衆議院

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第19号 平成13年6月13日(水曜日)

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平成十三年六月十三日(水曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 滝   実君 理事 二田 孝治君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩倉 博文君

      岩崎 忠夫君    岩永 峯一君

      金田 英行君    上川 陽子君

      北村 誠吾君    後藤田正純君

      坂本 剛二君    七条  明君

      菅  義偉君    園田 博之君

      高木  毅君    西川 京子君

      浜田 靖一君    林  幹雄君

      菱田 嘉明君   吉田六左エ門君

      古賀 一成君    後藤 茂之君

      佐藤謙一郎君    城島 正光君

      津川 祥吾君    筒井 信隆君

      永田 寿康君    楢崎 欣弥君

      松野 頼久君    江田 康幸君

      東  順治君    黄川田 徹君

      高橋 嘉信君    春名 直章君

      松本 善明君    菅野 哲雄君

      重野 安正君    山口わか子君

      金子 恭之君    藤波 孝生君

    …………………………………

   農林水産大臣       武部  勤君

   農林水産副大臣      遠藤 武彦君

   農林水産大臣政務官    岩永 峯一君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究

   所国民経済計算部長)   小田 克起君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  香山 充弘君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   津田 廣喜君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議

   官)           田中壮一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  小林 芳雄君

   政府参考人

   (林野庁長官)      中須 勇雄君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネ

   ルギー・新エネルギー部長

   )            沖   茂君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  三沢  真君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  浜中 裕徳君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     林  幹雄君

  北村 誠吾君     菅  義偉君

  西川 京子君     坂本 剛二君

  永田 寿康君     松野 頼久君

  江田 康幸君     東  順治君

  高橋 嘉信君     黄川田 徹君

  中林よし子君     春名 直章君

  菅野 哲雄君     重野 安正君

同日

 辞任         補欠選任

  坂本 剛二君     西川 京子君

  菅  義偉君     北村 誠吾君

  林  幹雄君     上川 陽子君

  松野 頼久君     永田 寿康君

  東  順治君     江田 康幸君

  黄川田 徹君     高橋 嘉信君

  春名 直章君     中林よし子君

  重野 安正君     菅野 哲雄君

    ―――――――――――――

六月十三日

 農業協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八四号)(参議院送付)

 農林中央金庫法案(内閣提出第八五号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 林業基本法の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)

 森林法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)

 土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)(参議院送付)






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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、林業基本法の一部を改正する法律案、林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案及び森林法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長小林芳雄君、林野庁長官中須勇雄君、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部長小田克起君、総務省自治財政局長香山充弘君、財務省主計局次長津田廣喜君、文部科学省大臣官房審議官田中壮一郎君、厚生労働省老健局長堤修三君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長沖茂君、国土交通省住宅局長三沢真君及び環境省地球環境局長浜中裕徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子君。

西川(京)委員 おはようございます。自民党の西川でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今回、この林野三法にうたわれております基本的理念について、さまざまな質疑、あるいはきのうは参考人四人の方に来ていただいていろいろな論議が交わされましたけれども、私は、基本的な二つの理念、森林の有する多面的機能の持続的発揮と林業の健全な発展、このことについてもう一回改めて質問させていただきたいと思います。

 まず、多面的機能の持続的発揮という点から、治山治水の機能に関しての質問がやや少なかったように思いますので、そのことについてちょっとお伺いしたいと思っております。

 今、大変日本の山が荒れておりますが、あちこちで、ちょっとした台風その他で、特に私の住んでいる九州地方ではがけが崩れたり、大変荒れております。その中で、森林の持つ治山治水という面からの貢献度というんでしょうか、そういうものについて、緑のダムというような話も出ておりますが、森林が、すべて治水をそれで賄うというのはちょっと無理な理論だと思いますが、大きな役割を果たしていることは事実ですので、そのあたりについての大臣の御所見をまずお伺いさせてください。

武部国務大臣 西川先生御指摘のように、山と海は命のふるさと、私どもはそのように理解をして、森林は、木材の生産のみならず、山崩れなどの山地災害の防止や水源涵養、地球温暖化の防止、自然環境の保全等の多面的機能ということについては近年国民の間にもかなり期待が高まっている、このように思いまして、戦後造林されました人工林を中心として計画的かつ着実な森林整備が重要だ、かように存じます。

 先日も、経済財政諮問会議における例の骨太の方針の中にも、私ども、ヒューマンセキュリティーということの重要性、国の役割を明記すべきだ、その中で防災あるいは水資源の涵養、食料の確保、こういったヒューマンセキュリティーということをしっかり国の基本政策として明記すべきだということを主張いたしまして、それが盛り込まれた、かように思いまして、今後さらにそういう姿勢でしっかり進めてまいりたい、かように考えております。

西川(京)委員 ありがとうございます。

 実は今回、この問題に関してちょっと林野庁のインターネットにアタックしてみました。その中で、森林の公益的機能の評価額などについてのさまざまな観点からの試算をいたしまして、もちろん二酸化炭素の吸収率とかそういうことも含めて、総額で七十五兆円という額が出ておりました。これは、ある意味ではちょっと数字の遊びかなという気は正直いたしますが、一般の都会の人たちに森林機能の重要性を改めて理解していただくためには、こういう具体的な数字を挙げて広報、PRするというのは大変大事なことだと思っております。

 そういう意味で、林野庁の方でも努力を今後も大いに続けていただきたいと思うのですが、一つちょっと具体的なことをお聞きしたいと思います。

 実は、いわゆる治水ダムにしても何にしても、ダムがつくられますと当然そこに土砂が流れ込みまして、毎年土砂が堆積していくという問題があります。その中で、荒廃地の森林が、きちんと整備されている森林の場合と、いろいろな台風や災害で崩れたり、あるいは皆伐されてしまったり、そのまま木が植えられていないとか、そういう状況の中での土砂量の堆積していくスピードが違うというような、具体的なそういう調査というのは林野庁の方ではおやりになったことはおありなんでしょうか、長官。

中須政府参考人 御指摘のとおり、森林は、森林土壌の中に雨水を貯留する、水が徐々に流れ出るようにする、そういう機能を持っていると同時に、雨が降った場合に、植生とか落ち葉が林地を覆っている、このことによって河川等への土砂の流出を抑制する、いわゆる水土保全と申しておりますが、そういう機能を持っているわけであります。

 これをなかなか数値的にどうということは、個別のデータということでしかないわけでありますが、私どもの承知している限りでは、例えば森林の浸透能ということでいえば、裸地は林地の三〇%程度の浸透能しか持たない、水を中に貯留するというか、そういう能力に差があるということであるとか、あるいは落葉量と土地の侵食量ということでいいましても、具体的な広葉樹だとか針葉樹、各樹種ごとに、裸地とそういうもので覆われた土地について、降雨の強度によって流れ出る侵食量に大きな差があるという個別データもございます。

 個別の一人の学者のあれでございますが、荒廃地では一ヘクタール当たり年間三百七トンの土砂が流出するというのに対して、良好な森林はわずかに二トンということで荒廃地の百五十分の一の土砂しか流出をしない、こういうようなデータもあるわけでございまして、私ども、やはりダム等の上流の水源地における森林の整備ということが大変重要である、こういうふうに存じております。(発言する者あり)

西川(京)委員 ありがとうございます。こういう具体的な数字は、ある意味ではいろいろな条件があってかなり精査するのは難しいということがあると思います。国土交通省の方にもちょっとお聞きしてみたんですが、傾斜とかさまざまな条件で、きちんと具体的数字を出すのはかなり難しいようなお話もありましたが、やはりこれからは、こういう合理的な一つの根拠というんですか、そういうのも示しながら、森林の役割というのを大いにアピールしていってほしいと思います。

 今、広葉樹を植えろというお話も聞こえましたけれども、続きまして、今実際の林業の置かれている厳しい中で、本当に日本の山が荒れております。その中で、特に皆伐した後植えていない山、あるいは間伐が全くできていない山というのが本当に目につきます。

 実を申しますと、私の意見では、人工林でも間伐が本当にきちんと行き届いている山というのは、実は自然の植生にすごく近くて、広葉樹とかみんな、雑木、下草、本当にきれいに生えております。光が入る山というのは、ほとんど自然に近い状態で山があるんですね。ですから、人工林バッシングというのはちょっと当たらないし、また、やみくもに広葉樹を植えればいいということでもないと私は思っております。人工林でも、きちんと整備された人工林というのは自然の林に近いという認識をぜひ持っていただきたいな、そんな思いを持っております。

 そのためには、ぜひそういういい形の森林をつくっていかなければいけないわけですが、もう御承知のとおり、木材価格の非常なる低迷と人件費の高騰その他で大変林業の周りの環境が厳しくなっております。

 きのうも小国町の町長さんの持っていらした資料を拝見しますと、素材の価格が昭和五十四年のときに立米当たり三万九千二百三十円、そして平成十年が一万五千八百円、これは私に言わせるとちょっと高いかなというぐらいの認識ですけれども、それに比べて人件費の方はおよそ二倍近くになっていますね。少なくともそこに約四倍の差ができてしまって、もうこれは完全に業として成り立たないという状況があります。

 そういう厳しい中で、個人の力に間伐整備、山の整備というのをさせるというのはもう本当に厳しいことで、ぜひここで、林野庁、国がこういうことに関してもっと本当に積極的に補助事業をしていかなければいけないと思いますが、今行われている効果的な事業、よかったら具体的に教えていただきたいと思います。

中須政府参考人 これまでの御審議の中でも多く御指摘をされておりますように、森林というものが果たすべき機能、多様な機能を果たしている、多面的な機能を果たさなければならないということが認識されながら、他方、採算性の悪化によりまして林業生産活動が著しく停滞をしている、これを何とかしないと森林の持っている多面的な機能の発揮ということ自体が危うくなるのではないか、そこにやはり今林政改革を進めなければならない我々の一番の眼目、ポイントがあるというふうに思っております。

 そういう点では、既に我々いろいろな手を打つべく努力をしているわけでありまして、一つは、御指摘のありました間伐ということでございますが、全般的に、戦後、人工林というものが大幅に拡大をされましたが、間伐が非常におくれているという状況にあります。これを全国で、各都道府県を通じまして調査をいたしまして、ここ五年間で百五十万ヘクタールを対象にして緊急に間伐を実施しなければならない、こういうことから、平成十二年度から、緊急間伐五カ年対策ということで補助事業を実施している、こういうことでございます。初年度で三十万ヘクタールの間伐を実績として実施し得たということでございまして、引き続き、現在二年度目ということで取り組んでおります。

 それからさらに、そういうものとのつながりを持っているわけでありますが、公益的機能をより一層発揮するという観点からは、長期育成循環施業というふうに申しておりますが、一斉に皆伐をしてしまうのではなく、抜き切りを繰り返しながら複層林というものに誘導していく、そういう意味での長期育成循環施業の導入ということを通じまして、実際には最長九十年生の木材の事実上の主伐まで助成対象にしていく、こういうようなことに取り組んでいるわけでございます。

 ただ、もちろんすべての場所で、そういうことで間伐なりを含めて対応が可能かというと、必ずしもそうではありません。そういう意味においては、公益的な機能の発揮が特に求められる、しかし、実際、森林所有者による林業生産活動のみではそれはもうほとんど不可能に近い、そういう場所については、治山事業とか、あるいは各種公団、公社の事業というものを通じまして、いわゆる公的関与による森林整備、こういうものも併用いたしまして森林の適正な整備ということが図られるように努めていかなければならない、こういうふうに考えております。

西川(京)委員 森林の公益的機能ということでは、日本全国同じようによく育っていかなければならないわけで、余りポイントをするというのもある意味ではちょっとどうかなという気も正直いたしますが、有効に、効果的にするということでは、やはり意欲のある林業経営家というものを選んでやるということも一つの方法かなとは思っております。

 そして、続きましては、国内でそういうふうにいわゆる官民相まった努力、当然なんでございますけれども、まず現実の今を見据えますと、もうとにかく洪水のように外材が入ってくる、八割という、このことをやはり視野に入れた林業政策というのをしないことには、現実に対症療法をびしっとした上で根本治療をするということがやはり大事だと思うのでございます。

 今回のこの林業基本法においても、二十六条で、ちょっと読ませていただきますが、「国は、林産物につき、森林の有する多面的機能の持続的な発揮に配慮しつつ適正な輸入を確保するための国際的な連携に努めるとともに、林産物の輸入によつてこれと競争関係にある林産物の生産に重大な支障を与え、又は与えるおそれがある場合において、緊急に必要があるときは、関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるものとする。」ある意味では将来セーフガードを念頭に入れた一項を入れているように思いますが、このセーフガードの発令について、大臣の御所見をお願いします。

武部国務大臣 木材の輸入問題ということは、まさに昨今、外国における盗伐された木材の輸入など、G8でもいろいろ問題提起されておりますけれども、次期WTO交渉において我々はさらに問題提起をしていくべきだ、かように考えておりますし、ただいまセーフガード発動に関連してお話がございましたが、WTO交渉においては、公平かつ公正な貿易ルールの確立ということに向けて、地球規模の環境問題、資源の持続的利用、また、輸出入国間の権利義務のバランスといったような観点を踏まえて枠組みを確保しつつ交渉を行っていく、こういう必要性を考えております。

 また、この一環として、違法伐採された木材の輸出入についても、ただいま申し上げましたように、貿易ルールの重要性にかんがみまして、これを抑制するということについても、私どももその制限の可能性について検討してまいりたい、かように思います。

 なお、セーフガードの検討に必要な情報を常時収集していくモニタリング体制を整備したところでありまして、木材及び合板についてもその対象としているところでありますので、いずれにしても、セーフガード問題についてはWTO関連協定等に従って適切に対応してまいりたいというのが私どもの考えでございます。

西川(京)委員 ありがとうございます。

 さらに続けて、価格破壊がもう壊滅的な状況下では、やはりこの輸入制限は認められてしかるべきだと思っております。そして、この基本法の中でも、森林を適正に管理するのは所有者の責務であるという項目も入りましたが、こういうふうに記す以上は、急激な木材価格暴落時にはその歯どめ策を講じるのが国の責務であると私は申し上げたいと思います。

 そういう意味で、さらにもう一回重ねて、副大臣もこのセーフガードについての御所見をよかったらお聞かせいただきたいと思います。

遠藤(武)副大臣 せっかくの御指名でございますが、大臣が御答弁なさったことと重複するかもしれません。ですから、その部分は避けまして、私見を述べさせていただければ、日本というのは貿易で立国している国でございます。したがいまして、ある一分野でトラブルが起きますと、すぐに別の分野でのトラブルに波及していくという非常に危うい経済の上に立っていると思います。

 したがいまして、セーフガードについては、発動するなら発動するで、綿密なる調査とそして不退転の決意で臨まなきゃならぬ、このように思っておりますし、先生おっしゃられたまさしく価格破壊というのは、むしろ日本の木材産業そのものを破壊していくものではなかろうか、このように認識しておりまして、調査の結果を待ちたい、このように思っているところでございます。

西川(京)委員 済みません、いきなりで本当に申しわけありません。ありがとうございました。

 もう一つは、セーフガードというのはかなり長期の調査も要しますし、木材の場合はもうかなり昔からずっと高い水準で輸入されているといういろいろな困難な問題があって、このセーフガード発令にはかなりの決心と努力が要ると思いますが、もう一つの、この輸入制限の大きなある意味では有効な方策として、不法伐採の問題があると思います。

 今、日本の丸太の輸入先をちょっと見てみましたけれども、ロシア、マレーシア、インドネシア、ニュージーランド、このあたりが丸太の輸入先の主なところですが、この中で、インドネシアあたりでは本当に不法伐採が、イギリスとインドネシア政府の共同の調査によりますと、五〇%が違法伐採だという見解も出ております。

 インドネシアは、政府としても丸太の輸出禁止措置を検討し始めたということも伺っておりますが、ぜひ日本も、今この不法伐採というのは、ある意味で、本当に熱帯雨林が固まって日本の九州ぐらいの面積がなくなっていく、そして、自然の生物のすみかがどんどん奪われていくという大きな問題を抱えていますし、特に、ロシアの方では、タイガ樹林を伐採して永久凍土が流れ出して、本当に自然の温暖化その他環境に大きな影響が出てきている。

 そういう大きい問題を抱えておりますので、これは一林業の問題ではないというとらえ方からも、外交分野でセーフガード、あるいは不法伐採の問題、もっともっと日本は大きくアタックしていく必要があると思います。

 特に、今、COP3の京都議定書で日本の削減六%の中で三%を認めてもいいというような譲歩案も出ておりますので、今まさにチャンスだと思うんですね。それだけ日本の森林が価値があるんだから、この森林を壊すような今の貿易体制というのはちょっとおかしいんじゃないかと。工業製品も含めた、自然を相手の、環境を含めた農林水産分野に同じような基準で考えるのはおかしいということをもっともっと日本は言っていくべきだと思います。そういう意味で、ぜひ外務省とも連携をとった大きなアタックをよろしくお願いしたいと思います。

 考えますと、今のストップする考えというのは、ある意味では消極的な一つの療法で、結局、日本の国内の林産業が企業努力をしていないんじゃないかと言われるとそれまでのようなところもありますので、翻って、やはり林業の本当に体質改善というのは図っていかなければいけないわけです。

 その中で、輸出入の国を見てみますと、ドイツあるいはアメリカその他ヨーロッパ諸国は非常に輸出もしているけれども輸入もしている。その両方、双方向なわけですね。その中で、一方的に輸入だけしている先進国というのは日本だけなわけです。ですから、ぜひ、そういう状況を考えると、日本の国内の林業のもっと体質強化というのはやはり考えなければいけないと思います。

 その中で、ラベリングという問題が、効果的な、これからの頑張る一つの突破口ではないかななどと私は思っているんですが、今国際的に、非常に一定の基準、規格を満たした森林経営が行われている森林または組織に対して認証するという制度があります。

 FSC、森林管理協議会あるいはISO、国際標準化機構、こういうところでそういう非常に循環的な経営ができる環境のいいところの組織、あるいはそこから出てきた木材に認証を与えて、それが少なくとも、今環境意識がみんな国を挙げて出てきた中で、そういう木材を使うことが即自分たちも環境に寄与しているんですよという一つの意思があるわけですね。

 そういう感覚で、日本もぜひこの問題についてもうちょっと積極的に考えていただきたいなと思いますが、今国内でも一林業家あるいは森林組合、檮原でしょうか、そういう認証を受けているそうですが、ぜひ、国の中でも独自の認証制度を考えて、特に、農林水産で原産国表示という問題もありましたので、国民がどういう木材を使って、安心できる建物を建てるという認識も大きな林業に対する応援団にもなると思いますので、この問題に関して所見を聞かせていただけたらと思います。

中須政府参考人 ただいま御指摘のございました森林認証あるいはラベリングというのは、いわば森林経営というのが持続的に森林の持っている多様な機能というものを生かしながら行われている、そういう経営というのを認証して、そこから生産された木材というものが流通しやすい仕組みをつくっていく、そういう形で支援をしていくという考え方だろうと思います。

 ただいま御指摘のとおり、基本的には民間サイドの取り組みということで、今、大きく言えばWWF等を中心として設立されたFSCという形での森林認証、それからもう一つは国際標準化機構、いわゆるISOが定めた14000シリーズ、その二つでそういった認証等が国際的には一定の力を持ってというか、かなりの取り組みが見られるという状況であります。

 我が国におきましては、FSCについては、今お話にございましたように、森林組合を含めて二林業者というものが現に認証を受けているということでありますし、ISOについては、住友林業が14000シリーズについて初めて認証を受けた、こういう状況だというふうに聞いております。

 ただ問題は、こういったものが定着をしていく、大変それ自体望ましいわけでありますが、これには、もちろん他方で森林の認証を受ける、あるいはラベリングに伴う大変厳しい規制がかかるわけでございまして、コストの増嵩という問題があります。したがいまして、環境面を考慮した製品を積極的に購入することがいいことなんだという消費者の強い支持というか期待というか、消費者意識の高まりと並行して進まないとなかなかちぐはぐなものになってしまう、こういうことだろうと思います。

 そういう点で、私ども、こういった制度について、国内での普及を図っていくということと同時に、我が国の森林経営は一人一人という意味では大変零細な経営が多いわけであります。そういう経営にとってこういう国際的な認証を直ちに受けるということにいろいろ制約があるのも事実でございまして、この辺さらに、もっと調査検討を行った上で普及しやすい仕組み、やり方というのがないのかどうか、そういうことを政府としても、基本的には民間が取り組むことではありますが、そういう普及の方法等を含めまして政府としても調査検討を行っていきたい、こんなふうに考えております。

西川(京)委員 ありがとうございました。

 私も、これをみんな、どこのあれにも求めるというのはかなり難しい話でありまして、一つのPRの大きなモデルケースとしてぜひ進めていただきたいな、そんな思いを持っております。

 一方では、本当に間伐材の利用なり国産材の利用というのが、もちろん小さな林家にとってもあらゆる面で一番効果的なわけですが、特に公共施設への国産材利用というのが、国の考え方次第でどんどんできる話でありますので、ぜひこれをもっともっとやっていただきたいと思うんです。

 特に、学校施設の木造化というのは、このごろ文部科学省の方でも二分の一の補助その他をしていただいて、幾つか大分すてきな学校ができてきているようです。そのことに関連いたしまして、新しく学校をつくるというのは何十年かに一度のことでありまして、私は、特に改築、内装、机、廊下ですね、そういうものをぜひ国産材、合板でなく無垢材でしてほしい。

 そういうものに関して今林野庁の方でも補助金を出していらっしゃるようなんですが、それがあくまでも、やはり文部省に、ある意味では余り手を出さないように、県レベルを通して補助金を出すというような、びしっと、きちっとタイアップしてというのはまだまだできていないように思います。

 そういう意味で、私は、本当に教育効果ということを考えても、きれいな廊下、木の廊下の上を、みんながきれいなはだしで歩いてもらって、そしてぞうきんがけをみんなでばっとするようなということは、今の本当に心の問題が叫ばれている中で、文部省が本気で取り組むべき問題だと思うんですね。

 むしろ私は、林野庁が何となく遠慮しながらやることではなく、文部省がこの問題についてもっと積極的にPRして、一緒に一体となってやっていただきたい問題だ、そういうふうに思っておりますが、文部省のお答えをいただきたいと思います。

田中政府参考人 学校におきます木材の使用についてのお尋ねでございますけれども、木材は、感触のやわらかさ、温かさ、高い吸湿性など、すぐれた性質を持っておりまして、快適な学習、生活環境を実現する上で大きな効果が期待できると考えているところでございます。また、学校は、地域のシンボル的存在でもございますことから、施設づくりに地場産業や地域の伝統技術を生かすということも意義のあることだと考えておるところでございます。

 このため、文部科学省といたしましては、従来より、各都道府県委員会に対しまして、校舎の木造化や内装への木材の使用等、学校施設におきます木材の積極的な活用について通知し、その促進を図ってきておるところでございまして、昭和五十九年度には内装等に木材を使用した場合について補助単価の加算を行いますとともに、その後も、木造建物の補助単価の引き上げや補助基準面積の拡充などに努めてきておるところでございます。

 また、机、いすなどの学校用家具につきましては、平成十一年に学校用家具の現状に関する調査研究報告書というものを作成、配付いたしておるところでございまして、木製家具の持ちます温かさや肌ざわりのよさなどの特性を紹介いたしますとともに、教室用の机やいすに関しますJIS規格を改正いたしまして、従来の使用材質に関します詳細な規定を廃止いたしまして、多様な木材を使用した木製家具の導入をしやすくいたしておるところでございまして、木製の机やいすの普及に努めているところでございます。

 今後とも、林野庁等関係省庁との連携を図りながら、学校施設等におきます木材の積極的な使用の促進を図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。

西川(京)委員 ありがとうございました。

 時間がなくなりましたので、私の感想を述べて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 きのうの参考人の宮崎町長さんのおっしゃった言葉が、私、大変印象に残っております。林業をめぐる各省を横断する総合的政策の実行がなかった、この一言に私は尽きるような気がいたします。今まで林業は農林水産関係者の間だけで論議がされていた。それで、本当にこれが大きな大きな、環境を含めた多面的な機能を有する大きな問題だということがやっとここ何年かに認識された中で、これは各省横断で林業・森林再生プロジェクトチームみたいなものを本当はつくってほしいくらいの思いを持っております。

 そして、日本人の昔からの自然観の中で、大きな木、あるいは鎮守の森などに象徴されますように、木材に対する思いというのは本当に日本人の感性の中の根本を占めるものだと思っております。そういう、きのうの宮崎町長さんの、光や風が自然に感じられるような健康な木造住宅を目指している、すばらしいなと私は思いました。

 鉄筋コンクリートの中で住むのでなく、状況的にはそういう状況でも仕方がないにしても、せめて内装でも、合板でない、自然の木を使った建物を少しでも多くつくって、日本人の木に対する自然の感性、このことをぜひ学校教育現場でも育てていただきたいし、私たち日本人もこの気持ちを大事にして、日本の森林を守っていきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

堀込委員長 次に、筒井信隆君。

筒井委員 最初に、条文のことについてお聞きしますが、二条の「多面的機能の発揮」という見出しの条文、この条文、ちょっとおかしな書き方ではないか、訂正をするべきではないかというふうに考えますので、お聞きをいたします。

 この二条の見出しは、「多面的機能の発揮」ということになっております。しかし、条文の結論は、森林については「適正な整備及び保全が図られなければならない。」つまり、森林の整備及び保全を図る、こういう条文になっていて、多面的機能はそう図らなければならない理由づけとして書かれている。この条文はまずおかしいのじゃないですか。

中須政府参考人 条文の構成及び見出しの書き方ということに関しては、ただいま御指摘のとおりでございます。

 ただ、条文の見出しということにつきましては、私も必ずしも十分な専門家かどうかということを別にいたしまして、いわゆる条文の内容、目的等を簡潔に表現する、それによって条文の内容の理解とか検索の便に供する、こういう観点でつけられるというふうに伺っております。いわば、今のこの例のように、条文の目的、こういうことのためにこういうことをしろというときの、その目的を強調したいときにそれを見出しで表現をするという例も事実上多くの例の中にはあるわけでございまして、今回の場合にはまさに、目標というのでしょうか、目的というのでしょうか、そこを強調したいという気持ちが、簡潔に見出しにおいてそのような書き方をしたということでございまして、そういうものとして御理解を賜りたいというふうに思います。

筒井委員 全然答弁になっていないのだけれども、この二条は、森林の多面的機能を発揮する、こういう目的の条文でしょう。見出しも確かにそうなっているんですよ。だから、見出しが正しいんですよ。だけれども、条文の中身は、森林についての「適正な整備及び保全が図られなければならない。」こういう結論になっていて、森林の整備及び保全を図るための理由づけとして、森林の多面的な機能があることにかんがみとなっている。だから、二条の目的は、多面的機能の発揮でしょう、だけれども二条の結論はそうなっていないでしょう、条文は。そう聞いているんです。

中須政府参考人 私の言い方が不十分なのかもしれませんが、まさに先生がおっしゃったとおり、森林の持つ多面的な機能を持続的に発揮する、これがこの条文を書く大きなポイントであるということであります。

 ただ、もちろん、多面的な機能というものを発揮するためにその整備、保全を図る、こういうことでありまして、そこは条文の書き方と見出しの表現というもので一体として見て何ら違和感がない、まさにそういう書き方でこの条文の趣旨が十全に表現されているのではないかというふうに私は思っております。

筒井委員 多面的機能を発揮する、こういう条文がこの二条にあって、別に、そのために森林の整備及び保全を図る、こういう規定だったらそれはおかしくないのですよ。だけれども、ここでは、森林の整備及び保全を図るという条文になっている。

 それでお聞きしますが、農業基本法ではこういう条文じゃないでしょう。農業における多面的な機能の発揮を図らなければならない、これがこれに相当する条文の構成になっていますね。

中須政府参考人 農業関係の基本法の規定ぶりについては御指摘のとおりでございます。

筒井委員 それから、この森林・林業基本法の理念として、多面的機能の発揮とそれから林業の持続的かつ健全な発展というのが理念として書かれていて、第三条の方には、この二つ目の理念、林業の発展、これが書かれておりまして、こっちの方では、林業の「発展が図られなければならない。」まさに見出しと一致する条文になっているわけです。そうですね。これは当たり前なので、一々答えなくていいですが。

 だから、農業基本法においても、多面的機能の発揮を図らなければならない、こうなっていて、また、今問題のこの基本法でも、林業の発展を図らなければならない、まさに見出しであり、目的のその点が、その趣旨がそのまま条文に書かれているのですが、この二条だけ違うわけですよ。

 だから、これはほかに例があるのかは別にして、条文としては、目的と条文の構成が違うからちょっと恥ずかしい条文ですよ。私は、民主党がそうですが、基本的にはこの法律に賛成しようと思っているから、だから、こんな恥ずかしい条文にそのまま文句をつけないで賛成すればちょっと問題になるので、これは修正しませんか。

中須政府参考人 ちょっと状況は違いますが、例えば、食料・農業・農村基本法、この二十二条という条文がございます。

 これをごらんいただきますと、見出し自体は、「専ら農業を営む者等による農業経営の展開」、こういう見出しがついております。書いてあることは、「国は、専ら農業を営む者その他経営意欲のある農業者が創意工夫を生かした農業経営を展開できるようにすることが重要であることにかんがみ、経営管理の合理化その他」云々なんとか「必要な施策を講ずるものとする。」

 こういうことで、まさにこの条文などと同じような見出しの書き方をしているわけでありますが、その目的、そこがやはりここで強調したいことなのである、そのために一定のことをするという条文なんですが、その見出しとしては、「農業経営の展開」という、「重要であることにかんがみ」の部分を引いて見出しにしている例がある。

 そういう意味においては、かかる規定の仕方というのは決しておかしな、前例のないものでもございませんし、端的に条項の中身を表現するという意味においてはこれでいいのではないか、先生の全体の条項と見出しの構成の御指摘はそのとおりでありますが、こういう例もあるということで御理解を賜りたいということでございます。

筒井委員 ほかに例があるかどうか、だから先ほど私はわからないけれどもと言ったんだけれども、要するに、ここで目的にしているのは多面的機能の発揮を図るという点。しかし、条文の結論はそうじゃなくなっているということは事実ですね。

中須政府参考人 先ほども申しましたように、結論的には整備、保全を図るというのがこの条文の締めの言葉になっている、そこは御指摘のとおりでございます。

筒井委員 後はそれをまた検討していただきたいと思います。

 それで、この多面的機能なんですが、先ほど、農業基本法では農産物供給機能を除いた多面的機能という形で多面的機能の発揮を規定しております。だけれども、こっちの森林・林業基本法の方は、林産物の供給を含めた形で多面的機能の発揮を強調しております。これは間違いとか何かという趣旨じゃないのですが、なぜ農業基本法と森林・林業基本法とで違う形になったのか、この点を説明いただきたいと思います。

