衆議院

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第15号 平成15年6月4日(水曜日)

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平成十五年六月四日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    青山  丘君
      荒巻 隆三君    石田 真敏君
      岩倉 博文君    岩崎 忠夫君
      梶山 弘志君    金子 恭之君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      小泉 龍司君    近藤 基彦君
      七条  明君    高木  毅君
      西川 京子君    宮本 一三君
      後藤  斎君    今田 保典君
      齋藤  淳君    樽床 伸二君
      津川 祥吾君    筒井 信隆君
      堀込 征雄君    吉田 公一君
      江田 康幸君    山名 靖英君
      黄川田 徹君    藤井 裕久君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
      佐藤 敬夫君    藤波 孝生君
    …………………………………
   議員           鮫島 宗明君
   議員           筒井 信隆君
   議員           菅野 哲雄君
   農林水産大臣       亀井 善之君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  村田 保史君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        田中壮一郎君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房統計
   情報部長)        山本  領君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁資源・
   燃料部長)        細野 哲弘君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月四日
 辞任         補欠選任
  今田 保典君     樽床 伸二君
  江田 康幸君     山名 靖英君
  藤井 裕久君     黄川田 徹君
同日
 辞任         補欠選任
  樽床 伸二君     今田 保典君
  山名 靖英君     江田 康幸君
  黄川田 徹君     藤井 裕久君
    ―――――――――――――
六月三日
 種苗法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)(参議院送付)
同月四日
 農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)(参議院送付)
 農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)
 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案(鮫島宗明君外二名提出、衆法第二二号)
 種苗法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案及び鮫島宗明君外二名提出、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房統計情報部長山本領君、総合食料局長西藤久三君、生産局長須賀田菊仁君、経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君、食糧庁長官石原葵君、内閣官房内閣審議官村田保史君、文部科学省スポーツ・青少年局長田中壮一郎君及び資源エネルギー庁資源・燃料部長細野哲弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより両案に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。二田孝治君。
二田委員 それでは、民主党と社会民主党が提出しております食糧法改正法案について質問をさせていただきます。
 この法案につきましては、大変私どもも期待を持って拝見いたしたのでございますけれども、どうもやはり期待に余り沿えないような感じがいたしておるわけでございます。しかも実行可能性が余りないんじゃないのか、そんなことを強く感じました。
 詳細に見てみますると、二、三の相違点よりない。しかも、政府案とそれから野党提出のこの法案がやや同じ傾向を帯びているんじゃないのかということを強く感じました。これだったら、修正案で出していただくとそれでよかったんじゃないのか、時間をたくさんとって共同提出という法案にやる意味がどこにあったのか。自由党さんと共産党さんが参加しなかった意味もこの辺にあるんじゃないのかなということを、後に御質問もあるでしょうから、強く感じた次第でございます。
 そしてまた、当初は共同提案ということで私どもも随分お待ち申し上げた。ではありましたけれども、結局共同提案にならなかったのは、どういう理由にあるのか。今私が申し述べたように、野党全部の意見が方々においてそろわなかったんじゃないのか、そんなこともまた強く感じたわけでございます。これは御両所の日ごろの質疑内容をよく拝聴しておりますと不一致点がよくわかるわけでございまして、むべなるかなという感じもいたしたわけでございますけれども。
 提出者から、まずひとつこの点についてお伺いを申し上げたいと思います。
筒井議員 今、前提として修正案でもよかったのではないかということがありましたが、確かに主要食糧法の法案規定に限ればその可能性はあったかと思います。ただ、一番大きな違いは、補助金行政を続けるのか、それとも所得補償政策に大転換するのか、これが政府の今度の改革案と一番大きな違いでございました。
 それからもう一点は、主要食糧法の法案の中でも過剰米対策としての短期融資制度、これが、政府案の場合にはまさに豊作の時点しか対象にしておりません。基本的に需給調整は生産の段階、自主的な減反配分でやるということを大前提にしておりますから、そういう点で短期融資制度が非常に小さなものになっている。私たちの案は、これを生産の場でやるのではなくて、そこでももちろん自主的な減反配分はやるわけですが、しかし、生産の結果としての過剰米対策をきちんとやる、これを大幅にやる、こういう点が大きな二つの違いでございます。
 これらの問題点に関して、今二田先生から質問がありましたように、自由党さん、共産党さんも当初からそういう議論をしてまいりまして、今でもこの二党の皆さんは、この案が、私たちの案が政府案よりも格段にすぐれておりますから……(発言する者あり)そうですよね、今でもそういう判断をされていることは間違いないわけでございます。ただ、一点だけ、それぞれ一点だけで、やはり共同提案者には参加できない、そういう経過がありまして、二党の提案になった次第でございます。その各党の事情の中身については、私の方からしゃべるのはおかしいですから、それはお二人にお聞きをいただきたいと思います。
 以上でございます。
二田委員 あらかじめ申し述べておきますけれども、提出者の質問に対する簡略な御説明をひとつお願い申し上げます。余り時間をとっていきますと、私と金田先生の時間がなくなりますから、その点は今後ひとつよろしく御留意のほどをお願い申し上げたいと思います。
 それでは、ただいまお話にありましたけれども、逐条の内容に入ってひとつ質問をしてみたいと思います。
 農政の基本方向を示しました食料・農業・農村基本法第二条第三項でございますけれども、食料の供給は、高度化し、かつ大変消費者が多様化している、そして需要に即して行われなければならないとされております。
 私どもが与党といたしまして今回の米の改革の方向に留意してまいりましたのも、何とかミスマッチを、需要と供給との間の格差というものをどうしても少なくしていかなきゃならぬ、そういう観点に立ってまた進めておるわけでございます。そしてまた、食料・農業・農村基本法につきましては、この御出席の先生方の賛同も得て成立した法律でございますので、当然異論はないはずでございます。
 これまでの、減反面積を管理しておりました、いわば強制的に生産調整を配分する仕組みでは、恐らく今後、生産者が非常に意欲的に消費者に対するニーズを満足させるいろいろな種類の米というものをつくっていくにも大変難しい事態に立ち至っている、そういうふうに判断をいたしておるわけでございます。強制感を伴って減反面積を配分する生産調整を行うことと、そしてまた消費者を生産者ともどもきっちりと見詰めて生産調整をみずから行うことでは、全くその意味合いが異なるわけでございます。
 しかし、この主体的に生産調整を行っていくための方法が、与党案と野党案では全く異なっております。
 野党案を見ますると、第五条第一項において、生産出荷団体は生産調整方針を作成することができるとされております。この中では、今政府案に出ておりますところの国による認定行為は省かれております。いわば、農業者は自由につくるだけつくってよいということになっておるわけでございます。
 そして、与党の作成をしますときに大変私どもが苦慮をいたしましたのは、どうすると国の関与ができるのか、このことをやはり最大のポイントにしながら進めてまいりました。
 実は、政府はどういう考えであったかというと、皆さん方と同じような考えで、国による関与を全く排除しよう、地方自治体による関与を全く排除しよう、こういうような意図に進めてまいったわけでございますけれども、我々連立与党は、それではいろいろな面でうまくいかないだろう、やはりどうしても国の関与はある程度必要でありますよということで議論を重ねてき、そのような法律に仕上げていったということは、与党の皆さん方は御案内のとおりでございます。
 そしてまた、第九条。皆さん方の言うように、農業者がつくりたいだけつくって、そしてつくった過剰米においては、生産調整を行っていようといまいと、第九条第一項において米穀安定供給確保支援機構が無利子資金の貸し付けを行い、最終的には政府が青天井で買わなきゃいけない、こういうふうになっておるわけでございます。
 政府と与党案では、豊作による過剰米が発生した場合に、生産調整を行った農業者に無利子資金の貸し付けを行うということになっております。最終的に政府が買い入れるという規定にはなってはおらないわけでございます。皆さん方の方は、最終的には政府が買い入れする、こういう規定になっているように私は解釈するわけでございますけれども、これを比べてみますると、野党案の無利子貸し付けはまさに青天井、どこまでいってもいいんですよ、どこまででも買い入れますよ、こういうことになっているのではないかなと私は解釈をいたしました。これは立法者のまた趣旨というものもお聞きいたさなきゃわからないわけでございますけれども。
 こういうようなことになっておりますと、生産調整のいろいろな規制や、それから需要と生産とのミスマッチ、こういうものが大いに起きてまいるわけでございまして、需要に応じたところのきっちりと合った生産が促進されるというわけにはまいらないということは、これは自明の理でございます。
 先日の農林水産委員会において、たしか筒井議員であったと思いますけれども、政府案に対する一つのことで、過剰米で処理しても生産調整をしても効果は同じであるというような発言が確かにございました。
 そこで、二問目の質問でございますけれども、単に農業者が自由につくりたいだけつくって、余ったら過剰米処理を財政的に国民の税金で行えばよいという仕組みとなっている野党案を実行していった場合に、どうして資金需要や需要に応じた生産が促進されていくというのか。この点をひとつお答えいただきたいと思います。
筒井議員 二田先生、需給調整をどの場所でやるかという問題だと思うんですよ。生産の場で、減反という方式、それも強制減反に近い形でやるのか、それとも、生産の結果としての過剰米処理という形でもって需給調整をやるのかということだと思うんです。
 今までは、強制減反、そして生産の場所でやってきた。しかしそれが、減反関連の補助金だけで二千九百億円。そして農家の限界感、閉塞感、これが物すごく高まって、それで、一〇〇%達成しても米価は大幅にずっと下がっているんですよ、最高二万円ぐらいあったのが今は平均で一万六千円になっているんですから。効果の点からも、農家の意欲の点からも、あらゆる点からもそれは行き詰まっているんじゃないか、それを変えなきゃいかぬのじゃないかというのが前提にあるわけです。
 そして今度、政府案の方では、では自主的な減反の方に行こうといいながら、認定制度とかメリット措置をつけている。これが強制減反とどこが本質的に違うのか、限界感、閉塞感がどの程度変わるのか、極めて疑わしいと思っています。だから私たちは、先ほどからつくりたいだけつくれというふうに二田先生はおっしゃっていますが、私たちはそんなことは言っていないので、本当の意味の自主的減反、これは続けるわけでございます。
 ただ、政府としては、政府が需給調整する場所は過剰米対策の方でやるということでございまして、過剰米対策の中身も青天井ではありません。生産された結果、消費量を超えた分、これが過剰米対策の対象でございまして、年間消費量を超えた分が融資対象になる。その融資対象になった分に関しては、主食用市場では販売しない。これは、融資対象額は市場価格の六割でございますから、農家はある程度損して出すわけでございまして、つくりたいだけつくって消費量を超えて売れなくなったという場合に、融資対象にした場合には市場価格の六割しか入らないわけですから、この損を覚悟してやらなければいけないわけで、その点からも、つくりたいだけつくれなんと言っていることではないので、それは完全な誤解でございます。
 それはどの程度になるのかという点では、食糧庁が、減反が全部廃止になった場合にどのくらい米の生産量がふえるのかという試算を出しております。それによりますと、三十三万ヘクタールぐらいが復田になって、百七十万トンぐらいが減反をやっていたときと比べてふえるというふうに試算結果を出しておりますので、それを基準に計算した場合、市場価格の六割で融資して、それが全部米の引き渡しで返済されたというふうになった場合の予算額は一千八百七十億円でございます。
 これは、市場価格の六割というと約一万円弱ですが、それを全量備蓄米に回すわけです。米で引き渡された場合は全量備蓄米に回す。備蓄米に回したものは、こちらは棚上げ備蓄に変更しろ、回転備蓄じゃないというふうに主張しておりまして、ですから、役割の終わった備蓄米を加工米等々、あるいはバイオマス資源等々に活用するわけですが、その場合の販売価格は平均三千円でございますから、その分を引いた額がこれに必要な予算額となって、一千八百七十億円となるわけでございまして、これは恐らく最大だと思っています。
 そして、それは今までの減反関連補助金二千九百億円よりもずっと予算額としては少ないわけでございまして、効果としてその方がある、しかも予算額も少なくて済む。余裕が出てきた分は所得補償に回して、農家の最低限の所得を補償する。私は、この方がずっとすぐれた案だというふうに確信をしております。
二田委員 筒井さんのお話によると、そういうことになるという想定のもとにやっておるわけでございますけれども、しかし、やはり需要と供給をマッチさせるということが、私どもがねらった最大の米の改革案であるわけでございます。それにおきまして、市場価格というものも生産費に見合うものが完全に所得を超えて出てくる。そうでなければ、この米の政策の改革というものが何も意味をなさないわけでございますので、その意味におきましては、やはり、おっしゃるようなやり方をしたならば、恐らく米は市場にあふれ返り、とんでもない財政負担といろいろな社会問題を惹起しておるということは、これはまた今までの例から見て免れないところじゃないのかな。私どもはそういうふうに判断をいたしまして、今回の米政策、食糧法に取り組んでおるということをまずお伝えしておきます。
 さっきも言いましたけれども、余り答弁を長うしますと大臣がいなくなる時間もありますから、実は多少我々の時間もカットされておりますので、短くなってまいりますから、ひとつ答弁は簡潔にまたお願い申し上げたい。皆さん方の宣伝効果というものもねらっているわけでございましょうけれども、そうはまたまいらないところに一つの今回のこの問題があるわけでございますので、よろしくひとつお願い申し上げたい、こう思います。
 私が言いたいのは、市場価格を何とか維持しながら今後の農政の方向等を見出していくというまじめな農業者がたくさんおるわけでございます。そういう方々にも、やはりきっちりとした価格というものが自主的に創生されるようにしていかなければ、自主的な米の生産調整や、また無農薬米やいろいろな種類の米というものをつくる意欲はわいてまいりません。
 でございますので、筒井さん、まじめに生産調整の取り組みを行っている農業者については皆さん方は一体どう考えているのか、この辺をひとつお聞きしたいと思います。簡単でいいですよ。何も考えていないなら考えていないでいいですよ。
筒井議員 いやいや、考えていますよ。
 まさに、今までまじめに生産調整に取り組んでいる農家に対して、農政は裏切ってきたじゃないですか。今まで一生懸命まじめに取り組んできたのに、不公平感は持たされる、限界感は持たされる、しかも米価は下がる。こういう状況をこれからも続けるんですか、これを変えなきゃいかぬでしょうというのが私たちの主張です。
 その中身は言いたいのだけれども、また長いと言うから、それで終わります。
二田委員 まさに私どももそういう方針に基づいて今回の米政策大綱というものを策定いたしておるということは、それは方法論の違いはあっても目的とするところは同じでございますので、そこのところはよく御理解を、そしてまた申し述べておきたい、こう思っております。
 それから、野党案は、第二条第一項において、米の需給安定確保を図るための政府の基本方針のうち、「生産調整の円滑な推進」を削除し、また、政府・与党案による生産調整の円滑な推進施策を講ずるに当たっての基本的考え方、生産者の自主的努力を支援、米以外の、稲以外の作物の生産振興等の有機的連携、地域の特性に応じた施策の実施を規定しないとしています。
 しかし、食料・農業・農村基本法第十一条においては、農業者の努力の支援ということでございますけれども、ここでは、「国及び地方公共団体は、食料、農業及び農村に関する施策を講ずるに当たっては、農業者及び農業に関する団体並びに食品産業の事業者がする自主的な努力を支援することを旨とするものとする。」ということを書いております。
 国は、食料の安定供給、安全保障に責務を負っているわけでございます。需要に応じた生産を行おうとする農業者団体の自主的取り組みを後押しするのは、これは国としての当然の役割でございます。これはよく御理解できますね。
 野党案では、農家の生産努力を後押しすることも法律には書いておりません。生産調整方針の認定や支援のリンクも行わない。生産調整にまじめに取り組んでいる横で、いや、どうでもいいんだと、つくりたいだけつくって米価を下げているような農家についても、売れ残った米を政府が買ったり所得補償をしたりするということは、果たしてこれはいいものでございましょうか。(筒井議員「委員長」と呼ぶ)まだあるんだ、まだ。まだありますよ。あとは余り、時間がなくなってきましたから。
 これでは、まじめに取り組む人がばかを見る話になるのではないか。このような、先ほどから申し述べておるとおり、一体だれが需要に応じた生産に取り組むと考えておるのか。だれも取り組まなくなるんじゃないのかな、そして米農業というのは崩壊していくのじゃないのかなというような危機感をこの法律を見ると思うわけでございます。
 どうかひとつ、この二点について一言だけ簡便に。
筒井議員 ここでも述べておりますように、市場原理と産業保護の統一をいかにするかという問題なんですよ。要するに、その場合に政府が何でもかんでも支援支援でメリット措置を与えれば、ではうまくいくのかといったら、そうじゃないわけですよ。やはり自主的な、自己責任、自己判断の分野をきちんと確立した上で、それで政府が介入してもいい部分はそこでいろいろな助成や助言をするということでございまして、今の減反配分に限れば、自主的な減反配分について指導、助言、こういう法規定は私たちの対案にも載っているわけでございまして。
 ただ、メリット措置とか、国として認定したらまさに中途半端じゃないですか。今までの強制減反からどういうふうに変わるんですか。それが中途半端だと言っているんですよ。
 それを完全に自主的なものにする。自主的なものにするということは、これは農家の意識にまさにゆだねるわけですから、つくりたいだけつくれと言っているのと全然意味が違いますからね。二田先生は何回もおっしゃっているようだけれども、それは全然違いますからね。
 その上で、では政府としては、過剰米対策をきちんとやるんだ、それから備蓄制度もきちんとやるんだと。それで、過剰米対策も備蓄制度も、これは主食用には一切回さないんだということを大前提にしているわけですよ。それを総合的にぜひ見ていただければ、需給調整としてはこの野党案の方がずっとすぐれている、これは御理解いただけると思います。
二田委員 理解しろと言っても、理解されないから反対の質問をしているわけでございますけれども。
 時間が参りましたので、余りもう長くはやりません。ただ、私どもは、いたく、これが政府にも責任がないとは私は言いません。言いませんけれども、昭和四十六年度から四十九年度にかけて一兆円、それから昭和五十四年度から六十一年にかけて二兆円ものお金をかけて過剰米処理を行ったということは、よく御案内のとおりでございます。そしてまた、過剰米の処理のみで過去三兆円を使ってきたということも、これを合計するとそうなるわけでございます。
 それから、一言申し述べておきますけれども、百七十万トンの在庫が年間にできるんだ、こう申しております。では、この在庫をどう処理するのかということになってまいりますと、援助やえさ米に使え、こういうことで処理するようにお話をお伺いいたしました。
 しかし皆さん、えさ米というのは、幾ら使っても四十万トンより使われません。それから、御案内のとおりFAOの食糧援助規定に関するいろいろな取り決めがございまして、規制もございます。でございますので、無制限にODA、援助米に回すというわけにもまいらない、それはよく御案内のとおりだと思います。
 以上の点を申し述べて、この対案を拝見いたしますと、恐らく、財政的にもそれから実態的にも実行不可能な案をずらずらっと違うところは並べてあるということがよく散見されます。そういう意味で政府案の方が今回は数段すぐれているという御認識のもとに、私の質問は終わらせていただきます。
 後は金田さんにお任せしますので、よろしくお願い申し上げます。
小平委員長 答弁いいんですか。(二田委員「答弁要らない」と呼ぶ)
 次に、金田英行君。
金田(英)委員 二田先生に引き続き、野党案について若干の御質問をさせていただきたいというふうに思います。
 確かに、今の米生産、まさに需要の減退、それからいろいろな生産調整に伴う限界感、不満感、そしてまた担い手の高齢化等々で、まさに稲作経営というのは閉塞感に包まれている。これを何とかしなきゃならないというのが我々の大きな責任なんだろうというふうに思っております。
