衆議院

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第17号 平成13年6月6日(水曜日)

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平成十三年六月六日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 滝   実君 理事 二田 孝治君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩崎 忠夫君

      岩永 峯一君    金田 英行君

      上川 陽子君    北村 誠吾君

      後藤田正純君    左藤  章君

      七条  明君    園田 博之君

      高木  毅君    谷田 武彦君

      西川 京子君    浜田 靖一君

      菱田 嘉明君   吉田六左エ門君

      古賀 一成君    後藤 茂之君

      鮫島 宗明君    城島 正光君

      津川 祥吾君    筒井 信隆君

      永田 寿康君    楢崎 欣弥君

      江田 康幸君    高橋 嘉信君

      中林よし子君    松本 善明君

      菅野 哲雄君    山口わか子君

      金子 恭之君

    …………………………………

   農林水産大臣       武部  勤君

   農林水産副大臣      遠藤 武彦君

   農林水産大臣政務官    岩永 峯一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議

   官)           田中壮一郎君

   政府参考人

   (林野庁長官)      中須 勇雄君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 河野 博文君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  岩倉 博文君     左藤  章君

  佐藤謙一郎君     鮫島 宗明君

同日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     谷田 武彦君

  鮫島 宗明君     佐藤謙一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  谷田 武彦君     岩倉 博文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 林業基本法の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)

 森林法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)




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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、林業基本法の一部を改正する法律案、林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案及び森林法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査のため、来る十二日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として林野庁長官中須勇雄君、文部科学省大臣官房審議官田中壮一郎君及び資源エネルギー庁長官河野博文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤田正純君。

後藤田委員 きょうは、発言の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 まず、基本的なことにつきまして農林水産省にお尋ねをいたします。

 森林管理が適切に行われて、かつ山林所有者に何らかの所得補償があるならば国産材の利用は必要ないという考え方が一部あるようです。その点につきまして、なぜ国産材を利用すべきかという基本的なお考えをまずお聞かせいただきたいと思います。

遠藤(武)副大臣 まず、武部大臣は参議院本会議に出ておりますので、大変僣越でございますが、私から答弁をさせていただきたいと存じます。

 前段、後藤田委員おっしゃったことについては、寡聞にして私、余り仄聞したことがございません。

 ただ、やはり、川下の製材業や加工業が振るわなければどうしても森林の管理がおろそかになり、かつまた、林家そのものも振るわなくなるわけでありまして、当然、担い手も急激に減ってきた、こういう事実がございます。

 したがって、我々が、今度の林業基本法においては、森林の持つ多面的機能を生かしつつも木材の利用促進を図るというところに重点を置いているわけです。

 ただ、後藤田委員もう既に御存じと思いますが、我が国の製材、加工業は、諸外国の外材に押され、かつまたコストの面や加工の技術の面で、例えばプレカットとかあるいは乾燥技術、さまざまな面ではるかに水をあけられておる。だから、利用を促進するには、コストの低減を図りつつも利用が促進できるような、そういう技術的あるいはコスト的な面について今度の林業基本法によって支援をしていき、そして利用を促進させていく。当然のことながら、川上の林業の方も何とか維持保全できていくという構図ではなかろうかと思います。

後藤田委員 基本的な共通認識として、今の御答弁からしますと、国産材は利用するべきである、利用する方向であるということで認識がまず一致すると思うんです。

 しかしながら、御承知のとおり、構造的な問題がございます。日本における人件費の問題、そして今副大臣がおっしゃられましたように、いわゆる輸入材の攻勢という中で、川上から川下まで大変今厳しい状態であるということは御承知のとおりと思います。

 つまり、いわゆる製材業という工場、そこで製品が販売をされて代金が回収されます。そして、その代金によって丸太を購入します。丸太を購入するのは林業家からするわけでございます。そして、それによって伐採をする。そしてまた、伐採した後に植林をするという川上から川下までのサイクルがあります。

 そこに対して、しかしながら、今おっしゃったように構造的な問題があって、日本の林業を守りながら、そして林業、製材業を守っていく、このサイクルの中のどこに重点を置くか、そしてまた今まで行われてきたいわゆる林野庁を中心とする予算措置について問題があったか、そしてまたこれからどこに重点的に予算を配分していくかということにつきまして、御意見を聞かせていただきたいと思います。

中須政府参考人 ただいま御指摘ございました一連の循環の輪の中でどこに基本的な問題があるかという意味でいえば、やはり我が国の場合、林業という形でつくられた木が加工され流通に移っていく、やはりそこに一つ残念ながらネックがあるというのが指摘されると思います。

 それともう一つは、それとも関連するわけでありますが、消費者の需要、木材に対しどういうものを求めているかということになかなか的確に対応しがたい。これは、木というのは植えてから五十年、百年とかかるものでありますから、その場で対応といってもなかなか難しい、そういう本質的な点は持っております。それにしても、例えば、今品質とか性能ということが強く言われるのに対して日本の国産材というものが十分それに対応できていないというような問題点を抱えている、こういうふうな問題意識を私ども持っておりまして、新しい基本法のもとで、そういったネックを解消するということに努めていかなければならないと思います。

 ただ、いろいろな資金、国からの支援というものをどこに重点を置くかという意味でいきますと、やはり今、林業の一番の現場、森林の整備、保全を図っている現場が大変厳しい状況にある、そこに最後のしわ寄せが来ているわけであります。そこでの森林整備なり保全にやはり国の支援ということをしっかりやっていく、これがやはりウエートづけとしては一番重要な点ではないか、こういうふうに思っております。

後藤田委員 今長官のお話を聞きますと、川下なのか川上なのか、最後にまた川上の方に改めて森林保全という形で中心的に予算措置をしようということでございます。

 平成三年、いわゆる十年前の林野庁の予算、そして昨年の予算、大体四千億から五千億ぐらい全体でございますね。その中で非公共と公共という割合がございますけれども、大体三千億以上を超えますのが一般公共です。そして、非公共に対しては一千億をちょっと超えるぐらいですね。そのような割合になっておりますけれども、私は、川下の方に予算をもうちょっと配分していっていいのではないかなという気がいたしておるわけでございます。

 例えば、林業構造改善事業一つとりましても、製材業に対して、いわゆる川下の皆様に対しての予算措置が必ずしも今までは充実していなかったのではないかなという気がいたしております。

 例えば、先ほど冒頭、副大臣から国産材を前提にして使うということでありますけれども、やはり製材業、それを切って加工して売るという末端の川下がもうからないと、国産材も使われないわけですね。今現在大変経営が厳しいから、しようがなく外材を使っている。しかし、これから国産、内地材がふえていくことによってまた製材業が生き残っていれば、内地材の利用もふえるわけですね。そうなりますと、やはり製材業を今維持していく、そして彼らの経営環境をよくしていくということが私は必要だと思うんですが、林業構造改善事業の中のいわゆる補助事業にしても、たしか原則として内地材を使っている方に対して重きを置いているように思うんですね。外材を使っているところに対しては重きを置いていなかったという今までのやり方です。

 しかし、これからは製材業、いわゆる末端の小売店、例えばセブンイレブンだってそうですしローソンだってそうです、ああいうところの末端の小売がふえないと、結局生産者というのは利益を得られないというわけです。

 林業構造改善事業の実態と今後の改善につきまして、何か策があれば教えていただきたいと思います。

遠藤(武)副大臣 詳細について、施策の進め方については長官から。

 川下か川上かということですが、相対的な予算配分では、川上部分はある意味では公共が入りますものですから、パイはどうしても大きくならざるを得なかった。しかし、昭和三十九年に制定された今までの林業基本法、これは、木材総生産と生産性の向上、それから林業従事者に対する地位の向上ということを基本にしておったわけです。今度の森林・林業基本法というのは、もちろん今までのそうしたものも含め、多面的な機能も発揮させると同時に、木材利用の促進、加工利用の促進というところまで一歩踏み込んだわけです。それはとりもなおさず川下のことではなかろうか。

 ですから、外国のコストや加工技術に負けないような、あるいは乾燥技術も向上させるというふうな方向へこれからは予算が重点的に配分されるもの、そうお考えいただいてよろしいのではございませんか。

中須政府参考人 先生御指摘のとおり、木材産業そのものがなくなってしまえば、幾ら林業といっても物が流れなくなる。そういう意味において、木材産業そのものをいかに支援していくか、育てていくかという観点を我々は決して失ってはならない、御指摘のとおりだろうと思っております。

 ただ、率直に申しまして、林業構造改善事業という事業自体は、まさにその名前が林業構造改善、こういうことに示されているように、我が国における林業の現場から流通まで含めて、そこ全体の構造を改善しつつ競争力のある日本の林業というのを育てようというところに基本的な事業の成り立ちというか、そういうものがあるという意味において、やはり国産材とのかかわりということを事業の一つの柱としている、こういうことでございます。

 ただ、御指摘のとおり、これはそれとして、そういう形で進めてまいりたいと思っておりますが、大変多くの外材もあるわけでございます。木材産業そのものをどう育てていくかということに関しては、それはそれとしてまたいろいろ考え、手を打っていかなければならない、こういうふうに考えております。

後藤田委員 本当に現状は、製材全般を見ても、丸太の利用というのは半分が外材でございます。その現状を考えますと、やはり川下の、たとえ外材を使っていても、その方々の経営安定に向けての国の助成というものを新たにまた考えていただきたい。副大臣がおっしゃられたように、いわゆる川上の方の事業については、私は別に減らす必要はないと思っておりますが、その他非公共ということで、林業構造改善もしくはその他の方法によりまして、たとえ外材をやっていてもそれは仕方なくやっているという状態でございますので、その事業者に対しての支援を含めてお願いいたしたいというふうに思います。

 それともう一点は、間伐の問題でございます。これは、平成十二年、緊急間伐五カ年ということで二十万ヘクタールから三十万ヘクタールにふやしているということでございます。

 間伐自体の考え方ですけれども、民有林、国有林という区分か、もしくは、個人単位もしくは山単位にするか、市町村単位にするか、そしてまた県単位にするか。日本全国の森林保全、森林管理という考え方からすると、例えば個人の山の何割かを間伐する、非常にこれはコストがかかるわけですね。間伐に対しての補助金は、たしか年間大体五百億ぐらいかかっておりますね。これも考え方として、間伐の対象区分というのはこれから本当に今のやり方でいいのか。今いわゆる所有者区分単位というものから団地形成単位というような考え方も取り入れていかなくてはいけないんじゃないかというふうに思っておるんですけれども、その点につきまして教えていただきたい。

 もう一点は、間伐にかかわるんですが、それだけの補助をしながら間伐をしているわけですが、間伐材のその後の川下の利用方法について、ちゃんとこれは林野庁を含めて管理をしているのか。間伐材の利用促進についての施策はおとりになっているのか。その二点、お願いいたします。

中須政府参考人 一つは間伐の実施形態のお尋ねでございますが、そこはまさに先生がおっしゃったとおりだと思います。

 これまでの間伐というのが、基本的に森林の所有者がそれぞれ個別に自分の山の管理として間伐を行っていく、そういうことだったわけでありますが、大変林業をめぐる状況が厳しい中で、そういう形での間伐というのが非常に手抜きというか、手が薄くなってきている。そこで、今進めております、昨年度から開始いたしました緊急間伐五カ年計画においては、御指摘のとおり、ある一定の地域的なまとまり、その中で効率的に間伐を進めていく、それをできるだけ重点的に取り組んでいこうではないか、こういう考え方です。

 ですから、一人一人がというよりも、市町村長とそういう所有者の集団というのが協定を結びまして、計画的にこういうふうに間伐を進めようという計画をつくって、それに乗せて間伐を実施していく、そういう場合に国からの手厚い助成が行われる、こういうような仕組みを導入しているという意味において、まさに先生御指摘の方向に我々もかじを切りつつある、こういうことでございます。

 それからもう一点は、間伐というのは確かに総合的な対策でございまして、例えば林業現場でも、ただ木を間伐で切るということだけでは済まないわけであります。作業道をどう整備し間伐された材をどう搬出するか、あるいは機械をどう搬入していくか、そういうことを総合的に考え実施しなければならないという点で、ただ間伐に補助をするというだけでは済まないわけで、例えば機械の導入に対して助成をするとか、そういうものとの組み合わせで総合的に進めなければいけない。

 それからもう一つは、まさに先生御指摘になりましたように、間伐した材が我が国の木材市場で使われていくということを確保しない限り、切ってもただその場に捨て置かれるだけ、こういうことになるわけでありまして、そこは今回、ただいま約五百億円というふうな御指摘がございましたが、その五百億の中で、間伐材の利用促進対策ということも含めて、これに約三十億弱投入しておりますが、そういうことを含めて対応をしております。

 特に、その場合、間伐材ということでは、これからの用途の一つの大きな柱として、公共事業に間伐材を利用する、こういうことがございます。これは、私ども自体も、農林水産省自体も公共事業を持っておりますので、その中で積極的に取り上げていくということと同時に、国土交通省等にもお願いをして、各種の公共事業の資材として間伐材を使う。あるいは、畜産等と提携して畜舎の建設に間伐材を使う。そのほか、もちろん建築材あるいは生活用品、事務用木製品、多様な分野で間伐材の利用促進を図る。これらを一体として進めていかなければならない、こういう考え方で取り組んでいるところでございます。

後藤田委員 今長官御指摘いただきました、まさに公共事業に対しての利用、結局木がたくさん、できるだけ使われればいいわけでありますから、これは構造物として競合するのは鉄であったりコンクリートであったりというふうに思います。

 しかしながら、木の利便性、例えばCO2の排出量にしましても、意外に木というのは、コンクリートに比べると五分の一ぐらいしかCO2を排出しないという意味で環境にも大変いいものであるというようなこともどんどん指摘をして、国の事業だけじゃなくて、私は大変思うんですけれども、また皆様方にお願いしたいんですが、総務省と一緒になって、県や市町村単位の公共事業に対しても木材利用の促進についてぜひとも協力していっていただきたい。

 国土交通省におきましては、昨年、十二年度に建築基準法の改正がたしかあったやに聞いております。いわゆる材料規定から性能規定ということで、木も使われるようになっておりますね。「木材のすすめ」とかというのも、これは国土交通省と林野庁さんが一緒につくったもので、確かに使われております。今までは、ヨーロッパの方はいわゆる集成材を使った高構造物、体育館を初め、あとホールとか、それも、昔だったらこういう資料にはいつも外国の例しかなかったのが、結構日本の例がよく載っています。これは、本当に皆様方の大変なる御努力だというふうに思っておりますので、ぜひひとつ、今度は区切りを総務省、いわゆる地方自治体との関係の中で、木材推進を皆様方にぜひ協力して推進していただきたいというふうに思っております。

 それともう一つ申し上げたいのは、今度は、ダイオキシン対策ということで、各小規模製材業者は、自分の会社に木くずを燃やす設備をしろということを、国からもそうなんでしょうが、県からもいろいろと要請を今受けているようであります。御承知のとおり、この設備投資にはかなり金がかかります。そして同時に、温度管理、そしてまたダイオキシンの調査というものは、月にまたランニングコストがかかるわけですね。

 これを皆様方が進めていく上で、実際ダイオキシン対策というのは、私は産業別に違っていいと思うのですね。その歴史があったり、各産業によって性格が違うわけですから、十把一からげにやるわけにはいかない。

 川下の製材業に対してそういうことを推し進めているのですけれども、それをやる以前に、一方では、川上では森林組合とか事業者組合というのをつくっているわけですけれども、川下の、木くずだとか樹皮、そういうものを処理する施設というものも、私は共同体的な意味合いで今後やるべきだと思うのですね。焼却炉はありますよ、大きいものが県に大体一つか二つ。それも、更新するときにまた同じような設備を更新しようというようなケースが見受けられるのです。

 いわゆる循環型社会の世の中になって、環境省とかそしてまた厚生労働省とか、いわゆる縦割りじゃなくて横の連携というのがこれから必要になってきます。そうなりますと、そういった焼却施設も、個人個人に何百度以上で燃やす設備を置け、そういう酷なことを言うのではなくて、流域全体で、県単位ではなくても流域単位、広域単位で、例えば、燃やすことはもちろんですけれども、再利用、そして売電、また新素材、そういったものをつくる大きなプラントをつくっていく、そんな支援を、そしてまた、そういった方向での設備をつくるようなことを各自治体にもぜひ協力をしていただきたいというふうに思うのですが、その点について、林野庁長官、いかがでしょうか。

中須政府参考人 御指摘の問題については、二つの側面があろうかと思います。

 一つは、例えばダイオキシンの問題で申し上げれば、製材工場で出てくる木のくずを燃やせば、本当にわずかなものなんでしょうが、多少なりともダイオキシンがあるということで、いろいろ規制がかかってくる。これは、低温で燃やすことが一番よろしくないと言われているわけでありまして、個々の製材工場ごとに高温の炉を導入する。大変お金がかかる。そうであれば、地域全体としてそういうものを処理する。高熱で処理をする、高温で処理をするということが可能になれば、バイオマスという考え方に沿って、燃やしたものをまたいろいろな形でプラスの面で使えるのではないか、そういう意味での取り組みを考えるべきではないか、御指摘のとおりだろうと思います。

 そういう点で、今回のこういうダイオキシンの問題等を契機として、そういう廃材の焼却という問題をもっと積極的に取り上げるべきではないか、こういうことで、一部では具体的な地域でそういう取り組みの機運もございます。我々は、ぜひそういうものを支援して、国の助成対象にしていくというようなことを含めて、積極的に対応したいというふうに思っております。

 それからもう一つは、やはり木材の、冒頭のお話とも関連するわけでありますが、国産材の流通というものを円滑にしていく、消費者が望むいろいろな木材というものの品ぞろえを豊富に提供していくということになると、小さい製材工場が個別に事業をやって物を供給していくというところに、なかなか限界があるわけであります。

 例えば、最近で言えば、松阪に木の加工のコンビナートというものが大変大きな規模で竣工いたしました。こういう形で、大規模な拠点的な加工施設、共同利用施設になるわけでありますが、そういうものをつくれば、木材の流通の面、消費者が必要とするものを豊富に供給していける、品質的にもすぐれたものを供給するという意味での対応と、先生が御指摘になったような例えばダイオキシンの問題、そういうことについてもまた新しい局面が開かれてくる、そういうような両方の側面を持っているというふうに思っております。

 そういう点で、私ども、そういう構想というか考え方については、今後積極的に、これは事業の実施と絡む問題でございますから、役所が命令してどうこうということではございませんが、そういう機運が高まって、それを我々が支援していくというふうな方向で努力をしていきたいと思います。

後藤田委員 今回の法改正に当たりまして、これからまた予算編成も中身が当然変わってくるというふうに思っております。そして同時に、環境省そして厚生労働省、縦割りではなくて、さまざまな省庁と連携してそういう事業をやっていかなくてはいけないというふうに思っておりますが、この点については、副大臣、どこが音頭をとってこれから進めていくのでしょうか。

遠藤(武)副大臣 先ほどからお伺いしていて、後藤田委員の森林及び森林産業に対するお心の濃さを理解できたと思っていますが、川下、いわゆる木材加工産業あるいは流通産業が栄えなければ、当然、川上の方では人材の確保すらできない、そういう構造になっています。

 この構造改革をするには、やはり我が国の零細な木材加工業者、もう個々の努力の範疇を超えた現状にあるわけですから、こういうところにやはり手を差し伸べていかなければならぬと思っております。やはりその先導役をとるのは、今回、ただ単に生産性の向上や地位の向上から一歩踏み込んで、利用促進にまで踏み込んだ林業基本法を用意した我が農水省、特に林野庁が革新的な意識を持って取り組まなければならぬ。

 特に木材利用に関する、例えば学校、公民館などあるいは郵便局など、そうした公共的な建物にどんどん木材を利用していく。しかも、法隆寺の例でわかるように、千二百年ももつ木造建築だってあるわけですから、そういう意味では、木造を、木材を積極的に利用したところには、文部省なりなんなりが奨励措置をとる、あるいは財務省においては租税の特別的な措置をとるとか、そういうことを働きかけていく必要があろう、このように考えています。

 同時にまた、私自身、古代文明のさまざまな消長、衰亡を見てきた中で、やはり森なき民は滅び、農なき国は衰亡するのかな、こういうことを国民の皆さん方に訴えて、今百二十数万戸の住宅建築、四五対五五でありますが、ですからこれらを、もう少し国民の皆さん方が木材の価値を認めていただけるような、そういう運動というものを積極的に私たちがしていかなくてはならぬのかなという決意を新たにしているところでございますので、御支援のほどをお願いしたいと思います。

後藤田委員 今副大臣から、農林水産省が率先して、これから森林保全並びに川上から川下までのいろいろな施策をおとりになるということでございます。

 きょうは、いわゆる国産材を使っていくんだという意思を十分確認ができましたし、そして同時に、木材利用をこれからふやしていくために、具体的にいろいろな措置をとられるということも確認をさせていただきました。それと同時に、小規模川下の経営者に対してのいろいろな支援措置もこれからとっていくというお言葉をいただきましたので、これからも、この新しい法改正のもと、皆様方の御努力を、私も微力ですが支えていきたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、白保台一君。

白保委員 百年先の森林を見通した長期ビジョンを示し、今すべきことが何かわかるようにすることが必要である、わかりやすいビジョンを示すことが必要である、こういった林政審議会の意見等もございます。

 当然、今回の法改正の中で、これまでの基本法の中でも規定されましたように、やはり基本計画を法律に規定していくということは大事なことであろうというふうに思うわけでありますが、そういった中で、今回の林政改革大綱においても、「新たな基本政策の展開」の中に「森林の整備目標及び森林資源の利用目標の設定」との項目を掲げております。

 「森林の多様な機能を将来にわたって持続的に発揮させるため、関係者がコスト削減等を図りつつ森林資源の利用等に向けた努力を行っていく指針として、森林・林業の実態も踏まえつつ、森林の整備の目標及び森林資源の利用の目標の設定を検討する。」こういう検討過程を経て、本案は目標設定を明確にしていく、こういうことであろうかと思います。

 そこで、副大臣に最初にお伺いいたしますが、目標設定の意義、そしてまた、それによって期待される効果、これについて明らかにしていく必要があろうと思いますし、同時に、その目標設定の手法について明確にしておく必要があるかな、こういうふうに思いますので、まず副大臣の御答弁をいただきたいと思います。

遠藤(武)副大臣 今度の十一条で、政府が基本計画を立てることになっております。しかも、それは閣議決定を要するものであります。

 当然、目標設定ということはあり得るわけでありまして、今までの基本法では、ただ単なる量的な拡大というものを目指しておる。今回はいわゆる質的な利用の拡大ということに光を当てているわけで、したがいまして、管理の区分も三区分に分けていることは先生御存じのとおりであります。水土保全林、森林と人との共生林、そして循環利用林、こうした態様に応じて面的な数値目標を明らかにし、かつまた今度は生産あるいは加工の量というものを数値として示していく、そうすることによって計画的な森林利用が図られるもの、こう考えているわけです。

 と同時に、これは人が行う業でございますから、林政審などの御意見はもちろんお聞きしなければなりませんが、広く国民の皆様方に、本当の意味で森林の利用はいかにあるべきか、森林の効用というものはどのようなものかということを考えていただく機会にするためにもいろいろな人の意見を聞く。今はIT技術が非常に盛んになりまして、インターネットなども津々浦々ということですから、そうしたものを積極的に活用して、多くの人々の声が反映される中で目標を立て、それを指針として林業を振興していくという形にしたい、このように考えているところでございます。

白保委員 それでは、目標達成に向けての取り組みの問題ですが、林産物の供給、利用については、その達成のためには、計画経済や、いわゆる統制経済的な手法を用いることができないことはもとよりのことでありますけれども、市場経済の中で、消費者や実需者に自由に選択され、国民の間に広く消費されて初めて実現できる性格のものですから、そういうことが市場経済の鉄則でありますし、森林の有する多面的機能の発揮についても、本案で森林所有者等の責務を明らかにしているものの、規制を強化する方向でその実現を図ろうということでは、これは現実的ではないのではないか、こういうふうに思うわけです。

 こうしたことから、森林所有者等その他の関係者が取り組むべき課題について、目標の達成に向けた取り組みについて具体的な答弁をいただきたいと思います。

中須政府参考人 御指摘のとおり、新しい法律案の基本計画の中においては、関係者が取り組むべき課題ということを明確にして、それぞれの数値目標を含めて施策の方向を打ち出す、こういうふうに考えているわけであります。

 その場合、もちろん、我が国の森林の重要性、あるいは木材を使うことのよさとか、そういうものを積極的に私どもPRをして、理解を得ながらそういう方向に持っていくという努力がまず必要でありますし、それと同時に、ただそれに頼るだけではなくて、具体的にそれが実現するような方法というか、具体的な措置を講じていかなければならない、こういうことだろうと思います。

 関係者の責務ということで言えば、今度の御提案申し上げております新しい基本法では、森林所有者の責務という一項目がありまして、森林所有者は森林の整備、保全に努めなければならない、こういう条項が書いてございます。

 ただ、これは、そう書いたからといって、まさに御指摘のとおり、何か規制を強化して、それのみでそれをやっていこうということではなくて、もちろんそのことを森林所有者の方に自覚をしていただくということは私ども求めたいわけでありますが、各種の従来から進めております森林整備のための補助事業等を充実させる、そういうことを通じてそういう方向に誘導していくというか、そういうような誘導策ということを基本にしながら各森林所有者が例えば責務を果たせるようにしていく、そういうような考え方で臨むべきものだというふうに思っております。

白保委員 先ほども申し上げましたように、規制強化、こういうことではなくして、まさに所有者等の責務が果たされるような形で誘導をしていく、そういう形でなければならない、まさにそのとおりだと思います。

 そこで、お聞きしたいことは、木材の自給率、これに対する位置づけの問題についてお聞きしたいと思いますが、この自給率については、木材の自給率の目標を掲げることについていろいろな意見があるようであります。しかし、生産目標を明確にすることは大事なことでありますし、同時にまた、自給率というのは私どもは非常に大事なことなのではないかなと思っておりますが、まず、自給率についてどのように考えておられるのか。

中須政府参考人 木材の自給率ということであれば、木材の日本国内における需要というものを分母として、その分子に国産の材の量を置くという形で自給率というものが求められるわけであります。

 ただ、私ども、木材の自給率というものを一つの目標として使うことにはなかなか困難があるのではないかなというふうに思っております。

 と申しますのは、食料の場合等と異なりまして、景気動向等によりまして、一年間に消費される木材の量、使われた木材の量というのはかなりの変動、分母はかなりの変動をする、こういうことがございます。実際に、過去の例を見ましても、国内の生産が右肩下がり、やや低下傾向が四、五年続いている、そういう中でも、分母が変わることによって、いわゆる自給率という計算をすると、ある年は下がりある年は上がりという変動をしてしまう、こういうことがございます。

 そういう意味では、私ども、今回の基本計画の中におきましては、国内で生産される木材の供給、利用の数値そのもの、これを基本的な指標として、数値目標として掲げるべきではないか。もちろん、その場合でも、そういうふうに掲げれば、その先の需要、その時点における需要というものも私どもは同時に推計し、そういう計画の中に示したいと思っておりますので、計算することによって、当然のことながら、その時点における自給率がどういう水準になるかということも示されるわけでありますが、目標として考える、目標数値として置くのは、供給、利用量という、絶対値と言うとおかしゅうございますが、数値そのものを目標として置きたい、こういうふうに思っているわけであります。

白保委員 この辺はちょっと議論しなきゃならない問題だと思っておりますが、その利用量というふうに言われても、その数値目標を、どれぐらい国内で国内産の木材が使われているか、そしてそれは、当然輸入材もあるわけですから、そういった問題の中で、目標を設定して、多く使えばいいといっても、多く使うといっても、それが多いのか少ないのかといったものは量だけでは判断できない、率を見なければ判断できないという問題が僕はあると思うんです。

 ですから、そういう面では、分母が変動するので、この率を出してもそれほどの意味がないとはいいますが、私は、この率というものが見えてこなければ、拡大になったのか拡大にならなかったのかというのは見えてこないのじゃないかと。そういう面では、今の自給率の問題については、自給率はもう使わない、こういうふうな考え方ですか。

中須政府参考人 食料の場合でも言われているように、自給率というのは非常にわかりやすい概念であります。全体の需要のうち一体どれだけが国産で賄われているかということを示すわけでありますから、そういう意味において、いろいろ将来に向けての目標ということを考える際に、一つの資料として、自給率ではどうなるかということを示しながらお話をする、そういうことは大変有用であろうと私どもは思っております。

 ただ、私どもとして、政府として計画をつくって、この目標を、数値目標を達成したいというときの数値としては、例えば今は二千万立方メートルの国産木材を日本国内で使っている、それを例えば、十年後あるいは二十年後にはその二千万立方メートルというのを二千五百万にする、あるいは三千万にする、その三千万というのをやはり一つの目標として明確にした上で、それを例えば説明する際に、まさに御指摘のとおり、では、それは自給率でいえばどういうことになっているのか、上がるのか下がるのか、もちろん上がっていくということを我々は考えたいわけでありますが、そういう意味で使うということは何ら否定しているわけではございません。

白保委員 従来、数値目標を持っていても、その数値目標というのは、自給率、そういった形で出てくるのだろうと思います。

 そこで、これは外材との競争というのは当然あるわけでありまして、私たちはこれだけのものを使いますと目標を持ってやっていっても、分母が大きくなっていって、その中で、国内におけるものがなりわいとしてきちっと成り立っていくのかどうかという問題にもつながってくる問題だろうと思うわけですね。

