衆議院

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第5号 平成14年11月12日(火曜日)

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平成十四年十一月十二日(火曜日)
    午前九時三分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    青山  丘君
      荒巻 隆三君    石田 真敏君
      岩倉 博文君    岩崎 忠夫君
      梶山 弘志君    金子 恭之君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      小泉 龍司君    近藤 基彦君
      阪上 善秀君    七条  明君
      高木  毅君    西川 京子君
      宮腰 光寛君    川内 博史君
      後藤  斎君    佐藤謙一郎君
      津川 祥吾君    筒井 信隆君
      土肥 隆一君    鉢呂 吉雄君
      堀込 征雄君    山内  功君
      江田 康幸君    高橋 嘉信君
      小沢 和秋君    中林よし子君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
    …………………………………
   議員           今村 雅弘君
   議員           金田 英行君
   議員           宮腰 光寛君
   議員           佐藤謙一郎君
   議員           鮫島 宗明君
   議員           筒井 信隆君
   議員           楢崎 欣弥君
   議員           原口 一博君
   議員           江田 康幸君
   農林水産大臣       大島 理森君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   環境大臣政務官      望月 義夫君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   政府参考人
   (国土交通省都市・地域整
   備局下水道部長)     曽小川久貴君
   政府参考人
   (国土交通省港湾局長)  金澤  寛君
   政府参考人
   (環境省大臣官房審議官) 小野寺 浩君
   政府参考人
   (環境省大臣官房廃棄物・
   リサイクル対策部長)   飯島  孝君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局長
   )            炭谷  茂君
   政府参考人
   (環境省環境管理局水環境
   部長)          石原 一郎君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十二日
 辞任         補欠選任
  青山  丘君     阪上 善秀君
  宮本 一三君     宮腰 光寛君
  堀込 征雄君     土肥 隆一君
  松本 善明君     小沢 和秋君
同日
 辞任         補欠選任
  阪上 善秀君     青山  丘君
  宮腰 光寛君     宮本 一三君
  土肥 隆一君     堀込 征雄君
  小沢 和秋君     松本 善明君
    ―――――――――――――
十一月八日
 農薬取締法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案(古賀誠君外九名提出、第百五十四回国会衆法第二三号)
 有明海及び八代海の再生に関する臨時措置法案(佐藤謙一郎君外四名提出、第百五十四回国会衆法第四〇号)
 農林水産関係の基本施策に関する件(有明海及び八代海の再生に関する問題)


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 農林水産関係の基本施策に関する件、特に有明海及び八代海の再生に関する問題について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省農村振興局長太田信介君、林野庁長官加藤鐵夫君、水産庁長官木下寛之君、国土交通省都市・地域整備局下水道部長曽小川久貴君、国土交通省港湾局長金澤寛君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長飯島孝君、環境省大臣官房審議官小野寺浩君、環境省総合環境政策局長炭谷茂君及び環境省環境管理局水環境部長石原一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子君。
西川(京)委員 おはようございます。自由民主党を代表して質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
 去る十一月の六日に、私どもは農林水産派遣として、有明海のノリの生育状況そして諫早湾の干拓工事を視察してまいりました。私、初めて諫早湾の方は入りましたので、正直申し上げて、もうあそこまで完成している、できてしまっている状況の中で、一体水門を開門したりするいろいろな問題というのはどう対応するべきなのか、私は大変疑問を持ちました。
 その中で、現実に、その中の農地整備ということがこれからの課題ではないかな、そういう思いもいたしましたけれども、着々と試験的にいろいろな作物なども生育しておりまして、これからこれを実際に農家の方々がどう活用していくのか、その経済的な側面というのをフォローしながらしていかなければいけない、そんな思いもいたしました。
 実は今、国の一つの方向として、農林水産業、これが本当に疲弊してしまっている現実、この中で、国として、農林水産業に対する思いというのがどうしても私には余り見えてこないんです。その危機感を感じられない。そういう中で、一つの戦略として、今の政府が農林水産業というものをどういう位置づけをしてどう振興を図っていくのか、食料自給の問題も含めて、その辺のところが私も与党の議員として余り見えてこないという思いがあります。
 ぜひその辺のところをきょうはお聞きしてみたいなという思いもありますが、そういう大きな問題も含めて、有明のこのたびのノリの不作を契機にして特措法というのをそれぞれの議員でもんでまいりましたけれども、この特措法に対する基本的な考え、そのことも踏まえまして答弁いただけたらと思いますが、副大臣、よろしくお願いいたします。
北村副大臣 まず、基本的な認識でございますけれども、近年、有明海、八代海においては、昨年の九月だと思いますが、ノリの第三者委員会の中間取りまとめでも触れておりますとおり、漁場の環境の悪化が進行しております。そして、漁業の生産は非常に減少傾向で推移をしている、こういう認識を持っておりまして、このような状況の中で、一昨年の有明海における未曾有のノリの不作を契機に、有明海や八代海の再生あるいは保全のための特別措置を講ずることが強く求められたというふうに認識をし、与党において法律案が取りまとめられたというふうに認識をしております。
 農林水産省といたしましては、関係省庁あるいは関係各県等と連携を図りながら、環境の保全、改善並びに水産資源の回復等による漁業の振興に全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
西川(京)委員 ありがとうございます。
 やはり、ヨーロッパ先進諸国においては、一時イギリスあたりが食料自給が三十何%に落ちた、そこまでから、また今はもう一〇〇%自給まで回復している、どこの国でも国の戦略として農林水産業、特に農業、これはもう国の基本である、そういう認識がきちっとできていると思うのですが、日本の今の現実を考えますと大変お寒い状況です。その中で、農業そして水産業の疲弊というのがさらに環境の問題も含めて厳しい状況になっておりますので、どうか、大臣の方、副大臣の方におかれましても、その認識をお持ちになって、よろしく御配慮をお願いしたいと思います。
 今回の有明の特措法のことに関してでございますけれども、実は、水質汚濁防止法というのがございますが、瀬戸内海あるいは東京湾、同じ閉鎖性の水域の中で水質汚濁防止法の指定をみんな受けていたわけですが、有明海はその中に入っていなかったという現実があります。その中で、どうして指定をされていなかったのか、そしてまた、今回、さきの通常国会の中で、有明特措法のある意味では総量規制というんでしょうか、それをしない限りはなかなか実効はないのではないか、そういう思いも正直私の中にもありました。
 その中で、「削減に資する」という文言が今度修正案の方に入りましたので、そのあたりに対しての一つの方向性というんでしょうか、その辺をお聞きしたいと思いますが、よろしくお願いします。
石原政府参考人 水質汚濁防止法に基づきます現在の総量規制でございます。
 現在は、人口及び産業が集中しており、かつ通常の排水規制、これは濃度の規制でございますが、通常の排水規制によっては水質の環境基準を維持することが非常に困難であるという広域的な閉鎖性海域について実施しております。現在、この要件ということで、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の三海域について実施しておるところでございます。
 有明海についてのお尋ねでございます。
 この総量規制を実施しております東京湾などの三海域と比較しまして、人口及び産業の集中度合い、あるいは現在の水質も、水質環境基準を著しく超過しているという状況にはございません。そういうこともございまして、現在までのところ、有明海はこの総量規制を行う指定水域としては指定されていないものでございます。
 二点目の、今後、「汚濁負荷量の総量の削減に資する措置」ということでございます。
 有明海につきましては、水質の悪化が懸念されております。そういう点から申しますと、汚濁負荷量の総量を削減する措置ということは非常に重要であろうかと思っております。
 そういう点から、汚濁負荷量の総量の削減に資する措置として、汚濁負荷量を与える要因としましてはいろいろな要因がございます。一つは下水道、生活排水、あるいは工場、事業場の排水、それから非特定汚染源ということで、農業、畜産業、養殖漁業といった面からもございます。これらのいろいろな汚濁負荷量を加えている要因に対しまして、生活排水につきましては例えば下水道や合併処理浄化槽を推進していく、工場、事業場については排水規制基準なりを強化していく、それからあと、非特定汚染源に対しては負荷が削減されるような形での対応をするといった、いろいろな対応が考えられるかと思っております。
 有明海及び八代海におきまして、これらの対策をどのように組み合わせて実施するのが適当であるのか、今後、汚濁負荷量の実態把握に努めますとともに、関係省庁、関係県と相談しながら、具体化に向けて検討していきたいというふうに考えております。
西川(京)委員 ありがとうございます。
 要するに、この規制の指定の対象となる地域の問題なんですけれども、私どもは、臨海部の沿岸の市町村というのは当然なんですが、海の環境に一番大きな影響を及ぼす川に関してですが、当然、その中流、上流の区域の方まで入るべきだと私は思いますけれども、その地域に関してどういう御認識を持っていらっしゃるのか。
 そして今、さまざまな負荷量のいろいろな要因についてのこれからの推進の事業をしていきたいというお話でしたけれども、それに関して、例えば総量規制の問題にしても、瀬戸内海や東京湾あたりは、汚濁の原因になる企業なり臨海工業地帯という、明確な汚す原因がわかっていたわけですけれども、有明海に関しては、生活雑排水だとかさまざまな、どちらかといえば個人がその原因になっている場合が多いわけです。そういう場合に関して、一つの規制をかけるというかそういう基準、何をしてそれをそういうふうな方向に持っていくのかというのは大変難しいことだと思うのですが、その辺に関しての御意見もちょっと伺わせてください。
木下政府参考人 水産庁長官でございますけれども、まず、指定地域の考え方につきまして、私の方から答弁させていただきたいというふうに思っております。
 指定地域でございますけれども、第三条によりますと、有明海、八代海の海域の環境の保全、改善、またこれらの海域におきます水産資源の回復などによる漁業の振興に関する施策を講ずべき地域を指定することとされているところでございます。具体的な地域の指定でございますけれども、第三条によりますと、主務大臣が関係県の申請に基づき行われることとなっているところでございます。
 農林水産省といたしましては、法律の趣旨を踏まえますと、有明海あるいは八代海の沿岸域に所在する市町村、それから有明海あるいは八代海に流入する河川域に所在する市町村などを指定する必要があると考えておりまして、このような方向で関係省庁とも協議してまいりたいというふうに考えております。
西川(京)委員 より実効性のある指定の地域に御配慮いただきたいなと思っております。
 そして、水質汚濁のさまざまな原因に対してのこれからのいろいろな措置の中に、いわゆる浄化槽の問題、水を浄化することに関するさまざまな施策というのがあると思うのですが、具体的に、例えば後背地が大都市ではない、中小市町村ということで、やはり私は農業集落排水とか漁村集落排水あるいは合併浄化槽、このあたりが大変効果があると思うのです。
 これは県でももうかなり具体的にそういう策定の準備に入っていると思うのですが、どの程度これに、予算措置なりなんなりの特別な措置がとられていないと思うのですね。そういう中で、どのようにその補助を考えていらっしゃるのか。できれば具体的な数値目標などを設定して、それを推進していく一つの目標にしたらどうかなという思いもありますけれども、いかがでしょうか。これは農水省でしょうか。
木下政府参考人 有明海特別措置法の施行に要する経費でございますけれども、今後、下水道の整備、あるいは環境整備船の建造等の海洋環境の整備、それから覆砂あるいは堆積物の除去等の漁場整備等々が必要になろうかというふうに思っております。
 なお、御指摘の生活排水処理事業、それから合併処理浄化槽の整備事業、また栽培漁業地域展開事業につきましては、現時点でどの程度の費用かわかりませんけれども、今後この法律案の指定とされましたら、関係各省とも十分協議しながら、また関係県とも協議しながら検討していきたいというふうに考えております。
西川(京)委員 具体的な施行者はやはり県ですので、県の方でもこの動きに大変関心を払っておりますので、できれば有効な補助措置を考えていただきたいなと思います。
 そして、水質の汚濁のもう一つの大きな問題として、森林が関与する割合というのは大変大きいと思います。御存じのように、昭和三十六年でしたか四年でしたか、木材の自由化、それ以来、日本の林業というのの疲弊は今、目を覆うばかりの状況がございます。その中で、ほとんどの山の関係者がもう手入れをしないという、本当に荒れるがままになっているという現実があります。国有林の問題もありますが、やはり六割を占めている民有林が全く今動いていないという中で、一つは森林の荒廃というのが海の汚濁にも大きな影響を及ぼしていると思います。
 そういう一つの方向の中で、各漁協あたりが一生懸命山に木を植えたり、あるいはNPOの人たちが森林整備隊などを組んで山に木を植える、手入れをするという動きが少しずつ今動き出してはおりますけれども、全体の経済の大きな流れの中では、なかなかそれは微々たる動きであるという現実があります。近ごろはそれに加えて、荒れた山の中で獣害、シカの害とか、そういうので、本当にもうこれでもかというぐらいに山村は荒れているわけです。
 こういう山の整備という問題も今回の有明の中には入っておりますけれども、森林の整備ということが入っておりますが、具体的にこれはどういうふうな想定をしていらっしゃるのか、ぜひ農水省の御意見をお伺いしたいと思います。
加藤政府参考人 今、先生言われましたとおり、林業の状況が大変厳しい状況になっているわけでございまして、森林が間伐もされない、あるいは切った後植えられないというような状態も生じかけているところでございます。
 そういう点で、一方では、森林の多面的機能ということに対して、大変国民的な要請が多様化し、かつ高度化してきているわけでございまして、昨年、林野庁といたしましては、森林・林業基本法ということで、今までの林業基本法を抜本的に見直しをして、森林の多面的機能をいかに持続的に発揮していくのか、さらに、林業の健全な発展をどういうふうに図っていくのかということで基本法を見直したわけでございます。
 そういう点で、今回の有明海の問題、八代海の問題につきましても、そういった森林の多面的機能を十分に発揮していくということが必要ではないかというふうに思っているところでございまして、関係自治体と十分な連携を図りつつ、今申し上げました森林・林業基本法に基づく各種施策を実施しながら、森林の整備、保全に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
西川(京)委員 これはもう本当に、一にも二にも、国の予算がどうなるかという問題にかかっていると思うのですが、結局、今の現実の中では、市場に任せていても全く日本の森林は動いていかないわけです。
 その中で、国として、この治水治山、この日本の海と山をどうするのか、まさに政治の根本だと思うのですけれども、それに対しての理解度というのでしょうか、それが、国民を含めて、マスコミを含めて、政府においても少々欠けているような気が私はしております。どうかこの有明の特措法の、それも一つのきっかけになればと思いますけれども、この周辺の山林の整備に農水省の方でも一生懸命取り組んでいただいて、私たち政治家も頑張ってまいりたいと思っております。
 それと、今回、海の汚濁に関して、ちょうど軌を一にして、この有明特措法ができたからということではないとお聞きしておりますが、周辺の海域の、日本の海の汚染に関して、ごみ回収船なりなんなり、環境整備船というのが国土交通省の方で整備されているとちょっとお聞きいたしました。
 そういう中で、この有明海の中にどういう方向でその船をこれから導入していくのか、あるいはその船は大体どこを基準にして、停泊というんでしょうかしていくのか、その辺のところ、私もちょっと興味がありますので、お聞きしたいと思いますけれども。例えば、どこかを母港にしたりする場合には、その一つの条件なりなんなりがあるのか、その辺のところをちょっと国土交通省にお聞きしたいと思います。
金澤政府参考人 国土交通省におきましては、船舶の航行の漂流物などからの安全確保、あるいは海域の環境の保全というものを図るため、海洋環境整備事業という事業を進めておりますが、従来より、東京湾とか伊勢湾あるいは瀬戸内海におきまして、国直轄の環境整備船によりまして、漂流物、ごみとか油等の回収を行っているところでございます。
 有明海あるいは八代海につきましては、平成十四年度予算で環境整備船の建造に着手しております。平成十五年の秋ごろに完成いたしまして、その後、有明海、八代海域に配備し、運航を開始する予定にしております。
 配備される環境整備船は、全長が二十七メートル、総トン数で百トンの双胴船のタイプでございまして、広大でかつ潮位差が非常に大きい有明海、八代海を担務することになりますために、喫水が浅くて、かつ、高速で航行が可能な船舶とすることとしております。
 また、広大な対象海域の中で、気象、海象条件が変化し、あるいはごみなどの漂流状況に的確に対応して、機動的かつ効率的な運航を図るためには、本環境整備船の基地でございますが、基地は複数必要であろうと考えております。今後、有明海あるいは八代海にあります港の中から、係留のために必要となる施設の状況とか、陸揚げいたしましたごみの処理に必要となる施設の状況などを勘案しました上で選定することといたしております。
西川(京)委員 より環境整備船が効率よく動くように、適切な基準の設定あるいは場所の選定をお願いしたいと思います。
 実は、この有明特措法に関して、各関係四県がさまざまに、それぞれ県の方で具体的ないろいろな策定の準備に入っていると思いますけれども、これがやはり各県ばらばらで、それぞれ、非常に熱心な県あるいはそれが余りそこまでないという、そういう凹凸があると、この有明海の浄化に関してのスムーズな進行というのがやはり難しいと思います。
 そういう中で、各県がそれぞれ今、一つの思いとして、全体できちんとした協議会なりなんなりをつくって、心を一つにして、同じ方向性でやっていこう、そういう思いがあると思います。そういう中で、促進協議会というのが想定されていると思うのですけれども、これはそれぞれの各県の知事なりなんなりが自主的にきちんとしていかなければいけないのでしょうが、やはりそこは国の方でも、指導なり関与していただいて、適切な協議会の設立、運営に関与してほしいと思いますけれども、そのあたりについて御意見をお願いします。
北村副大臣 今、西川先生御指摘の、それぞれがばらばらにやったのでは本当に有明海あるいは八代海を豊かな海として再生することは難しい、このように思っております。そういう面では、統一的な計画のもとに、関係省庁並びに関係する県が連携をして、この海域環境の保全ですとかあるいは改善、水産資源の回復等により漁業の振興を図ることが、これは最も重要であるというふうに認識をしております。
 そのために、今回の与党案の中にもありますように、主務大臣、関係する県の知事さん等が、それぞれの県の計画の調和を図りつつ、その実施を促進するために、協議の場として促進協議会が設置されるものと理解をしております。この与党案では、主務大臣は、総務大臣ですとか文部科学大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、国土交通大臣及び環境大臣と、非常に多岐にわたる省庁が本当に連携をとっていかなければならないというふうに思います。
 その上で、農林水産省としては、促進協議会の場を積極的に活用して、有明海、八代海の再生に向けて最大限の努力をしてまいりたい、このように考えております。
西川(京)委員 ありがとうございました。
 この有明特措法に関係する、車の両輪であります農水省、環境省、それは当然でございますけれども、各省庁と本当に一体となって、有明海、宝の海の再生に向けての皆さんの省庁を超えての動きというのが一番大事なポイントになるかと思います。
 その中で、せっかくお忙しい中を大臣に来ていただきましたので、私も、今の農林水産という分野の日本という国の中での位置、今の位置というものが、私にはどうしても余り大きな認識を得ていないのではないかというような思いを持ってしまわざるを得ないような状況があります。その中で、大臣の、この有明特措法を含めた今の御所感なりを一言お伺いさせていただけたらと思います。
大島国務大臣 さまざまな思いを込めて質問されたと思いますが、まず第一点は、一次産業が今の日本の中において大きな、というかしっかりした存在になっていないのではないか、そういう視点から、有明の海というものを、この再生に向けてどういう思いがあるかということであろうかと思います。
 今般、与党の皆様方が出された提案、民主党の皆様方が出された提案のその根本は、やはり有明の再生というものにおける気持ちは根底では一緒であるというふうに、法案を見て私はこのように感じました。
 そして、一度申し上げたことがありますが、環境庁長官のときに水俣の問題に取り組みましたときに、自然というものが変化していく、壊れるというときに、その再生に向けては大変な努力が要るもの、厳しい、苦しいものを乗り越えなきゃならぬ、私はそういう経験を持っておりますが、この今の有明再生法について、本当にさまざまな歴史を超えて、そして何とか再生させよう、その再生させた上で、またそこでみんなでその場で生活ができる、一層発展できるというふうなことがいかに大事かという思いの中で議員立法として提案された。
