろう、こういうふうに思っているのかもしれませんので、今後議論を通じて、私どもが考えていることも御理解いただきたいと思います。
私は、間違っていれば、一番自信のないのは、私、北海道だからです。本州府県のそれこそ中山間地域というようなことについて、正直申し上げまして、余り詳しくありません。これはむしろ御指導いただきたいと思います。
○高橋(嘉)委員 歴史的にも、また、大臣の御地元のように、大規模経営をやっているところだけではありませんので、いずれ国際競争力云々というお話、市場原理はそのとおりでありますが、国際競争力がそこのまさに本筋であろうと思いますけれども、十町歩、二十町歩で競争力に勝てる面積であるかどうか、この辺は僕は非常に疑問を抱いておりますし、申し上げておきたいのは、耕作放棄地の増大、離農、高齢化、後継者難、過疎化に苦しんでいる農村の実態であります。それに、では法人化していこう、強い足腰というだけでは、僕は十分なものとは言えないと思っております。
中山間地域ほど農村文化を守ったり、土地に対する執着心があったり、経済的環境も見てください、よそに勤めようといったってなかなかできない、家族的な、制度的な側面もあります。本来の意味での意欲ある農業の担い手、すなわち後継者を育てる、また、育つ環境にあるというのは中山間地域であろうと私は考えております。その辺のところ、もう一度御認識を賜りますように、また、もう一度御検討を賜りますようにお願いを申し上げる次第であります。
もう時間がないという話で、何回も来られていますので、いずれ、あと随分用意してきたんですが、もう一点だけお話をしておきます。
WTOの農業交渉に向けての日本提案がございますが、これは食料安全保障のための支援スキームの話でありますが、これは、うがった見方と言われるかもしれませんが、減反しながら生産基盤を整備する、そういう矛盾に対して出てきた対案なのか。米が余りそうだし、米に対して支援しようか。今になってにわかにそういう提案、昔から言ってきたことだと思いますけれども、その辺、どのようなお考えなのか。
また、僕はこれは大いに進めるべきものだと思っておりますけれども、各国に提案、説明中と思っておりますが、その辺の経過、見通しをお願い申し上げたいと思います。
また、これはODA予算との関連性について、もしおありであるのであれば、答え得る部分についてお答えを願いたい、かように思っております。
○武部国務大臣 このWTOの日本提案についてお答え申し上げます前に、中山間地域のことは、私も十年間自民党の過疎対策特別委員会の委員長をやっていまして、新しい過疎法をつくった、それにかかわってきた張本人でございますので、その重要性は全く同感でございます。そのことを申し上げておきたいと思います。
日本提案であります食糧援助スキームにつきましては、これは中長期的に見て、世界の人口の動向、あるいは一年間に五百万ヘクタールも砂漠化しているそういう状況、さらには、耕作面積がふえない、生産性も伸びない、先ほど小平先生のお話にありましたように、世界の八億人の民が栄養失調や飢餓に苦しんでいる、そういうことを考えますと、中長期的には食料の需給状況というのはますます逼迫してくる。
金持ちの国は食料は何とかなるけれども、そうでない国、あるいはまた、畑をつくろうといってもつくれないようなところ、そういうようなことを考えますと、やはり人道的にも、食料というのは命にかかわる問題ですから、そういったことについて、とれる国ととれない国、栄養失調で悩んでいる民族、国民と、日本みたいにかなり飽食の時代になって、食べ残しや廃棄物もどんどん出ていく、こういったところもあるわけであります。
そういったことを中長期的に考える場合には、これは他の、特に開発途上国への配慮という観点になりますけれども、国際備蓄の仕組みというものを検討すべきだということを提案しているわけでありまして、これは日本の国内のいわゆる減反とか生産調整とか、そういう事情で提案しているものではないと私は理解しております。
今後、この財政負担等についてのあり方というのは、やはりWTO協定等、国際ルールの整合性というものも考えてやっていかなきゃならぬじゃないのかな。私、就任早々でございますので、そのことについて十分な知識を持っておりませんので、感ずるところはそういうことだと御理解いただきたいと思います。
○高橋(嘉)委員 ありがとうございました。終わります。
○堀込委員長 次に、中林よし子君。
○中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。
まず、セーフガード問題についてお伺いしたいというふうに思います。
生シイタケとネギと畳表、三品の暫定セーフガードが発動されてから大臣は就任をなさいました。そこで、この委員会での審議の到達点、それをぜひ確認させていただきたいというふうに思います。
順不同になりますけれども、まず、種子の輸出規制についての問題です。
日本から日本の野菜の種子を持っていって、外国で野菜をつくり日本に輸入するといういわゆる開発輸入、これが大きな問題になっております。この問題について前谷津農水大臣はこのように答弁をされております。「実は、種とかなんかは日本から向こうへ出しているのですね。私はこれは問題だ。」「言うならば、日本の秘密な、一つの企業秘密と同じじゃないのか、それをじゃんじゃん出すとは何事だと。」こう述べて、種子業者に対して輸出規制の指導をした、こういう御報告を受けております。
この種子の輸出規制について、大臣も引き続いてちゃんとやっていこう、こういうお考えで間違いございませんね。
○武部国務大臣 そういう努力はしていかなきゃならないと思います。
○中林委員 それでは、次の問題で、先ほども質問が出ておりますけれども、植物検疫や動物検疫の強化の問題です。
これで、前副大臣が、「植物検疫、動物検疫、また食品衛生検査の問題もあるわけでありまして、今、大勢から見たときにもうそれも限界に近づきつつある。こういった点も踏まえまして、私どもはありとあらゆる方法を総動員してこれに対処していく、」ことを明確にしたわけですが、というふうに答弁をされております。四月一日から上限を設けて検査の強化をされていることは大変喜ばしいことだというふうに思っております。
五月十五日、武部大臣もこれについての記者会見をされて、輸入量が大幅にふえても、検査の手を抜くわけにはいかないとおっしゃっているのですけれども、これも引き続き厳重に守っていかれるということを確認したいわけですけれども、よろしいでしょうか。
○武部国務大臣 喜ばしいという理解はしておりませんが、これはやむを得ないということだろうと思っておりますし、これは前大臣と同じような認識でございます。
○中林委員 日本が世界でも最大の食料輸入国である観点から考えて、当然、厳重な検査をしていくというのは、消費者も大変求めていることだということで、ぜひ後退しないようにしていただきたいというふうに思います。
さらに重要な点は、セーフガード発動体制、この問題について、私も予算委員会で議論をしてまいりましたし、この委員会でも我が党の松本議員がこういう質問をされております。
欧米や韓国は独自の体制を持って、関連の生産者団体にも申告の権利があるようになっていますね。日本は、専任の調査体制もないし、申請できるのは政府機関だけになっている。やはりこれは変えないとだめだと思う、もっと機動的にできるように。
こういう質問に対して、
先生御指摘のように、その辺の体制がどうなっているか、そしてまた調査自体も機動的になっているのか、こういったようなことについては、私どもこれはやはりこれまでを翻って、今回のやったことを踏まえて反省またはさらに整理すべきは整理して、体制というものを日ごろからきちんとしたい、その点では、先生御指摘の点につきましては私ども十分今回のことを一つの経験として対処していきたい、
こういう回答で、体制確立に向けて農水省としても取り組む、こういう見解を明らかにされているわけですけれども、この点も確認できますでしょうか。
○武部国務大臣 政府としてしっかりした体制の確立が必要だ、かように思います。
○中林委員 しっかりした確立の中身の問題で少し説明をさせていただきたいというふうに思うんですけれども、アメリカ、韓国、カナダ、オーストラリアなど、私自身調べてみました。それぞれ政府から独立した機関を持っていて、アメリカなどではスタッフが三百五十人以上いるわけですね、それから韓国でも五十人の体制、あるいはオーストラリアやカナダなどでも七、八十人の体制を持って、それぞれが生産者団体やあるいは利害のある団体などから調査要請がされればすぐ調査に踏み切る、こういう非常に機動的な体制になっております。
だから日本でも、今農水省には専任の職員はおりませんし、政府から独立した機関になっていない。だから、こういった輸入によって国内産業に影響を与えるという、その調査のために大変な手間をとられるということになるわけです。そうすると、兼任になるわけですから、その分野ではほかの業務に当然差し支えがあったり、あるいは残業続きで職員の皆さんに犠牲が及ぶ。
こういう結果があっているということですので、そういう意味で、この体制確立というのは機動的にできるような体制、それについての提案なのでございますので、ぜひこの点も今後の検討課題にしていただきたい、重ねて大臣の御答弁を求めたいと思います。
○武部国務大臣 我が国の場合は三省庁で共同して調査を行うということになっております。それは御案内のとおりだと思います。それぞれの国にはそれぞれの国のやり方があるんだろうと思いますが、今日本がやっているやり方に大きな問題があるというふうには理解しておりません。きちっとしたデータ、モニタリングができるような、そして厳正に対応できるような、そういう体制というものを現状でしっかりとり得るのではないか、かように思っております。
なお、セーフガードということはWTOで認められたルールに基づいてやっているわけでありますけれども、農林水産行政を預かる立場からいたしますと、これはやむを得ない措置というふうに我々は理解しているのでございます。これは、そういうセーフガードを発動しなくてもいいような、そういう産業や農業の体制をつくっていかなきゃならない、構造政策というものも急いでやっていかなきゃならない、そういうふうに私は考えておりますので、最初にセーフガードありきだとは思っておりません。
これを発動しないと日本の農業が壊滅する、農業が壊滅しないまでも担い手がいなくなる、そうなったときに将来はどうなるか、国民の皆さん方や消費者にはね返ってくるというようなことがありますから、我々はWTOで許された、認められた要件に基づいて、また的確なデータに基づいて今暫定発動をしているわけでございまして、このことは私の考えとして申し上げたいと思います。
○中林委員 答弁は、私はここの到達点を確認したいということだったのですけれども、説明を受けると、中身は後退してきているなというふうに指摘せざるを得ないわけです。
反省すべきは反省して、体制の点でも今後考えたい、こういう答弁だったわけですよ。今のままでその調査体制は十分だと、農水省あるいは財務省あるいは経済産業省、そこの三省でそれぞれやられているという現状は知っているのですけれども、しかしやはり進んだ国を見ていただければ独立した機関になっている。
日本は、今挙げた国々よりももっと輸入大国ですよ。そうであるならば、輸入が国内産業に影響を与えた場合は、WTO協定のもとでも、国際貿易ルールのもとで、このセーフガードの発動が当たり前のルールとしてあるわけですので、それはやはりルール上認められているものであるならば、やはり日本政府としても機動的に発動できるように。
なぜ機動的にと言うかというと、生ものが多いわけですよ。この時期にやってほしいと。その時期を過ぎれば、また生産がそのときはないとか、年がら年じゅう生産しているわけではございませんので、この時期がというときに発動がなければ生産者はなかなか大変だ。
そういう思いで、要請があってから何年もたつのじゃなくて、要請があって、これは調査が必要だという基準もお持ちでございますので、そうであるならば、それに向けて即機動的に対応する、こういう姿勢を、農業生産を守る、あるいは国土を守る、消費者の安全な食料を守る、こういう観点から、当然の措置ですから、この体制確立に向けてもぜひ研究をし、前向きに検討をしていただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。
そこで、現在の暫定セーフガードの本発動にぜひつなげてほしい、こういう問題についてお聞きするわけですけれども、三品目のセーフガードのスケジュールからすると、四月二十七日に資料の閲覧公開が終わり、発動の決定検討に移行している。今その時期だと思います。関係農業者は一刻も早い本発動を求めているわけですけれども、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
○武部国務大臣 現状は、輸入の増加が国内産業に与えている損害等についての緊急の状況や利害関係者の意見、今後の構造調整方策の検討を行った上で判断すべき、このように思っておりまして、それは、もうどうしても必要だというときには、やはりきちっとした対応をする、そういう腹構えで私ども政府はきちっとモニタリングをし、監視しているという次第でございますので、その必要があればやらなければならないということは全く同じでございます。
〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕
○中林委員 本来、この三品について政府が調査に入ったのは、一般セーフガード発動に向けての調査だったんですよ。ところが、生産者の方から早く発動してほしいということで、暫定発動の規定もありますので、それでまずそれに踏み切ったということです。
だから、本来は、このスケジュールに沿っていくならば、もう公開縦覧は終わったわけです。いよいよ政府が決定するかどうか、この時期にかかっていて、今さらモニタリングをするとか何らか新たな調査をするような感じをおっしゃっているわけですけれども、私は、そのお考えはいかがなものかというふうに思うんです。多くの関係者は、二百日の暫定セーフガードだけでは産地の体制確立にはとても足らない、こういう指摘をしております。
ここに産業構造審議会貿易経済協力分科会第二回特殊貿易措置小委員会の会議録、これを持っております。この中で、ネギだとかシイタケが二百日の間で国際的な競争力の観点からどうなんだ、こういう質問があったので、それについて農水省から説明をお願いしたい。
こういうことで、農水省の實重農水省野菜課長がこれに答えて言っているわけですが、二百日の間に国際価格に競争できる国内体制をつくるというのは、率直に言って困難。ネギは、作付から生産、出荷まで一年かかる作物。そういったことを踏まえ、構造改革を進める。セーフガードの確定措置が発動された場合には、この四年間という、ある意味で構造改革期間を預かっている中で努力していかなければならないと考えている、こういうふうに説明をされております。
私は、国内体制づくりにセーフガードでも認められている四年間、これがどうしても必要だと野菜課長としても認識をされている旨を説明されているわけです。ですから、一刻も早く本発動を大臣が決意をされて、生産者がゆとりを持ってそういう国内体制づくりに取り組む、その必要があるというふうに思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
○武部国務大臣 一月―三月の輸入量は、対前年比、ネギの場合は七五%増となっておりまして、生シイタケは一二%増、畳表は二一%増というデータの報告をいただいております。四月二十三日の暫定発動でありまして、今後これがどうなるのかという動向をしっかり把握するということは日本政府の務めだ、こう思います。
同時に、来年度予算に向けて、構造調整といいますか構造政策を進めていかなければなりません。生産面でいえば、省力機械の導入や、新品種、新技術の開発普及、規格の簡素化、契約取引の推進等により、品質、コスト面の改善なども図っていかなきゃなりませんし、これはいろいろな面から、消費の面からもいろいろな政策をとっていかなきゃならぬ。認められたルールだからセーフガード発動で輸入をストップする、それで日本の農業の根本的解決にはなりません。
先ほど来申し上げておりますように、こうした分野にありましても、私の出身地は北見ですから、タマネギなども戦々恐々としておりますよ。私も、生産者とも何度も会っておりますし、状況もつぶさにいろいろ聞いております。だけれども、彼らに我々が強く言うのは、こういう許されたルールがあるから発動すれば輸入はふえないんだ、そういうような考え方ではだめだよ、もっと積極的に、生産面でも君たちも頑張ってもらいたい。
また、流通面も、彼らから言わせれば、共産党さんは賛成か反対かわからないけれども、早く高速道路をつくってくれと言うんですから。物流対策をしっかりやってくれ、アメリカから日本に運ばれる運賃と北海道から東京市場に運ぶ運賃と同じじゃとても競争できない、こういうようなさまざまな政策要求もあるんですよ。公共事業はだめだという意見もかなりありますけれども、北海道の農業生産者からそういう意見もあるんです。(中林委員「質問に答えてください」と呼ぶ)失礼しました。
私が申し上げたいのは、政府としては、やるべきことをきちっきちっとやった上で、それの動向を見きわめて、そして本発動をどうするか。必要なときは、これはきちっと堂々とやらなきゃなりませんし、だからといって、そういった動向をきちっと見きわめないで、初めにセーフガード本発動ありきというようなことは少し、責任ある立場に立つ農林水産大臣としてはいかがかなと。状況はよく知っております。
そういうことでしっかり、モニタリングと言ったこと、ちょっと誤解があったかもしれませんが、監視していきたいということを、そして厳正に対応したいということを申し上げた次第です。
○中林委員 今まで、セーフガード発動に向けては、いろいろな論議を重ね、いろいろなルールがあって、それも政府の非常に長い手続だと私たちは思っているわけですけれども、それでも政府がお決めになったルールにのっとってここまで来たということなんですよ。
それで、野菜課長も言っているように、二百日間ではやはり国内体制はできない。だから、四年間かければそれなりの体制ができるだろう。今大臣がおっしゃった国内のさまざまな対応というのはやはりあると思いますね。だから、それもできるだろう。
ここは確認したいと思うんですけれども、二百日ではとてもできないだろうというのが率直なあれなので、四年間はやはり必要なんじゃないですかということを、ここだけはちょっと大臣、確認をとりたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○武部国務大臣 何度もお話ししておりますように、それは、今後のさまざまな動向を見きわめた上で判断しなければならないことだと思います。
○中林委員 ここの委員会でも、セーフガード発動に向けての決議をしております。だから、それも大臣、よく読んでいただいて、全国の農民、消費者も含めてですけれども、今日本がどういうルールをちゃんと行使してやっていくかということを見ておりますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。
さらに、ほかの品目への対象拡大の問題です。
三月十四日に、谷津前農水大臣が、水産物であるワカメ、ウナギについてセーフガード発動に向けた政府調査を開始するよう財務、経済産業の両大臣に要請をいたしました。それからもう既に二カ月が過ぎようとしているわけです。依然政府調査に入っていないわけです。
この問題については、我が党の松本議員が、鮮度が落ちやすいし、在庫費用もかさむ水産物へのセーフガードの発動というのは、今のようにのんびりした検討では間尺に合わないですね、こう指摘をしました。
それに対して、谷津前大臣も、まさに先生御指摘のとおり、私は、できるだけ早く調査をして、できるだけこの辺については対応できるようにしなければならないということで今しりをたたいているというふうな状況でございまして、こういう腐食しやすいというものについては、まさに時間との勝負という言葉はちょっと適切ではありませんけれども、そういうことがありますものですから、それに急がせているということでございます、御理解をいただきたいと思います、こういうふうに非常に早い調査決定をしたいという前向きの答弁でございましたけれども、大臣も主導的な対応をぜひやっていただきたいというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
○武部国務大臣 私も前大臣と同じ考えでありまして、三月十四日に、財務大臣及び経済産業大臣に対して、早急に政府調査を開始するよう要請しております。現在、三省で協議を継続しているところでありますが、セーフガード発動に向けた政府調査の早期実施に向けて引き続き努力してまいりたいと思います。
特に、ウナギ、ワカメにつきましては、輸入品の国内市場占有率が七、八割を占めるということになっておりまして、この価格の低迷というのは、私は素人だからよくわかりませんけれども、七割も八割も輸入品になっていて、さらに価格が低迷するというのは、これは輸入業者といいますか、輸入の面でももう大変なんだろう、こういうふうに思うのですね。したがいまして、そういったことも考えて引き続き努力したい、このように思います。
○中林委員 輸入関係業者の話ではなくて、やはり入ってくる中国だとかそこら辺の労賃が非常に安い、価格そのものが安いから全体が下がっていく、国内のものが下がっていく、そういう仕組みですから、そこの認識はちゃんとしておいていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
さらに、さっき言われたタマネギですね。タマネギだとかトマト、ピーマン、これは、当初農水省がぜひ調査対象にしてほしいという品目から落とされたものです。これについては今監視品目ということになっているわけですけれども、政府調査への移行の見通し、そして今移行していないのはなぜ移行しないのか、その理由、この二点についてお伺いしたいと思います。
○武部国務大臣 タマネギ、トマト、ピーマンについては、現在農林水産省内でモニタリングの体制をとっております。いずれの品目も現在WTOのセーフガード発動の要件を満たすに至っていないという状況にあることは否めません。仮に要件に適合する、その場合は速やかに政府調査を要請していくとの方針で臨んでいるところでございます。
○中林委員 要件に達していないということですけれども、だれが言っているのですか。農水省の要件に達しているから、去年の十二月の段階では品目に入っていたわけですから、どこが要件を満たしていないのですか。
○武部国務大臣 私のいただいている資料によれば、タマネギの輸入量は、一月―三月で九%減っています。トマトは、一月―三月で二八%マイナスですね。ピーマンが四〇%ふえている。そういう輸入量の推移等を見ましても、要件を満たしているということにはならない、こういう理解でございます。
だからといって、発動しないという前提で私ども対応しているわけではありませんで、これは、要件が満たされれば直ちに発動できるような諸般の手続はきちっとしなければならない、こういう考えで臨んでいるわけです。
○中林委員 一カ月、二カ月の話ではなくて、過去三年の平均を出すとかいうようなことでいろいろ計算するわけですよ。だから、そういう数字だけをお示しになってそれが発動要件になっていないと言うことはとてもいただけない、科学的な根拠にはならないというふうに思います。
私は、タマネギ、トマト、ピーマンについては一つの懸念を持っています。それは、アメリカの通商代表部三〇一条報告で、他に日本が調査している品目は木材、タマネギ、トマトであり、これらはアメリカの通商利害が絡んでいるとして、アメリカ政府は日本政府に対して、高官レベルでこれらの措置が輸入に及ぼす影響に関する重大な懸念を伝えた、こう言っているわけですね。
さらに、ロバート・ゼーリック・アメリカ通商代表部代表が、日本の暫定セーフガード発動に対して、この措置は間違っており、日米関係にとっても危険であるとまで言っています。そのおどかしに屈しているのではないか、こういうことを感じるから言っているのです。
アメリカは日本の何十倍もセーフガードの発動をしていて、そのアメリカが、ルールにのっとってちゃんとやる権利があるのに、日本に対してこんなことを言うこと自体、許されないことだというふうに思います。大臣はきちんと反論すべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○武部国務大臣 先ほどのタマネギ、トマトについては、価格のことを申し上げておきましょう。価格は、タマネギが三月は五%アップ、トマトは二六%アップ、ピーマンは四七%アップ、こういうふうになっていることも一つの参考データとして御承知おきいただきたいと思います。
今のスーパー三〇一条報告の件でありますけれども、四月三十日、USTRは、通商法三〇一条に基づく報告書の発表を行い、その中で、日本のセーフガード措置について、いわゆる優先外国貿易慣行として指定される可能性のあるもの、いわゆる監視対象とした上で、WTO協定上の義務との整合性について緊密に監視していくと記述したところでございます。これは、先生お話しのとおりでございます。
米国の認識のいかんを問わず、我が国としては、当該暫定措置はWTO関連協定及び関連国内法令に基づいて発動したものでありまして、これについて諸外国から説明や協議を求められた場合には、その旨をきちっと説明するなど適切な対応をしていきたい、こう考えております。特別、直接はありません。
○中林委員 国際貿易ルールにのっとって初めて日本で発動したわけですよ。これは、私も本当にうれしいし、それからやはり全国の農家の皆さんが、これで一筋の光が見えた、自分は直接それをつくっているわけではないけれども、政府がこういうルールを初めて使ってくれたということで喜んでおります。だから、今監視品目になっているもの以外にも、たくさんの要望が大臣のもとにも来ていると思いますので、ぜひ日本の政府として、今後ともルールにのっとった権利はちゃんと行使していただきたいというふうに思います。
最後にですけれども、農林水産予算の問題なんです。一点だけです。
私は、二月の質問の際に、道路特定財源と同様な扱いになっている農免農道予算について取り上げました。この予算を所得補償や価格支持予算に振り向けることを要求したわけですけれども、その後、五月十一日の参議院本会議で塩川財務大臣は、特定財源の使途はさらに広範囲にわたってもいい、こうお述べになって、五月十四日の予算委員会で総理も、道路特定財源について、聖域なき構造改革から見直しの方向で検討したいとおっしゃっているわけですから、当然、農林水産予算の中のその部分に当たる農免農道の予算についても見直しに着手する必要があると思いますけれども、ぜひお考えをお聞かせください。
〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕
○武部国務大臣 先ほどのセーフガードのことについては、非常に御鞭撻をいただきました、御激励をいただいたものと受けとめて、しっかり農林水産大臣としての対応をしてまいりたいということの決意を改めて申し上げます。
なおまた、農免農道につきましては、見直しの具体的内容が明らかになった上で我が方としても検討をしてまいりたいと思いますが、当然私ども事務事業の見直しの徹底はしていこうということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
○中林委員 ありがとうございました。
以上で終わりますけれども、私どもはむやみやたらに公共事業削減を言っているわけでは決してありませんので、一言だけ申し上げておきたいと思います。
○堀込委員長 次に、山口わか子君。
○山口(わ)委員 社会民主党・市民連合の山口わか子でございます。
先ほどから大臣の所信に対する質問が続いておりまして、私が最後となりました。多くの皆様がさまざまな御指摘をされておりまして、ダブっているところはあるかと思いますが、御容赦をいただきたいと思います。
まず、大臣にお伺いしたいのですが、改革断行内閣の一員として、食料自給率の向上を基本とした農林水産業の構造改革を進めると明言されました。そして、改革の名に値する施策を積極果敢に推進するとも言われました。そこで、農業政策について御質問をさせていただきます。
大臣は、所信での平成二十二年における供給ベースで四五%という食料自給率目標の達成を図るために、どういう農業政策を具体的に展開なさるおつもりなのでしょうか。
大臣のお話をお聞きする限りでは、そこのところがよくわかりません。農地の確保、生産基盤の整備、技術の開発などと言葉をおっしゃっていらっしゃいましたけれども、これらの政策と、食生活の見直し運動ではどういう政策が展開されるのかというところが私には見えないわけです。こうした大臣の所信表明で、どうその自給率が達成できるのか、なかなか理解できないところでございます。
現在、このように農業が衰退の一途をたどっている。その原因はどこにあったのか、なぜここまで落ち込んでしまったのか、その追及、政策の評価がないままに現在も未来も語れないのではないかと私は考えております。この点について、今までの政策の反省も踏まえて、大臣がどう具体的になさるのか、お聞かせいただきたいと思います。
○武部国務大臣 基本計画の目標であります四五%の自給率というのは、私も、独立国家としてこの程度の自給率を目標にするだけでいいのかというような疑問は持ちます。しかし、現実問題として、今四〇%、このままでいくと十年後には三八%になっていくということですね。
御案内のとおり、日本の食料の自給率は、OECD加盟国三十カ国のうち二十九番目です。三十番目はアイスランドですから、火山の上にある国ですから、最下位と言っても過言でないんです。そういう状態になぜなったのかということについては、一言で申し上げるのはなかなか容易ではないと思います。
これまでいろいろ努力をしてきたんだと思いますが、よく先輩から聞いた話では、米だけでも一〇〇%にしようよというのが、日本の農政の中にそういう流れがあったんじゃないかということを聞くことがあるんですが、確かに、米は減反の上に減反を重ねても一〇〇%なんですね、主食米は。それだけ食生活が変わってきたということが一つ背景にあるんじゃないでしょうかね。昔は百キロぐらい米を食べたけれども、今もう六十キロを割っているんじゃないでしょうか。そして、飽食の時代と言われるような状況の中で、私のように肥満な人間もいるわけですね。できるだけ余り脂を食べないように、脂肪をとらないようにという努力はしているんですけれども。
したがいまして、私が申し上げますのは、生産面でできるだけ低コストで安い農産物を供給できる体制というものをつくっていかなきゃならないというのは、これは生産面における一つの柱だと思います。
農家の生活、経営ということを考えたときに、農産物の価格を維持するということはなかなか容易じゃありません。したがいまして、そこに所得補償というような考え方を入れて農家の経営の安定ということを重視していこう、そういう政策展開に変わってきている、こう思うのであります。
私はやはり、農家をどう守るか、農家の経営、所得なり経済をどうするかとか生活をどうするかということと日本の食料の自給率四五%を十年後には何とか実現するんだということは、ひとつ分けて考えざるを得ないんじゃないかと思いますね。
そのためにはやはり、足腰の強い、先ほど来申し上げておりますように足腰の強い農家というのはどんな農家なんだ、こういう御質問が返ってきそうですけれども、それはやはり専業的な農家あるいはそういった生産力にたえ得る経営体というものをつくっていかなきゃいけない。
同時にやはり、農林水産業というのは多面的な機能を有する、こういうふうに我々申し上げているわけでありますけれども、地球の温暖化だとか砂漠化だとか、そういったことを考え、なおかつ、人口爆発、将来的には食料の自給状況が非常に逼迫してくる、もろもろ考えた場合に、都市にどんどん人が集まっていますけれども、我々は、自然の恵みに感謝する気持ち、自然の脅威を恐れる謙虚な気持ち、そういうものが日本の心の原点にあると私は思うんです。そういう意味で、やはり農山漁村というものをいま一度原点に返って見直さなくちゃいけないんじゃないか。
農山漁村に住んでいる人々を守るというだけの観点じゃありません。全国民の皆さん方に、農山漁村とか自然と共生するとか、あるいは都市と農山漁村の共生とか対流とか、そういったことは交通手段が発達してきましたから十二分にできるわけですね。
そういう意味で、環境を保全するとか環境を取り戻すとか、そういうことについては国民の皆さん方にも御理解いただいて、一口に何でも農業保護だとか一次産業過保護だというような、そういう議論がありますけれども、都市と農山漁村が対立するというのはよくありませんで、都市と農山漁村が融合した形の中で投資をしていく。
予算措置についても、全国の国民の合意を得ながら、やはりしっかりそういった環境面を考えながら、農山漁村の文化ということも考えながら、充実強化していかなきゃならないということを私は強く訴えてまいりたい、このように思っております。
