衆議院

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第17号 平成15年6月11日(水曜日)

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平成十五年六月十一日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    青山  丘君
      荒巻 隆三君    伊藤信太郎君
      石田 真敏君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      熊谷 市雄君    小泉 龍司君
      近藤 基彦君    七条  明君
      高木  毅君    西川 京子君
      宮本 一三君    後藤  斎君
      今田 保典君    齋藤  淳君
      津川 祥吾君    筒井 信隆君
      堀込 征雄君    吉田 公一君
      江田 康幸君    藤井 裕久君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
      佐藤 敬夫君
    …………………………………
   農林水産大臣       亀井 善之君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   政府参考人
   (総務省総合通信基盤局長
   )            有冨寛一郎君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房長) 田原 文夫君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   政府参考人
   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十一日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     伊藤信太郎君
同日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     荒巻 隆三君
    ―――――――――――――
六月六日
 国内生産・安定供給確保等米政策に関する請願(中林よし子君紹介)(第二九二〇号)
 同(松本善明君紹介)(第二九二一号)
同月十一日
 農家経営を守り、地域の農業振興に関する請願(中林よし子君紹介)(第三五八五号)
 同(松本善明君紹介)(第三五八六号)
 国内生産・安定供給確保等米政策に関する請願(中林よし子君紹介)(第三五八七号)
 同(松本善明君紹介)(第三五八八号)
 果実・加工野菜などのセーフガード発動に関する請願(中林よし子君紹介)(第三七四一号)
 同(春名直章君紹介)(第三七四二号)
 同(松本善明君紹介)(第三七四三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)(参議院送付)
 農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案及び農業災害補償法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長田原文夫君、生産局長須賀田菊仁君、経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君、食糧庁長官石原葵君、林野庁長官加藤鐵夫君及び総務省総合通信基盤局長有冨寛一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青山丘君。
青山(丘)委員 今国会は、何といっても農林水産関係の大きなテーマは米政策の改革でありました。そして同時に、食品の安全という問題が大きく取り上げられておりました。当委員会におきましても、食品安全関連の六案件について真剣な議論が行われてきまして、このほど成立を見たところであります。
 一方で、私たちが留意しなければならないことは、食と農は表裏一体のもの、車の両輪の関係にあるということを我々はしっかりと銘記していかなければならないと考えております。
 特に、私は、文部科学行政に少し携わってきまして、広く国民に食と農に対する正しい知識を習得していただかなければならない、そのためには食育を推進していくことが重要であると考えてきました。食育を推進するためにも、農業の担い手を育成していくことが大切である、そして経営基盤を強化していかなければならない、そのことが食品の安全とともに重要な政策課題であるというふうに考えております。
 そこで、農業経営基盤強化促進法についてでありますが、まず、集落営農についてお尋ねいたしたいと思います。
 今回の農業経営基盤強化促進法の改正は、広く国民に農産物を安定的に供給して、我が国農業を支えていく足腰の強い担い手を育てていこう、こういうものであります。言いかえれば、我が国農業の構造改革を進めていこうとするものでありますが、この点、我が国の水田農業は、水や土地の利用の面において調整が必要でありました。水を利用する、そのための土地の利用は地域全体が取り組んでいく、こういう課題がありました。その意味で、水稲の特質から、地域ぐるみで取り組まれてきたという伝統があります。
 こうした伝統は今後とも大切にしていかなければならないと私は考えておりますが、まず大臣、この集落営農の伝統的な取り組みについてどのような御見解をお持ちか、お尋ねしたいと思います。
亀井国務大臣 委員御指摘の、我が国の農業、水田農業、ここ一、二カ月、水田を見ておりますと、地域の皆さん方が水利、農地利用、あるいはまた協調的に相互扶助的な取り組みをされております姿を拝見しておるわけでもございます。共同体として、集落ぐるみの取り組みが大きな役割を果たしてきている、委員御指摘のまさにそのとおりでございます。
 今後、このような我が国の農業を活性化するに当たりましては、水田農業の特質を十分に踏まえましていくことが重要な課題、このように考えております。
 今般、この基盤強化法の改正に当たりまして、一定の集落営農組織を農用地利用規程に担い手として位置づけをする、そして、さらに効率的かつ安定的な農業経営体へとその組織を発展させていくことを考えたところでもございます。
 今後、従来からの担い手育成施策にこうした新たな取り組みも加えまして、望ましい農業構造の実現に一層の努力をしてまいりたい、このように考えております。
青山(丘)委員 今、御答弁がありましたように、今回の基盤強化法の改正では、集落営農の取り組みのうち、経営体としての実体を有するものを、特定農業団体という名称で、法律上も我が国農業の担い手として位置づけるものであって、地域に根差した取り組み、これを支援していこうということで、私は政策的な前進であるというふうに理解しております。確かに、将来的には法人化も果たして、立派な経営体として発展していくことが期待される集落営農の育成を図っていくべきであると思います。
 一方で、私の地元では、東海地方でありますが、集落営農に熱心なところでありますが、各地域で展開されている集落営農を見てみますと、機械を共同利用してコスト低減を図っているもの、あるいは農地の保全に役立っているものなど、その取り組みの内容はさまざまであります。こうした多様な取り組みは、それぞれの地域が直面する課題に対応するものとして行われてきているものでありますが、経営体としての実体を有していないものでありまして、それでも地域農業の活性化や多面的な機能の発揮に大きな役割を果たしてきました。
 その意味で、特定農業団体を担い手として育成していくための施策を講じていくことは必要であります、ぜひ進めていただきたい。同時にまた、特定農業団体以外の集落営農組織に対しても、その機能や役割に応じた支援をぜひしていかなければならないというふうに考えておりますが、その点はいかがでしょうか。
川村政府参考人 集落営農の取り組みでございますが、ただいま委員が御指摘ございましたとおり、その地域地域の実情に応じて、さまざまな形で多様な取り組みが行われているということは事実でございます。
 ただ、今後の農業構造というものを考えました場合に、ただいま大臣の方からお答えいたしましたように、望ましい農業構造に向けまして、将来的にも安定した、また効率的な農業経営というものに育っていただきたいということを考えまして、一定のものについては基盤法上の位置づけをしたいということでございます。
 今回、こういった位置づけをしたということもございますし、また米政策の改革ということもございまして、今地域でいろいろな話し合い等が行われております。この特定農業団体に向けての取り組みがなされることを期待しているわけでございますけれども、それ以外の取り組みに対しましても、ただいま委員が御指摘ありましたように、機械の共同利用でありますとか、あるいはコストの低減を図るいろいろな取り組みが行われておりますので、そういったものに対しましては生産対策の面から、また中山間地域等では、農地の保全管理を行うものに対しましては中山間地域の直接支払い等もございますので、それぞれの機能なり役割に応じた支援策というものを講じていきたいというふうに考えております。
青山(丘)委員 ぜひきめ細やかな政策対応を進めていただきたいと思います。
 そこで、担い手の明確化についてお尋ねをいたしますが、集落営農の取り組みの内容が地域によってさまざまであることからもわかりますが、今後、我が国農業の構造改革に取り組んでいこうとするのであれば、地域の自主性を尊重する形で進めることが必要であります。
 つまり、それぞれの地域の将来の農業をどうしていくのか、地域の農業の将来展望をまず持たなければならない。その際、地域農業の担い手については、認定農業者のような個別の経営体を地域全体で育てていくのか、それとも地域ぐるみで集落営農に取り組んでいくかといった地域の農業の姿は、極力地域で主体的に判断をしてもらい、研究してもらわなければなりません。それはやはり押しつけで進めていくものではありませんので。
 そこで、地域農業の担い手の明確化については、どのように考えておられるのでしょうか。
川村政府参考人 地域の農業の担い手の明確化でございます。
 特にこの水田農業につきましては、地域ぐるみでの取り組みが必要という特質がございます。今回の米政策の改革に当たりまして、まさに地域段階でのそういった話し合いなり取り組みというものが極めて重要であるということでございまして、地域水田農業ビジョンをそれぞれの地域が自主的また主体的につくっていくということでお願いをしているわけでございます。
 この地域水田農業ビジョンをつくる過程で、集落段階で話し合いを重ねていただきまして、その地域の実情に合って、ただいま御指摘もございましたとおり、どういう方にその地域の農業をゆだねていくのか、あるいは集団として、集落営農として取り組むのかといったような形で、担い手のそれぞれのあり方というもの、またその地域での作物なり生産体系なり、そういうものについての話し合いを十分やっていただくということで、まさに、全国画一的なものではなくて、その地域の特色を生かしたビジョンをつくっていただきたい、こういうふうに思っているところであります。
青山(丘)委員 地域の実情に根差したものを進めていく、こういうことをひとつぜひ十分考慮していただいて、政策を進めていただきたいと思います。
 次に、経営の多角化について、それから、法人化ということが農業経営基盤の強化が図られるものであることを意味するということで、少し質問します。
 農業生産法人の要件緩和についてでありますけれども、農業経営の法人化は、家族農業経営の活性化とともに、食料・農業・農村基本法にも明確に位置づけられた重要な政策課題であります。法人化は、安全、安心な農産物を供給する農業経営基盤の強化が図られることを意味しておりまして、生産現場はもとより、消費者にとってもこれを推進することが非常に重要であるというふうに位置づけております。
 この場合、個々の農家は、生産したものをそのまま出荷するというだけではなくて、加工、流通、販売などの分野にも進出する、そういう経営の多角化に取り組むことも有効な手段であります。そのために法人化がまた必要であるかもしれませんが、今回の経営基盤強化法改正においては、このような農業者の経営の多角化を含めた多様な経営展開を促進するために、認定農業者である農業生産法人の構成員要件について農地法の特例措置を設けるものであります。
 そこで、このような農地法の特例措置を設けることによって、経営の多角化、多様な経営展開をどのように図ろうとしておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
川村政府参考人 現行の農業生産法人制度でございますが、関連事業者等からの出資につきまして議決権の割合を制限しております。全体で四分の一以下、また一構成員当たり十分の一以下ということになっておりまして、意欲ある農業生産法人が、分社化でありますとかのれん分けをする、あるいは、今委員が御指摘ございましたように、販路拡大あるいは経営の多角化ということで、外部との業務提携、例えば生協等とも連携をされまして、直販、顔の見える販売等ということで取り組まれるということもあるわけでございますが、こういった制限がその展開に支障があるということで、農業内部の声としまして、この特例をつくっていただきたいという要望があったわけでございます。
 今回、そういった制限を、認定農業者である生産法人に限って、また一定の条件のもとに認めるということでございますが、今申し上げましたようなことで、関連事業者との連携等が非常にスムーズになるということで、多様な経営展開ということで大きく寄与するのではないかということで、その効果を期待しておるところであります。
青山(丘)委員 そうです。ぜひ経営の多角化、多様な経営形態を推進していかなければなりませんが、そのために、農地法の特例措置を設けることによって農業経営の多角化が図られるということであります。
 ただ、その一方で、農業外からの出資が今まで以上に行われることになりまして、片方では新しい資本が必要であります、しかし、それは既に平成十二年の農地法改正においても議論がありましたが、農外資本によるところの農業支配、農業経営支配というものが出てくるのではないかという懸念がありました。あるいは地域の調和を乱すのではないか、あるいはまた株式会社一般による農地の取得につながっていくのではないかといった懸念がありました。
 法人化を進めていくときにそれは当然出てくる問題で、かつ新しく資本を求めていく場合に当然出てくる問題でありますが、今申し上げたような懸念材料を払拭していかなければなりません。そういう意味で、その懸念をないものと、少なくするという意味で、どのような方策を考えておられますか。
川村政府参考人 ただいま委員が御指摘されましたような懸念というものは、農業、農村の現場にあるわけでございます。今回のこの制度改正に当たりましても、その点、十分配慮をするということで、重要なポイントであろうと思っております。
 そういったことで、そういう懸念を払拭するための措置といたしましては何点かございまして、一つは、認定農業者の経営改善を目的とした出資に限定をするということで、計画認定に当たりましては、出資の具体的内容でありますとか、その認定農業者の経営基盤の強化に寄与するかどうかといったものを厳重にチェックするということがまず第一点でございます。
 それからまた、この計画の有効期間というものを五年に限定した措置ということで考えておりまして、有効期間の中であっても、不適切な状況があれば市町村が認定を取り消すということができるということでございます。
 それからまた、農業に常時従事する構成員が業務執行役員の過半を占めるという役員要件は変更いたしませんで、取締役会等の意思決定機関が農業関係者以外の方に支配されるということはないという仕組みを確保しているところでございまして、こういった仕組みなりチェックを通じまして、農外資本側の都合によりまして農業生産法人の健全な農業経営に重大な影響を与える支配が行われることのないように確保していきたいと思っております。
青山(丘)委員 矛盾したことを求めていくような気がしまして、なかなか困難なことだとは思いますけれども、やはり農外資本を片方で求め、かつ農業生産法人の経営支配を惹起しない、こういうことはなかなか困難ではありますが、日本農業を守るために、あるいは農業の生産性をさらに高めていくために、これはぜひ進めていただきたいと思います。
 それから、遊休農地についてお尋ねいたします。
 食料自給率の向上を図り、国民への食料の安定供給を確保するためにも、農地は農業生産にとって最も必要な基礎的な資源であります。しかし、現実には二十一万ヘクタールもの耕作放棄地が存在しております。この二十一万ヘクタールをイメージで申しますと、東京都とほぼ同じ面積、私の地元愛知県の約四〇%、物すごい土地です。淡路島の約三・六倍、佐渡島の約二・五倍、伊豆大島の二十三倍、大変大きな面積であります。
 これだけの農地が農地として活用されておらないということを、農業政策を遂行する我々は、大きな損失をこうむっていると受けとめなければいけないのではないかと私は思っております。そして、農地の集積を図って、生産性を高めて、食料の自給率を高めていくという大きな役割を我々は果たしていかなければなりませんから、その意味で、遊休農地の解消について、しっかりとした取り組みを進めていかなければならないと考えております。
 特に、耕作放棄地の中には、雑草が繁茂したり、病害虫の発生によって周辺農地に支障を来しております。そのため、このような耕作放棄地の発生を抑制して、その有効利用を図ることが極めて重要です。今回の遊休農地に関する措置の見直しによって、遊休農地の所有者等に利用計画の届け出を行わせるなどの措置を新たに設けることになっております。
 そこでまず、耕作放棄地の解消に向けて今回設けられる新たな措置に、遊休農地の、耕作放棄地の解消にどのような政策効果を期待していますか。いかがでしょうか。
川村政府参考人 遊休農地の現状は今委員御指摘のとおりでございまして、近年増加傾向にございます。その原因は、担い手の高齢化なり、あるいは土地条件が悪い等が主な原因になっておりまして、これを抑制するということが必要でございますので、担い手の育成なり、あるいは基盤整備事業の実施等が必要であろうと思っております。
 また、既に遊休地化したところにつきましては、その解消を図るということが必要でございまして、これまでも農業委員あるいは市町村の取り組みによりましていろいろ努力はなされてきておりますが、やはり制度的な位置づけというものも必要であるということでございまして、プロセスを明確にするという意味もございます。
 そういう意味で、まさに委員が今御指摘のように、遊休地の中には周辺の農地に非常に多大の支障を来しているというところもあるわけでございますので、そういった遊休農地につきましては、まずその所有者に利用計画を出させまして、これに対しまして農業委員会なり市町村の勧告、また届け出がないときのペナルティーといったものを盛り込んでおります。
 こういった措置も、それから各般の予算的な措置も含めてやっていく必要があると思っております。
青山(丘)委員 今答弁がありましたように、遊休農地の解消のために従来からいろいろな施策を進めてきました。これと相まって、今回の措置を導入することによってその効果が期待できると私も考えておりますが、しかし、現実には、二十一万ヘクタールというのは物すごく大きな土地。これをそのまま放棄地として我々も座していることは、これはできない。
 そういう意味で、今回新たに設けようとしている措置が有効に機能するように私はぜひ進めていただきたいのですが、現在の遊休農地解消の取り組みを支援していくことも、つまり、発生の抑制を図っていくことも大切ですが、現在ある遊休農地をどのように解消して有効に活用してもらうようにするのかということが大事だと思っておりまして、その点はいかがでしょうか。
川村政府参考人 まさに今回のような法的な仕組みも整備をしますとともに、また、そういった解消に向けての取り組みを支援するような予算措置も必要だと思っておりまして、この平成十五年度より二つの事業を新たに発足させております。
 一つは、認定農業者農地集積促進事業でございまして、これは、認定農業者の申し出に基づきまして、農業委員会が一定のエリアで調整活動を行うということで、その場合に促進費を交付するというのが一つございます。
 また、遊休農地が市町村の区域を越えて発生しているようなこともございますので、農業委員会活動強化対策事業ということで、農業委員会の広域連携によります遊休農地の監視あるいは解消の取り組みに対しましても支援を行うといったような新たな取り組みもしているところでございます。
青山(丘)委員 担い手への支援がやはり必要だと私は思うんですね。所有者側への措置を講じる、同時に、今答弁にありましたように、担い手への支援策、それから農業委員会が十分に活動できるような支援というものがこれから必要だと私は思っております。
 農業災害補償法の改正について、一点お尋ねをいたします。