 そういうことを踏まえながら、農水省として、決して我が省だけでというのではなくて、本当に、関係省庁、そして最も大事なのは、さらに大事なのは、地元の皆様方の連帯感、そういう中に生まれた意識というものと我々がなすべきことを国全体としてしっかりと受けとめてやっていくという覚悟と決意が必要だなということを思いながら御議論を伺っておるところでございます。
西川(京)委員 ありがとうございました。
 私は、やはり、この農林水産という分野は、もうまさに食料という問題あるいは実際の生活に直結している、私たちの命にかかわっているという問題以上に、本当に地球環境すべてにこの問題がかかわっているという現実が、今ほとんどの方々が認識を持っていると思います。
 そういう中で、WTOの貿易交渉などさまざまな経済的要因あるいはそういう問題の中で大変厳しい現実を強いられている。私たちは、一農林水産分野だけでなくて、環境あるいは経済あるいは外交、そういう本当に大きな視点からこの農林水産という問題を考えていかなければいけないと思います。そういう意味で、私たち政治家に課せられた課題というのは大変大きいものがあると思いますが、省庁一緒になって、私たちも頑張ってまいりたいと思います。
 きょうはこれで私の質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。
小平委員長 次に、江田康幸君。
江田(康)委員 おはようございます。公明党の江田康幸でございます。
 早速質問に入らせていただきますが、有明海、これはもう広大な干潟がございまして、タイラギ、アサリ、アゲマキ、こういう地域特有の魚介類が豊富に生息する豊かな海でございます。我が国にとって極めて貴重な海域でございます。
 しかし、一昨年、ノリ養殖業、かつてない不作に見舞われて、アサリ、タイラギなど魚介類も三十年以上にわたり漁獲量の減少が続く。そういう有明海の環境の悪化が懸念されている状況の中で、我々与党三党としまして、このような有明海また八代海を一刻も早く再生するために、有明海、八代海再生特別措置法案を前国会から提出してきたわけでございます。私も多くの漁民の皆様方の声を聞いて、この与党三党の再生法案にその声を反映してきたつもりでございますが、そこで、幾つかの質問をさせていただきたいと思っております。
 我が党は、有明海のこの環境悪化の原因について、何度も言いますが、予断を交えずに徹底して調査すること、そして、今やれることから遅滞なく対応策を講ずることが今重要であるということを申し述べてまいりました。
 そこで、このような環境悪化を招いたその原因についてどのように考えておられるか、まずお答えしていただきたいと思います。
木下政府参考人 有明海の漁獲量でございますけれども、平成元年以降、オゴノリの漁獲量を除きますと減少傾向にあるわけでございます。このような減少の背景として、底質の悪化、あるいは藻場、干潟の減少、あるいは人の活動に伴います水域環境の悪化等が関与しているのではないかというふうに考えております。
 有明海の環境悪化の原因につきましては、ノリ不作等第三者委員会の提言によりますと、まず第一点は、都市化の進行等に伴います陸域からの負荷の増加、第二点といたしましては、ダムなどによります河川からの砂などの流入が減少したこと、また、第三点といたしましては、海底の地形あるいは海岸の地形の変化などが考えられるというふうにされております。いまだその原因を特定するに至っていない段階でございます。
 現在、タイラギなどの減少原因も含めまして、独立行政法人水産総合研究センターが中心になりまして、有明海四県と連帯しながら調査研究を積極的に行っている、そういう段階でございます。
江田(康)委員 また、今おっしゃられましたように、今、その原因として、一つの原因かというと、なかなかそうは断定できない、やはり複合的な要因が絡んでいる、そういう予断を交えない調査がまた必要であるという状況だと思います。
 そこで、この諫早湾干拓事業の潮受け堤防を締め切った後に有明海の漁獲高が激減していると一方で言われております。一部の水産物につきましては潮受け堤防の建設が進んだ九三年から九七年にかけましては漁獲高が逆に上昇して、この有明海干拓事業の進捗状況と漁獲高の減少傾向は必ずしも一致していない、そういう御意見もあるわけでございます。
 そこで、この潮受け堤防の締め切りと漁獲高の減少、その関係につきまして水産庁としてはどのように認識をされているのか、お伺いします。
木下政府参考人 有明海の漁獲量の変遷でございます。
 過去十五年間程度の漁獲量の推移を見ますと、魚種なり地域により増減の傾向に違いはありますけれども、昭和六十年以降の期間をとらえた場合、総じて減少傾向にあると見られますけれども、平成九年四月の潮受け堤防締め切りの前後でその傾向に著しい変化は見られないというふうに認識をいたしております。
 また、この減少の中で、魚種別に見ますと、貝類が主な減少要因となっているわけでございます。この貝類の減少要因でございますけれども、ノリ第三者委員会の中間取りまとめによりますと、底質の泥化あるいは貧酸素水塊などの底層環境の変化が資源の減少に関与しているというふうに考えられるけれども、まだその原因を特定するに至っていないというふうにされているところでございます。
江田(康)委員 この有明海の悪化について、その干拓事業の影響というのが非常に注目され、また懸念をされておりますので、この関係についてしっかりと調査をしていくことが必要でございます。
 その有明海の再生のために、有明海全域にわたるこの調査研究を県、大学、関係各省などの関係機関が連携して効率よく実施する必要があると考えております。そのためにも、この中核となる試験研究機関の整備を含めまして、今後の体制をどのようなものにしていくことと考えているのか。
 我が党は以前から、この調査は長期にわたる可能性がある。だから、そこに省庁を乗り越えた枠組みにとらわれない形で、すなわち有明海の総合研究センター、これは仮称でございますが、そういうようなものをつくってはどうか、そういう中で、そういうもとで進めていってはどうかというのも提案しているわけでございますが、いかがでしょう。
木下政府参考人 現在、有明海の海域環境の調査につきましては、独立行政法人水産総合研究センターの西海区水産研究所が中心になりまして、関係省庁あるいは関係の県、また大学など二十二の関係機関と連携をして実施しているところでございます。
 今後、有明海などの再生に向けまして、有明海全域にわたる調査研究を一層効率的に実施するためには、先ほど申し上げた各機関の調査研究による成果の情報の収集なり分析、また対策の検討を一元的に実施する体制の構築が重要だというふうに認識をいたしているところでございます。
 このような見地から、水産庁におきましては、関係機関の協力を得ながら、まず第一点といたしまして、有明海海域環境の情報、研究のネットワークの構想を策定したいということで、その体制づくり、また、それと並行いたしまして、有明海海域環境のいろいろな情報がございますけれども、これらの情報をデータベース化いたしまして、いろいろな皆さんがその情報にアクセスしやすいような体制をつくりたいということで、私ども有明海海域環境の情報、研究ネットワークの構想策定事業を行っております。本年度から着手をしたところでございますけれども、できるだけ早くこのようなネットワークを完成し、完成したところから利用していきたいというふうに考えておるところでございます。
江田(康)委員 ぜひ、この調査研究については、今、短期開門調査が行われておりますけれども、中長期、そして、そういうしっかりとした調査が行われるようにその体制をぜひとも整えながら連携をとって進めていっていただきたい、これを切に要望するわけでございます。
 一方で、諫早湾干拓事業の必要性についてもまた御質問しておきたいと思うのですが、先日、我々は現地調査を行わせていただきました。参考人質疑も先日行ってきたわけでございます。
 この干拓事業について、私は、地元に行きまして、あれだけ技術の粋を集めた防災のための潮受け堤防、そういうものが、また農地利用のための干拓整備が進んでいる現実を見せていただきまして、非常に必要性は大きいということを実感したわけでございますが、地元の方々からもそういう強い要望が出ております。しかし、一方では、この干拓事業について、本当に防災効果があるのか、また、農地利用としての費用対効果といいますか、そういうところに疑問があるという声もあるわけでございます。
 ここで、農林水産省としまして、この防災機能の強化と優良農地の造成について、地元の人々がどのように評価していると受けとめられているか、お伺いしたいと思います。
北村副大臣 先生御指摘の諫早湾干拓事業につきましては、これはもう、先生、先日御視察もいただきましたとおり、背後低平地における高潮あるいは洪水及び常時の排水不良に対する防災機能の強化と、平たんな農地に乏しい長崎県における大規模な優良農地の造成を目的として実施しているということは、これはもう御承知のとおりでございます。特に、平成十一年三月の潮受け堤防の完成後は、台風やあるいは洪水時だけではなくて、常時の排水に関しましても防災効果が着実に発揮されて、地元住民の皆様から非常に感謝されております。
 このことにつきましては、先日の参考人質疑の際に吉次参考人から、台風時の高潮が防止され、洪水時の湛水の規模や時間が大幅に改善された、常時の自然排水も可能となるなど、防災効果が発揮されており、非常に感謝しているとの評価を得ているところでございます。
 また、長崎県や地元自治体や農業関係者から、平たんで大規模な干拓農地の早期の造成を強く要請されているところでございます。
江田(康)委員 私も視察をしまして、先ほども申しましたけれども、今までは河口が干潟で覆われて、それによって自然排水ができない、そういうような状況が、今は潮受け堤防を設けられて、それで、泥で覆われた河口も除去されて、非常に排水が自然に、効果的に行われるようになっている、その姿を見ております。
 だからこそ、こういう、一方で干拓事業が進められながら、そしてその干拓事業が有明海の環境の悪化に、本当にその原因となっているのか、調査をしっかりと一方で進めながら、これをいかにして両立できるのか。本当にあらゆる考えを動員しながら対応していかなければならないと、非常に毎日私も考えさせられているわけでございます。
 それで、もう一つ、皆さんの疑問といいますか不安の声でございますが、調整池の水質の問題についてお聞きいたします。
 漁業者の中には、この水を称して腐っているとか濁水という人々がおりまして、いつぞやの衛星写真の印象からも、あたかも汚れた水が水門からどっと排出しているかのように皆さん感じられているようでございます。しかし、これは見かけだけでは判断はできないわけでございます。
 汚れと濁りというのは違うからでございまして、実際のところ、調整池の水質の現状というのは流入する河川の水質と比較してどうなのか。私は、それよりも低い値であるということも聞いております。また、なぜ白く濁っているのか。本当に腐っていないのか。さらに、有明海への負荷の軽減を図るため、この調整池の水質の向上に対してどのように取り組まれるおつもりなのかをお聞かせいただきたい。
太田政府参考人 調整池の水質の現状及び水質向上対策でございますけれども、開門総合調査を実施いたします以前の調整池の水質は、季節や降雨の影響等により変動はございますけれども、COD、化学的酸素要求量は、一リットル当たり七ミリグラム前後、それから全窒素につきましては一リットル当たり一ミリグラム前後、さらに全燐は一リットル当たり〇・二ミリグラム前後で推移しております。
 これらの水質は、本明川等の河川から流入する負荷によって形成されておりまして、基本的には流入河川の水質を反映しているものと考えられます。なお、調整池のCODの値につきましては、有明海奥に流入いたします六角川等の河川水質ともほぼ同様の水準ということになっております。
 また、調整池の水の色が白っぽく濁って見えますのは、成分分析をいたしました結果、調整池の底の泥に近い組成となっておりまして、調整池の水深が浅いために諫早湾に元来もともとある潟土が巻き上げられることによるものというふうに理解しております。
 農林水産省としても、調整池の水質保全は重要な課題と考えておりまして、長崎県が平成十年二月に策定されました諫早湾干拓調整池水質保全計画に沿いまして、関係自治体などと協力いたしまして水質保全対策を推進しているところでございます。
 調整池の水質保全に当たりましては、調整池の水質が河川等からの流入負荷に影響を受けるものでありますことから、流域からの流入負荷の削減が重要であると考えております。このため、長崎県や流域市町と協力いたしまして、窒素や燐の高度処理を含みます下水道や農業集落排水施設などの生活排水処理施設の整備等のほか、畜産ふん尿処理施設の整備等の畜産ふん尿対策、さらには環境保全型農業の推進等を進めてきているところでございます。
 農水省といたしましては、今後とも地元市町の協力を得まして、流域の水質保全対策を推進するとともに、干拓面積を約二分の一に大幅に縮小し、環境への一層の配慮を盛り込んだ見直し後の事業計画に沿いまして、ヨシ帯等の植生帯の創出など環境配慮対策を実施していくことによりまして、調整池の水質保全に万全を期してまいりたいというふうに考えております。
江田(康)委員 有明海の環境悪化を防いで再生するためには、きれいにする、そして汚さないということが重要であるということを、この前の参考人からもお話がございました。この汚さない、最低汚さない、これをやっていくためには、汚い水を流さない、これをしっかりとコントロールするし、また、しつつある、できるというお話だったと思いますので、それは一つにはしっかり多くの方々は認識して、再度再認識していかなくてはいけないと思っております。
 今お話があった中でも、生活排水、これがまた非常に環境悪化を引き起こしている原因の一つかもしれないので、そういう管理が必要であるというお話がありましたが、この一層の生活排水処理、これがこれからの再生には重要であると考えます。
 そこで、下水道、農業集落排水施設、合併処理浄化槽等の生活排水処理施設につきまして、きちんとこれが経済的にも、それから、工事期間といいますかスピード、コスト・アンド・スピード等の評価をきちんと行って、そのすみ分けをしていかなければ、その整備はなかなか進まないというのが現状であるかと思いますが、このようなことに関しまして、環境省の対応についてお伺いしたいと思います。よろしくどうぞ。
弘友副大臣 今、江田議員が御指摘のように、汚さないというところで汚水処理施設の一日も早い効率的な整備というのが求められておる。そういう中で、経済性の評価というのはきちっと行って、家屋の密度が高い地域では集合処理、それから、そうでないところは合併処理浄化槽によって整備するというのが必要であると思うのです。
 合併処理浄化槽の特徴というのは、管渠が必要ないということですね。だから、人口密度の小さい地域では経済的な整備が可能である。あるところでは、三軒ぐらいしかないところで数百メートルに何千万もかけて管渠を引いて、それは処理できていないわけですから、たった三軒であれば、三百万で合併処理浄化槽でできる。それから、設置期間が短い。一週間ぐらいで設置できます。だから、整備効果の発現が早い。それから、汚水の排出源で処理をする、オンサイト、排出源で処理をできるという特徴から、身近な川の水量維持が図られる、健全な水循環の保全に効果があるということでございます。
 そういう経済比較をきちっとやりながら、いろいろなそれぞれの特徴はありますけれども、早急に、とにかく汚さない、流さないというのが、ほっておけばずっと一〇〇%汚水が流れているわけですから、今農水省は、下水道と農業集落排水事業しか言わなかったけれども、合併処理浄化槽というのがきちっとあるということを認識していただきたいなというふうに思っております。
江田(康)委員 弘友副大臣は、我が公明党の中でも水処理対策プロジェクトの座長も務められた方でもございまして、長くこの水処理対策には専門でやられてきておりますので、その熱い思いも殊さら環境省の中では大きいかと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思うのです。
 もう一つ、これもまた多くの方々の疑問の一つでもございますけれども、現在、有明沿岸におきましては、恐らく、財源とか技術的困難性というか、そういうところから長期間にわたるとかいうような問題から、下水道の整備というのが余り進んでいない状況にあるわけでございます。
 それで、市町村が合併処理浄化槽の設置を行う、今、環境副大臣が申されましたように、下水道が進まない、またそれが非効率であるようなところにおいては、この合併処理浄化槽が必要である、その設置を進める、これが必要なんだと申されましたが、この処理事業を活用して進んでやろうとする市町村が、この沿岸域には少ないんです。熊本県でも九市町村しかこの事業に参加しておりません。佐賀県におきましては、たしか参加していない。福岡、長崎も非常に少ないような状況でございます。
 この要因といいますか、この原因、これはどのように環境省は考えておられますでしょうか。どのように対応されるおつもりでしょうか。
弘友副大臣 今御指摘のように、特定地域生活排水処理事業を実施している市町村というのは、福岡県と熊本県だけで約八カ所なんですね。対象となると、百五十幾つ市町村ある中で八町村しかないという。
 これは一つは、本事業の創設が平成六年度であり、まだ十分市町村に知られていないということと、それから、合併処理浄化槽に対する知識も不十分だと。今までは個人設置型は補助金を出すということだけで済んでいましたけれども、市町村設置となると、そういう事務処理体制とか、いろいろそういうことをしないといけないということで、それの体制が整っていないということがございますけれども、今回立法されて、そうした動きも踏まえて、これを大いにやっていく。今まで六割負担だったのが、個人にとりましては、一割負担で済むわけです。
 やはり市町村が責任を持って汚水処理事業に当たる、下水等は市町村がやっているわけですから、責任を持ってやるという意味におきましても、この特定地域生活排水処理事業というのを進めていかなければいけないのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
江田(康)委員 ありがとうございます。
 やはりこの下水道整備が進まないところ、また非効率的であるところ、財源で困っているところ、合併処理浄化槽で進めればその半分にコストが削減されることもあるわけでございますので、これはしっかりと政府の方も考え、そして三省連携のもとで、どのようにすみ分けるか、また、どのように進んでいないところを進ませていくかということを、これから一番期待されるところでございますので、特に有明海の再生におきましては、この生活排水処理事業、ここに重点を置いていっていただきたいと思うわけでございます。
 最後の質問に近くなってまいりましたけれども、先日の参考人質疑の中でも、中村参考人でしたでしょうか、その原因究明というのは、やはり長期間にわたる、また、生物体系でございますから、その要因を特定化して、一つずつ、どこが原因だったかというのを突きとめるというのは、学者が言うわけですよ、ある意味では非常に難しいところがある、時間もかかると。
 そういう中で、私は、今、熊本県、福岡県の漁業の関係者の方々、多く回ってきて、その声を聞いてきました。あしたにもまたノリは不作でできなくなるかもしれない、ことしよくても来年、そのように有明海はもうぎりぎりのところまで来ている、だからこそ、今やれるところをやってもらいたい、したがって、この有明海再生特措法も、そういう有明海の環境保全、改善できる措置として組まれているわけでございますので、それを通してもらいたい、このような意見がいっぱいでございました。
 この法案には、今言いましたように、海域環境の保全、改善、これに加えまして、漁業関係者の方々が期待している水産資源の回復というのが組まれております。このような、今回論議しているところの有明海再生特別措置法案、申しわけございません、有明海、八代海再生特別措置法案が正確でございます。この九州にとって大事な閉鎖性水域を再生するためのこの法案について、どのような評価をされているか、政府にお伺いしたいと思います。
木下政府参考人 今回の与党案でございますけれども、委員御指摘のとおり、海域環境の保全、改善だけではなく、水産資源の回復による漁業振興も目的としているところでございます。
 このような措置を活用することによりまして、私どもも、関係各省とも密接な連携のもとに、有明海あるいは八代海における環境保全とあわせまして、漁業振興のためのいろいろな施策を一層計画的かつ効果的に推進していきたいというふうに考えております。
江田(康)委員 若干もう少し時間がございます。そのときに、効果的にやっていただく、そのように、この有明海再生特措法は、いろいろな意味で環境の改善、保全が進むように、補助事業においてもかさ上げ措置、そういうものがとられているわけで、推進していくことはできるわけです。
 具体的に、これはコメントだけなんですけれども、ヘドロの除去とか耕うん、覆砂、こういうものが非常に漁場整備には重要なんです。ただ、これを効果的にやっていく必要はあるわけです。だから、このヘドロの除去、なかなか難しい作業と聞いております。こういうようなものも、効果的、効率的な方法をぜひとも早急に、もう少ししっかりと考えて対策をとっていただくように。
 覆砂についても、一キロメーター沖合から一キロメーター幅で一メーター厚みの覆砂がそういう魚介類の再生においては効果的である、そういうような漁業関係者の声も聞いております。それをどういうふうにやっていくのか、こういう具体的なところが再生法案の成立後に必要となってきますので、どうぞ、そういうところは、水産庁、三省連携のもとで進めていっていただきたい。
 最後になりますが、この与党提案の有明海、八代海再生特別措置法案を受けまして、有明海再生に向けた大臣の御決意をお伺いして終わりたいと思います。
大島国務大臣 今、江田議員の御質問と、この有明、八代湾の再生に向けての御熱意の御意見を伺っておりました。
 いずれにしても、漁業生産は減少をいたしております。そしてまた、諫早干拓とのいわば調和という中での、生産者、関係市町村、関係知事、そこに住んでおられる住民、さまざまな議論をし、苦しみ、そういう中で今日まで進んでまいりました。
 そういう中にあって、民主党さんの案も出ておりますが、与党さんの案は、この有明、八代海の環境の保全、改善を図るとともに、水産資源の回復、漁業の振興を図っていくという目標を置いておられる。そういう意味で大変有意義なものと私ども考えておりまして、もし成立をされた場合には、当然、農林水産省として関係省庁と本当に密な連絡をとりながら、そしてその法の目的に沿って全力を挙げてまいりたい、このように思っております。
江田(康)委員 大臣、ありがとうございました。以上で質問を終わらせていただきます。
小平委員長 次に、楢崎欣弥君。
楢崎委員 民主党の楢崎欣弥です。
 大臣の元秘書官の疑惑問題につきましては、この後津川委員がやりますので私は触れませんけれども、議員としての監督責任もさることながら、やはり今大臣という重い立場におられる、その責任の明確性が求められていると私は思います。そのことを申し述べて、諫早湾問題に移ります。
 私は、これまで五回にわたって、当委員会を初め、予算、決算各分科会においてこの有明海問題を取り上げてまいりました。民主党案の趣旨説明のときにも申しましたけれども、失って初めてどんなに大事なものであったかがわかる、それが諫早干潟だったと思います。有明海異変は、複合的な要因があるでしょう。しかし、それでもなおかつこの諫干事業が与えた影響は大きい、私はそう思います。