 したがって、このことは、自給率を明確にして、我が国がこうやって進めていくのだというものを持っていないと達成できない、そしてまた基本計画を持っても前に進まない、こういう問題になってくるのじゃないかと思いますけれども、もう一度その辺を確認しておきたいと思います。

中須政府参考人 先ほどもお話し申し上げましたとおり、日本の国内において、基本的な考え方として、やはり森林を整備、保全していく、森林の多目的、多様な機能というものが十全に発揮されるような状態をつくり上げていく。それは当然、林業活動、林業生産活動というものがかなりの部分、それを担っているわけでありまして、当然そういった森林の整備を図るということになれば、一定の木材が国内で必ず生産される、それを利用にいかにつなげていくかということが、ひいては、森林の整備水準というか、森林が持っている多様な機能、多面的な機能というものを十全に発揮するという意味で必要なんだ。そういうふうな考え方において、一定の、将来における国内での木材の供給量、利用量というものを明確にしたい、こういう考え方でございます。

 その場合、もちろん、ただいま先生が御指摘になりましたように、全体の需要の中で国産材が一体どういう位置を占めているのか、そういうものを知る上では自給率というのは大変わかりやすい指標でございますから、その基本計画の示し方の工夫の中で、そういうものも容易にわかるように、そして皆さんが、どういう状況が十年先、二十年先に木材全体の需給の中で実現しているのか、こういうのがわかりやすく理解されるように、その辺の工夫ということは我々も考えていきたいと思います。

白保委員 時間が来ましたので終わりますが、数値目標をしっかりとしていかなければいけないということ、あとは、時間が残されておりますので、次の審議のときにまた申し上げたいと思います。

 以上で終わります。

堀込委員長 次に、金子恭之君。

金子(恭)委員 私は21世紀クラブの金子恭之でございます。

 私は熊本県南部、九州山地の真ん中にあります二千人余りの山村に生まれました。この地域は林業そして製材業を中心とした木材産業が非常に盛んな地域でございます。うちの父も林業を営んでおります。私も小さいころから、腰なたを腰につけて、父に山に連れていっていただきまして、下刈り、間伐、枝打ち、そういうことを実際に経験しております。そういう意味で、林業、木材関係の非常に深刻な状況というのはよく承知しているわけでございます。

 その中で、うちの父もそうだったのですが、昔は、私の小学校、中学校のころというのは、まだ十人ぐらいの作業員の方を雇って毎日手入れをしておりました。そういう意味で、比較的いろいろな意味での手入れというのは進んでいったわけなんですが、最近は木材価格の低迷等々がございまして、余りお金をかけることができないというようなこともあり、開店休業に近いような状況であるわけであります。

 そういう意味では、私も地域のそういう木材、林業関係の皆さん方といろいろ意見交換をする機会が非常に多いわけでありますが、非常に不満が大きいわけであります。戦後、国の強力な指導によりまして、お金を借りなさい、山に手を入れなさいということの指導のもとに、まじめにそれを聞いて、これまで融資をいただいて、そして間伐や下刈りやいろいろな手入れをしてきた皆さん方が、特に専業の大規模な林家ほどそういう意味では大きな負債を抱えながら、今木材を切り出してもなかなか収入にならないというようなことで、地元を回ってみますと、伐採はしたものの植林ができない裸山が多く見られるわけでございまして、そういう意味では、これは本当に深刻な問題でございます。

 そういう意味で、今回の改正案というのは、二十一世紀の林業の方向を指し示し、そして今後の林業施策はそれをもとにやっていかなければいけないというようなことで重要なものと認識しているわけでございます。そういう意味で質問をさせていただきます。

 まず、遠藤副大臣にお尋ねしたいというふうに思っております。

 今回の法律の中で、森林の多目的機能、多面的機能を高度に発揮するために、それに基づいて林業の振興を図っていこうということでございますが、森林の多目的機能といいますと、国土の保全機能とか水資源の涵養機能とか環境問題、地球温暖化の防止とか、いろいろな大きな問題があるわけでありますが、森林というのは、木というのは、四十年よりも五十年、五十年よりも六十年、林齢が高くなればなるほど、その機能というのは大きく発揮できるわけであります。そういう意味では、これから長伐期施業への転換を図っていかなければいけないのではないかなというふうに思っているわけでございます。

 その中で、長伐期施業に切りかえるに当たって、林家は、やはり生活をしているわけでありますから、その間の収入の問題、いろいろな問題がございまして、林業を営んでいる皆様方の協力なしにはやっていけないというふうに思っているわけであります。そういう意味では、国民の御理解をいただきながら、この長伐期施業への転換と森林づくりを進めていかなければいけないというふうに思っております。

 このような森林づくりにつきまして、国はどのような支援をしようとしていらっしゃるのか、その辺をお聞かせいただきたいというふうに思います。

遠藤(武)副大臣 幼少のころから山に育てられたといいますか、金子委員の本当に山を思う、経験談のようなものを教示いただいて、平地の水のみ百姓のせがれだった私は思いも寄らぬことでございました。

 ただ、林業に限らず、農水の分野においても、専業的に多少大規模にやっている者ほど、長期、固定的な負債が多い。これが、発展というか、さまざまな面での構造改革の大きな大きなネックになっていることだけは確かでありまして、今お話にありました長伐期施業に対しても、いわゆる既往の貸付金をどのようにして借りかえ、または償還可能な施策を講ずるかということは大きな眼目の一つだ、こう思っております。

 と同時に、国民の多様なニーズにこたえるためにも、やはり多様な森づくりをしなきゃならぬ。そういうわけで、水土保全林とか人と森林との共生だとかあるいは循環利用の森林とか、そういうふうな区分もしました。同時に、日本全体を見ますと、どうも針葉樹林の方が戦後の造林において非常に広く行き渡ってしまって、濶葉樹林、広葉樹林あるいは針広混交林というのがだんだん少なくなってきたのではなかろうかという声も聞かれます。そうした面にも配慮しながら、今後とも、針広混交林などの拡大等にも力を入れてまいる。

 と同時に、長期育成循環施業といいますか、今お話にありましたような、八十年、九十年といったような木もあるわけでございますから、それらの切り取り、抜き切りといいますか、おろ抜くといいますか、そういったものも九十年ぐらいまではいいんじゃないか、こんなふうなことを施策として考えておるところでございます。

 また、さまざまな助成、支援の具体的な事業等、数字といいますか、金額といいますか、そういうメニューについては事務方から御答弁をいたさせたいと思います。

中須政府参考人 多様な森林整備を進めていくという観点からは、従来からも、広葉樹林だとか針広混交林の整備、こういうことを助成対象にして私ども取り組んできたわけであります。

 特に、やはり最近の林業の情勢、木材の価格あるいは我が国における森林蓄積というものが次第に進みつつある、そういう状況を考えますと、ただいま副大臣が申しましたように、一つは、伐期を長期化するということで、より大きな材をつくっていくというんでしょうか、そういう方向を目指すということと、一斉に植えて一斉に切ってしまうという形ではなくて、循環施業ということで、常に木が植わった状態の森林が残されながら、その中から適宜一定の材を切り出していく、こういうような施業を進めていくというのがやはり今後の一つの大きな方向になるというふうに考えております。

 そういったものに対して、助成措置あるいは融資、既存の融資というものを借りかえる、施業転換資金というふうに申しておりますが、そういうものを用意して、そういった施業形態が普及していく方向に持っていきたいというふうに考えております。

金子(恭)委員 林業経営を圧迫している大きな一因として、外国材の輸入の問題が大きいと思います。今は八〇%が輸入というふうに聞いているわけでございますが、戦後、国内で木材需要が大きくなったときに、それに国産材が対応できなかった部分というのは仕方ないことでありますし、そういう意味では、昭和三十六年に、私が生まれた年に開放が始まり、昭和三十九年に自由化になった、そしてここまで至ったわけでございます。それが今では日本の林業を非常に圧迫しているというのは御承知のとおりでございます。

 しかし、現在はその当時とは違って、国産材ももう伐期がどんどん来まして、これから国内の需要を賄えるだけの供給量を備えるに至ったわけであります。そういう意味で、これまでの流れとはちょっと違ってきたんではないかと。木材については、他産業より自由化が非常に進んでいる場面もあります。そういう意味で、セーフガードの問題とかいろいろな問題が上ってきているわけでありますし、監視品目の中に木材も入れていただいているというふうに承知をしているわけであります。

 そういう意味で、今回、国内の森林資源というのが充実してきている中で、木材輸入を秩序あるものにすべきではないかなというふうに思っております。その点について、副大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

遠藤(武)副大臣 委員おっしゃるとおり、非常に外材がふえておりまして、八対二ぐらいの割合で外材が占めておるわけでございますね。この国境措置、水際には量的な規制がない。しかも低い関税である。もちろん、御存じのとおり丸太はゼロなものですから、最近は、アメリカ、カナダ、ロシアのほかに、北欧などからの輸入もかなりのスピードでふえてきておりますね。

 ですから、秩序ある輸入という場合には、実は木材需給対策中央協議会なるものがありまして、そこで木材の需給の見通しの作成をし、情報の交換をしているわけです。日本のトップ企業などもその委員の一人でありますから、ここでひとつ、ある意味で日本経済のあるべき姿という形でコントロールできぬものか、こう私どもは願っているわけであります。

 例えば、先ほど中国に対して三品目のセーフガードを出しました。暫定措置でありますが、輸入関税の割り当て制になるわけです。それに割り当てられた業者の数が、三品目で、ネギ、生シイタケ、イグサ、これだけで三百三十八社です。まあ、小さな角砂糖にアリが群がるような、こういう野方図で無秩序な流通でいいのか。むしろ、日本の流通機構がそういう市場をつくっているのじゃなかろうかとさえ思う。

 先生から御指摘いただいたまさしく秩序ある輸入、ということは、何も制限する意味ではなくて、流通機構の改革を図りながら国産材の育成にもお役に立てるような形で考えてまいりたい、このように考えているところでございます。

金子(恭)委員 今副大臣から御答弁いただいたわけでありますが、秩序ある輸入といいますか、そればかりに頼るわけにはいきません。やはり国産材の質の向上というのも図っていって、外国、外材に負けないような質のものをつくっていかなければいけないというのが急務だろうと思っております。

 その中で、先日、役所の方に話を聞いてびっくりしたんですが、外材というのは質がよくて価格が安い。そういう意味では、日本というのは質は高いんだけれども値段が高いというのが通常であるわけでありますが、質もよくて価格も安い、そうしたら、必然的に消費者というのはそっちに行ってしまうんじゃないかという感じがするわけであります。その中で、何で外材が質がいいかというと、乾燥技術というのが非常に発達をしていて、それが徹底している、また、強度性能の明確化というのがきちんとなされている、そういうようなことを役所の方から聞いたわけであります。

 何でそういうことがわかっていながらこれまでそういう対策というのをとって、まあ、とっていただいていたんでしょうけれども、そういうものが目に見える形でなっていなかった。もっとそういう弱いところを強化するのが国の施策であります。そういう意味では、今回、乾燥の徹底、強度性能の明確化というのが重要でありますが、これらに対する林野庁の取り組み、そしてこれを踏まえ木材の需要拡大をどのように図っていくか、質問を申し上げます。

中須政府参考人 ただいま御指摘のとおり、外材と競争していく、品質、価格の面で自由なマーケットでございます、その中で勝ち残っていくということのために、国産材がいろいろまだ努力しなければならない点が多いというのは御指摘のとおりであります。特に、戦後の造林によって植えられた木のうち、杉というのが四割以上を占めている。今まさに杉材について先生御指摘になったような問題が典型的に出ているわけであります。

 そういう点で、今この時点におきまして、私ども、乾燥材の供給体制の整備ということは大変急務だということでありまして、乾燥施設の導入に対する助成、いろいろな形を通じてその内容の充実を図るということを真っ先に取り上げる、取り組むということと同時に、乾燥材等の品質、性能の明確な木材を生産する、そういう意味において標準的なマニュアルを作成するとか、講習会を開催する、そういうような対策も一生懸命取り組んでいるところであります。

 そういった形での質の高い、質の明確な木材の供給に努めると同時に、先ほど来お話し申し上げているような木材のよさを訴えて、各種の住宅、公共施設等に積極的に使っていただく、そういうような措置と相まって、この厳しい状況の中、乗り越えていかなければならない、こういうふうに考えております。

金子(恭)委員 時間が参りましたので、私の質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

堀込委員長 午前十一時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時一分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時四十九分開議

堀込委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。後藤茂之君。

後藤(茂)委員 後藤茂之でございます。

 それでは、早速、森林・林業基本法並びに三法の質疑に入らせていただきます。

 森林の現状については、もういろいろ申すまでもなく、大変危機的な状況にあるわけでございます。特に我が国の人工林、これは全国の森林の四割以上を占めるわけですが、これは先人たちの手によりまして間伐や保育というのが行われまして、森林の健全性と活力が長いこと維持されてきたわけです。

 ところが、山村地域の過疎化あるいは就業者の高齢化とか後継者不足によりまして、今非常に厳しい状況に見舞われております。林業の採算性の悪化、あるいは不在村化などによりまして、小規模な森林所有者の間では森林経営に対する意欲が非常に薄れつつあるわけであります。その結果として、間伐の行われない人工林やあるいは植林が行われないままに残される伐採跡地が非常に目立ってきているということであります。

 また、その経営について関心を失っていない森林所有者にとっても、採算性の悪化の中で、森林に手を入れ続けるということが非常に厳しい条件のもとにさらされているわけでございます。山は荒れてまいりまして、十分な機能を果たせないままに荒廃地に戻る、そういう危機に今さらされているわけであります。そうした山の状況に対応するために、先ほどから皆さんがおっしゃっているように、間伐の推進を何としてもやらなければならないというふうに思うわけでございます。

 さて、政府は、緊急間伐総合対策ということで、百五十万ヘクタールの緊急間伐に今取り組んでいるところでありますけれども、この緊急間伐総合対策の考え方について、まず伺いたいと思います。

武部国務大臣 先生御指摘のとおり、戦後造成された森林の多くが、今間伐等の手入れを要する時期にあることからも、平成十二年度から五カ年に百五十万ヘクタールの森林を緊急かつ計画的に整備するということで、緊急間伐五カ年対策に取り組んでいるところでございます。

 具体的には、市町村との協定に基づく間伐の共同実施、間伐実施に必要な林道、作業道の計画的な整備等による効率的な間伐の実施を推進するとともに、間伐材の利用促進を総合的に図っていく、そういうもくろみで実施しているところでございます。

 なお、初年度に当たる平成十二年度は年平均三十万ヘクタールという間伐目標を達成できる見込みでありまして、今後とも、国と地域が一体となって、緊急間伐五カ年対策の着実な推進に努めてまいりたい、かように存じます。

後藤(茂)委員 今、内容について伺いましたけれども、量のことからいえば、大体二十万ヘクタールの間伐をずっとやってきた。平成十年はちょっと大型の補正があったので少し大きかったですが、しかし、これから三十万ヘクタールということです。

 ただ問題は、この百五十万ヘクタールというのは都道府県の緊急間伐推進計画の集計結果によって出てきている数字だというふうに認識しておるわけであります。もちろん、地域的な取り組みを一緒にやっていくという御説明もあったわけでありますけれども、しかし森林の中には管理をされていないものも随分ふえてきているわけでありますけれども、こうしたものも含めて、この百五十万ヘクタールあるいは今の間伐の計画で本当に日本の森林というのは大丈夫なのか、その点について伺いたいと思います。

武部国務大臣 緊急間伐五カ年対策は、年平均の間伐量として、これまでは先生お話しのとおり、二十万ヘクタール平均であったと思うのでありますが、三十万ヘクタールということは従来の一・五倍ということに相なるわけでございまして、その実施に当たって、各都道府県ごとに自主的に緊急間伐推進計画を策定して、着実な実施に向けて努力いただいているところでございます。

 この対策の円滑な実施に向けて、国及び地域が一体となって取り組むことにより必要な間伐が実施される、かように考え、そのような努力をしてまいりたい、かように考えている次第でございます。

 もし細かいことであれば、林野庁長官に答弁させます。

後藤(茂)委員 私は、今国民の間で、間伐とか植林だとかそういうものをきちんとやるべきだ、それが放置されているという声が非常に多いというふうに思います。

 また、施業の放棄の状況についても、例えば山林を歩く国民、遊びに行った国民やレクリエーションに行って国道を走っている国民の中からも、あるいは山村地域で暮らしている人たちの間からも、相当にひどい状況になってきているという話を聞くわけでございます。

 今回の法案の関係資料の中にも「森林施業の放棄の状況」という資料が入っておりまして、その中の「人工林における森林施業の放棄に関するアンケート調査」を見ますと、「十年生以下の人工林で保育放棄のため成林の見込みのないものがありますか?」「あまりない四八%」「時折見かける四七%」「たくさんある五%」。「〇・一ヘクタール以上の皆伐跡地が造林されないまま三年以上放棄されているものがありますか?」「あまりない三五%」「時折見かける五二%」「たくさんある一一%」、この「時折見かける」とか「たくさんある」とか言われている山林は一体どういう扱いになっているのか。私はその辺が非常に心配で申し上げているわけでございます。

 さて、しかしその前に、日本の森林の現況を本当にどのぐらい把握しているのか、日本の森林の現況をしっかり把握しているのかということがまず本当は心配の種でございます。そういう意味では、一体どういう把握体制をとっておられるのか、伺いたいと思います。

中須政府参考人 森林の現況把握ということのお尋ねでございますが、実は全国森林計画から始まり市町村森林計画に終わる一連の計画体系がございます。これの策定作業に合わせるということを基本として、五年に一回、新たにデータを更新するという考え方でございます。

 森林の立木の樹種、林齢あるいは材積等の状況を各都道府県の森林計画担当部局が、主として空中写真を写し、それを判読する、あるいは現地調査、関係者からの聞き取りを行うということを通じまして森林簿というものに記載をし、これを地図の上では森林計画図として五千分の一の地形図に整理する、これを各市町村に提供いたしまして、地域森林計画あるいは市町村森林計画を立てる際の参考としている、これが基本的な森林の現況把握の体制でございます。

 ただ、率直に申しまして、全国の膨大な数の、これは小班と言って小さな班でございますね、それごとに調べているわけでございますけれども、すべてを調べ切るということには困難な側面がございます。こういったことから、ただいまもお話が出ておりました間伐を実施すべき林齢の人工林ということを優先的に把握するというような運用面での弾力的な取り扱いを含めて、重点的な調査によって、問題が起こり得る部分について、この森林簿による現況把握ということにできる限り努力をしている、こういう状況でございます。

後藤(茂)委員 空中写真とかいうと、何となく、大丈夫なのかなという心配な気持ちになります。

 市町村等が窓口になってやっているわけでしょうけれども、現実には市町村は森林組合等に委託をするというような形でやっているんだろうというふうに思います。私は、やはり日本の森林をしっかり守っていくためには、現況をきっちりと把握するということは非常に重要なことだと思います。今後、どういうふうに現況把握の体制をより高めていくのか、検討をされていることがありましたら、御見解を伺いたいと思います。

中須政府参考人 現在私ども現況把握という点で努力をしたいというふうに思っておりますのは、一つは、森林地理情報システム、GISというふうに呼んでおりますが、これを整備する。それと、リモートセンシングデータの活用等によりまして森林状況の現状を把握する新しい技術、そしてそれをパソコン等の画面の上に表示をしてさまざまに活用できる、こういうようなシステムの整備ということに取りかかったところであります。

 ただ、これは率直に言って、まだまだ時間がかかるという点において、これから先努力をしていかなければならない、こういうことがございます。

 それとまた、もちろん、そういう話とは若干性格が異なるわけでありますが、今回、新しい基本法案、この十二条の二項でもって、現況調査等について支援をする、こういうような仕組みも設けてございます。こういう支援の施策を実施することによって得られるデータというものも、先ほど申しました森林簿に記載されるデータとして活用していく、そういうことも含めて努力を続けていきたいと考えております。

後藤(茂)委員 今話がちょうど出てまいりましたので、直接支払いの問題に移りたいというふうに思います。

 間伐、植林につきましては造林補助金あるいは間伐交付金といった形で、生産活動に対しましては今でも直接補助の制度が設けられているわけであります。しかし、山林の放棄とかあるいは不在村化などの状況が進んでおりますので、森林整備のために自主的な取り組みを確保できるような措置をしっかりと講じていく必要があるだろうというふうに思っているわけであります。これは、森林の持つ公益的な機能に非常に大きな価値を見出している国民にとっても望むところだというふうに私は思っているわけであります。

 直接支払いとしてどのような形のものが適当かということについてでありますけれども、先行していろいろやっている農業との比較でちょっと考えてみますと、農業には直接支払い制度があります。すなわち、EU等でやっているような、条件不利を是正するというような形での直接支払い制度があるわけであります。実際に今、傾斜等による条件不利地に対して直接支払いが行われています。しかし、こういう枠組みでは、林業の場合、そもそも条件不利地というのはどうやって特定するのかということから考えまして、これは難しいだろうというふうに思います。

 また、農業の分野で、経営所得安定対策というのが今検討中であります。御承知のように、担い手対策として、認定農業者を中心に、品目別の経営安定対策と調整をする形で、市場価格との間の所得の差を何とかするということで今検討中なわけであります。

 しかし、林業の担い手ということを考えてみますと、林業依存度の高い経営体というのは、林業の場合には大規模林家層が割合多いわけであります。恐らくその数というのは数千戸ぐらいが重立ってやっている、そういう意味での大規模林家だと思います。そういう層に対して所得補償をするのかということになれば、これは国民の理解をなかなか得にくいものだろうというふうに私は思うわけです。

 結果として、私はこう思いますけれども、森林の施業とか日常的な活動を支えるための森林管理者に対する面積当たりの直接支払いを森林・林業の場合にはやはり考えていかなければいけないのではないかというふうに私は思っております。

 ちょっとしゃべりましたけれども、農林水産大臣のこの考え方についての御見解を伺いたいと思います。

武部国務大臣 先生御指摘のとおり、農業が傾斜等により生産条件の不利な地域を特定できるということに対して、林業においてはなかなか生産条件の不利な地域の特定が難しい。また、今お話しのとおり、経営、所有者が大規模になっているというようなことで、所有者に直接支払いするということについてはなかなか国民の理解が得られないというようなことは御案内のとおりだ、かように思います。

 さまざま先生御指摘のように、森林・林業基本法第十二条に、森林所有者等による計画的かつ一体的な森林の施業の実施が極めて重要である、このように規定しておりまして、これを推進するための森林の現況の調査等の活動を確保するための支援策ということを行う旨規定しているわけでございまして、そういうような観点から、今後、具体化に向けてさらに検討してまいりたい、かように存じます。

後藤(茂)委員 平成十二年十二月に出されました林政改革大綱の中では、「森林整備のための地域による取組を推進するための措置」というふうに書いてありまして、そういう意味では非常にすっと、なるほどというふうに、わかりやすい形になっておりますのですが、もう一度、ここは委員会の場ですので、委員会の場で確認をさせていただきますけれども、こうした地域による取り組みを推進するための措置というのが基本法でどのように位置づけられているのか、再度、もう一度確認をさせていただきます。

武部国務大臣 お説のとおり、林政改革大綱においては、森林整備の地域による取り組みを推進するための措置を検討するとされたところでございます。

 これを踏まえて、森林・林業基本法第十二条第二項に、「森林所有者等による計画的かつ一体的な森林の施業の実施が特に重要である」として、これを推進するための「森林の現況の調査等の活動を確保するための支援を行う」旨規定しているわけでございます。

後藤(茂)委員 十二条二項に基づきまして、これがそういう直接支払いを念頭に置いている規定であるという話だと今受けとめました。この十二条二項に基づいて、直接支払いの制度ができるだけ早くに実現されますように、大臣の御決意を再度確認させていただきます。しつこいようですが、よろしくお願いを申し上げます。

武部国務大臣 できる限り早期に実施できるように検討を行う考えであります。

後藤(茂)委員 ありがとうございます。

 それでは、森林整備を支援する取り組みについて、次に少し伺っていきたいと思います。

 国民は森林を支援する活動というものを求めているというふうに私は思っています。そして、体制がきっちりと整備されれば、その多くの国民の関心がうまく吸収できる、そういう環境になってきていると私は思っているわけです。

 森林の公益的機能は、主として流域を単位として発揮されているというふうに思います。平成三年から、流域森林・林業活性化センターというものを中心としまして、下流の受益の問題も含めまして、流域内の関係者との調整を図ることになっているはずでございます。この流域管理システムが本当にきちんと管理されて機能しているのかどうか、具体的にどんな取り組みをされているのか、その状況について伺いたいと思います。

中須政府参考人 御指摘のとおり、平成三年から、関係者が協力をして森林整備あるいは木材生産活動、こういうものを流域を単位としてさまざまな形でみんなで協力しながら築き上げていこう、こういうような取り組みを行っておりまして、そのために必要な一つの機関として、関係者が集まる流域林業活性化センターあるいは協議会というものを設けながらこうした取り組みを行っております。

 先進的な取り組みの中では、例えば、流域の森林整備を担う新しい林業事業体を、こういうセンター、各関係者の中から新しくつくり上げていく、第三セクターというような形でつくって、それが地域の森林整備の主体となっていく、そういうような例がある。あるいは、そういう流域を単位に大規模な木材団地というものをつくりまして、その流域における国産材を集めて、供給基地として育て上げていく、こういうような試みもございます。

 そのほか、上下流市町村が連携をして上流における森林の整備を行う、さらに最たる例としては、一番下流におられる漁民の方々が上流に行って森林整備を手伝う、こういった多様な形での森林流域での管理システムというか、そういうものが芽を出している、こういうことでございます。

 ただ、全国百五十八の流域を単位にこういう運動を進めていこうというふうに言っているわけでありますが、決して今すべての地域でそういうふうにうまくいっているということではございません。先進地域でそういった事例が出ておりまして、こういうものを私どもできる限り普及して、多くの地域での活動につなげていきたい、こういうふうに考えております。

後藤(茂)委員 今お話もありました上下流の連携による枠組みにはさまざまなものがあるわけでありまして、特に近年、下流の地方公共団体が上流の地方公共団体、自治体と協力して水源地の森林の整備を図っている例がいろいろあるわけでありまして、森林整備費用を助成するというような仕組みや、分収林契約を結ぶとか、水源林を取得していくとか、あるいは水道料金の一部を利用して基金を造成するだとか、いろいろな仕組みがあるのだろうと思います。

 もちろん、地方自治体に期待される役割というものも非常に大きいわけだというふうに思いますけれども、農水省として体系的に上下流流域のこういう仕組みについてしっかりと旗振りをするべきだというふうに私は思っております。多くの地方自治体や住民が何かをしたいという気持ちを持っているときに、地域や住民の協力体制を築いていくためには、やはり農水省がきちっとメニューを示して、体系的にこういうことでやったらどうかということを示していくことが非常に大事だというふうに思っております。このことについていかがお考えでしょうか。

武部国務大臣 私は、いわゆる上流と下流との連携については、今後市町村合併をどう進めていくかということに関連しましても私なりの考えがありまして、流域ごとの合併というような、そういうことも視野に入れて検討すべきじゃないのか、かようなことを我々の地域の実情、実態からも考えているぐらいでありまして、上流の森林が適切に整備されることは、お話しのとおり、下流住民にとっても大きな恩恵をもたらすものでありますし、上下流連携による森林の整備を推進するということは極めて重要だ、かように認識しております。

 下流自治体が協力して行う上流の森林の整備の推進や、下流住民を含む国民参加の森林づくりへの取り組みなどに対して農林水産省としても支援策を現在講じているわけでありますけれども、これらが一体的に推進されるよう、流域管理システムのもとで、上下流の関係者の合意形成を図りつつ、さらに積極的な取り組みを果たしてまいりたい、かように考えている次第でございます。

後藤(茂)委員 繰り返すようですけれども、現在の国民の森林の公益的機能に対する理解度というものを考えていくと、費用負担の仕組みもできるだけはっきりしたものをつくって見せた方がいい、その方がかえって国民の問題意識がはっきりしてくるというふうに私は思うわけであります。

 過去においてもいろいろな議論もありまして、例えば水源税の提案とかも二度にわたってなされまして挫折したこともあります。もちろん、そういう構想にそれなりに成立しなかった問題点があるということは十分承知をいたしております。しかし、あつものに懲りてなますを吹くような状況ではいけないというふうに私は思いますので、今後ともぜひそうした枠組みをつくっていく、あるいはメニューを示しながらやっていっていただきたいというふうに思うわけです。

 それから次に、ボランティア活動についても一言申し上げたいと思います。

 このボランティア活動も、市民の理解を得ていくということのためには非常に大切なことだというふうに思っております。しかし、例えば山村を毎週末歩いている私などがちょっと皮肉っぽく言うと、どっちのボランティアかわからないようなボランティアじゃ困るわけです。

 つまりボランティアは、例えば都市や下流域に住む人たちが山に行ってボランティアをするのであって、山に住んでいる人たちが都市から来る人たちを遊ばせるボランティアをやるわけでは決してないということだと私は思っております。そういう意味では、ボランティアの登録制度をしっかりするだとか、あるいはリーダーの育成をしっかり図っていくだとか、あるいは活動の拠点を整備するだとか、そうした受け入れ体制の整備をしっかりしていかなければいけないというふうに思います。

