衆議院

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第5号 平成15年4月15日(火曜日)

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平成十五年四月十五日(火曜日)
    午前九時三十四分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    青山  丘君
      荒巻 隆三君    石田 真敏君
      岩倉 博文君    岩崎 忠夫君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      熊谷 市雄君    小泉 龍司君
      近藤 基彦君    七条  明君
      高木  毅君    中本 太衛君
      西川 京子君    宮本 一三君
      後藤  斎君    今田 保典君
      齋藤  淳君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    堀込 征雄君
      江田 康幸君    藤井 裕久君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    東門美津子君
      佐藤 敬夫君    藤波 孝生君
    …………………………………
   農林水産大臣       亀井 善之君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   環境大臣政務官      望月 義夫君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君
   政府参考人
   (環境省環境管理局水環境
   部長)          吉田 徳久君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十五日
 辞任         補欠選任
  梶山 弘志君     中本 太衛君
  山口わか子君     東門美津子君
同日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     梶山 弘志君
  東門美津子君     山口わか子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 林業経営の改善等に必要な資金の融通の円滑化のための林業改善資金助成法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)
 森林法の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)
 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君、生産局長須賀田菊仁君、経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君、食糧庁長官石原葵君、水産庁長官木下寛之君、海上保安庁長官深谷憲一君及び環境省環境管理局水環境部長吉田徳久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鮫島宗明君。
鮫島委員 民主党の鮫島です。大臣には初めての質問になります。
 先週、衆議院を代表して、自民党の谷津先生、金田先生、それから自由党の山田先生と私の四人でアメリカ、カナダに、WTOの問題でディスカッションをしに行ってまいりました。やはり、そこで感じたのは、関税の数字のことだけでやりとりしても余りらちが明かなくて、むしろ文化論に引きずり込んだ方がいいなという印象を受けました。
 例えば、日本は大変多様な食文化を持っていて、日本の主婦はすごいと言われますが、中華料理から日本料理から西洋料理から、日本は一人の主婦が全部こなす。恐らく、食材に使っている野菜の種類も、肉、魚の種類を含めると、世界で一、二を争う多様な食材を使っている。そういう文化を持っているという意味では、アメリカの食文化などとは随分対極にあるわけですから、そういう事情をよく話し合いながら、少し文化論としてディスカッションする必要があるなという印象を受けたことだけ、初めに申し上げておきます。
 BSEに関する質問をしたいんですが、ことしの四月一日から、廃用牛の検査も行われるようになりました。
 ただ、北海道だけが一年おくれということになっていまして、本当はこれを決めたときには、離島その他特殊な地域については、条件が整うまで一部おくれてもやむを得ないと。当時は、委員長は鉢呂委員長で、委員長提案でやったんですが、その委員長さんの御答弁の中にも、北海道全体を離島扱いにするようなことはないでしょうねということに対して、常識的に考えてそういうことはあり得ないというニュアンスの答弁を委員長からもいただいていたんですが、残念ながら、北海道の体制が間に合わずに一年おくれということになってしまいました。
 これは、条件が整い次第できるだけ早くというのが前提だと思いますが、大臣の御認識も、そういう意味では、何が何でも一年おくらせるんだということではなくて、条件が整い次第早くという理解でいいんでしょうか。知事もかわり、大臣もかわったことですので、ちょっとその辺の御認識をもう一度確かめたいんですが。
亀井国務大臣 鮫島委員には、アメリカに出向いていただきまして、先ほどお話しのとおり、農業の多面的な問題、また、特に文化の問題等々、大変貴重な御意見の交換をしていただきましたことに感謝申し上げる次第でございます。
 死亡牛の検査につきましては、BSEがどのような広がりを持ち、これに対してどのような防疫対策を講ずるかを検証する上で極めて重要なこと、委員御認識のとおりでございます。このことにつきましては、御指摘のとおり、北海道が今そのような状況にあることは承知をいたしております。ぜひ、これらが、できるだけ早くその検査ができるように、いろいろな努力をしていかなければならないのではなかろうか、このように考えております。
 十五年度においては現行の施設で可能な数千頭の検査を行う、このように聞いておりますが、何とか十五年度中に検査体制が整備をされるように、いろいろな面で私どももバックアップをしてまいりたい、こう思っておりますし、北村副大臣も北海道で、そのことにつきましては十分御認識を持っておりますので、ぜひその努力を積み重ねてまいりたい、こう思っております。
鮫島委員 委員長も北海道ですし、与党の筆頭理事も北海道ですし、副大臣も北海道ですし、そういう意味では、ぜひ、北海道のメンツにかけて、一日も早く体制を整えていただきたいというふうに思います。
 日本は大変不思議な国でして、いまだにBSEの原因が肉骨粉だということが確定されていない国なんですよ。つまり、不幸にして患畜を出してしまった畜産農家も、私は肉骨粉なんか与えた覚えがない、全員口をそろえてそう言っていますし、唯一共通のえさとして与えられたと思われている科学飼料研究所の代用乳についても、メーカーの方は、我が社の製品に肉骨粉なんか入っていないと言っていますし、農林水産省の調査でも、我が国に汚染肉骨粉が入ったという確定的な事実はない、こう言っているわけですから、非常に不思議な国なんですね。
 農水省の調査でも、メーカーも、飼養農家も、だれも肉骨粉を与えていない。しかし、厳然としてBSEの患畜は七頭発生している。非常に不思議な国なんです。ですから、だれかがどこかでうそをついているんですね、本当は。そのことすらもまだ明らかになっていないということを大臣にもぜひ御認識いただきたいというふうに思います。
 それにしても、獣医学の常識からいって、BSEの原因は汚染肉骨粉しかないというのが科学的には常識になっていますから、一応、それについて、隔離措置、さまざまな対策がとられてきたわけですが、私も農林水産委員の一員として見落としていたことを不明に思うんですが、実は、肉骨粉が入っていた有機質肥料、検査前の肉骨粉を使った有機質肥料が、いまだにどう扱っていいかわからなくてかなりの在庫量がある。
 これは私もちょっと気がつかなくて、本当は検査前肉の隔離なんかのときに一緒にこれも処分しておけばよかったんじゃないかとは思うんですが、私どもも気がつかなくてそのままになっているものがありまして、二種類あります。つまり、粉末状の固形の肥料と、それから、たんぱく成分を加水分解して液化して、液体肥料としてある、肉骨粉を原料として使っている肥料が二種類あるんですが、この固形の粉末の肥料について、メーカーの方も、約二万トン、四十社のメーカーがいまだに倉庫に置いてあって、いつ解禁になるのか、あるいは処分した方がいいものかどうか。検査前の肉骨粉が入っているわけですから。
 これは技術検討会で検討されて、四月八日の発表によりますと、この固形の粉末の肥料については、やはり、汚染肉骨粉が入っている疑いを払拭できない以上、これは使わせるわけにはいかないという結論が出たようです。
 これは、大臣としても、一応、農水省として、メーカーの方ももしかしたら解禁になるんじゃないかと思ってまだ持っているんですが、私は、そろそろ結論を出さないと、いつまでも持っていてもしようがないと思うんですが、大臣の御見解あるいは農水省の見解はいかがでしょうか。
須賀田政府参考人 有機入り肥料のうちの固形肥料でございます。
 先生も御存じのように、この肉骨粉の問題は、安全性が確認をされて、飼料への誤用、流用防止のための措置が講じられれば、肥料への利用は可能ということで、順次解禁をしてきたわけでございます。
 私ども、この固形肥料についても、四月八日のBSE技術検討会に、種々の表示でございますとか、あるいは農家が使った場合に使用管理票に報告するでございますとか、そういうような措置を講じて、牛への誤用、流用を防止できるのではないかということでお諮りをしたわけでございますけれども、そういう措置を講じたとしても、その肥料自体の安全性が確認できない限り、出荷停止措置の解除は困難であるという回答をいただきまして、現時点での判断としては、これを肥料として使用することは難しかろうという判断をしております。
鮫島委員 固形の肥料の方については、これを肥料として使うことは難しかろうという結論だということですが、液体の方についてはどうでしょうか。
須賀田政府参考人 液状の肥料でございます。
 この液状の肥料は、その製造工程におきまして、異常プリオンの不活性化方法の一手法としてWHOのガイドライン等でも紹介されておりますけれども、たんぱく質であります異常プリオンをアルカリ処理によって完全に加水分解すれば活性を失うということとされておりまして、そういうことから、その解除について、同じく四月八日の技術検討会に諮ったところでございます。
 その四月八日の段階におきましては、技術検討会において、アルカリ処理によって確実に異常プリオンが不活性化されているということを示すさらなるデータというのを出してほしいという指摘がございまして、私どもとしては、この安全性を示すデータが得られれば、液状肥料につきましては出荷停止が解除される可能性があるというふうに判断をしているところでございます。
鮫島委員 この異常プリオンというのは非常に不思議なたんぱく質で、普通、末端でつくられたたんぱく質自身が酵素機能を持つことはないと言われていますが、この異常プリオンだけは、それ自身が良質なプリオンを異常プリオンに変える酵素的な機能を持つ非常に不思議なたんぱくだというふうに言われていますが、酵素機能を持つ以上は立体構造がなくちゃいけないわけで、ですから、加水分解して幾つかに切って分子量がちっちゃくなっていれば、酵素機能が失われていることはほぼ確実だと思いますので、ぜひ、専門家の意見も聞きながら、解禁をするなら一日も早く解禁という措置をとっていただきたいと思います。
 今の固形肥料の扱いですが、四十社で約二万トン、そのまま在庫されている。使われる見込みがないなら、これはやはり早いところ処分した方がいいと思いますが、処分の経費について、肉骨粉適正処分緊急対策事業、平成十五年度で百六十一億二千五百万組まれていますが、これは肉骨粉そのものを処理する予算として組まれていますが、ぜひこの中で、この固形の肥料の処分についても、行政側にも重大な失政という問題があるわけですし、汚染肉骨粉が肥料に混入してしまった背景的な責任は農水省の方にもあるわけですから、ぜひこの処分についても、汚染肉骨粉と同等の助成措置での処分をお願いできないかと思いますが、いかがでしょうか。
須賀田政府参考人 現時点で私どもが推定をしております固形肥料の在庫量でございます。約一万四千トンあるのではないかということでございまして、現時点では、メーカーにお願いをいたしまして、家畜の飼料として誤用、流用されることのないように、保管管理の徹底をお願いしているということでございます。
 先生言われましたように、飼料用肉骨粉適正処分緊急対策事業というのがございまして、飼料用の肉骨粉とあわせまして、肥料用の原料の肉骨粉等も、焼却にかかる経費の二分の一を国庫補助しているわけでございますけれども、今後、この固形肥料について、私ども、現時点の判断で、もう処分せざるを得ないと。ただ、有機質一〇〇%と違いまして化学肥料がまじっておりますので、なかなか焼却というのが難しい部分がございます。
 どのような処理があり得るかということも含めまして現在検討しておりまして、その円滑な処分というものを推進する観点から、どのような支援方策があるかを含めまして、関係者と連絡をとりながら検討していきたいというふうに考えております。
鮫島委員 この肥料を扱っている団体、化成肥料協会が恐らくこの関係の団体だと思いますが、ぜひ農林水産省と前向きに話し合って、いつまでもこんな使えないものを抱えていても倉敷料だけかかるわけですので、ぜひ前向きな話し合いで適正な処分を一刻も早く進めるようにお願いしておきます。
 実は、似たような、おかしな話が一つあって、日本の牛足、牛の足が実は韓国に輸出されていて、それが一カ月分滞留して、持ち帰るわけにもいかず、向こうで売るわけにもいかず、大変困った事態があったんですが、これも農水省が、倉庫代、輸送費、処分費を全部持ってくれて、韓国の保税倉庫に入っていた日本の牛足を処分することができたんですが、ぜひこの固形肥料についてもそのような措置をお願いしたいと思います。
 以上の依頼で私の質問を終わります。ありがとうございました。
小平委員長 次に、筒井信隆君。
筒井委員 私は、きょうは、米政策の大きな変更といいますか改革の問題について、お聞きをいたします。しかし、三十分でございますので、一点の問題だけについて絞ってお聞きします。
 我が民主党としては、補助金行政から所得補償政策への転換ということを訴えております。米の生産調整に関係して、共補償とか稲作経営安定対策とか、今までいろいろな補助金制度、体制があったわけでございますが、これが非常にわかりにくい、複雑なものになっている、これらを全部整理して所得補償政策一本にすべきである、こういう主張でございます。
 私は余りアメリカの農政に関しては賛成の部分は少ないんですが、アメリカもこの点では、五年ほど前ですか、生産調整をそれまでやっていたのをやめて、本格的な所得補償政策を導入した、こういう経緯がございます。その後、ブッシュの今度の農業法によって、またさらに一部変更があったわけでございますが、いずれにしろ、我が日本においても、本格的な所得補償を導入して、そして最低限の農家の所得を保障した上で、後は、市場原理、農家の自己責任、自己判断にゆだねる、こういうふうな方向性に変えていくべきではないかというふうに考えております。
 この所得補償政策に関しては、今後、新食糧法の改正案の審議の中で、また大臣の御意見もいろいろお聞きをして、また問いただしていきたいと思っております。
 今回、政府案として出された新食糧法の改正案あるいは米政策大綱等によりますと、補助金制度がある程度整理されて三本のものになっている。この補助金制度についてお聞きをしたいと思います。
 最初に、産地づくり推進交付金制度というのがある。ただ、この産地づくり推進交付金制度は、どうも二本立てになっていて、一つはまさに産地づくりを主眼とするもの、もう一つは米価の下落影響緩和対策、この二つの柱から成り立っているというふうにどうも農水省の方は説明されている。
 しかし、これも地方分権でもって、各都道府県において、この米価下落影響緩和対策はとらなくてもいい、それは各都道府県の自己判断であるというふうなことのようでございますが、そうすると、まずこの点については、米価下落影響緩和対策の方は全くゼロであってもいいというのが今農水省が考えている中身でしょうか。
