衆議院

メインへスキップ



第24号 平成13年6月27日(水曜日)

会議録本文へ
平成十三年六月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 滝   実君 理事 二田 孝治君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩倉 博文君

      岩崎 忠夫君    岩永 峯一君

      金田 英行君    上川 陽子君

      北村 誠吾君    後藤田正純君

      七条  明君    園田 博之君

      高木  毅君    西川 京子君

      浜田 靖一君    菱田 嘉明君

     吉田六左エ門君    大出  彰君

      古賀 一成君    後藤 茂之君

      城島 正光君    津川 祥吾君

      筒井 信隆君    永田 寿康君

      楢崎 欣弥君    江田 康幸君

      高橋 嘉信君    中林よし子君

      松本 善明君    菅野 哲雄君

      金子 恭之君    藤波 孝生君

    …………………………………

   農林水産大臣       武部  勤君

   農林水産副大臣      遠藤 武彦君

   国土交通副大臣      佐藤 静雄君

   農林水産大臣政務官    岩永 峯一君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長

   )            槙田 邦彦君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    小町 恭士君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局食品保

   健部長)         尾嵜 新平君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長

   )            西藤 久三君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長

   )            木下 寛之君

   政府参考人

   (水産庁長官)      渡辺 好明君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十七日

 辞任         補欠選任

  佐藤謙一郎君     大出  彰君

同日

 辞任         補欠選任

  大出  彰君     佐藤謙一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 漁船法の一部を改正する法律案(内閣提出第八六号)(参議院送付)




このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、漁船法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君、農林水産省生産局長小林芳雄君、農林水産省農村振興局長木下寛之君、水産庁長官渡辺好明君、外務省アジア大洋州局長槙田邦彦君、外務省欧州局長小町恭士君及び厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金田英行君。

金田(英)委員 百五十日にも及ぶ通常国会が終盤を迎えたわけでありますが、堀込委員長初め与野党の理事の皆さんそして委員の皆さん方が、十三本にわたる閣法そして議員立法も含めて、鋭意真摯な議論を続けていただきまして、最後の法案、漁船法ということに相なっております。本当に皆さん方の御労苦に心から敬意を表させていただきます。

 自由民主党最後の、しんがりの質問を務めさせていただきます金田英行でございます。

 それでは、まず該当の漁船法の法案について二点ほど質問させていただきます。

 今回の漁船法の改正については、行革絡みというようなこともあったわけでありますが、まず一点目に、漁船の建造等に関する許可の見直しをしているわけであります。

 まず、船をつくるといった場合、建造、改造するときに何をチェックするかというと、漁船の用途はどういう用途なのか、あるいは性能はどんなものなのか、そして、もしその漁船が許可漁業に使われる漁船であれば、その漁業許可が取得できるのかどうか、そういったことをチェックするわけであります。今回、この許可漁業、漁業に対する許可と漁船の建造に対する許可というのを一致させた方がメリットがあるんだろうというようなことで、その方向での改正になったわけですが、具体的にどんなメリットが予想されるのかということについて、水産庁長官の御見解を賜りたいと思います。

渡辺政府参考人 今御指摘がありましたように、漁業の許可と漁船の建造の許可、この二つあるわけでございますけれども、漁船の建造の許可は、現在までのところ、長さ十五メートルというところを境にいたしまして、十五メートル以上のものは大臣許可、そして十五メートル未満のものは知事許可ということになっております。一方、漁業につきましても、やはり知事の許可と大臣の許可がございます。

 だんだんに漁船は、総トン数をそのまま据え置きまして、長くなる傾向がございます。スピードを上げるためにもやはり長くなってまいりますので、その結果、現在、知事許可漁業でありながら大臣の建造許可を受けるというものが五割以上になってまいりまして、こういう点からいいますと、知事に願いを出し、大臣にも願いを出すということで、やはり書類の重複であるとかそれから日数がかかるとか、そういったことも起こってくるわけでございます。

 そういう状況を踏まえまして、漁業の許可も漁船の建造等の許可も、大臣許可のものは一回で済むように、知事許可のものも一回で済むようにというふうにしたわけでございます。恐らく、これによりまして、要する日数であるとかそれから書類の省略であるとか、そういったメリットが漁業者に出てくるものと考えております。

金田(英)委員 今回の漁船法の改正の、まさに重要な核となる部分の改正点がそれであろうというふうに思います。

 それから、今回の漁船法の改正の中で、漁船の工事完成後の認定業務だとか登録業務という検認、そういった業務を民間機関に委託しようというような内容が含まれているわけでありますが、民間機関にこれらの業務を委託することによってどんなメリットがあるのだろうかというようなことについて、再び水産庁長官に御質問いたします。

渡辺政府参考人 国または県が行う検査・検定制度につきましては、今後、民間でできることは極力民間に開放していくということが基本原則でございます。こういう考え方に立ちまして、今回、指定機関制度を導入いたしまして、漁船の認定と検認について民間に門戸を開くものでございます。

 民間に門戸を開くということになりますと、民間の営業努力の中で、コストダウンというふうなことも期待をされますし、あるいは機動的かつ迅速な認定、検認ということも考えられます。そして何よりも、漁業者の立場に立って、例えば土曜、日曜、ちょうど休漁しているときに認定とか検認を行ってもらえるというふうな、サービス面での向上ということが期待をされているところでございます。日数の短縮、土日その他を含めましたサービスの向上というところを目指しているものでございます。

金田(英)委員 漁船法の改正について、主要な二点について御質問して、あとは一般的に、最後の質問ということで、今農林水産行政の中で大きく話題になっている点について、政府側の見解をただしてまいりたいというふうに思うわけです。

 第一点は、今回日本が行ったセーフガード、ネギ、イグサそして生シイタケでありますが、WTOに認められている日本の正当なセーフガード、そういったセーフガードについて、事もあろうに中国側が、自動車それからエアコンそして携帯電話等々に、報復的な措置だという形で一〇〇%の関税をかけてきたということがあるわけであります。まさに感情的とも言える中国の対応でございます。

 そういったことで、日本のセーフガードは、関税割り当てということで、一定の量のものについては旧関税を適用しているわけであります。しかし、中国の報復措置、こういったものが許されるかどうかについては後でまた質問させていただきますが、こういった、一台目の自動車からもう一〇〇%の関税を日本にだけ、ほかの諸外国はそれとして、日本にだけこういった報復関税をかけるという、こういう中国の対抗措置については、日中間で最恵国待遇がうたわれております日中貿易協定、昭和四十九年六月の日中貿易協定の最恵国待遇に違反しているのではないか、日本にだけそういった不利益な措置を講ずるというような中国の措置について、日中貿易協定に違反していると私は考えるわけでありますが、その点について外務省の見解をただしたいと思います。

槙田政府参考人 委員の御指摘のとおりでございます。

 日中貿易協定は、第一条におきまして、最恵国待遇の相互供与ということをお約束しておるわけでございますから、したがいまして、日本の産品のみをねらい撃ちにした形の措置を中国側がとるということは、これは明らかに日中貿易協定違反ということになります。

金田(英)委員 そういった日中貿易協定に違反している中国のこの報復措置について、外務省としてはどのような、警告と申しますか、注意と申しますか、異議を申し立てているのか、その点についてはどうなっているでしょうか。

槙田政府参考人 中国側は、こういう報復措置をとるという方針を、今月の十八日であったと思いますけれども、伝えてまいりまして、それからさらに、具体的に、今委員御指摘になりました一〇〇%の特別関税という措置をとるということにつきまして、二十一日の夕方だったかと思いますけれども、発表したわけでございます。

 これに対しましては、先ほど申しましたように、日中貿易協定違反であるということは明らかでございますし、また我が国がセーフガード措置としてとりましたものは、これは中国をねらい撃ちにしたものではないわけで、かつWTOルールに従って粛々ととってきた、しかも中国側の立場に対しても非常に配慮をしながらとった、そういう措置でございますから、そういう状況にありながら中国側がとった措置というものは、これはまことに遺憾であるということで、直ちに中国側には大使レベルで抗議をしております。かつまた、その後も、さまざまなルートでこの問題を提起し、中国側に強い遺憾の意を表明してきておるわけでございます。

金田(英)委員 問題を複雑にしているのは、国連の安全保障常任理事国でありながらWTOに入っていない中国の立場というのが問題を複雑にしているわけであります。我々のセーフガードについてはWTO上正当な措置なのだ、だからこれを守るべきだということでありますが、この問題の中国が、WTOにいまだ加盟していない、今加盟手続中の国であるということが問題を複雑にしているわけであります。

 もしWTOに中国が加盟しているのであれば、WTOに違反する、協定違反だということで、こういう報復措置はWTOで禁じられていると思うのであります。そういった中で中国が、今WTOに加盟する手続中だ、まだ加盟していないのだから、そういうWTO上のルールは完全に無視してもいいのだというような立場だとすると、中国がこれから国際社会の中でWTOに加盟していく、そういった中で国際ルールに従って諸外国とつき合っていこうというような形だとすれば、大きないろいろな問題を含んだ中国の対応だと言わざるを得ないのであります。

 また、ODA等々についても党の部会でもいろいろ議論があるわけでありますが、中国に対しては、日本はODAについて、十二億二千五百万ドルの円借款を含め、いろいろなODAを供与しているわけであります。日本円にして約千五百億円ですか、二千億とも言う人がいますけれども、それだけの中国に対する供与についても、いろいろとこれから問題視していかなければならないという考え方も党の中に出てきているわけであります。

 いずれにしても、WTO違反措置であるというふうに我々考えておりますが、もし中国がWTOにこれから加盟して、国際社会の一員としてやっていくのだというようなことであれば、こんな報復措置はとれないはずでありますし、もしとれるとしても、ジュネーブのパネルに行って、日本のセーフガードについて異論を申し上げる、紛争処理手続に従ってやっていくというふうになると思うのです。

 現実に中国がこういった報復措置を発動した以上、それを黙って見ているしかないというような措置については我々納得ができないわけでありますが、その点についての外務省の対応について御見解を賜りたいと思います。

槙田政府参考人 委員御指摘のとおり、中国はまだWTOの加盟国になっていないわけでございます。もう十年以上中国のWTO加盟の問題というのは議論をされてきておりますけれども、さまざまな問題がございまして、国際的なコンセンサスというものができ上がっていないという状況にあるわけです。しかし、比較的近いうちにWTOのメンバーになるであろうということは言われているわけでございます。

 WTOに加盟をすれば当然WTOの協定上の義務を守らなければならないということは、これは言うまでもないことでございます。他方、WTOのメンバーになりたいと申請をし、かつそのための国際的な協議が行われている、そういうときに、単にWTOのメンバーでないからWTO協定上の義務を果たす必要はないという論拠は、法的には可能かもしれませんけれども、政治的な要素その他を考えれば、それが適切な論点であるというふうには私には思えないということでございます。

 そういう状況の中で、では、WTO協定というその枠組みの中で中国に対して現在の時点でどのようなことが言えるかについては、これはおのずから限度があると思います。しかし、いずれにしても、この問題の解決は、中国との間でよく話し合って、この問題をよく整理して、説得し、そういうことで何らかの解決策を考えていかなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。

金田(英)委員 ネギ、生シイタケ、イグサについて日本がセーフガードを発動した、今度は中国が自動車、エアコン等々で、まさに違う産業分野で対抗措置を講じてきたというようなことで、何で農業のために自動車業界がこんな被害をこうむらなきゃならないのかというような形で、業界が違うというような形で、国内でいろいろな論議が出ているわけであります。

 例えば、日経連の奥田会長は、二十日の記者会見でこんな発言をしております、日本人同士が足のけり合いをしているようなものだと。政府の通商政策を批判するというような状況が出てきているわけであります。

 業界が違います。確かに、農林水産物のセーフガードの報復措置として自動車、エアコン業界が被害をこうむるというようなことで、ここは業界間、国内の業界の利害がばらばらになっていくというような事態が出てきているわけです。日経連のこのような対応というのは、けり合いをしているようなものだと言うような対応は、日本の国論を統一する上で極めて不都合な対応だろうというふうに思います。

 我々は、日本の農業を守るためにしっかりと正当な権利を行使しているわけでありまして、こんなセーフガードはやめるべきだったというような、他業界からこんな批判が出てくることについては、我々極めて遺憾でありまして、農林行政をもっと他産業にも理解していただく必要があるというふうに思っておるわけであります。

 こういった日経連の対応等々で国内でいろいろと物議を醸すような状況が出てくるということはまことに遺憾でありますが、この点についての、私の尊敬する農林水産大臣の御見解を賜りたいと思います。

武部国務大臣 ネギ等三品目に係る暫定措置につきましては、WTOセーフガード協定等に基づき実施したものでありまして、これは適正な措置であるというふうに考えているということは、金田先生御主張のとおりでございます。このことについては、中国側に累次の説明を行ってきたということも御案内のとおりでございます。

 中国側がこのような対抗措置をとったことは、ただいま槙田局長の説明にもありましたとおり、WTO協定から見ても、日中貿易協定から見ても、決して正当化し得ないものでありまして、極めて遺憾であります。このため、我が国政府としては、中国側に対して、本件対抗措置の撤回を強く求める一方、セーフガード措置に関しては、両国間の協議を通じて解決を図るべく、問題解決に資する建設的な対応を強く求めることにいたしております。

 このような中で、今の奥田日経連会長の記者会見においての発言について、私は、新聞報道は承知しておりますけれども、具体的な発言の内容について承知しておりません。というよりも、むしろ信じがたい発言だな、そういう印象でございます。

 いずれにいたしましても、先ほど来金田先生もお話しのとおり、今回の三品目の暫定措置につきましては、これは輸出国に対しても十二分に配慮いたしまして、過去三年間の輸入実績の平均、これまでは従来同様の関税で輸入を認めているわけでありまして、この辺のところがマスコミ等でも正確に報道されていない、そういう節を禁じ得ません。

 これは我々も、国民の皆様方に対しても、消費者の皆様方に対しても、よく説明しなければならないな、このように考えているところでございますが、いまだこの実績に至っていないわけであります。

 何か国民の間には、知らない人々の間には、中国を初め、この三品目については全く輸入できないんじゃないか、向こうからすれば輸出できないのではないか、日本が輸入を認めていないかのような印象を与えているように思うのです。先般も、私もある主婦に伺いましたら、そんなことを言っておりました。だけど奥さん、ネギなど相当値上がりしていますかと言ったら、いや、それほどではないですねと。こういうことなんですよという説明をしましたら、ああ、そういうことなんですかというお話でございまして、話せばわかるといいますか、よく説明すれば理解がいただける、かように思っております。

 いずれにしても、我が国の国民各層に我が国の政府の主張の正当性や今後の方針について幅広く理解をいただくことが何よりも重要だと思っておりまして、さらにそういう努力を政府を挙げてしていかなければならないと思います。同時に、中国側に対する働きかけにつきましても、今後も鋭意行いつつ、金田先生の御指摘を踏まえて対処してまいりたい、かように存じます。

