衆議院

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第20号 平成15年7月23日(水曜日)

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平成十五年七月二十三日(水曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    青山  丘君
      荒巻 隆三君    石田 真敏君
      岩倉 博文君    岩崎 忠夫君
      梶山 弘志君    金子 恭之君
      上川 陽子君    木村 太郎君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      小泉 龍司君    近藤 基彦君
      左藤  章君    七条  明君
      高木  毅君    西川 京子君
      福井  照君    後藤  斎君
      今田 保典君    田名部匡代君
      津川 祥吾君    筒井 信隆君
      堀込 征雄君    吉田 公一君
      江田 康幸君    藤井 裕久君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    横光 克彦君
      佐藤 敬夫君
    …………………………………
   農林水産大臣       亀井 善之君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   政府参考人
   (内閣府食品安全委員会事
   務局長)         梅津 準士君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            薮中三十二君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房総括
   審議官)         村上 秀徳君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局食
   糧部長)         武本 俊彦君
   政府参考人
   (農林水産省消費・安全局
   長)           中川  坦君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (林野庁長官)      石原  葵君
   政府参考人
   (水産庁長官)      田原 文夫君
   政府参考人
   (特許庁長官)      今井 康夫君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月二十三日
 辞任         補欠選任
  高木  毅君     木村 太郎君
  宮本 一三君     福井  照君
  今田 保典君     田名部匡代君
  山口わか子君     横光 克彦君
同日
 辞任         補欠選任
  木村 太郎君     高木  毅君
  福井  照君     上川 陽子君
  田名部匡代君     今田 保典君
  横光 克彦君     山口わか子君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     左藤  章君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     宮本 一三君
    ―――――――――――――
七月二十二日
 食料生産確保基本法案(山田正彦君外一名提出、衆法第三二号)
 牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案(鮫島宗明君外三名提出、衆法第四四号)
 輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案(鮫島宗明君外三名提出、衆法第四五号)
同月十八日
 国内生産・安定供給確保等米政策に関する請願(中林よし子君紹介)(第四四〇二号)
同月二十三日
 国内生産・安定供給確保等米政策に関する請願(中林よし子君紹介)(第四五七〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官村上秀徳君、総合食料局長須賀田菊仁君、総合食料局食糧部長武本俊彦君、消費・安全局長中川坦君、生産局長白須敏朗君、経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君、林野庁長官石原葵君、水産庁長官田原文夫君、内閣府食品安全委員会事務局長梅津準士君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君及び特許庁長官今井康夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。七条明君。
七条委員 おはようございます。
 時間の関係がありまして、もう簡潔明瞭な御答弁をまずお願いをしておきますが、私は、WTOの農業交渉について、これをまず時間の限り質問をしてみたいと思います。
 亀井大臣、我が国の基本的な考え方、このWTO農業交渉の基本的な考え方を何度かコメントを出しておられます。
 その大もとを要約してみますと、国土の保全、食料安全保障の維持、あるいは、今国会で、私がいろいろ調べてみますと、米改革を実現する法律案ができたけれども、食糧庁を廃止する、我が国の農政が今非常に新たな時代に入ったというようなこともこの間大臣が述べられております。この新たな、新しい改革の実現のために、いわゆるWTO農業交渉における我が国の主張が国際社会でうまく受け入れられるかどうかというのが、一番これは私、これからの新しい我が国の農政の中で、新しい時代の中で必要だと思っている一人であります。
 具体的には、WTOの農業交渉の中で、関税の削減、これはウルグアイ・ラウンド方式の採択ができるかどうかというところが我が国の立場の主張であろうと思いますが、我が国の食料自給率は非常に低い。食料備蓄と国内生産の安定確保が第一であるということは、農業者だけではなくして、消費者も同じく考えを一にしているところではないかと思います。
 では、まず私は、この三月末までに農業合意のモダリティーが確立されなかった、モダリティー1ですね、そういう現状下にあって、この間、七月の十日から十三日まで、大臣、アメリカあるいはカナダを訪問されたわけであります。このときの感触はどうだったのか、成果があったのかなかったのか、こういうことをまず簡単明瞭にお答えいただけますでしょうか。
亀井国務大臣 お答えいたします。
 今委員御指摘の、私は七月十日から十三日にかけまして米国及びカナダに参りまして、米国のベネマン農務長官、あるいはゼーリック通商代表、そしてカナダではバンクリフ農業・農産食料大臣とお会いをいたしました。
 その中で、我が国が今取り組んでいる状況、もう御承知のとおり、世界最大の食料純輸入国でありまして、また、農業分野に、今御指摘の米政策の改革等々、いわゆるウルグアイ・ラウンド方式、ウルグアイ・ラウンド合意に基づきましてそれらの改革をいたしておるわけでありまして、市場原理を導入する、こういうような大幅な改革を進めておるわけであります。また、委員御指摘の、国土の保全あるいはまた食料安全保障等の農業の多面的機能、こういうものの重要性、このことを強く主張してきたわけであります。
 そして、ハーモナイゼーション、こういう考え方でまいりますれば、条件に恵まれない多くの国の農業が壊滅的なものになってしまう、こういうことを申し上げ、WTO加盟国の中でも過半数の七十七カ国がウルグアイ・ラウンド方式、関税削減方式を支持しておるわけでありまして、また、EUにおきましてもあのCAP合意がなされたわけであります。
 また、私、アメリカに行く前にフィシュラー農業委員とも電話でお話をいたしまして、そのことを確認をし、そして、日本とEUあるいはフレンズ諸国、ともども同じ考え方のもとで進めていきたい、こういうことを強くアメリカに申したわけでありまして、まずボールは既にアメリカにあるのではなかろうか、過大な要求をしている米国、ケアンズ諸国が現実的な対応をすることが不可欠なことである、こういうことを申し上げて、我が国の主張を申し上げたようなわけでもございます。