須賀田政府参考人 先生おっしゃるように、産地づくり推進交付金、産地づくり対策と米価下落影響緩和対策の二本立ての構成になっているわけでございます。いずれも生産調整への参加ということを要件としておりまして、米とそれ以外の作物について需要に即した生産を推進しながら、地域の特色ある農業を育成しようというものでございます。
 極端なことを言えば、先生おっしゃるように、産地の選択によりまして、自分のところでは、もう米ではなくて米以外のもので今後生きていくんだというようなところは、産地づくり対策のみを実施するということも可能なようにはなっているわけでございます。
 ただ、実際に、現実に水田がございまして、全体として生産調整を推進しなくてはならない、そういう要請のもとで米価下落影響緩和対策をとらないという地域は、私どもはそうないんじゃないかというふうに推定はしているところでございます。
筒井委員 二本目の助成制度が担い手経営安定対策ですが、これは、今言った一本目のうちの米価下落影響緩和対策に加入していることが条件で支給する、こういうふうになっているわけですから、こっちの方も生産調整に参加していることが条件だということになりますね。
川村政府参考人 担い手経営安定対策でございますが、この対策は、米価下落によります稲作収入の減少の影響が大きい一定規模以上の水田経営を行っている担い手を対象に、そして今先生御指摘の、すべての生産調整実施者を対象として講じられます産地づくり推進交付金の米価下落影響緩和対策に上乗せをして、稲作収入の安定を図る対策として措置しようというものでございますので、生産調整とリンクをしております。
筒井委員 どうもリンクはいろいろしたりしているようですが、この二つの助成制度、産地づくり推進交付金と担い手経営安定対策、国会になされる予算要求としては、もちろん別々に予算が立てられるわけですね。
石原政府参考人 今、先生御指摘ございましたこの二つの対策でございますけれども、それぞれ別の事業として我々は予算要求をしていくつもりでございます。
筒井委員 そうしますと、先ほど言った米価下落影響緩和対策に全く加入しない、ゼロだ、そっちの方には加入しない、極端に言えば、例えば全県がそうしたとすれば、理論的には担い手経営安定対策の方が全くゼロになる、理屈としてはそういう形になるんですが、理屈としてはそうだけれども現実問題としてはそういうことはあり得ないというふうに考え、それを前提にしているわけですか。
川村政府参考人 私ども、先ほど申し上げましたとおり、経営安定対策につきましては、米価下落安定対策を前提としておる。こういう二つの対策はパッケージとしてお示しをしておりますので、現実問題としては米価下落安定対策を全く講じないということはないのではないかというふうに考えておるところでございます。
筒井委員 もう一つ、三つ目、過剰米短期融資制度ですが、これは、豊作でもって配分された数量を超えた分に対してのみ、その米を担保にして短期融資する、無利子の融資をする、こういう形を考えているようですが、その超えた分については「主食用と区分して安価に出荷した過剰米」というふうな説明を農水省はやっているので、ちょっと意味がわからないんですが、配分数量を超えた分を、それは各農家が主食用に生産したわけですね、それを安価に出荷したというのはどういう意味ですか、一体。
石原政府参考人 安価に出荷したといいますのは、これはまだ、我々この八月の概算要求の段階で具体的な融資単価を決めようというふうに考えているところでございますけれども、仮に六十キロ当たり三千円ということにしますと、豊作による過剰分を一俵当たり、六十キロ当たり三千円という対価をいただいて区分出荷するということでございます。
 実際のやり方としては、通常、農協等へ出荷されます。その出荷された農協におきまして、例えば作況が一〇三になったという場合、その一〇〇より超える三分を、これは過剰米短期融資制度を当てにして出荷されたものだということで伝票上操作するということを行います。
筒井委員 そうすると、農家が一たん農協の方に、例えば今の例で言えば三千円で出荷したことを前提にする制度なんですか。農家の方で、まだ売れない、そこで例えば三千円、農家に直接短期融資する、こういうことは考えられていない制度なんですか。
石原政府参考人 大半の農家の場合は農協へ出荷されますので、そういうことを先ほど申し上げたわけでございますけれども、実際、例えば大規模農家で、私は農協に出荷しないという方がおられれば、それは農協は経由しません。そういう場合には、そういう方が、みずからの例えば倉庫なら倉庫にきちっとこれは過剰分ですということでとめ置くといいますか、そういうことをしていただく。実際に、農協の場合もそうですし、大規模農家の場合もそうですけれども、きちっとそのように過剰分として区分してあるかどうかにつきましては食糧事務所の方でチェックしますけれども、そういう手続を経て行いますので、実際、大規模農家の場合は農協へ出荷しないという場合も考えられます。
筒井委員 そうすると、今、大規模農家であろうが、農協の方に出荷しない農家に関しては直接農家に短期融資するという説明だと思うんですが、この農水省の説明で「主食用と区分して安価に出荷した過剰米に対して短期融資(無利子)を行い、」とあるのは、これは農協に出す場合だけのことを言っているんですか。
石原政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、農協に出す場合が多うございますけれども、大規模農家の場合で農協に出荷しないという場合は、そういう大規模農家に対しまして機構の方から融資がされるということになります。
筒井委員 いや、だから、大規模農家でも何でもいいんですが、農協の方に出さない場合には、安価に出荷したということはないわけですね。
石原政府参考人 そういう意味では、言葉としては安価に出荷と我々は言っておりますけれども、自分の倉庫にとめ置くということになりますので、そこはきちっと区分していただきますればいいということで、出荷ということにはならないかと思います。
筒井委員 この説明はちょっと不正確じゃないですか。全部安価に出荷することが前提だという説明。この記載は、農水省の、食糧庁の説明は覚えておられますね。もう一回読みますが、「主食用と区分して安価に出荷した過剰米に対して短期融資(無利子)を行い、」と。これは、だから短期融資制度の一部についての説明であって、農協の方に出した場合だけの説明であって、出荷しない場合の、直接農家に短期融資する場合のことは含んでいないわけですね、ここで。誤解を受ける、そういう説明じゃないですか。
石原政府参考人 今先生が読み上げられたのはこのパンフレットであろうかと思いますけれども、我々、これは、この制度につきまして広く農業団体の方あるいは農家の方々に理解していただくということでつくったものでございまして、一般的なケースを想定いたしまして、わかりやすいということでそういう言葉を使ったということで、先生御指摘のとおり、大規模農家の場合にはその言葉は必ずしも適切ではないかと考えます。
筒井委員 それはやはり、農協に出す場合、そうじゃない場合、両方とも説明しないと、一方だけの説明じゃ、農家としてはわからないですね。
 そして、農協に出した場合の説明の方を聞きますが、農協に例えば出荷するわけですね、農協に売っちゃうわけですね。農協に売った金額は幾らであれ、三千円か、例えば五千円だって安価かもしれないのだけれども、五千円で農協に売った場合に、幾らになるか予算でこれが決まるのでしょうが、例えばさっきの三千円の融資をするという形になるわけですね。その点の確認と、その場合、農協がもう買ってしまったら、短期融資は農協にするんですか。
石原政府参考人 実際、農協へ出す場合は、農協が買い取るという場合もございます。これからの売れる米づくりを考えた場合に、我々は、そういう農協で買い取る方式、これについて進めていただきたいと思っておりますし、そういう方式が進むかと思いますけれども、通常の場合は、委託販売でございます。農協の方が委託されて販売するということでございますので、例えば先ほど言いましたように、作況一〇三、簡単に言いますと、本来百俵のところを百三俵できた場合は、その三俵分につきまして機構の方から融資がされるということでございます。
 この場合、本来からしますと、直接農業者個人にやればいいのですけれども、いろいろな手続につきましては非常に農家は煩雑でございますので、そういう事務につきましては、農協の方で一括して代理していろいろな手続をするということであろうかと思います。
筒井委員 農協に委託販売した場合には、まだその所有は農協ではないから農家に直接融資する。その場合も、出荷としてここでは説明しているわけですね。
 農協に直接売っちゃった場合、この場合は短期融資制度の対象になるんですか、ならないんですか。
石原政府参考人 非常にこれから議論すべきところであろうかと思いますけれども、直接農協が買い取ったという場合には、そういう場合、しかし農協に対しまして、それは幾らで買い取っていただくかという議論にもなってきますので、通常、主食用としてその分も合わせて売ってしまって、その分につきまして、安価出荷といいますか安い価格で融資がされるということになりますと、農協がそのマイナス分を負担することになりますので、実際はなかなかそういう場合は余りないのではないかと考えられますけれども。
筒井委員 そうすると、厳密な意味で安価で農協に出荷して売った場合には、短期融資制度の対象にならないのではないか、これから検討だけれどもという回答ですが、これは、ならないのではないかというものが、農水省では短期融資制度の対象になりますという説明になっているじゃないですか。この説明はなおさらおかしいんじゃないの。
石原政府参考人 委託販売でも農家にとりましては農協に出荷するわけです。それはあくまで出荷なんです。そこは御理解いただきたいと思っています。これは、別に買い取りの場合だけが出荷ということじゃありませんで、あくまで、委託であっても農協に対して出荷するわけです。その出荷に対して融資がされるということでございますので、御理解いただきたいと思います。
筒井委員 では、この出荷というのは委託販売の場合を主に考えているんだというふうに聞いておきましょう。
 ただ、その場合でも、先ほど言いましたように、委託販売していない直接販売の場合のことの説明が全くない。その点が欠落、極めて不十分ということ、これは今後の説明の中ではっきり出してほしいと思いますが、どうですか。
石原政府参考人 我々、今回、こういうパンフレットを数多く印刷しましてPRに努めていますけれども、きのうも全国説明会というのを、新しい食糧法の改正法案、それから基本要綱等について行いました。今までいろいろな説明会、これは全国段階でもやっておりますし、各ブロック段階でもやっております。あるいは県段階、市町村段階でも、食糧事務所あるいは地方農政局が積極的に出かけていきましてやっております。
 そういうときにいつも出される意見が、非常に複雑だと。例えば、我々、これは目いっぱいつくったつもりでございますけれども、専門家、要するに担当者はわかるんですけれども、農家、農業者になりますとなかなか理解してもらえないという問題がございます。我々は、そういう問題がありますので、できるだけ典型的な例で説明した方が御理解いただけるのではないかと思ってやっているところでございますけれども、先生の御指摘もわかりますので、我々、その点を工夫して、いろいろな農家、農業者がいらっしゃいますので、そういう方々に理解していただくよう、これから努めていきたいと思っているところでございます。
筒井委員 そして、短期融資制度を受けて一年の間に売れた場合にはその融資金を返済する。米を預かって売るわけですよね。その一年の間に売るのは、主食用に売っちゃだめなんですか、売ってもいいんですか。
石原政府参考人 これは、考え方としては、主食用として売っていただいても結構です。
 ただしながら、これは、通常の場合でいいますと、農協へ出荷いたします。農協といたしましては、こういう場合、調整保管の場合も同じでございますけれども、我々、かぎをかけると言います。これが主食用として売られますと、結果的に価格の低迷につながりますので、かぎをかけるといいますか、それは主食用としては売らないということを行います。ですから、建前としては、もちろん主食用としても売ることは可能でございますけれども、実際、委託販売で農協に出荷して、農協がそれをどうするというときには、農協はこれを主食用として売らない、むしろ、これをえさ用とかそういうものとして処分するというのが通常であろうかと思います。
筒井委員 農協に委託販売した場合には、では、それを主食用以外に売るように事実上努力してもらうということですね。その点の確認と、農協に委託販売しないで、例えば大規模農家なんかが直接売っている場合、これは主食用に売ってもいいんですね。だけれども、その場合もなるべく主食用じゃないものに売るように努力してもらいたいという要望なんですね。
石原政府参考人 農協の場合には、えさ用として通常処理されます。
 それで、先ほどおっしゃいました大規模農家の場合は、そういう場合には主食用として売る場合があろうと思います。あるけれども、主食用として売りますと、当然、要するに過剰米が発生するということで、豊作で米が多量にあるという状況でございますので、全体としての価格低迷につながるという問題がございます。
 したがいまして、そういう大規模農家の場合であっても、我々としましては、価格の低落をもたらさないということからしますと、できる限り主食用以外のものに処分してもらいたい。いろいろな、加工用、我々、米粉のパンとかというのを進めておりますけれども、そういう粉用あるいはえさ用として処分してもらいたいと思っております。しかし、主食用として売ることが否定されているかといいますと、それは否定はされておりません。
筒井委員 そうしますと、何かよくわからないんだけれども、要するに、大規模農家の場合に、主食用に売ってもいいけれども、そうじゃないように、主食用以外に販売してもらうように努力してほしいという要望だと。
 農協に関しては、今何か断言されましたね、主食用以外に売りますというふうに。そう義務づけるんですか。
石原政府参考人 農協の場合には義務づけはいたしません。義務づけはいたしませんけれども、農協は、通常の場合、それを主食用に売りますと価格の低迷につながるということで、全体としての、農業団体はもちろんでございますけれども、農家の経営にとってはマイナスにつながるということがよく理解されておりますので、主食用に売ることはされないということであろうかと思います。
筒井委員 そして、質流れになった米、質流れというか、結局、米で返済した場合、それは今度は国の方では主食用には売らない、これははっきり制度としてそう確定するわけですね。飼料用とか米粉とかパン粉用とか、そういう形で売るということは制度として確定するわけですね。
石原政府参考人 これを主食用として売りますと、そもそもこの制度をつくった意味がなくなります。したがいまして、それはあくまでえさとして処理する、あるいは、我々が一番期待しております、何度も申し上げますけれども、米粉のパンの粉用として活用するとか、そういう新たな用途、そういう方向に向けたいと思っているところでございます。
筒井委員 どうも、はっきり制度として確立するのか、要望なのか、そういうのがわからない部分が今ずっと聞いてきてあるわけで、前の助成金制度よりはわかりやすくなったのかもしれない、三本になったんだから。だけれども、まだわかりにくい。これでは、透明性の原則、わかりやすさの原則に反するんじゃないか。これは、いずれもやはり法的にはっきり、目的や支給条件や、それらを規定すべきだと思うんですよ。単なる行政指導とか何かでもって、その都度農水省の方でいろいろな形で決めていくというんじゃなくて、せめて政令、法律上はっきりと、支給条件、目的等々を明確に規定する。こうしない限り、透明性は全然出てこないと思う。
 そういう観点から見てきた場合に、この三つの制度のうち、短期融資制度は今度の新食糧法の中で不十分ながら規定される。他の二つ、産地づくり推進交付金と担い手経営安定対策の方は、これは一体、法的にはどこに規定されるんですか。法的な根拠は何ですか。
石原政府参考人 今先生御指摘の二つの対策、これにつきましては、その食糧法の中には規定はございません。
 我々、こういう助成措置につきましては、もちろん金額的にも圧倒的に、法律に基づく補助、これが多いわけでございますけれども、予算補助というものも認められていると我々は考えておりまして、予算措置によりまして補助していくということであります。
筒井委員 だから私の質問は、法的な根拠はあるんですか、ないんですか、この二つの助成制度は。あるとすれば、どの法律が根拠ですか。
石原政府参考人 直接的な法律という意味では、補助の直接的な根拠というのはございません。