 野党案が出てきました。どこが違うのかなというふうに考えておるわけでございますけれども、一言で言って、農家受け、選挙用のプロパガンダでないかというような感じがして、世間受けをねらっているなというふうな感を強くするわけでございます。
 だって、そうであります。余った米は国が全部買い上げますよ、所得補償は一兆円規模でしますよ、生産調整はしませんよということでありますから……(筒井議員「自主的減反ですから」と呼ぶ)自主的減反で、強制的な減反はしませんよと。ですから、農家の皆さん方にとっては至れり尽くせりの案でございますけれども、現実にこれが動くのかなということで若干質問させていただきます。
 余剰米は市場価格の六割で政府が買い上げるんだ、こう言いますけれども、余剰米について六割だということで、それでは、同じ米なんだから、六割で政府に買い上げてもらうよりは八割で安売りをした方がいいというふうに考えて、市場の供給が、米の供給が相当出て、米の大暴落を招くというふうに考えられますけれども、これについて、筒井議員、どう考えておられますか。
筒井議員 今のは、かえって政府案の方によりそう言えるので。政府案は今、予算の大枠さえ示しておりませんが、六十キロ三千円という案を出して、それが批判されて、引っ込めて、何かあいまいなままになっている。あいまいなままでも金田先生はそれに賛成されておられるわけで、一貫性がないと思うんですが。
 それで、今の野党案ですが、市場価格の六割というのが私は、余り高い、八割だと、それを目的にした生産というのが始まってモラルハザードを起こす危険性がある、余り低過ぎますとまさに政府案のようになってしまうということで、市場価格の六割で、ある程度損をする、過剰米が出た場合はある程度損をしますよ、だからなるべく過剰米が出ないように自主的な減反とか自主的な判断しなきゃいかぬですよということをこのメッセージには込めているわけでございまして、今の懸念は当たらないと思っています。
金田(英)委員 いや、政府案では、生産する生産量を地域別に割り振っているわけでありまして、それが、例えば豊作で、一〇三の豊作だったよというようなことになれば、百三俵とれたら三俵分は過剰米だという形で限定的に管理ができるようにしてありますので、それが主食市場に回ることはないというふうに考えているんですが、野党案によりますと、強制的な減反はしないということであれば、大変な、みんな米つくりたがっているという状況にありますので、相当の、幾ら自主的な減反といえども限度があるというふうに思っています。
 五月三十一日の北海道新聞に一面トップでこんな記事が載っているわけでありますが、新潟県の六日町から、北海道の岩見沢あるいは空知の栗沢町、北村等々に、私たち、米つくりたいので、北海道の米生産枠を譲ってくれないか、お金も出しますよというような文書が役場にだあっと送りつけられたというようなことであります。
 ですから、やはりみんな米をつくりたい、そういう状況の中で、しっかりと減反政策、減反というか生産調整をしっかりやるということがまさに問題でありまして、これを何とかなし遂げることが今我々に課された重要な課題なんだろうというふうに思っております。
 農家の皆さん方は、自分たちがつくりたいだけつくることはできないんだということをしっかりと認識しております。ですから、北海道に、もし麦をつくってもいいのであれば、おれたちに米をつくる枠を譲ってくれないかというような騒ぎが起こる。これはこれで、そういった生産調整が必要なのだということを農家の皆さん方がしっかりと認識している結果なんだろう。こういったことがいろいろな形の中で行われていくことはむしろ奨励すべきことなのかなというふうにも思うわけでございますが、とにかく、農家は一生懸命生産調整が必要だという認識の中で今現在あるんだということを、しっかり認識しなきゃならない。
 そういった中で、自主的な減反だから、つくりたい人はつくってもだれもとがめませんよというようなことになれば、相当の生産増が図られることになる……(筒井議員「政府案も自主的減反でしょう」と呼ぶ)いや、政府が認定して地域別に生産量を割りつけて、その生産量をつくらせる。だから、それ以上にできたものは過剰米として相当安い価格で処分しなきゃならないということになっていますから、相当の実行力というか実現力があるということでいるわけであります。
 いろいろあるわけでありますが、所得補償をするということ、これは大きな流れとして正しいと思っておりますし、我々も、農政の中で、所得補償の大きな流れになっていかざるを得ないというふうに考えております。
 EUにしてもアメリカにしても、差額払い制度、いろいろな、所得を補てんする制度というのをやっております。現実に我々もやっております。中山間地の直接支払い、あるいはまた麦の経営安定資金等々。一俵二千二百円の麦をつくっても、これじゃだれも麦をつくらないだろうから、麦作経営安定資金で六千八百円の助成をする。そうやって麦をつくっていただくというようなことをしながら、所得補償、まさに所得補償でありますが、そんな形で、米から麦、あるいは大豆、飼料作物への生産の誘導措置を講じているわけであります。そういった所得補償政策についてやることは、大きな流れとして我々も検討しておりますし、一部随分と取り入れてきております。
 しかし、今の状況の中で、構造改善が全然進んでいない状態の中で所得補償をしますよというふうになったときに、構造改革、今の稲作の構造改革が全く進まない。零細で、そしてコスト削減というようなことがない、所得は補償されたということになれば、今の稲作の構造改善は全く進まなくなってしまうのでないか。おれたちの所得は補償されたというような形で、まさに国民も、農家の所得補償をする、我々の税金を使うことを許さないというふうに思います。
 それで、消費者との関係についてお聞きしますけれども、納税者の皆さん方に、所得補償しますよ、そして米は自主的な減反ではあるけれども、減反というのは、さっきも言ったようにそんなに効果のあらわれない自主的な減反で、そういった人たちにも、生産調整に協力した、しないにかかわらず、米は買いますよ、そして価格が下がったら所得補償ですよというようなことに対して、消費者の皆さん方にどういうふうに野党案は説明するおつもりなのか。そこいら辺をお聞きしたいと思います。
鮫島議員 日本農業新聞を初めさまざまなマスコミが消費者の意向調査というのをたびたびやっていますが、非常に共通してあらわれる結果は、顔の見える農産物、国産の農産物を適正な価格で供給してほしいというのが大変多くの消費者が望んでいること。それからもう一つ顕著なのが、遺伝子組み換えのものは食べたくないというのがはっきりしています。それから、おいしい水を供給できるような水源地は保持してほしい、農村の美しい景観を保持してほしいというのは消費者の意向であります。あと、いざというときのための備えもしっかりしておいてほしいというのは共通で出てくる反応です。
 ただ、今、金田委員がおっしゃったように、ある種の不公平感、農家が恵まれ過ぎているんじゃないかということが若干ありますが、今度の野党案が新たな税負担を課すというようなことですと今言った御懸念が当たるかもしれませんが、全体の予算の組み替えで、トータルの予算の新たな負担がないということがはっきりしていれば、消費者は農家が元気でいい農産物をつくってほしい、なるべくだったら国産のものがいいというふうに思っているわけですから、農家が元気でいいものをつくるという視点から見てどちらがいいかというと、これは当然野党案の方がいいということになると思います。
 また、もう一つだけつけ加えますと、北海道の農家の七五%が主業的農家ですが、都府県においては八〇%が副業的農家で、この人たちは言ってみれば消費者ですので、今言ったような面からも消費者にも十分御理解がいただけるし、野党案の長所も御理解いただけるというふうに思っております。
金田(英)委員 一兆円の所得補償を行うということでありますが、この財源は一体何を考えておられるのか、筒井議員にお聞きしたいと思います。
筒井議員 この一枚紙は行っていますか。(金田(英)委員「はい。ここにあります。まだ見ていない」と呼ぶ)法案に載っていない考え方をここですべて説明してありまして、今金田先生が言われたことは全部ここに載っていることでございます。一番下に、合計で一兆一千四百五十億円の財源という項目がございます。ここで、今までのいろいろな補助金等々をこっちの方に回す、所得補償と過剰米対策と備蓄費用の方に回す、このことによって財源が捻出できるということでございまして、一項目ずつ全部金額言いますか、その必要ないでしょう。
 それともう一点、今、構造改革は所得補償ではできないと言われましたが、これも今のこの書面を見ていただきたいんですが、私たちは、四階建ての所得補償を、中山間地所得補償を含めて四階建てを考えている。一階目は、全経営体を対象にしたもの。そして、一定規模以上の経営体に対して割り増しの所得補償を支払う、それが二階目。三階は有機農業の経営体に対して割り増しのものを払う。それで中山間地を含めて四階建てでございます。
 所得補償政策によって構造改革を進めていく、これが私たちの目的でございまして、今、わけのわからない品目別の、あの複雑な補助金では私は構造改革は実現できないと思っています。
金田(英)委員 いや、補助金の整理ということで三本の交付金で集約しているのは政府案でも同じでございます。
 一兆円が、例えばいろいろなものを運用して一兆円を生み出すと言っていますけれども、例えば農業の公共事業費の一部を回すんだ、こういったことでありますが、やはり今の現状でも土地改良事業への需要というのは相当多いわけであります。大型圃場の整備をやってくれとか、構造改善をすることが必要だという、そういった予算を減らしてこの所得補償に持ってくるということは、果たして農業の構造改革を進めていく上でいいことなのかどうかということで私は大いに疑問を感じます。
 それから、何といっても、所得補償を中心として農業の構造改革を進めるんだといいますけれども、所得補償がされたら今の農家は構造改善に対する意欲というのを失ってしまいます。本当に、つくった米はみんな買ってくれるんだというようなことであれば、余った米はまさに自給率の向上には全く寄与しない米でございまして。こういった自給率の向上、我々しっかりと過去取り組んできました。何としても自給率を向上させるためには、麦、大豆、飼料作物に水田を転用していかなきゃならない、そういった形で、麦、大豆に対する転作が、転作がというか、作付作物が変わるような誘導策というのをしっかりととってきているわけでございます。
 野党案では、米をつくりたい人はつくれるということに相なるわけでありますから、余剰米だけどんどんふえていく、自給率の向上には全く寄与しない米づくりが許されるというようなことでは、日本のこれからの農業構造の展望と自給率の向上ということについてどういうふうに考えているのか、お尋ねします。
筒井議員 今土地改良に言われたことは、一般論として私も賛成です。だからこれを見ていただきたいんですが、事業量は維持する、そしてコストを削減をする。これは政府自体、農林省自体が、事業量は今のままで一兆六千億円ぐらいある農林公共事業の一五%削減、これを具体的に今出しているわけでございまして、ただ、その中で、自力施行がほとんどゼロに近いものですから、自力施行を二%ほどふやせば一七%になるわけです。
 ここでもちょっと挙げておりますが、長野県の栄村で、自力施行でもって六六%削減している例も、実例もあるわけです。だからこの一七%、事業量を維持したままで削減する。決して圃場整備や何か必要ないなんて私一言もここでも出しておりません。
 ただ、国営に関しては、国営に限ってはいろいろな意見があります。もう国が今農地をつくる時代かというのもありますし、経済財政諮問会議の中では、全量凍結すべきだという意見もあります。ただ、私はそれほど過激ではありませんから、ここでは国営についてのみ事業量は一部凍結ということで出しているものですから、誤解しないでください。土地改良工事を削って、ただ削って減らして、必要性ないから削ってこっちへ持ってくるんだということではありません。
 それから、今の質問は自給率の問題でございますが、日本はまさに米中心でございますから、米作、稲作を含めた農家の経営が成り立てば、農家というのは必ず野菜とか畜産とかいろいろなものもやっているわけでして、その意味からも、稲作経営の確立というのは自給率の拡大のためにもどうしても必要だということがまず一点ございまして、だからここでは、稲作経営の確立、これがきちんとこれからもできるということをまず第一に挙げております。
 それからもう一点は、所得補償のところで、この一枚紙を見ていただければわかるんですが、主要食糧としては米と麦だけでございますが、それ以外の畑作物、果樹あるいは牧草、これらも所得補償の対象にする、これを前提にして考えているところでございますから、まさに自給率を上げることを目的にしているわけでございます。
金田(英)委員 所得補償政策に各国も相当重点を動かしていっている。WTO交渉でも、グリーンボックスで自国の農業を守ればいいじゃないかという流れになっていることは我々も認めますし、また、所得補償政策を随所の農政の中で我々も取り組んできております。
 そして、EUのCAP政策等々で、とにかく農産物ごとの価格支援だとか価格維持だとかあるいは奨励策はやめよう、そして農家の総合所得をにらんだ形のCAP政策に取りかえないとEUの輸出補助金というのはなくならないということであります。ですから、とにかく麦をつくればこれだけの所得があるんだ、補償されているんだという形で生産物ごとの農政ではだめだ、農家の総合所得を補償していこうというような流れになっている。そうしないと、輸出補助金、蔵に麦が余ってしまう、ジャガイモが余ってしまうという状況をCAP政策で大きな変更をしようというふうにしております。
 我々も、そういった大きな流れになっていって、政府部内でも、所得補償のあり方に対する検討というのをやっております。十四、十五、十六とかけて、大幅な構造改革といいますか、政策変更が迫られるものですから、農業共済制度のガラガラポンが始まるというようなことでやっておりますが、ちょっと時間がかかります。
 そしてまた、この所得補償政策をやるときに、国民のコンセンサスが果たして得られるかどうかということが最大の問題点でございます。農家はいいな、所得が、過去三年間なら三年間の平均の所得が補償されるわいなというようなことでは、ほかの国民、中小企業の皆さん方が農家への支援をやらなきゃならないんだということで納得してもらえるのかどうか。そこいら辺の環境づくり、そういったことも進める中でやっていかなきゃならぬ。
 これからWTOの交渉が入ってきます。各国は、ケアンズ・グループは関税の大幅引き下げを主張しております。関税を引き下げたら、農家がまた競争条件が相当厳しくなる。そういった中で、コスト削減をどうやっていこうか、しっかりとした担い手が育っているだろうか、そういったことを総合的に検討する中で、国民のコンセンサスが得られた段階で、所得補償をその都度充実していくという方向にならざるを得ないんだろうというふうに考えております。
 ただ単に今現在の農業構造、稲作経営構造の中で所得補償しますよというようなことになれば、構造改革が進みません。ああ所得補償されたと、中小企業の社長さん方は、農家はいろいろな補助金ももらって所得補償までしてもらえるのか、おれの店舗の売り上げがほとんど三割減、四割減になっても所得補償はしてくれないといった形で、農政に対する他分野からの反発というのもあるんだろうというふうに思うわけであります。
 ですから、所得補償というのは慎重に、国民のコンセンサスを得られる中で、WTO交渉の結果だとか、あるいは今、タイやメキシコとのFTA、自由貿易協定をどうしても国益をかけて達成しなきゃならないという状況の中で、農家の皆さん方の理解を得づらいというようなそういった中で、それだったらこういう形の農政を展開しますよという、農業全体の構造改革についての見通しというのをしっかりと持たないと、米だけで、米政策は中心だとはいいますけれども、今はもう米でなくて麦、大豆あるいは畑作物、そういったものが総合的な食料の自給率を押し上げていかなきゃならないという時点に来ているんだろうと思います。
 そういった意味で、安易に所得補償政策、我々もその方法でやってまいりますけれども、今、米改革大綱の中で構造改革をやっていく中で所得補償を前面に打ち出すということは、無責任過ぎるなという感じを我々はしております。私の所見について、何か感想がありましたらどうぞ。
筒井議員 国民の理解を得なければいけない、これはまさにおっしゃるとおりで、だから、対案、私たちの法案の一つの条項に、わざわざそのことを強調している条項がございます。
 それと、方向としては賛成だと言われた、しかし、今やるのは早過ぎるという金田先生の意見ですが、遅過ぎるんですよ、日本の農業はもう崩壊に瀕しているんですよ。アメリカなんか七年前に所得補償やっているんですよ。何で日本だけがそれができないんですか。
 それで、私たちの対案は、平成十六年四月一日施行なんですが、しかし、完全実施はその後二年から四年以内。これはだから、政府案とその点でも一緒でございまして、今先生が言われることだったらまさにこれにできるんじゃないですか、完全実施はその二年から四年以内で。だったら、今金田先生が言われたことでいえば、まさに野党案で、所得補償で、今ここでやりましょうよ。来年からこちらの方はやると言っているんじゃないんですから。その間の準備期間をちゃんと入れているんですから。
 もう世界的な傾向から見たら遅いんですから。日本の農業はもう崩壊寸前なんですから。そんな悠長に、先の話だ、先の話だと言っていたら本当にだめになってしまいますよ。
金田(英)委員 早いとか遅いということじゃなくて、そういった方向であらゆる国民の理解を得られる環境をつくりながら所得補償を我々もやってまいりますけれども、今、この農業構造改革を進める、そういった中では、やはり必要な量の米だけが生産されるというような環境、それから担い手がしっかりと確保される、そういった構造改革をこの米政策改革大綱で実現する中で、また今度WTOの交渉結果も二〇〇五年に出てきますでしょう。そして、国際社会の中で日本農業がどうやって生き抜いていくのかというような対策というのは、まさに我々本当に頭が痛い検討課題でございまして、それには、大きな道として所得補償というのがあるなということは我々も認識しております。
 ただ、今、安易に米つくりたい、米つくりたいという農家がいて、それも零細な米農家。そしてそういった中でそれをしっかりと所得補償するということは、構造改革を全くおくらせてしまうことに相なると思っておりますので、強く、野党案は、農家、農民の皆さん方に対する何か機嫌取りとか、あるいはまた財政に対する責任というか、まさに政権担当能力があるようで全くないということを公にしたものだなというふうに思っておりますので、ちょっと時間もありますので、これで私の質問は終わらせていただきますが……(筒井議員「今のは質問じゃないの」と呼ぶ)質問ではないの。
 そういうふうに私の感想だけ、政権担当能力があるようでただ御機嫌取りの選挙用のプロパガンダだというふうにしか理解できないので、そのことを表明して、私の質問を終わらせていただきます。
小平委員長 どうしますか、今の答弁。
 筒井信隆君、簡潔に。
筒井議員 所得補償のやり方によって、構造改革に利さない、これはあると思いますよ。例えば、私たちの案の中で一階部分だけ、全経営体にそのまま所得補償する、これならば、あるいは今金田先生がおっしゃったようなのが成り立つかもしれません。こちらはそうじゃないんですから。一定規模以上に割り増しをして、有機農業に割り増しをして、中山間地に割り増しをする。まさに構造改革を進める中身の所得補償になっているんですから。今の金田先生の言っていることは全く当たらない。
 それと、財源について、ここで項目だけ挙げておりますが、先ほど申し上げたように、金額も挙げろと言われれば、全部こちらの方としては精査してまいりましたからそれも挙げることができる。その点でも無責任とは全く言えないことだけ申し上げておきたいと思います。
小平委員長 次に、鮫島宗明君。
鮫島委員 私は、政府に対してだけ質問いたしますので、野党の方々、一たんこちらにおいでいただいた方が質問しやすいんですが。
 今、政府案は政府案で、長年の御検討、いろいろなお考えの結果出してきている、それから野党案は野党案としてもさまざまの思いを込めて出してきている。ただ、それぞれ、別にまだ完成しているわけではなくて、まさにあすの農業政策をさまざまな知恵を出しながら作成している途中だというふうに私は思います。
 そういうことを考えていく上で少し留意しておかなければいけないことが幾つかあるんじゃないかという意味で何点か指摘させていただきますが、私は、農水委員会のほかに環境委員会にも入っているんですけれども、環境の部門でアメリカの動きが大変おかしいのが気になるんです。
 例えば、地球温暖化防止の京都議定書をいまだに批准していない。それから、生物多様性条約というのがこれも九二年に決まりましたが、アメリカはそっぽを向いている。それから、遺伝子組み換えの生物の国際間の取引を決めているカルタヘナ条約についてもアメリカは批准しない。こういう環境三法と言われるものについても、全くそっぽを向いている。
 やはり、冷戦後の新しい秩序が、きのう、おとといのサミットなんかを見ていても大分はっきりしたと思いますが、要するに、アメリカひとり勝ち、世界の中心はアメリカで、アメリカのパワーが図抜けて存在してきているというのが今の国際情勢だと思います。我々、この農業問題を考えるときも、やはり国際情勢を常に念頭に置いておかなければいけないし、先ほど金田委員がおっしゃったように、やはり国民的合意というのが大前提になる。
 そういう中で、何でもかんでもアメリカを頼りに、同盟国だからということで、食料もふんだんに、足りないと言えばアメリカからいつも入ってくるという前提で組み立てていいのかどうかということは、やはり今の新しい時代、しかもアメリカがやや変わりつつある、わがままな国に変わりつつある、英語の言い方でグリーディーネーションというのがあって、これは欲張り国家という意味ですが、そういう評価が私はだんだん出てくるんじゃないかと思います。
 そうすると、アメリカは自国の都合で、今大統領令によって例えば輸出をとめるようなこともできるし、その気になればアメリカはアメリカのイニシアチブで随分自由にできる環境になってきているので、日本はもう一度、この前の緊急事態法案なんか、有事法制の整備なんかも、そういう流れをみんなわかっているから少しちゃんとした自立した国になりましょうという意味の条件づくりだと思いますが、やはり食料政策についても私はそういう意識を持つ必要があると思います。
 WTO交渉のことも考えながらやっているわけですが、ちょっと一つだけ、本題と外れるんですが、私、ずっとBSEのことをやってきましたけれども、カナダでついに発生しました。陸続きですから、アメリカでいつ発生しても実はおかしくない状況になってきている。アメリカでもし発生したら、輸出がとまって国産にとっていいことだなどとのんきなことを言っていられる状態ではなくて、恐らく国際的なパニックになると思いますね、牛肉の貿易全体が。ですから、アメリカでもし発生したときにどうするかというのは、危機管理的に考えておかなければいけない。
