衆議院

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第18号 平成15年6月12日(木曜日)

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平成十五年六月十二日(木曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    青山  丘君
      荒巻 隆三君    石田 真敏君
      岩倉 博文君    岩崎 忠夫君
      梶山 弘志君    金子 恭之君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      小泉 龍司君    近藤 基彦君
      七条  明君    高木  毅君
      西川 京子君    宮本 一三君
      後藤  斎君    今田 保典君
      齋藤  淳君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    堀込 征雄君
      吉田 公一君    江田 康幸君
      遠藤 和良君    一川 保夫君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
      佐藤 敬夫君    藤波 孝生君
    …………………………………
   農林水産大臣       亀井 善之君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十二日
 辞任         補欠選任
  江田 康幸君     遠藤 和良君
  藤井 裕久君     一川 保夫君
同日
 辞任         補欠選任
  遠藤 和良君     江田 康幸君
  一川 保夫君     藤井 裕久君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)(参議院送付)
 農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案及び農業災害補償法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長須賀田菊仁君、経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君及び食糧庁長官石原葵君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江田康幸君。
江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。
 本日の議案は、農業経営基盤強化促進法の一部改正案、それから農業災害補償法の一部改正案でございます。これらの法律は、ともに農業経営のあり方に密着したものであると承知をしておりますが、我が国の農業経営の中心は、これは何といっても、米、稲作でございます。また、経営の改善が最も必要とされているのも、またこれ、米、水田農業でございます。
 一方、米につきましては、この農林水産委員会におきまして、食糧法について、参考人質疑を含め、長時間にわたって議論を行ってまいりました。そして、その中で、食糧法の改正案の内容のみならず、米政策改革全般について議論をしてきたところでございます。
 そこで、きょうは、これまでの米政策改革にかかわる議論をさらに深めるとの観点から議論を続けていきたいと考えております。すなわち、目標年である平成二十二年に向けまして我が国の水田農業の改革を進めるという視点から、この農業経営基盤強化促進法と農業災害補償法の改正案について、基盤強化法を中心に質問をさせていただきたいと思います。
 まず、農業経営基盤強化促進法の一部改正案についてでございます。
 この法案の改正のポイントは三点。一つは、集落営農の担い手としての位置づけ、二点目は、遊休農地の解消、三点目は、農業生産法人の多様な経営展開、この三点であると理解しておりますが、これらの改正のポイントそれぞれについてお聞きをしていきたいと思います。
 まず、集落営農を担い手として位置づけるという論点でございます。この点は、食糧法の審議の際においても議論が行われたわけでございますが、水田農業の構造改革という観点からは極めて重要なポイントであると考えております。
 そこで、質問でございますが、望ましい農業構造の実現、米づくりの本来あるべき姿の実現という目標との関係におきまして、今回、集落営農を担い手として位置づけることの、その意義を再度確認したいと思います。よろしくお願いします。
亀井国務大臣 お答えいたします。
 今回の基盤法の改正におきましては、一定の集落営農組織を農用地利用規程に担い手として位置づけ得るようにし、こうした組織を効率的かつ安定的な農業経営に発展させよう、こういう考えのもとであるわけでありまして、平成二十二年におきます農業構造の展望、こういう中で、効率的かつ安定的農業経営を、家族経営と法人経営とを合わせまして四十万戸程度を育成する、あるいはまた、農地利用の六割程度、二百八十二万ヘクタールをこうした経営に集積する、こういうことを見込んでおるわけでもございます。
 現状では、効率的かつ安定的な農業経営を目指す認定農業者の数であるとか、あるいは担い手への農地の利用集積面積、ともに不十分な水準にとどまっておるわけでありまして、特に稲作の土地利用型農業の構造改革がおくれておる状況にあるわけであります。こうした中で水田農業の構造改革を進めることに当たっては、水田農業において、農地利用あるいは水利調整等の面で集落ぐるみの取り組みが大きな役割を果たしてきているという実態を十分踏まえていくことが重要である、このように考えております。
 今般、この基盤強化法の改正案におきまして、先ほど申し上げましたとおり、一定の集落営農組織を農用地利用規程の担い手として位置づける、そしてさらに、効率的かつ安定的な農業経営体へと発展をさせていくということを考えておるわけでありまして、米政策全般、総合的に推進していく中で、従来からの担い手育成施策を、こうした新たな取り組みも加えまして、平成二十二年を目標とした望ましい農業構造の実現に向けて水田農業の構造改革を加速化してまいりたい、このような考え方のもとに進めてまいりたい、こう思っております。
江田(康)委員 ありがとうございます。
 今回の米政策改革のスローガンは、需要に即した売れる米づくりの実現、わかりやすく言えばこういうことであろうかと思います。このためには、生産者の側におきましても、単につくればいいというような従来の考えではなくて、市場からの、消費者からのシグナルと申しますか、消費者からの意見を、また需要を敏感に感じ取って、これに応じた生産を行うという経営感覚が不可欠であると思います。
 農業者の意識改革の重要性が言われるゆえんであると思いますが、この点、集落営農を担い手として位置づけるといいましても、全国各地にいろいろな集落営農が取り組まれているわけでございまして、言葉は悪いかもしれませんが、それこそ何でもかんでも担い手として認めていくというわけにはいかないのではないだろうかと思うわけでございます。そこで、需要に応じた売れる米づくりを行っていくことができる、そういう経営へと発展させることが期待できるようなものを育てていく、こういう視点がまた非常に重要だと思います。
 そこで、今回、法律上担い手として位置づけることとしているこの集落営農組織、特定農業団体の具体的な要件はどういうものか、これは農民の皆さんに、また団体にもわかりやすいように丁寧に説明していただきたいと思います。いかがでしょうか。
川村政府参考人 お答えいたします。
 集落営農は、今委員が御指摘のとおり、さまざまな形態がございます。その中で一定のものを担い手として位置づける、すなわち、全体の生産構造の中でコアとしての位置づけをして、全体を強固な構造としていきたいというのがあるわけでございます。
 そこの場合の具体的な要件でございますが、法律上は、第二十三条第四項でございますが、法人化することが確実と認められるものということが規定されております。その他の要件につきましては政令で規定ということになっております。
 この考え方でございますが、一つは、経営主体としての実体を有するということで、一定の集落営農についてまず対象にしたいということ。それから、法人格を現時点では有していないものであっても担い手として位置づけるようにしたいということがございます。こういう位置づけをすることによって、将来、効率的、安定的な農業経営へ発展させていきたい、こういうことでございまして、具体的に申し上げますと、大きくは二つの観点がございます。
 一つは、組織としての実体を有することを確認するための要件ということがまずあります。これは、より具体的に言いますと、目的なり、構成員の資格あるいは代表者に関する事項、総会の議決事項等が定められている定款なり規則を有しているということが求められると思います。
 それから、二点目の柱としましては、経営主体としての実体を有して、先ほど言いましたように、将来的には効率的かつ安定的な経営体として発展することを目指し得るものであるというための要件でございまして、より具体的に申し上げますと、当該団体が、その構成員を主たる構成員とする農業生産法人となることに関する計画を有している、法人化の計画を有しているということが一つ。それから、当該団体が、農産物の販売等を含みます地区内の農業に係る業務を一元的に実施していること。また、当該組織の主たる従事者が、市町村の基本構想で定められております所得目標、こういうものを目指し得るものといったようなことが考えられるということで、そういうことを見込んでおるところでございます。
江田(康)委員 一言で言えば、将来、効率的、安定的な経営体として発展し、売れる米づくりを行うことができるような組織ということであろうかと思います。
 このような集落営農組織を組織されまして、将来に向かって取り組んでいくということは、私は九州でございますが、特に西日本を中心としまして、もともと規模は小さいところが多いわけでございまして、個別経営のこれまでの取り組みではなかなか規模拡大を図りがたい地域、こういう地域におきましては有効な取り組み、手法だと思うんですね。ただし、今御答弁にあったような要件を全部満たすような集落営農、特定農業団体というのは、現時点におきましては必ずしもそう多くないのではなかろうかなという気がするわけです。
 これまでも、こういう農業生産法人へと向かう、また従来型の集落営農から特定農業団体に似たような組織をつくって進めていこうという取り組みがあったかと思うんですが、これはなかなか進んでいないのが現状だと思うわけです。この原因も詳細に分析されているとは思います、後で聞きたいと思うんですが。
 このような現状を踏まえれば、今回の集落営農の担い手としての位置づけという改革が、新しい政策の方向、それであるからこそ、その目的とか趣旨を現場段階までしっかりと伝えて、目標、ねらいを正しく理解していただくということが非常に重要かと思っております。そのような点に十分な配慮をしないと、せっかくつくった法律も、また受け皿も、現場ではそれは使われずじまいだった、今までどおりなかなか進まなかった、そういうことになりかねないと思うわけでございます。
 そこで、この特定農業団体の取り組みの促進に向けまして、現場レベルでどのように周知徹底の取り組みをしていこうとされているのか、これが一点。
 そしてさらには、周知徹底だけではなくて、相談とか支援とか推進というような、そういう策について具体的にどう考えておられるのか、実行されていこうとされているのか、教えていただきたいと思うわけでございます。
川村政府参考人 今回の法改正によりまして創設いたします特定農業団体制度が、農村の現場段階で有効に活用されまして、地域農業の担い手の確保、また農地の利用集積等の構造改革に資するものということになっていただきたいわけでございます。
 今委員も申されましたように、この制度の趣旨でありますとか目的、こういうものを都道府県、市町村はもちろんのことでございますけれども、農業者、農業者団体に正しく理解してもらうことが必要でございます。それからまた、地域の事情がさまざまでございますので、その実情に即した形で集落営農の組織化に向けた具体的な取り組みを展開していただくということが重要であると考えております。
