衆議院

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第22号 平成13年6月21日(木曜日)

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平成十三年六月二十一日(木曜日)

    午前九時二十九分開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 滝   実君 理事 二田 孝治君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩倉 博文君

      岩崎 忠夫君    岩永 峯一君

      小此木八郎君    金田 英行君

      上川 陽子君    北村 誠吾君

      北村 直人君    後藤田正純君

      七条  明君    園田 博之君

      高木  毅君    西川 京子君

      浜田 靖一君    菱田 嘉明君

     吉田六左エ門君    古賀 一成君

      後藤 茂之君    佐藤謙一郎君

      城島 正光君    津川 祥吾君

      筒井 信隆君    永田 寿康君

      楢崎 欣弥君    平岡 秀夫君

      江田 康幸君    高橋 嘉信君

      中林よし子君    松本 善明君

      菅野 哲雄君    山口わか子君

      金子 恭之君    藤波 孝生君

    …………………………………

   農林水産大臣       武部  勤君

   農林水産副大臣      遠藤 武彦君

   農林水産大臣政務官    岩永 峯一君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局食品保

   健部長)         尾嵜 新平君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長

   )            西藤 久三君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長

   )            木下 寛之君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十一日

 辞任         補欠選任

  相沢 英之君     北村 直人君

  浜田 靖一君     小此木八郎君

  佐藤謙一郎君     平岡 秀夫君

同日

 辞任         補欠選任

  小此木八郎君     浜田 靖一君

  北村 直人君     相沢 英之君

  平岡 秀夫君     佐藤謙一郎君

    ―――――――――――――

六月二十一日

 奄美群島周辺水域における大中まき網漁業の操業禁止区域の拡大に関する請願(徳田虎雄君紹介)(第三四四六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八四号)(参議院送付)

 農林中央金庫法案(内閣提出第八五号)(参議院送付)






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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、農業協同組合法等の一部を改正する法律案及び農林中央金庫法案の両案を議題といたします。

 この際、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣武部勤君。

武部国務大臣 昨日の本委員会における一川先生の単位農協の組合長の兼職に関する御質問についての私の答弁につきまして、法律案の趣旨に反するかのように受け取られるおそれのある表現がありましたので、深くおわびいたしますとともに、もう一度改めて答弁させていただきます。

 責任ある業務執行体制を確立するためには、日常的な業務執行に当たる役員は、その職務に専念すべきであることから、単協の常勤理事、代表理事が他の組合や法人の職務を兼ねることは原則として禁止することとしております。

 しかしながら、農協系統組織として、連合会の運営に会員たる単協の意思を反映させていくことも必要であることから、連合会の日常的な業務執行に当たらない経営管理委員については、例外として、単協の役員が就任できることを法律上明示しております。

 これ以外の例外は省令で規定することとなりますが、中央会は経済活動を行っておらず、日常的な経営判断というものはないこと等から、中央会の役員は実質的に連合会の経営管理委員に相当する職務と考えられるため、省令で例外として認める兼職先とすることとしております。

 こうしたことから、省令により単協の組合長は中央会役員を兼職できることとなりますが、中央会は農協系統に対する監査、指導を行う組織であることから、他の農協系統組織とはある程度独立していることが望ましいとの考え方もあり、今後のあり方については、農協系統の事業、組織の動向を見きわめながら検討してまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

堀込委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君、農林水産省生産局長小林芳雄君、農林水産省経営局長須賀田菊仁君、農林水産省農村振興局長木下寛之君及び厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 農林漁業金融公庫法の審議に引き続いて、今回、質問に立たせていただきます。

 今、武部大臣の方から、兼職禁止あるいは制限の件につきまして、答弁のやり直しといいますか、改めて答弁があったわけでありますけれども、今回の改正農協法で、ただし書きの中に、省令で定めるものについて、一応の兼職が認められるというような位置づけになっています。先ほどの御発言の中で、省令でこんなものを定めるのだということがありましたけれども、もう一度それを確認させていただきたいと思います。そして、今説明されたもの以外にはないというふうに考えてよろしいでしょうね。

須賀田政府参考人 兼職、兼業の禁止の考え方でございます。

 きのうも御答弁申し上げましたように、私どもとしては、一つは、職務専念ということに支障がないということ、もう一つは、兼業先がJAまたは農業界の発展に資するものであること、この二つの基本的な考え方のもとに、例外的に認められる兼業先というものを省令で定めるというふうに考えているところでございます。

 具体的に、どういうものが考えられるかということでございます。

 ただいま大臣が申し上げました中央会の役員というのが一つ考えられるわけでございます。それから、他の農協、連合会あるいは農協の子会社等の非常勤の役員、こういうものが考えられるわけでございます。それから、農業委員でございますとか、農業会議の委員でございますとか、あるいは行政庁の審議会の委員でございますとか、農協系統の審議会の委員でございますとか、こういう非常勤的職務というものが考えられるわけでございまして、ただいまのところ、こういうような職務につきまして、省令で定めていきたいというふうに考えているところでございます。

 今後、その具体的中身については、さらに詰めていきたいというふうに考えている次第でございます。

平岡委員 今の御答弁を聞いていると、審議会の委員とかいうのは、これはどこでどういうふうに禁止規定にかぶさってくるのか、ようわからぬものも入っておりましたけれども、まあいいです。いずれにしても、この兼職禁止の規定の趣旨というものを踏まえて、できる限り兼職を認める幅というのは狭くする、そういう考え方で臨んでいただきたいというふうに思います。

 それでは、法律案の質問に入ります前に、別のことでありますけれども、この機会に御質問をさせていただきたいと思います。

 といいますのも、最近、牛肉とか鳥肉なんかに関しまして、外国でいろいろな病気がはやっているというようなことがあったりして、お肉屋さんとかあるいは消費者の方々の中に、大丈夫なんだろうかというような懸念を抱いておられる方がおられます。そういう意味で、農水省の対応あるいは厚生労働省の対応、これらについて、ちょっと確認をしたいというふうに思います。

 まず最初に、ことしの五月の中旬に、中国産といいますか、香港とマカオだったわけですけれども、その家禽類について、家禽ペストにかかっているというようなことで発表がありまして、その後、中国産の家禽類について、韓国政府が自分たちで検査し、そしてその結果に基づいて輸入禁止措置をとったというふうなことがあったわけであります。

 これに対して、我が国では、韓国の対応が出た後に、おもむろに輸入一時停止措置をとったというようなことがあったようなんですけれども、ちょっと対応として遅過ぎるのではないかというような気がするのです。

 これまで政府としてどのような対応をとってきたかということについて、まず説明をしていただきたいと思います。

小林政府参考人 今御指摘のございましたように、五月の半ばに家禽ペスト、いわゆる鳥のインフルエンザでございますが、香港、マカオと連続して発生いたしました。この情報が得られた時点で、我が国といたしましては、それぞれ、香港、マカオからの家禽肉等の輸入停止ということに直ちに踏み切っております。

 また、その際に、香港、マカオだけではなくて、中国の本土の方の状況がどうなっているかということにつきまして、チェックのために中国の検疫当局にも照会をしております。その際には、中国の中では発生していない、そういった答えもございました。

 そういう中で、今般、韓国の方で検疫していたところ、中国産の家禽肉からその病原菌が分離されたということでございまして、韓国はそれによって輸入停止をしたわけでございますが、私どもの方といたしましても、六月八日以降、中国から船積みされるものにつきまして、輸入停止ということにしております。

 この趣旨でございますけれども、具体的に、中国の方で発生したという情報なり事実はまだはっきりと得られておりませんので、したがいまして、中国の国内が清浄であるかどうか、これを十分確認するために、一時停止して、その状況をチェックしたいということでございます。今、私どもは、担当官を中国の方に派遣して、中国の国内の清浄性をチェックするための調査を行い、その結果を見て対応したいということでございます。

 いずれにしましても、こういった水際の検疫と、それから各国の状況を十分チェックしながら、適時適切な対応をしていきたいというふうに考えておるところでございます。

平岡委員 今の説明は非常に概略だったので、もうちょっと聞きたいと思うんです。

 韓国当局が検査をして全面禁止措置をとったのはいつで、その情報を我が国政府として入手したのはいつになるのでしょうか。

小林政府参考人 韓国の方からそういった情報が入ってきたのは、この六月八日よりも少し前でございました。私どもは、すぐに把握して、それで六月七日にそういった対応を決めて、八日から停止するという措置を打ち出したという状況でございます。

 したがいまして、向こうからの情報なり、それへの対応につきましては、まさにおくれることなく対応しているということでやっているところでございます。

平岡委員 私が事前にちょっとレクを受けたときには、六月五日にこの情報を入手したというお話であったんです。ということは、韓国が全面輸入禁止措置をとったのはそれよりも以前ということだろうと思うんです。しかしながら、我が国がとった措置というのは、六月八日以降に中国から船積みされる中国産の家禽肉等についての輸入一時停止措置ということであって、じゃそれ以前に出されているものについて、つまり、韓国が全面的に輸入を禁止した以降のものについても、我が国にこれは入ってきているということになると思うんです。

 どうして、韓国が輸入停止措置を講じた日以降に中国で船積みされたものについて輸入停止措置をとっていないんですか。

小林政府参考人 まず、韓国からそういった通報があったことを踏まえまして、韓国の方ではどういった検査でチェックしていたかというようなことを、私ども自身もまた韓国当局の方に問い合わせをしたりして確認している、そういったチェックのあれがあります。

 それから、いずれにしましても、これは先ほど申しましたように、我が国として、中国の国内でその事実が発生したとかそういったことをきちんと把握しているわけじゃございませんので、今回の措置は、あくまでも中国の国内の清浄性をチェックするために一たんとめようじゃないかということでございます。

 今まで、似た例で申し上げますと、口蹄疫の関係でヨーロッパの方で連続して起きてきました。そのときに、三月の二十四日ですが、ヨーロッパ全域に口蹄疫の関係で牛肉を一時輸入停止する、これも清浄性チェックのためにやったというようなことがございます。

 そういう意味で、私ども、そういったチェックの経過を踏まえると同時に、あらかじめ、いつから船積みするものにつきまして一時停止しますよということを関係者に知らしめて、それで対応をしていく、そういった措置をとっているということでございます。

平岡委員 この問題については、どれだけ国民の健康に影響を与えるか、あるいは国民が食用にすべき鳥に影響を与えるのかというような観点から、今お伺いしたら、船積みする業者の関係というものをかなり意識して発言があったように思いますけれども、やはり、国民の健康あるいは健康な家畜を育成する、そういう意味からいって、もう少し健康面に留意した対応をとっていただきたいというふうに思うわけであります。

 そこでもう一つ、最近よく出ているのが、ヨーロッパで狂牛病が流行しているというようなことで、昨年からことしにかけていろいろな動きがあったわけであります。

 ことしの六月に入っても、チェコで狂牛病が発生したというような発表が六月の八日になされておりますし、それから、これは確認されていないようでありますけれども、香港で狂牛病を原因とする病気にかかった人が発生したというような報道がなされておったり、いろいろ国民の皆さんが心配するような事態が起こっているわけであります。

 これらの狂牛病に関する問題について、牛肉の輸入についての停止措置といいますか、それぞれの対応措置というものは適時適切に行われているのかどうか、そこを説明していただきたいと思います。

小林政府参考人 狂牛病の関係でございます。一九八六年ですか、イギリスで発生しまして、それ以降、我が国といたしましても、そういった発生した国につきましては直ちに輸入停止をするということでございまして、このところヨーロッパの方で、フランス等の国で出たわけでございますが、その都度、牛肉等の輸入停止ということを逐次やってきております。

 あわせまして、昨年また狂牛病に対するいろいろな懸念が出てきたものですから、昨年末に専門家の皆さんの御意見も伺いまして、ことしの一月一日からは、BSEの発生がどうも拡大状況にあるというEU諸国、これは必ずしもEUの中で発生していない国も含めて、さらにスイス、リヒテンシュタイン等も含めて牛肉等の輸入停止の措置を講じたということがございます。

 また、あわせまして、我が国内なども、サーベイランスといいますか、そういった体制の強化もしてございます。

 先般、チェコでもその発生が見られたということでございます。チェコは口蹄疫等の関係もございまして、これまで牛肉なんかにつきましては輸入停止をやっているところでございますけれども、改めて肉骨粉等を含めた輸入停止をしたということです。

 いずれにしましても、今先生御指摘ございましたように、いろいろな情報なり発生状況を見ながら、とにかく適時適切な対応をしていくということで引き続き進めてまいりたいというふうに考えております。

平岡委員 今までのは、どちらかというと家畜伝染病の予防というような視点からの規制といいますか、いろいろな措置ということで農水省さんにお聞きしたわけでありますけれども、翻って考えると、特に心配しているのは、そうしたお肉を売ることになる食肉店あるいはそれを食用に供することとなる消費者、これらの方々がやはりいろいろ心配しているということでもあります。

 そういう視点に立って考えますと、厚生労働省の方に、今国民の皆さんが持っている不安に対して一体どのように考えておられるか、そしてどのような対応をとっておられるか、その辺について御説明願いたいと思います。

尾嵜政府参考人 第一点の家禽ペストの関係の対応について御説明申し上げますが、これにつきましては、今回のケースにつきましては、食品を介してはもちろんでございますが、人への感染というのは今回報告をされておらないということでございます。国際機関においても同様な認識をされているわけでございます。

 そういった中で、先ほど御質問と御答弁がありましたように、農林水産省の方で家畜伝染病予防法に基づいた対応がとられているというところでございまして、現在のところ、食品衛生を含めました公衆衛生上の問題というものは私どもはないというふうに考えているところでございます。

 ただ、現地の状況につきまして、WHOが調査に行くという話も聞いておりますし、そういった現地の状況の情報収集につきまして、農林水産省とも連携をとりながらその把握に努めていきたいというふうに考えております。そういった状況の中で、必要に応じて専門の方々に御相談をしながら適切な対応をとりたいというふうに考えておるところでございます。

 二点目の狂牛病の関係でございますが、一九九六年以降、狂牛病の発生状況を踏まえまして、あるいは科学的な知見の進展を踏まえ、関係国からの牛肉等の輸入を控えるように輸入業者の方に指示をしてきたという状況がございます。そういった中で、本年二月十五日から、食品衛生法上の措置といたしまして、我が国への侵入防止策をより確実なものとするために、法に基づきました牛肉等の輸入禁止措置を講じたところでございます。

 現在、対象国は、直近チェコのお話がございましたが、チェコについても輸入禁止対象国にいたしまして、十八カ国を対象として輸入禁止措置をとっているところでございます。

 こういった状況で、狂牛病にかかった牛の肉等が国内に流通することはないというふうに考えておりますが、今後とも、最新の科学的知見なり国際的な情報の収集に努めて、食品の安全確保について努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

平岡委員 私が事前にいろいろお聞きしたときの感じでは、どうも厚生労働省の対応というのはちょっと遅いんじゃないかなという感じがいたしました。農水省の方は比較的早目早目に手を打っておる。

 これはいろいろな、何を守るべきかというところの法益の違いなのかもしれません。そういう意味では、農水省の役割というのは、こうした食用肉あるいは食用鳥肉の関係については非常に大きな役割を果たしていると思うんですけれども、大臣に、これらの問題についてこれからどのように考えていかれるか、やはり最終的には国民の健康につながる話でありますけれども、農水省にかかわる行政としても非常に大切な問題だろうと思います。そういう意味で、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 農林水産省としては、中国産家禽肉及び欧州産牛肉の輸入停止等の措置を適時適切に実施してきた、かように自負しております。

 今後のことにつきましては、中国産家禽肉については、既に中国に専門家を派遣いたしまして、調査団の派遣について事前打ち合わせを行ったところであります。現在、その具体的な日程等について中国側と調整しているところでございます。今後、調査団が実施する現地調査等によりまして中国での鳥インフルエンザの発生がないことが確認されれば、家禽肉等の輸入一時停止を解除することになる、かように存じます。

 欧州産牛肉につきましては、引き続きEU諸国等における口蹄疫やBSEの発生状況等に関する情報収集を行うとともに、動物検疫の的確な実施に努め、口蹄疫やBSEの侵入防止に万全を期してまいりたいと存じます。

平岡委員 大臣の決意を踏まえて、農水省の各担当者もしっかりとやっていただきたいというふうに思います。厚生労働省さんもしっかりとやっていただければというふうに思います。

 そこで、今度は法案の関係についてちょっと質問させていただきたいと思います。まず不良債権処理、そして破綻防止、破綻処理の問題についてお伺いしたいと思うのです。

 せんだっての参議院での答弁の中にも、経営困難な農協を平成十四年四月までに解消することを決定して、積極的に取り組んでいるというような答弁がちょっとありました。ことしの二月に、平成十四年四月までに経営困難な農協を解消するということを決定したようでありますけれども、その後四月の六日に、政府と与党は緊急経済対策ということで打ち出しておられるわけであります。その中にも、不良債権の処理を早急に行っていくというような方針が示されているわけであります。