 私は、大臣は今いい立場にいると思うんですが、日本から友人の国としてアメリカにできる最大のアドバイスは、一刻も早くアメリカに全頭検査体制をしいておいてください、そうすると、もし万一発生しても、全頭検査という体制がしかれていれば日本は輸入禁止措置をとりませんと。これで非常に国際的なパニックを抑える効果が私はあると思いますが、そういう深い配慮に基づく提案などもアメリカにしてもいいんじゃないか。そういうことを提案しながらWTO交渉なんかもしていくことが、これからの時代としては私は大変大事だと思います。
 例えばそういうような、BSEがもしかしたら発生するかもしれない、そのときに国際的なパニックに陥らないようにという立場から、日本が同盟国としてアメリカに進言するようなことを大臣はどうお考えでしょうか。
亀井国務大臣 カナダで発生し、カナダからの牛肉、生体牛の輸入の停止、これらいろいろな措置をいたしたところでございます。また、先般来参議院での審議、そして本委員会での御審議。先般たまたま米国大使が、私に会いたい、こういうお話がこの委員会の審議の途中であったことは事実であります。
 私は、参議院の審議の中でも、またこの委員会での審議の中でも、皆さん方からいろいろ御意見を承っております。今委員からもお話しのとおり、私は、近いうちに、できれば今週中に、こう思って、米国大使館にそのような申し入れをいたしております。それは、食の安心、安全、それとトレーサビリティーの問題等々、委員会での審議の状況、そして今お話しのようなことにつきましても、私の方から、日本の立場、そしてこの国会での審議の状況、こういうものをよく説明をして、そして、アメリカもしっかりした対応をとるべきではなかろうか、こういうことを申し上げる、こういうつもりで、今、日程の調整に入っております。
 それぞれの先生方の御意見、こういうものを総合してアメリカに申し入れをする、こういうつもりでおります。いろいろの御意見を承りましたこと、またアドバイスをちょうだいいたしましたことを深く受けとめて努力をしてまいりたい、こう思っております。
鮫島委員 ぜひアメリカに対しても遠慮なく正しいことを言っていただきたいと思います。
 有事法制に関連してなんですが、きょうも備蓄のあり方という話が大分出ていました。
 今の政府案の備蓄は、十年に一回訪れるかもしれない凶作のときに備えて、そのときに五十万トン程度の予備がなければいけないという発想で備蓄制度を考えています、したがって、五十万トンの二回転で百万トンというのが適正在庫ですというのが政府の説明ですが、この米の備蓄機能というところに需給調整機能は全く持たせていない。五十万トン買って、平年作ならそのまま出すわけですし、凶作じゃなければそこは使わないから、需給調整機能は全く持たせていない。それから、今国際的にさまざまな不安定要因がありますが、非常事態、いざ有事というときの備蓄、有事備蓄という言い方もありますが、その機能も今の政府案では果たしていない。
 一つの独立国として、有事法制について、小泉さんはたびたび備えあれば憂いなしという言葉を言っていましたが、一体食い物についてどういう備えがあるのか。これは、内閣官房はこういう問題について余り正面切って答弁したことがないので、ぜひきょうはお伺いしたいんです。内閣官房としては、有事法制で一応の枠組みは決めましたが、外国にあるような供給保障法とか基礎物資確保法とか、そういうのは多分これから有事関連で整備しなければいけない項目だと思います。
 今、石油については、原油については百七十一日分保管していますと。約半年弱。では食料の方はどうかというと、有事に対応した備蓄というのは日本にはなくて、米が今度百万トンといいますから約四十日分、それから大豆が二十日分、輸入小麦が二・六カ月分、それから家畜のえさ、飼料が一カ月分という構成になっていると思います。
 これは別に有事というのを想定して出ている数字ではないと思いますが、内閣官房というのはこういう有事を想定して、今の日本の基礎物資の備蓄制度について、ただいまの数字、石油百七十一日分、食料が米四十日分というのを、内閣官房もこういう数字を了承しているんでしょうか。
村田政府参考人 お答えいたします。
 我が国におきます主な食料それから石油などのエネルギーについての備蓄の現状につきましては、ただいま委員御指摘のような数字と内閣官房としても承知しております。
 武力攻撃事態への対処の法案を今審議中ですが、そうした武力攻撃事態それから国際的な紛争といった国際的な有事、そういった事態に備えて我が国として食料などについてどのような備蓄を図っていくべきなのか、これにつきましては、今武力攻撃事態対処法案を参議院で審議中でございます、これが成立した後に国民保護法制というものを続いて作成することになっておるわけですが、その法制の検討の中で、国及び地方公共団体においてそうしたものについてどのように備蓄していくべきなのか、これについて検討していきたいと考えております。
鮫島委員 世界の独立国の常識としては、普通は有事に備えて、エネルギーと食料と医薬品、これは三大基礎物資、この三つについては少なくとも数カ月分なり、慎重な国では一年分、こういう基礎物資、エネルギー、食料、医薬品というのは備えるのが当たり前ですが、まだ日本はその体制ができていない。有事法制もやっとできたばかり。しかし、それを踏まえて国民保護法制の充実を図っていく。そうすると、そういう中で、食料の備蓄についてもこれまでと違った視点から、違った品目、違った量というものが十分想定されていくし、想定していかなければいけないと思います。
 農林水産省にお伺いしますけれども、今農林水産省が備蓄しているものは、私がさっき言った数字で合っていると思いますが、米が今後の予定で約四十日分、食料用の小麦が二・六カ月分、飼料穀物が約一カ月分、大豆がなぜか二十日分というふうになっていますが、これは別に有事を想定して選んでいる品目、有事を想定して決めている数量ではないですよね。そのことだけ確認したいんです。
西藤政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども、食料・農業・農村基本法及び同法に基づく基本計画で、食料の安定供給ということが大きな課題になっているわけでございますが、その場合においても、不測の事態においても食料の安定供給が政府の課題である、そういう状況のもとで、備蓄についても、今先生おっしゃったような水準についての備蓄の整理をいたしております。
 そういう状況の中で、私ども、不測の要因ということで、国内における要因は、異常気象なりあるいは突発的ないろいろな事件、事故というようなことを想定しておりますが、あわせて、海外における要因ということでは、異常気象による不作でありますとか、社会的な要因といいますか、港湾ストライキなり、あるいは自然条件でのいろいろな要因、それにあわせて、地域紛争や突発的な世界的な事件、事故等による農業生産や貿易の混乱、そういうことも念頭に置いて対応する必要ということで、安全保障マニュアルを策定し、対応してきているつもりでございます。
鮫島委員 ちょっともう一回確認します。
 よくわかりませんけれども、農水省が出している「不測時の食料安全保障の話 食べ物が足りなくなったら?」というパンフレットがあって、そこにも、「備えあれば憂いなし! 普段からの取組も重要です。」こう書いてありますが、今局長の答弁は、では、軍事有事も想定して、この品目、数量は決めていると。
 私はむしろ、港湾ストとかいろいろな流通有事とか天候有事ということで決めているので、軍事有事は想定していないんじゃないかと思いますが、その点だけ、イエスかノーかだけで答えてください。軍事有事も想定して、品目、数量を決めているのか。
西藤政府参考人 先生おっしゃる軍事有事ということでの定義が必ずしも明確にあれでございますけれども、私ども、安全保障マニュアル、今先生御指摘いただいた前提として、地域紛争や突発的な事件による海外における生産なり貿易の制限ということも念頭に置いて対応しているつもりでございます。
鮫島委員 そうすると、先ほど内閣官房の方は、これから国民保護法制を充実していく、その中で備蓄のあり方も考えていきたいというふうに言っていますが、農水省はもうそれはできている、心配ないというのが今の局長の答弁です。
 ではお伺いしますけれども、このパンフレットの中の、だんだん危機レベルが0から1、2というふうになって、危機レベルの2というのは、一人一日当たり供給熱量が二千キロカロリーを下回ると予測される場合というのが一番危機のレベルが高い。そのときは、ゴルフ場を耕して芋畑にしなさいとか、なるべく生産性の高い作目に変えなさいとか、あるいは流通も配給制度に準じるような形で規制しますよという項目が書かれていて、備蓄の放出というのは一番危機レベルの高いレベル2には入っていないんですね。
 備蓄の放出はどこのところに入っているかというと、レベル0、何となく風評で食品の需給が不安定になりそうだぞというようなのがレベル0と想定していますが、このときに備蓄の活用をしますというふうになっていて、レベル2という、一番国民が不安を感じる二千キロカロリーを下回る緊急時には、備蓄は活用しない設計になっているんですね。
 だから、こういう本当の有事のときには今の農水省の設計では備蓄は対応しないというのが本当の国民に対する正直な答えじゃないかと思いますが、いいんですか。では、この今の、米が四十日、大豆が二十日、これで日本としてはきちっとした食料備蓄ができているんだということを、国民に対して西藤局長は言えるわけですか。
西藤政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども、安全保障マニュアルの中で、先生御指摘のとおり、平時からの対応、それとレベル1、2という事態を想定して安定供給、そういうことで、先生御指摘のレベル2というレベルは、一人一日当たりの供給熱量が二千キロカロリーでございますが、この水準というのは大体昭和二十年代の水準でございますが、そういう水準を下回ることが予想されるようなときにどうするかということがレベル2のプログラムでございます。当然それは、レベル0、平時から、平時に蓄えている備蓄。
 先生、米は四十日分というふうにおっしゃいますが、一方で一千万トン近い国内生産があるわけでございますので、いわばその状況に応じて、いろいろな状況がございますが、私ども、そのレベル0からレベル2という状況の中で、いかに生産転換、備蓄の活用も行いながら二千キロカロリーという水準を達成していくか、そういうプログラムを準備させていただいているつもりでございます。
鮫島委員 この有事対応のシナリオをつくるのが農水省の仕事だとは思えないんですけれども、今局長、かなりめちゃくちゃな答弁をしていて、一千万トン生産能力があるから心配ないんだとか、だって今、過剰対策で何とか七百万トンレベルにしようと思って必死になっているわけで、我々だって百七十万トンが過剰になるといって、そんな一千万トンなんという数字がどこから出てくるのかわかりません。
 もっとちゃんと言うと、米について今の政府の備蓄の計画ははっきりしていて、十年に一回程度訪れるかもしれない不作に備えて、そのときに恐らく五十万程度あればいいだろうという意味で、五十万トン、二回転で百万トンですという説明になっていて、その中に一言も、軍事有事に備えますなんという言葉は書いていないですよ。
 それともう一つ言いますけれども、この五十万トンというのはもちろん原則としては凶作時の備えだけれども、しかし、不測の事態が起こったときは当然国民の健康と財産を守るという意味でこれは放出するんだ、優先順位としてはそれがあるんだということが念頭にあるかもしれませんが、局長聞いておいてくださいよ、五十万トンは凶作時の対策だけれども、もちろん有事のときはこれも使うということがあるのかもしれませんが、たかが五十万トンですからね、今政府が備蓄の量として二回転で百万トン、約四十日分でしょう。そうすると、軍事有事と凶作がぶつかったらどうするんですか。
 だから、これは全然設計になっていないんです。それでもこれを有事対応だと言い張るんですか。
西藤政府参考人 お答えいたします。
 私ども、冒頭申し上げましたように、海外における要因ということで、地域紛争や突発的な事件、事故等による輸入に障害が生ずる場合を想定している、そういう点で私、地域紛争等有事という概念で申し上げたつもりでございます。
 一方、先ほど内閣府の方から答弁があったことは、私どもは、いわば武力攻撃を我が国が受けた場合の対応という前提での御論議だというふうに理解をいたしておるところでございます。
鮫島委員 何かよくわからない。平和ぼけの局長とやりとりしているような感じがしますが。
 有事法制を我々は何のためにつくったのか。これはやはり、有事の一番わかりやすい定義は、自衛隊に対して防衛出動が下令されたときというのが有事なわけですよ。といいますのは、国際情勢が不安定になる中で、万一のことがあっても国民に不安を与えてはいかぬ、超法規的措置でおかしなことにならないようにというので、大議論の末、有事法制も衆議院を通過し、今また参議院で議論しているわけです。
 そういう中で、では食料の備蓄はどうなっているんですか、有事を考えた備蓄の体制になっているのか、それを私は聞いているんだけれども、局長はいかにもそうだという口ぶりですが、大豆は二十日しか持っていない。大体、粉ミルクがないなんというのは国際的には信じられない。全然、有事に対応した内容になっていないですよ。えさが一カ月、米が四十日、大豆二十日、小麦が二・六カ月、何でこれが有事法制とある意味ではセットになるべき食料備蓄の姿なのか。
 今の政府の備蓄には一言もそんな説明はないですよ。十年に一回訪れるかもしれない凶作に備えて、五十万トン二回転の百万トン。それ以外の機能なんか何も持たせていないじゃないですか、少なくとも米に関しては。
 もう一回答えてください。有事法制で想定しているような有事に対応した備蓄制度というのを今農水省は持っているんですか。米四十日、大豆二十日というのがその答えなんですか。イエスかノーかで答えてください。
西藤政府参考人 先ほど内閣府の方から御答弁がありましたように、今国会で御審議いただいております有事法制に基づいて整備される予定の国内保護法制において、国や地方公共団体が実施する住民の避難や救援に必要な物資や資材の備蓄について規定を設けることが想定されております。
 その備蓄は、私ども、災害対策基本法に基づいて行われている備蓄等と兼ねることができると承知しておりますが、いずれにせよ、今後検討する国内保護法制、いわば国内の武力攻撃を受けた場合の国内保護法制の中で、武力攻撃事態が発生した場合に備えての備蓄のあり方について、先ほど内閣府の方からありましたように、今後検討する課題だというふうに思っております。
鮫島委員 最初からそう答えてくれればいいのに、何でそんな十五分間も変な粘り方をするのかよくわかりません。今後整備されていく国内保護法制の中で、当然、有事を想定した備蓄についても考えていくと。
 世界の常識からいうと、先ほど、日本は米は過剰生産ぎみだから心配ないみたいなことを言っていますが、すぐ今必要な、つまり平時で七百五十万トン程度は消費されていて、なるべくそれが過剰にならないように調整し、保管としては百万トンを備蓄する。それ以外にだぶついている米なんというのは存在しないようにするわけでしょう、そもそも今度の主要食糧政策では。それとも、その備蓄予定消費量以外に何かだぶついているようにするわけじゃないんだから、そういう意味では、有事のときに、日本は米が過剰生産ぎみだから使えるというのは理屈にならない。
 普通、常識的にどう考えるかというと、農作物というのは急に足りなくなって、石油だったらすぐ掘ればいいけれども、農作物の場合、足りなくなったら四カ月かかると言われているわけですね。しかし四カ月後には、必ずしも国内でつくらなくても海外にお願いしたりして、前にアメリカが大豆の禁輸をソ連に対してやったときに、アルゼンチンがあっという間につくり出して、四カ月後にはもう大量に出荷された。
 したがって、食料の非常時というのを考えたときは、四カ月というのが一つの時期になるわけですね。トウモロコシにしても、大豆にしても、サツマイモにしても、米はちょっときついですが、四カ月あれば一応できるということで、四カ月分備えましょうというのが欧米の、かつてのいろいろな悲惨な体験をした国々の常識になっているわけです。そういう意味で私どもも、先ほど筒井委員の方から米の備蓄数量三百万トンという数字を言いましたが、これはまさに、ちょうど四カ月分を想定して私どもは言っているわけです。
 食糧庁長官も、こういう米のことについては世界の備蓄制度も含めてお考えでしょうが、四カ月分程度の備蓄量が適正だという我々の案について、どういうふうにお考えでしょうか。
石原政府参考人 四カ月分の備蓄を持つことについてどうかということでございますけれども、これまでもお答えをいたしておりますように、米の備蓄につきましては、米が潜在的に供給過剰であるということでございます。そして、生産調整を実施している状況にあるという我が国の実情を十分踏まえて考えなきゃならぬというふうに考えておりまして、需給逼迫時に生産が回復するまでの供給を円滑に行う、そういう機能を中核的な機能として考えることが適当であると考えております。
 そして、その備蓄の水準をどのように考えるかにつきましては、今からしますと二年半ぐらい前に、最終的な結論を我々は出していただきましたけれども、学識経験者それから生産者団体、消費者団体及び流通業者、こういう方々から成る備蓄運営研究会というのを二年半前に設置いたしまして、結論を出していただいたわけでございます。
 その議論の結果では、一つは過剰在庫が米価の低下圧力となるということ、それから主食以外への振り向けに伴いまして財政負担の増嵩を招くこと、それから需要に応じた売れる米づくりに支障を来すこと、こういうことが判断材料になりまして、過去の作況変動をもとに翌年の増産可能数量をも考慮しまして、十年に一度の不作や、通常の不作が二年続いた事態等を想定いたしまして、百万程度が適切とされたところでございます。
 その内訳をちょっと申し上げておきたいと思いますけれども、一つは十年に一度の不作に備えるための数量でございます。これは、十年に一度の不作というのは作況九二をとられております。これでいきますと、試算では……(鮫島委員「ちょっと長官、違うよ質問と」と呼ぶ)生産の不足分が大体六十八万トンぐらいになります。それから、流通在庫の増大、要するに……(鮫島委員「ちょっと委員長、やめさせてくださいよ、違うんだから。違います。僕が聞いたのは全然違うんですよ。いいですか、有事のときの備蓄体制について聞いたんですよ」と呼ぶ)
小平委員長 鮫島委員、ちょっと待ってください。挙手をして発言を。
 はい、どうぞ。
鮫島委員 有事のときの備蓄体制について聞いたんですよ、今後想定される。今後、先ほど内閣官房の方も、国内保護法制を充実していくと。その中で当然食料備蓄のあり方も今後検討していく課題ですよということとの関連で、食料の備蓄というのは有事を想定したら四カ月というのが国際常識ですよと。これは、種をまいてから収穫するまで四カ月かかるからということで、四カ月。
 先ほど、学識経験者に検討してもらったというけれども、その学識経験者に有事を想定した備蓄について諮問しましたか、そういうことで検討してくれと言いましたか。僕はその学識経験者も知っていますが、彼らは別にそんなことを考えて決めたわけじゃないですよ。十年に一回の不作のときにどうするか、それから売れる米をつくる、消費に応じて生産しましょう、そんな話で、全然、平和ぼけ会議なんだから、有事のことなんか一言も出ていない。
 長官もおかしいですよ。あなたの頭の中に有事はないのか。これほど国会で問題になっていた有事法制の内容を一体読んだことがあるのか。有事のときどうするんですかと。まあいい、答えなくていいです。
 一冊だけ私は長官にも本を読んでもらいたいと思いますが、「ミグ25事件の真相」という本が二年前に出ているんです。
 一九七六年、函館空港にベレンコ中尉というのがミグ25に乗って亡命的な不時着というか、強制着陸したんです。これが実はずっと歴史の中で隠されていたんですが、当時の防衛庁の法務官の大小田八尋さんという人が二十五年間の禁を破って、全部資料は捨てたはずになっている、処分したはずになっていたんですが、この人がコピーを全部持っていて、それで二十五年ぶりに、やはり本当のことを国民に知ってもらった方がいいだろうということで出した本がこの「ミグ25事件の真相」という本です。
 実は、戦後一度だけ防衛出動がありました。これがそのミグ25のときなんですね。年配の方は御存じだと思いますが、昭和五十一年ですからちょうど三木内閣のとき、防衛庁長官が坂田道太さん。
 国籍不明機が近寄ってきました、スクランブルかけたら見失ったんですね。超低空飛行で函館に入ってきたんですが、ずっと航空自衛隊は見失って、当時の無線のやりとりが記録で残っていますが、見失いました、どっち方面をスクランブルかければいいでしょうかと言ったら、何を言っているんだ、もう空港に着陸しているからすぐ戻ってこいというようなやりとりまであって、函館の空港に着陸した。
 そうしたら、その次の日にアメリカの軍事筋からすぐ連絡が入って、大変な事態だと。このミグ25は機密の塊、最新鋭機で、必ずソ連がこれを奪回もしくは破壊に来る。空から空爆で破壊するかもしれないし、函館空港に潜水艦で特殊部隊が入ってきてこの機体の破壊または奪還を行う可能性が極めて強いから、直ちに準備せよという指令がアメリカから入って、北海道の方面本部がパニクったわけだ。
 それで、三木総理、坂田防衛庁長官に防衛出動の依頼をしたけれども、二人とも逃げ回って、私たちは関係したくないというので、結局、北海道の責任者が、超法規的措置で、私が全部責任をかぶるということで、実際戦車まで出して、それで具体的にどうなったかというと、ほとんど証拠物件としてのミグ25の機体の奪い合いで自衛隊と警察が一触即発、お互い銃を構えて、何だか漫画みたいな話ですが、非常におかしなことになって、身柄と機体を警察がとるのか自衛隊がとるのか大騒ぎになったことがある。
 結局、結果的にアメリカが入ってきて、おまえらそんな心配をするな、全部こっちが持っていくからといってみんなアメリカが持っていっちゃったわけですが。
 そのときに正式な防衛出動が実はあって、全部この命令書や何かが出たんですが、その後の処分だとかいろいろなことをどう考えたらいいかというのを責任者で悩んでいたのがこの大小田八尋さんなんですね。ですから、この超法規的措置というのがいかに危ないものかというのが具体的に書かれているのがこの「ミグ25事件の真相」という本で、一九七六年の真相がやっと二年前に明らかになった。そのぐらいやはり日本というのは有事の体制がなかった。
 食料については、教科書的には三つの体制をしきなさいと言われています、有事に備えて。日ごろから高い自給率を維持しなさいというのが大原則。それから二番目に、輸入食料については調達先を分散しなさい。これは石油と同じですね、ある国にだけ依存度が高まると危険ですよ、北半球、南半球含めて調達先を分散しなさいというのが二番目。三番目は備蓄の有効活用。それで初めて、有事に備える、備えあれば憂いなしと言えますよと。
 自給率の向上と、調達先の多様化と、備蓄の有効活用、この三つですが、今、農水省の今度の政府案で出てきているのもこの三つとどう関係しているのかというと、三つとも余り関係していない。自給率の向上は、意欲としてはわかります。それから二番目の調達先の多様化、これは西藤局長の役割なのか。農林水産省は、今、日本国民は海外からの食料に六割依存しているわけですが、日本の食料の六割は外国生まれという、この農水省のパンフレットにも書いてありますが、そうすると、セキュリティーの観点からどういうふうに調達先を分散化しているのか、あるいはその辺をどこが戦略を立てているのか。
