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第15号 平成14年6月6日(木曜日)

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平成十四年六月六日(木曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 鉢呂 吉雄君
   理事 岩永 峯一君 理事 大村 秀章君
   理事 金田 英行君 理事 原田 義昭君
   理事 佐藤謙一郎君 理事 鮫島 宗明君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      岩倉 博文君    岩崎 忠夫君
      金子 恭之君    上川 陽子君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      小西  理君    後藤田正純君
      七条  明君    高木  毅君
      西川 京子君    浜田 靖一君
      松野 博一君    宮腰 光寛君
     吉田六左エ門君    川内 博史君
      小平 忠正君    後藤  斎君
      津川 祥吾君    筒井 信隆君
      楢崎 欣弥君    山内  功君
      江田 康幸君    高橋 嘉信君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
      藤波 孝生君
    …………………………………
   農林水産大臣       武部  勤君
   農林水産大臣政務官    宮腰 光寛君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (農林水産政策研究所長) 篠原  孝君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月六日
 辞任         補欠選任
  梶山 弘志君     松野 博一君
同日
 辞任         補欠選任
  松野 博一君     梶山 弘志君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)(参議院送付)
 水産業協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)(参議院送付)
 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)(参議院送付)
 遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
鉢呂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案、水産業協同組合法等の一部を改正する法律案、漁業災害補償法の一部を改正する法律案及び遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長須賀田菊仁君、農林水産省農村振興局長太田信介君、農林水産政策研究所長篠原孝君及び水産庁長官木下寛之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川内博史君。
川内委員 おはようございます。川内でございます。
 きょうは、再びまた尊敬申し上げております武部大臣にいろいろ聞かせていただきたいというふうに思います。
 まず、質問通告をしていればよかったんですが、ですから御答弁は要らないんですが、時あたかもワールドカップが開催をされておりますので、こういう世界じゅうが注目をする大会、オリンピックもそうですけれども、スポーツの試合について、政府あるいは日本の国としてどういうふうな姿勢で臨むかというようなことについて、若干私の考え方を述べさせていただきたいというふうに思うんです。
 どうも韓国などは、毎試合毎試合、韓国チームで最優秀の働きをした選手にポルシェを一台贈呈するそうでありまして、チーム自体にも、毎試合、勝ったら報奨金が国からぼんと出るというような形で、モチベーションを物すごく上げて、とにかく勝とう、国として勝とうという姿勢が強く見られるわけであります。
 それは共同開催しているお隣の韓国だけではなくて、どこの国においてもそういう何らかの方策というのはとられているわけでありますけれども、我が国というのは、スポーツで大きな功績を上げた選手とかプレーヤーに対して、どうももてはやしはするんだけれども実際に処遇の仕方としては割と冷淡である場合が多いようであります。
 私は、以前銀行に勤めておったんですが、その銀行は大変体操が強い銀行でありまして、オリンピックで金メダルをとった選手も、私のすぐ横で、ふだんは午前中は仕事をしておったりしたんです、午後は練習に行くんですが。夜、たまに飲み会なんかでその方に話を聞くと、全く何もないと。金メダル一個とっても、全然生きていけないし、この銀行にも一生お世話になることも何かできないような雰囲気だし、なかなか難しいなというようなことを本音の部分でお話を聞いたことがあります。
 もうちょっと、優秀な選手なりプレーヤーに国としてしっかり処遇していくというようなことをすることが、その選手のためのみならず、世界じゅうが試合に注目をしているわけですし、そういうところでやはり日本という国の名前を、すごい国だぞということをアピールするためにも、そういうことというのは結構実は重要なんじゃないかなという思いを持っているものですから、ぜひ、私が尊敬申し上げている武部大臣は、閣議の閣僚懇談会の席ででも、何とかすべきだというようなことをばしっとおっしゃっていただいて、さらに武部大臣の名前をこれまた広く天下に知らしめる、悪名だけではないぞ、いいことも言うんだということをやっていただければ幸いに存じますので、まず冒頭申し上げさせていただきたいというふうに思います。
武部国務大臣 二十年ほど前、韓国に参りました際に、芸術家ですとかスポーツ選手とかが立派なマンションに、芸術家村とかスポーツ選手村とか、そういう村がありまして、二十年ぐらい前だったと思います。
 そのとき、すごいな、こう思いましたし、また一例を申し上げますと、オリンピック選手が、倉庫番だって立派な仕事です、立派な仕事ではありますが、メダリストが倉庫で働いているというその姿を子供たちが見てどう思うかというふうな、そういう話を聞いたことがあります。
 私は、決して働きのいい選手が報奨をもらうというその仕組みはいいとは思いません。いいとは思いませんが、スポーツ選手にしても芸術家にしても、並大抵の努力ではないと思うのです。そういう努力を評価する、評価をきちっとすれば、次代を担う子供たちも、一生懸命努力すればあのように評価されるんだということが励みになると思うのです。
 そういうことは非常に大事なことだ、こう思いまして、政治家も、悪名ばかりとどろく、そういうことではなくて、それぞれが、与党も野党も一生懸命努力しているということが評価されるような世の中にしていくということが大事じゃないか、こう思います。
 閣僚懇談会あたりで発言するか、小泉総理に直接申し上げるかは別にいたしまして、川内先生の非常に貴重な御意見をきちっと伝えて、そういう方向づけができるように私なりに努力したいと思います。
川内委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、質問に入らせていただきますが、まず、ちょっとこの四法案とは離れるのですけれども、口蹄疫のことについて若干お伺いをさせていただきたいというふうに思います。
 レクチャーで、しっかりと農水省としてこの口蹄疫対策については対策を講じているということをレクチャーをしていただき、また、一つ一つの方策についてはなるほど頑張っていただいているんだなということで理解をしておりますけれども、もともとこの口蹄疫の原因というのは、輸入された稲わらであろうという可能性が否定をできないわけであります。
 私は、実はこの口蹄疫が我が国の国内で発生するより以前に、現場の生産者の方から、稲わらが不足をしていて輸入稲わらに今頼っている状況だ。しかし、輸入稲わら等は畜産業には非常にリスクがある。それは、すなわちいろいろな家畜伝染病の発生の原因となると考えられるので、ぜひ稲わらの自給体制というものについて抜本的な対策を講じていただきたいという御要望をこの口蹄疫発生の随分前から聞かされていたわけであります。
 実は、減反調整で米を生産調整してわざわざ外国からウイルスに汚染されているかもしれない稲わらを輸入するよりは、減反するよりは稲わら用の稲をつくらせる、そしてまた自給体制をしっかりと整えるということが、これは抜本的な対策としてより安全かつ重要な対策ではないかというふうに思うわけでありますが、農水省としてはいかがなお考えであるかということをまずお尋ねさせていただきたいと思います。
須賀田政府参考人 先生おっしゃるとおり、飼料用の稲わらでございます。中国から、十三年度でいいますと二十六万トンが輸入されていたわけでございます。そして、中国に口蹄疫の関係で消毒の基準を要求していたわけでございますけれども、ことしの三月末から四月の初めに、二化メイガ、これが稲わらの中から見つかりまして、どうも消毒の基準というものを守っていない可能性が強いということで、四月五日から中国産の稲わらというものの輸入をストップしたわけでございます。
 中国からは、先ほど申し上げましたように、約二十六万トン、国産の飼料用稲わらが約百十万トンでございます。約二割ぐらいが中国からの稲わらに頼っていたわけでございます。一方で、飼料用以外を含めました国産の稲わらがどのぐらい生産されているかと申しますと、十二年で九百四十万トン生産をされておりまして、飼料用利用はその約一割でございますので、約七割がすき込まれたり焼却処理の対象になっているわけでございます。
 先生おっしゃられるような稲わらの国産というのは、量的には十分確保できる体制にあるわけでございまして、私ども今、安全、安心な畜産物の生産という観点からの国産粗飼料の利用という観点から、国産稲わら利用へ転換しようということを進めております。
 十二年度から、関係団体を含めます供給体制、あるいは稲わらの収集、調製を行います営農集団に対する助成等々を行っておりまして、また、稲わら専用の種類のテテップとかモーれつとかいった種類の品種を利用する場合に、稲わらの需要量がその県内で生産される量だけでは不足するような、例えば鹿児島県のようなところでは、この稲わら専用種の栽培について、飼料作物と同額の転作の助成金も与えるといったようなことをしておりまして、現在、省内に飼料用稲の対策のプロジェクトチームを発足させまして、この問題に真剣に取り組むという体制を整えているところでございます。
川内委員 ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。
 さて、今回審議されております四法案のうちの漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案というこの法律でありますけれども、この法律案の改正案の趣旨の一つが、我が国の二百海里水域内において資源の悪化が進んでいる現状を踏まえ、水産資源回復のための取り組みに対する支援策を強化することであるということが、この法律案の趣旨の一つとして書いてあるわけであります。
 では、その資源回復のためにどのような措置をとることが対策になるのかということについては、減船してとる量を減らせば水産資源が回復するというふうに記載をされているわけでありますけれども、私にはどうしても、船を減らしてとる量を減らすことが資源の回復につながるというのは、非常にネガティブというか消極的だなというふうに思えるわけであります。
 なぜかならば、後で質問させていただきますけれども、水産物の自給率も上げていきましょう、すなわち、とる量をこれからもっともっとふやしていきましょうというときに、一方では、とる量を減らして資源を回復させましょう、二律背反というか相矛盾したことをおっしゃっていらっしゃるような気がして、もっと抜本的な対策というものを講じるべきではないだろうか。海の中にいるお魚が自然にふえるような、もっと抜本的な対策をとる必要があるのではないかというふうに思うんです。
 船を減らすことによって水産資源の回復を図るというその方法について、水産庁さんとしては本当に胸を張ってそれを、これが資源回復の方法です、任せてくださいというふうに思っていらっしゃるのかということをまずお尋ねさせていただきたいというふうに思います。
木下政府参考人 我が国の周辺水域の水産資源の状況でございますけれども、本年度の水産白書でも明らかにしているとおり、総じて低位または減少傾向にあるというふうに認識をいたしております。
 このような傾向にあるのは、一つは、資源の回復力を超えた漁獲が行われているという理由が一つあろうかと思います。もう一つは、いろいろな要因によりまして水域の環境が悪化をしているということも大きく影響しているというふうに考えているところでございます。
 したがいまして、私どもが提案をいたしております資源回復計画では、まず、減船なり休漁等、現在の漁獲努力量を削減していこうというのが一つの柱になってございます。ただ、先ほど申し上げましたとおり、漁獲努力量が多い、あるいは水域環境が悪化をしているというのが現在の資源状況の大きな要因でございますから、もう一つの柱といたしまして、種苗放流あるいは藻場造成等、環境に配慮しながら水産生物を積極的にふやしていく、このような努力もやはり必要だというふうに思っておりまして、これは両々相まって資源の回復を図っていきたいというふうに考えております。
川内委員 今、水産庁の長官から、積極的にお魚がふえるような対策もとっていきたいというお話があったわけですけれども、私が存じ上げている境一郎先生という水産学博士が提案をし、実際に北海道や私の地元の鹿児島あるいは沖縄などでも成果を上げているというふうに聞いておりますけれども、資源回復について昆布海中林計画というのがあります。
 海の中に昆布の森をずっとつくっていく、そうすることによって水産資源の目覚ましい回復を見ることができるというふうに境一郎先生はおっしゃっていらっしゃるわけでありまして、別にこの境先生と私は何の利害関係もないからこそこうして申し上げるわけですけれども。
 これまでの水産資源のふやし方といえば、コンクリートブロックを投げ込むというような、環境改善方式といったものがとられていたそうでありますけれども、このやり方では環境にも悪影響を及ぼすしコストもかかるということでありまして、昆布の海中林の養殖方式ですと、コンクリートブロックを投げ込むよりずっと安上がりだというふうに、境一郎先生の書かれたものを拝見すると書いてあるわけでございます。
