衆議院

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第11号 平成14年5月29日(水曜日)

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平成十四年五月二十九日(水曜日)
    午前十時六分開議
 出席委員
   委員長 鉢呂 吉雄君
   理事 岩永 峯一君 理事 大村 秀章君
   理事 金田 英行君 理事 原田 義昭君
   理事 佐藤謙一郎君 理事 鮫島 宗明君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    上川 陽子君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      小西  理君    後藤田正純君
      七条  明君    高木  毅君
      西川 京子君    馳   浩君
      浜田 靖一君    宮腰 光寛君
     吉田六左エ門君    安住  淳君
      井上 和雄君    石毛えい子君
      川内 博史君    小平 忠正君
      後藤  斎君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    楢崎 欣弥君
      堀込 征雄君    山内  功君
      江田 康幸君    高橋 嘉信君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
      藤波 孝生君
    …………………………………
   農林水産大臣       武部  勤君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   農林水産大臣政務官    宮腰 光寛君
   政府特別補佐人
   (公正取引委員会委員長) 根來 泰周君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   経済取引局取引部長)   楢崎 憲安君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         尾嵜 新平君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十九日
 辞任         補欠選任
  七条  明君     馳   浩君
  川内 博史君     安住  淳君
  楢崎 欣弥君     石毛えい子君
同日
 辞任         補欠選任
  馳   浩君     七条  明君
  安住  淳君     井上 和雄君
  石毛えい子君     楢崎 欣弥君
同日
 辞任         補欠選任
  井上 和雄君     川内 博史君
    ―――――――――――――
五月二十三日
 BSE緊急措置法の成立に関する請願(川内博史君紹介)(第三二七四号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三二七五号)
 同(佐藤敬夫君紹介)(第三二七六号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三二七七号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三三〇七号)
 同(佐藤敬夫君紹介)(第三三〇八号)
 同(堀込征雄君紹介)(第三三〇九号)
 同(松本龍君紹介)(第三三一〇号)
 同(生方幸夫君紹介)(第三三四一号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三三四二号)
 同(釘宮磐君紹介)(第三三四三号)
 同(五島正規君紹介)(第三三四四号)
 同(日野市朗君紹介)(第三三四五号)
 同(堀込征雄君紹介)(第三三四六号)
 同(石原健太郎君紹介)(第三四一九号)
 同(大森猛君紹介)(第三四二〇号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三四二一号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第三四二二号)
 諫早湾干拓事業の工事中止と再見直しに関する請願(川内博史君紹介)(第三二七八号)
同月二十九日
 国民の食糧と地域農業を守るための緊急対策に関する請願(中林よし子君紹介)(第三四七五号)
 タマネギに対するセーフガードの発動に関する請願(中林よし子君紹介)(第三四七六号)
 BSE緊急措置法の成立に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第三四七七号)
 同(達増拓也君紹介)(第三四七八号)
 同(中林よし子君紹介)(第三四七九号)
 同(細川律夫君紹介)(第三四八〇号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三四九九号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三五三三号)
 同(中林よし子君紹介)(第三五三四号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三五八三号)
 同(筒井信隆君紹介)(第三五八四号)
 同(金子哲夫君紹介)(第三六四〇号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三六四一号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第三六四二号)
 同(重野安正君紹介)(第三六四三号)
 同(中林よし子君紹介)(第三六四四号)
 同(春名直章君紹介)(第三六四五号)
 同(日森文尋君紹介)(第三六四六号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三六四七号)
 同(松本善明君紹介)(第三六四八号)
 同(山内惠子君紹介)(第三六四九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九四号)
 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
鉢呂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君、農林水産省生産局長須賀田菊仁君、水産庁長官木下寛之君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長楢崎憲安君及び厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上川陽子さん。
上川委員 おはようございます。自由民主党の上川陽子でございます。
 本日は、JAS法の改正ということで、トップの質問でございまして、気合いを込めて質問させていただきます。
 昨年の九月に、我が国で一頭目のBSE牛が確認されてから、半年余りがたちました。行政によります初期対応のまずさや、原因究明がなかなか進まないこともありまして、消費者や生産者の間に行政への怒りや不信が渦巻き、食の安全性に対する信頼が大きく揺らぐことになりました。そうした中にありまして、本来、消費者の不安解消のために講じられたはずの牛肉在庫緊急保管措置が、一部の業者の不正行為によりまして、食の安全性に対する信頼をさらに傷つけることになりました。
 ことし一月末に雪印食品によります牛肉の産地偽装表示事件が発覚して以来、二月にはカワイ、また三月にはスターゼン、全農チキンフーズ、さらに昨四月には全農東伯振興、ヒラタ、丸紅畜産、伊達物産。偽装表示の対象が、牛肉のみならず豚肉や鶏肉、さらには米やシジミなど、食品全体にまで広がっています。
 消費者は、食品の表示を唯一の手がかりにしながら毎日の食材を購入しています。それだけに、安全な食品を提供するはずの業者が、最低限の職業倫理を忘れ、悪意によって食品の表示を偽るなどということは、消費者に対する背信行為と言わざるを得ません。
 そこで、まず武部大臣にお伺いいたします。
 BSE問題に端を発して、今回、一連の食品の表示の偽装事件が起きたわけでございますが、一日も早い消費者の信頼回復ということにつきましては、全力をもって取り組まなければいけないわけでありますし、また再発防止ということにつきまして徹底して行う必要があるわけでありますが、その点につきまして、武部大臣の御所見、御見解をまずもってお伺いいたします。
武部国務大臣 先生御指摘のとおり、食品表示は、消費者の適切な選択に資するためのものでございました。つまり、消費者と生産者を結ぶ信頼のきずなであると言って過言でございませんが、お話のとおり、最近の食品の虚偽表示の多発は、消費者の食品に対する信頼を著しく損なうこととなったわけでありまして、こうした悪質な行為に対して、私どもも極めて遺憾にたえない次第でございます。
 一方で、監視体制など、今までの食品表示制度の運営や現行のJAS法自体にも改善すべき点があった、このように認識しておりまして、こうしたことを踏まえまして、農林水産省では、検査に対応可能な職員数の増強もいたしました。およそ千五百人から三千三百人にふやしましたし、また、食品表示一一〇番を開設いたしまして、広く国民から情報提供を受ける体制もとりました。また、食肉の表示実態調査の実施や食品表示ウオッチャーの設置等も行いまして、表示の監視体制を強化するということに全力を尽くしてきたところでございます。
 偽装表示を防止するためにはということで、今回、さらにJAS法について、罰則の大幅な強化を内容とする法改正を行うものでございまして、今後、食と農の再生プランを踏まえまして、消費者に軸足を置いた農林水産行政を展開する観点から、不正は見逃さないという方針のもとに、食品表示の実効性が確保されるように省を挙げて取り組んでまいりたい、かように決意を新たにしている次第でございます。
上川委員 ありがとうございます。
 今の大臣のお話の中に、消費者と食品の信頼のきずなということで、表示が非常に大事だというお話がございまして、そういう意味ではJAS法の改正、大変重要な改正というふうに考えておりますので、早速その内容につきまして質問をさせていただきたい、こんなふうに思います。
 今回のJAS法の改正、大きく二つの強化を行うことによって、消費者への正確な情報提供を確保しながら表示の実効性を高めることをねらったものということで、その二つというのは、違反した事業者名等の公表の弾力化、そしてさらに罰則規定の強化と考えております。
 そこで、まず公表の弾力化についてでございますが、現行のJAS法では、品質表示基準に違反した製造業者あるいは販売業者のうち、農林水産大臣によって表示改善の指示に従わなかった場合のみ事業者名等を公表できる、こういう規定だということでございます。言いかえれば、違反事実の公表は、ひとえに違反した事業者自身の対応、すなわち彼らの判断や同意にゆだねられているということになるわけでございます。
 現に、農林水産省の発表によりますと、これは平成十二年の七月から十四年の四月の情報でございますが、品質表示基準違反でJAS法に基づき国が指示した件数、十五件ということでございまして、うち、相手方の同意を得て公表したものが十一件、つまり、残りの四件は公表しなかったということでございます。
 私は、消費者に対して、先ほど大臣のお答えではございませんが、正しい情報を適切に、そして選択をしっかりとしていただくためには、大臣が指示を行ったケースにつきましては、すべて、しかも直ちに事業者名等の公表を義務化すべきではないか、こんなふうに考えているところでございます。
 今回の改正案では公表の規定そのものが全面削除ということでございますけれども、これによりまして、公表のあり方等につきまして今後どのように変わるのか、副大臣にお尋ねいたします。
遠藤副大臣 これまで、規定では、行政の指示に従えば公表しない、こういうことになっておる。ですから、従わなかった場合、改善しなかった場合については公表しますよということなんですが、その区別をなくしたということで、より一層消費者の食に対する安全や安心感というものを高めるということでございます。
 しかし、例えばBSEに関して申し上げるならば、本部長として、社名を公表することに非常にじくじたる思いもありました。日本の食品産業というのは非常にすそ野が広く、その分、経営基盤というものが希薄なわけでありまして、社名公表即倒産という例がもう御存じのように何件か出ているわけであります。
 善と悪というか正と邪というか、罪と罰というか、私たちが長年培ってきた良識という境界があいまいになってきてしまって、売れればいい、もうかればいい、ばれなければいいという、そういう風潮なのかなとじくじたる思いがしますが、今度の法改正によって、不正表示即公表ですよ、公表イコール倒産につながりますよという厳しい姿勢だということを、事業者にわかっていただくということにしてあるものであります。
上川委員 今の御答弁でございますけれども、そうしますと、今回、公表の規定を削除するということについては、即公表する、つまり行政の裁量の余地はない、こんなふうに理解してよろしいわけでございましょうか。
遠藤副大臣 行政の裁量といいますか、第三者の委員会をつくりまして、その中には消費者や法律家なども入ってもらってということも視野に入れております。それは、場合によっては行政不服審査を求められたり、あるいは国家賠償などを求められたりするケースも考えられる、そういう意味で、第三者的な委員会の決定というものも大事かなと。しかし、おっしゃるように、行政裁量の余地は非常に少なくなったということは言えると思います。
上川委員 先ほど農水省の方の開示したデータということでございますけれども、同意を得て公表した十一の案件ということで見てみますと、違反の内容が、表示をしていないという無表示のケースと、それからいわゆる原産地等を誤って記載したという意味での虚偽の表示という、二つのケースがありまして、無表示のケースは忘れたということもある中で指示をしていくということでございますが、いろいろなケースがあるわけでございます。
 私自身が感じますのは、虚偽表示でありましても、無表示でありましても、どのタイプのものであっても大臣が指示したものについては公表するというのを大原則にすべきと、こんなふうに考えているところでございますので、ぜひともそういう立場に立って御検討いただきたい、こんなふうに思うところでございます。
 それでは続きまして、監視体制についてお尋ねさせていただきますが、食品表示の適正化のためには、今申し上げたような公表とか、今回は罰則の規定が非常に強化されるということでございますが、同時に、先ほど大臣がおっしゃったように、モニタリングとか、あるいは食品表示一一〇番の開設とか、あるいは食肉につきましては実態調査を実施するなどのような形で、監視体制を非常に強化しつつあるということでございますけれども、それ以外のこれからの取り組みということも含めまして、どのような対応をしていくおつもりなのか、また現状はどうなのかといったことにつきまして、大臣、よろしくお願いいたします。
西藤政府参考人 消費者が表示を信頼して食品を購入できるようにするためには、先生御指摘のとおり、食品表示に対する監視体制を強化していくということが非常に重要であるというふうに私ども考えております。
 そのため、先ほど大臣からもお答えがありましたように、広く国民から食品表示に関する情報を受け取るということで、食品表示一一〇番を二月に設置しております。既に二千五百件を超える情報をいただいている状況にございます。フリーダイヤル化をしてこの強化を図っているところでございますし、新たに本年度から、消費者の協力を得て食品表示の監視を行う食品表示ウオッチャーの設置を現在準備中でございます。一部の県では既に実行に入っている状況でございますが、これも当初の予定を上回る設置ができるのではないかというふうに予定をいたしております。
 そのほか、検査に対応可能な職員数の増強、さらに二月下旬から全国五百二十二カ所で食肉の実態調査、今後これをさらに、青果物、水産物等の食肉以外のところも全国的な表示の実態調査をしていくというふうに考えております。
 そのようなことを通じて、私ども、監視体制の強化とそれに伴う実効確保ということで取り組んでいきたいというふうに思っております。
上川委員 今御指摘でありました実態調査、今継続中ということなんですが、いつごろその結果というのを発表なさるおつもりなのか、ちょっと補足的にお願いいたします。
西藤政府参考人 私の説明が不十分でございました。
 食肉に関する実態調査自体は、二月下旬から四月下旬まで実施いたしまして、五百二十二事業所について、帳簿類のチェックを含めて、立入調査に近い実態調査を実施させていただいており、先週その結果を公表させていただいております。
 表示の実行状況ということでは九割を超える、たしか九三%の事業所では完全に実施されておりますが、不表示の事業所があったり、ごく一部でございますが、伝票と表示の中身が一致しないというようなことが見受けられましたので、直ちに是正改善措置をその場で指示してきているという状況にございます。
上川委員 今、モニタリングとか実態調査ということでございますけれども、それは虚偽表示という形を事前に防止するという予防的な意味があると同時に、その行為を通じて不正をある意味では表面化していく、この効果があると思うのですけれども、無表示というようなケースの場合には、比較的そういう日常的な調査の中で結果が出てくるたぐいのものです。
 虚偽につきましては、先ほど局長がおっしゃったように、かなり帳簿に入りまして実態についてきめ細かく得なければいけない。これは企業の中の経営情報に入るわけでありますので、機密にかかわる部分もあるということでございまして、なかなかそれはある意味では行政がかなり主導的にやらないとうまく情報が得られない、こんなたぐいのものである、こんなふうに思うところでございます。
 虚偽の表示等について、内部に立ち入ってやる場合の一番入り口の情報としては、事業所の中の従業員の方とかからの内部の告発というような形での情報の部分が非常に重要になってくる。ここの相手の同意を得て公表した十一件につきましても、そうしたタイプの一次情報というか、データが一番多かったというようなことでございまして、そういう情報の提供がきちっと促進されていくということは非常に大事だ、こんなふうに思うわけであります。
 イギリスとかアメリカでは、こうした企業内部の情報提供者については、社内で不利な条件で仕事をするということにならないように、保護の規定ということで法制化をしているということでございますけれども、日本の場合につきましては、この内部情報の提供者に対しての保護の問題、さらには法律に持っていく意思についての見通しということについてお聞かせいただきたい、こんなふうに思います。
西藤政府参考人 最近の食品の偽装表示にかかわる事案におきましても、内部関係者からの情報が契機になっている例もございます。私ども、立入調査の事例においてもそういう状況がございます。そういう点で、内部情報提供者を保護する制度を検討すべきという御意見があることは十分承知いたしております。
 また、国民生活審議会の中の消費者政策部会から、先般、四月だったと思いますが、出された中間報告の中で、消費者に信頼される事業者となるための自主行動指針において、今後、一層の検討が必要な課題の一つに、公益通報者保護制度が位置づけられております。内部情報提供者を保護する制度については、この中間報告でも指摘されておりますが、食品表示に関する法令違反だけに限定されるわけでは当然ございませんで、幅広く検討される必要があるというふうに位置づけられております。
 一方、ただ先生、内部情報提供者を保護する制度そのものについては、我が国の企業文化や風土になじむものであるかという御意見もあるような状況でございます。検討に当たっては、こういう考え方も踏まえる必要があるというふうに思っております。
 私ども、当面、とりあえず、さはさりながら、偽装表示を防止するためには、やはり食品を扱う企業のモラルを向上させることが重要だ、こういうことで、業界の自主的な取り組みということで、現在、食品産業関係の企業の集まりの中でその指針の策定作業も行われております。そういう中で、そういう内部情報の扱いについても一つの自主的な枠組みをつくろうではないかという検討もされているように聞いております。
 そういう点で、私ども、こういう企業の自主的な取り組みを引き続き促し、食品の偽装表示の防止に努めていくという取り組みもあわせて実施していきたいというふうに思っております。
上川委員 ぜひ新しい仕組みということで検討を幅広くしていただきたい、こんなふうに考えているところでございます。
 最後になりまして、一つ最後の質問をさせていただきますけれども、今回の食品表示に関します規制につきましては、BSEの調査検討委員会の報告書の中で、「現在の各種表示制度について一元的に検討し、そのあり方を見直す必要がある。」こういう一文がございます。
 今回の牛肉等の部分についてちょっと調べておりましたところ、四十年の歴史を有するいわゆる景品の表示法、不当景品類及び不当表示防止法という名称でございますが、これに基づく不当表示規制ということになりますと、この景品表示法の四条で、第一号、第二号ということで、品質等についての優良誤認、そして、公正取引委員会が指示する表示、この二つが規定されております。今回の食肉に関する虚偽の表示事件に関しても実際にこの法律が適用される、JAS法と同時にこの法律が適用されて、公正取引委員会によって摘発が行われている、こういう状況でございます。
 罰則規定ということで見まして、今回JAS法の改正で強化されるわけでありますが、この罰則規定を、この二つの法律を比較してみますと、これに大きな違いがあるということでございまして、そういう意味での法制度面での整合性ということについては問題がある、こんなふうに思うところでございます。
 このほかに、食品衛生法、さらには不正競争防止法ということで四つの法律が今現在進行しているわけでございますが、これらを一元的に統合していくという中での、安全ということでの消費者に対しての大事な取り組みをしていくということが必要ではないか、こんなふうに思うところでございます。
 六月に何か一元化に関する検討懇談会というものを開催するということでございまして、具体的にこの懇談会で、その一元化に向けて、将来のどのようなものを目標にしながら、どのような検討課題を持って、またどういうタイムスケジュールというか見通しを持ってお取り組みになられるのか、最後に質問させていただきたいと思います。
西藤政府参考人 表示制度につきまして、BSE問題に関する調査検討委員会の報告の中での御指摘は、先生御指摘のとおりでございまして、私どもそれを受けまして、厚生労働省と連携いたしまして、これはもちろん公正取引委員会も参加をいただいて、消費者も参加していただいた検討の場ということで懇談会を設置して、第一回目を六月七日に実施したい、しかも、この懇談会自体はオープンな形で実施していきたいというふうに思っております。
 現在の表示の状況の中でも、同じ表示項目に異なる用語が使われている等、消費者から見て非常にわかりにくいという御指摘もいただいております。こうしたことは我々十分念頭に置きながら、懇談会では、食品表示のそれぞれの目的、あるいは表示の内容、監視体制等々について、現状をすべて提示いたしまして一元的に御論議いただきたいというふうに思っておりまして、時期的にはこの夏をめどに中間的に整理をさせていただきたいというふうに思っております。
上川委員 時間が来ましたので終わらせていただきますが、先ほど大臣が、これから食と農の再生プランの中で消費者に軸足を置いて進めるということを述べられましたけれども、ぜひともそういう視点で、これからルールを明確にしていくということについて御検討いただきたいと申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて上川陽子さんの質疑は終了いたしました。
 次に、後藤斎君。
後藤(斎)委員 民主党の後藤斎です。
 まず、JAS法の本論に入る前に、厚生労働省の方に幾つか確認をしたいと思います。
 四月二十五日、当委員会で、農林水産消費技術センターで検査をしたサヤエンドウの中に残留農薬が検出をされ、基準値以上でありました。シペルメトリンという残留農薬があったにもかかわらず、消費技術センターからの通報が厚生労働省の方には行った、行かないということで、グレーのまま終わっております。冒頭、そのときに宮路副大臣から、きちっと調査の上、相互の連携も含めて御回答を申し上げたいという御答弁をいただいております。
 宮路副大臣、シペルメトリンの話、その後どんな形で、両省の連携がうまくいかなかったことを含めて御答弁をちょうだいしたいと思います。
宮路副大臣 前回後藤委員から御指摘のあった点なんでありますが、その後、よく私の方でも調査をしてみました。
 その結果判明いたしましたことは、農水省の方で、御指摘の中国産サヤエンドウについてシペルメトリンが基準値を超えているということの検出の結果が出たのが三月の二十八日である。そして、その連絡が私ども厚生労働省へ参りましたのが、公表される四月十二日の直前に私どもの方へその旨の連絡が入っておるということでありました。したがって、その当該サヤエンドウは、その時点では、その検体以外の部分ということになるわけでありますが、それは既に市場においても消費をされておりまして、回収等の措置を講ずる、そういう余地はなかった、残念ながらそういうことであります。
 当方といたしましては、中国産サヤエンドウについては、これも以前から委員御指摘のとおり、平成十一年の七月から、命令検査の対象としてサヤエンドウの輸入検疫を行ってきておったわけでありますが、農水省におけるそうした買い取りと、そして検査結果が出ましたことを踏まえまして、ことしの四月の十二日以降、その命令検査をさらに強化することにいたしまして、検体の採取量を二倍にするということにして、現在、一層のそうした強化された体制のもとで検疫に当たっている、こういうことであります。
 その結果、今までのところ、二百件近い件数について命令検査をやった結果、百八十一件ですね、そのうち一件について違反事例が発見されているというような状況でございます。
後藤(斎)委員 今の答弁、副大臣、要するに、今後としたら、両省もっと連携を、以前も確認をして、副大臣、そうだというふうにお話しになられましたが、農水省と連携、やはりうまくいってないんですよね、今。副大臣がいみじくも、調査をしてから公表するまでの期間、そして、回収もせずに、結局市場に流通してしまった。これだと、水際で幾ら例えば命令検査、検体を倍にして厳しくして、でも国内に実際入っている、それを食べちゃっている、回収指示もしない。この辺、これからどうなさるんでしょうか。
宮路副大臣 御指摘のように、先ほどの経過をたどっていきますと、もう少し連絡体制がきちっとしておけばよかったなというような気もいたします。ですから、その点はその後、私ども厚生労働省としても、農水省の方にその旨の申し入れと申しましょうか、要請をさせていただいておるところでありますので、今後、この点の改善をぜひ図って、そして従来から指摘されております縦割りの弊害というものを解消できるように努めていかなきゃならないというふうに思っております。
後藤(斎)委員 その後、農林省としては、農林水産消費技術センターの方で同様の検査をして、その後、厚生労働省とはきちっと連携をとって対応なさっているんでしょうか。
西藤政府参考人 私ども、輸入野菜の残留農薬問題につきましては、農林水産消費技術センターで、これは私ども水際ということではなくて、市場流通しているものを買い上げて、それを分析し、結果を見るという形で緊急に始めました。十三年度、そういうことで実施いたしましたが、十四年度は検体数も増加して継続実施していきたいと思っておりますし、今御指摘を受けた連絡調整体制も、密接な連携ということで取り組んでいきたいというふうに思っております。
 事実関係だけあれすれば、今回の事案についても、やはり分析に一定のどうしても時間がかかるという状況の中で、三月二十八日、四月十二日、十一日というあれはありますが、正式の通報はあれですが、我々、こういう動きがあるという事務連絡的な情報提供は不断に行っているという状況にあるというふうに理解をいたしております。
後藤(斎)委員 ぜひ宮路副大臣、今局長からもお話があって、これは本当に両省の連携をきちっとしていかないと、ようやく食のいろいろな将来の方向性が安全性に対してできた今日でありますが、結局は連携がうまくいかずにもとのもくあみであるということは決して私はあってはならないことだと思いますので、ぜひ今後とも、その点につきまして十二分な連携をお願いしたいと思います。
 厚生労働省に引き続いてお聞きをしたいと思います。
 ジョナサンのホウレンソウから、これも以前残留農薬で御指摘をしたクロルピリホスが検出をされ、今大変な社会的な問題になっています。これは冷凍野菜を輸入して、生鮮ではありませんでしたが、それが結局自治体の検査で出て、今、回収命令が出てという話になっております。
 これにつきまして、世の中かなり厳しく指摘をしておりますが、厚生労働省として、何でこれが入って、要するに、回収命令まで食品衛生法に基づいて対応なさっているのですが、簡潔で結構です、この事件の経緯と、今後、厚生労働省としてどんな形で対応なさっていくのか、簡潔に御答弁をお願いします。
尾嵜政府参考人 今御質問ございましたように、都内のファミリーレストラン等外食店の調理されましたホウレンソウ製品につきまして、残留農薬検査から、御指摘のような農薬が検出されたということでございます。四月二十六日、そういう報道がございまして、この報道を受けまして、私ども、東京都の方に対しまして、調査を行うように指示したところでございます。
 ファミリーレストランの使われております、原材料として使用された冷凍ホウレンソウから基準値を超えるクロルピリホスを検出したため、東京都は五月二十三日、その結果を公表しまして、同時に、当該違反品の回収を指示したところでございます。
 こういった経緯に関しまして、厚生労働省では輸入時の検査の強化をやっているわけでございまして、中国産の冷凍ホウレンソウにつきましては、四月二十二日、これ以前からでございますが、生鮮物も含めまして全届け出に対しまして有機燐系の農薬のモニタリング検査を実施しておりまして、継続して違反が確認されましたクロルピリホスにつきましては、五月十四日以降、基準に適合したもののみ輸入を認めるというふうな対応をしているところでございます。
 また、四月二十二日から、中国産の冷凍ホウレンソウにつきまして、有機塩素系農薬についても検査を強化しておりまして、五月二十日に有機塩素系の農薬の一種でありますディルドリンが検出されまして、こういったものにつきまして、生鮮のものを含めまして全届け出に対しまして有機塩素系の農薬の検査を行いまして、検査結果が確認された後でなければ輸入を認めないというふうな対応をとっているところでございます。
 いずれにいたしましても、命令検査をかけたり、あるいは全届け出件数をモニタリングで検査しておるというような対応をとっておりますが、そういった状況の中でも、こういった市中に出回るようなものがゼロではないというふうな事実がございます。こういったものにつきまして、繰り返し違反分が出た場合には、私ども、中国大使館の方にそういった品目について輸出をしないようにということを要請しているところもございます。
 以上でございます。
後藤(斎)委員 ジョナサンのホウレンソウの件については、今のような形で、今後、中国政府も含めて、安全なものを輸出するように要請をなさっているということであります。
 が、また、この間にダスキンで、肉まんに、食品衛生法でこれも禁止されている酸化防止剤が入っていたということで、またこれも大きな問題になっています。検査基準があるものについては今部長がお答えになったとおりであると思いますが、もちろんこれは使用禁止をされている酸化防止剤が使われていた。この件につきまして、これも経緯とこれからの対応方針について、簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。
尾嵜政府参考人 今御指摘のダスキンの件でございますが、この経緯につきましては、五月十五日に農林水産省に、株式会社ダスキンが販売いたしました飲茶の「大肉まん」に指定外添加物のTBHQが使用されていたという旨の情報提供がございまして、その告発文書を農林水産省の方から私どもの方に報告を受けたわけでございます。そういう報告を受けまして、直ちにダスキン本社を管轄いたします大阪府に対して調査を指示したということでございます。
 その後、大阪府からの報告によりますと、平成十二年四月から十二月までの間、ダスキン株式会社が販売しました中国産の肉まんに使用した食用油に、我が国の食品衛生法で指定をしておらない保存料、今申し上げました保存料が含まれていたという状況でございます。その数量については、大阪府からの報告でございますと、一千三百十四万個という量でございます。
 それと、ダスキン株式会社の方は、こういった当該事実を平成十二年十一月末に確認したということで報告を受けておりまして、そういう確認をした後も十二月まで継続して販売をしていたという状況でございます。
 私ども、大阪府に対しまして、一つは、五月二十二日に、現在販売しております肉まんの安全確認という点、あるいは同社での安全確認体制の改善というところを大阪府の方から指示していただいたということでございまして、厚生労働省としましては、ダスキンに対しまして厳正な措置をとるように、大阪府に今要請をしているところでございます。
後藤(斎)委員 厚生労働省としては、すべて今大阪府にお任せをして、食品衛生法に基づく罰則は適用しないということなんでしょうか。
尾嵜政府参考人 食品衛生法違反につきましての行政処分につきましては、都道府県知事が行うことになっておりまして、私ども、大阪府からも相談を受けておりますし、今申し上げましたように、大阪府には厳正に対処するように要請をしているところでございます。近々処分の内容が決まるものというふうに考えております。
後藤(斎)委員 記者発表してから、ダスキンはその後も販売したという事実もあるやに聞いています。その点一点確認して、処分をする際にそれも加味されるのかどうかも含めてお答え願います。
尾嵜政府参考人 今御指摘のございました内容も含めて、大阪府には詳細な報告を求めておりますが、新聞でも報道されておりますように、警察の方が立ち入ったということで、今まだ詳細な報告書なり報告を大阪府から受けていないという状況でございます。
 今の御指摘の点も大阪府に確認をして、報告の中で私どもの方にきちんと整理をしていただきたいという要請をしてまいりたいと思っております。
後藤(斎)委員 ぜひそういう形での、大阪府への指導も含めて、お願いをしたいと思います。