 具体的にどういう施策があるのか、御見解を伺いたいと思います。

中須政府参考人 ことしの林業白書においても触れたわけでございますが、先生が今御指摘になったように、一般の市民の都会の方々が木の植えつけから間伐まで山に行って実施をする、そういう森林ボランティア活動が大変増加をしております。これに取り組む団体の数が、私どもが把握しているだけで、平成十二年現在約五百八十団体ある、これは三年前の二倍になっている、こういうことでございます。大変国民の関心は高まっている、こういうことが言えようかと思います。

 こうした活動を通じて、もちろん森林の整備が進むということ自体もございますし、多くの国民が森林・林業活動の大変さを思い、あるいは森林の持っている、果たしている役割ということを改めて認識する、そういう点でこういったボランティア活動については、その主体性は尊重しつつ、技術レベルの向上だとか、活動の高度化を図ることが必要だろうと思っております。

 具体的には、今私ども取り組んでおりますのは、ボランティア団体を指導する技術者、これについての登録制、その登録に基づいて要請に応じて派遣をする、そういう仕組みづくり。それから、指導者を対象にいたしました研修の実施。それから、森林ボランティアに関するさまざまな全国情報、どういう団体があるか、どういう場所で求めているか、そういうことについての全国情報を受発信する、そういうベースをつくること。あるいは、森林ボランティアがそこに行けば活動できるという活動の拠点となるフィールドを整備する、こういった事業について現在取り組んでおりまして、先ほど言いましたように、こういった事業の重要性にかんがみ、これからもその条件整備に努力をしていきたいと考えております。

後藤(茂)委員 ボランティアというのは、ポイントをつくって情報を発信すると寄ってきてくれる人たちです。ですから、そういう意味で、ぜひ情報発信やそうした拠点づくりをしていただきたいというふうに思います。

 今ちょっと話も出てまいりましたけれども、ちょっと伺いますが、森林インストラクターあるいは樹木医とか林業技士、これはそれぞれ今何人が登録されておられるのでしょうか。

中須政府参考人 ただいまお話のございました森林インストラクターについては、現在一千百三十二名が登録をされております。また、巨樹とか古木の保全ということに取り組む樹木医、これは七百七十八名が登録をされている。それから、これは実際に森林整備ということの専門家ということになるわけですが、森林の評価とか林業機械、そういったことの技術者、そういう業務に携わる御指摘の林業技士、これは八千二百三十六名が登録をされております。

後藤(茂)委員 せっかくこういういい制度があるわけですので、もっともっと国民にアピールをしていただきたいというふうに思います。恐らくこういう制度があるということを知らない人たちも本当に多いのだろうというふうに思います。森林体験学習とかそうしたものに積極的に活用すべきだというふうに考えますけれども、御見解を改めて伺いたいと思います。

武部国務大臣 前にもこの委員会で申し上げたことがあるかと思うんですけれども、私は、PKOはピース・キーピング・オペレーションですね、もう十年以上も前からGKO、グリーン・キーピング・オペレーションというものをつくるべきだということを提唱してまいりました。したがいまして、今先生御指摘の問題は極めて重要な課題だ、こう思いまして、農林水産省といたしましてもしっかりリーダーシップをとってまいりたい、かように存じます。

 細かな体験学習などの指導者として森林インストラクター、樹木医などの活用を図っていくことが極めて重要でございますので、この点についてもさらなる意を尽くしてまいりたい、かように考えている次第でございます。

後藤(茂)委員 私もGKOがもしできればぜひ御一緒させていただきたいというふうに思っております。

 それでは次に、健全で活力ある森林の整備という観点からちょっとお伺いをしたいというふうに思います。

 山林の放棄とか不在村化とかいう事態の進行の中で、今現実に山村、森林においては、森林組合の果たす役割というのが非常に大きくなってきているというふうに言われております。実際に施業したりあるいはいろいろな調査、足腰となってやっているという実態があります。また、国有林についても八割が、これは森林組合だけではありませんが、森林組合を含む民間の委託として今事業が行われているわけです。

 森林組合は、造林とか保育の面については非常に中心となって活動をしていることはもう御承知のとおりで、民有林について、新植の九割、間伐の仕事からいえば七割を実施しているわけです。しかし、造林とか保育等の事業の実施について、いろいろ非効率であるとの批判も出ているわけです。その根っこには、例えば、造林補助の窓口が森林組合に限られているとか、あるいは市町村との随意契約によって大体契約が結ばれているとか、いろいろなそういう甘えの構造もそこにはあろうかとも思います。

 それからもう一つは、素材生産という観点からいうと、民有林の生産の二割にしかすぎないわけであります。民間の事業体と十分に対抗していけるだけの効率性を確保して、なおかつ組合員の期待にしっかりとこたえていくということが必要なわけですけれども、そうだとすれば、今後、造林事業が全体として減っていく傾向だと思いますが、素材生産を含めて一貫した事業体制をつくっていく必要があると私は考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

武部国務大臣 造林や間伐のみならず素材生産も含めた施業、経営の一貫した、なおかつ継続的な実施ができるような機能の充実を図っていくということは全く重要でありまして、その点については同感でございます。

 このためには、現状の森林組合はさまざまな問題がございます。安定的、効率的に施業、経営を実施できるよう森林組合の経営基盤の強化に努めるとともに、効率的な森林施業を実施できるような人材の育成等も大きな課題だ、かように存じまして、御指摘の点を踏まえて推進に努力してまいりたいと思います。

後藤(茂)委員 森林組合の実態についてちょっと伺いますけれども、森林組合で今赤字のものというのはどれくらいあるんでしょうか。また、常勤役職員がいない、いわゆる役場内組合と俗に言われているような組合はどれくらいあるのか、作業班が未設置の組合はどれくらいあるのか、伺いたいと思います。

中須政府参考人 平成十一年度末現在の数字でお答えを申し上げますが、この時点で全国の森林組合は千二百五十四組合ございます。このうち、事業損失を計上した森林組合は三百五十二組合でございます。それから、御指摘のございました、役場のひさしを借りているというか役場内に机があるような、常勤役職員がいない組合の数が百六十七でございます。それから、いわゆる作業班を設置していない組合の数は二百二十六、こういうような状況になっております。

後藤(茂)委員 今こうして伺っていると、経営基盤の弱い森林組合も相当に多いということだろうと思います。もちろん赤字を出す組合というのは仕事をしている組合なので、そういう意味では必ずしも赤字を出しているから落第組合だと言っているわけじゃ決してありません。しっかりと非常に熱心に仕事をしているところで赤字が出ているという例もあるだろうというふうには思います。しかし、全体として見て、経営基盤が弱い組合が多いということは否めないことだろうと思います。

 やはり経営基盤を強化していくためには、施業とかあるいは地域の森林管理の実施能力の向上をしていくということが必要だと思いますし、そもそも組合員や地域から信頼される組織運営をしていかなきゃいけないというふうに思うわけです。

 そこで伺いますけれども、経営基盤強化に向けて、これまでもとってこられた政策だとは思いますけれども、合併による広域化を進めていくべきだろうというふうに考えますけれども、大臣の見解はいかがでしょうか。

武部国務大臣 森林組合がその活動を効率的に推進するためには、資本力の増強、組織体制の強化、経営規模の拡大による事業量の安定確保等を通じて、経営基盤を強化するというようなことが重要なんだろう、かように思います。

 しかし、経営基盤の強化というようなことの有効な手段としては、お話しのとおり、広域合併を引き続き推進するということとともに、組織の合理化、組織運営体制の整備、役職員の資質の向上等にも努めてまいる必要があるのではないか、かように存じます。

 あるいはまた、さらに、農業の分野におきましても法人化というようなことが昨今注目されつつございます。今までのさまざまな課題解決への道のりだけではなくて、新たなる視点で森林組合のあり方ということも考えてみる必要があるのではないか、私はかように考えます。

後藤(茂)委員 森林組合の性格についてちょっと議論したいと思うんですけれども、森林組合が森林の管理を一般的にやっていく。管理の仕事を進めていけば、実を言うと森林組合というのはますます公益的な性格が強まってくるわけです。しかし、森林組合というのは、御承知のように本来協同組合でありまして、要するに所有者のメンバーシップ、これが集まって組合を形成しているというわけであります。

 そうなってきますと、本来の協同組合という法的な位置づけと、それからこうした公益的な性格というのは今後調和をさせていかなければならないというふうに考えるわけであります。今回の林業経営基盤強化法の一部を改正する法律の中でも、知事のあっせんによって施業を受託する森林組合において、認定を受けた森林組合については森林組合法の員外利用制限の特例が提案されて、二分の一を超えていいということになっているわけであります。

 これは、もちろん部分的なものであります。しかし、今後、森林の管理という全般の仕事について、もし森林組合が取り組んでいくということになれば、これはどう対応していくのか、非常に重要な問題になってくるというふうに思います。現況の把握や森林の管理ということを、森林組合が一体どこまでやるのか、あるいは、協同組合としての組織形態の方を見直すという必要が出てくるのか、考え方を整理していくことが必要になるだろうというふうに思います。

 こうした法的な性格の問題について、御見解を伺いたいと思います。

中須政府参考人 御指摘のとおり、森林組合は自主的な森林所有者の協同組織ということが基本的な性格でございます。しかし、歴史的な経緯を含めて、先日もある会合で聞いたわけでありますが、農協とか漁協と比べてみると、森林組合というのは、林業協同組合というふうには言わない、森林組合という独特の名前がついている。そこにやはり、今先生が御指摘になったような、地域の森林の管理というかそういう側面にまで、あるいはまた、もう一面では、作業班、労務班というものを持って、実際にそういう仕事を請負という形で実施している、そういう特異な性格がある、こういうことではないかというふうに思っております。

 今後、林政改革大綱の中でも触れられているわけでありますが、今回、林業基本法等一部改正ということを御提案申し上げておりますが、さらにそれに続いて、森林組合のあり方というものをどう考えていくか、この次のもう一つの大きな課題だろうというふうに思っているわけであります。

 そこは、いろいろ先生が御指摘になっていることを含めて、やはり一人一人の森林所有者ということでは地域の森林の整備、保全ということに十分手が回らなくなっている、あるいは不在村の方も非常にふえているという中で、何らかの形で森林組合が、それは公的な性格をかなり持つということになると思いますが、そういう部分を担当できないのか、こういうような問題意識は私どもも共通に持っているわけであります。

 しかし、そういった気持ちと同時に、実は、その森林組合が、先ほど来の話にありますように、大変組織基盤が弱い、そういったことを本当に担えるだけの力があるのか、また、森林組合の仕事のやり方をめぐっては、補助金に依存し過ぎているのではないかとか、さまざまな批判もございます。そういったものを総合的に考えて、どういうふうにこれからの森林組合のあり方、これを森林整備との関係で考えていくのか。我々もいろいろ悩みながら検討を進めているところであります。

 現在、実は、先週でございますか今週の初めだったですか、ちょっと定かに覚えておりませんが、学者、先生、あるいは現場の森林組合の責任のある方々にお集まりをいただきまして、どういうふうにこれから考えていけばいいか、検討会を立ち上げたところでございます。

 そういった中での御議論を踏まえつつ、私、できるだけ多くの方々の話を伺いながら、いろいろ相矛盾するものを持っているわけでありますが、森林組合の今後のあり方について、できるだけ早く一定の結論を得て、またいろいろ先生方にも御相談を申し上げていきたいな、こういうふうに思っております。

後藤(茂)委員 最終的には、森林の現況把握から施業までを一貫して継続的に実施する体制の整備を通じて、森林の適切な管理や森林資源の持続的利用を推進していくという大目標を達成しなければならないわけでありまして、そういうことにつきまして、さまざまな問題点があると思いますが、今後とも一緒にまた考えていきたいというふうに思っております。

 さて、こうした検討を踏まえまして、十四年度に森林組合法の改正というのは考えておられるのでしょうか。

武部国務大臣 森林組合制度については、森林管理と施業実施のための能力強化の方策、経営基盤の強化や組織運営体制の整備の方策、森林組合系統組織の再編整備等の観点から、今現在、森林組合法の見直しの検討を深めている次第でございます。

後藤(茂)委員 それでは、話題をちょっと転じまして、山村の問題について一言申し上げたいと思います。

 これは先日も申し上げたことではありますけれども、山村というのは、いわゆる森林文化というものの発生の場所であり、再生産の場所であるというふうに私は思っております。

 そして、日本では、長い年月にわたる、本当に営々とした先人たちの努力により造成された人工林というのは森林面積の四割を超えている。そして、森林面積は一世紀前とほぼ変わらない規模を維持してきているわけです。このことは、苗木を背負って山に入って、植えつけや下刈りをする、それで汗を流してきた山村の人たちのおかげだと私は思っています。その山村が今高齢化と過疎化に直撃されているわけです。森林・林業を守るためには、まず山村を守らなきゃいかぬというふうに思うわけであります。

 こうした山村の意義というのを考えてみれば、もちろん今度の基本法の十五条には、「山村地域における定住の促進」という規定はあるわけでございます。しかし、山村というものを、基本法の基本理念の中にもっとはっきりと位置づけた方がよいのではないかと私は思うわけでございます。

 もちろん森林という言葉は面的な概念を持った言葉であります。そして山村地域も、そういう意味では包含する言葉とも思いますし、森林という言葉は本当にすばらしい、いい言葉だというふうに私は思っております。

 大臣に伺いますけれども、基本理念の中に規定があるかないかということにかかわらず、山村の振興という政策の切り口を大切にして、これからの森林・林業政策をやっていかねばならないというふうに思いますけれども、大臣に改めて再確認をさせていただきます。

武部国務大臣 私どもは、先般、農山漁村の新たなる可能性を切り開くということについて考え方、私案をまとめた次第でございまして、今後、都市と農山漁村というのは対立する間柄ではない、カリフォルニア州よりも小さい日本列島ですから、都市と農山漁村というのは、私は対流という言葉を使っているのですが、共生、対流の間柄にある、そういうような考え方から、新たな存在価値というものを見出していくことができるのじゃないか、そういうふうに考えております。

 また、山村振興について、今、理念にきちっとこの林業基本法の中でうたうべきでないのか、そういう御提案でございますが、既に山村振興法に基づいた、総合的かつ計画的な山村地域の振興策が実施されているわけでございまして、多様な就業機会の確保、生活環境の整備、山村の魅力を生かした都市との交流等の施策を総合的に位置づけたのが、この法律の第三章十五条、十七条に規定しているとおりでございまして、今後とも、山村地域の振興に当たっては、都市と山村の共生、対流を図っていくということにかんがみて、活力と魅力ある山村の振興に向けた積極的な施策を展開してまいりたい、かように考えている次第です。

後藤(茂)委員 大臣のお気持ちは本会議のときからもいろいろ伺っております。そういうことで、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 山村については、風力だとか水力発電だとかあるいはバイオマスエネルギーなどの再生可能な自然エネルギー源がたくさんあるわけでございます。そのエネルギー政策としてこうしたものに取り組んでいく必要がある、これはエネルギー政策としても重要だと考えておりますけれども、特に資源循環型の山村をつくっていくために木質バイオマスを積極的に活用をすべきだというふうに考えております。特に市町村と国有林野がタイアップをしまして、私は地域の熱電利用としてのコジェネを積極的に展開すべきであるというふうに考えております。

 例えば、森林国の北欧などでは、エネルギー全般に占めるこうしたバイオマスの比率というのは非常に高くなっているわけです。日本においてもこうしたものがきちんと事業化できないものなのか。もしやるとすれば、一体どこにボトルネックがあって、何をすればブレークスルーになるのか。例えば、インフラとして配管を手伝ってやればそういうものができるようになるのかどうかとか、そういう具体的な検討をしていく必要があるだろうというふうに思っております。

 山村資源高度活用事業とか森林計画推進基礎調査とか、いろいろなところに十三年度においても予算が計上されているということは承知しておりますけれども、もっと積極的にこうしたものに対応していくべきだと私は思っております。バイオマスエネルギーの利用に積極的に取り組むべきと考えますけれども、御見解を伺いたいと思います。

武部国務大臣 木材産業におけるバイオマスエネルギー利用は、製材工場における木材乾燥用熱源等として利用されているのが大半でありますが、将来的には、先生御指摘のようなエネルギーの効率的な利用を図る観点から、熱電併給システムを整備することが重要でございまして、熱電併給のコージェネレーションシステムの整備ということは極めて重要だ、かように思います。

 これは農業の分野においても同様だ、かように考えておりまして、今後、国有林の問題も含めまして、市町村等と連携しつつ、木質バイオマス資源の安定的な供給体制づくりにつきまして真剣に考えてみたい、かように存じます。

後藤(茂)委員 ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 次に、山村と農業の連携ということについて一点伺っていきたいと思います。

 昨年の補正予算で、木曽福島に都市と農村の交流施設の整備が決まりまして、これは実を言うと大変喜ばれておるところであります。これは昔の小学校の、黒川小学校というんですけれども、ヒノキづくりの非常にいい、しょうしゃな小学校でございます、大変残念なことながら廃校になっておりますけれども。この黒川小学校に手を入れまして研修施設として整備をする、そして、その周辺に宿泊施設を建築しまして、滞在型の農業体験ができるようなそういう施設として整備をされたものであります。

 しかし、考えてみると、この中山間の農村というのは多くは山の中にあるわけです。そして、ここの場所も、実を言うと、シイタケ栽培をすぐわきでやっておられたり、あるいは裏の山は山林の遊歩道として非常にすばらしい場所が整備されているわけであります。そして、すぐ近くには渓流釣りの非常にいいスポットもあったりしまして、山の楽しみも非常に大きいわけであります。

 そこで、一般的に伺いますけれども、農業に関係して、中山間事業や山村事業や都市との交流事業等、さまざまな事業があるわけでありますけれども、こうした農業関係の施策と一体的に連携を密にしながら山の関係の事業にも取り組んでいくべきだというふうに考えますけれども、いかがでございましょうか。

武部国務大臣 先ほどもお話ししましたように、都市と農山村あるいは農山漁村の融合、共生、対流ということがこれからの時代の最も国民が願望しているテーマだ、私はこのように思っております。

 今先生の御指摘のような、農業と林業が一体となって地域の活性化や都市との対流を推進していくために今後真剣に考えてまいりたいと思いますし、今後、公共事業というのはこういう分野においてもある種重要になってくるのではないか、かように考えております。

 先生の御支援もよろしくお願いしたいと思います。

後藤(茂)委員 森林・林業基本計画と環境の問題についてちょっと確かめておきたいと思いますけれども、森林・林業基本計画のうち、「森林に関する施策に係る部分については、環境の保全に関する国の基本的な計画との調和が保たれたものでなければならない。」というふうに法十一条四項になっているわけでありますけれども、もちろん、ここに言う「環境の保全に関する国の基本的な計画」というのは環境基本計画ということになるわけでありますけれども、森林が公益的な機能を有しているということから、森林に関する施策というのは環境の保全に関する施策としてとらえる、そういう面もとらえることができるというふうに思います。こうした点から、森林・林業基本計画と環境基本計画がうまく調和されていかなければならないというふうに思っております。

 森林施策と環境施策との連携、役割分担等について、基本的な今後の対処方針についてお考えを伺いたいというふうに思います。

武部国務大臣 環境基本計画は、環境の保全に係る総合的な計画でありますし、森林・林業基本計画は、林業の健全な発展と森林の有する多面的機能の持続的発揮の着実な実現を図るための計画でありまして、森林の保全など、環境の保全に関係が深い施策については環境基本計画との調和を十二分に図る必要があると考えております。

後藤(茂)委員 質疑時間が終了しましたので、これで終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、鮫島宗明君。

鮫島委員 民主党の鮫島宗明です。

 私の友人で、弘前大学の理学部に澤田信一さんという方がいるんですけれども、ジャパン・ブナ・フェスティバルというのを十一年前から始めて、ちょうどことしで十回目が終わって、一応ことしで一段落ついたので、実行委員会としては所期の目的は達したので一応これで締めるということでしたけれども、白神山地のブナに、幾つかのイベントの目玉がありますけれども、一番大きいのが、都会の人たちが白神山地を訪れて、ブナ林の手入れをして苗木を植える、ブナの里親になるという里親制度というのがこのフェスティバルの一つの眼目でした。

 それからもう一つの眼目は、そういうお祭りですから、夜、開けたところで薪能をやったり、あるいは津軽三味線の連弾をやったり、フェスティバル特有の楽しい仕組みも含みながらやったわけですけれども、もう一つ、非常に大きかったのが、毎年百万円の賞金をつけて、ブナからつくった家具のコンテストというのをやりまして、毎年金賞を出す仕組みをそのフェスティバルでずっとやっていました。

 多分、昭和四十年代は、白神山地の余ったブナ材からは主にリンゴ箱をつくるというのが青森の習慣だったわけですけれども、当時の北欧の家具と比べると、リンゴ箱が一つ五十円、北欧家具のすばらしいデザインのいすが一つ三万円、そのぐらいの付加価値の違いがあったわけですけれども、毎年金賞百万円を出しながら十年たったら、ついに日本の技術は北欧家具の技術を超えたというところまで高まりまして、毎年、そのフェスティバルの後、金賞や佳作をとったものが東京で売りに出されますけれども、今や北欧家具よりもいい値段がつくぐらいにまで育った。

 つまり、やる気になれば、大変日本のポテンシャルはあるわけですし、特にたくみの技術に関しては、私は日本人は大変すぐれたものがあると思いますので、そういう意味では、考えようによってはまだまだ林業も捨てたものではないという気がいたします。

 きょう、私は東京の出身ですので、しかも東京の区部ですから、ほとんど業としての林業とは接点のない地域でございます。ただ、今回の森林・林業基本法の眼目の一つが、従来の産業としての林業の体質強化に加えて、森林の多面的機能あるいは公益的機能の強化というところにもう一つの眼目があって、ここに関してはいわゆる通常の市場原理が適用しにくい、公的資金をつぎ込みながら多面的機能の発現を支えていくという分野でしょうから、ここに関してはタックスペイヤーの理解を得ることが不可欠でして、私は、そういう意味では、二十三区の区部に住んでいる人たちに、どうしてあなた方の税金を日本の森林・林業に使わなくてはいけないのかということを、私自身も一代議士として説明する必要があるものですから、その立場からの質問をさせていただきます。

 先ほどのブナ・フェスティバルのような話は、そういう意味では都会人と山村の方々との大変よき交流の事例でして、あるときに、突然年配の御婦人が訪ねてきて、実はうちの息子が交通事故で死んでしまった、だけれども、どうもその子が何年か前にこのブナ・フェスティバルに行っているから、その子が植えた木があるんじゃないかということで訪ねてきましたら、ちゃんと実行委員会の方で調べて、その木をお母さんに教えてあげて、お母さんが大変喜んだというような美しい交流の話もあります。そんな意味で、都会と山村とのよき交流を推進するという立場で幾つか御質問したいと思います。

 森林の公益的機能の発露という観点からいいますと、私も実は、去年、地球温暖化対策で、CO2の吸収源における森林の機能というようなことで、林野庁のお持ちになっているデータあるいは環境省のお持ちになっているデータを見ると、大変判断がしにくいことがたくさんありまして、公益的機能を発揮している森林は環境省から見たら緑の国土を形成する森林でもあり、つまり、同じ森林空間を環境省的な見方で見る、あるいは林野庁的な見方で見る、ある意味ではかなり錯綜しているということがありまして、森林行政について、環境省的な見方と林野庁的な見方がきちっと整合性がとれているのかどうかということだけ、本論に入る前にお伺いしたいと思います。

 まず、森林植生のとらえ方ですけれども、環境省では緑の国勢調査というのをやっていまして、日本全体にメッシュをかけて、ここは自然林とか、二次林とか、自然に近い二次林とか、植生林というような分け方をしていますけれども、今度、この新しい基本法の中で、林野庁は林野庁の方で森林を三つの区分に分ける。

 省略して言いますと、一つは水土保全林という森林、それから二つは人間と自然との共生を進めるための共生林、それから三番目が、これは従来型の林業の対象でしょうけれども、資源循環林、この三つに全国の森林を分けるということですけれども、その前提となる日本列島全体の森林のメッシュかけなり国勢調査というのは、林野庁は林野庁で独自におやりになるんでしょうか。

中須政府参考人 先ほど、ほかの関連でお答え申し上げましたけれども、私ども、森林計画を策定するその基礎資料とするという観点から、都道府県の林務部局が主体となってやっておりますが、空中写真というものを一番の根拠にいたしまして、全国の森林を小班という単位で、細かい一定の区域ごとに、どのような木が植わっているか、何年生の木であるか、どのような手入れをしてきたか、そういうことを克明に記載した森林簿というものを持っておりまして、それが、いわば台帳というか、各地域の森林の戸籍になっている、こういうことでございます。

鮫島委員 環境省は環境省の方で、緑の国勢調査員というのを、ボランティアで、高等学校の生物の先生を含めて全国で確保していて、やはり向こうは向こうで森林簿に近いものを持っていると思います。

 それから二つ目は、保安林と保護林の関係です。保安林という指定が林野庁の方であると思いますけれども、環境省の方では、保安林の中で、貴重な野生動植物の生息地または生育地の保護その他の自然環境の保全に配慮した管理を行う必要がある国有林の一部の区域を保護林に設定して、それを守る政策をとる、これまで五十二万四千ヘクタールの保護林を設定しましたという報告が環境省の方の報告にあるのですけれども、この保護林の指定、設定というのは環境省が行うんでしょうか、それとも林野庁が行っているんでしょうか。

中須政府参考人 一つは、最初にお話の出ました保安林につきましては、御承知のとおり、いわゆる森林法に基づきまして、土砂流出防備であるとか水源涵養であるとか、そういう目的のために、かなり行為規制を伴った厳しい規制のかかる地域ということで保安林の指定制度がございます。これは、農林水産大臣と都道府県知事が分担をしてそれぞれ指定をする、こういう仕組みになっています。

 それから、ただいまお話の出ました保護林と申しますのは、指定自体は私どもの方でやっております。国有林の中において、国有林野としての森林施業を行う際に、貴重な動植物が残されているとか自然環境があるということで、森林施業ということをある意味では控えて、その地域は現在の環境を保護していこう、そういう意味から、国有林施業の中において保護すべき林、国有林という意味で保護林を指定いたしまして、ただいま先生御指摘のございましたとおり、五十二万ヘクタール余が保護林として私どもの方で指定をしてある、こういうことでございます。

鮫島委員 そのことに関連して、生物多様性の保全、ある意味では、言いかえれば野生生物の保護、豊かな森には鳥や小動物などの野生生物がたくさんいることが好ましいということは論をまたないわけですけれども、平成五年に我が国は生物多様性条約を批准し、それの裏づけとしての種の保存法というのを決めたわけです。今日本の森林の中にどのような野生生物がどういう密度でいるかという調査は、それに基づいて今の保護林というのの指定を行っているんでしょうけれども、野生生物の分布や密度の調査というのは、これはどちらのお仕事なんでしょうか、環境省なのか、林野庁なのか。

中須政府参考人 そこは基本的に環境省の方のお仕事だ、こういうことでございます。

鮫島委員 そうすると、貴重な野生動植物の存在や分布については環境省の方でやって、それで、特にそういう観点から大事そうな地区を保護林として指定するというのは林野庁の方でやる。何となく不思議な行政、同じ建物に林野庁と環境省が入っていればそういうことも可能かなという気がいたしますけれども、やや不思議な気がいたします。

 それから、流域管理という言葉も環境政策の方にも出てくるし、先ほどから出ているように、今度、林野庁の方では、百五十八の流域に分けて、流域管理的な視点から森林管理を行うということでしたけれども、環境省の方は環境省の方で原生流域調査というのをやっていて、特に自然度の高い流域、野生動物の存在なんかも含めて、環境的に見て好ましい原生流域を九十九流域指定しています。総面積二十万五千ヘクタール程度あるんですけれども、この環境省の指定する原生流域と、林野庁の方で決める百五十八流域というのは、どういう関係になっているんでしょうか。

中須政府参考人 これは言葉が紛らわしいのかもしれませんが、全く関係がないというのがお答えになろうかと思います。

 私どもで流域管理システムというふうに申し上げておりますのは、川の上下流というものを通じて森林の整備あるいは木材の生産、そういうことについて関係する方々、林業活動をされる方、木材生産をされる方、あるいはボランティアで森林整備に参加される方、こういう方々がその流域単位でもって十分協議をし、話し合いをしながら、流域内の森林をどう育て、どのように木材を生産していくか、こういうものを一緒に考えていく、そういうことをシステム的に進めてはどうか、こういうことでやっている作業というか仕組みでございます。

 それに対しまして、ただいまお話のございました環境省の原生流域は、面積約一千ヘクタール以上にわたって人工構造物の存在がほとんどない、そういう地域をそのまま残そうという意味だと思いますが、そういう地域として指定をして、経年変化等に関する調査を実施する。