中須政府参考人 食料・農業・農村基本法におきましては、基本理念ということで第一に掲げたのが「食料の安定供給」、こういうことであります。食料を安定供給することが食料・農業・農村政策における基本的な理念であるということでまずそれが特記されて、それに続いて「多面的機能の発揮」ということが、次のというか、その後の理念として掲げられるということから、食料の安定供給という部分については既に先に書かれているという意味において、その他の多面的な機能ということの構成になっている。

 それに対して、森林・林業基本法におきましては、森林の有する多面的機能というのを一番トップから書きおろしているわけでありまして、そのことによりまして、そもそも持っている木材の供給機能というのを多面的機能という中に含めて、さまざまに持っているその機能を持続的に発揮することが重要である、こういうふうに規定したという差でございます。

筒井委員 今の説明はわかる、さっきの説明は全然わからなかったけれども。今の説明でいいと思うんですが、ただ、食料供給機能と農産物供給機能は必ずしもイコールじゃないですよね、食料以外の農産物というのも一部あるわけだから。それに関しては、農業基本法の方では一切多面的機能の中に含まれていないという形になっていますね。

中須政府参考人 ちょっと私、そういう今の問いにお答えするのに適切な立場かどうかわかりませんが、私個人的に感じることとしては、やはり基本理念というのは端的に本当に重要なエッセンスの部分を書く、こういうことでありまして、持っているさまざまな、あるいは農業にしても林業にしても、さまざまな問題の中で一番のポイントになることを書く。

 そういう意味におきまして、農業というものが、農産物の供給、それは食料だけには限らない、御指摘のとおりだろうと思いますが、何はおいてもまず食料を供給するというところにおいて大変重要な意味を持っている、そこを強調するという意味においてこういう書き方がされているというふうに思います。そういうふうに理解をして、私個人としては違和感なしに受けとめている次第でございます。

筒井委員 違和感なしというのもいいんですが、ただ、私が聞いたのは、長官に聞くのはおかしいのかもしれないので。

 食料供給機能をまず最初に農業基本法では出していて、その後ので農産物供給機能全体を除いたそれ以外の多面的機能の発揮を規定していますから、これは大臣に聞いた方がいいのかな。もし意見がありましたら、なければないでいいですが、食料以外の農産物の供給に関しては農業基本法では多面的機能の中に一切含まれていないという結果になりますね。

武部国務大臣 よく整理されたお答えができないかもしれませんが。

 多面的機能の発揮のために適切な森林整備等が行われなければならないという意味では、多面的機能の発揮というのが上位といいますか、次元の高い、いわゆる基本法にふさわしい目的、理念だ、こう理解いただきたいと思うのでございます。今食料の問題については、農業の多面的機能ということと農産物の供給機能というのは、これはある種同次元の目的、理念というものと考えるべきでないのかな、私はこのように理解しておりますが。

筒井委員 ちょっと答えになっていないんだけれども、いいです、ここは大した、そんなに大きな問題じゃないので。

 それで、森林の多面的機能をちょっと正式に農林大臣の方に確認したいと思います。農林省の方でも言って一般的にも言われているのが七つあると思うんですが、森林の多面的機能、幾つあって何と何なんだ、その点、ちょっとはっきり確認していただけませんか。

中須政府参考人 今回の基本法改正案におきましては、第二条に「(以下「森林の有する多面的機能」という。)」ということで例示として掲げておりますのは、「国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等の」ということで、例示としてはこの六つが掲げられ、以下は「等」ということで、どこまでが「等」の中に入るのかということについては厳しい規定ぶりをしておりません。

 これがまさにこういうものに例示されるような多面にわたる機能だ、こういうことで、「等」の中にはさまざまなことがあるわけでありますが、例えば生物多様性の保存、しかしそれは自然環境の保全に入るのではないかとか、いろいろな御議論はあろうかと思いますが、こういったものとしてとらえているということであります。

筒井委員 それで法律に例示されているこれ以外にもあるのか、あるとすれば何なのか、それを一応確認してほしかったんですが。今言った生物の多様性、野生鳥獣の保護機能ということがもう一つ考えられるので、しかしそれは環境の保全の中に含めて考えることもできるかもしれないという答えですね。それ以外はちょっと考えられないですね。

中須政府参考人 私も、範囲を限るという意味においてほかにどういうものがあろうかということで、具体的に今お示しをするという余裕はございません。

筒井委員 それから、この基本法で二つの理念を規定している、多面的機能の発揮と林業の発展。もう一つ、山村の振興、これもやはり農業基本法と同じように理念として位置づけるべきではないかと思いますが、それはそういうふうな形にすることにしたんですね、大臣。

武部国務大臣 これまでの議論を踏まえて、山村振興ということは非常に重要な考え方だ、かように思います。しかし、既に山村振興法に基づいて山村における道路整備、医療、福祉の向上を含めた総合的かつ計画的な山村地域の振興策を実施しているわけでありまして、あえて森林・林業基本法の題名や基本理念としては規定していなかったわけであります。

 しかしながら、これまでの議論を通じて、森林の多面的機能の発揮に重要な役割を果たしており、またその活性化を図るということは森林・林業基本政策の重要な課題という認識をしておりまして、このことにつきましては、各般の御指摘をいただいておりますので、このような審議の経過を踏まえつつ、山村振興対策を推進していくというような考え方で先般私は、考え方を固めつつある、こういう答弁を申し上げたのでありますが、立法府の合意ということを尊重してまいりたいと思います。

筒井委員 山村振興を重要な理念として位置づける、だから三本柱になる、これは賛成なので、ぜひそういう方向でやっていただきたいと思います。

 それと同時に、山村の振興を理念とするとすれば、農業基本法と同じように、農業基本法は食料・農業・農村基本法になっている。森林・林業・山村基本法と題名も変えてもいいのではないですか。この点はどうですか。

中須政府参考人 この点については大臣から前回も含めてお答えを申し上げましたが、山村振興ということに関しては、山村振興法という別途の法体系がございます。その中では、もちろん各省それぞれ所管している施策というものを山村に対してどう総合的に講ずるかということが、この山村振興法の眼目であるわけであります。

 例えば産業という面でいきますと、山村を支えている第一次産業というのは農業であり林業であり水産業であるということで、ちょっと言い方が妥当かどうかわかりませんが、山村は林業、林政というか森林の立場からのみ独占、独占と言うとおかしゅうございますが、のみ語られるべきではなく、もっと幅広い観点から語られるべきもの。しかし、林業から見れば大切だということは、大臣からも再三お話ししているとおり、御指摘のとおりでありまして、そういう意味において、扱いが若干異なるべきではないか、そういう気持ちを私ども持っているということでありまして、題名に山村という言葉をあえて入れなかったということ自体も、そういうような背景があるということで御理解を賜りたいと存じます。

筒井委員 今言われた山村振興法、この存在は農業の場合とは違うので、今の説明には一定の合理性、納得性があるかというふうに思います。

 ただ、山村の振興というのを理念として位置づけない段階だったですから、それを理念として位置づけるということになれば、山村振興法もこっちに統合するとか、そういうものを考えてもよかったのではないかというふうに思います。それは今回は当然時間的にも無理でしょうから、今後の課題として提起をしておきたいと思います。

 それで、ちょっと時間がかかりましたが、きょうの本題の木質系のバイオマスの活用についてお聞きをしたいと思います。

 私は、植物というのは石油以上にすぐれた資源だ。大体、石油とか石炭というのも、以前は地上にあって、それが地下になってああいうふうになった。石油とか石炭というのは死んだ資源なわけですね。これからお聞きしますが、生きている植物、森林、これらの方がもっといろいろな面ですぐれた資源なんです。しかし今は、石油こそ、地下にあるものこそ資源で、地上にある植物等は、資源どころか多くの場合極めて厄介なごみになってしまっている。

 私の子供の時代でさえ、田んぼのあぜ道の雑草だって、家畜のえさになったり、あるいは堆肥の原料になったりして、それなりに活用されていた。しかし、今はそれが単なるごみ。間伐材もそうだし、間伐材は単なるごみとは言いませんが、これは場合によっては非常に厄介な処理のものになっている。それから木造建物の建築廃材、これも厄介なごみになっている。

 こういう状況というのは、まさに植物が本来持っているその性質を全く活用していないことだ。これを活用することこそが、これを本当に資源として活用することになれば、山村は振興するし、農林業も振興するわけでございます。農林業の振興、農山村の振興のキーワードは、やはり生物資源、バイオマス資源、地上にある資源の活用だろうというふうに私は思っております。そういう観点からお聞きをしていきたいと思います。

 平成十一年の七月に、森林・林業・木材産業基本政策検討会報告というのが出されたようでございまして、この中で、バイオマスエネルギー資源としての利用、有用な抽出成分の利用というのをこれから目指すべきだということが言われております。これに関して、公式の官の文書でこのバイオマスエネルギーの利用を目指すということが出されたのは、ずっと前、石油ショックのころはあったと思うのですが、最近としてはこれが初めてなのかなという点の質問が一つ。それから、有用な抽出成分の利用というのは何を意味するのか。この二点についてお聞きをいたします。

中須政府参考人 御指摘のとおり、木材から有用な成分を抽出してそれを利用するという意味で触れられたというのは、過去にも、一定の化学物質等を抽出して、例えば医薬品の原料に使うとか、そういった意味で用いられた例、全部調べておりませんが、皆無ではないと思います。

 そういうことは十数年以上前からある程度の議論にはなっていたということでございますので、あるいは触れられたものはあるかもしれませんが、やはり一つのエネルギー源としてそういうものを使っていくというふうな形で触れられたのは初めてではないかと存じております。

筒井委員 最近としてはこれが出発点だ。

 有用な抽出成分というのは、化学物質、例えばプラスチックとかあるいはアミノ酸とか、そういうものも入るのかな、そういうものを木質系のバイオマスから抽出していく、こういう方向がここで久方ぶりに出されて、その後平成十二年の十月、林政審議会報告でこういう方向が目指されております。木材のガス化、液化等によるバイオマスエネルギーとしての利用、木質プラスチック等の新素材としての利用。これは結局、今の説明からも、先ほどの基本政策検討会の報告と同じ方向だと思います。

 それと同じことが平成十二年の十二月、農水省の林政改革大綱でもまさに同じ表現で出されました。木材のガス化、液化等によるバイオマスエネルギーとしての利用、木質プラスチック等の新素材としての利用。それは農水省が出した林政改革プログラムにも出されまして、このプログラムでは、そういう推進方向に基づいて施策を着実に推進していく、こういう方向性が出されているわけです。

 これは私は基本的にどころか全面的に賛成で、先ほど申し上げたように、山村振興のまさにキーワード、本命はこの方向だ。林産関係の廃棄物を含めて、それを資源として活用していく、まさに山村地域が資源地域になるわけですから、山村の振興に結びつくというふうに思うわけで、これを進めてほしいと思うわけです。

 こういう林政改革大綱までの流れが、今度のこの基本法では、「林産物の利用の促進」の二十五条の「林産物の新たな需要の開拓、」この中に入るわけですか。その確認。

中須政府参考人 御指摘のとおりでございます。

筒井委員 そうしますと、こういう木質系バイオマスの使い方としては、活用の方法としては、今までの林政改革大綱等々をまとめてみますと、一つは、エタノール、メタノールをつくってそれをガソリン代替の燃料として使うという方法が一つ出されてきている。

 それから二つ目としては、石油代替原料としてプラスチックとかいろいろな化学物質、これを製造するための原料として使う。

 三つ目が、もう一つ考えられるのは、今までの林政改革大綱に直接は出ていませんが、このアルコールから、メチルにしてもエチルにしても、特にエタノールの方が多いでしょうが、水素を製造して水素から燃料電池をつくる。この三つの大きな柱が考えられると思いますが、どうですか。

中須政府参考人 当面の技術開発を含めた取り組みの方向としては、御指摘のようなことだろうと思います。

 ただ、私もよくわかりませんが、エタノールと水素に関しては、どちらが先なのか、エタノールをつくってそれをさらに水素に持っていくのか、水素が途中でつくられてそれを化合させてエタノールをつくっていくのか、その辺の過程の話はあるようでございますが、基本的には御指摘のような形が想定され得る今の視野の範囲に含まれている、こういうふうに思っております。

筒井委員 ちょうどきょうの新聞で、マツダがアルコールからつくった水素で燃料電池の試作車を発表したというのが出されておりまして、マツダとかいろいろな自動車グループがアルコールから水素をつくる、それから、一部のほかの自動車メーカーはガソリンから水素をつくって燃料電池にする、二つの方向性が今言われているようですが、これを何とか植物からつくったアルコールから水素をつくるという方向にやはり持っていくべきだろうというふうに思っております。

 そこでお聞きするんですが、そういうアルコールをガソリン代替燃料として使った場合の、ガソリンと比べた場合の熱量とかオクタン価はどうなんでしょうか。

中須政府参考人 いわゆる木質バイオマスによって得られるメタノール、セルロースを分解してメタノールをつくり上げるという形で得られるメタノールにつきましては、総発生熱量がキログラム当たり五千四百キロカロリーというふうに承知しております。これは、ガソリンの場合には同じキログラム当たり一万一千二百キロカロリーでございますので、約半分ということであります。

 それから、オクタン価につきましては、JIS規格によれば、レギュラーガソリンで八九以上、プレミアムガソリンで九六以上のオクタン価が要求されるということでありますが、メタノールについてはオクタン価は一〇六というふうに私ども伺っております。

筒井委員 そうすると、熱量は半分、半分というか六九%ぐらいじゃないですか。(中須政府参考人「はい、済みません」と呼ぶ)そうでしょう。そしてオクタン価はかえってガソリンよりいいという結果だと思うんです。しかも、いいのは、ガソリンで車を走らせればもちろん二酸化炭素をいっぱい排出するわけですが、アルコールで車を走らせた場合はせいぜいその一%程度ですね。二酸化炭素の排出は圧倒的に少ないですね。その点、どうですか。

中須政府参考人 御指摘のとおりでございます。

筒井委員 それから、石油代替原料として使う、つまりいろいろな化学物質をつくる、例えばプラスチックをつくる。これは、現在植物からつくったプラスチックが一部発売されておりますが、コストが高いことは事実なんだけれども、生分解性プラスチックができて、土に捨てれば腐るし、燃やしてもダイオキシンを出さない。この点、だから、木質バイオマスを石油代替原料とした化学物質をつくるということは環境的にも非常にいいことは間違いないですね。

中須政府参考人 これは、必ずしも木材に限らず、食用の農産物等も含めましてそういう可能性、道を切り開くことは、廃棄物の処理の問題を含めまして大変有用な方法の一つだろう、こういうふうに思っております。

筒井委員 そうすると、結局、今地球温暖化問題が物すごい大きな問題になっておりまして、京都議定書に関するアメリカの離脱とかいろいろな問題があるわけですが、この対策にも、大体、全部までいかなくても、車をアルコールで走らせるようになれば、物すごい二酸化炭素の排出が少なくなるわけです。

 それに、山村や農村地域にたくさん豊富にある資源がまさに資源として活用されるわけですから、先ほど申し上げたように、農村、山村の振興の大きな切り札になる。まさに地球温暖化と農山村の振興の切り札として、木質系のものを含めたバイオマス資源の活用を考えていくべきではないでしょうか。これは、もし農林大臣、意見がありましたら。

武部国務大臣 いろいろ、コストの面でありますとか、そういった素材をどのように集めるかといったそういう物理的な問題とかあろうかと思いますけれども、私は、今先生御指摘のような農業の分野あるいは林業の分野における科学技術の開発については、相当力を入れて農林水産省らしい展開をしてまいりたい、かように思います。

筒井委員 ぜひそうしてほしいんです。ただ、今までそうじゃないわけですよ。一応方向性は出ているけれども、予算のつき方も物すごい少ないし、これをもっと大々的に取り組んでいくべきだというふうに思っているんです。特に先進国と比べたら、めちゃくちゃにひどい状態だと言わざるを得ない。

 そこでお聞きするんですが、EU、まずヨーロッパの取り組み。この前、鮫島議員の質問でスウェーデンの取り組みについては答えられたと思うんですが、EU全体の取り組みは今どうなっているか、お聞かせをいただきたいと思います。

中須政府参考人 EU全体としては、全エネルギーに占める、これは再生可能エネルギーということで、例えば風力とかそういうものも含めた考え方だろうと思いますが、再生可能エネルギーの割合を一九九五年の六%から二〇二〇年に約一二%に倍増させる、そしてその増加の大部分というものをバイオマスエネルギー、これはつまり農作物とか農業廃棄物だとか、木質系ということだろうと思います、これで対応する、そういう目標をEUとして立ててそれに取り組んでいる、そういう状況だというふうに承知しております。

筒井委員 日本は、今のあれでいえば、現状は一%ですね。ちょっとその点だけ。

中須政府参考人 それ以下でございます。

筒井委員 まさに、バイオマスを中心としたこういう取り組みはEUの方が現在六倍以上、もうじき十二倍以上、二十倍ぐらいになっちゃうかもしれない。それだけ日本はおくれているという状況だろうというふうに思います。

 アメリカの取り組み状況はどうでしょうか。

中須政府参考人 米国におきましては、一九九九年にクリントン大統領のもとでの大統領令が発せられまして、バイオ製品・バイオエネルギーの発展と展望と題しておりますが、これによりまして、バイオマスエネルギーを支援する政策というものを、それぞれ個別にやっていたものを統合いたしまして効率的にバイオマス産業の発展を加速する、二〇一〇年までにバイオマス関連製品、バイオマスエネルギーの使用を三倍にするということを目指す、そういう方針を打ち出して取り組んでいる、こういうふうに承知しております。

筒井委員 さらにその先の長期目標もあると思うので、それもちょっと説明してくれますか、二〇五〇年までの。まあいいか。

 二〇一〇年までに、エネルギーと化学品の製造においてバイオマス資源の利用量を三倍にする。このことによる経済的な効果が二百億ドルというふうに見込んでいる。農林業と過疎地にそれだけの経済効果をもたらす。しかも、一億トンの二酸化炭素の排出を削減する。車両でいうと七千万台の車両を削減したのと同じ効果を及ぼす。まさに、今林野庁長官が説明されたのは短期的な目標ですが、地球温暖化対策それから農山村振興対策、農林業の振興対策、これとして出されたわけですよね。

中須政府参考人 そういうことだろうと承知しております。

筒井委員 しかもそれは当面の目標であって、二〇五〇年までの間に、もっと長期目標があって、全エネルギーと全化学品の二分の一をバイオマス資源でもって生産する、この方向性も大統領令として出している。そして、二〇〇〇年度においてその研究費として二億ドルを超える予算をつけた。つまり、日本円でいうと二百億円を超えるわけですが、そういう事実は間違いないですね。

中須政府参考人 申しわけありません。私、ただいまの開発に投ずる費用の額については詳細はまだ承知しておりません。

筒井委員 いずれにしても、まさにアメリカでは、今長官言われたように、それまでの個別のものをみんな統合して、バイオマス資源の活用を国家戦略として取り組んでいる。農村地域、過疎地域、地球温暖化対策、これを重要なキーワードとして取り組んでいる。

 これはやはり学ぶべきだと思うので、先ほどEUも何倍も進んでいるということを言われましたが、日本は、技術のいろいろなものも進んでいると言われながら、この分野に関してはもうめちゃくちゃにおくれている。

 日本においてこの点の開発とか利用が進まない理由はどこにあるんですか。ちょっとその理由を説明してください。

中須政府参考人 いろいろな要素があろうかと思います。ただ、御承知のとおり、我が国も、かつてはまきとか炭の利用というのが家庭の燃料の大部分を占めていた、ある意味ではバイオマスエネルギーにエネルギーのかなりの部分を依存していた時期があるわけでありまして、決して身近なものではなかったはずはありません。それが、急速に石油なり石炭というものに置きかわって、今はほとんどゼロに近いものになってしまった、こういう歴史を持っているわけであります。

 ただ、やはりアメリカにしてもあるいはEUにしても、こういったバイオマスエネルギーというものを実際に実用化していくという段階では、やはり価格面での対策というものをどう考えていくのか、そして、技術開発というものをどうしっかりと先行させてやっていくか、こういうことが不可欠であろうかと思います。

 そういう意味では、我が国の取り組み、先生御指摘のとおり、おくれているということかもしれませんが、私ども、今回、基本法にそういう位置づけをしたということを含めまして、これから研究開発ということを含めて本格的に取り組んでいきたい、こういうふうに思っているわけでございます。

筒井委員 ぜひそうしてほしいと先ほどから何回も言っているんですが。

 ただ、一度石油ショックのときに、通産省ですか、あのときは林野庁じゃないのかな、そういう石油代替エネルギーあるいは石油代替資源等の研究としてエタノールや何かに取り組んだようですが、その後、痛みが通り過ぎたらまた何かそれが下火になっちゃったというふうな経過のようでございまして、しかし、これは単なる石油ショックとか何かだけの問題じゃなくて、地球全体の問題であるし、農山村地域全体の問題なので、もう本当に意識を変えて、金もつぎ込んで取り組んでほしいというふうに思うわけです。

 政府がそういうふうにおくれているから民間もおくれているんですが、しかし、民間では結構取り組みが始まっている。例えば、固有名詞を言っていいのかどうかわかりませんが、トヨタも、植物から生分解性のプラスチックをつくって、そして、そのプラスチックを自動車部品とか家電製品に使う、このことを取り組み始めましたね、その確認。

 それは生分解性プラスチックの方ですが、それからもう一つ、エタノールに関して、これはどうなんですか、日本食糧という会社が、バイオベンチャーというらしいですが、報道によれば、農林省の協力を得てと言われていますが、農業廃棄物等々からエタノールをつくる、このエタノールは、現在、まだあと五年間ぐらい日本はアルコールが専売制ですが、アルコールの国の買い取り価格より二分の一以下のコストでできるというふうな報道もされているようです。

 つまり、民間はそういうふうに植物からのプラスチックの製造とかアルコールの製造とか、こういうのを具体的に既に始めているという状況だと思うんですが、そういう民間の状況についてどうつかんでおられるか、ちょっと説明してくれますか。

中須政府参考人 まず、前段で御指摘のございましたトヨタ自動車が外国においてサツマイモを原料とした生分解性プラスチックの製造を行うという話は、新聞報道その他を通じて私どもも伺っております。

 ただ、こういった試み自体は我が国においてもかねてからいろいろな分野で行われていることでございまして、例えば、平成七、八年ごろからでございますが、ホクレン農業協同組合連合会は、北海道でつくられるバレイショのでん粉を活用いたしまして、トレーとかどんぶりをつくって、これは野外等の活動に使った場合に、そのまま分解してしまうという意味において、自然にも大変いいということと、芋でん粉の用途拡大ということで、七、八年ごろそれを開発し、これは現在も販売が続いている、こういうような取り組みが民間において行われているわけであります。

 それから、後段の方のお話につきましては、平成十三年度から農林水産省が進めております農林業におけるバイオマスエネルギー実用化技術の開発、これは私どもの技術会議が音頭をとってこういうことをやっているわけでありますが、これの総合的な研究の一つとして、その名前の出た会社がエタノールを、これは廃材も含めてでありますが、廃材だけに限らず、ほかのものも含めて、未利用のバイオマス資源の中から効率的にエタノールを生産する技術というものについてこの日本食糧が取り組むということで、農林水産省の研究開発の一環としてそれを取り上げて、これは実際には森林総合研究所がそこに委託をするという形で技術開発にこれから取り組む、こういう状況にあるというふうに現状を把握しております。

筒井委員 そうしますと、林野庁を含めた農林省全体で、そして、しかも木質系のものを含めたバイオマス資源の活用に関する予算というのは、後で中身については聞いていきますが、合計で幾らですか。

中須政府参考人 申しわけございません。十三年度における総額ということでは必ずしも合計をしておりませんけれども、バイオマス資源の利用手法に関する調査とか、技術開発あるいは革新的技術開発促進、こういった技術開発促進関係で約一億五千万程度。

 それから、林業構造改善事業なり建設発生木材有効利用促進対策というふうなことを言っておりますが、現にバイオマスを活用した各種の施設に対する助成ということで、これは大きな総合対策の中の内数というか、実際に必要なものに助成をしていくということで、ここ数年の動きで見ると、年間十億ないしその程度で推移しているというような状況ではないかと承知しております。

 以上でございます。

筒井委員 先ほど指摘しましたように、アメリカは二〇〇〇年度で二百億円を超える研究費をこのバイオマス資源の活用に投入することを決めている。今の話ですと、日本は十億、もう全然質が違うので、きょう財務省の方にも来ていただいておりますが、こういう方向に関しての取り組み方を、予算のつけ方も根本的に変えるべきではないですか。財務省の方にお聞きします。

津田政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃったように、バイオマス資源というのは循環型社会に適したエネルギー源でございますし、地球の温暖化を防止するという観点からもその定着を図っていくことは今後重要な課題であると思っております。

 今林野庁長官からお話がありました予算のほかに、先ほど委員からもお話がありましたけれども、今でも経済産業省の方でやはりバイオマス関係の研究開発は数十億単位のもので続けております。

 予算の今後のことでございますけれども、何よりも大事なのは、担当する府省の取り組みをどうするかということが一番だろうと思います。そこで、いわば戦略的に優先順位をきちっとつけていくということがまず大事だと思いますし、それから、環境施策全体の中で財政措置というものをどのように位置づけていくかということも大事なことでございます、環境施策は別に財政措置だけではございませんから。

 そういったものをどう位置づけていくかというこの二つが前提になると思いますが、その上で、私どもといたしましては、要求をきちっと出していただければ、関係省庁と相談をいたしまして、今後ともバイオマス資源の利用推進に努力してまいりたいと思っております。

筒井委員 確かに、おっしゃるとおり、各担当部局の問題なんですね、これからさらに林野庁の方にお聞きしますが。

 財務省にもう一つお聞きしたいのは、今もちょっと言われました旧通産省、経済産業省、ほかの省庁もバイオマス資源の活用に関して何かいろいろな取り組みをしているんですよね、取り組みをやったりやめたり。例えば、バイオマス資源の活用に関しては、そんな縦割りのものをやめて全部統合しちゃったらどうなんですか。

津田政府参考人 それぞれの役所、補助金が研究開発の場合は多いと思いますが、特色がいろいろあると思いますので、一つの役所に統合するかどうかというのはよく研究しなきゃいけないと思います。

 ただ、できるだけ研究開発というのは複数のところで競い合うというのも一ついいことでございますから、むしろ、それよりはバイオマスエネルギーの開発利用というものについての大きな戦略をどこかできちっと立てて、その戦略のもとでいろいろな施策を展開していくということが一番大事ではないかと思います。

筒井委員 最後におっしゃったことが確かに大事なので、先ほど林野庁長官も言われましたように、アメリカのクリントン大統領は、それまでの個別の政策を全部統合して、先ほど言った国家戦略としてのバイオマス資源の活用、これを大統領令として打ち出した。こういう方向性が絶対必要だと思うので、その点ちょっと、農林大臣、どうですか。

武部国務大臣 政治主導ということがなぜ問われるかというのは、やはり、役所は縦割りといいますか、どちらかというとゼネラリストよりもスペシャリストというような立場にあるのではないかと思いますが、今後も、農林水産省でも幹部はゼネラリストという意識を持ってやってもらわなくちゃいけないと思います。

 そういう意味では、今先生御指摘の問題については小泉内閣では非常に重要視しておりますし、私個人的な考え方を申し上げれば、日本では、エネルギーで世界に貢献するというのはなかなか難しい、ましてや軍事面で世界に貢献するということは非常に不可能に近い、かように思います。

 さような意味では、食料の問題についても、あるいは森林・林業の分野においても、科学技術の開発に相当力を入れるということにより、なおかつ技術移転を円滑にやるというようなことを含めれば、今地球上の人口が六十一億からやがて百億にならんとしているわけでありますし、食料の問題についても、栄養失調に苦しんでいる人々が八億人もいるわけですね。

 ましてや、五百万ヘクタールの広大な面積、一分間に日比谷公園半分以上が砂漠化しているという現状を考えますと、私は、今世紀の問題は水の問題などが大きい問題になるな、森林の問題というのは非常に重大な問題だ、さような意味では、今、木質バイオマスの問題に限らず、農林水産業の分野における科学技術や試験研究というものは、相当力を入れることによって唯一世界に貢献できる分野だ、こういう認識を持っております。

 今財務省からもいろいろ答弁がありましたけれども、今後の農林水産業の行政の中で、とりわけ予算措置をどうしていくかということ、今後そういった戦略を立てていかなければなりません。そういう意味では、非常にこの分野は重要だ、このように思っております。しかも、これは農林水産省だけじゃありませんで、我々政治家サイドでは、他省庁にも働きかけて一つの大きな戦略というものを打ち立てていく、そういう必要があるんじゃないか。この分野について我々は非常に大きな関心を持っているということを申し上げて、答弁にかえたいと思います。

筒井委員 そういう方向でぜひお願いしたいんです。

 もう一つ、財務省の方で前段で言われた、それぞれ性格が違うとか、競い合った方がいいという面、これは縦割り行政の言いわけであって、全然中身は変わらないですよ。

 先ほど言った、石油ショックの後で、通産省だったと思いますが、エチルアルコール製造プラントの実証研究をやった。山口県の防府だったと思うんですが、これだって、結局、現在林野庁がやろうとしているものよりちょっと金をかけたというだけだ。中身はほとんど一緒。それも、そういうふうにばらばらでそれぞれやっていますから、その研究成果が一体今どう使われているのかもう全然わからない状態になっている。

 同じバイオマス資源の活用という目的があるんですから、その中で各省庁が、その問題に関しては統合して統一的にやはりやっていくべきだと思うんですが、財務省、もう一回その点。

武部国務大臣 それは、政治家の答弁すべきテーマだと思います。

 先ほど答弁ありましたけれども、農林水産省かどこか、今先生の御指摘によれば、それはじゃ経済産業省でやりますというような話になるかもしれません。やはり、それぞれの特徴ある競争的な技術開発ということが私は一番いいんじゃないかと思います。

 その上で、政府が国家的な戦略というものを立てて、そういったものをなしにやるというのはどうかと思いますよ、科学技術でありますとかあるいはエネルギーでありますとか循環型社会、そういった意味で、これはいろいろ切磋琢磨してやるというのが基本だろうと思いますが、その上に、やはり一つの戦略というものを政府部内でしっかり立てていかなきゃならぬということはお説のとおりだと思います。

筒井委員 国家戦略として立てて、そのもとで統一的にやるという方向でぜひ進めていただきたいんですが、それは、例えば林野庁あるいは農林省の中でも一緒なので、どうも現在はやはり、いろいろな個別的なものがばらばらでいっぱいされているんじゃないかという感じがするんです、農林省の中だけにおいても。

 バイオマス資源の活用のためのプロジェクトとして今実際にやっているのは、全部で幾つぐらいあるんですか、林野庁。

中須政府参考人 先ほど申しましたように、各種の調査関係、御承知のとおり、木質系バイオマスということになると大変かさが張る。こういうものをどう効率的に集め、そしてそこから新しい技術を開発して、例えばいかに燃焼効率をよくするか、あるいは物を抽出、液化とかガス化をする場合であれば、どういう技術を使って液化、ガス化を効率的に進めるか、そういう部分をそれぞれ進めていかなければならないという点において、調査費等も幾つかの分野に分かれている。