 今の点は、まさに冒頭申し上げた食の信頼回復に対する本当に大きなまた逆風だというふうにも思っております。
 せっかくここまで行政の皆さん御努力をされ、また事業者の皆さんも御努力をされている中での対応、これはもっと、表示に関して大きな問題があったときには、食衛法に基づいて、ことしの一月から食肉を中心に、JAS法とも相まって、食品衛生法の表示基準違反というものを集中的に検査されています。
 私は、今、本当にこれからの食の安全性をきちっと確保していくには、この肉まんに見られるような件も含めてきちっとしたベースの実態の調査をすべきだと思うんです。副大臣、食品衛生法に基づく、表示だけではなくて、その点、いかがでしょうか。
宮路副大臣 私どもの食品衛生法の検査は、輸入検疫については国の方で行っている。一方、国内に流通しているものについては都道府県の、主として保健所でありますが、保健所の衛生監視員を中心に監視を行っている。
 そういう体制で取り組んでおるところでありますけれども、御指摘のように、昨今のこうしたもろもろの事案の発生を考えますときに、そしてまた消費者の皆さんの食の安全に対する関心の高まりということをあわせて考慮いたしますときに、委員御指摘のように、表示の問題のみならず、食品の安全という観点から、所定の検査についてきちっと、一段と力を入れて取り組んでいかなきゃならない、このように思っております。
後藤(斎)委員 もう一点、厚生労働省に御確認をしたいと思います。
 先週から今週にかけて、スウェーデンとイギリスから研究発表がされております。ポテトチップスと限定していいかどうかはありますが、かなり発がん性の高いアクリルアミドという物質が検出をされたと。
 これをいろいろな報道等で確認をしますと、アクリルアミドについては、もちろん今我が国には、基準も決まっておらない。もっと問題なのは、国内にはアクリルアミドを検出するシステムがない。検査は当面始められないと厚生労働省が発言をなさっているようでございます。
 この問題について、今まで武部大臣とも予防行政という観点をきちっと話をさせていただいて、今まさに行政機関を含めて大きく生まれ変わろうとしているときであります。リスク評価という観点も含めて、厚生労働省として、今後、スウェーデンやイギリスのその研究も含めて、このアクリルアミドの問題についてどんな形で対応なさっていくのか、御答弁をお願いします。
尾嵜政府参考人 今御指摘ございましたように、新聞報道がなされたわけでございますが、厚生労働省として、現在、本研究に係ります分析方法が公表されていないということ、あるいは、アクリルアミドの毒性評価に関する知見がまだ十分でないというふうなことも踏まえまして、国立医薬品食品衛生研究所におきまして分析方法あるいは毒性に関する情報収集というものを進めていただいておるということでございます。
 また、今後発表されます当研究結果の詳細や、あるいはWHOの方で六月に、六月の末でございますが、この件に関しまして、各国の専門家を招集して、これをどう評価するのかという会議を予定いたしております。それにも我が国からの研究者を派遣して、検討の中に十分加わっていただいて、その内容を整理したものを私どももまた判断のもとにしたいというふうに考えているところでございます。
後藤(斎)委員 ぜひ前向きに、何かあってからでは何にもなりませんから、予防行政という観点から、ぜひ積極的に対応なさることをお願いします。
 JAS法の本体に入りたいと思います。
 食の偽装表示というのは、文献で見られる中ではローマ時代からあったというふうに伝えられております。ワインにアロエを入れた人工熟成をしたり、パン屋さんで酸化マグネシウムを白い粉と称してまいたりという時代から始まったと言われています。一番大きな社会問題になったのは、十九世紀になってからイギリスでミルクやビールに水をまぜたり、砂糖に銅の粉をまぜたり、そんな中で非常に社会的弱者と言われている消費者の方が大きな影響を受けた。それで、イギリスでは一八六〇年に食物及び薬剤粗悪化防止法というのが成立をしております。
 つい最近農家の方のお話をお聞きしたら、その地域はイノシシやスズメが出る地域であります。私たちは、食を見分けるときに、表示というものを見なければ、それが国産であるか、どこの地域で産出されたかわかりません。イノシシやスズメは、コシヒカリであるかどうかというのがわかるそうです。コシヒカリのところはスズメやイノシシが食べるそうですが、それ以外の生産性が高いお米は食べないという話を複数の方から聞いておりますが、かなりの確率で……(発言する者あり)スズメもそうらしいです、最近は。ということは、最近美食になったということかもしれませんが。
 そんな中で、大臣に冒頭お尋ねをしますが、大臣は四月になってから食と農の再生プランということを御公表なさって、先ほども御議論がありました、消費者に軸足を移した農林水産行政を進めると。このJAS法がその中でどんな意味合いを持つのか。
 私は、昭和二十五年にJAS法が規格という部分がまずメーンになってスタートをし、三十二年前、一九七〇年に品質表示制度もつけ加えられて現行に近い形になりつつあって、まだまだ、先ほど冒頭お話しした経緯の中では、日本の中ではまずおなかを満たすこと、それから安全性ということが、今品質から安全ということにまた移り変わっている。その時代背景の中で、大臣、この食と農の再生プランの位置づけも含めて、簡潔に御答弁をお願いします。簡潔で結構です。
武部国務大臣 一言で言いますと、消費者保護第一ということの原則がこの食と農の再生プランの原則であり、理念と言って過言でありません。
 委員も今いろいろ述べられましたように、消費者というものは、どこでどのように自分が食しようというものがつくられているのかということは、なかなか知る機会がないわけでございます。
 これまで農林水産省というのは、生産者サイドに立って、食料の供給側の視点で行政を進めてきたということは否めない、私はこう思うわけでありまして、やはり食する消費者の皆さん方に安心していただける、あるいはおいしい、そして新鮮なものを供給して初めて消費者の皆さん方は食料、農産物を召し上がっていただくわけでございますので、この食と農の再生プランの原理原則というのは、消費者保護第一、そういうフードシステムを確立していこうということであり、この食を支える農業の構造改革というものを加速化していこう、そして、食と農というのは一つの鎖というよりは環の中にある、こう思っております。
 最終的には、私は、食と農、この両方が目に見える関係というのは、都市と農山漁村で行き交う双方向のライフスタイルではないか、こういうふうなことを基本にいたしまして、食と農と美の国づくりに向けた食農一環政策という考え方でこのプランを構想しているわけでございます。
後藤(斎)委員 内容について入りたいと思います。
 生鮮食品につきましては、平成十二年、ちょうど一年半前から生鮮食品の品質基準が適用されています。まだまだ中小の小売店の方を含めてその表示が十二分に対応されていないものがありますが、野菜、水産、畜産という大ざっぱなカテゴリーで結構です。それぞれどの程度のまず遵守状況なのか、御答弁をお願いしたいと思います。
西藤政府参考人 一昨年、平成十二年の七月からすべての生鮮食料品について原産地表示をお願いしているところですが、原産地表示の実態の調査につきましては、逐次実施をしてきております。
 若干時期の古いものもございますが、順次申し上げますと、野菜につきましては、昨年一月に全国の小売店舗約一万二千五百店舗、かなり大がかりの調査でございますが、原産地表示の実施状況の調査を実施しております。
 全部に原産地を表示している店舗はこの一万二千五百余のうち三分の一、三二%、八割以上の野菜について表示している店舗と合わせて五五%程度でございました。ただ、これは専門小売店も含めての数字でございまして、スーパー、百貨店等の量販店ではこの比率が一〇〇%に近い状況になっているかというふうに記憶をいたしております。
 水産物につきましては、十二年十一月に全国の小売店舗約一千店舗でございますが、原産地調査を実施しておりまして、同様に全部について表示していたものが三六%、八割以上を含めて六一%という状況でございます。これも量販店と専門店との間にかなりのギャップがございました。
 畜産物につきましては、全国の五百二十二事業所について今年の二月下旬から先月末まで調査を実施しまして、全部に原産地を表示している事業所は九三%。
 このように、青果物、水産物については、調査時点が古いこともありまして原産地表示の実施率が高くないという結果が出ておりますが、私ども現場でモニタリングを行っている担当者の感触を総合いたしますと、特に本年一月以降、食品表示問題がいろいろ御論議される状況になって以降、青果物や水産物についても実施率はかなり高くなってきているというふうに思っております。
 しかし、そういう状況ではございますが、青果物、水産物、畜産物以外の品目についても実地調査を実施して、状況の把握と普及に努めていきたいというふうに思っております。
後藤(斎)委員 私は、この点について今局長から答弁をいただきましたように、この一年半たってもなかなか全体像が見えない。これは私は、人的なものの配置がまだ法の改正が行われたにもかかわらずできていない、それにまず尽きてくると思います。
 もう一点、同様の観点で確認をいたします。表示をする際、例えば有機野菜と一般野菜、養殖水産物と天然水産物、国産畜産物と輸入畜産物、これにつきましてなぜ先ほどお話がありましたように偽装というものがあるのか。もちろん、一般野菜よりも有機野菜の方が二割から三割くらい高い値段で売れる、養殖水産物よりも天然水産物の方が高く売れる、例えば国産の食肉の方が輸入食肉よりも高く売れる。もちろんその地域でのそれぞれのブランドがありますが、それに尽きると思います。
 どのような形で表示を確認なさっているのか、野菜、水産、畜産についてそれぞれお伺いをいたします。
西藤政府参考人 まず、有機の表示、特に有機と表示されております野菜についての状況でございますが、私どもモニタリング調査を実施いたしておりますが、そのときの確認の状況でございますが、一つは、有機の場合、有機JASマークが付されているかどうかを当然確認いたしまして、有機JASマークが付されているものについては登録認定機関が表示、あわせてわかりますので、登録認定機関を通じて生産記録等の確認を行う。そのほか、必要に応じまして、有機でございますので残留農薬の分析を実施し、その真偽を確認していくという、いわば科学的手法も導入してチェックをしていくということでモニタリングを実施いたしております。
 一方、今御指摘がありました養殖水産物と天然水産物、あるいは国産畜産物と輸入畜産物という点で申しますと、DNA分析等、科学的な手法による判断がこの場合困難でございます。仕入れ伝票のチェックや仕入れ先への照会等、いわば社会的な検証によってその確認を行っている状況にございます。(後藤(斎)委員「肉は」と呼ぶ)失礼しました。
 国産畜産物と輸入畜産物という状況も、天然の水産物等と同様でございまして、現状ではDNA分析等で峻別できるという状況にございません。そういう点で、社会的な検証により確認を行っている。立入検査等でいろいろ指示を行った事案についても、仕入れ、販売の伝票チェック等を通じて事実の確認を行ってきたという経過がございます。
後藤(斎)委員 では、まず有機野菜の点について御確認をしたいと思います。
 モニタリングを認証機関にさかのぼって、なおかつ科学的分析も含めて対応なさっているというふうにお話をされておりましたが、逆に言えば、JAS、有機JASというものを認定されると、基本的にはほとんど、それが何も問題なければ続いていく。ただ、その中に一部まぜたりどうこうというのが、今まさに偽装、ないしという問題で社会的な課題になっていますけれども、どの頻度でどなたがそのモニタリングの検査をなさっているんでしょうか。
西藤政府参考人 私、手元に有機のモニタリングの事例、昨年の状況をあれしておりますが、有機と表示されていた九十五点のものを買い上げまして、分析、調査したという状況でございます。点数的には、ちょっと今年度の実施点数、つまびらかではございませんが、同様のモニタリングを実施していくという予定になっているというふうに理解をいたしております。
後藤(斎)委員 では、ちょっと観点を変えてお話をしたいと思います。
 品質表示基準によりますと、畜産物が、生体を輸入して三カ月たってしまうと国産の牛に変身をいたします。輸入生体の牛だけで見ますと、昨年、特に肥育用が多いわけですが、平成十三年で一万九千三百十三頭輸入がされております。私は、なぜ三カ月たつと、例えばオーストラリアから来た牛が国産になり、それが国産品として売られていくのか、ちょっとこの記述を見たときよくわかりませんでした。
 なぜ三カ月たつと、オーストラリアの牛が日本産に、そして例えば、県名を挙げるといろいろ問題があるかもしれませんが、Aという県の産出になってしまうのか。それがブランド性が高ければ高いほど、それは国民の目を、逆に私は行政がそれを促進しているようにも思うんですが、なぜこの三カ月とか、豚では二カ月、そういうルールがあるのか、御見解をお伺いしたいと思います。
西藤政府参考人 輸入家畜、牛は委員御指摘のとおりの輸入状況にございますが、輸入家畜を国内で屠畜して生産された食肉を国産品として扱うためには、国内で飼養することによって食肉としての品質に変化が生じていることが必要になるという考え方に基づきまして、この変化が生ずるに足る一定期間、国内で飼養された家畜の食肉について国産として表示をする。
 牛で申し上げれば、乳用種と和牛で肥育期間が異なりますけれども、乳用種で二十カ月齢強、和牛でも三十カ月齢の肥育をしていると思いますが、技術的に見ますと、最後の三カ月がまさに仕上げ肥育というような形で、飼料の給与体系等も異なっているという実態があるというふうに聞いております。
 そういう点で、牛にあっては、一般的に肥育の最終段階で仕上げ用の飼料を給与し肉質の向上を図ることとする、その給与期間が技術的に見て大体三カ月程度であるということで三カ月、豚についてもそういうような議論の中で二カ月というふうに設定をいたしております。
 一方、委員御指摘の点から申しますと、確かに、出生地なりあるいは肥育地なり、畜産物の場合、移動するわけでございますので、食肉の生産に関する情報について幅広く消費者に提供すべきである、そういう御意見はもっともなところであります。
 そういう点で、現在、牛肉を手始めとしたトレーサビリティーシステムの導入について検討しているわけですが、そのような生産履歴情報を消費者に提供することで、御指摘のような問題についての対応があわせてできるのではないかというふうに考えております。
後藤(斎)委員 私は、このルールはやはり外していただかなければ、まさに先ほども御指摘をした、何か行政のルールが非常に付加価値の高いところに、例えばトン当たりというか一頭何万円かで持ってきた肉が、その十倍、二十倍で売られるというのはどうも解せないというか理解ができないんです。
 これは水産庁にいただいた資料ですが、今、ブリについても天然物が六万四千トン、養殖物が十五万トン、大体もう養殖の方がブリ類については七割くらいになっています。マダイについては天然物が一万五千トン、養殖が七万五千トン。先ほど局長から御答弁いただいたように、これはなかなか科学的な分析ができないので、仕入れ伝票からフォローしていると。
 では、水産物につきまして、仕入れ伝票というのはどの頻度で、だれが仕入れ伝票の検査をなさっているんでしょうか。
西藤政府参考人 私ども、立入検査の実態を申し上げれば、私どもの消費技術センターの職員、農政局の職員、あわせて県の御担当の方と一体となって立入検査を実施し、その中での事実確認を行ってきているという実情にございます。
後藤(斎)委員 では、野菜、先ほどお話をした畜産も含めて、水産物の立入検査をやった回数、そして、それに要した人数について教えてください。
西藤政府参考人 一昨年七月以降の、農林水産省といいますか、国が立入検査を実施した回数は、お米を含めてでございますが、千三百三十九件に達しております。そのときの人数、どれだけの人員でどうだというのは、正確にそのものを記録いたしておりませんが、農林水産省で立入検査ができる職員がこの三月まで約千五百名でございましたので、その範囲内で実施をしてきているという状況にございます。
後藤(斎)委員 もうちょっと角度を変えてお話をしたいと思います。
 認定事業者は、国内で二千七百五十七件、海外で四百一件、これは一番新しい数字だと思いますが、合計三千百五十八件の認定業者の方がいらっしゃるというふうに聞いています。
 これにつきまして、農林省としては、この方たちが認定を受ける際には審査を、申請書を受け取って、それぞれの項目が認定業者に合うかどうかという御判断をなされていると思いますが、少なくとも法律に基づくと、五年間の認定事業者の資格期間があるというふうに規定をされております。その五年間以内での認定事業者に対するチェックというのは、どのような形でなさっているんでしょうか。
西藤政府参考人 委員のお尋ねは、登録認定機関に対するいわば監視、登録後のフォローアップということと、あるいは、先ほど三千幾つというお話がございましたので、そういう認定事業者に対するチェックがどうかという二段のお尋ねかというふうに思います。
 まず、登録認定機関、例えばこれは有機ですと六十二だったかと思いますが、六十余が登録認定機関になっていると思います。それが適切な認定業務を行っているかどうかにつきましては、毎年一回、私どもの独立行政法人農林水産消費技術センターの職員が、当該登録認定機関の事務所で、当該機関の業務規程等をもとに、認定を行う際の現地の検査報告書等記録の監査を行うとともに、センターの職員が登録認定機関が認定業務を行っている現場に実際に立ち会いまして、その業務が適正に実施されているかどうかを確認するということを行っております。
 一方、その登録認定機関が認定した認定事業者の状況でございますが、これにつきましては、登録認定機関が認定を行った事業者に対して、少なくとも認定後年一回の頻度で工場や圃場等の実地の調査を行うということで、そういう形でのいわばフォローアップ、監査、確認をいたしているという状況にございます。
後藤(斎)委員 それでは、外国の内訳として、認定事業者に対してはどのような指導ないし調査をしているんでしょうか。
西藤政府参考人 有機及び林産物について、外国の登録認定機関がございます。国内の登録認定機関と同様に、適正にその業務が行われなければならないというのは当然でございまして、そのため、私ども農林水産省としましても、職員を海外登録認定機関に出張させ、現地で登録認定機関の業務の実施状況を確認し、外国においても我が国と同様に適正な認定業務が行われるよう確認をし、努めているところでございます。
 また、現在、海外での外国登録認定機関、EU諸国、豪州、アメリカ等でございますが、海外登録認定機関がある外国は、JASの格付制度と同等の水準にあると認められる格付制度を有している国でございます。この登録認定機関には、それぞれの国の制度に基づいて、当該政府の管理監督も及んでいる。あわせて、私どもと当該政府との間で密接な情報交換をするということを行っている実情にございます。
後藤(斎)委員 冒頭、大臣にお尋ねをした食と農の再生プランにも、JAS規格の法制化の検討というので、要するに農場から食卓へ顔の見える関係、水産物でいえば、漁獲をしてから食卓へと。
 先ほど、局長といろいろなやりとりをさせてもらいましたが、養殖と天然の区別をどうしているか。仕入れ伝票で確認している。その立ち入り権限が、米麦を含めても千三百件足らず。ということは、あとは基本的には野放しだということです。
 畜産についてもそうです。先ほど、牛が三カ月と一日たつと輸入品から国産品に変わってしまうと。そのフォローも、基本的には、多分今の人的な部分ではされていないのではないかと僕は思います。
 大臣、なぜ今回この法改正が出てきたのかというのは、冒頭というか、趣旨説明にもありますように、あれだけの食に対する信頼性が失われて、消費者選択ないし事業者への抑制効果を高める、これはよくわかるんです。ただ、私は、二点の観点から大臣に、残った時間でお尋ねをしたいと思うんです。
 私は、公表の弾力化ということで、例えば弾力化をして罰金を上げていくことが出口、要するに起こってからの問題だということだと思うんです。大臣は、私とも何度か御議論させていただいて、予防行政というものはそうではないと。事前にそうはならないような形での抑止力が、確かに罰金や公表の弾力化をして進んでいく部分はあると思います。ただ、実態が全くと言うと大変否定的で申しわけありませんが、十二分に把握されていないのが、今議論を、やりとりをさせていただいていて、もう大臣は多分おわかりになったと思うんです。
 私は、これから私どもが提案をする中に、やはり立ち入り権限というものも柔軟に職員にきちっとルールとして与え、その中で、要するに今の例えば原産地表示も、量販店ではできているけれども、中小小売の方、どんな意味合いを持っているか、多分まだ十二分に理解されていない方もたくさんいらっしゃると思います。あわせて、表示の確認というのも、先ほどもお話しした、天然も養殖も仕入れ伝票を見なければわからないと。仕入れ伝票まで疑ったら、これはやりきれませんけれども。
 というもろもろの問題があるし、そして今、別のいろいろな法律が審議をされていて、官の裁量権というものを余り与え過ぎると、これは大臣が政治家として最後は御判断なさって、公表して罰金を一億円かけるかどうかというのをお決めになるんでしょうけれども、ただ、その公表ないし指示をする、国民、事業者の方が見えるガイドラインみたいなものできちっと対応していかなければ、私は、官の裁量というのを強める意思が強い部分があると思うんです。それにきちっと歯どめをかけるということが、与えられた役割の中で必要だと僕は思うんです。
 大臣、その点、要するに官の裁量権がどんどんいくというのが、一部にそういう指摘もある。ただ、一方で悪質な事業者を取り締まるにはどうしても必要だ、そのバランスをどうとるのかというふうに私は思うんです。その点につきまして、大臣、どういうふうに御見解をお持ちでしょうか。
武部国務大臣 まさに食の安全にかかわる、予防原則を含む、リスク分析に基づく行政機関をどうするか。いわゆるリスク評価をどうするか、また各省におけるリスク管理をどうするか。さらには、リスクコミュニケーションといいますか、そのリスクに対して、これはもう今委員御指摘のとおり、役所のリスクマネジメントだけで対応を許せるのかというようなこともある、このように思うわけであります。
 私は、このJAS法の改正、厳罰主義だけで問題解決するとは思っておりませんで、この後、トレーサビリティーを十五年度に導入していく。そして、順次、顔の見える関係から生産者と消費者が対話ができる、そういう関係まで求めて構築していく、そういったことで消費者と生産者の関係というものの信頼のきずなを取り戻していかなければならないと思っております。
 このJAS法の中身についても、委員御指摘のとおり、やはりこれは消費者が食品を選択する際に重要な情報を提供するために行うものでありますから、偽装表示を確認し指示を行った場合には、情報公開法等の趣旨を踏まえた原則公表という考えではございますけれども、この考え方についても、これは消費者、生産者等から構成される農林物資規格調査会の直近の会議に諮ることとしたい、こう考えております。
 ガイドラインといいますか、そういう基本方針というものはしっかりつくっていかなきゃならない、私はこのように思っております。
 ですから、この手段、方法ですべてを一気に解決できるというものでないと思いますし、また、時系列的に、よりいろいろな角度からトレースするというようなこと。お話のとおり、結果に対してどうするかということはこの法律が一つの手段でありまして、二度とこういうことが起こらないようにという担保をされるかもしれませんが、問題は、事前に監視体制をきちっとするとか、それから、やはり国民の皆さん方、消費者の皆さん方にもきちっとウオッチしてもらう、そういうシステムというものも重厚にしていく。そういったことも含めて考えていかなきゃならない大事な問題だ、このように認識しております。
後藤(斎)委員 白書と言っていいのかどうかちょっとわかりませんが、今大臣がお話をなされたトレーサビリティーのシステムのイメージというものが、食肉だけではなくて各品目について、食品の流れということで、品種、食品の情報量ということで、生産、加工、流通、販売、消費ということで、いろいろな情報内容も含めてございます。
 先ほども大臣お話をしましたように、私は、全国で五十万の飲食、小売店、そして卸が十万人いらっしゃる。そこを、先ほどお尋ねをした数字でいくと、多分、一割程度か二割くらいの立入検査を含めた部分であるだけで、実態調査をしている部分が僕は大変少ないと思うんです。
 やはり、この際、これから大きな流れとしたら、このJAS法だけではなく、もっと基本法的なものを設ける必要性、そして組織形態も食の安全という部門に大きく切りかわった流れに、この大臣の再生プランの方向性もそうだと思いますけれども、行くということが、内閣自体でも、今大臣もメンバーになっている関係閣僚懇談会で検討されているというふうにも聞いています。私たちの党も、その主張で、それに一歩先んじていろいろな提案を差し上げております。
 このイメージが本当にできるかどうかというのは、私は、本当にその信頼性が食に対してできるかどうかというのにかかっていると思うんです。
 その際に、今まだ実態も十二分に把握をされていない。そして、組織的に、消費技術センターを中心にやっている。四百七十人の消費技術センターの方、多分、昼夜を徹しても、表示にかかわる方は百三十数人だというふうにお伺いしておりますが、それに本省からの方。でも、現場にいる職員の方もたくさんいらっしゃいますよね。
 それで本当にこのイメージができるかというのは、その部門に、まさに食というのは消費であり、農というのは生産というふうに分けても、大臣が繰り返しこの半年間おっしゃられてきた、生産と消費というのは両立をしなければいけない、そして、今もう少しかじを切って、消費者に軸足を移した農林水産行政というふうに大臣はおっしゃっている。でも、組織が全然変わっていない、動いていない、実態も把握されていない。
 これでは大臣、先ほど御指摘をした、一年半たっても、野菜、水産、畜産という中でも全体像がどの程度、例えば原産地表示が導入されているかもわからない。これで本当にこの法律が例えば改正されて、出口のところで厳罰にしても、入り口の部分できちっとそういう調査や立入検査をして、本当にこれが天然なのか、養殖なのか。そして、国産の例えば地域のブランド名も入ったものが正しいのかどうか。それをしない限り、大臣、本当に消費者から信頼される行政の形なんてできないじゃないですか。私はそう思うんです。
 私は、その組織の部分も含めて、今大臣がこの半年間ずっとおっしゃってきた、それを実現していただきたい。大臣、その点についてどうでしょうか。
武部国務大臣 私は、消費者に軸足を置いた農林水産行政に変えると明確に宣言している以上は、今後農林水産省の行政組織そのものも、今、食の安全にかかわる行政組織の見直しについて関係閣僚会議で議論はしておりますが、その議論の結果、どういう包括的な法律になるか。
 あるいは、今までの議論を踏まえて言いますと、リスク評価については独立した合議体、委員会のようなものということで進んでおります、もう新聞で御案内だと思いますが。
 そこだけじゃなくて、リスク管理の面でも、つまり農林水産省自体も、やはり予算でありますとか、人事も含めて人的資源でありますとか、その配分についても当然見直しをしなきゃならない、私はかように思っております。
 また、今委員、民主党の提出した修正案についても、私も概略承知いたしておりますが、いみじくも委員が御指摘のとおり、JAS法一本ですべて解決するものではない、こう思っております。また、それでありますだけに、トレーサビリティーについても、十五年度導入ということで今努力をしているわけでございます。
 また、専門性でありますとか透明性でありますとか、そういったことは当然監視体制の強化の上でも必要でありますから、研修もしっかりやらなくちゃいけないと思いますし、当然、人的な数の面も充実していかなきゃならないというようなことは、私は念頭に置きながら、今検討している問題も含めて、今後しっかり食品表示に対する安全性確保のための諸般の対策に努めてまいりたい、このように考えている次第でございます。
後藤(斎)委員 今大臣お答えになっていただいたように、私は積極的にその部分のものを今やるべきだと思うんです。なぜなら、このトレーサビリティーのシステムのイメージにあるように、ほとんどのものはこのJASの表示にかかわる部分が多いんです。それが私は、ひとつこれから歯車を切りかえて、前に動かす大きな要素になる。
 ですから、私は先ほども議論をしたように、なかなか科学的分析だけでは、養殖も天然も国産もわからない。あとはその専門家が、中立性の立場できちっとした目を養う。それが例えば来年の四月からスタートしました、何のその素養もなかった、だれがやるかということです。よくテレビで肉を見分ける人がいますけれども、そういう人を育てるために、じゃ大臣、何を今しなければいけないのか。
 ですから、私たちは今、品質表示をきちっと定点で、なおかつ立ち入り権限も現行のJAS法二十条に今あります。それを恒常的にやる者をやはり、今変えていかなければいけないということで、この法案を提出させていただいているんです。それは、先で、大きな見直しのときはもちろんそれが入ってくると思いますが、今対応して、それを徐々に、本格試運転している四月以降にその体制にしていく。
 一夜にして、先ほどもお話ししたように、三カ月と一日たって国産になってしまっている。余りにもおかしいと大臣は思われませんか。ですから、それと同じように、一夜にして専門性を持った職員の方が育てられるなんてことは絶対ないはずなんです。ですから、私たちは大きな組織改革の前で、確かにJAS法ではない、ほかのものも含めての法体系の整備もしなきゃならない、これも十分にわかっています。ただ、専門性を持ったということで、今まで米麦についても食糧庁が、検査官が見て何等とかいうのをつけていた。でも、そうではない形に大きく今時代が変わっている。
 いろいろな人材の活用の仕方はあるはずなんです。それを私は先行的に大臣の英断でやってもらう必要があると思うんです。今だって、その検査員を三千何人指名をしている。それを常時やれというふうなことが、例えばこの修正案になくてもできるはずなんです。その点、大臣、最後に御確認をしたいと思います。
武部国務大臣 後藤先生の発言の趣旨は、私は非常に大事なことをお話しされている、このように受けとめております。やはりすぐには、人材を確保し、養成するということはそう簡単なものではありません。
 いずれにいたしましても、専門性の高い人材による監視体制の強化ということも含めまして、そこの部分だけじゃないと思っております。私どもも本当に、農林水産省の組織、消費者に軸足を置く、こう決意した以上は、農林水産省全体の見直しも当然私は必要ではないか、そういうことを踏まえて、後藤先生の御指摘も貴重な御意見として承って、努力したい、このように思っております。
後藤(斎)委員 時間が来ました。以上で終わります。ぜひ、大臣、よろしくどうぞお願いします。
鉢呂委員長 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。
 次に、安住淳君。
安住委員 私は、三十分時間をいただきまして、一年半ぶりに農林水産委員会で質問をさせていただきますが、私が質問をするのは、もっとより具体的な、一つの海産物を例にとって、今現実にこのJAS法の改正ということになりますが、大きな枠組みの話よりも、より現実論に即した話をしたいと思っております。
 さて、広島や岡山、それから宮城、これは漁業で見ますと、大臣、生ガキの、ボイルも含めた産地ですね。年間三万トンぐらい我が国では生産をしているわけです。私の地元もカキの生産地なんですね。この十年ぐらい見ても、沿岸漁業者が本当に安定収入を得るというのは非常に難しいわけですよ。多分北海道でもそうだと思うんですね。しかし、少なくとも、カキの養殖というのは、安定収入という面からいうと、沿岸漁業者にとっては実は非常に大きな財源なわけですね。これは私は成功例だと思います。漁業基本法をつくって、漁業者、特に沿岸漁業の発展をやっていこうという話ですから、そういう意味では一つの非常にいいパターンというか、見本になるものだと思うんです。
 ところが、ここで大きな問題が起きました。ことしの三月に宮城県の表浜漁業協同組合の木村組合長を初め何人かが宮城県庁を訪れまして、カキの養殖をしている生産者でございますが、どうも韓国産のカキを相当多量に、宮城県内を含めて、仲買業者が混入をしているんではないかということで訴えをしたわけです。それが地元の河北新報を初め大きなニュースになりまして、今宮城県ではこの実態調査をしております。事実関係から申し上げますと、今月の初めに一部業者はその混入を認めました。しかし、そうはいったって全体の実態の解明はまだ霧の中ということになるわけですね。
 私は、今回のJAS法というのは、確かに、私自身も、前向きに消費者を向いた行政をやるという点からいえば、これはもう遅きに失したと思うぐらいであります。それはそれで結構でございます。しかし、現実に、このカキの混入問題を私なりに調べていきますと、本当に今の組織、今の体制の中でやれるんだろうか、そういう疑問を持ったものですから、今回質問をさせていただくということになっているわけです。
 今も私話しましたように、実はカキは、三月で漁期が終わって、ことしの九月から漁期が始まるということですから、このまま、はっきり申し上げて、ただ問題が起きて大変だ大変だと言うだけでは解決にならないんですよ。解決にならない。農水省を含めてどんな対応をしているか、私も全然わからないものですから。宮城県は実態調査していますと言うけれども、これは宮城県だけで実態調査してもなかなか難しい問題なんですね。ですから、JAS法が改正されて、それはいいけれども、現実に今起きている問題にちゃんと対応してほしいということです。ちゃんと対応してほしい。
 そこで、水産庁長官に、まず、きょうお越しいただきましたけれども、過去、この問題については、私も何度か水産庁に、生産者側の代表者を案内して、要請も行かせていただきましたね。これは、今の渡辺事務次官が水産庁長官のときもそう、その前もそうだった。しかし、現実には、残念ながら水産庁側は漁業者に対して誠意ある対応をしたとは私は思えないんですよ。思えない。全く何もしていない。
 今回、後で経緯を話すけれども、漁業者がみずからお金を出して調査会社を雇って、下関なんかまで行ってビデオまで撮って、そういう証拠を持ってきてようやく訴えたんですよ。昔のお代官様じゃないですからね、大臣。漁業基本法なんかつくったって、私から言わせたら、あなた方には漁業者を愛するという愛情を全く感じない。ないですよ。ないから、今になって、ああ大変だ大変だ、どうしましょうかと。今も後藤君の質問があった。法律つくったって、実態を調べて手足をきちっと持ってやらなきゃ、こんなものはもう絵にかいたもちなんですよね。
