衆議院

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第9号 平成14年11月21日(木曜日)

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平成十四年十一月二十一日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    青山  丘君
      荒巻 隆三君    石田 真敏君
      岩倉 博文君    岩崎 忠夫君
      梶山 弘志君    北村 誠吾君
      熊谷 市雄君    小泉 龍司君
      近藤 基彦君    七条  明君
      高木  毅君    西川 京子君
      平井 卓也君    宮本 一三君
      川内 博史君    後藤  斎君
      佐藤謙一郎君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    鉢呂 吉雄君
      堀込 征雄君    山元  勉君
      江田 康幸君    藤井 裕久君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
    …………………………………
   農林水産大臣       大島 理森君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   政府参考人
   (農林漁業金融公庫総裁) 鶴岡 俊彦君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十一日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     平井 卓也君
  山内  功君     山元  勉君
同日
 辞任         補欠選任
  平井 卓也君     金子 恭之君
  山元  勉君     山内  功君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六三号)


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省経営局長川村秀三郎君、水産庁長官木下寛之君及び農林漁業金融公庫総裁鶴岡俊彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 今回のペイオフ延期の法案について、ひとついろいろ聞かせていただきたいと思いますが、農協、漁協、この系統のいわゆる総貸出額といいますか、債権額はどれくらいなのか。まず、総債権額の貸出額を。
大島国務大臣 十三年度事業年度末でございますが、農漁協の貸出債権の総額は、農協は二十一兆五千億、漁協は約四千億となっております。
山田(正)委員 その貸出額のうちに、今、いろいろな不良債権とか、あるいは破綻先、実質的破綻、第四分類ですかね、破綻懸念先とか要注意先債権とかありますが、その分類に分けると、いわゆる不良債権、破綻先と実質破綻先、これはどれくらいの金額、また、破綻懸念先はどれくらいか、要注意先はどれくらいか、質問通告しておったと思うんですが、それをお聞かせ願いたい。
大島国務大臣 そのうち、今、二十一兆五千億と四千億、こう申し上げましたが、農漁協を含む全金融機関において共通にディスクロージャーされているリスク管理債権ベースで、不良債権の額につきましては、農協が一兆三千四百億円、漁協が六百四十二億円となっております。
 今山田委員が、その内訳も報告しろ、こういうことでございましたので、破綻先債権、農協が一千三百三億円、漁協が二百十二億円、延滞債権でございますが、農協が七千百三十五億円、漁協が百七十二億円、三カ月以上延滞債権でございますが、農協が二千百八億円、漁協が百五十七億円、条件緩和債権でございますが、農協が二千九百六億円、漁協が百一億円となっております。
山田(正)委員 ちょっとよくわからなかったんですが、金融庁の四分類と俗に言われている中での、そういう意味で答えていただければと思っていたんですが、不良債権は、農協だけで一兆三千億と。この不良債権というのは、もう破綻もしくは実質破綻でいいわけですね。そうすると、この要注意先とかあるいは懸念先債権、今の話の中で、三カ月延滞とか、元本も払っていない、でも、利息も払っていないけれども何とかやっている、懸念先債権とか、そういったもののトータル、いわゆる優良債権を除いて、破綻債権を除いて、それは全体で、農漁協合わせてどれくらいになりますか。
大島国務大臣 今私が申し上げたのは、いわゆる不良債権の中の……(山田(正)委員「内訳を言われたわけだ」と呼ぶ)ええ、不良債権の中の分類をお話を申し上げたのでありまして、したがって、多分先生は、正常債権とか要注意先債権とか破綻懸念先債権それから実質破綻先債権、そういうふうなものを説明しろという質問だろうと思います。
 先生、これは全部御存じだと思いますけれども、本来、その辺は、他の金融機関を含めて、ディスクロージャーされていないんですね。例えば、正常先債権が幾らで、要注意先債権が幾らで、破綻懸念先債権幾らで、実質破綻先債権あるいは破綻先債権の額、そういうふうなものの金額は、他の金融機関でも本来はディスクロージャーされていないというふうなことで御理解いただければありがたいと思いますが、前段に私申し上げたのは、いわゆる不良債権の、その内訳をお話し申し上げました、こういうことでございます。
山田(正)委員 例えば、銀行はまだ不良債権が三十七兆あるとか、そういう新聞をよく見るわけですが、では、系統系は、不良債権がそれぐらいあって、要注意、破綻懸念先債権が七十二兆ぐらいある、銀行等の場合にですね。そう言われておりますし、そう新聞にも報道されている。そういう意味では、かなり銀行関係は破綻懸念先債権もどれくらいあるかというのは大体知られているわけですが、農協、漁協関係も、そういう債権はどれくらいあるんだというのは、調べてあるとしたら、概算どれくらいだということは言えませんか。
大島国務大臣 我が省としての推計値として御理解くださいませ、推計値として。
 まず、農協の正常先債権、正常なもの、これは十七兆三千四百億円、要注意先債権一兆六千三百億円、破綻懸念先債権二千二百億円、実質破綻、破綻先債権三千四百億円。
 漁協の方を申し上げさせていただきます。漁協の正常先債権三千百億円、要注意先債権一千百億円、破綻懸念先債権三百億円、実質破綻及び破綻先債権四百億円となっております。
山田(正)委員 こういった分類というか債権分類、これは、自己査定でそれぞれの農協、漁協が、あるいは信連等がやっているものか、それとも、それに対して農水省なり各都道府県なり、そういったところが金融庁と同じような検査をやっているものかどうか。その辺、どうなんでしょうか。
大島国務大臣 委員おっしゃるように、私どももきちっと調査するようにしております。
山田(正)委員 調査するようにしている。ただ、今のところはほとんど、あれだけの農協、漁協団体があるんですから、いわゆる自主申告に基づいてやっているんだ、幾らかはそれなりに都道府県なり調べてはいるけれども、それが実態だと思っていいんですか。
大島国務大臣 県がやるそういう検査を私どもは確認をしながら、先ほど申し上げたような推計値を申し上げておるところでございます。
山田(正)委員 私も弁護士で、田舎の信用組合から随分相談を受けたことがあるんですが、かなり金融庁の検査は厳しい。自主申告というか自主査定しているもののほとんどが覆されてしまう、担保の価値、云々云々、その他ですね。そしてどんどん、不良債権とまでいかなくても破綻懸念先債権で、それに対する引当金の積み立てをどんどんさせられていっている。三割から四割方、自己査定が崩されていっている。そういう中で、金融庁の検査、監査、これは非常に厳しい。ところが、各都道府県、もともと、かつて信用組合は各都道府県が検査、監査しておったんですが、非常に甘い。
 そういった違いがあって、いわゆるこの不良債権、今、銀行の不良債権もこれまで金融庁がやってきておった。ところが、金融大臣がかわると、あと二十兆ぐらい不良債権になるんじゃないか、そう言われている。そんな中で、この破綻先債権、いわゆる不良債権の一兆三千億、これはさらにさらに大きくなっていく可能性はないんでしょうか。
