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第14号 平成14年6月5日(水曜日)

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平成十四年六月五日(水曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 鉢呂 吉雄君
   理事 岩永 峯一君 理事 大村 秀章君
   理事 金田 英行君 理事 原田 義昭君
   理事 佐藤謙一郎君 理事 鮫島 宗明君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    上川 陽子君
      北村 誠吾君    小西  理君
      後藤田正純君    七条  明君
      高木  毅君    西川 京子君
      馳   浩君    浜田 靖一君
      宮腰 光寛君    山本 明彦君
     吉田六左エ門君    川内 博史君
      小平 忠正君    後藤  斎君
      津川 祥吾君    筒井 信隆君
      楢崎 欣弥君    堀込 征雄君
      山内  功君    江田 康幸君
      高橋 嘉信君    中林よし子君
      松本 善明君    菅野 哲雄君
      重野 安正君
    …………………………………
   農林水産大臣       武部  勤君
   農林水産大臣政務官    宮腰 光寛君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         尾嵜 新平君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (農林水産技術会議事務局
   長)           岩元 睦夫君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   政府参考人
   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月五日
 辞任         補欠選任
  熊谷 市雄君     山本 明彦君
  山口わか子君     重野 安正君
同日
 辞任         補欠選任
  山本 明彦君     馳   浩君
  重野 安正君     山口わか子君
同日
 辞任         補欠選任
  馳   浩君     熊谷 市雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)(参議院送付)
 水産業協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)(参議院送付)
 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)(参議院送付)
 遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
鉢呂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案、水産業協同組合法等の一部を改正する法律案、漁業災害補償法の一部を改正する法律案及び遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長須賀田菊仁君、農林水産省農村振興局長太田信介君、農林水産技術会議事務局長岩元睦夫君、食糧庁長官石原葵君、林野庁長官加藤鐵夫君及び水産庁長官木下寛之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。筒井信隆君。
筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。
 きょうは、農林水産業の廃棄物、バイオマス資源の活用について主にお聞きをしたいと思うんですが、その前に、きのう、おとといあたりからまた報道をされております問題について確かめたいと思います。
 九八年の六月十七日ですが、やまりんという北海道の大手製材会社、このグループの二社が林野庁の営林支局の公売に応募、入札をして落札をした、まず、この事実はありますね。しかし、その公売、落札したんだけれども、営林署の説得によりそれを辞退させた、こういう事実があることはどうですか、林野庁。
加藤政府参考人 今お話しされた関係でございますが、平成十年五月にやまりんによる盗伐が発覚をいたしまして、その行政処分を検討している段階で、平成十年六月十七日に帯広営林支局管内で行われた公売につきまして、落札した二業者に対し、当時、行政処分の内容などが未確定の時期でもあり、また、いわゆる関連ある会社として道義的な観点も考慮して、帯広支局が契約の辞退を求め、相手方の理解を得て辞退をいただいたということは事実と承知しております。
筒井委員 その後、七月はどうでしたか。七月の公売はあったのかどうか。あったとして、このやまりん及びやまりんのグループ会社は入札に参加したのかしていないのか、この点はどうですか。
加藤政府参考人 七月につきましては、七月二十一日、二十二日に公売が行われておりますが、落札したということにはなっておりません。現段階で、応札されたか否かということについては確認できておりません。
筒井委員 七月段階で公売はあったけれども応札したかどうかわからないというのはどういう意味ですか。林野庁内部の問題でしょう。
加藤政府参考人 落札者につきましては記録が残っているわけでございますが、応札したかどうかというところについては今のところまだ記録が確認できていないという状況でございます。
筒井委員 六月の時点では、応札して落札したけれども辞退させた。七月も辞退させたんじゃないですか。応札させなかったんじゃないですか。
加藤政府参考人 先ほど申し上げましたように、やまりんの盗伐が発覚をして行政処分を検討している段階というのが六月の段階であったわけでございますが、その段階では、処分内容が未確定の時期だというようなことがございまして辞退をしていただいたところでございますけれども、その後、処分内容につきましても、やまりん一社を処分したというような形で確定をしたところでございまして、七月については、そういったことを行ったというようなことは聞いておりません。
筒井委員 聞いていないといいながら、しかし、応札したかどうかわからないという答えなんですが、いずれにしろ、結果としては、六月の入札は、入札によって落札したけれどもそれは辞退させた、そして七月の段階ではそもそも落札していない、応札しているかどうかわからないということですが。
 しかし、その次の八月と九月にはやまりんのグループ会社が落札していますね。二カ月間続けて結局落札、まあ最終的にはしなかったこともあったんだけれども、八月の十一日と九月の段階ではやまりんのグループ会社が林野庁の公売に応じて落札しておりますね。まず、その事実の確認。
加藤政府参考人 八月にも公売がございましたし、九月にも公売があったわけでございますが、さきに契約辞退した二社につきまして、八月、九月の公売で落札があったということは承知しております。これらの会社はもとよりやまりんとは別の法人でございまして、一般競争参加資格を有しておるというようなことでございましたので、入札への参加は可能であるというふうに考えております。
筒井委員 結果として、まだはっきりしないところはあるけれども、六月、七月は落札しなかった、しかし、八月、九月の段階で落札をして、今度は辞退もさせなかった。
 この間に何があったかというと、九八年の八月四日に、当時官房副長官だった、まだ官房副長官に就任した直後、五日後の鈴木宗男議員の官房副長官室にその製材会社やまりんの幹部が訪問をして、そして林野庁の事業を実施できるように取り計らいを依頼した、その際に四百万円の献金をした、そしてその場で副長官室から林野庁の方に鈴木副長官から電話をした、こういう事実が指摘されておりますが、林野庁としてはその事実を確認しておりますか。
加藤政府参考人 今お話がございました事実につきましては、現時点で事実関係を把握しているということにはなっておりません。今後の調査を通じて確認してまいりたいというふうに考えております。
筒井委員 現時点でわからない。先ほど言いました、まず林野庁に鈴木副長官から電話があったかどうかなんてすぐわかることでしょう。内部の問題でしょう。まず、その事実に限ってどうですか。
加藤政府参考人 このことにつきましては、関係者もOB等になっておるわけでございますし、そういったことも含めて調査をしていくということが必要だというふうに考えております。
筒井委員 しかも、これは、今度の、おとといの報道は第二弾でして、第一弾は、ことしの三月十五日時点でもう報道されていること。その際にも調査しているわけです。今の、まず、最低限林野庁内部の問題について、まだ調査中で何も答えられない、まだわからない、これはちょっと通らないんじゃないですか。大臣、どうですか。
武部国務大臣 三月十五日にあった報道の際には、そのような事実関係があったかどうかについて当時の林野庁幹部に聞き取り調査を行いましたが、その結果としてはその事実は認められなかったということでございます。
 しかし、先日の報道を見まして、私は、さらに、先般の調査は林野庁内部の調査でありますので、念には念を入れる必要がある、これだけ大きな報道がなされるわけでありますので、もう一度OBも含めていろいろな分野にわたった調査をするように、そういう指示をしたわけでございます。
 これを行うに当たりましては、調査項目その他しっかりしたものをまず決めまして、この調査チームには官房も一緒にチームのメンバーに入ってやるように、そういうことを指示した次第でございまして、そういうことから、慎重に調査をした上で、いずれその調査結果は発表させていただきたい、こう思っておるわけでございます。
筒井委員 外形的には極めてクロなんですよね。六月の公売は落札しながら、しかし辞退させた、これは厳しい態度をとっている。七月は落札を一切しなかった。その後に、鈴木宗男副長官の方に四百万円献金をして依頼をした、その一週間後の八月、九月は、今度はもう応札も落札も認めて、そして辞退もさせていない。こういう変化は、林野庁の変化は、外形的にだけからでも、まずそういう鈴木宗男副長官の働きかけによるものだ、これしか考えられないわけです。
 そして、林野庁の方に電話があった。林野庁に電話があったかどうかなんて、林野庁、そんな一日もかけないで調査できるでしょう。今度の報道に限っても二日前なんだから。それが今でもわからない。
 それじゃ、四百万円の献金がその当時鈴木宗男議員にされていた、この事実関係はどうですか。
加藤政府参考人 献金のことについては承知しておりません。
筒井委員 承知していないって、これは調べたんですか、収支報告書を。
 大体、では、今までどういう調査をしているんですか。三月十五日時点でもその献金の事実が指摘されているけれども……(発言する者あり)いや、林野庁がまさに疑惑の対象になっているわけですよ。だから調査チームを設置したんでしょう。それを、献金の事実もわからない、林野庁に電話したかどうかもわからない。こんなの、全然もう調査していないということじゃないですか。
武部国務大臣 ただいま私が申し上げましたように、さまざまな調査項目について、どういう項目を挙げて調査すべきかということも含めて調査チームをつくって調査するように指示したわけでございまして、したがいまして、わかったところから発表するとか、これはきちっとした事実確認をしっかりしなきゃなりませんし、そういう意味で、現時点では事実関係を把握していないということを申し上げているわけでございます。今後の調査を通じて確認してまいりたい、今委員が御指摘されたことも含めて、そういう考え方で調査を進めるということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
筒井委員 この年だけではなくて献金を受けているようなので、だから、まず、収支報告書なんかすぐとれるんだけれども、その調査で収支報告書はとっているんですか、まだとっていないんですか。
武部国務大臣 収支報告書、それをここで調べてこの場で発表すべきかどうかということも含めて、これは慎重に対応しなきゃならない、このように思うんです。
筒井委員 いやいや、私の今の質問は、収支報告書を取り寄せたかどうか。
武部国務大臣 今申し上げましたように、つい先日の新聞記事を見て、私は、これはきちっとした調査をもう一度し直す必要がある、念には念を入れてきちっとやろう、やるべきだということを指示しているわけでありまして、現時点では確認をしておりません。
筒井委員 そうすると、今の答えは、まだ収支報告書の取り寄せさえもしていない、そういう答えですね。
武部国務大臣 ここで改めて申し上げますけれども、どういうことを調査すべきかどうかということについても、これから調査項目について検討しなきゃならぬ、これは慎重を要する問題だ、私どもはこう思っております。
筒井委員 私が今聞いているのは、限定しているんです。収支報告書を取り寄せたのか、まだ取り寄せていないのか。こんなのはすぐできる、だれでもすぐできることだけれども、それさえもやっているのかやっていないのか、この点だけの確認です。
加藤政府参考人 林野庁に対してどのような働きかけがあったのかという観点から、三月の新聞報道に対しましても調査を行ったところでございまして、政治献金の問題については、我々として、収支報告書を取り寄せて調べるということは、今のところいたしておりません。
筒井委員 もちろん御存じだと思うけれども、収賄罪、あっせん収賄罪、請託を受けて、そして金をもらって、とすれば、成功したかどうかにかかわらず、その取り計らいの要請が正当な職務であるかどうかにかかわらず犯罪に該当するわけで、犯罪に該当する場合には、まさにその関係公務員は告発の義務があることは御存じだと思うんですが、それが今のところ、外形的にその可能性が強いわけです。そういう犯罪に該当するかどうかも一切調べるつもりはないんですか。
武部国務大臣 先ほど来何度も答えておりますように、どういう調査をするかということも含めてチームを編成して調査をするということでございまして、この調査も、調査の過程で逐次この場で発表するという性格のものではない、きちっとしたことが確認されてから発表するかどうかということも検討して明らかにしたいということでございまして、私どもはそういう考えで臨んでいるということでございます。
筒井委員 そうしたら、今もまだ何を調査するのか決めていないというんですか。
武部国務大臣 何を調査すべきかということも、具体的に今検討を指示しているわけでございます。
筒井委員 大体何を、調査チームは設置したんでしょう。調査チームを設置するときに、何を調査するかは決めないんですか。何を調査するかを決めないで調査チームを設置したんですか。
武部国務大臣 どのような働きかけがあったか等の事実関係を調査するわけですからね。ですから、つい先日の新聞を見て、何を調査するかどうかも決めていないのかと。チームを編成したばかりですからね。こういったことは慎重に進めていかなきゃならない、私はそのように思っておるわけでございます。決めたことから順次、逐次ここで発表すべき性質のものではないという認識でございます。
筒井委員 事実関係を調査する、それは、そういう四百万円の献金を受けたかどうか、こういう事実関係ももちろん入るんですねということが一つ。それから、事実関係の中には、林野庁に対する働きかけの有無、内容、これも入ると思うんですが、そんなのは時間をかけなくてすぐできることでしょう。この二点、どうですか。
武部国務大臣 そういうことも含めて検討する必要があると思いますが、先ほども何度も申し上げておりますように、どういうことを調査するか、そして、調査の過程のことを確認もせず、こういった場で発表するべき性質のものではない、私はそのように考えております。
筒井委員 そうすると、いろいろな問題があるんだけれども、今は、調査結果をこういう場所で発表しないというんですか。
武部国務大臣 調査がきちっと終わるまで、その調査の過程で逐次発表するということは、やはりきちっと確認をした上で公表することは考えております。
筒井委員 外務省よりひどいと思うのだけれども、林野庁の内部の問題なんで、そんな時間かけないですぐ確定できる。これが一点。
 それから、その調査チーム、今、いつまでに調査を終了する予定なんですか。どういう計画なんですか、その点は。
武部国務大臣 いつまでにということは、まだ確定的なことは申し上げられません。できるだけ、どういう調査項目を調査するか、そういったこと等も決めて、私はこれは慎重にやらなくちゃいけない、このように思っております。
筒井委員 大体、事実関係を調査するということだけははっきりしているけれども、どういう中身でいつまでに調査するかも、それも決めていない。それで、今のところ収支報告書さえまだ取り寄せていない。何もしていないんじゃないですか。
 その調査チームが本当に事実関係を明らかにする、そういうつもりがあるのかというのは極めて疑わしい。特に、その調査チームは五名ですね。五名のうちの一人が、林野庁の当時管理課長、まさに調査の対象者ですね、それが調査チームの中に入っていますね。この事実をまず確認してください。
加藤政府参考人 調査チームは、言われましたように五名で構成をしているわけでございますが、その中の一人が林野庁の管理課長であったということは事実でございます。ただ、指名停止にかかわる行政処分の権者というのは帯広営林支局長でございますし、また、当時業務を直接担う林野庁の部局ということでまいりますと、販売を行うということで、その関連通達を所管するのは業務部という組織でございます。
 そういう点で、管理部というのは実は直接の担当ではなくて、業務部と相互に国有林の仕事を行っているということでございまして、我々としては、聴取に当たりましてはチーム体制の中でとり行うということにしておるわけでございますので、厳正に対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。
筒井委員 今までの答弁からいくと、全然そうは思えないのだけれども。
 これ、献金の事実が明らかになって、同時に、請託を受けて鈴木宗男議員が行動した。そうすると、あっせん収賄、あるいは収賄罪に該当するわけですが、その事実が明らかになっても、今の答えから見ると、大臣、告発なんかするつもりないですね。しかし、告発しなきゃいかぬのですが、だけれども、今の答弁だと、そんなことの事実関係、大体そもそも明らかにする意向さえないんじゃないですか。告発義務についてどう考えていますか。
武部国務大臣 それは、調査を終えるまでは何とも言えませんね。
筒井委員 何とも言えないというのは、要するに金をもらった、請託を受けた、それで行動した、これもまさにこれに関係する核心的な事実関係ですが、今言った三点が明らかになっても告発しないのですか。それとも、明らかになってもまだ何とも言えないという態度なんですか。
武部国務大臣 調査によってきちっとした確認をしなきゃならぬということが私は非常に大事なことだ、こう思っております。
筒井委員 確認後の質問なんだけれども、今の林野庁、農林省の姿勢が、極めて消極的な姿勢が明らかになったので、これはさらに引き続いて質問することにしたいと思います。
 それで、時間もなくなってきたので、きょうの本来の私が聞きたかった問題に移りますが、農林水産業の廃棄物を含めた資源、これをバイオマス資源と言うならば、そのバイオマス資源の活用を図っていくべきだ、以前から私はこの委員会でも強調しております。
 昔は、人間は、すべて農林水産業でもって生活していた。エネルギーも農林水産業から基本的に賄っていた。衣食住も賄っていた。農林水産業によって人間は生活していたと言っても決して大きなうそではない、過言ではないというふうに思うわけです。しかし、今は農林水産業の比重が非常に小さくなってきた。
 これは、やはり石油系のエネルギーにとられてきた、それからプラスチックを初めとした石油化学工業製品、こういうものに日常生活が大きな比重を受けるようになってきた、この石油系のものによって農林水産業がどんどん侵食されてきた。その結果、今の状態になったということが言えると思うのです。これをやはりもう一度、農林水産業の復権を果たす。農林水産資源というのは、廃棄物を含めて石油と大体同じ成分を持っていますから、石油のかわりに活用することができる貴重な資源だと思うのですよ。
 エネルギーも、例えばエタノールをつくったり、あるいは水素を農林水産資源からつくることによってエネルギーを賄うことができる。あるいは、農林水産資源から生分解性のプラスチックをつくり上げることができる。こういうことをやっていけば、農林水産業はまさに衣食住とエネルギーを賄う、物すごく大きな比重を占める産業にまた生まれ変わる、再生することができる。農林水産業の比重を、日本国民の生活や、あるいは産業において大きく占めることができる、こう思うのです。
 そのためには、エネルギーと生分解性プラスチック等を初めとした化学製品、これを農林水産資源からつくる、こういう方向性をやはり農林省はさらにもっと強調していかなければいけないんじゃないかというふうに思うわけです。
 その場合に、林野庁の方は、林政改革大綱で、この二つの方向、バイオマス化学製品とバイオマスエネルギーの方向性、これを間伐材を含めて進めていく、この方向性を出しています。今回、水産四法の審議でございますが、水産庁も、藻場の形成、海の森の創造、こういう方向で今取り組んでおりますが、その藻場とか海草、これによって魚資源を増大させると同時に、その魚資源の廃棄物や海草の廃棄物からやはり生分解性のプラスチックやあるいはエネルギーの原材料を形成する、この方向性を水産庁も考えるべきだと思いますが、水産庁の方はどうですか。
木下政府参考人 お答えいたします。
 私どもも、資源増養殖の面から、あるいは海洋生態系の回復を図るという観点から、藻場、干潟は重要だというふうに考えております。こういう観点から、私ども、良好な沿岸域の環境を維持するという観点で、それぞれの調査を実施するなり、あるいはことしから実施をいたしております漁港漁場整備計画の中でもこれを位置づけて、藻場あるいは干潟の育成環境を整備していきたいというふうに考えております。
 また、魚の残滓の有機性廃棄物をまさにバイオマスエネルギーとして活用するという観点でございますけれども、私ども、このような観点で現在取り組んでおります。
 食用の魚介類を見ますと、八百五十万トンのうち食用利用可能を除いて大体三百八十万トン程度が廃棄物として処理をされている状況でございます。現在、百万トン程度が魚粉なり魚油に再資源されているわけでございますけれども、なお二百八十万トン程度が焼却されているという状況でございます。
 私ども、このような未利用の魚介類の残滓をバイオマスエネルギーとして再利用したいという観点から、本年度からメタン発酵技術の応用によりますエネルギー利用技術の開発に着手したところでございます。私ども、平成十七年度にはこの技術を確立していきたいというふうに考えているところでございます。
筒井委員 ぜひ、それを水産庁としても強力に進めていただきたいというふうに思うわけです。
 そこで、大臣もこの前ちょっと、バイオマスの活用について一言言われました。大臣の方の意向をお聞きしたいと思います。
 私は、本来こういうことを聞きたいので、いつも何かほかの責任追及ばかり好きでやっているみたいに思われますが……(発言する者あり)いや、好きでやっているんじゃない。あれは、そういう問題を起こすからやむを得ず追及するわけで、起こさなければ、本来のこういう政策問題について質問できるわけでございまして、起こさないようにしていただきたい。
 それで、今ここで委員長の了解をいただいて持っているのが、これもプラスチックみたいな感じですが、まさにバイオマス資源からつくった品物でございます。
 これもバイオマス資源からつくった、発泡スチロールのかわり、ウレタン発泡体でございまして、それから、これもバイオマスからつくった、完全に全部、これは国産のものでございますが、これは半導体の基板の一部にそのまま使えるそうでございます。
 それから、これもそうなんですが、木材と同じようなものとして使える。それから、これは建築資材として使えて、しかも燃えないし、電磁波もこれによって遮断することができる。それから、農業資材としてこういうものがありますが、このまま土に捨てて、もちろんそのまま腐る。
 それから、食品関係としても、これも全部そうでございまして、それから、これは鮫島委員からちょっと預かったんですが、借りたんですが、こういうかみそりも、刃はもちろんステンレスでつくるんだと思いますが、これも全部、これはコーンスターチからつくったものでございまして、今の石油化学工業製品のかわりを全部農林水産資源からつくることができる。しかも、これ、コストは、今の技術でも十分石油製品に対抗できるそうでございます。
 これがさらにもっと大量に普及するようになれば、石油化学工業製品よりも安くなる。これらを普及する価値が、地球温暖化問題等々を含めて、もう言うまでもありませんが、大臣、ぜひこれを見ていただいて、これについての推進を図っていただきたいと思いますが、いかがですか。
武部国務大臣 我が意を得たりと。
 今農林水産省は、農林水産業の生産政策ということも大事ですけれども、これからの農林水産省の仕事は、生物系由来の資源の持続的な活用、これを農林水産省の最も大きな看板として掲げて推進していくべきだ、このように思っておりまして、先般、経済財政諮問会議で私も説明をしたわけであります。その際にも、今委員お話しのとおり、化石資源使い捨て日本からバイオマス日本戦略へという話をさせていただいたわけであります。
 地球温暖化防止対策の切り札ということにも相なりましょうし、石油、石炭に代替するバイオマスエネルギー、あるいは今お示しいただきましたプラスチック化学製品を代替するバイオプロダクツ、あるいは太陽と水の自然の恵みで持続的に再生可能な循環社会を形成していく、さらには先駆的な技術ノウハウを世界のモデルとして提示して、日本発の新たな戦略的な産業として大きな可能性がある、農林水産業や農山漁村の新たな可能性というものを提示できる非常に大きな課題だ、私はこう思っているわけでございます。
 特に、都市にはいろいろな産業廃棄物が出てまいりますから、また農村には、これからいろいろ米政策の見直し等々も進めていかなきゃなりませんが、この間も青森では菜の花サミットというのが行われました。私は、今後、非食料農産物といいますか、そういったものも考えていくことも検討する必要があるのではないか、そういう意味で、積極的にというよりも、これを大きな看板に掲げて農林水産省としては取り組んでまいりたい。
 特に、都市と農村が近接してまいります。メタノールでありますとか、さまざまなことを考えますと、都市と農村が近接して、そこでバイオマスが取り持つ可能性という、都市と農山漁村の共生、対流、これはまさに二十一世紀の改革の向こうに見える理想の姿だ、ビジョンだ、私はこのように思いますし、これはアジア地域を初め世界に向けて日本が貢献していくことのできる非常に大きな可能性を持った分野だ、このように考えまして、積極的な対応に努めてまいりたい、このように思っております。
 民主党の工業を農業に、そういう政策も承知いたしておりますが、ぜひ御支援もいただきたい、このように考える次第でございます。
筒井委員 ふだんの追及の場合とは違ったいい答弁をいただきまして、しかも、民主党の農林漁業再生策で大きな柱として出しているのが工業の農業化でございまして、まさに石油に依存している今の工業から、こういう農業資源を活用して農業資源に依存する工業に変えていくことが、地球温暖化問題を初めとして、あるいは日本の社会構造自体を変革するのに非常に必要なことだろうというふうに考えております。
 その場合に、この後で時間があったら聞こうと思っているバイオマスエネルギーに関しては、農林省による三つのプラントとか、非常に規模は小さ過ぎるんだけれども、しかし一応実証プラントをつくっている。しかし、この生分解性プラスチックあるいはバイオマス化学製品に関しては、農林省は、林野庁も水産庁も含めて、具体的にはその実証プラントをつくっていないですよね。実証プラントもつくらなきゃいかぬし、あるいは、もうこういうふうに民間で研究して実際につくっているわけですから、民間のそういう動きを助成する、この二つの方向の措置が緊急に具体的なものとして必要だと思うんですよ。
