衆議院

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第15号 平成13年5月29日(火曜日)

会議録本文へ
平成十三年五月二十九日(火曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 滝   実君 理事 二田 孝治君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩倉 博文君

      岩崎 忠夫君    岩永 峯一君

      金田 英行君    上川 陽子君

      北村 誠吾君    後藤田正純君

      七条  明君    園田 博之君

      高木  毅君    西川 京子君

      浜田 靖一君    菱田 嘉明君

      平井 卓也君    山本 公一君

     吉田六左エ門君    古賀 一成君

      後藤 茂之君    佐藤謙一郎君

      鮫島 宗明君    津川 祥吾君

      筒井 信隆君    楢崎 欣弥君

      日野 市朗君    牧  義夫君

      松原  仁君    漆原 良夫君

      江田 康幸君    高橋 嘉信君

      中林よし子君    松本 善明君

      菅野 哲雄君    山口わか子君

      金子 恭之君    藤波 孝生君

    …………………………………

   農林水産大臣       武部  勤君

   農林水産副大臣      遠藤 武彦君

   農林水産大臣政務官    岩永 峯一君

   政府参考人

   (水産庁長官)      渡辺 好明君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     平井 卓也君

  七条  明君     山本 公一君

  後藤 茂之君     日野 市朗君

  城島 正光君     鮫島 宗明君

  永田 寿康君     牧  義夫君

  江田 康幸君     漆原 良夫君

同日

 辞任         補欠選任

  平井 卓也君     上川 陽子君

  山本 公一君     七条  明君

  鮫島 宗明君     松原  仁君

  日野 市朗君     後藤 茂之君

  牧  義夫君     永田 寿康君

  漆原 良夫君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  松原  仁君     城島 正光君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 水産基本法案(内閣提出第七五号)

 漁業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)

 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)

 漁港法の一部を改正する法律案起草の件




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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、水産基本法案、漁業法等の一部を改正する法律案及び海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として水産庁長官渡辺好明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。漆原良夫君。

漆原委員 おはようございます。公明党の漆原でございます。久しぶりに農水委員会で質問をさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 きょうは、FRP船の処理についてお尋ねしたいと思うんですが、一九六〇年ころから漁船だとかプレジャーボートなどにFRPが使われまして、その素材は薄くて強いことから、従来の木とか鉄を使った船に取ってかわっております。今、我が国においても多くのFRPを素材とした船が建造されております。

 しかし、このFRPというのは、今度処理の段階ではその強さが弱点になりまして、焼けばガラス成分が溶けて、焼却炉を傷めてしまいます。また、有害ガスも発生し、大量の二酸化炭素を出してしまうという問題点があります。今のところ、粉砕をして埋める以外に処理の方法はないというふうに聞いております。FRPは強度が高いため粉砕にも大量のエネルギーとコストがかかる、その処理の難しさが、今度は不法投棄、不法係留につながっているというふうに言われております。

 そんなことで、FRP船の耐用年数は約三十年から四十年と言われておりまして、現在、徐々に寿命を迎える船が出始めている、しかし、いまだに有効な処理方法が確立されていないというのが現状ではないかというふうに認識しておるところでございます。

 まず、水産庁長官にお尋ね申し上げたいんですが、現在、FRPを使用した漁船の総数は一体どのくらいあるのか、どのくらい把握されているのか、お尋ねをしたいと思います。

渡辺政府参考人 御指摘のFRP船でありますけれども、ここ二十年ぐらいの間に非常に大きく数が増加いたしまして、現在三十万隻を若干超えるという水準にございます。

漆原委員 この三十万隻ある船が徐々に廃船となるわけでございますが、水産庁は廃船となる船がどのくらいと掌握されているかわかりませんが、私の調べた数では、二〇〇一年度で廃船が予定されている船の数は二万五千七百六十四そうである、重量にして五万七千四百五十三トンある。したがって、本年度以降毎年四、五万トンのFRP廃船の処理が必要であるとのデータがあるわけでございますが、このような現状では、寿命を終えた多くのFRP船が不法投棄、不法係留されることになります。

 水産庁としては一日も早く、低コストで、しかも有効な、また環境に優しい処理方法を確立すべきであるというふうに私は考えておりますが、長官、いかがでございましょうか。

渡辺政府参考人 御指摘のとおりでありまして、水産庁といたしましても、FRP廃船のセメント原料あるいは燃料にするというふうなリサイクル実験についても実施をいたしました。

 同時に、その処理施設や用地の整備につきましても、水産庁の公共事業等でその対象にしているわけでございますけれども、やはり何と申しましてもコストが高いこと、それから技術水準がなかなか追いつかないこと、そして廃船に伴う費用負担は事業者負担となっていることがネックでございます。

漆原委員 今、長官が処理の費用は利用者負担だということをおっしゃいましたが、現時点におけるFRP船の廃船は一体どんなふうな処理をされているのか、そして、その処理にはどんな問題点があるとお考えなのか、お尋ねしたいと思います。

渡辺政府参考人 いわゆる廃棄物の処理の原則に伴いまして、事業者たる漁業者がみずからの責任において処理をするということでございますが、実際上は、廃棄物処理業者に委託をいたしまして焼却をする、あるいは埋め立てをするというのが大宗でございます。

漆原委員 コストの点では、どのくらいのコストがかかると認識されていますでしょうか。

渡辺政府参考人 先ほどは隻数を申し上げましたけれども、トン当たりで十万近くはかかるというふうなことを聞いております。

漆原委員 水産庁においては、今後、将来の取り組みでございますが、現在、どんな処理方法についての取り組みをされているのか、少しお話をいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 処理の点では、先ほどもちょっとお話をいたしましたけれども、セメントの原料にする、あるいは燃料にする、もう一度油に戻すということが手法としては考えられます。

 それからもう一つ、原点に戻りまして、強い強度でありますけれども、できるだけFRPの部材を使わないという方向はないのだろうかというふうなことにつきましても利用開発をしているところでございます。

 また、この問題は、漁船に限らずプレジャーボートの問題とも関連をいたしますので、国土交通省におきましてFRP船のリサイクルについての調査検討を行っておりますので、それに参加をいたしまして、何かもう少し現実的な方途がないか探求をしているところでございます。

漆原委員 今、国土交通省と連携をしながら研究をしているというふうにお答えいただいたわけなんですが、今、その研究がどの程度いっているのか、そしてそれが現実にどの程度まで利用される段階になっているのか、その辺の調査結果、研究結果を、少し経緯をお知らせいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 率直に申しまして、まだ緒についたという段階と思っております。

 委員会を構成いたしまして、一つはリサイクル、粉砕をしたり油を取ったりするという系統の回し方、それから船体そのものをもう一回リユースするというふうなチーム、さらに先生から御指摘がありました、ではコストをどれだけ下げられるか、処理費用をどれだけ下げられるかというふうな経済性の評価のワーキンググループをつくりまして、調査検討が始まっているという状況でございます。

漆原委員 ついこの前、私、新聞で、大分県の産業技術センター研究員谷口秀樹さんの紹介記事を読んだのですが、「廃船で「海の森」構想」という大見出しの記事がありました。

 どんなことが書いてあるかというと、

 九九年から、専門の炭化の技術をFRP処理に応用する研究に着手した。

  研究がうまくいけば、プラスチック中の炭素は二酸化炭素として放出されずに炭の形で残る。炭には水質を浄化する働きもある。海の中で藻場をつくり魚を育てるだけでなく、海をきれいにすることもできないか―。“海の森”づくりの夢が、実現へ一歩ずつ近づいている。

こんなふうな記事でございます。

 海の森をつくるというのはなかなかロマンのある言葉でございまして、しかも、FRP廃船を再利用して、水質を浄化しながら藻場が形成され、それがさらに魚礁となっていくのだ、こういうことでございます。

 海の森というこの構想は、まさに私は一石二鳥、三鳥、四鳥の発想だと思うのです。まず、実現可能かどうかは別として、こういう海の森の発想について長官の感想があればお聞きしたいなと思っておりますが、お願いします。

渡辺政府参考人 私自身は非常におもしろいと思っております。これまで水産庁は、魚礁の設置事業の中で、いわゆる沈船魚礁という形で、古い船を沈めてそこを魚の生息場所にするというふうなことをやっているのですが、今御指摘があった手法は、一たん炭化をして、しかも多孔性の繊維の状態にする、そうしますと非常に小さなプランクトン等がすんだり、稚魚がそこで生育をしたりということも考えられますので、非常におもしろい研究テーマであろうかと思います。

 お聞きするところ、十一年度から十二年度にかけまして、財団法人地球環境産業技術研究機構の支援によって、九州大学を実施主体とした研究をやっているということでございますので、私どもその成果も参考にさせていただきながら、今後、もう少しこういった手法について勉強させていただきたいと思います。

漆原委員 そんな記事を読んで、私も大変おもしろいなと思っていたところ、読売新聞で、昨年十月四日の夕刊に記事が出ておりました。これは、「廃棄ボートを漁礁に」そして「FRP 環境にやさしくリサイクル」、こういうふうな見出しで出ております。

 中を読んでみますと、九州大学機能物質科学研究所や大分県産業科学技術センターなどでつくる研究グループが、「廃棄された強化プラスチック製のプレジャーボートや漁船の船体を炭化処理し、漁礁として再利用する技術開発に成功した。炭化すると、藻が付着しやすく、小魚の産卵や稚魚の育成に適している、という。」研究成果は昨年、新聞ではことしになっておりましたが、昨年七月、ドイツ・ベルリンで開かれた国際炭素学会で報告された、こういう記事が載っておりました。

 そこで、私は、早速この九州大学の機能物質科学研究所所長でいらっしゃいます持田勲教授に面会を求めまして、この内容を少し詳しく聞いてみたわけでございます。その際にちょうだいした資料を、委員長の許しを得て皆さんにお配りしたいと思うのですが、よろしいでしょうか。

堀込委員長 結構でございます。

漆原委員 皆さんのお手元に配付させていただいている「水産業の技術革新を目指した新規課題の提案」、課題名が「ガラス繊維強化プラスチック廃船の炭化処理及び水質浄化構造物としての再利用」、こういう書類をいただいていろいろ説明を受けたのです。

 まず、この「背景」というところを少し見ていただいて、なぜこの提案をしたのかという説明を受けました。

 この「背景」を見ますと、真ん中辺に、既存の処理方法には三つあるのだと。その一つは焼却処理があるのだ、しかし焼却処理は可能であるけれども、「難燃性のため高温を要し、特別な炉が必要であり、多量のガラスを含むため、結果、大量のスラグが残存する。」二つは、切断後骨材利用もあるけれども、「切断コストが大きい。」三番目は、そのまま海中に沈めてしまう、それで魚礁にするということも提案されているのだけれども、「可塑材の溶出による危険性がある。」こんなことが背景で、「提案内容」という理由がありますが、今回の発案をしたと。

 「提案内容」では、「新規性」のところで、FRP廃船を「炭化し、さらに賦活して多孔性ガラス繊維炭素複合材料に転換し、水質浄化構造物として機能させると共に、藻場の形成を促進し、結果最終的には魚礁として機能する。」、「実用化の見通し」については、実際、これは四百度から五百度Cで炭化した後に七百度から千度で焼成すると、多孔性ガラス繊維炭素複合材料ができるのだ。これはFRPと違って水没することができるのだ。その結果、海中のプランクトンがそこに発生するのだ。

 以上のことから、FRP廃船を「そのまま、もしくは大分割で炭化、焼成すれば水質浄化構造物として機能しつつ、藻場の促進、結果、魚礁としての機能をもつ」、こういう提案がされておるわけでございます。

 そして、この三番目の「期待される効果」というところでございますが、その「成果」としては、FRP船を解体処理しないで、生物環境に無害な活性炭素構造物に転換をして、河川だとか湖沼だとか海域の浄化及びその結果として生物活性の非常に高い魚礁としての利用を実現できるのだ、「波及効果」としては、「経済的効果」だとかあるいは「社会的効果」を挙げられております。

 こんなことを説明を受けて、大分これは技術としては成功しつつあるのかなと。これが本当に実用化できれば、まさに処理に困っていたFRP船を利用して、いそ焼けなんということが言われておりますが、そこに沈めることによって藻場を形成して、そこに小魚がたくさん来て、それを食べに大きな魚が来る、そしてそこが魚礁となって育っていくということであれば、また水もきれいになる、こういういろいろな波及効果があるということを考えれば、まさに先ほど申しました海の森ということになりまして、一石二鳥、三鳥、四鳥だというふうに私は大変感銘を受けたわけでございます。

 そんなことで長官にお尋ねしたいのですが、この研究成果については、持田教授がおっしゃるには、実は昨年の十二月二十六日に水産庁研究指導課に提出済みであるというふうに聞いております。FRP船の解体処理を行わないで、生物環境に無害な活性炭素構造物に転換することによって、先ほど申しましたいろいろな効果があるという画期的な研究であると考えております。

 水産庁としては、ぜひともこの研究に積極的に取り組んでいただきたいというふうに私は思っております。昨年の十二月二十六日に、多分長官はごらんになったかどうかわかりませんが、水産庁の研究指導課に提出済みであるというふうに聞いております。今、どのようにお考えなのか、また、どのように取り組んでいこうとされているのか、長官のお考えをお尋ねしたいと思います。

渡辺政府参考人 水産庁の研究指導課にということでありますけれども、研究指導課がイニシアチブをとっておりますマリノフォーラム21のある種の事業として研究課題は提出されたわけでございます。それは承知をいたしております。

 先ほどお話をいたしましたように、十一年度、十二年度かけまして、他の公益法人でこの研究テーマに沿った事業化なり検討が行われておりますので、その検討成果を十分取り入れた上で次のステップを考えようということになりまして、十四年度は採択から外れたというふうな状況にございます。

 このマリノフォーラムでは、科学者、研究者たちが集まりまして、それぞれのテーマを審査いたします。相当高い倍率でございますけれども、そういう中できょうの先生のお話も参考にしながら、これは十四年度のといいますか十五年度といいますか、そういった方向で、また審査テーマに上げるかどうか、勉強させていただきたいと思います。

漆原委員 いろいろ申し上げましたが、おもしろい方法だなと思っておりますので、まさに低コストでありかつ有効な、この私の申し出に限らず、広く、低コストでかつ有効な処理方法の取り組みをぜひとも水産庁にお願いをさせていただいて、少し早いんですが、私の質問はこれで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

堀込委員長 次に、佐藤謙一郎君。

佐藤(謙)委員 民主党の佐藤謙一郎でございます。

 武部大臣とは、かつてからいろいろな場面、場面で御一緒することが多かったわけでありますが、今回の大臣就任後のいろいろと答弁を伺っていますと、多少饒舌に過ぎるかなと思いつつも、情熱がそのままあふれ出て、御本人の言葉で御答弁をされているというのは、私は大変すばらしいことだと評価をさせていただきます。

 そこで、まず、きょうは所管外のことからちょっと御質問させていただきたいんですけれども、ハンセン病の問題で、ハンセン病の控訴を小泉政権は断念をされたわけでありますが、同じそうした裁判で水俣病の問題、これは関西に移り住んでいる水俣病の未認定患者五十八人と御遺族が、国と熊本県、チッソを相手に総額十九億円の損害賠償を求めた、そうした訴訟でありました。私は、改革、政治優先、政治決断の小泉政権で、この水俣病の上告も断念されるんじゃないかなというふうに期待をしていたんですが、残念ながらそうはなりませんでした。