 ですから、まず、これまで再三要請をしたにもかかわらず、私は、この問題というのは、実は、証拠はないけれども、みんなわかっている話だったと思いますよ。なぜその要請を真摯に受けとめて前向きな対応をしてこなかったかについて、お話を水産庁長官に伺いたいと思います。
 大臣、私が今言っている話は参議院でも質問あったようだから、もしコメントがあれば、ぜひ答弁もしていただきたいと思います。
武部国務大臣 今どうなっているかということについては水産庁長官に答弁させますが、参議院において質問がございました。
 その際に、私は、これは第一義的には宮城県が対応しているという話でありましたけれども、そういう待ちの姿勢ではだめだ、現地に出向いて直ちに調査するようにということを指示いたしまして、それに基づいて新たな動きが始まって今日に至っている。大事な問題でありますので、私どももしっかり解明し、厳正に対処してまいりたい、このように考えております。
木下政府参考人 お答えいたします。
 宮城県産カキへの混入問題でございます。
 これまで、宮城県漁連あるいは宮城県から、輸入生ガキの流通ルートの解明あるいはカキ産地の識別技術の確立についての要請が水産庁に寄せられたことは、御質問のとおりだと思います。私ども、この問題について、宮城県の一部にとどまっているというような認識もあったかと思いますけれども、十分な対応をしてこなかったという批判につきましては謙虚に受けとめて、今後とも対応していきたいというふうに考えております。
 表示問題につきまして、農林水産省全体といたしましては、BSE問題あるいは食品の虚偽表示問題等を契機に、消費者の信頼確保を図る観点から、武部農林水産大臣が食と農の再生プランを発表され、消費者サイドに軸足を移した農林水産行政に転換をするというような御指示もいただいておりますし、また、野間副大臣をヘッドといたします食品表示制度対策本部を設置し、監視体制の強化を図っている、そういうところでございます。
 こうした中で、私ども、大臣から御指示いただきまして連絡会議を開催しているところでございますけれども、今後、関係部局あるいは都道府県の協力も得まして、国内の主要産地、また主要な輸入業者、流通業者に対しましてヒアリング調査を行うこと等により、輸入ガキの流通実態の把握に努めることとしたいというふうに考えております。
 また、カキ産地の識別技術の確立の要請でございますけれども、本年度から独立行政法人水産総合研究センターが、三カ年の予定でDNA解析技術等を利用した識別技術の開発に取り組むこととしたところでございます。
安住委員 いや、私は、大臣、役所や皆さんが口で言っていることだけじゃ、もう信用しないんですよ。いや、行動してもらわないとだめなんだって、現実に起きているんだから。いいですか。
 私はこういうことを質問しているんですよ。これは九九年に、私は四月にもこの問題を取り上げているんですよ、大臣、農林水産委員会で。当時は、今の委員長は筆頭理事でした。私は理事だったんだけれども。私はやった。(発言する者あり)農水にいろと言う人もいます。ありがとうございます。だけれども、私、今ちょっと忙しいから。
 それで、大臣、私はこう言っているんです。そのときも、このカキの混入問題、どうかと聞いたときに、あのときは、中川さんだった、大臣が。中川さんは同じようなことを言っているんですよ。今の時点では正確な情報を我々も持っていない、しかし、今回このJAS法、今の改正の前の、現状のJAS法を改正することによって原産地表示を義務づけたから、これは生産者にとっても大変プラスになるので、流通業者の皆さんにとってもいい話なので、実効性のあるような体制をつくっていきたいと。何もつくってないじゃないですか、何もつくってないですよ。いいですか。
 これが平成十一年でしょう。その後、私は何回漁業者の皆さんを案内して農水省に来たか。私は平成十年の四月にも来ている。同六月にも来ている、このときは厚生省にも行っています、食品衛生の問題。また十二年の十二月にも私は来ているんです。いいですか。十三年、去年の五月にも私は来ている。私もう五回も行っているんですよ、これは五回も。
 それで、実は経緯をたどると、ことしのこの漁業者の皆さんは、去年の漁期が始まる前に、この混入の問題が価格の下落それから小型球形ウイルスによる食中毒の問題等々を起こしている可能性があるから、カキの混入の問題を明らかにしてほしいということで、これは県も含めた依頼をしました。仲買業者の皆さんにもそれをお願いした。しかし、現実にはそれが無視されたものだから、みずから調査を行って、その証拠を出した上で調べろと言った。
 しかし、その証拠を持ってまた歩いたそうですよ。公正取引委員会も行って農水省も行って県も行っていたって。今言った公益法人の何とかというところにも行ったらしい、消費技術センター。だれも相手にしなかったというのですからね、これは。大臣、どういうことですか。
 私は、業者を守れと言っているんじゃないですよ。沿岸漁業者がそういう不正をわかっていて訴えているにもかかわらず何もしないんだったら、水産庁は要りませんということになりませんかと言っているんですよ。どうですか。ちゃんと反省してください、ちゃんと。今からやるんじゃなくて、今までやったことをちゃんとまずおわびをすることから次の議論に入りますから、どうぞ。
武部国務大臣 今からやるということではございませんで、過去のことについて私は詳しくはわかりませんが、私は、参議院の農水委における議論を踏まえまして、厳しく水産庁を叱正いたしまして、とにかく県任せにしないで、直ちに現地に行くように、そして実態を少しでも正確に把握するようにという指示をしているわけでございまして、これまでのことについては、まことに遺憾にたえないと私も率直に思います。
 その上で、しっかり、食の安全の問題にもかかわる問題でもありますし、偽装表示の問題から消費者の不信を大きく買ってしまっている、食の安全について大きな、食卓さえ揺るがすような状態になっているわけでありますので、先ほども申し上げましたように、しっかり、なおかつ厳正に対処し、問題解明に努めてまいりたい、かように思います。
安住委員 とにかく、木下長官もかわいそうですよ、確かに、なったばかりですからね。大臣もまだ一年。しかし、私は、少なくともこの問題四年もやっているから、歴代四人の大臣に聞いているんですが、さっぱりだめ。今回内閣改造あるかどうかわかりませんけれども、責任とってもらわないとだめですよ。(発言する者あり)静かにしてください。
 それで、木下さん、やはり私思うのですけれども、実態をちゃんとわからないとだめだから、どうですか、ちゃんと掌握なさっていますか。韓国産のカキがどれぐらい入っていて、我が国の県内生産量というのは大体どれぐらいなのか。つまり、そういう足し算、ちゃんと農水省掌握していますか。掌握していれば、大枠でどれだけの混入があるかというのは私はわかるはずだと思いますけれども、いかがですか。
木下政府参考人 まず、我が国のカキの生産量でございますけれども、平成十三年の全体の生産量、約二十三万トンということでございます。この中で、広島県が十一万四千トン、また宮城県が約五万五千トンというようなところでございます。
 また、輸入量でございますけれども、貿易統計によりますと、平成十三年、我が国のカキの輸入量は一万五千トンでございます。このうち、韓国からの輸入量は一万四千トン弱という水準でございます。
 ただ、この輸入ガキの数量でございますけれども、ほとんどが殻を取り外したむき身の状態で輸入されているということでございます。これをそれぞれ換算いたしますと、国内生産量に対応します三〇%弱が輸入、それから国内生産量が七割というような水準だというふうに考えております。
安住委員 これは、実は本当のことを言うと、どれだけ入っているかもわからないんですよ。貿易統計でちゃんと税関の手続をした量だけなので、これは。水商売ですから本当のところがわからないというのがあって。
 多分こういう推測は成り立つんですよ。生食用のカキでいうと、年間大体三万から四万で、国内生産はそれで横に水準をしていますね、横並び。ですから、逆に言うと、生産量がふえないものだから、その分カキが、韓国産のカキの輸入が認められてから、急激なドライブで輸入量がふえてきた。今一万四、五千トンやはりあるんだと思いますよ。
 すると、どういうことになるかというと、ボイル用のカキですからね、これは一応表向きは、韓国産の輸入というのは。十年前は十対一でした。国内生産が十に対して韓国産が一。ところが、私が業界から事情聴取をいろいろすると、今はそうでないですよ。もう極端なことを言うと、二対一、二・五対一までになっていますよ。その分はもう明らかに、韓国産のカキといって量販店で売っているカキなんかほとんどないから、そこから混入しているという話になるんじゃないでしょうか。これは確証のある話ではないけれども、まず限りなくクロに近い状態だと私は思うのですね。これを、では現実にどう改善するかということが大きな課題になると私は思うのです。
 そこで、とりあえず宮城県では、何か知事が先頭になって、宮城県のカキだけでいいますと、全仲買業者の事情聴取をしている、その結果については公表をするという状況になっているんです。そういう動きについては、来月の末までにはそういう実態を解明すると言っているんですね。
 なぜそういうカリキュラムでいっているかというと、これは、大臣もしかしたら知らないかもしれないので私説明しますと、カキの漁期というのは九月の終わりなんですよ。ところが、量販店等との仲買業者さんの契約は、六月の半ばぐらいからもう始まっちゃうわけです。すると、これは大変な混乱を起こしているんですよ。仲買業者さんの中にもまじめにやっている方たくさんいますから、そういう人たちから見たら、もう今は焦りすら感じているわけですよ。もう目の前ですから、来期の漁期の契約が。
 しかし、宮城県はそうやったって、これは全国的に見たら、もう広島も岡山も含めて、全くこれは宮城県だけの問題だとだれも思っていないですね。しかし、調査という名のもとに行われているのは、現実にはこれは宮城県だけという実態。だから何らかの対応をせにゃならぬのではないかということになっているわけです。
 総合食料局長おいででございますから、韓国産のカキの輸入の実態というのはちゃんと掌握なさっていらっしゃるか、いかがです。
西藤政府参考人 カキの流通ルートでございますが、国産カキにあっては、産地により異なっていると聞いていますが、仲買業者等の流通業者が県漁連または生産者から買い受けて、消費地市場を介して、または直接小売店へ販売する形態が一般的であるというふうに承知をいたしております。
 一方、輸入カキにあっては、輸入商社がこれを輸入し、問屋、消費地市場を介して、または直接小売店へ販売する形態が一般的であるというふうに承知をいたしております。
安住委員 これは、やはり本当に流通の背景をわかっていないと実は議論できないんですよ。悪いけれども、私は何回もこのことで役所の皆さんと話をしたけれども、流通の実態を本当にわかっている人はいなかった。つまり、私は何を疑問に思っているかというと、そんな役所が新しい役所をつくって取り調べるといったって、悪いことをしている業者から見たら、あなた方は怖い存在になり得ない可能性があるんですよ、法律だけつくっても。
 つまりどういうことかというと、大臣、例えば量販店のバイヤーはどういう買いたたきをするか、実態を御存じですか。そういうのをちゃんと調べていないから、表の話しかしないんですよ。あえて混入をしているような会社にまず値段を決めさせて、それで、まじめなところに行くんですよ。あなたのところはこう言っているけれども、あそこはこれだけ安くしているんだからどうですかと言ったら、まじめにやっているところは、それは値下げせざるを得ないでしょう。その値下げせざるを得ないところが、やはり混入をせざるを得ない状況をつくってしまうわけです。
 なぜかというと、キロ当たり、例えば三陸でいうと千二百円前後になる。韓国産のカキというのは、状況によって違いますけれども、大体、六百円から八百円ぐらいで推移していると言われているんですよ。そうしたら、どうですか、引き算すれば御聡明な大臣だってわかるでしょう。キロで三百円から四百円ですよ。これをずっと足し算していくと、どれぐらいもうかるかという話になる。
 しかし、逆に言うと、そこに量販店も目をつけているから、そこで買いたたきをするために、そこにあらかじめ混入していることを前提の上で買いたたきをしているんですよ。だから、ある意味では、仲買業者も被害者であるということも言えるんですよ。
 だから、我が国のそういう消費、流通の実態をわかった上でこの問題に対応しなかったら、悪いけれども、JAS法なんか改正したって、絵にかいたもち。量販店のそういう状況をよく掌握すべきだと私は思いますけれども、いかがでございますか。そこまで、やはり末端までやらないといけないと私は思うんですけれどもね。
西藤政府参考人 今回の宮城県での韓国産カキ混入問題につきましては、先ほど来ありますように、現在、宮城県が生産業者等を対象に表示の実態について聞き取り調査を実施されております。結果は、六月中旬には取りまとめられる予定だというふうに聞いておりまして、農林水産省では、その結果を踏まえて、連携して解明に当たっていきたい、そういうふうに思っております。
 先生今御指摘の、量販店等の関係でございますが、私ども、JAS法に違反した場合の立入検査に当たって、今までも幾つか実施してきておりますが、表示違反の事実の確認等に加えて、偽装表示の再発防止という観点から、必要に応じ、流通、取引形態の実態も含め、原因となった背景についてその把握に努めてきております。
 今後も、そのような観点を含めて、食品表示の適正化ということで努めていきたいというふうに思っております。
安住委員 大臣、ここでぜひ要請というか、私は、これは単県に頼んだってだめですよ。だって宮城県のカキを、仲買の宮城県の皆さんだけ調べたって、そこから今度は全国の業者が買うんだから、宮城県が宮城県の業者さんだけ調べたって、カキ流通全体の実態調査になんかならないですよ。そうでしょう。まして漁期が迫っていて、バイヤーとの契約がもう目前に迫っているような状況なんだから。
 どうですか、特に広島、それから岡山なども含めてカキの生産地はみんな、今このことで頭を悩ませているんだから、農水省は一日も早く実態調査をきちっとやる。全国の実態調査をきちっとやって、しかるべきときにそれをちゃんと公表して、九月の漁期が始まった段階で、また抜き打ちで量販店で検査をして、一罰百戒で徹底的にこれを取り締まるという姿勢を示さなかったら、結局、漁業者が自分の金を持ち出してまでやったことに対して、国は何にもこたえていない。JAS法をつくりましたからこれで大丈夫です、そんなことはもう本当に、税金泥棒と言われると私は思いますよ、そんなことをやっていたら。
 ちゃんと漁業者に信頼されるような行動をとってほしいと私は思います。いかがでございますか。
武部国務大臣 今委員からもいろいろ御指摘いただきましたが、この宮城県産カキへの混入の問題というのは、宮城県に限らない、全国的な広がりを持つ問題である疑いがあるというふうに考えます。したがいまして、食品衛生法を所管する厚生労働省や関係県とも連絡をとりながら、全国レベルでの調査を実施する必要がある、私はこのように感じました。
 また、委員は、JAS法ができても絵にかいたもちだというような、ちょっと寂しい御指摘がありましたけれども、そんなことではありませんで、これは、罰則も五十万円から、法人では一億円以下というふうにするわけでありますので。
 これは、これだけですべて解決できると思っておりません。先ほども、後藤先生に対してもお答えしましたように、監視体制の強化、あるいは消費者の皆さん方にも、食品表示一一〇番の問題だけじゃなくて、さまざま、ウオッチャー制度もこれからやりますし、やはりみんなでこういった問題に立ち向かっていくということが必要でありますし、当然、農林水産省としては全国的な調査に向けて、関係府省とも連携をとりながらしっかりやってまいりたい、かように思います。問題の解明に全力を挙げます。
安住委員 大臣、これは提案ですけれども、どんなことを体制整備するよりも、こういう一つの品種といいますか、カキ問題ならカキ問題をしっかり解決することの方がより信頼を高めると思いますよ。枠組みを、スキームをつくってこうするんじゃなくて、現実に、この問題で、漁期が始まる来年の九月からはもう混入問題がなくなった、韓国産は韓国産として売るようになりましたと。
 こんなこと、もう釈迦に説法だから言わないけれども、そうやって生産地の漁業者を守ることによって、値段もしっかり守れて、漁業後継者もそのまま育つんじゃないですか。その基本をやらなかったら、水産庁なんて、本当にだれのための水産庁だって話ですよね。
 ですから、この問題をまず最初に解決してみてください。つまり手足をちゃんと持って、法律を持つだけじゃなくて、手足を持って解決してみてください、下関からの流通ルートを調べればちゃんとわかるんだから。量販店に行って抜き打ち検査をちゃんとしてください。変な話、悪質な業者なんて、あなた方が内偵で調査をしたら、業者さんは幾らでも情報を提供しますよ。そういうことを全くやりもしないで、紙の上でこういう仕組みをやるという話は、今からは、なしですよということです。
 現実に今、水産の将来を考えると、今二十四万系統ですか、それがだんだん少なくなって、我が国の漁業形態なんて、もう十年二十年したら本当に十万ちょっとぐらいになる可能性がある。つまり、漁業者の沿岸漁業による養殖を今からもっとやるためには、やはりそれは国が守ってあげなければ、彼らはこういうことを、そんな調査会社まで使って漁業者がやるという、そのやるせない気持ちをあなたたちはわかっているのかということですよ。
 私は、ぜひこれから、例えばカキの識別、韓国産と国内産の識別をする機械をきちっとつくっていく。それから大臣も言っているように、このトレーサビリティーを、水産、特にカキのことでできるかどうか。そういうことをより具体的に、前向きな話もぜひ最後にしてもらいたいと思います。
 ただ、全国調査をするということだから、一日も早くその実態の解明をして、消費者の皆さんもさることながら、生産者の皆さんも安心して、冬場の海にちゃんと行って、危険な漁をやっても安心してやはり生活できるような仕組みをつくってほしいと思いますので、その二点を最後にぜひ答弁していただきたいと思います。
武部国務大臣 いずれにしても、しっかりやります。
 しかし、JAS法も、紙ぺらの話じゃありません。これも大事なことでありますので、一つ一つを的確にやっていく。そういうことで、消費者保護第一という視点で努力することが、生産者の存在というものに大きな力になるという考え方で努力したい、このように思います。
木下政府参考人 二点ほどお答えしたいと思います。
 一つは、カキの産地識別技術の開発でございますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、DNA解析で原産地を判別する技術。それからもう一つは、カキでいいますと、国内産と韓国産、同じDNAの可能性がございますので、そういう意味で、国内と同一種につきましては、生育環境水あるいは餌料に由来する微量成分分析等により原産地判別技術を開発する。そういうことにつきましても本年度から着手をし、十五、六年度には終えたいというふうに考えているところでございます。
 また、養殖水産物のトレーサビリティーにつきましても、私ども、可能なものから順次導入すべく検討を進めていきたいというふうに考えております。
安住委員 では、ぜひ今度委員会に立つときには結果を出していただくよう強く要請しまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて安住淳君の質疑は終了いたしました。
 次に、石毛えい子さん。
石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。
 JAS法の改正にかかわりまして、若干の質問をさせていただきます。
 今回の表示の適正化の改正案、間違ったり誤ったりして表示をした場合に罰則を強化する、公表もする、おおよそそういう内容でございますけれども、これが、先ほど来大臣がおっしゃられておりますような、消費者の視点に立って、消費者に資する、そういう観点から見ましてどれほどの効果が上がるものというふうにお考えになっていらっしゃいますか。その評価について、概括的にまずお尋ねしたいと思います。
武部国務大臣 今回のJAS法改正で、すべて一〇〇%問題解決になるというような大それた考えは持っておりませんが、消費者への迅速な情報提供を図るという観点から、指示をしたときには原則公表という内容のものでありますし、表示に関する命令に違反した者に対する罰則は御案内のように大幅に強化することにいたしましたので、こういった内容からいたしまして、虚偽表示に対する抑止力というものは大幅に強化され、食品の偽装表示事件というものは大きく減少するもの、かように考えております。
石毛委員 先ほど来、後藤委員の質問にも含まれておりましたように、一つは、虚偽表示であるかどうか、誤った表示であるかどうかということが立証できるだけの体制が整っていなければなかなか難しいだろうという側面と、それから、一億円という罰金が抑止効果があるかどうかにつきましては後ほどまたちょっとお尋ねしたいと思います。
 その前に、念のためにという質問になるかと思いますけれども、政府参考人の方からの御答弁でも結構ですので、念のために確認をさせていただきたいと思います。
 質問のレクのときに、食品衛生法とJAS法との表示義務事項、罰則の関係、こういう一覧表をいただきました。今回のJAS法の改正に対する表示義務違反の場合云々という、その適用範囲は、JAS法の及ぶ範囲についての話なんですね。
 食衛法で表示を規定しております部分に、アレルギー物質を含む旨とか添加物を含む旨とかございますけれども、食品衛生法の範囲には及ばないのですね、どうなんでしょうかということの確認と、それから、私は当然そうだというふうに受けとめておりますけれども、JAS法の範囲の中でも、肉ですとか魚ですとか野菜ですとか加工食品ということで、表示の領域といいますか範囲が異なっておりますけれども、それは全部カバーして、JAS法における表示に違反した場合には公表をし罰則をする、そういう理解でよろしいのですねということと、食衛法との関係ということを確認させてください。
西藤政府参考人 先生御指摘のとおり、JAS法では、消費者の選択に資するという観点から、生鮮食料品であれば原産地等の表示、加工食品であれば原材料等の表示をさせていただいております。御指摘の添加物等は、食品衛生法で表示を義務づけているというふうに理解いたしております。
 当然、そういう点から申しまして、今回のJAS法の罰則適用も、JAS法での品質表示事項についての虚偽表示、それに対しての指示、あるいは命令に対して従わない場合罰則が適用されるということになると理解をいたしております。
石毛委員 この法案を改正いたしますときに、ずっと後ほどの質問とも相関してくることになりますけれども、食衛法の表示についての改正というのも、BSE問題に関する調査検討会報告でしょうか、その中でも触れられているわけですから、当然JAS法の改正というのは食衛法の改正とあわせて議論になったというふうに思って、その上で出されてきた法案だというふうに理解はいたしますけれども、きょうは宮路副大臣においでいただいておりまして、質問通告してございませんけれども、食衛法ではこれから表示に関してどんなふうに取り組まれていくのか、ちょっとお答えいただければ。
宮路副大臣 委員御指摘のように、BSEの調査検討委員会におきましても、表示制度について一元的な見直しを行うべしという指摘もいただいておるところでもありますので、見直しをする中で、食品衛生法に基づく表示についても、その一環として見直しをしてまいりたい、このように思っております。
石毛委員 今回の法改正は、当然といえば当然かもしれませんけれども、JAS法の及ぶ範囲内であるということと、食衛法における表示との相関はまだ宿題として残っているという、その確認をさせていただきたいというふうに思います。
 次の質問でございますけれども、これも当然お答えいただける質問だと思いますので、通告はしてありませんけれどもお尋ねしてよろしいかと思いますが、先ほど、これも後藤委員から、ミスタードーナツですか、ダスキンのドーナツに対しての質問がございました。新聞報道等では肉まんに禁止添加物が入っていたということで、日本では使用を認められていない酸化防止剤が添加物として使われたということになりますけれども、これは食衛法、JAS法の表示義務からしますと、表示をしていなかったということで、表示義務違反なんでしょうか。それぞれの法律に照らすとどうなるんでしょうか。どなたでも結構ですから、それをちょっとお答えください。
尾嵜政府参考人 添加物関係の表示につきましては食品衛生法で定めておりまして、今回のケースにつきましては、もともとが使ってはならない、我が国では使ってはならない添加物でございますので、これを表示することはあり得ないわけでございます。
 指定をされておらない添加物を使うことはできないわけでございますので、そういう表示はあり得ないというふうに思っておりますので、今回のケースは、虚偽の表示をなさっているというケースではないというふうに理解しております。
石毛委員 一般的な表示はされていたんでしょうか、これに関しまして。
尾嵜政府参考人 今回のケースで、どういう中身の表示があったかというのは、私どもちょっと大阪府からも報告を受けておりませんが、確認はしてみたいと思っております。
石毛委員 質問のヒアリングのときに、このダスキンのことではないのですけれども、私は、例えばJAS法において、対面販売になっているものというのは表示から除外をしていると。例えば、お肉屋さんが、並べたお肉にロースだとかなんとかといろいろ表示をしてありますけれども、それが、どこが産地で、それからどんな保存物を使ってあるのかないのかとか、それから生産者はだれで、小売販売店は買いに行くからわかるわけですけれども、していないことが多いですね。お肉なんかというのは、霜降りだとか三枚肉だとかロースだとか、そういう表示はしてありますけれども、それ以外に、対面販売の店でこれがどこの生産地の肉だというようなことを表示していない場合も結構ある。
 だから一般的に表示というと、加工食品で缶詰だとかひっくり返して見れば表示がわかるとか、そういうものが多いわけですけれども、対面販売で買えるものについての表示はどうされているのですかというふうに伺いましたら、それは通達か何かで一定猶予しているというような表現をされました。
 私はそのときはそれ以上詰めなかったんですけれども、その後、ダスキンの肉まんの問題が発生して、これも対面販売ですよね。そうすると、今食衛法で、酸化防止剤の問題ですから、それについては、もし表示をしていたら虚偽表示になるんだと思いますけれども、恐らく表示はしていない。
 肉まんの販売というのは表示がない販売なんだと思うんです。割と対面販売で、その場で温かいのを買ってくるとかというようなことで、ないというふうにすれば、これは表示がなしということになってしまうわけですし、もし表示がしてあるとすれば、添加物のところに、明らかに今回は使用禁止の酸化防止剤が使われていたわけですから、これは食品衛生法上の添加物の使用基準に照らして違反になりますし、表示に関しても違反になるわけです。
 適切な表示が適正にされていれば、このダスキンの肉まんの問題というのは、恐らく一千三百万個も売れる前に問題の所在が明らかになったんだろうというふうに私は思うわけですけれども、包装をしていなくて対面販売になる、そうした食材に対する表示というのは、今どういうふうに扱われていて、これからどんな方針になっていくのかということと、あわせて御答弁いただければと思います。
西藤政府参考人 生鮮食料品、今先生のあれでは、食肉の場合、包装されない形で店頭販売される場合も、少なくとも産地についての表示を義務づけている状況にございます。その産地という場合、食肉の場合、国産であるのか、輸入であれば輸入先国を最低限表示するということでの表示義務づけをしていますので、産地の表示は最低限行われているというふうに理解をいたしております。
 それと、今先生御指摘の外食での表示の取り扱いでございますが、外食品についての表示、技術的には、いわば消費者が、外食を召し上がる方が、その中での原材料なりなんなりについての対話を通じて情報をとれるというような状況と、それと外食の場合、仕入れの状況等で原材料がかなり日々変化するというような状況の中で、現在私ども、JAS法の中で生鮮食料品の表示をお願いしている状況は、そういういわば外食については、表示のそういう点では対象外という状況になっております。
 ただ、私ども、いろいろな課題がございますけれども、奨励措置として、いわば食材についての情報提供を推進するということで、奨励的な取り組みを開始しているという状況にございます。
尾嵜政府参考人 先生のお話にございました食品衛生法上、添加物については、認められておる添加物を使用した場合にそれを表示するわけでございますが、お話の中でございました対面販売の場合には、食品衛生法上は表示を義務づけておりませんで、例えば、典型的な例はたこ焼きのようなものでございますが、対面販売ということで、こういったものについては表示はしなくてもいいという整理になってございます。
 そこのところが、どこまでのものを対面販売と言うかというのは、私も今この場で細かい一つ一つについての区切りをちょっと御説明する資料を手元に持っておりませんが、例えば、弁当のような、製造をするのは別の場所で持ってきて売っておるという場合には、これはきちんと食品衛生法上の表示すべき事項については表示をしておらなければいけない。例えば、またもう一つの例としまして、物を解凍するというふうなことで売る、こういったものも、そういうことをするという場合には、加工をしておるということで表示がかかるというふうな状況でございます。
石毛委員 恐らくこれからの検討課題になるんだろうと思いますけれども、対面販売といいましても、非常に規模が小さくて、自分でそこで調理、加工をしながら販売しているものと、それから今、最後に本当に数分温めればいいような、そうした大量流通する、ダスキンの肉まんなんてまさにそういうものだったと思いますけれども、そうした対面販売のものというものは、生産過程から、流通の長さから、経路が全く違いますから、対面といっても、生産、流通、最終消費に至るプロセスをきちっと押さえていただいて、どういう表示の仕方をしていくかということを検討する必要があるのではないかということを申し上げておきたいと思います。
 私は、ダスキンの新聞記事を読みましたときと今回の質問を準備するときが、最後のところでちょうど重なったものですから、もしそこにきちっと表示がされていたら、恐らく使用を認められていないような酸化防止剤は使わなかっただろうという、性善説かもしれませんけれども、そうしたことも思いましたから、急な質問をいたしました。
 次の質問ですけれども、今回の法律改正の中で大きく変わっているものが、公表の弾力性ということがございます。これにつきまして少し具体的にお尋ねしたいと思いますけれども、まず、改正にならない今の法律の中で公表をというようなことに関しまして、その前段の指示件数がどれぐらいあって、公表件数がどれぐらいで、罰則適用件数がどれぐらいなのかというのを、国の分と都道府県の分と、あわせて教えてください。
西藤政府参考人 平成十一年の改正JAS法が一昨年、平成十二年六月から施行されて以降、本年四月末まで、先月末までの間に、JAS法第十九条の九の規定、「表示に関する指示等」に基づき改善の指示を行った事案は、国による指示が四十八件、都道府県による指示が六十九件という件数になっております。
 これらの事案のうち、改善の指示に従わなかったことによりJAS法に基づき公表した事案はございません。指示に従わなかったゆえに公表した事案はございません。しかし、指示の相手方の同意を得て公表した件数は、国においては十一件、都道府県においては六件となっております。
石毛委員 そういたしますと、今の御答弁は、表示に違反があったときにそれを指摘すれば、全部指示に従っているので公表には至っていないということですね。うなずいていただきました。今回法律を変えるということは、現行法の中でその旨公表をすることができるという第十九条の九の三項を削除する。そうしますと、改正案の中には、この公表という表現が全くなくなってきております。
 そこで、これもヒアリングのときに伺いましたらば、情報公開法によって、当然公表するというのは当たり前の行為になってきているので、あえて法文に書く必要はないということで書かなかったということなわけですけれども、今までも公表されていたという件数が、指示に従って、なかったと。あとは社会問題化した部分、ですから、雪印のような問題ですとか今回の鶏肉の問題ですとか、そういう社会問題化した部分については公表になるけれども、指示に従えば公表にならないということになれば、弾力的な運用という場合、ましてや法文化していなければ、公表される件数というのは実際問題はなくなるんじゃないでしょうか。
 指示はされるのかもしれないけれども、公表はされない。そうすると、消費者にとっては公表されなければわからないわけですから、一体、その公表の確実性といいますか、そこのあたりはどう判断したらいいんだろうという、この改正法案でそこの疑問が生じてくるわけですけれども、どうでしょうか。
西藤政府参考人 現行の公表につきましては、指示に従わない者があるときはその旨を公表することができると規定されているため、これ以外の場面での公表は想定されていない。そういうことで、指示の段階で直ちに公表するということは現行法はできないということで、現行制度は、偽装表示が行われても、指示に従えば公表されないために、品質表示基準に違反した表示が繰り返されるおそれがある。あるいは、表示を信頼して商品を購入した消費者が、表示が違反している事実を知らされていないために、正しく商品を選択することができない、こういう問題が顕在化しております。
 このため、消費者への迅速な情報提供を可能とする観点から、表示に関する指示に従わなかったときに限って公表できるという旨の規定を削除するということでございます。
 それで、公表は、消費者が食品を選択する際に、先ほど来申し上げておりますように重要なものでございますので、偽装表示を確認し指示を行った場合には、情報公開法等の趣旨を踏まえて、当然、原則として公表するということになるということでございます。
石毛委員 そうしますと、原則として公表するというようなこと。私は、法文化されることが一番消費者にとってはわかりやすいというふうに思うわけですけれども、今の御答弁に従いますと、原則として公表するというのは、何を基準に受けとめたらよろしいのでしょうか。今はこうした法案改正について審議をしていますから、原則として公表するという御答弁をいただきましたけれども、五年たち、十年たてば、その答弁はどこかに雲散霧消するかもしれない。
