衆議院

メインへスキップ



第14号 平成13年5月24日(木曜日)

会議録本文へ
平成十三年五月二十四日(木曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 滝   実君 理事 二田 孝治君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩崎 忠夫君

      岩永 峯一君    金田 英行君

      上川 陽子君    北村 誠吾君

      倉田 雅年君    後藤田正純君

      七条  明君    園田 博之君

      高木  毅君    西川 京子君

      浜田 靖一君    菱田 嘉明君

     吉田六左エ門君    古賀 一成君

      後藤 茂之君    佐藤謙一郎君

      城島 正光君    津川 祥吾君

      筒井 信隆君    永田 寿康君

      楢崎 欣弥君    江田 康幸君

      高橋 嘉信君    中林よし子君

      松本 善明君    菅野 哲雄君

      山口わか子君    金子 恭之君

      藤波 孝生君

    …………………………………

   農林水産大臣政務官    岩永 峯一君

   参考人

   (日本鰹鮪漁業協同組合連

   合会代表理事会長)    上田 大和君

   参考人

   (全国漁業協同組合連合会

   代表理事会長)      植村 正治君

   参考人

   (東京水産大学資源管理学

   科教授)         多屋 勝雄君

   参考人

   (北海道大学大学院水産科

   学研究科教授)      廣吉 勝治君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十四日

 辞任         補欠選任

  岩倉 博文君     倉田 雅年君

同日

 辞任         補欠選任

  倉田 雅年君     岩倉 博文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 水産基本法案(内閣提出第七五号)

 漁業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)

 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)




このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、水産基本法案、漁業法等の一部を改正する法律案及び海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、日本鰹鮪漁業協同組合連合会代表理事会長上田大和君、全国漁業協同組合連合会代表理事会長植村正治君、東京水産大学資源管理学科教授多屋勝雄君及び北海道大学大学院水産科学研究科教授廣吉勝治君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考とさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、上田参考人、植村参考人、多屋参考人、廣吉参考人の順に、お一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、上田参考人にお願いいたします。

上田参考人 日鰹連会長の上田でございます。

 私は、水産基本法の早期制定と本法の基本理念に基づく斬新な施策の展開を切望する一人の水産人として、また、主として、私が携わっております中小漁業の立場からの意見を申し述べたいと存じます。

 我が国の中小漁業、すなわち沖合、遠洋漁業でございますが、近年厳しい経営苦境に直面いたしております。まき網漁業や私が関係するカツオ・マグロ漁業等の代表的な中小漁業におきましては、その七割が債務超過の経営体によって占められております。したがって、私どもの目下最大の関心事は、不良債権の早期処理が求められている昨今の経済情勢の中で、このような深刻な経営状況にある中小漁業をいかなる方法で再生に導くのかという課題でございます。

 これまで、主要漁業団体のリーダーたちが大日本水産会のもとに集まり、佐野会長を中心に本件問題を論議してまいりました。集約された結論は、累積債務に対しては長期的視点で弾力的に対処し、当面、損益計算書に焦点を当て、単年度収支の黒字が確保される経営体で、生産構造の改善に意欲と計画性を持って取り組む漁業者に対しては、その経営の継続に積極的な政策支援を行うべきであるとの考え方でございます。

 ちなみに、中小漁業の近年の年間生産量は三百六十万トンに達しておりまして、総漁業生産量の五五%を占めておりますので、七割の超過債務経営体の多額の累積債務を問題視してその淘汰を安易に進めるならば、水産物の自給率は極めて低い水準に落ち込むことになります。

 以上のような問題意識を踏まえ、私どもが最も関心を抱いておりますのは、水産基本法案の第二十一条でございます。効率的かつ安定的な漁業経営の育成のための理念と施策の方向を規定する本条を、厳しい経営苦境にある中小漁業の再生にいかなる手法で生かしていくのかという課題を重く受けとめております。今後、この条項の運用については、国と業界が生々しい漁業の実態を見据えた論議を重ねることが大切でありますが、その作業は、来年度に改正が予定されております漁業再建整備特別措置法、いわゆる漁特法の見直し論議に収れんされるものと考えております。

 つきましては、この漁特法の見直しに当たっては、冒頭に申し述べた中小漁業関係者の切実な要請にこたえ、本法の機能と効果を高めるよう、前向きの検討が行われることを切望いたします。

 次に、第十九条の輸入問題に関して意見を申し述べます。

 一九九八年のFAOの統計によりますれば、我が国の水産物の輸入金額は世界輸入金額の二三%で第一位、しかも、二位の米国と三位のスペインを合わせても我が国には及びません。さらに、輸入から輸出を差し引いた入超金額、すなわち輸入のインパクトを端的に示す数字で見ますと、我が国の入超金額は、二位の米国、三位のイタリア、四位のフランス、五位のスペインを合わせた四カ国の合計金額に匹敵するという驚くべき実態でございます。

 一九七七年、世界の二百海里時代突入とともに始まった水産物の輸入攻勢が我が国漁業に与えたインパクトは、漁業者の自助努力の限界をはるかに超えており、前述の中小漁業経営苦境の最大の要因も輸入でございます。

 私が携わる遠洋マグロはえ縄漁業におきましては、日本刺身マグロ市場の単一性と資源回復のための国際管理強化の必要性とをリンクいたしまして、国際資源管理機構と協調し、資源の持続的利用体制に反して漁獲されたマグロの輸入を抑制する枠組みを官民一体となって進めており、そのための法律も議員立法によって制定していただいております。今後は、この取り組みを一層効果的に推進する必要がございます。

 一方、我が国の二百海里水域においても、減船やTACの適用等の厳しい措置を国内漁業に課する場合には、それを補完する適切な輸入抑制措置がとられなければ、資源管理の実効を期することも、国内漁業の維持、存続を図ることも困難となりましょう。

 さらに、さきに数字を挙げて御説明申し上げたような水産物の輸入増嵩は、ずば抜けた高付加価値とキャパシティーを持つ我が国市場のみに際立って生じている異常な事態であります。

 今後、このような問題意識に立って、第十九条の効果的運用が図られるとともに、輸入インパクトの吸収を漁業者の自助努力にゆだねるだけでなく、魚価支持、需給調整等に関して効果的な施策が講じられることを願っております。

 最後に、多面的機能に関する施策の充実を規定した第三十二条に関し、申し述べます。

 多面的機能とは関係の薄いように見える遠洋漁業でも、結構その機能を備えていることを、遠洋カツオ・マグロ漁業の事例を挙げて御説明いたします。

 この漁業は、外国人漁船員をかなりの規模で乗船させており、これら漁船員の母国であるインドネシア、キリバス、南アフリカ、ペルー等の国とよき協力関係を維持しております。

 日鰹連では、日本の水産高校の卒業生に対し、カツオ・マグロ漁船への乗船を勧誘するリクルートコピーを作成しておりますが、その一部を御紹介いたします。「遠洋かつお・まぐろ漁船日本人乗組員の仕事は、わが国の食糧産業の担い手であるとともに、洋上での仕事を通じて、外国人への技術移転を図る国際協力の専門家としての役割を担う社会的使命を負った仕事です。」このように、遠洋カツオ・マグロ漁業は、生産活動そのものが国際協力の役割を果たしており、そのことを日本人漁船員募集のキャッチフレーズに活用いたしております。この漁業の持つ多面的機能を、既に実践に移していると言えると思います。

 もう一つの事例として、中西部太平洋高度回遊性魚種の保存管理に関する条約、いわゆるMHLC条約の多面的機能について申し述べます。

 この条約は、その内容に多くの問題があることから、我が国は反対の立場をとり、署名いたしておりませんが、そのこととは別に、この条約は漁業の枠を超えた問題をはらんでおります。この条約の策定作業には二十五の国が参加いたしておりますが、過半の十四カ国は南太平洋島嶼国であり、これら島嶼国を味方につけた国が条約の主導権を握ることになります。

 豪州、ニュージーランドは、これら島嶼国の水域での漁業利益はほとんど得ていないにもかかわらず、旧宗主国の権益保持のために島嶼国寄りの条約策定に極めて熱心であります。米国も同様に、漁業の利益を守ることよりも、外交、軍事をにらんだグローバルな戦略にウエートを置いているように見受けられます。

 これに対して我が国は、島嶼国水域内の漁獲量が参加国中最も多く、かつ同水域の漁獲量の過半が日本市場に供給されているにもかかわらず、その対応は漁業問題の域を出ておりません。

 MHLC条約は、一見漁業条約以外の何物でもございませんが、参加国の過半数を超える後進島嶼国の存在がこの条約に多面的な問題を投げかけており、我が国としても、本質を見据えた、漁業問題の枠を超えた対応を心がける必要がございます。

 このように、カツオ・マグロ漁業のささやかな事例においてさえも、その有する多面的機能への適切な対応が求められておりますので、第三十二条によって、今後、水産業及び漁村の有する多面的機能に関する理解と関心が深まることを期待するところでございます。

 以上で私の陳述を終わります。このような機会を与えていただき、まことにありがとうございました。(拍手)

堀込委員長 ありがとうございました。

 次に、植村参考人にお願いいたします。

植村参考人 おはようございます。全漁連の植村でございます。

 本委員会において、漁協系統の長年の悲願であります水産基本法案並びに関連制度の改正案について、精力的な御審議をいただいておりますことに対し、全国の漁業者を代表し、深甚なる敬意を表するものであります。

 先生方のお力により、日韓、日中の新たな協定が発効し、我が国の二百海里が確定した今、資源管理を柱とし、水産食料の安定供給、水産業の健全な発展を理念とした基本法が制定されますことは、まさに時宜を得たものであると考えております。法案については、系統の意向を取り入れていただいており、組織として了承しているところであります。

 本日は、基本法を初めとする新たな法制の整備と政策の展開が、資源管理型漁業の徹底、漁場環境の保全、漁村の新たなライフスタイルの構築を実現し、国民の求める水産物の供給を初め、多面的な機能を漁業、漁村が果たしていくとともに、浜の漁業者に将来展望を与え、真に漁業、漁村の活性化につながることを期待し、意見を述べさせていただきます。

 一つ目は、水産食料の安定供給体制の確立についてであります。

 二十一世紀は食料と環境の世紀と言われ、将来、世界的な食料不足が懸念される中で、国として、我が国の魚食文化の維持を国民食料確保の原点に据えていくことは不可欠のものと考えております。漁業資源は再生産可能な資源です。この循環を適切に図っていけば、継続的な生産が容易に可能なものであります。ただし、一たん枯渇すると、その回復には大きな経済的負担と長い時間がかかることになり、資源の管理が極めて重要と言えます。

 緊急に対応すべき資源回復計画の円滑な実践を進めるためには、減船、休漁等に伴う漁業経営対策を財政措置を含めて講じていただきたく、漁業者の積極的な取り組みにより早期に資源の回復が図られることを望んでおります。

 また、これとあわせ、漁場環境の保全と積極的な放流事業など、つくり育てる漁業の展開により、魚のすみやすい豊かな海づくりを進める施策を強力に展開し、国内生産を基本とする安定供給体制を構築することが必要と考えております。

 二つ目は、輸入の問題であります。輸入の増大に伴う価格の低迷が現在の漁業不振の一大要因となっていることは、先生方も十分御承知のとおりでございます。私どもも、輸入に対抗するため、構造改革等の取り組みを進めてまいりますが、国においても、IQ制度の機能堅持と、我が国漁業に重大な損害を生じた場合には、構造改革の支援並びにセーフガードの発動等による輸入の制限措置を機動的に講じていただくことをお願い申し上げるところでございます。

 また、人類全体の貴重な食料資源であり、有限な天然資源である水産物については、大自然の摂理を無視した競争原理に任せることには限界があります。鉱工業製品等とは異なり、資源の管理、持続的利用に貢献する貿易ルールが必要であるとの我が国の主張を、WTO交渉においても貫いていただきたい。

 三つ目は、漁場のすみ分けについてであります。

 漁業は、大型の漁船から零細なものまで、階層の格差が大きく、同一漁場で同一の資源をめぐって競合している実態があります。まさに、おりの中でライオンと猫が闘っているような状況にあるわけであります。

 資源の持続的な利用のためにも、また漁場の合理的な利用の観点からも、これらのすみ分け並びに調整機能の強化等、適切な措置をぜひ講じていただき、資源の枯渇と共倒れを防止し、お互いが持続的に発展していく方向が肝要と考えます。

 また、海に囲まれた我が国の特性から、海でのレジャー、中でも遊漁人口は急激に増大しております。海は国民の憩いの場であり、これに非を唱えるものではありませんが、無秩序な行為、行動が資源に圧力を加えており、乱獲で操業を行っておるという実態もあります。遊漁は実質的にルールのない中で行われ、漁業とのトラブルも発生しているというのが実態であります。

 資源管理や漁場保全について、国民の方々と問題意識を共有化し、遊漁と漁業の共存の道を志向していくことが大変大事ではないかと考えております。

 四つ目は、担い手の育成と経営安定についてであります。

 漁業者は、海を生活の場、生きがいの場として、若いころから忍耐力や技術を培い、漁業の発展を支えてきました。しかし、資源の減少、輸入増加や景気の後退による魚価の長期にわたる低迷等、漁業者の自助努力のみでは解決できない問題が山積しております。

 安定供給の中心を担う経営体を積極的に育成していくため、実態に即した漁済制度の拡充等、資源や価格の著しい変動が経営に与える影響を緩和する措置を講じ、漁家の所得の安定を図っていくべきでないかと思っております。

 五つ目は、漁業、漁村の多面的な機能についてであります。

 食料供給の役割のほかに、例えば遭難事故全般の救助は、現場に最も近い漁業者、漁協が最前線で行っております。また、漁村は、離島及び全国の沿岸域等国土の外壁を囲み、密入国者の情報提供など国の機関に協力をいたし、国土防衛的役割も果たしております。そしてまた、百年の歴史を持つ水難救済会の活動は、ほとんどその漁業者が携わっております。

 そのほか、植林による漁民の森づくりや、合成洗剤追放運動、対岸や上流からの流木、生活雑物の清掃活動、漁業者の海を守る奉仕活動には長い歴史があります。これらの機能を継続的に発揮していくためには、漁業と漁村が活力を持って存続していくことが必要であり、幅広い支援策が求められるところであります。

 六つ目には、漁村の活性化と水産基盤整備についてであります。

 漁業者は、地域産業の核となって地方の時代を支える力となってまいります。漁業においては女性や高齢者の参加が進んでおり、その活性化を図っていくことが必要でなかろうかと思います。

 後継者を初めとする新規参入者の定着を図っていくためにも、漁業地域全体としての所得の安定を図る取り組みを支援いただきたい。また、都市部に比べて極端におくれている下水道の整備を急ぐとともに、中核都市とのアクセスの整備により、高度な医療や文化を短時間で享受できるようにすることは、若者にとっても魅力ある漁村づくりの要件ではないでしょうか。これら生活環境の整備並びに漁村の福祉の向上に資する措置をぜひ拡充していただきたい。