大島国務大臣 農協、漁協の都道府県が行う検査が甘くて、破綻懸念先債権等々が厳しくやればどんどんふえるのではないかという御指摘であったと思いますが、農漁協の検査に対しましては、これは法律に基づいて、基本的に都道府県が行うことといたしております。
 私が、そういう点も含めて、委員の質問等々この議論をされているときに、検査体制がどうなんだということを厳しく議論をしましたときに、やはり今系統関係には、きのうもちょっと御議論させていただきましたが、あの住専の苦い思いというものが根底にありまして、そういう意味で、都道府県がそれぞれ所管する農漁協に対する検査、これは二年に一回の周期で実施しております。
 そういうふうな意味では、私どもは検査の一層の充実強化を図る必要がもちろんあるわけですが、極端にそこが変化していくということは、今の時点では考えられないと私は確信をしております。
山田(正)委員 そういう形でやっているということはわかったんですが、ひとつ農水大臣も十分その辺、不良債権はかなりもっと多いんじゃないかという懸念、これは監督機関としまして十分御注意いただきたいと思っています。
 さらに、実は、信用事業を行う農協、漁協の経営そのものは非常に劣化してきている。例えば、私も漁協を回っていますと、漁協の大半が赤字である、それで金を貸している。赤字企業が金を貸している。そうすると非常に厳しいんじゃないのか。今の系統、農協、漁協の経営内容、例えば、平成十三年度の決算の当期利益は赤字なのか黒字なのか、それを質問通告しておったんですが、お聞かせいただければと思います。
大島国務大臣 委員は、十三年度の事業決算ということで御質問がありましたが、大変申しわけありませんが、まだ十三年度の事業決算がすべてはございません。
 ちなみに、十二年度の事業で申し上げますと、十二年度末、当期剰余金発生組合は、農協では千二百二十組合、全体の八六%、漁協では千百五十七組合、全体の六九%が当期剰余金発生組合との私どもの把握でございます。
山田(正)委員 もう今は平成十四年の終わりですから、平成十三年度の統計はないんですか。
大島国務大臣 大変恐縮でございますが、来年の二月ごろでないと全部そろわないということでございますので、そろい次第御報告をさせていただきます。
山田(正)委員 農協の信用事業、漁協の信用事業というのは年々刻々悪化していっている。魚価も非常に低迷し、中国から安い輸入の魚、安い野菜等が入ってきて、非常に厳しい状況に今あって、一昨年よりも去年、ことしとかなり厳しい中で、当然、農水省としてはその監督責任としてリアルタイムで各漁協等の経営指数を掌握しておかないということは怠慢ではないんですか。
 大臣、それについてはこれから即刻、漁協、農協の経営をできるだけリアルタイムに掌握するようなことに努める気持ちはありますか。
大島国務大臣 委員の御指摘のように、リアルタイムに、毎日毎日というわけにはいきませんが、そういうふうなシステムがどうつくれるか。十三年度末のものが十四年度の二月、来年の二月でなければ出てこないというのはどういうことか、私ももう一回ちょっとチェックをし直したいと思いますので、できるだけ早くわかるような仕組みができるのかできないのか、研究してみたいと思います。
山田(正)委員 今の平成十二年度で見ましても、剰余金とさっきおっしゃいましたが、当期利益だとみなしていいのかどうか。それが漁協だけで六九%ある、あとの三一%は赤字であると。私が聞いている限りでは、漁協関係は、昨年度、平成十三年度、五〇%は赤字である、半分は赤字である、そういうふうに聞いておりますが、農協関係もかなり深刻にこの一、二年経営が悪化してきた。ほとんどの農協の経営形態も厳しい状況にある。
 そんな中で、実は、信用事業において、いよいよ金融監督庁の厳しい指導、金融監督庁が実際に農協等に入っていることはないようですが、その中で、不良債権に対しての引当金を当然要求される。引当金を要求されて引き当てを積む。ところが、既に経営は赤字である、引き当てが積めない、そういう状況に漁協そのものはもう半分が直面している。農協にしても、二割から三割は当然それに直面している。
 そういった場合に、積立金も積めず、そして貸出債権、分母の方はそのままでありながら、さらに資産が、今のように株価が低迷し時価が下がっていく。田舎に行きますと、田畑の価格はさらに下がっていっている。そんな中で、どう考えても、農協、漁協はこのまま行くと二、三年のうちにほとんどが赤字経営にならざるを得ない。そうすると、ペイオフ延期どころの問題じゃない、そう考えますが、大臣どうですか。
大島国務大臣 委員からは、すべての農協、漁協がそういう状況になっていく心配はあるのではないか、こういうふうな御指摘でございました。したがって、先ほど委員がお話をされましたように、一層、各農協、漁協のチェック体制、あるいはその前にサーベイランス、そういうものを私どもがしていく必要性を、今委員からの御質問で私は痛感をいたしました。
 そして一方、それぞれの農協、漁協がどのように経営というものを改善していくか、努力していくか。これは、農協のあり方論あるいは漁協のあり方論も含めて、構造的な問題としてとらえて、それぞれの総合農協、単協、あるいは経営基盤の強化という基本的な施策もしっかり踏まえなければならない問題だと思います。
 そして、そういう中で、自己資本比率がどんどん低下していった場合どうするのかといった場合には、まず第一に、配当の圧縮や役員報酬の削減等による内部留保の積み上げ、あるいは不稼働資産の売却、あるいは増資、貸し出し等の運用資産の圧縮等、やはりそういうふうなものをしながら、債権回収が唯一の方法という、もちろんそこが基本であることは事実ですが、そういう四点のことに留意をしながら、委員が御心配されるような事態にならないように努力していくことが大事だと思っております。
山田(正)委員 そうしたいという理想はわかるんですが、現実の面において、既に経営母体そのものが赤字経営である。それで信用事業をさらに行うことはできるのかどうか。いわゆる漁協の大半が、五〇%以上が赤字だとして、そして農協の二割から三割が赤字だとして、そういう赤字の企業に信用事業をやらせておくことは許されるものかどうか。
 当然、信用事業ですから、銀行、金融機関と同じだと考えれば、それは即時、信用事業を廃止させるという強硬措置をとらなければ、いわゆる貯金者並びに普通貯金等は大変なことになっていくんじゃないかと普通なら考えるんですが、それはどう思いますか。
大島国務大臣 単年度の赤字で、信用事業をしてはいけないとか、してはいいという判断ではないと思うんです。恐縮ですが、今、市中銀行の決算を見てまいりますと、単年度の決算、もう見事なぐらい苦しい状況です。
 むしろ、全体として、まず系統資金の信頼を確保できるシステムをきちっとすることと、先ほど申し上げましたように、それぞれの農漁協の経営基盤をしっかりとつくっていくという努力をしながら、そしていざという場合のセーフティーネットをそこに持ってやっていくことだと思いますし、繰り返して恐縮でございますが、それぞれの系統資金の事業を行っている事業者それぞれをサーベイランスをし、そしてチェックをし、そしてそういうことが起こらないように未然に対応を考えていくことが私どもの務めだ、このように思います。
山田(正)委員 農協、漁協系統は、そういった信用事業においては問題点をかなり内部に抱えている、これは大臣もよくおわかりだと思いますが、これからその点は、本当にペイオフ延期法案の審査と同時に、十分考慮しなければ大変なことになるのじゃないか。
 それと、きょう、公庫総裁に来ていただいておりますので、ちょっとお聞きしたいと思っておりますが、実は、最近、農家あるいは漁業者というのに、どんどん破産者、いわゆる破綻者が出てきている。そんな中で、私ども弁護士という立場から見てみますと、これを個人の民事再生あるいは事業の民事再生法、そういったものの適用をすればいいのではないのか。それなりの田畑、それなりの船とか、資産を持っているのであって、今のその資金繰り、運転資金繰りに困って、そして借り入れがオーバーし、いわゆる債務超過になって、そして今のような状況下では不渡り手形を出さざるを得ない、倒産せざるを得ないというのが実態なわけです。