 そこで、十月三十日、私は当委員会で福岡県有明海漁連が前面堤防差しとめを求めた仮処分申請の問題を取り上げました。ちょうど、同じ日に第一回目の審尋が福岡地裁で行われたんですね。そこで国が主張されたことは、ノリ不作の原因の赤潮は大雨や高温などの異常気象で発生したとされ、干拓事業のためとは断定されていない、また、二枚貝などの減少は事業の開始前から始まっている、そして、工事中止を求めていることについては、ことし四月、農水大臣が有明海三県漁連会長、長崎県知事らと会談して、二〇〇六年に完成させるという方針を理解してもらっているということですね。この四月というのは四月十五日のことを言ってあるのでしょう。私にしては、まだこんなことを言っているのかという感じですね。
 まず、赤潮問題からいきますけれども、異常気象で片づけようとしてある。いいですか、ことしの八月、学者グループによって、赤潮拡大は諫干事業が影響しているというような一年にわたった研究発表があったんですね。これは、有明海での近年の赤潮増加のメカニズムを解明できた、それは事業による潮流の変化と深く関係している、このように断定してあります。
 この研究をされたのは熊本県立大学の堤教授及び九州大学大学院の小松教授の学者さんを中心とした五人の研究者ですけれども、昨年の八月から有明湾内二十五カ所の調査地点を設けて、ことしの七月まで調査されてあるんです。
 有明海の潮流というのは、もうこの前の参考人質疑でも言われましたように、熊本県側から反時計回りに流れているんですね。それが諫早湾口部の引き潮に乗って加速する。そして、島原半島沿いに有明海の外に出ていく。ところが、農水省の過去のデータと比較すると、その潮流が現在は以前よりも停滞していることが判明したということです。しかも、それは潮受け堤防ができたために潮流が遅くなって、赤潮の原因となる高濃度の栄養塩、これらを含む河川水が筑後川などから流入したまま、長崎県の有明町、それと熊本県の長洲町を結ぶラインから奥、有明湾奥部にたまりやすくなっている。
 つまり、堤防締め切りが有明海の海水交換に悪影響を及ぼしていることは間違いない。だから、潮受け堤防がある限り、有明海の潮流速度低下が続く。そのために、植物性プランクトンが大量発生しやすくなって、大規模な赤潮が発生する、そしてノリ不作に陥りやすい海域になっていると結論づけておられるわけです。
 このように、潮流の変化が大きなポイントになっていると言われているんですけれども、これでも、単に異常気象のせいだと言われるんですか、どうですか。
太田政府参考人 先生の御質問のポイントで、平成十四年十月十八日に、有明海の海況についての自主的な一斉調査結果、有明プロジェクトとして公開成果検討会が開催されまして、熊本県立大学の堤教授らの研究グループが、堤防締め切り後、有明町と長洲町を結ぶ線で潮流流速が減少して、湾奥部の海水の停滞を招き、赤潮の大規模化、長期化、貧酸素水塊の大規模化を招いている旨の見解が述べられたということは承知しております。
 この見解におきましては、当省実施のモニタリング調査のデータをもとに議論が展開されておりますが、この見解の根拠とされましたデータは諫早湾の湾口部沖合の南寄り地点のデータのみでありまして、実際には、諫早湾湾口部沖合の潮流流速は、最大流速が低下している地点が見られる反面で、逆に、締め切り後、流速が早くなる地点も見られまして、締め切り前後で一様の変化傾向は見られておりません。
 また、海上保安庁水路部が実施されました有明海の潮流についての調査によりますと、平成十三年五月と昭和四十八年八月を比較いたしましたところ、全体的には、場所によって今回調査した方が若干流速値が大きい傾向にあるが、ほぼ同等の潮流を示しているとされております。
 さらに、湾奥部では塩分濃度の低い表層水が停滞していると論じておりますけれども、実測値は必ずしもこうしたことを示しておらないということがありまして、したがいまして、有明町と長洲町を結ぶ線で潮流流速が減少したとの見解は、現時点では明確ではないというふうに考えております。
 農水省といたしましては、開門総合調査の中で、有明海の流動等の状況を再現いたしますコンピューター解析によりまして、諫早湾干拓工事と有明海の潮流との関係について解明してまいりたいというふうに考えております。
楢崎委員 現時点では明確ではないということですか。農水省が何と言われようと、この赤潮問題、結局は、諫干事業にたどり着くんですよ。
 ちょっと視点を変えますけれども、赤潮の原因そのものとなる珪藻プランクトン、これにも種類がありますね。一昨年のノリ大凶作のときにはどのような種類が発生したんですか。
木下政府参考人 お答えいたします。
 一昨年のノリ不作の原因となりました植物プランクトンは、リゾソレニアを主体といたします珪藻プランクトンでございます。
楢崎委員 そうですね。リゾソレニアという種類です。これが大発生して、ノリの栄養塩を先取りしたことが原因だと言われています。
 視察に行った佐賀県でも言われましたけれども、これが長期間発生したとのことですね。このリゾソレニアというのは寿命が長くて、一たん発生すると容易に消滅しないそうです。なぜ長期間このリゾソレニアが発生したか、解明されているんですか。
木下政府参考人 一昨年のノリ不作の原因となりましたリゾソレニアでございますけれども、この発生の要因といたしまして、ノリ不作第三者委員会の中間取りまとめによりますと、秋の時期の大量の降雨に引き続く晴天の持続に高水温が加わったかなり異常な気象あるいは海象によって発生したものでございます。平成十二年は、十一月下旬から十二月下旬にかけまして日照時間が長く、また、福岡、熊本両県では十二月六日から、また佐賀県では十二月八日から発生をしたという状況でございます。
 この発生機構につきましてはまだ不明な点が多く、水産庁といたしましても、本年度から、珪藻赤潮の発生に関する予察技術の研究を進めている段階でございます。
楢崎委員 今までだって大雨が降ったときもありますし、日照時間が長いときもあったんですよ。それで、昨年も赤潮が発生したので緊張したわけですけれども、これはキートセロスという種類の珪藻プランクトンでして、短命で、死滅後に分解される、その一部がノリの栄養源にもなるということらしいです。ことしはギムノ。この両種類とも、リゾソレニアとは根本的に違う。
 このリゾソレニアの発生原因ですけれども、熊本県の水産研究センターによれば、干拓調整池の水にリゾソレニアの栄養となる珪酸が含まれていて、それが潮受け堤防排水門を通じて有明海に排出されたためと言われているのですね。
 つまり、それは工事に使うセメントのあくなどが溶出したもので、それで今言われた一昨年の大雨で珪酸が調整池に一気に流れ込んだ、それが有明海に垂れ流されたという構図ですね。この汚濁水というのは淡水で軽いわけですから、外側で海水とまじり合うと浮かび上がって表層が広がっていくわけですね。先日も言いましたように、西風が強いときは三時間で対岸の荒尾まで行ってしまう。また、豊富な栄養塩類も含んでいますから、酸素の供給を受ければ植物性プランクトンが大量に発生される。当然赤潮なども発生しやすくなる。つまり、有明海全体にとって大きな汚濁負荷源となっているんですよ。結局、諫干事業につながるんですよ。
 再度お伺いしますけれども、これでもなおかつ異常気象のせいだと言われますか。
太田政府参考人 工事のセメントの使用により珪藻赤潮が発生したではないかという御指摘でございますけれども、調整池の水質の中に含まれます懸濁物質につきましては、九州農政局が分析した結果によりますと、その成分組成は、セメントに由来するものとは異なりまして、調整池の底泥の表面部や深部、つまり諫早湾に元来ある潟土と極めて似た化学組成あるいは鉱物組成であることが明らかとなっております。
 さらに、九州農政局が平成十三年七月二日及び二十四日に行いました調整池及び調整池に流入しております八河川におきます珪酸の濃度の測定結果によりますと、流入河川の珪酸濃度は調整池の珪酸濃度と同等またはそれ以上の値となっております。
 したがいまして、調整池の珪酸濃度は、基本的には本明川等の流入河川の珪酸濃度を反映したものと考えておりまして、本事業の工事により調整池に大量の珪酸が流出するようなことはないものと判断しております。
 なお、調整池の珪酸濃度は、筑後川を初めといたしました有明海に流入する主な河川の珪酸濃度と比較いたしましても特に高い濃度ではなくて、調整池から海域への珪酸の流出が特に多いとは考えておりません。
楢崎委員 熊本県の水産研究センターとは見解が異なるということですね。
 それで、きょうこの有明新法が当委員会で上がるでしょう。今国会で成立するかもしれない。しかし、法律が成立したからといって、これで有明海問題が一件落着というわけじゃないんですね。与党の方々はそう思われているかもしれませんけれども。また、この新法というのは諫干事業にお墨つきを与えるものでもない、そのことをはっきり言っておきますから。
 そこで、この修正案に、「総量の削減に資する措置を講ずるもの」とあります。ですから、当然私どもも、次期通常国会に総量規制法案を提出したいと思っています。私自身も、またこれからも有明問題に対する行政の姿勢というものをこの政治の場で問い続けていきますから。
 そこで、委員長にお願いがあるんですが、今、異常気象が原因だと言われました。その根拠となる資料を提出させていただけないでしょうか。
小平委員長 ちょっと待ってください。――資料要求ですか。
楢崎委員 資料要求です。
小平委員長 資料要求ですか。――後刻出せますね。後日出せますね。
 配付と今聞き違いしましたものですから。どうぞ。
楢崎委員 ありがとうございます。
 次に、国は、二枚貝などの減少は事業の開始前から始まっていると主張されている。
 そうじゃないでしょうが。余り開き直ってはいけませんよ。それは海は生き物ですから、とれるときもとれないときもある。これはサイクルですよ。いいですか。確かに、筑後川大堰ができたとき、これは漁獲は落ちました。それから熊本新港の工事のときも有明海に影響を与えている。しかし、三年ほどでもとに戻っているんですよ。これは結局海の力、海の再生力なんですよ。今、その力がなくなっている。これはなぜなのか、それが問われているんじゃないですか。どうですか。
木下政府参考人 有明海における二枚貝などの貝類の漁獲量の推移でございますけれども、私ども、諫早湾干拓工事の開始前あるいは水門の閉め切り後を通じて、残念でありますけれども、減少傾向が続いているというふうに認識をいたしております。特にタイラギなどの貝類は、卓越年級群が発生した年には漁獲量がふえるというようなことを繰り返しながら、全体としては減少傾向にあるというふうに認識をいたしております。
 それで、これらの貝類の減少の要因でございますけれども、ノリ第三者委員会の中間取りまとめによりますと、底質の泥化、また貧酸素水塊などの底層環境の変化などが資源の減少に関与していると考えられますが、まだその原因を特定するに至っていないというふうにされているところでございます。
 農林水産省といたしましては、タイラギなどの減少原因につきまして、独立行政法人水産総合研究センターが、有明海など、四県と連携をしながら、生息域の特定、生育環境、生育状況を把握し、漁獲量変動過程を明らかにするための調査研究を行ってまいりたいというふうに考えております。
楢崎委員 再生力が落ちていることは認識してあるわけですね。だから私は十月三十日の質問のときにタイラギ問題を取り上げたんですよ。
 先週、視察に行きました。佐賀県知事さんからもこのように言われましたよ。皆さん方はノリの問題でおいでになったと思うが、実は、有明海異変は、タイラギやアゲマキなどの底生生物がやられていることが大きな問題なんです、このように訴えられました。
 福岡県では十月三十日に生育調査をやったんですけれども、成貝というんですか、成長した貝、十五センチ以上らしいですけれども、これが確認できなくて、三年連続の休漁が確実となる見通しなんですね。これは、あす十三日の福岡県の関係協議会でそのことが決定されると思います。
 以前も確かに不漁のときはあった。しかし、それでもタイラギはいたんですよ。それが全滅に近い状態になってしまった。これが事実なんですよ。政府としてはというかあなた方は、とにかく事業推進ありきだから、現実を直視しようとしていない、そんな感じがしてなりません。だから、そういう姿勢がまた信頼を失っている。もう少し有明海で生きてきた漁民の皆さんの声を真摯に聞くべきだと私は思いますよ。大臣、どうでしょうか。
大島国務大臣 楢崎委員の有明にかける思いというものは、質問を伺いながら大変伝わってくるところがございます。
 私も、地元八戸というところで、海を相手にしておるところでございますし、内海として陸奥湾がございます。そういうものを考えながら、この内海のあり方というのは本当に、私のところはホタテでございますが、さまざまな原因がある、そういう状況の中で、やはり海を一番、生活している人たちは生活している人たちなりの感覚とセンスがあることも承知しております。
 したがって、今先生からお話しいただきましたように、有明の状況について、漁民の皆様方が危機感を持っておられることは十分承知しておりますので、今後の環境や水産資源の状況につきまして、もちろん関係者、関係県等において調査を行っておりますが、地元の皆様方の御意見も反映しつつ、その対策についての、とる場合にはそういうこともしかと視野に入れて、意見を聞きながら対応していかなければならぬ、こう思っております。
楢崎委員 十分意見を聞いていただきたい、このように思います。
 それから、今問題になっています前面堤防ですが、これについても法廷では、陸上工事なので、潮受け堤防外に漁業権を持つ漁連に著しい損害は与えない、このように言ってある。どこに陸上があるんですか。私も現地へ行きましたよ。あれは陸上というものじゃないでしょう。強いて言えば仮の陸、幻の陸ですよ。
 言葉じりをとるようで失礼ですけれども、著しい損害を与えないということは、少なくとも影響は与えるということですね。
太田政府参考人 去る九月二十四日、福岡県有明海漁連は、有明海は諫早湾干拓事業の潮受け堤防工事によって壊滅的な打撃を受け、さらに今回の潮受け堤防の内側の内部堤防工事によって、そのような事態がさらに進行するという立場から、御指摘の主張をされておられます。
 福岡県有明海漁連が債権者として差しとめ仮処分を申請されておられます中央干拓地の内部堤防工事は、潮受け堤防内における工事でありまして、既に干陸しておる陸上において行う工事であります。したがいまして、潮受け堤防外の有明海に漁業権を有します債権者に関しましては、仮処分に保全の必要性が認められるための要件であります著しい損害または急迫の危険を避けるため、これを必要とする場合に該当するものではないというふうに考えております。
 なお、福岡県有明海漁連の申し立てに関する主張につきましては、裁判所における審尋を通じて対応してまいりたいというふうに考えております。
楢崎委員 森山町は干陸していますけれども、前面堤防の内側はまだ干陸していないでしょうが。それと、私は、著しい損害を与えないと言っているから、だから少なくとも影響は与えるんですねと聞いているんですよ。
太田政府参考人 前面堤防工事におきます影響はほぼないものと考えておりますけれども、あえてそのような表現で、可能性を排除しておらないという意味ではございます。ただし、著しい影響はないということについては明言できるかと思います。
楢崎委員 諫干事業をやるときも同じようなことを言って、今、漁民の怒りを買っているわけでしょう。小長井漁協の元組合長さんが訴訟されたのも、まさにそれじゃないですか。だから、著しい損害を与えないということは、若干の損害を与える、このように私は理解します。
 この問題も後ほど取り上げますけれども、今のところ、まだ中長期開門調査はやるともやらないとも決まっているわけじゃない、そうですね。だから、この前面堤防ができることによって、環境に対する調査ができないんですよ。つまり、中長期開門調査の妨げになるということなんですよ。ですから、もし中長期開門調査が実施されることになれば、前面堤防工事にも影響を与えるわけでしょう。だから、中長期の調査をやるかどうか決まるまで工事は当然ストップしておくべきじゃないですか。どうですか。
太田政府参考人 中長期の開門調査につきましては、現在御審議されております有明海を再生するための新法制定の状況、短期の開門調査で得られました成果及びその影響、その他の各種調査の動向、ノリ作期との関係等の観点を踏まえた総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設けます有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経て、農林水産省において判断することといたしております。
 一方、諫早湾干拓事業につきましては、平成十一年三月の潮受け堤防の完成後、台風や洪水時だけではなく、常時の排水に関しても防災効果が着実に発揮され、地域住民から非常に感謝されております。さらに、長崎県、地元自治体や農業関係者を初めとする地域住民からは概成した土地の早期利用を、また、諫早湾内の漁協等からは漁場安定のための工事の早期完了を強く要望されている状況にございます。
 また、四月十五日の武部前農林水産大臣と長崎県知事、有明海の三県漁連会長、有明海の三県の知事等との会談におきまして、短期の開門調査を実施し平成十八年度に事業を完了させるとの農林水産省の方針について、理解が示されておるところでございます。農水省といたしましては、この方針に基づきまして、短期の開門調査を含みます開門総合調査の実施とあわせまして、平成十八年度に本事業が完了するよう、前面堤防工事等の進捗を図っているという状況にございます。
楢崎委員 諫早干拓が持つ防災機能については、先日、私はその論拠を失っていると言いましたよ。本来あるべき防災対策を国や県がやればいいことであって、それを諫干事業の必要性にすりかえている、そうとしか思えません。それから、優良農地の問題も、既に先ほども言いましたように、森山町というのは地盤沈下が激しいわけですから、何が優良農地ですか。
 大臣、私は思うんですね。私の言っていることは間違っていますか。中長期調査はまだやるともやらないとも決まっていないんですね。やるとなれば前面堤防は調査の妨げになるんです。だから、結論が出るまで前面堤防工事はストップすべきじゃないか、こう言っているんですけれども、私の言っていることは間違っていますか、大臣。
大島国務大臣 先ほど局長がお答えしたように、さまざまな御意見がある中で、三知事がお会いをし、そしてその効果というものも評価しながら、私どもは十八年度に向けて進めていく、そういう方向で今やっております。したがいまして、先ほど局長が申し上げた方向で取り組んでまいりたい、こう思っております。
楢崎委員 納得する答弁ではありません。
 国はまた、その法廷において、あなた方が言われる四月十五日の合意を持ち出されているんですね。もうどこでもにしきの御旗みたいに振りかざしておられる。何度も言いますけれども、重たい合意と言われるにしては合意文書も覚書もないんですよ。私に言わせれば、これは深夜の密談にすぎない。
 大臣、この四月十五日の会合の件については、前大臣から引き継ぎを受けておられると思います。この会合では、短期開門調査のためだけに六年度の工事完成を約束したということですか。
大島国務大臣 武部前大臣からの私に対する事務取扱についての継承におきましては、諫早湾の干拓事業、そういうふうなものにつきましては、再評価第三者委員会からの意見も踏まえて、予定された事業期間の厳守等の観点等に立って総合的な見直しを行い、平成十八年度に完了をする、開門総合調査については、ノリ不作等第三者委員会の見解を受けて、現在、短期の開門調査を含む開門総合調査を行っている、そういうふうなことを踏まえてしっかりやっていただきたい、こういうふうなことの事務の引き継ぎをさせていただきました。
楢崎委員 この会合で、中長期の開門調査はやらないんだということを確約されていますか。
太田政府参考人 今、大臣から答弁がありましたとおり、一つは、工事を十八年度に完了させるということ、そして開門調査は、総合調査を含めてですけれども、開門調査を実施するというところが議論とされたわけで、それについての合意が得られたということでございます。
楢崎委員 ノリ対策第三者委員会から中長期開門調査が必要だという提言を受けておるのに、何で六年度の工事完成を約束されるんですか。
太田政府参考人 昨年十二月にノリ不作等第三者委員会から示された見解を受けて、有明海の状況をどう解明していくかという中で、まずは、排水門をあけることによりまして被害が生ずることがないよう、また、そのことを地域の方々が実感し得るよう、開門調査を行うということを基本といたしまして、被害を防止するための有効な対策を講ずることができること、そして早期に成果を得るという観点から適切な調査手法であること、さらに、さまざまな要因の調査と連携が保てることという、その三つの観点に立ちまして調査方法を検討し、開門総合調査という形で三つの調査を並行して行う、これは当然、短期開門調査は含まれておりますけれども、そういった方向で現在調査を進めているという状況にございます。
楢崎委員 そんなことを聞いているんじゃないんです。
 いいですか、私は昨年の三月一日に予算の分科会において質問を、この有明海問題を取り上げたんですけれども、そのときの谷津元大臣の答弁ですが、このように言っておられます。第三者委員会が「この水門をあけろ、そして調査したいということであるならば、私は、直ちに水門をあけて調査をしていただきたいと思っておりますし、また、そこで工事を中断してそしてまた調査をしたいということであるならば、私は、工事の中断もやるというふうに考えているところであります。」と。有明海の再生を願う本当に名答弁ですよ。私たち民主党の法案というのは、今その工事の一時停止と中長期の開門調査を柱にしているんですけれども、谷津元大臣はこのころからそのことを考えておられたんですね。大したものですよ。
 第三者委員会は、今まさにその中長期の開門調査を提言してある。短期だけの開門でお茶を濁そうとしている、そしてしゃにむに六年度の完工を目指す今の農水省の姿勢というのはもう暴走している、農林水産省の姿勢は暴走している、こうしか考えようがないんですけれども、大臣、答弁してください。
大島国務大臣 今、元大臣の谷津大臣のときの答弁を御披露ありました。そういうことから、武部大臣になり、先ほどお話がありましたように、まさに関係県の知事、そして大臣、そういうものの話し合いの中で、先ほど局長がお話しされましたように、第三者委員会から昨年十二月に示された見解を受けて、排水門をあけることによって被害が逆に生ずることがないようにしよう、そのことを地域の方々が実感し得るよう、開門調査を行うことを基本として、一つは被害を防止するための有効な対策を講ずることができること、二つ目は早期に成果を得るという観点から適切な調査手法であること、三点目はさまざまな要因の調査と連携が保てること、この三つの観点に立って調査方法を検討し、現在、短期の開門調査を含む開門総合調査を行っているところであるわけでございます。
 したがいまして、そういう多くの方々の議論、歴史を踏まえての議論を踏まえて、そういうふうにしているところでございます。
楢崎委員 同じくその四月十五日の会合で、国は三県の漁連会長にも理解してもらったと言ってあるようですけれども、これはその会合の体裁を整えるために呼びつけて同席しただけの話じゃないんですか。各漁連の会長は組合員の総意を代表して出席したものではない。だから、合意と言われるものに理解ができないから、この後も激しい抗議行動が起こっておるんじゃないですか。国は、それでもなおかつ理解をしてもらったと言い募るんですか。
