衆議院

メインへスキップ



第4号 平成14年3月28日(木曜日)

会議録本文へ
平成十四年三月二十八日(木曜日)
    午前九時二十分開議
 出席委員
   委員長 鉢呂 吉雄君
   理事 岩永 峯一君 理事 大村 秀章君
   理事 金田 英行君 理事 原田 義昭君
   理事 佐藤謙一郎君 理事 鮫島 宗明君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    上川 陽子君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      小西  理君    後藤田正純君
      七条  明君    高木  毅君
      西川 京子君    浜田 靖一君
      宮腰 光寛君   吉田六左エ門君
      川内 博史君    小平 忠正君
      後藤  斎君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    楢崎 欣弥君
      堀込 征雄君    山内  功君
      江田 康幸君    高橋 嘉信君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
      藤波 孝生君
    …………………………………
   農林水産大臣       武部  勤君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   農林水産大臣政務官    宮腰 光寛君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局畜産部
   長)           梅津 準士君
   参考人
   (農林漁業金融公庫総裁) 鶴岡 俊彦君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
三月二十八日
 農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)
 農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案(内閣提出第二二号)
同月二十日
 BSE緊急措置法の成立に関する請願(大森猛君紹介)(第八四九号)
 同(児玉健次君紹介)(第八五〇号)
 同(中井洽君紹介)(第八五一号)
 同(中林よし子君紹介)(第八五二号)
 同(西村眞悟君紹介)(第八五三号)
 同(羽田孜君紹介)(第八五四号)
 同(黄川田徹君紹介)(第九〇二号)
 同(児玉健次君紹介)(第九〇三号)
 同(末松義規君紹介)(第九〇四号)
 同(徳田虎雄君紹介)(第九〇五号)
 同(中井洽君紹介)(第九〇六号)
 同(春名直章君紹介)(第九〇七号)
 同(黄川田徹君紹介)(第九五三号)
 同(徳田虎雄君紹介)(第九五四号)
 同(中井洽君紹介)(第九五五号)
 同(中林よし子君紹介)(第九五六号)
 同(三井辨雄君紹介)(第九五七号)
 同(安住淳君紹介)(第一〇一六号)
 同(金子善次郎君紹介)(第一〇一七号)
 同(黄川田徹君紹介)(第一〇一八号)
 同(桑原豊君紹介)(第一〇一九号)
 同(佐藤公治君紹介)(第一〇二〇号)
 同(中井洽君紹介)(第一〇二一号)
 同(藤村修君紹介)(第一〇二二号)
 狂牛病に対する万全な安全対策と感染防止対策並びにセーフガードの発動に関する請願(中林よし子君紹介)(第一〇一三号)
 生産者米価の大幅引き上げと外米の削減・廃止、自主流通米の値幅制限の復活に関する請願(中林よし子君紹介)(第一〇一四号)
 輸入により価格が暴落している農産物のセーフガード発動に関する請願(中林よし子君紹介)(第一〇一五号)
同月二十五日
 BSE緊急措置法の成立に関する請願(黄川田徹君紹介)(第一〇五七号)
 同(小泉俊明君紹介)(第一〇五八号)
 同(鈴木淑夫君紹介)(第一〇五九号)
 同(高木義明君紹介)(第一〇六〇号)
 同(都築譲君紹介)(第一〇六一号)
 同(樋高剛君紹介)(第一〇六二号)
 同(細野豪志君紹介)(第一〇六三号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一〇六四号)
 同(山田正彦君紹介)(第一〇六五号)
 同(石原健太郎君紹介)(第一〇七九号)
 同(黄川田徹君紹介)(第一〇八〇号)
 同(小林憲司君紹介)(第一〇八一号)
 同(中津川博郷君紹介)(第一〇八二号)
 同(堀込征雄君紹介)(第一〇八三号)
 同(松本龍君紹介)(第一〇八四号)
 同(渡辺周君紹介)(第一〇八五号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第一一二〇号)
 同(井上和雄君紹介)(第一一二一号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一一二二号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一一二三号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第一一二四号)
 同(小平忠正君紹介)(第一一二五号)
 同(小林守君紹介)(第一一二六号)
 同(古賀一成君紹介)(第一一二七号)
 同(後藤斎君紹介)(第一一二八号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一一二九号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一三〇号)
 同(志位和夫君紹介)(第一一三一号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一一三二号)
 同(田中慶秋君紹介)(第一一三三号)
 同(徳田虎雄君紹介)(第一一三四号)
 同(不破哲三君紹介)(第一一三五号)
 同(松野頼久君紹介)(第一一三六号)
 同(松本善明君紹介)(第一一三七号)
 同(松本龍君紹介)(第一一三八号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第一一三九号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一一四〇号)
 同(木下厚君紹介)(第一一八七号)
 同(小林守君紹介)(第一一八八号)
 同(近藤昭一君紹介)(第一一八九号)
 同(鮫島宗明君紹介)(第一一九〇号)
 同(楢崎欣弥君紹介)(第一一九一号)
 同(松本善明君紹介)(第一一九二号)
 同(松本龍君紹介)(第一一九三号)
 同(水島広子君紹介)(第一一九四号)
 同(山田敏雅君紹介)(第一一九五号)
 BSEによる損害補償等に関する請願(松本善明君紹介)(第一一四一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)
 農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案(内閣提出第二二号)
 農林水産関係の基本施策に関する件(畜産問題等)
 平成十四年度畜産物価格等に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
鉢呂委員長 これより会議を開きます。
 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として農林漁業金融公庫総裁鶴岡俊彦君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君及び農林水産省生産局畜産部長梅津準士君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩永峯一君。
岩永委員 おはようございます。
 武部大臣、遠藤副大臣のもとで八カ月修行をさせていただきました。そして、本当に大変貴重な経験をさせていただいたわけでございます。その際にたまたまBSEの問題が発生してまいったわけでございまして、だれよりも一番身近でこの対応を見てもきましたし、させてもいただいた者として、感想を述べながら質問をさせていただきたい、このように思っております。
 私も内輪の人間の一人でございますので、みずからをみずからが褒めるというようなことは大変おこがましい話でございますが。
 イギリスまたEU等々、ヨーロッパ各国でこの問題が発生しました。ずっと資料を見ておりますと、相当な期間にわたって対応されてきているわけでございます。日本ではわずか三頭だと。その三頭が多いか少ないかという議論があるわけでございますが。そういう状況の中で、私は私なりに、よくぞこれだけ速やかに、そして大きな決断を持ってすべてに対応できたな、武部大臣並びに遠藤副大臣の強力なリーダーシップというものに感心をいたしましたし、諸外国から比べますと、本当に、そういう先例があったとはいえ、てきぱきてきぱき対応をしてこられたわけでございます。
 肉骨粉の輸入及び使用禁止の問題、そして屠畜場で屠畜されるすべての牛に対してのBSE検査の問題、また、脳や脊髄等の特定危険部位は除去、焼却するという世界でも類を見ない画期的な体制を導入する等々、また予算に対しましても、昨年の十月に一千五百五十四億円の関連対策費を取りまとめる、そして、買い上げ等を内容とする廃用牛対策等、必要な対策を追加して実施し、十四年度当初予算を含めて総額約二千億の処置がなされた。
 これは、財務省並びに多くの皆さん方の御協力があったとはいえ、この事態をかなり深刻に受けとめ、そして対応した農水省の努力、職員の皆さん方、特にまた遠藤副大臣におかれましては、本当に夜を徹して毎日毎日この問題に御尽力をいただいた、このように思うわけでございます。最初に、それを見ていた当時の政務官として、大臣、副大臣の努力を多としたい、このように思う次第でございます。
 しかしながら、残念なことに、これだけの対策が講じられているにもかかわらず、牛肉の消費は依然として実は回復しておらないというのが現状であります。大臣もおっしゃっておられるように、安全な牛肉しか出回らない体制が構築されたわけでございますが、このような状況にあってもなお消費が回復しないのは、牛肉の安全性そのものではなく何らかの二次的な要因があるのではないか、このように私は思っているわけでございます。
 御承知のとおり、雪印食品の事件それから食肉の偽装表示の問題等々、農産物全体に対するそういう不信感、不安感というものが消費者に蔓延してきているのではないか、このように思いますし、また各種メディアの取り上げ方も、大臣がいつもおっしゃるように、一生懸命に、肉は安全です、消費をしてください、食べてくださいということを言っていながら、その裏で、BSEのあのよたよたした牛が前面に映し出される。ああいう情景を見るにつけ、消費者の皆さん方も、政府を挙げてやっていることと裏腹な影響が醸し出されている。
 こういうようなことで、私は、リスクが過大に報道されているというような気がしてならなかったわけでございますが、国民が漠然とした不安を抱いているということの要因の中にメディアの問題もあるのではないか、このように思っております。
 牛肉の消費が回復しない原因は本当に何なのか、今後、消費の回復に向けてどのような対策を講じていかれるつもりなのか、武部大臣のお考え方をお聞きしたい、このように思います。
武部国務大臣 ともに、大臣、副大臣、政務官として、岩永先生とはこのBSE問題に限らず一緒に仕事をさせていただいたということを振り返りまして、岩永先生の熱い思いというものを今改めて知らされた気がいたします。激励をいただきましてありがとうございます。
 ただ、今先生御指摘のように、牛肉の消費が回復しないということが一番私ども困難な問題だ、このように思っております。最大の要因は、やはりBSEに対する漠然とした不安感というものがあるんだろう、このように思いまして、私どもも、安全と安心の間の距離をいかに埋めていくかということが一番大事なことではないか。
 総理からも、正確で科学的な情報を国民にきちんとお伝えするためのPR活動などに積極的に取り組むべきだという御指示もいただいているわけでございますが、具体的には、お話のとおり、BSE全頭検査の実施によりまして、屠畜場からは安全を証明した牛以外は一切出回らないシステムが構築されているのでございますが、このことをやはり着実に消費者の皆さん方にお伝えしていくということが必要でありまして、そのためのシンポジウムの開催でありますとか、影響力が大きいマスメディアの皆さん方の御協力をいただくことができるようにも積極的に努力している所存でございます。
 また、三月十八日からは、遠藤、野間両副大臣、また宮腰、岩永両政務官が全都道府県を回りまして、順次、知事さんにも、これまでの協力のお礼と、それから今後具体的にお願いをしなければならぬことなどについて強力にお願いをしているところでございます。
 学校給食も、ひところ六割ぐらいの自粛でありましたが、今は一七%になっております。また、いろいろ文部科学省の話なども伺いますと、新年度に入ったら自粛解除が一気に進むのではないかというようなお話を伺っておりまして、さらにそういったことにも努力したいと思っております。
 いずれにいたしましても、消費拡大ということが喫緊の課題でございます。今後、国民的なキャンペーンを展開していくということも含めまして、民間ボランティア組織の育成への支援、民間からの公募によるPR企画の推進など、民間の活力を利用して引き続きPR活動に全力を尽くしてまいりたい、このように思っている次第でございます。
 ただ、やはりポイントになるのは、食品の安全問題でございます。このことにつきましては、今、第三者検討委員会におきましても、畜産・食品衛生行政の一元的なあり方ということについて私ども提言を求めているわけでございますが、総理からも、食品の安全についての行政組織の対応ということについても御指示をいただいておりますので、今積極的に、これをどうしていくかということについても私ども真剣に検討している最中でございまして、これからもまたいろいろ御指導を賜りたいと思います。
岩永委員 生産者にいたしましても、食肉を扱う業者、流通、すべて大変な環境にあるわけでございますので、御尽力のほど、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、ここに、交雑種の子牛の取引価格、枝肉価格、小売価格のBSE発生前と今の、ずっと推移がグラフにして出されているわけでございますが、これを見ますと、約三分の一ぐらいに実は枝肉の価格が落ちているわけですね。しかし、消費者に渡る価格がほとんど落ちていない。こういうことで、生産者の方の御苦労、厳しさと、それから、普通だったら、どんな野菜にしたって、ほかの物価にしたって、その生産価格が落ちると今度は消費者価格も落ちるというようなことなんですが、我が国の肉の小売価格は実態がどういうような状況になっているか。まあ実態は大体わかりますので、小売価格と卸売価格と連動して安くして消費拡大につなげるというようなことができないかということ。
 それともう一つ、特にイギリス、フランス、それからドイツあたりの状況を見てまいりますと、一応安定してきたとはいえ、肉の価格は今でも、イギリスで七二%、フランスで二五%から三〇%の下落、それからドイツで、これも約二五%から三五%ぐらいの暴落の状況の中でずっと推移をしているということでございますが、そこらあたりに対する農水省としての対応についてお伺いしたい、このように思います。ちょっと時間がございませんので、あと大事な問題が一、二ありますので、簡単にお願いします。
武部国務大臣 小売価格が低下していない実態を事務方に指示して調べさせたのでございますが、大手チェーンストア数社からのヒアリングでありますが、現在の小売価格は、BSE発生前と比較いたしまして、平均で三割程度下がっているとの報告を受けているわけでありますけれども、私も、この小売価格と卸売価格の関係がどのようになっているのかということの実態をさらに調査すべきだということを指示しております。
 私が聞いた焼き肉屋さんの話では、焼き肉の値段は下げないけれども、そのかわりワインを一本つけているんだ、そういうようなことでお客さんを少しでも呼び寄せよう、そういう努力をしているということを直接聞きました。
 いろいろあるんだろうと思いますが、卸売価格の低下が小売価格により反映されることは、牛肉消費拡大に大きな効果があるものとも考えますので、消費拡大キャンペーンの中で小売店の特売等を誘導し、牛肉の消費拡大につなげるように、こういったことについても最大限努力してまいりたいと考えております。
岩永委員 次に、食の安全について、大臣は今までもかなりの決意を示されているわけでございますが、特に緊急を要するのは、トレーサビリティーシステムがそれぞれの食品にできるだけ早く、そしてできるだけすべてに導入されたい、このように思うわけでございますけれども、これについてどういうような御対応をしておられるかということをお聞きしたいと思います。
武部国務大臣 先生御案内のとおり、今年度中に牛の個体識別システムというものを導入することにしております。まだ全部耳標が装着されておりませんが、これらも順次全頭に装着されることになるだろう、こう思っております。
 今お話しのとおり、消費者がみずから食品の生産方法等に関する情報を引き出すこと、これが一番安心して食品を購入していただく要件でございます。いわゆる生産と消費の間に顔の見える関係というものをきちっと構築していくことが大事でありますし、こういったトレーサビリティーを導入することによりまして、食品事故が発生した場合にも、その原因の究明を容易にすることもできるわけでありまして、やはり最終的には農場から食卓までの過程を明らかにするということが大事でありますので、私はその導入を図るべく指示をしております。
 現在、特に牛肉については二月二十一日に実証試験を開始いたしました。さらにまた、先生御指摘のように、米、野菜や茶飲料等の加工食品についても、同様のシステムの開発と実証試験に取り組んでいるところでありまして、順次早期に実現化が図られるように努めてまいりたい、このように思います。
 以上のような食品の生産履歴等の情報を消費者に正確に伝える仕組みについては、食品表示制度の改善強化のための見直しの中で、制度化を図るべく今検討をいたしているところでございます。
岩永委員 ひとつ速やかに、すべての農産品に対して対応でき、消費者が安心できますように、スピードを上げて御対応いただきたいと思います。
 最後に、最近、このBSEの問題から食品安全庁をつくってはどうかという議論がございますし、特に、厚労と農水の食に対する一元化の問題が出ているわけでございます。
 ヨーロッパあたりでも、食品についてのリスクを科学的に評価する独立した行政組織を創設している。これによって食品行政に対する消費の信頼を回復した事例も見られます。特に、私、FAOの総会に行きまして、ドイツの農水大臣とバイ会談をやったときに、大変、ドイツは消費者保護そして食品それから農業省という形の中で、完全に一元化した新たな体制をとっておられるわけでございます。