 国民への食料の安定供給という観点から、六割依存する海外についてどういう戦略を立てているのか、そのヘッドクオーターというのは日本政府のどこにあるんですか、海外からの食料調達の戦略をつくるセンターは。
西藤政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、国民への食料の安定供給、それは基本でございまして、基本法では、国内生産を基本に、輸入と備蓄の組み合わせということで、安定供給ということになっております。
 そういう中で、私ども、特に先生御指摘の食料の安定的な輸入の確保という観点では、それぞれ物資所管部局において、平素から国内外の需給動向に関する情報収集、分析を行っているところでございますし、特に、我が国の食料安全保障上そういう点で重要だと思われます小麦、大豆、トウモロコシにつきましては、私どもの局が中心になってワーキンググループを設けておりまして、我が国への海外からの供給の見込み、状況等について、定期的、定期的と申しますのは大体毎月分析を実行し、毎月その結果は私どものホームページでそれぞれの状況について開示していくということで取り組んできている状況にございます。
鮫島委員 ぜひそのワーキンググループで、先ほどの官房が言った国内保護法もにらみながら、国民が安心できる備蓄、私は品目についても、先ほど粉ミルクの話をしましたが、脂もどうするかなんですよね。やはり、脂肪、たんぱく、炭水化物、そういうもののバランスをどう備蓄すべきかということも、ぜひ本格的な検討を始めていただきたいというふうに思います。
 だから、今の政府案の備蓄というのは、本当に十年に一回の凶作への対応という機能しか持たせていなくて、私たちは、もうちょっと備蓄というのは複合的な機能を持つはずだ、需給調整の機能も持つし、有事に対する国民の安心を供給する機能も持つし、そして、平時ならば、それをバイオマス、援助米、加工用、さまざまな素材としても使えるし、一石三鳥にも四鳥にも使えるのが備蓄を上手に運営することではないかというふうに思います。
 ですから、私たちは三百万トン程度、米でいえば約四カ月分あたりが適正備蓄量だというふうに思っています。これも随分遠慮している話で、では家畜の飼料はどうなのか、一カ月分でいいのかということも、今後ワーキンググループの中でぜひ検討していただきたいというふうに思います。
 では、そんなにいっぱい抱えて必要のないときにどうやって処理するんだという話がありますが、経済産業省がつい最近、新しいエネルギーに市民権を与えました。
 つまり、炭化水素油、簡単に言えばバイオ由来のエタノールとかジメチルエーテルとか、そういう主に植物由来の燃料も市民権を与えましょうと。今、実は、これについて規制がないものですから、いろいろなものが、おかしな品質のものが出回ったりしていて、あるいは脱税になっていたりしているものですから、ここをきちっと行政的に整備しましょうということで、炭化水素油という新たな定義をして、アメリカでもう普及しているガソリンにアルコールをまぜたガソホール、これも日本で市民権を与えていきましょうということが、つい最近、五月二十八日国会を通って、八月二十八日から施行されるようになります。つまり、正式に日本もガソリンにアルコールをまぜたガソホールがアメリカのように使えるようになる。
 市販車にそのまま使うのに、何%ぐらいの混入率だったら影響ないかどうか、今これは経済産業省で早急に検討しているんだと思いますが、今、実際、アメリカではどのぐらいガソホールとして使われているアルコールの量があるんでしょうか。
細野政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のアメリカにおけるいわゆるエタノールをまぜたガソリンのことでございますけれども、現在、アメリカにおきましては一〇%までこのエタノールをまぜたガソリンを販売してもいいということになっております。
 したがいまして、全体の量についてのお尋ねでございますけれども、アメリカにおきましては、二〇〇〇年におけるアメリカのエネルギー省の統計によりますと、全ガソリンが大体約五億キロリットルでございますので、それの約一三%がエタノールの一〇%混合ガソリンになっております。したがいまして、換算いたしますと、ガソリン全体の約一・三%に当たる六百三十万キロリットルというもののエタノールが消費をされておる勘定になります。
鮫島委員 今アメリカでは六百三十万キロリットルのエタノールがガソホール、ガソリンとまぜられて自動車用の燃料として使われている。アメリカで売られている自動車は今全部、一〇%アルコールの燃料にも対応できるような車じゃないと売れない。日本のトヨタもホンダも日産の車も、アメリカで売られているものについては全部、一〇%のエタノール燃料に対応できますよと。傷まないパッケージとか、あとメッキのやり方を変えて、コストはそんなにかかりませんとトヨタの方が言っていましたが、全部そういう車になっている。
 ただ、日本はまだそうなっていませんから、余りいきなり高い濃度のエタノール混入のガソホールを使うとパッキンが傷んだりするんでしょうけれども、今専門家の間で三%ぐらいまでなら大丈夫じゃないかという話が出ていると思います。まだこれは今後御検討していただくとして、あくまでも仮定の話なんですが、もし日本で今普通に走っている車が使える濃度が三%ぐらいだなというふうになった場合に、みんながこの方がオクタン価が高まって排ガスもきれいになるというのでこれを使い始めると、アルコールの必要量、日本で想定すると、仮にですが三%が適正だなというふうになってこれが普及した場合に、大体どのぐらいの量のアルコールが使われるという試算でしょうか。
細野政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の品質確保法という法律でございますけれども、この法律によりますエタノールの許容値、まぜてもいいという上限値でございますけれども、御指摘のように現在まだ検討中でございますが、仮に三%というふうになった場合には、平成十四年度におきまするガソリンの国内の消費量が約六千万キロリットルでございますので、これが全量、このすべてが許容値いっぱいに三%混合となった場合には、約百八十万キロリットルということになろうと思います。
鮫島委員 備蓄米三百万トンを日本酒をつくるように発酵させてアルコールにすると、ブドウ糖一個から二つのアルコールができて二つの炭酸ガスが出るんですが、そうすると、三百万トンの備蓄米全量アルコールに変えるとどれだけになるかというと、ちょうど今言った百八十万キロリットルになるんですよね。
 ですから、その意味では、筒井さんが言った三百万トンというのはなかなか深い意味を持った数字でして、ちょうど四カ月分の備蓄量にも相当するし、平時にはそれを三%アルコール混入のガソホールとして使えばちょうど全量はけますという、極めて適正な量だということが御理解いただけるというふうに思います。
 ただ、価格の問題があって、特に、アルコールがなかなか難しいのは、日本の酵母が世界で一番高濃度のアルコールに耐えられる。ワインで使っているものよりも日本のものが一番高くて、お酒好きな方は一九・二%ぐらいの原酒を飲んでおられる方もいると思いますが、あれが大体限度で、あれ以上アルコールが高まると酵母が死んじゃうというので、どうしても、日本の最高の酵母を使っても二〇%弱。これをそのまま燃料にできませんので、蒸留するわけですね。このときに大量にエネルギーを使っちゃうから、実はプラマイ・ゼロだとか、ほとんどゲインがないというあたりが今技術開発上の最大の問題になっていて、どうやったら余剰の熱、例えばごみの燃焼とか、余熱を使ってアルコールを上手につくるかというのが、ヨーロッパあたりでも今検討されているところです。
 特に北欧などでは、このバイオマスについて、米からつくったエタノールという場合には、もともと米中の炭素は空気中の炭酸ガスが固定されたものですから、これをアルコールにして燃焼して飛ばしても、環境については新たな負荷にはならない。環境ニュートラルという意味で、これはバイオ燃料として炭素税でインセンティブをつける対象になっているわけですね、北欧では。
 こういうことは方向的に経済産業省の方でも、これまでバイオマスプロジェクトは、オイルショックの後、昭和四十五、六年から今日まで、科学技術庁も取り組み、経済産業省も取り組み、農林水産省もバイオマスプロジェクト、さんざん取り組んできましたが、大体コスト的に合わない、帝国陸軍の知恵には勝てなかったなということが総括になっていると思いますが、今度もしうまくいくとしたら、炭素税でインセンティブをつけられれば、もしかしたらこういうバイオマスの世界が動き出すかもしれないという、ちょうど今二十一世紀の頭のところで、新しい文明を我々が手にできるかどうかが問われているんです。
 経済産業省の方もあれでしょうか、環境省と相談しながら、こういうバイオマスのエネルギー利用について、やはり炭素税あるいは環境税というものをどう組み合わせていくかということも検討しているんでしょうか。
細野政府参考人 お答え申し上げます。
 バイオマス起源のアルコールにつきましては、今御指摘のとおり、再生可能な資源ということで非常に貴重なものでございます。もちろん、地球温暖化の対策としても非常な可能性を持っているということでございまして、昨年十二月に閣議決定されましたバイオマス・ニッポン総合戦略というものにおきましても、こういう観点から、バイオマスエタノールを含むバイオマス燃料について、安全性とそれから供給の安定性、それから経済性、環境への影響、こういったものについて、我が国の事情も踏まえて適切な評価を行った上で、国が主導してその導入スケジュールをわかりやすく示しながら、計画的に利用に必要な環境整備を行っていくということについて検討すべきであるというふうに定められております。
 経済産業省といたしましても、こうした考え方に立ちまして、関係省庁と連携してバイオマスエタノールの利用について取り組んでいく方針であり、本年二月より、総合エネルギー調査会の燃料政策小委員会においてもこのバイオマス燃料のガソリン、軽油等への混合等の形態での利用について審議を開始したところでございます。
 そのほか、技術開発等の支援につきましても、木質バイオマスから発酵技術によるエタノールを製造する技術の開発支援、あるいは動植物油からのバイオディーゼルフュエルを製造する装置の実証試験支援、あるいは自治体とかNPO、民間事業者によるバイオディーゼルフュエルの導入等の地域におけるモデル的な取り組みについて支援を行っているところでございまして、こういった状況を見ながら、全体的な方向を検討してまいりたいと思います。
鮫島委員 私は、炭素税を使ってインセンティブをつけることを検討しておられますかと聞いたので、ちゃんとした答弁をもらえませんでしたが、ぜひ……。
 ですから、今農業問題といっても、ただ農業は農業の現場だけで考えればいいだけじゃなくて、今のようなガソホールも視野に入れ、炭素税も視野に入れ、そして環境省も協力してもらい、また有事も想定し、内閣官房とも相談し、複合的、総合的に組み立てていく時代に入ってきているということを私は言いたいわけです。
 ですから、備蓄も、十年に一回の不作のときどうしようかということでは余りにも発想が貧困。やはり来るべきバイオエネルギーの時代、そして有事も考え、国民に安心、安全を与えるためにはどういう備蓄がいいのか、どれだけ複合的な機能を持たせるかというのが政策じゃないかという観点から、備蓄問題について質問させていただきました。
 ちょっと別の角度から、先ほど金田委員がおっしゃった国民的合意をどう得るかという話なんですが。
 私ちょっと触れましたが、北海道と都府県は全く構造が違う。北海道は専業率が、主業的農家が七五%、それ以外が二五%、それに対して都府県は、主業的農家が二〇%、副業的農家が八〇%、そのぐらい違う。経営面積も随分違うと思いますが、その数字だけ教えてもらえますか。北海道の主業農家と都府県の主業農家の経営面積の違い。
山本政府参考人 お答えいたします。
 主業農家一戸当たりの経営耕地面積でございますが、北海道は二十一・二ヘクタール、都府県では二・八ヘクタール、このようになっております。
鮫島委員 約十倍違います。都府県と北海道の違いは、日本とドイツの違いぐらい違っていまして、ですから、まさに北海道こそ本格的な農業らしい農業が展開できる場所ですし、七五%が主業農家というのは、私はすごい数字だというふうに思います。
 ただ、先ほどの国民的合意との関係からいうと、では所得はどうですか。これもちょっと若干誤解されていますが、例えば北海道の主業農家の農家総所得、世帯当たりですが、幾らでしょうか。それから、都府県の販売農家の所得は幾らぐらいか、それに対して都会の勤労者世帯の世帯当たりの所得、この三つの数字だけ言ってもらえますか。
山本政府参考人 お答えいたします。
 北海道の主業農家一戸当たりの農家総所得でございますが、これは平成十三年の数字でございますけれども、九百六十三万円となっております。これに対しまして、都府県の販売農家の平均でございますが、これは八百二万円となっております。さらに、全国の勤労者世帯の実収入、これは農家の総所得に相当いたしますが、六百六十一万円、このようになっております。
鮫島委員 これはまさに金田委員が指摘したとおりでして、勤労者六百六十一万、それから販売農家が八百二万、北海道の主業農家で九百六十三万、この世帯当たりの総所得だけ見ると、勤労者というのは非常に貧しいんですよね。ですから、余り粗っぽい所得移転というような話をしたら、国民的な理解が得られない。よほど所得の低い人たちも納得できるような形の直接補償や何かを考えなければいけないというふうに思います。
 北村副大臣は北海道ですのでちょっとお伺いしますけれども、私がさっき言ったみたいに、専業率が七五%、都府県は二〇%、経営面積が約十倍、農業の構造が全く違うと私は思いますが、ところが、一貫して農水省は、都府県も北海道も単一な政策で対応してきた。これはおかしいんじゃないか。もうそろそろ、北海道は北海道らしい独自の農業振興策、そして都府県はどちらかといえば副業的経営が八割ですから、その構造に合わせた別々の政策を企画立案すべきじゃないかと思いますが、北村副大臣の個人的な見解でも結構ですので、御意見を伺いたい。
北村副大臣 鮫島委員から個人的ということでありますが、立場が副大臣でありますから、どう言っても個人的な答弁にはなりませんけれども、今委員がおっしゃったことは、私は大変重要なことだと常日ごろから思っておりました。
 ですから、そういう面では、早い時期からというわけではありませんけれども、平成十二年には、北海道と都府県とやはり経営形態別の展望をきちっとしようということで、そういう取り組みも我が農林水産省はやってきたところでございます。
 ただ、すべて今の農業を取り巻く、あるいは農村、漁村を取り巻く状況というのは、北海道も府県もそんなに大きな差はない。高齢化ですとか、あるいは担い手が足りなくなってきているとかいろいろな問題を考えると、すべてをくくって別々にやるということにもなかなか難しいという状況もありまして、今のところはやはり一つの政策を日本の中できちっとやっていくということになれば、どうしても都道府県を一体とした政策をとっていかざるを得ないというのが今の状況ではありますが、今後、私は、北海道あるいは府県というもののいろいろな経営形態を考えたときに、北海道ならではというようなものをやはり政策として打ち出していかなければならないだろう、こう思っています。
 そして、そのときには、今回の米政策等々でも、いつも長官がおっしゃっていたとおり、意識改革、これはどのようなところであっても生産者の方々の意識改革というのは同じだと私は思っています。生産調整をする、これは北海道であろうが府県であろうが同じだ。あるいは、酪農、畜産あるいは畑作の意識も、米の意識も、生産調整をする。とにかくもうけるということが第一にあって、そのためには需要と供給をどうとるか、それには生産者がやはり意識改革をしていくということがやはりどこの都道府県をとっても私は同じである、このように思っているところであります。
鮫島委員 それは、この三、四十年の歴史を見ても、非常に、市場原理を導入したり競争原理を導入したり、ある種農業の産業としての自立を図るための措置をとると一番影響が少ないのが今、副業的農家。家計費に占める稲作所得の割合はわずか二%ですから、つまり、値段がどう動こうが多少揺さぶられようが何の影響もなく、ライフスタイルファーミングみたいな形で、ホビーファーミングでできるわけで、専業の人がそういう波をもろに受けるという意味で、私は今、北海道には少し別な視点が必要じゃないかということを指摘させていただきました。
 何か大臣の御都合があるとか。ちょっとあと一問だけ。今、そういう所得補償の関係で、多面的機能ということが一種のはやりのようになっていますが、これも正しく判断していかないと、非農家の合意、都市住民の合意は得られないと私は思います。
 今、学術会議が行った試算で、農地の多面的機能を貨幣換算すると約八兆二千億、林野で七十兆円というすごい金額が出ていますが、これは変な試算といえば変な試算でして、例えば、その空間に農家があった場合とない場合でどうかといって本当ははじかなくちゃいけなくて、ある空間が持っている多面的機能だったら、じゃ、国立公園はどうなんだ、原生林はどうなんだ、白神山地はどうなんだという話になって、実は何が何だかわからなくなる。それから、都市の商店街だって、夜は商店街が治安を維持しているんだぞとかいろいろなことを言い出すとわからなくなるので、農地や林地の持っている多面的機能というのを都市住民に納得いく形ではじくためには、そこに農家が存在していることによってプラスどれだけの価値が生まれているのかということで私はぜひ試算し直してほしい。
 この学術会議が仮にやってみた貨幣換算というのは、乱暴というか科学的ではないというふうに思いますが、これはこれで一つの試算としての意味はあるのかもしれませんが、ぜひそういう意味でもう一度農林水産省として、特に直接所得補償をにらみながら、多面的機能の貨幣換算というのを、農家がそこにいた場合、いない場合という視点でぜひやっていただきたいんですが、いかがでしょうか。これを最後にします。
太田政府参考人 多面的機能に関する国民的理解を得るということは非常に大事なことでありまして、その評価について、国際社会における対応という面からもまた重要だということで、平成十二年に日本学術会議に、地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的機能の評価について諮問いたしまして、十三年に幅広い学術的な評価についての答申をいただいております。
 その結果はただいま委員の方から御指摘があったとおりでございますが、農水省といたしましては、一年間にわたり、学術会議という科学的な慎重かつ十分な調査審議を経ての答申でございますので、これは重いものだというふうに考えております。適切な評価はいただいたというふうに考えております。
 ただし、これを国民の方々に理解いただく上で、その表現ぶり、そういったものについてはさらなる工夫というのがあると思います。そういった意味での、御指摘の趣旨を踏まえて、より国民の理解がいただけるような工夫を続けてまいりたいというふうに考えております。
鮫島委員 ちょっとあんまり危ない答弁をしないでもらいたい。よく考えてくださいよ。
 もし学術会議方式でやるんだったら、だれも人が住んでいない原生林が一番価値が高いことになりますよ。ですから、農家のいることの価値ということでやるのがまさに農水省らしい価値でして、学術会議は学術会議の一つの評価としてこれは参考にすればいいので、こんな数字で多面的評価はこれだけ価値があるんだから金を出せと非農家に言ったって、これは逆に誤解と反感のもとになりますよ。ぜひそこは、そういう立場なんですから、科学的に、客観的に、もう一回計算し直してもらいたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。
小平委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時十分開議
小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 きょうは大事な法案の最終日です。委員会が流れないように、委員各位に出席をよろしくお願いいたします。
 質疑を続行いたします。山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 きょうは、委員長も申されましたように、大事な食糧法案の最後の審議なんですが、どうやら与党席はほとんど理事が欠席で、いかに与党が政府案に失望しているか、それとも、いわゆる食糧法案に対する真剣な態度が足らないんじゃないか、そう思って、私どもは、政府案それから野党案について質疑させていただきたいと思います。
 先に政府案について大臣にお聞きしたいと思いますが、いわゆる計画流通米、今まで計画流通米で三百八十万トンあったわけですが、それについては、価格が下がったときに差額分の八割を補てんしてきておった。ところが、これから枠組みが新しい食糧法では外れちゃう。そうすると、計画流通米という概念もなくなるわけですが、すべての米、例えば、個人で生産者が直接だれかに売ったときに、一万二千円でしか売れなかった、そういった場合に、領収書があれば差額分についても補てんできるのかどうか。
 その辺の仕組みはどうなるのか。全く自由になるのか、あるいは何らかの制限があるのか。大臣、いかがですか。
亀井国務大臣 今度の、いわゆる計画流通制度が廃止になるわけでありまして、米価下落影響緩和対策等々、この対象、こういうものにつきましては、いろいろの、まず最初の段階の生産数量の調整、これは農業者あるいは農業団体等々いろいろ協議をされまして、その数量が確保、決定されてくるわけであります。
 そういう枠の中での、また、産地対策等々、あるいは水田農業のいろいろのビジョン等々、いろいろの制度に関連を、所属をされる、そういうことであれば一つのそのような補てんの問題が出てくるわけでありますが、ただ、今の場合、どのくらいの量をどう、縁故米というようなそういう形での売り渡しなのか、ケースがいろいろ出てくるのではなかろうかな、このように思います。
 原則的に言えば、個人がそういうふうな販売をされたということであれば、個人と個人との販売、こういう形になるのではなかろうか、こう思います。
山田(正)委員 どうもはっきりしないんですが、個人が、直接消費者に生産者が販売したとしても、その価格についてのいわゆる補てん、六十キロ二百円と差額の五割についての補てんがあるのかどうか。あるかないか、それだけで結構ですから、お答えいただければ。
亀井国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたとおり、どういう条件になりますか、その条件がいろいろあるんじゃなかろうかなと。どのくらいの量を、そして、要は制度の中のいわゆる参加者であるかないか。そして、その数量がどの程度、どういう形になるか。個人的な販売のようなケースなのか。少し具体的なことがちょっと、いわゆる今度の制度、交付金あるいは米価下落影響緩和対策等々の対象になっておるのかどうか、そういうことによって異なってくるのではなかろうかと思います。
山田(正)委員 異なってくるか、制度がどうなっているかじゃなく、いわゆる流通制度において、自主流通米とか計画流通米とか計画外流通米とかというのは一切なくなるわけですから、そうなれば、当然、個人の売ったもの、あるいは農協を通じて売ったもの、それも同じように価格補てんがあるのかないのか。それだけで結構ですから。わからないならわからないでいいですよ。