 そういうことで、地域の広がりとかあるいは地域指定の、指定というか概念自体も基本的に違うもの、こういうことでございます。

鮫島委員 大体わかりました。

 ダブっているところもあるし、それぞれ別の観点から取り組んでいるところもあるというのはわかりましたけれども、多面的機能の発露といいますか、森林の持つ多面的機能ということに着目して日本の森林を適正管理していく上では、例えば、先ほどの緑の国勢調査にしても、環境省は環境省で行って、全く違ったネーミングで、違った概念でくくってマップをつくり、林野庁は林野庁で、また独自の森林簿をつくる。これはやはりタックスペイヤーの方から言えば、二重払い、二重行政の典型的な例でして、私は、野生生物の管理の面についても多少二重行政的な面があるのではないかと思いますけれども、環境省から見れば貴重な野生生物で、林野庁から見れば同じ動物を害獣というというようなおかしな行政は、やはりタックスペイヤー側としては、もっと一元化を図ってほしい。

 橋本元総理の行政改革、長所、欠点、さまざまあったことが最近言われておりますけれども、私は、ある意味では森林の多面的機能を行政的にどう担保していくかということについては、本当は環境省と林野庁が、あの行政改革の論議の中で、もうちょっとこういう視野を持って検討すべきでなかったかという気はいたします。その辺が二重行政のまま残されているということをぜひ御認識いただきたいというふうに思います。

 本題に入りますけれども、この森林・林業基本法が今度できて、いよいよ日本も環境調和型の新しい林野行政が定着しますといったときに、都会の人たちにこういう法律が今度できますよと言うと、一般の都会人が何を期待するかというと、じゃ、その法律が、基本法ができたら花粉症はなくなるのかということが多分一番大きな関心なんですけれども、この立法措置と花粉症が少しは軽減されるのかということは関係があるのかどうか。ちょっと都会の人たちのために御答弁いただきたいんです。

中須政府参考人 大変難しい御質問でございまして、どういうふうに答えればいいか、私もいささか戸惑っておりますが、基本的に、ちょっと花粉症について、私どもがどういうことをやっているかということを簡単に申し上げたいと思います。

 花粉症対策というのは、そもそも原因究明、あるいは予防、あるいは治療、あるいは発生源に関する対策をどうするか、さまざまな対策を総合的に進めなければならないということで、現在、私ども、それから環境省、厚生労働省から成ります連絡会議を設けて、総合的なさまざまな対策をそれぞれ分担してとっている、こういうことでございます。

 その中で、林野庁としては、じゃ、どういう部分を担当しているかと申しますと、森林・林業面で、杉の花粉症にどう対応するかという意味では、一つは、花粉の出る量が少ない杉、こういう品種を開発して、その普及を図っていくというのが一点目でございます。

 それから二点目は、やはり今、ずっとこれまで御議論ございましたように、間伐、いわゆる森林の整備の一番典型的な例でございますが、こういうものを進めているわけであります。

 これが杉花粉の発生抑制に資するということで、緊急間伐五カ年対策等を現在進めておりますが、そういう中で、できるだけ、例えば首都圏とか近畿圏とか、人口稠密な地域に近いところでは、花粉を多く発生する木を間伐に際して選定をする、あるいは枝打ちに当たってそういう枝を優先する、こういうような形で、できる限りの配慮を払っている。こういうところが、私どもの担当している部分でございます。

 そういう意味では、新しい基本法、そういう中において、森林の整備、保全が進むということは、十分手入れのできた山がつくられていく。これは、必ずや、いわゆる花粉が出る量で言えば少なくなる、そういう意味では有効な対策の一つだと思いますが、それをもって、じゃ、花粉症が全部解決するかというと、まことに残念でありますが、そこまでは現段階では困難でありまして、そういう意味で、森林が十分手入れがされて、整備、保全が進むということは、花粉症の発生の改善には資するだろうけれども、それをもって根本的な対策にはならない。

 そういうようなことで、変な話でございますが、私も実は花粉症でございまして、大変苦労をして、恥ずかしいのでそういうことは余り申さなかったのでありますが、そういう意味で、我々も、限られた中ではありますが、花粉症縮減のための努力は我々なりに続けているということを、いつも申し上げているわけでございます。

鮫島委員 東京都のさまざまな調査で、花粉症について非常にはっきりしたことが一つありまして、花粉だけが犯人じゃない、花粉と排気ガスとの複合的な作用で花粉症が初めて起こる。

 ですから、排気ガスが少なくて杉の主産地で花粉が飛び交っているようなところの方々の花粉症の比率は非常に低くて、むしろ排気ガスと花粉が合わさったときに花粉症が出ますから、林野のサイドといいますか、山村の方々、あるいは杉を育てている方々が、何も自分たちだけが犯人ではないということも、ぜひそれは自覚して、逆に言うと、東京なり大都市での排気ガスの規制ということに関しても、一見関係がないようですけれども、そういうところにも関心を持っていただければ、花粉症の発生の実態ももう少し理解されるのではないかという気がいたします。

 それから、もう一つ多分関心があるのは、この基本法ができることによって、つまり産業としての自立が危ぶまれている林業の足腰が少しは強くなるのか。業としての林業を助けるためにいつまでも税金をつぎ込むのでは、これは問題ではないか。この基本法ができて、多面的機能の発揮には、公的資金は結構ですが、業としての林業というのは、やはりこれを機会に足腰が強くなってほしいというのが、これもやはり納税者側の当然の希望だと思います。

 その意味で、先ほどからほかの委員の方々も質問をしていましたので重複を避けますと、林業の産業としての自立について、技術的な支援あるいは研究開発的な支援を今後どの程度力を入れていくのか。

 私が知る限りでは、医学を含めてさまざまな生物系産業がありますけれども、生物系の産業で一番技術開発とか研究開発がおくれているのが残念ながら実はこの林業ではないかという気がいたします。その意味で、産業としての自立支援について技術開発の占める役割は大変大きいと思いますけれども、大臣、もし御所感がありましたらお伺いさせていただければと思います。先ほどの森林行政の一元化についても、もし御意見がありましたら。

武部国務大臣 先ほど、タックスペイヤーの立場ということでいろいろ興味深いお話を承ったのでありますけれども、私は、我々の努力も足らないのかもしれませんが、先ほど排気ガスのお話もありましたけれども、森というのは大気浄化作用もあることは先生御存じのとおりだと思いますし、東京の都民の皆さん方が、蛇口をひねれば水が出る、よもやそのように考えていないと思うんですね。やはり森林の水源涵養ということも御存じだと思いますが、意外にそういったことが知られていないということについては反省しなきゃいけない、かように思います。

 また、環境省と林野庁の問題、先ほど有害鳥獣の問題なども話がありましたけれども、東京の皆さん方は御存じないかもしれませんが、私どもの地元では、農家は、何でシカを山から出してくるんだ、シカは畑に出てこないように林野庁がしっかり管理しろ、そういう、同じ農林水産省の中でも、林野とそれから農業の分野で大変なつばぜり合いをやっているという実態もあるんですね。そういったことも御承知いただきたいと思います。

 お説のとおり、行革の際に、省庁再編のときに、私は、林野庁は環境省にやってよかったんじゃないかという議論を言っていた立場です。それはどうしてかというと、ただし借金は棒引きにしてもらわなくちゃ困るよというようなことも言っておりました。しかし、現実、林野庁は農林水産省として残ったわけでありますので、環境省と林野庁というのは、あるいは農林水産省すべてだと思いますけれども、恋人の段階から夫婦のような、そういう関係になっているんじゃないか、かように思います。

 今後、私どもも、たまたま私の私案ということで発表させていただいたんですが、農林水産省の使命というのは、食料の安定供給と美しい国づくりということを掲げておりまして、人と自然との共生社会を実現していくというようなことをねらいとしているわけでございます。

 本来、環境庁ができるまでは、農林水産省が環境庁の役割の大部分を担っていたんじゃないか、このように思っております。しかし、昨今、環境問題というものが非常に注目をされまして、国民の関心も非常に強まってきたというようなことで、環境問題は国際的にも地球温暖化の問題などもありますし、これを特別に取り上げて、役所を設けて行政対応していこうということになっているんだろうと思いますけれども、そういう意味では、環境省は、企画調整といいますか、そういった分野が強くなっていくんだろうと思います。実際に環境を浄化していく、修復していく、改良していく、あるいは望ましい環境を創造していくということになりますと、農林水産省の役割というのは従来にも増しまして非常に大きくなっている、このように思うんです。

 先ほど来私ちょっとお話ししておりましたが、タックスペイヤーと農山漁村との関係につきましても、私は、ちょっとマスメディアが主導で対立関係をあおっているんじゃないのかなと。これは本当に不可思議なことであり、悲しい事実だ、私どもこのように受けとめております。カリフォルニアよりも小さい国ですよ。そして、都市の皆さん方がおいしい水を飲めるのは、やはり豊かな森があるからだ、そしてこの豊かな森が荒廃してきているからさまざまな環境悪化につながっているという事実もあるわけでありまして、そういう意味では、これから都市と農山漁村というのは融合すべきだ、対流すべきだ。

 交通インフラが整備されたんですから、あとは飛行機代とか新幹線の運賃が半分になれば、東京に緑をつくるとか東京を再生するとかということよりも、人が動けば簡単においしい水、きれいな空気、美しい自然を手に入れることができるわけですね。新鮮な野菜も手に入るわけでございます。そういうことを助長する政策が大事ではないか。そういう意味では、環境省と農林水産省に限らず、政府が一体となってこの問題に取り組む必要があるんじゃないか、かように思います。

 本来の林業の産業としての自立性や体力強化をどうしていくかということにつきましては、昨今随分変わっております。地域的に随分違うところがあるのかもしれませんが、第一に日本の地形ですね。急峻な地域において高性能の林業機械の導入などがまだ進んでいないとか、あるいは間伐等の非皆伐作業及び環境負荷低減に配慮した作業に対応した機械化の取り組みが不十分であるということは御指摘のとおりだろう、こう思います。

 今後、技術的にはかなり問題はない、技術的な問題はない、研究開発の分野でも外国に引けをとらない技術が進んでいる。問題は、林産業の経営基盤が極めて脆弱であるということがやはり一つ大きな問題だろうと私は思いますし、はっきり申し上げて、協同組合主義ということも意識改革をおくらせている原因になっているんじゃないか、かように思います。そういう意味では、この林業基本法の制定を機に相当思い切った改革が進んでいくというふうに私は存じます。

 ちょっと長くなりましたけれども。

鮫島委員 どうも御持論をとうとうとお聞かせいただいてありがとうございました。

 大臣が、本来環境庁と林野庁が一緒になっておけばよかったなという御意見を初めて伺いましたけれども、私ども民主党としても社会単位としての夫婦における夫婦別姓は主張していますけれども、行政組織はぜひ夫婦同姓でお願いしたいというふうに思います。

 今の技術支援に関してですけれども、きょうもずっと話が出ているように、やはりこれだけの人件費の高い国で、間伐作業がなかなかペイしない、それも間伐が進まない非常に大きな理由だと思いますけれども、そういう意味では、全自動型の間伐ロボット、枝打ちロボットなり、もうちょっと林地の中で作業をするようなロボットの開発も必要ではないか。

 私は、先ほど一番最初にブナの話をしたのは実は多少意味があったわけでして、こういう技術開発をするときに、コンペティション方式といいますか、これまでの林業機械の分野で開発をしていたところではなくて、もっとオープンに、ある条件での間伐作業を自動的にやるようなロボットをぜひつくってください。それが、試作段階から実機段階というふうに二段階ぐらいでコンペは分けてもいいと思いますけれども、最後に金賞をとったら、これは林野庁のお墨つきである種の補助金もつけて全国で使えるようにするというような仕組みまで多少組織的に考えないと難しいのかなという気がいたします。

 それは、実は農業の世界で田植え機の開発に成功したことによって田植えの重労働から解放され、農業の規模拡大も少なくとも行政的には想定可能になったわけですけれども、この田植え機を開発したのは、実は農業関係の技術者ではなくて、東大の宇宙工学のグループが田植え機を考えたということもあります。ですから、従来型の発想だけではなくて、ひとつ開かれたコンペティション方式なんかも取り入れながら、ぜひ林作業における省力化ロボットの開発に取り組んでいただきたいと思いますけれども、現状はどうなっておられますか。御紹介いただければと思います。

中須政府参考人 林業における高性能機械の導入ということでは、平成三年に、私ども、高性能林業機械化促進基本方針というものを定めまして、その当時、外国でかなり普及の進んでおりました大型の林業機械、ある種のロボットというか、木の伐採、そして伐採された木を木材にしていく、そういう一連の過程を一挙に行ってしまうプロセッサー等のそういう機械を我が国に導入し、普及を図るということでまず取り組んでまいりました。

 こういった大型機械、平成十二年度末で二千三百台、我が国に現在導入されておりますし、国産化も進んでおります。そういうことで、生産性の向上なりコストの削減にも、いろいろな事例調査等から見ると、かなりの効果を発揮している、こういうことがございます。

 ただ、残念ながら、こういった欧米で開発されている大型機械というのは、我が国で使う場合にはやはり場所が限られてしまう、非常に急峻な山の斜面、そういう場所で効率的に作業を行うという意味では、やはり我が国の条件に合った小型のロボット、そういうものを開発する必要があるということが現下の急務でございまして、そういった意味で、新しい基本方針を昨年策定いたしまして、小型の、我が国の状況に合ったロボットの開発ということに取り組んでいるところであります。

 なお、それに当たりましては、関係の需要者を含めた方々に集まっていただいて、どういう仕様のもの、どういう能力を持ったものを開発すればいいかというものを検討していただいた上で、それを広く公募して、こういうものをつくられる方、そういうのを手を挙げていただいて、その方に試作というか機械の開発をお願いする。こんなふうなシステムを通じて、現在、新しい省力型のロボットの開発に取り組んでいるところでございます。

鮫島委員 ぜひ力を入れていただきたいと思います。

 世間で言われていることは、農林水産省の研究開発の経費の単位が一けた低いんじゃないか。こういう農作業ロボットなり林作業ロボットをつくるにはかなりのお金が必要ですので、ぜひ今までの研究支援の予算単位を超えた予算単位を考えていただきたい。それは、なかなか間伐が進まないことによるマイナスの行政経費に比べたら、技術開発に今まで以上のお金を注ぎ込むことは、私はむだではないと思います。

 確かに、急傾斜地で従来のロボットの発想からはうまくいかない、発想の転換がさまざま必要でしょうけれども、時にはテレビのニュースで、林業の作業ロボット遭難というようなニュースが出ることを私は期待いたします。

 都会の人たちが根強く期待していることのもう一つに、林産の副産物といいますか、キノコの王様マツタケがもうちょっと何とかならないのかと。これは直接、この基本法ができたからといって急に日本のマツタケがふえるということではないと思いますけれども、一体研究開発はどんなふうにしているのか。

 私は昔つくばの生物資源研というところにいましたので、大体予想はつきますけれども、人工培地で何とかマツタケをつくりたいという人たちが何人も挑戦しましたけれども、小指の先ぐらいのマツタケが一瞬顔を出したことがありましたけれども、それ以外は菌糸が張るだけでキノコにはならなかった。多分、ああいうふうに生き物に寄生しながらふえるキノコというのは大変難しいし珍しいものですから、そういうバイオテクノロジーで人工培地を開発してということでうまくいくのかどうか、私はむしろ難しいんじゃないかと思います。

 それよりも、もうちょっと泥臭く、どうして同じ松林でありながら、こちらの松林はマツタケが毎年たくさん出てこちらは余り出ないのか、そういうマツタケの生産力の違いというのの科学的な背景はどうなのかという切り口からの研究の方が私は実用性が高いんじゃないかと思いますけれども、そんな面で、マツタケ研究は最近どうなっているんでしょうか。

中須政府参考人 私も専門家でございませんので、しっかりしたお答えができるか自信はございませんが、ただいまお話ございましたように、マツタケは生きた松の根に共生して生活をする、これを菌根菌というふうに言っているそうでございますが、そういう特異な性格を持っている。

 このマツタケの人工増殖のため、私どもの試験研究機関、お話のとおり人工培地での育成ということに長年取り組んできたわけであります。しかし、これは残念ながらとうとう成功しなかったということで、ほぼ十年前に人工培地によるマツタケの増殖ということについてはほぼ断念をいたしております。

 現在では、実際に生きている松の根を利用して、林地でのマツタケの育成方法についての研究ということに転換をしているわけでありまして、森林総合研究所が、六府県というふうに伺っておりますが、関係林業試験研究機関等と連携をいたしまして、分担をして、実際の現場でのマツタケの育成ということはこの六府県の林業関係試験研究機関が現在取り組んでいる。

 基本的には、胞子の埋設等を試みて、どのような環境下で菌根菌が安定的に増殖をしていくのかということについて研究を進めているわけでありますが、残念ながら、現段階では、今なお実用的な栽培技術というものが確立されるには至っていない、なお継続中である、こういう状況でございます。

鮫島委員 ぜひ、この森林・林業基本法の成立をきっかけにして、花粉症が治って、マツタケが安く食べられるというような林業を実現していただきたいというふうに思います。

 残された時間、バイオマス利用の関係に入りたいと思います。

 私は、間伐がなかなかペイしないとか、もう一つ林業の方が経営的に難しいというのの一つのかぎは、バイオマス利用との関係が握っているんじゃないかという気がいたしております。これもまたおかしなことに、農林水産省と経済産業省のやはり縦割りの問題があって、なかなか林野庁が正面切ってエネルギー生産をやるんだということが言いにくい行政環境にあることが、私は日本病の一番大きい原因ではないかという気がいたします。例えば、総合資源エネルギー調査会というのがありますけれども、この会はどういう会で、どの程度の権威のある会なんでしょうか。

中須政府参考人 我が国のエネルギー政策なりこれからの開発ということに関して、学識経験者を中心としてその方向を議論される、そういう会議だというふうに承知をしております。

鮫島委員 森林バイオマスのお話の入り口として、現在国内の森林・林業・木材産業由来、あるいは木材由来のバイオマス資源の総量というのはどの程度なんでしょうか。もちろん、もう既に材として使われているもの以外の未利用木材資源の総量というのはどの程度なんでしょうか。

中須政府参考人 未利用資源という観点でいうと、なかなか、どこまでを分類するかということで難しゅうございますが、一応の割り切りをいたしまして、木材生産の過程で出る残されたもの、実際には、現在、例えばおがくずとして畜舎にまくとか、本来の使われ方ではないのかもしれませんが、そういう形で使われているものを含めて申しますと、いわゆる林地残材あるいは未利用の間伐材ということで約九百万立方メートル、それから製材工場において発生しております残材あるいは廃材、これが千五百万立方メートル、それから建設発生木材、つまり、例えば家を取り壊すとかそういう中で発生してきた廃材、これが約千六百万立方メートル、合計約四千万立方メートル程度というふうに推計されると私ども思っております。

鮫島委員 理由がわからないのですけれども、バイオマスエネルギーの賦存量、つまり潜在的にどれだけの量があるかというのが、同じ政府系のいろいろな委員会なり審査会の報告によって非常にばらついています。

 それから、このバイオマスの話になると使う単位がいろいろ出てきて、今おっしゃった、例えば林業生産活動に伴って発生する林地残材や枝などというのが九百万立米という体積で出てきましたけれども、では、これは原油換算でどうなんだというと、六割が水分として、乾物率で四割、それで〇・四を掛けて、それから木材一単位と石油一単位の、カロリーが木材の方が三分の一だから、さらにそれに三分の一を掛ける。つまり、約八分の一にすれば大体原油換算の量になりますよということだと思いますけれども、そんなところでよろしいのでしょうか。

中須政府参考人 いろいろの計算、ある意味での概算でございますので正しいのかどうか私も絶対的には自信がございませんが、例えば、私が今ここで持っております資料によれば、先ほど四千万立米というふうに申しました。これが、木材のトン数に換算すると千六百万トン、こういうふうに一応換算できます。四千万立米、千六百万トン、同じものです。これをエネルギー量として原油換算をすると約五百万キロリットルの原油に相当する、私ども、こんなふうに換算としては使っております。

鮫島委員 ごく大ざっぱに言えば、大体八分の一ぐらいで判断すればよろしいということなんでしょう。

 先ほど私がお伺いしました総合資源エネルギー調査会、政府の諮問で、日本のエネルギーの需給構造のあり方とそれを環境にどう調和させていくかという大変高度な作業をしている調査会だと思いますけれども、この会の中で、バイオマスエネルギー関係の御担当をしている専門家はどなただか御存じでしょうか。

中須政府参考人 ただいま御指摘になりました調査会で木質のバイオマスエネルギーのことについて御議論が行われているということは承知しておりますが、御担当がだれだか、私、お名前は存じておりません。

鮫島委員 林野庁がいかにこの木材バイオマスエネルギーに無関心かの一つの証拠だと思いますけれども、実は、東京大学の山地憲治さんという教授の方がこの調査会の中でバイオマスエネルギーを担当されている。その方の「バイオエネルギー」という本がありますけれども、これは、バイオマスエネルギー関係ではいろいろなところに引用されています。

 この方が、例えば間伐材を利用すると石油換算で八百万キロリットルのエネルギーになる、こう言っているわけですけれども、これをやや粗っぽく単純に十倍しますと八千万立米の間伐材が出ていることになっているんです。先ほど長官の方は、林業生産活動に伴って発生する林地残材や枝等は九百万立米とおっしゃいましたけれども、この山地大先生の推定では十倍になっているわけですね。

 これはほかのバイオマスに関しても、どうしてこういう数字が出てきているのか私はわかりませんけれども、大変権威のある先生と言われている方がめちゃくちゃな数字を出しながら、それで権威のあるこの総合資源エネルギー調査会で新エネルギーの見通しを決め、そして環境との調和で重要な役割を果たしているというのは大変ゆゆしき問題だと私は思って、どうして林野庁がそれほど無関心なのか理解できないんです。

 では、ここに、林野庁側から見てバイオマスエネルギーの開発については大変実績もあり見識もある方がどなたか入っているでしょうか。

中須政府参考人 ただいまお話のございましたように、八千万立米でございますか、そういう間伐材というのは常識的には、林業関係者としては、当然そのような数字はあり得ない、余りにも膨大過ぎる数字だと思います。

 ただ、ただいま御指摘のそういうお話、まことに申しわけございませんが、私、初めて聞きました。そういう内容自体承知しておりませんでした。

鮫島委員 もう遅いのかどうかわかりませんけれども、ぜひ大臣もその点について、このバイオマスエネルギーの利活用というのは、先進国の中で日本の取り組みのおくれが一番目立っている分野ですし、今の林業が、エネルギーを視野に入れて、新産業として新しく展開していく可能性を潜在的にたっぷり持っているにもかかわらず、もう一つエネルギー政策と結びついていかないというあたりがこの林業の将来を暗くしている大きな原因ではないかという気がいたします。

 ちなみに、先ほど後藤委員の方から話がありましたけれども、少なくとも、例えばスウェーデンでは、国内の全エネルギー消費の一七%程度をこのバイオエネルギーに依存している。それに対して日本は〇・八%です。しかも、その〇・八%の主たるものは都市の一般ごみ、いわゆるごみ発電から出てくるもの、それから製紙過程で出てくる黒液、こういうものをバイオとしてカウントして、それでやっと〇・八%、こう言っているわけでして、ほとんどまだこの森林・林業の世界とバイオエネルギーとが残念ながら日本ではつながっていないということが経営を大変圧迫している一つの例だと私は思います。

 一番くだらない話は、例えば製材所で出てくる廃材が産業廃棄物だという扱いを受けて、本来でしたらエネルギー利用すれば新しい価値を生むはずのその製材所の製材かすだとか端切れが産廃としてお金を取られる。それを二トントラックで運んでいくと二トンにつき三万円取られて、ただでさえ薄い利益のところがそんなふうに取られて、どうもよくわからない。ただ、これを焼いて処分しようとしたら、野焼き禁止で罰金だと言われる。

 非常に良質でクリーンなエネルギーのもとであるはずの林産廃棄物あるいは製材所の残渣が、もっともっと有効に使われるべきなのがそんな扱いを受けているというのが悲しい日本の現状なんですけれども、今の日本に比べてヨーロッパではどの程度こういうことが進んでいるかという点について、林野庁の方でモデル事例的に、もし日本でこんなことができたらいいんだけれどもというような事例がヨーロッパでありましたら御紹介いただきたいと思います。

中須政府参考人 ヨーロッパ、特に北欧での取り組みということでいえば、私どもが承知している限りでは、今お話がございましたように、スウェーデンでは総エネルギー消費量の約二割をバイオマスエネルギーで賄っているという状況にございますが、これは特に、当初化石燃料に依存をしておりました都市部の個別暖房というものを地域暖房に切りかえ、その地域暖房のエネルギー源としてバイオマスエネルギーを活用する、こういうことが大きな力になったというふうに伺っております。

 そのほか、デンマーク等では、国際協定である気候変動政府間パネルに向かって努力をするという中で、総エネルギー消費量の約八%を木質バイオマスエネルギーで賄っている、こういう状況にあるというふうに承知しております。

 それから、今の例えばスウェーデン等では、エネルギー源に関していろいろな税が、エネルギー税とかCO2税だとか硫黄税とか、そういうものが課せられる仕組みになっているわけでありますが、木質バイオマスについては、そういった税がほとんどかからないという形でもって、相対的にエネルギー源として有利な扱いをする、こういうような仕組みになっているということも大きいというふうに聞いております。

 そのほか、フィンランド等でも約二割が、スウェーデンと同じぐらいがバイオマスエネルギーになっている、こんなふうに私ども承知をしております。

鮫島委員 多分、行政環境として二段階おくれているような気がします。

 まず、欧米の諸外国では、バイオエネルギーを含む再生可能エネルギーの利用促進、特に電力会社に買い取りを義務づけるような法的な措置、あるいは行政的なインセンティブを約十年ほど、もう今からですと十五年ほど前からほとんどの国が発動している。しかし、日本はそのような基礎条件が整っていない。

 今のお話にもありましたように、EUはやはり風力とか先行していた新エネルギーがもう大体頭打ちになってきたもので、これから一番伸びていくのは、あるいは伸びる可能性があるのはバイオマスエネルギーだということで、EUはここに非常に力を入れ始めて、ドイツでも二〇〇〇年の四月一日に再生可能エネルギー源に高い優先順位を与える法律というのをつくって、今後十年間でバイオマスエネルギーのシェアを五倍にふやしていくという国家目標を立てています。

 金も力もない林野庁がどこまで経済産業省を口説けるかという困難な課題もあると思いますけれども、今林野庁の方としてはどんな方策でこのバイオマスエネルギーの利用推進を図っていきたいと思っておられるのか、具体的なメニューがありましたら紹介していただきたいと思います。

中須政府参考人 先ほど来御説明申し上げておりますとおり、今バイオマスエネルギーということで現実に使われているという状況は、小さな、小さなと言うと語弊がございますが、製材工場単位に、出てきた廃材をボイラーでたいて、それを例えば乾燥材の乾燥の熱源にする、あるいは進んだところでその工場の電気、電力を賄う一部にする、こういった取り組みが若干の場所で行われているというのが現状でございます。

 したがいまして、これから先、これを進めていく上で、技術の問題、コストの問題を含めて、現実にどういう問題があるのかということ自体が、なかなか私ども把握できていないというのが率直な状況であります。

 そのために、例えば今年度から新たに山村地域においてバイオマスエネルギー、山村地域に賦存しておりますさまざまなバイオマスエネルギーを活用してどういうことが実際に可能になるのか、そういうような調査に取り組んでいるわけでありますが、そういう調査を通じて、現実的な可能性というものを実際に掘り起こしていく。それで、どういうところがネックになるのかということを見定めて、それを政策化していく。

 そういう意味での一番取っかかりというか端緒に立っているというのが、先生から大変おくれているという御指摘がございましたが、そういう状況でありまして、我々、おくれを取り戻すべく、そういったやはり具体的な実例に即して、どういうことができるのか、そういう現場からの調査に基づいて方策を検討して、バイオマスエネルギーへの取り組みに生かしていきたい、こういうふうに思っております。

鮫島委員 ヨーロッパで長年バイオマスエネルギーの開発に携わってきた行政の担当者たち、結局二十年ぐらいかかってやっと定着してきましたと。その人たちの感想をまとめた言葉として、今日の普及水準に至るまで、利用者に対しても、国民に対しても、バイオマスによる地域熱供給システムなどの再生可能エネルギー利用システムの環境的なメリットや経済的なメリットを繰り返し説明するなど、的確な情報提供に努めてきたことが大きな成果につながったということが、大体彼らが抱いている感想だそうです。

 ですから、余り最初から大上段に振りかぶって大げさなシステムを導入することを考える必要はないと私は思います。小さなボイラーでもいいし、実際の零細な林業をやっておられる方々が、経済的な負担もなく、例えば月々数千円のリースで借りられるような、そんなボイラーを貸すだけでも、今お金を払って捨てているというようなばかなことを解消することに少しは役に立ち、そういう意味でエネルギー利用、熱利用でもいいですし、暖をとってもいいし、乾燥に使ってもいいし、そういうささやかなことから始めて、こういうことがエネルギーの第一歩として使えるんだということを広くみんなが体感することが、私は、日本において、二十年ヨーロッパよりはおくれていると言っていますけれども、バイオマスエネルギーが少し市民権を持っていくきっかけになるのではないかという気がいたします。

