衆議院

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第12号 平成15年5月22日(木曜日)

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平成十五年五月二十二日(木曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      青山  丘君    荒巻 隆三君
      石田 真敏君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      熊谷 市雄君    小泉 龍司君
      近藤 基彦君    七条  明君
      高木  毅君    西川 京子君
      宮本 一三君    後藤  斎君
      齋藤  淳君    津川 祥吾君
      伴野  豊君    堀込 征雄君
      吉田 公一君    江田 康幸君
      藤井 裕久君    中林よし子君
      松本 善明君    菅野 哲雄君
      山口わか子君    佐藤 敬夫君
      藤波 孝生君
    …………………………………
   農林水産大臣       亀井 善之君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   国土交通大臣政務官    高木 陽介君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 渥美 千尋君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         遠藤  明君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   政府参考人
   (国土交通省河川局長)  鈴木藤一郎君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十二日
 辞任         補欠選任
  今田 保典君     伴野  豊君
同日
 辞任         補欠選任
  伴野  豊君     今田 保典君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君、生産局長須賀田菊仁君、経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君、食糧庁長官石原葵君、外務省大臣官房審議官渥美千尋君、厚生労働省医薬局食品保健部長遠藤明君及び国土交通省河川局長鈴木藤一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。齋藤淳君。
齋藤(淳)委員 民主党の齋藤淳です。
 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案について質問いたしますが、本題に入ります前に、中国産輸入ホウレンソウの残留農薬検出の問題について確認させていただきたいと思います。
 新聞報道等によれば、先月の二十八日、二十九日に陸揚げされた中国産の冷凍ホウレンソウから、食品衛生法上で定められた残留基準を超える農薬クロルピリホスが相次いで検出されたとのことです。厚生労働省は、今月の二十日、国内の輸入業者に対して同冷凍ホウレンソウの輸入自粛を指導したとのことであります。三カ月ほど前になりますけれども、中国がホウレンソウ生産の安全対策を強化したということを受けて、政府が昨年七月十日から行ってきた輸入制限を二月二十六日に解除したとのことであります。
 結果論ではありますけれども、二月二十六日に中国産冷凍ホウレンソウ輸入自粛解除をしたということは、これは早計だったのではないか。今までどういった検討と判断がなされたのか、確認願いたいと思います。
遠藤政府参考人 中国産冷凍ホウレンソウ問題につきましては、その対策につきまして中国政府との協議を昨年七月二十二日の局長級協議により開始し、以後断続的に協議を行ってきたところでございます。
 協議の中で、中国側より、日本に輸出される冷凍ホウレンソウについての新たな残留農薬対策案が提出をされ、中国側としては、既に、日本向けホウレンソウについてクロルピリホスの使用を禁止する、生産企業に対し残留農薬検査室の設置、加工前検査の奨励等の農薬管理の強化を指導する、地方検験局に登録された生産企業または圃場で生産されたもののみ輸出可能とするといった対策を講じており、今後収穫されるホウレンソウについては、中国政府の検査に合格したもののみ輸出を認めることとしたいとの提案がございました。
 日本側としては、実地検分を行った上で、これらの対策が的確に実施された場合には再発が防止されるものと判断したことから、去る二月二十六日に、中国側の対策にのっとり輸入される冷凍ホウレンソウについて、昨年七月より行ってまいりました輸入業者に対する輸入自粛要請を解除したところでございます。
 今般、検出値は低いながらも、連続して二件の違反が見られたことは、中国側の衛生管理になお改善の必要な点が残されているという認識のもとに、再度輸入業者に対して輸入自粛を求めた上で、中国側に対し原因究明とその改善を要請しているところでございます。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 昨年七月の輸入自粛措置ということはあくまでも行政指導であったわけですけれども、これは法に基づくより厳格な規制を行うべきではなかったか、改めて政府の見解を求めたいと思います。中国側の反発を懸念する余り、弱腰の対応に陥ってしまったことはなかったのか。
 あともう一点。四月二十八日、二十九日に陸揚げされたホウレンソウと同じロットに入っていたホウレンソウが市場に流通した事実というのはございませんね。
遠藤政府参考人 食品衛生法第四条の三に輸入禁止措置が規定をされているわけでございますけれども、この発動に当たりましては、違反率、人の健康を損なうおそれの程度、現地の食品衛生上の管理の状況などを発動の要件といたしております。
 中国産冷凍ホウレンソウにつきましては、残留農薬の検出値が低いこと、そのために直ちに人の健康を損なうおそれはないということ、また、現時点で直ちに中国側の対策全般に問題があるというふうな判断ができないところから、この輸入禁止措置について直ちに発動するということは考えてはおりません。今後、中国側における原因究明及び改善、防止措置について報告を受け、二国間協議を行うこととしており、協議内容も踏まえ、この規定の発動の要否について検討するということになろうと思っております。
 それから、この二つのロットでございますけれども、いずれも命令検査対象になっておりまして、その命令検査が行われている間は国内に入らないというふうな措置をされておりまして、市場に出回るというふうなことはございません。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 やはり、農業の生産現場では、農薬取締法への対応でかなりきつい努力をしているわけであります。こうした中で、危険な農薬が残留基準を超えて残っているそういった野菜が中国からどんどん入ってくる、こうした現状にやはり農家の皆さんというのは非常に強い憤りを感じております。食品安全基本法でも、海外からの危険因子の流入に対して十分な配慮をするという修正条項が盛り込まれております。日本の食卓の安心とともに、日本の農業を守るために、今後も断固たる、そして適切な処置を求めたいと思います。
 次に、本題に入ります。
 新食糧法の改革の実行に当たっての注意点について、まず大臣にお尋ねしたいと思います。
 大臣はお米屋さんの御出身ということで、私も因縁浅からぬものを感じます。私は実は米農家の出身でして、私の父も、年老いたとはいえ、認定農業者として、先日も庄内平野に広がる十数町歩の田んぼの田植えを終えたばかりであります。
 今回の米政策大綱を説明したパンフレットというのは、全国で二百万部配布されたということでありますけれども、私の集落の隅々にも配布されていたことを私も確認しています。そのパンフレットでも、改革実行の留意点として、わかりやすさ、効率性、透明性、この三点を挙げているわけであります。
 そこで、大臣に伺いたいのでありますけれども、こういった注意点に実効性を持たせるために具体的にどのような取り組みをこれからしていくおつもりでしょうか。
亀井国務大臣 お答えをいたします。
 委員今御指摘をいただきましたとおり、注意点、わかりやすさ、効率性、透明性、このように申し上げておるわけでありまして、メッセージが明瞭でわかりやすい政策、あるいは効率的でむだのない政策、決定と運用のすべてのプロセスについて透明性が確保された政策、こういう理念を持っておるわけであります。
 まず、メッセージが明確でわかりやすい政策。政策手段と目標を明確化し、わかりやすくする観点に立って、地域みずからの発想と戦略と地域の合意に基づき実施する取り組みを支援する産地づくり対策、生産調整のメリット対策として米価下落の影響を緩和する米価下落影響緩和対策、担い手の稲作収入の安定を図る担い手経営安定対策をそれぞれ講ずることといたしております。
 また、効率的でむだのない政策といたしましては、生産過剰分を主食用として高い価格で集荷し、最も価格の安い飼料米として処理するというむだをなくすために、豊作による過剰米が主食用と区別して出荷されるような仕組みをつくること。生産調整面積を達成しても、残る水田で増産され、生産調整の効果が減殺されるということをなくすため、生産数量を調整する方式に転換することとしております。
 さらには、決定と運用のすべてのプロセスについて透明性が確保される政策といたしましては、生産調整の配分に当たって、前年の需要量をもとに生産目標数量を策定するとともに、公正中立な第三者機関的な組織の助言を得て決定する。米政策の改革の目標を明確化するとともに、毎年の改革の実行過程をチェックする。
 このようなことをいたしまして、御指摘の注意点、これを全うしてまいりたい、このように考えております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 そこで、生産調整を具体的に配分する中での役割分担について、具体的に伺いたいと思います。
 今回の法改正の基本方針、基本メッセージでは、国が生産調整から基本的には手を引いていくということであります。そこで、生産調整に当たるのは、特に農協を初めとする生産出荷団体等ということになるのだと思いますけれども、この法案の中では、この生産出荷団体等が具体的にどのような役割を演ずることを想定されているのか、確認の意味で御説明願いたいと思います。
石原政府参考人 お答え申し上げます。
 生産出荷団体がどのような役割を果たすのかという点でございますけれども、生産出荷団体等がつくります生産調整方針、これは、現在各地域で取りまとめをお願いしております地域水田農業ビジョン、これで明らかにされました生産それから販売戦略に即しまして、米の生産目標数量の設定の方針や、米以外の作物等の生産の指針を示すものでありまして、このビジョンで示された地域水田農業の将来方向も踏まえつつ、このビジョンと生産調整方針、これを一体的に策定するということが重要であろうと考えております。
 このような中で、生産出荷団体は、一体的に策定するということにつきまして基本的な役割を演じていただくということでございますけれども、一体的な策定を行った上で、そのビジョンに沿った特色のある水田農業を展開するという観点から、米につきましては、販売戦略の構築とそれに対応した米づくりを推進する。そしてまた、米以外のものになりますと、売れる地域作物の産地づくり、こういうものにつきまして、積極的に出荷団体等が参画していただくということが必要でございまして、そういう役割を演じていただくことを期待しているところでございます。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 さらに確認させていただきたいんですけれども、今回の法改正、第五条によれば、生産出荷団体等による生産調整方針が認定を受けることになっているわけでありますけれども、そのための基準は、方針の内容が基本指針に照らして適切なものかということ、そして、数量目標を確実に達成することが現実的に可能かどうかということ、そして、その他農林水産省令で定める基準に合致しているということなわけですけれども、この「その他農林水産省令で定める基準」というのは、具体的にはどのようなことを現段階で予定しているのか、お尋ねしたいと思います。
石原政府参考人 生産出荷団体等が作成します生産調整方針につきましては、当然のことながら、適法であるということが前提となります。そういうこともございまして、国といたしましては、他の諸法令に照らして適法なものについてのみ認定を行うことが必要であるというふうに考えております。
 このため、先ほど委員の方からお話ございましたこの認定基準でございますけれども、これは、第五条第三項に基づく農林水産省令におきまして、生産調整方針の内容が法令に違反するものでないことを規定することを検討しているところでございます。
 具体的に申し上げますと、例えば、農協が生産調整方針を策定する場合にありまして、保管場所を当該農協の倉庫に限定する、当該の倉庫を利用しない参加者には農協の他の施設の利用を禁ずるという場合は、これは農協法の第十九条第二項に違反すると考えられますので、認定を行わない場合もあるということでございます。
齋藤(淳)委員 詳細にわたる御説明、まことにありがとうございます。
 そこで、この生産調整の主役となることが想定されている生産出荷団体等、これがいかに適正な、そして公正な役割を演じなければならないかということについて、幾つか伺いたいと思っております。
 改革の目標は、あくまでも、わかりやすさ、効率性、透明性を確保することだ、この点につきましては先ほど大臣から詳細にわたる説明がありました。そして、生産調整の主役は生産出荷団体等になるわけであります。一方で、現場で生産調整に従事している農家の間には、やはりこれまでの減反政策に対する不公平感のようなもの、割り切れなさのようなものが、根強いものがあります。農業経営主体の間で、生産調整の運用に対して不信が募れば、これは、将来的には、やはり生産調整の制度そのものを揺るがしかねない問題に発展しかねないと考えます。
 生産出荷団体等の最近の問題の一例として、ある県で起こった農協の問題を持ち出したいと思います。参考までに申し上げますけれども、某県で、現職の県会議員が、農業協同組合の組合長を務めておりました。その組合長兼県会議員なわけですけれども、さきに行われた県会議員選挙で、自分の選挙活動を応援しないということを理由に、同地域の農業共済組合の総務部次長に対して、農協と共済組合の間の業務提携解消の話を持ち出しました。これが公職選挙法上の自由妨害ということで、組合長を兼ねる県会議員が逮捕されるという事件がございました。
 同事件に対しては、これから司法判断を仰ぐ段階ですので、詳細についてはこれ以上立ち入ることはいたしません。これは一部の特殊事例だと思いますけれども、一方で、何から何まで農協に従わなければならない地域もある、そういうことであります。生産にまつわる一挙手一投足、あるいは金融、生産調整、果ては選挙運動まで農協に従わなければ生活できない、村八分になってしまいかねない地域もある。そんな中で、生産調整における農協の関与が強まっていく。こうした現状について懸念を有している農業経営者もいる。
 このような中で、やはり生産調整の配分の中で、農業団体、生産出荷団体等が、適正な、わかりやすい、効率的な、透明性を確保した生産調整配分を行っていく中で、どのような留意点があるか、大臣に見解をお尋ねしたいと思います。
亀井国務大臣 生産調整方針につきましては、農業協同組合のほか、いわゆる商人系の主食集荷協同組合など、農協以外の集荷団体にあってもそれを策定することができるわけであります。
 この生産調整方針に従って米の生産を行う農業者については過剰米短期融資制度の対象になるというメリットがあるわけでありますが、農協の策定するものに参加するほか、商人系そのほかの方々がこの策定に参加する、農業者にはそのような選択が可能であるわけでありまして、どちらをとってもメリットに差が全くないことでありますので、御懸念のないようなことが進められなければならない、このように思います。