 そんなときに、民事再生手続をやってみますと、ほとんどの銀行は債権額のカットに応じてくれる。最近は、信連とか農協とか漁協とか、あるいは公的信用機関である県の信用保証協会も応じてくれる。ところが、農林漁業金融公庫、大口の債権がある場合があるのですが、そういった場合に、このような民事再生による再生、今、再生というのはこれから一番大事だと思うのですが、それに対して、公庫としても前向きに考えてもらえないものかどうか、ひとつ総裁にお聞きしたい。
鶴岡政府参考人 私ども公庫の役目は、融資を通じまして農林漁業者の経営の発展とか経営安定を支援しているわけでございます。農林漁業者が民事再生の申し立てをしました場合には、事業の再生を目的としている民事再生法の趣旨を尊重いたしまして、私どもとしましても積極的に対応しているところでございます。
 具体的にちょっと例を申し上げますと、私どもの融資先につきまして民事再生の申し立てがありましたのは、一応二十一件でございます。そのうち八件につきましては、裁判所で再生計画の認可がありましたので、我々としても、今先生が御指摘のような対応をいたしておるところでございます。それから一件が取り下げ、それから五件が、残念ながら再生の見込みがないということで、裁判所で棄却をされたわけでございます。それから残りの七件は手続中でございまして、私どもとしましては、この法律の趣旨に沿いまして努力いたしておるところでございます。
山田(正)委員 ありがとうございます。
 これから大事なのは、いろいろな漁業者、農業者の破綻があるときに、金融機関が再生に向けてどれだけ協力してくれるかという姿勢、そういう意味で、今まで公庫を随分私ども心配しておったのですけれども、公庫さんの方も、今の発言で、そうなってくれれば大変心強く、再生についての道も開かれるのじゃないか、そう思っております。
 ところで、別な話になってしまいますが、実は現在、日韓交渉が行われております。十一月の十一、十二、十三日に行われたのですが、この日韓交渉、資源管理の問題とかいろいろなされているようですが、端的に、どういう方針で今臨まれているか、大臣でも副大臣でも結構ですが、お答えいただければと思います。
大島国務大臣 日韓の漁業交渉にどのような方針で臨んでいるかということでございますが、昨年十二月に開催されました第四回日韓漁業共同委員会において、刺し網、かご漁業の全廃、日韓の漁獲割り当て量の等量化といった協定発効以来の懸案が解決できたと思います。したがって、本年は、我が国周辺水域の資源状況に沿った適正な資源管理を日韓協力で進めるための環境がようやく整った、私はこう認識しております。
 そのことを踏まえまして、本年の日韓漁業交渉におきましては、我が国漁業者の意見を十分に踏まえつつ、本協定の運用が我が国周辺水域の漁業資源の管理の進展に資するために、漁獲割り当てを削減していくよう精力的に交渉を進めてまいりたい、このように思っております。
山田(正)委員 大臣、九州北西海域、いわゆる韓国と面しているところですが、ここにおいて、日本のEEZ内、そこに韓国のはえ縄漁船が二、三百隻入ってきている。日本のEEZ内ですね。その船が、ほとんどが三十トンぐらいで七、八人乗っている。ところが、日本は、そこで実際に四、五トンの船で一人か二人乗っているひき縄。韓国は、それこそ四十キロ、五十キロの流し網、はえ縄なんです。それでもって、実はそこでタチウオを、日本が三千トン、ところが韓国も三千トンとっている。ところが、韓国ははえ縄で三十キロ、四十キロ流していますから、日本のひき縄の操業ができないで、皆さんは大変苦しんでいる。
 ところが、ここが問題なんですが、国際海洋法上は、ここに私も法律を調べてみましたが、いわゆる沿岸国は、自国が漁獲可能量のすべてを漁獲する能力を有しない場合、いわゆる自国がとった余剰、それを他国、韓国にEEZ内ではとらせてやるということになっている。ところが、韓国が三千トン、日本が三千トン、むしろ韓国のEEZみたいな形で今なされている。これは大変不合理である。そういう意味で、強硬にその是正を図ってもらわなければいけない。ちなみに、ここのTAC、許容漁獲量は三千トンにすぎない。余剰はない。韓国を入れることは相ならないんじゃないのか、韓国の漁船。それはいかがですか。
大島国務大臣 今の余剰論は別にしまして、具体的に、このタチウオの問題につきましては、韓国漁船の漁獲の相当な圧縮が急務なことだ、こういう認識のもとで全力を尽くしてまいりたい、こう思っております。
山田(正)委員 終わります。
小平委員長 次に、中林よし子君。
中林委員 まず、法案について質問したいと思いますが、深刻な不況と信用不安のもとで、今、ペイオフ解禁の条件にないということは明らかだというふうに思います。
 しかし、今回の延長措置というのは、小泉内閣が進める不良債権の早期最終処理の集中処理期間に対応して二年に限定したものになっているところが大問題だというふうに思います。ペイオフ解禁は、経済の立て直し政策によって景気を回復させることを大前提に行うべきだ、機械的に二年間という期限を切って解禁するやり方は、極めて乱暴で無責任だと言わざるを得ません。それは、不良債権処理の加速による企業つぶし、金融機関の淘汰、再編の方針と結びついているからです。
 しかも、小泉首相は、ついこの間まで、ペイオフ解禁は予定どおり断固やる、こう言い続けてこられたわけです。大臣も、自民党の国対委員長として、いわば同じ立場で進めてこられたのではないかというふうに私は思うんですけれども、ペイオフ解禁の延長をせざるを得ない状況に追い込まれたということは、小泉内閣がとってきた政策が失敗した、失政だというふうに私は思いますけれども、大臣の見解はいかがでしょうか。
大島国務大臣 中林委員がお話しされた総理の方針、総理の発言の中に、大胆かつ柔軟に物事を考えていかなければならぬ、こう言っておられるわけです。
 さまざまな日本の経済の問題の中で、やはり不良債権の処理というものは大事なことである。したがって、それについては、本当に厳しい施策かもしれないけれども、ここで毅然として二年間の間に処理していこう。その痛みをできるだけ和らげながら、一方において、先ほど山田委員が、再生という、その言葉が大事だと言いましたけれども、まさに再生をしてもらう手だてをこっちに持つ。そして、国民に安心を、ある程度しっかりセーフティーネットをつくりながら、やはり全体の問題点を処理するために、大胆かつ柔軟な考えのもとで今のペイオフの二年延長を決断した。
 経済も政治も生き物でございますので、その変化にしかと対応しながら判断した結果ではなかったか、このように私は理解をいたしております。
中林委員 人ごとみたいに言われるんですけれども、自民党の国対委員長という要職でありましたし、それから、今は小泉内閣の大臣でございますので、大臣の言葉としてお聞きしたかったなというふうに思います。(大島国務大臣「委員長」と呼ぶ)いいです。わかりました。
 それで、大胆かつ柔軟、この言葉で何もかも、今までの政策を推進してきたことの失政を認めないで、ころっとそれとはまるで違う方向を示すということは、経済界のみならず国民を迷わす、そういうものだというふうに言わざるを得ない、そのことを指摘しておきたいと思います。
 次に、農協系統金融機関に限って見た場合、なぜペイオフ解禁を二年延長するのか、そうしなければならないような混乱が系統金融機関にあるのか、その点について明らかにしてください。
大島国務大臣 中林委員、農協系統で七十三兆の扱い高がございます。これは、日本全体の金融システムの中では相当なシェアを占めた金額だと私は思います。
 したがって、金融問題を考えるときに、系統だから別とか、あるいは市中銀行だから別とか、そういう視点でばらばらにやったら、かえって国民の、日本全体の金融システムに対する混乱と不安が起こるものだと思います。政府・与党全体としてこうあるべきだといった金融対策についてやる場合は、そういう視点に立って系統資金もしっかりと手だてをしていくべきだ、これが私どもの考え方でございます。
 決して、系統金融の中に何がしか不安があるからそうしたという現実的な問題があるわけではございません。金融システム全体の問題として考えた結果であるということを申し上げさせていただきます。