 この分野、なかなか林野だけでもやれない難しいことだと思いますけれども、日本の長期的なエネルギーのあり方、あるいは地球環境、地球温暖化防止における日本が果たすべき役割も考えると、この分野も大きな一つの決め手になるのではないかと思います。その意味では、ぜひ大臣に閣議の中でも頑張っていただきたいし、余りテレビに外務大臣ばかりが出るような状況は好ましくない。この分野における大臣の御決意を最後にぜひお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 二十一世紀の我が国を循環型社会としていく上でも、先生の御指摘というのは非常に重要だ、かように思っております。さような意味でも、林業基本法、なぜ改正に至るかというその背景の一つも、やはり今までは木材生産、それが第一義的に林野庁の仕事だった、あるいは山の管理、そういった面だけであったと思うんですけれども、きょうは非常に示唆に富んだお話を伺いまして、私もひそかに今胸を燃やしている次第でございますので、今後の御鞭撻をお願いしたいと思います。

鮫島委員 どうもありがとうございました。

堀込委員長 次に、鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄でございます。

 まず大臣に、答弁を簡潔にしていただきたいと思っています。会期末を迎えまして、本来は基本法二つをこの間やるというのは大変至難のわざでありまして、十二時間の審議時間でこの林業基本法を上げるということは大変な形でございますので、よろしくお願いいたしたいと思っています。

 実は私、きのう、おとといからこの本を読んでいまして、日本林業調査会の「諸外国の森林・林業」、分厚いものでありますけれども、通して読ませていただきました。

 この中で、この書いている方、何人かで書いておるんですけれども、日本の森林・林業政策は大変世界の国際的な潮流からおくれておると。十一カ国の事例、ほとんど先進諸国でありますけれども、ロシア、東欧を除いて、ニュージーランドは若干違うんですけれども、世界各国とも、先進諸国はこの十年間、極めてある面では困難な状況の中でありますけれども、それほど大きな林業の衰退をしないできておる、ところがひとり日本だけはこの間自給率は二〇%、縮小再生産の方向である、こういうふうに論じておるわけであります。

 実は今回の、森林・林業基本法というふうに銘を打って変えるわけでありますけれども、非常におくれました。私ども、三年前の国有林野改革法のときにも、この林業基本法、全く時代おくれだということで厳しく言わせていただいたんですけれども、あのときもそれを見直すという答弁をいただけませんでした。今回やっとこういう形で出てきたわけでありますけれども、この間の日本の森林・林業政策、大臣としてどのようにとらえておるのか、なぜこのようにおくれたのか。この点について簡潔に御答弁願いたいと思います。

武部国務大臣 現行基本法のもとでの施策の展開も、森林整備など一定の成果はあった、このように評価できると私は確信しております。

 その後の森林・林業をめぐる情勢の変化により管理不十分な森林が増加してきている、こういった近年の状況に対応して、森林の多面的機能の発揮への国民の要請の高まりというものもございますので、それを踏まえ、今般基本法を見直すということに相なった次第でございますが、率直に申し上げまして、私自身も、もっと早く取り組むべきだったという印象は免れない、かように思っております。

鉢呂委員 一九九二年に地球サミットがございました。実はあのときに、国際的に、自然や緑の重要性、地球環境としての森林の重要性、これがうたわれたわけでありまして、それから約十年間を、失われた十年というふうに言われていますけれども、各国とも、一九九〇年代前後に、今日本が改正しようとしていることは、ほとんど法律にも整備をして実行してきておる。私は、そういう面では極めて遅かったし、と同時に、それでは二十一世紀の日本の森林・林業を本当に立て直すだけの内容になっておるのか、今、これから一時間お話をさせていただきます。

 先ほど鮫島さんが、力も金もない林野庁、こうおっしゃいました。これを本当に変えて、林野庁が力も金もある林野庁にしていくのか、この点がやはり問われておる。

 いろいろ細かいところはあります。細かい点に余りにもわたり過ぎています。大臣、例えば、今回も全国森林計画とかさまざまな計画、日本の農水省は、これは農業も漁業もそうですけれども、あらゆることについて計画を立てさせる。これはもう都道府県から市町村から団体まで、私もその団体にいましたからよくわかるのですけれども、毎度、新しい政策が出れば、補助金をもらうために、最終的には鉛筆をなめて全く林野庁の言うとおりのものをつくるのですけれども、果たしてそれが実行されたかどうか。全く実行されないのに、計画をつくるのに林野庁の職員の仕事も七割、八割のところになっている。国会の答弁の資料とりも大変なようでありますけれども。もっと大胆に、何をやれば本当の意味での日本の森林・林業政策の実行につながる力あるいは金を得られるのかどうか。その点について、大臣がきちんとした指導性を発揮してほしい。

 武部私案が出ました。私は高く評価しています。それだけ、田中眞紀子さんに相当する、積み上げ方式でない、自民党さんも少し文句を言っておるように聞いていますけれども、私は、それぐらいの政治の指導性がなければ、この難局は、森林・林業もやっていけないと思うのですね。ですから、その大臣の意欲を、小泉内閣は退陣しない前は大臣をかえないと言っているのですから、あなたが頑張れば解散があるまでは絶対かわらないというふうに思いますから、腰を落ちつけてやっていただきたい。

 そこで、この基本理念のところに二つ書いてあります。森林の多面的機能の発揮と林業の健全な発展、この関係が並列的に書いてありまして、いわゆる森林の多面的機能は、普通は、公益的機能プラスいわゆる林産物の供給という形で、多面的機能というふうな書きぶりになっております。問題は、林業というのは、森林の多面的機能の発揮に重要な役割を果たす、こういうふうに基本理念に書いてあるのですけれども、林業は本当にこの多面的機能を圧迫する要因にならないのかどうか。ここはきちっと確認をしておかなければならない。

 これは、大臣でなくても長官、きょうは初めて私は長官を参考人として呼んだわけでありますけれども、林業生産というのはすべて多面的機能になるのかどうか、ここはきちっと確認をしておく必要がある。これをちょっとお答え願いたいと思います。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

中須政府参考人 御指摘のとおり、今回の基本法におきましては、森林の有する多面的機能の持続的な発揮ということを第一の理念として掲げ、それを実現する上でも重要な役割を持っている林業の健全な発展と、そしてまた木材の供給、利用の促進ということを掲げているわけであります。そういった並べ方。

 そういうことを含めまして、私どもは、林業生産活動ということを通じて森林の多面的機能が持続的に発揮される、こういうものをつくり出していかなければならない。それはやはり意図的に努力をしてつくるのであって、林業生産活動をただやれば、自動的に多面的機能が持続的に発揮されるということではない。そこをしっかりとわきまえて進めていく、こういうふうな考え方をとっているということでございます。

鉢呂委員 実は、環境省と林野庁で、この法案をつくるためのさまざまな質問を四回、五回やっています。私は、これは大事だと思っています。環境省から、こういう点についての質問をしておるのであります。

 その中で林野庁は、今話がありましたけれども、当初の回答は、林業生産自体が多面的機能に合致するんだというそっけない答弁をしておるわけでありますけれども、執拗な、四回ぐらいにわたる環境省側からの質問で、ここにありますけれども、やはり最終的には、森林の伐採等があればそれは多面的機能を妨げる要因になるとか、収奪的な伐採を行い再造林をしないというようなことは多面的機能を侵すとか、あるいはまた、間伐を実施することによって下草を生えさせて、先ほど言った野生動植物を生息させるとか、あるいは多様な樹種の選択をすることによってそういうことが可能になると。

 私は、むしろもっと積極的に、林業生産が必ずしもいわゆる公益的機能を全的に保証するものでないということにやはり注意を払うべきであるし、こういう、環境省から盛んに質問をされて最終的に行うというような問題意識であってはならない。この点については、きちんとした林業生産におけるマイナスの側面というものについて踏まえた林政改革を行うべきである、まずそのことを、お答えは要りません。

 それから二つ目であります。山村地域の活性化、先ほど後藤委員がお話をされたとおりであります。確かに山村振興法という旧国土庁所管の法律はあります。しかし、農業基本法やこの間の水産基本法の、農村、漁村の法律における位置づけからいけば、両方とも基本理念のところに明記をされておったのにもかかわらず、林業基本法における山村の位置づけは、いかにも、第十五条に、いわゆる森林の有する多面的機能の発揮に関する施策の中で、その第四番目に山村地域の定住の促進ということを打ち出しておるにすぎません。

 したがって、大臣、我が党として、野党の皆さんとも協力をして、この山村の条項についてはきちんと修正をしていただきたい。このことをきょう大臣にもお話をしますので、与野党の議論に付していただきたい。また、委員長の御配慮をお願いいたしたい。この点について大臣の御所見をいただきたいと思います。

武部国務大臣 先ほど来後藤委員の御質問にもございましたが、山村振興ということは極めて重要なテーマだろうと思います。個人的な考えを申し上げますと、私は、山村振興だとか農村振興だとか漁村振興だとか、こういったものを一体的に考える農山村振興計画みたいなものが、いずれにしてもこの基本法に基づいて必要になってくるのではないのかなと。

 今先生は、理念としてしっかり打ち出すべきだ、こういうお考えだと思うのでございますが、今求められれば、私は、今申し上げましたように、施策としてどういうふうに位置づけていくかということを、むしろきちっと今後計画化していくということが大事ではないのか、かように考えておりますが、立法府でどういうお考えをお示しになるか。

 私どもは、必ずしも、私どもが提案したことにあくまでもどこまでも固執するわけではありませんで、一番いいものをどのようにして編み出していくか、つくり出していくかというようなことを前提に考えるべきだ、かように思いますので、ただいまの御発言に対しましては、委員長がどうおさばきになるかということを踏まえて、我々としても考えを固めていきたい、かように思います。

鉢呂委員 大臣、大変ありがとうございます。その方向で御検討をお願いいたしたいと思います。

 次に、直接支払い制についてであります。

 先週の後藤委員の本会議での代表質問に対して大臣は、直接支払い制度を導入すべきとのお尋ねがありましたと。林政改革大綱では、森林整備のための地域による取り組みを推進するための措置を検討されたところでありまして、これを踏まえて、森林施業を計画的かつ一体的に実施する上で不可欠な森林の現況の調査等の活動に対する支援について十二条に位置づけをし、その具体化に向け検討を行っているところであります、こういう御答弁をされました。

 そこで、長官でよろしいのですけれども、この森林の現況の調査等の活動に対する支援、これは十四年度、来年度から実施する方向にあるのかどうか、それから、非常に限定的に現況の調査等、こうなっておるわけでありますけれども、この等という意味は何なのか、まずこれについてお答え願いたいと思います。

中須政府参考人 この新しい基本法第十二条の二項の規定につきましては、長い議論がその背景にあるということを前提といたしまして、私ども、ぜひこの規定に基づいた新しい支援の方法というものを、先ほど大臣もお答え申し上げましたが、できるだけ早く現実のものとしたい、こういう気持ちで今検討を進めているところであります。

 その際、現況調査等の等はいかなる意味合いかということでありますが、この条項につきましては、基本的に、その前段で書いてあるとおり、「森林所有者等による計画的かつ一体的な森林の施業の実施」これが特に重要だ、こういう認識で、これを確保するためにいわば不可欠な活動を確保するための支援を行う、その活動の一つの例示として森林の現況の調査というものがある、そういう意味におきまして等というものが書かれている、こういうふうに私ども考えております。

鉢呂委員 十四年度から実施ということについてのお答えはどうでしたか、ありましたか。それとあわせて、交付基準、例えば、後藤委員も本会議で質問したのは、森林の対象面積当たりの交付とかいうようなことでお聞きをしておるわけでありまして、その交付基準あるいは交付すべき対象者、この点についての御答弁もお願いいたしたいと思います。

中須政府参考人 この条項の実施につきましては、私ども、大臣からもできる限り早くやるようにというふうに御指示を受けております。そういう意味では、十四年度の予算というものを視野に置いて、そこでの実現ということに向けて検討の努力を続けていく、こういうふうに思っております。

 それから、具体的にどのような形で、例えば交付の基準であるとか交付の額というものをどうしていくかということについては、現段階では率直に言って、まだしっかりと固まった考えができ上がっておりませんので、申しわけございませんが、説明するだけの能力がございません。

 ただ、基本的に考えておりますのは、一定の森林の整備を確保するということでございますので、やはり市町村なりそういう公的な団体との約束というか、そういうものを一つの歯どめにするということがありましょうし、もう一点は、どういうふうに段階をつけるとかあるいはつけないのかとかさまざまな議論はありますが、一定の額というものを基準として示して交付する、そういうようなことが、これはちょっと私の個人的な考えかもしれませんが、現実的なやり方ではないのか、こんなふうに思っております。

鉢呂委員 実は、先ほどの環境省との意見のすり合わせの中で、この点についても環境省は質問しておりまして、この中では明瞭に答えております、国会で答えられないのかもわかりませんけれども。

 森林の現況調査等の等は、森林施業の実施区域の明確化、施業の、仕事を行う実施区域の明確化、歩道の整備等を想定している。支援の内容はということに対しては、森林施業の的確な実施の観点から上の三つ、というのは、先ほど言った森林の現況調査、施業の実施区域の明確化、歩道の整備、歩道というのは林道から作業現場に行くところのものを歩道というそうですけれども、歩いていくところなんだそうですけれども、そういう三つの活動について助成することを考えたい、こういうふうに環境省には答えておるのでありまして、林野庁は、長官は勉強していても言わなかったのかもわかりませんけれども。

 そこで大臣、私は、財政当局との具体化の形でこういう表現になったものと思われますけれども、やはり基本法ですから、こういう森林の現況の調査というのは、何か調査活動に対して交付するというようなことではなくて、大臣も明瞭に直接支払いについてはという表現で、この条項は、少し話が長くなりますけれども、林政審の段階でも山村の定住化の中で取り上げられた項目であります。

 今、この法案の中では、あくまでも森林整備の中の一つのあり方としてこの条文が書いてあるのです。非常にここはお聞きをしたいのですけれども、いろいろな苦心があったんだろうと思いますけれども、本来は、山村振興あるいは山村の定住化の中で大きな形で、地域での一体的な取り組みという形で直接支払い的なものを想定しておるのだと思いますから、私は、文言的にも野党の皆さんと協力をして、「森林の現況の調査等の活動を確保するための支援」という条文を、もう少し一般的なものとして、森林整備のための地域による取り組みを推進するための支援というふうな修正の条文を提起させていただきましたので、この点についても大臣、率直なところを、前向きの検討を願いたい。頭を横にしないで、将来にわたる林業のあるいは森林の方向を規定するものです。

 大臣、財務当局があるから、非常に金がかかるから、正直言いまして、非常に皆さんは後ろ向きに、しかし、先ほど言ったように、力とお金を持つ林野庁にならなければならぬという形からいけば、まさに法律をつくれば財務省は従わざるを得ないわけでありますから、ここは、広い意味での直接支払いという観点に立った条文の修正に特段の指導性を発揮していただきたい、これが武部流の構造改革だというふうに思いますので、この辺、明瞭な答弁をお願いいたします。

武部国務大臣 ちょっと考えてみる時間がかなり要るような感じがいたします。率直に申し上げていかがかなという疑問符がつく、そういう答弁になってしまうことを……(発言する者あり)理由は、余りしゃべり過ぎない方がいいんじゃないかと。

 私の頭の中ではちょっと整理がつかないという次第でございまして、なかなか難しい問題があるんじゃないかという感じがいたしますので、少し時間をかけて検討してみなきゃならないな、かように思います。

鉢呂委員 明快、明瞭な大臣が言葉を出せないのですから、そのお気持ちを酌んで、ただ、山村というのは、この林政審の報告でも、山村が面積的に非常に多いことは事実ですけれども、役割として、そこに住んでいることによって、例えば森林の見回りや境界管理が自然と日常的に行われる、あるいは、森林火災というのは大変大きいものがありますから、そういう森林火災も未然に防ぐとか、先ほど委員からお話ありました、例えばボランティア活動なんというのも、ただ来ていい空気を吸って帰るというようなことではなくて、やはり本当の意味でのボランティアということになると、そこのボランティアを支援するその地域での取り組み、さまざまな地域での取り組みをつくるためにも、財源はどのぐらいかということについても先ほど答弁はなかったんですけれども、武部流の改革であれば、やはりここにこそまず大きな力を注ぐべきだ。世界各国いろいろな取り組みをしております。しかし、やはり日本は、単なるつくって、後追いで何の効果も示し得ないというのが余りにも多過ぎたですね。

 ですから、ここは大臣、先ほども、条文上もおかしいんです。条文上も財政当局との関係でこうなったのかもわかりませんけれども、やはり山村における役割ということをきちっと位置づけて、もう少し広がりの持てる条文にすべきである、私はこのように考えています。

 そこで、次の関係ですけれども、力ということを先ほど言いました。先ほど長官は、今後も誘導策で、規制強化ではなくて誘導策でやっていくんだと言いました。それについて二、三申し上げます。

 一つは、これは森林法の方に出ているんですけれども、森林の保全措置の重要性ということで、これは平成六年ですけれども、林業構造の動態調査によっても、これは保有山林が二十ヘクタール以上ですからかなり大きな林家の調査をやっても、手入れをしていないというのが二一%、そのうち、不在村地主は、不在村所有者が手入れをしておらないというのが約二割強いるんです。極めて保全管理がなされておらない状況なんですね。

 皆さんの、現在ある森林法の中でも、こういった保育あるいは間伐の管理をしておらないところに対して施業すべき旨の勧告を行って、これに従わない場合は所有権の移転等にかかわる勧告を行い、またさらにこれに従わない場合は、都道府県知事が分収育林契約締結の裁定を下して分収育林で行っていくというぐらいの強い法律条文は既にあるんです。きょうは余り時間がなくなりますからあれですけれども、今までこれを実行したケースは一件もないんですね、一件も。裁定まで行ってやらせたところはないんです。

 例えばドイツでは、この本にもあるんですけれども、これはドイツは州が強いんですけれども、例えば皆伐をするについても許可制です。再植林についてもきちっと許可制です。後からお話ししますけれども、日本は届け出制をやっと今回補強する形ですけれども。

 伐採後の造林、再植林についても、今回森林法で届け出制を拡充することになっております。拡充というのは、伐採の届け出は今までもあったんですけれども、伐採後の植林、造林をやるための届け出を、追加的な記載をさせるというふうに法改正をするのでありますけれども、私は、誘導策でやることについては、限度、限界に来ておるのではないか。むしろ、届け出制より、例えば皆伐、もう一年一括で切るというような手法については許可制にするとか、その後の再植林についてもきちんと命令的なもので行えるとか、先ほど言いましたけれども、都道府県の裁定まで持っていって、ある面では強制的に再植林をする。

 大臣、今、伐採届け出面積は、平成七年で一万九千ヘクタール、そして平成十一年は一万四千七百ヘクタール、だんだん減ってきています。ところが、伐採後三年以上経過しても植栽されていない伐採跡地が二万二千ヘクタール、これは平成十一年三月ですね、統計上。だんだんこれは多くなっています。こういう現状を見れば、この今の森林法のきちっとした法の執行といいますか、そういうことについて大臣として林野庁の力を示す考えがあるのかないのか、お答え願いたいと思います。

中須政府参考人 先ほど私が誘導策でというふうに申し上げましたのは、今回の改正法案の中に、森林所有者等の責務という規定が設けられた、森林の整備、保全というのが所有者の責務である、こう書かれた規定に関連して申し上げた、こういうことでございます。

 ただいま御指摘ありましたように、今、我が国の森林の現況、手入れが非常に怠られている。その中でやはり一番憂慮すべきことは、伐採された後に再植林されない面積というのがじわじわと拡大をしているのではないか、こういうことであります。そのために、今回、ただいま御指摘ありましたように、伐採の届け出に際して、再植林ということを届け出事項にするということを通じて本人に意向を喚起する、そういうことと同時に、法律的には、最終的にそれに対する変更命令なり、あるいは最終的に植林を実行するようにというふうに命ずることができる、こういうふうにしてあるわけであります。

 ただいま先生がお話ございましたように、再植林自体を義務化してしまう、こういうことについては、今の制度上は、森林法では、保安林についてはそういう義務を課せられることにしてございます。それはやはり、保安林というものが持っている公益的機能の大きさということからそこまでできるというふうに規定されているわけでありまして、それを、そういった制度を森林全般に持っていくということは、そういうこととの兼ね合い、均衡の問題からなかなか難しいということで、ぎりぎりの選択として、ただいま申しましたような届け出事項の中に再植林に関する事項を届け出事項とする、それの実行を慫慂する、こういうような形がぎりぎりの限界ではないか、こういうのが私どもの提案に至った検討の経過でございます。

鉢呂委員 しかし、例えば農水省の山林所有者へのアンケート結果によれば、これは平均してでありますけれども、伐採後植林したと答えた人は二一%、しないというのが七六%ですね。

 もう一つ聞きます。

 それでは、伐採の届け出制を許可制にするということについて、なぜこれをとらなかったのか。先ほど言いましたように、スウェーデンでもドイツでも許可制です。長期伐採だとか、まさにいろいろなことを林野庁は考えておるようでありますけれども、その林相といいますか機能、生育度合いによって、ここは皆伐はだめですよとか、そういう許可制にしないのはなぜか。諸外国ではそういう形が非常に多くなっておるわけでありますけれども、この点についてお答えを願いたいと思います。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

中須政府参考人 その点についても似たようなお答えになってしまうわけでありますが、伐採自体を許可制にしているというのは、現行の法体系のもとでは、森林法に基づく保安林の区域内においてはそのような規制が設けられているわけであります。

 基本的に、今の法体系、仕組みというのは、保安林の制度によって、本当に公益上かなりの受忍をしていただいて、しっかりと水源の涵養とか土砂の流出防止だとか、そういう機能をどうしても果たしてもらわなければならない区域、これは指定をしてそういう厳しい規制をかける、それ以外の地域については、そういった機能を持っていないわけではございません、ただ、高度にそういう機能を発揮すべき地域に比較した上で、やはり私どもは、誘導策をもってそういうところについての公益的な多面的機能の発揮ということを実現したいというのが、今の基本法、ないし、それに基づいて制定されている森林法の体系上の姿ではないか、こういうふうに考えているわけであります。

鉢呂委員 体系が絶対的なものであれば林野庁の言うとおりでありますけれども、本当にこのように再植林をしないという林家が多い中で、また、こういうふうに多面的な機能という中でも公益的な機能を主にするような今回の改革法案で、やはりそこに効果を生み出すという考え方が、大臣どうですか、今の話を聞いていて、届け出制で話を進めながら何とかやっていただくような方法で、誘導策でということで本当にうまくいくような今の状況なのかどうか。そういうところから割り出して、本当に諸外国で許可制ですね、大臣の感想でもよろしいですから、ちょっと答えていただきたいと思います。

武部国務大臣 規制でやるというよりも、誘導策で、お互いの意識改革のもとに努力していく、そういう努力目標を与えることの方が私は中長期的にはいい形になっていくんじゃないのかな、かように思います。

鉢呂委員 ちょっとこの理由、根拠を言わなかったら、そう言われたのでは、私も、感想を聞いただけですからまあいいですか。

 やはり大臣、もう少し危機感を持って日本の今の森林・林業に当たってもらいたい。公益的な機能、多面的な機能ということの中身は、先ほど大臣が冒頭言ったように、今までの林業基本法は林産物生産を拡大していけばよくなるということでやってきた。こんなものはもう一九八〇年代中葉で本当は見返しをするべきだったんですけれども、曲がりなりにもそういうもので来たのを多面的な機能と、多面的な機能は、林業生産もその中に入っているんですけれども、それを除けば公益的な機能ですね、国土の保全ですとか、水源涵養ですとか、公衆レクリエーション機能とか。そうであればどうすべきか。

 そこで、ちょっと順番がかわりますけれども、国民コスト負担のあり方というところに移りますけれども、例えばスイスにおいては、今検討されておるのは先ほど言った非木材サービスというんですから、いわゆる公益的な機能、これについてお金を払ってもらおう。今七十項目の検討を終わったというふうに出ております。非木材サービスを国民に支払ってもらうという兼ね合いについてやはり真剣に検討しているんですね。フランスにおいても、基金というものをつくって、これはずっと長い間つくっていますけれども、そういう基金の安定した税収入の中でこの林業行政をしておるんです。

 そこで、大臣、そんなもの見なくたって大丈夫ですから。今、道路特定財源が話題になっております。私は、端的に言いますと、特定財源を一般化して何でもかんでも使っていいというのは反対なんです。やはり税収を目的にした場合には、その特定による支払いが、支出がなけりゃならぬというのが、国民に対するきちんとした説得力を持つんだろうと思っております。

 私は、ガソリン税、社会に対する空気、環境を悪化させるという意味では、やはり環境税、炭素税という形に道路税をきちっと目的意識を変えて、環境税という形で徴収して、そしてそれを森林・林業の整備に充てる、これがやはり常道ではないか、例えばですね。道路特定財源について、どういうふうに考えますか。

武部国務大臣 道路特定財源は道路をつくることを目的としている特定財源なわけでありますけれども、道路が整備されていないところ、例えば北海道みたいなところは、傾斜配分してもっとやらなくちゃいけませんね。鹿児島までは高速道路も、新幹線も今工事もやっている。北海道なんて、私の住んでいる網走なんかはいつになったら……(鉢呂委員「質問に答えてください」と呼ぶ)簡単に。ただ、例えば区画整理事業とか新しい行政需要、道路財源でやれる分野というものはあるわけですね。ですから、そこにこだわることはないと思うんです。

 それから、ちょっと先ほどのことで、私がなぜ、根拠はという話がありましたから、ちょっと戻りますけれども、私は、農山漁村でもITインフラは完璧に整備されなければならないと思うんですよ。ですから、一定の地域に、集落の再編というのは、新しいコミュニティーをつくるというのはそこにあるわけでして、山のてっぺんにまで人を定住させるというような考え方にないわけなんです。そういうようなことは、そこに定住させるというのであれば、鉢呂先生言われたような論理も一つあるかもしれませんが、もう少し、集落の再編ということなども考えているので、そういうことを申し上げたわけであります。

 今の御質問についても、新しい行政需要に対応したそういう仕組みに変えていくべきだという考えがあります。それは、道路特定財源の中ででもかなりできるのではないか、例えば、中心市街地でありますとか、町づくりでありますとか。したがいまして、このことについては、揮発油税の問題については道路特定財源についてどういう結論になるかということを見た上で考えていかなきゃなりませんが、環境税でありますとか新税については、今現在、新たなる増税をするという考え方を小泉内閣は持っておりませんので、ここではお答えすることはできませんけれども、基本的には、鉢呂先生言うようなことが将来的には当然のこととして普遍化していくんじゃないか、私はこういうふうに思っております。

 それよりも、短くやめますが、もっと意欲を持って、一億二千万人の国民に全部山を見直してもらおう、山に来てもらおう、そういうような発想でなきゃだめだと思うんですね。全部国が何もかも税金でどうこうするという話じゃないので、みんな自分で持ち寄ってくる、そういうことの方が、それこそ森林の公益的機能をさらに高めていく。あるいは、人と自然との共生社会を実現していくということは、一人一人の国民の考え方が私は極めて重要だ、こう思いますので、そういう意味で、いわゆる規制によって誘導するというのじゃなくて、努力目標を持って誘導するということの方が大事だ、こういうふうに考えているわけです。

鉢呂委員 国民のコスト負担のあり方について、林野庁は検討会を設けておりますけれども、これはいつまでに結論を出して、今大臣が言われたような、小泉内閣では新税は取らないというようなことに従ってやるのかどうか、答えていただきたいと思います。

中須政府参考人 今、研究会では、一応の全体の議論を終えて論点を整理し、どういうふうに意見をまとめていくか、そういう段階に入っております。できるだけ早く私どもとしては御意見を賜りたいというふうに思っております。やはりこの八月というのは予算要求の一つの節目でございます。そういう中で、いろいろな議論が今、経済財政諮問会議等でも行われておりますが、さまざまな議論が出てくるだろう。そういうものにこたえるというか、そういうのに対応して私どもの考えが明確に述べられるように、研究会の結論がそういうタイミングで出されることを期待しているということでございます。

鉢呂委員 大臣、水源税の関係ですけれども、先ほど後藤委員もお話あったとおり、昭和六十二年等で税制改革等で二回この問題があったんですね。資料によりますと、水道用水に一立米二円五十銭、あるいは水力発電に一キロワット〇・九円。税収としては、年間一千百七十億円です。これを森林整備に五百億、河川整備に六百七十億というような検討がされたのであります。

 先般、これは新聞報道でありますけれども、水道料金がこの四年間で、水道の事業体が千九百事業体あるのだそうですけれども、その三〇%が料金の値上げをこの四年間でした。その値上げ幅が一六%程度だということで、この二十年間を見ても、水道料金はちょうど倍増して、今、家庭月平均三千五十一円だそうです。なぜ倍増したのか。これは、ダム建設費、それから、水質が悪化をしたということでその浄水設備等の設備費でこのような、ほかの公共料金はほとんど下がっておるのですけれども、水に関してはこの二十年間で倍の料金を設定せざるを得ないということであります。

 大臣も先ほど、蛇口をひねったら水が出てくるのではないということで、東京都内では、大臣の酪農生産地の牛乳より高いような水をせっせと買っていらっしゃる方もいます。しかし、水道水と大して変わらないというデータも最近は出てきておるというふうにも言われております。

 いずれにしても、水道の水をきれいな水でということは、森林・林業の大きな務めだと私は思いますし、そのための税というものを、やはり国民から納得できると思うのですね。水は基本的なものでありますから、いろいろな圧力はあると思いますけれども、水源税ですとかいわゆる炭素税、ガソリン税という形で痛みを伴う。痛みを伴うということは、何もそれによってどこか知らないところに使うということでなくて、特定したところにきちっと使われるということであれば国民の皆さんは理解をしていただける。