 つまり、農林省自体としてこういう実証プラントをつくったりして研究を進めていく、それと民間のそういう働きかけに対する援助、支援をする、この具体的な二つの方向についてはどうお考えですか、大臣。
武部国務大臣 当然、農林水産省としても、来年度の予算編成に向けて、重点化項目として今、食と農の再生プランの一環として工程表をつくらせております。したがいまして、その中で具体的な政策、予算措置ということも検討することに相なろうと思います。
 それから、このバイオマスの問題というのは、農林省が非常に大きな役割を担うと思いますが、政府全体で取り組んでいく必要があるのだろう、私はこのように思います。むしろ、内閣に一つの大きなプロジェクトといいますか、戦略本部みたいなものを求めて、そこで政府全体として、環境省や経済産業省や各省がこぞって一体的に参加してやるということに相なろう、こう思います。それが一番いい方向じゃないか、こう思っておりまして、先般も経済財政諮問会議ではそのことを主張いたしました。
 したがいまして、民間のエネルギーを活用していく、民間の力を活用していくというのは当然のことでありますし、これは当初の段階では相当支援もやっていく必要があるのじゃないのか。今、経済産業省もいろいろやっておりまして、私も、地元のバレイショでん粉を原料にして、今から五、六年前に応援、これは残念ながら経済産業省の予算をお願いして、そういった実証的なプラントをつくることに協力したことがあるわけでありますけれども、委員のお話しされているようなことについては、当然そういう努力をしていかなくちゃいけない、このように考えております。
筒井委員 まさに私も大賛成で、IT戦略本部はあるけれどもバイオ戦略本部がない、これは内閣全体にやはりつくるべきだろう。バイオ戦略といった場合に、大体頭に思い浮かぶのが、ヒトゲノムの方の、医薬品等の関係が中心だ。やはり日本全体としては、ヒトゲノムも大事ですけれども、しかし、バイオマスの活用という意味でのバイオ戦略、これをもっと日本も戦略的な課題として上げなければいけない。
 その中心はやはり、バイオマス資源というのは農林水産資源とほぼイコールですから、農林水産省が前面に出てやらなければいけないというふうに思うわけです。それが結局、農林省のためにもなるというのはおかしいですが、農林省が衣食住とエネルギーを全部対象にすることになれば、物すごい強い、今言われている公共事業で強いのじゃなくて、まさに国民の同意をもらえる形での、期待される省になると思うのです。
 だから、今の言われたバイオ戦略本部を内閣全体につくること、大賛成でございますから、ぜひ進めていただきたいし、それをまた農林省が先頭に立ってやっていただきたいということを、最後にもう一度、確認、大臣、お願いします。
武部国務大臣 先ほども申し上げましたように、生産振興ということも重要でありますけれども、むしろ、これからの農林水産省の新たなるコンセプトというのは生物系資源の持続的な活用ということだろう、このように考えておりまして、バイオマス日本戦略の先頭に農林省が立ってしっかり御期待にこたえたい、かように考えております。
筒井委員 農林水産技術会議の皆さんに来てもらったのに、申しわけないです。エネルギープラントについての現状の説明をいただこうと思ったのですが、時間がありませんので、きょうはこれで終わります。大変ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて筒井信隆君の質疑は終了いたしました。
 次に、岩倉博文君。
岩倉委員 自由民主党の岩倉博文でございます。
 きょうは水産四法案の質疑ということでありますけれども、本題に入ります前に、幾つかの点について大臣にお伺いをいたしたいというふうに思います。
 まず初めに、BSEの問題であります。昨日、衆議院でBSE対策特別措置法案が通過をいたしました。
 ちょうど先週の土曜日、私、地元に帰っておりまして、白老町という町があります。町の基幹産業の一つに、白老牛というブランドで、かなり以前から一生懸命皆さんが取り組んでいる町でありますけれども、昭和二十九年に初めて取り入れて、試行錯誤を繰り返しながら、最近ようやくこのブランドが定着をし、一生懸命取り組んで頑張っている町であります。
 昨年の九月のBSE発生以来、大変な苦労を生産者がしております。お祭りの実行委員会の実行委員長が農協の青年部長、畜産農家の後継者でありました。開会式で、非常にすばらしいお天気だったのですが、たくさんの人たちが町内外から集まっておりました。
 わずか五分ぐらいの実行委員長としてのスピーチだったわけでありますけれども、本当に、昨年以来の大変な苦労、そして昨今の状況、あるいは自分たちがさまざまなキャンペーンを通じて白老牛は安全だというのを、自分たちの足で、道内各地あるいは一部本州まで出かけて、一生懸命取り組んできた。
 しかしながら、十四年目を迎えたこのお祭りに本当にたくさんの人が来てくれるのかどうか不安でたまらなかった。そして夜が明けて、土曜日の朝、すばらしいお天気の中で、本当に大勢の皆さん方が集まって開会式を迎えることができた。わずか五分間の実行委員長のスピーチでありましたけれども、私自身非常に感動を覚えながらそのスピーチを聞いていたわけであります。
 全国それぞれの地域で、生産者、流通、小売あるいは食品業界も含めて、大変な御苦労があったこの九カ月であり、BSEの問題は、これからまだまだ年という単位で緊張感を和らげることはできない状況でありますけれども、昨日、衆議院で特措法が通過したという時点で、大臣もこれまで大変な思いをして御苦労いただいたわけでありますけれども、この時点で、BSE対策に関する所見並びに改めての決意をお伺いいたしたいというふうに思います。
武部国務大臣 まず、昨日、衆議院におきましてBSE法案が可決されましたことは、これまでの立法府の皆様の真摯な御努力によるところと敬意を表する次第でございます。
 今岩倉委員から白老のお話がありましたが、私も、日曜日、山形の金山町で植樹祭がございまして、ぜひ新幹線であの米沢牛の弁当を帰りに買って、電車の中で食べてこようと思ったのですが、私のところに売り子さんが来る時点ではもう米沢牛の弁当が売り切れているということは、残念でありましたけれども、皆さん方がもういつもと変わらない状態でお肉を召し上がっていただいているんだなという感じも受けまして、ほっとしたといいますか、うれしい思いを感じたわけでございます。遠藤副大臣の話によりますと、米沢牛は発生前よりもキロ五百円ぐらい高いんだという話も聞きました。
 BSEの発生当初、本当に、私もよく知識も持ち合わせませんでしたし、混乱が国民の皆さん方の大きな不信の原因になったということを今も深く反省しているわけでございますが、それだけに、BSEの清浄化に向けた全頭検査及び感染経路の遮断、また国民生活や関係事業者への影響の緩和のための各般にわたるBSE対策というものを講じてきたわけでありますが、さらに、まだまだ課題も残っております。
 十四年度においても、マル緊事業の継続や肉用子牛生産者補給金等への月別支払いの仕組みの導入、BSEの影響の長期化に対応した新たな運転資金の創設、牛肉の一層の消費拡大対策等々、必要な対策を講ずることとしているところでありますが、なお引き続き、消費者の視点に立った正確な情報提供等による牛肉の一層の消費拡大、セメント工場における焼却等による肉骨粉の焼却の推進、それから老経産牛の流通の円滑化等々、問題も残っております。
 こういったことを着実に実施し、推進に努めてまいりたい、こう思っておりますし、BSE法案の成立ということがこういったものをさらに支えてくれる力になる、このように信じております。
 また、課題として、死亡牛の検査については、できるだけ早く二十四カ月齢以上の牛全頭の検査が開始できるように都道府県における検査体制の構築に向けた取り組みの推進に努めてまいりたいと思いますし、何といっても、やはり感染源、感染経路の調査については、迷宮入りには絶対できないという決意で、引き続き全力を挙げて取り組んでまいりたい、このように思っている次第でございます。
 その後、このBSE新法を踏まえまして、食肉を初めとした食の安全確保と消費者の方々の不安の解消にさらに努めていかなきゃならないと思っておりますし、今国会におきましてもJAS法の改正、あるいはまた今六月中に新しい食の安全に係る行政組織あるいは包括的な法の整備ということを政府においても検討中でございます。
 まだまだ課題は多いと思いますが、最後に、私ここでつけ加えておきたいと思うことは、やはり客観的な検証、科学的な知見ということがいかに大事なことかということを痛切に感じた次第でございまして、そういったことを決しておろそかにせずに、調査検討委員会の報告書を厳粛に受けとめつつ、しっかり農林水産省としてその対応に努めてまいりたい、このように決意を新たにしている次第でございます。
岩倉委員 ありがとうございました。
 今大臣から大変重い決意をお聞きしたわけでありますけれども、一つの懸念材料として、やはり昨日の通過、あるいは今国会でBSE対策法案の、一つの通過点でありますけれども、けじめがついたということで、エアポケットのようなものができないかというのが多少の懸念材料にあります。
 そういった意味では、ぜひ今大臣がお話しされた方向の中でしっかりと、本当に緊張感を持って、きめ細かなあるいはフレキシビリティーを持ったBSEの対策が必要なのではないかというふうに思いますので、ぜひ思いを一つ、心を一つにして頑張っていただきたいなというふうにお願い申し上げたいと思います。
 次の問題なんですが、日曜日だったと思いますけれども、読売新聞の朝刊に「農水省、名称変更へ」という記事が載っておりました。さらには、四日の日本農業新聞では、小さな記事でありますけれども、この報道を事務次官が否定されるというような記事が載っておりました。
 例えば、自民党の部会等々でも議論としてなかったわけではないわけでありますけれども、非常に唐突な感じをしたと同時に、私自身は個人的に検討に十分値する問題ではないかというふうに考えながら記事を見ておったわけであります。
 この問題、報道で世に出たわけでありますけれども、実際には、記事によると、大臣の指示で検討を始めているというような記事でありましたけれども、このことについての実際の現状について大臣からお話をお伺いしたいと思います。
武部国務大臣 まず、省名の呼称について検討を指示したことは全くありません。私も、日曜日、山形であの新聞を見て驚いたのでありますが、多分、これは推測でありますけれども、今関係閣僚会議において、食の安全に係る安全委員会といいますか、合議体でリスク評価をする、それに対応しまして、リスク管理については各省がしっかりその体制を組むと同時に、リスクコミュニケーションというものは非常に重要だから、それもしっかりした位置づけを政府全体としてする必要があるのではないか、そういうようなことが議論されております。
 当然、そういったことが明らかになれば、農林水産省といたしましては、業務の見直し、組織の見直しはしなければなりません。さらに、農林水産省は、食と農の再生プランを明らかにしました際に、消費者に軸足を置いて農林水産行政を変えますということを明言しているわけでございます。消費者に軸足を置いて農林水産行政を変えるということは、当然のことながら、人的あるいは財政的な資源配分ということもこれは見直しをしなければならないことは言うまでもない、このように思うわけでございます。
 それから、蛇足になるかもしれませんが、私はこれまで農林水産省は、かつては農林省、こう言ったのが、今は農水省、こういうふうに略称で呼んでいる。これからは略称で呼ぶとすれば、私ども食と農の再生プランということで発表しておりますから、食農省かな、そういうようなことを新聞記者諸君の前で、オフレコの場で、懇談の場で語ったことがあるわけでございます。
 いずれにいたしましても、名前をどうこうするということじゃなくて、先ほどバイオマスの議論もございました。これから農林水産省の役割というものはやはり年々時代とともに変わってくるんじゃないかというふうに思います。それに伴いまして、組織でありますとか業務でありますとかそういったことの見直し、そしてその結果、一番素直な形で、国民の皆さん方に納得してもらえるといいますか、受け入れてもらえるような、そういうような省名の見直しなどもおのずから持ち上がってくるといいますか、そういうようなことは私はあってしかるべきだ、このように思います。
 先ほども申し上げましたように、呼称の変更については一切指示もしておりませんし、私自身の念頭にもございませんでしたが、しかし、農林水産省、これからどういう方向で進んでいくのかということについては真剣に、業務、組織の見直しを含めて考えていく必要があるということは、そのように考えている次第でございます。
岩倉委員 私も二年前に初めてこの政治の場に来て、農政にしろ、水産行政にしろ、全く素人の立場でずっとかかわってまいりました。
 最近思うことの一つに、産業分類の見方として、一次産業、二次産業、三次産業というような見方があります。これは産業分類としては、呼称としてはもう既に定着をしていますし、しかし、ややもすると産業分類という役割を超えた目で一次産業、二次産業、三次産業というものを見てしまうという傾向があるのではないかというふうに考えています。
 農政全般のさまざまな施策を議論していくときに、どうしても一次産業、二次産業、三次産業という産業を並列的に見て、そういった立場で考えていくのが本当にいいのかどうかという疑問が今ありまして、自分自身で答えが出せないんですけれども。
 そういった思いとそれから農林水産省というこの呼称の問題というのが非常にリンクして、自分で今いろいろな試行錯誤をしながら考えているところなんですけれども、いろいろな流れの中で、やはりいろいろな議論をしていくことは大事なんではないか。しかも、政治の場だけではなくて、生産者の皆さんあるいは一次産業にかかわる皆さんが大勢いらっしゃるわけで、やはりこういった場合にはいろいろなところの意見を聞きながら進めていくことが大切なんではないか。
 願わくばそういったプロセスで、本当に、先ほど冒頭言いましたように、一次産業、二次産業、三次産業という並列化したような産業分類というものがこの国の風土に合っているのかどうかというような視点をぜひ考えてみたいなというふうに思っております。
 ぜひ中期的な課題として、あるいは呼称の変更そのものは機運が高まればそんなに時間をかけなくてもということかもわかりませんけれども、一部に名前を変えるべきだというような話も具体的にありますので、そういったことも含めてぜひ慎重な御検討をしていただきたいなということをお願い申し上げたいというふうに思います。
 次の問題なんですが、これも水産の四法案とは直接ちょっと関係ないんですが、これは間接的に関係している問題なんですが、やはり今、農政全般、あるいは水産行政もそうなんですが、食料自給率の問題なんです。
 さまざまな政策、施策の根底には、やはり食料自給率の向上という非常に国民的な課題があるわけなんです。例えば農水省の発信するいろいろな政策も、その根底には食料自給率の向上という大きな目標があるわけなんですが、これもよく議論が出ることなんですが、自給率ということを今のこの国の、私も含めて、国民の皆さんが本当に意識をしているんだろうかということを非常に疑問に思うんです。
 私より上の世代、もう亡くなっていますが私の父親の世代ぐらい、父親の世代というのは戦争経験世代でありますが、私が小さいときには、自給率の話というのは家庭の中で出ていたような記憶もあります。しかし、非常に恥ずかしいんですが、私の世代も含めて、もうそういった意識が欠落をしている。これも事実ではないかというふうに思うんです。
 いろいろな、特に農政あるいは水産行政の施策を展開していく場合に、やはり国民の皆さんがこの自給率の意識をどの程度持っているのかということがかなり大きく影響するのではないかというふうに考えるわけです。
 そこで、例えば学校教育の問題とか世代間伝承とか家庭教育の問題とか、そういったところで自給率のことはよく出るんですけれども、何か、今までの流れの延長線上ではない、やはり食料自給率、中国の存在あるいはインドの存在、アジアにも大きな懸念材料があるわけですし、世界戦略の中での日本の食料自給率向上に向けた何かが必要なのではないかという思いをいたしているんですが、このことについて大臣の所見をお伺いしたいと思います。
武部国務大臣 食料・農業・農村基本法ができまして、食料の自給率、現状四〇%を今後十年間に四五%を目標にして諸般の政策を推進するということを掲げてはいますが、私は、今委員御指摘の問題提起というのは非常に大事だ、このように思います。私ども、なぜ食料の自給率を四五%にしなければならないのかということについては、やはりもっと大局的に物事を考えていく必要がある、地球規模の視点で考える必要がある。
 食料を輸入するということは、水を世界じゅうから日本が奪い取るということにも等しい問題提起もあるわけであります。地球温暖化ということから砂漠化がどんどん進んでおります。我が国の耕地面積は四百八十九万ヘクタールぐらいだと思いますが、もうそれ以上減っているかもしれません。しかし、毎年この地球は五百万ヘクタールが砂漠化している。これはもう一分間に東京ドーム七個分、あっという間に消えていくということになるわけでございます。
 なお、今、近くFAOにおける食糧サミットの五年後会合というのが開かれまして、もし国会のお許しがいただければ私も政府を代表して出席したいのでありますけれども、その目標は、地球上で八億の民が栄養失調に悩んでいる、それを五年間で半分にしようという目標でありました。しかし、到底そういう状況に至っておりません。
 人口爆発ということを考えたり、地球温暖化の問題等を考えたり、それから、森林の違法伐採の問題を考えたりした際に、やはり日本みずからが、先ほどバイオマスのお話もありましたけれども、これはバイオマス戦略とか産業とかいうことじゃなくて、そういう地球全体の規模の視点で食料の問題、環境の問題は考えていかなきゃならない。
 この間も、経済財政諮問会議で小泉総理が、健康と人間力という項目のところで、人間力といえば健康だろう、健康といえば食事と運動と休養じゃないか、その食事が一体どうなっているんだ、食事といえば農業じゃないかというようなことで、やはりそこの原点に戻るべきだと。
 すかさず私は、知育、徳育、体育、教育には三つの要素があるというけれども、忘れてはならないというのは食育じゃないか、知育、徳育、体育、食育だ、体育協会があって食育協会がないのはおかしいという話などをして結構盛り上がったんですけれども。
 私は、そういう意味で、最近はスローフードということも、イタリアで起こった運動でありますが、我が国国内にありましても、スローフードとかスロータウンとかというようなことが非常に各地で盛んになってまいりますし、NPOなどを見ましても、食の問題あるいは環境の問題に対して非常に大きな関心を呼んでいるということを考えますと、やはり、アメリカでは離乳食から食育月間というものをやっているんですね。ですから、ただ、食べるということは生きるということだけじゃないんだということも、この辺で原点を見詰めてみる必要がある。
 そういう観点から、我が国は我が国として、世界に協力し貢献するために、国内における一定量の自給率は確保しなきゃなりません。それぞれの国がそういう努力をすることによって、飢餓でありますとか、あるいは温暖化の問題でありますとか、そういったものが防止できるということにつながっていくんだという考え方で私はこの食料の自給率の問題というものを考えていきたい、こう思っているわけです。
 水産物における自給率ということも、この場でいろいろな議論がありました。食べたいものは大体外国から輸入しているものが多いじゃないかというようなことでありますが、水産物の自給率を一つの目安を持ってやっていくということも、これはやはり、資源をどう管理していくか、回復していくか、そういうことがその裏づけにあって自給率の重要性という問題が少しずつ理解していただけるんじゃないか、こう思っております。
 委員の御指摘というものを、私どもも農林水産省として非常に大事な警鐘でもある、こう思って受けとめさせていただきたい、このように思います。
岩倉委員 本当に、政治の場全体の共通の大きな課題として、この自給率向上に向けたさまざまな問題をしっかりと考えていかなければならない、大切な、重要なテーマではないかというふうに思いますので、大臣もいいお知恵がありましたらぜひ発信していただきたいなというふうに思います。
 それでは、きょうの本題であります水産四法案のうち、私は、同僚議員がこの後また質疑がありますので、漁業再建整備特別措置法、そして水産業協同組合法の二点について、基本的な質問をさせていただきたいというふうに思います。
 まず初めに、再建整備特別措置法が今回一部改正になるわけでありますけれども、いろいろな漁業を取り巻く環境も大変厳しいものがあります。特に、自分の選挙区のことばかりで申しわけないんですが、例えば日高の方へ行きますと、昆布漁が主流です。昆布漁の皆さん方は、朝早くからお昼ぐらいまでの仕事が終わると、午後から公共事業の現場に出る、あるいは、季節によっては山に入る。つまり、ああいう、漁業者そのものが循環雇用で生計を立てているというところであります。
 そういった意味では、今なかなか昆布も値段の問題があって大変厳しい。公共事業も大変厳しい状況だ。山も、結構いいトーンで昨年来予算の問題が出ていますけれども、その割には余り予算がつかないというようなことで、大変、三重苦と言っていいような状況の中にいるわけであります。
 本当に全国各地、それぞれの魚種によって大変な御苦労をされているわけであります。そういった意味で、今回この四つの法案のフレームを変えていくということは大変大事なことではないかと思いますが、この再建整備特別措置法の改正のポイントを水産庁長官に御説明をいただきたいと思います。
木下政府参考人 漁業再建整備特別措置法の改正でございますけれども、昨年六月に制定されました水産基本法に基づきまして、効率的かつ安定的な漁業経営の育成を図るために、今回、漁特法に基づきます計画制度の見直しを行おうというものでございます。
 中身でございますけれども、まず第一点は、従来の制度でございますと、カツオ・マグロあるいはまき網など、中小漁業六業種にその対象が限定をされておりましたけれども、今回は沿岸も含めましてすべての漁業種類を対象にしたいというのが一点でございます。また、その中で、経営改善意欲のある個別の経営体に着目した経営支援策をとりたいということでございます。これが第一点でございます。
 第二点でございますけれども、漁業者によります自主的な減船の実施を支援する仕組みでございます整備計画制度につきましても、支援対象を拡充し、資源回復のために減船なり休漁等の取り組みを行う漁業者に対して農林漁業金融公庫資金を融通したいということでございます。
 また、これのほかに、従来から実施しております負債整理資金でございますけれども、中小漁業者、沿岸漁業者それぞれにつきまして、再建計画制度につきましては引き続き実施をしたいということでございます。
岩倉委員 今、改正のフレームについてお伺いしたわけでありますけれども、今まであった中小漁業構造改善制度を変えていくということでありますが、六業種から幅を広げるということなんですが、今までの法律の昨今における具体的な問題点がどこにあったのかというポイントと、その問題点を踏まえて今回の改正が、ここがこうなんだというところを、すべてではなくて結構なんですが、主なるものをもうちょっと突っ込んで御説明いただければというふうに思います。
木下政府参考人 従来の中小漁業構造改善制度でございますけれども、カツオ・マグロあるいはまき網等の中小漁業六業種に対しまして、業界全体として規模拡大なり生産行程の協業化を進める、そのようないわば業界の構造改善を進めようということについての助成策であったというふうに考えております。
 ところが、最近の状況を見てみますと、総じて水産資源の悪化が進むわけでございますので、業界一丸となったような経営規模の拡大をする制度というのは、現在の状況の中で実情にそぐわなくなってきているというふうに認識をいたしております。
 もう一つは、先ほど申し上げましたように、業界全体としての取り組みでございます。現在の課題をさらに個々の漁業経営のコストの低減という観点からいたしますと、従来の制度でございますと、しばしば過剰投資につながってきたという面もあろうかというふうに思っております。このような点を踏まえまして、今回は、経営改善意欲のある個別の経営体に着目をした制度に転換をしたいというふうに考えているところでございます。
岩倉委員 ありがとうございました。
 いずれにしても、さっき言いましたように、漁業者を取り巻く状況は極めて厳しいものがあるわけです。今回の改正をするに当たって、漁業者にわかりやすく伝達をしていくということが非常に大事なんではないかというふうに思いますので、そのこともあわせてお願いをしておきたいというふうに思います。
 いずれにいたしましても、この法律の改正は、私のところにも必ず要望の中に早期実現というのが入っているわけでありますけれども、漁特法の改正案では、公布の日から起算して三カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するというふうになっているわけでありますけれども、これは参議院先議でありますから、衆議院で可決されれば決まるんですが、水産庁として、実際にその施行に当たっての日程的なものはどのように押さえているのか、御説明をお願いしたいと思います。
木下政府参考人 今回の漁特法の改正でございますけれども、委員御指摘のとおり、公布の日から起算をして三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するというふうにされているわけでございます。
 まさに現在、本院で御審議をいただいているところでございまして、私ども水産庁といたしましてはできるだけ早く施行したいというのが気持ちでございまして、私どもも、そういうようなことでございましたら、施行に必要な準備等について、水産庁内部の作業についてはできるだけ早く了したいというふうに考えております。
岩倉委員 できるだけ早くということでしたけれども、ぜひ一日も早く施行されるように御努力をお願いしたいというふうに思います。
 引き続き、水産業協同組合法改正について、あと五分しかありませんが、改正のポイントについて長官にお伺いしたいと思います。
木下政府参考人 水産業協同組合法改正のポイントでございますけれども、私ども、本法律案を提案した背景といたしまして、資源状態の悪化など、水産業をめぐる状況が変化をしてきている、もう一つは、本年四月一日からペイオフが解禁になるなど、近年の金融情勢の変化があるということでございます。このような漁協をめぐります変化に対応いたしまして、漁協の事業、業務執行体制の整備、それから漁協系統信用事業の健全な運営を図るための措置を講じたいというのが趣旨でございます。
 具体的な内容でございますけれども、一つは、漁協の資源管理の取り組みを促進するため、水産資源の管理をまさに漁協の第一番目の事業として明確に位置づけたいというのが第一点でございます。
 また一方で、漁協の事業基盤の強化を図るという観点から、信用事業を行います組合につきまして、最低出資金額を現行の二千万円から一億円に引き上げたいというのが一点。
 また、信用事業を担当いたします常勤理事一人以上の設置の義務づけ、あるいは、経営管理委員会制度の選択的導入等の措置を講ずることとしているところでございます。
 なお、この信用事業等々の問題につきましては、現場の実態に即しました施行期日を考えているところでございます。
岩倉委員 ありがとうございました。
 大臣にお伺いしたいのですが、例えば農協なんかでも合併が非常に進んでおりまして、地域によって温度差はありますけれども、かなり順調に進んでいる方だと思いますが、この漁協の合併はなかなか難しい。浜ごとにいろいろな関係があるような地域もありますし、非常に順調には進んでいないような状況があるのではないかというふうに思います。
 そういうことに対して、これから漁協の合併に対してどういう対策をお持ちなのか、あるいはどういう思いをお持ちなのか、大臣にお伺いしたいなというふうに思います。
武部国務大臣 今現在、全国で千六百六十ぐらいの漁協があるわけでありますが、平成十九年度末には約二百漁協にする計画を漁協系統では持っているわけでありますけれども、この漁業協同組合合併促進法の期限があと一年となっておりまして、この一年間で合併がさらに促進されるように、農林水産省としても、漁協系統の合併による組織再編を積極的に進めてまいりたい、このように考えているわけであります。