 今後とも、いろいろ会談を通じてお互いの考え方を率直に述べ合ったわけでありますので、これからカンクンに向かってさらなる努力をしてまいりたい、こう思っております。
七条委員 今、ボールがもう既にアメリカにあるんではないかというような表現があった、私も実にそうではないかと思っておりますから、いわゆるベネマンあるいはゼーリックというような代表のところとどういう形で話をするかというのは非常に大事なんだろう。恐らくや、亀井大臣、その辺の心を言い切っておられたのではないかと思うわけであります。
 先日、もう一つ、これは先週ですか、ジュネーブで開催されました農業委員会の特別会合。これも随分と、九月のメキシコの閣僚会議に向けてこの会合が重要であると言われるところのジュネーブの会合で、輸出補助金あるいは国内助成とか、それから市場アクセスの各分野についての論議がされたと聞いておりますけれども、これ、ウルグアイ・ラウンド合意と比べてどうだったのか。
 特にミニマムアクセス等々はどういうふうになっているかということが、今関心が非常に深い。私たちも関心を持たなければならないと思っておりますし、もう一つは、三月末までに農業モダリティー確立ができなかったという現状の中で、いわゆる日本の主張に対して開発途上国の支援を拡大していくことができるのか。一番有効策というのは何なんだ。
 途上国にとっての問題については、先進国のいわゆる市場開放を要求することだということは聞いておりますが、途上国の理解とか支援を得られるのかどうかということ、これはどういうふうに考えるんでしょうか。
村上政府参考人 先生御指摘のとおり、WTO加盟国が現在百四十六カ国ございますけれども、途上国が約百カ国を占めております。そういう中で、WTO農業交渉におきまして、我が国が主張しております現実的かつ柔軟性のあるモダリティーの確立を図るために、途上国の理解、賛同を得ることが必要不可欠ということでございます。
 我が国といたしましては、まず関税水準につきましては、米国、ケアンズ諸国の主張やハービンソン議長のモダリティー提案にあるようなハーモナイゼーション、これは平準化と申しておりますが、こういうことを前提とした一律、大幅な削減方式が採用されますと、特恵マージンが失われるということで、我が国やEUなどの主張するウルグアイ・ラウンド方式が途上国としても有利であるということ。それから、他方で、我が国といたしましても、途上国のために、市場アクセスの改善、それから、そういう観点から、平成十五年度、一般特恵措置の拡充、LDC諸国に対する無税、無枠措置を講じている。こういうことにつきまして途上国に対して積極的に説明をいたして、努力をしているところでございます。
 今後とも、途上国に対してこういう働きかけをしていきたいというふうに考えているところでございます。
七条委員 我が国の主張というのは、当然、品目ごとの柔軟性だとか、あるいは改革の継続性だとか、それから三分野のバランスの確保。国内支持、あるいは輸出の競争、あるいは市場アクセスという、この三分野でのバランスの確保というのが恐らく我が国の主張だ、こういうことは理解ができるんでありますけれども、私が一番心配するのはやはり途上国ですね。
 開発途上国、約百カ国ぐらいあるだろうと聞いておりますけれども、この途上国が先進国の市場開放を要求するという立場の中で、我が国のような、あるいはヨーロッパやフレンズ諸国のようなところの主張をきちっと理解し、あるいは支持していただけるかどうかというのが一番ポイントなんです。もう一度その辺を明確にしゃべっていただいた方がいいんじゃないかと思いますが、簡潔明瞭に願えますか。
村上政府参考人 開発途上国は、WTO農業交渉の中で、先進国の市場開放、それから国内支持の大幅削減ということを、かなり強く主張しているところでございます。
 市場アクセスの関係、関税の引き下げ等につきましては、これを一律、大幅に削減することは途上国にとって必ずしもプラスにならない、一部有力な輸出国がひとり勝ちをすることになりかねないということで、我々はEUなどと連携をいたしまして、やはり途上国にとって一番いいことはいわゆる特恵のマージンを維持してあげるということではないか、それから、ウルグアイ・ラウンド方式で、柔軟性のある方式でやることが一番いいのではないかということを説得いたしているところでございまして、そういう努力の中で、現在、ウルグアイ・ラウンド方式につきまして、途上国を中心に七十七カ国の支持が得られているというような状況でございます。
 こういう努力を引き続き続けていきたいというふうに思っているところでございます。
七条委員 今、特恵とかウルグアイ・ラウンド方式、UR方式だと思いますが、この方式をできるだけ採用してほしい。
 私が九月に向けて大臣にお願いしておきたいことは、やはり、これは、これから粘り強く開発途上国に対する理解を得ること、支持を得るということをきちっとヨーロッパ諸国あるいはフレンズ諸国と一緒になってやらなければならない。先ほど来、アメリカにもう既にボールが投げられている、ボールがあるというようなことを言っておられましたけれども、はっきりと、ケアンズ諸国等も含めて、ここは対立軸をきちっと整理し、九月に向けた基本をきちっと整理していただきたいと思っております。
 では、もう一つ、ちょっと違った観点でお聞かせをいただきたいのは、この場合のいわゆる市場アクセス、ミニマムアクセスの制度についてお伺いをしたいんでありますが、この制度を見直すことができるような主張ができるのか。
 これは今までのウルグアイ・ラウンドのときもそうであったと思いますけれども、すべての体系の輸出補助金を削減するなど、食料の輸出国と輸入国に存在する権利義務の不均衡を是正するという観点で、とりわけ我が国のような食料自給率が極端に低い輸入国が不当な、不利な条件に置かれるいわゆるミニマムアクセス制度を見直すことができるかどうか、そういう主張というのをはっきりとやれるのかどうかということを私は聞きたいんですね。我が国の主食たる米について、実効ある国境措置が確保できるかどうかというのもこれにかかっていますから。ぜひ、このミニマムアクセス制度の見直しの実現性についてどう考えているか。
村上政府参考人 ミニマムアクセスの問題につきましては、先生御指摘のように、先般のウルグアイ・ラウンド交渉の結果にあって、輸出国と輸入国の権利義務のバランスの観点からも問題があるということで、全体的な交渉の主張のベースとして権利義務バランスの是正ということを言う中にあって、ミニマムアクセスにつきましては、制度的な問題点を指摘して、これの是正を求めているところでございます。
 具体的には、関税化がおくれたことに伴います加重アクセスの解消の問題、それから、ミニマムアクセスを計算する基準年につきまして、最近の消費の基準年に是正すべきではないかという主張を随時行ってきております。
 ミニマムアクセスの問題につきましては、こういう特別の事情を抱えている国、特に先進国が限られているということで、なかなか理解を幅広く得られる状況にはなっておりませんが、引き続き努力をしていきたいというふうに思っております。
七条委員 日本は今、米が余っています。食料自給率は非常に低いけれども、米については非常に余っているんですね。余っているにもかかわらず、今のWTOの農業交渉の中では、七十六万七千トンですか、これを義務的に輸入しなければならないという不合理なところがあるんですね。
 当然それは、先ほどもお話があったように、米については関税化がおくれた、いわゆる輸入義務数量が加重になってきた。これは、関税化がおくれたために、本来なら消費量が一般的には五%でいいけれども、七・二%になってしまった。この七・二%になったことに対して、もとの一般的な五%に戻すという主張ができるかどうか。まず、ここが一つのポイントだと思うんですけれども、これはどうですか。
村上政府参考人 現在、先ほど申しましたように、このミニマムアクセスの問題について、制度的な観点から、その是正を強く求めているところでございます。