 さらに、水産業を支える基盤として重要な漁港と漁場の整備については、失われた藻場、干潟の再生、沿岸、沖合漁場の造成、海の畑づくりと港づくりを一体化し、つくり育てる漁業の一層の推進を図り、資源の生産から流通まで一貫した、総合的、効率的な事業展開が可能となるような法整備をお願い申し上げる次第です。

 最後に、基本法に示される理念を達成していくためには、漁業者みずからの取り組みが重要であることは言うまでもありません。このため、実践の中核となる漁協の合併、再編については、系統を挙げてさらに運動を強化してまいります。自主、自立、創造性を高めるためにも、リーダーの育成を初め、政策面の支援をぜひともお願い申し上げるところでございます。

 私は、半農半漁の家に生まれ育ち、現在も漁協の一組合員であります。

 私の漁協は、昭和四十五年三月に六つの漁協が合併して成立いたしました合併組合でございます。ほぼ三十年を経過いたしました。組合員数千二百名、平成十二年度の水揚げ高は六十五億円、貯金残高六十数億円、購買、共済事業等を行う総合漁協であります。

 合併当時と比べ水揚げ高は数倍となっており、中でも、養殖漁業であるホタテは四万トン近い水揚げを記録し、単協としては日本一の生産を上げておりますが、これも合併の成果と考えております。

 不肖私も、組合長として三十年近く職務にありますが、浜の活性化に、微力ではありますが、いささか取り組んでおるところでございます。

 本水産基本法等の重要法案の審議に際し、国会の場で意見を申し述べることは初めてであり、感慨ひとしおのものがあります。

 水産基本法が、漁業、漁村の発展を通じ、国民食料供給を初めとする役割を発揮していく太い大黒柱となり、浜の人々に自信と誇りを与えることを期待し、今国会での早期成立をお願い申し上げ、意見陳述といたします。

 大変ありがとうございました。(拍手)

堀込委員長 ありがとうございました。

 次に、多屋参考人にお願いいたします。

多屋参考人 東京水産大学の多屋です。水産基本法について私の考えを述べたいと思います。

 水産基本法全般に関して若干遅過ぎた嫌いがありますので、基本的には賛成でありますけれども、その問題点について四点ばかり私の意見を述べたいと思います。

 まず第一点でありますけれども、先ほども上田会長、植村会長から、漁村の多面的機能について御意見がありましたけれども、この漁村の多面的機能に関して私の意見を述べますと、農林業と漁業とはスタンスがかなり違いますので、同じようなスタンスで水産基本法には書けないだろうというふうに考えております。お手元にあります資料に書いてありますように、これは別な法律によるものではないかというふうに考えております。

 若干、水産基本法の枠から出ることでありますけれども、非常に重大な問題でありますので、述べたいと思います。

 現代、海と人間はもちろん共生しておるわけでありまして、陸のもろもろの営みは、海と生態系を通じて関連して、循環しているということであります。その関係はますます強くなってきているわけでありまして、その上で、漁業のために生態系を保全し、海からもろもろの恵みをもらうということをもう一度認識する必要があると思います。こういった海洋の自然環境保全は、言われている宇宙船地球号の環境を守るために重要な役割があり、子孫に海洋を含めた豊かな自然環境を残していくのが我々に課された責務である、これは今までの議論の中でも出ていただろうと思います。

 しかしながら、識者の中には、水産基本法の中にこの視点がないのではないかという議論があります。農林業でいう多面的機能に関して言及されていないという指摘がありますけれども、これに関して、農業、林業では、産業活動そのものが生産の場をつくって多面的機能がつくられていくという構造になっております。

 漁業はそうではなくて、海を利用させてもらって自然の恵みを海から直接享受するという産業でありまして、自然あふれる生産の場を農業のように新たに創出する機能はありません。漁業の役割を言いますと、水産資源の保全を図るために海洋環境の保全を監視するといった海の環境をモニターする機能といったものがあるんだろう。モニター機能というのは評価できると思いますけれども、それ以外にはなかなか大きな機能というのは見つけることはできません。

 海の幸をもたらす海洋環境を守るには、漁業者だけの問題ではありません。漁業者が守れる範囲はまた限定されております。国民全員が海で遊び、さまざまな形で海を利用して、国民が共同して海を守る、そういった責務があります。

 漁業者が海洋を守るには限界がありますが、その理由の一つは、漁業による海洋保全は水産資源の保護に限定した話になります。水産基本法に関しても、資源保護に関連して海洋環境を保護するといったスタンスになります。あるいは海洋レジャー、希少生物の保護、生態系保全、さまざまな海洋環境保全を水産基本法の中にもちろん入れるわけにはいかないわけであります。

 二つ目は、漁業は経済活動でありますので、漁場が市場原理によって売買されるという問題があります。過去三十年間、まず海が汚染されて漁業が成り立たないようにされる、その上で、漁場が工業用地として売買されていった、こういうメカニズムがありまして、優良な産卵場や稚魚の保育場などがそういった形で埋め立てられていって、売却されていったわけであります。このような市場原理による売却は非常に問題があります。

 市民の憩いの場として、海洋レジャーの場としての評価あるいは工場用地としての評価を国民的、総合的見地から判断がなされる必要があるわけで、もろもろの価値を総合的に高度な観点から判断する必要があるわけでありまして、こういった仕組みは今までなかっただろう。

 三つ目に、漁業者は食料生産者であります。ですから、基本的には風評被害を恐れて、汚染を告発するといったことはしにくいわけでありまして、例えば、ダイオキシンという問題が大きな問題になっておりますけれども、魚介類から日本人は半分を摂取しているという事態になっておるわけであります。これ一つとっても、水産というセクションから問題を提言していくには限界があります。国民の健康という観点から、高次の視点からの対策が必要になると思います。

 この問題に関しては、従来、四省庁の海洋関連連絡会議等で十分うまく連絡し合っているんだという話がありますけれども、省庁が寄り集まって調整しても、各省庁の縄張りの調整ということに置かれるだろうというふうに思います。

 こういった海の環境を守る、海洋環境保全の理念は、アメリカでは海洋基本法としてでき上がっております。理念を先にうたって、その理念を進めていくという海洋基本法であります。我が国でもこの海洋基本法を上位概念として置いて、今回の水産基本法を連携させるといったことが必要だろうと思います。今回の枠組みとは若干違うことでありますけれども、重大な視点であると思いまして、議員の皆さんに訴えるものであります。

 今回の問題の基本法のことについては、第二点でありますけれども、資源管理について述べさせていただきます。

 資源管理は資源の管理を優先するということで、海の資源はいろいろな要因で変動しております。海洋環境それから漁業者の漁獲というもので、資源は変動しております。なかなかその要因がわからないわけでありますけれども、しかし、わからないということで置いておいては資源がなくなってしまう危険性がある。すべて予防的に管理するというのが国際的な動きでありますので、今回の水産基本法で予防的に徹底して資源管理をしていくというのは非常に大賛成で、遅かったということであります。

 しかしながら、その次の問題を私どもは考えているわけでありまして、資源の管理は成功したけれども、漁業がだめになったというのが諸外国では有名な事例としてあります。アメリカ、カナダのオヒョウの管理でありますけれども、これは教科書に載っているわけでありますけれども、TACを設定して資源の管理をした、資源は非常によく管理して回復した、しかし漁業がだめになってしまったという事態であります。

 これは、我が国の漁業の窮乏化、非常に窮乏化してなくなってしまうかもしれないという水産業の現状とぴったり一致するわけでありまして、水産業の窮乏化は、資源問題もありますけれども、漁業の管理の問題が残っているわけであります。これは行政の今後の運用にかかわる問題かもしれませんけれども、今回の法令の中にはその漁業の管理の問題が非常に希薄であるというのが問題であろうかと思います。

 結論的に言いますと、私の個人的な考えでは、沖合漁業は、例えば批判はありますけれどもTACを設定して、個別漁獲割り当て、IQ制度をやって、他の規制はなるべく外していくというようなものが諸外国ではどんどん進んでいるわけであります。国際競争力を高めるためにも、このIQを一方で徹底的に進めて資源を保護する、それからほかのいろいろな規制によるしがらみを外していって効率を上げていくというのが、沖合漁業では必要があると思います。

 沿岸では、もともと日本にはとも詮議という言葉がありまして、漁場を一番知っているあるいは漁業を一番知っている漁業者が船のともで話し合いをするという伝統があります。これが世界的にも成功しておりまして、今後、このとも詮議、別の言い方で言いますと、漁業者による資源の自主管理という体制がやはり今後も展開していく可能性があるかと思います。この方向を、漁業者の自主管理組織を育成していく対策がまだこの法制度ではよく見えない、今後の運用にかかる問題であろうというふうに思っております。

 それから三番目に、公共投資でありますけれども、公共投資は今まで漁港等、水産公共投資に水産庁予算の七割を投資してきている、それが長年固定化している、非常に問題であります。この問題は、やはり有効な公共投資とそうでないものを選別して、むしろ公共投資よりもソフトな事業に早く転換すべきであろうというふうに思っております。

 それから四番目には、産地市場の活性化というのが一番問題であります。

 産地は、とってきてそのままである。現在、水産物はあり余っているわけでありまして、そのあり余っている中にどう売り込んでいくかということが問題なわけでありまして、市場を見ながら産地が売り込んでいくという体制が、全く我が国の漁業、産地には欠けていることであります。そのためには、販売できる人材を育成するということが一番大事だろうというふうに考えておりまして、それの販売ノウハウのある人材を育成するというのが四番目の提言であります。

 こういった人材育成について、まだまだ十分ではない。これは今後の運用でぜひ実現していただきたいというものであります。

 以上で、私の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

堀込委員長 ありがとうございました。

 次に、廣吉参考人にお願いいたします。

廣吉参考人 北海道大学の廣吉です。

 私は、水産経済学を専攻しておりまして、現在、その中でも漁業構造に関する研究をしております。漁業構造といいますのは、簡単に言いますと、漁業の存在形態とか存続条件などにかかわる研究だということです。

 既に他の参考人の方からも意見があって、やや重複するかもしれませんけれども、私は、また違った側面から二、三、意見を申し上げたいと思います。

 基本法の理念が示すものとかあるいは目指すべき施策の方向というのは是とすべきだと思いますけれども、それらは、石油ショックの発生だとか二百海里体制の形成定着を見た七〇年代及び八〇年代初頭の事態を契機に、下部の漁業、漁村実態において既に形成されつつあるもの、また要請されてきたもの、そういう観点から、水産行政施策の中で、なお一層改善、変化が求められている課題の一つと思われる多面的機能、役割の問題について述べてみたいと思います。

 多面的機能の問題は、既に新農基法の議論の中でも、農業の多面的機能論ということで、その概念化が図られておりますし、漁業でもその概念を援用していいと思います。漁業生産活動に伴って生産される魚介藻類、食料以外の有形無形のさまざまな価値をつくり出す機能とでも言っておいた方が適切だと思いますが、その経済的な性格、特徴というのは、私は二点ほどあると思います。

 一つは、これは農業でも指摘されております、整理されております外部効果、公共財的な側面の機能であります。

 既に、今伺っておりましたら、上田参考人の方から、カツオ・マグロを中心として、中小漁業でも漁業協力だとか技術援助だとか技術移転の機能、役割は大きいとおっしゃっておりましたし、また、多屋参考人からは、漁業の環境モニター機能というような話も出ました。こうした外部効果、公共財的な機能の問題は、既に水産基本政策検討会の中でもかなり議論されたと私は伺っております。

 離島や半島など辺境地の産業というのは、農業よりもむしろ漁業であるということは周知の事実だと思いますけれども、そこの地域経済、社会、文化の維持、活性化の役割を果たしてきているということは言えますし、また、植村参考人からお話がありましたけれども、沿岸域の防災、環境保全、管理、その活動の事実上の担い手で、それに責任を持ってきた。水難救済会や合洗追放運動、環境を保全する機能というのは、取り上げれば切りがないということがあると思います。

 また、漁業が沿岸域利用の中心であるという我が国の特徴を見ますと、海洋の利用、保全、管理に、一定の秩序形成に役立ってきた。もし漁業がこれほど高密度に我が国の周辺になかったとすれば、もっと異なった沿岸の状況になっていたと思います。そういう外部効果、公共財的な効果は、農業にまさるとも劣らない機能を持っていると言わざるを得ません。御承知のとおりだと思いますけれども。

 さて、それが一点目ですけれども、もう一つ、きょうはむしろ強調したいのはこの点でありますけれども、二点目に、漁業生産活動なしには、あるいは漁業生産活動によって、多面的機能、役割が果たされる。漁業あっての多面的機能、漁業と多面的機能は一体不可分の側面を持つ、このことであります。

 例えば、卑近な例ですけれども、いそ根資源でも、御承知だと思いますけれども、寒天の原料ですが、テングサのようなものは、これは今輸入の方が圧倒的に多くて、産地が随分崩壊しているということがあります。テングサのようなものは岩盤をひっかいて採捕するわけですけれども、そういう行為がないと、良好な岩礁域が保全、形成されません。もしそれがないとすれば、ただ雑草が生えるだけで、一たんテングサの採捕をやめた岩礁域は、ただ雑草の自然域になって、取り返しがつかないと言う科学者がおります。岩ノリやヒジキにしてもそうだと思います。

 また、沿岸の干潟域の、例えばアサリのようなものについて想像してみますと、採捕という行為は干潟を耕すという効果がありまして、漁場の老化の防止に大いに役立っている。何もない干潟というのは、ただそれはナチュラルな形であるだけ。そうではなくて、むしろ人の手が加わることによって、干潟域がよみがえっているということを知るべきであります。

 私は今北海道に住んでおりますけれども、北海道は天然昆布のメッカでございますけれども、それは、ほったらかしにして、自然をそのままにしておくということではないんですね。生産時期は一時期ですけれども、漁業者が年がら年じゅう沿岸域を管理しておりまして、そういうことによって昆布の沿岸域が雑草にならずに、見事な沿岸域として保全をされているということがあります。

 つまり、もう一度繰り返し言いますけれども、漁業の産業的な活動が保障されることで、初めて環境等の社会的機能が維持されるということであります。このような漁業生産活動なしには、環境というか、多面的な機能の役割を果たせないという側面には、二つの漁業固有の特徴があることも知らなければなりません。

 一つは、こうした漁業生産活動というのは、大体漁期が短く、季節性があり、希少資源として量産が非常に難しい。沿岸の地域住民、定住漁民が年間を通じて管理しておりますけれども、その年間を通じて収入の対象にはできないという特性を持っておりまして、もともと条件不利な性格を持っております。

 それから、二つ目は、これらの産業というのは、漁業生産は代替性がないということがあります。非常に代替性がないか、乏しい。

 例えば、モズクのようなものを考えましょうか。モズクは、今そのマーケットでのシェアは八割、九割が沖縄産で、沖縄といえばモズクのメッカです。モズク自身は、どこでも日本の岩礁域で採捕されたものです。しかし、沖縄以外にモズクはないかというと、あります。きょう参考人としておいでの植村さんは青森の御出身だと思いますけれども、下北半島は優良なモズクで有名なところだと思います。例えば、下北の大間などというのは、非常に貴重なモズクがあって評価されております。それはほかにはありません。定番商品としてマーケットを席巻している沖縄モズクとはまた違った意味で消費に迎えられているということがあるわけです。