○山口(わ)委員 大臣の御説明で、日本の農山漁村、林業を支える皆様が本当に納得し、将来に夢を持てるのでしょうか。
実は、私の地域で、私は長野県ですけれども、ある村で、昨年の十二月議会で「米の生産調整に反対し村独自の方針を求める決議」を採択しました。ちょっとこれを読ませていただきたいと思います。
国は、一九九九年七月、食料・農業・農村基本法を制定し、さらに本年三月、同法十五条に基づき、閣議において基本計画を策定した。
また、従来にない考え方で、消費者、食品産業事業者も含め、これからの食料消費のあり方についても言及し、国民的なものにしたいとしている。しかしながら、過去における農業、農山村政策の失政のため疲弊し前途に光明の見えない農山村の現状を直視することなく、耕地利用率の上昇、コスト削減による価格引き下げを求めるなど、生産者への一方的押しつけも多く、素直に納得し計画に向かって歩み出すには余りにも多くの課題が山積しており、簡単なものではないことを指摘せざるを得ない。
我が国食料自給率が低下した要因は明白である。貿易収支の均衡のために洪水的に米を除く食料品を輸入し、農山村から人手と生産意欲を収奪した結末である。
我が村は、明治二十二年村制施行以来、たび重なる国勢調査において一度も人口の減少を見ることなく、今日まで発展を遂げてきた。
この根源をなし得たものは、気候、土壌、良質な水に恵まれていることに加え、先人たちから受け継いだおいしい米づくりを中心とした安曇野らしい農村風土が堅持されてきたことが定住への共感を得ている大きな要因であることは言をまたない。
終戦直後、すべての国民が飢餓の恐怖におののいている時期、いち早く入村開田希望者ともども米生産体制を整え、十万俵に達する県下一の供出量を誇り、生産されるおいしい米は、多くのすし店のシャリ米として高く評価され、その後においてもおいしい米として県内外へ出されている。
減反調整は年々強化されてきた。来年度はさらに、緊急拡大分五万ヘクタール、作況指数が一〇〇以上になったときは需給調整水田五万ヘクタールが加算されることになっている。
今まで、農業立村を標榜し米づくりをその柱にしてきた立場から、減反政策に強く反対しつつも、平等性、協調性を重視し、仲間同士という立場から、より一〇〇%に近い実績で調整に参加してきたが、今、振り返って考えるとき、減反政策は、農業従事者の生産意欲を奪い、荒廃農地を生み出し、農村が活力を失うなど大きな課題を残し、将来に明るい展望を見出すことができない状態にある。私たちは、改めて過去を反省し、新たな観点からの方針を打ち出すべきであると考えている。
近い将来、あずみ野国営公園の部分供用開始を控え、安曇野の原点ともいうべき田園風景、屋敷林、里山が最も色濃く残されている村に対し、公園決定の大きな目玉である安曇野の風情、すなわち四季を通じての田園風景を保持してほしいとの強い要望が、国を初め村内外の関係者から寄せられている。
現在のように、四〇%にも達しようとしている減反政策に埋没していたならば、こうした大局的な要望にこたえることはできず、農業を主産業とする我が村の将来展望も不透明にならざるを得ず、大きな問題である。
山林を育成し、質のよい水の確保に努め、おいしい良質米の生産に誇りを持ちつつ、環境を保全し、安曇野らしい風情を後世に残す責務のある我が村は、展望のない減反政策への迎合を改め、独自方針に基づく米生産計画を樹立すべきである、と言っているのです。
この状況でもおわかりのように、本当に今、中山間地を抱えている村は大変な状況になっているわけです。将来の望みも農作業への意欲もなくなっているというのが現状だと思うのです。仮に、賃金労働者が、月十万円の賃金を来月から五万円にすると言われたら、どうなるのでしょうか。恐らく日本じゅうで暴動が起こるのではないかと思うのです。
こうした胸の痛くなるほどの我慢強い農業従事者、経営者の方々のためにも、生産調整という名のリストラについて、具体的に今後どうお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
○武部国務大臣 今のお話を伺っておりまして、私ども北海道でも米をつくっていたんですね。そして、今や半分以上が減反です。
私どもの地元でも、米しかつくれない海抜の低いところもあります。しかしそれでも、まあ適地適作というようなことで、ひどい人は、北海道はヤッカイドウ、ヤッカイドウの厄介米というような本当にけしからぬことまで我々は言われて、立腹しました。
しかし今は、腹は立てたけれども、その米しかつくれない、水田畑にしかならないところも、タマネギだとか野菜だとか小麦だとかいうことにかわっています。これは基盤整備のたまものですよ。そういったところに国が思い切った投資をした、公共事業としてやったから、そういった克服もできているわけです。ところが、それを克服したかと思うと、今度タマネギが輸入の問題などに遭遇して、本当にみんな迷っている。お話は私、よく理解できると思います。
ただ、どういう政策をとっていくべきかということになりますと、やはり国民本位ですから、国民の皆さん方にも食生活を変えてもらいたいと思います。もっと穀物類をとって、米というものを見直してもらいたいと思う。
しかし、現状では余っているのですね。米が余るとどうなるかということになれば、値段が下がるんですよ。値段が下がって、また農家が苦しいことになるということでございます。
やはり私どもは、適切な生産調整というものは避けられないということに加えて、新たな作付転換ということについても思い切った支援をしていかなければならない。基盤整備もそうですし、それから省力機械等の導入などもそうですし、生産面については、少しでも安いコストでいい品質の農産物が供給できるような体制をつくっていかなければならないと思いますし、消費者の皆さん方に、私は本当にもっと協力してもらいたいと思いますね。何かというと農業過保護論というものが消費者の間から出てくるというのは、私は残念だと思うのです。
したがいまして、我々も、消費者の皆さん方に好まれる、消費者のニーズに見合った、そういったものをつくり、供給していくという努力もしていかなければなりません。食品産業の世界でも同様だと思います。やはり、販路の拡大でありますとか消費の拡大というものは食品産業に負うところ大なものでありますから、そういったものを総合的に、ありとあらゆる手を尽くしてやっていかなければならぬ。そのためには、一言で構造改革と私は申し上げましたけれども、構造改革というのはリストラじゃありませんで、そのことは、今後、委員会の議論を通じて明らかにしてまいりたいと思います。
残念ながら、昔のノスタルジアに浸ってタイムトンネルをくぐって元に戻るということはできないわけでございます。その上で、新しい農山村の可能性というものをどう切り開いていくか。
私は先ほど申し上げておりますように、農山村に今住んでいる人たちだけじゃない、東京の人たちも、都会の人たちはみんな田舎を求めているじゃないですか。そういった方々に、地方や田舎、農山漁村を見直してもらえるように、提供できるような政策展開というものを私は考えていくべきだと思います。これは、農林水産省だけではできません。全省庁挙げての大事な課題だ、かように思っております。
○山口(わ)委員 実は、農山村の皆さんが本当に悩んでいるのは、もうここの場で生活ができなくなっているからなんです。それは、都市との交流も大事かもしれません。でも、都市との交流をするべき農山村がどんどん壊れていって、環境破壊されて、なくなってしまったら、とてもじゃないですけれども交流などできるわけはないと私は思うのです。
例えば、長野県の例で申し上げますと、二〇〇〇年の農業センサスでいきましても、農家数はどんどん減っているんですね。耕作放棄地は初めて一万ヘクタールを超えたということで、もう棚田なんというのは見たくても見られないという現状になっているわけです。そして、田畑は荒れ、山は荒れ、動植物はどんどん死に絶えている。
今、私たちの日本の中で何を守らなければいけないか。これはやはり農業を支えてきた農地そして山林、海、そういう自然の資源をどうやって守っていくかということがとても大事であって、それが基本にない限り、私は、都市との交流なんて言ったって、ちょっと実現しないんじゃないかなというふうに思うのですね。
そういう面で、もう一つ大事なことは、そこを支えている担い手をこれからどう育成していくかという問題がとても大事だと思うのです。
例えば、お米がつくれなくても、お米をつくれるような環境をつくるということがとても大事だと思いますし、やはり野菜もそうですが、今高齢者が、あるいは女性が農業を担っているんですよ、ほとんど中山間地では。そこへ重たいタマネギを植えてつくれと言われても、なかなか能力的にも体力的にも続かない、何といっても、それはお米をつくることが一番合っているわけですね。そういうところにいろいろな作物をつくればいいじゃないかと言っても、つくればつくったで価格が下がってしまう、収入にはならない、そして補償もない、そんなところになかなか農業で残れと言っても無理じゃないかというふうに私は思っているんです。
実は長野県でも農業を支えているのは女性という、ほとんど女性が支えているわけでして、この女性の農業従事者を、何とか生きがいを持てる、少しでも夢のある制度に、そういう皆様が農業に従事できるようにということでいろいろ工夫をしまして、長野県独自で農村生活マイスター協会制度というのをつくりました。
これは長野県独自のものでして、長野県で独自に予算をつけて、農村の皆様の、特に女性の皆様の地位向上、あるいは農村社会の発展を目指して地域の農業の振興、新しい望ましい農村生活の推進を図ろうと長野県は独自で一生懸命やっていてくださっているわけです。もちろん予算は、国にはあるのかないのかよくわかりませんけれども、独自でこの事業を進めていまして、会員数もかなりふえてきているんですね。
ですけれども、女性の従事者というのは、あくまでも、経営者であるというよりはお小遣い稼ぎと言った方がいいのでしょうか、ほとんど扶養家族としての扱いしか受けていないのが現状です。もちろん年金でも、農業経営者である夫が亡くなっても遺族年金はもらえないということで、非常に将来不安な女性の担い手がたくさんいるわけですね。
こういう状況を大臣は多分おわかりだろうとは思うんですけれども、実は、この所信の中に余り担い手のことについて触れられていない。そのことについて、今農業を支えている人たちをどうするかということをやはり第一に考えていただかないと、いつも、消費者がどうの、都市との交流がどうのということになっちゃうので、そうじゃなくて、基本的には、やはり今の農業を支えている、あるいは林業や水産業を支えている人たちをどう政策として、夢のある、そして本当に農業を担っていてよかったという、そういう政策にしていかない限り、恐らくだめになっちゃうと思うんですね。その辺をぜひお答えいただきたいと思います。
○武部国務大臣 担い手のことでありますが、今山口先生御案内のとおり、農村における女性というのはお小遣い稼ぎというようなことになっちゃっている、こういうようなお話がありましたけれども、私はいろいろな農業があっていいということを最初に申し上げましたが、老夫婦がお米をつくったりして、野菜をつくって、息子たちや親戚や孫たちに送る、太陽をさんさんと浴びて元気に頑張る、これは国家的に、健康を維持しながら家族とのきずなをしっかり保ちみんなに感謝される、これはお金に換算したら大変なものだと思いますよ。そういう人たちも大事。
それから、サラリーマンが定年になってから農村に行って、そして農業をやろうという人たちにそういうチャンスを与えるためには、そういった基盤をつくらなくちゃならない。これも大事。
それから、女性がお花をつくったり田んぼをつくったり一人で頑張っている、こういう人たちも、何とかやりたいという生きがいを持ってやるということは、国家的に見たら、これはお金に換算したら非常に大きなものだと私は思うんですよ。
ですから、そういったことを今忘れているということは――認識は同じなんです。そういった人たちがやり得るようにということを前提に考えるならば、もう随分高齢化していますね、すべてが。
だから、担い手ということになれば、食料供給、国民のいわゆる四五%のうちの八割以上の自給率を担うという人たちと、そうじゃなくて、そういう女性で頑張っている人、老夫婦で頑張っている人、サラリーマンをやめてふるさとへ帰って頑張る人、あるいは、今まだ勤めながらでも農村に行って、自分の田んぼを持ったり畑を持っていて、それは住まいが二カ所にありますと三百六十日いませんから、結局できなくなっちゃうんですよ。みんなあきらめているんですよ。
しかし、ちゃんとそれを管理してやったり、もし来たときには機械を貸してやったり、苗を用意してやったりする、そういったものがあれば、私は、理想論かもしれませんけれども、一億二千万国民が、みんな自然と共生し、農業を大事にして、自然に感謝し、自然の脅威を恐れる謙虚な気持ちというものを、日本の心というものはそこから広がっていく、私はこう思っているんです。
そういうために、農林水産省としても、女性の農業者がみずからの意思によって経営に参画したり、あるいは今申し上げましたような多様な形で農業にいそしむ、そういう環境整備をしっかりやっていこうということで、そういったものについて、きのうも男女共同参画社会基本法に基づきまして農林水産省にも本部をつくりました。遠藤副大臣が本部長になりまして対応しているわけでございまして、今いろいろお話がありました御趣旨を踏まえて女性農業者の支援対策というものを具体的に進めていきたい、このように考えておりますので、ぜひまた御意見、御指導を賜りたいと思います。
○山口(わ)委員 なかなか私の御質問にお答えいただいていないので本当にがっかりなんですが、人間やはり空気を吸ったり水を飲んでは生きていかれないんですね。農業をやるからには、やはりそこで生活していかなきゃいけない。そのことがとても大事であって、私は、大臣が、では女性の皆さんに所得補償をしようとおっしゃるのかなと思ったら、言われませんでして、とてもがっかりいたしました。
ぜひ、そこで生活できるような、公共事業も確かに大事かもしれませんが、公共事業を割いても、農村で生活している高齢者や女性や若い担い手の皆さんの、認定農家だけじゃなくてそういう皆さんのやはり施策をもっと具体的にぜひやっていただきたい。せめて所得補償くらいは考えていただいてもいいんじゃないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
最後に、森林・林業・木材産業に関する施策について御質問をさせていただきます。
大臣は、森林が果たしている国土の保全、水源の涵養、地球温暖化の防止など、多面的な役割、機能について所信で触れられました。
森林の持つ多面的な機能を発揮させるためには、当然のことですが、森林の保全、整備を担う人材の育成等が重要です。しかし、森林の担い手の状況は大臣も御存じのとおりです。担い手育成に対する大臣の具体的施策をお聞かせいただきたいと思います。
また、森林・林業基本法を早急に成立させることが関係者の皆様の願いでございます。基本法成立へ向けた大臣の決意をお伺いしたいと思います。
実は、長野県でも田中知事は脱ダム宣言をいたしましたが、何といっても造林に力を入れていきたいというふうに考えております。今、山は荒れ放題です。クマが時々襲ってきたり、カモシカでけがをしたりする人がふえていますが、そういう動物たちさえも山から逃げ出すような森林の荒廃ぶりです。ここに手を入れるためには、きちっとやはり担い手の育成をしていかなければいけないし、担い手に対するやはり補償をしていかなければいけない。
そのことがとても大事だと思いますので、ぜひ、基本法を成立させていただくと同時に、担い手育成に対する大臣の御決意をもっと具体的にお聞かせいただきたいと思います。
○武部国務大臣 ただいま山口先生から、林業基本法については早く成立を期すべきだというお話を賜りまして、意を強くしております。今までの考え方から、森林・林業、木材の多面的な機能というものにこたえる立派な法案でございますので、よろしくお願いしたいと思います。
わけても、担い手の問題は本当に山では難しいですね。ひところ、バブルが盛んな時期に私どもの北海道で人がいなくなりまして、一番最初に山林労働者がいなくなりました。そこで、フィリピンだとか東南アジアの国から研修生として労働者を入れて山の仕事をやらざるを得ないというような、そういうときもありました。
しかし、もうそんな急場しのぎのことはやっておれません。お話のとおり、担い手というものをしっかり確保しなければなりませんし、山をどうやって守るかということについても、これは産業面だけの問題でありませんで、やはり山は、森林は、空気浄化作用をしているわけですね。地球温暖化を防ぐために大変な貢献をしているわけなんです。
私どもは、河川を守るために、洪水だとか泥水が出てこないために、漁協の組合員、漁師が山に木を植えに行っているのですよ。そういうような努力をしているわけで、私は、党の会合ではGKOをつくろうと言っているのです。富山県には緑の十字軍というものが、学生、東京から行って、もう何十年にもなります。グリーン・キーピング・オペレーションというようなものをつくって、政府専用機を使って、東京の人たちや大阪の人たち、みんな北海道や信州の山へ行って、そして働いてもらう。もう森林・林業というのは大変重要だ、私は山の中で育ちましたからね。ですから、そのことはよく理解しているつもりでございます。
具体的な担い手対策というようなお話がありましたけれども、私もまた、笑われるかもしれませんが、私の志、夢は、森林とか林業とか農業とか漁業とかというものは、一億二千万全国民にもう一度目を向けてもらおうという、そういう考えなんですよ。それはできますよ。今言ったように、グリーン・キーピング・オペレーションみたいなことをやれば。
そのために、もっと国は基本的な政策等をもって、投資もしなければなりませんし、個人金融資産千四百兆円もあるではないですか。銀行に預けたって利子がつかないのですからね。そういった、山を買うとか、それで枝落とし、下草刈り、いろいろな仕事がありますから、みんなで出かけていって、やってもらう。しかし、そこでしっかりした指導者、指導的な、そういったものをリーダーシップをとってやれるような人々が常時いなければならぬことは言うまでもありませんので、これからも積極的に努力してまいりたいと思います。
○山口(わ)委員 どうもありがとうございました。
○堀込委員長 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時三分休憩
――――◇―――――
午後零時三十三分開議
○堀込委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
内閣提出、水産基本法案、漁業法等の一部を改正する法律案及び海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君、農林水産省農村振興局長木下寛之君、水産庁長官渡辺好明君、厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君及び環境省環境管理局水環境部長石原一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○堀込委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古賀一成君。
○古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。
水産基本法ほか二法、前森内閣のもとで審議が始まりましたけれども、きょうは新小泉内閣のもとでの第一日目、冒頭質問させていただきます。
前回、農業者年金基金法の折に関連で質問をいたしましたけれども、今度、大臣そして副大臣、政務官、皆さんおかわりになりましたので、前回と若干重複するところもあるかもしれませんが、大変重要なところは私は再度確認をさせていただくこともあろうかと思いますので、お許しをいただきたいと思います。
まず、提案されております法律そのものについてでございます。
今回、水産基本法の新規制定、そして漁業法の一部改正、海洋生物資源保存管理法、こういう三本が出ておるわけでございますが、沿岸漁業振興法にかえて三十八年ぶりに水産基本法を制定されるということに相なっておりますが、この点、基本的にどういう成果と反省の上に立って、あえて水産基本法という法律体系になったのか。
つまり、沿岸漁業振興法は、どちらかというと現場の、そして零細なる漁業者への対策を講じた法律であったのですね。今回、水産基本法ということで、法律を見てみますと、国際的な問題であるとかあるいは加工、流通を含めた水産業全体に配慮するとか、よくなった面はたくさんあると思うのですが、私は、要するに、スマートになり過ぎたゆえに、今の漁業関係で一番問題になっておる零細漁業というものがこれでどうなるんだろうかというところに一つ懸念を持ちます。
そういう思いも込めましてこの質問を出しました。大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
○武部国務大臣 古賀先生御指摘のとおり、昭和三十八年に制定された沿岸漁業等振興法は、当初、他産業と比べ立ちおくれていた沿岸漁業等の発展とその従事者の地位を向上させることを目指していたものでございます。
この方向に沿った施策の実施によりまして、漁業の生産性が向上し、漁業生産量もピーク時の昭和五十九年には一千三百万トンに増大するとともに、漁業者の所得も、漁家所得が勤労者世帯を上回るなど一定の成果を上げた、このように考えております。
今先生御指摘の、沿岸漁家の中でも規模の小さいそういった方々もおられますが、私どもの地元におきましても、こういった方々も最近は法人化というようなことにも対応してそれぞれ安定している、そういう方向になっております。
しかしながら、相対的にはそういうようなことが言えると思いますけれども、四十年が経過した今日、本格的な二百海里体制へ移行いたしまして、周辺水域の資源状態も悪化しているということで、漁業生産もどんどん減少しているというような現況でございまして、沿振法制定時には予期し得なかった情勢の変化が生じてきている、かように思います。
そういった状況から、水産物の安定供給や品質、安全性の確保等に強い関心が寄せられるようになってまいりまして、沿振法に示した政策方向では現実の課題に的確に対処し得なくなってきている。
同時に、有明海もそうでありますけれども、私どものサロマ湖にいたしましても、環境の問題ということも重要な問題になってきておりまして、水産施策全般を総合的に見直して、従来の政策にとらわれることなく、新たな理念のもとに政策の改革を断行すべく、水産物の安定供給ということと水産業の健全な発展ということを基本理念にいたしました水産基本法を提出させていただいているわけでございます。
○古賀(一)委員 今大臣の方からこれまでの施策にとらわれずというお話が出ました。それはそれで大変重要なことだと思うのですが、私は、この水産基本法制定、これ以前のいわゆる沿岸漁業振興法についてもそうでありますが、農林行政、本当に水産業あるいは林業、農業について、今までも、霞が関の農林省の本館においていろいろな政策が出てきます。しかし、一番現場が重要な農林水産漁業について、私はかねてより、本当に現場の声、現場の悩みを聞いているのだろうかということをよくよく思ったことがあるのですね。
今回の法律は大変スマートになっております。基本法なるものが農業に引き続いて水産そして林業と出ますけれども、私は、いわゆる本当の現場主義というものが一番大切にされるべきこの分野において、今までも現場への調査というか目というものがなかったように思う。
これが今回の大変スマートな、グローバライゼーションに対応したんでありましょうが、水産基本法ということで、こういう法体系になったのは、それはそれで評価しますけれども、今漁業が抱えております後進的な部門の積極的支援というニーズは、とりわけ私の地元有明海の漁業を見たときに、今までにも増して必要な気がいたしまして、この点は、今までの政策にとらわれないという視点は非常に重要でありますけれども、今後、さらに一層、現場主義というか人間臭さというか、そういう点について、農林行政、水産行政はもっと体質的に配慮すべきだと思います。
それで、私は実は、この質問をぜひさせてくれということで、連休前に勉強をしました。その後、自民党の総裁選なるものがございまして、政権がかわるということで、大分待ちまして、その間、かつて勉強したものを、きょうは一時間いただいたので、とことんやろうと思っておりましたけれども、この一月間、相変わらず地元の有明海の問題というものは、地元でも悩みはさらに広がっている面がある、そして、漁業関係者も私のところにしょっちゅう来られる。
そして、実は、四日前、五月十三日は、柳川の市民会館に千数百名集まってのいわゆる総決起大会が再び開かれた。その二日前には、組合だけではいけないということで、有明海をよくする有志の会が集まって、これも千名ぐらいの人が実は大シンポジウムをやったというふうに、そういうことはずっと私は聞いてきています。
その中で、私は、水産基本法は大変スマートに、体系としては新しいものに衣がえしたんだけれども、私の現場、有明海、そして諫早湾干拓を見たときに、本当にここの法律の精神に書いてあることが現場で生かされているんだろうか、逆じゃないかと思うことも、私はこの一月、あるいはもっとさかのぼればもう十年ですけれども、感じておりまして、私は、有明海をテーマに、構造改善事業のいわば欠点、体質、あるいは行政の一つの思い上がりと言ってもいい分野があったと思う、そういう面につきまして、ひとつただしていきたいと思うのです。
第一問目でありますが、私は前大臣、谷津大臣に申し上げたとき、対局長に質問しましたけれども、大臣が横でお聞きになって驚かれて、答弁を二度された問題がございます。それについて、まず新大臣に一つ認識をお伺いしたいことがございます。
それは、諫早湾干拓事業です。これが及ぼした有明海の環境そして漁業への影響というものを、詳しくは結構でございますが、やはり総体としてどう受けとめておられるのか。ひとつこれの基本認識をぜひ御披露いただきたいと思います。
○武部国務大臣 私はまだ就任間もない状況にありますし、先般、諫早湾岸の諫早市長や漁民の方々もおいでになりまして、あの干拓事業の長い長い歴史の経緯も聞かせていただきました。民主党の国会議員さんも一緒においでになりました。長崎県の知事さんもおいでになりまして、いろいろお話を承りました。
しかし、私はそのときお答えしたのは、私は、国会の日程の都合もあるけれども、みずからが現地に赴いて、この目でいろいろ確かめたい、したがって、現時点において予断を持って考えることは避けなければならないと思っている、このように申し上げた次第でございます。
有明海の環境や漁業へ諫早湾の干拓事業がどのような影響を及ぼしているかということについても、さまざまなことは伺っておりますが、私は、このことについても、現時点において予断を入れないで、どんな問題があるのか、どのような解決方法があるのかということを考えてまいりたい、このように思っております。
ただ、私どもも、オホーツク海に面した小さな町で育ってきたものでありますし、私どもの地元にはサロマ湖という宝の湖がございます。ここには、かつて私が道議会の水産委員をやっているときに、流氷が入ってきて、ホタテの養殖の全施設が壊滅したときがございました。そのときの漁業者の嘆きというものは言葉に尽くせないものがございます。
さらにまた、さまざまな要因があるんだろうと思いますけれども、私どもの地域は酪農地帯でもあり、畑作地帯でもあり、サロマ湖というのは、これは湖沼でありまして、所管は建設省、河川になるんですね。
河川になっているわけでございまして、今、恐らく三メートルぐらいの、ホタテの排せつ物でありますとかさまざまな土砂が堆積して、このままではいずれ死の海になってしまうんじゃないかというような、そういう心配が出されております。
第二湖口というものを切り開いて潮通しをよくして、環境浄化に全力を尽くしてまいりましたし、流氷が入らないような施設も、これは漁港の予算でやりましたし、今なお漁民も、有明海のことも目にし、耳にし、このままではいけないというようなことで、対策を立てようということで、立ち上がっております。
こういったことを通じて言えるのは、基本的な考え方は、やはり我々は自然の恵みに感謝する気持ち、自然の驚異を恐れる謙虚な気持ちというものを忘れてはならない。
さまざまな技術革新のもとにいろいろな技術が進んでまいりました。宇宙にも行けるようになりました。その技術の過信が、ともすると自然を怒らせてしまっている、天罰のような仕打ちになっているというような、そういうようなことがあってはいけないな、こう思いまして、私ども、身近にサロマ湖がありますし、まだ有明海には行っておりませんけれども、ビデオを見たり新聞を読んだりしながら、やはり自然と調和する、そういうやり方というものを何事においても考えていかなきゃならぬ。
これは、技術者もそうですし、生産者もそうですし、国民一人一人がそういうことを原点にしてもう一度立ち返って考えなきゃならないのではないか、こんなような認識であります。今後、現地にも赴きまして、いろいろお話も聞き、自分の目や耳で確かめたい、こう思っておりますが、先ほど申し上げましたように、今現在、予断を持って考えるべきではない、そういう立場でございまして、古賀先生のまたきょうこの議論を通じての御指導もちょうだいしたい、かように思っております。
○古賀(一)委員 大臣の方から、予断を持っては判断してはならない、しないというお話がございましたけれども、でも、これは確かにそうかもしれませんが、よくよく考えると私はおかしいと思うのです。
といいますのは、有明海の病理につきましては、例えば有名なタイラギという貝がありまして、これはこの十年間、ほぼゼロです。アサリも激減であります。そして、私が少年時代にとっておりましたアサリの浅瀬、干満の差が六メーターも五メーターもあるのですが、本当に大勢の人たちがたくさんの船に乗って、ちょうど今ごろでありますけれども、海へ乗り出して、あの干潟でアサリをとるのです。五メーターの水が全部引いちゃうのです。その浅瀬というものが今本当に狭くなっているのですね。そういう現象はもうとっくに起こっているのです。
そして、例の諫早湾干拓の造成。そして、漁民の皆さんはギロチンと呼んでおりますけれども、あの堤防による内海と調整池の遮断、その後にもいろいろなことが起こっているわけです。そして、去年の色落ち、ノリの色落ちというのは、それだけじゃないのですよ、ほかにもたくさんの現象があるわけで、予断を持って結論は出さないというのは、もうその時期は過ぎておるのではないか。
むしろ、大臣は着任されたばかりでありますから、今私はこう思うというのは言えないにしても、大臣として、これだけ深刻な結果、そしてマスコミでの取り上げ方もあります。
事務当局に、今の段階でどこが問題だ、そういうのを一つ一つチェックしながら、第三者機関ができたからその結論を待つということなんでしょうけれども、漁民の皆さんは、この前谷津大臣に申し上げましたけれども、ノリが今度始まる十月まで何とか結論をとおっしゃったけれども、三月からことしの、今期のノリの栽培は始まるのです。そのために二百万、三百万、金を借りないといかぬ、借りていいのだろうか。
今、有明漁民の皆さんが、四日前にもやった、六日前にもあれだけの決起大会をやって、何とかしてほしいというのはそこにあるわけで、予断を持たないということは重要であるにしても、そろそろ方向性、あるいは今わかった問題点というものは、大臣はぜひ叱咤激励して、事務当局から聞いて次なるアクションの準備をしていただきたい、かように私は強くお願いを申し上げたいと思うのです。
もう起こっている現象を説明しますと山ほどありますのではしょりますが、いわゆる予断を持って判断しないというスタンスだけではなしに、漁民は次をどうしていいか悩んでいる、そのときに、やはり農水省としてその方向性、問題認識というものをそろそろ一つ一つ出していただかなければ、余りにも漁民の皆さんがかわいそうだということを申し上げておきたいと思うのです。
二番目に、今、いわゆる技術上の過信あるいは自然への謙虚な気持ちという大臣のお言葉がございました。私も全くそう思います。
しかし、私は、今からるる言ってもしようがない、過去の話になりましたけれども、今後の構造改善事業、あるいは干拓事業もそうです、これの一つの教訓とするために、あえて過去の話でありますけれどももう一度指摘しなきゃならぬことがございます。それは、この前も聞きましたけれども、諫早湾の湾口中央部におけるいわゆる防潮堤防及び干拓地造成のための砂の採取であります。
これはこの前も申し上げましたので簡単に申し上げますが、私は、有明海のそばで育って、この十何年、漁民の皆さんが悩んできた、有明海が変貌してきたということは知っておりまして、平成二年に初当選して以来、いわゆる有明海の砂の埋め戻し、覆砂事業というものに本当に頑張ってきたつもりです。水産庁も協力してもらいました。