 合併の難しさというのは、漁業権の問題でありますとか、あるいは、漁協によってそれぞれ資産等の格差があります。そういったことが、なかなかうまくいかない原因じゃないかと思います。したがいまして、問題点は何かということをもう少しきめ細かに洗い出して、そして、その問題点を解決するために農林水産省としても系統に協力していくということが必要だ、このように思っております。
 いずれにいたしましても、漁民の組合に対するニーズというものは非常に高いんですね。しかし、小さな組合がどれほどそれにこたえられるかということを考えますと、今までは、漁業権の問題がある、どういう問題があるということで、それが障害になっておりましたけれども、それよりも自分たちが求めるものの方がだんだんウエートが大きくなってまいりますと、また環境も変わってくるんじゃないかと思います。
 地域によってそれぞれ違うと思いますが、私は、やはり広域合併ということで管理部門というものはごく小さくして、そしてもっと、漁協も農協もですけれども、経済団体として、漁協ももう漁協タイプの民間会社みたいな、そういう考え方でいくべきだと思うんです。
 市場はもう時々刻々動いているんですけれども、漁協での決め事というのは、理事会を開いたり総会をしなかったら決まらない、こんなことではとても時代についていけないことになるんじゃないか、こう思いまして、これからはよく系統とも、何が問題なのか、どういうことが我々行政側に求められているのかということのコミュニケーションをしっかりとって進めていきたい、このように考えております。
岩倉委員 ありがとうございました。
 農業以上に漁業の場合には、やはり担い手の不足あるいは担い手の育成という課題がかなり大きな問題になっておりますので、そういった意味でも、その政策のきめ細かな対応、対策をぜひ発信していただきたいなというふうに思います。
 時間が参ったんですが、金子委員の御了解をいただいて、最後に一つだけなんですが、一カ月ほど前になりますか、ある漁協の皆さんたちと懇談をしていたときに出てきた話なので、一つお聞きしたいのです。
 海難救助に協力した漁民やあるいは漁協に対する支援措置に対することなんですが、私もまだこれは十分調べてはいませんので、水産庁と直接関係ないかもわかりませんけれども、やはり消防団の場合の対応と、身分保障等々も含めてかなり差があるというような話があります。
 いろいろな意味で、漁業の多面的機能というテーマが議論されておりますけれども、この多面的機能の一つとしても、そういった場に遭遇するケースが非常に多いわけでありますので、きちんとした評価をし、対策を発信すべきではないかというふうに私は感じたんですけれども、このことについて最後にお伺いをいたしたいと思います。
武部国務大臣 私も、地元から同じようなことを何度も要請を受けています。運輸政務次官の当時から、この水難救護法というのは、明治三十二年にできた法律で片仮名の法律なんですね。これによりますと、「救護ニ関係シタル者ハ市町村長ヨリ救護費用ノ支給ヲ受クルコトヲ得」と書いてあるんです。
 そういうことを根拠に我々もいろいろ努力してみたんですけれども、なかなか今、水難救護に協力した者に支給される手当というのは、日本水難救済会が申請を受けまして、水難救護法は適用していないという実態がございます。
 今、浜は、プレジャーボートでありますとか、あるいは海水浴でありますとか、レジャーの中心地にもリゾート地にもなっております。一方において、漁民にとっては生活の糧である生産の現場でもございます。
 船も大型化しております。さまざまな海難事故がございます。そのたびに、漁協の組合員、特に青年部などが駆り出されて、時には消防団と一緒になってその衝に当たっているといいますか、ボランティアと言って過言ではありません。私は、もうこれはやはり単なるボランティアというわけにいかない。
 もう漁村も高齢化していますし、若い人もいないですし、そういうことを考えますと、この問題はもう少し真剣に取り組む必要がある、こう思いまして、きょう、委員の質問に対する答弁レクをやりました。そこでかなりの時間を割いて、水産庁長官ともこの問題について議論をしたわけでございますが、多面的な機能のこともしかりでございます。少しこの問題、農林水産省として真剣に勉強してみて、前向きな努力を進めていきたい、そのためには、よく現場の声も聞かせてもらいたい、このように考えております。
岩倉委員 ありがとうございました。質問を終わります。
鉢呂委員長 これにて岩倉博文君の質疑は終了いたしました。
 次に、金子恭之君。
金子(恭)委員 自由民主党の金子恭之でございます。
 岩倉委員に引き続き、水産四法案につきまして質問させていただきます。
 昨年六月、水産政策の改革に向けて、水産関係者の議論を踏まえた上で、この委員会で審議をした上で、水産政策の理念や施策の基本的方向を明らかにするということで水産基本法が制定されました。それを具体化する一環として、ことしの三月に水産基本計画が策定され、そしてそれをまた具体的にするためにこの四法案がようやく提出されたわけであります。私も、水産基本法案が審議される際に質問をさせていただきました。そういう意味では、やっとそういう具体的なものが出てきたかということで、非常に期待もしておりますし、また、速やかに成立させていきたいというふうに思っております。
 この法案につきましては、効率的かつ安定的な漁業経営の育成、水産資源の適切な保存管理など、水産基本法が掲げる施策の具体化に大きく前進するものでありまして、私も、基本法に則して水産政策を考えたときに、人づくりでございます担い手の確保、そして水産物の安定供給の確保という意味で資源管理というこの二つのことが非常に重要なことだというふうに思っております。漁業を取り巻く環境が非常に厳しい現状の中で、このままこの二つをほうっておけば、漁業というのは衰退の一途をたどるのではないかと思っております。
 そういう意味で、担い手を育成確保するためには、安定的な収入の確保というのも重要でありますし、また、とり過ぎてしまえば資源の枯渇ということが起きてしまうわけでございまして、資源回復計画というのをやっていかなきゃいけない。休漁もそのかわりやらなければいけない。そういう意味では、その休漁している間の支援施策というのもきちんとやっていかなければいけない。
 また、水産業、漁業というのは自然環境の影響というのが非常に大きいわけで、漁業経営の安定のためには漁業共済の充実というものも図っていかなきゃいけないし、加入率も上げていかなきゃいけない。そういう意味では、この四法案というのはそれをすべて網羅しているわけでありまして、そのことについてこれから具体的に質問をさせていただきたいと思います。
 まず、農業にしろ林業にしろ中小企業にしろ、いろいろな産業において、担い手対策というのがやはり今後の一番大きな課題ではなかろうかと思います。そういう意味で、大臣に今後の漁業の担い手対策についてどうお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
武部国務大臣 今、金子委員から、今般の水産四法案が担い手対策、人づくりを網羅的に示しているというお話でございますが、まさにそのとおりだ、このように私は思っているわけでございます。
 担い手といえば、漁業技術、経営管理能力の向上、新規就業者の確保、青年漁業者中心のグループが行う創造的取り組みへの支援等々いろいろな諸般の対策がありますけれども、やはり浜が豊かになる、そして経営が安定するということが基本であろう、こう思うんです。その際には、やはり資源を守り、資源を育て、資源に見合った操業、漁業ということは避けられないわけでありまして、今委員がお話しのとおり、資源管理や資源回復策についてのお話、また経営についても、それを支える共済制度の充実等々が今度のそれぞれの四法案に込められているわけであります。
 しかし、包括的に言いますと、私は、農業よりも漁業の方が法人経営などが進んでいるな、こう思うんです。私どもの地元も、漁協は漁協としてしっかり存在していますが、定置がほとんどですから、だから、全部生産法人ですね。個人というのはないんですよ、これは一緒にやらなかったらできない漁業ですから。
 その中から、本当に不漁のときには出稼ぎに大阪だとか東京に出かけていったりしていました。最近は、やはりその中から、出稼ぎに行かなくてもいいようにということで、せっかくまとまった法人なんだから他の収入の道を考えようというようなことで、知床を背景にしておりますから、夏は遊漁なども新しい船を入れてやっておるというふうな、そういう試みがなされております。
 したがいまして、漁業の分野にありましても、担い手確保ということについては、一つは、しっかりした若い漁業者が浜に戻ってくる、そこで踏ん張って頑張るということと同時に、法人組織というんですか、経営ということを考えて、単なる魚をとるだけじゃなくて、生産から加工、消費に至るまで、あるいは遊漁船法を改正するわけでありますけれども、真鶴とか神奈川あたりはそっちの収入の方がはるかに多いというようなのがあります。
 都市と農山漁村というのは、共生、対流、おいしい空気、おいしい魚を求めて行ったり来たりするわけでありますので、そういった新たな分野に拡大していくということについては、経営組織の考え方ということも新たな視点で考えて、浜に外から、都会から人がどんどん来るというような、そういう将来の漁業、漁村というものを構想していきたいな、私はそんなような考え、夢を持っている次第でございます。
金子(恭)委員 ありがとうございました。
 この法律の中に、いろいろな言葉が出てくるわけでありますが、意欲ある漁業者などの創意工夫を生かした経営改善制度への移行ということが書いてあるわけであります。農業にしろ、意欲ある農業者ということが出てまいります。その中で認定農業者制度というのがあって、税制的や金融的な優遇措置とかがあるわけでありますけれども、この法律の中で意欲ある漁業者というのはどういうものであって、そして政策的支援をそこに集中させていかなければいけないということでありますけれども、今回の漁特法について、どのような方を具体的に対象にしているのか、教えていただければと思います。
木下政府参考人 今回の漁特法改正の中で、従来の制度でございますと、カツオ・マグロあるいはまき網などの中小の六業種ということで、団体を対象といたしました構造改善制度であるわけでございますけれども、今回の制度改正の中で、従来の中小漁業構造改善制度を見直しまして、漁業経営改善制度へ転換をいたしたいというふうに考えているところでございます。
 この中で、一つは、中小なり沿岸を含むすべての漁業者を対象とするわけでございますけれども、御自身がそれぞれの経営について、このような具体的な経営の中身を改善したいというような経営改善計画をつくっていただこうというふうに思っておりまして、そのような経営改善計画制度について農林水産大臣なり都道府県知事が認定をする、そういうような認定をされた漁業者に対しまして支援をしていきたいというふうに考えているところでございます。
金子(恭)委員 ぜひ、そういういわゆる意欲ある漁業者を支援していただきたいと思います。
 続きまして、今後の漁業経営を考えるに当たりまして、今回法律の中で、資源管理への取り組みというのが書いてあるわけでありまして、これは非常に重要なことだというふうに私も認識しております。
 その中で、水産庁で本年度予算で資源回復計画に取り組んでいらっしゃっているわけでありますが、その資源回復計画の作成状況についてはどういう状況なのか、教えてください。
木下政府参考人 我が国周辺水域の水産資源でございますけれども、総じて低位あるいは減少傾向にあるというわけでございまして、私ども、水産資源の適正な管理が水産政策を進める上で重要な課題になってきているというふうに考えております。
 資源回復計画の策定状況でございますけれども、昨年度は十魚種五計画について資源回復計画の作成に着手をしたところでございます。既に本年四月、瀬戸内海におきますサワラ資源につきまして資源回復計画を策定し、公表したところでございます。
 このサワラ資源に続きまして、本年度は、太平洋北部の沖合性カレイ類、また伊勢湾のトラフグなどの小型底びき網漁業対象資源、それから日本海西部のアカガレイ等に係ります八魚種三計画につきましても原案の作成を終了している段階でございます。漁業者団体と最終的な調整を行い次第、順次公表したいというふうなところでございます。
 また、太平洋のマサバ資源でございますけれども、マサバの資源の状況、数年に一度小型魚が大量に発生するという特性を有しているわけでございます、その発生状況を見まして、マサバにつきましては具体的内容の詰めを行っていきたいというふうに考えております。
金子(恭)委員 今、作成状況についての御答弁があったわけでありますが、今お話しになられた以外で、沿岸のこれからそういう資源回復をしなければいけないような地域があるのか、調査を進めて今後さらにこれを追加していく必要があるのか、教えてください。
木下政府参考人 資源回復計画でございますけれども、先ほど御説明いたしました既に着手をしている十魚種五計画を含めまして、私ども、平成十六年度までを一応のめどにいたしまして、五十程度の候補魚種の中から、条件の整ったものから順次計画策定に着手をしていきたいというふうに考えております。
金子(恭)委員 資源回復計画というのは非常に重要なことでありますので、これを充実させていただきたいというふうに思います。人為的にできる資源の回復というのは、今長官の方からお答えいただきましたこの計画を進めていくことによって、かなり充実していくのではないかというふうに思うわけでございます。
 一方、今地球温暖化というのが叫ばれているわけでありますが、本当かどうかわかりませんが、これまでとれていた魚が水温が上がったためにとれなくなったとか、熱帯魚に似たようなのが九州の近海でとれたとか、何かそういううわさを耳にしたことがあるわけでありますが、地球温暖化というのが漁業に与える影響についてはどの程度考えていらっしゃるのか、教えていただきたいと思います。
木下政府参考人 地球温暖化と水産業との関連でございますけれども、地球温暖化が水温の上昇など海洋環境に影響を及ぼし得るというのが広く知られているところでございます。このような環境の変化が我が国周辺水域の資源にも影響を及ぼし得るというふうに指摘をされている方が研究者の中で多数いらっしゃるというのが現状でございます。
 具体的な影響でございますけれども、一つが、水産資源の分布なり回遊が大きく変化をする。二点目が、藻場の消長に影響し、生態系が変化をする。第三点目は、表層水、上の方の水でございますけれども、表層水が温かくなるために低層水とまじりにくくなるという点で、海域の生産力が低下するというようなことが指摘をされているわけでございます。
 具体的な魚種でございますけれども、最近分布が変化をいたしている魚種として、ゴマサバの太平洋系群、また、マダラの日本海系群などがございますけれども、これがどの程度地球温暖化が影響しているかどうかについては、さらに研究を進めていく必要があるというふうに考えております。
金子(恭)委員 今、長官の方から御答弁ありましたが、一つ一つの影響というのを聞いたときに、これが本当に現実のものになったときに、これは大変なことになるというふうに思います。そういう意味では、気温と比較して水温が一度上がると、これは魚種の分布、そういったものにかなり影響があるというふうに聞いております。
 そういう中で、今言われました学者の中、研究者の中でそういうことを言われる方がいらっしゃるということでありますが、せっかく資源回復計画を一生懸命やったとしても、温暖化が急激に進んでそれを上回るような勢いで生態系が変わってしまったときに、これは早く研究をして、早く取り組んでいくことが重要かというふうに思うわけであります。そういう意味では、今の取り組みについて、もっと具体的に、どういう危機感を持って取り組んでいらっしゃるのか、御答弁をお願いしたいと思います。
木下政府参考人 地球温暖化と水産業の関係について、私ども、非常に重大な関心を持って研究を進めているという状況でございます。
 具体的に申し上げますと、一つは、独立行政法人水産総合研究センターにおきまして、主としてTAC対象魚種の資源量の変動あるいは成長等に対しまして、水温なり海流の変化がどのように影響を与えるのかという点につきまして既に研究に着手しておりますし、また、植物プランクトンの増殖と海洋による二酸化炭素吸収機能の関係についての研究も推進をしております。
 本年は、地球温暖化が農林水産業に与える影響の評価あるいは対策技術についての開発ということで、農林水産省全体として着手したところでございます。この中で、水産分野でございますけれども、北太平洋におきます気候変動の海洋生態系への影響把握の一環といたしまして、地球温暖化が魚類のえさとなるプランクトンの生態系へ与える影響に関する研究に着手をしたところでございます。この研究につきまして、私ども、十八年度まで実施をし、きっちりとした知見を積み重ねていきたいというふうに考えております。
 今後とも、関係省庁とも協力しながら、国立試験研究機関あるいは独立行政法人等々、研究機関相互に連携をとり合いながら、この問題についての研究の促進に全力を挙げて進めていきたいというふうに考えております。
金子(恭)委員 これは、将来の漁業を考えたときに非常に大きな問題になる可能性もあるわけでありますから、水産庁としても、心してといいますか、真剣に取り組んでいただいて、もしそういう影響があるということであれば、その対策について万全の体制をしいていただきたいというふうに思います。
 続きまして、水産業協同組合法の改正に関連して質問させていただきます。
 今後の漁業政策を進める上で、国と漁業者が直接いろいろなつながりを持つということはできない状況の中で、国と現場の間に立つ漁業者の協同組織でございます漁協の役割というのが極めて重要になってくると思います。もちろん、今も重要であるわけでありますが、これからさらに重要になってくると思います。この点につきまして、大臣、どのようにお考えになっているか、御見解をお伺いいたします。
武部国務大臣 新たな水産基本法のもとでは、資源管理の推進、効率的かつ安定的な漁業経営の育成等に対しまして積極的な取り組みが必要ということで、それを前提に今般の水協法等の改正に及んだわけでございまして、この水協法等の改正は、漁協の事業として、資源管理、営漁指導の位置づけということを明確にしたところでございます。
 今、委員からもお話ありましたように、法人もありますが、多くは個人でやっているわけでございます。個人個人の漁業者が、実際に経営能力からすべての問題について熟知していく、あるいは新たな技術を学んで対応していくということは当然のことでありますけれども、しかし、今日のように情報や知識が非常に多くなっているときには、やはり漁組の存在、特に一人一人の漁業者を補佐するといいますか、サポートするということは非常に重要になってまいります。
 同時に、資源管理ということをもっと積極的にやっていかなきゃなりません。それは、一人一人でできるわけじゃありませんで、今休むと言ったらみんな一緒に休む、そういう一緒になって対応していくということが必要だと思いまして、そういう意味では、こういったことを明確化した水協法の改正ということで、これまで以上に漁業、漁村における中核的な組織としての役割が発揮されるんじゃないか、このように期待を込めて法案提出をさせていただいているわけでございます。
金子(恭)委員 今回の水協法改正におきまして、私も勉強不足であったわけですが、意外だったのは、法律の中に、改正前は六番目に位置づけをされていた水産資源の管理を一番目に、また、十番目に位置づけをされていた営漁指導が二番目の事業として位置づけられているわけでありますが、この理由をお聞かせください。
木下政府参考人 昨年制定をいたしました水産基本法でございますけれども、水産物の安定供給、それから水産業の健全な発展という二つの基本理念を掲げているわけでございますけれども、このような基本理念を実現していくためには、現場におきます資源管理の積極的推進、あるいは効率的な安定的漁業経営の育成が最も重要な課題であるというふうに認識をしているわけでございます。
 このような課題に対しまして、漁業あるいは漁村におきます中核的組織でございます漁協についても、積極的に取り組んでいくというふうに考えているところでございます。
 したがいまして、従来、委員御指摘のとおり、漁協の資源管理事業は水協法上六番目の事業の中に規定をされているというわけでございますけれども、その重要性にかんがみまして、これをまず独立をさせる、その上で漁協が行う事業の第一番目に明確に位置づけをしたという点でございます。
 また、漁協の営漁指導事業につきましても、非常に重要性があるというふうに私ども考えておりまして、漁協が行う事業の第二番目に位置づけをしたということでございます。
金子(恭)委員 信用事業の実施基盤強化というのは重要なことであるわけでありますが、規模の小さな漁協にとっては、常勤理事の設置はなかなか困難ではないかと思うわけでございます。信用事業を行う漁協が無理なく常勤理事を設置するために、水産庁としてはどのように指導していかれるのか、教えてください。
木下政府参考人 信用事業をめぐります状況の変化でございますけれども、委員御案内のとおり、四月一日からペイオフの解禁等金融情勢が大きく変わっているわけでございます。私どもも、貯金者からの信頼の確保は信用事業を行う上で不可欠の条件ということで、漁協につきましても貯金者の信頼にこたえ得る最低限の業務執行体制を整備しておく必要があるということで、今回の法改正を提案しているわけでございます。
 今回の信用事業を行う組合でございますけれども、来年一月一日から施行を予定いたしておりますけれども、このような常勤理事の問題、直ちには対応は困難というふうに考えておりますので、組合の負担にも配慮して、三年間の猶予措置を設けたところでございます。
 私どもも、さらに、来年一月一日から三年間の中で、個々の現場の実情に即しながら組合の合併を促進する、あるいは零細でどうしようもないところは県の信漁連の方に信用事業を譲渡する、いろいろな道が考えられると思いますけれども、現場現場の実態に即しまして指導をしていきたいというふうに考えております。
金子(恭)委員 続きまして、漁業災害補償法改正に関連しまして質問させていただきます。
 漁災法によります漁業共済制度というのは、リスクの大きな漁業を営む上で、経営安定を図る災害施策としまして大変に重要な制度であると思いますと同時に、共済掛金が高い、加入が伸び悩んでいるとも聞いております。
 まず初めに、大臣に、今回の漁災法改正のポイントをどのように考えているのか、お答えいただきたいと思います。
宮腰大臣政務官 漁災法改正のポイントでございますが、まず第一に、漁業共済事業の見直しといたしまして、漁業者ニーズにこたえた幅広いメニューの創設等を措置すること、二つには、加入率が約四割にとどまっている漁業共済への加入促進を図り、漁業経営の一層の安定に寄与すること、三つには、組織再編として、全国団体の漁業共済組合連合会と県団体の漁業共済組合との合併の制度を創設すること、この三点がポイントでございます。
 なお、法改正とあわせまして、養殖共済の対象魚種にシマアジ、ヒラマサ等を追加すること、それから、掛金を抑えつつ大災害に手厚くてん補する特約の創設をすること、これは例えば、有明海のノリ漁業等もこの特約については対象になるということでございます。三つには、義務加入制度の運用を緩和の方向で見直しをすること等についても措置する予定としておりまして、これらの改正により、漁業災害補償制度全体の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
金子(恭)委員 今回の漁獲共済において、加入要件の緩和ということで、これまで別々だった加入区分の十トン未満、これは家族経営が主であると聞いておりますが、未満の漁船漁業と十トン以上の漁船漁業を統合するということが法案に書いてあるわけでありますが、この統合というのがどのような効果とメリットを持っているのか、御答弁をお願いします。
木下政府参考人 現行の漁獲共済でございますけれども、十トン未満の加入区分の場合、零細あるいは小規模経営でございまして、なかなか漁獲金額の把握が難しいという点がございます。このような点から、現在、このような十トン未満の加入の場合には、契約成立の条件といたしまして、加入区内の関係漁業者の二分の一以上の申し込みを必要とする、また、加入者が営むすべての漁業種類を一括して加入しなきゃならないというような加入制限を課しているわけでございます。
 ただ、このような、先ほど申し上げた小規模経営で漁獲金額の把握がなかなか困難だというような契約につきましては、近年、漁協の電算化の進展等によりまして、個人ごとの水揚げ金額の把握が可能となったというところでございます。したがいまして、十トン未満につきまして、関係漁業者の二分の一以上の加入の申し込みだとか、あるいは漁業種類を一括して加入しなきゃならないというような加入区分を撤廃するというわけでございます。
 これによりまして、十トン未満の漁船漁業でございましても、個々の漁業者の漁業実態なり経営状況を踏まえ、共済ニーズに合わせた柔軟な加入が可能となるというふうに考えております。
 また、統合によりまして、漁業種類別の共済母集団が拡大をするという点でございまして、ある意味では、共済母集団を拡大することによりまして共済のリスクが分散するということが見込まれるわけでございます。長期的には共済収支が安定し、掛金水準も低減するというメリットも考えられるというふうに期待をいたしております。
金子(恭)委員 昨年の基本法の審議のときも質問させていただきまして、漁業共済の加入率を上げる必要があるということを指摘したわけでありますが、漁業共済にはできるだけ多くの漁業者が積極的に加入をし、そのおかげで漁業経営の安定において大きな役割を果たしていけるものだと思っております。
 そういう中で、民間の損害保険、自動車保険と比較して高過ぎるという人もあるわけでありますが、根本が違うわけでありますから、これを比較するのもどうかと思いますが、こうしたことも踏まえながら加入率の向上をどうやって図っていくか、どういう努力をしていくつもりか、長官の方から御答弁をお願いします。
木下政府参考人 漁業共済への加入でございますけれども、近年伸び悩み傾向にございます。漁業共済全体での加入率が平成十一年度で実績四三%というような状況でございます。
 私ども今回の改正に当たりまして、できるだけ多くの漁業者が共済に加入していただきたい。そのためには、一つは、漁業者のニーズに合わせた共済制度をつくるということが基本だろうというふうに考えまして、一つは、掛金水準を抑えた新たなてん補方式の導入だとか、養殖共済におきます病害不てん補特約の創設等々、実情に即した制度改正に心がけたところでございます。
 また、このような改正とあわせまして、私ども、現在の漁業共済の仕組みが非常に複雑で、漁業者の方々がなかなかわかりづらいという点も指摘をされておりますので、私どもこのような制度改正を受けまして、漁業者に向け、できるだけわかりやすくPRしていきたいというふうに考えております。
金子(恭)委員 次に、遊漁に関連して質問をさせていただきます。
 一見関係ないような感じにも見えるわけでありますが、今回の水協法改正の中で資源管理規程の対象に遊漁船業を追加する理由を教えてください。
宮腰大臣政務官 海洋性レクリエーション活動が活発化する中で、遊漁船業者を利用する遊漁者による水産動植物の採捕は、海域や魚種によっては漁業者の漁獲量を超える実態も生じておりまして、資源管理上無視できない状況になっております。
 一方、遊漁船業につきましては、約八割が漁業との兼業者となっておりますものの、現在は漁協として禁漁期間、禁漁区域、体長制限などを規定する資源管理規程を定めましても、組合員が遊漁船業を営む場合に資源管理規程の対象とされていないために、漁協全体としての実効性の確保に支障を来すことになるわけでございます。
 こうした状況を踏まえまして、資源管理規程の対象として組合員が営む遊漁船業を追加いたしまして、漁協による資源管理の実効性を高めることとしたものでございます。
金子(恭)委員 まじめに遊漁船業を営んでいる方が大多数だと思いますが、一部に今政務官の方からお話がありましたいろいろな問題が起きているわけでございます。
