衆議院

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第7号 平成15年5月8日(木曜日)

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平成十五年五月八日(木曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    青山  丘君
      石田 真敏君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    上川 陽子君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      小泉 龍司君    西川 京子君
      松浪 健太君    松野 博一君
      三ッ林隆志君    宮本 一三君
      山本 明彦君    後藤  斎君
      今田 保典君    齋藤  淳君
      津川 祥吾君    筒井 信隆君
      堀込 征雄君    吉田 公一君
      江田 康幸君    藤井 裕久君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
      佐藤 敬夫君
    …………………………………
   農林水産大臣       亀井 善之君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   政府参考人
   (外務省経済局長)   佐々江賢一郎君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         遠藤  明君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産技術会議事務局
   長)           石原 一郎君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月八日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     松浪 健太君
  高木  毅君     松野 博一君
同日
 辞任         補欠選任
  松浪 健太君     上川 陽子君
  松野 博一君     三ッ林隆志君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     荒巻 隆三君
  三ッ林隆志君     山本 明彦君
同日
 辞任         補欠選任
  山本 明彦君     高木  毅君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 農林水産省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)
 食品の安全性の確保のための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第三三号)
 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)
 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、地方農政事務所及び北海道農政事務所の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)
 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)
 牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法案(内閣提出第三二号)

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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、農林水産省設置法の一部を改正する法律案、食品の安全性の確保のための農林水産省関係法律の整備に関する法律案、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部を改正する法律案及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、地方農政事務所及び北海道農政事務所の設置に関し承認を求めるの件の各案件を議題とし、前回の委員会に引き続き、本委員会に付託されております食の安全関連案件について順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣亀井善之君。
    ―――――――――――――
 農林水産省設置法の一部を改正する法律案
 食品の安全性の確保のための農林水産省関係法律の整備に関する法律案
 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部を改正する法律案
 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、地方農政事務所及び北海道農政事務所の設置に関し承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
亀井国務大臣 農林水産省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 農林水産省は、食料の安定供給の確保及び農林水産業の健全な発展に資するため、従来から安全な農林水産物の生産の確保のための施策を講じてきたところでありますが、我が国初の牛海綿状脳症の発生が確認されるなど食の安全を脅かす問題が発生する中で、消費者保護を一層重視した食品安全行政の確立が求められております。また、昨年六月の食品安全行政に関する関係閣僚会議において、内閣府における食品安全委員会の設置、リスク管理体制の見直し及び食糧庁組織の廃止等の既存組織の見直しを行うことが決定されたところであります。
 これらの点を踏まえ、農林水産省組織の改革再編を行うこととし、この法律案を提出することとした次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、農林水産省の所掌事務について、農林水産物の生産過程における食品としての安全性の確保に関する事務を明確化することとしております。
 第二に、食糧庁を廃止するとともに、食糧庁の地方支分部局である食糧事務所及びその支所を廃止することとしております。
 第三に、地方農政局の分掌機関として、食品のリスク管理のための監視、指導や、従来食糧事務所が行っていた主要食糧事務等を担う地方農政事務所を設置するとともに、地方農政局の統計情報事務所及びその出張所を、地域における情報発信の役割をあわせ持つ統計・情報センターに改組することとしております。
 さらに、平成十八年度からは、統計・情報センターを地方農政事務所と統合し、地方農政事務所の統計・情報センターとして位置づけることとしております。
 続きまして、食品の安全性の確保のための農林水産省関係法律の整備に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 昨今、牛海綿状脳症の発生や無登録農薬の問題等、農畜水産物の生産段階において食品の安全性を脅かすさまざまな問題が発生し、国民の食に対する不安を招いております。
 このような状況にかんがみ、農畜水産物の生産に係る資材等について、その適正な使用の確保等により食品の生産段階における安全性の徹底を図ることが、国民の食に対する不安を払拭し、信頼を回復するために必要不可欠であります。
 このため、国民の生命と健康の保護を第一に食品の安全性の確保に万全を期す観点から、肥料取締法、薬事法、農薬取締法及び家畜伝染病予防法を改正することとし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、施用方法によっては人畜に被害を生ずるおそれがある肥料について、施用基準を定める等の措置を講ずるとともに、販売の禁止に違反して販売された肥料について、その回収等を命ずることができることとしております。
 第二に、許可を受けていない者による動物用医薬品の製造または輸入及び適正な表示のない動物用医薬品の家畜等に対する使用を禁止するとともに、家畜等に使用される蓋然性が高い医薬品について、使用基準を策定することができることとしております。
 第三に、販売の禁止に違反して販売された農薬について、その回収等を命ずることができることとしております。
 第四に、特定の家畜伝染病について、総合的に防疫を実施するための指針を作成するとともに、特定の家畜について、その家畜の飼養者が遵守すべき衛生管理基準を策定することとしております。
 第五に、農畜水産物の生産に係る資材の承認等に当たって、厚生労働大臣等の意見を聞かなければならないこととし、連携の強化及び食品衛生法との整合性の確保を図ることとしております。
 続きまして、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 牛海綿状脳症の発生を契機として国民の食の安全に対する信頼が損なわれている事態を踏まえ、食品の安全性の確保に万全を期するため、農畜水産物の生産に係る資材の安全性の確保と適正な使用の徹底が求められているところであります。
 また、公益法人に対する行政の関与の適正化の観点から、飼料の検定制度について見直す必要があります。
 このような飼料をめぐる状況の変化にかんがみ、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する制度を見直すこととし、この法律案を提出することとした次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、特定飼料等の製造業者について、品質管理の方法等が一定の要件を満たす場合には、農林水産大臣の登録を受けてこれを販売することができることとしております。
 第二に、有害な物質を含む飼料等について、販売の禁止に加えて、製造、輸入または使用を禁止することができることとするとともに、有害な物質が含まれる可能性が生じた飼料等を輸入する場合には、その旨を農林水産大臣に届け出なければならないこととしております。
 第三に、飼料の検定機関への行政の関与の適正化を図るため、安全性に関する特定飼料等の検定を独立行政法人肥飼料検査所が行うこととする一方、栄養成分に関する公定規格の検定については、検定機関を指定制から登録制に改めることとしております。
 第四に、飼料の基準及び規格の設定等を行う場合には、厚生労働大臣の意見を聞かなければならないこととし、連携の強化及び食品衛生法との整合性の確保を図ることとしております。
 続きまして、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、地方農政事務所及び北海道農政事務所の設置に関し承認を求めるの件の提案理由につきまして御説明申し上げます。
 食糧庁の地方支分部局として、現在、食糧事務所及びその支所が設置されておりますが、このたび国会に提出いたしました農林水産省設置法の一部を改正する法律案により、これらを廃止するとともに、従来食糧事務所が行っていた事務や食品のリスク管理のための監視、指導等を担う地方支分部局として、地方農政局の分掌機関である地方農政事務所及び本省直轄の北海道農政事務所を設置することとしております。
 本件は、この農林水産省における地方支分部局の再編に伴い、地方農政事務所及び北海道農政事務所を設置することについて、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づく国会の御承認を求めようとするものであります。
 以上が、これら法律案及び承認案件の提案の理由及びその主要な内容であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
小平委員長 これにて各案件の趣旨の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
小平委員長 次に、内閣提出、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及び牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君、生産局長須賀田菊仁君、農林水産技術会議事務局長石原一郎君、食糧庁長官石原葵君、外務省経済局長佐々江賢一郎君、厚生労働省健康局長高原亮治君及び医薬局食品保健部長遠藤明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。齋藤淳君。
齋藤(淳)委員 民主党の齋藤淳です。
 関連諸法案のうち、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について質問いたします。
 まず最初に、経済の低迷が長期化し、企業が一般的に新規投資に慎重になる中で、食品製造過程の高度化について、支援策のあるべき姿について農林水産大臣にお尋ねします。
 少し古い数字になりますけれども、平成十年の漁業センサスによれば、全国で一万四千余りある水産加工業者のうち、およそ六五%がHACCP手法の導入に対して積極的な意向を示していたとのことです。同じく水産庁の同様の調査によれば、平成十四年二月段階で、水産加工業者のうち、HACCP手法の導入率は一・四%にすぎなかったとのことであります。
 これは、水産加工業というごく限られた業種での数字になります。食品加工業全体に広げると、食品産業センターが昨年三月に調べた数字によれば、回答のあった三百三十二社のうち、HACCP未導入企業の八割がHACCP導入を希望しているとのことです。
 食品加工業界全体におけるHACCP導入へのニーズ、要望というのは非常に強いものがあると思います。しかし、にもかかわらず、なかなか導入できないという現状をどのように考えておられるか、最初に農林水産大臣にお尋ねしたいと思います。
亀井国務大臣 今、数字をお示しいただきましたが、この制度の必要性はもう十分御理解いただいておるわけでありまして、それぞれの関係の業界の皆さん方も、ぜひ利用したい、こういうようなことで、順次その希望がふえてきておるわけであります。
 一方、大変厳しい経済状況もありまして、なかなか思うようにいかないわけでありますが、いろいろ制度融資をする手だてをいたしまして、それらが利用していただけるような努力をしていかなければならない、このように考えております。
齋藤(淳)委員 厳しい経済状況の中で、理解が高まる中で、しかし伸び悩んでいる。この状況を踏まえて、政策目的と政策手段の整合性について改めて伺いたいと思っています。
 食品製造業者が一般的に、HACCPという作業工程管理手法に理解を示し、導入を積極的に考えておられるという認識は大臣も共有しておられるようですけれども、経営環境をめぐる現実は非常に厳しいものがあるわけです。
 現行の支援策では低利融資と税制上の優遇措置という二つの手段を組み合わせて使っているわけですが、果たしてこれだけで十分なのか。また、現行の低利融資制度が適切に運用されているものなのかどうか。事融資案件が絡むと、借り手のプライバシーの問題があって、なかなか情報を開示してくれないという問題があって、私たちは、その支援策の妥当性を判断するのがなかなか難しいという問題に突き当たります。
 そこで、改めて政府にお尋ねするわけですけれども、高度化計画の認定が、平成十一年から十四年の間、毎年約三十数件程度あります。これに比べて、食品産業品質管理高度化促進資金の融資実績というのは毎年十五件程度で、税制上の支援制度は数件にとどまっているというような割合になっています。
 そもそも、高度化計画の認定数自体が少ない上に、促進資金の融資実績も少ないのではないか。もちろんこれは、経済低迷、長期化のせいにすることは簡単ではありますけれども、果たして現行の支援策がユーザーにとって、借り手にとって使いやすいものになっているのかどうか、改めて伺いたいと思います。
西藤政府参考人 先生御指摘の、高度化計画の認定件数、融資実績について乖離がある状況は、御指摘のとおりのような状況にございます。
 我々なりに要因を見てまいりますと、制度資金の活用はもちろん、計画の認定を受けた後、設備については自己資金で対応するというケース、あるいは他の今までの融資先とのつながり等から資金を手当てするというケース、あるいは残念ながら計画はできたけれども実行に移せないというケース、状況がございます。
 先生御指摘のとおり、食品製造業、非常に中小企業の割合が高い状況でございます。私ども、そういう点では、本制度とあわせて別途、やはり技術蓄積あるいは人材育成という観点での予算的な支援措置も行いながら、本制度の活用が円滑に進み、品質管理の高度化が図られるように努めていきたいというふうに考えております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 確かに、この低利融資制度というのは、今までですと適切な支援策だったのかもしれませんけれども、低金利そして低成長時代がこのように長引きますと、幾ら低利であっても、借金してまで新規投資はと二の足を踏む事業主体が非常に多い。これはどのような制度金融にとっても共通する問題かと思われますけれども、時代に合った適切な支援策、そして透明性の確保、公正なる運用に努めていただきたいということをお願い申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
 ニーズに対して支援策がいかにこたえるかということを考えると、先ほど局長からも御指摘ございましたとおり、常に、中小零細企業対策をいかにするか。といいますのも、ISO、HACCPともに、これまでの認可の実績を見ますと、どうしても、従業員人数が多い大規模な事業所が導入する余力があるという傾向があるように思われます。
 平成十年にこの臨時措置法が衆議院農林水産委員会を通ったときにも、中小零細企業に対する配慮が附帯決議という形で盛り込まれております。この点について、この五年間に具体的にどのような対策が講じられてきたのか、改めて御説明願いたいと思います。
西藤政府参考人 本制度、平成十年度に創設をさせていただきました。その後の融資実績の状況を見ますと、融資実績は順次上昇してきている状況にございます。平成十三年、十四年、若干の変動はございますけれども、私ども、融資実績そのものは着実に上昇してきているし、HACCP手法についての関係者の理解は深まってきているというふうに思っております。
 そういう点で、私ども、本制度の普及啓発ということで関係団体を通じて周知徹底を図ってきたつもりでございますけれども、今回、制度改正をさせていただくに当たって、改めて、中小企業者への支援強化と情報提供の充実ということで、関係者の理解とそれに基づく実効確保ということに努めていきたいと考えております。
齋藤(淳)委員 中小零細企業に対してどのような配慮をここ五年間に講じてきたのかということを伺いたかったのですけれども、今後の運用において十分な配慮がされることを求めたいと思います。
 現在、HACCP導入支援策の議論をしているわけでありますけれども、支援策の議論と同時並行で、やはり望ましい衛生管理のあり方に対して、HACCPがいかにあるべきかということも並行して議論していかなければならないのではないかと改めて感じている次第です。特に、中小零細企業が多いという日本の食品加工業の現状を踏まえた、現実的かつ適切な衛生管理のあり方を考えていく必要が高いのではないかと思います。
 HACCPという極めて科学的、現代的な工程管理手法を取り入れていく一方で、例えば伝統的な加工の手法、地域の特色といったものとの調和を図っていく必要性もあるのではないかと思われます。実際、海外での議論を見てみますと、望ましいHACCPのあり方について、中小零細企業に対する配慮あるいは発展途上業者に対する配慮も盛り込んだ形で、HACCP自体を見直していこうというような議論も展開されているようであります。
 支援策以前に、HACCPのあるべき姿に対して、国際的にも国内的にもどのような形で議論を進めていくべきなのか。日本政府としてどのような見解を持っているのか。コーデックス委員会へ例えばフィードバックをする、日本の現状を照らし合わせて適切なHACCPの手法のあり方を提案していく、そのような意思がおありか、問いただしたいと思います。
西藤政府参考人 先生御指摘のとおりでございますが、コーデックス委員会、多少経緯的に御説明させていただきますと、コーデックス委員会で一九九三年にHACCPシステムとその適用ガイドラインを採択し、各国にその採用を推奨してきているわけでございます。
 その後、今先生御指摘がありましたように、加盟国の中で、ガイドラインが、専門知識や技術、人的資源などの面で困難を抱える中小企業なりあるいは途上国に対して、HACCPを導入するに当たって必ずしも十分じゃないんじゃないかという問題提起がされているのは、そのとおりでございます。このような問題提起を受けまして、コーデックス委員会では、現在、中小零細企業に配慮をした、より柔軟な対応が可能となるようなガイドラインについての見直しが議論されているというふうに承知しております。
 私ども、HACCPのガイドラインの見直しに当たりましては、さはさりながら、HACCPの原則と申しますか、七原則十二手順ということで、いわば品質管理の一定の最低限の基準を図るという前提を維持していくことは基本的に必要でして、そういう前提の中で、中小零細企業に配慮したガイドライン、どういうふうにできるかということも、今直ちにこういう形でということはなかなか難しいところがございますけれども、議論の中で私どもの知見を生かしていきたいというふうに思っております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 日本の食卓の安心と日本の第一次産業を守るという観点から、積極的な取り組みをお願いしたい、そのように考えております。
 日本の食卓の安全性ということを考えるときに、食品製造業者に零細企業が多いということも重要ですけれども、やはり、原材料から流通に至るまで実に多様な調理加工過程を経て食卓に出ている、長いフードシステムという現状も指摘できるかと思われます。
 HACCPは、現状では、あくまで食品製造業での、工場単位での導入ということになるわけですけれども、食の安全確保という原点に立ち返って、ワンフレーズで言えば、農場から食卓まで、食品安全性、これを確保するために、例えば食肉であれば屠畜場、乳業であれば搾乳段階からHACCP的なシステムを導入していく必要性があるのかないのか。そして、その取り組みについて、政府の方針ないしは見解をただしたいと思います。
渡辺(具)大臣政務官 齋藤委員御指摘のとおり、食の安全という視点からすれば、食品の供給全過程においてHACCPによってより高度な衛生管理をすべきだというふうには私どもも考えているわけでございますが、今、食品業界の置かれている状況等考えますと、先生も御指摘のとおり、零細中小企業もあるというようなことを考えますと、直ちにこれを導入するというのは、経済的にも、あるいは人材供給の面におきましても、なかなか現実的でないわけでございます。
 しかし、そうはいっても、考え方としては、全行程におきましてHACCPを導入した方がいいということでございますから、HACCPの考え方をやはり導入して衛生管理を図っていく必要があるのではないか。
 そこで、厚生労働省といたしましては、危害要因の分析ですとか、あるいはその発生防止対策、原材料の安全確認、記録の作成、保管などのそれぞれの段階で、HACCPに盛り込まれたような安全対策を取り上げていくことが可能ではないか、可能な部分をできるだけ取り上げていきたいというふうに思っておりまして、今回の食品衛生法の改正におきましても、販売食品等の安全性の確保に関する知識及び技術の習得を努力してほしいということにしてありますし、あるいは販売食品等の原材料の安全性の確保、あるいは自主検査の実施、それから、必要な記録の作成、保管、そういうものについてHACCPの考え方をなるべく入れてするようにということにしてあります。
 今後とも、厚生労働省といたしましては、関係省庁と連携をしながら、食の安全の観点から全行程におきまして衛生管理の一層の向上に努めていきたい、こういうふうに考えております。
齋藤(淳)委員 先ほど来、HACCPの導入に関しまして食品衛生法との関連での言及が多々出されているわけでありますけれども、食品の安全性ということを考えた場合に、食品衛生法も確かに重要ではありますけれども、さきに衆議院を通過しました食品安全基本法との関連でHACCPをどのように考えていくかということも、既にこの段階で検討していく必要があるのではないかと思われます。
 そこで、食品安全基本法との関連でお伺いいたしますけれども、さきの修正案におきまして、食品安全にかかわる海外からの危険因子の流入について対応する規定が食品安全基本法に盛り込まれたわけであります。
 食料自給率の低い我が国の現状を踏まえて、食品安全性を厳格に優先して考えるのであれば、輸入食品の安全性について検討していく必要が極めて高い。
 また、一部では、海外で、HACCPを国際的に適用しようとする動きもあるようです。例えば米国では、水産加工物に対しまして、輸入業者に対して輸入品がHACCPにのっとって製造されたことを証明する義務を課しているようであります。現状では厳格には適用されていないようですけれども、長期的には義務化の方針を貫いていこうという方針のようです。
 国際化の時代に、我が国の食卓の安心と第一次産業を守るために、我が国政府の対応として、輸入食料品のHACCP確認などについて現時点でどのような考えを持っているか、お尋ねしたいと思います。WTOとの関連でいろいろと難しい問題もあるとは思いますけれども、対応が後手後手に回らないうちに、現時点での見解をお尋ねしたい、そのように考えます。
渡辺(具)大臣政務官 我が国においては食料品の六〇%が輸入に依存しているということを考えますと、その安全性を確保する意味からは、輸出国からの食料品に対して衛生管理の点で厳重にしていくということは大変大切であります。そういう意味で、今のところ、相手国に対しまして、食肉等の一部の食品、水産食品につきましては衛生証明書を添付してほしい、添付しなきゃいけないということになっております。
 委員御指摘のとおり、HACCPの高度な衛生管理がされているかどうかということを義務づけることができれば、これにすぐるものはないわけでございますが、先ほど申し上げましたように、我が国の食品製造業者に対してもHACCPの導入の義務化をまだやっていないところでございます。したがいまして、内外において扱いに差別を設けるということはこれは許されないわけでございます。
 したがって、今すぐに義務づけを相手国に対して行うということは大変難しいというふうに考えておりますが、今後、より高度な衛生管理技術が普及した場合には、我が国業者に対してもそういうことを義務づけていくというような段階が来ましたら、相手国に対してもそういうことを同時に考えていかなきゃいけない、こういうふうに考えております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 国内の義務化がまだで、業者の任意の取り組みに任せているという現状の中で、HACCPの導入をいかにインセンティブとして企業にとって有利なものと認識させるかということについて、次の質問とさせていただきたいんですけれども、要するに、HACCP制度の運用にかかわる問題であります。
 食品産業センターが平成十四年三月に行った調査では、HACCPを導入していない企業に対して、HACCP導入を希望する理由というものを聞いたところ、衛生・品質管理レベルの向上、これを挙げた企業が八八%。次に大きな項目が、消費者に対する企業イメージの向上、これが三割。つまり、HACCP導入において消費者イメージというものが二番目に重要だったという結果になっております。
 義務的にHACCP導入を課していない現実の中でHACCP導入策を講じるというときには、確かに制度融資、税制上の優遇措置などの資金的な支援を行うことも重要ではありますけれども、市場においてHACCP導入企業がどのように評価されるかという問題が非常に重要になるのではないかと思われます。消費者側の認知度を高めてHACCP導入に対してインセンティブを持たせる必要性について、どのように考えておられるか、問いただしたいと思います。
 その前に、コープとうきょうがコープの組合員に聞いたところ、JAS、リサイクルマークに比べると、HACCPマークというのは非常に認知率が低いという結果が出ています。HACCPマークを見たことがあるという消費者は、アンケートの回答者のうち一四・三%にすぎなかったそうです。知らないと答えた消費者が四一・四%。このような状況の中で、市場の中でHACCPが評価されるための取り組みについて、政府の御意見を伺いたいと思います。
西藤政府参考人 HACCP制度を普及していくということは、もちろん品質管理の高度化を通じて安全性の確保というのが第一点でございますが、そのことがまさに消費者の利益に資する、そういう観点で我々は推進しているわけでございますので、そういう点から、消費者の理解が深まることによってHACCP手法の導入促進が図られる面があることは、そのとおりだというふうに思っております。
 このため、私ども、消費者の方々とのいろいろな形での交流、あるいは安全に関するいろいろな御論議がある中を通じて、いろいろな機会を活用して、品質管理のまさにそういう優良事例の紹介、あるいはHACCP手法導入のメリット等について消費者サイドに積極的に周知を図っていく、そういう努力を、本年度から、特に安全、安心あるいは食生活という観点を含めて、食育活動を全国的に展開したいというふうに考えておる、そういう一環の中で本問題も対応していきたいと考えております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 食育活動などを通してHACCPが消費者に広く認知されたとします。次に生じてくる問題は、やはりHACCP制度の信頼性の問題だと思われます。
 我々の記憶に新しいところでは、やはり、HACCPの認証を受けていながら食中毒が発生した雪印事件、この教訓は無視できない、そのように思います。あの事件は、そもそもの原因というのはHACCP以前の基本的な衛生管理の問題だったわけですけれども、しかしながら、HACCPマークが貼付してあるからといってこの商品は安全だとは言えない、そういった不信感が消費者の間に広がってしまった場合には、幾ら周知徹底活動、啓蒙活動を行ったとしても無意味になってしまうわけであります。
 そこで、このHACCP制度に対する信頼性の確保について具体的にどのような取り組みをされる方針か、改めて見解を伺いたいと思います。