 全体的な議論の状況を申し上げますと、ミニマムアクセスにいたしましても、カレントアクセスにいたしましても、これを拡大するのかどうかという議論が基本的な焦点になっているところでございます。その中で、一部の国から消費量基準の見直し等についての議論も行われておりますし、我々の加重の部分についての是正について賛同してくれる国もございます。ただし、先ほど申しましたように、先進国としてこういうミニマムアクセスの特例措置をとった国が極めて限られているというところもございまして、なかなか支持が広がらないというところがございます。
 いずれにしましても、米の輸入制度全体の問題としましては、このミニマムアクセスの制度是正の問題とあわせまして、関税の水準の問題、二次税率の問題、それから一元輸入の維持の問題、こういう米の輸入管理制度の全体を総合的に維持するという観点から、総合的に対応していく必要があるというふうに思っております。
 いずれにしましても、ミニマムアクセスの制度的な是正の問題については、強く、今後とも粘り強く主張していきたいというふうに思っております。
七条委員 では、この義務的なものの、今あります七十六万七千トンの米が、いわゆる国家貿易による一元輸入枠である、これはもう義務的に日本が買い入れなきゃならないということでありますが、先ほども言いましたように、日本は米が余っているのに買わなきゃならない。
 これを今までの内訳で見てみると、大体、主食用が十万トン余り、あるいは加工用が二十万トンから三十万トン、援助用に二十万トン何がしが行っているというふうに私は考えておりますが、これは食糧庁というか食糧部、これで当たっていますね。いいですね。
武本政府参考人 お答えします。
 そのとおりでございます。
七条委員 では、義務的にちゃんと入ってきたこのMA米、ミニマムアクセス米ですね、このミニマムアクセス米七十六万トンというのは、これからもやはり続けていかなければならない。だとすると、援助にこんなものを回してしまうとなると、これは今もう食管法が赤字になった、食管赤字だと言われている、そういう中でこれからどうしていくんだ。これをそのまま、赤字をどんどん続けていって、毎年毎年援助米に持っていくという制度がいいのかどうか。
 これは見直す必要があるんだろうと私は思いますし、当然のことながら、ここで提言をしておきたいのは、このミニマムアクセス米を、すべてとは言いませんけれども、主食の世界に流れるものは流す。SBSのような入札制度の中でもっと拡大をさせて、市場に流していけるようなものはきちっと位置づけていく。できるだけ国家で持たないで、援助米に回さないで、いわゆる国費の負担を少なくするようなやり方をきちっとやる、できれば加工用にほとんど回してしまうことができないか、私はそういうふうに単純に考えてしまうんですね。
 主食の世界にちゃんと流れるようなセーフティーネットが必要ですけれども、これをきちっとやっておかなきゃいけないんじゃないか、そういう心づもりということをしながらWTOの農業交渉をやらなきゃいけないんじゃないかと私は内々思うのですけれども、いかがでしょうか。
武本政府参考人 お答えします。
 まず、加工用のお米の需要というのは大体年間百三十万トンぐらいございまして、お酒などで四十万トン等々があるわけでありますけれども、その需要に対してどういうお米を使っているかというと、自主流通米で約四十万トンぐらい、それから減反の一形態である加工用米という非常に安価なお米が二十万トンから二十五万トンぐらい。あと、どうしても国内産米では供給できない安価な需要がございまして、せんべいとかそういう世界でありますけれども、ここにミニマムアクセス米を大体二十万トンから三十万トン処理をして、その外側にくず米の世界が約五十万トンある。そういう需給構造になってございます。
 先生お尋ねといいましょうか御指摘の、加工用米に極力回したらどうかという御指摘、御提案でございますけれども、一つは、ミニマムアクセス米を受け入れる際の閣議了解というのが平成五年にございました。これでは、国産米の国内需給に極力影響が及ばないように処理しなさいということになっておりまして、これを受けて、国産米で供給できない加工用等に処理をして、それでも残ったものについては国の外に、援助等に対応するという基本的な方針に立ってございます。
 もう一つは、ですから、その閣議了解がある中で、加工用に回すということになりますと、先ほど言いましたように、いろいろなお米が既に百三十万トンの需要に対応してございますから、ミニマムアクセス米を入れていくと加工用米がはじき飛ばされ、その加工用米が主食用をはじき飛ばすということで、結果的には国産米の自主流通米に著しい影響を与えていく可能性があるんではないかなと思っておりまして……
小平委員長 武本部長、簡潔に答弁を。
武本政府参考人 はい。ということから、なかなか難しい問題ではないかなと考えております。
七条委員 簡潔に答弁していただきたいことを私も要望しますが、基本的には、もう食糧庁がなくなって、食糧庁から食糧部に変わったんでしょう。食管制度というのはもう一遍改められて新しい時代が来たときに、まだ今のような答弁をしているというのはおかしいですよ。
 はっきり言って、加工は加工だ、主食用は主食用と、主食用をきちっと守って、農業者を守っていくという物の考え方をきちっとしておくということをやっておかなければ、毎年毎年MA米は入ってくるんでしょう。入ってくるものをそのまま保存して、それが赤字につながっていく、食管赤字につながって、国費を置いていくなんというような物の考え方は決してやっちゃいけない、私はそう思うんですね。
 ですから、こういう新しい時期にこれを直しておかなきゃならないし、こういうことを含めて、これから九月のウルグアイ・ラウンドに大臣がどういうふうに臨むかというその決意だけを聞かせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。
亀井国務大臣 今いろいろ御指摘もございました、また先ほど来申し上げましたとおり、アメリカやあるいはケアンズ諸国と、また我が国、EU、この溝が深いわけでありまして、また、いわゆる途上国等々につきましても働きかけを積極的に行い、そして七十七カ国の支持を得ておるようなわけでありますので、それらを総合的にいろいろ施策を進めまして、我が国の主張が入れられるよう最大の努力をしてまいりたい、こう思っております。
七条委員 以上で終わります。
小平委員長 次に、木村太郎君。
木村(太)委員 委員長、大臣初め皆さん、おはようございます。早速ですが質問に入らせていただきたいと思います。
 中国で、果物を初め農林水産物あるいは加工品などを対象に「青森」という商標登録申請が現在五件行われておりまして、うち二件が四月二十八日付で、一件が六月十四日付で公告され、残り二件が審理中と聞いております。私の地元の青森県の農林水産業に携わっている生産者に大変大きな不信感が今広がっております。
 私も調べてみましたら、中国の商標法第十条第二項に、公衆に知られた地名は商標にすることができない、このように明記されておりますが、しかし、一方で公告されているということは、極めて私は遺憾なことだと思います。
 仮にこういうことがまかり通れば、例えば、青森という文字を使用して我が国から中国に輸出ができなくなりますし、また例えば、中国産のリンゴなどが、青森という文字を使い、我が国やあるいは周辺諸国に流通、販売されるおそれがあります。
 こういうことを考えますと、農林水産物に限らず、偽装品、コピー商品の拡散に拍車をかけることにもつながると思いますし、また、青森の次は他の都道府県名などが使われるおそれもある。聞きますと、静岡という名前も検討されている情報も私なりに持っております。ゆえに、青森県だけにかかわる問題ではなく、農林水産物にかかわる問題としてだけではなく、我が国の主権を守るということについても政府一体で対応すべきと考えます。そうしなければ日中の友好関係に水を差すことになる、こう私は最も危惧いたしております。
 そこで、私の地元でも、県内において関係団体が異議を申し立てる準備を進めているようであります。農林水産省として、大臣が今回の事態をどのように受けとめて対応されようとしているのか、その決意をお聞かせいただきたいと思います。
亀井国務大臣 青森県産の農林水産品が中国を含むアジアの諸国に輸出が行われている、こういうことは承知をいたしております。また、今御指摘の、中国で「青森」が商標として認められれば同県産の農林水産物の中国への輸出に悪影響を与える、これは大変懸念をすべきことであります。