 大臣のように、そういうことはやらないで、ボランティアで集まってきて金を出しなさいと言っても、そんなこと現実にできますか。やはり国民の理解を得て、消費税だって、こういうものに使うということが特定されていればこんなに批判はなかったのかもわかりません。しかし、何かわからないような一般財源化する。財政上は一般財源の方が使いやすいのだろうと思いますけれども、やはり特定的に税のあり方、例えばフランスでは紙税、こういう紙に対して紙税を取っています。これを木材、森林に使うという形をとっているのですね。先ほど言った非木材サービスというのはどういうものがあるか。そういうものをスイスは七十項目挙げて、どれを実施しても国民の皆さんに理解いただけるかという段階になっておるというふうに聞いています。

 そういうお金の問題について、林野庁はやはりきちんと責任を持って国民にこの考えを発信していくべきだ。小泉内閣、いろいろ税は取らないということであっても、いわゆる道路特定財源の揮発油税を振りかえる、どんどんガソリンを使うということは環境にも悪化をするということで、一定の税で抑制的なものにしていくという考えで、それは地球環境の問題に使っていく、その一部として森林・林業にも使うということについて大臣の前向きの答弁があってしかるべきじゃないですか。

武部国務大臣 水源税については関心はあります。しかし、受益者はだれかということになると、それこそ森林の公益的機能というようなこと、大気浄化作用、環境保全機能、もろもろ考えますと、受益者は幅広いのですね。私は、そういう観点から考えますと、付加価値税のような一般的な、普遍的な税の方が、もし新たなる増税をするというような場合にでも、特定の受益者が明確であれば別ですけれども、水源税ということになりますと、その恩恵を受ける受益者というのはだれなのかということになると、これは結構難しいことだろうと思います。ですから、関心はないわけじゃありません。

 ここのところは、農林水産省といたしましても、もっと国民の皆さん方に理解と協力を求める努力が足らなかった、こう思います。水についてもそうですし、空気についても同様ですね。また、美しい自然ということについても全く同様だ、このように思うのです。

 そういうことからして、将来増税をしなければならないというようなことであれば、みんなが一般的に、普遍的に受益を受ける、そういうことについては目的税も結構だろうと思いますけれども、私は水源税については関心はありますけれども、国民の皆さん方の理解を得ることはできるのかなと。

 むしろ、国民の皆さん方の理解と協力が得られるような、そういう努力をまず我々が率先してやらなきゃならない。その上で、次なる税が環境税というようなことになるのか、国民的なレベルで検討していくということになるのではないか、かように思います。

鉢呂委員 時間がなくなりましたので、間伐の関係等については後回しにしまして、大臣の公共事業改革、いわゆる武部私案についてお聞きをいたしたい。若干駆け込み的な雰囲気はありましたけれども、そのぐらいの迅速な行動は評価をしていいと私は思います。きょうはもう細かい質問はやめます。

 そこで、単に農林水産関係の予算をとるためにというような形ではやはりだめだと思います。今まで、生活重点化枠だとか方々ありましたけれども、役所の幹部に聞いても、これは言葉だけで、やっていることは同じだ、中身は同じだというようなものでは全くだめで、資料をいただきましたけれども、大臣も、先ほど言ったような環境との関係は、あるいは都市との関係についてもまだ全部、細かいところまでは書いていませんけれども、「環境との調和への配慮」と、言葉ではなくて、環境と共生していくという視点で、土地改良事業ですとかあるいは漁業関係は少し具体的な目をもって自然とも共生していくという方法を考えていく、具体的に書いてあることは大変結構だと思っております。

 ただ、林業については必ずしも、一般的なことしか書いてありません。先ほど言いましたように、林道のようなものも環境を破壊することにもなりかねない。あるいは、先ほど私は言いませんでしたけれども、間伐もきちんとやらなければ、最近、二十年、三十年たったものは間伐をしないことによってモヤシのような林になって、大雨が来ればその木だけが災害を起こして、一気に落ちて大きな災害。私の地元でも経験した。しかも、それが海に流れていって、大量の流木。やはり適切な間伐をやらなければならない。緊急計画は五年間で百五十万ヘクタール、まだまだ少ないというふうに思いますから、そういったものにきちっとシフトするように公共事業のその質的な転換を図っていただきたい。

 それから同時に、この食料の安定供給と美しい国づくりに向けてという全体的な武部私案、これも私は是としたいと思います。

 ただ、意欲ある経営体、いわゆる産業政策としてこの支援を限りなく、可能な限り集中化をする。もう一つとしては、それ以外の農家等ということで、これは見た感じでは農村振興対策というような形でこれを行う、大胆な取り組みで非常に結構だと私は思います。

 同時に、従来の公共事業、ハードにこだわらない、もっと直接農家がきちっと方向を見出し得るような予算の使い方にしてほしい。どうも林業でも、先ほど四千億のうち三千億が公共事業、林道とか、そういうものに消えてしまうと言ってはおかしいんですけれども、効果がきちっと発現できるような、あるいは公共事業も、本当にこれだけいいものが果たして必要なのかどうかという費用対効果も本当の意味で考えていただいて、最終的には第一次産業の担い手がきちっと明るい方向を見出せるものに、いわゆるハードからソフトも含めて、ぜひ検討して実現をしていただきたいものだなと。大臣の御所見をいただきたいと思います。

武部国務大臣 全く先生が御指摘いただいたようなそういう考え方でやっていかなければならない、かように思っております。

 その中で、先ほどもちょっと触れましたけれども、ハード、ソフトは言うまでもないことでありますけれども、私は、先生も御案内のとおり、今農山村は高齢化という問題がありまして、人間らしい生活を営むにはもうそこに定住することは不可能というような状況が数々生まれてきているんじゃないか、このように思います。

 それと、若い人たちに農山村で頑張ってもらおうとすれば、林間学校に行って、子供が便秘になるからもう行きたくないというような話がありますように、やはりインターネットの利用環境というものが、農山村においても一〇〇%できる、ITインフラというものをきちっと整備した、そういう集落ということでなければ、現在ある農村自体も立ち行かなくなるでありましょう。

 都市と農山漁村の共生とか対流とか、農山村といっても、これは農山村に住んでいる人々のためのコミュニティーじゃないわけでありまして、我々が想定しているのは、都市住民の皆さん方にも、今申し上げましたような条件整備が可能であれば、いつでもどこでもだれでもが生活も仕事も両立できるということになるわけでありますから、あとはちょっと運賃を払うということと、時間をかけて飛行機で行かなきゃならぬとか電車で行かなきゃならぬというだけのことですから。

 ですから、もう既に技術も進んで願望を実現できる、そういう環境にあるということからいたしまして、私どもは、そういった分野にも思い切った公共事業を向けて整備していく必要があるということを考えれば、一・七兆円なんというのは、その程度の金ではなかなか我々の理想実現にはほど遠いというように思っている次第でありますが、中身については、やはり重点化、集中化ということを、従来型じゃなくて、考えていかなきゃならないということは御指摘のとおりだと思います。

鉢呂委員 きのう林野庁のホームページを見させていただきましたら、間伐のことが出ていました。林野庁のホームページの内容は、私はまだまだ貧弱ではないかなと。ぜひ、多くの国民が森林・林業を知るためにも――いや、かなり努力をしていることは努力をしているんですよ。もっと国民に開かれたホームページで、開かれてはいるんですけれども、内容を豊富化してほしい。

 その中で、最後に林業労働力、もう五分しかありませんので。二十二万から七万に林業従事者が減った。林政審でも林政改革大綱でも、今は仕事がこういうふうに縮小しているから、中長期的に懸念されると。では今は問題ないかのようでありますけれども、問題はあり過ぎているんですね。むしろ林業生産が減っているから、それだけ必要としないというか、しかし後継的なきちっとした担い手になっていかない。今、六十五歳以上が二九%、三割が六十五歳以上の方で担われておる。その一方、大臣も御承知でしょうけれども、この林業に従事をしたいという方は大変多いんですね。求人数を大きく上回っている状況なんです。数字は挙げませんけれども。

 しかし、中身を見てみますと、農水省の平成十年の新規就業者等の就業状況調査、何が問題点かというと、やはり収入の金銭面、それから二番目は作業の危険性、三番目は健康、体力、四番目が林業の将来展望。やはり、今の世の中の趨勢かもわかりませんけれども、三割の方は数年以内のうちに離職してしまって、やはり考えていたようなバラ色の林業労働ではないということなんですね。

 一方、今回森林・林業基本法を新たにつくったんですけれども、第二十一条は全く昔の林業基本法とほぼ同じような条文で、何の新鮮味もないんですね。大臣は途中から入ってきたからあれでしょうけれども、やはりこの修正をしていただきたいぐらいですけれども、公益的な機能という形を今回の新法はとったわけですから、いわゆる林業生産だけでない多面的な、公益的な機能をきちっと習熟をして、国民の皆さんに、こういう森林・林業だということを知らしめるような、そういう林業の従事者というものを新たな気持ちで、就業したいというのは本当に多いんですね。

 最後に、その点について、大臣の林業労働というか林業従事者についての御見解をお伺いして、終わります。

武部国務大臣 先ほども申し上げましたように、一億二千万人の全国民が山元に足を運ぶ、そしてさまざまな労働なり事業に携わる、そういうようなことをぜひ実現してみたいな、かように思います。

 しかし、それであればこそ、林業に携わる人々ということについては林業労働者ばかりではないんだろう、かように思いますし、これは林業基本法のみならず、さまざまな法律に基づく多様な施策を展開することによって充実を期していくということが妥当ではないのかな、私はかように思います。

鉢呂委員 終わります。

堀込委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時一分開議

堀込委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。一川保夫君。

一川委員 党首討論の後を引き継いでの質疑なのでちょっとやりづらいですけれども、大臣も党首討論の雰囲気を見てこられたと思いますので、ひとつ力強い御答弁をよろしくお願いしたいと思います。

 私、今までの質疑とできるだけ重複しないようにいたしますけれども、特に大臣あるいは林野庁長官の現時点での、本当に関係者にわかりやすい、そういう御答弁をよろしくお願いしたい、そのように思っています。

 まず大臣にお聞きしたいのは、今回、林野三法ということで、森林・林業基本法、それから森林法の一部改正、それから次の法律、ちょっと名前が長ったらしいんですけれども、俗に林業経営基盤強化法といいますけれども、こういう三法の法案が審議されておるわけです。

 中でも、林業基本法というのは昭和三十九年ですかに制定されまして今日まで来ておるわけですし、また、森林法というのはすごく歴史のある法律でございまして、昭和二十六年に今の新しい法律に切りかわっておるわけですけれども、こういった二つの法律が日本の森林・林業行政をそれなりに引っ張ってきた法律だというふうに私は思いますけれども、今回、基本法については名称まで変えて、森林・林業基本法というこれからの二十一世紀の新たな基本法として充実していくということだろうと思います。

 また、一方では、森林法もそれに合わせまして、基本法の理念に沿って森林法の見直しを行うということでの改正だと思いますけれども、今までこういった法律も、何回もその時点その時点で時代のいろいろな要請に応じて改正がなされてきたと思いますけれども、今この時点で、これまでこの林業基本法なり森林法の果たしてきた役割といいますか、あるいは現在この時期においてこの二つの法律の中身がちょっと時代とそぐわなくなってきたということで当然改正するわけですから、これまでのこの両法律のそういう評価といいますか、それに基づくいろいろな施策の評価も含めて大臣の御所見をまずお伺いしたい、そのように思います。

武部国務大臣 現行林業基本法は、当時の旺盛な木材需要に対応した国産材の供給を図ることが大きなねらいであった、かように思います。林業総生産の増大を図るとともに、林業従事者の経済的、社会的地位の向上を図ることを目標としておりました。また、森林法については、現行基本法のもとで、森林の保続培養と森林生産力の増進ということを目的としていた、かように思います。これらにつきましては一定の成果があった、かように思います。

 林業基本法及び森林法に基づく施策を通じて、我が国の森林の四割を占める一千万ヘクタールに及ぶ人工林が造成されるなど、森林資源の計画的な整備が進められてきたことは御案内のとおりだと思いますけれども、しかし、材価の低迷等による林業の採算性の悪化から、森林所有者の経営意欲が減退し、人工林を中心として手入れの行き届かない森林が増加するおそれが生じている、あるいはもう既にそういう状態になっているというのが現状だろう、かように思います。

 他方、森林に対する国民の要請は、木材生産を中心としたものから森林の有する水資源の涵養、国土や環境の保全などの多面的な機能の発揮を図ることへ大きく変化してきている、かように現状認識をしているわけでございます。

 このようなことから、今回、林業基本法を改正し、森林の有する多面的機能の持続的発揮と、林業の健全な発展と林産物の供給、利用の促進の新たな基本理念のもとに政策の再構築を図ることといたしましたし、また、森林法を改正して、森林計画制度に森林の公益的機能の別に応じた施業の推進を盛り込む等の措置を講ずることにした次第であります。

一川委員 農林水産大臣、前の水産基本法の折にもちょっと触れたかもしれませんけれども、近年、食料・農業・農村基本法、これは昭和三十六年に農業基本法という法律ができて、それを一昨年、新しい基本法に切りかえたということですね。それから、先日はこの委員会でも水産基本法というものを決めましたけれども、これも昭和三十八年に沿岸漁業等振興法ですか、それが従来の基本法的な法律だったと思いますけれども、それを水産基本法に切りかえた。今回、森林・林業基本法ということで、農林水産省の三つの基本法が出そろうわけでございまして、そういう面では画期的な二十一世紀の年だなという感じが私はいたしますし、そういう面で、農林大臣に、この三つの基本法が出そろうということについて、大臣の所見をちょっとお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 まさに先生御指摘のように、我々二十一世紀に突入してきたわけでございます。しかし、現状、国境が随分低く、垣根が低くなってまいりまして、世界を見渡したときに、いわゆる地球温暖化の問題が提起され、そして、年間およそ五百万ヘクタールの砂漠化現象が現実の問題として提起されている。しかも、人口問題、食料問題などを振り返ってみますと、今日六十億余りの人口が今世紀半ばには九十億を超える、そういう状況にあるわけですね。今現在でも、およそ八億の民が栄養失調に苦しんでいるというような状況がございます。

 こんなときに、地球的視野に立って、未来の我々の食料のあり方、自給率をどうするかという問題、同時に、地球環境の問題、我々の近未来の生活、ライフスタイルというようなことを想定したときに、私は、人間一人一人が自然生態系の一員であるという原点を踏まえて農業、林業、漁業というものを考えていかなければならないのではないか。安全保障も、集団安全保障が今論議されておりますけれども、私は、この一次産業の分野においても国際的な視野、地球的な規模でこういった問題を真剣に考えていかなければならない。

 そういうときに、我が国が率先して、こういった問題提起に基づいて、これから百年、二百年後の地球のあり方あるいは人と自然とのかかわりのあり方、そういったことを真剣に考えていくという契機に、今度の三つの基本法というものは、その方向を明示する上において非常に重要な意味を持つ、かように思います。

一川委員 二十一世紀の初頭に当たり、武部大臣の時代にこの三つの基本法が出そろうということでございますので、歴史に残る農林水産大臣に恐らくなると私は思いますし、この基本法の理念を受けてそれぞれの分野で力強い、そういう具体的な政策をぜひ実行していただきたい、そのように要望したいと思います。

 さて、林野庁長官に、現場における具体的な悩み事も含めて、ちょっと質問をしたいというふうに思います。

 私自身もこういった山間地に住んでいる人間でございますし地元の森林組合の役員の一員でもありますけれども、我々も毎年、林業にかかわっている地域の集落の皆さん方とも定期的に座談会を開きながら皆さん方のいろいろな御意見を吸い上げるように努力いたしておりますけれども、そういうような中から幾つかピックアップして、今回の法律との絡みで質問をさせていただきたい、そのように思います。

 まず一つは、この三法の中の一つ、名前が非常に長い法律、俗に言う林業経営基盤強化法というこの法律、よくよく見ると一番最後に暫定措置法と書いてあるのですね。こういう暫定措置法的な法律というのは幾つかございますけれども、この林業・森林という分野というのはほかの分野とちょっと違いまして、木を植えてからそれが一人前になるまで相当の年月を要しますよね。そういう長い時間を要するものを対象にした法律でございますし、しかもこの法律、昭和五十八年だったですか、制定されてもう二十年ぐらい経過してきておる法律です。

 しかも今回は、新しい基本法をつくるという一つの大きな節目にあるわけですね。そういうときになぜこの暫定という名前が残るのかなというのを自分なりにいろいろと考えているわけですけれども、まだちょっと自信がないから暫定ということになっているのか、まだいろいろなことが、世の中が変わるかもしれないから暫定ということになっているのか。私は、もうそろそろ恒久法として、関連するいろいろな法律の特例を扱っているのだろうと思いますけれども、林業従事者なり林業にかかわる方々がやはり安心して取り組めるような、そういう法律としてなぜ今回できなかったのか、まずそのあたりの御説明をお願いしたいと思います。

中須政府参考人 この法律が暫定措置法というふうに名づけられている基本的なゆえんは、この法律でもって林業経営改善計画の認定を受けた者に対して、通常の融資条件とは異なる特別の有利な融資条件によって農林漁業金融公庫の資金の貸し出しができる、こういう構成をとっているわけであります。

 本来は、例えば償還期間二十五年というものが、これは農林漁業金融公庫法で二十五年と書いてある、それが、この法律で特別の認定を受けたということによりまして例えば期間が三十五年に延びる、そういうふうに一般的な制度の特例を設けている、そういう意味において暫定措置法というふうになっているわけでありまして、現にそういった形での暫定措置の中身というのはこれまでも何回か見直しが行われてきて、その法形式を現在に引き継いでいるところであります。

 御指摘のとおり、ある時点でそれが確定的なものとして変われば、暫定措置法ではなくて、恒久法というふうに制定をする道があるわけでございましょうが、現段階では、これまでも何回かその暫定措置の内容について改善等を図り、繰り返してきた、こういうことから、今回においても引き続きそのスタイルのもとで特別の者に対して優遇措置を講じたい、こういうことで構成されているわけであります。

一川委員 法律の事務的な考え方からするとそういったことになるのかもしれませんけれども、私が先ほど言いましたように、森林・林業、こういった関係する法律ももっと自立した法律として、もう二十年間そういう経過があるわけでございますし、基本法という新しい理念を入れた新しい法律体系になっていくわけですから、本来であればもっと自立した、しっかりとした恒久法にしてほしかったというのが私の率直な印象でございます。

 それから次に、もう一点、今回の法律改正の中でよく出てくる中に、これは新しく理念の中にも加わっておりますけれども、公益的機能別施業区域というものを設定していきたいというのが、これは全国計画、地域計画かあるいは市町村ですか、そういった計画のレベルでもそういうゾーニングをしていくということになるわけですけれども、こういうように多面的な機能というものを十二分に発揮するために公益的機能別のゾーニングをしていくという考え方は理解できるところもあるわけです。

 こういうことになれば、当然ながら期待するのは、公益的な区域として設定されたところはやはり相当公的な支援があるんだろう、そういう期待感は当然出てくるわけですし、また、では一般の、それ以外の森林とその公益的な機能として位置づけられた区域と森林の本来持つ機能というのはそう大差はないとは私は思いますけれども、先ほどのいろいろな質疑の中でも大きく三つぐらいのゾーニングをするというようなこともありましたけれども、具体的にどういう施策をそれぞれの区域に施して、また、それに対して公的な支援というのは何かめり張りがついてくるのかこないのかというところはちょっとわかりづらいところがあるのですけれども、そこのところの基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。

中須政府参考人 御指摘のとおり、公益的機能別施業森林区域ということで、基本的には、今私ども、機能別の施業区域という意味では、水源涵養機能あるいは山地災害防止機能の維持増進を重視する一つの区域、これは仮に水土保全林、こういうふうに名前をつけているわけでありますが、そういうようなゾーンと、もう一つは、生活環境保全機能あるいは保健文化機能の維持増進を重視するいわゆる森林と人との共生林、こういう二つの区域、ゾーン分けをこの制度を使ってやっていきたいというふうに考えているわけであります。というふうにその二つの区域に区分けられないところについては、基本的に従来どおりというか、資源の循環利用林、こういうような位置づけになるわけであります。

 問題は、それぞれの区域の機能の維持増進に資する森林施業の方向をその土地所有者、森林施業を行う方々に示していくということにやはり一つ大きなこのゾーニングの意味があろうかと思います。

 具体的には、例えば水土保全林ということであれば、伐期の長期化あるいは複層林の育成というようなことによって保水力と土壌保持力がすぐれた高齢級、高蓄積の森林を整備していくということが当然施業の具体的な姿として示されることになる。

 また、森林と人との共生林ということであれば、例えばでございますが、原生的な自然環境を維持すべき天然林については自然の推移にゆだねた取り扱いをするということになりましょうし、例えば里山等におきましては広葉樹林の整備だとか択伐施業による針広混交林を進める、こういった施業が推奨されることになる。

 このように、区分に応じた望ましい森林施業の方向を指し示し、施業を行う方々がそういう方向で施業を進めていただくということに取り組んでほしい、そういうような方向を示すという大きな意味がございます。

 したがいまして、森林の区分に応じましては、ただいま御指摘ございましたように、施策体系自体を具体的に幾つか導入する。

 例えば、水土保全林においては、抜き切りを繰り返しつつ徐々に更新を図る長期育成循環施業への助成をこの区域ではメーンの一つとして考えるということでありましょうし、この区域においては、公益的機能の発揮に対する要請が非常に高いんだけれども、林業生産活動のみでは適正な森林整備が進まないというときには、例えば治山事業とか、各種の公的関与によって森林整備を進めていく、そういうふうな手法もとられるということになります。

 また、森林と人との共生林においては、里山等について、市町村を中心とした、利用ということに配慮した森林空間整備であるとか、アクセス道の整備を実施する。

 こういったようなゾーンごとの施策のめり張りをつける、こういうふうなことについても現在検討を進めているところでございます。

一川委員 そういう新しい考え方を導入しているのがゾーニングということであれば、関係者にわかりやすい、そういう施策を具体的にぜひ進めていただきたいというふうに思いますし、こういう公益的云々ということが入ってくれば、そこについては相当国なり県なり市町村が全面的にバックアップしてやってくれるんだというような期待感みたいなものが当然あるわけでございますし、そういうことに対する理解が関係者に行き届くように、ぜひお願いをしたいというふうに思っております。

 それでは次に、もう一つこの法律の中で出てきますのは、「森林所有者等の責務」という条文があります。私たちも、実際に森林地域に入ってみて、非常に善良に管理されている森林と、全然手つかずのほとんど管理されていない森林というのが混在しているケースがよく見受けられます。

 中には、不在地主ということでほとんどそこには住んでいらっしゃらないという方もいらっしゃると思いますし、あるいは森林の管理ということにほとんど関心のないという人も当然おられると思いますし、また、なかなか全体のそういう協力体制の中に入ってこれないという、ちょっとふだんから変わった人というのは中にはおりますけれども、そういうことも含めて、最近だんだん、間伐等が進んでいきますと、管理されていない森林というのは非常に目立ってくるわけですね。

 こういうものを当然放置していいわけじゃございませんし、今回の法律の中にもそういった森林所有者の責務ということが明確にうたわれてきたわけでございますし、国と地方と一体となって森林を善良に管理していくということは大変重要な課題の一つだというふうに私は思いますけれども、いろいろな関係機関等がそういう啓蒙活動も含めていろいろと働きかけをしても、なかなか善良に管理してもらえないといったようなときに、それを放置していくのか、あるいはそれに対してある程度強制力を働かせながら整備していくのかというところが一つのポイントになるかと思うんです。

 私は、その森林資源としての価値が低下しないということであれば、ある程度強制力を働かせてもいいんじゃないかという気持ちはありますけれども、そこに対する考え方をお聞きしたいと思います。

中須政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、森林を歩いてみますと、同じような条件に置かれている森林でも、大変丁寧に管理されている森林、整備されている森林、あるいは全く放置されている森林、そういうのが多々目につくわけでありまして、所有者のやはり林業・森林の整備に対する気持ちの持ち方というか、そういうものがそういうのを見ることによってよく感じられるわけであります。

 私ども、ただいま御指摘のとおり、今回基本法の中の一条項といたしまして、森林所有者について、森林の整備、保全に努めなければならない、これが森林を持つ者としての基本的な心構えなんだ、そういう意味での責務規定を置いたわけであります。これは、そういう心構えというふうな意味において、直ちにここから何らかの義務が生ずるとか、そういうことではございません。そういう意味におきましては、具体的ないろいろな施策でその辺を、しっかりした整備、保全が行われるように、どういうふうに持っていくかという点があるわけであります。

 そういう点では、まず従来どおりということではございますけれども、造林とか間伐等について補助事業を行う、あるいは無利子の森林整備活性化資金等の金融措置を講ずる、こういう支援措置を行うことによって、いろいろ苦しい中でもこういった森林の整備、保全に努めてほしい、こういう点が一点ございます。

 それからもう一点は、意欲が低下して放置されていると言うと語弊がありますけれども、そういう森林がある場合に、今回の基盤強化法の一部改正の中で新しく設けられた制度でありますが、そういった森林については委託に出す、あるいは所有権を移転するということについて、都道府県知事がしっかりしたその委託を受ける人等に、これは認定を受けた方でありますが、それをあっせん先として紹介をして、そういう方々に作業の受委託が行われるようにあっせんをする。そういうふうな制度でもって、しっかりした人の手で整備が行われるような手はずというものを整える。

 もちろんその場合には、委託を受ける人、受ける組織というものが各地で育成されていなければならないという意味において、森林組合であるとかあるいは素材生産業者等を含めて、そういった組織の育成というのも一つ重要な課題にはなるわけでありますが、そういった制度的な対応がある。

 それからさらに、公益的な機能の発揮の要請は大変強いわけですけれども、所有者等による林業生産活動ではなかなか実際に管理が進まない、これは、金銭的な面を含めて困難であるというふうな場合には、治山事業を含めて、公的関与によって森林整備を実施していくというのも最後の手段というか、最後にそういう、本当に必要な場所にはそういう形での整備を行う。

 こういうような多様な手法をそろえて、森林所有者等がその森林の整備、保全に努めなければならない、こういう責務規定が実現可能なような条件整備を図っていきたい、こういうふうに思っております。

一川委員 今、長官の方から、いろいろな対策めいたお話がございました。

 要するに、皆さん方はもう御存じのとおり、そういう管理されないで放置されている森林というのは非常に目立ってきているわけでございまして、そういうものに対する具体的なこれからの対策をぜひ立てていただいて、私は、やはり末端では、森林組合みたいな組織が、いろいろな啓蒙活動をする中でそれをお手伝いしていくということしか私が見ている自分の地域ではないのかなという感じはいたしますけれども、それぞれの地域によってはいろいろな組織、団体もあろうかと思います。また、都会の近辺では、何か市民団体にそういうものを依頼して、市民農園じゃないですけれども、市民森づくりみたいなもので、そういう方々の力をかりて山の管理をしているというような報道をちょっと見たこともございます。

 いろいろな、やはり山に入りたくても山がないという人も中には当然いるわけでございますし、やはりそういう管理されていない森林を見れば、何とかしたいなという気持ちは、きれいにしたいという気持ちはどなたもあるわけでございますので、そういう意欲を持った関係者なり関係団体の力をかりていくということが大変大事ではないかというふうに思っております。

 特に森林組合なんかは、そういうことをやるとすれば、一種のリスクを抱えながら物事に取り組まなければならないケースもあるわけでございますので、これは要望でございますけれども、そういった森林組合等に対するいろいろな財政的な支援措置というものも含めて、具体的な検討をお願いしたいというふうに思います。

 それで、ちょっと次の話題に入らせていただきますけれども、これも我々の地域の最近の座談会でよく話題に出ることです。特に最近、ここ一、二年の話題ですけれども、非常に山深いところの杉の木なんかがクマの被害に遭ってしまうということです。これは従来なかったことなんですけれども。

 私たちの地元というのは白山山系でございます、石川県、福井県、岐阜県も含めた山岳地帯ですね、富山も入りますけれども。そういった山深いところで、民有林の最も奥地の方ですけれども、七十年、八十年たったようなそういう大きな杉の木が、一夜にして皮がはがれてしまうという被害です。それは、クマもいろいろな、えさ場がなくなって、だんだん下へおりてきて、杉の皮の裏の方にある樹液をなめることによって、その味を覚えてしまったんじゃないかということを言う古老もいましたけれども、そういうことが最近非常に目立ってまいりました。

 なぜこういうことが起こるかということをいろいろと話し合いをしますと、やはり、山のもっと奥の方、我々のところではどっちかというと国有林でございますけれども、そういう地域における広葉樹林的なものがだんだんなくなってきている、そういうことで、そういった動物のえさ場がだんだん少なくなってきているのではないか、ですからだんだん下のほうへおりてくるのではないかというようなお話を年配の方はしておりました。