 まずお伺いしたいのは、こういう環境改善方式と呼ばれる、コンクリートブロックを海中に配置することによる水産資源の回復を図るための措置については、毎年どのくらいの予算を使っていらっしゃるのかということについて、お尋ねをさせていただきたいと思います。
木下政府参考人 私ども、十三年度から、従来の漁港事業それから沿整事業を統合いたしまして、まさに地域の実態に即した事業実施をしているということでございますけれども、全体といたしまして二千億を上回るような予算で対応しているところでございます。
 この中に、先ほど申し上げましたように、漁港の予算それから魚礁の予算、それからもう一つは藻場あるいは干潟をつくっていく予算、それぞれ地域の実態に即した予算措置を実施しているところでございます。
川内委員 細かい内訳はちょっとすぐには出せないということをきのうもお聞きしましたので、大体二千億という毎年の予算の中で、漁港の整備やら魚礁やら藻場の造成というものをされていらっしゃるということであります。
 日本の水産資源の回復というものを考えたときに、その二千億というものをどのように有効に活用していくかということは非常に重要なテーマであろうというふうに思うわけでありますけれども、中国は、非常に昆布海中林の養殖というものについて積極的にやっていらっしゃって、中国の漁獲量というのは、日本が原産の真昆布を中国の沿岸部に大規模に養殖することによって、八八年から九七年まで九年間で三・六倍にふえたというふうに聞いておりますし、この中国の漁獲量というのは日本の七倍ぐらいあるんだそうですけれども、そのくらい昆布の海中林というのは威力があるんだそうでございます。
 私は、ぜひ、水産資源回復のために、昆布海中林というものを日本ももうちょっと積極的に研究をすべきではないかと。私が今、中国の漁獲量が目覚ましい勢いでふえたというのは、これは境先生の書いた文章の中にあることですから、本当かどうかはわかりませんよ、検証したわけじゃないですからね、私も。
 だからこそ、私など魚とりについては素人ですし、その素人の私が考えるには、水産庁さんが今まで一生懸命取り組まれてきたことに関しても敬意を表しておりますし、もちろんその努力が、先ほど水産庁の長官がおっしゃったように、漁獲高が物すごくふえちゃったし、そもそも日本の近海水域での環境の変化ということでなかなか資源回復が図れないというのであれば、こういう昆布海中林などのことをもっともっと積極的に研究をされて、それが本当に有効であるならば、国策として、日本の沿岸水域に全部そういうものを造成、養殖していくことによって水産資源の回復が目覚ましい勢いで図れるのではないかというふうに思うわけであります。
 ぜひここで武部大臣に、昆布海中林の養殖計画を、やるやらないではなくて、今そういうことを御答弁はいただけないと思うんです。これは一つだと思うんですけれども、こういうことを含めて積極的に研究をされて、いろいろな方法について研究をして、成果のあるものについては取り組んでいくという御決意を聞かせていただきたいと思います。
武部国務大臣 藻場は、水産生物の産卵でありますとか、幼稚魚の生育等の資源生産の場としてのみならず、海水中の窒素、燐等の栄養塩の取り込みによる水質浄化機能というものを有するわけでありまして、良好な沿岸域の環境を維持する上で極めて重要な役割を有している、このように承知しております。
 現在、水産基盤整備事業におきましては、漁場環境の保全、創造と基礎生産力の向上を目的といたしまして、水産動植物をはぐくむ昆布海中林などの藻場の造成等による豊かな海の森づくりということを推進しているところでございます。
 本年三月に策定しました漁港漁場整備法に基づきます新たな漁港漁場整備長期計画におきましては、平成十四年度を初年度といたします五年間で、おおむね五千ヘクタールの藻場、干潟に相当する水産動植物の育成環境を新たに保全、創造することにしているわけでございまして、今後とも、水産資源の増殖、豊かな沿岸域の環境の創造の観点から、藻場の造成を積極的に進めてまいりたい、このように思います。
 私は、海は、この海中林の問題や、もっと思い切り耕すと相当資源は変わってくる、ふえてくる、こう思っております。
 なぜオホーツク海でいい昆布がとれるかというのは、流氷によって全部いその雑草を駆除してくれるんですね。それが昆布の生息に大きくプラスする。だから、温暖化によって流氷が接岸しなくなってくるということから、雑草がふえて大変だということで、八尺を回したり、あるいはダイナマイトをかけたりして、そして岩礁を削ったりしている。
 したがいまして、今委員御指摘のとおり、もう少し、今まではとれ過ぎたら値段が下がるとか、そういうような感覚があったと思うんですが、そうじゃなくて、海水、海中の浄化だとか、自然生態系というものを、生物多様性の観点からしっかり研究して対応していくということが非常に大事じゃないのかな、私はこう思いまして、そういう努力をしてまいりたい、このように思います。
川内委員 今、大臣がおっしゃったように、昆布の海中林というのは、地球の温暖化対策にも非常に効果があるという研究もされているようでありまして、私、大臣が前半、水産庁が書かれたものをお読みになりましたけれども、前半よりも後半の、大臣が御自分の御地元のことを語られた部分に、前半は全然共感できませんでしたけれども、後半は共感をいたします。
 ぜひ水産庁も、長官、私が素人なりに、昆布海中林に、もっと積極的に研究すべきじゃないですかということを、せっかくこの委員会で提案をさせていただいているわけですから、何か大臣にあんなつまらない答弁を書いて読ませるんじゃなくて、もうちょっとしっかり頑張りますみたいなことを言わないと、言わないとというかやらないと、それは皆さんは専門家だしプロだから、そんなことは素人に言われたくはないよ、何言っているんだというお気持ちもわかるけれども、しかし、素人だからこそ言えるということもあるわけじゃないですか。
 それをやはりぜひ御理解いただいて、昆布の養殖計画、海中林計画については前向きに対応方をしていただきたい。そして、その研究成果をまた教えていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。
 時間もなくなりますので次に参りますが、あと、漁業の経営の効率化、合理化という観点からは、漁業組合、漁業協同組合の再編統合が現状でなかなか進んでいない状況にあるというふうに私は認識しておりますけれども、これについて水産庁の見解をお聞かせいただきたいと思います。
木下政府参考人 漁協の合併でございますけれども、まさに委員が御指摘のとおり、同じような認識を私どもいたしております。私ども、こういうことから、今回、これまでもその障害となっております漁業権制度のあり方だとか、あるいは認定漁協制度ということで、今後できるだけ早く日本の漁業者の期待にこたえられるような漁業協同組合になるように努力をしていきたいというふうに考えております。
川内委員 まだなかなかこの再編統合、合併が進んでいないという認識は水産庁さんもお持ちでいらっしゃるということでありますし、また、それに対していろいろな方策を講じているところだという御答弁があったわけです。
 漁業協同組合の合併促進特別措置法が来年三月末で期限を迎えるわけでありますが、もう今六月ですから、あと九カ月しかないわけでありまして、漁協の合併の支援策を継続するという意味でも、この合併促進法の延長について現場からも強い御要望があるわけでありまして、合併促進法の期限の延長というものについて、どうするのかということについて御見解をお聞かせいただきたいと思います。
木下政府参考人 合併促進法の延長の問題でございますけれども、委員御指摘のとおり、本年度末に期限を迎えるわけでございます。現在の基本計画の達成状況でございますけれども、五月末現在で一八%というふうに低水準にとどまっているわけでございます。
 合併促進法を延長するかどうかという点につきましては、合併の進捗状況など、現在の合併促進法がどの程度効果があるのかということについても検証を進めているところでございますし、また、類似の、例えば農協合併助成法だとか、あるいは森林組合合併助成法については、既に提出期限を終了しているというような問題もございますが、それらの問題を総合勘案して、どうするかについて検討を進めていきたいというふうに考えております。
川内委員 どうするかについて検討を進めていきたいということですけれども、さまざまな支援策を漁協合併を促進するために講じているけれども、今この六月の時点でなかなかその合併が進んでいないという認識を水産庁さんはお持ちでいらっしゃるわけですから、漁業協同組合のこの合併促進法について、もう来年三月で切れるということでありますから、当然延長して対応しなければならぬというふうに私は思うのですけれども、延長する方向で検討するのか、どうなんでしょう。
木下政府参考人 先ほど来申し上げておりますけれども、合併促進法について、現在の合併促進法の効果をもう少し見ないと、単に延長しても、本当に効果があるのかということについても、私ども、いろいろ検討すべき課題があろうかと思いますし、もう一つは、類似制度のバランスということについても考慮していきたいというふうに考えております。今しばらく、これらの点について、私ども、慎重に検討していきたいというふうに考えております。
川内委員 現場の漁協の皆さんや、あるいは漁業に携わっている皆さんは、延長してほしいという御要望を持っていらっしゃる。それは、何とか自分たちも経営を効率化し、合理化したいという思いがあって、そういうふうな御要望になっているわけでありまして、現時点では法律の効果がないから合併が進んでいないわけであります。
 どうも今の水産庁長官の御答弁、私はちょっと釈然としないんですけれども、あともう九カ月しかないわけでありまして、なぜ延長するとすっきり、あるいは中身を検討して前向きに対応するとか、こんなことで隠し立てする必要なんかないだろうにと思うんです。
 まだ来年の三月まで九カ月もあるということで、そんなことはまだまだおまえなんかには言えないよということなのかもしれないですけれども、ぜひ現場の御要望として、現場の声として、この合併促進法を延長していただければ、現場としても経営の効率化、合理化のために合併を進めていきたいという声があるということをきょうはお伝えしておきたいと思います。
 最後に、ちょっと時間がなくなりましたけれども、私は、農林水産業から収穫をされた作物なり食料について、農林水産行政あるいは水産行政が消費者重視だというのも、それはわかります。消費者も大事です。
 しかし、何回も、この前も言いましたけれども、日本は半農半漁で、農業をやり、魚をとることによって食べてきたわけで、民族の歴史というものを培ってきたわけで、そういう意味では生産者が大事なんです。生産者を大事にしなければこの国は滅びるというのが私の基本的な考え方でありまして、私は武部大臣に、大臣はもうどうなってもいいわけですから、今のマスコミの何かふわふわとした論調に流されずに、生産こそが大事なんだということを自信を持って言うべきなんですよ。
 それで、この前ニュースを見ていましたら、農林水産省の課長さんがファミリーレストランで、いらっしゃいませ、ありがとうございますと、一生懸命研修をしているわけですよ。私は、何の意味もないと思いましたね。それをテレビのニュースで流させることによって、農林水産省がいかに消費者の立場に立って行政を進めようとしているかということをアピールされたいのかもしれないですけれども、私はそれは違うと思うんですよ。
 日本という国の成り立ちを考えれば、やはり、きょうは水産関係の審議ですから、カツオ・マグロ船に二年間乗せてみるとか、あるいは、実際に十トンか二十トンかぐらいの小さな船で、毎日ちょっと海に出て魚をとって、それでどういう生活ができるのかということを経験していただくとか、そういうことこそがこの国を立て直すことにつながっていくわけです。
 消費者も大事ですけれども、しかし、食料を、私たちが日々口にする作物なり、お魚をとっていただいている、収穫していただいている生産者の皆さんの日々の苦労とか思い、あるいは、実際にどういう生活ができるのかということを体験することこそが農林水産行政のスタートだということを、再度大臣に、おれもそう思う、本当はそう思っていたんだということを言っていただきたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
武部国務大臣 生産者と消費者との区別なんですけれども、生産者といいますか、これは農業を営んでいる人、漁業を営んでいる人、山で働いている人、これは別の言い方をすれば自然の守り手だ、私はこのように思っております。そのことが非常に大事だと思っておりますし、また、消費者でもあるし、生活者というような、そういう言い方ができるんだろうと思うのです。
 ただ、食の安全、安心、食の問題について物すごい大きな関心があるわけであります。そういうことを考えると、食する人々が何を求めているかということについて真剣に考えて生産にいそしまなきゃならないという意味で、消費者に軸足を置いて農林水産政策を見直す、こう申し上げているわけでありまして、農林水産省の職員も、浜で働いたり、畑で働いたり、山で働いたりということは、従来からずっとやってきているわけです。何カ月も研修しています。
 しかし、消費者マインドでありますとか、そういったことを勉強しなきゃならない。あるいは役人、これは単なる、農林水産省だから消費者マインドじゃないんです。やはり役人の意識改革ということは、国民の中に飛び込んでいく、そういう意味もあるわけでありまして、現に、農林水産省として消費者との会合というのは全然なかったんですから、それで今度定例懇談会をやるようにしたわけでありまして、今までが生産者にべったりであったということで、それではいけないということで意識改革を進めるためにそういう軸を打ち立ててやっていくわけでございます。
 私の体の中に流れている血のDNAはまさにオホーツクでありますので、その反省からきているということを御理解いただきたいと思います。
川内委員 終わります。
鉢呂委員長 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。
 次に、山内功君。
山内(功)委員 民主党の山内功でございます。
 水産基本法は、水産資源の適切な管理と持続的な利用を確保すること、このことを基本的な理念としていると思うのですが、外交交渉の問題も絡む、そういう問題も抱えておりますので、大変不安定な要素もあると思うのです。
 例えば、日本海沖に日韓の暫定水域がございますけれども、そこの問題も、今、本来なら政府間交渉で発生する問題についてきっちりと解決をする努力が求められているのにもかかわらず、それが現在は民間の団体の交渉に任せられている現状がございます。この点について、その理由をまず伺いたいと思います。
木下政府参考人 日韓暫定水域の点でございますけれども、日韓漁業協定上、資源管理措置を日韓で協議し、双方で実施するとともに、違反の取り締まりは双方で自国の漁船に対して実施することとなっております。政府といたしましては、暫定水域の資源管理問題は日韓両国政府間で協議するよう、韓国政府に対しまして、これまで累次にわたり強く申し入れをしてきているところでございます。