 こういった観点から、この特定農業団体の組織化に関しましては、今般の米政策改革の一環といたしまして、地域におきまして地域水田農業ビジョンというものを策定することになっております。その中で担い手を明確化するという作業をやっていただくというわけでございまして、このような取り組みの中で現場レベルでの周知徹底を図っていきたいということでございます。
 そして、この組織化に当たりましては、まさに今申しました集落段階での話し合い、合意形成、これが非常に重要なキーポイントとなるわけでございまして、ただ、なかなか地域地域、事情も違いますし、困難な面もあるかと思います。やはり地道な話し合いといったようなことで、時間もかかるとは思いますが、そういうプロセスを積み重ねてつくり上げていただきたいなと思います。
 我々としましても、そういう話し合いでありますとか、そういうプロセスがスムーズにいくような予算的なバックアップというのもできるだけ力を入れていきたいと思っておりますし、市町村、農協等に対しましては、米政策改革の準備期間であります平成十五年度のできるだけ早い時期にこの合意形成のための体制づくり等を行うことが適当であるということで、指導の通知も出しましたし、その取り組みを促して、積極的に取り組んでいただきたいということでお願いをしているところでございます。
江田(康)委員 これまで農水省の施策の中には、計画はいい、ビジョンはすぐれたものがあったかと思うんですけれども、現場への浸透がうまくいかなかったがゆえに結果的に失敗したようなものもあると思います。これらの反省に立って、今の御答弁にあったような積極的な取り組みをお願いしたいわけでございます。特に、今答弁にありましたように、こういう集落営農の組織化が進むような予算措置をやはりきちんとつけて、一つ一つこの組織化が進んでいるのかどうかチェックしながら、適切な対応を図ってもらいたいと強く申し上げておきたいと思います。
 次に、基盤強化法改正案のポイントの二つ目でございます遊休農地の解消に向けた措置について、お聞きしたいと思います。
 今回の措置のポイントは、遊休農地の所有者自身が、その遊休農地をどうしていきたいのか、みずから考えて計画をつくってもらうところにあると理解しております。
 確かに、農業委員会の指導があって、市町村長の勧告がある、従来の上からの措置というようなものに比べますと、一定の効果が期待できるのではないかなと私も評価をしております。
 しかし、望ましい農業構造の実現、売れる米づくりの実現という観点からしますれば、単に遊休農地を解消するだけではなくて、これをいかにして認定農業者の担い手に集積していくかということがさらに重要ではないかなと考えるわけでございます。
 そこで、質問でございますが、遊休化している農地の担い手への集積の推進方策につきまして、市町村など関係者がどのような役割を果たしていこうとしているのかを含めてお答えいただきたいと思います。
川村政府参考人 担い手への農地の利用集積ということは一番ポイントとなる課題でございますが、残念ながら、まだ目標の七七%程度ということでございまして、最近この伸びが鈍化している傾向にございます。
 こういう担い手への集積が思ったように進まない理由としましては、さまざまあるわけでございますが、近年の経済状況の中で、担い手の経営規模を拡大する意欲が抑制されておるといったようなこと、それから、担い手の方から見まして望ましい農地がないというようなこと、また、機械化の進展等を背景に、兼業農家でありますとか高齢者の農家でも稲作に特化した経営を持続することが可能になっていることなど、その原因は複合的にあると思います。
 この遊休農地の問題は重要な課題でございまして、まさに規模拡大のためにもこういった農地を有効に活用するということが必要なわけでございます。これまでも農業委員会でありますとか市町村が、地区外あるいは市外の居住者が所有する遊休農地とかにつきましていろいろ指導等もしてきたわけでございます。ただ、単なる指導とかではなかなか活動ができない、やはり法律上のバックアップもしてほしいという要望もございました。
 そういうことで今回、この基盤強化法の改正の中で、委員が先ほどお触れになりましたような、まず所有者の方に自発的にこの取り組みを考えていただくという意味での利用計画の届け出制度。この届け出につきましては、市町村長の勧告もありますが、その前段階としまして、農業委員会の指導というものも十分に行うというようなことで、農地を認定農業者へ集積していくということでの取り組みを、よりプロセスを明確にしてやっていくということになろうかと思います。そういう意味で、農業委員会それから市町村がこれまで以上に、タッグマッチといいますか、よく連携をとりまして、この遊休農地の解消に努めていただきたいと思っているところでございます。
 また、この遊休農地の解消につきましても、単にこういう制度面の措置だけではなくて、借り手につきましても促進費を出すとか、また農業委員会の活動費につきましても予算的な措置をする等の、予算的な措置もあわせまして、その加速化を図っていきたいということでございます。
江田(康)委員 どうぞよろしくお願いいたします。積極的に、これもまた同じように取り組んでいくものだと思っております。担い手への集積、借り手への予算措置、支援、こういうところが非常に大事かと思いますので、よろしくお願いします。
 時間がそう多くはございませんので先に進みますが、次に、この三つ目のポイント、農業生産法人の要件緩和についてお聞きしたいと思います。
 この措置は、経営改善計画を作成しまして、その計画について市町村の認定を受けた農業法人に限定するといった、農外資本による経営支配を惹起しないようにさまざまな歯どめ措置を講じながら、農業現場からの要望に対応して、そして農業生産法人の多様な経営展開への道を開いていこうとするものであると承知いたしております。これによって、分社化による農業経営の合理化や経営の多角化といった取り組みが従来以上に促進されていくということが期待されるわけであります。
 そこで、質問でございますが、水田農業を行っている生産法人を念頭に置いていただいて、今回の措置がどのような形で、売れる米づくり、需要に応じた米づくりを促進するものとなるのか、わかりやすく教えていただけませんか。
川村政府参考人 今回の農地法の特例でございますけれども、関連事業者等との円滑な連携の推進を通じまして、農業生産法人の経営の改善が実現できるように、認定農業者制度の枠組みの中で、農業生産法人の議決権の割合に係ります制限を緩和しようというものでございます。
 具体的にどういったケースが想定されるかということで、水田農業を念頭に置いて説明してほしいということでございますので、例えばでございますが、米生産を行っておられる農業生産法人が、スーパーでありますとか生活協同組合と業務連携をいたしまして、加工施設を建設し、米の加工品の製造をするとか直販をするとか、米の付加価値の向上を図るということがあると思います。
 また、酒造メーカーと連携をいたしまして、実需に応じた酒造好適米でありますとかそういうものを実施する場合に、連携の一つの形態としてのそういった出資もつながりとして求めていくということもあろうかと思います。
 それからまた、消費者団体でありますとか学校法人等が農業生産法人に出資をしまして、農業生産に参画することで、最近重要になっております例えばトレーサビリティー、生産履歴を明確にした米づくりといったようなことで、安定した販路の拡大につなげるといったようなこともあると思います。
 また、外食産業等とも連携ということになれば、外食産業の求める品種あるいは栽培方法での生産を行うということで、この外食産業との連携という意味でのまた出資の関係といったようなこと。
 さまざまな取り組みで、川下の方の需要者の側も、自分たちの資本を投入するということによって、より当事者意識といいますか、一緒にやっていく、共同事業という色彩が出るということで、安定的な取引関係等が構築されるのではないかということを期待しているところでございます。
江田(康)委員 今申されましたようないろいろな取り組み、これは非常に重要かと思います。その中でも、消費者団体が法人に参加していくというような、消費者の需要、ニーズが非常にわかりつつ、また拡販も進むというか、そういうような効果があるということでございますが、実際に効果を出していただきたいと思うわけでございます。
 最後の質問でございますが、我が国の農業従事者が全般的に高齢化しておりますね。その中で、私は、今回の改正が、農業法人に就職してさまざまな栽培面、経営面でのノウハウを身につけた後に、いわゆるのれん分けを受けて独立しようとするこれからの若い農業者を後押しするということに特に期待をしております。
 その中でも、特に水田農業につきましては、稲作の新規就業者数は年間五百人でございます。稲作農家一万戸についてたった四人でございます。酪農や施設野菜、こういうものに比べたらもう壊滅的な状況に陥っていると聞いております。こうした状況を踏まえますと、次の世代の我が国水田農業の担い手の確保という観点からも、今回の措置は非常に重要なのではないかなと思うわけでございます。
 その従業者である若い農業者が独立しようとする際に資本援助を行うかどうかは個々の農業生産法人の判断にゆだねられるべきものであることは当然でありますけれども、実際にのれん分けに関心を持っている農業生産法人というのはどの程度見られますか。私は決して多くないと思いますが、その多くない原因をどう考え、そして今回の法律の改正でどのような効果を出そうとされているのか、そこを最後に教えてください。
川村政府参考人 現在、農業生産法人ということで、法人経営がかなりの速度でふえております。そして、こういった農業法人に就職をされるという形で農業とのつながりを持たれ、そこでいろいろ研修を積まれて独立するという方がふえておりまして、そういう意味では非常に新しい新規就農についての受け皿ということになっている実態が出てきております。
 その意味で、そこで修行を積まれまして独立する際に、就業先の農業生産法人が若い人の独立に際して出資をしたいという希望を持っておられるところも数多くあります。ただ、そうはいっても、今の農地法の規定でいきますと、一者当たり十分の一しか認められませんので、残り九割を独立する方が何らかの形で手当てしなくてはいけない、こういう状況があって、なかなか進まないというのが今の状況でございます。
 私ども、昨年十月にアンケートをしております。その場合、のれん分けによります新規法人の設立を考えている生産法人というのは、このアンケートの数はそう多くはないわけでございますが、全体の三割強の法人の方が、のれん分けによって新規法人を設立したいという回答をされておるところでございまして、我々も非常に期待をしているところでございます。
江田(康)委員 全体の三割がのれん分けに関心を持っておられるということでございます。やはり、こののれん分けも本当に具体的に実効力のあるものに、若者が独立していけるように、積極的な取り組みをお願いしたいわけでございます。
 きょうはこれで時間が終わってきますが、せっかく大臣、副大臣、いらっしゃる中で、きょうは結果的には経営局長とばかりお話をさせていただきました。私、細かい点も用意しておったからだと思いますが、今回の農業経営基盤強化促進法と農業災害補償法について議論をさせていただきました。
 食糧法は食糧庁で、そして基盤強化法や農災法は経営局でという縦割りにならないように、目指すべきははっきりしています。売れる米づくり、望ましい農業構造のもとでの需要に応じた米づくりということでございますので、これを心にとどめていただいて、農水省、一体となって、大臣、副大臣、よろしく御指導していただくようにお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
小平委員長 次に、一川保夫君。
一川委員 自由党の一川保夫でございます。