中林委員 結局、いつもですけれども、この系統金融機関は横並びで全部政策が変えられていくということなんですね。だから、後でぜひ議論させていただきたいと思いますけれども、系統金融機関の役割とは一体何なのか。これを別にしてばらばらに対応するのはいかがなものか、不安を与えるものにつながっていく、こういうふうに大臣はお答えになりましたけれども、私はそうは思わないのです。
 それで、日本共産党は、不良債権処理の加速が、結局、先ほども言いましたように、企業つぶし、国民の暮らしをさらに苦しめることにつながると指摘をしてまいりました。農協系統、漁業系統の金融機関においても、不良債権処理が農業者、漁業者の経営にどんな影響が出るのか、それが私は本来問われなければならない。
 これまで、金融ビッグバンのもと、系統金融機関も競争に勝たなければならないということで、自己資本比率を高めるため、相当な無理をしてきたんじゃないかというふうに思います。そのことが、農家や漁業者、そこへ犠牲となってあらわれているという実態、これを大臣、つかんでいらっしゃいますでしょうか。
大島国務大臣 先ほど山田委員から、再生法に基づく農業者の再生についてもしかと目配りをしながら努力せよという御指摘がございました。委員御承知だと思いますが、農協の不良債権の九割は農業融資以外のものでございます。したがって、それはそれとして、農業者が本当に返済に困難となりました場合には、先ほどの再生手続の問題も含めて、経営再建の可能性を見きわめ、可能であれば積極的に支援していくことが必要であり、農業者、漁業者の特性をしかと勘案して、そういう対応をしていくことが大事だ、このように思って努力していくことが大事だと思っております。
中林委員 私は、実態をつかんでいらっしゃいますかと質問したんですけれども、どのように対応するかというのはその次の話だろうというふうに思うんですね。
 確かに、言われたように、農協の不良債権の中で農業者の占める割合というのは一割強、あと九割近くがその他になっている。ここが、私は、本当を言うと大問題ではないかと。ここに大臣も目をつけられるならば、もう少し後でその点については触れさせていただきたいというふうに思うんです。
 実態の話ですけれども、実はここにいらっしゃる委員の多くも聞いていらっしゃると思うんですけれども、ことしの四月二十四日、野菜の安定基金の法案の改正のときに参考人としてきていただいたふらの農協の組合長がこのように語っております。
 ことし、平成十四年度に離農を決意された方々につきましては九十七戸でございまして、売却農地が九百二十ヘクタールということでございますけれども、このうちの約五五%、五十三戸が、残念ながら経営不振による離農という、いわゆる負債によっての離農ということに相なっているのでございます。
 非常に問題なのは、この半分以上の五十三戸の中には、極めて、後継者がおられて、農地の規模の拡大あるいは農機具、建物等に積極的に投資したという中核農家が行き詰まっている現状にあります。望んでいる方向とはまるで逆の方向に組合員農家がなっている。
 こういう現状をお話しになって、野菜の問題をずっとお話しになり、最後に、もっと御紹介したい点もあるんですけれども、こう結んでおられます。
 食料の自給率が四〇%ということでございますから、この祖父が築いた、北海道は開拓百年でございますから、みんなこちらから行った人間ばかりでございます。その人たちが血と汗で開墾した優良農地が次から次へと耕作放棄をされて荒れ果てていくさまというのは、私どもとしては極めて残念で仕方がないというのが実態でございます。
 まさに政治が弱者のためにあるというのであれば、ぜひこの農業の撤退、いわゆる弱小の農業を皆さん方の力で、働けば何とかなる農業に何とかつくり上げていただきたい。
 つまり、農政の転換を求める意見ではありますけれども、負債を抱え、組合長ですから、離農を迫った本人として、涙ながらにこの委員会で訴えられたこと、私もとても胸が痛む思いでお聞きをいたしました。
 このように、数年前も私は、北海道を中心に離農勧告ということが随分出されているということ、農協が出しているというこの事態を、本当にこれでいいのだろうかと。本当は助けてほしい、そういう人たちがあるということをこの方はおっしゃっております。
 それから、貸しはがし、これも系統金融で実態をお聞きしております。
 山梨県の農協なんですけれども、酪農家で、こう言っておられます。BSEの影響が出るまでは順調に経営をしていた、しかし、えさ代がかさんだら農協に呼びつけられて脅迫のようなことを言われ、町営住宅でも住んで働きに出ろ、こういうふうに言われた、事情を何度話してもわかってもらえなかったと言って訴えられました。
 さらに、二千万円の借り入れの花卉農家へは、来年十月のオンラインシステムまで一たん全部返済しろ、それから改めて貸すからと言われた。しかし、お金がないから借りるのであって、いつまでも二千万円ためているわけにはいかないんですよ。返済を迫られて、ついにこの方は自殺をされました。こういう現状は許されるのでしょうか。大臣、どうですか。
大島国務大臣 今委員から、事例として二件のお話をちょうだいしまして、お話そのものが非常に厳しい、また深刻なお話であるなという感想は持ちました。政治として政策をどう考えるかといったときに、それらの事例について的確に、客観的に把握をした上でコメントは言わなければなりませんが、感想を言えというのであれば、そういう思いは持ちました。
中林委員 その把握を私はぜひしていただかなければならないんじゃないかなというふうに思うんですね。
 大臣もおっしゃいましたように、農協のリスク管理債権の総額に占める農業融資のリスク管理債権、この割合、これが、平成十一事業年度が一二・二%、平成十二事業年度は一一・〇%、一割強ですね。だから、系統農協が抱える不良債権の九割近くは農業者以外なんですよ。そうであるならば、こういう離農勧告だとか貸しはがしという方向にいかないで、どういうところに貸し出しているかわかりませんけれども、そういうところ、例えば地域のスーパーであったり、あるいはほかの会社であったりするのでしょう、不動産屋であるかもわかりません、そういうところの処理をまず優先的にやるべきだというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
大島国務大臣 中林委員、その九割の中には、そこに住む組合員の農業者の生活資金も入っているわけでございますので。いずれにしても大事なことは、農業者のための農協系統金融、漁業系統金融ということを基本に据えながら、先ほど申し上げましたように、その農業者がどのように再生できるか、再生するためにどういう手だてがまず考えられるかということを基本に置きながら農業者に対応させることが一番大事であり、その徹底を図ってまいることが大事だと思います。
 そして、さらに言えば、その九割の方々にも当然に、ある意味では回収のときにおいてはきちっとした対応をしていかなければならぬ。農業者に厳しく、非農業者には甘くというようなことが絶対あってはならぬ、こういうふうなことで、きちっと指導してまいりたいと思います。
中林委員 今の大臣の御答弁は、要するに、強弱はつけないというふうにお聞きするんですが、私はむしろ、系統金融機関、農業者が主体、協同組合の金融系統ですからね。
 それで、不良債権、不良債権と言うんだけれども、実態は、農業者の不良債権というのは一割強しかないということですから、そうであるならば、先ほどのふらの農協の組合長さん、あるいは私が直接聞いた山梨県の農家の皆さんの声、そういうのを聞けば、本来そういう金融系統というのは、後継者もおり、一生懸命意欲を持ってやろうとしているところ、ここをサポートする。
 返済期間が少し延びたりする場合があるでしょう。しかし、サポートすれば元気になる、そういう可能性だって出てくるわけですから、その強弱のつけ方は、私は、むしろ農業者の不良債権の中身はしっかり押さえながら、やはり九割、そっちの方が、農業以外が多いわけですから、今系統金融が抱えている不良債権は。だから、少なくともそっちを優先して、そして少なくとも貸しはがしなんか絶対やるなと。今中小企業庁が、中小零細企業に対する貸しはがし、これはやってはならないというような通達を出されているというふうに思うのです。
 ぜひこの農協系統、その監督責任者である農水大臣として、やはりここは実態を把握して、それに見合った指導、あるいは通達をお出しになる必要があるのではないか。強く要望したいと思いますけれども、いかがでしょうか。