 情報公開法というのは、あくまでも請求して公開されてくるわけで、自動的な公開ではないわけですから、公表のルールといいますか基準というものをきちっと今設定をしていただかなければ、公表しますということに対する消費者の信頼性というのは、そこに疑念が生まれても仕方がないかなというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
西藤政府参考人 先生御指摘の公表の明文化ということにつきましては、仮に公表の規定を明文化いたしますれば、現行法もそういう状況でございますが、公表の時点を縛ってしまいまして、消費者への迅速な情報提供に支障を生ずるおそれがある。
 あるいは、食品衛生法等他の法律においても公表の規定はございません。ございませんが、公表を行っている。このことから、あえてJAS法だけ規定する必要性がなく、公表の規定を置くことが不適当と法制的に整理をされたものでございます。
武部国務大臣 委員御心配なのは、きちっとした方針を示せ、こういうことなんだろうと思うんですね。これは、原則公表という方針について、消費者や生産者等で構成します農林物資規格調査会の直近の会議で諮ることとしているわけでございます。
 また、指示がない場合でも、私は、極めて悪質な場合は直ちに公表するというようなこともあり得るというふうに思いますので、法律に明文化することよりもこの方が、公表の機会といいますか、そういうことは多い、私はこのように思っております。
石毛委員 もう少し伺いたいところですけれども、もう一つどうしてもお尋ねしたいことがございますので、農林物資調査会ですか、そこでどういう方針が出されていかれるかということについて注目をしていきたいと思います。
 時間がありませんので、非常に短絡した質問になると思いますけれども、今、JAS法の関係と食衛法の関係で、例えば品質保持期限と賞味期限という、表現が違っているというようなことで、消費者にとって非常に表示がわかりにくい、そうした問題がございます。
 それで、私も地元の消費者センターに食品に関してどういう相談が多いかということを問い合わせましたら、やはりこの品質保持期限、賞味期限をどういうふうに解釈するのかというようなことがかなり多い、食品に関しては最も多い質問だというようなこともおっしゃっておられました。
 当然一元化していくべきだというふうに思いますし、一般的な普通の生活感覚からいいますと、賞味期限と品質保持期限というのはやはり若干ニュアンスが違うんだと思います。賞味期限というのは、何かおいしさが保たれているような期限かなと。品質期限というのは、それこそ衛生上考えて、健康上被害が及ぶ、そうした表現かなというふうに、だんだん思ってくると、どっちがどっちだろうと。買うものによって違ったり、あるいは、最近は品質保持期限(賞味期限)とか、その逆もありますし、要するに表示が一本化されていない。
 それから、あと添加物などに関しての表示も、今度は一本化ではなくて、例えばアミノ酸等というふうな表示になっているわけですけれども、この辺の表示に関しては、消費者はもっときちっと、グルタミン酸ナトリウムという表示にしていただきたい、そうした観点もあるわけです。
 ですから、時間がなくて、うまく私の方の質問が伝わるかどうかというふうに思いつつなんですけれども、表示というのは、消費者に何をメッセージするかということになれば、一つはやはり安全性が大丈夫かというようなメッセージと、それから、その表示を信じていいのかというか、依拠していいのかというその二面性、もっとあるのかもしれませんけれども、そうしたことを表示というのは複合的に示しているんだと思うんです。にもかかわらず、現行の表示の中で品質保持期限と賞味期限が違っているという、今回のJAS法の改正というのはそこまで至っていないわけですね。
 それから、もう大急ぎになりますけれども、この食の安全確保に関する特命委員会の提言にいたしましても、厚生労働省の方で出されたもの、厚生労働省直接ではないですね、所管に関連して出されたというふうに訂正いたします。食品衛生規制に関する検討小委員会から出された内容を拝見しましても、このことに関して必ずしも明確な方向性が示されているわけではないというふうに私は見ました。合理的な範囲で、品質保持期限、賞味期限等について表示制度の調整を行うというような表現になっていて、必ずしもBSEの調査検討会報告の表示の一元化という表現とは軌を一にした表現にはなっていないように思います。
 一体、消費者から見て、本当に選択に資するような、簡明直截で信頼ができて安全性を理解できて納得できる表示の一元化というのは、今後、どういう方向性で検討されていくのか、そのことについてお聞きしたいと思います。
武部国務大臣 委員御指摘のとおり、JAS法と食衛法では賞味期限と品質保持期限と異なった表示となっているわけでありまして、消費者にとってわかりにくい制度になっているということについては私も同感であります。
 これまでの国会での論議を踏まえて、私は、やはり食衛法とは一元的に法改正をする必要があるということを申し上げてきたのでありますが、しかし、偽装表示の問題というものが後を絶たないという昨今でございますし、消費者の皆さん方の選択に資するという観点からこのJAS法改正は今国会でやりたいということから、JAS法改正を私どもといたしましてはまず国会に提出するということに相なったわけでございます。
 BSE問題に関する調査検討委員会の報告においても、一元的に検討すべきである、そういうようなことは指摘をいただいているのではないかと私どもは受けとめておりますので、厚生労働省などとも連携いたしまして、消費者も参加する検討の場として、食品の表示制度に関する懇談会を六月七日から開催いたします。ここで食品表示制度のあり方を一元的に検討していくことになるであろう、こう思っております。
 この検討の場におきまして、表示事項も含めまして食品表示制度のあり方全般について御議論をいただき、その議論を踏まえて具体的にどうすべきかということが検討される、かように私ども考えております。
 また、これはどの場面でもそうです。先ほどもこれは申し上げましたが、JAS法ですべて解決できるものじゃない、こう思っております。やはり、今関係閣僚会議で議論しておりますように、リスク分析に基づく、先生御関心の予防原則のことも踏まえまして、予防的にどう対処していくかというようなこともその考え方に入れて、今検討しているわけですね。
 リスク分析に基づいてリスク評価をするということについては、独立した機関を設置する。そして、それに基づいてリスク管理については各省が対応する。また、リスクコミュニケーションについても、総合的なマネジメントの部分はリスク評価機関でやるべきでないかとか、あるいはリスクコミュニケーションをどう位置づけるかというようなことで検討しているわけでございまして、そういったことを踏まえて、この表示の問題、食の安全の問題についてどう担保していくかということについては具体的に明らかになっていくのではないか。そういう努力をしていきたい、このように思っております。
石毛委員 今大臣から非常に包括的に御答弁をいただきましたけれども、表示に関して言えば、表示の一元化と同時に、何を表示するのかということが非常に大事だというふうに、言わずもがなですけれども。そして、何を表示するかというときに、最も消費者にとって今求められているのは食品の安全性であるということも、これまた当然のことであるわけです。
 その安全性を消費者がどういう表示で受けとめるかということに関しては、やはり消費者が一番判断素材を持っている。ある意味で、判断経験を持っている。そこがリスクコミュニケーションの双方の一方の極だというふうに思いますので、大臣がおっしゃられましたリスクコミュニケーションと、それからそこへの消費者参加というところを、ぜひ表示に関しましても、厚生労働省との関係も含めまして、十分に消費者の信頼に足る表示制度をつくる、その方向を私どもも頑張っていきたいと思いますけれども、受けとめていただきたいということを要請させていただいて、質問を終わります。ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて石毛えい子さんの質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四分開議
鉢呂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。白保台一君。
白保委員 食の安全、安心という問題については、これは人間の命にかかわる問題でもありますし、そういう面では、古くから大変議論をされてきて、それなりの法律ができ、形ができて今日に至っている、こういうふうに思うわけです。そういう非常に関心の高いものであるにもかかわらず、ことしに入って、雪印を初めとするさまざまな不正表示の問題が出てまいりました。ことしに入ってから四カ月、五カ月、こういった問題で常にマスコミや新聞等をにぎわせて今日に至っているわけであります。
 そういう意味では、それぞれの党がそうだと思いますし、食の安心、安全の確保に関するチームをつくって研究をしたり、勉強をしたり、そして新たな提案をしたり、やってきております。特に与党三党のPTでも、きょうも開かれますが、食の安心、安全確保に関するPT等を開いて、本当に消費者が安心して、そしてまた我々が安心していける、そういった体制をつくろうということで、それぞれが努力をしておるところでございます。
 特に、四月にBSEの調査委員会の報告書が出て、夏ごろまでにはきちっとした抜本的な体制をつくっていこう、既に報道等でもそういったものが出ておりますし、先ほど申し上げました与党PTでも議論を重ねて、いよいよのところまで来ているかな、こんなような感じでありますが、よく言われるように、そういう抜本的なものを目の前にしているそういう時期に、今この改正をしなくてはならない、その理由ということをまずお聞きしたいと思っています。
西藤政府参考人 今回のJAS法の改正は、委員御指摘がありましたように、最近の食品の偽装表示の多発を踏まえて、食品の偽装表示の再発を防止するとともに、一日も早く食品表示に対する消費者の信頼を回復する、そういう緊急の措置として提案させていただいているものでございます。
 現行のJAS法では、御案内のとおり、食品の偽装表示が行われた場合、指示に従えば公表されないため、消費者は偽装表示についての情報を得ることができない、あるいは最終的に科せられる罰則も五十万円以下の罰金と少額で、偽装表示に対する抑止力が不十分だという問題があります。
 このため、消費者の選択に資する観点から、違反事業者を公表することができるようにするとともに、適正な品質表示を担保するため、表示に関する命令の違反者に対する罰則を強化することで、消費者の表示に対する信頼性を確保していこうというものでございます。
 なお、先生御指摘の、BSE問題調査検討委員会報告での御指摘を踏まえ、厚生労働省と連携して、消費者の参加を得た検討の場として、食品の表示制度に関する懇談会を開催して食品表示制度のあり方の一元的な検討をしていくということで、これも六月七日に第一回目の会合を開きたいというふうに考えております。
白保委員 今の局長の答弁は、提案理由説明のときの趣旨説明をそのままやったような感じで、それはもう前にも聞いたなという感じがしています。
 私は、大臣に、抜本的な改正を後ろに控えてやらなければいけない、そしてまた消費者からの信頼回復をしていかなければならない、そういう中で、これだけいじってどうするのかという感じがないわけじゃないんですよ。ですから、そういったことを今やらなければならない、こういうふうに至ったその事態に対して、大臣はどのような御感想をお持ちですか。
武部国務大臣 委員御指摘のように、今与党においても、また政府におきましても、食の安全にかかわる法整備、また行政組織のあり方について、六月中を目途に検討しているわけでございます。かなり固まってきたと言って過言でありません。ここにおける法整備はかなり包括的な内容になるのではないか、このように思っております。
 一方におきまして、BSE発生後、雪印食品の事件に端を発しまして、偽装表示が今なお後を絶たないという状況でございます。
 私どもといたしましては、BSE対策の最終的な目標というものは、通常の状態に戻るということでございます。生産者から消費者に至るまで、川上から川下に至るまで、関連する方々が大勢影響を受けたわけでございます。これを解決するためには消費が通常の状態に戻らなければならない、そのためには消費者の信頼を取り戻すことだ。そのためには、やれることからどんどん先行してやっていこう。
 このJAS法の改正というのは、食衛法との関連からいたしますと、表示の一元化という問題もございますが、それに先行して、まずこのJAS法改正に着手して、今国会でこの成立を期して、直ちにこれが施行できるようにしようと。
 我田引水になるかもしれませんが、五月に入りましてから消費がかなり戻っておりますし、残念ながら四頭目が発生いたしました、このことについては本当に胸が痛むのでございますけれども、しかし、実際の状況は、消費の面も出荷の面も大きな影響を受けていない、こう思うのであります。
 それも私どもの努力といいますか、このJAS法改正、かなり厳しい、懲役刑でありますとか、法人の場合には一億円以下でありますとか、厳罰に処するというような、そういう大胆な取り組みというものも消費者の信頼回復につながっているのではないか、こういうふうに考えておりまして、特に、委員初めいろいろ御提言をいただきましたが、それを踏まえて取り組んできているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
白保委員 今、大臣、表示の一元化の話もされました。現在審議しているのはJAS法の改正の問題を審議しているわけですが、食品衛生法のお話も今ございました。あと公取関係の不当景品類及び不当表示防止法がありますね。それから、不正競争防止法、経済産業省のものがありますね。
 そういったものがあって、本来ならば、一つのものに対してこれがきっちりと、先ほどの答弁にあるように、普通の状態で、みんなが信頼して物事をやっていける、そういう状況でなきゃいけませんが、一つのものを取り巻いて、四つもこうやっていろいろな法律があってやっているわけです。
 それぞれの役割というものが一つあると思うんですが、さっき表示の一元化という問題もありましたけれども、きっちりとこの辺のことをやっていかなきゃならないことも一つあるな、こう思っています。まず、それに対して、その役割等も含めて御答弁をいただきたいと思います。
西藤政府参考人 食の安全、安心に対する消費者の信頼を確保するためには、先生御指摘のとおり、食品の偽装表示の再発を防止し、食品表示の適正化を図ることが重要でございます。
 現在、食品表示にかかわる法律としまして、私ども御提案させていただいていますJAS法のほか、食品衛生法、不当景品類及び不当表示防止法、景表法とあれしておりますが、それと不正競争防止法がございます。
 JAS法は、御案内のとおり、原産地等、消費者が食品を選択する際に重要な情報を提供するということを目的といたしておりますし、食品衛生法は、食中毒等、食品が原因の衛生上の危害を防止するということ、あるいは景表法は、消費者が優良あるいは有利と誤認するような表示を禁止することにより、公正な競争を確保し消費者の利益を保護すること、不正競争防止法は、不正の目的をもって原産地あるいは品質等について誤認させるような表示を禁止することにより、事業者間の公正な競争を確保することというふうに、それぞれを目的としておりまして、その目的に応じた規制内容あるいは表示内容になっている状況でございます。
白保委員 ですから、それぞれの目的を達成していたならば、こういうさまざまな不正な問題が出てこないんだろう、こう思うんですね。ところが、これだけ一つのものを取り巻いて四つも法律がありながら、常にこういった問題が出てくるということ自体が非常にゆゆしき問題なんです。
 したがいまして、これから食の安全、安心ということを確保していこうという議論をしている中で、これからやっていく上においては、まさにきちんと一元化して、しっかりと守られる体制をつくっていかなきゃいけない。そうでなかったならば、いっぱい法律を改正したり、法律をつくったりしていながら、これが守れないがためにこのような議論になっていくという、これは非常に問題が大きいと思うんです。
 したがって、この件についても今後詰めていかなきゃならない問題ですが、これはしっかりとやっていただきたいということをまず要請して、次の問題に移りたいと思います。
 公表規定の削除の問題、けさほどもあったと思いますけれども、遵守事項を遵守すべきとの指示等に従わない製造業者等があるときは公表する、今回これを削除して、必要に応じ、これらの事実を公表すると改正していくわけでありますが、これまでの規定の中で、従わなかった例や数はけさほども出ておりました。この数等も必要ですけれども、公表の時期を今回早める、この意義と効果、どのように考えておられましょうか。
西藤政府参考人 指示件数なり、指示に従わなかった件数ということで、指示に従わなかったものはなかったわけですけれども、指示件数ということからいいますと、国で、生鮮食料品十三件、加工食品二件、米三十三件の計四十八件。うち公表をした件数が、相手の同意を得て公表した件数でございますが、生鮮食品で九件、加工食品で二件という状況になっております。
 これも公表は相手方の同意を得て公表しているということになっておりますが、今回の公表の弾力化によりまして公表時期が早まる、そのことを通じて、偽装表示の抑制に資する、あるいは消費者に状況を迅速に情報提供できる、そういうことになるというふうに考えております。(白保委員「効果は」と呼ぶ)
 まさに、現行のJAS法では、食品の偽装表示が行われた場合であっても指示に従えば公表されないため、消費者は偽装表示についての情報を得ることができないという問題の状況にあるわけですので、今回、公表に関する規定を削除し、公表を弾力化することによりまして、指示と同時の公表が可能になります。その結果、消費者に対して迅速に虚偽表示についての情報提供をできるし、そのことを通じて、偽装表示の抑制にも資するというふうに考えております。
白保委員 大変大きな期待を持っておられるようですけれども、後でこの問題について触れたいと思います、後もうちょっとしたら触れますけれども。
 その前に、罰則の強化について、五十万を一億ですか、こういうふうに引き上げる、そういうふうにいうわけです。これは他法令との関係も一つあると思いますが、他法令との関係がどうなっているのか、あるいは外国と比較してどういうことになるのか、この辺です。
 そしてまた、単に五十万を一億といいますけれども、この一億というのはどういう意味があるのか。この辺のことについてはいかがでしょうか。
西藤政府参考人 法人に対する罰金の額につきましては、法人が食品偽装表示をした場合には、個人事業者のように懲役刑を科すということができないにもかかわらず、個人事業者に比べて不当に巨額な利益を得ることが可能であるというようなことと、そういう状況の中で、個人事業者と同じ百万円以下の罰金では抑止力として効果がないということで、法人の売上高等を考慮しまして一億円以下ということにさせていただきました。
 海外の食品表示違反に対する罰則につきましては、国によって歴史的、文化的背景なり、食品の生産、流通実情が異なるということで単純に比較はできないと考えておりますが、アメリカでは、事実に反し、または誤解を与えるような表示を行った場合は千ドル、現在のあれで邦貨に換算すると約十二万円以下の罰金または一年以下の自由拘束、詐欺の意図があった場合は、一万ドル以下の罰金または三年以下の自由拘束が科せられる。
 あるいはフランスでは、表示義務不履行に対しては一万フラン、現状で約十六万円程度の罰金になるかと思います。商品の性質、品質、原産地等に関する虚偽表示に対しては、二十五万フラン以下の罰金または二年以下の懲役が科せられる。そういう状況になっていると承知をいたしております。
白保委員 罰則を強化して、あるいはまた先ほどの、直ちに公表していく、公表の時期を早める、そしてまた罰則を強化していく、そういうことでしっかりと食の安心、安全の方向へ持っていこう、こういうことで努力をするわけですが、最後に残るのは、けさほども議論があったと思いますが、いわゆる事業者のモラルの問題ですよ。これは、一億払ってそれで事足れりという話にはならないです。
 したがって、一方で法律をきっちりとして、こういう罰則がありますよ、したがって正しい方向性でやっていかなきゃいけませんよということを、方向性を示していく。大事なことです。しかし一方でモラルの問題について、けさも議論ありましたが、しっかりとしていかなければ、これはもう幾ら法律をつくってもだめです。
 したがって、こういったことについて、一方で法律をつくりながら、もう一方で農林水産省の行政としてどのようなことをしていくのか、このことが最後に残る最大の問題だ、こういうふうに思っています。この辺について、大臣の答弁をお聞きしたいと思います。
武部国務大臣 先生御指摘のことがやはり一番大事だ、私はこう思っております。
 これまでの法体系というのは、企業の性善説に立っておりました。しかし、あのような偽装表示事件が後を絶たないというようなことから、こういう、決して私は一億円の厳罰というものが快いというふうに思っておりません。したがいまして、国民の生命や健康に直接かかわる食品を扱う企業でありますから、社会的モラルというものをしっかり果たしてもらいたい。企業の行動理念ということに照らしてしっかりした対応をとっていくということが重要だと考えております。
 このために、一月二十三日付で、食品企業、団体を広く会員とする財団法人食品産業センターに対しまして、関係法令の遵守や倫理の維持等につきましての取り組みを強化するよう指導を行っております。これを受けまして、同センターにおきまして、具体的事例も踏まえた企業行動規範に関する講習会を開催もいたしております。
 実際に、食品企業におきましても、法令や社会的モラルに反する行為の禁止といった基本的な事項について規範を明確化し、研修等あらゆる機会を通じ周知徹底するということが必要でありますし、経営トップに直結した倫理についての委員会を設置しまして機動的に開催するなど、適切な内部統制を構築するといった具体的な取り組みを促してまいりたい、このように思います。
 業界においても、こうした取り組みをわかりやすい形で食品産業全体に広げるための手引きとなるものを六月中にもまとめるべく検討が行われている、こう承知しておりますし、農林水産省といたしましても、こういった動きを引き続き促してまいりたい、そのことが非常に大事なことだ、このように思っております。
白保委員 終わります。
鉢呂委員長 これにて白保台一君の質疑は終了いたしました。
 次に、山口わか子さん。
山口(わ)委員 社会民主党・市民連合の山口わか子でございます。今回のJAS法の一部改正について、御質問をさせていただきます。
 今回の法改正案の提案理由としまして、現在の農政に対する消費者や生産者の信頼回復を図るということが急務であるとされています。しかし、このことはもう何年も前から問題にされながら根本的な政策転換がなされてこなかったということに大きな問題があると私は思います。
 より低価格で、しかも生産性を上げることにのみ農政の中心が置かれまして、何十年も前から例えば農薬による農民の健康被害、あるいは食品への被害があったにもかかわらず、このことが問題にされてきたかどうか、そのことに対してどう解決してきたのかも余りはっきりはいたしておりませんし、いまだに、農薬に問題があるのに何十年も空中散布がとめられない。あるいは畜産にしましても、低価格で出荷せざるを得ない中で、安さを追求することが優先されました結果、肉骨粉を飼料に使うようになったということになると私は思うのです。やはり、常に忘れてはならないことは、食の安全と生産者の健康を守る、このことがきちっと政策として打ち出されてこなかったように私は思うのです。
 さらに、このような現状の情報公開も余りされずに、消費者団体が追及するまで、危機意識がなく、実態すら知ろうとしなかった農政に対して、どう生産者や消費者の信頼を回復していくのかというのは重要課題だというふうに思うのですが、こうした根本的な取り組み、今までの反省を踏まえて、どう農政を本当に基本的にきちっとしたものにしていくかのお答えを大臣からお願いいたします。
武部国務大臣 私ども、BSE発生を機に、深い反省の上に立ちまして、BSE問題に関する調査検討委員会の報告も、甘んじてこれを率直に受けとめよう、そういう判断をしたわけです。これは、農林水産省、改革か、さもなければ解体かというふうに問われたと言っても過言でないというふうに私は厳しく受けとめているわけでございます。
 その上に立って、食と農の再生プランを公表いたしまして、今まで生産者サイドに軸足を置いていたと言って過言でない農林水産行政を、消費者保護第一、消費者が召し上がっていただけないものを幾ら供給しても生産者も成り立たない、自給率向上を唱えても自給率が上がるわけはない、そういう考え方を基本理念として今取り組んでいるわけでございます。消費者ということがわかりづらいといいますか、生産者の方々からすれば誤解を招く言葉かもしれません。私は、消費者というのは、生活者という言葉に置きかえることができる、このように思っております。
 その上に立って、先般ヨーロッパも行ってまいりましたけれども、イギリスあたりは環境・食料・農村地域省と、どこを見ても農林水産省とか農業省、漁業省という、そういう文字は見当たらないんですね。ですから、WTOにおいて我が国が主張しておりますように、食料の安全保障でありますとか農業の多面的な機能でありますとか、あるいは資源の持続的な利用というようなことを基本原則にして、これからの農政を転換していかなきゃならない。
 その上に立ちますと、環境でありますとか農村地域でありますとかを考えますと、当然生産者の方々の命と健康ということに十分配慮しなきゃならぬことは言うまでもございません。それは消費者にとっても生産者にとっても同じ問題だ、このように考えて、その取り組みを強めてまいりたい、このように考えている次第でございます。
山口(わ)委員 今までやはり、農政に対しまして、今大臣も御答弁されましたけれども、本当に食の安全と生産者を守るという視点で、今回はJAS法の一部改正ということで公表と罰則が主な点になっていると思いますが、例えばこれ一つをとっても、本当に政策の中で生きていくのかどうかというのが、私は疑問に思うわけです。
 例えば、この改正案では、必要に応じて事実を公表していくことができるとされているわけですが、必要に応じてということは一体どういうことなのか、あるいは必要がなければ公表しないのか、その辺も非常にあいまいさを残しているというふうに思うのです。
 例えば、公表が結果として生産者や消費者にどういう影響を与えるかということも私は問題であるというふうに思うのですね。私は、善意に考えても、だれも悪いことをしようと思ってする人はいないと思うのです。そういうことをする原因がやはりあるというふうに思うのですね。特に、公表するということは、事業者に重大な社会的な制裁を加えるわけですから、それだけに公表が行政府の恣意的な裁量にゆだねられるということにも私は問題があるというふうに思います。
 やはり、公表だけが解決ではないというふうに思いますし、日常の農林水産業務が、特に全国各地の現場で今きちんとされているわけです。私なんかも地元にいても、農林水産省の現場の職員は本当に一生懸命やっているんですね。そういう一生懸命やっている職員はいろいろな情報をキャッチしているというふうに思うのですが、その情報がなかなか組織的にずっと大臣のところまで伝わってこない、そういうことも一つは言えるのじゃないかというふうに思うのです。そういう意味でも、やはりこの公表ということを、もちろんきちっとどういうことを明記するかということも大事ですが、その公表に至るまでの農林水産省の制度の仕組みというのも考えていかなきゃいけないのじゃないかというふうに思うのです。
 そういう意味で、これからこの公表をどう明記していくのか。あるいは、公表のための農林水産省の取り組みをもっと具体的に、せっかく現場で働いている農林水産省の職員がいるわけですから、例えばそういう皆さんとの情報交換をどういうふうになさるとか、その辺について御答弁をいただきたいと思います。
西藤政府参考人 食品の偽装表示がなされた場合に、消費者が正しく食品を選択するために消費者に対して迅速に情報提供をしていくことは非常に重要だというふうに思っております。
 表示の実態につきましては、私ども独立行政法人消費技術センターで巡回的にモニタリングをする、そういうみずからのモニタリングにおける現場の把握と同時に、食品表示一一〇番、これは今年の二月に設置して以降、既に二千五百件を超える一般の方々からの情報もいただいております。
 さらに、この十四年度には食品表示ウオッチャーということで、消費者の方から日常の購買行動の中での情報提供をしていただく、あるいはお気づきの点をいただく。さらに、食肉あるいは青果、水産物というふうに、分野を決めて集中的に実態調査をする。
 そういうようなことを通じて情報の収集を図っていき、必要に応じ、当然のことながら立入調査をする。立入調査によって、例えば偽装表示を確認し、指示を行うということになっていくと思っております。そのことを通じて、消費者に対する情報を正確に提供していくということになると思っております。
 そういう点で、公表の状況がどうかということでの御質問でございました。虚偽表示を確認し、指示を行った場合には、今度、情報公開法等の趣旨を踏まえて、原則として公表するということになると思っています。この場合の公表につきましては、偽装表示につきましては、事業者は公表されない正当な利益を有しているとはとても言いがたいことから、指示を行うと同時に公表することになるというふうに考えております。
山口(わ)委員 今回、BSEが発生して、特に偽装表示問題が起こって、これは大変だというのでJAS法改正に踏み切ったと思うのですが、これは何もBSEに限った問題ではないと私は思うのですね。もう何年も前からこの偽装表示というのは起こっていたと思うのです。
 例えば、三月に、食糧庁が公表している資料の中で、お米の表示が正確かどうか、適正かどうかを八万七千の米穀業者を対象に調べた結果、不適正な業者が一万四千七百業者もあったという報告がされているわけです。お米の偽装表示というのは、前からやはりかなり新聞に載ってきたというふうに思うのですが、そういうときのきちっとした体制もないままに、今回はこれだけ新聞で大騒ぎになり、BSEで大騒ぎになり、牛肉の消費も落ち込んできたという中で、もうどうしようもなくなって、一つはこういうJAS法の改正に踏み切ったというふうに思うのですけれども、やはり私は、農林水産省の危機意識というのがもう一歩欠けていたように思うわけです。
 今回の不正表示につきましても、なぜ今まで把握できなかったかと疑問に感ずることがたくさんあります。さっきも民主党の議員さんからも質問されていましたけれども、やはりこういう疑問がふえてくるほどに、一体農政は何をやっていたのかなというふうに思う部分があるわけです。内部告発があったということも多いんですけれども、農林水産省としても事実を、実態を把握していたのではないか、けれども公表しなかったのではないかということもちょっと疑問に思いますが、その辺はどうでしょうか。
西藤政府参考人 食品の表示は、先生御指摘のとおり、消費者の適切な商品選択に資するためのものであります。消費者と生産者を結ぶ情報交換であり、信頼のきずなであると考えております。そういう点で、最近の食品の虚偽表示の多発は、消費者の食品に対する信頼を損なう悪質な行為で、極めて残念であり、遺憾なことだというふうに思っております。
 私ども、表示の問題を、前回平成十一年のJAS法の改正で、一般消費者向けのすべての飲食料品について表示をお願いするという背景は、やはり食と農が遠くなってきている、食と農が見えなくなってきている、そういう状況だったというふうに思っております。
 すべての飲食料品についての表示義務づけをお願いした平成十二年七月以降、私ども、その表示の実施状況についてモニタリングといいますか、実態調査をし、関係者への協力、消費者への情報提供にも努めてきたつもりでございますけれども、残念ながらこのような虚偽表示が多発するという状況は、一方で私どもの監視体制なり、あるいは表示制度の今までの運営、現行のJAS法についてもやはり改善すべき点があったんだというふうに真摯に受けとめております。
 こういう状況の中で、私ども、検査に対する体制強化ということで、今までといいますか、本年まで千五百人程度で立入検査の職員数を確保いたしておりましたが、それを三千三百人程度まで拡大しておりますし、食品表示一一〇番の設置、あるいは食肉の実態調査、食品表示ウオッチャーの設置等々を通じて監視体制を強化する。あわせて、今回お願いしております、偽装表示を防止するためのJAS法改正ということで、罰則の大幅な強化等を内容とする改正をお願いし、法案を提出させていただいている状況にございます。
 私ども、今後、食と農の再生プランを基礎に消費者に軸足を置いた農林水産行政を展開する、大臣からも大変強い御指示をいただいております、不正は見逃さないという方針のもとで食品表示の実効性が確保されるよう、省を挙げて取り組んでまいりたいというふうに思っております。
山口(わ)委員 この不正表示、違反がなぜ後を絶たないかということで今いろいろ御答弁をいただいたんですが、私が考えますのに、例えばその製品の食品の量とか納入期日まで、すべて量販店の意向に従わなければいけないという構造が私は最大の問題点ではないかというふうに思うのです。
 牛乳の問題もそうですが、昨年の雪印事件のときも私は御質問申し上げましたけれども、牛乳の値段が水の値段の半分しかないということを一つ取り上げましても、これだけ安く量販店で売らなければいけないということになりますと、当然、酪農家の皆さんは、それだけ安い牛乳を出さなきゃいけないということで、より安く、よりたくさん牛乳を出さなきゃいけないということが基本にあって、安い肉骨粉を使わざるを得なくなってきた。
 幾ら生産者だって生活していかなきゃいけませんから、安い牛乳をどうやって提供するかということだけでも頭を痛めてしまうという問題がありますし、牛乳に限らず、ほかの野菜なんかもそうですが、生産者から出すときの低価格な食品というのは、本当に生産者の生活を圧迫すると思うのですね。価格を決められるのが、大体が量販店で決められてしまいますから、その決められた金額で納入しなければいけない。逆に、それを納入するためには生産者のところにしわ寄せが行ってしまうという、非常に問題点があると思うのです。
 私は先ほど申し上げましたけれども、不正をしたいと思っている業者はそうたくさんはないと思いますが、そうせざるを得ない現状。例えば、より安く、どっちかといえば食品の安全よりは値段だけの追求で物事が進んでしまう、そういうことが生産者も圧迫し、納入業者も圧迫するんではないかというふうに思うのです。