 しかしながら、同水域には御案内のとおり竹島が含まれていることから、特に韓国政府側におきまして、政府間の協議の実施について多大な問題を抱えているというようなことを承知しているところでございます。
山内(功)委員 領土問題が絡んでいるとすれば、余計に民間協議では暗礁に乗り上げると思うんです。政府主導で協議を進めるべきだという漁民の声も多いんですが、政府の考えはどこら辺にあるのでしょうか。
武部国務大臣 暫定水域の資源管理問題を日韓両国政府間で協議するように、これまでも累次にわたりまして韓国政府に申し入れてきているわけでございます。しかし、今長官も申し上げましたように、困難な問題も横たわっているというようなこともありまして、これが思うように任せません。しかし、農林水産省としては、引き続き民間協議を支援するということと同時に、韓国政府が協議に応ずるように粘り強く求めてまいりたい、このように考えております。
山内(功)委員 仮の話ということで逃げないでいただきたいと思うんですが、暫定水域が廃止されれば、韓国船に苦しめられているベニズワイガニの漁業の問題は大きく解決すると、漁民の要望もございます。
 日韓の漁業協定を破棄した場合に、我が国の漁業に与えるメリットとデメリットを教えてください。
木下政府参考人 日韓漁業協定でございますけれども、一九九九年一月に発効いたしております。我が国漁船は、韓国水域で協定発効以前と同水準の約千四百隻、九万トンの操業枠を確保する一方、沿岸国主義に基づきまして韓国漁船を我が国の管理下に置き、漁船間トラブルが激減したというような効果をもたらしております。
 私ども、そういう意味で、日韓漁業協定の発効によりまして、日韓間で沿岸国主義に基づく操業秩序が確立されたということで、協定の廃棄は考えておりません。
 今お尋ねの机上の話ということで、私ども、仮に日韓漁業協定を破棄して、双方がそれぞれ主張いたします排他的経済水域を設定し、主権的権利を行使することとなった場合、我が国水域で操業する韓国漁船がいなくなるという意味でのメリットがあろうかというふうに私どもは思っておりますけれども、漁業の分野に限定をいたしましても、一点といたしましては、韓国水域で操業している我が国漁船が当該水域での操業が不可能になる、また、この水域への依存度が高いまき網漁業等は壊滅的な打撃を受けるというふうに考えております。
 また、日韓両国間での排他的経済水域の境界の画定がなされない水域が現実にあるわけでございますが、双方の主張する排他的経済水域に食い違いが生じまして、双方の漁船の拿捕が頻発するおそれがある、このようなデメリットもあるというふうに想定をいたしております。
山内(功)委員 暫定水域の問題はこの程度にしますけれども、また折に触れて質問させていただこうと思っています。
 さて、改正案についてですが、水産資源の管理及び水産動植物の増養殖を漁協や漁連の行うことのできる第一号事業とする、水産に関する経営及び技術の向上に関する指導を第二号事業とするとしておりますけれども、このことの趣旨や意義を問いたいと思います。
武部国務大臣 水産基本法の基本理念の実現には、資源管理の積極的な推進と効率的かつ安定的な漁業経営の育成が最も重要であります。
 こうした課題に対しては、漁業や漁村における中核的組織である漁協としてもこれに対応して積極的に取り組むべきだ、こう考えておりまして、従来、漁協の資源管理事業は水協法上の六番目の事業中に規定されているところでございますが、今般、その重要性にかんがみまして、これを独立させた上で、漁協が行う事業の第一番目に明確に位置づけるということにしたのでございます。
 同時に、漁協の営漁指導事業についても、その重要性にかんがみ、漁協が行う事業の第二番目に明確に位置づけることとしたのでございます。
山内(功)委員 今、最後に言われた漁協の指導事業についてですけれども、指導担当職員は極めて少ない状況にあると聞いています。このような状況からどのようにして指導機能の強化ということを図ろうとしておられるのか、その点はどうですか。
木下政府参考人 今回の水協法の改正で、先ほど申し上げたように、指導事業を漁協の基本的な事業として位置づけることとしているところでございますけれども、現在の一漁協あたりの指導事業担当職員は平均で見ましても〇・六人ということで、委員御指摘のとおりの状況になっておるところでございます。
 私ども、こういうような状況を考慮いたしまして、組合員に対して適切な指導事業を実施するためには、一定規模以上の事業基盤を持ち安定的な収益を上げていくことが不可欠というふうに考えております。
 そういう意味で、十三年度から、資源管理なり担い手育成などの課題に対応して指導事業を行い得るような事業、組織基盤を備えた漁協を認定漁協というふうに明確化いたしまして、これに向けた合併の支援等必要な措置を講じているところでございます。
 現在、認定漁協は全国で三十四漁協ということでございますけれども、平成十七年度までには百二十にふやしていくように、系統とともに努力をしていきたいというふうに考えております。
山内(功)委員 今の認定漁業というのは、農業で言う認定農業者と同じようなことを考えておられるのでしょうか。
木下政府参考人 認定漁協制度でございますから、現在の漁協が全体として千七百ほどあるわけでございますけれども、この中で、御案内のとおり、押しなべて職員の数が十名程度ということでございますから、認定漁協の制度では、一つは、資源管理なり担い手育成の水産業の新たな課題を担うに足りるような組織なり事業基盤を備えたような漁協を私ども認定漁協というふうにいたしまして、そのような認定漁協に対しましていろいろな支援をしていきたいというふうに考えております。
 先ほど申し上げましたように、現在、全国で三十四の認定漁協が既にできているわけでございまして、今後二年間程度でさらに百二十までこの漁協をふやしていきたいというふうに考えております。
山内(功)委員 しかし、資源管理規程についても設定されている事例はごくわずかですよね。だから、そういう制度をいろいろとつくろうとされるんですけれども、例えば、この管理規程にしても、持つ意味はどうなのかとか、利用が少ないその原因は何なのか、あるいは方向性についてはどう考えているのか、一つずつ整理をしないまま新しい仕組みをつくっていくということが、果たして漁業が再建できる道筋なのでしょうか。
木下政府参考人 委員御指摘になりました資源管理規程でございますけれども、平成五年度の水協法改正で、これまで組合内の自主的な申し合わせを法律上に位置づけたということで、これらに違反した組合員に対しまして過怠金を課すというような仕組みを設けたところでございます。
 これまで、資源管理の重要性については必ずしも組合員に十分浸透していないこともございまして、締結例はまだ十六件というふうに少ないわけでございますけれども、昨年の水産基本法の制定を受けまして、水産基本法の理念を実現するためには、やはり漁業者団体の責務といたしましても水産資源の管理が重要であるというふうに明確化したわけでございます。漁協系統におきましても、資源管理の取り組みの強化について運動を進めることとしております。
 私どもも、今回の水協法の改正と相まちまして、水産資源の管理を末端の漁業者まで十分に浸透し、本当に地についたものになるよう努力をしていきたいというふうに考えております。
山内(功)委員 改正案では、細かいことでは、例えば信用事業を行う漁協や漁連については、国債や投資信託を窓口で販売する事業を追加するという法案にもなっているんですけれども、この趣旨に限ってちょっと説明をしてください。
宮腰大臣政務官 お答えいたします。
 国債あるいは投資信託の窓販業務につきましては、平成四年の金融制度改革法によりまして農協を初めとする金融機関に追加されたものでございますけれども、漁協等につきましては、業務実施体制の整備状況等にかんがみまして、その導入が見送られてきたものでございます。
 漁協系統におきましては、見送りの後、信用事業の実施基盤の強化を図るために合併や信用事業譲渡等を進めておりまして、また、漁協等に対しましては、監査機能の充実、早期是正措置あるいは最低出資金制度の導入、役員の兼職、兼業の制限等、他の金融機関と同様の法整備が行われておりまして、信用事業の業務執行体制の整備が相当程度図られてきたところでございます。
 こうした中、本年四月のペイオフ解禁等を迎えまして、漁協等の組合員の中には一千万を超える貯金を有する者も多数存在いたしておりまして、また、漁村地域におきましては、漁協等以外に金融機関や証券会社が少ないことなどから、資産運用の多様化を図るため、漁協等における国債窓販や投信窓販等のニーズが高まってきたところであると考えております。
 こうした状況を踏まえまして、今般の水協法改正において、漁協系統信用事業の実施基盤のさらなる強化を図ることとしたことを機に、国債窓販、投信窓販等の証券業務を漁協等の業務として追加することとしたものでございます。
山内(功)委員 しかし、例えば国債は、随分格下げという問題もございますよね。それから投資信託も、三万二千円の一番の株高のときに買ったのが今一万一千円ですから、三分の一で、投資信託で大損している国民もたくさんいますよね。
 だから、漁協や漁連でこれらの適切な販売とか管理とか、そういうことができるのかなという心配が一つと、それから、先ほどニーズがあると言われましたけれども、それはどの層の人にとってのニーズなんでしょうか。
木下政府参考人 今回の法律改正の中で、先ほど御質問のとおり、漁協や信漁連に国債なり投信の窓販を認めるわけでございますけれども、個別の実施に当たりましては、それぞれの個別の漁協ごとに事業実施能力を審査いたしまして、その上で認可をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
 また、ニーズはあるのかというお尋ねでございますけれども、漁協におきます一千万円を超えます貯金を有するいわゆる大口貯金者の割合でございますけれども、系統貯金の残高に占める割合が大体四〇%を超えているというような状況でございます。
 そういう意味で、国債なり投資信託の窓販業務に対するニーズはあるというふうに承知をいたしております。
山内(功)委員 漁協における貸出金のリスク債権のことについてお聞きします。
 この不良債権の占める割合も、例えば農協や農協系の信連に比べると四倍ぐらいの高い率を示しておりますけれども、まず、この原因についてはどうとらえたらいいんでしょうか。
木下政府参考人 委員御指摘のとおり、漁協の貸出金に占めますリスク管理債権の割合は一八・七%ということで、全国銀行の割合の六・二%と比べると非常に高いということになっております。
 このように高い要因でございますけれども、漁業協同組合の融資は、漁船資金それから漁業運転資金など、組合員の漁業生産なり漁業経営向けの融資が約八割を占めているというところでございまして、漁協の信用事業は、漁業の好不況に大きく左右されているところでございます。
 一方で、漁業でございますけれども、昭和五十年代まではその生産が拡大基調にございましたけれども、その後、国際化の進展なり国内の全体としての資源状況等もございまして、押しなべて漁業経営が悪化をしてきているという状況でございます。したがいまして、このような漁業の不振を反映した形で金融機関が不良債権を抱えるに至ったというのが一つでございます。
 もう一点といたしましては、漁協系統信用事業でございますけれども、リスクが高く、一方で担保物件が非常に乏しいということで、市中金融機関がなかなか融資を受けがたいという状況の中で、組合員のための協同組織金融機関として対応してきたというような結果によりまして、先ほど御説明しましたようにリスク債権の割合が高いというような状況になっているというふうに認識をいたしております。
山内(功)委員 貸し出しの担保力が弱いということとか漁業が不振だということが理由だということと、信用事業を行う漁協に信用事業を担当する常勤理事を一人置くというのは、どうリンクしているんですか。
木下政府参考人 信用事業につきましては、本年四月からペイオフ解禁というように、信用事業を取り巻く環境が大きく変わってきておるわけでございますけれども、そういう意味で、信用事業を的確に実施していくというためには、信用事業専任の理事が必要だというふうに考えておるところでございます。このように専任の理事を置くことによりまして、信用事業の貸し出しの審査も含めまして、的確に行われるというふうに認識をいたしております。
 このような常勤理事の制度でございますけれども、来年一月一日の施行から三年間の猶予を置きまして、この間にそれぞれの漁協の中で体制を整えていただくことを期待しているわけでございます。
山内(功)委員 いや、私が聞いたのは、リスク管理債権の割合を減少させるのに、常勤理事を一人専任で置くことがどれほどの意味があるのかなということをお聞きしたいということが一点と、それから、これから三年間のうちに常勤理事を選任するという体制をつくっていかなくちゃいけないということなんですが、それは実際に可能なんでしょうか。そういう経費的な問題もあるでしょうし、どうでしょうか。
木下政府参考人 貸付債権のリスクとの問題でいきますと、信用事業専任の理事を置きまして、そのもとで、貸し出しに当たりましての審査をより厳格に、的確に行えるよう期待をしているところでございます。
 また、もう一点の三年間で常勤理事一名を置けるのかという問いでございますけれども、信用事業への的確な対応あるいは相互牽制機能を含めまして、日常の信用事業業務に責任を持って当たる常勤理事の設置を義務づけるわけでございますけれども、今回、このような三年間の中で常勤理事の設置ができないような零細な漁協の場合には、合併あるいは信用事業を信漁連に譲渡する、そのような道をそれぞれの地域の実態に即しながら御判断いただくようなことになろうかというふうに思っております。
山内(功)委員 漁協等に対しては、昨年の農協改革法案と同様に経営管理委員会制度を導入することとしておりますが、その趣旨も教えてください。
木下政府参考人 経営管理委員会制度の問題でございますけれども、最近、漁協の中で、本年四月一日に誕生いたしましたように、一県一漁協というような広域合併も見られているところでございます。
 このような広域合併の進展によりまして、理事数の増加によりまして理事会の開催頻度が少なくなり、なかなか迅速な経営判断が難しくなってきている。また一方で、信用事業を中心に業務の高度化、複雑化が進み、実務家による的確な業務運営が必要となっているというようなところでございます。
 このような状況に対処するため、業務執行体制については、組合の実情によりまして、組合員の意思を業務運営に反映させながら、迅速かつ的確な業務執行が的確に確保されるような仕組みを整備する、このような観点から、今回、経営管理委員会制度を導入したいというような提案をしているところでございます。