太田政府参考人 三県漁連の代表の会長の皆さんにおかれては、昨年の一月以来からの問題にずっと対応されてこられて、そうした中で、開門調査というのはひとつやはり必要だと。特に、短期の開門調査ということについても、農水省としても先ほど大臣からお答えいたしましたような調査方法も考えてやっていこうという中で、そういう方向が見えてきたという中で、これはやはり工事についても一定の理解をするという雰囲気が醸成され、そうした中で十五日の会談に至ったものでありまして、そういった意味で、決まった内容というのは非常に重いものであるというふうに考えております。
楢崎委員 全く唯我独尊、手前勝手な思い込み、ひとりよがり、ただもう事業推進ありきのみですね。
 今月二十六日には、福岡、佐賀、長崎、熊本四県の沿岸住民の方が同じく前面堤防差しどめの仮処分申請を佐賀地裁に行う予定ですけれども、要するに、もう裁判におけるあなた方の主張というのはその論拠が薄い、そういうことを申し上げておきます。
 環境省の方にお伺いします。きょうは御苦労さまでした。
 私は、有明海の異変問題というのは大きな環境問題だと。ところが、環境省の声がよく伝わってこないんですね。そもそも環境省はこの問題をどのようにとらえてこられたのか、答弁してください。
石原政府参考人 有明海の異変の問題についてでございます。
 有明海につきましては、環境省といたしましては、従来から水質の監視等のモニタリングをやっております。この結果によりますれば、一般的な有機汚濁の指標であるCOD並びに富栄養化原因物質と言われております窒素、燐の水質項目については、環境基準を著しく超過しているような状況にはございません。
 しかしながら、先ほどお話にもありましたように、二枚貝類の魚介類が長期にわたり低迷している、さらに一昨年には深刻なノリ不作等、水環境の悪化が懸念されている状況にございます。この環境悪化の原因につきましては、いろいろな仮説が言われております。一つは夏季におきます貧酸素水塊の発生、あるいは底生生物が長期的に減少しておるということで、単に水質だけではなく、底生生物、底質の状況を含めた水環境全体にわたる問題であると認識しております。
 このような観点から、水質のモニタリングに加えまして、底質、底生生物の状況についても調査をする等、その環境悪化の要因なり原因についての調査検討を進めているところでございます。
楢崎委員 環境省は、計画が変更される前の昨年八月、調整池の水質保全目標達成が非常に厳しいとした上で、水質保全対策や生物への環境調査の強化が必要とする見解を発表してあるんですね。その上で、先月の十月三十一日、農水省と長崎県に水質保全対策実施の要請をされている。
 そこで、調整池が汚濁水のままであったらどのような影響が考えられるのか。あわせて、これは潮受け堤防外に垂れ流されているわけですから、当然海も影響を受けますよね、どのような影響を受けますか。
炭谷政府参考人 ただいま先生が指摘されましたように、私ども、十月三十一日の日に長崎県に対しまして水質汚濁対策の一層の充実を求めたところでございます。
 その背景といたしましては、昨年の八月に九州農政局が作成しました諫早湾の干拓事業の環境影響評価のレビュー報告書や、今年の七月に公有水面埋立法に基づく変更申請時に九州農政局が作成した環境保全に関し講じる措置を記載した図書によれば、調整池の水質は、各種の対策が実施されることによりその水質保全目標が達成されると予測されております。また、調整池の水が排出される諫早湾の水質については、潮受け堤防締め切り前後に明確な変化はなく、経年的にはほぼ横ばいに推移すると予測されております。
 私ども環境省としても、おおむね妥当な予測ではないかと思っておりますが、このような水質保全目標が達成されると予測されているものの、諫早湾干拓事業の変更によって一部水質の悪化、例えばCODの指標などでございますけれども、予測されているところでございますので、十月の三十一日に、長崎県に対しまして、例えば環境保全型の農業の推進とか排水対策の強化というようなことについて、検討結果の反映等を求めて、水質保全対策の強化を求めたところでございます。
楢崎委員 いや、それはわかっているんですよ。だから、どのような影響が考えられますかということを聞いているんですよ。それが海に垂れ流される、有明海はどうなりますかと。
炭谷政府参考人 ただいま御説明しましたように、現在の状況は、排水門につきまして、水質保全目標が一応達成されると予測されておりますので、私ども、これの対応、対策ということを見守っていきたいというふうに思っております。
楢崎委員 非常に甘いですね。
 それで、環境省は、ことしの七月十四日、湿地保全に対する我が国の取り組み状況をまとめましたラムサール条約国別報告書を発表されていますね。これは、今月スペインで行われる締約国会議で報告されるということですけれども、この報告書に、有明海など、湿地に影響を及ぼす政策や計画の見直し、変更がその途上、あるいは行われていない事例が存在すると記載されているわけです。これはどういうことでしょうか。説明してください。
小野寺政府参考人 自然担当の審議官をしております小野寺でございます。
 お答えいたします。
 ラムサール条約国別報告書は、締約国会議の前に各締約国が条約事務局に提出するものでございます。御指摘のとおり、今月スペインで開催されます第八回の締約国会議に先立ちまして七月に取りまとめた報告書は、保全と利用など、八つの総合目標の実施状況について、設定されました六十三の質問に答える、また、参考資料をつけるという形で報告を行ったものでございます。
 お尋ねの記述は、適正な湿地の利用ガイドラインの適用に向け、潮間帯湿地に影響を及ぼす政策の見直し等を行ったかどうかという設問において、有明海を初めとした我が国の代表的な潮間帯湿地の中には、湿地の開発や保全に関する政策や計画に関し、見直しや変更の動きのあるところがある旨を報告したものでございます。この中で、行われていない事例について言及したのは、こうした見直しや変更の動きが我が国の潮間帯湿地すべてにおいて一斉に実施されているものではないことを示したものであります。
 環境省としても、これらの湿地のうち重要なものについては、今後、事業者において、専門家の意見を踏まえるなどして、湿地の適正な利用に向けて、必要に応じ政策や計画の見直しが進められるべきと考えております。
楢崎委員 ちょっと、わかりやすく説明していただきたいんですけれどもね。
 最後に、環境省にお伺いしますけれども、いわゆるノリ対策第三者委員会が、諫干事業が有明海全体の環境に影響を与えていることが想定されるとして、中長期の開門調査を提言しているわけですけれども、これだけの問題ですから、先ほど言われたように、環境省も独自の調査をしてあるんでしょう。そこで、環境省は、この諫干事業と有明海異変、この因果関係をどのようにとらえてありますか。
石原政府参考人 有明海の異変につきましては、いろいろな原因仮説が言われておるところでございます。河川からの砂粒の細粒化等による底質の悪化、あるいは干潟の消失による底生生物の減少、大きくは、さらには周期的気候変動、海洋変動という、有明海の異変につきましては、そういういろいろな仮説が言われておるところでございます。
 環境省といたしましても、水環境の保全ということで、水質の保全、モニタリングを続けるとともに、さらに、とりわけ海洋の環境に大きな影響を持ちます底質あるいは底生生物の調査をしておるところでございます。
 有明海につきましては、いろいろなそういう原因が言われておるところでございまして、この原因を引き続き検討中でございまして、何が特に原因であるというような状況には至っておりません。
楢崎委員 検討中が長過ぎるんじゃないですか。そのままでは、本当に省の存在価値が問われますよ。農水省は、やはり、みずからが諮問した第三者委員会の提言を無視するような形で、今、事業を強行しているわけですから、そういう姿勢を批判するぐらいの気概を環境省は持っていただきたい、このように思います。きょうはありがとうございました。
 そこで、大臣にお伺いします。
 大臣は、就任後の記者会見で、中長期の開門調査をすべきという意見があるのは承知している、その一方で、事業の改善計画に対する評価と期待もある、このように述べてあります。それはそれでいいんですけれども、実は、その事業の改善そのものに欺瞞があるんですよ、私に言わせれば。
 これは、九州農政局が、この諫干事業について、計画どおりの事業実施ということを再評価第三者委員会に諮問されたわけですね。この諮問に対して、昨年の八月二十四日、再評価第三者委員会は、環境への真摯かつ一層の配慮を条件に事業を見直されたい、社会経済の変動が激しい今日、諸般の事情を含めて、事業の遂行に時間がかかり過ぎるのは好ましくない、英知を尽くして取り組むことが緊要である、このように答申されているわけですね。これは、計画どおりの事業実施という九州農政局の諮問を認めない、有明海再生を強く意識した答申だと私たちは評価したんですよ。
 現に、この答申に至るまでの過程では、失われた諫早干潟の浄化機能などの外部不経済、それから諫干事業による有明海への負荷やマイナスの影響が軽視もしくは看過されているということなどが議論される中で、専門家からは営農計画のずさんさ、また、複数の委員からは事業の中止ないし休止という強い主張がこの議論の中で繰り返されてきたらしいです。そういう審議内容の経過を含めて、委員長提案によって、このような簡潔な答申になったわけですね。
 ところが、その同年の、昨年の十月三十一日に農水省が示した改善案、びっくりしました。それまでの議論が何も生かされていない、手前勝手な解釈。とにかく有明の海をもとの姿に戻しましょうよと言われた谷津大臣の言葉も、大臣がかわれば関係ないよと言わんばかりの農水省の姿勢じゃないですか。
 この事業の見直しというものは、大臣はどうとらえられておるのか、見解を聞かせていただきたいと思います。
大島国務大臣 再評価第三者委員会の意見を踏まえるということは、私は、今後のこの事業を進める上においての大変重要なことだ、このように思っております。
 私も、この歴史をちょっと勉強させていただきました。
 今委員が御指摘をいただきましたように、第三者委員会からは、環境への真摯かつ一層の配慮を条件に、事業を見直せと第一点ございました。また、第二点の、社会経済の変動が激しい今日、諸般の事情を含めて、事業の遂行に時間がかかり過ぎるのは好ましくないという御意見もあったわけでございます。
 そういうふうな意味で、第一には防災機能の十分な発揮、概成しつつある土地の早期利用、環境への一層の配慮、予定された事業期間の厳守、そういうふうなことから、既に干陸した土地のうち、農地としての整備が進んでいる区域に限り干拓地として整備をし、残りは現状のまま保全することといたし、前面堤防の位置を変更し、干拓面積を二分の一に大幅に縮小した、これを本年六月に行ったところでございますし、また、余りだらだらと事業をやってはいかぬ、しっかりそういう防災機能の強化、その他のこの事業の目的を踏まえ、平成十八年度の完成を目指して事業を進める、そういうことが私の責務であろうと思っております。
 なお、今後において、事業を進める過程においても、環境への影響というものを十二分に配慮しつつ進めていかなきゃならぬことは当然のことだと思っております。
楢崎委員 大臣とは少し認識を異にするわけですけれども、確かに、見直すという文言だけをとらえれば、事業の継続から中止まで、極めて広い解釈ができますね。現に、農水省に対して、事業継続という都合のいい口実を与えているわけですから。だから、私は、ごまかされないように、その答申に至るまでの経緯、中身の話を先ほど紹介したんですよ。
 つまり、これまでの事業が環境への配慮に欠けていたという反省から、私は、事業を中止あるいは休止して、見直すことを求めておる、常識的に解釈をすれば、大臣、そうなるんじゃないでしょうか。
    〔委員長退席、鮫島委員長代理着席〕
大島国務大臣 一方において、この事業で日常の平和な生活が守られる、したがって早く完成してくださいという強い強い要請があることもあるわけでございます。したがって、私どもは、第三者委員会から御指摘いただいたそういう御指摘に沿って先ほど申し上げたような結論を出させていただいた、そしてそのことに向けて進めさせていただく、しかし、進めていく過程の中でも、やはり環境に対する保全、配慮というものは当然必要であろう、こういう思いを持って、十八年度に完成をするという決意で努力してまいりたい、こう思っております。
楢崎委員 大臣、どうもかみ合いません。
 それで、環境への配慮を見直しの出発点にしながら、自然と共生する環境創造型事業を言われているわけですね。これがわからない。要するに、人工的につくりましょうということでしょう。要するに、再評価第三者委員会の答申にある、環境への真摯かつ一層の配慮、これは何度も言いますが、やはり常識的に解釈すべきだと思います。つまり、干潟と水産資源の回復、言いかえれば、有明海再生のための一層の配慮を私は言っていると思いますよ。
 それで、大臣、やはり、何でもそうですけれども、前提を忘れちゃいけないと思うんですよ。ノリの大凶作を初めとする有明海異変がクローズアップされたから、その解明、そして有明海再生に向けた議論が各第三者委員会でされているわけでしょう。そういうときに、だれも潮受け堤防内の環境の整備の話なんてやりませんよ。
 ところが、諫早湾や有明海への環境配慮のはずが、調整池内の淡水域の環境配慮にすりかえられている。これはひどいですよ。完全なごまかしじゃないですか。もともと、有明海の子宮と言われた干潟ですよ。海だったんですよ。海だったところを淡水の湖として整備することがどうして環境保全になるんですか。海に戻すことが有明海の環境再生につながる、環境配慮はそのことを言っているんじゃないですか。どうですか。
太田政府参考人 調整池の中の環境配慮と御指摘でございますけれども、既に干陸した土地のうち農地としての整備が進んでいる区域に限って整備すること自体が、例えば工事期間中における影響を軽減するということも当然ございますし、それをまたさらに、アシ、ヨシ帯を含めた植生帯等をつくってさらにその水質の改善を図るということも十分に環境に配慮している内容だというふうに理解しております。
楢崎委員 本当に太田さんの言っていることはよくわからないな。
 さらにわからないことが一つあるんですけれども、東工区の干陸化は断念するものの、西工区の造成及び淡水化計画は予定どおり実施する、こういう改善計画のもとに今事業が行われているわけですけれども、そもそも、西工区の区域がかつての諫早湾の中でも非常に重要な役割を果たしておったところなんですね。だから、西工区の復元が有明海再生の一つのキーポイントと言われてきたんですよ。単に東工区を断念しただけでは再生につながらないし、また何のためにトカゲのしっぽ切りみたいに東工区を断念したのかも、その縮小の目的が私にはわからない。答申が言うところの、意味するところの、事業の見直しという一環であれば、当然、それは西工区になるはずなんですよ。
 そこで、私がつらつら思ったのは、それは農水省自身が事業の総括をきちっとやれないからじゃないか、やらないじゃなくてやれないからじゃないかということなんですね。農業目的がいつの間にか防災に名をかりた事業になる、その防災も、何度も言うように、論拠がしっかりしない、有明海漁業にも深刻な影響を与えている、費用対効果の面でも土地改良法違反事業と言われている、諫干事業というのはそういう事業なんですよ。
 それを事業の継続に執着されるのは、たまたま、十一月六日の朝刊に、諫干事業受注ベストスリーの業者から長崎県選出の代議士それから長崎県知事に献金の問題が出ていました。これは後ほど共産党の委員がやられると思いますけれども、このような政治献金そして天下り、つまり政官業トライアングルのしがらみがあるからじゃないですか。
 やはり、半世紀の歴史を引きずっているこの事業、そして地域にも混乱を与えているこの壮大な公共事業というのは一体何だったのか、改めて問い直されなければならないと思うんですけれども、大臣の見解をお聞きします。
大島国務大臣 楢崎委員から、今、半世紀にわたる長い歴史のというお話がございました。まさにそういう歴史の中で追い求めたものというのは、大変、簡単な言い方でございますが、第一点は、やはり防災機能ということが一つあったと思います。そしてまた、あると思います。第二点は、これはたびたびお答えしておりますように、優良農地を造成したいということであったと思います。
 この二つの目的のために、かつて長崎県の漁業者が漁業権も放棄し、そういう大きな目的のために話し合いをして進めてきた事業であったと思いますし、その間、今たびたび御指摘いただいた環境上の問題点等々の御指摘や、あるいはまた、ノリ生産者の声というものの御指摘や、そういうものがありながら、そういう問題をみんなで話し合いながら、そして乗り越えながら、この大きな二つの目的を果たしていこうというのがこの干拓事業の目的ではないか、このように思っております。
楢崎委員 大臣、お言葉を返すようですけれども、防災についても優良農地の問題についても、もう何度も言ってきましたから言いませんけれども、それぞれに疑問を感じます。
 そこで、大臣、私思うんですけれども、干拓地が今すぐ必要なほど、我が国に食料危機が迫っていますか。むしろ、干潟の魚介類を殺し、豊饒の海と言われた諫早湾、有明海の水産資源を激減させたことの方が食料問題にとっては一層深刻なはずだと私は思うんですよ。どうでしょう、大臣、多くの関係者が納得されるように、まず、工事を一時中断して、中長期の開門調査をやる、その政治的決断のときが来ているんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
大島国務大臣 先ほど委員から約半世紀の歴史ということをお話しされまして、特にここ数年、本当に関係各県知事、漁業者、そして議員の皆様方、そういうふうな御議論、あるいはまた研究の末、関係県知事の、そして漁連の、そういう関係者の皆様方の決意の中で、また第三者委員会からの御提言もあり、まず第一点は、いつまでも環境に最大の配慮をしつつ、そういう観点から、見直すべきところは見直し、そして事業をしっかり、長くかけないでやりなさい、こういうことから、私どもは十八年を目途に、そして計画変更もし、今着実にそういうふうな事業を進めてまいるのが責務と考えております。
楢崎委員 もう時間がありませんので、その中長期開門調査に関して、一つだけ確認しておきます。
 武部前大臣の言葉はもう紹介しませんけれども、大臣も同じお考えだと思います。この方針でいけば、検討結果次第では中長期開門調査をやることは否定しておられない、そういう理解でよろしいんですね。これは政治的なあれですから、決断は大臣がするわけですから、大臣が答弁してください。
大島国務大臣 中長期の開門調査につきましては、現在審議されている有明海を再生するための新法制定の状況、短期の開門調査で得られた成果及びその影響、その他の各種調査の動向、ノリ作期との関係等の観点を踏まえ、総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設ける有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経て、判断をしてまいりたいと思っております。現時点で、その実施について、中長期の実施について言及する時点ではまだない、このように思っております。
楢崎委員 現段階では、中長期調査をやらないとはっきり決まっているわけじゃない、このように私は理解をいたします。
 そこで、議題となっているこの新法に関してですけれども、補助金かさ上げの与党案を心待ちにされている方々もおられるでしょう。一方、中長期開門調査を実施するために工事の一時停止を柱とする私たち民主党案に期待をされている方々もおられます。
 この有明新法について、大臣は新聞社の取材に対して、臨時国会で何としてでも成立させていただきたい、議員立法だが、大臣としても努力すると述べてあります。当然、与党案、民主党案に目を通されていると思いますので、簡単で結構ですので、この両法案に対する感想というものを述べてください。
    〔鮫島委員長代理退席、委員長着席〕
大島国務大臣 与党案及び民主党案の皆様方の両法案、共通する点は、いわばこの有明の再生にみんなで力を合わせてやっていきたいという思いは、私は共通しているものだと思います。違う点は、いわば事業をやめろということかどうかだと思っておりまして、私どもとしては、先ほど来答弁を申し上げておりますように、十八年を目途に実現をしたい、こういう思いの中でやっておりますので、そういうふうな与党案の、どういう結果になるかわかりませんが、できた暁には全力を尽くして取り組んでまいりたい、こう思っております。
楢崎委員 与党案は、有明海再生法を言いながら、諫干事業にも中長期開門調査にも触れられていない。ただ、公共事業予算のかさ上げが柱になっています。
 そこで、小泉内閣の国庫補助率引き下げの姿勢と相反するのではないかと思うんですけれども、大臣の見解はどうでしょう。
大島国務大臣 私どもは、成立がされた暁には、水産庁及びそういう枠の中でそういうことを処理してまいりたい、こうは思っておりますが、先ほど来から先生もお話をされ、また与党からの御質問もあり、緊急かつ重大な問題としてこの案件を見ていかなければならぬと思っております。したがって、小泉改革の方向性に逆行しているとは思っておりません。
楢崎委員 与党案は、各主務大臣が基本方針を設定して、財政支援をするんですね。計画は関係各県が策定するようになっているんです。ですから、めったに会わない福岡県知事も二度も陳情に来られたわけですけれどもね。
 私は、旧来型公共事業を有明海全体で展開していくことによって、公共事業依存病、これが諫早湾から有明海全体に移転していくと思うんですね。先週、参考人として出席された小長井漁協の元組合長さんの森文義さんですか、お金をつぎ込めば喜ぶ漁民はいるだろうが、これでは有明海は救えない、諫干事業の潮受け堤防がある限り、有明海は死んでいく、このように述べられたんですよ。
 しかも、この特需というのは、政府が言うところの六年度の工事完了とともに終わるんですね。そのときに、本当に漁民が帰るべき海はあるのか、将来世代に手渡すべき海はあるのか。とにかく今は、有明海再生に努力することが現代世代に生きる私たちに課せられた命題だと思うんです。やはり、この再生を願う気持ちは与野党の枠を超えると思います、皆さん方、有明海は大事だと言われますからね。その再生法案が対立の形になったことは非常に残念ですけれども、諫干事業それから中長期開門調査に触れられていない、つまり、与党案それから修正案については再生の道筋が見えない、こういう思いで反対の意を表明して終わります。
小平委員長 次に、津川祥吾君。
津川委員 民主党の津川祥吾でございます。楢崎委員に引き続きまして、政府に対して質問をさせていただきます。
 まず冒頭、一言申し上げたい。大臣、今日の日本の農業、林業、水産業はまさに危機的な状況にある。特に、林業、水産業というのは非常に大変な状況です。私は、林業が特に大変だと思っております。先ほど、自民党の委員の方からもこういった御指摘がございましたけれども、大変危機的な状況である。
 今、大臣にこの日本の農林水産業の状況がどういう状況かと伺えば、大変な状況だと多分認識をおっしゃると思います。ただ、行動に出ていないんです、行動にあらわれていない。大臣になられてからこの臨時国会の中で、日本の農業あるいは林業、水産業、どれでも構いませんが、そのどれか一つでも、まさに構造改革というような大きな改革をするというような法案ですとか方針ですとか、一本も出されていない。私は、この行動から見て危機意識というものがやはり非常に少ないんじゃないかと思わざるを得ません。
 来年の通常国会にぼちぼち出そうかななんという悠長なことを言われては困るんです。現場ではもう本当に大変な状況で、委員の皆さんは当然これを理解していただいていると思いますが、大臣もこれは人一倍強く持っていただかなければ本当は困る。