 リスク管理部門を明確に評価部門と分離するというような準備も最近進められているというような話を聞くわけでございまして、食品供給行政、そして食品衛生行政、そして食品公正取引行政、こういうものを一元化すべきだ、私はこのように思っているわけでございますが、大臣としてこのことにどう対応しようとされているのか。
 特に、小泉総理も、食の安全と安心の確立に向けて政府を挙げて取り組む、このようにおっしゃっておられるわけでございますが、具体的な道筋というのが実はまだ見えないわけでございますので、農水大臣としてはどういう作業をどこにどのように依頼をしていくのか。
 また、行革で一府十二省庁になったわけですが、こういう問題が出てきたときに、では、内閣府がこれに対する検討をするのか、それとも行革担当大臣がこのことに対して検討していくのか、そこらあたりの道筋が見えないのと、武部大臣としては総理に対して具体的にどういう要請をしておられるのかということをお聞きしたいと思います。
武部国務大臣 BSE問題等に関連しまして、食に関するさまざまな問題が顕在化している今こそ、今後の農林水産行政のあり方というのは、生産者サイドから消費者サイドに軸足を大きく移して、食の安全と安心の確保に向けた改革に真剣に取り組む必要がある、私はこう思っております。
 そのことが食料の自給率や生産者にとっても大事なことだ、こう思っておりまして、今欧米の話もございましたが、やはりリスクアナリシスといいますか、リスク分析に力が注がれているということに大いに学ぶべきでありますし、我が国においてもリスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションの三つをどう組み合わせていくかということが非常に重要な問題だ、このように考えております。
 このために、私どもがBSE問題に関する調査検討委員会の設置を強く、当初事務方が抵抗したのにもこれを設置したということは、やはり畜産・食品衛生行政の一元的なあり方ということは何よりも必要だ、食の安全ということについてどういうシステムをつくっていくべきなのかということ、これがやはり決め手になる、こう思いまして、今も大詰めの御議論をいただき、四月二日には提言をいただけることになっているわけでございますので、与党でも御検討いただいていると思いますが、そういった提言をいただきまして、先生御指摘のような総合的な行政組織の問題を含めまして、抜本的な食の安全と安心を確保する行政対応システムづくりにつきまして真剣に今後取り組んでまいりたい、かように決意を新たにしている次第でございます。
岩永委員 どうもありがとうございました。大臣、大変厳しい環境のときではございますが、勇気と決断と武部大臣の持ち味を生かしてさらなる御健闘、御活躍をお祈りしたいと思います。
 どうもありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて岩永峯一君の質疑は終了いたしました。
 次に、川内博史君。
川内委員 おはようございます。川内と申します。大臣、きょうはよろしくお願いを申し上げます。
 実は、私が政治の世界に志を立てていたころ、初めてお会いした政治家というのが、青年代議士であられた武部勤先生でありまして、もう大臣は覚えていらっしゃらないと思うんですが、ほんのちっちゃな集まりにお伺いをして、私も、当時サラリーマンでありましたけれども、なけなしの私のポケットマネーを献金させていただいたこともございまして、そういう意味では大臣の御活躍をだれよりも願っている一人であるというふうに私は自負をしているわけでございます。
 前に差しかえで質問をさせていただいて、家畜のふん尿処理の問題とかはずっと取り組ませていただいてきたんですけれども、きょうは農水委員として初めて私もこの席に立たせていただきますし、一時間、時間をちょうだいしています。私も演説好きでありますし、大臣も演説好きでいらっしゃいますので、お互いに演説合戦をさせていただきたいというふうにきょうは考えております。
 まず、初めての農水委員、正式な農水委員のメンバーとしての私の質疑でありますので、私自身の農業に関する基本的な認識等から始めさせていただきたいというふうに思うわけであります。
 我が国というのは、有史以来、農業を中心に国づくりをしてきた。あらゆる祭りも農業にその起源を持っているわけでありまして、すなわち農業こそがこの国の根幹であり、基本であるというふうに私は考えております。
 したがって、今、BSEの問題もそうですけれども、数々のこの社会、家族の崩壊とか学校での校内暴力とか、そしてまた数々の政治に関する腐敗、疑惑、一体この国はどうなってしまうんだろうということをたくさんの方々が思っていらっしゃるわけですけれども、その根源というのは実は、農業が崩壊しかかっているというところにあらゆる社会の崩壊の原因を求めなければならないのではないかというふうに私は考えております。
 今回のBSEの調査検討委員会の論議の資料等を見させていただいておりましても、消費者のサイドに立った行政とか消費者重視の政策をということで、生産者と消費者を対比して考えているわけですね。ところが、私は、農業に関する限りは、生産者と消費者を対比させるというのは適当ではない、その生産者と消費者という言葉自体がもう既に経済の法則というか市場マーケットの言葉であって、農業というのは経済の一分野ではないんだ、日本においては農業というのは、経済の一分野ではなく、日本の国そのものであるというようなところから発想をしていかなければならないのではないかというふうに思っているわけであります。
 そういう意味では、金融機関が三月危機とか何とか言われて、まあ、三月危機は乗り切ったと言われているわけですけれども、私はあえて申し上げさせていただければ、金融機関がどれだけつぶれても日本の社会はつぶれることはないと思っています。したがって、公的資金を金融機関に入れることはほとんど意味がないと思っているんですけれども、日本の社会が本当の意味でつぶれるとしたら、それは農業がだめになったときだと思うんですね。それくらい日本の社会にとって、あるいは日本という国にとって農業というものは、国そのものだと。
 それはなぜかというと、数々の議論の中に、欧米ではという言葉もよく出てくるわけです、欧米ではと。ところが、欧米の国々というのは、もともと狩猟、畑作を中心として民族の歴史をつくってきた国々であって、この場所で獲物がいなくなったら、あるいは作物ができなくなったら、次の場所に民族大移動をしてまたその地域で生活する、もといたところは荒れ果てた土地になるということで、どんどん砂漠をつくってきているわけですよね。
 ところが、日本という国は定住農耕民族で、一つの土地で、その土地を耕しながら、しっかりとその土地の地力というものを保持しながら、作物をつくり、お祭りをし、営々として民族の歴史を積み上げてきたというのが私たちの民族の歴史であって、そういう意味では、欧米ではこうしているから日本もこうするというのも、これもまた考え方としてちょっと違う考え方になるのではないかというふうに私は思っているわけで、金融というものも、欧米の社会から持ち込まれた考え方でありますから、これは日本の社会には根源的には結びついていない。したがって、日本の社会がもし崩壊するとするならば、それは農業が崩壊したときだ。
 食料・農業・農村基本法に基づく方針案の中では、食料の自給率を十年後に四五%にしますとか、あるいはその四五%を確保するために四百七十万ヘクタールを確保しますとか、そういう方針が示されているわけですけれども、現状の農政の方針であれば農業の真の意味の回復というのはないのではないかという危惧を非常に強く私は持っております。
 改革は必要ですけれども、私は、そういう意味では、真の構造改革とは何だろうかということを考えたときに、日本を農業国にする、もう一度農業国にするんだということが真の構造を変える改革だ。今までの、経済、経済、金、金、金の第二次世界大戦以降の社会ではなくて、もう一度日本を農業国にするということが真の構造改革だ。二十一世紀の日本がこんな国になるんですよということを最もわかりやすく国民の皆様方に伝えるメッセージだというふうに私は考えているわけです。ですからこそ、農水委員会を希望して、ことしから農水委員になっているわけです。
 私のふるさとである薩摩は、四百五十年前にフランシスコ・ザビエルという人が初めて日本では薩摩の地に上陸をして、薩摩から京都に行き、そしてローマ法王庁に手紙を書いたわけですよね。日本の国の人々というのは、大変勤勉で、一生懸命に仕事をして、そして人情味も豊かですばらしい民族だ、だから欧米の国々が日本を侵略するようなことをしてはならないという手紙をローマ法王庁に書き送った、だからこそ、日本という国は侵略を免れたんだというふうに私はちっちゃいころ小学校の先生に習った記憶があるわけです。
 日本国憲法に書いてある、世界の国々から尊敬される国になりたい、その尊敬される国というのは、実は、日本が昔ながらの姿に戻るということだと私は思うのですね。外務省の役人が高いワインを飲んで何か偉そうに外交交渉をすることが世界の国から尊敬されることでは決してない。たとえぼろを着ていても、たとえ貧しい生活をしていたとしても、日本という国はこんな国なんだということを身をもって体現していくということが日本の国柄というものを世界に示すことになるんだろうというふうに私は思っております。
 そういう意味で、農業というものが日本の中心だということをもう一度しっかりと全国民の認識の中に据える、農業で食っていくということを中心にしなければならないというふうに私は思っているのですけれども、二十一世紀の農業が日本の国の形の中でどう位置づけられるべきかということについて、まず、武部大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
武部国務大臣 川内先生との出会いのことは、今ももうきのうのように思い出します。私の大学時代の同級生の坪井君からも先日メールが来ました。今、先生からパーティーの券を買っていただいたというお話も思い出しましたし、また、先生の御親族の方の結婚式に何でもいいから来いと言われまして、私はお祝いを持っていったつもりなんだけれども、後で、いや、こっちが強制的に呼んだんだから祝いは要らないといって返されたこともきのうのように思い出されまして、今お互い政治家として党派の違うところで議論をしなきゃならないというのは、私と川内先生の場合にはちょっと異質であって、早くまた一緒に同じ気持ちで政治の仕事ができるようになればいいな、こう思いました。
 それは、これまでの経緯だけじゃありません。先生は薩摩の御出身だと伺いましたが、私は、北海道の流氷に閉ざされるオホーツクの地で育ったわけであります。ですから、生まれながらにして周囲は大地であり山であり海なんですね。ですから、自然の恵みに感謝する気持ち、自然の脅威を恐れる謙虚な気持ち、これは生まれながらにして身についてきた、こう思って、このことについては、自分の育ってきた環境に何よりもありがたいと思って感謝しているわけでございます。
 しかも、我が国のことを考えますと、三分の二が急峻な山国ですね。私は、今BSEと花粉症の挟み打ちで苦労しているわけでございますが、この間ちょっと調べましたら、八世紀半のころ、柿本人麻呂が
  古の人の植えけむ杉が枝に霞たなびく春は来ぬらし
という歌をつくって、これは当時から、杉の枝に、「霞たなびく」というのは花粉が飛んでいる、ああ、きっと春が来たに違いない、人々がそういう思いを持って春の訪れを楽しんだということだろうと思うのですが、同時に、その当時から木を植えかえていたんですね。木を切ったら、今度はそこにまた木を植えていく。そういう日本文化といいますか、そういう自然から教えられる我々日本民族のライフスタイルとか、そういったものは今やはり原点に返って見直さなくちゃいけない、こう思っております。
 そこで、私は、食料の安定供給と美しい国づくりという表題を掲げて武部私案を出しまして、それに基づきまして、ことしのお正月のあいさつ文には「「食」と「農」と美の国づくりに向けて」、こういうふうにしました。
 しかし、実際問題、地球温暖化の影響を受けまして、毎年五百万ヘクタール以上の土地が砂漠化しているんですね。これは、一分間に後楽園球場七個ぐらい砂漠化しているんです。今六十億の民がおりますけれども、それでも八億人が栄養失調だと言われています。これが五十年すると九十億を超える。こういうときに、我が国が今食料自給率四〇%ということで、将来を考えますと、この食料の自給の逼迫というものは、もっともっと困難なことになってくるんじゃないかと思うわけでございます。
 そういう意味で、やはり食料の安定供給ということも必要でありましょうし、私ども、田舎におりまして、都市の皆さん方との間に、たまには、私たちの税金を何であなたたちの北海道のあんな人の住んでいない、クマが交通事故になるようなところにつぎ込まなくちゃいけないのという厳しいお話もあります。しかし、おいしい水、きれいな空気、美しい自然というものは、都市に住んでいる人々にとってもあこがれだと思います。これは、過去においてはない物ねだりだったかもしれませんが、今ならそれは可能だと思います。
 ですから、二十一世紀の農業の位置づけというのは、やはり農業の多面的な機能とか食料の安全保障というような観点から、これは今お話しの経済原則だけじゃなくて、しかし、私は経済発展というものも大事だと思います、市場原理に基づく競争政策というものも今大事なんだろうと思います。しかし同時に、公共原理に基づく共生政策というのがあっていいんじゃないかと思うのですね。そして、都市と農山漁村がお互いに共生、対流する関係、そういうものをしっかりつくっていく。
 しかし、それはどうしたらつくれるかという現実の問題を考えますと、今アンケートをとりますと、食の安全ということが、あなたはどういうことで食品を買いますかといったら、かつては安いということが一番だったわけです。今は安全ということなんですね。
 そういうことを考えますと、やはり消費者サイドに軸足を置いて、そして消費者の皆さん方が求めるものを供給していく。そのことが自給率の向上にもつながる。そして消費者と生産者が顔の見える関係を構築していく。そして都市と農山漁村に住んでいる人々が絶えず行ったり来たりできる。そしてそこに、時代は変われども日本民族の心といいますか、あるいは日本文化の発祥というものをもう一度見直して、やはり、単に食料というものは我々の生活の糧だけじゃなくて、自然界の一員である、仲間だという意識で私はこの農政というものを進めていきたい、食と農の一体、食と農と美の国づくりということで取り組んでまいりたいと思います。
 いつもBSE問題で相当私厳しい追及を受けている間柄でございまして、今先生からの熱い農に対する思いを聞かせていただきまして、非常にきょうは感動この上ない気持ちで聞かせていただいた次第でございますので、今後ともよろしくお願いしたいと思います。
川内委員 ありがとうございます。
 私も、市場原理を全く無視した中に農業を位置づけるというような無謀なことは考えていないんですけれども、ただ、大規模経営にして規模の利益で日本の農業もやっていくというようなことにしてしまうと、それは本当の意味の日本の農業ではない。じいちゃん、ばあちゃん、父ちゃん、母ちゃん、僕と私で、家族で経営する、小さいながらも、小規模ながらも経営していける、それが日本の社会の本当の構成の単位だ、社会を構成する基礎の単位だということで、そういう小規模零細な農家がやっていけるようなサポートを私たちがしていくということが必要なのではないかというふうに考えているわけでございます。
 次に、私も食品安全庁のことについてちょっとお聞きしようと思ったんですけれども、先ほど岩永先生がお尋ねになりましたので、その次の通告の問題に行かせていただきたいと思うんですけれども、食品安全庁をもしつくるとしてもつくらないとしても、とにかく食に対する消費者の安全とか安心を求めるそのニーズをしっかりと満たしていくということは必要なことでしょう。
 しかし、大臣、毎日東京だけで一千万人分の残飯が出るわけですよ。不景気だ不景気だ、こんなに景気が悪いと言いながら、毎晩東京だけで一千万人分の残飯が出ている今の状況、今日の日本を取り巻いている状況を考えると、私は、食の安全も大事だけれども、もっと根本的なところで、先ほど大臣がおっしゃったように、都市と農村との交流、そしてつくられる作物あるいは畜産物というものがどれだけありがたいものであるかということを、やはり国民の皆さんに認識をしていただいて、それこそかみしめていただいて食べていただく。それがやはり、制度や法律で安心を保障するより何よりの安心、安全の保障になると思うんですね。
 先日、農水省さんで重大改革というのを発表されて、スーパーやレストランで職員を研修させるというようなことが発表されたんですけれども、私は、重大と、大と、大きいという字がつく割には、スーパーやレストランで研修をさせるというのは余りにもせこいんじゃないか。それはなぜかというと、もっと大きな構想を持っていただきたいと思うわけですね。
 私が逆提案をさせていただきたいんですけれども、農水省の職員の方々は、やはり農業を実地にやるべきだと思うんです。田んぼをつくり、畑をつくり、そしてまた牛を飼い、豚を飼い、鶏を飼う。牛や豚のふん尿の始末を毎日すれば、いかにこれが大変なことかということがおわかりになられると思うし、田んぼをつくれば、化学肥料を使うことがどれだけ怖いことかということもおわかりになられると思う。畑も同様です。
 私がこういうことを言うと、よく、いや、うちは実家が農業で、私もちっちゃいころはやっていましたとか言う人は多いんですよ。これは、与野党問わず政治家もそういうことを言う人はいっぱいいます。だけれども、なりわいとして何年間かそれを毎日やるというのと家が農業だというのとでは、もう全然違う。
 家が商売をやっていても、自分が商売をやっていなきゃ商売の厳しさなんというのはわからないわけですから、やはり、農水省のエリートであればあるほど、入省して三年間か五年間ぐらいは農業をやっていただきたいというふうに思いますし、また私は、文部科学省と御相談をいただいて、小中学生にも農業体験、農業の実習というものをしていただくようにしていただきたい。そして、実際に農の現場で、これからの農政を担うお役所の皆さんと小中学生が出会う。それで農業について語り合う。それが日本の社会というものを、子供たちが大きくなったときに、農業は大事なんだ、あのときにあの田んぼで一緒に耕したおじさんが言っていた、そのおじさんが今は偉くなってテレビに出て農業のことを語っている、そういうような状況というものをつくり出していくことが、日本の本当の意味の改革だというふうに私は思うんです。
 大臣、今の、スーパーやレストランで研修をさせるんじゃなくて実際に農業をさせる、やっていただく。それと、小中学生に農業体験をしていただくというようなことに関していかがお考えになられるか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