山内(功)委員 それは、どの程度の規模の漁協で活用されることを期待しているのですか。
木下政府参考人 このような経営管理委員会制度がどのような漁協で活用されるかという点でございますけれども、私ども、県域漁協、一県一漁協というような広域合併により、理事数の増加なり地区の拡大が進んだような漁協、それからもう一つは、信漁連なり共水連など、業務の高度化あるいは複雑化が著しいような連合会、このようなところでまずは経営管理委員会制度が導入されていくものというふうに見込んでおります。
山内(功)委員 私は、先物取引の被害の実態について少し関心を持っていまして、経済産業委員会でも、その対策について平沼大臣と質疑したりしたんですけれども、そのときに事例を調べてみましたら、ある漁協の組合長も先物取引に手を出して、組合のお金を使い込んで業務上横領で逮捕されたという事例が、どうも一月か二月ごろですか、あったようなんですけれども、そういうような事例もなくなるんでしょうか。
木下政府参考人 個別の事案については、私、承知をいたしておりませんけれども、経営管理委員会制度等を導入することによりまして、ある意味では、専門家集団による業務執行と、それを組合の立場からコントロールするというふうになれば、より一層そういう意味での業務執行体制が全体として強固になるというふうに考えております。
山内(功)委員 いろいろ調べてみますと、一概に非難できないところもあって、今日のように〇・〇〇何%の金利で、全く金利が期待できないので、多少リスクはあっても利殖をしてみたいという衝動に駆られた部分もあったようですけれども、それにしてもちょっと残念な事件だったと思っているんです。
 この信用事業を行う漁協等の最低出資金額を二千万円から一億円に上げるという改正案になっていますけれども、これも先ほどと同じで、三年間の猶予期間においてどのように実現させていくつもりなんでしょうか。
木下政府参考人 私ども、今回の出資金一億円の制度につきましても、委員御指摘のとおり、三年間の猶予措置を設けたところでございますけれども、この三年間の期間に増資ができないような零細な漁協の場合には、今後、金融機関の経営の健全性の確保の観点から、合併あるいはその漁協についての信用事業を信漁連に譲渡していただくというような道を地元の実情に即しながら選択していただく必要があろうかというふうに考えております。
山内(功)委員 私も、いろいろな委員会で合併ということが論点としてどの法案にでも出てくるものですから、例えば市町村合併の問題とか、それに伴って、例えば経済産業省では、去年は、商工会の合併とか農協の合併、そして漁協の合併とか、そういう問題が出てきて、私も、十分な信用事業が行えないところは合併も真剣に考えてくださいよという省の態度はわからなくはないんですけれども、それによって、まだ地域で一生懸命頑張っているというか、そういうような、まだまだ一つの漁船で一種類か二種類の魚種しか漁獲できないけれども頑張っているようなところまでも、無理にというか強引に合併という方向に持っていかされるという可能性はないんですか。
木下政府参考人 私ども、合併につきましては、今後の漁業情勢を考えますと、基本的には、今後大いに推進をしていきたい、あるいは推進していくべきものというふうに考えておりますけれども、それに当たりましては、よくよく現地で議論をし、意思疎通をしながら進めていくものだろうというふうに考えております。
山内(功)委員 漁協が一県一信用事業を目指して漁協の信用事業を信漁連に譲渡する信用事業の統合が進められてきてはいるのですけれども、現在までの統合の状況がなかなか思わしくないようですが、現段階の状況と今後の見通し、大まかな見通しを聞かせてください。
木下政府参考人 一県一信用事業統合体でございますけれども、平成四年度から、合併なり信用事業の譲渡を通じて都道府県単位で一つの信用事業として機能するよう進めてきたところでございます。現在、十府県でこの体制が完成をしております。平成四年末から平成十二年度末の信用事業の組合、千八百七十六から七百九十一という意味で大きく減少しているところでございます。
 なお、全漁連からの聞き取りによりますと、平成十七年度末にかけまして、さらに全体として三十二県でこのような一県一信用事業統合体が実現されるというふうに承知をいたしております。
山内(功)委員 信用事業の譲渡とか譲り受けについては、行政庁の認可を必要とすると改正されるようですけれども、その理由は何なんでしょうか。
木下政府参考人 信用事業の譲渡の問題ですけれども、漁協の信用事業の譲渡、これまでは零細な漁協から信漁連への譲渡がほとんどでございます。譲渡に係ります資産の額につきましても、信漁連のそれに比べて大きくなかった等々から、譲渡債権の内容のチェックまで必要がないというふうに判断をしてきたところでございます。
 ただ、最近の事例を見ますと、広域合併の進展によりまして漁協の規模拡大が行われております。この中で、信用事業につきましても、漁協の資産あるいは負債の六割以上を占めておるということで、その譲渡につきましては、譲り渡す側あるいは譲り受ける側双方の経営に大きな影響を及ぼすというふうに考えております。
 したがいまして、信用事業の健全性の確保の観点から、他の金融機関同様、漁協の信用事業の譲渡につきまして、今回、行政庁の認可に係らしめるというような提案をしているわけでございます。
山内(功)委員 具体的な認可基準はどういうふうになっているんですか。
木下政府参考人 信用事業の譲渡の中から、会社などの金銭の取り扱い、あるいは有価証券の保護預かり、両替など、経営への影響の小さい軽微な事業の譲渡につきましては認可の必要が乏しいというふうに考えておりますので、これにつきましては認可の対象から外すというふうに考えております。
山内(功)委員 それでは、漁協系統における信用事業について、政府の今後の対応をお聞きしたいと思います。
武部国務大臣 実態を顧みますと、信用事業を行う漁協というのは、一漁協当たりの平均貯金残高が約十七億円でございまして、従業員数も約二人にすぎない、このように他の業態の金融機関に比べまして極めて脆弱な事業、組織体制にとどまっているわけでございまして、一般的に、漁協が単独で信用事業を行うことには限界がある、このように考えているわけでございます。
 このために、漁協系統におきましては、平成四年度から、合併、信用事業の譲渡等を通じまして、都道府県単位で一つの信用事業体として機能する一県一信用事業統合体を構築すべく、体制整備を図っているところでございます。
 農林水産省としても、このような体制が望ましいと考えておりまして、漁協から信漁連への信用事業譲渡を支援する等によりまして、漁協系統信用事業の再編、健全な運営の確保に努めているところでございます。
 なお、単協の信用事業の実施体制の強化は、貯金者保護等の観点から、一県一信用事業統合体に至るまでの漁協や一県複数自立漁協を目指す広域漁協にとって不可欠でございまして、また、農林中金との合併等は一県一信用事業統合体が破綻したときのセーフティーネットとして必要であるということから措置しようとするものでございます。
山内(功)委員 大胆な合併に向かってのいろいろな規定が設けられることになった。あるいは、漁協とか漁連がいわば最も関心のあると言うと失礼かもしれませんが、信用事業についていろいろな手当てをするということで、大臣、今回の水産四法を制定すれば確実に日本の水産業、そして地方の漁村の活性化に絶対に役立ちますか。
武部国務大臣 今日の漁協の実態、浜の実態を見ますと、大きいところもあれば小さいところもあります。また、資源的に恵まれているところもあればそうでないところもございます。ですから、すべて一様とは言えないとは思いますけれども、今般の水産四法の制定によりまして、私は、今絶対という、委員はそういう表現をされましたけれども、絶対そういう方向づけをしていかなきゃならぬ、そういう決意で臨んでまいりたい、こう思います。
 それにはかなりの痛みも伴うことであろうと思います。それぞれ利害関係がありますし、また、私も浜の実態を見まして、漁民同士の感情の問題もございますし、これを乗り越えていくということは、さまざま容易でない問題があろうかと思います。
 この水産四法の制定を契機に、それぞれが一つの方向に向かって邁進していく、そのための明確な方向づけは、今度の水産四法によって示すことができる、私はこのように思っております。世の中に絶対ということはありませんが、気持ちの上では、そういう決意で臨むというのが農林水産大臣のあるべき姿勢だ、こう思っております。
山内(功)委員 構造改革という問題は、時として、弱小の条件不利な地域の漁協とか漁民にとって非常に高いハードルとなると思うんです。私は、組合が健全に発展することと、本当に地域の漁村が崩壊していかないように、活性化とか自立ということをぜひ尊重していただきながら、そういった改革となるように省の十分な指導を期待して、終わりたいと思います。ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて山内功君の質疑は終了いたしました。
 次に、江田康幸君。
江田委員 公明党の江田でございます。おはようございます。
 本日審議されておりますこの水産四法は、今後の日本水産業の発展のために非常に重要な政策を含む法案であると思いますので、四法それぞれについて、真正面からきょうは議論させていただきたいと思っております。
 まず、漁業再建整備特別措置法等の改正案についてお聞きさせていただきます。
 改正案では、これまで中小漁業の振興に特化して、団体主導により構造改革を進めてまいりました中小漁業構造改善計画制度を見直して、沿岸を含む全漁業種類を対象に、意欲ある漁業者等が創意工夫を生かして行う経営改善の取り組みを支援する漁業経営改善計画制度を創設することとされております。
 これまで特定業種ごとに中小漁業構造改善計画を作成して、経営規模の拡大、省力化への取り組みなど、さまざまな経営対策に取り組んできたにもかかわらず、依然として多くの中小漁業経営体は多額の負債を有して、その財務状況も厳しいという状況かと思われます。
 そこで、この中小漁業構造改善計画制度のもとで、中小漁業の経営が今まで改善しなかった理由、要因はどこにあるのか、また、その問題点を踏まえて、今回の改正案ではどのような仕組みをつくっていこうとされているのかについてお聞かせいただきたいと思います。
木下政府参考人 現在の中小漁業構造改善制度でございますけれども、昭和五十一年の創設以来、二十六年が過ぎたわけでございますけれども、水産資源の悪化が進む中で、業界一丸となった経営規模の拡大を進める制度が、現在のそのような状況の中で実情にそぐわなくなってきているというのが一つでございます。
 また一方で、個々の漁業者が、その経営を見直しまして、コスト削減を図るという視点が必ずしも十分でなかったという点でございまして、しばしば、結果として過剰投資につながっていたという面があろうかというふうに思っておるところでございます。
 そのような本制度への評価を踏まえて、今回の制度改正では、経営改善の意欲のある個別の経営体に着目をした制度へ転換をしたいというのが一つでございます。
 もう一つは、その際に、個々の漁業者の創意工夫を生かした経営改善を促進するため、まずは、それぞれの経営実態に即した経営改善計画を作成していただき、その計画の内容につきましても、具体的な経営向上の目標を明らかにしていただくというようなところで、先ほど申し上げたように、結果としてコストの増あるいは過剰投資につながっていたというような点を克服していきたいというふうに考えております。
江田委員 では、今回の改正案では、今申されましたように、経営改善を行う漁業者に対して、農林漁業金融公庫から経営改善に伴い必要な資金を貸し付けができるようになるということでございますが、一方、農林漁業金融公庫資金の漁業関係資金の貸付実績というのは、漁業をめぐるこの厳しい状況の中で減少傾向にある。
 この漁業経営の現状を克服するためには、こうした金融措置を柱とした政策ではもう既に限界が来ているのではないかというような批判もございますが、今後、漁業経営の安定のために金融がどのような役割を果たしていくか、そこをまた教えていただきたいと思います。
木下政府参考人 漁業でございますけれども、その主要な生産基盤である漁船が個人の所有に属するということで、なかなか補助事業になじみがたい。また、漁業活動、特に中小漁業でございますけれども、多額の運転資金が必要であるということから、従来、漁業活動につきましては金融で支えられてきております。これまでの我が国漁業の生産拡大に重要な役割を果たしてきたというふうに考えております。
 一方で、近年の漁業生産の低下なり金融情勢の変化の中で、新規貸し付けが減少しているわけでございますけれども、漁業関係の融資残高、現在二兆二千億に上るということで、漁業におきます金融の重要性は変わらないというふうに考えております。
 今回の水産四法でございますけれども、漁業経営の安定のための取り組みといたしまして、先ほど御説明しましたような漁業再建整備特別措置法の改正によります各種の金融制度の支援のほかに、一方で、漁業災害補償制度の改正等々も行いまして、相まって、漁業経営の改善に努めていきたいというふうに考えております。
江田委員 ではさらに、現在、漁業を取り巻く厳しいこの状況のもとで、漁業者の信用力を補完して、その経営に必要な資金の融通の円滑化を図る中小漁業融資保証保険制度の役割というのが、さらにまた重要になっていると思います。
 しかしながら、この基金協会においては、厳しい漁業経営環境を反映してか、保証残高の減少、多額の延滞債務や求償権残高、長引く超低金利の影響等によって財務基盤の脆弱化が進んでおり、保証保険制度をめぐる状況は一層厳しい。このような状況を踏まえて、漁業信用基金協会の財務基盤を強化する等、その保証能力の向上を図るという必要があるかと思いますが、これについてお考えを聞かせてください。
木下政府参考人 漁業保証の問題でございますけれども、漁業信用基金協会は、中小漁業者などの信用力を補完いたしまして、その経営に必要な資金の融通の円滑化を図るという観点から、今後ともその必要性は変わらないというふうに考えております。
 御案内のとおり、この財務基盤が弱くなってきているという点もございます。私ども、そういう点を踏まえまして、漁業信用基金協会の保証能力を向上し、その役割を十分に果たせるように、これまで予算措置をしてきたところでございます。
 一つは、都道府県が漁業信用基金協会に対して出資を実施した場合の、その出資助成を補助する制度、また、漁業信用基金協会の保証債務の履行を円滑化するための農林漁業信用基金からの融資をするための出資等、財務基盤の強化に努めてきております。
 平成十四年度の予算措置でございますけれども、十八億ということで、前年の十億に比べまして大幅な予算措置の確保を図っているところでございまして、今後とも、漁業信用基金協会の健全な運営の確保を図る観点から、必要な予算枠の確保に努めていきたいというふうに考えております。