 昆布でも同じです。北海道の昆布は、先ほども申し上げましたように日本の昆布生産の中心的な位置にありますけれども、昆布といっても一言では言えない。これはもう釈迦に説法かもしれませんけれども、日高では三石昆布といい、根室、釧路の方では長昆布、それからその少し北の羅臼では羅臼昆布という特産的な昆布があり、道北の方では利尻昆布ですか、それから私が今住んでおります函館近郊、噴火湾では真昆布がとれる。何か昆布というのは、あればいいだろうというんじゃなしに、栄養塩だとか海流だとか水温の差によって非常に異なった環境を呈しております。そこで、異なった品質の昆布がとれる。それぞれ代替性がないんですね。昆布であれば何でもいいという形になっていない。マーケットがそういう形になっている。消費の社会的評価と一体となった差別化商品として沿岸生産物は生産される側面が強いわけです。

 極論ですけれども、農業の棚田の保全というのは大変重要だと思います。しかし、棚田で生産されるコシヒカリは棚田でなければならないかというと、それは、機械化一貫体系の農業によってもっと広大な土地で生産性の高いコシヒカリができているわけで、もちろん棚田の米でなければならないという消費者もあるかと思いますけれども、漁業はそういった側面が、もともと非常に強い側面があるということを御承知願いたいと思います。

 消費者の国内水産物評価によって、日本の沿岸漁業生産は代替のきかない付加価値生産という位置をますます求められております。水産行政もそういう形で、輸入への競争的共存という形で、付加価値生産という形でそういう方向を追求してきたわけです。そういうことがあります。

 私は、こういうことで、最後に二点ほど提案したいと思います。

 一つは、今回の基本法の中で、三十二条は多面的機能に関して入れた非常に特筆すべき、評価すべき内容ですけれども、さらに、これは今申し上げたように、沿岸域漁業生産の継続によって初めて沿岸域の多面的機能が得られる。強い位置づけが与えられるべきだろうと思います。

 ことしの白書を見ておりますと、これは百十八ページに、「漁村の現状と活性化への取組」の中でこういう表現をしております。「漁業者をはじめとして地域住民が居住し、漁業生産活動が継続的に行われることを通じ、沿岸域の環境保全や海難救助への貢献等の多面にわたる役割を果たしている。」こういう表現がありまして、これは私が二点目に申し上げた、漁業生産活動なしには実は沿岸域の多面的機能、環境を守れない、そういう特殊な側面を持っているということを表現しているわけです。そういう意味で、もう少し強い位置づけを与えられてしかるべきだろうというぐあいに思います。これが第一点。

 第二点目は、そうした沿岸域のこういう一次産業というのは、今や人間活動と環境という問題を考慮の外に置いて考えることはできない。そういう意味で、社会経済的な分野を、あるいは社会経済、文化、流通、市場、こういったものを念頭に置いた研究、念頭に置いた行政を意識して施策を進めていく、こういうことが必要だろうと思いますけれども、そういう専門スタッフにアドバイズする研究領域が全く寂しい限りです。

 例えば、国の段階でいいますと、農業試験場は二千五百人の所員がおりますけれども、そのうち経営経済とか流通利用には三百七十人ぐらいおりまして、一五%ぐらいがこうした社会科学系の人たちの部門があります。都道府県では五千三百人ほどの研究員が農業試験場におりますけれども、そのうち六百六十人ぐらいが経営経済とか流通利用の分野におります。

 もうこれも釈迦に説法でしょうけれども、水産関係は主に九つの研究機関があるというのは御承知でしょうけれども、その中で、約四百名の研究員のうち中央水産研究所のたった九名が経営経済部研究員であって、これは二・三%、そんな程度です。都道府県では寂しい限りで、全体の千二百名の研究員の中でたった九人です。

 こういう状況に置かれているということに思いをいたすと、こういう専門スタッフ、行政マンをアドバイズしていく研究というのは非常に必要だと思います。

 時間が超過しました。(拍手)

堀込委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上川陽子君。

上川委員 おはようございます。自由民主党の上川陽子でございます。

 本日は、参考人の皆様には、大変早朝より、日ごろの活動を通して考えていらっしゃる御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 水産基本法につきましては、昭和三十八年の沿岸漁業等振興法の制定以来約四十年ということで、関係する皆様も大変期待されているということでございまして、きょう参考人の皆様から、私自身は、お一人ずつ一、二点質問させていただきたい。非常に時間が短いものですから、短くで結構でございますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、植村会長にお伺いさせていただきたいと思います。

 第一点は、先ほどのお話でもございましたが、水産基本法については、漁協の皆さんが長年にわたって制定を求めてきたということで、悲願であるというようなお話がございました。この間、基本法の制定に当たりまして、どのような思いあるいは目的を持って運動を進めてこられたのか、簡単にお願い申し上げます。

 第二点につきましては、基本法のもとで新たな政策を展開していくということになるわけでありますが、その場合に、漁協の皆さんの役割が大変大きいということでございます。先ほどの最後の方のお話にも、合併あるいは業務の再編というような御指摘もございましたけれども、今の現状と今後の方針ということにつきましてお願いを申し上げます。

植村参考人 ただいま御質問の、水産基本法に対して我々が積年の念願であったということは、三十八年の振興法もそれなりに大きな役割を果たしております。しかし、我々は、輸入その他のいろいろな圧力のもとで、魚価低迷、資源の減少という中にあっても、漁業者は、漁村に生きるプライドといいますか喜びといいますか、そういうものをしっかりとかみしめているんだと。どんなに不漁であっても夜逃げもしないし、倒産ということも免れながら、孜々営々として仕事を続けている。

 時に、片っ方は基本法がそれぞれできても、漁業は、我々は、国民的食料を生産しているという認識を法的に求めることができない。戦後も、日本の食料危機はやはり漁業の漁獲によってかなり救済をした。僕らも漁業に参加したことを忘れませんけれども。そういう中で、ひとつ基本法をつくって、国民食料の生産を我々が担うんだという自信と誇りを法的根拠に置きたい、これが最大の念願でございます。

 そして、その背景にあって、我々漁業者だけではどうにも手がつけられない漁場の造成とか、あるいはまた生産基盤の最たる漁港の整備などについて、また種づくりとかそういうものについて、応分の力を法的根拠を置いて進めていただきたい、こういうことでございます。

 それから、漁協合併のお話でしたか。(上川委員「水産基本法が実現する場合の漁協の役割の中での合併」と呼ぶ)

 漁協というのは、先ほども諸先生からのお話にございましたとおり、漁業それ自体は非常に専業率が低いんですよ。大体二〇%前後でございまして、その中にあって、漁協というものを中心にしながら、共同生産、共同販売、漁場の有効利用、そういうものを共同の中で進めてきている。

 しかし、現状は、先ほど申し上げたような外圧的な問題もありまして資源の枯渇などが進んでいるということでございますから、漁協をそのような原点に戻して、やはり資源の管理と漁場の保全を図りながら大きな役割を果たさせていきたい、こういう願いでございます。

上川委員 ありがとうございました。

 それでは次に、上田会長にお願いを申し上げます。

 先ほどのお話の中で、カツオ・マグロの漁業を初めといたしまして、沖合、遠洋漁業ということで、長年にわたりまして生き残りをかけた国際的な活動をしていらっしゃるということのお話がございました。

 会長の書かれたものの中に、ことしの年頭の所感ということで、昨年十二月に、新機構といたしまして、責任あるまぐろ漁業推進機構というのを設立されました。その中で、国際的に管理された刺身マグロ漁船以外は日本への受け入れを排除する方針というのをはっきりと打ち出されまして、そのもとで具体的な行動を力強く進めていく、こういう御方針を述べられていたというのをちょっと読ませていただきました。

 今、台湾、中国との交渉ということにつきましても、大変厳しいというふうに思いますけれども、この国際交渉の過程の中でどのような点に御苦労なさっていらっしゃいますか。現場の実感というのをちょっと聞かせていただきたいということと、そして、今回の水産基本法が制定されまして、国際的な交渉に絡まる二百海里の排他的経済水域外のところについては幾つかの規定がございます。そういう規定も盛り込まれた基本法が実現するということが、これまで長い間御苦労なさってきたことに、ある意味では力強さというか、どういう効果があるのか、影響があるのか。この二点につきまして、お願い申し上げます。

上田参考人 それでは、お答えいたします。

 まず、責任あるまぐろ漁業推進機構、これが昨年の十二月に発足したわけでございますが、その基本的な考え方は、刺身マグロという市場が世界じゅうで日本にしかない、ほかにも少しはありますけれども、ほとんどこれはもう少のうございまして、大部分のものが日本市場に搬入されている。したがって、日本国民が余りにもたくさん安いものを、安いマグロがいいということで食べ過ぎますと、日本市場に供給がふえてくるわけでございまして、これが資源の枯渇を招くということでは、やはり資源の持続的利用体制に対して日本の国が責任を果たせなかったということになります。

 特に、マグロという魚は、日本では刺身マグロとして食べますけれども、外国では缶詰マグロとして食べております。ところが、缶詰マグロで食べる場合と刺身マグロで食べる場合とは、付加価値が抜群に違う。十倍、二十倍という付加価値の違いがございます。

 したがいまして、日本に持ってくればもうかるということで、世界じゅうの刺身マグロが日本に搬入されて、その結果は、資源に対して漁獲努力量が過剰と、FAOから過剰な漁獲努力量を削減すべきだという勧告を受けて、日本は率先減船した。日本が率先減船した理由も、マグロ資源の持続的な利用の恩恵に一番あずかっている市場国の責任においてやるべきであろうということで、減船をしました。

 しかしながら、それぞれの国が最近責任を持って管理を始めたわけでございますけれども、その管理されることが嫌な心ない漁船がパナマとかホンジュラスだとかそういう国に逃げ込んで、そこで国際資源管理体制の外でやり始めた。このマグロまで自由貿易ということで入ってきておりますので、これではいかんともしがたい。

 自由貿易というのは、やはり貿易に対する不要な障壁を取り除くということであって、好ましくない魚まで入れるということではないだろうということで、責任あるまぐろ漁業推進機構を設立いたしまして、一番の問題は、ここでやっと台湾と話し合いまして、台湾の漁船もその機構に入っていただくということで発足した。今後、韓国あるいはインドネシア、フィリピンというしっかり管理された国の漁船にも全部入っていただいて、日本が市場国として、あるいはまた漁業国としてのリーダーシップをとりながら、そういった国と協調して、日本市場にいかがわしいマグロは入れないという漁業者の行動を起こしていって、それを当局の輸入問題の政策に結びつけていただきたい、このように思っているわけでございます。

 それから、もう一つ、国際交渉の問題でございますけれども、やはり日本は伝統的な遠洋漁業国でございまして、ICCATであるとかミナミマグロであるとかあるいはインド洋であるとか、そういったところに国際機関が設立されておりまして、日本もそれに従来から参加しておりますけれども、どちらかというと、大きな力を持つ遠洋漁業国として、初めのころは若干肩身の狭い思いで参加しておった、日本がたくさんとるから我々はとれないんだというような。

 ところが、最近は、よくよく考えてみますと、ICCATにしてもインド洋にしても、ICCATというのは大西洋でございますが、大西洋にしてもインド洋にしてもミナミマグロにしても、そこで管理されてとられたマグロというものが、日本漁船がとったマグロだけではなくて外国漁船のとったマグロもほとんどが日本市場に入ってきている。

 結局は、これらの条約というのは、日本国民の資源の持続的な利用、一番日本国民が恩恵を受けているということでございますので、近年、日本は市場国、日本国民が一番この条約水域の資源の持続的利用の恩恵を受けている。したがって、その責任を果たすんだという観点で国際交渉に当たるようになりましてから、やはりその国際交渉の場における日本のリーダーシップがかなり強く発揮されるようになったということで、今後ともその方向で臨んでいかなければならない。

 そういう観点で今回の基本法案を拝見いたしますと、国際協力の観点、そういったところについて二つぐらいの条項でしっかりと基本理念とその方向が書かれておりますので、私どもは非常にありがたい。あとは、この基本理念をさらにいかなる方法で工夫しながら実践活動に結びつけていくかということについて、行政庁あるいは政治の力もおかりしながら努力していかなければならない、このように思っております。

 以上でございます。

上川委員 ありがとうございました。

 それでは、三番目に、多屋先生にお伺いいたします。

 多屋先生は御主張の中で、沿岸、沖合漁業の撤退の背景ということで、ある論文の中で、国内漁業の体制に問題があったという御指摘がございました。資源に対する漁船、漁具の配置が不適切であったために、特に移動性の高い魚種については先取り競争が行われ、非効率な漁業になっているという点を指摘されていらっしゃいました。

 きょう、お話の中で、TACを基本としまして、その他のいろいろな規制についてはできるだけ排除していくという方向と、同時に漁業者による資源の自主管理が大切ということで、先ほどお話があったと思います。

 実は、一昨日、静岡県の由比というところで、サクラエビの漁業者の皆さんから、自主的に行っていらっしゃいますプール制という制度につきましていろいろ御意見をいただくことができました。

 ただ、その折に、なぜうまくいっているのかという理由の中で、非常に魚種が、漁域というか、限られているところで、また原組合長という方の非常に強いリーダーシップがあって、長い間かかって成功のうちに今維持されている、こういうお話がございましたけれども、ほかの魚種、とりわけ動く魚種については、また広い範囲に生息しているという場合には、それは非常に難しいんじゃないか、こういうお話もございました。先ほどの御指摘の中の漁業者による資源の自主管理ということについては、なかなか現実は厳しいというような感じもいたします。この点につきまして、お考えをお願い申し上げます。

多屋参考人 先ほどかいつまんで自主管理、議論のあるところですけれども、沖合はいろいろな漁業がありまして、沿岸もいろいろな漁業があって、それぞれ対策が実はかなり違うんだろうというふうに考えております。

 簡単に申しまして、沖合は物によってはTAC管理、それから諸外国では、TACだけで資源を守ることはできるけれども漁業がだめになってきたので、TAC・IQ管理、個別漁獲割り当て制度というものに移行しているので、業種によってはこのTAC・IQ制度という制度が有効ではないか。それから、話を変えまして沿岸では、漁業権が与えられていて、漁場が与えられている。そこを自主的に漁業者が話し合いで管理する。大きく二つの流れがあるだろうというふうに考えております。

 沖合漁業では、資源先取り競争があって、日本では世界でも有数な技術、漁業機器を持っておるわけであります。結果として、異常にコストの高い漁業ができ上がってしまっておるということであります。