 きょうの答弁を聞いておりましても、有明海あるいは八代海の問題、この問題に対する答弁を聞いても、どうもやはり危機意識が感じられない。(発言する者あり)勉強しているかどうかわかりませんが、谷津大臣の答弁なんかも今出てまいりましたが、私どもは、あのとき、ああ、ようやくこの問題が少し前に進むかと思ったけれども、時計の針がどうも逆戻りをしたんじゃないか、こういう思いなんです。こういう大変危険な状況であるという思いで今質問させていただきます。
 私は、昨日、質問通告で大きく二点のことを言わせていただきました。一点は、この有明、八代の再生に関する問題であります。もう一つは、大臣の前秘書官の公共事業の口きき疑惑の問題であります。もちろんこの疑惑の問題については、ぱっぱと答えていただければ本題に入れますので、ぜひそういった形でお答えをいただきたいと思います。
 まず、この疑惑ですが、先月の十月十三日に、まず最初に大臣御本人にこの疑惑というものは示されたはずであります。それからきょうでちょうど一カ月であります。私は、今大臣に辞職をしろと言っているわけではありません。大臣御自身もこれまで繰り返し述べていらっしゃるとおりで、今の大臣の責任は真相の究明、真相の究明とそれをしっかり国民に対してわかりやすく説明をするというのが大臣の当然の第一の責務であろうかと思います。まあそれが究明された後にはやめるかどうかは御自身で判断をしていただきたい。
 小泉総理も出処進退については自分で判断せよというようなお考えのようです、総理の任命責任もあると思いますが。まずは、いずれにしても真相を明らかにして、説明していただくというのが第一であろうかと思います。
 そこで、まずここを確認いたしますが、今回の疑惑について、大臣としての責任あるいは政治家としての責任、どのようにお考えかをしっかりとお答えいただきたいと思います。
大島国務大臣 津川委員から、今さまざまなことを問われました。まず、農林大臣として、WTOの問題と米の改革というものは今喫緊に私の大きな課題としてやらなければならないことだと思っておりますし、農林水産業が危機的状況にあるのではないかという思いの中で、全力を尽くしていかなければならないと思って努力しておりますが、一カ月たちましたというお話がございました。
 当時、私の前秘書官が、六年前あるいは七年前、多額の金を自分が買った家の原資にされたのではないかという指摘を受けました。私は、その報道を見て、非常に深刻に受けとめました。したがって、その原資についてしっかりと彼個人から報告を受け、そしてその裏づけをとり、皆様方の前にそれを提示することが私の責務と思って本当に努力をしてまいったつもりでございます。
 そのことについてのさまざまな御批判、御意見等があることを承知しておりますが、私も知らざることがたくさんございました。その都度に厳しく問いただし、そしてその都度にそのことに私なりに努力して答えてきたつもりでありますし、そのことが私の責務の一つと思っております。
 もう一点は、私は二十八で県政に立たせていただき、以来二十八年間、政治の場に身を置かさせていただきました。そして、私自身は、絶えず公のためにみずからを尽くしてくる、そういう思いで二十八年間努力してきたつもりです。
 しかし、その中にあって、つらいことも指摘を受けたこともございますが、なおみずからにもっともっと深く考え、国対委員長として野党の皆様方ともさまざまな交渉をしたり議論もいたしましたが、みずからのあり方が、さらに律してそしてやらなければならないこともあるんだということを、自省も含めて、そういう意味で職務に専念していくことが私のもう一つの責務である、このような思いで毎日毎日努力をいたしておるところでございます。
津川委員 三十分しかありませんので、少し手短にお答えをいただければと思いますが、大臣は、今の農林水産業に危機感をお持ちであるということ、それから、今回の疑惑に関して宮内前秘書官に対して厳しく質問するというのが責任だとおっしゃいました。しかし、それだけじゃなくて、調べることも責任ではないですか。調べて説明するのがあなたの責任ではないですか。私どもが調べたことあるいはマスコミで報道されていること、あるいはさらに言えば、事前に通告されたからそのことについては答えるというのが責任ではなくて、あるいは宮内さんに確認するだけが責任ではなくて、確認するのも当然ですが、それだけではなくて、真相を解明するのがあなたの責務ではないですかと聞いているんです。もう一度答えてください。調べるのがあなたの責任ではないですか。
大島国務大臣 したがいまして、報告を受けたことを裏づける調査も持ってきなさい、資料を持ってきなさい、私のそういうふうな調べるという、あるいは彼の報告を受けるというのは、やはりそういうふうな意味を含めて申し上げているつもりでございます。
津川委員 宮内さんに対して聞く以外、こういったことも含めて真相を究明するのがあなたの責任ではないですかと今聞いたんです。違うなら違うと答えてください。違わないならそれ以外のお答えをしていただいて構いません。違うなら違うとはっきり言ってください。
大島国務大臣 彼個人ではなくて、彼の奥様、あるいはまた、問われたことに対するその調査の提供をしてもらうためには、あるいは、言われたことに対するその周辺の方からの御意見も聞くこともあると思います。
津川委員 今の言い方ですから、要するに、やらなきゃいかぬというふうに答えたんだと思います、違うとはおっしゃいませんでしたから。
 ただ、何か質問をしたら、それを確認するために何かほかに聞かなきゃいけないかもしれないという順序じゃないんですよ。
 あなたが十月の三十日、当委員会において、我が党の筒井議員に対しまして答弁をされています。「調査を私もできるだけして、そしてその上に立って、そのことに対する事実、彼からの報告等を踏まえてお答えするのが責務」と答えています。
 報告をどうやって確認するのかが責務じゃないですよ。あなたが調査をするのがまず最初にあるとあなたがおっしゃったんです。違いますか。どうですか。
大島国務大臣 したがって、私のできる範囲の中でそういうことをして、お答えをしておるつもりでございます。
津川委員 では、ちょっと一つ具体的に聞きますが、宮内氏に聞く以外、宮内氏からの報告等というんですから、これは奥様からの報告も入るんでしょう。それ以外に、あなた自身が調査をされたことはどういったことがあるんですか。(発言する者あり)じゃ、予算委員会を開けばいいじゃないか。
大島国務大臣 皆さんから、きのう筒井委員もお話しした、A氏と会って私に質問したというふうに言われました。したがって、A氏に会って私に質問したことを受けて、私は、前秘書官のそのことに関して、委員もそうだと思いますが、秘書の二十四時間を管理しているわけではございません。ましてや、過去のさまざまな問題提起がありましたときに、私の知らざることが出てきた場合に、やはりそのことについて彼に対して真摯に厳しく聞きながら、それではここはどうなんだ、だったらここの資料を出しなさい、あるいは奥様にも、宮内家のプライバシーを全部出させて、そして、私のできる限りの、その報告を受けて今皆様方に答えているのが今の私の責務だと思っております。
津川委員 先ほどの答弁の続きがあるんですよ、十月三十日の農水委員会。「調査を私もできるだけして、そしてその上に立って、」上でも下でもいいですが、「彼からの報告等を踏まえてお答えするのが責務と思って今日まで努力しております。」というんでしょう。
 今やっているんですか。やっていないじゃないですか。今の答弁では、出てきたものに対してそれをいかに確認するか、証拠を出せ、出せと言っているだけじゃないですか。あなたが調査もできるだけして、これからやりますというんじゃないですよ、十月三十日に当委員会において、これまでやってきましたと言っているんでしょう。やっていないということは、これはうそじゃないですか。十月三十日にうそをついたんですか。これは大変な問題ですよ。
 今、有明、八代海の再生の問題、やっていますよ。これは、与党の方々だって、問題意識、大変強いわけでしょう。我々民主党の議員だって、これは非常に問題だということで議員立法を提出しているわけですよ。ほかの野党の方々もそうです。でも、ここで一生懸命議論して、こういう法案をつくるべきだ、つくっても、あなたは、やってもいないことをやっていると答弁するんですよ。
 やっていることがあるなら、答えてください。それがないなら、あなたは、十月三十日にこの委員会において、まさにうそをついたんですよ。私は、このことについてしっかり答弁していただかないと、これ以上質問できませんよ。
大島国務大臣 十月三十一日と言いましたか……(津川委員「三十日です」と呼ぶ)三十日、そのようにお答えしたと思いますし、問われたことについては、今もそういうことでお答えをしてきて、努力をいたしております。
小平委員長 津川祥吾君、質問しますか。
津川委員 ちょっととめてください。ちゃんと答えてください。
小平委員長 質問されますか。
津川委員 ちゃんと答えてください。
小平委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
小平委員長 速記を起こしてください。
 津川委員、再質問をお願いいたします。そこで大臣の答弁によって、この後、理事会なりを開いて協議しますので、再質問してください。
津川委員 中身についてまたしっかりとお答えをいただきたいと思います。
 少しクールダウンをいたしまして……
小平委員長 それでよろしいですか。答弁は要らないですか。
津川委員 はい。いいです。また後でちょっと質問しますから、その中で答えていただければ構いません。
 まず何点か、大臣御自身もここ数日の間に認められている点について、ちょっと確認をさせていただきます。
 まず一つが、脱税事件であります。
 宮内さんが大臣の政策秘書をされていた時代だと思いますが、明らかな脱税をされていたという話でありますが、大臣御自身の政治家としての責任はどういうふうに果たすおつもりなのか、御見解を伺います。
大島国務大臣 まさに最初に報道され、その原資をしっかり説明しなさいという経過の中で、相続税、贈与税でございましたでしょうか、その問題が、どうしたんだと厳しく問いただしたところ、大変申しわけございませんということでございました。私は、税の納付の期限というものを後で伺いながらしましたが、なおしっかりと税務署と相談しなさい、これは多額な贈与税だ、公設秘書であった時点におけることだとするならば許されることではないんだ、もう一度税務署に行って経過をお話しし、そして相談をしなさいと言いまして、今、世田谷の税務署と、どういうふうにしたら税を納められるかの協議に入っているそうでございます。
 したがって、そのことについては、彼の方から、大変申しわけない、したがって、何らかの形で、税務署さんと相談してその対応を図っていきたいというふうな報告を受けました。私から厳しくそのことを繰り返し彼に怒り、その結果、そういうふうな形になってまいりました。
津川委員 税金を納めていなかったんだからちゃんと払いなさいということを厳しく言うのは当たり前です。それも当然監督責任のある大臣の責任だと思いますが、普通であれば、まず最初に、国民の皆さんに心からおわびをしなければなりませんと言うのが監督者の責任ではないかと思うんです。何でこれについて、本人が謝るのは当然ですが、大臣御自身がそういったことをおっしゃらないんでしょうか。それについて御見解はありますか。
大島国務大臣 広く考えますと、例えば先生と秘書さんの関係におきましても、確かに、普遍的に言えば、一般的に言えば、そういうことがあったとすれば、これはやはり代議士と秘書という関係で決していいことではないと思い、遺憾であると言わなきゃならぬと思います。気持ちの中にそういうものがあり、だからこそ、一般の贈与税、あるいはそういう納付期限が切れたとしても、何か道があるはずだ、そのことがまず君の責任ではないか、あるいは、そのことがまた私自身の責任でもあるのかもしれない、直接的ではありませんけれども。そういう思いで問いただし、そして、税務署に行って今相談をして、一気に払えなくてもどういう形で払えるかという協議をしているということを報告を受けております。
津川委員 いや、だから責任はどうですかというのに、報告を受けておりますという答弁はおかしいんですが。まあわかりました。大臣御自身がまず国民に対してはおわびをしないという話でありますから、よくわかりませんが、そうなんでしょう。
 ちょっと余談なんですが、大臣、ちょっと聞いていただけますか。
 二年前に、私が当選させていただいて間もないころなんですが、大臣が科学技術庁長官をされていたころであります。私は科学技術委員会で質問させていただきました。クローンの規制の問題でありました。私、初めて一時間の時間をいただいて質問をさせていただいたんですが、大臣は大変よく私の意見を聞いていただいて、まさに御自身の言葉でしっかりと答えていただいたんです。私はちょっと驚いたんです、あの森内閣にしてこういった大臣もいらっしゃるのかなと。ちょっと生意気でありますが、目からうろこの落ちる思いでありました。
 こういったことを、ぜひ、質問に対してだけではなくて、事実に対してしっかりと究明をしていくということを、誠実に答えていただきたい、わかりやすくお答えをいただきたいと思います。
 昨日、特殊法人等改革特別委員会において、私どもの民主党の筒井委員が指摘をし、お示しした資料についてお伺いをいたします。
 これは、実は今回の疑惑の一角ではないかとさえ言われているわけでありますが、A氏と言われる方が宮内前秘書官に直接お金を持っていった、つまり、公共工事の口ききの見返りとして、業者から集めたお金をプールしていた貸し金庫、こういったところから、宮内前秘書官の指示があったたびに大島大臣の議員会館の部屋に持っていった、あるいは振り込みをした、こういったことを裏づける資料が出てまいりましたのでお示しをいたしました。そして昨日は、大臣は、今見たばかりだからこれを検証したいという話をされました。
 その検証の結果をここで報告していただければと思います。
大島国務大臣 津川委員からの御指摘は、きのう筒井委員がお示ししたお手紙とさまざまな資料、要は、西部瀝青の社長さんに五百万円を貸した経過の点についてお伺いをしておるわけだと思ってお答えをさせていただきます。
 この件に関しまして、改めてあの手紙も私も見させていただきましたし、そして精査をして、彼自身に改めて聞きました。
 その結果、彼からは、A氏に樋口氏、つまりA氏から樋口氏に五百万円を振り込んだという事実が、あの資料からは客観的な事実として読み取れますと。
 そういうことから、宮内が樋口氏のために金銭の借り入れをお願いしたとする私的な書類など手紙等もございましたので、さらに宮内に問いただしました。そうしましたところ、昨日お答えを申し上げましたように、宮内が樋口氏にみずからが金を貸した事実はございませんという報告でございました。
津川委員 つまり、昨日私どもがお示しをした事実、この資料ですね。この資料と、今大臣がお答えになった、つまり宮内さんに確認した事実というのは違うわけですよ、全然。違いますよね。
 だから、A氏はお金を、十五回にわたって、五千五百万円渡しました、何月何日に渡しました、そのうちのこの日はこういったところでこういった形で振り込みましたと、その証拠もありますとこれも示されているわけですよ。いや、今大臣、改めて確認されましたよ、手紙の件だと。午後にお渡しをした手紙の件ですよ。この手紙の中に、「貴殿に対し、金銭の借入れの御願いをし、貴殿から快く実行して頂きました。」貴殿というのは宮内さんだという話でしょう、これは宮内さんに対する手紙なんですから。という事実に対して、あなたの前秘書官は、渡していないと。
 つまり、この事実と、これはA氏からお預かりしているものですから、A氏がおっしゃっている事実と、あなたの前秘書官がおっしゃっている事実が違うわけです。違うんだから、真相究明はこれはしなきゃいけない。一カ月たっているのに、今の段階でもこういう状況というのは、先ほど私が申し上げましたが、真相究明が、本来あなた御自身の責任だといって努力をしてきたと言っているけれども、していないじゃないですかということです。していますか。
大島国務大臣 先ほど私、確認をしましたのは、きのう筒井委員から、手紙を初めは一通見せられました。その後、もう一通コピーをちょうだいしました。そのことを、よくよく私自身も読みました。そのことについて聞きましたところ、筒井委員にも午後お答えしたのですが、ちょっと背景をもう一度申し上げさせていただきます。(津川委員「時間がないので」と呼ぶ)いや、そのことをやはり知っていただいた上で、手紙の内容があるということを知っていただきたいと思います。
 平成八年か九年ごろ樋口氏が上京し、そして自分と彼と面会した際、A氏とたまたま引き合わせる機会があった、その後、樋口氏とA氏はお互いに仕事をする関係になったそうでございます、二人で。そういうことから、学生時代からの友人であって、そういう関係から、本当に資金繰りが苦しいということを宮内にたびたび訴えておったそうですが、そういうふうなことから、もう二人で仕事をしているので、A氏に聞いてみてはどうかということで、確かに、宮内はA氏に対して、余裕があるなら協力してほしいということのお願いはしましたと。したがって、そういうふうなことから、二人からそういう金銭のあれがありましたということの報告があったということでございまして、自分自身が、自分のお金として、あるいは自分が振り込んだとか、そういうことではなくて、要するに、A氏にお願いをして、そして、お願いしたのは事実ですということが、やはり同じことが私に返ってきた。あの手紙を見せ、報告をさせ、それが私の今の答えでございます。
津川委員 わかりました。要するに、大臣はこの真相の究明ができないんですよ。あなたのおっしゃっていることが、それは正しいかもしれません。ただ、A氏のおっしゃっていることが正しいかもしれない。少なくとも、これは矛盾しているんですよ。矛盾していることに関して、真相を究明できないんです、一カ月たちましたが。
 委員長にお願いいたします。
 大島大臣の宮内前秘書官とこのA氏、参考人としてお招きいただくことをお願いいたしますが、いかがでしょうか。
小平委員長 これにつきましては、理事会で協議をいたします。
津川委員 終わります。ありがとうございました。
小平委員長 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 引き続き疑惑を聞きたいところですが、きょうは有明法案について大臣にお聞きいたしましょう。
 平成十二年にノリ被害があった。その前から、タイラギ、巻き貝等々がかなりの被害を有明海で受けてきている。これはどこに原因があるのかといろいろ今まで取りざたされてきましたが、私は、酸処理が問題なんじゃないか、そう思っています。大臣、酸処理の実態はおわかりですか、有明海。
大島国務大臣 山田委員が大変その問題にお詳しいということで実は勉強してきたんですが、正確に詳しくはちょっと、山田委員のようにはまだ勉強しておりません。
山田(正)委員 きのうの質問通告で、大臣に酸処理の実態を必ずレクしておくように、大臣から酸処理の中身を御答弁いただきたい、そう言っておったので、今のような回答では困る。
大島国務大臣 山田委員、酸処理剤のことでございますね。このことにつきましては、ノリの養殖をする過程の中で、酸処理剤を使って網をつけて、そしていわば他の雑藻類を排除していく、そういうふうなものに酸処理剤を使っておるということはしかと承って勉強してまいりましたし、まだしゃべろといえば、ここにたくさんございますが、山田委員からの宿題はしてきました。
山田(正)委員 その酸処理をどのようにしてやるのかということで私は質問通告で言っていたつもりですが、もう結構です。
 大臣、その酸、本来ならば、酢酸とかそういう海に害のないものをやらなきゃいけないのが、実際には安い塩酸とかそういったものを利用して、いわゆる竹を刺したノリの棚がありますね、そこに、箱舟、いわゆる舟の中に酸処理剤というか、海水と一緒に入れておいて、そこに出した冷凍網をつけて、病気にならないようにそれを海に出す、これが酸処理ですね。その中で、実際には、箱舟の中に入れた酸処理の液、これをそのまま海上投棄している。この実態は御存じか。
大島国務大臣 もしそういう実態があるとすれば、大変なことだと思います。現実的に、何月何日、こういう案件がこういう事態で起こっておりましたとかという報告はまだ受けておりませんが、山田委員はそういう事実を元手に多分御質問されているのかと思いますけれども、使用して残ったものを海の中に捨てるというのは、いかなることがあっても許されることではないと思っております。
山田(正)委員 大臣は農水大臣になられて、有明法案の審議の、いわゆるこの法案の直轄の大臣として、有明海がどういう状況にあって、実際に酸処理がどうして行われたか、いわゆる酸処理済みの海水と酸をまぜたものを、この五、六年、事実上みんなが捨ててきている、それに対して何らの取り締まりもなされていない。そういう実態、そういったものを大臣は全く掌握されていない、この有明法案において。ただ、そういうことがあったら大変なことだと。これは、実態はそうなんです。それでいて大臣が務まりますか。疑惑事件で頭がいっぱいで、有明法案について、本当に大事なこの法案においても十分な勉強もなさっていない大臣、こんなことではもうこれ以上質問もしたくない。
 とはいえ、大臣、今大臣もゆゆしきことだと言ったけれども、そういうゆゆしきことが行われている有明海の実態において、酸処理の液、これをどんどん海に捨てていっている、これは海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律に明らかに違反するのではないのか。
大島国務大臣 山田委員から、そういう実態を知らないのはけしからぬとおしかりをいただきました。もし山田委員が、こういう実態があって、こういう地域でこうだということを教えていただければ、もちろん私どもはそれに基づいて調査もしますし、今御指摘がありましたからというわけではございませんが、そういうことはあってはならぬことでありますから、早速に、いま一度、水産庁を通じてそういうことの指導あるいは調査等もしてみたい、このように思っております。
 さらに、海上投棄が法律上禁止されているのではないかというふうな御質問でございますが、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の規定により、原則として、海域における船舶からの排出は禁止されているものと承知しております。
 また、この酸処理剤の残液は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律により、産業廃棄物として事業者がみずからの責任において適正に処理しなければならない、このようにあります。
山田(正)委員 先ほどの法律の第十条、これに違反している、海上投棄ということで。違反した場合には、この法の第五十五条の第三号、それによって一千万円以下の罰金に処せられる。これは大変重い罪だ。これが、今までは有明海においては野放しになってきている。それを、先ほど大臣は、大臣の責任において調査する。間違いありませんか。立入調査する、ノリ業者に対して。いかがですか。もう一回お答えください。
大島国務大臣 立入調査、そういうふうな概念が、どういうふうにできるかとは別にして、せっかく委員からそういう御指摘があったので、そういうことも、もし委員から具体的にそういうふうなことがあれば、それを元手に調査することも一つのきっかけになるとは思いますが、委員としての、ある意味では御提議、御提案でございますので、調査及びそういう問題点をしかと研究させて、何らかの行動をとってみたい、このように思っております。
山田(正)委員 いわゆる、今までこの問題で調査したり、あるいは捕らえたり、逮捕したり、罰金に処したりということはなされていない、私が調べる限り。