 所管外と冒頭申し上げましたけれども、水俣を中心とした漁業者に大変多くの苦しみ、悲劇をもたらしたこの水俣病、決して農水委員会、農水大臣がらち外にあるということではないと思いますので、この上告に対して御見解をお示しいただきたいと思います。

武部国務大臣 私も、過去にこのような水俣の悲劇が起きたということは大変残念なことと思っておりまして、心を痛めている次第でございます。

 水俣病の問題につきましては、これまでも、その時々においてできる限りの努力をしてきた、かように存じております。水俣病関西訴訟の原告の方々を除けば、平成七年、当時の与党三党、自民、社会、さきがけ三党による政治解決が行われた次第でありまして、約一万一千人の方々が救済を受けているというところでございます。

 しかしながら、先般の大阪高裁判決は、一部国の責任が認められているため、国としてこの判決をそのまま受け入れることは、かえって水俣病対策に混乱が生じ、本問題の解決をおくらせる懸念がある、かように考えまして、最高裁に上告し、その判断を仰ぐこととしたものと承知しております。

 いずれにしても、私はこの問題の早期解決を願っているということは当然でございます。

佐藤(謙)委員 残念ながら、大臣の御自身の言葉じゃないような感じがしましたが、早期解決を目指しているのであれば、当然、上告断念がしかるべきだっただろう。平成七年の和解に応じられた患者連合の方々も、わだかまりはあるけれども、高齢化したということもあって上告は断念すべきだと言っておられますし、熊本県もじくじたる思いでということで、言外に何かの圧力を表明しているわけであります。

 こうしたところに政治決着という判断ができなかったのは非常に私は残念だと思いますが、この水俣病の問題一つとっても、どうも開発ですとか汚染からどうやって漁業者を守るかという視点が著しく欠けている、そうしたここ数十年であったんじゃないかなと思うのです。

 有明海、諫早湾の干拓事業や環境の悪化、それにまつまでもないわけですけれども、例えば私がつい最近経験をした、富山湾、黒部川に出し平ダムと宇奈月ダムの連携排砂の問題がありました。ダムからたまった砂を、堆砂を一気に吐き出そうとしたところ、そのヘドロが黒部川から富山湾にかけて排出して、おかげで富山湾のヒラメの刺し網漁が全滅してしまうというようなことがあるわけです。これはダムと漁業者の問題。

 あるいは、東京湾で今問題になっている有明十六万坪、エドハゼ、江戸前ハゼが全滅すると言われている、あの有明地区の埋め立て問題、これも開発と漁業という問題です。

 あるいは、目を転じてODAの問題ですけれども、タイで大変大きな汚水処理施設、サムットプラカンというところで大変大きな汚水処理施設を、日本とアジア開発銀行の金でそうした施設をつくろうとしているけれども、それは、タイのその周辺の貝をとることによって生活をしている漁業者を今悲劇の底に陥れようとしている。

 そうした問題を考えますと、開発や汚染からどうやって漁業者を守るか、ひいてはそれは、我々消費者の食の安全にどうやってそれをつなげていくかということは大変大きな問題であるわけですけれども、どうも今の水産基本法を初めとした農水省の対応というのは、一つの殻の中に閉じこもって、その土俵の中で何とかうまい方法はないだろうかと、知恵を絞っていることは十分わかるわけですけれども、そうした議論の広がりがないために、何とも中途半端な法律体系で終わっているんではないかなと思うのです。

 こうした開発や汚染に対して、積極的にこれからどういう取り組みをしていくかという決意を御披露いただければと思います。

武部国務大臣 先般、二十六日に私は有明海を視察いたしました。また、諫早湾の干拓事業も目の当たりに見てまいりました。

 その際に、現地のいろいろな方々のお話を聞いて強く感じたのは、有明海一つとっても、海域環境を変えるということについては、私どもが想像していることとはまた全く違った地元のさまざまな事情があるのだなということを感じました。

 例えて言うならば、筑後川の大堰、ダム、これについても、今までのダム建設であれば、河川環境を維持する、水量を維持するというようなことが環境を重視したやり方だ、こういうふうになっておりますけれども、水量ではだめなんだ。やはり有明海の場合には底質が問題なので、それには一定の流速があって、大雨が降ったときなどに砂れきが一気に海に流れ出している。その砂れきが魚礁や二枚貝などの生息の条件をつくっているんだというようなことを聞いてまいりました。

 したがいまして、今佐藤先生御指摘の、環境のことを十二分に考えない今までのやり方という御批判は、甘んじてそれを受けとめなければならない、私もこう思っております。環境を重視するということについては、単に環境を保全するというような考えではなくして、やはりサロマ湖の場合にも、前に申し上げましたように、サロマ湖の環境浄化、一つの湖口を切り開いて、一つあるのをもう一つ切り開いて、そのことによって潮通しがよくなる。湖口を切り開くということは、自然保護者からすれば大変な反対のある話なんです。ところが、切り開いたことによって潮通しがよくなってサロマ湖の環境が浄化された、そういう事実を我々目の当たりにしているわけであります。

 したがいまして、今回の水産基本法案の第二十六条においても「環境との調和に配慮しつつ」と特に規定しておりますことは、環境保全というよりも幅広い、もう少し上の、次元の高いというような表現はどうかは知りませんけれども、そういう考え方で規定している次第でございます。

 環境に影響を及ぼすと懸念される開発事業の実施につきましては、環境影響評価法、公有水面埋立法による所要の手続なども必要としておりますし、これらの過程において環境大臣及び漁業関係者から十分意見を聞き、反映される仕組みになっているとも考えますし、今度の基本法によりましてこういったことがより担保されるのではないか、かように私ども確信を持って提案させていただいているということを御理解いただきたいと思います。

佐藤(謙)委員 今回の水産基本法の議論を通じて一つ非常に不毛だったのは、保全と調和という言葉の遊びに終始してしまっていて、場合によっては保全よりも調和の方が重い概念だなんということを言われてしまうと、そこで議論は終わってしまうのですね。

 どうも今調和と保全の議論で、いじるなということに対する過剰反応があって、何が何でもいじるなじゃなくて、もっといい方法があるんだということを言われたいのでしょうが、保全というのは決していじるなということじゃないわけですね、もとどおりにしろということでもないわけで、そこに保全というものの奥深さがあるのじゃないかなというふうに私は思うわけです。

 その辺については後で議論をさせていただくとして、今、環境にもう少し積極的になれと言われればそのとおりだ、そうしたお話と、行き過ぎても問題がある、そうした御議論でありましたけれども、水俣病の問題あるいは今回の諫早湾の干拓事業、ノリの不作対策等を考えてみますと、予防原則というのがこれから大変大事な概念になってくるのではないかなというふうに私は考えております。

 これは本来、化学物質から議論が進められてきたそうした原則でありますけれども、今度の新環境基本計画の化学物質対策の中にも、十分とは言えませんが、位置づけられました。

 これは一言で言うと、ある行為が人間の健康あるいは環境に悪影響を与えるおそれがある場合、たとえその因果関係が科学的に立証されていなくても予防措置がとられるべきであるという、ウイングスプレッド会議で確認をされたそうした原則でありまして、これは地球サミットのリオ宣言でもこういうふうに書かれています。

 環境を防御するため各国はその能力に応じて予防的方策を広く講じなければならない。重大あるいは取り返しのつかない損害の恐れがあるところでは、十分な科学的確実性がないことを、環境悪化を防ぐ費用対効果の高い対策を引き延ばす理由にしてはならない。

こう書いてあるわけであります。

 水俣のそうした不幸、水質保全二法がその後途中ででき上がったけれども時既に遅かった現実を考えますと、我々は一歩踏み込んで予防原則というそうした概念を、これから漁業、特に水産基本法を初めとしたこうした消費者の食の安全に直結をするようなときには常に頭の中に入れておかなければいけない、そう考えております。あるいは後の基本計画等にそうしたことを入れ込んでいく、そうした積極的なお考えがあるかどうか、お示しいただきたいと思います。

武部国務大臣 具体的にどのように織り込むかということはともかくといたしまして、自分の言葉で話をせよといいますと、いつも申し上げるのは、我々は自然の恵みに感謝し、自然の脅威を恐れる謙虚な気持ちを持つということが原点だ、このように申し上げております。

 今回参りました際にも、私は、いろいろな批判もさることながら、お互いの足元を見詰め直してみる必要があるのではないか、このように申し上げたわけでありますけれども、先生の御指摘の点については拳々服膺して対処していかなければならない、かように存じている次第でございます。

佐藤(謙)委員 本当に前向きに御発言をいただいて、ありがとうございました。

 先ほどの有明海の問題も、筑後川大堰の話が出ました。それこそいろいろな原因がふくそうして、今回のアサリだとかタイラギだとかアゲマキの被害になりノリの被害になりということにつながっていっているわけですけれども、そのどれを特定するかということは科学的にはなかなか困難を伴います。それだからこそ、今いろいろな力を総結集して委員会等で検討がなされているわけですけれども、そうした検討がある結論を得るまではやはりとまっていく、そこで歩をとめる、そうした姿勢というのが予防原則の原点なんだろうと私は思っております。

 そこで、もう一つ、予防原則と同じように、先ほど環境問題に非常に積極的な御発言をいただいたので、これは当然受け入れていただけると思いますけれども、今月の九日に神戸の方々を中心にある請願が受け付けられました。これは自然環境権。

 自然環境権を一言で言えば、人が生まれながらにして有する自然の恵沢を享受する権利ということでありますけれども、一九七二年のストックホルムの国連人間環境会議で人間環境宣言の中に織り込まれたこうした自然環境権という権利を、大臣、当然ながらお認めいただけますね。

武部国務大臣 まことに申しわけないのですけれども、今先生御指摘の問題について、私十二分に承知しておりませんで、今責任ある答弁はちょっと難しい、困難、こう思っておりますので、次の機会にでも少し時間をいただければと思います。

佐藤(謙)委員 この件については通告を申し上げなかったので、あるいは唐突に聞こえてしまったかもしれませんが、自然環境権というのは、今申し上げましたように、人間が生まれつきもう既に自然の恵沢を享受する権利があって、これはどういうことを意味するかといいますと、環境基本法でもまだ明文化はされていないわけですけれども、時代の流れは、今確実にそうした時代になろうとしている。

 先祖から受け継いだ自然を子孫に受け渡していかなければいけない、そういう責務と裏腹にある我々のこうした権利なんです。これは、なぜここで持ち出したかといいますと、この権利というものをきっちりと、これから我々が先ほどの予防原則と一緒に明文化をして、例えば環境基本法のようなところに明文化をしてしっかりと位置づけますとどういうことが起きるかというと、今までの公共事業を中心とした開発とか事業、例えば漁場を失うようなそうしたいろいろな公共事業があったかもしれません。そうしたもの、今までは所有権者や漁業権など権利がある者でなければ、裁判を起こす資格がなかったわけですね。そこに、実は漁業権という極めて特殊な権利が存在をして、我々がひとしく守ろうとする自然や景観ですとか、そうした我々にとって大変重要な価値が一部の当事者によって私されてしまっていたという事実が、逆にこれから漁業者に、都市住民を中心とした一般国民が、あるいは誤解を持つことになりはしないかということを懸念するのです。

 それは、都市と農村というのはいろいろな形で近づくチャンスはあるわけですけれども、今大変私が悩んでいるのは、都市と漁村となると、必ずしもそう距離を縮めることが簡単ではないな。特に、今回いろいろな方のお話を聞きますと、漁業者は、これは決して悪意ではないのでしょうけれども、人が入ることを嫌った。かつては密漁者というそうした被害者意識をきっとお持ちだったと思うし、正当な権利として人が入ることを嫌った時代というのがあったわけですけれども、これから水産基本法を初めとして、都市と漁村とを近づけていかなければいけないときに、この漁業権という問題が、非常に私は大きなテーマになってくるのじゃないのかな。

 その中でも、とりわけ漁業補償という問題が、これは民法の規定に基づいて、原因者が漁業に与えた損害に対して行う損害賠償という民事上の問題として今位置づけられていて、基本的には当事者間での解決にゆだねられてしまう。実はそれが、結果として貴重な藻場や干潟が失われて、漁業面だけではなくて、海洋環境の保全という面でも大きな問題を残してしまっているわけであります。

 今回の漁業法の改正案では、漁業権の放棄や変更については地元組合員の意向を優先させることを基本としていますけれども、直接の当事者間の問題解決だけで漁業権が放棄されたり漁場が永久に失われていくという現在の仕組みは、国民的な視点から見てどうしてもおかしいと私は考えます。

 その辺、漁業補償も含めて、私の浅薄な知識では、どうも補償制度そのものが水産政策のらち外にあって、どうも開発側にだけ、そうした漁業補償のワンサイドの議論に終わってしまっていて、水産庁にもそうした漁業補償に関するポストがないというふうに聞いたのですけれども、その辺も含めてお示しいただければと思います。

渡辺政府参考人 今先生から御指摘がありましたように、私どもはやはり水産サイドとして、一定の海面でどういう漁業をするかという漁業活動に対する権利を、ある種漁業権という形で与えているわけでございます。

 言ってみれば、その生産活動、経営活動が阻害をされるときに、あるいはされるであろうときに損失が生じますので、そこを補償するのは漁業制度でございますから、言ってみれば被害者が加害者に対して物を請求するのと同じレベルで、民事上のことでやってくださいというふうに申し上げているわけでございます。ただ、その補償のあり方につきましては、やはり補償金の分配の問題であったり、当事者間の合意であったり、例えば漁業組合であればその中でほとんど多くの方が、原則として基本的に全員が一致をしなさいというふうなことをしているわけでございます。

 一方、環境サイドから見ますと、これはやはり環境にどういう負荷を与えるか、こういうことでございますので、アセス法に基づくアセスメントの手続の中で、関係者なり環境省が御意見を申し上げる。

 そして、公有水面埋立法であれば、埋め立てに伴う被害、損失に対して都道府県なり関係市町村が意見を言うという機会がございますので、そういう方たちの言ってみれば判断と良識にゆだねるというのが、今やっています水産行政と環境行政という仕分けではないかなと思っております。

佐藤(謙)委員 今水産庁長官は、水産行政と環境行政、こう言いましたけれども、ここでは同じ立場に立てるのじゃないかなと思って私は議論をしているのですね。

 今水産庁長官は、漁業者の被害に対して手続的に応援をするということにとどまった発言だったのですけれども、これからやはり水産という問題をさらに大きく発展させていくためには、一歩踏み込んで、開発側に対して環境も水産行政も一緒になって漁業者を守っていくような、そういう仕組みを我々はつくっていかなければいけない時代が来たのじゃないか。

 あくまでも開発側は、大きな、例えばそれは国家権力かもしれません。そうした公共事業を例にとりますと、そういうところで小さな漁業組合が必死になって、もがき苦しみながらこればかりの漁業補償をとって、子や孫に漁業を継がせることができないという現実を、私は、例えば長良川の、これは内水面ですけれども、赤須賀漁協を初めもう全国各地で見てきているわけであります。