 やはりこういう構造が是正されない限り、私は不正表示というのはなくならないというふうに思いますし、今農政に求められているのは、安心して生産できる生産者、そして、安心して処理、加工できるそういう業者がいて、そして、安心できる食料が消費者の口に入るというふうに思うので、そういう仕組みをつくっていくことも大事だと思うのですね。
 常に価格は量販店で決められるというのではなくて、やはり農林水産省が中心になりながら、どうやったら安心して安全な食料が生産され、加工され、そして消費者の口に入るのかということを根本的に見直していかなきゃいけないんではないかと思うのです。
 多分、価格を決めるときは、農林水産省がどういうふうにかかわっているかよくわかりませんけれども、こうした仕組みを政府の中にどうつくっていくのかということが、私は、BSEの問題も、先ほどお米の偽装表示も申し上げましたけれども、やはりそういうことは後を絶たないんじゃないかというふうに思うので、その辺について、これから、基本的な問題だと思いますので、御答弁をいただきたいと思います。
西藤政府参考人 先生御案内のとおり、生鮮食料品等の価格形成、私ども、基本的には需給関係のもとで市場において価格形成されてきていると。もちろん、そういう価格形成の透明性の確保、あるいは野菜価格につきましては、自然条件等で大きく価格変動があることにつきまして、生産者の価格維持のための一定の補てん事業等も実施してきている状況にございます。
 そういう価格形成の実態とは別に、今回、先生御指摘のようなJAS法に違反した場合の立入検査を私どもやってきております。表示違反の事実の確認、当然そこの場で事実の確認をするわけですが、その場合も、偽装表示の再発防止をしていくという観点から、流通、取引実態も含めて、そういう偽装表示の原因となった背景についても、立入調査を通じてその把握に努めているという状況でございます。
 一方、先生御指摘のとおり、こうした実態把握において、量販店等がそのバイイングパワーを使って納入業者に不当に不利益を与えている、いわば優越的地位の乱用の事実があれば、公正取引委員会に直ちに連絡するとともに、公正取引委員会と十分連携をしてその是正が図られるよう対処していくということで、従前から公正取引委員会との連絡調整はいたしてきているつもりでございます。
 なお、公正取引委員会におかれては、大規模小売業者の優越的地位の乱用に伴う問題の重要性を踏まえられて、優越的地位の乱用規制の観点から、昨年十月から大規模小売業者とそれに対する納入業者との取引に関する実態調査、たしか六千事業者ぐらいに対する調査を実施されているというふうに承知しております。
 いずれにいたしましても、今後とも公正取引委員会と十分連携をとりながら、そういう優越的地位の乱用防止ということにも十分私どもとしても注意を注いでまいりたいというふうに思っております。
山口(わ)委員 ちょっと私の質問の趣旨とお答えが違うと私は思うのですが、私は、例えば、さっき例を挙げましたように、牛乳がなぜ水より安いのか、そのことが解決されない限り、相変わらず安い飼料を使い、たくさん出すことを考えてしまうんじゃないかと。
 例えばですが、牧草地でゆったり牛を育てるということがあれば、牛乳の量は少ないかもしれない、でも、安心で安全な牛乳は提供できるわけですし、価格だって、もしかしたら水より安いなんということは、とても生産者の側からすればできないことだと思うのですね。それを無理して安い価格で生産をしようと思うからいろいろな問題が起こってくると思うのです。
 ですから、乱用をなくすとか、そういう事業者の立入調査をするとかという問題の前に、やはり農政として、今後、価格形成を含めて、生産者の労働実態や、本当に生産者が安心して農産物を生産し、畜産もやり、そして出荷もし、安心して生活できる、そういう状況をどうやってつくり出すかという基本的な部分がとても大事だと私は思っているものですから、それはもちろん立入検査も必要でしょうし、実態調査も必要でしょうけれども、やはりそうではない方法も必要ではないか。もっともっと基本的なところでお答えをいただきたいと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
西藤政府参考人 表示問題に関連して消費者への情報提供ということを申し上げてきたわけでございますけれども、生産の実情、そういうことも含めて、消費者にどういうふうに正確に情報を提供し、消費者にそれを選択してもらうかということは、私どもも非常に重要な状況にあるというふうに思っております。
 トレーサビリティーということをたびたび申し上げておりますが、トレーサビリティーも、そういう産地、生産者の状況を消費者にいわば正確に情報提供していく一つの手法であるというふうに思っております。
 私ども、生産の状況あるいは流通の状況を、生産者に的確に提供し、消費者に的確に提供し、消費者がそういう状況に基づいて日々の食料品を購買していただく、そういう仕組みをぜひつくっていきたいというふうに思っております。そういう理解を通じて適正な価格形成も実現していく、あるいは生産者の努力も報われるような状況になっていくというふうに思っております。
山口(わ)委員 ただいまトレーサビリティーのことがお答えにありましたけれども、やはりきちっと正しく情報提供できるかということになりますと、これだって疑わしい部分というのは私はあると思うのですね。
 それで、今も全国各地で試みられていることは、生産者や消費者の目に見える農業生産ということがとても私は大事になると思うのですが、私どものところでもやっておりますが、生産者が自分の生産した野菜や牛乳にちゃんと名前をつけて、そして地域の商店といいますか、直販店に出して売るということが最近非常にふえてきているわけです。
 これはやはり地産地消といって、本当に地域の皆さんが目に見える商品を安心して買えるシステムというのをこれからつくっていかなきゃいけないというふうに私は思うのです。見てもどこの生産だかよくわからない、特に加工なんかはきちっと表示がまだされていないということもありまして、十分に消費者の目に見えない部分もありますが、この地産地消をもっともっと進めていくというお考えがあるかどうかというのが一つ。
 それから、先ほど情報の提供ということをお答えいただきましたけれども、実は私、この前の委員会でカドミウム米のことについて御質問申し上げました。一九九八年ごろ全国でかなり大規模な実態調査がされていると思うのですが、その実態調査の結果について、実は、資料を提出していただくようにお願いしたんですが、資料の提出がいただけなかったわけです。
 その大きな原因というのがどういう原因かといいますと、その調査の結果が生産者に知られるのがまずいというとちょっと語弊があるかもしれませんが、あらかじめ生産者の皆さんにきちっと承知をしていただかない検査だったので公表できないというお話だったのです。
 その公表できない理由はよくわかりましたけれども、調査をする場合は、やはり消費者に目の見える調査といいますか、生産者にも消費者にも必要な調査である、そして公表できるような調査をしなければいけないというふうに私は思っているのです。この辺も、私は非常に、この前質問したときは調査の結果を公表いただけるというお話でしたので、ちょっとがっかりいたしました。
 そういう意味でも、農林水産省自身も、せっかく調査をするんでしたらその調査が公表できるようにしなければいけないというふうに思いますし、先ほど、やはり農業生産物をどういうふうに生産し、どういうふうに消費者に提供していくかという点で、地産地消なんかを努力されなければいけないというふうに思います。
 この二つについてお答えください。
西藤政府参考人 農産物について、生産者と消費者が顔の見える関係ということを通じて、地産地消の取り組みへの言及がございました。
 私どもも、食料消費、食品流通という観点で見て、画一的な一つの方法だけでの流通ということではないだろうというふうに思っております。地域の実情に応じていろいろな取り組みが、昨今の状況を見ておりましても、生産者の名前を付した生鮮食料品が量販店の店頭に並ぶ。あるいは、当日の朝収穫した農産品が当日店頭にもう並ぶ。あるいは、自給用に生産した野菜を集めてそれを継続的に量販店の店頭で販売していく。いろいろな取り組みが全国で行われております。
 私ども、安全、安心という観点のみならず、顔の見える関係によって、食料消費の改善、増進という観点も踏まえて、そういう取り組みに対するいわば情報提供を進めていきたいというふうに思っております。
 また、私どもの調査の情報開示という点での御質問でございました。
 一般論でお答えすれば、私ども、ますます行政自身が非常に透明性を求められてきているというふうに思っております。今度のJAS法改正の指示、公表という枠組みについても、いわば情報を消費者に提供する、あるいは関係者に提供することによって、関係者の選択と自主的な努力を促していくという点で、今後ますますいろいろな取り組み、いろいろな情報の開示、透明性を確保していく、そういうことが行政手法として求められているというふうに私ども理解をいたしております。
山口(わ)委員 実は、私の地元でも量販店がございまして、私は長野ですが、長野はたくさん野菜もつくっていますし、お米もつくっているのですけれども、実は、量販店に行きますとほとんど地元産がないんですね。大概輸入品が多いんです。確かに、生産者コーナーというのもあることはあるのですが、ほんの一部で、ほとんど午前中の十時ころ、十一時ころといえば終わってしまうくらいしかないわけです。
 むしろ、私は東京にいて、実際に今高輪の宿舎にいるんですが、宿舎のそばのお店の方がよっぽど長野産とか埼玉産とかという野菜がきちっと店頭に並んでいるのです。本当に私は、せっかく目の前に農業をやっている現場があり、野菜をつくっているところを見て、ああ新鮮だなと思いながら、実際に買うときはない、こういう状況というのは、やはりこれはいつまでたっても直らないような気がするのです。
 そういう本当に農業が、農生産物が消費者に届くような行政をぜひやっていただきたいというふうに思いますし、別に外国産がどうのこうのという前に、より安心でより安全な食料をどうやったら生産し、そして消費者のもとに届くか。そして、生産者も安心して生産できるようなシステムをぜひつくってほしいというふうに思うのです。
 この問題というのは、本当に毎年いろいろな事件が起こって、私はここに来てから二年ぐらいですが、二年の間に本当にこんな事件ばかりあったような気がします。やはり基本的な解決は、安心して生産できる体制がないというのが私は一番大きな問題だというふうに思っていますので、その辺は、ぜひこれから真剣に、農業基本法もあって、ただ基本法という名前で飾ってあるだけじゃなくて、きちっとやはりそのことを実行していくということが大事だというふうに思いますので、その辺はぜひやっていただきたいというふうに思います。
 それから、JAS法に欠けている点は、消費者の保護と権利という視点にあると思うのですが、食品の製造や表示が行われている過程の中に消費者が参加できる規定をJAS法に位置づけたらどうかというふうに思うのですが、その辺のお考えはどうでしょうか。
西藤政府参考人 先生御案内のとおり、JAS法は消費者の商品選択に資することを目的にいたしておりまして、食品の製造方法を定めるJAS規格は、まさにそういう製造方法の一定の基準を定める規格でございますし、表示制度は、まさにその中身についての情報をどう提供していくか、そういう検討の際に消費者の意見を反映させていくということは非常に重要だというふうに思っております。
 こういう観点から、食品の、加工食品であればその規格、あるいは生鮮食料品の表示の基準を定める際に、私どもパブリックコメント、意見を広くいただくようにしておりますし、あわせて、JAS法に基づくいろいろな規格、表示基準は、いずれも消費者等から構成されます農林物資規格調査会の御審議を経て最終決定をするという仕組みをとっております。農林物資規格調査会には、専門委員会も含めて、必ず消費者の方の参画を得て実行しているという状況にございます。
 今後とも、多様な機会を通じて消費者の方々の参加を得ながら、規格、表示制度の運営を図っていきたいというふうに思っております。
山口(わ)委員 この食品の安全ということから考えますと、やはり消費者にどう安全を提供するか、安全ということはどういうことなのかをきちっと消費者に知ってもらうということは、とても大事なことだというふうに思っています。
 私も消費者の一人ですが、なかなか表示を見てこれが安全かどうかなんという判断は非常に難しいわけですね。ですから、なぜこういう表示がつけられているのか、表示の中身はどうなのか、あるいは加工の場合に本当にこの表示でいいのかということは、やはり消費者に理解してもらわないといけないというふうに思うのです。
 私も時々この表示を見るのですが、例えば加工食品の場合は、たくさん中身が入っていますけれども、それがどこの産地かということはなかなか理解できないわけです。最近は、非常に安い労働力が追求をされるために、外国で食品を加工して日本に納入するということがふえてきているというふうに思うのです。
 特に、私たちは、目に見えて、この表示をして、買えるシステムというのは非常に大事だと思うのですが、むしろ生鮮食品とか、食品が一つであれば今は表示がちゃんとされるようになりましたけれども、それでもまだまだ表示違反というのは多いと思うのですね。ましてや加工食品になったら、本当に一体どこでつくられているのか、中身は本当に安全で安心できるのかという点で、非常に消費者は不安を持っているというふうに思います。特に偽装事件が起きてからなおさらそうだというふうに思うのですが。
 こういう消費者が安心できるような表示をどうやって納入業者や生産者の皆様に徹底されているのか。特に表示をされてない場合もたくさんあるわけですね。小さいお店に行きますと、もう表示はほとんどないというお店もあるわけで、その辺のチェックはどういうふうにされているのでしょう。
西藤政府参考人 例えば加工食品そのものが輸入であれば、だれが輸入し、どこで製造されたということの表示は、基本的に加工食品において実施されているというふうに思っておりますし、私どもあわせて、今多分先生御質問の御趣旨は、加工食品の原料が、国内で加工食品がつくられる場合も、その原料がどこで生産されたものかが必ずしもはっきりしない、そのことによる不安感というようなことの御指摘ではないかというふうに思います。
 私ども、加工食品の原料原産地表示ということで、漬物の梅干し、ラッキョウから始まりまして漬物一般に拡大してきておりますし、さらに水産加工品についても、例えばアジの開きについては、そのアジの開き自体は国内のどこどこで行ったけれども、その原料のアジ自体はどこからの輸入物であるということの、まさに加工食品の原料原産地の表示も順次拡充をいたしてきております。現在も、冷凍野菜について、その原料原産地表示をすべく検討を進めている状況にございます。
 今後も、表示の可能性、実務的な実効性も踏まえながら、順次加工食品の原料原産地表示については拡充をしていきたいというふうに思っております。
 また、生鮮食料品の表示でも、中小といいますか、専門の小売店の方でなかなか表示がされてない実態があるということの御指摘でございます。
 私どもの実態調査においても、いわゆる量販店においては、表示はほぼ一〇〇%近い実施状況になってきておりますが、専門店においては、先生御指摘のとおり、まだまだ表示が十分と言える状況にございません。私ども、いろいろな機会を通じて理解と協力を求めていくという取り組みを強化していきたいというふうに思っております。
山口(わ)委員 農水省や厚生労働省が許可していない遺伝子組み換え食品が日常食品に使われているようなことを最初に見つけたのは消費者団体だというふうに思うのですが、やはり幾ら法律をつくって規定をつくっても、なかなかそれがきちっと実行されていかない。
 私は最近思うのですが、何か事件が起こったときに、やはりこうした方がいいとかああした方がいいということがあるのですが、何にも起きなかったら、もしかして何にもしないで終わってしまうんじゃないかという心配も実はあるわけですね。
 そういう意味でも、行政の皆さんに緊張感や使命感がなければ厳格なチェックはできないというふうに思うので、特にこの消費者団体による表示のチェックを政府が財政的に支援するようなことは考えられないでしょうか。
西藤政府参考人 食品の表示のチェックに当たりましては、国及び都道府県が中心になって監視や立入検査を実施している状況にございますが、消費者の協力を得て監視を行っていくということは、我々としても非常に重要なことだと。
 そのような観点から、平成十四年度から、全国で結果的に大体千三百五十人の消費者を食品表示ウオッチャーとして委嘱できるのではないかと思っておりますが、日常の買い物等の中で食品の表示をチェックし、疑いのある表示がある場合には関係行政機関に情報をいただく。こういう食品表示ウオッチャーの委嘱ということを通じて消費者のお力をかりたいと思っております。
 あわせて、私ども、独立行政法人農林水産消費技術センターでは、消費者からのいろいろな商品についての相談をいただいております。平成十二年度の実績で見ますと、全国で相談を受け付けた件数は約六千件に達しております。その中で、多分先生、その中身の分析を要するような事項について支援ということでのお尋ねだったのではないかと思いますが、この消費技術センターの相談をいただいた中でも、件数はそれほどではございませんけれども、私ども、御依頼を受けたものの分析をし、結果を開示しているという業務も行っております。
 今後も、消費者に対するいろいろな情報提供という観点で、こういう取り組みも強化をしていきたいというふうに思っております。
山口(わ)委員 時間が来ました。消費者団体の協力というのは大変重要ですので、財政的な支援もぜひしていただくように要望しまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて山口わか子さんの質疑は終了いたしました。
 次に、高橋嘉信君。
高橋(嘉)委員 自由党の高橋嘉信でございます。
 僕は、このJAS法の中身がよく見えないし、その上位法となる包括法を今検討しているという、その内容との整合性、よく見えないのでありまして、その辺のところをまずはお伺いしてみたいと思っております。
 このJAS法の必要性についてでありますが、その中でも、まずJAS規格からお伺いいたします。
 現在の食品の製造や流通状況を見ますと、JAS規格制度は本当に必要なのかどうか。まず、JAS法の流れ、ちょっと私の知る限りを申し上げますので、間違いがあるかどうか、後でお伺いしたいんですが。
 JAS法は、戦後の統制経済下の昭和二十五年、農林物資規格法として生まれました。そして、四十五年に品質表示法が加わりました。そして二〇〇〇年の改正で、全飲食料品に原産地、加工食品には原材料名等の表示義務が課された。そして、JAS法制定当時から三十五年までは、JAS規格の格付は農林省や各都道府県が行っていた。三十六年になって、消費者保護に対する声が強まってきたころなんですけれども、三十六年ごろに認定工場制が設けられてきています。そして、その規格証票、いわゆるJASマークが添付できるような仕組みになっていった。
 消費者保護に対する声がだんだん出てきて、四十五年ころから品質表示法が加わっていくのに、このころから手が緩められていった。僕はそう見ざるを得ないのでありますが、この農林省や都道府県が行っていた、にもかかわらず、三十六年に認定工場制、つまり、農林大臣の認定を受けた工場だけがJASマークを貼付することができていくように変わっていくわけですね。時代の流れとちょっと違う流れになっているわけです。この僕の認識で間違いないでしょうか。
西藤政府参考人 先生御指摘のとおり、JAS制度自体、規格から始まりまして、その後品質表示が加わり、大きく言って現在の体系になってきております。
 そういう点で、二十五年から制度が始まっておりますが、規格の当初のころ、生産過程をいわば工場生産一般という状況になかなかいかない状況の中で、国、地方公共団体が規格を検査するという状況でございましたが、加工食品の生産行程も、近代化という言葉がいいかどうかあれですが、工場生産になっていき、均一な製品ができる状況になってくる。
 そういう中で、格付機関についても、検査機関としての民間の力も出てくる。そういう状況の中で、工場の認定制度。認定工場は、サンプリングなりラベリングをみずからやる。検査自体は認証機関が行うという仕組みでございますが、そういう仕組みを通じて、いわば民間の力の活用、活用という言い方があれかどうか、民間による自主的な取り組みと、それと生産行程の変化に対応してきたというふうに思っておりますし、表示制度はますます、食と農が遠くなるという言い方をさせていただきますが、製品の中身についての情報について、より求められてきている。そういう点で表示制度の充実が図られてきております。
 一方、規格につきましても、例えば、つくり方に特徴があるということで、有機農産物が一番の例でございますけれども……(高橋(嘉)委員「いや、それはいいです」と呼ぶ)有機農産物についての規格を定めるというようなことで、規格制度の一面での合理化と一面での充実が図られてきているという状況にあると理解をいたしております。
高橋(嘉)委員 要は、制定当初はお役所が格付をしていたということですね。これだけは間違いないですよね。(西藤政府参考人「はい」と呼ぶ)その後、大臣認可によってJASマークが張られる食品が市場に出回ってきた、これは事実なわけです。
 ところで、大臣、これは哲学的な、理念の話ですが、JAS法の中のこの規格、このJASマークというのは安全を意味するものですか、どうですか。
武部国務大臣 安全も入るのかもしれませんが、品質の保証によって消費者の選択に資するということの意義があるんじゃないでしょうか。
高橋(嘉)委員 これは最も大事な点でありまして、食の安全を意味するのかしないのか、もう一回だけお話しください。JASマークは食の安全を意味するものか否か。
武部国務大臣 食の安全は、食品衛生法、食衛法によって担保されるものだと思いますが、同時に、JAS法というのは、そういう安全ということも踏まえた上で消費者の選択に資するための保証という、そのように理解していますが。
高橋(嘉)委員 いや、これは品質表示法が加わって昭和四十五年にJAS法が改正された、そのときに初めて、消費者の選択に資するとなっているんですよね。そうですよね。その点をお答えいただけますか。
西藤政府参考人 御指摘のとおり、昭和四十五年にJAS法の改正で品質表示制度を導入したときに、目的に消費者の選択に資するという視点を追加してきたというふうに思っております。
 先ほどの点で若干補足させていただきますと、一定の品質規格をクリアした商品であると、JASマークを貼付されているものは。そういうことを通じて、一つの安心を消費者にもある面では提供しているというふうに思っております。
高橋(嘉)委員 一定の規格をクリアしている商品だと。ところが、後でお話ししますけれども、規格率にばらつきが非常にあるわけです。これは任意なんですね。任意で、しかも、最初に農林省や都道府県が格付をしていった。まさに公的な機関が品質保証をしていった。そうすると、消費者は、これは安全な食品、安心できる食品と思って当然じゃないですか。
 しかし、これは農林物資規格が当初からの本旨であって、それが四十五年のころから、取ってつけたようにと言ったら失礼ですが、消費者の選択に資するという形になっていったんですね。ですから、中身と法律の運用の部分がどうしてもぎくしゃくして、実効を得る形がなかった。それが今日をあらわしているわけなんですよ。
 だから、僕はもう一度お伺いします。一定の規格をクリアしたから安心を与えているというような言い方ではなくて、食の安全、安心を意味するものかどうか、JASマークがどうか、それをもう一度お答えください。
西藤政府参考人 JAS規格、制定される状況、製品によって品質に大きな格差が認められる、いろいろ格差がある、消費者、生産者の強い要望がある、一定の市場規模がある商品についてJAS規格を制定し、その規格をクリアしているものについてマークを付すということでございますので、まさに一定の品質を保証していると、規格を付されている商品については。そういうことで、私ども、結果として、その品質を保証する、その規格をクリアするということで一つの安全、安心を消費者に供給しているというふうに理解をいたしております。
高橋(嘉)委員 これは農林政策なのか安全政策なのか、よくわからない。規格という。規格はクリアしていても、例えば、本当にそれは安全なものであるのかないのか。安全なものを提供するんだったら、最初は国や公的機関が格付をしていたんですから、どうして今は格付の認定機関とか登録認定機関とか、そういうところに任せっきりで、そして、実際には製造業者がその機関からの認定を受ければ勝手に張れるわけですね、ばんばんばんばん、JASマーク。それでいて本当に安全、安心を提供していると言えるんですか。
西藤政府参考人 食品の安全という観点からいえば、まさに流通する食品は当然のことながら安全なものでなければ消費者に提供されない。その安全自身は、食品衛生法の目的がまさに安全な食品を供給するという観点で、私ども、流通している食品は当然安全であるという前提に立って、かつ、その流通している商品が一定の規格をクリアしているということの情報を消費者に提供する仕組みであるというふうに思っております。
高橋(嘉)委員 つまり、食の安全、安心については食品衛生法だということなわけですね。ところが、もう当初は、JASマークは安全なものという、国がやっているものだから安全なものだ、あるいは公的機関がやっているから安心できるものだという認識を与えつつ、そのJASマークをどんどんどんどん、一製造業者も認定さえ受ければ張って出せるようになっていった。しかしながら、現状はばらつきがある。品目によっては半分以下のところもある。そういった実態の中で、安全、安心を提供できるという言い方は僕はできないと思います。
 そして、この登録認定機関のほとんどは、業界団体の組織あるいはその下部組織の検査協会ではありませんか。この実態について、ちょっとお話しいただきます。
西藤政府参考人 JAS規格を認定する認定機関、平成十一年の制度改正以前は、基本的に国と公益法人にその対象範囲を限定いたしておりました。十一年の制度改正において、一定の要件を備えておれば組織形態は問わないという形で認定機関が改正されている状況にございます。
 そういう点で申し上げれば、平成十一年の制度改正で新たに登録認定機関として出てまいりました有機に関する登録認定機関の状況を見ますと、地方公共団体からNPO、公益法人、株式会社まで、広範な組織形態が登録認定機関として登録されている状況にあると理解をいたしております。
高橋(嘉)委員 大臣にお伺いしたいんですが、要は、JASマークというのは、最初はやはり公的機関、国とかなんかがその格付をしていった。そして今、認定機関の方にあるいは格付機関の方に変わっていった。そのようになった場合、消費者は、安全、安心なものという、先ほど、どうも、規格規格の言葉の中に安全という言葉を組み入れてお話しされますけれども、食物だったら、食の安全ということを意味すると思うんですね。それが、どうも、いつの間にか国が後ろに隠れちゃっている。しかし、そのイメージだけはずっと残ってきている。変だと思いませんか。
武部国務大臣 私は、やはり、国の保証の裏づけということは、消費者の方々が信頼をつなぐ、信頼のきずなを結ぶ大事な要件だと思います。しかし、規制緩和というようなことから、登録機関でありますとか認定機関でありますとか、しっかりした国の監視指導、そういったものに基づいて適切にやれるところであるならば、私は、何も直接国がやらなくていいものなんだろう、こう思います。
 そういう意味では、やはり委員がいろいろ御指摘されているような問題について、安全性の問題でありますとか品質の水準の問題でありますとか、さらには消費者の嗜好、消費者の選択に資する、そういう消費者が求めるものについての表示といいますか、情報提供というようなことをきちっとやっていくということが必要じゃないかな、かように思います。
高橋(嘉)委員 いずれ、幾らお尋ねしてもお話しにならないかと思いますが、業界団体を保護するためにいろいろな検査協会等々をつくり、そこからJASマークを貼付させていった。JASマークに対する安全、安心というイメージが国民の中に、消費者の中にある。そして、それを定着させていった。これが実態ではなかったかなと思っております。何せアルコールとか何かが対象外なんですから。多分、当初、これは大蔵省関係だから関係ないという話だったと思うんですね。対象品目がおかしい、そして格付率にも著しいばらつきがある、この点は指摘しておきたいと思います。
 さて、次に、食と農の再生プランにおいて、食の安全と安心のため云々、法整備が唱えられております。その中でも、トレーサビリティーのJAS規格化など法制化の検討を行うものとありますけれども、この点についてお伺いします。
 トレーサビリティーのJAS規格化など法制化の検討とあります。トレーサビリティーは、安全、安心な食品を供給するシステムであります。これをJAS規格化に取り組むということを法制化する、こういう理解でよろしいですか。
西藤政府参考人 トレーサビリティーシステムは、消費者がみずから食品の生産方法等に関する情報を引き出すことにより、安心して食品を購入していただくという視点と、万一食品事故が発生した場合にもその原因究明が容易に行える、そういう仕組みとして導入を図ることが重要だというふうに考えております。
 トレーサビリティーシステムにより提供する情報の内容については、産地、生産者名、収穫年月日、生産資材の使用状況等の情報が考えられますが、今後、関係者の意見を十分聞きながら、その具体的な内容を検討していく必要があると思っております。
 JAS法に定める、JAS規格として制定するということは、そういう特定の生産過程がいわば検証できる仕組みという一つのJAS規格をつくり、その規格に基づいて生産され、情報が提供されるということを第三者が認証する、そういう仕組みとしてトレーサビリティーをJAS規格の中に入れていくということの検討を急いでいるところでございます。
高橋(嘉)委員 では、JAS法は、従来と違って、安全政策に転換をしていった、そういうような感じが受け取られます。
 では次に、農林省は、JAS法の中で行い得る安全と安心の消費者への提供策、今お話しになられました。もっと具体的に、例えば今検討課題にしているのでもいいですけれども、一体全体、安全と安心、トレーサビリティーだけなのか、そうでないものもあるのか、安全と安心、消費者への。ここのところはまだ本当に明確にはなっていないと僕は思うので、もう一回お伺いしますが、JAS法が必要ならば具体的にそれを提示しなきゃいけない。食と農の再生プランにもあれだけ強く出ている。
 食品衛生法と同じような表示方法がJAS法にもある。JAS規格というのは今のような実態だ、僕がお話ししたような実態にある。そして、過去の遺物と言ったら失礼ですけれども、それが規格化だと幾らお話しになられるかもしれませんが、規格をとっていない商品もばんばん出ているわけです。規格率にばらつきがあります。
 そこで申し上げたいんですが、そういった実態の中で、安全と安心の消費者への提供策、具体的に、トレーサビリティー以外に何かあったらお話しください。
西藤政府参考人 JAS規格制度は、先ほど来申し上げておりますように、国が定めた一定の規格をクリアしている、そのことを証するということで、消費者は、その商品のマークを選択することによって一定の品質基準をクリアしているということが保証されるわけであります。
 実際のJAS規格の運用の実態の中におきまして、トレーサビリティーはまだその規格としての検討過程でございますが、有機農産物のJAS規格を制定いたしております。有機農産物に対する消費者の受けとめ方、まさに安全、安心、本物を求める消費者の声に対応してきた一つの規格であると、そういうふうに私ども思っております。
高橋(嘉)委員 有機JASの話が強調されているようですけれども、JASマークの中の一つでありますけれども。
 いずれ、例えば安全、安心をどうしてもJASマーク、JAS法の中でイメージしていきたいというのであれば、お伺いしますが、食品の認定マークの中の厚生省所管の特別用途食品マークや特定保健用食品マークは厚生省許可とちゃんとそのマークに記してありますけれども、この点について。そして、かかる実態を受けての、食の安全、安心を食と農の再生プラン等で大臣があれだけ強調されるのであれば、このJASマーク自体、どのようにお考えか。大臣から御感想をお伺いします。厚生省はそのように書いている。
武部国務大臣 このたびのJAS法の改正は、たび重なる偽装表示の問題、そのことの発生によって消費者の信頼が著しく損なわれている。特にBSEの問題に関連して言うならば、消費者の信頼を取り戻さなければ消費が回復しない。いわば私どもは、緊急事態というような認識に立って、これを先行させてでも改正しよう、こういうふうに考えて、今国会に提出したわけでございます。
 しかし、当初から議論しておりますことは、不当表示法でありますとか食衛法でありますとか、公取、経済産業省、厚生労働省、農林水産省、関係する省がこの表示制度の問題についてもさらに検討して、一元的な対応を考えましょう、あるいはまた、これに付随する問題についてもその場で議論しましょうということで、懇談会を設けているわけであります。ですから、私は、JAS法がすべてだ、こう思っておりませんし、あるいは表示制度がすべてだとも思っていないわけでございます。
 少し答弁が長くなって恐縮でありますけれども、根本的にこの問題に取り組むためには、法整備も必要だ。また、行政組織も見直して、リスク分析に基づくリスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーション、そういったことについても踏み込んだ対応が必要だということで、今検討中なわけでありますので。
 今、印象はということでありますから、私は、いろいろな表示が、この間も量販店へ行ってみましたけれども、有機のマークがついていたり、JASマークがついていたり、いろいろな表示がついていて、その店の店長の話だと、ここの売り場は、隣にある同じようなものと比較して、一日二回並べなきゃならないと、かなりのスペースですが。
 ですから、私は、別に表示というのは一つであるべきだとは思っていないわけであります。それぞれの意味を持つ表示が複数あってしかるべきなんだろう、こう思います。それがいわば消費者の選択に資するという、消費者の選択の、求めるものは、安全であることもありましょうし、あるいは、どこでとれた、そういうこともありましょうし、あるいはどういう生産のされ方をしたのかということもありましょう。いろいろな関心がある。その関心にそれぞれこたえられることが一番いいんだろうと思います。