 今、この緊急経済対策における不良債権処理と、それから先ほどのペイオフ解禁を控えて急いでいるというこの政策と、どういう関係にあるんでしょうか。農水省は、緊急経済対策の中でどのように不良債権処理について考えておられるのか、お伺いします。

須賀田政府参考人 緊急経済対策におきます不良債権の処理の問題でございます。不良債権の処理というのは、一つは金融機関の収益性を高めるということと、それから貸出先の企業の収益分野がはっきりしますので、そこへの投資マインドを高めることによって我が国経済社会の活性化を図る、こういうねらいだというふうに私どもも認識しておりまして、農協系統も我が国金融システムの中では少なからぬ位置づけを占めておりますので、この不良債権の処理、具体的には不良債権のオフバランス化等でございますけれども、これに他の金融機関と同様に適切に対応していく必要があるというふうに認識をしております。

 一方、既に農協系統としては、ただいま先生申されましたように、ペイオフ解禁を控えまして農協系統独自の考え方で不良債権の抜本的な処理というものを進めることにしておるわけでございまして、経営困難な農協を来年の四月までには解消するんだということで積極的に取り組んでいるところでございます。

 こういうことを考えますと、緊急経済対策による不良債権の処理というのは、農協系統が取り組んでおります不良債権の処理にプラスの影響を与えるのではないか、ほかの金融機関との関係等も考慮をすれば、プラスの影響を与えるのではないかというふうに認識しているところでございます。

平岡委員 民主党も、経済対策という観点からは不良債権処理を早急に行うべきであるという主張をしておりまして、今のお話でいきますと、来年のペイオフ解禁を控えて今問題農協を解消していく、そういう中で不良債権処理についても急いでいく、その方針については私もそういう方向でいかなければいけないんじゃないかというふうには思うのです。

 ただ逆に、この不良債権処理ということをやっていきますと、特に問題農協と言われているところに対しては、かなり大きな影響を与えるのではないかというふうにも思うわけでありますけれども、こうした影響についてはどの程度のものを予測しておられますか。そして、その予測に対してどのような対処を考えておられますか。それを御答弁願います。

須賀田政府参考人 本日あたりの新聞報道によりますと、同じ貸出企業に対する債権を整理回収機構に信託して処理するんだというようなことが報道されておりましたけれども、私どもは、本来の方針といたしまして、農協系統の不良債権の処理ということにつきましては、まず、農協系統の不良債権の買い取り、回収を専門的に行います系統サービサー、系統債権管理回収機関、これを四月に設立いたしまして、八月から営業を開始することにしております。これによって、不良債権の買い取り、回収を行っていく体制を整えたわけでございます。

 そして、支援体制、経営困難となっている農協の処理に関する系統支援の体制でございますけれども、これは従来、全国相互援助制度、いわゆる相援制度で、地元負担が三分の二あれば全国的に支援をしていこうというような基準になっておったわけでございますけれども、この発動基準を緩和して、地元負担が三分の二でなくても二分の一でもいい、あるいは二分の一未満でも、県内の信用事業再構築を前提に体力に応じた負担でもいいというふうな地元負担の弾力化をやっていく。それから、貯金保険機構についても資金援助を積極的に行う。こういう体制で、不良債権の処理というものを行うこととしているわけでございます。

 そして、こうした不良債権処理を進めていきますれば、それまで十分な貸倒引当金も積んでいなかった農協等におきまして、欠損金が生じたり、また自己資本比率が四%を割ったりすることがあり得るのではないかというふうに考えております。その額というのは、現在農協の決算総会等が行われておりますから、具体的にどれだけ処理額が要るのかというのはこれから確定されるわけでございまして、現在そこの額を推定することはできないわけでございますけれども、現在貯金保険機構に約二千億、正確には千九百八十六億円の責任準備金がございます。それから、それのほかに、先ほど申し上げました全国相援制度、相互援助制度で全国ベースで現在三百五十億円ございます。これをあと百五十億円積み増して五百億円にする予定でございます。こういう準備資金の範囲内で処理をしたいというのが、系統の考え方でございます。

平岡委員 不良債権処理については、経営困難な農協を解消していく、あるいは緊急経済対策の中で取り組んでいくという方針が示されているにもかかわらず、その処理をすることの影響がどの程度あって、それに対して十分な措置が講じられているか、十分な準備があるかということがはっきりしないというのは、全く私としては、政策を遂行していく立場にある者として無責任きわまりないような気がするのですけれども、大臣、いかがですか。

武部国務大臣 農協系統金融機関は、一般金融機関に比べて貯貸率が低かったことなどから、結果的に不良債権による傷はそれほど大きくなかった面がございます。全体として見れば、これまでのところ、それなりに安定した事業運営を行ってきたのではないか、かような認識でございます。

 しかしながら、都市銀行の再編、他業態からの新規参入、IT革命の進行、ペイオフ解禁の接近といった金融情勢の劇的変化のもとで、今後十分な競争力を確保していくだけの体制が整備されているとは言いがたい状況にあるとも考えております。各農協、各信連、農林中金がそれぞれ独立して金融業務を行っているという色彩が強い現状を、農林系統金融機関全体としての総合力が十分に発揮されていない現状を何とか解消していかなきゃならぬ。

 そして、破綻の未然防止につきましても、各農協、各信連それぞれの経営努力に依存しているだけでありまして、能力を超えたり体制が整わないまま資金運用を行った結果、多額の欠損金を抱えたり破綻したりするケースが依然として見られるということも事実でございます。こうした場合に、従来のように農協系統金融機関内で多大な資金援助を続けていけば、農協系統金融機関全体としての体力も信用力も低下してしまうおそれがあることはそのとおりでございます。

 こうした激変する金融情勢下で農協系統金融機関が今後とも他の金融機関と対等に競争していくためには、全農協系統金融機関の総合力を最大限に発揮していくことが必要である。そのためには、新たな農協金融システムを早急に構築していくことが必要であり、このため、今回の法案を提出したものでございます。

 その最大のポイントは、体制や能力を超えた資金運用を行わないようにするための農協系統金融機関の自主ルールをつくることによって、問題のある農協、信連を破綻に至る前のできるだけ早い段階で発見すること、発見された問題農協、信連について、資金運用制限等の経営改善を図るだけでなく、一定の要件を満たす場合には上部団体に事業譲渡し破綻しなくて済むようにすることである、かように考えて、万全を期してまいりたい、かようなことでございます。

平岡委員 今回の法律改正についていろいろ説明していただいたわけでありますけれども、私が質問している趣旨は、やはり今やろうとしている政策、不良債権処理、問題農協の解消、このためにどれだけの影響が生じるか、その影響に対して本当に十分な資金的な確保ができているのか、こういう問題であって、これから制度をこういうふうにしていくからこれで安全ですというような話じゃなくて、今この問題について来年の四月までにやろうとしていることについて本当に対応できるのか、それを今聞いているんです。

 どうですか、来年の四月までにこの不良債権の処理、そして問題農協の解消、これに対して十分な対応ができていますか。どれだけの影響があって、どういう対応をするのか、それを答えてください。

武部国務大臣 正確を期すために答弁を読み上げさせていただきます。

 不良債権の処理に当たっては、他の金融機関に見劣りすれば貯金者の信頼を損なうことになることも留意する必要があります。行政と系統が連絡を密にして、銀行等に劣後することなく不良債権を処理する必要があると考えております。

 こうした不良債権処理を進めていけば、それまで十分な貸倒引当金を積んでいなかった農協等において、欠損金が生じたり自己資本比率が四%を割ったりすることもあり得る。十一事業年度末で自己資本比率四%未満の農協は二十七であったが、各農協の決算総会の結果を見ないと確たることはわからないものの、不良債権処理を強力に進めてきた結果、この数が増加する可能性も十分あるものと考えております。

 その要処理額については、まだ確たることは言えないものの、現在の貯金保険機構の責任準備金や相互援助制度で賄える範囲内のものではないか、かように考えております。

平岡委員 現在の予測では賄えるということでありますので、それを信じるしかほかに道はないのかもしれません。ただ、緊急経済対策あるいは問題農協の解消という政策をとっていくに当たっては、それに対応するいろいろな準備ができているのかということをやはり政策当局としては検証していっていただきたいというふうに思うわけであります。

 そこで、ちょっと視点が変わるんですけれども、今回の法改正でかなり、農中にも経営管理委員会ができたり、そこでいろいろな自主ルールをつくるとかいうようなことがあるようです。そして、改正のまた一つには指定支援法人というようなものもできたりするようであります。今までのいろいろな破綻防止あるいは破綻処理についても、監督官庁であり、かつ公的な資金援助をしてきた県とか貯金保険機構、あるいは相互援助制度、そして今回できる指定支援法人、そして農中、さまざまな主体が出てきているわけでありますけれども、今回の改正でいろいろなまた新しい仕組みができて、こうした破綻防止、破綻処理の問題について一体だれがどのような責任を持って遂行していくのかということが非常にわかりにくい制度になってしまったというのが私の率直な印象であります。

 そこで、私の印象を解消していただくために、大臣の頭の中でこれからの破綻防止、破綻処理というのはこんなのですよというのをわかりやすくちょっとまず言っていただきたい、後、詳しい話はまた局長さんからでも聞かせていただければいいのですけれども、大臣の頭の中でこういうものですよというふうにちょっと私に説明してもらえませんでしょうか。

須賀田政府参考人 今回の法律改正におきまして、農林中金が問題農協早期発見のための基本方針、自主ルールというものを定めることにしておるわけでございます。

 その自主ルールでどういうことを定めるかということでございまして、まず一つは、この基本方針、自主ルールの基本的な考え方を定めます。それで、資金運用を能力と体力を超えて行うことのないようにするということを一つにし、かつ、経営上問題を抱えているJAでございますとか信連でございますとかを早い段階で発見し、経営改善とか組織統合とかをする、そういう基準をつくる。この二点について、基本的にはこの自主ルールのねらいとしたいというふうに考えております。

 そして、その具体的ルールの中身でございます。主要なところを申し上げますと、まず、JAに経営状況の報告義務というものを課するということでございまして、毎事業年度終了後、いついつまでにこういうものを報告しろ等でございます。それについての補足ということで、いろいろな、例えば全中が監査等をしておりますので、その補足の調査も求めるということで、経営状況をまず把握するということが第一点でございます。

 それから、先ほど申し上げました資金運用制限のルール。体力と能力といいましても、業務執行体制でございますとか貸し出しの審査体制でございますとか自己資本比率だとか貯貸率でございますとか、そういうようなものに応じた資金運用範囲を制限していきたいということで資金運用制限ルールを定めたいということでございます。

 それから次に、経営改善ルールということでございまして、自己資本比率、不良債権比率、経営体制等一定の基準を設けまして、これをクリアできなかった場合に、資本増強等の経営改善、資本増強、そういうものをするか、それからさらに一歩進んで事業譲渡、あるいはこれにかわる合併、こういうものをするか、そういう経営改善ルールを定めたいというふうに考えております。そして、これのルールを定めまして、後は実行ということになるわけでございます。

 まず、破綻が避けられない、破綻処理をせざるを得ないというような場合に事業譲渡ということを系統はやるわけでございますけれども、破綻処理における事業譲渡は、基本的にはまず農協の自助努力、それから地元負担ということを行いまして、それでも不足する場合に貯保機構がペイオフコストの範囲内で負担をする。それから、農中の指導を受けて事業譲渡するという場合には指定支援法人も支援する。破綻処理の場合はそういう体制で臨むということでございます。

 それから、破綻の未然防止の場合でございますけれども、これは農中の指導で経営改善等を行うことになるわけでございます。この場合は、当該組合がまずは最大限自助努力をして、これに対して指定支援法人が支援をするという仕組みで臨みたいということでございます。これは破綻でございませんので、こういう場合には貯保の発動はないということとなろうかと思うわけでございます。

平岡委員 全然イメージが確定しないんですけれども、大臣、これからの破綻防止、破綻処理というのはこういうイメージなんだというのをちょっと一言、一言じゃ足りないかもしれませんけれども、大臣の頭で整理されたところをちょっと御説明願います。

武部国務大臣 先ほど詳しく申し上げましたけれども、金融機関の大競争、ペイオフ解禁など、金融情勢の変化の中で十分な競争力を確保していけるような体制をどうつくっていくか。このために、JAグループの総合力を結集して、農協系統が一つの金融機関として機能するような新たな農協金融システムを構築する、こういうことでございまして、問題農協をできるだけ早く発見して、必要な場合には上部団体への事業譲渡を行わせることとしているわけでございます。そういうことが今回の法案の趣旨でございます。

平岡委員 この問題、余りやっても仕方ないのかもしれません。ただ、私もかつて金融関係をやったことがあるので感想として言うんですけれども、系統金融機関については、こういった破綻防止、破綻処理の関係について言うと、余りにも非公式のことが多過ぎる。

 つまり、きちっと制度のできた枠組みの中で物事がされているんじゃなくて、どうもそういうところじゃないところでいろいろな話が進んで、えいやでやっちゃう。そのときに、いろいろな手段があって、今回はこれを使おう、今回はこれを使おうというような、使う手段も非常に恣意的であるということで、一体どういうふうにしてこれからの破綻防止、破綻処理の問題について処理していくのかということが国民にはさっぱりわからない。あるところでこちょこちょっと決まって、それが何らかの手段を使って実行されている、そういうイメージなんですね。

 そういう意味で、今回新たに法改正をしてもそうした懸念というのは全くぬぐえていないということで、もうちょっときちっとした仕組みをつくってほしいというのが私の感想であります。

 そこで、もう少し今回の破綻処理の関係あるいは破綻防止の関係について中に入って物事を見てみますと、指定支援法人という存在が今度できているわけでありますけれども、これも何かようわからぬ存在だなということをちょっと感じましたので、二、三具体的に聞いてみたいと思います。

 まず、この指定支援法人というのはどういう公益法人を指定しようとしておられるのか、それをお伺いします。

須賀田政府参考人 指定支援法人は、今回の法律改正におきまして、支援業務を適切かつ確実に行うことができる公益法人ということになっておるわけでございます。

 ありていに申し上げますと、これまでの全国相援制度は、基金を農林中央金庫に全国版は積んでおったわけでございます。そのままいきますと、農林中央金庫が会員であります農協に資金贈与、出資等をいたしますと持ち合いということになりますので、それではなくて、公益法人の中から適切なものを選んでそこへ基金を積もうということにしたわけでございます。

 現在、どの法人を指定するかということにつきましては、今後検討するということになるわけでございますけれども、このために新たに設立するとか、そういうことは考えておりませんで、既存の法人の中から適切なもの、系統の方々の納得の得られるような法人を選んでいきたいというふうに考えております。

平岡委員 法律を見ますと、「民法第三十四条の法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるもの」ということしかなくて、次の条文に書いてあるのを見ると、優先出資を引き受けたり債務の保証をしたり利子補給金を出したりとか、金融業務しかやっていないわけでありますよね。こんな公益法人というのが私は今現在存在し得るともちょっと思えないんですけれども、一体どんな法人なら指定できるんですか。

須賀田政府参考人 今、先生申されたとおりの業務を適切に行い得る法人ということになろうかと思うわけでございます。

 ただ、法律に、指定支援法人は農林中央金庫の要請を受けて農協等に対する資本注入や資金援助の業務を行う、こういうことになっておりまして、農林中央金庫の要請を受けて、その要請内容に従って種々の支援業務を行うということになっておりますので、みずからの判断で、みずからのリスクにおいていろいろなことをするというわけではございませんので、その分金融上の負担というのは軽くなると思われます。

 いずれにしても、そういうような仕組みを念頭に置きながら、これからどの法人がいいかということを選んでいきたいというふうに考えておるところでございます。

平岡委員 今局長の答弁の中に、農林中央金庫の要請を受けてやるんだというような話がありました。多分要請があったら指定支援法人というのは断ることはできないんだろうと思うんですね。そういう意味では、今いろいろ問題になっていますけれども、そういう公益法人をまた問題がある指定というような形でふやしていくにすぎないんじゃないか。本質は、農林中央金庫が本当はみずからの管理の中で行っていくようなものとしてあるのを、何か指定法人という形にすりかえているというふうにしか思えない。

 場合によっては、今度、指定公益法人にすることによって、さらに農水省の天下りのお役人さんたちがポストを一つ、二つ獲得できたというようなことにつながるんじゃないか、そういう危惧すら思い起こさせるような仕組みになっている。非常にあいまいな仕組みになっている。先ほど私が冒頭言いました、破綻防止、破綻処理の仕組みというのが農水省のは非常にあいまいもことしていてようわからぬという中の一つが、この指定支援法人であろうというふうに思うわけであります。