金田(英)委員 御苦労さまでございます。

 ついては、このセーフガードについて、我々、各省と協議しながら、そして日本政府の見解としてこのセーフガードの発動に踏み切ったわけであります。こういった政府の決定というのをしっかりと、大切にしながら、堅持していく姿勢というのが重要だろうというふうに思います。

 農林水産省の中でも、そしてまた我々の党の中でも、このセーフガードというのは、一定の期間たったら、いつか開放しなければならない、解除しなければならないという性格のものでありますから、その間に、しっかりとした農産物、野菜対策を講じて、いつか開いたときに、中国のネギがまたやってきてもしっかりと産地が守られるような、少しはちゃんとやっていけるぞというような構造改革をしっかりと取り進めることが肝要であります。

 そういったことについて、今後の農林水産省また政府の対応について、また外務省についても、政府の方針をしっかりと自信を持って堅持して、こういった報復措置に対抗していくようにと申しますか、しっかりとしたスタンスで事に当たっていただきたいということを申し上げさせていただきます。

 もう一点、今問題になっているのが、韓国のサンマ漁についてであります。

 この点について、北方四島の帰属について、日ロ間でしっかりとこの問題を解決して日ロの平和友好条約を締結するというのが日本、ロシアの大きな外交課題であります。そういった外交課題として、この問題については世界じゅうの人たちが、あの北方四島は日ロ間の紛争地域であるというようなことが理解されているはずであります。

 昨年の十二月十日、韓ロ漁業協定で、北方四島の水域で韓国のサンマ漁船が操業することが韓国、ロシア間で合意されたわけでありますが、その後水産庁がどんな対応をとってきたのか、そのことについてまずお伺いします。

渡辺政府参考人 北方四島は我が国固有の領土でございます。そして、その周辺水域は我が国の水域でございます。この水域につきまして、韓国、ロシア両国政府が、政府間の合意によってサンマ漁業に関する合意をしたということは、北方四島周辺水域の主権的権利を損なうものでございますので、外交政策上、大変重大な問題というふうに受けとめておりまして、これまでも外交当局がさまざまなレベルで、韓国、ロシア両国政府に対して合意の撤回を求めてまいりました。また、水産庁も、両国の水産当局との協議の際に、合意の撤回を申し入れてきているところでございます。

 こういう状況の中で、今月六日に、三陸沖の日本の二百海里水域内における韓国のサンマ漁業についての許可の申請がございました。北方四島周辺水域に出漁している船が三陸沖の日本の二百海里水域内で漁業を行う可能性がございます。これは、違反をしている船にそのまま許可を与えるということになりかねませんので、十九日に操業許可を留保することを決定いたしました。そして、二十一日には、韓国側に水産庁の見解を渡すと同時に、二十二日、武部農林水産大臣から駐日韓国大使へ厳重なる抗議を行ったところでございます。

 この件は、現象的には漁業問題でございますが、本質は領土問題でございますので、外交当局が主体となりまして、韓国、ロシア両国と交渉を行っていくことが肝要かと考えております。

金田(英)委員 日本の知らないところでロシアと韓国のサンマ漁についての合意が得られたということでありますが、これについてはロシアもロシアであります。この問題については、日本が領有権を主張している北方四島の海域で第三国の韓国に、漁業を許可すると申しますか、そういったことをすると、日ロ間の関係を悪化させるであろうということは十分知り得たはずであります。あえてそれをやったということは、外交音痴というよりも、極めて挑戦的なロシアの対応だろうというふうに思うわけであります。

 また、九二年に似たような問題があったときに、日本は、日本の漁獲枠を韓国に譲ることによってこの北方四島水域の問題を解決したという経緯があるわけです。こういった経緯を勘案すれば、この領域で操業することが日本をいかに刺激して三国間の混乱を招くかということは、韓国として十分承知し得た事項であったはずであります。そういったことにつきまして十分知っていたと考えられますので、極めて挑戦的だ。

 これについて、四島海域でサンマをとるということが日本をいたく刺激する、外交上、両国間あるいは三国間にいろいろな問題を惹起するということを十分知っていたと思われるのに、あえてそれをやったということについて、水産庁はどのように考えておられますか。

渡辺政府参考人 九二年当時の事案と似ているようで、実は全く事情は違うわけでございます。

 九二年当時は、日本の二百海里水域内において、韓国の漁船は自由に操業できるという状況でございました。その後、この状況は変わりまして、日本の二百海里水域内における操業は日本国政府の許可を得て行わなければならないということになっておりますので、九二年の経緯、それから、その後状況は変わったということを韓国政府としては十分に調べた上で、韓国は、今回の韓国、ロシア間の合意が、日本との間で政治問題になりかねない重大な問題であることを認識していたというふうに私どもは想像するものでございます。

金田(英)委員 こういった形で、韓ロ間で去年の十二月合意されていて、またぬけぬけと、日本の海域の三陸沖でもサンマをとるということで三陸沖の漁業の許可を申請してくるという韓国の態度には、ほとほとあきれ返るわけであります。

 もし仮に北方四島水域で韓国がサンマ漁を操業した、そしてそれに何らなすべき手もなく、いろいろ苦情は言ったとしても、あるいは抗議を申し入れたとしても、何らなすすべなく黙っていた場合、それが今後のいろいろな関係、竹島問題も含めて、いろいろな問題に影響が大きいと思うのですが、この韓国のサンマ漁、北方四島海域での操業を見過ごしたというか、見ていざるを得ないというのですか、そういった状況になったときに惹起される問題について、水産庁はどのように考えておりますか。

渡辺政府参考人 二つの点が考えられます。

 一つは、北方四島周辺水域は非常に良好な漁場でありますので、サンマの問題をもし私どもが見過ごしたとしますと、イカであるとか、スケトウダラであるとか、他の魚種ですね、そういったものについても同じような事態が生ずる可能性があるということ、それからもう一つは、韓国だけではなく、ほかの国がやはり同じような方式によってこの水域で操業を行う可能性がある、この二点で非常に問題であろうと思っております。

 そういうふうな事態になりますと、北方四島周辺水域における我が国の主権的権利がさらに侵害をされるおそれがございますので、韓国、ロシア両国が今後合意を撤回するよう、外交当局を中心に、引き続き強力に申し入れを行う必要があると考えております。

金田(英)委員 最後に、領土問題が基本でありますが、問題がいろいろ派生してくるわけであります。実効支配を認めて、それに論理上服従したというようなことになると、これから大変な問題が出てくると思います。

 そういった中で、この問題の解決に向けて外務省は毅然たる態度で交渉に臨んでいただかなきゃならないわけでありますが、両国に対して、その合意を撤回させて、あの水域での韓国の操業を認めさせないというような毅然たる態度が必要だと思いますが、最後に、外務省のそういった決意のほどを御披瀝願います。

小町政府参考人 本件につきましては、北方四島が我が国固有の領土であるという基本的な立場にかんがみまして、累次これまでもロシア及び韓国に、高いレベルを含めて何回も申し入れを行ってきております。

 最近では、十九日に、田中外務大臣からロシアのイワノフ外務大臣あてにメッセージを送りましたし、また二十二日には、武部大臣の方から崔韓国大使に申し入れをしていただきました。二十五日には、ソウルにおきまして、寺田駐韓国日本大使から韓外交通商部長官に対して改めて抗議の申し入れを行ったところでございます。

 外務省といたしましては、水産庁と十分協議を重ねながら、さらに韓国、ロシア両国に対しまして、当該水域で韓国漁船の操業が行われないように強く働きかけていく所存でございます。

金田(英)委員 今通常国会、自由民主党最後の質問をこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄でございます。

 きょうは、漁船法の改正案ということでありますけれども、農水委員会の理事会でも、農林水産行政全般についての一般質疑という形で内定をいたしておりますので、漁船法を含むさまざまな問題について、武部農林水産大臣を中心に御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今ほどの韓国漁船の操業問題について、まず最初に外務省にお聞きをいたしたいと思います。

 この問題は、昨年の十二月の十日に、韓国とロシア両政府間で、北方四島周辺水域を含むあの周辺での韓国サンマ漁船の操業についての協定を結んだ、しかも、来月の七月十五日からこれが操業できるということであります。

 私どもが承知をしたのは六月の十一日以降でありまして、この間、韓国、ロシアに対してどういう働きかけをしてきたのか。また、森・プーチン会談でもこのことの申し入れはあったということでありますけれども、なぜ私どもに、日本の国内には、国民の皆さんにはこれが披瀝をされておらなかったのか、まずこの点について御質問をいたします。

小町政府参考人 お答えいたします。

 本件につきましては、ただいま委員御指摘のように、昨年十二月十日に合意がなされたわけでございますけれども、我々がこの件につきましてわかりましたのが昨年の十二月二十六日でございます。これは、韓国とロシアの合意ができたということに関して日本側から照会したのに対しまして、韓国側が、北方四島周辺水域が含まれているということを回答してきたわけでございます。

 それで、その後、ことしの一月からさらに細かいいろいろな事項を確認いたしまして、ことしの二月一日には韓国側に既に申し入れをしておりまして、その後だんだんレベルを上げていきまして、二月二十日には東郷欧州局長からロシア大使へ等々、さらに、今委員御指摘のように、三月二十五日には、森総理からプーチン・ロシア大統領にもこの問題を提起していただいたような次第でございます。

 これにつきまして今まで対外的に説明してこなかったのは、本件につきましては、まず静かに交渉する方が実際の問題解決にプラスになるのじゃないかというふうに考えた次第でございます。それが、本件が今まで、六月の半ばまで発表されなかった背景でございます。

鉢呂委員 静かな対応ということだったと思いますけれども、結果として何ら解決をしておらないということで、やはりこういう重要な問題については、わかった時点で国民に明らかにすべきである、このように思いますけれども、その点、単なる静かなる対応でいいのかどうか。

 領土問題が絡みます。もちろん、今、日ロで領土を協議しているさなかでありますけれども、そういう配慮があって、逆に問題を長引かせ、さらにこの解決が遠のいた状態に今日至っておるのではないか。

 昨日、韓国政府は、日本の寺田大使ですか、七月の民間漁業協議会の協議を延期するとか、あるいは捕鯨の国際会議の打ち合わせ会議が日本であるのを出席を見合わすとか、さまざまな形をとってきておるというふうに報道されておりますけれども、外務省のこの種の対応は果たしていいのかどうか、もう一度局長に答弁をいただきたいと思います。

小町政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの点につきましては、我々も、静かに話し合いを進めておりましたけれども、いつまでもこれを対外的に説明しないということはできないと思っておりました。そのタイミングにつきましては、先ほど来水産庁の方から御説明がありましたように、三陸沖のサンマ漁の申請に対する許可証の発給等のタイミングを十分考えながら、水産庁とも御相談の上、今般対外的に御説明をさせていただいたような次第でございます。

 これからは、先ほど来申し上げておりますように、本件水域におきまして操業が行われないように、重ねてロシア及び韓国にできる限りの働きかけを行っていきたいと思っております。

鉢呂委員 きょうは外務大臣をお呼びしたいと思ったのですけれども、ああいう問題で外務委員会も相当な課題を抱えておるようですから呼ぶことができませんでした。武部農水大臣におかれましても、この問題は秘密交渉というようなことで解決できる問題ではない、これは外務省として、国民には説明をしないで静かに交渉するというようなものでは解決をし得ない問題だということで、やはり毅然たる対応でやる必要もあるし、国民にもその都度理解を求める中で交渉すべき問題であるというふうに思いますよ。小泉内閣としてきちっと意思統一をしてやっていただきたい。

 今までの経過について、反省について、農水大臣としてどのように考えておるのか、御答弁願います。

武部国務大臣 私は、本件は、現象的には漁業問題ではありますが、本質的には領土問題であるというふうに認識しております。

 これは主権にかかわる重大な問題ということから、韓国から日韓漁業協定に基づく三陸沖の排他的経済水域内におけるサンマ漁についての許可証の発給を求めてきた、これが六月六日でございます。したがいまして、二週間をめどに答えを出さなければならない、そういうことに迫られましたので、官邸とも相談した上、四島周辺における韓国のサンマ漁について、これを撤回しない限り三陸沖の発給は留保するという答えを出さざるを得なかったわけでございます。

 お話のとおり、こういった問題を、確かに物静かに交渉事を進めるということについては私は否定するものではありませんけれども、事実関係というものをきちっと明らかにした上で進めなきゃならない。事実関係を明らかにしたから交渉がスムーズにいかないとか、静かに進まないということについては、私は、これはナンセンスな考えだな、かように思うのです。今の欧州局長のお話を聞いても、韓国とロシアのこの四島周辺における合意というのは、何の通告もないんですね。事前に話もない。後でいろいろ情報を聞いて、そうではないかということで確かめたところがそうだったということでありますから、これは非常に大きな問題だと私どもは思います。

 いずれにいたしましても、今後どう対応していくかということについては、韓国側からいろいろな対応法が行われていると認識しております。あるいはこれから何が起こるかわかりませんが、日韓関係というものは極めて重要であります。

 まず第一に、四島についての領土問題、これは日本の固有の領土であるという確たる認識の上に立って、なおかつロシアとも韓国とも、お互いに緊密な関係というものをこれから維持増大させていかなきゃならぬということは言うまでもありません。ましてや日韓の漁業問題については、せっかく日韓漁業協定締結にこぎつけた、そして今日の安定した関係が構築されているわけでありますから、このことも大事にしたいということで、私どもは、これを大事にしたいがゆえに、きちっと正すべきものは正してもらわなきゃならないということを申し上げているわけであります。

 今後、韓国あるいはロシア両国と交渉していく過程におきましては、外交当局と連携して建設的な対応に努めてまいりたい、かように考えている次第でございます。毅然かつ建設的に、こういうふうに申し上げたいと思います。

鉢呂委員 時間がありませんから簡潔にお願いします。

 韓国側は、紛争水域の場合は実効的管轄権を行使している国家から許可を受けて操業するのが国際法的な慣行である、国際法上認められておる、このように述べておるんですけれども、これが正しいのかどうか。ここだけはきちっと、やはり国際法上の問題として、日韓の共通のルールといいますか、共通の認識に立つべきである。そういう点で、これは日本の外務省としてどのように考えておるのか、確認しておきます。

小町政府参考人 ただいまの点でございますけれども、北方四島周辺の二百海里水域は我が国の排他的な経済水域でございますし、ある国の排他的経済水域における水産資源の保存及び管理につきましては、当該国が主権的権利を有していることは国際法の基本原則でございます。したがいまして、韓国側が指摘するような国際法及び国際慣行は存在しないというふうに認識しております。