 とかく今までは、商人系の集荷協同組合、いろいろの問題がありましてなかなかできなかった面がございます。今回、流通の改善、こういう面でそのような商人の方々が力を発揮していただく、こういう場が拡大されるのではなかろうか、私はこのように期待を申し上げます。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。大臣の答弁にありますように、農家の側にとっても、農業経営者の側にとっても多様な選択メニューがあって、納得した中で、地域的な合意を確保した中で生産調整が行われるということを期待したいと思います。
 また、第五条で、「その他農林水産省令で定める基準」ということがありますけれども、先ほど適法性という答弁がございましたが、例えば政治資金規正法上の規定ですね、第二十二条三、寄附の質的制限等についても、これは当然ではありますけれども、関連団体の組織がいろいろな形で癒着の温床にならないような適正かつ透明な運用が行われるということをお願いしたい。この点については特段の配慮をお願いしたいと思います。
 次に、産地づくり対策の交付金につきまして、具体的にいろいろとお伺いしたいと考えております。特に、産地づくり推進交付金の中で産地づくり対策に焦点を当てたいと思います。
 地元の農業者から聞いた声ですけれども、生産調整の新しいやり方についてアンケート調査の質問票が届いた、だけれども、具体的な数字が明らかになっていない中でどう答えていいのかわからなかったというようなお話を何人かの農業者から聞いたことがあります。
 確かに、概念図としてはこれは理解しやすいものではありますけれども、具体的にどのような数字が入っていくのか、産地づくり対策の交付金算定式策定の指針について、現時点でどのような方針を持っておられるか、見解を伺いたいと思います。
須賀田政府参考人 生産現場で農業に携わっておられる農家の方が、営農準備のためにも、やはり全体の仕組み、予算、具体的な使い方という全体像、具体像がわからなければ何とも答えられないというお気持ち、よくわかるわけでございます。ただ、先生も御存じのように、この仕組み、器をつくる法律制度、それから予算要求、その前の関係方面との検討、一連の手順というものがございまして、なかなか一挙にいかない事情があるということについては、御理解を賜りたいと思っておりますけれども、一刻も早くその全体像をお示ししたいというふうに考えております。
 具体的には、たびたび申し上げましたように、要は、大きくは、これまでの全国一律の要件、単価設定から、地域で使いやすい助成体系へ変えるということでございます。
 それで、国の算定自身は、自給率向上に資するような作物の作付を推進することが一つ、それからその上に担い手に集積することを促進する、さらには品質向上、この三本立てでいくわけでございますけれども、これ自身がどこにウエートを置くかということ自体が、農政全般について、構造改革の推進という観点から見直していくということと関連があるということ。それから、総額でございますとか単価の水準をどのぐらいにするかということは、やはり農林水産予算の中で賄う必要がございますので、具体的な算定方法、算定の中身については、概算要求時点までに明らかにしていきたいというふうに考えております。
 あわせまして、地域でどのような使い方をするかについても、具体的なガイドラインとしてあわせて明示をしていきたいというふうに考えているところでございます。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。やはり、よらしむべし、知らしむべからずでは、生産調整に対する農業者の理解は得られないのではないかと思います。全体的な方針としてはわかる、しかし、一番重要なのは具体的な数字なんだというのが現場の声ではないかと思います。やはりこの一番重要な部分について、国会の場で、公開の場で堂々と議論されるように、一言希望を申し上げたいと思います。
 そして、担い手対策、産地づくり推進交付金について、予算の中で具体的な算定式は検討していくのだという答弁でしたけれども、やはり農業者も政府の予算編成を非常に注目しております。総枠として伸び悩んでいる、もしくは縮小傾向にある農水予算の中で、どのような形でこの財源をひねり出すのか、総枠としての農水省の予算の中でどのような優先順位づけがなされるのか、やはり具体的な数字がないと地域も計画の策定ができないのではないかと思います。
 改めて、農業予算全体の中で、今回の食糧法改正にかかわる財源についてどのようにお考えなのか、伺いたいと思います。
石原政府参考人 全体の予算でございますけれども、十五年度予算、生産調整の関係の予算が二千四百億円ございます。これが、一年前、十四年度予算では二千九百億円でございました。
 ただし、この二千九百億円も、ずっと二千九百億円で推移してまいりまして十四年度二千九百億円になったということではありませんで、非常に、生産調整面積の拡大、そういうものに伴いまして徐々にふえてきたということでございます。要するに、ほかの、林業関係あるいは畜産関係、そういう関係の予算をいわば犠牲にしてふやしてきたということでございまして、二年前、十二年度から比べますと、二年間で七百億円ふえた。
 それが今度、御案内のとおり、百一万ヘクタールから百六万ヘクタールに生産調整をさらに拡大いたしましたので、そのことに伴いまして、今まで行ってきました生産調整の超過達成とか緊急需給調整、そういう関係のもろもろの、いろいろな上乗せ措置、そういうものを整理した関係で、今回二千四百億円という形になったということでございます。
 この二千四百億円を、十六年度予算に当たってこれをベースに考えるのか、あるいはそれをふやすのか、あるはそれより減らすのか、これはあくまで全体の農林水産省の予算の中で、この農林水産予算の方も、概算要求基準が決まり、決まっていくものでございます、だから、その中で生産調整の関係をどうするのかというのは今後検討すべき問題で、我々はそれを八月末の概算要求の時点までに決定させていただきたいということを申し上げている次第でございます。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。数字に関して細かく議論すると時間がございませんので、改めてまたの機会に伺いたいと思います。
 最後に何点か。
 生産調整に協力している農業者の間で一番強い不満の一つが、やはり、国は本当に日本の自給率を維持していく、高めていく意思を有しているのかということであります。産地づくり対策の交付金算定式作成の考え方の中にも自給率向上ということがうたわれているわけですけれども、例えば重点作物の本作化ですとか、具体的にどのような方針で臨まれるのか、現時点でのお考え方を伺います。
須賀田政府参考人 自給率の問題は重要な農政課題というふうに受けとめております。特に、今後戦略的に生産の振興が必要な麦、大豆、飼料作物は、従来から力点を置いてきたわけでございます。生産調整の拡大に伴いまして、この麦、大豆、二十二年度の生産努力目標というのを目標に置いているわけでございます。
 小麦については、目標が十八万ヘクタールというふうになっておりますけれども、既に二十一万ヘクタール作付をしている。大豆については、十一万ヘクタールの目標に対して十五万ヘクタールと、既に生産努力目標を大きく超える水準になって、それなりの努力というものをしていただいているわけでございますけれども、先日来申し上げているとおり、どうも、ともかく生産調整をこなすんだというところに重点が置かれまして、あるいは高い助成単価をいただきたいというところに重点が置かれましたために、販売とうまく結びつかない、いわゆるミスマッチというものが生じておりますので、輸入の大豆だとか小麦を駆逐できるような品質が高くてロットの大きいものをつくっていくということで、担い手によって品質の高いものをつくっていくということを重点に進めることによって、地に足のついた、真に自給率の向上につながるものにしていきたい、そこから一歩一歩拡大をしていきたいというふうに考えているところでございます。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 最後に、わかりやすさ、効率性、透明性、こういった注意点に戻りますけれども、これを実現するためには、複雑な誘導策をとるよりも、むしろ私ども民主党が主張しているように、抜本的に社会政策や地域政策をも加味した所得補償型の政策に移行し、価格の形成をむしろ市場競争にゆだねてはどうか。これは先般の本会議で筒井委員からも提案があったわけでありますけれども、守らなければならないのは、やはり高い多面的機能を有する、これはOECDでも認められたわけでありますけれども、この農業であり、その基盤となっている農村の地域共同体であり、そして消費者サイドから見れば食卓の安心ではないか、そして食料自給率ではないかと思います。
 そして、担い手への農業生産集約ということは、これは正しい方向性だとは思いますけれども、一方で、担い手条件を満たさない農業者が、非常に厳しい状況にある地方経済の荒波の中に、現実の中にほうり出されるという可能性が極めて強いわけであります。
 米政策は、生産から消費、この部分を単独して切り離すということはなかなか難しいのではないかと思います。やはり、社会政策、地域政策という部分を主として農村政策を再構築していく必要も、この改革に伴って生じてくるのではないかと思います。
 食料・農業・農村基本法の精神に照らし、どのようなビジョンを持っているか、大臣にお尋ねして私の質問を終わらせていただきたいと思います。
亀井国務大臣 農村は、食料等の生産の場であるとともに、地域住民の生活の場でもあるわけであります。また、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承、多面的な機能の発揮する場所でありまして、大変重要な役割を果たしておるわけであります。
 これまで、地域農業の振興に向けた生産基盤の整備とともに、農業集落排水施設の整備など、都市に比べて立ちおくれた生活環境を整備し、定住条件を確保することに重点を置いて施策を進めてきたところでもございます。
 近年の農村を取り巻く状況の変化にかんがみまして、自然環境や生態系を配慮し、あるいは豊かで住みよく、風格があり、都市住民にも開かれた国民共通の財産として農村を次世代に継承していくためにも、美しい農村の景観の維持と利便性の高い村づくりに取り組んでまいらなければならないわけでもあります。
 そのような中で、今回、この米政策、いろいろの施策を進める中で、農村をしっかり守り、そして都市と農山漁村の共生、対流、その取り組みを総合的に推進いたしまして、消費者そして生産者、これが本当に顔の見えるような施策をぜひ進めて、そして先ほど委員御指摘のような地域の問題等を含めて、活力のあるものにしてまいりたい、このように考えております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。時間もございませんので、これで終わらせていただきます。
小平委員長 次に、楢崎欣弥君。
楢崎委員 民主党の楢崎です。
 冒頭、川辺川ダム問題に関して若干お伺いをいたします。
 きょうは参議院の方で委員会が開催されているとのことですから、まず国土交通省にお伺いをします。高木政務官、そして鈴木河川局長、きょうは本当にありがとうございました。
 御承知のように、今回、川辺川ダム利水訴訟において国の敗訴が決定したわけですけれども、国土交通省はどのようにこのことを受けとめておられるか、まずお伺いを申し上げたいと思います。
高木大臣政務官 ただいま川辺川利水訴訟の判決についてお尋ねがございましたけれども、まず、球磨川流域での、これまでも、過去三十年間に九回、洪水被害が発生しており、国土交通省としては、川辺川ダムは球磨川流域の二市七町四村の約十二万人の生命財産を守るために必要な事業であるとの考えには変わりはございません。
 ただ、川辺川ダムからのかんがい用水の取り扱いについては、今後、農林水産省から国営川辺川土地改良事業についての具体的な考え方を聞いて、必要な検討を行い、対応してまいりたい、このように考えております。
楢崎委員 形の上では、本体着工に残された法的なハードルというのは、今熊本県収用委員会が審理している漁業権収用問題ということになるんでしょうけれども、この判決によってその状況も変わってくるんではないかと私は思うんですよ。やはり、利水、治水、それから発電という大きな事業の一つの利水事業に違法という判決が出たんですからね。本体事業そのものの変更が余儀なくされるんじゃないですか。
高木大臣政務官 川辺川ダムの変更の可能性について御指摘がございましたけれども、土地改良事業を今後どのように進めるかについては、まずは農林水産省が検討することになると思いますけれども、現段階では、今回の判決によって計画変更前の当初計画が有効というふうには聞いております。
 したがって、現段階では、川辺川ダムからのかんがい用水の取り扱いが具体的に示されておられませんので、ダム計画の変更、これが、国土交通省が独自に変更するという、それは考えられない状況であるというふうに考えております。
楢崎委員 扇大臣も、当初計画に戻るというような発言をしてあるようですけれども、三十七年前の論理を振りかざしてダムの必要性を主張されるというのは、もう無理があると思いますよ、私は。
 そこで、農水省がどう今後対応されるか後ほどお伺いしますけれども、利水事業がもし縮小されれば、ダム本体に設定された利水容量が変わるんじゃないですか。そうすれば当然、ダム本体の基本計画も変わってくるんじゃないですか。いかがですか。
高木大臣政務官 今委員御指摘のように、まず、利水事業について今回判決がございましたので、その判決に基づいて、今後、農水省の方が計画の問題については検討していくと思います。
 ただ、先ほど一番最初に申し上げましたように、国土交通省としての治水の部分。特に、水害がこれまで過去三十年間で九回もございましたので、この点に関しましては、この必要性というのを国土交通省は認識している。ただ、ダム本体の事業に関しましては、今後、農水省がこの利水事業に対してどのように検討を加えていくのか、それに基づいてこの事業についてはさらに考えていく、このようになっているというふうに考えております。
楢崎委員 それから、特定多目的ダム法は、知事からの意見聴取、これが義務づけられておるわけですけれども、その熊本県知事は、やはり今回の判決はダム本体への影響があると言っておられるわけですね。このことをどう受けとめておられますか。
高木大臣政務官 熊本県知事の発言についての御質問でございますけれども、県知事の方がどのような趣旨で発言されたのかは承知しておりませんけれども、いずれにいたしましても、先ほどから申し上げていますように、国土交通省としては、まず、川辺川ダムの球磨川流域の二市七町四村の十二万人の生命財産を守る、こういうような形での治水というのを最初に考えております。
 また、今後、農水省の国営川辺川土地改良事業についての具体的な考え方をお伺いしながら、必要な検討を行って対応してまいりたい、このように考えております。
楢崎委員 高木政務官、私、この裁判の結果というものはやはりダム事業に直結すると思いますよ。今私たちは緑のダム構想を提唱しているんですけれども、この裁判の結果というものを真摯に受けとめて、少なくとも、大きな一つの建設目的を失った、そういう事業そのものの中止を視野に入れるべきである、このことを申し述べておきたいと思います。
 きょうはありがとうございました。参議院の方で委員会があっているそうですので、どうぞお戻りください。
 そこで、亀井大臣にお伺いをします。
 この判決の結果というのは、農水省が進めてきました利水三事業、その基幹事業であるかんがい排水そして区画整理が違法と判断されたわけですね。やはりこれは大変なことだと思うんですね。川辺川の利水事業そのものが大きな転換期を迎えたと思いますけれども、農水省にとっても、残された選択肢はそうないでしょう。今後どう対応されるのか、事業中止をも視野に入れるべきではないか、その辺のお考えをお伺いしたいと思います。
亀井国務大臣 球磨北部地域、水に恵まれないことから、農業用水の確保を求める農家が多くおられることを承知いたしております。かんがい施設の整備による農業用水の安定供給も重要である、このように考えております。本地域における農業用水の必要性につきましては去る十九日にお会いしました原告団の農家の方々からも直接お聞きをしたところでもございます。
 農林水産省といたしましては、今回の判決を受けて、水が来なくなるのではないかとの関係農家の不安を一日でも早く解消するとともに、農業用水の確保に向けた農家の期待にこたえることが重要なことであります。
 このようなことから、今後、熊本県あるいはまた関係市町村等と密接に連携を保ちながら、当該地域の農業振興に向け、関係農家の意向を確認し、必要な整備を進めていく考えでありまして、その方法につきましては早急に検討してまいりたい、このように考えております。