 どうかこれから、漁民側も加わった地域の活性化という観点から、これからいろいろと海岸利用等が多くなることも予想されて、一般国民と漁業者との距離を縮めていくためにも、この漁業権の対応だとか漁業補償の進め方というのは、より慎重であり、より漁業者と消費者の側に立った、そうした考え方が必要だと思います。

 これは、何もこうした漁業の存続だとか海洋環境等というものが決して対立するものではなくて、ここでは一緒になれるのじゃないかな。こうしたことこそ水産基本法の中でしっかりと議論をしておかなければいけないことではないかなと思うのですが、大臣、いかがでしょう。

武部国務大臣 全く同感です。これは、一つはやはり科学的なデータというものも根拠にしなければならないと思いますけれども、時として水産サイドの、保守的なエゴみたいなこともある場面もあると思うのですね。しかし、私どものふるさとにおいても、このごろ流域ごとに非常に関係が改善されております。

 それは、お互いに生かされている、そういう発想があると思うのですね。昔は、水に流すという言葉に象徴されるように、何でもかんでも川に流してしまう。それが海に流れて、海は汚れる。逆に、今台風などが来ると一気に、森林が十分整備されておりませんから、水が流れ込んでくる。

 そんなことで、えりもの例もありますし、北海道の漁協婦人部の例もありますし、漁師が、漁業者が山に木を植えるとかそういうような運動も起こっておりまして、お話しのとおり、今までは対立関係にあったものが、お互いに協力、融合していこう、自然界の一員としてお互いに生かされるんだというような考え方で、これからのさまざまな人と自然との共生の関係ということを考えていこう、そういう機運にあると思います。

 これまでの議論の中でも森林と漁業との関係についてもかなり大きな議論があった、かように思っておりますので、具体的な施策展開の際に、そういうようなことをきちっと位置づけて私どもは行政を進めていかなきゃならない、かような考えを新たにしている次第でございます。

佐藤(謙)委員 農業には、開発から身を守る仕組みというのが、今いろいろと社会的にあるんですが、どうも漁業と森林・林業は、まさに開発にさらされてしまう。だからこそ、今、森は海の恋人、川はその仲人と言われた、気仙沼の畠山さんが始めたああした運動が全国的に展開をされる。

 そして、私も、水俣に行ったときに、水俣病で本当に人生を棒に振ってしまった、結婚もできずに、家族にも死なれ、たった一人で、今、小学生を相手に一生懸命水俣病のことを話をし、そして毎朝シラスの漁に出ている女性の方にお目にかかった。本当に、苦しみや怨念を超えて、仏様のようなすばらしい顔をされておられたんですが、その彼女も一言、不知火を昔のようなすばらしい海に戻したい、そのために、佐藤さん、一緒に山を大切にしましょう、山から始めたい、山にある、森林にあるフルボ酸鉄というものが結局植物プランクトンを育て、そして食物連鎖ですばらしい豊穣の海をつくっていくんだ、そうしたお話を聞けば聞くほど、今我々がどういう仕組みをつくっていくかというのは非常に大事なときなんだろうと思うんです。

 私は、一つ、化学物質の問題で、いろいろと法律をつくってきたりしましたけれども、その中で、ある市民運動の方がこういうことを言われたときに頭を殴られたような思いをしたんです。それは魚とPCBの問題で、我々人間はダイオキシンの九割が口から入る、そのうちの七割が日本の場合は魚からと言われて、魚の、食の安全性というのは非常に大切だということを我々は肝に銘じたわけです。魚の汚染というとすぐ、佐藤さん、あなたは、我々人間が食べて、そして体にどういう不都合があるか、健康を害するかということばかりを考える、それは本当の意味では人間中心主義だ、魚が侵されている、そういう現実に目を当てなければ、この問題は解決しないんだよと。魚に蓄積された化学物質を人間がどれだけとるかではなくて、魚がどれだけ蓄積してしまっているかというところから視点を当てなければいけないと。

 まさに、この水産基本法の一連の議論でどうもかみ合わないその議論の根本は、人間中心主義かあるいは生物多様性を柱とした生態系中心主義かの、そのミスマッチがそのままあらわれてきたような気がしてならないんです。保全は一切自然に手をつけない、そういう誤解からスタートする。調和というのはいい状態にするんだということで、調和の方がはるかに重い大きな概念だと言われてしまうと、そこで話はストップしてしまう。

 あくまでも、水産というのはやはり人間が主語、我々の事業が主語なんです。そうじゃなくて、我々も自然の中で生かされているという、先ほど、謙虚な気持ちを大臣は持っておられるわけですから、そうした大臣の謙虚な気持ちをそのまま法律や日本の社会の仕組みに、今の大臣だったらそれができる立場におありなんですから、やっていただきたいと思うんです。

 例えば、栽培養殖漁業の危機が言われています。一九九六年に、熊本県の天草でアコヤガイの被害が起きました。そうした被害を中心に、今養殖漁業の危機が言われています。ホルマリン漬けのトラフグですとかあるいはヒラメ、今、そうしたものが給餌養殖としてどんどん広がりを見せているわけですけれども、そうした安易な化学物質を使う漁業というものを、とる漁業からつくり育てる漁業という名のもとに野放しにしてしまって、都市生活者がそのままわかったと言ってくれる時代が来るのかというと、私は来ないというふうに考えています。

 そこで、この養殖漁業については、一九九九年、おととし、持続的養殖生産確保法というのができたわけですけれども、この持続的養殖生産確保法、この目的を見て僕は唖然としたんです。実は、私、このとき農水委員会に所属していなかったので。この目的の中で、「特定の養殖水産動植物の伝染性疾病のまん延の防止のための措置を講ずることにより、持続的な養殖生産の確保を図り、もって養殖業の発展と水産物の供給の安定に資することを目的とする。」つまり、事業者、供給者からの視点だけででき上がっている法律。

 これは、この法律の性格上やむを得ないかもしれないわけですけれども、消費者の食の安全、さらには化学物質に対して、水産業という一つの業の中でどういうふうにこれから扱っていくのかということは、私は、非常に大きなテーマなんだろう、それこそが、人間中心主義なのか、生物多様性を柱にした生態系中心主義なのかを大きく左右する、まさに岐路に立っているときだろうと思います。

 こうした問題についてどういうふうにお考えでしょうか。

武部国務大臣 私は、人間も自然界の一員だ、こう思っておりまして、今先生の御指摘の点については、相対立する関係ではない、かように思っております。

 いずれにいたしましても、さまざまな人間活動による自然環境への負荷が非常に大きくなっているということは非常に大きな問題でありまして、先ほども申し上げましたように、自然の恵みに感謝するとともに、自然を恐れる謙虚な気持ちを持つことが、生産者も、食品加工業者も、また消費者も、これを原点として考えていかなければならない、かように思っております。

 有明の問題についても、私が先般、お互いまず自分の足元を見詰め直してくださいということを申し上げましたのも、私は、酸処理剤の使用の問題のビデオなども見ましたけれども、結果的には自分で自分の首を絞めるようなことにならないように、そういう意味では、何事も法で規制するとかそういうことではなくして、その原点を考えればきちっとした対応ができるのではないか、このように考えております。行政の面でも、そういう考えを前提に今後の対応を、しっかり適切なやり方をやっていかなきゃいけない、このように思っております。

 私は、そういう意味では、対立する関係ではないけれども、先生の御指摘というのは非常に重要な御指摘だ、かように受けとめております。

佐藤(謙)委員 どうもありがとうございます。

 最後の質問になると思うんですけれども、今、感謝と謙虚という言葉を出していただきました。それに対して私は感謝を申し上げたいと思うんですが、海洋資源という言葉自身に、人間にとってのみ有用であるというそうした傲慢さ、そうした考え方から解放されなければいけないんじゃないかということを考えると、水産基本法を初めとした関係諸法はそれはそれとして、それをもう一つ大きく包括する、先日の参考人質疑で、東京水産大学の多屋先生でしたかお話がありました、海洋基本法がもう一つ大きい問題としてあるのではないかと。私は、海洋保全法というようなイメージでいいのではないかなというふうに思っているわけです。

 要は、海全体の生産力をどうふやすか。その中で、漁業者はどういう役割を演じ、国民はどういう役割を演じ、そしてその中でどれだけの分け前を我々がもらい、次の世代にバトンタッチをしていくのか。そうしたことを大所高所から議論をする時代というふうに私は申し上げましたけれども、まさに、海洋における生物多様性というのは、実は盛んに条約に加盟はしたのですけれども、今、そうした目的を施行する国内法というのがないのですね。今すがっている法律は何かというと、まさに水産庁が所管をしている漁場保全だとか、水産資源の保護というところしかない。やはりこの法律のさらに包括的に大きな海洋保全という問題を考えると、海洋保全法あるいは海洋基本法をつくるべきだと私は思います。

 そして大臣は、これは所管ではないのかもしれませんけれども、今までのこうした議論の中から、最後に前向きな御発言をいただければと期待を申し上げます。

武部国務大臣 ここ数年ですよね。環境修復型の公共事業、そういう問題が提起されたり、人と自然との共生ということが大きなテーマになってきたというのも、これが具体的に国民レベルで関心が高まってきたというのは、私の認識ではここ数年ではないか、かように思います。これは、急速に高まっていくだろうと思います。

 そういう意味では、こういう議論というものをどんどん盛んにしていくというようなことが大前提であって、現時点においては、前向きな答弁がなかなかできないということでおしかりを受けるかもしれませんけれども、議論が成熟しているとは思わない。議論が緒についたと。これはやはりもっと、これは農林水産省の所管ではないかもしれませんけれども、それは私どもの所管ではありませんということではなくして、私どもの方からむしろ積極的に問題提起を掲げて、そして国民的なレベルで、今先生の御指摘のような議論を盛んに高めていく必要があるのではないか、そういうことを前提に、いずれ将来立法ということも俎上に上がってくるのかな、そういうような印象を私は持っている次第でございます。

佐藤(謙)委員 武部大臣の誠実なお人柄に期待をして、質問を終わらせていただきます。

堀込委員長 次に、日野市朗君。

日野委員 おはようございます。

 私は実は、この委員会では正選手ではなくて補欠でございますので、今までの論議を全部伺っていたわけでもありませんので、今までの論議といろいろ重複することがあるかもしれませんが、そこはひとつお許しをいただきたいと思います。私の思いをこの水産基本法案にぶつけてみたい、こういう思いで質問をさせていただきたいというふうに思います。

 私、実は子供のころ、余りだれも信用しないのですけれども、漁師の仕事、私の出身地は北上川の河口に近いところでございまして、漁師の仕事もやりました。朝早く起きて、子供ですが、そのころ櫓をこがされまして、櫓をこいで沖に出て、定置網を揚げるとか、そんなこともいろいろやってきた経験を踏まえて、海のありがたさ、海の豊かさ、海における心の安らぎというようなものをよく私も経験をしているのであります。

 それで、いろいろな観点から伺ってまいりたいと思いますが、それにしても、現在の漁業の状態というのは、私は寒心にたえないと思っております。

 数字上から見てでも、この十五年間に生産量は半減してしまう。そして、水揚げは四分の三にまで落ち込む、いろいろな機械の合理化や何かいろいろあって、それでもそういう状態です。そして新規就労者は、平成十年六百九人だ、こういうふうに数字があるそうでございます。こういう姿を見ておりますと、日本の漁業、水産業、これが全般にずっと落ち込んでいるという状況ですね。

 私は、一般の都市の人たちから見たら、これはなかなか理解できないことではないかと思う。魚屋さんの店先、デパートの生鮮食品売り場に並んでいる魚の豊富さ、そういったものから見れば、日本の漁業がここまで落ち込んでいるなんて、都市の人たちはだれも思っていないのではないか、こう思うのです。しかし、言うまでもなく、全需要量の大体六割から七割というのは、いわゆる輸入に依存しているわけです。

 こういう中で、日本の漁業を何とかしなくてはいかぬ、漁業、漁村を何とかしていかなくてはいかぬと私は思っているわけであります。それで、いわゆる沿振法、沿岸漁業等振興法、これが果たしてきた役割の総括を私なりにちょっとしてみたいのです。

 漁村、漁民の収入を増加させようということで、そういう点に主眼を置いて、いろいろ水産庁も施策を講じてこられた、それはよくわかるのです。しかし、その成果がこのようになってしまっているということを考えますと、この沿振法にずっと今までしがみついて、私は、もうこれにかわる新しい漁業政策が打ち出されなければならないと思ってきたのでございます。

 その沿振法、それと今度は水産基本法、これにかえていくわけですが、沿振法についてどう思っておられるのか。今まで一定の役割を果たしたというお答えになるのだろうと思うのですが、それにちょっとしがみついて、もっと早く行われなければならなかった水産政策の転換というものがおくれてきた。そして、今水産基本法を出して、これを成立させようとしておられるのだと思うのですが、沿振法の果たした役割についての総括、ちょっと聞かせていただけませんか。

武部国務大臣 先生が漁業にかかわりのある、そういうお立場であったということは、私も法務委員会を一緒にやっている時代にいろいろお話を聞かせていただきまして、それだけに、漁業を取り巻く最近の停滞ぶりに大変なお嘆きの様子であるというふうにも承った次第でございます。

 お話のとおり、沿振法が制定されて三十八年になるのでございますけれども、地域によっては、いろいろな問題も数々残っているのだろうと思います。

 これも私どもの地元の例をとりますと、オホーツク海は、私は、沖底と沿岸との話し合い、協力、それに一つは流氷に閉ざされるという、それが資源を十二分に守ってくれたんだろうと思います。また、その流氷が逆に、冬期間の仕事ということを養殖というところに着眼してみんなで力を合わせた、こう思いまして、沿振法に基づく漁業経営の近代化、改善、そして生産所得の増大、生活の向上ということを果たし得た、そういうところも少なくないと思うんですね。

 しかし、二百海里時代に入りまして、海域が非常に狭くなったということに端を発して、漁業経営がそれぞれ悪化していった。これはもう御多分に漏れず、担い手の減少、高齢化の進行、それから都市にどんどん人が移動しておりまして、総体的に漁村の活力の低下が著しい、そういう現状になっている、こう思います。

 私ども随分言いました。このままでは漁村集落というのはなくなってしまうよ、そういうことも申し上げました。それから、漁港の修築についても、こんなでっかい港をつくって、おれたちは仕事をしづらくてしようがない、だから小さくしてくれと。しかし、将来を展望したら必ず、この港も小さくなった、こういうふうに言われる時代が来ると思うぞ、まずそういうようなことを申し上げて、かなり漁業者、生産者に対しても我々正直にいろいろ注意を促したりしてまいりましたが、いずれにしても、構造改革がおくれているということは否めない事実だ、かように思います。そして、水産業全体を国民に対する食料供給産業というような考え方でとらえていかなければならない、そういう意識にも欠けていたんじゃないのかな、かように思います。

 適切な答弁になったかどうかわかりませんけれども、私は、沿振法はそれなりの効果を上げて今日の漁業の近代化ということに貢献した、かように思いますが、それだけではもう立ち行かない、考え方も変えなきゃいけないということで、水産物の安定供給の確保と同時に、水産業の健全な発展を今日及び将来における水産政策の最も基本的かつ重要な考えとして基本理念に位置づけているわけでございます。

 この成立を期して、何とか現状を大きく打開していきたいというふうに考えている次第でございます。

日野委員 今までの考え方、水産庁はそれにはかなり抵抗してきたというふうにも思いますが、日本の国の大きな政治の流れとしては、漁民はそこそこ生きていければいいというような考え方があったんじゃないか、私はそう思っています。