鉢呂委員 今大臣は、日韓の関係、建設的にやっていきたいと。しかし、魚の問題は魚で解決をする、九二年当時のような解決にしないようにと。サンマは最近非常に資源が枯渇をして日本の漁業者も大変困っているわけでありますから、三陸沖の韓国に許されている水域をさらに拡大するというような形で、魚で解決をするというようなことであってはならないと。これは堅持をすると。

 しかし、七月十五日はもう三週間後ですから、どういう解決の方向に向かうのか。やはり、大臣の方から一定の考えを国会に披瀝すべきであるというふうに思いますから、魚で解決をするということでないことについても明言をしていただきたいし、何らかの解決の方法についても農水大臣としての見解を明らかにしていただきたいと思います。

武部国務大臣 これは先ほど来申し上げておりますように、現象面では漁業問題かもしれませんが、本質的には領土問題であり、主権にかかわる問題でございます。このことについては我が国政府としての立場というものは譲れない、私はかように思います。

 また、解決の方法ということについては、私は、予断を持って今こうすべきだああすべきだという考え方は持っておりません。持つべきでない、かように思っております。これは領土問題であり主権にかかわる問題である、このことから、外交当局を通じてしっかりした交渉をやってもらわなければならない。

 ここでどういうことが方向として出てくるのかどうか、これらについても現時点でどうこうということを推測することは私は難しいと思いますが、あくまでも領土問題であり主権にかかわる大変な問題だというこの認識を崩してはならないというふうに思っておりますし、その上に立って、私の立場においては、現時点では、予断を持たず、粘り強く正々堂々と我が国の立場を主張しつつ建設的な解決ができればと、こう願っているということでございます。

鉢呂委員 次に、野菜のセーフガードに移らさせていただきます。

 中国がこういう報復措置をとったわけでありますけれども、若干、日本政府の見通しに甘さがあったのではないか。中国政府は日本にさまざまな牽制球は投げてくるけれども、十一月の本発動、十一月二十日に暫定措置が切れるわけでございますから、それ以降の本発動を回避させるための、さまざまな話はあるだろうけれども、実際の報復措置というような形のものはないだろうというような楽観的な考えがあったのではないか。また、現に、平沼経済産業大臣あたりは、中国のこの関係の大臣とも協議する中で非常に楽観的な話をしておったようでありますし、その点、日本政府として見通しの甘さがなかったかどうか。まずそこから大臣の率直な考えを聞かせていただきたいと思います。

武部国務大臣 中国政府は、我が国がネギ等三品目について発動したセーフガード暫定措置に対する対抗措置として、六月二十二日から、日本製の自動車、携帯・車載電話、エアコンの三品目に対して、現行の輸入関税に加えて一律に税率一〇〇%の輸入特別関税の徴収を開始したということでありますが、これまで中国側は、ネギ等三品目に係る日中情報交換会の場等において、対抗措置を発動する権利を留保する旨の表明はしておりました。したがいまして、対抗措置の発動の可能性は、私どもは認識していなかったということではありません。

 しかしながら、私どもは、中国がWTO未加盟の国ではありますけれども、やがて加盟国になるであろうという大国でもありますので、WTO協定に照らして丁寧に交渉を行ってきたわけでございます。今回のこのような措置は、WTO協定から見ても、日中貿易協定から見ても、決して正当化し得ないものでありまして、直ちに撤回すべきものというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、ネギ等三品目に係るセーフガード暫定措置は、WTOセーフガード協定等に基づき実施したものでありますので、私どもといたしましては、適正な措置ということをこれまでも言い続けてきたわけでありますし、丁寧な累次にわたる交渉も続けてきたわけでございまして、見通しを誤ったというような認識はいたしておりません。

鉢呂委員 中国側に累次の説明を行ってきたという先ほどの答弁もありましたけれども、やはり、こういう形についての日本政府の予想、予測というのは必ずしもなかったのではないか。

 同時に、この間の、暫定発動して以降ですけれども、もう少し、遠藤副大臣以下、政治家レベルの、閣僚クラスの方がおるわけでありますから、農水省としても、これからでも遅くないわけであります、単なる事務レベルの対応ではなくて、やはり積極的な対応が必要になっておるのではないか。

 これは、WTOに認められておるからというだけでどんどんかけていけばいいというものでもないし、例えば小泉総理からは、余り肉声は聞こえませんけれども、新聞報道によれば、慎重で建設的な方向での話し合いはなければならない、余り事を荒立てることはしない方がよいというような、非常に、きちっとした毅然たる方向というのが出ておらずに、何かけんか両成敗的な意味合いの発言が見られるわけであります。

 この点、所管の農水大臣として、やはりきちっと小泉総理にも事態を認識、まあ認識はしていただいておると思いますけれども、やはり小泉内閣全体として、総理の発言というのは必ずしも事態を重大視しておらないというように私は見れるわけでありまして、大臣から、小泉総理のこの発言についてどのように考えるのか、あるいはまた総理からどういう指示をもらっているのか、その点について御答弁願いたいと思います。

武部国務大臣 とにかく、今回の中国の措置というのは、WTO協定から見ても正当化できない、なおかつ、日中貿易協定からして、最恵国待遇という日本に対してかような措置をするというのは一種驚きですね。ちょっと信じがたい措置でございます。

 しかし、私どもは、再三申し上げておりますように、これまでも、WTO協定に未加盟の中国でありますけれども、丁寧に交渉を続けてまいりました。しかし、中国側からこれといった具体的な提案がないということで、今先生御指摘のようなハイレベルでの動きということは、日本側からやるべきそういう状況になかったということも御理解いただけると思います。

 小泉総理からは、当初から冷静に建設的な方向で話し合っていくようにという御指示でありますが、これは、ルールに従ってきちっと粘り強く丁寧な交渉をするようにということで、私どもの対応については、当然、総理の理解と指導のもとに行われている、かように御理解いただきたいと思います。先日も私から状況等について御報告させていただいているところでございます。

鉢呂委員 質問通告しておりませんけれども、アメリカとメキシコとの自由貿易構想というのが具体化をしておるわけであります。また、日本と日本を取り巻くアジア全体でこの自由貿易構想というものも国際会議の場で最近出ておるわけでありまして、この中に野菜を初めとする農産品がどのように入っていくのか。これは、関税ゼロで自由にアジア圏でEUのような取引をすれば双方の国にとってプラスになっていくという形でありまして、そういう大きな方向、流れというのはあるんだろうと思いますが、一番大きなネックになるのは、やはり農産物ということは当然ある話でありまして、これについて、大臣として、率直なお考えでよろしいのですけれども、聞かせていただけますか。

武部国務大臣 私どもは、あくまでもWTOの中で問題を解決していくという立場でありまして、現時点で二国間のそういう自由貿易協定という考えはありません。そうすべきではない、かように思っております。

鉢呂委員 同時に、今回のセーフガードの日本政府の基本戦略といいますか、この点についてお聞かせを願いたいと思います。

 いずれにしても、大臣も御案内のとおり、本格発動しても限定的です。四年ないし、私は必ずしも深く知りませんけれども、最長でも八年ぐらいの秩序立った輸入を行わせるというふうにWTOの一般セーフガードはなっておる。したがって、それ以降は、要するに自由に輸入、輸出することができるという形になっておりますから、日本政府としてどんな方向に持っていくのか。

 私は二つあると思っています。

 今回の一般セーフガードの本格発動を行って、その間に国内の野菜の経営改革をして、中国産にたえ得るような、競争できるようなものにするのか。また一方、最近、三割減というようなことも、野菜について経営改善をすると、これも後で聞きますけれども。しかし、そうであっても、今の形からいけば、無秩序に大量に中国のさまざまな野菜が入ってくる可能性がある。ここは、WTOという国際協定もありますし、同時に、二国間でどういう秩序立った自主的な貿易ルール、野菜についての貿易ルールをつくるか。これは単品ごとでもいいんです、長ネギ、生シイタケ、畳表の。そういう自主ルールをつくるか。その戦略について、必ずしも明らかでない。

 それはもちろん、対外的には声高に、どんどん、日本はWTOで認められることをやるんだから、一切中国は物を言うべきでない、こういう今の報復措置というのは許されるべきものでないというふうなことが聞こえるわけでありますけれども、対外的にはそれでいいかと思いますけれども、実際問題として、日本政府としての基本的な協議の方向というものについてやはり明らかにしておく必要があるんだろう。お聞かせを願いたいと思います。

武部国務大臣 WTO協定に基づくセーフガードの発動というのは、その前提に構造調整ということがあるんですね。ですから、これは単に輸入阻止という、そういう考え方ではありません。

 急激に輸入がふえて重大な損害が生じる、そのことによって、例えば農業分野でいえば、農業が成り立たない、作付が減ってしまう、あるいは離農につながる、農村が崩壊するというようなことを何とか防いで、なおかつ構造政策、生産対策あるいは流通対策等々、今いろいろ農林水産省としても検討しております。こういったことの対応策を講じて、できるだけコストの安い国内野菜というものが供給できるような体制をつくっていかなければなりません。今、三割減ぐらいのコストで野菜の供給ができるようにということで、野菜振興対策も農林水産省で検討しているところでございます。

 その上で、できるだけ足腰の強い、競争力のある国内生産体制というものを確立していかなければならないということと同時に、しかし、このセーフガードの暫定措置を本発動に、そういう強い声もございますが、このことにつきましては、直近の状況も踏まえた実態をさらに把握し、利害関係者等からの意見表明等の検討も踏まえつつ判断することだ、かように思います。

 私ども、今度のセーフガード発動、暫定措置は、決して中国に対するものじゃありませんで、先ほど外務省からもお答えありましたように、これは中国から一番多いということで大きな問題になっているわけであります。したがいまして、中国と累次の交渉をしているわけであります。もし中国から建設的な提案があれば、私どももそれを受けて、我が国としても建設的な対応を考えてまいりたいということは言うまでもないことでございます。

 先生御指摘のとおり、まず最初にセーフガード発動ありきではありません。国内の農業に力をつけていく、そして競争力のある生産体制というものをつくっていく、その上で、なおかつ、重大な損害を与えることになるようなことはあってはならないというようなことで、WTO協定に基づき、国内関連法令等にも基づいてこういう措置をとっているわけでございまして、こういったことについても国民各界各層の御理解をいただくような努力もしていかなければならないのではないか、かように考えております。

鉢呂委員 やはり中国との関係は、どういう農産物の貿易ルールをつくるか、私は、ここに主眼を置いた、向こうからそういう提案があればというようなことではなくて、やはり日本側から積極的な対応方向というものを示すようにやるべきだ。

 これは、四年ないし八年を過ぎてしまえば全くあとは自由という形では、どこかの新聞も書いていましたけれども、日本人の胃袋はほとんど中国の大地に、農地によっておる、さまざまなものが、農地だけではなくて、最近のウナギなんかも、かば焼きに加工されたものが七割、八割を席巻しているとか、本当にそういう形になっておるわけですから、やはり、秩序立ったものに貿易もしていくという形で日本の戦略を組み立ててはいると思いますけれども、それはあめとむちと絡み合わせながら大臣が相当指導性を発揮すべき問題だろうと思っています。

 そこで、国民の理解の問題でありますけれども、最近、この問題が起きまして、消費者団体という非常に生産者にも理解あるような方々が、安い長ネギを食べたいのにとか、普通、世論調査をすれば七割、八割の方は国産品を食べたいというのが出てくるんですけれども、必ずしもそれが積極的なものでないということに私ども愕然とするわけです。安全性とかなんとかという前に、安ければその方がいいというような形が如実に出る。それにしても国民はそれほどは批判的ではなかったというふうに、私は客観的に見て、小泉フィーバーのような形がそこそこに出るので非常に心配するわけですけれども、そういう形ではなかったなと。ただ、やはりマスコミなんかは非常に批判的な論調が目立つわけであります。

 私は大臣に、農業団体と話すのもいいんですけれども、三者会談というのは盛んにやっておるようですけれども、むしろ農水省がやらなければならないことは、そういった国民合意、自給率を上げるためにも、これは国民の理解のもとにやらなかったらとてもできない。まさか日本人が食べるさまざまなものについて、国内物を食えとかということを強制するわけにはいかない種のものでありますから、そういう意味でも、大臣がやらなければならないのは、そういった団体だけでも問題がありますけれども、むしろ消費者とか一般の国民の皆さんに向かってどのぐらいメッセージを送ることができるか、ここにかかっておると思うんですね。

 ですから、むしろやらなければならないのは、国民、マスコミにも受けるような、見えるような形で、先ほど言ったような経済団体の皆さん、経団連とか日経連の皆さん、あるいは連合という労働組合の集まりもあるでしょう、あるいは消費者団体も、国内物を食べるというような底の浅い意識、そういうものを変えるにも、やはり具体的な大臣からのメッセージを送る、そういうものが今こそ必要じゃないか。そこは従来から私ども厳しく言ってきているんですけれども、やはりまだまだ足りない。農業団体とこんなのをやるぐらいですので、必ずしもそれは表に出ませんね、業界紙には出ているかもわかりませんけれども。そういう形でないものを今こそつくる必要があるのではないか。これについて大臣の見解をお聞きします。

武部国務大臣 先生の建設的な御意見を傾聴させていただきました。今後、私どもの執行の上で参考にさせていただきたいと思います。

 おっしゃるとおり、消費者の目線といいますか、国民の理解と合意ということが今後の農林水産行政の上で極めて大事だと思います。同時に、先ほどのサンマの問題もそうなんですけれども、これは損得で考えるべき問題ではないんですね。やはり領土問題、主権にかかわる問題だということについても、国民の皆さん方にしっかり理解してもらう必要がある。さような意味では、国民の皆さん方や消費者の皆さん方との対話ということが非常に大事だ、かように思います。

 そういうことを小泉内閣が重視しているがゆえにタウンミーティングなども全国各地で行っているわけでございますが、私といたしましても、農林水産行政を預かる立場で、今後、消費者の皆さん方や国民の皆さん方との対話に鋭意努力してまいりたい、かように思います。

 その上で、何が筋かということと同時に、国民の皆さん方や消費者の皆さん方が考えている日常の関心事というものも十分受けとめて対応していくというようなこともしっかりやっていかなければいけないなということでございまして、先生の御意見に敬意を表し、これからそういうことを含めて検討させていただきたいと思います。

鉢呂委員 WTOの農業交渉の詳細提案というのがさきにあったわけであります。この中に、国境措置に関する、例えば米の最低輸入量、MAの問題等については触れなかった、こうなっておるわけでありまして、やはりきちんとこれは真正面からとらえていくべき問題である。

 同時に、私は何回も言っていますけれども、国会も大変でしたでしょうけれども、これから休会になるわけでありますから、大臣を先頭に、世界各国に日本の考えを訴えていただきたい。大臣からお聞きしますと、アメリカ等に行くというような予定もあるようでありますから、私は大賛成であります。