 ですから、従来からも当委員会でも話題になっておりますけれども、やはり今、日本の森林の一番脆弱な部分として、余りにも人工林、針葉樹林がふえ過ぎたという中で、広葉樹林が非常に不足してきている。またそれに対する管理といいますか関心も低下してきたことは事実でございますけれども、こういった、広葉樹林対策も含めた動物被害に対する今後の取り組み、そのあたり、ちょっとお話をお聞かせ願いたいと思います。

中須政府参考人 私どもが把握している数字では、平成十一年度の合計で、いわゆる森林被害を野生鳥獣によって受けたというのは、約八千ヘクタールの被害があったというふうに全国で集計されております。動物の種類でいうとシカが一番多うございまして、これが約半分を占めている、こういうことであります。

 御承知のとおり、森林被害ということにとどまらず、農作物等を含めまして、最近になってそういうのが非常にふえているのではないかというふうな声があちこちで聞かれるというのも事実でございまして、そういうのが何によってきているのかということについて、なかなかつまびらかにしないわけでありますが、そういうことの究明と同時に必要な対策を講じていかなければならない、そういう状況にございます。

 今、私ども林野庁といたしましては、防護さくの設置であるとか忌避剤の散布、食害防止チューブ等による駆除、それから今の、シカにより皮をはぎ取られるということに関しては、あらかじめテープを巻いておく、そういうふうな対応が一つでございます。それからもう一つは、市町村との連携強化による監視、防除体制というものを整備していく。

 それから、全くそれとはまた方向が異なるわけでございますが、野生鳥獣の生息環境となる広葉樹林の造成を図る、こういった形での被害対策を総合的に実施していこうということでございますが、率直に言ってなかなか決め手になるようなことはない、やはり大変地道な作業を続けなければならない、こういうような状況であります。

 特に野生鳥獣については、広葉樹林を整備してえさを確保する、そういう観点からいいますと、野生鳥獣共存の森整備事業というふうな形で、広葉樹の森林を整備するというふうな事業についても現在取り組んでいるわけでありまして、八年度から十二年度まで、全国十一カ所でもってそういう森林の広葉樹林の整備に取り組んでいる、こういうような実例もございます。

 そういうことを含めまして、これから、こういう鳥獣被害については、先ほどの御議論でもございましたけれども、鳥獣保護法による、環境省等、そちらの側からの駆除の問題、そういう点もございます。関係省庁との連携を強化しながら、少しでも被害を減らすように対策を講じていきたいというふうに思っております。

一川委員 こういった鳥獣被害といいますか、動物的な被害というのは、トータルから見ればわずかの面積ですけれども、場所によっては非常に被害を感ずる、こういう問題でございますので、ぜひこのあたり、それぞれの地域のいろいろな特性があろうかと思いますけれども、実態を十分掌握されまして、対策をお願いしたいと思います。

 それで、大臣に最後二問ぐらいちょっとお尋ねしたいわけですけれども、一つは、この基本法の理念、三条にも書いてございますが、十九条にも、「望ましい林業構造の確立」という言葉が出てきます。言葉では簡単に望ましい林業構造の確立になるわけですけれども、現実問題、大臣も御承知のとおり、林業の採算性ということからすれば、専業的に林業を行うという人はほとんど今難しい状況の中で、では望ましい林業構造というのは何かといったときに、私自身もちょっと具体的にイメージがわかないのですけれども。

 現実は、山に入っていろいろなことに黙々と働いている方はいらっしゃいますけれども、ではそういう人たちにいろいろなことをこれから説明する場合も、いや、今度の新しい法律では望ましい林業構造を確立するんだという条文ができましたよといったときに、何を説明したらいいのか。大臣、いかがですか、それは。

武部国務大臣 なかなか難しい問題だと思います。御案内のとおり、木材価格の低下、林業経営コストの増大等により林業の採算性が悪化して、全般的には林業経営意欲が低下している。しかし、そういう中でも、効率的な施業の実施や品質のすぐれた木材の生産により相当の林業所得を確保している林家、あるいは活発な林業生産活動を実施している林業事業体もあることもこれは事実でございます。

 したがいまして、今後は、経営規模の拡大、生産方式の合理化等の施策を講じることにより、こうした効率的かつ安定的な林業経営体や林業事業体を育成確保するということとともに、これらの者に施業や経営の集約化を促進することによって、これらの者が我が国の林業生産活動の相当部分を担う林業構造を確立する必要性がある、かように考えております。

 また、私の考えの中には、農業において法人化というものを強力に推進していきたい、このように考えているわけであります。これは思いつきでありますけれども、そういった農業と林業が一体となった、生産だけじゃなくて、販売、流通、加工、こういったものを総合的に支援する組織体といいますか、事業体といいますか、法人化、こういうようなことも視野に入れて、やはり農業にしても林業にしても、これだけではというとなかなかうまくいかないのではないかと思うのですね。

 第一次生産者というのは、それに専念しているがゆえに、うまいところをみんな他の業者に持っていかれている。したがって、積極果敢に、自分たちが共同して、あるいは株式会社などの法人化に着手して、競争政策の中ででもやっていけるというようなそういう努力も必要じゃないかと思いますし、農林水産省としても、そういったことの支援策ということも強力に展開していってみたいな、こういうことも念頭にあることを申し上げたいと思います。

一川委員 現実、専業的に林業をやる方とかあるいはそういう事業体も含めて、わずかな方ですけれども、そういう人たちが意欲が出てくるような施策も当然大事ですけれども、今大臣がおっしゃったような、林業と農業と一体となったような組織体のあり方みたいなところは、これは確かに今の制度上ちょっと空白部分になっておりますので、そういったところはぜひまた御検討をお願いしたいとは思います。我々もそれなりに意見は持っておりますけれども、また別の機会にしたいと思います。

 今の大臣の話にも関係しますけれども、私たちが一番悩むのは、ごく一般の山を持っている林業・森林所有者に対して、今その人たちは、定年を迎えたような方も自分の山に入って黙々と仕事をしながら採算を抜きにして山を管理しているわけです。かといって、では、自分たちの山がいずれ何か値打ちが出てくるだろうという期待感のもとにやっているわけですね。

 そういうことを考えますと、これからの国産材の活用の問題がどうなっていくかとか、あるいはまた今後の林業の採算性はどうなるかとか、あるいはまた外材の輸入が今後どういう動向を示すかということも含めて、今実際に山に入って管理している方々に何か夢の持てるような、そういうメッセージをやはり林野庁がもちろん事務局としてのいろいろなデータをとってそれを示してあげるということが私は大事ではないかと思うのです。何か目標なしに働け働けと言っても、なかなか難しいと思うのです。あと十年頑張ればこうなりますよというようなものが今必要じゃないかなと私は思いますけれども、大臣の所見はいかがでしょうか。

武部国務大臣 林産物の供給及び利用の目標については、森林の多面的機能を確保するために必要な望ましい森林施業による木材の供給量、消費者ニーズ、国産材の活用状況等を踏まえた目標を想定しているわけでありまして、今後、基本計画に基づきまして、目標達成に向けた施策等を森林・林業関係者が一体となって総合的、計画的に実施できるよう具体的な目標を明示するということは非常に大事なことだ、かように思います。

一川委員 以上で終わります。

堀込委員長 次に、中林よし子君。

中林委員 私は、林業基本法の一部改正法案について質問をさせていただきます。

 これまでも議論されましたけれども、現在の木材自給率は二〇%を切る水準まで落ち込み、林業事業体の六割前後が赤字経営の状況に追い込まれています。国内の木材価格は採算ベースをはるかに下回る水準まで下落し、多くの林業家は、木材を搬出する経費も賄えない、こういう状況のもとでみずからの森林の間伐や保育もできない、こういう状況に追い込まれているのが現状です。そのため、多くの森林が荒廃し、無惨な状況となっています。

 大臣、一体だれがこのような状況に日本の森林を追い込んだのでしょうか。そのことを明らかにすること自体が、国土の七割近くを占める日本の森林をよみがえらせて、二十一世紀の日本林業の再生にとってどうしても必要なことだというふうに思うのですけれども、このことに対しての大臣の所見を明らかにしていただきたい。

武部国務大臣 だれがこういう状態に追い込んだかというのは、だれかと特定するのはなかなか困難だろう、かように思います。さまざまな問題があって、特に、かなり激変を続けながら社会経済情勢が動いてきた。そんな中で、今お話ありましたような輸入の問題なども大きな契機になったんだろう、かように思いますけれども、私流に考えますに、やはり今回の法案で示しておりますように、森林の有する水資源の涵養、国土や環境の保全などの多面的な機能というものを発揮せしめるということに対して、国民すべからくそういう問題意識が欠けていたのではないか、こういうふうに思います。

 またこれは、だからこそ今回、こういった法律の制定ということにつながったのでありますけれども、今まで木材生産ということの一面に、これまでの森林・林業の行政も、あるいは林業に携わる皆さん方の価値観もそこに集約されていたんじゃないのか。

 このことの反省に立って、今回、国民の理解と支援を得ながら具体的な施策を展開していくために、森林・林業施策の基本方針を定める林業基本法を見直し、森林の多面的機能の持続的発揮を重点としたものへ転換することと相なった次第でございます。

中林委員 私は通り一遍の弁明を聞きたかったわけではございません。大臣も、一部輸入という問題もお触れになりました。さまざまな社会的な現象だ、それから国民の意識の欠如だ、そういうようなことをおっしゃるわけですけれども、私は、政府として、今日までの林業・森林に対する施策、それについての反省がなければならないというふうに思います。

 私は、現行基本法ができ、そしてこれまでの基本計画と長期見通しというのをずっと大体七年ごとに立てていらっしゃるものを見てみました。それについてお聞きしたいというふうに思うのですが、一九六六年に初めて現行基本法に基づく長期見通しが策定されました。これを見ますと、きちんと木材自給率が明記されております。当時の木材自給率は実に七七%ありまして、そのとき、昭和九十年、すなわち二〇一五年には木材自給率は九〇%になる、こういう見通しがきっちりと明記されていたのです。このときの基本計画は、この中身を読んでみますと、大変筋の通った日本林業のあるべき姿が提示されています。読み上げてみます。

 「わが国の森林および林業を世界的視野においてみると、森林資源造成の自然的条件は、本来的には有利であると判断される。」「したがつて、わが国の森林は、人工造林、林道開設等が十分に行なわれるならば、風土的には、林地の生産力を高めることができる恵まれた素地を有している。」「わが国の森林資源は、その増強を図る余地と条件を十分に有しているにもかかわらず、その整備が不十分なため、木材の生産機能はいまだ低い。今後もこのような状態のまま推移するならば、外材への依存度が増大する一方となつて、国内林業の不振を招来するおそれがあり、」こう述べているわけです。

 なぜ、この指摘どおりにやらないで、外材への依存度が増大して国内林業の不振を招来したのか、まさにこれは政府の責任だというふうに思うのですけれども、その点を大臣、明らかにしてください。

武部国務大臣 日本の国は、共産主義の国でございませんで、市場原理を建前としている国でありますから、なかなかおっしゃるような計画的なことは難しいんだろうと思います。私どもの地元では、国有林について、中にはキクイムシなどという、そういうことを言う人たちも地元の人々の中にはかつておりました。実際に国有林の経営を見ましても、本当に驚くべき実態だった、そういう時代もあります。

 ですから、私は先ほども申し上げましたように、だれの責任ということを言う前に、お互いみずからの足元を見詰め直す、そこから始めなければならないのではないか、かように思います。そういう意味では、はっきり申し上げて、林野庁も国有林の管理が仕事の大宗みたいな、そういう状況にもあったんじゃないかと思いますね。あえて申し上げますならば、林業関係の皆さん方、これは組合も含め、役所も含め、業界も含め、もたれ合いがなかったとは言い切れない。

 そういう意味では、やはりこの時点で原点に立って、森林の多面的機能、一面的に見ないで、これは、森林の多面的機能という意味と一面的に見てはならないという意味とは多少違いますけれども、今先生御指摘のような問題も含めて、これは政府の責任だと言われたら、それでは国民の皆さん方に全部木造住宅でやってくれますかというようなことになっちゃうんです。

 やはり国民のニーズといいますか、要求というものも時代とともに変わってきているということもあるわけですね。しかも、これは、自由貿易を建前にして経済は動いているわけでありますから、安いものがどんどん入ってくるというようなこと、また、国民の皆さん方の多様な要求、欲求というものに十分にこたえていくことができたのかどうか。

 しかし同時に、森林・林業というものを、そういう経済の論理だけで考えられないということから、私どもは、森林の公益的な機能ということについて国民の理解と協力を得ながら、多面的機能の発揮ということに重点を置いて今回の法制定に向けて御協力をお願いしているわけでございますので、今、政府の責任というような視点でお話がありましたから、あえて私の考えを率直に申し上げさせていただいた次第でございます。

中林委員 日本が共産主義の国ではないということはだれの目にも明らかですよ。そんなことは大前提の話でしょう。なぜそういう言葉が出てくるのか、本当に不思議です。

 そして、今までの政府が七年ごとに基本計画と長期見通しというものをちゃんと立てられる。今の日本の資本主義の政治の中にあって、ちゃんとこういう計画経済というのは入り込んでいるんですよ。それがなかったら、それに対してのさまざまな施策というのは当然できないわけです。だから、政府が閣議決定しているこの計画どおりにいかなかった、そのことについてのちゃんとした分析がなければ次の手は打てないでしょうと言っているわけです。

 そこで、私たちは、多面的機能というのは大いにこの森林が果たしているということは認めておりますし、それを発揮すべきためにも森林を生かしていかなければならない、こういう観点に立っております。

 そこで、私は、政府がみずからお立てになったこの計画をずっと時代を追って見ましたら、最初にこの基本計画が立てられて七年後の一九七三年、この基本計画と長期見通し、表現が変わってまいりました。

 最初の七年前のときには木材自給率九〇%を目指していたはずなのに、ここでこういう言い方に変わりました。「木材需要の増大に対応するためには、恒常的に相当量の外材輸入に期待せざるをえない」こう態度を変えて、「見通しの数量の円滑な輸入を図るためには、森林資源の開発造成に関する経済協力の充実等外材の長期安定的確保のための施策を強力に推進する必要がある。」と、ここまで外材輸入のためにはとことんやるんだという政策転換があります。

 そして、当時の外材輸入量五千三百万立方メートルが、見通しですけれども、一九八一年には八千五百十万立方メートル、一九九一年には八千八百六十万立方メートル、こうなるとの需給見通しを立てていらっしゃいます。現在の木材輸入量をほぼ的確に見通しをしていらっしゃいます。

 だから、最初立てたときから七年たったこの一九七三年の長期見通し、そして基本計画、ここで外材依存へ転換があったということは明白ではないのでしょうか。だから、こういう施策をやらなかったら外材依存にずっといってしまうよ、そして国内が大変な事態になる、そういうことが危惧されるともう最初から予告をしていたのにそうなってしまったということですから、私は、この反省がなければやはり日本の林業あるいは森林の再生はないというふうに思うんですけれども、大臣、その点はいかがでしょうか。政府が立てた計画なんですから。

中須政府参考人 戦後の林業政策というか木材需給の動きの中で、御指摘のように、やはり戦後の旺盛な木材需要というものにこたえて、基本的にはできる限り国産材の供給を図っていこう、こういうことだったわけでありますが、実際に我が国の森林の現状というものが、やはり森林の資源には制約があるわけでありまして、これ以上国内のものを切って、過剰に伐採して供給するということは困難である、そういう中でやはり外材に依存せざるを得ない、それだけの国内での非常に旺盛な需要があったということは、歴史的に振り返ってみても事実だろうと思うわけであります。

 それと、やはり外材にここまで依存したということの一つの要因は、いわゆる為替レートの変動という大きな要因があって、外材と国産材との競争関係に大きな変化があった、そういったさまざまな状況の変化というものが、御指摘のような外材依存の、現在八割を超す外材の輸入に依存をしているという事態の背景にあるということだと思います。

 今回の新しい基本法のもとにおいて、もちろんそういう自由な貿易なりマーケットメカニズムというものが働くべきだというところはそのとおりでありますけれども、やはり公益的な機能を果たしている森林、そういうものに対するさまざまな形での支援というものを強化することによって、国内における森林の整備、保全というものを進め、そういう整備、保全の中から生まれてくる木材、国産材について、それを国内で使っていく体制に向けてできる限りの努力をしていこう、これは皆様、国民全体の理解を得ることを含めて努力をしていく、この新しい基本法の中でも基本計画でそういうことを示していこうではないか、こういうふうに考えているわけであります。

中林委員 輸入に依存せざるを得ない日本の社会的条件だと長官はおっしゃいますけれども、しかし、本当に日本の森林、林業家を育てていこう、その観点があれば、国内に対するさまざまな施策、これはとられてしかるべきだったと思いますけれども、この一九七三年の基本計画と長期見通しでは、明らかに外材輸入、そこに力点を置いた、そのためならさまざまな施策をやろう、国内生産を高めるための施策よりもそちらに力点があったということは間違いありません。

 それから、共産主義みたいに計画経済ではないと大臣がおっしゃったんですけれども、日本の山を守っていくためには、少なくとも計画的な管理がなければできないでしょう。それを市場経済に任せて、売れるからとか売れないからとかということをやってきたがためにこういう状況になったから、今度は、ちゃんと生産していくところ、多面的機能あるいは都市との交流のところをちゃんと育てていこうじゃないか、これも立派な計画ではないのか。こういう計画がなかったら、当然山は育たないというふうに私は考えております。

 今のような惨たんたる状況に陥ったその原因、私は、決して日本の林業家の責任でもないし、ましてや国民の責任はない。そして、この政府の計画、これをずっと見れば、輸入に依存したその政府の政策の転換にこそ責任があった、このことを指摘して、次の質問に移りたいというふうに思います。

 私は、この間、森林組合の関係者の皆さんとも懇談してまいりました。そして、多くの皆さんが、新基本法に木材自給率、これを明記していただけないだろうか、せめて五〇%は国内産で、こういうことをやってもらえば本当に自分たちの励みになるんだけれども、こういう期待を込めて訴えられておりましたけれども、大臣、この点はいかがでしょうか。

武部国務大臣 責任論はもう言及いたしませんけれども、木材需要というものは、食料の需要が比較的安定的であるのと異なり、景気変動により大きく増減してきたということは事実でありますが、木材需要を分母とする木材の自給率は、国産材供給量の動向にかかわらず上下することがあり得ると思います。国産材の供給、利用の指標としては必ずしも適切とは言いがたいのではないか、これは昨年十月の林政審議会報告においても指摘されているところでございます。

 むしろ、新しい森林・林業基本法の基本理念である林産物の供給、利用の促進の指標として、国産材の供給、利用量を直接示すことがわかりやすく適切であると考えております。したがって、このため、森林・林業基本計画において、林業等の事業活動と消費の指針として木材の供給及び利用の目標を提示することとしているわけであります。

 なお、この基本計画においては、木材の総需要量についても見通す考えでありますので、国産材の供給、利用量を需要量で割れば自給率が示されるということになるわけでございます。

中林委員 確かに、全体の需要量そして輸入はこのぐらい、国産はこのぐらいというのでちゃんと計算すれば自給率出てまいりますよ。しかし、やはり基本計画を今度立てていくわけですから、先ほども、林業家に何か夢のようなもの、光のようなものと言っているほかの議員がいらっしゃいましたけれども、本当にそのことを林業家は望んでいるし、森林組合の方々もこもごもそのことをおっしゃっているんです。

 林政審では、あれこれの理由をつけて、自給率目標は明記しないんだ、今大臣がおっしゃったようなことを述べて言っているんです。しかし、一九九六年の長期見通しでもこういうことが書いてあるんですね。「国産材供給量の主体を占める製材用材の自給率は、漸増傾向で推移し、おおむね二十年後には、五割に近い水準になるものと見込まれる。」ということで、自給率の考えはちゃんと書かれているわけですよ。

 だから、そういう意味では、やはりきっちりそういうことをお書きになることが、林業家へ、森林組合へ励ましになると思うし、現に、本格的な国産材時代を目前にして、毎年七千万立方メートルの木材蓄積を国産材は行っているわけですね。今、需要量が約一億立方メートルということですから、大体七割ぐらいは、大ざっぱな計算ですけれども国産材があるということなんですから、自給率目標を持つことは科学的でないとか、あるいはいろいろな景気動向があるからというようなことではなくて、私は、やはり輸入依存ではなくして、そこにこそ高めていくべきだということを指摘して、次の質問に移りたいというふうに思います。

 そこで、森林組合の皆さん、それから林業関係者の皆様方が、国産材利用の最大のネックになっているものはということを聞きましたら、森林には豊富な林業資源がある、搬出する技術も持っている、しかしながら、搬出するための決定的な作業道、これが不足しているんだとおっしゃるんです。広域林道なんか要らない、本当に機械が入りさえすれば、自分たちの技術を見てほしい、こういうふうにおっしゃっているわけで、現場が最も望んでいる作業道、その開設に予算を大幅に軸足を移す、広域林道ではなくてそちらの方に移す、こういう決意を大臣、ぜひ述べていただきたいというふうに思います。

中須政府参考人 林業生産活動を行う場合に、御指摘のような作業道を含めて、当然のことながら、機械を林地に入れ、そこで作業をし、収穫された木材を搬出する、そのためにはどうしても道が必要であります。そういう意味において、私ども、造林事業の補助の事業の中では、さまざまな、間伐だとかあるいは下草刈りであるとか植林であるとか、そういう経費の補助と同様に、作業道を開く経費についても助成対象にし、それはむしろ造林事業の一体のものとして取り扱って、一体のものとして事業として進めていく、こういう考え方でいるわけであります。そういう意味において、森林整備事業費というもののしっかりした確保ということについては、引き続き私ども努力をしてまいります。

 ただ、同時に、そのことは、例えば今先生、広域基幹林道というお話が出ました。また、ほかの地区、ある一定の地区では、広域基幹林道をつくり、そこに支線をつくり、そのまた末端に作業道ができていくということでその地域の林業の振興、森林の整備を図りたいということから、ぜひ広域基幹林道に予算をつけてほしい、そういう切実な声も他方にあるわけでありまして、そういうことを総合的に見ながら、私どもバランスを持って進めていきたい、こういうふうに思っております。

中林委員 現場の声は、私も本当にいろいろなところを歩きましたよ、作業道だと。作業道は本当に単価が安いですよね。だから、林道でアスファルト舗装するよりも、とにかく機械が入りさえすればいいと。大体、搬出したところの道路というのは、市町村道にしろ県道にしろ、ありますよ。だから、そういうのを利用すれば十分だとおっしゃっている。この声をぜひ受けとめていただいて、大臣、せっかく基本法改正ですから、作業道、望むところを予算増大をしていただくことを強く要望しておきたいというふうに思います。

 実際に公共投資がどれだけ値打ちを持つかという産業連関表、ここから見た場合も、林業に対する投資というのは一般公共事業に対する投資よりも波及効果は非常に高い、これが客観的な数字としてあらわれております。ましてや、日本林業の再生にとって欠かせない作業道、これは予算の中でぜひ思い切って振り向けるべきだというふうに思います。お答えいただいてもまたすれ違いになるかもわかりませんので、ぜひ胸にとめておいて――簡単に。

武部国務大臣 ぜひ、公共事業は減らせというようなことにならないように、林道、作業道についての重要性は今よくよく、私も強く感じましたので、しっかり勉強してみたいと思います。

中林委員 次に、木材利用の問題なんですけれども、国産材の振興のために積極的な木材利用というのが不可欠です。特に私は、教育施設の木造校舎化、これを当然推進すべきだと思っています。木造校舎は生徒の情緒安定にとっても好ましいという研究報告もあります。現に私も、校舎を木造化した学校では、いじめや不登校、そういうものが改善された、こういうお話も聞いたし、それから、文部省から資料をいただいたものの中に、障害児教育などに非常に効果が上がっている、こういう事例も紹介されております。

 だから、国産材に対するインパクトというのは非常に大きくて、学校一校建てる、木造化するということになると、秋田の能代の一年分の秋田杉の需要量に匹敵する、こう言われているわけですね。

 文部科学省に来ていただいていると思うんですけれども、校舎の木造化の推進のためにどういう方向を持っていらっしゃるか、簡単にお答えいただきたいと思います。

武部国務大臣 学校校舎を初め、地域のシンボルとして、民間への波及効果が大きい公共施設での木材利用の促進ということが非常に重要でありまして、私どもも党内の議連の一員として積極的に努力しているところでございます。

 このため、農林水産省としても、文部科学省との情報交換等の場を通じて、校舎の木造化などの促進を図るとともに、みずからも、学校に併設して整備される複合的な公共施設の木造化など学校関連施設での木材利用を促進し、今後とも、文部省を初め関係省庁との連携を一層強化し、校舎を初めとする公共施設への木材利用促進に努めてまいりたいと思います。この際、文部省にも格別なる御努力を要請したいと思います。

田中政府参考人 文部科学省でございます。

 木造校舎についてのお尋ねでございますけれども、木造は、感触のやわらかさ、温かさ、高い吸湿性などすぐれた性質を持っておるところでございまして、快適な学習生活環境を実現する上で大きな効果が期待できると考えておるところでございます。

 文部科学省といたしましては、昭和六十年に校舎等の木造化を始めまして、内装や屋外環境施設への木材使用等、学校施設における木材の積極的使用につきまして教育委員会に通知をし、その促進を図ってまいっておるところでございます。

 昭和六十一年度には、木の研修交流施設整備事業を創設いたしますとともに、木造建物の補助単価の引き上げ、あるいは補助基準面積の拡充にも努めてきておるところでございます。

 また、平成十年度には、木造施設を整備する際の参考となる手引書及び事例集を発行したところでございまして、翌平成十一年度からは、これらを活用いたしまして、林野庁との共同開催による講習会も実施させていただいておるところでございます。

 今後とも、林野庁を初め関係省庁との連携を図りながら、学校施設におきます木材の積極的使用の促進を図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。

中林委員 大臣、文部省はそういう積極的な姿勢を示されたのですけれども、では実際はどのくらい木造校舎になっているかということを文部省から資料をいただいてみて、私は実は唖然といたしました。毎年、木造整備の学校の施設数というのは出てくるのですけれども、何と木造整備率というのは三・五%なんですよ。これはやはり少な過ぎる。割と田舎の方は木造になっているなという印象はあったのですけれども、まだまだ建てる余裕はいっぱいあるんじゃないか。だから、今後改築される計画のところは大いにやっていただきたい。

 それから、私は、やはり大都会が問題ではないか。ここの木造化がなかなか進まないということで、何がネックになっているのかと調べてみたのですけれども、建築基準法だという話もありました。しかしこれも、国土交通省の方に聞いたら、昨年、随分この建築基準法が改正されまして、かなりのところで木造校舎が建てられる、そういう方向になったというのですね。だから、耐火の問題でも随分クリアしてきた。そういう研究もされてきたということなんです。

 教育的効果はある、国産材が使われる、もう一石何鳥の役割も果たす、これが木造校舎だというふうに思うのですね。ここは大臣と私、同じ考えだというふうに思いますので、大いにイニシアチブをとっていただいて、木造校舎がどんどん建築できるように要求をして、次の質問に移りたいというふうに思います。決意を一言だけ。

武部国務大臣 まことに同感至極でございますし、建築基準法でありますとか耐用年数でありますとかさまざまな問題がありますが、特に地方から、そういう耐用年数その他、木造建築といいますか木造で校舎を要請しようとかなんとかということについて足踏みしている嫌いがあります。これは、厚生省管轄のいろいろな、特別養護老人ホームなども最近は十分対応できるのですね。

 ですからこれは、文部省においても、もっと木造校舎について年次計画をつくってでもやってもらえるようなそういう努力をしていただきたいと思いますし、私どもも、関係府省と連携をとりまして、これがなぜ進まないのか、なぜ地元から、それぞれの自治体から木造による公共施設の整備について強いアクションが起こってこないのか、そんなことについても連携をとって、整備が促進されるような努力をさらにしてまいりたい、かように存じます。

中林委員 さらに、この委員会でもきょうずっと、バイオマスエネルギーについて質問が相次ぎました。経済産業省に来ていただいているのですけれども、大量に切り捨てられている間伐材や木くずなどを燃やして発電に利用する、このエネルギーの多様化という点は経済産業省から見ても極めて重要だというふうに思うのですけれども、その取り組みと、今後どのようなことをおやりになろうとしているのか、比較的短くお答えをいただければと思います。

河野政府参考人 それではできるだけ簡潔にさせていただきますけれども、私ども、バイオマスエネルギーは、太陽光発電あるいは風力発電と同様に、再生可能エネルギーの一つとして重要視をしているわけでございます。また、欧米諸国でも再生可能エネルギーの導入には高い関心を示しておりまして、その中でバイオマスエネルギーの位置づけも高いという状況にございます。

 我が国でございますが、製紙工程で出てまいります廃液であります黒液ですとか、製材工程からの廃材を熱利用あるいは発電などに用いるこういった廃棄物あるいは副産物系バイオマス、これは導入がかなり進展しておりまして、現在の新エネルギー導入量全体の七割ぐらいになっているという状況にございます。

 他方、食品ですとか畜ふんといった廃棄物から発生するメタンガスの利用、あるいは植物を燃料用アルコールに転換する、こういった方面につきましては、まだコスト等の問題がありまして、技術開発、実証試験の課題が残っているという状況であります。

 現在、私どもは、総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会の場を通じまして、こういったバイオマスを含めました新エネルギーの政策のあり方について検討を進めておりまして、この過程では農水省からも御出席をいただいて、御説明等をいただいたわけでございます。