 そういう意味では、きょうの大臣は、はっきりと、今野放し状態になっている酸処理について調査をするということなので、大臣が言われた、本当に大臣がその責任を遂行してくれるかどうか、これからぜひ見守らせていただきたい、そう思っております。
 そういったもろもろのことによって、この酸処理だけではありませんが、それこそタイラギとか二枚貝、そういったものが、タイラギは特に全滅、壊滅的状況に陥ってしまった。これをどうしたらいいのかという意味で、この汚濁、いわゆる水質の汚濁、これについて何らかの総量の規制が必要なんじゃないか、そう考え、自民党の提出した今度の法案について、我が自由党としては、修正、いわゆる総量規制を織り込むべきである、そういう主張をし、自民党さんの方でも、与党さんの方でも、それをのんで、修正案の今回の成立に至るという形に考えておるわけですが、大臣、このいわゆる総量規制、農水大臣として、その必要性、それをどう思うか。一言で答えてもらえばよろしい。
大島国務大臣 山田委員からの今累々の御提案の経過、あるいはそういう意味での修正の経過を伺いました。私としても、環境省と相談して、そういうふうなことのあり方について検討してみたい、こう思っております。
山田(正)委員 現在、総量規制が行われている瀬戸内海とか伊勢湾、東京湾について、どういうふうに現実になされているか。ごく簡単でいいですが、きょう、環境省の政務官、見えていると思いますが、政務官、御答弁お願いします。
望月大臣政務官 水質汚濁防止法に基づく総量規制でございますけれども、人口、産業の集中等により汚濁が著しく悪化している状況にあった東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海を対象として、五十四年から行われてきました。
 そういった中で、これらの海域では、有機汚濁の度合いを示す代表的な指標でございます化学的酸素要求量、CODでございますけれども、その汚濁負荷の総量を削減してまいったところであります。実は、平成十一年度のCODで示した発生の負荷量は、昭和五十四年度と比較いたしまして約六三%、三七%減少しているという結果が出ております。
 そういうようなことで、平成十六年度を目標年度といたしまして、第五次総量規制においては、CODに加えて、窒素及び燐を対象項目に加えまして、その汚濁負荷の総量の削減を図っているところでございます。
山田(正)委員 今回の修正案で、いわゆる総量規制についての条文を明確に入れていただいているということで、政務官にもう一度お聞きしたいんですが、実際に有明海でも総量規制をやるのか、やらないのか。そこだけで結構です。
望月大臣政務官 山田委員おっしゃるとおりでございまして、環境省といたしましては、有明海の再生が図られますように、汚濁負荷量の総量の削減、総量規制を導入することで対応してまいりたいと思っております。
山田(正)委員 はっきりそうして環境省でも言っているので、それを早急に取り組んでいただきたい、そう思っておりますが、瀬戸内海あるいは東京湾みたいに、最初からそういった基準ではなかなか難しいと思うので、それなりに、徐々にでも結構ですし、早急にこれに取り組んでいただきたいということで、この問題については、私の方の質問は終わらせていただきます。
 実は、もう一度環境省政務官にお聞きしたいんですが、それと農水大臣にもお聞きしたいんですが、いわゆる有明湾、どこでもそうですが、海には、藻、海藻、そういったものがあって、一つの生態系をつくっておる。
 ところが、最近、七月十四日の日本テレビで私は見たんですけれども、イチイヅタというのが地中海で繁茂している。それまでのポシドニアと呼ばれる海藻を駆逐して、一斉に地中海に、特にイタリア湾岸において生えてきた。
 ところが、それが小魚とかプランクトンを忌避するものを出す、そのイチイヅタが。変異性のイチイヅタ。本来ならば、寒い海では育たなかったイチイヅタ。これが、ドイツの水族館か何かで何か照射することによって変異性のものができ、それが水槽から流れてきてそうなったと言われておりますが、このイチイヅタが繁茂することによって、イタリアでは突如として漁獲高が減少した。いわゆる魚がいなくなった、極端に言いますと。
 日本でも、日本の東京大学の海洋研究所小松助教授、これがこういうことを言っているわけですね。変異性のイチイヅタ、これは、各国とも非常にこれを規制している。日本は野放しなのではないのか。もしも日本に入ってきたとしたら、これは、日本沿岸の方が地中海より水温も高いし、突如として繁茂して、そして海全体が、アマモを駆逐して海全体に、大変なことに、地中海をはるかに上回る被害が予想される、そう言っているわけです。
 これについて、環境省の政務官と農水大臣、一体日本としてはどういう対策をとってきたのか。さらにもう一つ、小松助教授は、日本でも能登半島にあるんじゃないか、出ているんじゃないか、そういう指摘もしておる。
大島国務大臣 つくづくに、山田委員の勉強ぶりを今拝察いたしましたが、私も、通告がありまして、一体イチイヅタというのは何だろうかと。それで、よく伺いました。そして、もしそれが日本にあれば、繁殖していけばどうなるのかということを水産庁の詳しい諸君と議論したんですが、大変に、今委員がお話をされたように、もしそれが日本に存在し、そして繁殖していくと、海が壊れていくということがわかりました。
 したがって、結論から申し上げますと、現在のところは報告されていないということでございますが、そういう大変大きな影響、被害を惹起せしむるものですから、繁殖状況について本当に注意深く監視してまいりたい。まずそういうことを、今能登というお話もありましたので、そういうことも踏まえて監視そして調査をしてみたい、こう思います。
山田(正)委員 能登半島では発見できないとかと水産庁から私も聞いたんですが、実際にあるという報告もあるし、日本に来ているかもしれない。ところが、海域に本当にその海藻があるかどうかというのを調べるのは至難のわざであって、本当はもう入っているかもしれない。実際に、日本の水族館においては、各地においてこの変異性のイチイヅタが使われているのは事実。それが、単なる一ミリの一片でもその水槽から、水族館から海に流れていたら、それが直ちに強力な繁茂をする。そうなったら、大臣、ただ調べてみたいでは追っつかないんじゃないのか。
 肉骨粉、あの場合だって、大丈夫だろう、何とかなるだろうという安易な気持ち。未然に法律規制でもって防止する。既にアメリカとかオーストラリアとか、ヨーロッパ各地では、イチイヅタに対しての法的規制もできている。そういう意味で、大臣、法的規制を急ぐ気持ちはないかどうか。
小平委員長 その前に環境省、山田議員、いいんですか、答弁は。
山田(正)委員 ちょっと、まず農水大臣に。
小平委員長 では、大島農水大臣。
大島国務大臣 今委員からお話を伺って、例えば、水族館なんかにあるぞと。捨てられて、そのことから海に行ってということは、なるほど、そういうふうなことも大変心配だなと思います。
 ですから、どのぐらい水族館、そういうふうなものも含めて、私ども、改めてそういうものに対しての監視とそれから調査研究というものにまずしっかり取り組んでみたいと思いますので、その上に立って、どうあるべきかということを考えなければならぬと思いますので、まず注意深く監視をすると同時に調査研究を、せっかく先生からの本当に大きな指摘でございますので、取り組んで、その上で所要の対策の検討を行っていく。
 今、実態と、その態様がわかりませんので、今法律という前に、そういうことが必要かなというふうに思っております。
望月大臣政務官 イチイヅタにつきましては、本来の生息域を超えて移入をするということで、生態系に対する大きな脅威となっておりますけれども、先生先ほどお話ございましたように、最初、我々の聞いている話では、観賞用に日本に入ってくる、あるいは水族館に観賞用として中に入っていて、紫外線か何かを当ててこれが突然変異をして、本来日本では生息できないものが低温でも、ある程度の低温でございますけれども、生息する、そういうような、人がつくった外来種といいますか、そういうようなものであるというふうに我々は考えております。
 そして、実は、この移入種につきましては、環境省といたしましては、本年三月にまとめた新生物多様性国家戦略において、早急に対応しなくてはいけない、そういうようなことに位置づけております。
 そしてまた、環境省といたしましては、専門家の意見を踏まえて、本年八月に、外来種の対応方針、持ち込む際の事前の影響評価、侵入の早期発見など、対応方策に係る基本的な考え方をまず整理いたしました。そしてまた、これを受けまして早期に中央環境審議会の野生生物部会に専門の小委員会を設置いたしまして、論議を深めてまいりまして、そして結果を踏まえて、先生がおっしゃったように、具体的な制度化をしていきたい、このように環境省では考えております。
山田(正)委員 この問題で、環境省を呼んで、役所の方を呼んでいろいろお聞きしたときに、イチイヅタについて環境省は、海のそういう生物についての調査は全くしていなかった、政務官、これはね。私は驚いたんですが、今政務官の答弁の中にも、突然、いわゆる水族館の中で変異するというんじゃなくて、既に変異した危険なイチイヅタ、変異性のイチイヅタが日本の水族館に入っている、今自体。それに対して、ただ調査研究して云々とか、生ぬるい対応、これではどうしようもないので、まさに肉骨粉のようになってしまう。
 早急に法律規制をしないで、もしや本当に能登半島にいるかもしれない、それが繁茂を始めたら、有明湾まであっという間に来るかもしれない。そうすると、有明海のこの法案だってどうなっていくのか。そうして考えれば、私の方は大臣と政務官に言っておきますが、この問題で将来もしものことがあったら、今ここで大臣、政務官が早急に法的規制をやらなかったことの責任である、これは重大である、そういうことを言って、一つイチイヅタの質問は終わらせていただきます。
 次に、有明湾において、さっき話しましたタイラギとかアゲマキ、そういった有明海特有の二枚貝がほとんど壊滅状況に至っている。今度の有明法案によって、この条文をつぶさに読んでいきますと、資源回復を図るとなっておりますが、大臣、これをどのようにして資源回復を図るおつもりか、その辺について所見をお聞きしたい。
大島国務大臣 先ほどちょっと触れましたが、私のところには陸奥湾がございます。タイラギの話が出ましたときに、ホタテガイとタイラギを比べてみまして、まず種苗の技術が確立しておりませんですね。そこをやはり全力を尽くしてまず一つすることが大事なんだろうな、こう思いました。
 さらに、まあそれは技術ですから、さはさりながら、そういうことをしながらも、やはり、水産基盤整備事業という事業におきまして、覆砂や堆積物の除去をしながら生息場所をつくってやるということが大変大事なんじゃないだろうか。そういうふうなために、干潟の造成等の施策を講じておりますけれども、あるいはタイラギに対して、食害生物であるトビエイの駆除事業、そういうふうなものを総合的にしていかないと非常に難しいなという感じがしておりますので、そういうことに一生懸命取り組むということが大事であろう、こういうふうに思っております。
山田(正)委員 大臣、資源回復に取り組みたいという意向、その意向はわかりましたが、具体的な話として、資源回復をどのようにしてやるのか。その意味では、今、水産庁の事業の中で、私は、水産予算の三分の二は土木予算でどうしようもないといつも言っているわけなんですが、その中でも一つだけ、非常に私どもが関心を持っている、評価している政策、これが資源回復事業、この資源回復事業をひとつ有明湾においてやってみる気はないのかという意味。
 例えば、海区を決めて、そしてこの海区を一たん禁漁する、全く。ただ、今は壊滅に近いから、種苗をまず大量に、例えばホタテのように、種苗技術は確立されていないといっても、今までやっていなかったので、やればできるわけですから、私も水産試験場で聞きましたが。そうすれば、何億立米の、ホタテあるいはアゲマキ、そういった貝を、海区を三つ、四つぐらい沖合につくっておいて、そこに入れて、二年間とか三年間とか禁漁し、あるいは輪作みたいにしてやっていく。それに対して、いわば漁業調整、そこには底びきもいろいろな船も入れないとか、そして、禁漁のための監視船、それに対する助成、支援策、そういったもろもろのもの、海区に対してもあるようですが、そういったもので、具体的にこの資源回復事業、これでやらせたいというお気持ちはないかどうか。
大島国務大臣 山田委員のお話をされる、まず基本的に、その漁業資源回復計画策定を有明にどんと指定というか、そういうことができないかということが一つあったと思います。しかし、そういうふうな計画は計画としながらも、輪作体系というんですか、そういうふうなこと等も考えて指導したりあるいは援助したりしてできないかという二つの点があったと思いますが、特に後者の方は私は有効ではないか、こう思います。
 したがって、ホタテ等でもそういうことをやっておりますので、稚貝の放流とそれから自主的な休漁を組み合わせて、そういうふうなものの再生を図っていくということも今後の課題であると思っておりますので、一層地元の皆さんとも相談して、何としてもこれは地元の漁業者が本当にその気になってもらわなければいけないことは委員御承知のことだと思います。したがって、そういうことも含めて、タイラギの再生について努力してまいりたい、こう思っております。
山田(正)委員 大臣、その資源回復事業、これをぜひ水産の振興のために、各地で今始まっているところなんですが、いわゆる港湾土木じゃない、本当の意味で漁業者が資源回復するために、国が三分の一助成しましょう、都道府県が三分の一助成しましょう、あと残り三分の一を漁民に負担してくださいと。この事業で私も随分、壱岐、対馬、五島と浜回りしたんですが、ところが、今の漁民にとってはその三分の一の負担もできない。実は先月、対馬だけで六人が一カ月で自殺いたしました。そういう厳しい漁業状況にあって、漁民はいわゆるその三分の一もなかなか負担できないというのが今の実情なんです。
 そうであれば、いわば国の三分の一と都道府県の三分の一と両方だけで、金額は少なくてもいい、いわゆるこの資源回復事業を各地でどんどん推進してやっていただきたい、そう思っていますが、大臣、いかがでしょう。
大島国務大臣 資源回復事業というのは大変大事な事業だと思います。
 今委員からは、この国の三分の一というものをもう少しかさ上げできぬかという御主張であったと思います。それは生産者の負担になるから。そのことについては、わかりました、そうしますというわけにはまいりませんが、この事業も、だれのためにやるのかということを理解してもらうためにも、やはり生産者の方々にある一定のものを御負担いただきながら、そしてともにやっていく、そういう事業でございますし、ほかの部分で何か知恵がないかといえば少し勉強はしますが、その負担部分で、こういう財政事情もございますので、今、わかりました、こう言って胸をたたける状況ではございません。
山田(正)委員 ただ、私が言っているのは、漁業者に対して十分な休漁補償、減船補償をやりましょうというわけじゃないわけですね。例えば瀬戸内のサワラにしても、一人当たり漁民に五万か六万ぐらいになるんじゃないか、そういうふうにお伺いしておりますが。いわゆる漁民自体は既に覚悟している。例えば、どんな仕事でもいい、それをしながら禁漁期間を守ろう、それで、国からは、県からは少しでもいいからの支援という制度だ、それは十分漁民も理解してやっているわけです。
 その中で、ただ、漁民が負担してファンドに積み込まなきゃいけない、現金がない。自分たちはもらい分は少なくてもいいけれども、その現金がないと。だから、漁民の負担をファンドに積まなくてもできるような方法を、大臣、考えてもらえないか。これが一つ。ちょっと、時間もなくなったので、大臣にお願いしたのは、ぜひこれを水産庁に検討を指示していただきたいんですが。
 もう一つは、実は、県によっては非常に財政が厳しくて、国もやりましょう、あるいは漁業者ももうある程度我々も負担しようというところになったけれども、これは長崎県じゃありませんよ、これはほかの県の話なんですが、その県財政が非常に厳しくて事業をやれないということも聞いています。そうした場合に、例えば減船の補償等に国が九分の五とか九分の四とか出している例もありますが、国自身、この事業は非常にいい事業だ、そういった意味でひとつぜひ検討していただきたい。
 もう一つだけ、質問も終わりますので言っておきますが、この事業で漁業調整、例えば、まき網とかごち網とか、一本釣りとの漁業調整もできるわけですが、これが広域漁業調整委員会で調整できるようになっていますので、各県との調整について、ひとつ国がうまく、例えば、この魚種、まき網がどうしても禁漁に反対するとか、そういった場合には議決でもって、多数決でもってきちんと、あるいはしっかりとした形で強制的にでもこの禁漁区域、同期間を守れるような形、これを大臣、少し水産庁に、ぜひ弾力的にこの制度を運用して水産資源の回復を図っていただきたい、そう思います。いかがでしょうか。
大島国務大臣 第一点の、この事業は、漁業のサステーナブルという意味ではこれから非常に大事だと私も思います。
 したがって、三分の一をかさ上げしろということではなくて、例えば、多分、山田委員が御心配しておるのは、借り入れて、そしてその事業に参加する、しかし、残念ながら資源が回復しなかった、そういう不安があるわけですね。そういうものには、償還期限の延長とか、中間据置期間の設定等、償還条件の緩和をもう少し我々も検討していいのじゃないか、こう思っておりますので、この点はちょっと勉強させていただきます。
 それから、多種間の業種での調整ですね。簡単に言えば、もう少し国も入って調整をしたらどうかという御指摘だと思うんです。
 一応、広域漁業調整委員会がございますので、やはりそこで協議しながら、余り初めから国が入ってがちゃがちゃ調整役をやると、だれのためにやるかというのはわけがわからなくなりますから、そういうことをしながら、国も見ながら、必要であればそこに関与しながら努力していくという仕事は、私はあると思っております。
山田(正)委員 終わります。
小平委員長 この際、休憩いたします。
    午後零時三十分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時七分開議
小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。小沢和秋君。
小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。よろしくお願いいたします。
 本法案は、古賀誠、松岡利勝両議員など十名が提出したいわゆる議員立法であります。私は、当然、提出者に対し質問するものと思っておりましたが、本日は、政府に対する質問ということになっております。
 なぜ提出者が直接出席して答弁をしないのか、大臣や局長が提出者にかわって責任のある答弁ができるのか。まず、このことをお尋ねしておきます。
小平委員長 小沢委員、それは、過般理事会で、今回、有明対策として政府に質疑する、そういうふうに合意がありましたので、お気持ちはわかりますが、そういうことなもので、先へ進めてください。
小沢(和)委員 納得できませんけれども、質問を続けたいと思います。
 まず、お尋ねしたいのは、有明海及び八代海を再生するための特別措置がなぜ必要になったのかということであります。原因を正確に認識せずに正しい措置を講ずることはできません。提出者は、かつて宝の海と言われた有明海などがどうして今のような瀕死の状態になったと認識しているのか、お尋ねをしたいと思います。(発言する者あり)では、大臣、成りかわって答えてください。
小平委員長 今申し上げましたように……
小沢(和)委員 だから、では、どうぞ大臣、かわって答えてください。
小平委員長 有明海再生に対する、政府に対する質疑でよろしいですね。
小沢(和)委員 もう一遍繰り返しますと、原因を正確に認識せずに正しい措置を講ずることはできないというふうに考えますが、では、大臣はその原因をどう認識しておられるか、お尋ねします。
大島国務大臣 有明海のさまざまなデータを拝見いたしますと、環境の悪化が、さまざまな形で要因が指摘されておりますが、確かに、水産資源の減少傾向がしかと数量として見えております。そういうふうなことを踏まえて、ノリ不作等第三者委員会の検討によりますれば、藻場、干潟の減少、人の活動に伴う水域の環境悪化等が関与していると考えられる、このようになっておりますが、いまだその原因を、これだというふうに特定するには至っていないわけでございます。
 現在、タイラギを含め水産資源の減少原因については、独立行政法人の水産総合研究センターが、有明海四県と連帯し、調査研究を積極的に行っているところでございます。
小沢(和)委員 本日は、特に深刻な状況に直面している有明海に絞って質問したいと思います。
 かつて年間十三万トン前後の水揚げを誇ったこともある有明海が、昨年はついに二万トンを切るところまで落ち込みました。その原因は、私も諫早湾干拓工事だけではないと思います。筑後大堰、三池炭鉱の海底陥没、熊本新港工事などにも原因があると思います。しかし、決定的な原因が諫早湾干拓、特に潮受け堤防の工事であることは、かつて年平均約八万九千トンあった漁獲量が、工事が本格的に始まった一九九〇年以後は、直後に周辺のタイラギが全滅状態になり、魚介類全体で年平均約五万五千トンに落ち、一九九七年のギロチンによる堤防締め切り後は年平均約二万六千トンまで落ち込んだという事実から推測できると思います。
 その漁獲量の推移を示したのが、お手元に配付していただいております資料の上段のグラフであります。大臣は、今、これだという原因がはっきりしないようなことを言われましたけれども、このグラフをごらんになっても、干拓工事が決定的原因でないとお思いになるでしょうか。
大島国務大臣 有明海の環境の悪化については、先ほど申し上げましたように、さまざまな要因が指摘されておりますが、水産資源の減少原因につきましては、ノリ不作等第三者委員会の検討、先ほど申し上げました、藻場、干潟の減少、人の活動、つまり生活排水から、その他の排水だと思います、水域環境が悪化しているというふうに考えておりますが、そういうものが複層的に考えられておるわけでございまして、それを特定するにはまだ至っていない。
 そういう意味で、ノリ不作等の第三者委員会の見解の趣旨等を踏まえまして、有明海の再生に向けた総合的な調査の一環といたしまして、短期の開門調査を含む開門総合調査を行っているところでございます。これによって、諫早湾干拓事業による有明海の環境への影響をできる限り量的に把握しよう、このようにしているところでございます。
小沢(和)委員 農水省が設置したいわゆるノリ第三者委員会も、「諫早湾干拓事業は重要な環境要因である流動および負荷を変化させ、諫早湾のみならず有明海全体の環境に影響を与えていると想定」されるとの見解を発表し、中長期の開門調査が有明海の環境破壊の原因を解明するために決定的に重要であると提言しております。
 海洋問題の専門家で組織する日本海洋学会も、同学会の発行する雑誌「海の研究」最新号で、昨年に続き、有明海異変の原因究明と回復のための提言を発表し、中長期の開門調査を強く要望しております。私たちも、それを要求しております。
 農水省は、ノリ第三者委員会の提言を尊重すると繰り返し表明してきたにもかかわらず、渋々短期開門調査をやっただけであります。しかも、期間は二カ月のはずだったのに、実質的に調整池の中に海水を出入りさせたのは一カ月、それも、わずか二十センチにも満たない水位差の範囲で行っただけであります。