 やはり特にアメリカとか、いわゆるケアンズ・グループに対して言わなかったら、日本人というのは外の方から何か根回しをして事足れりというようなことがあるわけでありますけれども、本当の意味での、輸出国に対して日本の立場というものをきちんと説明する。特にアメリカに対して、やはり定期的にも話をすることが大事だと私は思います。

 小泉内閣では大臣をかえないということですから、小泉内閣が存在する限り次の解散まではずっと武部農林水産大臣が続くわけでありますから、ぜひ、そういう継続的な、戦略的な大臣の行動というものを示していただきたい。これは副大臣も政務官も同じです。四人か五人いるわけでありますから、事務レベルというのはどうしてもきちっとした決断というのはできませんから、やはり率先して政治がリードするというのは外交にも求められるだろうと思いますから、その決意を大臣からお聞きいたしたいと思います。

武部国務大臣 WTO農業交渉の日本提案につきましては、五月以降、各国の提案をもとに各議題ごとに詳細な検討が行われているわけでありまして、我が国のペーパーも作成、提出しておりますので、より詳しく説明することにより日本の提案への理解、支持というものが広がっていくように期待をしておりますし、今後も努力してまいりたいと思います。

 今先生の御指摘の、私を含めて副大臣、政務官等も挙げて、各国に日本提案の中身について理解を広めるべく、我が国の主張に対する各国の理解を求める努力をこれからいろいろな形でやっていきたい、かような決意であることを申し上げたいと思います。

鉢呂委員 ちょっと時間がなくなりましたが、後先逆にして、今のセーフガードの関係で、野菜の生産体制あるいは関連の流通、消費も含めての体制ということで、農水省も取り組む姿勢を明らかにして、私もその具体的な展開方向というのを見せていただきました。

 これも、野菜生産の構造改革あるいは流通の構造改革という形になるんでしょうけれども、やはりきちっと目に見える形で、三割コスト削減をするというのであれば、どこでするのか。単に生産段階でなくて、流通や生産資材の簡素化というか、そこも含めて相当指導性を発揮していただきたい。ここに書いてあることは我々も賛同できる面が多々あると思いますから、予算的にもきちっとそこに重点化をして行うことが必要だ。

 それからもう一つ、きょうは厚生省も来ていらっしゃると思いますけれども、遺伝子組み換え食品を含めて、やはり食料の安全性については、表示も含めて日本は非常におくれておる。特に、加工食品の原産国、原産地表示というのが非常におくれていますね。まだ試行段階、やっと漬物等をやるかということですから、これはもう来年四月以降は全食品やるぐらいの大臣の指導性がなければだめだと思いますね。農水省の食堂に行けば、自給率何%と書いていますね。ああいうのを加工食品についても、自給率というのはおかしいかもわかりませんけれども、そういう表示をすれば、非常にわかりやすい。

 加工食品が一番輸入野菜を使っておる。長ネギなんかもそういう形だというふうに思いますから、やはり表示の問題をきちっとやる。いろいろ難しい問題はあるけれども、できないことはないわけですから、そこのところの大臣の決意をお聞かせ願えますか。

西藤政府参考人 食料品の表示の問題についての先生の御意見でございますが、先生御案内のとおり、JAS法を改正させていただきまして、生鮮食料品については去年の七月から、加工食品、遺伝子組み換え食品の表示を含めて、あるいは有機の表示を含めて、この四月一日から実施をしております。

 そういう中で、先生今御指摘の加工食品そのものは、例えばアメリカの加工食品であれば原産国表示はされております。先生御指摘の点は、加工食品の原料の原産地表示、これは品目において大変難しいいろいろな課題を抱えております。

 先生御指摘のとおり、私ども、加工食品の原料原産地に着実に取り組むということで、梅干し、ラッキョウにつきましてはこの十月一日からお願いしますし、そういう点で、漬物についても来年の四月一日から全面的に取り組むということで、順次検討をし実行に移している、そういう状況でございます。

鉢呂委員 漬物、ラッキョウばかり食べている日本人ではないんですから、漬物、ラッキョウ、梅干しとやればそれでいいというものなら、それは戦後の直後の日本ならそれでいいかもわかりませんけれども、そんな生ぬるい形でいくから消費者の理解も得られないということですから、大臣、きちっと、それは業界のそれに向かう姿勢というのがあるかもわからないけれども、それに対応できないような業界は、これは日本人の嗜好から外れちゃうんだということで、やはり期限を定めて、全食料品、加工食品の原料の原産地表示、このことをやるべきだ。大臣の決意をお伺いいたします。

武部国務大臣 消費者の皆さん方の目線といいますか、関心ということを第一に考えて、いろいろ検討していかなければならないと思います。消費者が選択しやすいような、そういう対応をしっかりやっていきたいと思います。

鉢呂委員 期限を切って実施をしていくということについて、もう一回御答弁願います。やり方は非常におくれていますよ、今日まで。

武部国務大臣 期限を切ってということは、ちょっと今申し上げるのは困難かと思いますが、いずれにしましても、ベストを尽くしていくということで御理解いただきたいと思います。

鉢呂委員 いずれにしても、この間、三品目程度ですね。梅干しぐらいは、もう原料が限られているわけですから、塩と梅と何か香料ですから、それがやっと去年あたりから始まったわけでありまして、ですから、そこの速度は速めるように。

 しかも、きょうは時間がなくなって申しわけないんですけれども、遺伝子組み換え食品ももう本当に無秩序ですね。これはもう、日本で認めておらないジャガイモのポテトチップスですとか、そういうものがどんどん入ってくる。これはもう水際作戦、もちろんアメリカに行っての、向こう側の指導も大事なんですけれども、これについてどのように考えるか。表示の問題も、実行しているといってもまだ半数ぐらいとか、いろいろありますね、例えば生鮮食品についても。あるいは、遺伝子組み換えもこの四月からですから、それも大豆とトウモロコシというふうに非常に限定されていますけれども、それ以上のスピードでどんどん未承認のものが入ってきておる。

 ここはやはり農水大臣として、所管は厚生省と共管のようなものでありますけれども、そんな縦割りでなくて、我々民主党も、その関係については、もっと警察的な機能を持った食品監視員というような形の法案を今出そうとしておりますけれども、農水省として、やはり食品の安全性あるいは国内の食料の供給という観点で、これも速度を上げていただきたい。大臣の御答弁をお願いします。

武部国務大臣 詳しいことは私も、責任ある答弁は困難だと思いますが、必要があれば局長に答弁させたいと思いますけれども、先生の御発言の御趣旨を踏まえて努力してまいりたいと思います。

鉢呂委員 大体、大臣が責任を持った発言をできないということ自体、私が質問通告をしておるにもかかわらず、まあ順番は違いましたから、それは失礼申し上げますけれども、もっとこの点について大臣も、これはなかなかいろいろ多岐にわたりますから、わかります、一人の人間としてわかりますけれども、やはりスピードを上げるような大臣の指導性をお願いします。

 それで、時間がなくなりましたので、きのう閣議決定をされた経済財政諮問会議の基本方針、この問題に移らせていただきます。

 私、きのう私の地元の十町村の町長さん、議長さんと懇談会を設けました。異口同音に、地方は、この間の小泉内閣の構造改革政策に大変な不安感を持っていますね。一つは、地方財政、地方交付税の削減ということで、どういうふうになるんだろうということで、やはり小泉内閣として思い切って、農水省の族議員のいろいろな反発があれば、それを乗り越えて先々やるというような感じになっておるようですけれども、やはり国民に対しては丁寧な説明が必要じゃないかな、まずそういうふうに思いましたね。

 それから、財政再建というのは短兵急にやることではないのではないか。見通しを持って、今景気がこんな深刻な状況ですから、景気に悪影響を与えないということを大前提に着実にやっていくという方向がなければ、初めに数字ありきで三十兆円以下に国債発行を抑えるとか、そのことについては、景気にも配慮する形になるんだよというふうに小泉さんはきのう言ったようでありますけれども、しかし、それにしても、財政再建が先行して、経済やあるいは国民に非常に痛みの伴う、伴い過ぎる結果にならないように注意をしなければならない。

 その中で、農水省の関係のものを見ますと、七つの改革プログラムのやっと地方の関係のところに農林水産業の形があらわれてくるにすぎません。これも、どうもそのほかのさまざまな委員の提言を見ますと、全く入っていない状況を、武部農水大臣が臨時委員として乗り込んでここまで書き込んだというのが実態だというふうに聞いておりますけれども、それにしても、結果としては農林水産についての考えが必ずしも如実にあらわれていないということで、所管の大臣として、この基本方針についてどう取り組むのか、これをまずお聞かせ願いたいと思います。

武部国務大臣 昨日閣議決定されました、今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針ということでありますが、農林水産省関係では、構造改革の七つの改革プログラムのうち、生活維新プログラムにおきましては、人の生命、健康にかかわる良質な環境や水と食料などの確保を図るヒューマンセキュリティーの確保、また地方自立・活性化プログラムにおきましては、食料自給率の向上等に向け、農林水産業の構造改革を推進するとともに、都市と農山漁村の共生、対流を通じた美しい日本の維持、創造の重要性が盛り込まれました。すなわち、日本経済の再生シナリオに農林水産業の構造改革が大きく位置づけられたと私は評価しております。そのほか、町づくりの問題でありますとか、もろもろ私どもの主張が盛り込まれた、かように認識しておりますけれども、先生、今、前段御指摘のことにつきましては、我々も同じように、地方の出身の立場から心配すること、多々ございます。

 しかし、聖域なき構造改革というのは、これはもう避けて通れない一つの大命題だ、こう思いますし、この閣議決定は、今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針でございまして、省によっては一切提案していないところもあるわけでありますので、私どもは、これがガイドライン、こう思っておりますから、これに従って骨太の、それこそ農林水産省の構造改革ということについて、今後しっかり対応してまいりたい、かように存じます。

鉢呂委員 この方針の二番目に、社会資本整備という欄がありまして、その2に「硬直性の打破」というふうに銘打って、その(3)に「ハードからソフトへの政策手段の転換」ということで、このハードからソフトの中に、初めて農業について具体的に、農業以外も社会資本整備はいろいろあるのですけれども、「例えば、」というふうに銘打って、「農業については、食料の安定供給、自然環境の保全等を目指した構造改革が喫緊の課題となっている。こうした農業政策の目的に照らし、費用対効果の観点を踏まえ、公共事業から公共事業以外の政策手段へシフトしていくことが必要である。」と。

 このことについては、大臣はどういう考えを持ち、とりわけこの「公共事業以外の政策手段」というのは、具体的にはどういったものを示しておるのか、これをお答え願いたいと思います。

武部国務大臣 農林水産公共事業は、食料の安定供給や水資源の涵養等の多面的機能の発揮を図る上で重要な事業でありまして、今後、これらについても重点化、効率化ということを重視してまいりたい、かように考えております。

 また、今後、構造改革を一層進めていくという観点から、専業農家を初めとする意欲と能力のある農業経営が農業生産の大部分を担う農業構造の確立ということが必要だ、かように思いまして、これらの経営体に今後諸施策がより一層重点的かつ集中的に講じられるようにするということと同時に、それ以外の農家に対する施策のあり方を含めて、関連施策全体の見直し、再編を進めていくというのが私どもの考えであります。

 いずれにいたしましても、具体的な対応については、今後示される概算要求の枠組み等を踏まえまして、八月末の概算要求に向けて具体的な検討を進めてまいりたいと思います。

 今の、シフトの話でありますけれども、私は、これは従来型の公共事業からというふうに理解しております。

鉢呂委員 この中でも、社会資本とはということで、社会資本とは、いわゆる市場メカニズムの円滑化のために市場の失敗を是正する役割を果たすということで、非常に広範囲な社会的なさまざまな施策を社会資本というんだということで、具体的には、例えば、大気、水、緑、土壌など自然環境、それから道路、交通、水道などの社会的なインフラ、そして三つ目には、司法とか教育の制度資本と。

 私はこの考えでいいと思いますし、その最初の環境的なもの、この点については非常に重視をするということも必要ですから、大臣が言われる、いわゆる従来型の公共事業というものを政策転換、シフトしていくということで、これは目に見える形でやっていただきたい。単に非公共事業ということで、建物を建てるのもいわゆる公共事業、従来型の公共事業だと思いますから、そこのところは、本当に目に見える形でやることだ。

 例えば新しいダム、これは、建設省所管のものは中止をするというようなことも扇国土交通大臣は表明したようでありますから、去年初めて中途のものについても見直しをしたようでありますけれども、まだまだやはり足りない面がある。

 もちろん、私どもは、必要なものはきちっとやる必要があると思います。必要なものはきちっとやる。ただし、そこには、本当に必要であれば、単に費用対効果といった場合は、どのぐらい車が通って、金額に直して、資本に対して効果がどのぐらい出るんだというのが多いんですけれども、それも必要になってくるだろうと思います。

 また同時に、私自身は、先ほど第一番目に言った自然環境、これの効果、農水省は、森林でも農地でもあるいは海でも、さまざまな多面的機能があるということを言っておるわけですから、やはりこの費用対効果の中に自然環境の効用というか効果というものを、金額的な明示になるかどうかは別として、一つの事業を行う場合にはそういう視点を取り入れるということも大事ではないかと思いますけれども、大臣の所感、考え方を聞かせていただきたいと思います。

武部国務大臣 農林水産公共事業については、事業により整備される農地、水路、森林等が、環境や国土保全、良質な水資源の涵養など、市場で評価されていない外部経済効果というものがあると思います。これらの効果の費用対効果分析の手法ということにつきましても、私ども、さらに検討をした上で、これも国民の皆さん方に説得力のある姿形というものを明らかにしていかなければならないのではないか、かように思いまして、今後、そういったことについての努力を一層強めてまいりたい、かように存じます。

鉢呂委員 私ども民主党は、この予算のあり方というものを検討して、農水部門についても、五年後には、いわゆる公共事業を含めて農水省関係予算というものを三割削減するということを打ち出しました。正直言いまして、これは選挙を考えれば非常に大変なことでありますけれども、三割削る、公共事業だけ見れば五割削減する。

 しかし、同時に、三割と五割の差はありますから、これはやはり必要な、重点的な施策を考える。私どもは、一つは、農家に対する直接支払い、農家、林家、漁家とありますけれども、そういう直接支払いに二千億以上充てる。あるいは、森林の整備、私ども緑のダムということを言っています。もちろん森林だけで保水力が保たれるとは思いませんけれども、現状の森林の荒廃を考えたときに、そこに約二千億をつける。そして、安全な食品を供給するというのはますます重要になりますから、有機農業生産というのは、こういう自然、気候条件では日本の国内では難しい、むしろアメリカ等からどんどん入ってくる可能性があるということで、やはり支援をする必要があるということで、これに一千億というような重点化を考える施策を打ち出しております。