 先ほど若干御説明いたしましたが、私どもが所管している調査費でも、三つとか四つの分野に分かれて、そういったものをそれぞれ課題を明示して開発ということに取り組んでいる、そういう状況でございます。

筒井委員 七つぐらいあるようで、それも八百万だとか五千七百万だとかいろいろな個別なものになっているようで、だから、もっと国家全体としても統合した戦略が必要ですが、林野庁あるいは農林省の中においてもそうしていただきたい。

 最後の質問なんですが、その中で一番大きな予算をかけている、といっても一億八千万ですが、農林業におけるバイオマスエネルギー実用化技術の開発、循環型アグリ・フードシステム確立プロジェクトの一部としてなされているバイオマス資源活用のためのプロジェクトがあるようですが、この具体的な中身、どういうものをやっているか、最後にちょっと説明してください。

中須政府参考人 バイオマスの前処理技術の開発ということで、これは森林総研が担当しておりますが、木質系の廃棄物とか農業系廃棄物等の有機性の廃棄物を効率的に粉砕をしたり脱水をしたりする、その過程を研究するという部分。

 それからもう一つは、エネルギー変換技術の開発ということでありまして、微生物等を使ってエタノールへ転換をするとか、膜分離技術を活用して能率よく抽出を行うとか、そういう有効成分を抽出する際の技術の開発。

 それから三点目として、地域のバイオマスエネルギー生産システム構築のための実証研究というふうに言っておりますが、ある地域における各種の木質系の廃棄物等、それをトータルとして地域レベルでどういうふうにシステムとして一体的に利用できるか、そういう全体像を構築する、これは環境影響評価を含めてでありますが、そういう実証研究を行う、こういう大きな三つから構成をされているということでございます。

筒井委員 そういうことじゃなくて、具体的に、長崎でメチルアルコール製造プラントをつくってそこで実証研究をしているのがその中の一つに入るのですね。それから、新潟県の六日町の方で今度はエチルアルコール製造プラントをつくってそこで実証研究をする、この二つも入るかどうかという点と、それ以外にも、今言ったプロジェクトの具体的な事業はあるのかどうか、どこまで進んでいるのか、それをお聞きしたいと思います。

中須政府参考人 ただいま御指摘になりました二つは、いずれも入っております。

 それと、これはかなり広範にわたる、それぞれに課題を掲げてそれについて取り組むというものを全体として戦略的にやっていこう、こういう開発でございますので、ちょっと私も全体像を簡潔に御説明するだけの能力、今ございませんが、そのほか、非常に多方面、多分野にわたって、それぞれ各項目ごとに、大学の研究室、あるいは私どもの関連する研究施設、あるいはその他の、先ほど出ました例えば日本食糧が担当する部分、そういうものが組み合わさって全体として構成されている、こういうことでございます。

筒井委員 ぜひこれは、先ほど言ったように山村振興、林業振興あるいは地球温暖化のキーワードですから、自信を持って、この事業を戦略を持ちながら進めていただきたい。そうすれば、絶対に山村地域がまさに資源地域になるのですから、結果として山村の振興を必ずもたらすことができる、こういうふうに確信していることを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、後藤茂之君。

後藤(茂)委員 後藤茂之でございます。

 きょうは、林業の健全な発展の関係、林業労働の件とか、あるいは木材産業とか国有林野のことにつきまして質問を少しさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、総論的な話ですけれども、今回の基本法の十九条に「望ましい林業構造の確立」という条文が起こされておりまして、改めて読むまでもないかもしれませんが、「国は、効率的かつ安定的な林業経営を育成し、これらの林業経営が林業生産の相当部分を担う林業構造を確立するため、地域の特性に応じ、林業経営の規模の拡大、生産方式の合理化、経営管理の合理化、機械の導入その他林業経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずるものとする。」としているわけです。

 旧林業基本法には、十二条に、林業経営の近代化だとか、あるいは小規模林業経営の規模の拡大とか、あるいは同じ十五条においては、これも小規模林業経営の規模拡大あるいは経営基盤の整備に係るような条文がありまして、所得の増大や地位の向上という観点から、正面から条文がありまして、これらは今回の基本法においては削除をされているわけであります。もちろん、「林業経営の規模の拡大、」という文言は十九条にも実を言うと入っているわけでありますけれども、しかし、ここで相当明確に理念の違いが浮き彫りになっているというふうに思います。

 また、森林法の一部を改正する法律案においても、今回、森林施業計画の作成単位となる森林を見直して、森林施業計画を一定のまとまりのある森林、三十ヘクタールぐらいを対象としていく、そういう改正案が出されておりますし、作成主体に、所有者に加えて、受託等により森林所有者にかわって森林の経営を行う者というものが加わっている、そうしたこともそういう流れにあるのだろうと思います。

 小規模な林業経営者を中心として起こっている今の林業の非常に危機的な実態の変化に対応して、森林の管理の視点からの施策の推進だとか、あるいは林業生産組織の活動の促進とか、そうした新しい施策の枠組みが前面に出て示されている、その点については非常に評価するところであります。

 せっかくこうした政策理念を明確にしているわけですから、今後、林業のそれぞれの具体的施策をしていく場合に、こうした理念の筋道に従って政策を着実に具体的にやっていくべきだ、政策のターゲットをしっかり絞ってやっていくべきだというふうに思いますけれども、大臣の御決意を伺いたいと思います。

武部国務大臣 後藤先生は、本問題については非常に造詣が深い方でございまして、この基本法につきましても、細部にわたりまして御検討いただき、今は非常に温かい御支援の弁だ、このように受けとめた次第でございます。まず、このことに敬意を表したいと思います。

 御案内がありましたように、林業は国民生活に不可欠な資材である木材を供給するのみならず、森林の多面的機能の発揮にも重要な役割を果たしている産業でもあると私ども認識しております。

 しかし、昨今、木材価格の低下や経営コストの増大等によりまして、林業の採算性が悪化している、そのために非常に今苦境に立っているという実情にあるわけであります。したがいまして、今後とも林業再生ということに向けて、育成すべき担い手の明確化、施業や経営の促進、経営コストの削減、地域材の流通、加工の合理化、需要の開拓等を通じまして、林業の健全な発展に力を尽くしていかなければならない、かように考えているわけでございます。

 このために、基本法に基づく森林・林業基本計画には、林業・木材産業の関係者の課題というものを明らかにしつつ、林産物の供給及び利用の目標を掲げるということが非常に大事でありますし、政府としても講ずるべき施策を総合的に検討し、これを盛り込み、その展開を図ってまいりたい、この法律はそのことを明確に意思を明らかにしたもの、このように考えているわけでございます。

後藤(茂)委員 政策は、やっていけば、何でもやりたい、何でもやった方がいいということになりがちでありますけれども、やはり国の政策というのは筋に従って必要なところに重点的に行っていくということが全体としての政策の筋道をつけていくことだろうというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 それから次に、林業労働について伺っていきたいと思いますけれども、林業労働力は、御承知のようにどんどん減ってきまして、昭和五十年には二十二万人だったものが、平成七年には九万人、平成十二年の調査では七万人ということになってきております。

 林業労働力の確保の促進に関する法律に基づきます改善計画というのも出ていまして、それなりに労働力を増加させて、前向きな取り組みもなされているんだろうというふうに思います。しかし、高齢化やさまざまな労働条件のもとでの退職という形で、全体としてどんどん減少してきている。これは、将来的に日本の山を守っていくということからいえば大変大きな問題だ、非常に深刻な事態だと思っているわけです。

 しかし、問題なのは、例えば現場の森林組合や事業体の段階で労働力が不足しているというふうに本当に認識をしているかというと、実を言うとそれほど人手不足だと現場では思っていないんです。これはどうしてかというと、これは当たり前のことですけれども、要は山の仕事が減っているということ、山を維持するために必要な事業量が確保されていないからこういうことになっているのではないかというふうに思うわけです。

 そういう観点から、今後日本の山を守っていくためにどれほどの林業労働が必要と考えられるのか。もちろん、強制的に、計画的にどうこうするというわけにはいきませんけれども、そういう林業労働の目標をまず政策体系の中で設定するということが非常に重要になってくると思います。

 それで、林業労働の目標を設定するに当たって、通常は伐採量に応じて、切ると植えつけをし間伐をしていくという形で林業労働を算定していくということだろうと思います。ですから、全国森林計画で伐採量が何千万立米になるのかということでそれなりに決まっていくことになるでしょうけれども、しかし、前回も御指摘申し上げたように、今の山の現況ということからいえば、相当に荒れていたり、実を言うと放置されているところもたくさんあるわけでありまして、そういう過去において積み残している分や、あるいは放置されている分も含めて、どれだけ林業労働が必要であるのかという点についても十分配慮していただきたい。

 それから、一方では機械化とか技術革新だとかいろいろなことが進んでいく中で、労働生産性を上げる、林業の効率化を図っていくという枠組みの中でも、一体どれだけの金をかけてどれだけの林業労働というものが必要であるのか、そうしたことをしっかり体系の中で位置づけていくべきだろうというふうに考えております。

 林業労働の数値化を考えていくべきだと思いますが、いかがでございましょうか。

武部国務大臣 おっしゃるとおり、将来必要となる林業労働力の見通しにつきましては、将来の森林資源状況等がどうなるのか、こういったことを踏まえ、今後予想される機械化の促進による生産性の向上等を念頭に置いて、基本計画を策定する中で明らかにしてまいりたい、かように考えているところでございます。

 細かい部分については林野庁長官に説明、答弁させてよろしいですか。それでは、長官に答弁させます。

中須政府参考人 基本的にはただいま大臣が申し上げたところに尽きるわけでございます。

 現在の七万人の林業労働力というのは、現場での実感として決して人手不足ということではなくて、むしろそういう各事業体等が求人等をすれば、データでいえば五割以上の事業体で求人数を上回る応募があるというふうな状況でありまして、十分そこはそういう意味でいえば充足されているとなるわけでありますが、実はその裏には森林の整備というものが非常におくれている、それを前提とした数字ではないかということを我々は忘れてはならないと思います。

 そういう意味におきまして、大臣からただいま申し上げましたように、これから先そういったおくれをどう取り戻して現実の森林整備として取り組んでいくのか、そういうことを明らかにする中で必要な林業労働力の姿というものを明らかにしていく、こういう考え方で取り組んでいきたいと思います。

後藤(茂)委員 今大臣からも長官からも話がありまして、数値目標は決めていくというお言葉があったように思いますけれども、具体的に森林整備の基本計画の目標の中で、それはいろいろなケース分けみたいなものもあるのかとも思いますけれども、数値目標を書くべきだと私は考えますけれども、森林整備の基本計画の目標の中に書くかどうかということについてはいかがでしょうか。

中須政府参考人 基本計画の数値目標自体につきましては、法律上、計画事項というか、こういう事項について定めよということで掲げられているわけであります。ただ、ただいまの林業労働力等について、想定される森林の姿ということを前提にしてどのような労働力の確保が必要なのかということ自体は、施策の分野として数値を検討するのか、もう少し時間をいただいた上で、明示していく方法を含めて私どもも検討させていただきたいと思います。

後藤(茂)委員 例えば民間の非常に成熟した山の場合、民間というのは民有林で、長く手を入れてきて、そういうようなところでは例えば一人で百ヘクタールぐらいを面倒見ているところもある。これはもちろん、非常に安定した成熟した山があってそこに作業道が細かく張りめぐらしてあって、そういう非常に整った条件のもとでの山ということになりますけれども、そういうような整備の問題等もあるでしょうし、なかなか難しいことだろうと思いますけれども、そういう意味で、積み上げで必要な労働力の合計が目標であるというようなことにならないようにぜひお願いをしたいというふうに思います。

 それから、次に移りますけれども、林業労働に関する施策につきましては、現行林業労働力の確保の促進に関する法律、労確法というのがありまして、しかし、いろいろ話を聞いて勉強したり議論していく過程で、特に目新しい切り口が少し見えていないのではないか、率直に言ってそういう感じを私は持ちます。

 もちろん、幅広い観点からいえば、山村における定住の促進策だとか多面的機能の発揮に関する施策というもの、これは林業労働対策としては非常に大きな意味では重要なものであると思います。しかし、従来からの林業労働力確保支援センターの活動を拡充するとかいうこととともに、新しい全体としての林業労働にかかわるトータルな今申し上げたような幅広い意味での政策の調整も含めて、支援センターの具体的な施策の見直しをトータルに図っていくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

中須政府参考人 林業労働力確保支援センターにおきましては、現在、就業準備等に必要な資金の貸し付けをする、あるいは事業主の委託によりまして就業者の募集を行う、あるいは高性能林業機械を事業主に貸し付ける、こういった事業を中心として取り組んでおりまして、林業への新規参入そして事業体の雇用の改善等を促進している。これらは大変地道な仕事であります。

 ただ、具体的な数値で御説明するとわかりやすいわけでありますが、これらの事業を通じてかなりの改善が図られてきている。毎年、林業就業促進資金の貸付件数というものは着実に増加をしておりますし、高性能林業機械の台数も増加をしている、それと支援センターによる委託募集の実績ということもかなりの人員が実現している、募集の実績としては増加をしているということで、それなりの成果を上げているというふうに思っております。

 ただ、これからの課題といたしまして、都市部からの参入とか定着促進のためには、個別の労働力確保支援センターだけということではなくて、もう少し全国にわたる就業情報のネットワークというものを整備する、そういうことであるとか、今回の法改正を契機といたしまして、林業の技術、現場の技術というのも、多面的機能発揮のための森林整備というところに焦点を当てた知識、技術というものの習得の機会をつくるというふうなこと、そういう新しいニーズに対応した適切な対応というものをこういう確保支援センターが図っていけるように我々としても努力をしていきたい、こういうふうに考えております。

後藤(茂)委員 そういった新しい政策も考えておられるということであれば、労確法の基本方針、これについても見直しを行うべきだというふうに思いますけれども、その見直しもされるということでよろしいですね。

中須政府参考人 現行の労確法の基本方針は、私どもと厚生労働大臣との共管ということで平成八年に策定をしたものでございます。これは、現在改めて読み返してみましても、現在置かれている林業労働力の確保をめぐる状況にそれなりに的確に対応する方針が示されているのではないか、私どもはそういうふうに基本的には考えておりますが、基本計画という形での数値目標を含めた施策の方向全体、新しい取り組みが行われるわけでございます。

 そういう意味におきましては、基本方針を含む施策のあり方について、当然基本計画が策定された段階でもう一回見直し検討をしていく、こういうことになろうかと思います。

後藤(茂)委員 今、Iターンをする若い人たちが結構マスコミなんかでも取り上げられておりますけれども、Iターンをしてくる人たちの新規の数あるいはその後の定着率というのは今どうなっているでしょうか。

中須政府参考人 これは私どもが、先ほど来お話になっておりますセンター等を通じました各種の事業を実際にやっておられる方々、あるいは個別就業者の方々へのアンケートを行ったその調査結果、十一年度に行ったものでございます。これによりますと、過去五年間に新規に林業に就業された方の一七%がIターンによるもの。ちなみに、地元の方がそのままその地元で新規就業されているのが六〇%というふうな中で、県外からのIターン者が一七%を占めている、こういう経過がございます。

 それから、そういったIターンの方を含めた新規就業者全体の定着率というのが、過去五年間に新規就業された方のうち、調査時点で在職されている者がどのくらいいるかということを調べた結果では、回答のあった中では七五%の方が定着をしている、こういう結果が出ております。Iターン者に限って定着率がどうかということについては、申しわけございませんが、ただいまの調査の中では個別にはしてございません。

後藤(茂)委員 私は、定着率七割ということを伺うと結構高い数字だなというふうに思いますし、支援センターの委託募集の具体例なんかをちょっと聞いてみると、結構委託募集に対して七、八倍も人が来ることもあるというふうに聞いていまして、これから、自然と共生しようとか森林の中で生きようとか、そういう方たちも非常に多くなってくると思います。

 そうした中で、Iターンというのがふえたり、あるいは新規に帰ってくる方、Jターンの方、いろいろな方たちがふえて定着率が上がっていくためには、地元の話なんかを聞いていても、住宅の問題だとか用排水等の生活環境の整備だとか、あるいは、何といっても生活していけるだけの仕事があるかということ、特に通年的に安定的な所得があるかどうかというようなことが非常に大きなネックになっていて、夢破れてということにならないように、ぜひ地域のインフラを整備していく必要があるだろうというふうに思っております。

 そんな意味で、地域のインフラ整備等についてぜひしっかりやっていただくように、大臣の御見解を伺いたいと思います。

武部国務大臣 林業生産の安定ということが不可欠な要素であることは言うまでもありませんけれども、やはり一番大事なのは共通する社会基盤の整備、今生活環境の整備ということをお話しされましたけれども、いつでもどこでもだれでもが同じ条件下で生活できる、あるいは仕事ができるという一種のプラットホームといいますか、そういうものを構築して、都市と農山漁村の共生、対流という構想を私ども考えているわけであります。そういったことをつくり上げていく過程で、Iターンというものがどんどん進んでいくのではないのか。そして土日、ウイークエンドは山村からさっと六本木に走っていける、そういうようなことが可能だと思いまして、その環境づくりに最善を尽くしていきたい、かように考えております。

後藤(茂)委員 もう一つ、人材の育成確保という点で、林業研究グループの活動、私は地域においては非常に注目をしております。今、全国で林業研究グループは何グループあって、大体会員数はどうなっているのか、教えていただけますでしょうか。

中須政府参考人 いわゆる林研グループと言われております林業研究グループ、林業経営者を中心として、林業に関する技術、知識の習得等を目的とした学習活動だとか交流活動、こういうことを行っているわけであります。平成十三年二月現在、全国で千八百八十六グループ、会員数で申しますと三万四千二百五十七名、こういうふうに伺っております。

後藤(茂)委員 そして、話を聞いていると、女性が大変ふえてきているということだそうでありまして、これは地域づくり、地域の中での活動としては大変いいことだというふうに思っているわけです。

 南木曽町というのがあるのですけれども、ここに南木曽町林業研究クラブというのがありまして、昭和五十二年に山と人間を復興しようという目標を立てまして、まず最初は長男が六人、若い人たちが集まってつくったものがどんどん大きくなってまいりまして、数十名に及ぶ活動体になっております。

 これは例えば、キノコをつくってそれを教えたり、自分たちでつくって小学校の給食に提供したりとか、例えば枝打ちの講習会を行うとかというような、そういう山村の技術とか地域おこしの活動もやっていますけれども、あわせて水源の里体験実習という交流事業もやっていまして、名古屋から多くの方たちがやってきて、その交流事業をもう既に十年間十回もやっています。

 彼らの話を聞いていると、都会から来た人たちが自分が手入れした山が毎年どういうふうに変わっていくかというのを見に来るのが楽しみだということで、多くのリピーターが来て、彼らには手づくりの豚汁を出して、決して使い捨てのカップとかいうものを出すのではなくて、地元のろくろの器で豚汁を食べてもらって持って帰ってもらうとか、こういう非常に具体的で地味な話ですけれども、ホスピタリティーを高めてやっているわけです。

 こうした地域のグループが全国に千八百以上あるわけでありまして、こうした地域の林研グループの活動について、ぜひこの場で大臣から励ましの言葉をいただきたいというふうに思います。

武部国務大臣 いわゆる林研グループにつきましては、本当にさまざまな活動をしていただいておりますし、単なるボランティアというような範疇を超えて、私はそういったところで頑張っている人たちというのは、そこで頑張る環境も、おいしい水、きれいな空気、美しい自然、新鮮な野菜いっぱいの、そういう環境だろうと思うのですけれども、それ以上にそういった林業研究グループの皆さん方の心というのは、本当に美しい心、すばらしい全体をしっかり見据えた皆さん方だろうと思います。

 そういう人々を育てるということが、私は、そのグループを育てるということよりも、そういう気概を持った方々の活動を助長する、そのことは将来の日本にとって非常に大きな成果を生むのではないか、かように考えまして、私ども、そういった方々を支援する、むしろ一緒にやってまいりたい、そういう気持ちでございまして、ぜひ先生からも身近な方々に私がきょう申し上げましたことをお伝えいただければありがたいと思います。一生懸命頑張ってまいります。

後藤(茂)委員 ありがとうございます。

 それから、もう一つ具体例を申し上げますと、諏訪に落水川を考える会という河川とか湖の浄化のグループがありまして、具体的に何をやっているかというと、その一つに、木炭による河川や湖の浄化に取り組んでいます。例えば木炭について、炭についていえば、すき間に汚れがうまく入ってきれいになるとか、あるいは汚れを分解する微生物がすき間に住んで水を浄化するだとか、いろいろな効果があるというふうに着目して、炭を水に入れたりして熱心に活動に取り組んでいるわけです。

 恐らく、森林総合研究所のもとで技術研究組合がつくられてこの問題について研究をしていたと承知していますけれども、その研究の成果について伺いたいというふうに思います。

    〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕

中須政府参考人 ただいま先生御指摘のとおり、昭和六十一年度から四年間、木材炭化成分多用途利用技術研究組合、これは平成六年に解散をしておりますが、試験研究を実施いたしました。

 その結果といたしましては、御承知のとおり木炭は多孔質で、表面に不純物等を直接吸着する能力、それと微生物の生育にとって良好な環境を提供する、そしてその良好な環境に住んでいる微生物が有機物を分解するということで、水質浄化材として有効である。つまり、吸着と同時に微生物を育て、微生物が有機物を分解する、そういう意味で二重の効果を持っている。

 具体的には、透明度を高める、あるいは化学的酸素要求量の改善、アンモニア性窒素の低減、こういうものに顕著な作用がある。ほかにもいろいろございますが、そういう具体的な指摘、知見が得られているわけであります。

 これを受けまして、この成果を全国の自治体等に流しまして、今先生が御指摘のあったことを含めて、木炭を利用した水質浄化の取り組みがかなり幅広く推進をされているという状況でございます。

 今回も、先生からの御質問があるということで、全国での取り組み状況、主なものを並べただけで紙一面が細かい字でいっぱいになるくらいの多様な試みがなされているということでありまして、御紹介する余裕はございませんけれども、大変各地で、各地のボランティア活動等によって木炭を利用した水質浄化の試みが成功をしている、こういうふうに受けとめております。

後藤(茂)委員 それでは、次に木材産業の話に少し移りたいと思いますけれども、木材産業の実態等、その対応の緊急を要することについては本会議でも割合に時間を割いて申し上げたところであります。

 時間もありませんので、その部分については繰り返しませんけれども、非常に木材価格が下落してきている中で、外国からは非常に末端で利用のしやすい形の木材が安く入ってくる。木材産業の経営というのは限界まで追い込まれていると思うわけですけれども、どのような具体的な対策を講じていくこととされているか、再度大臣に伺いたいと思います。

武部国務大臣 我が国の木材産業は、今日まで、住宅着工の減少、輸入製材品のシェア等の拡大により厳しい状況にあるわけでありますけれども、各関係者の連携強化や、意欲的な取り組みを行う企業、地域への重点的支援等を通じた木材産業の構造改革を推進していかなければならない、かように思います。具体的には、乾燥材等の供給体制の整備や加工、流通体制の拠点施設の整備等による木材の安定供給体制というものに支援していかなきゃならない、かように思っております。

 農林水産省の支援策についても、ともすると今までは、民間企業であればさまざまな制約を受けるというようなことがございました。しかし、その地域で牽引力になっているところに支援をしなければ大きな前進はない、かように思いまして、木材産業の体質強化というものに新たなる視点で取り組んでいく必要があるんじゃないか、かように考えております。

後藤(茂)委員 加工、流通、一体的に取り組まなきゃならないと思うわけですけれども、製材や合板の加工なんというのは、これはもう明らかに農水省、林野庁の所管であるとみんな思っているわけですけれども、具体的になってくると、例えばパーティクルボードは農水省ですね、ファイバーボードになると経済産業省ですね、机、いす、テーブルなどの木工品になると経済産業省ですねとか、いろいろ所管についても分かれているわけであります。

 それからもう一つは、経済産業省の方では中小企業対策というのをやっていまして、そういう意味では、従来から政策のはざま、そして所管のはざまに入って、木材を中心に、木を中心にしている木材産業というものが非常に分断された状況で、言うなればみんなが見合っている間にぽてんヒットがぽとんと落ちるということになりかねないというふうに思っているわけです。

 もちろん、産業に対する政策ツールというのは、金融とか補助金だとか、非常に限られた政策ツールしかないのかもしれません。しかし、どういうふうなビジョンに従ってどういうふうに対応していくのかということは、できるだけ前向きに取り組んでいく必要があると考えております。

 その点について確認をさせていただきたいと思いますが、いかがお考えでしょうか。

武部国務大臣 細かい分野については長官に答弁させますが、今先生御指摘の点についていえば、例えば、先般環境大臣と会見いたしまして、環境省と農林水産省の両方にかかわる分野について、縦割り行政をやめるために、少し若い役所の職員を相互に出して早速協議会を設けさせたりいたしております。したがいまして、今お話がありました点につきましても、今後経済産業省と同じような方式でぜひ前向きに検討してまいりたいと思います。

 森林・林業基本計画の策定におきましても、木材産業の事業活動等に関する指針等を定める予定でございます。これに基づきまして、本年度に木材産業体制整備の基本方針を策定いたしまして、先生お話しのような木材産業のビジョンというものを示す予定でございます。

 先ほど来さまざまな議論がありますように、下からの積み上げじゃなくて、やはりきちっとした戦略とかビジョンとかそういうことに基づいて、農林水産省独自にやるべきもの、あるいは他の省庁と連携をとって、場合によっては協議会等を設けてプロジェクトチームなどをつくって進めていくもの、そういうことを私どもこれから新しい考え方に立って進めていきたい、かように考えている次第でございます。

    〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕

後藤(茂)委員 一つ伺いますけれども、木材産業という法律用語は、今回この基本法で初めて法律的には使ったというふうに思いますが、いかがですか。

中須政府参考人 この法律で初めてでございます。

後藤(茂)委員 私は大変結構なことだというふうに、きょうは評価しっ放しかもしれませんが、評価しているわけでありまして、せっかく基本法に木材産業という言葉を書いたわけですから、そういう意味では、木材産業という形で産業政策を林野庁、農水省がしょっていくというつもりでぜひやっていただきたいというふうに思います。

 それから、先ほど大臣の方から木材産業ビジョンというようなものをつくるという話がありまして、大変それもやっていただきたいことだと思っておりますけれども、森林・林業基本法ができて、それに基づく基本計画というのがあって、それを具体化する形で、例えば森林法上の森林計画だとか、基盤法上の基本方針だとか、労確法上の基本方針だとか、いろいろそういうものがあります。

 そして、林産物ということも、基本理念、三条に書かれているわけでありますから、そういう意味では、そういう横並び意識を持った木材産業ビジョンというのをぜひつくっていただきたいと思いますので、その部分についてだけ確認をさせていただきたいと思います。

武部国務大臣 お説のような努力をしてまいりたいと思います。

 先ほど私は民間の木材産業のことも申し上げましたのは、協同組合とかそういうことだけじゃなくて、木材産業そのもの、こういったところに力をつけていかなければ、それに波及する素材生産も生きてこないわけでありますので、私は地元でそういった経験を体験しておりますし、積んでおりますし、先生御指摘のようなことを踏まえて努力していきたいと思います。

後藤(茂)委員 一つ簡単に伺いますけれども、間伐材とかいろいろな木材資源を利用してということで、私も前回バイオマスエネルギーの話をしましたし、その後、多くの委員が話をされていますので、もうそのことについては触れませんが、公共事業、土木関係に、自然の中の景観ということからいえば、コンクリートの打ちっ放しが随所にあるよりも、ぜひ丸太を使ったりしていくというような話も出ておりますけれども、保安林や林道については、大臣の足元にありますから心配しておりませんが、国土交通省に対しまして具体的に何かアクションをとられるおつもりでしょうか。

武部国務大臣 小泉内閣の一つの新しい流れ、特徴というのは、人と自然との共生ということをうたっていると思います。また、循環型社会の構築ということも、これは私どもだけの考えじゃありません、小泉内閣の一つの新しい方向づけでございます。また、先般の骨太の方針の中でも、都市と農山漁村の共生、対流ということも明記されました。

 さような意味では、国土交通省とも、人と自然との共生、自然共生型の公共事業、施設づくりというようなことについて、積極的な協力関係を構築することができるんじゃないか、私はかように思いまして、公共土木事業におきましても、間伐材の利用などを含めまして、相当な協力関係が拡大していく、かように確信をしております。

後藤(茂)委員 本会議でちょっとお話ししたことですが、九州・沖縄サミットにおいて違法伐採も問題になりました。環境保全の観点からこれを議論するということは、もちろんこれは重要なことは言うまでもありませんけれども、貿易ルールづくりを通じて木材市場の国内需給の調整が結果として図られるということは、これはもう否定のしようのない事実でありまして、これまでどういう議論を行ってきたのか、今後こうした観点から戦略的にどういった取り組みをしようとしていかれるのか、その辺についてお話を伺いたいと思います。

武部国務大臣 昨年沖縄で開催されましたG8首脳会合におきましても、違法伐採に対処する最善の方法についても検討するという旨合意をされ、コミュニケが公表されたわけでございます。先生御案内のとおりでございます。

 木材輸入国である我が国としては、違法に伐採された木材は使用すべきでないとの考え方に基づきまして、違法伐採を撲滅する方策については関係省庁と共同して検討してまいりたいと思いますし、WTO交渉においても、現在のルールのもとで許容される貿易制限の可能性につき検討してまいりたい、かように思います。

後藤(茂)委員 国有林野の問題についてちょっと伺いたいと思いますが、国有林野、これは世界遺産に登録された屋久島を初めとして、非常に貴重な野生の動植物が生息する豊かな森林生態系を維持している森林が多く残されているわけです。

 例えば、従来からの保護林の制度に加えて、十一年度から、緑のコリドーの設定によって生物多様性の保全を図ることとされていますが、その設定に当たっては、民有林との調整も必要ですし、特に環境行政と連携を図っていくということが重要だと思います。今の緑のコリドーの設定作業の進捗状況を伺いたいというふうに思います。

中須政府参考人 国有林野の機能というものを公益的機能重視に転換をするその一つの具体的なあらわれとして、ただいま御指摘のございました緑のコリドーの設定ということに取り組んでいるわけであります。

 平成十二年度には、各森林管理局ごとに、有識者、関係道県等の意見を踏まえて、御指摘のとおり、民有林あるいは環境行政との調整ということにも十分配意を図りながら回廊の設定方針を定めて、具体的な設定手続を進めてまいりました。

 本年四月一日現在、全国の国有林野におきまして、知床半島から奥羽山脈、長野県内の雨飾、戸隠など、十カ所において緑の回廊を設定したところでございます。

 今後は、このとりあえず設定した緑の回廊について、希少な動植物等がどういうふうな動き方をしているか、そういうようなモニタリングを行うとともに、また、そうしたことを踏まえつつ、現地の状況をさらに踏まえながら、必要な箇所についてさらにこれを拡大をしていくということで取り組んでまいりたいというふうに考えております。