 久しぶりに農林水産委員会で質問させていただきます。大臣も初めてお目にかかりますけれども、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 私、今ほど、委員のいろいろなやりとりの中で、ちょっと重複するテーマもございますので、先に、通告の順序を変えまして、米政策の転換、我々は必ずしもこの政策そのものには十分満足しているわけではありませんけれども、今、政府がやろうとしている米政策の転換といいますか、従来のやり方を大幅に変えていこうというようなことが基本的な流れになっておりますけれども、現実問題、現場では相当不安感が漂っているというのが正直なところだろうというふうに思います。
 私は、石川県の、従来の米の単作地帯に位置しているところに住まいをしている人間でございまして、現状では、当然、水田の植えつけも終わりまして、もう麦の刈り取りも終えたというのが今の現状だろうと思いますし、先ほど大臣もちょっと触れられました、水田農業を行っている農家の方々にとっては、ちょっと一段落している時期かなという感じはいたします。
 しかし、新しい米政策というものが具体的に現場でどういうふうに展開していくかということについては、まだまだ現地の農家の皆さん方は十分理解されていないというのが現状でございますし、また、農家の皆さん方に直接説明する責任のある市町村なり農協の皆さん方もまだ十分わかっていないというのが現状だろうと思うんです。
 そこで、現段階で、幾つかそういう疑問点について農林水産省の考え方をお聞きしたい、そのように思っております。
 まず最初に、新しい米政策の中で言われています、俗に言う産地づくりの交付金制度でございます。
 こういう制度がスタートするということはある程度皆さんわかりつつあるわけですけれども、しかし、具体的にどの程度のものが交付され、またその使い道についてはどういう縛りがあるかということについては何も説明されてもいないし、今、それぞれの集落単位でのいろいろな話し合いの中では、最も知りたいところについてはだれも説明できないというのが今の現状だろうと思うんです。
 そこで、まず、この産地づくり交付金制度というものの内容、これは対財政当局とのいろいろな予算折衝がある程度詰まっていかないと説明できないというようなことかもしれませんけれども、私は、やはり農林水産省として、こういう政策の責任官庁としては基本的にはこういう考え方でいきたい、それで頑張るけれども、最終的にはどうなるか、若干動くかもしれないという要素を含みながらでも、現段階で、もうちょっと具体的に個々の農家にもっと説明をおろすべきじゃないかというふうに思います。
 そういうことも含めて、まず、制度の現時点での内容を、より具体的に御説明をお願いしたいと思います。
須賀田政府参考人 産地づくり対策でございます。
 転作に対しますいろいろな御批判を踏まえまして、今までの転作奨励金の考え方を抜本的に見直すということで、国が自給率の向上ということを念頭に置いてどのような作物を振興するか。今まで、麦、大豆、飼料作物ということを戦略作物として振興してきたわけでございますけれども、そのような考え方は継続をしていくわけでございます。そして、その上で、現在最も求められております構造改革、担い手の育成確保ということについて加算をしていく。そういう体系で交付額を算定いたしまして、その額を一括して地域に助成する。地域の皆様方は、その算定どおり使うのではなくて、みずからの発想、戦略で水田農業の構造改革が進むような使い方をしていただきたい。ここまでは地域の皆様にも御説明はしたわけでございます。
 そして、今お願いしておりますのは、その前提となります地域水田農業のあるべき姿と実現方策、要するに地域水田農業ビジョンの作成をお願いしたい。その中身は、何をその地域で作付するか、そしてどこへ売り込むか、担い手というのはどのようにして育成していくか、こういうことを内容とするビジョンでございます。
 私どもの調査によりますと、既に二割程度の市町村でそのビジョンの作成作業を開始しておられるということを伺っております。そして、約七割の都道府県におきまして、県段階で協議会を立ち上げまして、市町村段階におけるビジョン策定の支援体制を整備したというところでございます。
 具体的には、ビジョンの策定の手引を作成する、あるいはビジョンの記載の留意事項を盛り込んだ様式例を作成して市町村に配る、こういうことをしておるところというふうに伺っております。
 ただ、先生御指摘のように、具体的な金額、そしてどのようなものに使っていいのか、これはガイドラインで示す予定でございますけれども、そういうことがわからなければ検討が難しいという批判も私ども伺っております。何せ農林水産予算の中で賄う必要がございますので、十六年度予算の概算要求時点までに、そのような具体的な金額の中身、ガイドラインの中身、こういうものをきちっとお示しいたしまして、この作業をできるだけ促進、推進をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
一川委員 今の説明によりますと、概算要求時までにそういうものをもっと具体化したいというお話でございました。
 これは概算要求時ですから、九月初めに概算要求出されますね。そうすると、農林水産省の内部で物事をある程度詰めれば中身は詰まってくる、財政当局との折衝でその中身が動くというものではないというふうに理解していいわけですか。
須賀田政府参考人 いろいろな御意見を聞くところがございます。農業団体それから地域の自治体、いろいろなところの御意見を聞きながら詰めていきたいというふうに考えておりまして、それまでに我々の考え方を実質上財政当局にも理解していただくというような形で、できるだけコンクリートのものにしていきたいということで作業を進めたいと考えております。
一川委員 実際問題、現場の方でいろいろなこういう話を詰めていく段階では、非常に難しい面がたくさんあるような気がするんです。
 先ほどビジョン作成、要するに、米づくりといいますか、水田農業に対するビジョンというものをそれぞれの地域で策定していただくということなんですけれども、では、そのビジョンを描くにしても、政府サイドのそういう助成というものは、どれだけの規模のものが、どういう使い方ができて決まるのかということがある程度見えてこないと、またビジョン作成もできない面もございます。そういう面では非常に、今二〇%ぐらいのところがもう既に策定したというようなお話もございましたけれども、内容的に、本当に真剣に農業に取り組んで努力していこうという人たちは、それをつくろうとすると大変苦労が伴うと思うんですね。割と簡単にさっとつくってしまう地域というのは、逆に余り農業のことを真剣に考えていないような感じもいたします。
 そういうことをいろいろと思いますと、今、局長から答弁がありましたビジョン策定、それと並行して、いろいろな現地の意向を聞いて、そして最終的にそれを反映したいというようなお言葉なんですけれども、現時点では、私たちの地域では、市町村の職員あるいはJAの職員を通じて、それぞれの集落のそういう責任者あるいは個々の農家の皆さん方を含めて十分な話し合いというのはまだスタートしていないと思うんですね。
 しかし、先ほど言いましたように、もう我々のところでは、一部農繁期は終えて、いろいろなことを考えめぐらす、そういう時期に来ているわけですよ。そういうときに、具体的なものを材料にして議論できないということは、大変不安感が漂っているというのが現状でございますので、そのあたりを皆さん方にお話を申し上げ、しっかりとした指導をお願いしておきたい、そのように思っております。
 そこで、これとあわせて、過剰米の処理の対策の問題も、具体的な内容なりいろいろな方式というものも定まっていないようなことを聞くわけでございますけれども、それについては、現時点ではどういう状況になっているんでしょうか。
石原政府参考人 今回、米政策の改革で新しく講じようとしております過剰米対策でございますけれども、もう先生御案内のとおり、これまでも過剰米の処理というのはその都度やってきております。
 しかしながら、これまでの過剰米対策というのは、あくまでも過剰米が発生したその後に、あたふたと言ったらなんでございますけれども、過剰米が発生した後に、その都度対策を財政当局とも相談しまして講じてきたというのが実情でございます。そういうやり方をしておりますと、過剰米が適切に処理されるんだ、要するに余った米というのはないんだということのメッセージが、卸の関係の方とか価格の決定に力がある人、そういうところに必ずしも伝わらないというのが状況なわけですね。
 それともう一つは、農家の方からとりましても、過剰米が出ますと最後はどうしているかというと、えさで処理します。そのえさで処理する過程、あるいはそのお金がどうなっているかとか、そういうのはあくまで各県の経済連のどんぶり勘定といいますか、県の共計の中で決まっているということで、必ずしも農業者には伝わっていなかったというのが実態でございます。
 そういう反省に立ちまして、今回は過剰米短期融資制度というのをきちっと創設いたしまして、過剰が出たらそれはひとつ、やり方はいろいろあるわけでございますけれども、翌年の生産目標数量から減らして、要するに需給関係をきちっと整えるということもあります。これが基本でございますけれども、それとあわせまして、主食用に区分して出荷された過剰米に対しまして米穀安定供給確保支援機構が短期融資を行いまして、農協等の生産出荷団体が一たん市場から隔離する等の取り組みを行う、そして、機構への融資の返済が米の引き渡しでなされた場合は、その米を新規用途の需要開拓に向ける、そういう過剰米処理のルールをあらかじめ決めておく、制度としてきちっと整備しておくということで、米価の下落による農業経営への影響を防ぐというふうに考えております。
 そして、今お尋ねがありました融資単価等でございますけれども、これにつきましては、農業者が円滑に過剰米を処理し、制度全体が円滑に運営されなければなりません。そういうことに十分配慮いたしまして、これは十六年度予算の概算要求の決定時までに決定してまいりたいと考えております。
 こういう制度をきちっとしたものにするためには、ただいま先生の方からお話ございましたように、農業者、農業者団体によく理解していただくということが重要でございます。そして、その農業者、農業者団体の意識改革、この法律の審議の過程でもこの委員会で何度も繰り返し御説明させていただきましたけれども、意識改革を図るということが重要でございますので、我々、これまでも、説明会とか、それからパンフレットをつくったり、そういうことで意識改革を図るということで、いろいろな手段を使いまして周知徹底を図ってきたところでございます。
 しかし、どうしても、今先生のお話ありましたように、お金がどうなるのか、その辺がわからないと、農業者は今回の制度がわかったということにならないというのが実態であろうと思います。しかし、あくまで、こういう制度というのは十六年度の問題でございますので、十六年度の予算の全体の姿、概算要求基準から始まりますそういう姿がきちっと定まらないと、なかなかこういう制度の融資単価等、あるいはこの制度の最終的な仕組みは明らかにならないという点は御理解いただきたいと思います。
 いずれにしましても、我々、この八月末までにはきちっとこういう姿を決めまして周知徹底を図っていきたいというふうに考えておりますので、御理解をよろしくお願いいたします。
一川委員 そこで、今回、今の米政策の中では、担い手経営安定対策と称する中では、集落型の経営体と認定農業者というものを位置づけして、特にこの集落型経営体というものを一つの、今までそんなにしっかりとした政策はなかったと思いますけれども、そういった集落にある程度着目したような政策を展開していこうということが言われております。
 それと、今回の法律改正で出てきます集落営農、要するに農業集落の営農組織というものに着目した今回の法律の位置づけがございます。それは、先ほどの話では特定農業団体、まだ正式に法人化されていないという、前段ではそういうような総称かもしれませんけれども、特定農業団体というものに対して焦点を当てて政策を展開していく。