 このため、私ども農林水産省といたしましては、本件につきましては今後の動向に強い関心を有しておるところでありまして、この件に関しましては、情報収集を行うとともに、青森県の今委員御指摘の異議の申し立てに公正かつ適切な裁定が行われるよう、外務省を通じまして中国国家工商行政管理総局に対しまして申し入れたところでもありまして、今後とも、経済産業省あるいは外務省と緊密な連携をとりまして、情報の収集、提供等に努めてまいりたい、こう思っております。
木村(太)委員 国に次ぐ行政単位であります都道府県の名称が使われるということは、国際的に許されることなのかどうか。この点、経済産業省にお伺いしたいし、また、経済産業省としての今後の対応もあわせてお尋ねしたいと思います。
今井政府参考人 お答え申し上げます。
 商標の保護に関します代表的な国際的な協定は、パリ条約とWTOのTRIPs協定でございます。これらの協定におきましては、他国の地名を登録商標することについて直接的に言及している条文はございません。基本的には各国がそれぞれの国内法令で定めることとなっております。
 ただ、TRIPs協定におきましては、二十二条三項という規定がございまして、地理的表示を含む商標の出願について、その国において公衆が真正の原産地を誤認するというふうに判断される場合には商標登録を拒絶するという規定が設けられているところでございます。
 今先生がおっしゃいましたように、現在、異議申し立ての期間中でございまして、青森県の主導によりまして共同申立人が組織されておりまして、我が国の弁理士事務所を通じて異議申し立ての準備が行われているところでございますが、私ども当省といたしましては、青森県に対しまして、ジェトロの北京センター、これは工業所有権のさまざまな問題を取り扱っております、そことも連絡をとりつつ、中国の法制度に関する情報の提供でございますとか、異議申し立ての手続の方法でございますとか、弁理士事務所の選定などに関しまして、御支援をしてきておるところでございます。
 今後とも、異議申し立て手続が進捗してまいりますので、これを注視いたしまして、関係省庁とも連携しながら、可能な限りの支援を行ってまいりたいというふうに考えております。
木村(太)委員 支援というよりも、先ほど言ったように、政府が一体となって取り組むべきことでありまして、青森県が取り組むべきことだとは私は思いません。青森県を支援するんじゃなくて、青森県のために政府が取り組むべきことだと私は思います。なぜならば、先ほども言いましたが、日中友好関係に水を差すことにもなりかねない。
 そこで、外交問題に大きく発展してはならないということから考えても、外務省としてもどう対応されるのか、決意をお聞かせください。
薮中政府参考人 お答え申し上げます。
 外務省といたしましても、本件については非常に重視しております。私自身、青森県の知事からもお話を伺いました。
 そして、昨二十二日でございますけれども、中国大使館を通じて、中国側の政府当局、つまり中国工商行政管理総局に対しまして申し入れをいたしました。そして、私どもの方からも、本件については公正かつ妥当な裁定がなされるようにという強い申し入れをいたしまして、その結果といたしまして、直接会いました安という商標局長でございますけれども、安商標局長が、お申し出の案件についてはよく理解した、今回は知事の書簡もいただき、また日本政府が本件に注目しているということで、その点を十分に理解した、商標局としても本件を重視し十分きちんとした研究をしていきたいということを言っております。
 私どもとしては、引き続き、関係省庁とも一体となりまして、本件について適切な裁定がなされるよう努力していく考えでございます。
木村(太)委員 今の外務省の答弁を聞いても、何となく、青森県のために我々も応援します、支援しますというような答弁に聞こえてくるんですね。
 もちろん、こちらから中国側に申し入れはしているんでしょうけれども、場合によっては中国側に来ていただく、大使にでも来ていただく、このぐらいの強い姿勢でぜひ外務省としても取り組んでいただきたいと思います。こちらから行くんじゃなくて、あちらから来てもらって確認していただく、やはり強い姿勢を持って取り組んでいただきたいと思います。
 今の経済産業省と外務省の答弁を聞いても、何となく、時に批判されるような弱い態度でこの件について当たってはならない、こう思っておりますので、いま一度大臣にお伺いしたいのは、内閣において、総理を初め関係閣僚にもお伝えして、この件について内閣の中で農林水産大臣がリーダーシップを発揮していただきたい。その決意をもう一度お尋ねします。
亀井国務大臣 農産物の輸出の問題は、今、この間から二十数県で協議会をおつくりになったりして、輸出のことにつきましては大変熱心に取り組んでおられるわけでありまして、そういう面からも、この問題につきましては、今外務省並びに経済産業省からも答弁いたしましたが、私といたしましても、三省庁、御指摘のような趣旨に沿ってしっかりやってもらいたい、こう思っております。
木村(太)委員 ぜひ大臣のリーダーシップに御期待を申し上げたいと思います。
 時間がなくなりましたので、もう一つお聞かせいただきたいと思います。
 私は、この場に立ちますとリンゴのことを今までも多く聞いてきたわけですが、そのリンゴの件について、最近またいろいろな動きが出てまいりましたので、まとめてお伺いしたいと思います。
 まず、最近のこの動きを私なりに考えますと、先般、WTOのパネルで火傷病に関する検疫制度が日本側の敗訴ということが大きく伝わりました。
 また二つ目には、昨年産、一昨年産と大変安値で推移しまして、いわゆる果樹経営安定対策による補てんがなされるようであります。また、基準価格の設定見直しについて、私どもも党内で農林水産省の皆さんとも一緒に議論を重ねまして、先般、特例的な算出によって、生産者側もぎりぎりやむを得ないという判断をしながらも設定がなされました。このことは私は現実の問題として評価をしたいと思っております。しかしながら、この流れが続きますと、果樹経営安定対策そのもののありがたみが薄らいでいくのではないかなという不安視する声もあります。
 三つ目には、生産地では今、園地の若返り事業、改植事業を一生懸命取り組んでおりまして、当初はウルグアイ・ラウンド対策関連の予算と生産総合対策事業を活用して進めてまいりました。ただ、昨年を見ても、改植を希望する生産者の三割しか対象になっておりませんで、つまり七割が待たされている状態にあります。
 忘れてはならないのは、先ほど七条先輩もおっしゃっておりましたが、新農業基本法の大きな理念であります自給率の向上、その中で、個々の農産物の自給率の姿が目標として掲げられ、リンゴでいえば九十四万トンという現状を維持することになっております。
 そこで、WTOでの今後の対応をどのように進めていくのか。二つ目に、果樹経営安定対策を今後どのように活用していくのか。加えて三つ目に、来年度の予算編成も厳しいものと思いますが、これから概算要求に入っていく時期において、希望が多い改植事業など、つまり意欲のある姿については、この厳しい財政状況の中でもめり張りのある予算を編成すべきである、こう思いますが、大臣の思いをお聞かせいただきたいと思います。
亀井国務大臣 七月十五日に、米国産リンゴの火傷病に係る植物検疫措置に関するWTOパネルの報告書がWTO加盟国に送付をされました。本報告書は、我が国の米国産リンゴ火傷病に係る植物検疫措置が十分な科学的根拠なしに維持されており、SPS協定に違反しているとの結論づけであります。
 この点につきましては、我が国は従来から、成熟した病徴のないリンゴ果実の内部に火傷病菌が存在し得ることにつきまして、十分な科学的根拠が存在する、こう主張しておるわけであります。
 我が国としては、今後、本報告書の内容については、定められた期間内に上級委員会へ申し立てを行うことを念頭に、今詳細に検討しております。そのような形で進めてまいりたい、こう思っております。これは期限内、六十日以内、こういうようなこともございますので、その間に対応してまいりたい、こう思っております。
 それから、果樹経営安定対策でございますが、摘果等の需給調整対策の取り組みが行われた場合においてもなお価格が大きく変動した場合、需給調整対策に的確に取り組んだ果樹経営者に対して補てん金を交付するものでありまして、今後とも果樹需給対策を徹底し、産地段階で策定された生産出荷目標をもとに計画的な生産、出荷に取り組むとともに、高品質果実を生産するための適切な摘果や適期収穫、あるいは選果の徹底等、厳選出荷に取り組み、価格の安定に努めながら、果樹経営安定対策を続けてまいりたい、このように考えております。