武部国務大臣 農林水産省は、入省した若い職員を農村に派遣して、ちょっと見えなくなりましたけれども、大村理事は、私の出身地斜里町の峰浜というところの藤盛さんというお宅、私の後援会長ですが、そこに一月滞在、一年だったかな、滞在して一緒に農業をやったという人で、まさに藤盛さんは、うちでこき使った大村君が今国会議員をやっているんでびっくりしたと言っているんですけれども、そういうケースはたくさんあるんです。
 先生の言わんとする意味はよくわかります。私ども、今度のは、重大改革というよりも、情報戦略タスクフォースというのをつくりまして、農林水産省が情報の受発信について非常に幼稚であるといいますか、安全の問題についても、私のことも含めましてですけれども、全頭検査体制になったから安全だと言う程度ならだれでもできるわけです。
 やはり、科学的にきちんと説明するとか、こういうことを発表することについては下手をするとこういう誤解も招くとか、そういったことをきちっと整理してやれるような、いわばコミュニケーター、私ども、ことしのキーワードをコミュニケーションとして、農林水産省のキーワードをコミュニケーションだよ、省内のコミュニケーション、上司と部下のコミュニケーション、それから生産者とのコミュニケーション、消費者とのコミュニケーション、それから立法府とのコミュニケーション、与党とのコミュニケーション、そういうようなことをキーワードにしているわけでありますが、そのコミュニケーションのとり方ということが余り上手じゃないんですね。
 それで、特に消費者の考え方ということについて、そういうお店だとか焼き肉屋さんだとか量販店でありますとか、そういったところへ行って、礼儀作法を学んでくるということではないんです。やはり、消費者の本当の深層心理まで知るような、そういう努力をしないと、消費者サイドに軸足を置いて、結果的にそれが生産者のためにもなる農林水産省にしていくんだというときに、やはりそういう実態をきちっと知らなくちゃいけない。生産者のことについてはいろいろ研修制度があるわけです。
 それともう一つ、今先生のお話を聞いてそのとおりだなと思うのは、最近、スローフードなんというのがはやっています。また、我々はスロータームというのがあっていいんじゃないかと思っております。今まで、食といえば命と健康を守るため、こういうことがすぐ出てきますけれども、知育、徳育、体育に、食品ジャーナリストの砂田さんという人は、食育という言葉を使っているんですね。知育、徳育、体育、食育、私は、これは本当に大事なことだと。もう離乳食を食べるころからアメリカあたりではそういうことをやっているそうです。
 つまり、食文化ですね。食べ物を通じて文化を知るといいますか、そういうふうな考え方では、おいしい水、きれいな空気、美しい自然と今一言で申し上げておりますけれども、おいしい水というのはどうしてつくられるのか、きれいな空気は、美しい自然はと。それで、山には山菜とかなんとか、どういうふうにして、生物多様性という中で、何でこのごろ猿が出てくるのか、シカが出てくるのか、クマが出てくるのかとありますね。
 やはり、そういう生物多様性というのは農業の基礎になっていると思うんです。そういうことをも我々はしっかり承知した上での農政ということが必要なんじゃないかな、こう思いまして、今先生のお話からちょっと思いついてあえて申し上げたわけでありますが、そのことは人間にとって不可欠なことです。ですから、もう子供たちの時代から、メダカの学校じゃありませんけれども、そういうようなことでありますとか、生物多様性、その中で人間も生きていくんだというようなことを自然と学び育っていくような、そういうことが大事であり、農林水産省としても、文部科学省と連携して、その分野というものはこれから非常に大きくなるのじゃないか。
 そこで、私は、都市と農山漁村の共生、対流ということで村づくり新プランというものを掲げているのは、一つはそういう背景があるということを御理解いただきたいと思います。
川内委員 まさしく今大臣がおっしゃるように、メダカも今、環境省の出しているレッドデータブックでは絶滅危惧種の一種になっているわけでありまして、私たちが子供のころは、メダカなんというと、もう小川にうじゃうじゃいたわけですけれども、たった何十年かの間に、もう絶滅が心配をされるというようなことになっている。
 本当に、自然というものを食い散らかして私たちは生きてきたんでしょうけれども、そろそろ自然との共生を考える。そういう中で農業というものを中心産業に位置づけていく。しかも、それは大規模経営ではなくて、化学肥料や何かをいっぱい使う農業ではなくて、本当に自然の中で、自然の恵みとして作物をちょうだいするというような農業に変えていく。変えていかなければ、人類そのものの存続が危ぶまれる時期に私は来ているというふうに思っておりまして、農水省さんには、ぜひともこれから環境省や文部科学省を巻き込んでいただいて、しっかりと頑張っていただきたいなというふうに思っておりますので、最初三十五分間使いまして、私の農政に対する基本的な考え方をちょっと大臣と議論をさせていただきました。
 さて、きょうは畜産のことについて質疑をせよということでございますので、今ちょうど、きょうとあした、きのうときょうですか、畜産あるいは酪農に関するさまざまな価格が決定をしているようでございますので、その点について幾つか残りの時間質疑をさせていただきたいんですが、幾つかといっても十個ぐらいありますので、素早くやらせていただきたいと思います。
 食肉価格や加工原料乳生産者補給金、この算定に当たっては、BSE問題が発生をし、畜産、酪農を取り巻く環境というものが大きく変化をした、激変をした。その価格の決定に当たっては、その環境の変化を考慮するというふうにレクチャーをしていただきましたけれども、具体的に、審議会のメンバーの構成を変えたりとか、あるいは新しい仕組みをつくって、その価格についての諮問案をつくったりとかはされてはいないと思うんです。
 例年の年中行事的な扱いで、例年のやり方を踏襲して、そしてまたほんの少し環境の変化を考慮したということでは、本当に変わったのかなという疑問を持たざるを得ないというふうに思っているのですけれども、この点についてはいかがお考えになられるか、御説明をいただきたいと思います。
梅津政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、本年の価格の背景として、昨年九月発生しましたBSEというものが大きいバックグラウンドとしてあるわけでございますけれども、これは発生以来、BSE関連のつなぎ資金ですとか、あるいはBSEマル緊といった各種の経営支援対策を実施してきております。
 一方、畜産物価格につきましては、法令に沿って算定の仕組み上反映されるものは、ルールに沿って反映させていくということで算定を行っております。例えば食肉価格につきましては、算定上、直近の物価動向を反映させることとなっておりまして、こういったことを通じて、BSEの影響が一定程度反映されているというふうに考えております。
 今委員から、審議会のメンバーの点もございましたけれども、畜産価格を審議する食料・農業・農村審議会の委員は、消費者、生産者、あるいは流通関係者、研究者等々、非常に多様な方々がメンバーになっておりますので、そこで非常に幅広い観点から御論議をいただいて、適切な御答申をいただけるものと考えております。
川内委員 ただ、肉用子牛生産者補給金制度の保証基準価格及び合理化目標価格については価格が据え置きになったというふうに理解をしておりますが、結果としてこのようなことになったことについて、その審議会での検討経過、どのような意見が出されたのかということについてお尋ねをさせていただきたいと思います。
梅津政府参考人 肉用子牛につきましては、保証基準価格は、これは飼料費等の上昇は上げ要素となりますけれども、労働費の低下が下げ要素となって、総体として前年同額となっております。合目価格につきましては、生産性の向上は上げ要素でございますけれども、輸入牛肉価格の低下が下げ要素となって、総体として前年同額となっております。
 審議会におきましては、直接、子牛の価格あるいは繁殖農家経営のほか、表示の改善ですとか、あるいはトレーサビリティー、飼料基盤の確保等々、非常に幅広い御論議をいただいた上で、現下の生産条件、需給事情その他の経済事情を総合的に考慮すると、試算に示された考え方で決めることにやむを得ないとの答申をいただいたところでございます。
川内委員 今回の畜産、酪農価格の算定について、その基本理念、今回はこういうことで価格を、まあ審議会が決めたわけですから、農水省さんとしては、それは審議会の委員の方々のお決めになられたことですということなんでしょうけれども、しかし、諮問案をつくるのは農水省ですから、その諮問案をおつくりになられるに当たっての、原案どおり審議会では決定をされたわけでありますから、日々御苦労をされていらっしゃる生産者の方々に対して、今回はこういうことで価格を諮問させていただきましたという理念を、哲学をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
梅津政府参考人 先ほど来御指摘のとおり、BSEの発生という状況のもとでの算定でございますけれども、BSEの影響は基本的にはBSE対策で対応することといたしまして、一方、その中で、価格の算定に反映されるものはルールに従ってきちんと反映する、そういったことを通じまして、加工原料乳、食肉、肉用子牛価格を通じて再生産を確保するということを旨として算定いたしたところでございます。
川内委員 肉用子牛生産者補給金制度の保証基準価格及び合理化目標価格で、黒毛和種とその他の価格が平成四年度までは同価格であった、五年度から双方の価格に差を設けたというのは、これはどういう事情でそのようにされたんでしょうか。
梅津政府参考人 委員の御指摘は、黒毛和種と褐毛和種の保証基準価格、合目の差を設けた点だと思います。
 褐毛和種につきましては、平成二年以前は子牛価格が黒毛和種とほぼ同水準でございまして、同じ変動を示しておりましたので同一の品種区分としてまいりましたが、平成二年以降黒毛との価格差が拡大して、平成四年度には褐毛が二十五万円台まで低下したわけでございます。
 こうしたことから、黒毛と褐毛を同一区分とはみなし得なくなったということで、平成五年度から、黒毛和種と褐毛和種を分離して、それぞれについて保証基準価格と合理化目標価格を設定することとしたものでございます。
川内委員 それでは、乳用種と交雑種の保証基準価格、合理化目標価格が平成十一年度まで同価格であったのに、十二年度から双方の価格に差を設けたのも同じような事情によるのでしょうか。
梅津政府参考人 委員御指摘のとおり、従前、乳用種と交雑種、いわゆるF1は、同一の区分、肉専用種以外の品種ということで扱ってまいりました。乳用種と交雑種に対して同額の補給金が交付されておったわけでございますけれども、近年、交雑種の飼養頭数が増加いたしまして、あわせて、乳用種と交雑種の子牛価格の格差が非常に拡大、定着してまいりました。生産コストにおいても差異が見られているところでございます。
 こうした実態を踏まえまして、乳用種の雌牛の確保とこの制度のより適正な運用を図るために、平成十二年度から乳用種といわゆるF1を分離したものでございます。
川内委員 廃用牛やぬれ子牛の価格の暴落などから牛乳の生産コストというのは大きくふえているわけでありますけれども、本日決定された加工原料乳生産者補給金、前年度が十円三十銭、きょう決まったのが十一円というふうに七十銭上乗せをされたというふうにお聞きをしておりますけれども、今回、キロ当たり十円三十銭から十一円に七十銭上積みをされたということの理由、そしてまた、限度数量を二百二十万トンとお決めになられた、これらのことについてその理由を御説明いただきたいというふうに思います。
梅津政府参考人 平成十四年度の加工原料乳生産者補給金単価につきましては、いわゆる過去三年の生産コストの変動率をもとにして、変動率方式を基本として試算した結果、前年度単価に対してプラス七十銭となるキロ当たり十一円として今諮問したところでございます。
 それから、限度数量につきましては、近年の生産事情あるいは来年度の牛乳・乳製品の需給動向を踏まえて二百二十万トンと諮問させていただいたところでございます。
 算定に当たりましては、直近の物価動向を反映させるとともに、BSEの発生に伴う乳廃牛あるいはぬれ子価格の低下等を適切に織り込んで試算を行ったところでございます。
川内委員 そしてまた、二十九日には畜産、酪農の関連対策が決定をされるというふうに聞いております。先ほどから再三出ておりますけれども、BSE問題による経営の直撃というこの厳しい状況にかんがみるならば、我が国の畜産、酪農基盤の存続そのものが今危うい状態になっているというところであります。今回のこの二十九日の対策というのは、非常に重要な、重い重い意味を持つというふうに思われます。
 調査検討委員会が、BSEの発生について、行政の責任は、農水省の責任は重いというふうに非常に厳しく指摘をしているわけでありますけれども、その指摘を踏まえるならば、畜産、酪農家の方たちに対してもっともっと大きなサポートをしなければならないというふうに私は考えております。
 二十九日にどのようなメニューが提示をされるのかあるいはされなければならないのか、どのような対策が盛り込まれる方向なのかあるいは盛り込むおつもりなのかということをお尋ねさせていただきたいと思います。
梅津政府参考人 BSEの発生以降、生産農家の皆様の経営の安定を図るために、いわゆるBSEつなぎ資金の措置あるいはBSEマル緊対策等を創設しまして、これを着実に実施してまいりました。例えば二月分につきましては、一頭当たり、肉専用種で二十一万一千七百円、F1で二十三万四千円、乳用種で十七万七千円の補てん金の支払いを三月二十六日から開始しております。
 来年度でございますけれども、今続けておりますBSEマル緊事業の継続、それから肉用子牛生産者補給金、子牛生産拡大奨励金、それからいわゆる通常マル緊、こういった事業に、現在は四半期ごとの支払いでございますけれども、これを、月別支払いの仕組みを導入することを今考えております。
 あわせて、BSEの影響の長期化に対応しまして、新たな運転資金の創設、さらに、消費拡大の対策の充実、あわせて、本年度構築する牛の個体識別システムの活用といった取り組みを充実するということを現在考えておるところでございます。
川内委員 私の地元は、肉牛は日本一ですし、豚、鶏も日本一でありますから、畜産、酪農に従事していらっしゃる方々が、まあ酪農は余りいないわけですけれども、とにかく畜産県でありますから、物すごい打撃を皆さんこうむっていらっしゃるわけですね。この前、私がある牧場に行きまして、若夫婦でした、若夫婦といっても三十代半ばですけれども、脱サラをして二年ぐらい前から牛を五十頭飼い始めた。そうしたら、こんな問題が起きて、本当に、借金もしているし、もうどうにもならないというような窮状をおっしゃっていらっしゃいました。
 それで、せっかく意欲を持って牛を飼おうということで始められた方たちが、このBSEがなければ順調にいっていたはずなのに、これによって大きな重圧に今さらされているというような状況をお聞きしまして、今おっしゃられたような政策、全体としての政策ももちろん大事でしょうけれども、一戸一戸の農家の実情に応じたきめの細やかなサポートというものをぜひ体制としておとりをいただけるようにお願いを申し上げておきたいというふうに思います。それぞれの農家、それぞれに事情がいろいろあると思いますから、よろしくお願いします。
 それでまた、廃用牛の買い上げ制度について、輸送費や屠畜料などの流通経費が高くなって、国の示す買い上げ助成が目減りをして、結果として手取りが減ってしまうという不満があるというふうにもお聞きをしておりますけれども、現在の廃用牛の滞留数及び利用者にとって使い勝手のよい制度とするための運用改善へのお取り組みについてお聞かせをいただきたいというふうに思います。
梅津政府参考人 二月末現在のいわゆる廃用牛の滞留頭数は、五万八千頭と推定されております。
 そこで、二月から実施しております廃用牛流通緊急推進事業でございますけれども、これは、廃用牛の流通を推進して滞留を解消するために、農協が実施する廃用牛の買い上げ、乳用牛四万円、肉用牛五万円、これに加えまして、流通経費の助成を行うことになっております。
 御指摘の流通経費につきましては、全国の流通コストの実態を調査しまして、助成金の単価は流通するエリアごとに設定しております。さらに、屠場における食肉処理加工促進のための助成金、あるいは事業主体団体の出荷調整助成金等も助成対象にしておりますので、通常の出荷が行われれば、先ほど申しました肉用牛で五万円、乳用牛では四万円の農家手取りが確保されるものというふうに承知しております。
川内委員 あと、へい死牛の死亡原因の確認についてお尋ねをさせていただきたいと思いますけれども、へい死牛の中にBSEの感染牛がいる可能性を考えればこれを徹底すべきであるというふうに私は思いますけれども、いかがでしょうか。また、その体制が整うのはいつごろになりますでしょうか。
梅津政府参考人 農場段階におきましては、現在、全国百八十三カ所の家畜保健衛生所で、二千六十六名の獣医師職員が家畜伝染病の蔓延防止のための検査あるいは巡回指導を行っております。
 農水省としては、今回のBSEの発生を踏まえて、サーベイランス体制を強化するということで、先生御指摘の、最も感染の可能性の高いBSEを疑う症状、例えば中枢神経症状とか、そういったものを示す生きた牛、それから中枢神経症状を示して死亡した牛、これにつきましては全頭、それから、統計学的に感染牛を把握するために、二十四カ月齢以上の死亡牛については年間四千五百頭、これを対象としてBSEのエライザ検査を実施しているところでございます。
 現在、各都道府県、最低一カ所のエライザ検査のできる家畜保健衛生所の整備を進めているところでございまして、遅くとも明年度の半ばには、全県で少なくとも一カ所、エライザ検査のできる体制が整備されると考えております。
川内委員 何よりも、情報を開示していく、リスクマネジメントが大事だと先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、検査をして数字を公表し、何でも正直に言っていくことが信頼回復への第一歩になるというふうに思いますので、ぜひその体制を、今御答弁いただいた体制をなるべく早く整えていただけるように要望をしておきたいというふうに思います。
 また、BSE問題を論じるときに忘れてはならない方の一人が、農水省の事務方のトップであった熊澤前事務次官であります。二十六日に行われた参議院予算委員会の集中審議で、小泉総理は、熊澤氏の参考人招致について、だれであろうと調査に必要なら委員会で呼んでいいと思うという前向きな姿勢をお示しになられたようでありますが、大臣御自身は、熊澤氏の参考人招致ということに関して、政治家としてどのようにお考えになられるかということをお聞かせいただきたいというふうに思います。