 我が国は、気象変化の激しいアジア・モンスーン地帯に属し、我が国農業は、風水害、冷害等の災害にしばしば見舞われて被害を受けやすいという宿命を負っております。私は、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の詩の中に、サムサノナツハオロオロアルキ、これは物すごい実感として感じております。
 その意味で、我が国においては、農業を持続的に発展させていくためには、災害によって農業者がこうむる損失を補てんし、農業経営の安定を図っていくことが重要であると考えております。農業災害補償制度は、制度発足以来、国の農業災害対策の根幹として、農業経営の安定に大いに寄与してきたところであります。
 そこで、今回の改正では、共済の引き受け方式や補償割合の選択の拡大が行われるようですが、今回の法改正の趣旨をどこに置いておられるのか、この際、明らかにしていただきたいと思います。
北村副大臣 先生御指摘の農業災害補償法は、生産者の皆さん方が本当に命がけで、それこそ毎日額に汗して生産をした生産物を収入源とする、しかしそれだけでは、自然との闘いの中で大変な損害をこうむるときがございます。そういう面では、この農業災害補償法というのは生産者の皆さんにとっては一つの救いの政策であった、このように思っております。
 そういう面で、農業者の方々の、今の経営実態に応じた補償の選択の幅をやはり拡大していくということが、将来、この農業災害補償法が自他ともに明確に生産者の方々のためになる政策として位置づけていけるものだ、こう思っております。
 そういう面で、今先生もおっしゃったとおり、補償の選択の拡大をさせるということが一点。さらにはまた、最近の農業生産の実態に即した補償をしていくということが二つ目。三つ目は、しかしそれを運営している農業共済団体の運営の合理化もしていかなければならない。こういう三つを掛け合わせた災害補償法の改正をやっていきたい。
 そのことによって、生産者の方々が災害に遭われたときの補償がより今まで以上に効果が上がる、そして充実したものを目指していこうというのが今回の改正の趣旨であるということを御承知おきいただきたい、このように思います。
青山(丘)委員 時間が来ましたが、担い手二法が担い手の経営の体質強化に大きく貢献してくれますように期待をして、質問を終わります。
小平委員長 次に、齋藤淳君。
齋藤(淳)委員 民主党の齋藤淳です。
 担い手二法案の中で、特に農業災害補償法の一部を改正する法律案に焦点を当ててお尋ねいたします。
 まず最初に、若干お時間をおかりしまして、特に防除の問題に焦点を当てて質問したいと思っております。
 自然災害や病害虫に対して備えるという意味で、この農業災害補償法の内容を充実させていくということはだれしもが認める非常に重要な課題だとは思いますけれども、しかし、やはり共済の適用対象となるような事象の発生を防ぐことこそが重要な農政の課題ではないかと思います。
 農業の担い手が競争力を持って経営を行うためには、やはり病害虫の発生を防ぐための効率的な防除体制の確立ということが急務かと思われますけれども、一方で、昨今では農薬をめぐる問題、食の安心をめぐる問題もありまして、農業の現場に立つ経営者、作業者は非常に難しいかじ取りを強いられている現状にあります。
 このような中で、日本の農業が競争力を持って生産を継続するために、防除のあり方はどのようにあるべきか、大臣の見解をただしたいと思います。
亀井国務大臣 今委員御指摘のとおり、大変重要な課題、また難しい問題と承知をいたしております。
 防除にとりましては、我が国の立地条件、温暖で多湿な我が国の自然条件、そういう中で良質な農産物の生産をする、こういうことに対しましても、病気やあるいはまた害虫あるいは雑草、これらから農産物を守ることは大変重要なことであります。とりわけ、果樹でありますとか野菜等におきましては、農薬を使用しないで栽培をした場合、どうしても出荷可能量が大幅に減少する。このため、農薬は農業生産にとりまして重要な資材であるわけであります。
 また、この取り組み、病害虫の防除の実施に当たりましても、発生予察情報に基づく適時適切な防除を基本として必要最小限の防除を実施する必要がありますし、また、天敵昆虫や性フェロモンの利用、病害虫抵抗性品種の導入等、多様な防除技術を活用いたしまして、農薬のみに依存しない防除の実施ということに努めていかなければならない面もあるわけでありまして、これら環境に配慮した適切な防除を推進していく必要があると思います。
 また、農業共済組合におきましても、この共済事故、病害虫による被害の発生の予防のために、無人ヘリ等による防除や共同防除を有機農法への配慮等を行いながら実施していくということがまた必要なことではなかろうかな、このように思います。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 農薬になるべく依存しない農法も開発しながら、有機農業との共存も図りながら努力していかなければならない、全く私もそのとおりだと思います。
 私は実は、山形県庄内平野の農家の長男として生をうけまして、今こうして幸か不幸か衆議院に議席を預からせていただいておりますけれども、本来であれば農業の担い手として田んぼに入ることを期待されて育ちました。高校生のときも、私自身、動力噴霧器を背負っての防除作業を随分手伝わされた思い出がありますけれども、この防除作業というのは、やはり農作業の中で一番つらい作業の一つだと思います。
 現場にいると、薬剤に被曝する危険性と常に隣り合わせです。かといって、すべての雑草を人力で、あるいはアイガモによって除草するなどということも、非常にコストや手間のかかる問題です。かといって、効率を追求して航空機を用いて一斉防除するというような時代でもなかなかないのではないかと思います。
 以前は、有翼の航空機ですとか有人のヘリコプターを使って大規模な防除をしていた時代もあったかと思いますけれども、最近は、飛散の問題もありまして、効率的ではありますけれども航空防除というのは非常に難しい状況にあると聞かされています。
 この航空防除をめぐる状況につきまして、農水省、現状について報告を願いたいと思います。
須賀田政府参考人 農林業におきます航空機の利用は、水稲、畑作、果樹等の病害虫防除というもののほかに、若干ではございますけれども、播種とか施肥とか各種調査がございます。その延べの実施面積でございますが、十二年度が三百七十三万ヘクタール、十三年度が三百六十二万ヘクタール、十四年度が三百六十五万ヘクタールでございます。
 この病害虫防除の内訳の実に八割が、実は南西諸島におきますミバエ類の防除のために不妊化した虫を放し飼いする防除で占めておりまして、田畑におきます農薬散布は六十六万ヘクタールということで、いずれも減少傾向でございます。
 この田畑におきます農薬散布のほとんどが水稲の病害虫防除でございます。先生おっしゃられましたように、都市化、混住化が進みまして、昭和六十三年は百七十四万ヘクタールでございますが、これがピークでございまして、十四年度は六十五万ヘクタールということになっております。
 まさに先生おっしゃられましたように、ちょうど夏の炎天下の時期に防除に当たりますものですから、炎天下での防除作業からの解放という利点がこの航空機防除はあるわけでございますけれども、一方で、周辺環境への飛散によります地域住民の方への危害という問題もございまして、やはり事前広報の徹底でございますとか、飛び散らないようにする散布方法の工夫を凝らす必要があろうかというふうに考えております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 なぜこの航空防除の問題を最初にお尋ねしたかといいますと、最近、実は私の地元では無人のラジコン操縦によるヘリコプターの防除の導入が非常に進んでおりまして、ところが、無人ヘリコプターによる防除というのは、どうしても従来の大規模航空防除のイメージがあるものですから、無人ヘリコプターによる防除イコール航空防除という形で誤解されている側面があると思ったからです。
 細かい区域をピンポイントで小型の無人操縦ヘリコプターで防除できるという意味で、従来の航空防除の持っていたいろいろな問題、不完全ではありますけれども、クリアできる側面が多いのではないかと思います。もちろん、有機農業との厳密なすみ分けという意味では解決していかなければならない問題が多いわけですけれども、ただ、短時間に効率的に防除をするということを考えると、動力噴霧器を背負ってやる作業というのは、農業者は非常に高齢化が進んでいますから、もうそろそろ足腰が立たなくなっている、そんな状況で、動力噴霧器を使う状況でもない。やはり現実的な妥協策、解決策として無人ヘリ防除というのが導入が進んでいるのだと思います。
 もちろん、これが向くか向かないかというのは、作物や地形によっても左右されますし、天候によっても事情は異なると思います。しかし、例えば水田の経営ということを考えたときに、農薬の使用を最低限に抑えるためには、適切な時期に短期間に一斉に防除を行う必要がある。そのための手段として、やはり無人ヘリ防除ということを進めていかなければならない状況にあるのではないかと思います。
 もちろん、全く農薬を使用しないで農業をやりましょうというのであれば、例えば、収量が落ちる、あるいは収量のぶれが大きくなるというところに、厳密に収入保険をかけて所得補償を導入するというような民主党の提案を新食糧法でのむとか、そういった工夫もあったかとは思うんですけれども、やはり、このラジコンヘリを用いた防除というのがこれからは非常に導入が進んでいくのではないかと思うんです。
 農水省として、現状と将来の動向についてどのように把握しておられるか、聞いておきたいと思います。
須賀田政府参考人 この無人ヘリ、先生おっしゃいますように、そんなに高くないところを細かくピンポイントで防除できるという、余り飛散させない防除方法でもございます。また、有人ヘリと比べますと、有人ヘリが一機一億円、それからパイロットが必要というのに比べますと、一機約一千万円で、メーカーの研修等によって養成されたオペレーターで操作可能、こういうメリットがあるわけでございます。
 この無人ヘリの延べ実施面積でございますけれども、十二年度が三十四万ヘクタール、十三年度が四十万ヘクタール、十四年度が四十五万ヘクタールというふうに、拡大傾向、増加傾向にあるわけでございます。特に、その中で、水稲の病害虫防除は、十四年度三十九万ヘクタールということでございます。
 農村地域におきましても都市化、混住化というのが進むというふうに予想されておりますので、やはり有人ヘリによります空中散布というのは、今後は減るだろう。それにかわりまして、無人ヘリコプターの導入、具体的に数値を予想することはできませんけれども、今後も一層伸展するのではないかというふうに考えておりまして、私どももそういう方向で対応をしていきたいというふうに思っております。
齋藤(淳)委員 農業防除用の無人ヘリ、産業用無人ヘリに割り当てられている周波数というのは、実は四波しかございません。先ほど須賀田局長の答弁でも、防除面積は年々増大しつつある、将来においても増大することが予想されるということなわけです。
 お配りしました資料の中の周波数表がありますけれども、防除用の無人ヘリが使用できる周波数帯というのは、七十三・二六メガヘルツから七十三・三二メガヘルツまでの間の四波しかない、こういう状況なわけです。
 その中で、地図もお配りしましたけれども、現場の農業者は、まさに集落営農ですけれども、集落でヘリの運営協議会をつくって、こういった形で地域的に周波数の割り当てを行うことで問題の回避、電波が混信するとそれは当然ヘリコプターが墜落するというような状況に陥りますから、それを避けているという状況にあります。例えば、上から遊佐北部三二、遊佐北部三〇、二八と書いてありますけれども、これは周波数表の小数点以下の二けたの数字が書き込まれていると御理解いただきたいと思います。
 そこで、電波を管轄しているのは総務省ですから、総務省の有冨局長に伺いますけれども、一般に、電波の割り当てというものがどのような過程を経て決定されるのか。そして、産業用無人ヘリに七十三メガヘルツ帯の電波が割り当てられた当時の状況がどのようなものだったのか。そして、現在の電波、四波しか割り当てがないわけですけれども、いろいろな規制についてお答えいただければと思います。
有冨政府参考人 お答えをいたします。
 まず最初に、電波の割り当ての過程でございますが、一般に言いますと、新たな無線通信システムに対しまして周波数を割り当てようという場合においては、二つの手続がございまして、一つは、先生言われましたけれども、周波数の有効利用と混信防止という観点で、出力あるいは変調方式等の、これは技術的な観点でございますが、技術的な状況につきまして情報通信審議会に諮問をいたします。それからもう一つは、周波数の変更計画にかかわりますので、周波数割り当て計画等の改正という形で電波監理審議会にかけます。そして、この二つの審議会に諮問いたしまして、その過程におきましては利害関係者から意見を聴取するというような手続を踏みまして、割り当て可能な周波数を決定する、こういうような手続を踏んでおります。
 それから、その当時の状況とか現在の状況でございますが、産業用の無人ヘリの周波数につきましては、平成七年に関係業界からの要望を踏まえて対応したものでございますが、それはその当時からですが、だんだんとこういった産業用無人ヘリの周波数の要望が強くなっている。
 この時点におきましては、ホビー用、趣味用のラジコンと共用しておったということがありまして、これでは使い勝手が悪い、場合によっては混信をしたりして事故が起こる可能性もあるというようなことがございまして、いわゆるホビー用のラジコンとの混信の回避とそれから需要の増大、こういったことに対応するために、ホビー用の周波数とは別に産業用ラジコン専用の、このときは六波でございましたけれども、それを七十三メガヘルツ帯におきまして新たに設置をしたということがございます。
 ただ、その後になりまして、これはまだなお混信があるということで、平成十年に、まさにその六波のうち四波だけを産業用無人ヘリの空専用に割り振ったというような経緯がございます。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 この四波しかない電波の割り当ての中で、集落を単位にこういった形で地域的なすみ分けを図っているわけですけれども、現場からの報告を聞きますと、やはり混信を起こして墜落しかかった、それを熟練したオペレーターが機転をきかせて回避したというようなことが、昨年一年間だけでもかなりあったとのことです。
 もちろん、ヘリコプターを飛ばせる前に、ほかの周波数の電波が飛んでいるかどうかというのはチェックはするわけですけれども、携帯電話で連絡をとり合ったりしながら十分な調整を行っているわけですけれども、しかし、四波しかない中で、防除に適切な時間帯、天候、非常に限られてくるわけです。非常に現実的には厳しい制約条件の中で操業をしている。
 そんな中、万が一、高速回転しているローターが回ったままヘリコプターが墜落してくるというようなときには、作業員や、あるいは、こんなことはなかなかないと思いますけれども、通学途中の中学生が巻き込まれたりとか、そういう危険性もあるのではないかと思われます。こういった事故を回避するための方策をどのようにすればいいのかということが問題になるかと思いますけれども、四波しかない状況で総務省としてはどのような対策を講じておられるか、現状について把握しておきたいと思うんです。
有冨政府参考人 今、現在の四波の中で、先生言われたように、いろいろと難しい問題があろうということは承知をしております。
 現時点におきましての状況でございますけれども、産業用の無人ヘリ、これは微弱な電波を共同利用するということでございまして、免許が要らない、そういう形になっております。したがって、現時点におきましては、実際に運用するに際しましては、複数の産業用の無人ヘリの電波が相互に混信しないということが大前提になります。
 したがって、先ほど先生が言われました運営協議会等々の組織がありますが、そこにおきまして、相互に混信しないように使用周波数を調整したり、あるいは使用時間を調整したりというような形で御利用していただいている、そのような指導もさせていただいているところでございます。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 技術的には、確かに、数学的に最適な半径を描いて電波の共存を図るというようなこともできるかもしれませんけれども、農業の実態、現場の実態ということを考えると、やはり集落単位でお金を出し合って、共同出資でヘリコプターを導入する、集落単位でヘリコプターの研修を受けるというようなこともございます。また農水省としても、担い手の育成の一つの形で集落営農ということを推進している状況もありますから、それを考えると、電波の行政上の、技術的にこういう解決策があるということと、なかなか難しい部分があるかと思うのです。
 やはり、一番安心できる解決策としては、新規に調整して捻出できる電波帯があるのであれば、それを一波でも二波でも、無線操縦の小型ヘリコプター用に新規の電波を割り当てしていただくことなのではないかと思います。
 もちろん、農業の現場も、もっとより一層の調整へ向けての努力、技術開発ということはしなければならないのではないかと思いますけれども、そんな中で、今後、電波のすき間を何とか調整を行って、一波でも二波でも産業用の無人ヘリコプターにふやす余地というのがあるのかないのか、端的に伺いたいと思います。
有冨政府参考人 お尋ねの産業用無人ヘリの周波数の増波についてでございますが、これは構造改革特区の第二次提案として地元からも提案をされておりまして、私どもといたしましては、平成十五年度中に産業用ラジコンヘリの利用実態や課題等の調査を行い、周波数の増波を行う予定という旨、明らかにしております。
 そして、現在でございますが、総務省といたしましては、関係省庁あるいは団体へのヒアリング等の調査をもう既に始めておりまして、早期に利用実態をよく把握して、課題等を整理して、当該周波数帯における他の利用ニーズをも勘案しなきゃなりませんが、それを勘案した上で所定の手続を踏むなどして、適切な対処を行うということでございます。
 ただ、増波を幾らしても、やはり利用の調整というのはどうしても必要になりますが、それは前提となります。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 今後、農水省と総務省、緊密な協議のもと、現場の実態を踏まえて有効な解決策がとられることを強く望みたいと思います。
 また、ヘリコプターの防除に関しては、例えばカーナビの基礎技術であるGPS、グローバルポジショニングシステムや地理的情報システムを組み合わせて解析すると、防除のむだを防ぐことができる。そうすることで、例えば平均的に農薬の散布量を減らすことができるとか、そういった新しい技術の開発につきましても、ぜひ積極的な支援をお願いしたいと思います。
 また、農業の現場では、若い農業者がこのラジコンヘリにかなり積極的に取り組んでいるという明るい展望も、若干ですけれども、御報告申し上げたいと思います。
 次に、この防除の問題を離れまして、若干、農業災害補償法の本論にかかわる問題ですけれども、風評被害、この問題について、農業災害補償法の枠組みの中で、あるいは枠外でどのように考えていくかという問題をお尋ねしたいと思います。
 農業災害補償法の第一条には、「不慮の事故」という文言がございます。これに備えるための農業災害補償法なわけですけれども、この不慮の事故というものが具体的にどのようなものかということ。
 あと、時間がありませんのでまとめてお尋ねしますけれども、最近、BSEや無登録農薬の問題で風評被害が起こりました。これを苦にして、北海道の肉牛農家が自殺をしたり、あるいは青森のリンゴ農家が自殺をしたという痛ましい事件も報告されております。この風評被害というものは、農業災害補償法上の「不慮の事故」に含まれるのかどうか、当たるのか当たらないのか。また、その理由についてどうか。
 この二点、お尋ねしたいと思います。
川村政府参考人 農業災害補償でございますが、「農業者が不慮の事故に因つて受けることのある損失を補填して農業経営の安定を図り、農業生産力の発展に資することを目的」ということでございます。
 現行の「不慮の事故」といたしましては、風水害、干害、冷害等の気象上の原因によります災害、病虫害、鳥獣害などとされておりまして、不慮の事故とは、その発生が不確実であるとともに、私人間の責めに帰すことのできない損害というふうに考えられまして、現行では、主に自然災害を「不慮の事故」としておるところでございます。
 今お尋ねございましたBSEあるいは無登録農薬に見られるような風評被害でございますが、ただいま申し上げましたように、主に自然災害を「不慮の事故」としておりまして、また、その補償対象も農作物の収量の減少あるいは品質の低下ということでございますので、風評被害は共済事故には該当しないということでございます。