大島国務大臣 委員御指摘のように、農業融資にかかわるところは一一%ある。したがって、今お話がさまざまにございましたように、まず第一に、農業融資以外の一般融資の処理が先決であると私も考えております。
 それで、農業者にどういう手だてと施策を持って臨んでいるんだ、通達を出しなさい、こう言いますが、通達行政の御指摘を何回もいただいたこともございますけれども、通達を出すということよりは、農業融資が返済不能な不良債権となった場合には、せっかくつくって、非常にこれを活用されておりますけれども、負債整理資金の活用により経営再建ができるようにさらに指導して検討していくことが、実があるし、そしてそのことが基本である、私はこのように思っております。
中林委員 農水省、大臣官房協同組合検査部といったら農水省の中ですね。これが系統金融検査マニュアル別冊「農林漁業者・中小企業融資編」の作成、整備に係る意見・情報の募集結果についてというのを明らかにされております。これは今紹介したように、こういうような指摘が意見として、これは国民から募集しているわけですからね。
 どういうことが書かれているかというと、一律に金融庁がやったマニュアルなんかで押しつけないで、実情に見合ったやり方でちゃんとやってほしいということが多くの共通点として、意見として上がっております。さらに、BSE発生の影響で畜産農家の販売額が減少し、やむを得ずえさ代や素牛代の支払いなどが延滞して生じている、このような農家がマニュアルによって正常ではない債務者と査定され、そのために担保増や貸出金回収を迫られているので、資金繰りなど、BSE対策に実効性が確保できるよう、査定上も至急具体策をとることとか、自然相手にやっているので安定しないのでというような、系統金融に対してこうやってほしいという意見を農水省自身が募集して、持っているわけですよ。
 であるならば、やはりこれを生かして、ちゃんとやっていただきたいというふうに思うんですね。BSEの発生で大変被害を受けたり、あるいは農産物の価格下落だとか長期不況の中で、農家の皆さんはそれでも一生懸命営農されているわけですよ。だから、本来、農協金融系統の機関というのは、そういう営農が成り立っていくサポート的な役割、そういう担い方を持つ、これが私は農協の金融機関としての大きな役割が存在するというふうに思うのですけれども、大臣、これは異論がないんじゃないでしょうか。
大島国務大臣 委員が今いろいろお話ししましたが、御異論がないんじゃないですかと言われますと、ちょっともう一度議事録を見て精査しなければならぬところがあるんですが、委員がおっしゃることは、基本的に農協金融のいわば特質をどう考えているんだということではないかと思うんです。
 先ほど来申し上げましたように、やはり農協金融というのは、農業者、そこを中心に、基本に置かなければならない金融だと思います。そして、成長性が非常に低いとか、自然条件によるリスクを絶えず背中に背負っているとか、融資返済期間が長いとか、提供できる担保が農地等、非常に評価の難しいものである、そういう農業融資の特性から一般銀行からなかなか融資を受けられない、その農業者に農業経営に必要な資金を融通することを出発点としているわけでございますので、そういうことを踏まえながらすべての対応を考えていくという意味でもし委員も御認識を一にするなら、共通した認識だと私も思います。
中林委員 そこの認識をお持ちなら、今私が事例を挙げましたように、そういう実態があるということですから、ぜひこれは実態を把握していただきたいということを重ねて申し上げておきたいんですよ。
 BSEだけではありません。この間の農業情勢の中で、高齢化の中で離農せざるを得ないというのがあるんですけれども、これは農業政策上の問題で離農せざるを得ないところに追い込まれる。ところが、金融サイドからもう一方離農勧告がされるということであれば、二重の意味で、本来、日本の農業者を育成するべき農水省としては、これではせっかくの基本法の自給率も絵にかいたもちになっていくんじゃないか、そういう危惧を私は抱いております。
 私は、大臣も言われましたけれども、農村とか漁村に網の目のような店舗を持って、職員が地元の農業者や漁業者に密着して、信頼を高めながら、ともに展開していく、これが協同組合の強みであるし、本当の役割だというふうに思うんですね。
 そこで、農協の問題についてお伺いします。
 八月三十日に開かれた経済財政諮問会議で、当時の武部農水大臣が農協改革についてなかなかすごいことをおっしゃっております。現状の農協は、三十万人もの職員を抱え、日々変化する市場、消費者、担い手農家のニーズに的確にこたえられない。民間事業体として行う業務と行政の補完的機能が混然となって、性格があいまいになっている。問題を打開するには、農協のほかに農協型株式会社があってもよいのではないか。農協の構造改革には相当の抵抗が生じているが、解体的改革がなければ農協の存在意義はゼロであると申し上げているというふうに述べておられるわけですね、農協に関する改革の問題を。
 大島大臣もこの武部前大臣の考えを踏襲されるのでしょうか。
大島国務大臣 武部前大臣は、私はよく知っている政治家でございまして、言葉の激しさがほとばしるようなときがございます。
 農協が求められている改革、視点というのは、一つは、基本に返れということだと思います。第二点は、日本の置かれている国際的立場、そして現時点における経済情勢の変化、こういうものをしかと踏まえた、そういうものに対応できる農協になっていかなければならないことだと思っております。その二つの視点から、農協が自己改革も行わなければならないし、また私どもも指摘していかなければならないことだと思っております。
 しかし依然として、農家、農民のために、地域のために、農業協同組合の存在というものは、二十一世紀のこの時点においても私はしかとあるものだと思っております。存在を維持するためにも自己改革を求めていかなければならないし、私どもも申し上げなければならないという思いは、武部前大臣と基本的に共通するものであるということを申し上げたいと思います。
 株式会社というお話がございましたが、私は株式会社がすべて善だとは思いません。株式会社であればすべてが許されるというものでもないと思いますが、経済的合理性、市場に対応する経済的合理性という意味の活用は、農業の世界でも既に活用されておりますし、また積極的にその活用を考えていく時代になっている、このように考えております。
中林委員 非常に、わかったようなわからない御答弁だったんですけれども、私は、端的に言っていただきたいのは、基本的には武部前大臣の考え、それも受け継ぐとおっしゃって、じゃ、農協が株式会社化していいのかという、そこのところが問われているというふうに思うんですね。それについて、あれば。
大島国務大臣 先ほど申し上げましたように、株式会社がすべていいということを私は否定しました。組合の存在というものも否定しました。農業協同組合を農業協同株式会社にしたら組合の存在はなくなるわけですから、組合の存在というものは私は認めますと言っておるわけです。
中林委員 大臣が原点ということをおっしゃって、組合法の目的にもきちっとうたってあるわけですよ。
 それで、株式会社と協同組合の一番の違いは、協同組合は、組合員としての事業の利用で、非営利なんですね。それで、株式というのはやはりあくまで利益追求型ということで、協同組合とは性質を全く異にするんだろうというふうに思うんです。
 だからこそ、ことしの六月のILOにおいて、協同組合の促進に関する勧告、これを採択されているというふうに思います。だから、この趣旨に沿って、国際的に見てもと大臣おっしゃいましたし、原点という言葉もおっしゃいました。私は、その点が非常に大切で、今国際的に見ても協同組合が崩壊している国も実は出てきているから、こういう勧告決議がされた。その背景を見ておりますので、ぜひ、本来の組合としての農協のあり方、そして、それがちゃんと成り立っていくためには、一人一人の農業者が経営者として成り立っていく、そういう農政の転換を強く求め、質問を終わります。
小平委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 最後の質問者となりましたけれども、数点、農林水産省の考え方をお聞きしておきたいというふうに思っております。