武部国務大臣 参考人招致の件につきましては、これは院の権限でありますし、理事会等でお諮りいただいてお決めになることであろう、かように存じます。したがいまして、この点についてはコメントは差し控えさせていただきたい、かように思います。
川内委員 総理は、呼んでいいと思う、委員会の決定に従うとか、そうしゃくし定規におっしゃらずに、割と、いいんじゃないのというふうにおっしゃっていらっしゃると思うんですけれども、大臣はあえてコメントはしないということでよろしいでしょうか。
武部国務大臣 私もその予算委員会におりましたけれども、総理も、それは院がお決めになることだということでありまして、院がお決めになることについては、だれを招致されても、そのことについて自分としてとやかく言うべきことではない、こういうふうに私は受け取りましたので、私も、そういう意味では、院で、理事会でお決めになることについてとやかく言える立場ではないという意味のことを申し上げた所存でございます。
川内委員 大臣、BSEの対策について、発生をさせたことについては大変な不手際があったというふうに思います。これは、農水省さんもその責任というものを真摯に、謙虚に受けとめなければならないと思います。
 それで、発生した後の対策のとり方については、私も一定の評価をいたします。次々にいろいろな対策をおとりいただいている。BSEの調査検討委員会の最終報告も間もなく出るというところで、大臣は、非常に口幅ったい言い方になりますけれども、やめろ、やめろというやめろコール、やめろ攻撃の中で頑張って今までその対策をおとりになられたということでありまして、そういう意味では、そういう大臣の身の処し方についても、私は、大変な圧力の中でお仕事をされていらっしゃるなということを感じています。
 しかし、BSEを発生させてしまった農水省の責任というものを考えるときに、ある一定の対策をとり、調査検討委員会の最終報告が出る、大体万全の、万全とは言い切れないにしても、およそ考えられる限りの対策は打ったというところで、私は武部勤が侍であったというところを見たいわけですよ。昔のお侍さんというのは、何か不始末があったときにはみずから腹を切っておわびをした、それが大和魂だと思うのですね。今も私はそうだと思うのです。今もそこが私はやはり国づくりに大事だと思うのですよ。
 大臣は、おれは対策をとることが責任のとり方だ、おれの責任のとり方は対策をとって安心と安全を確保することだと言い続けてお仕事をされてきた。それで、ある程度の対策がとれた段階で、しかし農水省の責任というものに関してはしっかりと認める。おれがその責任を引き受ける、したがって辞任をするということを言えば、私は、もう武部勤は男だということに全国民がなる、それで一気に信頼も回復していくのではないか。まあ、そうはならないかもしれないですけれども、思うのですが、男武部勤の生き方として、ある程度の対応がとれたというこの段階で農水大臣を辞任する、責任をとって辞任をするというお考えはないかということを最後にお聞かせをいただきたいというふうに思います。
武部国務大臣 極めて熱い激励をいただいた、このように感謝申し上げます。
 私がBSE発生当時痛切に感じたのは、なぜこのBSEが日本に侵入したんだろう、ゼロリスクということがこれは不可能だとしても、なぜきちっとした危機対応マニュアルが、厚生労働省でありますとか都道府県でありますとか農林水産省と一緒にとっていなかったんだろう、こういう思いを強くいたしまして、これは構造的に行政上に問題がある、これは役人任せにできない、政治主導で執念を持ってこの解明に取り組んでいこう。
 そして、大事なことは客観的な検証だ、科学的な知見も得なきゃならぬということで、これも先ほど申し上げましたように、相当、役所内では抵抗があったのでありますが、私と厚生労働大臣の私的諮問機関としてBSE問題に関する調査検討委員会を設置したわけでございます。その報告書が近くまとめられて出るわけでございます。報告書に限らず、私は、これまで農林水産省の責任は非常に大きい、こう思いまして、非常にオーバーな表現かもしれませんが、遠藤副大臣、本部長でありますが、本当に命がけでという気持ちで今日まで対策に当たってまいりました。
 そして、いよいよこれから行政の構造的な問題は何だといえば、やはり畜産・食品衛生行政のあり方ではないかと思うのです。食の安全、食品の安全問題に対する行政対応、組織も含めてどうすべきだ、どうすべきかということだと思うのです。そういったことについても提言をいただけることになっているわけでありますし、私は、今先生、もう大変な大手術の真っただ中に立っていると思っております。ですから、この手術を、メスを投げ出して患者さんを見捨てるわけにはいかないという思いで取り組んでいるわけでありますので、執念を持ってこの与えられた職責を全うさせていただきたい。
 今、よくやっているという御評価をいただいた、かように存じますので、その上はひとつ私の腕を信じて、私の決意を支えてくださいまして、これを全うさせていただきたいということを申し上げたいと思うのでございます。
川内委員 終わります。
鉢呂委員長 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。
 次に、白保台一君。
白保委員 大臣、御苦労さまでございます。
 男武部勤の論争が今ありましたけれども、そういう厳しい農林水産行政が行われている中でございますが、私は、二〇〇二年度の畜産、酪農の政策価格や関連対策について、まず伺いたいと思います。
 今もいろいろとお話がございましたが、まさに昨年の秋から、農林水産省の行政に対する目というものは大変厳しくなってまいりました。その後、またさまざまな手を打ちながら今日に至っているわけでございます。
 この価格決定は、私は、十一年、十二年は秋に行われたというふうに思います。したがって、昨年の秋に行われるのかな、こう思っておりましたが、やはりBSEの対策や、あるいはまた業績不振の雪印の問題や、そういったことがあって結局この時期になってしまったのかな、こういうような感じで見ておるわけでございます。したがいまして、この場限りの対策ではなくして、やはり中長期的に見た、しっかりした冷静な判断もまた必要であろうかな、こういうふうに思っておるところでございます。
 そこで、こういうような状況の中で、特に牛肉というのは、BSEや、あるいはまた不正表示の問題、そういったことで大変厳しい状況になっております。そういう状況の中で価格決定をどうなされたのか、あるいはまた豚肉については逆にいい方向といいますか、そういう状況にあります。そういう面も考えますと、どのような観点から考慮がなされていこうとしているのか、この辺をまず最初にお聞きしたいと思います。
武部国務大臣 今白保先生御指摘のとおり、日本で初めてBSEが発生いたしまして、本当に未曾有のいろいろな影響が、生産者はもとより中小企業の皆さん、あるいは消費者の方々にも影響を与えて、その後また雪印食品の事件によりまして、食品の安全問題、とりわけ偽装表示というような問題が明るみになったわけでございます。
 私は、もう徹底してうみを出すべきだ、災い転じて福となす方向づけをどうしていくべきか、こう考えておりますし、このピンチをチャンスに切りかえていく必要がある。それにはやはり、生産者の方々も今本当に深刻な状態でありますし、さまざまな皆さん方が影響を受けて我々に対する不信が募っておりますし、そういったものに思い切ってこたえていく。
 つまり、これだけの対策をやろうとするその政府の姿勢に対して、我々も大変だけれども、ここでこの困難から立ち上がっていこうというような、そういう勇気を持ってもらえるような、そういう諸対策ということを考えなければならない。そのためには、さまざまな影響がある程度きちっと整理される、またそして、それから先の見通しもある程度立てることのできるような状況、つまり、ぎりぎりですね、期限ぎりぎりの年度末の今、この価格決定に向けて御論議をいただいているわけでございます。
白保委員 私も、先ほど申し上げましたように、そういったさまざまな条件がある中での決定でございますので、その辺の考慮が十分になされていくんだろう、こういうふうに思います。
 そこで、ちょっと具体的になってまいりますが、牛肉需給の推移、あるいはまた国内生産、こういった辺はどのようになっていますか。
梅津政府参考人 お答え申し上げます。
 BSE問題の発生後、消費者の牛肉に対する不安から国内の需要が減少しまして、牛肉の国内生産量及び枝肉の卸売価格は低下いたしましたけれども、牛肉の国内生産量は、一月以降、前年同期を上回って推移しております。
 牛肉の消費量は、BSE全頭検査開始後、徐々にですけれども回復しておりまして、枝肉卸売価格、これは東京、大阪の省令規格でございますが、直近の三月中旬以降、若干ではございますけれども回復傾向にございます。
 それから消費量、昨年十月は対前年比四一・六%家計消費がございましたが、直近の一月のデータでは、対前年同期比六四・五%まで回復しています。枝肉の卸売価格の方は、省令価格で、三月の上旬が三百四十八円・キロでございましたが、下旬で四百七十七円・キログラムまで回復している、そのような状況にございます。
白保委員 要するに、ある程度回復の兆しが見えてきているという状況だ、こういうふうなことだと思います。
 そこで、卸売価格の問題なんですけれども、卸売価格は低下しておる、そういう状況にあっても、それが結局小売価格に十分に反映されてきていない、こういうふうに思います。その辺の認識について、どのように認識を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
梅津政府参考人 委員御指摘のとおり、牛肉の枝肉卸売価格は、BSE問題の発生以降、国内需要の減退から大幅に低下しておりますけれども、小売価格が枝肉価格ほど低下しないのが実態でございます。この理由につきましては、全体の消費の回復が十分でない中で、小売店が通常の販売価格は下げずに、いわゆるウイークエンドなどの値引き販売、特販で行う等の対応をしているというふうに聞いております。
 他方、先般、大手チェーンストア数社からヒアリングをしましたところ、現在の小売価格は、BSE発生前と比べて平均で約三割程度下がっている、こういう情報もございました。今後も小売価格と卸売価格の関係がどのようになっているか、さらに調査を進めてまいりたいと考えております。
白保委員 はい、わかりました。
 そこで、次の問題に入ります。加工原料乳補給金について伺いたいと思います。
 平成七年以降、生産者団体は、需給の逼迫に対応して、増産型の計画生産を実施しています。生乳生産は、七、八年度の、それぞれ前年度をわずかに上回ったものを、九年度以降は、都府県を中心とした飼育頭数の減少により、前年を下回って推移している。
 生産者団体は、十二年度の計画生産目標を前年実績比一〇〇・二%と設定しましたが、生乳生産は、猛暑の影響等から都府県、北海道とも前年度を下回り、全国では一・一%下回っています。
 十三年度の計画生産目標は、前年実績比一〇一%と設定していますが、十三年四月から十四年一月までの生乳生産は、対前年同期比一・六%の減少となっています。飲用向け処理量も、対前年同期比一・八%の減少であります。一方、乳製品向け処理量も、十三年四月から十四年一月までの計では、対前年同期比〇・九%の減少となっています。
 このように、生産者団体の酪農経営も厳しい環境に立たされております。平成十四年度の加工原料乳生産者補給金の単価は、BSE発生による副産物の低迷などの実態を総合的に考えて決定する必要があります。そのため、加工原料乳生産地域の再生産を確保するということが重要であると考えます。
 酪農家の多くが、廃用牛の出荷の滞りやぬれ子などの副産物価格の下落で多大な影響を受け、苦境に立たされております。単価の引き上げなど、実態を十分に踏まえた対応が必要であると考えておりますが、本日の報告等によれば、先ほども議論がありましたような状況であると思います。適正に決定する必要がある、この辺の報告が出ておりますが、そのことについて伺いたいと思います。
梅津政府参考人 十四年度の加工原料乳生産者補給金単価につきましては、前年度単価十円三十銭に生産コストの移動三年平均の変化率を乗じて求めるいわゆる変動率方式を基本として適正に算定することといたしておりまして、前年度からプラス七十銭のキログラム当たり十一円ということで諮問させていただいております。
 この算定に当たりましては、直近の物価動向を反映させることによりまして、BSEの影響による乳廃牛あるいはぬれ子価格の低下を適切に織り込んだものでございます。
 また、限度数量につきましても、生乳の生産事情、昨今の飲用牛乳、乳製品の需給事情を十分考慮して、二百二十万トンという方向で適切に決定してまいりたいと思っております。
白保委員 では次に、肉骨粉の処理状況について伺いたいと思いますが、現状、どのようになっていますか。
梅津政府参考人 現在、一日九百トンの肉骨粉が生産されまして、約六百七十四トン焼却されます。これまで三万九千トン焼却しました。現在、都道府県で、畜産部局と環境部局の連携によりまして、いわゆる一廃施設の確保のための作業が行われておりまして、二十三県、六十六のレンダリング工場で焼却が進められております。
 それから、セメント工場での焼却につきましては、環境省の認定の状況は、これまで三十六工場中三十三工場から申請があり、二十工場が認定され、十三工場が審査中でございます。
 私どもとしては、梅雨入り前には先ほどの焼却量と生産量が均衡して、その後順次、現在保管されている肉骨粉の在庫の解消に向かっていけるよう、環境省あるいは都道府県との連携により、努力してまいりたいと思っております。
白保委員 そうですね。今、梅雨入り前のお話がございましたが、まさに梅雨入り前に適切な処理をしないと、環境問題等発生するおそれが非常にありますし、それが懸念されている状況です。
 十月十八日以降十八県でやっておったのが、今、二十三県で焼却を実施している。先ほどありましたが、都道府県にもいろいろと連絡をとりながら進めていきたいということですが、現在、一日当たり、今お話がありました六百七十四トンを焼却処理ができる。
 処理状況でいきますと、そうしますと、三月十五日現在で三万八千六百二十九トン。しかし、保管数量は十一万三千八百七十六トン、非常に多い。その前は十一万七百七十八トンでしたけれども。焼却済みが三万八千六百二十九トンですね。焼却が必要な肉骨粉の一日当たり生産量は九百トンでしょう。
 そうすると、一生懸命頑張っている、しかし、どうしても分母はだんだんとふえてくる、上の方も、減っているようですけれども、結局ふえてくる。そういう中で、一日当たり二百二十六トンぐらい残っていくんですね。したがいまして、焼却処理というのは非常に大事なんで、その見通しについてきっちりとお話をいただきたいと思います。
梅津政府参考人 若干舌足らずでございましたけれども、現時点で六百七十四トンでございますが、私ども最終的には、一般廃棄物処理施設で約六百五十トン、セメントで四百五十トン、合計一千百トン程度の焼却能力の確保が可能というふうに見通しております。
 したがいまして、現に一日当たり生産量が九百トンでございますので、先ほど梅雨前には何とか毎日の生産量に見合う焼却能力を確保したいと申し上げましたけれども、その後、主としてセメントの焼却能力の拡大を通じまして、今申しました一日当たりの生産量を超える焼却能力を通じて、今委員御指摘の、既にある在庫の確実な焼却に努めてまいりたいと思っております。
白保委員 もう一つ、屠畜場の廃用牛の問題について、受け入れ体制、受け入れ状況、都道府県別にいきますと、受け入れについて体制ができている、屠畜場側の問題はないというのは十二県、一定の体制はあるものの十分ではないというのが十七県、ほとんど体制ができていないというのが十七県、こういう状況にあるわけですね。大変隔たりがあります。今そういったことに対する検討状況と今後の対処の仕方について伺いたいと思います。
 同時に、系統の対応状況も都道府県別に違いがありますけれども、これについてもどのように対応されておるのか、伺いたいと思います。
梅津政府参考人 二月末現在で、全国で約五万八千頭の廃用牛が滞留しているというふうに推計しております。このような状況に対応しまして、現在、屠畜場の円滑な受け入れの推進のために、先ごろから、副大臣、政務官が各都道府県知事を順次訪問して、屠場の円滑な受け入れについて強力にお願いしておるところでございます。
 その場合、屠場の受け入れとあわせて、経済連を初めとする地元の生産者団体組織の協力が重要でございます。したがいまして、私どもとしては、二月からスタートしました廃用牛流通緊急推進事業を円滑に進めていく上で、それぞれの農協系統あるいは家畜商系統、そういった方々、さらには各地域の屠場関係者と十分意思疎通を密にしながら、例えば日にちとか時間とかそういったものを決めて、受け入れていただくような取り組みが進むように努力を続けているところでございます。
白保委員 さて、大臣に伺いたいと思いますが、一昨年、九十二年ぶりに発生した口蹄疫、あるいはまた、昨年、アジアで初めて日本で発生したBSE、こういった問題について、言ってみると、輸入の飼料が媒介したという可能性が大変強い、こういうふうに言われております。先ほども食の安全の問題が非常に議論されましたが、まさに、輸入が拡大されていきますと、貿易が拡大していく、世界的になってくる、そうなってきますと、どうしても外から入ってくるものが大変多くなってくる。言ってみれば、年間二千万トン近くも輸入飼料に依存するという状況で、まさに効率を重視したような、そういう形になっております。
 そういう生産体系から我々は食の安全という問題を考えた場合に、資源循環型の農業、こういったものが非常に大事になっていくだろう。したがって、そういった方の機構、体制を整備していく必要があるだろう、こう思うわけでありまして、まず大臣の御決意、見解をお伺いしたいと思います。
武部国務大臣 先生御指摘のとおり、グローバル化が進んで何が侵入してくるかわからないという状況の中で、やはり私は、国内における生産体制というものをしっかりつくり上げていくということが一番大事だ、このように思っております。
 私も北海道でありますけれども、酪農家の方々によく話をするんですけれども、やはり自給飼料、粗飼料をしっかりつくって、そしていいえさを与えて健康体の牛をつくって、いい牛乳を出して、そしてそういった生産体制を消費者の皆さん方にもわかってもらう。わかってもらうためには、やはりトレーサビリティーということも、テーブルまで、食卓までわかるような仕組みをつくっていこう。
 つまり生産者と消費者の顔の見える関係というものをしっかり構築するということが一番大事だと思っておりますし、今先生御指摘の資源循環型農業ということは、先ほど川内さんのお話にありましたけれども、我が国がちょっと忘れていた、しかしもう原理原則、最も大事な農政の基本だ、私はこのように思っております。