筒井委員 そういう状態が私はよくないんじゃないかと。日本は法治国家ですから、法律上、明確な根拠を持ったものでなくちゃいけない。
 もうきょうは時間がないから、この次の機会にします。
 補助金適正化法でもそのことを前提にしているんじゃないか。補助金適正化法の例えば七条、「法令及び予算で定める補助金等の交付の目的」、法令と予算、法令及び予算。法令または予算とは言っていないんですよ。法令及び予算で交付の目的や何かを定めるべきだ、そういうことが規定されている。そういうものに、今の姿勢は、今の答弁は反するんじゃないか。そして、この二つの補助金について、そういう法律の要請に反するんじゃないか。この点はどうですか。
石原政府参考人 法律補助か予算補助かという点でございますけれども、これまでも、米に係る予算措置につきましては、法定せずに必要な対策を講じてきているということでございます。
 これの根拠としましては、予算を法律にしますとどうしても硬直的になるということもございまして、それからまた、毎年、予算の執行の状況あるいは改革の実施状況、こういうものを検証しまして、それを踏まえた対応を行うことが、地域の特性に即した産地づくりを行え、また予算の機動的かつ効率的な編成につながるということで、我々、予算補助といいますか、そういう道もあるというふうに考えております。
 それで、今先生の方から御指摘ございました補助金適正化法第三条一項でございますけれども、これは予算の執行に関する基本的事項を規定する法律でございます。これは、今御指摘の三条一項は、各省各庁の長に対しまして補助金等を法律及び予算で定めるところに従って公正かつ効率的に使用すべき義務を課したものであるということで、助成措置について法定しなければならない、そういうことを定めたものではないと我々は解しておるところでございます。
筒井委員 時間がなくなって終わりますが、私、今指摘したのは第七条ですから、後でそれを見てください。
 いずれにしても、また引き続いてこの問題はお聞きをしたいと思います。きょうは終わります。
小平委員長 次に、楢崎欣弥君。
楢崎委員 民主党の楢崎です。
 ある新聞による大臣の人物評価、朴訥で政治家としては地味だがそのまじめな仕事ぶりには定評がある、このようにありました。就任早々のお祝儀評価だとは思いますけれども、政策以外での、みずからの問題をも含めた争点をおつくりにならないように、まずは期待をしておきたいと思います。
 そこで、先日、大臣の所信発言をお伺いしました。水産政策については、海洋国家日本云々とありました。それも結構ですけれども、今は惨たんたるものですよね。海の恵みである水産資源の減少、有明海の環境異変問題等々、いろいろな問題を抱えておる。
 昨年秋の臨時国会において、いわゆる有明海特措法が成立をしました。今、それにのっとって事態は動いておるわけですけれども、対案を出した者として、きょうは有明海問題に絞って質問をさせていただきたいと思います。
 そこで、まず環境省にお伺いします。吉田管理局水環境部長、きょうはどうもありがとうございました。
 今言いましたいわゆる有明海特措法に基づいて、環境省の中に総合調査評価委員会が設置されたわけです。二月七日の第一回会合において、このとき、弘友副大臣は、委員会の任務は極めて重要、委員の見識と経験で再生への道筋を示してほしいと、現在の有明海の悲惨な状況を認識する発言をされている。
 それにさかのぼること一週間ほど前ですか、この第一回会合を二月七日に開くと発表された坂川室長さん、この実務担当者ですけれども、この方は、一月二十八日に、将来の法律見直しにつながる重要な委員会という認識を示されているわけです。この、将来の法律見直しにつながるとは何を意味するんでしょうか。上司としてお答えください。
吉田政府参考人 お答えを申し上げます。
 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律、この附則の中に、この法律施行の日から五年以内に行う同法の見直し、その見直しに関する必要な評価検討を行うための評価委員会というものが設けられたわけでございます。
 そういう意味合いにおいて、まだ見直しをどうするということが具体的に決まっているわけではございませんけれども、その見直しに関する準備として評価委員会が作動するということを申し上げた次第でございます。
楢崎委員 私は、諫干事業に踏み込まない与党案よりも、そこに踏み込んでいる民主党案に沿った法律への見直しと期待したんですけれども。そこのところも視野に入れておいてくださいね。
 そこで、この委員の任期というのは二年ですね。評価するのに時間的にその程度かかるという解釈でいいんですか。
吉田政府参考人 評価委員会は、先生御指摘いただきましたように、二月の七日に第一回会合を開催いたしましたほか、三月の十二、十三日には現地の視察もいたしました。そして、三月の二十四日に第二回の評価委員会を開催いたしました。これまでの評価委員会での御議論を通じて、有明海、八代海に関する評価委員会の任務というものを、先生方、共通の認識にお持ちいただいてきていると思います。
 今後、鋭意作業を進めてまいりますが、任期の二年ということと検討期間とは必ずしも一致しているものではございません。できるだけ早い時期にこの評価委員会にゆだねられた本来の任務を全うすべく、私ども事務局としても尽力をしていきたいと思っております。
楢崎委員 今答弁ありましたように、では、評価結果はいつごろ出そうというめどはありますか。
吉田政府参考人 重ねてお答えいたしますが、まだ評価委員会が検討の緒についたばかりでございます。評価の結果がいつ出るかということについて、今明確に申し上げる段階にはございません。
楢崎委員 ここ、大事なところなんですよ。後に続きますからね。
 大体ことしの秋ですか、それとも一年ぐらい後をめどにしてあるんですか。それもお答えできませんか。
吉田政府参考人 いずれにいたしましても、鋭意、評価委員会の作業を進めまして、できるだけ早い時期に評価の結論を出していくべきだと思っております。
楢崎委員 まあ、いいでしょう。できるだけ早い時期にお願いします。
 特措法によれば、評価するのは、干潟や潮流、潮汐と海域環境との関係、それから河川流況、汚濁負荷量、土砂採取と海域環境との関係、さらには赤潮、貧酸素水塊の発生メカニズムの解明など調査の結果に基づく有明海再生の評価となっておるわけですね。
 当然、その評価の結果いかんによっては、今問題になっている諫早干拓、あの潮受け堤防排水門の中長期開門調査実施の可否に影響すると思うんですが、環境省はそのような認識を持ってあるんでしょうね。
吉田政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたとおり、この評価委員会は、有明海、八代海が対象になりまして、そこで行われる各種の国及び県の調査に基づきまして評価づけをしてまいることになるわけでございますが、有明海、八代海の環境や水産に影響を与えておる可能性のある各種の要因につきましては、評価委員会が行うべき評価の対象になり得るものでございまして、この評価に基づいて当該要因の取り扱いについて意見を述べることは、評価委員会の所掌事務から排除されているものではないというふうに思っております。
 諫早湾の干拓事業につきましては、この事業による影響についてこれまで検討を進めてこられました農水省の有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会、いわゆる第三者委員会の関係資料も既に評価委員会の方々にお渡しをしてございますほか、第二回の評価委員会におきまして、農林水産省からこれまでの検討経過の御報告をいただいたところでございます。
 なお、諫早湾の干拓事業に係ります中長期の開門調査につきましては、そのあり方について検討を行う場が別途農水省に設置されているところでございますので、この検討会議の状況も適宜評価委員会に報告をし、評価委員会における調査審議が適切になされるよう配慮してまいりたいと思っております。
楢崎委員 なぜ特措法によって環境省内に評価委員会が設置されたのか、その認識をしっかり持っていただきたいと思うわけです。
 つまり、前提があるわけですね。ノリの大凶作が起こった、タイラギやアゲマキなどの底生生物が全滅状態に陥っている、いわゆる有明海環境異変と言われるものは、その一つは諫干事業に起因するものではないか。その諫干事業との因果関係を含めた異変の解明のために、今まで第三者機関による各調査、議論が行われてきたわけですよね。
 その結果、今度解散しましたけれども、ノリ対策第三者委員会は中長期の開門調査が必要だという提言をしているわけです。また、潮流、潮汐の変化、赤潮とか貧酸素水塊の発生メカニズム、すべからく諫早湾が締め切られたことによる、今それが科学的にも証明されつつあるわけですよ。
 当然、皆さん方の評価というものが中長期開門調査実施の可否の大きなポイントになる、そういう認識をしっかり持っていただきたいと思います。それで、特措法の成立によって環境省は大きな使命が課せられたわけですから、評価委員会に対してミスリードされないように、それを望みます。
 そこで、亀井大臣にお聞きします。
 この環境省に設置された総合調査評価委員会、大臣はこのことについてどう評価し、何を期待されますか。
亀井国務大臣 有明海及び八代海の再生を図るためには、有明海・八代海総合調査評価委員会はこのような評価を行うということで、重要な役割を担うものと認識をしております。
 私ども農林水産省といたしましては、関係各省と連携を図りながら、環境の保全、改善や、水産資源回復等による漁業振興に全力を挙げて取り組んでまいりたい、こう思っております。
楢崎委員 部長、お聞きのとおりです。それで、諫干事業が有明海の環境変化、悪化に与えた影響というものをしっかり視野に入れた委員会になるよう指導していただきたい、そのことを期待しておきます。
 それから、評価委員会の須藤委員長も、広い視野で評価したいと述べてありますね。現地視察もされましたようですし、いずれ時期を見て、状況をお聞きするために参考人招致をお願いすることになろうかと思いますので、そのことを申し述べておきます。
 部長、きょうはありがとうございました。
 そこで、これからは本家本元にお伺いいたします。
 先ほど来言っています、中長期開門調査の可否問題ですけれども、その可否を協議する新たな機関、その名も中・長期開門調査検討会議ですか、これが三月二十八日に発足した。この担当局は農村振興局ですよね。私は思うんですが、よくそんなことができるなと。
 大島前大臣も言われましたように、まさに、中長期開門調査をやるかどうかはこの検討会議の協議を踏まえて判断されると発言されている。それなのに、諫干事業を強行している農村振興局のもとに置くような検討会議なら、もうはなから開門調査はやりません、そういう結果が出てくることはわかっているようなものじゃないですか。まず国民がそんな第三者機関を信頼しませんよ。どうですか。
太田政府参考人 中長期の開門調査につきましては、短期の開門調査で得られた成果及びその影響、その他の各種調査の動向、ノリ作期との関係などの観点を踏まえた総合的な検討を行った上で、平成十四年度中に設ける新たな場での議論を経て農林水産省において判断すると、これまでしてまいったところでございます。
 中長期開門調査の実施につきましては、賛否両様のさまざまな意見や主張がある中で、その取り扱いの判断は、総合的な視点に立ちまして、関係者等の理解が得られるように行っていくことが重要であるというふうに考えております。
 このため、農林水産省におきましては、中・長期開門調査検討会議を設置し、学識経験を有する専門委員の技術的、専門的な助言も得ながら、豊かな行政経験を有する委員が、さまざまな立場の有明海関係の学識経験者、漁業者、行政及び水産の担当者などの方々から広く意見を聴取し、それらを踏まえ、中長期開門調査の取り扱いの判断に必要な論点を取りまとめていただくこととしたものでございます。
楢崎委員 広く人材を集めと今言われましたけれども、その検討委員会の人選がまた農水省らしい。もう見え見えじゃないですか。七人全員が官僚OBですよ。そのうち五人が農水省OB。またそのうち、諫干事業を推進してきた旧構造改善局、今の農村振興局、そちらですよ、そこからのOBは二人。
 そこで、亀井大臣は西日本新聞社のインタビューで、官僚OBだからといって予断を持って判断することはない、このようにインタビューに答えてあるようですが、関係者の人から見れば、この人選はおかしいと首をひねっておりますよ。そう思われませんか、大臣。
亀井国務大臣 それぞれの委員の皆さん方は、環境と水産、あるいは環境と農業、環境と河川に関する経験をお持ちの方でございまして、この委員会の重要性、このことを認識して仕事をしていただける、このように考えております。
楢崎委員 だめですよ。この検討会議の性格からすれば、諫干事業を推進してきたそういう行政経験よりも、まず現場をよく知る人を中心とした組織にするのが常識じゃないですか。そうじゃないですか。
亀井国務大臣 先ほど申し上げましたような形で、技術的なことも、またあるいは、それぞれ必要に応じて専門的な委員と申しますかそういう方から、専門委員会、こういうようなことからの助言を得るというような形もとることができると思いますので、成果を上げる、こう思っております。
楢崎委員 では最初から入れればいいじゃないですか。なぜ入れないんです、そういう識者の方々を。
亀井国務大臣 それぞれ、これは行政的な問題もまとめていかなければならないわけでありますので、それらを踏まえて、専門的な立場と、これはそれぞれ個別の問題というようなことで、議論を願うということになろうかと思います。
楢崎委員 私は、漁業関係者や識者からも意見を聞いたというポーズづくり、つまり私から言えばお茶を濁す程度の考えとしか思われないんです。そうじゃないと責任を持って言えますね。まあ、いいでしょう。
 そこで、参考のためにお伺いしますけれども、開門調査の可否、判断時期はいつごろを想定してありますか。
太田政府参考人 中・長期開門調査検討会議の議論と、それを踏まえての農林水産省の判断という、この二つの段階があろうかというふうに考えております。
 そういった意味で、まず検討会議での御議論をいただくわけでございますが、先ほども申し上げましたとおり、さまざまな立場の方々から広く意見を聴取し、その取り扱いの判断に必要な論点の取りまとめをいただくというのがこの検討会議の場でございます。私どもといたしましては、このことを踏まえながらも、できるだけ早い取りまとめをお願いしたいというふうに考えております。
 その上で、さまざまな調整を経て、最終的な農林水産省としての判断をしていくということになろうかというふうに考えております。
楢崎委員 もう皆さん方のことですから、大体のめどというのは立ててあると思うんですよ。ことしの秋ですか、一年後ですか、二年後ですか。大体でいいんですよ。
太田政府参考人 さまざまな立場の方々という意味で、できるだけ広くということでございますので、どれぐらいの方々から御意見をお伺いするか、そういったところは検討会議での議論を待つことになりますが、私どもの気持ちといたしましては、年内にもこの検討会議の結論をお出しいただければありがたいなというふうには考えております。
楢崎委員 今、年内という言葉が出てきました。
 では、局長は、環境省内に設けられた評価委員会、こことの整合性、どのように考えてあるんですか。
太田政府参考人 評価委員会の方に対しましては、必要に応じ、検討の状況等を御説明してまいりたいというふうに考えております。
楢崎委員 いや、私が聞いているのは、検討会議が出す時期と、評価委員会が出す時期、結果を出す時期、これのずれについて。ずれは当然出てくるんじゃないですか。それとも歩調を合わせて発表するということですか、結果を出すということですか。
太田政府参考人 先ほど環境省の方から御答弁がありましたように、評価委員会そのものも、どういう議題、どういう日程ということを議論しながら進めていくという状況だとお聞きしております。
 私どもといたしましては、中長期開門調査の方針につきましては主体的に考えていかなきゃいけないという立場から、評価委員会への説明等を進めていくこともいたしますけれども、主体的に検討を進めていかなきゃいけないというふうに考えております。
楢崎委員 農水省が暴走しないように気をつけてくださいよ。
 大臣にお聞きしますけれども、大体、調査を重要視されるんですか、それとも六年度の完工、工事完了というものを重視されるんですか。どちらですか。
亀井国務大臣 それぞれの調査、またその検討会議の結果、こういうものを十分重視していくことが必要だと考えております。
楢崎委員 六年度の完工よりも、まずそういう調査結果を重視したいというふうに私は受けとめました。