遠藤政府参考人 平成十二年六月に発生をいたしましたHACCP承認施設における飲用乳を原因とする大規模食中毒事件等を踏まえ、地方厚生局の職員による承認審査、承認後の監視指導体制の充実強化を行うとともに、専門家により構成する評価検討会を設置し、意見の聴取を行い、本制度のより厳正な運用を図ってきたところでございます。
 また、今回の食品衛生法の改正において、承認された内容の実施状況について一定期間ごとに営業者みずからが確認し、同時に行政側も、その実施状況を踏まえ、承認された内容を再確認するよう、本制度に更新制度を導入することとしたところでございます。
 このような取り組みを通じまして、HACCPによる衛生管理に対する信頼性を確保してまいりたいと考えております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 確かに、モニタリングを強化するというのは非常に費用のかかることだとは思いますけれども、やはり制度の信頼性を高めるということは非常に重要だと思われますので、今後ともこういった取り組みに御努力願いたいと思います。
 また、モニタリングを強化するというのも一つの手法ではありますけれども、例えば、HACCPを運用するに当たって、従業員の訓練不足ですとか、あるいは従業員が虚偽報告をするような、人的ファクターによる信頼性の瑕疵をいかに防止するかということも非常に重要なのではないかと思います。実際、食品製造業者に対して、どのような支援措置が必要かというニーズをただすと、訓練や研修などのソフト事業に対して助成を行ってほしいというような意見を表明する業者が非常に多いようであります。
 こういったソフト面での支援事業についていかがお考えか、政府の見解をただしたいと思います。
西藤政府参考人 今回のHACCP手法支援法では、まさに施設整備に対する直接的な支援を目的としているわけでございますが、施設整備が適正に運用されて初めて効果を持ってくるというのは、まさに先生御指摘のとおりだというふうに思っております。私ども、そういう点で、今度の制度改正で、施設整備とあわせて運用面での体制ということも高度化計画の中に入れていくということで対応するとともに、あわせて、人の育成あるいは技術情報の的確な提供ということが非常に重要な要素だ、御指摘のとおりだというふうに思っております。
 特に、先生が先ほど来御指摘のとおり、我が国の食品製造業の実態が中小零細企業という状況でございますので、私ども、まさに人材養成といいますか、教育という観点での支援、それと技術情報の提供という点でのデータベース支援ということで、十五年度でも予算措置を拡充させていただいている。そういう取り組みを強化することによって、施設整備とあわせて運用の充実を図っていきたいというふうに考えております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 最後に、HACCP認証の実施体制についてお尋ねして、質問を締めくくりたいと思います。
 現在のところ、業種ごとの協会がHACCPの認定の基準をつくり、そして認定を行うというやり方になっています。確かに、技術的な観点を優先させれば、これはいたし方ない部分もありますけれども、透明性の確保という意味あるいは実効性の確保という点で問題があることもあるのではないかという懸念があります。全業種対象に一機関で一括して認可を行うというような改革の方針についていかがなものか、見解をただしたいと思います。
 また、情報の公開については今回の法改正でも条項が盛り込まれておりますけれども、この点について、より積極的な対応をお願いしたいと思います。
西藤政府参考人 HACCP手法支援法におきまして、その高度化計画の認定のところは、先生御指摘のとおり、それぞれの食品の種類ごとにまさに製造過程あるいはその管理の過程が異なる。食肉と米飯製造では、おのずとその製造過程、管理の状況も異なる状況でございます。そういう点で、やはり、食品の種類ごとにその製造過程の実態に精通している者が高度化基準をつくり、認定をするという現在の枠組みは、食品製造の実態から見て私どもはやむを得ないんじゃないかというふうに思っております。
 現実に、現在十八業種の指定でございますが、さらに、私どもが承知している限りにおいても、パン製造業等、新たに準備をされているところもございます。そういうところを助長していきたいということと、一方で、先生御指摘のとおり、透明性という点で、私ども、そういう機関の指定を行った場合には官報で公示して透明性を確保しているつもりでございます。
 今後とも、透明性の確保をしながら、適正な運用が図られるように努めていきたいというふうに考えております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございました。これで私の質問を終わりたいと思います。
小平委員長 次に、津川祥吾君。
津川委員 民主党の津川祥吾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 齋藤委員に引き続きまして、主にHACCPについて質問をさせていただきたいんですが、実はこのHACCPという制度、私、この短い議員生活の中で割合に縁のあるものでありまして、私ども今の一期生が初当選させていただいたときに、ちょうどあの雪印の問題がございました。
 今回のこの法律をまたちょっと勉強し直す中で、あの雪印の問題どうだったかというようなことをお話しさせていただきますと、実は、あれでHACCPに傷がついたというよりも、むしろあれで普及したというような話がございまして、それまで全く認知されていなくて、雪印というのはHACCPというのをやっていたらしい、HACCPとは何ぞやというところから何か普及が始まったというようなところだそうであります。
 まだまだそれも普及段階、当時はその読み方すら定まっていなくて、ハセップとかハサップとかハシップとか言っていまして、今はハセップになったんでしょうか……(発言する者あり)ハサップになったんですね。実は私、ゼネコン出身でして、ゼネコン業界ではハセップ、ハサップ、どっちだったかな、よくわからなくなりました、まあどっちでもいいんですが。
 名前もわかりにくいんですが、厚生労働省さんと農林水産省の縦割りの部分というのがやはりこれにもございまして、厚労省さんの総合衛生管理製造過程承認制度、いわゆるマル総との関係がよくわからない。特に現場の皆さんからすれば、食品加工の現場の皆さん、HACCPやりたいなというような話なんですが、何品目、つまり自分のところが入るのか入らないのかもよくわからないというようなお話も随分聞きました。
 そこで、ちょっと確認をさせていただきたいんですが、この本法、今回ここにかかっている本法は、基本的にはHACCPを推進する。その推進する中で、最終的には厚労省さんのマル総の承認を受ける。それを推進する中で、施設にお金がかかる。施設改良にお金がかかったり、新規につくるときにHACCP対応にするときには余計にお金がかかることがあるから、その分は融資をしましょう、こういう話だと思います。
 そういうふうに認識するなら、この法律に基づいて融資を受けられた、高度化認定を受けられた業者さんが最終的にはマル総の承認を受けるというのが本来の筋であろうかと思うんですが、これまでの五年間の実績の中で、本法に係る高度化認定を受けた業者のうち、マル総の承認をとった業者というのがどのくらいあるかということをまず教えていただければと思います。
西藤政府参考人 現在御審議をお願いしておりますHACCP手法支援法、製造管理の高度化に関する法律でございますが、これはまさに、現在業種ごとに高度化計画を策定していただいて、それに合致する施設整備を金融、税制ということで直接支援する。それで、現在十八業種において取り組みが行われております。十八業種で、この五年間で百四十七件の高度化計画が認定されるという状況でございます。かつ、この施設支援については、私どもと厚生労働省さんとの間で共管でございまして、まさに基準作成に当たっても両省一緒になって策定してきているという状況がございます。
 一方、食品衛生法に基づく総合衛生管理製造過程承認制度、マル総なりHACCPと言われているものでございますけれども、この対象となっておりますのは、私どもの施設整備については現在十八業種ということですが、六業種で政令指定されております。
 私どもが、私どもといいますか、本法に基づく高度化計画を認定した事業所で、その六業種に該当するものが、この五年間で三十三事業所ございました。うち九事業所が、総合衛生管理製造過程の承認を既に取得いたしております。七事業所が取得に向けて作業中ということでございます。三十三のうち十六、約半分が、施設整備と同時に運用面での総合衛生管理製造過程承認制度の承認を得ている実績にございます。
津川委員 三十三件中、九件しかないんですね。だから、その施設整備に関してこの法律に関する承認を受けても、最終的なマル総は全然とっていないんです。とっていないのは、これは問題ないという認識ですかね。これは全く別のものだという認識でよろしいですか。
遠藤政府参考人 食品衛生法上のHACCP承認制度は、食品衛生法の第七条に決められております食品の製造基準が存在するものについて、それの例外規定としてHACCP制度を設けてあるという関係にございまして、七条の製造基準のないものに関してはHACCPが適用されないという仕組みになっております。
 現在、その食品衛生法第七条の三のHACCP制度の対象になっている業種が六業種ということでございます。
津川委員 いや、西藤局長、三十三というのは、これは関係する部分ですよね、重なる部分ですよね。ですから、重ならないから違うというんじゃなくて、重ならない部分を入れると百四十七なんですよ。そうじゃなくて、重なる部分は三十三なんですよ。その三十三の中で九しかやっていないというんですよ。
 これは違ってもいいということですか。今のお答えだと、百四十七全部はできませんという話だと思うんですが、それもいいか悪いかはちょっと別問題でありますが、重なる部分に関してですら、この支援を受けて施設をつくったはいいけれども、最終的なマル総とっていないんです。これをどういうふうに解釈すればいいですかという話です。
西藤政府参考人 食品衛生法と本法との間で業種が重なるところで、先生御指摘のとおり、先ほど御答弁させていただきましたように三十三事業所施設でございます。うち、既に食品衛生法の認定を受けたものが九、認定を受けるべく作業中のものが七、それで十六という形で私申し上げて、多少のタイムラグがございますが、約半分という状況。
 これが私ども決して望ましい状況であるという認識を持っているわけではございませんで、基本計画、基本指針をつくるに当たりましても、私ども、本法に基づく施設整備をしたものについては食品衛生法の申請を行い審査を受けることが望ましいということで、基本方針でも明示をさせていただいておりますし、厚生労働省の方からは関係都道府県にもそういう旨の御指導をいただいているという状況にございます。
 私ども、やはり、施設整備のハードと、できた施設が適切に運用されることによって初めて品質管理の高度化が実行されるわけでございますので、施設整備とあわせてまさに食品衛生法上の承認を得ていただいた方がいいということで、そういう方向で今後も取り組んでいきたいというふうに考えております。
津川委員 できればとっていただきたいという話ですね。
 厚労省さんにもう一つ確認させていただきますが、この重なる部分、マル総で言うところのHACCPの品目ですが、何品目でしょうかね、ちょっとお答えいただけますか。
遠藤政府参考人 現在、承認対象としておりますのは、乳・乳製品、食肉製品、魚肉練り製品、容器包装詰め加圧加熱殺菌食品――缶詰、レトルト食品のことでございますが、清涼飲料水の六業種ということになっております。
津川委員 今五つしか言っていないでしょう。六つ言ってください。もう一回言ってください。
小平委員長 遠藤食品保健部長、はっきり答弁してくださいね。
遠藤政府参考人 失礼いたしました。
 乳と乳製品が二種類ということになっておりまして、六種類ということでございます。
津川委員 おかしいんですよ、それ。厚生労働省は五品目と言っているんですよ。別に五でも六でもどっちでもいいんですが、分けるか分けないかはどっちでもいいんですが、つまり、その数字すら違うんですよ、数え方が。この法律では六と数えているんです。厚労省は五と言っているんですよ。これは現場の人間が混乱するのは当たり前ですよ。
 しかも、今のは何か、農林水産省は六と言って、厚生労働省は五と言っているような雰囲気にも見えますが、この法律は共管ですよ、両方でやっているんですよ。両方で重なって、この法律では六で、厚労省さんよろしいでしょうか、厚労省のホームページでも文書でもすべて五と書いています。何でこんなすり合わせもできないんですか。
遠藤政府参考人 乳・乳製品でございますけれども、これを施設が同時に取得をするということで分類上同じにしておりますけれども、法令上は六種類ということにしております。
津川委員 答えようがない質問なのかもしれませんが、やはりそこはしっかりすり合わせをしていただかないと、皆さんの頭の中では分類できるのかもしれませんが、実際この制度を利用しようとする現場の皆さんからすれば、全くわかりにくい。
 厚生労働省の、そちらの方がどちらかというとよく有名なようでありますが、五品目、五品目と言っています。農水省では重なる部分は六品目と言っていて、農水省のこの法律の対応が十八ですか、あるわけですよね。だから、その辺のところがそもそも違うというのもおかしいと思いますし、重なる部分と言われるところですら分類の仕方がそれぞれ違うというのも、やはり非常におかしな感じがします。
 この法律は特に共管という部分でもあるわけですから、そこのところはぜひ遠慮せずに、厚労省さんの方にしっかり意見を言って農水省としてもやっていただきたい。そうじゃないと、まず非常にわかりにくい。
 わかりにくい話についてもう少し後でやりますが、ただ一方で、これはまだ始まったばかり、まあ五年はたちましたけれども、まだまだ必ずしも固まっていない制度という認識もあるかと思います。そんな中で、この法律ができて、現在のところ今御報告いただいたとおりで、この法律にかかわる認証を受けたところはたくさんある。まあたくさんかどうかはわかりませんが、百四十幾つあるけれども、マル総には必ずしも直結していない。
 この現状の中で、マル総をとるのが確かに望ましいけれども、そこまでやらなくてもいいという認識をとられているのか。つまり、施設整備に関して、HACCPというものを少しでもかじった形で施設の改良をすれば、それだけでも一定の評価だ、さらにはできればマル総もとっていただきたいという、そういう認識なのかどうか。この法律そのものの考え方になりますので、これはちょっと大臣の考えをお伺いしたいんですが。
亀井国務大臣 今いろいろ御指摘いただいております食品の安全、食品の衛生、こういうことは大変重要なことでありますので、できる限りその承認申請を得べく私どもとしてもぜひ奨励をしてまいりたい、こう考えております。
津川委員 大臣は、そもそも、このHACCPという手法をどのように評価されているか、ちょっと御自身のお考えを伺ってもよろしいでしょうか。
亀井国務大臣 大変いろいろの食料品を扱う、製造する、そういう過程におきまして、衛生管理あるいはまた科学的な手法、いろいろのものを用いるわけでありまして、大変すばらしい制度、このように認識をいたしております。
津川委員 先ほどの齋藤委員の質疑の中でもありましたが、国際的な流れの中で、私は、このやり方、この手法というのは導入必至ではないかというふうに認識をするべきだと思っています。ですから、これはなかなかすぐれた手法であるから、こういったやり方もできればいいなということではなくて、国際的な流れの中では、これに対応できていないということが、つまり日本の従来のやり方で安全性を確保しているということを幾ら主張しても、それが国際的には通らない可能性がある。そういった危機感から考えれば、これは世界に先んじてでもやはり導入をしていかなきゃいけない、そういう立場に立つべきではないかというふうに私は思います。
 その中で、問題点として特に挙げられるのが、お金がかかるという話。それから、手法が必ずしも確定をしていない。業種ごとにはまだまだ手探りの状態のところもたくさんございます。大手のところなんかは割合にそれが先行してできても、中小の食品加工業の皆さん、零細の皆さんなんかは、HACCPやれと言われても、とてもじゃないけれども、人数的にも全然足りない、それから敷地的にも全然足りない、全くできないというようなことをおっしゃる方が多いと思います。
 その中で、やはりそういった中小零細の企業さんにとってもこれが導入できるという形にしていかなければならない。それは、やはり今言われているようなHACCP手法をそのまま押しつけるようなやり方では不可能なんですね。中小なら中小なりにそのやり方を担保していく、そういったやり方を手探りでつくっていかなきゃいけないということだと思います。
 その中で、このやり方を、どんどんHACCPを導入していかなきゃいけない。政府が旗を振るだけではなくて、やはり一番大きな力は、消費者の皆さんが安全性の高いものを求める、それもいわゆる賢明な消費者の皆さんが必要十分な安全性の確保というものを求めるという中で、HACCPを導入しないと話にならないという形になっていけば、もう対応できませんというのではなくて、いかにして対応するかというような知恵も出てくるかと思うんです。
 その中で仮にコストが高まっても、そのコストは最終的には消費者の皆さんに負担をしていただくということだと思います。安全はただでは買えないということでありますから、そこまで理解をしていただく必要があると思うんです。
 厚労省に伺いますが、HACCPというものに対する消費者の認知度向上についてどういった努力をされているか、伺います。
遠藤政府参考人 消費者の認知度向上につきましては、食品衛生行政の取り組み状況をわかりやすく情報提供するために、平成十二年十二月に食の安全推進アクションプランを策定し、ホームページに掲載するなどしており、その中でHACCPの推進についても取り上げているほか、新たにHACCPの承認を行った際にはプレスリリースを行っているなど、消費者の理解の促進に努めているところでございます。
 また、当省の所管法人でございます社団法人日本食品衛生協会において「HACCP これからの衛生管理」と題するリーフレットを作成し、消費者あるいは事業者等へのHACCPの考え方の周知等を図っているところでございます。
 今後とも、機会を通じましてHACCPの考え方について周知を図り、消費者それから事業者の認知度の向上に努めてまいりたいと考えております。
津川委員 どのくらい消費者の皆さんが認識をされているかは私は必ずしもよくわかりませんが、私は、やはりまだまだ認識をされていないのかなという思いがあります。
 その一つが、生産者の側も、どうすればHACCPなのかというのがよくわからないんですね。HACCPの定義を言えば、危害を分析して、それぞれの危害を防止するためには重要なポイントがここだ、そこでこういう管理をしなければならない、それから、各所各所においてしっかりとした記録をとるというような話になろうかと思いますが、そういう言い方をすればその定義はわかるんですけれども、実際の使われ方が必ずしもそうなっていないんですね。
 きのう、埼玉の方に視察に行かせていただきましたが、その中でも、これはトレーサビリティーの話ですが、深谷牛の出荷牛の履歴情報というものがホームページでも見られますと言って、その資料も見させていただきました。その中に、いろいろある中で、HACCP方式に準じた衛生管理及び生産管理の記録を行っていますというのがここに書いてあります。
 ただ、これを出荷している卸売業者さんの高橋畜産さん、きのういろいろお話を伺いましたが、その社長に伺うと、そこの加工工場はHACCPやっていませんという話でした。導入してみたいけれどもやっていませんという話でした。
 つまり、牛の生産をされている方がHACCPやっていても、その解体をしているところでやっていなければ全然HACCPじゃないんですね、これ。だから、本当にHACCPに準じてやっていると言えるかどうかというと、言えないんですよ。これは全体でやらないと言えないものですから、全然、残念ながらHACCPそのものが正確に認識されていない。
 それどころか、厚労省さんに伺いましたが、マル総にかかわるHACCPは何件かわかるけれども、それ以外、自主的にやっているのはどのくらいあるかわかりませんという話ですね。だれも理解していないんです。全く統計的な数字はありません。
 そんな中でこれはHACCPでございますと言われても、消費者がどう認識すればいいのか。マークだって、HACCPでございますと書いてあるならそうなのかなという程度で、それが本当に科学的な手法によって解析されたものなのか、安全性が高いものなのかどうかすらだれも自信が持てないようなものが、何となく、HACCPという言葉だけが先行しているという状況です。
 私は、そういった意味では、このHACCPというものをもう少し定義からしっかりやり直して、実際に全国いろいろな業種、いろいろな生産品目に関して、これはHACCPで生産されたというものであるかどうかをはっきりさせるということは、やはり国がしっかりやらなきゃならないところだと思うんです。
 業界の皆さんが手法をしっかり決めていただくのは重要な話でありますが、一方で、それが本当にHACCPと言えるかどうかということ。業界によって違うとか、県によって違うとか、あるいは農水省と厚労省で違うというんじゃとんでもない話でありまして、これはやはり国がしっかりとしたものをつくっていかなきゃいけない。業界の皆さんにそれぞれの品目についてつくっていただいたら、それはまさにHACCPであるか、あるいはそうではないかというところは明確にしなければならないし、それを明確にしない中で消費者の皆さんに幾ら普及しようとしても、これは理解されるはずがないと思います。あるいは、消費者が理解しているというふうに言っていたとしたら、それは誤解です。
 私は、そういった意味で、農水省さんと厚労省さん、どちらかといえばこれは厚労省の役割だと思うんですが、そこをしっかりやっていただかなければならない。その中で、中小企業や零細ができるようなものもしっかりと承認をしていかなきゃいけない。中小零細が独自に、私たちもHACCPでございますということを言われてそのままやられたのでは、これはHACCP制度そのものが崩壊するわけでありますから、そこまでやはり目を配らなければならないと思います。
 今、齋藤委員からも、もっと安くすることができないかというような話がありました。
 コーデックス委員会の方針の中でもいろいろとガイドラインが決められておりますが、この法律の基本方針の中にある、清浄度別の区画を隔壁により仕切る。壁をしっかりつくりなさい、仕切りをしっかりつくりなさい。清浄地域と非清浄地域、それから仕掛かり品の作業地域と、三つに分ける。三つに分けて、そこは壁をつくって空気の出入りがならないようになって、それぞれ別の人が作業するようになる。人がその地域を行ったり来たりしないようにする。最低限それで人が三人にならなきゃいけないし、仕切りを二つつくるだけのスペースがなければならないという根拠になりますが、コーデックス委員会のガイドラインの中にはそれは入っていないんですね。だから、中小に対しては必ずしもそういったものを強要する必要はないと思うんです。
 ですから、中小ですとかあるいはその業界ごとにもっと簡易に入れられるようなものをつくるべきだと思いますが、そういったことは取り組まれていらっしゃるでしょうか、どうでしょうか。
西藤政府参考人 コーデックスのHACCPシステムのガイドラインの中では、七原則十二手順を定め、かつ微生物の生残または増殖による危害分析についてもその中で含めて、その対処をするための防止措置を講ずるということであって、具体的な施設整備をこうしなければならないという形でガイドラインが整備されているわけではないというのは先生の御指摘のとおりでございます。
 ただ、今申し上げましたような考え方を具体的な品目ごとにやはり当てはめていくと、私ども、微生物の危害防止をどうしていくかということを考えていきますと、やはり、清浄区域と非清浄区域を分ける、清浄区域の区画が隔壁で区分されている、製造ラインが交差しないというところが、品目ごとの製造工程の具体的なことも念頭に置きながら、かつ微生物の危害防止という観点を踏まえれば、この考え方は基本的に各品目にやはり共通していくのではないのかというふうに思っております。
 コーデックスの世界で、コーデックスの場で、中小企業者、零細企業者、あるいは途上国に対する対応ということで現在議論が行われております。私ども、我が国の実態、それぞれ地域の実態も踏まえながら、その議論にも積極的に参加しながら、中小企業の方あるいはそれぞれのところがどういう形で対応していけるかということは工夫していきたいと思いますけれども、ただ、品質管理の高度化という基本的な観点で、基本的な枠組みは現在の形がやはり適切ではないかというふうに考えております。
津川委員 実際には、各都道府県で独自の基準をつくって認証制度をつくるというのをやっていますね、やっているんですよ。茨城県がやっています、長崎県もやっています、東京都もやっています、愛知県もやっています、北海道もやっています。それから、新潟県もやっておりますし、我が静岡県もやっております。
 それが、つまり国の制度よりは若干ある意味で甘いんです。少しは基準が低い。だけれども、まさに思想はHACCP思想なんです。HACCP思想でできるような業種をなるべく広くして、なるべく簡易で入れられるようにして、なるべくお金のかからないようにして、各都道府県が認証してやっていこうと言っているんです。
 ですから、私は、各自治体がそれに積極的に取り組むというのは大変すばらしいことだと思います。それは農水省さんも厚労省さんもぜひ見習っていただきたいところでありますが、ただ、一方で、それぞれが勝手にやってしまうと結局それぞれの信頼性というものに差が出てしまいますから、例えば、HACCPについてレベルをつけるとか、ミニHACCPをするとか、これについてはこういったやり方をする、ランクをつける、こういうやり方はできるはずです。それをやらない限り、今の基本枠組みが前提でございますと言っている限りは絶対普及しないですよ、できないところは幾らでもあるんですから。これでは結局できません。
 それから、海外の例についても、先ほど齋藤委員からもありましたが、海外も中小企業向けというのは結構やっているんですね。しかも、さらに言うと、例えば業種の中では、製パン業界についてこれから農水省さんやるというような話を先ほどされましたが、製パンの業界の皆さんの話を伺いますと、例えばアメリカのAIBというものがある。それは、今日本がやっている、やろうとしているHACCPよりもはるかに厳しいというんですね。だから、そもそもそっち側をやってしまおうと。全くの後追いでありますし、仮に、それで日本でとったとしても、アメリカに対して、では日本のパンのはHACCPでやっているから大丈夫だよということが言えるかというと、言えないんです。
 それから、例えば、私はこういったやり方は最終的には消費者の立場に立って考えなければならない。消費者の立場に立って考えれば、輸入品であったとしても国産品であったとしても同等にやはり安全性というのを確保していただかなければならないという話に当然なるわけでありまして、そういう考え方からすれば、どうも現場で言われているように、農林漁業金融公庫の融資だから、外国から輸入したものを材料にしている場合はこの認定はなかなか受けられないなんというようなことのないようにしていただかなければならない。
 食料自給率を上げるために国産の食料、材料を使っていただくというのも、確かに農水省としては重要な政策として掲げているとは思いますが、だからといって、食品の安全性ということを担保しなければならないこの制度にその思想を盛り込むと、結局、国内の生産者だけが厳しくなって、輸入品に対しては非常に甘いという形になりかねないわけですから、そうはならないようにしていただきたい。
 むしろ消費者の立場から考えて、輸入品であれ国産品であれ、同等の安全性、高い安全性を担保する、確保するということを突き詰めていった先に、そうであるならば例えば地産地消だ、顔の見える食品だということになれば、やはり国内の方が、そこはある程度アドバンテージのあるところかもしれない。
 だから、むしろこれは国際レベルに当然劣らないものをつくらなければならない。国際基準との間ですり合わせをしなければならないし、農水省と厚労省の間で六か五かなんて言っている場合じゃないんですよ、全然。
 こういったものは、国内ではとにかくまず統一をしていただいて、そして、中小零細でも入れられるような基準をしっかりつくっていただいて、その上で、消費者の方々に対して認知をしていただけるような普及をして、それをさらに進めていく中で、日本の国内の生産者の方々、こういった方々が一つの武器とできるような安全性というものを、これは国が一体となって進めていくということにならなければならないんだというふうに思っております。
 大分時間がなくなりまして、私ばかりしゃべりまして申しわけありませんでしたが、ぜひ今回、期限が切れたからただただ延ばすとか、あるいは不景気だからHACCPをやればお金を貸すよなんていう発想ではなくて、まさにこの食品の安全行政という中で、こういったものを導入することは本当に必至であるという観点に立って進めていただきたいということを指摘して、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
小平委員長 次に、楢崎欣弥君。
楢崎委員 民主党の楢崎です。
 きょうは十五分という限られた時間ですので、問取りを受けた中から、トレーサビリティーシステム導入の発端となったBSE問題に絞って質問をさせていただきます。
 そこで、そもそも感染ルートの解明はどうなったのか。農水省においては、プロジェクトチームをつくって、川下、川上からの調査を実施しているということを聞いておりますけれども、今日における状況というものをまず報告してください。
須賀田政府参考人 BSEの感染源、感染経路、これまでたびたび御質問がございました。
 私どもは、大体三つのルート、一つがイタリアから輸入された肉骨粉ですけれども、一九九六年以前、OIEの基準を満たしていなかったという問題……(楢崎委員「ちょっと大きな声で」と呼ぶ)
 一つは、イタリアからの肉骨粉です。もう一つは、五つの配合飼料工場で混入の可能性が否定できなかったということ。三番目には、今まで感染が確認されました七例に共通して給与されていた代用乳の中に、BSE汚染国のオランダからの動物性油脂がまじっていたという問題。
 この三つに絞られて、集中して調査をしてきたわけでございますけれども、私どもはまだ特定するに至っていないという状況でございます。
 そういうことで、この問題の隘路を切り開くということで、専門家によりますBSE疫学検討チーム、これを立ち上げまして、これまで得たデータをすべてお出しいたしまして分析評価をしていただいているところでございます。