 今後、リスク分析というものを大事にしながら、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションをどうつくっていくか、そして、国内の農業、国内生産体制というものをしっかりつくり上げていくというために、国内の生産者を大きくバックアップし、消費者に理解されるような努力をしていかなきゃならない、かように決意を新たにしている次第でございます。
白保委員 国内飼料生産の状況等、いろいろと質問を細かくやりたいと思っておりましたが、せっかく大臣の強い決意でございますので、この決意を了として、質問を終わります。
鉢呂委員長 これにて白保台一君の質疑は終了いたしました。
 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 きょうは、畜産物価格についての審議、委員会のいろいろな質疑なんですが、実は大臣は北海道で、大変酪農にお詳しいと聞いておりますが、生産者乳価は一体どのようにして今決められているのか、ひとつお教えいただければと思います。
武部国務大臣 最近の生乳価格は、平成十三年度の補給金単価が前年同額でありましたことから、メーカーとの取引価格も据え置きになったこと等から前年度並みとなっておりまして、安定的に推移している、このように見ているわけでございます。先生は、生乳価格の動向はどうだということをお聞きしたいということで、そういう質問をされたと思うのでありますけれども、一言で言いますと、やはり再生産可能な乳価のあり方ということに相なろう、このように思っております。
 したがいまして、最近の生産費の動向、そういったものを分析した上で、最近どの部分が、例えば労賃単価がどうなっているか、えさがどうなっているかということ等に加えて、最近の経済状況やBSEの問題等もございます、そういった最近のさまざまな環境条件、こういったものを勘案して決めていくというのが仕組みの基本だ、このように認識しております。
山田(正)委員 ちょっと、私が聞いたのはそういうことではなくて、乳価の取り決め方、いわゆる指定生産者団体とメーカーとの取引の価格はどのようにして決められているのか。副大臣、結構です。
遠藤副大臣 委員御承知のとおり、飲用向け乳価及び加工原料向けの乳価は、両方とも全国十ブロックの生乳生産者団体と、大手、中小を交えますと約百五十社の乳業メーカーとの個々の取引条件を考慮しながら決められているというのが実態でございます。
 ただ、相対交渉でございますが、やはり大手が先行価格となり得るということも言えるわけでございます。大手乳業と中小との間では、もちろんですが若干差異がございます。しかしそれは、公表資料はないんですけれども、一般的には、大手乳業は、取引の量的な規模あるいは年間を通して安定的に取引をしていただくというようなことから、若干中小よりは安いのかなというふうに考えております。ただ、そうした非常に合理的で透明性の高い取引を推進しなきゃならぬということから、酪農乳業情報センター、これは生産者団体と乳業メーカー両方でつくっているんですが、そこで情報の共有化ということをしております。
 ただ、やはり世界的な取引においても相対取引が主でありますが、しかし、昨今のいわゆる取引の自由化あるいは競争的市場ということを考えれば、将来的には入札というような方向も視野に入れておかなきゃならぬのかなというふうに私としては考えておるところです。
山田(正)委員 相対取引でいわゆる百五十ぐらいのメーカーと生産者団体がやっているということは、力の差によって価格が大分変わってきているんじゃないか。私が聞いているところでも、一キロ当たり五円ぐらいの開きが出てきている。
 これは生産者にとっては大変大きな価格の差であって、そうこう考えていくと、やはり不明朗な相対取引じゃなく、今あらゆる野菜でも畜産物価格でも市場価格導入、いわゆる取引価格、競り価格、入札価格ということが行われるのが普通なんですが、米でもそうであって、そうしたら、いわゆる相対取引がいまだに残っている乳価、これについて入札制度の導入、いわゆる市場価格の実勢に即したというのか、実勢にある程度即応したような形の、そういった意味での乳製品取引市場の創設というのを平成十一年の十一月に試みたようですが、その内容、その結果はどうであったか。大臣、わかる範囲で、あるいは副大臣でも結構です。
遠藤副大臣 委員御承知のとおり、最近の傾向としては、やはり買い手市場みたいなところがございまして、生産酪農家はかなり厳しい立場に置かれているわけです。したがいまして、従来のような相対取引がいいか、自由な競争にゆだねる入札がいいかということはなかなか議論の分かれるところじゃなかろうかと思っておるのです。
 ただ、先ほど申し上げましたように、委員おっしゃるような方向も一つの視野として私ども考えておりまして、模索の段階といいますか、どういう方法がよろしいかというふうなことを今考えている。しかし、当然そういうことは将来やはり受けとめていかなきゃならぬ問題かなというふうに思っております。
山田(正)委員 私が聞きたいのは、平成十一年に試みた入札制度を、もう取引をやめた、これはなぜやめたのか、どういう弊害があったのか。せっかく入札制度、いわゆる公開の市場制度というものを導入しようとしながら、乳価において、乳製品において、それをやめるに至ったというのは、何かそこに働いたのではないのか。そこは、大臣あるいは副大臣、いかがでしょうか。
遠藤副大臣 平成十一年に行われたそのことはなぜ取りやめになったか、私は今現在のところつまびらかではありませんが、しかし、その十一年のやり方を、一種のパイロット市場の方へ移行していった方がいいのではなかろうかという話もありまして、その制度そのものを葬り去ったというわけじゃなくて、いわゆるパイロット市場のようなものを創設してはどうかという方向で今やらせていただいているというところでございます。
山田(正)委員 補給金を十円三十銭から十一円に決めたわけですが、いわゆる七十銭上げた、その上げた主な理由ですね。このところ物価はずっと下がり続けてきている。そんな中で、今まで長い目で見れば乳価も下がってきたような傾向はあったんですが、そこで、ここで上げたというのはそれなりの理由、具体的な理由があった、どういう理由だったのか、ひとつ大臣でも副大臣でも結構ですから。
武部国務大臣 先ほどは失礼しました。私どものところは加工原料乳地帯がほとんどなものですから、生乳のことを加工原料乳、こう思いまして先ほどちょっとお答えいたしましたけれども、これは、生産者補給金の単価というのは、前年度単価に生産コストの移動三年平均の変化率を乗じて、いわゆる変動率方式を基本として算定することとしているわけでございます。
 また、算定に当たっては、先ほどちょっと御説明しましたように、直近の物価動向、経済動向というものを反映させることによりまして、BSEの発生による乳廃牛、子牛価格の低下等を適切に織り込んで試算を行い、食料・農業・農村審議会の意見を聞いて決定するというふうになっているわけでございます。
 いわゆる副産物等の価格をどう評価するかということで、最近の労賃評価でありますとか、副産物の価格でありますとか、そういったことを見込んで、十一円ということの諮問はそういった直近の副産物価格や経済、物価動向、えさ代だとか、そういったことを含めて諮問するわけでございます。
山田(正)委員 大臣のお話ですと、七十銭上がったというのは、いわゆる副生物あるいはぬれ子等の価格の低下、そういったものを考慮して、農家経営、酪農家経営安定のために乳価を引き上げたんだ、よくそれは私どもも納得いくわけですが、では、今度は牛肉の安定上位価格、安定基準価格、これは十三年度、十四年度、全く上がっていない。同じように、副生物等々はほとんど無価値になってしまった、いわゆる食肉においては。食肉においては副生物はほとんど値がしなくなった。
 そういった中で、考えてみれば、乳価よりもこちらの方が今影響を受けているのに、この基準価格の方は、畜産農家の経営の立場から考えれば、同じように考えたとき、上げなきゃいけないのに上げていない、同じである。これは、大臣、なぜなんでしょうか。ひとつ明確にお答えいただきたい。
武部国務大臣 一つは法律的な背景などがございますが、またいろいろな諸対策ということもございます。一言で言うと、法律に基づいて別の法体系であるということは委員御案内のとおりだ、このように思います。
 牛肉の安定価格帯については、指標となり得るものについて定めることが適当であると考えておりまして、現在の安定価格は去勢牛のB2、B3の規格について算定しているわけでございますが、その数量のウエートが高い。去勢牛の約五割、成牛の約三割ですね。その価格水準から見て、一般家計消費の中心となるものであるとの理由によるものでございます。
 A5、A4等の高級規格は、数量ウエートがこれに比べ低い、家計での消費も少ないことから、安定帯の対象にすることはなじまない、このように考えているわけでございます。
 指定食肉価格につきましては、配合飼料の価格の上昇は上げ要素でありますけれども、市場実勢価格の低下等が下げ要素となっておりまして、総合すれば前年同額。
 肉用子牛については、保証基準価格は、飼料費等の上昇は上げ要素でありますが、労働費等の下げが下げ要素、総合すれば前年同額、こういうことになるわけでありますし、合理化目標価格は、生産性向上が上げ要素でありますが、輸入牛肉価格の低下が下げ要素となる、そういうことを総合して同額というふうに決めているわけでございます。
山田(正)委員 どうも、大臣、私の質問に答えていないんですが、私が言っているのは、いわゆる乳価についての補給金を七十銭上げた。今まで下がり続けたのを上げたわけです、ことし。それはなぜかといったら、副産物その他の価格はBSEの影響で大いに下がった、下がったからそうして上げたんだ。
 では、今度は、食肉の場合においては、いわゆる副生物というのはさらに下がっているわけで、そう考えれば、当然そういう考え方でいったら、この食肉価格を、安定上位価格、安定基準価格、ともにこれが、食肉に関しては前年度と同じ、生乳に関して、牛乳の乳価の補給金に関しては七十銭上がる、これはおかしいのじゃないのか。やはり食肉の場合も上がらなきゃおかしいのではないのか。それについて、ひとつお答えいただきたいと言っているわけです。
遠藤副大臣 委員もう既に御承知と思いますが、普通、一般の消費者の大宗を占めるのがB2、B3規格なわけでありますね。これが非常に下落をしているわけです。逆に、A5、A4、特にA5、自分のところを申し上げて恐縮ですが、私のところなどは四千円という値段をつけております。それから比べると、B2、B3はもう目も当てられないほどの状態になっておるわけです。
 したがいまして、むしろ基準価格は下げ基調と言えるかと思いますが、しかし、このようなBSE発生の経済環境を考えた場合に、下げ基準というふうなことを視野に入れるのでは、到底これは生産者にとっては大変過酷な問題になるということから、仕組みを変える理由はないという理由のもとに据え置かせていただいた、もうこれは本当にぎりぎりの努力でさせていただいたというふうにお考えいただけないか。これは御理解を賜りたいと思っております。
山田(正)委員 じゃ、乳価の方は上げて、こちらの方はぎりぎりの選択で据え置いたと。言ってみれば、酪農家の政治的な力が強くて、どうやら政治的判断でぎりぎりのところ据え置いたとお聞きしたんですが、これ以上質問するのはもうやめましょう。
 もう一つお聞きしたいんですが、先ほどからちょっと少し、A5、B3というふうにお答えしておったようですが、基準価格というのは、言ってみれば安定上位価格と安定基準価格と二種類に分けている。
 ところが、牛肉というのは、私も牛を飼っていたし、自分で肉屋もやったのでよくわかっているつもりなんですが、このA5あるいはA4、A3、黒牛ですね、その価格差と、乳牡犢のB3とかB2とか、この辺の価格差というのは三倍ぐらい開きがあるわけで、それくらい開きがあるのに、いわゆる安定上位価格と安定基準価格の二種類だけ。しかも千十円と七百八十円。
 いわゆる畜産農家の黒牛、黒牛は普通A4からA3、この辺で出しているのが普通なんですが、それでいて、実際には、いわゆる基準価格というのは非常に、本来ならば、例えばA5ならA5、A4あるいはA3、B3とか、そういう形で、その格付で例えば上位価格、基準価格を決めるのはわかるんですが、これはちょっとおかしいんじゃないのか。実態にそぐわないんじゃないのか。そこはどうお考えですか。
遠藤副大臣 先ほど申し上げたように、やはりB2、B3が一般の消費者の最も購買される量である。A5のように、例えば瞬間的に枝肉価格でキロ四千円というふうなものを基準にはなかなか行政としてはいたしがたい。やはり一番消費傾向の高いものに照準を合わせるほかはないのではなかろうか、このように考えますし、安定価格帯については、指標となるものはおっしゃるように定めておくべきではありますが、どこへ基準を合わせるかということは、行政としてはやはり一定の範囲があろうかというふうに考えて、現在のような水準にさせていただいているということでございます。
山田(正)委員 どうもよく、その説明、私としては納得いかないんですが、これを聞いたところでしようがない話で、ひとつ、副大臣、大臣もよくわかるとおり、これだけの開きがあるのに格付でその基準価格を決めないというのはおかしい、このことはよく実態を知っておられる方ならよくわかることで、これはぜひ、これからの問題としてしっかりと考えていただきたい。
 その際に、いわゆるこの基準価格を定めるということ、安定基準価格を定めるということは、言ってみれば、安くなったときに、それを調整保管、買い入れて、高くなったときに放出する、その基準になる価格なわけで、じゃ、今回、BSEで大変暴落した、今度の調整保管は、一体どの規格の牛を、どのように調整保管で、どれだけ買い入れたのか、実態はどうでしょうか。ひとつ、副大臣、大臣、わかる範囲で結構ですが。
遠藤副大臣 調整保管による買い上げは、B2、B3規格について安定価格帯を設定しているわけですから、その価格帯で買い上げを行っております。
 なお、これは、一般家計消費の中心となるのがやはりB2、B3でございますから、こうした牛肉の再生産を図るためにも、安定供給の観点からもこの水準が適当かなと。ただ、一方、A5等の高級牛肉というのは、家計消費でも少ないことから、調整保管の対象としてはどうだろうかという思いもいたしておるところであります。
山田(正)委員 B2、B3を買い支えた、調整保管したということですが、価格の推移で見る限り、B2、B3あたりが七百八十円を大幅に下がって、大幅とは言いませんが、下がっている。じゃ、これは買い支えたことにならないんじゃないのか。一体何をしておったのか。一体どれだけの量をどうしたのか。ちょっと明確に。
遠藤副大臣 いわゆる一種の買い支え効果というものはどうかと聞かれれば、私ども、正直なところ立場は非常に苦しいところでございます。
 ただ、買参人の購買余力というのは非常に乏しくて、なかなか競りが行われない中で、買い手が全くつかないというふうな不成立を防止していくとか、間々あるわけですね。一万円から始まって、普通は一万一千円、一万二千円と上がっていくんでしょうけれども、七千、五千、ゼロと。そういうのをなくす意味でも、ある種の買い支え効果、あるいは屠畜しても売り先がない中で、何とか、滞留はしていますけれども、滞留を何とかやめてもらえないかとか、いろいろなそういう効果を期待している。
 とにかく、七百円とは何事だと言われればそれはそのとおりなんですが、何とかそういうことで、やらなければ全然どうしようもないわけですから、それなりの保管効果というものを私どもは期待をしてやらせていただいているということでございます。
山田(正)委員 一般の畜産農家のA3とかA4とかというものならまだしも、B2、B3とか、その辺においても買い支えすら、いわゆる調整保管すら十分にできていないとしたら、なかなか難しいとか、いろいろな事情、副大臣弁解しておられたようですが、もうそんな制度だったら要らないんじゃないですか。
 もう要らないものをいっぱいいっぱい重ねた制度がいっぱいある。そのためにいろいろなむだな費用が使われている。それよりも、むしろマル緊制度による生産者に対する助成なら助成、そういう一本でやるとか、そういった形に、そろそろ明確に制度をきちんと整理すべきなんじゃないのか。それは、大臣、副大臣、いかがですか。
遠藤副大臣 この価格帯の設定そのものは、再生産を確保するためということが大前提となっているわけです。まずそのことが、購買する側、これは一般消費者とは限りませんけれども、一つの目安になっておるわけでありまして、ある程度価格の安定ということについては役立っているのではなかろうか。しかし、有機的、機動的な発動という意味では、委員おっしゃるとおり、マル緊の制度というのは非常に効果があるというふうには思いますし、そういうものにだけ一元化するのではなくて、むしろ、この制度をある程度は維持しながらも、再生産を確保していくということも捨てがたい制度である。
 ただ、大臣が常々申し上げておりますが、農林省の制度や機構の構造改革という中では、当然、私たちもそれらの視野に入れておる制度ではあるということは申し添えておきたいと思っています。
山田(正)委員 いろいろ言っても、これ以上言ってもしようがありませんで、ぜひひとつそこは、今回、畜産価格の問題で考えていかなきゃならないということ。
 もう一つですが、実際にかなりA4価格、A3規格の価格は大幅に下がったわけですね。B3においても随分下がった。ところが、そういう大幅に下がったのに、実際に小売価格は横ばいである、小売価格はほとんど変わっていません。
 ところが、EU、ヨーロッパ諸国では、むしろ、BSEの影響によって当然卸売価格というか枝肉相場は下がるわけですが、下がったらいわゆる小売価格も連動して下がった。そして、その連動して下がったことが、先般、野党議員の皆さん方がBSEのEU視察に行ったときの報告をおととい受けたわけですが、そういう小売価格が下がったことが消費の回復につながった、そういうふうに聞いております。
 ところが、日本においては消費の小売価格がそのまま変わらないというのは一体なぜなのか。ひとつ、大臣、副大臣はどのようにそこを理解しているのか。
武部国務大臣 私ども、事務方と議論する際に、必ずこの問題について議論をしているわけです、どういうメカニズムになっているんだと。私も実際詳しくわかりませんで、それで、事務方の説明の中には、安売りするときにはどんと下がるという話だとか、あるいは小売の段階で、全体の売り上げが減っているから、したがって、トータルで売り上げを減らさないために小売価格を上げているんだと。そんなことあるかな、やはり消費を拡大した方が牛肉の消費が戻ってくるんじゃないか、そのためには安く売った方がいいじゃないか。
 私自身が体験したのは、ある焼き肉屋さんですけれども、メニューの値段は変えてないんですね。確かめた。どうしてこれは安くしないんですかと言ったら、いずれもとに戻ると思って、メニュー、正札には手をつけたくない、そのかわりワイン一本つけているんです、こういう説明でした。