高橋(嘉)委員 大臣、僕が聞いている視点は、例えば、この間のBSEの調査検討委員会の報告でも、消費者への安全性の確保そして一元化ということを提言されていますね。
 ですから、JAS法の中で食の安全、安心という視点を取り入れていくというのであれば、ですから先ほど局長さん、有機の話をどんどん持っていこうとしているのかもしれませんけれども、現状の中で食の安全と安心ということを示そうとするのであれば、今までのJASマークの認定形態とかそういうものでいいのかどうか、ましてやそのマーク自体にも、ちゃんと厚生省の場合は厚生省許可と書いてある、国が後ろに回ったりしていない、そのことを、そういうお考えがおありかどうかの感想を聞きたかったのですよ。まずそれはそれでいいです。
 では次に、時間がないようですのでちょっと飛ばしますけれども、牛肉のトレーサビリティーシステムにおいて、具体的にはどういった情報を対象とするのか。
 例えばB3、A5といった等級を情報提供するのか。今検討中というお話はわかりました。だけれども、大臣の考え方として、あるいはそれを受けて農林省の考え方としてはどうなのかということを聞きたいのであります。例えば、今言ったB3、A5といった等級を情報提供するのか。あとは、ホルスタイン種か黒毛和種といった品種までも情報提供するのか。
 さらに、現行法は、畜産物について、国産という表示義務だけで産地表示が課されていませんが、この二点について、大臣の今後のこの課題に取り組む姿勢を含めてお話をお伺いします。
武部国務大臣 私は、できるだけ数多くの情報が提供できれば一番それにこしたことはない、このように思いますね。
 ヨーロッパへ行って感じたのは、何で個々の農家まで我々消費者が知らなきゃいけませんかと逆に聞かれてびっくりしたんですよ。私どもはここのお店を信頼している、このお店に聞けば、興味があればこのお店が全部トレースして教えてくれる、だから、私どもはこのお店を信頼しているんだから、それから先まで知る必要はない、そういう話を聞いて、実際驚いたんです。
 私どもは、食卓から農場までのトレースというものをきちっとやれるような、そういうことを最終的には期待をしておりますが、名称でありますとか原産地、販売業者名等の現行の義務的な表示項目に加えまして、その個体識別番号をキーとして、牛の品種……(高橋(嘉)委員「等級です、等級」と呼ぶ)飼養地、屠畜場、年月日、あるいは、この間行ったところでは住所、氏名、電話番号までありました。
 等級のことは、私そこまで今答える知識は持っておりませんので、これはやはり、消費者や流通業者、学識経験者から成る検討委員会を昨日、二十八日に国産牛肉トレーサビリティ検討会として立ち上げたと承知しておりますので、今後そういった場で幅広く検討することになるだろう、かように考えます。
高橋(嘉)委員 いずれ、この等級の話をすると、どのような検討過程になるかわかりませんが、私たちが焼き肉で食べているというのは、私の場合ですが、ほとんどホルスタイン種だと思うのですけれども、その辺の実態がわからないまま消費者が口にしている、そこまで踏み込むのかどうかということをお伺いしたかったのであります。私は、できる限り多くの情報を提供したいという今のお話ですから、前向きに御検討を賜るものと考えております。
 では次に、米の表示ですけれども、米の認証マークについても、義務から任意の認証へとどんどん変わっていく。不適正表示がそれで物すごい数ですね。要は、わかりにくいもの。米、魚介類、肉、野菜、見た目でわからないもの、こういったものが、例えば魚介類や肉にしても、食品衛生法での違反の摘発率が非常に高いんですよね。だれが見てもわかるわけですよ。
 見てわからないもの、これをやはりモニタリングシステム的に、季節的にやるとか、全体を調査しなくても、あっ、やられるな、そういう姿勢ならわかるんですね、もう気をつけるわけです、お互いに。そういうやり方をしないで、単に法人には一億円と、場当たり的にできたような法律に見えるんですね。
 フランスの場合だってもっと多段階ですよね。軽微なものから累犯のもの、そしてもう悪質なものに対してどんどん重くなっていっていますね。その点のところが、にわかにできたような法律のように思えてならない。もう少し、本当にJAS法を残してきちっとした抑止力を備えようとするのであれば、違うやり方があったんだと私は思っております。
 それらを含めて、JAS法の品質表示制度も、先ほど申し上げましたように、食品衛生法と重なっている。今後の検討いかんによっては、包括法のあり方いかんによっては、JAS法の中の品質表示制度がなくなる可能性はあるんですか。
武部国務大臣 今政府で検討している包括法とJAS法とは、直接関係はないと思います。ただ、JAS法について、今、私、委員から種々指摘を受けまして、さまざまな問題があるなという印象を受けました。
 今回は、先ほど来申し上げておりますように、偽装表示に端を発して、これだけでも先行させようということから今国会に提出をしているわけでありますし、今後は、この表示制度にかかわりのある関係省と懇談会を設けて、そこで少し制度的な問題を含めて幅広に検討することになろう、かように思います。
 その場で、今問題の指摘がございましたが、私も少し、これまでのことを前提にして、これまでのことをすべて是として検討するのじゃなくて、もう一度見直しをするというようなフィードバックもして、その上でどうするかということも考えに入れて検討した方がいいのではないかというふうに今感じている次第です。
高橋(嘉)委員 いずれにせよ、品質表示のラベルが、トレーサビリティーばあっと書いてある、これは包括法、それで内容量とかそういったものはもうJAS法、添加物は食品衛生法みたいな、そういうラベルじゃ一元化とは言えないんですよね。ですから、品質表示制度は食品衛生法に吸収されたっていいと僕は思っているんですよ。そうすべきです。それが一元化という意味ですよ。
 僕は、その辺は各お役所で、しかもお役所の機構の中にしっかりと根づいている法律というのはなくしたがらない。だけれども、それがいつまでたっても、今回のようなことが起きると、まさに事後的な後手後手の対応になってしまう。そういう組織のあり方自体にも問題がある。すなわち、法律を一元化するというのであれば一元化すべきだと思うのです。
 そして、JAS規格そのものも、先ほど申し上げましたように、規格ですから、これは。物資規格だったんです。四十五年に消費者保護と、表示制度を入れてからそうなったんだ。物資規格なんです。物資規格なら物資規格だ。
 JASマークというものは、国民や消費者に安全なものだという、食品の、食の安全的なもの、食品なら規格と思うよりも安全と思うのが普通ですからね。そういうイメージを与えてしまって、最初は国が格付したわけですから、与えてしまってからそれをやっていくと。JAS規格そのものも見直すべきなんですよ、私はそう思います。どう思いますか、大臣。
武部国務大臣 今までも見直しているんだろうと思います。しかし、今委員指摘のことは私は大事なことだ、こう思います。我々、省益を超えてこの表示制度というものを抜本的に検討する必要がある、こう思っております。しかし、トレーサビリティーが導入されまして、ITの技術が進めば進むほど、私は消費者が個別にさまざまなものを自分で選択する情報というのが得られることになるのだろう、こう思います。そういったことも視野に入れながら、やはり幅広に検討する必要がある、このように考えております。
 今まで全く見直してこなかったわけじゃありませんで、これだけテンポが速くいろいろ動いているわけでありますし、特に、私ども今回、消費者に軸足を置いて、消費者の選択に資する、そういう表示制度を検討していこうと。まずはこのJAS法改正を先行してやったわけでありまして、先ほどから申し上げておりますように、これがすべてだと考えているわけじゃありませんので、幅広に検討をしていく必要がある、このように思っております。
高橋(嘉)委員 それは、JAS法自体、品質表示制度自体、もう省益にとらわれずにやるということですね。そう理解してよろしいですね。
 では、時間もありませんので、先ほどから有機農業の話を答弁の中でされていますので、有機の話を一つだけ聞いてみたいと思います。
 有機JASの登録認定機関の手数料が機関によって相違がある。これは問題だと思いますが、なぜなのか。これがまず一点。
 また、有機農業に取り組む農業者を支援する観点から申し上げますが、その手数料をもう少し安く、定額にするように何らかの手だてがないのか。それと、もしその登録認定機関が、今六十六だったと記憶していますが、競争によって消滅した、倒産したとした場合に、せっかくの有機認定を受けている農家が大変な被害を受けることにはなりませんか。この辺について、総合食料局長にお伺いします。
西藤政府参考人 有機JASの認定手数料は、認定業務の適正な実施に要する費用の範囲内で各登録認定機関が定めることとされておりまして、この機関には、先生も御案内のとおり、NPO法人や営利企業も含まれ、また活動の規模も大小さまざまでございます。町の範囲でのものもありますし、広域のものも当然ございます。
 このため、その認定手数料も認定機関の規模や人件費、事務費の差異を反映いたしまして相違が見られる状況にあります。具体的には、十万円以下の機関が七割以上を占める一方、二十万円を超える機関も一割程度あるという状況でございます。
 私ども、こうした状況を踏まえまして、有機認定に取り組もうとする農業者が、登録認定機関の活動内容や認定手数料等を十分に把握した上で登録認定機関を選択することができるように、すべての登録認定機関の状況をホームページに掲載するなど、情報の提供に努めております。
 そういう点で、認定を受けようとする農業者の方々はその情報をもとに選択をしていくということが可能になるようにしておりますし、あわせて、できるだけ低廉に認定を受けるということの必要性の中で、認定を受けようとする農業者を支援する観点から、講習会の開催などを通じて必要な手続等についての情報提供を行っております。
 今後とも、有機農業に積極的に取り組もうとする農業者への支援を行っていきたい、また、その登録認定機関の状況につきましても、私ども、認定を行いそのままというわけではなくて、毎年定期的に監査、認定の実施状況のフォローをすることによって認定機関が適正に認定業務が行われるように努めている状況にございます。
高橋(嘉)委員 環境保全型農業、とりわけ食の安全が騒がれている、まさに時代の流れなわけです。そういった観点からも、この有機農業というのはどんどん推し進めてしかるべきだろうと思っております。
 そういった中で、よくホームページ、ホームページと言いますが、ホームページを開ける人ばかりが農業者ではありませんので、もう少し親切なやり方をした方がいいと思うんですよ。例えば、品質表示の中でも加工日とか製造年月日がなくなっちゃった。大体にして、賞味期限よりも製造年月日の方を書くのが普通だと僕は思うんですね。そういう不親切なんです、消費者に対して、あるいは生産者に対してもです。
 そこの中で僕は申し上げたいんですが、要は、量販店、流通段階にあるところ、先ほどからほとんどの委員がお話ししています。もう少し厳しいチェックの仕方が必要ではないかと。大体、生産量、出荷量に対して販売量が何十倍もという商品がある、信じられないことなわけですよ。マスコミでばんばんたたかれているじゃないですか。もう少し厳しいチェックの仕方、段階的に抜き打ちをしたり、流通段階だって二つか三つ、多くても四つぐらいでしょう、消費者に回るまでに。そこを抜き打ちでやれば済むだけのことじゃないですか。その辺のシステムがしっかりでき上がっていない、そう指摘せざるを得ません。
 いずれにせよ、不正表示や偽装表示、こういった状況下にあって、もしJAS法の中にも品質表示制度をそのまま残したいというのであれば、申しわけないんですが、表示ウオッチャーとか表示一一〇番くらいの話で物事が進むとは僕は思えないんですが、いずれこの監視体制についてもきっちりと行っていただきますようにお願いを申し上げて、質問を終わります。
鉢呂委員長 これにて高橋嘉信君の質疑は終了いたしました。
 次に、中林よし子さん。
中林委員 法案質疑に入る前に、大臣に質問をしたいというふうに思います。
 それは、来月、大臣はFAOにおいての食糧サミットに出かける予定だとお伺いをしているわけです。九六年のサミットでローマ宣言が採択をされました。このローマ宣言では、二〇一五年までに栄養不足人口を現在の半分に減らす見通しを持ってというふうに、二〇一五年までの目標が立てられました。二項目めには、世界に八億人以上の栄養失調の人口がいるということはとても容認できないという規定にもなっております。
 このとき、当時農林水産大臣は藤本大臣でございました。藤本大臣がこのサミットでこう発言をされております。それは、食料、農業分野を我が国の国際協力の重点分野の一つと位置づける、こうおっしゃっているわけですね。私は、とてもいい提案だった、発言だったというふうに思います。それはなぜかというと、日本のように自給率が大変低い国、世界最大の食料輸入国、そこにおいて飢餓をなくすために果たさなければならない日本の役割というのは非常に大きな役割を持っているというふうに思うからです。
 一番の問題は、そのときに実は、食糧サミットでの議会人会議、ここで日本共産党の当時藤田スミ議員が発言をされております。日本の果たさなければならない役割、それは、やはりそれぞれの国の自給率をいかに高めていくかという点が非常に大切だ、こういう点です。特に、当時は日本の自給率は四六%でした。それが、そういう目標に向かっていくならば、本来自給率は上がらなければいけなかったのに、実際はこれまでの農業政策の中で自給率が四〇%台まで下がったということでは、このローマ宣言の採択から逆行していると言っても言い過ぎではないんじゃないかというふうに思います。
 このときに、私は、政府はいろいろな意味合いを込めてこういう発言をされたのだと思うんですけれども、一体、ローマ宣言を受けとめて、具体的にはどんな取り組みをやってこられたんだろうなというふうに思わざるを得ません。そこをちゃんと踏まえなければ、大臣が来月行かれても、では、どういう具体的な提案をしてくるのかということが問われるというふうに思うんですね。
 特に、八億人を超える飢餓人口と言われた中で、アフリカ対策というのは非常に重要だというふうに思います。アフリカのナイジェリアで、大豆を育てて、豆腐をつくれるようにした日本人のすばらしい実績がありますけれども、大臣、御存じでしょうか。
 これは一九八九年に、三年間JICAから派遣された中山修氏が、現地の灌木の白い樹液、これがにがりのかわりをするということを発見して、そして、日本流の豆腐のつくり方ではなくして、現地に応じた大豆をつくって、それを原料とする豆腐をつくるということをそこでなし遂げられたわけです。このナイジェリアは、牛肉だとか卵が大変値上がりして手に入らない、そういう人々の中では、現地のにがりに匹敵するものを使った豆腐づくりというのは、安くて、たんぱく源として大変喜ばれたということで、爆発的にナイジェリアの農村の食卓を潤していった、こういう報告があります。
 私が問題にするのは、こういうすばらしい実績がありながら、実は単発的なんですよ。きのう、ちょっと関係の人に来ていただいてお話を聞いたら、その後一体どうなったのかというのはわからないとおっしゃるんですね。これだけすばらしいことがありながら、学会などいろいろな会議で報告がある、昨年は各新聞で報道もされながら、実は知らない、存ぜぬというようなことではいかぬのじゃないかというふうに思いました。
 九六年のサミットにおける議会人会議での日本共産党の提案は、ODAの予算の使い方を抜本的に改める必要があるという提起をしております。
 当時も世界一のODA予算を日本は持っているし、今もそうだというふうに思います。しかし、実際、食糧援助ということになると極めて少ないということになっているので、本当に、一人のこういうすばらしい方が行って、そしてアフリカ流の豆腐のつくり方をそこで広めてきたというようなこと、これは、そんなにたくさんのお金が必要ではない、それでアフリカの飢餓の状態を回復したり、砂漠化を食いとめたりする、そういうことにつながっていくというふうに思うんですね。
 だから、私は、大臣がせっかく行かれるのですから、ぜひ、この三年間のこともちゃんと取り入れながら、今後どういう援助の仕方があるのか、そこを積極的に取り組む必要があるというふうに思うんですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。
武部国務大臣 一九九六年十一月の世界食糧サミットにおいては、委員御指摘のとおり、世界の食料安全保障の達成と栄養不足人口の二〇一五年までの半減を目指しまして、各国が協調行動をとること等が宣言されたわけでございます。
 具体的な行動計画が採択されまして以来、我が国は、この行動計画に即して、開発途上国の自助努力による食料増産への取り組みや持続可能な農業、農村開発等を支援するために、累計で約七十五億ドルの二国間政府開発援助を実施しているわけでございまして、さらにまた、FAOに対しましては、サミットのフォローアップ活動として、食料不足地帯等における情報の収集、分析、及び農業生産の向上における農民の自主的な取り組みの推進などについて支援をしてきたところでございます。
 来月の十日から十三日に開催されます五年後会合には、国会のお許しがいただければ私も出席させていただきたい、こう思っているわけでございますが、飢餓との闘いに向けた取り組み姿勢について討議する予定でありまして、我が国としては、栄養不足人口の削減のための各般のODAの実施、食料安全保障における国内生産や持続可能な農業、農村開発の重要性、農業の多面的機能を含むWTO交渉への我が国の考え方、不測の食料不足に対応した国際備蓄の重要性、また持続可能な森林、水産資源の利用等を訴えてまいりたい、かように考えております。
 また、今御指摘の、大豆加工技術普及事業につきましては、FAOの五年後会合には、ナイジェリアからは大統領も御出席のようでございますので、でき得れば大統領にも直接お会いいたしまして、ナイジェリアにおいて、今委員からお話ありましたような協力について、一定の成果を上げたものということについては、大豆の生産量も、九一年の十四万五千トンから二〇〇〇年には四十二万九千トンということですから、大変な成果だと言って過言でないと思うわけであります。
 協力案件の採択に当たりましては、当該国からの要請を踏まえて、外務省及びJICA等との調整を図りつつ、開発途上国の自助努力による食料増産への取り組み、あるいは持続可能な農業、農村開発等を支援するための二国間協力等を実施していくということでありますから、でき得ることならば大統領に直接お会いして、きょうのこともお話ししてみたい、このように思います。
中林委員 ぜひ、お話しされるべきだというふうに私は思うんですね。国際大豆会議、日本で一昨年あった会議などでは、ナイジェリアから直接いらっしゃって、女性の人が、非常にすばらしいことだということを言っているわけですよ。ですから、そういう意味では、ぜひこれが根づくようにしていただきたいというふうに思うんです。
 この世界食糧会議で、二〇一五年までに栄養不足人口を半減するというふうにスローガンを掲げても、本当に草の根の、具体的な施策がなければ実現できていかないということを私はあえて申し上げておきたいと思いますので、これが本当に実を結んでいくように、ぜひ要請をしておきたいというふうに思います。
 そこで、法案そのものの質問に入る前にもう一点、この間からずっと問いただしている牛肉在庫緊急保管対策事業の問題で、私、やはり大臣の答弁、納得がいかないものがございます。
 ずっと検品が今進んで、その都度農水省の方からプレスリリースが寄せられておりますけれども、いずれの場合も、意図的な、作為的なものが見られなかった、こういうふうに言っているわけですね。例えば補助対象の除外になった主な理由は、「品質保持期限切れ」、「形状に問題(付け脂用の牛脂が混入)」、それから三番目に「形状に問題(骨付き部分肉)」というふうになっているわけです。だけれども、どう考えてみても、脂だとか骨つきだとかいうようなものが、意図的なものだとか、わざとではないというんですけれども、本当にそうなのか。
 その名前の公表を拒むという理由をずっと列挙されています、相手の理由。だけれども、いわば、こういうことをやった人たちの言い分をそのままうのみにしているというか、いわば言いなりじゃないかというふうに私はどうも思えてならない。
 例えば、わずか一キロ、二キロの話じゃなくて、二トン以上のところもありますし、それから四百キロ以上のところもあるわけですよ。そんなものが意図的ではないなどというようなことが本当に言えるのか。どう考えてみてもそういうふうには思えないというふうに思うので、一体どういうふうに調べて、どういう透明性を持っているのか、これはぜひ大臣、わかりやすく答弁いただきたいと思います。
武部国務大臣 わかりやすく答弁できるかどうかわかりませんが、保管牛肉の検品につきましては、四月二十五日から全箱を開封して、事業実施主体等からも事情を聞きながら実施していることは御案内と思います。
 これまでの検品の結果、品質保持期限切れ等の理由で十七の事例、約七トン、七百六箱を補助対象外としたところでございます。これら補助対象外とした事例については、検品の結果、いずれも内容物の詰めかえやラベルの張りかえ等の行為は認められなかったという報告でございます。
 私ども、税金のむだ遣いといいますか、事業費の不正受給を許さないというような考え方を基本にしておりますし、全箱検品というようなことにつきましても、よりつぶさに実態を把握したいということで行っているわけでございます。
 対象外となった理由につきましても、事業の趣旨や対象要件についての周知不徹底や理解不足、品質保持期限切れ、骨つき部分肉等がこれに該当します。事業実施主体の買い入れ時における確認不足、スライス肉の混入などがこれでございまして、御案内のとおり、当初は保管事業として始めました。ですから、買い戻し特約がついて、またこれは流通させるという前提でございまして、しかし、早く短期間にこの事業を実施しなきゃならぬというところでそういった問題が生じたという一面も、やむを得ない面もあるのではないか、このように思います。
 いずれにいたしましても、いずれの事例についても意図的な作為は認められない、こう判断しているわけでございます。
 それから、それでよろしいんでしょうか、何かもう一つありましたか。
中林委員 今から質問します。
 意図的な作為は見られなかったというわけですけれども、なぜ公表に不同意なのかというのに、徹底しなかった農水省の方が悪いんだから、もしこんなことをやったら行政訴訟に踏み切るよというようなおどしをかけているような状況がずっと見られるわけですよ。だから、私は、業者の方の言いなりになっているんじゃないか、それをうのみにしているんじゃないかということなんです。そうでなかったら、私は、この公表の問題は、すぐにやるべきだというふうに思うんですね。
 前回も、全肉連の買い上げ、これは末端の業者の名前が全く出ていないので、いち早く公表すべきだと申し上げました。そうしたら、一定のところでまとめて六月ぐらいになったらという話があるんですけれども、もうそんなことを言わないで、わかった時点から次から次へ公表していったらどうか。その点について、大臣、お答え願います。
武部国務大臣 BSE検査前の牛肉を確実に隔離するという観点から、事業実施主体が対象牛肉を買い上げまして所有権を取得し、保管することを要件としたのでございますが、その際、事業実施主体の買い上げ先を報告することを要件としてはいなかったということが一つございます。
 しかしながら、事業の透明性を確保するとの観点から、事業実施主体に牛肉の買い上げ先について報告を求め、公表することへの同意を得た上で三月十五日に公表したところでございます。
 このうち、直接の買い上げ先が県レベル等の団体である場合には、事業実施主体も末端の業者等を把握しておりませんので、現在、事業実施主体が県レベル等の団体に対し、末端業者ごとの申請数量について公表を前提とした調査報告をお願いしているところでございます。これは、お金を払うときには全部相手先がわかるわけでありますから。
 いずれにしても、公表を前提とした情報提供を得るためには個別の業者から同意を得ることが必要であると考えておりまして、引き続き、早期に公表できるように事業実施主体の努力を促してまいりたい、かように思います。
中林委員 これは大臣の判断でできるんですよ、みんなわかっているわけですから。数量だとか各県はどのくらいというのは、わかっているのは、個別にわかっているからわかっているんですよ。そうであるならば、もう同意を得たところも当然あるわけですから、次々に公表していったらいかがですか。もう即刻おやりになる、その意思を見せた方がいいと思いますけれども、大臣、もう一言お願いします。
武部国務大臣 これはいろいろな問題がありますから、しっかりした対応をしたい、このように思っております。
中林委員 しっかりした対応が、公表するのかどうかよくわからないような答弁では、本当に困ります。
 これは本当に農水省の信頼を失墜させた一つのことだったわけですから、それを取り戻していくためには、ちゃんと厳しくやっているんだということを素早く見せる必要がある。これは私は前から質問しているのに、いまだにそういう状態では全く前に進んでいないように思うわけですので、強く要望しておきます。
 そこで、偽装表示の問題などについて質問をしていきたいというふうに思います。
 ことしの一月二十三日に雪印食品の牛肉偽装工作が明らかになって以来、二月十五日には高松市のカワイ、二月二十七日はスターゼン、その後、丸紅畜産、全農チキンフーズなど、大手企業による組織ぐるみの食肉表示偽装が行われてまいりました。その偽装の報告を見ると、もう膨大なものだというふうに思います。
 偽装表示の常態化、これがわかったわけですよね。今回、公取による排除命令、それを受けた丸紅畜産、少なくとも九九年から偽装表示をしていた、このことが明らかになっているわけですけれども、これほど大がかりな偽装が常態化していたにもかかわらず、なぜ今まで摘発、処分がなされなかったのか、消費者は不思議でしようがないというふうに思っております。
 表示の問題は先ほどからずっと出ていますけれども、JAS法、食品衛生法、景表法、三つの食品表示を規制する法律がありながら、その一つとしてこれまで偽装表示を摘発することができなかった。本来、それぞれお聞きするのが筋ではありますけれども、きょうは、武部大臣に代表して、こういう表示がありながらなぜ摘発できなかったというふうにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
武部国務大臣 一言で言えば、商道徳といいますか、通常の商取引、つまり、性善説に立った考え方でこれまでの仕組みがつくられているというふうにお答えすることになるんだろう、こう思います。
 しかし、最近の食品の偽装の表示の多発ということによりまして、消費者の食品に対する信頼を著しく損なうことに相なったわけです。食卓を揺るがす大問題になっているわけでありまして、また一方では、率直に申し上げますと、監視体制など、今までの食品表示制度の運営や現行のJAS法にも改善すべき点があった、率直にこのことは思います。
 こうしたことを踏まえまして、私どもは、検査に対応可能な職員数の増強、約千五百人から三千三百人にふやしておりますし、食品表示一一〇番の開設、それから食肉の表示実態調査の実施、食品表示ウオッチャーの設置等によりまして監視体制を強化するとともに、今回、JAS法について、罰則の大幅な強化等を内容とする改正案を、他の法律に先行して国会に提出させていただいているということでございます。
 今後も、不正は見逃さない方針のもとに、食品表示の実効性が確保されるよう、省を挙げて取り組んでまいりたいと思います。
中林委員 JAS法の改正だけでは、見逃さないということが本物になるかどうかわからない。それは、今までそういう状況がありながら摘発できなかったのは、この三つの法律がやはりそれぞれもたれ合いの関係になっていたんじゃないかということを指摘せざるを得ません。
 そこで、まず景表法の問題、公取に来ていただいておりますのでお伺いしたいというふうに思います。
 公正取引委員会が、後追い的ではありますけれども、景表法第四条に基づいて、不当な表示である優良誤認や、原産国の不当表示に該当するとして、偽装した会社に次々と排除命令をかけております。
 今はこう厳正に次々とやっているんだけれども、例えば食肉について言えば、二〇〇〇年六月に、福岡地区で、小売業者が外国産の輸入肉を国産肉と表示して販売している、こういう摘発を受けて調査を行っておられるんです。チラシ、ラベル、店頭表示で、輸入肉を「国産」「都城若とり」「宮崎産」こういって偽って販売したという事実が認められたにもかかわらず、処分は警告どまりで終わったわけですね。企業名の公表もしていない。
 偽装の内容からいえば、大変悪質ですよ。当然排除命令がかかるような、そういうものだというふうに思うんですけれども、なぜそのときは警告どまりで取り締まらなかったのか、明らかにしてください。
根來政府特別補佐人 振り返って考えますと、御指摘のように、こういう問題については排除命令をしてもよかったんじゃないかという感じがいたしますけれども、当時の判断としましては、事業者の大小、あるいは違反の態様の大小、そういうものを勘案しまして警告にしたものと考えております。
 なお、警告事案でございますけれども、これは、警告という性格上、相手方といいますか、違反事業者の氏名等については公表せずに、一般的にこういう事案があったということを報告書に盛って公表しておるという事態でございます。
中林委員 その当時ちゃんと排除命令をかけていれば、今回のような状況をある程度防げたかもわからないという事例だと思うんですね。だから、これは公取の怠慢以外の何物でもないというふうに私は思います。
 食肉について、第四条の不当表示に基づく厳正な処分をしてこなかったその背景に、事業者の自主的表示基準である公正競争規約の策定づくりに傾斜してきた公取自身の姿勢があるんじゃないかというふうに思うんですね。景表法制定以来の経緯をずっと見ますと、景表法は範囲が広いから不当表示に基づく取り締まりは大変なので、表示のルールは業界団体に任せていこう、こういう姿勢があったというふうに思わざるを得ないわけです。
 それで、公正競争規約、これは業者がみずからつくって、公取の認定を受けた基準を自主的に守っていれば公正シールをもらえ、それを張って営業している限り、基本的に景表法の立場からは問擬されない、こういう制度になっているわけです。
 だから、食肉表示でいえば、食肉の表示に関する公正競争規約があって、施行規則には、原産国の偽装やそれから松阪牛だとか神戸牛などの銘柄牛の偽装表示には不当表示に該当するという規定があるのだから、規約をちゃんと遵守している印である公正シール、これが張られていれば、偽装していても、きちんと表示で守っているはずだというふうになって、問擬されないということになるわけですよね。
 この食肉の公正競争規約に参加しているのは小売店のみで、スーパーなど大型店はほとんどが参加しておりません。参加していても、チェーンや会社ごとの加盟ではなくて各店舗ごとの参加形式であるがために、参加事業者は小売店の大体三分の一ぐらいだというふうになっているわけです。しかも、卸は入っていない。だから、卸売の段階で混入や偽装があったら、何の効力もない。
 食肉について適正な表示を確保していこうという立場ならば、公正競争規約に頼らないで、四条に基づく摘発と処分がやはり必要なんだ、そこを厳正にやる必要があるというふうに思うんですけれども、いかがですか。
根來政府特別補佐人 お説でございますが、ちょっと私どもと考え方の違うところがございます。
 公正競争規約があるからといって、それに安住しておるということは一切ございません。今の、原産地表示が偽っているというのは、公正競争規約以前の問題でございまして、これはまさにおっしゃるように四条違反でございますから、これがあれば、公正競争規約がありましても、四条違反であることは間違いないわけでございます。
 公正競争規約というのは、あくまでも、さらに公正な競争、自由な競争ができる、あるいは消費者に対してどういう情報を提供したらいいかという見地から定めているものでございますから、そこは少し違いまして、原産地表示というのは、あくまでも四条違反ということでございます。
 ただ、おっしゃるように、公正競争規約は、いろいろこういう事態を踏まえまして、さらに検討してよいものをつくっていくということは当然あるべき姿だと考えております。
中林委員 福岡県で、五月十五日に明らかにしているわけです。これは、新聞報道を見ましたら、県内二百四十三店舗のスーパー、精肉店、これの食肉の名称と原産国の表示違反というものがあったと。七店舗が原産地の表示違反、内容では百三十二店舗があったということになって、約五四%がこういう違反になっていると。これは公取が調べたわけではありませんけれども、そういう結果が公表されているわけですね。
 そうすると、公正競争規約では、スーパーなどは入らないわけですよ。だから現にそういうことが行われているということで、公正競争規約そのものについて、私はやはり見直していく必要があるんじゃないかというふうに思わざるを得ません。
 あくまでも公正競争規約というのは、この基準そのものが自主基準なんですよね。だから、取り締まりも参加業者の協議会が行っているわけです。本来、問擬しないということで任せてあるならば、一般よりも厳しいことがそこには求められているというふうに思います。ところが、それに違反していても、罰金は、罰金と言いません、違約金と言いますけれども、三十万円以下だと。これは別に民法上の扱いではないわけですから、違約金を払わないからといってもおとがめはない、こういう驚くべき状況になっております。
 今回、排除命令を受けた高松市のカワイ、これは、香川県食肉公正取引協議会の役員をなさっているというようなことですね。それから明治屋の、京王百貨店新宿店での、他県のものを松阪牛と偽った問題ですけれども、この明治屋本社、福岡においては、やはり食肉公正取引協議会の会員になっているというようなことを考えれば、そこの役員だったりそこの会員だったりする者がこういう違反をやっているわけですよ。
 しかも、公正取引委員会が、昨年、消費者取引問題研究会を開いて、いろいろな意見が出ていますね。その中に、やはり今私が指摘をしたようなことがちゃんと言われているわけですよ。
 消費者に適切な商品・サービスの情報を提供するために公正競争規約が果たしてきた役割は大きいけれども、公正競争規約が設定されている業界と設定されていない業界があること、アウトサイダーには公正競争規約が適用されないという問題点がある、これは自主規制なんだから法的な裏づけが必要なんだと。
 こういうことで、公正競争規約の見直しを求めているわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