 さらに質問しますと、今回基金を設けることになっていまして、基金の負担金を負担した場合には租税特別措置法で損金に算入することができるという仕組みにしているようであります。それはそれとして、今度、指定の取り消しというのが第四十条に書いてあるんですけれども、指定を取り消した場合にこの基金というのはどうなるんですか。

須賀田政府参考人 まず指定支援法人は、先生言われたような、新たに今後つくっていくとかいうのではなくて、あくまでも既存の法人の中から適当なものを選んで業務を行っていただくという方針でありますので、そこのところは御理解を願いたいというふうに思っております。

 それで、指定を取り消されたときに基金がどのようになるのか。これは大変困惑する御質問でございまして、指定支援法人の業務というのが今後の系統信用事業の再編整備に不可欠なものでございますので、ちゃんと業務を行い得るものとして指定をしたいというふうに考えておりまして、指定の取り消しといったような事態が発生することのないように適切に監督指導を行っていきたいとまずは考えております。

 取り消しというような事態はあってはならないと思っているわけでございますけれども、仮にその指定が取り消された場合、これは取り消しの要件が確かに法律に書いているわけでございます。「支援業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。」等でございますが、こういうときには、法定業務の継続ができなくなる、同時にその法人の目的も失ってしまうものですから、その法人は解散ということになろうかと思うわけでございます。恐らく、定款の規定に従いまして、その基金については新たにまた指定した法人に帰属させるということになろうかと思うわけでございます。

 ただそのときに、先生言われるように、ではそういう場合の税制はどうなるのかとか、譲渡の円滑な引き継ぎは規定されているのかとかになると、私どもの今回の法律案にはその部分までは規定をしていないわけでございます。実は、ほかの類似の仕組みを見ても、取り消して新たな法人に譲渡するどうのこうのという規定はないわけでございます。もし取り消しというようなことがあった場合には、その時点で、そういう税制面を含めまして取り扱いを決めないといけないというふうに思っているところでございます。

平岡委員 取り消しの規定を置きながら、取り消すときにまたいろいろ考えますというのでは、何か泥縄というのですか、後から縄をなうような話でありまして、こういう規定を置くからには、きちっとしたそのときの対応をやはり用意しておくべきであるというふうに思うのです。

 本質的な問題は、私はさっき言いましたように、どうも系統金融機関の破綻防止、破綻処理の仕組みというのが非常にあいまいもことしておって、この指定支援法人というのをつくるに当たっても、本来ならば、これは農中がすべて管理し、そして農中がいろいろ実行していく、そういう立場に立ってやるべき話ではないのかなというのが私の感想なのです。

 それで、今回のJAバンク構想ということで、法律的な主体としては、農中、信連、農協と、全く違うのにあえて一つのグループでやる、統一ブランドでやるのだ、統一商品で業務運営するのだといっても、イメージとしては一体のようだけれどもこれは見るとばらばら、そういうような仕組みになっているわけですね。

 例えば今回の法律改正の中でも、農中がいろいろ重要な役割を果たすということになっているわけなのですけれども、では、どういう権限を持っているかと考えてみたら、何か指導という言葉がある。指導というのは、法律的に言うとどういうものなのか。指導に従わなかったらどうするのか、指導に従った結果として何か悪い結果が生じたら、それに対してだれが責任を持つとか、そういうことが全くわからない。全く不明確な制度であるというふうに私は思っているわけであります。

 欧州の類似の金融機関、フランスのクレディ・アグリコールとかドイツのDGバンク、オランダのラボバンク、こうしたところも同じような仕組みというものがあるわけですけれども、監督権限が法律上与えられているとか、責任の所在が今回の仕組みよりももっとはっきりしているわけであります。そうした例も考えてみると、今回の仕組みというのは非常に責任があいまいな仕組みになっているというふうに言わざるを得ないのですけれども、この点についてどう思われますか。大臣、お願いします。

武部国務大臣 フランスやドイツのあり方というのは私は具体的なことを知りませんけれども、将来的にはそういうようなことにもなっていくかもしれないという印象を、今、先生のお話を伺って感じました。

 今回の法案については、農林中金は農協系統金融機関の中心的機関でありますし、高い金融ノウハウを有している、かように思います。したがいまして、農協金融システムの運営に責任を持って取り組むという必要があります。今回の改正において、信用事業の再編強化に関する基本方針の策定、基本方針に即して農協、信連に指導を行う、このことを農林中金に権限を付与する。自主ルールに基づく農林中金の指導に従わない農協、信連については、一定のペナルティー措置を受けるとともに、指定支援法人の支援が受けられない。これらにより農林中金の指導については実効性が担保される、かように考えているわけでございます。

 後段のフランス、ドイツの例を挙げての先生のお話については、前段申し上げた次第でございますが、自主ルールは、別組織であっても機能するが、一定の経営水準がクリアできなくなれば、上部団体への事業譲渡を行うなど、このシステムのもとに農協系統の再編を強力に推進していく。そして将来的には、今申し上げましたようなことを推進していく過程でさらに理想的な姿になっていくかもしれない、そういうような印象でございますが、まずは、今回の改正で我々は確信を持って担保できる、こういう印象を持っていることをお話ししたいと思います。

平岡委員 今回の改正で、うまくいかないという印象を持っておられたのでは大変なので、それはうまくいくという印象を持っておられること自体は否定するものではありませんけれども、余りにも責任の所在があいまいであるというふうに思います。

 先ほどペナルティーを科すと言っておられましたけれども、どうも仲間内で決めたルールの中で仲間内でやっている、そういう中でのペナルティーということであって、法律的にどこにどういう根拠があってそういうペナルティーが科せられるのかというようなところも、私としては非常に大きな疑問を持っているわけであります。

 確かに、実効性という意味においては、仲間で決めたものについて守らなければ排除される、それもいいのかどうかというのは私にはわかりませんけれども、そういうのは多分農協の世界では非常に怖いことだろうと思いますから、それなりに実効性はあろうと思うのです。それでは、その指導に従わなかった、従った結果としてだめになったときには一体だれが責任を持つのか。また、住専のときの関係について同僚議員が質問しましたけれども、責任があいまいなままに、なあなあ主義で終わってしまうというようなことではいけないのではないかというふうにも思うわけであります。

 そういう観点から今回の法制度をもう少し見てみますと、農中に経営管理委員会を設置するというのがあって、これを見ますと、この経営管理委員にはいろいろな方々が役員として入ってくるということになっているようであります。そのやろうとしている仕事の中身というのが、理事を選任し、そして代表理事を決定する権限を有している、さらに、農協金融の再編と強化に関する基本方針の策定に承認を与える、あるいは、その基本方針に即した農協金融の再編と強化を図るための指導を行うか否かの決定を行うといったような権限を持っている、こういうことになっているわけであります。

 私が思うのは、この経営管理委員会が、そうした基本方針の策定とか、あるいはその方針に基づいて指導を行うか否かの決定をするということについて、本当にこれは責任を負えるような人たちであるのかどうか、これに対して非常に大きな疑問を持っているわけであります。

 農水省の説明の中に、問題のある農協、信連を早期に発見して、早期に経営改善、組織統合による是正を図るための自主ルールである基本方針を策定するのだ、こう書いてあるわけです。この基本方針の中身を見ると、どうして金融の専門家である農中の理事の人たちではこれができないのか。理事で決定し、理事が農中の経営について責任を持つということでいいのではないかと思うのですけれども、どうしてこういう経営管理委員会というものを、また屋上屋を重ねるようなものをつくらなければいけないのですか。

須賀田政府参考人 単協、信連、農林中金と、金融業務を営んでいるのではありますけれども、やはり一つの系統でございまして、我々が今回ねらいとしております自主ルールとそれに基づく指導と問題ある農協の処理、こういうようなことを実効性あるものとして確保するということのためには、全体のシステムがやはり納得ずくでうまく機能しないといけないということが一つあるわけでございます。

 そういうことでありますれば、ありていに申しますと、現在の農林中央金庫の理事会と、それ以下の会員、信連でございますとか単協が意思疎通があって、うまく指導関係が確立しているかというと、率直に申しますと、なかなかそういう関係にはないわけでございます。やはりそこは、会員の意思を反映した業務運営、基本方針の設定を会員たる信連、農協が守るという体制にならないと、現実には実効力が確保できないという状況にあるわけでございます。

 そこで今回、その農林中央金庫に会員の代表等から成る経営管理委員会を設置するわけでございますけれども、これは農協等の経営管理委員会と異なりまして、この経営管理委員会の中には金融の専門家も一部入ってもらうということを現在考えておりまして、この経営管理委員会で基本方針をつくれば、会員の意思が反映されたものであるということで、実効が担保できるのではないか。むしろ、系統としての責任の所在の明確化につながるのではないかというふうに考えているところでございます。

平岡委員 きょうの質問を通じて、まだやはり、系統金融機関というのが、一体だれが責任を持っていろいろなことを決定し、実行していくのかというのが、どうもよくわからない。いろいろな主体がいっぱい出てきて、それぞれがみんな何かやっていて、何かよくわからぬですねという仕組みになっているような気がして、どうもしようがないのです。

 最後に、お願いになりますけれども、こういう金融問題、特に破綻防止、破綻処理の問題については、やはり透明なルールに基づいて、透明性ある決定が行われていく必要があるというふうに私は強く思っております。

 最後に、大臣にそういう決意を示していただきたいと思います。

武部国務大臣 御指摘のように、系統金融機関であるということからして、会員の意思というものは非常に重要でありますし、民主的に運営されなければならぬということは言うまでもありません。

 しかし、金融機関としては、他の金融機関と競争条件下にあるわけでありますから、そういったことを踏まえて、これがベストと我々は思って今回法案を提出させていただきましたけれども、さらによりいいもの、いいシステムづくりということも視野に入れながら、農林水産省としてもしっかり対応していかなければならない、かように存ずる次第でございます。

平岡委員 以上で終わります。

堀込委員長 次に、一川保夫君。

一川委員 昨日に引き続いて質問をさせていただきます。

 きょう、委員会の冒頭、大臣の方から、私の昨日の質問について再度説明がございましたけれども、その問題について、大臣が余り直接答弁されるとまた誤解を招く面がありますから、私から自分の思いを若干述べさせていただきます。

 私自身は、昨日質問をした趣旨は、今回の法改正の中で、兼職、兼業の規制を強化するという一つの流れの中で、現行法の中でも、行政庁の認可があれば一部例外的に認めてきたという事例が当然あるわけでして、今回さらにそれを強化するというような趣旨の文言になっているわけですけれども、では現実、現場の方はそれですきっと割り切って物事が円滑にいっているかということを考えてみた場合に、どうも何か例外扱いのところがはっきりとした扱いになっていないのではないか、率直にそういう印象を持っているわけです。

 ですから、法文上明記されておるところはそれでいいわけですけれども、これから農水省の方針として、省令の段階で、どういう考え方で基本的にそれを整理していかれるかというところを、この機会に大臣にお考えを聞きたいということで昨日質問したわけでして、割とわかりやすい答弁があったというふうに私は思いますけれども、どうも、そのあたりがこの法律の趣旨に反するおそれがある云々というようなことでお話をされましたけれども、私は何もそんなに大げさなものでもないと思います。

 やはり、現場、第一線で本当に地域の農業に責任を持って、地域の農業、農村の振興のために命をかけて頑張っている農協のリーダーの方もたくさんいらっしゃるわけでして、そういう方々がそういう地域に足場を置いて、しっかりとした思いでいろいろな連合会組織の中で発言をしていく、またそれを引っ張っていくということで、現実問題としては、むしろ業務の効率化ということが図られるケースもあります。また、いたずらに役職にいろいろな人を登用するということは、私は、逆に組合員の負担増につながる危険性もありますし、また現実問題、そういった人材を確保するということが非常に至難なケースがあるような気がするのですね。

 ですから、現実問題として、今それぞれの単協段階でも、いろいろな役員を改選するような地域もあろうかと思いますけれども、そういう時期によりわかりやすい考え方をお示し願いたいということで質問いたしたわけでして、そのあたりを十分御理解していただきたいと思います。

 先ほどの、冒頭の大臣の説明もわかりづらいところが若干ありますけれども、しかし、昨日の答弁の中に大臣の基本的なお気持ちもある程度あらわれているわけでございますので、私は、この問題については、先ほども触れましたように、末端の各単協の段階、それから、それぞれの農業関係者の方々にやはりもっとわかりやすい形で指導がされますように、よろしくお願いを申し上げたいというふうに思っておる次第でございます。

 この問題は、これ以上突っ込みますとまたややこしい話になりますので、ここはこれで終わらせていただきます。

 それで、きのう質問できなかった事項がございましたので、きょう、ちょっと質問させていただきます。

 農協という組織を広域合併するということが、かねてからの大きな政策課題だったわけですね。広域合併の問題。それから、組織の二段階制の構想というのは、これまた農協関係者も含め我々も大いに関心のあるテーマであるわけです。

 これが目標どおりそう進んでいるわけではないというふうに率直に思いますけれども、現状はどのようになっておりますか、まず御説明をお願いしたいと思います。

須賀田政府参考人 農協の合併構想、横の合併と縦の合併と両方あるわけでございます。

 まず横の合併でございまして、横の合併は、本年、十三年の三月末までに全体で約五百十の農協合併構想の実現ということで取り組んできたわけでございます。現況どうなっているかということでございます。本年の四月現在、構想実現農協が三百八十五ということで、達成率が七六%でございます。具体的な農協数は、現在千百六十六ございます。

 それから、組織二段でございます。組織二段も二〇〇〇年度、十二年度を目標に取り組んできたわけでございます。まず組織二段につきましては、経済事業で、本年四月までに二十七経済連が全農と統合を達成しております。それから、共済事業でございます。共済事業は、昨年、十二年の四月に、四十七共済連が全共連と一斉統合を完了しております。

 そういう形で、この経済、共済両事業は一定の成果が上がっているわけでございますけれども、信用事業につきましては、まず農林中金との統合の方針を決定しているのが二十四信連でございまして、そのうちの九信連が組織整備に向けて個別に検討中という状況でございます。さらに条件がおおむね合意に達しました三信連が十五年度中の統合に向けて具体的な準備を進めているということで、信用部門は大層おくれているわけでございます。

 今後、拍車をかけてこの組織統合問題に取り組んでいく必要があろうかというふうに思っている次第でございます。

一川委員 今ほどの御説明を聞いてもわかるとおり、目標に掲げたものに対して進捗状況が七六%というようなお話もございましたけれども、この合併問題、当然組織によっていろいろな問題を抱えておるわけでして、そう簡単にいかないというケースも理解できるところがあるわけです。

 大臣、農協の合併問題というのは、合併助成法という法律がありましたけれども、この三月末でその期限は切れて、もうこの法律を延長していないわけですよね。ということは、農協の広域合併の課題についてはもうあきらめた、あきらめたというのはおかしいけれども、もう大体これ以上やるのは無理だという観点なのか、いやそうじゃない、これからも従来どおりしっかりとやっていくんだということなのか。法律が一応ことしの三月末で切れているという現状を見て、今後の農協の合併あるいは組織の二段階制ですか、こういう問題に対して、基本的に大臣としてどのように取り組んでいかれる方針なのかお聞きしたい、そのように思います。

武部国務大臣 今後も引き続き合併に取り組んでいくことといたしたいと思いますし、農林水産省としては、一般企業の企業再編と同様に、農協系統内の組織再編の一環としての合併の必要性はあるもの、かように考えております。

 このために、合併に当たっては、農協系統の自主的な取り組みを基本としつつ、企業再編税制の適用を受けられるよう措置したところであります。また、合併手続の簡素化も措置したところでございまして、合併助成法の延長は行わないことといたしましたが、さらに積極的な合併に取り組んでまいりたい、かように存じます。

一川委員 私は、合併問題も当然組織の効率的な運営を図るという観点で基本的には促進させるべきだというふうには思いますけれども、場所によっては、割と小ぢんまりとした農協、相当特色を生かして頑張っている農協もあることはあります。そういうのも現実でございまして、そういう意欲を低下させないということも一方では非常に大事な面もありますので、ケース・バイ・ケースであろうかと思いますけれども、恐らく残されている農協はいろいろな問題を抱えている農協だというふうに私は思いますので、そういうことも踏まえて、余り画一的な指導でないやり方で臨んでいただきたい、そのように思っております。

 そこで、次の問題に移らせていただきますけれども、先ほどの平岡委員の段階でいろいろな話題が出ておりますけれども、信用事業に関連した問題でちょっと気になりますのは、今回、新たな法律をつくって農協関係のそういった系統金融システムというものを一本化していきたいというような流れになってきておるわけですね。そういう中で、法律第四条に、基本方針を定めて対処していくということになっているわけです。