 しかし、至るところでそういうことがあるのかなというふうに私は疑問に思っていまして、これは、私ども、どういうメカニズムになっているんだ、徹底的にその実態を調査する必要があるということを強く指示しているところでございます。私自身も、どうしてこういうことなのかということについていささか疑問を持っている一人でございます。
山田(正)委員 大臣が疑問を持たれたのではしようがない話で、もう少し、例えば一つの小売価格に対する行政指導とか、あるいはいろいろな形での具体的な指針を打ち出しているならともかく、疑問であるという段階でしか大臣はお答えにならないわけで、私の時間ももうないので、最後にちょっと質問をしたいと思っているんです。
 いわゆるマル緊制度、それから肉用子牛の生産者補給金とか子牛の生産拡大奨励資金等、今回のBSEでかなり、いわゆる実質的には農家の収入に支障がないように図った。これは、今回のBSEは国の責任でこうなったわけだから、今回農家に対して、あるいは本来流通業者に対してもそれだけの責任を負うのは当然だと思うんですが、昨年の九月から始まって、これまでに一体どれだけ、そのためのマル緊と、今言った子牛の生産奨励及び子牛の云々でどれくらいの国費、いわゆる我々の国のお金を投入せざるを得なかったのか。ちょっとこれは質問を事前通告していなかったので、概略のところで、大臣の、あるいは副大臣の頭の中の感じだけでも結構です、これはどれくらいの金額だろうと。
 それから、あと二年こういう状態が続くとしたら、一体どれくらい、それに対して我々国としてはそれだけの責任を負わなきゃいけないのか。大体その辺の認識、どの程度今、大臣、副大臣はお考えなのか。ひとつその辺を聞いて終わりたいと思っております。
遠藤副大臣 おおよその目安ということでございますが、例えば子牛の取引価格が下落した場合の肉用子牛生産者補給金というのは、十三年度第三・四半期、十月―十二月ということですが、百七億円を既に交付いたしております。また現在、三月中旬現在ですが、いわゆるBSEつなぎ資金といいますか、二千四百件ほどの申し込みがございまして、三百四十五億円程度融資をいたしております。
 また、生産費を下回った場合の差額を一カ月ごとに補てんすることにしていますが、例えば二月分については、肉用牛ならば二十一万一千七百円程度、交配雑種ならば二十三万四千円……(山田(正)委員「トータルで」と呼ぶ)そうしたものを、これのトータルはまだ私の手元には届いておりませんが、そのように集計をすぐできると思いますので、後で委員のお手元にお届けさせていただきたいと思っております。
鉢呂委員長 時間が過ぎておりますけれども、武部農林水産大臣、簡明に御答弁願います。
武部国務大臣 先ほどの件も含めまして、私ども、一番喫緊の課題はやはり牛肉の消費が伸びることだ、こう思っておりまして、これはもう徹底したキャンペーンを今用意いたしておりますし、最近、消費の回復基調にあるということも数字的に出てきております。
 そういったことで、今の問題も含めまして、恐らくこの後の先生の指摘は、そんなに財源はあるのか、どこからそんな財源を見つけ出しているんだということだと思います。きょうは生産者の皆さん方も傍聴席においでになるようでありますので、心配はかけない、これからとにかく心配をかけないようにして、消費の拡大に全力を挙げて、そして一日も早くもとの姿に戻るように努力をしていくということが今私に課せられた一番大きな責任だ、こう思って努力いたしますので。
鉢呂委員長 これにて山田正彦君の質疑は終了いたしました。
 次に、中林よし子さん。
中林委員 私は、まず乳価の問題で質問をいたします。
 本来、BSEが発生しなかったらば、乳価の価格決定というのは昨年の秋にされる予定でありました。したがって、私は昨年の秋に、日本の加工原料乳の生産を支える北海道十勝地方に行きまして、市場原理の導入によって、価格制度の改悪によって酪農の経営にどんな影響が出ているのか、その実態を調査し、また現場で農家の皆さんの要望を聞いてまいりました。
 現地では、雪印食中毒事件だとか口蹄疫の問題だとかに追い打ちをかけるような形で、酪農家の命綱であった不足払い制度、これが廃止されたということで、将来の見通しが本当に立たないんだ、こういう不安が広がっており、私は農協だとか生産者あるいは役場、ここの方々と話したときに、これ以上乳価が下がったら北海道酪農はつぶれてしまう、こういう声が相次ぎました。現に、毎年三%割合で離農が進んでおりますし、飼養頭数も減っており、それに伴って二〇〇〇年度は生乳生産量の減少も始まりました。
 私たちは、このような事態になることを懸念して、毎年引き下げられてきた乳価を、せめて再生産が保障される価格まで引き上げるべきだと一貫して要求しました。しかし、現場では、政府が進めてきた規模拡大一辺倒のこの酪農農政のもとで、ぎりぎりまで頭数をふやして何とか低い乳価のもとでもやっていかなければならないということなんだけれども、もう限界だ、こういう声が出ておりました。
 大臣にお伺いするわけですけれども、やはりそういう低過ぎる乳価のもとで、今の酪農家の実態、こういう現状になっているという認識はお持ちでしょうか。
武部国務大臣 我が国の酪農経営については、委員も御案内と思いますが、主産物である生乳の販売額が収入の九割以上を占めていると思いますね。総合乳価がほぼ前年度水準で推移してきていると思います。
 一方、BSEの発生によりまして、副産物価格の低下、あるいは廃用牛の滞留を初め、規模拡大等に伴う環境問題の顕在化、労働時間の増加等の問題が生じてきたことはそのとおりだ、このように思っております。
 このような状況のもとで酪農経営の安定を図るためには、まず廃用牛の出荷促進ということで、BSE対策に万全を期する必要があるということで諸般の対策を講じているわけでありますし、飼養管理技術の向上や家畜改良の推進等による経営内容の充実とか、ヘルパー等の畜産支援組織の活用による労働の軽減でありますとか、自給飼料基盤の強化でありますとか、家畜排せつ物の適切な管理と有効利用等について関係者の皆さん方と一体となって取り組んでまいりたい。そして、今度のBSE発生を、ぜひピンチからチャンスに切りかえて、ゆとりある生産性の高い経営の実現に向けて引き続き私どもも努力していきたい、このように考えておるわけです。
中林委員 BSE発生以前の時点においても大変な状況だったということを、まず私は、大臣が認識されているのかどうかということをお聞きしたかったわけです。
 そういう状況のとき、不足払い制度が廃止されて市場原理に流されていったという中で、やはりこの価格の決定、特に加工原料乳の生産の大部分は北海道ですから、そういう意味では、生乳が九割とおっしゃるけれども、価格の決定に携わることができるのは加工乳の問題ですから、そこで私は、九割は生乳だなどと言わずに、ここが北海道酪農を支える問題だという認識でなければだめだというふうに思います。
 今言われたように、今回のBSE発生で、ここは大臣も認識されているようですけれども、酪農家の収入の一割を占める廃用牛あるいはぬれ子の副産物収入が激減したということで、これまで日本の酪農を支えてきた人たちが本当に窮地に陥るような状況になっております。
 もう既に二〇〇一年度からの加工原料乳も市場原理に基づいてメーカーと生産者団体の交渉による価格形成が始まっているわけですけれども、このBSE発生で環境が大変悪化しているという状況の上に、さらに不況が影響していて、スーパーなどで、小売りサイドから値下げの圧力が非常に強いということになって、市場原理にゆだねていけば、どうしても下がる傾向になっていくというのは当たり前の今の状況です。
 今回、補給金に対して若干の引き上げ諮問をされているわけですけれども、これで万全の対策だなどと絶対思わないでいただきたいというふうに思うんですね。私は、ここに大臣のいわば政治的な判断が求められているんじゃないか。これで再生産が本当に確保できるのかどうか、日本の酪農が廃れるかどうか、まさに今度の価格決定というのは非常に大切な問題で、再生産が保障できる価格まで農家をやはり補償していくんだというそういう大臣の決意を示す、ピンチをチャンスにとおっしゃったんですけれども、まさにそれを示すチャンスじゃないですか。大臣の決意をお伺いします。
武部国務大臣 まさにピンチをチャンスにしていかなきゃならない、こう思っておりまして、生産者の方々にも、元気を出して勇気を持って取り組んでいただけるような、今回の乳価に向けての私どもの努力を今傾注しているところでございます。
 十四年度補給金単価は、七十銭アップのキロ十一円ということで諮問した次第でございます。審議会において適切な議論のもとに答えをいただけるもの、このように思っておりますし、乳廃牛、子牛価格の低下等について、こういったものも価格に織り込んで試算を行ったところでありますし、BSEの影響については廃用牛流通緊急推進事業等の個別の対策も行っているところでございます。また、北海道は最近、廃用牛の出荷も円滑にいきつつございます。これもこの互助制度というものが大分皆さん方に生きているんじゃないか。
 今までの、五分の四の補てん金プラス共済金だけじゃなくて、一頭当たり、代替牛購入資金五十万、また経営再開維持資金十万、六十万ですね。先ほど来た若い酪農家の方は、前のと後ので大体一頭百万だな、ここまで政府が腹をくくってやろうということであるならば、我々も頑張れると。
 そのほか、諸般の対策、まだ検討中でありますから、これはもう新聞では既に単価三万円というような数字も出ておりますし、やるべきことは、やり得ることは、私どもも、大臣としても責任を持って、皆さん方の意見をしっかり聞いた上で対処してまいりたい、このように考えております。
中林委員 BSE対策については後でまたお伺いするわけですけれども。
 乳価の決定で若干引き上げたということなんですけれども、それでは足らないということを私は申し上げているわけです。乳価に対して質問しているわけで、さまざまないろいろな施策はありますよ。その施策も十分やっているというお話だったんですけれども、私は、特に今、酪農家を初め畜産農家が悩ましいと思っているのが、家畜排せつ法によるふん尿処理の施設を整備しなければならないという問題なんです。
 ここに北海道酪農協会の方から、要請書というのがあるのですけれども、BSE発生で非常に農家の経営が危機的状況になっていて、平成十六年の十月までに整備をしなければ罰則規定が設けられるという状況の中で、とてもそれはできないよということで、BSEによる国家的非常事態に集中的に対処するため、平成十六年度期限の家畜ふん尿処理法の適用を当面延長すること、こういう要望も出ているぐらいなんですね。
 私は、いろいろな農家の人たちと話をして、さまざまな施策がなければぜひ延長してほしいという声は確かに聞きました。しかし、私は、延長することをよしとはしてはならないんじゃないかというふうに思いますね。やはり、今の国民からの要望、環境をきちんとするということは必要なことだと思うのです。ただし、こういう事態になったときに特別な、この期限内に処理施設ができるような特別な対策、これを講じなければだめだというふうに私は思うのですけれども、大臣、いかがですか。
武部国務大臣 特別な対策というよりも、やはり経営の安定ですね。将来展望がきちんとできる、そういう経営に向けて生産者も頑張ってもらう、私どももこれをバックアップする支援策についてさらに努力をしていく。
 そして、今委員御指摘のように、私は、先生から延長せいと言われるのかと思ったら延長するなというふうな御意見、こう承りましたけれども、今の時点は、まだ十六年までですから、今の時点でどうこうというような、そういうことを決めるのじゃなくて、やはり十六年までにやってしまおうという前向きな姿勢で取り組んでいくということが大事だ、こう思っております。そういうことを、生産者団体の皆さん方にも、ぜひ生産者の皆さん方に督励していただきたいということをお願いしているわけでございます。
中林委員 延長してほしいというのは、本当に切実な要求なんですよ。延長しないならばやはりそれに見合うだけの対策が、今まで順当に来ておったらそれはよかったでしょう。しかし、こういうBSE発生という、今まで味わったことのないような、しかも農家の責任でないところで起きて、経営が大変な事態になっているんだ。
 ふん尿処理施設をつくろうと思うと、そう簡単なことではありません。それは、シートを敷くぐらいでいいんですよ、簡易なものもありますよと説明を受けていますよ。しかし、実際農家の方々に聞くと、それも不安だ、やはりやる以上はちゃんとやりたいという要望もあります。
 昨年秋に私が北海道に行って聞いたときに、大樹町では五割の進捗状況、あるいは音更町では二割の進捗状況。この音更なんかでは、このまま進んでいくと十年かかります、とても間に合わないのでぜひ国の特段の対策を求めたいということなんですけれども、これは何らかの対策はとられますか。
武部国務大臣 これは、全額国が金を出すわけじゃありませんで、やはり私どもも総務大臣にお願いをしておりますが、地方自治体の財源確保ということも大事でありまして、特別交付税等でさらにこのBSE関連ということも含めて協力してほしいということを申し上げております。
 やはりそういった、地方自治体においても前向きに環境問題については取り組んでいただけるように我々からも督励して、計画的に事業が進むようにさらなる努力をしたいと思います。
中林委員 それで本当にBSE対策が、大臣が全力を挙げて取り組んでいるとおっしゃるにふさわしいものなのかどうか、これもやはりたださなければならないというふうに思っているのです。
 昨日、二〇〇二年度の予算が成立をいたしました。この予算に、BSE対策費、本予算では十三億円しか組んでいない、こういう状況です。
 なぜ本予算で対策を講じようとしなかったのか。BSEの潜伏期間が七、八年ということになると、長期化するということはもう明らかなので、本腰を入れた対策、これが必要なんですね。私は、ここに政府の姿勢というものが示されているのじゃないか。
 大臣、なぜ本予算で措置しなかったのか、その点についてお答えください。これは大臣ですよ。
武部国務大臣 私は、問題は結果だ、このように思っております。
 本予算でも最大限措置していかなきゃなりませんし、やるべきことはもう、二千億円を超える対策を行っているわけでございまして、よりスピーディーに、臨機応変に対応できるということが特にBSE対策にとっては大事だ、かように考えております。
 さような意味では、本予算に組まなければ事業ができないということじゃありませんで、本予算に組むならば、予算が通らなければ執行できないというような、そういう一面もあるわけでありますから、臨機応変に、スピーディーに対策を講じていくということが何よりも望まれている、こう思って、そういう努力をしているわけでございます。実際には、結果としてはきちっとやらせていただいている所存でございます。
中林委員 事業団予算を使っているわけですよ、それ以外は。
 本来事業団というのは、関税収入だとかそういうことで、指定事業というのが決められて、そこにずっと使われていくということで、私は、昨年九月に日本で初めてBSEが発生して、予算上の措置がなかったから、事業団の財源があった、それを昨年以降使っていった、昨年度というか今年度というか、それを使っていったというのはわかりますけれども、日本で三頭発生して、これからも発生する可能性だってあるわけですよ。本腰を入れた農水省としての対策をとろうと思えば、当然本予算でしかるべき措置をしなければならないということを申し上げたいと思います。
 もちろん、事業団でも十分な対応をしなければならない、その予算でも、と思います。問題は、四月以降、ではどういう対策を講じていくのか。
 具体的に政府が示しているのを、私もペーパーをいただきました。幾つか四月以降もやろうとされているわけですけれども、その点で、今具体的に、運用の変更、それをぜひ改善してほしい、こういう要望が農家から出されておりますので、具体的に、その要望にこたえるのかどうか、答えていただきたいというふうに思います。
 まず一つは、従来のマル緊事業、これに対する国の負担額をぜひ増額してほしい。それから、通常のマル緊に加入する農家に対して、積立相当額を国が立てかえてやる、そういう方法にぜひしてほしい。それから、補償基準、今八割ですけれども、十割に引き上げてほしい。こういう要望が出ております。それに対してどうこたえるのか。
 それから、つなぎ融資の返済、この新しい施策では二年ということに変えられたようですけれども、最低五年だ、これが各団体から出てきているのですよ。ですから、ぜひこれも、潜伏期間の長さから考えると回復がそう簡単に見込まれないということで、延長を図っていただきたい。
 以上の点、答えていただきたいのです。
梅津政府参考人 通常マル緊の運用について御質問がございました。
 この事業は、農家が自主的判断により加入して、国と農家がそれぞれ、国が三、農家が一という拠出割合で拠出した原資をもとに、所得の低下に応じて家族労働費との差額の八割まで補てんすることによりまして、価格変動に対処しようとするものでございまして、この三対一を出して家族労働費との差額の八割を補てんするという現行の仕組みは適切なものであるというふうに考えております。
 それから二点目の、新たに加入する者の積立金を国が立てかえるということにつきましては、既に入って積立金を納付している既加入者とのバランス、新規加入者が積立金を積み立てることなく補てん金の支払いを受けるということになれば、これは非常に不公平となりますので、困難であるというふうに思っております。
 それから、新しいつなぎ資金でございますけれども、いわゆる肥育黒毛和種二十カ月といったような肥育期間も考慮しまして、現行一年のものをさらに二年というふうにしたものでございます。
 以上でございます。
中林委員 国に立てかえてほしい、後で払いますよという話なんですよ。だから不公平は生じないんじゃないですかということを申し上げて、ぜひ検討を、農家の人たちの非常に強い要望ですので、加えていただきたいというふうに申し上げます。
 それから、BSEマル緊、これは延長されるというふうに伺っておりますので、ぜひ延長していただきたいんですが、この算定方法が農家の皆さんにとってはなかなか納得がいかない。産地がいろいろで、ブランド物のところなどは高いというようなことで、全国に押しなべられるとなかなか経営実態に見合わないんだということで、市場ごとだとか、あるいは県ごとだとか、何とかならないかということがございますが、これについての検討。
 あるいは、子牛に対する補給金がありますね。これも産地によって子牛価格が全然違ってくるということで、なかなか経営の足しにならないという話があるんですけれども、今後の検討課題としては、そういう方向も考えていただけるでしょうか。
梅津政府参考人 委員御指摘のBSEマル緊の補てん金の算定方法でございます。
 この事業は全額国が負担しておる事業でございまして、全国の生産費調査をもとに、全国の食肉卸売市場三十市場の枝肉価格を用いて、全国一律に実施しているものでございます。