後藤(茂)委員 国有林野については、改革二法が通って、今、例えば木材生産機能の重視から公益的機能を重視していくとか、あるいは簡素で効率的な実施体制を確立していくとか、累積債務の処理の問題とか、非常に厳しい中で改革の努力が進んでいるわけであります。

 そうした中で、材価が非常に下がってきまして、国有林野の収支も非常に苦しくなってきているわけであります。民有林についても、こうした材価が下がってくることや労働の条件だとか、いろいろな問題について国の支援措置が今後進んでいくわけです。

 そういう国の支援措置が民有林に対しても進んでいくのとやはり一体的に考えて、国有林野特別会計へ一般会計から繰り入れてやる金についてもやはり予算上配慮していかなければならないというふうに思っております。もちろん、いろいろな予算関係の問題はありますけれども、国有林野特別会計へ一般会計からの繰り入れをふやしていくべきだというふうに考えております。

 農水省としての御見解を伺いたいというふうに思います。

武部国務大臣 国有林野事業におきましても、新たな森林・林業基本法の趣旨を踏まえまして、森林の多面的機能の持続的発揮を図るために必要な経費等については一般会計から繰り入れてまいる考えであります。

後藤(茂)委員 終わります。

堀込委員長 次に、古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。

 毎回のように質問に立たせていただいておりまして、きょうは森林・林業基本法関連ということで質問に立たせていただきました。

 きょうは、そういうことで上流の方の関連の法案でありますが、もちろんこの関係についても、私の地元には筑後川の上流、柳川の上流にいろいろ山が連なっておりまして、大変林業、森林に関心がありますから、質問を申し上げます。

 きょうはちょっと冒頭に、もう少し下流、下流といっても有明海まで下流に行きませんが、筑後川の、有明海の河口からおよそ五キロ、十キロという地帯に、実は日本でもうただ二つになったと言っても過言ではありませんが、イグサの産地がございます。私の本当に地元、足元でございまして、筑後表とも呼ばれております。四百年の歴史を持っております筑後地方のイグサの関係で質問をさせていただきたいと思うんです。現物が今地元から届きました。

 なぜかといいますと、今度セーフガード、四月二十三日に、皆さんのいろいろなお骨折りもございまして、暫定でありますけれども発動になりました。その一品目として畳表が入っておるわけでございますが、これにつきまして、私の地元から、生産者もおられます、あるいは畳表の加工業者もおられる、問屋さんもおられる、そういう多くのイグサ関係の団体の方が、私のところに陳情あるいは要請にお見えになったのであります。

 そこで、畳表についてのセーフガード、今回暫定措置で今発動になっておりますけれども、これについての実効性をどう判断しておられるか。そして、後ほどるる申し上げますけれども、今後この畳表に関するセーフガードの目的を実効あらしめるためには、花ござあるいは上敷きにまで対象を拡大しないと畳表にセーフガードをかけた意味がなくなる、こう私は思うのでありますが、畳表とあわせて、イグサ関連製品でございます花ござ、上敷きについてセーフガード適用を今後検討していく、それをぜひお願い申し上げたいんですが、政府の御見解をお願いしたいと思います。

小林政府参考人 セーフガードをこれまでいろいろ検討してまいりました。その際の基本的要件は、輸入の急増と、それが国内産業に及ぼす影響ということでございまして、その中のとりわけ輸入の急増につきましては、いわゆる税関の通関の統計を用いてその調査をしてまいりました。

 その中で、イグサの製品には、今先生がおっしゃいましたように、畳表とそれからござ類がございます。畳表の方につきましては、ここ数年非常に急増があり、それが現実に国内の畳表の生産者に影響を及ぼしているということがありますけれども、ござにつきましては、通関統計上の輸入量はむしろ減少傾向ということがございました。

 私ども、今回、三品目のセーフガードにつきましては、とにかく客観的な指標によってそれの影響が出ているということを基本にやってきておるものですから、今回、現時点では畳表に限定した形での暫定措置ということを進めておるところでございます。

 それからもう一つ、今先生、実効性のお話がございました。では、そういったことで畳表についての輸入の調整が可能かということでございますが、今申し上げましたように、関税分類上、畳表とござということで明確に区分してそれでチェックしておりますので、そういう意味での輸入数量のチェック、管理は十分やっていけるんじゃないかというふうに考えておるところでございます。

古賀(一)委員 セーフガードの世界あるいはWTOの世界、関税の世界ということになると、確かに今局長がおっしゃったとおりでございまして、関税品目、分類品目が明らかに違う、これはわかります。しかしながら、今から申し上げるようなござ類と畳表のいわゆる同類、補完材的な性格が非常に強い両者でございまして、こういう点から見て、これは今のまま畳表だけセーフガードの本格発動、こういうことになった場合に、私は、いわゆる壊滅的な打撃を受けることは間違いないと思うんです。

 つまり、こういうことです。

 まず第一点は、畳表に簡単な縁加工をしますと、これは一種の上敷きとして輸入できるのではないか。あるいは実際されているのではないか。だから、それを輸入した後に裁断をして実際は畳表として使う。なぜそういうややこしいことをするかといいますと、要するに、一定量を超えれば、割り当てを超えれば当然高い関税がかかるわけですから、それを見越して、いわゆるへり加工をしてまで畳表の課税を逃れるということが実際に起こっているのじゃないかということです。

 もう一つは、畳表にこれだけの関税がかかるならば、じゃ、中国側としては、技術的にできるから、ござとしてあるいは上敷きとして輸出してしまえという、いわゆるより高付加価値化した形で中国の畳産業というかイグサ産業というのがより上手の産業にシフトしていくんじゃないか、そして輸出攻勢をかけるんじゃないか、こういう問題も起こります。

 それでもう一つは、セーフガードの措置によりまして国内原料イグサというのは高くなっているんです。当然なります。そうした場合、これを原料とする花ござあるいは上敷きをつくっている国内の本当に零細なる業者もたくさんおられる、生産者もいる。その原価が当然アップする。そうしますと、セーフガードのかからない中国のござと日本のござの内外価格差は今よりもさらに高くなる、こういう感じになってくることは間違いないと思うんですね。

 そういうことで、畳表とござの関係というものは、そういういろいろな抜け道あるいはシフト可能なものですから、私は、確かに関税分類上、ござは四六〇一・二〇・〇一〇ですか、あるいは畳表は九一・二一一という番号は違いますけれども、そういう実態から見て、セーフガードを発動したのは国内のイグサ生産者及び畳関係者を守るという思想だったと思うので、一部だけやったことによって肝心のござ産業まで倒れることになるんではないかということを私は強く恐れますし、皆さん地元の関係者は、そう強い強い懸念を持っております。この点、再度、大臣でもいいんですが、私はお聞きしたいんです。

 実は、この前勉強会をやったんです。この部分が畳表ですよね。これが農林省の資料によりますと怒濤のごとくこの数年来ておりますし、去年はすさまじい勢いで輸入された。これがいわゆるセーフガードの対象。

 ところが、こういうのがあるんですね。ここに縁から飛び出たイグサの部分がある。それをおよそ四センチぐらい切ったここに変な縁をつけているんですね。では、これは何だと。こんなことをするということは、いわゆる畳表じゃないよ、関税のかからない、セーフガードの対象外のござよということで恐らく輸入しているんだと私は思うんですね。

 それをさらに立派にしてくれたのがこれ、上敷きになるんです。

 では、これは日本でつくったんだろうと。それはそうなんです。ところが、後で大臣にもお見せしますが、中国では寧波というところが一大生産地なんですけれども、私の地元関係者から、代議士、見てくれということで、この前、何げなく写真を何枚かもらったんです。これをよく見ますと、中国の工場に、まさにさっき中間地点で申し上げました全く奇妙きてれつなこれが写っているんですね。現に、視察団はこれを見てびっくりしたんです。

 つまり、私は、そういう面で、関税、セーフガード、制度上はそうかもしれませんけれども、いや、相手もさる者、関税がこれだけ上がるなら、ひとつこういう品、ござで輸出ということは容易に起こるし、これまでの輸入実態から見れば、十四トンコンテナ、これは実はみんなあけて見たわけじゃないんです。

 そういういろいろな関税の実態、そういうものを全部含めたときに、私は、このままでは結局、期待はしたものの、逆にとんでもない、中国側がより高度なござ生産にシフトしていって、八代の畳表も、花ござにつきましては私の筑後地方は日本一なんです、規模は小さくなったとはいえ、日本一なんです。これもあわせて壊滅的な打撃を逆に受けるのじゃないかということを強く私は心配します。

 相手は中国でありますが、後ほど、中国との交渉方針というものを私は問いただしたいと思いますけれども、今の点も含めて、こういう実態も含めて、局長、ひとつ前向きに検討していただけませんでしょうか。

小林政府参考人 今先生御指摘の点は、いろいろな産品で、要するに産物とその加工品、それとの関係をどうしていくかと常に私ども悩みの種になる点でございます。

 今のお話の点で、私は三つぐらい多分ポイントがあるのじゃないかと思っていますが、一つは、先ほど申し上げましたセーフガードの発動対象としてとらえるときに、セーフガード協定上のルールからくる制約、限界がありますから、これはあくまでルールにのっとってやる、それで畳表ということでやる、これは一つの整理だと思います。

 その上で、では畳表という形で制限をかけているときに、いろいろなものが入ってくる、それを水際でどこまでチェックできるかというのが多分二つ目。

 これは確かに今おっしゃったように税関でチェックすることになるけれども、そのときに、外形的な基準でやるというのはすべてのルールですから、今、縁取りしてあるのかないのかということでやっていますが、それに加えて、そういった客観的な要素以外に何かチェックできる手法があるかどうかというようなこととの関係であると思いますけれども、ただ、税関の立場からしますと、やはりいろいろ忙しい中でやっていますから、外形的な基準というのが基本になるだろうということで、今先生がおっしゃったような一つの問題というのは残らざるを得ないのかなと。

 もう一つは、今回、畳表ということでセーフガードの対象にして、それで今私ども、これから確定措置をどうするか、そういった検討もしておりますが、一方では、ほかの、三品目以外のものを含めて、中国との関係で秩序ある輸入といいますか、そういうのをどういうふうにやっていくのだということは、セーフガードという問題だけじゃなくて、中国といろいろな話し合いをするということの一つのポイントでございます。

 そのときに、セーフガード暫定措置の対象以外のものをどういうふうにやっていくかというところの議論がありますので、例えて言えば、イグサの製品全体、今、畳表という形でセーフガードの暫定措置の対象にしておりますけれども、イグサ全体の、中国での生産だとか、日本への輸出だとか、そういうのをどういうふうにしていくのだというようなことを含めた今の需給情報の協議というようなことをやっておりますので、そういった流れの中でどういった解決への方向が見出せるのかということを私ども十分念頭に置いてやっていきたいというふうに考えているところでございます。

古賀(一)委員 それでは、これは質問通告していませんが、今後、セーフガードの本格発動といいますか、それに向けて、とりわけ中国との交渉が始まると思うんですが、この交渉体制というのはどうなるのでしょうか、セーフガードについては。

 経済産業省そして財務省、これが今度のセーフガードの発動に関しての各利害関係者の意見窓口になっています。両省が関係省ですね。当然、外交を預かる外務省もあるのでしょう。そして、もちろん三品を所管します農林省がある。今後、中国との交渉というのはどういう体制でやっていくのか、ちょっと教えていただきたいのです。

小林政府参考人 交渉の体制ということでお答えしますけれども、今までも、ことしの二月ぐらいから、中国との間ではいろいろなレベルの協議、交渉を進めております。これは、今回の暫定措置に至る前から、政府調査に入った以降。そのときに、やはり三品を所管しております私ども農林水産省が主体になりますけれども、あわせて外務省、それから現地の大使館もございますし、それから先般、六月四日のときには経済産業省の担当官も当然随行いたしまして、そういった形で関係する各省が合同して今いろいろな協議を進めている、そういった状況でございます。

古賀(一)委員 これは本題でありませんから詳しく聞きませんが、ただ、一点だけ申し上げますが、実は、きょうも夜、中国の関係の会合が私三つございまして、お会いします。そこで、私も中国は、この場でも何度も申し上げましたけれども、しょっちゅう顧問をやったり行ったりしておるのですが、WTOとはいえ、世界の市場の自由化を図ろうというそのコンセプトはわかりますけれども、対アメリカとは違って、やはり同じアジア人同士、そして、聞くところによれば、去年、畳表を余り輸出し過ぎた、生産過剰だった、中国側がそれで価格の暴落ということで、やはり秩序なき生産あるいはやりっ放しの輸出攻勢というものも果たしていいのかなという懸念も中国側にあるやに聞くし、シイタケについても同様の現象が起こっているとも聞きます。

 ここは、WTOの世界とはいえ、やはり共存共栄、秩序ある、日本のためにもそうだけれども、中国側の産業育成にとっても、急激な拡大であるとかそういうものじゃなしに、ともに協議しながら共存共栄の道を図ろう、ちょっと今回は遠慮してくれ、もう少し縮小してくれぐらいのことを私は言っていいと思うんですよ。

 そういう面で、外交体制、日本は特に弱いと言われております。私もそう思うんですが、ここでやはり農林省は農家を抱え、農民の次なる生活を保障していく、アドバイスしていく、そういう役を担っているわけですから、私は、外務省なりの後ろにいて、交渉で遠慮するのじゃなしに、この際、この畳表といわゆるござというものは補完関係だ。現に統計を見ましても、両方合わせたものでずっと、若干ふえていますけれども、畳表が去年なんかはめちゃくちゃふえて、その分だけござ類は減ったという構造になっているのですね。

 これを見ますと、今度、畳表がずっと減って、ござがわっとふえるという形にもなりかねない。そんなところを中国側にしっかり訴えて、しかも、畳というのは日本だけの文化ですから、そういう強いあるいは忌憚のない外交交渉といいますか、そういうので私は臨んでもらいたいということを強くお願いしたいのですが、対中国との今後の交渉方針というのはどうお考えでありましょうか。大臣にお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 先生御案内のとおり、セーフガードはWTO協定また国内関連法に基づいて一定の要件が満たされて発動をすべきことでありますし、その前提にはやはり国内の産業の構造調整ということが大前提でありまして、農林水産省としても、今畳表の生産者はもとより、ネギ、シイタケ等についてもさまざま支援政策をやっております。

 また同時に、今お話がありました中国でありますが、御案内のとおり、中国はWTOに加盟はしておりませんが、我が国としては、WTOのルールに従って丁寧に交渉を継続しているわけでございます。何も外交ルートばかりじゃありませんで、六月四日には、農林水産省から生産局の審議官あるいは総合食料局の参事官等も中国に参りまして、外務省や経済産業省の担当官と一緒に折衝しているわけでございます。

 その際に、中国から民間協議の話もございましたが、これはなかなか実際問題、実効性は難しいのじゃないか、かように思いまして、私どもとしては、引き続き中国との関係は今先生御提案ありましたようなことも含めて大事な問題だ、また、日中間の関係は非常に重要であるというようなことから、引き続き丁寧な交渉を続けてまいりたい、かように考えているわけでございまして、その交渉の際には、当然我が国の国内生産者の事情等も篤と説明をし、理解を求めている次第でございます。

 しかし、残念ながら、中国側からこれといった具体的な提案がいまだなされていないというようなことでありますから、また何か具体的な提案があれば、また私どもも、我が国としてもそういった中国の真意を引き出すために引き続きの努力をしていきたい、こういうように思っておりますので、御理解いただきたいと思います。

古賀(一)委員 それではもう一点、このセーフガードについて確認したいのです。

 十一月の初旬にこの暫定期限が切れますが、いわゆる関連の事業をやっておられる方から見れば、何せ初めてのセーフガードでありますから、セーフガードを前提として商取引をやったり体制を整えたりということがもう現に起こっております。暫定発動の後に本発動はやめたということにはなるはずもないと思いますけれども、今後の本格発動へ向けての手順と、とりわけそこで問題になりますのは恐らく構造調整だと思うんですね。ただ困った、ふえたから何もしません、関税だけはかけさせてくださいという世界ではなくて、今後我々は足腰を強くしていく、こういう手順だと思うんです。

 この構造調整について、とりわけイグサ関係は大変足腰が弱くなっておりますけれども、イグサ関係、ござ類、畳表、今度どういう方向で構造調整を図っていくための施策というものを講じていこうとしておられるのか、本格発動の見通しも含めまして、まとめてお答えいただければと思います。

武部国務大臣 イグサについての構造調整については、生産局長から答弁をさせます。

 本発動については、先生、今ちょっと私の聞き違いかもしれませんが、それはあるはずはないと思うけれどもというふうに聞いたんですけれども、そんなことはございませんで、私どもは、政府調査における意見表明、直近の輸入状況及び構造調整方策の検討を踏まえまして今検討しているわけでございます。現時点でその見通し等については申し上げることはできませんが、いずれにしても、私どもは、今申し上げましたような要件が整えば本格的な発動を求めるというような農林水産省の姿勢であることは改めて確認しておきたいと思います。

 イグサに対する構造調整については、生産局長に答弁させます。

小林政府参考人 ただいま私ども、三品目について構造調整あるいは体質強化対策ということで鋭意検討を進めております。

 その際、イグサにつきましても、やはり生産、流通、消費といいますか、要するに最後のユーザーまで含めてきちんと国産がうまく使われていく、そういった方向を出していかなくちゃいかぬと思っております。

 生産段階では、これは一つは品種の問題がございます。より品質のいい品種等、これは今、普及がまだ低いものですから、そういうものを高めていくということがございます。あと、コストの面でやはり共同利用とかそういった効率化ということ。

 それから、流通面では、九州中心のあれでございますけれども、やはり市場統合とかそういった意味でできるだけ競争力を高めたい。

 それからさらには、消費の面では、やはり畳表のよさといいますか、あるいは例えば畳表をつくる皆さんに国産をどうやってうまく使ってもらうとか、それにちょっと着目しながら、具体的な対策は何があるかということで今鋭意詰めている段階でございまして、概算要求等もありますから、それに向けて三品目ともどもでございますけれども整理をしていきたいというふうに考えているところでございます。

古賀(一)委員 この点につきましての質問はこれで終わります。しかし、最後に局長がおっしゃいました、セーフガード関連で生産、流通、消費というところまで考えないと構造調整の手だては打てない、こういうふうに受けとめたんですが、これは別にこのセーフガードの問題、畳表の問題だけじゃなしに、農業基本法、あるいはこの前やりました水産基本法、そしてきょうの森林・林業基本法、農林水産省の所管にかかわる事柄のほとんどすべての分野で同じような問題を抱えていると私は思うんですね。

 要するに、農家が生産する食品、いわゆる食べ物ですね。よくこの委員会で出ておったように思いますが、消費者に渡るときには七十兆、八十兆、農家が受け取っておるのは十兆円。つまり、その間の七十兆というものは、あるいは六十兆というものは、いわゆる流通、農林省所管外。このござでもそうですよ。この質問通告をするためにきのういろいろ農林省のお役人の方と話したら、いや、代議士、これはへりをつけますと通産省所管だという話なんですね。

 結局、農林省あるいは農林水産行政が、やはり田んぼ、畑あるいは海、山というものから消費者に届くまでにどういう付加価値を生産者側にとってもらう、あるいはそれだけのものをつくってもらう、そういうところの発想が弱かったために今日のいろいろな問題があると僕は思うんですね。

 米価を二倍にしろとか米の面積を二倍にしろとか、あるいは農家所得を倍にしろというのは容易じゃないですよ。でも、例えば八十兆の消費者の方が払っている金がある、それを一次産業である農林水産業が一歩一・五次化を図っていくということだけで二十兆になると私は思うんですね。私は、そういう発想というものが本当に農林水産行政のこれからの一大要諦だと思っております。

 そして、今度の本題に移りたいと思うんですね。これもそうなんです。

 それで、基本法にうたう例の森林の多面的機能、これは水産関係でも話題になりました。もちろん食料・農業・農村法でも話題になったわけでありますが、法律の体系は確かに、第二条に高らかに森林の多面的機能、こう書いてあるんだけれども、問題は、法文をきれいにつくっても物事は動かないわけでございます。

 具体的に地方自治体、森林組合、国民あるいはマスコミの方々、そういうものから見て、森林というのは確かに多面的機能を持っている、こういう森林になったらいいな、そういう具体的な姿、それはモデル事業でスタートするのかもしれませんが、そういう具体の事業を通じての、プランを通じての具体の姿をやはり提示していくことが一番重要じゃないかと私は思うんです。

 今までは、森林法とか林業といえば国有林野だ、赤字だ、森林保全だとかスーパー林道だ、こんなイメージしか浮かばないのでありますけれども、今度の法律には、多面的機能であるとか山村の定住、あるいは国民の自発的参加であるとかボランティア、都市山村交流とか教育のための森林利用、こういう言葉がいろいろ入っておるのですね。問題は、これを具体化していくための具体的事業、それを生み出す農林水産行政における一種の感性というか関心の置きどころというか、そういうものがこれから問われてくると私は思うんですね。

 したがいまして、長く申し上げましたけれども、今後この森林の多面的機能というものを本当に実現する、国民に訴えていく、示していく、そのためにどういう具体的な事業、施策というものをお考えか、ひとつ例示をしていただければと思います。

中須政府参考人 いわゆるオーソドックスな言い方をまずさせていただきますれば、今回の一連の基本法に始まる法改正を通じまして、我が国の森林というものを、水土保全機能を重視する森林、そして森林と人との共生機能を重視する森林、こういうふうに大きく区分けをいたしまして、それぞれに適した森林施業というものを提示して、そういう方向への誘導を図る。

 例えば、水土保全機能を重視する森林におきましては、従来行われておりました皆伐、新植というやり方を、抜き切りとかあるいは伐採面積自体を縮小するということを通じて良質な水の確保に資する森林施業を推進する。あるいは、特に公益的機能の発揮に対する要請が強いけれども、所有者に任せていては適正な森林整備が進まない、そういう場合には、公的関与による水土保全機能の高い森林整備を公的機関が実施する。

 あるいは、森林と人との共生機能を重視するという場合には、自然の推移にゆだねた天然林の取り扱いとか、里山等においては、地方公共団体、市民参加による広葉樹林の整備あるいは針広混交林化を推進する、そういうようなことを進めていきたいということであります。

 ただ、その場合に、当然そういうものをオーソドックスに地道に進めていくということと同時に、例えばということでありますが、平成七年には私どもも水源の森百選ということを実施いたしました。

 各界の有識者に集まっていただきまして、平成七年七月に我が国の代表的な水源の森を水源の森百選という形で取りまとめて、典型的には、よく言われますが、秋田の白神山系の水沢川源流の森、広大なブナ林がございます。そういうところを水源の森として指定する。東京の近くでは、東丹沢県民の森というふうに言われておりますが、神奈川県。ここでは、もちろん水源林であると同時に、国民の保健休養とか都市との交流に役立つ、活用されている森林ということで、こういうところを指定する。

 そういうことを通じて、国民の皆様方に森林の持っている水源の涵養機能というのはどういうものかを目に見て実感していただいて、なるほど、こういうことが大切なんだ、林業の各種の作業を通じて、そういうことの多面的機能実現のためにみんなが努力をしているのだ、そういう姿を国民に理解していただく、そういう趣旨で水源の森百選ということを行いました。

 そういったさまざまな形での国民へのPRと申しましょうか、そういうことを重ねていって、こういう趣旨というものが国民にさらに一層理解されるように努力をしていきたい、こんなふうに思っております。

古賀(一)委員 具体の例を挙げていただきまして、大変わかりやすかったと思います。

 私は本当に、こういう新しい法体系ができるわけですから、林野庁はやはり大変まじめだと思うのです。この前の水産庁の皆さんも私は大変まじめだと思うのです。でもやはり、これから、昔と違いまして、行政が大蔵省から予算をとってきて営林署で仕事をしていけばいいという時代はもう終わって、やはり国民の理解、国民の参加とか、そういうものが不可避。あるいは国民から批判も来る。

 そういう中で、この法律が変わったわけですから、この際私は、林野庁の皆さんの中ではもちろんですが、幅広くいろいろな人の意見を聞いて、森に関する、渓流に関する、山村振興に関するいろいろな知恵を募集すれば、山ほどあると私は思うのです。今、水源の森百選がありました。先ほどの後藤委員の質問に対しまして、緑の回廊、十カ所とお答えになりましたけれども、こういうものをもっと楽しく大々的にアピールする形で私はやってほしいのです。

 そこで私が提言しますのは、例えば桜林道一万キロ構想とか、山もたくさんありますし、私もしょっちゅう行きますけれども、何でこんなに平野が見渡せるいい峠に、杉、ヒノキを植えて何にも見えない。昔からずっと私は、林野庁は何を考えているのだと。

 都市住民が山越えして行く。私の地元の周りにもたくさんありますよ。関東近辺もあります。私は、そういうところを右、左十メーターずつ全部切るのです。きのうも話題になっておりましたけれども、切って、それを天然林が自然に自生するのを待つのか、あるいは、あえてもみじを植えるか、桜を植えるか、そういう問題はあります。それは技術的に検討していただけばいいのですが、いわゆる杉の木が道路まで迫って二十メーターもそびえている道と、まさに空が見える、星が見える、秋になれば紅葉する道、それが何キロも続く、もう全然違うのですね。

 私はそういう面で、そういう具体の事業というものをもっと高らかに、アドバルーンと言ったら失礼でありますが、この際構想を打ち立てて、林野も我々もこういう時代の変わった中で地域振興をやる。山村に来てください、そういう構想を、緑の回廊は十カ所で何キロか後でお答えいただきたいのですが、こんなものではなくて、もみじ街道一万キロでもいいですよ、桜街道でもいいですよ、それを地域で設計し、考えてやれ、そういう時代ではないかと私は思うのであります。林道だけではありません。ダムのサイトや、あるいは渓流、この辺申し上げましたけれども、渓流の水質保全の広葉樹帯をつくろう、こういう構想があったって私はいいと思うのです。あるいは、展望台、オートキャンプ場、そういうものもいろいろなものがあると思う。

 私はそういう面で、今後この森林の多面的機能、その思いの中には山村振興とかいろいろな思いが入っておるわけですが、大分前、六年前にやられました水源の森百選にとどまらず、今後そういった新しい事業展開というものをどうお考えか、ひとつ大臣の方から御所見がございましたら、ぜひ表明いただきたいと思います。

武部国務大臣 先生のお話を聞いているだけでふるさとを思い出すような、胸が熱くなる感じをいたしました。全く同感でございます。

 我々人間は何のために生きているのかということを考えたときに、余りにも自分の生活を大事にしていないのではないか、このように思います。我々は自然界の一員でありますし、日本は大都市に人々が集中的に住んでいる。しかし今までは、都市政策一つとっても、問題解決型の視点で対症療法的な後追い政策に終始していた、こう思うのです。

 しかし、今日のように交通インフラが整備され、そしてIT革命がどんどん進んでいくということになれば、農山漁村にも、ナショナルミニマムといいますか、一定の共通的な社会基盤施設整備というものがなされれば、いわゆるプラットホームみたいなものが地方にできれば、そこから自転車で五分で、五分桜街道を走るとその先はせせらぎがあってアユ釣りができるとか、さらに山に行って山登りもできるとか、そういうようなライフスタイルになってくるのではないかと思います。つまり、二重生活を享受できる時代になってきているのではないのか。

 そのことを思いますと、国民の願望実現型の視点で二十一世紀の本格政策というものを樹立していくべきであり、先ほども申し上げましたが、森と海は命のふるさと、私どもこう申し上げているわけでありますけれども、都市と農山漁村の共生、対流ということに向けて、農林水産省としては、人と自然の共生社会の実現、美しい国づくりというようなことで、先生さまざまお話しされましたような構想を、農林水産省も林野庁もどんどんメッセージを国民に送り、また国民の声を聞いて、そういった方向づけを積極的に展開してまいりたい、かように考えている次第でございます。

古賀(一)委員 大臣に、ぜひこの法案成立を機に、新しい機軸で、ひとつ新しい世紀のそういう林政のスタートの年にしていただきたいと思います。

 そこでもう一点、今あと五分しかありませんので、あと一問かと思いますが、今度の森林・林業基本法関連で、もう一歩踏み込んでやればよかったのに、あるいは旧態依然だなと思った点がもう一点ございます。それは、いわゆる地方公共団体の扱いでございまして、第六条に「地方公共団体の責務」という規定がございます。

 でも、私は、先ほどの話じゃありませんが、地域に行きますと、もう私も国会議員になって十一年になりますが、いろいろな折々に、地域の市町村長さんあるいは議員さんあるいは林業関係者、そういう方々から、こういうアイデアはどうですか、ここを何とかいい知恵を出してくれとか、いろいろな思いがあるんですね。それは決して林野庁が霞が関の中でデザインできるものじゃないんです。山はそれぞれ個性がある、地域のニーズもある。きのうもある参考人の方がおっしゃっていました、スーパーマンのようなすべての機能を持つ森林はないと。それぞれの森林が、その地域に応じて、地形に応じて、ここは水源涵養の森であってほしいとか、そういうやはり個性があるんですね。

 そうしますと、これからの森林の整備というのは、やはり机上の空論でもない、霞が関で考えるというよりも、各地域の生の声の集積が、それがモザイクとなって全体の日本の森林の行政というものを描くんだと思うんですよ。

 ところが、今度の法体系は、相変わらず基本計画をつくる、こういうことになって、では市町村はどうするんだと見ましたら、責務の規定はあるんです。しかし、地域の創意工夫というのが、とりわけ市町村だと思うんですね、ここが主体的に提言をし、構想をし、プランをし、それを各自治体が競ったところ、補助金なのかコンテストなのか表彰なのかわかりませんが、その関与の仕方は別として、国が、おお、ここはこういうのをよくつくったねと、そういう体系に持っていかない限り、山村振興というのは私はないと思うんですね。山村定住もないと思うんです。

 そこについてこの法律は、せっかくの機会であったにもかかわらず、地方公共団体の主体性というのが法体系上非常に弱いと私は思うんです。そういう面で、この法体系、私は書き直してもらいたいというか、一節設けるかどうかは別として、もう少し市町村の主体性というものをこの法文上オーソライズしてほしいと思うんです。それとともに、先ほどの話じゃないけれども、具体的に市町村、地域の声を聞くというシステムを実際の行政でもやっていかないといかぬと思うんですね。

 それで、お聞きします。最後の質問になりますが、まず、法改正に当たって市町村長の意見を聞かれたのか。そして、今言いましたように、法体系とは別に具体的な、山村をこうしてほしい、こういう林道をつくりたい、そんな意見を今まで聞いてきた実績はあるのか。そして、今の私の指摘を受けまして、やはり市町村の意見、声、知恵というものを、創意工夫というものを吸収していくいろいろなシステムを今後構築していこうとされておるのか。まとめてで結構でございますが、お聞きをいたしたいと思います。