 そこで、これからそういった基本方針に基づいて、問題を抱えている農協なり信連というもののいろいろな問題点の早期発見なり早期是正ということに当然取り組まれていくというふうに思いますけれども、どのような基準でそういうものに対処しようとしているのか。また、問題があると指摘された農協等が基本的なその指導に従わなかった場合に、具体的に何かペナルティー的なものがあるのかないのか、逆に、指導に従った農協に対しては何かメリットがあるというふうになるのかもしれませんけれども、そのあたりの基本的なお考えをお聞かせ願いたいと思います。

須賀田政府参考人 再編法四条で規定する基本方針でございます。まず、経営改善をするルールといたしまして、例えば自己資本比率、不良債権比率、経営体制、こういうものが一定の水準をクリアできなかった場合には経営改善を行う。それで、経営改善を行う場合には指定支援法人から資金援助をする。さらに、経営上の重大な問題が生じた場合には事業譲渡を行う。このために、指定支援法人への積み立ての義務をこのルールの中に決めていく、そして、ルールに従わなかった場合の措置というものもこのルールの中で決めていく、こういうようなことを考えているわけでございます。

 そして、この基本方針に従わなかった場合のペナルティーでございますが、これはあくまでも自主的なルールの中でのペナルティーでございまして、まず、例えば基本方針の中で農林中金の指導に従わない農協とか信連につきましては、コンピューターでございますとか為替でございますとかの信用事業インフラの利用停止でございますとか、農林中金からの除名でございますとかを定めることを見込んでおるところでございますし、指導に従わぬわけでございますので指定支援法人からの支援もないということでございます。

 このようにして、農林中金の指導の実効性の担保というものを図っていきたいというふうに考えているところでございます。

一川委員 そこで、大臣にちょっとこういう一つの流れの中でお聞きしたいことがあるわけですけれども、農協系のこういった信用事業を再編成していくという一つの方針のもとで、当然、農協が抱える不良債権の解消の問題というのはこれまた重要な課題だと思いますね。不良債権、当然ながらいろいろなものがたくさんございますけれども、特に、農協の抱えている不良債権の中で、本当に営農、農業にしっかりと取り組んでいきたいという中でいろいろな資金繰りをやった結果、いろいろな面で不良債権的な扱いになってしまっているケースも当然あろうかと思うんです。

 そのほか、一般の金融機関並みの不良債権的なものも当然あろうかと思うんですけれども、農協の抱えている不良債権も、中身をよく見た中で、本当に農協本来の、組合員、農業者のためにしっかりとした指導をされていくということであれば、やはり農業者が立ち直ることができるような指導のもとでの不良債権の処理の取り扱いがあっていいというふうに思います。

 そのあたりに対する大臣の基本的なお考えを確認しておきたいと思います。

武部国務大臣 農業者の不良債権については、適切に対応していくことが肝要だと思います。農業者の経営再建が可能かどうかを適切に見きわめることがとりわけ重要だ。再建可能であれば再建を積極的に支援していくことも必要であろうと思いますし、営農状況を踏まえて適切な指導を行い、返済不能な負債状況に陥らないようにすることが基本だ、かように考えております。

一川委員 だんだん大臣の答弁が味気なくなってまいりました。もっとも、何となく慎重になる心境もわからないでもないわけですけれども、大臣らしい味のある答弁をお願いしたいと思います。私の質問もあとわずかですから、よろしくお願いしたいと思います。

 もう一つ、農協のこういった金融関係の問題で常に話題になるのは、ペイオフ解禁に向けての対応です。

 これは、日本の金融システムの安定という中で常に議論されておりますけれども、私は、農協がほかの金融機関並みに何でも横並び的に物事を考えていくことには、基本的には余り賛成しないのです。農協の金融システムが一般の金融機関に比べて信頼度があるという自信を持って、基本的には対処していただきたい。

 何となく、横並びで物事をやっていると、何かほかの金融機関並みにちょっともろいところがあるのかなというふうに、常に組合員にそういう感覚で見られますので、私は、むしろ一般の金融機関が何か新しい方向に進んだ場合でも、農協サイドはそれと関係なくちゃんと自立していくということがあっていいのではないかなというふうにかねがね思っているわけです。

 しかし、今、ペイオフ解禁という時期をだんだん間近に控えてきまして、それに対するセーフティーネットを構築していくということも一方では重要な課題であるわけですけれども、こういったことが各農協のどういう負担につながっていくのかということも含めて、各農協も事情がそれぞれ皆異なりますから、このあたりのやり方いかんによっては、農協そのものが自信をなくしてしまう危険性もはらんでいるわけです。ですから、そういうことに対する農水大臣の基本的なお考えをお聞きしておきたい、そのように思います。

武部国務大臣 味気ない答弁になっておりますことは申しわけなく思いますが、しかし、事金融の問題というのは、これはきちっとしていかなければなりません。

 しかし、今、先生御指摘のとおり、今日の農業情勢を考えますと、私が提案しておりますように、思い切った農業構造の改革を進めていかなければならない。単なる生産だけではなくて、加工、流通、そういった分野にもマーケティングを重視した展開を望んでいるわけでありまして、それを支援していこうというのが私どもの考えでありますので、ここで万全なセーフティーネットの構築ということは極めて大事なことであります。同時に、農村が、あるいはまた農業が活力を発揮していく、それを支援していくというのが農協金融の基本だということをまず申し上げたいと思います。

 貯金保険制度、系統の自主的な積立制度により、一定の財源を確保してまいりまして、新たな金融システムの中で、必要額を確保しつつ各農協の経営状況等が勘案されるものと考えます。

 税制上も損金算入といった負担軽減の措置も考えていかなければなりませんし、新たな農協金融システムのもとでは、早期是正により全体としての負担は小さくなるはずだ、かように考えております。

 以上のような考え方でしっかり対応することを旨といたしまして、同時に、今、先生が心配されましたような問題を解決して、農村に活力を与える、そういうことについても十二分に農林水産省としては配慮していかなければならない、かように考えております。

一川委員 私が質問しようとした中身と平岡委員の質問した中身と重複したケースが幾つかありますので、私はこれで質問を最後にさせていただきますけれども、今回、農協改革法ということで、農協そのもののこれからの役割めいたものについては、昨日も大臣の基本的なお考えを確認させていただきました。

 私は、農協が二十一世紀に入って本当に日本の新しい農業に対してしっかりとした役割を担っていくという中で、一方では、農業なり農村を取り巻くいろいろな環境に厳しいものがあることは御案内のとおりでございますけれども、基本的には、農協の本来の理念というものを今まで忘れかけていたのではないかということが基本にあるような気がするのですね。

 昨日もちょっと触れましたように、農協栄えて農家滅びるというようなことが当然あってはならないわけでございますし、逆に、もっと農協の役員それから職員一丸となって、管内の農業の振興のため、また組合員のために、この際身を削ってでも全力投球するという気構えで取り組んでいただきたいというのが私の気持ちでございます。

 そういった信頼を回復しない限りは、なかなか農林省が立派な政策を打ち出しても末端に浸透しないというケースも多々あるわけでございまして、そういう面では、農協に対するいろいろな指導、これは、我々政治家もそれぞれの地域に帰ってそういったことは当然やらなければならないわけですけれども、そういうことをよろしくお願いするわけです。

 最近の中山間地域のいろいろな厳しい状況とか、あるいはまた、高齢化社会を迎える中で、農村地域は、特に高齢化現象が激しい、また担い手が非常に不足してきている。また一方では、農地が荒廃化してきている。非常に農村全体が活力を失いつつある。また、そこで農業に従事している皆さん方も、だんだん自信をなくし、誇りをなくしていく、そういう危険性をはらんでいるわけです。

 そういったことを考えますと、この農協という組織が、農協だけちゃんと生き残ればいいというものでは当然ないわけでございますので、やはりその地域の農業なり農業従事者をしっかりとサポートしていく、そういう気構えを農協そのものが持つべきだというふうに私は思っております。

 今ほど言いましたようないろいろな脆弱化現象があらわれてきておりますので、場合によっては、その地域の農作業等についてもっと積極的に農協が委託を受けて、そういうものをカバーして、自分の管内の農地が有効に活用できるようにお互いに知恵を出し合って、あるいは、場合によっては肉体労働も含めて対応すべきだというふうに私は思うわけですけれども、こういう一つのこれからの新しい方向について、大臣としてのお考えを確認しておきたい、そのように思います。

武部国務大臣 同感という言葉は気をつけなければならない用語かもしれませんが、全く同感でありまして、農協も、合併の問題も本法案の中でいろいろ議論いただいておりますが、私は、初めに合併ありきとは思っておりません。

 小さな農協でも、きめ細かくしっかり対応しているところがあります。しっかりしているところはどういうところかというと、やはりすぐれた人材がいる、また組合長を初めリーダーがいるということが非常に大きな力を得ている、かように思います。

 そういう意味で、合併を促進することによって、いい人材が多岐にわたって活躍いただけるということにもなろうと思いますし、営農指導でありますとか、きめ細かく生産者、組合員、農家の適切な相談相手になり得るようなことが基本的に大事だと思います。

 さらに、先ほどもちょっとお話ししましたけれども、マーケティングのことも極めて重要でありまして、私は、それは合併ということではなしに、どんどん各単協が広域的な事業を、会社を起こすなり、また共同でやるなり、そういうような経済行為、産業政策の分野については、農協の考え方を離れて、もっと飛躍した努力をすべきじゃないか、かように思います。

 いずれにいたしましても、今、先生御指摘のようなことは基本として非常に大事なんでありまして、本末転倒にならないような努力を農林水産省としても徹底していきたい、かように思います。

一川委員 私と大臣とのやりとりの問題が原因でちょっと審議時間がおくれておりますので、私は若干早目に終わらせていただきます。きょうはどうも御苦労さまでございました。

堀込委員長 次に、松本善明君。

松本(善)委員 大臣に伺いたいと思います。農協のあり方の根本問題のようなことですが、今起こっていることは、農民の農協離れなんというものではなくて、農協の農民離れだということが言われている。そういうことを聞いたことがあるかどうか。また、聞いたことがあるかどうかは別として、そういうことが言われていることについてどう思うか、聞きたいと思います。

武部国務大臣 私も政治家ですから、地元に帰りますれば、いろいろな農家の方々のお話を耳にいたします。そういう話もあれば、また逆に、今こそ農協が一体となって頑張っていかなきゃならないというようなさまざまな意見がある、かように承知しております。

松本(善)委員 きょうの委員会の冒頭、陳謝されましたけれども、実際に進んでいることと現状とが違っている。それがぽっと出たというのがきょうの事態。今の御答弁を聞いていましても、この法律がやろうとしていることと違う方向、私はそういうのがすっと出てくるんだと思います。

 お聞きしますが、昨年の七月ですが、読売新聞に明大の農学部の北出教授の意見が出ておりました。それによりますと、「組合員からみると、単位農協が最も身近な本店であり、県組織は支店、全国連合会は出張所といえる。農協を規模や経営の観点でなく、組合員の営農と生活をいかに向上させるかを徹底して考えることが必要だ。」こう述べております。私は全く同感だと思いました。

 農協が頼りにすべきものはそれぞれの農協がよって立つ組合員と地域であり、組合員の要求に基づいて組合員の営農と生活をいかに向上させるか、そこにこそ農協本来の姿があるのではないか。大臣はどう思います。

武部国務大臣 農業協同組合精神というのは、一人は万人のために、万人は一人のためにというのがスタートだったろう、かように思います。

 したがいまして、このことは原点でありますし、同時に、時代とともにさまざまな競争も余儀なくされているわけであります。今までは地産地消というようなことでよかった。北海道であっても、全国ネットで流通分野にどんどん広がっていかなきゃならないということになりますと、また農協の役割というものも変わってくるでしょうし、道路も随分よくなってまいりましたし、広域的に事業をやっていかなければそれこそ生産者の要請や期待にこたえられないというような分野もあるわけであります。

 そういったことでは、農協の合併というふうなことも、私は、生産者の側からの要請としても、あるいは、少しでも小さな農協ということからいたしましても、そういう要請が出てくるのは当然だろう、かように思います。

松本(善)委員 先ほども同僚委員が言っていましたけれども、農協栄えて農民滅ぶ、農協の農民離れと同じです。金融機関化し始めているんですね。本来の性質と違う。この法律案なんかはその典型の一つですよ。

 法案で、農協の第一の事業に営農指導事業を掲げました。それは当然のことなんですが、今までやっていなかったということになるのかということの疑問もあります。ところが、指導員数は一九九九年度で一万六千四百十四人。五年前の一万七千七百四人から約千三百人減少している。指導員のいない農協の比率は九・三%に上っています。大臣、この原因をどう考えていますか。――大臣。ちょっとやめてくれ。だめだ。きのう、私のところへ来て、政府委員は私が認めたときに答弁してもらう。大臣だということを言っているんです。勝手に出てくるな。

武部国務大臣 営農指導員の減少については、どう対応するかということも含めてお答えいたしますか。(松本(善)委員「いいですよ、原因は何かということをまず答えてください」と呼ぶ)

 農協の行う営農指導については、合併により広域化するにつれ、営農指導がなおざりにされがちであり、少なくとも組合員とのつながりが希薄化している。主として組合員の賦課金により賄われていることを理由にして営農指導員の数をふやさず、むしろ、合併を契機に、効率化を理由に減少させる等の批判が寄せられている。しかし、今後、厳しい農業情勢下で、担い手の育成、食料自給率の向上等を図るための構造改革を進めることが急務でありまして、その意味で、営農指導を農協の第一の事業として今回の法案でも明記しているところでございます。

 指導員の減少は、資質の向上、指導の重点化と効率化等でカバーする必要があると考えておりまして、このような考え方のもとで、地域農業改良普及センターと連携を図りながら、その実現を図る。

 法人経営、大規模家族経営等とのネットワーク化を図り、指導の重点化を図る。試験場、肥料、農薬等のメーカー、地域農業改良普及センター等の協力を得て、営農指導員の資質の向上を図る。

 マーケティング、消費地での店舗展開等を視野に入れ、農産物の有利販売の観点から対応を戦略的に実施する等によりまして、生産から農産物販売までをカバーすることを旨として、営農指導の質の向上を図ることが重要と私は認識しております。

松本(善)委員 大臣、国会改革で、そういうような答弁をしないようにしようじゃないかということじゃなかったですか。やはり政治家として、私は、こういう法案を出すならば、真剣に物を考えなきゃいかぬと思うんですよ。(武部国務大臣「真剣に考えていますよ」と呼ぶ)私の質問に対してほとんど答えていないじゃないですか、なぜこういうふうになってきているのか。私はそういうところが政治家と官僚との違いでなければならぬと思いますよ。

 私は、ある営農指導員から話を聞きました。営農指導費は事業総収益の二%程度になっているというんだ。収益の落ち込みの原因は、米価の下落、野菜、果実の価格の低迷だというんです。指導の中心は農協中央会指導の水田営農推進が中心で、米の輸入の問題だとか、あるいは国内の農家をどう育成するか、そういうようなことを余り言わないで、国からの助成金が幾らもらえるか、こういうことが中心だというんです。これでは今後ますます農家の足が遠くなっていくんじゃないかというふうに思われる。

 営農指導といっても、減反で幾ら助成金をもらえるか、そこが中心なら、これは離れていきますよ。私は一人の営農指導員の話を聞いたわけですけれども、この営農指導がずっと少なくなってきているということについてやはり真剣に考えないといけない。私は、農水大臣が十分考えているようにも思えない。

 私は、やはり農協を、さっきの御答弁の中では、農協の本来の姿についてもありましたけれども、そういう本来の姿、農民のための農協、こういう方向へ一歩でも戻していかないといけないというふうに思います。ましてや、参議院選挙のための組織ぐるみの選挙に農協を使うなんて、とんでもない本末転倒だ。

 昨日、大臣は、ぐるみ選挙の時代ではないということを言われましたが、果たしてそうかということを聞きたいと思います。

 大臣には答弁の関係で資料をお渡しいたしますが、読みますと、これは、香川県の農協での自民党の比例代表候補者の支援対策です。名前は、皆さん言えばおわかりと思いますが、名前は出しませんが、F氏ということにしましょう。

 経過は、全国農業者農政運動組織協議会は、第十九回参議院議員選挙比例代表選挙区に、前農林水産省食品流通局長のF氏の推薦を決定した。これを受け、本県においても、十月十三日開催の香川県農協農政対策協議会委員会において、同氏を自由民主党の比例代表候補者として推薦することとした。あわせて全国農政協から要請のあった自由民主党の党員確保四百名及び同氏の後援会の会員確保一万名に取り組むことにした。

 ということで、党員確保四百名。これは対応はどうするか。要請先及び目標。中央会、連合会、JA香川県本店に対して、香川県農協農政対策協議会長名で、本人(常勤役員及び管理職員)と家族一名(家族は家族党員として入党)の要請を行い、全国農政協から要請された四百名を確保する。