そういうことを営々とやってきた中で、実は、この諫早湾干拓のために、とりわけ防潮堤防のために、この前の大臣及び農水省の答弁をもう一回繰り返しますと、諫早湾の湾口部、これは有明海の宝、有明海の子宮と呼ばれておった野崎ノ州、あるいはもう一つ、マエアの州という州があった。これは本当に、カニもタイラギも魚もここで有明海の生命が生まれるということで、関係の漁連の皆さんも大切にしたところの州があるのですね。
実はこの前の局長の答弁で、二千万立方メートルの砂をこの事業のためにとる予定のところ、二百六十万立方メートルは、この宝とした、この前は野崎ノ州と言いましたけれどもあれは訂正をいたします、マエアの州という若干南にある州でございますが、ここからとられたということですね。
これの影響、前大臣は驚かれましたが、私は大臣にぜひこれは告知しておった方がいいと思うので申し上げますと、縦に、南北に幅十五メーター、深さ四メーター強にわたって生命が生まれてくる州をばあっと何畳にも掘っているのですね。したがいまして、水深は、下手すると二メーター、一メーターまで下がる。浅い海です。五メーターの深さの海に四メーターの穴を掘って、海流が満ちてくるときに、それは湾の奥まで行くはずないですよ。その溝に沿って流れていくという海流の変化になったのですね。
私は、有明海の宝と言われたところに、漁業への影響が心配されるこの事業について、何でこういうことをしたのか、自然への謙虚な気持ちというよりも、自然への挑戦というか、そういう事実なんですね。それについて、この影響は、私は大変なものだと思っています。
この点、恐らく大臣は初めてお聞きになったと思うのでありますが、前大臣からお聞きかもしれませんが、今のお話を聞かれまして、今後の、いわゆる構造改善事業、こうした大規模事業のあり方としてどう思われるか、ぜひ御所見、御感想をお聞きしたいと思います。
○武部国務大臣 先生のお話を伺って、想像する範囲でしかお話しできませんが、先ほども申し上げましたように、土木事業であれ何であれ、やはり自然と調和する、環境と調和しながら進めるということを忘れてはいけない、甘く見てはいけない、私はそういう認識でございます。
有明海のノリの不作を発火点にした有明海のさまざまな環境改善といいますか、そういったことについては、先ほども申し上げましたように予断を入れず、いろいろな、今先生が指摘しました砂利採取のことでありますとか、聞いておりますことを申し上げれば、港湾事業の問題でありますとか、あるいはさまざまな、この間ビデオを見ましたら酸処理のやり方の問題でありますとか、私が聞いただけでももう数々いろいろな方々がメールを送ってくれたり資料を送ってくれたりしておりますので、その程度の範囲でしかわかりませんけれども、基本的には環境と調和しつつ物事を、事業を進めていくということが一番大事なことではないのかな。
今、具体的なことにつきましては、お許しいただければ政府参考人に答弁させたいと思いますが、いかがでしょうか。
○古賀(一)委員 それでは、政府参考人の方に関連してお聞きしたいことがございます。
この二千万立方メートルの砂を、当初の計画はこうでなかったというふうにもいろいろな人から聞きます。学者の人からも聞くし、海の男たちからも聞きましたけれども、当初のこの湾口部からの海砂採取計画はどうだったのでありましょうか。その点、御説明をお願いします。
○木下政府参考人 お答えしたいと思います。
私ども、諫早湾干拓事業で当初予定をいたしておりました砂採取でございますけれども、二千百万立米というふうに承知をいたしております。
○古賀(一)委員 では、それを、当初からああいうふうに、湾口部を南北に傷つけるように、溝を掘るようにとる予定だったのですか。
○木下政府参考人 私ども、砂の採取に当たりましては、長崎県の砂利採取要綱に基づきまして二千百万立米の採取を予定していたという段階でございます。ただ、委員御指摘のとおり、これにつきましては、事業の段階で二百六十万立米に変更をいたしております。
私ども、変更した理由でございますけれども、当初、二千百万立米の採取を予定しているその事業の前提としては、潮受け堤防とそれから内部堤防、両方にこの二千百万立米の砂を充てるという予定でございました。
そういうような予定でございましたけれども、私ども、防災効果を発現するのを優先させるという観点から、まずは潮受け堤防の完成を優先させるというふうにいたしましたので、そういたしますと、内部堤防の施工箇所に砂をとったところから直接海上運搬することが不可能になった、また、潮受け堤防を越えまして砂をとったところから採取した砂を積みかえて運搬するというよりは、別途陸上運搬による購入材料に変更した方が全体としてコストが安くなるという観点から、先ほど申し上げましたように、二千百万立米から二百六十万立米というふうに計画を変更したところでございます。
○古賀(一)委員 要するに、防潮堤防の基礎の部分を含め、当初、海から二千百万立米を有明海のいわば生命の根源でもある州からとろうという計画であった。それを、防潮堤防ができたことによって、内部堤防部については運びづらいから壱岐島ほかから持ってきた。後半の部分はわかります。
しかし、私は、先ほど環境に配慮しなければならぬという大臣の当然のお話がございましたけれども、本当に二千百万立米の膨大な砂を、しかも、かつては、大牟田側の近いところでは、同じ農林省の中にある水産庁が覆砂事業までやって有明海の復興をやってくれた、その同じ役所の構造改善局が二千百万立米をそこでとろうと思った。
それで、私が聞くところによりますと、やはり、海に優しいというのか何かわかりません。しかし、七メーター、フライパン状に水をかくようなことはやめて公平にとろうというような計画があったやに聞きますが、結果としては、要するに、もう海流が変化しようが何かわからぬ、もう傷をつけようが構わぬ、もう縦にずうっと掘っていったというのが結論なのですね。
私は、この点、谷津大臣もお会いするたびに、覆砂事業で今度平成十三年度に一生懸命やるということを何度も私に、会うたびにおっしゃいました。
私は、これは構造改善局長や農林省のために申し上げますが、この覆砂事業というのは大変効果があります。私は見に行きました。かつて自分が皆さんの理解を得て覆砂事業をやってもらったところに、海の男たちが来てくれと言って、水につかりながら見ましたけれども、恐るべき、アサリの稚貝がよみがえっていたのですね。
だから、私は、ぜひことしは、農林前大臣は三十億とおっしゃっていましたが、先ほど水産庁長官にお聞きしましたら二十五億とおっしゃっていましたけれども、この額はさておき、効果のあるものは、現場をしっかり見て、評価されて、補正予算があるか何かわかりませんけれども、当面このリカバリーショットというのは、これが一番私はきくと思うのです。私は、これはぜひ真剣に受けとめて検討し、県なりと相談をし、場合によっては県に叱咤、ハッパをかけてでも、この復興についてのリカバリーショットをしっかり打っていただきたい、かように思います。
この点、もう余り突っ込んでいますと時間がないので、次に移ります。
そこで、今の砂のとり方そのものも私は配慮がなかったと思う。次に、この諫早湾干拓事業は、南総計画以来、これだけの長期にわたって環境論争、いろいろなものがありました、他県も巻き込んで。これだけの問題事業について、いわゆる環境と漁業についてどういうアセスメント、モニタリングをやってきたのだろうかと。当然私はやってくれているものと思っていた。漁民の方もそうだと思う。
しかし、最近、あるペーパーを見たのですね。つまり、昭和六十二年に三県漁協と九州農政局長との間で確認書が結ばれました。その第四項に、今後、いわゆる諫早湾の干拓事業遂行に当たっては、「水産業への影響並びに環境の変化を把握するため、定期的に調査を実施する」という確認項目が四項にあったのですね。
ところが、実は、これが平成十年、三年前ですね、漁協の方から、有明漁連の組合長さんから九州農政局長に、ある要望書が行っているのです。そこにこう書いてあるのです。「確認書第四項が遵守され、各種調査が誠実に履行されているとの実感は得られず、困惑致しております。」と。つまり、事業は進んでいる、確認書も結んだ、しかし、どうもその後の水産業なり環境へのアセスというものは約束どおり守られていない。その結果、実は去年の突然の色落ち、こういうふうになったのです。
私は、この点について、今大臣は環境に優しいそういう事業の展開でなければならぬとおっしゃったし、それは正論であります。では、大問題であった、みんなが声を上げて懸念をしておったこの諫早湾干拓事業についての有明海の環境、漁業アセス、あるいはモニタリングというものは、実際具体的にどういうふうに施行されてきたのか、ぜひお答えをいただきたいと思います。
○木下政府参考人 まず、第一点目の環境影響評価でございます。
私ども、諫早湾干拓事業を実施するに際しまして、当時の長崎県環境影響評価事務指導要綱に基づきまして、いわゆるアセスを実施したところでございます。その内容でございますが、諫早湾干拓事業の実施に伴います有明海への影響等につきまして、有明海全体を対象とし、潮位、潮流、水質、水生生物、漁業等に及ぼす影響について予測評価をしたところでございます。
また、第二点目のモニタリングの点でございます。
私ども、諫早湾の湾奥部から湾口部周辺までの区域を対象といたしまして、水質、底質、水生生物など九項目にわたりまして、平成元年以降継続して調査を実施しているところでございます。
○古賀(一)委員 調査をやっておられるとおっしゃった。しかし、これだけ大騒ぎになっても、農林省サイドからのいわゆるそういう科学的データ、これまで調査をした、モニタリングをした、その上での科学的情報というものが出てきていませんよ。とりわけ漁民なり悩んでいる方の心を、私は、動かして、納得させていないと思う。――失礼しました。今のは、案外とっておれば有明海の漁師の人からかもしれなかったのですが、切りました。
では、定点観測とおっしゃると思うのですが、これは調整池に数点あって、影響が問題になっている有明海の部分というものは、聞くところによると一定点しか調査をしていない。それも、一九九九年にはその定点も撤去して、やっていないという話もある。
上の方、表流水の部分は調査しているけれども、有明海というのは、貝も、タイラギも、アゲマキも、メカジャも、ワラスボも、ウミタケも、まあ皆さんわからない動物ばかりだと思うのですが、我々有明の人間は全部知っているのですが、いずれもみんなおいしいのですが、これは全部底地なのですね。そして、有明海のノリだって、結局潮の満ち引き、とりわけ台風が来る、攪拌されて、その底地にある養分なり、場合によっては毒もあるかもしれない、それが攪拌されて、養分となり、場合によっては毒となってノリを侵す。だから、底地ももう当然のことながら極めて重要なのが有明海なのですね。普通のことです。だけれども、この底地については調査をしていない。
私は、本当にもう過去のことを言ってもしようがないので、さっき言ったように、水産基本法が前法律と違ってスマート過ぎると言いましたけれども、やはり行政なり政治というものは法体系のきれいさじゃないと思うのです。本当にこれがどう影響を及ぼすかという現実を想像しながら調査をする、対応していくというのが、私は政治であり行政だと思うのですよ。
私は今、長崎県のそういう基準に基づいてという、そういうことを聞いているのじゃないのです。その点、極めてモニタリングとアセスというものは不十分だったと思う。それは、本当に謙虚に、これは今後のこともあるのです。来年もだめ、再来年もだめといったら、もう有明海の漁業は壊滅します。もうみんなやりませんよ。そういうのがかかっておるわけで、その点私は、今後の話を含めてでもいいのです。
要するに、しっかりと受けとめてやるというその姿勢が、実は今漁民が一番求めているのですね。本当に問題が出たらやってくれる、問題があることをちゃんと調べてくれるというその信頼関係の中で、今の有明海の漁民の人たちは、借金してでも、息子に譲るためにことしもノリをやろうかと思うわけで、借金の残高の多さでやめる、やめないじゃないのです。将来の展望なんです。その展望がかかっておるのがまさにこの調査であり、皆さんの姿勢だと思うのですね。
この点について、私は、あと山ほど質問がありますので、もう質問にしません。指摘として、次の質問に移りたいと思います。
さて、次の問題を申し上げたいと思うのですが、いわゆる調整池です。堤防はもう締め切られました。そして、せんだって調査のために若干の開門が行われましたけれども、今漁民の皆さんが言っておるのは、いわゆる防潮堤防で締め切られた調整池内の水、これが当然、洪水が来る、雨が降る、そのためた水というのは、洪水調整のために、海よりも潮位一メーター下げるように運用するためにつくられた堤防でありますから、水は流れるのですね。その水が汚れているのです。
私は、せんだってもまた有明海、福岡県側から船で全速力でざっと堤防まで三十分で着きますけれども、行ってきました。堤防の周りは何か青白くなってきて、中は牛乳色に近い色になっておるそうでございまして、漁民の皆さんはこう呼んでいますね。毒水と呼んでいるのです。そこまで言われているのです。この調整池から湾外へ当然排水が行われてきたし、これからも行われるわけでありますけれども、大体どのくらいの量になるのでしょうか。そして、その水質というものをどう把握されておるか、御説明をお願いします。
○木下政府参考人 調整池からの排水の実態についてまずお答えしたいと思います。
私ども、河川から調整池に流入する水を諫早湾に排水をしているわけでございますけれども、小潮で排水できない日を除き、ほぼ毎日排水を行っているという状況でございます。
先生御指摘のとおり、調整水位をマイナス一メートルに保つということでございますので、マイナス一メートルを超えた場合に、ゲートを干潮時にあけて排水を行っているという状況でございます。大体一日の排水量は、雨等々の影響もございますけれども、二十万から五十万立米程度という点でございます。
それから、排水の水質でございます。私ども、諫早湾の調整池の水質につきましては、基本的には、調整池に何本か大きな川が流入をしているという点でございますけれども、そのような流入している本明川などの河川の水質を反映しているというふうに理解をいたしております。したがいまして、季節あるいは雨などの影響によりまして変動があるわけでございますが、例えばCODで見ますと、一リットル当たり六ミリグラム前後で推移をしてきているという点でございます。
それから、御指摘のような調整池の水の色でございます。調整池は一般的に水深が非常に浅いという点でございまして、粘土を主成分とする潟土の巻き上げ等が一般的に見られるという点でございまして、水が白っぽく濁って見えるという状況でございますけれども、これはそのように、水質というよりも、諫早湾特有の潟土の巻き上げによるものというふうに認識をいたしております。
○古賀(一)委員 一日平均二十から五十万立米の水が排水されておる、色が白っぽいのは粘土の影響で問題ないというふうに聞こえましたけれども、私は、これはそれだけにとどまらず、もっと緻密に調査をしてもらいたいと思うのです。
例えば、ことしの三月二十二日、北部樋門が開門になりましたね。その前後に地元の学者が調べております。その、ことし三月二十二日の実験の開門の前、実は、善玉プランクトンの一種でございますスケレトネマというのが結構多かったのですね。大半であった。
ところが、あけた翌日以降調べたら、沈降量は岸の方で八倍、沖で四倍にふえ、一番たちの悪いリゾソレニアという、今度の色落ちの大問題になったのじゃないかと言われておる、ちょっと油っこいプランクトンなんですけれども、これであるとか、キートセラスといった大変たちの悪いプランクトンが大変に増加しておる、こういう問題が現実に出ておるのです。
私は、これは、今後この調整池が存在し、防潮堤防が存在する。常に問題になってくる大問題であります。本当に、場合によっては浄化施設を設けないといけないかもしれない。ただ白いあの色という、見たらちょっと私もぞっとするのですけれども、それは恐れるに足らず、念のためだよとおっしゃるならば、そういう科学的な調査をやはりしないと、これはいつまでたっても、切りのないいら立ちと不信感が年々増幅してくると思うのです。これはぜひ、構造改善という立場からいうと余り得意な分野じゃないのならば、いろいろな研究機関、とりわけ環境省なんかもあるわけだし、力をかりて私はやっていただきたいと思うのです。
それで、私は非常に不思議に思うのですが、きょうは環境省にも来てもらっているので、今後、環境行政への一つの問題提起として申し上げますが、水質汚濁防止法という法律があるわけですね。これは、工場であるとか事業場が公共用水域に水を出すときには、これは何ppm以下、これは何ppm以下、これに違反したら罰金、営業停止なんという厳しい法体系になっているのですね。
ところが、本明川ほか三河川から入ってきて、国がつくった堤防でため池をつくった、そこでもし水がさらに悪化し、腐り、それを今度捨てておるとなれば、民間の事業場と工場にはそれだけの水質汚濁防止法を課して、罰則、刑罰までかけながら、一方でこういう国がつくった公共用水域が汚染源になっておる場合、何も適用がないというのは、何か不思議でしようがないのですね。これは、水質汚濁防止法の適用というものは考えられないのでしょうか。ひとつ環境省に御質問します。
○石原(一)政府参考人 水質汚濁防止法についてのお尋ねでございます。
先生御指摘のとおり、水質汚濁防止法につきましては、主として工場、事業場からの排水を規制するということで水質の汚濁を防止するという法律でございます。諫早湾干拓の調整池につきましては、そういう工場あるいは事業場には該当しないということでございますので、水質汚濁防止法の排水規制の対象にはなりません。
ただ、調整池の水質そのものにつきましては、現在工事中でございます。工事完了後の水質目標としての水質目標値を設定いたしまして、それに基づく水質の監視なり改善に向けての努力が行われているという状況でございます。水質の目標そのものにつきましては、工事が完成した後においては、いわば湖沼に準じたような形での水質目標値として設定されているところでございます。
○古賀(一)委員 私は、そういう面で、確かに今までの水質汚濁防止法の体系からいうと想像し得なかった分野だと思うのです。国がやった事業を環境省が取り締まるというのは本来変な話でありますので、まずは構造改善事業の中でぜひ原因を究明し、あしきもの、他への影響があるもの、そういうものは、これはことし一年で終わる話じゃないのですから、これを解決しない限り毎年、毎年、毎年、仮に諫早湾干拓事業が原因でなくても、五年後に何か変なことが起こった、またあれも諫早湾だ、あれも干拓事業だともうずっと言われますよ、私は言われると思う。それは、こういう国営干拓事業あるいは国の事業のあり方として決していいことではない。
そのたびに、長崎県と佐賀県、福岡県、熊本県、あの海の男たちは魚のとり合いをしているわけですけれども、基本的には仲がいいのです。でも、この問題で、長崎県と他三県は、海の男たちもいがみ合うようになったのですね。これは非常によくないのです。私は海の男たちの心まで実は裂いておるということが今後毎年のように続いてもらっては困るのです。
そういう面で、ぜひとも科学的な調査というものをしっかりやる、そしてわかったら手を打っていく、それを新大臣から、そういう方向性、私たちを信頼してくれ、その点を私はぜひここで表明していただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
○武部国務大臣 有明海の宝の海の海域環境あるいは漁場環境を改善してもとの宝の海にするのだということについては、農林水産省はもとより、政府挙げて取り組まなければならないテーマだと私は思います。
関係する省庁と協力して、ただいま先生からいろいろ御意見賜りました覆砂の問題、あるいはまた聞いているのでは堆積物の除去の問題、かなり複合的ないろいろな問題があるのだろう、こう思いまして、漁場環境の改善、海域環境の改善、有明海を宝の海に取り戻すのだということについては全力を尽くして対応してまいりたい、かように存じます。
○古賀(一)委員 私は、きょう、有明海の問題をテーマに、役所にとってはちょっと厳しいことも言ってきましたけれども、最近日本の環境がおかしいと思っているのです。とりわけ人間の生活あるいは陸地で起こっているいろいろなこと、それの矛盾というのが、内海でございますからあそこにたまるのですね。そういう面で、有明海の問題というのは、私は、日本が抱える環境問題のいわば凝縮された形ではないかと昔から思っていたのです。
そういう面で、この有明海の海、あるいはその背後に広がります私の地元であります筑後平野とか、そこでどういうことが営まれ、それが川を通じて流れ、そして有明海の干潟にどう沈殿しという総合的な環境調査というものをやるべき時代にあると私は思うのです。皆さん、どうでしょうか。環境省もお見えになっていますから。
私は大変自然の好きな男なんですが、私が若いころ「沈黙の春」というアメリカの本がございまして、それを二十数年前に読みました。有名な本になりました。いわゆる春になってもチョウチョウが飛ばない、つまり、化学肥料であるとか殺虫剤であるとかそういう科学、人間がつくったそういうものによって、結局鳥も鳴かない、そういう沈黙の春が来るという警告の書であったわけでありますけれども、ことし、私は本当にハチを見ないのですね。チョウチョウも少ない。
私は実家が柳川にありますけれども、まあ何やかんや、柳川のクリークあるいは川下りのコースの水が汚れても絶対へこたれなかった食用ガエルが、この五年、全然鳴かないのです。カエルも激減しています。つぶさに見ると、本当にチョウチョウがいないのですよ。私の実家の庭には別に殺虫剤なんか何もまきませんから、よく春になるとチョウチョウとかハチが飛んで、菜の花の筑後川とか、あそこにもハチは山ほどいたけれども、本当に最近虫が少ない。
そして、私の地元の最上流に例えば矢部川という川があるのですね、あるいは筑後川の最上流もあります。そこの村長さんが言うのです。本当に村人が、渓流の水じゃなくて、水は飲めない、井戸を掘って簡易水道をつくってくれと。そして、その村長さんが、昔に比べて魚の種類、魚の数はもう激減していますよと。それは最上流ですよ。矢部川の源流のあの地帯でそういう現象が起こっているのです。
そして、もちろん都市部においては、合成洗剤やダイオキシンもあるでしょう、いろいろなものが支川を通じ、本流筑後川に流れ、筑後大堰でとめられ、若干においもしています、それが砂をとめ、上水だけが有明海に流れて、水量が減ったために、上げ潮で上がってくる潟が筑後川の大堰の中流まで上がってくるとか、いろいろな現象が起こっているのですね。
そういう面で、有明海なり筑後川、筑後平野特有の問題じゃなしに、何か日本の自然がおかしいし、虫が減っている、そこに危機感を非常に覚えるのですが、そういうことが経年変化的に一番わかるのが有明海じゃないかと思うのですね。
そこで、地元からも陳情が行っておると聞いておりますけれども、私は、徹底的、総合的なそういう環境調査というものを、内海、有明海をテーマにひとつ日本全体のためにやったらいいのじゃないかと思っておるのです。
ついては、環境省を主導に、有明海のいわゆる環境調査システムというか、場合によっては、地元の陳情は研究所を誘致したいという話もありますけれども、こういったものに取り組むいいチャンスだと私は思うのです。この点、環境省、これだけ環境上大問題になった本件につきまして、こういう声が地元から上がっておりますけれども、お考えはいかがでありましょうか。
○石原(一)政府参考人 有明海の総合的な調査についてのお尋ねでございます。
環境省といたしましても、今回の有明海のノリ不作に関連いたしまして、環境の水質の保全につきまして申しますれば、水質の保全ということで常時水質の状況を監視しております。
環境モニタリングと申しておりますけれども、そういうモニタリングに加えまして、ことしのノリ不作に関連いたしましては、とりわけ二月から三月にかけまして、通常の水質の捕捉だけではなく、環境全体を把握する上で特に必要な底質あるいは底生生物についての調査も実施したところでございます。
本年度におきましては、さらにこのノリ不作の原因究明を図るという観点で、第三者委員会において言われておりますように、有明海の海域環境について、農林水産省、国土交通省とも連携しながら総合的な調査を実施してまいりたいというふうに考えております。
それから、都道府県との連携も図りつつ調査を実施してまいりたいというふうに考えております。環境の調査等につきましては、従来から、地方分権、あるいは地域に非常に環境が密接に関係しておるということもございまして、都道府県でのモニタリングという形での実施の仕方をしております。
そういう意味で、関係省庁あるいは都道府県及び都道府県の試験研究機関とも十分な連携をとりつつ、有明海の環境の調査あるいはノリ不作の原因の究明に努めてまいりたいというふうに考えております。
○古賀(一)委員 今度の水産基本法にも調査研究についての新しい条文も入っております。だから、そういう格好いい部分だけじゃなしに、現実に起こったこの分野についても、環境庁も環境省になったんですから、そして時代は環境の二十一世紀と言われる時代でありますから、連携をとって、いいチャンスだと思うんです。
土壌から、気候から、酸性雨もあるでしょう、大堰問題もある、もちろん諫早湾の問題もある。漁業関係、あるいは気象関係、土木工学的な立場、そういうものを糾合して、別に役所をつくればいいという問題じゃないと思います。
しかし、環境省が予算をとってそういう関係省庁と、この問題の本質から見て、地域の特性から見て、こういう組み合わせ、ネットワークでひとつ調べようという音頭を、私は、省になった以上はそのぐらいのことはすべきだと思うし、ぜひともやっていただきたいと思います。
時間が迫ってまいりまして、あとたくさん残っておりますが、最後に、これはまだ具体のお答えは出ないだろうとは思いますが、大臣にお伺いしたいことが一点ございます。
先ほど言いましたように、ノリの年度も新しくなって、今も漁民は本当にいら立っております。今後、いわゆるあの北部樋門であるとか、あの二つの樋門をあけた場合に、逆に汚染されて大変じゃないかという危惧を持っている人もいますが、やはりこれはあけて、少なくも調査をして、原因究明をしてもらわなければ、らちが明かぬだろうという声が大半であります。
そういう面から見て、要するに、防潮堤防を開門して調査をする、そのタイミングというものは今後どうなるのか、検討委員会の動き等も含めて、ちょっと先行きを教えていただきたい、かように思います。これを最後の質問とさせていただきたいと思います。
○武部国務大臣 ただいまの御質問にお答えする前に、先般も環境大臣が現地を調査されまして、その感想等の報告を受けました。環境省あるいは国土交通省ともしっかり連携しまして、今先生御指摘の有明海の総合的な調査というものに農林水産省も全面的に協力させていただきたい、かように思います。
また、ただいまの今後の開門調査の手順、日程等についてでございますが、先生もう既に御案内のとおり、第三者委員会においては、現状把握のための調査には少なくとも門を閉じたまま一年間かける必要がある、こういう報告でございます。また、現状把握の調査が終わっても必ずしもすぐに排水門を開くことにはならず、最も適切な方向を目指す、こういうような提言もございます。
こうした提言を受けて、現在検討を行っているところでございますが、地元関係者の理解を得て速やかに排水門をあけた調査に着手し得るように検討をしてまいりたい、かように考えている次第でございます。
○古賀(一)委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
○堀込委員長 次に、楢崎欣弥君。
○楢崎委員 大臣、副大臣、そして政務官の御就任に心から祝意を表したいと思います。有明海問題、セーフガード問題、そして自給率の向上問題等々、多岐にわたる大きな問題を抱えた時期での御就任ですけれども、少なくとも農政がイエス、ノーのノー政と言われないように、御活躍を期待したいと思います。
冒頭、遠藤副大臣、そして岩永政務官にお聞きをしたいと思います。
五月十四日の予算委員会におきまして、我が党の岡田政調会長から、副大臣、政務官の派閥均衡人事を問われた小泉総理は、大事争うべし、些事構うべからずと答弁されました。些事というのは、ささいなこと、つまらないことと辞典に書いてありますけれども、どうも、大臣、党三役の人事は大事、副大臣、政務官人事は些事ということらしいのですが、この小泉答弁についての御感想をお聞かせください。
○遠藤(武)副大臣 総理の、大事争うべし、些事構うべからず、こういうことのようでしたが、あのときたしか総理は、そのことに対する反問に対してさらに返して、それは揚げ足取りだというふうなことをおっしゃったように記憶いたしております。しかし、総理もいささか言葉が足りなかったのかもしれないと思いました。私どもの役職というか責務は、決して些事とは思っておりません。
実は、一連の国会改革に、各野党の皆さんも含めまして、私も直接かかわりを持ってまいりました。一つは、大臣にかわって官僚が答弁する政府委員制度、これを廃止する。それから、総理と野党の党首が毎週水曜日午後三時から四十分間、NHK生中継によって党首討論を行う。三番目の改革の一つが、一月六日からの省庁再編にあわせて、副大臣、大臣政務官制度を設ける。これは二十二名プラス二十六で、合計四十八であります。閣僚を合わせると、六十名を超す国会議員が、一応、特別職として行政府に入るわけですから、これは大変なことですよと申し上げてまいりました。そこで副大臣は認証官というふうにさせていただいた。
ですから、私は、そういう自分の役職と自分がそういうふうに進めてきた経過というものを十分承知しておりますので、決して些事の部類に入るとは思わぬ。一応、閣僚人事と言いますから、人事が一番大事だったんだというふうなことを、人事こそが大事だったんだということを総理は言おうとして舌足らずだったんじゃなかろうか、こんなふうに思いますので、誤解のなきように御納得いただければと思っておるところでございます。
ありがとうございました。
○岩永大臣政務官 大変高い支持率で総理になられた小泉内閣に、こうして政務官としてその一翼を担わせていただけること、大変光栄に思っておるところでございます。
むしろ、私自身は、小泉総理が構造改革をやっていく、そして私のこの立場の中でどう小泉政権を支えていけるのか、こういう意欲を持って対応させていただきたいと決意をしているところでございますので、些事とは毛頭思っておりませんし、総理がおっしゃった意味については、そのときの討論の、議論の中での話であって、私どもの知る由ではない。むしろ、精いっぱい頑張って、高支持率の小泉内閣をずっと支えて、支持率が落ちないように頑張るのが私の役割だ、このように思っておりますので、よろしくお願いします。
○楢崎委員 個々の受けとめ方はあるでしょうけれども、政治改革の一環として制度化された重要な役職ですので、言葉のあやにめげず、自信を持って頑張っていただきたいと期待をいたします。
本論に入ります。
言うまでもなく、本法案は、資源の大切さ、漁場の大切さ、それを守るための法律であります。私もまた福岡の人間として、有明海問題を避けて通ることはできません。そこで、大臣の認識については今お聞きをいたしました。私も、予断を持たないという時期は過ぎていると思いますけれども、まずは現地を見ていただきたい、早く現地に行って実情を把握していただきたい、そのことを申し述べておきたいと思います。
そこで、私は、今日まで望ましい漁場環境の姿は必ずしも具体的に明らかにされなかったと思います。それがなし崩し的に漁場環境の悪化を許してきた面がある。今回の有明海問題もその一例であろうと思います。だから、望ましい漁場環境をつくり、また保全するために今回の法案が提案されたと考えています。
本法案では、二条の、水産に関する施策についての基本理念で、「環境との調和に配慮」という概念が盛られてはおります。しかし、有明海に見られるように、これまでも一定の配慮が行われながらもさまざまな優良漁場の破壊が進んできたことも事実であります。この際、この「環境との調和に配慮」、ここをレベルアップして環境保全とするのが妥当ではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。
○武部国務大臣 先生の申される環境保全ということが、具体的にどういうイメージでお話しされているか、少しく理解できない面があるのですけれども。
また北海道のことばかり申し上げて恐縮なんですけれども、有珠山は、昨年の噴火の前に、十年ほど前に噴火がありました。そのとき、私ども現地に参りまして、これはもうまさに死の山になったな、こう思っていたんです。ところが、やがて青々と草木が芽生えて花が咲くように、そしてさまざまな動物がすむような、そういう自然に復元されたという事実を見て、私は自然界の復元力の偉大さというものに驚きを持ったのでございますが、そういう意味では、環境に全く手をつけない、そういう考え方ではなくして、環境と調和をしていく、つまり環境というものを望ましい方向に、我々人間の手でできるならばそういう努力も必要でありましょう。