 そうなると、集落型経営体と称するものと今回の特定農業団体というものは当然関連性が深いものが出てくるんだろうと思いますけれども、そこのところをもうちょっとわかりやすく、農家の方に説明するときにはどうして説明したらよろしいんですか。
    〔委員長退席、楢崎委員長代理着席〕
川村政府参考人 今回、基盤強化法に位置づけをいたします特定農業団体と、それから担い手経営安定対策、これは米対策の中でございますが、集落型経営体という概念を出しておりまして、その関係いかんということでございます。
 まず、今回、基盤強化法に位置づけようとしております特定農業団体でございます。
 基盤強化法は、これはもう先生御案内のとおりでございますけれども、担い手の育成という観点から、例えば、認定農業者でありますとか土地の利用集積に関する規定等を置いております。そういう、土地の利用集積の対象となり得る法人といいますか担い手をどうするかという法律でございまして、その中に、この特定農業団体、まだ法人格を有しないものとして位置づけをしようということでございます。法人格を有するものは、特定農業法人というものがもう既にこの基盤法の中に位置づけられておりますが、そういうことで、その前段階としての特定農業団体というものを法律上明確に位置づけようということでございます。
 そして、その考え方といいますか要件といたしましては、経営主体としての実体を有するということで、集落営農すべてではないということ。それから、法人格を有していないんですが、将来担い手として位置づけるために、法人化の計画等があるということでございまして、こういうことであれば、農地の利用集積を進める受け手となり得るのではないかということでございます。
 これに対しまして、米政策の担い手経営安定対策の集落型経営体でございますが、これは、まさに米の生産の経営主体としての位置づけということでございますが、法人格を有していなくても、生産から販売、収益配分までの、組織として一体的に経理を行う等、経営主体としての実体を有するということ。それから、水田農業でありますし、今後の方向性を持たせるという意味では、一定規模以上の水田営農を行っているということ。それから、生産調整のメリット措置としての米価下落影響緩和対策があるわけですが、その上の上乗せ対策としての担い手ということでございます。
 こういう意味からいたしますと、もう一回整理をいたしますと、特定農業団体と集落型経営体ですが、法人格はともに有していないけれども、経営主体としての実体を有し、将来、効率的、安定的な経営体に発展することが期待される集落営農組織であるという点では共通しておりまして、特定農業団体の方が広い概念でございます。これは、水田に限らず、いろいろな畑地も含めた農地の集積の担い手ということでございますので、そうなります。
 集落型経営体は、この共通要件に加えまして、経営対策としての対象ということでございますし、また生産調整の対策の一環ということでもございますので、一つは生産調整を行っていること。それから一定規模、農林省案としましては現在二十ヘクタールということで打ち出しておりますけれども、これ以上の水田経営を行っているといったような要件が加味されるということで、集合論的に言いますと、特定農業団体のさらにその小さな集合として集落型経営体があるというふうに御理解いただければと思います。
一川委員 今の説明を聞いても非常に理解しづらい点があるわけです。私なりに理解するのは、現地でもだんだんこういうふうに理解されつつあると思うんですけれども、米政策の中で言っている集落型の経営体というものを、今回の法律改正でもって、ある程度法律上の位置づけを明確にしていくというような形にもとれるわけです。
 そうした場合に、先ほどお話しのように、集落型経営体の要件というものと特定農業団体の要件というのはちょっとずれるようなところもあったというふうに思いますけれども、集落型経営体の要件にプラスして、また新たな要件を設けて特定農業団体というものを位置づけするのかどうか、そのあたりもまだはっきりわかりませんけれども。ただしかし、逆に考えると、法律上、担い手として位置づけた特定農業団体というものがあるとすれば、それに何か新たな要件を上乗せして、また別のそういう指定行為的なものがあるとすると、それもまた非常にわかりづらい面もあるわけでございます。
 どうも、今、個々の農家の方々に説明に入る段階では、私は、この集落型経営体の要件、そして特定農業団体の要件というものを、もっとわかりやすい、現地で整理しやすいような形にしっかりとしておかないと、ますます混乱を来す危険性がありますし、また、それぞれの市町村、県でもって扱い方が異なってくる危険性というのも出てくるような気がしますので、そのあたりをしっかりと対応してほしいというふうに思っております。
 そこで、先ほど、今の要件にも該当するわけでございますけれども、集落の経営体としての規模が二十ヘクタール以上というような言い方をされております。単純にそこの水田経営規模の面積で二十ヘクタールというものを考えればいいのかということが一番わかりやすいわけでございますけれども、現実問題、中山間地域に入れば、二十ヘクタールといっても、確保する集落というのは非常に少ないというのが現状でございます。そうした場合に、いろいろな作業の受委託をされている面積とか、あるいはまたその一つの集落組織内外、外と作業の受委託をしているケースもいろいろとございます。
 そういうことをいろいろと考えますと、中には、集落の中にいる方でも、ほかの集落へ行って耕作をしている方も当然いらっしゃるわけです。そういういろいろなことを想定しますと、この二十ヘクタールという要件はどういうふうに具体的にカウントするのかというところの考え方もちょっと明確でないというふうに思います。
 私は、端的に、この二十ヘクタールというものをもっと弾力性を持たせたらいいというふうに思いますけれども、そこのところ、農水省は、この二十ヘクタールという規模に相当こだわっていらっしゃるのかどうか。私は、もっとそういうものに弾力性を持たせながら、要は、そこで水田農業、米を作付されている方々の内容の問題だと思うんですね。
 規模の大小も当然あるかもしれませんけれども、そこで本当にまじめに、質のいい米をつくろうということでチャレンジしている地域に対しては、やはり農政としてはしっかりと手を差し伸べてあげるということも非常に大事だということも思いますので、今回のこの二十ヘクタールの規模の問題、どういうカウントの仕方をするのかということ、それから、この規模二十ヘクタールにどの程度こだわるのか、そのところを教えていただきたい、そのように思います。
川村政府参考人 集落型経営体につきましては、規模要件ということで考えておりまして、今二十ヘクタール以上ということにしております。
 その考え方でございますが、この経営安定対策というのは一つの政策でございますので、政策方向ということを考えますと、やはり構造改革を進めなければならない。構造展望で二十二年の望ましい姿というのを示しておりますので、それに近づく努力を促すということでございまして、構造展望ではおおむね四十ヘクタールぐらいの生産組織というものを考えておりますので、その半分の二十ヘクタールというのがこの二十ヘクタールの考え方でございます。
 そして、この二十ヘクタールのとり方は、経営規模でとらえております。作業委託等は含まない数字でございます。
 そして、この二十ヘクタールについて今後どうするのかというお尋ねでございますが、こういう案を昨年打ち出しまして、その後、各地の自治体等から、あるいは農業団体等からも、地域の実態ということでのいろいろなデータの提出なり、また御要望というのもございます。我々、今、その状況を十分勉強、検討させていただいておりまして、いずれにしても、この経営安定対策というのは米政策の全体のパッケージの中の大きな柱の一つでございますので、他の米政策との整合性、総合性もとりながら、先ほど来話がありますとおり、八月末の概算要求の決定時までにその具体的な中身を固めていきたい、こういうことでございます。
一川委員 この二十ヘクタールという規模、経営規模で判断されるということなんですけれども、こういったことで線引きされた場合には、我が国の今こういった農水省が農政として対象にするような農業集落、どれくらいカバーされるんですか、この二十ヘクタールで。
川村政府参考人 残念ながら、生産組織につきましての統計というものがございませんので、具体的にどの程度カバーしているかというのは、今、個別の自治体等の話を聞きながら精査しているところでございまして、現時点ではまだはっきりしたことが言えない状況でございますので、御了解をいただきたいと思います。
一川委員 我々北陸の方面では、こういった二十ヘクタール規模ということを単純に考えてみた場合には、相当の部分はこれを下回っているというふうに思います。
 それは、集落のとり方がいろいろと弾力的になっているというお話も聞いておりますけれども、しかし、片や経理を一元化しろとか、こういうような要件がつけば、なかなかそんなことは簡単にできるわけでもございませんし、私はやはり、先ほど言いましたように、中山間地域の割と条件の厳しいところでもおいしい米づくりを目指して頑張っている農家の方はたくさんいらっしゃるわけです。そういうところにもしっかりとした、やはり政策のそういう温かみが当たるような農政をなぜ展開できないのかなというふうに思います。
 そこで、大臣に基本的な考え方をお伺いするわけです。
 米の生産調整、御案内のとおり昭和四十年の半ばごろからスタートして、三十年以上経過してきたわけでございますけれども、残念ながら、水田農業の中で米の過剰基調というものを解消し切れず、生産調整という施策が三十年間も続けてまだ定着、水田地帯のいろいろな農業というものがしっかり確立されていないという面では、私は、これまでの水田農業のやり方、農政の展開の仕方というものをやはり大きく反省しなければならないというふうに思っております。
 そういう観点で、これまで、そうかといって、それなりにつくりたいものもつくらず、政府のいろいろな米政策に協力をしながら頑張ってきた農家の方々がほとんどだというふうに思います。しかし、現実問題、そういうふうにいろいろな面で政策に協力し、また農業に努力をしてきた、そういう方々に対して、もっと報われるような制度というものをこれからはしっかりとやはり用意しておいていただきたいし、また、農家の経営の内容に余り行政が深入りしないでほしいというふうにも私は思います。ただしかし、農家の方々が創意工夫を凝らして、本当に自分は意欲を持ってやりたいという、基本的な制度というか、そういう支援策というものは当然必要でございますけれども。
 そういうことを考えますと、大臣、まだ就任してそんなに日がたっていらっしゃらないかもしれませんけれども、こういった米政策というもの、あるいは今回の法律改正でねらおうとすることをいろいろと考えますと、やはり、一生懸命頑張って努力をしている農家の皆さん方、農村地域の方々が、それなりに生きがいがあるといいますか、農業にやりがいのある、そういうような、報われるような制度をぜひお願いしたいわけですけれども、大臣の基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
亀井国務大臣 先ほど来、委員、いろいろ御指摘をいただきました。米政策を推進する、こういう面におきまして、農家の皆さん方の不安を払拭する、こういう面での御指摘、いろいろ私どもも努力しておりますし、また、農業団体あるいは各地域におきましても、それぞれ、限られた中で、今日大変な努力をしていただいておりますことを本当に感謝申し上げる次第でございますし、委員、北陸地方で、また経験者としてのいろいろのお話を承ったわけでもございます。
 生産調整を三十年やってまいりまして、需要の減少や生産調整の限界感あるいは負担感の高まり、あるいはまた担い手の高齢化、こういうことから閉塞状況があるわけでありまして、これを今までのような微修正、こういう形ではもう限界に来ておるのではなかろうか、このように思います。
 ぜひ、今回のこの制度を通じて、そして委員からも御指摘の、本当に一生懸命、農家の皆さん方、御努力をいただいております。これからさらに、時代の要請にこたえて、そして消費者重視、市場重視の視点に立ちまして米政策を抜本的に見直しいたしまして、需給調整対策あるいはまた生産構造対策、流通制度等の改革を整合性を持ってやっていかなければならないわけであります。