楢崎委員 大臣、民意を問うときに賛否両論があるのは当然ですよね。問題なのは、大方の農家が水は要らないと言っているのに、それを押しつけようとしている国の姿勢に問題があるんですよ。(発言する者あり)黙って聞いて。
 そして、皮肉なことに、減反政策がもたらした結果でもあるんですね。つまり、現地では、茶葉などの水を大量に必要としない作物への転換が進んでいるんです。ですから、将来的にも大量の水が必要になるとは思えないんですね。ですから……(発言する者あり)いや、水は必要なんですよ、ですからダム以外の方法で利水を考えるときに来ているんじゃないですか。
太田政府参考人 ダムに頼らない利水計画も検討すべきではないかというお考えかと存じますが、かんがい排水事業の利水計画を策定する場合には、まず、受益地域内で利用可能な水源を優先的に利用すること、これが基本でございます。
 本地域におきましても、地域内の渓流等々を含めた既存水源での利用可能性を検討いたしましたが、これだけでは広大な農地をかんがいするには不十分でございましたので、受益地域内の渓流水を最大限利用した上でもなお不足する水量をダムに依存するという利水計画を立てたものでございます。
 今後、関係農家の意向を把握するとともに、受益地域内で利用可能な渓流水を最大限利用しつつ、これまでの検討経過も考慮いたしまして、本地域に最も適した利水計画を検討してまいりたいというふうに考えております。
楢崎委員 いずれにしても、違法という烙印が押されたわけですから。
 それにしても、農林水産省は法廷で、同意率三分の二を超えていると主張されてきたんですね。それが判決では、その三分の二に達していないから違法だとされたんです。言いかえれば、このことは、農水省がこれまで偽証を続けてきたことになるんじゃないですか。大臣、そういう認識を持っておりますか。
亀井国務大臣 判決におきましては、変更計画について他に違法な点は見受けられないが、農業用用排水事業及び区画整理事業についての受益農家の三分の二以上の同意という要件を満たさない旨の事実認定がなされたわけであります。
 同意の取得に当たって関係者の皆さんがさまざまな努力をされたと思います。また、結果的に不備があったことは認めざるを得ないわけでありまして、なぜこのようなことになったのか、まず計画変更の同意取得の際の諸事情の把握に努めてまいりたい、このようにも考えております。
 また、今後の土地改良事業の実施に当たっては、工期の短縮や事業のコストの縮減、透明性や効率性の向上、こういうものに取り組まなければならないわけでありまして、事業計画の同意取得に当たって関係農家の理解が十分得られるようにさらに努力をしてまいりたい、こう思っております。
楢崎委員 大臣も今言われましたように、同意を得るための作業に結果として不備があったということは認めてある。それで、にせの同意書までつくって事業を強行しようとした農水省の責任というのはやはり重大ですよ。やはり最高責任者として、その責任の所在というのを明確にすべきじゃないですか。いかがですか。
亀井国務大臣 それぞれあの時点でいろいろ、関係の皆さん方がその事業のために署名等々をおとりになった、努力をされたわけであります。結果的に不備があった、こういうことは認めるわけであります。
 ぜひ、今後、その取得の諸事情等々を十分把握してまいりたい、このように考えております。
楢崎委員 当初からダムありきで強引に推し進めた上に、結果として地域住民を欺いたことになるんですね。その責任を明確にされるよう要望しまして、本論に移りたいと思います。
 これまで、我が国の米政策それから農業施策が、自民党、農水省、農協の三位一体で進められてきました。ですから、米にかかわることになりますと本当に皆さん方は元気が出られるようで、昨日も活発な質疑が行われました。また、大臣も、米政策の大転換を図る重要法案であるということを強調されておったようですけれども、そこで私は、きょうは予算面からお伺いしたいと思います。
 今ここに、昨年十二月、農林水産調査室が出しました米政策関係資料の中の「米政策に係る予算措置の推移」という表があるんです。今私たちも対案を準備していますのできょうは伺うだけになるかと思いますが、この表による「生産調整等」の予算の中で、水田農業経営確立対策等が、平成十二年は一千二百八十八億円、十三年が一千六百四十億円、十四年が千八百四十六億円とふえ続けているわけですけれども、これは減反措置によるものですか、理由を教えてください。
須賀田政府参考人 十二年度から予算がふえている理由でございます。
 量的側面と質的側面がございまして、まず量的側面につきましては、米の需給事情から生産調整規模がふえているということ、目標の面積だけでも、十二年度が九十六万三千、十三年度が百一万、十四年度が百一万、まあ超過達成がありましたけれども、十五年度が百六万というふうに、生産調整規模がふえているということが量的側面でございます。
 次に、一つ一つの単価。団地化とかあるいは高度利用だとかで加算される仕組みになっております、最高は七万三千円という高水準の単価を設定しているわけでございますけれども。団地化とか担い手の集積によります基本助成、十アール当たり最高四万円の口でございます、この面積が、例えば十二年度二十一万ヘクタールのが、十四年度の見込みで二十八万まで拡大をしているということ。それから、一年二作とか二年三作の高度利用、これは高度利用加算で十アール当たり一万円口でございますけれども、これが、十二年度九万四千ヘクタールが、十四年度十五万八千ヘクタールに拡大をしているということで、農家の皆様方が積極的に転作に取り組まれて質の向上を図っている、そういう側面が両面ございます。
 両方によりまして予算がふえておるということでございます。
楢崎委員 ちょっと教えていただきたいんですが、この中に、いわゆる担い手対策というものは入っていませんね。入っているかどうかだけ。入っていないか、入っているか。
須賀田政府参考人 稲作経営安定対策等は入ってございません。
楢崎委員 いやいや、そうじゃなくて、今私が聞いたのは水田農業経営確立対策ですから。その中には担い手対策は入っていないということですね。――もういいです、もう時間がないから。
 では、今須賀田局長が言われました稲作経営安定資金助成金、これはどういう措置ですか。この中に担い手対策は入っているんですか。
石原政府参考人 この稲作経営安定対策の中には、一つのコースといいますか、として、担い手コースというのがございます。要するに、通常の農業者の場合と、担い手の場合はそれよりちょっと手厚く補てんするという仕組みがございます。
楢崎委員 では、もう一度、須賀田局長。水田農業経営の中には担い手対策は入っていませんね。
須賀田政府参考人 先生、今お読みになった予算額、ちょっと教えていただきたいんですけれども。
小平委員長 ちょっと待ってください。
 ではもう一回、楢崎欣弥君。
楢崎委員 十二年度が千二百八十八億、十三年度が千六百四十億、十四年度が千八百四十六億、ふえ続けていますね。
須賀田政府参考人 その数字の中には入ってございません。
楢崎委員 ちょっと水田農業経営と稲作経営の理解がしづらかったものですから聞いたのですけれども。いずれにしましても、この生産調整等にかかわる予算、これはふえ続けているんですね。
 今回の改正に伴う措置では、この生産調整費というのはどうなっていくんですか。さらにふえ続けますか。
石原政府参考人 先ほどもちょっとお答え申し上げたんですけれども、この生産調整の関係の予算、十五年度予算は約二千四百億円ございます。これを、今回の改革、具体的にはどのようにいろいろな助成措置を講ずるかというのはあくまで十六年度の問題、十六年度予算の問題でございます。
 だから、この二千四百億円をベースにして当然考えることになりますが、これよりふえるのか、ふやすのか、これを我々は、全体の政府の予算の中で農林水産関係の予算をどうするかというのは、この概算要求基準が決まり、いろいろな手順を追って決まってまいります。その中で米関係にどれだけの予算を使うのか、そしてまたその中で生産調整関係にはどれだけ使うのかということを、いろいろ内部で議論した上で、八月末までに決定させていただきたいということを申し上げている次第でございます。
楢崎委員 我が党の筒井議員が、本会議で、ここの部分を原資として所得補償に充てるべきだと発言されましたから、ちょっと確認の意味で今質問したわけです。
 次に、生産分野ですけれども、ここには私がサラリーマン時代に携わっていました圃場整備関係の補助金が含まれているわけですけれども、今回の改正に伴う支出は今後どうなっていきますか。ふえ続けていきますか、それとも減っていきますか。
太田政府参考人 圃場整備を初めといたします生産基盤の整備につきましては、生産性の高い圃場条件の整備、あるいはさまざまな作物が作付できる汎用耕地化等を目指しまして、農地や水利施設の整備を進めてきておるわけでございます。これまでの整備によりまして、例えば、担い手育成型圃場整備事業などで平成八年度から平成十三年度に完了した四百二十地区では、事業の実施前に比べまして、担い手の経営規模が約二・二倍、担い手の稲作労働時間が約六割短縮するなど、その効果が着実にあらわれている状況にございます。
 今後、米政策改革の実現のためには、効率的、安定的な経営体の育成を図っていくことが重要でありまして、農業農村整備事業の平成十五年度予算におきましても、経営体育成基盤整備事業を創設いたしまして、農地利用集積、経営体の育成など成果重視の農地整備に転換したところでございます。
 これらの事業を活用し、地域みずからの創意によります地域水田農業ビジョンに即して、意欲ある経営体が活躍できる生産条件の整備を推進してまいりたい、このように考えております。
楢崎委員 いずれにしても、今回は大転換期を迎えるわけですね。米政策、その総体にかかわる予算ですけれども、それにのっとって予算枠組みを見直す必要というのが出てくるんじゃないですか。どなたでも結構です。
太田政府参考人 御質問の趣旨が、公共事業のことであるのかあるいは農林水産予算全体であるかというのがございますけれども、公共事業について申し上げれば、ただいま申し上げましたような内部の改革といいましょうか、圃場整備が実質的にその名前も含めてなくなったということも含めて、その改革は着実に進めておりますし、これからもそのような努力はする必要があるというふうに考えております。
楢崎委員 きょうのところは聞き及んでおきます。
 次に、政策面について若干お伺いしますけれども、この改正案は、農業者、農業団体が主体になった生産調整に転換することが一つのポイントとなっているわけですけれども、市場重視それから消費者重視を言うなら、やはり消費者代表の参加も必要なのではないかと思うんですけれども、いかがですか。
須賀田政府参考人 今般の新しい対策、先生おっしゃいますように、市場重視、売れる作物づくり、地域重視、地域の発想、戦略、これに基づいてやるということでございますので、地域水田農業ビジョンというものをつくりますときに、消費者、実需者の意見を十分聞きたいということでございまして、私ども、このビジョンをつくります協議会に、構成員として消費者団体の代表を入れるように指導をしているところでございます。
楢崎委員 消費者と結びついた生産計画がおいしい米をつくることになるわけですからね。
 それから、担い手の問題も、農業産業推進のための新規就農者への助成システムの導入。それから、農地転用の厳格な規制、これは私は前にも言いましたけれども、ゾーニングの導入を図るべきだと思います。そのことを申し述べて、終わります。
小平委員長 次に、鮫島宗明君。
鮫島委員 法案審議が大変詰まって忙しいもので、なかなか一般質疑の時間がないんですが、農林関係、いろいろな事件が頻発しているものですから、冒頭ちょっとその関係のことだけ触れさせていただきます。
 カナダでついにBSEが発生しました。それで、きのうから、厚生労働省は食品衛生法に基づいて禁輸措置を発動した、農林水産省も家畜伝染病予防法に基づいてカナダからの牛肉の輸入の停止措置を発動したということがニュースで流れております。一月三十一日に屠畜されたカナダの肉用の雌牛八歳が肺炎の疑いだったという話ですが、それがBSEと確定したのが五月二十日、三カ月と二十日、約四カ月かかっているわけです、なぜこんなにかかったのかよくわかりませんが。
 きのう、その禁輸措置を発動したわけですけれども、一月三十一日から五月二十日までの間に日本に輸入されている、カナダから輸出された牛肉が、多分、流通過程のいろいろなところに滞留していると思うんです。恐らく一月三十一日から五月二十日まで概算で約五千トン、カナダから輸入があったと思いますが、この流通過程に滞留しているカナダからの肉はどういう扱いになるんでしょうか。厚生労働省にお伺いします。
遠藤政府参考人 昨日より、食品衛生法第五条第二項に基づきまして、カナダ産の衛生証明書を受け入れないこととして、輸入を認めないこととしたわけでございますけれども、国内で既に流通をしているカナダ産の牛肉等につきましては、昨日から、輸入業者別、製品別の輸入実績を確認し、国内で一頭目のBSE感染牛が発見されたときと同様に、特定部位が混入しているもしくはそのおそれがあるものの回収の指示を輸入業者等に対し行っているところでございます。
鮫島委員 農林水産省はどういう措置をおとりになるんですか。
須賀田政府参考人 既に出回っております肉の回収につきましては厚生労働省の措置にお任せをしておりまして、我が方は、厚生労働省への種々の情報の提供というような面で協力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
鮫島委員 BSEが五月二十日に確認されたといっても、発生したのは一月三十一日、患畜が処理されたのが一月三十一日ですから、普通はそこからカナダはBSEの汚染国になったわけですよね、一月三十一日から。
 一月三十一日から五月二十日までの肉については、特定部位の混入がないものについてはオーケーですという扱いをしておきながら、ではなぜきのうから突然全部だめになるんですか。きのうから全部だめならば、一月三十一日から五月二十日までの五千トンについてもだめという扱いで回収措置をとらないと、消費者の安心につながらないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
遠藤政府参考人 基本的には、特定部位が含まれていない牛肉につきましては安全性に問題はないと考えておりまして、そういった考えに基づいて、既に輸入された牛肉については、特定部位を含む可能性のあるものについて回収命令を出しているということでございますけれども、新たに輸入されるものにつきましては、BSEの我が国への侵入防止策をより確実なものとするために、EU諸国あるいはBSE既発生国からの輸入と同様、農林水産省の家畜に係る法的措置と並びまして、食品衛生法に基づく法的措置を行って輸入を阻止するというふうなことでございます。
鮫島委員 自分で説明していておかしいなと思っていると思いますが、特定部位が混入していなければ安全性に問題はない、しかしBSE蔓延防止の観点から、あるいは人間に被害を及ぼすといけないから、五月二十一日からの分は回収しますと。
 一月三十一日から五月二十日までのものと五月二十一日からのものとは全く同じなわけで、特定部位が混入していないものはいいですというなら、五月二十一日からも特定部位が混入していないものは輸入していいはずだし、もしBSE被害防止の観点からというんだったら一月三十一日以降のものを全部押さえなければおかしいわけで、自分でおかしいことを言っているというのを認識していますか。
遠藤政府参考人 確かに、昨日までのものと昨日以降のものとでダブルスタンダードになっているということではありますけれども、対策として、一頭目のBSE牛のときに練られた対策と同等の対策を講ずるのがよかろうというふうなことで、このような措置を決めたところでございます。
鮫島委員 日本で発生したときに韓国がどういうことをしたかというと、八月の二十七日に一頭目が発生して、確定したのは九月二十日ぐらいで、約一カ月、発生してから確定するまでそこに時間があったわけですね。韓国に日本から、珍しいんですが、牛足が輸出されていて、それが韓国の港に、保冷倉庫に入っていた。そうしたら、韓国は、九月二十日に日本で一頭目が発生しましたといったら、その牛が屠畜された日、八月二十七日をもって日本を汚染国として扱って、八月二十七日以降のものを一切、流通禁止措置をとったんですね。それが普通のことだと思います。