 そういう中で、安全面とか漁場利用面で悪質な事業者が引き続き営業を継続することができるというのが今までの問題であったわけであります。話によると、遊漁船で禁漁区に行って、そこで釣りをした、そのとき罰せられるのは釣り客である、釣り客が主犯で、そこまで案内した業者の方が共犯というような形で、何ともおかしなことになっているなというふうに思うわけであります。
 そういう意味では、きちんとそういったものは取り締まりをしていただきたいと思うわけでありますが、今回の改正でそうした課題に具体的にどう対応していこうとしているのか、御答弁をお願いします。
木下政府参考人 遊漁船業につきましては、委員御指摘のような状況にあるというのが一般の共通認識だろうというふうに思っております。このような状況を踏まえまして、私ども、遊漁船業につきまして、現在の届け出制から登録制へ移行したいというのが一点でございます。
 このような登録制へ移行することによりまして、船舶安全法なり漁業法で罰金以上の刑に処せられた者は登録を拒否できるということでございますし、また、登録後におきましても、悪質な遊漁船業者に対しまして事業停止あるいは登録の取り消しが行われるというふうなことで、従前に増しまして、はるかに遊漁船業者に対する指導監督がしやすくなるというふうに考えております。
 このような制度改正によりまして、私ども、遊漁船業の適正化に今後とも努力していきたいというふうに考えております。
金子(恭)委員 それでは、時間が参りましたので、最後の質問を大臣にさせていただきたいと思います。
 今回の改正におきましてこの法律を実効あるものにするためには、法律を決めた以上はきちんと監視をする体制というのが必要だと思います。JAS法もそうだったと思いますけれども、人は皆生まれながらにして善人であると性善説に基づいてやっていく中でそういう抜け道が出てきて、まじめにやっている人たちがばかを見るみたいなことではいけないと思います。
 そういう意味では、これからこの法律を施行するに当たって、監視体制、取り締まり体制をどうやっていこうとお考えになられているのか、大臣に御答弁をいただいて質問を終わらせていただきます。
武部国務大臣 委員御指摘のとおり、今回の法改正を実効あらしめるためには、都道府県とも連携をとりまして、遊漁船業者に対しては的確な指導を行うことが必要だ、このように考えております。
 このために、都道府県の水産部局に対しまして、遊漁船業者に対して業務に関して報告を求めるということ、あるいは立入検査を適正に実施するというようなことを指導してまいりたい、このように思います。また、海上保安庁及び警察関係者との連携も強化する必要がございます。遊漁船業者の違反行為に対する監視や取り締まりの強化をしっかり図ってまいりたい、かように考えております。
金子(恭)委員 ありがとうございました。質問を終わります。
鉢呂委員長 これにて金子恭之君の質疑は終了いたしました。
 次に、高木毅君。
高木(毅)委員 自由民主党の高木毅でございます。
 本日は、昨年の六月二十二日に成立をいたしました水産基本法関連の水産四法案の審議について御質問をさせていただきますが、私もその前に一つ大臣にお聞きしたいというふうに思います。
 今、国民が最も関心を持っていると言っていいかというふうに思いますいわゆる食の安全の問題でございますが、私は、以前よりずっと、食の安全は何をおいても国民生活の最も大切なものだというふうに認識をしてきました。
 そしてまた、消費者の皆さんに安全かつ安心できる食品を提供するということが、生産者である農家や漁業者の経営安定につながるんだというふうに確信をいたしておりますし、さきにBSE関連でここで質問に立たせていただきましたけれども、そのときもそのような視点で質問をさせていただいたつもりでございます。
 先日も本委員会でJAS法の改正案が審議されまして、本院を通過したわけでございますが、これも、食の安全をより確かにする有効なものとして大いに私は期待をしているところでございます。
 しかし、それにしても、もう昨今、食品のラベル表示に全く信憑性がないという、非常にゆゆしき問題が起こっているわけでございます。最初は肉類から始まったかと思いますが、畑作物、あるいは、本法案にも、きょうの審議にも関係するかと思いますが、水産物に至るまで、その表示の不当性が指摘をされているわけでございます。
 なぜ、このような不当表示がはんらんすることになったのか。生産者や流通業者といった供給側が利益に走ってしまう、いわゆる倫理観の欠如ということも当然あるんでしょうけれども、やはり行政側の食品に対する安全対策というものが著しく立ちおくれていたのではないかと言わざるを得ないわけでございます。
 養殖魚には抗生物質やワクチンが投与されているということでもございますし、消費者である私たちは今後どのようにして食の安全に関する情報を得ればいいのか、国民の食品への不安感をぬぐい去るために早急な対応が必要であるわけです。
 大臣からもたびたび食の安全に対する御意見、お話というものはお聞きいたしておりますが、ここで改めて、大臣の食の安全に対する現状の認識というものと、あわせて今後の対応への決意というものをお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
武部国務大臣 委員御指摘のとおりだ、私はかように思います。私ども、BSE発生あるいは偽装表示の問題を契機に、農林水産省としても消費者サイドに軸足を移して、水産物の品質の確保や水産物表示の適正化等、安全性確保に向けた積極的な取り組みが必要だという決意を新たにして臨んでいるわけでございます。
 消費者に軸足をということが、生産者サイドからはまだ正しく理解されていない一面がありまして、残念なんですけれども、消費者に歓迎されないものを幾ら供給しても、生産者は成り立っていきません。また、流通業者もしかりだ、こう思います。
 私は、御案内のとおり、四月十一日に食と農の再生プランというものを発表いたしまして、ここではもう明確に、消費者保護第一の食の安全と安心のための法整備、あるいは行政組織の見直しということを申し上げまして、今関係閣僚会議でこういったことについての検討もしているわけでございます。当然、農林水産省の内部組織、業務も、この食の安全、安心確保のための見直しということも視野に入れてこれから検討を進めていきたい、このように思います。
 最初は、農場から食卓へ、あるいは漁場から食卓へという用語を使っておりまして、ある人に指摘されまして、まだ大臣、意欲はわからないわけではないけれども、こういうこと自体が間違っていますよと言われまして、やはりトレーサビリティーといいますか、トレースする場合には、食卓から漁場へ、食卓から農場へという考え方に一つ一つきちっと改めていく必要があると考えているわけでございます。
 食に関するリスクについては、徹底した調査と情報開示ということが必要でありますし、このリスクにみんなで立ち向かっていくという意味で、私ども、食の安全運動国民会議ということも提唱しているわけでございます。
 この中では何をするかということは、先ほど他の委員に対してもお話しいたしましたが、やはり離乳食を与えるところからの食育ということと、それから、いろいろな方々、関係者がこぞって立ち向かっていく、賢く立ち向かっていくリスクコミュニケーションということが必要なんだろうと思います。JAS法の改正もそういう観点で、この信頼回復に向けた一助になればと思って提案をさせていただきました。
 今後、国民の皆様方からの御意見を踏まえて、厚生労働省や都道府県とも連携を密にいたしまして、食の安全に関する情報が消費者の方々に的確に提供され、そして、安全で信頼される食品が供給できるような施策の具体化に努めてまいりたい。特効薬といいますか、これ一本でということはなかなか難しいと思います。いろいろな角度からこの問題に取り組んでいく必要がある、私はこう思っているわけでございます。
 なお、抗生物質やワクチンについてでございますが、薬事法に基づき製造の承認が与えられ、または使用基準が設定されているわけでありますけれども、これらの適正使用については、各都道府県を通じ、出荷時の残留検査の実施を含めまして指導の徹底を図っているところでございます。
 願わくば抗生物質だとかワクチンなんか使わなくてもいいような漁業や水産にしたいものだ、私はこう思いますけれども、これを使用する際でも適正使用ということについて指導の徹底をしていかなきゃならない、かような認識でございます。
高木(毅)委員 そうした大臣のお考え方が生産者の方に御理解いただけるように、ぜひ今後とも御指導をお願いしたいというふうに思います。
 それでは、法案審議に入りたいと思いますが、まず、漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。
 改正の一つに、漁業経営改善計画をつくって実行するという制度があります。その計画を認定する基準というものをどこに置くのか。例えば、規模や経営の安定度などをどのように判断するのかということについてお聞きをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
木下政府参考人 改正後の漁業経営改善制度でございますけれども、この計画の中で、漁業経営の改善の目標、それから改善によりまして経営の向上の程度を示す指標、それから漁業経営の改善の内容あるいは実施の時期、また経営改善を実施するに必要な資金の額及びその調達方法を記載することといたしております。
 農林水産大臣または都道府県知事が、それぞれの計画認定の申請があった場合に、改善計画が農林水産大臣の定める漁業経営の改善に関する指針に照らして適切であり、また漁業経営の改善を確実に遂行するために適切なものである場合に認定をしたいというふうに考えております。
 具体的な漁業経営の改善に関する指針でございますけれども、法成立後、水産政策審議会の意見を聞いて具体的に定めたいというふうに考えているわけでございますけれども、農林水産省といたしましては、経営改善意欲のある漁業者の取り組みをできるだけ支援するという本制度の趣旨に基づきまして、具体的な経営向上の数値目標を含めて基準を定めていきたいというふうに考えております。
高木(毅)委員 どうもありがとうございました。
 それでは次に、水産業協同組合法等の一部を改正する法律案についてお伺いをいたします。
 漁協が現在信用事業を行っております。そして、今回の改正案では、出資金額を二千万円から一億円に引き上げるという案でございますが、少し極端な言い回しかもしれませんが、私は、この際、出資金額のいかんによらず、組合が信用事業を行う必要はないのではないかというふうに実は思っております。
 すなわち、信用事業というのは各都道府県の漁連に任せてもいいのではないかというふうにも思っているのでありますけれども、これはいかがでございましょうか。
木下政府参考人 漁協系統の信用事業でございますけれども、一漁協当たりの平均貯金残高が約十七億円。また、従業員数も、専任でございますけれども二人にすぎないということで、他業態の金融機関に比べますと非常に脆弱であるというふうに認識をいたしております。
 このような事情から、漁協系統におきましては、合併あるいは信用事業の譲渡等を通じまして都道府県単位で一つの信用事業として機能する、いわゆる一県一信用事業統合体を構築するということで、現在までその運動を続けてきているという状況でございます。
 今回の水協法の改正におきましても、漁協系統の信用事業の確保を図るため、現在自主ルールとして定めて運営しているのをまさに法律の中に取り込むわけでございますけれども、このような中でも、基本的には一県一信用事業統合体を目指していろいろな対策を講じていきたいというふうに考えております。
高木(毅)委員 ということは、この一億円に出資金額を引き上げるということは、その一県一漁協化していく経過措置というふうな考え方でよろしいんでしょうか。
木下政府参考人 今回の制度改正の中で、信用事業の出資金の規制等々につきましては、来年一月一日から三年間の猶予措置を設けているというところでございます。
 私どもも先ほど御説明しましたように、基本的な方向としては、一県一信用事業統合体ということで進んでいるわけでございますけれども、地域によりましては、それぞれの漁協で独立をして今後ともやっていきたいというところもあることも事実でございます。
 私ども、そういう意味で、今回基本的な方向としてはそういう方向でございますけれども、それぞれ地域の中で漁協として信用事業をやる場合には、先ほど来申し上げているような信用事業としての基準をクリアしていただきたい、そのための時間的猶予措置としては三年間を考えているということでございます。
高木(毅)委員 それでは、この一億円という金額の根拠というものはどこにあるのか、お尋ねしたいと思います。
木下政府参考人 最低出資金制度を一億円に設けた点でございますけれども、金融機関の経営の健全性を確保するため、各金融機関に共通に措置をされている規制でございます。農協を含めまして、他の協同組織金融機関がおおむね一億円とされているということを踏まえて今回の提案とさせていただいたところでございます。
高木(毅)委員 それでは、この信用事業の実施基盤の強化という点で、今回常勤理事を一人以上設置するということを義務づけるわけでありますけれども、これはかえって人件費などの経費がかさんで経営の悪化につながるんじゃないかというような心配もあろうかと思いますが、いかがでございましょうか。
木下政府参考人 確かに委員御指摘のとおり、信用事業を行う場合に信用事業担当の常勤理事一名を義務づけているわけでございますけれども、それぞれの漁協が地域の金融機関として今後も存続をするというためには、地域の皆さん方から、金融機関としてのやはり信頼性の確保が不可欠だろうというふうに考えております。
 したがいまして、今回の制度改正の中で、先ほど来申し上げていますように、信用事業を行う場合の最低限の信頼確保措置として、漁協の信用事業担当の理事一名を義務づけたところでございます。この措置につきましても三年間の猶予措置を設けたところでございまして、このような中で、組合の事業体制をできるだけ合理化する中で対応していただくというのが基本的な方向でなかろうかというふうに考えております。
高木(毅)委員 続いて、漁業災害補償法改正については、私も質問しようと思っておりましたけれども、先ほど金子委員が質問をしまして、長官非常に詳しくお答えをいただきましたので、この際割愛をさせていただきますが、非常に加入率が低いというふうに私も判断しておりますし、先ほどの答弁もそうだったかと思います。今後、加入をしっかりと推進するように行政側の対応をぜひお願いしたいというふうに思います。
 次に、遊漁船業の適正化に関する法律の一部改正についてお伺いをしたいというふうに思います。
 言うまでもなく、我が国は海洋国家でありまして、釣り人口も多く、釣りもレジャー産業の一つとして確立されているというふうに思います。
 また、私の地元であります福井県、とりわけ私の地元は大変豊かな海岸線に恵まれておりまして、近隣県、岐阜県、愛知県、あるいはまた京都府、大阪府あたりから多くの釣り客に来ていただいております。
 特に週末の深夜ぐらいになりますと、国道沿いのえさ屋さんといいますか釣り具屋さんあたりに他県ナンバーの車がたくさん駐車をしていただいておりまして、少なからず我が地方の経済にも寄与していただいている、経済効果も多くあるというふうに感謝をしているところでございます。
 しかし、そうした中にあって、今もずっと話が出ておりますけれども、事故やあるいはまた採捕違反というものがかなり多くて、まじめな漁業者とのトラブルもあるというふうにもお聞きをしているところでございます。
 このような事故や違反に対しまして、遊漁船の登録制や業務主任者を置くということでどのような期待ができるのかということについて、改めてお聞きをしたいというふうに思います。
木下政府参考人 まず、今回の制度改正によりまして、一つ、内容でございますけれども、都道府県知事への届け出制から登録制へ移行する。もう一つは、出航の中止基準などを内容といたします業務規程の届け出、それから、漁場での遊漁船特有の事故を防止するための講習を受けた遊漁船業務主任者の選任を義務づけたところでございます。
 このような点で、一つは海難事故の減少が期待されるところでございます。私どもの調査によりますと、遊漁船業の事故が起こっている中で、遊漁船特有の原因で起こっている割合が五割程度ございます。今回のこのような措置によりまして、相当程度の海難事故の減少が期待をされるというふうに考えております。
 もう一点は、漁場利用面でございます。近年、遊漁が非常に各地で盛んになってきているわけでございまして、その中で、やはり既存の漁業者と遊漁者の間での漁場利用をめぐるトラブルがあるわけでございますけれども、今回の登録制の実施、あるいは採捕規制に沿った事業方法を内容といたします業務規程の届け出、また、規制内容を熟知し、利用者に指導等を行います業務主任者の選任等を義務づけたわけでございますので、このような遊漁に伴います漁場利用のトラブルの減少につながるというふうに期待をしているところでございます。
高木(毅)委員 どうもありがとうございました。
 実は私、今回ここで質問させていただくということで、地元の漁業関係者の方にお話をちょっとお聞きしてきたわけでありますけれども、その中で、二つほど印象に残ったことがありましたので、ここで紹介をさせていただきまして、御所見をいただきたいというふうに思うわけでありますけれども、まず一つ目はこういうことでございました。
 全漁連や県漁連は、水産業の育成、向上に向け指導するのが本筋である。しかし、最近はどうも、ちょっと言葉は語弊がありますけれども、手数料稼ぎの商社的な団体となってしまっている。これは私じゃございません、漁業関係者の方がおっしゃっていることでございますが、手数料稼ぎの商社的な団体となってしまっている。
 さらに、市場外の水産物流通が盛んとなって、漁連というものの存在意義が希薄になってしまった。今、その機能が問われている。もっと機能強化を図られるような根本的な構造改革が必要であるという御意見でございました。
 漁業関係者の方がこうした意見をおっしゃったわけでございますけれども、こういったことに対して、すなわち各都道府県漁連の実態についてどのように思われるか、ぜひ、できることなら大臣の御見解をお伺いしたいというふうに思います。
武部国務大臣 私は今、高木先生が地元でお聞きになったことに対しましては、これは謙虚に受けとめるべきだ、このように思います。指導すべき水産庁は、このことをきちっと厳正に受けとめて対処しなきゃならぬ、そういう話は私自身も間々耳にすることでございます。
 初めに全漁連だとか信連ありきじゃないわけであります。組織を維持するためにどうするかということじゃありませんで、この組織は、生産者でありますとか漁民でありますとか、そういった方々に対して、どのようにサポートし、組織としての機能を発揮していくかということでありますから、私は、徹底した構造改革というものをまずやっていただかなければならない、このように思うわけでございます。
 しかし県漁連は、漁協の経済事業の補完でありますとか経営指導等、非常に高度な業務が多くなっておりますので、そういったことを通じて重要な役割を担っているということは言うまでもありません。
 したがいまして、漁協の再編にあわせて県漁連の再編もやっていかなきゃならぬだろう、こう思いますし、系統全体の経済事業の規模が縮小する中で、県漁連の見直しということは早急に進めていく必要性がある、このように思っております。
 国としても、そういった観点に立って、経済事業等の実施体制の見直しによりまして、漁協系統の再編を適切に指導していく必要がある、このように考えております。
高木(毅)委員 大臣、ありがとうございました。
 それからもう一つ、大臣に先ほどの続きでありますけれども、地元の方からお聞きした話をしたいというふうに思います。
 二つ目としては、水産資源を豊かにするため、種苗放流に莫大なるお金をかけている。しかし、実効性が上がっていない。それより、いわゆる魚類の揺りかごと言われているいそ根の復元を図ることが急務ではないかという意見でございました。
 今回の水産四法案の中で共通していることの一つに、水産資源の確保あるいは管理等というものがあるわけでございます。私は、この漁業者の言葉に一つの真実があるというふうに思っております。大臣もよく、森と海は命のふるさと、あるいはまた、森は海の恋人だというようなことをおっしゃっているわけでございます。まさに私も同感でございます。いそ根の復元ということについて、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 質問を割愛した関係で時間はまだ少しございますので、大臣、思い切り、たっぷりとその大臣の思いをこの場で御披露いただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
武部国務大臣 平成十四年度から、新規の事業については、公共事業を環境創造型あるいは自然再生型の事業ということに、農林水産省は抜本的に見直しを図るということに踏み出しているわけでございます。
 漁業は海洋の自然環境に大きく依存している産業でありますし、良好な漁場環境を確保するため、国民全体の理解と協力を得て、森、川、海を通じた幅広い環境保全の取り組みを推進していく必要がある、私はこのように考えているわけでございます。
 そもそも、やはり私の地元でも、古老といいますか、昔から古くから漁業を営んでいる人からオホーツクの環境などの話を聞きますと、自然の理にかなっているなという感じを強く受けます。このことは、我々謙虚にこれまでのことを反省する必要があるのじゃないのかな、このように思います。
 国としても、水産動植物をはぐくむ藻場、干潟の造成等による豊かな海の森づくり、あるいは、海洋性生物の生息、生育の場として重要ないそ根や天然礁におけるごみの除去、一般市民等が行う海浜清掃活動、こういったことについても、これは本当は、それぞれの地域の皆さん方がNPO等を組織してやっていただくというのが一番いいのだろうと思うんです。国民合意のもとに、みんなで豊かな海を守っていこう、つくっていこうということが必要だと思います。
 漁業をやっている人というのは、私は、一番自然の摂理というのを知っているんじゃないか、このように思います。この日曜日にも、私の地元の常呂漁協の皆さん方が、植林をやる、植樹祭をやるのに、漁民が先頭になって、お金も出してやっているんですね。これは、やはり山が荒れてくると、台風が来ると大水が海に出てくる、川も汚れる、河川環境も悪くなる、海が汚れれば天与の資源が枯渇していくということで、もう行動を起こしているわけでございます。
 そういう意味で、漁場環境保全総合美化推進事業などを実施しておりますけれども、漁業者のみならず、我々、国民運動として、豊かな海づくりということは豊かな森づくり、そういうふうな考え方でこういった事業を拡大していきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
 今後とも、やはり資源を守り、資源を育て、資源に見合った恩恵を受けていくということを基本にして、良好な漁場環境の保全を図ってまいりたい。漁港漁場整備法、昨年の通常国会で議員立法で成立いたしました。そういった考え方も今私が申し上げましたような背景に基づくものであるということを御理解いただきたい、かように思います。
高木(毅)委員 どうもありがとうございました。
 まさに四方八方を海に囲まれたこの日本の国民として、いつまでもおいしくて、しかも安全な水産物、お魚が食べられるように、大臣を初め関係の皆様方の今後ともの御奮闘を心よりお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて高木毅君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時五分開議
佐藤(謙)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。後藤田正純君。
後藤田委員 久しぶりに大臣に質問させていただくのですが、去年の九月、BSE発生後に初めて質問をさせていただきまして、そのときに三つ、大きなポイントとして、いわゆる行政の責任、そしてもう一つは、いわゆる縦割り行政の問題、そして最後に、私は、これはBSE以外、すべての農産物について調べなくてはいけない、その必要性を申し上げたわけでございます。その当時、大臣は御出席にならずに、副大臣が出席されていたと思うんですが、それ以来九カ月たちまして、BSEの対策がこの前、数カ月前にようやくでき上がって、そしていわゆる縦割り行政の問題も指摘があって、これから対策が実行されていくんだろうと思います。それと同時に、ほかの農産物についても調べていただいていると思うんです。
 まず大臣、私が九カ月前にその問題を指摘させていただいたことは幹部の方からちゃんとお耳に入っていたんでしょうか、教えてください。
武部国務大臣 委員会の審議の状況は、全部精読はいたしませんけれども、後藤田先生はもとより、皆さん方の質疑の状況、議事録は、私ども、目を通しております。
後藤田委員 ありがとうございます。
 まず最初に、実は、先日採決されました農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律、これちょっと、その当時、数日前ですか、この委員会でどういう議論があったか。ちょっと細かいことなんですけれども、今回、水産四法ということで、水産業のことを議論しているわけですが、農林物資というのは、僕、水というのは何で入っていないのかなと。
 私、農林水産六法を読みますと、農林物資の定義に、水産物の加工品及び原料と書いてあるんですが、これは農林水産省の名称からしてもそうですね。昭和何年ですかに変わって、農林水産というふうになった。今回、また農林物資という表現をしている。ここのところというのは、これは水産関係者は非常に悲しいんじゃないかなと。
 これについても、何か細かい議論でございますけれども、しかし、水産関係者にとりますと、いわゆる定義は中身に入っているけれども表に出ていないというのもすごく寂しい話で、その点について、大臣、水産関係者にはどういうふうに御説明されるか、そこら辺、ちょっと教えてください。
武部国務大臣 いや、それは私もよく気がついていなかったことですね。
 役所の呼称についても、昔は農林省と言って、今は農林水産省と。今、通称は農水省、こう言うんですね。林業関係の人は寂しい思いをしているんじゃないのかな、こう思います。
 今後どうするんだというような話になりますと、ヨーロッパなんかは環境・食料・農村地域省と長ったらしいんですけれども、しかし、この間ちょっと聞いたら、四文字以上はだめなんだと。そういうような決まりがあるかどうかわかりませんけれども、だから、国土交通省とか文部科学省とか、農林水産省も四文字なんですね、それから厚生労働省とかですね。このことは、私、細かくこだわる必要ない、やはりきちっと表音、表意が一致する方が適切なんだろう、こう思います。
 今の委員の御指摘については、なぜ水が入っていないかということについては、私勉強しておりませんので、これは事務当局に答弁させたいと思います。
後藤田委員 大臣も御理解をいただいたので、大変細かいかもしれませんが、せっかく農林物資のJAS法の議論をした後にこの水産関係をやる上で、私はどうも農林物資という表現が気に食わないなと思いましたので、また、幹部、当局の方々と御検討をいただきたい、そして、水産関係者に誇りをまた取り戻していただくような、そういう表現にしていただきたいと思います。
 それでは、水産四法案関連ということで、まず、現状の日本を取り巻く海洋汚染の状況を水産庁として今どのように考えていらっしゃるのか。つまり、ダイオキシンを初めとしたいろいろな環境汚染で海が汚れているのではないかというようなお話があるのですが、その点についての現状のとらえ方、これについて教えていただきたいと思います。
木下政府参考人 海は水の最終到達点ということでございまして、いわば陸域からの負荷を一手に引き受けているということでございます。このため、ダイオキシン等の有害物質によります汚染あるいは生活排水等による陸域からの汚濁物質の流入、また、水産生物の生息あるいは生育の場である藻場、干潟の減少等の問題が生じているわけでございます。
 今どの程度の状況かという点でございますけれども、私ども環境省が出しております環境白書によりますと、海洋環境の状況、水質なり底質という点につきますと、近年、地域によって相当差はあるけれども、総じて大きな変化は認められないということで承知をいたしております。