 これは私どもの党の中の話でありますけれども、ほかの部門では、下げるだけとか、あるいは重点的なものをつけ加えることの作業をやっておらないところもありますけれども、そういう大胆な考えというのが、大臣は構造改革というふうに言っておるわけでありますから、やはりそういう形でぜひ出していただきたいものだなと。これからいわゆる抵抗勢力が出てくるかもわかりませんけれども、決して負けることなく、これをやっていただきたい。

 同時に、きょうは時間がなくなりますから私の方で言わせていただきますけれども、いわゆる担い手の構造改革で、大臣は、将来の意欲ある担い手に施策を集中するということで、経営支援を行うという形を打ち出しています。

 私は、やはり同時にそのほかの農業者も、二つについて大臣の方も書いてありますけれども、それに対する施策をどういうふうにするのか。決してばらまきではなくて、産業としての経営を考える、そこに対する手だて。それから、いわゆる環境保持的な、今、中山間の事業も非常に活気があるというふうに、私どもが地元に行きますとそういう考えも出てきておりますから、そういう中山間の所得支援というようなものを組み合わせるという考えも必要になってくる。いずれにしても、従来型の公共事業を硬直性のまま踏襲するということでない姿をぜひ示していただきたいものだ。

 最後に、大臣から若干所見をいただきたいと思います。

武部国務大臣 私は、公共事業、特に農林水産関係の公共事業というのは、今後、環境に配慮するということになれば、コスト面ではかなり厳しくなるな、むしろ事業費がふえていくような、そういう感じがいたしますけれども、しかし、聖域なき構造改革、ゼロベースからの出発ということを原点に、食料の安定供給と美しい国づくりに向けてしっかり努力してまいりたいと存じます。

鉢呂委員 終わります。

堀込委員長 次に、一川保夫君。

一川委員 また私の方から、漁船法の改正に一部関連しての質問、そのほかに一般的な質疑をさせていただきます。

 まず、漁船法に直接関係はないかもしれませんけれども、今回のこの法律の改正の根底にありますのは、前のこの委員会の場でもいろいろと御質問をさせていただきましたけれども、基本的には、我が国の水産業を取り巻くいろいろな環境が厳しい状況の中で、漁業資源というものをしっかりと管理しながら、将来の水産業を繁栄させるための一つの対策としまして、減船とか休漁みたいなものに取り組んでいかなければならないという厳しいお話がいろいろと出されているわけです。

 私は、漁船の建造なり検査なり、漁船そのものを管理していく、こういったいろいろな政策は、戦後、我が国にとって、割とずっと力を入れてきた分野だというふうに思いますし、戦後は、恐らく漁船そのものが相当破壊された時代があったんだろうと思いますけれども、そういう中で、我が国の水産物をしっかりと安定的に供給するという面では、非常に大事な分野であったことは間違いないわけです。

 今回、こういった全体の水産資源をある程度縮小していくというような流れの中で、こういう施策をしっかりと関係者に周知し、または理解していただいて協力を仰いでいくということがその根底に当然なければならないというふうに思うわけです。

 そうした場合に、こういう資源を回復していくための施策というのが、今後、いつごろまでをめどに、どういう形で行われていくのかということが、漁業者はもちろんのことでございますけれども、関係者にとっては非常に関心のあることであり、ある面では非常に不安に思う点もあるわけです。

 そういう面で、こういった水産資源の回復計画なるものがこれから策定されていくというふうにお聞きしておりますけれども、こういう計画を今後どういうようなスケジュールで、しかも、そのおおよその内容として、基本的にはこういう方針で取り組むんだというところをまず大臣の方からお聞かせ願いたいというふうに思います。

武部国務大臣 我が国周辺の水産資源のうち、早急に資源の回復が必要な魚種につきましては、全国または海域のレベルにおいて、まず減船、休漁等を含む漁獲努力量の削減、第二に種苗放流等による資源の積極的培養、第三に藻場、干潟の造成等による漁場環境の保全などを内容とする資源回復計画を策定することとしております。

 また、資源回復計画の策定は、本年も含めおおむね四年以内に行うということにいたしております。減船、休漁等の漁獲努力量削減に必要な措置については、今後十年程度の期間内に完了することを予定しております。

 なお、資源が回復し終える時期については、対象魚種の親魚までの成長期間等、生態的特徴により異なりますが、できるだけ早期に良好な資源状況に回復できるように必要な対策を講ずることといたしたいと存じます。

一川委員 そういう基本的な考え方で、ぜひ、できるだけ具体的な施策が目に見えるようにしていただきたい、そのように思っております。

 そこで、ちょっと水産庁長官に、最近報道されておる中で、これは事前に通告していなかった分野なんですけれども、要するに、漁船が不正に輸出されておるという報道がございます。この問題はちょっと気になる面もありますけれども、基本的にはこういうことが割と起こりやすいというお話も聞くわけです。

 長官の答弁できる範囲内でいいんですけれども、話によりますと、今、インドネシアへ輸出するということで手続をとりながら実質は北朝鮮の方へ輸出されたのではないかというような疑いが持たれている、そういう報道でございましたけれども、この問題について、現時点での水産庁長官の見解をいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 漁船の輸出そのものは、輸出貿管令に基づいて経済産業省がチェックをしております。ですから、その仕向け先国が申請どおりであったかどうかとか、そういったことは輸出貿管令でやられます。

 それで、私たちがどういう立場からこの漁船の輸出についてかかわっているかといいますと、この漁船の輸出によって、例えばブーメラン効果で日本近海の漁業資源の管理に悪影響を与えるとか、あるいは国際的な資源管理に悪影響を与えることがないかといったようなことを、経済産業省からの書類の回送といいますか、あるいは場合によりますと申請者から直接、便宜来ることもございますけれども、そういう中でそれをチェックする、書類審査をするというやり方をやっております。

 本件は、やはり、今回の報道で見ますと、この申請代理人でありますアカガネ海運産業から経済産業省にそういった申請がございまして、私どもの事前審査では、その書類の中で、インドネシア海域においてのみ操業するというふうなくだりがあったものですから、問題はなかろうということで、確認をした結果、実はそうではなかったという問題でございます。

 もちろん、書類を偽造したとか、実際に偽って操業海域あるいは船籍国を書くというふうなことは、私たちがチェックしている上でも問題がございますので、経済産業省と連携をとりながら、捜査には入ったことでございますので、事態を注視していきたいと思っております。

一川委員 その問題は、ぜひ真相をしっかりと究明した中で御説明をまたお願いしたいと思います。

 そこで、これは先ほど金田委員からも質問があった事項ですけれども、北方四島の周辺水域でのいろいろな話題が最近出ております。

 私自身、沖縄北方問題特別委員会に所属しているものですから、先般も両省にそのお話をちょっと確認したこともございました。また、当委員会でも、先般、農水大臣にも私の方から、関係大臣とよく連携の上お願いをしたいということをお話し申し上げたこともあるわけです。

 先ほど来のやりとりを聞いておりましても、基本的には、外務省の対応がちょっと生ぬるいといいますか、昨年の十二月に事がわかっておりながら今日こういう事態になったことに対して私自身も非常に疑問に思う点があるわけですけれども、農林水産大臣から外務大臣の方にこの問題については何か話し合いはされたのでしょうか、まだですか。

武部国務大臣 外務大臣にも当然申し入れをいたしております。たまたま、外務大臣がアメリカに参りました際に、私自身が農林水産省として三陸沖の許可証発給にかかわる答えを出さなければならない、そういう期日にあったわけでありまして、福田外務大臣臨時代理とも協議をいたしまして判断した次第でございます。

 この件につきましては、何度も申し上げておりますように、現象的には漁業問題でありますが、本質的には領土問題であるということから、外交当局が中心に韓国、ロシア両国と交渉していくことが重要と考えておりまして、さような意味でも、外交当局にしっかり対応していただきたい、また私どもも引き続き外交当局と連携して対応してまいりたい、かように考えている次第でございます。

一川委員 基本的には領土問題であり、毅然とした、また建設的な態度で臨みたいという大臣の考え方は賛成なんですけれども、きょうの新聞でも一部報道されましたように、韓国側に今回の日本側の三陸沖での許可の留保という措置に対して一種の報復的な動きが、要するに、民間レベルでのいろいろな漁業協議がまだ軌道に乗る見通しが立っていないというような報道がちょっとあったと思います。

 要するに、こういうことがだんだんエスカレートしていけば、日韓漁業協定でのいろいろな申し合わせ事項とか、あるいは暫定水域という日韓にとって割と関心の深い水域での漁業に対する操業、これは、これからのカニ問題、すべて影響するわけですけれども、そういうことを考えますと、やはり早期にこの問題を決着させるということが大変大事なことではないかと思います。しかも、漁業者なり水産関係ということであれば、やはり農林水産大臣の方がある程度主導権をとりながら、しっかりと外務大臣なら外務大臣に進言していく。

 基本的には領土問題が背景にあるといえばそうかもしれませんけれども、やはり漁業問題、漁業、水産、そういったいろいろな関係者に非常に不安な材料を与えていくということになるわけでございますので、農林水産大臣の方からも、そういう考え方を整理された上での強い対応をぜひよろしくお願いしたいと思いますけれども、大臣の決意のほどをお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、本質的には領土問題であり主権にかかわる問題である、しかし私ども、日韓関係というものは今後も重視してまいりたい、こう考えております。

 とりわけ、日韓間の漁業問題ということは、建設的に事が運んでいくように、前進していくように努力していかなきゃならない、かように考えていることは言うまでもありません。日本と韓国の漁業戦争にする考えは毛頭ありませんで、そのためにも、やはり外交当局を中心にしっかりした交渉をしていただきたい、かように思っておりますし、私自身も、農林水産大臣としての重要な責務というものをわきまえている所存でございますので、事が事だけに官邸とも相談して三陸沖のサンマの操業許可発給に関しては判断したわけでございます。

 今後、十分、韓国政府の動向についても注意しつつ、私どももしっかりした対応をしてまいりたい、こう思っております。

一川委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 それで、次に、ちょっとまた話題を若干変えさせていただきます。

 農業もすべてそうなんですけれども、自給率の問題が最近大きな課題でございます。こういった水産物に関する自給率の問題も当委員会でいろいろと話題に出ました。水産資源そのものの漁獲量をある程度抑制する中で、しかも我が国の自給率を上げていくという、これまた非常に難しい課題にチャレンジするわけです。

 こういった問題、この委員会で話題に出ましたように、日本近海等で割と多量にとれる魚をできるだけ食卓にのせていく、そういうことも一方では大変大事な課題であるわけですけれども、最近、自分たちの地域でも、俗に言う、昔で言う魚屋さんという商売が非常に活力がなくなってしまってきている。これは、大型店舗にも相当いろいろな面で太刀打ちできないということでやめていかれる方もいらっしゃいますけれども、また後継者そのものがもう非常に不足しているということもございます。

 しかし、こういった新鮮な魚をできるだけおいしく消費者に提供するという面では、こういう流通あるいは最終的に対面的に消費者に提供する、こういう仕事に携わっている、鮮魚専門店というのですか、要するに魚屋さんというのは、水産業を最終的に消費者に結びつける大変大事な役割を担っているわけでございますので、水産物の、魚介類の自給率向上、一応目標は六六%ですか、そういったところに置いておりますけれども、こういうことに対する対応策というものを具体的にどういうことを考えておられるのか。長官、何か答弁できますか。よろしくお願いします。

渡辺政府参考人 まずは、魚が健康生活にとっていいものだということをひとつPRしなきゃいけないと思うのです。それから、その中で、日本の周辺水域というのは非常に豊かで安定供給が可能だということをしっかり言っていくということだと思います。

 それから、魚屋さんについて言えば、恐らく二万店ぐらいなんだろうと思うのですけれども、そのまま買っていくだけじゃございません、対面販売ですから、知識を、消費者の方々にこういう調理方法で、この時期にこういうものを食べたらいいというふうなことをきちんと伝えられる、そういう商売なんだろうと思います。ですから、やはり魚屋さんが、消費者の身近なところにもありますし情報提供もできるという点で、ここの部分を強化していけば日本近海のものがそのシーズン、シーズンに応じて消費をされていくという点で栄えていくんだろうと思っております。

 一方で、朝早い、きつい、それからもうからない、大型店に押されているというふうなこともございますので、この際、やるべきことは、大型店にはできないようなことを、例えば産地と直結をしてより地元のものを消費者に直接伝えるというふうなやり方であるとか、あるいはお魚屋さん同士が組んで組合を通じていろいろなことをやっていく、PRもしていく、研修もする。そして、もっと大事なことは、衛生管理や情報化のための共同施設をつくって消費者の方々に対して安心感を与えるというふうなことがこれから先考えられる事項だと思っております。

一川委員 そこで、ちょっと大臣に。

 今のことに若干重複しますけれども、私も、皆さんも恐らくそうだと思いますけれども、最近、魚を扱っている市場、生産地に近いところの市場と消費地に近いところの市場では多少中身が違うのかもしれませんけれども、前に比べると非常に活力がなくなってきたといいますか、もう元気がない。そこに出入りしている方々が何となく元気をなくしてしまったような気がするわけです。十年以上前であれば、何かああいう魚市場というのは、ある面では非常に活気があったわけですけれども、最近はそういう面では活力がなくなってしまって、非常に寂しい感じもするわけです。

 今ほど水産庁長官からお話がありましたように、俗に言う、昔で言う魚屋さん、ああいう御商売は、消費者と対面的に話をしながら、きょうはこういう魚がおいしいですよというようなことも含めて、いろいろな調理の仕方も教えながら提供していた。非常にこれは、最近の若い奥様、そういう方々は余り直接魚を自分でさばくということはされないということもありますけれども、そういうことも考えますと、小売店といいますか、こういうことに対する対策も、相当やはり何か連携をとってうまくやった方がよろしいんではないかというふうに私は思うんです。こういう方々を元気づける意味でも、ひとつ大臣の御所見をお願いしたいと思います。

武部国務大臣 私も子供のころから市場に行くのが大好きでして、それから、近所の魚屋さん、その前を通るのがもっと大好きでして、何か落ち込んでいるときでも、魚屋さんの前を通ると、そこのおじさんに声をかけられると何か急に元気が出る。きのう泳いでいた魚でも今すぐとってきたような感じがするぐらい、それこそ活力がみなぎっていましたね。そして、そこでいろいろな対話が生まれ、そして鮮魚等についての料理方法を学んだり、本当に温かい人間関係がそこから生まれていたと思うんですね。

 私は、これは非常に大事なことだと思いますし、今コンビニだとか大型店だとか、そういったところに押されぎみでありますけれども、私は、最近少し日本人の心の中に、はやりを追う、そういう流れから、個の確立といいますか、個性ある生き方、そういうライフスタイルに変わっていく傾向が出てきているんじゃないか、かように思います。そういう意味では、そういった産地と鮮魚小売業との連携を通じた流通の効率化、あるいは地域密着型の商業として、対面販売の利点を発揮して、大型店に負けない、一種のこだわりのあるお店というものが、私はこれから生きていけるんじゃないかと思います。