武部国務大臣 市町村はもとより、国民の間に、森林に対する期待というものは非常に大きく変わってきている、かように思います。したがいまして、この法律は森林の多面的な機能の発揮ということをうたっているわけでありまして、これはいわゆるナショナルプランとして、国家挙げて、地方も国も一緒になって、挙げて取り組むべきそういう性質のものだと思います。

 しかし、個々の施策は、統合補助金のようなものもございます。やはり地方自治体から計画をつくってもらって、そしていい計画に対していろいろ国は支援していく、そういうやり方になるんだろうと思います。しかし、それにしても、国の方が、政府の方が基本的な方向づけというものを示さないと、これは地方自治体もどういう声を上げていくべきかというようなことについてちゅうちょする面があるんだろうと思いまして、国の計画、地方の計画、これをドッキングさせていくといいますか、それが具体的に今後の運用になっていくんじゃないか、かように思います。

 基本的には、やはり我々のこの法律の理念というものは多面的な機能の発揮というところにあるわけでありますし、これは国がしっかりした役割分担をやってまいりますよ、その上に立って、具体的には国民一人一人、地方のさまざまな個性ある努力をしていただきたい、そういう思想が流れているということを御理解いただきたいと思います。

古賀(一)委員 これで終わります。

堀込委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十三分開議

堀込委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。城島正光君。

城島委員 民主党の城島でございます。

 それでは、午前中から引き続きまして、この森林・林業基本法について質疑をさせていただきます。

 時間が限られておりますので、まず最初に大臣の方に基本的な御見解を承りたいというふうに思いますが、今回の基本法改定に当たって、今ある基本法そのものが、一九六四年だと思いますが、制定されてきた。その間、私もこの委員会で質問をこの前させていただきましたが、水産の方の基本法があり、その前に農業の基本法があり、そして今回この林業の基本法、こう一連の流れはあるんですね。それは、ある面では非常に整合性があるようにも思うんですが、一方、この間、特に国有林野事業の赤字の問題というのは大変大きな課題として今まであったわけであります。

 また同時に、この基本法の中にも当然触れられておりますけれども、我が国そのものが大変な森林国である。国土の森林率が六七%に達している。さらには、二十ヘクタール以上保有する林家の年間の所得が三十六万円という衝撃的な水準になっている等々含めて、この林業そのものがかなり疲弊してきているというようなことが以前からかなり明らかだった。

 ということからすると、この基本法そのものはもうちょっと前に基本的なこういった法案として出されてもよかったんではないか。ちょっと遅きに失しているんじゃないかというような感じを持つわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。

武部国務大臣 現行林業基本法のもとでも、さまざまな施策の展開を通じて森林資源の整備の一定の成果はあったと思いますけれども、私は、完全に遅きに失した、このように思います。十五年ぐらい前にこういうことをやっているべきでなかったのかなと。つまりバブル期以前に、日本が金余りのときに国土利用計画というものを見直して、日本の新しい生きるべき道というのを国民的なレベルの合意を得てやるべきだったんじゃないのかな。それを怠っていたのが今日のさまざまな問題を生じさせているのではないか、かように思います。

 しかし、なぜ今日に至ったのかというのは、やはりこれは、政治家を含めて国民の末端に至るまで、そういう自覚、意識というものが乏しかった。近年、急速に国民の森林に対する公益的機能ということについての評価も高まってまいりましたし、さまざまな状況下で新しい基本法につくりかえなければならないというような要請があって、その見直しをやることになった、私はこのように理解しております。

城島委員 少し具体的なことについて御質問しますが、今の基本法においては、森林の林業的利用の拡大あるいは奥地の森林資源の開発ということで、広葉樹、雑木林から人工林への積極的な転換というのが行われてきましたけれども、どの程度の規模で行われてきたんでしょうか。また、現在どの程度の規模になっているのか。同時に、この事業に要した総費用、幾らぐらいかかっているのかということをお尋ねしたいと思います。

中須政府参考人 まず最初に、どの程度の規模で人工林への転換が行われたかとお尋ねでございますが、三十九年の基本法制定以来の杉、ヒノキ等の針葉樹を中心とした積極的な造林、三十九年以降、現在までの間に約三百万ヘクタールの天然林が人工林に転換した、こういうような実績に相なっております。このことによりまして、現在約千四十万ヘクタールに及ぶ人工林が造成され、これは全森林面積の約四割を占める、そこまでに至っているということであります。

 なお、このことによりまして、この人工林の蓄積量、木材の量と申しましょうか、これは約二十二億立方メートルということになっておりまして、全森林蓄積約三十八億立方メートルというふうに推定されておりますが、その約六割がこの人工林の蓄積によって占められている。しかも、現在の森林の成長量の大部分を占めている、こういう状況でございます。

 人工林の造成のために要したこの間の費用ということのお尋ねでございます。

 これは、すべての金額を過去にさかのぼって網羅的に集計することはなかなか難しいわけでありますが、昭和三十九年度から昨年度までに森林の整備に要した公共事業予算額というのを集計いたしますと、純粋な部分ということでぎりぎり見積もって、造林関係事業というものだけを積み上げましても、国費ベースで約二兆円の金が投入されている、こういう状況に相なっております。

城島委員 それでは今後、すべての、まだ残っている人工林への整備ということについてお尋ねしたいわけでありますが、それは完全に目標どおり整備されるためにはどの程度の期間及び費用がかかるんでしょうか。

中須政府参考人 ただいま申しました我が国の森林面積の約四割を占める人工林につきましては、結局、成長の各段階に応じて、それぞれ段階ごとに適切な保育とか間伐、こういうものが継続的に実施される。当然、これからは、水源涵養あるいは山地災害の防止、こういった公益的機能を十全に発揮するという観点からは、抜き切りを繰り返しつつ徐々に資源の更新を図っていく長期育成循環施業の導入等、さまざまな形で適切な整備を進めることが必要になるわけでございます。このような人工林の整備というのが林木の成長、造林、保育、伐採のサイクルに合わせて継続的に展開されていく、こういうことに相なるわけでございます。

 こういった森林整備に必要な費用とか人員ということにつきましては、率直に申しまして、将来の国民の森林整備に対する要請の変化とか、林業生産面での技術の進歩、あるいは生産性の向上、そういうことを含めた変動要因が多く、的確に見通すことはなかなか難しいと思います。

 しかし、私ども、今回この法改正を受けまして、新しく森林・林業基本計画を定めることにしているわけでありますが、その計画の中で、森林の多面的機能の発揮のための目標とすべき具体的な資源の状態を明らかにする、それから、全国森林計画の中では、十五年間ぐらいを見通した造林面積とか間伐面積の計画量、こういうものを示すことによりまして、今先生がお尋ねになったことに対する一つの数値的なお答えというか、そういうものが出てまいるということで、この法律の施行を待って、この点を鋭意詰めて、また別途御説明の機会を与えさせていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。

城島委員 それでは、これからの基本計画といったものにその辺を明確に出して、提示をいただきたいというふうに思います。

 次に、大臣にまた基本的なことをお尋ねしたいわけでありますけれども、特に国有林ということについてで結構でありますけれども、先ほどの御説明でも長官からありましたように、二兆円程度のお金を投入してきたというような数字も挙げられましたけれども、かなりの税金を導入して植えられてきている国有林であるわけであります。それこそ適正に管理して初めて木材としてまた商品としての価値も出てくるものであるわけであって、このまま放置すれば、それこそ森というか山は死にかねない段階に来ているとよく言われているわけであります。

 結果として、投資した税金そのものがむだになるというようなことがないようなことをしなければならないわけでありますが、そういう観点から、今回のこの基本法をまさしく実効あるものにしていくということのためには何が最も必要なことなのかということについて、大臣はどういうふうにお考えになっているのかをお尋ねしたいというふうに思います。

武部国務大臣 私の出身地も国有林の地域でございまして、いろいろな歴史的な経過はさまざま承知しているのでございますけれども、大体、国有林野というのは、我が国の国土の約二割、森林面積の約三割を占めておりますが、この多くが脊梁山脈や急峻な奥地水源地域に分布しているというようなことから、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全等の公益的機能を中心に、森林の有する多面的な機能の発揮に重要な役割を担うべきところに国有林が多いということでございます。

 国有林野の改革ということにつきましては、いろいろな経緯、年月を経たわけでありますけれども、今日的な使命は、まさに公益的機能の維持増進を基本としたものに転換しているわけでございまして、国有林野事業については、さらに抜本的な改革を推進しつつ、公益的機能の維持増進、林産物の持続的かつ計画的な供給、地域における産業等の振興に一層寄与していくべきことを旨として、民有林行政とも連携しつつ、かつ適切な、効率的な運営を行っていかなければならない、かように思います。

 私見をさらにつけ加えて申し上げるならば、何か林野庁の仕事が国有林中心であったというところに、木を見て森を見ざるがごとき林野行政というような批判があるのではないか。今後は、そういったことについては、新しい基本法に基づいて、しっかり、国有林にありましても、国有林だけじゃなくて、民有林行政とも連携しつつ、適切な努力をしていかなければならない、そういう決意をしている次第でございます。

城島委員 次に、第十五条に、山村振興、山村地域における定住の促進ということが書かれておりますけれども、こうした課題は具体的な施策こそが重要ではないかというふうに思っております。

 過疎化が加速度的に進む現状を考えるとき、幾ら法律でその促進ということを書いても、具体的にそういったことが進まなければ、まさに絵にかいたもちにすぎないわけでありまして、国民共有の財産を守ってかつ管理をしていくというためには、こうした問題がさらに重要じゃないかというふうに思っております。なかんずく、プラスして言いますと、昨今、大変高い失業率、四%台の後半というような雇用情勢から見ても、希望する人には山村での仕事と生活がきちっとできるような支援事業といったものを考える必要があるんではないかというふうに思います。

 九六年だったと思いますけれども、総理府の国民意識調査においても、条件が許せば約三割の都市生活者が地方で暮らしをしてみたいという結果が出ているわけでありますので、ぜひ、二十一世紀型の、いい意味の公共事業の一環として、雇用創出の観点も含めて、重要な施策としてこういったことについて林業整備といったものを考えてはどうかというふうに思うわけであります。御検討いただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

中須政府参考人 御指摘のございました山村の振興、こういう観点から見ましても、山村における基幹的な産業の一つでございます林業の振興を通じて雇用の場を創出する、そしてまた林業就業者の確保と定着を促進する、こういうことは大変大きな課題だというふうに考えております。

 具体的に、午前の御質疑の中でもお話が出てまいりましたが、各都道府県に設置をされております林業労働力確保支援センターというところが、就業に必要な資金の貸し付けであるとか就業相談等を実施して、林業への新規参入を促進しているところであります。

 まさに今先生がおっしゃったとおり、かなり若い方々を含めて、林業の場ということを志そうという方がかなりおられるわけでありまして、例えば最近でも二月に、東京と大阪で、森へ行こうよ全国フェアというのを開催いたしました。そういうところに、二万人近い、あるいは二万人前後の方々、二日間のフェアに御参加いただいたわけでありますが、そういう中でも、相談コーナーをつくりますと、東京では九百名の方が、大阪では七百名の方が、山村で林業に就業するということの希望を持って相談窓口を訪れている、こういうようなことが現にあるわけであります。

 したがいまして、先ほどのような話に加えまして、都市部からのUターンあるいはIターンということを含む幅広い就業希望者に対して、森林に関する知識とか就業情報を提供する、就業希望者に対する研修を実施する、こういう形で新規就業者の育成確保ということに関係省庁とも協力しながら、引き続き努力をしていきたい、こういうふうに考えております。

城島委員 ぜひ積極的な検討をお願いしたいというふうに思います。

 次に、今回の基本法の中では、木材の生産といったものを中心としたところから新たに多様な機能の発揮というところへ、一つの林政の目標を大きくつけ加えるというんでしょうか、場合によっては変えるというんでしょうか、こういうことが一つのポイントとされているわけでありますが、これは少し整理しておく必要があるんじゃないかなというふうに思っております。

 というのは、多様な機能という中で、私的な財産というか、私的財としての生産機能である木材生産というものと最も合致するのは、いわゆる二酸化炭素固定機能というのは公益的機能の中で一番ストレートに合致する機能だということだと思います。すなわち、木材生産を最大化するときにこの二酸化炭素の固定機能も最大になるということであるから、そういうふうに言えるというふうに思います。これに対して、水源涵養機能といったものを中心とした公益的機能というのは、場合によっては相反する側面を持っている。したがって、そういった面においては調整が必要な部分が出てくるんじゃないかというふうに思うんですね。

 公益的機能というのは、まさしくその名のとおり公益財であって、多数の受益者がある。私的財である木材の生産を行う森林所有者との利害をそういう面で、あるところでは調整していく必要が出てくる部分もあるということだと思います。

 そういう点で、今回の中身で、特に木材生産機能というものと公益的機能というものが森林の多様な機能にはあるということはまさにそのとおりでありますし、さらにその公益的機能には、木材生産と矛盾の少ない二酸化炭素吸収、固定機能というものと、それから、今申し上げましたように、木材生産機能と調整の必要なそれ以外の公益的機能があるということをある程度きちっと整理した上で、課題にきちっと対処していく必要があるのではないかというふうに思っております。

 地球規模の環境問題というのが重要性を増すにつれて、地球温暖化対策となる森林の二酸化炭素の固定能力というのは再評価されるべきでありますし、循環型社会構成の必要性の面から考えましても、この森林資源造成といったものと木材等の生産機能というものはきちっとやはり見直されていくべきであるというふうに思っております。

 また同時に、木材等の生産機能との調整の必要な国土保全、水資源涵養、良好な生活環境の保全、保健、文化、教育的利用、あるいは生物多様性の保全等々、森林に要請される機能もまさしく多様化しているし、その重要性も極めて大きくなってきているというふうに思います。

 こうした理解のもとで、木材等の生産機能というものとその他のいわゆる公益的機能を二本の柱にする持続可能な森林管理を森林政策の目標とすべきではないかというふうに考えております。

 したがって、私は、大きく言うと三点が基本政策としてはポイントじゃないかというふうに思います。一点目は、多様な機能の持続的発揮のための適切な森林の経営との調整というのが一点、それから二点目が、森林資源の循環的利用を担う林業・木材産業の発展、それから三番目が、山村振興、大きく言うと、この三つの施策の展開が必要じゃないかというふうに思います。

 時間が限られておりますので、特にこの中の二点目に申し上げました林業あるいは木材産業の発展ということについて、少し私の意見を含めて御見解を承りたいわけでありますが、今申し上げましたように、多面的な機能の発揮というものは極めて重要でありますが、さはさりながら、やはり木材をきちっと生産し消費していくというこの道も王道としてきちっとしないことには、問題の本質からずれていく可能性がある。

 そういうことからすると、私も、この木材というんでしょうか林業については、かなりというかほとんど素人だったものですから、いろいろこの間勉強させていただきまして、専門的ではありませんが、専門家の話もいろいろ勉強させていただいて、素人なりに解釈しましたのでちょっと専門的なところからはずれるのかもしれませんが、一言で言うと、私自身の認識もそうだったんですけれども、木造というのは鉄筋なんかに比べていろいろな面で劣るという認識が僕自身あったわけです。

 決してそんなことはないと。非常にわかりやすく言うと、耐火性とか耐震性においても、きちっとしたことをやっていけばほとんど遜色ない材料であるということの認識が――自分のことだからかもしれませんが、一般的に強いんじゃないかと思うんですね、国民の中に。やはり、いい建物というのは、鉄筋で、鉄骨できちっと組み上げたのがすぐれているんだ、木造というのは劣るんだという意識がまだあるんじゃないかと思うんですけれども。

 やはりその辺の、私はデータ等を見せてもらいましたけれども、きちっと、木造そのものというのは非常にそういう面で、耐震性においてもあるいは耐火性においても、きちっとしたことをやれば全然劣らない、プラス、やはりもう言わずもがな、いろいろな、いい、資源消費型じゃない循環型の材料ですから、すばらしい材料であるというようなことの国民的な認識の普及、PRというのが一方で非常に大事じゃないかというふうに思っているところであります。そうしたことも含めてみると、やはりこの林業の最終消費者まで視野に入れた産業の振興といったものが極めて重要だ、そういうふうに思っております。

 そういう点においては、インフラの整備といったことも海外との問題でよく言われますので、競争力をどうつけていくかということでいうと、まさしく山から消費者まで行く間の流通、加工を含めて、相当いろいろな面で競争力が落ちているということもやはり事実だと思う。

 特に、現場の人に聞いてみますと、材料としての品質の、しかもある程度量がまとまって、しかもできるだけ、できるだけというか、いわゆる乾燥材としてのものは極めて少ないということでありますので、最低限、そういったものについては、価格の前に海外とのもので競争できるような条件整備を整えるような、ある面でいうと、投資あるいは援助、そういったものがどうしても必要じゃないかというふうに思っております。

 流通過程を含めたそうした公的負担が私は必要じゃないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。

武部国務大臣 今、本法案の特徴は三つあるとお話しされましたけれども、三つは、それぞれ個別、相対立するものではないと思いますね。森林の公益的な機能ということが人と自然の共生という観点から非常に重要なものである、あるいはまた、広くは地球環境問題というような視点からも重要だという、これは国民的なあるいは全人類的な課題として大きくクローズアップされてきている。

 同時に、今お話ありましたように、木材に対するあこがれというものも、最近の生活の反省からむしろ新たなる願望として強くなってきている。

 それは那辺にあるのかというようなことでありますが、よく、地震、雷、火事、おやじという言葉が言われましたけれども、やはり日本のような火山列島とか、地震が多い、あるいはまた地震に伴いまして火災も多いというようなときに、そういう危険、恐怖感というものが多かった。しかし、依然として、昔も今も、木材の優しさ、やわらかさというものはみんなそれぞれあったと思うんです。

 それが昨今、技術も進んでまいりまして、集成材でありますとか乾燥材でありますとか、そういったようなことで、公共施設にもこれが十二分にたえ得るというふうになってまいりまして、そういう意味では非常に今先生御指摘のようなことが見直されているということも、今次新しく森林・林業基本法を制定しようという時代的な背景があるんじゃないのか、かように思います。

 山村振興については、先ほどもお話がありましたが、これもやはり人と自然との共生という出発点がそこにあるんだろう、かように思います。そういうような視点で、私どもは木材産業の新たなる視点での振興ということにも積極的に取り組んでまいりたい、かように考えている次第でございます。

城島委員 そういうことの中で、東京大学の農学部にあります弥生講堂というのが、東大農学部が百二十五周年で木造の講堂を建てられた。先週、見てまいりまして、ちょうど三百人入るホールが一条ホールと名がついていまして、これはどうも静岡県の一条工務店さんという方の寄附で建てられたそうでありまして、すばらしい講堂というか建物でありました。まさしく木の香りもしまして、いわゆる鉄筋コンクリートの講堂なんかよりはるかにいいものだという実感をいたしました。

 ちょうどそこで公開市民講座というのをやっていまして、三百人収容のホールにはほとんどいっぱいで、地域の市民の皆さんがまさしく生物の多様性と農学というテーマで勉強されておりましたけれども、何人かに毎回出られている方にもお聞きしますと、やはりこの講堂というかこの建物だから、本当に落ちついて、またいろいろな人も来やすいというかすばらしいという実感をお持ちでありました。

 ただ、その中でちょっと気になりましたのは、やはり私自身の認識がそうであったということと同じように、建築基準法を含めてさまざまな規制があって、なかなか、木造のものをつくっていきたくても規制がやはり強いということがあります。

 そういういろいろな研究が今進んできていますから、本来であれば、規制をかけなくてもできるような木造というのがいっぱいあるような感じがしまして、ぜひ、そういった面での見直し、建築基準法等の見直し等についても積極的にやっていただきたいのと、これはこの委員会でも多くの皆さんおっしゃっているように、特に公共施設みたいなものについては国産材を使うような方向で積極的な取り組みをぜひ展開していただきたいということをお願い申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

堀込委員長 次に、白保台一君。

白保委員 林業のこれからの展望を開くために林業基本法を含めて三法が審議をされておりまして、間もなく終結しますが、そういった中で一つやはり気になるのは、林業就業者の高齢化の問題だと思うんですね。高齢化については、何も林業に限らずさまざまな業種においても、他産業においてもそういった問題は深刻な形になってきているわけでありますが、特に林業は非常に高齢化が目立ってきておりますし、同時にまた、その後を引き継いでいく新たな担い手の育成の問題や、そういった問題が非常に大きな問題として今あるんではないか、こう思います。

 そういった意味では、この林業三法、基本法を含めて審議をしながら、まさに法律をつくって制度を整備してもやはり人が一番大事なわけでありまして、制度を生かすべき人、こういう人をどうするかという問題が非常に大きな課題として残っていくんじゃないかな。

 そこで、大臣、高齢者の皆さん方に対する、高齢化に対する対策の問題が一つあるだろう。これは次の担い手の問題もそのまま関連していくわけでありますが、そういった問題について大臣としてどのように受けとめ、また対応をなさるのか、まず最初にそのことをお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 全く私も先生と同じ問題意識を持っておりまして、林業労働力というのは、林業就業者の約三割が既に六十五歳以上である、その高齢化の著しさは驚くべき状況にあります。したがいまして、若い担い手の確保育成ということが非常に重要な課題であるというふうに考えております。

 このために、従来から、都道府県の林業労働力確保支援センターを拠点とした各般の施策を講じてきたところでありますが、今後はこれに加えまして、今先生のお話もありましたように、都市部からの参入、定着促進のための就業情報ネットワークの整備、新たな森林整備に対応した人材の育成等、担い手の確保のための措置に全力を尽くしていきたい、かように思います。

 同時に、これまでも議論がありましたように、林業労働の機械化、このことも大変おくれているわけでございます。高齢化になればなるほど、それに対応した仕事をどうしていくか、それはやはり積極的な機械化あるいは省力化、ロボット化ということなどにも力を入れていかなくちゃいけないんじゃないのかな、かように考えております。

白保委員 今後の人材確保の問題等については、現在の仕事のあり方等も含めて工夫をしていかなきゃならないだろうと思いますし、同時にまた、県境あたりで、こっちからここはどっちの仕事、こっちの仕事というようなこういう分け方じゃなくて、全体を、どこでもやっていけるようなレンジャー隊みたいなものも工夫をしてみるとか、そういったこともこれから重要な問題なのかなと思います。

 同時に、林野庁の予算五千億ですか、これも倍増して、今の大臣の言われた機械化等にも対応できるような状況も工夫していかなきゃならない時代も来るんではないか、こういうふうに思います。

 次に、私は、この間も議論をいたしましたが、国産材の供給量と木材需要のバランス、自給率の問題ですが、向上に向けた国産材の利用促進、こういった問題についてお伺いしたいと思います。

 昨日も参考人の意見の聴取があったわけでございますが、その中で、全国の組合長の方は利用量の拡大ということを訴えておられました。一方で、林業経営者の女性の方は自給率の向上に言及しておられたわけでございます。

 林野庁は、自給率の問題について、木材需要を分母とする木材の自給率は、国産材供給量の動向にかかわらず上下することがあり得るなど、国産材の供給、利用の指標としては適切とは言いがたい、むしろ林産物の供給、利用の指標としては、国産材の供給、利用量を直接示すことがわかりやすく適切であると考えるというふうに自給率の問題点については言っているわけですね。

 そこで、一つ確認をしておきたいんですが、木材需要を分母とするという部分で、この分母という問題は非常に大きな問題で、これを分母とする木材の自給率は問題あり、こういうふうなことを言うわけですから、この分母について、なぜ分母が大きくなったのか、この部分について確認をしておきたいと思うのです。どのように考えておられるのか。

中須政府参考人 全体の我が国の木材の需要ということでいえば、製材用、パルプ、チップ用それからその他、こういうふうに大きく三つに分けられるかと思います。国産材がどのように使われるかということでいえば、現況でいえば、我が国の国産材は製材用というところに主として振り向けられている。パルプ、チップ等は、もちろん国産材の端切れとかそういう部分も当然ございますけれども、ほとんどが外材で賄われている、こういうような構造になっている。

 このパルプ、チップ等の部分は、紙の利用拡大ということに伴ってここのところ急速にふえてまいり、現時点では、再生紙というのがかなり拡大をしているということを含めて、横ばい状態ということであります。

 製材需要というのは非常に大きな部分が家の建築用材でありまして、もちろんそのほか家具だとか木製品の材料になるわけでありますが、やはり日本国内におきます住宅の需要、新規着工件数の動向ということによってかなりのぶれがある。現在ですと百二十万戸程度でありますが、景気対策等で、多いときには百五十万戸を超えるような数字もあった、こういう状況であります。

 それらをすべて、そういう用途は捨象して単純な数量で合計したものが需要量ということで分母になっている、こういうことでございます。

白保委員 ですから、分母が拡大していっているというのは、輸入量も拡大しているわけですね。その一方で、林野庁は自給率の向上に向けた国産材利用推進のためにさまざまな取り組みをしているわけですね。公共用、民間用あるいは住宅用、さまざまな手だてを打っていろいろと努力をされているようでありますが、ここでは分母を中心としたところの自給率を考えても余り意味がないというふうなことをおっしゃる。一方では、自給率拡大のためにいろいろな手だてを打たれる。そういうことですね。

 それで、今回の場合には、分母という問題、国産材の供給量を拡大するというふうに言いながらも、自由競争やそういった競争の中で考えたときに分母の部分というものをあいまいにして拡大していこうとしても、結局はその対応を誤っていくんじゃないかな、こういうふうに私自身は受けとめているんですが、その辺はいかがでしょうか。

中須政府参考人 御指摘のとおり、自給率というのは、全体の我が国の需要と供給の関係の中において国産材がどういう地位を占めているか、こういうことを知る上では大変わかりやすい指標でございます。したがって、我々もそういうものの指標を一律にないがしろにしているわけでは全くございません。林業白書等をごらんいただきますとおわかりのとおり、その年における自給率がどうだったかということを掲げ、それをいろいろ分析するというようなことをやっているわけであります。

 ただ、私が前回を含めて申し上げましたのは、林政審議会の報告にも触れられているわけでありますが、あそこでは三点ばかり掲げておりますけれども、政府が実現を図るべき数値目標として掲げるのにどういうものが適当か、こういう議論の中では、一つの答えとして、私どもとしては、そういう利用量という量そのものを掲げてはどうかと言ったわけでございます。冒頭申しましたように、全体の需給関係の中において日本の木材というのがどういう地位を占めているか、需給関係の中においてその姿を明らかにする、ウエートを明らかにする、そういう意味では大変有用な指標でございます。

 いずれにしても、私ども、基本計画の中で全体の需要量というのをどういうふうに推計するかということ自体もいろいろ問題がございます。その点の検討を含めて議論を行った上で、そういう自給率というふうな数字も基本計画の中で示していけるような、そういうことも検討していきたいと思っております。

 もう少し具体的に、どのような形でその辺を表現していくかということについては、これから先、いろいろ御相談をさせていただきたいというふうに思っております。

白保委員 自給率の問題についてもこれまで議論してまいりましたが、要は、国内の利用拡大をどうしていくか、ここに尽きるわけですから、いろいろな議論をしても、結局、国内産が使われない、国産材が使われない、拡大していかない、こういうことであってはいけないわけで、国産材を拡大していくその中で初めて林業も成り立っていくわけであって、そういう面では、その位置がどうなっているかということを明確にする、そういったことは常にいろいろな指標の中で明らかになっていかなきゃいけないだろう、こういうふうに思います。

 その分母、分母があいまいで、こちらの方の利用拡大が見た目で余りよくわからない、わかりにくいということであってはいけませんので、そのことを強く申し上げておきたいと思います。

 時間がありませんが、次の問題について申し上げたいと思います。最後に、間伐について伺いたいと思います。

 間伐対策というのは、従前から取り組まれてきたわけでありますけれども、対策の効果の問題について非常に疑問を持つところがございます。平成十二年度より五カ年計画で百五十万ヘクタールですか、平成九年度実施の約五割の森林を緊急かつ計画的に整備する、これを推進しているわけでございますが、今の進捗状況と今後の具体的な計画といったものについてお伺いをしておきたいと思います。

中須政府参考人 間伐の意義につきましては、残存木の成長を促して、良質な立木の育成を通じ災害に強い森林をつくるということもございますし、とにかく林内に日光が降り注ぐということを確保して、下層植生を繁茂させること等を通じまして土壌の保全を図る、そういう意味においても、つまり森林が本当に多面的な機能を発揮していく上でも間伐というのは極めて重要な問題だ、こういうふうに考えております。

 このため、御指摘のとおり、五年間で百五十万ヘクタール、緊急間伐五カ年対策を進めたところでございます。初年度目の昨年度、十二年度につきましては、ちょうど全国で三十万ヘクタールの間伐を行いました。計画どおりということでございます。現在、二年度目ということで、各都道府県と打ち合わせをしながら、本年も再び三十万ヘクタールの間伐を実施すべく現在努力中、こういうことでございます。

白保委員 終わります。

堀込委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。

 これまでの質疑におきまして重複するところがあるかもしれませんが、これにつきましては確認の意味で重ねてお聞きいたしたいと思います。そしてまた、地域課題もありますので、通告に従い順次質問いたしたいと思います。

 地球環境の保全に大きな役割を果たしている森林は、陸地表面の二七%を占めておりますけれども、人口の急増と貧困、経済活動の活発化等により、開発途上地域を中心として森林の減少が進んでおります。平成二年から平成七年の五年間に、我が国の国土の一・五倍に当たる五千六百万ヘクタールが減少したと推計され、特に熱帯地域においては、年平均で、我が国の国土面積の約三分の一に相当する森林が減少している現状にあります。

 一方、我が国は、国土の三分の二が森林に覆われ、その比率は世界的にもトップ水準にありますが、これは、単に自然条件が樹木の成長に適しているからだけではなく、先人たちによる森林の造成やそしてまた保全へのたゆまぬ努力の結果であります。災害のない安全で豊かな国土や潤いのある生活を築いていくため、さらには地球温暖化対策等の地球規模の問題解決のためにも、このような豊かな森林を維持し保全していく必要があります。

 私は、これまで県議として住民の目線で地方行政の面から農林水産行政に携わってまいりました。私の住む岩手県は、森林面積が百十八万ヘクタールと県土面積の七七%を占め、また蓄積が約一億七千七百万立米で、面積、蓄積とも都道府県で全国第二位と、我が国でも有数の森林県であります。

 県の森林は、杉の人工林やアカマツ林が木材生産の場として活用されているだけではなく、ブナやナラなどの天然林を中心に、水源涵養や保健休養など、さまざまな公益的機能を発揮しております。平成十一年の県の林業基本計画によれば、岩手の森林の有する公益的機能は年間約一兆九千七百億円に上るとされております。

 そこで、最初に、森林については公益的機能が高度に発揮される森林を育てていく施策が重要であると思いますけれども、農林水産大臣のこのことについてのお考えをお伺いいたしたいと思います。