 なお、党費は一人四千円であるが、家族党費は二千円となっており、自民党香川県連から還付金として党員千二百五十円、家族党員六百二十五円が交付されることから、役職員一人当たり四千百二十五円、六千円から千八百七十五円を引いた、それを支出してもらうこととする。今の説明どおりです。そして、中央会、連合会、JA香川県本店への依頼数は別紙のとおりだと。

 後援会員(署名)の確保は一万名。この対応は、各連合会、農協、関係先に対して協力を要請するということです。

 そしてさらに、これはまだ農政協の文書ですけれども、次に、では、農政協の会長の丸本さんという方から、JA香川県本店生活事業本部御中ということで、これの具体化が要望されている。

 F氏への入会、依頼数二百四十九名分。この報告は、事務局(中央会組織経営部)に提出してください。自由民主党への入党、七十名分。同じように、事務局は中央会の組織経営部です。

 そして、事務連絡ということで、企画管理部長から各部(室)長あてに文書が出ている。それらの文書を添付して、入党費一人当たり四千百二十五円を部単位で取りまとめてください。そして、提出先は企画管理部。

 どうです、これはもう文字どおりのぐるみ選挙と違いますか、大臣。

武部国務大臣 農政協が農政活動をやるということ、また農協の組合員が個人として政治活動をやること、あるいは選挙運動をやること、それは私は別に問題はない、かように思います。

 ただ、今ちょっと見て、先生述べられましたけれども、正確に今見たものを把握してはおりませんが、本当に農協組織が、農協組織そのものがこのようなことをやることは適切ではない、私はかように思います。きのうも申し上げましたように、先生は農協ぐるみの選挙運動、こういうふうに申されたいんだろうと思いますけれども、今どきそういうようなことは、少なくとも我々のところではありませんね。そういうようなことは、かえって、組合員の批判を受けたり、それはもう有権者の批判につながる、かように思います。

 これも、十二年のことのようでありますけれども、そういう意味では、私はきのうお話ししたとおりでございます。

松本(善)委員 去年の十月といったって、今度の参議院選挙あての文書ですよ。そして、やっているのは、香川県の本店生活事業本部御中で文書が出されて、そこの企画管理部長が各部(室)長に企画管理部へ文書を出して報告せよと言っているのです。これは否定することはできないじゃないですか。

 私のところはそんなことはないなんて、農林水産省としてこれをきちっと調査をして、そして再発の防止をすべきであります。その調査をきちっとして、委員会に報告してもらえますか。

武部国務大臣 中央会も法律により法人格を付与された組織であり、他の法人と同様、目的遂行に資する限りにおいて政治活動を行うことは認められていると考えます。このため、公職選挙法や政治資金規正法等に反しない範囲で政治活動を行うことは、目的の遂行に資する限りにおいて認められるものと考えるものであります。

 しかしながら、中央会は農協を会員とする団体であり、農協にはいろいろな考え方を持っている組合員が加入しているということから考えれば、無理な政治活動は組織内部の混乱を招くおそれがあることから、その活動はおのずと限界があるものと考えます。

松本(善)委員 大臣が言っているのは、それは、農協は自民党の入党の活動をやっていい、それから後援会入会の活動をやっていいということですか。これは、このF氏を支援します、署名があって、小さく、F氏の後援会に入会しますと言っている。これに署名したら後援会に入会したことになるんです。こういうのを認めるんですか。

武部国務大臣 後援会活動とかいうのは強制されるものじゃありませんで、個人の自由ではないですか。

松本(善)委員 そうじゃないんです。私の言っているのは、農協の組織がこういう活動をすることをあなたは認めますかというんです。それはぐるみ選挙でしょう。やってはならぬことでしょう。やってはならぬことなら、調査をして、そして再発の防止をすべきじゃないですか。

武部国務大臣 今、松本委員は、選挙活動とおっしゃいましたけれども、これは選挙活動なんですか。(松本(善)委員「これはそうでしょう、今言ったことは。違いますか」と呼ぶ)いやいや、後援会活動と選挙活動は違いますよ。(松本(善)委員「推薦しますというんですよ」と呼ぶ)推薦するということも、それは選挙活動じゃありませんよ。

松本(善)委員 それは、認める、こういうことをやっていていいということですか。農水大臣の言いたいことは、こういうことは認められることだということですか。

武部国務大臣 あくまでも節度を持ってやるべきことには違いありませんけれども、その実態については私はそれは選挙活動だというふうには思いませんで、それが節度があるかどうかということは、よく私、今の時点でわかりません。いずれにしても、個人の資格で行われているもの、かように思います。

松本(善)委員 今の感覚で結構ですよ。これは認められることですか、認められないことですか。いけないことか、それともいいことか。どっちですか。

武部国務大臣 ですから、今申し上げましたように、今見せられたばかりですから、中身について、どういう実態なのかということは今私は正確に把握できませんから、認められるとか認められないとかという二者択一の答弁はできません。

 私は、認められるか認められないかというようなことは、私自身が判断する話ではないと思いますよ。これは後援会活動であるということ、そして個人の資格でやっている、そういう政治活動であるということであるならば、私はそれは許されないことではない。しかし、節度を持ってやらなきゃならぬことは、これは常識的に当然の話でありますから、それがどの程度のものであるかということは、私は、またよく事情を聞いた上でないと、二者択一の答弁は困難であるということを申し上げます。

松本(善)委員 だから調査をすべきと言っているんですよ。だってこれは、企画管理部長が各部(室)長あてに、企画管理部に入党とそれから入会の結果を報告せよと言っているんですよ。そういうことは、あいまいな答弁をしているんじゃお話にならないと思うのですが、本題に戻りましょう。

 こういう農協の体質、組織や事業にわたって、私は公私混同も甚だしいと思うのですよ。農業協同組合という立場からすれば考えられないことですよ。これをやはり、組合員が主人公という視点から改善していくこと、農協の体質をそういう方向に変えることが大事なんと違いますか。

武部国務大臣 昨日も申し上げましたように、いわゆる団体ぐるみの後援会活動でありますとかそういったことは、私は、決して多くの人の支持を得られるようなやり方ではないと思います。

 したがいまして、政治活動とか後援会活動というものは、これは個人の資格でやる場合におきましては何ら批判されるものはないと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、節度を持ってやらないと、よかれと思うことがかえってマイナスになる、私はそう思っておりますし、これは今後、そういったことは、私の立場からも注意を促すことはやぶさかではありません。

松本(善)委員 私は、プラスになるかマイナスになるかという観点じゃなくて、守らなければならぬルールとして言っているんですよ。どうもそこがおわかりにならぬようですが、時間もありますから次へ進みます。

 先ほど来も、不良債権の処理の問題、盛んに議論がございました。私はお聞きをしておりまして、金融機関としての整備の観点からの答弁。不良債権の処理と最終処理、二、三年のうちにやるというのが小泉内閣の方針でしょう。それは、取り立てをして不良債権としてなくしてしまう。そうすると、倒産なんですよ、企業でいえば。農家でいえば農地の取り上げですわ。担保にしているのもみんなとって、そして債権として処理するんですよ。それが不良債権の処理でしょう。さっき適当な答弁をされていましたけれども、そんなことにならぬように。

 小泉内閣、それをやるというんですよ。そうしたら、どういうふうにやるんだ、いわゆる倒産、離農はどのくらい出るんだ、この影響はどうなるのか。総額は三兆円ぐらいですね。農協が一兆一千億ちょっと、信連が五千億ぐらい、農林中金が一兆二千億ぐらい、合計三兆円ぐらい。これは、本格的に最終処理をやったら大変なことになりますよ。どういう見通しを考えているか。

武部国務大臣 農協系統においても、緊急経済対策で示された不良債権処理の推進策について適切に対応する必要がある、私はかように思います。

 農協系統では、十四年四月からのペイオフ解禁を控え、それまでは不良債権を確実かつ集中的に処理する方針を決定しております。行政と系統が連絡を密にして、銀行等に劣後することなく不良債権の処理をしなければならない、これは原則でございます。

 今、先生お話しのことは、そのことによって破綻する農協が出てくるのではないかとか、あるいはとりわけ組合員が農業を継続することができなくなるのではないか、ひいては農村が崩壊するのではないか、これをどうしてくれるというようなお話だろうと思います。

 そういうことにならないように今回の法案を提出しているわけでありまして、私どもは、確かに痛みは伴うと思います。しかし、これを放置するということは、これはもうすべてが生き残れないということになるわけですから、それはやはりケース・バイ・ケースで、どう対応していくかということは、単協を中心に、立ち上がれるものは立ち上がれるような、そういう方策を支援していかなければならないと思いますし、あるいはそうでないものも出てくると思います。

 そういったことは痛みが伴うことは言うまでもありませんが、これはさまざまな、農林水産省だけではないかもしれません、いろいろな角度からセーフティーネットということを構築していくということは言うまでもないことであります。

松本(善)委員 私は、大変無責任だと思う。三兆円ですよ。三兆円で、では農家の不良債権はどれだけなのか。

 最終処理というのは、つぶすんですよ、債権として終わりにするんですよ、だから、できるだけそういうことをしないようにではないんですよ。それは最後まで担保をとって、そして債権として終わりにするというのが最終処理なんですよ。それを小泉内閣は断行すると言っているんですよ。そうしたらば、どれだけの農家がそういうふうになるのか、そして日本の農業はどうなるのか、そういうことの展望を明らかにしないでこれをやるというのはとんでもない話ですよ。

 私は、今の御答弁では、何にも考えていない、私は、恐るべき無責任さだと思います。――いや、ちょっと待て、だめだ。資料を出すのならいいですよ。だけれども、資料を読まなければそれがわからないような農水大臣では困りますよ。しかし、まあ答弁してください。(発言する者あり)

武部国務大臣 まあまあ冷静に。冷静に対応しなきゃならぬと思いますが、三兆円三兆円と、何を、その三兆円はどの金額ですか。農業にどれだけあると松本委員は承知をしているんですか。

 農業者の不良債権については、農協は農業者の、農協は協同組合組織でありますから、そのことを踏まえて適切に対応していく、こういう考えであって、何も考えていないとか無責任だといういわれはないと思いますよ。

松本(善)委員 私の言ったものは、平成十一年度末のリスク管理債権状況の比較です。これは、農協は農林水産省の調べ、そしてその他は金融庁の調べ。これで、農協は一兆一千百七十一億、信連は五千三百九億、農林中金は一兆二千二十七億。

 私は、この数字よりも、農水省がどういうふうにこれを把握しているかということを聞いている。それの答弁がないから私は無責任だというふうに言ったんですが、それ以上聞いても数字は出てこないと思います。(武部国務大臣「局長に答弁させます」と呼ぶ)では、ごく簡単に、三十秒か一分か、数字だけでもいいよ、数字だけ言いなさい。

須賀田政府参考人 先ほど言われましたリスク管理債権の具体的中身については、私ども承知をしていないのですけれども、先生言われましたように、緊急経済対策で行います企業向けの不良債権処理と、農家への負債整理というのは別に考えていきたいというふうに考えております。

松本(善)委員 違うなら違うで、どういうふうに違うのか、その辺がやはり出てこなければならないと思うのですよ。私は、そこが出なかったということを無責任だというふうに言った。

 時間もありますから、本来のところをちょっと聞こうと思います。農協合併の問題。

 合併先にありきではないとさっき言われました。しかし、信用事業を行う農協に三人以上の常勤理事を置くことを今度義務づけているんですね。置けない農協をどうするんですか。これは普通は二人ぐらいでしょう。明らかに、合併しない農協だとか小規模農協をつぶすという政策ではありませんか。合併先にありきではありませんか。

武部国務大臣 お話しのとおり、最低三人の常勤理事の設置を義務づけることとしておりますが、小規模な農協の中にも、現在極めて優良な経営を行っているものがあるわけでありまして、貯金として農家組合員の大事な財産を預かっている以上は、破綻という事態は避けなければならない。

 幾ら組合長が優秀でも、信用事業、販売事業、購買事業、営農指導といった複雑な、なおかつ高度な業務を一人で完璧に行うことは実際上無理であり、こうした規制をかけることはやむを得ない。常勤理事を新たに設置する場合でも、自組合の金融担当職員が職員の身分のまま常勤理事を務めることも可能でありまして、これにより、常勤理事の設置に関する過度の負担をある程度軽減できるものと考えております。

松本(善)委員 それは、私がそういうことを言いますのは、過去の経過もあるのですよ。合併促進のために、例えばある県では、合併しない農協に対して、連合会の役員選挙における被選挙権を剥奪してしまうとか、ある県では、中央会の賦課金徴収で一律頭割り部分を拡大して、小規模農協では負担することを困難にするとか、あるいは合併した農協の組合長だけ集めた組合長会議を開いて、合併しない組合の組合長は呼ばない、こういうことが公然と行われているのですよ。だから、これは合併先にありきなのではないかというふうに思われる。

 私は、先ほど一番最初に言いましたが、やはり協同組合の信用事業のあり方、これを考えないで、やはり組合員と農協との信用関係、これを重視した貸し付け、そして貯金ということを重視すべきなのです。農協の規模だとか役員の数を中心に考えるのは、それこそ本末転倒と違いますか。

武部国務大臣 今先生みずからお話しされましたように、やはり農協というのは、組合員を第一に考えてつくられた組織であります。したがいまして、農協自体がその目的を遂行できないような、そういう状況になってはいけないわけですね。

 営農指導の問題もさまざまな、先ほど先生からも御指摘がありました。そういったことは、組合員からもさまざまな意見があるわけです。そういったさまざまな意見にこたえていく、そしてそういった役割を農協自体が遂行していかなければならないとすれば、組合員の中にも合併を望む人はたくさんいますからね。だから私は、先ほど言いましたように、単協でしっかりやっているところ、それはそれでしっかりやる方向でいいのではないですか。

 しかし、合併のメリットが先生は全くないとおっしゃって、そういうことを言っているのですか。合併を望む生産者もたくさんいるし、合併のメリットも数多くあるのです。私はむしろ、現在の生産者の数も減り、高齢化しているという状況、それからマーケティングを重視しなければならない。何よりも情報というものが重要な要素になっているときに、道路も大分よくなりました。それは、望まないものをしゃにむに押さえ込んで、合併を強要するというようなやり方は私はまずいと思いますよ。

 しかし、それをみんなが望んでいる。そういう合併はどんどん進めた方がいいと思うし、私は合併だけではなくて、いつでも言っておりますように、経済行為についてはまだまだやりようがある。株式会社も一考でしょう。そういう現場のことを、松本先生の人後に落ちないほど私もよく知っていろいろなことを聞いておりますので、ちょっと失礼な言い方かもしれませんけれども、余りにも独善的なお話のように聞こえてならないのです。

松本(善)委員 そうではないのですよ。金融機関として生き残るためにということが中心になり過ぎていて、そして農家のことがないがしろにされている。この実態を指摘しているのですよ。

 だから、私が調べた範囲では、例えば小規模農協ほど経営は健全ですよ。貯金の平均残高、貸付金平均残高、生産の購買や生活の購買だとか、販売、長期共済の保有高、出資金のすべて、そういう点で、大きいほど平均以下ですよ。そういう状態になっているし、それから大型の農協ほど、やはり金融不祥事が多数起こっているのではないですか。それはもう客観的事実だと思います。

 私は、本当ならば、時間が十分にあれば、それも全部聞いて進みたいのですけれども、時間も限られておりますので、もうちょっとお聞きしたいと思います。

 常勤役員の兼職、兼業の問題は、先ほどの問題にもなりましたが、それで聞きたいのは、経営管理委員会の委員は、兼職、兼業が禁止されるのかどうか。これは局長でいいのです。

須賀田政府参考人 経営管理委員は日常的な業務執行に当たっておりません。意思決定を何カ月かに一回、あるいは一カ月に一回というような会合で行っていくというようなことが予測されますので、兼業の禁止の対象にはしないつもりでございます。

松本(善)委員 経営管理委員会は、これまで定数五名以上ですべてのメンバーが正組合員としていました。今回の改正では、これを外して、正組合員以外も四分の一までは経営管理委員会に入れるようになる。農水省は、青年部、女性部、生産部の代表なども経営管理委員会に加えたいとしておりますけれども、現行法でも、一戸複数加入によって、奥さんや青年後継者も正組合員になることが可能であります。あえてこのようにする必要はどこにあるのでしょう。

須賀田政府参考人 先生お話しのように、青年後継者でございますとか、女性が正組合員になれば、経営管理委員に今までもなれるわけでございます。

 ところが、実態を見ますと、その世帯の中で、例えば、おやじさんが正組合員になっておりますと、その奥さんでございますとか、お子さんでございますとかは、出資が要るわけでございますので、正組合員になっていないという実態が多うございます。