 そういう面で、本当に一生懸命御努力いただく、あるいはそういう意欲を持ってやっていただく農家の皆さん方の後押しをしっかりやっていかなければならないのではなかろうか、そのような政策をぜひこれから進めてまいりたい、このように考えております。
一川委員 次に、もう既に政策として実績ありますけれども、中山間地域における直接支払い制度というのが平成十二年にスタートいたしまして、もう三カ年の実績があるわけですけれども、直接支払い制度という面では、非常に画期的な制度が当時スタートしたわけでございます。ただ、これについても、現場ではいろいろな混乱めいたものもありますし、依然として課題を抱えているというふうに思います。
 ただ、直接支払い制度ということの中身からすると、先ほど来話題に出ておりますような、米政策におけるそういう産地づくりのいろいろな交付金制度との絡みだとか、あるいは集落営農といいますか、特定農業団体に対するいろいろなこれからの助成というようなことを考えますと、中山間地域におけるこういった直接支払い制度というものがどういうふうになるのか、ちょっと気になります。
 基本的に、この直接支払い制度というものの実施状況なり、また、いろいろな三カ年の経験からして、今後の課題といったようなものをどのように考えておられますか。そのあたりを御説明願いたいと思います。
太田政府参考人 中山間地域等直接支払い制度についてのお尋ねでございますが、この制度は、集落協定などに基づきまして農業生産活動を行う農業者などに対しまして交付金が交付される、いわゆる手挙げ方式によって進めておる施策でございます。
 平成十四年度までの見込みによりますと、対象農用地を有する市町村の九二%に当たります千九百四十八市町村におきまして、また、市町村が策定された基本方針に定められた対象農用地の八三%に当たります六十五万五千ヘクタールにおきまして三万三千四百三十の協定が締結され、交付金が交付されている状況にございます。
 各地におきましては、集落協定などの締結を契機に、集落における共同作業などの復活あるいは耕作放棄地の復旧など、地域の実態に即した質の高い取り組みが見られておりまして、全体としてはおおむね順調に推移しているのではないかというふうに考えておりますが、他方で、都道府県別、市町村別に見ますと、取り組みに差があることも事実でございます。
 これは、特におくれているところについて申し上げますと、地域の立地条件によりまして、過疎化、高齢化等が相当進みぐあいが異なること、あるいは、畑作地帯におきましては、水田におけるような水の管理など共同で取り組む作業が少ないことがありまして、農業者間の話し合いが進みにくいといった面があるというふうに考えられます。
 私どもといたしましては、こうした、取り組みのおくれている地域を重点的に、地域外からのオペレーターの参入、あるいは他の集落との連携、これは先ほども先生の方から御指摘ありました、そして集落内でのさらなる話し合いの促進などに関します先進的な事例の提示などを行いながら、一層の協定締結がなされ、その実が上がるような普及定着に努めてまいりたいというふうに考えております。
一川委員 先ほどの話題の中にもありましたように、これからの米政策に関連しまして、新しいビジョンをつくるというようなお話もございました。今ほどの説明の中にも、集落協定的なものの中で、やはり、当然、農業の振興策までいっているかどうかわかりませんけれども、そういうことについての集落内でのいろいろな話し合いというのは、中山間地域では、この対象地域はいろいろなことがこれまでなされてきておるというふうに思います。
 この制度は平成十六年までだというふうに聞いておりますけれども、やはり農林水産省のこういう農村地域あるいは中山間地域に対するいろいろな施策というものが整合性を持ってうまく機能するようにしておかないと、いたずらに上乗せしていくということだけでは、またいろいろな面で批判を受ける可能性も出てくるような気がしますし、今ほどの局長の答弁でちょっと触れられましたように、個々の農家としては対応し切れないような、集落全体、地域農業全体として対応すべきようなことについて、できるだけそういうものの経費として基金的にそういうものをうまく積み立てながら活用するという方法もあるのかもしれませんけれども、やはり共同的にうまくそういうものを、集落営農が活力を持って持続できるようにしていく必要があるのではないかというふうに思っております。
 そこで、ちょっと大臣にお伺いするわけですけれども、この法律も非常にかかわっておりますけれども、農地法という法律がございます。これは優良農地をしっかりと確保するという大きな目的があろうかと思いますけれども、片や、いろいろな面で農村地域に活力を持たせるという面では、農地を他に転用するというようなことも、これまでずっと行われてきておるわけです。今回の法改正の中でも遊休農地というようなことも話題にのっておりますけれども、農業に余り差しさわりがなければ、そういう農地を有効に活用しながら、農村全体に元気を持たせていくということも、ある面では非常に大事なことでございます。
 ところで、ちょっと気になってきたのは、大平野部の割と平地部というのは、相当大きな面積を大胆に宅地造成とか、あるいは工業団地的に転用するケースが、ぼんと、割とスムーズにいく場合があるわけだけれども、中山間地域というのは、もともと農地面積が少ないということも当然あるわけでございますけれども、そういうところの農地をいろいろな他に転用するやり方というのは非常に難しいというのが現状です。
 しかし、中山間地域は、農業だけでもそんなに活力を持てるわけでもないし、他の産業を受け入れてこそ、そこにまた新しい活力が出てくるというケースもたくさんあるわけだけれども、そういう中山間地域ほど、農地を他に利用しようとする場合に、いろいろな面で制約があり過ぎる、また、そういうふうに指導しているのかもしれませんけれども。そういう面では、平地部と中山間地域の農地の活用の仕方にちょっとバランスを欠いているなというようなケースが非常に見受けられます。
 そういうことも含めて、農地の権利をいろいろな面で移動させ、あるいは規制しているということからすると、いろいろなあり方が議論される時代ですけれども、農地法という法律、当面、何か見直しをするという考え方がおありかどうか、もしあるとすると、どこにポイントを置いて見直しをされようとするのか、そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。
    〔楢崎委員長代理退席、委員長着席〕
亀井国務大臣 平成十二年に、農地法の改正の附則におきまして、施行後五年を目途として、施行後の実施状況等を勘案して、国内農業の生産増大を図る観点から、担い手確保の方策等についての検討結果に基づきまして必要な措置を講ずるとされておるわけであります。
 今回の基盤強化法の改正は、現場のニーズを踏まえ、また、農業構造改革を加速する観点、施策の具体化を急ぐべき事項について、この附則の規定に基づく検討の一環としての措置でもあるわけでもございます。
 今後、農地法につきましては、農業者の高齢化や担い手の不足あるいは耕作放棄地の増大等の問題が進行している状況にかんがみれば、今回の法改正の施行状況をも勘案いたしまして、そのあり方を検討していく必要があるのではなかろうか、このように思います。
一川委員 それから、今回の法律にもまた関連しますけれども、この委員会でも恐らく相当話題になっているかもしれませんけれども、農業委員会制度というのは法律にそれなりの位置づけをされた制度でございますけれども、では、現実、この制度がうまく機能しているかということを見たときに、これまた非常に形骸化しているなという感じがいたします。
 農業委員会、農業会議所というような言い方でいろいろな政策提言めいたものをされる場合もありますけれども、しかし、そういう方々が、実際、現地の農業をしっかりと啓蒙しながら引っ張っているかということを見たときには、そういうのは余り見受けられないなという感じもいたします。
 そうしたことを考えますと、これからの我が国の農業、真に構造改革を図っていくという中では、私は、農業委員会制度というものを抜本的に、もう一回原点に立ち返って見直すぐらいのことをやらないと、また、農業委員会というポストにこだわって、ずっとそこに居座っている方々もたくさんいらっしゃいますし、なかなか難しいのは、現場ではいろいろとお話を聞きます。
 そういう面で、この農業委員会という制度、早急に大臣としてそのあたりを改革に乗り出していただきたいと思いますけれども、いかがでしようか。
亀井国務大臣 農業委員会は、御承知のとおり、農地法の法令業務等の執行機関、あるいはまた構造政策の推進機関として位置づけられておるわけでありまして、今回の改正案におきましても、重要な役割を果たすことが期待をされるわけであります。
 しかし、現状の農業委員会、委員御指摘の点も、私もそれなりに今日承知をいたしておるわけでありまして、必ずしも活動が十分であるか、こういう点では疑問に思っております。
 実は、農業委員会に関する懇談会、こういうところで広範な検討をいただき、先般、その改革の方向をまとめられております。
 今後、この改革の方向に向かいましては、市町村の立地条件や市町村の合併の問題もあります、あるいは地方分権の動きもありますし、組織のスリム化、効率化、必置基準の見直しの問題、あるいは農地法制の課題に対応した農業委員会の委員の構成の問題、委員の資質の問題等々、いろいろ指摘をされておるところでもございます。法改正を含めて必要な措置を積極的に講じてまいりたい、このように考えております。
一川委員 では、最後になりますけれども、農業災害補償法の一部改正に関連してお伺いするわけです。
 今回の制度改正、見直しということの中では、従来のいろいろな制度に選択性を持たせてきているという説明でございました。いろいろな補償の水準なり引き受け方式等について選択制を導入していくというようなことをお聞きしましたけれども、その内容、内容といいますか、基本的な考え方をちょっとお聞かせ願いたい。
 それから、近年、我々中山間地域の先ほどの話題の中では、例えばイノシシの被害だとか、こういうのは余り、そういうことを見たことのない方は何だろうなと思うかもしれませんけれども、要するに、米の収穫間際になって、そこでイノシシがごろごろと遊んじゃうというような、そういう中で大変な被害を受けるところが出てくるわけです。そういうものが中山間地域では非常に被害が目立ってきたような感じもいたしますけれども、こういうことが対象になるのかどうかということも含めて、今回の見直しの考え方、そのあたりを御説明願いたいと思います。
川村政府参考人 今回の農業災害補償制度の改正でございますが、国の災害対策の柱として、この農災制度がこれまで重要な役割を果たしてきております。この農業災害補償の機能というのは今後とも極めて重要であると思いまして、これが将来にわたってその機能を十分に発揮していくことが必要だと思いますが、昨今の農業情勢等は変化をしつつあります。また、新しい食料・農業・農村基本法もできまして、農業経営の育成といった観点が非常に強くなっておりますので、そういった農政の展開方向、これに即して改正を図っていこうというものでございます。
 その一つのポイントが経営マインドの醸成ということでございまして、農家の経営状況等をみずからが判断されましてその選択をしていくということを大きな柱にしております。
 具体的に申し上げますと、農作物共済、果樹共済及び畑作物共済におきまして、農家が複数の引き受け方式の中から選択をできる。今は自分の所属する共済組合が選択したものしか選択できないということになっておりますが、個々の農家がそういう選択ができるということがございます。
 また、もう一点は、農作物共済において引き受け方式ごとに固定をされております共済金の支払い開始損害割合、いわゆる足切りでございますが、この点についても複数の中から選択が可能になるような整備もするといったようなことで、今回の改正は、農家のニーズに直接こたえるとともに、そういった選択の幅を広げるということで、経営判断あるいは経営感覚の醸成という意味では大きな意義があるというふうに考えております。