齋藤(淳)委員 果たして、この農業経営の安定という課題を考えたときに、これでいいのかというそもそも論に入ってしまうのではないかと思います。自然災害を主に対象とするということなわけですけれども、農家が現実に経営を維持していくために、いかにリスクに備えるかという原点にやはり立ち戻ったときに、不慮の事故に風評被害は含まれません、これでいいのかということになるのだと思います。
 実際、現場の農業者の意見を聞くと、最近は、自然災害というリスクに備えるということも重要だけれども、何よりも怖いのはマーケットリスクだということなわけです。例えば、一部の果樹や食肉、鶏卵、野菜などには価格安定策、いろいろと講じられておりまして、そちらを使えばいいのではないかという考え方もあるかと思いますけれども、しかし、将来的には、やはり農業災害補償法において、マーケットリスクをも包含した形で総合的な経営安定策を図る必要があるのではないかと私は思いますけれども、農水省としてはいかがお考えでしょうか。
川村政府参考人 風評被害を含みますマーケットリスクについて備えるべきではないかというお尋ねでございます。
 委員もただいまの御質問の中で御指摘ございましたとおり、個別品目ごとの価格安定対策あるいは経営安定対策におきましては対応がなされております。ただ、ただいまも説明を申し上げましたように、農業災害補償制度というのは、自然災害を契機とした収量の減少を補償の対象としておりまして、風評被害は対象としておらないわけでございます。
 今後の問題といたしまして、災害補償制度において自然災害以外のリスクにも対応するということが可能かどうかということでございますが、農業災害補償制度の基本的な性格にかかわる問題ではないかと思っております。そういう意味では慎重な検討が必要ではないかと思いますし、ただいまも御説明したように、品目ごとの価格安定対策、経営安定対策というものがございますので、そういったところで対応するということも考えられますし、風評被害の範囲、そういうものも非常に技術的な問題もあろうかと思いまして、多くの課題があるのではないかというのが現在でございます。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 農業災害補償制度の基本的なデザインの部分にかかわるという御答弁だったかと理解しますけれども、まさにその基本線に立ち返って、農業の経営の安定をいかに守るか、そして、その中で効率化、担い手の育成をどう図るかということを考えていかなければならないのではないかと思います。従来の経営安定策で間に合うのかということです。マーケットリスクということを考えると、全部の農家が同じ方向に向かった場合に危険分散をいかに図るか、本当にこの農業共済の制度でよかったのか、今までの経営安定策でよかったのか、いろいろと検討する課題は多いのではないかと思います。
 最後になりますけれども、この農業災害補償法というのは、基本的に収穫の減少に対する補償措置なわけですけれども、例えば、収穫が少なくなって市場価格が上昇し、むしろ農家の所得としては大してダメージを受けないというような場合も過去にあったかと思います。我が家も、九三年ですか、大冷害があったときに、庄内平野はそれほど冷害という被害を受けなかったものですから、価格の高騰によって、むしろ例年よりも高い所得を地域的には受けました。地域的にはそれほど豊作というわけではなかったんですけれども。
 このような、収量を対象に保険を掛けることによって火事場の焼け太りのようなことが起こるような現在の保険制度というのは、ある意味、不合理な側面があるのではないか。むしろ、農家がヘッジしたいリスクというのは、収量というよりは、むしろ収入ないしは所得なのではないか。やはり、所得補償ということも考え合わせて、総合的な収入保険方式に移行するなど、そういったグランドデザインを描いていく必要がこれからは生じてくるのではないかと思いますが、農水省としてはいかがお考えでしょうか。
川村政府参考人 農業災害補償制度でございますけれども、今御指摘がございましたとおり、基本的に収量の減少を補てんするというのが基本的な仕組みでございます。
 これは、通常は地域的な被害が多くて、これが全国的な価格の上昇につながらないということが多い。それからまた、近年、輸入の拡大もございまして、国内の被害が直ちに価格の上昇につながるということも考えられないということで、ある意味では、今申されましたようなケースもないわけではないわけでございますが、全体の運営コスト等も考えますと、現時点では現実的な、合理的な補償方式、こう思っております。
 ただ、将来的な問題と考えますと、収入保険的な仕組みというものはやはり検討課題であると思っております。ただ、これにつきましてはさまざまな課題がございます。個々の収入を的確に捕捉する必要がありますが、現実問題として、現状ではなかなか容易ではない。また、需給事情による価格低落等につきましては、社会的、経済的要因に基づくものでありますので、なかなか、保険料率の設定がスムーズにできるかどうかということもございます。また、需給事情による価格低落は全国的、また同時に発生するということでございまして、地域的に危険分散を図るという保険の仕組みになじむのかどうか等々ございまして、将来の課題ではあると思いますが、今申し上げましたような問題はあるというふうに認識をしております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 保険の考え方になじむのか、だからこそ、やはり所得補償と一体化して総合的な経営安定策を図るべきだということを繰り返させていただきますとともに、農水省、総務省、連携してヘリ防除の問題に建設的に取り組んでいただきたいということを最後にお願い申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。
小平委員長 次に、吉田公一君。
吉田(公)委員 まず、平成十一年度にいわゆる農業基本法を四十年ぶりに改正したわけであります。
 戦後の我が国の農業のあり方について指針を示したのが農業基本法というもの、昭和三十六年だと思いますが、農林省によってつくりました。しかし、その農業基本法の中の一番大事なところは、選択的拡大生産ということをうたい上げましたね。つまり、産地をある程度特定して、そこで家畜なり作物なりを取り入れて、産地別に農業育成をしていこう、こういうことだと思うんです。ところが、例えば神奈川なんかは養鶏、茨城は養豚とか、愛媛はミカンとか、そういうように、それぞれ産地別に伸ばしていこうといったんだけれども、農業基本法をつくった結果、何にもならなかった。
 新しくまた四十年ぶりに、農業が非常に構造改善を含めて、そして生産物の輸入、特にオレンジだとか牛肉だとか、最後まで我が国は抵抗して輸入を阻止しようとした、そういうものも全部自由化になっちゃった。そこでどういう対応をしてきたかといえば、結局のところ、要するに補助金を出してそこの場はおさめたというような結果になっているわけであります。
 そのことについて、農業基本法の選択的拡大生産の趣旨というのは、四十年間、ちゃんとうまくこの基本法に沿ってやってきたのかどうか、まずそれを伺いたいと思っているんです。
田原政府参考人 お答え申し上げます。
 旧農業基本法の政策目標でございます選択的拡大ということについてのお尋ねでございますが、先生御案内のように、昭和三十六年に制定されました基本法は、生産政策の方向性ということで選択的拡大ということを掲げているわけでございます。
 これは、昭和三十年代前半におきます、いわば米でございますとか麦あるいは芋といった需要が伸びないようなもの、これから、畜産でございますとか果樹でございますとか生産が伸びると予想されるもの、こういったものへ転換させたいということで政策目標として掲げた、かように認識いたしております。
 現実的には、こうした米あるいは麦主体から、畜産でございますとか野菜、果実、こういったものへ多様に展開したという面、いわば多様な広がりを持った農業生産へと転換した面、こういった面はあろうかと思いますが、ただ、その後国民の食生活も非常に多様化いたしまして、いわば国内生産がこうした国民の需要に必ずしも対応できないという面があったということ、これは否定できないのではないかというふうに思います。米の生産調整にとどまらず、そのほかの果樹関係でも生産調整等を行っているものもあるという意味におきましては、必ずしもそのとおりの格好にはならなかったと。
 ただし、これは、生産政策としての方向性自体が間違っていたというよりは、やはり食生活の面の多様化、こういったこともあったのではないか、かように認識している次第でございます。
吉田(公)委員 それは当たり前の話だよ。昭和三十六年には、日本人というのは欧米人に比べて、まだまだ動物性たんぱく質とか、あるいは牛乳とか卵だとか魚だとかそういうものをとらなければ、日本人の体格というのは貧弱で、そしてたんぱく質が足りないんだ、だから畜産振興をやって、そして我が国のたんぱく源を確保しようということも一つの目的。
 だけれども、今は、御承知のとおり、糖尿病になるから余り肉を食っちゃいけないとか、卵は一日一個以上、余り食べない方がいいよとか、昔の栄養学の逆のことをやれば病気を防げるんだ。そういうように、農業基本法を制定したっきり四十年間、これは農林省だけじゃないんだ、ほかの制度もそうだよ。おおむねなんて言ったって、三十年だよ。もう普通の民間企業、社会とはかけ離れているんだ、少し考え方が。
 そういうように、おおむねで五十年だから、そんなことは考えられないんだ。これだけ農業の形態が変わってきているのに、四十年間放置して、平成十一年にやっと改正した。随分かかっていたな、四十年の間に。それまで何で放置したんだ。生産物だって、今まで八百屋さんに並んだこともないような果物が並んでいるんでしょう。見たこともないような果物が並んでいるよ、南洋でしかとれないような。花だってそうでしょう。全然見たこともないような、園芸では、いっぱい鉢植えで売っているんだよ。そういうように変わってきているのに、農林省の姿勢は全然変わっていないんだ。
 今度、農業経営基盤強化法の一部を改正する法律なんていったって、強化なんていったって、どこを強化するんだかわからないけれども、とにかくいつもいつも後手だよ。まさか減反政策をやろうなんて、昭和三十六年に考えたこともないよ。足りないから何とかしなきゃいかぬといったんだ。
 その当時、昭和三十年代には、当時一万羽養鶏といって、庭先で鶏を飼っていたものを、企業が乗り出して一万羽養鶏というのを神奈川県の厚木でやった。それは商社がやった。そういうように、だんだんだんだん有畜営農から大規模農業に変わってきた。最後はアメリカにやられちゃったよ。今、百万羽養鶏なんて言っているんだよ。
 ところが、日本が何でだめかというと、濃厚飼料を全部輸入に頼っているから養鶏なんか成り立たないんだよ。卵は今、戦後と一貫して同じ値段だよ。十八円、だから、安いのなんか十七円ぐらいだよ、一個。昔だって二十円か二十二円だよ。ところが、濃厚飼料の方はどんどん上がってくる。だから、米は減反政策だけれども、自給飼料の政策は全然やってこなかった。どうして畜産振興なんて言えるんだよ。自給飼料ができなければ畜産振興にならない。
 そういうように、今度の強化法についてだって、本当にその目的のとおりやれるのかどうか、強化促進というのは本当にそうなのかどうか、もう一回答弁。
川村政府参考人 この経営基盤強化促進法でございますが、今回は三つの柱でお願いをしているところでございます。
 一つは集落型の経営体というものを育成していきたいということで、その位置づけを明確にするということが一つございます。それからもう一つは遊休農地、これが先ほど来御議論がありますとおり大変な問題でございますので、一歩でもその解消につながる施策を講じていきたいということで、法的な側面での措置をしたいということでございます。もう一つは、ただいまも御指摘ございました、農業の発展の中で法人化というものが非常に有効な措置でございます。そのために、法人の方々の御意見を聞きますと、今の農地法の仕組みの中ではなかなか思うような経営展開ができないということでございまして、一定の条件の中で円滑な展開が図られるような措置を講じたい。
 この三点でお願いをいたしておりまして、そういう意味で経営の基盤の強化につながるものというふうに思っているところでございます。
吉田(公)委員 今説明があったけれども、例えば遊休農地にしたって、実際に、それじゃそれを耕作できるような田んぼや畑にどうやってするか、後で質問しますよ。それから、集約型といったって、要するに土地改良事業でやっているんでしょう、今さら話す話じゃないよ、そんなの。
 そういうように、本当に強化促進法なんといったって、私は、農業基本法をつくって、それ以来余り信用していないんだよ。おれなんか農学徒だったけれども、こう見えても。向こうに眠っている人は農学博士だけれどもさ。私は農学徒なんだよ、今は能書き師になっちゃって。だけれども、がっかりしたよ、本当に、私が学生のころだよ、農業基本法ができたのは。
 それで、その当時、除草剤も発明されたんだよ。そのときは、人体の安全よりもいかに農家の手間を省くかということに主力が置かれたから、食料の安全ということについては第二次的だったんだ。大騒ぎだったよ、除草剤が発売された、ああ、これはもう農家が楽になるな、あの暑い炎天下、農業の一番大変なのは草取りだから。これが大変なんだ、炎天下、日陰がないんだから、日陰があったら畑にならないんだから、それが大変なんだ。それを省力化しようというので、発明して除草剤というのをつくったんだけれども。
 私も少しは畑を耕しているんだよ、今。一週間行かないでいてみなよ、雑草だらけだよ、全部、作物全滅だよ、虫は食うしさ。またこれは後で、農薬の話するけれども。
 そういう意味で、強化促進になるのかどうかということは、何か答弁じゃ強化促進ってうまいこと言って、遊休農地がどうとか、集約農家だとか、そんなソ連のソフホーズみたいなことを言って。これから我々はちゃんと農業というものについて、本当は日本という国は農業が国の基と言われているんだよ。本当は農業国家だったんだから、二千年。産業国家になったなんというのはわずか四十年だよ、千九百六十年間というものは農業国家だよ、日本は。わずか四、五十年、産業国家だの工業国家なんて言われたのは。
 だから、農業というのは、一億二千万も人口がいるんだから、山間部が七割なんだから、三割の平野に一億二千万の人が住んでいるんだから、いかに食料が大事かということは当然のことだよ、それは当然のこと。ただし、効率の悪いことも確か、天候に左右されることも確か。だから、そういう問題をクリアしながら一億二千万人の食料を確保していくということは、これは重大な国策でもあるんだよ。
 だから、そういう意味では、ぜひ日本の農業が、だんだんだんだんいろいろな金をどんどんどんどん使いながら下がってくるなんという話はおかしな話じゃないか。何で自給率が下がってくるの、これだけの金を使いながら。上がってこなきゃおかしいじゃない、今まで。そうでしょうよ。土地改良事業なんていろいろなことをやって、何千億なんというお金を使ってきて、自給率が下がっているというのはどういうわけ。説明してよ、それ。
亀井国務大臣 今いろいろ御指摘がございました。
 自給率が下がってきている。これは御指摘の、先ほど昭和三十七年、こういうお話がございましたが、当時米の消費は一人百十八・三キロだったと思います。それが今日六十二、三キロ。こういうことで、米の消費がこのように少なくなった、これは自給率の減少に大きなウエートを占めておるわけでありますし、一方、食肉、肉類の消費、あるいはまた油脂類の消費、こういうものが当時に比べますと数段上がってきておるわけでありまして、そういうようなことで自給率が低下をしてきておる、こういうことでございまして、いろいろの施策を進めてこの自給率を上げる努力をしなければならないわけであります。
 平成二十二年に何とか四五%にしよう、こういうことを基本計画の中で進めておるわけであります。なかなか、四五%、これは非常に難しいことでございますが、一つ例を申し上げれば、一%自給率を上げる、こういうことにつきましては、毎食国民が一口余計御飯を食べていただく、こういうことになると一%上がる、こういうような数字もあるわけであります。
 先ほど委員御指摘の飼料の問題、飼料の生産であるとかいろいろなものにつきまして、今回のこの強化法、こういうものをいろいろ生かし、あるいはまた水田の政策、米政策等々を実施する中で、食料の自給率の向上のために、四五%当面、本来であれば五〇%を超すということが望ましいことであるわけでありますが、四〇%を四五%にするために、生産者あるいは消費者、そして関係の皆さん方あるいは国民の皆さん方の御理解、食育の問題であるとか日本型食生活のなお一層の推進、大変高く評価をされております日本型食生活、いろいろ進めなければならない課題もありますし、そのようなことを通じて自給率の減少ということを食いとめ、アップのために努力をしてまいりたい、こう思っております。
吉田(公)委員 今大臣からお話がありましたように、確かに主食の食べる量というのは大体一年間一人平均、大臣のおっしゃるとおり六十キロ。だから、半分になったわけですね。お米は技術が改良されてそして増産してきた、食べる方は半分になってきたということだから、当然減反政策もやらざるを得ないということも理解しないわけではありません。
 しかし、それに対応してくるのが農林行政でありまして、確かに大臣がおっしゃるように、主食は半分になった、だけれども技術改良等によってお米の方は増産をしてくる。もちろん、お米についての補償もありますから、お米をつくれば安心ということもあって増産をしてくるということであります。それに対する結果論はそのとおりなんですけれども、農林行政としては当然そういうことを四十年の間、いきなりなったわけじゃないんだから、徐々に考えて対応策をとってこなきゃおかしかった、そういうふうに実は思っているわけ。
 次に、飼料。さっき言ったように、我が国の畜産を振興していくためには、自給飼料を確保しなきゃならない。ところが、ずっと日本は輸入に頼ってきた、濃厚飼料。だからみんな配合するだけですよ、かき回すだけだよ、それを袋詰めして家畜の飼料として実は販売している。まことに自給率が低い。だから、日本の畜産なんというのはなかなか成り立たない。
 ましてや、全部自由化ですから、それで冷凍設備ができてきた、だからどんどん船で大量に送られてくる。生鮮野菜まで送られてくるという話だ。卵なんか全然合わないよ、もう。そんな、二十円や十九円で濃厚飼料を食べさせたら、とてもとても、だれが考えたって合いっこない話だ。
 だって、草地試験場なんかあるじゃないか、那須の方に、何の研究しているのか知らないけれども。オーチャードグラスをつくって、要するにたんぱく質の多い牧草をつくろうじゃないか。だけれども、遊休農地があったって、じゃ、牧草に転換して、やればいいんだよ。それもしないんだ、任せきりだよ。だから、畜産振興だなんていったって、全然振興になっていない、ほったらかしだから。そういう意味では、自給飼料の確立はどうやってやるの。
須賀田政府参考人 先生おっしゃいますように、特に大家畜は粗飼料を給与しないといけない。粗飼料は国内でできますので、自給飼料と言われるぐらいでございますので一〇〇%自給をしたい。残念ながら、現在のところ、粗飼料ですら百八十五万トン輸入に頼らざるを得ない現状になっているということでございます。
 そこで、我々は、十二年の六月に全国飼料増産戦略会議という関係者で構成する会議を開きまして、飼料増産運動というのをやっているわけでございます。
 その方向としましては、まさに先生おっしゃられました生産調整が進んでおりますので、転作田あるいは耕作放棄地、こういうところで飼料作物の作付拡大ができないか、そしてさらには、特に中山間でございますけれども、日本型の放牧ということで草地を造成して放牧ができないか、こういう発想はしておるわけでございます。
 ただ、現実に、水田地帯と畜産地帯の立地がうまくいっていないという面、あるいは、耕種農家に飼料作物をつくっていただくと、捨てづくりというんでしょうか、転作奨励金ねらいのものにならざるを得ない。そういうことがございますので、現在まさに米政策改革大綱ということを御議論いただいておりますけれども、そういう中で、中山間地帯における日本型の放牧だとか、あるいは耕種と畜産の連携強化だとかの支援というもので、できる限り、とりあえず輸入をしている粗飼料というものをなくしたいというふうに考えているところでございます。
吉田(公)委員 とりあえずで四十年じゃしようがないじゃないか。さっき言ったばかりじゃないか、そんなの。当面とかなんとか言って五十年だ。とりあえずで戦略会議を開いてどうするんだよ。戦略会議なんて名前だけはすごいけれども、どんな戦略を考えているんだか知らないけれども、いずれにしたってちっとも戦略じゃないや、そんなの。ほったらかしだよ。
 それから、飼料需給安定法という法律があるね。その中に、「この法律において「輸入飼料」とは、輸入に係る麦類、ふすま、とうもろこしその他農林水産大臣が指定するものであつて、飼料の用に供するものと農林水産大臣が認めたものをいう。」こう書いてある。
 さてそこで、さんざん農林水産委員会で議論があったBSEに関連する肉骨粉。肉骨粉の輸入というのはこの中に入っていないけれども、飼料需給安定法でどう解釈して肉骨粉を入れたの、それでは。