 そういう実態に即しまして、今回、経営管理委員にそういう青年後継者、女性の方もなれるように、正組合員以外の方も四分の一までなら経営管理委員資格を与えるということにしたわけでございます。

松本(善)委員 さらに、経営管理委員会に代表理事の選任権を与えております。組合員の代表でもなく、組合員によって選ばれた者でもない理事が、代表として日常業務の最高責任者になる、これは協同組合の原則を踏み外すことにならないか。

 今金融機関化して、例えば、極端な例で言えば、銀行から持ってくるとか、そういうようなことになりますと、農協の本来の性質からすっかり変わって金融機関になっていくのです。こういう危険はありませんか。これは大臣に聞きましょう。

武部国務大臣 農協というのは、民主的に運営していかなければならないという精神のもとに、そういう組織形態になっていると思います。

 しかし同時に、これは農協だけで生きていけない、そういう時代ですよ。ですから、金融の専門家の判断も必要ですし、必ずしも理事会や総会を開いて、そこで多数決で決めたことが絶対ということでない場合もある。

 しかし、これは基本ですが、それだけにスピーディーにケース・バイ・ケースの問題について、しかもより民主的な形でみんなの総意で決定をしていくというようなことから、私は経営管理委員会というような存在価値というものが求められるのだろう、かように理解しております。

松本(善)委員 金融機関としてやっていこうというと、民主的な運営はやはりだめになっていくのですよ。それは、全体でそうなりますから。この問題の根源は、農協だけでは生きていけないというのは、農業政策そのものが破綻しているのです。米価の下落、来年だって下落しないという保証はないでしょう。それから野菜やなんかも、セーフガードの問題が盛んに言われているということは、それは農業経営そのものが困難になってきているからこういう事態が起こっている。これは指摘だけにして、質問を終わります。

堀込委員長 次に、中林よし子君。

中林委員 先ほどから、農協栄えて農業滅びるという言葉が幾たびか使われました。そこで私は、農業を滅ぼさせない、農業を発展させる、その観点から、セーフガード問題についてお聞きしたいというふうに思います。

 十日前に、私ども日本共産党は韓国を訪れて、セーフガード問題の調査を行いました。大臣は御承知だと思いますけれども、韓国では一九八七年、十四年も前から韓国貿易委員会、KTCを創設して、セーフガードの発動を推進してまいりました。私はそこに行って、直接お話を聞いてまいりました。実に感銘深いものでございました。

 まず、体制がとてもしっかりしています。人員は五十人体制で、四課体制となっております。また、セーフガード調査申請、これは業界や団体、省庁が申請できることとなっており、農産物の場合は農協が申請できます。申請が来た場合は、三十日以内に調査をする必要があるかどうかを審査し、調査開始が決定されれば百二十日以内に調査を行い、その調査を基礎に、産業に被害があったかどうかを委員会で判定することになっています。調査開始の検討の期間も非常に短いし、業界申請も認められているので、実に使い勝手のいい仕組みになっています。

 大臣、このKTCというものをどのように評価され、受けとめていらっしゃるか。日本もこのような仕組みに前進させる必要があるのではないかと思うのですけれども、その点、いかがでしょうか。

武部国務大臣 韓国におかれては、一般の行政府から独立した機関が置かれているということは承知しております。

 しかし、セーフガードに係る調査を行う機関のあり方については、各国がそれぞれの判断で決めるということは言うまでもないことでありまして、独立した機関の設置については、その必要性や、セーフガードを含めた各種業務の効率的かつ適正な執行のあり方などを総合的に勘案して考えていくべき性格のものではないか、私はかように思います。

 農林水産省においても、セーフガードを初めその時々の重要課題に適切に対処できるよう、今後とも、業務に応じた適切な人員の配置や体制の整備に努めておるところでございまして、韓国は韓国、日本は日本、それぞれのやり方があってしかるべきだろう、かように思います。

中林委員 この問題は、私がきょう初めて提起をした問題ではありません。予算委員会の中でも提起をしてまいりましたし、セーフガード発動要請が農業者の間からたくさん出ている間に、特に農水省の中でどのような体制になっているかお聞きしたら、全部兼務でやっている、専任体制はない、このようなお話で、係の、担当の職員の方々は、大変ハードな業務をやっておられました。その間は当然、本来の業務が支障を来す、こういうことになりかねない、そこを私は大変心配もしてまいりました。

 日本は世界最大の農産物輸入国です。そうであるならば、農水省の大臣として、私はもっと、こういう機関の方が客観的に判断できるなということで、むしろほかの閣僚にも働きかけていただきたい、そういうことを強く思います。

 実際、この韓国のKTCの方々のお話を聞いて大変感銘を受けた点は、この機関が設立されてから十四年間、三十二件の申請があったそうです。そのうち十五件について救済措置をとった、つまり発動したということです。セーフガードについて、世界のビッグフォーがございます。アメリカ、EU、カナダ、オーストラリアです。韓国貿易委員会は、制度を運用して十四年になるわけですけれども、セーフガード発動については日本よりもしっかりやっている、こういうふうに、少し胸を張って答えておられました。

 大臣、世界的に、先進国はこうしたセーフガード発動体制を持っているわけですね。私たちは、こういう調査研究をぜひ行ってほしい、そして体制確立について日本でも真剣に検討すべき、そういうときなのではないかというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕

武部国務大臣 韓国で十五件、十五回発動があったのですか。それは間違いありませんか、セーフガードの発動。セーフガードの発動は、私どもは二回と承知しているのでありまして、その辺のところは定かでありませんが、先生がそうおっしゃるのですから、それはまたちょっと調べてみますが。

 我が国といたしましても、農林水産省もそうですが、専任の職員を置くことがより監視体制を強化できるということになるのか、あるいはモニタリングについて、その方が有利なのかどうかということについては私はいささか疑問を感じます。

 農林水産省の組織を挙げてこれに対応しようというのが我が国の姿勢でありますし、なお、その中でもとりわけ本件については、近年非常に関心が高まっておりますし、監視品目についても十五品目ということに相なっているわけでありますから、それに対応できるような体制、努力はしていかなければならぬ、かような認識でございます。

中林委員 これは、私がうそを言っているのではありません。この貿易委員会の責任者から、直接これまでの十四年間の経緯、もちろん、この十五を発動したということは農産物だけではありません、ほかのものも含まれております。

 ただ、農産物についてはどのぐらい発動しているのか、これもお聞きをいたしました。トウガラシ、ニンニク、タン塩、粉ミルク、豚肉の缶詰、トウモロコシ、それからこれは木製品ですけれども、木のはし、つまようじ、それからエビの発酵したもの、こういうふうに御報告を受けました。

 私もこれまで農水省や外務省から、韓国はどれだけ発動されているのかとお聞きしたときに、二件と聞いていたのです。実際にこのKTCでお話を伺ったら、これだけやっていますよ、しかし申請がすべて発動になるわけではない、それはこの委員会でちゃんと調査をし、検討して最終決定を行うのだ、こういう言い方でした。

 韓国が、十四年前こういうKTCという体制をとった、そのいきさつはどういうことだったのかとお聞きもいたしました。それはやはり先進国、ビッグフォーと言われるところから学んだ、とりわけアメリカのITC、米国国際貿易委員会、ここから学んだ、だから韓国としてもこれで十分とは思っていない、準司法機関の役割はしているのだけれども、しかし純然たる政府からの独立機関ということにはなっていないので、アメリカのように純然たる独立機関にすべきだとも思っている、こういう話も伺いました。

 韓国のこのKTCのお話の中で、あるいは韓国農林部のお話の中で、韓国政府としても、セーフガードは世界に認められているルールであり、日本政府が今回、セーフガード発動についてやられたこと、これは十分理解する、そういう立場を表明されました。お隣の国の政府でさえもセーフガードの発動を認めているわけです。

 日本政府の立場、世界最大の農産物輸入国、そのことを考えていくならば、それは農水省として全力を挙げてそのことに取り組んでいらっしゃるということはこの間の経緯を見てもよくわかります。しかし、本来の農水省としての仕事もあるわけですね。だから、輸入によって国内産業に影響が出ているのかどうか、これを客観的に判断する機関の設置というのが当然行われるべきではないのか、このように思います。

 だから、今、武部大臣のお話を聞いて、何か前向きでないような感じを受けざるを得なかったわけですね。そうすると、今セーフガード発動に向けて暫定で三品できているのですけれども、ほかのことにももっと発動してほしい、こういう各地の要望が出てきているわけですから、政府は今後のセーフガードについてどのように対応していこうとされているのか、その方針があればお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 韓国のKTCは、WTO以後もそれだけの数があるのでしょうか。ガット時代には、いわゆる関税を上げるとかそういった措置ができたというふうに今事務方から聞きましたけれども。

 いずれにいたしましても、私ども、韓国の問題はいざ知らず、初めに発動ありきじゃありませんで、これはWTOのルールに従って、国内関連法案に基づいた要件が満たされた場合にこういった発動をするわけですね。それにはしっかりした政府調査というものもなければなりませんし、実際にセーフガードを発動したとしても、一定の期間が過ぎればこれは解かれるわけであります。ですから、基本的には、農林水産省としては、構造政策ということをしっかりやっていかなければならない、さような認識でございます。

 そういう意味では、日本の場合に、政府内にこういうものを設置しておりますから、外国、相手国との交渉、折衝、そういったことも即できるということからすれば、韓国のことはわかりませんけれども、KTCが発動した後即、あの発動についても政府が交渉するのじゃないのですか、その独立した機関が諸外国との交渉もやるわけじゃないのだろうと思うのですね。多分そうだろうと思います。そういうことを考えますと、今の日本のやり方ということがベターではないのか。

 今後も、各品目につきましてモニタリングを徹底した上で、直近の事情、そういった輸入状況及び構造調整方策の検討等を踏まえて判断していくということが私どもの考えでございます。

    〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕

中林委員 私は、この十四年間ということを前置きをして言ったわけですね。WTO協定以後というのは、もちろん数字としてはあります。しかし、ガット体制以後ずっとこのセーフガードの制度については変わっていないのですよ。だから、あえて私は言ってまいりました。

 日本の場合は、今回初めて発動されたということは、本当にとてもよかったというふうに思います。韓国も、これで国内産業が救えるとは思っていないけれども、国際的な貿易ルールの中でとり得る最後の安全弁なんだ、こういう言い方もされておりました。

 だから、少なくとも、アメリカ、カナダ、オーストラリア、EUなどビッグフォーというところでは、こういう独立機関を持っている。もちろん、それが決定したら、今度交渉するのはそれぞれの担当の政府ですよ。それは私も承知していますし、韓国もそう言っておりました。だからこそ、客観的に調査ができる、発動がこれでいいのかどうか、そこを客観的に見る、そういう機関が必要だ。もちろん、学識経験者だとかいろいろな方が、最終的には九人の委員で判定していくわけですよ。

 だから、そういう機関、それは韓国だけではなくして、アメリカもある、オーストラリアもある、カナダもある、EUもあるということで、私は、今後の日本の、世界最大の食料輸入国と言われている中で、これだけ農家の皆さんが苦しんでいる、そういう中では、当然体制の問題についてもぜひ前向きの検討をお願いしたいというふうに思います。

 そこで、今言われた暫定三品目の問題なんですけれども、もう調査期間は終了していますでしょう。にもかかわらず、本発動の決定がされない。私は、これは本当に遺憾だというふうに思うのですね。先般、群馬県議会、続いて茨城県議会も全会一致で本発動を求める意見書の採択が行われました。この方向は全国的に広がりつつあるわけですけれども、ぜひ本発動の決定を早くやっていただきたい。なぜおくれているのか、その理由について述べていただきたいと思います。

武部国務大臣 今調査結果の取りまとめをしているところでございまして、利害関係者等からの意見表明、直近の輸入状況及び構造調整方策の検討等を踏まえつつ、判断することといたしております。

中林委員 もう取りまとめは終わっているでしょう。まだですか。当初、期間は、四月中に利害関係のあれもちゃんと聞いてと。もう六月に入っているのですよ。どうしてこんなに期間がかかってしまうのですか。何が、どこがどうなってしまっているのですか。だからこそ独立機関が必要なんでしょう。

西藤政府参考人 御説明いたします。

 セーフガードの関係の調査につきましては、先生御案内のとおり、昨年十二月二十二日にあれしまして、それで一年以内に調査をするという仕組みになっております。

 去る五月三十一日に政府調査の利害関係者からの意見表明等も概要公表をいたしておりますが、現在、あわせてそれに対する再意見表明を受け付けるということで、政府調査自体は継続実施いたしておりますし、さらに、今ほど大臣から御説明いたしましたように、構造調整方策についての取りまとめとあわせて判断すべき状況にあるというふうに理解をいたしております。

中林委員 大臣、最終的にはいつごろ判断されますか。

武部国務大臣 ただいま局長が答弁した趣旨が明確になってからでございます。

中林委員 一年以内、これだって随分もう遅いわけですよ。暫定の期限ももう決まっておりますよ。だから、できるだけ早く本発動をしてほしい。四年間あるわけですから、構造調整もしなきゃいけないとか、いろいろそこにはありますよ。国内をどうしていくかという対策、それも早く取り組んでいかなきゃいけないわけですから、大臣、事は急ぐというふうに思います。このように全国の農家の人が、三品に限らないでほかのこともやってほしいという要望がありながら、しかし、三品については本発動の要請を行っておりますので、ぜひ重く受けとめていただきたいというふうに思います。

 ワカメ、ウナギについてですけれども、これは中国との間で協議が成立して、自主規制というようなことを報道されているわけですけれども、それで、実効措置として輸入が規制ができなかった、そういうときは政府はどうされるつもりでしょうか。

武部国務大臣 先週、ワカメに関する民間協議が北京で行われ、全漁連及び岩手県漁連、宮城県漁連と中国側との間で、双方のワカメ養殖業の持続的発展と消費者への安定的な供給確保の重要性について、意見が一致したとの報告を受けております。こうした関係者の御努力は評価いたしたいと存じます。

 こうした民間間での話し合いは話し合いとして、農林水産省としても、ワカメの輸入急増が我が国ワカメ養殖に与える影響の大きさにかんがみ、輸入動向等諸般の状況を引き続きしっかりと監視し、関連する情報を総合的に判断しつつ、WTO関連協定及び関連国内法令に基づき、セーフガードについて適切に対応してまいりたい、かように存じます。

中林委員 最後に大臣に提案したいというふうに思うんです。

 今回の調査を通じて、私は、この同じアジアのモンスーン地域の中に住んでいる、それで農業もやっている、そういうお互い同士が共存していける道はないものかということを韓国でも申し上げたら、農林部の局長も、大変いいアイデアだ、考えてみたい、このようにおっしゃっていたんです。韓国の政府もそう考える。実際にお会いした農家の人も、自分たちがつくっていることが日本の農民を苦しめる、そういうことはとても望んではいませんとおっしゃっているんです。

 だから、日本の農家も韓国の農家の人も、あるいは中国の人も含めてですけれども、本当に足りないものを補い合っていく、そういう生産ができないものだろうか。そういうことを今後とも真剣に考えていただきたい。私どもも真剣に考えたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

堀込委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 農協法あるいは農林中金法の一部改正について、多くの議論がなされてきました。最後の質問に立ちますけれども、一時間という時間設定をされておりますけれども、政府から本当に正対した前向きな答弁がいただけるのならば、できるだけ早く終わるように努力したいというふうに思います。そういう意味では本当に前向きな、本当に真剣な議論、答弁をお願い申し上げておきたいというふうに思います。

 それで、的を絞って質問していきたいというふうに思っています。農協の果たしてきた今日までの役割とそれから今後の方向性について、この点に絞って議論をしてまいりたいというふうに思います。

 昭和二十二年の農業協同組合は、農民の、農村の民主化を実現して、そして、それを基盤として農業生産力の増進と農民の経済的、社会的地位の向上を図るという、本来の設立目的はここにあったと思うんですね。そういう意味では、それから約五十二、三年たって社会経済の状況が大きく変化している、そういう今日的な、歩んできた農協の道のりであるというふうにとらえています。

 それで、大臣にお聞きしたいんですけれども、これまでの地域農業の発展のために農協系統の果たしてきた役割、五十数年を振り返って、成果と反省点、いっぱいあると思うんです。このことをどうとらえているのか、この認識を冒頭お聞きしておきたいというふうに思います。

武部国務大臣 今先生から民主化という話がありました。そういう意味では、農村社会が非常に民主的で明るい農村社会に変わってきたということは高く評価できますし、一人が万人のために、万人は一人のためにという協同組合精神のもとに、本来ならば、いわゆる経済原則、市場原理だけではこんなところに産業は成り立たない、農業は成り立たないというふうに思われるであろうところも、例えば根室原野なども、あそこは大原野だったんです。そういったところも青々と大地が栄えております。そして、そこでみんな頑張っております。