江田委員 その保証能力の向上をぜひとも図っていただいて、漁民の皆さんが安心して貸し付けいただけるようによろしくお願いしたいと思うわけでございます。
 次に、漁業災害補償法改正案について幾つかお伺いをさせていただきたいと思っております。
 まず、改正の趣旨についてでございますが、共済制度の基本というのが、特定の者に生じた不慮の損失を広く多くの人々が少しずつ補てんし合う、このことによって全体の経営を安定させようというものでありまして、制度の健全な運営のためには普遍的な加入が不可欠でございます。
 しかしながら、この加入の現状を見ますと、平成十一年度推定加入率は、漁獲共済で四三・三%、養殖共済で三一・二%、特定養殖共済で六八・五%、漁具共済で四・七%、これは極端に低いですが、漁具共済を除くこの三共済平均では四二・八%となっておりまして、総じて上昇傾向にあるとはいえ、まだ極めて低い状況にあるかと思います。
 例えば、私の地元である九州有明沿岸で生じたノリの凶作のときには、漁協によっては共済に加入していないところが随分ありまして、共済金の支払いが受けられない生産者がかなりの数に上ったわけでございます。このような状況を踏まえると、漁業環境の変化と漁業者のニーズを的確に把握して、本制度がさらに漁業の実情に即したものとなるように、その充実を図る必要があると思います。
 政府は、この改正案の提出に当たって、加入率が低い原因をどのように把握されて、今回の改正にどのように生かされようとしたのか、また、これによってどの程度の加入拡大を見込んでおられるのか、その考えをお聞かせください。
木下政府参考人 まず第一点のお尋ねでございますけれども、漁業共済制度の加入率が低いという点でございます。
 一つには、漁業共済は単年度ごとの掛け捨ての保険でございます。漁業者がそのような掛け捨てに対して割高感を抱いているというのが一つでございます。
 もう一つは、私どもが十分反省する必要があるわけでございますけれども、補償内容が漁業者に正確に理解されていない、共済支払い時期におきまして漁業者が期待をしている補償額との間に乖離が見られる、あるいは、漁業共済制度がなかなか複雑で十分理解できていないという点もあろうかというふうに考えております。
 私ども、今回の改正におきましては、そのような点を踏まえまして、できるだけ多くの漁業者が加入していただけるよう、漁業者の現下のニーズを踏まえまして制度改正を実施したところでございます。
 一つは、掛金水準を抑えた新たなてん補方式の導入、昨年の有明海での経験を踏まえ、このような掛金水準を抑えた新たなてん補方式の導入によりまして加入を促進していきたいというふうに考えておりますし、また、養殖共済におきましても、病害不てん補特約の創設等々によりまして掛金の負担をできるだけ少なくする、そのような点につきましても制度改正に盛り込んでいるところでございます。
 私ども、今回の制度改正によりまして、今後漁業者の共済加入が増加をするというふうに見込んでいるわけでございますし、また、いろいろな場を通じてPRもしていきたいというふうに考えておりますけれども、今後、現在の四割程度の水準から五割以上まで伸びるというような見通しを持っているところでございます。
 それから、もう一点、恐縮でございますけれども、先ほど私が漁業信用基金協会の出資補助金の額について御紹介をいたしましたけれども、十四年度の予算、十八億というのが一億八千万でございまして、十三年度が、十億というのは一億でございますので、訂正をさせていただきたいというふうに思います。
江田委員 今御説明がありましたように、加入の低い原因として、掛け捨ての割高感があったり、補償内容が十分理解されていないというようなことがあったと思います。それに対して、今回の改正では、加入要件の緩和等で、これまで四〇%台だったのが五〇%以上に加入率が上がっていただけるだろうという予測でございますが、これには、本当にしっかりと周知徹底して、なかなかわかりにくい内容ですので、これを周知徹底していただく必要が本当にあるかと思います。今回の有明の問題を機に、ここを行政の方が重要としていただいて、よろしく御推進いただくようにお願いしたいと思います。
 そういう意味で、あと、この加入推進に頑張らなければいかぬところが漁協であり、また地方公共団体ではなかろうかと思いますので、その点についてちょっとお伺いをさせていただきます。
 漁業共済への加入を促進するためには、法改正などによって制度がいかに充実されたとしても、これを推進する体制が不十分であれば何とも進まないわけでございます。漁協というのは共済組合の直接の構成員でありまして、事業の円滑な実施においても重要な役割を果たしているところでありますが、共済加入推進上の漁協の位置づけというのが制度上明確になっていない、そういうことのために無関心な漁協も多いというような指摘もあるところでございます。ここで、共済加入の促進における漁協のあり方についてお考えをお聞きしたいと思います。
 また、災害による漁業被害が漁業経営だけでなくて地域経済に大きな影響を与えることを考えれば、地域において漁業災害補償制度は重要な役割を果たしていると言えます。こうした認識から、地方公共団体による掛金の助成とか制度の説明会などが実施されているところでございますが、本制度における地方公共団体の役割についてあわせてお聞かせいただきます。
木下政府参考人 漁業共済制度でございますけれども、漁業者の相互扶助の精神を基調とする制度ということでございます。そういう意味で、地域に根差した共済普及の取り組みが重要でございます。漁村の中核的な組織であり、また、漁業者の相互扶助を目的といたしました協同組合であります漁協についても、その役割は大きいというふうに考えております。
 また、本制度でございますけれども、災害対策あるいは漁業経営安定対策として重要な役割を果たしているわけでございます。地方公共団体が講じております各種施策と有機的に連携をして、地域の実態に即した効果的な運用が重要だというふうに考えております。
 そういう意味で、私ども、漁業共済団体が中心でありますけれども、国、地方公共団体、それから漁協系統団体、一丸となりまして今後加入促進運動を展開していきたいというふうに考えておりますし、今回の制度改正を受けまして、今回の制度改正の内容のPRを含め、これらの関係団体ともどもさらに一層加入促進に努めていきたいというふうに考えております。
江田委員 漁協についても、その加入促進運動、加入促進を進めていくというのに取り組むということでございますが、特に、これまでとにかく無関心な漁協も多いということでありますので、これを法的に制度づけということができなければならないかと思うんですが、そういうところはできないわけでございますか。
木下政府参考人 それぞれの事業の中で、その事業を実施するために漁業協同組合があり、また、漁業共済組合があるわけでございます。私ども、漁業共済組合、漁業協同組合、それぞれその組合員は同じであるというふうに考えております。それぞれ、組織あるいは形態は違いましても、組合員相互の相互扶助という点については共通でございますので、組織形態は違うことはありますけれども、まさに組合員の相互扶助の精神に照らして、それぞれ連携をして事業を進めるよう指導していきたいというふうに考えております。
江田委員 わかりました。
 時間が参りますので、あと二法ございますので、ぜひとも質問したいと思っておりますので、先に進ませていただきますが、次に、水産業協同組合法等の改正案についてお伺いいたします。
 まず、資源管理の取り組みの促進、このことについて、非常に重要ですので触れさせていただきます。
 昨年の水産基本法の制定による新たな水産施策の理念である水産物の安定供給の確保や水産業の健全な発展の実現に向けて、漁協系統組織におきましても、より積極的な役割を果たしていくことが期待されております。このため、漁協系統組織が水産資源の適切な管理について的確に対応していくことが求められているところであります。
 言うまでもなく、水産資源は、水産業の持続的な発展と国民に対する水産物の安定供給の基盤でありまして、その適切な管理と持続的利用を図ることが重要でございます。しかしながら、現在、我が国周辺の水産資源については、多くの魚種についてその資源状態が非常に悪化しており、資源の回復を図る、これが重要な課題であるということは共通の認識であるかと思います。
 そこで、幾つか質問をさせていただきたいんですが、漁協の事業活動というのは、一つには信用事業、二つには指導事業、三つ目販売事業、四つ目購買事業、そして五つ目が共済事業であり、六点目自営事業等多岐にわたっているということでございます。その中で、特に指導事業というのが、組合員の漁業活動のみならず、その生活全般にかかわる事業であって、漁協のほかの事業との有機的な結びつきを保ちながら実施されているところであります。
 現在、この指導事業を実施している漁協は全体の九八%を占めて、ほとんどの漁協が実施されております。しかし、一漁協平均の指導事業担当職員は〇・六人、都道府県漁連の指導事業担当職員は六人、その実施体制は非常に脆弱であると言われております。
 こうした中におきましても、水産基本法の基本理念の実現に向けた漁協の積極的な取り組みが期待されておりますことから、指導事業を拡充して、資源管理の推進、組合員の経営技術の向上、担い手の育成等の諸課題に的確に対応することが今求められているところであるかと思います。
 そこで、漁協系統組織の指導事業の具体的な事業及びその取り組み状況についてお伺いいたします。また、水産資源の管理及び営漁指導事業を漁協の事業の第一番目、第二番目に今回位置づけることの意義について、またその具体的な効果について、あわせてお伺いいたします。
宮腰大臣政務官 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、指導事業についてはまだまだ脆弱な状況にあるということでございます。
 具体的な指導事業の内容につきましては、一つには、資源管理のための漁獲の指導、それから二つには、乗船する際の救命具の着用及び海況、気象情報の提供等の安全指導、三つ目には、経理、税務等の経営指導、四つ目には、各地の漁況及び知識向上を図るための教育指導などが含まれておりまして、経営指導、技術講習、資源管理など組合員の漁業活動を支える多種多様な内容となっております。
 また、御存じのとおり、本事業は収益を生む事業ではありませんので、他の事業部門の収益により運営されているものでございます。
 水産基本法におきましては、水産物の安定供給の確保と水産業の健全な発展という二つの基本理念を掲げておりますが、この基本理念を実現していくためには、資源管理の積極的な推進と、効率的かつ安定的な漁業経営の育成が最も重要であるというふうに考えております。
 こうした課題に対しまして、漁業、漁村における中核的組織である漁協としても積極的に取り組むべきであるというふうに考えておりまして、その重要性にかんがみまして、従来の漁協の資源管理事業、これを独立させた上で漁協が行う事業の第一番目に、漁協の営漁指導事業を第二番目に明確に位置づけることとしたものでございます。
 このことによりまして、漁協が本年度から策定が始まりました資源回復計画の取りまとめに積極的な役割を果たしていただいたり、営漁指導の一環として担い手育成の取り組みをこれまで以上に強化をしていくということなどを期待しているところでございます。
江田委員 そうですね。今回の改正で、第一番目、第二番目に水産資源の管理等を置くということでございますので、それで漁協が最重要として実施されると思うんですが、何分これは制度とか法的な措置でこうなっているとは思うんですけれども、実効力のあるものにやはりしていかなければならないと思うんですね。
 資源管理というのは、直接には利益が上がってくるところでないものですから、ほかの販売とか購買とかそういうようなところに比べてやはりちょっと、第二、第三番目に今まで置かれていたわけです。しかし、水産資源の管理をしなければ、最終的には漁業の、それは漁協も漁民の皆さんも首を絞められるわけでありますので、そこはしっかりと周知徹底、指導がもう一つには要るんじゃないかと思いますが、これまで以上に指導されますか、そこをお伺いしたいと思います。
宮腰大臣政務官 資源管理につきましては、持続的生産の保証でもあるということでございまして、全漁連等々の系統を通じましてこれまで以上にしっかりと指導をしていくとともに、資源管理のための支援の枠組みも検討をいたしているところでございますので、これからもしっかりやっていきたいというふうに考えております。
江田委員 わかりました。
 さらに質問を続けさせていただきますが、今回の改正により、資源管理規程の対象に遊漁船業が追加されることになりました。これにより、遊漁船業者の八割が漁協の組合員という実態から、その実効性が確保されることが大いに期待されるところでございます。
 しかしながら、資源管理規程につきましては、二県において十六漁協が設定しているにすぎないと言われております。この二県十六漁協というのは、たしか九州のみではなかったかと思うんですが、そういう非常に、この資源管理規程は皆さん設定はされていないわけでございます。
 こうしたことを踏まえまして、まず、資源管理規程の活用が進んでいない、その原因は何なのか、それを示してもらった上で、今回の改正による資源管理規程の拡充が水産資源の適切な管理に果たす役割、新たな制度の活用に向けた取り組みのあり方についてお伺いしたい。またあわせて、現在水産庁が進めておられます資源回復計画との今回の関係、その進捗状況、これもあわせてお伺いできれば。よろしくお願いします。
木下政府参考人 現在の資源管理規程でございますけれども、平成五年の水協法改正で導入されたものでございます。
 組合内部の自主的な申し合わせを法律上に位置づけたという点でございますけれども、これまで資源管理の重要性については叫ばれながら、必ずしも組合員には十分浸透していないというようなところがあったかと思います。そういう面もありまして、この制度が十分活用されていないというのが実態でございます。
 昨年の水産基本法の制定によりまして、水産基本法の理念を実現する観点から、漁業者団体の責務として水産資源の管理が重要であるということが明確化されたわけでございます。漁協系統におきましても、今回の改正を受けまして、資源管理につきまして、まさに運動の中心に据えて進めていきたいというような運動に取り組んでいるというところでございます。
 私どもも、今回の改正を受けまして、先ほど政務官が御答弁申し上げましたように、資源管理の取り組みにさらに一層努力をしていきたいというふうに考えております。