 大臣、今の話を聞いていて、一月三十一日に屠畜された牛がBSEだったというのがわかったのが五月二十日、しかし、肉の扱いについては、五月二十一日以降は禁輸で、一月三十一日から五月二十日まで五千トン入っている分については、特定部位が混入していなければ安全として、どうぞという、ダブルスタンダートで扱っていることをおかしいというふうに思いませんか。
亀井国務大臣 一月と五月、そういう面で若干疑問にも思います。
 ただ、特定部位の混入またはそのおそれのあるものを回収する、いつの時点で、こういうこと。昨日の時点でそういうことがわかったわけでありますので、そういう日にちでそのようなことをいたしたこと、ちょっと複雑な思いをいたしますけれども、これはそのような措置をとる、今までの経緯からそういうことにしたのではなかろうか、こう思います。
鮫島委員 私は、ぜひ大臣の御決断で、一月三十一日から五月二十日までに輸入されてまだ流通過程に滞留している肉は大臣の御決断で回収指令を出した方が、二次被害とか風評被害につながらないでいいと思いますよ。これが輸入肉全体に広がっていくと、WTO交渉とかいろいろなことでまた日本は変な国だという扱いになるので、私はぜひ、亀井大臣の御決断のいい課題じゃないかと思います。
 このBSEについて、今のように厚生労働省の態度が、判断の基準が一貫していないということに関係して、日本でも同じようなことがちょっと懸念があるんですが、日本でもしBSEがまた発生して、今度、牛肉トレーサビリティー法案もできました、疑似患畜の特定が今までよりもさらに効率的にできますと。疑似患畜が特定されたら、実はその疑似患畜の肉が出回っているということがわかった場合、同居牛が、ではあれは一週間前に屠畜したとか、二週間前に屠畜した、その肉がどうも出回っているというのが今度トレースバックできるわけですから、非常に末端まで把握できるようになる。
 そういう疑似患畜の肉が流通過程に出回っていることがわかった場合に、その肉は回収の対象になるんでしょうか。厚生労働省にお伺いします。
遠藤政府参考人 国内におきまして食用として処理されるすべての牛については、と畜場法及び牛海綿状脳症対策特別措置法に基づき、BSE全頭検査を実施するとともに、屠畜解体時に、牛の特定部位の除去、焼却、特定部位により食肉等が汚染されることのないよう衛生的な処理が義務づけられており、安全性が確認された牛肉のみが市場に出回る体制を確立しているところでございます。
 したがって、仮にBSE感染牛が発見をされ、家畜伝染病予防法に基づく疑似患畜になり得る牛の肉であっても、食品衛生法上は回収の対象とはしていないところでございます。
鮫島委員 遠藤部長の答弁がまた長くなり始めていますので、短くするように気をつけてください。そうすると、疑似患畜の肉が流通過程に出回っていても、全頭検査を経ているし、特定部位も除去されているから、それは安全だから回収の対象にならないと。
 一方で、農林水産省は、家畜伝染病予防法に基づいて疑似患畜は殺処分するということになっていると思いますが、今の厚生労働省の見解ならば、移動禁止措置だけとって、飼い続けて、それで屠畜場に出して検査して、BSEフリーだったら、肉として出してもいいというふうにはなりませんか。なぜ殺処分をしなければいけないのか。BSEが伝染病ではない、伝達性だという見解も含めて、専門家の北村副大臣から答弁をいただきたい。
北村副大臣 鮫島先生もよく御承知の上で御質問をされているのではないかな、こう思います。
 私も、疑わしきはすべて焼却した方がいいという思いはございます。しかし、疑似患畜につきましては、OIEの国際獣疫事務局が一つのルールをつくっていただいておりまして、そこでの規定というものがございます。ある面では、その規定に従って日本のBSE対策をとらせていただいている。それが今回の疑似患畜の殺処分ということになっております。
 それで、今回もOIEの総会で、疑似患畜の範囲の見直しについて、何とか、今までの膨大なデータをもとにして、OIEとして疑似患畜の改正の見直しが今回の総会で提案をされております。そのことを日本国は強く支持をしておりまして、そうなりますと、疑似患畜の範囲もぐっとまた狭まってくるというふうに思います。
 いずれにいたしましても、今やっているBSEの国内における対策は、OIE基準に乗っかって粛々と進めさせていただいている、もう、それ一点でございます。
鮫島委員 もうこれ以上はこの問題はやりませんが、OIE基準を重視するならば、OIEは非常に早くから、死亡牛検査はちゃんとやりなさいと言っているわけですから、そのOIEの勧告を尊重していただきたいというふうに思います。北海道は離島ではないということです。
 本論に入りますが、備蓄制度についてだけお伺いします。
 ちょっと大臣にお伺いしますけれども、役人の長じゃなくて国民の代表として、お米の備蓄が行われていることは国民だれでも知っていますが、何のために備蓄は行われているんだと、大臣はどんなふうにお感じになっていますか。
亀井国務大臣 農産物、これは天候にいろいろ左右されるところもあるわけでありますし、さらには、消費者に安定供給をする、こういう視点から備蓄というものは考えていかなければならないわけであります。
 特に、米の備蓄につきましては、主食である米の供給の不足する事態に備えて消費者への安定供給、これが目的でありますし、さらには、食料・農業・農村基本法に、国民に対する食料の安定供給、このことも記しておるわけでありますし、食糧法におきましては、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備える、こういうようなこと等を定めておるわけでありまして、国民の、消費者への安定供給、この使命を果たす面におきまして備蓄を考えておるわけであります。
鮫島委員 今度の新しい改正案の中では、これまで百五十万トンプラス・マイナス五十万トンと言われていた備蓄量を、百万トンを適正水準とする、年間五十万トンずつ売り買いして二年で一回転の百万トンという制度にするそうです。この備蓄制度は、今大臣からは、食料の安定供給、不作のときにそこから供出できるようにというのが第一の目的という御答弁でした。この百万トンの備蓄というのは、もちろん不作のときの備えというものがありますが、市場調整機能、まあ今は過剰対策どうするかというのが一番問題なわけですが、この備蓄という枠を使って、過剰なときは少し多く買い入れ、足りないときは放出するという市場調整機能は、今度の備蓄政策の中に含まれているんでしょうか。
石原政府参考人 備蓄制度、これが市場調整機能を持たせているかという点でございますけれども、我々は、この備蓄というものは、主食である米の供給が不足する事態に備えて米を在庫として保有する、そして、いざというときに消費者へ安定供給するという趣旨でございます。
 それで、過去、豊作時に在庫が膨れ上がったという事例がございます。その処理に多額の経費を要したということもございまして、我々は、市場調整機能を持たせるべきではないというふうに考えております。
 しかし、我々、そういうこともありまして回転備蓄を運営していくわけでございますけれども、需給変動によりまして販売数量の増減が生ずることは避けて通れないということでございますので、現実の備蓄数量の変動をある程度は想定しておく必要がある。ですから、結果としての需給調整機能といいますか、それはありますけれども、あくまでそれは臨時的、副次的なものであるというふうに考えております。
 そして、仮に結果として在庫量がふえたということがありましても、早く適正備蓄水準に回復していくことが重要だと考えておりまして、効果的、安定的な備蓄運営、国民の財政負担を防ぐためにも、効果的、効率的な在庫運営、備蓄運営、これをやっていく必要があると考えているところでございます。
鮫島委員 備蓄運営研究会報告によると、備蓄水準は「百万トン程度とすることが適切。」それに加えて、「幅は設定せず常時百万トン程度の保有となるよう運営。」というただし書きまでついているわけで、これは、市場調整機能をここに持たせない、つまりそういうことではなくてあくまでも五十万トンずつ二回転で百万トン、幅は設定せず常時百万トン程度の保有となるように運営というのがこの研究会の結論ですから、私は、今食糧庁長官がおっしゃったような答弁は余りよろしくないのじゃないか。
 つまり、備蓄は市場調整機能を持っていません、では市場調整機能はどこが持つのかというのをちゃんと課題として残しておかないと、この固定的な備蓄が結果として需給調整の機能を持つような表現は、私は、いろいろなところに誤解を与えるんだと思いますよ。もし需給調整機能を持たせるんだったら、幅は設定せず常時百万トンなんという表現はできないはずで、そこはぜひそういうふうに認識していただきたいと思います。これ以上言いませんけれども。
 先ほど大臣も、備蓄というのは不作のときの備え、食料が足りなくなったときの備えだと言いますが、食料が足りなくなる局面というのは普通に考えれば三つぐらいあって、何らかの有事、さっき大臣がお答えになったのは天候有事とでもいうべき、天候不順で不作になりました、これは天候有事。それから、港湾ストその他で流通がとまる、貿易がスムーズにいかないというようなのが流通有事とでもいう分野。それからもう一つは、国際紛争で本当に輸送船の運航ができなくなったり、日本に経済封鎖類似行為で入らなくなったり、昔大豆でそういうことがありましたが、こういう紛争有事。天候と流通と紛争と、三種類ぐらいの有事があるわけです。
 こういう状況を考えたときの備蓄というのは、普通は足りないものを備蓄するわけで、日本は米が過剰です、凶作に備えて米を備蓄しますというのは、産油国が石油を備蓄するみたいな話で、ナンセンスといえばナンセンス。
 一番日本が有事になってすぐ行き詰まるのが、まず大豆でしょう。それから小麦とか、そういう日本でとれないもの、自給率が非常に低いもの。普通は油とたんぱく質と炭水化物、三つバランスを考えて、油とたんぱく質とでん粉、この三つをいざというときのために保有しておくのが備蓄の本来のあり方だと思いますが、米以外のものはどんなふうな備蓄体制になっていますか。
西藤政府参考人 お答え申し上げます。
 食用の農産物ということで、米以外で現在備蓄の状況にあるもの、先生御指摘のありました食料用の小麦、それと食品用の大豆を備蓄している状況にございます。
鮫島委員 それぞれ何日分ぐらい備蓄しているんでしょうか、大豆と小麦について。
西藤政府参考人 食料用小麦につきましては約百万トン、年間の需要量で二・六カ月分に相当するかと思っております。
 それと、食品用大豆は約五万トン、年間の需要量の二十日分程度の数量に相当する備蓄を行っている状況にございます。
鮫島委員 大豆が二十日分、小麦が二・六カ月分。米以外はこれだけしか備蓄していないわけですね、日本は。
 今私が言った三つの有事、天候有事、流通有事、紛争有事。この備蓄というのは、今の大豆二十日分、小麦二・六カ月分というのは、国際紛争に起因する輸入障害も想定して決めている数字なんですか。
西藤政府参考人 私ども、不測時の食料安全保障マニュアルということで、基本法に基づきましてマニュアルを策定しておりますが、そのマニュアル策定上想定している事態として、先生御指摘がありました、国内外における異常気象等による不作、あるいは主要輸出国における港湾スト等の輸送上の問題、それとあわせて、地域紛争や突発的な事件等による貿易の混乱等を想定して対応しているつもりでございます。
 また、先ほど備蓄数量について小麦と大豆ということでお答え申し上げましたが、これは直接食用ということで申し上げまして、飼料備蓄が別途備蓄されていることは先生御案内のとおりでございます。
鮫島委員 国際紛争のことも考慮してこれだけの備蓄を決めていると。
 時間がないので私の方から言いますが、冷戦が終わってから後でもいろいろな事故があって、例えばアメリカで九六年の夏に異常気象があって、干ばつになってトウモロコシが不作になって、日本にトウモロコシの輸出がおくれたことが、三カ月ぐらいの期間あった。あるいは、中国がちょうど肉食文化に入りかけるということがあって、みんな肉を食べ出したら穀物が足りなくなって、中国から日本への穀物輸出が十九カ月間停止しました。平時でもこんなことがあるわけですし、もしいざというときのことを考えると、やはり最低三カ月分ぐらいのちゃんとした食料備蓄があるのが常識だと思います。
 お隣の韓国とか台湾ではどんな食料備蓄の体制になるのか、その実態を御承知でしたら教えていただきたい。
渥美政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども承知しております状況としましては、韓国につきましては、二〇〇一年末の数字でございますけれども、品目としては米を数量約百三十三万五千トン備蓄していると承知しております。
 台湾につきましては、二〇〇三年二月現在において、米を約六十六万五千トン備蓄していると承知しております。
鮫島委員 韓国、台湾も米だけですか。
渥美政府参考人 軍事的なもので別途あるのかもしれませんけれども、私ども承知している限りでは、米だけだと聞いております。
鮫島委員 多分、実態はわからないんだと思いますよ。本当は軍事機密、国家機密なんですね、備蓄内容と備蓄量は。北欧の国々も、スウェーデンは完全に機密になっています。
 ですから、そういういざというときの備えというのは、みんなそれぞれの国はきちっと備えているわけで、日本も、民主党の協力により非常事態法案がこの前可決しましたが、まだそういう緊急事態、有事に対する感覚の第一歩を踏み出しただけで、本当にいざというときにどういう格好で備蓄しておかなければいけないのか、油はどうするんだ。資源とエネルギーと食料というのは有事に備えてきちっとした備蓄体制をとっておかなければいけないのですが、実はそれを設計する役所がないというのが日本の政府の実態じゃないのですか。
 農林水産省は、そういう国際情勢も考え、いざというときにはどのぐらい食料の需給がタイトになるのか、それを考えて、逆算して今の大豆二十日間、小麦二・六カ月分というのを考えているんですか。つまり、社会的、歴史的、国際情勢の判断に基づいて、一番大変なことが起こるとこのぐらい必要だぞ、米はどうも十分ありそうだから、では大豆が二十日分、小麦が二・六カ月分、何を根拠にこういう数字というのは考えているのか。備蓄品目と備蓄量を、ちゃんと世界情勢を踏まえて、国際紛争の危険性も考慮しながら考えるのが農水省の役割ですか。それを予算措置するのも全部、農水省が一〇〇%やるということなんでしょうか。
 普通に考えると、当然、防衛庁との共管とか、あるいは内閣府も参加して、どういう備蓄体制がエネルギーと食料にとって適正なのか、予算はどこが背負うのかというのを政府として省横断的に考えるべきだと思うのですが、今は農水省だけでやっているんですか。
西藤政府参考人 先ほど、不測時の食料安全保障マニュアル、基本法に基づいて我々作業をしということを御報告申し上げましたが、食料安全保障マニュアルの策定に当たりましては、農林水産省の整理でございますが、関係省庁にも御意見を承る形で対応してきている状況にございます。
 それと、最近の例で申し上げれば、ついこの間でございますけれども、本年三月に開始されたイラクに対する武力攻撃に際しましても、私ども省内には対策本部を設置いたしまして、本件に伴う農産物はもちろん、資材の物流、価格動向に関する情報の収集と提供ということで対応してきているつもりですし、農林水産省、備蓄の関係の予算も我が省で今対応している状況にあります。
 現在の状況は、今申し上げましたように、そういうマニュアル策定に当たって関係省庁の御意見を承りながら、私どものできる範囲での対応をしている状況にあるということでございます。
鮫島委員 イラクとか、今私が聞いているのは有事、非常事態、日本を取り巻く東アジアの環境が激変したときにどういう備えが必要なのか。これは、農林水産省だけで判断すべきことじゃないと私は思う。それから予算も、こういう国際紛争に基づく輸入障害、あるいはもうちょっと緊張が高まって非常に食料が入りにくくなるというようなときのための備蓄の予算措置を、何も農林水産省だけが予算措置するというのもおかしな話で、政府全体として考えるべきだという個人的な意見を私は持っています。
 今、食糧法の改正が行われて、もう米は特別扱いしません、野菜並みですといっても、やはり米は主食です、だから米だけ備蓄しますと。もし米も野菜と同じですというのだったら、いろいろなものを備蓄しなくてはいけないわけで、やはり米だけ特別扱いというのは残っているわけですね。
 米政策に関して、今、オプションがどんどん少なくなっていく中で、私は、備蓄というのはいろいろな使い方、もうちょっと知恵を出せばこれにいろいろな機能を持たせることができるのではないか。先ほどは、不作のときのための備えというのが中心でしたでしょうが、本当は、市場調整機能も持たせて、回転備蓄でもう一回主食用に戻すのではなくて、一たん備蓄にして二年なり三年置いたものはもう十分社会的な役割は果たしているわけですから、それをまた主食に戻す必要はなくて、農水省が最近看板に掲げているバイオマス利用、非食用利用、エネルギーとかバイオプラスチックというようなものに使っていくという考え方も必要ではないかと私は思います。