 そして、この疫学検討チームは、過去の肉骨粉、輸入の生体牛、それから動物性油脂、こういうものの国内への侵入リスクあるいは暴露のリスクにつきまして複数の仮説を立てて、その規模と起こりやすさを追い込んでいって検証しようということ。それから、BSEに感染をした発生群とそうでない群の飼育方法とか飼料の給与のデータで比較考察をしよう。こういうような方針を立てまして、疫学的な分析評価の中間取りまとめをこの夏までにいただくという状況になっているところでございます。
楢崎委員 先月、我が党の鮫島議員が合同審査会において、どこかの段階でだれかがうそをついているとしか思えない、このような趣旨の発言をされました。私も同感ですね。
 今言われましたように、七頭の感染牛の共通事項があるわけですけれども、出生時期もさることながら、やはり私は、全農の子会社である科学飼料研究所高崎工場で製造された代用乳、ミルフードAスーパー、これがどうも気になります。たまたま同じものだったというような偶然の一致説というものは、もう通用しないんじゃないですか。
須賀田政府参考人 酪農の場合、子牛の段階で代用乳を使うというのは一般的なことでございます。母牛は販売用の生乳を搾っているわけでございますので、子牛を育てる場合には代用乳を飲ます、これは一般的なことでございます。
 そういうこともございますが、先生が今言われた七例共通の代用乳の原料として使用されたものの中に含まれていたオランダ産の動物性油脂、これについて、昨年六月に現地調査、オランダへの調査をしたわけでございます。その動物性油脂の由来でございますとか製造工程について調べさせていただきました。
 一つは、その原料が牛の脂身ということでございまして、背脂肪とか腹腔内の脂身でございまして、危険なところは自主的に原料から除去をされていたということが判明をいたしました。
 それから、その動物性油脂は純度が非常に高いものであったという可能性が高いということが判明をいたしました。
 それから、飼料用の油脂の製造ラインというのは他の製造ラインと分離をされておりまして、他のものが混入する可能性が非常に低いということでございまして、私どもとしては、この動物性油脂がBSEの感染源となったという確証を得るに至らなかったということでございます。
 そういうこともございまして、先ほど申し上げました専門家から成ります疫学検討チームにおきまして、他の感染源の可能性とあわせて分析評価をしていただいているところでございまして、先ほど申し上げましたように、中間的な取りまとめをこの夏までに行っていただくということとしているところでございます。
楢崎委員 私も、今言われましたオランダ産の獣脂、これの製造過程の中で汚染された肉骨粉が紛れ込んだのではないかという疑問を捨て切らないわけですけれども、いずれにしましても、まだ感染源の可能性は否定できないという姿勢だと思います。
 ところが、全農は、消費者に情報開示をするどころか、一方的に代用乳は安全と宣言しているんですね。これでいいんですか。農水省はなめられているんじゃないですか。
須賀田政府参考人 昨年、たしか農業新聞に先生が言われたような広告を全農サイドが出したということを私どもも承知しておりまして、直ちに全農に対して、感染源、感染経路の究明中にこのような内容は不適当ということで、訂正の広告を出させたところでございます。
楢崎委員 私は、やはり偽装事件に通じる全農の体質があらわれている、このように思います。
 そこで、農水省の消費者に軸足を置く行政というものを打ち出しておられるわけですから、これまでの感染ルート解明作業について、中間報告という形ででも国民に報告すべきではないですか。
須賀田政府参考人 私ども、感染源の究明のためのチームをつくりました。合計十二名おりますけれども、国内のいろいろな工場、それから海外のイタリア、オランダ等の調査等をいたしまして、過去その結果を二回取りまとめて発表をさせていただいているところでございまして、今後もそういうふうな情報の開示というものには努めていきたいというふうに考えているところでございます。
楢崎委員 ぜひやっていただきたいですね。
 私も、結局何が原因だったんだとよく聞かれるわけですね。きのうも現地調査をやりまして、その訪問先であるイトーヨーカドーの関係者から、とにかく感染ルートの早期解明をやってくださいと訴えられたところですけれども、やはり解明されなければ、どんなに食の安全措置をとろうと消費者の不安感は完全に取り除かれない、このように思います。そこで、もう市場に出ている肉というのは安全だということが消費者もわかっておられるわけですから、情報は進んで提供していただきたい、このように思います。
 これに関連して、北村副大臣にお伺いします。
 いわゆるBSE対策の一環である牛肉買い取り制度ですけれども、七十九社、百四トンが補助対象外として判明したわけです。補助額に換算しますと、約二億三千万相当ですか。これは、最終的に対象外の肉の量はどの程度になりましたか。
北村副大臣 先生から御指摘のありました対象外の肉でございますが、百四トンということでございます。
楢崎委員 いわゆる内部告発によって大手食品会社からも逮捕者が出る事件も発生したわけですけれども、今回とも相まって、言いかえればこの制度のずさんさが指摘されていると思うんですね。
 そこで、今回関与した業者名が公表されないということはどういうことでしょうか。これは、公表することによって、この制度の今言いましたずさんさ、そして指導の不徹底を逆に業者から指摘されることを恐れたからじゃないんですか。
北村副大臣 先生から今御指摘のあったことにつきましては、補助対象外となった業者名の公表につきましては、牛肉在庫保管・処分事業の補助対象外となった業者名の公表に係る第三者検討会において、公表の基準というものを示されたわけでございます。この委員会で、検討は昨年の七月から八月にかけて四回検討委員会を実施していただいて、公表の基準を示されております。
 その公表の基準におきましては、例えば箱の詰めかえなどの故意が認められたものについては原則公表しよう、あるいは一方で、自主点検の報告が事前になされているなどの場合にはあえて公表する必要があるかどうかは勘案することというような、一定の公表の基準というものを検討委員会で出されている。
 それに照らして、私も含めた弁護士やあるいは元検事等で構成されております牛肉在庫保管・処分事業に係る判定委員会を開催して、一件ずつ実は丁寧に丁寧にこれを検討して、公表すべきでないという検討委員会での決定を見て、今のところ検討をする業者がないということであります。
楢崎委員 情状酌量という点も含まれているのかもしれませんけれども、消費者から見れば、やはり農水省の対応は疑念が残ると言わざるを得ない。そのことを指摘して、終わります。
小平委員長 次に、鮫島宗明君。
鮫島委員 ちょっと楢崎さんの質問の続きを一問だけさせていただきます。
 須賀田局長にお伺いしたいんですけれども、問題となっている代用乳のミルフードAスーパー、一九九六年前後につくられていたものの販売先、その販売先のルートに沿って、それを給与された牛の群の追跡調査というのはやっているんでしょうか。
 例えば、死亡廃用牛の比率がえらく高いとか、そういうおかしな数字が出てくる可能性もあるんじゃないか。あるいは、まだ現在七歳とか八歳でいる牛について、もう一度丁寧な目視検査をするとか、ミルフードAスーパーを一九九六年四月前後に与えられた牛の群については準疑似患畜的な見方が必要じゃないかと思いますが、そっち側からの調査というのはやっているんでしょうか。
須賀田政府参考人 たしか一例目から四例か五例目まで、たしか九六年の何カ月の範囲に集中して感染が確認されたということがございました。そして、それらが共通して与えられていたのが代用乳であったということがございまして、その年に生まれたものを集中的に鑑定をしていこうという方針を立てました。
 ただ、その年に生まれたものを強制的に連れてきて殺してみるというようなこともできませんので、農家の同意を得て、できるだけ病性鑑定の方へ回すようにということで、一頭たしか六万円の支払いをするような措置をとりまして、できる限りの病性鑑定に誘引するという手法をとったのが一つでございます。
 それから、そういう牛に与えられていた代用乳のロットが幾つかで特定できないか、もし特定できるなら、その成分というものをきっちり見られないかということで調査に入ったわけでございますけれども、なかなかそのときのロットが残っていなかったというようなこともあり、この点からの調査というのがなかなか難航をしているという状況でございます。
鮫島委員 その当時の九六年四月前後のミルフードAがどの範囲に売られて、どういう酪農家のところまで行ったのかという追跡はできないわけですか。
須賀田政府参考人 今先生言われました代用乳、東日本で全体の酪農の三割が使用をしておりますものですから、なかなか特定的に追跡というのが難しい状況にあったということでございます。
鮫島委員 済みません、ちょっと私の予告してあった質問と違うんですが、本題の牛のトレーサビリティー法案についてお伺いいたしますけれども、これはよく読んでみたらなかなか難しい法案で、法律効果がどこにあるのかが読めば読むほどわからない。どうも頭が痛くなってくるしということで、ちょっと最初にSARSのことだけ聞きます。
 これはコロナウイルスが原因だというふうに言われていますが、動物、家畜でもコロナウイルス由来の病気が幾つか知られているんじゃないかと思いますが、ペットでは猫が有名だと思います。多分北村副大臣は御存じではないかと思いますが、豚とか牛でもコロナウイルス由来の病気というのはあるんでしょうか。
北村副大臣 その道の専門家ではありませんけれども、あるというふうに学んでおります。
鮫島委員 そうすると、今、人間に感染して、一番直近のデータですと、患者の数が六千九百三人、既にお亡くなりになった方が四百九十五人、けさの情報ですが。これはある種のコロナウイルスの変異型が今こういう猛威を振るっているということですが、どっちから来たのかわからない、動物の方から来たのか、どこから来たのかわからないということだと思いますが、今、人畜共通病害という認識はお持ちなんでしょうか。
高原政府参考人 先生御指摘のとおり、世界保健機関は四月十六日付で、SARSの原因は人の間でかつて見られたことのないコロナウイルス科のウイルスであると発表いたしました。これをSARSコロナウイルスというふうに命名したところでございます。大きく分けて三種類ぐらいコロナウイルスがあると言われておりますが、それのいずれにも属さないというふうに言われております。そういう知見が得られております。
 それで、御指摘のとおり、コロナウイルスの自然宿主といたしましては、人の風邪とか、牛、豚、犬、猫、ウサギ、マウス、鶏などを確認しております。
 それで、人のコロナウイルスは、上気道炎を症状といたします風邪の原因ウイルスの一つでございますし、動物のコロナウイルスについては、ただいま御指摘ありましたように、豚とか猫とか鶏とか、さまざまな病変を起こすことが知られております。しかしながら、いわゆる新しいSARSウイルスの、動物に感染することができるか、ないしは動物から来たのか、要するに人畜共通のものについては、残念なことに、私ども、現在のところ知見を持っておりません。現時点では、動物からはSARSコロナウイルスが検出されたという報告はございません。
 しかし、これはもう御案内のとおり、この二月ぐらいに国際研究プロジェクトが発足いたしまして毎日のように情報が更新されているという状況でございますので、今後とも、WHOないしはWHOが組織しました十カ国、十を超える研究機関のネットワーク、日本の感染研もその中に入っておりますが、そういうふうな国際的な情報に耳を傾けて、もし必要な施策がありましたら早急に対策をとりたい、そういうふうに考えております。
鮫島委員 ぜひ、しっかり情報をとっていただいて、動物と人間との間に行ったり来たりしながら蔓延するというようなことがない予防行政をやっていただきたいと思います。
 本題に入りますが、牛のトレーサビリティー法案、これは、食品安全基本法のときにも問題になりましたが、あと、先ほどの委員の方も質問していましたが、輸入牛肉は入らない。それから、焼き肉的に言えば、タンとかハラミは入りません。ハンバーガーの肉も入りません。それからスパゲッティミートソースのミートソースも入りません。牛のモツ煮も入りません。要するに、入らない部分がたくさんあるわけで、およそ食材として供される牛肉の何%ぐらいがこの法案の対象になるというふうにお考えでしょうか。
須賀田政府参考人 私どもが牛肉の流通経路から推定をしているわけでございます。先ほど先生から例に挙げられましたモツ煮だとかそういう内臓肉部分は、そもそも牛肉の対象から外れておりますので、牛肉を分母といたしますと、牛肉、枝肉、部分肉、精肉、すき焼き用とかステーキ用だとか、この部分が全体の五五%でございます。
 あと、外食産業で使っているのが三七%を占めるわけでございますけれども、我々が将来的に対象にしようとしている、しゃぶしゃぶですとかすき焼き店ですとかステーキ店がその三七%のうちの四〇%ぐらいを占めるということで、一四、五%ですか、全体からいくと。
 この五五プラス一五%ぐらいが対象になるんじゃないかというふうに考えております。
鮫島委員 普通の消費者感覚からいえば、六三%が輸入肉で三七%が国産牛、国産牛のうちのタンとかハラミが牛じゃないというふうには、普通食べる人は思わないわけで、それも牛の食材というふうに思って食しているわけですが、多分、大ざっぱに言って、二五%、約四分の一がこのトレーサビリティーの対象になる量だと思いますよ。つまり、国産比率が三七で、そこから内臓とかいろいろなものを落としていくと、約四分の一、二五%が、食ぜんに供される牛製品のうちの四分の一が対象になるのじゃないかと思います。つまり、そのぐらい不十分な法律だということです。
 この法律の立法目的は、あくまでもBSEの蔓延防止のためということがうたわれているわけですが、消費者保護という理念はこの中に入っていないんでしょうか。
須賀田政府参考人 この牛肉のトレーサビリティーの法案、おっしゃいますように、BSEの感染国になった我が国において、全頭検査体制が整えられているわけでございまして、そこでBSE感染牛が確認されたといった場合に、疑似患畜等を追跡できるという意味があるわけでございます。
 一方におきまして、消費者にとりましては、個体識別番号を通じまして、牛肉の原料となる牛の個体情報といったものにアクセスすることが可能となっておりまして、そういうことで、牛肉の偽装表示の防止にも役立つ、自分が食べている肉がどこでとれたものかというようなことにも役立つということで、消費者の利益の増進ということももちろんこの法律の目的に入っているところでございます。
鮫島委員 確かに、目的のところに、履歴情報の提供を促進し、もって消費者の利益の増進を図るという部分はありますが、食品安全基本法の基本理念の中に、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識が重要だというふうに食品安全基本法でうたわれ、それの傘の中にあるトレーサビリティー法、この中では、国民の健康の保護が最も重要だというはっきりした文言もなければ、消費者保護という表現もない。
 つまり、情報提供して消費者の知る権利を多少サービスしますよということになっていて、あくまでもBSEの蔓延を防止するための措置の実施の基礎とするというのが目的の中心になっているわけです。
 厚生労働省にお伺いしますが、九六年、O157カイワレ騒ぎの後、今日まで、O157で死亡した人の数は何人でしょうか。
遠藤政府参考人 厚生労働省に報告がございました腸管出血性大腸菌O157の食中毒による死者の数でございますけれども、平成八年八人、九年ゼロ……(鮫島委員「トータルで」と呼ぶ)トータルでよろしゅうございますか。平成八年以降、十四年までに二十一人が把握をされております。
鮫島委員 では、同じ九六年四月以降でいいんですが、今日までにBSE由来で死亡した方の数は何人でしょうか、国内でですよ。国内でBSEで死んだ人間はいるんですか。
遠藤政府参考人 これまで国内ではバリアントCJDの報告はございませんので、当然、死者もございません。
鮫島委員 この法律ではBSEの蔓延を防止するための措置の実施というふうになっていて、O157とかサルモネラ菌による被害の防止というのがこの法律の目的に入っているんでしょうか。
須賀田政府参考人 先生御承知のとおり、この法律といいますのは、一昨年でございましたか、我が国初のBSEの感染牛の確認というのが、かつてないほど国民の皆様方に食に対する不安を与えた。そして、毎日毎日、屠畜される牛につきましては全頭検査をやっているという状況を踏まえまして、なかなか牛肉に対する消費者の信頼の回復というのが図れない、だんだん回復はしてきておりますけれども図れないという状況を踏まえて、EUの制度等を見ながら、牛肉の安全性に対する信頼の確保を図るということで導入をしたわけでございます。
 O157でございますとかサルモネラでございますとか、そういうものが発生した場合に、製品の回収だとかそういうことを行うということを目的にしたものではございません。
鮫島委員 ですから、消費者保護、消費者の健康が第一ですという食品安全基本法にうたわれている理念が、このトレーサビリティー法案の中で生かされていないんですね。
 一般的に、トレーサビリティー、追跡可能性は何のためにやるかといえば、EUでも既に数年前から定着していますが、製品に欠陥が見つかった場合に消費者保護にとって最も重要なのがトレーサビリティーである。トレーサビリティーは、食品の回収を円滑にするとともに、問題になっている製品に関する的を得た正確な情報を消費者に提供することを可能にする、これが世界的なトレーサビリティーの概念なんです。
 今回政府が提案している牛肉トレーサビリティーは、こういう世界の常識から非常に大きく外れて、BSEの蔓延防止のためのトレーサビリティー。そうすると、家畜伝染病予防法もBSEの予防と蔓延防止がうたわれていると思いますが、それを補完するというような位置づけなんでしょうか。
須賀田政府参考人 一般的に食品のトレーサビリティーといいますのは、先生が言われましたように、消費者に正確な情報を提供して食品に対する信頼を得る、万が一事故があった場合には追跡可能なものということで一般的にトレーサビリティーというのは制度化といいますか、政策として成り立っているわけでございます。
 その中でも、牛肉はBSEの発生がありましたので、プラスの目的として、今全頭検査をしています、BSEの感染牛が発見されます、そうすると疑似患畜その他については処分する必要がございます、そういうものの追跡が可能で、消費者に対して、こういう肉がここにありますよということを情報提供できるということで、罰則による義務化、耳標の装着でございますとか情報の届け出、それから個体識別番号の伝達、そういうものを罰則の担保による義務化として加重的に制度化したのが牛肉のトレーサビリティーでございまして、一般のトレーサビリティーの上に、そういう目的を持っているとお考えをいただきたいというふうに思っております。
鮫島委員 私も、牛肉のトレーサビリティーという世界の中に、O157もあり、サルモネラ菌もあり、残留抗生物質もあり、あるいは場合によっては合成されたホルモン剤の問題などもあり、健康にマイナスの影響を及ぼすと思われるような因子はたくさんあるわけですが、あくまでもBSEの蔓延防止というところに絞って、消費者保護、消費者の健康の保護が最も重要という概念が消えてしまっているのが非常に悩ましいというか、わけのわからない理由なんです。
 去年の七月二十三日、アメリカのコンアグラ・ビーフ社が極めて大規模なO157事件を起こしたというのは御存じでしょうか。
遠藤政府参考人 昨年の七月に米国農務省が、大手食品メーカーにおいてO157に汚染されている可能性のある牛ひき肉が回収されている旨を公表した事件というふうに承知をしております。
鮫島委員 史上二番目のO157被害と言われていますが、全部で八千五百トンのひき肉が回収された。
 このコンアグラ社というのはアメリカの大手の食肉メーカーですので、多分、ここからも日本には輸出されておりますね。そのことを確認できますでしょうか。このときの問題のロットかどうかは別として、このコンアグラ社の肉というのは日本に入っているのかどうか。
遠藤政府参考人 当時、厚生労働省におきまして、当該メーカーの牛ひき肉の輸入実績の調査を行いました。また、当該メーカーの牛ひき肉の輸入届け出がなされた場合には輸入手続を保留するように検疫所に指示し、当該メーカーの牛ひき肉以外の牛肉に対する輸入時のモニタリング検査の強化を行いました。
 その結果、平成十三年一月から平成十四年七月までの間に、当該メーカーの牛ひき肉の輸入実績はございませんでした。
鮫島委員 では、このコンアグラ社が七月に事故を起こしたときに、例えば、日本側として当分の間、つまりHACCPが適正に機能しているかどうかを日本の立場から確認するまでは、そこから日本向けの出荷を停止するというような措置をとりましたでしょうか。
遠藤政府参考人 当該メーカーの牛ひき肉、先ほど申し上げましたように輸入実績がなかったということ、それから牛ひき肉以外の牛肉についても輸入時のモニタリング検査でO157は検出をされなかったというふうなことでございます。また、平成十四年七月以降も当該メーカーの牛ひき肉の輸入実績がないということでございますので、特段措置をとっておりません。
鮫島委員 微妙にひき肉、ひき肉とつけていますが、別にひき肉だけを対象にする必要はなくて、むしろ、このコンアグラ社の衛生管理に大変問題があった、それはどこへ飛び散っているかわからないわけですから、国際的な常識からいえば、例えばEUだったらここからの出荷はとめるはずですよ。それで査察に入って、絶対、事故が二度と起きる心配がないということが確認されるまではコンアグラ社から日本への出荷は認めないというのが、多分、国際的な常識だと思いますが、この今回の法律が成立すると、厚生労働省の方はそういう措置のとり方が変わってくるんでしょうか。
 アメリカの大手の食肉メーカーは連邦検査官の検査を受けないで自主検査でオーケーということになっていると思いますが、そういう大手のメーカーから日本に出荷されている牛肉で、ある種事故が起こったときに、当面そこからの出荷を、日本向けの輸出を停止するというような措置を今後とるつもりがあるか。この法律が成立することがきっかけになるのか根拠になるのかどうかわかりませんが。
遠藤政府参考人 今後、輸出国におきましてO157汚染牛ひき肉が回収をされているというふうな情報を入手した場合には、我が国におきましても、食品衛生法第四条の第三号に該当をするということで、輸入実績を調査し、回収対象ロットの製品の輸入がある場合には輸入者に対し回収を指示、それから当該メーカーの他のロットの製品に対するモニタリング検査の強化、あるいは必要に応じ命令検査の実施といったふうな措置をとるつもりでおります。
鮫島委員 ある種ケース・バイ・ケースと。緩いですよね、普通に消費者の健康が第一というふうに考えた場合に。
 今私がちょっと言いましたけれども、アメリカの大手の食肉メーカーは自主検査でいい、連邦検査官の検査を受けなくていいというのが連邦食肉検査法で決まっているんじゃないかと思いますが、それは事実確認できますか。
遠藤政府参考人 検査を行っているかどうか。行わなくていい場合ですね。
鮫島委員 連邦食肉検査法では、コンアグラ社のような大手企業については会社の自主検査にゆだねており、連邦検査官による検査は行っていないというのは事実でしょうか。
遠藤政府参考人 私どもの承知しております範囲では、米国におきまして、食肉のO157やサルモネラ菌等の微生物検査について、過去六カ月間検出がなく、日常的に検査を行っている食肉処理施設、もしくは牛肉の購入元に対して全ロット検査を要求している食肉処理施設、もしくは屠畜処理において有機酸、熱湯により枝肉の汚染制御を行っている食肉処理施設については、原則として検査を行わないことができるというふうな通知があることを承知しております。
鮫島委員 ちょっと余り時間をむだにしないでいただきたいので、最後の結論だけ。
 ですから、今言ったような条件を満たしているところは連邦検査官による検査を行わなくてもよろしい、会社の自主検査でいいという体制になっているわけですね。そういうところが去年の七月に八千五百トンの肉を回収するようなO157の大きな事件を起こした。
 そういうことに対して、内外無差別で、国産と同じようにやはり消費者の口に入るわけですから、健康を守るためにそういう体制をしかなければいけないと思いますが、今回のこのトレーサビリティー法案は全然そういう世界について機能するようになっていないと思うんですが、その辺、どういうふうに思いますか。この法律ができたからといって、今言ったようなコンアグラ社の事件のようなものに迅速に対応し、これよりも強い措置がとれるという機能は、この法律は全くないですよね。それはそういう解釈でいいのでしょうか。
須賀田政府参考人 先生今言われましたような、安全でございますとか健康に直結するような問題というのは、食品衛生行政の世界の問題として、検疫なり食品衛生法に基づく規格基準の運用なりでちゃんと対応するという仕組みでございます。
 このトレーサビリティーというのは、国内の牛と牛肉との対応関係についての情報をきちっと末端の消費者まで伝えるというものでございますので、ちょっと場面の違う問題だというふうに考えておりまして、この法律ができたからといって、アメリカのO157の問題ですとかに対応できるようなものになっているわけではございません。
鮫島委員 要するに食品衛生行政とは別分野の法律として整備されているということが、だんだんこういうやりとりをしているうちにわかってくるので、何となく一般の常識からいうと大分違うような気がするんですが。
 この提案理由説明のときに大臣が、こういう法律をつくると、「牛一頭ごとにその飼養履歴等に係る情報を一元的に管理し、BSEが発生した場合に過去の同居牛等を迅速に特定できる仕組みを新たに構築することが必要」ですというのをこの提案理由説明の中で述べているわけですが、では、患畜が屠畜場で見つかりました、そうしたら、疑似患畜が一カ月前に既に出荷されていた、あるいは二カ月前に既に出荷されて食肉として末端にまで出回っているぞということがわかった場合には、これは同居牛等を個体識別番号に基づいて早急に回収するということなんでしょうか。つまり、この法律効果がわからないので聞いているんです。
須賀田政府参考人 屠畜場で全頭検査をしまして患畜が見つかった、そうすると、今、家畜伝染病予防法で、給餌、同じえさを食っておったとか同居しておったとか、そういう疑似患畜は特定をして殺処分をする、こういう仕組みになっているわけでございます。(鮫島委員「それが出荷されていることもわかったら」と呼ぶ)出荷されていたということになりましたら、科学的にはこの肉というのは安全だということになっておりますので、健康上どうのこうのという問題がないわけでございますけれども、できるだけこのシステムを活用いたしまして追跡をいたしまして、消費者にその旨を情報としてお伝えするということは可能だというふうに思っております。
鮫島委員 ちょっとはっきりしてもらいたいのですが、患畜が見つかりました、それで疑似患畜の範囲を特定したら、既に出荷されて末端の流通段階に行っているものがあるということがわかったら、全部番号がついているわけですから、それによって追跡してその製品を全部回収するのか。
 つまり、この法律がBSEの蔓延の防止に役に立つというのが全然わからないわけですよ。個体識別番号をつけたところで別にBSEの蔓延の防止じゃないし。だから、何をやるのか、BSEの蔓延の防止とこの法律がどういうふうに関係しているのか全くわからないもので聞いているんです。
 もしその疑似患畜が既にスーパーの店頭なんかに出回っていたら、それは慌てて回収しますよというと、では全頭検査を何のためにやっているのかと。今だって、疑似患畜が屠畜場に出ている可能性はあるわけですよね、患畜がたまたま見つかる順序が後先になって。疑似患畜が出ているけれども、それは全頭検査を厳密に、世界に冠たる検査をやっているから大丈夫です、肉は安全ですと言って売っているわけでしょう。一方で疑似患畜が出たといったらそれを回収するという話とが、どういうふうに消費者に説明するんですか。
須賀田政府参考人 まず、科学的な問題、制度的な問題と、消費者に安心を与えるという問題と、二つに分けて考えていただきたいわけでございますけれども、制度的、科学的には疑似患畜の肉というのは安全なわけでございまして、食品衛生法上も、回収しろだとかそういうふうにはなっていないわけでございます。
 ただ、消費者に安心を与えるという意味で、関係の業者さんが自主的に回収をしたいというような行動をとる、あるいは消費者としては知りたいというようなニーズがある、そういう場合に、情報を伝達いたしましてそういう動きの一助とする、こういうものでございます。
鮫島委員 私は、ちょっと何かある種の混乱を生むんじゃないかと思うんですよね、疑似患畜を回収するというようなことになると。
 そうすると、今だって、屠畜場に出ているものが全頭検査でBSEマイナスというふうになっても、いつこれが疑似患畜に変わるかどうかわからないわけで、その後一年後に出荷されたものがもし患畜だったとすると、では一年前のあれは疑似患畜だった、しかし、そのときはもうみんな食っちゃっていたということですが、だから、今の全頭検査はそういうことがあっても大丈夫なようになっているわけで、疑似患畜の肉も、何のために回収するのかわかりませんが、一応回収しますよという話になると、どれが疑似患畜でどれが正常の肉なのかがBSE検査だけではわからないという話になって、もう一回、私は牛肉の世界に混乱を与えるのではないかと思っているのです。
 では、ほかに、この法律はBSEの蔓延防止にどういうふうに機能するんですか。
 これは、私は非常に、フランスの例でもそうですが、全部この個体識別番号をつけて、牛一頭につきラベル約二千枚、二百グラムとか三百グラムのパッケージまで全部ラベルを張ろうとすると、二千枚ぐらい一頭につきかかる。そのことによって加工流通コストがフランスで約一割上がったと言われていますが、それだけの社会的なコストを要求するわけですよね。それで、一方で、BSE蔓延防止の効果が見えない。何か疑似患畜の肉を慌てて回収するぐらいしか効果がないんだとしたら、何なんだ、この法律はと。
 だから、どういうふうにこれをやるとBSEの蔓延が防止されるのか、もうちょっとわかりやすく言ってほしいんです。それだけの巨額の社会的なコストをかける効果がどこにあるのか。
須賀田政府参考人 このシステム、制度の第一の目的といいますのは、消費者に、個体識別番号を通じまして、自分が購入した牛肉とその原料になった牛との対応関係についての情報を提供するというのが第一義的なねらいの法律でございます。
 そして、BSEの蔓延防止はどこで役に立つのかということでございます。
 今までは、屠畜場でBSEの感染牛が確認をされたということになりますと、直ちにその生産農家のところへ行きまして、まず調べて、どこから牛を導入したかを聞きまして、その導入元にも行きまして、どうなっておるどうなっておるというので残っている疑似患畜を特定して、殺処分をする。相当期間がかかるわけでございます。