 まず初めに、今月、十一月三日から十五日に行われたワシントン条約、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、これを締結している国でワシントン条約第十二回締約国会議というものが開かれました。チリのサンティアゴで開かれたということですが、このワシントン条約締約国会議の性格、十二回目を迎えておりますけれども、非常に変質してきているというふうに思います。
 当初、出発したときには絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約だったものが、それがどんどん広がってきていて、そして環境保護団体を中心にしながら国際取引というものがどんどん規制の方向につながっている。そのことが今回の会議でも顕著にあらわれたんではないのかなというふうに私は思っています。
 それで、今回の締約国会議の結果をどのようにとらえているのか、そして、今後に向けた対応というものを、そういう状況の中で日本国政府としてどのような対応をしていくのか、これらについてぜひお伺いしたいと思います。
 ただ、その中においても、私は特に強調したいのですが、サメ類関係を全部ワシントン条約の中に盛り込んでいくということになると、特に日本のマグロ漁業というものがもうできなくなってしまうんじゃないのか、そういうおそれがあるわけですね。二十四年たって、階段的にここまで、ここまでと、そして今日ここまで到達した、次のステップはという形で考えていったときに、産業そのものができなくなるというような状況にもつながっていくおそれがある。これらについてはどのように考えて、どう対処していかれるのか、お聞きしたいというふうに思います。
木下政府参考人 今回のワシントン条約の第十二回の締約国会議でございますけれども、委員御指摘のとおり、保護重視派、それから海洋水産資源の持続可能な利用推進派の対立構造の中で会議が進展したというふうに思っております。数の上では保護重視派が私どもの利用推進派を上回っていたわけでございますけれども、我が国の鯨関係の提案を多くの途上国が支持するなど、科学的な根拠に基づく持続可能な利用の考え方が途上国において浸透してきているということがうかがわれたと思っております。
 ただ、一方で、絶滅のおそれのある野生動植物取引の規制という条約の目的を超えるような提案がなされたということもございます。商業対象種でございますと、本来でございますと地域の漁業機関なりFAOが取り扱うことが適切である海産種につきまして、委員御指摘のとおり、サメ二種の中ではジンベイザメあるいはウバザメが科学的根拠の乏しいままに附属書2に掲載されたというところでございます。これら二種のサメにつきましては、我が国には直接の対象とする漁業がなく、漁獲量も極めて限定されておりますけれども、今後、さらにこれらの対象が広がっていくというふうに懸念をいたしております。
 したがいまして、今回の事柄で直ちに我が国漁業に直接影響を及ぼすものでないというふうに考えておりますけれども、先ほど申し上げましたように、他の海産種についても附属書への掲載が提案されるおそれが非常に高いというふうに思っております。したがいまして、さらに科学的な情報の整備に努めていくとともに、地域漁業機関あるいはFAOとともに連携いたしまして、科学的根拠に基づく海洋生物資源の持続的利用が達成されるよう、関係各省とも連携をしながら努力していきたいというふうに考えております。
菅野委員 ことし、IWCの総会が持たれました。そして、今水産庁長官がFAOとも連携してということなんですが、この国際機関での全体の流れは、どうしても、保護優先という形と、資源を持続的に守って利用していく、そして科学的根拠に基づいてというこの流れが、ややもすれば保護優先という形に流れているのが今日の状況だというふうに思っています。それがワシントン条約締約国会議の中でも今回はっきりしたというふうに思うんですね。
 大臣、私率直にお聞きしますけれども、そういう流れの中で、水産国日本として、私は、政府を挙げてしっかりとした取り組みというものを行っていかなければならない時期に来ている。そして、今月の三日から十五日まで行われたこの重要な国際会議というものが、日本の国内で本当にどれだけ議論が行われていることが話題になって議論されているのかということも、私は、そういう流れをつくっていることだというふうに思うんですね。
 大臣として、今の国際的な流れに対して、日本がイニシアチブをとってどう方向修正していったらいいのかということをお聞きしておきたいというふうに思います。
大島国務大臣 菅野委員の御指摘、ほとんど共感できるものがございます。ワシントン条約が方向性として変質しかかっているのではないかという危惧は私も強く持ちます。
 そこで、どのように対応していくかということに関して、やはりこれはまず第一に、与野党の先生方にこのワシントン条約が日本に及ぼしている問題点というものの共通認識を持ってもらうように、与党の皆様方にも御相談しながら、また野党の先生方にも御理解をいただきながら、国民としての共通認識としてそういう危機感をきちっと共有してもらうように私どもが努力することだと思います。
 そして、そういう背景を持ちながら、外務省、そしてまたもちろん我が省、環境省、こういうものと、あるべきワシントン条約の目的というものは当然に私どもはそこを目標といたしますが、水産資源、これをすべてワシントン条約に対応しながら、やはり科学的知見というものをきちっと踏まえさせて、そして判断してもらう。情緒やあるいはイデオロギーやあるいは文化や、そういうもので左右されない科学的知見というものが最も基本にならなければならないということを視点にしながらこれから努力してまいりたい、このように思っております。
菅野委員 今日までの推移というのは、一年、二年でここまで来たんじゃない。二十四年かかっているわけですから、今後、二十五年たったらもう何もできないだるまさんの状態だというような状況にならないように、今から先を見越してしっかりした対応を政府全体挙げて行っていく必要があるというふうに、私は今回の第十二回のワシントン条約締約国会議が日本に警告として投げかけていることだというふうに思っていますから、しっかりとして取り組んでいただきたいというふうに思っています。
 それから、次に移りますが、この協同組合貯金保険法、協同組合再生手続特例法の一部を改正する法律案、今多くの議論がなされておりますけれども、端的に言って、今回ペイオフ解禁を二年間延長するというふうになっていますが、この延長すること自体が意味あることではないというふうに私は思っています。
 問題は、この二年の期間に何をやるかだというふうに思うんですが、不良債権の存在が経営を圧迫して自己資本比率を下げていることは言うまでもないことですけれども、系統金融機関の不良債権処理についてはこれまで、先ほども大臣から答弁がございましたけれども、どのように対策が行われて、どのような効果を上げてきたのか。また、組合員に自己責任を問えるだけのディスクロージャーは行われてきたのか。この二年間に不良債権処理はどのように進まれていくのか。これを、今の時点での考え方をお示し願いたいというふうに思っています。
川村政府参考人 お答えいたします。
 まさに農協系統の金融の体質強化ということが必要なわけでございまして、昨年の農協改革二法、これにおきまして、JAバンクシステムを構築するということで取り組んできたわけでございます。自主ルールをつくりまして、早期発見、早期是正という精神のもとに取り組んでいるということでございます。
 特に、本年の四月からペイオフの一部解禁がなされるということでございましたので、本年四月をまず第一の目標といたしまして、不良債権の処理を確実に進めるということを一つやってまいりました。それからまた、問題農協を確実に解消するということでございまして、自己資本比率が四%未満という農協がないようにということで、十三年度末までをまず第一の目標として取り組んできたところでございます。