 だから、最後に大臣に、この米の備蓄に、過剰対策機能、こういうものを、バイオマス利用も含めて持たせるべきではないかと思いますが、大臣の御見解をお伺いして、これで最後にします。
亀井国務大臣 国民への安定的な供給を図ること、これは国の基本的な責務であるわけでありまして、備蓄の問題等につきましても、それぞれいろいろの需要あるいは国内の生産動向を踏まえ、また、必要に応じて備蓄の見直しもしなければならないこともあろうかと思いますし、いろいろな情報の収集が大変重要なこと、このように思っております。
 また、古米となった備蓄米をバイオマス利用に使うべきではなかろうか、こういうことにもお触れになったわけでありますが、バイオマス等の主食以外の用途に備蓄米を充てるということは、現在の価格水準でいきますと、大変多大な財政負担を要することでありまして、なかなか困難なわけであります。備蓄の問題、バイオマスの問題、これらの問題は、備蓄とは別の角度で検討していく課題、このように認識をいたしております。
鮫島委員 以上で終わります。
小平委員長 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 米の問題で大臣にお聞きしたいと思いますが、ちょっと順序を変えまして、いわゆる区分出荷の話からお聞きしたいと思います。
 いわゆる減反をやめて生産数量でもって割り当てするという制度になるわけですが、そうした場合に、生産数量に見合った反別を各農家に配分するということに当然なると思います。
 そうした場合に、仮に作柄が一〇三、いわゆる普通作よりもちょっと多かったとした場合に、私の計算だと、余剰米は二十五万トンぐらい出ると思うんですが、大臣、余剰米の処理をどういう形で今度の新しい法案ではやられるんでしょうか。
亀井国務大臣 豊作等によります余剰米の問題等につきましては、これを加工用であるとかあるいは飼料であるとか、いろいろそれなりの用途に、主食以外の用途に転用する、こういうことを考えていかなければならないんではなかろうか、このように思います。
山田(正)委員 余剰米をそういう形にするというお言葉ですが、では、出来秋に米が出た、その余剰米を、どれが余剰米でどれが余剰米でないのか、主食用の米なのか、その区分はどうやってするわけなんでしょうか。
石原政府参考人 通常の場合、農協に出荷したということになりますと、わかりやすい数字で申し上げますと、農協に例えば百三俵出荷した。その百三俵出荷した場合、三俵分が過剰米というふうになりますと、農協の方でこれを区分出荷という扱いをしていただくということになります。
山田(正)委員 農協では、その三俵分の区分出荷、百三俵のときの三俵分の区分出荷はどの生産者からそれを割り当てるんですか。
石原政府参考人 これは、基本的にすべての農家に満遍なく、不公平にならないような形で割り当てるということになります。
山田(正)委員 そうすると、百三俵のうちから三俵分だけ俵を崩して、三キロずつ全部集めるということになるわけですか。
石原政府参考人 先ほど申し上げましたけれども、三俵とおっしゃいましたけれども、それぞれの農家がどれだけ出荷しているか、その出荷に応じまして、これは帳簿上でやりますので、それほど難しい問題ではないというふうに考えております。
山田(正)委員 よくわからないんですが、その帳簿上でというのはどういう意味なんですか。三俵だけ区分しないで。ちょっともう少し詳しく。
石原政府参考人 出荷伝票というのがあります。出荷伝票で、仮にAさんが、わかりやすい数字で、百三俵出荷したとします。総体で百三俵といたしますと、そのうち三俵分が過剰という扱いをするということでございます。
山田(正)委員 北海道あたりはどうか知りませんが、百俵とか二百俵とか九州あたりで出荷する人はいませんね。それは、何俵か出荷するときに、出荷分については伝票だけでやるとして、ではその区分というと、出来秋に全体集めた分を農協はどこかに保管するわけですか。どうなんですか。
石原政府参考人 先ほどのあれでございますけれども、例えば、非常に規模の小さい方がいらっしゃった場合には、帳簿上でありますので、仮に一俵未満の単位でも、この一定の部分は区分出荷としたということになります。
 それで、区分出荷のやり方でございますけれども、農協に区分出荷したところについて、確実に区分出荷されているかどうかは、食糧事務所の方でチェックいたします。
山田(正)委員 大臣、今お話を聞いておったと思うんですが、いわゆる農協に出荷されている米。今実際には八百五十万トンから八百七十万トンぐらい生産されていて、農協に出荷されている米は、生産量のどれくらいに当たるか御存じでしょうか。
亀井国務大臣 農協に集荷されているお米はおおむね半分程度、五〇%を超えて五五%くらいではなかろうか、こう思います。
山田(正)委員 農協に出荷されている米は、私の調べでは大体四百五十万トンぐらいですから、大臣、大体そのとおりだと思います。
 それでは、生産量の半分ぐらいが農協に出荷されているとして、農協に出荷しないで個人が自分のところで消費している分、あるいは自分のところの親族や子供に無償で送っている分だけでも七十五万トンぐらい。今、農家というのは自分で半分ぐらいは直接売っている。そういったものの区分出荷はどう考えておられますか。大臣、お答えください。
亀井国務大臣 いわゆる生産調整の段階で、先ほどの三%等々の問題、こういうことの中で、農家の方々が自分で消費をされる、あるいは縁故米、あるいはまたそれぞれのルートで販売をされる、こういう御指摘のようなことでありますけれども、それらは、今回の制度、集落あるいはまた地域でいろいろおまとめをいただく、こういう中で組織的にいろいろなことを進めなければならないわけであります。
 先ほどの御質問もありましたけれども、生産調整の段階で、農協あるいはまた集荷業者、こういう中でいろいろなことができるわけでありまして、ぜひそういう面で、地域の皆さん方がいろいろなビジョンをおつくりになる、地域で全体としてお考えになる、そういう中で、やはりいろいろコミュニケーションを図り共同して、全体、米の生産調整のもと、数量の面で進めていくわけでありますので、農家の皆さん方からそれぞれ御協力をちょうだいして、過剰米の短期融資制度が円滑に進むように全体としての御協力をお願いしたい、こう思います。
山田(正)委員 大臣、答えになっていないと思うんです。
 個人で流通している人たちにとっては、区分出荷する分については短期融資で六十キロ三千円というわけですから、だれも自分のところで、これは余剰米、いわゆる作柄一〇三で、その二十五万トンの中に入るものが自分のものだということで、区分してどこかになおしておいて、それで三千円いただきますよという協力的な人がいるとお考えですか。大臣、お答えください。
亀井国務大臣 農協など集荷業者に対して出荷せずに個人で販売している農家についても、みずからの経営判断に基づきまして過剰米処理を実施する場合には、JAの作成する生産調整方針に参画し、豊作による過剰分のみをJAに出荷する。あるいはみずから生産調整方針を作成の上、その方針に記載した倉庫において明確に主食用と区分して保管し、食糧事務所が確認する。
 このような制度に参加をしていただき、また融資を受けることが可能であるわけでありますので、やはり、米全体の問題として、そのような農家の皆さん方も、全体の問題として御理解をいただいてこれに協力していただくようなこと、また、行政としてもそのようにいろいろ進めていかなければならないのではなかろうかと思います。
山田(正)委員 先ほどから、協力をいただいてと、それしか大臣は言えないようですが。
 米の出荷の半分は、農家がやっていらっしゃる流通、販売ですね。それで、農家自体が、三千円で、いわゆる加工用に回すとかという米を、自分のとれた米のうちからそれだけを区分してということは全く考えられない。となると、区分制度そのもの、これがこの法律はまさに破綻しているということなんです。
 では、農協でも、私が農協に出荷するとして、そのうち三%が三千円になりますよと。あとの部分については一万六千円とかその他にしても、その三%部分は三千円になりますよということは、結果として一万六千円の価格をさらに大きく引き下げることですから、農協に出荷しなくなる。農協に出荷しなくてもいい。
 農協自体としても、大臣、農協は千も二千もあるわけです。自分のところは何も区分米を集荷したんじゃありません、区分米は農家の方々がそれぞれ自分のところで加工用米として処理しております、これは全部、区分米じゃない普通の米です、そう言って流通に出す。
 だれも、安いもので、幾ら融資してもらうからといって三千円で処理しようなんて、農協だって民間ですから、国がやっているわけじゃないんですから、やれるわけがない。この区分出荷制度そのものは大変な法的欠陥であり、こんなことを考えること自体、役人の作文で、全く実際に即していない制度だ。大臣、そうお考えになりませんか。
亀井国務大臣 農協なりあるいはまたいろいろな取引の形態でそのような余剰米がそういう形で市場に出るということになりますと、全体的に米の価格が下がることになり、また農家全体としても適正な米価というものが維持できない、こういうことにつながるわけであります。
 ぜひ、そういう面では、このような制度をそれぞれの農業者が、またいろいろな施策をこれに付随して進めておるわけでありますので、やはりお米全体の問題として、先ほど来私繰り返して申し上げておりますとおり、行政もその趣旨を徹底し、そしてそのPRに努めて、また、農家の皆さん方にもそれにお力添えをちょうだいするようなことを進めることによって、この制度を何としても制度として機能させてまいりたい、こう考えます。
山田(正)委員 事実上あり得ないような制度、事実上考えられないような制度をどうしてもやりたい、協力したい。農水省はばかなことを考えたなと僕は思っておりますが、それはそれ。
 長官に私がお聞きしたいのは、区分したとされる米について、一体これは、ほかに少しでも高く売る努力といったものはもう一切しないで、そのまま真っすぐ加工に回すようになっているわけですか、どうなんですか。
石原政府参考人 区分出荷したものにつきましては、これは本来過剰分でございますので、新規用途分、例えば今いろいろ話題になっております米粉パンの原料に使ったり、そういう新規用途に振り向けていただくというように我々は考えております。
 それで、先ほど、区分出荷の制度について農林水産省が考えて云々というお話がございました。我々は、過剰米が出たことによって米の価格が引き下がる、これを何とか防ぎたいということで、先ほど大臣が繰り返し申し上げておりますように、全体として農家の皆様方に御協力いただいて今回のこういう制度をつくり上げて、これを運営していこうということでございます。この区分出荷の問題につきましては、決して農林水産省が考えたということではございませんで、この辺は農協とも十分相談し、こういうことを組み立てたということでございます。
 それで、今まで過剰が出たときどうやっていたかといいますと、千円で売っていたわけです。これは、共計ということで、農家はすべて農協に出します。そのうち、残ったものにつきましては、農家は御存じないんですけれども、最悪、千円で処理していた、そういうのが実態なんです。
 それを、今回JAの米事業の改革もしていただきますけれども、そういう中に今回の区分出荷という制度をうまく組み入れていただきまして、これまでは、過剰が出たときその都度その都度対応していたものを、既存の、事前の策として、事前というか最初からある既存の制度としてこしらえ上げて、この制度のもとに、過剰米が出たことによる価格の低落を防ごうということでございますので、御理解いただきたいと思います。
山田(正)委員 長官、大変大事な発言をしたわけですが、その米を六十キロ千円で処理しておった、これが事実だとして、それは初めて聞きました。それが実際にそうして公表され、農家としては、農協に出荷した米については場合によっては千円で処理されておったという事実なんですね。一般に、今農協出荷は五割もないと思いますが、それであったらますます農協に出荷するということはなくなる。そんなばかなこと。
 それともう一つ。私が食糧庁のあなたの部下に聞いた話では、区分出荷している三千円の米も、できるだけ高く売るように努力するという話を聞いたんですが、それは違うんですか。
石原政府参考人 高く売るといいますのは、我々、先ほど来先生が六十キロ当たり三千円とおっしゃっています。去年、これの検討の過程で三千円というのを一時提示したことはございますけれども、これは、きょうも何度もお答え申し上げておりますように、八月の概算要求時点までに最終的な姿を決めるということで、三千円と決めているわけじゃありません。
 いずれにしましても、いわゆる、言葉は悪いですけれども質流れ、過剰分については、主食用として使わないで、新規用途分として使っていただく。使っていただいたものを、これは過剰米処理対策の中で円滑に回らないといかぬものですから、できるだけ高く売る。例えば、これをえさに処理するとなると、先ほど来言っておりますように、千円でございます。これではなかなか、農家の結果的な負担になりますので、そういうことにならないように、より高く。例えば米粉パンの原料として売りますと、大体四千円から五千円になります。要するに、より高く売るような努力をするという趣旨でございます。
山田(正)委員 これ、農水省が出している、いわゆる調査室が出している「法案の概要と論点」ですが、この中によりますと、「主食用等として販売した場合は、その融資額を返済するが、販売できなかった場合には、米穀安定供給確保支援機構に現物弁済としてその米を引き渡す」とある。主食用として売るとはっきり書いてあるじゃありませんか。間違ったことを言わないでくださいよ。主食用として売るということであったら、流通に回るということだから、そうしたら、結局のところ、市場価格を引き下げる要因になりはしませんか。
 大臣、今のお話を聞いていて、どうお考えでしょうか。
亀井国務大臣 翌年度の過剰米短期融資制度、これを「米穀安定供給確保支援機構からの一年以内の短期融資を受けることができる。そして、翌年産の生産量を減少させて主食用等として販売した場合は、その融資額を返済するが、販売できなかった場合には、米穀安定供給確保支援機構から現物弁済としてその米を引き渡すことができる。」ここにもありますとおり、主食用等、こういうようなことで、いろいろのことを考える。
 「機構は、現物弁済された米を、既存の加工用米用途ではなく、米粉調製品代替、米粉用などの新規用途及びエサ等の主食用以外の用途に向けることとなる。」こういうことではなかろうかと思います。
山田(正)委員 大臣、だから今言っているんですよ。これは、翌年度の生産量を減少させたとしても、今年度区分された米を主食用に売るということは、今年度の相場を引き下げる要因になることは間違いないわけですね。そうすると大臣、いいですか、もう時間がなくなってきそうなので一言だけでお答えいただきたいんですが、それでは区分出荷の意味がないのではありませんか、どう思われますか。一言でお答えください、次の質問がありますので。
亀井国務大臣 私は、区分出荷のことを十分踏まえておると思います。それが、翌年の生産量、こういう形でいろいろ勘案して処理するわけでありますから、それが区分出荷の機能というものを果たしておる、このように思います。
山田(正)委員 どうも農水省は法制局との打ち合わせが随分悪かったんじゃないか。
 私がこの法案の条文を子細に調べてみますと、第九条において、「規定する米穀を在庫として保有する措置の実施のために必要な資金に充てるための無利子の資金の貸付けを行うこと。」というのが第九条の一項にあって、この中に第五条の第二項第二号を準用しているんですが、第五条の第二項第二号によりますと、「生産数量目標を達成するためとるべき措置(天候その他の自然的条件の変化により生産数量目標を上回って生産された数量の米穀に係る措置を含む。)」とありまして、これを素直に読む限り、区分、区分というのは不可能だと思いますが、区分されたものについては販売しないで在庫としてそのままとめ置くというふうにしか法律で読めないと思うんですが、今ここで法制局を呼んで法律の論議をするつもりはありませんので、次の質問に移りたい、そう思います。
 今、農水省は、余った米の在庫、いわゆる在庫備蓄というもの、そういったものを回転備蓄しているわけですが、それに要する費用は年間どれくらいかかっているんでしょうか。