 ただ、ちょっと我々の身近なところでも、経営者の高齢化が進んでいるということなどもありまして、元気がないというような、そういう現象になっているのかもしれませんので、産地と消費地の鮮魚小売業との直接取引等の推進や、あるいは組合等による研修会の開催だとか、事業共同化等の活性化プロジェクトの取り組みだとか、また衛生管理や情報化のための共同施設の整備等、そういったことについて、水産庁としても、農林水産省としても、いろいろな意味で支援をしてみたいな、このように考えております。そのことが、鮮魚小売業の活性化を図り、水産物の自給率の向上に資するであろう。

 最近は、いろいろなところで地産地消という問題が、何か再認識されているといいますか、至るところでそういう話が耳に入ってまいります。ですから、先ほども申し上げましたように、少し国民のライフスタイルといいますか、それも変わってきているんじゃないか、それがどういうふうに変わっていくのかというものを見きわめた対応策を考えていきたい、かように思います。

一川委員 ぜひそういう方向でお願いしたいと思います。

 過疎地域なり中山間地域と称するような地域では、ほとんどそういった魚屋さんと称するものはないわけですけれども、最近ちょっと目につくことは、逆に、車に魚を載せて巡回されている方も中にはいらっしゃいますし、そういう面では、いろいろな時代に応じたやり方があろうかと思います。ぜひそういう分野にも、やはり気配りのある、そういう行政をお願い申し上げたいというふうに思っております。

 さて、では最後になりますけれども、農村振興局にかかわる仕事だと思いますが、中山間の直接支払い制度というのがございます。これは平成十二年から本格的に動き出したわけですけれども、中山間に対するいろいろな施策というのは、最近いろいろと関心を持たれて、各分野でそれなりの施策が動いていることは間違いないわけですけれども、この直接支払い制度というのは、ある面では画期的な制度だったわけですね。

 これで約一年ぐらいの実績が、実績といいますか、中山間地域の各集落とのいろいろな折衝、意見交換、関係する各市町村とのいろいろな連携という中で、この制度がスタートして、幾つか問題点といいますか、今後に対する課題めいたものが整理されつつあるのではないか。すべてがすべて、私は一〇〇%うまくいっているはずはないと思いますけれども、そこのところをまずお聞かせ願いたいと思います。

木下政府参考人 委員御指摘のとおり、本制度、十二年度から実施をした制度でございます。

 この中で、一つが、農政史上初めての制度ということもございますけれども、市町村の担当者あるいは現場段階の裁量にゆだねるというところがあったかと思います。したがいまして、私ども、例えば、五年間の協定期間の要件だとか、あるいは団地の要件、一ヘクタール以上というような要件にしているわけでございます。これらにつきまして、いずれも現場段階でいろいろな工夫ができるというような制度で仕組んでいるわけでございます。制度がうまくいっているところはいろいろな工夫をなされているという点もございますけれども、必ずしも現場段階まで十分な情報が行き渡っていないような地域におきましては、どちらかといいますと画一的な処理をなされたという点もあろうかと思います。

 そういう点もございますので、私ども、できるだけ地域に即した取り組みが行われるよう、中央段階あるいは県段階、いろいろな会合を重ねたところでございますし、現在、十二年度の実績を踏まえまして、どのようなところが問題なのかということにつきまして、農業者の意向を調査している段階でございます。

一川委員 今局長は、十二年度のこの制度を実施した実績といいますか、ある程度整理されておるんですか。そのあたり、ちょっと数字的にお話し願いたいと思います。

木下政府参考人 今月中に取りまとめることとしておりまして、今最終的に取りまとめているわけでございますけれども、十二年度実績ですが、集落協定が約二万六千、それからこの集落協定の締結の対象になっている面積が約五十四万ヘクタールというふうに承知をいたしております。

一川委員 私は、この集落協定をベースにした直接支払いというのは、ある面では当然評価しているわけです。ただ、持っていき方によっては、集落のお互いの共同意識を破壊してしまう危険性を常にはらんでおります。

 といいますのは、直接支払いですから当然個々の農家にそれを払っていくという一つの流れになっていると思いますが、やはりその集落全体でいろいろな農業的な資産を守っていくという中にこういったものをできるだけ充当した方が、私はこの制度を今後長くうまく活用する方法ではないかなと思うんです。余り直接支払いで直接本人の懐へ入ってしまうと、なかなか地域全体の平和を保てなくなってしまう危険性がありますので、それは各集落、その地域の特色が当然あろうかと思いますけれども。

 けさもNHKで報道されておりました。例えば、ため池の補強工事をこれから何千と取り組みたいというような農林省の何か方針が出されたというふうに聞きましたけれども、やはりこういう中山間地域にため池というような施設というのは結構たくさんあります。最近、余り十分な維持管理もできないままに放置されているのも正直たくさんあるわけです。

 こういったことが梅雨時期とか台風時期を迎えますと非常に心配なところもあるわけでして、やはり、例えばこういうため池のいろいろな修繕とか、こういうものの地元負担にこういった直接支払い的な資金をうまく充当していくようなことも含めて、本当に個人で対応できない、その集落全体であるいは地域全体で対応しなければならないような、そういう経費にこういうものをできるだけ充当するような方向へぜひ指導を願いたいなと思いますけれども、これは大臣に、ちょっと、そのあたりどうですか、基本的なお考えを。

武部国務大臣 先生の御意見というものは非常に傾聴に値するお話だ、かように受けとめさせていただきました。

一川委員 以上で終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、中林よし子君。

中林委員 まず最初に、大臣にお伺いしたいと思います。

 昨日閣議決定されました、今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針、いわゆる骨太方針と言われているものについてお聞きするわけですが、この中心的な眼目は、不良債権の最終処理、それも二年から三年かけてやるんだということなんです。

 そこで、お伺いするわけですけれども、この不良債権の最終処理について、農林中金あるいは信連及び農協、これが持っている不良債権も対象になるのかならないのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。

武部国務大臣 不良債権処理については、農協系統金融機関としても他の金融機関と同様に適切に対応していく必要があると認識しております。これは、農林中金、信連、農協といった農協系統金融機関も不良債権の最終処理を進めていく対象金融機関として含まれているということでございます。

中林委員 これは大変な問題だというふうに思います。それは、先般、農協二法の法案審議の中で、松本議員の方からこの点を質問いたしました。そのときに、農協、信連、農林中金、二兆八千五百七億円、平成十一事業年度末の不良債権があるわけですね。約三兆円近い。これがいわば最終処理の対象になるということになれば、農家が抱えている借金、一体これはどうなるのか。農家に与える影響、大臣はどのようにお考えになっているんでしょうか。

武部国務大臣 農漁協系統金融機関も、我が国金融システムの一員として、他の金融機関と同様に不良債権の最終処理を着実に進めていく必要があると考えていることをまず申し上げます。

 しかしながら、農漁協の組合員である農水産業者に対する融資は、協同組織である農漁協にとって特に重要なものであります。でありますから、不良債権一般の処理とは異なる取り扱いをする必要があるものと考えております。

 なお、農協の不良債権、十一事業年度末のリスク管理債権一兆一千百七十一億円のうち、農業融資に係るものは一割程度の一千三百億円強と見られ、不良債権のほとんどは員外融資を初めとする農業融資以外のものであるということも申し添えておきたいと思います。

 農水産業者が経済環境の変化等やむを得ない事由により返済に支障を来すようになった場合における農漁協の取り組みといたしましては、まず、農水産業者の経営再建が可能かどうかを適切に見きわめることが重要であります。再建可能であれば、償還条件の緩和や負債整理資金の融通、農業経営負担軽減支援資金や漁業経営維持安定資金等を使いまして、農水産業者の再建を積極的に支援していくことが必要であると考えております。

 なお、農漁協は、信用事業のほか指導事業、経済事業をあわせ行っておりまして、組合員である農水産業者の経営内容を的確に把握できる立場にもあります。このため、農水産業者に対する融資等信用の供与に際して、経営状況を踏まえて適切な指導を行い、返済不能な負債状況に陥らないようにすることが何よりも大切であると考えております。

中林委員 いろいろな融資だとか借りかえだとか、そういうようなことで対策はとるんだというお話でございますけれども、しかし、農協系統、これも不良債権最終処理の対象になっているんだということであるならば、農家であれあるいは関連の地域のスーパーであれ、不良債権になっている、その問題を区別して取り扱うということになるわけですか。農家はしっかりと守られる、こういうことを大臣は言明していただけますか。

武部国務大臣 今申し上げましたように、再建可能であれば農水産業者の再建を積極的に支援していくというのが私どもの立場であります。

中林委員 再建可能であるものは対象にならないんですよ、それはどれに対しても。これは、農協関連でなくても、再建可能であるものは最終処理の対象にならないでしょう。

 だから、要するに不良のものですよ、再建不可能のもの。それを処理していくわけですから、農家が抱え、経営が悪化して、決して農家の責任ではない、そういう事情のもとであっても、経営が悪化して再建がなかなか大変だ、しかしながら今後の農政の展開いかんではまた経営がよくなる、農業というのはそういう長期の見通しでなければならないというふうに思うんです。

 今回の方針というのは、二年ないし三年でやるということなんですよ。私は、これはすべての日本の中小企業、あるいは農林水産業も含めてですけれども、今回の不良債権最終処理の対象にすべきでないという考えを持っておりますけれども、当然、私は、農林水産業に責任を持つ当委員会において、農林水産業を守る観点から、二年ないし三年で最終処理されて本当にいいのかという問題が問われると思います。

 農業というのは、本当に長い見通し、林業でも長い見通し、そういうものがなければ経営なんて成り立っていきませんよ。今たくさんの負債を抱えているからということでこれは再建不可能だと判断をして処理されたんでは、日本の農業はやっていけません。ましてや、食料自給率の目標を掲げている中で、これ以上農家が廃れていいはずがございません。

 その点、大臣、農林水産業、これについてもこの最終処理の対象外にするんだ、こういう決意を持って臨んでいただきたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕

武部国務大臣 私の方から御質問したいぐらいなんですが、再建できないものをどうやって助けるかということについて先生はどのようにお考えでしょうか。

 それは、いろいろケース・バイ・ケースだと思いますよ。再建できないものをどうやって立て直すかということについては、これはもうケース・バイ・ケース、本人にやる気があるかないか、そういったことなども、私自身は現場をよく知っておりますからね。もうこの苦しみから何とか脱したいという人たちにまで追加融資をして、さあ頑張れ、やれ、やれというようなことは、押しつけがましいようなやり方はできないのだろうと思うのですね。ですから、私は、再建可能であれば、いろいろな償還条件の緩和や負債整理資金等の融通を行って、農林水産業者として再建できるように積極的に支援をしていこう、こういうことであります。

 したがって、ケース・バイ・ケースということでございまして、ここから抜け出したいという人にまで、農業者としてそのままそこで頑張れ、頑張れというようなことは私は難しいと思いますし、いずれにいたしましても、これはケース・バイ・ケースであろう、かように思います。

中林委員 農業経営をやりながら図らずも負債がふえてしまったということで、農家の皆さん方は、もちろん、職業選択の自由というのは当然あるわけですよ、それは農業をやめてほかの産業につきたいとおっしゃる方、その方々を私は言っているわけでは決してありません。しかし、たくさん借金は持っているけれども、今に値段もよくなって経営が好転していく方向も必ず来るに違いない、やはり土に生きたい、そういう農家の方々にとって、例えば、もう既にあっていることですけれども、北海道、大臣の地元ですけれども、そこの農協の自己資本比率を高めていくために離農勧告を農協自身が数年前にやったということが報道されました。

 だから、私は、本当に農業というのは十年、二十年、そういうスタンスで見なければならない。自給率だって十年先を見越した計画を立てているわけでしょう。そういう中で、今回のは二年ないし三年で最終処理をするということですから、私は、あえて大臣に答弁は求めませんけれども、本当に農林水産業に関しては、この政府の閣議決定されたものから、農協、信連、農林中金、ここの、特に農家経営をやっていらっしゃる方々は対象外にしていくんだということをぜひ要望しておきたいと思います。

 それでは、続いて中海・宍道湖の問題について質問をしたいと思います。

 中海の本庄工区中止後、内水面漁業振興ということに大変島根県も鳥取県も期待をしておりました。しかしながら、ここ数年ですけれども、毎年のように宍道湖でコノシロという魚が大量死している事態が発生しております。

 平成八年度、五月下旬から六月下旬にかけて約十六万尾、これは宍道湖においてコノシロを回収した量なんですけれども、十六万尾になっております。平成九年度、六月中旬から七月中旬にかけて約二十一万尾、これも回収量です、宍道湖での。平成十年度は、五月下旬から六月上旬にかけて約一万尾、これは主に中海でへい死しております。それから、平成十一年度、六月上旬から六月下旬にかけて、確認した数だけで約十七万尾、そのうち六万尾が回収されている。これは宍道湖です。それから、平成十二年度、六月上旬から七月下旬にかけて、確認量が二十二万尾で、九万六千尾が回収されている。これも宍道湖です。

 大変な量のコノシロのへい死であります。このことが宍道湖のシジミその他の水産資源にも大きな影響を及ぼすと漁師の人たちは大変心配しております。

 内水面漁業振興の立場からとても放置できる状態ではない、そのように思うわけですけれども、この状況、そしてその原因、水産庁としてどのように見ていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 数字は、それぞれ先生が御指摘になったとおりでございます。

 八年以来の毎年の宍道湖もしくは中海のコノシロのへい死につきましては、地元では、島根県でありますけれども、貧酸素水塊ではないかという疑いを持っております。

 こういう状況を受けまして、十三年度から、国土交通省等関係機関の協力を得まして、コノシロへい死の原因の究明と、それから、今ほとんど使われておりませんので、未利用資源であるコノシロの有効利用を図るための本格的な調査が三カ年かけて始まったわけでございます。

 水産庁といたしましても、この調査を通じて宍道湖ないし中海におけるコノシロの大量へい死の原因が明らかになっていくと思っております。

中林委員 まだその原因が明らかでない、こういう長官の認識のようでございます。

 そこで、宍道湖のコノシロ大量死の原因について、今長官からもお示しになったように、島根県はことしから、国土交通省そして宍道湖漁協の協力を得て、原因調査とコノシロ資源の有効利用調査に乗り出している。国土交通省出雲工事事務所では、大量死発生期を中心に、宍道湖底層の塩分、酸素の量をチェックするとともに、貧酸素水塊の流入コースと考えられる大橋川から玉湯町にかけて観測機器十基を設置して観測する、こういうふうに報道されているわけです。