 これが新しい仕組みになりますと、BSE感染牛を確認した、そうしたら、その同居牛なり疑似患畜なりはどうなっておるかというのは、個体識別番号を追跡することによりまして、今の仕組みに比べれば格段早く、出荷途中の生体牛を押さえるですとか、あるいは科学的にはいいんですけれども注意を呼びかけるとか、そういうことが可能になる、そういう意味でございます。
鮫島委員 かなり苦しい答弁で、この法律の第一の目的はBSEの蔓延防止で、別に消費者に対する情報の提供は第一の目的じゃないですよ、普通に読めば。
 それから、今おっしゃった話は、では現状はどうなっているか。今、例えばどこかで患畜が見つかった、全頭検査で見つかったら、すぐトレースバックできて、それで同居牛が特定できるわけでしょう。別に、この法律がないと疑似患畜が特定できないわけじゃないでしょう。これまで七頭発生して、全部かなり迅速に疑似患畜の特定できたじゃないですか。
 だから、別にこの法律ができなくても、今おっしゃった生産現場から屠畜場までというのは、今だって別に、情報はかなり自由に流れるわけで、この法律の目的は、屠畜場から店頭、食卓まで、ここのところをつなぐのが今度の法律の目的でしょう。そうすると、そのこととBSEの蔓延防止がどういうふうに関係あるんですかということを聞いているんです。だから、結局、この法律の目的が何だかわからないので、やはり食糧庁の職員の仕事の確保のためだなというふうにどうしても思われちゃうところもあるわけです。
 例えば、百歩譲って、二つありますが、一つは、アメリカやオーストラリアも日本と同レベルの、これも食品安全基本法の中で国内外におけるという文字が一番急所のところに入りましたので、これは全部、肉も含めてそういう考え方に統一されていないとおかしいと思いますが、日本と同レベルのトレーサビリティーを輸入肉についても保障してくださいということをアメリカやオーストラリアに要求することは、何かWTO協定上、問題ありますでしょうか。
佐々江政府参考人 お答え申し上げます。
 WTO協定におきましては、人、動物または植物の生命または健康を保護するために必要な衛生植物検疫措置をとることが認められているわけでございますが、同時に、この際には、入手可能な科学上の情報等を考慮して、正当な目的、これには人の健康もしくは安全の保護、動物もしくは植物の生命もしくは健康の保護または環境の保全を含むとされておりますが、このような正当な目的の達成のために、必要な範囲で強制的な規格を定めることが認められているということでございます。
 この際、幾つか条件的なことが定められておりまして……(鮫島委員「時間ないので、直接質問に答えてください。個体識別番号の表示を要求することは問題があるかどうかです」と呼ぶ)
 ですから、そのようなことで、仮に国内に適用される措置について輸入食品も対象にするような場合には、こういうWTO協定の規則にのっとっているかどうかということが問題になるわけでございますが、その意味では、例えば、いまだBSEが発生していないアメリカあるいは豪州からの輸入牛肉につきまして個体識別番号の添付を要請するような場合には、その科学的な根拠とか、あるいはその必要性、必要な限度かといったような点が説明されなければ、WTO協定上、問題となり得ると考えております。したがいまして、この整合性の問題につきましては、輸出国の個別の国の事情も考えながら判断しなければいけないというふうに考えております。
鮫島委員 それは、大体どう答えるかはわかっているというか、オーストラリア、アメリカはBSE発生国じゃないから、だからこの法律で言うようなトレーサビリティーは必要ない、したがって日本と同じ仕組みを要求するのは理不尽だという組み立てなんでしょうが、それは余りにも食品衛生的な観点が薄くて、サルモネラとかO157とか、それから成長ホルモンを使っている可能性もある。そういう意味では、消費者、国民の健康が第一と、それは外務省だって共通にそういう考えがなくちゃいけないわけで、そのために、日本と同じような、要するに内外無差別、内外同質の安全性を要求するというのは、私は当然のことだと思います。
 オーストラリアは非常に個体識別は昔から盛んですが、今どのぐらいオーストラリアではこういう個体識別が普及しているのかどうか、今後、それがどのぐらい拡大していくのかというのはわかりますでしょうか。
須賀田政府参考人 豪州は、一九九五年、ビクトリア州で任意の取り組みとして個体識別制度が発足をいたしまして、一九九九年から全豪に広がっているわけでございます。
 役所と団体が実施主体になりまして、個体識別のマイクロチップだとかカプセルを投入しておるという仕組みでございまして、二〇〇二年の九月現在、牛の頭数で見て約二割程度の加入状況となっております。
 これは、先生も御存じのように、EUが肥育ホルモンフリーの肉しか輸入しないということで、豪州側がそれに対応するためにみずからの任意の個体識別制度を活用してフリーを証明しているという状況でございます。
 ただ、EUへ出す肉の量というのが、近年、六千トンから一万トン程度でございますので、その面からは余り拡大する要素というのはそんなにないのではないかというふうに思われる一方で、やはり豪州でも消費者の安全、安心に対する関心というのが高まっていると思われますので、その面からは拡大もあるのかなということで、ちょっと今のところ推定できません。
鮫島委員 もう時間がないので、あと一問だけで終わりますが、オーストラリアは、ことしから来年にかけて約七百二十五万頭にまで達すると見込まれているというのがオーストラリアのパンフレットにあります。七百二十五万頭。だから、日本で今百三十万頭、国産で屠畜していますが、日本に輸出するのに十分な量まで個体識別がもうオーストラリアは可能になっていると私は思います。多分アメリカは全然だめでしょう。
 ですから、そういう内外無差別、消費者の権利保護というのがやはり一番大事なので、あるいはBSEの蔓延防止、そういう観点から、一方でコストはかなりかかりますという全体像を見ると、私どもとしては、この法律は意味がないな、とても賛成できないという結論です。
 技術会議に一つだけ聞きますが、本当はトレーサビリティーを内臓やひき肉まで含めて全部やろうと思うと、百三十万頭の牛のDNA登録が全部できれば、あとはややこしいことをしなくても、何か事故があったら、ひき肉だろうか内臓だろうがタンだろうが、そのDNAを分析してこの個体だということがわかれば、一番科学的で正確なトレースバックだと思いますが、こういう、私もちょっと専門じゃないのでわからないんですが、百万頭以上の群れの個体識別というのがDNAレベルで技術的にできるのかどうかというのがわかりましたら。
石原(一)政府参考人 お答え申し上げます。
 現時点ではできておりません。おっしゃられるようなシステムを構築するとなれば、百三十万なりのベースでのおのおのの違う遺伝子のDNAの類型が区分できる必要があります。
 それにつきましては、どのマーカーを使って、たくさんのマーカーを使わない限り多くの数ができませんので、現時点ではそういうマーカーは開発されていませんし、そういう意味では、まだまだ先の話であろうというふうに考えております。
鮫島委員 大変だとは思いますが、それが一番正確でコストもかからない、途中のコストがかからないと思いますので、ぜひそういう意味の技術開発を検討していただいて、それができた段階で、私どもも晴れてこの法律に賛成しようというふうに思います。
 以上です。
小平委員長 この際、休憩いたします。
    午後零時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時十六分開議
小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。江田康幸君。
江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。
 本日は、この二法案について質問をさせていただきます。
 平成十二年、これは私も衆議院議員になりまして初年度でございますので忘れもしませんが、雪印乳業の黄色ブドウ球菌毒素による食中毒事件、これは、患者数が約一万五千にも及ぶその規模の大きさと、大企業の工場が発生原因であったということから、消費者心理に非常に大きな影響を与えた問題でございました。
 さらには、平成十三年の九月に我が国で初のBSEの事例が発生しまして、これを機に多くの消費者が牛肉の購入を控える、そういう問題が生じたわけでございます。また、その後発覚したさまざまな食品の偽装表示問題、これが非常に大きく消費者の食品の安全に対する不信感につながってまいりました。
 これらのような問題を受けまして、消費者保護をより一層重視する観点から、食品の安全性の確保に関する制度等の抜本的見直しが図られ、今回の法案の審議に至っている、このように理解しております。
 私、本日の質問は、これらの問題を機に、トレーサビリティーシステムにしろ、HACCP制度の充実にしろ、そういうものがきちんと行われるということを前提に、我が国が食の安全、安心に関しては世界のリーダーシップをとれるような立場に、また実力を備えるというような、転んでもただでは起きないようなしぶとい行政、日本のそういう農水行政にぜひともしていっていただきたいという観点から質問をさせていただきます。
 まず、トレーサビリティーシステムについてでございますが、牛の個体識別情報を生産から消費まで具体的にどのように伝達するのか、また、その確認をどのように行うのか、これについて御質問をさせていただきます。
 昨年の二月には、宮腰元政務官と一緒に、イオンの店頭で牛肉のトレーサビリティーをいち早くモデル見学した者としまして、この牛肉につきましては、今般の法案では個体識別番号等の表示が義務化されることによりまして、これは、食品の、牛肉の安心、安全を向上させる上で非常に重要なシステムであるということを認識いたしました。これは野菜とかそのほかの農水産物のモデルにもならなければならない、そのように実感したわけでございます。
 そこで、今回の牛の個体識別情報を生産から消費まで具体的にどのように伝達していくのか、またその確認をどのように行うのか、これについて概要を説明していただきたいと思っています。
須賀田政府参考人 今回の個体識別情報をどのように伝達していくかでございます。
 まず、生産段階でございます。すべての牛に個体識別情報を盛り込んだ番号を記載いたしました耳標を装着させる。そして、移動等があるたびにその届け出を義務づける。その情報は、家畜改良センターが個体識別番号によって一元的に管理をしておくわけでございます。
 そして、その牛が屠畜以降流通されるわけでございますけれども、その一元的に管理されております個体識別番号が消費者にまで順次正確に伝達されるように、牛肉のパックでございますとか店頭表示パネルボードでございますとか、そういうところに番号の表示を行って、かつ、その記録を管理する。帳簿を備えつけるわけでございます。こういうことによって、順次消費者の手元までその番号が、情報が行くようにしたいというふうに考えております。
 どのように確認するのかということでございまして、私どもの職員が、生産者段階で耳標がちゃんと装着されているかどうか、家畜改良センターにちゃんとした届け出を行っているかどうか、こういうものを立入調査等によって確認したいというふうに考えているわけでございます。また、業者段階にも同じように、適正に帳簿を備えつけているかどうかもあわせて確認をしたい。
 そして、一番重要なのは、屠畜場で屠畜されます牛すべて、これは年間百三十万頭ぐらいおりますけれども、この肉片をDNA検査のサンプルとしてとっておきまして、一方で、小売段階での牛肉について、これもサンプルで集取して、果たして一致するかどうか、きちっと情報が伝達されているかどうかをそれによって確認したい、同一性を確認したい。このような確認方法を考えているところでございます。
江田(康)委員 今答弁されましたように、生産から流通、消費までモニタリングして管理をなされるということでございますが、今回の法案では、独立行政法人家畜改良センターにおきまして、個体識別番号により、牛の個体識別番号が一元管理されるということなんです。この管理している情報というのが、この法案では、個体識別番号、生年月日、雌雄の別、母体の個体識別番号、それから出生から屠畜までの間の飼養地及び飼養者等々が記載、伝達されるように、管理されるようになるということです。
 この情報の中に、牛の品種、例えばホルスタインとか和牛とかF1とか消費者が非常に知りたい情報、さらに消費者の関心が高い、飼料はどんなものが給与されたのか、そういう飼料の給与履歴、それからワクチン、動物用のワクチンでしょうけれども、投薬の履歴、そういうのに消費者は非常に関心を持っているところなんですが、そういうものが欠如しているように思えます。
 この牛肉の生産、流通の各段階におきまして、品種の情報、それから、こういう飼料の給与履歴の情報、投薬履歴の情報、これらは非常に重要であると考えておりますけれども、その取り扱い、今後のお考えについて、どのようにお考えか教えていただきたいと思います。
須賀田政府参考人 まず、品種でございます。
 品種は、業者の品ぞろえの上からも、また消費者の商品選択の上からも非常に重要な情報でございますので、私ども、牛の個体識別台帳に記録すべき事項、その他農林水産省令で定める事項というのがございます。その中できちっと定めまして、必要な情報を義務的に提供するというふうなものにしたいと考えております。その具体的なやり方については、今後、関係者の意見を踏まえながら、どこまで細分化するかということは検討をしていきたいというふうに考えているところでございます。
 次に、どんな飼料を与えたか、どんな動物用医薬品等を与えたかという情報でございます。
 関心のある方には非常に重要な情報だというふうに考えておりますが、ただ、これを義務化するとなるとなかなか農家の負担が大変でございまして、一頭ごとに飼料給与あるいは動物用医薬品の給与の状況を一々記録して届けてもらう、国が一々確認するというのは、なかなかコスト的に大変でございますので、これを義務として義務づけるというのはなかなか難しゅうございますが、任意の制度として、飼料の給与情報でございますとか動物用医薬品の投与の情報でございますとかそういうものを、食品の生産履歴情報を消費者に正確に伝えることを第三者機関に認証してもらういわゆる特定JAS制度、こういう任意の制度として、それに興味のある方が任意に参加をしてもらうということで推進をしていくというのが現実的な方法ではないかというふうに考えているところでございます。
江田(康)委員 確かに、今御答弁にありましたように、品質は政令レベルですか……(須賀田政府参考人「省令」と呼ぶ)省令レベルで情報の管理ができるのではないかということでよいかと思うんですが、飼料給与履歴、投薬履歴、これに関しては、政府がすべて一々にこれをチェックしておりましたら、確かにコストもかかる、人件費もかかる、時間もかかるというようなことで、任意の制度として、第三者、民間の団体が情報を管理するというようなことは一つには現実的ではないかなと思います。
 大事なことは、徹底してそれらが消費者の皆さん方に、望めばそれがとにかく入手できるというか、情報を知ることができる、こういうことで食の安全、安心をさらにさらに確保していっていただきたいと思いますので、この質問に関してはそれで御答弁は結構でございます。
 次に参りますが、これは北村副大臣にお伺いいたします。
 今回、北村副大臣の北海道でも、BSE問題で国産牛肉の消費が非常に大打撃を受けて、生産から流通段階におけるまで、それにかかわる関係業者等、非常に大変な状況であったんですが、今消費が大分戻ってきている。
 こういう中において、国産牛肉につきましては、トレーサビリティーが今回こうやって確立されることによりまして、その安心、安全が確保されることになると思うんですね。さらに、国産牛肉は、輸入牛肉と比較しまして高いけれども非常においしい、そういう品質面でまさっているということから、国産牛肉の消費はむしろ拡大していくべきものだというふうに考えております。私の出身の熊本でも、和牛ではございますが、肥後の赤牛、褐毛和牛、これは非常においしい品種でございます。
 アメリカとかオーストラリアでは、もちろんBSEが発生していないから制度は要らないわけで、こういうような制度は確立していないわけです。だから、いわゆるチェックされていない、生産履歴も管理されていないという状況です。しかし、我が国は、今回の問題が起こったからこのトレーサビリティーシステムを導入して、徹底して消費者の方々に食の安全情報を提供する。こういうことになってまいりますので、いわゆるこのトレーサビリティーシステムが我が国は確立されている、一方、輸入牛肉はその制度はない、したがって、チェックはされていない。
 ここを差別化することによって、国産牛肉の消費を拡大していく。先ほども申しますように、転んでもただでは起きない、そういう消費拡大の努力を国が率先してやっていくべきと思いますけれども、これについて副大臣はどのようにお考えか、教えていただきたいと思います。
北村副大臣 先生からの御質問につきましては、先生御承知のとおり、一昨年、先生と一緒に、食の安全法をどうするかという議論の中で、どんなにいろいろな制度をつくっても完璧なものはない、そういう認識の中で、やはり一番大切なのは、消費者の方々にきちっとした情報を伝えて、その情報の中で消費者の方が自分の健康等々については自分みずからがきちっと管理をしたり決定をしていくということのための情報を的確に伝えようではないか、こういう議論をしたのを覚えております。
 そういう意味では、今回のトレーサビリティーの制度というものは、まさしく消費者の方々にこの情報をきちっと伝えていける、そういう制度である。
 そのことが、国内産と輸入産との中で、国内のものであれば情報はいつどういうようなときでもアクセスすることができますよと、そのことによって安心、安全というものが自分なりにきちっと判定ができる。しかし、輸入してくるものについては、どういうような養い方をされたかということもわからない、どういうような経歴があるのかということがわからないという意味では、今先生がおっしゃったとおり、そういう面で区別化、差別化というんでしょうか、そういうことで、国内のものなら情報的に自分がよく知っている、それを買って食べようじゃないかという意味では、PRをきちっとして消費者の方々にこの制度の持っている意義というものをきちっと伝えていくことが我々農水省の役目であり、また国会の役目ではないか、このように思いまして、国内産と海外産との区別化、差別化にとってはこのことは大きな一歩である、このように思っております。
江田(康)委員 具体的に考えはございますか、PR法の。
北村副大臣 今までも、BSEが発生して以来、トレーサビリティーのことにつきましてはそれぞれ役所の中でもPRをやってまいりましたが、この法律を皆さんの御審議の中で成立をさせていただいて、今度は我々の役所の中の特に地方における仕組みを変えていきますので、そういう職員の方々が現場に出て、特に消費者の方々あるいは販売店の皆さん方に、こういうトレーサビリティーの制度ですと、こういうことをやはり足で、そして現場を最重点的に回させるための努力を我が省は全力を挙げてやっていきたい、このように思っております。
江田(康)委員 ぜひともこの差別化を実現していただきたい。そして、国産牛肉の消費を拡大して、積極的に国がまた地方自治体を指導しながらやっていっていただきたいと思うんです。
 ただ、輸入牛肉が検査をしていないから危険だというような、一方ではちょっともろ刃のやいば的なところがございますので、具体的には何かいいお知恵があるかなということをお聞きしたかったんです。またこれはぜひとも政府とも協議をしていきたいと思っております。
 トレーサビリティー法案に関してもう一つですが、今言いましたように、このトレーサビリティー制度が確立されて、幾ら安全であると言ったとしても、また国産牛肉が輸入牛肉に比べておいしい、品質で幾らまさっとると言っても、輸入牛肉に比べて価格が高ければ、今はいいんですけれども、最終的に消費者は安いものに向かっていく可能性がございます。そうすると、国産牛肉の消費がやはり低下していくことにもなりかねない。
 今は、たまたまBSE問題が起きたから、ある時期牛肉が安くなった。そして、そのころに、私と一緒かもしれませんけれども、安いときにおいしい国産の牛肉を食べようということで、そのときに消費されて、そしてそのおいしさを改めてわかって、それでいて、価格は今戻っているんだけれども、消費は国産牛肉は高い状態に維持されている、こういうことだとは思うのですけれども、いずれ、やはり価格競争となりますと、消費の方で国産牛肉が低下する可能性がございます。そういう意味で、海外との競争に勝つために、肉用牛の低コスト生産を推進して、これを実現すべきだと考えます。
 これは大臣にお聞きいたしますけれども、この低コスト生産を実現するための畜産業界の構造改革というか、そういうところにおいて政府の方針についてお考えをお聞きしたいと思います。
亀井国務大臣 いろいろお話しいただきましたとおり、この制度を導入することによりまして国産牛肉の安全性に対する信頼確保が図られ、そして国産牛への消費回帰が図られる、ぜひそのことを願うわけであります。
 そのような中で、低コストの生産、この努力をしなければならないわけでありまして、肉用牛生産の構造改革を推進する必要があるわけであります。経営実態に即し、低コストな建物や農機具を必要最小限整備するなど新規投資額を可能な限り抑え、規模拡大を図っていただく。特に、繁殖経営については、放牧の積極的な推進や分娩間隔の短縮、肥育経営については、増体量の向上、飼料給与方法の改善、個体能力の的確な把握及び肥育期間の適正化等、コスト低減のための対策を実施してまいりたい、このように考えております。
江田(康)委員 わかりました。ぜひともこの構造改革を進めて、国際競争力に勝つ畜産業界の体制を整えながら、国産牛肉の消費拡大を、これを機に大いに拡大していきたい。御協力してまいりますので、ぜひともよろしくお願い申し上げます。
 それと次に、時間がございませんが、HACCP支援法について幾つか質問をさせていただきます。
 平成十二年の雪印乳業による食中毒事件、これによりまして、HACCPを導入していたけれども何にも役に立たなかったじゃないかというような印象を国民に与えてしまったことは非常に残念でございます。先ほどから質問等があっておりましたけれども、そういう印象を与えたことは否めない。しかし、一方では、HACCPというのはそれまで国民にはほとんど知られていなかった、それが注目されるようになってきた、そういうプラスアルファの効果もあったかもしれません。
 ここでHACCPについてちょっと一言申しますと、HACCPというのは、私がこれまで担当しておりました医薬品の開発におきましてのGMP制度、これに匹敵する、それよりも基準は低いものではございますけれども、そういう非常に高度管理ができるシステムであります。今回の事件は、HACCPそのものが問題であったわけではなくて、やはりこの運用面、ソフト面に大きな問題があったということが今回の分析の結果だろうと思います。
 HACCPというのはこういうものですよ。国際的な食品規格を策定する機関である、先ほどから言われているコーデックス委員会が推奨しているもので、最終製品を抜き取るだけの検査で製品の管理をしようとしていた従来の方法とは違いまして、原料の受け入れから入荷、保管、加熱、冷却、包装、出荷、例えばそういうような各ステップが一つの製品をつくるまでの間にございます。その各ステップにおいて継続的に監視するために、一つ一つ記録を保管していく。そして機器を、いろいろな機械を用いてデータを出して、その記録を保管していく。それがソフト面、運用面でしっかりといくと、このHACCPというのは、医薬品におけるGMP制度に匹敵するような非常に精度の高い品質管理ができるわけです。
 そういうHACCPなんですけれども、これが今回、そういう運用面での問題があったということでございます。
 それでお聞きしたいのでございますが、今回の法案で運用面での見直し等についても改正がなされていっているということでございますけれども、どのようなソフト面を配慮したものになっているか、また、その改正の内容が、HACCP手法の導入の促進という観点から、事業者にとって過度な負担とならないものであるかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。
西藤政府参考人 お答え申し上げます。
 HACCP手法につきまして、従来から、本法で、一定の基準をクリアした施設の整備に対して金融、税制上の支援を行うことによって品質管理の高度化ということを図ってまいったわけでございますけれども、先生御指摘のとおり、これが実効性を確保していくという点で、やはり運用の問題が重要だ。
 そういう点で、例えば所要の訓練を受けた人員によりまして所定の手順に従って管理される、そういう実践をされることが重要だという観点から、今回の改正に当たって、施設の整備に加えまして、HACCP手法の運用体制の整備に関する事項を高度化計画の記載事項に盛り込みまして、それにより、事業者が高度化された製造過程の管理を的確に実践するよう促していきたいというふうに考えております。
 記載事項としては、例えば、所要の訓練を受けた専門の人員の配置であるとか、所定の書類、図面の具備であるとか、記録の保存管理方法、どういうふうにあれしていくかという管理方法の設定など、HACCP手法を導入する場合に必要な七原則十二手順を実施するための最低限の内容を想定いたしております。
 そういう点で、運用面の充実を図りつつ、最低限の内容を想定いたしておるつもりでございますので、その作成や実施が事業者にとって過度の負担になるというようなことはないと思いますし、ないようにしていく必要があるというふうに思っております。
江田(康)委員 もう時間が来ておりますので、最後ではございますけれども、今御答弁されましたように、運用面、ソフト面に配慮した改正ということで、高度化計画、そういう運用に関する事項、七事項ですか、七手順に従ってやっておられるその運用に関する計画事項、記載事項、こういう高度化計画の記載事項を充実させるということでございますが、言われたように、やはりこれには経験と専門性を備えた、そういう専門家が必要なんですね。先ほどからいろいろと議論されておりますけれども、HACCP自体がどこまで基準を上げて、そして管理していくべきものか、そのソフト面においては、やはり海外に学ぶことは非常に大きいと思います。
 それと、厚生労働省の管轄であるところの医薬品においては、そういうGMPシステムがございます。もちろん厚生労働省がHACCPのこういう管理についてもしっかりと主導してやっていかなくてはならないところでございますが、この厚生労働省との連携をしっかり果たしていただかないと実のあるものにはならないというのが、先ほどからの質疑、答弁でも私は非常に実感を受けました。
 さらには、やはり自治体、県ごとにHACCPの基準をつくって、そして努力しておりますので、そういう横の連携もしっかりととられながら、縦の連携ですか、国、県、地方自治体との連携、現在のHACCPの導入のその手順等についてしっかり連携をとっていただきながら、国がリーダーシップをとっていただく。
 そして、最終的には国際的なレベルに近づけつつも、やはり過度な負担にならないように、厳しくなり過ぎないように、これは医薬品みたいに直接体の中に投与するものではなくて、食べていくという食品でございますので、そこら辺においては基準が全然違うんですね。それと同じように、余りにも基準が厳し過ぎるとなると導入しにくくなる。中小零細企業は当然なかなか難しくなります。
 そういうような種々の観点、今述べましたけれども、これまでの私の経験からすれば、HACCPを導入してそれを確立していこうとするその企業、中小企業の方々のことを思えば、やはりそれがスムーズにいくためには、国の強いリーダーシップ、指導、そして育成が、そういうソフト面で、運用面で必要となってくる人材の育成が非常に重要だということを実感いたしますので、どうぞそういうところに、この法律を成立させていくのは当然だとして、その準備を着々と進めていただきたい。
 周知徹底、指導育成していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
小平委員長 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 きょうは亀井大臣に、このトレーサビリティーの問題、これを少し議論させていただきたいと思っております。
 きのう、私ども農水委員会で大宮の方に、埼玉の方に視察に行ったわけです。その中で高橋畜産商事の社長さんのお話を聞いたときに、深谷牛二頭についてはトレーサビリティーは何とかできる、あと、そのカット屋さんですが、扱っている三百頭の牛、F1、交雑種等については正直にとても不可能だという話を申しておりました。
 これは大変手間暇というのはかかるわけなんですが、現実に、一頭ずつの部分肉、さらにスライスされた肉までの個体管理というんですか、これは大臣、できるとお思いですか。
亀井国務大臣 先生方、埼玉県に御視察いただいたようでございますけれども、私も神奈川県の食肉センターに参りまして、屠場を視察してまいりました。
 その中で、関係者からお話を伺ったわけでありますけれども、処理的に、牛につきましては一日五十頭、こういうようなことでありますから、機械的にも大変進んだ機械を使っておるので牛については五十頭ということであればできる、こういうようなお話を承ったわけであります。
 しかし、あの工程を拝見いたしますときに、いろいろ難しい問題もあるようにも承知をして帰ってきたようなわけでありまして、ぜひこれからいろいろの努力をしてそれが完全に実施できるようなことを考えなければならないという点は、あの視察の中でも感じている面もございます。
山田(正)委員 私はかつて肉屋も六店舗ほどやっておりまして、その工程というのは自分でもよく承知しているつもりなんですが、その中で、今回のトレーサビリティーであそこまでやるということは大変な負担です。
 実はその高橋畜産商事の工場長さんからもお話を聞いたんですが、我々がきのう見たときに、十一人でもって一日約十五頭分のカットをやるというお話でしたが、トレーサビリティーをすべてに実施するとしたら、あと二人必要である、事務の方ももう一人必要である、そうしたら、カット屋さんですけれども、コストだけで二割はかかると。
 さらに、きのうイトーヨーカドーに行ったわけですが、ラベルを張ったりいろいろな形でのコスト。全体、生産者がさらに耳標等の個体識別をして、餌料、えさ等についてもすべて記録していくとしたら、大変な手間暇とそのコストは、私は、全体として牛肉に一割から二割ぐらいはコスト分として高くならざるを得ない、そう考えますが、大臣、どう思われますか。
亀井国務大臣 一割、二割、この辺の数字は何とも私も計算することもできませんけれども、それなりのコストの上昇ということは考えられるわけであります。