例えて言うならば、北海道の原始河川なんかは、大雨が来ると荒れ果てて、地図とは全く違う方向に河川ができちゃうんですね。ですから、現地の漁師などは、そういうことにならぬように河道整備をやるわけですよ。砂利を取り除いて、大雨が降ってもちゃんとまた秋、サケが遡上できるような、そういう道をつくりながら河道整備をやるんです。ところが、お役所はそれはけしからぬといって、罰せられたりする場合もしばしばございました。しかし、我々現地に住んでいる者からすれば、ほっておくと、洪水になったり、それから河川が全く違う方向に行って、自然が自然を壊してしまうということになったりということがあるものですから。
そういう意味では、私は、全く環境に一切手をつけないということじゃなくて、環境のあるべき望ましい姿というものを守りながら、それを壊さないように、またさらにその目的なり考え方が生かされるように、環境と調和していく、自然の復元力というものを考えながら謙虚に事業を進めていく、水産業を進めていく、そういう意味で、私は、環境との調和ということが、ある意味では環境保全よりも次元が高いんじゃないのかな、こういうふうにさえ理解しているのでございまして、先生の環境保全という考え方、私がイメージしていることと全く同じだとは思いますけれども、環境との調和ということを本法案でうたっているのはそういう意味があるということを御理解いただければと思います。
○楢崎委員 大臣とは若干認識を異にするのですけれども、私は、水産業は環境と生態系に大きく依存している産業であるということを、この有明海問題を通じて改めて知らされた思いがするんですね。私は、保全ということに今後もこだわっていきたいと思います。
ところで、三月二十七日に開催されました第三回調査検討委員会、いわゆる第三者委員会では、条件つきではありましたけれども、排水門開放の結論が出ました。当時の谷津大臣も、最大限尊重すると言われました。これは、諫早湾干拓工事が異変の一つの引き金となっている疑いがある限り、この結論、それに対する前大臣の言葉は当然のことであったと思うのです。
ところが、農水省の、排水門を閉じたままの現状把握に四季を通じた調査、つまり一年の調査が必要との、これは何というのですか、提言というのですか、提案というのですかが、四月十七日の第四回第三者委員会で激論がありましたけれども了承された。どうも農水省の姿勢からは、異変解明への積極性が私は見えないのですね。むしろ干拓事業推進の思惑がのぞくのですが、どうでしょうか。
○渡辺政府参考人 三月の第三回の調査委員会までのお話をいただきました。
私どもは、そこまでの議論の様子で、どういう調査を具体的にやるのか、そしてどういうふうな状況で開門した調査をするのかという球が、言ってみれば行政の方に宿題として投げかけられたわけでございます。
第一の、現状の状態での調査というのは、やはり一年間、四季を通じて海も生物も動くわけでございますので、きちんと一定の期間をかけませんと現状を把握できませんから、そういう点で、少なくとも一年間、四季を通じたというのが、計画の設計として私どもは考えられる方向であるということをお話をしたわけです。もちろん委員会の中には、この種の問題というのは最低二年はというふうな声もございました。しかし、それは開門との関係もございますので、一年間は少なくともということで委員長が取りまとめをされたわけでございます。
それから、開門の問題につきましては、先ほど大臣からお答えを申し上げましたけれども、安全問題、それから開門に伴う環境影響評価の問題、それから模型実験の問題、こういうことが絡みますので、その一年間という期間のうちに、しかるべく準備を進めた上で、再度委員会の御判断を仰ぐということにさせていただいたわけでございます。
○楢崎委員 農水省にとって、この第三者委員会に対して、どういう位置づけというか、性格というか、第三者委員会に対してどのような認識をお持ちでしょうか。
○渡辺政府参考人 第三者委員会、まず有明におけるノリ不作等の状況をきちんと把握すること、それからその原因究明を、きちんと徹底して調査をする、その研究や調査のための計画の樹立をする、それからそれに対して適切な助言指導をする、科学的な根拠に基づいてそうしたことの解析を行って、今後の不作等の対策に係る提言を行うということでございますので、これに足る非常に幅広い分野の先生方にお集まりをいただきました。
しかも、その推薦の方法は、農林水産省なり関係省庁がこの方ということではなく、有明四県で構成をされております、各地域の主として行政機関や試験研究機関の方々による集まりがございますので、そうしたところから御推薦をちょうだいいたしました。したがって、メンバーの方をごらんになっていただきますとおわかりのとおり、相当幅広く、かつ高い知識を持たれた方々でございますし、委員会自身も完全に公開という形で実施をいたしましたので、そういう点では、過去に例を見ない委員会になったと考えております。
○楢崎委員 第三者委員会は独立機関ですね。どうですか。
○渡辺政府参考人 独立機関という御趣旨がいま一つきちんとキャッチできないのですけれども、根拠になる法律その他はございませんが、この種の委員会の機能としては、谷津農林水産大臣がその当時何回も申し上げておりますように、委員会の議論に全幅の信頼を置き、その結論については最大限に尊重するということでございます。我々はそういう点で、委員会、互選で選ばれた委員長の御指示にすべてお任せをしたという状況にございます。
○楢崎委員 委員会メンバーに予断を与えるようなことがないように、やはりこの第三者委員会が公平、公正な判断がされるような環境づくりをしていただきたいと思います。
そこで、本年の二月二十七日、当委員会における我が党の鉢呂委員の質問に対する前大臣の答弁の中で、第三者委員会による中間報告のことが述べられています。谷津大臣の発言は、「中間報告を九月末までというふうに言っておりますけれども、できるだけ早くその辺を取りまとめていただきまして、中間報告をさせていただきまして、そこで即座に対処していきたいというふうにも考えているところでもございます。」これは、ノリの網入れが十月に行われることを考慮に入れた答弁ですけれども、できるだけ早くとか、また即座に対処するという言葉は、私は、やはり排水門開放を念頭に置いた発言だったと思うのですね。
昨日、武部大臣も同様の所信を述べられましたけれども、前大臣と同じ思いといいますか、同じ認識をお持ちでのこの所信であったのでしょうか。
○武部国務大臣 同じような思いでございます。
○楢崎委員 私は、三月一日の予算委員会の分科会でも、この問題を取り上げました。前大臣は、むしろ私の質問を遮るがごとく、とにかく有明海を早くもとに戻しましょうよと強く訴えられました。
今、私の地元である福岡県では、その有明海にアサリガイの放流をしています。総量四百三十トンの予定ですけれども、アサリガイは、一個が一日約九万個の植物性プランクトンを食べる。そして、これはいろいろな説がありますけれども、一日に八十リットルの海水を浄化する能力があるそうです。先ほども出ましたけれども、そのほかに海底に砂をまく覆砂事業も例年より拡大をしてやるようです。
一方では、このようにこつこつと有明海の再生に向けた努力がなされている。一方では、排水門の開放が先延ばしになる。前大臣も言われましたように、今目指すべきは有明海の再生であろうと思うのですね。確かに、異常解明は複合的な面も考えられて、容易でないことは私もわかります。しかし、これからまた一年間閉め切ったままで、さらに状況が悪くなるとは考えられないのですか。いかがでしょうか。
○渡辺政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、私どもは、再生に向けて対策を考えるということが大事であります。そのためには、現状をきちんと把握するというところから始まります。原因が何であるかということがわからないまま対策を打つわけにはまいりません。したがいまして、その現状把握という点でやはり最低限必要なのが、一カ年間、現状の排水門閉鎖状態での四季を通じた調査ということでございますので、それはやはり現状把握の意味できちんと科学的根拠を持った原因究明という点でやらせていただきたいというふうに思っております。
開門の問題については、第三者委員会からも助言がございました。そして、そのためにどのようなやり方で行うのかということについても宿題が投げかけられておりますので、この一年間の調査の期間内に必要な準備、検討を行うということでございます。
○楢崎委員 では、現状把握調査に一年が必要なら、当然、排水門の長期開放調査も必要ですよね。いかがですか。
○武部国務大臣 第三者委員会の委員長の報告を我々最大限尊重して対応したいという中にも、少なくとも一年間かけて閉じて調査をする。さらに、開門しての調査ということも今長官が御説明しましたように、安全でありますとか、環境影響の問題でありますとか、あけたときにいろいろと問題があるさまざまなことも、どういうことがあるかということも十分留意した上で開いてやるというふうなことも、これも第三者委員会の指摘を受けているところでございます。
いずれにしましても、原因究明ということが大前提だろうと思います。その上で、そのためにもどんな問題があるのか、またどんな解決方法があるのか、さまざまな問題にしっかり対応すべきだ、このように心得て、我々は今努力中であるということを申し上げたいと思います。
なお、私自身も、できれば来週には現地に赴いて自分の目で、耳でしっかり確かめたいな、こういう思いを持っておることも申し添えておきたいと思います。
○楢崎委員 今、あけたときのさまざまな問題と言われました。防災のこともあるのでしょう。
ただ、そのシンボルと言われている本明川のはんらん防止のためには、潮受け堤防の長さは半分でいいという説もあるのですね。よく研究していただきたいと思います。
そこで、先ほども言いました、三月二十七日に開かれました第三者委員会で、委員長の清水さんが一回目から三回目までのまとめを発表されたのですね。その中で、清水さんは、調査には時間を要すると考えられるので、原因が科学的に一〇〇%解明されるまで待つのではなく、必要なときには委員全員の知恵を結集して、何らかの提言を行う、そのときは予防原則ないしリスクの低い方向で考えると言われたのですね。
このままでは、一年以上も旧態依然たる状況が続くことになるのですけれども、この委員長の取りまとめとの整合性というか、このまとめはどのように扱われるのですか。
○渡辺政府参考人 今回の有明海の本格的調査、これは二カ年間実施をするということで計画を立てました。年度当初から設計をしていますと立ち上がりが遅くなりますので、前倒しをして、二月、三月ということで準備をさせていただいたわけでございます。
それをもって四月から実施をいたしましても、九月の時期までにはわずかの期間しかありません。十月のノリの網入れの時期に何らかの提言を行わなければならないとすると、そこの時点での提言というものは、データが完全に出そろわない状況で一定の判断をせざるを得ないということでありますので、その時点における、入手をした最大限活用できるデータをもって九月の、漁業者の方々が欲している提言、中間報告にまとめたいということをそういう趣旨でおっしゃられたというふうに理解をいたしております。
○楢崎委員 谷津前大臣は四月十七日にこの第三者委員会の決定を受けて、排水門の開門が延びたことによって、それによってまた不作という事態が起こった場合に備えて、経営安定のための対応を図りたいという発言をされたのですね。それがその三日後、二十日に発表された特定ノリ養殖共済の特例措置ということでしょうか。
○渡辺政府参考人 俗に言うセーフティーネットに一番直接結びつき、一番狭い範囲でいいますと、掛金について負担を軽くする、それから補償について、かなり思い切った補償ができるような共済制度の臨時特例的実施ということになりますけれども、一年間四季を通じた調査になりますので、その間に十月のノリの網入れがございますから、そこに向けた対策をきちんとやってくれという趣旨に私どもは受け取りまして、例えば海域環境を一時的によくする、先ほど御指摘がございましたけれども、覆砂、しゅんせつ、耕うん、それから二枚貝の放流、ノリ漁場の適正な使い方等々をあわせて対策として打ち出したわけでございます。
○楢崎委員 共済、これは保険だと思うのですけれども、これまでの政治家の言動を見ていますと、今度の場合、どうも補助行政の一環として共済が使われているような感じがするのですが、どうですか。
○渡辺政府参考人 共済は、共済でありますので、あくまでも保険設計に基づいてこういう仕組みを考えました。つまり漁業者の方々がお掛けになった掛金の中から、もちろん国庫の助成がございますけれども、甚大なる損害が出たときには高い補償、しかし軽微な損害の場合にはこれまでよりは言ってみると割の悪い支出しかないという、急傾斜の保険設計をすることによってこういったセーフティーネットにつながる、そういうことを考えようではないかということで試験実施臨時特例措置を考えたわけでございます。
○楢崎委員 その共済金の支払いが現行の最大五倍程度になるということを聞いているのですけれども、この特例措置は有明海のノリ漁業者だけを対象にした支援策ということで、それはそれでいいんですよ、ただその共済制度の公平性が問われるのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○渡辺政府参考人 釈迦に説法のようなことになりますけれども、日本のノリ生産というのは、日本の漁業生産が二兆円の中で一千億という、非常に大きなポジションを占めております。とりわけ、有明海のノリ生産というのは四百億でありますので、大変な産業であります。
米に比較していただけるとおわかりになると思いますけれども、言ってみると、作況指数でいえばそれが六割になってしまったわけでございますから、しかもそれが広域四県にわたるということでありますので、その甚大性、広域性、こういうものに着目いたしますと、やはりきちんとした手だてを講ずるというのが行政の役割であろうかと思います。
これはもちろん、生じた損害について今お支払いをするということではなくて、そういうふうな設計を選ぶこともできるような選択肢をふやしたという、これからの対策であります。
○楢崎委員 非常事態ですから、お金でいろいろな支援策を講じられるのは当然ですけれども、事の本質を見誤らないようにお願いいたします。
私も有明海を視察しました。ひどいものでした。私はまず排水門を開放すべきという立場に立つ者ですけれども、若干、少し視点を変えて質問したいと思います。
諫早湾干拓事業ですが、これの着工に至るまでの経過、簡略でいいですから説明していただけますか。
○木下政府参考人 諫早湾干拓事業の着工までの経緯でございます。
まず、諫早湾におきます干拓構想でございますが、昭和二十八年度に調査に着手いたしました国営長崎干拓計画が端緒でございます。その後、昭和四十五年度に調査に着手いたしました長崎南部地域総合開発計画を経まして、事業規模を大幅に縮小し、昭和六十一年度に諫早湾干拓事業として事業着手に至ったものでございます。
それぞれの干拓計画の事業目的でございますけれども、長崎干拓計画では、高潮、洪水の防止、水田、工業用地の造成、農業、工業用水の確保。また長崎南部地域総合開発計画では、高潮、洪水の防止、畑地の造成、農業、水道用水の確保。また現在行っております諫早湾干拓事業では、高潮、洪水、排水不良対策、それから優良な畑地の造成ということになっているところでございます。
○楢崎委員 私は昭和四十一年に大学を卒業したのですが、勘違いかもしれませんけれども、当時、諫早湾干拓事業所というのがあったような感じがしましたものですから。
いずれにしましても、典型的な巨大公共事業ということが言えると思います。これはこれで問題があるのですけれども、諫早湾を干拓地にするということが決定されたことによる諫早を中心とした長崎漁連の方々の、これまた漁場を奪われるという当時の苦悩ははかり知れないものがあったと思います。
その漁場を奪われた漁業者がおかに上がって、生活のために、自分たちの海を奪ったその干拓事業に従事される方も出てきた。そして今、場合によってはですが、その生活の糧を得る場も奪われるかもしれない状況が出てきた。これは当事者にとってはたまらぬですね。行政に対する不信も増大するばかりであろうと思います。こういう状況をどう思われますか。
○木下政府参考人 私ども、委員御指摘のとおり、諫早湾干拓事業につきまして、現場でほぼ毎月百人程度の雇用が行われてきたというような状況でございます。
現在、二月以降干拓工事が中断に至っているという状況でございます。私ども、できるだけ早く、関係漁業者の理解を得て工事を再開したいというふうに考えているところでございます。
○楢崎委員 言わずもがなのことを言われましたけれども、有明海異変で被害を受けられた方々は当然のことながら、こういう長崎漁連関係者もまた被害者であろうと思います。
その干拓事業の継続か中止に大きな影響を与えます本年度の時のアセスは予定どおり行われるのでしょうか。
○木下政府参考人 私ども、国営土地改良事業の再評価でございますが、事業採択後五年ごとに実施をしているものでございます。
諫早湾干拓事業を含めました六つの国営事業につきまして、九州農政局で再評価を行う予定でございます。例年、五月末あるいは六月初旬から始めまして、翌年の概算要求に間に合わせるよう実施をしているところでございます。本年につきましても、十四年度の概算要求に間に合わせるべく実施をするというふうな予定であると承知をいたしております。
○楢崎委員 四月七日に、学者を含む市民団体の時のアセスが発表されたのですけれども、費用対効果が、農水省の見込む投資効率一・〇一倍を大きく下回って〇・三倍未満しかなくて、干拓事業の中止と干潟の復活が必要と提言されました。算定方式はもちろん違うと思いますけれども、〇・三〇倍未満なら土地改良法に違反することになるのですね。
農水省の評価は、干潟の浄化能力の経済価値をゼロとしている。費用に算入されていない。また、その経済効果の約六割を占める災害防止効果のうち二分の一は、高潮から守られる湾内の旧堤防の価値としていますから、経済効果の約三割が、機能不全に近い状況にある旧堤防の被害想定額ということになっているのですね。このようなものが効果として計算できるのか、甚だ疑問に感じます。
市民団体の時のアセスは、干潟の浄化能力を経済価値としてカウントしてあります。同時に、旧堤防の機能不全による経済効果劣化等を考慮して投資効率がはじき出されているのですが、それが〇・三〇倍未満となっているのですね。
今日の有明海の実態を見ますと、私は、少なくとも干潟の浄化能力を入れて算出する必要があるのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○木下政府参考人 私ども、土地改良事業を実施する際には、費用対効果を算出しているところでございます。
そこで、委員御指摘の干潟の水質浄化機能でございます。私どもが現在費用対効果に算入いたしておりますのが、いわばそれぞれの効果につきまして、貨幣評価をでき得る手法が確立されている効能につきましては、それぞれ貨幣で評価をしてやっているわけでございます。
ただ、委員御指摘の干潟の水質浄化機能につきましては、私どもは、まだ現時点で貨幣評価による手法が確立されていないというふうに考えているところでございます。
○楢崎委員 私には、投資効率を殊さらに極大化しようとする思惑が感じられます。
四月二十四日には、日本自然保護協会が、潮受け堤防を締め切ってから、堤防内の二千九百ヘクタールだけではなくて、堤防外の干潟も千八十ヘクタールほど消失している、こういう分析結果を発表して、干拓事業の影響の大きさを訴えられておるのです。
干拓事業がもし中止になった場合の雇用対策ですけれども、ある漁業者はこのように言っておられます。海を壊す仕事はしたくない、でも生活がある、漁場を奪われ、今度は新たな働き口まで奪われる、いつも犠牲になるのは漁民だと。すべてはこの言葉に集約されると思います。また、政治の責任でもあろうと思います。
干拓工事が中止になったときは、国は責任を持って雇用対策に当たるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
○武部国務大臣 諫早湾の干拓工事を中止するということは今考えておりませんので、御質問の工事が中止になった場合の雇用問題については答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、このことについて、私が就任して以来、長崎県や地元の皆様方から、先日事業の計画的推進についての要請を受けました。その一方、昨日は福岡、佐賀、熊本県の漁連から工事の中止を求める要望を承ったところでございます。
私といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、現地をできるだけ早く、来週中にも見させていただきまして、さらに、どのような問題があるのか、あるいは解決の方法があるのかということをしっかり検討して対応してまいりたいと思います。
○楢崎委員 干拓工事の中止というものが全然視野にないということであれば、次回は巨大公共工事という観点からこの諫早湾干拓工事を検証していきたいと思います。
工事再開ですけれども、何か工事再開に当たって漁業関係者の同意は必要ないと農水省の関係者は言っておると聞いているのですが、それは間違いありませんか。
○木下政府参考人 実は、先日、諫早湾干拓事業の地元の関係者の人々から私ども農林水産省に、十三年度の干拓工事を速やかに再開すべきであるというような要請があったわけでございます。その際に、私どもの方は、事業を円滑に進めていく観点から、実施方針について関係漁連の方々の理解を得られるように取り組んでいる、そのような理解がないと円滑に工事が進まないんだという趣旨でお答えしたところでございます。
なお、干拓事業につきましては、土地改良法に基づきまして、それぞれの手続を経て六十一年度に事業に着手をしたというものでございます。したがいまして、工事の再開に当たりましては、そういう意味での関係者の同意を得る必要はないというふうに考えておりますけれども、私ども、現実の工事が円滑に行われるというためには、関係者の理解と協力が必要だというふうな認識をいたしております。
○楢崎委員 デリケートな時期ですから、言動によく注意をしていただきたいと思います。
ことし当初、被害を受けられた農林漁業者の多くは返済するあてのない融資は受けられないと言っておられたのですが、ことしの二月に実施された特別融資の利用状況についてお聞かせいただけませんか。
○渡辺政府参考人 二月に決定をされました金融の特別措置でありますが、融資枠としては六十四億円措置をされております。その中で、今日までいわゆる無利子の安定資金の融通は約四十一億円貸し付けが行われております。別に締め切ったわけではございませんので、今後も必要に応じて貸し出しが行われると考えております。
○楢崎委員 その利用状況は、予想よりも多いのですか、少ないのですか。
○渡辺政府参考人 それぞれの漁家の実態に応じて、まちまちの状況になっております。
私どもとしては、もう少し利用をしていただいてもいいかなと思いますけれども、それは実を申しますと、先ほど御紹介をいたしましたこの十月の網入れが円滑にいって資金をきちんと返せるような経営設計ができるというめどがだんだんについてくれば、金を借りてもいいではないかということになるのでありますので、私どもとしては、この十月に向けた対策をもう少し漁業者の方々にきちんとPRをしたいというふうに思っております。
○楢崎委員 三年間利子が補てんされるといっても、借金は借金ですからね。
私は、三月一日の予算委員会分科会でも取り上げたんですが、被害を受けたノリ漁民に対する補償問題です。
政府は、潮受け堤防と異変の因果関係が明らかでないということでしたけれども、調査の結果、因果関係がはっきりすれば、当然補償問題も検討するということですね。どうでしょう。
○武部国務大臣 農林水産省に設置しました第三者委員会の委員長取りまとめによると、ノリ不作の直接の原因は、例年と異なる気象、海象の変化による珪藻赤潮の早期かつ持続的な発生によるとされているわけでございまして、現在、有明海の環境悪化の現状把握と原因究明のための調査を行っているわけでございます。
したがいまして、現段階では、本調査を、予見を持たずに、委員会の意見を最大限尊重し推進することが重要、このように私どもは考えている次第でございます。
○楢崎委員 被害漁民の方々は、生活が脅かされる不安な毎日を送っておられるんですから、調査の結果次第では迅速な対応をお願いしたいと思います。
いずれにしましても、一番海を大事にしてある漁業者の方々が排水門の開閉で対立してあるというのは、先ほども話に出ましたけれども、やはり不幸なことであろうと思います。
また、政治家の方々が、あっち向いて理解の態度を示す、こっち向いて理解の態度を示す、そういう姿勢も混乱の一因となっている、このように思います。
私も、いろいろな方から話を聞き、また報道を耳にしました。農業収入が上がらないで、担い手が減っているのに、広い干拓地をつくれば解決されるという論理はもう崩壊しているという話も聞きました。
また、石川県、河北潟干拓地では、五分の一が売れ残っている、入植農家の土地代の償還滞納も見られるというこの現実。事は決して単純ではないと思いますけれども、諫早湾干拓事業そのものの是非に対する政治的な決断がそろそろ検討される時期に来ているのではないかなと私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○武部国務大臣 今、楢崎先生御指摘のとおり、政治家があっち向いて理解を示す、こっち向いて理解を示すというようなことが必要以上の影響を与えるというようなことは断じて慎まなければならない、かように存じております。
したがいまして、私どもも、いろいろな利害関係者があるわけであります。さまざまな事情を抱えている本当に深刻な問題だ、このように受けとめております。先日も、長崎県の皆様方のお話も承りましたし、また昨日は、福岡、佐賀、熊本三県の漁連の皆様方の要望も承ったところではございますが、私としては、予断を入れずに、現地をできるだけ早く見たい、こう考えております。
しかし、現地を見たからといって、すぐさま政治的な判断ができるものだというふうには私は安易に思っておりません。さらに、今後、どのような問題があるのか、あるいは解決の方法があるのかということをしっかりと検討して、政治家としての誤りなき対応に努めてまいりたい、このように考えている次第でございます。
○楢崎委員 いずれにしましても、有明海が、次に質問しますトラフグの産卵場であることも確認されておるわけです。ですから、今後とも有明海を共生の海とすることを第一義に考えていくべきであろうと思います。そのことを申し述べて、次に移ります。
御存じのように、今は、この東京でも割合簡単に安く食べられるところがありますけれども、山口以西、特に私どもの地元の福岡でもそうですが、博多の冬の味覚といえばフグです。特に、フグの中のフグと言われているトラフグの刺身で一杯飲んだらこれはもうたまらぬです。高いところがちょっと玉にきずですけれども。
現在、トラフグの資源状況をどのように把握してありますか。
○渡辺政府参考人 私の手元に、南風泊市場の入荷量といいますか、水揚げ量がありますが、一九七〇年代から八〇年代にかけましては八百トンから九百トン、トラフグが上がっておりました。二〇〇〇年の数字ですと百トンそこそこという状態でありますし、フグはえ縄の操業隻数も、かつては二百隻程度ございましたが、現状では三十三隻ということでございますから、資源状態は、悪化が懸念されるというところを通り越して、悪化の方向にあるというふうに思った方がいいのではないかなと。
また、その原因としては二つ考えられます。一つは産卵場の環境の悪化、もう一つは、やはり漁獲圧力の過剰ということだろうと私は思います。
○楢崎委員 そのためにも有明海の再生に力を注いでほしいと思います。
そこで、このトラフグですけれども、TAE制度対象魚種に指定が想定されるとありますけれども、本当に指定されるんでしょうか。もし指定されるとするなら、その根拠は何か教えていただきたいと思います。
○渡辺政府参考人 TAEは、今回のいわゆるTAC法の改正でお願いをしている部分でございます。
資源状態が少なくとも悪化しているということがおおむねわかって、そして、それを資源管理すれば回復の可能性があるというのがインプットの規制であります。TACの方は、きちんと状況がわかっていて、何トン、どこまでというアウトプットを規制するやり方でありますので、トラフグはそういう点で、資源の回復を図る必要があり、漁獲圧力、漁獲努力量を削減する必要があるという魚種に該当すると思います。
私どもといたしましては、今回の法律改正がなされました場合には、資源の悪化の主たる要因が漁獲圧力の過剰である、それから、厳密な資源量の推定はできないけれども悪化の向きにあるといったものを指定していきたいというふうに考えております。
○楢崎委員 昨年九月に発表されました、中央水産研究所の我が国周辺水域の漁業資源評価によれば、今長官も言われましたけれども、トラフグは減少の一途であって、大幅な漁獲量削減が必要であると。理想的には禁漁にすることが望ましいとまで言っているんですね。これは、フグ漁に従事する漁業者にとっては大変な死活問題になるんですけれども、資源回復の可能性について、見通しは持ってあるんでしょうか。
○渡辺政府参考人 今御指摘のとおりでありまして、では、資源の回復の可能性、見通しはあるかということであります。
これは、試行錯誤でやりながら状況を見るということになりますけれども、過去の例から考えれば、例えば秋田沖、日本海のハタハタの場合でありますと、本当に資源払底かと思われましたけれども、三カ年間禁漁いたしました結果、かなりの回復が見られるというふうなことでございますから、この資源管理、回復のための措置というのは必ずや効果があると考えております。
○楢崎委員 有明海の再生も資源回復の重要な課題であろうと思います。
この資源評価によれば、トラフグの生息海域は日中韓三国の水域にまたがっていますから、資源管理は日中韓の三国共同で行うことが望ましいとあるんですけれども、この三国によるそういう体制の構築はなされているのか、現状と展望についてお伺いします。
○渡辺政府参考人 御指摘のとおり、三カ国共通の海をいわば回遊しております。したがって、これまでは日韓、日中というふうな形で資源管理についての各種の話し合いなり交渉を持ってきたわけでありますけれども、三カ国が同一の場に集まって資源管理を考える時代がそろそろやってきたのではないかというふうに私ども考えまして、つい先日、釜山で三カ国の会合がございましたので、今後は定期的に三カ国の資源管理を中心とした情報交換等の話し合いの場をぜひ設けたいという提案をいたしております。
○楢崎委員 これはトラフグに限ったことではないんですけれども、我が国が資源保護に努力している最中に、その間他の国が乱獲をするということがないように、しっかりとした国家間の体制の構築がなされることを望みます。
次は、漁協合併についてお伺いします。
私の地元福岡に糸島半島というところがあって、そこには八漁協が存在するんですけれども、そのうち六漁協の対等合併が決まって、この七月一日に発足することになりました。福岡県も漁協再編のモデルケースとして後押ししてきたんですけれども、大手と言われる二つの漁協がこの合併に参加しなかったために規模的には半減された。それぞれの漁協組合員の同意が得られなかったためなんですが、これは糸島に限ったことではないと思うんですが、何が原因だと思われますか。
○渡辺政府参考人 いきさつから申し上げますと、県漁連が合併のための基本計画をつくりまして、その基本計画のもとで組合長間の話し合いも行われ、合意はあったわけでございます。ただ、それが、法律上やはりこの種の合併には三分の二以上の賛成が要るということで、組合員レベルに落としたときにそうならなかったということでありますが、私はやはりもう少し話し合いを重ねる必要があったかなという印象を持っております。
巷間、いろいろな要因は伝えられておりますけれども、もう少し粘り強く話し合いをして、合併の目標自身もたしか十四年度末、十五年の三月ということでございますので、一層指導、努力をいたしたいと考えております。
○楢崎委員 質問時間が終わりました。
農協合併の問題点と類似するわけですけれども、やはり合併する双方が納得される基準づくりというものが必要ではないかと思います。
終わります。
○堀込委員長 次に、永田寿康君。
○永田委員 民主党の永田寿康でございます。私、農林水産委員会では二回目の質問ということになりますが、どうぞよろしくお願いします。
さて、小泉政権誕生おめでとうございます。そして、大臣、副大臣、政務官におかれましては、就任おめでとうございます。
私どもずっと、改革を本当にやっていきたい、民主党は結党以来、改革改革というふうに言ってきたわけですが、まさにその改革の志を持った内閣がいよいよこの地球上に生まれたんだな、そういう感慨を持っております。
もちろん、菅幹事長が申しているとおり、私たち民主党は足を引っ張るつもりはありません。手柄争いをするつもりもありません。そして、応援できることは応援していきたいというふうに思いながら、しかし一抹の不安を感じてしまうのは、やはり仕方のないことだと思います。