 例えば、サバまき網漁業というのがありますけれども、ほとんど周期的にサバが大発生します。その大発生したサバを一年以内に、まだ百五十グラム、フィッシュミールにするようなサバをほとんど九割とってしまって、人間が食べるおいしいサバというのは四歳以上になるわけですけれども、そのときにはもうサバはいない。日本人の食べるサバは、生鮮用サバはほとんどノルウェーから買ってくるという不合理が起こっておるわけであります。

 これは、世界でも最も効率のいい漁具、漁船でやっているからでありまして、個々の漁船は能力をどんどん上げていく、資源を先取りするために能力を上げていってそういうことになったわけでありまして、これは漁業全体として何か管理しなければいけない。これは諸外国ではIQ制度によってある程度管理しているというものであります。

 それから、沿岸では、キンメ漁場では漁業者が朝早くから漁場に駆け込んでいって、漁場の場所をとるのに夜中じゅう場所をとっているとか、あるいは漁船が多過ぎて、いい漁場では縄がもつれてしまうというような問題があるので、指導者が出てきて、この漁場には半分の漁船でいい、残りの漁船は周辺に配置する。漁場全体を漁業者全体が管理するということが個々に行われております。

 こういった漁業の問題は、陸上から見るとマナーがないみたいなことになるわけですけれども、漁業固有の経済法則でありまして、ヨーロッパでは共有地の悲劇というふうに言われています。資源をみんなで共有しているから早くとった方が勝ちだ、そのために小さい魚を早くとる。それから、漁船は自分の船だけはどんどん大きくする。日本の漁船はエンジンが非常に高機能であります。そのためにガソリン代あるいは重油を非常にたくさん使ってコストがかかるというようなことで、非常に過剰装備というものが大きな問題になってきております。それを漁業者の話し合いで沿岸漁業では管理していく、話し合いができないような大きな海域では、行政側がいろいろコントロールするということが必要ではないかというふうに考えております。

 以上、お答えになったでしょうか。私の説明は終わりです。

上川委員 ちょっと時間があれなんですが、一つだけ簡単に廣吉先生にお伺いしたいんですけれども、先ほどのお話の中で、海洋の自然環境保全に果たす漁業の役割というお話がお二人の先生からございまして、ちょっと考え方がお二人とも違うような感じがいたします。

 多屋先生の方は、むしろ海洋基本法をつくって、そして海洋基本法の下に水産基本法を置くという形で、漁業というのは資源を利用する型であって保全する産業ではないというふうな御認識を持っていらっしゃる。実は、廣吉先生の方は、漁業というのは環境保全型の産業であって、環境を維持するための基本的な考え方を水産基本法の理念の中に織り込むべきだというような御主張をされていたと思うんですけれども、今の多屋先生のお考えも含めて、先生のお考えをもう一度お願いいたします。

堀込委員長 廣吉参考人。

 時間が来ておりますので、恐縮ですが、簡潔にお願いいたします。

廣吉参考人 おっしゃったとおりかもしれませんけれども、海洋基本法と先生がおっしゃった、そのことについては特に異論はありませんし、上位法としてそれがあるにはこしたことはありませんが、私は、漁業のためには環境が必要だと申し上げたんじゃなくて、環境は漁業の生産活動があって成り立っている、社会的に成り立っている、そういうところに強調のポイントを置いたということです。その点は違うかもしれませんけれども。

上川委員 ありがとうございました。

堀込委員長 次に、小平忠正君。

小平委員 おはようございます。民主党の小平忠正であります。

 きょうは、参考人の諸先生方には、大変お忙しいところ、わざわざ当委員会に御出席いただきまして、それぞれ御専門また実践の経験等を通しての高邁な御意見の開陳、まことにありがとうございます。政府に対する質疑と違いまして、我々も事前の質問通告をしておりませんので、そこのところは諸先生方の御意見をそれぞれよろしくお願いしたいと思います。

 御案内のように、今回の遅きに失した水産基本法の審議、また、あわせて関連二法案、当委員会でも二十数時間を使いまして今審議の渦中にあります。そういう状況の中で、きょうは皆さん方の御意見をいただいておるわけでありますけれども、私は、水産業といいますか、この分野は非常に多岐にわたり、また、今日我が国が置かれた現況も、非常に難しい環境にあると思います。

 例えて言うならば、先般二百海里を軸にした排他的経済水域が一応国際協約で設定されました。それを見ると、我が国は世界においてたしか七番目か八番目の大国になったわけであります。非常に広大な範囲であります。さらに、そういう状況の中で遠洋、沿岸あるいは近海も含めまして、いろいろと漁業も多岐にわたっている、今、そういう状況に置かれております。そして一方では、お隣の韓国や中国、この領海問題もまだ決まっておらない。一方では環境問題。そういうものを一手に抱えた今の水産業の状況になっております。

 そういう中にありまして、私どもはこの審議を通じて水産業というものが、単なる国民にたんぱく資源を提供する、そういうことのみならず、今いろいろとお話がありましたが、漁業者の生活環境、これも大事であります。これについても今御質問いたしますけれども、まず、多面的機能といいますか、これについて若干触れてみたいと思います。

 今申し上げましたように、かつて当委員会で食料・農業・農村基本法を改正いたしました。そのときにも、多面的機能というものも一つの方向でありましたし、また、過般のUR、ウルグアイ・ラウンドにおいても、我が国は食料安全保障そして多面的機能を大きな柱にして諸外国といろいろと渡り合いました。今回、この水産基本法におきましても、私は、多面的機能についてもう少しく強い姿勢でこれを打ち出していくことが肝要である、こう考えております。

 ちょっと視点を変えて申し上げますと、いろいろな意味で多面的機能はありますけれども、私は、その中の一つとして、例えば今、尖閣諸島あるいは竹島問題、中国、韓国とのいろいろな国境ラインあるいは漁業権含めて、大きな問題がまだ未解決であります。そういうところで、私は、例えば、あの尖閣諸島あるいは竹島に我が国の漁民が居を構えており、そして漁をしておるならば、果たして今こういう問題が存在するかと。確かに、かつて我が国同胞の国民があそこに拠点を構えて漁をされておった。しかし、いろいろとその後の生活の利便さ、あるいは一方では、船の近代化によって本土から通っていっても漁ができる、こんな状況になってそこが空白化し、そこに他国が入り込んできた、こんなことが言われております。

 話を翻って、農業の分野でいいますと、デカップリングという言葉がございます。これは一説には、イギリスがEUに参加するために、自国の農民を庇護するために条件不利的な地域あるいは状況を設定してEUに参加したという、これがデカップリングの由来と言われております。しかし、もっと前をたどると、私の承知する範囲においては、名目は所得補償という表現ではなかったかもしれませんけれども、例えばヨーロッパの山岳地帯で国境を接する国が、そこに牛飼いの人やきこりというか、そういう方に一つの保護をすることによってそこに住んでもらい、フロンティア、国境ラインが変わらないようにしたという、そんな歴史が私はあったと思います。

 今、漁業問題においてもそういうことを含めて考えますと、私は、多面的機能というものをもっと強く打ち出して、そこに我が国政府はそれなりの補償政策というものをもっと強く出していくこと、これも多面的機能の一つの方向ではないか、こんな考えを持っております。

 今、いろいろとお話をお伺いいたしました。まず、こんなことについて、いろいろと御苦労されております上田参考人、いかがでしょうか。御意見、もしございましたら。

上田参考人 先ほどもお話し申し上げましたように、私が関係しておりますカツオ・マグロ漁業は、先生のおっしゃるように、自分たちの持っている多面的機能というものを最大限活用するようなことを実践しないと、厳しい世界環境の中で生き残っていけない。それからまた、できるだけ漁業の生産活動そのものが多面的な機能を持つように心がけていかなければならない、このように考えております。

 もう少し具体的に申し上げますと、先ほども御質問にお答えしたんですが、刺身マグロというのは日本にしか市場がない。したがって、世界の海にいる刺身マグロ資源を日本にすべての利益が集まるような形で利用しておったんでは、やはり世界の批判を招く。それからまた、日本は生産コストなんかも、かなり下げないとやっていけません。そういったことを組み合わせて、マグロ漁業が、いろいろな世界のコストの安い後進国の力をかりながら、そういった形で生産活動を展開していくことが、マグロ漁業の生き残りにつながる、そういうことで今までやってきております。

 したがいまして、多面的機能の問題というのは、この基本法の理念と施策の方向に非常に大きなかかわりを持つ規定ではないかというふうに認識しておりますので、申し上げるまでもないことでございますが、当委員会におきましてそのような御認識に立っての御審議をお願い申し上げたい、このように考えております。

小平委員 実は、今、特にカツオ・マグロについては、我が国から遠く離れて大変御苦労されておる、そこに先ほど開陳された諸外国の人たちに働いてもらって、いろいろな意味で貢献されておる、それも多面的機能の大きな一つだと私は思います。そういうことで、いろいろと多面的機能というのは多岐にわたっていると思います。そんなことを含めて、一つの例をもって私は実はお考えをお聞きしたんでありますが。

 また、もう一つつけ加えるならば、広大過ぎるほどの我が国の海洋事業、水産事業をやっておりますが、監視船もこれは水産庁を含めていろいろとありますけれども、我が国の監視体制は非常に脆弱というか、諸外国に比べると非常に不安定な、例えば武器の携行にしてもなかなか、これは非常に微妙な問題でありますけれども、現場でその作業をされておる皆さんにおかれてはまた強い思いもあると思います。ひとつよろしく御健闘、頑張っていただきたいと思います。

 植村参考人さん、私が申し上げましたことは、今我が国には竹島あるいは尖閣諸島以外にも多くの離島があります。私の地元北海道にも幾つかあります。しかし、これらの地帯に共通することは過疎、高齢。これも漁村においても、今大きく社会問題になっておる。そういう状況の中で、いずれかのときに本土に皆さんが渡り住んでその島が、言うならば我が国民がそこに住まなくなってしまう。また二十一世紀、漁業にあわせてそういう新たな問題も起きてくる。我が国は長い海岸線を持っている国であります、そういうことをあわせて非常に大事な問題でもあって、そんな観点からも申し上げたのでありますけれども、実際にその労を担っておられる関係者の代表として、ひとつ御意見、いかがでしょうか。

植村参考人 まさに離島あるいは僻地に住んでおるという漁業者、その土地を愛すということはもちろんでございますが、やはりそこに一定の生活の糧が保全されておる、こういうことが非常に重要な役割を果たしている。

 離島なりそういう僻地における漁獲状況というのは大変よろしかったわけです。輸送の面ではやはりかなりのコストがかかります。しかし、それをカバーできるような漁獲状況があった。しかし、最近は、不特定の方々の遊漁なり釣り人等が参入して、資源を全部とっちゃうという状況が出てきておりますので、多面的な機能を果たす側面を持つその人々のためにも、そういう資源を守ってやるということが非常に大事じゃないか。

 例えば、カナダのバンクーバーにおきましては、土地に住んでおったインディアンはその魚をとっていいけれども、よそから行く者はライセンス料を払って、一匹なら一匹の限定された漁獲しか許されない、まずこういう考え方が進んでおるようでございます。日本はとり放題、不特定多数の人だれでもとり放題というような現況がありますので、そういった方々の生産の場である、生活の場である保全というものを考えて、資源を保護してやるべきだ。

 また、なおさらにいろいろなリスクがあるとすれば、それをカバーできるような対策、信用を措置すべきであろう、そのことが多面的機能を果たす意味においての国土の防衛、保全に大きな役割を継続できるんじゃないか、このように考えております。

小平委員 ありがとうございました。

 保全という問題でありますけれども、確かに、私はかつて北海道、襟裳岬が選挙区でありました。襟裳の春は何もない春でしたというのがありましたが、今、漁民の皆さんの御労苦によってあそこに林、緑が戻り、漁場としては復活をされた、そういう事例が一つあります。

 この保全、先ほど多屋参考人さんが海洋基本法の設定、これも保全の意味で非常に必要だということで、我が党としては、今回の水産基本法の審議の中で、海洋等の環境の保全、これを強く訴えております。特に、今回のこの法律には環境との調和という状況でいろいろと理論武装されておりますが、ここが非常に、これは一種、禅問答的な色彩もありますが、私どもから見ると、そこをしっかりとらえていかなければいけない。もちろん、陸上と海といいますか、状況は違います、違いますから同じようには律してはいかぬと思いますが、そういう関係の中で、今ほどお話がございましたが、それらについてどのような御意見をお持ちでありますか。

 時間もありませんので、できましたならば多屋参考人さん、それから廣吉参考人さん、簡潔で結構ですから、これらについての御意見をちょっとお伺いしたいと思います。

多屋参考人 先ほどのところで申し上げましたように、水産業の多面的機能というのは、先ほど廣吉さん、上田さんからもいろいろ具体的にはありますけれども、農業、林業の場合は、生産活動をする、その生産の場が直接自然環境を新たにつくり出すというものでありますけれども、水産業の場合は、自然の海を、豊かな恵みを利用するという産業でありまして、生産活動の場が、生産活動そのものが何かつくり出すということではありません。

 ですから、私は、制度としては、水産基本法の中に多面的機能を入れ込む、海洋環境保全というのを可能な限り入れたらいいと思いますけれども、これは海洋基本法というところで、やはり海は汚してはいけない、国民だれしも、漁業ではなくてほかの産業もそれから運輸も、いろいろなところの海を利用する関係のものを基本的に集めて基本法をつくって、そちらで解決すべき問題であろうというふうに考えております。

 この水産基本法の中に入れ込めるものは入れ込めた方がいいとは思いますけれども、そちらでむしろ解決できるものである、理念も、そちらの方の理念として入れた方が理解しやすいというふうに考えておりますので、またの機会に御検討いただきたいというふうに思っています。

廣吉参考人 簡単に。

 過疎地域の話が出ましたけれども、先ほど申し上げましたように、過疎地域は、半島でも離島でも、農業よりもむしろ漁業がもう主要な産業になっているということがあります。過疎地、過疎地というのは、漁村からいいますとちょっと当たらないように思います。それは、産業特性が随分違ってきたということと政策要因が働いたということ、両方の要因があったろうと思います。

 産業特性というのは、簡単に言いますと、漁業の方は、自然の恵みが評価される適地適産の産業として商品化をしていくその特性が非常に評価されてきたということがあるのに対して、農業の方は、政策要因が強く働いた。つまり、辺境地でも稲作に特化したあれが随分やられてきたということが、一挙に七〇年代になってそれが産業を衰退させてしまったということがある、それの差が大きいと思います。

 おっしゃったように、多面的機能というのは、辺境地、過疎地についていえば、漁業の維持ということが非常に重要なテーマになっているということを改めて強調すべきだと思います。

 それから、立法論としてどうかというのは、今申し上げるあれはありませんけれども。

小平委員 終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、参考人の方々には、お忙しい中貴重な御意見を伺いまして、大変に御苦労さまでございます。ありがとうございます。

 沿振法の制定から四十年が経過した現在におきまして、制定時には予測できなかった経済、社会の変化や、漁業、社会構造の変化等が起こって、その見直しが今必要になってきているということから、この水産基本法の新たな制定ということになっている状況でございます。先ほど植村参考人も、本法は悲願とも言われました。私も、本基本法の制定を早期に望む者として、その参考にと思いまして、幾つか質問をさせていただきます。