 それから、二点目の鳥獣害被害の問題でございますが、近年、御指摘のように、中山間地域を中心として野生鳥獣によります被害というものがかなり出ておるわけでございまして、ただ、農災制度の関係でございますけれども、この鳥獣害は、従来からでございますけれども、すべての事業で共済金支払いの対象となる共済事故とされております。
 実績を申し上げますと、平成十三年の数字でございますが、全共済金の支払いの中で約三%近くを占めておるという実態にございます。
 被害等の実態を見ますと、西日本等での被害が多くなりまして、その支払いの割合も、西日本の地域での割合が高くなっております。
一川委員 これで質問を終わらせていただきますけれども、この農業共済制度というのか、公的な一つの目標を持って農家の経営の安定を図るという中での公的な保険制度だと思いますけれども、しかし、これも、時代のいろいろな変遷によって制度の内容も当然変わってくるわけでございますし、米を増産する時代から、今は米を抑制する、そういう時代に来ているわけです。
 そういう面では、こういった制度もしっかりと見直す中で、私はもっと見直しを早くやるべきだったと思いますけれども、個々の農家の方々は、先ほど言いましたように、意欲を持って農業にチャレンジできる、やろうという若者が次から次へと出てくるような制度をやはりしっかりと用意しておかないと、しかし、昨日もここで話題になったらしいですけれども、農業共済制度という中で安住している方々もたくさんいらっしゃいます。そういうものを農家の方々は見ておりますので、やはりしっかりとした風通しのいい制度にしておかないと、制度そのものに対する不信感というのが出てまいります。
 そういうことも含めて、農林水産大臣にその指導力を十分発揮していただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
小平委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。最後の質問になりますけれども、しばしの間おつき合いを願いたいというふうに思います。
 まず、大臣に基本的な点をお聞きしておきたいんですが、この農業経営基盤強化促進法と農地法との関係なんです。農地法の第一条の目的規定というのは、「耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」というふうに書いてあるんです。そして、農業経営基盤強化促進法も、私はその目的は同じだというふうに思うんです。
 そして、日本の農業というのはどういうふうな形態をたどってきたのかというと、何といっても、戦後の農地解放から始まって、今日的な農村集落の形成というものが図られてきた、その中においては、この農地法の果たした役割というのは非常に大きかったというふうに思いますし、これからもこの農地法の果たす役割というのは非常に大きいものがある。そして、食料自給率が四〇%を切った中において、米だけはこの自給率を押し上げる役割も果たしている。こういうふうな立場に立ったときに、やはり農地法の今後の役割というのも非常に大きいものがあると私は思っているんです。
 大臣は、この農地法の耕作者主義という部分も含めて、この二つの法律案の関係をどう考えておられるのか、お聞きしておきたいと思います。
亀井国務大臣 我が国の農業、農村は、食料の供給機能、また、あわせてそれ以外の多面的機能を発揮していかなければならないわけであります。そういう面で、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するとともに、これを支え、補完するそれ以外の農業者の存在、これまた不可欠なことでもございます。
 何といっても大変国土の狭い我が国でありまして、国民に対する食料の安定供給を図る面で、今後とも限りある農地の効率的な利用、この確保が重要であるわけでありまして、農地を適正かつ効率的に耕作する者に農地の権利取得を認める、いわゆる耕作者主義という農地法の基本的枠組みを引き続き維持する必要があると私は考えております。
 一方、今回のこの農業経営基盤強化促進法の改正は、耕作者を主体とする農業生産法人につきまして、多様な経営展開の実現を求める農業内部からの緩和の要望にこたえるために、農地法の基本的枠組みを維持しつつ、意欲的に経営改善に取り組もうとする認定農業者たる農業生産法人に限定して特例の措置を講じようとするものでありまして、委員の御指摘のように、農業者、農地法、この重要性は十分これを尊重していかなければならない、このように思っております。
菅野委員 大臣、二つ今申されました。この農地法の基本的な枠組みは堅持していく、ただし、農業生産法人の要求というものが一方では存在するからこれを緩和していくんだと。ここに私は大きな矛盾点が存在するんじゃないのかなと思うんです。
 農地法というのは、先ほども言ったように、昭和二十七年に施行されていますね。二十七年からずっと五十年間、この農地法というものをベースにして日本農業というのは築かれてきたというふうに思っています。そして、昭和五十五年ですか、農地法のもとにこの農業経営基盤強化促進法というものがつくられていくわけですよね。そうしたときに、今回の法改正は、農地法の改正は行わないで、そして経営基盤強化法の中でこの法人経営の枠を、法人に参加する枠を広げていっているということだというふうに思うんです。
 私は、初めて国会に来た年、平成十二年においてこの農地法の改正について議論いたしました。多くの議論がこのときに闘わされたというふうに思っています。私自身も、この十二年の法改正というものが今後は株式会社の農地参入に道を開くことであるということで、そのことの枠組み、歯どめをどうかけていくのかの議論を徹底的に行ったと思っています。そして、四分の一あるいは十分の一条項というものが、そこでこれがぎりぎりの限度であるという形で農地法の改正というものが行われていったというふうに私は記憶しているんです。このことが今非常に大事であるというふうに思っています。
 そして、先ほども大臣は答弁なされていましたけれども、附則条項につけて、そして、この農地法の改正後五年間のそういう推移を見た上で、十三年施行後の五年間ですからね、それを見た上で、それでまた議論をしていきましょうというのが、農水省と国会との間、政府と国会との間の約束事じゃないですか。農地法を改正しないで、そして経営基盤強化促進法でもって例外規定を設けていく、こういう法体系はあってはならないと私は思うんですけれども、このことについての見解をお聞きしておきたいと思います。
川村政府参考人 農地法と基盤強化促進法との関係でございます。
 基盤法は、担い手の育成、その経営基盤を強化するという観点でつくられた法律でございまして、例えば、土地利用の関係等につきまして、農地法の特例を定めております土地利用規定等につきましても、農地法の原則に対します特例ということになっております。
 そういう意味で、今回の改正も農地法の農業生産法人制度の特例としての位置づけをしますので、基盤強化促進法の特例ということでの基盤法の改正を行ったということでございまして、その農地法の先ほど申しましたような基本的な考え方の中で特例を設けようということでございますので、御理解いただきたいと思います。
菅野委員 平成十二年のこの農地法の改正というものがどういうものであったかというときに、法人形態の要件緩和が行われたんですね。法人に出資する場合の構成要員の要件に、法人経営に法人が参入する道というのを開いたんです、これが。それ以前は、平成五年の改正というものはそこはできなかったわけですね。そして、平成十二年に農地法改正が行われて、そして、改正が行われたときに制限をつけました。制限をつけて、四分の一条項、十分の一条項というのをつけたんですね、法整備、法の中で。
 局長、今の答弁では、例外規定を設けた、かつてもう例外は設けてあるから、これは問題ないんだと。それじゃ、五年間の経過措置というのは法律条項なんですね。これをどう理解していくんですか。答弁お願いします。
川村政府参考人 まず、平成十二年の、前回の改正でございますが、その内容は、生産法人の要件として四つ柱がございまして、法人の形態要件というものがございます。この中に、農事組合法人でありますとかあるいは合名、合資、それから有限会社というものは、既に平成十二年の改正前も規定をされておりまして、そして、それに法人形態として株式会社形態のものを加えるという改正でございました。
 そして、その以外にも、今御指摘がございました構成員要件の、今度はその持ち分の問題として、四分の一、十分の一という規制がございますが、これは従来からあったものでございます。
 そして、次は附則の関係でございますが、政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の規定の実施状況を勘案しということで、その検討結果に基づいて必要な措置を講ずる、こういうふうに書いてあるわけでございます。
 五年を目途ということでございますが、この法律施行後、株式会社の形態のものも既に四十二ほど実現を見ておりますし、また、農業生産法人もかなりの数、増加をしております。こういう方々の要望等を踏まえますと、早急にこの要件の一部緩和をしてほしいということがございました。そういう現実のニーズを十分踏まえ、これは五年を待たずしても手当てすべきは手当てすべきということの考え方のもとに、今回の法改正の提案をさせていただいているところでございます。
菅野委員 今回の法改正は、五〇%未満で法人が出資することができるという状況なんですね。
 今局長の答弁では少しごまかしているんですが、平成五年の改正では、構成員要件は個人となっているんですね。そして、十二年の改正で初めて構成員要件に法人が入ったんです。十二年の改正で法人が入ったんですね、個人から法人になっていくわけです。そして、今回の経営基盤強化法においては、この法人に対する出資割合を五〇%未満に認めるという状況だったんですね。平成五年の改正では四分の一条項、十分の一条項が入っていました。十二年の改正というのは、四分の一条項、十分の一条項をそのままにして、そして法人の出資を認めたんです。
 今回の経営基盤強化法においては、この法人が五〇%未満まで出資することができるというふうになっていったときに、なし崩し的に農地への株式会社の参入というものが拡大していくんじゃないのか、このことが問題なんであって、局長、ここが、どうして本則の農地法を変えないで、そしてこの経営基盤強化法でやっていこう、これは、この十二年の議論を踏まえれば、私は、この農地法の考え方を逸脱しているというふうに申し上げなければならないと思うんです。このことをどう考えているんですか。
川村政府参考人 農地法の本則には、今委員が申されたように、四分の一の規制、それから一社当たり十分の一の規制というのがあるわけでございます。この本則の改正ということになりますと一般的に制限を緩和することになるわけでございますが、今回私どもが改正をお願いしておりますのは、まさに一定の要件のもとでこの条件を緩和したいということでございますので、基盤強化促進法の改正ということでの対応をしたわけでございます。
 つまり、特に認定農業者たる農業生産法人というものにまず限りますし、それにさまざまなまた要件を加えていくということでございますので、本則での改正ではやはり本則と特例という関係が明確にならないということでございますので、基盤強化促進法の改正で対応したということでございます。
菅野委員 本則で議論しないで基盤強化促進法の中での一定要件をはめてという答弁ですが、これをずっと繰り返していったならば、振り返ってみたときにはこの農業生産法人というものが大多数を、五〇%未満の出資を得て法人経営している農業生産法人が大多数を占めていたなどということが起こってきたときに、私は、農地法との関係が、本則の方でぎくしゃくしてくるんじゃないのかなというふうに思っています。
 経営基盤強化促進法においても、農地法の精神というものを踏まえた基盤強化というものを図っていくべきだというふうに思うんです。一定の要件のもとで条件を付しているからこれは例外的に認められるんだという論法というのは、つくり上げていってはいけないと私は思うんです。そして、そういう中で、農業生産法人というものがどのようにして強化されていくのかという本法を踏まえた中での検討というのは行われるべきだというふうに思うんです。