 私ども、ダイオキシンの状況について把握したところを御紹介いたしますと、公共用水域での全国平均がリッター当たり〇・二四ピコグラムというのが十一年度の平均でございますけれども、この数値、十年度に比べまして、測定地域が違うということで単純な比較は非常に難しいというふうに思いますけれども、十年度はリッター当たり〇・四〇ピコグラムというような状況で、総じて横ばいで推移をしているのじゃないかなというふうに認識をいたしております。
後藤田委員 ということは、持続的な水産業もしくは水産資源を守るという水産基本法の基本の中で、今のお話は、環境白書によると変化がない、海洋汚染は大して悪化はしていないということでよろしいんですね。
 それと同時に、しかし、私が聞く範囲によりますと、水産庁さんは、ある程度一定の海洋汚染を考えた中で、陸上の養殖に取り組んでいる。もしくは、民間でも、ゼネコンさんを初め、水処理の会社も含めて、循環型水槽だとか、いわゆるバイオ技術を使ったノンポリューションの養殖、そんな取り組みを一方でしているやに聞いているのですが、それはやはり海洋汚染等々がある程度悪化しているからなのではないんでしょうか。それとも、乱獲だとかその他の要因でそういうことをされているのでしょうか。ちょっとその点、もう一回教えてください。
木下政府参考人 先ほど私が申し上げたのは、全体としてほぼ横ばいであるということを申し上げましたけれども、現在の状況が水産資源という点から見て十分な状況であるかという点については、やはり今後ともそれを改善していく必要があるだろうというふうに認識をしているわけでございます。
 私ども、そういう観点から、まさに水産動植物の繁殖にとって重要な藻場あるいは干潟につきましても、保護水面の指定等によりまして保護をするとともに、本年からスタートいたしました漁港漁場整備事業等におきましても、環境との調和を目指した新しい公共事業を実施しているところでございますし、これまでも、森、川、海を通じました川上から川下に至る幅広い環境保全の取り組みを今後とも推進していく必要があるだろうというふうに考えております。
後藤田委員 済みません、最初の、環境白書による、大して海洋汚染の変化がないということと、ちょっとだんだん何かニュアンスが私わからなくなってきたのですけれども、例えば、海上養殖における、えさを使って、そのえさが海底に沈んで、それによってまた海洋汚染が発生しているなんという例はたしか全国であったように思います。そして同時に、これは教えてほしいのですが、藻場の管理ということですけれども、では、過去十年とか過去五十年の間で藻場がどのように変化したかというのは、どんな書類を見たらいいのでしょうか。そういうデータはちゃんと管理して、それに対策は打っているのでしょうか、教えてください。
木下政府参考人 藻場あるいは干潟の面積の推移でございますけれども、残存面積、藻場、干潟でございますけれども、藻場につきましては現在二十万一千ヘクタール、また干潟につきましては五万一千ヘクタールということでございます。これにつきましては、平成三年という環境庁の調査でございます。
 前回調査というのは、若干古うございますけれども、一九七八年から比較いたしますと、それぞれ、藻場につきますと六千四百ヘクタール程度、また干潟につきましては四千ヘクタール弱の減少が見られるということでございます。
後藤田委員 今、平成三年のデータですけれども、平成十三年、十二年、最近のデータはいかがですか。変化がどのぐらいあったかという認識が、なくなったのかどうかということを教えてくれれば、数字は別に結構ですから。
木下政府参考人 現在、私ども、取りまとめ中でございますけれども、基本的には減少をし続けているんだろうというふうに認識をいたしております。
後藤田委員 ということは、結局、今、最後に長官が答弁された、藻場が減少していますよということと、最初の、環境白書では余り海洋汚染の変化がないというのは、その整合性はどう考えればいいのですか。私の理解が悪いのか、わからないのですけれども。
 先ほどの、変化がないと言ったのはどういう意味で言ったのでしょうか。私は、ダイオキシンを初めとした全般の海洋汚染の問題を申し上げた中で、変化がないという答えだったので、今のお答えだと、藻場がなくなっているという現状も含めて、変化があったわけですね。それはどういう、さっきの答弁との差をちょっと教えてください。
木下政府参考人 海洋環境の現状についての、まず最初の質問についての私の答弁でございますけれども、水質なり底質の汚染状況でございますけれども、最近の状況ですと、過去に比べてほぼ変化がないということを申し上げたのですけれども、そこが、改善に向かっているというよりも、かなり悪化しているような状況の中で改善が見られないという意味での変化が見られないというふうに御説明をしたところでございます。
 藻場、干潟の減少でございますけれども、藻場、干潟がどういう理由で減少したかという点でございます。埋め立て等直接の改変によりますものが、藻場でございますと三〇%弱ございますし、干潟でございますと四〇%ぐらいが埋め立てによって消滅をしている。その次の理由といたしまして、海況の変化によります減少が、藻場でございますと一五%程度、また干潟でございますと一〇%であるというふうに理解をいたしております。
後藤田委員 ということは、海洋汚染というのは、悪化した中で、先ほどの変化がないということですけれども、藻場は、十年、二十年の間で、過去においてかなり減ってきている。その理由は、いわゆる港湾の工事を初めその他の状況によってやはりどんどん、結局海洋汚染は進んでいるという整理でよろしいですね。
木下政府参考人 私たちも基本的にはそのような理解をいたしております。
後藤田委員 今、BSE問題を初めとする食品の安全の問題、先ほど来委員の方々から出ている問題の中で、今まで生産者重視の方向だったものが、消費者、タックスペイヤー、生活者、ここを見ていかないとだめですよというような流れになっていると私は思うんですが、そんな中で、先ほども若干触れましたが、今の国産の海産物の安全性について、そしてもう一つは輸入の海産物の安全性について、どのような御認識をされているか。
 そしてまた、国産の海産物の中でも、海上でえさを使って養殖をして、いわゆる抗生物質が使われているだ何だというような話をよく聞きますが、それについてどういうお答えをするのか。
 そして、新たなバイオ技術を使って、今、陸上の循環型水槽のようなそういった発想で、レスポリューション、水産用医薬品を一切使わないいろいろな事業をやろうとしている方々がいます。これは、いわゆる経済財政諮問会議の方向として合っていることだと思います。新しい産業だとか、新しい雇用だとか、そういうものを生み出す上で必要だと思っておりますし、いわゆる水産業を営む後継者も、こういう新しい産業に従事していく、また転換していく。そして、同時に食の安全も確保されるというような、私はすごくいい施策、方向だと思っているんですが、それについての水産庁としての御認識と、それに対して国としてどういう助成措置をとられているのか。
 国内においての二点と、国内と海外の海産物の安全性について教えていただきたいと思います。
木下政府参考人 まず、安全な国産あるいは輸入水産物の供給をするためにどういうことをしているかという点のお尋ねでございます。
 私ども農林水産省では、従来から、漁業者に対しまして、衛生管理の向上に対し指導を行っているというところでございますし、厚生労働省と連携をとりながら、輸入水産物の安全性の確保、また、流通加工業者に対します食品衛生法令の遵守指導に努めているところでございます。
 私ども農林水産省といたしましては、今後、消費者サイドに軸足を移し、水産物を初めといたします食品の安全性の確保に向けた積極的な取り組みを進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 また、二点目のお尋ねでございます。水産養殖業についてどのようなことをやっているかというお尋ねでございます。
 私ども、水産養殖業につきまして、まずは、養魚用飼料につきまして、飼料安全法に基づくその製造なり使用、販売等につきまして規制を行っているというわけでございますし、当該規制を遵守させる観点から、飼料製造業者に対しまして、必要に応じ立入検査等を実施しているところでございます。
 また、抗生物質なりワクチンの問題でございますけれども、薬事法に基づきまして、農林水産大臣による製造の承認が与えられ、そういうような使用基準が設定されているところでございまして、このような水産用医薬品の適正使用につきましても、各都道府県を通じまして、医薬品残留検査の実施を含めまして、指導の徹底を図っているというところでございます。
 ただ、私ども、平成十一年に制定をいたしました持続的養殖生産確保法に基づきまして、基本的にはこのような漁場改善計画を策定することが重要だというふうに思っておりまして、このような計画に基づきまして、養殖場におきます水質それから底質等の環境モニタリングを実施しておりまして、できるだけこのような、先ほど申し上げたいろいろな医薬品を使わないような水産養殖業を推進しているところでございます。
 また、第三点目でございますけれども、いわゆる陸上で循環型水槽を利用しての養殖の推進でございます。
 この循環型水槽を活用した陸上養殖でございますけれども、残りのえさあるいはふん等のいわゆる有機物を海洋環境に放出しない、また、飼育環境を最適な状態に整えた水槽で飼育するということで、安全な養殖水産物の供給に資するものというふうに認識をしているところでございます。
 このような観点から、水質の管理あるいは飼育環境の改善等の課題につきまして、平成十年度から平成十四年、本年度までかけまして、産官学の共同研究開発組織でございますマリノフォーラムによりまして、閉鎖循環式陸上養殖システムの開発に取り組んでいるところでございます。
 私ども、このような循環型水槽につきまして、先ほども申し上げましたように、海洋環境に負荷を与えないという観点から非常に有効だというふうに思っておりますけれども、今後、そのコストの削減等々につきまして努力をしていきたいというふうに考えております。
後藤田委員 よくわかりました。
 それで、今のお話の中で、海産物の安全性の問題なんですが、これは結局、流通を通って消費者に、いわゆる食卓まで行くわけです。そんな中で、さっきも大臣が、出荷時でちゃんとチェックしていますよとおっしゃっていましたけれども、具体的に、どこの流通でだれがどのようにチェックをしているのかということが一点。
 もう一つは、厚生労働省さん、私もこれを質問したときに、いや、これは主管が厚生労働省ですよなんてまた言われたので、相変わらず、BSEの反省が水産庁はまだ全然浸透していないんだなと思ったんです。ここのところも、今長官が、厚生労働省さんと協力してとおっしゃいましたが、大臣にどういう指示を受けて、水産庁と厚生労働省とがBSEが起きた後にどういう体制を整えたのか、教えてください。
木下政府参考人 まず、第一点目のチェックの点でございますけれども、私ども、去る四月十一日でございますけれども、大臣が食と農の再生プランを発表し、その中で、一つは、消費者保護を第一とする食の安全と安心のための法整備と行政組織の構築を図っていく、もう一点は、食のリスクに関する徹底的な調査なり情報開示を進めていこうという点でございます。また、三点目といたしましては、食卓から漁場へ、あるいは農場へということで、私どもできる限り、養殖水産物につきましても、生産履歴といいますか、トレーサビリティーの構築に向けまして今後検討を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 また、生産段階につきましては、それぞれ養殖の段階等々につきまして、都道府県のそれぞれの指導員によります巡回指導を行っているところでございます。
後藤田委員 ということは、チェックはその生産段階における巡回だけなんですか。その巡回の仕方、モニタリングをやっているのか、全品でやっているのか、そこら辺はどうなっているんですか。
木下政府参考人 残留検査の状況でございますけれども、そこは現在のところサンプリングで実施をしているという状況でございますし、養殖現場へ防疫対策の指導員、魚類防疫員というふうに言っておりますけれども、そのような魚類防疫員が定期的にパトロールしているという状況でございます。
 私ども、このようなパトロールあるいはサンプリングの検査でございますけれども、今後とも、その頻度なり母数を上げていく必要があるだろうというふうに思っておりまして、今後の、来年度の予算編成に向けて検討していきたいというふうに考えております。
後藤田委員 それと、済みません、ちょっと聞き漏らしたのかもしれませんが、具体的に、大臣から指示を受けて、いわゆるテーブルからステーブル、食卓から生産現場というお話がありましたが、厚生労働省さんのどの部署とどういう打ち合わせをどれだけ日ごろされているんですか。教えてください。
木下政府参考人 厚生労働省の食品衛生担当の部局でございますけれども、具体的にどの程度の頻度でやっているかということにつきまして、今手元にございませんけれども、私ども、必要に応じ連絡をとり合っているという状況でございます。
後藤田委員 必要に応じということになりますと、食の安全保障という意味、フードセキュリティー、フーズセーフティーと言った方がいいですかね、これは事が起こった後にやったらだめよということで今回大きな問題になったわけであって、事前にどういう計画のもとに大臣から指示があって、いや、今後は厚生労働省の食品衛生担当部局とこういう会を定期的に、こういう問題がある、そういった、何か、事が起こる前の議論というのはしていないんですか。
木下政府参考人 私ども、水産関係でございますけれども、これまでも流通分野で、先ほど必要に応じと申しましたけれども、この意味するところは、具体的に定期的に会合を持っているわけでございませんけれども、相当頻繁に、具体的に問題が起こってどうしようかということじゃなくて、それぞれ出向ということもございますから、やっている状況でございます。私ども、できるだけ、この点につきまして、定期的な会合を持つような方向で検討を進めていきたいというふうに思っております。
後藤田委員 今の長官のお話を聞くと、頻繁にやるように検討を進めていきたいとおっしゃったということは、では、これからの話を、私の質問で今そうお答えになったんですね。
武部国務大臣 厚生労働省や都道府県とは絶えずいろいろな連絡をとっていると思いますが、食の安全の問題については、特に食品表示の問題が起こって以来、関係省との連絡会議を持つようにしております。それから、六月七日だったと思いますが、厚生労働省と農林水産省が特に食品安全問題についての懇談会を持つことにしております。
 私は、定期的に厚生労働省とどの頻度で連絡会議を持つというようなことは、その必要性については、それぞれ各省、厚生労働省と農林水産省が、いついつやるということではないにしても、そういう連絡をとり合って、定期的に問題を持ち寄って検討会をやるというようなことは必要だと思いますし、また、個別案件については、担当者が、パソコンもありますし、電話もありますし、メールの交換もありますし、そういうようなことは絶えずできる状況になっているのではないか、このように承知しております。
後藤田委員 大臣みずから御答弁いただきましてありがとうございます。
 ただし、BSE問題も、何だかんだ、その前から厚生労働省と農林水産省は、適宜、相談、連絡、連携をとってということをおっしゃっていながらああいう事件が起きたわけですね。その後、食糧庁も含めて大きな再編をするというような流れ、いわゆる、フランス、そして各ヨーロッパも、デンマークもそうですね、テーブルからステーブルというのはまさにデンマークから始まった言葉で、私が九カ月前にそれをここで申し上げた、最初に。
 ということになりますと、行政の形がどうなるかというのは、これはまた時間がかかる話だと思います。しかし、私は、幾らいい制度をつくったって、幾らいい法律をつくったって、最後は人の行いなんですね。ということになりますと、その連携の中身も、私は、大臣、今御答弁いただきましたので、ぜひ、また同じ問題が起きないように、そこら辺は人の行いとして、管理監督、チェックを怠らないようにしていただきたいというふうに思っております。
 次に行きます。
 漁業について、これは生産調整の話、この後時間があったら米の問題をやろうと思っているんですけれども、漁業においても、御承知のとおり、直近の五カ年で生産調整、いわゆる過剰生産抑制というものをやりました。
 一つには遠洋マグロ、平成十年度。一つにはタラ、十三年度。大型、中型のまき網、これは平成十二年度から十三年度。そして沖合の底びき網、平成十一年度から十三年度。
 米の問題もそうなんですが、生産調整というのは、米なんかまさに、三十三年やっていて、今あれが果たして正しかったのかということ、後で話しますが、当時の高木事務次官が今になって、正直に、ある一定の意味はあったけれどもさしてないような御発言を、時の農林事務次官が、真摯に反省しておっしゃっていますね。その資料が最近、いわゆる生産調整部会等々でも御紹介をされております。だれでも見れます。
 この漁業においての生産調整について、この評価、これが正しかったのかどうか、これは漁業者にとって、そしてまた消費者にとって、結果としていいものであったのかどうか、これについて長官の御意見を聞かせてください。
木下政府参考人 この五年間で私ども減船をしてきたわけでございます。
 この減船の中で二つの種類がございます。一つは、漁業に関する国際規制が著しく強化される中で、その再編を余儀なくされる漁業につきまして、当該漁業の計画的かつ円滑な再編整備を推進するという観点からの支援措置。もう一つは、漁業の生産構造の再編整備を推進するということで、漁業者が自主的に行う減船に対しての支援措置でございます。
 まず、最初の国際漁業再編対策による支援措置でございますけれども、委員御指摘のとおり、遠洋マグロはえ縄につきまして百三十二隻、また、タラはえ縄漁業につきまして十九隻の減船を行ってきたところでございます。これらの減船措置でございますけれども、国際規制の強化に伴います社会的、経済的影響をできるだけ緩和するという観点から実施をしたことでございます。
 また、もう一つの減船でございますけれども、自主的に行う減船に対する助成でございます。沖合底びき網漁業が四十五隻、また、大中型まき網漁業につきましても、この五カ年で三百八十二隻の減船を行ったところでございます。これらの減船につきましては、我が国の二百海里水域におきます資源状況を踏まえた減船措置でございます。
 このような減船措置を実施した結果、資源の管理、回復、あるいは経営の改善に寄与したものというふうに考えております。また一方で、このような減船措置を行うことによりまして、ある意味では、これらの漁業の適切かつ円滑な維持につながったものというふうに評価をいたしております。
後藤田委員 今の長官のお言葉を信じまして、また数年後、これがまたどういう結果になっているかというのを、またぜひ検証をしていただきたいと思います。
 もう一つは、先ほど同僚議員からもお話がありましたが、信用事業の出資額について、私、割愛させていただこうと思ったんですが、例の一億円を割ってはいけないという出資額、これについてですが、先ほどちょっと長官の御答弁で、他の農協、団体を初めとしたそういったところとの相場に合わせたというような、そんな御発言がございましたので、いや、果たしてそれでいいのかなと。
 いわゆる国際競争力とかWTOの問題も含めて、輸入の問題も含めて、いわゆる国の農林水産業を守るためには、ダブルスタンダードというのはこれは当然のことだと思うんですね。これはほかの産業でも言えることだと思います。
 それと同時に、農業と水産業の規模というのは、これは全然違うわけですね。これは大臣初め幹部の方はもう頭に入っていると思いますが、農業というのは大体九兆五、六千億の粗生産規模、林業が六千億ぐらいですね。漁業というのは一兆九千億ぐらい。この大体の数字が多分頭にはちゃんと入っていただいていると思うんですが。それと比べたときに、先ほど比較をされたJAとの問題、ほかのいわゆる金融機関との比較、これは果たして正しいんでしょうか。そこをちょっともう一回教えていただけないでしょうか。
木下政府参考人 最低出資金制度をどうするかという点のお尋ねでございます。
 先ほど私が御答弁申し上げたのは、農協を含めまして他の協同組織金融機関がおおむね一億円とされているということを踏まえて、漁協につきましても最低出資金について信用事業を行う場合には一億円にしたいというような御提案をしているわけでございます。
 このような提案をしている背景といたしまして、貯金者からの信頼の確保というのは信用事業を行う上で不可欠な条件だというふうに私ども認識をしているわけでございますけれども、この中で、漁協に対しまして他の金融機関に比べその差を設けることとしますと、かえって漁協の実施をいたしております信用事業に対する信頼性の確保が難しくなるんじゃないかなというような観点から、先ほど申し上げたような農協並びの最低出資金制度にしたところでございます。
 今回、私ども、これにつきまして、来年一月一日から施行といたしておりますけれども、この中で三カ年の猶予措置を設けたところでございます。この中で、私ども、基本的には脆弱な漁協が今後とも信用事業を行うのは非常に難しいというふうに考えておりますので、できるだけ一県一漁協というような方向を目指して指導していきたいというふうに考えております。
後藤田委員 今のお話を聞くと、一県一漁協ということで、漁業組合の合従連衡といいますか合併が進めば、それは当然可能なんです。しかし、それがなかなか進まない場合には、今の信用事業一億円というのは、これはどういうふうになるんでしょうか。
木下政府参考人 漁協が信用事業を実施する場合には、基本的には、平成十八年一月一日以降でございますけれども、その要件として出資金が一億円以上要るということでございますので、その間に、一つは資本増強をするか、あるいはそれが困難な場合には他と合併するか、あるいは信用事業部門を譲渡するか、そのような地域の実態に即しながら選択していただく必要があるというふうに考えております。
後藤田委員 わかりました。ちょっと先に行きます。
 これは大臣にお願いしているんだと思うんですが、先ほどもちょっとちらっと触れましたが、日本の農、林、水の粗生産額。つまり、私ももともと商社におりまして、利益を出さないと食っていけない、いわゆる国や役所、行政機関とは違うところだったんですが、何事も金を使う上ではその投資効率というのをちゃんと考えるのが普通なんですね。費用対効果と申しますか、特に我々は国民の税金をこれまた使っているということがございまして、その費用対効果を非常に高めていく、これが必要だと思います。
 今、農、林、水と分けた場合に、農業は今、農業予算規模として二兆四千億ぐらい、そのうちの五千億ぐらいが米なんですけれども、それで約十兆弱、九兆三千億弱と言った方がいいのかな。林業関係については、私の調べたデータによると、ちょっと細かな数字は別にして五千億弱で、六千億弱の粗生産額。漁業におきましては三千数百億に対しての一兆九千億という費用対効果。どれだけ投資をしたらどれだけの粗生産額が生まれた、これは完全に頭に入ってなきゃ、これは当然だと思っておりますが。
 この農、林、漁業と比べた場合に漁業のあり方について、まず長官、どのような投資効率だとお考えになっていますか。
木下政府参考人 水産関係でございますけれども、水産関係の予算額が、委員御指摘のとおり、三千五百億に対しまして粗生産額一兆九千億弱ということでございます。
 私どもも、予算を執行する、あるいは予算を策定する際には、まさに費用対効果といいますかをできるだけ考えながら、あるいはそれが上がるような執行を図ることが必要だというふうに考えております。ただ、農あるいは林と比べまして、私どもそういう意味での予算額と粗生産額の比率、高いわけでございますけれども、市場で評価されないいわゆる多面的機能等々を考慮しますと、なかなか一概には評価し切れないんじゃないかなというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、水産関係予算でございますけれども、本年三月には水産基本計画を策定いたしましたし、また、漁港漁場長期計画も策定をしたところでございます。このような基本計画なり長期計画の着実な実施を図れるよう必要な予算を確保していきたいというふうに考えております。
後藤田委員 ぜひそのような考え方で、もちろん今長官おっしゃったように、漁業は一兆九千億以上にいろいろな多面的なものも含まれていると思いますので、それもぜひある程度数値化して、これだけちゃんと水産庁はやっているんだということをぜひこれからもお訴えをいただきたいと思います。
 最後の質問でございます。これは、時間が余るようで余らなかったので、ちょっと大臣に、せっかく事前に通告させていただいたので、一言お願いします。
 水産とはかわって米の問題なんですけれども、これから毎年毎年、いろいろ調べると、秋口に大体生産調整の問題というのを、いわゆる党においても政府においても議論するようでございます。ここ最近の、私も過去のことを経験がないのでいろいろ書類で勉強させていただきましたけれども、初めてと言っていいぐらい、生産調整というものに対して各専門家が部会をつくって、座長になって、いろいろ議論をされている、すごく、大変すばらしいことだと思っています。
 その中で、先ほど申し上げましたが、その中のメンバーの一人として非常に勇気のある発言をされているのが、もとの事務次官の高木さんという方のようでございます。いわゆる今までの米政策、一つには、米の過剰に対する抑制力としては一定の効果があった、他方では、次のような効果や弊害について、数値的な検証は難しいが、効果を十分発揮していない、または弊害があると指摘。これは、暴落防止以上の価格維持効果があったとか、需要に応じた生産の推進だとか構造政策の推進、生産者の経営マインド、地域農政の推進、このように弊害もあったというような答えを出しているんです。これは本当に勇気のある発言だと思っております。
 大臣のこれからの、僕は農業問題はすべて大切だと思いますが、三兆二千億弱の農業予算の中で五千億以上を占める米。投資ですよ、投資効率のさっきの話からいくと。これから米政策として生産調整についてどういう態度でこの一年、この秋に臨んでいくのか。今のこの機会にやらなければ、また需要は減る一方だし、価格は落ちる一方だし、そういうことを一回ちょっと大臣の意気込みを聞かせていただきたいと思います。これは党との関係が大変かもしれませんが。
武部国務大臣 このことをお話しする前に、農業や漁業や林業と他の産業との違いについては、後藤田先生も十二分に御承知おきいただいていると思います。
 農業の多面的機能というものは、これは貿易によって取引できるものではございませんで、そういう状況の中で、我が国の農業や林業や漁業というものを考えていかなきゃならないということは御理解いただけると思います。しかし、一方において、グローバル化といいますか、国際化という状況の中で、やはり足腰の強い日本の農業や一次産業にしていかなきゃならぬということも言うまでもございません。
 そういう意味で、一番象徴的なのが米の生産調整でございます。今だから言えるのかもしれませんが、私は余り米のことは詳しくありませんけれども、三十年間この減反政策によって米の需給調整を進めてこようとしたことについては、私は当初から疑問に思っておりました。しかし、これは民意というものを背景にして今日までの政策があるわけでございます。
 我が国の農業のうちでも畜産や野菜などと比較いたしますと、米づくりが一番基盤が弱いといいますか、規模も小さいし生産力についても問題が残っている、このように思いまして、私は、今後、六月中に検討方向を生産調整に関する研究会においてまとめていただきたい、こう願っているわけでございます。そして、秋までにはきちっと論点を整理して、水田農業の抜本的な構造改革を実行に移していきたいということを願っているわけでございます。
 そういうことで、後藤田先生らもグループをつくって勉強しているという話も漏れ承っておりますので、私、渡辺美智雄先生に言われたことで今でも耳に聞こえてくるのは、当選四回、五回になったらだんだん物が言えなくなるぞ、政策論議に上下なしだ、酒席に序列あり。そのことを忘れずに、党の政調では、相手が大臣であろうが当選十回であろうが構わない、自分の考えを堂々と主張してこそ、それこそ国民から負託を受けて出てきた国会議員だと。こういうお話を思い出すわけであります。