 いずれにしましても、諫干事業を強行している農村振興局は、どんな形にせよ、この検討会議に介入することは望ましいことじゃないですね。ミスリードされないように、また、その人選も含めて農水省の姿勢は非常に問題があるということを強く指摘しておきます。
 そこで、何か、短期開門調査による補償問題が起こってきていますね。
 短期開門調査、昨年の四月二十四日から五月二十日にかけて実施されたわけですけれども、それによって被害が出たということで、諫早湾沿岸の小長井町、瑞穂、土黒、神代の四漁協に国が補償額を提示しているということですが、これはどういうことですか。
太田政府参考人 農林水産省におきましては、ノリ不作等第三者委員会の見解の趣旨等を踏まえまして、排水門をあけることによって被害が生ずることがないよう、また、そのことを地域の方々が実感し得るよう、調査方法を検討し、有明海の再生に向けた総合的な調査の一環として、諫早湾干拓事業による有明海の環境への影響を調査するために、短期の開門調査を含む開門総合調査を実施している状況にございます。
 この短期開門調査を行うに当たりましては、潮受け堤防を造成後安定化しつつある諫早湾内漁場に被害が出ないよう、排水量を段階的に増加させるなど必要な措置を講じることといたしましたが、万一被害が生じた場合には誠意を持って必要な措置を講ずるという基本方針で実施したところでございます。
 これに先立ちまして、湾内の四漁協から、短期開門調査に伴いアサリなどの漁獲高が減少するとの強い懸念が示されるとともに、漁場などへの影響につきまして、農林水産省が前もって行った水質、潮流などの影響予測調査の結果、開門調査の水質などへの影響は諫早湾内にとどまるが、開門開始直後は調整池の濁りが拡散し、アサリ漁場などへの影響が及ぶ可能性があることが明らかになりました。
 こうした状況を踏まえ、九州農政局が長崎県の立ち会いを得て、湾内四漁協との協議を行い、その結果を踏まえ、必要な対応をとることとしたものでございます。
 具体的には、短期開門調査前後のアサリなどの生息状況調査結果と魚類の漁獲量について漁協からの聞き取り結果を踏まえ、農林水産統計などの客観的なデータ等を比較考量し、短期開門調査による損失が確認できたため、補償を行うこととしたものでございます。
楢崎委員 諫早湾を締め切ったことによる被害の因果関係は認めなくて、あけたことによる因果関係は認める、そういうことになるんですよ。冗談じゃないですよ。今の答弁は、はいそうですかと受け入れるわけにいかぬですよ。
太田政府参考人 この短期開門調査での排水門の操作と申しますのは、委員御承知のとおり、調整池から諫早湾へ専ら排水を行う従来のこれまでの水門操作ではなくて、調整池の中に大量の海水を逆流させるなど、諫早湾干拓事業において想定しておらなかった水門の操作を行う、そういう調査でございます。
 また、短期開門調査に先立ちいたしました影響予測調査によりますと、先ほど申しましたようなことが、影響が及ぶ可能性があるということが判明いたしましたことから、その後の生息状況調査等の結果を踏まえて対応したものであります。
 したがって、このたびの補償は、想定していなかった短期開門調査による損失に対するものでありまして、諫早湾干拓事業そのものに関しましては、既に漁業補償は完結している状況にございますことを御理解いただきたいと思います。
    〔委員長退席、鮫島委員長代理着席〕
楢崎委員 理解はできません。
 それでは、その因果関係を示す資料を提出してください。いいですか。きょうじゃなくていいですよ。
太田政府参考人 現在、補償の話し合い自体がまだ進められている状況でございますので、ここでそのことの明言は差し控えさせていただきたいと思います。
楢崎委員 ちょっと待ってください。あなた、因果関係を認めたから今補償の問題が出ているんじゃないですか。その因果関係を示す資料を出してくださいと言っているんですよ。
太田政府参考人 当方として因果関係を説明できる資料を後ほど提出させていただきます。(発言する者あり)
楢崎委員 出すんだって。出すって。
 これは諫干事業推進派で短期開門調査にも反対していた漁協なんですね、この四漁協というのは。その四漁協の同意を得るために、最初から約束していた、つまり、開門調査手当ともいうべきものではないんですか。どうですか。
太田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、短期開門調査を行うに当たりましては、潮受け堤防を造成後安定化しつつある諫早湾内漁場に被害が出ないよう、私どもといたしても最大の努力をするということで考えてはおりましたけれども、万が一被害が生じた場合は誠意を持って必要な措置を講ずるという基本方針で臨んだところでございまして、これも申し上げましたとおり、四漁協からそういう懸念が示されたこともございますけれども、他方で、事前に行いました影響予測調査の結果として、その可能性があるということが判明いたし、また、その調査結果として、その影響が認められたということでございまして、御指摘のようなことは当たらないというふうに考えております。
楢崎委員 今局長が言っておられることは、武部元大臣が、調査による被害は国が誠意を持って必要な措置をとる、この発言に開門反対派のこの四漁協が同意した経過があるらしいですが、要するに、農水省とその反対漁協とでそういう約束をする、同意書みたいなものはあるんですか。
太田政府参考人 地元説明を行いました際に、万が一被害が生じた場合については誠意を持って必要な措置を講ずるということを明言して対応しております。
楢崎委員 口約束ですか。
太田政府参考人 その旨の説明をし、また、その考え方を地元に示した文書といいましょうか、大臣のお考えを示したそういうペーパーで説明を行っております。
楢崎委員 四月某日の深夜の密談と同じじゃないですか、払う根拠ないじゃないですか。幾ら大臣といえども、個人的な口約束に国税投入できませんよ。それはだめですよ。
太田政府参考人 基本方針は方針といたしまして、事前に行いました環境影響予測調査の結果、そして現実に調査しました結果、そういったものを総合的に勘案して補償を行うこととしたものでございます。
楢崎委員 大体どの程度の要求を受けているんですか。そして、こちらが示している額は幾らなんですか。
太田政府参考人 今まさにその話し合いが行われている状況でございまして、その結論を見るに至っておりません。そうした状況でございますので、ここでそのことを御説明することは、申しわけございませんが、御容赦いただきたいと思います。
楢崎委員 だめですよ。税金から払うわけですからね。提示している額はあるわけでしょうが。まだ話は煮詰まっていないかもしれないけれども。
 幾ら要求を受けて、じゃ幾ら払いますと提示しているんですか。経過でいいから報告してください。
太田政府参考人 補償の経過そのもの、この話し合いの経過自体が補償の決着に対して影響が考えられるということでございますので、その点をぜひ御理解を賜りたいというふうに思います。(楢崎委員「納得いかないですわ。何で税金払うのに、その話をしているのに額を提示できないんですか」と呼ぶ)
鮫島委員長代理 どうぞ質問を続けてください。
 どうぞ、楢崎欣弥君。
楢崎委員 納得いきませんね。いずれにしましても、先ほど言いましたように、締め切ったことによる因果関係は認めなくて、あけたことによる因果関係は認める。このように役所に都合のいい解釈に基づく、それも、反対派の漁協を懐柔するような支出を認めるわけにはいかない。当然じゃないですか。もし支出されるようなことがあったら、私は決算委員会で取り上げますからね。そのことを申し述べておきます。
 それから、今年度のノリのできぐあいですけれども、最初は順調に見えましたけれども、最後は惨たんたる状況になりました。大体、ノリ生育に適した栄養塩というものの量は、海水一リットル当たり九十八マイクログラム以上と言われているんですけれども、福岡県における一月の量は三十五マイクログラム。熊本の荒尾ではもっと悲惨な数字が出ているんですね。
 農水省は、二〇〇〇年度以来のこの不作の原因、何が原因だととらえておりますか。
木下政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども、平成十二年度のノリ不作を契機といたしまして、ノリ不作等の第三者委員会でその原因等について検討いただいたところでございます。
 まず、十二年度のノリ不作でございますけれども、十二年の秋でございますけれども、大量降雨に引き続き晴天が持続して、またその時期の水温が高かったというような、第三者委員会の報告によりますと、かなり異常な気象、海象によって発生をしたというふうに考えております。
 また一方で、本年産のノリの状況でございますけれども、委員御指摘のとおり、昨年十月上旬から秋芽網が始まったわけでございますけれども、当初は病害の発生等もなく生産は順調に推移をしたわけでございます。ただ、十二月から始まりました冷凍網でございますけれども、十二年度に見られましたような赤潮の発生は見られませんでしたけれども、委員御指摘のとおり、栄養塩の不足からノリの色落ちが発生をしたという点でございます。その後も栄養塩が回復せず、生産は低調に推移をしたという状況でございます。
 このように、今漁期の後半が不作であった原因といたしまして、関係各県からの報告によりますと、栄養塩の不足は、梅雨の時期も含む夏以降の降雨が少なく、河川からの栄養塩供給が少なかったためであり、一月中旬からのノリの色落ちは、乏しい栄養塩をノリが消費したことが原因と考えられるというふうにされたところでございます。
 ちなみに、ノリ作にとって重要な六月から九月にかけての降雨量を佐賀市の例でとってみますと、昨年の場合には平年の五割にとどまっていたという状況でございます。
楢崎委員 あるときは大雨のせい、あるときは少雨のせい。また天候のせいですか。
 私は、少雨については過去にもあったと今までも言ってきました。いいですか。これは降雨量を示す資料なんですけれども、福岡県の例です。昨年の十月からことしの一月まで、ノリ漁業にとっては一番大事な時期なんですけれども、これはずっと定点観測しているんですね。福岡の甘木、久留米、大牟田、この三地点で定点観測をやっているんですけれども、四カ月の雨量というものが九百二十ミリですね。昨年の同時期では千二百四十八ミリ。確かに少ない。ところが、福岡大渇水と言われたあの九四年の十月から九五年の一月まで、今言いました三地点の雨量は四百九十三ミリですよ。今期の約二分の一ですよ。それでもノリはとれたんですよ。
 農水省は天候のせいにしたいようですけれども、言いかえれば、そういう天候の影響を受けやすくなった有明海の環境変化というものが問題なんじゃないですか。どういう認識をお持ちですか。
木下政府参考人 ノリの生産でございますけれども、これまで第三者委員会での指摘もございますけれども、海況あるいは気象との関連が非常に難しい作物であるというふうに指摘をされたところでございます。したがいまして、私ども、海況なり気象に十分注意をした管理が必要だというふうに認識をいたしております。
楢崎委員 現実問題として、悠長なことを言っている状況じゃないんですね。結局、私が今まで主張してきた有明町と熊本の長洲町を結ぶ湾奥部がことしもやられているんですね。とにかく、今すぐにでも中長期開門調査をやるべきだと私は思うんですよ。これは政治的決断を要する問題ですよ。大臣、どうですか。
亀井国務大臣 今いろいろ御指摘も受けたわけでありますが、それぞれ今までの経過もございます。まず、先ほど来の検討委員会等々、十分検討して今後の対応をしっかり図ってまいりたい、こう思っております。
楢崎委員 大臣になられて間がないですからその辺のところは理解しますけれども、やはり、あの諫干事業の水位管理を停止すれば、とにかく諫早干潟の復元というのは今からでも可能である、そのことをぜひ認識しておいていただきたい、このように思います。
 一方、ノリ漁業者の疲弊が深刻になっているんですね。
 特措法に基づく拠出金というのは、基本的には、漁民には行かないで、マリコンを初め業者に行くようになっているんですね。しかし、ノリ漁業者の人たちは二〇〇〇年度の大凶作の痛手からまだ立ち直れていない、借金の返済にも追われている。それに追い打ちをかけるようなことしの凶作ですよ。
 ただ、特措法では、二十一条それから二十二条で、二十一条は「赤潮等による漁業被害等に係る支援」、二十二条は「赤潮等による漁業被害者の救済」、こういうことがうたわれておるんですから、この二十一条、二十二条に基づく漁民救済策を検討すべきであると思うんですが、いかがでしょうか。
    〔鮫島委員長代理退席、委員長着席〕
木下政府参考人 私ども、今回のノリ不作に対しまして、まさに有明海特措法二十一条の趣旨を体しまして、幾つかの対策を講じているところでございます。
 まず第一点は、既に十二年に貸し付けた貸付金の償還期限の延長等々もございます。漁業者の実情に応じて個別に相談に応じるよう指導しているところでございますし、また、十二年度の対策を踏まえて実施をいたしました共済事業につきましても、できるだけ早期に支払いをするように指導しているほか、今年度のノリ不作に対しまして、災害による被害につきまして沿岸漁業経営安定資金の融資制度につきましても活用してまいりたいというふうに考えております。
楢崎委員 そのことも含めて、有明海漁民ネットの方が、あしたの午後四時から農水省の方に陳情といいますか申し入れに行かれますので、誠意を持って対応を検討していただきたいと思いますが、大臣、いいでしょうか。
亀井国務大臣 先ほども申し上げましたが、今までの対応、これらをしっかり受けとめて今後の対応をしてまいりたい、こう思っております。
楢崎委員 では、あしたの有明海漁民ネットによる陳情につきましてはよろしく対応をお願いします。
 それから、長崎県知事選挙をめぐる違法献金問題事件で前幹事長が逮捕されたことは御案内のことですけれども、この献金にも諫干工事受注業者が大きく貢献しているわけですね。受注額のトップは五洋建設ですけれども、献金もトップ。要するに、受注上位が献金上位を占めている。
 さらに、諫干事業に関して言えば、献金した翌年度に受注した企業、もう時間がありませんから名前を言いませんけれども、これが二社。反対に、受注した翌年度から献金を始めた企業が一社あるわけですね。これはやはり、献金と受注の時期が近いということは、わいろ性の問題が出てくる。
 これが諫干事業の実態なんですよ。諫干事業受注業者からの政治献金、その受注業者への天下り、要するに政官業癒着構造がなし得る典型的な公共事業なんですね。そういう政官業トライアングルのしがらみがこの諫干事業の根底にあるから、政治的にもストップできない、そういうアリ地獄に陥っているんじゃないですか。どう思われますか。大臣。これは政治的な問題だから。
亀井国務大臣 工事の発注等につきましては、会計法令に基づきまして、一般競争入札、あるいはまた公募型指名競争入札、この導入によりまして適正に執行されている、このように考えております。
楢崎委員 いいですか、大臣。有明海再生と諫干事業は両立し得ないんですよ。そのことを申し述べて、終わります。
小平委員長 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。新しい大臣のもとで初めて質問させていただきます。
 実は、先般、有明法案を議員立法で成立させることができました。その中で、私ども自由党が提案して総量規制の条項を、十八条の二項の中に「有明海及び八代海の海域に流入する水の汚濁負荷量の総量の削減に資する措置を講ずるものとする。」そうなっておりますが、実際に、この三月までにということで、農水省も、基本計画、指導計画というのですか、そういったものを、環境省ですか、いずれかそういう対応をした、そう考えておりますが、実際、簡単でいいんですが、どのような総量規制についての措置をしたか、環境大臣政務官にお答えいただきたい。
望月大臣政務官 お答えさせていただきます。
 有明海及び八代海の再生につきましては汚濁負荷量の総量の削減が重要であるということは、もう先生おっしゃいましたように我々も認識しておりまして、特別措置法第十八条二項においても、「有明海及び八代海の海域に流入する水の汚濁負荷量の総量の削減に資する措置を講ずるもの」と記述させていただいております。
 特に、本年二月に告示されました有明海及び八代海の再生に関する基本方針においても、汚濁負荷の総量削減の措置として、生活排水、工場・事業場排水、農業、畜産、養殖漁業等に起因する汚濁負荷の削減を進めるとともに、新たな総量削減の方策の検討を進めることを明記しております。そして基本……(山田(正)委員「そこで結構です」と呼ぶ)よろしいですか。