 それが、この食と農の再生プランから出発して、そして有識者懇談会の中でもこの議論というのは真っ二つに分かれていたんじゃないですか。その二つの両論併記をしなければならない状況を踏まえて、あえて今日の状況まで踏み込んだというのは、私は、政府に相当の意図が隠されているんじゃないのかなというふうに思えてならないんです。
 認定農業者あるいは農業生産法人を多数つくっていって、そして基盤強化をしていくんだという制度に今移行しようとしているんですけれども、なぜ株式の五〇%未満の取得まで拡大して、それじゃ、どれくらいの農業生産法人がふえていこうというふうに考えているんですか。そこの数値目標もなしに、単に現在の農業法人から要望が強いからという形で、本法を無視したような形の法律制定というのは、私は、あってはならないということを強く申し上げておきたいというふうに思っています。
 なかなかこの部分では、大臣、私は大臣に基本的に一番最初に聞いたのがこの視点なんです。農地法というのは基本的枠組みを維持していく、一方ではこの要求が強いわけですね。農地法の枠組みを拡大してくださいということの要求は強いんです。ここをどうしていくのか、この要求をどう整理していくのかというのは大臣の力にかかっていると思うんですね。
 今、今日的に規制緩和、規制緩和と言われています。規制緩和という形で私は農業分野にも相当入ってきているというふうに思っています。今大臣が苦労している点もその点だというふうに思うんですね。一方では農地取得の株式会社については、これは特区といえどもだめなんだと主張していきながら、一方では経営規模強化のためには五〇%未満、一定要件を加えればこれはいいんですという法律案を出していること自体に私は矛盾があるんじゃないのかなということを主張しているんです。大臣、どう思いますか。
亀井国務大臣 私は、規制緩和、あるいは経済財政諮問会議等々から今までも盛んに株式会社の農地取得のことにつきましていろいろお話を承っております。しかし、あくまでも農業者、農業を経営する、農業を営む、こういう視点に立ちまして、それは受け入れられない、こういうことを再三申しており、今日までそのような態度でおるわけであります。
 今回の、あくまでも認定農業者あるいは農業生産法人、こういう形で農業がいろいろ加工等時代の要請に、その地域で効率ある農業経営ができるような、農業者を主体とする形での農業経営が展開できるような、そのようなことがこの枠の中で進められるようにこれからもいろいろ指導してまいりたい、こう思っております。
菅野委員 私は、特区の議論と今の基盤強化法の議論というのは、一面では共通しているんだと思うんです。
 特区というのは、一定の条件を付して、そして特区として株式会社の農地取得を認めていこう、これは一定の制限をつけているからという条件だと思う。そして構造改革特別区域法というのは、将来的にはその成果を見て一般化していこうという意図がそこに込められているんですよね。
 この経営基盤強化促進法においても、こういう一つの法人形態が存在して、そして取引相手から取引物資を納入している、生産物を納入している人に出資を五〇%未満で認めていく、これが大成果をおさめたという形でこれも一般化しようとしている。一つの例外規定を設けて、最終的には一般化というふうに考えているんだというふうに思います。私は、なし崩し的な農地法の改正であるということを強く申し上げておかなければならないというふうに思うんです。
 そういう立場に立って、ぜひ農地法という一つの基本法をしっかりと踏まえた政策を行っていただきたいということなんです。私は一般化につながる特区とか特例というのは設けるべきじゃないというふうに思うんですが、大臣、もう一回答えてください。
亀井国務大臣 今、特区のことについてお話ありましたけれども、特区につきましても、株式会社の特区の農地取得ということにつきましては、私どもはそれは認めていないわけでありまして、あくまでもリース方式ということでそれは考えておりますし、また今、リース方式ならば全国展開を、こういう話もありますけれども、私は、そういうことは、やはり特区でのリース方式で本当の農業経営、真の農業経営がどう営まれるか、こういうことを見きわめる必要があるんではなかろうか、こういうことで、今経済財政諮問会議の関係者には強く申しておるところでもございます。
 あくまでも、先ほども申し上げましたような中で、農業者が農地を持って、そして農業経営が、そしてさらには時代の要請、こういう中で、いろいろ付加価値をつけるとか、加工の問題等々いろいろ、これから需要の問題等々あるわけであります。それらが効率よくできることは必要なことでありますので、それは、あくまでも、農業生産法人、認定農業者、こういう中で真に農業が営まれることを中心に考えていかなければならない、こう思っております。
菅野委員 私は、この問題点を大きく指摘しておいて、次の質問に移りたいと思うのですが、やはりしっかりとした理念、考え方、農地法の目的規定をしっかりと踏まえていただきたいというふうに思うんです。
 あくまでも、「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進し、及びその権利を保護し、並びに土地の農業上の効率的な利用を図るためその利用関係を調整し、もつて耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」私は、このことをしっかりと踏まえていくべきだということを強く申し上げて、次の質問に移っていきたいというふうに思っています。
 この農業経営基盤強化促進法の中で、認定農業者という制度がつくられてきているわけですね。そして、十二年の改正で、農業生産法人という形が農地法に入れられてきました。そして今回、この認定農業者と農業生産法人という関係が、どうも私はわからないんですね。認定農業者を育成していく中で、経営基盤強化というものが図られていくということが進められてきたんだというふうには思っています。その限界がもう生じたという立場で、この農業生産法人という組織をつくろうとしているのか、ここをはっきりしておきたいというふうに思うんです。
 そして、この認定農業者というのは、十七万一千七百九十六という数字があるんですね。そのうち六千四百四十六法人というふうに言われています。私は、この十七万という認定農業者を育成していくことこそ経営基盤の強化につながっていくんだという認識に立ってきたんです。これからも、この視点は失うべきじゃないというふうに私は思うんです。
 それをあたかも、後でも議論しますけれども、農業生産法人にシフトしていくという体制は、私は、何か行き詰まったから新たな観点に立とうとしていることに見えてならないんですけれども、この認定農業者と農業生産法人の関係をどう考えておられるのか、答弁をお願いします。
川村政府参考人 認定農業者と農業生産法人との関係でございます。
 農業生産法人について、ちょっと御理解いただきたいんですが、農地法は、そもそもは自然人に農地の権利取得を認めておったわけでございますが、もとの基本法が三十六年にできまして、やはり今後は法人の経営も農業経営の形態としてはあり得るということで、一定の要件のもとに法人にも農地の権利取得を認めようということで、そもそもスタートしたのは昭和三十七年でございます。
 そういうことで、この農業生産法人制度というのは、農地の適正かつ効率的な利用を確保する観点から、農業関係者を中心に組織された一定の要件を満たす法人に限りまして、耕作目的での農地の権利取得を認める、こういう制度でございます。農業生産法人制度については、その後も幾たびかの改正がありまして、最近では、委員が御指摘ございましたように、平成十二年に株式会社の形態での生産法人を認めましたし、また法人の出資も認めた、こういう経緯にございます。
 一方、認定農業者でございますが、これは新政策を打ち出しまして、やはりその中心、コアとなるいわゆるプロ農家を育てるべきではないかということでの認定農業者制度が発足をしてございます。
 これは、市町村が、それぞれの地域の実情を踏まえまして、育成すべき農業経営の目標というものを作成することになっております。その地域に合った経営類型をつくりまして、経営規模でありますとか所得目標等を作成しております。この目標を目指しまして、経営改善を計画的に進めようとする農業経営を市町村が認定するということでございます。そして、国といたしましても、こういった認定を受けました認定農業者につきましては、より重点的に施策を講じていこう、こういうことでございます。金融を初め補助制度につきましても、そういうことでございます。
 ですから、この認定農業者制度というのは、家族経営でありますか、あるいは法人経営であるかを問わないということでございますので、農業生産法人でありましても、この経営改善の計画をつくっていただきまして、市町村の認定を受けられれば認定農業者になり得るということでございます。
 そういうことで、現在、先ほども委員が数字をお示しになりました、十七万の認定農業者のうち、六千五百が法人経営として認定農業者になっている、こういう実態でございますので、この点、御理解いただきたいと思います。
菅野委員 この認定農業者制度というものの推移もずっと見てきました。そして、今、十七万という数字に達していますけれども、なかなか認定農業者の制度に乗っかるという人たちも今日的には頭打ちだと私は思うんですね。そういう中で、そういうことを打開しようとする意図なのかどうかということなんです。
 そして、そういう状況のもとに、今回の経営基盤強化促進法において、先ほども一川さんの質疑にあったんですが、特定農業団体というものが制度化されるわけですね。そして、集落営農組織あるいは特定農業法人という枠組み、どうも認定農業者という形で制度として基盤強化促進法の基礎に置いてきて、それが行き詰まったからということなのかどうかわかりませんけれども、新たな制度をつくり上げるということ自体にどんな意味があろうとしているのか。そして、どういう方向に日本の農業を持っていこうとしているのか。この基盤強化促進法の中では、なかなか見えてこないんです。
 これをどう、認定農業者、農業生産法人、特定農業法人、特定農業団体、集落営農組織という、食糧法で言う二十ヘクタールという部分も含めて、どういう方向に持っていこうとしているのか。これは局長、答弁願いたいと思います。
川村政府参考人 私ども、農政として目指しますのは、まさに新しい基本法のもとで基本計画をつくりました。その中で構造展望というものを出しております。これは、平成二十二年が目標でございますが、その中で、まさにその中心となる経営体として四十万程度を考えております。
 その内訳といたしましては、個別経営体で三十三から三十七万経営体、そして法人なり生産組織で三ないし四万ということで考えているわけでございます。これが我々の政策目標でございます。
 そのための取り組みといたしまして、効率的、安定的な経営体ということであれば、やはり認定農業者ということの認定を受けてほしいというのがまず次の目標でございます。
 そして、認定農業者を育てるということでありますと、先ほど言いましたように、個別経営体もあれば法人経営体もあるということでございますので、その法人経営体を育てるためのステップとしてこの特定農業団体があります。
 つまり、この特定農業団体というのは、基盤強化促進法に位置づけますので、これは、観点というのは、土地利用の中心、土地利用の担い手となる中心としての位置づけをまずするわけでございます。担い手というのは、経営もありますが、その経営の主要な要素は農地でございますので、農地に関する集積をすぐ担う主体として位置づけたいということでございます。
 その担い手としての位置づけは、既に特定農業法人というのがあります。これは、もう既に最初から法人でなければならないわけですね。そうすると、一挙に法人にはなれないので、特定農業法人を目指すんですけれども、それ以前の段階でも法律上位置づけて我々としても施策の対象にしていこうということで、いわば特定農業法人の前段階としての特定農業団体というのを今回、法人組織ではないんですけれども位置づけて、それを特定農業法人に向けて育てていきたい、こういう構図になっておるわけでございますので、そういう関係を御理解いただきたいと思います。