 まず、農業も漁業も国の基本であるというふうに私は思っております。それは、食料の安全保障、それからまた多面的な機能を含めて、最重要課題でございます。そのためにも、食料自給率の向上というのが非常に重要かと思っておりますので、この点についてちょっとお伺いさせていただきます。

 基本法では、水産基本計画におきまして水産物の自給率の目標を定めることと規定しておりますが、具体的にはどのような事態を想定して目標を立てようとしているのかというのをよく考えます。農業では生産の拡大が自給率の向上につながるわけでございますが、水産物につきましては、自給率向上を目標に掲げるとすれば、獲得努力量の増大を招きまして、資源を圧迫そして枯渇を招くのではないかと心配されます。

 私は、自給率の目標は水産物独自の問題として考えていくべきではないかと思っておりますが、御意見を伺いたいと思います。

 先に申し上げなくて、申しわけございませんでした。植村参考人、よろしいでしょうか。

植村参考人 ただいま資源の自給率の増大について、資源との減殺にかかわる問題もあるんじゃないかというようなお話の中で、この問題は一時的にはそのような考えもあると思います。

 しかし、資源を回復させるいわゆる条件をとって、それが実行されれば資源が一定の回復をする、資源が資源を生むという循環作用を、やはり我々は管理体制の中でとっていくというようなことにするといいのではないか。

 そのためには、一時的にはやはり減船、休漁とか、資源をふやす場合のそういう体制をとって、その資源の繁殖期あるいは資源の増殖時期等をにらみながらそのような措置をする。それが資源管理型漁業の一環として存在するものでございますので、そのための休漁補償とか減船の対策にかかわる補償というものを考えていくというようなことは非常に大事ではないか。

 そういうことで、資源の増大は、今までのような乱獲状態というものを克服することによって倍増できるんじゃないか。今、日本の六百五十万トンという漁獲状況を一千万トン程度に引き上げるというような計画もかつてはありましたので、そのような状況に復元できるものだというふうには考えられるわけです。

 以上です。

江田委員 上田参考人の御意見もちょっとお伺いしたいなと思うんですが、よろしいでしょうか。

上田参考人 水産物の自給率の問題につきましては、我々水産業界は、まず自分たちの縄張りであるところの水産物の自給率をいかに高めるかという問題について考えなければいかぬと思っております。それが政策的にどのような形で位置づけされるかということは、まさに政治、行政の問題であろう、このように思っております。

 それと資源との関連につきましては、耕地面積等をふやせば自給率がおのずから上がってくるという農業と違いまして、水産業の場合には天然の資源を対象としておりますので、自給率を簡単に上げるということは難しいわけですが、やはり基本的には持続的な資源量というものを拡大して、それをどのような合理的な形でとり、それをどのように合理的な形で利用しているか。資源をどれだけとるかという問題だけではなくて、日本の食生活にマッチしたような形でできるだけむだなく国民の食料として利用していく、そういった観点で考えていかなければならないのではないかというふうに思っております。

江田委員 ありがとうございます。むだなく資源を活用する、資源管理型の漁業というものの重要性ということに自給率はかかわってくるということでございます。

 水産資源の適正な管理と持続的な利用につきましてお二方、多屋参考人と廣吉参考人に、これは幾つか同じような質問が出ているかもしれませんが、改めてお二人の意見を同時にお聞きしたいなと思っております。

 まず、基本法では、水産資源の適切な保存及び管理について規定しております。我が国の水産業の現状は、周辺水域の水産資源は過剰漁獲や海洋環境の悪化から全般的に低位水準にあって、漁業生産は減少を続けて、また外国からの輸入増加などにより水産物の自給率も低下している現状でございます。

 このように、我が国の周辺水域の資源水準は深刻な状況にございますが、今後、この水産資源を適正に管理していくために重要と思われる点について、これまでの反省点を踏まえまして、今回の基本法の制定で十分と言えるか、また加えるべきことは何か、そこら辺を教えていただければと思います。よろしくお願いします。

多屋参考人 水産物の自給でありますけれども、資源は、一方で、今回の中でうたっておるように、乱獲で資源がなくなってきたということも事実であります。

 しかし同時に、先進国においては未利用資源がどんどんふえている。うまく漁業に手を差し伸べてやればせっかく優良な経営ができて漁業ができるのに、利用しない資源がどんどんふえている。それから、資源を廃棄するようになってきた。それから、多獲性魚の利用の仕方がまずいというようなことの問題がありまして、自給率の問題は、一方でそれらの需要を、流れを確保するということが大事だろうと思います。

 つまり、例えば昔大阪ではキチジというような魚がありまして、魚屋さんが、これは梅と一緒に煮たら臭みがとれて食べられるなんという、丁寧なマーケティングをして販売していたわけであります。今は、スーパーマーケットへ行っても、日本沿岸でとれる多種多様な魚を丁寧に販売してくれるところはなくなったわけであります。

 ですから、日本周辺にある未利用資源、あるいはいろいろな多種多様な魚がうまく流通するような体制が、一方で必要であろうというふうに考えております。こういったことでかなり自給率が向上する。あるいは、大量にとれる魚をどうやって利用していくかというのはまだ十分な体制が成っていませんので、FAOでも、魚の廃棄はどんどんふえているという報告もありますので、周辺でとれる魚を有効に利用するということで自給率がかなり上がるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

廣吉参考人 私は、過剰漁獲の是正の課題がないのだということは思っておりませんし、今回の基本法の中でもそれが強く意識されて資源の回復計画があると思います。

 しかし、資源管理ということが、即何か漁業者の望ましい経営環境を生むというようには思わない方がいい。資源回復、資源保存ということで、供給力の拡大ということが必ずしも経営にいい効果をもたらさないということは、既に農業などでも米作の供給拡大が志向されないのと同じことで、やはり資源管理という課題と経営管理という課題は別のものとして認識して、政策論としてきちんとすべきだと思います。

 これは、やはり背景には、消費における国民的合意の形成ということがかかわっているものですから、何でも資源を守ってつくればいいということにはならない、簡単に申し上げれば。そういう印象をちょっと強くいたしました。

江田委員 貴重な御意見、ありがとうございました。

 それとも多少またかかわってくるんですが、次は、植村参考人にもう一回お聞きしたいんですが、漁業についての今度は消費者側と国民の理解、今も出てまいりましたが、その辺について。

 年頭のあいさつで、私、読ませていただきましたが、植村参考人が、新しい世紀において、漁業の系統運動を展開していくためには、消費者や国民の理解と支持が不可欠であると。基本法第八条で、「消費者は、水産に関する理解を深め、水産物に関する消費生活の向上に積極的な役割を果たすもの」とございます。今後、魚食の普及と魚食文化の継承に消費者が果たす役割についてどのように考えられているか。

 また、基本法では、「国は、国民が漁業に対する理解と関心を深めるよう、漁業に関する教育の振興その他必要な施策を講ずるものとする。」と規定しております。消費者に対してどのように理解を深めて協力を求めていくのか、具体的なお考えがあれば、お聞かせ願えればと思います。

植村参考人 私は、生産と流通は車の両輪であろうという認識を持っております。

 生産の段階では、先ほど自給率の問題がありましたが、密殖状況なり過当競争の中ではいい品物ができません。特に、養殖の場合ではそれがもう原点でございまして、適正な養殖をしていかなきゃならぬ。

 先ほど、私の組合はホタテですから、ホタテにおいては、数年前に半分ぐらいに減ったんです。これは何遍もやっていることなんですが、同じことを繰り返す傾向がありますから。四年前に、共済事業に全額加入することと、県の助成も八〇%、国と合わせて入れてもらって、そして死んだ場合はそれで補てんする、それで、もっと密殖を根本的に改めて、いわゆる歩どまりのいいというような、丸々と太ったおいしい養殖産品をつくる、これに徹しましたところ、四〇%の前年対比の水揚げが可能になりまして、それが現在も継続しているというような状況がございますから、ともかく生産の段階ではいいものを提供する、安全性の高いものを提供する。そして、やはり市場その他、漁場もそうですが、安心感を持たれるようなものをつくって、できればそういう漁業に対して、消費者を導入してやりたい。

 現実、私は、ツアーを編成して、東京周辺から青森まで二泊三日ぐらいでやっております。ことしも六月十八日にやりますし、六月三日には、消費段階の問題といたしまして、東京で二百人ぐらいの消費者に料理の提供をしようと。これは私、昭和五十年に、全国でも早いんですが、加工業者あるいは生産者、それから系統あるいは行政を入れまして、流通振興会というものを結成しております。

 したがって、やはりそういう実効ある体制をとって、浜の立派な産品ですから、それのPRを徹底的に行って、消費者に親しんでもらうということを積極的に行うべきだ、これは我々生産者の任務でもあるというふうに考えております。

 以上です。

江田委員 ありがとうございました。非常に参考になる御意見でございます。

 基本法にも、安全性のいいもの、それから品質のいいもの、これに向かって支援策を講じていくという旨が記載されていますが、現場サイドのアイデアを非常に駆使して消費者をつかまえていくというところがまた自給率並びに経営改善にもつながっていく、ここは私も非常に重要なところであるかと思いますので、国の施策と同時に、現場の方のお考えをまた国の方もどんどん入れていくべきではないかなと考えます。

 時間があと少しございます。最後に、これは廣吉参考人、よろしいでしょうか。

 漁業就労者の人材の育成と確保ということでございますが、今、担い手、若者、その漁業就労者が減少を続けている現状がございますけれども、新規就労者の確保のために何が一番大事か、簡潔に御意見をいただければ助かります。

廣吉参考人 せんだっての有明の問題も思い出すんですけれども、やはり漁業に対する展望、将来性、こういったことが担保されるということが一番大きい要因ではないかと考えております。

 基本法案の中では、新規就業者の確保ということで、他産業や漁業以外の就業者も大いにオープンにして取り込んでいくということも非常に重要だと思いますけれども、何せやはり漁業の将来像ということに対して、暗い要因が多過ぎます。そういうのを一つ一つ取り除いて展望を示すということが、何か堂々めぐりのようなことになるかもしれませんけれども、そう思います。

江田委員 ありがとうございます。今の御意見は非常に大事なところだと思います。将来への漁業の展望というのが、明らかなビジョンがやはり示されていかなければ若者は引きつけられない、私も非常に大事な観点であるかと思います。

 きょうの参考人の皆様からお聞きした御意見は、この基本法を施行していく場合においてしっかりと我々考えて、協力をして、漁業を守っていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上でございます。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、一川保夫君。

一川委員 自由党の一川保夫でございます。本日は、参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。

 参考人にお聞きしたいテーマというのは大体絞られているわけでして、私の番になるとほぼ重複するケースが多いわけで、それを避けまして質問させていただきます。

 まず大学の先生お二方にお聞きしたいんですけれども、今、重要な課題の一つに、水産資源を管理するという大きなテーマがあるわけです。

 四年ぐらい前に、俗に言うTAC法という法律のもとで、そういう全体の総量管理的なことに入っているわけですけれども、昨日も農林水産省の話によりますと、このTAC制度によるいろいろな運用というものはほぼ定着しつつあるけれども、ではこの制度による成果というものはどこまで上がってきているかというのは、十分掌握し切っていないというお話がございました。一方で、今回の法律の改正等によりまして、また新たに漁獲努力量の管理制度を導入していこうというふうにしているわけですね。

 こういうふうに、全体の漁獲量の総量管理というものについて、いろいろと知恵を出しながら今試行錯誤しているような状況かもしれませんけれども、これらの制度の動き、また今後こういうものについてはこうあるべきだというようなことも含めて、両先生の方から御意見をお聞きしたいと思います。

多屋参考人 現在の法律では、資源管理ということで、まず、もとである資源を保全するというのが第一段階であります。資源を保全、ただし、これは必要十分条件ではなくて、資源を保全して漁業がもうかるかどうかというのはまた別問題でありまして、その次の段階として、もうかる漁業をつくっていく。

 今までのほかの国の例を見ますと、TAC制度だけでは漁業がもうからなくなっている場合も結構出ているわけでありまして、それは、コストの高い漁業が出てくる、ほかの産業でもそうでありますけれども、コスト高の産業ができてしまうともうからない。ですから、コストをどう低めるかという問題になってくると思います。

 日本の漁業でも、TAC・オリンピック制度だけではコスト高になってしまうので、それの次に、諸外国ではIQ制度、あるいは漁業者の自主管理という問題が出てくるだろうというふうに思っております。ですから、今後もうかる漁業をどうやってつくっていくかというのが、今後の大きな問題だろう。

 その場合、従来の規制の中で、規制はなるべくやめないといけないわけでありますけれども、ただ、水産資源の場合は共有の悲劇というのがありまして、海の上の資源は、みんなだれがとってもいい、それをほっておくと、先ほど言いましたようなコスト高の漁船、漁業ができてしまうという構造があります。ですから、その共有の悲劇をなくすためにどんな法律で、一つはTAC法で、あるいは努力量管理でやっていくというようなことになってくると思いますけれども、統一的な考えとしては、管理の手法をいろいろ行政側は持っておく、これはいいことだろうと思います。管理の手法をTAC管理、努力量管理、いろいろな手法で持っておって、業種ごとに管理していくということが大事だろうというふうに思っております。

 以上でございます。

廣吉参考人 私は、先ほども申し上げましたか、資源管理の課題を否定するものではありませんし、今、資源全体として非常に大きな不安な内容を持っていますから、課題だと思っております。

 しかし、今回の水産基本法案の十三条にもありますけれども、やはりMSYというか最大持続生産の実現ということがあるわけですけれども、こうした生物学的なモデル論的手法で何か資源管理が、あるTACの現実的妥当な水準が把握できるというようなことでは必ずしもないわけでありまして、それは非常に不確実性が高いという問題を含んでおります。私はその専門外の人間でありますけれども。

 また、この問題は、既に多くの論者の指摘もあると思いますけれども、マイワシ資源が昭和四十年代には一万トンぐらいしかとれなかったのですけれども、それが昭和六十年代の冒頭には四百万トンにもなる。これがどうしてMSYの同一の線上にある資源とみなせましょうか。その一事態とってもわかりますように、非常に不確実性が高い。

 そこで、ここの十三条に書いてあります最大持続生産の実現という課題の解明において、科学的な判断に過信があってはならない。やはり現実妥当な今日の技術の水準で、多屋参考人も言われましたように漁獲努力のさまざまな規制、あるいは資源管理型漁業の育成、推進ということもあわせて展開していくということが政策論としては重要なんではないかと思います。

一川委員 ありがとうございました。

 それでは、上田参考人と植村参考人にお聞きしたいと思います。

 これも先ほどちょっと話題が出ておりましたが、今、水産漁業者を取り巻くもろもろの情勢、大変厳しいものがあるのは御案内のとおりでございまして、とりたい魚が十分とれないという中で、これからの漁業経営をどのように維持、向上させていくかということに尽きるわけですけれども、先ほど上田参考人も、今回の基本法の十九条なり二十一条なり、そういう条文を取り上げながら、これから大いに具体的な施策を期待したいというようなお話もございました。