 また、資源回復計画の進捗状況でございますけれども、十六年度までに五十程度の候補魚種から順次制定をしていきたいというふうに思っておりますけれども、現在の状況ですが、四月に瀬戸内海におけるサワラ資源の資源回復計画を作成、公表したところでございます。本年度は、さらに八魚種三計画につきまして、その作成の準備を進めていきたいというふうに考えております。また、太平洋のマサバにつきましても、資源状況を見て作成に着手したいというふうに考えております。
江田委員 終われというペーパーが参りました。
 今まで三法について聞かせていただきましたが、あと遊漁船業の適正化法の改正案が出されております。これは、届け出制から登録制ということで、私も、これによって未然に悪質な遊漁船業者を排除できることとなると期待するものでございますが、最後に、この登録制度への移行によって見込まれる効果、これを一点だけお伺いして、終わりたいと思います。
木下政府参考人 登録制に移行させる効果でございますけれども、一つが海難事故の減少、それからもう一点は、万一事故が発生した場合の利用者の保護の徹底、それから遊漁と漁業の利用調整がさらに円滑になるというふうに考えております。
江田委員 本日議論しております水産四法、今議論しましたように、非常に水産業の発展に直結するところでございます。我々もしっかりと議論を続けまして、成立を期したいと思っております。
 ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて江田康幸君の質疑は終了いたしました。
 次に、中林よし子さん。
中林委員 漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案についてお伺いします。
 これまで漁業全国団体が作成してまいりました中小漁業構造改善計画について、この法案では、漁業者及び漁業協同組合等が改善計画を作成することになって、従来の団体が作成する方式を改めました。これに対して、すべての漁業者個人が改善計画を策定できるのか、また、全国団体がどのようになるのか、排除をするということはないのか、こういう懸念が想定されるわけですけれども、農水省はこれにどのように対処されるのか、明らかにしてください。
木下政府参考人 今回新たに創設を提案いたしております漁業経営改善制度でございますけれども、個々の漁業者自身がみずから行おうとする経営改善の取り組みにつきまして計画を作成するという点でございます。
 したがいまして、今般の法律改正に伴いまして、個々の漁業者は、所属する漁業者団体に頼ることなく、みずからが計画作成主体になるよう求められているわけでございますけれども、ただ、実際の計画作成過程におきましても、個々の漁業者が作成するという場合に種々困難も予想されるところでございます。したがいまして、個々の経営体が改善計画を作成するに当たりましても、漁業者団体が適切な指導あるいは協力を行うこととなるよう、私どもとしても漁業者団体を指導していきたいというふうに考えております。
 また、新しい制度のもとで、漁業者団体が、傘下の漁業者の経営改善に資するという観点から、みずから水産加工場の建設などの具体的取り組みを内容とする改善計画をつくる道も開いております。このような場合につきましては、そのような取り組みに対して認定を受けることができるということでございます。
中林委員 確認したいんですけれども、「等」とありますよね。策定する「漁業協同組合等」、この「等」は「その他の政令で定める法人」ということになっているわけですけれども、この、その他政令で定める法人の中には、従来の漁業全国団体、これが指定されるということでしょうか。もう一度御答弁願います。
木下政府参考人 漁業者等でございますけれども、委員御指摘のとおりでございます。
中林委員 次に、漁業経営改善計画認定制度について伺うわけですけれども、小規模な漁業者中心である沿岸漁業の場合、この認定漁業者とそうでない漁業者、その選別が行われるのではないか、こういう問題が生じるわけですけれども、この点についてはどのようにされるつもりでしょうか。
木下政府参考人 今回の漁業経営改善制度でございますけれども、経営改善意欲のある漁業者でありますと、漁業種類あるいはその経営規模にかかわりませず、だれでも単独または共同で漁業経営改善計画を作成し、認定の申請を行うことができるというふうにしているところでございます。今回の制度は、それぞれの漁業者を認定するのではなく、漁業者がつくります改善計画を認定する、そのような認定をされました計画に従いまして、種々の支援措置を行いたいというふうに考えているところでございます。
中林委員 そうしますと、漁業者の中に協業体あるいはグループを含めるということになるんでしょうか。協業体やグループの場合は連名で計画をつくることにし、また、その協業体やグループの中に漁業協同組合が入って一緒に計画策定をする、こういうことになるわけですか。
木下政府参考人 今回の漁業経営改善制度でございますけれども、それぞれの漁業者が単独でつくる場合、あるいは漁業者が共同でつくる場合、両方の場合を想定しているわけでございます。したがいまして、漁業者が漁協と共同して改善計画を作成する場合、あるいは漁業者が協業体を形成して協業体として改善計画を作成する、いずれも対象になるというふうに考えております。
中林委員 それでは次に、諫早干拓問題についてお伺いします。
 短期開門調査が行われているわけですけれども、この経緯について明らかにしてください。
太田政府参考人 農林水産省といたしましては、昨年十二月に開催されましたノリ不作等第三者委員会の見解を踏まえ、有明海全体としての環境改善の方策を講ずるための総合的な調査の一環といたしまして、短期の開門調査に加え、諫早干潟に類似した現存干潟における実証調査、開門調査により得られる情報も活用したコンピューターによる水質、流動等の解析調査の三つの手法を総合的に組み合わせた開門総合調査を実施し、有明海の環境変化への影響が指摘されておりますさまざまな要因の一つである諫早湾干拓事業につきまして、有明海の環境への影響をできるだけ量的に把握したいというふうに考えております。
 開門総合調査のうち、短期の開門調査は、調整池に海水を導入することによりまして、調整池及び海域の水質、諫早湾の潮の流れなどにどのような変化があるかを現場で観測するものでございます。
 今回の開門調査では、大潮、小潮等を含みます四月二十四日から五月二十日までの間、海水を調整池に導入するとともに、その後の調整池が淡水に回復する過程について、調整池及び海域の水質等の変化を現場で観測しているところでございます。
 以上でございます。
中林委員 今言われましたように、ノリ不作の検討委員会、その見解を踏まえてということになっているわけですね。
 それで、短期開門調査といっても、このやり方というのが、鉄の扉があるわけです、ギロチンになったあれですね、その扉を海底から最高九十センチ持ち上げる程度の調査です。堤防内の水位の変動幅がわずか二十センチということなんですよね。海水の導入量が約七千万立方メートル、当初計画で言われていたのは七千五百万立方メートル、それを下回っているということになっています。
 これについて、専門家からいろいろな意見が今出ております。海水化が不十分でデータを得られない、こういう懸念が出ているわけですよ。
 ノリ不作検討委員会、この第三者委員会の長崎大学の東教授、この方は、予測できたことだが、調整池の表層では海水化が余り進んでいない、干潟の浄化機能を調べるには、もっと長期にわたり、大幅に海水を入れる必要があることが実証された、こういうふうに述べておられます。同じく第三者委員会の九州大学大学院の本城教授、この方は、赤潮の解明には夏場の調査が欠かせない、夏を含めた長期開門が必要だ、こういうふうに述べています。
 大臣、第三者委員会の主要な科学者の意見、このように言っているわけです。中長期開門調査に当然取り組む必要があるというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
武部国務大臣 現在実施している短期の開門調査につきましては、ノリ不作等第三者委員会の見解の趣旨を踏まえまして、既に潮受け堤防によって背後地で期待された防災機能が発揮されていること、また潮受け堤防の周辺地域で多くの住民が生活し、農業、漁業等を営んでいること、また本事業については早期完了を強く求められていること等の観点から、採用する調査方法を検討したところでございます。
 中長期の開門調査につきましては、これらの観点に加えまして、現在進められております有明海を再生するための新法制定の動き、短期の開門調査で得られた成果及びその影響、その他の各種調査の動向、ノリ作期との関係等の観点をも踏まえまして総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設けます有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経まして、農林水産省において判断することとしているわけでございます。
中林委員 それは非常におかしいというふうに思います。というのは、この短期開門調査の結果を総合的に見て、シミュレーションなども含めてですけれども、そういうものを含め、これからそういう場を新たに設けて、そこで検討して結論を出すという話なんですね、中長期については。しかし、中長期開門調査は、ノリ不作の検討会の見解として、まずは短期だ、それから中期、長期というふうに順を追った提案がなされている。そうなると、今の大臣の御答弁では、中長期をやらない場合もあり得る、こういう選択肢もその中には含んでいることを意味しているんじゃないでしょうか。
 第三者委員会の提言については、谷津前農水大臣は、最大限尊重する、こうおっしゃったわけですよ。大臣、谷津大臣からその点はしっかり引き継ぎされたんじゃないですか。その点、いかがですか。
武部国務大臣 私ども、最大限尊重しながら今日に至っている、このように理解しております。
中林委員 そうすると、先ほど言われた中長期の開門調査、これはやるということが言明されなきゃいけないんじゃないですか。谷津前農水大臣は、短期だけでは科学的にも意味がない、短期だけで済ませようとするなら反対する、こういうふうにおっしゃっているし、先般、「ニュースステーション」で、谷津前大臣が直接取材を受けて、その点をテレビでも言明されておりました。
 今回の短期開門調査が二十七日間、しかも、うち、一日二回以上海水を入れたのは七日だけ、ともかく海水を入れたのが十二日間、ゼロの日が八日間もあったわけですよ。だから、本当にわずかしか海水が入っていない。あそこの全体の調整池の海水の全部の入れかえのためには五十日から六十日かかる、こういうふうに言われていて、これだけ短い期間海水を入れるだけでは、本当の意味で、私は、どんなことを言われても、総合的な判断はできないというふうに思います。
 だから、この第三者委員会が非常に時間をかけて議論して、そしてなぜそういうものが必要なのかということまできっちり出していらっしゃるわけですから、これは、今言われたように、最大限尊重するとおっしゃったのならば、中長期の開門もする、そういう調査もするんだということをやはり言明していただかないといけないんじゃないですか。
宮腰大臣政務官 中長期の調査の実施の判断ということだと思いますけれども、ノリ不作第三者委員会は、有明海沿岸四県におけるノリ養殖の不作等に関する調査及び研究の計画の樹立、適切な実施等を図るために設置した委員会でございます。
 開門調査につきましては、ノリ不作等第三者委員会において科学的な検討を行っていただいた結果として、諫早湾干拓地排水門の開門調査に関する見解が示されまして、その取り扱いについては、委員長発言にありますように、行政に総合的な判断をゆだねられたところでございます。
 有明海の再生のための各種対策の検討や検証を進めるため、平成十四年度中に新たな場が立ち上げられることとなっておりまして、中長期調査につきましては、この新たな場での議論を経て、農林水産省として判断することとしております。
中林委員 どんなに言っても、この間から議論を聞いていますけれども、中長期の調査については言明を避けていらっしゃるんですよ。
 まず短期の結果を見てからというようなことを言われるというのは、当初、この見解が発表になったときに、私たちは、これで科学的な解明ができるんだなというふうに思ったわけです。谷津前農水大臣も、最大限尊重する、このようにおっしゃったんだけれども、短期だけで終わるということになると、最大限尊重などということでは絶対ないですよ。
 私は、大臣、なぜ明確にそのことを言われないかというと、それは、あなた方が依然として干拓事業推進の立場にこだわっているからじゃないですか。長期に水門を開放して調査をすれば、干拓事業は予定どおり二〇〇六年までには完成する、こういうふうに言っているわけですけれども、その推進が難しくなってしまう。
 もし調査によって干拓事業が有明海の異変を引き起こしたことに原因がある、こういうふうにはっきりとしたら、干拓事業中止もあり得るわけですよ。そうですよね。干拓事業が今の有明海の環境を悪くしたんだ、またノリ不作にもそこに原因があったんだ、こういう結果が長期開門によって出れば、中止せざるを得ないということになるわけですから。
 中長期調査をやるということを明確にしない限り、本当に今農水省が自信を持って、では干拓を進めると言うんだったらば、こういう科学的な調査があったんだという裏づけがなければだめでしょう。そういう中途半端なやり方であの干拓事業をごり押しするなどということは、私は許されないと思います。
 大臣、明確に、中長期の開門調査をやるんだと言明してくださいよ。
武部国務大臣 中長期の開門調査にかかわる見解は先ほど述べたとおりでございます。
 私は、今、諫早湾干拓事業推進派だ、そういうふうに決めつけてお話しされましたけれども、八月二十八日には大きな見直しをやったわけでございます。干拓事業については、防災機能の十全な発揮、概成しつつある土地の早期の利用、環境への一層の配慮、予定された事業期間の厳守の視点に立って、各方面からの検証を行い、本事業を自然と共生する環境創造型の農業農村整備事業の先駆的な取り組みにしたい、こう考えておりまして、今もその考えは変わりません。したがいまして、御理解をいただきたいと思います。
中林委員 そうであるならば、なおさら、あの第三者委員会の主要な学者の方々が、今回の短期調査の結果を受けて、これではやはり不十分なんだと指摘をしているわけですよ。
 だから、私は、あくまでもこの第三者委員会、大臣も最大限に尊重する、なぜそういうものが必要なのかということは、本当に非常にリアルに、中期調査それから長期調査の必要性というのは、やはり干潟だとかそういうところをしっかり見なきゃいけないんだ、こういうふうに言っているんですよ。
 今回、なぜそれだけ非常に少ない海水しか入れなかったかというと、既に干陸化されている干潟のところ、西工区ですけれども、やはりそこへ海水が入るおそれがあるということで、こういう非常に短期的な、科学者から見れば、研究者から見ればこれでは不十分だと言われるような調査しかできなかったんじゃないかというふうに思わざるを得ません。