山田(正)委員 望月大臣政務官に、僕は、前回の有明法案のときに、実は、措置を講ずるということは、その中身は一体何なのか、実際に総量規制をやるのか、やらないのか、そう質問いたしております。この議事録にもあります。実際に有明海でも総量規制をやるのか、やらないのか、そこだけで結構だから答えてほしいと。そのとき、望月大臣政務官は、環境省といたしましては、有明海の再生が図られるように、汚濁負荷量の総量の削減、総量規制を導入することで対応してまいりたいと。導入するとはっきり答えております。
 これは、前日まで、その答弁については金田筆頭理事ともいろいろ打ち合わせをして、十分、やるのか、やらないのか、そこの点だけは明確にしてほしい、そういうもとでやったわけですが、実際に総量規制なるものはせず、いいですか、今あなたがおっしゃったように、いろいろな排水、出てくるものについて、工場とか農場とか、こういうことをしなさいとか具体的に、例えば東京湾でやっているように、東京湾あたりでは、具体的に、化学的酸素要求量の総量、いろいろな事業所及び農業者、そういったものから東京湾内に入るものについては百五十六トンまでに総量で規制すると具体的な方針を決めて、実際に実施させている。そういったことを一切やらずに、ただ検討をするということで濁している。これはどういうことなのですか、望月政務官。
望月大臣政務官 前回の答弁、私も答弁書を見させていただきましたし、先生の質問も見させていただきまして、まさに先生のおっしゃるとおりに、総量規制についてはそれを進める、そういうことでお答えさせていただいております。
 それで、その中で、総量の削減の方法の中に、実は、一方法として総量規制が入っているという我々認識でございまして、これは、新たな総量削減の方法の検討を進めるということで、この地域に最も適当な総量規制というものをやはり考えていかなきゃならない、それについては、あらゆる団体の皆さん、もちろん各県、これに近隣する六県だとか、あるいはまた農業、いろいろな皆さんとお話をさせていただいて、この地域に最もということで、我々は今それを進めているところでございます。
山田(正)委員 望月政務官はちっともわかっていないんじゃないですか。
 総量規制というのは、例えば長崎県、佐賀県、熊本県云々の事情においてやるのではなく、東京湾と伊勢湾と瀬戸内海、この三つだけ今総量規制をやっていますが、有明海でもそれをやろうと決めた。決めたら、国が総量、さっき言ったように、いわゆる化学的酸素要求量とか窒素含有量、燐含有量、そういったものの総量を国が決めるんですよ。各地域の事情を聞いてこれから検討する、研究する、これはまさに我々国会での議決、法律を無視していることなんですよ。
 これは、望月政務官の答弁はきちんと議事録に載っているわけですから、やると言って。それを現実にやっていない。この責任はどうとられるつもりなのか。望月政務官、きちんと答えていただきたい。
望月大臣政務官 先生のおっしゃることももっともだと私も思いますけれども、こういう総量規制をするにはもちろん手順がかかりまして、各いろいろな皆さんの御意見も聞きながら、そしてまた国もそういったところから正しい指導ができるような形での総量というものを決めていかなくてはならないのではないかなと私は思います。
 それで、この法律をつくったときも、与野党の皆さんがそろって、この形でいきましょうという形で総量削減というような形のものになっていると思いますし、それから、先生の質問の中でもありますように、瀬戸内海あるいは東京湾みたいに、最初からそういった事情でなかなか難しいと思うけれども、必ずこういうような形を進めていけ、我々もそういうような形で総量規制は進めていく、そういうことで順次進めているところでございます。
山田(正)委員 幾ら言っても時間のむだかもしれないけれども、大臣政務官に一つだけ答えていただきたい。いつまでにやるのか、やらないのか。
望月大臣政務官 瀬戸内海、東京湾方式といろいろございますけれども、過去の導入の経過を踏まえれば、基礎的な情報の収集、調査のほか、関係者、関係県との調査を含め、導入年を決めていかなくてはならない、このように考えておりますけれども、どちらにいたしましても、大切なことでございますので早急に調査を進めて導入に向かって進めていきたい、このように思っております。
山田(正)委員 いつまでにやるのか、やらないのか。
 政務官としては、我々は国会で法律を審議し決める、そして、その法律案について、その責任者たる政府に答弁を求め、政府もやると言いながら、今のような答弁ではまさに国会無視であって、これ以上質問できない。
望月大臣政務官 たくさんの近隣の県の諸事情もございますし、あるいはまた、たくさんの仕事をしている皆さん、農業、工業を含めて、そういう皆さんもおります。そういう中で、地域を守るということでの総量規制というものを総量削減の中で考えているということでございまして、我々は、国としてはそれを必ず進めていきたい、そういうことでございます。
 あえて何年というような形で言わせていただきますと、東京あるいは瀬戸内海は三年から四年の期間をかけて総量規制を決めているということでございますので、今の調査の対象あるいは進め方でいきますと、大体三年程度が見込まれるのではないかな。しかしながら、そういう中で、先生おっしゃるように、大切なことでございますので、早急に導入されるような形というものを進めていきたい、このように考えております。
山田(正)委員 大臣にお聞きしたいんですが、有明法案の関連ですけれども、いわゆるノリの酸処理ということについてはレクを受けていると思いますが、ノリの酸処理の液を、箱舟、いわゆるノリ養殖の箱舟からそのまま海洋に放棄している。そうすると、酢酸ならばかなり問題ないんでしょうが、塩酸とか、安いそういったものを使った酸処理によって、そして海の汚染が進み、タイラギとかそういったものが全滅していったのではないか、そういう質問を前回やったわけですが、海洋に投棄するということは、これはまさに法律違反である。これは法律によって規制されているわけですが、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律、これの第十条で禁止されて、一千万円以下の罰金に処せられることになっている。
 ところが、これがこれまで全く野放しであった。あれだけのノリ業者がどんどんやっている、それが野放しであって、それを前の大島農水大臣に、どうするのか、調査するのか、立入調査までやって何とかしなきゃならないんじゃないかと質問したときに、この議事録が残っておりますが、調査及びそういう問題をしかと研究させて何らかの行動をとってみたい、そう大臣は答えております。
 大島大臣の後を引き継いだ新大臣ですが、ひとつ、農水省としてそういう具体的な調査行動をとったのかどうか、それを明らかに答えていただきたい。
亀井国務大臣 今委員御指摘の、農林水産省として、ノリの酸処理剤については、食品添加物であって、天然の食品に含まれ、ノリに残留しない有機酸を用いること。残液は海中に投棄することなく、中和処理等の上、下水等を通じて排出させる等、適正な処理処分を行うこと。使用に際しましては、県の試験研究機関に事前に相談し、その指導に従うこと等の指導を行っているところであります。
 有明関係四県では、各県漁連等と協力して、酸処理液の繰り返し使用、残液の適切な処理等について、漁業者に対し指導、監視を実施しております。また、農林水産省として関係県を通じ使用実態等の調査を行っているところであります。
 現在、十四年度漁期がほぼ終了しつつありますが、これまでのところ、有明四県からの報告によれば、不法投棄を初めとする不適正な使用は確認されていない、このようなことであります。
山田(正)委員 実際に現場を大臣見られたことはないと思いますが、舟の中に溶液を、溶液というか、いわゆる酸液を入れておいて、かなりのものです。ノリのひびをそれにつけて、除藻剤の役割として酸処理しているわけですが、その液を投棄せずに、全部そのまま回収したということですか、ノリ業者があれだけいて。農水省の調査はそうだということですか。それでは、こちらも調査しなきゃいけない。
 農水省の調査の結果に過ちないと大臣は断言できるかどうか。はっきり答えてください。
亀井国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、都道府県がいろいろやっております。使用実態の調査を行っているわけでありまして、不適正な使用は確認されていないということであります。
山田(正)委員 都道府県に責任を転嫁させるのではなく、農水大臣がみずから調査及び何らかの行動やるとはっきり明言しているのであって、農水大臣としてその調査結果に責任持てるかどうかと言っているので、責任持てる、持てない、どっちかを答えていただければいいわけです。
亀井国務大臣 私どもとしては、この処理剤につきまして、適正な使用、こういうことを徹底を図るということで、都道府県を通じていろいろなことをさせておるわけであります。
山田(正)委員 大臣、大臣が答弁し、やります、行動しますと言っていて、ただ、都道府県に不法な処理や使用はなかった、それで調査は終わったと。そんなことで農水大臣が務まるとは思えない、僕は。
 大臣、もう一回で結構です。
亀井国務大臣 最終的な調査結果というものが上がってきているわけではありません。現在調査もいたしているところでございますので、今御指摘のような点、さらに十分徹底するように努力をしてまいりたい、こう思っております。
山田(正)委員 当時の質問では、現地立入調査等を含めと、そういう議論をこの委員会でやっている。大臣、それを承知の上で、もう一回、その結果を私はこの委員会で質問したいと思っているので、十分な調査をしていただきたい。
 そして同時に、海上保安庁長官、来ていただいていますが、これは違法ではないのか。取り締まりできるのではないのか。その点についてお答えいただきたいと思います。
深谷政府参考人 御説明申し上げます。
 ノリの養殖業におきまして、ノリの網についた雑藻類等の除去に使用した酸処理剤、御指摘のものにつきまして、廃棄物としてこれを海中に排出するような行為につきましては、一般論として申し上げれば、これが陸上から行われる場合、これは廃棄物の処理及び清掃に関する法律の違反に、これが船舶から行われるというふうな場合には、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律にそれぞれ該当し、違反行為だと考えております。
山田(正)委員 今長官が申されたように、これは法律違反、いわゆる刑罰も含めて、厳しく調査して、海の汚染、農水省としても海上保安庁としても対処をしていただきたい、そう思っております。
 次に、前回、漁協の合併の話を質問したときに、漁協の自己資本比率を一〇%にしている、ほかの信用組合とか銀行とか、これは四%を切った場合には改善命令等が出されるわけですが、実は漁協の場合にはまさに一〇%という大変重い責任を課されている、それをどこで決めたのか、だれが決めたのかと言ったら、中金の理事長、中金の方で決めたと、理事長というわけじゃありませんが、そういう話があった。
 それならば、中金の理事長をこの委員会に呼んで、どんないきさつで、どういう形でそれを決め、漁民はそのためにまさに貸しはがしに遭っている、新規の貸し出しというのはほとんどない、そのいきさつを聞こう、そう思って、きのう、中金の理事長を参考人に呼んでいただきたいと私の方で要求した。ところが、金田筆頭から、民間だからなかなか来られないようだという話で、きょう、どうやら中金のあの理事長は見えていない。
 農水大臣、中金は政府系金融機関では、確かにそうではない。しかしながら、漁協とか農協の頂点にあって、そして、しかもその理事長は農水省のOBである。そんな中で、当然、ここに来て、なぜ漁協を一〇%に決めたのか、それを明らかにすべきである、そう思うが、政府系金融機関ではない、民間だから来られない、こういう態度に対して大臣はどう考えられるか。まず、それをお聞きしたい。
亀井国務大臣 委員からもお話しのとおり、農林中金、これは完全に民間の金融機関であります。それらのことを踏まえて、いろいろ当時御議論をされたことと思いますし、これらは、民間、こういう立場でいろいろ進めていくことが必要なことではなかろうかな、こう思います。
山田(正)委員 大臣、農水省のOBが理事長であって、漁協、農協の一番頂点にある、そういうものを、民間だから、この委員会では民間はそういう重要な者を参考人として呼べないと思われるか、思わないか。
亀井国務大臣 その件につきましては、委員会でいろいろ御議論をいただくことではなかろうかな、こう思います。
山田(正)委員 そのために、一〇%という自己資本比率のため、漁協は、今どこの漁協でも、全国津々浦々、大変な状況になっている。ということは、漁民にほとんど新規の貸し出しがなされていない。そしてまた、今まで借りた分についても返済を強く迫られ、そして対馬においては、昨年からことしにかけて漁業者だけで十一人も自殺している。
 このような現場、このような状況というもの、これをまさにどうするかということ。私どもはそのことをいろいろと苦慮し、いろいろその対策を考えなきゃと言いつつ、そして、この四月一日から、漁業者に無担保無保証の借り入れ、保証人もない、担保もない、そういったものに、いわゆる新規であれば千五百万、あるいは今までの事業をやるというものであれば八千万まで、経営改善支援事業、もう一つは漁業・地域維持対策事業、これでやれるということになった。これは私にとっては、農水省もこれに本気で取り組んでいただくなら、大変ないい制度である、そう考えておりますが、この点について大臣に、その中身についてお聞きしたいんです。
 漁業を今までやってきて、大変苦しい、新規で貸してくれない。そういったときに、例えば二千万なら二千万借り入れしたい、そうするとして、漁協とかあるいは信連とかそういったところに申し込む。そして、それについていわゆる漁業信用基金協会、ここが保証をする。そのかわり保証人も、会社であれば代表者の保証が必要かもしれませんが、保証人も要らない、いわゆる担保も要らない。そういう制度だと思うんですが、実は、この信用基金協会というのが、今までは担保をとらないと保証してくれなかったし、延滞があるからあなたのところは保証できないとか、いろいろなことでなかなか保証してくれていないのが実態である。
 今回、申し込みすれば、信用基金協会としては当然担保は要らないでやると思われるが、その場合に、どういう基準でどういうところがその審査をするのか。大臣にレクしておいていただきたいと言っていたので、お答え願いたい。
亀井国務大臣 漁業改善等資金融通円滑化事業、これは、意欲を持って経営改善に取り組む漁業者や担い手として地域が支えようとする漁業者等に対する漁業保証保険について、これら漁業者等が担保や保証人を持たない場合であっても一定額まで必要な融資を円滑に受けられるようにするための仕組みとして、平成十五年度予算において創設されたものであります。
 本事業を活用して借りかえ資金についての無担保無保証での保証を利用する場合、漁業者は、借りかえ資金の借入について金利を負担するとともに、各県の漁業信用基金協会に対して保証料を負担する、こういうことが必要でありまして、仮に沿岸漁業者が借りかえ資金である漁業経営維持安定資金を二千万円、償還期限七年、うち据置期間二年という条件で借り入れたとして試算すると、借入初年度においては、現在の末端金利が一%であることから、それに対応する利息二十万、現在の保証料率が二%であることから、それに対応する保証料四十万円の合計六十万円を負担する、このような制度であるわけでありまして、所定の手続によってこの制度を受けるということが可能だ、このように思います。
山田(正)委員 ちょっと私の質問に直接答えてもらえなかったようですが。
 漁業者が借金をかなり抱えておって、保証人も担保もない。ところが、どうしても運転資金にお金がかかる。そういった借り入れの申し込みをして、信用基金協会がこれまでみたいに、担保があるかないか、あるいは焦げつきがあるかないか、これまでかなり債務不履行があるじゃないか、遅滞があるじゃないか、そういったことは考えずに、かつて中小企業を救うために五千万まで無担保無保証で信用保証協会がどんどん保証して助けてやったことがある、そういう趣旨のもとに、かなりの程度緩やかに、漁業者の債務整理資金も含めて、いわゆる保証料二%を払えばどんどん貸してくれるという制度なのかどうか。
 その辺、大臣、今回の制度の趣旨、それによって各県の漁業信用基金協会の扱いも違うと思うんだ。それをお答えいただければと思います。