 委員御指摘のような形で、同じ生産費でも、創意工夫によって高い値段の牛を出荷する地域の方が、仮に低価格の牛を出荷する地域よりも低い補てんしか受けられないということになりますと、これは、出荷する牛が同じ価格でも、創意工夫により生産費の低い地域の方が生産費の高い地域よりも低い補てんしか受けられないということになりますので、かえって不公平感が生じ、適切ではないというふうに考えております。
 あわせて、子牛生産拡大奨励事業につきましても、同様に、仮にこれを地域ごとに算定した場合には、そういった生産者の努力により高い価格の子牛を出荷した地域の方が奨励金が少なくなるということで、かえって不公平が生じ、適切ではないというふうに考えております。
中林委員 今農家の方々が、やはり廃用牛の滞留で困っていらっしゃる。せっかくの制度ができたんだけれども、なかなかうまくいかない。やはり、廃用牛の屠畜の専用屠畜場、これをぜひ設けてほしいということは、先般私も要望して、前向きに検討するというお話がございました。
 この検討状況、そして今後の努力はどうされるのか、それだけちょっと簡単にお答えいただきたいと思います。
武部国務大臣 老経産牛の処理についてのことでございますが、それぞれの都道府県におきまして、屠畜日の指定や専用の屠畜場を含めた受け入れ屠畜場の確保について、実情に応じた処理体制の確立について協議が進められております。かなり前向きに進んでまいりました。
 農林水産省といたしましても、老経産牛について、その流通の促進を図るために、各県屠畜場における老経産牛の受け入れを要請しております。両副大臣、政務官が直接赴いてお話をしております。
 また、廃用牛流通緊急推進事業及びBSE対策酪農互助システム支援事業の実施について、かなり現場でも理解が深まってきたように思います。そういうようなことで、これにより出荷の気持ちを固めてもらいたいということを切望しているわけでございます。
 そういう努力を通じて、さらに努力をしてまいりたいと思いますし、例えば、屠畜場でなく、水防法の問題もあります。公衆衛生の問題もあります。ちゃんとBSEの検査もしなきゃなりません。そういうようなことができる、そういう古い屠畜場といいますか、これは、肉として流通しない場合には、そういったところでも処理できる方法を検討してみていいのではないかということで、これらのことも今検討をさせております。
中林委員 非常に農家の皆さんの要望が強いし、ぜひ国が責任を持ってやはり買い上げるという野党四党案、それの実施をされることを要望しておきたいと思います。
 次に、農林漁業金融公庫食品流通改善資金の問題でただしたいというふうに思います。この貸し付け問題なんですけれども、貸し付けの使途の準営業権、これは対象になりますでしょうか、農水省。
西藤政府参考人 お答え申し上げます。
 食品流通構造改善促進法に規定しております卸売市場の機能高度化事業の実施に必要な営業権の取得につきましては、一定の要件に該当するものにつきまして農林漁業金融公庫の融資対象といたしております。
中林委員 準営業権が対象になるのかと言っているんです。
西藤政府参考人 営業権につきましては、一般的に、当該企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊の取引関係の存在などを総合した、他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係というふうに判例上されておりますが、その具体的範囲については、個々のケースに応じて判断されるべきだというふうに思っております。
 御指摘の準営業権とされるものが営業権に当たるかどうかについても、具体的内容に即して判断されるべきだろうというふうに考えております。
中林委員 事前にお伺いし、この点は何度も確認したんですけれども、ちゃんと農水省の答弁書はあるんですよ。準営業権については承知しておりませんと。ちゃんと規定上は営業権になっていて、準営業権というのは出ていないんですよ。急にどうしてそういうふうに変えるんですか。
 そこで、公庫の方にお話をお伺いしたいと思うのですけれども、実は、大阪府は経営破綻をした第三セクターの松原食肉市場公社の再編処理をするに当たって、浅田満氏が代表取締役をしている南大阪食肉畜産荷受株式会社の準営業権を買い取ることにし、その際、この農林漁業金融公庫の融資を受けることにしているわけです。
 なぜ大阪府は準営業権という表現を使っているのか。それは公認会計士が行った南大阪食肉畜産荷受株式会社に対する営業権評価報告書で、今回の譲渡の対象となる営業権は何ら法的権利を有しておらず、また、有形の資産を含めて譲渡するものでないため、基本的には、超過収益力説における営業権と位置づけることができるというふうにしながら、この会社に超過収益力が存在すると判断することはできないということにした。これが大阪府議会で昨年九月に追及されました。そこで、営業権とは言えなくなってしまって、準営業権という言い方に変えてきた。このような、営業権と言えないものを融資の対象にされるのでしょうか。
鶴岡参考人 私どもの公庫大阪支店におきまして、平成十二年の十月以来、大阪府の方から、今御指摘のような両市場を統合する、それに関連しまして公庫資金の利用をしたいと今相談を受けております。
 大阪府からは、スキームとして、松原食肉市場公社を解散する、それから松原食肉市場公社の市場開設者の業務を民間新会社に継承させる、それから羽曳野市食肉地方卸売市場を廃止する、それから南大阪食肉畜産荷受を解散して営業権を民間の新会社に譲渡するというような再編のスキームを伺っております。
 私どもは、これを検討した結果、こういうスキームにつきまして、条件さえ整えば私どもの食品流通改善資金の融資の対象とし得るものと考えまして、その旨は大阪府にも、担当の方にそういう説明をしております。
 ただ、事業主体が、今後構造改善計画を策定しまして、農林水産大臣、具体的には近畿農政局長に当たるわけですけれども、の認定を得ることが必要でありまして、これらの手続が進む中で、融資審査に必要な書類の提出を受け、事業主体の話を聞き、大阪府とも相談しながら融資について検討する考えでございます。
 今ありました営業権につきましても、そういう中で検討して対応していきたいというふうに考えております。
中林委員 時間が来ていて申しわけないんですけれども、確認だけさせてください。これは、融資を大阪に確約したんですか、しないんですか、それだけ。
鶴岡参考人 確約というのがどういうことまで言われるのか、ちょっと私承知いたしておりませんけれども。私どもは、お伺いしまして、条件さえ整えば必要な融資はできる、そういう回答はいたしております。いずれも今後の問題でございます。
中林委員 今後の問題ということで、まだ確約はされていないというふうに受け取りました。
 終わります。
鉢呂委員長 これにて中林よし子さんの質疑は終了いたしました。
 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社民党の菅野哲雄でございます。
 今多くの議論がなされておりますけれども、ダブる点がありますけれども、私から質問させていただきたいというふうに思っています。
 一つは、野党四党案では特飼牛と言っていますけれども、一般的に廃用牛の問題でございます。武部農水大臣は老経産牛なんという表現を使っていますけれども、これはどう表現したらいいのか、多くの議論のあるところでございます。
 この対策の現状について、私は二月の二十五日の予算委員会でも問いただしてまいりましたし、それから約一カ月経過して今日に至っているわけですけれども、先ほどの答弁では、二月末で五万八千頭、そして、都道府県に屠畜場での受け入れを要請して歩いて、多くの方々と意思疎通を進めながら取り組みを進めているという状況が今までの質疑で明らかになっています。
 現時点で五万八千頭というふうに今言われました。この老廃牛、特飼牛が、二月、対策をスタートさせました。それ以降、屠畜場に何頭出荷しているんですか、これを明らかにしていただきたいというふうに思うんです。
武部国務大臣 十三年度実績は、九月二万二千頭、十月八千頭、十一月二万二千頭、それから十二月二十四日時点で一万八千頭、十二月一万五千頭、一月一万七千頭、そして二月は一万九千頭とふえてきていますね。もう一踏ん張りだと思います。
菅野委員 大臣、今の答弁で本当にいいんですか。老廃牛、老経産牛が、特飼牛が屠畜場に何頭出ているんですか。では、廃用牛と言ってもいいです。廃用牛が屠畜場に何頭出ているんですか。
武部国務大臣 いつの時点で、今月ですか。ずっと。
 今答えたのは乳用雌牛でございます。滞留頭数は、二月で五千頭、累計五万八千頭でございます。
 このことにつきまして少しく申し上げますと、本年二月からこの廃用牛流通緊急推進事業を開始したのでございますが、徐々に進んでまいりました。これまで、一時集約管理施設は全国二十七県において一万三千頭分が確保されているところでありますが、準備の整った七県の施設において次々収容が始まっているところでございます。
 現在は、事業実施主体において事業計画書及び補助金申請書の取りまとめを行っているところでありまして、事業の実績はまとまっておりませんが、本年二月及び三月においては約二万五千頭の、いわゆる先生からいえば特飼牛、私ども廃用牛と申し上げますが、の出荷が行われる見込み、このように聞いております。
菅野委員 はい、わかりました。
 それじゃ、五万八千頭、今農家に滞留しているという状況ですね。この五万八千頭がどうして農家に滞っているのか。部長でもいいですから、この原因をどう考えているのか、そして、このことが酪農家や子牛生産農家にどのような影響を及ぼしていると考えているのか、答弁願いたいと思います。
武部国務大臣 先生からも前にも委員会でも指摘されましたけれども、廃用牛の屠畜頭数は、どんどん出るようになりましたから、増加基調にあるということが一つ言えます。屠畜場の業務への悪影響を懸念しまして、これを抑制しようというようなそういう動きもございます。
 また、廃用牛の価格の低下ということも影響していたんじゃないかと思いますが、御案内のように、廃用牛対策もやりましたし、そして、やはり一番、私、今、両副大臣、政務官で回っておりまして、かなり理解が深まっております。
 特に、互助制度ができまして、北海道あたりは、金額にして一頭当たり六十万というようなことになりまして、前はやはり、どうしてかというのは、先生おっしゃるとおり、また出たらどうしよう、もう自分たちの経営は破綻だ、地域もそれこそ大変なことになっちゃう、特に肥育牛農家からすれば、自分たちの肉が、ブランドがすべてパアになる、そういうようなことで、屠畜場が抑えるといいますか、屠畜場でブレーキがかかるあるいは農業団体もブレーキをかけている、そういうところもございます。いろいろ実態がわかってきました。
 しかし、この緊急廃用牛対策をやるようになりまして、これではいけないんだ、やはりちゃんとBSE検査をして出さなくちゃいけないんだ、しかも互助制度でもって一頭六十万ももらえるようになったんだ、五十頭であれば三千万だ、それまでのあれを入れると五千万だ、そういうことがだんだんわかってきまして、よし、ここで腹を固めようという傾向が出てきておりまして、私、事務当局から聞いているのでは、大体、ことしの五、六月ぐらいには円滑にいくような形で、従来の実績のような形で出荷される、そういう見通しになるのではないか、こういう説明を受けておりまして、私は、ぜひそういうようになるように期待をし、さらに努力したい、このように考えているわけでございます。
菅野委員 私は、大臣、そういう傾向はつかんでいるんですが、実際に五万八千頭、例えば二月二十五日に聞いたときに五万四千頭と聞きました、実際。そうすると、二月―三月で四千頭が滞っているという状況になっていますよね。
 本当に、これがゼロであれば、あるいは五万八千頭が下がっているんであれば、私は危機的なこんな質問はいたしません。どんどんふえていっている現状です。そして、一万三千頭の分は確保したと言っていますけれども、農協やいろいろな団体を通じて。それで、この五万八千頭のうち、差し引いた四万五千頭というものが農家の畜舎に滞っている現実があるんですね。
 このことをどうとらえて、そして、このことが酪農家や子牛の生産農家にどう影響を及ぼしているのか、分析をしているのかしていないのか。そして、このことに対する、五万八千頭という部分をゼロにするための取り組みをどうしていこうとしているのか。このことをはっきりと酪農家や多くの方々に示していかない限り、減っていかないんじゃないのかなというふうに思うんです。大臣じゃなくてもいいです、局長でも。長くなるから。
梅津政府参考人 先ほど五万八千頭と申し上げましたが、月にならしますと、例えば十二月は、前年の実績に比べて屠畜実績が約五〇%でございました。これが二月には七〇%以上まで回復してきております。まだ前年を超えておりませんので滞留頭数が積み上がっていることは事実でございますけれども、各月当たりの滞留頭数は、十二月が一万三千頭、一月が七千頭、二月が五千頭というふうに着実に減ってきております。こういったことを通じまして、いずれ、ほぼ前年実績の屠畜頭数が確保されていくものと思われます。
 一方で、先生御指摘のように、酪農家にとりましては円滑な更新が重要でございますけれども、今、いわゆる乳廃牛の更新がスムーズに進まないという事情もございまして、この出荷の促進とあわせまして、一時保留施設、例えば公共牧場とか空き牛舎を活用した保留施設の確保を進めております。現在、全国で一万三千頭分のスペースが確保できまして、これまで四百四十四頭、まだ少ない数字でございますけれども、の保留の実績が上がっておる状況でございます。
武部国務大臣 今部長が説明しましたように、屠畜頭数はふえている、滞留頭数は減ってきている。しかし、減ってきているけれども、まだふえていることは事実です。しかし、今度の乳価に関連する対策でも、乳用雌牛対策として一頭当たり三万円。これも、廃用を出す場合ということで、そういう更新、乳牛の更新を進めるということも、これが早く出る方法であります。
 それから、今、屠畜場についても大分ふえてきていますし、先ほど中林委員にもお伝えしましたようなそういう対策をやりますので、ですから、我々も努力いたしますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
 まだ金額は決まっていませんが、私の頭にインプットされているのは三万ということです。まだ審議会、開かれておりませんので。
菅野委員 この問題は、BSE対策で今本当に最後に残っている課題だと私は思っています。ここをしっかりやっておいて、そして、しっかりやることによって、日本の畜産業が維持できるかどうかというところにかかっていることだというふうに思っています。難しい点はいっぱいあるということは承知していますけれども、この廃用牛対策も含めて、BSE全体をどうしていくのかというのは、根本的な議論も継続してやっていただきたいということを強く訴えておきたいというふうに思っています。
 それから、酪農家や子牛生産農家が今一番苦しんでいるのは、追い打ちをかけられていることなんですけれども、家畜排せつ物の処理という、先ほど中林さんもこのことを訴えていましたけれども、農家を回って歩いていろいろな意見交換をするときに、このことが、非常におもしになっているというふうに言われております。
 各自治体から農林水産省に対しても多くの要望が上がっているというふうに思っていますし、この家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律、これも平成十一年の七月二十八日に成立していて、この条文も読みました。
 そして、多くは都道府県に施策の展開はゆだねられているんですが、農水大臣に一つ与えられているのは、基本方針を策定することです。このことは行ってきていることだというふうに思うんですが、ただし、この基本方針を策定して、「農林水産大臣は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。」というふうに七条の三項にあるわけですね。私は、農家の実情や畜産農家、酪農家の方々の実情を考えたときに、農水大臣は、法のこの七条三項という部分を真剣になって考える時期に今あるのではないのかなというふうに思っています。
 これが、法が施行されていて、そして都道府県の基本計画があって、農家は、家畜排せつ物どころじゃなくて、BSEの対策でどうしたらいいのか、どうしたらいいのかというふうに頭を悩ませている現状のときに、負担を少しでも軽くしていくような方向性をつくるべきだというふうに私は思うんですが、このことに対する見解をお聞きしておきたいと思います。
梅津政府参考人 委員御指摘のとおり、家畜排せつ物法第七条三項では、情勢の推移により必要が生じたときは基本方針が変更できる旨の規定がございます。しかしながら、御承知のように、家畜排せつ物の不適切な管理によりまして、水質汚濁あるいは土壌汚染、悪臭、さらには硝酸性窒素等により、人の健康にも影響を及ぼしかねない要素がございます。こういった畜産環境問題の改善の必要性には変化がないというふうに考えられます。
 また、BSEの畜産経営に及ぼす影響を緩和するため、BSEマル緊事業等の各般の施策が講じられておりますので、現時点において、基本方針の変更は困難であるというふうに考えております。
菅野委員 梅津部長さん、本当に農家を回って見ているんですか。酪農経営や子牛取りや肥育農家というのはそこまで配慮して、そして環境に悪影響を及ぼさないような体制でもって今経営しているんです。
 それが法的に全部規制されて、そして今、地域と本当に共存してやっているにもかかわらず、この法律が平成十六年から適用されるとなれば、それまでに施設整備しなきゃいけない。今、何にも問題ない地域にも法的に枠がはめられるから、これを緩和してくれと言っているんじゃないでしょうか。それが、不適切な管理によって環境にも悪影響を及ぼしているという現状認識は、どこから来るんですか。そういう認識があったときに、畜産経営者は、今の部長の答弁だと、本当に努力して、環境に悪影響を及ぼさないように努力している姿を否定するものじゃないですか。
武部国務大臣 先ほどの三万円の話は、ちょっと委員長にお願いしますが、関連対策の中で、私どもそういうことを期待して今いろいろ構想しておりますけれども、決まった話ではありませんので、これはひとつ削除していただきたいと思います。
 そういう努力をいたします。そして、この乳牛の更新が円滑にいくように、そして廃用牛が出るように努力します。
 今の問題ですが、私ども、先ほど中林先生にもお答えしましたとおり、経営の安定対策についてさまざま、BSE対策を重厚に講じていくということによって、みんなで早く環境対策についてもしっかりやっていこう、そういう気持ちを持っていただけるような条件整備ということが一番大事ではないでしょうか。そういうことで努力をさせていただきたいということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