 先ほどの植村参考人のお話を聞いておりましても、減船なり休漁的なものはある程度やむを得ないという中で資源の回復を図っていくわけですけれども、こういった考え方の総論的なものは、恐らく漁業関係者なり漁業者もそれはそれでやむを得ないだろうという気持ちはおありだと思いますけれども、片や、では現実の毎日の生活、漁業経営ということを考えた場合、大変深刻な問題がいろいろとあろうかと思うのですね。

 そういった板挟みの中で、これからどういう具体的な施策を皆さん方が期待されているか。御自身でいろいろなことは創意工夫されていくところもたくさんあるわけですけれども、今、政府、行政に対して、少なくともこのあたりはこういうふうなものをしっかりと用意してほしいというようなものが、もし現段階で何かおありだったらお話を聞かせていただきたいと思います。

上田参考人 まず、いろいろ今までにも御意見が出ていますけれども、私は、やはり基本法と、これからいろいろな法令が整備されていくと思いますけれども、産業政策、そういう理念のもとに、その産業政策の中に資源政策あり、経営政策ありという、そのような基本的な認識がしっかり持たれなければいかぬというふうに思っております。

 もう少しわかりやすく言いますと、資源の持続的な利用体制というものができても、漁業の持続性というものがなければ、海の魚というのは国民の食卓に自分で泳いできてくれませんので、やはり漁業というメッセンジャーがこれを国民の食卓に届けることによって安定的な供給というのが可能になりますので、資源が生き残ると同時に漁業も生き残っていかなければならない。

 そういう観点に立って、今の遠洋漁業初め沖合漁業を見てみますと、やはり先ほど申し上げましたように、いかにも不振経営体が多過ぎる。これをすべて淘汰したのでは、日本の自給率というのはもう実にプアな形になるものですから、やはり累積債務は多くても生き残っていこうということで、しっかり意欲を持って、計画性を持って取り組む漁業者に対しては、これを支援していく。

 ところが、やはり大きな債務を持っているわけでございますので、これをそのままほっといては、なかなか困ってしまうことになりますので、この累積した固定化債務を流動化する金融措置というものがなければならないというふうに思っております。

 それからもう一つは、漁業者自身が、いろいろと厳しい中で自分たちがどうやって生き残っていくのかという具体的な実践メニューを持たなければいかぬ。その場合に、それを行政に提示して、それを支援する、そういうめり張りのある経営対策というものが今後重要になってくるだろう。

 それで、ここら辺が議論されるのは、先ほども申し上げましたように、来年に改正が予定されておりますところの漁特法、これは中小漁業の経営対策を、減船という面、構造改善という面、それを支える金融という面、この三つから書いてある法律でございまして、これをどのように見直していくかということが非常に重要でございます。これについては、今後、業界と国が漁業の現実をしっかり踏まえて大いに議論していかなければならない、このように思っております。

植村参考人 私は、沿岸、沖合の立場からお話をしてみたいと思います。

 先ほど、資源回復を図るという立場から、減船の問題、休漁の問題を申し上げましたけれども、どうしても、例えばトロール漁業なんかは、沿岸域から許可になっている漁法をもってして現在も存在しているということがありまして、それは幼稚仔の生育環境を非常に荒廃させるばかりではなくて、幼稚仔、小さい魚そのものまでもやはり漁獲してしまうという問題などがありますので、そういうことから考えますと、高齢化されて自然淘汰的に減船するという問題じゃなくて、やはり理解を得て減船をするということは、資源回復のためには非常に有効であり、沿岸漁業者としては大変渇望しておる問題でもございますので、やはり生活圏が存在しておる業種の方々との十分な話し合いの中で補償制度というものを立ち上げて、早急な対策をする。

 休漁対策というのは、先ほども申し上げましたように、産卵期、増殖期などを休漁するという方策を打ち出して、魚種によってはそのとき大変値段が高く売れるという逆の問題がありますが、やはりそれを克服するための休漁補償というものは考えられていいのではないかというふうに思っております。そのことによって資源が安定的に、持続可能な状況になれば、お互いの生活設計というものが立ち上がるんじゃないか、そういう考え方でございます。

一川委員 大学の先生の多屋先生の方にちょっとお聞きします。

 最近、こういう水産関係の話題になると、この前の質疑にもよく出てくる話題ですけれども、豊かな漁場づくりというのは、単なる海域の対策だけじゃなくて、そこに注ぎ込む河川の流域全体をしっかりと管理しながら、河川周辺の対策、それから河川の本当の上流域の森林管理も含めて、そういう川上から川下へかけての総合的な対策がしっかりと恒久的なものが確立していないと、真の豊かな漁場というものはでき上がってこないということが言われているわけです。

 こういうことに対する先生の御見解、今後こうすべきだというのがもし何かあれば、そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。

多屋参考人 森林からいろいろな栄養分が海に流れていってということでありますが、一つは、日本全体の森林と漁場というのが、過去、非常に大きな課題になっております。それがなくなってきたために漁場が荒廃したということがあります。それから、地域的に、それぞれの地域で河川を豊かにする。

 それから、農業あるいは住宅等からやはり河川にいろいろなものが流れていって、いい影響、悪い影響を与えるので、そこの管理を徹底的にしていかなければいけないという現代的課題が出ております。有明海でもそのことは、もともと人間の営みの生活排水等が海に流れていって、それをノリという形あるいは貝という形で回収する、漁業はリサイクル産業だったわけですね。

 やはりそういった生態系を保全するように、よく監視していかなければならないというふうに考えております。

 以上です。

一川委員 では、最後にこれは植村参考人に、先ほどもちょっと出た話題かもしれません、先ほど来この多面的な問題がよく出ていますから。

 漁業者とか漁協の関係の方々は、いろいろと話題が出ましたように、こういった水産関係の食料供給という重大な役割は当然担っておるわけですけれども、そういった日常的な漁業と並行しまして、先ほどの話題のように海難事故に対するいろいろな対応とか、あるいはまた密入国者に関する情報提供とかということ、大きく言えば、日本の国境に対するしっかりした監視役として、日常的な漁業の中でそれなりの役回りも果たしてきておられたというふうに思います。

 しかし、一方では、協同組合そのものも経営基盤が大変苦しいところはたくさんあるわけです。そういった社会的な役回り、多面的な機能をしっかりと果たしていただくためにも、漁業協同組合というような組織なり漁業者自身も、もうちょっと安心して生活できるような基盤をしっかりとつくるべきだというふうに私個人的に思うわけです。

 今、漁協の合併問題とかいろいろな課題に取り組んでいるところでございますけれども、こういうことへの支援に対してはいろいろな御意見があろうかと思いますが、そのあたりのことを簡潔にお聞かせ願いたいと思います。

植村参考人 ただいま、多面的な役割を果たしておる漁業者並びにその中核たる漁協についてお話がございました。

 漁協が地域においてこれまた非常に一体的な役割を果たしております。特に、これからの地方の時代の核として、非常に力強い生活力を維持しているわけです。収入は非常に少ないけれども、複合的な収入と合わせながら、非常に意志の強い生活をしておられる、こういうのが漁業者であり、そしてまた、地域のあらゆる行事は漁協が仲間になり、先行している場面があります。しかし、行政的には、海面下のことでございますのでやはり非常に厳しい状況になっておりますが、奉仕活動においては非常に濃密な奉仕共同運動をしておる、こういうのも漁協の実態でございます。海自体の実態についての探索などは、行政ではなかなか確認しがたいことについては全部漁業者が協力をしている、こういう大きな面を持っております。

 しかし、漁協の合併が進まないというものには、漁場管理を共同で行うという問題が一つあります。共同で行うという場合は、信頼関係というもの以外にそれをリードするものがなかなか見当たらない。歴史的に、隣の漁協とは非常に確執があるんですね。漁場の争奪ではないけれども、定置の設定とかいろいろな問題で長い歴史をみんな持っている。したがって、不信感につながっている。こういうことで、合併した場合、信頼関係が損なわれるのではないかという心配が大変あります。

 しかし、今、それを乗り越えて、漁協が限られた職員、限られた財政基盤で、今申し上げたような一定の大きさの漁場管理とか、漁場清掃もひっくるめて、あるいは密漁問題、遊漁対策、いろいろな問題に対応できるかというと、これまた時代背景が非常に大きくなってきておりますので、何としてもこれを合併させなければいけない。

 結局、合併への反対の理由に、隣の漁協は借金がかなりあるんだとか、あるいは負債がどうなっているとか、そういう問題が具体的な反対理由として提起されます。それに対する対応というのが、融資とかいろいろな話がありますけれども、現状の中で、では、融資されたものを返済できるような漁獲状況というものが合併によって確保されるかというと、必ずしもそういう問題について、それは大丈夫だということを申し上げる実態じゃないわけですよ、先ほどからの漁業状況を見まして。

 ですから、私であれば、そういう状況がそんなに大きい問題じゃないので、それを一時棚上げさせて、そしてどこか基金なんかでもいろいろな方策をとって、そして新しい認定漁協には持ち込ませないという話などが具体的に出ていったら、合併の速度が物すごく早まるものだ、みんなそう認識を持っていながら、今言ったような旧来からのお互いの対立を借金というものにすりかえられて、すりかえるということは言わないけれども、実態に対して、それを新しい合併漁協に持ち込むということに対する不信感は非常に持っていると。

 共同漁業というものを推進するための共同の力というものに信頼を置くなれば、そういう信頼を欠くような状況というものをやはり排除していく方法はないか、こういうことを私は常々考えておる、言上しておるところでございます。

一川委員 どうもありがとうございました。

堀込委員長 次に、中林よし子君。

中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。

 それでは、まず上田参考人からお伺いしたいと思います。

 マグロの資源管理を図るために、もう長い間、便宜置籍船の廃絶を進めていくということが大変望まれているわけですけれども、台湾対策として、二〇〇〇年の三月合意に基づく廃絶に向けた対策、これは実効があったのかどうか、その点が第一点です。

 それから、台湾対策が進む中で、台湾から中国へ逃げていった便宜置籍漁船が急増して、勢力を拡大しているんじゃないか、こういう問題があると思うのです。日鰹連は、中国政府に対して、この便宜置籍漁船の受け入れ即時中止を要望して、また水産庁は、中国側とのマグロ協議を継続しているわけですけれども、上田参考人は、中国対策をどのように進めたらいいのか、その辺の御見解、台湾と中国の二つの対策について、お伺いしたいというふうに思います。

上田参考人 まず、台湾対策につきましては、具体的に実践段階に入りまして、これからその実効が上がっていくというふうに考えております。

 まず、台湾の便宜置籍船、二百隻ぐらいあるわけでございますけれども、このうち百二十隻が、残念ながら日本から輸出された漁船でございます。この百二十隻については、原則として日本が責任を持ってスクラップをしていくというような、そういう合意をいたしまして、それで先般の補正予算におきまして三十三億円近い予算をつけていただきましたし、非常にありがたいことであると思っております。

 それからまた、私ども業界も、台湾の業界、日本の業界、それぞれ水揚げの中から応分の金を出しまして、国民からいただいた資金と我々が出しました資金を合わせまして、これら漁船をスクラップしていくという行動計画が既に始まっておりまして、もう数隻スクラップの契約をいたしております。

 ところが、その百二十隻ある船のうち半分ぐらいが私どもの計画に手を挙げてきまして、あとの半分は、そのうち何とか自由貿易体制だからうまくなるんじゃなかろうかというようなことで、この計画に参加しておりません。そういった船が中国の方へ逃げ込みまして、大中国の傘のもとであれば何とかなるんではないかということで、そういった船を受け入れている。ところが、中国はそういった船を受け入れることによって漁獲量がふえてまいりますので、ICCATから割り当てられた四千トンの漁獲量では足りないということで、それに異議申し立てをしている。

 もう少しわかりやすく言いますと、世界が排除すべき便宜置籍船を受け入れて、自分たちのクオータが足りないから、その便宜置籍船のためにICCATにもう少しクオータをよこせという、とんでもないことを言っているわけでございますので、これは大中国といえども、我々は毅然たる態度で話し合いをしていかなければならないということで、既に三回の話し合いが行われております。

 一回目、二回目は政府だけで行われましたけれども、三回目の話し合いには政府に随行いたしまして私も北京の方に参りまして、中国業界とお話し合いをしております。

 私どもが中国に今申し上げていることは、まず便宜置籍船、これを今後受け入れないということを明確に意思表示してもらいたい。それから、今後漁船数を、これ以上の隻数をふやさないという限度隻数でございますが、その隻数を明示してもらいたい。その隻数というのは、国際社会が容認し得る隻数でないと、膨大なものを明示してもそれは容認できない。国際社会が容認できるような限度隻数を示してくれと。それから、先ほど申し上げましたICCATの異議申し立てを撤回してちょうだい、この三つのことを要請しておりまして、それで基本的には、中国サイドも決して後ろ向きの対応ではございませんので、六月末に第四回目、さらにずっと粘り強く対中国との話し合いを続けていくことになろう、このように思っております。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

中林委員 重ねてですけれども、結局、イタチごっこのような状態というのはあって、やはり私は現法のまぐろ法の輸入規制条項、これは改正する必要があるんじゃないかと。

 つまり、便宜置籍漁船で漁獲されたマグロの輸入を禁止する、こういう法制化が必要ではないかというふうに思うのですけれども、それに対してのお考えがあれば、お聞かせください。

上田参考人 台湾の業界といろいろとこれまで二年間にわたって話し合ってきたのですが、最近では、やはり好ましくないマグロは日本市場がそれを受け入れないということにすべきであると台湾の業界は言っております。それから、台湾の政府もそれと同じような意見を言っております。

 便宜置籍船というのは、先ほど申し上げましたように台湾の漁業者がやっている、実態的には台湾の業者がやっているのが大部分でございます。その台湾が、既に業界ベースの話し合いであるとかあるいは政府も非公式の場ではそのようなことを言っております。

 今後は、そのような日本の漁業者だけの声ではなくて、日本市場にマグロを供給する台湾を初め、韓国であるとかインドネシアであるとか、そういった漁業者が私どもと同じような声を上げていく場合に、政治、行政がどのようにそれを受けとめられるかという問題が出てくるのではないか、このように思っております。

中林委員 次に、多屋参考人にお伺いしたいと思います。

 我が国は世界有数の漁場を持ちながら、水産資源が大きく衰退したことはだれも承知していることで、その最大の原因が、私が考えますのに沿岸などの埋め立てあるいは干潟、藻場の破壊など、こういう開発優先の政策というのがあるんじゃないかと思うのです。だから、私は、今度の水産基本法案でもそうですけれども、一方でこういう自然の藻場や干潟をつぶしながら、一方で人工干潟、藻場の造成という方向も打ち出されていて、一体これはどういうことなんだろうかと。研究者の話を聞いても、自然にまさるものはない、このように言われているわけです。