 また、リンゴの意欲ある生産者を育成すべく、リンゴの改植事業の積極的な展開のことでございますが、優良品種の導入と消費者ニーズに即した果実の生産や生産性の向上を推進することが目的でありまして、この果樹農業振興を進める上で最も重要なこと、こう思っております。このため、生産振興総合対策につきましても、特に小規模基盤整備として改植を推進しているところでもございまして、今後とも、予算措置等につきまして、その推進が図られるよう努力をしてまいりたい、こう思っております。
木村(太)委員 終わります。
小平委員長 次に、吉田公一君。
吉田(公)委員 WTO農業交渉に当たりまして、WTOでは、七種目のうちの農業ということでございます。したがって、WTO交渉の一番ポイントになっておりますのは関税率をどうするかということだろう、こう思うのでありますが、補助金もあわせて、WTO交渉で関税率を上げる、あるいは維持していく、あるいは補助金を出すというようなことは、これは生産者にとりましては農業を守るという意味では大変有効だ、こう思うのでありますが、消費者、国益全体にとれば、消費者に対して、関税率を上げる、補助金を出すということは価格にはね返ってくる、そういうことでありますから、国益ということを考える、消費者の立場も考えて私はWTO交渉に当たるべきだ、こう思っていますが、その点はいかがですか。どう思って交渉に臨んでいるか。
村上政府参考人 お答えいたします。
 農業につきましては、農産物の生産という経済的な側面に加えまして、国土や環境の保全とか食料安全保障などの多面的機能を果たしておりまして、その利益につきましては消費者を含む国民全体のものであるということで、一定水準の関税、国内支持により必要な保護を行っているわけでございます。
 また、世論調査によりますと、国民の八割以上が可能な限り国内で食料を生産することを望んでおりますし、また国民の九割以上が多面的機能を有する農業を将来にわたり国内に残していきたいと考えているような結果が出ているわけでございます。そういうわけで、大幅な関税引き下げや国内支持の削減によりまして国内農業が崩壊するということになりますれば、このような消費者の期待にもこたえられない、むしろ消費者の不利益にもなるのではないかというふうに考えるわけでございます。
 今次交渉におきましては、我が国は、消費者や経済団体を含めました国民合意プロセスの中で取りまとめました農業交渉提案を交渉の基本といたしまして、これに基づいて、具体的な保護、支持の削減幅を含めます包括的なモダリティー提案というのを示してきております。こういうことで対応してきておりまして、我が国の農業交渉における対応につきましては、生産者のみならず消費者を含む国民の総意に基づいて行っているつもりでございまして、国民各界各層のメリットを反映していきたいというふうに考えているところでございます。
吉田(公)委員 農産物の自給率が低い、したがって足りない、足りないから輸入せざるを得ない。片方は、自給率を今度は四五%に上げよう、こうしているわけですね。自給率が上がれば、つまり輸入量というのは減ってくる、そう基本的に考えてもいいのではないか、こう私は思っているんです。後で答弁してください。
 それからもう一つは、お米なんかはもう余っているわけですよ。余っているのに輸入せざるを得ないというところに問題があるわけです。だから、自給率を四五%に今度しようじゃないか、これは、一%自給率を上げるんだって容易なことじゃないですよ。それぞれ農政改革をやり、思い切った改革をやらない限りは、自給率を上げるなんて、数字で簡単なことを言うけれども、実態はできないですよ、それは。
 だからそういう意味では、余っているのに輸入せざるを得ないというような我が国の変な貿易立国としての、つまり弱みもあるわけだよ。例えば中国政府なんかは、セーフガードをかけたらすぐ自動車へ関税をかけちゃう。結局、自動車が売れなきゃ困るから農産物のセーフガードはやめる、そういうことになったわけでしょう。
 だから、米が余っているのに輸入せざるを得ない、つまり国際的な圧力で輸入せざるを得ない。それから、自給率が少ないから輸入せざるを得ない。では、自給率が上がったら輸入しなくていいのか、こういう話になる。全くその場限りの話じゃないか、そう思っているんですが、どうですか。
村上政府参考人 御指摘のとおり、基本法に基づく基本計画の中で自給率の向上ということを、引き上げという努力目標を掲げているわけでございます。ただ、我が国は国民の食料の需要全体を国産で賄うことができないということで、輸入と自給力の維持、それから適切な備蓄、こういう三つの組み合わせの中で国民に対する食料の安定的供給ということを図っていくことだと思います。
 自給率を上げることが即輸入の減少につながるか、これは、人口の推移とか一人当たり消費量の動向というようなことにかかわってくる問題でございますので、必ずしもそういうふうになるとは限りませんが、今申しましたような三つの政策をきちっと組み合わせて、自給率の維持向上を図りながらこういう体制を確保して、国民に対する安定的供給を図っていくということではないかというふうに思っております。
吉田(公)委員 WTO交渉の中で、例えば日本なら日本がそれ相当な努力をするという上に成り立ってWTO交渉が成立するだろうと私は思うんですね。だけれども、世界を見ると、アメリカ、EU、それからオーストラリア、ニュージーランド、ブラジルを含めて、それから途上国、東南アジア、こういう四つの勢力が激突して、にっちもさっちもいかないようになっている。今度WTO交渉をやるときに、四つ激突しているところをどう調整していくのか。何か調整案はあるんですか、これは。我が国にとって。
村上政府参考人 先生御指摘のとおり、現在、大きく分けますと、輸入国サイド、それから輸出国サイド、それから途上国ということで立場が分かれております。特に、アメリカ、ケアンズが一律、大幅な保護ないし支持の削減ということを主張しているのに対しまして、日本やEUなどフレンズ諸国を中心に漸進的な改革ということを主張しておりまして、ここに大きな溝がございます。
 我々といたしましては、日本はEUと連携して既に中庸を得た提案を出しているというふうに考えておりまして、このWTOの農業交渉をまとめるためには、過度に野心的な主張をしておりますアメリカ、ケアンズ諸国が我が方に歩み寄ってくることしか道がないのではないかというふうな主張をしているところでございます。
吉田(公)委員 世界が四グループに分かれて、場合によれば途上国も入れて五つのグループに分かれて、いかに自国の国益のために、途上国側は途上国側、そして農産物を輸出したいアメリカ、EUはEU、そういうようにみんな国益をかけてWTO交渉というのをやっているわけです。その中にあって、日本は貿易立国という宿命を負っているわけだ。セーフガードを例えば農産物でかければ、今度は産業製品に関税かけてくる、対抗してくる、それで外さざるを得ない、こういう状況がこれから続いてくるだろう、こう思うんですね。
 だって、人件費は安いし、土地代も安いんだし、そういうような農産物が、今産業製品でもそうですよ、百円均一へ行ってみなさいよ。とてもじゃないけれども日本人の賃金じゃできないような品物が、商店街で一番はやっているのは百円均一だよ。どうしてこんなものが百円で売れるんだろうと思うようなものがどんどん輸入されて、日本の製品はいいんだけれども高いから買わない。
 例えば中国や東南アジアの自転車一台見たって、昔の丸石の自転車なんというのは、やはり二万四千円ぐらいしている。だけれども、中国製品というのは、店の一番真ん前に並んで、八千五百円、九千円だよ。だからそういうように、農業交渉以外の産業製品については、どんどん安い賃金のところの製品が逆輸入されている。だから、日本の製品がだめになってしまうということは当然のことなんです。農業だってそういう可能性がないわけじゃないよね、ないわけじゃない。そういう意味で、これから日本という国は非常に難しいところへ差しかかっている。