何しろ、内閣の顔ぶれはかわりました、総理・総裁もかわりました。しかし、自民党の議員は一人もかわっていないわけですね。ですから、果たしてこの自民党を中心とする政権が改革を進めていくことができるのかどうか、その真価の部分、私たち民主党は、国民とともに見守っているところであります。
しかし、残念ながら、先ほど来大臣の答弁を聞いておりますと、この改革への意気込みはやはり意気込みだけであったのかな、そのような気持ちがしてならないのです。なぜか。今、一つ申しましょう。
実は私たち国民、私も国民の一人ですが、国民が不安に思っているのは、自民党を中心とする歴代の内閣、実は、やると言ってやらない、あるいはやらないと言ってやってしまう、そういう裏切りの数々を今まで積み上げてきたんですね。
例えば去年の四月、予算が組み上がった直後に、宮澤大蔵大臣、当時の大蔵大臣はもうこれで補正予算は要らないというふうにおっしゃっていたのに、早々に十一月には補正予算を組んでいます。やらないと言ってやってしまう。あるいは、あっせん利得処罰法、これで政治の浄化を目指すんだといいながら、四つも抜け穴をつくって、ちっとも実効性のない法律にしてしまった。これで政治改革への意気込みが果たして実効あるものと言えるのかどうか、私たちは非常に不安に思っておりました。
それで、今の議論を見ておりますと、まさに、きょう三人目の質問者は私、福岡三羽がらすと言われますが、私の父が福岡出身ですので、きょうは全部福岡にゆかりのある質問者でまとまっておるわけですが、先ほど来諫早湾の水門の話が出ておりました。
この諫早湾の水門の話、ぜひあけていただきたいと私たちは思っておるわけです。しかし、なぜかあけることができない。前大臣、谷津大臣もそうでした。あけることができない。
なぜかなということを私は思うわけです。答弁も前から変わりません。大臣は新しい大臣になりましたけれども、先ほど来、予断を持たずに調査をしていきたい、その結果を待ちたい、こういう話です。
しかし、政治は永田町で起こっているんじゃありません。現場で起こっているんです。世界じゅう、日本じゅうで政治は起こっているんです。そこで、諫早の周りの漁民の方々がどうなっているか。もちろん皆さん御存じのことだとは思いますので繰り返しませんが、この苦しみをわかれば、本当は永田町で安穏と調査の結果を待っているなんということは言えないはずなんですね。
しかし、答弁は前大臣から変わりません。前政権から変わりません。一体、小泉内閣、何が変わるのかなというふうな期待、期待というか不安ですね、ますます大きくなってしまいました。
なぜこれがあけられないのかなということを邪推しますと、私が思うには、どうやらこれは、もしもあけることになったら、諫早湾の水門をつくったそのことが失政である、そういうような評価を受けてしまう、そのことを恐れているからではないかと私は邪推をしております。
邪推であるならばいいのですが、しかし、失敗を失敗と認めないこの体質はぜひ改めていただきたい。なぜか。今国民の怒りはそうだと思うんです。いいですか。
景気が悪いのは困る。失業率が高いのも腹が立つ。だけれども、もっと腹が立つのは、失敗をした人が失敗を認めずに、その失敗のしりぬぐいをするために国民が大変な苦しみを味わっている、このことが一番腹が立っているんです。
失政を繰り返し、日本をよくすることもなく、六百数十兆円の借金を積み上げた自民党政権。確かに、小泉総理は改革の意気込みは立派です。しかし、この六百数十兆円の借金を積み上げた、そして開発という名の破壊を全国で行ってきたその失政の責任は一体どうなってしまうのか。それに目をつぶってしまっていいのか。私たちは大変な怒りを感じております。
あるいは、銀行預金だってそうです。かつてバブルの時代、銀行のトップが安易な判断をして無謀な融資をした結果、それが破綻し、焦げついて、そしてその失敗を失敗と認めない。失敗にしないために、国民に対して、一般預金者に対して低い金利を強いている。一体何なんだ、あのトップは、さっさと責任をとれ、これは国民の声だと思います。
ですから、私たち民主党は今、今度の参議院の選挙で、すべての人にとって公正であるために、こういうキャッチフレーズをつくっています。私流に翻訳をしますと、あいつらに責任をとらせよう、これです。国民の怒りはまさにここにあるんだと思うんです。
ですから、諫早湾の水門をあけたところで、確かにそれは失政という評価を受けるかもしれないけれども、そこはしかし、構造改革内閣を標榜される小泉政権ですから、ぜひぜひ英断をしていただきたい、このように思うわけでございます。
まずこのような小泉政権に対する私の不安の思いをわかっていただいたと思いますので、そのことを念頭に置かれて質問にお答えをいただきたい、こんなように思います。
そこで、せっかくの構造改革内閣ですから、水産業においてどのような構造的問題が現在存在していて、そしてそれを直すためにはどうしたらいいと思っているのか、水産業の構造改革に関する大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○武部国務大臣 ただいま国民の声ということを盛んに唱えられましたけれども、小泉内閣の支持率が我々が想像しているよりもはるかに高いという、この高い支持率が国民の声であるということを肝に銘じて、私自身も、その内閣の一員としてしっかり対応してまいらなければと決意を新たにしている次第でございます。
また、今諫早湾の問題について言及されました。質問は後段の構造改革のことだと思いますが、そのことについてもあえて言及させていただきます。
楢崎先生は先ほど、あっちから言われて理解を示す、こっちから言われて理解を示す、そういうようなことがかえって多くの漁民や関係者を困惑させるのだというような趣旨の御発言がありました。私は、全くそのとおりだ、かように思います。
永田先生は福岡にかかわりがあるとおっしゃいましたが、先日も、福岡、佐賀、熊本の皆さん方のみならず、諫早湾湾岸の市長さんたち、それから長崎県知事らも参りました。そのときには、その二つの我々に対して要請をされた皆さん方には、道案内に民主党の国会議員さんがそれぞれ一緒に同行されたのですね。そういうようなこともあります。
したがいまして、我々は、予断を持たずにと、こういうふうに申し上げざるを得ません。私も就任間もなくでありますので、私は、北海道の育ちでありまして、自然に感謝する気持ち、自然の驚異を恐れる謙虚な気持ちというものを持ってこの問題に取り組んでいかなければならない、こう思っておる次第でございますので、ぜひ御理解をお願いしたいと思います。
さて、水産業に関する構造改革とはどういうことかということでございますが、これも、何だそんなことかというふうに軽べつされるかもしれませんけれども、今申し上げましたようなことに原点はあると思っております。
つまり、これまでの法律に基づいて、何とか水産業に携わる人々も都市の皆さん方と対等な生活が営めるように、おおむねそういう目標を持って漁業を振興してまいりました。しかし、二百海里水域時代に入りまして、日本の漁業が、沿岸から遠洋へ、こういうふうに拡大していったものが、逆に外から締め出されるというような状況になりました。
環境というものを大前提に考えますならば、やはり、資源を守り、資源を育て、資源に見合った操業秩序の確立ということを大前提にこれからの水産物の供給を国民の皆さん方に続けていくか、しかもこれは良品質の少しでも安いコストで供給できるかというようなことが非常に大事だ、このように思っているわけでございます。
我々は地方出身でありますから、都市居住者の皆さん方、確かに納税者は都市に住んでいる人たちが多いことは事実であります。ともすると、農業過保護論、あるいは水産業、漁業に対しての過保護論、そういったものが、我々、どうしても目につくわけでございます。しかし、私どもは、都市に住んでいる人々も農山漁村に住んでいる人々も、お互い運命共同体の中にあるではないか、このように考えているのでございます。
消費者の皆さん方にも御協力をいただきまして、需要に即した水産物が供給されるような体制、そして、その前提になる、資源を守り、資源を育て、資源に見合った漁業というものを定着させていくためには、今までの水産全体の構造改革、これに伴う政策転換というものを思い切り目指していこうではないかと。
理念的に申し上げますと、私は、そういう考え方で農林水産大臣に就任させていただいた次第でございまして、若い永田先生の御鞭撻、また格式の高い御見識もぜひお寄せいただいて御協力願いたい、かように存じます。
○永田委員 格式の高いお話はぜひお任せいただきたいと思います。
さて、今の大臣のお話を要約いたしますと、水産業の抱える構造的な問題、そして構造改革の道筋というものを御質問したわけですが、構造の問題では、二百海里問題がやはり厳しい。要するに、これで、漁場というか漁をする範囲を広げることがなかなか難しくなってきた。一方で、近海の漁場が荒れてきた、乱獲もあった。だから、資源を守り、資源を育て、その資源量に見合った漁業をやっていくこと、そういう理念を定着させたいというお話で要約できると思います。
しかし、漁業の抱える問題というのはそういうことではないのではないかと私は思っています。というのは、統計を見ますと、過去数十年間にわたって日本の食卓に上っている魚介類の量、これは、重さベースでもたんぱく質の供給量ベースでも、ほとんど変わりません。しかし、量は変わらないのですが、ウエートが下がってきています。なぜか。肉が入ってきたのですね。お肉が大変食卓によく上るようになって、その結果、熱供給量でも重さでも、あるいはたんぱく質の供給量ベースにしても、魚介類のウエートは下がってきているということでございます。
では、なぜそのようなことが起こるのかと申しますと、漁業は、基本的に狩猟です。泳いでいるものをとる。もちろん養殖というのもありますけれども。ただ、一般的に言えば、非常に多くの部分がいまだに狩猟のような、そこにあるものをとるというような形に頼っているのは、これは否定のできない事実だと思います。漁場を拡大することも極めて難しいです。
しかし、畜産の場合には、一応、土地をならして、牛を養殖とは言わないのでしょうが、牛や豚を飼えば、あるいは鳥を飼えば、肉類の生産量というのは非常に簡単にふえますし、また、非常に簡単に生産性の効率を上げることができる。例えて言えば、畜産と漁業というのは、生産性を上げる上での容易さという面において有利、不利が構造的に存在しているというふうに考えなければならないと思います。
また、ほかの産業に目を向ければ、別に食品産業に限りません。トランジスタラジオをつくっていた時代から、今はコンピューターをつくっている時代になった。そういう電子産業にしても、自動車にしても、あるいはその他もろもろの産業、どれを比べても、やはり工業に比べて漁業というのは生産性を上げる上で極めて不利な立場に置かれている、こういうふうに言わざるを得ません。
そのような構造を直視した場合、構造改革という意味においても、やはりそれなりに対応が必要だと思われるのですが、大臣は、漁業と肉類、そういうような産業間格差と言ってもいいと思いますが、こういうような格差を直視した上で、必要な対策というのはどのようなものだと思われますか。
〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕
○武部国務大臣 お言葉を返すようですけれども、私は、漁業が、いわゆる捕獲する時代から育てる漁業の時代になった、このように思っております。
私どもの地元の例だけ挙げましても、サケ・マスの増養殖事業、これが、現在日本で食している国内のサケ・マス資源の大宗ですね。そのために、漁民もみんな負担金を出して、政府も助成をしてやってまいりました。また、サロマ湖のホタテガイ等の増養殖事業だけじゃなくて、外海も稚貝を放流して、これができるようになったわけでございます。例えば、私どもの地元の常呂漁協というのは、一人当たり一億円近い預金高になっているわけでございます。それだけを見ましても、他産業との所得面の格差というものは随分なくなったな、このように思っております。
しかし、生産性の面につきましては、今先生御指摘のとおりでございまして、工業とは異なりまして、水産業は資源の育成に相当な期間が必要であるということ、また、漁獲量が自然の力に左右される、あるいは環境などに左右される、規格を統一した漁業生産ができない、水産物の貯蔵に限界がある、資源をすべてとり尽くしてしまうわけにはいかない等、自然を相手にするということの宿命は避けて通れないわけでございます。
したがいまして、自然との共生を重視していく、自然の恵みを持続的に利用していくということが水産政策の基本になるということは、工業製品等とは違うところでないのかなと。
したがいまして、こういった水産政策を進めていく上では、やはり水産業に携わる人々の意識、それから、これをいかに付加価値を高めていくかというような試験研究、技術開発、製品開発、加えて、先ほど先生も肉類との比較においてお話しされました消費者の皆さん方の食生活のあり方。
我々農林水産業、特に農業や漁業においては、国民の健康を守るために、その基礎になる最も大事な部分を負っているということでございまして、このことについては国民の皆さん方や消費者の皆さん方の協力もぜひ必要だ。そういう面におきましては非常に難しい問題があるということは否めない、このように考えております。
○永田委員 極めて重要な問題があるということを正直にお認めになって、それに対する対策が出てこなかったのでは、国民はいよいよ不安になってしまうのではないかというふうに思うのですけれども。
今、日本人の食生活のお話がありました。確かに日本人の食生活は大きく変わりました。かつては、食卓に上がっていたものといえば、魚類でいえばサンマやアジやイワシでした。今もそれらは食べられていますが、しかし食卓の主役は、私が本会議で質問したとおり、エビとかマグロとかあるいはアラスカ産のキングサーモンにその主役の座を譲っているというふうに考えた方がいいと思います。これはなぜ起こったのかということを考えることも大切なんですが、それは次の質問に行ってしまうので、ちょっと待っていただいて。
さらにその中で、食生活の変化という観点からすれば、もう一つ指摘をしたいのは外食の隆盛ですね。いわゆるレストランで、ファミリーレストランで、あるいはファストフードで食事をするというようなことがはやっています。実際、エネルギー供給ベースでも消費金額ベースでもどちらでも、外食産業というのは非常にふえてきて、いわゆるうちの中で普通に食卓で食べる内食というのは大分減ってきている。
しかし、事魚介類に限って見ると、外食で食べるというのは結構不利なことなんですね。というのは、私たちが普通にお昼御飯をレストランで食べようと思っても、魚を食べるというのは結構難しいんです。議員食堂にはサンマなんてありますけれども、一たび町の、銀座の定食屋さんに行くと、もう揚げ物、お肉ばかりです。非常に難しい。牛どん屋さんが一杯二百五十円ですごくはやっていますけれども、サンマ定食屋さんが三百円で店を出したという話は一度も聞いたことがありません。これはなぜかというと、魚介類を鮮度を保ったまま調理しやすい形に工場でまとめて、鮮度を保ったままお店に持ってきて、それを最終的な料理に仕上げるというようなことが実は難しいのですね。
そういった意味からすると、日本人の食生活が内食中心に戻ってこない以上、漁業というのはより一層不利な立場に置かれることになるのではないかというふうな懸念があります。
大臣は、こうした状況を直視して、日本人の食生活は今後どのようになっていくと思われますか。あるいはどのようにしていきたいと思いますか。食生活の今後について御所見をお伺いします。
○武部国務大臣 食生活がどうあるべきかということを我が身に振り返って言うならば、もう少しバランスのとれた食事をしなくてはいけないな、つまり、私が食しているような日常生活を改めることだ、このように思います。
農林水産省も、文部省や厚生省と共同で、食生活指針というものを策定いたしております。この定着に向けた取り組みを、両省など関係府省との連携を図りながら国民的なものに盛り上げていくことが必要だろう、このように思います。国民運動的なものを起こしていかなければならぬなと。
したがいまして、自給率向上という観点からも、御飯などの穀類をしっかりととる、野菜、果物、牛乳、乳製品、豆類、魚なども組み合わせて、食塩や脂肪は控え目にと、いろいろ十項目から成っているんだそうであります。私もこれは就任してから初めて聞いた話でありますけれども、そういうような努力をしていかなければならぬだろうと思いますし、一言余計なことを言わせていただきますと、食生活だけに絞って考えるということよりも、我々の、日本人の日常生活のあり方ということを変えていかなければならないのではないでしょうか。
私は先日、日本フードサービス協会の総会に呼ばれていって申し上げたのですけれども、大分国内の農産物を食材に使っていただいています。およそ十兆円の売り上げのうち、最終食材二兆円ぐらい買ってくれているんですね。農業の売り上げは九兆円ですから。
そういうことを考えますと、ファミリーレストランにおいても、いわゆる個食ということになっているんですね。家族が別々に物を注文する、それが当たり前になっている。それから、夜遅く帰って、コンビニなんかから弁当を買ってきて一人で食べる、寂しい食生活なんですね。やはり食生活というのは我々の本当の生活の一部でありますし、友達と仲よくということもありましょうが、これからの日本の家族のあり方、そういったライフスタイルというものにまで波及させて考えなければならないことではないのかな。
そういう意味で、私ども、農林水産業の構造改革と農山漁村の新たなる可能性を切り開いていくということで、一言で申し上げているわけでございまして、もし、対策がないというふうにお思いならば、どうぞ、この機会に御指導いただければありがたいと思います。どうしたらいいでしょうか。
○永田委員 たしか国会の論戦では、政府は委員に質問をするということは原則的にないものだというふうに聞いていましたが、それはさておき。
冒頭、大臣が、日本人の食生活をどうしたらいいと思っているのかというふうに聞かれて、自分のやっているような食生活を改めることだ、このようにお話がありました。果たして、病気のお医者さんにかかる患者さんはどのような気持ちになるのでしょうか。大臣にはぜひ、そのような不安を国民に抱かれないように食生活をしっかりと改められて、まさに健康体で任期を全うされていただきたいなというふうに思う次第であります。心からお祈りを申し上げております。
一方で、先ほど来、自給率の話が出ていました。食料自給率のことだと思いますが、今度、水産基本法には、魚介類のというのですか、水産物の自給率も目標として設定するというお話がありました。副大臣が御答弁になることになっているのか、どなたでも構いませんが、まず、目標自給率はどのように決定して、どのような水準に置かれる予定なのか、教えていただきたいと思います。
○渡辺政府参考人 まず大前提として申し上げておきたいのは、水産物の自給率目標というのは、農産物とは違った性格を持っております。
農産物の場合には、農地の面積が決まっておりますから、これを高度に利用することで、しかも足らざるものをつくることで、自給率を上げることができます。漁業生産の場合には、とり尽くせば、そのときの自給率は上がりますが、その後の持続的利用ができませんので、漁業生産が持続的に行われることを大前提として、この自給率目標をつくるということになります。
その自給率の目標ですが、現在考えておりますのは、具体的には、国内生産量を国内消費仕向け量で割りまして、重量ベースで出したらどうだろうかというふうに思っておりまして、いずれこの法律をお通しいただければ、この新法に基づく基本計画の中で、おおむね十年程度後の自給率をそういった重量ベースの数字で表示をいたしたいと思っております。
○永田委員 もう一度ちょっとお伺いをしたいのですが、国内の消費量を分母にして、国内供給量を分子にするんですね。そのような計算方法だというふうに理解してよろしいですか。
○渡辺政府参考人 分子は国内生産量であります。国産量ですね。その下に、結局、全需要量といいますか、それを出すわけですが、今、私が違う言葉を使いましたのは、全需要量の中から、輸出に仕向けられる分がありますので、その分は除去しなければいけないので、それを通称、国内消費仕向け量、こう言っております。
○永田委員 丁寧な御説明、ありがとうございました。
しかし、目標を設定するという意義についてお伺いをしたいと思います。
というのは、恐らく、過去にさかのぼって今の公式で計算をすれば、魚介類の国内自給率というのは傾向的には下がっているものというふうに思っています。であるならば、その理由、なぜ下がってきたのかという理由もお伺いしなきゃいけないですし、一方で、目標として自給率を設定することによってどのような意義が生まれるのかということもお話しいただかなければならないと思います。お願いします。
○渡辺政府参考人 これは、食生活という面でジョイントをしますと、漁業者にとってもそれから消費者にとっても一つの指針を与えるということになります。
消費者にとっての指針というのは、先ほど大臣がお答えを申し上げましたけれども、望ましい食生活、水産物に対する需要というのはかなり根強いものがありまして、たんぱく質総量の二割、それから動物性たんぱく質の四割を供給しております。これはこのところずっと変わっておりません。したがって、根強い需要があるということは間違いございません。
その一方で、日本は四百五十万平方キロという広大な二百海里、世界で第六位の二百海里を持っております。しかも、その中には、世界三大漁場の一つと言われる北部太平洋といいましょうか、それが入ってくるわけでございますので、そういう状況の中で相当程度の自給が可能だということを国民に対してもきちんと位置づけをし、御報告をする必要があると思います。
同時に、これは後ほどまた議論があるのかもしれませんけれども、国産のものを消費していくということは、健康上の問題、安全上の問題、さらには輸出をしている国々の環境なり産業をどうするかという問題も絡んでくることであります。これはもちろん、国民一人一人、消費者一人一人が考えなければならない問題でありますが。
そういったことをいろいろ考慮いたしまして、食生活の中における消費のあり方も含めて、自給をどうするかという目標を掲げることは、漁業者それから消費者、そして先ほどおっしゃられた加工業者も含めて、国民のわかりやすい指標、目標というものになるのではないかと思っている次第であります。
○永田委員 実は、目標自給率の設定については、私は非常に大きな問題があると思って、本会議でも相当な時間を割いて質問させていただきました。
水産庁の方々が私の事務所にお越しになって、いわゆるレクですね、レクをなさるときに、何度も何度も、これは国民にとってわかりやすい指標だというふうに言うのですが、正直言ってさっぱりわかりません。
先ほどの計算式が、一見もっともらしく見えるのですけれども、それで魚介類全体をくくってしまってもいいのかという問題、後々質問しますが、そういう問題もありますし、さらに、一体国民がお魚屋さんで魚を買うときにこれが国産であるかどうかということをそんなに気にして買っているのかなというふうにちょっと思うのですね。あるいは、マクドナルドに行ってフィレオフィッシュを食べているときに、それが国産のものでできているのか、輸入物でできているのかなんということは、外食産業においてはもうさっぱりわからないですよ。
ですから、先ほど大臣がみずからのお言葉で答弁なさったように、外食産業が今大変な割合を占めていて、しかも急速に伸びているということを考えると、国産表示を外食産業にまで徹底することは恐らく難しかろうと思いますし、目標自給率というものを定めて国民に知らせること、あるいは現在の自給率がどれぐらいですよというようなことを言うことが、かえって国民に要らぬ誤解を生んでしまう、いわゆるミスリーディングなことになるのではないかとちょっと心配をしているのですけれども、もう少し、なぜ国民にとってわかりやすい、よい指標なのか、御説明をいただきたいと思います。
○渡辺政府参考人 まず、国民一般、消費者一般と言った方がよろしいかと思います、それから加工業者の方々もそうでありますけれども、できるだけ性の知れた国内産の魚介類を使いたいという気持ちがもとにあるわけでございます。
しかし、それはコストの面なりロットの面で必ずしも外食産業の方々に、あるいは消費者にこたえられるようなものではない、そういうふうな状況がこれまであるものですから、なかなか使えない。先ほどの外食産業への供給の問題にしても、例えば仲卸さんたちがどういう供給ができるか、それから加工の方々もどういう製品をどれだけ供給できるか。ところが、一方で加工業者というのは九九・九%が中小企業でありますので、衛生上の問題も含めてなかなか難しいという点があります。
それから、近年やはり消費者のニーズにこたえて随分表示が変わってまいりました。水産物につきましても、生鮮水産物それから原料水産物も含めまして、これはどこの国から入ったものであるかとか、どこの漁場でとれたものであるのかというのを逐一表示するように表示制度が充実されてきております。消費者はそれを一つの指針として、鮮度が高く、新鮮、良質、安全といいましょうか、その三つのキーワードで水産物についても選んでいく、そういう時代の趨勢にあるのではないか。
そうなった場合には、もちろんいろいろな魚種の積み上げになりますけれども、トータルとして日本の海を使った水産物供給はこのぐらいあった方がいいという目標は、生産をする側にとっても消費をする側にとっても非常にわかりやすい目標値ではないかと私は思います。
○永田委員 しかし、自給率というものは下がってきているわけですけれども、それはなぜかということを考えてみると、実は目標自給率の設定というものが余り意味のないことだということがおわかりいただけると思います。
私が本会議でも質問したとおり、なぜ日本人の食卓に上がる魚介類、自給率が下がってきたのか、国内産の割合が減ってきたのか、それは、日本人の魚介類の嗜好の変化、これによっているものだと思います。
先ほども申したとおり、かつてはアジやサンマやイワシが食卓の主役であったのに、今やマグロやエビやキングサーモン、これが食卓の主役になってきているということになると、それはなぜかということを考えますと、日本人の所得水準が上がったことによるものではないかというふうに思います。
つまり、ありていに言えば、イワシやアジやサンマというものは下級財、経済学的に言えば下級財と言うのですね。所得が上がると消費量が減るのです。一方で、マグロやエビやキングサーモンは、これは高級財、上級財と言って、すなわち所得水準が上がると消費量がふえるものですね。人間はおなかいっぱいまでしか食べられませんから、所得水準が上がると、多少値が張ってもおいしいものを食べたくなるというようなことから、上級財の方に需要がシフトしていったのではないかというふうに考えています。
そのような観点に立てば、自給率が下がってきたことは一応説明はできるのですけれども、それを上げようと思っても、日本人の食生活、食の嗜好がそういうマグロやエビを食べたいというふうに固定されている以上、あるいは日本近海で大量にエビの養殖ができたり大量にマグロのとれるような環境にならない限りは、自給率を上げようと思ってもなかなか無理な話ではないかなというふうに思うわけです。
ですから、自給率を上げるための対策、どのようになさるのか一つ質問したいのと、もう一つは、マグロの話でちょっと、水産庁のお役人の方が私のところにレクに来たときに気になる話をしていました。目標自給率の設定というのは意味があるのです、マグロだって意味があるのですと。なぜか。便宜置籍船でとったマグロ、これが自給率を下げている一つの要因になっていると言うのですね。
要するに、マグロをとっている漁船の持ち主が、税制対策上その船の国籍を違う国にして、日本以外の国にして、その船が日本人が操業しているような水産会社の船であっても、その船でマグロをとればこれは日本に水揚げされた瞬間に輸入とみなされる、ですからこういうような不正をなくしたいんだというふうなお話がありました。
しかし、それは目標自給率の設定という形で解決すべき問題ではなくて、私に言わせれば、そういうルール違反はだめでしょうというようなのが筋ではないかなというふうに思うのですね。
一体目標自給率の設定というのはどういう意味を持っているのか、改めてこの観点から御質問したいと思います。
○渡辺政府参考人 これまでの自給率の減少、低下傾向と、それからいわゆる、農産物の中にも入っておりますけれども、農産物の見通しというのは、目標ではなかったのです。
こういうふうな状況が続くと、トレンドとしては十年後にこうなるだろうという見通しですね、もちろん意欲的見通しという言葉もありますけれども。これからはむしろ、食料・農業・農村基本法でもこの水産基本法でもそうですが、目標を掲げてそこに近づく、そのためにそれぞれの関係者はどういう努力なり役割を果たすかということで、この基本法の八条にも「消費者の役割」として、「水産に関する理解を深め、水産物に関する消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。」と書いてあるわけです。
先ほど、高級財と下級財という言葉がございました。経済学的には、趨勢を放置すればそういうことかもしれません。それは、米と麦とトウモロコシも同じことですね。しかし、そういうことではなくて、望ましい健康生活から考えたらどうなんだろうか。
それは、DHAなりEPAなりということを考えると、そういう今までは切りかわってきたものをむしろ戻すような食生活の方が健康的にいいのではないかというのが最近の傾向ですし、それをまたエンカレッジするような表示のシステムというのがだんだんに世の中一般にも浸透し始めている。また、それに対して私どもは、その供給のための力を、日本の三大漁場の一つ、四百五十万平方キロの二百海里でやれるのではないかというふうに思っているわけでございます。
便宜置籍船の問題はこれは論外でありまして、きちんと正常化をされた状況のもとでやはり目標を掲げないとそれはおかしなことになると思いますから、別途、便宜置籍船問題については、国際規律、あるいは通関時における船籍証明、そういったものを通じてきちんとした対応をする必要があるというふうに思っております。
〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕
○永田委員 食生活、DHAの話もありましたけれども、体にいいと言われるたんぱく質、あるいは脂肪の一種かもしれませんが、油脂の一種ですね、あれは。そういうものが、イワシやアジや、そういういわゆる光り物のお魚には非常に多く含まれているということを私も重視して、できるだけサンマを食べようという気持ちになっているんですが、しかし、日本人の食生活をそういう昔の時代に戻すというのは、やはり幾ら何でも物事として、政策としてやるべきことかどうかというと私はちょっと考えてしまうので、そこはクエスチョンマークをつけるぐらいのことで質問にはしないことにしたいと思います。
しかし、日本の食卓に上がってくる魚介類の自給率を表示するということは、あるいは目標として設定することは、今お話しになってわかったとおり、恐らく僕は、皆さんもおわかりになったと思いますが、それはそういうような意味合いのものではないんじゃないか。
つまり、僕が思うには、そういう自給率というかえって国民にとってわかりにくいものを設定するよりは、例えば、ことしは国産のイワシを国民全体で何万トン食べましょう、こういう直接的な数値を出した方がずっとわかりやすいんですよね。去年は国産は何万トン、輸入は何万トンでした、ちなみに輸出もちょっとありました、だったらことしはこれぐらい食べることを目標にしましょうよと量で示した方が、自給率四〇%だ、六〇%だという数字を出されるよりははるかにはるかにわかりやすいと思うんですけれども、何で率にこだわったんですか。
○武部国務大臣 なかなか難しい問題提起だと思いますが、ニシンは昔は高級魚ではなかったですね。しかし今は、ニシンが出てくると、目の玉が飛び出るぐらいに高いですよ。ハタハタも同じですよね。ですから、やはり私ども、消費者の立場も十二分に考えながら生産者サイドの一つの目標設定をしないと、先ほど来担い手のことでお話ありますように、自分たちがどのような漁業を営んでいったらいいか、あるいは、当然いろいろ生産調整もやっております、共販体制の中で。そういった目安を持って、輸出に向けたり市場に見合ったいろいろな操業をしたり、漁業をやっているわけですね。
そこで考えなきゃならないのは、我々産地の者は、これがどこのものであるかというのは、ケガニ一つとってもわかります。これは冷凍物であるか、とれたばかりか、あるいは何週間前にとれたものか。ですから、小さな子供、私の孫なんか見てびっくりするんですけれども、おいしいおすししか食べませんね、同じものでも。それはなぜかというと、やはり舌が肥えているんですよ、舌が潤なんですな。