 私が見てまいりました神奈川の場合は、大変新しい機械を導入して、まさに一番最新の機械、たまたま三つの屠場を合併するということが予定されておりまして、その設備をした経緯もございまして、拝見する中では非常にいろいろ頭脳を使っておやりになっておるわけでありまして、その辺の負担が、コストがどこまでかということはわからないわけでありますが、今委員御指摘の一、二割、できるだけそのコストがかからないような努力もまた考えなければならないと思います。コストのアップは、これは理解できるところでございます。
山田(正)委員 大臣、いわゆる消費者にとって安心、安全な牛肉だけれども、しかし、どれほどコストがかかって高い牛肉につくのか、今回トレーサビリティーを実施するとして大体どれくらいのコスト高になるのか、それについて大臣自身は数字もつかんでおられないんですか。概略でいいですが、それくらいのことは今回トレーサビリティー実施に当たって当然農水省としても大臣としても考慮しなければ。大変な負担をかけるわけですから。御回答ください。
亀井国務大臣 流通過程におけるコスト負担につきましては、新たにラベルプリンターつきの機械を導入するとか、牛肉パックに個体識別番号等の表示を行う場合の機械に、食肉小売店で約八十万、あるいは大規模な食肉センターでは五百万程度が必要、このように承知をいたしております。
山田(正)委員 機械については、確かに、いわゆる個体識別と重量とをラベルに打ち出すとしたら、それくらい新しい機械を、カット工場では五百万ぐらい必要だと言っていましたが。
 私が言っているのはそうじゃなくて、トレーサビリティー実施によって、生産から流通、小売までの間にどれくらい経費、コストがかかるか、それを農水省において、大臣において全く掌握していないのかどうかということなんです。
亀井国務大臣 それぞれ、個体識別番号の記録あるいは管理、あるいは必要な帳簿等の管理、ランニングコスト等々が生ずるわけでありまして、先ほどの機械の問題等、それぞれどの程度のコスト負担が生ずるか、これは食肉販売業者の営業規模等々にもよりまして状況が異なるのではなかろうか、このように考えます。
 したがって、どのくらいと。先ほど委員御指摘の一、二割、これは数字的にも理解する数字でありますけれども、規模等々によりまして、また機械の違い等々にもよりますと思いますけれども、差があるのではなかろうか、こう思います。
山田(正)委員 これ以上話をしても、大臣としては機械でかかる分については承知しているようですが、それ以上のコストがどれだけ牛肉に転嫁されていくか、コストがどれくらいかかっていくかということについてはどうやら掌握していないようなので、次の問題に移らせていただきたいと思います。
 このいわゆるトレーサビリティーを実施した場合に、それだけの、例えばカット工場において二割ぐらいは、もっとかかるかもしれませんという工場長の返事でしたが、それをまじめにやっているところと、それから、まじめにやらずに、今度の食肉の偽装管理とか、あのBSEのときにいろいろありましたが、そういうことが発生するおそれが十分ある。そういったものに対して、地方農政事務所の八百四十人が仮にそれを監視するとしても二年に一回しか行けないというふうにお聞きしておりますが、あのBSEの食肉の保管の問題から考えても、そんなことで一体、現場として、いわゆるまじめにやるところと、ただ単なるごまかしでやるところと、実を伴わないトレーサビリティー実施になって、まじめな人が損をしてしまうということになりやしないのか。大臣、どう考えますか。
亀井国務大臣 それぞれ、この制度を活用して、このシステムに従って、法に基づきましてぜひその仕事をしていただきたい、こうお願いをするわけでありまして、あわせて、今回の組織改正、消費・安全局、そして地方までいろいろその体制をつくるわけでありますので、今委員から御指摘の二年に一遍、こんなことにならないように、ぜひ精力的にそれらの調査なりができるような体制を私どもとしてもしっかりつくっていかなければならない。また、そのようにさせる所存であります。
山田(正)委員 どの事業所が、一年間にどれだけのお店、どういうところをいわゆる検査して、その結果はすべて公表できますか。これは質問事項になかったんですが、大臣の個人的見解で、答えられなければ答えなくても結構です。
亀井国務大臣 どういう形でこれからどういう調査等々、これらの問題もありますけれども、やはりできる限りのことはしなければならないこと、このように承知をいたします。
山田(正)委員 イトーヨーカドーさんに見せていただいたんですが、イトーヨーカドーさんで大体五割は輸入の牛肉だと。
 実際、日本の牛肉の自給率は三五%で、あとは輸入牛肉なんですが、国産の牛肉に対しては、トレーサビリティーで大変な負担を流通業者、小売業者、生産者にかけている。ところが、輸入の牛肉、これは、アメリカにおいては全くトレーサビリティーをやっていない。そうすると、アメリカから入っている肉が今輸入牛肉で五一%とすれば、その肉が、同じ店で、同じところに売られておる。
 アメリカについては、トレーサビリティーのいわゆるそういう要求、これは全くなされていない。大臣、こんなことでいいのかどうか。
亀井国務大臣 委員御承知のとおり、このトレーサビリティーの導入は、BSEの問題、このことを主眼として、疑似患畜の迅速な特定、あるいはまた消費者の信頼確保、こういう視点でおるわけであります。
 輸入牛肉につきましては、原産国表示、こういうこととあわせて、JAS法に基づくわけでありまして、その辺を、アメリカやあるいはまたオーストラリアはBSEが発生していない国でもあるわけであります。
 ぜひ、このトレーサビリティーの導入によりまして、消費者の理解、そういうものも、これを進める中で、お店で消費者の皆さん方が関心を持っていただき理解が深まる中で、その辺の、国産と輸入牛肉との問題というのは理解が得られてくるんではなかろうか、このように私は思います。
山田(正)委員 国産では今度のトレーサビリティーの実施で一割から二割のコスト負担をしながら、そして同じところで輸入のアメリカ産の牛肉については何もなされないままに売られておって、それでいいと。今の発言、今の答えは、それでいい、それで消費者に理解を求めるという趣旨なのか。イエスかノーで答えていただきたい。
亀井国務大臣 イエスかノーかの答えというのはなかなか難しい話でありますけれども、この制度を導入してぜひ消費者の信頼確保をと。あるいはまた、BSEでの苦い経験というものを持っておるわけでありますから、国民の皆さん方はきっと御理解をいただける、このように思います。
山田(正)委員 大臣、少し考え違いしているんではないですか。
 アメリカが日本からの食肉の輸入に対してどのような厳しい措置を、知っておられるか。アメリカが日本からの牛肉を輸入するときにどういう規制をしておるか、知っておられるか。知っておられたら、簡単に、三分ぐらいでお答えいただきたい。
渡辺(具)大臣政務官 山田委員の、今度は逆に、我が国からのアメリカに対する輸出の制度でございますが、アメリカの方の食肉の輸入に関する検査制度は連邦のレギュレーションによって決められておりまして、食肉検査制度を有する一定の要件に適合する国からのみ食肉を輸入いたしております。
 我が国から米国への食肉の輸出につきましては、あらかじめ厚生労働省が、米国が定めておるレギュレーションに合致していると認定した屠畜場ですとか食肉処理場で処理されたもののみが日本からは輸出されております。
 そのレギュレーションの内容でありますが、施設とか設備の構造あるいは材質についての基準があります。それから、屠殺解体あるいは分割のための衛生管理基準も定められております。それから、HACCP方式による衛生管理実施基準もあります。これらに合致するかどうかを、厚生労働省があらかじめ指定しましたと畜検査員、これは県の職員が普通ですが、そういう人がサインした対米食肉輸出証明書が添付された食肉のみが米国に輸出できることになっております。
山田(正)委員 農水大臣によく聞いてほしいんですが、対米輸出食肉を取り扱うと畜場等の認定要綱、それでこれだけあります。二、三十ページは十分あるんです、細かい数字で。その中に、先ほど言ったいろいろな細かい、背割りのやり方からナイフの使い方から、厳しい規制が屠場において管理基準で決められております。中には、残留物質に関するモニタリング、そこまで要求されている。日本の牛肉をいわゆるBSE発生前にアメリカに輸出するとしたら。
 アメリカでそれだけの規制をしているかというと、先ほどの鮫島議員の質問だと、アメリカの大手は、何と言ったかな、サルモネラ菌ですか、については、いわゆる自主検査、その会社の自主検査にゆだねている。日本とは大違いだ。国際法上のいわゆるTBT協定。国内と同等のもの以上のものを求めてアメリカは輸入規制を日本にしている、これは国際法上違反である。
 それくらいの要求をしているアメリカに対して、いいですか、大臣。この前、食品安全基本法を修正して通しましたのは御承知のとおり。その中に、国の内外の食品を、外国からの食品も、輸入食品も、その食品供給の行程において同等に扱うというふうに修正が成った。そういった趣旨からして、大臣の答弁、いわゆる、輸入は輸入、国内は国内ということで通るのかどうか。大臣の答弁そのものが、この前修正して出した食品安全基本法に違反しているじゃありませんか。
亀井国務大臣 今回のトレーサビリティーのこの法律につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、BSEの問題、このことでこの制度を考えるわけでありまして、先ほど来、価格のお話、店頭に輸入牛肉と国産、こう出ておったときの価格のことを御指摘いただいたわけでありますが、この制度、BSEの問題、こういうことで進めるわけでありまして、ぜひそのことは消費者の皆さん方にも御理解をいただきたい。そういう制度を導入することによって、いわゆる消費者の信頼、こういうものを回復できるもとでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
山田(正)委員 大臣、さっきから同じことで、消費者に理解を求めたい、消費者に理解を求めたいと。私が聞いているのは、輸入牛肉に対して、本来なら、トレーサビリティー、国のいわゆるトレーサビリティー、牛肉についてあると同等のものでなければ、食品安全基本法の中に書いてあるように、輸入品だけは特別例外でトレーサビリティーがなくてもいいということでは、この食品安全基本法に違反するんじゃないのか。違反するのか違反しないのか、そこだけ答えてもらえばいいんです。
亀井国務大臣 輸入牛肉につきましては、BSEの発生国でないわけでありまして、ぜひそのことはまずお考えいただきたいと思います。
 また、衛生措置としても、輸入牛肉に個体識別情報の伝達を求めるということは、主要な輸出国から、十分な科学的根拠がなくSPS協定違反であると強く批判をされること等は必至である、このようにも考えられるわけでありまして、厚生労働省が確認をして、そしてその手続によりまして輸入をしておるわけでありますから、我が国がトレーサビリティーを導入して牛肉につきまして今回BSEの問題を契機にこのような措置をするわけでありますので、輸入の問題につきましては、それぞれの国が、特にBSEが発生していない国、そしてさらに、衛生的なそれぞれの基準に従って検査をしているわけでありますので、これは、トレーサビリティーを導入していないというようなことであっても構わない話ではなかろうかと思います。
山田(正)委員 大臣は、いわゆる輸入牛肉に対しては、トレーサビリティーのないものを輸入して店頭で売ってもいい、そういうお考えかに今聞きました。
 この食品安全基本法に言っているところの「国の内外における食品供給の行程」。これについても同じように扱う。当然、アメリカからの輸入のものについても、トレーサビリティーがないものについては輸入しない、流通させない、店に並べない。国の内外を問わず、国の食の安全と安心からは、この食品安全基本法ではそうならなきゃおかしい。
 だから、まずこの食の安全基本法に対して、大臣は、これはあなた自身が提案して通した法律です、これについての見解を、回答をいただきたいと言っているんです。
亀井国務大臣 輸入時にいろいろな検査をするわけでございまして、現行の食品衛生法第五条第二項に基づきまして、我が国と同等以上の基準に基づき衛生的に処理された旨の輸出国政府機関が発行した衛生証明書、これが添付を義務づけておるわけでありますので、その面で問題はない、このように思います。
山田(正)委員 全然回答になっていないですよ。
 いいですか。私が言っているのは、この食品安全基本法に言うところの「国の内外における食品供給の行程」。いわゆる食品安全基本法がトレーサビリティーの親法ですから、すべてにおいて輸入品も輸出品も平等に食の安全と安心の見地で規制するということに、輸入の牛肉だけを自由にさせるということは反しているじゃないかと言っているので、あなたが答えているのは、いわゆる輸出証明があるのは当然で、そんなことを答えることは、これは答えにならない。
 これ以上答えられないというんだったら、もうそれでいいですよ。答えられないですね、それ以上。簡潔に答えてください。
亀井国務大臣 昨年夏に議員立法によりまして創設されたいわゆる包括的輸入禁止、この規定に基づく輸入禁止措置を発動することも考えられるわけでありまして、もしそのようなものであれば、これは現地調査やまた二国間の協議をしなければならないわけでありますが、それぞれの手続に基づきまして輸入をしておるわけでありまして、先ほど来申し上げましたとおり、厚生労働省等々の衛生機関での検査、こういうものがあるわけでありますから、それに違反するということであれば今申し上げたような措置をとるということになるわけであります。
山田(正)委員 大臣は、食品安全基本法に違反するということであればそれなりの措置をとりたいと。そういうふうに私もお聞きした。そういうことで、先に進めさせていただきます。
 では、いわゆる輸入のものに対して、例えば、アメリカはBSE発生の国じゃないから、いわゆるSPS協定に基づく必要な限度においての科学的な根拠がないから、BSEがないからアメリカからの輸入については規制することができない、さきの答弁でそういう発言をしたかに聞こえました。
 ところが、先ほど鮫島議員が話しましたように、昨年の七月、アメリカのコナグラ社がO157で既に八千五百トンの牛肉を回収している、いわゆるひき肉だということですが。そのとき、コナグラ社から日本もその牛肉を輸入しておきながら、それについて、先ほど鮫島議員も言っておりましたが、もう安全であるということの確認があるまでは当然輸入に対する停止措置ができるはずだ、それをやらずにそのまま輸入させてきている。いいですか、これらの事実からしても、まさに米国は、O157とか、そして将来はBSEの発生のおそれもある等々を考えれば、十分必要な限度においての科学的な根拠、それは、輸入を禁止するに当然である。
 トレーサビリティーをアメリカに求める。既にオーストラリアにおいてはトレーサビリティーを実施している、そういう状況であれば、食品安全基本法の原則に従って当然アメリカに対しても牛肉の輸入をトレーサビリティーがない限り禁止する。そういう措置が必要になると考えるが、大臣、いかがですか。
北村副大臣 山田委員からの御質問の中にO157とトレーサビリティーとの関係がございましたが、トレーサビリティーをしっかりやらなければO157が防げないということではありません。これは全く、O157は食品安全法に従ってやるものであって、トレーサビリティーを幾らやってもO157が防げるという問題ではありません。それだけは御理解をまずいただきたいと思います。
山田(正)委員 副大臣、ちょっと誤解しているようで、いいですか。このSPS協定は、人または動物、植物の生命または健康を保護するためにあるんです。僕が言っているのは、いわゆるこのSPS協定の趣旨を今話しているので、それは当然、O157も含まれるし、ほかのサルモネラ菌とかあるいはBSE、そういったものも含まれる。
 日本人の生命あるいは健康、それを保護するために、アメリカで昨年の七月にそういう大騒動があった、そういったところの国に対しては当然のこと、トレーサビリティーに基づかないものは入れないという要求をしておけば、例えばその回収等においても、どの牛でどういうものが発生したかということできちんと日本国の健康保護のために十分な措置ができるということで話している。大臣、いかがですか。大臣にお答えいただきたい。
亀井国務大臣 科学的な根拠に基づきまして輸入の問題があるわけでありまして、今、O157の問題、いろいろな問題につきまして御指摘がありましたけれども、あのときの話は、先ほどの話を伺っておりましても、現状ではその運用の実績というものはないわけでありまして、万一そのような科学的な問題で問題の生ずるようなときであれば、それは考えなければならないことではなかろうか、こう思います。
山田(正)委員 大臣、前向きでなかなか結構だと思います。どうかひとつ前向きに検討していただいて。いわゆるSPS協定に反したのはアメリカの方であって、アメリカは国内の条件よりも日本に厳しいものを求めているわけですから、これはSPS違反で日本がむしろアメリカを訴えなきゃいけない。日本としてもトレーサビリティー実施ぐらいのことはアメリカに要求して当然であり、それがなければアメリカの牛肉は一切輸入しない、ひとつそういう点での御検討をお願いすることとして、次の質問に移りたいと思います。
 関連質問ですが、BSEのへい死牛の検査の実施なんですが、これは法律の第六条の二は「地理的条件により当該検査を行うことが困難である場合」ということになっております。例外的な場合しか、すべてが本来やらなきゃいけなかったのが、実際にへい死牛の検査ができるに至ったのは四十七都道府県のうち三十、道はないんですね、三十都府県にとどまった。
 ここは私もかかわったので非常にはっきり覚えているんですが、この特別措置法第六条二項を受けての省令、これには「死亡した牛の検査を行う施設が存しない離島その他の地域において」と。「離島その他の地域」と、いわゆる物理的な条件を入れていて、大変限定的に省令も決めております。
 「当該検査を行うことが困難である」、そういった場合だけは平成十六年度までへい死牛の検査を待つ。もうヨーロッパではとっくに始めているBSEのへい死牛検査ですから。これが実際にはなされていなかった。これは大臣、省令違反ではないのか、国会の決議無視じゃないのか、どう考えられますか。
亀井国務大臣 今先生お話しのとおり、本年四月から、三十都府県で二十四カ月齢以上の死亡牛、そして二県が離島を除く県内全域で検査を実施しておるわけでありまして、その他の十五道県にあっては、飼養頭数が多いことや施設設置場所の地元の合意が得られて間もないことなどから実施されていないわけであります。それらを踏まえて、現在、十六年四月までの間に、すなわち十五年度において検査体制が整備されるようなことで、今いろいろ努力をしているところでもございます。
山田(正)委員 努力しているのはわかるんですよ。努力しているのはわかるんですが、いわゆる法律及び省令にまではっきりと書いておって、それが実際には、一番大きな北海道もできなかった、三十都府県しかできなかったということは、法律、省令を無視しているということではないんですか。そこだけ答えていただければいいんです。
亀井国務大臣 無視ではないと思います。
山田(正)委員 では、無視ではなくて。「離島その他の地域」、いわゆる物理的にできない、そういった場合を除いては全部やらなきゃいけなかったのにやらなかった。それが無視じゃないんですか、違反じゃないんですか。
亀井国務大臣 それで、物理的にできないところでありますので、それは認めているわけでありますので、無視しているということではありません。
山田(正)委員 それじゃ、違反じゃないんですか。
亀井国務大臣 違反でないと思います。
山田(正)委員 なぜ違反じゃないんですか。
小平委員長 亀井農林水産大臣、その理由を述べてください。
亀井国務大臣 この死亡牛BSE検査例外措置に係る省令について、いろいろ書いてありますけれども、第六条の二項の最後に、「地理的条件等により当該検査を行うことが困難である場合として農林水産省令で定める場合は、この限りでない。」このように記しております。
山田(正)委員 大臣、その農林水産省の省令を読んでください。省令の中に、「施設が存しない離島その他の地域において牛が死亡した場合であって、当該検査を行うことが困難であると都道府県知事が認める場合」となっている。大臣、省令はなお厳しく、「離島その他の」と書いてあるんですよ。いわゆる離島その他の条件不利地域と例示しているのにそれに対してできなかったということは、これは法律違反じゃないんですか。違うんですか。
亀井国務大臣 「離島その他の地域において」ということで「都道府県知事が認める場合」、こういうことでありますので、違反していない、こう思います。
山田(正)委員 北海道は離島なんですかね。
 大臣、北海道は離島なんですか。
亀井国務大臣 「その他の地域」、このように書いてあるわけですから、ここに該当するわけであります。
山田(正)委員 大臣は、大臣でもなる人ですから、いいですか、第六条は地理的条件ですよ、「地理的条件等により当該検査を行うことが困難である」と、省令では「離島その他」と書いてあるんですから、法律解釈からすれば当然、離島に類するような、この法律で言う「地理的条件等により当該検査を行うことが困難である」場所、「場合」と言っているわけですから。北海道もそれに当たるんですか、大臣。
北村副大臣 北海道という言葉が出ましたので、大変おこがましいですが、私の方から答弁をさせていただきたいと思います。
 今、山田議員から、この第六条第二項には「地理的条件等により当該検査を行うことが困難である場合として農林水産省令で定める場合」、こうなっています。そして、その農林水産省令で定めた中に、離島その他の地域の場合ということで、「離島その他の地域において牛が死亡した場合であって、当該検査を行うことが困難であると」その「都道府県知事が認める場合」、こういうふうになっております。
 北海道の場合は非常に困難であって、そのことが、北海道の知事が認めた、そのことを指しているわけでありまして、北海道はそういう事例に今回は遭遇したということであります。
 ただし、北海道については、本年度中にできるだけの短い期間で全頭検査ができるように、鋭意農水省の方から督励をしているところでございます。
山田(正)委員 北海道でなぜまだできないかと聞いてもいいんだけれども、ちょっと時間が終わりつつあるので、一つ最後に、BSE関連でお聞きしたいんです。
 実際、長崎県大村地区の肥育農家というのが今一番困っているのは、魚粉を使えないことなんですね。これまではA5とかA4といういい肉質のものが出ておったのが、魚粉を使えなくなったがために、A3とかA2とか、そういった形で、非常に農家が困っている。
 かといって今その使用を認めれば、魚粉と肉骨粉は非常に紛らわしい、あるいは輸入の魚粉等に肉骨粉が含まれる可能性もあるというおそれがあるので、当分の間、肉骨粉の使用、いわゆるへい死牛の検査等がきちんと確立しない限りこれはできないのは私もよく承知しているわけです。
 ただ、純粋に魚粉だけでできているもの、これを、厳格な管理のもとに、例えばそれに反した場合には罰則五百万以下とかそういう形で魚粉の利用を認めることは、大臣、考えられるのか、考えられぬのか。そこだけお答えいただければと思います。
北村副大臣 山田議員から、理屈的にはそういうことである、こう思います。
 ただ、それを平成十三年に一度条件として認めたんですが、その後の検査でやはり動物性のたんぱく質等々が入っていたということが立証されたということで、今現在は、これは使用はできないことにしているということであります。
山田(正)委員 まだいろいろ質問を準備しておったんですが、私の質問時間が来ましたので、ここで終わらせていただきます。
小平委員長 次に、中林よし子君。
中林委員 私は、トレーサビリティー法案について質問をいたします。
 本法案は、牛肉という一つの食品に対して、国が主導して全国的に統一された情報開示システムをつくるものです。言うまでもなく、BSEに感染した牛が発見されて以来、BSEを未然に防げなかった政府の失政やその後の行政対応への不信感から、牛肉の安全性に対する消費者の信頼は大きく揺らぎました。その結果、牛肉消費は激減し、価格は暴落し、そして生産、流通、消費に至る各段階での関係者は大きな打撃を受けました。
 現在も消費は、一時期よりも返ったとはいうものの、まだ一〇〇%回復はしておりません。いまだに発生前よりも落ち込んだままで、こういう状況のもとで、牛の個体識別管理と消費者への情報管理、これは、BSE問題に関する調査検討委員会の報告でも指摘されているように、消費者の信頼回復政策としても、また牛肉の安全性確保のためにも必要な措置であるということは言うまでもないというふうに私は思います。
 問題なのは、このトレーサビリティーシステムの導入に当たって、きちんとしたシステム構築、そして安定的な運用が保障されるかどうか、ここが問題だというふうに思います。
 日本では、牛肉の安全性への不信感は、先ほども言いましたように、政府の失政によって増幅された部分が非常に大きいのですね。ですから、このシステムにもしもトラブルが発生した場合、再び政府に対する不信感が広がって、牛肉消費の低迷が起きかねない、こういうことになるというふうに思います。
 現に、トレーサビリティー先進国と言われるフランスで、実は、二〇〇〇年十一月に、システムを利用した問題牛肉の回収をめぐって混乱が起きまして、そしてその結果、牛肉の消費が激減するという結果になりました。特に日本では、BSE発生をめぐる一連の行政の不手際、こういうもので牛肉の信頼が大きく損なわれたという経緯がある以上、システム自体の不備だとかあるいはシステム導入後の不手際で、牛肉の信頼が再び揺らいでいくようなことがあってはならないというふうに思うんですけれども、大臣の御見解をお伺いします。
亀井国務大臣 BSEの問題の関連でこの牛肉トレーサビリティーシステムを導入するわけでありまして、牛の生産段階において、この前、私も酪農家の皆さんにお目にかかったりし、また青年からも、これをつけて、そして今しっかりやっていると。たまたま私の住んでおるところで六頭目というようなことがありました関係から、大変関心を持っておるわけであります。
 彼らも個体識別番号を記載した耳標の装着や牛の譲渡等の届け出義務をしっかりやり、そしてまた独立行政法人の家畜改良センターがこの個体識別番号により牛の移動履歴等の情報を一元的にやっていただくということで、彼らもぜひそういうシステムが確立するということに期待をしておるわけでありますし、またセンターもそのことをしっかりやっていただくことが必要なわけであります。そういう中で、この信頼回復を図らなければならないわけであります。
 あるいはまた、一方、牛肉のパックや店頭表示パネルボードに個体識別番号の表示を行うとともに、伝達情報の記録管理、帳簿の備えつけ、こういうものを義務づけるわけでありまして、エラーのないようにしっかりやらなければならない、こう思っております。
 また、これらの問題、これから農水省の職員が、牛の管理者や屠畜場あるいは販売業者等の事業所等に立ち入り、耳標の装着や個体識別番号の表示の確認、あるいはまたDNAの検査によって、牛肉の個体識別番号等々の表示とその内容の同一性の確認をする等々のことをいたしまして、このシステムが完全に確立できるようなことはいたさなければならないと思っております。
中林委員 しかし、きょうもいろいろ議論がされているわけですが、本法案では大きく言って二つの点で不備があるというふうに私は指摘をせざるを得ない。
 その一点目は、対象牛肉が国産に限られているという問題です。輸入牛肉が全く対象外という点です。この法律そのものがそういう法律なんだからと言ってしまえばそうなんですけれども、それでは消費者は納得しないという問題なんですよ。
 今回対象となるのは特定牛肉ということで、加工品だとか調製品、細切れ、ミンチ、これを除いて食用に供される牛の肉であって、対象はスライス肉以上の大きさを持つ国産の生鮮牛肉に限られるというわけですね。だから、どのくらいカバーできるのかということになるわけですけれども、国内流通量で国産牛肉のシェアは三五%しかありません。そのうちの六、七割しか対象にならないということになるわけですから、本法案の対象となる牛肉は、国内流通出回り量の二〇%強、これしか対象にならないということなんですね。
 大臣、国内流通の大半を占める輸入牛肉をなぜ今回外したのか、その理由を明らかにしてください。
    〔委員長退席、鮫島委員長代理着席〕
亀井国務大臣 先ほど来お話し申し上げておりますとおり、輸入牛肉につきましては、特にこのトレーサビリティーがBSEの発生に端を発しているわけでありますので、豪州並びに米国につきましては、BSEが発生していないということとあわせて、この輸入につきましても、それぞれ我が国と同じような検査を関係国はしておるわけでありますので、そのような中で、まず我が国の牛肉につきましてこのトレーサビリティーを実施する、こういうことであります。
中林委員 これは理由にならないというふうに思うんですね。それは、きょうもいろいろ議論をされました、輸入牛肉を対象から除外するということなんですが、オーストラリアにしてもアメリカにしても、まだBSEは発生していないからだということをおっしゃるわけですが、まだなんですよ。これはわからないんですよ。だから、本当に清浄国と言えるのかどうかというのは、それこそ科学的な裏づけは何もありません。これはそういう意味で問題がある。
 それから、百歩譲って清浄国といたしましょう。しかし、牛肉の問題というのは、先ほどから言われているように、食肉を汚染する危険因子というのはたくさん含まれているということです。だから、むしろ輸入牛肉の場合は、O157汚染の食中毒の発生、あるいは抗生物質投与、それから合成抗菌剤やホルモン剤の残留など、BSEのほかにも安全性にさまざまな問題を抱えているわけですよ。だから、そういうものがフリーパスで国内に流通している、こういう現状を放置していいということはないと思います。
 輸入牛肉のO157の汚染は大変深刻で、これは死に至るという食中毒ですよ。そのぐらい大変です。これは、大規模な食中毒を起こしかねない、そういう問題です。原因牛肉の特定がおくれる、あるいは特定ができない、こういうことを放置するわけにはいかないでしょう。
 トレーサビリティーの役割というのは、消費者への信頼回復ということをずっとこの間大臣も答弁をされました。それだけじゃないと思うんですね。同時に、発生した場合に、製品の回収、原因究明の迅速化、こういうことをやるためのシステムだというふうに思うんです。だから、むしろこの機会に積極的に、輸入牛肉はBSE汚染だけではない、さまざまな危険因子を持った食品だ、こういう認識に立って輸入牛肉にトレーサビリティーを徹底すべきだ。これについていかがですか。
須賀田政府参考人 問題を分けてお考えいただきたいわけでございます。
 確かに、輸入牛肉にBSE以外さまざまなリスクがございます。この問題については、検疫あるいは国内に入ってきたときの食品衛生法、こういうものがございまして、国内で規制しているのと同一の基準に基づいたものでなければ流通させない、輸入させないということで、相手国の、輸出国政府機関が発行した衛生証明書の添付といったものも義務づけておりますし、違反を繰り返すような国からは包括的な輸入禁止ということもできるというふうになっているわけでございますので、このリスクに関しては、基本的には食品衛生法規というもので対処すべきものだと思うんです。