 それよりはもっと別に、やはり工業それから貿易、そういったいろいろなお金になるところ、それで日本はお金もうけをして、外国から水産物は輸入すればいいんだというような考え方がずっと底流にあったような感じがしてならない。これは私の考え方であって、恐らく、水産庁の皆さんに言わせれば、いや、そんなことはありません、こう言うに違いないから、これはもうあえて答弁求めませんが、私は、そのようにずっと見てきたというふうに申し上げておきましょう。

 それで、今度は水産基本法の成立を目指しているわけです。私も、このような考え方、ずっと条文も見させていただいて、大きくこの国の水産政策が変わればいいな、こう思っているんですね。

 それで、伺っておきましょう。まず、水産業というものをきちんと理解しておかなければならない。水産業が日本の経済社会において、また経済ばかりじゃなくて一般社会においてどのような役割を果たすべきなのか。そして、何ゆえに水産業をきちんと守っていくという観点に立たなければならないのか。私は、ここを間違うと、水産基本法ができても仏つくって魂入れずというような形になってしまうだろう、こう思うんですね。ひとつ大臣のお考えを聞かせてください。水産業をどう位置づけていくのか。

武部国務大臣 まず、水産業は、国民に対する水産物の安定供給という使命を負っていると思います。沿海地域の経済の発展、国民生活や国民経済の基盤を支える役割も持っている、かように思います。こうした役割は、二十一世紀の我が国においては、豊かで安全な経済社会を実現する上で不可欠なもの、かように考えている次第でございます。

 したがいまして、我が国の水産業や漁村が国民から期待される役割を十全に果たすことができるような政策の方向づけを行うということが必要であろう、かように存じます。

 水産業や漁村が我が国の経済社会において果たす役割を明確にすることが、この水産基本法の第一の目的になるでありましょうし、漁業者を初めとする水産関係者が自信と誇りを持ってこれに当たることも促すことになると思いますし、国民に対して食生活の安全と安心をもたらす等の意義を有するものがある、かように考えております。

 同時に、もう一点は、さまざま当委員会でも御議論がございましたが、やはり水産業についてもあるいは漁村についても、多面的な機能を有するというような御指摘がございました。私は、特に日本は四面海に囲まれているわけでありますから、この海の環境を守り、またさまざまな海を愛する人々の期待にこたえるというような観点からも、単なる産業としてだけの位置づけではない。それだけでは漁業を営む皆さん方の自信と誇りというものを与えることはできない。むしろもっと、そこに住んで頑張っている漁師の皆さん方、漁業に従事している皆さん方というのは、おれたちがいなければどうなるんだというような使命と誇りも持っている、このように思います。

 そういうような考えで、水産基本法の制定を期しているという次第でございます。

日野委員 後でもお話ししますが、国際環境から資源の問題から、いろいろ厳しい問題がありまして、水産業をちゃんとまた発展させていくといっても、これは容易なことではないなと実は私は思っているわけですね。

 そして、水産基本法をつくって、さあ何をやる、そのためには何が必要だ、こういうきちんとした論理性を持った政策というものが必要だと私は思っているんですね。それで、今大臣、何点かずっと、水産基本法を成立させて、そのためには何をやる、そのためにどういう観点から水産業を振興する必要があるんだとおっしゃった。私も大体そんなところだと思うんです。

 大体日本というのは昔から島国で、海に依存して生きてきているんですね。現在の領海と排他的経済水域、これを合わせると四百四十八万平方キロに及ぶ。しかもここは、本当に世界で有数のすばらしい漁場なので、これを荒らしてしまってはいかぬわけですよ。きちんと持続可能な利用を積み重ねながら、ここから日本人のこれからの食料としての魚資源を得ていくということが絶対に必要ですね。日本人はそうやって生きてきた。

 そして、このごろ、肉を食っている人たちは大変だと思うんです、狂牛病だの口蹄疫だのいろいろありまして。そういう点では、魚という資源は非常に今までも大事だったし、これからも大事にしていかなければならないし、世界の目は必ずこれから魚に向いてくる、海洋生物に向いてくる、私はそう思っています。日本がこの資源を得る、領海とか排他的経済水域とか、いろいろな世界の漁場、これにきちんとした目を向けて、きちんとした対応をしていくことが必要だと思う。

 それから、私は、漁村というものをしっかり見詰めていくことが必要だと思うんです。そこでは、国土保全だとか国境の監視だとか海難救助だとか、いろいろなことが行われるし、そこではまた、漁村は漁村として、日本のすばらしい文化の伝承者でもあるということですね。

 ただ、これもやはり都会の人たちにはちょっとわかりにくいことなのかもしれないけれども、政府の財政審議会か何かで漁港をもっと減らすべきだというようなことを言っているわけです。私は、公共事業としての漁港の整備というのは大事なことだと思うんですよ。漁村というのは孤立して存在している場合が非常に多い、そして、それぞれの漁村ごとに一つ一つ共同体ができているわけであります。

 そのほかに、この漁村集落というのは土地が非常に狭いのが普通です。そして、そこで漁労を営むということになれば、船揚げ場などというのが必要なんです。大臣、おわかりになりますね、船揚げ場は。漁船はしょっちゅう海に浮かべておけばいいというものじゃなくて、ちゃんと船を引き揚げておくわけですね。使わないときは引き揚げておく。これは大変広い面積を要するわけでありまして、そういうことなんかは恐らく都会の人は知らないのじゃないかなというふうに思うんです。

 公共事業としての漁港、こういうものについて大臣、どういうお考えを持っておられますか。必要なものはやはりきちんと整備しなくちゃいかぬ、私はこう思っていますが。

武部国務大臣 先生御指摘のとおりでございまして、漁港に行っても船が全然一隻もいないなんというようなことを公然と言う学者がいますけれども、漁師というのは朝早く、夜が明ける前から沖へ出ているのですよ。沖へ出ているがゆえに、学者さんが通ったときには船がいないのは当たり前でして、どうも偏見を持っているなという感じがしてなりません。

 同時に、漁港は、昔のように船をつけて荷物を揚げる場というようなものではなくなっております。そこですぐ作業に入るというようなことで、漁港と作業場とが一体になっている。お話しのとおり、船を揚げなければ、これは大変なことになりますよ、北海道なんか氷に閉ざされてしまうわけですから。そういうようなさまざまな事業を総合的にやらなければならない場でもあります。

 加えて、私は、漁業者にも考えてもらわなきゃならないと思うのは、昔のような既存の集落に、そこにへばりつくという言葉は適切でないかもしれませんけれども、後継者のことなども考えたならば、やはりいつでもどこでもだれでもが同じ条件下で生活できる、仕事ができるという環境づくり、そういう意味で、私ども、農山漁村の新たなる可能性を切り開いてまいります。

 それは、新しい形での都市の皆さん方との交流も可能な新しい漁村、コミュニティーというものもつくっていかなきゃならない。そのコミュニティーづくりに一つの新たな公共事業として位置づけていくというようなことも念頭に置いて、新しい形の農山漁村の集落づくりというようなことに取り組んでいきたい、このように思っている次第でございます。

日野委員 ややもすると、政治力の関係ですかな、こういう点は押しまくられているような感じが若干あります。むだなものをつくれということは私は言わない。しかし、必要なものはつくらなくちゃいかぬ。ですから、ここいらは水産庁、ひとつ十分な研さんを重ねて、一般の町の人たちの論理と言うと語弊があるのですが、語弊をいとわずに言いましょう、町の人たちの論理に負けないだけのきちんとした対応をやってもらいたいものだ、こういうふうに思っております。

 それからもう一つ、環境の問題について、環境の保全なのか、それとも環境との調和なのかということで大分、言葉の遊びだとさっき佐藤議員が言われたのですが、私は、必ずしも言葉の遊びだとは思っておりません。今、環境について新しい概念が持ち込まれている。いわゆる持続可能かどうかという問題ですね。

 私は、きちんとした持続可能な生産基盤をつくっていくということは非常に大事なことであって、そこで、言葉としては保全という言葉を使うのが正しいだろう、こう思うんです。例えば、海を守るための森林の整備というお話がありました。これは非常に大事な観点であると思いますから、ここのところはきちんとやっていただきたいなというふうに思います。

 森と海との関係について、一言、大臣、おっしゃることございますか。

武部国務大臣 先ほど来議論がありますように、森は海の恋人だというふうに言われた方もおりますけれども、私は、森も川も海も大地も一体だと思います。我々の体、手足がばらばらじゃ生きていけませんね。それは全く不離一体のものである、このように、それぞれの地方の人はわかっています。

 ですから、気仙沼の皆さん方の御努力、それから、えりも、北海道の漁協婦人部の皆さん方、漁師が自分で金を出して山に木を植えている、山だけじゃなくて、やはり今後は流域にもそういう努力をしていかなきゃならないのではないか、そういう意味では、全く同感でございます。

日野委員 とにかく環境の問題というのは、町の人はよく農村を見て、自然はいいね、こう言うわけだね。緑が豊かで、自然はいいですなと。それから海に来ては、ああ、海はいいね、こう言う。しかし、今、農業だってかなり環境破壊の要因を抱えているわけだし、漁業も随分環境破壊的要因を抱えて営まれている。しかし、これからは、環境というのは、人類の抱えているテーマの中で最大のテーマになってきます。そして、ここに対するきちんとした対応をしないものは、恐らく競争力を急速に失っていくだろうと思います。

 それと同時に、私は、この環境をきちんと整えるためのいろいろなビジネスもどんどん発展してくるだろうと思うし、そうあってもらいたい、こう思っているわけであります。

 とにかくこの環境の問題、私の方から一方的に言わせてもらいますが、この基本法の中で環境との調和という言葉、これについてはいささか私も、ちょっと意味を理解しにくいようなところがあります。保全というふうにはっきり言い切った方がいいように思うが、しかし、キーワードである持続可能性、これをきちんと考えながら今後の運用に当たってもらいたい、これは私の注文であります。

 また、多面的機能が一応法文の中に入り込んだこと、私はこれを評価いたします。今までの沿振法の場合、多面的な機能というものに対するきちんとした評価がなかったために思うような施策も打てなかったという点があったのではないかというふうに思いますので、これは谷津大臣なんかの言葉にもあったようでありますが、自信と誇りを持って水産業を営むことができるような、そういう関係をしっかりと整えてもらいたいというふうに私は思います。

 それで、これから関係者の役割としては、特に水産庁あたりの役割としては、こういった多面的機能が十分発揮されるようにするためには、全国的な、国民的な理解が必要なんであって、国民がきちんと海を見、漁業を見、水産業を見、それにきちんとした判断ができるようにきちんとした施策を講じていく、このことは必要だと思います。いかがでしょうか。

渡辺政府参考人 水産基本法の中では、水産物の安定供給以外の機能、これをいわゆる多面的機能と称しております。特に水産の場合には、多面的機能の発揮が、そこの漁村に生活をする方々を通して、その活動を通して発揮されているというのが非常に重要な点でございます。レクリエーションの場の提供ということもありますが、それ以外にも、環境の保全、海難救助への貢献、あるいは防災や国境監視、伝統文化の継承といった点がございます。

 ただ、この部分につきましては、残念ながら、これまで数値化をする、その他の知見の蓄積がまだ不十分でございます。したがいまして、これから先急がれますのは、PR、浸透、そしてこれを数値化するような作業、そういった点にまず重点を置いて、それを踏まえて多面的機能の発揮についてのいろいろな支援策を講じていくことが必要であろうというふうに思っております。

日野委員 そういう机の上の作業も大いにやってください。しかし、体を動かすということも大事なんですよね。大臣初め至るところで体を動かして、そして国民の関心を海に、漁業に、水産業に向けていく、そのことをぜひ私は強く要望します。

 我々はそれをやっているからよくわかるんですよね。選挙区をはいずり回っていると、これはよくわかるんだ。大臣だって、あの辺の海のことならべらべらしゃべり始めたらとまらないでしょう。私だって、自分のところの海のことを始めたらこれはとまりません。きょうは時間の関係があるからそんなに多くを語りませんけれども。

 しかし、そういった机の上の作業も必要、それから体を動かしていく、みんなと触れ合っていくことが必要。ぜひそこのところは、特に農水省なんかがみんなそれをやってもらいたいですね。みんな期待しているんだよ。水産庁の長官が来るなんていったら、みんな期待してね。ただ、選挙運動なんかには使われないように、そのことは一言、一本太いくぎを打っておきますよ。

 では、ちょっと今度は資源の問題について少しお話をしましょう。

 生産量が半減した、こういう話であります。これは、資源量の減少にもよるんですね。資源量が減少するというのはどういうことかというと、魚資源というのは大体周期があって、例えばイワシなんかも、わあっととれるかと思うとすうっと少なくなる。しかし今度は、一方のイワシが減少すると、本当はアジだとかサバだとかそっちの方がわあっとふえなくちゃいかぬのだ。ところが、今ふえていないんですね。そういう自然のものもありますが、しかし、人為的な原因というものも随分あります。

 私は、さっきも言ったように、いろいろ漁業に関心を持っているものでありますから、市場なんかにも行ってみる。それから、小型底びきやなんかがずうっと入ってきますね。それを見ているんですよ。そうすると、戦慄すべき光景に出会うんですね。底びき網を揚げて漁獲を波止場に積み上げる。その中から売り物になる魚だけを引き抜いて、それを持っていく。あとには小さな魚の山が依然として残っている。カモメはよくそれを知っていまして、その船が入ってくると、小さな売り物にならない魚にわあっと寄っていく。恐らくいろいろなところで見られる光景だと思いますよ。

 市場に行ってごらんなさい。こんな小さい、三十センチもあるかないかというようなアンコウが山になっている。あと二年もとらないでそのままおいたらいいアンコウになって、値段も高く量もとれ、そういう状態になるだろうと思うんだけれども、ところが、残念ながら現状はそのような状態なのでありますね。

 私は、そういった意味で、人為的な資源の減少というものは何とか食いとめていかなくちゃいかぬ、こう思います。漁業権のことでありますから、漁業許可制度と密接にこれは結びつく。それで、私は、漁業許可制度というものを構造改革しなくちゃいかぬと思う。大臣、あなたは小泉内閣の閣僚なんですから、構造改革をここのところ大胆におやりなさいよ。

 今までの漁業権をずっと引きずってきていて、お互いに業者同士が足を引っ張るような形になっているわけですね。やれ実績がどうだ、それからあの人はだれそれ先生とつながりがあって何とかいう話まである。ここらはちょっと変えないと、漁業者たちもじり貧、じり貧で生きていけないですよ。ある人なんかは私にこう言う、どうせつぶれるなら早くつぶしてくれと。そういう話は北転船のあの事件のときにもあったんだ。

 ここのところ、構造改革をきちんとやる必要があるんじゃないですか、どうですか。

武部国務大臣 漁業というのは、資源を守り、資源を育て、資源に見合った操業秩序を確立していくということがいわゆる資源管理型漁業の原理原則だ、かように思います。

 我が国周辺の水産資源については、多くに魚種において資源が悪化しているということは御指摘のとおりでございますので、そのうち早急な資源の回復が必要な魚種については、必要な措置を計画的に講ずるということを予定しているのでございます。