菅野委員 そこが大臣、後でそのことも聞きますけれども、経営が安定して、そしてそういうものにも取り組めるだけの、家畜排せつ物に回せるだけの余裕があるんだったら、私はこの場でこんな議論はしていません。今の畜産農家がそのことによって何年これから畜産経営ができるかどうかわからないところに追い込まれていって、そして新たな設備投資をしてまでもやらなきゃならないというふうに法に定められたときに、私たちはどうしていったらいいのか迷っている現状が今日の畜産農家です。
 そして、やめていこうかなというふうに考えている人たちも、この際だからやめていこうじゃないかと考えている人も多く出始めているこの時期に、いや、その部分は少し猶予を与えますよという形で農水大臣が発信していかない限り、畜産経営全体が行き詰まってしまうというおそれがあるから、私はここで質問しているんです。
 二年後、三年後に完全に経営が安定するという状況が見えるのであれば、こんな話はしていません。そこが見えないですから、ぜひ、このことは多くの国民の声として上がっております。一方では、環境対策も進めていかなきゃならないという命題もそこには存在しています。こことのバランスをどうとっていくのか、多くの議論を家畜排せつ物の部分で行っていただきたいというふうに思っています。
 それで、畜産物価格でこれからやっていこうとしていますが、そういう意味では、農業や畜産業、複合経営をやって、私の地域では複合経営的に米と畜産物でやっと農家経営が成り立っているという地域であります。北海道の猿払は酪農の複合じゃなくて専業地域であるというふうに、地域地域によって形態は違いますけれども、複合的な経営の地域においても、米価は下がる、それから畜産物価格は下がってしまっていっている。
 農家経営が大変だというふうに言われていますけれども、やはりこの際、多くの国民世論として、農業や第一次産業の部分で経営所得の安定対策というのをどう制度として取り入れていくのか、私はその時期に来ているんじゃないのかなというふうに思っております。
 武部農水大臣前には、このことは検討して、十分検討に値するということで進んでいたのですが、武部農水大臣になった途端にこの議論というのが消え去ってしまっているというふうに思っています。それで、先ほど、そういうことを抜きにして経営の安定に向けて頑張ってもらうしかないというふうに言われたって、農家は大変な状況に追い込まれているんじゃないか。経営所得安定対策をどうしていくのか、このことについて私は、直接所得補償制度というのをどう入れていくのか、これについての大臣の見解をお聞きしておきたいと思います。
武部国務大臣 先ほどの件については、今先生も環境対策ということでありましたので、都道府県や地方自治体の財政事情も厳しいということですから、そういったことも含めて早く進むように我々も努力したいと思っております。
 今、経営所得安定対策ということでございますが、これは経営実態というものをやはりできるだけ正確に把握するということがまず大前提ではないかな、このように考えております。その上で、どういう形で直接所得補償というものができるのかどうか。これも、WTOとの関連もありますし、合理的な形で進めなきゃならないというふうに考えております。
 今後、WTOの農業交渉の中で、我々、非貿易的関心事項、農業の多面的機能というようなことも日本提案で主張しておりますので、そんな中でもしっかりした主張をしつつ、水田がはっきり言って一番所得が減少しております。そういった中で、規模の問題もありましょうし、経営形態をどうするかということもこの委員会で議論がございました。そういったことをすべて含めまして、十四年度予算におきましては具体化検討のための調査費を新たに確保しているわけでございますし、調査を速やかに実行し得るように、関係機関、団体と連携して準備作業を着実に進めてまいりたい、このように考えているわけでございます。
 私になりましてから急に途絶えたということじゃありませんで、むしろ私になりましてから幅広くいろいろな見地から、集落営農や法人経営ということも含めて、農村あるいは農業が成り立っていく道はどうしたらいいのかということを積極的に提言させていただいている、こう思いますので、今後ともよろしくお願いしたいと思います。
菅野委員 武部農水大臣、今の方針は、説明は、新年度の概算要求をするときに大体説明されていたんです。その後、九月、十月、十一月と、BSEが発生して、そして畜産経営がどうなっていくのか、そういう状況になったときに、こういう事態を迎えているんです。そして、そういう事態を踏まえて、農水省として、あるいは農林水産大臣として、先ほども言いましたけれども、本当にこういう事態になったときに、前の答弁と今もそっくり同じ答弁をしているんです。そういう答弁を繰り返しているから、農水省として危機管理がないと言わざるを得ないということなんです。
 BSEの問題が起こって今日の状況になったときに、日本の畜産経営がどうなっていくんだろうか、そして畜産経営と複合経営をやっている、米と畜産と複合経営している農家がどうなっていくんだろうか、そこに具体的な支援をどうしていったらいいのかということを今日の状況で打ち出さない限り先に進んでいかないという危機感を私は持っているんです。
 大臣、今答弁をいただきました。それでは、これを調査して具体的に方向性を示すまでにどれくらいの時間をかけてやろうとしているんですか。
武部国務大臣 先生が経営所得安定対策のお話をしたから、私はそう申し上げたわけでございます。
 BSE対策はBSE対策で、諸般の対策を私ども真剣に取り組んで努力しているわけでありますし、これからもなお、先ほども一部、つなぎ資金の延長等々の話もさせていただきました。そして、財源のことについては、先生方から、これからも同じようなことをできるのかという御懸念といいますか、むしろ心配していただいての御発言もございました。私は、そういったことについては、責任持って生産者の方々に心配させないような努力をしてまいります、こういうふうに申し上げた次第でございます。
 BSE対策はBSE対策としてしっかり取り組んでいこう。そして同時に、今度のことで食品の安全の問題ということがクローズアップされてきているわけでありますから、そういったことについても新たな問題としてしっかり取り組んでまいりたい、こういうふうに申し上げている次第でございまして、御理解を賜りたいと思います。
菅野委員 私が言っているのは、個別対策によって農家は若干息をついているというところはあります。ただ、農家所得が本当に、大臣、聞いてほしいんですが、子牛生産農家、今までせいぜい収入があって四百万とか五百万で農家経営、総体的に経営を行ってきている中小の農家です。その人たちが大体百万、所得減になっているということです。一千万のところが百万減になって九百万じゃないんです。
 そういう農家の実態ですから、それは個別政策によって行われていっても、この百万をどうしていただけるんだ。月十万です。この状況が、どうしていったらいいのかと悩み苦しんでいる人たちがいるということを念頭に置きながら、これからの政策展開を進めていただきたいというふうに申しておきます。
 最後です。感染源の究明が今どのように行われて、どこまで進んでいっているんですか。そして、具体的に今どのようなことをこの感染源究明において行っているんですか。具体的に答弁していただきたいと思います。
武部国務大臣 現時点では、第二次中間報告におきまして発表させていただきましたが、感染源としての可能性は排除できない事項や、さらに確認を必要とする事項をある程度明らかにすることができた、このように思っております。
 まず、肉骨粉については、関係する配合飼料工場のうち四工場が同じラインで鶏、豚用の飼料を製造しておりまして、牛用飼料への肉骨粉の混入の可能性を完全に排除できない。九八年六月以前に輸入されたイタリア産肉骨粉は加熱処理が不十分である可能性が高い等が明らかになりました。汚染された輸入肉骨粉が何らかの経路を経て発生農家で使用されていた飼料等に混入した可能性が排除できない、このように考えておりまして、イタリアには専門家を派遣して、さらに追求してまいる所存でございます。
 また、三例の感染牛に共通して給与された代用乳の原料については、オランダ産の動物性油脂というふうに言われておりまして、その原料は牛の脂身であること、当該動物性油脂は純度の高いものである可能性が高いことが明らかになりましたが、三例に共通する飼料原料でもあり、現段階において感染源となった可能性を完全に排除できない、こういうふうに考えて、徹底究明を続けたいと思います。
 また、香港から輸入された肉骨粉の内容等の確認、あるいは魚粉工場が仕入れた食品残渣の確認を今行っているところでございます。かなりの工場になりますので、少し時間がかかるかもしれません。
 いずれにいたしましても、BSEの感染経路の究明に当たりましては、私ども体制も整備いたしまして、三月一日からは専門家も一人加えました。そういう体制も強化しまして、迷宮入りはさせないとの覚悟で全力を挙げてまいりたい、このように考えております。
菅野委員 終わります。
鉢呂委員長 これにて菅野哲雄君の質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
鉢呂委員長 この際、金田英行君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六派共同提案による平成十四年度畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鮫島宗明君。
鮫島委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、平成十四年度畜産物価格等に関する件の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    平成十四年度畜産物価格等に関する件(案)
  牛海綿状脳症(BSE)の発生は、畜産・酪農経営、関係事業者から消費者に至るまで多大な影響を及ぼしている。加えて、牛肉の偽装表示事件に端を発する食品の不正表示問題は、食と農政に対する消費者の信頼を損なわせており、我が国畜産・酪農を取り巻く情勢は極めて厳しいものがある。
  よって政府は、平成十四年度畜産物価格等の決定に当たっては、左記事項の実現に万全を期すべきである。
      記
 一 牛肉に対する消費者の不安を払拭し早期に消費を回復させるため、消費者をはじめ、加工・流通・飲食店等の関係事業者、学校給食関係者等に対する迅速かつ適正な情報提供と正確な知識の普及に努めるとともに、トレーサビリティーシステムの確立、実効性のある食品表示監視体制の整備を推進すること。
   また、BSEの感染源究明については、引き続き徹底して推進すること。
 二 BSE発生に伴う畜産・酪農経営の不振が依然として続いていることに対処し、経営所得安定対策、金融対策の継続・充実を図るとともに、事態の変化に即応して迅速かつ適切な対策を講ずること。
   また、廃用牛の処理が円滑に機能するよう、と畜場に対する指導の徹底等に努めるとともに、肉骨粉及び死亡牛を円滑に処理するため、関連施設の確保・整備を促進すること。
 三 加工原料乳生産者補給金の単価は、BSE発生による副産物価格の低迷などの実態を総合的に斟酌し、生産者の努力が報われ、生乳の再生産、経営の安定が図られるよう適正に決定すること。
   また、加工原料乳限度数量については、生乳の生産事情、牛乳・乳製品の需給動向を踏まえて適正に決定すること。
 四 牛肉・豚肉の安定価格及び肉用子牛の保証基準価格等については、BSEの発生等生産の実態に十分配慮し、再生産の確保を図ることを旨として、畜産農家の経営の安定に資するよう適正に決定すること。
   肉用牛肥育経営安定対策については、肥育農家の経営所得の安定を確保する観点から、十分な予算の確保等その充実を図ること。
 五 飼料自給率の向上等を図るため、自給飼料基盤の強化、生産性・品質の向上、飼料生産の組織化・外部化の推進、草地畜産の振興、国産稲わら・稲発酵粗飼料の生産利用の拡大等の施策を積極的に推進すること。
 六 家畜排せつ物については、地域の実態等に即した処理施設の計画的整備が進められるよう支援策を強化するとともに、環境と調和のとれた農業生産を確立するため、耕種農業との連携強化によるたい肥の利用促進や有機性資源の循環的利用を推進すること。
 七 安全かつ良質な畜産物を供給するため、HCCP手法を活用した衛生管理の向上を図るとともに、食肉処理施設及び乳業施設の再編整備を進めること。
   また、海外からの伝染病の侵入等を防止するため、輸入飼料等の検査・検疫体制の一層の充実・強化を行うこと。
  右決議する。
 以上の決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
鉢呂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
 この際、ただいまの決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣武部勤君。
武部国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に従いまして、最近の畜産をめぐる情勢を踏まえつつ、十分検討してまいる所存でございます。
鉢呂委員長 お諮りいたします。
 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 この際、休憩いたします。
    午後零時四十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十四分開議
鉢呂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 ただいま付託になりました内閣提出、農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案及び農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案の両案を議題といたします。
 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣武部勤君。
    ―――――――――――――
 農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案
 農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
武部国務大臣 農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 将来にわたる食料の安定供給と農業の多面的機能の発揮を確保するためには、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立することが必要であります。
 そのためには、効率的かつ安定的な農業経営を広範に育成していくことが急務であり、意欲ある農業の担い手が経営改善に必要な資金の融通を円滑に受けられるようにしていく必要があります。
 政府といたしましては、このような課題に対応して、農業近代化資金、農林漁業金融公庫資金及び農業改良資金について、資金内容の充実等を行うこととし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、農業近代化資金助成法の一部改正であります。
 農協等の民間金融機関の融資に利子補給する農業近代化資金について、現行の施設資金に加え、経営の改善を図るのに必要な長期運転資金を追加することとしております。
 第二に、農林漁業金融公庫法の一部改正であります。
 農業経営基盤強化促進法の認定農業者以外の農業の担い手が経営の改善を図るための農林漁業金融公庫の経営体育成強化資金について、その対象を土地利用型農業だけでなく、全農業種目に拡大することとしております。
 第三に、農業改良資金助成法の一部改正であります。
 都道府県の財政資金を無利子で貸し付ける農業改良資金について、特定の農業技術の導入のための資金から、農業の担い手が農産物の加工を始めたり、新作物に取り組む場合、あるいは新技術を導入する場合など、高リスク農業にチャレンジするための資金へと改めることとしております。
 また、都道府県からの直接融資方式に加え、農業改良資金についても、民間金融機関が都道府県から借り受けて農業者に貸し付ける方式を追加することとしております。
 第四に、農業信用保証保険法の一部改正であります。
 民間金融機関からの農業改良資金の融通が円滑に行われるよう、当該資金を農業信用基金協会による債務保証の対象に追加することとしております。
 続きまして、農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 効率的かつ安定的な農業経営を育成し、地域農業の活性化を図っていくためには、家族農業経営の発展の支援とあわせて、法人形態の農業経営の育成を推進していくことも重要であります。
 近年、農業法人は増加傾向にありますが、その経営内容は自己資本が少ないといった問題があり、農業法人が地域農業の担い手として健全に発展していけるようにするためには、農業法人の自己資本の充実を促進していく必要があります。
 政府といたしましては、このような課題に対処して、農業法人に対する投資の円滑化を図るための措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、農業法人に対する投資育成事業を営もうとする会社は、当該事業に関する計画を作成し、農林水産大臣の承認を受けることができることとしております。
 第二に、農林漁業金融公庫は、その業務の特例として、農業法人に対する民間の投資を補完するため、事業計画の承認を受けた会社が農業法人投資育成事業を営むのに必要な資金の出資の業務を行うことができることとしております。
 第三に、事業計画の承認を受けた会社は、農業協同組合法の特例として、農事組合法人に対して投資を行うことができることとしております。
 第四に、事業計画の承認を受けた会社であって、農協系統及び地方公共団体がその議決権の過半数を有しているものは、農地法の特例として、農業生産法人に対して投資を行うことができることとしております。
 以上が、これら二法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
鉢呂委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
鉢呂委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 農林水産関係の基本施策に関する件について調査のため、来る四月三日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る四月二日火曜日午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後一時四十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.