 我々が提案しておりますトレーサビリティーが、そういうものを追跡するのに確かに役には立ちます。しかし、このトレーサビリティーというのは、我が国でBSEが発生をして消費者に非常な不安を与えて、いまだにそれがぬぐい切られていない、払拭されていないということ、そして、万が一患畜が見つかったときには疑似患畜を追跡できる、こういう事情のもとで国産の牛肉に対して義務としてかけているものでございますので、そこのところはよく御理解を願いたいというふうに思っています。
中林委員 では、局長でいいですので御答弁願いたいと思います。
 BSE以外の病気発生あるいは食中毒、汚染された、こういう事故が発見された場合は、このシステムは使わないということですか。
須賀田政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたとおり、この制度は、BSEが起こったことを背景にして、消費者に牛肉とそのもとになった牛との対応関係をちゃんと情報を提示するためにできた制度です。O157とかそういう問題が起きたときを想定して、それを目的にして、それを追っかけるためにつくった制度ではないですけれども、現実にそういう食中毒事故が起きたときにこの制度を利用して追跡できないかというと、それはできます。運用の問題として、そういうものの追跡に使っていただいても結構ですということを申し上げておるわけでございます。
中林委員 そのきっかけはBSEですよ。先ほど言いましたように、第三者委員会の報告でもそれをちゃんとやりなさいということが言われているし、特別措置法の中でもちゃんと個体識別をやっていくということが盛り込まれました。だから、こういう法律が出てくるのは当然ですけれども、だからということで、せっかくある耳標の個体識別だから、そういう問題が起きた場合も利用できます程度の話じゃなくて、本当に消費者の安全、国民の命を守るという観点からすると、当然、せっかくの大変な負担をかけてやるシステムですから、そういうところまできっちりさかのぼって特定できる、原因究明ができるということにしなきゃだめですよ。
 それで、先ほどから、輸入牛肉については食品衛生法だ、厚生労働省だと盛んにそっちに責任を振りかけております。しかし、私はこの委員会でも輸入牛肉汚染の問題でただしたことがございます。O157汚染でどういう事態になっているか御存じでしょうね、皆さん。去年も亡くなった方があるんですよ。去年は福岡市の保育園、これは百十二名が汚染されて二十人が入院された。去年七月、宇都宮の介護老人保健施設、百三十九名が感染して八名の方が亡くなっているんです。あの九六年、堺で小学生の子供さんが三人亡くなった、それよりも被害は拡大しているという実態なんですよ。
 これは輸入牛肉が原因だとまだ特定されていませんけれども、輸入牛肉が原因だった、そういう事故が二年前、二〇〇一年に二件起きております。一件は、滋賀県、富山県、奈良県、ファミリーレストラン、ビーフ角切りステーキ、六名が汚染されてO157にかかっております。これはカナダから二〇〇〇年十二月に輸入されたもの。それから、二〇〇一年三月から四月にかけて、滝沢ハム、一都六県で二百四名が感染しております。これも、二〇〇〇年十一月、アメリカの輸入牛肉です。
 モニタリングしているとか水際検査しているとか、大臣、よく聞いてくださいよ、そう言うんですが、二〇〇〇年は、全く輸入牛肉、モニタリング検査しておりません。一件もやっていないんですよ。だから、二〇〇〇年にカナダから輸入したもの、二〇〇〇年にアメリカから輸入したものからこういうO157食中毒は発生しているんですよ。それで、厚生労働省の世界ですなんということを言って、どうして国民の命が守れますか。O157は、特に子供たち、お年寄りを直撃して命を奪われる、そういうとんでもない食中毒なんですよ。
 だからこそ、私どもは、こういう問題が起きたときにちゃんとそういうものが遡上できるように、相手の国に対してもやはり要求すべきだというふうに思うんですけれども、大臣として、これは厚生労働省の責任にやることができますか。せっかくこういうBSEの問題をきっかけに食の安全、そこに農水省としてもやっていこうというシステムづくりのときですから、当然、輸入牛肉、六五%流通しているわけですから、大半の方をほっておいて、それを今回、要するに義務づけだとかそういうものは一切やらないという手はないというふうに思うんですけれども、いかがですか、大臣。
亀井国務大臣 輸入牛肉につきましては、先ほど来答弁申し上げておりますとおり、JAS法等々に基づきまして、また、相手国におきましてもやはり同じレベルの検査がいろいろ行われておるわけでありますので、現状、トレーサビリティーにつきましてはBSEの問題でこういうシステムを導入するわけであります。これを契機に、JAS法の問題等々につきましても十分注意をして、そして安全な輸入牛肉、こういうための努力をしなければならない、こう思います。
中林委員 結局、輸入牛肉についてはやりませんというのが繰り返し言われているけれども、実際、今私が指摘しましたでしょう。水際でちゃんと厚生労働省が食品衛生法に基づいてやっているんだと言いながら、実はモニタリングというのも本当にわずか、それから二〇〇〇年は一回もやっていない。こういう結果、国内に入った牛肉でO157に汚染されて国民は苦しい思いをしている、こういう状況なんですよ。だから、このときに、輸入牛肉は対象外だなどというような相変わらずの答弁を繰り返すようでは、私は、せっかく食品安全基本法ができようと何ができようと、国民は安心できないというふうに思います。
 これだけ言っているわけにもいかないんですけれども、今大臣がちょっと先回りして答弁されたように思うんですけれども、JAS法の問題を言われましたね、これがあるからというふうに。
 JAS法は、偽装事件などで混入したり、そういうものが発覚したときは、公表して、罰金を与えて、いろいろ取り締まりをやる、ちゃんと禁止をやっていくということなんですが、今回、私は農水省の方からいろいろ、何で輸入牛肉を対象外にするのかということを聞いたら、国産と輸入の差別化の問題で、これをやれば国産の方がプレミアがついて、より有利に働くんだみたいなことをおっしゃるわけですよ。これは私は全然理由になっていないというふうに思うんですね。
 要するに、どういう事態が起きるかというと、やはり偽装問題というのは避けて通れないだろう、ちゃんと輸入牛肉に対してトレーサビリティーをやらなければ、一層偽装問題というのははびこりかねないというふうに思います。
 というのは、国内は生産から流通から販売に至るまでちゃんとトレーサビリティーの義務を課せられて一生懸命やったとしても、そこへ輸入牛肉を混在させて、国産でございます、どこどこ産ですと、ロット番号ぐらいはそこに付して店頭に並べたとしても、それが輸入牛肉で、もしいろいろな問題が、事故が発生したときは、かえって汚染源にたどり着かない、一層混乱を引き起こしかねない、そういう問題だと私は思うんですけれども、それは防げると明言できますか。
須賀田政府参考人 幾つかの問題を指摘していただきました。
 まず、海外の国に対して何を我が国として求めることができるかという問題があるわけです。例えば、私どもが所管をしております動物検疫でございますとか植物検疫で、相手国に対して、例えば口蹄疫が発生したら、その食肉は輸入禁止ですよ、ただ、口蹄疫を不活化するような処理をしていれば、その限りにおいて輸入は認めましょう、検査させてくださいねと。それは、日本国における食品の最低限の安全を確保するための措置でございますので、こういう措置は国際的に認められているわけでございます。
 次に、今回の牛肉トレーサビリティーのこのシステム、このシステムは、生産の履歴をずっと消費者まで送っていくということなので、それぞれの流通の段階で、はい、サルモネラフリーでございます、検査しました、O157フリーです、検査しましたという情報まではこの中に出ていないわけです。
 それで、今、豪州とかアメリカとかではBSEが起こっていない、全頭検査もしていないわけなんです。そこへ、この法律に基づく耳標をつけろだとか全頭検査しろだとか、そういうことを強制的に求めるということはできない、国際的にも。ただ、日本の消費者に情報をできるだけ伝えるということはまた一方では重要ですので、任意の制度として特定JASという制度がありますので、輸入牛肉にも、相手国の同意、参加が得られるという条件のもとで、任意の制度としてJAS制度を活用する余地がございますということを再三申し上げているわけでございます。
中林委員 任意なんというようなことは抜け穴はいっぱいある。だから、今私が言ったように、偽装は防げるのかということですよ。国内の方はちゃんとトレーサビリティーのシステムがある。だから、それで遡上していっても、そこに外国産のものがまざっていたら、原因究明なんてできないでしょう。それはどうするんですか。
須賀田政府参考人 このトレーサビリティーのシステムは輸入牛肉を対象としませんので、輸入牛肉の偽装をこれで防ぐことはできないわけでございます。
 輸入牛肉の偽装といっても、別の、JASの罰則による抑止効果でございますとかそういうものを用いて輸入牛肉に関してはその偽装を防ぐ、こういう道しかないというふうに考えております。
中林委員 結局、防げないということを局長は答弁されたというふうに思います。
 そうすると、負担をかけて、生産者から流通業者、販売業者に至るまで、消費者に安心、安全を与えるために一生懸命努力をしているものが、結果的に、そういうことによって、実は輸入牛肉はトレーサビリティーができていないから、それによって打撃を受けるということが起こり得ないとは言えないですよ。だから、大臣、私はそういうことを言っているわけですよ、輸入牛肉もちゃんとやらなきゃだめですよということをね。
 先ほどからも、EUはオーストラリアに対して求めているという話が再三出ております。これは、EUはBSEでやっているわけじゃないんですね。ホルモンでやっているわけですよ。これでオーストラリアに対して、ちゃんとEUのシステムをきちっと守れと。それで、オーストラリアも国内法を変えて、EU向けはちゃんとやっているわけですよ。
 だから、そういうことをやればいいじゃないですか。なぜできないんですか。
須賀田政府参考人 まさしく先生おっしゃいましたように、EUは、自分のところに輸入する牛肉には肥育ホルモンが入っておってはいけないと、これは検疫類似のことを、検疫そのものですけれども、要求しているわけでございます。EUの域内の食品の安全のために、肥育ホルモンが一つも入っていてはいけないということを要求しておりまして、そのシステムとして、豪州側が、みずからが構築しております牛の個体識別制度を活用して、これは肥育ホルモンを使っていませんよ、肥育ホルモンフリーの牛ですよというのを証明してEUに出しておるわけでございます。
 我が方は、何回も言いますけれども、BSEが発生しましたので牛に対する不安があるので、消費者に対して、自分が購入した牛とその生産の履歴の関係をちゃんとやろう、こういう情報なんですよ。このシステムを今の国際法のもとでBSEフリーの国に強制的に要求するというのはできないというふうに思っております。
中林委員 局長、できますよ。というのは、BSEでできないとしても、牛肉の輸入、牛肉で発生するO157、これはもう実際にアメリカから輸入している肉で発生しているわけですから、科学的な裏づけがあればできると外務省も答弁していたでしょう。だから、できるんですよ。
 だから、この法律のカテゴリーからいけばとおっしゃるから、これは表題からいって、BSEだけに限ったような法律にしているところに、等とかちょっと入れればいいわけですよ、あれは。本当に、私も今ごろになって気がついてちょっと申しわけないと思うんだけれども、ちょっと等を入れて。
 物すごく負担ですよ。牛だって負担なんだから。生まれたときにあんなものをつけられて、小さい牛がひらひら重たいものをつけさせられて、本当にかわいそうだと農家の人たちは言いますよ。だから、それは本当に、財政的な負担ももちろんあるけれども、いろいろな問題で、今回のシステムというのはそれなりの負担を求めているわけですから、そういう意味では、今一番恐ろしいのは、そういう輸入牛肉による食中毒ですよ。これにやはりきちっと対応できるような、せっかく、トレーサビリティーなんというようなことがこの日本でできるというのは私は本当にいいことだと。
 それが、BSEに限ってという狭い範囲で見ていたのではだめで、局長も、いや、ほかのものが発生したときは遡上しますよと言うんだけれども、問題は、私は、大臣、聞いていただきたいと思うんですよ。輸入食品というのは消費者から一番遠いところから来るわけだからこそ、さかのぼる、そういうシステムが必要なんですよ。国内だったら、見てみれば、すぐ飛んでいける、見ればわかるという問題もありますよ。だけれども、何時間もかけてアメリカまで行かなきゃいけない、費用もかけなきゃいけない、そういうところから来るものだけに、ちゃんとしたものが必要なんじゃないでしょうか。
 今後、これは検討されますか。どうですか、大臣。
亀井国務大臣 水際でJAS法、やはりその国で検査しておるのと同じような検査を十分して輸出をするわけでありますので、輸入する面におきましてもそのような検査をするわけでありますので、安全なものが輸入されるような努力をすることが必要なことだ、このように思います。
中林委員 もう一つ歯切れが悪いですよね。だから、任意だとかそういうことじゃなくて、では、少なくとも、対外的にこういうシステムを要求した場合、拒否されたとしても、輸入業者がロット別に生産農場や生産状況等の情報を管理する、これはもう当然だと思うんですね。
 例えば、きのうイトーヨーカドー、輸入元になるとおっしゃっていました。自分たちはそこははっきりさせるとおっしゃってもいました。そうした管理ができていない牛肉を流通させているとすれば、そのこと自体の方が大問題だというふうに思うんですね。
 だから、輸入業者に対して、原産国表示は当然のことです、これは決められているから。そうじゃなくて、やはり生産履歴、流通履歴、これを記録、公開する、これを義務づける必要があるんじゃないですか。それはいかがですか。
須賀田政府参考人 先ほど来いろいろ御指摘でございますけれども、今の食品衛生法による仕組み、検疫の仕組みというのは、私どもが提案している牛肉トレーサビリティーの仕組みよりはるかに強い規制でございますし、はるかに強い検疫措置になっているわけでございます。
 それで、輸入業者に、海外の生産履歴とか流通履歴とかをちゃんと表示するように義務づけろというお話でございますけれども、これも先ほどの話と一緒なわけでございます。輸入業者だって、その国がちゃんとした制度を持っていなければ、その国、外国での追跡はなかなかできないわけでございますので、結局は先ほどと同じ議論に戻りまして、その相手国に対して、強制的に耳標をつけろだとか全頭検査しろだとか、ちゃんとトレーサビリティーシステムをつくれということが言えるかというと、それは今の国際協定のもとではできないということでございます。
中林委員 だけれども、実際に、アメリカはもうちゃんとした、それは民間であれ、管理はしているわけですよ。だから、輸入業者に、輸入業者は国内ですよ、それをちゃんと求めれば、それはできるはずなんですよ。やるかどうかだけの問題。
 先ほどから言っているように、輸入牛肉に食品衛生法の方がはるかに強制力が働いて強い力を持っているというんだけれども、私が今指摘したように、だめなんですよ、食品衛生法上における水際検査というのは。もうずるずるなんですから。モニタリングなんというのは、本当にやっている証拠を見せるぐらいな話で、しかも、わかったときにはもう流通した後というような形でね。だから、わかるまでは輸入をとめるんならいいけれども、わかったらやっと命令検査するかどうかぐらいのところで、もう食べちゃっているとか流通しちゃっているとか、そういう輸入食品に対する検疫というのは日本の場合は非常になっていないというのは連合審査のときにも盛んに私やりました。
 そういうことをあなた方もう御存じなのに、今回の法律はここでございますのでというふうに、法律で動くしかないのかもわからないけれども、本当に私は、この法律は法律として、しかし、大臣なら、少なくとも、今後そういうものも輸入相手国に求める、そういう検討ぐらいは始めたらいかがですか。どうですか、もうここまで言っているんですから。
亀井国務大臣 今度のこのトレーサビリティーシステムを導入し、消費者の皆さんが関心をお持ちいただく。国産牛につきましてそのような対応が目に見える形で出てくるわけでありまして、消費者の皆さんや、あるいはまた輸入関係の皆さん方も、相手国、それぞれのことをやっておるわけであります。現状、BSEということでスタートしたわけでありまして、これはやはりそういう安心したものでなければ消費者の皆さんはお求めにならない、そういう時代ではなかろうか、こう思います。
 輸入関係の方々も、このシステムの導入を契機に自主的にJAS法の問題によってそれなりのいろいろなことをしていただける、このように期待をしたいと思います。
中林委員 二点目、このトレーサビリティーのシステムをしっかり構築しなければかえって悪い影響を及ぼすという疑念の二点目。それにはあと五分しか残されていないので、十分議論ができないと思いますけれども。
 このシステム導入に当たっては、生産者、それから流通業者、屠畜場、販売店、やはりそれぞれ負担、コストがかかるわけですね。今のような不況下でやはり大変だということをどなたもがおっしゃっておりました。
 私は、このトレーサビリティーの先進県広島の全農ひろしまに直接行っていろいろ聞いてまいりました。なかなかよくやっておられますけれども、しかし、それは一定の枠の中でやるからできることだろうというふうにも思いました。しかし、そういうシステムの中に入っている農家の皆さんも、実は、これが義務づけられていけばなかなか大変だ、こういう思いを率直に語られました。
 零細な屠畜場だとか、それから流通業者だとか販売業者、こういうところは、やはりその負担というものも大変だろうと思いますので、これは、やはり昨年成立した特別措置法の精神に基づいてきちっと国が責任を持って支援策をやるべきだというふうに思いますが、これはなかなか大変なところがあるので、簡潔にぱっと答えてください。
須賀田政府参考人 確かにコストがかかると思います。
 農家が十三万戸ございます。耳標の作成、配付、そして情報システムの開発等について支援したい。
 屠畜場が百九十六カ所、食肉卸が九千舗、小売が一万九千舗、食料品のスーパーが一万九千舗ございます。これらに対しては、必要な機器の整備、ソフト開発について、融資でございますとかリース事業による支援というものを考えていきたいというふうに思っております。
中林委員 簡単といえば非常に簡単だったので、本当にこのシステムが起動していくように、そうでなくても、農家の人の声を率直に大臣に聞いてもらえれば、自分たちの責任でないところでBSEが発生して、そしてこれだけダメージを受けて、その上、今度は耳標を義務づけて、それを怠ったら罰金だと言われるのは、余りにも自分たちにとってはつらいことだというふうにおっしゃっておりましたよ。だから、そういう意味では、農家だけじゃなくて、それに関連する業者を含めて、十分な措置を講じていただきたいと思います。
 あわせてですけれども、エラーが発生した場合、これはとんでもないことになるというふうに思うんです。
 それで、せっかくのシステムにエラーが発生したらいかぬということで、これは全農ひろしまのパスポートシステムの宣伝のものですが、こういうものです、パスポートというのは。中にいろいろ書き込んでいくというものなんですけれども、これをシステム化するために物すごい努力をしているんです。エラーをわざわざ起こして、もしそうなった場合はどうするかということまで徹底的に訓練する。その場合、DNAの鑑定をしているんですよ。全部一頭ずつDNAを保管しておいて、それと小売店のあれとを照合していく、こういうやり方で、もう徹底してそれは訓練をいたしました、そうしないと信頼はかち取れません、こういうふうにおっしゃっていたんです。
 ところが、農家に行くと、私らみたいな老人に十けたの番号をきっちり押せなんというようなことはわかりませんよと。ファクスで送るんだけれども、送ったものやら送っていなかったものやら、こうやって積んでいってわけがわからぬ、そういうものが今度義務づけられるようになると本当に大変だ、高齢化はどんどん進んでいくということをおっしゃっているわけですよ。
 だから、私は、こういうエラーが起きないようにするためには、やはり現場を見て徹底した指導、これが必要なんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点についてはどのようになさるつもりでしょうか。
須賀田政府参考人 確かに、先生おっしゃいますように、去年一年間、十四年の一月から十二月、見ておったわけでございますけれども、農家段階で、番号の書き間違いでございますとか報告すべき事項の記入漏れでございますとか、あるいは二重報告でございますとか、実に一割を超えるエラーの報告がございました。
 これではなかなか制度として定着しないということで、私どもは、まず、家畜改良センターがファクスにおける届け出様式というものを配付いたしまして、それに書き込んでいただければということで、センターから直接生産者を指導するということをしてきたところでございますけれども、今後、地方農政事務所が発足をいたしますので、県だとか農協の関係者とともに、現場での監視、指導を徹底するということでエラーの発生の防止をしていきたい。
 また、高齢農家によります届け出に対しては、肉用子牛の生産者補給金制度がございますので、あれは定期的に接触をいたしますので、これと連携しながら、農協等の職員が特に支援をするということでエラーの防止に努めていきたいというふうに考えております。
中林委員 時間が参りました。一点、最後、これは要望して終わりたいというふうに思うんですが、私たちは、本来ならば、一つの個体にトレーサビリティーすれば到達していくということが一番ベストだと思っているんですが、今のような状況の中では、一つのロットでないと行き着かないだろうというのもやむを得ないかなと思うんですね。最大限、五十ぐらいの頭数、個体だということを言っておられるわけですけれども、消費者はやはり一頭一頭行くだろうというふうに思っていると思うんです。
 だから、本当に消費者に対して安心、安全ということを言うならば、消費者にどのようにこの実態を徹底させていくのか、そこのところが非常に大切だというふうに思います。だから、そこを怠りなくやらないと、生産者から販売業者に至るまでは努力したけれども、結果それが目に見えなかったということにならないように、消費者に対する情報の伝達、教育、そういうものを十分やっていただくよう大臣にも強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
鮫島委員長代理 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 今までかなり議論されてまいりましたが、どうもこのトレーサビリティー法について合点がいかない部分があるわけなんですね。それで、冒頭少しその点について質疑しておきたいというふうに思うんです。
 昨年の四月にBSE問題に関する調査検討委員会の報告が出されて、そして「リスク分析手法の導入」という形でトレーサビリティーが俎上に上ったわけでございます。ただ、その前に、平成十三年の十月二十二日に家畜個体識別システムの構築に関する基本方針というのが打ち出されておりますね。そして、昨年の四月の調査検討委員会報告を受けて全国データベースの利用規程というものが設けられて、そして今日まできているわけですね。
 それともう一つ、伏線としてあるものは、食と農の再生プランというものが農水省から打ち出されました。「食の安全と安心の確保」という項目において「「農場から食卓へ」顔の見える関係の構築」という部分があって、「食卓へ生産情報を届けるトレーサビリティシステムを導入し、これを実効あるものとするためのJAS規格など法制化を検討します。」トレーサビリティーシステムを導入し、JAS規格などの法制化を検討します、これが食と農の再生プランの中身なんですね。
 ということは、先ほどからずっと須賀田局長が言っていますけれども、この法案の目的というものがどうなっているのかということなんですが、この目的が矮小化されて議論されているんじゃないですか。須賀田局長、冒頭このことをはっきりさせておかないと、どうも議論がかみ合わないような気がしてならないんです。
 「牛海綿状脳症のまん延を防止するための措置の実施の基礎とするとともに、」これが目的規定になっているんですね。これじゃないんじゃないですか、スタート時点は。牛においてトレーサビリティーというものを確立するためというのは、食の安全、安心の確保のためじゃないんですか。この基本が逸脱しているから議論がかみ合っていないんだと私は思うんですけれども。それで、この法案の目的にはそのことが一項も触れられていないんですね。どこに消えてしまったんですか。このトレーサビリティーシステムの導入の根本の目的はどこにあるのか、ここをはっきりさせていただきたいと思うんです。
須賀田政府参考人 先生言われますトレーサビリティー、一般の食品のトレーサビリティーといいますのは、食品の由来を消費者に伝達する、消費者が食品を購入するに当たって信頼感を醸成する、そして万が一食品事故があった場合には追跡が可能なシステムとするということで、今先生お読みになりましたように、JASにその制度がございますので、関係者が合意してそういう仕組みをつくり上げる、これを基本にしているわけでございます。
 なぜ今回牛肉だけに限ったこの法律を出したかといいますと、先ほど来申し上げておりますけれども、牛肉に関しましては、一昨年九月に我が国で初めてBSEの感染牛が確認をされた。牛肉に関しては消費者の信頼がいまだに回復していない。全頭検査は始めたんだけれども、なかなか牛肉に対する不安が解消をしない。さらに、全頭検査で患畜が見つかった場合には同居牛等の疑似患畜を追跡するシステムというものも必要だということで、牛肉に関しましては、耳標の装着でございますとかいろいろな情報の届け出、これを罰則によって生産者に担保する。そして、それぞれの流通、小売に至るまでの段階で、その情報を化体いたしました個体番号というものをちゃんと伝達していく、これも罰則で担保する。こういうBSEの発生に伴う特別の措置としてこの法律をつくったわけでございます。
 これはEUでも同様の仕組みになっておりまして、一般の食品はJASのシステムを利用してトレーサビリティーの制度化を図っていくということになっておりまして、決して、牛肉に特化して、これだけに限るという意味で御提案を申し上げているわけではないわけでございます。
菅野委員 そこに、どうして牛に特化しよう特化しようとしているのか、はかり知れないでいるんですけれども、食の安全、安心、食品安全基本法のもとに今このトレーサビリティー法案が提出されているんですね。そして今、関連六法案を一括して審議しているんです。基本は、食の安全、安心の確保、食品安全基本法に基づくトレーサビリティー法案だと位置づけられているんですね。ということは、大臣、今、須賀田局長は特化しよう特化しようとしているんです。
 私は、牛のトレーサビリティーシステムを法的に今確立させていくということは、食の安全、安心にとって重要なことだと思っているんです。食品基本法にもうたわれておりますし、そして、リスク管理、こう言っていますね。BSE問題に関する調査検討委員会の報告書では、「リスク分析手法の導入」という項目で、食品の原材料の追跡、検証が可能になるシステムが必要だ、トレーサビリティーは最終商品から原材料へと追跡可能なシステムである、食品の安全性の確保のためにトレーサビリティーはフードチェーン全体を通じたすべての食品に適用されるべきシステムである、そしてリスク管理、農水省が行うリスク管理における重要な手法と位置づけられなくてはならないと言っているんです。この第一歩に立つのがこの牛のトレーサビリティーシステムだと私は思っているんですね。
 それが、それはそうじゃないんだ、これはBSEが発生したからこの法律をつくっただけなんだというふうに特化しているんですね。
 大臣、そういう意味においては、牛のトレーサビリティー法案と、今後他の食品について行っていこうとするBSE問題調査検討委員会のこの報告をどう関連づけていくのか、これがはっきりしなければならないというふうに思うんですけれども、大臣の考え方はどうなんですか。
亀井国務大臣 今回こうして法案をお願いしております。これは、BSEの問題に端を発して出ているわけであります。
 しかし、食の安心、安全、このことは大変重要なことでございまして、このトレーサビリティーシステムは、消費者がみずから食品の生産方法等に関する情報を引き出すことにより、安心して食品を購入していただくことにもなるわけでありますし、万一食品事故が発生した場合にも、その原因の究明を容易にすることができるわけでありまして、食品の安全、安心を確保する上で極めて有効なもの、このように私は考えております。
 実は、先ほども申し上げたんですが、私、食肉センターに視察に参りましたときに、牛肉につきましては制度をやっている、豚についても、いわゆる出荷者、そこの食肉センターの関係者は、豚についてもできることならばと、こういうことのお話の中で、やはり、ただ、数が、神奈川の食肉センターは日に二千二、三百頭豚を処理する、そうなりますと、なかなかこれはそのシステムの導入ができない、農場一つごとにというようなことでも考えられれば、こういうような話もされておったわけであります。
 ぜひこの制度を通じて、消費者そして生産者、顔の見えるような関係というものができる一つのものではなかろうか。食の安心、安全のためにいろいろな分野でこれが活用される、また、それぞれ、この時代、消費者重視、そういう中で、消費者の皆さん方もこのことに関心をお持ちいただき、生産者の皆さん方もやはりそういうお考えになるのではなかろうか。ぜひそういう面で、任意的な形で、そういうものがいろいろなところで自発的に導入されることを御期待申し上げるわけであります。
    〔鮫島委員長代理退席、委員長着席〕
菅野委員 BSEが発生して、なぜトレーサビリティーをしなければならないのかという問題のもう一つの側面があるというふうに思うんですね。それは、食品の偽装表示の問題ですね。そして、牛肉が売れなくなって、牛肉にかわるものとして輸入鶏肉が国産品としてまぜて流通していったという状況があります。そして、宮城においては韓国産のカキの混入問題がありました。そして大きな社会問題になったというふうに思うんですね。
 それらを、食の安全、安心という部分を消費者からしっかり信頼を得るためのシステムとしてこれが存在しているというふうになって、トレーサビリティーシステムというものが、先ほどから言っているように、調査検討委員会の報告に載ってきたんだというふうに思うんです。偽装表示の問題もそうなんですね。