 いずれにいたしましても、私どもも、関係各省と連携をとりながら、引き続きバイオマスエネルギーの開発導入にさまざまな支援を行いながら積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

中林委員 きょうずっと大臣や林野庁のこのバイオマスエネルギーについての御答弁を聞かせていただきました。答弁の意気込みとは予算がかなりかけ離れて、非常に少ないというふうに思います。

 現に、一九八〇年の長期見通しのときにはもうこのバイオマスエネルギーの研究開発をすべきだと提起されて、二十年たっているわけですね。二十年たってまだこんな段階なのか、国有林の利用の問題も、これだけの報告が出ているんだけれどもまだ絵しかかかれていない、実際には行動が起きていないということでは非常におくれている分野だというふうに思いますので、大臣、もう随分御答弁されましたので、この点は御答弁求めません。

 バイオマスエネルギー、これも、国産材を利用し山を守るために必要なことなんですから、ぜひ大いに取り組んでいただきたいというふうに思います。

 そこで、最後にですけれども、今度の法案の第二十六条、これについてお伺いしたいというふうに思います。

 今回の改正でセーフガード規定が盛り込まれたわけです。その意味について、大臣はどのようなお考えをお持ちなのでしょうか。

武部国務大臣 まず、木質バイオマスエネルギーについては、山村の新たなる可能性を拡大できるもの、かように考えまして一生懸命頑張ってみたい、かように思います。

 森林・林業基本法第二十六条は、世界有数の木材輸入国である我が国の責務として、各国の森林の多面的機能の発揮を損なうことがないよう適正な輸入を確保するため、国際的な連携に努めるということとともに、輸入が急速に増大し我が国の林産物生産に著しい支障を与える場合において、緊急に必要があるときは、WTO協定で認められた輸入制限措置が行えるということを規定したものであると理解しております。

中林委員 林業関係者の皆さんからすると、三十年前にこの規定があったらなということを言われるわけですよね。私は先ほどから指摘をしてまいりましたけれども、過ぎた時はもう帰ってこないわけです。だから、今が大切だというふうに思います。

 現在、製材品及び集成材としての木材が緊急監視対象品目に、合板、干しシイタケが監視対象品目になっております。前の農業基本法と同じように、セーフガード規定があっても発動されないということでは意味がないわけです。

 せっかく二十六条にこれが盛り込まれたわけですから、発動要件に合致するならば即時発動すべきだ、そういう毅然とした態度が何よりもこの二十六条を生かす道だというふうに思うんですけれども、大臣の最後の決意をお聞かせいただきたいと思います。

武部国務大臣 常に毅然と対処しているつもりでございまして、十分な証拠があると認められる場合には、セーフガードに係る政府調査を行うよう関係省庁に要請していきたいと考えております。

中林委員 終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社民党の菅野哲雄でございます。

 森林・林業基本法の一部改正について質問をいたします。

 私は宮城県の気仙沼出身なんですが、気仙沼というと水産都市というふうに実際は思い浮かべるんじゃないかと思うんですが、山が七〇%を占めている地域でございます。私の育った地域は、六百ヘクタールにも及ぶ全国で唯一の国有部分林組合を有しております。これは本当に全国で唯一です、そして約八年前に全山植林を終えた。そういう意味では、林業地域であるというふうに私は思っていますし、私のうちにおいても、生産森林組合や部分林組合、地域において林業を育成している地域でありますし、そして、全国でも珍しいと思うんですが、山を守るということで森林消防組織を持っていて、山火事から大切な資源を守ろうとみずから消防組織をしている地域でもあるわけなのです。

 そういう意味では、これから質問をいたしますけれども、やはり持続的林業経営、これが今日の林業に求められている大きな課題であるというふうに思います。この持続的な林業経営を行っていくことこそ、山村地域社会を守ることの原点であるというふうに、私はみずからの体験を通して言えることだというふうに思っています。

 そういうときに、やはり林政改革大綱を受けてこの森林・林業基本法というものが出てきているわけですから、林政改革大綱において「森林の整備目標及び森林資源の利用目標の設定」、このことをうたっているわけですね。そして、「森林の多様な機能を将来にわたって持続的に発揮させるため、関係者がコスト削減等を図りつつ森林資源の利用等に向けた努力を行っていく指針として、森林・林業の実態も踏まえつつ、森林の整備の目標及び森林資源の利用の目標の設定を検討する。」という状況になっています。

 このことを今後具体的に森林・林業基本法を提出するに当たってどう考えておられるのか、このことを大臣、答弁をお願いしたいと思います。

武部国務大臣 森林・林業基本法では、森林・林業基本計画において、「森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標」を定め、森林整備や林業・木材産業の事業活動等の指針とすることとしているわけであります。

 このうち、森林の有する多面的機能の発揮に関する目標については、森林を水土保全、森林と人との共生、森林資源の循環利用といった観点から区分をし、あわせて、区分に応じて行われるべき森林施業を示すことにより、森林に対する国民の要請に的確にこたえる上で望ましい森林資源の姿を提示するということを想定しているわけであります。

 林産物の供給及び利用に関する目標につきましては、望ましい森林施業のあり方や、それに伴い産出される木材の供給量を踏まえ、関係者が取り組むべき課題を明らかにした上で、当面目標とすべき具体的な木材の供給、利用量や木材利用の方向について提示することを想定しているわけでございます。

菅野委員 大臣、森林・林業基本法ですから、今はその答弁しかできないというふうに私は理解するんですけれども、これから基本計画を早急につくっていかなきゃならないんですね。そういう状況だと思います。

 私は、林野庁長官でもいいんですが、基本法を提出するに当たって、林政改革大綱を議論していますから、その基本的な目標というものを議論し合った上で基本法として提出してきているんじゃないか、こういうこと。それで、基本計画を今の段階で全然議論していないという話にはならないと思うんですね。だから、今日の段階で基本法を提出するに当たって目標値をどういう形に置いているのか、これを具体的に示していただきたいというふうに思うのです。

 このことなしにはこれからの森林・林業、これから後で触れますけれども、林業の実態を克服するということはできないんじゃないのかな、私はこういうふうに考えているんですけれども、長官はいかがですか。

中須政府参考人 御指摘のとおり、今回の新しい基本法の立案作業に当たっては基本計画というのが柱の一つになるわけであります。そういう意味では、これまでの林政改革大綱での議論を踏まえながら、我々の内部ではさまざまな議論、さまざまな見解の交換ということは行っております。

 ただ、御承知のとおり、この基本計画は、この場を含めて新しい基本法に向けてのさまざまな場における議論というものを十分踏まえ、また手続的には林政審議会の御意見を聞いて決めていく、時期としては、私どもの全国森林計画とあわせて今国会で成立ということになった場合には、十月までにしっかりした計画を立てていきたい、こういうことを考えておりまして、そういったスケジュールの中で議論をして固めていきたいということであります。

 まことに申しわけないわけでありますが、今の段階ではまだ事務的な形で我々の内部でいろいろな意見を闘わせている、そういう意味において、さまざまなこういう国会の場での御議論を含めてぜひ御意見をいただきたいというのが今私どもの立場でございます。

菅野委員 ぜひ、これからの議論なんですが、今日の林業をめぐる実情というのは、経営が成り立たなくなっているというのが率直に言えると思います。先ほど私が言いましたけれども、国有部分林組合の組合員がどんどん脱退していく状況です。将来にわたって収入が本当にあるのかというところに危惧を抱いて組合を脱退していく。あるいは、部分林組合、生産森林組合も、本当に固定資産税さえも支払うことが大変になっているという実情があるわけです。

 このような、林業経営が成り立たなくなっていると言っても過言ではないと思うんですが、林業をどのように再生させていこうとしているのか。この目標値の設定についてはこれから議論するというんですが、それも含めてこういう方向で将来は、林野庁としては、農林水産省としては、再生させていく決意を持っているんだということを具体的に示していただきたいというふうに私は思うんです。

中須政府参考人 御指摘のとおり、現在の我が国の林業の現状、大変厳しいものがございます。どういうふうにこれを立て直していくのか、なかなか一片の言葉では言い尽くせない、またさまざまな手だてというものを積み重ねながら解決していかなければいけない、そういう状況にあるというふうに思っております。

 ただ、やはりそういう中において最も基礎的な話として必要なことは、木材価格が低下をしている、経営コストが増嵩をしている、こういう中で採算性が全体として悪化しているわけでありますから、いかに低コスト構造の林業というものを構築していくか、そういう地味な、従来から言われていることでございますが、その努力を重ねたいというのが一つでございます。

 いわゆる効率的かつ安定的な林業経営を担える者を育成確保して、こうした方々に施業や経営のかなりの部分を集中していく、そういう形をとるということが一つ。それから、林道、作業道、先ほどお話が出ましたそういう路網整備とか、高性能林業機械の開発普及ということによる経営コストの削減。さらに、各地域において生産される材の流通、加工の合理化、需要の開拓。こういうことを通じて、林業の再生、林業の振興を図っていくということが、言い古されたことでありますが、基本的に重要なことだというふうに思います。

 もちろん、こういったことを新しい基本法のもとでは、森林・林業基本計画において具体的にこれをその計画の中に必要な施策として提示をして、こういう施策を通じて数値目標を実現していくのだということがわかるような形でお示しをしたいと思うわけであります。

 ただ、それと同時に、既存のそういったことをただ進めるだけではなかなか難しいのではないか。そういう意味で、新しい取り組みという意味では、先ほど来議論になりました新基本法の十二条二項にあるような措置も含めて、国民的な視点において、厳しい状況にある林業にやはり支援の手を差し伸べる、こういうことを充実していくということがもう一つ必要だろう、こういうふうに思っております。

菅野委員 私は、今日的な森林・林業が落ち込んだ大きな原因として、やはり公的関与が不足していたんだというふうに思っています。

 そして、公的支援、あるいは今議論になっていますけれども、直接支払い等を含めて、山村地域を振興させる方向というものがこれまでかなり打ち出されてきたんですが、やり切れないで来たというのが状況だというふうに思っています。

 先ほど鉢呂さんもおっしゃっていましたけれども、昭和六十一年に水源税構想があったんですね。水源税構想は何で出てきたか。山村地域が疲弊しているよ、これを何とか立て直していかなければならない、国民的な負担でもって立て直していかなければならないということで、昭和六十一年にもうこの状況は議論されていたんです。そして、昭和六十二年、森林・河川緊急整備税構想というのが持ち上がりまして、これもとんざしているんです。この当時から、今日の山村の状況は予測されていたんじゃないですか。それに対して、何ら手を打ってこなかった。

 そして、大臣、先ほどの答弁でも今日的には新税構想は考えていませんという状況なんですけれども、昭和五十五年の木価、昭和五十五年に最高値がついていました。そして、今日的な木の値段というのが、杉材で約三分の一に落ち込んでいっているんです。三〇%ですよ。こういう状況のときに、自助自立、あるいは先ほど言ったように国民的視点に立ってなんという状況にはなっていないんじゃないのか、このことを私は強く指摘しておきたいと思うんです。

 そして、有明でノリの問題、生産が四〇%に落ち込んだ、農水委員会で大騒ぎしました。三陸産ワカメの問題、暴落になって、農水委員会でも議論いたしました。林業所得は、勤労所得が六百四十五万円の中で、資料を見ると林家が百十万九千円という状況になっている。こんな状況になっているのにもかかわらず平然としている、こういう状態を私は異常だと思うんです。

 林業構造が崩壊するという危機にあるときに、どういう手を打っていくんでしょうか。財政の手当ても含めて、公的支援、あるいは公的関与、直接支払い等について、今日的な状況を踏まえて政府としてどう対処していくのか、このことをお聞きしておきたいと思います。

中須政府参考人 林政改革大綱におきましても、これから先、森林の整備ということを本当に進めていくためには、それを国民的に支援をしていく、国民的支援という言葉が妥当かどうかは別でございますが、そういう考え方に立って、森林整備のコストというものをどういうふうに負担すべきかということを真剣に議論すべきだ、こういう問題提起がなされて、それについて今私ども、実は、そういうコストをだれがどういう形で負担をしていくということが適切なのかと、学校の先生を初め、学識経験者を含めていろいろ議論をしているという状況にございます。先ほどお話し申しましたように、できるだけ早くこの検討会の意見もまとめていただきたいというふうに思っております。

 ただ、同時に、こういった森林整備のコストをどういうふうにだれが負担するのかという問題は、すぐれて政治の問題でもあろうかと思います。私どもは、政府の一員として、当然財源の拡充ということに向けて努力をいたしますし、そのためにさまざまな努力、資料の提供を含めて努力をいたします。やはり政治の場においても、ぜひこういう問題について積極的に御議論いただいて、どういう方向を目指すべきなのか、そういうことをお示しいただきたい、そういうこともまた私、役人の立場から不適当かもしれませんが、よろしくお願いをしたいと思います。

武部国務大臣 私が先に手を挙げようかと思ったのでありますけれども、長官に先に答弁をさせました。というのも、現状についての認識というものを我々新たにしておく必要がある、かように思います。

 先生御指摘のような問題は、正直申し上げまして、一番大きな悩みです。しかし、残念ながらといいますか、民主主義は主権在民ですから、国民の理解、協力ということがなければ、なかなか容易に、我々がやろうとすることは難しい、困難性がある、かように思うわけです。

 小泉内閣は現時点において増税をする考えは持っておりませんで、私は増税がだめだという論者ではございません。ただ、水源税については、先ほども鉢呂先生の御質問の際にお答えしましたように、この目的税というのは、だれが受益者かということを特定するのは非常に難しいと思いますね。これは、水を使っている企業が受益者であるということに特定できないと思うんです。

 森林の公益的な機能、水資源涵養、大気浄化、もろもろのことを考えますと、これは広く薄くといいますか、環境税のような考え方で、やはり付加価値税ですね。すべての国民が森林の公益的な機能ということを理解し、認識していただいた上で、こういったことはいずれ考えていかなきゃならない課題だ、このように私は思っております。

 同時に、公共事業をともすると悪者に扱うというような、そういう傾向があるんじゃないでしょうか。このことを非常に残念に思います。林野公共は、これは今後いろいろ総点検した上で、見直しもしていかなければならない面もあるかもしれません。あるかもしれませんが、森の恵みというものに着目して、我々はこういったことも積極的にやっていかなくちゃいけないわけであります。

 それから、最近、都市と農山漁村の間の対立関係というのが、マスメディアの影響かどうかわかりませんけれども、国会内にもあるように思うんですね。これはまことに残念な話で、でありますから、私は都市と農山漁村の融合ということを言っているわけです。

 このことについて、都市住民の皆さん方にも理解してもらわなくちゃいけない。広く言えば、国民の理解というものを求める努力が一番大事だ、我々こう思っておりまして、そういうようなことを出発点にいたしまして、今後の公益的機能発揮のための社会的コストの負担のあり方について真剣に検討していくべきだ、かように考えている次第でございます。

菅野委員 目的税等を含めて、今全体的に環境税という考え方もいろいろな形で起こってきています。そこの中にどう組み込まれていくのか、そのことを真剣になって政治の場で私たちは議論していかなきゃならない。

 私は、これからのこととも絡まるんですけれども、林業の担い手の問題です。このことも先ほど鉢呂委員の方から質問がありましたけれども、先ほど言ったように、私の地域で本当に林業技術が継承なっていくんだろうかという危機感さえ持っているんです。

 そして、なぜ冒頭に森林整備の目標、あるいは森林資源の利用の目標について触れたかというときに、担い手を確保するために、将来の森林・林業事業がどういう方向でいくのかということが明確にならなければ、担い手を確保するという方向に地域が動いていかないんじゃないでしょうか。このことを指摘しておかなければならないというふうに私は思います。

 そして、現実問題として林業、山村が衰退しているということは、先ほどずっと議論されてきていますから、この部分については触れません。ただ、林業経営組織をどのような形で育成していくのか、このことを担い手と絡めて真剣になって考えていかなければならない時期に来ているというふうに私は思います。この点について、政府の答弁をお願いします。

武部国務大臣 農業も林業もそうですけれども、担い手の問題には、やはり継続性を持って担い手が定着するということを考えていかなきゃならないと思いますね。

 したがって、私は法人化のことも先ほど申し上げたわけでありますが、森林組合でありますとかそういった組織的な体制の強化、そのための政府の強力な支援ということを当然考えていかなければならないと思いますし、また生活環境整備のおくれなども山村の過疎化あるいは高齢化が進行している原因にもなっているんだろう、かように思います。

 さような意味で、私は、今日の資源を守る意味における集落の再編ということだけではなくて、もっと都市と農山漁村の融合ということを前提に考えて、いつでもどこでもだれでもが同じ条件下で生活したり仕事ができる、両立が可能だというような新しいコミュニティーというものをつくっていくことが、現在、定着してくれるであろう山村の若者、担い手に対する対策であると同時に、新たに農山村を見直して、そこで頑張ろうというような、そういう新たなる担い手といいますか、農山村への人々の対流といいますか、そういう機会をしっかりつくっていくということが非常に大事じゃないのかな、かように思います。

菅野委員 私の考え方は、本当に今農山村は林業で生活していくという環境にはほとんどなくなっております。木価が三分の一にもなって、木を切って、そして搬出する人夫賃にすべてをとられて自分の手元には残らないという実情の中で、どうして山村地域で林業に従事する人たちが出てくるんでしょうか。

 私は、先ほど言ったように、そういう意味では、森林整備の目標あるいは森林資源の利用の目標を設定して、大臣が言ったように、森林組合、このことを強化していかなきゃならないというふうに思っています。大臣がいみじくも言いましたけれども、森林組合を強化、育成していくという視点が今日ほど求められている時期はないというふうに思っています。

 そして、森林組合、先ほどの答弁で言われました、一千二百五十四組合あって、そして二百二十六組合は作業班もない森林組合になっています。そして、三百五十二組合は損失を抱えていますという先ほどの答弁がございました。

 こういう実情の中で、それじゃ山村地域では担い手もつくれない。どこで担い手をつくっていこうとするんでしょうか。そういう意味では、森林組合を含めて、森林組合がベースになると思うんですけれども、そこを育成、強化していくという視点がない限り、私はこの担い手の問題というのは解決していかないというふうに思います。

 私の地域においても、作業班の新しい人を採用したい、それでも将来の経営が見通しが立たない中で若い人を採用するわけにはいかないというふうにちゅうちょしているのが、今、森林組合の実態ではないでしょうか。このことをどう解決していこうとしているのか。そして、もう一つは労働環境。賃金の問題や林業の将来展望を示していかない限り、若い人たちは森林組合にも入っていかないという状況にあるのではないのかな。

 この二つの点をどう解決していこうとしているのか、見解をお聞きしておきたいと思います。

中須政府参考人 御指摘のとおり、現在の厳しい林業をめぐる状況の中で、林業の担い手といった場合には、もちろん個別林業経営、そういうこともございますけれども、請負あるいは受委託という形を通じて経営の委託という形を受けて、実質的に森林組合等が経営の主体となっていく。一つの方向として、これからの担い手確保対策の中でしっかりと位置づけていかなければならないというふうに思っております。

 また同時に、これは必ずしも森林組合だけということではなくて、今素材生産業者とかそういうふうにも言われておりますが、そういったさまざまな形での請負事業体というものの育成ということにも努めていかなければならない。

 その場合にやはり重要なことは、安定的な仕事が存在をして、そういう事業体が経営を行っていける、こういうものを確保しなければいけないということと、そこで働く労働者の方々の雇用とかそういうものがしっかり守られていなければならない。

 例えば、現在の林業の労働環境ということで見ますと、従来に比べてかなり改善されているといえども、林業事業体の労働者のほぼ半数が年間百五十日未満の短期就業者である、こういうような実態があります。また、社会保険等への加入率が、労災保険はほぼ一〇〇%入っているわけでありますが、その他の保険については四割から七割程度にとどまっている。

 そしてまた、もう一つ大変大きな問題は、労働災害の発生頻度が大変高い、こういうような職場環境にあるわけでありまして、こういった諸点についてさまざまな形で、特に林業労働力確保センター、各県に設置をされておりますが、こういうところの活動を通じてこういう条件の改善を図っていく、そういうことも大きな課題である。

 こういう、ただいま申しましたような課題を解決しつつ森林組合等の林業事業体の育成を図るというのがこれからの担い手対策の一つの大きな柱になっていく、こういうふうに認識をしております。

菅野委員 基本計画を策定するときまでぜひ大きな議論を闘わせていただいて、私は、担い手の問題を具体的にこれからどうしていくのか基本計画の中で明確に示していくことが今日求められていることだというふうに指摘しながら、基本計画を十月をめどに立てていきたいということですから、ぜひこの担い手の問題を避けて通らないように要望しておきます。

 三点目なんですが、やはり先ほどからずっと議論されてきておりますが、山が荒れているという表現を使いますけれども、荒れているんじゃないんですね。山には木は植わっているんです。先ほども言いましたように、六百ヘクタール植林しました。ただ、植林したときに人工林をどう手入れしていくのか、このことがやはり、戦後、造林計画を立てて今日に至るまで、ここの方向性がぴしっとしていなかったゆえに、今大きな問題になってきているんではないのかなというふうに思います。

 一千万ヘクタールと言われていますこの人工林の整備の方向性、これについて今考えている具体的な方向をお示し願いたいというふうに思います。

中須政府参考人 ただいまお話ございましたとおりに、我が国森林面積の約四割、一千万ヘクタールを超える人工林というもの、これはこれまでに多くの方々の大変な努力によってつくられてきたわけであります。ただ、それはまだ蓄積途上にあるわけでございまして、今後、計画的な森林の整備ということが、どうしても推進していくことが必要だ、こういうことであります。

 そのために、まず第一に、今日本の人工林について求められておりますのは、やはり何といっても間伐の実施であります。もう専門家の先生にあえて申すまでもございませんけれども、間伐は、残された木というものを立派な、大きな木として育てるということだけにとどまらず、間伐によって日光、太陽の光が地表まで届くことによって地面に下草が生える、そういうことがまた森林の持っている水源涵養あるいは国土保全の機能をさらに高める、こういうふうな意味も持っているわけであります。今、時期的に人工林における間伐を成功裏に進めていくということが大変重要な課題だということであります。

 そのために、先ほど来御説明あるいは御指摘をいただいておりますように、昨年度から五年間をもって百五十万ヘクタールの間伐を緊急に進めようということで取り組んでおります。幸い初年度目は目標を達成いたしました。今、二年度目に取り組んでいるところでありますが、これは実は、単に一人一人の方が間伐をやるということにとどまらず、一定の地域的な広がりを持って、まとまりを持って計画的に間伐をやっていくという意味で、地域での、夜みんなが集まっての話し合い、あるいは既にもういなくなっている不在村の地主に説得に行く、そういう大変な努力を積み重ねて年間三十万ヘクタールの間伐が行われている、こういうことであります。そういう努力をさらに積み重ねてこれを実現していきたいということが一つ。

 それからもう一つは、さらにその先、公益的機能をさらに発揮する、あるいは森林資源の循環利用を達成するという意味で、長期育成循環施業と言っておりますが、抜き切りによりまして複層林を形成していく、こういうものを今年度新たに助成対象にいたしました。これの普及、定着というものが人工林に関しての大きな二つ目の課題ではないか、そういうふうに今考えているところであります。

菅野委員 保育、それから除伐、間伐、そういうことを繰り返していかなければ、山は荒れるという表現を使うんですね。木がおがっていても荒れ山だと言われるんです。

 それで、今示されました。ただ、このことは、間伐を促進していくというときには、地方自治体との連携を密にしていかなければならない課題なんですね。それで、地方自治体との調整、どのように図っていくのかなという大きな課題があるというふうに思います。

 それで、これまで国の補助事業のあり方ということで、国が五一%、県が一七%、あるいは市が単独で補助しているその他の部分があったにしても、約三一%ですか三二%ですか、これが受益者が負担するという中で、非常に間伐がおくれていく状況があるというふうに私は思うんですね。

 それと同時に、昭和五十五年当時に、今三十年生、四十年生というのを徹底して除間伐をやったのです。将来に望みがありましたから、山に入って除間伐をやりました。しかし、今、木価が安くて将来展望が見えませんから、今、植えて十年生あるいは十五年生ぐらいは手もかけられないでいるというのが山の状況なんですね。初回間伐をどうしていくのか、このことが、今非常に林業経営が低迷している中で大きな課題として取り上げざるを得ないというふうに思います。

 先ほどもありました、このまま放置しておいたならば、それこそもやしの木と言われるくらいな成長しか見込めないんじゃないのか、そうしたときに山はどうなっていくのか、ここが大きな課題だというふうに思います。受益者が三〇%出さなければならない状況の中で、本当に今間伐が促進されていくんでしょうか。このことをどう解決していこうと考えておられるのか、このことを林野庁長官にお聞きします。

中須政府参考人 ただいま進めております緊急間伐五カ年計画においては、先ほど申しましたような地域的な取り組み、市町村長との協定に基づいて計画的に間伐をやっていくという場合には、従来の間伐よりも助成水準を、若干でございますが引き上げるというふうな措置もとって、受益者負担と申しましょうか森林所有者の負担を少しでも軽減するための措置も講じているところであります。ただ、これについては、五カ年計画ということで昨年発足し、現在までのところ、関係者の努力もあって一応順調に進んでいる、こういう状況であります。

 ただ、先生から御指摘ございました、若干気になりますのは、私ども、国の助成と都道府県の助成というものの組み合わせでもって、あとは、場合によっては市町村が助成をする、残りは受益者の方に御負担をいただく、こういうことになるわけでありますが、都道府県の財政事情とかそういうことによってある程度左右される側面がある。状況はいずれも大変厳しいわけでありましょうが、間伐の重要性ということから、さらに県として上乗せをして受益者の負担を軽減する、あるいは市町村が一定の負担をする、こういうようなことで間伐の促進に努めていただいております自治体もあるわけであります。

 そういうようなさまざまな形での努力の積み重ねの中で、私ども、今進めております緊急五カ年計画については、当面、今の形のもとで何とかその実現を図っていきたい、こういうふうに思っております。

菅野委員 大きな問題が、一つは、なぜ百五十万ヘクタールなのかという問題があるんですね。環境面に配慮した森林整備ということにおいて、年間三十万ヘクタールで十分環境が維持できるんでしょうか、人工林一千万ヘクタール整備してきた、そういう状況の中で、百五十万ヘクタールで十分なのかどうか、これが一つ大きな論点になるというふうに思います。

 それから、私は、先ほどからずっと財政の論議をやっていますけれども、財政の影響でもって環境という部分を議論してはだめだというふうに思います。環境を守る視点が最初に出てきて、そして整備面積というのが次に出てくるんじゃないでしょうか。

 それで、先ほど言ったように、今、森林経営が先行き不透明だから、植えたものの、後、手をかけられない、かけていないという状況をどう克服していくのか、この視点をはっきりと打ち出していただきたいというふうに思うんです。

 そして、本当に三十万ヘクタール、五カ年でやります、それでは次の五カ年で、基本計画を作成するときにこれを五十万ヘクタールにふやします、あるいは全体を、二十年なら二十年で除間伐をやっていく面積が幾らなのか、こういう計画を、基本計画をつくるときにぴしっと出るわけですから、全体の森林面積と樹齢がはっきりしているわけですから、そういうところを今後どうしていく考えなのか、最後にお聞きしておきたいと思います。

中須政府参考人 一つは、百五十万ヘクタールにつきましては、私ども、この事業を開始する段階で各都道府県からのお話をお聞きし、各都道府県としてどうしても実施する必要のある面積、そういうことの積み上げで百五十万ヘクタール、こういうことで事業を発足させました。

 したがいまして、これは一定の段階で、それで十分かどうかということは当然また吟味される時期がある、そういうふうな性格の形で、百五十万ヘクタールで五カ年ということで今の事業は取りかかっているということであります。

 それと、その先がどうなるかということと同時に、ただいま御指摘ありましたように、新しい基本法のもとにおける計画の中では、森林の公益的機能を十分に発揮している姿というものをお示ししようというふうに思っているわけでありますから、まだ、具体的にどういうイメージで出せるかということについては自信はございませんが、お話のとおり、これから先、十年先、二十年先に間伐というものがどういう姿になっているのか、こういうものはそういう計画の中で十分わかるように示していく、そういう方向で作業をしたいと思っております。(菅野委員「初回間伐は」と呼ぶ)

 それは御指摘のとおりでございまして、植林をして二十年というまでの、そこを目途に間伐の第一回目を始めなければならない、今回の百五十万ヘクタールの緊急間伐の中にも当然そういうものはかなりの程度含まれている、こういうことでありまして、そこの点については緊急間伐対策の中でしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

菅野委員 最後なんですが、森林・林業経営の実情を踏まえて、環境を守るという観点から国がどう施策展開していくのか、森林・林業基本計画を立てる段階でびしっと私たちに示していただきたい、このことをお願い申し上げて、終わります。

武部国務大臣 大変、森林・林業に御理解の深い、また御造詣の深い御意見を開陳いただきまして、大変心強く思った次第でございます。

 今御案内のように、ともすると社会の風潮は、森林・林業の公益的な機能というものに対して国民の皆さん方の理解がいまいちというふうに考えている次第でございまして、そういう意味でも、林野公共ということについても非常に大事だということをお互いの認識の原点として、我々も頑張りますので、御支援をお願いしたいと思います。

堀込委員長 次回は、来る十二日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時五分散会




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