亀井国務大臣 無担保無保証人での保証引き受けを行うことができるかどうか、これは、保証審査委員会の審査を経ることであります。そして、それらのことにつきましては、過去に延滞をしたことのある漁業者であるかどうか、こういうようなことで疑問視されるところがあるわけでありますが、延滞をしたことがあるからといって直ちに保証引き受けが否定されるというようなことのない制度、このように考えております。
山田(正)委員 かつての中小企業に対する五千万までの無担保無保証の救いをやったように、そういう同じ制度で、今本当に困っている漁業、これは農業よりも漁業者の方が今非常に深刻である、そういったものを少しでも救おうという趣旨でつくられた制度であるかどうか、その辺をはっきりお答えいただければ、もうそれで私の質問はいいんですが。
亀井国務大臣 中小企業の制度、これと全く同じか、こう言われると、必ずしもすべてというわけにはいかぬと思いますけれども、漁業者の立場に立って適切に対応できるような、そういう制度、このように考えております。
山田(正)委員 私の質問時間は来てしまいました。どうか、大臣、その趣旨を踏まえ、そしてまた、ぜひ一〇%枠の撤廃に向け、そしてまた、漁協の合併等の債務保証、債務整理の問題、不良債権の償却、これについても、農協以上に今漁協は大変であるという事実を踏まえて、十分にその措置を講じていただきたい、そう大臣に強く求めて、私の質問を終わらせていただきます。
小平委員長 次に、中林よし子君。
中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。
 質問の前に、余りにもこの委員会の出席率が悪い。もちろん、与党だけを責めるわけにはいかないと思います。いろいろな委員会が一斉に開かれているために、重なっているメンバーもいることは承知しておりますけれども、少なくとも、与党側がこれだけがらがらというのは、本来ならば質問できないような状況にあるというふうに思うんですが、そこはあえて言いません、進めさせていただきますけれども、委員長、ぜひ、定足数に達するような、そういう委員会運営をやっていただきたいというふうに思います。
小平委員長 中林委員からのことについては次回の理事懇で協議しますが、委員各位もぜひ御出席を、委員長からも要請いたします。
中林委員 WTO農業交渉の問題に限ってですけれども、大臣に質問させていただきたいというふうに思います。
 三月末のモダリティー合意はできなかったわけですが、今後の交渉いかんで日本農業に大変大きな影響を及ぼすことは間違いございません。
 そこで、今後のスケジュールからいうと、一つはサミットがあるというふうに思います。それから、九月のメキシコ・カンクンでの閣僚会議、ここが非常に大きな意味を持ってくるというふうに思うわけです。
 亀井大臣のこの所信的な発言、これで、このWTO交渉の問題で、「我が国としては、引き続きEU等と連携し、かつ、途上国の関心事項に十分配慮しつつ、多様な農業の共存を基本哲学とする我が国の主張に即したバランスのとれた現実的な合意を目指して、政府一体となって全力を尽くしてまいります。」こういうふうに述べていらっしゃるわけですが、この「バランスのとれた現実的な合意」、この中身がよくわからないんです。それは具体的にはどういうことを意味しているのか、関税の引き下げもその中に入っているのか、その点について説明していただきたいと思います。
亀井国務大臣 三月末までのモダリティー確立、これに至らなかったこと、いわゆる米国、ケアンズ諸国と、あるいはまた我が国、EUとの溝が埋まらなかった、こういうことについては大変残念に思っております。
 こうした交渉の過程で、我が国は、委員御指摘のような、バランスのとれた現実的なモダリティーが確立されるよう強く求めてきたところでもあります。
 具体的には、次の三つの事項を主張してきたところであります。
 まず、関税削減のウルグアイ・ラウンド方式や国内支持削減の総合AMS方式等によって品目別の柔軟性を確保すること。また、国内支持における黄色、緑、青の区分のようなウルグアイ・ラウンド合意の基本的枠組みを維持すること等により、改革の継続性を確保すること。そして、市場アクセス、国内支持、輸出競争の三分野のバランス、特に輸出入国間の権利義務バランスを確保すること。
 このような我が国の主張が反映され、バランスのとれた現実的なモダリティーが実現するよう、今後とも、EU等フレンズ諸国などと連携を図りながら、強力に、全力を尽くしてまいりたい、こう思っております。
中林委員 我が国のWTO農業交渉における基本的姿勢というのは私もよく承知しているわけですけれども、問題なのは、三月末のモダリティー合意に向けたときの農水省の姿勢も、実は、EU提案、これと同調していくんだ、このような基本姿勢がありました。EU提案というのはもちろん関税引き下げ、基本的な数字が明記されておりました。
 そういう意味では、今言われた中には、私が質問した、関税引き下げもそこには入っているのかという点についてお答えがなかったわけですけれども、その点についてはいかがでしょうか。大臣。基本的姿勢ですから。
亀井国務大臣 関税の問題につきましては、ウルグアイ・ラウンド方式、平均三六%の引き下げ、そして最低一五%、このような考え方、漸進的削減、品目ごとの柔軟性、こういう意味で考えておるところであります。
中林委員 そうすると、EU提案で同調されると言ったときに、数字の部分に同調して、そこは変わらないということですね。
 そうすると亀井大臣、関税引き下げ、その最低一五%、平均三六%というEU提案が、このモダリティー確立に至るまでのEU提案としてはありました。では、これは、最低一五%まで下がってもいいというお考えなのですか。どこまで下がることを容認するのですか。それをお答えください。
亀井国務大臣 これらの問題はこれからいろいろ進めるわけでありまして、関税、国内支持のAMS及び輸出補助金それぞれの削減率、関税削減についてはウルグアイ・ラウンド方式での平均三六%、品目別最低一五、こういうことを数字として記載しているわけでありますが、その内容、我が国が主張してきた現実的な漸進的な支持、保護の削減という考え方に、EUとも合致することでもあります。これらの問題について、これから、そのバランス、そして柔軟性を持って対応してまいりたい、こう思っております。
中林委員 それでは、最低でも一五%というEU提案、これは合理的なものだというふうに今御答弁されたということは重大問題だと私は思うんです。これ以上関税引き下げをすれば、日本の、米はもちろんですけれども、EU提案は、ほかの穀物、それから乳製品、さらには果物、こういったものもすべて引き下げ対象になっていくわけですから。
 そうすると、お米で一五%引き下げても、私どもは今、平均輸入価格で、米の値段で試算すると、十キロ当たり三千二百六十円ぐらいになるということなんですよ。大体、今お米十キロ当たり幾らぐらいのを食べているかというのは、もうこれは予算委員会で私、全大臣と議論したところですけれども、四千円というのが首都圏の消費者が食べているお米の値段です。もう当然入ってきます。
 これは平均ですから、もっと安いのがあるということになれば、EUのこの最低一五%引き下げ、これは合理的なものだということを今御答弁されたということは、日本の米生産農家に物すごい失望を与えるんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、あくまでも、この最低一五%ということは今後日本の政府として押していくということなんですか。確認したいと思います。
亀井国務大臣 すべて、これらの問題、総合的に考えていくという視点で今申し上げたようなわけでありまして、品目別にいろいろこれから、交渉でありますので、そのことを十分踏まえて総合的に考える、こういうことであります。
中林委員 総合的に考えるということは、EUが言っているこの最低一五%引き下げということもあるいはなくなるかもわからない、そういう可能性も含んでいるんですか。
亀井国務大臣 最低一五%の削減、これは品目別に行う必要があるわけでありまして、この水準であれば、各作物とも国内生産に特段の悪影響を及ぼすものでない、このようにも考えるわけでありまして、これからいろいろ我が国の状況というものを十分考えて対応していかなければならない、こう思っております。
中林委員 とんでもないですよ。
 お米、まあ米が一番大きな影響を与えるわけですから、だから、その最低一五%引き下げても、今言ったように十キロ当たり三千二百六十円ぐらい、今、輸入価格米で計算するとなるんですよ。そうすると、それと競争できない国内生産というのは当然出てきます。だから、それを、輸入のお米が入らないということはあり得ないでしょう。どうですか、これで輸入は防げると、大臣、言明できますか。(西藤政府参考人「数字の話ですので」と呼ぶ)いや、数字じゃないんですよ。
小平委員長 まず事務的なことですね。はい。
 西藤総合食料局長。
西藤政府参考人 先生御質問の中身が数字にかかわる話でございますので、私の方からお答えさせていただきたいと思います。
 米につきまして、先生御指摘のとおり、仮に一五%の関税カット、現行キロ三百四十一円でございますので、一五%カットいたしますと、これが二百九十円という水準になります。それに、仮に、現在の中国の短粒種の輸入価格、キロ当たり大体七十円でございます。(中林委員「そんな高いのをやっちゃだめですよ」と呼ぶ)いや、現実的な話として、その水準で換算いたしてきますと、六十キログラム当たりで見ますと二万一千五百九十一円という水準が試算されます。現在の自主流通米の平均価格が一万六千二百七十四円という水準でございますので、私ども、ぎりぎり、この状況の中では、大臣の御答弁にありましたような状況になるというふうに思っております。
中林委員 高いところだけ言っちゃだめですよ、中国のだけ。そんなのじゃなくて、うんと安いのが入ってきているし、今、キロ三十七円ですよ、平均。そうでしょう。
 だからそういう意味で考えると、今計算されたのは非常に、入らない入らないという根拠の数字として農協などでも説明されている数字だというのは私も承知しております。
 大臣、これで本当に、今局長はぎりぎりの線だ、こういうふうにおっしゃったけれども、入らない保証はありますか。
亀井国務大臣 いろいろ先ほどもお話がありましたが、品質の問題、やはりそれらが十分加味される今のお米の問題ではなかろうか、こう思います。それぞれ総合的にいろいろ考えていく必要があるのではなかろうか、こう思っております。
中林委員 結局、これはずっと議論を進めていきますけれども、EU提案がアメリカ提案よりいいだろうというようなことで、関税引き下げの議論の中で、よりまし論に安易に飛びつけば、日本の米生産農家も、ほかの農産物をつくっている農家にも多大な影響が出ます。
 今お米だけ言ったけれども、平均三六%ですから、お米で一五%とれば、ほかのものでは関税引き下げ率というのはもっと高くなるのは当然ですよ。今でも無税、無枠で入っているものも当然あるわけですから。
 そういう意味で、私どもは全部計算してみましたよ。麦、大豆、バター、あるいはコンニャクだとか落花生だとか、綿だとか生糸だとか、オレンジだとかアイスクリームだとか豚肉だとか、こういうものも全部関税引き下げになるんですよ。そうしたら、今以上の市場開放になってまいります。だから、これははっきり言って、この数字と一致するのならば、EU提案に乗っていくという相変わらずの方向ならば、私は、本当に政府の対応を改めていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。
 私は、三月末のモダリティー合意ができなかったというのは日本の食料と農業を守るためにはよかった、まだまだ交渉の余地があるということを示しているものだというふうに思うんですよ。だから、最初は、EU提案でいく、多数派を握らなければいけないという理由があったと思うんですけれども、しかし、これ幸いに交渉がまだできる、こういう期間が残されているわけですから、これは私は、日本の食料、農業をしっかりと守るという観点はどうしても貫いていただきたいというふうに思うんです。
 そこで、二月十八日付の日経の社説に、「自由貿易推進による経済の活性化や生活水準向上という大きな国益にもっと目を向ける必要がある。」「日本全体の国益を追求する通商政策」「自由な交易や投資で経済を成長させてきた日本は新ラウンドが頓挫すれば最も悪影響を受ける国の一つであることは間違いない。」こういう国益論を述べております。
 そこで、予算委員会も、外務大臣川口さんやあるいは前農水大臣と、この国益論で議論をさせていただきました。亀井大臣にお伺いしますけれども、亀井大臣は、この国益、どのようなものだというふうにお考えでしょうか。
亀井国務大臣 二十一世紀の世界が、人口問題、食料問題あるいは環境問題、飢餓、貧困問題等が顕在化しつつあり、こうした中にあって、山がちな国土条件のもとで一億を超える人口を抱えている高度な経済活動を営んでいる我が国にとっては、国民に食料を供給し、国土環境保全をする農林水産業は、ますます重要な役割を果たすものと考えております。
 WTO農業交渉においては、我が国は、多様な農業の共存を基本理念とし、さまざまな国の多様な農業が共存し合いながら貿易の円滑化が進んでいくようなルールを求めているところでもあります。
 その際、特に重要なのは、非貿易的関心事項に十分配慮した貿易ルールを確立することであり、すなわち、非貿易的関心事項は、食料安全保障、国土環境保全といった、貿易だけでは実現することのできない価値をあらわすものであり、農業交渉においてそれに配慮すべきことがドーハの閣僚宣言にも記されているわけであります。
 このように非貿易的関心事項に配慮し、先ほど申し上げました品目ごとの柔軟性、改革の継続性、輸出入国間のバランスといった主張を反映した貿易ルールを確立することが、我が国の国益に沿い、また、世界の多様な農業の共存につながるものである、そのように考えております。
中林委員 今言われた中で一番問題なのは、工業製品との問題なんですよ。
 これまで工業製品を輸出するために農業が犠牲になったということは否めない事実だと思います。したがって、今後のWTO農業交渉において、工業製品を優先するために日本の農業は犠牲を受けない、こういうふうに言い切れますか。
亀井国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、我が国にとりましては非常に重要なことでありますし、農業交渉においては、多様な農業の共存、これを基本理念にし、国民の皆様方の御理解をいただいて、農業をしっかり守るために努力をしていくことが必要なことではなかろうか、こう思っております。
中林委員 例えばセーフガードの発動問題で、暫定発動いたしました。しかし、自動車業界の方から、中国が制裁措置をとって一定の輸入制限をしたということで、大変なあつれきの中で本発動には至らなかった。日中の首脳間の話し合いということでそうなってしまったわけです。本来ならば暫定から正発動というのはどこの国もやっていた状況なんですけれども、そういう意味では、本当に国内農業を守る、国内生産を守るということが、言葉では何かごまかしながら言っているんだけれども、関税引き下げを要求されるということは、要するに輸出国の利益を求めるものだと思うんですね。
 だから、EU提案に乗っていこうという話も、EUは基本的に輸出国ですよ。日本は食料の六割を輸入しています。そういう特異な国だということを肝に銘じていただかないと、このWTO農業交渉、そういう国益という大くくりの中で、そのバランスを欠くなどということでまたまた農業が犠牲にならないように。私は、EU提案の数字でいくと言われたときに、これはだめだなというふうにもう本当に失望しているんですけれども、そこも本当に考えてやっていただかなければならないというふうに思います。
 私ども日本共産党国会議員団は、WTO農業交渉がある、また、米政策改革大綱が出たということで、とりわけ米をめぐって非常に大きな分岐点に今あるということで、全国各地の農業者あるいは農業団体、消費者、自治体、そういう方々がこのWTO農業交渉あるいは米改革大綱についてどのように考えていらっしゃるのか、現状はどうなのかということでの全国調査を展開いたしました。
 大臣御存じだと思いますけれども、北海道は日本の食料基地だ、このように言われていますね。だから、北海道の農業がどうなるかが日本の全体の農業をも左右するぐらい大きな意味があるというふうに思います。
 北海道の新十津川町、北海道の一番の米作地帯ですけれども、ここでいろいろお話を伺いました。その中で出てきた言葉というのは、十ヘクタールつくっても実際二百万円しか残らない、これでは高校なんかやれるわけがない、米価下落の中で、もう大変ぎりぎりな状況になるんだ、こういう話でございました。