 きょうは国土交通省の副大臣に来ていただいているわけです。なぜこの事業を始めたのか、それからその調査の中身、それについてお答えいただきたいと思います。

佐藤副大臣 中海・宍道湖における貧酸素水の流入コースの調査の目的と内容についてのお尋ねでありますけれども、平成八年から宍道湖・中海でコノシロの大量へい死が発生しておりますが、その原因についてはまだ特定されるに至っておりません。

 このため、国土交通省においては、島根県と協力いたしまして、原因解明のため、平成十三年度から三カ年予定で宍道湖におけるコノシロ大量へい死調査を実施いたしております。当該調査においては、中海・宍道湖の水環境の調査及びコノシロへい死の原因把握のため、湖内数カ所に連続観測機器を置きまして、溶存酸素量を測定いたしております。

 これらのことは既に記者発表いたしておるところでありまして、今後、結果がまとまり次第公表いたしたいと思っております。

中林委員 これとは別に、農水省の外郭団体のマリノフォーラム21が大橋川南岸二カ所で宍道湖の水質改善の実験を始めたと、これも報道されているわけですけれども。

 水産庁長官にお伺いしますが、このマリノフォーラム21が実験を始めた目的、それから調査の中身、これをお答えいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 結局のところ、貧酸素水塊、つまり酸素が足らないわけでありますので、ここに酸素を供給して、言ってみるとDOを上げていこう、そういう実証実験でございます。

 マリノフォーラム21が実施をしておりますけれども、大橋川を貧酸素水塊が遡上しますときに、それを一たん取り込みまして、そこで高濃度の酸素を吹き込んで溶存酸素量を高めて、再度大橋川に排出をする。具体的には、一ミリグラム・パー・リットル以下の水塊を二十ミリグラム・パー・リットル以上にして放出をするという実験を始めたわけでございます。

 もちろん、ほかにもいろいろ、曝気方式、曝気装置を使ったやり方もあるわけでございますけれども、ここでは、川を遡上いたしますので、その途中で取り込みましてこれを再びもとの川に戻すという実験を十二年度から行っております。

中林委員 大体どのくらいのお金がかかるのでしょうか。

渡辺政府参考人 予定期間としましては十二年度から十六年度までと思っておりますが、現在、事業費は年間約五千万円でございます。

中林委員 平成十二年、十三、十四、十五、十六、五年間ですね。年間五千万ということは、五、五の二億五千万相当だというふうに思ってよろしいのだろうと思うのですね。

 だから、私は、ぜひ大臣にも認識していただきたいというふうに思うのですけれども、中海の最大の面積を持っていた本庄工区というところが中止になりました。この中止は大変全国的にも喜ばれた中止決定だったというふうに思います。その背景には、中海・宍道湖、この二つの湖がこれで環境がよくなるだろう、環境の悪化によって両方とも内水面漁業が大変不振になっていた、それも改善されるであろう、これが大きな期待の声でもあったわけです。

 今長官がマリノフォーラム21、五年かけて大体二億五千万円ぐらいの、そういう酸素を入れていく、そういう機械でやっていくのだという事業の説明があったわけですけれども、しかし、国土交通省の方の説明でも、また長官の説明でも、湖底の貧酸素水塊、これがコノシロ大量死の最大の原因になっているということははっきりしていると思うのですね。

 では、その貧酸素水塊がなぜ宍道湖に流れ込んでくるのか。

 非常に見にくいと思いますけれども、これが宍道湖で、中海で、こっちが日本海ですね。一級河川の斐伊川というのが上流にありまして、それが常に宍道湖に流れ込んできています。だから、そういう意味では、上からの流れで、若干雑排水だとかいろいろなものがありますから、これは通常の汚れだというふうに思うのですが、やはり中海で水がよどんで滞留している、ここが貧酸素水塊を宍道湖に逆流させていく最大の原因だということはもう研究者の間では定説になっております。

 漁民の人、島根県民あるいは鳥取県民も含めて一番今求められているのは、今、日本海から流入するのは、この狭い中浦水門というところからだけ。日本海の潮汐の作用がある。本庄工区、これをつくる予定でしたから、堤防があります。こちらの森山堤防、こちらの大海崎堤防、双方とも開削して、日本海からの海水が流入できるよう、流れをよくするようにしてほしいという要求が一番強いのです。

 だから、これだけたくさんの予算、機械を入れるよりも、一番手っ取り早いのは、この森山堤防、大海崎堤防を、漁民の人、地元が望むように開削すべきだというふうに私は思うのですけれども、水産庁長官、いかがでしょうか。

    〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕

木下政府参考人 中海あるいは宍道湖の淡水化の問題でございます。

 昭和六十三年度に、鳥取あるいは島根両県から要請を受けて延期をしているところでございます。

 この淡水化の取り扱いでございますけれども、基本的には、代替水源等の確保をしてというのがございまして、私ども、両県におきましては十五年度を目途にそういう調査を実施しているというふうに聞いております。

 したがいまして、私ども、この開削の問題につきましては、そのような淡水化あるいは水源確保のめどがついた段階で検討すべき課題というふうに考えております。

中林委員 前は水産庁長官がそうお答えになる立場だったのだろうというふうには思うのですけれども、しかし今、この中海や宍道湖の内水面漁業、それがこういう状況の中で瀕死の状況になっている。水産庁長官として、内水面漁業を振興させる上で、この開削問題にどのように取り組んでいくつもりですか。

渡辺政府参考人 物事は開削だけで決まるわけではないわけでありまして、国がやりましたシミュレーションでも、それから島根大学の中海シミュレーションも同じですけれども、周りの状況がどう変わるかということが前提になって初めて開削問題が効果を出すか出さないかということが決まるわけであります。現状のままで開削をしたとしても海水の挙動に変化はないというのが大方の結論でございます。

 その点で、今農村振興局長がお答えになりましたように、淡水化の問題をどうするか、江島の架橋をどうするか、そういう問題がありますので、そういうものとこれはセットにして考えるべきもの、将来の課題というふうに考えるべきだと思います。

中林委員 私は、先送りすることは許されないのじゃないかというふうに思います。

 そこで、斐伊川、神戸川治水事業に伴って、松江市の大橋川改修事業の現地測量が七月にも着工されようとしているわけですが、六月十二日に島根、鳥取両県知事が取り交わした確認書の内容によりますと、両知事の確認書では、大橋川改修事業に当たっては、二つの干拓堤防が中海周辺の環境に与える影響、さらには、その堤防が開削された場合の中海・宍道湖への影響、環境アセスを要求しているわけです。国土交通省としては、この両県知事の確認書に対してどのように対応されるおつもりでしょうか。

佐藤副大臣 平成十三年六月五日に中国地方整備局長から鳥取県知事に対して回答した内容は以下のとおりであります。確実を期すために読み上げさせていただきますけれども、お許しいただきたいと思います。

 一、護岸の整備について。中海の護岸は、国土交通省の責任において整備を促進する。

 二、環境アセスメントの内容と実施方法について。国土交通省は、大橋川改修事業が中海・宍道湖の環境に与える影響について調査を行う。その際、大海崎堤、森山堤が開削された状態での中海・宍道湖の環境に与える影響について調査することに鳥取県、島根県を含む関係機関が合意した場合については、国土交通省は合意事項を踏まえ調査を実施する。

 また、環境調査の方法及び内容については、事前に鳥取県並びに米子市及び境港市に意見を求め、かつ、それを反映したものとするとともに、住民にわかりやすい方法で公表する。

 三、本庄工区の堤防開削について。大海崎堤、森山堤の取り扱いについては、今後、淡水化事業の中止等状況に変化があった場合には、地域の意見を十分に尊重し、河川管理者として適切に対処する。

 以上であります。

中林委員 条件はついてはおりますけれども、副大臣、ちょっと確認だけさせてください。

 淡水化が中止されて堤防が開削された場合、そのアセスの実施以前に着工ということはあり得ませんね。

佐藤副大臣 両知事のこの確認書のもとに、整備局といたしまして回答したとおりにさせていただきたいと思っています。

中林委員 農水省は、干拓事業と深くかかわるわけですけれども、どのように対処するつもりでしょうか。

木下政府参考人 両県で締結されました確認書でございます。私ども、その背景なり詳細について伺っておりませんけれども、その内容につきまして、今後できるだけ早期に説明をお聞きしたいというふうに思っております。その中で、干拓事業の関連で出ているところもございますので、農林水産省といたしましても、どのような協力が可能か検討していきたい、このように考えております。

中林委員 話をまだ伺っていないというのはちょっと驚いてしまいましたけれども、要するに、国営の土地改良事業にかかわる問題です。斐伊川水系の治水対策上の確認事項ではありますけれども、そこにはこの干拓事業あるいは淡水化事業の施設ももちろん入っているわけですから、当然、この確認書に基づく農水省の対応というのは求められているというふうに思います。

 この治水事業というのは、一九七九年に基本計画が発表されて以来、総事業費六千億円のうち既に三千億円が投入されているビッグプロジェクトです。特に大橋川改修事業は、この二十年来、鳥取県側との協議が進まず、棚上げとなってきた事業です。

 日本共産党は、治水という住民の生命財産にかかわる問題だけに、住民本位の事業促進が求められていると考えております。特に大橋川拡幅計画については、住民参加のもとで同計画を根本から見直すことを要求してまいりました。そして、拡幅に伴う中海・宍道湖の環境アセスメントを実施することも求めております。農水省としても国土交通省から説明を聞くとお話がありましたけれども、この確認書に基づく全面協力を要求したいと思います。治水上も水質上も、やはり堤防開削というのは必要だと思うのですね。

 大臣も、この中海干拓事業で本庄工区が中止になったのは、大きな話題になりましたから御存じだと思うのです。中止されれば環境がよくなるとだれもが思っていたにもかかわらず、いまだに事態は変わっておりません。私は、当然、地元の要望をお聞きになり、そして、内水面漁業振興、宍道湖も中海も本当に魚介類の豊富なところですから、ぜひ要望を聞いて、その方向でやっていただきたいと思いますけれども、大臣の最後の答弁をお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 本庄工区の工事延期及び干陸中止決定と水質の状況及び漁業への影響は明確な関係にあるとは言えない、かように聞いております。

 いずれにいたしましても、農林水産省としては、今後とも地元と十分話し合いながら、堤防を開削した場合の淡水化の代替水源の問題や、大橋川改修事業に係る確認書における環境影響調査の具体的な推移を見守りつつ対処してまいりたいと存じます。

中林委員 時間が過ぎましたので終わりますけれども、長官が言われたように、あの堤防を開削したシミュレーションもちゃんとやりました。そのときは明らかに水質は改善されたという結果も御存じなのに、変わらないという意見が大半ですなどとおっしゃったことについては異論を申し上げて、質問を終わりたいと思います。

堀込委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 百五十一回通常国会の農水委員会での最後の質問となりました。本当に長い間の御論議、大変御苦労さんでございましたし、あと三十分ほどですが、おつき合いを願いたいというふうに思っております。

 漁船法の改正については、終始、規制緩和に基づく、あるいは行政手続の簡素化という方向で改正されることについて、私は異議を申すわけではございません。ただ、漁船を取り巻く水産業全体が、これまでの水産基本法の中でも多く議論してまいりましたが、本当に非常に厳しい漁業環境にあるということは、お互いに共通認識に立ちながら、これからどうしていったらいいのかということの議論を進めなければならない今日的な状況にあるというふうに私はとらえております。

 そして、五月の十七日の水産基本法の議論の中でも私は取り上げましたけれども、今日の漁船、漁業をめぐる状況の中で、漁船の代替建造の問題は少し議論が不十分だったと私自身も思っております。そういう意味では、この点を取り上げて、少し今後の方向について議論させていただきたいというふうに思っています。

 今日の漁業経営の実態の中で、実は、遠洋マグロ漁船、昨年二割減船を行いました。その後、水産基本法の参考人質疑の中でも議論になりましたけれども、それでは、二割を減船して今日的な漁業環境はどうなっているのかということを考えたときに、減船以前と減船後で本当に改善しているのかということを考えたときに、まだ時期はそんなにたっていませんから、一気には回復ということにはなっていないということはわかるのですが、将来見通しを立てたにしても、減船の効果というものがどれだけ発揮されていくのだろうかということに対しても、大きな疑問を、業界も含めて関係者が今先行き不安を覚えているというのが今日の状況だというふうに思っています。

 そういう中で、今後代船建造が行われていくのだろうかという危機感を持っているのが業界の状況だというふうに思っていますが、これらの現状をどのようにとらえて、今後どのような方向に持っていかれるのか、少し水産庁の見解をお聞きしておきたいと思います。

渡辺政府参考人 今先生共通認識とおっしゃいましたが、私どもの方も、率直に申し上げまして、マグロはえ縄漁業の経営が非常に厳しいというのは認識をしております。とりわけ船齢がかなりたっておりまして、通常、耐用年数二十年と言われるのですけれども、主力はもう十年から十五年たっている船でございます。手元の資料でも、十一年以上が二百七十九隻、十六年から二十年が八十五隻などなど、全体の中で半分以上が間もなく船齢の耐用年数がやってくるというふうな状況でございます。

 そういう状況の中で、建造には多額の資金を有します。四百トンクラスで五億円以上というふうな状況でございますので、これから先、漁業経営に与えるインパクトというのは相当なものがあると思っております。

 今おっしゃいましたように、減船の効果の点では、まずは、減船をどの国にもしっかり参加をしてもらってやるということ、それから、減船の効果をそぐような便宜置籍船のようなものについて、しっかりとこれをクリンチしていくというふうなことが必要でございます。もちろん、代船建造には、最大で十億から十一億という建造費用を年利一・五五%という形で融資をしているわけではございますけれども、今後さらに、状況を踏まえて、どんなことが可能か、しっかりと勉強したいと思っております。

菅野委員 先日の水産基本法の中で、参考人からこのことも聞きました。そうしたら、参考人の方では、やはり具体的な対策というのはなかなか提示できないという状況の中で、健全経営の漁業経営者、船主が新船建造を行って、そして中古船を回すような、そういうサイクルで考えていきたいというふうな答弁があったのですけれども、実際に今、それでは、健全な経営を行っているマグロはえ縄漁業者がどれだけいるのかということを考えたときに、私は、この方法さえも見出せないでいるというのが現状ではないのかなというふうに思っています。

 水産庁長官の今の答弁は、五月十七日の答弁とほとんど変わっていません。ここまでは五月十七日に答弁を聞いていたのですが、その後、水産基本法の質疑の中で私は一つ提案していたのですけれども、私の地元で本当にこれからマグロはえ縄漁がなくなっていったらばどういう状況になっていくのかなということで、非常に危機感を持って、今一つ一つの議論を展開しているというふうに思っています。

 それで、地元紙の報道なんですが、近海マグロ漁船で、近海船で、三十四隻の平均船齢は十一・七年、そして最も建造が古いのは昭和五十四年で、二十二年にもなっている。それから、遠洋船では、九十三隻ある遠洋船の平均は、今長官が言ったように大体十一年ということで、そして最長は十八年ぐらいになっている。