 私は、短期調査の終わりごろ、一番海水が入った時期を見計らって、船を出してもらって調整池内を視察しましたが、排水門のごく近くでも、なめてみたら淡水とほとんど同じで、測定装置を使って辛うじて海水の混入を確認できる程度でした。これでは、ほとんど形式的に調査をしただけで、科学的な意味のあるデータは得られなかったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
太田政府参考人 開門総合調査の実施に当たりましては、農林水産省では、ノリ不作等第三者委員会の見解の趣旨等を踏まえた上で、被害を防止するための有効な対策を講ずることができること、原因究明及び対策の検討のため、早期に成果を得ること、さらに、さまざまな要因の調査と総合的な連携が保てることの三つの観点に立ちまして検討を行い、短期の開門調査、類似干潟での実証調査、そしてコンピューターによる水質、流動等の解析調査の三つの手法を組み合わせた調査を実施しているところでございます。
 開門総合調査のうち、御指摘のありました短期開門調査につきましては、調整池の容量の約二・四倍に当たります約七千万立方メートルの海水を調整池に導入いたしまして、調整池及び海域における水質、流動等の変化を観測しておりまして、現在は、調整池が淡水に回復する過程を調査している状況にございます。
 これまでの取りまとめによりますと、海水導入期間中は、調整池内では、塩分濃度は、底層では諫早湾奥の海水とほぼ同程度の一リットル当たり一万六千ミリグラムまで上昇し、COD等の水質は、海水による希釈効果等によりまして海域の水質に近づいたほか、植物プランクトンは、汽水性のものから海産性のものに入れかわるなどの変化が見られております。また、海域におきましては、COD等の水質は、海水導入前と比べると、ほぼ同じかわずかに高い水準となるなどの結果が得られております。
 その一方で、その他の調査についても進めておりまして、類似干潟の調査では、これまでにも現地調査を行い、水質や底生生物等の分布や特性等の把握が進んでいること、また、水質、流動等の解析調査の一環として、底層の溶存酸素濃度等の詳細な調査を行い、諫早湾や佐賀県沖の有明海湾奥での底層の貧酸素化の発生状況、それの要因等の把握を行っておるところでございます。
 今後は、専門家の指導助言を得ながら、こういった調査をさらに進め、諫早湾干拓事業による有明海の環境への影響をできるだけ量的に把握してまいりたいというふうに考えております。
小沢(和)委員 今のお話では、海水の濃度が相当上がったようなことを言うけれども、私は、さっき言ったように、行って現になめてみたんですからね。ほとんど私の舌に感ずる程度の塩辛さにはなっていなかったということは、もう一遍言っておきたいと思うんです。
 農水省は、有明海の環境異変の原因究明のために中長期開門調査の必要性を提言したノリ第三者委員会を最近では邪魔者扱いし、短期調査の指導助言を全く別の開門総合調査運営会議で行わせ、中長期調査をやるかやらないかは今年度中につくる新たな議論の場で検討すると言い出しております。いつになっても放置したままでは、事実上棚上げにしようということではありませんか。
 一方で、諫早干拓と類似した干潟で干潟の浄化機能を調べ、コンピューターで潮流などをシミュレーションで調べるとしておりますが、こんなやり方で科学的なデータが得られるはずがないのではないでしょうか。中長期調査をどうするつもりなのか。
 農水省には、タイラギ不漁の原因調査を十年近く結果を出すのを引き延ばし、結局わからないとうやむやにした前科があります。今度はどうするのか、ここで明言していただきたい。
大島国務大臣 小沢委員にお答えを申し上げます。
 ノリ不作等の第三者委員会の見解の趣旨を踏まえまして、有明海の再生に向けた総合的な調査の一環として、短期の開門調査を含む開門総合調査を行っているところでありまして、これによって諫早湾干拓事業による有明海への影響をできる限り量的に把握しよう、これはたびたび申し上げております。
 中長期の開門調査につきましては、現在御審議されております新法の制定の状況、短期の開門調査で得られた成果及びその影響、その他の各種調査の動向、ノリ作期との関係等の観点を踏まえ総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設ける有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経て、我が省において判断をしてまいりたい、こう思っております。
小沢(和)委員 四月十五日の深夜に農水大臣は、三県漁連会長、久間衆議院議員、古賀衆議院議員、長崎県知事、佐賀県知事らとの会談で、短期の開門調査実施とあわせて二〇〇六年度の干拓事業完成を合意したと伝えられております。これを機に、中長期調査の棚上げと工事再開の動きが始まっております。私は、こんな深夜の密談そのものを認めることができませんが、この合意もその後大きく崩れてきております。
 福岡県有明海漁連は、幹部の独断によるこの合意を二十六漁協中二十四の多数で覆し、あくまで工事再開に反対する意思を明確にし、現在、福岡地裁に対して前面堤防工事差しとめ仮処分を申請しております。また、有明海沿岸四県の漁民や住民が工事反対の集団訴訟を近日中に起こそうとしております。佐賀県知事も、二〇〇六年度の事業完成と有明海異変の原因究明は別次元の話、開門調査をしっかりやってもらうよう要望していくと、事実上中長期調査の実施を要求する発言を行っております。
 既に四月十五日の合意なるものはこのようにして崩れてきているのではないでしょうか。これを根拠にすることはもうできないんじゃないでしょうか。
大島国務大臣 四月十五日の今小沢委員がお話しされた、前大臣と長崎県知事、三県の漁連会長初め、そういう会議がありました。私どもは、そこで得られた一つの方針というものを非常に重いものであるというふうに認識して、そういう認識の上に立ってこれからそれを進めてまいりたい、こう思っております。
 これは、この事業に寄せるさまざまな御意見があることは承知しておりますが、やはり防災効果が着実に発揮される、地域住民から非常に感謝をされている、あるいはまた、概成した土地の早期利用、諫早湾内の漁協等から漁場安定のための工事の早期完了を強く要望されているところでございます。
 そういうふうな中で、再評価第三者委員会の意見を我々としても謙虚に受けとめながら、環境への一層の配慮、また予定されていた事業期間の厳守等の観点に立って総合的な検討を行い、既に干陸した土地のうち農地としての整備が進んでいる区域に限って干拓地としての整備をし、残りは現状のまま保全することとして、前面堤防の位置を変更し、干拓面積を約二分の一に大幅に縮小すること等を内容とする事業計画の変更を本年六月に行ったところでございます。
 したがって、その四月十五日のそういうふうな会談というものをしかと踏まえながら、短期の開門調査を実施し、平成十八年度に事業を完了させるとの農水省の方針について理解をちょうだいした、そういうことを踏まえながら、大変な地元における対立の構図があったわけでありますが、関係者の御努力、そういうことを踏まえて、長崎県の苦渋の決断のもとで既に短期開門調査を実施していることからも、私どもは、その会談は非常に重いものである、このように認識しております。
 したがって、今後とも、平成十八年度中に事業が完了するよう工事の円滑な実施と、現在行われている調査について万全を期していきたいと思っております。そして、そういう進める経過の中で、先ほど来委員の皆様方からも、漁民の声もちゃんと聞きながらというお話もございましたし、また環境に留意しながら、その目標に向かってしかと進めていくことが私どもの今とるべき道だ、このように思っております。
小沢(和)委員 農水省は盛んに、調査と工事は別と工事再開を合理化しておりますが、それならば、何のために調査を行うのか。調査は、干拓事業が環境破壊の原因になっていないかを検証するものでなければ意味がありません。
 農水省がとにかくそういう調査を何らかの形でやるというのであれば、その結果、事業が環境に悪影響を及ぼしている、有明海を死の海にしつつあるという結論が出た場合には、もとの状態に戻せるように少なくとも工事を凍結しておく必要があるのではありませんか。二〇〇六年度に完成させるということで前面堤防を建設してしまえば、復元は極めて困難になります。調査と事業は別ということは、端的に言えば、まともな調査をやる気が全くないということではありませんか。
太田政府参考人 農林水産省といたしましては、ノリ不作等第三者委員会の見解の趣旨等を踏まえまして、先ほど申し上げました、被害が生ずることがないように、また、そのことを地域の方々が実感し得るような開門調査を行うことを基本といたしまして、種々手法を検討した結果、短期の開門調査を含む開門総合調査を今実施しているところでございまして、これによって諫早湾干拓事業による有明海の環境への影響をできる限り量的に把握することとしたいというふうに考えております。
 中長期の開門調査につきましては、現在御審議いただいております有明海を再生するための新法制定の状況、短期の開門調査で得られた成果及びその影響、その他の有明海の環境改善のための各種調査の動向、ノリ作期との関係等の観点を踏まえた総合的な検討を行った上で、新たに平成十四年度中に設けます有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経まして、農水省において判断することとしております。
小沢(和)委員 いや、私が聞いているのは、調査をやっても、一方では工事をどんどんやってしまったら、もう調査の結果がどうあってもどうしようもないんですよ、そこをどう思っているんだと聞いているんだけれども、今のは全然答えになっていません。しかし、それを指摘して、先に行きます。
 二〇〇六年度の完成を約束したというんですが、それが延びても、干拓地の農地としての利用がただおくれるだけであります。今、これだけ日本の農業が危機的状況に陥り、長崎県でも諫早周辺でも離農や耕作放棄が相次いでいる中で、農地の完成がおくれたところで日本と長崎県の経済にどれだけ悪影響が出るというのか。干拓地は優良農地だといいますが、だれがこの農地を買って農業をやるというのか。十アール当たり七十万円という価格は、東工区を断念したことでさらに高くしなければならないはずですが、同じ価格を維持するという。いわばこの政治的な価格で購入できる人がどれだけいるのか、バレイショづくりや酪農くらいで経営として成り立つのか、この点をお尋ねします。
太田政府参考人 諫早湾干拓事業の営農計画についてでございますが、平成十二年六月に長崎県が取りまとめられました諫早湾干拓営農構想報告書の考え方をもとに、長崎県農政ビジョン等の各種農業振興計画や長崎県の意向を踏まえて作成しております。
 具体的には、バレイショを中心といたします大規模野菜経営の導入、低コスト粗飼料生産等によります安定した畜産経営の展開、さらには、企業的な組織経営によります花などの施設園芸経営の展開を軸に八つの営農類型を設定いたしまして、収益性の高い近代的な畑作生産基地の育成を目指すこととしております。
 それぞれの営農類型につきましては、他産業並みの労働時間でゆとりある経営と、一経営体当たりの年間所得七百から八百万円を確保できる水準を目標として、最近の農産物価格の動向等を踏まえた経営試算を行っており、干拓地農業の経営は成り立つものと考えております。
 ちなみに、経営の可能性を含めて、そういったさまざまなところから、現在、問い合わせが県等にも来ておるということをお聞きしております。
小沢(和)委員 長崎県は、昨年四月に予定した営農意向調査をやめております。その後も調査をする予定はないと聞いております。調査しても入植農家がいないとか少ないということが明らかになるだけなのでわざと放置しているのではないかと思うんですが、営農意向調査はどうなっているか。今、何か、結構あるようなことを言っていますけれども、それだったら調査をしたらどうですか。
太田政府参考人 本事業により造成されます干拓地の土地配分を行うに当たり、農林水産省九州農政局及び長崎県におきましては、配分を希望する方々の募集に関する資料の作成を進めながら、昨年、十三年度当初を目途に現地説明会の開催を含む意向調査を検討していたところでございますが、当時の本事業をめぐります諸情勢から、これを実施するに至らなかったものでございます。
 なお、本年六月、面積の大幅な見直しを伴う計画変更を行ったところでありまして、これに基づき、関係資料の作成を行い、準備が整い次第、意向調査を実施したいというふうに考えております。
小沢(和)委員 要するに調査できていないということです。
 次に、法案の内容について幾つか質問をいたします。
 法案には、有明海などの再生策として幾つかのメニューが盛り込まれております。先ほどから指摘してきたとおり、原因をきっちり究明せずに対策を実施しようとしているため、対症療法ばかりが並んでおります。
 この特別措置法をつくるに当たって参考にしたのが瀬戸内海環境保全特別措置法だったと聞いておりますが、これには不十分ながら埋め立ての規制などが盛り込まれておりました。しかし、本法案にはそういう規制が全くありません。本法案成立でいよいよ諫早湾干拓事業は大手を振ってまかり通り、法案が事業にお墨つきを与えることになる。
 なぜこの法案で埋立規制を盛り込まなかったのか、お尋ねします。
石原政府参考人 有明海、八代海の再生のための方策といたしまして、埋め立ての規制についてというお尋ねでございます。
 有明海につきましての環境悪化の要因等につきましては、現在、調査検討をしているところでございます。
 瀬戸内海法につきましては、環境アセス法、環境影響評価法が成立以前であったということと、かつまた世界に比類のない景勝地であるということもございまして、埋め立てへの配慮ということで、規定がございます。
 現在、開発行為につきましては、環境影響評価法、環境アセス法でございますが、これができておりまして、個別の事業の実施に当たりましては、環境に適切に配慮してやっていただくということで対応しております。
 個別の開発事業につきましてはそのような形で対応することとし、一律に埋め立ての規制をするというような形は適当ではないということを考えたものでございます。
小沢(和)委員 対症療法で一番注目されるのが、水産資源回復のための漁場整備の国の補助率のかさ上げ、特に覆砂事業であります。それも、五〇%が五五%に引き上げられるだけですが、特にこれが対象にされる理由は何か。覆砂はこれまでもかなり実施されていると思いますが、有明海域でこれまでどれくらいの砂をまき、幾らかかったか、今までどのような効果があったか、今後どういう計画か、お尋ねします。
木下政府参考人 お答えいたします。
 まず、覆砂事業でございますけれども、海底に堆積した汚泥を良質な砂で覆うことによりまして、底質あるいは水質の改善を図り、底生生物を中心といたしました生物相の回復を図る効果を有するというふうに考えております。
 具体的な効果といたしまして、これまでも、熊本県の水産研究センターの調査報告によりますと、覆砂事業実施海域と隣接する未実施海域とを比較調査した場合に、底質環境の改善によりアサリの着定量が約十倍になったというような報告もございます。また一方で、福岡県のセンターの調査報告によりますと、この調査によりまして、富栄養化を招く栄養塩の溶出が半分程度になった、豊富な溶存酸素量が周年維持されるというような効果が報告されているところでございます。
 私ども水産庁といたしましては、海域環境の保全あるいは改善を図るとともに、有用水産資源の増殖等を通じました漁業の振興を図る上で、覆砂事業は効果的かつ重要な事業であるというふうに考えておりまして、今後とも、有明海等におきまして、覆砂、しゅんせつ、耕うん等の適切な工法により漁場環境の保全を図るとともに、種苗放流等の取り組みをあわせて行う必要があるというふうに考えているところでございます。
 また、これまでの覆砂事業の実績でございますが、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県の四県におきまして、平成九年度から十三年度までの五カ年間の実績でございますけれども、事業費約七十八億円、四百七ヘクタールの事業、また、本年度でございますけれども、十三年度補正の繰り越しも含めまして、事業費約四十億円、二百七ヘクタールの事業が行われているというような状況でございます。
小沢(和)委員 私が聞いているところでは、覆砂は生産の回復までなかなか結びつかない、砂をまいた直後は小さいタイラギなどが立つのが見られるが、貧酸素水塊の影響やヘドロ化などで、しばらくするとへい死してしまう、だから長崎県のタイラギ漁は、十年続けて今も休漁のままだということであります。先日も、参考人の意見聴取で、私が、覆砂は有明海では効果がないのではないかと質問したのに対し、与党推薦の中村充福井県立大学名誉教授は、おっしゃるとおりと認めております。
 このように、覆砂は、実際の経験によっても、専門家の意見を聞いても、効果は極めて疑問視されている。この際、覆砂最優先を再検討すべきではないか、お尋ねいたします。
木下政府参考人 私どもは、有明海の海域環境の保全あるいは有用水産資源の増殖等を通じた漁業の振興を図りたいというふうに考えておるわけでございますけれども、これまでも県の計画等と十分相談しながら対応していきたいというふうに考えておりまして、この中で、覆砂あるいはしゅんせつ、耕うん等の適切な工法により漁場環境の保全を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
小沢(和)委員 覆砂事業でさらに問題なのは、その砂を採取するために海底が荒れ、それがまた新しい環境破壊を生み出しているということであります。このことについては、きょうは指摘だけにとどめておきたいと思います。
 この覆砂事業が新たなゼネコンのもうけの場にもなっている。覆砂事業を受注している企業の中には、諫早湾干拓の潮受け堤防工事などを受注した佐伯建設工業、三井不動産建設、若築建設、五洋建設なども含まれております。さんざん環境を破壊してきたゼネコンが、今度は環境再生の名目で漁場整備を受注している。
 問題なのは、私の資料の下段をごらんいただきたいと思いますが、他の覆砂受注企業も含めて、一九九五年から昨年までの七年間に、有明海沿岸の自民党県連、福岡県連に千二百五十万円、長崎県連に一億一千五十万円、熊本県連に三千五百万円、合計一億七千六百万円もの献金が行われていることであります。
 さらに、自民党の有力国会議員には、わかっているだけで、陣内孝雄参議院議員へ一千三百八十万円、松岡利勝衆議院議員へ九百六十万円、久間章生衆議院議員へ四百七十万円、古賀誠衆議院議員へ六百十万円、合計約三千四百三十万円もの献金が行われていることであります。
 先ほど指摘したように、漁業資源の回復には余り役に立たないことが経験的に確認されている覆砂を今後さらに大がかりに続ける背景には、政治家とゼネコンのこういう癒着があるのではないか。私は、こういう癒着を断ち切るためには企業の政治献金をきっぱり禁止する以外にないと考えます。今この問題で自分が渦中にいる大臣はこの問題をどうお考えになるか、お尋ねします。
大島国務大臣 覆砂事業の必要性は、先ほど局長から答弁がありました。有明の再生のためにさまざまな研究を重ね、またさまざまな手法、先ほど山田委員からも、いわば輪作といっていいんでしょうか、そういうアイデアも出されました。その一つとして覆砂事業が有効である、またそういう御要請もあるということでやっているのでありまして、委員から御指摘があったようなことのためにこの事業をやっているのではないということだけは申し上げておきたいと思います。
小沢(和)委員 時間が来ましたからこれで終わりたいと思うんですが、今や諫早湾干拓事業は全国的にむだな公共事業のシンボルになっております。政府自身も、費用対効果が〇・八三となること、このまま事業を続けていけば四百三十億円もの赤字になることを認めている。国民の圧倒的多数がこの事業に対し中止、再検討を求めている。このような世論を無視して事業を推進することに我が党は断固反対いたします。
 事業推進のための有明海及び八代海を再生するための特別措置法制定の撤回を強く要求して、質問を終わります。
小平委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 この有明特別措置法について質問いたしますけれども、まず冒頭、私たち社民党は、二〇〇一年二月八日、九日の両日、有明海ノリ、魚介等の被害国会調査団を結成して、私もその調査団の一員として現地の被害状況を視察してきました。そして、党内に有明海ノリ・魚介等被害対策委員会を設置して、今日まで進んできていることを申し上げておきたいというふうに思います。
 そして、このノリ、魚介等の被害の原因については、るる今まで議論されていますけれども、社民党としても、現地の関係者、関係団体等から事情聴取を行いながら、一つには三池炭鉱による海底陥没の問題、そして干潟の消滅という問題もあるし、あるいは汚水の流入など、私どもは、複合的な要因でもって起こっていることだと、この複合的な要因の中にやはり諫早湾の水門を閉じたことも複合的な要素の一つであるととらえながら、今日まで進んできているところであります。
 そして、その有明海を再生するためには、有明海対策新法を制定して総合的な対策を行うことが必要だという認識に立って、新法制定に向けての九州四県挙げて署名活動等も含めて取り組んできたということを申し上げておきたいというふうに思いますし、やっと、そういう意味では、今日まで長い月日がたったわけですけれども、一つの到達点に達したのかなというふうに思っています。ただ、到達点に達したなというふうな思いですけれども、これから有明海、八代海の再生に向けてやっていくことの大きさというものは非常に長時間かかることであるというふうにも思いながら、しっかりとした体制をとっていただきたいというふうに思っております。
 そういう意味では、この有明海、八代海海域の調査体制を農林水産省としてどのように考えているのか。
 この法律案、与党案、民主党案とそして修正案という形で準備されておりますけれども、私どもも、与党、野党一体となって修正協議を行ってきました。そして、その修正協議の結果として、修正の法律案の中の第十八条に、調査研究の実施及び体制の整備というふうに条文が設けられております。
 この条文の中には、国と県の連絡調整をどのように行っていくんだろうかという一つ大きな課題があるというふうに思っております。国は国、県は県、あるいは、後でも申し上げますけれども、環境省は環境省として調査していくという形ではないと思うんです。それをどのように調整していくのか、これがこれから長い年月をかけて行っていく場合必要なことだというふうに考えているんですが、どのように考えているのか。
 それともう一点、現地といろいろな情報交換をし合いながら取り組んできているんですけれども、そういう意味において、国の専門の調査研究機関、これをつくらなければうまくいかない、ぜひこのことも大きく取り上げてほしいということを要望を受けたんですが、残念ながら、この法律案の中にはこのことが盛り込まれておりません。既存の部分で調査活動を行っていくというふうになっていると思いますけれども、専門の国の調査研究機関をどのように考えておられるのか。
 この二点についてお伺いいたします。
大島国務大臣 私は、今菅野委員が御指摘いただいた研究体制というものは非常に大事だ、このように思っております。そして、この要因は複層的にあるということも私ども申し上げました。
 そういう中にあって、新しく研究センターをつくって、そしてそこに集中させたらどうか、そちらの方がいいのではないかという御提案も最後にあったように思いますし、また公明党さんからもそういうふうな内容の御意見があったように思います。