 そして、大臣が言うように、それは自主的に行われるべきものだと言われていますけれども、基本はそうだと思うんです。ただし、例えば、偽装表示をはっきりさせるために、あるいは、主食である米の偽装表示問題も今クローズアップになっています、これらを防止する一つの大きな手法としてのトレーサビリティーシステムだというふうに思うんです。それら全体をどう構築していったらいいのかというのは、国の主導のもとに行われていかなければ全国統一的に行われていかないということだと思うんです。
 大臣、私は、牛のトレーサビリティーというものが一つのモデルケースとして存在して、あらゆるケースに適用していけるんだという概念をしっかり持つべきだと思うんです。そして、足りないところは、それじゃその他の部分で変えなければならないところはどこなのかを明確にしながら、国主導として行っていくべきだというふうに思うんです。このことをしっかりと確立していただきたいと思うんです。
 それで、今問題になっている、当面早急にやらなければならないのは、主食の米の偽装問題だと思うんです。これに対してトレーサビリティーシステムを導入していくことが私は非常に有効な手段だと思うんですけれども、どう対処していかれようとしているのか、大臣の考えをお聞きしておきたいと思います。
亀井国務大臣 米のトレーサビリティーのシステム、いろいろ牛肉やら、あるいは食品の特性、流通経路等々もさまざまだ、こう思います。また、消費者のニーズ等もいろいろあることでありまして、いろいろ技術的な課題、こう受けとめていかなければならないと思います。
 米につきましても、偽装表示の問題が出ております。これも、DNA鑑定等、大変簡易にできるようなシステムを筑波の研究所で私は見てまいりましたけれども、現在も、表示の問題につきましては大変厳しくいろいろのことをしておるわけでありまして、当面は、米以外、いろいろの野菜等々につきましても、トレーサビリティーのシステム、これはそれぞれ自発的にいろいろおやりいただく、またこれが今の時代に必要なことではなかろうかな、こう思います。
 技術的な問題等々含めて今後どうするかということは、課題として受けとめて、また検討してまいりたいと思っております。
菅野委員 大臣、自発的に自発的にと言っています。それは、国として、食品安全基本法ができました、それにのっとって、食品の安全、安心を確保するシステムをどう構築していくのかというのが今日の課題だと思うんですね。これは自発的な行為にまつんじゃなくて、国としてしっかりとした方針を示していくということが今求められているから食品安全基本法というものが策定されたんだというふうに思うんです。
 それで、米の偽装問題は非常に大きな問題なんですね。もう世間では前からささやかれていたことが現実の問題としてなったわけですね。BSE以上の問題だと私は思うのです。それを国としてどう防いでいくのか、偽装表示をどう防いでいくのかというのは早急の課題だと思うんです。
 そういうことで、その一つの手法としてトレーサビリティーというものを導入しますという方向を打ち出すことが、私はこの偽装表示問題というものを防ぐ有効な手段だと思うんです。当局、そう思いませんか。これをどのように考えていくのか、具体的に答弁願いたいと思います。
石原(葵)政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま委員からお話ございましたように、米につきましての偽装表示の問題、我々、偽装表示が一切ないと胸を張って言う状況には至っておりません。非常に申しわけないことだと思っております。
 我々は、先ほども大臣が答弁いたしましたけれども、DNAによる品種の判別、それから、それより前の、食糧事務所の職員によります巡回点検、こういうことで偽装表示がないようにということで取り締まりを強化しているところでございます。そのような効果もありまして、偽装表示の率は下がってきております。しかし、先ほども申し上げましたように、一〇〇%偽装表示がないという状況には至っておらないということでございます。
 それで、今委員からお話ございましたように、トレーサビリティー、これは消費者の信頼を確保するということからしますと非常に有効な手段だと思っております。
 他方で、これは先ほど生産局長がるる述べたところでございますけれども、米について、牛肉で議論のありましたような事情、そういうことがあるのかどうかという問題。それから、仮に法律で義務化ということになりますと、そういうものに対して消費者のニーズがそこまで求めているものかどうか、これは非常にコストもかかります、そういう問題。それから、牛肉に比べまして、米につきましては流通経路がさまざま、農家の直販というようなこともございます。こういうこともございまして、なかなか法律上義務づけるという段階ではないのではないかということで、先ほど大臣が答弁いたしましたように、任意参加型のシステムが適当ではないかというふうに考えているところでございます。
 我々、この十五年度予算でそのための予算も措置しているところでございますので、任意参加型のトレーサビリティーシステムの導入、これに向けまして必要な環境整備を行っていきたいというふうに考えているところでございます。
菅野委員 牛のトレーサビリティーが法的に出発しようとしています。これは、牛肉の流通の何%にこのトレーサビリティーが有効に活用されるんですか。
 私は、ヨーロッパを見てまいりましたし、きのうも流通段階を見て回りました。一〇〇%牛肉の流通にこのトレーサビリティーシステムが働くかというと、そうではないんですよ。枝肉に、最終段階で、私は、牛肉の流通の二〇%か三〇%ぐらいしか適用にならない、これくらい適用になればいいと思っているんですけれども。米の流通にしても、自主流通とかそういうどころじゃなくて、全体の流通の一〇%、二〇%の議論を行うということだと思うんです、このトレーサビリティーシステムというものは。
 それで、そういう自主的に任せるんじゃなくて、制度として確立するということが重要なことであって、ぜひこれは、すべてにトレーサビリティーを適用するんじゃなくて、限定した部分にしか適用になっていかないわけですから、コストもかかることでありますから。そういうことを検討した上で、ぜひ主食である米にトレーサビリティーが適用できるような検討にもう入っていただきたいということを強く申し上げて、次に移ります。
 それともう一つ、食品安全基本法、やはり消費者の、国民の食に対する安全、安心を確保するためには、何といっても、食と農の再生プランで言っているように、新鮮でおいしいブランド・ニッポン食品の提供ということが、食と農の再生プラン、再生プランですからね。このことに農水省としてどう取り組んでいくのか、このことが食の安全、安心に対して非常に重要なことだというふうに思っています。
 そして、食と農の再生プランでは、食文化、地産地消の特色を生かしたブランド・ニッポン農水産物を供給し、生産、流通を通じた高コスト構造を是正します、こううたっているんですね。その一方で、イタリアから発生したスローフード運動というものが相まって、食の安全、安心のためという取り組みが日本に今広がっていくというふうに思っています。農水省としても、これらの動きに対してどのように対処していかれる考えなのか、大臣の方からお聞きしておきたいと思います。
亀井国務大臣 地産地消は、生産と消費の距離を縮めて、地元で生産したものを地元で消費をすべきであるという考え方であるわけでありまして、そういう中から、伝統的な食材や郷土料理だとか、地域の食文化をつくっていく、またそれを伝えていく、こういう面でスローフード運動と相通ずるものがあります。
 地域の特色を生かして新鮮でおいしい農産物を消費者に提供していただく、これらの動きをぜひ推進することが必要なことと思います。これは、流通コストの削減であるとか、あるいは食品の鮮度、安全の向上、あるいは地域の食文化の保全、こういう観点から重要な意義を有することでありまして、食と農の再生プラン、これに基づき消費者と実需者との連携強化による地域の特色を生かした産地づくりを推進する、こういうことで地産地消等につきまして積極的に私ども支援をしてまいりたい、こう思っております。
菅野委員 特に、米の問題です。米の消費がどんどん下がっていっている状況をどう克服していくのかというのは、大きな課題だと思っております。学校給食にどう米を導入していくのか、いろいろな知恵を絞って国民全体として米の消費をどう拡大していくのかというのは、大きな課題であるというふうに思っています。
 そういう意味で、食文化を大切にしながら地産地消という部分を追い求めていくことは、私は、米の消費拡大に非常に大きくつながっていくことだというふうに思いながら問題提起しているわけです。ぜひスローフード運動も含めて、しっかりとした情報を発信しながら全国的な運動展開ができるような取り組みというものをしっかりと行っていただきたいということを強く申し上げておきたいと思っています。
 それでもう一つ、先ほどからずっと議論されておりますけれども、日本全体の食品の六〇%は輸入食品である、これは厳然たる事実ですね。そして平成二十二年までにこれを四五%に引き上げると言っていますけれども、それができるのかできないのかというふうな議論にも今なっております。
 この自給率の向上を目指すことと、もう一つは、輸入食品の安全性というものをだれが、どこで、しっかりとどう担保していくのかという問題が存在するというふうに思っております。このことは、後でも申し上げますけれども、リスク管理の基本だと私は思っているんですね。それで、リスク評価部門とリスク管理部門を分離しました。輸入食品の安全性をそういう中でどのように確保していかれる考えなのか、大臣にお聞きしておきたいと思います。
亀井国務大臣 輸入食品の問題を含めまして、これは私ども、厚生労働省と農林水産省がリスク管理を連携して進めていくことが求められるわけでありまして、これら生産資材の使用基準の策定の問題であるとか、動物用医薬品あるいは飼料添加物の登録、指定、これは私ども厚生労働省にいろいろ意見聴取を行い、食品衛生法の残留農薬物の基準との整合性を確保する、こういう問題もあるわけでありまして、いろいろの分野で関係省庁と定期的な連絡会議等々を行い、また重要な問題につきましては行動計画、こういうものも策定をし、縦割りの弊害のないような食品安全行政、こういうものを一体的に進めてまいりたい、こう思っております。
菅野委員 先ほどからの議論で輸入牛肉の問題が議論されていました。それも、トレーサビリティーシステムというものを外国には強制できないという議論で平行線をたどっています。そういう中で、国内のトレーサビリティーシステムを構築していった後に、六割も輸入している外国の食材に対してどう安全性を確保していくのかというのは、日本から求めていいことだと思うんですね。六割も輸入しているんですから、日本の基準に合致するようなそういう安全性をどう諸外国に求めていくのかということが、このことにおいては重要なことだというふうに思っています。
 これは、水際作戦じゃなくて、入ってくる以前の段階で日本が輸入している国と徹底的な議論を行うということが私は根本にあるべきだと思っています。それをだれがどのような形でやっていくのかというのが、私は日本において縦割り行政の弊害がゆえに構築されていないんじゃないのかなというふうに思うんです。六割も輸入食品が入ってくるんですから、輸入食品をどう安全確保していくのかということをリスク管理の基本に置くべきだと私は思っております。
 それで、今いろいろなことを議論されていますけれども、大臣は一言で、縦割り行政の弊害を取り除くべく努力していきますという言葉で言っていました。言葉では簡単なんです。
 この食品安全基本法をつくって、そして縦割り行政の弊害をどう取り除いていくのかというのは、私も昨年の三月に、急にBSEの問題でイギリスに行ってきました。イギリス方式とか、フランス方式とか、ドイツ方式とかあります。それで、イギリスでは、ブレア首相に政権交代になったときに一元的にリスク管理をしていくシステムというものをつくり上げたと誇らしげに言っていました。旧来の部分を解体して一元的な方向に持っていって、地方自治体も巻き込んで一元的なリスク管理手法を構築したと言っております。これは、これからいろいろな形で進んでいく場合に、弊害は起こるかもしれませんけれども、それを乗り越えるだけの組織体としてつくったというふうに思っております。
 日本も、ある意味では、リスク管理部門は、農林水産省、厚生労働省、環境省、それと地方自治体、それぞれがそれぞれの分野でもってリスク管理していくということになっています。これをどう一元的に持っていくのかという考え方を持っていて徐々にそこに近づこうとするのか、今のままでいいのか、これが考え方の分かれるところだというふうに思っています。私は一元的に持っていくというのが将来的にベターな姿だというふうに思っていますけれども、このことについてどのように考えておられるのか、答弁お願いします。
亀井国務大臣 食品安全委員会が発足するわけであります。そういう中で、食品のリスク管理、これは私ども農水省になるわけでありますし、あわせて、先ほど申し上げましたとおり、厚生労働省もあるわけでありまして、新しい体制、食の安全、安心、このことを私ども打ち出しておるわけであります。いろいろ今先生が御指摘のような問題、新しい時代、そして安全、安心の問題につきましては、今までと角度を変えて国民の健康を守る、そういう大変重要な役割を果たすわけでありますので、十分検討し、今後の対応をしっかりやってまいりたい、こう思っております。
菅野委員 大臣、わかりました。大臣は一般的な答弁だったというふうに思っています。
 私の聞いているのは、将来的に食品安全基本法に基づいてリスク管理部門がどうあったらいいのかという観点を、農水省として、あるいは政府としてどういうふうな考えを持っているんですかと。そして、私は一元化というものに進むべきだということを提案しているんです。その一元化は日本においては無理なのか、あるいは将来的にやはり一元化という部分が必要なんだという観点が存在するかしないかによって、今後のリスク管理行政というものが変わってくるんだというふうに思うんですね。将来的な部分をどのように考えているのかということをしっかりと明示していただきたいと思います。
亀井国務大臣 私は今お話しのようなことを申し上げたわけでありますけれども、今回、食品安全委員会がスタートする、新しい制度をもって進むわけであります。
 先般、私、フランスに参りまして、食品衛生基準庁の長官ともいろいろ話をしてまいりました。そこではいろいろ科学的なリスク分析とリスク管理、いろいろセクションも組織も違っておるわけであります。
 新しい組織をつくるわけでありますから、国民の健康を守る、食の安心、安全、こういうものをしっかり確立しなければならないわけでありますから、今までと違ったところの問題等々につきましてもその分野の、また、対外的な問題につきましても、十分安全委員会が機能するような分析並びに管理等々につきまして、必要なものは積極的に進めてまいりたい、こう思っております。
菅野委員 リスク評価部門とリスク管理部門が分離しました。食品安全委員会というのはリスク評価機関ですから、私が言っているのは、リスク管理部門をどう一元化していくのかというのが、これは重要な課題であると思っています。大臣は一元化という方向はなかなか打ち出し得ないでいるというのもわからないわけではないですけれども、ぜひ一元化という方向は追求すべきだというふうに思っています。
 一元化に持っていけない端的な例というのが食品表示制度なんですね。この食品表示制度というのは、先ほどからずっと言っていますけれども、BSE問題調査検討委員会でも、食品表示制度の抜本的な見直しというものが必要なんだということで、課題として位置づけられています。この法体系も含めて抜本的な改正というものが調査検討委員会で触れられているんですね。
 これこそ、食品表示制度の一元化という方向に向かうべきだと思うんですけれども、この見直しの検討は現在どのようになっているのか、そして将来構想をどのように考えておられるのか、お聞きしておきたいと思います。
西藤政府参考人 お答え申し上げます。
 消費者の立場に立って、わかりやすい食品表示の実現というのは極めて重要な問題だというふうに我々も思っております。
 先生御指摘のとおり、そういう課題の中で、私ども、厚生労働省と一緒になって、消費者等の皆様の参加を得て、昨年来、食品の表示制度に関する懇談会で検討を行ってまいりました。その結果、法律の一元化については中長期の課題とする一方、当面、食品の表示全般に関する検討の場を設けて、現在、その共同の会議を設立して、わかりやすいという視点で食品表示制度全体についての御論議をいただいている一方、一元的な相談窓口の設置あるいは共通のパンフレットの作成、もう既に作成して関係機関に配布をさせていただいておりますけれども、そういうことを通じて、わかりやすい表示の実現ということで現在取り組んでいる状況にございます。
菅野委員 現在取り組んでいるということなんですけれども、これはこの食品安全基本法ができましたから、早急に一つの方向性を出して、消費者の信頼を、偽装表示問題等も含めて表示問題というのが大きな議論になっていますから、早急に結論を出せるような取り組みを強く要求しておきたいというふうに思っています。
 それから、BSEの問題が、七頭発生して、国民的にはBSE問題が一つの落ち着きを取り戻したというふうに私は思うんですね。そういう意味では、食品安全基本法ができて、そして牛のトレーサビリティーシステムが稼働していく、そういう中で追跡調査というものが行われる体制ができ上がっていくわけですけれども、このBSEの問題で一つ大きな課題が残っているんです。
 屠殺場で今BSEの全頭検査をやっております。OIE基準では全頭検査なんというのは要求していないんですね。日本として食品の安全、安心をかち取るために全頭検査に踏み切ってきたという経緯があるわけです。これは、ヨーロッパ全体、世界全体では、三十カ月齢あるいは二十四カ月齢牛という形でやっておりますけれども、このBSEの全頭検査について今日的にどのような考えを持っておられるのか、これをお聞きしておきたいというふうに思っています。
北村副大臣 先生から御指摘のBSEの全頭検査につきましては、先生御指摘のとおり、OIEでは二十四カ月齢以上あるいは三十カ月齢以上というようなこともございます。あのときには、OIEの基準もありました、ですから、科学的見地からいえば二十四カ月齢以上でいいのではないかという議論もありましたが、それじゃ二十三カ月齢は大丈夫なのか、あるいは二十二カ月は大丈夫なのかという議論も実はあったわけであります。
 そういう意味では、科学的な見地というよりも政治的な判断として、あの平成十三年度のときには、全頭検査をするということで、消費者の方々の安心、安全というその対価、非常に高額的な対価になってしまってはおりますけれども、我々はそのことを是としたわけでありまして、今後は、食品安全委員会等々でリスク評価をいただきながら、専門的な御意見をいただき、あるいはトレーサビリティー等々を導入していく、あるいは死亡牛の全頭検査をしていく等々をやったときに、OIEの基準も見据えながら検討をしてまいりたい、このように考えているところでございます。
菅野委員 わかりました。
 ただ、これは非常に経費負担を伴っていることなんです。今副大臣が言ったように、政治的判断を行いましたと。ただし、科学的知見というものが確立されている中で、私はいつまでも続けるべきことではないというふうな思いをいたしております。非常に大きな費用負担を伴って、そして現場段階の人たちは、牛肉への信頼をかち取るためにという奉仕的精神でもって今日までやってきているわけですから、早急な判断というものが必要だというふうに私は思っております。
 食品安全委員会に、ぜひ、検討課題として申し述べながら、早急な結論を得るように強く申し上げて、私の質問を終わります。
小平委員長 次に、岩倉博文君。
岩倉委員 自由民主党の岩倉博文でございます。
 きょうの質疑、最後でありますけれども、同僚の金子議員とともに、これから六十分、一生懸命務めたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 大臣、新しい世紀が始まって、二十一世紀に入って、今は時代の節目、同時に、さまざまな意味で時代の転換期、その渦中を今通っているんだなということを私自身は感じております。
 同時に、第一次産業、これは産業分類の呼称でありますけれども、第一次産業の農林水産業。私はよく、産業分類の呼称としての第一次産業とは別な意味で、農林水産業のことを基本産業というふうに表現させていただくことが多いのでありますけれども、この農林水産業にとっても、取り巻く時代背景と同様に大きな転換期を今迎えているというふうに認識をいたしております。
 その渦中に起きたBSEショック、この教訓を今後に生かすべく、その第一歩の一つともいうべききょうのこの大切な法案の審議、そのように認識をいたしておりますけれども、具体的な法案についての質問に入ります前に、ちょうど四月の一日、大臣御就任をいただいた日であります。それから一カ月余の間、大変な激務の中で御苦労いただいている大臣でありますけれども、就任早々から精力的にさまざまな問題に取り組まれているところでございます。過日も、訪欧されて、各国機関の関係者との会談を重ねられたとお聞きをいたしております。
 具体的な質問の前に、大臣に、一カ月少したった今日、農林水産業に対する、今、きょうの時点でどのような思いをいたしているか、あるいは、今後、農林水産行政に取り組む大臣の決意について、ここで冒頭に改めてお伺いをいたしたいと思います。
亀井国務大臣 今委員からもお話がございましたが、基本産業という認識。まさに農林水産業、農山漁村、これは、生命をはぐくみ、自然環境保全、あるいはまた文化を形づくる、こういう面で大変重要な役割を果たすのが農業でもあるわけであります。まさに国の土台、国の基本、こう思うわけでありますし、まさしく同じような認識を持っております。
 農林水産業と農山漁村を健全な姿で維持発展をさせることが、真に豊かで安定した国民生活を実現する基本、このように認識をいたしております。BSEの問題で大変信頼を損ね、そして、食料・農業・農村政策の再構築、こういうことが急務であるわけでありまして、川上から川下まで、生産、消費双方が共存共栄を図る社会形成、農林水産業の分野のさらなる改革、このことをしっかりやる決意であります。
 また、実は私、もう二十年近く前、農林水産委員会に、こちらにおりまして、当時、私自身、米の流通の仕事をしておりまして、消費者の皆さん方を相手に商売をやってきた男でありましたから、そういう面でやはり、生産地の重視というような当時の時代のことを考えますと、若干感慨深いものが今あるわけであります。
 ぜひ、そういう面で、食の安心、安全、きょうもいろいろと御議論いただいております食の安全関連法案の改正を含め、この食の安全と安心の確保に向けた取り組みとあわせて、今もちょっと触れましたが米政策の改革の遂行、そして、先般、連休中にWTOの関係者、EUの関係者にお目にかかってきたわけでありまして、WTO交渉の問題。これら我が国が直面する食料、農林水産業、農山漁村の根幹にかかわる大きな課題を持っておるわけでありまして、これらを誠心誠意、一生懸命努力をし、そして、国民の理解と信頼のもとに積極果敢な政策の展開を図り、二十一世紀の食料、農林水産業、農山漁村づくりに取り組んでまいる決意であります。
岩倉委員 ありがとうございました。本当に大切な時期でありますので、基本産業の道づくりという上で、大臣に私自身も期待をいたしたいというふうに思います。
 そこで、きょうの議題となっております法案の質疑に入らせていただきます。
 トレーサビリティー法案、きょうずっと聞かせていただいて、たくさんの問題がポイントアウトされておりますけれども、やはり、輸入牛肉の問題、あるいはコストの問題等々、大切な問題についての質疑が非常に多かったように思います。
 改めてここで、やはり消費者の皆さんあるいは国民の皆さん方がこの法案を見て、恐らく、きょうポイントアウトされた、数多くの議員から質問があった疑問とかあるいは問題点というのは、消費者の皆さんから見ても多分同じような思いでポイントアウトされてくるんだろうという観点から、多少重複する点もありますけれども、私なりに、トレーサビリティー法案について改めてストレートにお話を聞いてみたいなと思います。
 そこで、まずコストの問題なんですが、国産牛肉についてさまざまな規制措置を講ずることは、事業者にとって新たなコスト負担を強いることになるというふうに思います。コスト負担の増加についてどのように考えておられるのか。
 さまざまな法案ができて、そのことによって事業者に対してコストの負担がかかる、これはよくあることなんだと思うんですけれども、今回の場合に、かかる側を取り巻く状況等々あるわけでありまして、一律でそれを考えることはなかなかできないのではないかという観点から、このコスト負担の増加について、どのように考えておられるのかということについてお伺いをいたしたいと思います。
亀井国務大臣 いろいろきょう御議論いただいております。まさに食の安全、安心の確保のために新たなコスト負担が生ずるわけであります。
 この制度に要するコスト、牛の個体情報の記録、管理に必要なコスト、あるいは制度の実効性確保のために必要なコストについては、食の安全、安心のために国民全体が担うべきとの考え方に基づき、必要な予算措置も講じておるわけでもあります。
 また一方、個体情報の伝達等の義務化に伴うコストは、あるいは消費者の信頼確保による売り上げ増、こういう中で、経営内で吸収していただく努力ということも重要ではなかろうか。
 また、いろいろ、ロット番号による表示や小売店での店頭表示パネルボードの活用を推進するなど、できる限りコストの負担が軽減できるような仕組みというものも考える必要があるわけでありますが、そのほか、必要な機器の整備やソフト開発等について、政府系金融機関の低利融資や、あるいは財団法人畜産環境整備機構のリース事業、こういうものによりまして支援をしてまいりたい、こう思っております。
岩倉委員 さまざまな発信で、できる限り事業者のコスト負担を軽減できるような仕組みをとっていきたいというお話だったかと思いますが、複数の個体識別番号に対応するロット番号の表示も認めてしまいますと、万が一のときに、問題となる牛肉の特定に支障が生じて、トレーサビリティーシステムとしての機能が果たせなくなる心配はないのでしょうか。この点についてお伺いをしたいと思います。
須賀田政府参考人 お答えを申し上げます。
 制度の趣旨から申し上げますと、先生御指摘のように、一つの個体識別番号を特定する、その牛を特定するということが望ましいわけでございます。ただ、牛肉の流通の実態からいたしますと、卸売段階等で複数の牛の同一の部位を詰めて流通する、こういう実態にあるわけでございまして、それをまた分けて一頭ごとやれというと非常にコストがかかってしまう。こういうことでございますので、複数の個体識別番号の表示またはこれにかわるロット番号というものの表示を、出始めとして認めるということにしたわけでございます。
 そのロット番号の表示を行った場合には、問い合わせ先をちゃんと表示いたしまして、消費者から問い合わせがありましたら、そのロット番号に対応する個体識別番号をちゃんと情報提供する。こういうことにしておるわけでございまして、ある程度牛の範囲が限定をされて、追跡は可能になるんじゃないかと考えております。
 EUにおいても、そのような仕組みにしていると承知をしております。
岩倉委員 今、消費者はやはり、コストパフォーマンスに対して非常に関心が高いわけでありまして、ぜひ、あらゆる角度から今後もチェックをしていく必要があるんだろうというふうに思います。
 コストがいたずらにかかってしまいますと、幾ら安心のための仕組みだとはいえ、消費者は国産牛肉から安い輸入牛肉を選択してしまうという可能性もあります。ぜひとも、牛肉の流通実態を踏まえた運用を行っていただきたいというふうに思います。
 同時にまた、個体識別番号の伝達を行っていくためには、耳標代を初め流通業者の計量器やラベルプリンターなどの新しい機械器具類の導入が必要になると考えられます。こういったものを吸収する度合いというのは、事業者によって、企業の状況によって違うわけであります。しかし、企業にとってはかなり負担になりますので、これらについてどのような方針で対処するお考えなのか、お伺いしておきたいと思います。
須賀田政府参考人 私ども、基本的には、この仕組みが導入をされますと、消費者の信頼が一層上がるということで売り上げ増になるということで、経営内で増加したコストを吸収していただくということが一番望ましい形であるわけでございます。
 そういう努力を助長するということで、小売店で店頭表示パネルボード、簡易な、二、三万円で済むようなボードを推進するというようなことを含めまして、事業者のコスト負担の軽減という取り組みを助長したいと考えております。
 特に、ちゃんとしたラベラー、五百万だとか八十万だとかするものにつきましては、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、リース事業でございますとか政府系金融機関の低利融資でございますとか、いろいろな予算を用意して支援していきたいというふうに考えております。
岩倉委員 先ほど来から話が出ておりますけれども、国産牛肉の約六割が本法に基づくトレーサビリティーシステムの対象となり、その安全性に対する信頼が確保されることが期待されるということであります。
 ここもかなり大切なポイントになろうかと思いますが、我が国の制度はここまでやっているんだということを消費者にPRして、輸入牛肉との差別化を図っていくべきだ。このパブリックリレーションズは、いろいろなところで見ていますと、やはりそんなに上手にはやっていないんじゃないか、これは農林水産だけではないんですが、というふうに思うんですね。
 ここは今までの流れの延長で考えるのではなくて、パブリックリレーションズのあり方を、ぜひ、この法案の消費者に対する認知、あるいはPRに対してやはり積極的に考えて行う必要があるのではないかと思いますが、このことについてお考えがあれば、お伺いをしておきたいと思います。
亀井国務大臣 大変御指摘のとおりでありまして、比較的、いろいろの制度をつくりましても、国民の皆さん方の御理解を得ることができない。消費者や関連業者に御理解いただくために、説明会やパンフレット、ポスターの配布等をいたすわけであります。わかりやすいようなポスターやパンフレット等々をつくる努力をすることが必要、このように考えます。
 これら法律の施行に合わせて、あるいはまた積極的に、この面に十分わかりやすい、そして消費者に御理解いただくような、消費者の立場でというような観点でパンフレット等々の作成、そして積極的なPRを行ってまいりたい、こう思います。
岩倉委員 ぜひ、大事なポイントだと思いますので、知恵を出してパブリックリレーションズに努めていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 次に、WTO交渉が今非常に厳しい状況で推移をいたしておりますけれども、アメリカなどから非常に厳しい条件が提示をされています。