須賀田政府参考人 過去、肉骨粉は、現実にはサプリメントとして、補助的な飼料として使われておりまして、飼料需給安定法のような主要飼料ではなかったわけでございます。
 そういうことで、一つは、BSE発生前に、副産物として出るものをできるだけ効率的に使用できないか、乳用牛に使いますと乳量の出がよくなるというようなこともございまして、そういうことから使用されたということで、BSEが発生しまして以降は、肉骨粉の使用あるいは輸入、これは全面的にストップしている、こういう状況でございます。
吉田(公)委員 いつも何か途中でマイクを離れちゃうから、いつも語尾がわからないんだ。
 要するに、BSEが出ようが出まいが、大体草食動物に、肉食動物のライオンのえさで輸入したんじゃないんだから、乳牛の乳量をふやすために補助的飼料として肉骨粉を輸入したんです。
 それでは、肉骨粉は農林大臣が許可したのかね、特別に。どうしたの。自動的に知らないうちに入ってきたのか。では、自主規制とか規制とかという話は出ないはずだ。どうしたの、今まで。経過。
北村副大臣 委員はある程度わかっていて御質問をされているのではないかというふうな思いがございますが、元来、今先生が御指摘のとおり、動物に、特に牛、馬、草食動物がそういう動物性のたんぱく質をとるなんということは日本では考えられなかったことでありますし、そんなえさのやり方というのはありませんでした。
 しかし、欧米等々での家畜を主体とする、そして肉食を主食とするそういう地域においては、先ほど局長から答弁あったとおり、限られた動物性のたんぱく質をなるべく効率よく使っていこうというのがヨーロッパ等々にずっと長いことえさの給与の仕方としてあった。
 そういう中に、日本の戦後、酪農、畜産がある面では大きな規模拡大を目指したときに、今委員が御指摘のとおり、国内でそういう家畜、酪農、畜産に携わる産業動物のえさを、我が国の中でこれらを自給ができるのが一番いいわけでありますけれども、そこのところがなかなか難しいという状況の中で、だれが考えたのかわかりませんが、決して農水省がそれを奨励したわけではない、私はそう思っております。
 ある面では、そういう世界の趨勢の中で、生産者の方々が、こういうものを食べれば自分のところで牛乳の量をふやすこともできる、そういう学説的なものを読まさせていただいたり、あるいは今風で言うならば、インターネット等々でそういうようなことを言って、自分なりに勉強しながら、それらのものをぜひ使ってみたいということもあったでしょう。あるいは、消費者の方々が、こういうものを使うことによって日本の酪農、畜産がもっと大きくなるのではないかというふうに思われた方もおいでになるでしょう。
 そういう総体的な中で、最終的に農林水産省もそのことについて、えさとして、えさというよりも補助のものとして輸入することについては許可をされたものだ、私はそういうふうに認識をしております。
吉田(公)委員 それは、北村副大臣の説明は、要するに魚粉は昔からやっていたよ。それはやはりたんぱく質も与えなきゃいけないから、それは、トウモロコシやふすまだけじゃ、とても鶏だって卵を産みやしない。だから、魚粉はやっていたんだ。だけれども、牛の肉だの骨を粉々にして骨粉にして、そしてまたそれを牛に食わせるなんという発想はなかったよ、そんなもの。昔から全然ないよ、草食動物に牛の骨だの肉を食わせようなんという話は。
 もともと肉骨粉にする牛というのは、恐らく普通じゃ許可できない牛を肉骨粉にしたりなんかした。魚粉だってそうですよ、人間が食えるものは魚粉なんかにしっこないんだから。だから、そういうふうに、人間が食べないような小さなものだとか、それからそんなもの食卓にのらないものとか、そういう魚粉をつまり使って与えていたことは確か。カルシウムを与えていたことも確か。そういうように、肉骨粉を牛に食わせるなんという発想は全くない。だけれども、いつ肉骨粉というのは日本へ入ってきて、いつ出回って、結果的にはBSEだから。そうでしょう、肉骨粉からBSEなんだから。そんなことは今常識になっている。
 だから、飼料需給安定法にはそう書いてあるんじゃないか、農林水産大臣がその他のものについては認めたものをいうと。だから、恐らく魚粉なんかそうだと思うよ。だけれども、肉骨粉は農林水産大臣が特別に認めたのかね。そこで首を横に振ったってだめだよ、答弁しなきゃ。
須賀田政府参考人 肉骨粉の利用は、実は、文献によりますと、五十年ほど前にアメリカで始まったということでございます。(吉田(公)委員「日本は」と呼ぶ)日本はその後、そんなに歴史はないと思います、二十年とか三十年とかだろうと思います。アメリカのやり方をまねて、たんぱく質でございますので、補助的飼料あるいは園芸用の肥料、こういうものに利用できるということで利用が始まった。同時に、廃棄物でございますので、その効率的利用という観点もあったというふうに聞いております。
 飼料需給安定法に基づく計画、これは主要な飼料についての計画でございまして、肉骨粉のようなものは入っていなかったということでございます。
吉田(公)委員 それでは、農林省は肉骨粉について黙認していたんだね、流通しているのは知っているけれども。その辺はどうなんですか。それでBSEが出た、自主規制だ、いや規制だ、最後は自主規制になってしまった。これは、何かほかに力が働いたのかね。
須賀田政府参考人 畜産関係の試験場で働いておられる方が、こういう効果があるという論文をお書きになっている事実はございました。それで、そういうことを参考にして農家の方がお使いになっていたという経緯もございまして、これは重大なる失政というふうに指摘されたんですけれども、一九九六年にBSEと人の、変形のクロイツフェルト・ヤコブ病の関連が発表されて、そこで、行政指導によりまして反すう動物への給与を禁止したという経緯でございます。
 そのときはアメリカもカナダも同じような措置をとったんですけれども、アメリカ、カナダは翌年に法令上の禁止措置をして日本はしなかった、そういうところが過去の重大なる失政というふうに指摘された問題でございます。
吉田(公)委員 飼料需給安定法というのは、できたのが昭和二十七年だよ。そのときに、それ以外のものについては農林水産大臣の認可を得ると。それで、これは平成十一年十二月二十二日に法律改正したのかな、BSEが出てきたからびっくりして法律改正したのかどうか知らないけれども。
 いずれにしたって、昭和二十七年に飼料需給安定法というのができているんだから、そのときに、その他の飼料については農林水産大臣の認めたものだ、つまり認可が必要だ、こう書いてあるんだから、肉骨粉を輸入したときに、出回って使っておるということはわかっているんだから、どうしてそこできちっとやらなかったかということだよ。
 大体、天地に背く話じゃないか、牛に牛の骨と肉を食わせるなんということは。それは、乳量がふえるとかふえないとかという話以前の問題だよ。その前に、まさに自然界の摂理に反することを黙認していたか、勝手に輸入業者が輸入して、これを食べさせれば乳量がふえますよ、いい肉ができますよ、よく成長しますよと宣伝して恐らくやったに違いないんだ。そのことについて農林省は全然関知しなかったの。(発言する者あり)では、ちょっとそれは答えなきゃだめだよ、そうなれば答えなきゃだめだよ。
須賀田政府参考人 推奨というわけではございませんで、研究者がこういう効果がありますという論文を発表されて、それを農家の方が見られて使ったということでございます。例えば、私どもがいろいろな予算を仕組んで推薦したとか、そういうわけではないわけでございます。
 ただ、禁止していなかったのは事実でございますので、そのことについては、過去の行政にさかのぼって失政だったというふうに非難されたわけでございます。
 基本的には、先生おっしゃいますように、草食動物ですから草を中心として、生理機能から見ても草を中心として給与すべきという基本は、昔からその基本で言ってきたつもりでございます。
吉田(公)委員 何だか、いつもと違って歯切れが悪いね。どうしたんだよ。
 では、飼料需給安定法違反だな。それでは飼料需給安定法違反だね、昭和二十七年からできているんだから、平成十一年につくったんじゃないんだから。昭和二十七年からつくっているんだから、結果的には飼料需給安定法違反だね。
須賀田政府参考人 飼料需給安定法違反じゃないかというお話でございます。
 この飼料需給安定法というのは主要な飼料の需給の計画でございまして、その他大臣として何があるかといいますと、先生言われた魚粉でございますとか、脱粉でございますとか、大豆かすとかでございます。
 肉骨粉は、先ほど来申し上げておりますようにサプリメント飼料でございますので、飼料に補助する飼料ということでございますので、この飼料需給計画には入れていなかったわけでございます。ということで、飼料需給安定法の計画には主要な飼料ということで、肉骨粉のようなものは入れていないということでございます。
吉田(公)委員 では、補助飼料なら飼料需給安定法にひっかからないんだな。
須賀田政府参考人 飼料需給安定法は、先ほど来申し上げておりますように、主要な飼料の需給計画でございます。
 一方で、では、何も関与しなかったのかということでございますけれども、もう一つ……(発言する者あり)補助飼料は、この需給計画には入れてございませんでした。
 もう一つ、飼料安全法というのがございます。これは輸入の際に届け出るということになっておりましたので、こちらの方の届け出はされていたのではないかというふうに、一々確認はしていないですけれども、いたというふうに思っております。
吉田(公)委員 そんなんじゃ答弁になっていないな。
 要するに、補助飼料ならいいというんだ。だけれども、補助飼料といったって、じゃ、三分の一が補助飼料なのか、半分なら補助飼料なのか、ちっとも出ていないじゃないか。補助飼料ならいいなんて、飼料需給安定法にないよ、これ。だから結果責任だから、やはりそういうBSE問題みたいなものが出てきて世間を騒がせる、牛肉の消費が落ち込む、産業にも影響を与える。焼き肉はだめ、問屋さんはだめ、肉屋さんはだめ、そういう結果になったことは事実だから。では、補助飼料なら輸入していいんだな。では、そこでわかった。
 それから、肥飼料検査所というのがあるね。今度、独立行政法人になったよ。各都道府県に肥飼料検査所というのがある。この農林省所管の肥飼料検査所の役割というのは、これは何をやっているんですか。
須賀田政府参考人 肥飼料検査所、業務としては、肥料、飼料等の検査でございますとか、飼料安全法に基づいて検定の業務等がございますので、そういう検定の業務でございますとか、飼料安全法に基づく立ち入りの検査だとか、こういうことをやっております。
吉田(公)委員 そうすると、問題になった無認可農薬、それから今の肉骨粉だってそうだと思うんだけれども、では、無認可農薬が出回るなんということはここを通っていないということだね。これはあくまで届け出制かね。つまり、例えば肥料を売るときに必ず肥飼料検査所を通さなきゃいかぬ、あるいは飼料を売るときに必ず肥飼料検査所というのを通らなきゃいかぬということにはなっていないので、では、何でこんなのがあるんだよ、肥飼料検査所なんというのは。
須賀田政府参考人 例えば飼料に、特に最近は、農薬が残留しておった、カドミがあった、あるいは砒素等があったというふうに、有害な物質が混入、特に輸入飼料についてそういうものがある。あるいは、この委員会でもいろいろ御議論いただきましたけれども、抗菌性飼料添加物による問題というのもある。そういうものがございますので、そういうものを検査いたしましてチェックする、このために肥飼料検査所が存在しているわけでございます。
吉田(公)委員 要するに、だってそこへ持ち込まなけりゃ検査できないんだから……(須賀田政府参考人「立入調査」と呼ぶ)立入調査、それだけか。(須賀田政府参考人「サンプリングを行って持ってきて」と呼ぶ)だれが持ってくるんだよ。(須賀田政府参考人「職員」と呼ぶ)職員が。どのぐらい検査。
 では、ちょっともう一回答弁して。サンプリングでやるんだね。
北村副大臣 立入検査もありますし、あるいは輸入をされてこられたそういう産物等々についてサンプリング調査をする。
 先般も、私はこんなことがあるのかなと思ったのは、アメリカから輸入をされてきたアルファルファ、これは牛のえさですよ。草。つまりチモシーや何かと同じですけれども、そのアルファルファから農薬が出た。これも、今のこの独立法人でありますが、ここで抜き打ち的な検査をずっとやっていた、あるいは立入検査をやっていた、そういうことがそれを水際で防げた一つの例として先般も新聞等々にそれが記事としてなって、今はそのことについて、そういう国からの輸入は禁止をする、こういう措置もとれるという意味では、決して私は、必要のないような機関ではなくて、これからもそういった面では相当な効果が上がってくる検査研究機関である、このように思っております。
吉田(公)委員 肥飼料検査所の職員の数が何人いるか知らないけれども、全国回ってサンプル調査なんといったって、それはなかなか容易じゃない。そういう意味では、きちっと肥飼料検査所の体制を整えて、農薬の問題、何といったって人体に影響するんだから、しかも蓄積性があるわけだから。もしそういう役目をするのなら、要するに肥飼料の安全ということが主眼なら、ちゃんと今問題になっているわけだからやらなきゃいけない、そう思いますよ。だけれども、いいかげんなら、肥飼料検査所というのはずっとどこの都道府県でもあるんだよ。どこの都道府県でも何をやっているんだかわからないんだよ。だからそういうふうに聞いたわけだよ。
 独立行政法人というんだから、本来なら独立して、検査料をもらって人件費を払って、経費を全部賄わなきゃいけないんだ、本当は。だから、そういう体制がちゃんと整っているのかどうか。独立行政法人になったのはいっぱいありますよ、今度。看板だけかけかえたのもいっぱいあるし、次に質問する地方農政事務所だって看板のかけかえだけじゃないの。
田原政府参考人 地方農政事務所につきましてお答えを申し上げたいと思います。
 地方農政事務所は、BSEの問題でございますとか、食品の虚偽表示の問題でございますとか、あるいはただいま先生が御指摘になりました無登録農薬の問題とか、国民の間で食の安全、安心に関心が非常に高まっている、こういったことを背景にいたしまして、食品の安全、安心を確保するということでの、農薬ですとか、えさ、こういった生産資材の適正な使用の確保でございますとか食品の適正な表示の徹底、こういったことを、地方段階におきまして監視でございますとか指導を強化していきたいということ。
 それから、現在食糧事務所が担っております備蓄米の管理でございますとか米麦の輸入等、こういったいわゆる主要食糧事務、こういったことを引き続き効率的に行う必要があるというふうなことで、今回、先週成立させてもらいましたけれども、設置法の改正に伴いまして、地方農政局の下の地方分掌機関ということで三十八地方農政事務所、これを設置させてもらうということにさせてもらっている次第でございます。
吉田(公)委員 確かにこの間法律が通ったけれども、私だけ反対したんだよ。それで農政事務所といったって、統計所それから食糧事務所を農政事務所としたわけだから、だって、そういうことをやるんじゃ研修が必要じゃないか、ちゃんと。それじゃ看板のかけかえだけになっちゃう。食料の統計事務所だとかそんなものはもう要らないということになったから農政事務所に名前をかえたわけだから、それで職員のまま、そのままだったら、そういう今官房長が言った対応はできないじゃないか。研修なり何なりちゃんと、農薬の研修なら農薬の研修をちゃんときちっとさせなけりゃ。
 だって、何人残るの、農政事務所。これは相当いるんだろう。それこそ全国で肥飼料検査なんて人数が限られているんだから、こういう農政事務所の人がやればいいんだよ。なったかどうかはこの次また質問するから。
 時間がなくなってきたから、次に行きますよ。
 日本は、国会で二回だか三回だか、米を一粒たりとも輸入しないという決議をしたよね。だけれども、しようがない、これはウルグアイ・ラウンドで輸入せざるを得ない。そのかわり、高い関税をかけりゃなかなか輸入できないだろうしというようなことで、今そういうこともやっているようだけれども、米の輸入ばかりじゃなくて、輸出というのはどうしたの。何か輸出という話は余り聞かないけれども。やっているんだろうけれども、実態はどうなっているの。
石原政府参考人 米の輸出でございますけれども、これは数量的にはまだ十分な把握ができておりませんが、例えば台湾とかあるいはカナダ、こういうところに、特に輸出に熱心な農協さんが中心になりまして輸出しているというのが実態でございます。
 非常に国内の米の価格が高いものですから、他の国の米と競争するということで決していい条件にはないわけでございますけれども、我が国の米はおいしいということ、それからまた安全性が確保されているということで、特に台湾とかそういうところでは高い評価を受けているということでございます。価格は大体、国によって違いますけれども、三、四倍から高いところでは十倍近くなっている、それでも比較的よく売れているというふうに聞いております。
 我々、米の輸出につきましても、今後積極的に推進しなきゃならぬと思っております。
吉田(公)委員 ぜひ積極的に輸出していかなきゃいけないと思うんだよ。それで、しかも日本食というのは世界で健康食として認められているんだ。特にすしという、英語じゃなくて日本語のすしで通用しているんだから。だから、イラン米なんか、とてもじゃないけれども、すしになんかならないよ、ばらばらになっちゃっているんだから。
 だから、そういう意味では、日本のすし用の米として、ブランド製品としてどんどん売ったらいいんだよ。だって、いい製品は高くたって買うんだから。そうでしょう。ハンドバッグだって何だって、ブランド製品だって、日本の製品の七倍も八倍もしたって買うんだから。そういう意味では、ぜひ積極的に輸出をしていかなきゃだめだと思うんだよ。せっかく米が主要国の日本が、輸出についてはへっぴり腰なんというんじゃだめなんだ。ちゃんとやらなきゃだめだ。
 ちょうど、すしが世界じゅうはやっているんだから、どんどん外国へ人を派遣して、日本の米の試食会でもやるとか、農政事務所の人なんかいっぱいいるんだから、余っちゃって、仕事があるんだかないんだかわからないんだから、どんどん出して、そして、やるということが私は大事だ。
 それから、無農薬栽培、有機栽培。最初から何か、このごろあきらめがちなんだよ。とてもじゃないけれども、有機栽培なんというのは手間がかかって、生産量は上がらないし、とてもとても値段的には合わない、こう言っているけれども、今消費者は、三百六十五日、一日大体普通の人は三回口に入れるものだよ。だから、高くてもいいから、一々一々、これは農薬が入っているのかな、大丈夫かななんて心配しながらサラダ食っていた日には、うまくも何でもないんだよ。だから、三倍でも、仮に四倍でもいいから、選択させればいいんだよ、消費者に。これは無農薬で、丹精込めてつくったものですよ、そのかわり値段は三倍も四倍もしますよ、こちらはそうじゃないですよというふうにしないと、有機農業なんて育たないと思うんだよ。
 だから、さっき言ったように、除草剤をばあっとまいて、それで今度は農薬をまいて、そして増産している。もし農薬を使わなかったら今の米は半分だというんだ、収穫量は。だけれども消費者は、とにかく安全なものを食べたい、特に子供なんかには安全なものを食べさせたい。だから、生産者と消費者は車の両輪と同じだから、やはり消費者のニーズに合ったということになれば、有機農業なんだよ。そのかわり、手間はかかりますよ。労賃がかかる分だけ高いのは当たり前の話だよ。
 だから、今盛んにデパートなんかでも、有機農業の生鮮売り場というのがあって、高いのだって相当買っていくよ。卵だって、地卵といって買っていくでしょう、高いの。三倍もしていますよ。バタリー鶏舎で飼っている鶏の卵なんて栄養素がないんだ、だけれども、庭先で飼っている地鶏というのは、ミミズ食ったりなんかして、物すごくいいんだ、こう言って、三倍しているわけだよ。だから、高くてもいいんだ、安全なら。日本だって大国になったんだから、昔と違うんだから。
 そういうように、有機栽培の奨励ということをやらなきゃいけない。それこそ有機栽培農家には奨励金を出して、やったらどうなの。そういう方策は全然ないの、農林省には。
須賀田政府参考人 考え方は先生と全く同じでございます。
 アジア・モンスーン地帯でございますので、EUなどと比べますと、雑草だとか病害虫、中国からウンカも飛んでくるような国でございますので、農薬というのは有用な農業生産資材であるという一方で、やはり消費者の安心、安全志向というのがございまして、これにマッチする形で有機農法に取り組んでおられる農家がいらっしゃる。そういう主体的な運動を支援したいという考え方でおりまして、今のところは税制と融資でもって支援するという形でございます。表示の方も、有機JASということでちゃんと表示をするという仕組みになっております。
 今度、米の生産調整の問題がございます。
 私どもの調査によると、無農薬、無化学肥料で約二割ぐらい水稲で減収するということがございますので、生産調整効果があるということで、いわゆる産地づくり対策の中でもそういうものを支援できないかということを検討しているところでございます。