だから、やはりそういう意味で、一つの自給率という目標を設定するということは、一つは生産者サイドにとって大事なことだと思います。ことしは何を何万トン、とれるからとれた分食べましょう、そうはいかないので、所得や生活水準によって食べるものも変わってきているわけですね、今、洋食志向にもなっているわけですから。
そういうようなことで、私は、こういう目標を設定するということは大事な話であって、その目標設定が自給率ということで考えるだけでいいのかということは、今先生御指摘のことは私は理解できると思います。したがいまして、今後の政策運営の上で、きちっとした、より消費者や国民のニーズに合ったような水産物の需要と供給の問題というのを考えていかなきゃならぬじゃないのかな、こう思います。
我々――アスパラに先生は何をつけて食べますか。(永田委員「塩です」と呼ぶ)私は生で食べます。これが一番うまいんです。だけれども、私の息子などはマヨネーズをたっぷりかけて食べますね。ですから、これは一つの警鐘だと思います。我々の食生活、食文化、そういうようなことも考えてこの基本政策というものを打ち立てていかなきゃならぬ。
そのための一つの目安として基本法を制定しようということでございまして、今後、この委員会を通じてさまざまな御意見をお寄せいただくというのはありがたいことだと思っておりますので、ちょっと政治家として、また私は産地の人間として、外食産業に毒されているとは言いませんけれども、あの人たちの存在が食生活を豊かにしているということはもう言うまでもないことでありますが、さらに、それだけでいいのかな、食を通じてやはり日本の心とか日本の文化等を顧みるというようなこと、それから農山漁村というものの存在価値というものを見直し育てていくということも一つの視点じゃないのかな、こう思っておりますので、考えを申し上げております。
○永田委員 かつて、八年前ですね、クリントン大統領が就任をしたときに、その席で自分はブロッコリーは嫌いだという発言をしたら、次の日にブロッコリー農家から段ボールいっぱいブロッコリーが送られてきて、おまえ食えというふうな手紙が書いてあったそうですが、マヨネーズをつけてアスパラを食べない大臣、あしたマヨネーズがいっぱい届くのではないかと心配をしております。それは冗談ですけれども。
一方、最後に、最後にというか、この目標自給率に関する質問の最後の部分ですが、ですから、ぜひ私は、もう少し本当に国民にとってわかりやすい指標にしたいのであれば、例えば量で決める、あるいは品目別というんだったら少しはありかなと思っているんですね。
つまり、日本近海でとれているアジ、アジの自給率は今六〇%だから今度は七〇%にしたいね、そういう話はありだと思うんですよ。しかし、アジやサンマとインドネシアで養殖されているエビをごっちゃにして自給率を設定しても、ほとんど意味はないんじゃないか。それはどれぐらい意味がないかというと、机と自動車の自給率を一緒にごっちゃにして計算するのと同じぐらい意味がないことだと僕は思っています。
ですから、ぜひ、品目別ならせいぜいありかな、主要な品目で、それはありかなというような提案をさせていただきたいので、もしも御答弁いただけるのであれば、次の質問の冒頭でもお答えをいただきたいと思います。別に無視しても構いません。
次に、元本と利子理論に移りたいと思います。
私は本会議場でこだわりました。つまり、この水産基本法には、大変問題がある、間違った考えと言っても過言ではない元本と利子理論というものが背景にあります。
それは何かというと、日本近海の魚介類、これが漁場の破壊で非常に漁獲高が減ってきている。乱獲もあって漁獲高が減ってきている。これは実態を直視しなければいけない問題だと思います。私は、それに対して対策をとられる今度の政府の方針転換、非常に期待をしております。しかし、その背景として、漁場を適切に管理し、そして漁獲高が最大になるよう、その最大漁獲高が保たれるように漁場をあるいは水産資源を管理し、そしてその最大資源量の中で毎年生まれてくる部分だけを一年間の漁獲高として設定しようと。言ってみれば、元本が金利を生むような形で、その金利の部分だけ毎年とっていきたい、そういうお話です。
しかし、改めて説明しますが、この考え方は間違っています。なぜなら、お金を銀行に預けるのとはわけが違うのですね。お金は、銀行に預ければ利子を生みます。利子を生んだら、元本と利子は同じ性質を持つお金です。ですから、それは翌年になれば、利子も利子を生みます。
しかし、例えば、魚の場合には、今生まれたばかりの稚魚もあれば、成熟して子孫を残す力を持った、生殖能力を持った成魚、そしてもう生殖能力を失った老魚、繁殖能力を失った老魚まであるわけですね。そうすると、この老魚の部分だけを毎年とっていけるのだったら話は簡単なんですよ。しかし、一たん網を海に放り込んでしまえば、若いものから年老いたものまで全部とってしまう。網にかかってしまうのは、これはもう否定しようのない事実です。
そうなると、当然、現場で選別をしています。若い稚魚あるいはまだまだ繁殖能力を持っている成魚、これは海に戻す、こういうようなことを、現場で選別をしているのは僕も知っています。しかし、どんなに選別をしても、一〇〇%ということはあり得ないでしょう。やはりそれなりに若い世代が網に入ってしまう。そうすると必ず、言ってみれば、元本は毀損をするのですよ。元本は傷つきます。これを何十年、何百年続ければ、確実にその種全体に対して影響が出るくらいの漁獲高の減少が見られるでしょう。
こういうようなことを考えると、元本と利子理論というのは、ちょっと誤った考え方と言わざるを得ません。ですから、私が本会議で申し上げたように、農業で言えば、輪作のような、あるいは減反のような、そういうような政策もぜひ検討していただきたいと思うのですが、どうも水産庁のお役人の方からは、これは先生のお考え方の方が間違っていますよというお話がありますので、その話をもう少ししてみたいと思います。お返事をお願いします。
○渡辺政府参考人 お許しが出ましたので、先ほどの自給率目標の数字でありますけれども、もちろん、トータルとしてそういう率の目標を掲げたいと思っておりますが、それに加えて、どういうふうなものを示すのが現場の漁業者その他にとっていいのか、もう少し御意見も、消費者も含めて、現場の方々から伺った上で考えたいと思います。
それから、元本と利子理論は、本会議ということもありまして、非常に端的に貯金の元本と利子という関係になぞらえて申し上げたわけですが、利子が生じるとはいえ、今のように、お金に色目はないというふうなものとは全く違いますから、先生から御指摘ありましたけれども、一定程度それは、稚魚が入る、卵が入るということはあり得ますが、そういうことを前提とした上で、トータルとしての元本を損なうような、そういうふうな漁獲はしないという前提での資源管理をしたいと思っています。
例えば、網目でいいますと、網目の目合い制限、魚が抜けるようにする。さばいて戻すカニのようなものもありますけれども、目合いを大きくしてやる。それから、禁漁区をつくる、禁漁期間を設ける。例えば、稚魚が育つような時期であるとか、産卵場については手をつけないといったようなことは当然これまでもやってきておりますし、今後の資源管理の中では、そこを徹底してやるというのが大事でございます。
私どもは、魚種別、漁法別、そして漁期、漁場、そういうものをきめ細かに考えながら、漁獲可能量なり漁獲努力量というものを科学的なデータに裏づけられて実施をしていきたいと考えております。
○永田委員 がちがちの元本と利子理論であれば、恐らく僕が言ったようなことになったのでしょうけれども、非常に柔軟に対応されるということなので安心をしました。
一方で、私が本会議で指摘をした最後の問題、つまり、この法案は非常にちぐはぐなものになっていると思います。つまり、漁場を管理し、水産資源の量を適切な状態に保つというような水産資源管理の考え方を入れるとなれば、当面の間は漁獲高は減ると思います。減らさざるを得ない。それはもう規制をしてちゃんと減らしていくしかない。水産資源の量が一定量に回復したときに改めて漁を再開する、そういうようなことにならざるを得ない。
一方で、この法案の中には、たくさん漁獲高をふやすような効果を持つもの、漁業経営の近代化、あるいは流通、加工まで含めたインフラの整備、こういったものが含まれているわけです。こういったものとのちぐはぐというのを私は本会議で質問させていただいたのですが、しかし、よくよく考えてみると、問題はもっと大きいのですね。
つまり、漁獲高を減らす方向に当面は働くということになると、当然、漁業従事者は、一人当たりの収入が減ってくると思います。減ってきた場合に、一体これはいつまで、どの水準まで減るのだろうか、いつまで我慢したら明るい未来が開けるのだろうか、そういったことは、当然、今の漁業に従事している方、水産業に従事している方は不安に思っていることと思います。
ぜひ、大臣には、この不安にこたえる意味で、あなたたち漁業従事者の数はこれからこうなるんですよ、経営環境はこうなるんですよ、そしていつまで我慢したらどうなるんですよというようなことをお話しいただきたいと思います。
○武部国務大臣 私ども、むしろ、漁村における担い手の確保がだんだん難しくなってきている、そういう認識でございます。
同時に、漁業は農業よりもはるかに、例えば外海にありましても、これは農業で畑を耕すような、そういう努力をすれば、あっという間に資源がふえるというような次第です。
鯨のことがいろいろ言われますけれども、鯨の例でも、マッコウクジラは今十万トンぐらいになっているのですね。一時は、本当に資源が枯渇するというふうに騒がれた時代があるのです。しかし、今や、鯨が食べる魚は、人間の三倍から五倍食べているのです。地球上の人間が食する魚介類というのは大体一億トン弱ぐらいなんですけれども、鯨が食べているのは三億トンから五億トン、こう言われているのです。本当にごく短い間にそれだけ鯨もふえて、そして逆に、鯨がふえ過ぎて海の生態系が崩れているというような次第です。
私は、先生御懸念の御趣旨もわかりますけれども、そういう御心配なことを我々も認識しておりますから、計画的に資源管理型漁業ということを徹底させていかなければならない、こうも思っております。
これも農業と同じですけれども、漁業も、必ずしも一次生産だけではありません。魚をとってきて、それを市場に持っていって売ってしまうというだけではありません。さまざまな加工を加えて、流通の面にも、自分たちの所得を得る機会というものに進出しまして、かなり幅広い、水産加工業との境界もなくなってきているというふうなことでありますので、そういったことを十分に考えながら、需要に見合った水産物の供給体制をどうとっていくか、しかも、自然や環境というものを考えて、資源の増殖を図りつつ、その資源に見合った操業秩序を確立していくか、それが今度の水産基本法を制定しようとする大きな背景になっている、このように御理解いただきたいと思います。
○永田委員 きょうも漁連の方がいらしているようですが、漁業従事者、水産業従事者は、この法案を本当に見守っていると思います。漁獲高を当面の間は少なくとも抑制しなければならないという話なんですから、自分たちの生活、所得は直撃なんですよ。
これは理念法ですから、法律に書くようなものじゃないですけれども、これを制定する審議の場では、ぜひ大臣のお言葉で、今の漁業従事者、水産業従事者の数は、持続的な水準から見て、過剰なのか不足しているのか、それぐらいのことはおっしゃっていただきたいなというふうに思います。具体的な数字は述べなくても構いませんけれども、果たして過剰なのか不足なのか、ぜひ教えていただきたいのです。
○武部国務大臣 私は過剰だとは思っておりません。むしろ、日本全体の少子高齢社会というようなものを考えたときには、今しっかりした将来の見通しを明示しなければ、激減する、担い手の確保は難しくなる。したがって、この法律の制定に大いなる期待を寄せていただいていると思いますし、私どもも、この制定を機に、先ほど来さまざま御発言がありましたようなことも体して、しっかりした計画を立て、政策化していきたい、このように思っております。
○永田委員 担い手が不足をしているというのは、いわゆる家業を継ぐ人がいないというのは、これは産業にある意味で魅力がなかったり、あるいは若い人たちの嗜好の問題でそういうことというのは起こるんだと思うのですが、実は、漁業従事者数の望ましい持続的な数、絶対数というのは、これはそういうことでは決まらないのですね。申し上げたとおり、国内の魚介類に対する需要の量、それから近海あるいは漁場でとれる魚介類の量、この二つを総合的に勘案して決定されるべき数字なので、担い手がいないから不足をしているというような考え方というのは正直改めていただきたいなというふうに思います。
それと最後に、輸出促進策というのがこの法案には含まれていました。輸出を促進するといっても、実は近年の日本の魚介類の輸出の動向を見ますと、白書にも載っておりますが、もう本当にありとあらゆるものが壊滅的に減少した輸出量ですね、缶詰もそうでした、練り製品もそうでした。こういったありとあらゆるものが減って、例外となっているのは真珠、そして海外で加工されて缶詰にするための冷凍の魚介類、これだけは輸出量を保っております。しかし、ほとんどの、普通にそのまま食べるような魚介類というのはもう日本で輸出は壊滅的です。
なぜか。それは、白書によりますと、一応農水省がお認めになった、水産庁がお認めになった文書だと思いますが、白書によりますと、現地生産が進んだからだ、こういう話になっています。つまり、海外に魚介類を輸出するといっても、もちろん刺身を持っていくわけにいきませんから、加工品として輸出をするわけですね。かつては日本国内で加工しておったのが、今は現地で加工をしていくようになった。あるいはその方が鮮度が保たれるという問題になった。こういうようなことは円高の進行と密接に関連をしていることと思います。
であるならば、円高の進行と密接に関連をして、日本の商社が、かつては日本で加工をして海外に輸出したものを、今は現地に工場をつくって生産している。こういうような現地化の動きが原因であるならば、輸出促進策というのは何をやってもほとんどむだなのではないかなという気がちょっとするのですけれども、どのようなことを具体的にはお考えになっているのか、お話しいただきたいと思います。
○岩永大臣政務官 先生おっしゃられたように、確かに今までは真珠と缶詰用の冷凍食品が中心でございました。しかし、昨年度でも二十二万トン、約一千四百億円の輸出がやはりあるわけですね。そして、先ほどのお話がございましたように、海洋国、そしてこれは日本の大きな資源なんですね。だから、日本の中での大きなウエートを占めている産業としての位置づけというのをこれから確立していかなければならない。そのことのために、ヨーロッパ等における管理の問題、そして食品衛生等の問題をも今国内の業者にいろいろと勉強させている。
そしてなおかつ、外国における魚食というのがだんだんふえつつあるわけですね。そういう部分をやはり見通して、そしていかにこれから日本の輸出をふやしていくか、振興していくか。確かに、この十年ほどの間に半減したことは事実でございます。しかし、半減したからだめだということではなしに、やはり新たにそういう施策をとっていく。だから、今回の法律の中でも、輸出についてはかなり大きなウエートで第十九条の二項にもきちっと位置づけておるわけですね。
そういうようなことでございますので、特に北海道のホタテ、それから鹿児島の養殖のハマチ、ここらあたりがかなり輸出用向けに生産基盤を確立してきているということでございますので、ひとつ安定していくような今回の基本法でありたいということで御理解いただきたいと思います。
○永田委員 質疑時間が終わりましたので、最後に二つだけ指摘をしたいと思います。
全体の答弁を聞いて、やはり行け行けどんどんの拡大主義の答弁が多かったのではないかなという気がします。
それからもう一つは、やはりこれから食料というものを考えますと、実は穀物というのは一トンつくるのに五十トンの水が要ると言われているのですね。これから世界各地で水の争奪戦が起こることは容易に予想できます。恐らく、今度起こる戦争は石油をめぐる争いではなくて、水をめぐる争いではないかというふうに言われています。しかし、水産業は水を必要としません。真水を必要としません。ですから、ぜひ水産業のウエートをもう少しふやしていただいて、このような悲惨な水争いに日本が巻き込まれることのないよう、頑張っていただきたいと思います。
この御指摘で最後にしたいと思います。ありがとうございました。
○堀込委員長 次に、中林よし子君。
○中林委員 私は法案審査に入る前に、昨日公表になりました土地改良区における政党費等の支出状況、農水省が中間結果を公表されました、この件に対してただしたいというふうに思います。
党費立てかえなどは、三十三県、五年分で、党費立てかえ分だけで二千二百六十八万円、政治団体等への寄附金で二千二百五十五万円、その他陣中見舞いなどを合わせて総計四千六百万円を超えており、私は、ことしに入ってから栃木で問題になったことでも驚きましたけれども、全国的に蔓延していたということです。
けさNHKのニュースを見たら、この三十三県まとめるには間に合わなかったのだけれども、茨城県、これがこの四千六百万円の約三八%に当たる千七百六十万円あったと報道もされておりました。
土地改良区には三年に一度検査に入っていることが明らかになっているわけです。しかも、日本共産党の林参議院議員が十年前、この問題は指摘をしてまいりました。この間、農水省は一体何をやっていたのか。五年間ではありますけれども、私はずっとこの報告を見て、大体固定している、ではその前は一体どうだったのかということを考えたときに、今日まで放置をしてきた農水省の責任、これは重大だというふうに思うのですけれども、大臣、その点についての反省の弁はいかがでしょうか。(発言する者あり)
○武部国務大臣 まことに遺憾千万、こういうことで国民に多大な不信を与えたということは極めて残念なことでございまして、この調査を一日も早く済ませて報告ができるように私の方から指示したところでございます。
できるだけ早くということは、六月の初めごろまでにはぜひやれるようにというようなことで徹底をさせたい、こう思っている次第でございます。
○中林委員 私は法案に入る前にとお断りしたのですけれども、それは、水産基本法という極めて重要な問題、政治姿勢にかかわる問題の一端が今回の中間報告にあらわれている、そういう観点からただしたいという意味合いでございます。
栃木で、自民党支部が土地改良区に対して、その規模に対して、あるいは土地改良区に対して党員を割り当て、土地改良区の党員が国や県の補助金で行われる事業で議員にお世話になったという意味でおつき合いをしてきた、こういうふうに言われているわけですね。このように、補助金とそれに対するお礼を政治献金でという自民党政治のあり方そのものが問われております。
農家の人たちが土地改良をして、その負担に耐えかねているという実態など、本当に農家の経営を圧迫している実態を見るにつけて、こういうことが蔓延していたこと自体に本当に怒りを覚えずにはいられません。
これは自民党として、その問題の真相を明らかにし、反省すべきだ。大臣も自民党員だというふうに私は確信しているわけですけれども、自民党員として、やはり総裁である小泉首相に問題を提起していただく必要があると思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
○武部国務大臣 自由民主党は、既にこの件について党独自としても急ぎ徹底究明すべく努力しているところでございます。
○中林委員 いずれ、この問題はもっと徹底追及をしなければならないと思いますけれども、言われたように、法案審議に入りたいというふうに思います。
漁業法の改正案についてでございますけれども、免許形態に、人格なき社団と言われて、法人ではないけれども法人とみなされるみなし法人による免許件数が百五十七、社団数が百六あります。関係者は全国で相当の人数に上るわけです。今回の漁業法改正で、みなし規定の削除、それによって優先順位が落ちて、それを避けるために法人化しなければならないという戸惑いがあります。
私も、定置網組合の方々と懇談したわけですが、ある組合では、二つの漁協構成員全員の加盟で六百人から成る、法人ではないけれども、任意組合方式で運営されておりました。安定した水揚げがあって、組合員の重要な収入源となって、漁村の生活を支えています。
ところが、法人化を迫られるということで大変不安を募らせていて、新たな出資が必要で、できない人は排除される、出資額によって上下関係、差別が生まれる、一定部分は外部資本の参入ができるとともに、株式譲渡ができるようになり、外部企業の支配、乗っ取りにつながる道、あるいは、株の譲渡制限は役員が承認すればよいのだから、歯どめにはならないなど、こういった声がこもごも聞かれました。漁村住民に不安を与える改正をなぜ今やらなければならないのか、疑問を感じております。
そこで、具体的な質問に移らせていただきます。
昭和三十七年の改正で、法人以外の社団を法人とみなすという規定は、当分の間だけでという規定だったわけですね。ところが、あれから三十九年たっている、もはや廃止は自明のことだと政府は説明されております。当分の間と言われて、それが約五年ぐらいだと言われていたんですけれども、実に三十九年続いてまいりました。
今回削除するという理由が、もう廃止は自明のことだ、それだけではとても納得いきません。今回の改正に当たって、なぜ削除しなければならないのか、これを改めて検討されたのでしょうか。
○渡辺政府参考人 前段、三十七年の改正のいきさつにつきましては、委員から御指摘のあったとおりでございます。したがって、私どもは、当分の間ということの経過措置でありますから、本来しかるべき時期には削除をされていかれるものと思っております。あれから四十年、一世代以上がたちました。
実は、この人格なき社団が持っておりますデメリットといいますか欠点でありますけれども、結局、法人格を持たないわけですので、構成上は構成員全員が共有免許という形態をとります。したがって、免許を取得しました後に地元の漁民の方が新たに加入できる道が閉ざされているということでございます。今や、漁業をやりたい人についてはできるだけ多く入ってきてもらいたいという実情であります。
それから、法人格を持たないということになりますと、実態の把握とか行政指導におきましても支障を生じることがございます。
さらに問題なのは、法人としてならば第三者との取引も非常にスムーズにいくわけでありますけれども、法人格を有しないわけでございますので、結局のところ、第三者との取引は代表者が個人名義で行うという実情にございまして、今後、効率的かつ安定的な漁業経営を目指す上では、やはりこうした法人等が優先をされてしかるべきというふうに思っておりますし、法人になる道自身はさほど難しいものではないというふうに私どもは考えた次第でございます。
○中林委員 今言われた理由は、大体三十九年前に言われていることと余り変わってはいません。新しい人が参入できるような道をということなんですけれども、現場では、かなりここは弾力的になりつつあるのではないかというふうに思っております。
三十九年前の漁業法改正のときから今日まで、四十年という長きにわたってですけれども、その総括と分析を私は十分行っていないんじゃないかというふうに思うんですね。行政指導に支障を来す、いわば水産庁の側から見た要求ではないのか、どうしてもそう思えてなりません。
優先順位の見直し、こういうことをやる。今までの優先順位で何か不都合があったのか。実際に漁民の方から、これは変えてもらわなければならない、そういうような問題があったのか。その点をお聞かせいただきたいと思います。
○渡辺政府参考人 先ほどのお答えと一部重複をいたしますけれども、効率的、安定的な経営、近代的な経営を行おうとすれば、やはり対外的にポジションのしっかりした、しかもメリットをたくさん持つ法人経営にできるだけ移行していただきたいというのが私どもの考えでありますし、世の中全体の動きも、農林水産業いずれにおいてもそうだろうと思います。
こういうことで、今回削除を行うことにつきまして私どもは、地元の関係者、県の方々あるいは漁業関係者の方々にもお話を伺いまして、大勢として、そういう近代的な組織の優先、そういうところに道を開いた方がいいというふうなお考えでございましたので、そうした内容について賛同が得られたものとして御提案をしているわけでございます。
○中林委員 具体的に困った事例というのは紹介をされませんでした。
私は、農林水産調査室の方から「「水産基本政策大綱」についての学識経験者の見解等」という資料をいただいているわけですが、ここに、「村を支えるローカル・コモンズの仕組み」ということで、地井昭夫氏がお書きになったものがございます。
これは三重県尾鷲市付近の漁村を紹介しているわけですけれども、大型定置網の共同漁場利用の仕組み、それについて、「地域の人々、特に高齢者の暮らしを自前の共同労働(大敷従業員の給与は年二百五十万円)とその利益配分によって、これほど見事に支える自然資源利用の社会システムは、山村の入会林などが衰退しつつある今日では、漁村以外にはほとんど存在しない。しかもこの漁村では長い間、大敷の利益の一部を山林に投資して、イザという時に備えてきたのである。」といい例として紹介をされております。
ほかのところで、皆さんで分け合って有意義な共同体としてやっている、こういう事例はあるわけですね。だから、本来ならば、今回削除されるに当たってはそういうことも十分検討をいただかなければならなかったのではないかというふうに思います。
これと関連して、要件つきですけれども株式会社を第一、第二位の優先順位に引き上げる、こういうふうになっております。今までの一人一議決権という法人の要件もなくして、株式会社では出資によって議決も違ってくるわけです。
こういう株式会社の優先順位を高めるということは、沿岸の漁利を均等に配分するということ、関係漁民みんなが経営に参加し、利潤の公平な配分ができる団体営を優先するという、今までの漁業法における民主的な思想が後退するのではないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがですか。
○武部国務大臣 定置網、定置漁業の免許の優先順位が高まるのは、地元漁民の多数が株主であって、かつ定款で株式の譲渡制限のある株式会社、地元漁民の多数が参加する法人を優先するという思想を何ら変更するものではございませんで、民主的な思想の後退につながるものではない、そういう認識でございます。
○中林委員 大臣、今まで株式の優先順位というのは三位、四位だったんですね。今までみなし法人は優先順位が上だったわけですよ。それが今度は、もうそれはみなし法人はないんだよ、第一位の優先順位にするんだったら、協同組合にするとか、そういう法人組織にするかあるいは株式にしないとだめだよ、こういう規定になってくるわけですね。
それでは、ぜひ教えていただきたいんですけれども、今まで株式会社の順位を第三、第四位にしていたのはどういう理由からだったのですか。
○渡辺政府参考人 これは先生御承知のことと思いますけれども、農地法の改正のときにも議論がございました。当時の商法上は、譲渡制限をすることができなかったわけであります。その後、これは四十一年だと思いますけれども、役員会において株式の譲渡制限を付すことができるという規定がただし書きで入りましたので、それを活用すれば、先ほど先生の御指摘があった外部資本からの云々という問題が生じなくなったというふうにお考えいただきたいと思います。
○中林委員 四十一年ですよね。それから随分たちました。
だから、私は、そこで商法上の規定が変わったというようなことではなくて、実は、この漁業法の解釈をする本が出ておりまして、それを見せていただいたら、株式会社の性格として、株式の移動を定款で制限することができず、また議決権の数も持ち株数に応じるのが原則だから、株式の移転によって漁民以外の者が不労利益を得たり、持ち株数による議決権の不平等が利潤の公平な配分になじまないということで、この優先順位はつくったんだ、こういうふうになっているわけですね。
だから、私は今回株式会社を優先順位の一位、二位に上げていくということは、議決権そのものが出資によって違ってくるわけですよ。だから、議決権をたくさん持つ株式、そういうものが出てくるということだと思います。漁民主体それから譲渡制限がある株式会社ならということでございます。
譲渡制限、これも農地法で長官と議論したところでございますけれども、譲渡制限といっても、私はやはり歯どめにはならないというふうに思うのですね。だから、漁村を離れ、株を維持できなくなる者から外部の企業や業者に渡り、後で事後承諾的に役員が承認せざるを得ない、こういう形で譲渡されることはあり得るわけですよ。
また、出資の多い外部の人が役員になって、影響力を行使するということがあり得るのではないか。こうして、利潤の上がる漁場によっては、漁業者以外の手に操業が事実上支配されていく危惧は大いにあるというふうに思うのです。それはないよと言い切れるものがあるんでしょうか。
○渡辺政府参考人 先ほど網組の話を出されての御説明がございました。
確かに、浜の構成員が、同質、同等でしかも常に同じ業に従事しているという時代から大分たちまして、実態として変わってきているわけです。この網組に入っている方でも、例えば都会に住んでいて、実態は従事の実情がないというふうなこともございますし、浜の中でだれを中心にして漁業をやっていくかということについて、この人にかなり多くのところを任せようというふうになってきますと、やはり、その人は出資も多くし、そして労働の配分も多く受けるというふうなことだってあってもいいではないかということなわけです。
ただ、その場合忘れてはならないのは、支配権を常に浜の方たちが持つということです。そういう点でいえば、七割という支配権が必ず可能なところで外部からの出資を制限しておりますし、常時従事の社員、役員といったことについても制限がございます。譲渡制限は有効に働くというのが、日本の、言ってみると家族経営、同族会社一般のほとんど大宗でありますので、この制度は決して先生が御心配になるような外部資本からの支配等々の問題は生じないというふうに思っております。支配権はあくまでも地元の漁民にあるというものを優先するという考えでございます。
○中林委員 今言いましたように、地元漁民が七割以上という規定は当然あるわけですけれども、しかし、そのところも外部からの人が役員に入ってきたりして、そこが大きな権限を持つということになると、一人一人はやはり弱いものですよ。
だから、そういう意味では、今回の優先順位、そこに株式を一位、二位へ引き上げ、これまで頑張ってきたみなし法人の方々が優先順位が落ちていくということは、やはり考え直していただかなければならないんじゃないかというふうに思うのですね。
大臣、定置網の漁業のために何が必要なのかということを本当に考えていただきたいと思うのですね。優先順位の見直しだとか法人化の促進、これで定置網漁業が本当に発展するのか。私は、そうじゃないんじゃないか。もっと困っているのは、資源の衰退だとか、魚価の低迷だとか、担い手不足だとか、そういうところにあるわけで、株式会社になっても魚がとれる保証はありません。そうですよね。
今までのみなし法人から株式にやればいいのじゃないかと大臣はおっしゃったんだけれども、では、株式に移行したからといって魚がとれるようになるわけではない、魚価も上がるわけではない。資源の管理や漁場の改善に漁民が団結して取り組めるような条件の整備だとか、魚価の回復に力を入れるべきであって、今回のような事態は漁村に混乱を持ち込むものだ、こういう声も上がっております。
したがって、一律にみなし法人を廃止することのなきように、ちゃんとやっているところもあるわけですから、そういうところをよく検討していただいて、これは再検討をしていただけないか、これが一点です。
しかし、どうしてもやるということであるならば、社団の人たちが引き続き操業が保証されるような配慮、または、法人化する場合、いろいろと支援を求めております。どんな支援を行うのか、その点について大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○武部国務大臣 今回の法改正については、関係の漁業団体や県とも十分に協議の上、提案しているものでございます。改正内容については賛同が得られているということは、御案内のとおりでございます。
今後、今先生御指摘のような資源の問題でありますとかさまざまな問題は、いついかなるときにでも常に想起されることでありまして、それは今後の政策として、政策展開によって解決すべき問題だろう、こう思いまして、効率的かつ安定的な漁業経営体を育成するというためには、閉鎖性が強いとか経営基盤も脆弱と言われている人格なき社団を近代的な組織として、経営の透明化、合理化を推進するということが必要なのだろう、かように思いまして、法改正の内容は私も適当だ、このように考えているところでございます。
今回の法改正によりまして、三十七年改正法附則第三条を削除しても、人格なき社団が、有限会社やこれと同順位に位置づけられる株式会社へ移行することにより、引き続き高位の優先順位を確保することは可能ではないか、かように思います。