石原政府参考人 保管料経費ということでは、十四年の実績でございますけれども、二百六十四億円となっております。
山田(正)委員 今年度の予算では三百十二億円、今、いわゆる在庫がどれくらいあって、在庫費用はトン当たりどれくらいかかっていますか。
石原政府参考人 在庫でございますけれども、十四年度の数字で申し上げますと、国内米が百五十五万トン、これは玄米トンでございますけれども、それから、MA米が九十五万トン、合計二百五十万トンでございます。
 それで、先ほども言いましたように、二百六十四億使っているということで、我々は通常、一トン一万二千円と申し上げます。これは時点の関係で、この計算では大体一トン一万円ぐらいになっていますけれども、実際は一トン一万二千円ぐらいかかります。
山田(正)委員 その一トン一万二千円は、何でこんなにかかっているんですか。ちょっと時間がなくなるので、これは保管料として、倉庫形態、営業用倉庫に二百五万四千トン、農業用倉庫に五十九万七千トン、いわゆる貸し倉庫というんですか、倉庫業に委託している委託料が一万二千円だ、そう考えてよろしいのかどうか。イエス、ノーで。
石原政府参考人 そのとおりでございます。
山田(正)委員 では、その保管料を、米を頼むときに、委託するとき、これは競争入札でやっているのか、随契でやってきたのか、イエスかノーだけ。
石原政府参考人 随契でございます。
山田(正)委員 これは、今このような時代に随契でやってくれば、随分高いものに長い間かかっているんじゃないのか。その実態を私は調べなきゃいけないなと考えているところですが、今回それまで時間がありませんでしたので、その程度でとめておきます。しかし、少なくとも随契じゃなくて、大臣、やはりそういう場合には競争入札してできるだけ安くするということ、それをやっていただきたいと思います。
 もう一つは、大臣、この備蓄したものというのがほとんど主食用に回れないんですね。毎年毎年、需給は緊迫して、消費は少しずつ減っていっていますから。それでどうするかというと、保管料だけがどんどんどんどん高くなって、今、平成八年産の米がかなりある、九年産の米もかなりある。いわゆる海外援助用になって、在庫そのものが大変な財政負担になろうとしている。さらに今度は百万トンまで在庫を減らそうとする。
 ところが先般、いざというときに、食料危機になって、冷害になって、二百五十九万トンか、海外から米を緊急に入れざるを得なくなった。そういうときもあるわけですね。それを考えると、いわゆる備蓄のあり方ということを、大臣、ここで大きく考えなきゃいけないんじゃないか。
 というのは、私も随分考えてみたんですが、回転備蓄ではなく、もうはっきりと、これは主食用に回しません、主食用に一切回しませんという棚上げ備蓄。主食用に回すときには、まさにいわゆる天災その他で、あるいは貿易が緊急に、例えばことしのオーストラリアが、天候不順でもって食料の輸出国から輸入国になった。アメリカがそうならないとも限らない。そんなときのために備蓄する。その備蓄を、いわゆる高い政府保管米倉庫等にやるのではなく、自分で、国が備蓄倉庫をつくってやったらどうか。備蓄倉庫じゃなく、備蓄のサイロ、もみサイロ、もみで夏場だけ低温でサイロ保管すれば、大臣、食味としては十年、二十年もつんですね、これは。いざというときに主食用にもなる。
 そして、このコストなんですが、私が、佐賀の方に実際にあるカントリーエレベーターと、もみサイロ、夏場だけ低温で保管するところを見に行って調べてきたんですが、これは三百トンのものが一基当たり二千百万でできるんです、サイロが。このサイロ五十基をつくったとして、そこだけで一万五千トン備蓄できるわけですね。その生産コストというのは十一億一千万なんですよ。
 したがって、仮に五百万トンあたりの、産地にサイロで、もみでカントリーエレベーターのところに備蓄する施設をつくったとしても、大体三千億ぐらい、これは農業構造改善で五年計画でやったら十分やっていける金額なんですが、これでやれるんじゃないか。
 そうすると、償却コストはそうかかるものじゃありません。私がトン当たりで計算して、いろいろ計算もあったんですが、夏場の電気代と償却、あとは人件費の管理費なんですが、いわゆるサイロ備蓄でやった場合、大体一トン当たり千五百円ぐらい。これは、農水省も食糧庁もぜひ試算していただきたいんですが、サイロ備蓄で、もみで、産地でこれをやった場合に、今、回転備蓄している価格の大体十分の一でできるんじゃないか。例えば三百億かかっているとしたら、三十億でできる。
 大臣、これは大変大きなことなんですが、そういう形で、完全に備蓄の考え方を切りかえる、従来のものではなく。そして、備蓄のあり方、ありよう、何のために備蓄するか、これを私どもの野党案では十分に検討して、そしてけさ、一応、備蓄の骨子を示したわけです。
 次の審議では、大臣、十分我々の米法案についての検討をしていただきたいと考えまして、私の質問を終わらせていただきます。
小平委員長 次に、中林よし子君。
中林委員 私ども日本共産党国会議員団は、WTO協定の問題あり、そして昨年の米政策改革大綱が決定され、それがいよいよ法律案となって具体化して出てくる、その最初の改正案がこの法案だというふうに思うんですけれども、そういうときにあって、主食である米が、米政策が大転換をさせられるというこの時期に、二月、三月に二カ月かけて、北海道から九州まで、現地の調査をしてまいりました。
 生産者、消費者団体、自治体などなど関係者の御意見を聞いてきたわけですが、北海道の米の一番生産地であります新十津川町、ここでお話を聞きました。ピンネ農協の幹部の方が、米の価格下落に加え、転作で取り組んだメロン、花、長ネギ、ブドウも、すべて価格がじり貧になってしまっている、こういう話をされて、一生懸命やっても確実に収入は減っていく、保険を解約して資金のやりくりをした、こういう農家の実態がございました。
 それから、北海道だけではありません。四国・南国市、JA南国市でも、もう今の価格で採算は合わない、現在、ここら辺の価格は一俵一万四千円で赤字だ、最低二万円なければやっていけない、稲作農家はやはり価格が大切、しかし残念ながら現実はそうなっていない、こういう話。
 今少しばかり紹介をしたわけですけれども、このように、一番の問題はやはり米価の問題だということがはっきりとわかりました。現にこの間、九二年、二万一千九百九十円が、二〇〇二年には一万五千九百二十九円、六十キロ当たり六千円以上も下落をしている、これが実態です。
 本来、生産者の声にこたえる、米生産に対してこたえていくということであるならば、一番米価が問題なんだ、この間こんなにも下落していると言っているわけですから、この米価に対して回復できるような、そういうものでなければいけないというふうに思うわけです。しかし、今回の主要食糧法の改正案では、一段と市場原理が導入されていくことになって、一層の米価下落を引き起こすことは容易に想像できるわけです。
 政府が先般提出いたしました農業白書、これでどのような分析をされているかということを私も見させていただきました。
 この農業白書でも、農産物の下落により農業経営の収益が低下しているという記述があったり、それから、かなり厳しく、正直にというか、分析されているというふうに思うんですね。「著しい価格下落が農業経営に与える影響は、大規模経営や規模拡大等に向けて多額の投資を行っている経営体ほど大きくなると考えられる。このため、このような経営リスクを軽減し、効率的かつ安定的な農業経営やこれを目指す意欲的な農業経営が、安心して経営規模の拡大や経営の転換等に取り組めるよう、著しい価格下落があっても経営全体の安定が図られるセーフティネットの整備が求められている。」というふうに、価格下落が大規模農家に対しても大変な経営圧迫要因になっていると、あなた方自身もそういう分析をされているわけです。
 だから要するに、今度の法案で、さらに一層規模拡大あるいはコスト削減、これをうたっているわけですけれども、今の生産者の実態からいえば、余りにもかけ離れた方向性しか出ていない。この食糧法の改正案の道を進んでいくならば、さらなる離農者を増大させ、耕作放棄地を広げ、当然日本農業破壊に導いていく道だ、そういうふうに思うわけですね。
 大臣はきっとそうではないというふうにおっしゃるかもわからないけれども、そうならないというならば、どうするおつもりか、大臣、御答弁いただきたいと思います。
    〔委員長退席、楢崎委員長代理着席〕
亀井国務大臣 今回の改革におきましては、今先生いろいろお述べいただきましたような問題、これらを何とか解消しなければならない、こういう観点に立ちましてこの改革を進めるわけでありまして、第三者機関的な組織による助言を踏まえて、そして需要量予測に基づく、当面国が生産目標数量を配分する。また、生産調整メリット措置、産地づくり推進交付金のもとで需要に見合った売れる米づくりを行う。過剰米短期融資制度によりまして、農業者、農業者団体等が主体的に豊作による過剰米を処理することにより需給の均衡を図る。
 また一方、現在の経済状況のもとで、作柄の豊作や凶作等によりましてどのような価格変動が生ずるかは想定しがたいわけでありますが、仮に豊作により価格が下落する事態が生じた場合には、当面、米価下落影響緩和対策によって下落幅の一定割合を補てんする、あるいは担い手農業者に対しては担い手経営安定対策を講ずる。これらを講じまして稲作経営への影響を回避できる、このように考え、今回の改革を進めて、いろいろ難しい課題に直面する米作経営、米の問題に対して対応してまいる、このような考え方であります。
中林委員 要するに、大臣も、価格下落、これはさらに引き起こされかねない、ただし、いろいろな施策を講じるから需給均衡がとられれば大丈夫なんだ、こういうことをおっしゃったわけですけれども、例えば産地づくり交付金とおっしゃいましたが、きのうから議論を聞いていて、全く、どの程度どんなものが出てくるかということはまだまだ、各自治体などの取り組みを勘案しながら八月の概算要求までに取りまとめていくというようなことで、全く農家の判断材料は示されていないんですよ。
 それなのにこういう法律案を決めていこうなどというのは、農家に本当にこれをやれば大丈夫なんだというような判断材料がないじゃないですか。そういうことを口先だけで、いや、まだアイデアを求めているところだとか、そういうようなことで、その裏づけになるものは一切ありません。
 過剰米処理の話も、まだ三千円は決まったものではないなどと言いながら、六十キロ当たり千円だ、三千円だというのは、泣くにも泣けないような価格なんですよ。農家の皆さんは、これは過剰米としてつくるわけでもないし、一生懸命つくって、その結果、本来ならば豊作を喜ばなければならないのに、これは過剰でございますからいわば質流れとして出してもいいじゃないかみたいな論は通らないというふうに思います。
 しかも、価格下落に歯どめをかけるそれらの予算はふえていないんですよ。例えば、平均の八割補てんだとかいろいろな数字は並んでいますけれども、十割補てんなんということは全然ない。予算は減らしていくということですから、今までよりも農家の手取りというのは確実に減っていく、そういう施策でしかあり得ない。今若干紹介しましたけれども、もう価格は限界だ、もうこれ以上下がったら農業をやっていられないというのが全国各地の率直な意見です。
 このいわば価格下落の対策の一環だと言われている担い手経営対策、それについてお聞きするわけですけれども、これが本当に経営改善になると本気で皆さんお考えになっているのか、政府が考えているのか。担い手対策で一体どれだけの農家が対象になるのか。
 これを見ると、一定規模以上の水田経営を行い、米価下落影響緩和対策に加入し、青色申告を行っているなどの要件を満たす認定農業者とそれから集落型経営体、そういうふうになっているわけですね。北海道は一定規模以上というのが十ヘクタール以上、都府県では四ヘクタール以上、それから集落経営体は二十ヘクタール以上という条件になっているわけです。
 これは、九二年から始まった新政策も、若干面積規模などの提示は違っておりますけれども、同じ手法が今回も取り入れられております。本当に一部限定されたものでしかあり得ないというふうに思うんですけれども、一体それによって農家がどのくらいカバーできるのか、北海道、都府県、集落型経営体、それぞれでお答えいただきたいと思います。
川村政府参考人 委員お尋ねの担い手経営安定対策でございます。
 これは、米価が下落した場合に稲作収入の減少の影響の度合いが大きい水田営農の担い手を対象といたしまして、米価下落影響緩和対策の上乗せ措置として措置をするものでございまして、担い手の経営安定の機能プラス水田農業の構造改革を加速化させるという趣旨でやっております。
 そして、今委員が申されたとおり、この施策の対象といたしましては、認定農業者または集落型経営体、また一定規模以上の水田経営を行っているということで、構造展望の目標にできるだけ近づく努力ということを促したいということで、おおむねその二分の一を基本として、北海道で十ヘクタール以上、都府県で四ヘクタール以上、これは個別経営でございますが、それから集落型経営体については二十ヘクタール以上等要件を課しているわけでございます。
 これがどの程度のカバーになるかというお尋ねでございまして、今申し上げましたようにいろいろな要件がございますので、現時点でこうだということが申し上げがたいわけでございます。したがいまして、一番推計のしやすい面積要件で見ますと、個別経営でございますと、北海道で約一万戸、それから都府県で八万戸、合計九万戸の農家が対象になるのではないかと思っております。
 それから集落型経営体でございますが、これも、今申し上げましたように、現在全国に水田での集落営農というものは約七千ほどございます。これが現状での母体にはなると思いますが、私どもがこの集落型営農ということを担い手として位置づけるということを明確な政策として打ち出しましたので、今後は地域水田農業ビジョン、地域のビジョンをつくるということでございますので、そういった中で担い手の話し合いも積極的に行われますので、その母数の拡大ということも十分期待をしているところでございます。
    〔楢崎委員長代理退席、委員長着席〕
中林委員 今お答えがあったように、北海道で一万戸。これはまだ面積だけですからね、推計しているのは。だから、その他いろいろな要件を満たさなきゃいけないということも勘案すると、必ずしもそうだとは言い切れないというふうに思うんですね。一万戸だと四四%。それから、都府県八万戸だとわずか四%。集落型経営体というのは、現在集落営農をやっているのが七千団体ぐらいある、これは母体になるだろうと言われているわけですけれども。まず、一定規模以上を見ただけでも、北海道で半分以上の農家は対象にならない、それから都府県では九六%の農家が対象にならない、まさに一部限定された対策でしかあり得ないということですね。
 だからこそ、集落型の経営体、二十ヘクタール以上ということを条件につけたんだ、対象にしたんだとおっしゃるんだけれども、これで本当にみんなカバーできるかどうかというのは、この調査室が出されている、現在の集落営農をやっている方々のアンケート、その取りまとめがありますけれども、認定農業者、農業生産法人等に農地の集積を進め、集落単位で土地利用、営農、いわば今回担い手対策としてやろうとしているのに、現在そうなっているかというのは一〇%しかない、一割しかないんですよ。そうすると、あとの九割というのは現時点ではまだ取り組む方向性も出ていないということだと思います。
 集落型経営体で七千が母体になると今局長はおっしゃったわけですけれども、大体どのくらいというふうに予測されていますか。
川村政府参考人 今、七千と申し上げましたのは、現在あります集落営農が約一万近くございまして、水稲なり陸稲を中心とする集落営農が七千ぐらいあるということでございます。その内訳もさまざまでございまして、今申されたとおり、集落内の営農を一括管理運営する、ほとんど経営体といっていいものが今おっしゃったように一割強ございますし、また、作付の集団化など土地利用調整をやっているものも、アンケートによりますと五割程度あるということでございまして、そういうこと。それからまた、土地利用調整をしております土地利用改善団体というものもございます、これは全国で一万二千ほどございます。
 それから、先ほど言いましたように、私どもとして明確にこの集落型の営農を担い手として位置づけるんだという方向を昨年の米政策大綱で打ち出しましたので、それに呼応する形で、各地で今、集落レベルでの話し合い等も始まっております。そういう意味で、私どもとして、今現実に大体どの程度という見通しは残念ながらお答えできないわけでございますが、かなりの取り組みを期待しているところでございます。