 その結果、農協系統のリスク管理債権の総額も、先ほど来話がありましたが、他の一般金融機関と比べましても遜色のない水準であるということでございます。特に貯貸率の問題もありまして、総資産に占めるリスク管理債権の割合は低くなっておるということもございます。それから、本年四月を第一目標とした取り組みもございまして、効果といいますと、今申し上げましたリスク管理債権の問題もございますが、現実にこの四月以降も農協の貯金は対前年同期比で一%前後の伸びを示しておりまして、農協全体として安定した状況がつくり得たものと考えております。
 それからもう一点、ディスクロージャーの問題がございました。
 このディスクロージャーにつきましては、まさに金融機関の透明性を高める、それから貯金者がまさに自己責任で選択等ができるというその自己責任原則の確立のためには不可欠の基礎になるものでございます。農協系統も金融機関の一員でございますので、ディスクロージャーの規定を農協法に設けまして、逐次、不良債権の開示をやってきたわけでございます。そして、平成十年の三月期以降はすべての系統金融機関におきましてディスクロージャーが行われてきたということでございまして、そのディスクロージャーの内容についても、基本的には他の金融機関と同様の内容ということで取り組んでおるところでございます。
菅野委員 ペイオフ解禁を迎えて今日まで取り組んできた姿というのは今説明を受けました。それでは、二年間先送りしたときに、この二年間でペイオフ解禁に向けてどう体力をつけていくのかというところが今日的に求められていることだというふうに思っています。
 まだまだ体力がついていないからということで今日の大きな政策変更になった。政策変更ではないと言いますけれども、現実には政策変更だというふうに思います。
 そういう一連の流れの中で、十二年度に貯金保険法の制度改正が行われた、そして破綻組合の処理が迅速化されることになったというふうに思っていますけれども、この貯金保険制度はこれまでどのように活用され、貯金者保護の面でどのように効果を上げてきているのか、そのことを検証しておかなきゃならないというふうに思うんですけれども、このことはいかがですか。
川村政府参考人 お答えをいたします。
 平成十二年の貯金保険法の一部改正におきまして、今御指摘もありましたが、経営困難な農協の処理を迅速に進めるという観点で、公的管理人制度の導入というのが一点ございます。それからまた、貯金保険機構が行います資金援助方式の多様化といったような内容の改正であったわけでございます。
 まず最初の公的管理人の制度につきましては、債務超過農協、あるいは貯金の払い戻しを停止するおそれがある農協が出ました場合に、この農協に対しまして公的管理人の管理のもとで処理を迅速にかつ的確に進めるというものでございますが、現在までに三件の適用実績がございます。
 また、二点目の資金援助方式の多様化につきましては、信用事業の一部譲渡、また付保貯金の移転につきましても資金援助ができるようにしたということが主な内容でございまして、これが措置されましたことによりまして、受け皿組合の迅速な決定につながるということと考えております。
 実際、この多様化に対応したものは、先般の大原町農協に対しまして実施をしたということでございます。
 この結果、上の三件もございますが、経営困難農協の早期処理が促進されるということで、貯金者の保護あるいは信用秩序の維持ということで大きく貢献したというふうに考えております。
菅野委員 そういう一連の流れをつくってきて、最後に、私は、まだまだこのこともしっかりと行っていかなければ今後大きな問題が生ずるというふうな部分だと思うんですけれども、農協系統において広域合併がどんどん進んできました。その一方で、従来の三段階制から二段階制に、そういう中で移行しつつあるというふうに思っています。
 共済事業では、平成十二年に全共連と農協の二段階制が完成して、経済事業についても、三十四都府県で全農、農協の二段階制が実現してきています。また、信用事業については、ことしの十月に宮城県信連と農林中金の統合が実現しておるわけですけれども、現在、幾つかの県信連においては統合計画が進行中であると聞いています。
 こうした二段階制への移行について、農林水産省として、将来見通しをどう持って、どのような方向に位置づけていこうとしているのか。私は、この二年間というものが、非常に大きな議論がなされなければならないというふうに思うんですけれども、将来見通しをどう持っているんですか。
川村政府参考人 委員が御指摘のとおり、広域合併等が進んでおりまして、単協レベルそれから県連レベルそれから全国レベルということで三段階で来た系統組織、これにつきましては大幅な見直しが必要な状況になってきているということでございます。
 経済事業や共済事業につきましては御指摘のとおりでございまして、信用事業、これにつきましても、二段階への方向ということで動きが出ておるわけでございます。これも委員御指摘ございましたが、本年十月には宮城県信連と農林中金の統合がありましたし、平成十五年の三月には岡山県信連、また平成十五年五月には栃木県信連ということでの統合が今決定をしております。また、今後の動きといたしましては、秋田県、山形県、富山県それから長崎県の四信連も、平成十五年度中を目途に統合する方向で検討を進めているところでございます。
 こういった組織の統合は、基本的な方向として今後のあり方だというふうに考えておりますが、やはり統合のメリットが実効あるものとして出ていくことが非常に重要であろうということで、そういう目でも、しっかり行政としても監視をしていきたい、ウオッチをしていきたいと思っておるところでございます。
菅野委員 私は、先ほども議論になっていますけれども、農協という組織がどうあったらいいのかを含めて、それでは農協の系統がどうあったらいいのかというのは、しっかりとした道筋をつけていかなければならない大きな課題であるというふうに思っております。
 単に農協というものが産業組合的に出発して今日までたどってきた経過と、それではこれから以降、そういう過去の歩みをしっかりと振り返って、これからどうあるべきかというのは、農協自体も議論しなければならないというふうに思いますけれども、農水省としても、政府としてもしっかりとした道筋をつけていかなければならない大きな時期に来ているというふうに私は思っております。
 しっかりとした取り組みをしていただきたいというふうに思うんですが、大臣、今の今日的農協をどのように総括して、そして今後どのような方向に持っていこうと考えておられるのか、所見をお聞きしておきたいと思います。
大島国務大臣 金融の問題も含め、農協のあり方論の根本的な問いであったと思います。
 第一点は、組合員のために存在する農協になるということ、そして第二点は、さまざまな農業を取り巻く変化に農協もしっかり対応して、そして、繰り返すようですが、組合員のためになる農協をつくること、その中には、消費者というものも視点に置いた農協活動というものもいたさなければなりませんし、また資材供給の場合のコスト削減、そういうふうなものにも努力していかなければならぬし、さまざまにあると思います。原点は、組合員のためにまずあることということだと思います。
菅野委員 そのことについてもこれから大きな議論をしていかなければならないなというふうに思って、後の機会にもまた議論していきたいというふうに思っています。
 農協がそうであるように、今日的な第一次産業の衰退という中で、漁協系統、これも非常に厳しい状況に追い込まれているのも事実であるというふうに思います。農協系統に比べて一方は本当に零細、脆弱であるというのも、これも事実であります。
 漁協系統の貸出金に対するリスク管理の債権の割合は、漁協で一三・八%、信漁連で一三・六%で、他の金融機関と比較して高くは見えますが、ことしの六月の水協法の改正でも、最低出資金が二千万円から一億に引き上げられたという状況があるというふうに思います。
 信用事業の体制整備も図られたが、一県一信用事業責任体制の見通しも含めて、漁協系統信用事業の将来の展望というものをどう描いているのか、これについて考え方を示していただきたいというふうに思います。
北村副大臣 今委員が、将来展望、特に漁業協同組合系統というお話でございました。
 委員御指摘のとおり、信用事業等々での漁組での一漁協当たりの貯金の残高は約二十一億円、そして従業員は約三人にすぎない、まさしく委員が御指摘のとおり、脆弱な中で信用事業あるいは組織体制がなされているわけでございます。そういう意味では、やはり今後、合併をしていく、あるいは信用事業の譲渡等を通じて一県一信用事業責任体制をとっていく、このことが非常に重要になっていくというふうに思っております。