 我が国の肉用牛、牛肉については、トレーサビリティーが確立するこの機をとらえて、肉用牛生産の構造改革を図り、経営の合理化に努め、低コスト生産を推進することによって海外との競争に勝たなければならないということが当面の大きな課題の一つになると思いますけれども、このことについてどのような方針をお持ちなのか、お伺いをしておきたいと思います。
亀井国務大臣 国産牛肉の安全性に対する信頼確保が、このトレーサビリティーシステムの導入に基づきまして可能になるわけでありまして、国産牛肉への消費の回復につながる、このように考えております。
 そのような中で、国産牛肉に係る正確かつ適切な情報提供とともに、消費者に受け入れられる価格で供給し、消費者に国産牛肉を選択してもらうということが必要なわけでありまして、そのために、経営実態に即し、肉用牛の生産の構造改革、低コストな建物や農機具を必要最小限整備するなど、新規投資額を可能な限りひとつ抑えていただき規模拡大を図っていただく。特に、繁殖経営については、放牧の積極的な推進や分娩間隔の短縮、あるいは、肥育経営については、増体量の向上、飼料給与方法の改善、個体能力の的確な把握及び肥育期間の適正化など、コスト低減のための対策を実施してまいりたい、こう思っております。
岩倉委員 ありがとうございました。
 次に、もう一つは、我が国でBSEが発生して、その後のさまざまなプロセスで今日あるわけでありますけれども、もう一つ大事なことは、やはりEUにおけるBSEの状況等も常にしっかりと情報を収集し、把握しておくということが大切なのではないかというふうに思います。
 そこで、EUにおけるBSE対策の現状について、三点ほどお伺いをしておきたいと思います。
 BSEは、イギリスで確認された以降、ヨーロッパを中心に発生しているわけですが、これら発生状況について、現在も増加しているのか、終息傾向なのか。昨年ぐらいまでは結構いろいろな情報があったんですが、特にことしに入ってからの状況についてお伺いをしておきたいと思います。
 二番目に、現状のBSE対策がきちんと機能しているかを確認するためには、BSEの浸潤状況の把握が大切だと考えます。そこで、BSE対策として、日本においても二十四カ月齢以上の死亡牛の検査が四月から開始されましたが、EU諸国における死亡牛の検査の状況についてお伺いをしておきたいと思います。
 三点目に、BSEの感染源を遮断するためには、肉骨粉等の飼料としての利用の規制が重要というふうに言われておりますけれども、EUにおける肉骨粉等の飼料利用にかかわる規制の状況についてお伺いをしておきたいと思います。
須賀田政府参考人 EUにおきましては、これまで、二十二カ国、十八万頭以上がBSEに感染ということになっているわけでございます。そのほとんどが英国でございますけれども、英国におきましては、一九九二年に三万七千頭余の発生を見たことをピークにいたしまして、だんだん減少傾向にございまして、昨年は八百頭ということでございました。その他の国におきましては、少ないところで一頭、多いところで二、三百頭といった発生でございまして、おおむね横ばい傾向でございます。
 次に、浸潤状況の把握ということで、死亡牛の検査がどうなっているかということでございます。かつては三十カ月齢以上の死亡牛ということでございましたけれども、二〇〇一年の七月から、二十四カ月齢以上のすべての死亡牛のBSE検査へ検査対象の範囲を変更いたしまして、二十四カ月齢以上の死亡牛はすべて検査をしているという状況でございます。
 それから、肉骨粉の利用状況でございます。EUにおきます肉骨粉の飼料利用の規制については徹底をしておりまして、反すう動物以外を含めた動物を原料とする肉骨粉等について、すべての家畜への給与を禁止している、こういう状況にございます。
岩倉委員 牛肉については、先ほどもちょっと出ておった件でありますけれども、平成三年四月の牛肉の輸入自由化以来、輸入は増大して、それまで五割以上あった牛肉の自給率も、平成十二年には三四%まで減少をしているわけであります。こうした中で、平成十三年九月にBSEが確認されて、これに伴う国内消費の減退から輸入量も減少したわけでありますけれども、最近では再び輸入が増加傾向に転じているということであります。
 そこで、今や我が国の牛肉供給の七割近くを占めている輸入牛肉の取り扱いを中心にお伺いしたいと思うんです。
 きょうもこれが一番大きく出ていた問題なんですが、少し視点を変えて、この法律は国産牛肉を対象とした措置なわけでありますけれども、一部に、きょうも出ておりますけれども、輸入牛肉についても個体識別情報の伝達を求めるべきではないかという意見がこれからも出てくるだろうというふうに思います。
 そこで、世界で最初にBSEが確認をされて牛肉消費の激減といった深刻な社会的混乱を経験したEUにおいては、域内の牛肉に対して個体識別番号等の表示を義務づけておりますけれども、EUにおける域外牛肉についてはどのように扱っているのか、お伺いをしておきたいと思います。
須賀田政府参考人 EUにおきましては、二〇〇〇年に制定されました規則に基づきまして、域内の牛肉については個体識別番号等の表示を義務づけておりますが、域外から輸入される牛肉につきましては、原産地はEUでない、ノンEUという表示で足りるというふうにしているところでございます。
岩倉委員 ありがとうございました。
 私の持ち時間がなくなってきましたので、今の点に関して、輸出国に対する個体識別を求めるべきだという意見に対して、厚生労働省はどういう見解をお持ちか、お伺いしておきたいと思います。
遠藤政府参考人 輸入牛肉につきましては、BSE発生国からの輸入を禁止しているところであり、BSE非発生国であっても、我が国と同等以上の衛生規制を有している国からの輸入のみを認めていること、貨物ごとに輸出国の政府機関が発行する衛生証明書の添付を義務づけていること、輸入時において、抗生物質等の残留物質や腸管出血性大腸菌O157等の病原微生物についてモニタリング検査を実施していることなどにより安全性確保を図っているところでございまして、輸出国に対する牛肉の個体識別を求める必要はないと考えております。
岩倉委員 ありがとうございました。
 トレーサビリティー法案については、まだ幾つかあったんですが、時間の関係もありまして、HACCPについて、せっかく厚労省の政府委員も来ていただいておりますので、一つだけお伺いしておきたいというふうに思います。
 HACCP手法支援法のもとで高度化を実現した事業者が、一様に総合衛生管理製造過程の承認を受けられるように、総合衛生管理製造過程承認制度の対象品目を拡大するということについて、厚労省の見解をお伺いしておきたいと思います。
遠藤政府参考人 HACCP承認制度の対象品目を拡大することについてでございますけれども、今後、食品衛生法において、製造、加工の基準をどのように設定していくのか、これが前提になっているということから、その状況、それからまた諸外国における導入状況、食品群ごとのリスク、業界におけるHACCPに対する取り組み状況などを勘案しつつ、審議会の議論も伺いながら、対象食品の拡大について検討していきたいと思っております。
岩倉委員 ありがとうございました。
 HACCPに関する件もトレーサビリティー法案と一緒なんですが、これは大分認知度は進んだというふうには思いますけれども、実際の中身について、やはりどれだけ消費者の方が認識をしているかということについては、まだまだ足りないのではないかというふうに思いますので、トレーサビリティー法案同様に、パブリックリレーションズについてやはりしっかり取り組んでいくことが大切だというふうに思いますので、ぜひこのことについてお願いをしておきたいと思います。
 最後になりますけれども、きょうの議題の法案とはちょっと外れますけれども、新たに設置される北海道農政事務所、その承認の件というのが、きょうの冒頭、大臣から趣旨説明がありましたけれども、この北海道農政事務所は、食品安全対策を強化する上でどのような役割、あるいはどのような業務を担うことになるのか、できるだけ詳細に御説明いただきたいと思います。
北村副大臣 岩倉先生から、北海道のと、こういうことでございますので。
 具体的には、都府県に設置される地方農政事務所と同じでございます。それは三つございまして、一つは、農薬などの生産資材の販売、使用などに関する調査、指導をする。二つ目は、食品表示の監視、指導をする。三つ目は、今議題となっております牛のトレーサビリティーの管理、伝達に関する指導などのリスク管理業務を実施していく。こういうことでございます。
岩倉委員 ありがとうございました。
 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
小平委員長 次に、金子恭之君。
金子(恭)委員 自由民主党の金子恭之でございます。
 同僚の岩倉委員に引き続きまして、議題となっております食の安全関連法案につきまして質問させていただきたいと思います。
 国民の食生活を取り巻く環境というのが非常に多様化している中で、一昨年のBSEの発生以来、食品の不正表示の問題、また外国産の残留農薬の問題、そして無登録農薬の問題等々、いろいろな、農業また消費者を取り巻く大きな問題が発生しております。そういう中で、食品の安全性の確保に対する国民の不安また関心というのも非常に高くなっているわけでございます。
 そういう中で、先日衆議院を通過いたしました食品安全基本法案がございました。参議院の方でも今審議中で、やがて成立するということでございますが、食品の安全行政の強化、確立というのがこれから重要になってくると思います。
 私も地元に帰りまして、生産者の方々といろいろなお話をする中で、やはり不安というものは大きいわけでありますが、私は逆に生産者の方々に、今が実はチャンスなんだと、農業にとっては今が、こういう苦しいときこそこれを反転して攻勢に持っていかなければいけないということを言っております。
 それは、これまで消費者の中には、安いものがいい、安ければいいというような傾向もあったというふうに思っております。そういう中で、おととしもありましたが、セーフガードの暫定発動等々もありまして、やはり外国産の安い農産物にどうやって対抗していくか、そういうことが非常に大きな問題だったわけでありますが、今回のそういう大きな食品の安全の問題が脚光を浴びたということにおきまして、日本の農家にとっては、少し高くても安全で安心でおいしくて新鮮なものをつくるということで外国の農産物に対抗していく、そういう、日本の農業が生き残っていく方向性が示されたのではなかろうかなと思っている次第でございます。
 食品安全行政の見直しというのが、今回の食品安全基本法を皮切りに、今回の関連法案の成立を見て、これで一つの大きな形ができていくのではなかろうかなと思っております。そういう意味では、この食品安全行政システムが効率的に機能するように、国としても力を入れていただきたいと思う次第でございます。
 そういう中で、食品安全行政の改革ということで、食品安全基本法案に基づきまして食品安全委員会の設置がなされたわけでありますが、その設置のみによってこの食品安全行政という改革がなし遂げられるわけではなくて、ある意味では、リスク管理を行う関係各省における取り組みというのが重要になってくるのではなかろうかなと思っております。そういう意味で、農林水産省がいかに、この食品安全基本法に基づきまして、食品安全委員会と役割分担を果たして機能していくかということが大きな問題ではなかろうかなと思っております。
 そういう意味で、新たに設置される食品安全委員会と農林水産省はどのような役割分担で連携していくのか、大臣にお答えをしていただきたいと思います。
亀井国務大臣 お答えいたします。
 新たな食品安全行政では、内閣府に設置される食品安全委員会が科学的なリスク評価を客観的かつ中立公正に行う一方、このリスク評価の結果を踏まえ、リスク管理を担う農林水産省では、厚生労働省と連携して、農林水産物の生産から食品の販売に至る一連の行程において、施策を総合的に講じていくこととしております。
 このため、農林水産省では、例えば農薬の規格基準を設定するなどの際には、食品安全委員会に諮問を行い、委員会が行うリスク評価の結果に基づき規格基準などを設定するとともに、重大時における危機管理やリスクコミュニケーションには、委員会を中心に政府一体となって取り組むこととしております。
 また、食品安全基本法では、このような食品安全委員会と関係行政機関との密接な連携方策など、食品安全行政の実施に関する基本的事項を定め、これを公表することとしております。
 このように、一定の役割分担のもと、農林水産省としては、食品安全委員会及び厚生労働省と密接な連携を図り、食品安全行政の一体的な推進に邁進してまいりたい、こう考えております。
金子(恭)委員 ありがとうございました。
 今後の食品安全行政において、農林水産省は農林水産物の生産段階を中心として食品のリスク管理の業務を担うわけでございますが、今回の法案の中で農林水産省の組織再編があるわけでございますが、その組織再編によりまして、食の安全、安心対策はどのように強化されるのか、お答えください。
亀井国務大臣 リスク管理を担う農林水産省といたしましては、産業振興部門から分離独立して消費者行政とリスク管理業務を一体的に行う消費・安全局を創設するとともに、リスクコミュニケーションを推進することで、相互の牽制や緊張関係を持ちつつ、食品安全行政における透明性の確保を図っていくわけであります。
 また、地方農政局や地方農政事務所においても、リスク管理業務を担う消費・安全部を設け、農薬の販売等に対する立入検査や食品表示の監視、指導を行うなど、消費者保護のための監視指導体制を強化することとしております。
 無登録農薬等の回収命令の創設等、緊急時の対応措置を拡充するための関係個別法の改正、農薬の登録等の際に厚生労働省の意見聴取を行い、連携を強化するための関係個別法の改正など、リスク管理のための組織や施策を総合的に見直すこととしております。
 これによりまして、国民の健康の保護を第一に、食品安全行政の的確な推進を図り、食に対する消費者の不安を払拭してまいりたい、こう考えております。
金子(恭)委員 ありがとうございました。大臣のリーダーシップによりまして、万全の態勢で臨んでいただきたいと思います。
 今、地方を歩いておりますと、農協の女性部が直接運営をしておるふれあい市場等々が非常ににぎわいを見せております。やはりこれは、生産者の顔が見える農産物ということで、みんなが安心をして買っていただいているからではなかろうかなと思っております。そういう意味で、これから、顔の見える、そういうトレーサビリティーシステムというのをどんどん導入していかなければいけないのかなと思っております。
 そこで、農林水産省におきましては、食品の生産、流通経路をきちんと把握できるように、いわゆるトレーサビリティーシステムの推進を図るということになっておるわけでありますが、ここで改めて、食品全般にわたりまして、トレーサビリティーシステムの導入のためどのように取り組んでおられるのか、お伺いいたします。
亀井国務大臣 トレーサビリティーシステムは、消費者がみずから食品の生産方法等に関する情報を引き出すことにより、安心して食品を購入していただくとともに、万一食品事故が発生した場合にも、その原因の究明を容易にすることができる仕組みであり、食品の安全、安心を確保する上で極めて有効なものと考えております。
 この食品の履歴をさかのぼることができるトレーサビリティーシステムの導入については、まず牛肉について、個体識別番号によって、我が国で飼養されるすべての牛、約四百五十万頭の個体情報を記録、管理する、そして個体情報が正確に伝達されるための制度を構築するわけであります。
 また、米や野菜などの牛肉以外のものについては、食品の種類ごとにその食品の特性や流通の実態が異なることから、トレーサビリティーシステムの開発を進め、ITを活用したモデル的な取り組みの支援、情報関連機器の整備等に対する助成を行うなど、生産者や食品事業者の自主的な取り組みが行われるようなことができれば、こう考えております。
 任意の制度として、農畜水産物の生産方法など食品の生産過程に関する情報を正確に伝えていることを第三者に認証してもらうJAS規格制度の導入も検討しているところであります。
 いずれにしても、トレーサビリティーシステムは、食卓と農場を結び、顔の見える関係の構築につながる、生産者と消費者の信頼関係の醸成に重要な役割を果たす、このように考えておりますし、この支援をしてまいりたい、こう思っております。
金子(恭)委員 ありがとうございました。
 先ほど来、牛肉のトレーサビリティー法案につきましては議論があったわけでありますが、局長の方から先ほど来答弁があったと思っております。
 そこで、重要なところでございますので、このトレーサビリティー法案の提出の趣旨、特に牛肉についてのみ法的に義務づける理由について、大臣の方からお答えをいただければと思います。
亀井国務大臣 BSEについて、他の家畜伝染病と比べて潜伏期間が極めて長い、あるいは、患畜発生時において、同居牛や疑似患畜の特定には、その所在や移動履歴等の記録を過去にさかのぼって確認する必要があるわけであります。このため、蔓延防止措置の的確な実施を図るために、牛一頭ごとに所在等の情報を一元管理し、患畜発生時に迅速に検索できるシステムを構築する必要があるわけであります。
 牛肉に対する消費者の信頼を特に強く確保する、こういう視点で、牛肉についてBSEの発生により大きく減退した消費がいまだ発生前の水準にまで回復しておらないわけでありまして、最近でも全頭検査でも不安というような消費者が多数おられるわけでありまして、ぜひこの信頼を回復してまいりたい、こう思っておるわけであります。
 また、BSEの発生により大きな社会的混乱を経験したEUでは、BSEの発生を契機に、牛肉流通の透明性の確保により、牛肉に対する消費者の信頼を確保するため、二〇〇〇年九月一日以降屠畜された牛肉については個体識別番号の表示が義務化されております。
 このようなことから、本法律案は、牛及び牛肉を対象とし、牛の個体情報を個体識別番号により一元管理するとともに、屠畜以降の牛肉について、流通、消費の各段階で個体識別番号等の表示を義務づけることによって、牛肉の個体情報を確認できる仕組みを構築するものであります。
金子(恭)委員 今の趣旨に基づいて、きちんと行政でもフォローしていただきたいと思っております。
 大臣の時間等もございますので、トレーサビリティー法はこれで終わりまして、HACCP法案の方に対して質問をさせていただきます。
 近年の食品事故やBSEの発生によって、食品の安全性や品質の確保についての消費者等の関心は非常に高くなっておりますけれども、そうした中で、HACCP手法支援法が平成十年に制定され、今日まで五年が経過しております。そこで、まずは、この五年間において、この法律に基づき、どれだけの施設に対してHACCP手法についての高度化計画が認定されたのでしょうか、またその実績をどのように評価されているのでしょうか、お伺いいたします。
亀井国務大臣 これまで十八の業種においてHACCP手法の導入のための取り組みが行われております。個別の高度化計画の認定件数も百四十七件、これは平成十五年三月末現在でございますけれども、百四十七件であります。
 このような取り組みによりまして、HACCP手法に基づく高度な製造過程の管理の考え方が着実に広まってきているところであります。一連の食中毒事故やBSEの発生等を通じて、食品の安全性の確保や品質管理の徹底に対する要請が一層強まっているとともに、近年の経済状況のもとで設備投資の面での難しさもあることから、本法の適用期限を五年間延長することとしたものであります。
金子(恭)委員 これからさらにHACCP手法の導入を促進していくとのことでございますが、HACCP手法というものは、食品製造行程の原料受け入れから製造、出荷までの全行程において、危害防止につながるポイントをリアルタイムで監視、記録するシステムであり、食品の安全性を確保する上では最もすぐれた手法の一つと承知しておりますけれども、そうであるならば、本法案の支援対象に食品の製造段階だけではなく農業の生産現場や流通段階をも含めることによって、食品の安全性の一層の向上を図ることが望ましいのではないかと思います。
 本法案の支援対象に食品製造業者以外の事業者をも含めることについてどのように考えておられるのか、見解をお伺いいたします。
西藤政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、HACCP手法支援法におきましては、食品の衛生管理システムを確立していくということでございますが、危害分析ということで、微生物による汚染や異物の混入、過去にもいろいろな事故がございましたが、そういう異物の混入を防止する上で、清浄区域と非清浄区域を区分して管理するということが我々非常に重要だというふうに考えております。
 こういう点で、先生御指摘のように、一次産業の分野あるいは流通の分野という観点で見ますと、清浄区域と非清浄区域という形で場所を囲って対応するということがなかなか、生産現場、流通現場では現状では非常に対応しにくいという状況がございます。そういうことから見て、加工段階と全く同様にこのHACCP手法を導入していくということは、なかなか現状では困難な面がある。
 ただ、生産段階あるいは流通段階とはいえ、品質管理の高度化を図っていくという考え方はやはり必要なものじゃないかというふうに思っております。そういう点で、HACCP手法の考え方をできる限り生産現場でも、物によって状況は違いますけれども、そういう考え方を取り入れるとすればどういうことがあるんだろうか、どういうやり方があるんだろうか、そのようなことをマニュアルを策定し、そのマニュアル策定を支援することによって、トータルとしてのそういう品質管理の高度化ということに資したいということで、私ども、そういうマニュアル策定について、必要に応じ今までも支援してきているという状況にございます。
金子(恭)委員 今、局長の方から答弁がございましたが、これからも御支援方よろしくお願い申し上げます。
 次に、HACCP手法の導入というのは、衛生、品質管理の向上を初めとするさまざまな効果が生まれるものであります。国民の食に対する信頼を回復するためには、HACCP手法を推進することが重要であります。この法案を五年間延長することにより、どの程度の実績を伸ばすことが可能であると想定されているのか、お答えください。
西藤政府参考人 お答え申し上げます。
 過去五年間で、先ほど大臣からの御答弁にもありましたように、十八業種で百四十七件の高度化計画の認定が行われております。
 今回、制度を延長させていただきまして、定量的にどの程度というのはなかなか見通しがたいのが正直なところでございますが、私ども、関係団体、具体的には食品産業センターが関係企業のアンケート調査を行っております。三百余の企業を対象に意向を把握しておりますけれども、HACCP手法を導入していない企業二百弱のうち約六割が、すぐに、あるいは三年以内に導入したい、さらに五年以内にということを合わせると、全体の八割が希望している状況にございます。
 また、冒頭申し上げましたように、現在十八業種ということで、指定認定機関も十八団体なわけでございますが、現在、新しい体制のもとで指定認定機関になることを希望しておりますのが、漬物とパンの業界でそういう動きがあると我々了知しております。五年間延長することによりまして、範囲を拡大して、さらに実績を伸ばすことができるのではないかというふうに考えております。
金子(恭)委員 ありがとうございました。
 今、私が地元の生産者の方とお話ししていく中で、やはり一番大きな問題の一つに農薬の問題があると思います。
 昨年、農薬取締法が改正をされ、三月の十日から施行されたわけでありますが、トマトには使えてメロンには使えないとか、そういう、非常に現場では混乱をしたわけであります。聞くところによりますと、日本で生産されている農産物は三百種類ある、その中で厳密に登録されているものだけを使うと、半分の農産物には使う農薬がないというふうに聞いております。
 そういう中で、経過措置として、グループ化、農産物の分類化をして、その中でその分類に入るものに使えるものはほかのものにも使えるということで、一定の期間にわたって経過措置を与えていただいたわけであります。この一定期間というのが一年なのか二年なのかというのは定かではないようでありますが、そういう中で、この一定期間が終われば登録をされていない農薬というのは使えなくなるわけでありまして、この一定期間の中でいかに未登録の農薬を登録していくかということが今一番重要なことではなかろうかなと思っております。
 そういう中で、生産量の多い農産物については、使える農薬というのはメーカーとしても開発をしていくわけであります、お金と時間がかかるわけでありますが。心配するのは、マイナー作物と言われる、余り量の出ない地域特産物に対する登録農薬が本当にその一定期間でできるかということを心配しているわけでございます。そういう中で、農家としては、誤った農薬の使用を行って産地としてのイメージを失うことを最も恐れているわけでございます。
 そういう状況の中で、農林水産省としまして、安全性の確保とマイナー作物の生産の問題についてどのような対策を講じていらっしゃるのか、お答えをお願いいたします。
須賀田政府参考人 たしか、マイナー作物に使用できる農薬が少ないという要望を受けまして、私ども、先生おっしゃいましたように、一定の経過措置ということで二年間ぐらいを設けまして、前提としては、出荷前に残留農薬分析をしてくださいよという安全確保措置をとってくれということを前提にいたしまして、知事の方から農薬と作物の組み合わせについて申請を行ってもらいまして、農林水産大臣が暫定的に承認をする、大体グループ化した範囲内で承認をするということでございます。
 この二年の経過措置の間に必要なデータをとっていただきまして、登録をしていただきたいと思っているわけでございます。現時点で約五千六百件全国で出て、承認をしているところでございます。
金子(恭)委員 続きまして、特定農薬についてお聞きしたいと思います。
 特定農薬につきましては、募集をしましたら七百種類の候補が出たそうでありますが、その中で認められたものは三種類であったということでありまして、もうほとんどのものが今回保留をされたということでございます。
 そういう中で、生産者の中では、木酢液というのがございますが、木酢液は農薬を薄めるものに使いまして、それをこれまでも頻繁に使っていたということであります。今回の「特定農薬制度の今後の運用について」ということで、「農薬とすることが保留されたものは、薬効を謳って販売されるものは、従来どおり取り締まりの対象とするが、使用者が農薬的に使えると信じて使う場合はこの限りではない。」ということが言われているわけであります。
 ということで、今皆さん方は農薬として売っていない木酢液を買ってきて、それを農薬を薄めて使っているというのが現状なんですね。しかし、できれば早くこれを特定農薬に認めていただければ、安心して使えるわけでございます。
 そういうこともございまして、これから今後、今保留されている資材をどのように取り扱っていただくのか、早く検査をしていただいて、早く登録をしていただきたいというのが私からのお願いでありますが、そのことについてお答えをお願いいたします。
須賀田政府参考人 原材料から見て人畜に安全であるということで登録等を要しない農薬として、特定農薬というものを位置づけたわけでございます。
 先生おっしゃるように、重曹、食酢、天敵と三種類が認められております。おもしろおかしく取り上げられたものとして、アイガモだとかアヒルだとかそういうものがありますけれども、これはもう明らかに農薬でないというふうに位置づけられました。
 あと、現在、農薬効果が不明といったものの中に、米ぬかとかビールとかコーラだとかそういうものと並びまして、木酢液がございます。これはまちまちなつくり方をそれまでしておられましたので、林野庁関係の団体でちゃんとした規格基準みたいなものを定めていただきまして、ちゃんとしたつくり方をするようにということで審議会にお諮りをしたところ、農薬効果が不明だという評価をいただきました。そういうものが幾つかございます。これを農薬の効能をうたって販売すると、それは無登録農薬になりますので農薬取締法上の禁止規定にひっかかるわけでございますけれども、みずから防除に効果があると信じて使われる段には特に支障はないわけでございます。
 できるだけ効果と安全性に係る評価の手続を今専門家で進めていただいておりまして、四月十六日に第一回目の検討、五月にも引き続き検討を行う予定でございまして、評価可能なデータを得られたものから順次指定をしていきたいというふうに思っております。
金子(恭)委員 時間も参りましたので、最後の質問にさせていただきます。
 残留農薬の問題で、農薬取締法を改正され、農家の中では誤解された部分が多少ありまして、実は、残留農薬の検査を生産者がしなければいけないのじゃないかということを考えていらっしゃる方がいらっしゃって、農薬取締法が改正されたとしても価格面に実は生産者としては反映をされることがない、ある意味では経営規模の小さい零細な農家にとってはこれからも負担がどんどんふえるんじゃないか、そういうことを考えていらっしゃる方もいるわけであります。
 私の認識としては、生産者がみずから残留農薬を検査するということはないというふうに聞いておりますし、今言われているのが、各地域で農協とかいろいろな団体が自主的に残留農薬を検査して出荷するということが行われるということを聞いているわけでございますが、実際、残留農薬の自主的な検査をやって農家に負担がかかることが本当にあるのかないのか。それから、各地域で積極的に残留農薬検査をやっていらっしゃる団体等に対する補助とか負担金の軽減とか、そういったものがあるのかどうか。そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。
小平委員長 きょうはHACCPとトレーサビリティーだから、簡潔に答えてください。
須賀田政府参考人 出荷前の農作物について自主的に残留農薬分析を行うということは、非常に重要な取り組みでございます。
 個々の農家がやるということはちょっと考えられませんけれども、農協なり先進的な農家の団体なりが取り組むという事例を承知しておりまして、現在このような自主的な取り組みに対する支援ということで、十四年度の補正予算、十五年度予算におきまして、都道府県と農協に対して機器の整備への助成というのを行っております。
金子(恭)委員 ありがとうございました。これからもその取り組みはよろしくお願いいたします。
 終わります。ありがとうございました。
小平委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
 次回は、来る十三日火曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十二分散会

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