 具体的には、種苗放流等による資源の積極的培養や、藻場、干潟等の造成による漁場環境の改善措置のほか、休漁、減船等により根本的な問題である過剰な漁獲圧力の削減を考えなければならない、かように思っております。

 また、この計画的な資源回復措置を実施していくためには、漁業法の改正により設置される広域漁業調整委員会や、海洋生物資源保存管理法の改正により創設される漁獲努力量管理等の制度を積極的に活用するとともに、それらを通じた適切な資源管理を実施することにより資源の持続的な利用を図っていく、こういう所存でございます。

日野委員 何だかべらべらっと来ちゃったので、十分理解し切れたかどうかちょっとわからないんですが。

 現状をどのように変更していくかということが、今大事なのですよ。特に私は、いわゆる効率漁業と言われるもの、これについてちょっとお話をしようと思う。

 例えば、トロール、底びき、それからまき網、ひところは大目流しが随分話題になったが、このごろは大目流しは余り話題になっていないようですね。あれは業者の数が減ったからですかね。特にトロールなのですが、漁師の人たちがよく知っているんだ。トロールを二、三年休めば魚はわいてくるよ、みんなこう言っているのですね。私もそうだと思う。トロールというのは、これはまさに一網打尽にずっと引いていくだけではないのです。さっきも言いましたね。小魚の山の中から売り物になるものだけを抜いていってというような話をしましたが、それだけではないのですよ。

 海底というのは、実に微妙な生態系を提供しているわけですね。それこそ藻場もあるだろうし、それから、僕も見て知っているのだが、いろいろな複雑に絡まり合った生物たちがいっぱい生存していて、それが魚の生息場所になっている、また繁殖の場所にもなっているのですよ。それを全部破壊していくわけです。

 ですから、私のところは、仙台湾なんというのは、トロールに引かれてもうすっかり海の底は平らになったわ、こんなふうにまでも言われているわけですね。私は、こういう状態を見ると、トロールなんかも、それからあとまき網の問題もありますが、ちゃんと休漁をさせるとか減船をさせるとか、こういうことはきちんとやっていかなければいかぬのではないか、こう思います。

 私は、これは随分前から言っているのですよ、特にトロールの問題については。そうすると、歴代水産庁長官の答えは、加工屋さんが困るでしょう、こういう話なのです。問題はそんな問題ではないのですね。歴代の長官にもずっと聞いてきたので、今度は渡辺長官にも聞きましょう。いかがですか。

渡辺政府参考人 底びきなりまき網ですけれども、やはり日本の国内漁業生産において、底びきでいえば二〇%以上、まき網では三割ぐらい揚げておりますので、大事な漁業であるということは間違いないと思います。

 これは先生よく御承知のことと思いますけれども、長い歴史の中で、底びきやまき網については、だんだんにその資源との対応がうまくいくような形に制限を付してきております。例えば、底びき禁止ラインをつくる、禁止区域をつくる、休漁期間を設定する。そして、例えばまき網であれば大型の百三十五トン型はここまでしか近づいてはいけない、八十トン型はここまでだというふうなことを一つ一つ積み重ねをしてきました。

 しかし、今御指摘がありましたように、漁法別に許可なりが出ておりますので、これからは、今回のTAC法の改正の中で漁獲努力量という制度がつくられれば、漁法横断的、つまりまき網でも底びきでも沿岸でも、いろいろなものを束ねて、その資源の状態に応じた対応をとるというふうに変えていくことが可能でございます。また、その過程で、御指摘がありました休漁あるいは減船ということも、当然資源回復計画に沿って設定をしていくという方向で対応したいと思っております。

日野委員 私も知っているのですよ。休漁区域を定めるとかいろいろやっている。しかし、それでもなおかつ、どんどん資源状況が悪化していっている。こんな状態、あなた方が今までやってきたことが効果を上げていないということではないですか。私はそう思っていますよ。反論はありますか。

渡辺政府参考人 反論というよりは、資源の状態が非常に悪くなっているということはデータの上でもわかるわけでございます。そういう状況の中で、しばらく前にTAC制度、漁獲可能量の制度をつくりました。それだけでは不十分でありますから、いわばインプット、投資の部分を抑えるという意味で、今回漁獲努力量の規定を提案させていただいているわけでございます。

 これによりまして、ぎりぎりのところまでデータがわからなくても、傾向がわかれば投入量を減らすことで資源の管理ができる。しかも、その場合には漁法横断的に、その資源状態がわかっている、あるいは資源状態が大体わかっているという魚種に着目をして、これからは資源管理を強めようというのが私たちのこれからの方向でございます。

日野委員 私が底びきと海底との関係をさっき言ったのは、何で言ったか。それは、漁獲量だけに着目したのではだめなのですよということを言いたかったわけです。つまり、そういう魚が生息する場、これをきちんと維持していくことが必要なのだということを私は言った。そういう意味をも含めてお話をしているのです。

 うちの方に、万石浦というところがある。これはそれこそ魚類の揺りかごです。私は、随分昔の話で恐縮だが、子供のころそこに遊びに行くでしょう、そうすると、歩いていくと砂が滑るのですよ。何で滑ったか。こんな小さいカレイの幼魚たちがいっぱい、びっしりいた。今、そんなことはありません。それから、私のところなんかでも、もやいのくいに、どういうことでしょうね、小さいモズクガニなんという小さいケガニがびっしりついて、一本のもやいにみんな寄り集まっていた。それをそぎ落として網でとってきたりなんかしていたのですが、そんなことも全然なくなっているでしょう。

 これはいろいろな水質の問題もあります。それから、いろいろな海底の変化なんかもありましょう。しかし、TAC制度で漁獲量だけに着目していたのでは、根本的な解決にならないのではないでしょうか。

渡辺政府参考人 重ねて恐縮でありますが、漁獲量そのもの、アウトプットを抑えるやり方のほかに、漁法も兼ねたインプットを制御していくということを今回やろうとしているわけであります。

 それから、今先生からお話があったのは底びきの話でありますけれども、例えば、小型底びきであれば、これはちょっと名称が正しいかどうかわかりませんが、チェーンこぎとかそろばんこぎといったように、海底をしっかりかいていくような漁法はもう既にこれまでの改善の過程で禁止をされてきておりますし、現状の底びきでも板びきが主流で、攪拌びきというのはもうごく一部の地域にしか残っておりません。

 そういうふうな漁法、同じ底びきであっても中層を引くような形にだんだんに変えていく、そういうことも重ね合わせることによって全体としての投入量を減らす、そういうことをこれからはやるつもりでおります。

日野委員 今度は、この基本法ができたら、きちんとそういった魚類の生存環境、それをきちんと守っていく精力的な仕事はひとつやってもらいたいと思います。

 では、これにばかりかかずらわっているわけにいきませんので、特に国際的な問題についてちょっと目を向けてみたいというふうに思います。

 便宜置籍船とか、それから中古漁船の販売だとか、これは随分問題になって、随分これは水産庁も苦労している、政府全体も苦労しているというふうに思います。それで私、この資源の維持ということと、それから貿易の関係、これをきちんとルール化する必要があるだろうと思っているんですね。このルールをきちんとしておかないと、本当にたたかれっ放しにたたかれるなんということになりかねない。

 ここについてはどういう努力をこれから進めていかれるか、ひとつ聞かせてください。

渡辺政府参考人 資源状態についていえば、FAOなどの発表でも、既に過剰漁獲になっているようなものは相当あるというふうな話が出ております。私たちは、国際的な資源の問題についていえば、これは貿易との関係がありますけれども、第一には、やはり国際機関でそういった資源状態が悪いものについては取り決めをして、そしてその資源の状態をきちんと維持管理するものだけを我が国は輸入するというふうな仕組みにする必要があるというふうに思っております。

 今、WTOの次の交渉が始まらんとしておりますけれども、その中で、水産物につきましては、多面的機能とあわせまして資源をきちんと維持管理していく、そういう前提に立つと、完全にフリーな貿易であっていいはずはないという主張を我が国はしているところでございます。

 いずれにいたしましても、そういった国際機関の中で共通認識として取り組みをするというのが資源管理の上で効果的であろうと思っております。

日野委員 それと、こういった国際機関の中でのいろいろな議論の中で大事なのは、我が国の立場を理解してもらうという国をちゃんとつくっておくことが必要だと思うんですね。ODAや何か、こんなにODA出していて何でこんな国からこんなに悪口を言われるんだというような思いはみんな一様に持っているわけです。特に、ODAとは別にして、水産庁で無償援助なんというのがありますわな。それなんかもちゃんと使って、そして我が国の立場を理解しているというような国とできるだけ密接な関係を持っていかれることが必要だと思うんですが、いかがでしょうかね。

渡辺政府参考人 もちろん、直接的に、これだけのお金をやるから我が国の政策にこう協力してくれというふうな話ではないわけであります。ただ、やはり漁業を行い、水産物を貿易する、そういう小さな国々にとって漁業に対する投資というのは非常に重要な地位を占めておりますし、我が国は資金的にも技術的にもかなり高いものを持っておりますから、水産無償を通じて、これはかなりの額でありますので、これまでも実績で通算八十カ国というふうな状況でありますから、これを国際的に見て資源の状態がいいような方向に使っていく、そしてその国の水産物貿易において付加価値を高めるというふうなことに協力をし、自然にそういった我が国との友好関係の状況を生み出していくということがこれからますます重要になると私は考えます。

日野委員 非常に思いは同じでありますから、できるだけ効果がいい方に出るようにひとつ努力を促したいというふうに思います。

 では、次は捕鯨の問題についてちょっと伺います。

 IWCは現在、理性を失った議論をやっているというふうに私は思っています。これは私の責任で言わせてもらうが、それはもうあんな委員会は、全く科学というものに信をおかないといいますか、科学的な成果というものを全く無視して感情的に物事を処理しようとしている。私は、これは困ったものだ、常軌を逸していると。特に環境問題を語るときは、やはり科学の成果というものをきちんと踏まえた議論をしていかなくちゃいけません。それが行われていないということは非常に残念だが、我が国としても商業捕鯨の再開に向けてきちんと努力してもらう必要があります。

 特に、鯨の量が、鯨が少しふえ過ぎてこれは間引きをしなくちゃいかぬというような状態になっているんです。去年ですか、アメリカの西海岸で二百七十頭か何かの鯨が死んだ。調べてみると、これはえさ不足で死んでいるわけです。そういう状態なんかを全く無視して、環境などということを振りかざす人たちがいるので非常に困ったものですが、これからも調査捕鯨をきちんとやっていく、これからの持続可能な捕鯨のために調査捕鯨をきちんとやっていくということは、これは間違いない方針でしょうな。いろいろ外圧があることは私もよく知っている上でお伺いします。

武部国務大臣 先生は、鯨については非常に造詣が深く、農林水産省に対しても大変な御支援をいただいていることをよく承知しておりますけれども、今お話しのとおり、鯨類の資源状況を科学的に把握するために、南氷洋と北西太平洋において、国際捕鯨取締条約に基づく締約国の権利として鯨類捕獲調査を実施しているわけでございます。今後とも、科学的必要性に応じ、これらの調査を実施していきたい、この考えに変わりありません。

 また、鯨類の捕食が漁業資源に与える影響の解明に重点を置いて昨年から実施している新しい北西太平洋鯨類捕獲調査に関連いたしまして、米国が反発し、ペリー修正法に基づく対日輸入制限の可能性が示唆されておりますが、米国の反応は国際捕鯨取締条約そのものを否定するものだと私どもは考えます。農林水産省としては米国の冷静な対応を求めてまいりたい、かように存じます。

日野委員 ペリー修正法でどれだけのことをやられるかなんという問題はいろいろありますけれども、しかし、そういった外圧、それから小さなと言っていいか悪いかわからぬが、内圧だってあります。しかし、それに屈しないというきちんとした、毅然とした態度をおとりになるべきだと私は思いますので、そのことは強く要請をしておきたいと思います。

 また、鯨について、ノルウェーから輸入要請がありますね。これにはどうお答えになりますか。

渡辺政府参考人 我が国とノルウェーとは、ともにCITESにおけるミンククジラの附属書1の掲載を留保しておりますので、国際法上は両国間のミンククジラの製品の輸出入は問題がありません。私はそう考えております。

 ただ、鯨製品の貿易再開につきましては、国際的な関心が非常に高い、注目を浴びるというふうな状況でございますので、簡潔でかつ信頼性と透明性の高い貿易の枠組みをつくることが肝要だろうと思っております。したがいまして、まず日本とノルウェー双方に共通のDNA登録制度の確立などにつきまして、実務的、技術的、科学的な検討を両国の実務レベルで行う必要があると考えております。その方向で両国の考え方は一致をしております。

日野委員 時間がなくなってきたので、今度は遊漁、釣りの問題をちょっと話題にしておきたいと思います。

 私、見ていて、釣り人たちというのは採算は関係ないのね。だから、高い仕掛けだとか何か持ってきて、漁師の人たちでは手が出ないようなものを持ってきて根こそぎにとっていくというようなことがよくあるんです。今はどうかわからぬけれども、超音波なんかを使って、いるだけの魚を皆集めて、そしてそれをごそっととっていくなんということもあるわけですね。それから、あとは渡り鳥、鳥にテグスが巻きついたりなんかする被害なんというのも、これはいろいろあったりもします。それで、私は、やはりこの釣り人たちも一定の節度は守らなくちゃいかぬ、こう思います。

 それで、例えばオーストラリアに行くと、どの魚種は何センチ以下はとっちゃいけませんよ、こういうふうな決まりがあるんですね。それから、例えばカナダのユーコン川では、キングサーモンは一人一匹までですよ、こういうふうに決まっているわけですね。そういった規制というものはある程度必要なんじゃないかなというふうに私思うんですが、この遊漁の問題も随分話題になって久しいわけですが、今どう思っておられるか、ちょっと伺いたいと思います。

 それともう一つ、環境省の方で、在来種に対して外国種の生物がダメージを与えているということが伝えられて、それの絶滅をしようというようなことで環境省は努力をするということになったら、何か水産庁は、ブラックバスについて環境省の方針とはちょっと違って、ブラックバスの駆除については非常に生ぬるい決定をしているような話を聞いているんですが。

 皆さん、ブラックバスなんというのは本当に嫌なやつですよ、あれは。うちの方の沼にもそれが入り込んで非常に迷惑しています。フナだ、コイだ、ドジョウだ、ウナギだ、ただ、コイだけはブラックバスに負けないらしいんだね。ただ、生態系全体が変わってくると、これはコイにとってもいろいろ不利な状況が出てくるだろうとも思っているんですがね。ブラックバスなんというのはこれはやはり駆除の方針でいってもらいたい。そして、少なくとも釣ったらまた放すな、釣ったらもう持って帰って自分の責任で、結局あれだってうまく料理すればうまい魚なんだから。ですから、そこらのところはちゃんと対処してもらいたいと思いますが、どう思いますか。

渡辺政府参考人 二点お尋ねがございました。

 まず、遊漁の問題でありますが、遊漁人口が非常にふえているという状況の中で、海域や魚種によりましては、むしろ漁業者が採捕するよりも遊漁者が採捕しているものが多いというふうな状況も出てきております。漁業活動にとっても、また資源にとっても問題が生じているケースもございます。