亀井国務大臣 ですから、先ほど来申し上げておりますとおり、いわゆる米価下落影響緩和対策の対象、これは、水稲の作付面積が作付目標面積を超えていない農業者、あるいは過剰米短期融資制度における過剰米処理に係る拠出をしている農業者の米穀であって、農産物検査を受検した米穀、生産目標数量の範囲内の米穀、米穀安定供給確保支援機構が行う支援の対象となっている米穀。これらはいわゆる米価下落影響緩和対策の対象になるわけですから、その対象のものであれば、まずその補てんの対象になる、こう思います。
山田(正)委員 だから大臣、聞いているのは、私が生産者だとして、消費者に直接、六十キロ一万二千円で、それしか売れなかったとした場合に、対象になるのかどうか、支援機構の。イエスかノーかだけで、わからないならわからない、それだけを答えてくれればいいとさっきから言っているんですよ。
亀井国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、要件が整っておれば対象になる、こう思います。
山田(正)委員 では、対象になる、そう考えていいかと……
亀井国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、その米価下落影響緩和対策の対象、こういう要件、これらが整っておれば対象になる、こういうことになります。
山田(正)委員 だから、要件がどうなのか。ただ個人、私、生産者が、六十キロ一万二千円で消費者に直接売った場合もその対象の要件に入るのか入らないのか。それを、後ろの方に聞いてもらって結構ですから、正確に答えてください。
亀井国務大臣 ですから、ケースが、例えば生産者が個人的な関係でその消費者に一万二千円でお売りになった。これは、いわゆる取引がそういう形態であれば、私は個人的な売買じゃなかろうかと。
 先ほど来申し上げております基準というのは、基準価格というものが算定されてくるわけでありますので、それとの差額が出てきた場合、それは補てんをされる、こういうことでありますから、あくまでも、この対象、こういうものが必要になってくると思います。
山田(正)委員 どうも大臣の答え、よくわからない。政府案はかようにあいまいである、そうとらえざるを得ない。
 そう考えておりますが、中でも、価格がどんどん、かつて、自主流通米制度のときには価格は二万一千三百六十七円だった、ところが、ことしあたりになると一万四千円、かなり下がってきている。これでいくと、さらに米価は下落していく。
 大臣、そうなってきたときに、いわゆるこれからの価格をどうするかという意味での、今度の新食糧法は米価下落の価格に対する歯どめが何かあるのかどうか。大臣、そこだけ、あるならある、ないならないでいいですから。
亀井国務大臣 ですから、それはいわゆる米の市場等々での価格が、一つの基準価格等々が出てくるわけであります。そういう中で価格が決定をされる。そして、それに差が出てくるようなことになれば、先ほど来申し上げますとおり、いろいろの関係に加入をされている等々のいわゆる要件にかなった経営をされている、そういう方々につきましてはそれなりの補てんをする、こういうことになっておりますから。
 どこに歯どめを置くか、これはなかなか難しいことでありますけれども、どういう状況になるか、これはこれからのいわゆる取引の状況にかかってくるのではなかろうか、こう思います。
山田(正)委員 大臣、基準価格というのを今度の新しい食糧法では決めるわけですか。どうやって決めるんですか。法案に、どこに書いてありますか。
亀井国務大臣 これには書いてございませんけれども、いわゆる今度のセンター等々で取引が行われるわけでありますから、そういう中でそれなりの、販売をされる方、またそれを購入される、そういう方等々によって価格は決まってくるわけであります。それが異常な低下というようなことになれば、先ほど申し上げましたような緩和対策、こういうようなことでその補てんがなされるわけであります。
山田(正)委員 米の価格形成センターもなくなって、全く市場で野菜と同じように取引されるわけですから、それに基準米とか基準価格とかということはあり得るわけがない、大臣。それに対する対策、いわゆる緩和対策措置と言いましたが、どういう措置を考えておられるのか。
亀井国務大臣 いわゆる米の価格が、現在までは自主流米センター、これが変わった形でセンターとして存続するわけでありますので、これは、そこだけじゃなしにいろいろなところで取引はなされるわけであります。そういう中でいろいろ価格というものが決定をされると思います。それは、あくまでも需要予測に基づく、いわゆる生産数量であるとか、あるいは生産調整のメリット、産地づくり推進交付金の需要に見合った売れる米づくりであるとか、過剰米の短期融資制度、こういうことで、農業団体あるいは農業者等々、過剰米を処理するというような需給の均衡、こういうものが図られるわけでありまして、そういう中で、取引という中で価格というものは決まっていくのではなかろうか、こう思います。
山田(正)委員 大臣、正直に答えればいいのであって、これから米の価格はいわゆる市場価格で決まっていく。基準米価とかそれに対する補てんとかということはあり得ないわけでしょう。大臣、政府案をしっかり認識してもらっていないと困りますよ。ということは、どれだけ下落するか、さらにわからないということになりませんか、大臣。
亀井国務大臣 需給調整をするわけでありますし、補てんにつきましても、過去のいわゆる価格、こういう中で、過去三年なりそういう中での一つの基準、今一つお示しをしております二百円の固定部分、またその変動、こういうものがあるわけでありまして、そういうようなものがいろいろ加味されて、その補てん、こういうものが出てくるわけでありますので、価格が下がった、こういうような場合につきましてはそういうものが、先ほど来申し上げますとおり、下落への緩和に対するいろいろの措置がなされてくる、このように思います。
山田(正)委員 どうも大臣のはあいまいなんですが、政府案を私どもが読んで精査した限り、いいですか、米がどんどん下がろうとも、それに対する下支えあるいは価格を安定させるようなものは考えられない。ただ、価格が下がったときのいわゆる補てん、これは従来どおり今回盛り込まれておりますが、それについても、これまでは計画流通米に適用しておった。ところが、そのシステムも全くなくなるわけですから、それであれば、すべての生産の米、八百七十五万トン、それに対してすべて、いわゆる差額についての補てんをするのかどうかと、そう聞いておったわけですが、どうも大臣はよく理解しておられないようなので、次に質問を移したいと思います。
 実は、この前から区分出荷について、いわゆる豊作で一〇三とかに作柄がなった場合に、二十五万とか過剰米が出た場合の区分出荷を、どの生産者の米を農協が区分出荷するのか。農協そのものが扱う米も、三百万トンからせいぜい四百万トン。その中で大変不公平に陥ってしまう、その区分出荷した分は六十キロ三千円ですから。そういう状況に陥ってしまうんじゃないか、そう思われるわけなんです。
 そのような中で、大臣としては、いわゆる区分出荷、それについてはかなりきちんと実現可能であると思われるかどうか。意見だけで結構ですから。
亀井国務大臣 区分出荷につきましては、まず、先ほど来の基本的なことで、いわゆる需給、需要、生産数量、これを農業者や農業団体等々で決めるわけでありまして、そういう中でやはりいろいろ話し合いをし、そして一つの集落あるいは地域、こういう形で農業経営をやっていただき、そしてまた出荷をされる、こういうことになるわけでありますから、十月十五日の作柄、こういうことに基づきまして、それなりの数字というものが出てくるわけでありますから、それはやはりその経営体、その地域の皆さん方がお互いに、今回のこの制度が変わる、こういう意識改革、認識をお持ちいただく、そういう中でそれらが進む、実現できる、このように思っております。
山田(正)委員 大臣はそういう希望的観測を考えておられるようですが、それでは大臣、質問を変えますが、いわゆるこれまでの米の備蓄、この買い入れを昨年度、市場から備蓄分として何万トン、価格はどれくらいで買い入れましたか。これは質問通告しておったはずですが。
亀井国務大臣 まず、米穀の政府買い入れにつきましては、食糧法第五十九条に基づきまして、生産調整実施者から売り渡しの申し込みに応じて随意契約により買い入れを行う、こういうことでありまして……(山田(正)委員「僕が今聞いたのは、昨年何万トン、幾らで市場から備蓄用として購入しましたかと聞いているんです」と呼ぶ)十五年におきましては――ちょっとお待ちください。
 昨年は一万四千二百九十五円であります。そして、買い入れの数量は、八年産が……
小平委員長 大臣、一度座られて、きちんと答弁を整理してから。
 別な質問をされますか。――では、ちょっと待ってください。
 大臣、よろしいですか。はい、どうぞ。
亀井国務大臣 一万四千二百九十五円で、八万トンでございます。
山田(正)委員 いわゆる八万トン、九百七十万トン生産のうちに八万トンぐらいしか備蓄として買い入れていないということなんですが、今の価格をお聞きしました。
 ところで、備蓄用として買い入れて、今も百五十万トンぐらい備蓄米があると聞いておりますが、その中で、八年産、九年産、この米がかなりあるやに聞いておりますが、その米の保管料はどれくらいに今なっているでしょうか。そしてまた、今、備蓄用の米、去年一年間で保管料はどれくらいかかっていましょうか。
亀井国務大臣 政府米の備蓄に伴う保管料、これは、一年につきトン当たり一万二千円、そして、現在二百六十四億の保管料の実績であります。
山田(正)委員 大臣、もう私の方から話しますが、平成八年産、九年産の米がかなりある。しかも、毎年二百六十四億、いわゆる三百億ぐらいの備蓄コストがかかっているわけです。そして、これから先も平成八年産、九年産の米を市場に出すことはほとんど不可能である。そうすると、政府は、この備蓄米の処理を回転備蓄という方法でやっていて、多大な経費がかかり、そして行き詰まっていると私は言えると思うんですが、それで百万トンに備蓄を減らそう、そういう主張をなさっている、そう政府は考えていると私は思わざるを得ないわけなんです。
 この原因は、一つは、先般ちょっと質問しましたが、いわゆる保管料、営業倉庫に随契でもって高い保管料を払ってきている。トン当たり一万二千円ほど保管料が一年間にかかっている。ところが大臣、私は、米はサイロでもって、もみでもって、生産地につくれば、大体トン当たり今政府は一万二千円ぐらいかかると言いましたが、私の計算でいくと、私が調べたところでは、大体トン当たり一千五百円しかかからないわけです。ですから、例えば二百五十万トン備蓄したとしても三十何億しかかからない。いわゆる政府がかかっているお金の十分の一で済むわけです、もみサイロを建築すれば、そこでいわゆる棚上げ備蓄すれば。いいですか、大臣、よくわかっていただきたいんです。もう意地悪な質問はしないから聞いていてください。
 それで、大臣、いいですか。毎年、仮にそのサイロをつくるとしても、私、佐賀県で実際にサイロを見に行って調べてきたんですが、大体二百五十万トンのサイロをつくるとしたって、鋼鉄でつくって夏場だけ低温にすればいいだけですから、大体一千八百億もあれば十分できるんです、構造改善事業でつくれるんですよ、これは。そうすれば、いわゆる備蓄を、経費がかからずに安いコストで、しかもその質を落とさないで保管できる。当然そういう方向で、一つの生産地へのもみサイロによる棚上げ備蓄というものを、大臣、ここで検討しなければいけないのではないか。どうですか。
亀井国務大臣 先ほど八年産、九年産のことにお触れになりましたけれども、八年産につきましては、百十六万トン政府が買い入れをいたしまして、これまで百一万トンの販売が行われておりまして、十四年十月末現在で十五万トンの在庫であります。あるいは九年産米につきましても、百十九万トンの政府買い入れ、これまで八十一万トンの販売をいたしまして、十四年十月末、三十八万トンの在庫。こういうことで、この八年、九年産につきましても、それぞれいろいろ業務用等々につきましての需要もあるわけでありまして、引き続きこの販売の努力をしていかなければならない、こう思っております。
 また、さらに保管のことにつきましていろいろお話がございました。実は私も商売の経験者でございますから、保管料がどのように、一期、月にどのくらいの金額で、農業倉庫でございますと、たしか食料倉庫をやっておったときには一カ月二期というような区分で保管料をちょうだいした経験があります。そういう面で、いかにそれらを安く保管するような努力をしなければならないわけであります。
 あるいはまた、その保管につきましても、米の備蓄、これは低温による長期の保管であります。どうしても入梅期の暑いさなかを越しますと大変質が落ちてくるわけでありまして、そういう面で、やはりこの保管につきましては低温、こういうものでなければならないわけでありまして、サイロの問題、もみでの問題、これはやはり私は、玄米での保管の方がそういう面で低温等々の問題で品質を落とさずに済むのではなかろうか。
 また、サイロの建設等につきましても、地域で新たにつくる、現実に今いろいろなところで新たなものをつくるよりも、やはりこの保管等につきましてコストの低減、こういう努力をしていく方がよろしいんではなかろうか、このように考えております。
 しかし、これから、この保管あるいはまた入札の制度等々につきましては、やはりいろいろの設備や能力、そういうものの、一定水準のものであるとか、あるいは競争原理を導入して入札制度をするとか、こういうことで十分検討していかなければならない、こう思っております。
山田(正)委員 大臣となかなかかみ合わないんですが、いいですか、いわゆる三百億からの保管費用がかかっておって、しかも、農産物検査官というんですか、いわゆる米を一級、二級とか、たしか十二階級ぐらいに分けているのかな、そういう検査制度がまだ残っておって、それで千四百三十七人の米の検査官がいる。一人当たり、年収、年の給料が五百万としても、七十一億八千万ぐらいは、いわゆる米が自由化されてというかもう流通に制約がなくなるわけですから、こういう検査制度もなくなるんじゃないかと思うんですが、それでもこれだけの、七十一億、さらに合わせると四百億ぐらいむだな経費が今、米の管理、保管、あるいは検査とかという名目で使われているんじゃないか、私はそう思うわけです。こういういわゆる回転備蓄制度というのは破綻を来しているんじゃないか。
 ところが、野党案、筒井議員にお聞きしたいんですが、野党案はその点非常にすぐれていると思いますが、野党案としてはどのように考えておられるか。
筒井議員 おっしゃるとおりだと思います。もみで、サイロで備蓄をする。保管費用が、今の政府がやっているのよりも保管料自体が非常に安い。
 大体、倉庫に玄米で保管するなんというのは、ものすごい費用がかかることをわかり切ってやっていることです。しかもその備蓄米も市場から市場価格で買い入れて安く売るんですから、その値引きの額の損害もすごく大きい。私たちの案の場合は、市場価格の六割でもって、もみでもって引き取るわけですから、その点からも極めて合理的であるというふうに考えております。
 そして、それはもう短期融資の対象になった時点から主食用には一切回さない。役割が終わった備蓄米に関しても、主食用には一切回さずに、加工用、バイオマス用等々に回すという点からも、需給調節の機能が十分果たされる、こう確信をしております。
山田(正)委員 野党案はすぐれている、そう思われますが、ひとつ筒井議員に重ねてお聞きしたいんです。市場価格の六割、これはいただけない。
 アメリカの米のいわゆるローンレート制度ですが、これは先般この委員会でも質問したんですが、いわゆる融資単価、ローンレートが二百十三ドル、そして市場価格は百四十三ドルですね。だから、市場価格は、ローンレート、融資単価の三分の二ぐらいにすぎない。これはローンレートの方が高くなっているわけです。
 米で計算しますと、例えば一万五千円ぐらいが市場価格だとすれば、アメリカの同じような制度で考えると、融資単価というのは六十キロ二万二千円ぐらいになるわけです。そうすれば、もともと、米に対する補償、いわゆる下支え的機能というのをローンレートは果たしているわけです。
 ところが、筒井議員の市場価格の六割というと、そういう市場においての米の下支え機能というのを最初から放棄している。そうなりませんか、筒井議員。
筒井議員 アメリカのローンレートの場合には、乱高下はありますが国際価格と市場価格とローンレートがほぼ同一水準という形で、このローンレートによって直接価格の下支えをやろうという趣旨の制度でございます。輸出を前提にしたアメリカと日本の場合とは全然趣旨が違って、日本の我が野党案では、純粋に過剰米対策としてこの短期融資制度を考えているわけでございます。
 過剰米対策として考えた場合に、山田先生がおっしゃるように、もし市場価格に近い、あるいは市場価格の八割でもよろしいんですが、それで融資するという形になった場合には、初めからそれが目的で生産をしてしまう、こういう悪い結果が起こってくる可能性があるわけでございまして、だからそういう意味では、先生がおっしゃるような、市場価格に近い価格を設定するのは間違いだというふうに思っております。それで六割にしたんです。
 ただ、六割にすることによってある程度、過剰米をつくってしまったら、消費量を超えた米をいっぱいつくってしまったならば、六割でしか政府には引き取ってもらえない、損することを覚悟しなければいかぬわけですから、そこで自主的な生産調整がある程度生きてくる可能性はありますし、また、先ほど言ったような、物すごい高い価格を設定した場合の悪い結果は生じてこないというふうに考えて、市場価格の六割としたものでございます。
山田(正)委員 アメリカの制度は、もともと価格支持融資制度と銘打たれるほどであって、いわゆるローンレート、融資単価そのものは価格支持の機能を果たしているというところ、これは筒井議員の考え方とちょっと違うんじゃないか、そう思っておりますが、いいです、そのことは。それ以上、時間もないので議論しません。
 EUでも支持価格制度を設けているという形で、穀物においてそれをやると生産過剰になりやしないかという筒井議員のお話でした。
 ところで私は、先般、金田委員も言っておりましたが、米だけでなく、小麦あるいは大豆、それにもいわゆる価格支持融資制度をやったらいいんじゃないかと。今、複雑な計算方法でもって大豆とか小麦とかいろいろ補助制度をやっておりますが、それを全部やめて、米と同じように、例えば小麦も六十キロ九千円なら九千円、今の相場より千円か二千円ぐらい上げて、そして、引き取りますよ、市場で売れなかったのは最終的にその分引き取りますよという形にすれば、北海道あたりはほとんど米じゃなくて麦をつくるんじゃないか、そして、地域によっては大豆も、ローンレートの設定次第では大豆をどんどんつくるんじゃないか。そうすると、過剰米制度というのは徐々になくなっていくんじゃないか。
 過剰米そのものは、いわゆるローンレートで備蓄用として棚上げ、一切市場に出さない、主食用として出さないということを徹底していくことによって、三百万トンから五百万トンぐらい備蓄していけばそれで足りるだろうし、いわゆる小麦、大豆あるいは飼料作物等についても、そういうローンレート、いわゆる支持価格融資制度というものを設ける必要があるんじゃないか。
 私はそう考えますが、筒井議員、いかがでしょうか。
筒井議員 アメリカの場合は、先ほど先生が言われたように、ローンレートそのもので価格の下支え機能を果たしている。しかし、今、野党案、これは政府案もそうだと思いますが、価格そのもので、融資単価そのもので価格の下支え機能を果たすんじゃなくて、過剰米を処理することによって米価の引き下げを防止するという意味では下支え機能を果たすわけですよ。
 そういう意味で、ちょっと制度が違う。過剰米対策であるという特色を持っているわけでして、その点から、今先生が言われた麦とか大豆について考えますと、過剰という状況ではないものですから、過剰米対策として麦とか大豆に広げるということは、ちょっと趣旨が違うかなと思います。
 ただ、別な趣旨の制度として、今先生がおっしゃったように、確かにそういう形にすれば北海道で麦とか大豆がもっとふえるんじゃないかということが言えるものですから、それは別な制度として十分に検討に値する案だというふうに考えております。今後の検討課題だと思っております。
山田(正)委員 それから、野党案でもう一つ、私、大変すぐれていると思うのは、所得補償制度、これを取り入れていることだと思うんです。
 その所得補償について、いろいろな、水田だけではなく農地もあるわけで、畑作にも、いろいろな野菜をつくっているところもあれば、果樹、それから畜産と、いろいろあるわけですが、筒井議員としては、所得政策をどのように基本的に考えているか。その基本的な考え方だけで結構ですが、お話しいただければと思います。
筒井議員 日本農業再生の道は、市場原理と産業保護の統一しかない。全部市場原理にゆだねたら日本農業は崩壊してしまう、かといって、保護だけになってしまったら発展性もない。この二つの統一こそが日本農業再生の道だと考えております。
 そのために、先ほど申し上げたように、減反政策に関しては、より自主的なものにする。流通規制に関しても緩和をする。しかし同時に、明確に最低限の所得を農家に補償する。その最低限の所得を補償した上で、各農家の自己判断、自己責任という方向性が必要だと思っておりまして、この最低限の補償がこの所得補償だ。
 これは、この主要食糧法ですと米と麦だけでございますが、先生がおっしゃる大豆もそうですし、野菜もそうですし、畜産もそうですし、そういう方向に広げていくべきだ、さらに将来的には林業にも漁業にも広げていくべきだというふうに考えております。
山田(正)委員 大変結構だと思うんですが、ことし、アメリカの場合に、九十億ドル、約一兆円、農業予算の中で環境保全対策費として計上したわけですが、これから農業の持つ環境保全的機能と、それから一方で、けさほどから問題になっておりました構造改革を進めるということとは、相反するんじゃないか。
 いわゆる中山間地域、私は離島なんですが、島における段々畑等々というのは、まさに日本の国土保全、環境保全的機能を果たしているのであって、それに対しての所得補償を、例えば四町歩以上とか十町歩以上とか、そういう構造改善を目指してのいわゆる所得補償であっては環境保全的側面というものは失われていくんじゃないか、そう考えますが、筒井議員、いかがでしょうか。
筒井議員 矛盾しない所得補償の形がある、こう考えております。
 だから、こちらが提案しているのは四階建ての所得補償でございますが、一階部分は全経営体に渡す。多面的機能を発揮している、あるいは食料安定供給機能を発揮している、これは、規模にかかわらない、すべての農家の果たしている成果でございますから、それに対してきちんとした所得補償をする。
 しかし、二段階目は、一定規模以上、例えば個別経営であれば四ヘクタール以上とか、そういう構造改革の努力をしている経営体に対して割り増しの所得補償を渡す。それからさらに三階部分は、今、消費者の志向は安全、安心でございますから、そういう有機農業の努力をしている農家に対しては三階部分でさらに割り増しの所得補償を渡す。そして、先生今おっしゃった中山間地に関しては、厳しい条件不利地域の中でもって多面的機能と食料安定供給機能を果たしているんですから、それに四階部分を渡す。