 我々また、きょう時間もございませんからこれ以上申し上げませんが、本当にことしは米政策転換の年だ、そういう強い決意で私どもも臨んでまいりたい、真正面に向かって取り組んでいきたい、こう思っておる次第でございますので、御鞭撻と御支援をお願いしたいと思います。
後藤田委員 ありがとうございました。
 私の属する平成研究会でも、米の問題をことしは勝負の年と考えているようでございますので、民意というのは一部の人間ではないというのを憲法第十五条に書いておりますので、すべて国民、消費者重視の米政策転換を武部大臣のときにぜひやっていただきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。
佐藤(謙)委員長代理 これにて後藤田正純君の質疑は終了いたしました。
 次に、津川祥吾君。
津川委員 民主党の津川祥吾でございます。
 実は、私、最近ほかの委員会ばかりで質問しておりまして、農水委員会、当委員会で質問させていただくのはちょっと久しぶりでございまして、二カ月ぶりでございます。
 二カ月前に、ちょうどBSEの調査報告書が出る前日に質問させていただきまして、武部大臣とお話をさせていただくのもきょうは最後かなと思いながら質問させていただいたわけでありますが、続投をされるということでありますので、生産者あるいは流通業者、消費者の方々からの農林水産行政に対する信頼というのはまさに今地に落ちた状況でございますので、この回復に全力を尽くしていただきたいというふうに思います。
 では、きょうの議題でございます漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案外関連法案について質問をさせていただきます。また、若干本法案からはそれますが、農林水産行政にかかわる幾つかの点について質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 まず冒頭でありますが、官房副長官及び福田官房長官のマスコミに対しての発言について質問をさせていただきます。
 先週金曜日の五月三十一日、当初政府首脳と報じられましたが、福田官房長官が記者団に対し、将来、国際情勢や国民意識が変化してくれば非核三原則が変わる可能性がないとは言えないと述べ、国際情勢の緊迫化や国民世論が容認すれば、将来的に非核三原則を見直すこともあり得るとの見解を示したとの報道がなされました。
 これは、安倍官房副長官が五月中旬の早稲田大学での講演の中で、大陸間弾道弾ミサイルですとか小型の原子爆弾の保有は憲法上可能であるというふうに発言をされたことに関連しての官房長官のコメントのようでありますが、報道されたとおりであれば、これは大変ゆゆしき発言であったかと思います。
 核兵器をめぐりましては、持たず、つくらず、持ち込ませずとする非核三原則は国是でございまして、日本政府の基本政策であったはずでございます。核保有につきまして、政府は、自衛のための必要最小限の範囲を超えないものであるならば憲法解釈上は許されるが、政策としては非核三原則により許されない、こういう見解をこれまでも示してきたかというふうに認識をしております。
 しかし、この三原則を将来的に見直すことがあるということを今なぜ発言をされたのか、その意図は何かと疑わざるを得ません。憲法だって変えようという議論が起きている時代だから、将来、三原則が変わることがないとは言えないと語ったというふうに報道されておりますが、そんな軽々に語る問題ではないはずであります。
 確かに、憲法といえども不備があったり、あるいは時代の大きな変化、流れによって、変える必要がないか、検証したり議論するということは妨げられるべきではないというふうに思います。しかし、その根幹にかかわるような部分に関して、国民ですとかあるいは一国会議員ならいざ知らず、時の政府の官房長官ともあろう方が、ないとは言えないからあるかもしれないというような、まさに軽々きわまりない発言をされたということは、私は大変ショックを受けました。
 例えば、官房長官がこれからの国家のあり方を語る中で、御自身のお考えとして、日本は非核三原則を見直すべきだとおっしゃったなら、内容が国民に支持されるかされないかは別として、私は全く支持しませんが、御自身の政治信条として発言に責任を持たれればいいのだろうと思います。全く支持されないというふうな認識をもしされたら、現在の職をおりられればよかろうというふうに思うわけでありますが、ところが、その後の報道によりますと、何やら、若い記者が将来のことを今からしっかり考えてほしいという期待を込めて発言したと、非常によくわからない、釈然としない釈明をされたりしております。
 報道というのは、確かに、発言者の一部を切って張ったりして、報道する際に、若干というか、大分そもそもの意図と違うような記事になってしまうようなことは間々あることでありますから、ひょっとしたらそういったこともこの中にあるのかもしれませんが、今このような発言をされた官房長官の見識というのは、私は疑わざるを得ないというふうに思います。
 それで、この発言について、各閣僚の方々からコメントが報道されております。坂口厚生労働大臣のお言葉ですとかあるいは扇国土交通大臣のお言葉等々、報道をされているかと思いますが、私が確認した限りでは、武部大臣のコメントがないようでありますが、あるいは既にどちらかで発言をされていらっしゃるかもしれませんが、この官房長官の発言について、武部大臣の閣僚としての見解をまずお伺いしたいと思います。
    〔佐藤(謙)委員長代理退席、委員長着席〕
武部国務大臣 御指摘の発言は、記者の質問に答えて、国の安全保障のあり方については、それぞれの時代状況、国際情勢等を踏まえて、さまざまな国民的議論があり得ることを述べたものでありまして、報道されているように、政府として今後の方向性を示したものではない、私はかように思います。
 いずれにいたしましても、我が国が、核兵器については持たず、つくらず、持ち込ませず、この非核三原則を堅持することについてはこれまでも歴代内閣、累次そのように明確に表明しているわけでありますし、小泉内閣といたしましても、総理も述べられておりますように、今後ともこれを堅持していくという立場には変わりはない、私も同様でございます。
津川委員 報道の内容が発言の真意を必ずしも伝えていないのではないかというお話であろうかと思いますが、六月二日付の報道では、このときまだ政府首脳の発言として「私の発言は国の安全保障のあり方についてさまざまな国民的議論がありうることを述べたものであり、政府として今後の方向性を示したものではない」、今大臣がお答えになったとおりでありますが、そういった報道がされましたが、これは、ただ、まさに机上の論理であります。
 確かに、世論が変われば政府の政策も変わってくるということは当然あり得ることではあります。しかし、ではこの非核三原則というものに対して今の日本の国民の世論がどうなっているか、この認識が少しでもあれば、あのようにとられかねない発言はなかったのではないかというふうに私は思えてなりません。その現場に居合わせたわけではありませんので、どのような発言であったかわかりませんけれども、やはり、そこに若干見識の甘さがあったのではないかなという思いがいたします。
 さらに言えば、仮に国内の世論ですとかあるいは国際社会の世論が核兵器容認に大きく振れていきそうだというようになったとしても、被爆国である我が国の政府は、その世論に対して核兵器の廃絶をさらに強く訴えていかなければならない立場にあるはずであります。それこそが日本の政府の果たすべき役割ではないかと私は考えます。
 私は昭和四十七年生まれでございまして、戦後何十年もたってから生まれた人間でありますが、戦後数十年以上たって生まれた世代は当然今後ますますふえていくわけでございまして、我が国が原子力爆弾をまさに身をもって体験したという実感はどうしても時とともに薄れていくものかもしれないというふうには思います。しかし、決して忘れてはいけないものでもございます。だからこそ、今回の官房長官の発言を、騒ぎ過ぎだというような形で軽視するのは大変危険なことではないかなというふうに感じまして、冒頭、触れさせていただきました。
 私がこの発言について当農林水産委員会で取り上げさせていただいたのは、実は、この非核三原則というものの成立に少なからず影響を及ぼしたというふうに思われます第五福竜丸事件を念頭に置いてのことでございます。一九五四年、昭和二十九年の三月一日、ビキニ周辺の公海上でアメリカの水爆実験で被災した第五福竜丸、これは母港が私の今の選挙区でございます焼津でもございます。終戦直前の広島、長崎で被爆された方々のことももちろん決して忘れてはなりませんが、平時、しかも全く落ち度のない漁師の方々がアメリカの水爆実験の犠牲となったということは、当時の日本国民にとって大変大きなショックであったかと思います。
 したがって、この非核三原則というものは、特に農林水産大臣におかれましては強い思いを持っていただきたいという思いが私自身にございます。できれば、この際、非核三原則について、武部大臣の農林水産大臣としての御所見を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。
武部国務大臣 私は、先ほども申し上げましたように、我が国は、被爆国として戦争を最も憎む、そして核に対しても、これをこの地球から少しでも減らして、最終的にはなくしていく、そういう使命感を持って世界の平和に貢献していくというのが我が国の歩むべき大事な道筋だ、私はこういうふうに理解しておりますし、私ども、いつも申し上げておりますように、自然の恵みに感謝する気持ち、自然の脅威を恐れる謙虚な気持ち、こういうことが私ども日本人の心の中にはかつては宿っていたんだろう、こう思うのでございます。しかし、文明が進むにつれ、そこにおごりが出てきたというふうに思えてならない。
 そういう意味では、非核三原則は堅持するということをもっと踏み越えて、これを廃絶する、核を廃絶するという方向に向けて努力していくというのが私どもの立場であろう、私はそういう気持ちで政治家としての努力をしていきたい、このように思います。
津川委員 大変ありがとうございました。
 総理も広島、長崎で、核廃絶ということを何度もおっしゃっておりますが、まさに被災された地域、広島、長崎、あるいは焼津、こういった地域の方々だけではなく、やはり日本全体が、特に我々のような若い人間もこういったことをしっかり忘れないように、常に、自分自身、改めてこの思いを持たなければならないと思いましたので、ちょっと時間をいただきまして大臣の御所見をいただきまして、ありがとうございました。
 次に、またちょっとこれは本法案とは若干離れるんですが、先日、報道にあった件について確認をさせていただきたいと思います。
 本日朝の、筒井委員からも冒頭話があった点でありますが、鈴木宗男官房副長官、当時でございますが、林野庁から行政処分を受けた御自身の後援企業の木材会社について、処分後も従来どおり受注できるように林野庁に働きかけたとされる疑惑について、農水省が調査を行うこととしたという報道がございましたので、現在のところで結構でございますが、農水省が把握されている事実はどういったものか。
 それから、これから調査をされるという話は午前中もお答えをいただきましたが、いつまでにどのような調査をされて結果を見ようという予定であるのか。現在決まっていないのであればしようがありませんが、この辺までにその結論を見たいという目標もあれば、その日程についてもお答えをいただければと思います。
加藤政府参考人 鈴木議員をめぐる九八年八月ごろの事実関係につきましては、昨日、大臣官房審議官をキャップといたしました調査チームを編成の上、やまりんに対する入札参加指名停止措置等に関連して同議員から働きかけがあったかどうかについて調査を行うということにしたところでございます。本調査につきましては、まず調査事項を詰めた上で、当時の林野庁及び帯広営林支局の幹部など関係者からの聞き取りを行いつつ、厳正に進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 調査につきましてはそういうようなことで、これから着手をしてまいるわけでございますので、また、聞き取りを行う範囲もOB等にもわたるということでございまして、今の段階で、いつごろまでに調査ができ上がるのかということを申し上げるには至らないのではないかということで御理解を賜りたいというふうに思っております。いずれにしましても、厳正に調査をしてまいりたいというふうに考えております。
津川委員 ありがとうございます。
 昨日衆議院を通過いたしましたBSE対策特別措置法のように、これから農水省がしなければならないことはたくさんございますけれども、その中でも大変重要なポイントとして、国民の信頼を回復するということがあろうかと思います。そういった視点で、この件に関しても事実関係を明らかにしていただいて、先ほど同僚議員からもございましたが、それじゃ外務省じゃないかというような批判が出ないようにしっかりとやっていただきたいというふうに思います。
 さて、では本題の方に入らせていただきます。
 昨年の五月十六日の大臣の所信表明の中で、水産政策について、次のように触れられていらっしゃいます。ちょっと読ませていただきますが、
  我が国水産業については、本格的な二百海里時代を迎えるとともに、資源状況の悪化や担い手の減少、高齢化が進展するなど内外の情勢が大きく変化しております。こうした中で、水産物の安定供給を初め、豊かな国民生活の実現にとって不可欠な役割を果たす我が国水産業について、その健全な発展を確保していくためには、政策の抜本的な見直しが必要となっております。
  このため、本国会
昨年の通常国会でございますが、
 本国会に、新たな政策の理念と基本的な施策の方向を示す水産基本法案及びその関連法案を提出し、審議をいただいているところであり、法案の速やかな成立に御協力をお願い申し上げますとともに、国民全体の十分な合意を得ながら、順次、改革が具体化されるよう全力を尽くす考えであります。
  また、国際漁業問題につきましては、周辺国との漁業問題や国際的な資源管理が必要なマグロ漁業、捕鯨の問題等に関して、引き続き関係国との協議を行ってまいります。
以上でございます。
 今ちょっと読み返してみますと、若干短いなという気がしないわけでもありませんが、まあまあ簡潔にまとめられているといえば言えないこともないわけでありまして、内容としては大変結構であろうというふうに思いますが。
 ただ、この中で、水産基本法成立後には国民全体の十分な合意を得ながら、順次、改革を具体化していくよう全力を尽くすというふうにありますが、具体的にこの一年間何をなされてきたのか。日本の水産業の将来がどうなるのか。今回提出されました法案がその具体的な中身だとおっしゃるのかもしれませんが、これらの法案を見る限りでは、まだちょっと、具体的と言うには若干不十分ではないかな、まさに、国民全体が理解をするというには若干不十分ではないかなという感じがいたします。
 以下、順次お伺いをいたします。
 まず、水産基本法におきまして、水産物の安定供給の確保というものと水産業の健全な発展というこの二つが基本理念というふうにされておりますが、この水産物の安定供給の確保に関しまして、農水省が行った水産基本政策大綱に関するアンケートというものによれば、漁業関係者あるいは消費者とも、まず一番目につくり育てる漁業の推進、二番目が排水規制や藻場、干潟の保全等による漁場環境の保全、三番目が資源管理の推進等々、幾つかございますが、これらの三つあたりが、必要性を指摘する回答が大変多かったというふうに伺っております。
 国民全体の十分な合意を得ながらということでありますから、この辺に対してこたえる政策が求められていると判断してもよろしいのではないかなというふうに思いますが、今申し上げました三番目の資源管理の推進ということに関しては、基本法第十三条にもかかわる部分でもございますし、具体的には、資源回復計画という取り組みもございます。本法案でも、資源回復にかかわる部分で、農林漁業金融公庫の資金種類の充実というものがございます。
 しかし、生産者、漁業関係者あるいは消費者とも非常に必要だと答えたつくり育てる漁業に関して、どのくらい具体的な政策がとられているのか。果たして十分なのか。その規模等についてお答えをいただければと思います。
木下政府参考人 我が国の周辺水域における水産資源の維持増大、それから安定的な漁業生産の確保を図るために、資源管理推進とあわせまして、水産基盤整備事業、栽培漁業それから養殖業等の施策によりまして、つくり育てる漁業を推進しているところでございます。
 まず、具体的に申し上げますと、水産基盤整備事業あるいは漁業経営構造改善事業でございますけれども、この中で、魚礁の設置あるいは増養殖場造成等のいわゆる海の場づくり、また、二つ目の柱として、サケ・マスを含めまして、栽培漁業によります海産魚介類の種苗生産、放流等の海の種づくり、現在八十種類に及ぶ魚種につきましてこのような種苗生産を実施している状況でございます。
 第三点の柱といたしまして、養殖業の振興でございます。現在、ブリあるいはノリ、ワカメ等、既に百三十万トンに及ぶ実績を上げているわけでございますけれども、このような施策を推進しているわけでございます。
 今後とも、先ほど申し上げましたように、海の場づくり、海の種づくり、それから養殖業ということで、この三本柱をもってつくり育てる漁業の積極的な推進に努めていきたいというふうに考えております。
津川委員 ありがとうございました。
 次に、二番目に挙げられている点でありますが、排水規制や干潟の保全等による漁場環境の保全という点についてはいかがでしょうか。これは、他の省庁との協力も必要な場合が多いかと思いますが、これまで具体的にされていることがあればお伺いをいたしたいと思います。
木下政府参考人 水産業は、まさに海の自然環境に依存しているというようなところでございまして、私ども、環境と密接な関係を有する産業ということで、このような漁場環境の保全というのは非常に重要な部門であるというふうに認識をいたしております。
 このような観点から、水産動植物の繁殖にとって重要な藻場あるいは干潟につきまして、保護水面の指定等によりまして保全を図るという点でございます。このほかに、漁港漁場整備計画によりまして、今後五年間をかけまして、藻場、干潟につきまして五千ヘクタールの造成を図っていきたいというふうに考えております。
 また、このような措置のほかに、森、川、海を通じました、いわば川上から川下に至ります幅広い環境保全の取り組みを推進したいということで、これは既にそれぞれの地域でいろいろな形で行われているわけでございますけれども、魚つき保安林の指定あるいは漁業者によります植林活動のための環境整備等につきましても、私ども、いろいろな形で助成をしているわけでございます。このような、いわばいろいろな形、森林保全と一体となった整備は今後とも必要だろうというふうに考えております。
 このほかに、当然のことながら、他省庁とも十分連携をとって進めていく必要があるわけでございますけれども、工場排水の問題だとか生活排水あるいは廃棄物等の排出等の規制措置、あるいはダイオキシン類等の有害化学物質等につきましても、関係省庁とも連携をとりながら、施策を総合的に実施をしていきたいというふうに考えております。
津川委員 排水規制に関しては、連絡を密にして、総合的にという話でありますから、それは、いわゆる官僚用語として翻訳をさせていただければ、余り期待できないのかなというふうに思わざるを得ません。他省庁とのかかわりでありますから、なかなか農水省だけでできないのはわかりますが、ぜひともそこをやっていただきたいということ。
 それから、干潟の保全といいますと、当然諫早湾について言及したいわけでありますが、ちょっと私の後で後藤委員からもその点について指摘もあろうかと思いますので、そちらの方に譲らせていただきたいと思います。
 今御説明をいただいた二つの部分では、水産物の安定供給の確保ということに関して、やはり十分とは言いがたいのかなという感じをいたします。基本法ができて、大きく抜本的に見直すんだという方向性まではなかなか正直見えてこないというのが実際のところではないかなと思います。
 今回の柱でもありますが、融資の円滑化というものがございます。水産業の健全な発展、これは基本法のもう一つの柱でございますが、この融資の円滑化というのは、確かに大変重要ではありますが、これまでもやってきたことでございます。むしろ、こういった融資の円滑化が、残念ながら現在はかえって漁業者の負債状況を深刻化させているという現実もあるわけでございます。
 先日のBSE問題に関して参考人で来てくださった畜産の現場の方がおっしゃったことでありますが、意欲のある人ほど新しい試みにチャレンジし、結果として多くの借金を抱え、離農を余儀なくされているという大変厳しい深刻な状況を述べられておりました。
 融資の円滑化も確かに必要なことでありますが、それだけでは問題が解決にならない。これまで、漁業再建整備特別措置法に基づく三種類の制度金融がございましたが、これまでの漁業の再建整備にどう貢献してきたのか。これまでの制度が、残念ながら結果的に問題を深刻化させてきたという一面はやはり否定できないと思いますが、これまでの制度をどのように総括、評価していらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。
木下政府参考人 現在の漁業特別措置法の融資制度でございますけれども、現行の中小漁業構造改善制度でございますけれども、カツオ・マグロだとかあるいはまき網などのいわゆる六つの中小漁業者を対象にいたしまして、業界全体として規模拡大なり生産行程の協業化を進めよう、そのような、いわば業界全体としての構造改善に対しまして金融措置を実施しているところでございます。
 私ども、この二十年ばかりの状況を見てみますと、最近の資源状況を勘案すると、業界全体としてこのような構造改善を進めていくという意味でいたしますと、コスト削減という面では十分な効果がない、かえって過剰投資なり経営悪化を招いた面も否定できないというふうに考えているところでございます。
津川委員 過去は過去として改善をされなければならないわけでありますが、いずれにせよ、意欲ある漁業者が創意工夫を生かして経営改善を行い、それが軌道に乗って初めて漁業の再建整備は実現するものでございます。
 そこで、大臣にお伺いしたいのですが、本法案では農林水産大臣が経営改善に関して指針を定めるということになっております。これは本法案の成立後ということでありましょうが、現在の段階でどのようなことを想定されていらっしゃるのか、可能である範囲で結構ですので、お示しをいただければと思います。
武部国務大臣 漁業経営の改善に関する指針につきましては、漁業経営の改善の促進に関する国の基本的な考え方等を明らかにするものでございまして、漁業経営の改善の内容や改善の実施方法に関する事項を定めることとされているわけでございます。
 具体的な内容について申し上げますと、今御指摘のとおり、法の成立後、水産政策審議会を持ちまして、ここでの意見を聞いて定めることとなるのでありますが、農林水産省としては、生産コストの削減、付加価値の向上など、漁業者が取り組むべき経営改善のための措置の方向性、それから二つ目には、国として支援しようとする取り組みの基本的な考え方、三つ目には具体的な経営向上の数値目標等について明らかにしたいと考えております。
津川委員 農業の方でも、望ましい経営像というもので、年間労働時間や生涯所得が他産業並みというような具体的なものも出していますので、できればそういったイメージしやすいものを出していただきたいと思います。
 ただ、実は私は、若干悲観的な部分がございまして、大臣がそういった具体的な指針を示して、漁業者の方が改善計画を立てて大臣の認定を受けて種々の融資、資金提供の優遇措置を受けたとしても、結果的になかなかうまくいかないのじゃないのかなと正直思っているところでございます。
 うまくいくのであるならば、これは大臣が保証人になるということであろうかと思いますけれども、そんな計画を大臣が立てる、大臣がと言っては失礼かもしれませんが、省庁の方が立てられるのであるならば、農林水産省がなるべく細かくつくってあげてそれをお渡しすればいいわけであります。個々の漁業者にとって具体的な改善方法が違いますから、それをすべて一つ一つつくるわけにはならないので、大枠だけ示すということかもしれませんが。
 正直言いまして、国がこういった経営方針というものに関して口を出すと大体うまくいかないというのが通例でございまして、今回のように、大臣なり省庁が指針を示してそれに沿ったものは認定をするというところまでやるわけですが、最終的に、それでうまくいくかうまくいかないかはわかりませんが、どの程度まで大臣や農林水産省が最後まで責任を持つのか、今お答えいただけますでしょうか。
武部国務大臣 どの程度ということについて、私は、具体的な考えを今持っていると言うほど責任のある答弁はできません。
 しかし、今度の水産四法の改正も、しっかりした漁業経営をやってもらうためには、まず資源管理ということをしっかりやろう、その次がやはり経営についてしっかりした指導もやろう。しかし、基本的には本人の責任ということが大事になってくるんじゃないでしょうか。
 だからといって、先ほど御指摘ありましたように、本人というのは、私自身もそうですけれども、一回目選挙に落選しましたけれども、落選する前までは八万五千票ぐらいとって三番目ぐらいで当選すると思っていましたからね。私の計画ではそうでした。
 これはふさわしい答弁をしているかどうかはわかりませんが、やはりそこは理想と現実ということがありますし、そこのところは一つの方針というものを、農林水産省としても責任ある方針を示して、そして中に立つ漁協等が全体の方向性というものに基づいて指導をし、御本人がやはりしっかりした着実な、長期的な目標に向かった現実的な計画を立てていく。どこの世界にもあるような問題だ、こう思います。
 やはり、そういった国とそれから地方や漁協と漁業者という関係、コミュニケーションをより密にしながら、適切な対応をしていく必要があるのではないか、このように思います。
津川委員 もちろん、だれにとってもリスクはあるわけですから、私がやれば万全だというものはないわけであります。
 本人が御努力をされるのがもちろん大前提でございますが、本人だけではできない。そこで、その役割を担うのが私はやはり組合ではないかなというふうに思うわけであります。
 農協も営農指導というものがございます。今回の法律、本当はもう少し触れたかったのですが、水産業協同組合法の一部を改正する法律案の中でも、組合の業務の一番目に資源管理、二番目に営漁指導というものがあります。この営漁指導がまさに重要なところであって、そこをしっかりやっていただくようにサポートするのがむしろ国の仕事ではないかなという思いがございます。
 もちろん、組合がしっかりとした経営が成り立つというのも重要ですが、これは農協の過去の経験からすれば、組合の、自分たちの利益の確保のために結果的に農家が苦しむということも現実にはあったわけでありまして、そういった形にならないような適切な指導こそ行わなければならないのではないかな、それが国の役割ではないかなというふうに思います。ちょっと飛ばさせていただきますが、そういった御認識をぜひお持ちいただきたいと思います。
 いずれにせよ、我が国の水産業を取り巻く環境というのは大変厳しいわけでございますが、なかなかその特効薬というものはなかろうかと思います。つくり育てる漁業の推進等々、いずれにしても一朝一夕に実現できるものではございません。地道で継続的な努力が不可欠であろうかと思います。
 そんな中で、今も申し上げましたが、国の役割として特に重要なのが、それらの現場での地道な努力が水泡に帰すようなことになってはならない、そのための責任を国は負っているのではないかというふうに思います。
 先ほども紹介させていただきました昨年の大臣の所信表明の中でも、国際漁業問題について触れられました。
 ちょっと時間がないので質問を飛ばしますが、韓国のカニかごが最近、ことし非常に多く押収をされているというニュースがございました。大変大きな問題ではないかというふうに思いますので、この点について質問させていただきたいのですが、きのう、質問をしようと思って、レクに来られた担当者の方にこの質問をしましたら、いや、確かにかごの保管場所に困って問題なんですよねとおっしゃっていましたので、大丈夫かなと思いましたけれども。
 そういう問題じゃありませんので、まさに国際問題として大臣がリーダーシップをとらなければならない部分ですので、ちょっと一言、どういう対応をとられるのか、明快にお答えをいただきたいと思います。