 私は、干潟の浄化機能などを観察するために、水門のできるだけ大きく、長い開放が必要だ。この論法はわかるんじゃないですか、大臣だって。あんな短い調査で干潟の問題なんかわかりようがないじゃないですか。
 干拓の見直しを提起したときには、自然と一体となったような、環境と共有できるような、そういうものにしていくんだというんだったらば、あれだけ世論が盛り上がった、そういう中で、ノリ不作の第三者委員会ができて見解も出された。それを受けた形で、まず第一歩だけだったんですよ、短期開門調査というのは。それであるならば、それを踏まえるのは当然ですよ。それを踏まえた形で、中長期の開門も必ずやるんだ、なぜこう言明できないんですか。
宮腰大臣政務官 短期の開門調査、七千万立方メートルについて少ないという御指摘でございましたけれども、平年の降水量を勘案すれば、大体平年で見ますと七千五百万立米ぐらいにはなるだろうということでございまして、それに匹敵する量である、しかも調整池の容量の約二・三倍の海水を導入したということでございます。
 それから、短期の開門調査で科学的に何がわかるのかというような御指摘であったと思いますけれども、今回の開門総合調査は、短期の開門調査だけで成果を得ようとするものではなくて、諫早干潟に類似した現存干潟における実証調査と、それから開門調査により得られる情報をも活用したコンピューターによる水質、流動等の解析調査を含めた三つの手法を総合的に組み合わせることによりまして、諫早湾干拓事業の有明海の環境への影響をできるだけ量的に把握しようとするものでございます。
 このうち、御指摘の短期の開門調査は、調整池に海水を導入することによりまして、調整池及び海域の水質、それから諫早湾の潮の流れ等にどのような変化があるかを現場で観測をいたしまして、例えば、今回得られた海水を導入した状態での諫早湾での水質の観測結果と調整池がつくられた以降の水質の結果とを比較することによりまして、淡水を調整池で一たんためて海域に排水するようになったことが海域の水質にどのように影響を及ぼしているかなどを知ることができるというふうにも考えております。
中林委員 要するに、短期というのは本当にちょっとしか海水は入っていないんですよ。本当に調査しようと思えば、海水が入れかわるぐらい、あそこは潮汐の働きによって浄化機能というのはあるわけですから、そういう意味では、海水がどれだけ入っていくかというのは調査のためには決定的に重要だ。だから、今シミュレーションを置くだとか、似たような干潟もよそにつくって、そこをモデルにしながらやっていけば十分だなどとおっしゃっているんだけれども、もともと、本当は二カ月あけて二カ月閉めた調査が短期だという最初のノリ不作の検討委員会の短期のやり方まで出ているんだけれども、それを今回は非常に短くした、シミュレーションなんかができるからというのは、私もそれを否定するものではございませんけれども、しかし、今言われたことは、もう何が何でも中長期の開門は避ける、その言いわけにしかすぎないというふうに思うんですね。
 ここに日経の「長期の開門調査につなげよ」という四月十七日付の社説がございます。ここに「農水省は中長期の開門調査については短期調査の結果を見て考えるというが、短期調査は本格的な調査の前段階でしかない。中長期の調査を見送るなら、有明海の異変の解明を封じてしまうことになる。有明海の再生を目指す以上、その選択はあり得ない。短期調査を中長期の開門調査につなげなければならない。」日経の社説ですよ。言っているんですよね。だから、赤旗の社説じゃないんですからね。これが私は世間一般が見ていることだというふうに思います。
 どんなに言っても中長期はすると言明されないというのは、もう極めて不自然でしようがないということを指摘する。それを言わないということは、この日経も主張しているように、有明海の再生に背を向けている農水大臣だと言っても私は過言ではないというふうに思いますね。
 そこで、今回この短期開門調査、開くに当たって、諫早湾干拓開門総合調査運営会議というものを持たれましたね。今もそれは会議はあります。これは一体どういう性格の機関で、どういうメンバーで、このメンバーの選考基準はどういうものであったのか、明らかにしてください。
太田政府参考人 開門総合調査運営会議についてのお尋ねでございますが、この運営会議は、開門総合調査を実施するに当たり、調査の方法、調査の管理運営及び調査の取りまとめに対します専門的な立場からの指導助言を得るために、九州農政局に設置したものでございます。この趣旨に沿いまして、九州農政局または長崎県により組織されました諫早湾関係の委員会の代表者、関係四県の水産の専門家、ゲート等の構造物の専門家及び気象環境の専門家の方々にもお願いしておるところでございます。
中林委員 それで、メンバーの名前は言われませんでしたけれども、非常に私おかしいと思ったのは、このメンバーに、第三者委員会、それがありながらこういうものをわざわざつくった。これは中長期開門調査の検討が必要でないという結論を出さんがための機関ではないか、こういうふうに推測せざるを得ないと思うんですね。第三者委員会の主要な学識者メンバーは入っていますか、どうですか。
太田政府参考人 開門総合調査を支障なく円滑に実施する観点から人選は行ったわけでございまして、地域の状況に精通した専門家の方々、具体的には九州農政局または長崎県により組織されております諫早湾関係の委員会から、有明海海域調査助言者会議の代表、諫早湾干拓調整池等水質委員会の委員長、それから諫早湾干拓地域環境調査委員会の委員長並びにゲート等の専門家、気象環境の専門家の先生方、さらに関係四県のそれぞれの水産研究機関の所長の皆さん方に委員をお願いしておる状況にございます。
中林委員 なぜ第三者委員会のメンバーを入れなかったんですか。
太田政府参考人 今申し上げましたように、開門総合調査を支障なく円滑に実施するという観点から、地域の状況に精通し、またその分野の専門家をお願いしたところでございます。
中林委員 全く答弁になっていないですよ。ノリ不作第三者委員会、ここはもう常時そこで調査していらっしゃる先生方がずらっと並んでいるにもかかわらず、今回全然メンバーに加えていない。全く答弁していないと等しいですよ。
 それで、私、このメンバーを見ましたよ。塚原、戸原両九州大学名誉教授がメンバーになっていらっしゃるわけですけれども、塚原さんは、たしか諫早干拓のアセスメントにも携わって、漁業被害がないというアセスメントをまとめた方だ、こういうふうに聞いていますね。それからまた、戸原さんは、諫早干拓工事に農業土木の立場から推進した人で、あのギロチンが落ちたときボタンを押した人の一人ではなかったですか。この両人とも諫早干拓推進の立場の人で、そのような方が、開門の是非を尋ねて、開門しろと言うはずないじゃないですか。
 こういうような人選で結論を誘導する。そして、専門家の意見を尊重して決めましたと国会ではきっと言われるに違いないというふうに思うんですね。まさに見え透いたやり方だというふうに思います。もっと公平に人選すべきだし、第三者委員会の主要な学識経験者はメンバーに入れるべきではないですか。その点いかがですか。大臣、どうですか。
武部国務大臣 開門総合調査を支障なく円滑に実施する観点から、今局長が説明しましたように、地域の状況に精通した専門家の方々、具体的には、九州農政局または長崎県により組織されている諫早湾関係委員会から、有明海海域調査助言者会議の代表、諫早湾干拓調整池等水質委員会の委員長及び諫早湾干拓地域環境調査委員会の委員長、並びにゲート等の構造物の専門家及び気象環境の専門家の先生方、さらには関係四県のそれぞれの水産研究機関の所長の皆様に委員をお願いしたというものでございまして、開門総合調査運営会議設置の趣旨に合った人選を行ったものでございます。
中林委員 そうすると、第三者委員会のメンバーで、どなたが今の条件に当てはまらない方々なんですか。当てはまる人は一人もいないんですか。
太田政府参考人 申し上げましたように、地元にこの調査を行うに当たっては、背後地の住民の皆さん、あるいは農業者、それから諫早湾内の漁業者の皆さん、非常な不安がある中でこれを実施するという観点から、地元の状況に精通した先生方、あるいはゲートの構造そのものにも非常に精通した先生方、そういう信頼をいただける方を選ばせていただきました。
中林委員 だれが不適格者なのかと聞いているんですよ。第三者委員会のメンバーを入れなかった理由、全然あなたは回答していないですよ。じゃ、東先生、どうしていけないんですか。
太田政府参考人 ただいま申しましたように、この調査を行うに当たっては、地元に非常な不安がある、これはやはり不安を起こさないように、そして理解を得ながら進めていくという観点から、説明、委員会でのそういう発言、そういったものが地元に受け入れられるという観点も含めて選ばせていただきました。
中林委員 あなた、不安というのを一方的な方からだけ見ちゃだめですよ。中止してほしい、こういう不安を皆さんいっぱい持っていらっしゃる。こっちの方が圧倒的ですよ。その不安にこたえているんですか。そういう不安があるから、そうすると推進の立場ばかり入れた、裏返せばそういうことをあなたは今答弁したんですよ。余りにもひどい、そういうふうに思います。
 そこで、今言われた諫早湾干拓事業開門総合調査運営会議、これの新しい会議録、全部読んでみましたよ。最初、どう言っていますか。なぜ第三者委員会の先生方がいないのか、そこの関連はどうなんだ、こういうことを口々に言われている。本来、この開門調査というのは第三者委員会、そこの見解の中で、短期調査が必要だ、こう言って始まったのでございます。だから、当然その見解を示した人たちがこの会にはいる必要があるんじゃないか、こう言っているじゃないですか。全然説明になっていないというふうに思います。何回言っても同じことしか言われませんから、余りにもひどい答弁だというふうに思います。
 大臣、少なくとも、この短期調査の結果、この結果は第三者委員会に示して、そこの意見も聞くということは最低必要なんじゃないでしょうか。そういうことをおやりになりますか。
武部国務大臣 ノリ不作等第三者委員会は、有明海沿岸四県におけるノリ養殖の不作等に関する調査及び研究の計画の樹立、適切な実施等を図ることを目的に設置したものでございます。一方、開門総合調査運営会議は、調査の実施主体である九州農政局が、地域の状況に精通した委員により、専門的な立場から助言指導いただくために設置したものでございます。
 具体的には、短期の開門調査における海水導入に伴い、背後地の塩害や諫早湾内の漁業への影響が生じないよう、事前の影響予測や対策、不測の事態への対応などについて助言指導いただくこととして、これまで同会議の助言指導のもとに予定どおり調査を進めているわけでございます。
 さらに、この短期の開門調査を中心に、これと関連して、諫早干潟に類似した現存干潟における実証調査と、開門調査により得られる情報も活用したコンピューターによる解析調査を組み合わせた開門総合調査について、具体的な調査手法や調査の取りまとめに関しても助言指導いただくこととしているわけでございます。
 今までそれぞれ答弁したことを整理して、もう一度御理解いただくために申し上げました。
 そして、開門総合調査の結果については、ノリ不作等第三者委員会に報告を行うことになるものと考えております。
中林委員 報告を行い、この第三者委員会で検討していただくということまでお約束していただけますか。
武部国務大臣 報告を行うということは、そういうことも視野に入れて報告を行うということでございます。
中林委員 私は、ノリ不作の第三者委員会というものの果たしてきた役割というのは、本当に、期間をちゃんとして調査もよくされて、そしてよく検討もされて、そして見解をまとめられたわけですよ。今そういうものが立派にある、そういう中で、この第三者委員会を抜きに、この短期調査の結果をまた新たな、今は全然姿が見えないんですけれども、新たな組織をつくってそこで検討すると言っているんですけれども、もともとあったこの第三者委員会で十分じゃないかというふうに私は思います。この第三者委員会の役割、それをしっかり念頭に置いていただきたい。
 中長期開門調査のことについては、大臣、明言を避けられた。これは本当に私は遺憾だというふうに思います。この問題は引き続き今後も取り上げていきたいというふうに思い、次の問題に移らせていただきます。
 大臣、FAOの食糧サミットにお出かけになるので、先週も私、この観点から質問をさせていただきました。
 この食糧サミットの問題ですけれども、前回九六年のサミットで、八億四千万人いた慢性的栄養不足人口を二〇一五年までに半減するということを決めました。FAOの中間報告によると、世界食糧サミットの目標の達成進捗度はこれまで相当緩慢であって、現在の進捗率によると二〇一五年までに目標は達成されないだろうと、目標達成が不可能であることを明らかにし、世界の食料事情というのは極めて深刻だというふうに思います。
 その中で、食料輸入大国日本、その実態はどうかということを検証する必要があると思います。アメリカを中心としながらも、全世界から五千八百二十五万トン食料を輸入している日本です。そのような輸入食料依存のもとで、飽食とも言われ、食生活を維持し、国民一人当たりの供給熱量が二千六百四十四キロカロリーに及んでおります。酒類を含めば二千七百九十八キロカロリーになるわけですね。このことは、世界の人口に占める割合が日本の場合二%です、その国が、人口比率の三・七五倍の食料と十二倍の水産物を輸入する、こういうことになっているわけですよね。
 EU諸国だとかアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの先進国の国民一人当たりの供給熱量、三千キロカロリーでございますけれども、しかし、これらの国は食料自給率が一〇〇%を超えている、ないしは七〇%、八〇%、そういう国々ですね。だから、自分の国で賄えているということです。
 世界の食料供給に負荷を与えているのは、先進国ではまさに日本だけだと。四〇%まで低下しているこの日本が、先進国では唯一世界の食料供給に負荷を与えているということになっているわけですね。
 このような、世界の食料を先進国と称する一国に集中するようなこと、これが、現在、将来にわたって許容されるのかということが、私は本当に厳しく問われるだろうというふうに思うんですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。
武部国務大臣 食料の問題というものは、今委員が御指摘ありましたような問題、あるいは地球環境をどう見るかという問題、とりわけ輸入農産物というものは、私は、水の略奪と言っても過言でありませんし、輸入するための手段というのは、航空機、船等使うわけでありますが、これも、石化資源を使う、CO2の排出ということ等にもつながりますし、そういう視点で考えていくということは大事なことだ、このように考えております。