 だから、私どもは、この辺で埋め立てというものは、例えば瀬戸内海などでは禁止すべき、もうそういうときに来ているのではないかと思うのですけれども、これまでの自然の干潟や藻場の喪失の問題、それからそれを回復するためというか、回復はできないのですけれども、人工的に多額なお金をかけて人工藻場、干潟を造成している問題、あるいは瀬戸内海の埋め立て禁止の方向についてのお考えなどありましたら、お聞かせいただきたいというふうに思います。

多屋参考人 干潟、藻場の生産力は非常に大きくて、人間は、ここから生活排水を出して栄養塩類を流す、干潟、藻場で貝あるいはノリ養殖場をつくってリサイクル、そういう非常にうまい循環系が従来はできてきたわけであります。

 この干潟、藻場をなくしていくというのは、この循環系、人間と自然との関係をなくしていくということになりますし、それから目に見えないいろいろな環境破壊が行われているというふうに思います。干潟、藻場をやはり保存しておくということが、それだけで経営が成り立つ、優良な漁業経営を保全するということになりますので、水産物の自給率にも大きな貢献をもたらす、これを開発優先でなくしていくというのは問題があると思います。

 ただ、干潟、藻場の問題は、漁業だけの問題ではなくて、沿岸域、近くに住んでいる住民の遊びの場とか、いろいろな領域の人々の利害、有効利用がされているわけでありますので、水産側だけではなくて総合的な、先ほども申しました海洋基本法の中で理念をうたって、もちろんこの水産基本法の中で理念をうたってやるのもいいわけでありますけれども、やはり海洋基本法の中に入れ込んで、上位概念の理念を打ち出すべきだというのが私の主張であります。

 以上であります。

中林委員 廣吉参考人に伺いたいと思います。

 ことしの二月ですけれども、平成十一年十二月に水産基本政策大綱についての学識経験者の見解というので、先生の意見を読ませていただきました。この中にこういうくだりがございます。「「新農基法」では強調された「食料安保」の視点で国内漁業を支援する位置づけが希薄ではないか。」こういうふうなことが「その他のコメント」という項目であります。

 私もそうだというふうに思うんですね。何か具体的に国内漁業に対する支援策で具体策、そういうものの提言があれば聞かせていただきたい、これが一点です。

 それからもう一点は、先ほどから、漁業における多面的機能の問題を四人の方々から聞かせていただいて、大変勉強になりました。特に、廣吉参考人の、漁業生産なしに多面的機能はなし、これは一体化したものだという御意見には、私も感服をいたしました。特に、漁期が短く、一年通じてないんだ、しかし、やはり一年通じて海岸線は守り、あるいはさまざまな問題で貢献をしているんだ、こういうお話だったんですね。

 しかし、それに見合う補償というものは、今度の基本法案の中には見出せません。情報の提供、そのぐらいにとどまっております。私は、当然、離島においても、半島においても、あるいは寒漁村におきましても、こういう大切な役割に見合う所得の支援策、所得補償、そういうものが必要なのではないかと思うんですけれども、具体的な漁業支援の提案、あるいはこの多面的機能にかかわっての所得補償についての御見解がありましたら、聞かせていただきたいと思います。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

廣吉参考人 私の意見に関するコメントをいただきましたけれども、食料安保論が、新農基法での提言がそのまま今回も有効だとは、必ずしも思えない部分があります。漁業独自の、水産物独自の食料としての位置づけというのは、やはり農産物と違うと思います。

 その背景には、先ほどもちょっと申しましたけれども、消費における国民的合意というのがありまして、ありていに言いますと、三度三度の飯のおかずというような意味合いで水産物をとらえるということは、もはやできなくなっている側面が強くなっている。消費者から見れば、やはり非常に価値の高い、国民生活を、自分たちの生活を豊かにする食料の一つとしてとらえている側面が非常に強くなったという点では、やはり随分違った位置づけがあり得るだろうと思います。

 ただ、こういうことを申し上げたのは、水産物は、諸外国でももはやそのような形で水産食料の位置づけがなされておりますけれども、やはり健康だとか成人病予防だとか、かけがえのない食材の一つとして、農産物とは異なった意味で位置づけがあるものですから、そういったようなことがもっと強調されていいのではないか。その上で、自給率の目標なり食料安全保障の問題は、国民に問いかけるような提起があってもいいのではないかというぐあいに思った次第です。

 それから、二点目の問題については、これは新農基法の三十五条でしたでしょうか、中山間の振興というようなことが言われて、その背景には、多面的機能の役割の評価というのがバックボーンになっていると思います。私は、この点に関して、漁業の生産活動があって初めて環境が維持存続している側面をどう見るのかという点を、もう少し注意深く、水産基本政策検討会も議論されたように記憶しておりますけれども、その点を申し上げたかったわけです。

 先ほど、他の議員の方が森との関係をおっしゃいましたけれども、森と漁業はもはや一体というようなことがあると思いますけれども、私の論理で展開しますと、むしろ、漁業の発展が価値ある森を必要としている、漁業の発展が森を価値あるものとするというような意味でとらえるべきではないかというように思っている次第です。

 その意味で言えば、この三十二条の多面的機能、情報交換云々という条項はやや物足りないかなと思います。ただし、立法論としてどうかという問題は、私は申し上げているわけではありません。

 以上です。

中林委員 植村参考人にお伺いします。

 農水省は、三月十四日に、ワカメ、ウナギについてのセーフガード発動に向けた政府調査を開始したいということで、財務省と経済産業省に要請しているんですけれども、既に二カ月経過しているんですけれども、いまだ政府調査開始ができている状況ではございません。関係漁民は、どうせ政府はやる気などないのだ、こういうあきらめの声も聞くわけですね。このセーフガード発動に対する植村参考人としての御見解、御要望があれば、ぜひ聞かせていただきたいというふうに思います。

植村参考人 冒頭の段階で申し上げておりますIQとあわせてセーフガードという両刀の手法を適切に実現していただきたい、これが我々漁業界の念願です。

 ワカメのセーフガードについては、業界の我々としてはこれを提起いたしてもおりますし、また現場からの要請もございます。いろいろな問題を調査しながら、政府としても立ち上げるであろうと思いますが、その間に、業界といたしましては、中国の方に参りまして、この我々の実態について説明をし、共感を得るための努力もいたしております。ぜひ実現方をお願い申し上げたい、こういうふうに思っております。

中林委員 同じく植村参考人にお伺いするわけですけれども、漁業に対する新規参入の問題ですね。

 相模湾のサクラエビについては、うまくいっているのでこれは後継者もちゃんといるんですよというお話を聞いたんですけれども、なかなか全体的には、後継者もいない、また新規参入も難しい、こういう状況です。そういうものだけに、国としての施策が必要なんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、後継者の問題、また新規参入の問題で具体的な御要望があれば聞かせていただきたいというふうに思います。

植村参考人 新規参入については歓迎をいたしますけれども、ただいまお話しのように、農業と違いまして、海の中での作業なり技術手法をマスターして、なおかつ荒れる海での仕事ですから、そうやすやすとはいかないのではないか。我々の申し上げている後継者という問題は、漁業の漁獲状況を向上させることによって可能になるという認識を持っております。

 それからもう一つは、先ほどから申し上げておりますとおり、一定の自然環境の中で資源に限界がございます中で、今、浜では三世代が仕事ができる状況になっている。と申しますのは、おやじと息子というものに合わせて、おじいちゃんなりそういう関係が就労できる態勢にありますので、三世代が必ずしもそこにひしめいていることではなくて、どの世代の方かは別な収入を得られるような条件をつくっていくということも、漁村の活性化には極めて重要だという認識を我々は持っております。そのためには、やはり安定した漁獲条件をつくり上げると同時に、アクセスをしっかり整備して、自宅からしかるべく仕事に携われる世代が十分可能な状況をつくる。

 あわせて、必ずしも漁村に高度医療、文化施設というものをつくることよりも、高度医療と文化施設に短時間、少なくとも一時間以内で交流できるような、都市との交流が可能な状況をつくれば、かなり後継者問題が好転していくというように認識いたしております。

中林委員 四人の参考人の先生方、どうも貴重な御意見、ありがとうございました。

 終わります。

堀込委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄と申します。本日は、本当に参考人の方々、大変御苦労さんでございます。もうしばらくの間意見をお聞かせ願いたいというふうに思います。

 まず初めに、上田参考人にお聞きいたします。

 先ほどの、マグロ減船、二割減船をやって以降の状況を業界としてどのようにとらえているのかという問題ですね。私は宮城県の気仙沼市出身なものですから、会長さんには多くのお世話になって、地域として二割減船からの脱却を図られつつあると思いますけれども、先ほどの参考人の陳述の中で、中小漁業は非常に厳しい、七割が債務超過、それから不良債務処理をこれからしていかなきゃならない状況ということを聞かされたときに、業界としても、これから非常な決意を持って、マグロ漁業を絶やしてはいけないという立場でやっていかなきゃならないと思うんですが、二割減船以降の状況について再度お聞きしたい。

 やはりこの問題を考えるときに、輸入の問題、先ほど各委員からお話がありましたけれども、市場原理、自由競争の中でこの輸入の問題をどう解決なさっていこうとしているのか。民間外交といえども限界があると思いますけれども、この問題を含めて、この業界のこれからの方向性というものをどうおつけになっていかれるのか。このことをしっかりやらなければ、私は、二割減船に応じた人たちの思いというものが無になっていくんじゃないのかなというふうに思う。

 減船に応じた人たちの気持ちを考えるときに、業界としてしっかりとやっていただきたいという思いが強いと思いますが、その辺を踏まえて、どうお考えになっておられるのか、お伺いいたします。

上田参考人 率直に申し上げて、減船して二年近くがたっておりますけれども、漁業者の経営状況は改善されておりません。私も最初から、日本の減船だけで経営が改善できるということは、これは楽観的過ぎるのではないかというふうに思っておりまして、今の状況を決して異常な状況だとは思っておりません。むしろ、減船とポスト減船対策をどう進めるかということが非常に重要な問題であると。

 先ほどから申し上げましたように、マグロを付加価値の高い刺身という形で食べる国民は世界で日本だけでございますので、世界じゅうの刺身マグロ漁船がとったマグロがすべて日本に集中してくるという単一市場でございます。単一市場の場合は、供給過剰になったらどこにも持っていく先がございませんので、日本市場にマグロがあふれて、完全に買い手市場になります。ところが、反面、供給がタイトになりますと、どこからも持ってこれませんので、売り手市場になります。そういう経済的な原理を持っている。しかしながら、先ほどからお話し申し上げましたように、日本に持ってくればもうかるということで、各国が自由貿易体制の中で漁獲努力量をふやして、慢性的な過剰供給に陥って、魚価安が続いて漁業経営が困っている。

 それから、まともな形だけではなくて、便宜置籍船という、国際規制を逃れてやる船が二百数十隻も出て、その供給量が五万トンもある。それからまた、しっかり管理している日本とか台湾とか韓国とかそういう国が減船しても、その便宜置籍の方に逃れていったらざるになりまして減船効果も上がらないということでございますので、一番の問題国であった台湾と話し合いまして、日本は減船をした、君たちも減船をしろ、それから、君たちが陰で実営している、君たちの国の漁業者が実営している便宜置籍船というのも一緒になって退治していこうではないかということで、日本の計画、台湾の計画を立てまして、今進めているということでございます。

 したがって、このポスト減船対策が計画どおり進んでいけば、漁業者の経営の実態に確かな手ごたえが出てくるのではないか、これからの問題である、したがいまして、私も最善の努力をこのポスト減船対策に傾けたいというふうに思っているところでございます。

 ありがとうございました。

菅野委員 やはり民間外交も含めて、政府も含めて、今日のマグロ漁船等を含めて、水産業界の置かれている現実を率直に認識し合うということが今日求められている。そのことを国民に訴えていくことも必要なことだというふうに私は思っております。

 それからもう一つ、漁船漁業を考えたときに、漁船員の高齢化の問題なんですね。先ほど意見陳述の中で、低コスト地域の力をかりてコスト削減を図りながら漁業経営を持続させていく、このことも長続きする話じゃないと私は思うんですね。幹部船員をぴしっとした形で養成しておかない限り、漁船漁業の経営というものが成り立っていかないんじゃないのかという危機感すら、今持っているわけです。

 それと同時に、この委員会でも私質問させていただいたんですが、代船建造の問題です。漁船が古くなっていて、代船建造資金がないですから、代船、船をつくることができない。ここをどう改善していくのかということも、業界としての大きな課題ではないのかなというふうに思います。

 これが、あと五年や六年で漁船漁業をやめるというのだったら別ですけれども、経営体として継続させていくために、この二つの大きな問題を解決しなきゃならないと思うんですけれども、上田会長の御所見をお聞きしておきたいというふうに思います。

上田参考人 漁船員の後継者対策につきましては、単純労働力については、外国人漁船員に今後依存していく体制を強めていかなければならぬと思いますが、キーマンとなるところの幹部船員につきましては、日本人漁船員がどうしても必要でございますが、残念ながら、このキーマンとなる日本人漁船員が最近非常に高齢化いたしてきております。

 また一方、やはりマグロ漁業の厳しい現状がございますので、なかなか水産高校の卒業生が乗ってくれないという問題がございます。冒頭にも申し上げましたように、非常に厳しいマグロ漁業で、必ずしも労働環境は君たちの望むような形でないかもしれぬけれども、国際協力の専門家としてのそういう仕事もあるんだよ、生産活動そのものが国際協力にも役立っているんだよというような、そういうことをキャッチフレーズにして後継者の確保を図っているところでございますけれども、やはり基本的には、漁業そのものを魅力ある形に持っていかないと、なかなか後継者は来てくれない。

 それともう一つ、やはり待遇面でもう少し給料を上げてやらなきゃいかぬということでございますが、日本人労働力を全部導入するという前提で給料を上げようとしても、これは困難でございますので、単純労働力は外国人労働力を導入して、そこで浮いた浮上経費を日本人の幹部船員の給料アップに充てていく、このような考え方で今進めております。

 それから、非常に経営が苦しい状態が続いておりますので、新しい漁船をつくる漁業者が非常に少のうございまして、だんだん漁船が老齢化してきております。これにつきましても、マグロ漁業の場合、非常に経営格差がございまして、経営のいい人と悪い人の差は、これが同じ漁業かというほど開いております。

 したがいまして、私は、経営状態のいい方を、できるだけいろいろな形で支援して船をつくっていただく。そうしますと、その方が持っておられた古い船の方を、比較的まだ使えますので、これをリフレッシュして、経営状態の厳しい、いわゆるオーダーメードの背広を着られない人にレディーメードの背広を着てもらうというような、そういう現実的な施策というものも必要ではないかと思っておりまして、近く組織の中にそのような作業部会を発足させて、いろいろな知恵を絞りたい、このように思っております。