 こういう四階建ての思想でこの所得補償を配分すれば、まさに多面的機能の発揮と構造改革とを同時にこれで実行することができる、こう考えております。
山田(正)委員 いろいろ意見は異なるかもしれませんが、概して、野党案はその所得補償という意味ではすぐれているんじゃないか。いわゆる今世界の流れからして、既にEUにしても所得補償、アメリカにしても所得補償、形は変えてもカナダにしても所得補償をしている。各国やっているのに、日本だけが主要食糧において米の野菜化をここで実現するということは、農業のまさに崩壊である。
 そういう意味では、この政府案には断固として反対であり、そういう意味で、所得補償政策、それからローンレートその他の前向きな米政策をぜひ実現していかなければならない、そう私の所信も述べさせていただいて、実は時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。
小平委員長 次に、中林よし子君。
中林委員 まず、民主党、社民党提出の案について質問したいというふうに思います。
 私も、今度この二党が出された対案というのは、所得補償だとかあるいは備蓄の問題だとか、今まで政府にない、農民が期待するものが入り込んでいるということで、大変前進だというふうに思います。
 ただ、今質問したい点は、政府案と同じ態様をとっている米の価格形成センターの問題なんです。
 現行の規制を全部取り払って、届け出さえすればだれでも米の集荷、卸、小売ができるようになる。これでは、大スーパーあるいは大商社が資力に物を言わせて米ビジネスに入ってくる、そういう傾向がある。そうすれば、この委員会でも大分問題になっていましたけれども、投機の対象にもなるのではないか。売り惜しみだとかそういうものがあって、生産者にとっては買いたたきが行われるということで、この面でも歯どめのない米価下落を招きかねないというふうに私は危惧するわけですけれども、この歯どめ措置というのはどういうものでしょうか。
筒井議員 この法案で、大幅に供給が不足する緊急時に関しては既に規定がされておりまして、それは政府案でも一緒でございます。
 緊急、有事だとほど言えない不足時の段階においては、これは野党案の方が、私たちの案がすぐれているところですが、政府備蓄制度、これを需要調節機能とそれから危機管理機能と両方とも持たせておりますので、その場合にも、緊急時、有事とまで言えない段階の売り惜しみとか大暴騰の危険性が出たときに、政府備蓄米を放出することによってそういうことを防止することができる。
 この役割を、規定を入れているわけでございますから、戦前の富山の米騒動みたいな、ああいうものはこの備蓄制度によって十分防ぐことができる。三百万トンですから、こちらの方の備蓄の量は。絶対に買い占めとかなんかはもうほとんど効果が発揮できないという制度に野党案はなっていると思います。
 そしてまた、逆に米価が大幅に下がることに対する防止措置は、まさに過剰米対策としての短期融資制度でございまして、これに関しても政府案よりすぐれていると思っているんです。
 政府案の場合には、豊作時の対策があるだけ。例えば、豊作で作況指数が一〇三だった、この場合、三についてだけその短期融資制度の対象になることができる、これだけでございます。野党案の場合には、年間の消費量を超えた量、これ全体を短期融資制度、過剰米対策の対象にすることができるわけでございますから、より本格的、大幅になっておりまして、だから、米価が下がることに対する防止措置も野党案の方がすぐれている、こう確信をしております。
中林委員 全体の法体系から見て政府案よりいいというのはわかるんですけれども、ただ、下落を食いとめるところまではいかないんじゃないかというふうな危惧はまだぬぐえませんけれども、政府案の方がひどいものですから、そっちの方で十分議論していきたいというふうに思います。
 この審議を通じて、政府の説明あるいは答弁を聞いて、この法案を突き進んでいけばまさに農業の崩壊につながってしまう、こういうことがますますはっきりしてきたというふうに思います。
 主食の米の安定供給から手を引いて国の責任を放棄し、さらなる市場原理にゆだねて価格の下落には歯どめがかからない。米の集荷、卸、小売の規制がなくなって、米市場への大企業の参入、これに一層拍車がかかってきてしまう。さらに、担い手経営安定対策、こういうふうに言うわけですけれども、一定規模以上で対象から外される、それが九割ぐらいになるということも明らかになりました。
 実は、先般五月二十七日に、平成十五年度全国農業委員会会長大会、そこで要請書が出されました。ここに、全国各地の農業者の切実な声が紹介をされております。
 これを見ると、山形県の余目の町の人の声ですが、本町の認定農業者二百七十六人の平均耕作面積は六・一ヘクタールであり、現在考えられている要件、家族経営体四ヘクタール以上、集落型経営体二十ヘクタール以上では、農地の利用集積が進んでいる本町にあっても要件を満たさず、恩恵に浴さない担い手農家が出てくる。彼らをどう支援できるかが課題だ、こういうふうに言っているわけですね。
 私もこれまでずっといろいろただしてきたわけですけれども、こういうあるべき姿からはみ出す九割ぐらいの農家、それに対しては、一体どういうふうにこの山形の人の声に政府はこたえるのでしょうか。
亀井国務大臣 この担い手経営安定対策、これは、米価が下落した場合に、稲作収入の減少の影響が大きい一定規模以上の水田営農の担い手を対象に、また米価下落影響緩和対策に上乗せし、稲作収入の安定を図る対策として措置しようとするものであるわけでありまして、したがって、担い手経営安定対策の対象にならない人たちは、生産調整実施者であれば、規模の大小、あるいはまた専業、兼業にかかわらず米価下落影響緩和対策の対象になるわけでありますし、今回の米政策におきます産地づくり対策や過剰米短期融資制度の対象ともなり得るわけでもございます。
 また、農家に対する経営支援対策といたしましては、今回の米対策のほかに、従来からの農地や機械、施設等の整備に係る補助及び長期低利資金の融通、経営規模拡大のために必要な農地の利用集積の促進、経営の多角化等に必要な商品開発、あるいは販路開拓等の取り組みに対する支援等各般の支援策を講じているわけでもございます。
 なお、今御指摘の中山間地域や、あるいはまた西日本を初め、水田営農の規模が総じて零細な地域にあっては、個別経営で担い手経営安定対策の対象にならない場合であっても、一定要件を満たす集落営農を組織化することによりまして、担い手経営安定対策の対象となる道を開くこととしておるようなわけであります。
中林委員 大臣、いろいろ言われましたけれども、しかし、この審議を通じて、集落型経営体というもの、二十ヘクタール以上というのは、まさに農水省も、一体どのくらいできるかというのは何一つ示せないんですよ。
 これまでの認定農業者などのアンケートを見ても、その今ある集落営農から見ても、一割程度しか一元的な経営管理はやっていないし、将来法人化しなければならないなど厳しい要件を満たすようなものは出てこない。全くそういうことは絵にかいたもちだということは明らかです。しかも、いろいろな対策を講じるとはおっしゃるけれども、今までよりも分厚いものになるなんということは、金額的にも全く出てきておりません。
 そういう意味では、まさに絵にかいたもちを一応決めて、これを農民に押しつけるなどということはあってはならないし、私は、九割近いか九割を超えるかもわからない、そういう、これまで営々と稲作農業をやってきた人たちを今回によって切り捨てるような政策、これは絶対に許されないことだというふうに思います。
 そこで、私はなぜそういうことを言うかというと、この審議を通じて参考人質疑をいたしました。生産調整研究会の座長であった生源寺氏、この方が、平成二十二年の四十万戸と言われるこの担い手対策に乗る農業経営体というのが本当に実現できるのか、こういう質問に対して、できないでしょうと答えているんですね。そのぐらい自信のないものなんですよ。
 現実を見ればできないということは明らかです。だから、もう基本構想が始まる前から壊れているようなもの、これを農民に押しつけるんですか、農水省は。
亀井国務大臣 平成二十二年におきます農業構造の展望、それは、効率的かつ安定的な農業経営、家族経営と法人経営を合わせて四十万程度。また、農地利用の六割程度、約二百八十万をこの目標にしておるわけでありまして、これらの目標に対して、現状では認定農業者が十七万、あるいはまた、農地におきましても目標の七七%、こういうことであります。これらにつきまして、今後、やはり私どもも格段の努力が必要、このように認識をいたしております。
 今般の米政策の改革、このような構造改革の進展状況を踏まえまして、生産調整システムだけでなく、米政策を総合的に再構築しようとするわけでありまして、二十二年を目標として、この構造展望の実現に向けて、水田農業の構造改革を加速化してまいる努力をしてまいりたい、こう思っております。
中林委員 大臣からも全く自信のある答弁は見えませんでした。要するに、努力をすると。あなた方は、それに向かって努力をするのみ、これしか、私も事前にいろいろ聞いても、まさにそこは希望的観測なんですよ。こうあればいいなと。そういうことを机上のプランでやってみる。現実、それを受けている農家の方々は、これだけ経営規模がある自分の町でさえも恩恵に浴さない担い手農家がたくさん出る、こういう声を出していることに全くこたえようとしていないということを指摘して、次に移ります。
 仮に、自信のないと言われた四十万戸構想も、大規模農家に農地を集積して、その他の農家は自分たちで好きなようにおつくりください、こういうことで米生産から基本的には退場させていく、こういうものがあった場合、とても危険な問題をはらんでいると私は指摘せざるを得ません。
 十年後、この四十万戸の経営体がそれからずうっと続く保証はどこにもありません。大体、新政策も同じことを言ってきたわけですよ。十年後には他産業と同じ所得が得られるようにこの道を進めばなりますよ、こう言って構造改革を進めた。ところが、だんと米価が下落して、集積すればするほど農業経営は困難になっていったというのは、現実が物語っているじゃないですか。
 だから、いろいろ集積したけれどもやはり米価は下落して、やってはいけない、やっておられないという状況で、もしも経営放棄をした場合、一体その農地はだれが引き受けるんですか。要するに、担い手にならないそういう農家の人たちは、飯米ぐらいはつくっているかもわからないけれども、基本的な農業経営体にはなっていないわけですから、引き受ける資力もあるいは経済力もない、そういう事態になっている中で大規模農家がバンザイした場合、一体その農地はだれが引き受けていくんでしょうか。
川村政府参考人 私ども、二十二年の展望として、担い手四十万ということを目標にしております。これは決して、これを構成される経営が固定的なものというふうに考えているわけではございませんで、今先生も御指摘ございましたとおり、新たに入ってこられる方、また高齢化あるいはその他の理由によって離農される方も確かにおられると思います。入る方と出ていかれる方、そういうものがあるということは事実でございますが、まさにそういう出入りがある中で、総体として確保されていくようにしていきたいということでございまして、まさにそのために、中核的な農家、またその周辺の農家も含めて目を配りながら、特にまた中核となって引っ張っていく農家も強固に育てていきたいというのが我々の考え方でございます。
中林委員 日本共産党の国会議員団が全国調査をしたその経験は、この審議でも私は相当御披露してまいりました。滋賀県、そこで百ヘクタールをつくっているグリーンちゅうずのお話もさせていただいた経緯がございます。これは、その町のもう耕作ができなくなったところを引き受けながら、全体で百ヘクタールを担っているという状況なんですね。これ以上価格が下がれば、真っ先にバンザイせざるを得ないとここの社長はおっしゃっておりました。そうなると、一体そこはだれが引き受けるんですか。
 まさに、もうできないからということで委託された耕作をやっている、そういう会社が、法人がバンザイする。このときに、その出入りがありますとおっしゃるんです。新規参入があるでしょうと言う。それは数えるほどしかないですよ。大体、もうかるならば、新規参入、どんどん入っていくでしょう。しかし一方、関税引き下げ要求が国際的には出されている、そして国内的にはこの食糧法の改正で市場原理が一層持ち込まれていく。どうやって上がるというんですか。
 全く上がる要素はないのにもかかわらず、新規参入があって、出入りで、それで何とかやっていきますなんといういいかげんな答弁では、とても農家の皆さんは納得されないというふうに思いますよ。
 大体、今まではそれでも集落営農ということで、水路の管理だとか、田の草を刈るとか、あるいは機械の共同的な作業だとか、そういうことで成り立っていって、助け合いで、家族経営で何とかこうやって集落の水田を保持してきているわけですよ。それを選別して四十万戸にして、大経営をやらなければ、あるいは二十ヘクタール以上集まらなかったらあなた方は農業からもう退場ですよと言っているやさきにバンザイした場合ですよ。そんな、絵にかいたように新規参入でそれをちゃんとやれるなんということが言えますか、自信持って。言えるんなら、おっしゃってください。
川村政府参考人 まさに効率的かつ安定的な経営体ということで我々は言っておりまして、この安定的なという意味では、今申されましたように法人化、これも非常に重要な道でございます。
 それからまた、特に水田農業等につきましては集落で取り組んでいくということも大事だということで、基盤法の中でも、今回、特定農業団体ということでの位置づけをし、また、米対策の中でも集落型経営体というものを新たに担い手として位置づけるということでやっております。
 これから米対策に取り組んでいただくわけでございますけれども、地域地域で、地域の水田農業ビジョンということで集落で徹底して議論をしていただきまして、だれがその地域を担うのか、また、将来どうあるべきなのか、作付はどうすべきなのかといったことを徹底してお話し合いをしてやっていただきたい。それに対して我々もできる限りの支援をしていきたいということでございます。
中林委員 それが、もう現実、始まっている中で、集落では、新たな選別の中で、あなたは担い手だ、リーダーだと言われる農家はいいけれども、あなたは退場だと言われた人たちは、もうやっておられるかという状況になってきているわけですよ。現場を知らないで、今後そういうことを話し合いしていただければ何かうまくいくかのようなことをおっしゃっても、今までの歴史がそうは言っていないよということを指摘せざるを得ません。
 この農業会長大会のさまざまな全国の議論の中には、本当に切実な声があります。
 山口県田万川町の声。農業の現状から考えた場合、夢のある農業とはほど遠い状況である。後継者が農業を継がないことや、新規就農者が数年で離農といったことが数多くあるなど、夢と現実のギャップが大き過ぎる。国はもっと思い切った支援策を実施しないと、農業そのものが崩壊しかねないと危惧している。こういう声。
 また、北海道では、ウルグアイ・ラウンド合意以後は農産物輸入が増加し、農産物価格の下落を招いており、とりわけ担い手農家の経営を悪化させている。そのため、安心して農業経営に取り組めるように、これ以上の輸入を食いとめる措置と経営所得安定対策を早期に実現してほしい。こういうふうに言っているわけですよね。
 同じように、そのとき資料として、全国農業会議所がアンケートの結果を私たちに見せていただきました。この中でも、農業経営所得安定対策、断トツの第一位なんですよ、一番望むものというのは。だから私は、民主党や社民党が共同提出された対案というのは、そういう面では画期的な対案だというふうに思うんですよ。
 だから、意識改革だとか話し合いだとか、この審議を通じて農家自身の取り組みを随分強調されましたけれども、こういう現実離れした現在の状況、支援策をほとんど具体的に示せ得ないで、何で自信持って進めることができるのか。こういう農家の人たちに、支援策ありますよ、こういう提案でちゃんとやれますよと言えるものがあるなら、示してください。
石原政府参考人 先ほど来出ておりますように、野党の方からは、直接所得補償あるいは過剰米短期融資制度による価格補償というようなことも出されております。
 我々、これまでもこの場での議論で申し上げておりますように、我が国農業、特に水田農業の現状を考えますと、非常に、担い手の生産シェアが著しく低いという特徴がございます。また、大幅な需給ギャップが大きな問題となっているという側面もございます。こういう点を考えますと、需要に応じた生産を主体的に担う農業経営、これを育成するとともに、構造改革を加速化するということが重要な課題だと思っておりまして、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造を一日も早く実現することが大事だということでございます。
 そういうこともありまして、先ほど非常に批判されましたが、農業者の意識改革、これが重要なことだと思っておりまして、農業者の意識改革を伴わずに野党案にありますような所得を直接補償するような措置を講ずるということになりますと、先ほど来申し上げています構造改革が進まない、生産構造が固定化されて構造改革に支障があるということでございます。
 そしてまた、一番、消費者のことを考えましても、需給事情や品質評価といった市場シグナルを農業経営に伝達することが重要でございます。こういう点につきましても非常に問題があるのではないかと考えております。
 以上のようなことで我々は今回の政府案を提案した次第でございますので、御理解いただきたいと思っております。
中林委員 意識改革と言うけれども、あなた方がこれまで猫の目農政みたいに、やれ転作をして奨励金つける、大豆をする、麦をすると言いながら、やれば、今度は、もうそれは廃止だよとか、毎年のようにくるくる変わっていったわけでしょう。何でそういう、意識改革が大切だと農民に責任転嫁するんですか。あなた方自身の意識をまず改革しなきゃいけないじゃないですか。これだけ輸入をしておいて、そして需給とのギャップがありますよと。需給とのギャップはあなた方がつくったわけでしょう。農民は、夢と現実のギャップを言っているわけですよ。何言っているんですか。
 安全な食料を欲している消費者のニーズを農民が敏感に肌で感じろと。よく言ったものだというふうに思いますよ。消費者は何を求めているか。安全で安定した食料ですよ。国内で自給できるようにしてほしい。それを全部台なしにしてきたのは、これまでの自民党を中心とする政府の政策じゃないですか。(北村副大臣「委員長」と呼ぶ)いや、あなたに何も聞いておりません。何も聞いていません、結構です。
 そこで、産地づくりについてお聞きします。いいですか。農民同士で……(北村副大臣「そんな、共産党の……」と呼ぶ)何言っているんですか。そんな、副大臣が自分の座っている席からどうして不規則発言されるんですか。(北村副大臣「答えさせてください。今の委員の」と呼ぶ)いえいえ、私が聞いている範疇で言ってください。いいですか。
 産地づくりの問題でお聞きします。
 これまで、この委員会での審議を聞いていると、農民同士でよく話し合って、そして、どの作物をつくれば全体の自給率向上できるか、そういうものをそれぞれで自主的に決めてくださいと言うんですよ。そんな、これまでやってきたことを全く顧みないで、農民同士の自主的な判断で、これが足らない、あれが足らないから、これをつくったら何とかいけるなんということが現実できると本当に考えているんですか。
 そうじゃなくて、二〇一〇年まで自給率四五%まで引き上げると基本計画で決めているわけですから、その五ポイントを引き上げるためには、それぞれの生産作物の数値目標を示しながら、そしてそれを引き上げるための具体的な政策を示す必要があるんじゃないですか。農民同士の自主的な判断などということでは、日本の二〇一〇年までの自給率向上にはならない、このように思いますが、その点はいかがでしょうか。(北村副大臣「委員長」と呼ぶ)
小平委員長 まず、答弁者は、質問が終わってから答弁の挙手をして、そのルールを守ってください。
 北村農林水産副大臣。
北村副大臣 委員からいろいろと御指摘ございました。
 私もかつては酪農をやっておりました、北海道で。今もやっております。そういう意味では、生産者の方々、今委員がいろいろなことをおっしゃいました、そういう方もおいでになるでしょう。
 ただ、私は一点、委員が、意識改革、そんなことを声高に言うべきでないと言いますが、意識改革が大切だという意味は、我々五十代、自分たちが戦後生まれて、親の背中を見ながら一生懸命にやってきて、自分の生きる道は親の跡を継いでいくことだ、こう思ってやってきた。しかし、その我々が今五十代になったときに、自分たちの子供に何を言っているか。(中林委員「委員長、とめてください。聞いてないことを答弁している」と呼ぶ)国が悪い、あるいは都道府県が悪い、農協が悪い、そういうようなことを言っていたら、息子が本気になって親の後を継ぎますか。
 ですから、そういう意味で、意識改革をしっかりやりながら生産調整、みんな苦しいんです、苦しいけれどもやってきている。米もそこを、考えていただきたい。野菜も酪農もみんな生産調整をやってきているんです。それがなぜ、米の方々だけができない、こういうことを言うんですか。そうじゃない、みんな同じです、農家の方々は。
 ですから、そのことを踏まえて、余り特異的なことだけをここで述べられて、それが全部のような言い方をされるのであれば、私は何度でも答弁をさせていただきます。
中林委員 委員長、お願いがあります。私が聞いていることとは全く違うことを副大臣は答弁だと言って述べておられます。産地づくりの問題を聞いているわけです。だから、それについて答弁してください。前に進まないと。私は持ち時間がないんですから。
小平委員長 質問者、答弁者ともに、冷静に対処を願います。
 須賀田生産局長。
須賀田政府参考人 産地づくり対策、先生も先ほどおっしゃられましたように、担い手の育成、それから需給調整、地域特産化。例えば需給調整ですと、共同できちっとやらぬといけないという要素、担い手の育成ですと、多少なりとも選別的な要素、こういうものが入ってくるわけでございます。やはりそういうものを推進していくためには、集落あるいは旧市町村単位で働いております相互扶助でございますとか、自治でございますとか、平等、あるいは地域資源の共同管理というような、そういう原理が働いているところで、地域水田の農業の将来ビジョンというものをどうやっていくかということをつくっていただいて、中に担い手の問題、作物、作付の問題、販売の問題、こういうものがあるわけでございます。
 そういうビジョンをつくっていただいて、これまで、ともすれば私どもの対策、押しつけだ、あるいは使いにくい、地域の実情に合っていない、こういう御批判をいただいておりましたので、自分でおつくりいただいたビジョン、これはもちろん生産努力目標とか構造展望とか全国ベースの目標を念頭に置いてつくっていただくわけでございますけれども、そのビジョンを支援するにはどういう支援の仕方があるかということも考えていただきまして、いわゆる地域の自主性を尊重しながら創意工夫を生かしていただく、こういう意味で産地づくり対策ということを提案させていただいているわけでございます。
中林委員 自主的な取り組みというけれども、大臣、これは私、妨害がありましたので時間がどんどんなくなったので、答弁は求めませんけれども、しかし、イギリスが、かつて第二次世界大戦前は自給率三〇%台だったんですよ。それを戦後、見事に自給率を高めていった。なぜそういうことをやったかというのは御存じでしょうか。