武部国務大臣 韓国等の外国漁船による違反操業が後を絶たない上に悪質化しているという実態にございまして、外国漁船の操業秩序の維持が重要な課題である、このように強く認識しております。
 本年度においても、新型取り締まり船や漁具回収船の配備強化など、取り締まり体制を強化いたしました。今後とも、海上保安庁と連携をとりつつ、さらに取り締まり体制を強化してまいりたいと思います。
津川委員 韓国に対しても、直接大臣として強く申し入れていただきたいと思います。
 それからもう一つが、一生懸命資源管理をしても外国船がじゃんじゃん持っていっては効果がないということが一つですが、幾ら海の環境を保全しても山の環境が破壊されてはこれも効果がないということであります。
 先ほど局長からもお話があったところでありますが、実は先日、私ども民主党所属の農林水産委員と環境委員を中心といたしまして、静岡県の天城湯ケ島町へ林業の現場視察に行ってまいりました。町長様ともお話をさせていただいたのですが、最初に要望があったのが、シカの被害でございました。駆除狩りではなくて猟期に雌のシカもとれるようにしてもらいたいというのが、非常に切実な要望としてございました。私も、正直申し上げまして、実態について必ずしも十分に認識をしていたわけではありませんでした。現地の方に伺って深刻さを確認した次第でございます。
 この点についても、昨年の林業基本法関連の議論の中で、この件に関する大臣の御答弁がございました。
 環境省と林野庁の問題、先ほど有害鳥獣の問題などもお話がございましたが、東京の皆さんには理解していただけないかもしれないけれども、私どもの地元では、農家では、何でシカが山から出てくるんだ、林野庁しっかりしろという、同じ農林水産省の中でも、林野とそれから農業の分野で大変なつばぜり合いをやっているという実態もあるんですね。御承知いただきたいと思います。行革のときには、林野庁は私は環境省にやればよかったんじゃないかという論を持っていたけれども、農水省に来てしまいました。ただ、環境省と林野庁というのは、あるいは農林水産省すべてというのは、恋人の段階から夫婦のような、そういう関係になっているのじゃないかな、かように思います。
 こういう答弁でございます。大変心もとない答弁でございました。
 ぜひここでしっかりとリーダーシップを発揮して、ここで断言していただきたい。有害鳥獣を駆除するという発想ではなく、農業や林業に対する被害を防止するために実効ある施策をとるんだ。これは、同時に、裏返しでありますが、鳥獣保護を明確にするという必要もございます。林野庁と環境省が、夫婦だからいいだろうというわけではありませんで、夫婦げんかをいつまでも続けられても困るわけでありまして、そろそろこの問題に終止符を打っていただきたい。ぜひ大臣にこのリーダーシップをとっていただきたい、この御決意をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
武部国務大臣 今の私のかつての答弁を聞いておりまして、当時は言いたいこと、思うことを率直に言えて何か懐かしいような感じがいたしますけれども、私も現場を知っている者として今も率直にそういうふうに思います。
 今委員指摘のように、鳥獣を保護する、そういう自然生態系というものをつくっていかなきゃならないんです。ですから、山に木を植える、その木も広葉樹などを植えるとか、そういったことも林野庁はちゃんとやっていかなきゃいけません。環境省もただシカだとかそういう動植物だけを考えちゃだめなんで、そこに人が生活を営んでいる、そういう現実感というものも持たなきゃならないんだろう、このように思います。
 いずれにいたしましても、平成十二年度、被害面積が約八千ヘクタールである。このうちシカによるものが約六割である。鳥獣被害対策としての防護さくの設置や生息環境の整備等の対策を総合的に実施するということが大事だと思いまして、環境省等関係省庁との連携を強化してまいりたい。
 もう環境省と林野庁というのは夫婦という、そういうことを申し上げたということでありますが、今やもう子供も産まれるというぐらいの親密な関係でございますので、実り多い両省の協力関係をしっかり構築していきたい、かように思います。
津川委員 ありがとうございました。終わります。
鉢呂委員長 これにて津川祥吾君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、追加的でありますけれども、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君及び厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 それでは、質疑を続行いたします。後藤斎君。
後藤(斎)委員 後藤斎です。ただいま追加的に委員長のお話をいただいたように、厚生労働省に冒頭お尋ねをしたいと思います。
 先週、五月二十九日の水曜日にもJAS法の改正の中で厚生労働副大臣に御論議をさせていただきました。その中でも、当日は、JAS法、表示の問題でありましたが、いろいろな議論を通じながら、宮路副大臣の方から、表示の問題のみならず食品の安全という観点から、所定の検査についてきちっと、一段と力を入れて取り組んでいかなきゃいけないというふうなお答えをいただいております。
 この一両日、食品衛生法違反、無認可の添加物を三十二年間使用したと協和香料の話が幾つかの報道機関で国民の皆さんの前に、またまた食の安全の関係で、食の信頼性、安全の信頼性を失うような事件が起こっております。
 冒頭に厚生労働省にお尋ねをいたします。
 なぜ、この無認可の添加物が三十二年間という長期にわたって、厚生労働省、放置をしてきたのか、そして、この協和香料について今後どういう形でこの事件を解明し、処分等の命令が出ると思いますが、対応なさっていかれるのか、お尋ねをしたいと思います。
尾嵜政府参考人 今お話ございました協和香料につきましては、茨城県の方が過去に定期的に立ち入りの調査を食品衛生監視としてやっているわけでございます。最近では九年と十一年に立入検査を実施いたしておりますが、その際にはこれらの添加物の使用については確認できなかったという結果でございました。
 今回のような意図的なケースにつきましては、違反の確認というのはなかなか難しい点があるというふうに考えておりますが、私どもも含めまして監視する側の意識についても反省すべき点があるというふうには感じておるところでございます。
後藤(斎)委員 今部長からお答えをいただいたように、過去、九年、十一年について同会社についても立入検査をした、ただ、今回の事案は発見ができなかったということで、今後、報道によりますと、各都道府県に対して、添加物を製造している工場に対して全国的に実態調査をするという話になっているようでありますが、今後どんな形で、いつまで、どんな規模でやられるのか、それについてまずお尋ねをしたいと思います。
尾嵜政府参考人 先ほどの御質問で、一点、私ちょっとお答えを落としておりました。処分の関係についてもお尋ねがございましたので、これにつきましては、五月三十一日付で既に茨城県の方が営業の禁止と違反品の回収というものを命じておるというところでございます。
 それと、今の御質問の関係でございますが、私ども、六月三日付で都道府県等に対しまして、全国の添加物製造施設、およそ二千件余ございますが、それに対しまして緊急に立入調査を行いまして、食品衛生法上認められていない物質を使用して添加物等が製造されていないかどうかということにつきまして、原材料の使用状況及び表示内容などを検査して、違反が確認された場合には回収、公表等の必要な措置をとるように指示をしたところでございます。
 これにつきましては、早急に立ち入りをお願いしておりまして、期限を切ってございませんが、できるだけ早く報告をもらおうというふうに考えておりまして、そこのところは至急立ち入りをした上で報告をいただくということで、再度都道府県等には依頼をしようというふうに考えているところでございます。
後藤(斎)委員 逆の観点から厚生労働省にお尋ねをいたします。
 今回の無許可、無認可の添加物、これは我が国の食品衛生法では認められてはいない添加物でありますが、米国やEUでは香料として逆に認められている。私は従来から厚生労働省の方とお話をしていまして、コーデックス委員会でも、要するに我が国だけが独自の規制を持っているもの、コーデックス委員会でも規制があるもの、我が国は規制がないもの、幾つかの段階によって、いろいろな国でもちろん食文化や生産のあり方も含めて認可の仕組みが違っております。
 なぜ、逆に言えば、米国やEUでは香料として認められているのに、食品衛生法上我が国では認められていないんでしょうか、この三物質ですね。
尾嵜政府参考人 添加物につきましては、食品衛生法上厚生労働大臣の許可を受けることを要件としているわけでございますが、そうでなければ販売等を禁止するということになってございます。
 その際には、海外での使用の可否についての条件というのがございませんで、そういったものの要否は関係なしに、いわゆる業者の側からの指定要請というものを受けて審査をし、認可等の要否を判断する、そういうふうな形で指定制をとっているわけでございます。いわゆるポジティブリスト的な形で運営しているということでございまして、ほとんどの国が、そういう形で諸外国もやっているわけでございますが、それぞれの国によりまして認めておる添加物の内容というのは異なっておるというのが実情でございます。
 今回の三品につきましては、御指摘ございましたように、アメリカとかEUの一部で認められておるというのは事実でございます。こういったことにつきまして、私どもは、食品添加物というのは、できる限りその使用の範囲というのは広くとらないように、できるだけ抑えた形でやるべきであろうというのが基本的な考え方として一つございます。そういったことでこういう制度をこれまでとってきているわけでございます。
 ただ、御指摘のように、海外で、コーデックス委員会なりJECFAというところで科学的な検討がされておるというものにつきまして、我が国で認めていないというものもたくさんございます。そういったものについては、今回のこの事案を契機といたしまして、業界の方に、汎用的に、世界的に使われているもので業界として要請をしたいというものがないかどうか、そういったことも促したいというふうには考えております。
 それと、業界側につきましても、こういった添加物につきましては、これは製造ではございませんが、例えばそういったものを使用する別な食品会社が、そういった添加物を含んだ香料を、今回の場合は香料でございますが、使うわけでございます。そういったときに基本的にはチェックしていただくことが必要ではあろうというふうに考えておりまして、そういう要請もしたいというふうに考えております。
 こういったことで、今回を契機に、私ども、業界側とも十分相談して、今の御指摘のようなことで、世界的な部分とのそのそごというものが少しでも是正と申しますか調整できればというふうなことも考えているところでございます。
後藤(斎)委員 今の国際基準との差、私も消費者の方とお話をしますと、逆に、国際基準があるから我が国だけの基準じゃなくて安心だという指摘もかなりあると思います。ぜひ、部長からお答えをいただいたような形で、積極的に、国際基準があるもの、我が国だけのもの、そういう相互の調整をこれからも続けていただいて、厚生労働省としても、食の全体としての信頼、安全性の信頼回復という点についてさらなる御努力をお願いしたいと思います。
 これに関連しまして農水省にお尋ねをしたいと思います。
 この香料を使ったメーカー、食品産業は農水省の所管でございます。幾つかのスーパーやメーカーで、協和香料の香料を使った商品の店頭からの撤去ということが今進んでいるという報道がされております。お菓子というものがかなり多いわけですけれども、農水省としては、今回のこの無認可添加物の問題で、どのような形でメーカーに対して指導し、これからどんな体制で厚生労働省とも調整をしながら臨まれるのか、お尋ねをしたいと思います。
西藤政府参考人 私どもといたしましては、食品添加物が広範に利用、流通している状況にかんがみまして、食品を扱う企業において製品の自主点検等を行っていただいて、認められていない食品添加物が使われていないことの確認を徹底することが必要だろうというふうに考えております。
 こういう状況の中で、大臣からの御指示を受けまして、食品企業に対しまして、原材料及び製品についての自主点検とその結果についての消費者への情報提供等を早急に実施していただくよう、現在要請をしている状況にございます。委員御指摘のとおり、既に一部のメーカーにおいて、製品、どういう状況でどうだということの公表と回収作業が行われている、そういう状況にございます。
 今後とも、食品衛生法を所管されます厚生労働省、先ほど尾嵜部長の方から今後の方針の御答弁がございましたが、今回の事例においても十分連携をとってきているつもりでございますが、今後も情報の共有化を図りながら対応していきたいというふうに考えております。
後藤(斎)委員 もう一点、今の関連で農水省にお尋ねをしたいと思います。
 先般のJAS法の改正の中で、時間がなかったんですが、加工食品の表示を見ると、香料の部分についてはまとまって書かれているというふうに思います。逆に言えば、保存料のように、ある保存料を明示的に括弧書きをするということで対応していけば、今回のように、三種類の、例えばアセトアルデヒド、ヒマシ油、プロピオンアルデヒドというものが明示をされればこのようなことはもしかして起こらなかったんではないかな。
 というふうなことで、表示について、お答えは結構ですから、そういう点も配慮しながら、これからJAS法が新しくスタートをする、ガイドラインもまたいろいろな形で見直すというお話もいただいておりますので、ぜひその点については今後検討をし、厚生労働省と農水がきちっと連携をして、本当であればもう二度と、二度とというのを嫌になるくらいこの場でもお話ししていますが、ないように、大臣の方からも事務局をぜひ指導しながら対応していただきたいと思います。
 香料については以上で終わりますので、次に移りたいと思います。
 もう一点、本法に入る前にお尋ねをしたいことがございます。
 諫早の水門の開放ということで、四月の二十四日から五月の二十日まで短期調査ということで対応がされました。ただ、二日ほど前に、武部大臣の前任者がテレビで、今回の水門を開いて調査をしたことについて過去の経緯も含めてお話をされておりました。
 昨年の十二月に出たいわゆる第三者委員会、検討委員会の最後の部分に、第一段階として二カ月程度の開門調査、その次の段階で半年程度の開門調査、さらにそれらの結果を踏まえた数年間の開門調査へ進むという記述がございます。
 当時、前大臣のときには、一人でも委員の中から開門すべきだということが出たら直ちにやっていくというお話がありましたが、あれからちょうど一年余を経過して、ようやく今回の短期開門調査ということに至りました。これにつきまして前大臣がテレビでインタビューを受けてお話をされていたのは、私はそう思ったけれどもなかなか事務当局が動かない、結局おれの意見は聞いてくれないんだというような趣旨の話をされておりました。
 先ほど大臣は、自分が大臣でないときはもっと自由に言えたんだというお話もなさっておりましたが、今後、この検討委員会の報告のように、次の段階として、今回の二カ月程度の短期開門調査の以降、半年、数年間ということになっていくんでしょうか。
 それとも、四月の十五日付に大臣が長崎県知事、ほかの方とお話をされた以降、やはり諫早干拓について十八年度に完了させるという方針については、対立の構図を超えて有明再生と諫早周辺地域の振興に向けて新たなスタートが切れたもの、大変ありがたく思っているというふうなコメントが出されております。
 これにつきまして、今後、農水省としては、諫早干拓事業を例えば一たん停止して、サスペンドをして中長期開門調査をしていくのか、それとも、あくまでも十八年という完了に向けて進めていくのか。この件について、現在でのスタンスをお教え願いたいと思います。
宮腰大臣政務官 お答えいたします。
 まず、中長期の開門調査の件でございますけれども、諫早湾干拓事業の短期の開門調査につきましては、御指摘のとおり、大潮、小潮等を含む四月二十四日から五月二十日までの約一カ月間、海水を導入いたしまして、その後、排水門を通常の操作に戻し、六月中旬のかんがい期までに調整池を再び淡水化することといたしておりまして、現在まで予定どおり調査を進めてきているところであります。
 農林水産省におきましては、この短期の開門調査に加え、諫早干潟に類似した現存干潟における実証調査と、開門調査により得られる情報も活用したコンピューターによる解析調査の三つの手法を総合的に組み合わせた開門総合調査を実施しているところでございまして、これにより、諫早湾干拓事業の有明海の環境への影響をできる限り量的に把握したいというふうに考えております。
 現在実施しております短期の開門調査につきましては、既に潮受け堤防によって背後地で期待された防災機能が発揮されていること、潮受け堤防の周辺地域で多くの住民が生活をし、農業、漁業等を営んでいること、本事業については早期完了を強く求められていること等の観点を踏まえ、採用する調査方法を検討したところでございます。
 中長期の開門調査につきましては、これらの観点に加えまして、現在進められている有明海を再生するための新法制定の動き、短期の開門調査で得られた成果及びその影響、その他の各種調査の動向、ノリ作期との関係等の観点をも踏まえ総合的に行った上で、新たに平成十四年度中に設ける有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経て、農林水産省において判断することといたしております。
 工事の中止の御指摘等々もありましたけれども、諫早湾干拓事業は、平成十一年三月の潮受け堤防完成後、台風や洪水時だけではなくて、常時の排水不良に対しましても防災効果が調整池周辺で着実に発揮をされ、地域住民から非常に感謝されているわけでございまして、また、地元自治体や農業関係者を初めとする地域住民から、概成した土地の早期利用を強く要望されております。
 このような中、本事業は、昨年行いました総合的な検討を踏まえ、土地改良法に基づく事業計画の変更手続を終了したところでありまして、新たな事業計画に沿って、平成十八年度中に完成するよう事業を推進しておりまして、工事を中止するということは考えておりません。
 以上であります。
後藤(斎)委員 大臣、本論にだんだん近づいていきますけれども、水産基本法が昨年六月に制定をされ、今回の四法もこの水産基本法に基づく基本計画の中身の具体化というふうに私自身はとらえております。
 この中に、大臣、ポイントというので大変恐縮ですが、「水産に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策」という一つ目に、「水産物の安定供給の確保に関する施策」という中に、水産動植物の生育環境の保全、改善という部分があります。私は、この点に着目して、今の諫早の問題もあえて今御質問申し上げたわけです。
 これは、私は、これから本論に入る中での資源管理型漁業に大きく関連をしている、この諫早の問題は。ですから、私は、そういう視点というものが、もう何度もこの場でもお話をしている、BSEが発生した以降、食料、農業政策の視点を大臣は大きく変えられました。少なくとも今農水省のスタンスも大きく切りかわろうとしております、一〇〇%とはまだ言えないまでも。
 そして、昨年の水産基本法で二つの大きな柱が立っております。水産資源の持続利用の確保ということで、国民に対する水産物の安定供給、そして水産業の健全な発展、これに加工、流通も含めた水産業全体を対象とするという視点の拡大みたいなものはありますけれども、これはまさに昨年の主な論点であって、今はまさにこの食の安全という中に水産物も当然入るし、そしてあわせて、足腰、要するに人的部分をどう育てていくかという視点が、これに追加をして、私は今この基本法を大きく取り巻く環境が少し切りかわるのかなというふうに思っています。
 大臣、昨年の基本法の制定、そして三月二十六日ですか、水産基本計画が閣議決定をされ、それを踏まえた今回の四法案の提案をした基本的な趣旨というのを、私は、安全性であるとか環境の問題だとか、そういうものを踏まえてどんな形でこれから水産行政を持っていくのか、大臣に基本的な方針についてお尋ねをしたいと思います。
武部国務大臣 諫早に関連することは宮腰政務官が対応しておりまして、現地に何度も参っておりまして、政務官に答弁をお願いいたしましたことを御理解いただきたいと思います。
 水産基本法の制定につきましては、やはり水産物の供給を通じまして、健康で豊かな日本型食生活の一翼を担うほか、地域経済の振興等に大きな役割を果たしている我が国水産業でありますが、周辺水域における水産資源の悪化、漁業就業者の高齢化の進展などの状況に直面している、そういう問題が今ございます。
 こうした状況の中で、委員御指摘のように、国民に対しまして安全で新鮮な水産物を安定的に供給していくにはどうしたらいいかということと同時に、水産業を活力ある産業として発展させていくことが喫緊の課題だ、このように考えておりまして、昨年六月の水産基本法の制定はこの精神にのっとって法案化されたものでございます。
 この制定を踏まえまして、本年三月には、今御指摘のとおり、水産基本計画を策定して今後の政策対応の方向性を示したところでございまして、この基本計画を指針としまして、消費者第一の水産物の供給を目指して、安全で安心な水産物供給体制の構築、それから資源回復の推進、今回の法律改正等による漁業経営の改善等を通じた水産業の構造改革、開かれた漁村の振興のために都市と漁村の共生、対流による地域の活性化、こういったことに重点を置いて、国民の皆様の参加と合意を得ながら、水産基本法の理念の実現を目指した施策の推進に努力していきたい、このように考えているわけでございます。
 そういった線に沿って、有明海の再生につきましても今議員立法で新法制定に向けて与野党御努力いただいている、このように聞いておりますし、私どももこの成立に大きな期待をかけているわけでございます。
 ただ、現実問題といたしまして、私の立場からいいますと、やはり過去、現在、未来という問題を一つ一つ輪切りにできないなと。そこに継続性があるわけでありまして、十四年度からの農林水産省の水産関係の公共事業も、漁港漁場整備法に基づきまして、環境保全型といいますか自然再生型の事業に転換いたしましたし、アウトカム目標に基づいてこれを進めていく。その中には、干潟、藻場づくり等についても一つの大きな目標にしているわけでございます。
 同時に、この農村振興局の事業も十四年度から環境創造型、自然再生型事業に全部切りかえているわけでございます。しかし、過去のものがまだ半分も終わっていないというならまた別ですけれども、もう仕上がりを迎えつつあるというようなところをどうしていくかということが、私どもとしては、現実問題、真剣に考えていかなきゃならぬ問題であります。
 これから過去、現在、未来ということを真剣に考えてみるならば、先ほど諫早湾の問題につきましても、四月十五日に、長崎県知事や福岡県、佐賀県、熊本県の代表の知事さんたち、あるいは三県漁連の皆さん方との話し合いにより、先ほど政務官が申し上げましたような新しい方向づけに向かって今始まっているわけでございます。そういうことの御理解の上で進めてまいりたい、このように考えているわけでございます。
後藤(斎)委員 大臣があえて諫早の問題について触れていただいたので、もう一点だけ。これは質問ではありません。
 なぜ諫早の問題がこれだけ大きくなってしまったかというのは、まさに厚生労働、農水、これは二省庁の関係であります。そして、農水省の中でも、局の中のいろいろな綱引きがあるというふうに私は正直言って思います。水産庁、水産業として基本計画に基づいたその指針、方向性と、農村振興局が持っているその指針、方向性、これが今の時点であれば、今回の水産組合法の改正についてもそうですが、いろいろな融合をこれから法律についても制度についてもしていかなきゃいけない。私は、その視点を持っていただきたいということで、先ほど政務官にもお尋ねをしたということをぜひ御理解を賜りたいと思います。
 そして、この水産基本法を踏まえた今回の水協法の問題ですが、その前に、先ほど大臣も触れられました資源管理型漁業、これがこの四法に共通して通じている一つの課題かなというふうにも思います。もう一つ、資源回復型漁業、これはそれぞれ目的が違うと思いますが、水産庁長官、資源管理型漁業と資源回復型漁業、この違いについて簡潔に御説明をいただきたいと思います。
木下政府参考人 お答えいたします。
 資源管理型漁業あるいは資源回復型漁業、いずれも、水産資源を持続的に利用しながら漁業をやっていくという意味では同じような考え方、趣旨だろうというふうに思います。
 ただ、経緯について若干申し上げますと、資源管理型漁業というのは、平成三年以来、例えば秋田県のハタハタなどに代表される魚種に成果を上げたわけでございますけれども、生産者の自主的な取り組みとして実施をし、それについて国が援助をする、そのような取り組みについてをこういうような呼び名で呼んでいるわけでございます。
 また一方、資源回復型というふうに最近言っておりますのは、そのような自主的な取り組みではなかなか限界がある、あるいは漁業者間の自主的な取り組みでは困難なもの、これらのものにつきましては資源回復計画をつくろうということで、国、県で取り組んでいるところでございます。
 いずれにいたしましても、両方とも水産資源を持続的に利用しようということでは同じようなねらい、考え方だろうというふうに思っております。
後藤(斎)委員 今回の水協法の改正の中で、農林中金が漁協や信漁連から信用事業の譲渡を受けることができる。これは、まさに先ほども御指摘をしましたように、昨年の農協法の改正と同じ趣旨で、できるだけJAグループ全体で金融を盛り立てていこうという趣旨での昨年の改正であると思いますが、農林中金が今度信漁連や漁協までもその任に当たるということであると、逆に言えば農林中金の負担は増すのかなという指摘もあるのではないかなと思います。
 あわせて、今までスキーム的には同じものがあったはずなんですが、この農林中金を中心とした漁協関係も、なぜ今の時点で農林中金が事業継承を受けるように改正をしたのか、お尋ねをしたいと思います。
木下政府参考人 農林中金、信漁連等々の関係でございますけれども、農協系統組織は、平成五年以来、いわば従来の組織三段を組織二段にしていこうという中で、農林中金と信連統合の道を開いたわけでございます。一方で、漁協系統でございますけれども、県段階の漁連あるいは信漁連の存続を前提としていたことから、このような道は開いてこなかったというのが実情でございます。
 一方で、今回の法改正でございますけれども、四月一日からペイオフ解禁になるなど、金融をめぐる状況が大きく変わってきているわけでございますけれども、この中で、万一の破綻に備え、漁協系統としてのセーフティーネットを構築する必要があるということで、漁協、信漁連等から、万が一の措置ということで農林中金への事業譲渡の道を開くこととしたところでございます。
 なお、基本方針の策定、漁協、信漁連の指導等、農林中金の負担が増すということも確かに考えられるわけでございますけれども、系統金融機関全体の全国組織として、そういう意味での責任もぜひ担っていただきたいというふうに考えておるところでございます。
後藤(斎)委員 先ほどの資源管理型漁業の中に、つくり育てる漁業ということで、栽培漁業、そして、いわゆる養殖というものがあると思います。
 先般のJAS法の改正の中でもお尋ねをしましたが、養殖と天然物というのはなかなか見分けがしにくい。一方で、養殖と天然物の価格差というのが非常に大きい。あわせて、養殖をする際に、抗生物質やワクチンの投与が行われなければ、なかなか養殖魚というものもこれまた成長しない。いろいろな相反するものを抱えながら対応しておりますが、冒頭大臣からお話をしていただいたように、水産物についても安全性というものは大変重要であるというお話がございました。
 例えば、養殖において抗生物質やワクチンの投与、これは、だれがきちっとしてものを使っているのかどうかチェックしているんでしょうか。あわせて、JAS法についても、安住委員からの指摘だったと思いますが、カキについてこれから科学的な分析も含めて対応していくというお話もたしか長官がされていると思いますが、簡潔で結構でございます、その二点についてお尋ねをしたいと思います。