根來政府特別補佐人 おっしゃるように、公正競争規約についていろいろの問題点があることは重々承知しております。そして、先ほど申しましたように、そういう問題点をこれからどういうふうにクリアしていくか、あるいは、今回の事件を踏まえまして、どういうふうに改善すればいいかということは大きな宿題になっているわけでございますから、それは担当所管部局におきまして十分検討しているものでございます。
中林委員 JAS法について聞きます。
 現在、農水省は、消費者からの情報提供を求めるとして、食品表示ウオッチャーや食品表示一一〇番、これに取り組んでいると盛んにおっしゃっているわけです。それも私は大切だというふうに思うんですけれども、JAS法二十一条には、農林水産大臣に対する申し出の規定があります。何人も不正表示の告発の申し出ができる規定がちゃんと整備されているわけですね。
 この規定は一九七〇年から設けられているわけですけれども、七〇年から今までの三十二年間で、一体この規定に基づく申し出は何件ありましたか。
西藤政府参考人 先生御指摘のとおり、JAS法第二十一条で、国民からの情報提供が図られる申し出の規定がございます。四十五年制定以降、二十一条の規定に基づきまして農林水産大臣に申し出がなされた実績は、現在まで一件でございます。
中林委員 大臣、お聞きになったと思いますね。せっかくこういう、だれもが申し出をすることができるとありながら、一件というわけですよ。だから、表示ウオッチャーもいいでしょう、一一〇番もいいでしょう。しかし、法律がありながらこれが活用されていないということは、やはり手続上、大変複雑だということがあると思います。だから、この二十一条に基づく手続を気軽に活用できるように改善して、これをもっとPRする必要があるんじゃないかというふうに思いますね。いかがですか。
武部国務大臣 制度の啓発を行う等、PRする必要があるということはお説のとおりだ、こう思っております。他法令の例も見ながら、手続の簡素化など、御指摘の点については検討してまいりたいと思います。
中林委員 それで、一元化の話というのは随分出てきておりますけれども、その前に、私は、やはり体制上の問題が非常に不十分なんじゃないかということを指摘せざるを得ません。
 食品衛生法に基づく各都道府県の食品衛生監視員、これももう手いっぱい。残留農薬問題だとか、食中毒事件だとか、そういうものをやるのに手いっぱい、こういうことで、とても表示問題まで手が回らないんじゃないかという声も聞きます。
 それから、農林水産省管轄の方も、消費技術センター、ここの人数もとても足りるようなものではない。景表法担当者も、ここずっと横ばいになっている。これは十年間ずっと見たんですね。
 食品衛生監視員は、十一年度と十二年度を比べると三百六十三人減っているんですよ。ずっと食品の安全への要求が高まっているにもかかわらず減っている。農水省管轄の農林水産消費技術センター、これは十年間で百人減っていますね。
 それから、景表法の方ですけれども、これは一人とか二人ふえているときもあるし、横ばいのときもある。五十人をちょっと超えるぐらいで推移しているという状況ですよね。
 それぞれふやす決意があるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
武部国務大臣 それでは私の方から申し上げますが、表示制度の一元的検討については、今懇談会を立ち上げますので、そこで検討をされることに相なろうと思います。
 また、農林水産消費技術センターの問題でございますが、体制強化は非常に重要な課題であります。その充実に努めているところでございますけれども、今後とも食品の表示に対する信頼性回復に向けて全力かつ迅速に取り組んでいく考えでございまして、いろいろ努力をさらに加速化してまいりたい、このように思います。
宮路副大臣 全国の都道府県に配置されております食品衛生監視員は、委員御指摘のように、平成八年が七千五百五十六人だったんですけれども、それが徐々に上がってきたんですが、平成十二年にはまた落ち込んでいる、こんな状況で、現在七千四百三十六人、こういう数字になっておるわけであります。
 これは、この配置は、委員御案内のように、厚生労働省が直接所管をしておるわけではないわけでありまして、都道府県の職員であるということでありますので、私どもの方で、その増減について直接的にこれに関与するということができないわけでありますので、責任を持ったお答えというのは限界があるわけでありますけれども、御指摘のように、極力増員を図っていただくようなことを総務省を通じてお願いする、要請するといったようなことはやってまいりたい、こう思っております。
 そして同時に、限られた人員の中でもっと効率的に衛生監視をやっていく方法があるんではないかというふうに考えておるわけでありまして、農林水産省の方との連携を従来以上にきちっと行って、計画的、効率的なウオッチができないかどうか、その辺を一つは探っていきたい。
 あともう一つは、食品衛生監視員の資質の向上の問題や、あるいはまた卸売市場に衛生検査所を設けておるわけでありますが、そういった専門的、広域的な衛生検査の推進。そしてまた、食品衛生監視機動班というものをつくりまして、保健所の管内だけではなくて、広く県下一円を、例えば機動班をつくって事務所を回るといったような、そういうような体制づくりを検討するとか、そういったことで幾つかのより効率的、計画的な衛生監視の実施に向けて創意工夫を凝らして、御指摘の線に沿ってのより充実した体制整備というものに努めていきたい、このように思っております。
根來政府特別補佐人 いずれにせよ、情報をどうしてとるか、あるいは、それは本物かにせものかを見分ける力をどうするかということに尽きるわけでございますが、私どもの職員として専従職員は五十数名でございまして、これをふやすことはなかなか難しい問題だと思います。
 ところが、景表法をごらんいただいておわかりのように、固有事務として都道府県が所管しているわけでございますので、都道府県と十分連絡をとりまして、情報もとりたい。あるいは、消費者モニターというのが千人ぐらいいらっしゃいますけれども、これは私個人の考え方でございますが、消費者モニターももっと増員して手足を広げたい、こういうふうに思っております。
中林委員 三人の方にお伺いしなければならないというふうに、やはり表示問題一つとってみても、世界に例を見ないような複雑さを今まで持ってきたわけですから、今回の問題を契機に、特に内閣の一員である大臣に要請しておきますけれども、本当に、この複雑な表示の是正、それから体制の整備、前向きの整備ですよ、減らすんじゃなくて、そういうことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
鉢呂委員長 これにて中林よし子さんの質疑は終了いたしました。
 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 この際、本案に対し、後藤斎君から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。後藤斎君。
    ―――――――――――――
 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
後藤(斎)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。
 今回の改正案は、食品の不正、偽装表示が次々と発覚する中、消費者の食品表示に対する信頼回復を目的とし、提出されたものであります。しかし、不正表示等が発見された場合の罰則規定等の措置については強化をされましたが、不正表示が行われないようにするためには、予防行政の観点から、定期的に、立ち入り権限を有する品質表示監視官を常時配置し、生産、製造、卸、小売の各流通段階での監視指導体制の強化が課題であり、そのための修正を行うべきだと考えます。
 修正案はお手元に配付したとおりであります。以下、その概要を申し上げます。
 法律二十条に、農林物資品質表示監視官を設置し、食品の品質表示及び名称表示に関し、立ち入り権限等、指導、監視の職務を行わせるため、農林水産大臣が農林水産省職員のうちから農林物資品質表示監視官を命ずるものとすることであります。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようによろしくお願い申し上げます。
鉢呂委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、後藤斎君提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、金田英行君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。菅野哲雄君。
菅野委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に努め、消費者の食品表示に対する信頼回復に万全を期すべきである。
      記
 一 消費者への迅速な情報提供を図る観点から、製造業者又は販売業者が偽装表示等の品質表示基準違反行為を行ったことを確認した場合においては、直ちに指示し、公表すること。なお、裁量権の拡大にならないよう、また、健全な企業活動を妨げないよう指示・公表基準について明確にすること。
 二 食品の適正な表示を確保するため、消費者・事業者の協力を得つつ、実態調査の充実、不正表示に関する情報の収集など、食品表示の監視の強化に努めるとともに、専門性の高い人材を広く求め、立入権限を有する常設の食品表示監視担当職員を配置するなど、監視指導体制の整備に向けて、抜本的かつ積極的検討を行うこと。
 三 消費者の健康保護の観点から、「BSE問題に関する調査検討委員会報告」を踏まえ、食品衛生法等の食品の安全性に係わる関係法を抜本的に見直し、包括的な新たな法律の制定を検討すること。併せて、安全かつ良品質な食品を求める消費者の選択に資するよう、食品に関する各種表示制度について一元的な見直しを行うこと。
  右決議する。
 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の経過等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
鉢呂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣武部勤君。
武部国務大臣 ただいまは法案を可決いただきまして、ありがとうございました。
 附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
鉢呂委員長 引き続き、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長須賀田菊仁君及び厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 BSE法案について、四野党で先に法案を出しておりました。その後、自民党、与党三党からも法案が出され、今理事会を通じながら、合意案がほぼ各党党内手続が終わったところですが、大臣に、この新しいBSE法案について、基本計画も含め、その中身をひとついろいろと質問させていただきたい、そう思います。
 まず最初に、問題のへい死牛、いわゆる死亡牛なんですが、これの検査、これはEUでは現在どのようになっているのでしょうか。端的に答えていただければ。
武部国務大臣 端的に申し上げます。
 EUは、一九九〇年、死亡獣畜の取り扱いについて、施設、処理方法を規定しまして、二〇〇一年一月一日から三十カ月齢以上の死亡牛について一定数の検査義務をつけております。
 二〇〇一年七月一日から、農場で死亡した二十四カ月齢以上の牛を対象に一定数のBSE検査を実施、現在は暫定的に二十四カ月齢以上の死亡牛全頭の検査を実施しているというふうに承知しております。
山田(正)委員 死亡牛の全頭検査を今EUでは行っているわけですが、その中で、一般の屠畜場に運ばれている牛と違って、このいわゆる死亡牛、へい死牛については、BSEの感染率、発生率が非常に高いと聞いておりますが、その内容はいかがでしょうか。
武部国務大臣 屠畜場での陽性率は約〇・〇〇三四%に対しまして、死亡牛等での陽性率は約〇・〇八九%でありまして、EU全体では約二十六倍。死亡牛におけるBSE発生率は国によって異なりますが、イタリア五倍、オランダ五倍、ドイツ十六倍、フランス十九倍ということでございます。
山田(正)委員 死亡牛の場合、かなりのBSEに感染している率が、十九倍とか二十倍とか三十倍とか聞いておりますが、その中で、実際に日本において今現在、死亡牛、へい死牛、これについては一体どれくらいの頭数が年に出て、そして現在どのような検査がなされているか、なされていないか、大臣、御答弁願います。
武部国務大臣 済みません、聞こえたかと思うんですが、二十四カ月齢以上で七万六千頭でございます。
 死亡牛の検査の実態は、昨年十月十八日から本年五月二十四日までに千百六十六頭を実施いたしまして、すべて陰性でありました。内訳は、死亡、廃用牛、三百九十九頭、中枢神経症状を示した牛、六十一頭、その他肉骨粉給与牛等、五百九十九頭。
 死亡、廃用牛に対するサーベイランスについては積極的に取り組んでいるところでございますが、四頭目が過去三例と生年月日が近いため、九六年三月、四月生まれの乳用牛のBSEサーベイランスの強化について、専門家の意見を聞いて具体的に検討してまいりたい、かように考えております。
山田(正)委員 日本において死亡牛の検査はまだほんのごくわずかしかなされていない。ということは、今現在、死亡牛の取り扱いなんですが、これは検査されないままに肉骨粉になっていっているという現状だと思うんです。
 実際、私の九州あたりで話を聞いていますと、いわゆる畜産農家は、老廃牛、いわゆるBSEのおそれのある牛については、非常にその処分、屠場でも取り扱ってくれない、屠殺もできない。かつ、もしもBSEが出たら大変なことになるというおそれから、薬殺して、そしていわゆるレンダリング業者にむしろ畜産農家がお金を出して、三万円とか五万円とか、レンダリング業者に引き取ってもらって肉骨粉にしているということをよく聞くんですが、大臣、そのようなことを聞いたことはありますか。
武部国務大臣 そういう具体的な実例についてはございませんが、現場ではいろいろ苦労をしているという話は聞いたことがございます。
 しかし、御案内のとおり、最近になりましてからは、屠畜場で受け入れないとか、あるいは廃用、高齢牛が滞留しているとかということは解決いたしまして、もう既に滞留している牛五万八千頭は四月の段階で二千頭出荷されております。その後、順調に出荷が進んでいる、このように考えております。
 死亡牛の取り扱いについては、詳しくはわかりませんが、牧場で亡くなったりいろいろな原因で埋設などされている例はあるのではないか、かように心配しているところであります。
山田(正)委員 死亡牛の検査がなされないままに、かなり高い発生率、二十倍とか三十倍とかというBSEの感染率があって、検査されないままに肉骨粉になっていって、その肉骨粉が場合によっては肥料とかそういったものに使われるおそれがあるとしたら、それは大変ゆゆしきことなんです。
 死亡牛の検査をEU並みに二十四カ月齢以上でも早くやらなければいけないということで、厚生省の医薬局食品保健部長から農水省あてに死亡牛等々についての要請がなされたということについて、農水大臣はどうお考えか。
武部国務大臣 五月十三日に開催されました牛海綿状脳症の検査に係る専門家会議におきまして、専門家からの意見として、死亡牛全頭検査についてそういった意見がありまして、同日付で厚生労働省医薬局食品保健部長から畜産部長あてに、「厚生労働省としても、我が国のBSE感染状況の実態を把握する上で、重要なことと考えており、農場におけるBSE検査に万全を期されるようお願いする。」旨の依頼があったということでございます。
 農水省といたしましても、同様の観点から、昨年来、二十四カ月齢以上の死亡牛についての全頭検査の導入を目標として体制整備を進めているところでありますが、できる限り早急に二十四カ月齢以上の牛全頭の検査が開始できるよう、都道府県における検査体制の構築に向けた取り組みを支援してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
山田(正)委員 農水省としても、全頭検査、二十四カ月齢以上の死亡牛について取り組むというお話ですが、今その状況、その体制は、例えば各都道府県にそれを委託してやらせるつもりなのか。そうであるとしたら、各都道府県の準備状況はどういうところまでにあるのか。わかる範囲で結構ですが。
武部国務大臣 農場段階におけるBSEのサーベイランスについては、昨年来、二十四カ月齢以上の死亡牛についての全頭検査の導入を目標として、体制整備を進めているところでございます。
 これまで、家畜保健衛生所の検査機材等の整備を図るとともに、死亡牛の確認、検査システム等具体的なサーベイランスの実施方法について、都道府県、関係団体等と検討を進めているところでございます。
 具体的には、サーベイランスをさらに強化するためには、死亡牛の全頭検査を効率的に実施するための死体の集積場所を確保するとともに、BSEの陰性が最終確認されるまでの間、およそ三日間程度ということでありますが、その間の腐乱を抑えるための冷蔵保管施設が必要であります。
 検査終了後の牛の死体の焼却施設のさらなる整備等、死亡牛の取り扱い、処理体制の整備が必要でございまして、これら冷蔵施設や家畜死体の処理場は迷惑施設である、こう言われておりまして、周辺住民との調整がこれまた必要でございます。したがいまして、二十四カ月齢以上の死亡牛全頭の検査、処理体制の確立のためには一定の期間が必要と考えております。
 現段階で具体的な時期を明示することは困難でありますが、できる限り早急に二十四カ月齢以上の牛全頭の検査が開始できるよう、都道府県における検査体制の構築に向けた取り組みを支援してまいりたい、かように思います。
 なお、畜産主要県については、検査体制整備に二年以上必要と聞いておりますが、二年後を目途として、より効率的な検査体制の検討を進めていくこととしているところでございますが、さらに少しでもこれを急がせることができないかということで、副大臣、政務官等が都道府県を訪問して、いろいろ要請をしている次第でございます。
山田(正)委員 かなり時間がかかりそうなお話ですが、大臣はこの委員会で、九月までにはへい死牛の全頭検査の準備ができるということを答弁したのではなかったのですか。
武部国務大臣 私は、機材の準備が、キットというんですか、機材がそろうのが九月ということでございまして、私の期待感を込めて申し上げたということでございます。
 しかし、死亡牛の採材、検査、処理等の一連のシステムの構築につきましては、都道府県等での検討がまさに進められているところでありまして、平成十五年度からどの県で全頭検査が可能となるかについて、現段階では明確にはお答えすることは困難でありますけれども、先週から六月上旬にかけまして、地方農政局単位で都道府県担当者を集めて、検討状況や課題等を把握、調整しているところでございまして、これらの協議、調整を段階的に行いながら、全体的な計画を作成していくこととしているわけでございます。
山田(正)委員 迅速にやらなければならないということは、大臣、お考えか。
武部国務大臣 可能な限り、一日でも早く検査体制を整えて検査を行いたい、このように願っております。
山田(正)委員 かなりの時間、日数を要するというのは、具体的には、先ほどのお話ですと、いわゆるへい死牛を一たん保管しなければならない、その保管、いわゆる冷蔵保管というんですか、その施設等々に時間がかかるというお話のようですが、検査そのものは、いわゆる今屠場で検査しているのと同じように、厚生省の協力を得られればできるはずですし、あるいは、BSEの発生した、陽性反応があった牛については、焼却も厚生省の協力を得て、私が調べた限りではできそうなんです。
 問題はその集積場ですが、これは一時的に、単なる冷蔵保管あるいは冷凍車の保冷ボックス、一時的にそういう仮の安置、そういったものを家畜保健所のそばに仮設置するとか、そういういろいろな形ができるのではないのか、そう考えますが、大臣、いかがですか。
武部国務大臣 可能なことですね。周辺の状況も許されることなら、できる限りのことをしたいと思っておりますが、離島等のように地理的に困難な条件であることでありますとか、北海道のように極めて飼養頭数が多いことなどから、やはり地域によって困難な地域もあるのではないか、このように思っておりますが、あらゆる可能性について今後とも検討してまいりたい、このように思います。
 それから、一つは、やはり人材の問題もありますね、人材の問題も。北海道あたりはそういう話も聞いております。
山田(正)委員 この新しい合意案の中には、第十三の附則、平成十五年四月一日から全頭検査、いわゆる二十四カ月齢以上、期限を切って予定されているわけですが、まさに地理的な状況、例えば離島等について、私も離島ですが、離島は結構、いわゆる牛の繁殖農家等が多いわけですけれども、そういったところでの、先ほど話しましたように、保冷施設、保管施設等々がなかなか間に合わないという状況があれば、一時的に、例外的に、やむを得ない場合として認められるのはやむを得ないと思うんですが、期限を切って各都道府県にぜひこの法律でもって施行させるということには、大臣、間違いないでしょうか。
武部国務大臣 原則はやはり期限を切ってやりたいというのが、私の気持ちの上ではそのとおりでありますが、しかし、例外は、これは無理押しもできない面もありますね、離島でありますとか、多数の飼育頭数があるところとか。
 しかし、やれるところからやれるまでにやればいいということではない。やはり、一定の時期までに体制を整える、一つの目標に向かってみんなで努力する、早くやれるところは早くからやる、そういうようなことが本件については大事な姿勢だ、このように思っております。
山田(正)委員 法律で期限を切ることの意味合いというのは大変大きいものだと思うんですが、大臣、ぜひその例外にならないように御尽力いただきたい、そう思います。
 ところで、全頭検査が終わるまでの間の肉骨粉等々については、非常にBSEの汚染の疑いのある肉骨粉が今でもできていっているわけですけれども、今回の合意案、法律の中においては、いわゆる牛に使用されるおそれのある飼料は、これを製造したりもしくは輸入してはならないとはっきりこの条文の第五になっているわけです。
 この牛に使用されるおそれのある飼料ということは、いわゆる豚とか鶏の飼料、それにいわゆる魚粉、調整魚粉等紛らわしい魚の飼料、あるいはペットフード等々も含まれて、これも禁止される趣旨なのかどうか、大臣、その辺を明確にお答えいただきたい。
武部国務大臣 製造段階で肉骨粉が混入していないことを確認した魚粉以外の魚粉は、牛用飼料として使用することを法的に禁止しておりますし、牛の肉骨粉を用いたペットフードの製造、販売等についても今自粛を要請しておりますので、委員の御指摘については、私はそれでいいのではないか、このように思います。
山田(正)委員 大臣、最後にもう一つ。いわゆるその肉骨粉を利用した肥料なんですが、これもいわゆる死亡牛の全頭検査が終わるまでは、汚染された肉骨粉が混入している割合、あると思うんですが、これも、肥料については当然禁止する措置と考えていいのかどうか、その辺、明確にお答えいただきたい。
武部国務大臣 これは、牛への誤用、流用防止のため、牛の肉骨粉を含む肥料の製造及び出荷の停止を要請しているところでありますし、飼料安全法に基づく省令改正により、肥料であっても牛に給与することを法的に禁止しておりますし、肥飼料検査所の監視によりこれは万全を期してまいりたい、こう考えているわけでございまして、肉骨粉についてはそのように考えております。
山田(正)委員 大臣、今回、私の質問はこれで終わりますが、BSE法案、与野党合意案について非常に前向きに大臣が、この日本からBSEをできるだけ早くなくしてしまうことに力を入れていただくこと、農水省も含めすべての、厚生省も含め、各行政機関と協力し合いながら、一日も早くそういう形でのBSEの撲滅、それにぜひぜひ頑張っていただくことを私からもお願いしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて山田正彦君の質疑は終了いたしました。
 次に、中林よし子さん。
中林委員 日本で初めてのBSEが発生して以来、この委員会でも数々の議論をしてまいりましたし、それから、連合審査あるいは予算委員会等で論議をしてまいりました。
 私は、そういう議論を踏まえたり、あるいは農家の皆さんだとかそれから消費者の皆さん、また肉関連業者の皆さん、そういう方々との懇談を続ける中で、今までにないBSEというものが発生したわけだから、これはやはり特別な立法が必要だ、しかも早くつくらなければならない、そうしなければ将来に対する希望が持てないという思いの中から、野党四党共同して、最低ここだけは早く実現を図りたい、そういう思いで二月に法律案を提案いたしました。
 私は、こういう提案があればこそ、与党案も提出をされる、そういう中ですり合わせも行われるという状況になったというふうに思うんですね。そういうことを考えれば、この野党四党案というのは非常に大きな意味合いがあったんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣はその点についてどのような認識をお持ちでしょうか。
武部国務大臣 野党四党におかれましては、去る二月二十二日にBSE対策緊急措置法案を提出されたのでございましたが、私としては、これをBSE問題の解決に向けた皆様の真剣な御努力を示すものと受けとめてまいりました。
 他方、与党三党においても、野党法案が提出された経緯も踏まえまして、BSE対策の法案の検討を進められまして、今般、与野党間の調整を了とされたようでございますし、政府提出予定法案の内容も盛り込んだ総合的なBSE対策法案が取りまとめられることになった、このように承知いたしております。
 私としては、本法案は、国民の皆様の理解と期待にこたえ得る法案でありまして、BSE問題の解決に向けての立法府の皆様の真摯な御努力を示すものと受けとめておりまして、早期に成立することを望んでいる次第でございます。
中林委員 この野党四党案が出て以来、全国の方々は、やはり希望を持ちたいということで、早く成立をさせてほしいという成立促進の署名運動が展開をいたしました。これは、そういう署名というのはなかなかしないものだろうというふうに思うんですけれども、今回は、多分百万人署名を超えているんじゃないかというほどの署名が寄せられたということは、ぜひ大臣の記憶にとどめていただきたいというふうに思います。私は、その署名の原動力になったのは何だったのかと。
 これまでも私は責任論というものを展開してきたわけですけれども、やはり、農家に責任はない、国民に責任がないということが明白になっておりました。だからこそ、そういう場合の損失補償というものは当然やってもらわなければならない、そういう思いで、野党四党案にはそういう経営安定のための助成措置というものを盛り込んでまいりました。
 残念ながら、今回のところでは、基本計画の中に、どういう状況になるのか、私たちは一層その要求は強めていきたいというふうには思いますけれども、問題は、肉関連業者ですね、流通業者、飲食店あるいは畜産農家。
 改めて、大臣、BSEに関する調査検討委員会で、大変な失政だとか政策判断の誤りだとか、こういうふうに行政に対する厳しい指摘をしたわけですから、ここでやはりちゃんと陳謝をすべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
武部国務大臣 調査検討委員会の報告でも、一九九六年の肉骨粉の取り扱いについては、これは重大な農水省の失政というふうに記述しているわけであります。
 また、なかなか皆さん方にはお話しいただけませんが、その記述の最後の部分には、大臣を初めおくればせながらと記してありますが、農水省も改革志向で取り組んでいるということについては高く評価できる、こういうようなところもあるわけでございます。
 私ども、いずれにいたしましても、一連の問題を振り返って、本当に大きな迷惑をおかけしてしまったということについてはまことに遺憾にたえない次第でございまして、であればこそ、諸般の対策について、私も仕事をやり抜くことが責任をとる道でもあるということで、今日まで皆様の御鞭撻をいただきながら取り組んできた所存でございます。
 農林水産省としては、経済産業省及び厚生労働省との連携によりまして、政府全体として、経済的影響を受けた食肉関連業者に対する低利の資金の融通、また、保証については、経済産業省において、別枠でセーフティーネット保証が受けられる等の対応をしたところでございますし、このセーフティーネット保証につきましては、無担保保険八千万円、無担保無保証の特別小口保険千二百五十万円を設けているところであります。
 さらに、農林水産省としても、従業員五十人を超え三百人以下に該当する焼き肉店等について、別途無担保の信用保証措置を講じているところでございますし、このような対応を進めるほか、問題の解決のために、牛肉は安全という正確な科学的な情報の消費者への浸透により消費回復を図ることが最大の課題であろう、かように認識しておりまして、JAS法の改正もお願いした次第でございます。
 今後とも、このような対策について、関係省庁とも連携をして全力で取り組んでまいりたいと思いますが、いろいろ今補償のお話もございましたけれども、あるいは無利子資金の創設のお話も、御指摘もございましたが、食肉関連業者を取り巻く状況にかんがみまして、国としても、今後とも可能な限りの利子補給を行い、低利融資としたところでございますので、御理解をお願いしたいと思います。
中林委員 私は、損害を与えた、そういう関係者の皆さんへやはりおわびの言葉、これが必要なんじゃないか。遺憾だとはおっしゃったけれども、やはり大臣としてのおわびの言葉を今聞けませんでした。
 むしろ、私の責任のとり方は対策を十分やっていくことだ、これにずっと終始しているわけですけれども、改めて、今やはり、この間の質問で、発生以来、全体に損失額が四千五百七十七億円、そのうち生産者段階では一定のものをやったとおっしゃるわけですけれども、農水省自身が推測して試算してもこれだけのものを与えたわけですから、しかも、どこが間違っていたのかということまで検討委員会ではちゃんと報告をしているわけですから、私は、やはりここで、少なくとも生産者、関係業者の皆さんに大臣としてのおわびの言葉を聞きたいというふうに思います。
武部国務大臣 私は、何度も、私自身の責任について、率直に気持ちを述べさせていただいております。
 さまざまな問題が起こりましたが、そのことによって関連する皆様方が大変迷惑を受けたということについては申しわけない気持ちいっぱいでありまして、それだけに、諸般の対策について責任を持ってしっかり取り組んでまいりたい、そういう決意で今努力している所存でございまして、御理解を賜りたいと思います。
中林委員 政治家というのはなかなかおわびしないものだというふうには思ったんですけれども、気持ちではおわびの言葉を言いたいんでしょうけれども、なかなかそれが素直なおわびの言葉として出てこないというのはいかがなものでしょうか。
 本当に申しわけなかった、済みませんというその一言、やはり、私どもは今でもBSEに関するさまざまな懇談会、シンポジウム、やっております。なぜだれ一人として責任をとらなかったのか、やめなかったのか、こういう質問が必ず出てくるわけですよ。
 だから、そういう意味で、議会制民主主義の手続上、大臣はいらっしゃいますので、そうであるならばなおさらのこと、ここは、国民の責任でない、いわば大失政、政策判断の誤り、そこでこれだけの被害をこうむっているわけですから、それに対して素直な気持ちを吐露していただければというふうに思います。
武部国務大臣 何度も申し上げておりますように、まあ、私も帯状疱疹になったり、遠藤副大臣はごらんのようなかぶろの状態です。これは、こんなことを言っても始まりません。それは、本当に大変な責任を感じているのですね。
 ですから、もう申しわけない、そういう思いで、何とかここのこの困難性を克服していこう、そういうことで努力をしているわけでございまして、私ども、もう新聞に何度も陳謝、謝罪、おわび等々というふうに大きな見出しで書かれております。その見出しを見るたびに責任を痛感し、そして真摯な気持ちで、謙虚にこのことを受けとめて、そして大胆な改革を必ずやり遂げようというようなことで、食と農の再生プランも発表し、消費者に軸足を置いた農林水産政策の見直しに今チャレンジしているわけでございまして、先生も既に御理解いただいている、このように思います。
 申しわけない気持ちいっぱいで、針のむしろ、今なおそういう気持ちで、これからも邁進してまいりたい、このように考えている次第でございます。
中林委員 大臣は針のむしろかもわからないけれども、被害を受けた方々にとってみたら、やはり針のむしろどころではない、仕事そのものをやめたり、倒産したりということをやはり聞くわけですよ。だから、そういう現実、このBSEの問題に端を発して大変な思いをしているという方々、今少し消費が戻ったということで少し私どももほっとはしているけれども、それが待てないで廃業なさった方々がいるということをぜひお考えいただきたいというふうに思います。
 そこで、今度の法律案の中で、基本計画を立てるということになっているわけです。損害補償はしないと前回の委員会で大臣がおっしゃいました。国家賠償法、それには値しないんだというようなこともおっしゃったんですけれども、今言われたように、多大な被害を与えたということで心を痛めていらっしゃるということであるならば、私は、少なくとも全く補償のない関連業者、飲食店、ここに対する施策を大臣の決意いかんではできるのではないかというふうに思うのです。
 それは、今、少し踏み込んで回答されましたけれども、融資の問題ですが、無担保はおっしゃいました。しかし、無利子とはおっしゃらなかった。少なくとも、やはり無担保無利子、そして一定の期間、長期ですね、そういう融資の創設、これが必要だというふうに思うのですけれども、これは大臣の決断いかん、これまでも経済産業省の方、中小企業庁にお聞きしたら、農水省の決意いかんだ、このようにおっしゃっているわけですよね。
 だから、農水省がそういう方向で検討してくれと言われるならば中小企業庁としても対応しますと言ったわけですし、連合審査のときに経済産業大臣もそのような旨の御回答をいただいております。だから、ここはもう一つ踏み込んで、基本計画の中に、業者、飲食店、そういう方々に対する、せめて、補償しないならば、無担保無利子の融資制度の創設、これをしていただきたいというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