吉田(公)委員 二割ぐらい米は少なくたって、それこそ高くしてあげればいいじゃない。絶対、消費者はその方が買うよ。そんなことは当然の話なんだよ。では、何でそういうことを進めないんだよ。それこそ、さっき言った、新農業基本法で書いてあるじゃない。農業生産法人にして大規模にするとか、集落営農するとか、要するに、効率のいい農業をやっていこうというための施策というのがここに書いてあるじゃない。
 だから、そういうように、有機農業の奨励。特に、有機農業というのは本当に大変なんだから、そういう人には奨励金を出して、そして国民の健康、安全、そのためにまず農林省はちゃんと努力すべきだよ。そうしたら、減反政策なんか要らないじゃないかよ。そのかわり、高いのは当たり前だ、こう言うんだよ。そんなことは承知で言っている。
 それから、今遊休農地が二十一万ヘクタールあるんですって。その遊休農地をどうしようかというのが今度かかっているんでしょう。「遊休農地に関する措置の改善について」というのは、そうでしょう。その中に、ポンチ絵みたいのがあるよ、ここに。調子のいいことが書いてあるよ。「Bさんの農地が使えればもっと農作業の効率が上がるのにな…。」と書いてあるんだよ。Bさんの農地を手に入れりゃ。だけれども、手に入れたくない農地もいっぱいあるんだよ。そのときをどうするかということが問題じゃないかよ。だれもが欲しがるような田んぼや畑だったら、遊休農地になんかならないよ。
 だけれども、問題は、あんな畑もらったって、段々畑みたいになっているし、地形はよくないし、うちの畑からもう少し歩かなきゃいかないしというのが問題なんだから。ポンチ絵のとおり、調子のいいことしか書いていないけれども、どうなってんの。必ず遊休農地というのは、こういう絵のとおりちゃんといくのかね。全部必要な農地なのかね。
川村政府参考人 遊休農地の問題でございますけれども、遊休農地の発生の要因もさまざまでございます。
 農業に従事されていた方が高齢化でありますとか、あるいは、今まさにおっしゃったように、土地条件が悪くてなかなか借り手がいないということもあるわけでございます。そういうことでございますので、まず、遊休農地が発生しないようにするというのが一番重要であろうと思っております。
 そのためには、土地条件の悪いようなところは基盤整備事業を実施して借りやすいように、使いやすいようにするということも重要でございますし、また、非常に農地が散らばっているということで効率的な利用ができないということであれば、集積をしていくということも必要でございますし、また、単に個人に貸すということではなくて、やはり集団的な取り組みをするということも必要であろうかと思っております。
 今回法案で出させていただいているのは、その中の一つの手法としてこういった手法がとれないかということでございますので、これとほかの予算措置とかいろいろなことと相まって遊休農地の問題に取り組んでいきたい、こういうことでございます。
吉田(公)委員 要するに、遊休農地ができるということは、時間がないからあれだけれども、庭先米づくりの人たちがたくさんいるわけだよ。農林省の言葉では第二種とかなんとか言っているけれども、要するに、一反歩か二反歩の田んぼをつくって、そしてそういうものも米になっているわけだから、逆に言えば、庭先農業というのはほかの作物に転換してもらう、そういう政策があれば、何も減反政策なんてやることないんだよ。だから、そういうことも、やはり発想を転換しないと、今の農業というのは維持することできませんよ、それは。
 それから、もう時間がないから、いろいろと質問しようと思って、いろいろな人が来てくれているんだろうけれども、質問のない人はこの次に残しておいてやらせてもらうから、きょうは勘弁してもらいたいと思う。
 農業委員会、区市町村農業委員会ありますよ。建築基準確認申請でも、例えば、だめだといったら二週間以内に返事するんだよ、こうこうこういうことだから許可が今のところできませんと。ところが、この農業委員会にいろいろな申請を出しても、二年も三年も待たされて何でもないというのがいっぱいあるんだよ。期限を設けていないんだよ、これ。だから、都市住民が途中で農業やりたいといって、農業従事者の免許をもらわなけりゃ農業できないんだから、農地を借りることもできない、買うこともできないんだよ。ところが、申請したって、いつくれるかわからないんだ。それ、だれが担当しているの。
川村政府参考人 ただいま委員がお尋ねになりましたのは、農地法四条、五条の知事の転用許可の問題じゃないかと思います。
 かつては、御指摘ありましたように、いろいろ事務が迅速でないという御指摘もあったわけでございますが、最近、農業委員会の審査におきまして、標準処理期間ということで設定をしておりまして、受け付けから三週間以内に知事に申請書を送付するということになっております。また、知事は、申請書の受理後一カ月以内に許可されないものについては、処理の遅延の理由等を申請者に通知するということにしておりまして、最近、そういった苦情はかなり減っているというふうに思っております。
吉田(公)委員 最後になりますが、やはりこれから、農業委員会というのは大事な委員会なんだけれども、もともとはこんなのはアメリカ方式なんだ、教育委員会とか選管だとか農業委員会なんて。選挙だもん、これ。だけれども、選挙といったって、市会議員選挙みたいにやったのは余り例がないんだよ。一人でも多く出ようものなら大騒ぎだよ、選挙になっちまうから。だから、一部は形骸化しているところもあるからね。
 だから、この農業委員会が農業のために、その障害にならないように、むしろ農業を振興させるための農業委員会ならいいけれども、そうでなけりゃ、やはりちゃんと期限を切って、法律改正して期限を切るということにしないとだめですよ、これは。転用も遊休農地もできないよ、活用も。農業委員会で全部とまっちゃうんだから。ぜひその辺もお願いしたい。大臣、お願いしますよ。
 終わります。
小平委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。今田保典君。
今田委員 御苦労さまでございます。民主党の今田保典でございます。
 私の方からは、農業災害補償法の一部を改正する法律案に関して質問をいたしたいと思います。
 まず最初に、農業共済団体等の運営の仕組みについてお伺いをしたいと思います。
 この農業共済組合の事務費については、組合員から集めた掛金等を充てるとともに、それだけでは不十分だということで、不足分を国庫負担されているところでありますが、国はこの国庫負担、毎年どの程度負担をされているのかお伺いをしたいと思います。また、その仕組み等々についてお伺いをしたいと思います。
川村政府参考人 お答えをいたします。
 農業災害補償制度でございますが、その仕組みをまず申し上げたいと思います。
 これは三段階になっておりまして、まず一番現場に近いところでは、農業共済組合等が行います共済事業というのがまず一段階としてございます。そして、この組合等の共済責任の一部につきまして責任を保有する都道府県の農業共済組合連合会が行います保険事業というのが二段階目としてございます。それから国段階でございますが、連合会のまたこの保険責任の一部について責任を保有する国が行う再保険事業。こういう三段階で行われておりまして、それぞれの段階で危険分散を行う、これによりまして適切な事業運営が図られるように措置してあるということでございます。
 そして、この制度は、まさに農家の経営安定、災害対策の柱となるものでございますので、本対策を効率的、効果的に運営するということで、農家が支払いますいわゆる保険料の共済掛金につきましても助成をしておりますし、事業運営を行います団体の事務費の一部につきましても負担をしておるところでございます。
 そして、その状況でございますが、この事務費の負担金につきましては、農業災害補償法に基づきまして役職員の給与、事務費、その他事務の執行に必要な費用ということで負担をしておりまして、その負担割合は、農業災害補償業務の費用のうち、平成十四年度で申し上げますと五四・八%というのが現在の状況でございます。
今田委員 そこで、このデータを見ますと、昭和四十年には三千七百余りの団体があったわけでありますけれども、平成十三年には三百五十団体になった、こういうことでありまして、四十年の一〇%程度に激減しております。また、昭和四十年には二万二千人ほどおった職員が、平成十三年には九千五百七十名ほどになった。これまた大幅に減っております。
 これらは、組合が合併したりあるいは広域化したりして、さらにまた事務の合理化というものを推進した結果だろうというふうに私は理解しているんですが、しかし、国から事務費が交付されているのであるのならば、もっともっと業務の合理化というものを進めなければならないんだろうというふうに私なりに理解をしているんです。
 同時に、今その合理化といいますか効率的な運営がどの程度進捗しているのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
川村政府参考人 農業共済団体等の業務運営の合理化の状況でございます。
 ただいま委員が御質問の中で触れられましたように、昭和四十年から比べますと、合併等によりまして相当の合理化が進んでおります。これは、国がこれらの共済団体に対しまして、地域の再編ということで積極的に推進してほしいということ、それからまた、引き受けなり損害評価、こういった基幹的な業務の機械化を推進するということで、業務運営の一層の合理化、効率化を進めるように指導を行ってきた結果ということでございます。
 委員は四十年との比較で申されましたが、ここ十年で申し上げましても、まず組合等の数は六〇%、八百三十八から三百三十二まで落ちておりますし、職員数も一万二千人台から九千人台ということで、二五%減少しております。また、業務費総額も一七・四%減少ということで、年々大幅に減少してきているところでございます。
 今後の見通しでございますが、やはりさらに広域化を進めてほしいということで、これは運営コストの縮減等をお願いしたいということでございまして、将来計画としては、現在三百台ありますものを二百七十組合まで持っていくということでの計画を出していただいておりますので、引き続きこの合併に取り組んでいただきたいと思っているところでございます。
今田委員 同時に、人件費について、要するに、農業共済組合に勤めている役職員の給料が当然出ているわけですが、それをどのように決められているのか。
 あわせて、農業共済組合に加盟している組合員の最近の流れについて、例えば昭和四十年から平成十三年までどのぐらい動きがあったのか、組合員数ですね、もしわかるならばお知らせいただきたいと思います。
川村政府参考人 まず、共済団体の役職員の給与の関係でございます。
 これは、農家の方々の掛金をもとにこういう共済事業をしておりますので、やはり適正な水準ということがバランス上必要なわけでございます。そういうことで、職員につきましては当該地域の地方公務員の給与に準拠するようにということでございますし、また役員の報酬につきましては、他の農業団体の役員報酬でありますとか、それから農業共済団体のまさに財政の状況、運営状況を考慮して、総会で適正に諮って決めていただくように指導しているところでございます。
 また職員数につきましては、先ほども触れましたが、昭和四十年に二万二千人ぐらいおりましたが、十三年には九千五百人台ということでございます。
今田委員 職員の数じゃなくて、農業共済組合員の動きをちょっとお聞かせいただきたかったんですが。組合員の方。
川村政府参考人 ただいますぐ出ませんので、またわかり次第、お答えさせていただきたいと思います。申しわけありません。
今田委員 それから、特別会計の仕組みについてちょっとお伺いしたいのですが、農業共済予算を見てみますと、特別会計への繰り入れとあります。その中身についてまず御説明を願いたいし、また、その特別会計の仕組みについてもちょっとあわせてお尋ねをしたいと思います。
川村政府参考人 農業災害補償制度でございますけれども、先ほどその仕組みをまず御説明したとおり、まず第一段階に組合等がありまして、連合会、国、こういう三段階に行われておりまして、それぞれの段階で危険分散を行うということでの事業運営が図られるように制度設計がされております。
 そして、この会計処理でございますけれども、これは農業共済再保険特別会計ということでございまして、国が行います再保険事業を経理するということでございます。そして、再保険料をもって歳入として、そしてまた歳出の方は、再保険の支出をもって歳出ということでございます。
 このような特別会計制度がとられていることの背景でございますが、災害の発生状況というのは各年非常に大きな差、ばらつきがあるわけでございます、それから農業災害の発生態様が非常に特殊であるということで、各年の事業収支が大きく変動することもあるということでございます。したがいまして、効率的にこの保険の仕組みを運用していくというためには、この歳入と歳出を長期的には均衡させる、バランスさせていくということが必要でございますので、こういう特別会計をとりまして年々の変動を平準化する、そういった意味合いがあるわけでございます。
 このようなことから、再保険に係ります事業収支を一般会計と区分して明確化するということでございまして、特別会計で経理をしております。
 ただ、こういう特別会計をとっておりましても、やはり異常災害、極めて大きな異常災害というのもございまして、再保険金の支払いに不足を来す、例えば、平成五年に大冷害がありまして、あの場合は米だけでも五千億近い支出がありました。そういうときは、一般会計からの繰り入れもやりますし、また財投の借り入れ等も行いまして対処をしたという経緯がございます。
今田委員 次に、賦課金というものもあるんですよね。
 それで、この賦課金、義務づけ等々のものでちょっと勉強させてもらったんですが、農業災害補償法第八十七条の二において、賦課金の滞納がある場合、いわゆる国税、地方税、その次にこの賦課金なんですね。そのぐらい重いものだという意味なんだろうというふうに思いますが、徴収金の先取特権の順位は、先ほど言ったようなことで国税、地方税ということになっておりますけれども、それはどういう理由からそういうふうになったのかお聞かせをいただきたいし、そもそも、賦課金というその位置づけについて、どのようなことでこういう位置づけになったのか、お聞かせをいただきたいと思います。
川村政府参考人 農作物共済の共済掛金及び賦課金の関係でございます。
 御案内のとおり、農業共済につきましては加入方式に二通りございまして、農作物共済につきましては強制加入ということ、当然加入制がとられております。ほかの共済と違いまして、そういう制度がとられております。
 そういうこともございまして、この農作物共済の共済掛金なり賦課金、これは、賦課金は、今おっしゃられたとおり、組合等が組合員等に課す事務費でございます。その場合の未納があった場合、まず手続でございますが、督促状によりまして期限を指定する、そして督促をして、なお納付がない場合には、市町村に対しまして徴収を請求するということでございます。市町村に対してその要求をするということでございます。そして、市町村が一定期間内に処分に着手しない等の場合がありますと、都道府県知事の認可を受けまして、みずから徴収を行うということも規定されております。
 この市町村なりあるいは農業共済組合による徴収金につきましては、先生も今御指摘をいただきましたけれども、国税なりあるいは地方税に次ぐ先取特権ということで、かなり優遇をされております。
 その理由でございます。
 これは、こういう手続が定められておりますが、先ほど冒頭ちょっと申し上げましたが、農作物共済は当然加入制をとっておりまして、あらかじめ共済掛金の支払いがなくても共済関係が成り立つということになっておりまして、そのまま未収ということでありますと共済事業の運営を非常に不安定にするということが一つございます。
 それから、事務費につきましても、多くの組合員の方がいらっしゃいますし、これをそのまま納めないことを放置いたしますと、組合員の相互の間での公平感、こういうものに非常に問題を来すわけでございますし、ひいては組合の事業運営に支障を来すということで、農業共済制度が目指します農業経営の安定、こういうものが図られないということでございますので、今申し上げました共済掛金またその賦課金につきまして、特に着実な徴収を確保するという観点からそういう規定がございます。
 なお、ちょっと参考で申し上げますと、国民健康保険組合が徴収する保険料につきましても同じような規定がありまして、優遇をされているということを御参考までに申し上げます。
今田委員 先ほど言ったように、先ほどから私がお伺いしているのは、事務費の負担は国庫負担がある、それから、例えば災害が起きたときには、これまた国庫負担で不足分をカバーしてやる、それから賦課金については位置づけとしてはそういう位置づけになっている、こういうことですから、いわば農業共済組合に勤めている職員は、商売をしなくとも、いわゆる自助努力をしなくとも、何にもしなくともやっていける、こういう仕組みなんですよね、早く言えば。損害が起きたときには国で負担をする、そういうやり方なんですよ。
 だから、商売的に、我々が頑張って農業共済組合の運営を何とかいいものに変えようという意識が、私は地元におって、どうも足りないのですよ。それがいわゆるそういう仕組みになっている、こういうことであるのではないかというふうに思っているんですが、この点についてどうですか。
川村政府参考人 まず、ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどちょっとデータがすぐ出なくて申しわけありませんでしたが、農業共済加入戸数の問題でございます。
 代表的な農作物共済、水稲での加入で見ますと、昭和四十年に四百六十三万戸ございました。そして平成十三年でございますが、二百二十九万戸ということでございまして、率にしますと五〇%以上の減少ということでございます。それをお答えさせていただきます。
 それから、この手厚い助成なり保護によりまして共済組合のそういう改革に向けてのインセンティブが非常に働かないのではないかという御指摘であったわけでございますが、そういうことがあってはならないと我々は思います。
 この制度は、端的に言いますと、末端といいますか個々の農家の方々の経営安定を図るために、できるだけコストを低くして、そして経営の継続、安定を図っていくということがまさに本旨でございますので、我々もそういう御批判は真摯に受けとめまして、引き続き合理化努力、やっているつもりではございますけれども、引き続き頑張らせていただきたいと思うところでございます。
今田委員 また後ほどこの件については議論したいんですが、しかし、どうも農業共済組合の幹部連中の態度を見ていると、親方日の丸でやっているんですよね。何様のつもりだということを私は言いたい面があるんです、正直言って。
 そういう意味では、国庫負担があるから何をやっても大丈夫なんだと。いわば私は、地方公務員あるいは国家公務員、そういった方よりも恵まれた立場にあるのではないかな、逆に言えば。職員の方々の気持ちとして腹の中にあるとすれば、大変な間違いだと思うんですよ。これは、どう改善していくのかというのをきっちりやってもらわぬと、農家の方々が一生懸命掛金を納め、賦課金を納めてやっているにもかかわらず、職員の方がそういう心づもりでおるということであれば、これは大変な間違いだというふうに思うんですよね。
 もう一度ちょっと、この点について。
川村政府参考人 今の委員の御指摘でございますが、まさに先ほども申し上げましたとおり、この共済制度というのは、農業者の、個々の組合員の方の利益を最優先ということでやっていただかないといけないわけでございます。
 そのためにも、私ども、まず、個々の市町村等に共済組合があるのではなかなか事務の合理化が図れないということで、できるだけ合併を進めて合理化をしたいということで強力に指導しておりまして、現在、各都道府県それぞれの大きな郡単位なりブロックでの共済組合、あるいは全県を視野に入れたところに来ております。
 また、事務につきましても、組合員のニーズにこたえた形での迅速な、またわかりやすい、丁寧な事務的な処理ができなくちゃいけないということで、昨今は非常にIT化が進んでおりますので、そういう電算化も含めまして事務を合理化するようにということで、基本的に、オンライン化は単位組合から国の段階までは終わったところでございます。
 事務運営の合理化というのが今回の農災制度の改正の一つの柱になっておりまして、その中で、まさに、申し込みも今非常にパソコンなりメールでやる、政府の方も電子政府化というようなことで、電子手続で、電磁的な方法によって行うということも着手し、既に一部実施をしておりますけれども、そういうことでの努力もしております。
 各般にわたりましてそういう事務の運営をし、できるだけ農家の方の負担を減らしていく、賦課金を上げるようなことはあってはならないわけでございますので、できるだけ合理化を進めていくということが必要だと思います。
 また、これは非常にある意味で残念ですが、やはり国の財政が厳しいということで、事務負担についてもある程度の削減をせざるを得ない状況もありますので、それを農家に転嫁するということがあってはならないということもございますから、そういうこともにらんで、真剣に合理化に努めていただきたいなと思っているところでございます。