 農業だけじゃありませんよ。ほかの七分野についてだって、農業はその一分野にすぎないんだから。あとは貿易立国として、産業国として、工業国として製品を売って、特に自動車だとか電子部品だとか電気製品を売って、日本はこんなすごい、世界の中では、まあ、景気が悪い、景気が悪いといいながらも世界第二位の経済大国だ。だから、ODAなんてみんな日本へ金もらいに来ているじゃないですか。そういうように、他産業もそうなんだから、農業製品だっていずれそうなる可能性がある。
 いつもセーフガードをかける、かけるといったって、今度は報復措置をとられるんだから。だから、どうやって農業製品を守るかといえば自力しかないんだ、本当は。補助金農政ばかり今までやっているから、自力がなくなってしまって、何でも国に頼らなきゃならない農業になっている。だから、後継者育成、後継者育成と、農林省、予算とっているでしょうよ。全然いないじゃない、後継者が。それは希望ある農業じゃないからだよ。補助金農業だから、お金をもらわなきゃやっていけない、だから後継者が育たないんだ、展望がないから。
 だから、国内でもそういう農業事情になっているんだから、これから世界の農業製品の輸入に耐えていくためにはどういう原則を持ってこれからやっていくのか、基本姿勢を示せたら教えてもらいたい。
亀井国務大臣 農政改革の推進につきましては、WTO交渉のいかんにかかわらずこれは極めて重要なことでございまして、食料・農業・農村基本法を踏まえまして、昨年十二月に策定した米政策大綱に沿ったかつてない米政策改革の遂行を今しておるわけでありまして、我が国農業の礎でありますいわゆる稲作農業の将来にわたる発展に力を尽くしてまいらなければならない、こう思っております。
 また、米政策の改革にとどまることなく、農業の構造改革、この加速を図るわけであります。多様な担い手の育成、今委員御指摘の担い手の問題、あるいはまた農業経営の法人化の問題であるとか担い手への農地の利用集積と、いろいろ今、私もこの間から東北や北陸に参りまして、厳しい環境の中でありますけれども、いろいろの、土地の利用集積等々、担い手が積極的な努力をされております姿を拝見いたしております。これらがさらに推進できるようなことを進めていかなければならない、こう思っております。
 あるいはまた、多面的な機能の発揮、このことにつきましては平成十二年に中山間地域の直接支払い制度を導入したほか、食の安全、安心の確保に向けた取り組みを強化するなど、各般の改革を着実に進めるということが必要なことと、平成二十二年のあの展望、こういうものに向かってこの改革を進めてまいりたい、またそのためのいろいろの支援策を講じてまいりたい、このように考えております。
吉田(公)委員 例えば「我が国のUR関税化品目の税率(二次税率)」とございまして、例えばコンニャク芋、キロ二千七百九十六円の関税がかかっている。何でこんな大きな関税をかけるんだ。それから落花生についてもキロ六百十七円の関税がかかっている。だから、関税をかけているから要するに輸入量が少なくて済んで、要するに保護農政WTOだよ、これは。だから、この関税率が高いということはそれだけ消費者にも負担をかけているということもよくバランスをとって考えてもらいたい、そういうふうに実は思っているわけです。
 それからもう一つは、農産物の輸入大国である我が国として、WTO農業交渉において、関税引き上げの率はもちろん大事なことであります。しかし、そのほかに今、ついこの間も農林水産委員会でやった食の安全というようなことがあるんだけれども、日本は、食の安全、食の安全といいながら、全くこのことにはWTO交渉で触れられていないで、要するに、どれだけの農薬を使っている農産品が輸入されているのかということについては、植物検疫所、動物検疫所というのがありますが、そこで検査をするしか手はない、あと食料品になれば厚生省だ、こうなっているわけでしょう。
 だからそういう点で、食の安全だ、食の安全だといったって、輸入製品が多いのに、その輸入製品について食の安全が図られていないということは、国民の健康や安全について日本の政府として世界各国へ発信していないじゃないか、私はそう思うんですよ。
 だから、我が国の農薬基準はこうなっていますよ、したがって農薬基準をオーバーしたものについては輸入しませんよと、むしろはっきり言った方がいいんだ。そうすれば輸入製品というのは減ってくるんだよ、自動的に。それを厳しくすれば、何も関税なんか高くしなくたって、我が国の農薬基準に合わせれば。
 世界の農薬基準というのは、今度一覧表出してもらいたいと思うんだけれども、どういう農薬基準になって消費者へ農産物が渡っているのか。日本だって相当農薬使っている、だけれども、それ以上基準が甘いというのが各国の対応だ、こう思っているんですよ。そういう意味では、オーストラリアの牛でも何でもそうだし、また豚肉でも何でもそうだと思うんだけれども、どういうふうにすれば食の安全ということを確保できるのか。そうすれば、関税なんかそんなにやらなくたってそこでカットすることができるわけだよ。そうでしょう。
 輸入を一切していないというんならいいんだけれども、輸入をうんとしている国が農薬基準については一切触れない、何食わされているのかわからないなんというんじゃ、まことに私は無責任だと思うんだ。その点について、どうですか。
北村副大臣 先生のおっしゃっている輸入農産物の安全性ということは、これは極めて重要なことでありますし、そのことによって、今回、七月一日からは、食の安全委員会も、皆さん方の御理解の中でこれも設立をし、また運営を今行っているところでありますし、またJAS法等々の改革ということにも我が省は取り組んでおりますし、あるいは原産地表示等々の、これにもしっかり取り組んでいこう、こういうことでやっております。
 しかし、一番我が国が輸入農産物について重要視しているのは、コーデックス委員会あるいはOIE、こういった世界の機構の中で日本の主張を明確に、それも科学的なデータに基づいてこれらを提言し、そのコーデックスやOIEの中でこれらを改革し、また議論の上でそれらを改正していく、そしてそのことによって輸入品目についての一定の歯どめをかけていくということが大変重要なことであるというふうに考えておりまして、そのことには今後も農林水産省は全力を挙げて取り組んでまいりたい、このように考えております。
吉田(公)委員 全力を挙げて取り組むというのはいいんだけれども、具体的なことをWTO交渉の中で言っていかないと、国内の農薬基準はきちっとやって食の安全を図りますと。だけれども、輸入製品については、輸入牛肉の標識、あれだって容易じゃない、こう言っているわけでしょう。だけれども、カナダからBSEが出て、外国産牛についてもトレーサビリティーが大事だというようなことも言われているわけですよ。そういう中で、農産物輸入残留農薬について水際で対応せざるを得ないというのが状況ですよ。
 だけれども、そのときには、破棄するのか、損害をどっちが持つのか。市場に出回せられないわけですから、だれがその負担を負うんだというような、例えばホウレンソウなんかに残留農薬が入っていた、そういうときにだれが負担しているの、これ。農林省が負担しているんですか。それは輸入した業者が負担しているの。そこはどういうことになっているんですか。
北村副大臣 一義的にはというよりも、すべては、この農産物を輸入しておる企業あるいはそういう商社が処分等々については全額負担するということであります。
吉田(公)委員 最終的にはそういう結果になるだろう、こう思うんですね。だから、商社にとってみれば、残留農薬があるのかないのかということについて、現地調査までしてやらざるを得ないというようなこともあるわけですね。
 ゼネラル菌じゃない、何だっけ、ゼネラルモータースじゃないな、レジオネラ菌というのが発生して、そしてその発生源を尋ねていった。そういうようなことがあって、結局それはパセリだったらしいのだけれども、そういうように、中には人の生死にかかわるようなレジオネラ菌なんという問題も発生するわけだから、BSEどころじゃないですよ、それは。野菜からもそういうことがある。結局、アメリカで発生して、発生源どこだといったら、メキシコだったというんだから。そういうように、我が国だって農産物をどんどん輸入している以上は、そういうことは全くないとは言えない。そのことについても対応力を強めていかなければならない。