武部国務大臣 今先生御指摘のとおり、地球的な規模で将来を展望した場合にも、お説のとおり砂漠化がどんどん進んでいるということを考えますときに、やはり森林の有する国土の保全、水資源の涵養、地球温暖化の防止、自然環境の保全、大気の浄化等々の公益的機能に対する国民の期待も最近は非常に高まっているのではないか、かように思いまして、全人類的に、また全国民的に、こうした要請、期待にこたえて森林・林業がその役割を果たしていくということが極めて重要な課題である、かように認識しているわけでございまして、このために、今般林業基本法を改正し、森林の有する多面的な機能の持続的発揮を重点とした政策に転換することとした次第でございます。

 今後、重視すべき機能に応じた森林の区分等に対応し、国民の森林に対する多様なニーズにこたえ得る森林の整備に努めてまいりたい、かように考えております。

黄川田委員 大臣からお話がありましたけれども、今回の林業基本法の改正において、森林・林業行政の基本方向を、木材生産のみに着目したものから森林の有する多面的機能の発揮に転換することは、時代に沿ったものであり、私も適切であると思っております。

 しかしながら、この政策転換を生かすためには、基本法を改正するだけでなく、具体的な法律や予算制度などが伴わなければならないと思っております。また、関係者の努力を促すためには、この中央での政策転換が、地方の林業従事者を初めとする関係者や住民に正しく理解されることが必要不可欠だと私は思っております。

 そこで、この基本法における理念の転換をどのように実効あるものにしていくのかを農林水産省に具体的にお尋ねいたしたいと思います。

中須政府参考人 ただいま御指摘のとおり、今回の基本法の改正は、森林の多面的機能の持続的発揮、また林業の健全な発展と林産物の利用の促進、こういうことを基本理念として基本政策を提示したものということでございます。したがいまして、御指摘のとおり、これから先具体的な個々の法制度をどうやっていくのか、そしてまた予算面でどういう裏打ちをしていくのかということが基本的に重要、こういうことに相なるわけであります。

 その出発点として、私どもは、まず基本法の成立を得て、森林・林業基本計画というものの中におきまして、幾つかの数値目標を含め、これから先の中長期的な施策の方向、どういう形でその数値目標を含めて実現を図っていくのかという姿を明らかにする。

 こういう作業を行うと同時に、先生御指摘の、一つは法制度面の問題につきましては、今御一緒に御審議をいただいております森林法の一部改正、それから経営基盤法の一部改正ということを通じまして、この森林・林業基本計画に即してということに相なるわけでありますが、森林の果たすべき機能に応じて、その機能の区分に応じた森林施業の進め方、その方向を明示し、施策体系を導入していく、それから担い手への施業や経営の集約化を図っていく、さらに木材産業の構造改革なり木材利用施策の推進、こういうような個々の具体的な対策に、来年度予算をまず当初の手がかりとして取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。

黄川田委員 森林を社会全体で支えていくという政策の転換でありますので、社会的コストについて具体的に明確にして、国民の理解を求めていく必要があると私は思っております。そこで、地域住民の協力で、そして多面的な機能を維持する方式が日本で定着するのか、そこがかぎだと思いますので、ぜひとも実効あるものにしていただきたいと思っております。

 それでは次に、森林管理対策と森林基盤整備についてお伺いいたします。

 森林の多面的機能が十分に発揮されるためには十分な整備がなされる必要があり、新基本法の第十二条にも森林整備の推進が掲げられております。人工林面積の約五割を占める四百万ヘクタールの人工林が間伐の対象となっております。しかしながら、小径木の需要の伸び悩みや材価の低迷により、必ずしも十分な間伐がなされているとは言えない状況にあります。また、公益的機能が高い森林を育成するためには、抜き切りによって複層林といいますか、そういう状態の森林を育てていくことが効果的でありますけれども、現在の林業情勢のもとでこのような取り組みを進めることは客観的に難しいと思われるわけであります。

 そこで、先ほど白保委員さんからもお話がありましたけれども、この森林の機能を発揮するためには不可欠な間伐の推進あるいは抜き切り等の森林施業をどのように推進していくのか、私からも改めて林野庁長官にお伺いいたします。

中須政府参考人 まず間伐の問題につきましては、当面五年間で百五十万ヘクタールということで、最大限この実現に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 特に、今回の緊急間伐対策の中では、私どもが重視しておりますのは、個々の所有者が間伐をするというのが基本的な姿ではありますが、むしろ面的なまとまりということを重視して、一団の団地的な場所で計画的に間伐を進めていく。そのためには、多くの関係者が集まって計画をつくって、市町村との一定の約束事のもとに間伐を進めていく、そういう場合にある程度国の助成を上乗せして、その促進を図っていく。そういう手法も導入して、面的な広がりを持った間伐というものの計画的な実施に取り組んでいきたいということを間伐では重点にしているわけであります。

 それから、御指摘のございました抜き切りを繰り返しながら循環林をつくり上げていく、いわゆる長期育成循環施業というふうな方向に持っていくことに関しましては、この新しい施策体系というか助成を十三年度から実施するということで、十三年度予算に計上してございます。

 この中では、一定の要件を満たす場合には、最長九十年生までの木を切る、これはいわば主伐に相当するわけでありますが、抜き切りであればそれをも助成対象にするという形で、この長期育成循環施業を推進する。そういうある意味で誘導策を充実させながら、大変厳しい今林業の現状がある中で、間伐の促進及びこの抜き切りによる循環林の育成というか、そういうものを実現させていきたい、こういうふうに考えております。

黄川田委員 それでは、次に地域課題であります。

 近年、地球温暖化の影響とも、また酸性雨や排気ガス等の影響とも言われておりますけれども、松くい虫の被害が年々拡大し、北上しております。私の地元の陸前高田市にも、高田松原と言われる、海岸に沿って二キロにわたる美しい松林があり、三陸海岸の景観をなしておるわけでありますけれども、この松林についても松くい虫の被害が発生しつつあります。岩手県は、県南地域が我が国の松くい虫被害の北限と認識しておりまして、県北及び青森県への北上を阻止するため、目下森林整備の重点課題の一つとして、対策を講じておるところであります。

 そこで、国は北上する松くい虫被害に対し、どのような対策を講じておるのでしょうか。また、酸性雨等の環境因子が影響し、被害の現象が変わってきていると考えられないか。これらについての研究あるいは調査の実態をあわせてお尋ねいたしたいと思います。

中須政府参考人 松くい虫の被害は、ただいま御指摘ございましたように、昭和四十年代後半から我が国において急増いたしました。数量的なピークは、昭和五十四年度が被害量のピークだったようでありまして、二百四十三万立方メートルに達した、こういうことでございます。その後減少に転じてきておりますが、この間、その時々の夏の気候その他によりまして変動を繰り返すということで、今御指摘のありましたとおり、北は秋田県と岩手県が北限ということで、北海道と青森を除く全四十五都府県で発生している、こういう状況にございます。

 松くい虫被害対策については、対策を講ずる松林の範囲を公益的機能の高い松林等に重点化をする。ただいま先生からお話のございました陸前高田市の高田の松原、まさにこういうところを守っていく、そういうところに重点的に対策を講ずるという考え方に立ちまして、いわゆる予防散布、伐倒駆除等の的確な防除を図るとともに、周辺松林の他樹種への転換等、総合的な対策に取り組んでいるところでございます。

 特に、その先端地域におきましては、被害木を早期に発見して徹底的に駆除をする、それから航空機による被害木調査とか被害木の伐倒駆除等の重点的、効果的な推進を図るということで取り組んでおりますが、今後ともなお一層努力をしていきたいと思います。

 なお、酸性雨の問題についてお話がございました。

 林野庁では、平成二年度からモニタリング調査を実施しております。ここ五年ぐらいの数字を私も見てみますと、いわゆる酸性雨ということで、年平均pHは四・五から五・四ということで、pH五・六以下のいわゆる酸性雨というものが降っているという状況はあるわけでありますが、各モニタリングのポイントにおきまして、具体的に森林の衰退というふうな事態には至っていないというのが現在での評価でございます。

 なお分析中でございまして、一定のまとまった段階で明らかにしていきたいと思っておりますが、とりあえずはそういう状況でございますので、松くい虫の問題についても、酸性雨との関係がどうかということについては、直接的な因果関係なりデータというのは得られていないのが現状でございます。

黄川田委員 地元では、国の対策の中で、対象松林の要件の緩和といいますか、指定要件を緩和してほしい、景観のための松原というか、それだけじゃなくて、もうちょっと指定要件を緩和していただけないかという気持ちでありますので、そのところが眼目でありますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それでは続いて、担い手育成と経営改善についてお伺いいたします。

 材価の低迷や経営コストの上昇など、林業をめぐる情勢は厳しい、そのとおりであります。また、山村地域における一層の過疎化、高齢化の進行によるいわゆる不在村地主もふえている現状にあります。

 このような情勢の中で、世代交代などを契機に境界が不明確な森林が増加しており、森林管理に大きな支障となっておりますが、これに対してどのような対策を講じていくのか、林野庁にお伺いいたします。

中須政府参考人 昨日の参考人の皆様方のお話の中でも出てまいりましたが、森林所有者が不在村化するというのは、隣にいてちゃんとやっておられるという方もあるわけで、必ずしも一律には言いがたいわけでありますが、データによれば、二五%程度の森林というのが不在村化しているのではないか、こういうようなデータもあるわけであります。

 そういうことは、森林所有者の森林に対する関心が低くなるということでありまして、今お話の出ました森林の境界自体が不明確になるということが現にかなりの程度起きているようでございます。

 これはアンケート調査でございますが、山林保有者の林業活動に対するアンケートというものがございまして、保有山林の境界の状況がどうかということを聞いた場合、特に不在村者の場合には、五二%の方が不明確だ、自分にとってはどこが境目か必ずしもわかっていない、こういうような結果も出ているわけでありまして、こういうことを放置しておきますと、ますます森林の整備ということにおいて問題が生ずる、こういうことでございます。

 このため、現在におきましても、森林組合等が行う、一定の施業を行うという前提での関係者間の合意形成とか、森林情報の収集とか境界の明確化、こういうものに対して助成を行うということを通じて、森林所有者の意欲を喚起しつつ、境界の明確化等に取り組んでいきたいと思っておりますが、今回の基本法改正法案の十二条二項に規定しております新しい措置等も、そういう中で境界の明確化ということも一つの課題ではないかというふうに考えているところでございます。

 そういった活動を通じまして、森林整備のための不可欠な、ある意味での前提作業でございます、その辺がしっかり判明するように努力を続けていきたいというふうに思います。

黄川田委員 そしてまた、林業就業者の高齢化とともに就業者数は減少の一途を余儀なくされておりますけれども、今日の林業をめぐる厳しい情勢のもとでは、林業後継者の増加を簡単には期待できないのが現状であります。

 私は、森林組合が地域の森林整備の主体として、不在村地主や小規模な森林所有者の森林を預かって施業していくことが今の現状ではベストであると思っております。しかし、森林組合についても基盤が脆弱なものが多く、平成十一年度末のデータでは、全国約千二百組合のうち、広域組合とならず市町村以下の区域を地区とする組合が約七割を占めていると聞いています。

 そこで、森林組合がその期待されている役割を果たすためには、広域合併等によってその経営基盤を強化していくことが必要と考えますが、森林組合の合併状況は、国の目標に対し、最近どのような傾向にあるのでしょうか。また、森林組合の基盤強化のため、今後さらにどのような対策を講じていくのか、林野庁の見解を求めておきたいと思います。

中須政府参考人 森林組合の広域合併が重要だということは御指摘のとおりでございまして、これは森林施業を的確に確保していくということにとどまらず、森林組合の運営、財政基盤の強化という観点からも極めて重要な課題ということで、系統組織も挙げて取り組んでいるわけであります。

 実は、系統組織自体、期末の組合員数を、現在の計画のもとでは、この十三年度末の系統の目標としては全国六百組合に統合を図りたい、こういうふうに掲げていたわけでございますが、現実は、十二年度末で千百七十三組合というのが実績でございますから、この目標に比べて現状は大幅におくれているというのが現況でございます。

 現在では、千百七十三組合のうち二町村以上にまたがる組合は三百九十四組合ということで、約三四%を占めている。そのほかの組合は、市町村の行政区域と同一かそれ以下の森林組合である、こういうような姿に相なっておるわけでございまして、引き続き森林組合の広域合併ということに、系統組織はもちろん、我々も最大の支援をしていかなければならない、こういうふうに考えております。

黄川田委員 合併の進捗率が低いために、財務省からさまざまな意見が出されておったりして、来年三月末で期限が切れるのですか、森林組合合併助成法ですか、この改正、延長についても指摘しておきたいと思います。

 次であります。

 近年は、杉の丸太価格が約一万六千円から七千円台と、昭和四十年代と全く変わっておりません。その一方で、労賃、苗木代等が上昇し林業の採算性が悪化するなど、林業の経営を取り巻く環境は厳しいものであります。

 このような中にあって、やる気を持って林業経営を行う方々を支援していくことが必要となるわけでありますけれども、今回は、林業経営基盤強化法の改正案も提出されております。今回の改正では、このことについてどのような支援や手当てをしているのか、林野庁に改めてお伺いいたします。

中須政府参考人 経営基盤強化法の一部改正におきましては、林業経営改善計画の認定を受けた林家、森林組合、素材生産業者等に対する金融上の支援措置といたしまして、一つは、農林漁業金融公庫資金について、新しい資金を追加する。高性能林業機械の借り入れとか、作業員の研修等に必要な経費を資金の対象にしたいという点が一点。

 二点目は、農林漁業信用基金の無利子資金の融通対象に造林のための資金を加えまして、これもいろいろ議論になっております長期育成循環施業等、伐期の長期化あるいは森林の複層林化というものを行うための施業転換に際して、この無利子資金を借りかえ資金として融資をする、そういうことによって総体としての利子負担の軽減を図る。こういう措置を講じたい。

 それから三点目に、新たに、放置されていると言うと語弊があるかもしれませんが、十分に整備のされていない森林につきまして、その森林の権利あるいは森林施業の委託ということを、この認定を受けた林家とか森林組合にあっせんをする、そういう権限を都道府県知事に与える。

 こういう三点をこの改正の骨子としておるものでございます。

黄川田委員 それでは、ここでさらに生産森林組合について考えてみたいと思います。

 生産森林組合は、組合員が所有する森林を現物出資し、自分たちの労働で経営を行う、いわば資本と労働と経営能力を持ち寄って構成する一つの経営組織であります。しかしながら、実際には入会林野を整備する過程で設立されることが多く、全国では約三千の生産森林組合がありますけれども、そのうち七割弱が入会林野の整備を契機として設立されておると思います。

 林業を取り巻く環境が厳しいことは、先ほど言っておるわけでありますけれども、これら生産森林組合の経営にも大きな影響を与えておるところであります。

 林業生産全体が低迷している中、以前のように収益が上げられないのは仕方がなく、現状ではプラスの収益を期待するよりも、いかにマイナスの損失を最小限にとどめるか、その工夫しかないと思われるわけであります。しかしながら、住民税や固定資産税さえ払えないといった苦境を聞くにつけ、何とかならないかと思うわけであります。

 そこで、この生産森林組合の現状はどうなっているのでしょうか。また、国は生産森林組合のあり方を今後どのように方向づけようとしておるのか、あわせてお伺いいたしたいと思います。

中須政府参考人 平成十二年三月末現在の数字で申し上げますと、生産森林組合、全国で三千四百五十九組合、約三千五百組合ということであります。平均組合員数が約九十人、平均の経営森林面積は約百二十ヘクタールでございます。

 ただ、ただいま先生から御指摘ありましたように、本来この制度自体は、零細な森林所有者が集まって土地を現物出資し共同で森林の管理を行っていく、そこにあるわけでありますが、実態的には七割から八割が、入会林野の権利関係を近代化するあの法律に基づいて整備をして、生産森林組合として今後やっていこうということで成立したものが大部分を占めているというのが現状でございます。

 現在の森林・林業生産活動自体が全体として大変落ち込んでいる中で、例えば、データ的に申し上げますと、生産森林組合の販売実績ということを見ましても、事業年度一年間に立木とか木材を販売した組合、いずれもパーセントで申しまして一けた台、こういうような姿でありまして、かなりの生産森林組合が休眠状態というかそのままの状態で置かれているのではないかという状況がそういうところから見られるわけであります。

 そのために、これから実は私ども、一つ生産森林組合だけの問題ではなくて、森林組合自体をこれから先どういうふうに考えていくか、森林の施業のあり方を長期的に考えていく中で、森林組合がどのような役割を果たしていかなければならないのか、あるいは果たしていけるのか、こういうことをしっかり議論するということで、関係の方々にお集まりをいただきまして検討会を発足させました。

 実はその中で、この生産森林組合の問題につきましても、そういうある種の理想を持ってつくられた制度、そしてまた、かなりのものが入会林野の近代化に伴って生まれてきた、こういう出自というか経過の中にある生産森林組合を今後一体どう扱っていくか、ぜひその検討会の中で十分御議論をいただいて、今後の方向について検討をいただきたい、こういうふうに思っております。

 また、しかるべき機会にこういう検討会からの中間報告なりそういうものが出された段階で、いろいろ関係方面の御意見を聞きながら、方向づけをしてまいりたいと思っております。

黄川田委員 生産森林組合の役員が例えば亡くなったりしますと、役員の変更登記をするわけですね。そうすると、登記所に登録免許税も、負担も大変だというような話もありますので、林野庁にはぜひとも生産組合の現場の生の声をお聞き取りいただきまして、適切な対応をお願いいたしたいと思っております。

 それでは次に、次世代を担う若者の育成でありますが、農業、水産業、林業に共通した課題でありますこのことについては、特に林業の担い手育成については、農業や水産業のそれとは異なる大胆な発想の転換が必要であると私は思っております。

 二〇〇〇年度林業白書によりますと、二十ヘクタール以上を保有する林家の年間林業所得はわずか三十六万円にすぎないのであります。家計に占める林業所得の割合は本当にわずかなもので、これでは小遣い稼ぎにもならないのが実態であります。したがって、従来の発想の延長ではもはや若者はついてこないのであります。

 そこで、私は、国民運動的視点で方策を提言したいと思います。無論、林業白書に見るとおり、森林整備を支援する取り組みはそれなりに行われていることは承知しております。

 一つの方法は、教育改革国民会議の提言にもあるとおり、奉仕活動の一つとして義務づけることであります。さらに、ODAの仕組みのもと、国際協力事業団、JICAの青年海外協力隊の活動が海外支援先で高く評価されておりますけれども、類似のシステムを森林整備の支援体制に取り入れてみてはいかがでしょうか。

 それには、若者を主とするNPO活動を国がもっと積極的に支援する、そういう姿勢が必要であると思っております。

 今回の改正案では、多面的機能の施策の一つとして、一応第十六条で国民の自発的活動の推進を掲げておりますけれども、私が今申し上げたように、国土保全はある意味では国を守る考え方にも似ておると思いますので、国はもっと踏み込んだ政策をとるべきであると思っております。

 農林水産大臣の御見解はいかがでしょうか。

武部国務大臣 近年、一般市民が森林整備に参加する森林ボランティア活動が非常にふえておりまして、これに取り組む団体は、全国で約五百八十団体を数えております。三年前の約二倍となる状況でございます。

 国土の保全はもとより、森林の多面的機能を持続的に発揮させていくためには、こうした森林ボランティアや募金活動への協力を得ることなど、広く国民の理解と参加を得て森林整備を進めていくということが重要だ、かように認識しております。

 このため、農林水産省としては、ボランティア団体等の主体性を尊重しつつ、その活動を促進されるべく、森林ボランティアに関する全国情報の受発信、森林ボランティアの活動拠点となるフィールドの整備、指導者を対象とした研修等を推進するほか、緑の募金の展開に努めてきたところでございます。

 前にもこの委員会で私申し上げましたが、富山県で、いつも学生が現地に参りまして下草刈り、枝落としなどをやっております緑の十字軍、これは戦後数十年に及ぶボランティアでございますし、私は、今先生が、国防にも値する大事な使命というものを持っている、このようなお話がありましたが、ピース・キーピング・オペレーション、PKOに対して、グリーン・キーピング・オペレーション、GKOというものをつくるべきだということを年来主張してまいりました。

 農林水産大臣に就任した今、こうしたことも含めて、林野庁に積極的に構想をまとめてみるように指示したいと思いますし、これは政府部内におきましても非常に大事な問題ですので、小泉総理にもこういったことを提唱して、協力を求めたい、かように考えております。

黄川田委員 かつては学校林というものがありまして、学校の生徒が下刈り等々をしまして、主伐して、それを売って学校のピアノなどの備品に充てたというところもありまして、昔は自然にボランティアをしていた。ボランティアといいますか、山は本当に宝の山でありましたから。現実はまた違ってまいりましたので、ぜひとも積極的な対応をよろしくお願いいたしたいと思います。

 それでは次に、地方分権が推進される中、これからは地方が主体性を持って政策を実行する時代であると思っております。とりわけ、森林の多面的機能の一層の充実を求め、適切な経営、施業を行っていくためには、都道府県や市町村の積極的な取り組みが欠かせないところであります。

 また、多くの山林を抱える、これは平成十二年七月一日現在の数字でありますけれども、全国八百七十七市町村は、森林交付税創設促進連盟に加わり、広く草の根運動を展開しておるところであります。とりわけ、森は海の恋人で知られます宮城県唐桑町の植林の山は岩手県の室根村にあるわけなんですけれども、あそこも本当に主導的な役割を果たしておるところであります。

 そこで、最近、地方交付税の一兆円削減など短絡的な議論がなされておりますが、国土保全上、森林資源を適切に管理していくべく、森林あるいは山村対策などに対する地方財政措置を充実させるべきではないかと思っておりますが、総務省の見解はいかがでしょうか。

香山政府参考人 私どもも、山村地域の振興を図りますとともに、森林の多面的な機能を維持増進するということを大変重要なことと考えておりまして、平成五年度から、地方財政計画上、森林、山村対策というような項目を設けまして、公有林の管理、あるいは担い手対策、さらには、今年度からは公共施設等の備品への木材製品導入、こういったことを想定いたしまして財政措置を講ずることをいたしておりまして、十三年度の地方財政計画では約三千億円の事業費を確保させていただいております。

 今後とも、森林の公益的機能の維持増進、担い手対策等、極めて重要な課題と考えておりますので、地域の実情も踏まえまして適切に対応してまいりたいと考えておるところでございます。

黄川田委員 山村対策については国土交通省あるいはまた林野庁とも連携をとっていただきたいと思いますし、せめて特別地方交付税の措置などの充実を図っていただきたいと思っております。

 それから、残り時間が少なくなってまいりましたので通告の順序を変えまして、次に、森林資源と環境保全についてお伺いいたしたいと思います。

 ヨーロッパでは、二〇一〇年には再生可能エネルギーを一次エネルギーの全体の六%から一二%へ倍増すべく努力しております。そのうちの八・五%をバイオマスで賄おうとしているようでありますが、この中では、木質バイオマスが最も大きな割合を占めております。この背景には、最近EUに加盟した森林国で、人工林を積極的に活用しているスウェーデン、フィンランド、オーストリアの三カ国の影響が大きいのであります。特に、スウェーデン、フィンランド両国は、全エネルギーの約二〇%に達するバイオマス利用の大国であります。

 我が国も、国土の三分の二が森林に覆われた世界有数の森林国であり、かつ、利用エネルギーのほぼ一〇〇%を海外に依存せざるを得ないので、木質系バイオマスエネルギーの積極活用も図らなければならないと私は思っております。地方自治体においても、木材産業振興対策の拡充を図るべく、木質バイオマスのエネルギー利用の促進を重点施策に掲げておるところも出てまいりました。最近、我が国の長期エネルギーの需給計画について、総合エネルギー調査会の新エネルギー部会からその方針案が提示されたと聞いております。

 そこで、再生可能エネルギーの風力等、おのおのの利用計画はどのような見通しでしょうか。また、バイオマスエネルギー、特に木質バイオマスの供給にどのような方策が期待できるのでしょうか。経済産業省の見解をお伺いします。

沖政府参考人 バイオマス、風力発電などの新エネルギーにつきましては、エネルギーの安定供給の確保、地球環境問題への対応という観点から、その開発導入を積極的に推進することが重要でございます。当省といたしましては、技術開発あるいは設備の設置に対する補助を通じて導入促進に努めてきているわけでございます。

 現在、先生おっしゃいましたように、総合資源エネルギー調査会の場を通じまして、長期のエネルギー需給見通しの見直し及び政策の見直しをやっているところでございます。二〇一〇年度の新エネルギーの導入見通しにつきましては、官民による最大限の取り組みを前提とした目標値といたしまして、九九年度実績の約三倍となります、原油換算の千九百十万キロリットル、これは一次エネルギー全体に対する比率で申し上げますと、三・二%程度と設定されている次第でございます。また、この新エネルギーに地熱、水力を加えました再生可能エネルギーで見ますと、一次エネルギー全体の六・六%を目標に設定している次第でございます。

 先生御指摘の木質バイオマスエネルギーにつきましては、これまで、製紙工程における黒液、あるいは製材から出てくる木くず、廃材などを用いた発電などに用いられているわけでございます。また、間伐材を燃料として利用する方法につきましては、収集コストあるいは輸送コストが高いという課題がございますので、この辺のことを解決していくことが課題であろうと考えております。

 このため、我が省といたしましては、今後とも、バイオマスエネルギーにつきまして、技術開発やモデル事業による実証試験を支援することによりその開発導入に積極的に取り組んでまいりたい、かように考えております。

黄川田委員 経済産業省からお伺いいたしましたけれども、林野庁においても木質バイオマスのエネルギーの利用促進につきまして特段の取り組みをお願いいたしたいと思います。特に、運送の部分でさまざま、公共団体から要望等が、補助等、助成等、あると思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それでは、時間でありますので、いずれ森林の多面的機能が本当に国民に理解されるよう林野庁の取り組みを御期待いたしまして、質問を終わります。

 以上であります。

堀込委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時開議

堀込委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。春名直章君。

春名委員 日本共産党の春名直章でございます。大臣、よろしくお願いいたします。

 私、森林率八四%の、日本一の森林面積率を誇る高知県の出身であります。県も部局に森林局を設置して、森林と林業の振興と再生という点では、大変努力をしている県の一つだと私も思っております。私自身も過疎の山村の育ちでして、山が荒れることによってやはり村がだめになっていくという姿の中で育ってきた者の一人ですので、林業・森林の問題について、私なりに真剣にこの間取り組んできた者の一人です。

 今度の林業基本法の改正について、期待もあると思います。そして、私も、その声をできるだけつぶさに聞いてこようと思いまして、いろいろ出かけていって聞いてまいりました。その声も紹介しつつ、ぜひ、あすの森林・林業を二十一世紀、どう発展させていくのかということで、真摯な議論をしていきたいということであります。

 木材の輸入の規制の問題や自給率の向上という問題、私も最大の問題だと思っているのですが、前回、中林委員がこの点で議論をさせていただきましたので、私はこのことには触れません。林業の再生と、業として成り立つどんな努力がこれから必要なのかということを中心に議論をさせていただくということを、最初に申し上げておきたいと思います。

 まず、法案の中身の中で、大臣、危惧している点を一つ指摘をしたいわけです。

 一つは、現行の基本法の中には、「林業の自然的経済的社会的制約による不利」の補正という規定が明記をされておりました。ところが、新基本法には不利の補正という言葉がなくなり、その考え方もなくなってしまったかのような印象を受けてしまいます。現在、日本の「林業の自然的経済的社会的制約」がなくなったと考えられているのか、この点について少しお話を聞きたいと思います。

中須政府参考人 御指摘のとおり、従来のというか現行の基本法におきましては、第二条の「政策の目標」のところにおきまして、「国の林業に関する政策の目標は、国民経済の成長発展と社会生活の進歩向上に即応して、林業の自然的経済的社会的制約による不利を補正し、」云々、こういう形で書かれていたわけであります。

 これは、そもそも林業が抱えている不利、例えば、育林から伐採までの生産期間が非常に長期にわたる、あるいは、林業というのが土地において行われるわけでありまして、生産性の向上には一定の制約がある、あるいは、我が国の林業というのが所有規模が非常に零細で生産性が低位であるとか、そういった条件のもとに置かれていて、他産業に比べて不利な条件にある。これを是正して他産業との格差を是正する、これに政策の基本的なポイントを置く、そういう意味において書かれていた、こういうふうに私ども理解をしているわけであります。

 この状況自体は変わっていないわけでありますが、今回の新しい森林・林業基本法においては、林業というものの健全な育成を図る、その根拠というのを、林業と他産業が、どちらが有利だ不利だ、そういった観点からの施策ということではなくて、林業が森林の多面的機能の発揮に重要な役割を果たしている、このことに着目して、その多面的機能の持続的な発揮のために健全な林業を育成しなければならない、こういう観点から林業に必要な支援を行っていく、そういう意味において物の考え方を転換させた。そのために、この不利の補正という条項については、新しい基本法の中ではそういう書き方はしていない、こういうことでございます。

春名委員 今長官が、不利の問題は変わっていないという認識を発言されたことは重要だと思います。

 他産業との有利不利という考え方はやめて、多面的な機能の発揮という観点から育成していくということに考え方を変えたというのだが、この新しい林業基本法、できるまでに大変な年限がたっているわけですが、その間、不利の補正、不利という問題ではむしろそのギャップは広がってきているというのが今日の実態だと思うのですね。相次ぐ木材輸入の自由化、こういう中で、そして地域や産業の不均衡が一層拡大している。

 ですから、文言上というふうに言われるかもしれないけれども、私は、その考え方の根底に、ここを克服するということは今施策の中で一層重要な問題であるという認識で当たっていただかなければならないと私は思うのですね。

 その点を一つ指摘をしておきたいと思いますし、同時にもう一点お聞きしておきたいのですけれども、林業の不利がどういう形であらわれているかといいますと、決定的問題は木材価格の低迷というところに行き着いていくと思います。価格が採算性を大きく下回った水準で長年推移をしていますので、林業が業として成り立たなくなっている大きな根幹になっています。林業整備への意欲もそぐ結果になっています。

 そこで、今度は大臣にこの点で御認識をお聞きしておきたいのです。

 林業の経営を健全化するという大きな目標があるわけですが、そのことにとって、価格の低迷の打開、価格の安定という問題は避けて通れないし、決定的問題だ、またそういう要求が強いというように当然認識されていると思うのですが、この点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

武部国務大臣 木材価格の低迷が林業の停滞の原因の一つであることは御指摘のとおりであろうと思います。

 基本的には、市場における競争のもとで価格が形成され、需要に見合った供給に努力するという市場メカニズムの利点を生かしつつ、森林の整備、保全の促進、あるいは国産材の需要拡大等の観点から別途支援を行うことが国民の理解を得る上で最も適切な道ではないか、かように考えているわけであります。

 従来から間伐等の森林整備に対し助成措置を講じているところであり、さらに、森林施業を計画的かつ一体的に実施する上で、これに不可欠な森林の現況の調査等の活動を行う森林所有者等への支援について、今回の森林・林業基本法に位置づけ、現在その具体的検討を行っているところでございます。