今田委員 その件についてはまた後ほど触れたいと思いますが、次に、役員の選出について。
 第三十一条の規定の中身は、まず一つは、農業共済組合に入っている組合員の方が、四分の三の方が役員の中に入りますよ、あと四分の一は組合員でない人もいいですよ、こういう定めになっているんですが、そういう理解でいいですか、お聞きをします。
川村政府参考人 農業共済団体等の役員の選出の問題でございます。
 農業災害補償法上、農業共済団体には、役員として理事と監事を置くことになっております。その定数は、理事が五人以上、それから監事が五人以上とされておりまして、今委員が御指摘いただきましたとおり、理事については定数の少なくとも四分の三は組合員、すなわち農業者でなければならないということでございますが、四分の一以内は員外理事ということで、学識経験を有する方々の登用というのも可能になっております。
今田委員 それから、先ほどから議論されているように、国庫から助成が行われております。掛金の一部負担、あるいは事務費の補助の負担。十五年度の予算におきますと、約一千百九十三億円の予算がついております。農業共済組合に対してそういう国庫負担をやっているわけですよね。そういう農業共済組合の、そういう助成を受けている職員や役員が、この前行われた地方統一選挙で白昼堂々と選挙運動をやっているんですよ、ある一部の候補者を。
 それで、捕まったのが山形県の、私、山形ですから大変恥ずかしいんですが、現職の県会議員の議長が恫喝罪らしきもので捕まっているんですよ。恫喝した相手は農業共済組合の役員なんですよ、幹部なんですよ。自分に応援しなかったものだから、おまえら共済組合の役員を首にするよ、こういうことを言って逮捕されたんですよ。いわば、裏を返せば、白昼堂々と選挙運動をやっているということですよ。いわば国の金で給料をもらっている人間が、日中堂々と選挙運動をやっている。
 こういうことが行われているという事実についてどう思われるか、お聞かせをいただきたいと思います。
川村政府参考人 今委員がお尋ねになりました、山形県下の統一地方選挙におきまして、農業共済組合の副組合長と県の農業共済組合連合会の副会長を兼ねられます県会議員の方が、公職選挙法違反の容疑で、去る五月十一日に逮捕されたということは承知しておりまして、現在、山形地検が当該県会議員の方を起訴されているということは聞いております。
 いずれにいたしましても、今回、国の災害対策を担います農業共済団体の役員が有罪というような場合には、非常に残念なことで、今後、こういったことが起こることのないような農業共済団体の指導ということをやってまいりたいと思っております。
 それから、先ほどの答弁の中で、監事定数を五名と言いましたが、これは二名でございます。訂正させていただきます。
今田委員 いっそのこと、その定款の中に、選挙運動はしてはならぬ、こういうふうに入れたらどうですか。一番問題なんですよ。
 それから、先ほど役員のことを申し上げました。理事長あるいは副理事長、そういった方が、県会議員とか国会議員がいるんですよ。当然、いれば、その方を当選させたいという気持ちは人情として起きますよ。そういう役職も役員も、公職にある者はしてはならぬ、こういうことをどうせ書いたらどうですか。そういうことをすることによって、そういったことを改められるんですよ。
 現に、国会議員いるんですよ、理事長になっているのは。中央……(発言する者あり)先生、わかるでしょう。そういうことがあればだれでも、人間ですから、我々の理事長を当選させたいということはだれでも起きますよ、人情ですから。
 そういうことをそもそも根本から断ち切るということをしなければ、こういったことが起きるということはたびたびあるんですよ。このことについて、どうですか。
川村政府参考人 まず、事実関係といいますか、現在の規程の状況を申し上げます。
 農業共済団体の職員でございますが、これは公務員のような政治活動の禁止規定は適用されておりません。また、個人的に一切政治活動をしてはならないということは考えておりません。
今田委員 ちょっと時間になるようですが、私が申し上げたいのは、国庫負担とかそういったものをもらってなけりゃいいんですよ。大部分ですよ、これ、この仕組みを見ると、国庫負担するのは。そういう金をつぎ込んでいる団体が政治運動をやるというのがそもそも私はおかしいと思うんですよ。(発言する者あり)いやいや、それは違うんですよ。いや、あなたはちょっと黙っていなさいよ。今質問しているんですか。私が言っているのは、聞いているのは、大臣とかそちらに聞いているんですよ。
 そういうことをやる以上は、こういうことはたびたび起きると私は一点言いたいんです。どなたがやって悪いということは私は言っていないんですよ。やってもいいんですよ。しかし、そういうことをやらなけりゃ世の中問題ないんですよ。そういうことが起きているから私は言っているんですよ。そのことをきっちりと議論していただきたいですね、これ。まあ時間がないですからあれですが。
 そこで、今ほどの問題を総合的に、大臣、どうお考えなのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
亀井国務大臣 選挙は、公職選挙法に基づきまして、法を遵守して行わなければならないわけであります。
 先ほどのお話の件、大変遺憾なことでございます。また、団体等にもいろいろ指導してまいらなければならない、このように思います。
今田委員 時間になりましたが、しかし、私は非常に地元におって残念なんですよ、そういうことが起きたということは。恫喝って、まあ言葉は悪いですけれども、選挙自由妨害何とかという罪だそうですけれども、そういうことがこれから続くとすれば、特に山形はそういうことが何か続いているようですけれども、しかし、そういうことにならないように、これからもいろいろな場で、皆さんにそういうお話が国会の場で議論されたよということを言っていただいて、そういうことにならないようにお互いに身を引き締めていただきたい。
 このことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。
小平委員長 次に、後藤斎君。
後藤(斎)委員 今のものに関係はありませんが、法案に入る前に、ちょっと一点確認をしておきたい事項がございます。
 数日前、財務大臣の諮問機関であります財政審議会の中でも、来年度の予算に向けてというので、公共事業をさらに減らしていくという確認もされているようでございます。あわせて、大臣も何度か、いろいろな報道や当委員会でも、公共事業を見直すべきは見直すというお話もされたことを記憶しております。
 そこで、お尋ねをしたいと思います。
 そういう公共事業は、全体的に、建設、土木に従事する方も、大変それぞれの地域では御努力されている点は私は素直に評価をしたい点もございます。ただ、それが一部の業者の方にということになると、これは問題があるというふうに言わざるを得ないと思っております。
 林野庁の公共事業全体で何千億あるか、細かい数字は承知しておりませんが、一般論でまずお尋ねをしたいんですが、公共事業に関する入札制度について、冒頭、簡潔に長官の方に御答弁をお願いいたします。
加藤政府参考人 林野庁の直轄公共工事の発注におきましては、発注規模に応じまして、一般競争入札、それから公募型の指名競争入札、それから工事希望型の指名競争入札、それから通常の指名競争入札により実施をしているところでございまして、そういった中で透明性、競争性の確保を図っているというところでございます。
後藤(斎)委員 透明性、競争性ということでありますが、四、五年前に、これは林野庁がメーンということでなく、当時の構造改善局が大きな国民的な非難を受けた事件がございました。
 そのとき以降、農林省の中でもいろいろな御努力をなされて、入札参加者選定事務取扱要綱を制定したりして、いろいろな指名基準を明定したりして対応していることは承知をしておりますが、この一部抜粋の十七条というところをいただいておるんですが、「指名基準」というのが一ページにわたって書いてありますけれども、この指名基準というのは、いわゆるコンサルタントの方も適用されながら対応されるものなのでしょうか。選定方法について、やり方についてお願いをいたします。
加藤政府参考人 今お話ございましたとおり、競争参加者選定事務取扱要領を制定いたしているところでございまして、これに基づきまして、調査設計業務についても同様の取り扱いをしているということでございます。
後藤(斎)委員 そこで、ではお尋ねをします。
 林野庁から、山梨県関係ということで気をきかせて対応していただいたんですが、入札結果一覧というものの十二、十三、十四年度をいただいております。これは落札業者ということで、施工業者の部分でありますけれども、多い年で二十九件、三十件弱、そして少ない年で少し低いんですが、コンサルタントを見ますと、平成十二年が二コンサルタンツ、十三年度は一つのコンサルタンツ、十四年度が二つのコンサルタンツが調査設計をしているということです。
 これは一般論でよく言われることでありますが、コンサルタンツがある程度基本設計をして、それを委託主でありますお役所の方にお返しして選定を進めると思いますけれども、施工業者が三十弱あって、このコンサルタンツが、今長官がお答えをいただいたこの要領に基づいてやると、いろいろなコンサルタンツが多分、このような景気の状況ですからコンサルタンツも大変厳しい状況に置かれているというのは、施工業者と同じようにその現状が把握を多分されている中で、なぜこの二つないし一つに絞られてまずコンサルタンツが選定をされたのか。教えていただけますか。
加藤政府参考人 調査設計業務につきましては、実は、奥地、山岳部におきまして専門的な能力をお持ちになって調査設計をしてもらわなきゃいけないということがございまして、今までは実は随契でやっていた時代もあったわけでございます。それを見直しいたしまして、指名競争で行うということにしてきているところでございまして、今徐々にその指名競争の参加していただく人数というものもふやしてきているところでございまして、平成十四年度におきましては十名の方に参加をしていただいて指名競争をしていただいたというようなことでございまして、結果としてそういう形になっているというふうに理解をいたしております。
後藤(斎)委員 この指名基準の十七条2の(2)のウに「建設工事等の成績」、「技術的適性」がエにございます。この部分で、確かに、過去の実績とかいうことになりますと、長官がお答えになった部分もある意味では正しい部分があるかもしれませんが、この一番毎年コンサルタンツで指名を受けている社は、財団法人林業土木コンサルタンツであります。お名前をざざざっと読ませていただきますと、多分農水省のOBの方も何人かいらっしゃる財団。それ自体が不正だとか、私はそういうことを言うつもりは全くありません。が、十社というのは、本当に十社指名に入られましたか。そのリストは後ほどいただけますか。
加藤政府参考人 先ほど申し上げましたように、十社を指名させていただいたところでございますので、その名簿につきましては、後ほど提出させていただきたいと思います。
後藤(斎)委員 そして、奥地であるからということは、少なくとも、委託を受けたこの林業土木コンサルタンツ、これは東京に本社がございますね。林野庁の特に治山事業にかかわるところは本当に山奥にあるのは私もよく承知をしておりますが、そうであれば、地元の業者の方も入っても全然不思議はないですね。
 何か技術的な特典とか、特に考慮すべき、例えば、先ほど指摘をしました指名基準、十七条の2の(2)の「地理的条件。ただし、特定調達契約に係るものにあっては、この限りでない。」いろいろあるのですが、何がポイントになったのか。今もしお答えになれなかったら、あわせてその資料に、その理由を明示していただけますか。今お答えになられますでしょうか。
加藤政府参考人 治山事業ということでございますので、やはり山の状態等々もきちっと把握をし、その中でどういうふうに工事を行っていくかというふうなこともやっていただかなければいけないということでございます。そういう点で、技術的な調査研究等もされているというところがあったわけでございますけれども、今申し上げましたように、それらにつきまして、我々としても、できるだけ幅広く指名をしていくということで、業者数もふやしてきたということでございます。
 そのあたりにつきまして、また業者名簿を提出させていただくということで先ほどお答えさせていただきましたので、なお必要がございましたら、今申し上げましたようなことにつきまして説明をさせていただきたいと思います。
後藤(斎)委員 それは、ぜひお願いをしたいんです。
 そして、もう一点大変気になるのは、この十二、十三、十四年、確かに継続事業がありますが、施工業者がほぼ一定をしているんです。コンサルも一定であって、施工業者も絞り込まれている。長官のお答えはわかります。多分、指名基準に従ってやっている、いい業者を選んだと言うでしょうけれども、そうじゃないんです。四、五年前の、農林省全体があれだけ世論からも、大臣も含めて、改悛の情をあらわし、何とか検討委員会をつくって農林省全体のコンサル、施工のあり方を見直したというのが、私は正直言って、これを見ると生かされていないと思うんです、申しわけないんですけれども。
 では、施工業者と調査設計にかかわるコンサルの関係というのはどうなっておりますか。
加藤政府参考人 公共工事の発注に当たりましては、今の指名選考に当たりましては、当該公共工事の調査設計を実施した建設コンサルタントは指名の対象から除外するということにいたしております。また、調査設計を担当した建設コンサルタントに対しては守秘義務を課しているところでございまして、そういうことから見ますと、施工業者と建設コンサルタントの間に、特定の公共工事の発注に関して両者の関係というものは厳正さが保たれているというふうに認識をしているところでございます。
後藤(斎)委員 半分たってしまいましたので、この辺でやめますけれども、長官、先ほどの資料とあわせて、私、では地元の方でもう一回調査をします。それでコンサルと施工業者の関係が明確になったらどうしますか。その責任のとり方について御発言いただけますか。
加藤政府参考人 今申し上げましたように、我々としては、コンサルタントと施工業者の間でそういった不明確な関係というものはないというふうに考えているところでございます。
後藤(斎)委員 長官、私、一つの事例を挙げながらお話をしているわけですけれども、これが、今また浄化をする意思があるのであれば、私はまだ正しい一歩だと思うんです。ただ、やはり、これはもう今やっているからいいんだということであれば、もっと大きな問題になりかねない。これはもう、BSEの問題でも、去年の農薬の問題でも、不正表示の問題でも、頭が痛くなるほど、長官は直接の当事者ではありませんでしたが、やってきたわけです。
 ですから、私は、行政という立場がどういうものなのかというのをやはり明確にもう一度、官と民のあり方というふうに小泉さんが二年何カ月前に言い始めて、そういう意識はお役所の方にも多分行っていると思うんです。でも、おれたちはやっているからいいんだということであったら、大臣、余りよくないですよね。大臣は、その点、どう思われますか。
亀井国務大臣 今のお話、入札等々、これは基準に従って公平に、そして透明性を持ってなさなければならない、このように思っております。
後藤(斎)委員 ぜひその点でこれからの、資料をもう一度見せていただきながら、次回の委員会でまた対応するかどうか考えさせていただきますので、資料提供の方はよろしくお願い申し上げます。
 本論に入っていきたいと思っています。
 今回、農業経営基盤強化促進法並びに災害補償法ということで、二つの法律案が今審議をされているところでもあります。ただ私、今回の二法が出てきたことは、これからの日本農業全体の下支えをする第一歩だというふうには思いますが、正直言って、まだまだ抜本的なものになっているとは到底思えません。
 特に今回、災害補償法の方の関係で、幾つかの選択肢を広げながら対応するということはいいと思うんですが、災害補償法の主目的というのは、要するに、自然災害に特に対応する、不測の事態に備えるという点が法律の一条でも大変強調されているところでもあります。
 そして、現在のこの共済制度の中でも、果樹、お茶、麦につきましては収入保険という考え方も一部取り入れられて、私自身そうですし、民主党も今、経営所得という所得方式、所得を経営体についてどう考えていくかということがこれからの日本農業を考える上で必須であるということの観点からいえば、経営体の所得を確保するという点については、もともと法律の趣旨が違うからそうなっているのでありますけれども、一部芽出しをしてきた品目もあるという中で、私は、これから経営所得安定というものを考えた中で、今回の農業災害補償制度を、いろいろな御議論の中では積み立て方式にするとか保険方式にするとか、アメリカやカナダのいろいろなセーフティーネットの動きも含めて御議論されたことは承知をしておりますが、これからのあり得べき経営所得というものを確保する中で、今回の農業災害補償法の改正をどのように位置づけられているのか、まず御確認をしておきたいと思います。
    〔委員長退席、鮫島委員長代理着席〕
川村政府参考人 農業災害補償制度につきましては、まさに自然災害等に備えまして、農家の経営の安定、継続を図るための重要な柱でございます。そして、農業情勢、いろいろな状況がその時々で変わりますので、この農業災害補償制度につきましても、さまざまな改善の御要望等があるわけでございます。
 その要望を踏まえまして、できるだけ対応したいというのが一点ございます。また、新しい基本法ができまして、その方向で農業経営を、企業マインドを持った経営を育てていくという観点もあるわけでございます。そういう視点にも立って、かつ、それぞれの要望に応じた改善も加える、そういう考え方で、この災害補償の改善に取り組んでおります。
 委員が御質問の中で触れられました経営所得安定対策というものは、これはまた農業災害補償制度と全く無関係ではございませんけれども、基本法案でもこの方向が出ておりまして、経営を単位としてとらえるという対策として将来的には考えていくべきだということでございます。
 したがいまして、今回の農災法の改正は、そういった農政の動きがございますが、まずは当面の要望、また新しい基本法に基づきます経営マインドという観点から、早急に手をつけるべきところを手をつけたということでございます。
後藤(斎)委員 もう一点。いわゆる環境保全型農業というものをこれからもっともっと促進しよう、減農薬であるとか無農薬であるとか有機栽培であるとかという話があります。その際に、先ほども指摘がありましたように、単収の低下というものが環境保全型農業についてはございます。
 共済金や共済金の支払いというものが基準収量というものを基礎にしながら対応すると、では、環境保全型農業を促進というか推進していくものと若干そごが出てくるような感じもするんですが、今回の改正の中身も含めて、どう環境保全型農業を推進するという芽出しができているのか、簡潔に御答弁をお願いいたします。
川村政府参考人 環境保全型農業でございますが、これは、やはり一つの今後の生産のあり方ということで、今後積極的に取り組むべき課題だと思っております。農災制度におきましても、環境保全型農業につきましても他の農業と同じく災害補償制度の対象として取り組んでおりまして、安心して取り組めるような形になっていると思います。
 ただ、この環境保全型農業につきましては、今委員も御指摘ございましたとおり、一般的には収量が低下するということでございますので、この引き受け時の基準収穫量のとり方につきましては、その肥培管理状況に応じて実態に即した対応をするということで、実態に応じました補償ができるということで安心して環境型に取り組んでいただけるような仕組みになっております。
後藤(斎)委員 局長、そう話をされますが、一方で、ちょっと農業経営基盤強化促進法の方に入りますが、実際、食料・農業・農村基本法の基本計画で、平成二十二年の農業構造の展望という、あるべき望ましい農業構造というものを目指して数字的にも目標数値を挙げながら掲げていますけれども、実際にことしの白書でも、現状のままでは望ましい農業構造経営の実現は極めて厳しい状況となっているという指摘を農水省みずからがしているところでもあります。
 実際、先ほどの経営所得安定の方にも関係するんですが、今農家の方がなぜ後継者が不足をし、なぜ農地が遊休化をし、耕作放棄地がふえて農業の基盤ががたがたになっているかというのは、まさに安定した所得が確保できない。ですから、私も農家の次男坊ですけれども、おやじやおふくろはみずからの息子に、私の兄貴も含めて自分たちの息子に、農家の跡取りにならなくてもいい、そう言ったかどうか僕は覚えていませんが、だと思うんです。変な話、所得というものが他産業並みの収入みたいに、農業基本法の時代にさかのぼっても、それが仮に本当に達成できていれば、今、日本農業というものはもっと違ったスタイルになっていたはずなんです。