 これは、国がやはり国策として自給率を高めていかなければならない、一九四七年の農業法で本当に国民的な合意を得て、財政支出も伴ったわけですから、そして価格政策をやって、農産物の価格を大体一五%から二〇%引き上げる、そういう財政支出をやりました。だから、それ以来、穀物の自給率もうんと高まって、今はイギリス、全体では七割ぐらいですけれども、穀物は一〇〇%を超えているわけですよね。だから私は、そういうことを具体的に国がちゃんと責任を持ってやるべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。
 先般の我が党の松本議員の質問で、政府筋は、ミニマムアクセスの削減のためのセクター方式にすれば、ほかの穀物の輸入量をふやさなければならないので、自給率向上に弊害を及ぼす、こういうまことしやかな答弁をされました。そこで確認をとりますけれども、ミニマムアクセスは義務ではなく最低輸入の機会の提供、これでいいですね。いいか悪いかだけ。
石原政府参考人 結論だけを言うと誤解を抱かれると思いますので、ちょっと御説明をさせていただきますと、この点につきましては、平成六年の五月二十七日、衆議院の予算委員会におきまして政府統一見解を出しております。
 その内容は、ミニマムアクセス機会を設定する場合におきまして我が国が負う法的義務は、米の国内消費量の一定割合の数量についての輸入機会を提供すること、ここは同じです。ここはおっしゃるとおりでございます。
 しかし、我が国は米を国家貿易品目として国みずから輸入を行う立場にある、そういうことからしますと、ミニマムアクセスについて輸入機会を提供すれば、通常の場合、当該数量の輸入を行うべきものと考えているというのが政府統一見解で、この統一見解につきましては現在も変更はございません。
中林委員 だから、この議論は私、ずっと今までやってまいりました。あなた方が自分たちで、国家貿易だから義務にしなければならないということを、勝手に手を縛りまくってしまっているということで。そうじゃなくて、言われたように、輸入機会の最低の提供だと、これが正しいWTO協定上の解釈なんですよ。だから私は、そこはちゃんと確認をとりたいと言ったら、前段お認めになりました。日本政府の場合はこういうふうな解釈をしていますよという御丁寧な説明もあったわけですけれども。
 私は、このミニマムアクセス米が、義務輸入ではないのに、政府が国家貿易だと勝手に言って無理やりに輸入している。だから、セクター方式にすれば、大豆や飼料用の穀物など、これは国家貿易でもないわけですから、縛られないというふうになります。そうなると、国家貿易に縛られないわけですから、これは三%、五%以上輸入しているわけですから、大体輸入量の平均を確保すればいい、穀物セクターにした場合。そうしたら、ミニマムアクセス米をすっぱりゼロに削減しても可能でしょう。なぜやらないんですか。
石原政府参考人 米について、穀物セクターとしてまとめてアクセス数量を約束すること、これは我々、米以外の品目でアクセス数量の拡大要求を招くこととなる、今後自給率の向上を図っていくこととしている国内産麦の振興に悪影響を与えないかと言っております。要するに、我々、これは、なかなか、今の国際状況から見まして、こういう新たな穀物セクターという、一まとまりでこういうミニマムアクセスを設定することは難しい、こう言っておるわけですね。
 仮にそれができたとしても、仮に小麦と米と一緒のセクターになりますと、米は減らしてもいい、そのかわり小麦はどうするんですかという問題が出てくるということです。小麦について、我々は今までも自給率向上のために、これの生産振興をしております。これができなくなるということ。
 それからもう一つ、米につきましても、あくまで穀物セクターとして一本になるわけですから、米について輸出国の要求が静かになるわけではありません。全体としての穀物セクターの中で、米をもっと買え、もっと買えという話になりますよということを申し上げているわけでございます。
中林委員 一体、米を守るつもりがあるのかないのか。あれだけ三度の国会決議をして、一粒たりとも入れないという、あの気概は一体どこに行ったんですか。アメリカの顔色ばかりうかがって、そんな弱腰なことを言っていてどうしますか。
 理論的には可能です。そして、カレントアクセスにやっていけば、輸入量の平均の半分、国内需要がないものは輸入しなくてもいいんですよ。九九年のとき、私は資料をこの委員会で配りましたよ。アメリカはアクセス数量に対してどういう輸入の状況をやっているか。アイスクリームの例もそのとき言いましたよ。そのとき、アイスクリームは三百二十八万四千トン。だけれども、実際は一万七千トンしか輸入していませんよと。こういう状況がちゃんとあるんですよ。それぞれの国の事情で、減らすことが幾らでも可能。だから、米をきっぱりゼロにしていけば十分じゃないですか。そんなこと、理論的にできるのに、ミニマムアクセス米が今農民を苦しめているということを考えれば、そういう方向で交渉すべきだというふうに思います。
 私はこれでずっと言い続けるわけにいかないので、今度の米の調査の中で全国回って、地産地消運動、とりわけ学校などの米飯給食運動、本当に地域ぐるみで取り組んでいることに感動を覚えました。
 文部科学省は今、米飯給食を週三回にしたい、こういう目標値を持っているわけです。今二・八回になっておりますけれども、残念ながら大都市の方はそれよりも以下になっているわけです。例えば、悪いところを申し上げて恐縮なんですけれども、特に悪いのが、週一・八回の神奈川県、それから二回の大阪府、二・四回の東京都、それから二・五回の兵庫県、愛知県、広島県と、大体大都市を抱えているところなんですね。だから、こういうところが米飯給食をうんと進めていけば、私は、そこの地産地消運動はうんと進んでいくだろうし、そして、米生産農家と直接結んだ自給率向上にも資するのではないか、こういうふうに思っているところです。
 きょう、文科省の方に来ていただいているので、ちょっと一点だけですが、学校給食会がこれ使えという限定的なことをところどころでまだやっている、その地域の取り組みを阻害している要因もあるので、そこは地域の取り組みを尊重するという指導を徹底していただきたいんですが、短い答弁でよろしくお願いします。
田中政府参考人 各学校におきます給食の材料につきまして、何を使って、どこから買うかということに関しましては、これはそれぞれ学校を設置いたしております市町村の教育委員会なり都道府県の教育委員会が決定することでございますので、私どもといたしましては、その地域の実情に応じて地場産物の活用をさらに推進していただけるように、各都道府県教育委員会等を今後とも指導してまいりたいと考えております。
中林委員 大臣、最後に御要望がございます。
 ここに食糧庁、私は非常にすばらしい仕事をされていると。食糧庁をいつも批判ばかりしているわけじゃないんですよ。米飯学校給食推進の取り組み事例。全国の事例がここに網羅されて、まさに食糧庁の宝、残念ながら食糧庁はなくなりますけれども、そう思っているわけですよ。
 日本農業新聞でも、ついこの間、五月十五日付で、高知県南国市、家庭用炊飯器を活用して「棚田米育て農家交流も」。地場産で完全米飯給食、週五日。それぞれの学級ごとに、家にある炊飯器でお米を炊くわけですよ。だから副食よりも先にお米の方をみんな食べる、本当に残菜がなくなった、こう言っているんですね。
 だから、平均以下のところをいかに高めていくかというのを農水省としてもうんと支援策を強化していただくことと同時に、大臣、一度南国市に行って、ここを見ていただき、体験していただきたい、こう思いますが、支援策と、ぜひ大臣、体験していただくかどうか、それを御答弁いただきたいと思います。
亀井国務大臣 先ほど来いろいろ御指摘をいただきまして、いろいろの米政策のこと等につきましても、大変御批判をちょうだいした御発言もちょうだいいたしました。
 しかし、私ども農林水産省、今、米のことにつきまして、学校給食のこと、あるいはまた食糧庁がいろいろやっていることにつきましてお褒めをちょうだいしたわけでありますが、そのように、すべて各省庁、米の問題等々につきまして、消費し、そして生産し、顔の見える関係等々、この新しい時代にそれなりの成果が上がるように今努力をしておるところでもございます。また、学校給食のことにつきましても、自県産米を使うとか地産地消の問題等々、いろいろ積極的に支援措置も講じて努力をしておるところであります。
 また、南国市の問題につきましては、いろいろの日程がございますから、どういうことにできますか、大変今お話は興味深く、また大変感心して伺ったような次第でございます。
中林委員 終わりますが、大臣の地元がなかなか少ないですので、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。
亀井国務大臣 私の地元、神奈川県のことにつきましてお触れになりましたけれども、やる体制はいろいろあるんですけれども、なかなかそれをやっていただく職員の皆さん方の御理解をいただいていないというところが、実は神奈川県の問題としてあるわけでありまして、それらのこともぜひいろいろ全般的な御理解をいただく。新しい制度をやるにつきまして、そこに従事される人たちがなかなかそれを進めていただけない障害があるということをぜひ御理解いただきたいと思います。
小平委員長 大臣、許可を得て答弁してくださいね。(亀井国務大臣「はい」と呼ぶ)
中林委員 終わります。
小平委員長 次に、山口わか子君。
山口(わ)委員 社会民主党の山口わか子でございます。
 今度の政策につきましては、もうこれでいよいよ最後となりました。さまざまな議論がありましたけれども、なかなかわかりにくい議論の中身もあったというふうに思います。
 最後ですから大臣にお伺いしたいんですが、これまで実施されてきたこの幾多の米政策につきましては、やはり三十年も続けてきた減反政策、特に生産調整についても、どういう評価をされているのかということが非常に私たちにはわかりにくいわけですね。特に最近、しばらくの間はよかったんですが、最近は毎年のように目まぐるしくこの生産調整の政策が変わってきているというふうに思うんです。
 そんな中で、今ここでこの改革大綱が見直されて、改革大綱を進めていくことになるわけですけれども、私はやはり、今までどうして三十年も続いてきたこの政策にどこが問題があったのか、どういうところが変えなければいけないことなのか、非常にわかりにくいと思うんですね。
 先ほどから、生産者の意識の改革が必要だとか、消費者の意識がどうとかというお話がありましたけれども、私はむしろ、国が、国の政策として今まで進めてきた中で、この我が国の水田農業政策、米政策をめぐる状況がどうしてこんなに閉塞感になってしまったのか、三十年も続けてくる中で政策上の失敗はなかったのか、具体的にお答えをいただきたいと思います。
亀井国務大臣 米について、これまで生産調整を初めとして各般の施策を実施してきたわけでありますが、だれのため、何のための生産調整か、そのようなメッセージが農業者に伝わらない。また、生産調整の助成体系が複雑で理解しにくい仕組みであった。あるいはまた、米生産に対しましてさまざまな助成を行う一方で、米減産にも多額な財政資金を投入するなど、非効率的な政策となっておったんではなかろうか。また、生産調整の配分理由やその経過が不透明である上に、政策効果がきちんとした検証がされないなど、政策の透明性が確保されていない。このような問題点があるわけでもございます。こうした問題が、結果として米の閉塞状況、こういうものを招いた、このように認識をいたしております。
 このため、今回の米改革につきましては、この米の閉塞状況、これを打開し、水田農業の未来を何とか切り開く観点から、消費者重視、市場重視、この視点に立ちまして、わかりやすく、そして効率性、さらには透明性を確保して、需給調整対策あるいは生産構造対策、流通制度の改革を整合性を持って行うことによって、生産者がしっかり将来に対してもやはり喜びを感ずるような、そして消費者の選択の幅が広がるような形というものをつくってまいることによって、いろいろの問題点を整理してまいりたい、こう思っております。
山口(わ)委員 もう既に百万ヘクタールも減反政策をしているわけで、耕作面積はどんどん減少してきているわけですね。耕作放棄地はどんどんふえている中で、特に、山間地の耕作放棄率というのは平たん地の二倍にもなっているという状況があるわけです。
 特に、米販売農家の十アール当たりの農業所得も、平成三年には七万四百二十四円だったものが、平成十三年では四万三千八百八十七円ということで、大幅に下落し続けている状況がありまして、こんな状況の中で本当に、この主業農家の皆さんはもちろんですが、すべての農家の皆さんは、米づくりに対する情熱も意欲も、農村の活力も失われてきてしまっているというのが現状だというふうに思うんです。
 これから、この政策大綱によって活力が生み出される、夢と希望が持てると言われても、なかなか農家の皆さんは、そういう実感は出てこないんじゃないかというふうに思うんですね。農家だけでお米や穀物の生産を自立可能にしていこうと思っても、なかなかそうはいかないと思いますし、やはり政府の責任は非常に重いというふうに思うんです。
 経営の主体は農家で、自分で責任をとりなさいといっても、今までの農業を見る限りでは非常に難しいというふうに思うんですが、こういう人たちに夢と希望を持たせて、本当に安心して、安全な、特にお米や麦の生産ができるようにするには、今までの反省を踏まえてですが、どういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
石原政府参考人 先ほど大臣がお答え申し上げましたけれども、そういう反省に立って、これまでの政策をどういうふうに転換していくのかということでございます。
 先ほど大臣の答弁にもありましたように、これまでの米政策は、メッセージが伝わっていない、非効率な政策となっている、透明性が確保されていない、この三点でございます。これを今回の米政策では、それぞれ見直そうということでございます。
 具体的に、まず第一点のメッセージが伝わっていないという点。この点につきましては、政策の手段と目標を明確化して、わかりやすくするというふうに考えています。具体的には、地域みずからの発想、戦略と地域の合意に基づく取り組みを支援する産地づくり対策を創設する。それから二つ目として、生産調整のメリット対策として、米価下落の影響を緩和する米価下落影響緩和対策というのを講ずる。そして、担い手に対しましては、稲作収入の安定を図る担い手経営安定対策を講ずるということを考えております。
 それから、二番目の論点の、効率的でむだのない政策としましては、これまで生産過剰分を主食用として高い価格で集荷いたしまして、最も価格の安い飼料用米、これは一俵当たり九百六十円という非常に安い価格で処理してきたわけでございますけれども、そういうむだをなくすため、豊作による過剰米が主食用として区別して出荷されるような仕組み、こういうものをつくるということでございます。それから二つ目には、生産調整面積を達成しても、残る水田で増産され、生産調整の効果が減殺されるということをなくすために、これまでの面積での管理から、数量を調整する方式に転換するということでございます。
 それから、三番目の論点の透明性が確保されるという点でございます。そのための政策といたしまして、生産調整の配分に当たって、前年の需要量をもとに生産目標数量を策定する。そして、この策定に当たりましては、公正中立な第三者機関的な組織の助言を得て決定するということでございます。そしてもう一つは、米政策の改革の目標を明確化して、毎年の改革の実行過程をチェックするということでございます。
 これら、これまでの政策の反省の上に立ちまして見直しを行った結果、今申し上げました三点の対策をそれぞれ講じていくというのが今回の米の総合対策でございます。
山口(わ)委員 今、生産調整の目標面積から数量への転換ということでお話がありましたけれども、これは、どういうふうにやるのかというのは非常に難しいんじゃないかと思うんですね。
 特に市町村段階でどのように配分するかということですが、同じ市町村の中でも、中山間地とか平たん地によっても、標高差もあるし、土壌の肥沃度もあるし、排水性等の栽培条件もあるし、あるいは栽培品種によっても相当の格差が生じてくるわけですね。このような場合に、同一市町村内の基準単価を用いると不公平が生ずるということもあるわけですが、こうした場合に、どういう基準単価、反別ですか、具体的にどのように基準単価というのは設定されていくのかというのが非常にわかりにくいというふうに思うんですね。
 そして、現行の生産調整の仕組みですと、化学肥料とか化学農薬を使用しない取り組み、特に有機農業なんかもそうですが、このときは一五%までの範囲の減収を見込んで、これに相当する面積を生産調整対象から控除するということになっているようですけれども、これから環境保全型農業を推進していく上で、特に有機栽培ですとか減農薬栽培、直まき栽培のような減収を伴う栽培に取り組むときには不利になるんじゃないかというふうに思うんですね。
 もっとそういう有機農業を進めていく、あるいは消費者に安全で安心できる農業を進めていくようにするためには、先ほどの御説明だけでは不十分な気がするんですが、その点はどう考えていらっしゃいますか。
石原政府参考人 二点、問題があったかと思いますけれども、一つは基準単収の問題でございます。
 先ほどおっしゃいましたように、同じ市町村の中でも単収がそれぞれ違います。そういうところにつきましては、同じ市町村の中でも、中山間地域、平場地域、標高差、それから土壌の肥沃度、排水性等の栽培条件によって違います。
 そういう場合には、第三者機関的な組織の指導、助言をいただくわけでございますけれども、基本的には、我々、共済が持っております水稲共済基準収穫量、これがベースになろうかと思いますけれども、これをベースにいたしまして市町村内を幾つかに区分しまして、はっきりと、例えば市町村内がA、B、Cというふうに単収が分かれるのであれば、それはその地域の、A、B、Cのそれぞれに応じた単収で計算していただくということになります。
 このことにつきましては、先ほど申し上げましたように、第三者機関的な組織のいろいろな助言をいただいて、そういう決定をしていただきたいということでございます。
 それからもう一つの論点は、有機栽培をやっている場合はどうか。
 有機栽培をやりますと、当然、単収は落ちます。落ちますけれども、その落ちた場合につきましては、有機栽培をやるということにつきまして確認がされれば、それに応じた、落ちた単収に応じて面積が決定される。数量が配分されますと、それが、落ちた単収に応じて面積が決定される、そういう仕掛けになっております。
山口(わ)委員 なかなかわかりにくい御説明でして、本当に実際どうなるのかというところは、それぞれ農家の皆さんも心配でしょうし、これからどうなっていくのかという不安がますますつきまとうのではないかというふうに思っているんですね。
 今回の改革では、これまでの米政策を大転換するというふうになると思うんです。そういう意味では、全国の生産者とか農業団体の関係者に改革の趣旨が十分に理解されて、関係者の意識改革がされるというふうにきっと思ってこの改革をなさるんだろうと思うんですが、アンケート調査によりましても、実は、この稲作部門が一位である農家三千戸を対象に調査をしても、このお米政策大綱の決定プロセスについての評価というのは、評価しているというのも四割ありますが、一方では、研究会で議論された中身についてはよく知らないという人も四割近くあるわけです。
 研究会で議論されていたことは知っているけれども関心がなかったのでわからないという人が二割ということですから、全体に、この米政策改革大綱なるものが、農家の皆さんでさえも六割近くが知らないとか関心がないとかという状況の中で、本当に今回の米政策の改革が実施されることについて生産現場では混乱が起きるということはないのでしょうか。その辺はどうやって関係者に周知を徹底していくのでしょうか。
石原政府参考人 今委員がお話しになりましたアンケート調査でございますけれども、確かに、米政策改革大綱の決定プロセスについての評価につきまして、評価しているが四割、知らないが四割というふうになっております。
 これは、実は農林水産省の統計情報部が調査しておりますので、我々が申すのはあれでございますけれども、ちょっと設問の仕方が、あるマスコミの方に聞きますと設問の仕方がまずかったんじゃないかという意見もございます。
 といいますのは、例えば、来年から生産調整のやり方が変わる、今、農林水産省あるいは食糧庁がいろいろな改革のための検討をしている結果として変わる、そういうことは皆さん御存じなんです。ところが、この質問は、米政策改革大綱云々という話になるものですから、四割という数字が出たんだと思っております。
 しかし、我々はまだまだ周知徹底については努力しなきゃならぬと思っておりますので、これまでも、大臣以下、副大臣それから政務官、皆さん全国に行っていただきまして、それぞれのブロック単位で、あるいは県単位で、それから集落単位で、あるいは市町村単位で説明会というのをやっております。これは大綱をつくった後もやっておりますし、それから今回の法案ができた後もやっております。それからまた、皆さん方が言われております予算措置。これも、我々、八月の概算要求時点で決定させていただきますけれども、その後もまた、こういう全国、それからブロック単位、県、市町村、それから集落単位という説明を十分行っていきたいと思っております。引き続き頑張ります。
 それで、なお、アンケート調査の中でも、我々、評価している云々の話よりも、今回の食糧庁が進めている米づくりの中で一番大事なのは、消費者重視、市場重視の姿に移行していることなんですね。これについての評価はどうかということについて、評価しているが七割あるんです。我々、この辺も見ていただきたいというふうに思っております。
山口(わ)委員 私も、ここに参加をさせていただいて議論していくのを聞いていてもなかなかわかりにくいこの米政策ですから、消費者にわかりやすくというのはなかなか難しいんじゃないかなというふうに思うんですが、これから本当にこの問題は大変なことだというふうに思います。産業のうちでも特に第一次産業、しかも農地を伴うお米政策ですから、本当にこれは真剣にやっていかないと大変なことになるという思いがありますので、やはり、十分に反省していく中で政策を本当に消費者重視、あるいは生産者重視にしていくことに努力していくことが非常に大事だというふうに思っているんですね。
 それで、もう一つ大臣に伺ってから野党の法案の質問に移らせていただきますが、将来、お米づくりの本来あるべき姿というのはどういうものなのか。現状の自給率をどう高めていくのか。米価の下落に歯どめがかからない中で、米づくりのあるべき姿、実施目標である平成二十二年に米価の水準はどのくらいと見通しているのでしょうか。また、この市場化を推進するのであれば、農家にとってお米で生きていけるのか、農水省として望ましい水田農業とはどういうものかをお示しいただきたいと思います。
亀井国務大臣 大変多岐にわたりますので、まず、米づくりの本来のあるべき姿。