 そういう意味では、農協の果たしてきた役割というのは、戦後の日本の民主主義というものを、あるいは地域の振興というものを発展させるための非常な原動力になった、かように思います。

 しかし、一方において、日本の社会経済情勢の激変ということに伴いまして、今日、農村が過疎化や高齢化に悩んでいるというような状況、そうしたことから農村地域が今危うい状態にあるということからして、従来の農協系統の事業や組織では、系統内外から批判が出ているといいますか、新たなる期待に十分こたえられないというような声が強く出ているというのが現状ではないか、かように思います。

菅野委員 そういう意味で、今日的な経済社会の状況の中で、それでは、農業者の協同組織としての農協系統を、五十年の成果と反省の上に、これから子供や孫たちにどう引き継いでいこうという方針を持っておられるんでしょうか。その方針のもとに今日の農協法の改正というものが提案されてきていると私は思うんですけれども、大臣としての、今後の農協組織の、農協系統のあり方のビジョンというものをしっかりと示していただきたいというふうに思うんです。

武部国務大臣 やはり食料・農業・農村基本法に基づいて、一言で言えば、自給率向上という目標を掲げて今農政全般の推進に当たっているわけでありますけれども、そういったことを考えますと、農業分野における構造改革も思い切った徹底が必要だろう。

 食料自給率に向けた生産システムをどうつくっていくか、このことについて言えば、意欲や能力のある経営体、専業農家の育成あるいは法人化というようなことも視野に入れて、四五%の自給率達成に向けた体制づくりをしていかなくちゃならぬ、かように思います。このことについて農協も改革をやっていただきたい、かように思います。

 しかし、同時に忘れてはならないのは、今、農村で悩んでいる皆さん方というのは、簡単に離農できるんだったら離農した方がいいかもしれない、町を離れられるなら離れた方がいいかもしれない、しかし、この大地をこの自然をだれが継続し守っていくべきなのか、この資源を守り育てていくということが農村の社会においても非常に重要な課題になってくると思います。

 それから、都市居住者も含めて、やはり自然に返りたい、人と自然との共生社会というものを求めている、そういう願望もあります。こういった方々にもこたえられる新しい農村、農山漁村というものをつくっていく必要があるのではないか。農林水産省として、こういった明確なビジョンというものを示さなきゃならないというのは今先生御指摘のとおりでありまして、それにこたえる農協であってほしい。

 特に、前段申し上げました四五%ということになれば、産業政策というものを強力に展開していく必要があるんだろう、こう思うんですね。今まで農業といえば、つくって、そして育てて、収穫して、それを売る、これは全体で十兆円に満たないんですね、外食産業まで入れると八十兆円なんです、いつも申し上げておりますように。ですから、生産、加工、流通、あるいは農業にかかわる他の産業という分野にも進出していって、もっともっと農村の皆さん方に活躍していただきたい。

 そのためには、やはりそういう経済的な支援というものも必要でありまして、なかなか現実問題、一般の金融機関がそういったものを支援するという客観的状況はないんじゃないか、私はかように思います。そういう意味では、農協系統の信用事業ということも非常に重要になってくる。

 しかし同時に、先ほど来御指摘がありましたように、今相当疲弊しているわけでありますから、その問題、大きな荷物をどうやって克服していくかという問題を考えるならば、農協系統の合併ということも、道路などもよくなりましたし、やむを得ないし、むしろ合併することによるメリットというものも多々あるということを我々は前向きにとらえて進めていこう、こういうふうな考え方のもとに今回の法案の御審議をお願いしている、このように御理解いただければと思います。

菅野委員 大臣の、今日的な問題点、農政全般の問題点というのは、お互いに共通しているというふうに思っております。しかし、その農政全般の中で農業協同組合の果たす役割というものを明確にしていかない限り、この法律案を改正したにしても、今後の農政に果たす農業協同組合の位置づけというものが不明確なまま推移していったならば、これからどんどん同じ方向に行くのではないでしょうか。

 私の言ったのは、農政全般を議論する、これは後の方で私は議論したいと思うんですけれども、この今日的な実情を踏まえて、農業者の協同組合としての、協同組織としての農協をどう位置づけていくのか、これを明確にしていかなければならないというふうに思っています。

 先ほど先輩の松本委員が明確におっしゃっていたと思うんですね。後でも触れますけれども、農協というものが信用事業や共済事業にシフトしていっている今日的な実情の中で、本当に今日大きな課題を背負っている農政全般の中で、農民の組織として農民に農協というものがぴったり位置づけられていくのかという大きな問題点があるというふうに思うんです。

 そういう意味から、平成十二年の十一月に「農政改革の方向」というものが議論されて、今日の農協系統の問題点を明らかにしながら、これからの方向というものが議論されているというふうに思います。

 そのことが今回の法改正の中にどう生かされているのかという疑問を抱かざるを得ないんですが、端的に今そこの中で指摘されている事項として、社会経済情勢の大きな変化の中で、従来の農協系統の事業、組織では、内外からの期待に十分こたえられなくなっている、先ほど大臣もこのことをおっしゃっていました。そして、専業的な家族経営、法人経営と第二種兼業農家とに分化し、地域農業の振興が十分に図れなくなっている、こういう問題意識を指摘していますね。それから、組合員であるから当然農協を利用するという意識が薄くなっている。これらを中心として多くの問題点が指摘されているんですね。私は、これを具体的に解決する方向を示していかない限り、農協というのは、農民離れ、農村地域から離れていった組織になってしまうんじゃないのかというふうに思うんです。

 こういう現状を踏まえて、抽象論じゃなくていいんです、農協を農林水産省としてこれからこういう方向に持っていきたいという、具体的な中身でもって考え方を示していただきたいというふうに思っています。

武部国務大臣 先ほど包括的に申し上げたつもりなんですけれども、やはり、農協改革というのは協同組織としての原点に立ち返るということが大事でありまして、組合員に対するメリットを最大限に発揮することが目的であります。これは今先生御指摘のとおりでありまして、今後は、地域の農業者全体をメンバーとしてとらえ、農業者の営農支援に重点を置いてまいりたい、その上で地域農業全体の発展に向けた積極的な役割を果たしていくべきだ、このことが重要だ、かように存じます。

 今先生のお話にもございましたが、さきに農協系統の事業・組織に関する検討会の報告が出ております。この中で、食料・農業・農村基本法を踏まえた農協系統の事業システムのあり方ということが示されておりまして、これは細かく申し上げなくてもいいかと思いますが、いかがでしょうか。(菅野委員「いいですよ」と呼ぶ)いいですか。こういった報告に従って、農協系統の改革に農林水産省としても全力を挙げていきたい、かように存じます。

菅野委員 十二年の十一月に、問題点を整理して、そして具体的な方向が示されました。営農指導の問題についてはこれから少し大きく議論をしていきたいと思うんですが、この農村地域社会の今日抱えている問題点の中で、これから農協にこういうふうに具体的な今日的な問題点を解決するために果たしていただきたいという理念がなければ、大臣、局長でもいいですが、具体的にそういう方向に向かっていかないのではないでしょうか。

 信用事業や共済事業では黒字です。それから、販売事業や購買事業では赤字です。赤字でも、そのことをやり続けなければ農協というのは生きていけないという問題点を抱えているんですね。そして、信用事業や共済事業で埋める、その赤字を埋めていくにも限界があるというふうに思うんです。

 そういう中で農協をどう位置づけていくのか、このことを明確にしていただきたいということが今の質問の趣旨なんです。答弁していただきたい。

須賀田政府参考人 昨年四月から十一月まで、国民各界各層を代表される方に広範な角度から検討をしていただきまして、今後の経済社会における農協のあり方は何を基本にすべきかということを議論していただきました。

 やはり、その中では、その存在理由、社会における存在理由として、何よりもまず地域農業振興の司令塔、これは農協の、先生冒頭言われました、昭和二十二年に設立されました趣旨が、零細な農業者の営農と生活を守り発展させるんだということで発足したわけでございますけれども、その後五十年たちまして、必ずしもその方向に進んでいないのではないかという反省の中で、もう一度原点に立ち返って、地域農業振興の司令塔として地域をリードすべきだと。

 特に、最近担い手を中心に農協離れというのが起きております。必ずしも農協というのは、組合数が減るということで、構造改善とかということに熱心であったわけではなかったわけでございます。そういう批判を受けてきたわけでございます。そういうことを放置したゆえに担い手等が農協離れを起こしてきたということがございますので、担い手を育成するという観点を含めまして、担い手の育成に合わせた諸事業の展開、販売事業、それから安い生産資材の供給、こういうことに力を注ぐべきだというのが基本的な考え方だというふうに私どもは認識をしております。

菅野委員 私の質問しているのは、五十年の、今日的な農協の置かれている実態というのは、私は、先ほど申し上げた視点で、共通認識に立っているというふうに思うのですね。それでは、これからの地域農業を本当に発展させていくという農協の設立趣旨に戻すために、具体的に農協というものをどう位置づけていくのかというのが、私は、今の局長の答弁では見えてこないのです。

 一方では、昨年農地法の改正が行われました。そして、専業的な農家をどんどんやっていく、法人化の方向も示していく、そういう意欲的な農家ほど農協を頼らないで独自でやっていくという方向、農地法の改正でもそういう農政をやっていっているのですね。そして、担い手を中心として農協離れが起こっている。

 こういうふうな状況もある中で、そういう農政を展開する中で、農協の位置づけをどうしていくのか、これをしっかりと理念として持っていかなければ、農協が地域に存在するということはこれからも大変な状況になるのじゃないのかなと思えてならないのです。

 これは大臣でいいですから、答弁してください。

武部国務大臣 私も先生と問題意識を共有しているということを申し上げたいと思います。

 ですから、今度の改革案でも、営農指導を第一とするということを明記しているわけです。その中で、私は、農協の仕事というのは、そういう営農指導だとか組合員へのサービス、地域政策的なものと、一方、産業政策的な経済行為の分野があると思うのですけれども、この営農指導のことについては、自治体などとも、あるいは普及センターなどとも連携して、そこでのイニシアチブを農協はしっかりとっていくべきでないのか。

 減反が進んでなかなか所得がふえません。しかし、農家の皆さん方はやる気はあるわけです。何に特化していこうか、あるいはマーケティングの面も含めて、篤農家などは、みずからコンサルタントに相談しながらやっている人たちもいるわけですね。そういう意味では、農協の営農指導についても、全然知識も浅いし、実体経済についていくだけの指導力がないじゃないかという批判が若い人たちの間に非常に強いということを私もよく知らされるのであります。

 そういう意味では、農協の原点である一般組合員、一人一人の組合員の抱えている問題に適切にこたえる、そこに最重点を置いて、今後、農協の役割というものを求めていくべきだ、かように考えております。

菅野委員 今回の農協法の改正の大きな目玉というのは、今大臣が答弁したとおり、農協のこれまでのあり方を大きく変更して、そして営農指導体制の方向に持っていこうということ、そこは酌み取れるのです。

 ただ、長い間かけて、五十年間かけて、その営農指導体制というものを農協が壊してきたと言ったら語弊がありますけれども、力を注いでこなかった。先ほど松本委員も質問していましたけれども、原因があると思うのですね。先ほど局長の答弁では、担い手、農家を一生懸命やっていこうとする人を中心として農協離れが進んでいると。それでは、どこに営農していくのですか、対象は。一方では、専業的家族経営や法人経営と第二種兼業農家との乖離が進んでいっている、農村地域社会の中でそういう現象が起こっているのですね。

 大臣も局長も決意として申されるのはよろしいのですけれども、今日の農協を取り巻く情勢の中で、営農指導を行える組織体をそれではどのようにつくっていかれようとしているのですか。これは農協の、個々の単協の判断だということじゃないというふうに思うのです。ぴしっとした国としての理念をしっかりと提示していく中でそのことを追求していかない限り、私は、壊れた組織体というものは戻らないというふうな危機感すら持っています。このことをしっかりとした考えのもとに構築していかない限り、私は、地域農村社会における、本来の目的を持った農協というものがなくなっていくという大きな危機感を持っているということなんですね。

 この辺について、考え方を示していただきたいというふうに思います。

須賀田政府参考人 農協が近年営農指導員を減らしている、営農指導について必ずしも熱心でないという批判がある、この原因でございます。

 一つは、農協側の原因として、効率化というものを追求するということになって、黒字経営を追求する余り、そういう部門から離れている営農指導ということに力を注いでこなかったという点は確かにあろうかと思います。それからもう一つ、営農指導というのが主として賦課金によって賄われているということがございまして、昨今の農業情勢から見て、なかなか組合員農家から賦課金をたくさんいただく情勢にないというようなこと、両方相まちまして、営農指導ということがともすればおろそかにされてきたのではないか、これが実態ではないか。そして、そういうことなので、担い手を中心とした農家が農協から離れていっている、こういう悪循環になっているのではないかというふうに私どもは認識をしております。

 今後どうするのかというお話がございました。先生から、昨年の農地法改正のお話もございました。昨年の農地法改正も、従来の、自分の労働の成果を公正に享受する家族経営というものが農業労働として最も適切な形態であるという、その基本的考え方の中で農業生産法人の拡大というものを図ってきたわけでございますけれども、そういう法人経営を今度は含みまして、担い手とのネットワーク化というものを中心にして、農協が営農指導に重点を置かなくてはならないという基本的考え方を今回樹立したわけでございます。

 ただ、それだけではなかなか事業が進まないということで、ではそれにかかる費用というのはどうするのかということでございます。この営農指導にかかる費用というのは、農家組合員からの営農賦課金、それでなければ各種事業の収益を充てるということになるわけでございます。

 そういうこともありまして、基本的考え方として、営農指導に力を注ぐという方針を抱えながら、農協が行います各種事業の抜本的見直しによりまして、黒字事業についてはできるだけ収益を大きくする、赤字事業についてはその廃止を行ったりしていく。こういうことも、やはり営農指導に力を注ぎ込むためにも重要な視点ではないかというふうに私ども思っておりまして、トータルとして、今回の農協法改革をお出しした次第でございます。

菅野委員 問題が根深いんだと思うのです。局長も明確に答弁できないくらい問題は根深いということだと思うのです。

 というのは、営農指導員を減らしている原因は、冒頭申し上げました、効率化を追求する余り、そういう方向を農協として目指さなければいけないんだと言っていながら、最後はやはり農協本来の姿を取り戻すためには効率化を追求しなければいけないんだ、最後の答弁はそうですね。その中間はいろいろなことがありました。

 先ほどの答弁では、担い手を中心として農協離れが進んでいる、そして家族経営を中心としながらも法人化も認めていって、担い手と法人化のネットワークを構築していく、こういうことも必要だと言いながら、それじゃ、このことをやっていく営農指導員がどう確保されていくのかというところの国としての指針がなければ、ここから脱却していかないんじゃないですか。

 農協法の事業の九番目か十番目に抽象的に記載されていたことを、今度の法改正で第一項の一番先に持ってきて、このことを国として追求するという理念の発信は、私はわからないわけではございません。ただ、その理念の発信だけで具体的解決に向かっていくんだろうかということに私は疑問を持っているんです。この営農指導体制の強化こそが、これから地域農村の農協を設立した目的に再度戻す、農協の本来の姿に戻す第一歩だということはわかっていながら、この具体的な中身が伝わってこないのでは、法改正した意味がないんではないのかなというふうに私は思えてならないんです。

 そして、効率化を追求する余り、大臣は非常に強調していますけれども、効率化を追求する余り農協合併に進んでいっているんですよね。営農指導体制の基本は、私はフェース・ツー・フェースだと思うのです。地方自治体もそうなんですが、地域住民と密接にかかわりを持つ中で信頼関係を得て、そういう営農指導体制というもの、農民と農協が信頼関係を取り戻す、そのためにはやはり営農指導員と農家の人たちが顔と顔を突き合わせて、そして今日の実情をお互いに訴えながら進んでいかなければならない。一方では、効率化を追求するために農協合併というものを推進していく、ここの大きな矛盾点をどう解決していくのか。このことなしには、私は営農指導体制の再確立というのはあり得ないんではないのかなというふうに思うのですが、この矛盾点をどう解決していこうとなされるのか、お聞きしたいと思います。

武部国務大臣 確かに、マンツーマンで営農指導した方がいいに決まっていると思いますよ。だけれども、その指導する人の能力だとかそういったものによっては、私はあの人の指導よりも三つ向こうの町の農協のだれそれさんの話を聞きたいなという話も現実にはあるのですよ。

 それから、実際問題は、賦課金でこの営農指導体制というものを構築していかざるを得ない。何でもかんでも補助金でやるわけにはいきません。そうなりますと、小さな農協でも一生懸命頑張っているところというのは、一にかかって、いい指導者なんですね。すばらしい職員がいるんです。だから、我々、生産者からも、もう農協を大合併して、北海道を一つにして、各支店にしたらいいんじゃないか、そういう話を聞くんですよ。そして、支店長がかわれば自分たちの抱えている問題は解決できる、あるいは支店長でなくたっていいですよ。営農指導をやる人材でもいいと思います。