 したがって、今後は遊漁もきちんと資源管理と漁獲という中に取り込んでいく必要があると考えておりまして、水産基本法案では、資源管理のための措置としては遊漁も含まれるということを明確にしておりますし、漁業者以外の者、遊漁者を想定いたしまして、水産動植物の採捕者の水産施策への協力義務というものを定めているわけでございます。

 現況、遊漁の実態、区々ございますし、これからの規制のあり方につきましては、十二年の六月に調整規則の例を通達でお示しをいたしましたが、今後は、何かこの漁業者以外の採捕についての制度化を図るべきではないかと思いまして、検討を急ぎたいと思っております。

 それから、ブラックバスの問題でありますが、環境省と見解が違うのではないかという御指摘がございましたが、私どもも、このブラックバス等の外来魚につきましては、生息区域の無秩序な拡大を防止するという観点で、その移殖を制限することを原則としております。そして、生息数を減らすために駆除に対する支援等も行っているところでございます。

 ただ、ここからはちょっと難しいんですが、地域によりましては、四つの事例がありますが、既にブラックバスをスポーツフィッシングの対象として取り込んでいる地域もございまして、実績もございます。そういう状況の中で、今先生から御指摘があったキャッチ・アンド・リリースの問題、そこに戻すな、あるいは生きたまま連れて帰ってはだめだというふうなことを規則化をしているところもございますが、この点は、今後どういうふうに具体的に持っていくか、遊漁関係者と漁業者との間でじっくりとした話をさせたいと思っております。

日野委員 最後に一言だけ。これは答えは要りません。

 昔から遊漁問題については同じ答えだ。検討中、検討中、検討中だ。それから、ブラックバスなんか、あんなもの釣らなくたって、ほかにいっぱい釣る在来種はいますから、どうぞブラックバスについては厳しくやってください、厳しく。

 終わります。

堀込委員長 次に、一川保夫君。

一川委員 では、引き続き質問をさせていただきます。

 私、この週末にかけて水産関係の皆さん方とかあるいは、我々北陸の場合は観光産業も大変落ち込んでおりますので、その観光の関係者みたいな人たちともいろいろな話をする機会の中で、この水産関係というのはそういう観光に携わる皆さん方も大変今いろいろな面で関心を持っている分野です。恐らく御存じのとおりのことでして、やはり観光客相手においしいものを提供したいというのはどこの地域もそうだろうと思いますけれども、そういう面では、今回のこの水産基本法に関連する質疑につきまして、最後に、今まで余り話題にのらなかったところを中心にお聞きしたいというふうに思っております。

 今回、水産基本法の第二十六条の中に「水産業の基盤の整備」という項目を設けて、これから積極的にそういうものを整備していこうという条文があるわけです。今回もこの委員会の場で、後ほどまた漁港法の一部改正の話題も出るわけでございますけれども、これは議員立法という一つの昭和二十五年以来の法律でございます。私は、こういった漁港関係とか漁場というものはまさしく水産業の基盤でございますけれども、こういった地域の特性をしっかりと踏まえながら、しかも環境とのいろいろな調和を図って、これからこういった水産基盤整備的なものをこれからの新しい時代のニーズに即したような格好で着実に整備を進めていくということもまた重要な課題であろうというふうに思っております。

 そこのところ、水産庁長官になろうかと思いますけれども、今現在、第九次の漁港整備長期計画、これは平成六年にスタートしまして、途中、公共事業全体の長期計画は二カ年延ばすということもあって、八年間という変則な長期計画になっておると思いますけれども、それが今年度いっぱいで一応この長期計画の期限が来るわけですね。それからもう一つは、第四次の沿岸漁場整備開発の長期計画、こういったものも今年度いっぱいで一つの計画を終えるわけでございますけれども、この二つの長期計画に盛られている施設の整備が現段階でどういう状況にあるのかというところをまず御説明をお願いしたいと思います。

渡辺政府参考人 第九次漁港整備長期計画と第四次沿岸漁場整備開発計画でありますが、水産資源の生産量の増大への取り組み、それから消費者ニーズに合致した水産物の安定供給、青く豊かな海の確保ということをテーマにいたしましてこれまで進めてまいりました。

 予算上の成果といいますか、進捗状況でいいますと、漁港整備長期計画が総事業費の一〇六%、沿整の方が九二%、これは十三年度の当初予算でありますが、そういうふうな進捗状況になっております。

 一方、漁港なり漁場等の整備状況であります。岸壁整備率、これは漁港ですが、平成十年の状況で五六%、漁場整備率が平成十一年で一二%、それから漁村でいえば、下水道等の普及率は平成十一年で二五%、中都市が七六%でありますので、まだまだ不十分であるというふうに言わざるを得ません。

一川委員 まだまだ不十分だということでございますけれども、また後ほど大臣に基本的なお考えをお聞きしますけれども、その前に長官に、もう一つ確認の意味で、現状の取り組み状況等の考え方をお聞きしたいわけです。

 私自身も、漁港という空間は、当然ながら水産物の供給の基地としての重要な役回りはしておりますけれども、やはりその地域社会全体にとって漁港という水辺空間というのは、ある面では非常に魅力のあるところだというふうに思うわけです。そういう場所も、最近いろいろな工法のやり方も、環境にマッチしたような工法を極力取り入れながら工夫されているという努力の跡が見えてきているわけでございます。

 この前、参考人の方に来ていただいたときのお話を聞いておりましても、漁業者の皆さん方は、最近、特に地域のいろいろなイベントに対して積極的に貢献をしてきているということをお話しされておりました。私たちも、自分たちの地元で見ておりましても、やはりそういった漁業者の皆さん方、漁村の皆さん方も、地域おこし、村おこしという観点からも当然そうなんでしょうけれども、そういうイベント的なものに対しても大変積極的に協力をしながら参加しているなということを見受けるわけでございます。

 これからは、当然、都市住民といいますかそういう皆さん方と漁村地域の方々とのいろいろな交流というものを積極的にやっていくということも一つの大きな流れでございますし、先ほど佐藤委員のお話を聞いておりましたら、一時代は漁村は交流を避けたというようなお話もございましたけれども、最近は、積極的にそういう交流を深めていきたいというような機運があるというふうに思います。

 そうなりますと、やはり漁港という空間を整備する場合に、そういうことを念頭に入れた整備の仕方を、単なる漁港としての機能本位だけじゃなくて、それにプラス若干の遊びを含めた、なおかつ自然環境にマッチしたような漁港地域全体の整備のあり方というものがあっていいと思うんですけれども、こういった要請に対して、現状、どういう取り組みをやっておられるのか、そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。

渡辺政府参考人 御指摘がありました自然に優しい工法の導入、それから地域住民や都市住民との交流に配慮した漁港事業ということで、これは漁業生産と決して矛盾するものではございません。自然調和型漁港づくりというふうな形で進めております。

 これからますますその必要性は高まると思いますが、一例を申し上げますと、生物が生息しやすい防波堤ということで、通常の防波堤の下にもう一つ潜った形の堤を足しまして、そこが藻場として形成をされていく。それから同じ防波堤でも、穴をあけまして、海水交流機能を持つということで、外から波力を利用して水が入ってきて交換をされるというふうな事業をやっております。

 それから、都市住民、地域住民との交流の点で申し上げますと、親水機能を持った防波堤ということで、防波堤の幅を拡幅いたしまして緑地や遊歩道をつける。あるいは緩やかな護岸の海岸事業にするということで、親水機能を高める、交流広場をつくる。場合によりますと、水産物の直販施設等も持った広場にしていくということで、かなり広い形で自然との調和、環境との調和、そして都市住民、地域住民との交流というふうなことを心がけております。

一川委員 それでは、ちょっと大臣に、これからの水産基盤の整備の基本的なお考えをお聞きするわけです。

 今ほど、最近のこういった公共的な施設の整備も、時代のいろいろな新しいニーズにこたえながらそれなりの対応をしてきているというお話でもございますけれども、今、第九次の漁港整備長期計画が十三年度で一応終える、また一方では、第四次の沿岸漁場整備計画、これも今年度いっぱいで一応計画のけりをつけるわけですけれども、当然、来年度以降、この長期計画の後の、長期計画になるのかどうかわかりませんけれども、こういうものを計画的に整備していくという一つの大きな節目に当たるわけでございます。

 大臣としまして、こういった水産関係の基盤整備といったようなもの、最近公共事業はいろいろな面で批判されつつ見直しが迫られているわけでございますし、また、だんだん漁船が減っていくんだったら漁港をもっと減らしたらどうかというようなことをおっしゃる方もちょっといました。そういうような批判に対しても、いや、そうじゃない、もっと計画的にしっかりと漁港も整備しなきゃならない。そういったこれからの事業の重点化の方向みたいなものは、これまでのやり方とは若干変わってくるのではないかと思いますし、そのあたりのお考えをまず大臣からお聞きしたいと思います。

武部国務大臣 今までの漁港というのは、機能重視だったと思いますね。また、沿岸漁場整備開発事業も別々にやっていたわけでありますが、今般、議員立法で漁港と漁場整備を一体的に進めるというようなことの立法措置をお考えいただくということで、大変我々意を強くしているわけでございます。私は、当然、漁港の機能というものは変わったと思いますね。これは、先ほど遊漁の話もありました。プレジャーボートだとかヨットだとか、そういったことを利用する一般市民の方々も非常にふえてまいりました。したがいまして、漁港と沿岸漁場整備と一体的に進めていく、そこでさまざまな機能を有する港にしていく、あるいは別な言い方をすれば、ウオーターフロント事業というふうに考えていいのじゃないか、こう思います。

 一方において、環境修復、創造型の公共事業ということは、今長官話をされましたけれども、このことも当然考えながら、海というものは多くの人々の憩いの場になるべきだ、このように思っております。そういう願望というものは非常に多くの、特に都市住民の皆さん方にあるんじゃないか、かように思います。

 ですから、従来の港とは違って、新たなる漁村集落というもの、これはもう新たなるコミュニティーと考えたらいいのではないかと思うんですね。そういう意味で、従来型のやり方というものを現代化といいますか、国民の皆さん方の要望にこたえるという形で積極的に拡大すべきだ、私はこういう考えを持っている次第でございます。

 海を知っている人、海の魅力に取りつかれている人というのは海のすばらしさというものをよく知っているんですけれども、案外そういう人たちが少ない。ですから、都市と農山漁村というのは共生、対流の間柄にあるということを前提に、これからの公共事業も積極果敢に進めてまいりたい、かように思っております。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

一川委員 大臣お話しのように、私もやはり漁港というような場所を通じて、海に親しみまた魚に親しむということが、ある面ではまた日本型の食生活をしっかりと定着させるということなり、こういった厳しい水産関係の環境の中で、国民のいろいろな食生活をまた新たな方向へ引っ張っていくということにもなろうかと思いますので、ぜひお願いをしたいと思うんです。

 それから、大臣にもう一つ、私も、今回の中央省庁再編成にも絡んだ問題でございますけれども、海岸整備に関する仕事がありますね。従来、建設省所管の海岸整備だとか、あるいは運輸省所管の海岸整備だとか、あるいは農地海岸だとか、水産海岸とかと、四つぐらいに分かれてお互いに縄張り争いをしながらやっていたと思うんです。

 農林水産大臣ですから両方に関係するわけですけれども、漁港あるいは漁場の整備ということも含めて、こういった海岸整備ということも、各省庁の縦割り的な弊害をだんだん除去しながら、できるだけ効率よくスムーズにそういった整備ができるような体制へ移行すべきだというふうに思いますけれども、そのあたり、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 一川先生御指摘のとおりでありまして、これも海岸整備というのは、海岸防護のようなそういう考え方で、今まで物理的に海岸を保全しようという考え方が主流だったと思います。

 しかし、ちょっと沖合に魚礁などを入れながら静穏度を高めるというような方法で、これは非常に大きな養殖魚礁、養殖場ができるということも考えられるのですね。これこそが、力で波を抑えるということじゃなくて、自然の力を利活用して保全していく、そして水産動植物の保全や増大を図っていく、そういう手法というものはもう既にとられていると思います。これは、私どもも積極的に他の省にかかわる事業も含めて展開してまいりたい、かように考えている次第です。

一川委員 ぜひそういう方向で積極的に取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 それでは、ちょっと話題を変えますけれども、水産資源全体の管理の話題は、前の質問の折にも、現状のTAC制度の問題も含めてお聞きしたことがあるわけですけれども、若干、世界全体の水産資源といいますか、水産物の需給の動向みたいなものがちょっとまだ頭に入り切らないわけです。

 長官にそのあたりまずお聞きするわけですけれども、平成十一年に、FAOは、世界各国の漁獲能力の管理ということを一つの目的としました行動計画というものを採択したというふうにお聞きしております。日本もこの場で審議されていますように、いろいろなことでこれから資源管理に入るわけですけれども、では、世界各国全体はどうなっているのだ、本当に皆さんまじめにやっていただいているのかねということも含めて、ちょっと気になるところでございます。

 そのあたり、政府としては、世界全体のそういう動きというものをどのように今把握をし、今後それがどういうふうな方向へ向かうのかということについての認識をまずお聞かせ願いたいと思います。

渡辺政府参考人 まず、世界全体としての需給の見通しでありますけれども、資源の悪化ということがFAOでも言われております。世界の主要魚種のうち約七〇%は過剰に漁獲されているか、あるいは最大限に利用されている状態、こうなっております。一方で、開発途上国を中心といたしまして、人口増加、経済成長に伴う食生活の変化が見込まれるわけであります。

 こういう二つの要因を背景といたしまして、将来的には世界の水産物需給は逼迫をすることも予想されているというふうにされております。FAOが一九九五年に公表いたしました二〇一〇年の水産物需給見通しでありますが、最悪のシナリオの場合には、世界全体で五千万トンの水産物が不足するという試算がございます。

 今、先生から御指摘がありました平成十一年採択の国際行動計画でありますけれども、我が国は、他国に先駆けまして、非常に危機的な状況にあるとされましたマグロはえ縄漁業について、二〇%のスクラップ減船を実施しているところでございますし、台湾や韓国等にも協調することを要請しているところであります。

 そのほかのものはどうかということでありますけれども、これはまだ率直に申しまして、行動計画に従った対応は緒についたところという状況であります。何らかの計画を立てましたということで、予備的評価を実施しておりますという報告がございました国が二十八カ国という状況になっております。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

一川委員 そういった世界全体の中で、水産物の需給が今後どういう動向を来していくかということは大変関心のあるところでございますし、また、我が国も、当然ながらそういうものの影響を相当大きく受けるわけでございますので、全体の情報の収集等について、また今後どういう方向へ向かっていくかということも含めた対応について、正確な情報の収集をお願いしたい。また、我々もまた別の機会にそのあたりをお聞かせ願いたいというふうに思っております。

 それと、これも長官にちょっとお尋ねするわけですけれども、今、水産資源が非常に枯渇してきているということは事実でございますけれども、これは国際的にも、あるいは日本の国内にとっても、また日本の国内の場所によっても違うと思いますけれども、なぜこんなに水産資源が悪化したのかという原因めいたものが、人によっていろいろと濃淡があるわけです。