このことから、平成十五年から十六年にかけて実施される定置漁業の免許の一斉切りかえに向けて、優先順位が高い法人に組織変えをするか、優先順位は従来と比較して劣位となるが現在のままの組織形態を維持するのかにつきましては、関係者で十分な検討が行われ、関係者が望む場合には、法人化が円滑に進むよう、県や関係の漁業団体とも連携して対処してまいりたい、かように存じます。
また、関係者が望む場合において、法人化を円滑に推進するために何らかの施策が必要かどうかにつきましては、法人化の実態等を踏まえまして検討してまいりたい、かように存じます。
○中林委員 ぜひ、大変不安の声などが起きておりますので、混乱を避けられるように取り組んでいただきたい。実態を踏まえて、こういう答弁をいただきましたので、そのようにやっていただきたいというふうに思います。
次に、水産基本法の方について質問したいというふうに思います。
今回、この法律を見させていただいたのですけれども、離島の漁業の問題がどこにも触れられておりません。
それで、私は島根県に住んでおります。島根県の隠岐島の西郷町では、総生産所得の九・四%が水産業で占められ、第一次産業の九割が水産業です。これは西郷町に限ったことではなくて、離島はどこも大体このぐらい、九割以上だろうというふうに思います。だから、地域振興にとっても水産業が核となっております。こういう状況を見たときに、やはり基本法で離島漁業の位置づけ、これがなされていないということがどういうことなのかなというふうに私は思いました。
離島における漁業の重要性と水産基本法での位置づけ、これについて大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○武部国務大臣 離島において水産業が地域経済に与える影響の重要性ということは言うまでもございません。今後も離島における水産業の健全な発展を図ることが重要という認識をいたしております。離島については、離島振興法に基づきまして、高率の補助で漁港整備などに対しては優遇措置がとられているわけでございます。
今後とも、漁港を初めとした水産基盤の整備を積極的に、農林水産省としても離島振興とあわせて努力してまいりたい、かように存じます。水産基本法は基本法ですから、これをもとにさまざまな具体策が進められるわけでありまして、政策展開をしっかりやっていこう、このことは言うまでもないことでございます。
○中林委員 書いていないのだけれどもちゃんと考えているのだというお考えです。もちろん、離島振興法は別の省庁の対応でかさ上げがあることは知っておりますけれども、せっかく新しく水産基本法ができるときですから、今までの離島の方々の御苦労にちゃんとこたえていくためにも、水産業という立場からぜひ強めていただきたい。
そこで、具体的に述べていきたいというふうに思います。
この離島漁業には絶えずハンディキャップが生じてまいります。隠岐島では、市場は鳥取・境港にあります。まき網船などは直接市場に水揚げできるのですけれども、イカ釣りだとか沿岸のいそ物、あるいは定置網のものは、西郷漁港から仲積み船で境港に行きます。それによって次の朝の市場になってしまい、鮮度も落ち、価格も下がってしまいます。それだけではありません。島から市場までの運送料も負担しなければならない。
こういう離島漁業のハンディキャップについては、農水省としてこれまで調査をされたことがあるのでしょうか。事実関係だけお願いします。
○渡辺政府参考人 先生の御指摘にぴたっと合うかどうかわかりませんが、水産庁で、かつて離島の水産物産地市場の実態調査を全国調査の一環として実施いたしました。それから、これは離島振興法を所管する国土交通省でありますが、離島に関する調査の中で、冷凍冷蔵施設と加工施設の立地状況等を調査の対象としていると承知しております。
ただ、御指摘がありました鮮度の保持であるとか輸送に係るコスト負担等についての調査は、残念ながらございません。
○中林委員 かつてやったことがあると。いつごろの話ですか。
○渡辺政府参考人 前者が平成八年、それから、後者が平成十一年と承知しております。
○中林委員 一部分はやったことがあるのだけれどもというお話でしたので、私は、ぜひ今言ったようなことを含めた全面的な調査をやっていただきたい、大臣聞いてくださいね、ぜひやっていただきたいというふうに思うのです。
離島漁業に携わる漁業関係者は、例えば、仲積み船の仲積み作業の軽減と作業の効率化のために船のコンテナ化が必要、こういう判断をしております。これとて相当の投資が必要になってまいります。そのため、離島漁業関係者は、離島漁業のハンディキャップを乗り越えるためにも、国による輸送経費の補助を強く願っています。
ですから、この調査はないとおっしゃるわけですから、調査の上、離島漁業のハンディキャップに対する対策についても、この基本法制定をきっかけにしてぜひ真剣な検討をいただきたいというふうに思うのですけれども、大臣の決意をお伺いしたいと思います。
○武部国務大臣 私は離島じゃありませんけれども、党の過疎対策特別委員長を長年やってまいりました。離島の事情は十二分に承知している所存でございます。本土と比べハンディがあることは言うまでもありません。それだけに、高い補助率を設定して漁港等さまざまな関連施設の整備を図っているところでございます。
離島等辺地に限り、離島等から本土への運搬船の整備に対して助成を行い、流通面での離島漁業に対する支援を行っているということでございまして、今後とも、これらの施策を通じまして離島漁業の振興を図ってまいりたい、かように存じます。(中林委員「調査はやっていただけるかどうか」と呼ぶ)前向きに検討します。
○中林委員 ぜひ調査をお願いしたいというふうに思います。
次に、国営栽培漁業センターについてお伺いします。
水産基本法で、水産動植物の増殖及び養殖の推進が第十六条でうたわれていて、「国は、環境との調和に配慮した水産動植物の増殖及び養殖の推進を図るため、水産動物の種苗の生産及び放流の推進、養殖漁場の改善の促進その他必要な施策を講ずるものとする。」こと、こういうふうにされているわけです。そして、そのために、国としては国営栽培センターでその事業を進めているわけですけれども、この事業の拡充強化、それを今後もおやりになるおつもりなのか、それについてお答えください。
○武部国務大臣 水産資源の持続的利用を確保するために栽培漁業を推進していくことが重要というふうに私も認識しております。
栽培漁業の基礎的技術開発を、国営栽培漁業センターにおいて社団法人日本栽培漁業協会に委託し、実施している次第でございまして、日本栽培漁業協会の独立行政法人化については、一つの可能性として考えられますが、今後とも、十分な技術開発が実施できるように対処する考えでございます。
○中林委員 拡充強化につながるのかどうなのかよくわからないような話で、独立行政法人化も言われている中ですから、むしろ縮小されるのではないか、そういう危惧をどうしても感じるわけですよ。
ここに国営の栽培漁業センターの要覧というものを見せていただきました。十六設置されていて、もうこれで終わりだとこれを持ってきた係の方はおっしゃっていて、私は愕然として、ここ、地図を見ていただいても、カバーできないなと。いや、基礎的な技術ですからどこでやろうともカバーできるのです、こういう御説明だったのですけれども。
大臣、やはり京都の宮津以西にはないのですよね、日本海側に。だから、隠岐の人たちが、これは漁協の方も含めて、ぜひ国営の栽培漁業センターを設置してほしい、こういう要望があったのですけれども、いかがでしょうか。
○渡辺政府参考人 先生から先に御指摘がありましたので、そのことの若干繰り返しになりますけれども、国はこの施設をつくって栽培漁業協会に運営を委託するわけです。
そこで行うことはやはり基礎的な技術開発でありますので、具体的なイメージからしますと、隠岐ですと対象になります魚は多分マダイということになります。マダイは、もう既に全国ベースでも二千三百万尾、それから隠岐の県のセンターでいいますと百二十九万尾ですか生産をしておりまして、技術としてはもう一般化をしているというような状況でございますので、国が乗り出すよりは県のセンターがやっていくということがふさわしいと思っております。
いずれにいたしましても、関係県と連携をしながら、栽培漁業の一層の推進を図りたいと思っております。
○中林委員 やはり、せっかく水産基本法ができるのだけれども、その必要性は大変大切だと書きながら、実際面では、検討はするとはおっしゃるのだけれども、これ以上は数がふえそうにもないというようなことですので、この基本法が生きる上からもぜひ国営の栽培漁業センターの拡充を求めたいというふうに思います。
次に、日本水域の富栄養化の問題についてお伺いします。
これは五月十三日付の日本農業新聞の論説です。大変興味深い記事になっておりました。全文は紹介しませんけれども、それには「海、河川、湖沼の汚れが改善されない。下水道や浄化槽が普及したのに、水域の富栄養化は、逆に進んでいるのである。」こういう記事なんです。
その原因として、農産物の無秩序な輸入が富栄養化物質を大量に持ち込んでいることにある、こう指摘をしております。特に、通常の下水処理装置では、有機物の除去はかなりできるけれども、窒素や燐が取り除けないため、河川など水域へ放出されているわけです。そういうことを指摘しております。
私は、これは水産物でも同様だというふうに考えます。日本周辺水域でとれた水産物を消費するならば、日本水域での窒素や燐、これは取り込んでいくわけですから、そしてまた放出するということでプラマイ・ゼロ、こういう論は成り立つと思います。ところが、輸入水産物であれば、絶えず日本水域に窒素や燐を放出し続けていく、こういうことになるわけです。
だから、富栄養化を進めるということを食いとめるためには、輸入水産物を含む輸入農水産物の問題をやはり国民的に考えていく、そういうことが必要なのではないかと思うのですね。こういう観点から、水域の富栄養化の問題、それを研究したり検討されたことが今までおありでしょうか。
○渡辺政府参考人 水域の富栄養化と申しますと、基本的には窒素と燐であります。ですから、窒素の循環についての調査研究ということでお答えをしたいのです。
平成八年に、富栄養化の原因となる窒素について、日本の食料供給システムにおける循環というのを農林水産省の研究所で実施をいたしました。お答えはほぼ先生が御指摘になったことと同じなわけでありますけれども、調査時点は八年ですが、四年ベースの資料を使いまして、国内生産の食料、飼料として、つまり国内生産が六十九万トンの窒素、それに対して輸入食料、飼料として九十二万トン、国産よりも多い量の窒素が輸入をされて、環境中に結果として百六十七万トン排出をされているというのが実態であります。この内訳は、畜産廃棄物が七十五万トン、食品廃棄物として七十四万トン、化学肥料として五十七万トン。
つまり、たくさんのものが入ってきて、それが国内に最終的に排出をされるということでございますから、これを、今先生から御指摘ありましたように、正しい循環に戻し、できるだけ国産で、残さない、再度使うという、言ってみると三つのRでしょうか、リデュース、リユース、リサイクルといったようなことで戻していくことが水域にとっても富栄養化を避ける望ましい傾向である、そう考えております。
○中林委員 こういうすばらしい調査も研究もされたということなんですね。そうすると、私は、食料自給率を引き上げる、こういう観点を考えるときに、ただ輸入農水産物依存が食料危機を招く、そういうことだけではなくして、日本の食料の物質循環を壊していくだとか日本の水域の富栄養化を招くだとか環境を破壊するんだ、輸入水産物だけじゃなくて農産物も含めてそういうことにつながるんだ、これを打ち出す必要があるんじゃないかというふうに思うのですね。
今国民は、大変環境問題に対して関心は深いのです。だから、大臣として、ぜひそういう取り組みを強めて、こういう観点からも、やはり輸入農産物あるいは水産物に依存するのじゃなくて、こういう環境の問題、水域の富栄養化を防ぐ問題、その観点からもやっていくんだということをぜひ御決意いただきたいというふうに思います。
○武部国務大臣 全く同感でございまして、私ども、化学肥料や農薬をできるだけ使わない農業をやろうというようなことも提唱しておりますし、そのための政策展開ということも充実していかなきゃならない、このように考えております。例えて言うならば、緑肥作物を輪作体系に入れていくというようなことも一案だろう、かように思います。
また、外国からの輸入農産物に限らず、窒素、燐をいかにして抑えていくかというのは、今水産庁長官がお話ししましたように、食品のリサイクル、あるいは畜産廃棄物等、有機性資源の循環利用を進めるということが有効だろう、かように考えておりまして、今後、有機性資源のリサイクル技術の高度化に対する研究をさらに強化してまいりたい、かように考えている次第でございます。
このことにつきましては、国民の皆さん方、消費者の皆さん方の理解と御協力がぜひ必要だ、かように存じておりまして、農林水産省としても、国民の皆さん方の合意を得られるような努力も最大限取り組んでまいりたい、かように存じておる次第でございます。
先生の御発言、大変傾聴に値するものがある、かように存じまして、深く敬意を表したいと思います。
○中林委員 次に、食中毒問題です。
この委員会でも随分問題になっているO157の汚染問題なんですけれども、それについて、きょう厚生省の方から副大臣にも来ていただいておりますので、よろしくお願いします。
ことしの三月に、滋賀県のファミリーレストランでビーフ角切りステーキを食べた子供がO157に感染して、その後、富山県、奈良県で、同じ系列のファミリーレストランで同じビーフ角切りステーキを食べた人がO157に感染する事件が起こりました。患者数は六名でした。その原因は、二〇〇〇年十二月にカナダから輸入されたO157に汚染された牛肉でした。
また、ことしの三月から四月にかけて、千葉県、埼玉県、神奈川県など一都六県で二百四名の患者を出し、八十二名の入院と十三名のHUSを発症させた滝沢ハムのO157事件も、その原因は、二〇〇〇年十一月にアメリカから輸入されたO157に汚染された牛肉でした。
恐れた事態がとうとう起きたのか、そういう事態です。幸い死者が出なかったのですけれども、私は、これだけの患者を出したということは非常に大きな問題だというふうに思います。
そこで、お伺いしますけれども、なぜO157に汚染された輸入牛肉が何のチェックも受けずに輸入されたのでしょうか。
○尾嵜政府参考人 御承知のとおり、牛肉の輸入に際しましては、輸入者に対しまして、衛生的な処理が行われている旨の衛生証明書を輸入時に添付させることにいたしておりまして、同時に、輸入時に一定の割合でO157につきましてのモニタリング検査を実施しているわけでございます。そういった結果をもとに、輸出国における衛生的な処理方法の改善を要請し、牛肉のO157汚染率を低減化するように、そういった対策を行っているところでございます。
ただ、御承知のように、O157につきましては、健康な牛の腸内に存在しておるということでありまして、牛肉そのものの表面には、一定の割合で、一定の率で汚染がされるということが、これをゼロにするというのは非常に難しいものでございます。そういったことで、私どもとしましては、今申し上げましたような輸入時の証明あるいはモニタリング検査ということをやっておりますが、そういったもので全くゼロにするということは難しいというふうに考えておるわけでございます。
ただし、このO157につきましては、御承知のとおり、加熱加工すれば簡単に、容易に死滅をするという細菌でございます。そういったことをするようにということで、十分消費者にもあるいはその業者の方にも指導や注意喚起をしているという状況でございます。
○中林委員 えらい簡単に加熱処理すればとおっしゃいますけれども、実際に、モニタリング検査というのはわずかです。検査したときに汚染されていたとしても、もうその時点では汚染されたものは食べられちゃっている、こういう事態ですね。ですから、ちゃんと証明書をもらっているんだとかあるいはモニタリング検査をしているから大丈夫だということは当てはまらないんじゃないかというふうに思います。
食品衛生法の四条に禁止規定があるわけです、使用してはならないと。その四条の三号に、「病原微生物により汚染され、又はその疑があり、人の健康を害う虞があるもの。」という規定の中にこういうO157も入っているわけですよ。それにもかかわらず、実はこれは四条違反には当たらないんだ、だからそういう指導だけでいいんだということで、何のチェックも受けないものが入っているというこの事実は、副大臣、ちゃんと認識していただかなければならないというふうに思います。
そこで、モニタリング検査の問題ですけれども、これも大問題だというふうに思います。二〇〇〇年度の輸入肉で患者が出たんです。だから、二〇〇〇年度のO157のモニタリング、計画数と実績数、どういうふうになったのか。計画数は二百件について実績はその四分の一しかならない五十八件ですよ。なぜ二百件と計画を挙げておきながら四分の一しか検査をしなかったのか、その理由についてお答えください。
○尾嵜政府参考人 モニタリングの数字につきましては、御指摘のとおりでございます。
若干経年的な数字を申し上げますと、平成十年度は、牛肉を、計画数七百に対しまして六百九十三、平成十一年度、牛肉に対しまして、六百八十の計画に対しまして実績は千三百六十一、こういった実績でございます。十二年度は、御指摘のように、計画が、牛肉ではございませんで牛ひき肉を対象としてモニタリングをするということで、それはどうしてかと申し上げますと、牛ひき肉、いわゆるハンバーグによりましてO157の中毒事件が国内で発生をいたしました。そういったところで、私ども、これまでの牛肉での検査結果を見れば、そちらよりも牛ひき肉の方を重点的にやるべきだという判断をした上でこういった計画を立てたわけでございます。
ただ、実際には牛ひき肉についての輸入量の詳細がつかめておらなかったものですから、そういった中で、計画数としては、ある一定量、頻度以上にやるという計画で、二百件ということを計画上は想定したわけでございますが、実際には、ひき肉全体が入ってまいりましたのが二百数十件でございまして、そのうちの一割程度に当たります二十八件と、あわせまして牛肉についても一部モニタリングで検査をした、その実績としての御指摘のような五十八件というふうな数字になっているわけでございます。
○中林委員 ひき肉だけやったんだ、しかも牛肉の方はゼロですよ、計画そのものが。もうここからして、大体モニタリングそのものの計画も間違っているし、実際に患者が出たから牛肉の方も三十件検査はしているわけですけれども、そういう、通常ならば、平成十年、さっき言われたように七百件の計画数があったんですよ、それが十二年になって途端にひき肉だけ二百件の計画件数、しかも実施は非常に悪いということから、そこをかいくぐって汚染されたものが国民の口に入っているということです。
一九九九年度は、二〇〇〇年度の二十三倍に及ぶ、先ほど部長がお答えになりましたが、千三百六十一件のモニタリング検査が行われました。たくさん行われれば、九件もの輸入牛肉のO157汚染が発見されたのですよ。その九件というのは幾らの数量になるかというと、九十四トンを超えるんです。一人一食、牛肉を百グラム食べたとすると、実に九十四万人分に相当する牛肉なんです。だから、わずかだなんということじゃないんですよ。
私は、当然O157に汚染された牛肉というのは焼却処分されたものだというふうに思ったんですけれども、何と加熱加工用に使用するとして流通加工を認めました。恐るべき事態だというふうに思うのです。副大臣、これでいいと思っていらっしゃるのでしょうか。
○桝屋副大臣 先ほどから伺っておりまして、水産三法のこの審議の中で、あえて委員が牛肉に対するO157の問題、御懸念を持たれて心配をされて御発言をされておられる、まことに重く受けとめていきたいと思っております。
それで、今の部長とのやりとりを聞いておりまして、一つは、今委員がおっしゃった、十一年度の検査、陽性となったものについて、これが加熱加工用として流通をした、これはとんでもない話だという御指摘があったわけであります。
先ほど部長も申し上げましたけれども、御指摘のO157が検出された牛肉については、加熱加工すればこれは容易に死滅をする、七十五度C、一分というふうに言われておりますけれども、死滅をするということが可能であります。したがって、先ほどから話が出ております、食品衛生法第四条により販売が禁止される、人の健康を損なうおそれのあるものには該当しないわけでありまして、したがいまして廃棄処分を行わなかったということであります。
もちろん、その牛肉が食中毒の原因とならないよう、輸入業者に対しましては、販売に際して確実に加熱加工される用途に仕向けるよう指示をしたということでございまして、御理解をいただきたいと思います。
○中林委員 私は、副大臣に大変期待を持っております。それは、公明党ですよね、本当に食の安全、これは一貫して求めておられる政党じゃないかというふうに思ったんですね。にもかかわらず、こういう事態になっている。業者を指導したからそれでいいというものじゃないでしょう。
今回の滝沢ハムの問題なども、ちゃんと加熱するということは当然。しかも、滝沢ハムなどというのはHACCP工場ですよ、認定工場。そこで、実際人間がやることですよ、十分でなかった、だからO157に汚染された、こういう事実になっているわけですね。
だから、加熱処理、七十五度以上にすれば死滅するんだというんだけれども、それに達しなかったらずっと生き続けるというのがO157。九六年の堺の事件を覚えていらっしゃるでしょう、物すごい数の患者、三人の方が、幼い子供が亡くなりました。そのぐらいO157というのは、私はちゃんと防がなければならない病原菌だというふうに思うのです。
先ほどの九件の輸入牛肉がO157に汚染した状況、これを具体的に見てみますと、例えば牛の内臓、冷蔵、加工用未調整品、これは九件の内訳で、二件検査をして二件とも汚染されたわけですね。汚染率からいけば一〇〇%ですよ。当然、検査は厳重に行わなければならないはずです。
九九年度が、千三百六十一件モニタリング検査をして九件の汚染牛肉が見つかったわけですから、二〇〇〇年度はもっとモニタリング検査を強化して、監視体制を強めるべきだったというふうに思います。
それが逆に、計画ベースで九九年度のわずか一五%足らずの二百件、これしか検査計画がなかった。しかも、実績はその四分の一、五十八件しかモニタリング検査をしなかった。ほとんど無検査に等しい、そういう状況になって汚染牛肉が輸入されたのではなかったのですか。これはどうですか。
○尾嵜政府参考人 今回の事件の関連での御質問の中で、若干私の方から、御理解を願いたいということで御説明申し上げます。
その一九九九年の千三百件余りのモニタリングをやったというものにつきましては、まさしくそこに、御指摘がございましたようにO157が陽性になったというところの、これはアメリカの業者でございますが、そこについて、そこから発送されます、輸入されますものについて重点的にやったという形での件数の積み上げの数字でございます。
そういう意味で、そこにつきましては、最終的には一般の国内の率と同程度の非常に低い率までに件数率が落ちましたので、そういったところについては平常と申しましょうか正常なレベルに戻ったというふうなことで、そういった意味で、この件数が非常に重なった、数字が大きくなったということが一つ事実としてございます。
御指摘のとおり、十二年度につきまして、ひき肉だけでなしに肉の方をもっとやるべきでなかったか、そこのところは確かに私どもも反省する点はあるというふうに思っております。十三年度のモニタリングの内容につきましては、現在、御指摘がございました二つのO157の事件を踏まえまして、計画をもう一度見直そうというふうに考えているところでございます。
○中林委員 反省をして十三年はモニタリング検査数をふやすんだとおっしゃるんですけれども、こういう中毒事件、汚染されて患者が出れば、そこで厚生省は後追いみたいに考えるんじゃなくて、常日ごろやっておかないからこそ、汚染されたものがわかったときには、国民の口に入っている。
業者を指導している、加熱すればいいんだ、ボンカレーに回せばいいんだ、そのようにおっしゃる厚生省の役人の方もあります。とんでもないことだと思う。私は、O157に汚染されたものがボンカレーに入っていますよと本当に宣伝したいぐらいです。(発言する者あり)いや、汚染されたものは入っちゃっているんですから。それは、加工用に許可して、加熱すればよろしいということで言っているんです。だから、そのことは厳然たる事実でございます。
だから、私は、副大臣、ぜひ考えていただきたいのです。食品の安全に関する厚生労働省の基本姿勢、これを本当に正していただきたい。エイズ事件でも、あれほど安全性の、予見可能性の問題が厳しく指摘されたんですよ。
O157は、死亡する危険性もある非常に危険な感染症です。極力危険性を回避する義務、これが厚生労働省にはあります。当然、輸入牛肉のO157汚染について、命令検査の対象にしてそれを日本には持ち込ませない体制、それをとるべきじゃないですか。ましてや、モニタリングで発見されたとき、ここが大切だと思うのです。加熱処理をすればよろしいと業者を指導するだけじゃなくて、回収、焼却処分にする。
もちろん、そのためには人員が要るとかいろいろおっしゃったのです。ふやせばいいじゃないですか。国民の命を守るところなんですよ。それが私は厚生労働省に今求められているというふうに思うので、副大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○桝屋副大臣 委員の御指摘を重く受けとめまして、厚生労働省としても食の安全確保のためにできる限りの努力をしていきたい、このように思っております。
先ほどから議論がありますこの牛肉のO157でございますが、一つは、決して私は安易に考えているわけではないわけでありまして、ただ、O157というこの存在が健康な牛の腸にいるということは事実でありまして、完全にこれをなくするというのはなかなか難しい。しかし、それを食の安全という観点から本当に全力を挙げて厚生労働省としては努力をしなければならぬ、このように思っているわけであります。
加えて、やはり国内の流通の段階で加熱加工するという、これもきちっとしていただかなければならぬ。その徹底がなされていなかったということもこれまた事実であります。したがいまして、私ども厚生労働省としては、このO157の対策については、これを全くゼロにするということはなかなかその存在からしますと難しいわけでありますが、しかし食肉の処理、あるいは加工、そして流通、さらには消費を通じての各段階で安全対策をそれぞれ一生懸命講じていくという対策を講じなければならぬだろう。
委員は、輸入のときの検疫の体制を御指摘いただきました。これももちろん大事でありますし、今部長から御答弁申し上げましたように、遅まきながらでありますが、こういう事件を踏まえてモニタリングの数も、計画数も急遽ふやさせていただいたわけでありまして、こうした体制はもちろんこれからも全力を挙げてやっていかなきゃいかぬ。
数が足らぬ、ふやせという話もありましたが、この前もここで議論させていただきました食品衛生監視員、三十一カ所で頑張っておりますが、これも順次、輸入量の増加の中でふやしてきているわけでありまして、こうした体制の整備にも全力を挙げていきたい、こう思っております。
それから、加工、流通段階、これも国内の業者にしっかりと低温管理あるいはその加熱の処理ということを本当にきちっとしていただかなきゃならぬ、これも監視指導というのを十分行っていく必要があるだろうというふうに思っているわけであります。
それから、これもおしかりを受けるかもしれませんが、やはり消費の段階で生の肉というのは相当注意をしていただくということも、しっかり私どもの役割としてPRをしていかなきゃならぬだろうというふうに思っているわけであります。
いずれにしても、きょうの御指摘を踏まえてしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○中林委員 以上で終わりますけれども、だからこそ命令検査が必要だということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
○堀込委員長 次に、菅野哲雄君。
○菅野委員 水産基本法について、五点にわたって当局の考え方を、政府の考え方をただしていきたいと思います。
初めに、小泉内閣のもとで武部農水大臣が任命されて今活躍なさっているのですが、小泉内閣は、とにかく聖域なき構造改革を唱えてきておりますし、これからもそこに向かってずっと進んでいくというふうに言われております。
先ほども答弁ありましたけれども改めてお聞きしておきたいのですが、武部大臣は、水産業の中で構造改革という視点をどのようにとらえているのか。そして、水産基本法をいかに実効あるものにしていかれる考えなのか。そして、小泉総理大臣の唱えている構造改革というものは、私はずうっと聞いておりますけれども、自由競争という経済社会をつくり上げていこうとしている。そういう中で、基本法の目指している水産業の健全な発展、そういう観点との関係をどのように大臣としてとらえてこれから農林水産行政を行っていこうとしているのか、この点をお聞きしておきたいと思います。
〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕
○武部国務大臣 先ほど来申し上げてまいりましたように、水産業をめぐる我が国の環境は、まず、漁業経営が悪化しているということ、担い手の減少、高齢化の問題、漁村の活力の低下、こういったような厳しい状況にあると認識しております。したがいまして、その構造改革を進めることが急務であるというふうに申し上げたいのでございます。
これまでの施策全般を抜本的に見直しまして、総合的、計画的に政策転換を推進していくということが不可欠なわけでありますが、少しく具体的に申し上げますと、漁場利用の面では、我が国が有する約四百五十万平方キロメートルの排他的経済水域、二百海里水域の漁場を大事に使うという考え方に改めていくということでございます。
水産資源の観点から申し上げますと、とる漁業から、資源を管理し、守り育てる漁業に切りかえること、かように申し上げられると思います。
また、担い手や経営面では、意欲と能力を持つ方々にその生産や政策の重点をゆだねていく、かようなことでございます。
さらに重要なのは、消費者とのかかわりでございます。消費者との関係においては、生産と消費の共存、共生の観点に立ちまして、加工、流通部門なども含めまして、需要に即した水産物が供給されるような体制を整備していくということが具体的に重要だろうと考えている次第であります。
今回の水産基本政策は、こうした水産全体の構造改革とこれに伴う政策転換を目指して行おうとするものでありまして、よくゼロベースでということを申し上げるのでございますが、従来の考え方にこだわらず、新たなる考え方で、今申し上げましたようなさまざまな取り組みを全力で法の制定のもとにやってまいりたい、かように考えているわけでございます。
それから、次に御指摘の、自由競争という経済社会の中で基本法の目指している水産業の健全な発展についてどのように考えているかということでございますけれども、水産基本法案に示された方向に沿った諸施策を水産業の構造改革として今申し上げましたように政策展開しているわけでありますが、その結果として、基本法の理念に掲げられております水産業全体の健全な発展が達成される、そういう努力を掲げているわけでございます。
水産業が自由競争を基本とした現在の経済社会の中で行われることを前提といたしまして、具体的には、漁業者自身の経営者としての努力を基本といたしまして、それに加えてあらゆる施策の効果が相まって実現されるもの、こういうふうに考えている次第でございます。
漁業者の創意工夫を生かし、経営基盤の強化に向けた条件整備、さらには漁業共済等を通じた災害による損失の合理的な補てん、資源管理が経営に与える著しい影響の緩和、こういったこと等に留意をして、意欲を持って漁業に取り組む方々の経営の安定と発展が図られ、水産業の健全な発展という理念が実現されるものと考えている次第でございます。
○菅野委員 武部農水大臣、この水産基本法を国会で審議したのは、谷津農水大臣のときからずっと審議してきています。私も前回一時間質問させていただきましたけれども、変わっていないんですよね、理念は。
そして、今言ったように、私が言うのは、聖域なき構造改革、構造改革と言っていますけれども、第一次産業においては、今までの継続的な施策というものを展開していく、改革断行内閣だなんて言わないで、今までとってきた政策を継続して発展させていくんだという立場を明確にすべきだと私は思うんですね。それがあたかも、今までやってきた施策が間違っていて、これから方向転換しますよなんて言うからみんな戸惑いを感じるんじゃないでしょうか。このことを冒頭に当たって私はしっかりと大臣に申し上げておきたいと思うんです。所信のときに、冒頭に改革断行内閣と言いますけれども、そうじゃないと思うんです。