 これだけ食の安全、食の安全と、この間も農林水産委員会でやって、それで外国製品についてはおっかなびっくりでもってできないとかなんとか言っているけれども、それはおかしいなと実は私は思っているわけですね。
 それから、さっきちょっと触れましたが、セーフガードの措置について、農産物についてのセーフガードをやれば、向こうは必ず工業製品についての緊急報復措置というのをとるんだから、だから農産物のセーフガードというのはなかなかとりにくい、やりにくい、そういうことはありませんか。
村上政府参考人 お答えいたします。
 WTOのセーフガード協定におきましては、セーフガードを発動する国は、発動に先立ちまして、利害関係国と協議を行いまして補償措置をとるよう努力するというふうにされております。また、仮にこの協議が合意に至らない場合には、輸出国は、我が国からの輸出に対しまして、関税引き上げ等による対抗措置をとることができるというふうにされております。
 したがいまして、セーフガード措置を発動する場合に、直ちに対抗措置がとられるというわけではございません。
 いずれにいたしましても、セーフガードは、自由貿易体制を維持する中で、輸入の増加による国内産業の重大な損害に対応するためにWTO協定上認められた権利でございます。セーフガードの発動の判断に当たりましては、このWTO協定それから関係国内法令等に則しまして、関係各省とよく連絡をとって、適切に対処していきたいというふうに考えております。
吉田(公)委員 WTO交渉というのは、今後ずっと、今百四十六カ国加盟しているのかな、台湾と中国が入って百四十六。その中で、特に農業交渉については、言ってみればアメリカだって農業国だし、フランスだって農業国だし、ロシアは寒いから余り生鮮商品がとれないらしいや、だからそれは別として、とにかく日本に買わせよう、買わせようとしているわけだ。だけれども、それに立ち向かっていくためには、関税一本やりでやっていくなんということは不可能なんだ。
 だから、効率のいい農業、それからいろいろな農業改正をして、そして世界の農業に対応を、どこでも保護をやっていますよ、農業についてはどの国も、それは生産効率が悪いんだから、天候次第でどうにでもなる。価格は不安定、安定しているのは米だけだから。だからそれはもちろんどこでも農業補償していますけれども、しかし、補助金の農業というのはある程度見直さなきゃならない。税制面からいっても、あるいは財源の面からいったって、いつまでもやっているわけにいかない。だから、希望が持てる農業というのを、後継者育成のためにも必要だし、それから世界の農業に打ちかつためにも必要なんだ。
 だって、ほかの産業はやってきたんだから、農業だけができないということはないでしょう。勝っているんだから、みんな。他の工業製品や産業製品は勝っているんだから。農業は絶対できませんとは言えないんだ。
 だから、そういう意味では、効率のいい農業をやっていくためにはどうすればいいんだ、世界の農業に打ちかっていくためにはどうすればいいんだということを、農林省としてはどういう長期的な展望に立って、具体的にどうやっていくのかということの見解をぜひ示してもらいたい。
亀井国務大臣 その件は、先ほどもちょっとそのような質問にお触れになりましたけれども、やはり農政改革、食料・農業・農村基本計画、基本法に基づくこの計画に基づきまして、いろいろの、特に米政策の改革大綱、これに基づきまして、今食糧法の改正をしていただき、そのことも進めておるわけでありますし、農業の構造改革の加速化を図る、こういう面での、担い手の問題、あるいは農業経営の法人化の問題、あるいは担い手への農地の利用集積、こういうことを進めてまいらなければならないわけであります。
 そのような、今いろいろ、この基本法に基づく計画、平成二十二年度の展望、これをお示しをしておるわけでございまして、何とかそれが実現できるように進めていく、また、それが将来の姿、このようにいたしたい、このように思って、各般の改革また努力をいたしておるところでございます。
吉田(公)委員 それから、減反政策についてでありますが、例えば一反歩減反すると幾ら補助金を今出しているのか、その金額を教えてもらいたい。
白須政府参考人 お答えいたします。
 米の減反で、一反歩当たり幾らの補助金が出ているかというお尋ねでございます。
 作物によりましていろいろ相違があるわけでございますが、現行の対策によりますれば、十アール当たり、最高額で六万三千円の補助金が出るわけでございます。
 そこで、現在、この十四年で生産調整によりまして交付されました全体の補助金の額を、いわゆる交付を行われました面積、転作面積で割りますと、反当たりの平均単価というのが出てくるわけでございますが、これによりますと、十アール当たり約三万円ということでございます。
吉田(公)委員 その減反助成金について、全体の予算額は幾らですか。
白須政府参考人 十四年の生産調整の予算額でございますが、千八百五十億円でございます。
吉田(公)委員 千八百五十億円の助成金を出して、そして何もつくらないのか。つまり、米だけつくらなければ、あとはもう雑草を生やかしておいて、そのまま放置していてもいいのか。規制とか、減反政策をした後の農地に対する対応策を何か指示しているんですか。
白須政府参考人 現在の転作の対策は、水田農業経営確立対策ということでございまして、決して何も生やかさないということではございませんで、例えば、麦、大豆、飼料作物といった、自給率の低い、これから伸ばしていくべき作物に対する転作ということでございますと、先ほど申し上げました例えば六万三千円のものが出るというふうなことで、したがいまして、それは作物ごとにそれぞれ違うわけでございます。
 先ほど先生がおっしゃった、例えば、調整水田というふうなことで、水を張りまして水田の保全管理というふうなことももちろんその対策の中には入るわけでございますが、そういうものは単価としては低い額になる。そういうふうに差をつけまして、それぞれ、水田農業の確立という観点から行っているわけでございます。
吉田(公)委員 時間が参りましたからこれで終わりますが、減反というのは政策じゃないよね、これ。無策だと思うんです。そういう意味で、米が余ったから、生産者に補助金を出すからぜひ田んぼを耕さないで、稲を植えないでくれという話じゃないの。減反政策なんておこがましいよ、本当に。政策じゃありゃしない、そんなもの。
 だからこれからは、ちゃんと、農地だ、そこはほかのには売れないんだから。そうでしょう。我々が農業をやろうと思ったって農地法でもって売買ができないんだから、結局だれも買う人がいないんだ、結局放置したまま。減反政策ではなくて減反無策政策だよ、これは。無策政策というのは新しい言葉だけれども、そう言っておくよ。
 これで終わります。
小平委員長 次に、田名部匡代君。
田名部委員 民主党・無所属クラブの田名部匡代でございます。
 議員なりたてほやほやの新米議員でございます。大変緊張しておりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 十分という短い時間でございますので、早速ではございますが、輸入牛肉のトレーサビリティーについて御質問をさせていただきます。
 一昨年のBSEの発生に起因いたしまして、食品安全基本法案を初め、食品の安全に関する法律が多数成立をされました。いわゆる牛肉トレーサビリティー法も先般成立したわけでございます。しかし、この法律は、我が国に流通している牛肉の六割以上を占める輸入牛肉を対象とはしておりません。そこで、民主党を初めとする野党四党は、輸入牛肉の安全、安心を確保するため法案の修正を求めましたが、政府は、輸入牛肉の安全性は確保されているためトレーサビリティーを求める必要がないとして、野党の修正案は否決されました。
 しかし、五月にカナダでBSEの発生が確認されたことから、状況は変わりました。輸入牛肉の安全、安心の問題については、与野党を問わず、早急に取り組むべき課題と認識をいたしております。
 特に、今問題となっております米国産の牛肉についてでございますが、米国は、カナダから生体牛を約百七十万頭、牛肉を約四十万トン、これは二〇〇二年でございますが、輸入していたと聞いております。このため、米国を経由してBSEが侵入する危険が懸念され、政府も輸入牛肉の原産地を証明するように米国に求めております。米国は原産地証明の延期を要請し、農水省が八月末まで延期を受け入れたとお伺いしております。