木下政府参考人 まず第一点のお尋ねでございますけれども、抗生物質なりワクチンなどの水産用医薬品でございます。
 それぞれ、薬事法十四条に基づきまして、品質なり有効性、安全性の確保を図り、効能なり効果、残留性等を審査の上、農林水産大臣が承認になったもののみ製造されているという状況でございます。このような水産用医薬品の使用でございますけれども、薬事法の規定によりまして、対象の動物、用法、用量等、基準を設定しているところでございます。
 今お尋ねの、そのような使用基準の遵守とその適正使用についてどうしているのかというお尋ねでございますけれども、各都道府県を通じまして、まずは適正使用を図るためのパンフレットの配布を含めた啓発事業、第二点といたしましては、養殖現場への防疫対策定期パトロールを実施しておりまして、その中で具体的な適正使用のための指導を行っている、第三点は、出荷時の養殖用医薬品残留検査を活用いたしました水産用医薬品の適正使用を行っているところでございます。
 いずれにしましても、私ども、持続的に養殖漁業を推進していく観点から、これまでもそれぞれの海域の水質をやはりきちんと守っていく必要があるだろうというふうに考えておりまして、基本的には、そういう中でこれらの使用をできるだけ少なくするという方向で指導しているところでございます。
 第二点目の輸入カキの点でございますけれども、私ども、DNA分析のほかに、もう一つは、同じ場合にはなかなか困難でございますので、生育環境なり餌料に由来する微量成分分析につきまして、本年度から十六年にかけて研究を進めていきたいというふうに考えております。
後藤(斎)委員 水産庁長官、遊漁法の改正も資源回復や資源管理にとって効果があるというふうに言われておりますが、その点について、本当に簡潔で結構でございます、どんな効果があるのか、お答えを願いたいと思います。
木下政府参考人 今回の遊漁船業法の改正によりまして、一つは、それぞれの主任者を置くということで、それぞれの海域によりますいろいろな規制があるわけでございますから、そのような規制を十分遵守した形での遊漁船業が行われる。そのような中で、基本的には資源管理に資するというふうに考えております。
後藤(斎)委員 大臣、時間もそろそろないので、最後にお尋ねをしたいと思います。
 きょうは、幾つか質問通告した中で、ちょっと時間がないのでお尋ねできなかった点があるのですが、今回のこの水産四法の改正というのは、冒頭も大臣お話をしましたように、基本計画に基づいてそれを一つずつ対応していって、全体の水産業、そして国民生活への安定供給に資するということであります。
 食の安全というものにもちろん水産物も入ります。そして、私は、今大臣も入られている関係閣僚懇で、これからの食の安全組織のあり方全体を考えていかれると思います。私は、水産庁も、今生産にウエートを置いた仕事と消費にウエートを置いた仕事、この二つが相まって対応されている。そこについて、水産庁も、大きな組織改正全体のときには、食の安全というものは、切り離すというのが適切かどうかは別としても、あるべきその組織のあり方というのを考えていくべきだと私は思うのです。
 大臣、その点について、いかがでしょうか。
武部国務大臣 今、政府部内で、関係閣僚会議でこの安全行政の見直しを進めているわけでありますが、この概要が固まってきました。それに伴いまして、農林水産省の業務、組織の見直しもやらなきゃならない、こう思っておりますし、言うまでもなく、安全な水産物の供給という観点も含めて、消費者サイドに軸足を移して農林水産行政を変えていくということを宣言しているわけでありますから、当然水産庁においても業務、組織の見直しは検討しなきゃならない、このように考えております。
後藤(斎)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。
 次に、楢崎欣弥君。
楢崎委員 本日最後のバッターで、皆さんお疲れのようですし、観客も少ないようですので、なるべく早く終わりたいと思います。
 冒頭、先月、五月二十日から二十四日にかけて開催されましたIWC、国際捕鯨委員会下関年次会合について、三点ほどお伺いをいたします。
 私も、その前日に開催されました持続的利用を訴える関係国国会議員で組織するSUPUの会合に先輩議員と一緒に参加をしました。この第五十四回IWC会議は、鯨類の持続的利用派と反捕鯨派が拮抗するなどの変化も見られたんですけれども、一方では、相も変わらず総会による科学委員会軽視、アイスランドの加盟拒否に見られるように、感情的な部分が先行する、そういうIWCの存在意義をも問われかねない状況もまたこれから持続することになったと思います。
 我が国が実施している鯨類の捕獲調査は、IWCの科学委員会から、鯨の資源管理に有用な情報をもたらしているとの高い評価を受けているんですね。前回までのIWC本会議では、この科学委員会での議論を無視する形で、調査捕鯨の自粛を求める決議が、一九八七年以来毎年採択されてきましたが、それがことしの総会では採択されずに終わった。やはり確かな状況の変化は見られると思います。
 我が国は、この調査捕鯨について、これは国際捕鯨取締条約に基づいて、権利として、予定どおり毅然として粛々と実施していくべきと考えますけれども、政府の方針をお聞かせください。
武部国務大臣 委員御指摘のとおり、IWC科学委員会では、第二期北西太平洋鯨類捕獲調査予備調査の結果が北太平洋の鯨類資源と漁業資源の相互作用の解明に寄与するというふうに評価されたところでございまして、本格調査計画案につきましては、調査の方法、資源への影響につきまして、これまでどおり両論併記ということになりはしましたものの、計画の目的はIWCの関心事項に合致しているわけである、かように思います。したがいまして、IWCより求められている必要な情報を提供している旨合意したわけであります。
 農林水産省としては、所要の手続きを踏まえまして、計画原案に沿った実施の準備を整えてまいりたい、かように考えております。
楢崎委員 今回の総会では、我が国の沿岸小型捕鯨によるミンククジラ五十頭、この暫定救済枠の要求がまたアメリカ等の反捕鯨国の反対によって否決をされました。その一方で、アメリカは、アラスカ原住民によるホッキョククジラの捕獲枠を要求したんですね。これは資源状態がよくない種なんですね。さすがに、自国の捕鯨は容認しようとしたアメリカのダブルスタンダードに、我が国のみならず、批判が集中しました。結果、このアメリカの要求は否決をされました。私どもは、捕鯨に依存するアラスカの人たちの立場は同情しますけれども、これはあくまでも利己主義的なアメリカの姿勢が批判された結果だと思っています。
 しかし、我が国も、沿岸小型捕鯨によるミンククジラ捕獲に向けて努力していかなければいけない状況は変わっていない。この点について政府の方針をお聞かせください。
木下政府参考人 今回のIWC総会の中で、沿岸小型捕鯨につきましては、付表修正に必要な四分の三の賛成を得られず、救済枠が確保できなかったという状況でございますけれども、我が国の関係国に理解を求める働きかけを反映いたしまして、過半数に一票差までの僅差となったというふうに考えております。これは、今後の我々の動きにとっても明るい材料というふうに認識をしているところでございます。
 今後とも、IWC加盟国への働きかけに努めるとともに、IWC以外の場でも、沿岸小型捕鯨地域の現状救済を訴え、IWCをめぐる環境の改善へ取り組んでいきたいというふうに考えております。
楢崎委員 次に、IWC加盟国の分担金についてですけれども、発展途上国の負担を軽減する暫定措置が採択をされました。これによって発展途上国のIWCへの加盟が促進されることになると思います。
 このことはまた、海洋生物資源の持続的管理、利用、そして鯨類の捕食問題について我が国と共通の理解を持つ国が増加する、結果としてそれがIWCの正常化にもつながると思うのですが、政府の見解をお聞かせいただきたいと思います。
木下政府参考人 委員御指摘のとおり、今回の総会におきまして、アンティグアバーブーダ、それからアルゼンチンの共同提案の形で、今後三年間でございますけれども、開発途上国の分担金の負担軽減を図るための措置が提案され、採択されたところでございます。
 私ども、今回の措置が採択された結果、我が国としては、野生生物の持続的利用に理解を示す傾向にあります開発途上国のIWCへの加盟の道が拡大するというふうに考えておりまして、そういう意味で、IWCの資源管理機関としての正常化が進むというふうに期待をしているところでございます。
楢崎委員 少なくとも関係各位のこれまでの御努力によって着実に状況変化が生まれつつあると思いますし、そのことに期待すると同時に、私たちもバックアップをしていきたい、このように考えます。
 次に移ります。
 武部農水大臣が誕生して、私が初めて相対しましたのが水産基本法だったと記憶しています。望ましい漁場環境のあり方が具体的に示されなかったことがなし崩し的に漁場環境の悪化を許してきた面があるのではないか、そういう観点から、そのときは質問の半分以上を有明海問題に費やしました。この有明海問題はいずれ集中的に審議をされると思いますし、私もそのときにじっくりとやらせていただくつもりですけれども、一つだけ、宮腰政務官のこの有明海問題に関する発言について、その真意を確認しておきたいと思います。
 五月二十二日、宮腰政務官は、潮受け堤防排水門の短期開門調査終了の報告に長崎県庁を訪問されました。その日の発言についてですが、データ分析の進みぐあいによっては判断が来年にずれ込む可能性があるという発言が報道されたわけですけれども、これは中長期開門調査に関して述べられたものだと私は思ったんですが、この発言そのものに間違いはありませんね。先ほど説明は聞きましたから、イエス、ノーで結構ですから。
宮腰大臣政務官 間違いありません。現存干潟における調査、これは四季を通じた調査ということでございまして、春先のデータの分析、できる限り早く進めたいと思っておりますけれども、これが春先のデータということでありますから、年度いっぱいにデータがきちっと分析できるか、その辺がおくれる可能性もあるといった趣旨でございまして、できる限りこの分析を早くしたいということではありますけれども、四季を通じた調査であるということでそういう発言をさせていただいたところでございます。
楢崎委員 今、答弁にありましたように、このデータ分析というのは短期開門調査の結果のみならず各種調査のデータ分析と理解するわけですけれども、判断が来年にずれ込むとあるこの判断は、中長期調査を実行するかどうかの判断ということですね。
宮腰大臣政務官 先ほど申し上げましたように、新たな検討のための組織は本年度中に設置をするということでございまして、そこで検討をしていただいた上で最終的に行政が判断をするということでございます。
 ですから、今回の調査の結果については、既に、例えば短期の開門調査の結果につきましては、塩分濃度でありますとかそういうものにつきましてはリアルタイムで公表させていただいておりまして、六月の下旬で一通りの区切りをつけて終わるわけでありますけれども、そういうもののデータを分析するほかに、現存干潟でのデータの分析等々も要るということでありまして、結論というのは、そういうものを踏まえて新たな検討の場で結論を出していただいて、最終的に農林水産省が判断をするということでございます。
楢崎委員 いや、だから、その判断というのが中長期開門調査をやるかどうかの判断ですねと聞いているんですよ。どうですか。
宮腰大臣政務官 その新たな検討の場で検討していただいて、最終的な判断は農林水産省が行うということでありまして、そういう意味の判断は平成十五年度にずれ込む可能性もあるということでございます。
楢崎委員 では、ちょっと言い方を変えましょうね。
 どのようなデータ分析結果が出れば中長期開門調査が実行されるのかわかりませんけれども、少なくとも、分析結果次第ではこの開門調査をやることは否定しておられない、そういう理解でいいですね。イエス、ノーで。
宮腰大臣政務官 私どもといたしましては、すべてのデータを新たな検討の場に供して、そこで判断をしていただくということでございます。最終的には、国が責任を持ってこの判断を行うということでございます。
楢崎委員 では、分析結果次第では、この開門調査をやることは否定しないというふうに理解しますよ。そうでないと、第三者委員会の結論をこの時点で無視することになりますからね。
 五月二十日に福岡県の有明海漁連が諫早干拓工事再開反対の決議をしました。宮腰政務官は、この漁連の動きに対して、同日、つまり、五月二十二日ですが、二〇〇六年度の工事完了を合意した四月十五日の約束は極めて重たい、何があっても六年度完成は厳守すると発言されています。間違いありませんね。
宮腰大臣政務官 趣旨的には大体そのとおりであろうというふうに思っております。
楢崎委員 四月十五日の約束とあります。私はそこにいませんでしたから、どう約束されたのかはわかりませんからお聞きしますが、これは覚書か何か取り交わされたんですか、どうですか。四月十五日の約束ですよ。どういう約束をされたのか。
宮腰大臣政務官 先ほど大臣の方からも御答弁を申し上げましたとおり、武部大臣、長崎県知事、有明海の三県漁連会長、有明海の関係の三県の知事等との会談におきまして、短期の開門調査を実施するということ、それから平成十八年度に事業を完了させるとの農林水産省の方針について御理解をいただいたということでございます。
 このことにつきましては、これまでの対立の構図を超えて、有明海の再生と諫早周辺地域の振興を進める第一歩であるということについて、関係者の御理解を十分にいただいたというふうに考えております。
楢崎委員 政務官、福岡県有明漁連の反対決議の内容ですけれども、この漁連は二十六の漁協から成り立っているんですね。五月二十日の総会に、欠席したのは一漁協、残り二十五漁協。この投票結果が、二十一対四。圧倒的な差で工事再開反対の決議がされているんですね。
 政務官の言われる約束は、少なくとも福岡県漁連では組合の総意をあらわしたものではなかった。つまり、政務官の言われる極めて重たいものではなかったんですよ。むしろ、福岡県漁連の決議を重たく受けとめるべきではないですか。
宮腰大臣政務官 有明海に関する三県漁連の皆さん方、代表の方々にお集まりをいただいて、関係者の方が全部お集まりをいただいた場で御理解をいただいたということについては、極めて重い意味があるというふうに考えております。
楢崎委員 だから重たくなかったと言っているんですよ。福岡県漁連が反対の決議をした、その決定の方が重たいんですよ。それから、これからの約束事は、組合の総意かどうか確認した方がいいですよ。
 そこで、大事な点をお聞きしますけれども、何があっても六年度完成は厳守するという発言は、これは、ノリ対策の第三者委員会が言うところの数年にわたる長期開門調査はやらないということを宣言していることに等しいんですよ。大変な発言なんですよ。そういうことなんですか。
宮腰大臣政務官 先ほど申し上げましたように、四月十五日、関係者の方々がすべて出席をされた場での理解ということについては極めて重いというふうに考えております。また、長崎県諫早市等の地元住民につきましては、潮受け堤防等が発揮している防災効果を高く評価いたしておりまして、これも先ほど申し上げましたけれども、防災工事の早期完成を望んでいる。あるいは、長崎県地元市長、農業関係者からも、平坦で大規模な干拓農地の早期の創出についても強く要請をされているということでございまして、短期開門調査の実施、同時に平成十八年度までの工事完了について、その双方について理解をいただいたものというふうに重く受けとめさせていただいております。
楢崎委員 ではもう一度確認しますけれども、四月十五日の約束約束と言われていますけれども、それは覚書か何か交わされたんですか。
武部国務大臣 覚書とかそういったものを交わしてはいませんが、長崎県の知事、また長崎県の議会議長、長崎県漁連、それから福岡、佐賀、熊本の漁連の会長、また三県の知事さんたちが御同席をいただいて、私から、地元の厳しい声はよく承知しているけれども、有明海再生に向け、短期の開門調査を容認いただきたい、また三県漁連に対して、長崎県との間で昨年十二月に合意した事業の見直し案による平成十八年度事業完了に向けた事業の円滑な推進に協力してほしい、こういうようなことに対して双方合意したということでありますから、私は、これは非常に重いものである、こう思いまして、有明海再生に向けての新たなる第一歩だ、こういうふうに申し上げた次第でございまして、私は、このことは非常に重いものがある、このように受けとめているわけでございます。
楢崎委員 では大臣、いいですか、六年度の諫早工事完成を前提にするなら、物理的に長期開門調査はやれない。私は、先ほどのデータ分析結果次第では開門調査をするという、これは私の理解ということでも結構ですが、そのことを私自身は、では重たく受けとめる、結果的にその政務官の答弁とも相反する、矛盾するんですよ。
 大臣、結局、中長期開門調査はやるんですか、やらないんですか。どうですか。
武部国務大臣 中長期開門調査の実施については、現在進められております有明海を再生するための新法制定に向けての動き、また短期開門調査で得られた成果及び当該調査自体による影響、その他の有明海の環境改善のための各種調査の動向、先ほど宮腰政務官が申し上げましたことを、私、今繰り返して申し上げているわけでありますが、ノリ作期との関係等の観点を踏まえた総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設ける有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経て、その上で農林水産省において判断をするという考えでございます。
楢崎委員 ちょっと本論に入る時間がありませんから。私は前にも言いました。政府や関係議員の方があっちを向いて理解を示し、こっちを向いて理解を示す、ある意味では、政務官の長崎における発言もそのように受けとめられるんですよ。それが現場の混乱を招き、最終的には政治不信を招く、この有明海問題、近いうちに今の続きもじっくりやりますから。
 昨年、四十年ぶりに日本漁業がかじを切りかえる水産基本法が成立したわけです。日本漁業が生き残るための新たな方向づけが示されたと私は思います。これをもとに、さらに具体的な水産計画へどう肉づけしていくかが問われる、それが今度の水産四法であろうと思います。基本法の特徴は、資源の持続的利用を柱に打ち出した点であろうと思います。そのかなめとなるのが資源管理型漁業ですね。
 そこで、水産庁は昨年十月、日本周辺の海を三ブロックに分けて、地域ごとに資源回復計画をつくって実行する広域漁業調整委員会を発足させましたね。これは沿岸漁業者、沖合漁業者が共同で減船、休業覚悟で資源回復に乗り出す。これも初めてなんですが、この分けられた三ブロックの一つ、日本海・九州西広域漁業調整委員会の九州西部会が昨年十一月に開催されたんです。
 このときに、水産庁が示した資源状況をあらわす資料を見て、出席された漁業者の委員は愕然とされたんですね。現場の人たちですから、魚が少なくなったということは実感としてあったらしいんです。それが具体的に数値として突きつけられた。さらには、その減少の理由が乱獲にあるということも相まって、大変な危機感が会場を埋めたそうです。
 この九州西部会では、特に緊急性の高い、マサバ、マダイ、アマダイ、ヒラメ、ウルメイワシ、そしてトラフグ、この六魚種について資源回復計画を策定することになりました。本年度はさしずめ二魚種程度の計画を策定します。当然、資源回復のために減船とか休漁とか、漁業者にとって痛みを伴う犠牲を払わなければいけない状況も生まれると思います。
 そこで、漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案では、整備計画に従って行う資源回復のための休業等が円滑に実施されるよう農林漁業金融公庫の資金種類を拡充して、休業、漁具、漁法の転換等の資源回復のための取り組みに伴い必要となる資金の追加を行うこととしているとなっていますね。
 そこで、お伺いしますけれども、この九州西部会で策定されている資源回復計画に伴う減船、休業についても、この支援措置の対象になるんですか、どうですか。
木下政府参考人 昨年度より九州西部会で検討されておりますけれども、本年度はトラフグなりアマダイといった魚種が検討対象になったところでございます。私ども、九州西部会、本年九月に予定をされているというふうに聞いておりますけれども、その決定を受けまして具体的な資源回復計画の作成に着手することとしております。
 このような計画に基づいて実施をされる資源回復措置につきましては、改正漁特法等に基づいて支援を行っていきたいというふうに考えております。
楢崎委員 わかりました。資源回復を目指す人たちの努力が反映される改正案であってほしい、このように思います。
 そこで、改正案そのものについてお伺いしますけれども、現行の整備計画制度を改正される趣旨といいますか、近年整備資金の融資実績も少ないようですけれども、現行制度が果たしてきた役割、これをどう評価して改正ということになったのか、お聞かせください。
木下政府参考人 現行の中小漁業構造改善制度でございますけれども、昭和五十年代当初の状況を反映いたしまして、カツオなりマグロ漁業等の特定の漁業種類を対象にして、業界全体として規模の拡大等を進めようとする仕組みでございます。これまで、農林漁業金融公庫資金の融通等を通じまして業界全体での構造改善の推進に役立ってきたというふうに評価をいたしております。
 ただ、最近の状況でございますけれども、水産資源の悪化が進む中で、業界一丸となって経営規模の拡大を進める制度は実情に合わなくなってきているというふうに考えているところでございまして、このような観点から、今回見直しをすることとしたところでございます。
楢崎委員 もう一点お伺いしますが、改正案で措置される資金融資、これは将来の返済が前提ですね。水産資源が回復して収入がふえるかどうかは不確実でありますし、減船に伴って漁業離職者も出てくると思うんですが、この点についてはどのようにお考えですか。
木下政府参考人 資源回復措置でございますけれども、この財源につきまして、国が三分の一、県が三分の一負担し、漁業者の三分の一につきまして、先ほど申し上げたような公庫の融資で対応するという点でございます。
 今回の削減でございますけれども、資源の回復目標あるいは達成年次につきまして、科学的根拠に基づきまして漁獲努力量削減の程度等を実施することとしております。
 今後の資源回復後の漁獲量の増加、あるいは魚価の見通し等につきましては、確かに不確実性はあるわけでございますけれども、資源回復計画に基づきましての漁業者の負担でございますが、将来の水揚げ金額の数%以内にとどめるよう作成しているところでございます。このような観点から、十分に返済可能な水準というふうに理解をいたしております。
楢崎委員 もくろみどおりいけばいいんですけれどもね。
 話はもとに戻りますけれども、この九州西部会は、地域的に大きな課題を抱えているんですね。つまり、この部会が担当する日本海、東シナ海、ここで操業するのは日本漁船だけではないということです。つまり、日中韓の入会的な漁場になっている。そこで、やはり中国、韓国を巻き込んだ資源回復計画でないと実効は上がらないんじゃないでしょうか。
 このことは水産基本法のときにも言いましたけれども、この中韓両国に対する働きかけ、現況はどうなっているんでしょうか。
木下政府参考人 今回の資源回復計画をつくる際にも、委員御指摘のとおり、まさに日本の国内、日本の水域内で対応できる魚種ということを念頭に置きながら、現在検討を進めているところでございます。
 また一方で、韓国なり中国の関係でございます。私ども、日韓あるいは日中ということでそれぞれ協定を結んでいるわけでございますけれども、まさに日中韓、このような海域に回遊する資源につきまして、三国が共同して対処することが不可欠であるというふうに考えております。このような考え方のもとに、昨年五月でございますけれども、三国間で意見交換を行ったところでございます。
 今後とも、このような日中韓の三国間におきます意見交換が定例化するように、中国あるいは韓国に対しまして働きかけを強めていきたいというふうに考えております。
楢崎委員 日韓の場合、毎年更新する操業許可隻数の割り当てを決めるだけでも大変という事情はあると思いますけれども、粘り強い話し合いを期待したいと思います。
 そこで、この日韓両国によるトラフグ、これの共同放流が昨年十一月、山口県下関沖の響灘で行われました。このトラフグは、両国にとっても貴重な水産資源ということで、九五年から毎年実施されているわけですね。近年、水揚げの二割は放流されたもので、放流自体の効果は高いと報告されておるわけですけれども、しかし、資源量から見れば減少の一途をたどっている。中央水産研究所の我が国周辺水域の漁業資源評価によれば、理想的には禁漁にすることが望ましい。そこまで落ち込んでいる。
 このトラフグの資源としての悪化要因は、何が原因としてとらえてありますか。
木下政府参考人 委員御指摘のとおり、トラフグの資源でございますけれども、トラフグの東シナ海、日本海西系群の資源状況でございますけれども、近年低位水準で減少傾向にあるというのは御指摘のとおりだと思います。
 この原因でございますけれども、産卵場近傍海域で定置網等で漁獲される産卵親魚がやはり一九八〇年代後半から減少しているという点でございます。近年では、多いときの一ないし二割程度になっております。私ども、同系群の減少原因は必ずしも明確ではございませんけれども、このような状況を踏まえますと、産卵のために回遊してくる我が国近海漁場での過剰な漁獲、あるいは成魚の索餌場でございます東シナ海、黄海での過剰な漁獲が影響しているというふうに考えております。
楢崎委員 昨年も言いましたけれども、このトラフグの産卵場の一つが有明海なんですよ。トラフグも含めて、有明海の再生が水産資源回復の重要なキーポイントになっている、このことを強く申し述べておきたいと思います。
 もう一つ、日本と韓国が共同で管理しています日本海の暫定水域、これが韓国漁船に占拠されて日本漁船が事実上締め出されている状況にあると聞きました。こういうトラブルを避けるための共通のルールづくりが民間協議によってなされてきたと思うんですが、日本の漁業団体は、もう民間協議では限界だと、政府間の協議を求めているんですね。しかし、韓国側は民間協議にゆだねるという主張を崩していない。政府はこれにどう対応されるんですか。ほっておかれるつもりですか。
武部国務大臣 委員御指摘のように、暫定水域の資源管理問題を日韓両国政府間で協議するよう、韓国政府に累次申し入れをしているのでありますが、竹島問題がありまして、韓国政府側は協議の実施に多大な問題を抱えているというふうに承知しておりまして、日韓漁業共同委員会の合意に基づきまして日韓の漁業者団体間協議が行われているわけでありますが、休漁期間の設定等、一定の成果が私は出てきている、このように思います。
 しかし、政府としても、引き続き韓国政府が協議に応ずるように強く求めていくとともに、また、民間協議をもしっかり支援してまいりたい、このように考えております。
楢崎委員 要は、どちらかがたくさんとることでどちらかがその被害を受けるという短期的な利害得失にとどまらないわけですね。将来にわたって持続可能な漁場として両国が資源管理に協調する、それがお互いの漁業に長期的な利益をもたらす、そうした視点に立って、両国間で操業秩序というのですか、それを確立するべきである。そういう意味では、政府の責任は重たいと思うのですね。ここは政府がやはり指導力を発揮すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
武部国務大臣 先ほども申し上げましたように、政府としても、さらに強く韓国政府に協議に応ずるように求めてまいりたい、このように思います。
楢崎委員 当事者である民間交渉に任せていては、生々し過ぎて決着はつかないと思います。政府間の交渉の必要性、これ、粘り強く交渉されることを期待しまして、きょうはこれで終わります。
鉢呂委員長 これにて楢崎欣弥君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明六日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十一分散会


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