 また、乾燥材等の供給体制の整備や、加工、流通の拠点施設の整備等により木材の安定供給体制をつくり、国産材の需要拡大を図ってまいりたい、かように考えているわけでありますが、いずれにいたしましても、私ども、国民の理解というものを第一に考えて、それに照らした対応策というものを考えていかなければならない、こういう基本的な考え方で今後も対応してまいりたい、かように存じます。

春名委員 今おっしゃることは私は間違いでないと思うのですね。そうであれば、現行基本法に明記されていた国の施策としての「価格の安定」あるいは「国は、重要な林産物について、需給及び価格の安定を図る」、こういう規定が残念ながらさっぱり消えてしまっている、これでは日本の林業の再生という道は閉ざされかねない、こういう危惧を私は感じざるを得ません。

 主に住宅に使われる国産材のうち、杉の立木価格は十年前の約半額、外材との競争に強いと言われたヒノキも四割に暴落をしているという事態です。

 高知県の森林組合の組合長によりますと、丸太市場価格の推移を調べてもらったのですが、一九八九年、一立米当たり、杉が二万二千二百円、ヒノキが五万六千五百円だった。ところが、昨年二〇〇〇年には、杉が一万二千六百円で、何と五六%にダウン。ヒノキが二万八千円で五〇%にダウン。その上、これはあくまでも売り価格であって、手数料が七%、はえ立て料が千五十円、トラック運賃平均が二千円、これらの経費を引くと、何と、杉でたった八千五百円程度。業として成り立ちようがないという事態になっているということは冷厳たる事実だと思います。

 現行の基本法の中で、価格の安定を図るということを政府の施策として重視をしてきたにもかかわらず、残念ながらこういう事態が今続いているときに、またこれも文言だけだというふうにおっしゃるかもしれないけれども、しかし、この基本法の中に価格の安定をしっかり図っていくということの内容が消えていくということに私は大変な不安を感じるわけでありますが、その点、なぜ規定をなくしてしまうのか、お答えいただきたい。

中須政府参考人 現在の林業基本法の規定、先生御指摘のとおり、十六条に、「国は、重要な林産物について、需給及び価格の安定を図るため、素材生産の円滑化、出荷の調整等必要な施策を講ずるほか、外国産の木材について輸入の適正円滑化等必要な施策を講ずるものとする。」こういうふうに規定してございます。

 これは、御承知のとおり、この昭和三十九年前後の状況というのが、高度経済成長の中で木材需給が逼迫し、価格の高騰が懸念される、こういう状況の中で、林産物の需給及び価格の安定に関する施策ということで、むしろ安定的な供給を拡大して需給及び価格の安定を図る、こういった意識のもとに書かれた規定であります。

 ところが、この時代と現在は、ただいま先生が御指摘になりましたように、木材の需給あるいは価格の状況というのは、さま変わりの状況でございます。木材需給は大幅に緩和し、価格が低下をする、木材需給の状況が基本的に変化をしている、こういう状況でありまして、当時規定したような意味における「需給及び価格の安定」ということでは到底処理し切れない、こういう事態だということでございます。

 そういう意味におきまして、この規定については別途の形での規定ということに変えた。むしろ、ただいま大臣から申し上げましたように、新たな基本法のもとでは、国内での森林の適正な整備を図っていく、そのことによって、木材の供給、利用の促進ということがどうしても必要である、また加工、流通の合理化、需要の開拓等の林産物の供給、利用に関する施策を強化することが必要だ、そのための規定を新たに設けている、こういうことでございます。

春名委員 当時の規定は、価格が暴騰するということを安定させるという趣旨であったというお答えだったと思いますが、そうであれば、私は、別の趣旨で、今日の場合は、低迷して、低迷して、低迷して、だから業として成り立たない事態になっているんだから、そういう逆の事態があるんだから、価格の安定をそういう角度から図るということを明記すればいいじゃないですか。それが林家、林業関係者の願いじゃないかなと。

 だから、ゆがんだ見方をしますと、国は環境の方向に逃げ込んでしまったのかなんという意見を何人かから聞きましたよ。林業を業として本当に支えていくということが、もちろん、この施策を全部やればいろいろな対策がとれると思うのですよ、それはよく私も自覚していますが、しかし、そういうところに、林業という問題についての立場が非常に問われているように私は感じたわけなんです。

 そこで、具体的にお聞きします。

 実際、県単位で見ますと、今こういう低迷の中で、木材価格の安定を図るということを施策の重要課題として位置づけているところが多数生まれていますよね。例えば、宮崎県では、県内産の木材価格が標準価格を下回った場合に補助金を交付する緊急対策をとっています。それから、私のお隣の愛媛県でも、未利用間伐材有効利用促進事業というのに取り組んで、杉を対象として、間伐材の平均単価が生産経費を下回る場合、材積一立方メートル当たり三千円を限度として補助するという制度を実施する、こういう取り組みが各地で生まれております。

 つまり、価格を、逆の意味で、何十年前ではなくて、今の時点でいかに安定させて業として成り立たせるのかということに真摯な努力が、県ごとにこういう形で今生まれているわけだと思うのですね。

 したがって、私は、県のこういう努力を支援するし、リードするということが国としての姿勢として大事ではないかと考えます。価格の安定という大切な政策方向をあえて私は明記をしていただきたいと思いますが、同時に、書いていないけれども重視しているということであれば、こうした県の経験に学んで、何らかの木材価格の安定を目指す国の支援制度、例えば、国が資金の造成を援助するとか、そういうことを研究してみてはどうかというように私は感じますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 経済政策として考えた場合には、やはり市場原理ということが本来の姿だろうと思います。しかし、公共原理というものも一面においてあると思うのですね。この際には、森林の多面的な機能の発揮ということで、森林の公益的な機能というものを国の責任でどこまでやるべきか、いずれにしても、国の役割分担というのはあると思うのです。また、地方自治体の役割分担もあるんだろう、こう思います。その辺の役割分担というものが公共原理の場合にはあると思いますし、当然その際に国の責任というものはあると思います。

 今先生の御指摘の面は、確かに難しい面だろうなと思います。今先生のような考え方で経済政策というものを考えるということは、これは他に及ぼす影響も非常に大きいものもありまして、今の政府はそういうやり方をとる立場にはございません。私も、価格の安定ということじゃなくて、森林の多面的機能の発揮のための支援措置といいますか、これを助長する措置、さらには木材生産のより合理的なシステムづくり、そのことによって、結果として経営の安定に資するというようなやり方を考えていくべきではないのかな、かように考えます。

春名委員 一点だけ言っておきますけれども、農水省の施策は不十分ですけれども、下落した分について補てんするという仕組みは、ほかの分野であるのですね。野菜もありますし、それから果樹もこの間つくりましたし。ですから、ほかのところに影響を与える、異質なものだという考え方では別にないと思うのですよ。私は、そのことは言っておきたいと思います。

 さて、そういう価格の安定ということは大事だと思いますが、そのためにも、幾つかの問題をクリアしなければならないと思います。

 一つは、搬出コストなどを削減するということですね。それは、価格が低くても、手持ちが、何とか持ちこたえるという意味で、搬出コストを削減するということは、段々の委員の皆さんも質問されましたが、非常に大事なことだと思っています。その点で、次の問題として、林道とそれにつなぐ作業道の整備の問題について、少しお話を聞きたいと思います。

 今、特に作業道の整備の補助、これについては主にどんな仕組みがあるのか、簡潔でいいですので、また負担割合を含めてお答えいただきたいと思います。

中須政府参考人 御指摘のとおり、森林における作業を行う場合、作業道というのは不可欠でございます。そういう意味におきまして、一番典型的な例ということで申しますれば、私ども、保育、間伐等の造林事業、この中におきまして、その造林事業に必要な作業道の開設というのは助成対象にしているわけでございまして、この場合は造林関係事業の補助率が適用されるということで、国、県を通じまして、もちろんいろいろな状況で変化はございますが、典型例で申しますれば、おおむね六六%程度が補助される、こういう形をとっております。

春名委員 長官、それは国、県でですね。大体六六%が支援される造林補助事業というのが、主な、ほかにもあるというふうにお聞きしておりますけれども、作業道をつくる際の補助の仕組みになっている。

 さて、作業道というのは山持ちの人たちのためにつくるものですから、要するに、受益者の負担がそこにあるわけですね。その点を少し議論もしてみたいわけですが、一定の受益者負担、地元負担があるわけです。

 一昔前なら、作業道をつくる際に、木を切り出したり、あるいはその周辺の木を切り出すことで、それ自身で材価を稼いで、負担分、地元負担分、受益者負担分を払ってもおつりが来るような状況が確かにあったと思います。しかし、今は、作業道をつくるその負担を払ってまで山に手を入れようとか、木を出そうという意欲も金力もなくなってしまった所有者、林家が非常に多いんじゃないかと思うんです。私は実際、歩いていろいろ聞いて、そんなところへとても自分のお金を出すなんて余裕はないということはたくさん聞いてまいりました。

 そういう点で、今度の法案の中で、森林の多面的な機能、公益的機能を重視するということが非常に強調されているわけです。山を人間社会の共有財産として守り、生かしていくという点でいえば、林道や作業道というのはまさに森林整備促進道とも言えるような、そういう性格のものだと思うんです。

 ですから、本法案のそういう見地からしても、ただ個人だけの益ではなくて、国民全体に還元する利益につながるということで、そういう認識を持って、例えばその受益者負担をある程度、一層軽減するような措置を考えるだとか、そういう施策も、私はこの法案の中身からいって重要な具体化の一つになるんじゃないかというふうに、実態からも、また理念からも考えるものでありますが、この点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

中須政府参考人 既にほかの委員からのお話にお答え申し上げてございますが、例えば、現在の森林整備の各種の事業の中で最も重要で急がれている対策として、間伐の問題がございます。これについては、緊急間伐五カ年対策ということで、昨年度から全国百五十万ヘクタールを五カ年間で間伐を実施しようということで取り組んでいるわけであります。

 こういう事業におきましては、特に間伐というと、主伐ではございませんので、出てくる木というものは材価が相対的には安いという問題もございます。そういうことを考慮いたしまして、私ども、市町村と森林所有者との協定に基づいて、団地的なまとまりを持って間伐を実施する、そういう場合には、この造林事業の補助事業の補助率について従来よりも高い助成水準を適用いたしまして、実質的には先ほど言いました水準が国、県合わせて七二%になる、こういうような対策も講じて緊急間伐の推進を図っている、こういうような状況にございます。

 それとまた、各都道府県とか市町村においては、先ほど申しました国、県を通じた補助ということにあわせて、県単独で、あるいは市町村単独での補助というものを地域の実情に合わせて組み合わせ、さらに軽減を図る助成を行っている、こういう例もあるわけでございまして、地域の実情に応じた取り組みを強化していきたい、してきている、こういう状況でございます。

春名委員 大体そういうことは私も理解して質問しているんですが、実態としては、そういう御努力をいただいた上に、引き続き、この森林基本法、林業基本法の理念からいっても、そして山の現実からいっても、そこをさらに深く検討する必要が出てきているなというふうに私は実態を踏まえて感じていますので、そういう御提案をしているわけであります。

 同時に、そのこととあわせて、森林組合の各組合長が言っているんですけれども、どうしても作業道というのは崩壊するんですね。つくるときには助成があるんですけれども、崩壊した後の管理、それから災害復旧の対象にならないわけなんです。そういう点でいいますと、これから二十一世紀の山をいかに守るのかということを考えたときに、ここの点にも、災害復旧や管理という問題にも光を当てていくことがこれから重要になってくるんじゃないでしょうか。この点は、大臣、どうでしょうか。

中須政府参考人 林道と作業道というものは、大きさとかそういうような分類上の規制というものは原則的にはあるわけでありますが、基本的には林道というのは恒久的な施設である、それに対して作業道は、一定の森林作業を行う際に開設され、その後は基本的には使わないということで、そういう性格の基本的な差があるということが、いろいろ助成体系を含めた差の一番の基礎になっているんだろうと思います。

 そういう意味におきまして、作業道という名前がついていても、実際上恒久的に使うような道であれば、それは林道として取り扱う。例えば、そういうことによって、その維持管理ということ、あるいは、もし災害を受けたときの復旧ということにも支障が生じないわけでありまして、その辺は実情に応じてということには相なろうかと思います。

 決して私ども一律に、機械的にやっているわけではない。そこは弾力的に、十分そういう実態を踏まえて対応したいというふうに思っております。

春名委員 その弾力性、実態を踏まえてということの一つの資料として今私が提案しておりますので、ぜひそういう考え方をしっかり持って取り組んでもらいたいと要望しておきたいと思うんです。

 さて、国産材の活用拡大について次に話を聞いてみたいと思います。

 法案の二十五条に、「国は、林産物の適切な利用の促進に資するため、林産物の利用の意義に関する知識の普及及び情報の提供、林産物の新たな需要の開拓、建物及び工作物における木材の使用の促進その他必要な施策を講ずるものとする。」という一文が入っています。木材の使用、利用の促進、この条文が入っていることを私は大変歓迎しております。非常に重要だと思うんです。この条文をまさに生きたものとするために、今までも大分議論がされてきていますが、私からも幾つかの提案を含めて申し上げたいと思います。

 一つは、公共施設や公共土木事業への国産材の活用の拡大の問題であります。

 現在、公共施設への国産材の利用割合は、大体建築で約三割ぐらい、土木事業では一割以下だとお聞きをしております。例えば、都市基盤整備公団とか地方住宅公社などの建築や増改築、公共土木事業の仕様書に、地域材をしっかり使うということを明記するということをぜひやっていただきたい。活用が一層進むことは確実であります。ぜひそういう点を検討してほしい。

 同時に、各都道府県が地元産材を公共事業に一定割合活用している、そういう例が生まれておりますね。新潟では、県産材の供給目標を、二〇〇五年に二三%、二〇一〇年に二六%ということを決めて、積極的に地域材、地元材を使う努力、こういう試みが各県ごとに行われております。こうした取り組みはまだ一部の県にとどまっているとお聞きしておりますので、農水省がこうした先進的な取り組みを林野庁を先頭に啓発普及するということを強く要請しておきたいと思います。あわせて御答弁をお願いします。

中須政府参考人 これまでもいろいろ御議論が出ておりますように、公共施設等への国産材、地域材の利用ということは、国民に対する普及啓発という意味も含めまして大変重要な課題だということで、私ども引き続き関係省庁と連携しながらこの課題に取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

 ただ、具体的に、例えば御指摘がございました、都市基盤整備公団等が行う建築、増改築の仕様書自体に地域材の使用を明記させる、こういうことにつきましては、建築部材等については、公共施設を含め、施設に応じた性能とか品質、価格の条件を満たす必要があり、現状では、一律に仕様書段階で、地域材、こういうふうに明記することはなかなか難しい、これも率直な実情でございます。

 そういった一定の制約はございますが、公共施設等への国産材の利用については引き続き最大限努力をしてまいりたいと思います。

 同様な意味において、各県が自発的に地域材を各種公共事業等に使われる、一定の目標を掲げてそれをクリアされようとする、大変望ましい、立派な試みでありまして、私どもそういう例をいろいろ集め、それをまた他県にも御紹介するというようなことを含めて、こういった動きがさらに普及することを推奨し、また期待をしたいというふうに思っております。

春名委員 同僚委員も何人か御指摘されていますけれども、学校に木造をというお話が大分この委員会でもされたと思うんですね。私、もう一つ、それに加えて、特別養護老人ホームや老健施設、こういう療養型の施設にぜひ木造建築を普及させていただきたいということを強くお願いしたいと思っています。

 今、こういう点でどのような規制があるのか、簡潔に言ってください。どのような規制があるのかということと、そして特養ホームや老健施設を実際に木造にして建設をした例があるかどうか、この二点について厚生労働省、来てもらっていますので、お答えください。

堤政府参考人 特別養護老人ホームあるいは老健施設等につきましては、基本的には耐火建築あるいは準耐火建築ということをお願いしております。

 そういう建築基準法の範囲内で、かつ防災対策ということも考慮しながら、しかし、お年寄りにとりましては、木材の持つやわらかさとか温かさ、そういうことが精神的なゆとりとか安らぎにつながるということでもございますので、内装等に積極的に活用するようということで林野庁からも要請があり、関係の部局長という名前で各都道府県に指導をいたしております。

 ことしの三月に全国の担当課長会議を開いた際にもその趣旨を徹底しておりますし、具体的に木材を使った事例集などもつくってこれを指導しておりますので、引き続きこういう方向で進めてまいりたいと思っております。

春名委員 木造にして建設した例があるかどうか。

堤政府参考人 今申し上げましたように、特別養護老人ホームあるいは老人保健施設は耐火、準耐火ということでございまして、実際的に、全面的に木造建築というのは私ども聞いておりません。保育所等の、言ってみれば通いの施設の場合には木造でつくっている例がございますが。

春名委員 わかりました。

 今お話があったように、もちろん建築基準法の耐火構造が最大の問題なんですが、ただ、それにしても、木造そのもので老健施設や特養ホームをつくった例は全国に一つもないんだそうです。内装はあるんだそうです。内装は、木のやわらかさ、いろいろありますので。ところが、構造自身を木造にしたのは全国に例がないそうです。学校や保育所やそれから診療所などは木造というのが進んできていますけれども、この分野では残念ながらないという状況だということなんだそうです。

 そこで、なぜかなと私考えてみたんですが、ちょっと時間がないんでそれも答弁してもらえばよかったんですが、はっきり言って、やはり建築費用が鉄筋に比べて耐火構造にすることでかなり割高になるということが最大のネックだと思うんですよね、材質はいいわけだから。

 しかし、ぜひこれは大臣にも聞いていただいて、御協力いただきたいんですけれども、高知県が事例研究をやったんですよ。ちょっと聞いてください。大型木造施設の経済波及効果というのを調査したんですよ。県内の構造が異なる体育施設の四建築物による経済波及効果を産業連関表で比較した調査をやったんですね。

 そうすると、工事費一〇〇に対する波及効果として、鉄筋コンクリートプラス鉄骨づくりが一四三・七の波及効果、鉄筋コンクリートプラス木造では一八九・七の波及効果、それから、木造(一部鉄骨)というのでは一九一・五の波及効果、すべて木造、これは一八七・九という波及効果。

 もちろん、高知県は鋼材の自給率が少ない方の県ですので、鉄骨づくりの波及効果が地元で低いという事情もあると思うんですね。しかし、それにしても、木造系の建築物は鉄筋コンクリートプラス鉄骨づくりよりも四〇%から五〇%高い地域経済波及効果があるという事例研究もやっているんですね。

 今お話が老健局長から出ましたが、木造にしますと療養にとっても非常にいいわけですよね。木の作用によって人々の情緒を安定させるということになりますし、音響効果、断熱性あるいは調湿作用、大変すぐれているということはもう皆さん御承知のとおりでして、こういう経済波及効果も加味しながら、この耐火基準もクリアしながらつくるには確かに割高になる可能性はあるけれども、しかし、ここにも、私は、国産材を使った木造建築などは大変大事なこれからの施策の方向ではないか、こういうふうに認識をしているんです。

 大臣はどうでしょうか。ぜひ御研究の対象にしていただいてと思いますが。

武部国務大臣 私の地元の留辺蘂町で特別養護老人ホームを地元の集成材等を使ってやりたいという強い要請がありました。問題は、今老健局長の答弁にありましたように、耐火建築物の問題、それから耐用年数ですよ、耐用年数。

 したがいまして、私は、このことについては、地元の自治体の長が、それぞれの地域がかたい決意を持ってやるということですね。そのことが一番大事だと思います。そのことによって、今先生が御指摘のように、経済効果もあるというんであれば、やろうと思えばできないことはない。

 また、厚生省初め他の関係府省に対しても、私どもは、さらに今、経済効果の問題のみならず、木材というものがどの程度に教育だとかあるいは福祉、医療、そういったものに効果があるか、いい意味のプラス効果があるかということも研究いたしまして、これは積極的に、積極果敢に公共施設における国産材、地域材の活用について努力してまいりたいと思います。

春名委員 地域がやる決意をすればということですが、もちろん、そういう決意を後押しする国の施策をきょうこの場では求めているわけなんで、後段で言われた積極的な努力をしたいということに心から期待をしながら、ぜひ、問題提起をしましたので、研究してみてほしいということをお願いしたいと思っています。

 それで、最後の問題ですが、林業就業者、後継者の育成問題です。

 議論に大分なっていますけれども、林業就業者は、一九六〇年の四十四万人から九七年では八万人へと激減をしてしまいました。大臣もおっしゃったとおり、五十歳以上の中高年労働者が七〇%を占める。

 高知県で見ましても、年六十日以上山仕事に出ている人が二〇〇〇年でわずか二千三百人しかおりません、作業班員を含んでですよ。うち六十歳以上が千百名。つまり、あと十年たって七十歳を過ぎてこうしたベテランが退きますと、山に入る人が本当にいなくなる、こういう事態が目の前に来ている。それから、もう抜き差しならない、一刻も猶予がならない事態になっているということは、御認識は一緒だと思うんです。

 そこで、それを打開する基本方向という点でいいますと、価格の安定、コストの縮減により林業を業として成り立たせるということが決定的なわけですけれども、同時に、ここまで後継者づくりが深刻化している状況ですので、そういう努力と合わさって後継者対策そのものの独自の取り組みが今強く求められている時期に入っている、私はこういう認識です。その認識でいいかどうかというのもお答えください。

 それで、農水省は今度の法案の中でも森林ボランティアを活用する問題だとかいろいろな施策を提案されているんですけれども、国民の力を結集するという点は大賛成です。同時に、ボランティアだけでは山は守れません。技術を習得し、継承された専門的な技能を持った青年を多数輩出しなければならないというのはもう当然のことだと思うんです。

 例えば、愛媛県の久万町では、九〇年に林業技術者の確保を目指して労務会社いぶきというのをつくりました。このいぶきは、役場職員並みの賃金、保険、年金、退職金制度など社会保障の体制も構築をして、若い作業員を多数確保するという対応をとっています。毎日生き生きと施業に出かけている青年の顔を見て活力が広がっているということで、前町長が大変明るく話をしてくれました。その資金は、町のお金と町民の募金でやっているわけなんですね、基金を募って。そうやって実行してきた。

 あるいは徳島県の上那賀町とか木頭村、木沢村でも、林業労働者の社会保険について掛金の半額を九九年度から助成する制度を導入している。助成対象は森林組合や林業会社など事業体に所属する六十五歳未満の従業員で、植林や伐採など実際に山林で業務に携わる人が対象になっている。こんな努力が各地で今広がっています。

 そこで、少しお聞きしておきたいんですが、時間がないんで。全国的に進んでいる後継者育成への対策のこういう自治体ごとの取り組みを支援する国の制度としてはどうなっているでしょうか。簡潔にお答えください。

中須政府参考人 ただいま御指摘のございました例えば愛媛県の第三セクターいぶきのように、若い人を積極的に採用して、しっかりした雇用条件のもとで仕事を確保し、近隣における森林の作業をしっかりやっている、そういう例は幾つかの地域で先進的事例としてございます。

 これらに対しましては、私ども、もちろんこれまでもいろいろお答えを申し上げてきましたように、林業労働力確保支援センターを通じて、雇用管理の改善であるとか就業者の研修であるとか高性能機械の貸し付け、そういう対策を講じておりますほか、実は、かつての自治省時代から、森林・山村対策ということで地方財政措置を活用いたしまして、道府県に合計約一千億円の担い手のための基金を設ける、この基金の運用益をこういった事業にいろいろ活用していく、こういうことをこれまで行ってきたわけでございます。

 ただ、今、昨今のような事情のもとで、この運用額が縮小しているという状況の中で、平成十三年度には新たに十億円の新規の地方財政措置も講じていただいております。こういったものを活用して、こういった各地での取り組みの支援が行われている、こういう状況だというふうに認識をしております。

春名委員 時間が来ましたので、一点だけで終わりますので、済みません。

 要するに、私は、新規の林業就業者が技術習得をする一定期間、生活費とか社会保険など、その負担がなかなか苦しいわけです、この労務会社とかいろいろなところを聞いてみましたけれども。国の制度として、林業後継者育成制度などを、そういうことを補てんするような制度を検討したらどうかと思うのですね。やはりそういう思い切った対応をぜひ望みたい。

 大臣、最後に一言で結構ですから、この後継者対策、一言言ってもらって終わります。

武部国務大臣 川上から川下まで、流域管理システムの今後のあり方の中でいろいろ検討したらどうかなと思います。

 特に、担い手の問題では、林業機械というのは相当高額でありますし、これを、だからといって民間企業に助成をするというようなことは難しいでしょうから、川上から川下までのそういう流域管理システムの中で一体的に、今もお話ありましたような担い手対策もいろいろやり得るのではないか、かように思いますが、やはりこれも、国と地方の役割分担というのはあるんじゃないかと思います。むしろ地方からいろいろな計画というものを自発的に立てていただいて、いい計画には国が支援をする、こういうやり方が大事じゃないかと思いますね。

春名委員 終わります。どうもありがとうございました。

堀込委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党・市民連合の重野です。

 四十分という時間をいただきまして、大臣並びにそれぞれお願いしております方に答弁をお願いしたいと思います。

 その前に、今春名議員も述べましたが、私も、九州は大分県の、それこそ山の中で生まれ育った人間です。うちの集落は三十一戸、うちから先にはもう道がないのでありまして、それこそ見渡す限り山であります。

 子供のころから、うちの家は代々、ひいじいさんもじいさんもお父さんも山が好きでありまして、一生懸命植林をしました。子供のころ、春休みになると、今は春休みなんかありませんが、当時は春休みがありまして、両親に連れられて母樹林に行って穂木をとるわけですね。それをまた伏せ込んで、それを今度は山に持っていって植えるということを繰り返してやるわけです。だから、山に対する思いというのは、私も人並みにあるつもりであります。

 時々山に帰って、私が植えた木が、もう本当に三十五年ぐらいたっていますから、大きくなったものだと感心するのですが、しかし今、これは私の集落だけではなしに、日本全国、山林地域に行って、山の買い手がない。

 子供のころは本当に、九州ですから、北九州の炭鉱がありましたから、松は坑木で、やはり一日に三回ぐらいトラックが運びに来ていました。だから当時は、そういう、うちから先に道がないような奥でも結構にぎわっていたのですね。お百姓さんの懐ぐあいも結構よかったんじゃないか、炭も売れますし、坑木も売れるし、竹も売れるし。

 ところが、もう今そういうにぎわいというのはありませんね。私どもが親に連れられて植林に行って、ハチに刺され、夏、下刈りに行きますとマムシに食われたり、そういう思い出があるのですが、その山は本当にひっそりとして、もうだれも見向きもしない、極端に言うと。そういう姿を見るにつけ、やはり何とかせにゃいかぬなという思いを私も人並みに持つわけですね。そういう感慨を込めながら、以下質問していきたいと思います。

 まず、今度の林業基本法の一部改正案について、これにつきましては、私は評価する立場にありますし、森林・林業基本法となった、これが日本の林業の新たなる舞台づくりに寄与することを心からの期待をするものであります。

 そこで、林業の生産性の向上を政策目標とする従来の林業基本法の基本理念を、今度のこの改正は、林業の有する多面的機能の発揮、そして林業の健全な発展、こういうふうにしたわけでありまして、これは素直に評価したいと思います。

 本案では、この多面的機能について、第二条におきまして「国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等」と記しておりますが、これら言うところの機能の具体的内容について説明をお願いいたします。

中須政府参考人 典型的には、まず、国土の保全という機能でございますが、傾斜地における土砂の崩壊とか流出を防ぐ、災害の防止、そういった機能がまず挙げられます。

 水源の涵養という機能につきましては、雨が降った場合、それが直ちに河川に流出してしまうということではなくて、河川への流出をなだらかに平準化をする、そしてまた森林土壌により水質を浄化していく、そういう機能をあわせて水源の涵養というふうに考えております。

 さらに、自然環境の保全という観点では、非常に幅広いことが包合し得るわけでありますが、例えば野生動植物の生息、生育の場を提供する、あるいは多様な遺伝子資源を保全する、そういった機能があろうかと思います。

 公衆の保健という意味では、例えば、都会、地域の住民の方々が、森林浴等を含めて森林を利用される、レクリエーションの場として活用する、そういうことがございますし、地球温暖化の防止については、御承知のとおり、空中にございます炭酸ガスというものを木が吸収をして炭素として固定化をする、そのことが温暖化の防止に大変大きな役割を果たす。そういった機能をそれぞれ果たしている、こういうことでございます。

重野委員 今の説明にもありましたように、森林の持つ機能というものはそれほどに多様であり、多彩であり、よくそれをまとめて考えるに、この地球という大きな星にとって切っても切れない、今日の地球というそのものの、他の惑星にない価値というものを生み出す、それほどに大きな意味がある、私はそのように思うし、今の長官の説明もそういう内容であったろうと受けとめます。

 そこで、この新しい法律について、代替方式に基づく試算も一つの重要な要素と考えるわけであります。農水省におきましても、現在、日本学術会議に研究を依頼しているとのことであります。本案によって理念の転換を図るわけでありますが、そうであれば、一刻も早く説得力ある研究報告がなされるよう、特に要請しておきたいと思います。

 問題は、マクロ経済から見てどうなるかということで、今長官も申しましたが、その内容の部分は、国民経済計算に統計上示されるものもありますが、計算しがたいものも多いのではないかと思います。

 一九九二年、リオデジャネイロにおける環境と開発に関する会議で、国連が環境・経済統合計算ハンドブックとして示したいわゆるサテライトシステムを我が国も研究、導入する必要があるのではないか、このように思います。森林の持つ多面的機能を政策理念とするのであれば、このシステム導入は重要な要素となるのではないか、このように思うんですが、見解を伺います。

小田政府参考人 御説明いたします。

 内閣府におきましては、環境・経済統合勘定、今先生御指摘のハンドブックに従いまして研究を進めております。

 これまでのところ、大気汚染あるいは水質汚濁といった経済活動が環境に与えた悪化部分、これを貨幣評価するという試みは行ってまいりました。ただ、環境問題を貨幣評価するというのはなかなか難しいところがございまして、試算の対象を拡大するというところまではまだ至っておりません。

 また、御質問にございました、森林を含みます環境というのがいろいろなサービスを提供しているということはそのとおりだと思いますけれども、これの貨幣評価につきましても、ハンドブックの中ではまだ具体的な手法が示されていないというのが現在までの状況でございます。

 現在、国連におきましてハンドブックの改定作業が行われておるんですけれども、これまでのハンドブックが環境問題について貨幣評価をするというところに重点を置いた内容だったんですが、今、改定の方向は、貨幣評価に余りとらわれずに、経済活動と環境に関係しますいろいろな物量データ、例えばNOxやSOxの排出量とか、そういったものを関係づける物量勘定という方向に動いてきているというふうに私ども受けとめております。

 今後、私どもとしましても、そういう流れを受けまして物量勘定の研究をしていきたいと思っておりますが、その中で、森林も含めます環境の提供しているサービスというものをどういうふうに位置づけることができるか、あわせて勉強していきたい、こういうふうに思っております。