菅野委員 特定農業団体と特定農業法人、それから農業生産法人という関係は理解できたとしても、集落営農組織があって、そして地域の農業者はどうやっているのかというと、用水路を、集落ごとに田植え前に用水路払いをやるとか、そうやって共同化というのが集落営農組織は形づくられているんです。その他、今は崩壊してしまったんですが、機械の共同化とかそういう形での集落営農というのが行われてきた。そして、それは、冒頭言ったように、日本型の農業経営体であるというふうに思うんですね。それは、基本的に尊重していかなきゃならないと私は思うんです。
 それで、今、平成二十二年の構造展望ということが示されました。四十万農家構想と言われておりますけれども、それを無理に主要農家四十万構想に結びつけていこうとするから、農業経営基盤強化促進法というものがわけのわからないものに私はなっていっているというふうに思うんです。
 それで、この主要農家構想が崩壊しているんです。平成二十二年まで、あと七年後ですか、七年後までに主要農家四十万農家というものを認定農業者としてできるのかどうか。これはできないというふうにもう政府が認めている。その上に立ってまた経営基盤強化法をつくろうとしているから、矛盾が矛盾を呼んでいるんではないのかなと私は見えてならないんです。
 そういう意味では、冒頭大臣に言ったように、今の日本農業の現状というものをしっかりととらえて、そして政策展開というものが行われてしかるべきだと私は申し上げておきたいというふうに思っています。
 集落営農組織と特定農業団体との関係はどうとらえたらいいんですか、これを説明してもらいたい。
川村政府参考人 特に稲作を中心としまして、各集落では集落を単位とする地域ぐるみの営農が行われております。これは、私どもの調査によりますと、全国で一万ぐらいの取り組みがなされておりますが、その中身はさまざまでございます。
 これまで私ども、農政といたしまして、余りこの集落営農を正面から施策の対象としてはこなかったわけでございますが、今後の展開を考えますと、やはり集落の営農というのも一定の位置づけをし、育てていかなくてはならないんではないか、こういうことでございまして、その現実にある集落営農、また今後取り組んでいただく、今話し合いをしていただいていますので、そういうものの中で、今後の安定的な経営体として育ち得るものは担い手として積極的に位置づけていこうというのが今回の考え方でございます。
 ただ、だからといって、それ以外の集落営農を全部切り捨てるのかということではございませんで、それはそれとして、生産対策でありますとか中山間の直接支払いでありますとかいろいろな施策がございますので、そういう対策はもちろんしていくわけでございますが、今後の構造展望の四十万経営体をにらんで、生産組織として育てていくべき経営体というものをどういうふうにとらえていくかということが次の課題になりまして、今回の法律も、土地利用の集積を担う団体として特定農業法人がありますが、その前段階として位置づけることによって特定農業法人をできるだけ加速度的につくっていこう、こういう構想でございます。
菅野委員 私は、集落営農組織というのは自然に発生してきていて、今までも経営基盤強化促進法がなくても存在してきたというふうに思うんですね。それを、存在しているものを特定農業団体に引き上げて、最終的に特定農業法人に持っていこうという意図というのは、私はかえって集落の共同体というものを壊していくような気がしてならないということを申し上げておきたいというふうに思います。
 最後になります。
 農業災害補償法、今回の改正なんですが、私は、今までの共済的性格から保険的な性格に変わってきて、農家の相互扶助という性格も農業災害補償法の中に存在していたと思うんですが、これも変わってきているというふうに思っています。
 それで、局長、これからも、十四年、十五年、十六年で所得補償制度というものを調査研究しているわけですね、調査費を使って。その所得補償制度を導入するという方向と、この農業災害補償法という観点をどうこれから整理していこうと考えておられるのか。十四年、十五年、十六年で所得補償を、直接支払い方式になるかどういう方向になるか、今調査研究しているわけです。その方向性と今回の法改正はどう位置づけているんですか、このことをお聞きしておきたいと思います。
川村政府参考人 今回の農災制度の改正でございますが、これは、新しい基本法ができまして、経営判断、経営マインドを持った農業経営を育てていこうということでございまして、そういった観点から不断の改善というものが必要でございます。
 そういう観点から、いろいろな要望をお聞きいたしまして、現時点で対応すべきものを取り込んで、できるだけ農業経営の自主性なり判断を生かすような形で今回の改正をしたということでございます。そういう意味で、将来の経営安定対策をにらんでやるとかそういうことではなくて、まさに新しい農政の流れの中の、農業経営の自主性なり選択、そういう幅を持たせるという意味での改正というふうに御理解いただきたいと思います。
 今後、経営所得安定対策等を講じます場合に、確かに委員御指摘のようにその間の調整は必要であろうかと思いますが、今回の改正はそういう趣旨であるということで御理解いただきたいと思います。
菅野委員 今回の法改正の趣旨はわかっているんです。
 ただ、直接的に農家の所得補償というものを念頭に置いてこれから検討する過程においては、農業災害補償という部分は非常に大きな検討条項に上ってこざるを得ないというふうに私は思っております。そういう意味で、十四、十五、十六と今調査研究を進めている段階でございますから、しっかりとした理念を持って進めていただきたいということを私は強く申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
小平委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小平委員長 ただいま議題となっております両案中、まず、内閣提出、参議院送付、農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案について議事を進めます。
 これより討論に入ります。討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子君。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 反対理由の第一は、本法案が農業経営改善計画に従って農業生産法人に出資する関連事業者等について、農地法の適用除外とし、出資制限を緩和することです。
 農地法は、農業生産法人が農外企業等によって経営の支配権を握られることを防止するため、農業関係者以外の出資に量的制限をかけていますが、本法は、その歯どめ措置である出資制限を骨抜きにし、農外企業による法人経営のコントロールを可能にするものです。
 反対理由の第二は、集落営農のうち、農水省が定めた要件を満たす者のみを特定農業団体として位置づけることです。
 特定農業団体の要件から外れる圧倒的多数の集落営農は、今後、育成すべき農業経営とはみなされず、切り捨て対象となりかねません。稲作の担い手経営安定対策や経営所得安定対策の対象とならないばかりか、政策対象の絞り込みが打ち出されている中で、その他の施策の対象からも除外されることになれば、多くの集落営農の維持が困難に陥ることになります。
 本法案は、集落全体として地域農業を担い、地域社会の維持に寄与してきた集落営農組織の役割を否定するものです。
 以上、本法案の反対理由を述べ、討論といたします。(拍手)
小平委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、参議院送付、農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、金田英行君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守新党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。楢崎欣弥君。
楢崎委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守新党を代表して、農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  我が国農業・農村が、従来にも増して厳しい状況にある中、将来にわたり食料の安定供給と農業の持続的な発展を図るためには、担い手の育成、遊休農地の解消と農地の利用集積の促進等が喫緊の課題となっている。
  よって政府は、本法の施行に当たり、農業の構造改革の推進を図るため、左記事項の実現に努めるべきである。
      記
 一 認定農業者たる農業生産法人については、多様な経営展開が一層容易となるよう、農業経営改善計画の認定を行う市町村に対し適切な助言、指導を行うほか、経営相談事業の充実等ソフト面での支援に努めること。また、認定農業者制度については、地域における中心的な担い手が認定されるよう、運用の改善を行うこと。
   さらに、農業生産法人の構成員要件についての特例措置等が、農外資本による実質的な経営支配や農地取得等を招くことのないよう、農業委員会によるチェック体制の整備等に努めること。
 二 特定農業団体については、集落機能の活性化や農地の流動化、生産の合理化などが図られるよう、地域の実情に応じた担い手として育成するための条件整備に努めるとともに、特定農業団体以外の集落営農組織についても、農村地域社会における役割、多面的機能への貢献を踏まえ、的確な支援策を講ずること。
   なお、特定農業団体と米政策改革大綱における集落型経営体については、両者の整合性に留意し、現場段階で混乱を来さないよう十分配慮すること。
 三 認定農業者等育成すべき農業経営が意欲をもって経営改善に取り組んでいけるよう、新たな経営所得安定対策の導入に向け、その手法についても保険方式、積立方式、直接支払い等幅広い視点から、検討を急ぐこと。
 四 特定遊休農地の利用計画制度の運用に当たっては、遊休農地の解消と認定農業者への集積等が効果的に行われるよう、市町村、農業委員会、農地保有合理化法人への周知徹底に努めること。
 五 農業委員会制度の見直しに当たっては、本法の適切な運用において果たすべき役割はもとより、農地をめぐる担い手の育成及び地域の課題に的確に対応する機能が十分発揮されるよう、関係者の意見を踏まえつつ、広範かつ具体的な検討を行うこと。
  右決議する。
 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
小平委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣亀井善之君。
亀井国務大臣 ただいま法案を可決いただき、ありがとうございました。
 附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。
    ―――――――――――――
小平委員長 次に、内閣提出、参議院送付、農業災害補償法の一部を改正する法律案について議事を進めます。
 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、参議院送付、農業災害補償法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
小平委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 農林水産関係の基本施策に関する件について調査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十九分散会


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