逆に大臣の話を聞いていて、こうであればいいと思うんですが、今日的な第一次産業が置かれている状況は非常に厳しい状況にあります、こういう厳しい状況はこういう原因でなってきたから、その原因を取り除くために改革しますというんだったら、私は拍手を送りたいと思うんです。
大臣、今言ったように、漁業経営の悪化、そして漁村集落の活性、活力の低下。漁場利用、二百海里海域をこれから大事にしていかなきゃならない。今まではしてこなかった、そういうとらえ方ですね。それから、とる漁業から守り育てる漁業、これを展開していかなきゃならない。これもぴしっとなっているかと言ったときに、なっていないんですね。これからの途上にあると思うんです。
これらの漁業環境を取り巻く状況は、何に起因して今日の厳しい状況をもたらしたと思っているんですか。そして、その原因をどういうふうにして取り払っていこう、改革していこうとしているんですか。そのことのメッセージを大臣に生の声で国民に訴えてほしいと私は思うんです。
〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕
○武部国務大臣 今先生のおっしゃったとおりだと私は認識しております。
今までの漁業、水産業の問題点は何かといえば、やはり資源ということについて深い考え方を持っていなかった。午前中も申し上げましたように、また繰り返しますけれども、我々人間が少しおごっていたんじゃないか。自然の恵みに感謝する気持ち、自然の驚異を恐れる謙虚な気持ち、これが原点です。これを原点にしなければ、地球環境というものはそう遠くない未来のうちに私は破滅に追い込まれるんじゃないか。
そういうようなことを考えたときに、これまでの、一言で言うと略奪漁業、我々地元ではそういう言葉が使われます。そういうようなことを改めて、資源をみんなで育てましょう、資源が育つような環境づくりをいたしましょう、そしてこれを守りましょう。そして、守るためには資源に見合った操業秩序というものを確立していきましょう。これを付加価値を高めて、国民の皆さん方に大事に供していただく、食していただけるように、消費者の皆さん方の御協力もいただきながら、水産物の需要と供給の関係というものをしっかり維持してまいりましょう。そのことを真剣に、計画的に考えて諸施策を展開していきましょう。
先生がお話しになりましたことは、基本的には私どもと何ら変わらない考えでありまして、これはまさに聖域なき構造改革と言うに値することだろう、こう思います。そういう基本的な考え方を持って新しい基本法をつくるわけでございますので、ぜひ一日も早い成立に御協力を願いたいと思います。
○菅野委員 今言ったように、漁業の経営そのものが悪化している。そして、その原因は基本法に盛られているんですから、基本法をこれから実のあるものにしていく中でやっていかなきゃいけない。
それでは、具体的に基本法の中身について私ここで議論したいと思うんですが、十三条に排他的経済水域、今大臣もおっしゃっているように、二百海里水域内における資源管理をどのように行っていくかということに、これからの漁業というものも相当なかかわりを持ってくるんだろうというふうに思っています。
それで、十三条の中身を見ると、最大持続生産量の把握、漁獲量、漁獲努力量の管理をしていくというふうになっているんですね。だけれども、これをだれがどうやっていくのか、これは非常に難しい問題があるというふうに思うんです。先ほども利子論の議論がありましたけれども、資源を科学的に把握するということは非常に大変な作業だというふうに思っています。鯨の例でいえば、本当に鯨の資源量が今どれくらいあるのかということは、見方によってまるっきり違うという状況も出てくるわけですから、こういう最大持続生産量の把握、これをどのようにしていくのか、これがこれからの漁業生産に大きなかかわりを持っていくんだと思うんですが、この点をどのように考えておられるのか、これがまず一点です。
そして、先ほど大臣も話していたんですが、略奪漁業から秩序ある漁業というふうに言っていますね。確かに略奪漁業という部分があったかもしれません。ただ、今は逆に、マグロでいえば漁獲率の低下によって漁業経営も相当押し込められているんですけれども、そういうふうに、TACも含めて生産管理していこうとするときに、漁業者にどういう補償というか、農業でいえば所得補償というものをどうしていくのか、この点も水産業においては重要な課題だというふうに思うんです。
そして、十三条には、漁獲調整によって経営に影響を及ぼす場合の緩和措置というものをうたっているんですが、この漁業調整によって経営に影響を及ぼす場合というのをどういう判断基準でしていくのか。これもぴしっとしたものをつくっておかなきゃならないというふうに思うんですが、この二点について、長官でもいいですから考え方をお聞きしておきます。
○渡辺政府参考人 まず第一点目の最大持続生産量の把握の問題であります。
御指摘のとおり、この把握は容易なことではありません。ただ、十五条には、水産資源に関する調査研究をやっていくんだということがきちっとなっております。また、水産庁としても、これまで水産資源の調査研究の充実に努めてまいりました。
特にこの中で一番ポイントになりますのは、漁獲量そのものと親子関係の科学的情報の長期集積という点だろうと思います。そういうところに重点を置いて今後さらに調査研究をしなければいけないと思っておりますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、必要な科学的な情報が万全、十分でないというふうな資源につきましても、傾向がわかれば、そういう中で資源管理措置を実施していく。つまり、歩きながら物事を考えるという、施策の実施過程で、現場の漁業者のお考えも含めて、実感も含めて、そういったいろいろな角度からの情報集積をして最大持続生産量の実現を図っていきたいというふうに思っております。
次に、漁獲量であるとか漁獲努力量の管理というのをそういう状況の中で行うわけですが、これを実効あらしめるためには、漁業者から報告をとりますが、これを基礎にいたしまして、それを積み上げた後、必要な量に達するということになりますと、関係漁業者に助言、指導勧告、操業の停止命令といったものをかけて、管理が徹底をするようにしていくということになります。
ただ、もちろんベースになりますのは漁業者からの報告でありますけれども、当然のことながらクロスチェックということが必要でありますので、ここの点では市場サイドに相当な御協力をいただかなければならないというふうに思っております。
最後に、資源管理を徹底すると痛みが生ずるという問題でありますが、当然資源回復計画というものを立てるわけで、その資源回復計画に基づいて減船あるいは休漁ということを具体的に決めていきます。これは数字が出てまいりますので、この計画に沿って行われる減船や休漁等の実施は、当然のことながら収入の遮断、減少ということになりますので、その点につきましてどういった施策を具体的に講ずるか、目下検討しております。十四年度からは資源回復計画をレールに乗せたいと思っておりますので、非常に検討が急がれるわけであります。
大変ドラスチックな状況になりますと、減船の費用を負担する漁業者につきましても、特定の漁法の特定の漁業者ということになりますと負担が大きいですから、これを同じ魚をとる漁業者全体に広げてみる。あるいは、すぐに費用負担をしないけれども、資源水準がある一定程度回復したところで費用負担を逆に求めていくというふうな、いろいろなやり方が可能だろうと思いますので、ここはもう少し勉強すべきものでございます。
ちょっと蛇足ながら、鯨の資源状態ですが、これは科学委員会で我が国の主張はきちんと認められておりまして、これを感情的もしくは政治的にのまないというのが現状でありますので、科学的には認められているわけでございます。
○菅野委員 十三条のことをぴしっとやっていくというのは非常に難しい問題を内包しているというふうに私は思うんです。
それで、今日までの漁船漁業も含めて、沿岸漁業も含めて、どういうふうにやってきたかというと、先ほど長官が言うように、資源回復に欠かせない条件として、減船あるいは休漁その他の漁獲努力量の削減というのをずっとやってきているんですね。やってきているんです、自主的に。
それにもかかわらず、今日の水産業の状況はどういうふうになっているかというと、魚価はなおかつ安いんですね。上がっていないんです。魚価安なんです。どんどん減船したにもかかわらず魚価安は続いています。それと、量は振るわずなんです。そういう中で、もう漁獲調整以前に自主的に廃業している実態なんですよね。負債を抱えて倒産していっている実態なんです。
それで、先ほど言ったんですが、自由競争経済ですから、倒産以前に政府から手を差し伸べるということは難しいことなんですね。もう現実に漁業経営者は倒産して、共補償をやっていますからお互いにまた苦しい立場になっていって、そして漁船漁業界全体が連鎖倒産をしていくという状況になっているわけです。
それで、そこの中で最大持続生産量を把握して、漁獲調整やって、一方では水産たんぱく資源の供給という国の施策もあるわけですから、これができなくなったときには大変な世の中になるわけですよね。そういうことを考えてこの十三条をどのように運営していくのか。そして、自由経済社会の中で、国による補償措置というものをどのようにしていくのか。休業補償に対して、あるいは倒産に追い込まれたときに、国としての補償というものをどうしていくのか。
このことをしっかりと議論しておかない限り、十三条は実効あるものになっていかないのじゃないのかな。今の考えている点を、長官もう一度答弁をお願いしたいと思います。
○渡辺政府参考人 今回の制度改正の中で、もう一つやはり漁業法の改正もお願いをしております。
これは、許可のあり方として、これまで伝統的に一つの船に一つの許可というふうな運用がなされてきたわけでありますけれども、こういった減船、休漁というふうなことが生じてまいりますと、多様な許可を一つの船が持っていて、その多様な経営の中で、兼業ではなくて兼営といいますか、そういうふうな形の中でトータルとしての所得を上げるというふうな方法もあるわけでございます。
ですから、いろいろなやり方をして、伸びんと欲すればまず屈せよではないですけれども、資源をまず回復させて、持続するような状態に持っていくということ、それからその中で、コストを下げる、あるいは付加価値を高めるというふうなことをして、問題は、価格もさることながら、トータルとしての所得をどう守るかということでありますので、そういう方向を水産業界全体として目指したいというふうに思っております。
そのためには、何はともあれまずやらなければいけないのは、資源状態がきちんと回復をし、安定的に漁獲、漁業生産が行われるということだろうと思います。
○菅野委員 二百海里が設定されて、そしてそこの中で漁業がやられるようになってきて、多種多様の魚種がいるわけですけれども、非常に生産性が上がって、そして経営として成り立つ部分というのが淘汰されてきているのです。そういう意味では、資源総体が回復しても、漁業経営体がなくなっていったときに水産物としてのたんぱく資源供給というものの道が断たれますから、そういう危機的な状況にあるという認識に立って、この十三条という部分をしっかりと考えていってほしいというふうに思います。
それからもう一つは十四条の関係なのですが、次に移ります。
二百海里水域外での資源保護をどのように図っていくのか、これは国際協調の中で図っていくしかないわけです。特に、二百海里外で今漁船漁業がされているというのは、大きなものではやはりマグロなのですね。マグロ資源をどのように保護していって、そして持続可能な漁業経営にしていくのか、このことは非常に大きな課題だというふうに思っています。
それで、日本は国際協定を結んでいっていますけれども、まだこの便宜置籍船、そういう国際協定の枠の中に組み込まれていない部分があるわけですね。この便宜置籍船からの漁獲物を日本に輸入しているというのが相当な量になっている。これが日本のマグロ漁業を衰退させている非常に大きな原因になっているのではないのか。それと同時に、二百海里以外での資源の枯渇の原因にもなっているというふうに、非常に危機感を持っています。
そういう便宜置籍船と日本との関係をこれからどうしていこうとしているのか。これは、便宜置籍船を認めているのは日本の商社なのですよ。マグロを買っているのは、商社が買い付けて、そして日本の市場に持ってきている。この姿を断ち切らない限り、二百海里以外の資源保護というのは図られないというのが実情だと思います。この今の経済行為をどのように直していこうとしているのか。長官ですか、副大臣でもいい。副大臣、答弁してください。
○渡辺政府参考人 今回の水産基本法の提案の中で、十四条はかなり重要な位置づけになっております。つまり、日本国だけの生産ではなくて、日本の排他的経済水域以外でも水産資源をきちんと持続的に利用するという考えをこの十四条にはっきり出させていただいております。水産資源の持続的な利用に関する国際機関その他の国際的な枠組みへの協力という形でございます。我々とすれば、やはり公海を中心に高度回遊をするマグロであるとか、あるいはストラドリングストックのたぐいにつきましては、どうしても日本の排他的水域以外が絡むわけでありますので、国際機関の取り決めによってこれをカバーしていくということが大事であります。
私どもは、そういう意味から、例えば今先生がおっしゃられたようなカツオ・マグロ類でいいますと、ICCATあるいはインド洋まぐろ類委員会、鯨でいいますとIWC、こういうところに全面的に協力をいたしまして、ここで強い規制がかかれば輸入の分野におきましても強い規制ができるということでございます。
御指摘がございました便宜置籍船の問題は非常に深刻で、かつ重大視しておりまして、ICCATのような強い規制のあるところのものにつきましては、輸入禁止を勧告した国からは一切輸入をさせないという状況でありますが、それ以外のところのものにつきましても、今回、船籍証明、つまり過去便宜置籍船であったかどうかということをきちんと情報をとりました上で、このリストに掲載をされているものにつきましては漁獲物の取引規制を強く要請する、エコラベルをつけていくというふうなことをやっていきたいと思っております。
○菅野委員 今までも長官、その取り組みはずっと、便宜置籍船の問題は今始まったことではないですから、水産基本法ができる前からこの問題は大きな問題としてクローズアップされてきて、そして漁業関係者も含めて、この問題をどうにかしてくださいということで非常に強い要望が政府に対して出されてきた、そういう経過は大臣おわかりだと思うのですね。それで、今の状況はそれでは改善になったかといったときに、ほとんどまだ改善になっていないのですね。やはり過剰輸入の状況はマグロ類においてはまだ続いているのです。資源が枯渇しているのもそういう中では状況としては厳しいのです。
それで、私は気仙沼なのですが、一航海、かつては六カ月、八カ月だったのですが、今は十六カ月あるいは二十四カ月航海、そしてそういう状況で、効率性を上げるために船は外国に寄って仕込みをして、そして乗組員だけが飛行機で帰ってくるという実情の中、そうやってコスト削減をしても漁船漁業として成り立たないという実情が今日のマグロ漁業を取り巻く状況なのです。
そういう意味においては、商社も含めて、便宜置籍船の問題を本気になって政府として取り組んでいただきたい。そして、若干商社の方々も今日の実情をわかっていただきつつあると思うのですが、やはり自由経済ですから、ここに一定の限界があるわけですから、そのことを大臣に、ここに来る前、一番最初に言ったというのはそこだと思うのです。
自由競争の中で、今日の水産たんぱく資源を供給するための生産体制が崩されるということであれば、構造改革もやぶさかではないのではないですか。たんぱく資源を供給する体制を守るための構造改革というものを断行することこそ私は今求められているのだと思うのです。そのことを断行しますというのだったら私は拍手を送るのですけれども。そういう状況に追い込まれているということについて、大臣でも副大臣でもいいですから、御見解をお聞きしておきたいと思います。
○武部国務大臣 先生が御主張される構造改革というのは具体的にどうすればいいのかということは、よく私理解できておりません。
いずれにしましても、自由競争原理という中で漁業が行われているわけでございます。であればこそ、やはりだれしもが資源管理ということが重要なのはわかっていても、かなり無理してとってくるというようなことになる。それが今、結果的には自分で自分の首を絞めるような状況に置かれているということの反省のもとに、資源管理型漁業ということをやろうと。
これからは、かつては沿岸から遠洋というふうに拡大的に広がっていった日本の水産業でありますけれども、四百五十万平方キロメートルという二百海里の中で漁業資源を育てていけば、かなりその中で自給できるということは可能なんだろうと思うのです。ですから、そういう方向づけをきちっとした上で、構造改革という意味は、先生のおっしゃったようなことも含まれているんだろうと思いますし、かなり減船もしましたし、これはもう業界の皆さん方もよくよく承知しているわけであります。
これは農林水産省の行政だけではなし得ない部分がかなり多いのですけれども、物事の考え方はそういうことに起点がある、このように思っておりまして、さまざま、この法律の制定に基づいて総合的、抜本的な政策を重点的に実行していこう、こういう考えであることを御理解いただきたいと思います。
○菅野委員 いずれ国際協調体制に漁船漁業者は組み込まれていって、そして、国際的に連携をとりながら、ICCAT等も含めて国際条約を尊重しながらやっていこうという体制は、日本のとっている今日の状況です。ただ、そこに組み込まれていない部分をこれから政府としてどうやっていくのか。その部分は非常に難しい部分がありますけれども、国際的視点に立って、ぜひとれる施策を模索しながら実行に移していただきたい。このことをお願い申し上げておきたいというふうに思います。
四番目に、水産基本法の十九条の関係について少し議論させていただきたい、質問させていただきたいというふうに思っています。
食料自給率、水産物の自給率。今も大臣おっしゃったように、自給率の向上というものは資源の回復を図りながら自給率の向上を図っていきます、この部分は理解するのです。そのとおりだというふうに思うのですが、水産基本法の十九条の中ではそうはうたっていないのですね。日本で生産されないものは輸入に頼っていきますとはっきりと言っているのですね。そうしたときに、水産たんぱく資源としての供給体制を自給率の向上のためには守っていかなければいけない状況になっているのではないでしょうか。
先日のこの水産基本法の議論の中で、自由党の山田正彦さんが一時間、輸入割り当て制度について質疑いたしました。政府としてこのIQ制度をどう適用してきたのかということを山田委員が力説して、輸入割り当て制度というものがあるにもかかわらず、冒頭言ったように、自由貿易体制ですから、IQ制度の適用は政府としてはほとんどしてこなかった。そういう状況の中で、この自給率向上が本当に図られていくのだろうか。今の政府の施策の中では、生産体制も崩壊に追い込んでいるのですよという認識、本当にそういう認識に立っているのだろうかと言わざるを得ないのです。
この十九条の関係で、食料自給率の向上を水産基本法の中でどう図っていこうとなさっているのか、これらについて見解をお聞きしておきたいと思います。
○渡辺政府参考人 十九条より前に、消費者に対する供給のあり方も基本法では明定をされております。国民に対する水産物供給のあり方として、世界でも有数の排他的水域ということを挙げつつ、我が国の漁業生産の増大を図ることを基本とし、自給率の向上を目指しながらというのが載っておりますし、その後、先ほど先生がおっしゃられた、我が国水産業による生産では需要を満たすことができないものについては輸入を確保する、こう書いてあるわけでございます。
この組み合わせによって安定供給を図るというのが基本方針でありますけれども、この場合、「我が国の水産業による生産では需要を満たすことができない」というのは、いろいろな意味があります。もちろんエビのように既に自給率が六%になってしまっているようなものについて、これをとめるというふうなわけにもいきません。
そうなりますと、やはり資源量というのが我が国の生産のベースになります。それから、コストはどうなんだろうかというふうなこともあります。それから、良質、新鮮、安全ということで消費者に果たして受け入れられるような需要があるかどうか。
もろもろ、そういうことについて努力をして、基本的には輸入に対抗できるだけの力をつけていくということを念頭に描いておりますが、その上で、さらにどうしてもやはり一定の輸入関連措置をとらなければならない事態というのも生じますので、その手法をこの十九条の以下に続く部分におきまして、輸入割り当て制度であるとか、あるいは国際機関に定められたことに伴う輸入の承認であるとか、あるいは最悪の場合にはセーフガードであるとか、そういうふうなこと、もろもろの多様な手法をとることがあり得るんだということを想定しているところでございます。
○菅野委員 私が言いたいのは、十九条の後半の部分ですけれども、輸入割り当て制度が今あるのです。それがほとんど機能していない中で、そして今、この水産基本法にこういうふうなことをやります、輸入制限あるいは関税率の調整その他必要な施策を行っていきますというのですが、輸入割り当て制度が機能していない中で、輸入制限、関税率の調整その他必要な施策を行っていくと。具体的に何があるのですかということなんです、長官。答弁をお願いします。
○渡辺政府参考人 私の御説明の後半部分で申し上げましたけれども、関税率の調整について言えば、セーフガードが考えられます。それから、先ほど申し上げた物量をとめるという点では、先ほどのICCATの決まりに基づいて、輸入してはならない国からの輸入は輸入承認という形でストップがかけられます。それから、輸入割り当て制度自身も、関係団体からの御意見によっても、これはやはり一番強い措置であるから、いざというときには、これはぜひ堅持をしてほしいというふうな希望もございます。
今はやはり、全体として、この間も山田先生に大臣の方からもお答えをしているわけでありますけれども、需要を満たすための輸入割り当てという部分と、それから周辺海域における資源を管理するという部分と、全体の国際情勢という中でもろもろ、いろいろなことを考えてやっておりますけれども、やはり全体としては、我が国の水産物生産にダメージが生じないような幾つものバッファー装置は用意をしたいというのが水産基本法の精神でございます。
○菅野委員 私は、この水産基本法に異議を唱えているのじゃなくて、そういう施策をやってほしいという気持ちを込めて今質問しているわけです。
それでは、具体的に言います。
先ほどもあったのですが、要するにワカメの問題です。どういうふうになっているか。議論し合って、先ほど大臣がセーフガードの問題でいろいろ中林委員の質問に答えていましたけれども、今ワカメがどういう状況になっているのか。日本の食料供給、ワカメ供給の危機という状況に私はあるんじゃないのか、こういう状況こそ輸入制限というものを、セーフガードというものを発動すべきじゃないのかというふうに思うんです。
具体的にワカメの実態について、この間も触れましたけれども、平成十三年度の実態がほぼまとまりましたから、私の資料でもって実態をみんなにわかっていただきたいと思っているんです。干しワカメ、塩蔵ワカメ、生ワカメ、それでトータルとしてワカメがあるんですが、大体は塩蔵ワカメが主流ですから、この塩蔵ワカメの実態がどうなっているのかということで申し上げておきたいと思うんですが、これは三陸産ワカメの実態です。
金額で言います。平成十一年度、二十一億七千四百二十六万、二十一億の塩蔵ワカメの共販実績があったんです。十二年度は大変だったんです、十二年度の落ち込みが。二十一億もあったのが、十二年度が十一億二千万に下がったんです。半分ですね。それで、十三年度の実績は三億三千百万です。塩蔵ワカメで、十一年度で二十一億あったものが、十三年度の実績は三億三千万なんです。そして実際には、十一年度はワカメの五月共販もされたんですが、三月共販で打ち切りです。合わないですから、海に刈り取りに行かないんです。
平均単価でいいますと、十キログラム当たりですけれども、平成十年度が七千八十九円、十一年度で六千二百九十円、十二年度で四千百四円、十三年度で三千六百六十七円。県漁連からの資料なんですが、こういう実績になっているんです。数字的な違いというのは統計のとり方でいろいろなものがありますけれども、これは一つの流れとして理解していただけると思うんです。
こういう状況のときに、国内生産体制を維持するために、政府がどういう施策をこの水産基本法のもとでなさろうとしているんですか。
一つはセーフガードというふうに思うんですけれども、この生産体制を維持するためにその他の施策をどう展開していこうとしているのか。あくまでもセーフガードというのは暫定措置、あるいはその構造が、生産体制が競争力に対処できるまでの措置という状況ですけれども、ワカメの生産を競争に十分太刀打ちできるようにしていくための政府の考え方というのはどういうふうに今考えられているのか、これについてお聞きしておきたいと思います。
○遠藤(武)副大臣 私は水産のことはもうからっきしだめでありますが、セーフガードというと政府の施策の一つですから、いささか申し上げたいと思います。
確かに、おっしゃるように、ワカメはひどいの一言に尽きますね。それから、今問題になっているのはウナギでありまして、非常に厳しいどころか値段も半分というような状況に追い込まれております。そういう状況はよく承知しておりまして、我が省としては、三月の十四日、前大臣の時代ですが、財務省及び経済産業省にセーフガードの発動をするための調査を要請したところでありまして、今事務方で両省と協議をいたしまして、早期に調査を開始することの可否について調査しているところでございます。
ただ、セーフガードの発動に当たっては、国内産業との構造調整が前提となっておるわけです。ただ、構造調整のいかんにかかわらず、セーフガードを発動せなきゃならぬ状況に、今先生のおっしゃった数字などを見ますとあるというふうに考えて、受けとめております。
しかし、先生が何度もおっしゃったように、自由貿易の中で、しかも二百海里体制が次第に整ってくる中で、いわゆるセーフガードにばかり頼っていくようなことであっては、逆に言うと、セーフガードを発動しなきゃならぬほどの構造的な問題を持っている、内包しているということを指摘されるのと同じじゃなかろうか。正直言って、水産業について、価格の競争その他でどうやって構造的な改革をなし遂げられるか、非常に頭の痛いところであります。
一例を申し上げますが、さきに生シイタケとネギとイグサ、畳表を、暫定的でありますがやったわけですけれども、実は輸入関税割り当て、申請承認されておる商社は三百八十二です、たった三品目で。そういうことを考えると、いわば生産から消費の間の流通にこれだけ無分別に、野方図に商系が群がっているというその流通構造そのものにかなりメスを入れなきゃならぬかな、こんなふうに感じているところでございまして、御教示願えれば大変ありがたい、このように考えているところでございます。
○菅野委員 最初にやはり大臣に、今日の漁業経営の悪化、この原因はどこにあるんですか、そして、構造改革をしていくということは、こういう状況を改善していくような構造改革を断行しますと大臣は言っていますから、私どもと一緒になってこの部分を、私は先ほどから言っているように、政府としても、財政支援も含めた視点に立たなければ、今生産体制が崩壊寸前なんですよという状況だけを申し上げて、緊急措置としてセーフガードもあるだろうし、業界から要請があったときの支援体制もぜひ早急な検討をお願いしていきたいというふうに思っています。
ノリの問題も大変です。ノリは、先ほどの話では四百億で、片っ方は十一億だからという問題じゃないというふうに思います。漁業経営体からすればワカメも相当な打撃を受けているんですから、有明のノリと同様な施策展開をぜひ図るよう要請しておきたいというふうに思っています。
最後の質問なんですが、やはりたんぱく源の供給産業としての漁船漁業というものを私はこれから日本として積極的に維持していかなきゃならない状況にあるというふうに思っています。減船も含めて、あるいは淘汰されてきている、厳しい漁業環境の中でも精いっぱい努力してきた部分が今残っているわけですから、この部分を絶やすことのないような施策の展開というものが今求められているというふうに思っています。
それで、政府としては、この漁船漁業の問題点というのは、一つは漁船員の不足なんです。船に乗る人がいません。そのことによって漁船員の高齢化が急速に進んでいるんです。それで、そこを補うために外国人漁船員を混乗させるという状況になっているんですね。そのことによって多くの問題点が生じています。
それと、もう一つ大きな問題は、漁船の老朽化の問題なんですね。そして、漁業経営が非常に厳しい状況の中で、代船建造ができないという状況なんです。新たな設備投資ができなくて非常に困っている実情にあるというのが、漁船漁業を含めた今の実情であるということを申し上げておきたいというふうに思っています。
ここに五月の十日のものがあるのですが、地元では、亡くなった人を地元新聞によって亡くなりましたと知らせるのですが、機関長二人が同じ日に葬儀がされている状況なんです。遠洋漁業の機関長ですね。
そういう厳しい環境の中で、漁船に乗り組まざるを得なくて命を落とす、そういう状況にもなっているという現状をどう認識されて、今後どのような形で漁船漁業を維持発展させていく考えなのか、考えをお聞きしておきたいと思います。
○渡辺政府参考人 漁船漁業も含めて、今御指摘の点では、二つ深刻な問題があると思います。一つは、若い人が漁業界に就職してこないという問題、それからもう一つは、今おっしゃられたように、漁船の幹部職員が高齢化をしているという問題です。
若い人が入ってこないという点につきましては、年間の新規就業者数が、漁業の場合には、これは沿岸漁業ということになりますけれども、千三百人から千四百人という非常に低いレベルですから、これでは全体としての労働力や生産力のベースができないということであります。
もちろん、大水であるとか全漁連を通じて、新規就業の説明会をやったり、いろいろな支援措置はとっておりますけれども、基本はやはり今の漁業所得なり漁家所得の低さ、それから労働のつらさということがありますので、そこを切りかえていかない限りはなかなか外から人が来ないという状況であります。いずれ基本計画をつくりますので、経営展望であるとか構造展望もやらなければならない時期に来ていると思っております。
幹部職員については、各県が相当力を入れて、研修機関を持っておりますから、そういうところにはいろいろな機械や施設を補助するといったようなことを通じて、技術力の向上なり育てる方向の努力は努めておりますけれども、さらに何ができるかは検討したいと思っております。
やはり今一番頭が痛いのは代船建造の問題です。これは、私どもも、はっきり言って、代船建造に踏み切っていただけるのかどうかというところに、確たる支援なり結論をぴしりと言える状況ではございません。ともかく猛烈なお金がかかります。マグロはえ縄船でいって、十年から十五年くらいの船が一番多いのですけれども、大体二十年くらいになると代船の時期に来ると言われていますが、四百トンクラスの船で、恐らく五億円はかかると思います。
ですから、そういうところに船主が代船建造に踏み切るかどうかというのは、なかなか勇気の要ることでありますので、この点は深刻な問題として受けとめて、いま少し課題として検討させていただきたいと思います。そう軽々にやれとかやめろとかと言えない問題で、資源管理の状態や何かがうまくレールに乗ったことを見きわめた上で、いろいろと対策を打つべきことかなと思っております。
○菅野委員 漁船漁業の経営というのは、それこそ新たな設備投資、現在の経営体を維持していくのにきゅうきゅうとしている状況であって、これは第一次産業総体がそうなんですけれども、そういう意味では、この代船建造の問題が、新たな設備投資ができない中で、それでは将来にわたって国民へのたんぱく源の供給産業を維持できるのかどうかという瀬戸際に来ているわけです。
大臣、地元の関係者が一つの提案を行っているんですね。というのは、「水産食料を供給する重要な産業である漁業を維持するために、関係者が望む戦略的な課題の一つが「公共予算で“特定漁船”を建造する案」だ。漁船を漁港施設と一体的な生産基盤施設と見なし、特定漁船を公費で建造、漁業者に一定期間貸与する。そのあと何年後かに漁業者に払い下げるという、かなり思い切ったシステム」を考えなければ、この新たな建造という部分は成っていかないという状況にも、ただし、このことはかなり難しいということもわかりながらも、こんな新たな発想に立った構造改革をしなければ維持できないのですよという認識に立っていただきたい。
私は、このことを強く申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
○堀込委員長 次回は、来る二十三日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時三十五分散会