武部国務大臣 先ほども申し上げましたが、国として可能な限りの利子補給を行いまして、低利融資としたところでございます。そのほか、経済産業省等とも連携をして、今後の対策にさらに全力で取り組んでまいりたい、かように考えておりますので、御理解をお願いしたいと思います。
中林委員 これ以上言っても同じ答弁しか返ってこないんでしょうけれども、私は、本当にそのぐらい思い切った措置、融資だから返さなきゃいけないんですよ。今不景気の中で、こういう業者の方々は、そうでなくてももう金を借りるのは目いっぱいだ、だから補償してほしいというのがずっと根底にありました。でも補償しないということであるならば、せめてやはり、利子補給すると言うんだけれども、無利子にはならないわけだから。
 無利子になりますか。無利子になるぐらいな利子補給していただけるんなら、私はこれ以上追及しませんけれども、大臣、いかがですか。
武部国務大臣 これはそれぞれの制度というものがございます。原理原則というものを無視することは難しいと思います。
 したがいまして、可能な限りの利子補給をすることによって、より低利な融資によって経営の安定対策に資するべく努力したい。そのほかにも、関係省とも協力して中小企業対策等については万全を期していきたい、このように考えている次第でございますので、御理解をお願いしたいと思います。
中林委員 制度の原理原則があるというふうにおっしゃるんですね。わからないではありません。しかし、BSEというのは、今までの制度、原理原則を超えたところでやはり考えなければならないことだというふうに思います。
 例えば、震災などで個人補償をというような声が上がったときに、私有財産だからということを盾にとって国は個人補償をいたしませんでした。後から法律ができて、いろいろな条件を設けて若干それはできるようにはなったものの、それは非常にわずかです。
 ところが、地方自治体ではそういうわけにはいかないということで、鳥取県では鳥取西部地震において、鳥取県知事は三百万円の個人補償を条例で決めて実現したんですよ。今までなかったような事態が起きれば、本当に国民の立場を思えば、そういう施策をやっていく、それで新しい原理原則がそこには出てくるだろうというふうに思うんです。
 武部大臣がやめないで、針のむしろの上に座ったような気持ちで全力でいろいろな対策に取り組むんだ、このようにおっしゃるんならば、その原理原則を飛び越えた形でやはり業者の皆さんの声に耳を傾けてやっていただきたい。いかがですか。
武部国務大臣 農林水産省といたしましては、過去に例のない対応をしている所存です。また、私も総務大臣と直接お話しいたしまして、都道府県や市町村が一番身近なところにあるわけでありますので、現地における対応についても特別交付税の配慮のお願いもしているわけでございます。
 各般の対策について私どもも誠意を持ってやらせていただいた所存でございますし、関係の省の協力もいただいて、政府を挙げていろいろ努力してきているところでございますので、そしてさらに、今後も関連する皆さん方に対してでき得る限りのことをしてまいりたい、そういう考えで私は申し上げているわけでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
中林委員 最後に一点です。廃用牛の買い上げ問題。
 若干動き始めたとおっしゃっておりますけれども、私は、やはりこれを早急に動かすのは、基本計画の中で今農協だとかそれから家畜商が買い上げの事業主体になっているんですけれども、そこへやはり国も、なかなか動かないときには国もできる、そういうものも入れ込んでほしいというふうに思うのです。これは大臣、お約束していただけますか。
武部国務大臣 今御案内のとおり、廃用牛も順調に出荷が進んでおります。滞留も減っております。廃用牛を農協等が買い上げる場合の助成等を内容とする廃用牛流通緊急推進事業につきましては、全農等の全国連や日本家畜商協会を事業実施主体として、本年二月から実施しているところでございます。
 出荷状況については、生産者や農協、家畜商等関係者に浸透し、定着してきた、私はこう思っているわけでございまして、屠畜場における廃用牛の受け入れも進み、屠畜頭数も増加基調にあるということ等から、私は、本事業の実施主体が農家からの買い上げを拒否している等の話もございませんし、聞いておりません。
 仮に、国もしくは農畜産事業団が買い上げの主体となった場合には、これは買い入れ予定価格の設定、現物確認等の一連の事務手続を、全国数万戸に及ぶ個々の生産者を対象に行わなければならないわけでありますので、多くの時間や経費、職員の確保等が必要になるわけでございます。
 したがいまして、議員御指摘のような、農協等が本事業に取り組まず、廃用牛の買い上げを希望する農家に支障が生ずるようなことが万が一にも生じないよう、農協等事業実施主体を強力に指導を実施してまいりたい。そういったことで、問題の起こらないように努力していきたいと思います。
中林委員 基本計画はこれからということですので、ぜひ、本当に今困っている国民の声を聞き入れた計画になるよう要望して、質問を終わります。
鉢呂委員長 これにて中林よし子さんの質疑は終了いたしました。
 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 今、今日のBSEをめぐる状況を振り返っているわけですけれども、昨年の十二月一日、二日、北海道の佐呂間町と猿払村に社会民主党として、BSE調査団として行ってまいりました。
 そのときに、野党四党案の要綱案を猿払村、佐呂間町の皆さんに示して、野党四党で今こういう法案を用意しているんだ、そういう中で、皆さんからこの法案に対する意見をぜひ聞いていきたいということで、調査団、現地に入って調査活動をやってきたことを、六カ月前ですか、ちょうど思い出しているんですが、そのときに強烈に言われたことが脳裏から離れていないというのが今日の状況であります。
 一つは、感染源を一日でも早く究明してほしいというのが現地の、当事者の酪農家の方々だったというふうに思っていますし、もう一つは、一日でも早く、安心して酪農経営ができるようにしてくださいというのが、酪農経営者から寄せられた言葉です。というのは、安心して経営ができるということはどういう意味なのかと問いただしたときに、BSEが猿払村から出たときに、やはり疑似患畜牛として全頭殺処分される、千葉でも同じような状況だったんですけれども、このことに対する不安から、毎日眠れない夜を過ごしているんだということを言われたときに、頭を殴られた思いがいたしたというのが正直な思いです。
 それで、五月に四頭目が発生しました。一頭目、二頭目、三頭目は過ぎ去ったことですから、北海道でこの四頭目が発生して、その疑似患畜牛が今どのような状況になっているのか。これは北海道が決めることですから、北海道知事の権限ですから、政府は間接的に、OIE基準を示して、疑似患畜牛の基準を示して、後は北海道で判断しなさいという状況だと思うんですけれども、今日の北海道のとっている状況というものをどのように今日的にとらまえているのか、冒頭お聞きしておきたいと思います。
須賀田政府参考人 四頭目のBSEの感染牛の、農家にかかわります疑似患畜の扱いでございます。
 先生も言われましたように、現在、我が国の家畜伝染病予防法では、OIEの基準に準拠いたしまして、感染のリスクの高い同居牛については疑似患畜といたしまして殺処分をするとともに、BSE検査をしているという状況でございます。
 私どもが伺っておりますところによりますと、昨日二十八日、この農場で飼われておりました五十六頭のうち四十四頭を疑似患畜というふうに決定したということでございまして、これにつきましては、検査の上、順次殺処分をされるということでございますけれども、その中で、BSE感染牛、いわゆる患畜と生年月日の近い三頭については、直ちに殺処分は行わず、道立の畜産試験場において、学術研究のために継続いたしまして飼養観察をすることとしているというふうに伺っているところでございます。
 したがいまして、四十四頭の疑似患畜のうち、四十一頭が殺処分、三頭が試験研究のために別途飼養観察されるというふうになったと聞いておるところでございます。
菅野委員 今回の法律、そういう状況を、少しでも農家の不安を払拭するという観点からかと思うんですが、今回の法律案では、家畜伝染病予防法でのBSEを、伝染性から伝達性海綿状脳症に改めるという案になっています。このことは、私は、酪農農家を含めて、畜産経営をしている方々にとっては非常に画期的な出来事だというふうに思っています。
 私自身も、六カ月前に、野党四党案は伝染性海綿状脳症対策緊急措置法案という、伝染性という名称での法律案をつくっていたんです。そのときに、この伝染性海綿状脳症というのを伝達性に改める、六カ月後に改めることができるなどということは、なかなか難しいことだよというふうに当時言われていました。そのことが、やはり科学的知見に基づいたいろいろな議論の末に、今回、名称変更したというふうに思っています。このことは、先ほども申し上げたように、私は画期的なことだというふうに思っています。
 それで、この法律案における基本計画をこれから定めていくというふうになっています。具体的にBSEが発症したときに対応措置に関する基本計画というものをつくるということになっています。
 この基本計画をつくるに当たって、伝染性から伝達性に名称を変えたということ、このことにどのような配慮をして基本計画を策定していくのか。このことを、大臣も猿払村や宮城村に行って今言ったことを、酪農農家の気持ちを訴えられたと思うんです。このことを大臣、どのように基本計画の中で考えていくのか、この決意をお聞きしておきたいというふうに思います。
武部国務大臣 与野党間で調整され、取りまとめられたBSE法案につきましては、家畜伝染病予防法上の伝染性海綿状脳症という名称を、ウイルス感染や細菌感染とは異なるということ等から伝達性海綿状脳症に改める内容となっているのでありますが、このことにつきましては、BSE問題に関する調査検討委員会の報告におきましても、伝染性という用語が、BSEさらにCJD、クロイツフェルト・ヤコブ病も伝染病と誤解を招くとの指摘がなされているわけでありまして、私も、国会の議論を踏まえまして、かなり早くから、伝達性との変更は適切だ、このように申し上げてきたところでございます。
 また、名称変更の理由については知識の普及に努める必要がある、このように考えておりますが、名称のいかんにかかわらず、BSEについては、家畜伝染病予防法に基づき、これまでどおり清浄化に向けた措置を実施する必要がある、私はこのように考えているわけでございます。
 先生とも随分議論をいたしましたが、疑似患畜につきましては、BSEに関する技術検討委員会の検討等を踏まえまして、OIEの基準に準拠し、殺処分しBSE検査を実施するということとしているわけでございます。
 国際機関に対して、我々もっと堂々と、こういう我が国の科学的なデータが蓄積しました、だから疑似患畜の取り扱いについて我が国としては改めたいというようなことが言えるまでには、まだその蓄積が足らないという認識でありまして、むしろそういった蓄積を早く実現していくために、サーベイランスも拡大していこう、死亡牛についても早くやろうというようなことでございますし、生年月日が患畜と近い三頭については、北海道におきましても、道立畜産試験場において、学術研究のために継続飼養するということにしているわけでありますので、そういった背景を御理解いただきたいと思います。
菅野委員 私は、やはり名称を変えるということは重大なことだというふうに、単に名称という問題ではない、中身が伴っているということです、名称を変えるということは。
 一方では、法律的に言うと、家畜伝染病予防法なんですね。伝染病から、ではないというふうに名前を変更した、ただし、いろいろな中で、家畜伝染病予防法から外すわけにはいかないという立場、大臣が今表明されたというふうに思っています。
 ただ、私が言いたいのは、科学的な知識というものが普及してきて、国民の理解が得られ、科学的な立場でもって議論ができるようになってきたという立場から、今日、こういう状況までたどり着いたと。そういう意味では、これからの課題として、そして新たに法律案をつくるということは、伝染病だったら新たな法律案というものは必要なかったというふうに私は思っています。
 そういう意味で、BSEだけは家伝法の中でも特殊なんですよ、特別なんですよ、だから新たな法律をつくって対処していこうという形に今日なっているという状況だと思います。
 それから、先ほど局長の方から答弁がありました、今、生年月日が近い三頭については、学術的研究のために、隔離して、殺さないで研究の用に供していくという体制も、四十四頭中三頭についてはとりましたと。私は、あとの四十一頭も殺処分しないで、学術研究用に畜産農家に飼育してもらって、そして乳も搾ってもらって、そういう体制もとれるんではないのかなというふうに思っています。
 二十一日の遠藤副大臣の答弁は、その点について前向きな方向の答弁がございましたから、その二十一日の答弁をぜひ具体化するように、基本計画の対応措置の中に盛り込むような努力をしていただきたいというふうに思っております。この件については、二十一日の答弁以上の答弁が出てこないというふうに思いますから、それを了として、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 感染源について、今回、四頭発生して、そして、同じ工場でつくられた代用乳が四頭に共通して与えられていたということがわかりました。そういう意味では、感染源が代用乳ではないかというふうに、多く言われております。大臣、このことをどのように考えているんですか、この代用乳という問題。それから、代用乳を含めて、今後の調査をどのように行っていくつもりなのか、答弁をお願いしたいと思います。
武部国務大臣 四頭目のBSE感染牛が、感染源の究明に当たって非常に重要な知識、情報になる、私はこのように思っておりますが、しかし、感染源の究明に当たっては、今までも申し上げておりますが、私は、予断を持たず、あらゆる可能性について徹底した調査を実施するということが大事だ、このように思っております。
 四頭に同一の代用乳が給与されていたということも事実でございますので、また、生年月日が極めて近いということも今申し上げましたように重要な情報であると考えております。
 代用乳の調査については、代用乳の当該農家への販売時期からさかのぼってその製造時期を特定するために、四頭目の感染牛が確認された五月十三日以降、農協から当該農家への販売時期及び数量、仲卸業者から農協への販売時期及び数量、製造工場の製造記録及び販売記録の調査を行っているところでございます。
 今後、各流通段階の販売記録等を精査の上、給与された代用乳の製造時期の特定等を進めていく予定でございます。
 生年月日、三月、四月、あるいは代用乳、共通項目があるわけですね。ですから私は、できるだけ早く、先ほど言いましたように、サーベイランスは、全頭検査で一つのサーベイランスをやっているわけでありますけれども、こういう共通項がある場合には、これはやはり、生産者の酪農家のプライバシーの問題もあります。それから、三月、四月といっても、二万六千頭もおります。
 これは、同じ代用乳を与えていたということで、どういうふうな重なり方があるかどうかというようなことも調べた上で、専門家の意見も聞きながら、まずはそういった三月、四月とか、重なるところのものは生体検査というものを急いでやるべきことなんだろうと思います。
 あるいは、協力してもらったり、プライバシーの問題に配慮をしたり、それから専門家の意見も聞いて、さらに集中的な、重点的なサーベイランスができないかというふうに私は考えておりまして、事務当局に、どういう方法があるのか検討するように指示をしているところでございます。
菅野委員 わかりました。
 逆に言うと、この代用乳の問題も含めて、BSEに関して科学的検証が関係国で行われているんですが、代用乳に対してもまだ具体的な感染源のおそれという形にはなっていないわけです。
 ただ、そういう意味で、日本が今回、このBSE問題が発生して、このことを契機として、これから数年、五年、六年、七年という形でデータ蓄積を行っていく。そしてそこの中から、BSEに関して科学的な検証を行った上において、全世界にいろいろなデータを発信していくという日本の役目というのも、私は大きなものがあるというふうに思っております。
 そういう意味で、先ほど申し上げたように、本当にデータの蓄積をどう図っていったらいいのか、そのことは、四頭発生して、これからも発生するだろうと思われますけれども、やはり疑似患畜牛というのをどう科学的研究材料にすべてをしていくのかという形が、私は日本のとるべき道だというふうに思っています。
 そういう意味では、四頭に共通している代用乳の研究体制、あるいは四頭が生まれた時期が同じだという、この観点も含めて、ぜひ今後のしっかりとした調査研究活動を行っていただきたいというふうに思っています。
 最後に、このことに対して、大臣の基本計画に盛り込む視点としての決意をぜひお聞きしておきたいというふうに思っています。
武部国務大臣 委員御指摘のとおり、やはりこれは、この代用乳の問題につきましても、原料として使用される飼料用の動物性油脂については、昨年十二月二十七日に通知を発出しまして、代用乳用の外国産の粉末油脂については輸入を一時停止するとともに、国内産の飼料用動物性油脂についても、EU科学委員会の報告に即しまして、飼料として使用するのは、OIEの基準においてたんぱく質を含まない獣脂の基準とされる不溶性不純物〇・一五%以下のものとすること、牛の代用乳用については、より厳格な規制として、不溶性不純物〇・〇二%以下とすることを指導してきたところでございます。
 この国内産の動物性油脂に係る基準については、飼料安全法に基づく基準、規格として法的規制措置を講じることとし、去る二月八日からのパブリックコメント手続等も了し、現在省令改正の手続を進めているところでございまして、今後、代用乳及び動物性油脂の規制については、諸外国のBSEに関する科学的情報や原因究明の状況を踏まえつつ適切に対応してまいりたい、かように存じます。
 委員御指摘のとおり、こういった知見を重要な資料として、積極的に原因究明に努めてまいりたいと思いますし、またそのデータが世界に貢献できる、そういったものであるように、事務当局にしっかりした対応を指示しているところでございます。
菅野委員 私は、先ほど申し上げましたように、一日も早いBSEの清浄国となるように、これまでずっと議論展開をしてまいりました。今回新たに法律案もつくられるわけですから、しっかりとした施策を展開していただきたい、このことを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
鉢呂委員長 これにて菅野哲雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、金田英行君。
金田(英)委員 金田英行でございます。
 今いろいろと委員会で、あすの議員立法、まさに国権の最高機関としての政治のメッセージとして、BSE法案をつくるという段階に至っておりますが、取りまとめと申しますか、いろいろな政府・与党がやってきたことについて、反省の意味も込めて、あるいはいろいろな意味も込めて、質問してみたいと思います。
 大臣、何か官邸の方で御用事があるようでございますので、時間になったらお帰りください。
 それで、まさに昨年の九月十日にBSEが発生したわけであります。大臣が四月に就任されてから、ほんの四カ月後ということだろうと思うのでありますが……(発言する者あり)五カ月後ですか、その後今日まで、約九カ月にわたってBSEのあらしが吹き荒れたわけでございます。大変な混乱でございました。――大臣、いいです。じゃ、どうぞ。(武部国務大臣「済みません」と呼ぶ)
 大変な針のむしろという、九カ月もの間しっかりと耐え忍んで対策に当たられた大臣のリーダーシップについて評価させていただきたいと思いますし、その労苦を多としたいと思うわけでございます。
 大臣に聞いていただこうと思っていたんですが、副大臣、よろしくお願いします。また、副大臣は、政府の、農林水産省のBSE対策本部長として、大変御苦労さまでございます。
 この九カ月、いろいろなことをやらせていただきました。まさに不眠不休の対策が矢継ぎ早に、思いつくことは、やれることは何でもやろう、安全のためには何でもこの際、この危機に臨んでやらなきゃならないというふうに思った、本当に緊急な対策だったというふうに思うわけでございます。自殺する酪農家がどんどん出てきた、あるいは倒産する焼肉店等々が出てきたというようなこと、この困難の時期をどうやって乗り切るかということで、政府、我々は与党として、大変な連日連夜の会議会議の連続だったというふうに思っております。
 ところが、今振り返って考えてみますと、随分と、当時としては必要な対策だったわけでありますが、一見むだだ、今冷静に考えてみたらむだだと思われる措置も緊急避難的に行ってきたということに気がつくわけでございます。
 例えば、全頭検査、国民の皆さん方を安心させるために全頭検査をしよう、屠殺、屠畜場に持っていった牛は全頭検査だという形で国民の不安を払拭しようとしたわけでありますが、このたび、イギリス、ドイツ、フランスに行ってきたわけでありまして、その中で、パリのOIE国際獣疫事務局のバラ事務局長といろいろな議論もさせていただいてまいりました。
 日本は全頭検査だからどんなものだという形で言われましたところ、いや、それは、ドイツもフランスも二十四カ月齢以上しかやっていないよ、二十四カ月齢以下のものは政治的な配慮でやっているのであって、今までの検査結果では、やってもいいけれども、決して、効果がないものだよというような指摘もされました。
 そんなことで、とにかく国民の風評被害、狂牛病から国民の皆さんの安心をかち取るためにいろいろとやってきた対策について、全頭検査ということも、国民の税金を一定程度、余り論理的でない対策も組まざるを得なかったんだろうと思います。このことがまた国民の信頼をかち得る一助にもなっていったんだろうとは思います。そういったこともあります。
 また、プリオンの運び屋であります肉骨粉、一頭目が発生してから急遽とめさせていただきました。一定程度膨大な肉骨粉をとめたわけであります。ところが、肉骨粉全体をとめたものでありますから、牛の肉骨粉というのは、残念ながら肉骨粉と称されるものの二割にしかすぎないわけであります。ですから、鶏の肉骨粉だとか豚の肉骨粉等々についてはとめられたということで、肉骨粉として、肉骨粉の有用資源のリサイクルという面から、果たして今から考えてみて適当だったんだろうかという反省もあるわけであります。
 ざっと、一見むだだと思われる、まさに安全には安全をという意味で、いろいろな対策を組ませていただきました。十月十八日から全頭検査が始まって、これから屠畜場から出る牛はみんな安全だよというふうに我々主張するということで、全頭検査をしたことを高らかにうたい上げました。
 確かに全頭検査体制をわずかの期間でとるためには、全国の屠畜場の検査員を横浜に集めて研修をして、ここに来ておられる尾嵜部長も大変な苦労をして、大体それだけの検査キットをそろえるのに生産が間に合わないとか、外国から外務省を通じていろいろな働きかけもしながら、一日一日を急いだという不眠不休の努力も政府部内でやっていただきました。
 そんなことで全頭検査になったわけでありますが、そのほかに、十八日から全頭検査をやった、こういうことにしたわけでありますから、それ以前に生産されて市場に出回っている牛肉、これは今までの知見でも、OIEの基準でも、異常プリオンは牛乳には行かないんだ、そしてまた肉には転移しないんだということで、肉は安全ですというふうに我々国民の皆さんに主張してきたわけでありますが、全頭検査との兼ね合いで、今までの牛肉は流通をぴたりととめさせていただきました。そのこと自体論理的かと今言われると、今から考えてみると、とにかく肉の需給関係が大分緩んでいたわけであります。
 そういったことで、とにかく需給関係の緩み、牛肉は下がる、牛の値段はどんどん下がるというような実態があったわけで、そういった緊急に市場を回復させる意味も込めて、牛肉の停止と、後日その牛肉は焼却する、膨大な費用をかけて焼却するという措置もとらせていただきました。
 冷静になって考えてみると、果たしてそれだけの税金を使うことが許されたんであろうかということもあるわけでありますが、どうしてもやはり、対策として、風評被害を阻止するためには必要な対策だったというふうに今冷静に考えておるわけであります。
 それから、廃用牛の値段がどんどんどんどん下がってまいりました。廃用牛が一万円を切るというような値段で、農家所得を激減させて打撃を相当してしまいました。ですから、政府といろいろ相談の上、肉用牛については五万円、乳用牛については四万円を補償しなさいという措置を急遽講じさせていただきました。
 そのことによって酪農家の所得の目減りというのは幾らか助かったわけでありますが、その対策を講じたことによって、廃用牛の値段が、どうせ四万円が補償されるんであればということで、二千円で買ったって二万円で買ったってあんたの手取りは四万円なんだからというようなことに相なりまして、廃用牛の市場原理、市場価格形成が損なわれてしまいました。
 そういったことで、果たしてこれから、ああいった今まで必要でとってきた対策でありますが、それぞれの対策にはいろいろな問題点も含んでいるわけであります。
 そういったことについても、今までやってきたことはやってきたこと、そして、その当時、この緊急事態、この危険事態を避けるために、何とかして国民の皆さん方に安心し、生産者の皆さん方に安心してもらおうと思ってした対策も、今から冷静に考えてみると、いわゆる過剰防衛でなかったのかとか、いろいろな反省点もあるわけで、後で歴史が評価していただけるんだろうと思いますが、膨大な国の予算を使って対策を講じてまいりました。連日のようにいろいろやってきたわけであります。
 そういったことで、あす、委員長の御配慮、そして野党の皆さん方の協力によって、国会の意思として、政治的メッセージとして、BSEの新しい法律が衆議院を通過するわけでありますが、何か、正直言って、野党の皆さん方が二月二十二日に野党法案を出してきたときに、我々与党には法案をつくっている余裕なんかなかったというのが実態であります。
 とにかく対策対策で忙しくて、予算措置でみんな対策を講じていたわけですから、何をしなきゃならないかということで大変な忙しい目に遭っていて、法律なんぞつくるよりはまず対策が先だというようなことで、大体一段落したものですから、与党の法案を、どうだ、つくろうじゃないかと。
 これはやはり、予算措置ばかりじゃ国民の皆さんが政府なり国会が何をしてくれているのかというのがなかなかわかってもらえないからということで、与党案を取りまとめて野党の皆さん方といろいろ相談させていただきました。本当に野党の皆さんも含め委員長の御苦労には感謝いたします。
 ただ、一番修正された部分でございます死亡牛のことについては、与党内で大変な、いまだ十分納得していない部分があることも事実であります。確かに七万六千頭の牛、民主党の先生によると、鮫島先生等によると、今までだって発生した七万六千頭だから、何らかの処理をされていたんでしょうと。ですから、それをただエライザ法で検査するだけなんだからできるではないかというような御指摘もあったわけでありますが、何しろ七万六千頭を焼却施設までそろえて処理できるような体制というのはなかなか難しい。
 今、大体一万頭ぐらいは焼却しているんですけれども、七万六千頭というと、その処理施設が七倍にもふやさなきゃならないとか、急遽そんなことを言われたってという形で、都道府県段階で実施不可能だというような状況があります。
 そういったことで、農林水産省令をこれから定めるに当たって、検査しなくてもいい場合を定める農林水産省令については、実行可能な、現実性のあるものにしなければならないなというふうに思っているのであります。
 その点についての副大臣のお考え、死亡牛について、実行可能なものにしなければならないなと私は考えているわけでありますが。一応、原則としては十五年四月一日からやるのが原則なんだけれども、ただし書きで、省令で例外規定を設けるわけでありますが、そのことについて、実行不可能なものでも、現実、都道府県知事が大変な出費とそれから苦労、人員体制ができるわけでありますが、その農林水産省令、これから定める省令について、お考えがあれば。
遠藤副大臣 まず、冒頭から金田筆頭理事のこれまでの経緯について詳細にお聞きしまして、私自身も振り返りながらいろいろと反省もしておるところであります。
 また、BSE発生以来、先生方からこの場でいろいろと御議論をいただいたことで、国民、消費者の食に対する関心というものが非常に高まり、同時に、それが結実して、このたびのJAS法の改正であるとか、上程されようとしておるBSE法案であるとか、あるいは、さらに進んで、食品の安全を担当する行政機関、独立した行政機関の設置とかいうふうなものに進んできたわけで、この委員会の果たした役割は非常に大きい、こういうふうに思っております。
 その中で、いろいろな対策を講じてまいりましたけれども、死亡牛の検査については私は随分前から主張をしておりまして、いろいろと各方面、それぞれ専門家がおられて、専門的な立場から死亡牛の検査についておっしゃいました。
 それをあえて死亡牛も検査の対象にすべきである、全頭とは言わないまでも、少なくとも科学的根拠としてEUなどが示している二十四カ月齢以上は死亡牛の検査をすべきである、こういうことで盛り込んだわけでありますから、その盛り込もうとした最初の決意というか考え方というものが後ろ向きにならないような形で省令等について対処しなきゃならぬのじゃないか、こんなふうに考えているところでございます。
金田(英)委員 あす、委員長から提示される、国会の政治的なメッセージというのが一つの大きな区切りになるんだろうと私は考えております。
 そして、四頭目の牛が五月十三日に発生したわけであります。これは市場の反応も極めて冷静なものでございました。また、国民の反応も極めて冷静なものでありましたし、マスコミの取り上げ方も、まさに何か、当時、以前は一面トップで半分以上を、大変な事件が起きたという騒がれ方から比べたら、この四頭目については冷静に受けとめるような体制ができたんだろうというふうに思っております。
 四頭目が出たことはまことに残念でありますけれども、今までの九カ月間の政府、そして与党と申しますか、関係者の皆さん方の努力がだんだんと成果を上げてきたんではないのかなという形で受けとめているわけであります。
 そういったことで、大臣もいないところで余り大臣のよっこいしょもおかしいんですが、五時になったらぴったりやめようと思います。
 そして、厚生労働省の尾嵜部長が来られておりますけれども、本当に不眠不休と申しますか、大勢の人間と大変な御苦労をされております。BSEのこれからの対応、それから、全頭について検査をしているわけでありますが、これについて国民の皆さん方が冷静に受けとめられるような体制ができてきたら、税金のむだ遣いでもありますので、その辺についてどういう状況で考えていくのかということについて、御苦労いただいた尾嵜部長の御発言を求めたいと思います。
遠藤副大臣 まず私から。
 いろいろ、考えてみればむだではないかというふうなことが出ましたが、万全の体制を追い求めつつやってきたつもりでありますが、ただしかし、この不況のさなか、リストラや離職を余儀なくされた人々や、あるいはやり場のない怒りで農政不信を募らせておる酪農家、生産者、そしてまたみずから命を絶たざるを得なかったような人々のことを考えると、それに対して四千億円を超える国費をつぎ込んだわけでありまして、言ってみればこれは国民の血税でありますから、そのことについては率直におわびしなきゃならぬではなかろうか、このように思っております。
 また、一言付言させていただきますが、先ほど来の議論の中で、生まれた月が大体似通っている、二週間と違わない、代用乳も共通しているというふうなことで、何やら感染源にアプローチしたかのような印象を受けられるとちょっと困るのではなかろうか。
 徹底して私どもも、一応その三月、四月に生まれた牛をサーベイランスしておりますが、そこから何も出なかったならば、ではどこなんだということになりますし、代用乳についても、オランダ原産、原料、しかしそこで問題がなかったらということもあります。たまたまこの四頭に共通例があったというふうに受けとめて、あくまで真摯に、この原因、感染源追求は重ねてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
尾嵜政府参考人 金田先生からいろいろお話ございましたように、全頭検査をするかどうか、当初私どもは二十四カ月齢以上ということで案を提示させていただき、また御議論いただいたわけでございますが、政治的な考え方、あるいは消費者の方々の不安等々を勘案しまして、最終的には、厚生労働大臣が全頭検査をしようという御決断をいただいたわけでございます。
 私どもとしましては、十月十八日から始めまして、まだ一年にも満たない状況でございます。いずれこの全頭検査をどうするかというのは議論をする時期があろうかと思いますが、しばらくはこの体制を続けるということは、国民の安心の一つのもとになっているところがあるのではないかというふうに思うわけでございます。
 いずれにしても、私ども、こういった検査の内容につきましてもう少し詳しくいろいろなデータを整理をした上で、専門家の方々にもある時期にはそういったデータについてごらんいただき、御検討いただくということも必要ではないかなというふうな考え方を持っておりますが、その時期については、そう近い時期ではないというのが私の考え方でございます。
金田(英)委員 終わるという約束ですので終わりますけれども、いろいろな課題が残されております。一応一段落したな、いろいろな対策が一通りそろって、国会のメッセージであるBSEの法案が、与野党通じて全党であす成立する運びと思いますので、一つの一段落を迎えたなということだろうと思います。
 残された問題、食の安全に関する問題だとか、あるいは、あと肉骨粉を徐々に、有用な資源でございますから、危険部位を取り除いた肉骨粉を有用な資源としてどう活用していくのかとか、肥料として必要な果樹農家等々もおります、いろいろな課題を抱えながら対策を組んでまいりましたけれども、いろいろな課題がさらに残っているんだということも踏まえながら、一応自由民主党の最後の質問にさせていただきたいと思います。本当に御苦労さんでした。
鉢呂委員長 これにて金田英行君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明三十日木曜日午前八時十分理事会、午前八時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四分散会


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