 それから、自分たちの政策が間違っていたなどということを今まで政府は一言も言っていない、もう自分たちの生活は初任給以下になっているというようなことで、国の施策について大変失望感をあらわにしておられました。
 いろいろ激しい言葉などを聞いたわけですけれども、こういう話もありました。十年前に農地拡大して認定農家を奨励したが、その大規模農家が支払い金利にも苦しんでいる、それで、負債を背負って肩たたきに遭っている。後継者も育たない、離れていっている、こういうふうに言って、私は北海道だけに行ったわけではありません、東北、それから関東地方、それから東海地方、近畿、中国、四国、九州、全部回らせていただいたんですけれども、本当に、もうあきらめの境地といいましょうか、そういう事態に、もちろん意欲的な方が中にはいらっしゃいます、もちろんそれを否定するものではないですけれども、全体的にはもうあきらめの境地になっている。
 それはなぜなのかということなんですけれども、新政策に基づいて規模拡大をやったけれども、米価下落になった。それからまた、売る自由だと盛んに宣伝して新食糧法ができた、これでも米価は下落した。さらには米の関税化に踏み切った。農業は守れる、こういうふうに政府は言明しながら、こういう施策をこの十年余りやってまいりました。実態は、もう米価の急落ですよ。そういう中にあって、本来政府が言ってきたこととはまるで逆の方向になっている。WTO農業交渉の見通し、こういうふうにさらなる市場開放につながる関税引き下げ、そこに今政府が入り込んでいるということになると、ますます大変な事態になっていく。
 大臣、こういう事態をどういうふうにお考えでしょうか、受けとめておられますか。
亀井国務大臣 今御指摘がありましたが、平成十一年から四年連続で消費者物価が下落している、デフレ状態にあり、農産物の需給が緩和基調にある、こういうことから、農産物の販売価格が五年以降下落傾向にあり、特に十年から十二年にかけて大幅に下落をしております。
 こういう中で、食料・農業・農村基本法の理念に沿って、農業の構造改革の一層の加速化、あるいは意欲ある経営体が活躍できる環境条件を整備する、そして消費者の動向や視点をしっかり踏まえたニーズに即した農業生産、こういうことをぜひ進めてまいりたい。
 こういう中で、御指摘の稲作農家におきましても、消費の減少、生産調整の限界感、あるいは担い手の高齢化等の閉塞状況を打開するために、消費者重視、市場重視の視点に立って、担い手が大宗を占める生産構造の確立や、農業者、農業者団体による主体的な需給調整、多様なニーズにこたえ得る生産体制をつくり、流通改革の推進を図ってまいりました。
 米政策改革を初めとする農政のさらなる改革を図り、二十一世紀の農林水産業、農山漁村の確固たる将来を築くことができるよう、積極果敢な政策の展開を図ってまいりたい、このように考えております。
中林委員 それは本当に大臣、実態を知らない答弁だと思います。もうみんな、効率化、効率化を言われ、規模拡大を言われ、構造改革、構造改革と言われてやってきた結果が、こういう事態なんですよ。それをさらに進めようというのが今度の米政策改革大綱で、これについても、私どもの全国調査では極めて厳しい感想がどこからも出されました。これはまた後ほど議論させていただきますけれども。
 そういう中で、今私は、こういう事態が進んでいき、WTO農業交渉でこれ以上の市場開放を許すならば、離農がさらに進んでいくだろう。米生産から手を引く農家がたくさん出てくるし、現に、大規模な、北海道は十ヘクタール、それからこちらの方は四ヘクタール以上のところに施策を集中するという提案もありますから、本当に大部分の農家は離農せざるを得ない、そういう状況に追い込まれる。そうなれば、二〇一〇年までに食料自給率を四五%に引き上げると言っているわけですけれども、私は逆方向に行っているんじゃないかというふうに思います。
 大臣、具体的にどのようにして、あと五ポイント自給率を上げるんですか。
亀井国務大臣 食料自給率を二〇一〇年までに四五%にまで回復させる、このように考え、いろいろ、食料・農業・農村基本計画、こういう中で、生産者、食品産業の事業者や消費者等の関係者が一体となって取り組むべき消費、生産両面の課題が解決された場合には実現可能な水準、このように考え、現状の四〇%から四五%の目標を設定したところでもあります。
 この自給率の目標達成に向けましては、食生活の見直しを含む、いわゆる食育の推進に向けた国民的な運動の展開が必要なことではなかろうか。あるいは、米政策の着実な推進を初め、農地や担い手の確保、生産基盤の整備、技術の開発普及などの施策を講じつつ、効率的で安定的な経営体が農業生産の相当部分を担う農業構造の確立など、消費、生産両面からの取り組みを推進しているところであり、計画内における目標の達成に向けて全力を尽くしてまいりたいと思っております。
中林委員 この食料自給率を決める基本計画ができたときの答弁と全く変わらない。
 事態は動いている。しかも、WTO農業交渉の見通しも極めて悪いんですよ。私たちはEU提案がいいとは思わないのだけれども、このEU提案だって通るか通らないかわからない。もっと関税引き下げが提示され、それが合意される可能性だってなきにしもですよ。
 そういうときに、合理化、合理化とか、生産者に対するいろいろなあれがありますよ。それからあと、国民が食べ方を変えなさいと。二・何ポイントかは国民の食べ方で変えるというのですよ。だから、達成できなかったら国民の食べ方が悪いからだと国民に転嫁させるような、とんでもないような、今どうやってやるんですかというような、それは本当に私たちは相入れることができないというふうに思います。だから、今の大臣の答弁、私は、こんなことでは本当に自給率は上がらないというふうに思います。
 そこでですけれども、もう時間がありませんから言いますけれども、今農家の皆さんが政府に何を求めているのか。本当に全力で国内生産を守る、この姿勢を見せてほしいということですよ。WTO農業交渉の中で、関税引き下げにすぐ飛びつくのではなくて、そうではなくて、政府が提案している食料主権だとか、日本は六割を輸入している特異な国なんだ、ここをもっと示さなければだめですよ。EUのように輸出国と一緒になって、同じ土俵でできるわけがない。本当に地球環境だとか日本の環境だとか食料の安全、そういうものを見れば、当然私は、ここでもう一回、EU提案でいくというのではなくて、日本の提案を堂々とおやりになって、やれば農家の皆さんも農水省を応援する、大臣を応援するというふうに思うんですね。
 ここに、「これでいいのか日本の食料 アメリカ人研究者の警告」という本があります。
 六割輸入している日本、もうこれ以上の市場開放になったらどうなるのかという観点から、最低限の食料生産の道を残しておくのか、それとも日本の農業はもう要らないのか、まさにそういう究極の選択が今問われているんだ。食べることは生きることであり、安全でおいしい食料を得ることは、世界共通の権利である。WTO交渉の場で日本が権利の大切さをアピールすれば、多くの発展途上国の共感を集める可能性は高いと。
 つまり、WTO協定に加盟しているほとんど多くの途上国、そこにも、日本のこの実情を説明していけば、共感を得られると私は思います。途上国だって、よそから食料を買うお金がないわけですから、それぞれの国の農業をどう発展させていくか、共通の認識がそこにはあるというふうに思います。
 だから、もう時間が参りましたのであえて大臣の感想は求めませんけれども、もうこれ以上自給率を下げてはならない。本当に、本気でもって、三月モダリティー合意ができなかったのをチャンスにして、日本はもっと日本としての提案をどんどんおやりになる。そうすれば、私たちだって、いつも批判ばかりしないで、政府を応援しながら頑張りたいということだけは申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
小平委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 私の方からも冒頭、本委員会が半数に達していないという状況でございますから、これは、委員会成立要件を満たしていないという状況で質問に入らざるを得ないということに対して、強く抗議しておきたいというふうに思っています。
 まず、今も中林委員から質疑がありました、WTO農業交渉についてです。
 今、るる質疑の中で政府の考え方が示されましたけれども、三月三十一日、一つの区切りだった、そして今、四月の十五日という今日的な状況の中で、今後どのようにこのWTO農業交渉を政府として進めていこうとしているのか。これを、今日的状況を踏まえて、どう克服していこうとなされているのか。この点について、大臣の御見解をお聞きしておきたいと思います。
亀井国務大臣 WTOの農業交渉は、二十一世紀の農政、さらに農業そのもののあり方を決める重要な交渉である、このように考えるところであります。
 また、我が国としては、多様な農業の共存、これを基本理念として、農業の持つ多面的機能、食料安全保障の確保等の非貿易的関心事項に十分配慮しつつ、品目ごとの柔軟性と改革の継続性、輸出入国間の権利義務バランスを確保することが可能なルールを目指しているところであります。
 一方、三月末までに、WTO農業委員会特別会合の結果、ドーハ閣僚宣言に記された期限である三月三十一日までにモダリティーを確立することができなかったわけでありまして、我が国は、これまでドーハ閣僚宣言に即した現実的かつ具体的なモダリティー案を提出するなど交渉の進捗に努力をしてきたところでありますが、保護助成の大幅、画一的な削減といった過大な要求をしている米国、ケアンズ諸国と、漸進的で現実的なルールを求める我が国、EUなど連携国との間の溝が埋まらなかったものであります。
 農業交渉の今後のプロセスといたしましては、九月にメキシコのカンクンで予定されている第五回WTO閣僚会議へ向け、できるだけ早期にモダリティーを確立するということが加盟国内の共通の認識となっております。四月以降も技術的な事項の検討を継続するとともに、六月及び七月に予定されている農業委員会特別会合の機会、あるいは各国間の協議、このほか、四月末にパリで、六月にはエジプトで開催が検討されているWTO非公式閣僚会合等を通じて、各国が合意できる解決策を探るものとされております。
 我が国といたしましては、多様な農業の共存を基本理念として、これらの場において、引き続きEU等フレンズ諸国などと連携を強めながら、各国に対し粘り強く働きかけ、二〇〇五年一月の交渉妥結に向けて、現実的かつバランスのとれた貿易ルールが確立されるよう全力を尽くしてまいる所存であります。
菅野委員 その場合、これから二〇〇五年の一月に向けて、いろいろな行動を展開していかなきゃならないというふうに思っています。そして、外交交渉事項ですから、各国との違いを乗り越えていかなきゃならないという大きな課題を背負っていると思うんですね。
 私が言いたいのは、モダリティー一次案、あるいはこのモダリティーの一次案改訂版が発表されたということを、国民の多くがどれだけ理解しているのか。そして、農業者だけの問題じゃないというふうに私は思っているんですね。地域社会、地域集落の崩壊にもこのモダリティー一次案がつながっていく大きな要素を持っている中身だ。そのことを国民が知らないでいるということに私は大きな疑問を持っているんですね。
 今回の選挙戦、統一自治体選挙、戦われました。大きな争点にもかかわらず、そのことが議論されていないんですね。びっくりいたしました。そういうふうになっているんですかと、かえって聞かれるくらいな状況なんです。
 そして、単に農業者じゃなくて、生産者、消費者、あるいは各種NPOの団体等が一体となって今日的な危機的な状況を乗り越えていかないと、私は、このWTO農業交渉を含めて、押し切られるんじゃないのか。先ほど中林委員もおっしゃっていますけれども、押し切られたときにどうなっていくのかという問題点が含まれておりますから、国民世論をどう大きくしていくのか。そのためには、政府として情報をどんどん公開していく、こういう姿勢が必要なんではないのかなというふうに思っています。この点について、どう考えておられるのか。
 そしてもう一つは、モダリティー一次案改訂版が発表になりました。この方針でいったならば、この方向でいったならば日本農業がどうなっていくのかということも、私は国民に知らしめていくことが必要なんじゃないのかなというふうに思っています。
 先ほど、中林委員の質疑の中で、最低一五%の質疑がなされました。モダリティー一次案は四五%ですからね、最低。私は、一五%で議論するのではなくて、最低の四五%というもので議論していく必要があるというふうに思うんですが、このことに対して、モダリティー一次案でいった場合にはどのような影響を及ぼすのか、これを国民の前に明らかにしていただきたいと思います。
亀井国務大臣 委員御指摘のとおり、WTO農業交渉につきましては、これまでの状況を逐次公表し、消費者、農業者、あるいは産業界、マスコミ関係者等各界各層の方々に、我が国の立場や、米国、ケアンズ諸国等急進的な自由化を標榜する国の主張の問題点をさまざまなチャネルを通じて説明するとともに、これらの方々の意見を踏まえながら交渉に臨んできたわけでありますけれども、さらにこの努力はする必要があると思いますし、農水省といたしましても、国民の皆さん方にも御理解をいただけるようなさらなるいろいろの努力をしてまいりたい、こう思っております。
 米国、ケアンズ諸国、あるいはまたEU、我が国、この溝が埋まらずにモダリティーを確立することができなかったところでありますが、WTO交渉に関し国民の関心は高い、このようにも理解をしております。
 こうした中で、私も就任して四月一日に、それを受けまして談話を発表したりしたわけでもございます。いろいろ交渉の状況につきまして適時的確に国民の皆さん方にお伝えをし、国民的な議論を大いに行っていただき、その理解と協力のもとに、我が国の主張を実現すべく交渉に臨んでまいる所存でもあります。
 第一次案改訂版、これにつきましては、一次案と同様著しくバランスを欠き、一部輸出国の主張に偏重した内容となっておりまして、我が国といたしましては、交渉のベースにならない、こう主張しているわけでありまして、このことにつきましても前大臣のときにもいろいろ御説明をするなりしてまいったと思います。
 今後も引き続き国民の皆さん方の御理解をいただけるような努力をさらにしてまいりたい、こう思っております。
菅野委員 大臣、本当に、このWTO農業交渉が、今日的段階で説明してきましたという、今、多くの議論を積み重ねてきたと。政府と中央において、中央の農業者団体等を含めて議論されてきたというふうに思いますけれども、国民全体の中にその議論というものが伝わっていないんですね。そして、モダリティー一次案あるいは改訂版がどういう影響を及ぼすのか、今大臣は答弁しませんでしたね。答弁なかったです。
 そのことを、今のWTOの流れの中ではこういう影響が出ますということを国民の前に知らしめていくこと、そして、最低限でも現状を維持していくということをしっかりと政府の方針として国民の前に示しながら、そして、交渉が終わったら、終わった時点で、この交渉事項を国内に知らしめていく。この繰り返しなしには、私は、このWTO農業交渉というものは押し切られてしまって、国内農業というものがつぶされていく。危機感だと思っています。この危機的な状況を危機ととらえていないところに、私は、国民に知らしめていないがゆえに国民世論として盛り上がっていないんだと思うんですね。そこをしっかり形づくっていただきたいというふうに思うんです。
 大臣、その具体的な国民世論の盛り上げを、地方からの盛り上げをどう図っていくのか、そして、モダリティー一次案、改訂版における具体的影響をどうとらえているのか、その件をもう一回答弁していただきたいと思います。
亀井国務大臣 まず、改訂版の問題でございますけれども、あくまでもこれは対外的の交渉でありまして、このモダリティー一次案改訂版をベースに議論を行っているかのような印象を与えるところがあろうかと思います。そういう視点から、これが適用された場合我が国にどう影響を与えるのか、このような議論をするということは国内的に適当ではないのではなかろうか。まだ対外的な交渉という視点にあるわけでありまして、国内の農業関係者に不要な動揺を与える、こういうところも考えなければならないことではなかろうか。
 また、いろいろな問題を、国民の理解を得るような努力をする。こういうことは、いろいろ冊子等、わかりやすく、また理解をしていただくことができるような、若干、役所の文書なり資料というものはわかりづらい、理解できないところがあり、また、外国との問題で用語等々につきましては理解しにくいところもあるわけでありまして、そういう面を十分留意して、御理解いただくような努力は積極的にやらなければならないのではなかろうか、こう思います。