重野委員 この山林の持つ機能というものをどう国民的な合意に持っていくかという上で、今説明がありました内容は非常に私は重要な意味を持っていると思います。

 単に山に関係するものだけの問題としてではなく、全国民的な思いというものを統合していくという上において、具体的にわかりやすい評価というものを国民の前に示す、そういう点について、ひとつ心して取り組んでいただきたいことをお願いしておきます。

 もちろん、今申しました問題は、森林・林業だけの問題ではありません。今説明のあったとおりでありまして、重ねて申しますが、今後、特にこの問題について可及的かつ速やかな取り組みもあわせてお願いしておきます。

 そこで、本案の基本問題について質問いたします。

 林業基本法が森林・林業基本法となりました。一九七〇年、これは非常に節目の年でありまして、国内生産量を外材、外国から輸入する量が上回った年と私は心得ております。私は、本来ならその時点が実は全面的な改正があってしかるべき節目ではなかったのかな、こういうふうな思いを持つわけです。

 公益的機能である森林と事業的機能である林業、概念においては異なる概念でありますが、そういう異なる概念を統合して一法案とした積極的な理由、それはどういうふうに説明されるか、お伺いいたします。

武部国務大臣 新たな基本法におきましては、森林の有する多面的な機能の持続的発揮、また、林業の健全な発展とそのための林産物の適切な供給、利用の確保を基本理念として位置づけているわけでありまして、理念の実現のための基本的な政策として、まず第一に、森林の有する機能の発揮を図るための森林の整備、保全などのいわゆる森林政策、そして二つ目には、林業生産活動の支援、林産物の加工、流通を担う木材産業の合理化など、いわゆる産業政策としての林業政策を位置づけることとしているわけであります。

 このため、基本法の題名につきましても、政策の理念とその展開方向を明確にあらわすために、森林政策と林業政策をあらわす森林・林業基本法とした次第であります。

重野委員 今、説明は説明としてわかるんですが、そういうのを合わせた積極的理由は何ですかというふうな質問をしたんですが、その点の説明というのはちょっと今の説明では私としては不十分だと思うんですが、再度。

武部国務大臣 積極的な理由ということについては私も十分な理解を持ち合わせておりませんが、先ほど先生も御指摘ありましたように、本来、もっと早くに基本法を改正すべきそういう時期があったと思います。先ほども私は、もう十五年ぐらい前にやっておくべきだった、こういうふうに申し上げましたが。したがいまして、そういう時間的な落差というものを持ちながら、本来、二つの基本法を今の時点で考えざるを得ないような背景もあったんじゃないかと。

 私が大臣に就任する以前にこの法案は前大臣が提案しているわけでございますが、さような意味ではちょっと無責任な答弁になるかもしれませんけれども、私も、森林・林業のことについてはそれなりの見識を持っている所存でございまして、そういう意味では、先生が積極的には、こういうお尋ねでございますが、積極的にはということについて、私は、前段申し上げたことが積極的なことでもあり、あえて申し上げるならば、もっと早くにやっておくべきこともあったし、その後、時間差があって、今日的に法改正を試みなければならない、そういうものもあったのかなと。

 ちょっと、十分な答えだとは思っておりませんが、一応お答えとさせていただきます。

重野委員 大臣の答弁を了として、今言った決意をひとつ、一〇〇%、一二〇%今後に生かしていただきたいということを要望しておきます。

 次に、労働力の点について何点か伺いますが、基本計画と労働力の問題であります。

 十一条二項の二の「多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標」と必要労働力見通しとは当然連動するものと私は受けとめるわけであります。したがって、森林・林業基本計画における事項として、この労働力の問題というのはやはり一項を掲げる、それほど大きい価値ある課題と私は受けとめるし、そういう位置づけが必要ではないか、このように思うのですが、その点についてはいかがでしょう。

中須政府参考人 御指摘のとおり、十一条の二項、特に二号に書かれております「森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標」ということを掲げる、こういうことになっているわけでありますが、この目標については、望ましい森林施業のあり方あるいはそれに伴い産出される木材の供給量ということを踏まえて、関係者が取り組むべき課題を明らかにしつつ、目標とすべき具体的な森林資源の状態あるいは木材の供給、利用量を示す、こういうことに相なろうかと思います。

 ただ、御指摘のとおり、林業労働力というものをいかに確保するかということは、実は、今申し上げましたその目標を達成するためのどうしても欠かせない課題の一つであります。そういう意味におきまして、今後、基本計画を策定する中で、具体的にこれから必要とされる森林整備の事業量あるいは労働生産性というものがどういうふうに推移をするのか、そういうことを十分見きわめた上で所要の労働力の見通しということを、どこまでその先の見通しから可能かというような限界はあろうかと思いますが、明らかにしていかなければならない、こういうふうに考えております。

重野委員 同じ労働力に関連して、労働力の新規参入と林業への定着を図るには、環境保全と経済活動という林業労働の意義を明確にするとともに、一例を挙げれば、山村地域でありますから、よく、役場の職員あるいは農協の職員とか、そういうところが一つの目安にされると思うのでありますが、林業労働者に対する待遇の保障、先ほど話がありました。そういうことが必要ではないか。それがやはり林業労働者の将来の目標設定にとって、欠かすことのできない課題であろうというふうに思うわけです。

 あわせて、通年雇用が保障されること、あるいは各種の休暇であるとか退職金、年金など、労働環境の整備が私は不可欠だというふうに思います。

 今後、この点についてどういうふうに具体的に指導していくのか、あるいは、そういう状態をつくっていく決意というものを持っていると思うのですが、そこら辺についてお聞かせください。

中須政府参考人 ただいま御指摘のございました林業のいわゆる労働環境ということで見ますと、これまでの、現在の基本法のもとにおいて、長期的に見れば、雇用の長期化であるとか機械化等による労働強度の軽減ということで徐々に改善が図られてきている、こういうふうには認識しております。

 しかし、残念ながら、例えば林業事業体の労働者のほぼ半数が今なお年間百五十日未満の短期就業者である、こういうような実態がございますし、社会保険への加入状況というものを見ましても、労災保険に関しましてはほぼ一〇〇%ということに相なっておりますが、そのほかの雇用保険等につきましては加入率になお問題がある。そして、特に強調しなければならないのは、労働災害の発生頻度というものが、林業労働の場合、全産業平均の八倍程度と非常に高い水準にある。こういうことにおきまして、他産業に比べ、決して十分とは言えない状況にある。

 こういった環境について、できるだけ早く改善を図る。そのためには、こういう方々を雇用する林業事業体自体が安定した経営が行える、そういう環境をつくっていくことが重要でありますが、緊急の課題としてさらに力を入れて取り組まなければならない、そういうふうに認識をしております。

重野委員 そういう方向で、ひとつ全力を挙げて取り組んでいただきたいと思います。

 次に、林業の持続的経営問題についてであります。

 法三条に定める林業の健全な発展、これは持続的林業経営の確立に尽きると私は考えます。そうした観点からしますと、生産性の向上及び林業構造の確立、林産物の供給、利用の確保といった施策だけで確立できるのかなという疑問を持つわけであります。

 現実には低価格の外材がどんどん入ってまいります。林業者がこぞって求める木材価格の安定あるいは木材価格対策、民有林も国有林も例外じゃありませんが、一体のものとして、そういう林家の持つ不安あるいは期待にどうこたえていくか、これは日本林業の将来にとって決定的な意味を持つと思うのでありますが、この点についての認識あるいは方針をお聞かせください。

中須政府参考人 この点に関しましては、先ほど大臣もちょっと言及をされたわけでございますが、確かに現在の林業生産活動の低迷、こういう状態を現出している大きな理由の一つとして、木材価格の低落、低迷ということが原因の一つであることは御指摘のとおりだろうと私ども思っております。

 ただ、基本的には、市場メカニズムと申しましょうか、そういうもとで、需要者の動向というものが生産者にそのままじかに伝わる、こういう市場メカニズム、市場原理というものを基礎として価格が形成されるということ自体は否定し得べくもないわけでありまして、私ども、そこはそういうものとしてとらえた上で、ただ、林業につきましては、森林の持っている多面的な機能をいかに林業が現実に担っているかという観点から、いわば森林の持っている公共財としての性格、そういう側面から当然、林業に対して一定の支援がなされなければならない。そういう視点からの支援を別途行っていく。

 それは、森林の整備、保全の促進であるとか、あるいは国産材の需要拡大であるとか、そういう観点からの支援を行うことが、国民の理解を得ながら、我が国の森林・林業というものを守っていく最も適切な方法ではないか、こういうふうに思っているわけであります。

 それと同時に、やはり現在の価格の状況等を、価格、流通と申しましょうか、見ておりますと、やはり国産材が、現在国民が求めている木材なら木材というもののニーズ、特に、品質とか性能ということを明示して販売がされなければならない、そういう点について非常におくれをとっているという状況があるわけでございます。

 端的には、乾燥材の供給体制をどう整備していくか、こういうことは、そういう市場のシグナルを受けて、国としてもさまざまな形で支援をしながら、供給体制を供給サイドとしても整備をしていく、そういった施策を多角的に組み合わせていくことによって、林業の発展の基礎をつくっていくというか、条件を整備していく、こういうような考え方で対応してまいりたいというふうに基本的に考えているわけでございます。

重野委員 次に、森林整備の実効性について質問をいたします。

 森林整備とその実効性確保について、法案は、森林整備の責務を定め、伐採後の植林など、勧告制度の強化、森林整備体制の整備について、森林所有者の林業生産活動を通じた森林整備を基本とし、自助努力が困難な場合、林業事業体への経営委託、またそれでも困難な場合には、公的セクターによる施業、こういうふうに書いております。

 こうした考えは、これまでの林業生産活動を通じた考え方を体系化しただけではないのかな、こういうふうに私は思うのです。したがって、この森林整備の実効性という観点から、この程度でいかほどかというような思いがしないでもありませんが、そこについて、どのようにお考えでしょうか。

中須政府参考人 森林整備を推進していくという観点からは、個別のいろいろな対策、施策としては、もちろん基本法の改正を待たずして、幾つかの試みというか、新しい取り組みということにも私ども取り組んできたわけでございまして、そういう意味で、既存のものの集大成、こういうような御指摘も、一面ではそのとおりかというふうに思うわけであります。

 いずれにいたしましても、森林というのは、公益的機能の持続的発揮ということを通じて、広く国民生活の安定、向上に寄与する、こういう極めて公共的な側面を持っている。しかし同時に、森林を整備していく、木が大きくなっていくということが、その森林所有者の、木の所有者の私的財産の形成につながっている、これもまた否定できないわけでありまして、そういう意味におきまして、私ども、この新しい基本法の十二条に、森林の整備、保全ということを国が推進をするんだということを明記する。

 これは、やはり自助努力ということを基礎にしつつも、それを国として支える体制をつくる、こういうことでありましょうし、それは言葉をかえて言えば、どうしても公益的機能を十全に発揮しなければならない、そういう場所において、森林所有者にゆだねるのではそれが実現できない場合には、公的な力によって、財政的な負担によって整備をする、そういうことも組み合わせながら進めていくのである、こういう考え方をとっているわけでありまして、そういう中で、実態の変化と申しましょうか、実情を十分つかみながら、そういう施策の内容の充実に今後とも努めていく、こういう形で取り組んでいきたいと考えております。

重野委員 問題は、森林計画の整備目標と実際の施業との間に、結果として大きな乖離が生ずるだろうと私は懸念をするわけです。

 それで、いろいろ議論はありますが、この森林整備計画の実効性を高めていく、そのためには、やはり国の思い切った財政出動というものが担保されない限り、これはなかなか実行できない。したがって、国におかれては、そういう意味で、思い切った財政出動をお願いしたいというように要望しておきたいと思います。

 次に、間伐のあり方でありますが、緊急五カ年計画が実施されております。間伐対象分の齢級別計画量と実施状況、これはどうなっておりますか、お聞かせください。

中須政府参考人 私、ただいま手元に持っております資料で、齢級別間伐の実施状況ということで申し上げますと、平成七年から十一年までの五年間の数字がございます。この間の間伐面積、毎年約二十万ヘクタール程度でございまして、実際にこの五年間合計すると、百十三万七千ヘクタールの面積について間伐が実施された、こういうデータになっております。

 このうち、七齢級以下、つまり、植林後三十五年を経ていない齢級の間伐が百二万七千ヘクタール、八齢級以上、三十六年生以上の齢級の間伐が十万九千ヘクタール、こういうようなデータを私は今手元に持っております。

重野委員 この間伐の問題は、やはり間伐は、適期に間伐しないと間伐の価値がないのですね。結局、販売収入に結びつく高齢級の林にそれが集中する。つまり、間伐した木材が売れますからね。したがって、若齢間伐、なかなか手が届かないというのが実態であります。

 したがって、初回間伐については、徹底的に若齢間伐に重点を置く、そのためにはやはり金もかけるという決意を国が持って進めていかないと、現場においては、なかなか若齢間伐というのは進まないと思うのですね。その点について、どういうふうに考えておるか、お聞かせください。

中須政府参考人 確かに、御指摘のような問題点があろうかと思います。初回間伐の場合、初回間伐と申しましても、一体どのくらいの齢級でやるかということによって状況は変わってくるのでありましょうが、やはり小径材ということで、材価が、要するに木材としての利用がなかなか厳しい、こういう状況はあろうかと思います。

 そういう意味におきまして、緊急間伐五カ年対策という中でも、これも繰り返し御説明申し上げておりますが、必要な路網の整備と同時に、市町村との協定に基づいて、地域全体での取り組みというようなことに対して、従来よりも高い補助率を適用するというふうな形での間伐推進に努力をしているということと同時に、各都道府県におきましても、この緊急間伐に対する国の補助事業というのに合わせて、各地域の具体的な実情に応じて、森林所有者の負担を軽減するための追加的な助成を行う、こういうような取り組みもなされている。

 さらに、先ほど触れた話で申しますと、例えば森林所有者等による適正な管理が困難になっている水土保全機能にかかわる保安林等については、治山事業によって間伐を、言ってみれば全額公費で、本数調整伐というような形で実施をする。

 こういったことの組み合わせによってできる限りの、御指摘のような初回間伐を含めて、対応を努力していきたいというふうに考えております。

重野委員 わかりました。とにかく努力をお願いいたします。

 最後に、国有林野事業について質問をいたします。

 結論から言うと、国有林の役割というのはやはり大きいですね。日本の林野に占める割合も大きいし、そういう国有林というのは大きな価値があるし、役割は大きいんだということに比して、国が果たしてそれだけのことをやっておるかということをあえて言わなければならない、それが現実ではないかと思うんです。

 国有林の管理経営。私の家の奥にも、昔は国有林というのは官山、官山と言っていたんですね。十年ぐらい家に事務所があって、営林署が来て、伐採をしたんですよ。その山を私は昔から知っていますから、僕に言わせれば、手入れがよくない、そのときにつくった道ももう全然道のていをなしておらぬ、それが現実ですね。私は、やはり国有林に対してもっと国は責任を持って守りをしていかなきゃいかぬというふうに思います。

 同時に、国有林の林野事業会計もやはり厳しいことを承知しています。独立採算なんといったって、今の状態でできるはずがない。これはやはり山の価値というものをこの際もう一度見直して、その中で国有林の位置づけというものを明確にする。そこについて、最後に農林大臣の決意をお聞かせください。

武部国務大臣 公益的機能の維持増進を重視するとともに、財務の健全性を回復し、国民共通の財産である国有林野を将来にわたって適切かつ効率的に管理経営する体制を確立することが極めて重要だと考えております。

 森林の多面的機能の持続的発揮を図るために必要な経費等については、一般会計からの繰り入れ措置を講じてまいる考えでございます。

重野委員 終わります。

堀込委員長 次に、金子恭之君。

金子(恭)委員 私は、21世紀クラブの金子恭之でございます。林業関係三法案につきまして、最後の質問をさせていただきます。

 今質問されました重野委員と同じく、私も、九州山地の真ん中、林業地帯、山村の中で生まれまして、父も林業でございます。そういう中で、同じ山村出身の委員がいらっしゃって、非常に心強く今思ったような次第でございます。

 私の地元は林業・木材産業が非常に盛んな地域でございまして、現況は、非常に厳しい状況の中で皆さん方が歯を食いしばって頑張っていただいているわけであります。私と懇意にしていただいている方々も真剣に林業に取り組んでいらっしゃるわけで、グループをつくって勉強会をしたり、協力し合って何とか今歯を食いしばってしのいでいただいているわけでございます。今回、林業関係法案について質問をするということをお話ししましたら、ぜひ現況を訴えてくれというようなお話がございました。

 そういう中で、お話を伺ったところによりますと、現在、杉、三十年生の間伐材の木材価格ですが、一立方メートル平均単価が一万円を割り、八千円から九千円前後の単価になりました。生産費が一万円と考えますと、千円から二千円の赤字になります。それに、トラック運賃、市場の手数料、労災保険料等、消費税をも加算しますと、一万四千円から一万五千円の生産原価になります。現在の木材価格では六千円から七千円の赤字になり、山の手入れをしようにも、手入れができる状況ではありません。現在の木材価格で作業をしたら赤字がふえるばかりで、作業になりませんので、現場に合った林業政策を検討してほしいと思いますというお話でありました。

 もちろんこの方は法人経営をなされ、自分のところで作業員の方を雇っていらっしゃいまして、自己管理をされている方であります。そういう意味では、森林組合を通した補助事業ではないと思いますが、それにしても非常に厳しい状況であるということは間違いないわけであります。

 その中で、お話をしている中で今一番問題意識が大きいのは、これまで、造林資金を初め公庫からお金を借りて、負債をしながら頑張ってこられているわけでありますが、五、六%の利息を払いながら、いよいよ元本償還というような時期になってきたわけであります。

 償還してくれ、償還してくれと言われても、今そういう状況でありますので、木材を売ってもほとんど利益にならないというような状況で、返したくても返せないというような状況が続いているわけであります。その中で、今の負債をぜひ借りかえさせていただいて、今四十年生を、五十年、六十年、七十年、八十年と長伐期化させていただいて、どうにかしのがせていただきたいというのが皆さん方の切なる願いであるわけであります。

 その中で、今回、農林漁業信用基金の無利子資金の融通対象の拡大等、非常に林業家にとってはありがたい施策を講じていただいているわけでありますが、やはり感じたのは、その方が言いました、公庫資金を利用して山の育成管理を行ってきた人たちが今一番悩み苦しんでおられると思いますと。今の制度は、今から融資を受け、山を育てる人たちに対しての制度のようで、今まで山をつくり育ててきた人たちに対しての助成策が一つもないと言ってよい状況でありますというふうに言われるわけです。

 調べてみますと、これまでも低利の施業転換資金というのがあったわけでございまして、どうしてこれを皆さん方御存じないんだろうか、そういうものを利用されていないのだろうかなということを非常に疑問に思うわけであります。こういう政策があったとしても、だれも知らなくて、だれも利用できないような政策であれば絵にかいたもちでありまして、そういう意味では、これまでの制度の周知が徹底していなかったんではないか、また、条件が厳しかったんではないだろうかというふうな疑念を持つわけであります。

 その点について林野庁長官にお答えをお願いいたします。

中須政府参考人 御指摘のとおり、造林資金等を借り入れて植林をされて造林事業をやってこられたという方々にとって、現下の木材価格の状況を含めた林業をめぐる状況、大変厳しいものになっている、御指摘のとおりであります。

 ここを乗り切るということのためには、お話がございましたように、伐期の長期化とか複層林化ということによりまして主伐の時期を先に延ばしていく、それまでの間は既存の資金について借りかえを認める、しかも、借りかえに際しては、できるだけ低利の資金に借りかえることによって負担を軽減する、こういうことで対処をしていくということがやはり基本になろうかと思います。

 そういう意味におきまして、ただいまのお話を聞きまして、私どもも改めて、そういった制度が設けられているわけであります、決して新しい方々だけではなくて、既に借り入れた方々について、施業転換を行うという場合に無利子の資金をあわせ貸しするというのも今回の制度改正の内容に含まれているわけであります。

 私ども、法改正後、改めてこういった制度のPR、それから、具体的にはやはりその認定を受けるとかそういう一連の手続がございますから、その点に関しましては、都道府県を通じまして、実際に利用される方々の御不便にならないように最大限の努力をしなければならない、そういうふうにただいまの御質問を伺って感じました。そのように努力いたします。

金子(恭)委員 ありがとうございました。せっかくこういう融資制度があるわけでありますから、利用しやすいものにしていただいて、今後拡充していただきたいというふうに思っておる次第でございます。

 続きまして、武部農林水産大臣に質問させていただきます。

 間伐事業やいろいろな施業につきまして、これから施業の集約化を図っていかなければいけない。そういう意味では、森林整備の担い手として森林組合の役割というのは大きなものであるだろうというふうに思っているわけであります。

 先ほど来、質疑の中で、間伐事業等につきましては、面的な広がり、それから計画的な実施というようなこともあって、政策の誘導のために森林組合を通した事業というのが非常に有利に動いているわけでございまして、そのことについて質問させていただきたいわけであります。

 今、森林組合に加盟していらっしゃる方は面積で七割というふうに聞いておるわけであります。そういう意味で、まだ三割の方が組合に加盟していらっしゃらない非組合員の方であります。非組合員所有の森林についても森林組合が施業を受託して森林整備をしていくことが効率的であるというふうに考えております。

 このような森林所有者につきまして、組合に加入させることが好ましいのか、どういうふうに思っていらっしゃるのか、大臣のお考えをお伺いいたします。

武部国務大臣 金子先生おっしゃるとおりだと思いますね。

 森林所有者の不在村化、林家の世代交代や林業の採算性の悪化等の中で、地域の森林の適切な管理を推進するためには、森林組合の機能を充実するとともに、森林所有者の森林組合への加入を確保、促進することはもう絶対不可欠だ、かように思います。

 そのためには、森林組合が行う森林所有者への森林施業の働きかけや、不在村森林所有者等にかわって行う森林の現況の調査等に関する措置を十分に行うことによりまして、森林所有者の森林組合への加入の確保、促進を図ってまいりたい、かように存じます。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、林野庁長官にお伺いいたします。

 先ほど来、作業道の役割や重要性についてのお話があったわけであります。私の地元でもそうでございますが、地域においては後継者不足そして高齢化が進んでおりまして、また、林業の作業につきましては危険を伴う作業が多いわけでございます。そういう中で、省力化そして危険を防止するために高性能林業機械の導入というのが今図られているわけでございまして、私も地元で高性能林業機械の研修会にも一回お邪魔したことがあるわけでございます。

 その中で、高性能機械というのは重要なものであるというのはわかっていながら、作業道の問題があって、作業道が狭くて現場までその高性能機械を持っていきづらいというようなことが言われているわけであります。作業道にどういう規格があるかどうかわかりませんが、せっかくであるならば、そういうものを拡充していく必要があるのではないかというふうに思っております。

 その点について、林野庁長官のお考えをお伺いいたします。

中須政府参考人 御指摘のとおり、効率的に森林整備を推進するという上で路網の整備が重要である。それと同時に、高性能林業機械をできる限り導入して効率化を図る、これも重要であります。

 本来、路網整備という意味での作業道につきましては、通常、国庫補助を受けて開設する場合、車道の幅員三メートル以下というのが基本的な扱いになっております。ただ、問題は、やはり高性能機械を導入して行う場合であれば、そういうところにこだわっていては意味がないわけでございます。そういう意味におきまして、高性能林業機械を導入する場合にはそれに応じた幅員を可能にするように、そこは弾力的に扱えるように私ども努力しているつもりでございます。

 また同時に、実はこの問題はもう一方で、大変急峻な我が国において、欧米基準というか外国の基準によるような大型機械のみで作業ができるか。そういう意味におきまして、高性能林業機械の小型化、そういうことを開発して取り組んでいく、そういうこともまた他方で重要だろうと思います。

 両方の側面におきまして努力をすべき課題だ、こういうふうに考えております。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

 最後に、武部農林水産大臣にお伺いいたします。

 先日の質問の中で、森林の多面的機能を十分に発揮するには長伐期施業というのが必要であろう。四十年生より五十年生、八十年生、大きくなればなるほど、林齢が高くなればなるほどそういう効果を発揮しやすいというようなことで、遠藤副大臣からも長伐期施業への転換が非常に重要なことであるというお話がございました。

 その中でお聞きしたいわけでありますが、長伐期施業を推進していく中で、その間、十年、二十年、伐採収入が先送りされるわけでありまして、その間の収入についてどうやって確保していくかというのが大きな問題ではなかろうかなというふうに思っております。そうでないと持続的な林業経営というのはできないわけでございまして、そこを大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お聞きしたいというふうに思っております。

武部国務大臣 先生も御案内と思いますけれども、平成十三年度から、長期育成循環施業の導入に要する経費について助成することとしております。また、先ほど長官の答弁にもありましたように、過去に借り受けた造林資金の償還について、従来の農林漁業金融公庫の施業転換資金の貸し付けに加えまして、今回の林業経営基盤強化法の改正によりまして、無利子資金をあわせて貸し付けるということにしております。これらにより円滑な施業の転換が図られるように措置してまいりたい、かように考えております。

金子(恭)委員 ぜひ、武部農林水産大臣以下農林水産省の皆さん方が中心になって、この林業関係三法案をもとに有効な施策を講じていただいて、明るい林業が実現できますようにお願いさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

堀込委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 ただいま議題となっております各案中、まず、林業基本法の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 この際、本案に対し、二田孝治君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブの六派共同提案による修正案並びに春名直章君から日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から順次趣旨の説明を求めます。鉢呂吉雄君。

    ―――――――――――――

 林業基本法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鉢呂委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブを代表して、林業基本法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。

 修正案は、お手元に配付したとおりでございます。

 以下、その内容を簡単に申し上げます。

 第一点は、「森林の適正な整備及び保全を図るに当たつては、山村において林業生産活動が継続的に行われることが重要であることにかんがみ、定住の促進等による山村の振興が図られるよう配慮されなければならない」ものとすることであります。

 第二点は、林業については、林業の「持続的かつ」健全な発展が図られなければならないものとすることであります。

 第三点は、国及び地方公共団体は、林業従事者等の自主的な努力を「支援」することを旨とするものとすることであります。

 第四点は、国は、森林の現況の調査その他の「地域における活動」を確保するための支援を行うものとすることであります。

 以上であります。

 何とぞ全委員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)

堀込委員長 次に、春名直章君。

    ―――――――――――――

 林業基本法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

春名委員 私は、日本共産党を代表して、林業基本法の一部を改正する法律案に対する修正案について、その提案理由を御説明申し上げます。

 第一は、林業の自給率の目標を基本計画に明記することです。

 なぜ、食料・農業・農村基本法と水産基本法には基本計画の中に自給率の目標を明記するよう定めているのに、森林・林業基本法には明記しないのか、これが多くの林業・木材産業関係者の声です。また、昨日の参考人質疑の中でもこぞってその必要性が述べられました。我が国の森林資源は、人工林を中心に成熟しつつあるにもかかわらず、木材需要の大半を輸入材で賄ってきたことから、木材自給率は二〇%まで低下しています。

 今、基本法の制定に当たって求められていることは、何よりも木材自給率の目標値を設定して、林業・木材産業の振興に向けた具体的な取り組みを各地で提起していくことです。そして、林業・木材産業の振興に本格的に取り組むことを、関係者ばかりでなく広く国民に表明すべきです。

 その際、我が国の国土の二割、森林面積の三割を占める国有林が、自国の木材自給率にどれだけ貢献できるのか、その寄与度を明確にすることは、国民に対する責務と考えます。我が党は、木材の自給率の目標値を長期的には五〇%に、またその目標値に対する国有林野の寄与度を三〇%とするよう提案するものです。

 第二に、現行法にある「林業の自然的経済的社会的制約による不利」の補正条項は、地域間また産業上も不均衡が拡大しているもとで、森林の多面的機能、農山村の維持という面からも一層重要になっており、しっかりと位置づけ、削除すべきではありません。

 第三に、林産物の需要及び価格の安定に関する施策を明記することです。

 今、木材価格の低迷が再造林費も出ない事態を招き、林業関係者から国産材価格の回復が切実に求められています。関係自治体も、価格の維持、下落防止のため、独自の価格、所得対策を講じております。国は、こうした関係自治体任せにしないで、現時点にふさわしく価格安定対策をしっかりと位置づけるべきです。

 以上が、修正案を提案する理由です。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたしまして、趣旨の説明を終わります。

堀込委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより原案及びこれに対する両修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 林業基本法の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、春名直章君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、二田孝治君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、森林法の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 森林法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

堀込委員長 次に、内閣提出、参議院送付、土地改良法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣武部勤君。

    ―――――――――――――

 土地改良法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

武部国務大臣 土地改良法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 土地改良事業につきましては、農業の生産基盤の整備を通じて、農業の生産性の向上、農業構造の改善等に大きく寄与してきたところであります。

 このような中、食料・農業・農村基本法の目的とされた農業の持続的発展、農業の多面的機能の発揮等を図っていく上で、農業生産の基盤の整備に当たって、環境との調和に配慮して事業を実施すべきである旨規定されたところでありますが、この理念を、具体的な農業の生産基盤の整備を行う事業の実施手続を定める法律である土地改良法にも反映する必要があります。

 また、近年、農村地域の混住化が進む中、特に非農家を含めた地域住民の理解なくしては、土地改良事業の円滑な実施に困難な状況が生じることが少なからず見られるようになってきております。

 さらに、事業を効果的かつ効率的に実施していく上で、事業の再評価の結果、廃止すべきと判断される事業も出てくると考えられる中、その廃止に当たっての手続を明確にする必要があります。これらの内容を実施するため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、環境との調和に配慮すべきことを土地改良事業の施行に当たっての原則に位置づけることであります。

 食料・農業・農村基本法におきまして、農業生産の基盤の整備に当たっては環境との調和に配慮することが定められましたので、これを踏まえ、土地改良事業の施行に当たっての原則に、環境との調和への配慮を位置づけることとしております。

 第二に、地域の意向を踏まえた土地改良事業の実施のための手続の整備であります。

 土地改良事業計画の概要を策定する段階における市町村の位置づけを高めるとともに、国営または都道府県営の土地改良事業につきましては、あらかじめ計画の概要を公告縦覧し、これに意見がある者は意見書を提出できる仕組みを設けることとしております。

 第三に、土地改良施設の適切な維持保全のための手続の整備であります。

 土地改良区が国または都道府県に対して更新の事業を行うべきことを申請できる土地改良施設に、市町村が管理するものを追加するとともに、土地改良区の特別議決により行うことができる土地改良施設の更新の事業の範囲を拡充し、土地改良施設の適時適切な更新を容易にすることとしております。

 第四に、国営または都道府県営の土地改良事業の廃止のための手続の整備であります。

 これまで廃止に係る手続を定めていなかった国営または都道府県営の土地改良事業について、今回、廃止に係る手続を規定することとしております。

 このほか、土地改良区の組合員以外の受益者からの経費の徴収に関する手続の整備等を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

堀込委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十九日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十七分散会






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