 私たち日本海側の人たちから言わせると、一つは、やはり乱獲によってそういう資源が基本的にはだんだん減ってきたのだというのはベースにあるわけでございますけれども、また一方においては、水温の変化によって魚の回遊のコースが変わってきたのではないかというようなことを言う人もいるわけです。ですから、もっと広い範囲で見れば、そんなに資源は減っていないのだというようなことを言う人もおりますし、従来魚をとっていた地域からすると、そこが非常に少なくなったということが当然言えるわけです。

 長官、どうなんですか、こういった水産資源が非常に悪化してきた原因というのは、世界全体のそういうものと、日本の国内、日本の周辺の状況とは違うものなのか、そのあたりのお考えをまずお聞かせ願いたいと思います。

渡辺政府参考人 まず、日本周辺の状況でありますけれども、対象といたしまして、八十一系群の四十二魚種につきまして資源状態を追いかけておりますが、総じて悪化ないしは横ばいという状況でございます。

 これは、三つぐらい要因があろうかと思います。

 一つは、やはり沿岸域での開発に伴う藻場だとか干潟の埋め立て、海砂利の採取、自然海岸の減少、繁殖や保育の場が少なくなってきているという漁場環境の悪化という点が挙げられます。

 それから二つ目には、やはり漁獲能力の向上、言葉はきれいですけれども、ちょっととり過ぎということがございます。それには、漁船が大型化をし、漁労機器も高性能化をしているという点がございます。

 そして最後に三つ目、これは浮き魚類でありますけれども、先生御指摘になりましたように、水温であるとかえさの変化によりまして、そのコースが変わるあるいは魚種が交代をするということで、資源の状況が悪くなっているものがございます。

 ただ、国際的な資源動向といたしましては、先ほどちょっと触れましたけれども、FAOの報告によれば、やはり主たる原因は過剰な漁獲ということになっております。

一川委員 それで長官、これはちょっと見通しが難しいかもしれませんけれども、今我が国も考えているようなやり方で水産資源の管理に入った場合に、大体資源が回復するというのは、例えばどの程度回復するという見通しなのか。

 漁業関係者にとっては、今それは我慢はするけれども、では、いつまで我慢したらいいのだというようなことが当然言えると思うんです。五年なのか十年なのかということも含めて、そんなはっきりしたことは恐らく言えないのかもしれませんけれども、おおよそどれくらいをめどにすればいいのかなというふうに思いますけれども、いかがですか。

渡辺政府参考人 大変難しい御質問でございます。

 私たちは、計画をどのぐらいのスピードで立てるかということを問われれば、ここ三、四年以内に資源回復計画というのは立てたいと思っております。

 それから、その資源回復のための措置を実行する期間としては、おおむね十年間ぐらいはやって、その中で、魚種によって早期に完了するもの、あるいは十年引っ張るもの、こういうふうになるのではないかと思いますが、少なくとも底を脱するという期間はさほどかかるものではない、もちろん魚種にもよりますが。

 例えば、秋田沖のハタハタの資源は、最盛時に戻ってきているわけではありませんけれども、一番低位の水準を脱して、今上昇の方向にある。これの背景になっておりますのは三カ年の休漁ということでございます。

 非常に抽象的なことを申し上げましたけれども、できるだけ急いで回復計画を立て、その回復に必要な期間、休漁だとか減船の措置をとり、そして早く底を脱したいというふうに思っております。

一川委員 やはり定期的にそういう情報を関係者の方に流してあげるということも大変大切なことだと思いますので、今後ともよろしくお願いをしたいと思っております。

 そこで、私の質問、最後にさせていただきます。

 大臣にお聞きするわけですけれども、我が国は世界最大の水産物の輸入国である、これはまた非常にある面では残念なことなのですけれども。先ほど来、水産庁長官のお話によると、世界全体の水産資源の現状なり今後の動向というのは、まだ正確につかみ切っていないというところが一方であるわけですね。そうしますと、世界最大の水産物の輸入国である日本というのは、ある面では世界全体の水産物資源の管理について相当大きな責任があるのではないかということが当然言えるわけですね。

 私たち地元でも、私は石川県ですけれども、石川県の場合でも、こういった基本法の流れに即して、恐らく各県もそうかもしれませんけれども、県内の水産振興ビジョンみたいなものをこれから具体的につくっていこうとするわけですね。そうしますと、水産関係、漁業者にとっては、もうこれ以上輸入水産物はやめてほしいというような、そういった切実な声というのは当然あるわけです。

 しかし一方、消費者とか、あるいはまた市場関係者といいますか流通関係者に言わせると、いや、それはある程度輸入に依存せざるを得ない、だからそれは安定的にやはりそういうことに対しての施策が必要だということもおっしゃいます。それからまた、つくり育てるといいますか、そういった養殖というものについても相当関心が高まってきていることは間違いないわけです。

 片や、そういうことによって、地域性というか地域のそういった水産の特色というものはだんだんなくなってくるわけですけれども、こういう一つの流れの中で、これから我が国の水産物の輸入というものは基本的にはどういう姿勢であるべきなのかというところを、これは大臣の今のお考えで結構なのですけれども、そのあたりの御所見をお伺いしたいというふうに思っております。

武部国務大臣 一川先生のこれまでの御議論は極めて大事な論点だ、かように思います。

 国際的に資源をいかに管理するかということについての情報収集ということと、また、我が国がそれらについて国際機関等に対してもリーダーシップを発揮するということは極めて重要な考えだ、かように思います。

 同時に、本基本法がねらいとしておりますように、水産物の安定供給ということは、我が国水産業による生産では需要を満たすことができないものについては、これは輸入はやむを得ない、輸入の確保も重要であります。しかし、水産物の輸入によって資源に影響を与える、あるいは資源の管理や水産物の生産に支障が生ずる、こういう場合には当然輸入制限や関税率の調整が必要だ、かような認識であります。次期WTOの交渉におきましても、資源の持続的利用に貢献する貿易ルールが確立されるべきであるということ等についてもしっかり主張してまいりたい、かように存じます。

一川委員 以上で終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、松本善明君。

松本(善)委員 農水大臣に伺いますが、ワカメ、ウナギのセーフガードの発動についてであります。

 これは私、水産業とか漁業が大事だという農水大臣を初めとする答弁が本物かどうかという、いわば試金石だと思うのです。これはどうなのかということ。農水省は、三月十四日に水産二品目の政府調査を開始するように財務、経済産業の両省に要請しました。もう二カ月。どうなっているのだと。政府調査を開始するかどうかを検討するのに何で二カ月かかるのか。現場では、国はやる気があるのかと言っています。

 幾つもの例がありますけれども、例えばワカメについて、東北の市長会が早期発動を強く要望している。五月十五日です。御存じと思います。岩手県の宮古の市長さんは、このままの状況が続けばワカメ養殖をやめてしまう漁業者が出てしまう、漁業者をつぶしてもいいのか、こう言っている。

 このままで発動しませんでしたら、三陸ワカメは、どこもそうでしょうけれども、日本のワカメはなくなりますよ。そういう問題に直面しているのだという認識があるのかどうか、本当にやる気があるのかどうか、まず聞きたいと思います。

武部国務大臣 これは、国内生産者にとっては極めて深刻な状況にあるということを認識しております。

 また同時に、今委員御指摘のような三省間での協議、検討をしている最中でもございます。一方、構造調整の推進が急務である、かような認識も当然でございまして、いずれにいたしましても、農林水産省としては、政府調査の早期の実施に向けて引き続き努力してまいる所存でございます。

松本(善)委員 ところが、実際どうか。水産庁の栽培養殖課長が今月の二十二、二十三の両日、岩手、宮城両県を訪れて、関係漁民に何と説明しているか。セーフガード発動は難しい、こういう説明をしているのですよ。これは私、さっきも自給の問題が出ましたけれども、食料の自給というのは国民の生存にかかわることで、侵すことのできないものだと思います。

 それから、竹中経済財政担当大臣が二十五日に農水省で講演している。報道では、竹中氏は、追い貸ししてもだめだと思うようなら貸してはだめだと。追い貸しと同じようにこのセーフガードを考えている。とんでもないことだと私は思うのです。こういう考えだと、これはセーフガードということにならないですよ。セーフガードというのは、漁村や水産業を本当に大事にするかどうかというところで決まるのですよ。

 農水大臣に聞きたいのは、閣内でもそういう意見が出てくると私は思うのです、経済産業省だとか財務省だとか。それから経済界でも、開発輸入をやっている企業だとか、貿易を中心にしてやっている企業だとか、いろいろな意見が出てくると思うのです。断固としてそれと闘うということなしにはこれは実現しないのですよ。農水大臣にその決意があるかどうか、聞きたいと思います。

武部国務大臣 今、水産庁の担当課長が発動は困難だという、そういうような発言をしたという報道のお話でありますが、これはそういうことではないということをまず弁明しておきたいと思います。

 これは、輸入の増加と国内産業の損害の因果関係の証明が現時点では大きな課題となっていることを説明したということでありまして、セーフガードの発動自体が難しい見通しであると発言したものではございません。

 また、今、農林水産大臣としてはやる気があるのかどうかというお話でございますが、私どもは、ルールに従ってやろう、そういうことで今政府調査の早期開始に向けて努力しているわけでございまして、これはいろいろな声があることは当然でしょう、また、いろいろなことが出てくるでしょうが、農林水産大臣は農林水産大臣としての立場というものをきちっとわきまえて対応しているということを御理解いただきたいと思います。

松本(善)委員 栽培養殖課長の発言は、岩手日報を初め幾つも幾つも報道されていますということだけ言っておきましょう。

 それで、その決意どおりやってほしいと思うんですけれども、私は、それをやるについては、この水産基本法の水産業とか漁村の多面的機能というものの位置づけがやはり極めて弱い。これは前にも質問で指摘をしましたけれども、修正で少し広げるというふうになるようでありますけれども、やはり真っ正面からこれをちゃんと位置づけないといけない。それをしませんと、これはさっきの竹中さんのような意見になっちゃうんですよ。そこが、今の点では非常に弱い。

 そして、この点を、今度の法律をすぐ、もう既にきょう採決ですから変えるというふうにいかないでしょうけれども、今後、水産業や漁業の多面的機能というのを真っ正面に位置づけるという方向へ持っていく考えがあるかどうかを聞きたいと思います。

武部国務大臣 私どもは、常に真っ正面に受けとめて政策を実施している、そういう所存でございます。

 今先生の御指摘の多面的機能ということについては、これまで余りなかったというのが不思議なくらいだ、そういう認識でございまして、私個人は漁村にあるわけでありまして、そういうことの重要性を常々感じてまいりました。

 したがいまして、国内外に向けまして、こういった議論や調査の積み重ねというものをこれから重視してまいりたい、かように存じておりますし、基本理念としては最も基本的かつ重要な事項、かように規定している次第でございますので、御理解いただきたいと思います。

松本(善)委員 先ほど来も、閣内でもそういう意見、経済界でもいろいろな意見があるということをなくすためにも、やはり水産業、漁業、漁村の大事さというのを位置づけないといけない。

 漁民というのは人数は少ないですよ。だけれども、日本は島国なんだ、島嶼がいっぱいあるんだ。地域経済に対する貢献という点では農業と劣らないですよ。そこのところをはっきり国民全体に、例えば国産のワカメが食べられなくなったら国民全体の問題になる、そういうことをやはり基本法できちっと位置づける必要があるというふうに思うんです。

 私は、これからの漁業関係、水産業関係の予算との関係もあるんですが、漁村を守る、沿岸漁業を守るという点では、やはり漁村での所得補償、これはもう決定的だと思うんです。今、やはりセーフガードだけでいつもやるわけにいかない、恒常的に漁村を守るという体制になる、そのためには、漁業、水産業等、漁村での所得補償を確立するということが必要だと思いますが、その点についての農水大臣の決意を聞きたいと思います。

武部国務大臣 漁業経営の安定対策はさまざまあると思いますし、このことを真剣に考えていくことは重要だと思っております。ただ、他産業とのバランスも考えますと、水産業、漁業について所得補償ということを直ちに取り入れることができるのかどうかということについては、私は疑問視している次第でございます。

 いずれにいたしましても、漁業経営の安定対策ということは、諸般いろいろ考えられるわけでございます。また、構造政策も、ワカメのことについても、今鋭意やっているところでございますので、そういった安定対策、諸対策を総合的に講じていくというようなことで、漁民を守り、漁村を繁栄させていく、そういう考え方で努力したいと思います。

松本(善)委員 やはり市場原理万能の考えでいけば漁業はつぶれるんですよ。水産業もつぶれるんですよ。今までそれについて歯どめがなかったから、今のように漁業や水産業がもう沈没しそうになっているんですよ。

 そこのところをはっきり据え直す。そして、市場原理万能じゃないんだ、日本の地域経済、日本経済を守る、日本の国民の食料の安全保障というのはそういうことでしょう。これは妥協できない性質のものだ、そういう位置づけでやってほしいということを要求して、質問を終わります。

堀込委員長 次に、山口わか子君。

山口(わ)委員 社会民主党・市民連合の山口わか子でございます。

 水産基本法案が提出されまして、今までに多くの議員の皆様が御質問をされましたし、また、四人の参考人の皆様からも漁業の現状や悩み、今後の課題についてさまざまなお話をお聞きしましたし、きょうも朝から何人かの議員の御質問で、大臣の決意も述べておられました。そんな状況で、最後になってしまったわけですが、さらに確認したい部分について御質問させていただきたいと思います。

 先ほども民主党の佐藤議員から御質問がございましたが、ハンセン病の問題、あれだけ総理大臣が決意をし、謝罪をしてくださいましたことは大変大きな成果だというふうに思っておりますが、私も、水俣病につきましては、大変痛ましい事件としていまだに心に焼きついているわけでございます。

 この大きな問題というのは、人類史上例を見ない悲惨な有機水銀の中毒として、いまだに多くの人々を苦しめていることではないかと思います。遅く見ても一九五三年に水俣病が発病しまして、以来もう五十年もたっているわけですが、相変わらず、二十万人とも言われる患者さんが発生し、そして慢性水俣病で苦しい思いをし、しかも認定されていない、こういう問題が、今大変大きな問題になっているわけです。

 私は、今までに認定というのが非常に少ない状況の中で、認定されずに、中枢性の感覚障害を初めとするいろいろな、さまざまな症状を示す慢性水俣病が、深刻な社会病であると同時に、非常に差別と偏見の中で多くの人々が苦しみ、そしてなかなか表に出せないでいる、こういう皆様が非常に今問題になっているのではないかというふうに思うわけです。

 国がやはり行政責任をきちっと認めて、未認定あるいは未申請の慢性水俣病の被害者が水俣病として認定される、そして救済されない限り、水俣病は解決されないだろうというふうに思っています。

 このことは農水省も関係があるわけですし、特に、魚介類を介して知らない間に忍び寄った大変信じられない公害病と言われております。このことについて大臣として、今までのこうした被害についてどう思われておられるのか、あるいは、この問題はまだ解決しておりません、これからどうしてこの人々の救済をしていくのかをお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 私も、過去にこのような水俣の悲劇が起きたことは極めて残念なことと思っておりまして、心痛この上ない次第でございます。

 水俣病の問題につきましては、水俣病関西訴訟の原告の方々を除けば、平成七年に当時の与党三党、自民、社会、さきがけ三党による政治解決が行われたところでございます。しかし、水俣病の問題については早期解決を願っておりまして、政府全体として誠意を持って対応したい、かように存じます。