 ですから、いかにリスク分散というか、災害補償法をメニューを広げて対応しても、実際の所得、要するに個人の経営が、家計が回らなければ、幾ら法律改正や制度改正をしてもだめだ、これはお米のときにもお話をさせてもらいましたが。
 実際、認定農業者の育成ということをこの基盤法の中でもおっしゃられておりますけれども、昨年の十二月末で十六万七千六百六十二農家が認定をされていますけれども、その農家も、要するに経営目標というものを出しながら認定してもらうわけですけれども、半分近くがその目標を達成できないんだというふうにおっしゃっている方もいるわけですね。
 ですから私は、具体的なものをもう少し年次的に確認しながら、ちょっと飛びますけれども、遊休農地、要するに耕作放棄地も、当時、二年半前に農地法の改正をしたときには二十万ヘクタールだと言っていました。それが、センサスの数字だからそうなるのかもしれませんが、今は三十四万ヘクタールを超える耕作放棄地。当時の、農地法の改正のときの一つの目標というか大きな課題は、耕作放棄地をなくしていこう、有効利用していこうというのがもともとの目標だったわけですね。
 それと、先ほどの基本計画、望ましい農業構造のあり方の中でも、自給率四七のときの農地の利用率というのは一〇四でしたか、一〇四%という利用率を設定してあります。今その一〇ポイント落ちて、現実では耕地利用率というのは九四%ちょっとぐらいだという数字を農水省も公表されております。二十二年といったら、あと七年ですね。
 ですから、年次的にもう少しきちっと数字を追いながら、問題点がどこにあるかということを明確にしながらやらないとだめだと思うんですが、今回の強化促進法の改正というものは、その望ましい農業構造の確立というものにどのように資していくのか、簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。
川村政府参考人 今回の農業経営基盤強化促進法の改正が、望ましい農業構造の確立にどう資するのかというお尋ねでございます。
 平成二十二年におきます構造展望というのは、今委員が御指摘のとおりでございます。
 今回の改正で、三点ありますが、一つは、一定の集落営農組織を担い手として位置づけ得るようにするということがまずはございます。これによって地域の実態に即した多様な担い手の確保につながるというのが一つでございます。
 それから、二点目としまして、遊休農地を解消するとともに、認定農業者による利用を促す措置を講ずるということが二点目の柱でございまして、これが農地の利用集積の加速化につながるということを期待しております。
 また、三点目の、農業生産法人の多様な経営展開が可能となるように特例措置を設けるということにしておりまして、これによりまして法人経営の選択の拡大につながるということで、従来からもいろいろ担い手育成対策あるいは流動化対策をやっておりますけれども、こうした今回の措置と相まって、加速化に資するというふうに考えておるところでございます。
後藤(斎)委員 局長、大臣も、最後なんでちょっとまとめて確認しますけれども、大臣、実際、この二年半でも、数字的には五年前かもしれませんが、耕作放棄地は十四万ヘクタール以上ふえているわけです。ことしの白書の中の分析でも、耕作放棄地が何で増加をするかといったときには、高齢化や労働不足、地域に農地の引き受け手がないという労働力、労働条件に関係する答えが非常に高いわけです。
 一方で、農地法の改正のときにも、今、財政諮問会議の中でも大臣はいろいろなやりとりを委員の方とされていますが、株式会社を農地の耕作者として入れるかどうか、ホビーファームの市民農園的なものを入れるかどうかという議論、要するに農地の取得条項というか面積条件をなくすとかそういうものを議論する前に、この現実というものをどう解決するかという処方せんが、今回の基盤法でも私はすごく弱いと思うんです。
 ですから、平成二十二年には耕地利用率が一〇五%、農地面積四百七十万ヘクタールで四五まで自給率を上げていくよといっても、実際、農地面積も、農地を四百二十万ヘクタールしか使っていない。耕地利用率も、目標のものよりもはるかに低くて、十ポイントぐらい低い。これではやはり、幾ら農業委員会の改革をこれから大臣がおやりになろうとしても、実際、優良農地を集積したり、農地の借り手と貸し主のお見合いをさせたり、そういうものが今農業委員会の、まじめにやっている方もいらっしゃるでしょうけれども、農地を守っているだけですね。農地を本当にきちっと使っていこうという農業委員会の本来の目的というものも達成されていない。
 株式会社にどうかと、構造改革特区の中では一部農水省も英断を持ってやられたのか、一つ芽出しをしたのかちょっとわかりませんが、それをお認めになった。多角的に何が主眼かということで農地法やこの基盤強化法や災害補償法をやはり位置づけて、それに向かって後押しをするという法体系にしていかない限り、いや、基本法に基づいてやっているんだとおっしゃるかもしれませんが、実際そうなっていない。あと七年後で耕地利用率を一〇ポイント上げる、耕地の利用面積を四百七十万ヘクタール丸々使っていくなんてことはできないわけですよ、実際。ではどうやってやるかということを今から年次的にメニューをきちっとつくって、もし達成できなかったら何が問題なのか検証してまた翌年に生かしていくということを、今までやはりやってこなかったと思うんです。
 今回、農地法ではありませんけれども、これから農地法も来年に向けて改正をするようなお話もあるようですけれども、それができていなかった分、ここまで自給率の部分も落ち込んだ、担い手もなかなか育成ができない。いや、新規少し、百人か二百人出てきたよといっても、それはほとんど、きのう定年退職をしてやった方も多い。
 そういうものも含めて、大臣、やはりもう考える時期に来ているんだということを、私は今回のこの災害補償法の改正や基盤強化法のものをもう一度読ませていただいて思った次第なんですが、最後に大臣、まとめて今の見解をお伺いしたいと思います。
亀井国務大臣 平成二十二年の農業構造の展望、これに向かっていろいろの施策を進めておるわけであります。また、そのことが、今回の農業経営基盤強化促進法、これも、その中での役割をぜひ果たさせてまいりたい、こう思っております。
 いろいろの政策、今農水省におきましても政策評価、このことにつきまして大変重視をしてやっておるわけであります。今委員御指摘のような問題、大変厳しいいろいろの課題に直面するわけでありますが、そのような政策、そしてそれを現実をとらえて評価し、そしてこの二十二年の目的に、厳しいいろいろのことはありますけれども、改めるものは改め、そしてその目的の達成のために頑張ってまいりたい、こう思っております。
    〔鮫島委員長代理退席、委員長着席〕
後藤(斎)委員 ぜひ大臣のリーダーシップをもって改革を推進していただきたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。
小平委員長 次に、中林よし子君。
中林委員 今、総合規制改革会議で、一般株式会社の農地取得を特区で認めることだとか、それから、特区で認めた貸し付け方式による一般株式会社の農業参入を全国展開することへの強い圧力がかけられているというふうに思います。
 それに対する農水省の見解、対応、そしてその見解の理論的立脚点、それは一体どこに置いておられるのか、大臣、明らかにしていただきたいと思います。
亀井国務大臣 株式会社の一般の農地取得につきまして、いろいろ総合規制改革会議から盛んにお話をちょうだいしております。私は、終始一貫、やはり農業者が耕作をする、そういう方が土地を持って農業経営をする、こういうことが基本的なことではなかろうか、こう考えております。
 特に、一般会社に農地の取得を容認した場合、株主の意向によりまして、経営方針の変更や、経営中止という、農地の遊休化や、不透明な利用が排除できない弊害があるのではなかろうか。
 今、こういう問題に少し関心のある会社がいろいろのところの窓口に来てお話をされる中で、産廃の業者であるとか建設会社であるとか、そういう方々も目につくわけでありまして、そういう方々が本当に農業をおやりになる、農業生産をおやりになる、こういうことであれば、特区等を今いろいろ認めて、そしてできるような体制をしておるわけでありまして、リース方式、こういうことでできるわけでありますので、やはりそういうことを第一義的に考え、また今、全国的にリース方式でやれば、こういうようなことも盛んにおっしゃいますけれども、まず私は、特区という形でこのような制度を進めてきたわけでありますので。
 やはり、農業には、苗床をつくり、苗を植え、そして稲の収穫、あるいは野菜であるとか、果物だとか、果樹であるとか、これはやはり相当の年月がかかるわけでありまして、そういう面での農業の実態、農業生産が本当に行われておるかどうか、真に農業を行う、こういうことが行われておるかどうか、こういうことが検討しなければならないことであるわけでありまして、私は、そういう視点に立ちまして規制改革会議の方々にも説明をし、そして考え方を申し述べておるところであります。
中林委員 経営の法人化で拓く構造改革に係る有識者懇談会、ここでもかなり農地の問題が議論になっております。
 耕作者主義というのは現行農地法のやはり根幹をなすものだという、大臣の一番最初、農業者が耕作をするということの基本はそれから来ているんだろうというふうには思ったんですが、この中で田代洋一さんは、耕作者主義の目的は、「自ら耕作しない者の農地所有を排し、耕作者の地位の安定、農業生産力の増進、食料の安定確保を図ることにあり、その意義は、食料自給率四〇%の水準にあって、国内の農業生産の増大をはかることが農政の最大目的の一つとされる今日、いささかも変わらない。」このように主張しておられ、また原田さんは、「耕作者主義は、今日でも基本的に正しく、今後とも維持すべきものと考える。とくにその前段を、農地を適正かつ効率的に耕作する者が農地を経営する権利をもつべきであるとする考え方を示すものとして受けとめれば、これを否定する見解はまず存在しない」ということで、この懇談会で出された耕作者主義の今日的意義に対する肯定的見解、私も全くそのとおりだというふうに思うんです。
 当然、農水省、今大臣がお答えになった、一般株式会社の農業参入に反対する以上、こうした見地、ここに立脚されていると確認させていただいてよろしいでしょうか。
川村政府参考人 農地法の問題でございますが、農地法におきましては、農地を適正かつ効率的に耕作する者に農地の権利取得を認めるという、いわゆる耕作者主義の考え方のもとに法制ができておりまして、法人による農地取得につきましては、農業関係者以外の者に経営支配がされるおそれが全くない農業生産法人に限って認められております。
 もう委員も御指摘ございましたが、国土が狭小な我が国で国民に対する食料の安定供給を図るという意味では、今後とも、この限りある農地の効率的利用の確保が必要でありまして、この農地法の基本的枠組みを引き続き維持する必要があるというふうに考えております。
中林委員 局長の答弁はいいんですけれども、大臣に最初、どういう立脚点でというふうにお伺いしましたので、この有識者懇談会でこういう見解を述べておられること、それと同じ立脚点というふうに、大臣の答弁それでよろしいんでしょうかと確認させてください、大臣。
亀井国務大臣 先ほども申し上げましたが、農業、耕作者がやはり農地を持って農業生産をする、こういうことが基本的なこと、このように思っております。そのような考え方、このようになるのではなかろうか。
 しかし、現実に今いろいろ変わってきて、いろいろの面で経営を多角化する、あるいは生産性を上げる、こういう面でいろいろの考え方を導入する、農業生産法人がやはりそういう視点も加味して、あくまでも農業生産法人としていろいろの幅広い農業生産のために活動していただくことが必要な時代にもうなってきているのではなかろうか、こう思います。
中林委員 要するに、今綱引きになっているので、それで大臣に、大臣は確かに石原大臣とは真っ向から対立して、しっかり守る、こういうふうに言っていらっしゃると報道では承っているわけですよ。それを、いや、農業生産法人が云々かんぬん、こういうふうにつけられると不安になってくるんです。
 だから、ここの有識者懇談会の中で耕作者主義、これを農地法の一番基本だ、しっかり守るんだということを確認させていただきたいと言っているんです。いかがですか。
亀井国務大臣 耕作者主義、やはり時代が変わってきておりますから、今回いろいろ、基盤法なり、あるいは米政策の問題等々、産地づくりであるとか、地域で、集落でいろいろなことを進めていく。農業者がそういうことをするわけでありますので、全体として、私は、農業生産法人、こういう形で農業生産が行われる、これはまさに耕作者であるわけでありますから、個人ということでなしに農業生産法人、農業者が集団でいろいろなことを進めていく、これは必要なことではなかろうか。
 私は、本当に農業をやる、こういう視点に立ちまして、石原大臣とも再三申し上げておるわけでもあります。
中林委員 農業生産法人の問題については、これまでもさまざまな要件緩和がされてまいりました。
 私は、そういう耕作者主義というのが現行農地法制のいわば根幹をなすということを立脚点に置くならば、今回の改正案、これは認定農業者である農業生産法人への出資制限をさらに緩和するものであって、法人に種苗を提供している企業だとか、あるいは委託栽培等で生産物の販売を行っている企業、これらが五〇%未満までは出資可能となって、それらの企業による農業生産法人への経営支配の可能性が一層強くなって、利潤追求第一の企業の支配、それがやはり農業に持ち込まれる。そうすれば、安定的、継続的な農業経営が脅かされることになってくるんじゃないか、かえって。
 それは、守るべき耕作者主義を認定農業者の世界の方から崩していくことになりはしませんか。その点、大臣、いかがですか。
亀井国務大臣 私は、いろいろこれから多様な展開をする中で、いろいろの問題が出、そして担い手の育成の面でも、いろいろ農業者の内部からも多様な経営の展開、こういうことも出て、意見もあるわけでありますし、意欲的な農家の経営改善に取り組もうとする認定農業者あるいは農業生産法人に限って議決権の制限の緩和措置を一定期間講ずるわけでありますけれども、これらは耕作者主義を崩すものではない、このように思っております。
中林委員 耕作者主義を壊すものではないと大臣は明確に答弁されたわけですけれども、しかし、当然、五〇%未満まではそういう関連する企業からのいわば出資が可能になってくるわけですよ。そうなると、それらが支配しない、そういう歯どめは一体どこにあるというんですか。
川村政府参考人 農業生産法人でございますが、これは、先生も御案内のとおり、農地法の世界の中で認められている仕組みでございます。
 この農業生産法人の議決権の制限、これは、今大臣からもお答えいたしましたとおり、農業生産法人、現にやられている方から、なかなか多様な農業経営の展開ができないということで要望が出ているものでございます。
 先生が御指摘ございましたように、農外の支配が行われるのではないかということは、非常にこれは重要なポイントでございますので、我々としても、これを厳格にチェックする仕組み、また、そういうものが起こらないような仕組みに配慮して、この今回の議決権の制限の緩和ということをやっているわけでございます。
 一つは、認定農業者たる農業生産法人ということでございまして、認定農業者ということになりますと、その計画を出さなくてはならない。その計画のチェックについては厳格に行うということが一つございますし、また、今回、取り消しの規定も明記をいたしまして、たとえ計画期間中であっても、その計画に即さないことがあれば取り消しを行い得るということになっております。
 また、役員の構成につきましては現行どおりということで、農業者なり、あるいは農業者の代表の方が、農業にも従事をしますし、それが過半を占めているということを担保しておりますので、そういう意味での懸念を払拭する措置は十分講じているというふうに考えております。
中林委員 そういう措置を講じなければならないほど農外資本が支配をしかねないということを、裏返せば物語っていることですよ。しかし、そういうチェックは法的措置ではありません。しかも、今、経営改善計画とおっしゃいましたけれども、これ自体、現行でもちゃんとありますよね。ところが、今まで、それが達成しなかったからといって取り消しされた事例は一例もありません。
 しかも、先ほどの委員もおっしゃっておりましたけれども、この計画どおり遂行できなかった最大の問題は、農産物の下落、輸入農産物の増加等農業経営をめぐる情勢、それが厳しいから計画どおりいっていないんだ。つまり、法人の要件を緩和すれば農業経営がちゃんとなって、経営が計画どおり達成するなどという分析はどこにも出てきていないんですよ。
 あなた方は、前回の農地法の改正で、所有と経営の分離となる、もしそういうことをすれば耕作者主義から外れる、耕作者主義を維持する限り、今回が最大限のものである、こういうふうに言っているんですよ。仮にそこへ至ることがあるとしても、改正の効果についての検証と国民の理解の確保が必要である。
 つまり、二〇〇〇年の農地法の改正からまだわずかしかたっていない、検証もしていない、にもかかわらず、こういう、いわばなし崩し的に認定農業者のところから要件を緩和して農外資本が入れるような状況をやっていくということは、これは、大臣も局長も耕作者主義が基本に座ると言いながら、しかし、これを突破口にしながら、株式会社の参入の道をこの分野から開いていくものだということだと思います。
 答弁を求めても同じような答弁をされますので次へ行きますけれども、そういう問題を今度の改正案は含んでいる、非常に危険だということを指摘しておきたいと思います。
 次に、特定農業団体の問題についてお伺いしますけれども、集落営農は第二種兼業農家が最も多くて、日本農業のあり方の中で地域農業を守るために編み出された知恵とも言えるこの集落営農です。その集落営農に対して、構造政策をおくらせるものであるということで構造政策推進派からの批判があって、それに引きずられるように集落営農の法人化を強引に進めようとしているのが今回の改正だというふうに考えざるを得ません。
 全国の集落営農数、約一万ですけれども、そのうち集落内の営農を一括管理運営しているのは、現在、農水省の資料を見させていただくと、約一二%です。農水省の調査でも、法人化を希望しているのは、集落営農の抽出調査で二三・六%にすぎません。農水省は、このような集落営農の法人希望が低い理由、それはどこにあるというふうに考えていらっしゃいますか。
川村政府参考人 今委員が御指摘をいただいたアンケートは、平成十四年八月に実施をした農業構造動態調査に基づくものでございまして、この調査結果によりますと、将来の法人化の意向のないものが七六%ございますが、その主な理由といたしましては、一つは、当初から任意組合のままで運営を決定、それから法人化後の経理、労務管理が負担になる、あるいは法人経営のリーダーの確保が困難といったようなことが上位三位として挙がっております。
 この調査は、昨年の八月ということでありますように、昨年十二月の米政策改革大綱の中で一定の要件を満たす集落営農の組織化と法人化の構想を打ち出す前のものでございますので、この農林水産省の政策方向を踏まえた上での結果とはなっていないという面があることに留意をしなければならないと思っております。
中林委員 そういうような、今度は米政策改革大綱でそれを進めるんだからということで、その具体化である主要食糧法の改正、ついこの間議論いたしましたよ。それでも政府は、確固とした、集落営農がちゃんと成り立っていくという見通しは全く示せない。もう皆さんの話し合いで決めていただく以外にありませんというような、こういう言い方ですよ。それでどうしてこれが進むのかというふうに思いますよ。
 今局長が答弁されたように、法人化が困難な理由、それは、経理や労務管理が負担になる、それからリーダー確保が困難、こういうふうに言っているわけでしょう。だから、これが現実なんですよ。現実を見据えないと、やはり計画は進まないというふうに思います。強引に法人化を進めれば、逆に地域営農を壊すことになりかねない。
 私は、農水省が担い手経営対策の対象として今言われたような集落型経営体を設けて、集落営農に線引きすることにしているわけですけれども、このことは、主要食糧法の改正案の審議のときにもこの委員会で私は言いましたけれども、現に集落営農に混乱をもたらすことになってしまう、現実に即さないやり方だというふうに思うんですけれども、ちゃんとやれますということが言えますか。
川村政府参考人 先ほどお答えいたしましたとおり、昨年、米政策大綱を取りまとめて公表したということを申し上げました。その中で一定の集落営農を担い手として位置づけたわけでございまして、その後、例えば都道府県レベルにおきましては、岩手県では、岩手県の水田農業改革大綱の中で、集落の立地特性あるいは経営条件に応じた担い手の姿としての集落型経営体中心タイプの提示でありますとか、富山県におきましても県単独の予算措置をする等、一定の要件を満たす集落営農の組織化と法人化を推進するための具体的な動きが次から次と出てきております。