菅野委員 ありがとうございました。

 それでは次に、植村参考人にお聞きしたいと思います。

 沿岸漁業も含めて、遠洋漁業も含めて同じような現実にあるということと思いますが、やはり輸入問題に対抗するために、先ほどの植村参考人のお話を引用させてもらうと、構造改革をしていかなきゃならないんだ、そして、この構造改革に一定の国の支援というものも求めていきたいと考えておられるようです。一つはセーフガード、これは例えば三陸産ワカメなんですが、セーフガードを発動しても、この構造改革が進まない限り輸入に対抗し得ないというふうに私は思えるんですね。

 それで、この構造改革の方向性を、植村参考人として、漁連の会長さんとして、余地があるのか、構造改革はもうほとんどなし遂げて、ぎりぎりのことはやっていますよという状況なのか、この辺はどうお考えなのか、お聞きしたいと思います。

 それから、もう一点ですが、先ほど漁場のすみ分けの問題に触れられました。お互いに漁場をすみ分けしながら生産活動をやっていく必要があるとおっしゃっていました。それで、そのための調整機能の強化というものをしっかりとしていかなきゃならない。

 きのうも私、質問させていただいたんですが、今まで海区漁業調整委員会なりの果たしてきた役割というものはなかなか、表にはあらわれませんけれども、調整機能の強化という観点からすると、非常に難しい部分が存在しているわけですね。

 そして、今度広域漁業調整委員会というものを発足させて、全国を三つのブロックに分けて調整機能を果たしていこうという漁業法の改正が今行われているんですけれども、この海区漁業調整委員会と広域漁業調整委員会との関係を全漁連の会長さんとしてどのように考えておられるのか、そして、このことにどういう期待を持っておられるのか、資源の保護、育成という立場からどうお考えになっておられるのか、この二点についてお伺いしたいと思います。

植村参考人 まさに構造改善は、かなり日本の漁業条件は改善はされておりますので、より以上の構造改善ということになりますと、これから漁協合併などを通して、市場の衛生管理というものを通して、絶対的な安全性、安心性を高めていく。

 私は、やはり輸入水産物について、そういう面で日本よりかなり立ちおくれをしているんだという認識は持っております。したがって、その面での比較検討、いわゆる相手に対して、しっかりした対等の安全性のある商品を出しているのかどうか、こういう問題をもっと追及すべきである。

 我が方は、そのためには、そういう市場のHACCP化という言い方もありますし、安全性、安心性というものを極度に追求して、絶対的な位置づけをする。もちろん、出荷体制あるいはまた製品の加工体制などもございますので、構造改善という言葉が使われておりますけれども、そういう面で比較した場合、断トツの製品のよさ、安全性というものをキープできるような状況ということが、よりこれからの消費者に対する消費宣伝になるんだというふうな認識を持っております。

 一時、カキのブレンドの問題を我々が追及したところ、韓国からのカキは東京に入ってから生産月日を入れている、これじゃ話にならぬじゃないか、日本の方は海から揚げたその日を生産月日にするという問題なども発覚した中で、そういう指摘をはっきりやっていくということで対抗できるのではないか。

 それから、すみ分けの問題についての今の新法の広域漁業調整委員会ですか、これについては、我々も最初から、持続可能な状況をつくるためにどのような役割を果たせるのか、果たすのかという問題はかなり注視をしてきております。

 したがって、決して排他的な話じゃなくて、共存できる中で資源というものの持続可能性を高めていく、そういうことでお互いの経営の改善を図られるものだという基本的な認識を示しながら、今お話しのとおり、広域漁業調整委員会という新しい六ブロックのいわゆる実効ある運営というものについて大きな関心を持っている、こういうことでございますので、よろしくお願いします。

菅野委員 最後に、廣吉参考人の方にお聞きしたいと思います。

 多面的機能の保持のために、漁業生産活動によって多面的機能というのは保持されているんだということを非常に強調されたというふうに思ってお聞きいたしました。ただ、先ほどの江田委員の質問に対して、漁業に対する明るい展望が持てるような、そういう漁業環境をつくるべきだ、暗いものが余りにも多過ぎるという表現をなさって答弁なされていましたけれども、私も、今の一連の質疑の中でそのことをしっかりとつかんでいるつもりなんですが、なかなか明るい展望というものを見出せないでいるというのも現実の問題だと思うんですね。

 そうしたときに、水産経済学の立場から、端的に言って、こういうことをやはり政策としてぴしっと掲げるべきだということがありましたらお示しいただきたいと思うんですが、難しい問題だということはわかりながらも、お聞きしておきたいと思います。

廣吉参考人 難しい御質問。多面的機能の問題も、農業とやや異なった側面からその存在を見ておく必要があるという意味で、すべてではないけれども、特に沿岸域における漁業と漁村の存在の実態について、私の言うような側面から見てみる必要があると申し上げたわけです。

 そういう意味で、私が指摘したような状況を一言で申し上げれば、漁業はつまり環境保全型産業そのものなんだ。何か環境のために、多面的機能のために漁業があるべきだというような、そういうことじゃなしに、それもまた違った考え方だと思いますけれども、そういう視点で見ますと、まさに未来型産業というような強調の仕方をもう少ししつつ、国民の合意を形成していくという必要がありませんか。そのように思います。

菅野委員 ありがとうございました。以上で終わります。

堀込委員長 次に、金子恭之君。

金子(恭)委員 21世紀クラブの金子恭之でございます。

 参考人の方々には、農林水産委員会にお越しいただきまして、それぞれの立場から貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。各参考人に一点ずつお伺いさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、多屋参考人にお伺いいたします。

 多屋先生は資源管理の専門家であると承知しておりますが、この水産基本法においては、水産資源の適切な保存管理を施策の中核に据え、悪化した資源を早急に回復させることとしております。資源回復が達成されなければ、この基本法は絵にかいたもちになってしまうわけであります。

 しかしながら、そもそも水産資源というのは自然界に生息するものでありますので、先ほど来先生からお話がございましたTAC制度、それからIQ制度等、資源管理漁業のことについてお話をされたわけでございますが、人間が考えた計画どおりに回復すればいいわけでございますが、これは考えたとおりにいくかどうかは疑問でございます。このままでは、この基本法の書いたシナリオが狂ってしまうのではないかというふうに危惧をしているわけであります。

 こういうことを言うと身もふたもないわけでありますけれども、今後資源回復の実効性を高める上で最もかぎを握るものは何か、その辺を教えていただければというふうに思っております。

多屋参考人 資源管理型漁業を推進していくというのは世界共通の方針で、日本の場合でもこの何十年か資源を破壊して漁業がだめになっていったというのが本当なわけでありますけれども、ただ、資源の変動は海洋環境によっても変動しているということでありまして、なかなか自然科学的には把握し切れない分野もある。魚種によっては、特に小型浮き魚、アジ、サバ、イワシ、こういったところではなかなかできない。だけれども、世界の趨勢といたしまして、わからないからやらないということでは大失敗をする、資源を本当に破壊してしまうということで、今の趨勢としては、予防的処置をする。もしかしたら人間が大きく資源を破壊してしまう。イワシの場合でも、最小のときに漁獲をすれば、やはりもっと少なくなるということがありますので、予防的処置をしなければならないというのが世界の趨勢であります。

 ただ、資源を回復したからといって漁業がよくなるかどうかというのは次の問題でありまして、それはさらに、資源管理対策の後に漁業管理対策をしっかりやらないといけない、それを私はいろいろな意味で言っているわけであります。それがIQ制度なりいろいろな制度であります。

 以上であります。

金子(恭)委員 ありがとうございました。

 続きまして、廣吉参考人にお伺いいたします。

 廣吉先生、先ほど漁業生産活動によって多面的機能が果たされるというお話をされました。漁業生産する上で、今担い手の減少、また高齢化というのが非常に大きな問題であるわけであります。意欲的な担い手の確保が求められている一方で、収入を上げようとすれば漁獲を上げなければいけない。そうすると資源が悪化してしまう。資源が悪化してしまうと漁獲が上がらず収入が得られない。そういう悪循環に陥っているような気がするわけであります。思い切って、資源に見合った減船を進める、また収入が得られるようにすべきとの考えもありますが、かといって、資源が回復しても担い手がいなければ水産物の安定供給は不可能になってしまうわけであります。

 先ほど江田先生の質問に先生答えられまして、担い手対策としては、将来の展望というのが開けないと難しいというようなお話があったわけであります。なかなか漠然としてわかりにくいわけでございますので、将来にわたって担い手を確保するための手順というのはどのように考えるべきなのか、お考えをお伺いしたいというふうに思います。

廣吉参考人 大変難しい問題で、むしろ私が議員にいろいろお教えを願いたいぐらいに政策論として大変難しい問題。

 議員が前段で申されました所得の問題、つまり、今大変難しい局面にあります。かつてですと、大漁貧乏というような言葉があって、大量にとれると値段が安くなる。ところが、今資源が不足し、漁獲が非常に過少でも値段が上がらない、こういった問題が非常に大きく漁業者の中で認識されております。

 そういう意味で、一点思い当たることは、漁業災害補償法というのがございますけれども、昭和三十九年でしたか、この趣旨はまさに天災というか自然の災害というか、非常に不確実性の高い漁業生産を側面からサポートしていく制度だと思いますけれども、その具体的な中身は、災害によって失われた経費を補償していくというような側面が非常に強いわけで、したがって、何か漁業者の収入だとか利益だとか、非常に不安定性がもともと高いわけですけれども、そういったものを保障していくという形になっていない。その辺、農業と比べると、同一にいつも考える必要はないと思いますけれども、漁業の方もそろそろ所得保険、収入保険的な仕組みを、この漁災法なりを改善していけないものか。そういう芽は、既に農業よりも漁業の方にあると思います。御案内のように、既に言われておりますように、PQ方式といって、金額をベースに補償水準を保障してきたというふうなことが漁業の災害補償法にはありますから、非常にそれは、次のステップとして新しい政策的な展望を生み出す素地があるんではないかと考えております。

 全体的な考えはちょっと、むしろ差し控えさせていただきます。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、植村参考人にお伺いをいたします。

 この水産基本法の制定というのは、漁業系統におきまして悲願というふうに先ほど申されたわけであります。この水産基本法に基づいて行われます施策の推進についても、そういう意味では植村参考人の所属されている全漁連を含め、漁業系統で中核を担って頑張っていただかなければいけないというふうに思っております。

 そういう意味で、先ほど一川先生の御質問にもありました、漁業系統でも体力強化を図っていただかなければいけない。その中で、先ほど植村参考人もお話をされました、合併問題については各漁協の負債の問題や地域性、また信頼関係を損なうとか、いろいろな問題がある中で、会長の方からは、ぜひこれはその困難を乗り越えてやっていかなければいけないという強い決意を聞いたわけであります。これについては、会長はもちろんでありますが、一番大事なのは末端の組合員の方へそういう合併のことについての周知徹底をされることが一番ではないかなというふうに思っているわけであります。

 その辺のお取り組みの仕方、それから、もしおわかりになっていれば、今後こういう形で進めたいというようなスケジュール的なものがあれば教えていただきたいというふうに思います。

植村参考人 合併の話でございますが、その前に、先ほど後継者等のお話がございましたが、現在の状況で、漁村は非常に三K的な要素を持っているという見方がありましたが、先ほども申し上げたように、僣越ですが、私の漁村では後継者が全部Uターンしてほとんど充足されておる。早い時期に千葉県の近郊の漁協、漁村を視察しましたが、そこも全部Uターンをしている。ということは、やはり生産が安定していると、非常に漁村は自立性、自主性があってみずからが経営者にもなれるというようなことで、今、この基本法の中にある問題点が充足される要素が出てくる、漁村については非常に魅力の高い産業体としてUターンが行われ、あるいは後継者が育っていくというふうに見て結構だと思っておりますし、私は、それに対して大きな自信を持っておるわけです。

 ただ、職業は選択の自由がございますので、いや、どうしても私は海は好きじゃないという関係があれば別ですが、やはり生活条件が満たされてきますと、十分魅力ある、環境のすばらしい地域として漁村は今後大いに回復基調に入るんじゃないかというふうに見ております。

 そういう意味で、合併についてその体制を整備するということでは、合併というのは、先ほどいろいろな隘路はあるけれども、それはやはり乗り越えられる隘路だ。いわゆる古い感覚で、かつて隣の漁協とのいさかい、かつてどうであったということを乗り越えて、今申し上げたように新しい漁村づくりをするんだという立場からは、そういう一定の広域性を持たせて、そして、そこには新しい漁村の、今非常に問題になっている、若者に嫌われておる生活雑排水などの環境整備事業のゼロ地帯がかなりある。それを五、六〇%、ここ数年でできれば、非常に若者について好感を持って迎えられる。しかし、それも何か市町村の負担が非常に高い、こういう状況でできないということですから、そういう隘路をやはり一つ一つ解決していくということになればいい。

 先ほど申し上げたように、アクセスを整備して都市との交流を積極的に行っていけば、絶対的に、その生産を上げられれば十分そこに後継者が育つという自信と、漁協合併については、先ほど申し上げたように、少しばかりの不良化債権、借金というものが合併の中であるとすれば、それをやはり積み込まないように、全く同様な体制で合併ができるんだという方向性はとられるんじゃないか。今の基金制度とかいろいろな制度を利用しながらやられるんじゃないか。

 そのためにはやはり行政、地方の時代ですから市町村行政、県行政においてその理解を深められれば、延長線上に国の行政がありますから、さほどな大きなボリュームのものでは決してないわけですから、心情的な、感情的なものを克服できる、こういうような気持ちがいたしております。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

 最後になりましたが、上田参考人にお伺いいたします。

 先ほど来、債務超過の問題、いろいろな厳しい現状についてお述べになっていらっしゃいました。今後の世界的な海洋秩序の趨勢からしまして、また漁場の確保面でも、また国際的な資源管理の強化の面でも、遠洋漁業の将来について必ずしも明るいとは言い切れないというふうに思います。そういう意味で、遠洋漁業の将来ビジョンについて簡潔にお答えいただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

上田参考人 先生御指摘のとおり、遠洋漁業、非常に厳しい状況にございます。しかしながら、我々も日本国民に対して安定的に世界の海から水産物を供給するという使命を担っているというふうに思っております。一方、日本の水産物の自給率の議論も出ましたけれども、やはり自給率を高めるためには日本の二百海里内の資源を満限に利用できる体制、これをつくることが必要でございますけれども、日本の国民の胃袋はやはり輸入水産物とか日本の二百海里外の資源にかなり、五〇%近く現状は依存しているということでございます。

 したがいまして、輸入という形で依存するのか、遠洋漁業という形で自助努力に寄与する形で日本の国民にお届けするのかということを考えますと、自給率に貢献するような遠洋漁業の形でお届けするのがやはり一番いいことであるというふうに思っておりますので、そこら辺の使命をしっかりと腹に据えて今後とも最善の努力をしたい、このように思っております。

 ありがとうございました。

金子(恭)委員 参考人の方々には、本基本法の理念に基づき政策目的が達成されますよう、御尽力をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

堀込委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 本日は、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る二十九日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.