中林委員 今回の米政策改革大綱そのものが、新政策の行き着いたところの矛盾を新たな形で組み直して出してきたということで、全く反省が見えない延長線上にあるというふうに思うんですね。
 こういう経営体の方向性も、新政策のときに、個別経営体十五万戸、組織経営体群二万戸というようなことで、大体一定規模というのが十から二十ヘクタールというように方向づけがされておりましたけれども、さっき言いましたように、その道を進んだ結果が、米価の大下落を引き起こし、これ以上米価が下がればもうとてもじゃないけれども経営をやっていけないよということを、こもごも全国各地の生産農家が語っているわけですよ。
 それを踏襲して、今回はその一定規模以上の面積を多少変えたりしてはいますけれども、考え方とすれば同じ道を突き進もうとしております。私は、これは本当に絵にかいたもちだなというか、机上のプランから出てきているものだということを思わざるを得なかったのは、やはりこの全国調査で聞いたさまざまな地域での話です。
 北海道農業会、ここで聞いた話ですけれども、重点化と言うが余りに極端過ぎる、このような声が出ております。それから、北海道農政部、これは道の農政部ですけれども、小規模な農家も残っていく仕組みが必要、多様な農家が残ってこそ地域に活力が生まれる、こういうふうに、いわば新政策に基づいて規模拡大路線の先頭を走ってきた北海道で、政府の選別政策に疑問を今回投げかけておられました。
 さらに滋賀県。これは湖東農協、その幹部が、この方向では限界感がある、政府は農地の集積というが、一番打撃を受けるのは大規模農家、規模拡大の志向はありません、資本投下しても回収できない、逆に規模を縮小したい、こういうふうな声が出ました。
 それから、佐賀県の、これは地域のリーダーとなっている若手の認定農業者の話ですが、政府は、大規模化すれば生き残れると言う、しかし一方、WTOでの関税引き下げ、この要求があって、そういうリスクを直接受けて真っ先に倒れるのは大規模農家だ、こういう声でございました。
 このように、ごく一部の農家に施策を集中させていく、限定させていく、これにはこんなにも反発が出てきている。私は、北海道の道の農政部が言われたような、本当に小規模な農家も、多様な農業があってこそ地域の活性というのは保たれていくんだ、これが私はまともな声だというふうに思うわけです。
 だから大臣、実際地域のリーダーとしてもやってきた、規模拡大もやってきた、そういう方々が、今回の米政策改革大綱で一部の一定規模以上のところにしか集中しないような、そういうことになることに反発をしておられる。こういう声に耳を傾けたら、こんな施策は出てこなかったはずだというふうに思うんですけれども、なぜこんな人たちの声を取り入れなかったのですか。
亀井国務大臣 この米政策の問題、このことにつきましては、農林水産省といたしましても、あるいはまた農業団体の皆さんのいろいろ御意見を承り、そして進めてきた経緯でもございます。
 そういう中で、今の米の状況、またこの閉塞感、こういうものを打破していかなければならない。そして、消費者そして生産者、こういう関係が、顔の見える関係へ、そして需要に合った対応、こういうことを総合的に進めなければならないわけでありまして、今日までいろいろの意見をそれぞれ行政といたしましても酌み、今日の改革、このことを御提案申し上げておるわけであります。
中林委員 まあ全く、私はきょう大臣と、今回の通常国会の中で最大の改正案に対する議論ですから、本当に生な声で議論させていただきたいというふうに思っていたわけなんですよ。
 それで、前々大臣、武部大臣のときに、新政策の評価で議論したときに、一方でミニマムアクセス米の輸入を受け入れる、新政策でより一層市場原理を用いられる、そして大規模化でコスト削減を求められる、この方向が現在のような米価の下落を引き起こして、耕作放棄地が、中国の山口県を除く四県と四国四県、これに匹敵するものが耕作放棄地に今なっているわけですよ。このわずかの間でこれだけ農地が減り、農家戸数も減っていくということは、そういうものがあったからではないですかということを言ったら、そういうこともあったでしょうと、一部お認めになった経緯がございます。
 問題は、今、大規模化に集中しようという、北海道で十、都府県で四という一つの面積要件が出ているわけですけれども、この大規模から外れるもの、集落型経営体ということをお考えのようですけれども、これに対しても、実は全く空論だという声を至るところで聞きました。
 山口県、これは県の農林部長ですね、山口では条件不利地域が多いだけに、集落営農にしても、中核的な人間がいるかいないかにこだわらず集落全体の協力を重視してきた、こういうふうに言い、山口県のJA中央会も、経営規模七十アール平均という中四国では、経営規模が小さい農家がすべて一体となって頑張ってきたのに、それを踏みにじる今回の大綱に憤りを感じる、山口県に必要なのは大綱ではなく、過疎、高齢化、後継者対策だ、こういう率直な声を聞きました。
 それから滋賀県。ここは集落経営体を、いわば滋賀県では兼業農家全国一で集落営農が早くから取り組まれていた、そういう歴史を持っている。湖東農協、ここでも、湖東町は認定農家は一人しかいない、集落営農二十ヘクタールはできる、しかし仲よしクラブのようなもので、一定期限以内に法人化を目指すというようなことをクリアできるところは全くない、政府がやろうとしている集落営農はコルホーズ、ソホーズみたいなもので、失敗するに決まっている、経理の一元化などできるはずもない、こういうことを述べているわけですね。
 だから、本当にこういうことで農業が成り立っていくというふうに大臣はお思いですか。
亀井国務大臣 今いろいろお話をいただきました。しかし、今回の改革を通じて、米経営を通じて、今までのいろいろの問題点、こういうものを是正し、そして担い手経営安定対策等々の施策を進めまして、そして米作の経営、こういうものが成り立つような形というものを、この制度を導入いたしましてつくってまいりたい、こう考えて、いろいろの施策を今御提示しておるようなわけであります。
 いろいろお考えもあろうかと思いますけれども、やはり米の今日までの反省の上に立って、そして米作経営、こういうものが、特に若い担い手の皆さん方が意欲を持ってやっていただくような形というものをつくってまいれる、このように思っております。
中林委員 私は具体的に中山間地の話も聞いた、大規模を突っ走っていた方々の声も聞いたけれども、もう無理ですよと言っているんですよ。そうじゃなくて、ちゃんとした価格下支えがあるような、もうこれ以上の米価の下落を起こさせないような、そういう仕組みこそ必要なんだけれども、相変わらず効率化、安定化、コスト削減、こんなことばかりで押していっている。これではもう受け入れられませんよというのが実態で、幾らこういう改正案を実行しようとしても、まさに実効性が乏しいものになってしまうというふうに思います。
 そうなると、一体、日本の農業はどうなるのか、米生産はどうなるのか、そういうことが問われてくると思います。離農者が後を絶たないとか、米づくりから手を引くとか、こういうことになると、二〇一〇年までに四五%に自給率を高める、こういう目標を政府は決めているわけですけれども、本当にそういうことができる自信があるのか。
 実は、九二年から新政策が始まって、同じ路線ですよ、効率化、安定性、コスト削減。この道を進んだ結果、一九九二年には自給率四六%ありましたよ、それが結果は今四〇%でしょう。それを、同じ路線を歩みながら二〇一〇年までに四五%に引き上げる、こういうことをおっしゃっているけれども、言うだけになってしまう、結果的にはもっと下がるんじゃないかということを私は恐れているわけですけれども、どうやって引き上げるおつもりなのか、大臣の御答弁を求めます。
亀井国務大臣 自給率の向上を図ることは農政の重要な政策課題であります。その面から、生産サイドにおいても消費者の需要に結びついた生産を行い、あるいはまた、それが消費者に結びついてこそ自給率の向上が図られるところでありまして、食料・農業・農村基本法においても、食料の供給は国民の需要に即して行わなければならないことや、消費者の需要に即した農業生産を推進する、このことを規定しておるわけであります。
 今回、消費者重視、市場重視の考え方に立ちまして、需要に即応した米づくりの推進を行うことを基本として施策を進めるわけでありまして、これらいろいろの政策を遂行することによりまして、食料自給率の向上のために努力をしてまいりたい、こう考えております。
中林委員 この食糧法の改正で、大臣、もうこれ以上離農者は出ないとか、確実に米の生産が引き上がるとか、こういう自信が本当におありですか。もしもこれ以上、米生産から農民が手を引けば、確実に自給率は下がりますよ。
 政府は、私たちも大賛成なんですが、水田は多面的機能を持っている、これがWTO協定の中で交渉の柱になっているわけですよ。これ以上の耕作放棄地が広がれば多面的機能も果たせない。とりわけ、カロリーベースですから、米のカロリーが食品の中で一番ウエートを占めているわけですよ、ここが下がるからみんな下がっていくという状況になります。本当に自信を持てるのか、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
亀井国務大臣 今回の米政策改革大綱に基づく法整備等々によりましていろいろの施策を進める、こういうことで、食料の自給率の向上のために全力を挙げてまいりたい、こう考えております。
中林委員 もう時間が参りましたので終わりますけれども、いろいろな施策を実行するとか言うんだけれども、自給率を上げるためには国民の食べ方を変えなさいと言って、私みたいに脂肪分をとっている者は減らしなさいというようなことが書いてあって、それを実行しなかったら、国民が悪いんだから上がらなかったんだ、こういう計画になっているわけですよ。
 私は、本当に総合的に自給率が上がるようにするためには、転作していく飼料だとか麦だとか大豆だとかこういうところにきっちりとした価格政策をとっていく、そういうことなしには自給率は絶対上がらないということを申し上げて、まだ議論は途中ですので、次回に回したいというふうに思います。
小平委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 米政策改革大綱に基づく今回の食糧法の改正、私は、米政策の大きな転換という形でとらえていて、今後に悔いを残さないように、どう改革の方向性をつけていくのかというのは、この委員会にかけられた大きな責務だと思っております。そういう意味では、これからずっと議論していくわけですけれども、基本的な点をこれから問いただしておきたいというふうに思っております。
 この一年、昨年の十二月三日に米政策改革大綱なるものが発表になって、それ以前から、その一年前から多くの議論がなされておりました。その議論の中心は、何といっても国による減反配分の廃止、そして農業者、農業団体による減反に切りかえていくという点だったというふうに思っております。そして、それと同時に、面積配分から数量配分に切りかえていくということだったと思います。
 これまでの減反政策を本当に根本から変えていこうという緒についたというふうに思っておりますけれども、この減反政策を変えた理由、どこに原因があって、これからどういう方向に持っていこうとしているのか、これを明らかにしていただきたいというふうに思っています。
 それから、その点、そういう方向性をつけながら、この実効性をどのように確立していくのか。これは、平成十六年、十七年、十八年とやって、平成二十年からというふうにタイムラグを置いておりますけれども、この間、本当に実効性が上がらないがゆえにこれをまた変更するなどということが起こり得るのではないのかなと私は思えてならないんですけれども、この点についてどう考えているのか、答弁願いたいと思います。
石原政府参考人 二つお尋ねがありましたけれども、まず、生産調整について、これまでのいわゆるネガ面積による配分からポジ数量による配分にどうして切りかえるのかということでございます。
 御案内のとおり、現在、ネガ面積で配分、すなわちつくらない面積を農家に示しているわけでございますけれども、こういうもとでは、一つには、豊作等により生産調整効果が減殺される。それから二つ目には、農家にとりまして、米を生産できない水田を保有しているんだ、そういう意識がどうしてもぬぐえません。そのため、需要に見合った売れる米づくりを行うという環境ができ上がっていないということでございます。
 それから、消費者は何といいましても有機栽培、有機米、減農薬米、こういうものを求められるわけでございますけれども、たくさんつくりたいということで、有機栽培等への減収を伴う取り組み、こういうのがどうしてもおろそかになるという点もございます。それから、とにかく配分された面積をこなすことが至上命題化しておりまして、水田農業の構造改革、それから地域の特色ある農業展開や農業者の主体的な経営判断が阻害されている、こういう問題があるということでございます。
 そういうことから、今回、十六年度からの需給調整につきましては、需要に見合った米づくりをするというのが方向でございます。そういう観点から数量による調整をする方向に転換したいということでございまして、その数量につきましても、客観的な需要予測、これによって生産目標数量を設定いたしまして、農業者、農業者団体が主体的経営判断による需要に応じた生産を行う姿を実現したいということでございます。
 それから、その農業者、農業者団体による主体的な生産調整、その実効性が担保されるのかということでございますけれども、我々といたしましては、この数量による調整方式、これに十六年度から転換します。そして、各都道府県産米の需要実績をベースにいたしまして客観的な需要予測に基づく生産目標数量を設定いたしまして、当面は行政ルートとそれから団体の方のルート、それであわせて行うということで、その間に農業者団体の体制整備をしていただく。要するに、いろいろなノウハウもそのときに習得していただきたいということでございます。
 それから、農業者の主体的経営判断に資するという観点から、需給や価格に関する情報をタイムリーに伝達するということも必要でございます。
 それから三つ目には、生産出荷団体等が作成する生産調整方針、これを国が認定する。そして、その生産調整方針を団体がつくるに当たりまして、その作成及び適切な運用につきまして、国及び地方公共団体が助言や指導を行っていくということもポイントでございます。
 そして、最後に産地づくり推進交付金でございますけれども、これの交付対象といたしましては生産調整実施者を考えております。
 こういうような措置をいろいろ講ずることによりまして、農業者、農業者団体が主体的な経営判断により生産調整が実効を伴って取り組んでいただけるような、そういうことを考えておるということでございます。
菅野委員 これまでも、面積配分による減反においても、各集落単位あるいは農協単位で議論して、それでいろいろな議論が展開されて、この減反制度というものが維持されてきたというふうに思っています。完全に維持されてきたのかというと、いろいろな意見が交換されながら、制度として進めてきたというふうに思っています。
 しかし、今度、数量に切りかえたときに、地域ごとに生産数量というものはアンバランスがあるわけですね。大量にとれるところと、東北でいえば、やませの常襲地帯で、米が、単収それこそ三百キロ、四百キロぐらいしかとれないところ、あるいは五百キロ、六百キロとれるところ、バランスがあるわけです。その地域地域においても単収にアンバランスがあります。
 それをどう配分していくのか。数量配分をどのようにして行っていくのか。最終的には個々の農家に減反数量を配分する形をとっていくんだというふうに思っています。ここがしっかりとした形で行われないと、ますます不公平感というものがその地域地域において生じてくるんだというふうに思っています。
 ここをどうクリアしていくのか。これをしっかりとした方向性をつけておかないと、この数量配分というものは失敗してしまうんじゃないのかなというふうに私は思っているんです。この配分方法をどのように考えられているのか、これを説明していただきたいと思います。
石原政府参考人 生産目標数量を具体的にどのように配分するかという点でございますけれども、先ほど申し上げましたように、生産目標数量につきましては、公正中立な第三者機関的な組織の助言を得て、透明な手続のもとに、各都道府県別の生産量と在庫増減により算定される前年の需要実績をベースに、可能な限り客観的な需要予測に基づいて設定するということにしております。
 透明性を持って、その数字の決定の過程につきましては、すべての農家、農業者団体の皆様方にわかるような形にするということで、今言われておりますようないろいろな不公平とかそういう問題につきましてもぬぐい去りたいということでございます。