 これは、消費者ニーズを起点とした効率的かつ安定的な経営体が市場を通じて需要を喚起し、需要を鋭敏に感じ取る、そしてさまざまな需要に即応した生産を行う消費者重視、市場重視の姿、こういうものが考えられるわけであります。このようなあるべき姿を目指して、効率的かつ安定的な経営体が大宗を占める生産構造の確立、農業者や産地による主体的な需給調整を実施すべく、生産構造あるいは需給調整システム、集荷、流通、各要素について、これは私ども、食料・農業・農村基本法にのっとっていろいろな政策を進めてまいりたい、このように考えております。
 そしてさらに自給率の問題でありますけれども、これは、米政策大綱を踏まえまして、先ほど申し上げました需給調整システムの改革であるとか流通制度あるいは経営改革、構造改革を実施することによりまして、自給率の向上に努めてまいりたい。需要に即応した米づくり、そしていろいろな改革、あるいはこれに関連をいたしまして、高品質の麦あるいは大豆生産に取り組む生産者による支援策、あるいは耕種農家と畜産農家の連携、そして水田を活用した飼料作物の生産に取り組む生産者に対する支援策等々、あるいはまた多収品種、新形質の米の開発普及、あるいは低コスト化農法の定着であるとか、耕畜連携の条件整備、輸送の効率化とか、こういういろいろなことの取り組みをすることによって、食料の自給率を上げてまいりたい、こう思っております。
 それからあと、米価の話。平成二十二年の米価がどのくらいになるか、こういうことでございますが、どのような価格変動が生ずるか、これはあらかじめ予想することはなかなか困難であります。先ほど来申し上げますとおり、米づくりの本来のあるべき姿を実現すれば、消費者ニーズを起点としてさまざまな需要に応じ価格条件等が満たされる、安定的な供給が行われる、こういうことが期待されるわけでありまして、私は、従来以上に大幅な価格変動の生ずることはない、このように考えております。
 あと、望ましい水田農業経営。今回のこの政策、先ほど来申し上げますとおり、消費者ニーズを起点として、そして安定的な供給、消費者重視、市場重視、この姿を目指すわけでありまして、今回のこの米政策の転換、いろいろ創意工夫、そして集落等いろいろの施策を進めるわけでありますし、農業者、農業団体、あるいは第三者の皆さん方からいろいろのアドバイスをちょうだいする中で、パッケージで水田農業が確立できる、このように考えております。
山口(わ)委員 何かよくわからない説明で、本当にこの先どうなるのかということは、今の説明ではなかなかわかりにくいというふうに思うんです。
 それで、私もいろいろ聞いていく中で、特に、過去のさまざまな生産調整に関する政策が進められてくる中で、非常に目まぐるしく生産変更があったというふうに思うんですね。その最大の理由というのは、やはり国内の米政策の規制緩和と自由化を一層徹底する必要があったからではないかというふうに思うんです。そして、今回の改革大綱等はこれまでのこうした政策を集大成したものではないだろうか。農業者や農業団体主役の米需給システムの構築や、あるいは米需要予測、計画流通制度の廃止、そして米取引の場の育成などは、米政策における政府の責任を、その役割を縮小し、将来的には完全な民営化を目指しているのではないかというふうに思えてならないわけですね。
 そこで、今度は野党にお伺いしたいと思うんですが、野党案ですね、菅野委員に伺いたいと思いますが、なぜ代替案を提出しなければならないと考えたのでしょうか、お答えください。
菅野議員 今の米政策改革大綱なるものが推進されている中で、このままでは農業が大変になるという状況のもとで、野党四党での議論から出発して、代替案を考えていこうじゃないかという形で出発したのが始まりでございます。
 水田あるいは畑作農業というものは、主食である米を初めとした食料供給の機能だけではなくて、空気、水、土、景観の維持という大きな多面的機能を果たしている。しかし、今山口委員がおっしゃったように、全水田の四割、百万ヘクタールが減反されている。そういう中で、このままでは日本の農業というものが危機に陥るんじゃないのか。そして、農業だけじゃなくて、第一次産業総体も考えていく必要があるという中で、政府案のように中途半端なものでは日本の農業は再生できないんじゃないかというふうな思いを持ったところでございます。米政策改革の方向が示されて、これから米つくりがどういう方向に行くのかというのは、農村地域において非常に不安に思っている。
 それで、そういう中において、市場競争原理や産業保護の統一という形で考えてきたわけですが、市場競争原理や生産規制、流通規制を抜本的に改革していくという方向の裏腹として、生産者の所得の確保のための措置というものをどう入れていくのか、これは重要だというふうに私どもは思ったわけです。それで、所得補償というものを考えながら、短期融資制度、備蓄制度と産業保護という観点から所得補償制度を導入して、これからの農村、農業というものを本当に生き生きとしたものにしていかなければならないという立場でもって本代替案をつくった、そして提出したという経過でございます。
山口(わ)委員 本当によくわかりましたし、やはり今の農業を取り巻く状況は、別に私がいろいろ言わなくても、もう見ればわかるという状況なんですね。
 私の地元もそうですが、耕作放棄地は広がっていますし、非常に不法投棄もふえている中で、本当に寂しくなる、こんなことで農業はいいんだろうか、そういう思いに駆られます。やはり、海外の農作物が決して安全ではない、消費者にとってみれば、国内で生産してほしい、そして安全で安心できる食料だったら、価格のことを、やはり安ければいいという時代はもう通り過ぎたと思うんですね。安いものを食べて医療費にお金をかけても何にもならないわけで、やはり、安全で安心できる食料をきちっと提供できるような農業をどう確立していくかということが物すごく今は大事だというふうに思っているんです。
 それで、田んぼも、一たん耕作放棄をしてしまいますと田んぼに戻らないわけですから、そういう意味では、田んぼとしての機能をどうやってこれから維持していくのかということが私は非常に大事だと思うんですね。
 野党にまた御質問で、菅野さんに質問ですけれども、政府は農業構造の大転換を図ろうとしていますが、このことをどういうふうに考えているのでしょうか。
菅野議員 今政府が行っていこうとしている構造改革の視点というものは、今日的な状況を踏まえるならば、理解しないわけではございません。
 しかし、私どもがずうっと主張してきていることは、日本の農業というものは家族経営的な農業であるという視点を失ってはならないというふうに私は考えているんです。それで、今回の所得補償制度を導入するに当たっても、その視点をしっかりと位置づけてきております。
 一つには、全経営体に所得補償を行っていく。そして、構造改革を進めるという観点からも、一定規模以上の人たちにも、個人経営であれば四ヘクタールを基準にしながら、そこにも上乗せしていこうという考え方。それから、消費者の視点に立った有機農業をどう振興させていくのかという視点も取り入れております。そして、何といっても、日本農業の七割は中山間地域農業であるという観点から、その中山間地域農業をどう育てていくのかという視点もしっかりと持った構造改革でなければならないというふうに私は思っています。
 野党案においては、この視点を取り入れて、今後、農村、集落の維持発展のために寄与するというふうに思って、政府案よりは非常にいい代替案だということを申し上げておきたいというふうに私は思っています。
山口(わ)委員 よくわかりました。
 今、やはり農家は本当に高齢化が進んで、女性がほとんど農家の仕事を行っているというのが現状なんですね。農家にはもともと子供がいないかというと、そんなことはないと思うんです。生まれた子供はなぜ農業を離れて農家からいなくなっちゃうのかということも、非常に大切に考えていかなければいけないことだというふうに思うんです。
 今、失業率が物すごくなっていまして、五・四とか五・五とか、三百五十万人も失業しているという中で、もう東京ではホームレスがばんばんふえてきているわけですね。その中には農家の息子さんたちだっているわけです。
 私は、やはり農業に再び子供さんたちが希望と意欲に燃えて、御自分の家に帰って農業を続けていける、そういう農業政策を政府がやらなかったら、幾らいろいろ、自主的にやればいいとか、農家の意欲が大事だとか、かすみを食べて意欲が出るわけじゃありませんから、ここで生活できることがやはり大事になってくると思うんですね。
 ですから、第一次産業を続けていくためには、今のままではとても食べていかれないわけです。しかし、農地には、さっき言った多面的な機能がさまざまにあるわけです。農業をつぶしてしまえば都会の皆さんは水が飲めません、そしてきれいな空気も吸えなくなるんですね。そういうことを考えたら、このことは消費者に理解されるだろうというふうに私は思っていますから、今菅野委員の言った直接所得補償、このことが認められるということは当たり前のことだと私は思いますし、やはり若い人たちに担い手になってもらうような取り組みを政府もぜひ考えていただきたい。野党案のすばらしさをぜひ政策にきちっとのせていただきたいというふうに思っています。
 最後にもう一つ伺いたいと思うんですが、先ほどの、お米が余っちゃうとか、減反政策でとにかく水田がなくなってしまうというようなこともある中で、お米だけは確かに自給率が一〇〇%ということもあります。ですから減反ということも起こってくるんだろうと思うんですが、しかし、水田をもっと利用することも考えていく必要があるというふうに思うんですね。
 この野党案にはないんですけれども、私は、ホールクロップサイレージのように、自然を利用した備蓄の方法も併用したらどうかというふうに考えているんです。例えば、豊作が予想されるときには飼料用として青刈りをして、不作が予想されるときには主食用として育成する。こうした考え方は提案者にないのかどうか、お伺いをしたいと思います。
菅野議員 今山口委員がおっしゃったように、減反政策としてホールクロップサイレージが五年、六年くらい続いて、地域に定着しつつあるというふうに思っています。なぜこの政策がとられてきたのかというのは、やはり水田の持つ多面的機能、特に環境保全という視点でもってこの政策はとられてきたと私は理解しております。
 そういう意味で、減反政策を行わないという形で、きょうもるる議論がございましたけれども、この百七十万備蓄構想というものを提起いたしました。そして、これは最大での百七十万トン備蓄構想なんですが、豊作が三年、四年続いていくという状況のときには、やはり多面的機能というものが本当に保持できるのかということも真剣になって考えていかなければならない課題だというふうに私は思っています。このホールクロップサイレージというのが田んぼにおける備蓄という考え方を取り入れていたというふうに思ったときに、これからの備蓄構想の中でこのことをどう位置づけていくのかというのは、私どもとしての大きな検討課題だというふうに私は思っております。
 今回の野党案には盛り込まれておりませんけれども、これから食料全体を、米全体を考えていくときにはこのことも議論の対象にしていくべきだということを、私はこれまでも主張してまいりましたし、これからも主張していきたいというふうに考えています。
山口(わ)委員 ありがとうございました。
 やはり私も、今の水田をこのまま保全していく、維持していくということは物すごく大事だというふうに思っているんです。
 確かに、今お米は余っていますが、世界の中の食料危機というのは全くないわけではないと思うんですね。将来、食料危機が起こり得るかもしれない。そのときに、今、日本は余りにも食料を輸入に頼り過ぎているんですね。それでいいのかということを考えたら、このまま、お米は余っているから減反政策どんどん進めればいい、そして農家の皆さんの自主的な判断に任せればいいというようなことになって、結果的に水田がどんどん減っていくようなことがあったときに、いよいよ食料難が来たときに、もうお米ができなくなってしまったということが起こり得るということだってあり得るわけですから。
 そういう意味では、やはり水田としての機能をきちっと残していくような政策も必要だというふうに思っていますし、特に、家畜の飼料につきましては外国の輸入が非常に多いわけですから、せっかくあいている田んぼを使って飼料を生産するということは物すごく大事なことだというふうに思っていますし、そうなれば水田としてまた復元できるわけですから。
 そういうふうに、やはり日本だけでなくて世界の食料事情というものも頭に入れていく中で、これからの農林水産省としての食料の計画、農水産業の計画は進めていかなければいけないんじゃないかというふうに思っています。
 私は、ここでもう一つ大臣に伺いたいんですが、備蓄構想の中に、今、世界の中で八億人とも言われる人たちが飢えて苦しんでいるわけですね。世界の人口の八人に一人は飢えで死ぬ状況にあると言われていますし、イラクやアフガニスタンの戦争でますます食料に苦しんでいる人たちがいるわけです。日本は非常に裕福ですけれども、そういうことを考えたときに、これからは日本だけが裕福ならいいという時代ではないというふうに思うんですね。やはり、世界の人々が同じように食料に苦しんで飢えで死ぬようなことがないように、日本としてもそういう政策は考えていく必要があるというふうに思うんです。
 今、各地で、やはりこの食糧支援というのはそれぞれ自主的な団体が、余った田んぼに、減反している田んぼにお米をつくって海外に支援をしているということは、そこの人たちの自主的な支援でやっているんですね。別に政府が支援しているわけじゃなくて、自主的な支援でさまざまな支援活動を、ボランティアを通じて、あるいはNGOを通じて行っているわけですが、これから世界を見たときに、こういう備蓄構想の中で、きちっと政府として積極的に、食料が不自由しているそういう国々に対して支援していく構想がおありなのか。具体的に、その決意でもいいですから、お答えください。
石原政府参考人 備蓄構想につきましては、もう御案内かと思いますけれども、我々東アジアの、東南アジア、ASEAN諸国と協力いたしまして、今、備蓄構想というのを進めております。
 これは、我々、WTOの戦略の一つとしても位置づけているところでございますけれども、とりあえず、東南アジア、ASEAN諸国と備蓄構想を実現いたしまして、これを、ひいては将来、世界のいざというときに対応できるようにということで頑張っているところで、とりあえずはASEAN諸国との備蓄構想、これを実現すべくやっているつもりでございます。
山口(わ)委員 そうであれば、野党案が提案している百七十万トンの備蓄の方がいいんじゃないでしょうか。百万トンの備蓄じゃ少ないと私は思うんですけれども。
 やはり、これからは本当に、今ある農地を大事にしていく、そしてその中で生産できるように考えていく、そしてやはり備蓄もしていく中で支援もしていくというふうに、いろいろな広範な考え方を持って農林水産省は進めていただきたいというふうに思いますし、まだ、この法案がこれでいいということは決してないわけで、野党案の方が私は数段いいというふうに思っていますが、やはり柔軟に野党案も取り入れていく、そして農家の皆さんが安心して生産ができるようにやはり前向きに検討していくという意味ではすごく大事だと思いますので、大臣、野党案も取り入れていく気があるかどうか。お答えいただきたい。
亀井国務大臣 野党の皆さんから提案されている件につきましては、いろいろ問題がある、これを取り入れるというわけにはいかないわけでありますが、しかし、いろいろの問題、今度の米政策、大きな改革でありますので、これからも十分検討して、消費者重視、生産者重視、そして消費者にも生産者にもそれなりのメリットがあるような改革にするために、なお一層精進をすることが必要なことじゃなかろうか、こう思います。
山口(わ)委員 余り固定した考え方で物事はやらない方がいいですから、できるだけ柔軟な姿勢で、そして大きな、いろいろな人たちの意見も吸収しながら、後で後悔しないように大臣の政策は進めていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
小平委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小平委員長 この際、鮫島宗明君外二名提出、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。農林水産大臣亀井善之君。
亀井国務大臣 衆議院議員鮫島宗明君外二名提出の主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案につきましては、政府としては反対であります。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより両案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子君。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。
 反対の第一は、本法案が、日本人の主食である米の需給調整と価格形成に対する政府の管理責任を放棄し、米を市場原理のもとに一層ゆだねるものであるからです。米の輸入、関税引き下げなどがWTO農業協定の次期交渉で取りざたされている中で、本法案によって米価の一層の下落や米生産のさらなる困難が加速されることは必至です。このことは、我が党国会議員団の全国米調査でも明らかになりました。米の需給管理、価格形成は国の責任で行い、国は食料自給率の向上と国民に対する米の安定供給に責任を果たすべきです。
 第二に、政府買い入れの米の価格について、「米穀の再生産を確保する」旨を削ることは、米価下落への歯どめ策が一切なくなり、国の経営安定対策を大きく後退させるものです。そして、自主流通米価格形成センターを米穀価格形成センターに変更し、上場義務をなくすなど一層の規制緩和を推し進めることは、これまで以上に価格形成の公正さを失わせるものと言えます。
 第三に、本法案は、生産調整について、農業者、農業団体が主役となる仕組みを実現し、国の役割は助言、指導にとどめるとしています。これは、国が生産調整から撤退し、農家、農業団体に押しつけるものです。生産調整の配分はこれまでの減反面積から生産数量に変え、その数量も、豊作で売れ残った場合、翌年の配分から減らすという仕組みでは、農家の増産意欲を奪うものでしかありません。
 第四に、過剰米短期融資制度を創設し、過剰米を農家の責任において低価格で処理させることは、米価下落を一層促進するものと言えます。たとえ減反を一〇〇%達成したとしても、豊作や消費の落ち込み、そして輸入米の増加等に伴って過剰米が発生した場合には、農家の責任でえさ用や加工用などに処理しなければなりません。こうしたやり方では、農家の閉塞感を解消するどころか、ますます深まることになることは必至です。
 第五に、計画流通米制度を廃止して届け出制を導入することは、米市場への大企業の参入に拍車をかけ、米流通を投機的な状態にするものです。こうした米流通のさらなる規制緩和は、価格操作や買い占め、売り惜しみの機会を拡大し、また品位等の検査義務の廃止は、にせ国産米などの偽装表示で国民の不信を広げることになりかねません。
 私は、このような問題点を持つ本法案に反対するとともに、今求められている米政策は、生産費を償う米価を保障する仕組みをつくり、ミニマムアクセス米を大幅に削減あるいは廃止し、小麦や大豆などの転作条件を整備して増産させ、国が米の価格と需給の安定に責任を持ち、大企業の米流通支配を許さないことであることを述べます。
 なお、民主党、社民党提出の法案については、米流通を一層規制緩和するなど我が党の政策とは相入れない部分もありますが、所得補償制度を創設することなど、稲作経営を守る立場から評価できるものであり、賛成するものです。(拍手)
小平委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより採決に入ります。
 まず、鮫島宗明君外二名提出、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
小平委員長 次に、内閣提出、参議院送付、種苗法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣亀井善之君。
    ―――――――――――――
 種苗法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
亀井国務大臣 種苗法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 現行種苗法は、種苗が農林水産物の生産に不可欠な基礎的生産資材であることにかんがみ、優良な新品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図るため、品種登録に関する制度及び指定種苗の表示に関する規制等について定めたものであります。
 特に、品種登録制度は植物の新品種の保護に関する国際条約の内容に対応した制度であり、昭和五十三年の制度発足から現在まで新品種の出願件数、登録件数ともに順調に増加しており、我が国の育種の振興に大きな役割を果たしているところであります。
 しかしながら、近年、登録された新品種の種苗が権利者に無断で利用され、その収穫物が市場に出回ることにより、植物の新品種の育成者権が侵害される事態が増加しており、特色ある品種による産地づくりに取り組んできた農業者、産地等への影響も顕在化している状況にあります。
 また、昨年七月三日に決定された知的財産戦略大綱及び昨年の第百五十五回国会において成立した知的財産基本法においては、我が国が知的財産を戦略的に創造、保護及び活用することにより、産業の国際競争力を強化し、活力ある経済社会の実現を図る知的財産立国を志向することが明確に示されているところであります。
 このような、最近における植物の新品種の育成者の権利の侵害の状況及び我が国の知的財産立国の方向性にかんがみ、育成者権の保護の強化を図ることを目的として、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、罰則の対象範囲の拡大であります。現在、種苗について育成者権を侵害した者を罰則の対象としておりますが、この対象を拡大し、種苗を用いることにより得られる収穫物について育成者権を侵害した者を罰則の対象に追加することとしております。
 第二に、法人による育成者権の侵害に対する罰金額の引き上げであります。現在、育成者権を侵害した個人に対しては三年以下の懲役または三百万円以下の罰金を、法人に対しては三百万円以下の罰金を科すこととしておりますが、法人による育成者権の侵害に対する罰則を、一億円以下の罰金に引き上げることとしております。
 第三に、指定種苗制度の違反行為に対する罰金の法定刑の最高額の引き上げであります。従来、指定種苗についての表示義務等の違反行為に対しては二十万円以下の罰金を、種苗業者の届け出義務等の違反行為に対しては十万円以下の罰金を科すこととしていたものを、前者については五十万円以下の罰金に、後者については三十万円以下の罰金にそれぞれ強化することとしております。
 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
小平委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、明五日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二十六分散会


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