 また、我々がこの特定農業団体の究極の目的としております特定農業法人、これも近年特に五割増しずつ伸びてきております。これは、県等が、特にこういうものを将来的な位置づけとして位置づけられた県においてその伸びが著しいということでございまして、やはりそういう位置づけなり方向を明確にすることによってそういうことが急速に進むということを示しているんだと思っております。
中林委員 各県の取り組みは、せざるを得ないからやっているのであって、今岩手の例を言われましたけれども、岩手の集落営農を進める現場の声を聞きましたよ。既に話し合いが始まっている。そうすると、あなたはリーダー、あなたはもういいです、そういうような選別が始まって、集落では大問題になっている、こういう事例が既に私どものところに報告として上がっているわけですよ。
 だから、現実を見ないで、何らか、この絵にかいたようなことをやればやっていけるんだということは、まさに新たな集落営農形態を崩壊させる。だって、さっきも言ったように、集落型営農形態をしなければならないのは兼業農家なんですよ。だから、水路の問題だとか草取りの問題だとか、あるいは共同機械化の問題だとか、そういうところで共同しなければやっていけない。多様な人たちがいてこそ、そうやって集落営農というのは今成り立っていっているんですよ。それを、一元経営管理をしなきゃいけないとか、五年以内に法人化しなきゃいけないとか、そんな条件をつけて、やれるはずがない。
 しかも、あなた方の、調査室が調査した中の資料を見ても、法人化への支援策というのは極めて少ないですよ。どういう支援が必要ですかという、その答えに対して、法人化に対する支援策は九%しかないという結果が物語っているじゃないですか。
 だから、そういう選別が実際集落で始まれば、新たな集落の、いわば集団の崩壊につながって、せっかく助け合いながら、今低い日本の自給率でも、そういう助け合いの歴史ある集落営農の中で維持されているものまで、あなた方の政策によって壊れかねない、そのように思います。
 そこで、私は中山間地直接支払い交付金について伺っていきたいというふうに思います。
 ことしの白書で、「同制度が耕作放棄の抑制に一定の役割を発揮していることがうかがえる。しかしながら、協定締結率を自治体別にみると、十三道県で八割以上となっている一方、十二都府県では六割未満となっているなど、都道府県あるいは市町村ごとに格差がみられるほか、高齢化率・耕作放棄地率の高い地域での取組みが遅れている」こういうふうに白書でなっているわけですけれども、なぜこういうふうになっているとお考えでしょうか。
太田政府参考人 中山間地域等直接支払い制度の平成十四年度の実施状況の見込みにおきましては、委員御指摘のとおり、市町村が策定した基本方針に定められた対象農用地面積七十八万五千ヘクタールに対しまして、八三%に当たる六十五万五千ヘクタールにおいて協定が締結されておりますが、都道府県別あるいは市町村別に見ますと、かなりの差が見られている状況にございます。
 その理由でございますけれども、まずは、地域の立地条件によりまして過疎化、高齢化などの社会条件が異なっておること、畑作地帯におきましては、水田におきますような水の管理など共同で取り組む必要のある作業を必要としない場合もあること、また、多様な品目が生産され、品目ごとに収穫の時期や防除の時期が異なるなど共同作業の必要性に乏しい面があるなどのことから、農業者間の話し合いが進みにくい面があるということが考えられます。このほか、市町村が策定いたします基本方針の策定そのものがおくれたことによりまして、次の段階である集落における協定の締結がおくれているところもあるというふうに考えております。
 今後、取り組みのおくれております地域におきましては、地域外からのオペレーターの参入、他の集落との連携、あるいは集落内でのさらなる話し合いの促進などに関する先進的な事例の提示等を行いながら、一層の協定締結がなされるように普及、定着に努めてまいる考えでおります。
中林委員 さまざまな原因を挙げられましたけれども、やはり立地条件だとか高齢化率、そういうところで要件に満たなかったりして、それで市町村も取り組めないというような現実があると思うんですね。ところが、今言われたようなところこそ、本来ならば直接支払い制度が必要なところだろうというふうに思います。
 ここに、農林中金総研が分析しております「中山間地域等直接支払制度の実施状況と今後の課題」で、「直接支払いは耕作放棄地の拡大を防げるか?」という題で書いているわけですが、「条件の非常に悪い地域においては現行の農産物価格水準と直接支払額では農業は再生産が可能な所得水準に達しておらず、本制度を受け入れるよりも、受け入れないで耕作を放棄したほうが農家にとって経済的に合理的であるというものである。」そして、その対策として、この農林中金総研がその対策まで書いているわけですが、「本制度の改善策は、より条件の悪い地域に対しては、直接支払額の単価を増加することで農業所得を引き上げ農業の再生産を可能にする、というものである。」こういう指摘があるわけですよ。農水省は、この点をどういうふうに受けとめておられるのか。
 今回の法案で遊休農地の解消、耕作放棄地の解消をうたっているのですけれども、過料を科してまで進めようとしているわけですよね。私は、根本問題は、やはり再生産が可能になる価格支持だとか所得対策、これが根幹に座らなきゃいけない。進んでいないところの現状は、そこだけもっと加算した方がいいよと、こういうふうに言っているんですけれども、そういう対策を今後とるお考えはあるかどうか、お答えいただきたいと思います。
太田政府参考人 先ほども答弁申し上げましたけれども、確かにばらつきがあり、そういうおくれているところでこそさまざまな活動をより強化していくということは、先生御指摘のとおりでございます。
 その結果として、年々協定の締結の割合、締結の数自体もふえてきておる状況にございまして、その中におきましては、まさに高齢者だからといって締結ができないということではなくて、むしろ、例えば高齢者の農業集団を結成して、高付加価値型農業の確立を目指すような取り組みだとか、あるいは、既に集落全戸で集落営農組織をつくったけれども、それを法人化していこうというような動き等々も見られるわけでございまして、額を上げることだけがその解決策ではないというふうに考えております。
 例えば、その基盤につきましても、そこにアクセスをできないというような状況では営農継続そのものが非常に困難になるわけでして、さまざまな対策を総合的に行っていくことがその解決になるものというふうに考えております。
中林委員 要するに、この農林中金総研の分析、これは当たっていないというふうに言われるのですか。
太田政府参考人 そのような御指摘があるところは、当然そういう調査をやられた結果でございますので、そのことの是非を今ここで議論というよりも、そこのところはむしろ、十六年度にこの制度全体の見直しをするということになっておりますので、今現在も我々は状況の把握をできるだけし、また優良な事例を他の地域に普及していくというような動きをしておりますので、そういった状況の中でさらなる分析等は進めていかなければいけないというふうに考えております。
中林委員 大臣、私も、この中山間地に対する直接支払い制度というのが農家にとって物すごく喜ばれている、しかし、それを受けるよりも放棄していた方が、経営的には放棄した方がいいんだ、こういう地域もあるんだという指摘なんですよ。そういうところに対して、やはり耕作放棄地をなくすというならば、それに対する対応、この中山間地に対する直接支払い制度、交付金、これの充実をぜひ強めていただくよう要望いたしまして、質問を終わります。
小平委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 農業災害補償法についてお聞きをいたします。
 その中の果樹共済でありますが、果樹共済への加入は他の共済事業と比較をいたしまして低い、その原因に共済掛金が割高であるという点もあると思います。二〇〇一年度における十アール当たりの農家負担額を比較いたしますと、水稲共済は千四百六十六円、麦共済は二千四百十五円、畑作共済は二千百八十七円、果樹共済は七千六百五十四円ということで相当高いんです。果樹共済の健全な運営はそういうことで極めて厳しくなっている。
 今回の改正で新たに樹園地単位の引き受け方式が導入されるわけですけれども、共済掛金の割高感だとか補償割合に対して、加入率を高める観点からどういう対策を講じていくのかということをまずお聞きをしたい。
 それから、時間の関係でまとめて聞きますけれども、今回の改正で樹園地方式の対象となる果樹については政令で定めるということになっているわけですが、具体的には落葉果樹を想定しているというふうに聞いています。その理由はどういうわけなのか、どういう果樹がその対象になるのか、質問をしたいと思います。
川村政府参考人 果樹共済についてのお尋ねでございました。
 確かに、果樹共済総体では引受率が低い状況にございます。これまでも特定危険方式の導入でありますとかいろいろ制度改善に努めまして、加入促進に努めてきたところではございますが、今申し上げたような総体としては低い引き受けになっております。
 その原因でございますが、今委員も御指摘いただきましたように、概して、やはり掛金が高くなっているということで、みずから防災施設等自衛措置を講ずることによって対応しているということで、共済ニーズが必ずしも高くないということ。それから、こういうこともありまして、一つは、例えば果樹の場合はひょう害とか局地的に通り道とかということで災害が非常に偏ります。同じ経営者の中でも畑ごとに変わるということでございます。今農家が持っておられる全体を対象としておりますために、そういう被害が一部的には非常に甚大に起こっても全体で薄まってしまって共済金が支払われないということで、高い掛金を払っているのに支払いを受けられないという、農家の感覚に合わない点もあったということがあろうかと思います。
 こういうことで、現在お願いをしています改正案というのは、農家が複数の方式の中から選択できることにしたいということ、それから、これまで非常に要望の強かった樹園地単位の方式をメニューの一つとして新たに導入するということにしておりますので、今後、農家が経営実態に即しまして掛金を選べる、あるいはそういうきめ細かな対応ということで掛金自体も下がってくるということはあり得ると思いますし、補償の程度も選択できるということで伸びが期待できるのではないかということを期待しております。
 それから二点目の、どういったものを政令で指定するのかというお尋ねでございますが、今考えておりますのは、リンゴ、ブドウ、ナシといった落葉果樹を中心に指定することを考えております。
 この理由でございますが、樹園地単位方式が、同一経営の中でも局地的な被害の出やすい地域、果樹において要望が強い方式ということでございますので、先ほど例示を申し上げました、ひょう害の多い落葉果樹に要望が多いために、これをまず指定したいということでございます。
松本(善)委員 これに関連をして、リンゴと果樹経営の安定対策について、農水大臣に伺いたいと思います。
 リンゴは二年連続の価格暴落で、リンゴ農家の経営は今非常に困難になっております。青森県の知事も要望しておりますけれども、青森県の二〇〇二年のリンゴの累計平均単価はキロ百二十四円で、一九八三年の百十四円に次ぐ安値です。
 要因について県のりんご果樹課に聞きますと、輸入果汁の影響で加工向け需要が減った下位等級品の出荷が例年より多かったため、こういうふうに言っている。生果リンゴに換算をいたしますと、青森県の生産量を超える輸入リンゴ果汁が恒常的に輸入されている。今、加工用のリンゴは捨て値同然ということで、では、すなわちその捨て値であるよりは生果で出そう、それで低下級品が生果市場に流れて生果用のリンゴの価格を押し下げている、こういう状況だ。
 やはり、リンゴ果汁の輸入が生果用のリンゴの価格暴落の原因になっている。これはリンゴのことに詳しくなくても、話を聞けばわかる話なんですね。果汁用に出すよりは安くても生果で出そう。そうすると、全体の生果の値段が下がる、こういうふうに言われているんですが、農水大臣、どう考えられますか。
亀井国務大臣 我が国のリンゴの農家は、商品性の高い生食用を目的に生産をしておると思います。加工用は、規格外の小玉であるとかあるいは傷果など生食用に向かないものを仕向けている、こういうことでなかろうかと思います。
 近年、生食用のリンゴの価格は、出荷量の増減に加えて、果肉の軟質化であるとかあるいは実割れ果の発生による品質の低下、あるいは景気の悪化等の関係で、果汁加工品の輸入量により左右されているわけではないんではなかろうか、このように考えております。
 このようなリンゴの農家の経営安定を図るためには、需給調整あるいは品質向上が基本、このように考えております。
 十三年度から、生産者団体等による計画生産また出荷への取り組みを強化するとともに、適期収穫や選別の徹底、あるいは貯蔵管理の適正化等によりまして、品質の向上対策をいろいろ進めておるわけでありまして、このような取り組みの中で価格が大きく変動した場合、計画的な生産であるとかあるいはまた出荷を達成している者に対する補てん金を交付するなど経営安定対策を今講じておるわけでありまして、このようなことを進めてそれらの対策をさらに促進してまいりたい、こう思っております。
松本(善)委員 輸入品の影響じゃないんだ、こう言われますが、これは現場の生産者には全く説得力がありません。
 青森県のりんご協会の木村徳英さんという会長さんのホームページを見ますと、「価格維持のためだと言って、生産量を下げる操作を繰り返していると、」今、生産調整ということを大臣言われましたけれども、それだと「我が国の果樹産業は滅亡します。この状態を踏まえて、いかに生産者を支えるかが、行政の役目でないでしょうか。 このことに早く気がついて欲しいものです。それとも、意図的に我が国の果樹産業を滅亡の道へ誘う気なのでしょうか。」本当に切実な言葉が並んでいるんですよ。
 それから、青森県のりんご協会発行の「りんごニュース」というのがありまして、そこの主張を見ますと、「海外からの輸入果汁に圧迫されている激安の加工りんごと、生果の安値というダブルパンチの状態に、さらに生産量まで減らせという」大臣が言われた需給調整というのはそういうことでしょう、「生産量まで減らせという考えは、到底納得できるものではない。まずは国内の生産量よりも、海外から大量に輸入されている果汁やりんごを含めた他の果物の量を見直すことが重要であると思う。」と。
 数字でちょっと大臣に示そうと思うんですが、リンゴ果汁は一九九〇年の四月から自由化をされて、今では加工用リンゴに占める国産の割合は二割です。価格も半値以下になっています。輸入リンゴ果汁が野放しの状態で、生果用だけを対象にした果樹経営安定対策ではだめだということはこの経過からして明白なんですよ。
 今、青森の果汁用リンゴの価格は、十年前のキロ四十二円から、二〇〇一年にはキロ十七円になっている。二〇〇二年、昨年はキロ五円なんですよ。キロ五円というと一玉一円にも満たない価格で、それでも買い手がつかないんですよ。そうなると、一円以下だということになると、それはもうどんなに安くても生果で出そうということになるのは当たり前じゃないですか。
 私は農水大臣に聞きたいけれども、一玉一円以下なんだと知っていましたか、聞きたいです。
亀井国務大臣 存じ上げなかった次第であります。
松本(善)委員 そうでしょう。だから私は、農水大臣が現場へ行って生産者の声を聞かないと、農水省の役人が書いたものを読んでいるだけでは農政にならぬですよ。
 今は、農水省の言っていることは農民には信用されなくなってきているんですよ。BSEの問題からそうです。米の問題も、だれも信用していないですよ。リンゴだってそうでしょう。一玉一円以下になっているということを農水大臣も知らない、それではリンゴ政策はできないですよ。
 それで、安い輸入リンゴ果汁が入ってくるから、国産リンゴが加工用に回らなくなって価格が暴落している、これは今言ったとおりですけれども、数字でいいますと、二〇〇一年産は九十一万トン、二〇〇二年産は八十九万トン、そして二〇〇三年産は八十七万トンとどんどん下がっているんですよ。自給率も五八%になっている。農水省は、平成二十二年生産努力目標を九十四万トンという。自給率六五%。どうやって上げるんですか。農水大臣がリンゴの生産の状況も知らないで、どうやって上げられるんだ。
 私は、これは、この間米の問題で農水大臣にお話ししましたけれども、やはり自給率の目標を農水省が言っているように六五%にするというのならば、そのためには、価格保障をする、輸入は規制をするというふうにしなかったらこれはできないじゃないですか。どういう具体策を持っているのかということをちょっと聞きたいと思いますよ。どうしたら目標をして九十四万トンにできるんですか。
亀井国務大臣 リンゴは私も大変好きでありますし、ビタミンやミネラル、食物繊維が大変豊富なわけでありまして、また、今日さまざまな生活習慣病、こういう面での予防効果、こういうものも多分にあるわけでありまして、消費者の志向がそういうところにあるわけでありまして、消費者の関心の高い果物ではなかろうか、私はこう思います。
 そういう面で、六五%の設定、こういうことで、今、消費の拡大あるいはまた生産の振興、こういうことに取り組んでおるわけでありまして、ぜひ、いろいろ消費者ニーズに合った品種の導入であるとか栽培の省力化、あるいは低コスト化のためのいろいろの栽培、あるいは園地の基盤整備、あるいは集出荷につきましてのいろいろの施設の整備をする、こういうような取り組みをする中で、消費の拡大とあわせて、生産が安定した中で、いろいろ今お示しのように生産量も減っておる、また厳しい価格、こういう御指摘でありますけれども、そのような施策を進める中でこの自給率の問題に向かって進んでいかなければならない、こう思っております。
松本(善)委員 農水大臣の言っているのを聞いていると、農民が頑張らなけりゃだめなんだと、結論はそういうことなんです。そんなことでは絶対だめなので、さっき私が言ったようにすべきだと思いますが、せめて青森県が要望しているぐらいのことはやったらどうだ。
 一つは、青森県産の果汁の一リットル当たりの価格は、二〇〇〇年産で今三百六十円から四百二十円、輸入果汁のほぼ二倍ないし二・五倍なんですよ。これはもう競争にならないです。青森県も国に要望しているけれども、これに対してセーフガードをやってくれぬかと。私は全面的に自給率を上げるために輸入規制すべきだと思いますけれども、青森県は、せめてセーフガードをやってくれと言っているんですよ。これが一つだ。
 それから、少なくとも安全面、表示面で国産リンゴが有利に販売できるように、リンゴ果汁加工品について、原料原産地表示の対象とするようにJAS法を見直してくれと言っているんです。
 青森県の県知事は自民党も支持した、木村さんの時代なんだけれども、今度は知事選挙になっていますけれども、自民党も含めてみんな超党派のリンゴ生産者が要望しているんですよ。最低この二つをぜひやるように、これについてどう考えているか聞きたいと思います。
亀井国務大臣 輸入リンゴ果汁加工品の輸入規制のセーフガードの発動が考えられるわけでありますが、セーフガードの発動の可否は、輸入の増加による国内産業へのいろいろ重大な損害が要件ともなるわけでありまして、これらは、いろいろ慎重に考えていかなければならないのではなかろうか。
 さらに後段の、原産地表示の問題等々、いろいろこの義務づけ等の要望があることは承知をいたしております。これらの問題は、食品の表示に関する共同会議等々の議論も踏まえまして、リンゴの果汁についての議論を踏まえまして検討してまいりたい、こう思っております。
松本(善)委員 やはりきょうの答弁を聞いて、リンゴをつくっている方は全国、青森だけではなくてたくさんあると思いますが、本当に、農水省に任せておいたらこれはだめだと思うと私は思いますよ。何も具体策はない。青森県の県知事が要望したことについても、もう大分前に要求をしているんだが、何も考えていない、これから検討しますと。これではリンゴ産業をつぶすということなんです。
 そんなことをやっておったんでは話にならない。まず農水大臣、青森へ行って、さっき知らないと言ったけれども、リンゴ業者が果汁用のリンゴをどうやっているのか調べてください。そこから始めなかったら、もうリンゴ政策なんて論ずる資格ないですよ。大臣、それはやってくれますか、青森へ行って調べてくる。
亀井国務大臣 いろいろなところに出向きまして、いろいろな皆さん方のお話を伺うということは大変重要なことでありますし、また私もぜひやりたい、こう思っております。
 国会が終わる、こういう中で、精力的にいろいろの関係の皆さんのお話を伺い、先ほどお話しのように、私ども農林行政、農水省挙げていろいろなことを今計画をし、そしてそれを実行に移して、関係者の期待にこたえるような成果が得られるように努力をしてまいりたいと思っております。
松本(善)委員 もっと徹底的に詰めたいんですけれども、きょうはちょっと時間もありませんので、これで終わります。
小平委員長 次回は、明十二日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時五十三分散会


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