中林委員 そういう視点からお考えになって、日本の食料自給率向上、そこに視点を置かれるのでしょうか。そういう視点から考えなきゃいけないとはおっしゃったんだけれども、今四〇%まで自給率が低下している日本の食料事情、そしてアメリカを中心にしたところから莫大な食料を輸入している日本の状況、これについてのもうちょっと踏み込んだ見解をお伺いしたい。
武部国務大臣 理想と現実という問題がございます。我が国の食料の自給率四〇%という現状は、私は、これはもう大変な事態だ、こう思いますし、これを四五%まで上げようというその背景は、今申し上げましたようなことも非常に大きな要素でございます。同時にまた、一〇〇%完全に自給できないという事情もこれまたあるわけでございます。
 そういうようなことを考えるときに、これは我が国一国だけで今申し上げましたようなことの解決はできない、このように思いますし、これからの地球上の人口の動態、あるいは栄養不足で苦しんでいる人々がどれだけいるか、そういったこと等も踏まえまして、やはり環境の問題、食料の問題、水の問題、あるいは今委員御指摘のようなさまざまな負荷の問題も含めまして、私どもはこれまでもEUなどと連携してケアンズ・グループ等に対して日本の主張をしているわけでございます。
 多様な農業の共存、食料の安全保障という観点から、農業の多面的な機能ということについての重要性を主張しておりまして、当然そのような考え方に立って私どもの食料問題というものを考えていかなければならない、このように思います。
中林委員 決意を述べられるのはいいし、そして、新しい農業基本法で、四五%を目指すということを決めています。しかし、前回食糧サミットが行われたときに、日本の自給率は四六%でした。そのときも、自給率を高めなければならないというふうに言われたけれども、日本では農業政策は何をされたのかというと、当委員会でも明らかにしましたけれども、新政策を実行してまいりました。この新政策をやれば自給率は上がるんだということを名目にやられたけれども、しかしどんどん下がって、四〇%まで落ちた。
 だから、幾らあなたがここで決意を述べられても、実際具体的な施策がそこに追いついていかなかったら、発展途上国の栄養不足の人たち、その人たちにとって大変なことを日本はやっているんだ、そういうことは、私は、やはり許されない。だから、これまでの日本の食料、農業政策、それに対しては厳しい反省の目が向けられて、本当に自給率が高まる政策に本格的に取り組んでいただかなければならない、このように思います。
 その議論は、具体的な施策についてきょう議論する時間がございませんので、またの機会にさせていただきますけれども、委員会で、いや自給率上げるために頑張りますとおっしゃっても、内実が伴わなければ上がらないということだけは申し上げておきたいというふうに思います。
 自給率を上げていく問題の中で、日本が食料を大量に輸入しているという問題の中に、環境面、大臣もおっしゃいましたけれども、その環境面からも問題があるという点を述べたいと思います。
 日本においても、食料輸入を環境面からはかる尺度として注目を集めているのが、フードマイレージという考え方です。マイレージというのは、ここにいらっしゃる議員の方々、御存じだと思います。航空会社が乗客の航続距離に応じて特典を与えるので、国民の中に相当浸透している、そういう考えです。
 それで、フードマイレージですけれども、これは食料の総輸送距離をとらえるものとして打ち出されております。これについて、日本のフードマイレージがどういうことなのかという試算が農林水産政策研究所でまとめられております。きょう、所長に来ていただいておりますので、その概要を明らかにしていただきたいと思います。
篠原政府参考人 フードマイレージの考え方でございますけれども、イギリスの消費者運動家にティム・ラングという方がおられまして、この方が一九九四年から提唱しておる概念でございます。
 どういうことかといいますと、生産地から食卓までの距離、これに着目いたしまして、なるべく近くでとれた食料を食べた方が輸送に伴う環境汚染が少ないのではないか、環境負荷を低減させるべきじゃないかということで、欧州、ヨーロッパ、まあアメリカにも広まっておりますけれども、消費者団体、環境団体のところで盛んにこの概念を持っていろいろ説明されております。これは、我が国でいいますと地産地消という考え方がありますけれども、これを数量的に裏づけるものではないかと思います。
 それで、私の研究所では、こういったことに着目いたしまして、食料輸送が環境に与える負荷を定量的に把握すべく計算いたしました。どういう計算かと申しますと、輸入相手国があります、そこからの輸入量があります、そこの重量と距離を掛けまして、単位といたしましてはトンキロメートルであらわしました。日本の計算をしたわけですけれども、同じような輸入大国であります韓国、それから逆の、全くの輸出大国でありますアメリカ、この三カ国を計算いたしました。
 計算してみてびっくりしたわけですけれども、我々の試算によりますと、平成十二年度でいいますと、日本は五千三百万トン輸入しているわけです。それにキロメートルを掛けますと、約五千億トンキロメートルとなります。これは、韓国が大体千五百億トンキロメートルでして、三・四倍ぐらい、韓国の三・四倍になります。それから、アメリカの場合は千三百億トンキロメートルぐらいにしかなりませんので、それと比べますと三・七倍。
 次が、もう一つ問題でして、人口が違いますから、一人当たりの量に合わせますと、日本は、輸入農産物、食料を大体四百二十キログラム食べております。距離は平均いたしますと大体一万キロになりまして、この距離というのは、東京からシカゴの距離でございます。ですから、合計は、一人当たり四千トンキロメートル。韓国は人口が少ないですから、韓国と比べますと一・二倍。アメリカはほとんど自分の国で賄っておりますから、アメリカの一人当たりと比べますと、アメリカが五百トンキロメートルぐらいしかありませんので、八倍という結果になっております。
中林委員 私、今所長がおっしゃったその論文を読ませていただきました。いろいろな前提条件はあるものの、やはり非常にすぐれた試算の仕方ではないかというふうに思ったんですね。
 それで、大臣、今おっしゃったように、本当に驚いてしまうような数字になっていると思うんですね。日本のフードマイレージが五千億トンキロメートル。これが韓国の三・四倍、アメリカの三・七倍、こういう水準になっているわけですからね。人口一人当たりに直しても、我が国は四千トンキロメートルということで、これも韓国やアメリカに比べると驚くべきような数字になっているということです。
 この点について、大臣はどのようにお受けとめになっているでしょうか。
武部国務大臣 フードマイレージは、食材の生産地から食卓までの距離に着目しまして、地産地消の促進などを図る考え方であると承知しております。
 また、私は先ほど水のお話をしましたが、我が国の食料輸入量は、耕地面積で一千二百万ヘクタール、水では四百四十億トン、これは国内都市用水と農業用水の合計使用量の半分に相当するということでございます。
 伝統的な食材や料理、地域に根差した表情豊かな食文化を守るために、イタリアではスローフード運動が始まっておりまして、日本も含め四十五カ国に広まっております。これらの運動に着目いたしまして、私は、四月に発表しました食と農の再生プランにおきましても、食の安全と安心の確保のために、食品表示の信頼回復、トレーサビリティーシステムの導入、食育の推進等とあわせまして、新鮮でおいしいブランド日本食品の提供という理念を軸にいたしまして構想を発表させていただいておりますが、この考え方と軌を一にしている、このように自負しているわけでございます。
 今後、ブランド日本農水産物の供給体制の確立に向けまして、消費者や食品産業と生産者の連携、コミュニケーションに基づく、消費者の望む産地のあり方、品質や生産性向上等の目標、その達成に向けた生産、流通、加工、販売の取り組み等を内容とするブランド日本戦略というものを策定してまいりたい、このように思います。
 また、これに基づく、新鮮でおいしい農産物の生産、増養殖水産物の資源培養及び消費者への情報発信、生産、流通を通じた高コスト構造の是正、消費者ニーズを踏まえた品種育成等の技術の開発に取り組んでまいりたい、このように思っております。
 先般も当委員会で申し上げましたが、バイオマスにも着目いたしまして、私どもは、これからの農林水産政策というのは、単なる生産振興という考え方から生物系資源の持続的な活用ということが非常に大事だ、こう思っております。
 今委員御指摘のフードマイレージの考え方というのは、私は非常に大きな関心を持っておりまして、我が国においても、世界を見ながら、地球全体を見ながら、あるいは人類の将来展望をしながら、どういうふうに構築していったらいいかということを真剣に考えてまいりたい、このように考えております。
中林委員 私は、大臣がフードマイレージの考えに大変意味を見出されたということで、よかったなというふうに思うんですけれども、ただ、問題なのは、日本の場合、人口一人当たり約四千トンキロメートルというフードマイレージだということに今なっているわけですが、当然、そのためには膨大な輸送エネルギー、これがかかっております。当然、輸送に伴う温室効果ガスを排出するわけです。外航海運だとかそれから国際航空によるCO2の排出だけではなくて、冷凍、冷蔵コンテナからの代替フロンの排出、これも大きな問題となります。
 問題なのは、これらの外航海運あるいは国際航空からの温室効果ガスの排出、これが京都議定書から対象外ということになって、今後の検討課題ということになっているわけですね。そうすると、今後これが規制の対象になるということを当然考えなければならないというふうに思います。そうすれば、現在のような大量の食料輸入に依存していることが、環境面からも日本は問題視されるということになります。
 この点について、今の食料の大量輸入体制を見直す、すなわち食料自給率を高めていくということがどうしても、もう後に引けない取り組みをしなければならないということになるというふうに思うわけです。大臣が来週食糧サミットにお出かけになりますけれども、世界の食料問題に対する寄与にもなるわけですから、この点を世界に表明すること、これが非常に重要な課題になるというふうに私は思いますけれども、FAOの食糧サミットにお出かけになる決意をお伺いしたいというふうに思います。
武部国務大臣 FAOのディウフ事務局長は水の問題について非常に大きな関心を持っておりますし、私ども、日本政府を代表して今スピーチを用意しつつございます。今委員の御指摘も踏まえて、しっかりした我が国の主張をしてまいりたい、このように思います。
 ただ、同時に、私どもは、今まで人類や我が国が直面してきた問題をどうやって克服してきたかというのはやはり技術革新ということでもあろう、こう思うわけでございます。そういう石化、鉱物資源、非持続的なエネルギー資源から持続的な資源の活用というようなことに向けて、我が国としても、今後新たなエネルギー資源でありますとかそういったことの開発にも意を尽くしていかなきゃならない。農林水産省は、そういう意味でバイオマス日本戦略というものを掲げて真剣に取り組んでまいりたい、このように考えております。
 また、FAOの後、NTC、いわゆる非貿易的関心事項に係る我々の同盟国、フレンド国が五十二カ国集まりまして、我が国が、私が議長を務めるわけでございますが、その場でも、この非貿易的関心事項というものがいかに重要であるかというようなことについて、きょうの議論も踏まえて議論を深めてまいりたい、このように思っております。
中林委員 最後に、家畜に投与される抗生物質問題についてお伺いします。
 EUでは、三月二十五日に家畜用飼料への抗生物質の使用を二〇〇六年に全面的に禁止する計画を発表しております。また、アメリカにおいてもFDA、食品医薬品局ですけれども、フルオロキノロン類の抗生物質の使用禁止に向けた手続を進めています。このように世界的には、家畜に対する抗生物質投与について厳しいというか、むしろ全面禁止の方向に進んでいるというふうに受けとめられるわけですけれども、農水省はこの抗生物質の家畜に対する投与禁止の方向を検討されているのかどうか、どう検討が進んでいるのか、お答えいただきたいと思います。
須賀田政府参考人 先生今おっしゃられましたように、家畜に使用される抗生物質でございます。
 これは、薬剤耐性菌問題というのがございまして、継続的に抗生物質を使用しておりますと、抗生物質が効かない耐性菌というのがどんどん増加をしていきまして、それが例えば病原菌化をして、その病原菌に薬が効かないというようなことになりますと、また大変な問題になりかねないという懸念があるということで、EUは家畜の成長促進を目的とした飼料添加物の使用を二〇〇六年までに中止するという方針を明らかにしております。
 一方、アメリカ、先ほど先生言われましたのは、動物用医薬品として問題のあるものを中止したわけでございまして、この件に関しましては、アメリカは科学的根拠に欠けるということで、動物用医薬品として承認された抗生物質を飼料添加物的に利用するということを継続することとしているところでございます。
 我が国の対応でございます。飼料安全法に基づく飼料添加物として一定の抗生物質を指定いたしまして、成分等の規格を定めて、対象家畜、用量、使用する時期等を規制しているわけでございます。
 この抗生物質の使用に関して、私どもは、現在、家畜体内の薬剤耐性菌に関するモニタリングを行っておりまして、リスクの把握等に努めているところでございます。
 今後どうするかという話でございます。海外の、EUとかアメリカの動きの収集ということを含めまして、公正中立な立場から客観的な科学評価、いわゆるリスク評価を行っていただきまして、その結果に基づいて、飼料安全法による適切なリスク管理というのを行っていきたいというふうに考えているところでございます。
中林委員 大臣、私は、BSEからの教訓として、やはりこの問題は厳しく対応していかなければならない。結局、人体にも影響があるからEUはやはり禁止の方向を決めていっているわけですよ。だから、大臣が、家畜に対する抗生物質の投与の問題に厳しく対処されるというのは、BSEの前例を教訓にして、いわばリトマス試験紙になるのではないかというふうにも思うので、大臣が厳しく対処されるのかどうか、見解を聞いて質問を終わりたいと思います。
武部国務大臣 BSEに直面して感じますことは、やはり専門的、科学的な知見を重視するということを痛切に感じております。そういう観点からしっかり対応してまいりたいと思います。
中林委員 以上で終わります。
鉢呂委員長 これにて中林よし子さんの質疑は終了いたしました。
 次回は、来る十一日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十三分散会


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