 かつて、魚価が高くて経営が健全になっていたときには、大体十年使えば代船建造を行っていたという状況なんですね。それが、今はそのめどが立ちませんから、二十年あるいはそれ以上、修理して操業している。そういう中での、ある意味では危険性を伴った遠洋マグロ漁業であるというふうに思っています。そして、このまま厳しい操業が続けば、個人による建造リスクが重過ぎて、代船建造に踏み切る業者はもういなくなってしまうという今日的な判断なんです。

 そこで提案なんですが、政府機関などが公社などを設立して漁船を建造、漁船経営者に政府が建造して貸し出す方法というものを本気になって考えていかなければならないというふうに言っているんですが、これらについて考え方を示していただきたいと思います。

渡辺政府参考人 まず、総論から申しまして、今先生がおっしゃられたリース方式というのは、非常に魅力的な御提案だと思います。

 ただ、やはりリースという制度に乗せるためには、リース元がだれになるのか、それから、船が例えば非常に汎用性があって、標準化をされていて、いろいろな人が次々に転がして使えるというふうな状況も整備をされなきゃならないわけであります。農業の場合には、例えば農協がリース元になって、いろいろな施設を一たん自己が所有した上で農業者に貸すというふうなことで転がっていきますけれども、果たしてそれを国なりがやるというのが適当かどうかという問題もございます。また、一定の船を一企業が長期に固定して借りてしまいますと、果たしてリース制度と言えるのかどうかというふうな問題もございますので、そういう点も一つ一つクリアしなきゃならないと思っております。

 平成十年度にそういった勉強もしたのですが、そのときの研究会の報告ではかなり否定的だった。しかし、大変状況が難しくなってきている。代船建造しないと漁業経営が継続しないという状況は明らかでありますので、今後、漁業の実態を踏まえながら、そうした御提案も考慮に入れて勉強したいと思います。

菅野委員 リース方式の議論とあわせて、もう一つの考え方としてあるのが、漁船を漁港施設と一体的な生産基盤としてとらえていって、そういう立場から漁船というものを考えていこうという議論も一つあるわけですね。リース方式と、それから、あくまでも漁船というのは生産基盤の漁港施設と一体のものというとらえ方、この両方あると思うのです。

 それくらい今日、かつては魚価が高くて、漁船経営が、謳歌と言ってもいいんですね、盛んなときは、こんなことは考えもしなかったというふうに思っています。ここ数年、このことを真剣になって考えていかなければ、あと十年先が大変な時期に来る。今、大体平均船齢が十一年ですから、そうすると、十年、二十年使えば後は廃船という形になりますから、それまでに一つの方向を決めておかなければ大変な事態になるというのが、今言っている、議論していることなんです。

 この結論を、ことし、来年でつけてくれという状況じゃないというふうに思っています。今から議論して、五年先あるいは六年先に一つの結論として導き出すような議論を今からぜひ展開していただきたい。

 これは、どこが中心となってこの議論をしていくのかという問題があると思うのですが、やはり水産庁なり農林水産省なりが中心となって、業界全体で議論を展開していかなければ進んでいかないという問題があるというふうに思います。

 漁船経営者は、全国に展開しているのであれば全国議論としてなるのですが、残念ながら、水産業界というのは、全国展開じゃなくて地域地域に点在している団体なんですね。そういう意味では、議論を起こすことの難しさというものも存在しているわけですけれども、私が今言ったようなことに対する水産庁長官の考え方を示していただきたいと思います。

渡辺政府参考人 実は、水産基本法が参議院を通りましたときに、漁船漁業の関係の方々が、イの一番に私のところにおいでになりました。日本の漁業生産の半分以上を担っている漁船漁業のところをしっかりやらないと、これから自給率を高めるといってもそんなうまい話にはならないということをおっしゃいました。

 御要請の主眼点は、いわゆる漁特法の問題でありましたけれども、当然その問題も含めて、これから漁船漁業をどうするかということの検討にすぐ着手しなければならないと考えておりますので、もろもろ課題は多いわけでありますが、しっかり検討したいと思います。

菅野委員 要するに、今日的なたんぱく資源の供給産業をどう維持発展させていくのか、そのための大きな生産手段の一つが漁船であるという立場をこれからしっかりと全体で認識していただきたいというふうに思うのですが、大臣、今水産庁長官が一つの政府の見解を示されましたけれども、今までのやりとりの中で、大臣としての御決意をお聞きしておきたいというふうに思います。

武部国務大臣 水産基本法におきましても、水産物の安定供給ということを基本的な理念にいたしております。その際に、担い手とか、またこれを請け負うべき漁船とかということについても我々しっかりした対応が必要だ、かような認識でありまして、今後、先生の御意見も踏まえて、真剣に努力してまいりたい、かように思います。

菅野委員 次に、今までもかなり議論になりましたけれども、サンマ漁をめぐる問題です。

 私、農水委員会でこの問題が明らかになって、非常に大きなショックというか、問題点だなというふうに思ったのです。六月二十二日ですか、外務省が対外的に発表したというのが。その前は全然私たちに情報が届かないで、今日やっと私自身も全体像をとらえることができているんですが。

 韓国漁船が七月から北方四島周辺水域で操業することについて、これまでの具体的経過というものを、マスコミ等では発表になっていますけれども、農水委員会にはほとんど説明もなされていないし、質疑の中でもまだまだ私は具体的な経過というものが示されていないというふうに思うのですが、これらについて明らかにしていただきたいというふうに思うのです。

小町政府参考人 お答えいたします。

 本件につきましては、昨年末にそういう合意がなされたという情報を踏まえまして、ことしに入りましていろいろな点を確認いたしまして、ことしの二月一日に最初の申し入れを韓国側にしておりますけれども、その後、累次レベルを上げながら両国に申し入れをしてきております。

 これにつきまして今まで対外的に説明していなかったという点につきましては、まだ韓国とロシアの間の具体的な諸条件をめぐる話し合いも行われていたというふうに承知しておりますし、他方、六月に入りまして、韓国側から日本の二百海里水域内におけるサンマの許可証の申請等もあった点を踏まえまして、水産庁とも御相談をいたしながら、六月十九日だったと思いますけれども、武部大臣の方から明らかにしていただいた、こういうことでございます。

菅野委員 今概略的な中身ですが、この外務省からいただいた資料によりますと、これまでの申し入れが二月二十日から始まっていると記載されているのですね。二月二十日です。それから、三月二十五日には森総理大臣からプーチン・ロシア大統領に申し入れをしているという資料があるわけですね。そして六月二十二日、武部農水大臣が駐日韓国大使に申し入れをしている。申し入れというだけで、中身は何だかわかりません。どういう視点で、どういう話をしたのか、一連の経過はわかりません。ただ、少なくとも二月二十日から六月まで何も、情報統制して私どもに一切こんな情報は示さないで、そしてロシアや韓国と交渉してきたという中身はどういうことなんでしょうか。

小町政府参考人 お答え申し上げます。

 我々は二月以来、二月二十日と配付した資料には書いてございますけれども、実は、最初に申し入れをいたしましたのは、二月一日に韓国側に事務レベルで申し入れをしております。その後累次レベルを上げながら、二月二十日の、欧州局長から在京のパノフ大使に対する申し入れを含め、累次行ってきておるところでございます。

 申し入れの内容は、本件水域に関連して、北方四島は我が国の固有の領土であるので、この周辺の水域において漁獲をすることは差し控えてほしい、こういう申し入れを韓国及びロシア側に累次してきたわけでございます。

菅野委員 外交交渉ですから、事務方ですべてを明らかにしてやるということはできないにしても、少なくとも、こういう動きがある、そして今後こういう方向に持っていきますという国会に対しての議論というものも必要ではなかったのかなと思うのです。

 先ほど質問したのですが、今日まで具体的に農水委員会に、経過も含めて一切示してこなかった理由はどこにあるのですかということに対して答弁がないのですけれども、その辺、具体的に答弁していただきたいと思います。

小町政府参考人 お答えいたします。

 先ほどちょっと申し上げましたけれども、途中の経過で、ロシア側と韓国側の具体的な合意事項がまだ達成されていなかったというような状況も踏まえまして、かつ、そういう状況では、静かに両国に強く働きかけるということが効果を発揮するというような判断で今まで御説明していなかったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような、六月に入ってからの韓国側の申請等を踏まえまして、水産庁等とも御相談をさせていただきながら、今回の発表に至ったような次第でございます。

菅野委員 結果として、外交交渉の中で、北方四島、二百海里水域内で操業はしないという方向に持っていくことができたということであれば、私は、今とっている状況はわかるのです。しかし、そこができなくて、韓国とロシアが協定を結んで、そして三陸沖の九千トンですか、これを韓国に操業を認めないという農林水産省の方針を決めてから、決めても私どもはそのことは新聞でしか知らないわけですけれども、こういう方向でいきますということを農水委員会の中で一回も議論していないんですね。

 こういう中で、政府独自で進んでいることに対して、私どもは、国会として、本当にこの問題をいつ、どういう形で取り上げていくのか、大きな疑問点が残ってしまったのではないのかなというふうに思うのです。水産庁として、今までの経過を踏まえてどういう考えを持っておられるのか、この点、ひとつ答弁願いたいと思います。

 この問題の持っている意味というのは、北方水域でもって、北方四島、二百海里水域でもってこのまま韓国とロシアの協定が実施されたならば、日本がサンマ漁に入る以前に、この大切な漁場でもって韓国が最初に操業を開始するということだと思うのです。そして、ずっと北からサンマが下がってくるわけですから、それに伴って、下がってきたのを日本が、八月十日ですか、小型船が解禁になって、七月からとっていて、もうとり終わった後に、下手をすれば日本の船がそこに入るという状況。もっとも数量制限はありますけれども、やはりこういう大きな問題点を抱えている協定であるのにもかかわらず、私は業界に大きな影響をもたらすと思っているのですけれども、水産庁として、日本のサンマ漁業に与える影響を今どのように考えているのか。これらの協定を踏まえて、その辺、二点についてはっきり答弁していただきたいと思います。

渡辺政府参考人 まず、今回の許可の保留という問題は、これはあくまでも日韓の協定の枠組みの中での話でございます。違法操業が明らかなものに対して許可は出せないという、これはもう淡々と、日韓協定とそれからその操業条件を取り決めたものに反しているのでということであります。

 それから、もともとは、現象面は前々からお話ししておりますように漁業問題でありますけれども、本質は領土問題ですから、領土問題の取り扱いというのは非常に機微にわたる問題でありますので、これまで慎重に、かつ、はっきりと、厳しく対応してきたわけでございます。

 これから北方四島水域での日本と韓国とのサンマ漁をどうするかという問題は、これからまた考えなければなりません。ただ、事実問題として、昨年もその水域で韓国のサンマ船は、GGベースではありませんけれども、漁を行っていた。その際に、漁模様がよかったので日本との間にトラブルがなかった。これは一時的な幸せかもしれませんけれども。もし漁模様が悪ければ、韓国の大型の四百トンクラスの船と日本の十トン未満の船が摩擦を起こす可能性もあるわけでございますので、そうしたことも十分念頭に置いて、これからの取り扱いというものは考えていかなければならないと思っております。

菅野委員 そのことも経過としてはわかりました。ただ、韓国漁船がロシアと取り交わして北方四島の周辺で一万五千トンのサンマをとるということなのですけれども、こういう状況、そして先ほど申し上げましたように七月からとるという状況の中で、今後のサンマ漁業への影響というものを水産庁としてどのようにとらえているのか。そして、領土の問題もありますけれども、サンマ漁全体に与える影響をどのように考えて、そしてこの問題に対処していこうとしているのか。

 二面性があると思うんですね。一方で領土問題の議論もあると思うんですが、水産庁として、サンマ漁に与える影響をどのようにとらえているのか。この点、はっきりお聞きしたい。

渡辺政府参考人 二点お尋ねがありました。

 まず、サンマ漁全体の問題からいいますと、これは形になりますけれども、日本の水域ですから、当該水域のサンマの量も見込んだ上で韓国に対する枠九千トンを設定しているわけであります。その九千トンの枠は九千トンの枠として、さらにサンマがとられれば、それは資源管理の上で影響なしとしないということであります。

 ただ、問題は、一万五千トンを日本の水域からとるだけではなくて、あの韓ロが合意をした水域というのはロシアの二百海里と日本の二百海里両方にまたがる部分でありますので、そこはちょっと数字的には合わないと思いますが。

 それからもう一つ、日本の漁業者の出漁の時期でございますけれども、これはすぐれて漁業調整の問題でありますので、北海道のサンマ漁業者、それから三陸の方々、こういう方々はそれぞれ、どの時期にどういうふうに出たいという、いろいろお考えを持っているわけでございますので、漁業調整上の問題としてこれから考えなければならない、そういう点でございます。

菅野委員 これから外交を通じて、本当に日本のサンマ漁全体を考えた上で、真剣になって私はこの問題に取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 今後どういう形で推移していくかわかりませんけれども、大臣にお聞きしておきたいんです。三陸沖の九千トンは不許可という状況の中でこれから韓国と外交交渉をやっていくと思うんですけれども、韓国政府とどのような、今日的な状況を踏まえて、これから先、この問題解決に向けてどのような方向で進んでいくのか、決意をお聞きしておきたいというふうに思います。

武部国務大臣 いろいろ御議論の中で御理解いただいたと思いますけれども、我が国の許可なく韓国サンマ漁船が四島周辺水域で操業を行うことは、我が国法令上、違反操業であります。でありますから、その可能性の高い漁船の三陸沖での操業については許可の留保という考え方を先般示したわけでございます。

 これは、六月六日に許可証の申請がありました。通常、二週間以内に答えを出さなければなりません。その期限は六月二十日であります。したがいまして、私は、六月十九日に、官邸とも相談の上、これは言うまでもなく領土問題、主権にかかわる問題でもありますので、そういう判断をしたわけでございます。また、私からも、駐日韓国大使に対しまして我が国の立場を明確に申し入れ、本国に正確に伝えるようにという要請をいたしました。

 何度も申し上げますけれども、本件は、現象的には漁業問題であります。先生の立場からすれば、三陸沖のサンマ操業を初め漁業の問題について今後どうなっていくのか。これは、西側にありましても、先ほど一川先生のカニの話などもございました。これは非常に幅広く波及する非常に大きな問題であります。

 しかし、本質的には領土問題でありますので、外交当局にしっかり対応してもらわなければなりません。韓国並びにロシア両国と交渉していくことにつきましては、引き続き外交当局と連携して対応してまいりたい、かように存じます。

菅野委員 以上で終わります。

堀込委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、漁船法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

堀込委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

堀込委員長 次回は、来る二十九日金曜日、理事会、委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.