 ですから、必ずしも私は効率化のために合併するというだけじゃないと思うのです。限られた条件の中で、その条件というのは、一つは農協経営のための費用、資金、こういったことも現実問題としてありますよ、国営でやるんじゃないんですから。それから、やはり道路もよくなってきたということになれば、施設をつくるにしたって、あるいはマネジメントやマーケティングということを考えても、合併の方がいいというのが、これは大勢じゃないでしょうかね。

 ですから、合併というのは、これは信用事業だけの問題じゃありません。農協のさまざまな機能に照らして合併を求めているという人たちの方が私は多いと思います。その中でどのようにして営農指導というものを強化していくかということが問題だと思うのですね。

 私は、先ほども行政の話をしました。営農指導員、農協の特定の営農指導員だけに頼るというやり方じゃなくて、さまざまな分野で、派遣してもらうなり相談をお願いするなり、あるいは自治体あたりからのかなりしっかりした待遇をもって勉強している人たち、情報を持っている人たちもいますから、それはこれからの運営じゃないでしょうか。私はそういうふうに思います。

菅野委員 農政全般のことで私は議論しているんじゃないです。これから農協が、設立の目的をしっかりと踏まえて、これから農村地域においてしっかりとして根づいていって、そして一番最初言ったように、五十数年の歴史、これからずっと子供や孫たちにこの農協が引き継がれていく、そういう条件を国としてどうつくっていくのかという観点から、ずっと議論してきているわけですね。

 そして、今回の農協法の改正が行き着くところは、営農指導というものをぴしっとやっていかなければ、地域に農協として存在していく、そういう状況ではなくなったというのが今回の法改正であり、昨年、十二年十一月のこの「農協改革の方向」というものに示されているんです。このことはお互いに理解し合っているんですけれども、ただ、それだけでは私は不十分だというふうなことを論点として申し上げているわけですね。

 営農指導体制をぴしっとしてやっていける状況をつくり上げなければ大変な状況になるというところに行き着いているんです。それを、今日的農協を取り巻く状況の中で、国としてどう位置づけていくか、明確な方向を示していかない限り、具体的に全国の個々の単協の話をやっているわけじゃないのです。全国の農協というものが本当に地域社会に根づいていくのかどうかという議論をしていかなければならないんじゃないですか。これが今の法案審議の中で明確になっていないですから、大臣や、局長でもいいです、農林水産省として、その明確な視点をどこにどう持っているかということをはっきりさせてくださいということなんです。

 そして、営農指導体制がそれじゃなぜ崩壊したのかということを含めて、その反省点の上に立って、どうこれから再構築していくのか、その具体的な視点を示していただきたいということなんです。

武部国務大臣 私は先ほどそういう視点でお答えしたつもりなんです。先生は、それを国費を導入してやれということを申されているのではないと思います。やはり自主自立ということが大事であって、すぐれた営農指導員というものを求めていく、あるいはすぐれた営農指導体制というものを構築していくためには、本当にそれにふさわしい人材とか、それは農協の中だけに求めることではないだろうと思いますね。

 しかし、第一義的には、私どもは農協の役割の最も大事な部分として営農指導を取り上げているわけでございます。農協自体の改革を進めて、農業の経営改善ということが営農指導の強化と相乗的になっていくだろう、私はかように思いまして、それだけにさまざまな問題を解決していかなきゃならない。その一環で今回の法案を提出しているということを御理解いただきたいと思います。

菅野委員 農協に求められているのは、一つは、営農指導体制をどう、かつては本当に営農指導でもって地域農業の振興を図ってきた。そういう意味では、農協の果たした大きな役割というのはあるわけです。それが、農業の近代化に伴ってその部分がおろそかになってきたというところが正直言ってあるというふうに思っています。

 それでどんどん農協の組合員離れという部分が進行していった今日の実情というのはわかるのですが、難しいと思います、これからやっていこうという部分は。ただ、そのことを真剣になって国、自治体あるいは農協一体となってやっていかなきゃならない大きな課題だということを申し上げておきたいと思っています。

 それと同時に、もう一つは、地域農業振興機能の再構築、地域農業振興機能という表現を使っていますけれども、昨年の十一月に「農協改革の方向」で示されているのですが、地域農業振興機能の再構築に向けて、地域農業振興戦略を的確に樹立できる組織体制が農協を中心に求められているというふうに言っているのですね。

 このとおりだと思うのです。やはり、営農指導をぴしっとやっていく中から地域農業振興戦略というものが農協は打ち立てられるのですね。ややもすれば、今までの信用事業や共済事業を中心としたそういう取り組みの中でこのことに目が向いていかなかったというふうに私は思っています。これは、営農指導体制の弱体化の中で起こってきたことだと思っています。

 ただ、これも含めて、これから強く農協と一体となった行動に取り組んでいかなければならないというふうに思うのですが、国としてこういう視点に立って具体的にどう戦略を練っていくつもりなんでしょうか。このことをお聞きしておきたいと思います。

須賀田政府参考人 地域農業戦略ということで、農協系統自身が今後すべての農協で、地域の実情に即したものでございますけれども、自給率の向上と所得の向上を目指した有利販売、これを旨といたしました地域農業戦略をまず策定する。その地域農業戦略の実践のためには、どうしても農産物の有利販売、マーケティング、こういうものが必要となりますので、農協系統としては生産販売企画専任者を配置いたしまして資質を上げていくという話。

 それから、先ほど申しました、担い手とネットワーク化をいたしまして営農の相談体制を確立する。それから、生産資材につきましては、低コストの生産資材供給を行っていくということで、平成十七年度までに二〇%削減する。こういう方針を農協系統が打ち立てたわけでございます。

 こういう農協系統の方針と、私どもが農業政策の中で推進をしようとしております地域農業の再編、生産対策あるいは経営対策、こういうものとが相まちまして、この地域農業戦略が実のあるものになるというようにしていきたいと考えているところでございます。

菅野委員 わかりました。

 ただ、私、条件不利地域と準農村地帯の平場地域での農協のあり方はおのずと違ってくるというふうに思っていますし、やはりこれからの家族経営的な農業というものをしっかりと確立していくためには、条件不利地域の農業、そしてそこに対する営農指導体制というものもぴしっとしていかなければ、食料自給率の向上も含めて、これからの日本全体の農村地域社会は守られていかないんだという基本的な考えを持っているわけです。

 昨年から中山間地域への直接支払い制度が導入されてきております。この中山間地域直接支払い制度の現状について、まずお示しいただきたいと思っています。

木下政府参考人 中山間地域直接支払い制度の概要でございますけれども、特定農山村法など地域振興立法の農振地域、農用地域、指定地域の中で、傾斜等により農業生産条件が不利な農用地におきまして、集落協定等に基づきまして農業生産活動を行う農業者などに対しまして、平地地域との生産条件の格差の範囲内で交付金を支払うという趣旨のものでございます。

 十二年度でございますけれども、現在全体の実施状況を取りまとめ中でございますが、概括的に申し上げますと、集落協定の締結数、全体で約二万六千というところでございます。また、対象の市町村でございますけれども、千七百の市町村でこの取り組みが行われております。面積で申し上げますと、約五十四万ヘクタール程度というような状況でございます。

菅野委員 わかりました。

 それでは、そこに補助金として支出している金額はどれくらいになっているのですか。

木下政府参考人 事業費ベースで計上しておるのが七百億円、国費ベースでいきますと三百三十億円というところでございます。

菅野委員 わかりました。

 国費ベースでいくと、三百三十億円条件不利地域に直接支払いが行われているのです。

 ただ、この中山間地域直接支払い制度の中身、今局長がおっしゃったように、やはり集落営農協定というのが結ばれていかない限り、この事業が地域に定着していかないという大原則があるわけですね。

 私は、直接支払い制度が中山間地域にぴしっと定着していくその条件は、市町村の取り組みも非常に大事ですけれども、農協、地域農業の果たす役割というものも非常に大きなものがあるというふうに思うのですね。

 市町村と農協、それから中山間地域で営んでいる農家の方々、これの一体化を図るためには、私は市町村じゃないと思うのですね、農協にこの役目をぴしっと担わせていく、そのことが今求められているのではないのでしょうか。

 そのことから、やはり条件不利地域における農協の活性化というものを目指していく、そういう道筋を今つけるべきだというふうに思うのですけれども、これらについての考え方をお聞きしておきたいと思います。

武部国務大臣 耕作放棄地を防止するためには、集落における取り組みが必要であり、集落協定を基本として推進しているわけでありますが、お話しのとおり、集落協定の推進に当たっては農協を含めた一体的な取り組みが重要だ、かように認識しております。農協に対しても、集落協定の推進に主体的に取り組むように今後も指導してまいりたいと思います。

菅野委員 ちょっと質問が前後してしまって、もう少し聞いておきたいんですけれども、局長さん、十二年度で二万六千集落という報告を受けました。それから、一千七百市町村、五十四万ヘクタールという数字はお聞きいたしました。

 私の地元でもそうなんですが、中山間地域の条件に合致していても、集落営農協定の問題で、離農者が集落において多くいるということで中山間地域の直接支払い制度を見送ったという集落があるわけです。それは先ほど言ったように、大臣が今答弁したように、具体的にフェース・ツー・フェースでもってその地域に入って制度の理解を求めていく、そういうところの取り組みが不十分だったということが原因でそういうふうになっている部分もあると思うんですね。

 これから営農指導体制を強めていく中でこれはふえていくんだというふうに思うんですが、そういう実情の中で十二年度、直接支払いを見送ったという状況をどういうふうにとらえているのか、計数的にとらえているのであればお示し願いたいというふうに思っています。

木下政府参考人 中山間直接支払い制度の現状の中で御説明いたしましたけれども、協定の行われた市町村、千七百というふうに申し上げました。また、面積ですけれども、五十四万ヘクタールというふうに申し上げました。

 このような結果になったということにつきまして、一つは、この直接支払い制度が我が国農政史上初めての制度であります。また、この制度につきまして、市町村あるいは現場の取り組みが非常に大事だという点がございます。正直に申し上げまして、私ども、一昨年以来、この制度の普及、定着に努めたところでございますけれども、まだまだ末端で十分な制度の理解に至っていないという点もあろうかと思います。

 そういう点でございまして、私ども、やはりこの制度の中身、かなり柔軟に行っているつもりでございますけれども、さらに一層、農協なり市町村一体となった取り組み、また、県によって相当この普及率が違います、優良事例をいろいろな形でPRすることを通じて、まだ取り組みが行われていない地域におきましても定着を進めていくということに努めていきたいというふうに考えております。

 十三年度でございますけれども、私ども、このような取り組みの中で、現在把握している段階でも約三百の市町村が新たに取り組むというようなことも聞いております。したがいまして、十三年度を見ますと、やはり相当程度、対象市町村、ほとんどの市町村で取り組みが行われるということも考えておりますので、今後一層、このような取り組みを通じてより一層幅広い定着を図っていきたいというふうに考えております。

菅野委員 やはり農協法、私は、単に法律を改正すれば今日の農村社会が本当に生き生きとなっていくなんという、そんな甘い状況じゃないということを切実に感じております。国、市町村、農協、そして地域社会の中で、本当に苦しいけれどもこれから精いっぱい頑張っていく、そういう情勢を醸し出すためにも、やはり農協の設立目的のために、本当に営農指導というものが、今日的な経済状況の中でそのことが一番求められている課題だというふうに思っておりますから、関係者総力を挙げてこのことに取り組んでいただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

堀込委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより両案について討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。

松本(善)委員 私は、日本共産党を代表して、農業協同組合法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、業務執行体制強化のために、信用事業を行う農協に三人以上の常勤理事を置くことを義務づけることであります。これでは、三人以上の常勤理事を置けないような小規模な農協や、広域合併に加わらない農協をつぶそうとするものです。広域合併して規模を大きくしなければ無理な業務体制を、法律で義務化すべきではありません。

 第二に、経営管理委員会に関して、これまでは定数五名以上ですべてのメンバーが正組合員としていましたが、これを外して員外メンバーを認め、さらには、代表理事の選任権も与えることであります。組合員の代表でもなく、組合員によって選ばれたものでもない理事が代表として日常業務の最高責任者になることは、農協の民主的運営を形骸化しかねないものであります。

 第三に、中央会と農林中央金庫の機能、権限を強化することは、組合員主体の農協運営と単位農協が主役の系統組織という協同組合の民主的運営の原則に逆行するものと言わざるを得ません。当面する金融情勢への対応策とはいえ、早期是正のための自主ルールによって、強権的に信用事業の権限を奪い、信連や隣接農協に合併や事業譲渡させ、さらにはその勧告に従わないときには除名まで行おうとすることは、協同組合にあってはならないことであります。

 なお、農協法の参議院修正部分については、政府案により講じられる措置を実行する立場から五年をめどに見直そうとするもので、賛成できません。

 次に、農林中央金庫法案についてであります。

 第一条に目的規定を設け、農林中央金庫が農林水産業の発展に寄与する旨を位置づけたことは評価するものでありますが、従来の貸出先業種を会員団体を中心に限定列挙するやり方から、会員以外にも業務限定のない貸し出しを農水大臣の認可で認めようとする業務範囲の拡大は、際限のない融資につながる可能性を一層広げる危険があるとともに、農林中央金庫の系統金融としての性格を変質させることにつながるもので、賛成できません。

 以上、両法案についての反対討論を終わります。

堀込委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより両案について順次採決に入ります。

 まず、農業協同組合法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、農林中央金庫法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 ただいま議決いたしました両法律案に対し、二田孝治君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合及び21世紀クラブを代表して、農業協同組合法等の一部を改正する法律案及び農林中央金庫法案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    農業協同組合法等の一部を改正する法律案及び農林中央金庫法案に対する附帯決議(案)

  農業及び農村をめぐる情勢が大きく変化する中で、農協系統が、農業者の協同組織としての原点に立ち帰って、組合員のニーズに的確に応えながら地域農業の振興等に積極的な役割を果たしていくためには、その事業・組織の見直し等の改革の推進が重要な課題となっている。

  よって政府は、両法の施行等に当たっては、農協系統がその使命を達成できるよう、左記事項の実現に向けて、その指導・監督に万全を期すべきである。

      記

 一 組合員の営農支援が農業協同組合の本来事業であることを十分認識の上、営農指導事業の充実、生産資材コストの大幅削減、農産物の有利販売などに全力を挙げ、組合員の農業経営基盤が確立されるよう、農協系統の取組みを強化すること。

 二 農協系統の事業運営に当たっては、担い手のニーズに対応し、スケールメリットが生かされる生産資材価格の設定など、利用しやすい事業展開に努めること。

 三 青年・女性・法人経営者等農業の担い手の意向を組合運営に十分反映できるようにするため、これらの者の経営管理委員や理事への登用を積極的に進めること。

 四 農協等において迅速かつ適正な経営判断を行い得る業務執行体制を確立し、農業者の利益の増進に資するため、常勤理事等については、学識経験者等の積極的な起用を図ること。併せて、省令で例外的に認めることとしている兼職・兼業の範囲については極力限定し、職務に支障がなく、かつ、農業振興の上で真に必要なもの以外は認めないこととすること。

 五 農協等の経営の健全性を確保するため、監事による監査、中央会監査、行政検査等の体制の一層の充実を図ること。特に、中央会監査については、公認会計士を帯同して行うなどにより監査法人と比し遜色のない監査を行うこと。

 六 農協系統金融機関については、組合員等が安心して利用できるよう、問題農協等の早期発見・早期改善を軸とし、破綻することのない農協金融システムを早急に確立すること。また、ペイオフ解禁が差し迫る中で、不良債権の最終処理と経営困難農協の解消に全力を挙げること。

   その際、農林中央金庫は、信用事業の効率化及び健全な運営を確保するため、中央会及び関係省庁等と連携しつつ、責任をもって信用事業の再編強化の指導を行うこと。

 七 農林中央金庫は、農林水産業者の協同組織を基盤とする中核的な金融機関であることから、会員への資金の円滑な提供や預金の的確な運用等その機能が最大限に発揮されるよう、経営管理委員会の運用及び理事による業務の執行等に最善を尽くすこと。

   また、貸出先の拡大に伴う会員以外への資金の貸付け等については、会員への円滑な資金の融通に支障が生じることのないよう適正に行うこと。

  右決議する。

 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて既に委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。

 何とぞ全員の賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)

堀込委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立多数。よって、両案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣武部勤君。

武部国務大臣 ただいま法案を可決いただき、ありがとうございました。

 附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。

    ―――――――――――――

堀込委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

堀込委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時三分散会






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