 今、全漁連からの聞き取りによりますと、現在十の県において一県一信用事業責任体制が構築されている、さらに平成十七年度末にはこれが三十七県に広がるというふうに見込まれているわけでございます。そしてさらにまた、農林中金がJFマリンバンク基本方針を定めて、これに即して経営改善や組織統合を図る仕組みを導入しているわけでございます。この基本方針に基づいて、問題の組合を早期に発見あるいは早期に是正していきながら漁協系統の信用事業の再編強化をして、漁民、生産者のための漁協の信用事業の強化に努めてまいる所存でございます。
菅野委員 わかりました。
 その取り組みというのは、今日まで右肩上がりのときは本当に順調に推移してきて、今日的な経済状況になったときにそれを縮小、合理化していくこと、このことの難しさというのは私はわかるつもりでおります。ただし、そのことを避けておれないというのも今日的な実情だというふうに思っています。そこをどうリーダーシップを発揮していくのかというのが、農協系統、漁協系統同じだというふうに思いながらおりますので、しっかりとした取り組みをしていただきたいと思います。
 それで、今回の法改正で、大きな議論が行われて、決済用貯金制度を創設しておりますね。貯金保険の対象として、これを将来にわたって全額保護を図るということであります。その目的は、金融機関の関与に関する決済のためのセーフティーネットを構築するということでありますが、系統信用事業に関して、新たに決済用貯金を設けることの必要性と意義というものはどうとらえているのか。
 そして、ここが問題だと思うんですが、貯金者が決済用貯金に預けかえするような事態も想定されると思いますが、系統金融機関はそれに対応できるだけの体制整備が可能なのかどうかということが私は問題だというふうに思っています。今も、漁協系統においてどういう体制になっているのか、副大臣が触れられておりますけれども、そこまでの体制があるのかどうかということをどうとらえているんでしょうか。答弁を願いたいと思います。
川村政府参考人 お答えいたします。
 決済性貯金の問題でございます。一般論といたしまして、我が国におきます決済手段、これは口座振り込みなり口座引き落としということで非常に対応されておりまして、こうした金融機関の関与する決済システムということが非常に重要でございまして、この決済システムをいかに安定確保していくかということが、国全体としての金融のあり方として非常に重要だろうということでございます。まさにこの国会で、決済機能のセーフティーネットを整備するということで、預金保険法の方の改正も提出されております。
 一方、農協系統でございますけれども、我が国の金融システムの一員ということで、一般金融機関と同様に、組合員等の貯金口座を用いまして、農産物の販売代金でありますとか、あるいは農業資材の購入代金の支払い、あるいは公共料金等も含めまして、現に決済業務が行われているわけでございますので、こういった決済機能を十分に保護していくということは同様に必要であろうということでございます。
 今回の法改正を踏まえまして、農協系統でどのような貯金商品をつくるかどうかといったようなものは、現時点ではまだ決まっておりません。今後、銀行なり信金等の他の金融業態の動向もよく見ながら検討していくということだと思います。そういうためには、当然、御指摘のように、体制をしっかりしていかなくてはいけないということでございまして、系統内部におきましても、そのためのシステム整備ということの準備をするということでございます。
菅野委員 終わります。
小平委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小平委員長 この際、本案に対し、鮫島宗明君外一名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。鮫島宗明君。
    ―――――――――――――
 農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
鮫島委員 ただいま議題となりました農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案について、提案理由及び内容の概要を御説明いたします。
 小泉総理は、これまで、我が国の金融システムは健全であり、ペイオフは予定どおり実施すると明言しながら、一転して、ペイオフ凍結の二年延長を決定しました。本来、ペイオフの実施は、小泉内閣の進める構造改革の重要な政策であったはずであり、今回の政策転換については、いまだに明確な説明がなされておらず、政権運営のあり方に強い懸念を抱かざるを得ません。小泉総理は、たびたび大胆かつ柔軟な方針をスローガンにしておられますが、実態的には、大体かつ困難な方針になっているのではないかと思われます。
 バブル崩壊後、最安値を更新し続ける株価に象徴されるように、現下の金融システムは危機的状況にあります。多額の不良債権累積のため、金融システムは必要資金の貸し出し機能を損ない、産業再生の大きな障害となっています。民主党は、景気回復のために通貨供給量の増大を主張し、その唯一の解決の道として、日銀による国債の引き受けを提案してきたところであります。
 今後、デフレ対策を発動しても、本格的な景気回復のためには、なお一定期間が必要でありますが、政府改正案のように、貯金保険制度のペイオフ実施を安易に二年延長するということは、系統金融機関の経営改善への動機を弱め、貸し出し機能の回復への速度を緩めることにもなりかねません。
 こうした考え方に基づき、本修正案は、普通貯金、当座貯金等の全額保護のための保険金の額の特例について、期限を一年延長して平成十六年三月三十一日までとし、系統金融機関、ひいては我が国金融システムの安定化を早期に実現させようとするものであります。
 以上が、修正案の趣旨及び内容であります。
 委員各位の御賛同をお願いいたしまして、提案理由の説明を終わります。(拍手)
小平委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。
松本(善)委員 私は、日本共産党を代表して、農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
 深刻な不況と信用不安のもとで、現在、貯金全額保護措置を全面解除する条件にないことは明白であります。しかし、今回の延長措置は、小泉内閣が進める不良債権の早期最終処理の加速化を図るためとして、二年間に限定されております。貯金全額保護措置の解除は、地域経済の立て直しによる景気の回復を大前提とすべきであり、今回の措置は、不良債権処理の加速による農業者等の離農、系統金融内の合併、事業譲渡などによる淘汰、再編の方針と結びついているので、反対であります。
 地域での金融不安をつくり出し、金融機関への信頼を失わせてきたのは、金融検査マニュアルをてこに系統金融の合併、事業譲渡を進めてきた政府の金融政策であります。系統金融の財務内容だけを健全性の基準とする行政手法のもとでは、ペイオフ解禁を二年延長しても、問題の解決には決してなりません。
 なお、民主党提出の修正案は、政府案よりも一年、延長期間を短縮するなど、改善と評価できるものではなく、賛成できません。
 系統金融の経営を安定させ、信頼を回復するには、収益性に傾斜するのではなく、地域経済と農業者、漁業者の経営を支えるという本来の役割を発揮するような行政的支援こそが必要であります。このことを強く要求して、反対の討論といたします。(拍手)
小平委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、鮫島宗明君外一名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
小平委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十時四十分散会


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