 財政事情、それから実際に今日までさまざまな大学や研究機関で調査してきたこと、それはそれとして、もし全く新しくつくった方が本当にいいんだろうかという、財政事情だけではなくて、そういうことを考えますと、まず、私どもは、どこかにコアがなきゃいかぬ。そういう意味では、独立行政法人でございます水産総合研究センター西海区水産研究所をまず中心としよう、そしてそこに、中心に、つまりハブとして存在させて、関係省庁、関係県、大学等との連携により実施するということがいいのではないか、こう思っておるところでございます。
 したがって、そういうことをいたしながら、大事なことは、それぞれが持っているデータをそれぞれが囲うのではなくて、ネットワークにすることが大事だ、このように思うわけでございます。
 有明海環境情報・研究ネットワーク構想を策定したいと思っております。そして、そういう意味でのデータベースの開発を行ったりしながら、有明海環境情報・研究ネットワーク構想策定事業を十四年度から実施いたしているわけでございますが、いずれにしても、先ほど申し上げたところをいわば中心として、そして英知を集めて行うという仕組みでまずスタートをしたい。
 新しい組織をつくるとなりますと、また、そこの研究所をどこにするんだ、やれその組織体制をどうするんだ、そうすると今まで既存にやってきたものとの関係をどうするんだということになるものですから、そういう意味からも、そういう形でまず精いっぱいやってまいりたい、こう思っております。
菅野委員 大臣、言葉は取り下げているんですが、財政事情という言葉を使われておりました。有明、八代海の再生に向けてこれから進んでいこうというときに、漁民の方々はそういう言葉を聞いたら怒るというふうに思うんですね。あらゆる可能性を追求して、そして取り組んでいただきたいというのが、今日まで地元の方々の要望であるというふうに思います。
 そして、独立行政法人の水産総合研究センター、既存のもので行っていくというときに、それでは、具体的に既存のものをどう強化していくのかという視点がなければならないというふうに思っております。
 別な法律においては、水産総合研究センターは新たな独立行政法人として統合、吸収して、水産部門を一括してそしてやっていくという方向性が法律案として出ていますけれども、その中身を見たときに、この有明新法に対応するような体制には私はなっていないというふうに思うんです。
 そういう意味では、この有明特措法に対応するような体制というものをどうつくるのかを具体的に明示してほしいと思うんです。そのことが、地元漁民の不安を取り除いていく、将来はよくなるんだろうという方向が期待として持てることになるというふうに思っています。
 この十八条の中身を見るときに、一項目から八項目まで、どういう項目を調査研究していくのかということが書かれております。これを国や県として行っていこうとするときに、密接な協調連絡体制が行われなければ、投資効果というものも含めて、研究成果というものも、今行っているような形で個々の成果でしかあり得ない。それを総合的にコーディネートする体制がやはりなければならない。それは財政事情じゃなくて、財政をつぎ込んでも国として責任を持って行っていくんだという強い決意を示していただきたいというふうに私は思うんです。
大島国務大臣 新法における財源におきましても、先ほど委員の方から、これは小泉改革と逆行するのではないかと逆の御指摘をいただきましたが、財政事情が国として厳しいという事実は事実としながら、今この有明の問題に対して、その枠の中であっても、知恵を出してやれることをやっていくということがあるべき姿勢だろう、こう思っておりますので、今委員が御指摘いただいた研究体制につきましても、知恵を出して努力してまいりたい、こう思っております。
菅野委員 大臣、小泉構造改革、小泉構造改革と言っていますけれども、小泉構造改革の中身は、必要なところには必要な財源を投資するという姿勢だというふうに思います。
 それで、既存の部分でしっかりと行っていく体制だったらば、もう調査活動も進んでいるというふうに思います。それがてんでんばらばらに調査検討がなされていて、それをコーディネートする部分がないですから、今も短期の開門調査を行って、そして今解析をやっているという状況ではないでしょうか。この間に、いろいろな方々が、それぞれの考え方でもっていろいろな研究成果を発表しています。そのことをどうコーディネートして原因究明して、その原因がはっきりしないから対策が出てこないというのが今日の実情ではないでしょうか。
 私はぜひ、大臣がそういう気持ちであれば前に進まないというふうに思います。この調査研究体制をしっかりとつくっていきますという決意がないと前に進まないような気がしますけれども、再度答弁をお願いします。
大島国務大臣 先ほど申し上げましたように、そのところをコアにしまして、そしてネットワーク構想の策定事業も今進めております。委員から、改めてしっかりやれよ、こういうことでございますので、小泉改革はやるところはやると言っているではないか、まさにそういうふうなことも踏まえながら、そういうことを考えつつ、知恵を出すと申し上げたのはそういうことでございまして、一生懸命努力してまいりたい、こう思っております。
菅野委員 大臣、ぜひこの有明海、ノリが一昨年は不作で昨年は豊作だった、未曾有の豊作だったと言われております。ただし、海洋生態系というのはいつどうなるかわかりません。私も、この閉鎖性水域における環境改善のためにどれだけの年月を要したかというのは、私の地元においても経験を持っています。その閉鎖性水域の水質改善のために、巨額の財政投資、小さな自治体ですけれども、行わざるを得なかったという状況があります。
 スケールは違いますけれども、有明海も同じような閉鎖性水域です。私は、調査研究のために、そしてその調査研究をして原因を究明しない限り、対策というものがしっかりとした対策に結びついていかないというのが基本でございますから、この調査研究体制の整備にしっかりとした対策、体制をとっていただきたい、私はこのことを強く強くお願い申し上げておきたいというふうに思っています。
 環境省の弘友副大臣がいらしていますからお聞きしますけれども、この新法においては、これも与野党協議で修正した部分ですね、これは大きな成果だというふうに思うのですが、有明海・八代海総合調査評価委員会の問題、これを二十四条から二十七条に盛り込んでおります。条文はこうなっていますけれども、この調査評価委員会の体制をどのように考えておられるのか。
 そしてまた、総合調査評価委員会と研究調査機関との連携が密にならないと、これまたてんでんばらばらの形になっていく。総合的にどう連携をとっていくのかというのは重要なことだというふうに思っています。法案の中にはそのことは触れられていませんけれども、今、環境省としてどのように考えておられるのか、これをお聞きしておきたいと思います。
弘友副大臣 今御指摘のように、修正案におきます、環境省へ設置する総合調査評価委員会の役割といたしましては、国及び県が実施した調査結果に基づいて有明海等の再生に関して評価を行い、このことに関し主務大臣に意見を述べることであるというふうに承知しているわけでございますが、このような役割を持つ委員会を適切に運営するためには、委員会のメンバーについては、十分な知識と経験を有する方々から適切な人選を行う必要があるというふうに考えております。
 そしてまた、調査研究を実施する関係省庁及び関係県との情報交換を密にする、今御指摘があったとおりでございますけれども、密にして、連携をさらに強化することにしたい。そしてまた、当委員会を設置することとなります環境省といたしましても、可能な限りの体制を整えてまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
菅野委員 副大臣は今、一般論として述べたというふうに思うんですね。というのは、初めて、初めてというか、難しいことだと思うんですね。一方は研究調査をやって、その結果を評価して、そして対策にどう結びつけていくのかということは、調査研究をどう行うのかというところも評価委員会として議論しておかなければならない課題だというふうに思うのです。それは一方では、国、県というふうになっていますけれども、さっきの十八条の関係でいえば、そこに環境省がどう絡まっていくのかという問題等も含めて、今の国の縦割り行政の中では非常に難しいというふうに思うのです。
 そういう意味からいって、農水省や環境省あるいは関係省庁とを一つにする、大臣が言うようにコアの組織、中核となる組織をつくらなければ、私は、こういうものをつくっても具体的に機能しないというふうに思うんですね。だから先ほどの議論を聞いているのですけれども、環境省としてそのことをどう考えていこうとしているのか、現段階で考えていることをお聞かせ願いたい、一般論じゃなくて。
石原政府参考人 委員御指摘のとおり、有明海の調査及びその評価につきましては、現在、各県あるいは環境省、農林水産省、国土交通省初め、総合的な調査を実施しているところでございます。したがいまして、おっしゃられるように、調査そのものが非常に総合的に実施する必要がある、あるいは評価についても、多面にわたる部分を総合的に評価する必要があるということは事実でございます。
 ただ、その際に、一つの機関で実施する必要があるかということになりますと、必ずしもそうではないというふうに考えております。環境省と各省、連携を密にし、かつ情報交換も含めて、委員会の持ち方を含め、連携を図ることにより対応可能ではないかというふうに考えております。
 環境省といたしましては、全力を挙げまして、新たな評価委員会の適切な運営に心がけてまいりたいというふうに考えております。
菅野委員 先週の火曜日、現地を農水委員会として視察してまいりました。佐賀県知事あるいは長崎県知事とも懇談してまいりました。四県にまたがる有明海、今まで県の横の連携がほとんどとれていなかった、各県対応だったという反省点を述べられておりました。
 やはり国においても、先ほどの環境省の答弁にあったように、環境省は環境省として調査活動をやっている、農水省は農水省としてやっている、ここをどうコーディネートするのかという部分をしっかりつくっていかなければならない。そして、四県が横の連絡をやっととれるようになった、四県の連携も十分ではない、そういう中で有明、八代海を再生していこうというときには、やはりしっかりとした核となる研究調査機関というものをつくっていかなければならないと私は思っております。そういうことを考えて、ぜひ評価委員会それから研究調査機関という部分を位置づけていただきたいというふうに思っております。
 それから、次に移りますけれども、修正協議において、やはり一番大きな問題点は何だったのかということなんですけれども、諫早干拓の問題だというふうに思います。中長期の開門調査の実施ということが大きな議論になった点だというふうに私も思っております。
 私自身も、現地を見ながら、それが可能なのかどうかということも頭の中では考えてきております。現地視察したときも、現場ではどう考えているのかということも聞いてまいりました。そして、先週の参考人の意見陳述において、あるいは意見聴取においても、諫早市長と学者の人たちは真っ向から考え方が違っておりました。短期の調査だって苦渋の思いで認めたんだ、中長期なんというのはましてや考えも及ばないというのを一方で言っています。そして、有明全体を考えるときに、諫早干拓の問題が非常に大事な問題だという主張も一方ではあるわけです。
 中長期の開門調査を行った場合の農水省としての問題点というのをしっかりと国民の前に明らかにする必要があるんだというふうに思うんですね。あたかも何も問題がなくて、中長期の開門調査ができるというふうに誤解している部分も、私も現地に調査に行く前はそういうふうな思いはいたしていましたから、そういう部分を、問題点を国民の前に明らかにする必要があるのじゃないのかなというふうに思います。その点をどう考えているのですか。
大島国務大臣 二点あったと思います。
 改めて、環境省と農水省の関係の中において、修正案の部分のこの評価委員会と、農水省を中心とした調査との、縦割り的なそういうものがあってはならぬ。これは考えてみれば、いわば調査に対する、環境省の評価委員会が評価をするという意味では非常に厳しいシステムになり、徹底的にやらなければならない仕組みがここにあると思っております。先生からさまざまな御指摘をいただいたことを踏まえながら、全力を尽くして、そういう整合性のとれた、そしてまた、コアを充実させて努力してまいりたいと思います。
 さらに、中長期的な調査の実施については、しっかりとどういう問題があるのか国民に明らかにしながら考えなさいということでございました。その点につきましては、三つの観点から。
 一つは、被害を防止するための有効な対策を講ずることができるか。第二点は、早期に成果を得るという観点から適切な調査手法であること。三点目は、さまざまな要因の調査と連携が保てること。この三つの観点に立って調査方法を検討し、現在、短期の開門調査を含む開門の総合調査を行っているところでございますが、今先生から言われたようなことも含めて、我々はたびたびお答えを申し上げさせていただいておりますように、平成十四年度中に設ける有明海の再生方策を総合的に検討する場での議論を経て、農水省において判断をしてまいることにいたしております。
菅野委員 中長期の開門調査と一言で言いますけれども、では、私の感想を述べさせていただきたいと思うんですが、諫早湾、七キロの潮受け堤防をつくったんですよね。そして、大臣、二百メートルと五十メートルの門扉を二カ所につくったんです、東と西側に。そうしたときに、開門をしたときにどれくらいの流量が貯水池の中に入っていくんだろうか、干満差含めて。そういう状況に今なっているときに、本当に有明の干潟を利用した形での開門調査というものが可能なんだろうかと私自身が疑問に思ったということなんですね。農水省としてこの疑問にどう答えていくんですか、こういう疑問があるんですよね。
 それで、諫早のあの潮受け堤防を締め切った後、諫早の干潟をもとに戻すことは現地ではもうできなくなったと言っているんです。このことをどう考えていくんですかという問題です、端的に言うと。答弁願います。
太田政府参考人 中長期の開門調査、行うとすればどのような方法をとるかという御質問でございますけれども、この水位の変動幅を大きなものとするというようなことも見解の中には示されております。
 もしもそのような方法をとるとしますと、その影響を緩和するために、構造物の安全性を確保するための潮受け堤防の排水門を例えば改修するというようなことがあるでしょうし、また、排水門を出入りします速い流れによりまして、下にあります底泥、底の泥が非常に巻き上げられるということから、海域あるいは調整池の泥土の巻き上げあるいは洗掘、これを防止するような対策も当然必要になろうかと思います。
 さらには、背後地への常時の排水ポンプの設置等の防災対策、そして、調整池が塩水化し農業用水が取水できなくなることによります農業用水の水源手当て等が必要になります。これには多くの経費と相当の期間を要するものということになろうかと思います。
 また、現状を余り変えずに、最小限の簡易な方法で、開門調査による被害をできるだけ生じさせないような方法として、調整池の水位を標高マイナス一メーターから標高マイナス一・二メーターの範囲で例えば変動させまして中長期の調査を実施するとしても、例えば二百ミリの雨が降りますと、これは調整池の容量に相当する真水がそこに入り込むことになりまして、調整池の塩分濃度自体が大きく変化するという状況になります。
 つまり、塩分濃度は急激な変動を短期的に繰り返すといったことが続きますので、そういった結果として、環境に本当にどういう影響が出てくるのかという負の影響も含めた検討、評価が当然必要だということがありますし、また、潮受け堤防の内側で自然干潟の再生というのが本当に期待できるのかということもあろうかと思います。
 また、調査期間が長期に及び、開門期間に洪水期が含まれるということになってまいりますと、これまでさまざまな災害をこうむってこられた地元住民等は強い不安を抱かれるわけでして、背後地の防災対策を講じた上でも、この心理的不安を含めたものをいかに払拭するかというようなところが大きな課題になろうかというふうに考えております。
菅野委員 中長期の開門調査を行うにしても、多くの問題点が生ずる。私は、そういう意味では、ぜひこの十八条を使って、先ほどから申しますように、しっかりとした調査研究活動を行っていただきたい。そして、あとは、この有明海を再生するためには、どうしても諫早の問題というのが避けて通れないという結論が出たときには、そのときに政府としての重大な政治的決断というものが入ってくるんではないのかなというふうな思いをしながら、しっかりとした研究体制と評価機関というものをつくり上げていただきたい。このことを強く申し上げて、質問を終わります。
     ――――◇―――――
小平委員長 次に、第百五十四回国会、古賀誠君外九名提出、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案及び佐藤謙一郎君外四名提出、有明海及び八代海の再生に関する臨時措置法案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案につきましては、第百五十四回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案
 有明海及び八代海の再生に関する臨時措置法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
小平委員長 これより質疑に入るのでありますが、両案につきましては、理事会協議によりこれを省略いたします。
    ―――――――――――――
小平委員長 この際、第百五十四回国会、古賀誠君外九名提出、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案に対し、金田英行君外二名から、自由民主党、公明党及び自由党の三会派共同提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。山田正彦君。
    ―――――――――――――
 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
山田(正)委員 私は、自由民主党、公明党及び自由党を代表して、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案に対する修正案の趣旨につきまして御説明申し上げます。
 この修正案は、法案提出会派であります自由民主党、公明党及び保守党の与党三党並びに自由党の協議の結果、合意が得られたものであります。
 修正案は、お手元に配付したとおりでございます。
 以下、その内容を申し上げます。
 第一点は、国及び関係県は、有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興を図るため、干潟、潮流、潮汐等と当該海域の環境との関係に関する調査等の総合的な調査を行い、その結果を公表すること、また、総合的な調査研究体制の整備等の措置のほか、当該海域に流入する水の汚濁負荷量の総量の削減に資する措置を講ずることとすることであります。
 第二点は、環境省に有明海・八代海総合調査評価委員会を設置し、同委員会は、この法律の見直しに関し、総合的な調査の結果に基づいて有明海及び八代海の再生に係る評価を行い、主務大臣等に意見を述べることとすることであります。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
小平委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
 この際、両法律案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。農林水産大臣大島理森君。
大島国務大臣 衆議院議員佐藤謙一郎君外四名提出の有明海及び八代海の再生に関する臨時措置法案につきましては、政府としては反対であります。
 衆議院議員古賀誠君外九名提出の有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案につきましては、政府としては特に異存はございません。
 政府といたしましては、有明海及び八代海を豊かな海として再生することを目指して、関係各県等と連携を図りながら、環境の保全、改善並びに水産資源の回復等による漁業の振興に全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより両案及び金田英行君外二名提出の修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子君。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、与党三党提出の有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案に反対し、民主党案に賛成する立場から討論を行います。
 与党案に反対する第一の理由は、本法案が有明海及び八代海を再生する目的の法案ならば、まず行わなければならないはずの、有明海、八代海の環境悪化を引き起こした根本原因の究明と対策への方向づけが明確でなく、諫早湾干拓事業を初めとするこれまでの開発行為を反省、改善する方向を何ら示していないことです。
 特に、有明海の環境破壊と水産資源減退を引き起こした重要な原因である諫早湾干拓事業の抜本的見直しに背を向けていることは重大です。諫早湾干拓事業が、諫早湾のみならず、有明海全体の環境に影響を与えている原因であることは、昨年十二月の農水省有明海ノリ不作等対策調査検討委員会でも明確に裏づけられています。環境再生の中心的眼目である諫早干拓の中止と徹底的な影響調査、抜本的な見直しが欠けた法案は、実効性がないだけでなく、再生のための干拓見直しという焦点をぼかすものであり、賛成できません。
 第二の理由は、法案が将来にわたる開発行為の規制がないまま、各種の公共事業の重点実施を促進している点です。
 法案では、県が行う各種公共事業について地方債への配慮等、予算、事業の重点配分をうたっています。これらの公共事業の中には当然必要なものもありますが、各種事業が環境への影響を考慮せず実施されるならば、逆に環境保全、水産資源の回復にマイナスになりかねません。環境破壊、水産資源の枯渇に結びつく開発行為については、将来にわたって規制すべきです。
 なお、与党案に対する修正案では、調査内容の具体化、水質汚濁負荷量の総量削減に資する措置の追加及び有明海・八代海総合調査評価委員会の設置を加えるとしていますが、有明海の環境悪化の最大の原因である諫早湾干拓事業の中止に何も触れるものではありません。総量規制は望ましいことではありますが、その効果を上げるためには一刻も早い諫早湾干拓事業の中止が必要であり、有明海の再生につながる修正案ではない以上、賛成できません。
 以上をもって討論といたします。(拍手)
小平委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより採決に入ります。
 まず、第百五十四回国会、佐藤謙一郎君外四名提出、有明海及び八代海の再生に関する臨時措置法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
 次に、第百五十四回国会、古賀誠君外九名提出、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、金田英行君外二名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
小平委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十七分散会


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