菅野委員 確かに大臣、動揺を与えるからモダリティー一次案あるいは改訂版で議論することは行っていないんだという中身ですけれども、そういうことでずっと推移していったときに、押し切られたときにどうなっていくんですか。交渉事項ですよ。
 だから、今の現状を、動揺を与える、与えないじゃなくて、現状認識、みんな国民が一回同じ土俵に立つべきだと思うんです。そして、政府が今言っているように、これからの交渉事項ということを説明して、そして見守っていくという態勢をとらなければ、このWTO農業交渉というものが非常に危機的な状況に陥っていくんじゃないのかなというふうに私は思うんです。国民世論を盛り上げるということが今非常に大事な時期ですから、そのための方策として、すべての情報というものを公開すると同時に、そして、今の現状であればこういう状況になるということを説明すべきだというふうに思うんです。
 先ほど、EU提案の最低一五%の数字が述べられました。国内流通が一万六千二百七十四円、そして輸入価格が二万一千五百九十一円という政府が答弁した数字、私はメモしたんですけれども、だから大丈夫なんだと。では四五%の場合はどうなっていくんですか、この数字を示していただきたいと思います。そして、そのことによる影響というのがどういうふうなものになるのか、それを食糧庁長官に説明していただきたいと思います。
石原政府参考人 お答えを申し上げます。
 現在、一番我が方が恐れておりますのは中国産の米でございます。中国産の短粒種、これはSBSで入っているものでございますけれども、これが今一キロ当たり七十円となっております。これに対しまして、現在、枠外税率が三百四十一円となっておりますので、これを足しますと、四百十一円ということになります。一俵当たりにしますと、二万四千六百六十円ということになります。これが、関税が仮に最低とされております四五%削減ということになりますと、この三百四十一円というのが百八十八円となりまして、この百八十八円に七十円を足しますと、二百五十八円となります。一俵当たりにしますと、一万五千四百八十円となります。
 この一万五千四百八十円でございますけれども、現在、新潟のコシヒカリが、このところちょっと高くなっておりますが、大体二万六千円程度でございます。これよりはもちろんはるかに安いんですけれども、新潟のコシヒカリで一万八千円、あるいは平均的な自主流通米の価格で一万六千円という価格でございますので、自主流通米の価格よりも低いということになります。新潟のコシ、特に魚沼、それから一般コシ、こういうものは味で勝負できますので、かなり高くても太刀打ちできる面もあるんですけれども、こういうところがまず第一次的にやられるんじゃないか。それよりかなり低いものですから。
 それから、ひいては、きららになりますと一万四千六百円となりまして、これは、きららよりは、四五%引き下げたものは高うございます。しかしながら、新潟の一般コシとかこういうところが影響を受けて、さらにきららとかこういう低いものにつきましても大きく二次的な影響を受けるのではないかと我々は推測しているところでございます。
菅野委員 今のそのような状況を国民に全部知らしめていって、そして、だからみんなでこのWTO農業交渉を見守っていただきたいという運動をぜひ起こしていただきたいというふうに思っています。
 一万六千円台でも農家は苦しいという状況で、そして、稲作経営安定対策資金でもって底上げをされているから現状は維持されているんだというふうに思っています、自主流通米といっても。そういうことをしっかりと、二〇〇五年一月までに繰り返し繰り返し行っていただきたいというふうに思っています。
 それで、昨年の十二月三日に、米政策改革大綱なるものが打ち立てられましたね。それに向かって、あらゆる人たちが、農業の構造改革というものを進めていかなきゃならないという立場で米政策改革大綱も受けとめてきているというふうに思うんですね。そして、そこに来てWTO農業交渉でのモダリティー一次案が示されて、改訂版も示されて、それでは、農業の構造改革を進めていこうとしている人たちが、このWTO農業交渉がどういう結果になっていくのか、ここの二つの不安を抱えているんですね。一つの不安でも大変だったのに、同時に二つの不安を抱える結果になってしまった。
 こういう状況をどう解決していくのか。農業の構造改革と今のWTO農業交渉を関連づけて、農家の生産意欲を損なわないようにどうしていくのか、これが今政府として真剣に考えなければならないことだと思うんですけれども、このことについてどう思っていますか。
亀井国務大臣 昨年の十二月に、生産調整を初めとする米政策を抜本的に見直すべく、米政策改革大綱を決定し、この大綱の具体化の一環として、生産調整や流通制度の見直し等を内容とする食糧法改正法案を三月七日に国会に提出したところでもあります。
 これは、需要の減少、生産調整の限界感、強制感の高まり、担い手の高齢化等、まさに米をめぐる情勢が閉塞状況にあり、一刻も早く米改革を行わなければ水田農業の未来は描けないとの認識のもとで、消費者重視、市場重視の視点に立って、需要に即応した米づくりの推進を通じて水田農業経営の安定と発展を図ろうとするものであります。
 WTO農業交渉については、ことし二月にモダリティー案が示されたが、多様な農業の共存を目標とする我が国の主張が反映されるよう毅然とした交渉を行っていく所存であり、これによって、国内の米をめぐる閉塞状況に対処すべく今回行おうとしている米政策改革の基本方向が変わるものではありません。
 米政策改革については、わかりやすさ、効率性、透明性を確保しつつ、食糧法改正法案の早期成立、関連施策の具体化等について全力を挙げて取り組み、我が国農業の礎である稲作農業の将来にわたる発展を期してまいる所存であります。
菅野委員 実際に農家に入っていくと、生産者は、米政策改革大綱とWTO農業交渉の行方というものに非常に関心を持っています。それは、農業を継続できるような中身で議論されていることではないというふうな中身で、非常に不安に思っているということです。十六年度予算編成時期に一つの方向性が示されますから、それを注目しているというのも現実であります。
 私は政府に強く申し上げておかなきゃならないんですが、農業が持続的に経営できるような体制というものをしっかり見詰めていただきたい、地方の実態というものをしっかりとらえていただきたいということを強く申し上げておきたいというふうに思っています。
 次に移ります。
 今、内閣委員会では食品安全基本法が審議されています。それでは農林水産にかかわる部分ということで考えたときに、食の安全、安心という部分でいえば、農薬問題が今非常にクローズアップしてくることだというふうに私は思っています。
 農薬の問題、これまでずっと議論されてきて、低減農薬とかそういう言葉が入ってきています。農薬の問題でもかなり変わってきているということは理解するんですけれども、登録農薬の問題で、審査、安全性の基準の判断について、これが、組織がかわったときに、これまで行ってきた体制とこの食品安全委員会での体制がどうなっていくのかなというところは、私はまだ見えていません。
 あしたの合同審査で明らかにすることもできるんですが、農林水産委員会として、農水省として、この農薬の問題を、農薬の審査、安全性の基準というものをどういう体制で行っていくのか、これをしっかりと答弁していただきたいというふうに思っています。
須賀田政府参考人 農薬の登録は、一定の安全性の評価といったものを前提にしているわけでございます。
 そして、その安全性の評価は、一つは、農作物への残留が人畜に被害を及ぼすことのないように、毒性のデータというものをとりまして、一日当たりの許容摂取量、こういうものを設定するという、毒性データに基づく安全性の評価、これは実質的には厚生労働省が現在は行っております。それからもう一つは、環境触媒体を通ずる影響、すなわち土壌への残留でございますとか水質の汚濁でございますとか、こういうものを通ずる人の健康への安全性の評価、これは名実ともに環境省が現在はやっているわけでございます。
 そういう二つのものをもとにいたしまして、環境省が農薬の登録の保留基準というのを定めまして、それをもとにして農林水産省が農薬の登録を行っている、こういうことになっているわけでございます。
 今度、食品安全委員会ができますと、食品安全委員会の仕事の中に食品の健康影響評価という職務がございまして、これは、ただいま申し上げました中のうちの一日当たりの許容摂取量の設定、こういうものについて食品安全委員会が科学的分野の見地から行うということになろうかと思うわけでございます。そして、それに基づきまして、厚生労働省は食品衛生法に基づく残留農薬基準を、農林水産省、環境省は農薬の登録あるいは農薬の使用基準、こういうものを定めるということになろうかと思います。
菅野委員 それでは、食品安全委員会ができても何ら既存の部分は変わることはないという中身が今局長から答弁されたと私は思うんですね。それぞれが、厚生労働省は厚生労働省の既存の食品衛生法に基づいて行っていく、そして環境省や農水省はそれぞれが今までどおり行っていく、食品安全委員会はリスク評価だけは行うという中身で、ここが、農林水産省として、BSEが発生して、そして今日まで議論してきた中身が今法律案として提案されています。そして、このBSE調査検討委員会が一つの方向性をまとめたのをもとに今日まで進んできたんですが、今までとは一つも中身は変わっていないのではないでしょうか。
 大臣、今、法律案が提案されて、内閣委員会で審議されています。これまでの、BSEが発生して、BSE調査検討委員会が大臣のもとに、こういう方向性でいくべきだということを提案しました。それに基づいて今日まで来ているんですけれども、この流れ、本当に食品の安全、安心というものが確保されるのかどうか。これについて、大臣、答弁をお願いします。
亀井国務大臣 今御審議をいただいております食品安全委員会が設置をされれば、その安全性の評価、こういう視点から、いろいろの基準の設定、こういうものがなされる。これに基づきまして私どもは、農林水産省におきましては、その分析に基づきますいろいろの農薬等々の問題の対応をしていくということになります。
菅野委員 少なくとも、このBSEの発生から、食の安全、安心という体制をつくるためには縦割り行政をなくしていくという基本的なスタンスが必要だというふうに思いながら、私はこれまで議論を進めてまいりました。
 個人的にも、BSEが発生して、イギリスやフランスの例を視察してまいりました。そして、イギリス方式、フランス方式、どっちをとるのかという形の議論も展開してきたつもりでいます。一長一短はあるんですけれども、少なくとも、食の安全、安心を確保するために全体が一致することが私は必要だというふうな認識になっています。食品安全庁というものをつくって、そこに一元化すべきだという議論も行ってきたつもりでございます。
 その方向性とは、今、農林水産委員会の流れというものは、農林水産省の流れは、その方向性に行っていないということだけ申し上げて、そのことに強い私は憤りを感じているということだけ申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
     ――――◇―――――
小平委員長 次に、内閣提出、林業経営の改善等に必要な資金の融通の円滑化のための林業改善資金助成法等の一部を改正する法律案及び森林法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣亀井善之君。
    ―――――――――――――
 林業経営の改善等に必要な資金の融通の円滑化のための林業改善資金助成法等の一部を改正する法律案
 森林法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
亀井国務大臣 林業経営の改善等に必要な資金の融通の円滑化のための林業改善資金助成法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 森林・林業基本法でも明らかにされているとおり、森林の有する多面的機能が将来にわたって持続的に発揮されるようにするためには、これに重要な役割を果たす林業の持続的かつ健全な発展と、その前提となる林産物の安定的な供給及び利用の確保を図るための木材産業の健全な発展が相まって推進されることが必要であります。
 そのためには、効率的かつ安定的な林業経営を育成し、これらが林業生産の相当部分を担う林業構造を確立するとともに、林産物の適切な供給及び利用の確保が図られるよう、木材産業の事業者の事業基盤の強化を図っていくことが急務であり、両産業の担い手がその経営改善等に必要な資金の融通を円滑に受けられるようにしていくことが必要であります。
 政府といたしましては、このような課題に対応して、林業及び木材産業に関する資金制度について、資金内容の充実等を行うこととし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、林業改善資金助成法の一部改正であります。
 都道府県の財政資金を無利子で貸し付ける林業改善資金について、対象を木材産業まで拡大するとともに、特定の生産方式導入等のための資金から、経営改善等を目的として行う新たな事業の開始、生産・販売方式の導入等の先駆的な取り組みを実施するための林業・木材産業改善資金に改め、これに伴い、題名を林業・木材産業改善資金助成法とすることとしております。
 また、都道府県からの直接貸し付け方式に加え、融資機関が都道府県から原資を借り受けて貸し付ける方式を追加することとしております。
 第二に、林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通等に関する暫定措置法の一部改正であります。
 新たに林業経営改善計画の認定を受けた者に対する運転資金の融通制度を設けることとしております。
 第三に、農林漁業信用基金法及び独立行政法人農林漁業信用基金法の一部改正であります。
 融資機関からの林業・木材産業改善資金の融通が円滑に行われるよう、信用基金が債務保証を行うこととするほか、独立行政法人農林漁業信用基金が無利子資金の融通を行う場合の原資調達方法として長期借入金をすることができることとしております。
 続きまして、森林法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 我が国の森林は、木材等の林産物を供給するとともに、水源の涵養、国土の保全等の公益的機能の発揮を通じて豊かで安全な国民生活の実現に重要な役割を果たしてきたところであります。一方で、森林・林業を取り巻く情勢は、木材価格の低迷等により、林業生産活動が停滞し、管理が適正に行われていない森林が増加するなど、まことに厳しいものがあります。
 こうした情勢のもと、森林の有する公益的機能の発揮を図るため、造林、間伐、保育等による森林の整備だけではなく、森林を災害等から守る森林の保全をあわせて行うことが必要となっております。また、高齢級の過密化した人工林において、複層林施業の実施を推進することも重要であります。
 このような最近における森林・林業をめぐる諸情勢の変化に対応して、森林の有する公益的機能を重視し、きめ細かな森林の整備及び保全を推進するため、この法律案を提出した次第であります。
 次に、法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、森林の整備及び保全の一体的かつ総合的な実施を図るため、森林の保全の目標その他森林の保全に関する基本的な事項を全国森林計画等の計画事項に位置づけるとともに、全国森林計画に掲げる森林の整備及び保全の目標の達成に資するための森林整備保全事業計画を創設することとしております。
 第二に、保安林における複層林施業の実施を推進するため、森林所有者等が保安林において択伐による立木の伐採を行う場合に係る伐採の許可を事前届け出に改めることとしております。
 以上が、これら二法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
小平委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
 この際、お知らせいたします。
 内閣提出、食品安全基本法案についての内閣委員会厚生労働委員会農林水産委員会連合審査会は、明十六日水曜日午前九時から開会することとなりましたので、御了承願います。
 次回は、来る十七日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十八分散会


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