 そして、これを全国段階から都道府県段階、それから都道府県段階から市町村段階へ配分していくわけでございますけれども、最終の農業者へ配分する段階では、これは一つには営農計画を適切に立てていただく必要がございます。
 それからもう一つは、生産調整を実施されているかどうかの確認、これをやる必要がございます。それもできるだけ簡易にやりたいということで、最後の農業者の段階につきましては、生産目標数量とあわせて、これを地域の実態に応じた単収に基づいて換算した作付目標面積も配分するということにしておるところでございます。
 この単収、これはいろいろ、今委員がおっしゃいましたように、それぞれの地域によって違います。現在の面積の配分も、違う単収をベースにしてそれぞれの県の割り当て等がなされているわけでございますけれども、我々は、この最後の農業者への配分につきましては、いろいろな考え方がございます。一つは、統計情報部の方で発表しております市町村別の収量がございます。それから、共済組合等が定めております水稲共済基準収穫量がございます。それから、都道府県の試験場のデータがございます。こういうものを基礎にいたしまして、それぞれの地域ごとに適切に決定していただきたいと考えているところでございます。
菅野委員 面積配分でも、国が目標設定して、そして都道府県におろして、そして市町村におろしていくというルートは面積のときと同じだというふうに私は思うんですね。変わっていないんです。面積のときは、一律面積ですから、これは市町村段階もある程度受け入れられたというふうに思うんです。
 これを各農家に割り当てるときにいろいろな議論がありました。これをまた、面積を数量に一回置きかえて、そして数量の基準単収というものに置きかえて、そして各農家に最終的には面積配分という形になっていくんだと思うんですけれども、一つの基準単収というものを入れて各農家におろすことによって、また複雑怪奇になっていく、そして地域において本来手をとり合うべき人たちの不公平感というものがまた助長されていく、そして生産意欲の減退につながっていくというふうに私は思うんです。
 そういう意味では、この減反政策というものをしっかりと私は総括する必要があるというふうに思うんですね。また複雑怪奇にして、そして減反政策を継続していく、このことに私は非常に問題点が存在しているというふうに思っています。
 本来の食糧法というものは、目的規定に主要食糧の産業としての育成というものが入っているんです。産業の育成というものは、その産業に従事する人の意欲を増長していかなければならないという側面を持っているんです。この米の減反政策というのは、これまでも生産意欲の減退につながってきました。このことを継続していきながら、どう生産意欲の向上を図っていこうとしているのか。一方ではその方針がしっかりとなければ、私はこの今回の大改正というものは実効性を伴わないんではないかと思っているんです。
 減退意欲の向上に向けて、どのように考えておられるのか、答弁願いたいと思います。
石原政府参考人 現在の生産調整のもとでは、あくまで面積で管理しているということで、先ほど来申し上げておりますように、その面積をこなす、その面積のもとでできるだけたくさんつくろうという農家の発想になります。
 そうした場合に、今消費者から求められておりますのは減農薬米あるいは有機米、こういうものでございます。そういうものにつきましては、どうしても量が少ないものですから、そういうものについての農家の取り組みがどうしてもおろそかになる、おくれがちになるという点がございます。そしてまた、先ほども申し上げましたが、配分された面積をこなすことが至上命題化しまして、水田農業の構造改革とか地域の特色ある農業展開、それから農業者の主体的な経営判断、こういうのは二の次、三の次になりまして、阻害されるという問題がございます。
 そういうことも考慮しまして、今回、我々は新しい方式で配分をしていこうということにしたわけでございますけれども、こういう新しい方式になりますと、先ほど申し上げました有機栽培、こういうものも、これは有機栽培となりますと、当然単収が落ちます。落ちたものをベースにしてそれだけの面積が割り当てられますので、どうしても農家の取り組みが進みます。要するに、こういうものへの農家の生産意欲といいますか、そういうものが進行するというように考えております。
 それからまた、需要先を開拓したり、あるいは売れる努力をする産地、あるいは売れる米をつくる努力をする生産者が報われる。あくまで需要実績をベースにして配分しますので、どうしてもこういういろいろな努力をしたところが報われるということになりますので、私は、先ほど委員がおっしゃいましたような、今回の改革によりまして、農業者の、生産者の生産意欲が損なわれるということはないと考えているところでございます。
菅野委員 食糧庁長官、先ほどの答弁では、目標数量というのは、市町村単位の単収を基準にして最終的には面積配分していく。それでは、市町村単位ですべて有機農業を取り入れてやっているか、そういう政策を展開しているかというと、そうではないんですね。個々の農家なんです。個々の農家に面積を割り当てるときに、市町村単位の基準単収というものをベースにして面積割り当てをする。だから、農法によって割り当てるという方法はとっていないという中で問題点はあるんだという指摘を私はしているんです。
 そういうところも最終的に詰めていこうとすれば、こまい点でいっぱい議論しなければならない。そして、議論していくときに、また個々の農家との不公平感というものが助長されていって地域における感情的な対立につながっていくというところを、どうクリアしていくのかという観点をぜひ考えていただきたいというふうに思っています。
 これらについても、これからもまだまだ議論していかなければならない点ですから、先に送らせていただきたいと思うんです。次に移ります。
 今回の改革で、米の計画流通制度が廃止されます。この点は、戦後農業において計画流通制度というものの果たしてきた役割というものは大きかったというふうに私は思っています。それで、今回、この米の計画流通制度を廃止する具体的理由というものはどこに置いているのか、答弁願いたいというふうに思っています。
石原政府参考人 計画流通制度を廃止する理由でございます。
 現行の食糧法で計画流通制度というのが設けられているわけでございますけれども、米の流通ルートの特定等いろいろな規制をかけております。そういう規制をかけることによって米を安定的に供給することを目指しているということでございます。
 実際は米の流通がどのようになっているかということを見ますと、計画流通米のシェアが、現在、生産量の五割を切る状況でございます。非常に、徐々に落ちてまいりまして、五割を切る状況。それでも安定供給に特段の支障は生じていないというふうに認識しております。
 それから、流通ルートが特定されていることによりまして、多様化する消費者ニーズにこたえられなくなっているということがございます。
 それから、これが一番大きな点であろうかと思いますけれども、規制、負担を課されていない計画外流通米が増加しております。そういうことで、いろいろな、例えば先ほど私一俵当たり千円ということを申し上げましたけれども、そういうものの処理はすべて計画流通米の負担でやっているわけです。計画外流通米はそういう負担をしておりません。この辺が大きな不公平感をもたらすもとになっているわけでございますけれども、こういう一物が二ルートで流通しているということに伴います不公平感が発生しているということでございます。
 そういうこともございまして、今回、この計画流通制度を廃止いたしまして、創意工夫ある米産業の発展と需要に応じた米づくりを促進するという観点に立ちまして、安定供給のための自主的取り組みを支援する体制に移行するということにしたところでございます。
菅野委員 この部分は、食糧管理制度というものから今の制度に移ったときにも大議論になった点だと私は思っております。そして、ついに主食たる米も、すべて政府の手を離れて市場原理にゆだねていくという状況まで来てしまったのかなというふうに思っているところでございます。主食たる米を、やはり国としてのかかわりを残していくことが、私は現段階であっても必要なことだというふうに思っております。
 そして、この計画流通制度の廃止に伴って、もう一つ、備蓄という考え方、これも表裏一体にあるというふうに私は思っています。
 今回、備蓄量の目標を百万トンにしております。今、米が食べられない食べられないといっても、年間九百万トン、米が消費されております。この備蓄量を百万トンとした理由ですね。万が一のときに国民の一割しか米にありつけないという状況を形づくること。この備蓄量百万トンとした理由はどこにあるのか、これを説明していただきたいと思います。
石原政府参考人 備蓄数量を百万トンとした理由でございますけれども、この水準につきましては、米の供給が不足する事態におきましても国産米による安定供給を図ることを基本といたしまして、最近の需要動向それから過去の作況変動、こういうものをもとにしまして、一つは、十年に一度の不作、これは作況でいいますと九二になります、それから通常の不作、これは作況九四を考えておりますけれども、こういうのが二年続いても大丈夫だということで、そういうものを考えまして百万トン程度と設定したところでございます。
 もちろん、たくさんの数量を備蓄すれば、それは安定供給ということで、消費者の安心をもたらします。しかし、その裏返しとして、消費者には大きな財政負担がかかるということ。例えば、第一次過剰あるいは第二次過剰のときに、それぞれ一兆円、二兆円という大きな負担をしておるわけです。
 そういうことも含めまして、いろいろ消費者の方、国民の皆様に知っていただいた上でこの備蓄の水準については考えていきたいということで、我々はこの百万トンを提示しているということでございます。
菅野委員 政府が言うように、今いみじくも話されていますけれども、一兆円、二兆円という金の問題に切りかえています。先ほども山田委員の方がこの点については問題点を指摘して、これからも備蓄について議論していくという問題提起をしておりますから、私も、これからも備蓄について議論していきたいというふうに思っています。
 それでは、平成十三年の十月、備蓄量が発表されて、百五十万トンを備蓄しているという発表になっています。この現在備蓄しているものについて、幾らの量を、どのような方法で、だれが、幾らの予算で備蓄しているのか、これを具体的に示していただきたいと思うんです。それじゃないとなかなか、金がかかるからこうなんだ、こうなんだという抽象的な議論だけが先行するような気がしてならないわけですから、具体的に説明していただきたいと思います。
石原政府参考人 備蓄でございますけれども、これは大きく分けまして、政府の行っている備蓄と、それから民間の、これは備蓄というわけじゃありません、調整保管というものがあります。
 政府の備蓄につきましては、今委員がおっしゃいましたように、十四年の十月末現在が一番新しゅうございますけれども、これでは百五十五万トンとなっております。
 このお金でございますけれども、この保管経費、これは専ら保管料ということで、先ほど一兆円かかりました、二兆円かかりましたというのは、それを処分したときの、要するに買い入れ価格と売り渡し価格の差額の分とかそういうのを計算しておりますので大きくなりますけれども、単純な保管経費、これだけでは平成十四年度に百六十五億円を支出しております。
 それから、民間の調整保管、これはあくまで、安定供給というよりもむしろ、供給過剰で価格が下がる、これを防ぐということで、需給調整を行う観点から行っております。これは全農等の自主流通法人が行っておりますけれども、産地銘柄ごとに必要な数量の米を在庫として一年間保有し、市場から隔離することによって価格の安定を図っているということで、これに対して、国は、金利それから保管料の助成を行っております。
 十三年産の自主流通米につきましては二十七万五千トンの調整保管が行われまして、これに対して、国が約二十六億円の助成を行っているということでございます。
菅野委員 もう一つ。今、買い入れ価格と売り渡し価格の差という部分が言われました。この部分が、政府がどうしても備蓄について回転備蓄から棚上げ備蓄に移せない大きな要素と私は思っています。
 社民党としては、この回転備蓄という制度が米の価格下落に大きな影響を及ぼしているんだから、棚上げ備蓄にすべきだということをずっとこの間強く要求してきたにもかかわらず、まだ実現されておりません。今回も、せっかくここまで改革しようとしているにもかかわらず、回転備蓄百万トンという方針を打ち出しています。
 この棚上げ備蓄についてどのように今まで検討してこられたのか、そして棚上げ備蓄についてどのような考えを、今後に、実現に向けて取り組んでいこうとしているのか。ずっと回転備蓄のままでいこうとしているのか。その辺をお聞きしておきたいというふうに思います。
石原政府参考人 棚上げ備蓄でない理由ということでございますけれども、棚上げ備蓄につきましては、先ほど委員の方からもお話がございましたように、不作等により備蓄放出の機会がない場合、備蓄を放出すればいいんですけれどもそういう機会がない場合は、最終的には援助あるいは飼料用として処理するということになります。そういうことになりますと、結果的に多大な財政負担を要するということになります。
 それから、どれぐらいの期間それを持つのかということでございますけれども、期間の経過によりまして品質の劣化は避けられません。そして、品質の劣化ということで備蓄米の放出を行うというときには、その年数に応じて劣化するわけでございますので、必ずしも主食用として適さない、いいものじゃないものを主食用に回すということになります。
 それから、買い入れをどのようにやるのかであります。仮にたくさん買って五年間それを持つということも考えられますけれども、そうしますと、在庫を更新するときに一時的にたくさん買い入れをすることになります。そうすると、生産調整規模が急激な変動をするということもございまして、農業生産への大きな影響が懸念されるということでございます。
 そういうことも考えまして、我々としましては、備蓄運営のコスト、それから生産への影響、そういうことを考えますと、申しわけないですけれども、なかなか棚上げ備蓄というのはとれないということでございます。
菅野委員 米余り現象ということがずっと言われて、そして減反政策ということで今日まで進めてまいりました。そして、今、備蓄量が百五十五万トンという数字が言われております。そして、十四年十月ですから、昨年の作況が全国的に一〇三という状況のもとで、この備蓄のあり方というものが今回の食糧法の改正にとって大きなウエートを占めていくんじゃないのかなというふうに私は思っています。
 ここでしっかりとした政府の関与をしていかない限り、豊作のときはまた米価下落という状況を招いていくというふうに悪循環を繰り返していって、米が低価格で農業経営ができないというような状況を引き起こすのではないのかなというふうに私は思っています。計画流通米が廃止になって、すべて市場競争にゆだねる政策をとったときに、このことが大きなウエートを持ってくるというふうに思っています。
 少なくとも、計画流通米として五〇%以上が、今五〇%はあったわけですから、そういう制度が存在したときにはこの議論はしなくてもいいと思うのですが、計画流通米を廃止してすべてを市場競争にゆだねていこうというときには、この備蓄というものの果たす役割は非常に大きいし、そしてそのことをしっかりとした体制でもってつくり上げておかないと、後に禍根を残すというふうに思っております。この部分については、もう一回、しっかりとした議論をして、考え方を問いただしていきたいというふうに思っております。
 いずれこれから、やっと議論の緒につきましたから、この全体的な姿を、将来に禍根を残さないように、しっかりとした議論をしていきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
    ―――――――――――――
小平委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、来る二十七日火曜日午前九時二十分、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る二十七日火曜日午前九時十分理事会、午前九時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十分散会


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