山口(わ)委員 ありがとうございます。

 この問題は、農水省に限らず、厚生労働省の問題でもあるし、環境省の問題でもあるということで、私は常々、一つこういう問題が起こったときにどう早く原因を解明し、どう早く対策をとるかということがとても大事なことだというふうに思います。

 十年も、長くかかってしまったということが大きな問題を起こしたわけですが、そうした場合には、何といっても各省庁との連携というのはすごく大事だというふうに思っているのです。海に関することはいろいろな省庁との関連もありますし、特に公害病についてはむしろ農林水産省は被害者みたいな立場でもありますから、なお他省庁との連携をとっていくことが大事だと思いますが、その辺についての御決意とこれからの方向性をお聞かせください。

武部国務大臣 いずれにいたしましても、先生御指摘のことも含めて、早期に問題解決ができるように最善の努力をしていきたいと思います。

山口(わ)委員 先ほど佐藤議員から御質問がございましたが、この不知火の海は今、チッソの会社の有機水銀のヘドロを含めた埋め立てを行っているというふうに聞いております。海の再生という点で、ヘドロがいつまでも海の底に埋め立てられていることに対して、農水省としてこれから海の再生にどう取り組んでいかれるのかをお聞きしたいと思います。

武部国務大臣 現に、覆砂だとかヘドロの除去なども含めまして、漁場環境整備、環境改善ということについては鋭意努力している所存でございますけれども、先ほど来の御議論でも申し上げましたように、私は、環境修復型あるいは創造型の公共事業とか施設づくりということが必要だ、かように思っております。

 いずれにしましても、漁場環境のモニタリングということ、それから水産基本法第十七条を踏まえて、藻場、干潟の造成等海の環境修復あるいは改良、創造というようなことが新たな公共事業として重要になってくる、かように認識しております。

山口(わ)委員 ありがとうございました。

 この不知火の海は、先ほど申し上げましたように埋め立てをしておりますし、海にいる魚が外へ出ないように網を張っているということもお聞きしました。恐らく網を取り外すときも来るだろうというふうに思います。やはり安全で安心できる魚介類を国民は望んでいるわけですし、手を緩めることなく検査をしながら十分安全な措置をこれからもとっていただきたいというふうにお願いします。

 続きまして、基本法の理念と実効性を高める政策は、何といっても担い手の育成だというふうに思います。

 参考人の皆様からも出されていましたように、中小漁業者、沿岸漁業者の最も大きな悩みは、就業者の高齢化、そして新規就業者の圧倒的な不足、そして女性就業者の劣悪な労働条件と低賃金であろうと思います。中でも幹部船員の育成が急務であって、何とかしなければと思っても高齢者ばかりで、水産高校の卒業生はほとんど乗船してもらえないと参考人の方も言われておりました。そして、単純労務は大半を外国人労働者に頼らざるを得ないということも言っておられました。

 農業でも同じ悩みを抱えているわけですけれども、水産基本法でもこの担い手の対策についてはかなり書かれているわけです。この担い手の育成にこれからどう取り組むのか、漁業に取り組もうとしている意欲のある若い担い手を積極的に確保していく具体策は考えておられるのか、あるいは漁船員の新規就業を支えていくための育成とか技術の伝承をどう図っていかれるおつもりか、お答えをいただきたいと思います。

武部国務大臣 担い手をいかに確保するかというのは極めて大事な課題でありまして、先日有明に参りました際にも、鉢巻きをしている若い漁業青年が私にいろいろな要請をされました。今何をしているんだと言うと、何もしていない、こういう答えが返ってまいりましたので、私は自分が選挙で落選したときのことをちょっと話ししまして、何もできないときが一番大事だ、何もできないときに何もしないでいるのじゃなくて、何をやったらいいかということも考えろよ、こう言いましたら、わかりました、頑張ります、こう言いました。海の青年というのは非常に素直なんですね。

 それだけに、経営の安定ということが一番大事だと思います。経営が零細であるがゆえにかなり無理をした漁業をせざるを得ないというようなこともあると思いますので、やはり経営改善をどのように推進していくかというようなことが第一義的に大事だ、かように思います。

 同時に、経営も、農業の分野では集落営農とか法人化とかそういうようなことが既に行われております。私どもの地元でもほとんど会社になっておりまして、魚をただとってくるだけじゃありません、付加価値を高めるために、これについて加工だとか流通だとかマーケティングの分野に相当真剣に努力しております。冬、漁業ができないときにみんなで市場調査にも出かけている。そういう実態にありまして、むしろサロマ湖のホタテも外国に輸出している、そういう結果も出ているわけですね。

 したがいまして、一口で担い手対策としてどうすべきかというようなことは、あえてなかなか言えないのじゃないか。いろいろな角度から、経営の安定、漁業に対する夢、将来への希望というものをどう創出していくかということが必要ではないのかな、かように存じます。

山口(わ)委員 大臣が言われるようになればいいのではないかと思いますが、現実はなかなかそうはいかないというふうに思うのです。

 資料を見ましても、漁業の就業者は非常にたくさんの方がやめておられ、減ってきていることは事実ですね。二十八年に八十万人いたのが平成十年には二十七万人になってしまったということもありますし、あるいは中小漁業者の賃金も大幅に減っていまして、例えば製造業の平均よりも減っている、あるいは農業の所得よりも減ってしまっているということで、漁業の皆様が今一番低賃金に苦しんでいるのではないかというふうに思っています。

 そして、女性の就業者はさらに深刻でして、一生懸命働いてもなかなかそれなりの収入が得られない。特に被扶養者としての位置づけしかないということもありますし、漁業に働く女性の皆さんというのは非常に内職的な仕事が多いわけですね。そして夜遅くまで働いているという状況が見られ、その割には保障がないということで、基本法にも女性の問題がかなり書かれていますが、何となく夢を持てるのかどうかということさえもあの基本法では見えない部分があると思います。

 そこで、やはり私は、先ほど御質問にもありましたように、何といっても、安定的な経営をしていくためには、その具体策として直接所得補償をしていくということはとても大事なことだと思うのです。先ほど大臣がおっしゃったように、もちろん中にはすばらしい成果を上げているところがあると思いますけれども、全体としてはなかなかそうはならないのではないかというふうに思いますので、この所得補償ということについて、今回の水産基本法の中に触れられていないような気もいたしますが、そこについてこれからどう具体的にお考えになるのか、お聞かせいただきたいと思います。

武部国務大臣 漁業というのは、やはり資源を守り、資源を育て、資源に見合った、いわゆる資源管理型漁業ということを貫いていかなければなりません。その意味では、生産についても一定の制限が強制的に加えられるという場面もあるでしょう。

 しかしまた、これはもう民間企業にはないさまざまな補助政策もとられているわけであります。それは、漁業の安定的、持続的な経営システムを実現しようというようなことで、国の財政支出あるいは地方自治体による施策がさまざま展開されているわけでありまして、基本的には、やはり漁業者みずからが立っていく、意欲を持って漁業に取り組んでいくという経営の安定対策ということを優先すべきだ、私はかように思います。しかも、漁業の範囲というのは非常に広いですね。

 そういうようなことを考えますと、直接所得補償というようなことはなかなか困難なテーマだなというふうに私は認識しております。

山口(わ)委員 先日、有明海に視察に行ってまいりました。ノリの業者さんにもお会いしてきましたけれども、全くノリがだめになったときに、今四千万円もの借金をしているのだそうです。機械と船と両方を合わせると四千万円の借金だと言うのです。利子補給もするし、低利の貸し出しもあるけれども、借りても返せないという非常に大きな悩みをおっしゃっていました。

 私は、やはり臨機応変にといいますか、必要なところはきちっと漁民の皆様を支える仕組みというものはとても大事だというふうに思っております。

 そこで、所得補償のことは続いて大臣に、これから政策としてお考えいただきたいと思いますが、もう一つは、やはり災害補償の問題だというふうに思います。

 人間の災害補償もですし、漁業の災害補償も両方あると思いますが、特に海の場合は遭難あるいは事故が非常に多いということで、少しずつは減ってはおりますけれども、それでもまだまだ死亡とか病気、そういう災害が非常に多い中で、例えば船員保険、漁船保険ですか、暮らしの共済とかそういう保険もあるようですけれども、なかなか保険料が高くて払えないという嘆きも聞いております。

 こうしたことに対する、政府としての災害補償に対するこれからの具体的な政策がおありかどうか、お聞かせください。

武部国務大臣 まず第一に、漁業共済制度の問題ですが、有明については、臨時特例的に掛金半分、補償五倍というようなことで実施しようとしております。

 また問題は、この共済制度になかなか加入しないという実態がありまして、これを加入促進するためにどうしたらいいかということが一つの課題だ、このように認識しております。

 さらに、平成十四年度、共済制度全般を見直すということを今試みようとしておりまして、そういった中で、漁業共済制度がいかにあるべきかということを検討してまいりたい、このように思っております。

 また、海難事故等への対応、これは本当に深刻な問題でございまして、保険もありますけれども、それ以前に漁労の安全対策というものが非常に重要で、そういう海難事故が起こらないようにどうしていくか、その事故防止に関する啓発活動等、関係省庁とも連携して必要な対策を講じていく必要がある、かように考えております。

山口(わ)委員 ありがとうございました。

 この保険の加入にしましても、やはり掛金が高いということも大きな悩みだというふうに思っております。これからも、漁船の皆様、漁業に関する皆様のやはり生の声を聞きながら、その人たちにとってよりよい政策をこの基本法の中で具現化していただきたいということをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

堀込委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 ただいま議題となっております各案中、まず、水産基本法案について議事を進めます。

 この際、本案に対し、二田孝治君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブの七派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。小平忠正君。

    ―――――――――――――

 水産基本法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小平委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブを代表して、水産基本法案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。

 修正案は、お手元に配付したとおりであります。

 以下、その内容を申し上げます。

 第一点は、水産動植物の生育環境の保全及び改善を図るための措置として、森林の保全及び整備を明示することとしたことであります。

 第二点は、多面的機能に関する施策をより積極的に規定することとし、国は、水産業及び漁村が国民生活及び国民経済の安定に果たす役割に関する国民の理解と関心を深めるとともに、水産業及び漁村の有する水産物の供給の機能以外の多面にわたる機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されるようにするため、必要な施策を講ずるものとするとしたことであります。

 以上であります。

 何とぞ全委員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

堀込委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 水産基本法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、二田孝治君外六名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、漁業法等の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子君。

中林委員 私は、日本共産党を代表して、漁業法等の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行います。

 反対理由の第一は、定置網漁業権免許の見直しに関し、法人以外の社団を法人とみなす規定を削除し、いわゆる人格なき社団の優先順位を引き下げ、その一方で、株式会社を上位優先順位に新たに位置づけるという点であります。

 関連した社団は全国に百六あり、関係者は相当の人数に上ります。そして、前回の漁業法改正以降四十年近くもその形態を保持し、漁村集落においてそれぞれ相応の役割を果たしてきました。今回、社団に対する十分な現状の把握や分析もなく、ただみなし規定は当分の経過措置であり、近代的経営を優先するという理由で当該規定を削除することは、関係漁村へ混乱をもたらし、零細な漁業者への切り捨てにつながります。

 法人化等の改革が必要ならば、こうした法的手段で実施させるのではなく、社団自身の努力にゆだね、国はその条件整備への援助こそ行うべきであります。

 また、定置網漁業の免許には、前浜の漁利を漁業者全体へという民主的立場から、多数の漁業者による一人一議決という団体経営を優先させてきました。ところが、株式会社では、出資数に応じた格差が生まれます。また、要件としている譲渡制限の規定が実効ある歯どめになるかは疑問であります。多数の漁業者は、外部企業の参入に反対しています。今回の株式会社の上位優先は、その危惧する方向への一歩であり、条件のよい漁場では外部企業の支配につながりかねないものであり、関係漁業者の利益に反する方向と言わざるを得ません。

 第二に、指定漁業の残り枠の許可と操業権の承継について、従来は一定の要件のある漁業者を優先していましたが、これをだれでも参入の機会を与えられるという問題であります。つまり、残り枠の許可または承継を受けようとする現在漁業を営んでいる者と、外部企業であれ何であれ、同列において認めようとするものです。このことは、資源管理より利益優先になりやすい外部企業が参入したり、有力な大きな漁業会社への集中化も可能になり、この点でも漁業者にとって利益になる方向と思えません。

 今回の定置網漁業権見直しと指定漁業の規制緩和は、担い手不足など漁業の困難な状況のもと、外部の企業等の参入によって効率的かつ安定的な経営を育成することとしていますが、今重要なことは、こうした制度の改定ではなく、漁業を困難にしてきた開発優先や市場原理優先の政治を転換し、今ある漁業者の経営を守り、育成するしっかりとした施策を確立することこそ優先すべきであることを強く指摘して、反対の討論といたします。(拍手)

堀込委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより採決に入ります。

 漁業法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

堀込委員長 次に、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、漁港法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、理事会等において協議いたしました結果、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得ました。

 本起草案の趣旨及び主な内容につきまして御説明申し上げます。

 我が国水産業の基盤である漁港及び漁場につきましては、これまで別々の制度に基づき、計画的に整備を進めてまいりました。

 しかしながら、水産業の健全な発展や水産物の供給の安定を図るといった課題に的確に対応するとともに、漁村の振興に資するため、漁港及び漁場を水産資源の増殖から漁獲、陸揚げ、加工流通までの一貫した水産物供給システムとしてとらえ、総合的、統一的に整備を進めることができる制度とすることが必要となっております。

 また、地方分権の推進を図る観点から、地方公共団体が主体的に事業を展開し、地域のニーズに迅速かつ的確にこたえられる制度へ転換するとともに、近年の公共事業に対する批判や環境問題への関心の高まりにこたえるため、事業の透明性と客観性の確保、効率的な事業の実施、環境との調和の確保を図る必要があります。

 このような状況に対処し、漁港及び漁場を総合的かつ計画的に整備するため、本案を提案する次第であります。

 次に、本案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、題名を漁港漁場整備法に改めるとともに、環境との調和に配慮、水産物の供給の安定及び豊かで住みよい漁村の振興に資することを目的規定に明記することとしております。

 第二に、漁港及び漁場の整備に係る事業を一体として漁港漁場整備事業と位置づけることとし、農林水産大臣は、漁港漁場整備事業の推進に関する基本方針を定めるとともに、漁港漁場整備事業に関する長期計画の案を作成し、閣議決定することとしております。

 その際、水産政策審議会の意見を聞くこととしておりますが、審議会の審議は公開で行うものとし、審議に用いられた資料は公表することとしております。

 第三に、地方公共団体等が特定漁港漁場整備事業を施行しようとする場合には、基本方針に基づいて事業計画を定め、公表することとし、その際には、関係地方公共団体及び関係漁港管理者と協議するとともに、事業計画の案を二十日間公衆の縦覧に供し、広く住民からも意見を聞くこととしております。

 第四に、特定漁港漁場整備事業を廃止し、または停止しようとするときは、関係地方公共団体及び関係漁港管理者と協議するとともに、廃止または停止の理由等を公表することとしております。

 以上が、本案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 漁港法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

堀込委員長 お諮りいたします。

 漁港法の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております起草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とするに決定いたしました。

 なお、ただいま決定いたしました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る三十一日木曜日午後二時二十分理事会、午後二時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十六分散会




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