 そこで、まず、今回の米国に対する原産地証明の義務づけの延期の経緯についてお聞かせ願いたいと思います。それに続きまして、八月末の期限までに果たして米国による原産地証明は可能になるのかどうか、その点を大臣に、今後の見通しということでお伺いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
亀井国務大臣 お答えをいたします。
 今委員御指摘の、本年五月二十日、カナダにおいてBSEが発生をしたことを受けまして、米国を経由してカナダ由来の牛肉が我が国向けに輸出される可能性が否定できない、このことから、六月十日に米国に対しまして、七月一日から原産地証明の実施を要請したところでございます。これに対し、米国からは六月二十日、我が国の原産地証明の要請に対しましてさらに検討の時間が必要であるとして、六十日間回答を延長するよう要請があったところでございます。
 我が国としては、カナダからの生体牛あるいは牛肉等は五月二十日以降米国に輸入されていない、また、カナダからそれまでに輸入された牛肉、屠畜場直行牛については、米国国内で既に消費をされておりましてもうほとんど存在をしない、こう考えられるわけでありまして、また、カナダから輸入された肥育素牛については、頭数が限定的であるということと、屠畜月齢二十四カ月未満ということが考えられることでありまして、米国の説明を考慮いたしましてこの要請を受けたわけでもございます。
 このことにつきましては、先般私、米国に参りまして、ベネマン農務長官に対しましても、我が国の一昨年のBSEの発生以来の対応、あるいはまた本委員会でもそれぞれの委員の方々からも御意見をちょうだいしておりますことをベネマン農務長官にも申し上げ、そして、期限までに我が国の要請にこたえるよう強く要請したところでございまして、八月末までにその対応がなされる、このように思っております。
田名部委員 カナダでの現地調査についてなんですけれども、農水省は担当官をカナダに派遣し、原因究明の状況や今後の措置について調査してきたということでありますが、カナダにおける牛の管理はかなりずさんだったというふうにお伺いしております。BSEの発生源について、米国から感染した生体牛もしくは感染源となるたんぱく質を含んだ飼料が国境を渡り同国に入った可能性もあるという報告を受けたと聞いております。
 私は、北米全体にBSEが広がっている可能性もあるのではないかというふうに思うわけでございますが、カナダにおける調査状況と、米国からの牛肉の輸入が感染経路であったことが否定できないとするカナダ当局の報告書について農水省はどのようにお考えでいらっしゃるか、お聞かせ願いたいと思います。
中川政府参考人 お答え申し上げます。
 七月の三日に公表されましたカナダ政府の調査報告書におきましては、BSE感染牛が米国産である可能性が否定できないというふうにされているわけでありますけれども、その翌日の七月四日に米国の農務省は、これまでアメリカにおいては厳しいサーベイランスをやっている、その結果においても一切BSEは発見されていないということを述べまして、この報告書の可能性を否定いたしております。
 我が国といたしましては、海外で家畜伝染病が発生いたしました場合には、国際機関であります国際獣疫事務局からの通報あるいは発生国からの通報等によりまして、発生を確認いたしました上で必要な防疫措置をとることにいたしております。
田名部委員 私は、発生を確認してからでは遅いのではないかというふうに思うわけで、可能性が少しでもある以上、それを進めていくべきだと思います。皆様がいろいろと御努力をされているのはわかるわけでございますが、原産地証明が延期されている間にも米国からの牛肉の輸入は続いておりますし、先ほど申しましたように、北米全体にBSEが拡大している可能性は否定できないわけでありますから、早急に、国内と同様にトレーサビリティーを導入する必要があるのではないでしょうか。
 民主党を初めとする野党四党は、こうした状況を踏まえて、七月十七日に輸入牛肉のトレーサビリティーに関する二法案を衆議院に提出いたしました。輸入牛肉について、国産牛肉と同等の安全性の確保と消費者に対する適切な情報の提供を実現する必要があり、野党四党提出の二法案の早期成立が必要だと考えておりますが、この二法案について大臣がどのような感想をお持ちになっているか、お聞かせください。
亀井国務大臣 輸入牛肉の安全、安心の確保、これは大変重要な問題、このように認識をいたしております。
 農林水産省といたしましては、本年十二月を目途に実施する生産情報公表JAS規格等を活用いたしまして、任意のトレーサビリティーの取り組みを推進していくことにより、生産履歴情報を幅広く提供するべく努めているところでもございます。
 他方、牛肉輸出国においてBSEが発生した場合には、直ちに輸入を停止するわけであります。また、JAS法に基づく原産国表示義務や食品衛生法に基づく記帳の努力義務を設けるなどの措置が講じられている状況のもとで、BSEの未発生国からの輸入牛肉に対しましてトレーサビリティーを義務づけることにつきましては、国際協定に抵触するおそれがあるわけでもございます。
 このようなことから、十分に、ひとつ慎重に議論が行われるということが必要なことではなかろうか、こう思っております。
田名部委員 輸入牛肉のトレーサビリティーについては、消費者の方々はもちろん、先日、WTO参考人質疑のときに、生産者団体の代表の方もその導入には賛同されております。生産者にも受け入れられるものと思っております。
 この二法案について、国民の立場に立っていただければ、与党の皆様も反対する理由はない、そのように私自身考えます。速やかに成立させることを心からお願いいたしまして、私の初質問を終了させていただきます。ありがとうございました。
小平委員長 次に、後藤斎君。
後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。
 きょうは林業の話をメーンにお話をしたいと思っておったんですが、先ほどもお話が一部出ておるように、食の安全ということで七月一日から食品安全委員会が設置をされ、鋭意、委員会の中では御議論なさっていると思います。ホームページを見ればいろいろな議論の中身が見えてくるんですが、新聞等でも、あの一年半以上前のBSE以降の食の安全という議論が大変少ないような感じもございます。これから、具体的な問題点も含めて、委員会の機能が本当にきちっと基本法にのっとって対応ができるかどうか。
 たまたまきょうの日経新聞に、「食の安全 東京都が評価委」ということで、従来からこの委員会でも議論しておりました「被害未然防止へ情報収集」と、消費者代表も参加をして委員会の設置を認めるような内容の記事が載っておりました。
 まだスタートをして三週間余りでございますが、食品安全委員会の今までの議論、そしてこれから、専門調査会、専門家委員会の設置はまだ決まっていないようですし、海外情報の収集、先ほど田名部委員も御指摘がありましたように、カナダやアメリカのBSEの問題も含めての情報収集も委員会としてなかなか進んでいないような話も聞いておりますが、どんな形でこれから海外情報の収集、専門委員会の設置、そして国民から信頼をされる委員会の運営ということをお考えになっておるのか、冒頭お尋ねをしたいと思います。
梅津政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、今食品安全委員会は体制づくりあるいは枠組みづくりの過程にもございまして、具体的な活動はこれからという面もございます。
 ただ、今月一日発足以来、既に三回の会合、これは完全公開制で行っておりまして、明日、第四回目の委員会を開催する予定でございます。この中で、委員会の運営規程、専門調査会の運営規程、会議の公開等を既に決めております。それから、厚労省から既に、基本法二十四条に基づきまして、残留農薬等の評価について意見聴取の要請を受けているところでありまして、これら案件ごとに専門調査会での評価が必要か否かを検討しまして、必要な専門調査会で評価をしていくことになります。
 この専門調査会につきましては、今御指摘のように、現在、人選の準備を進めているところでございますけれども、年間の評価対象あるいはリスクコミュニケーションの手法などを検討する専門調査会につきましては、一部公募も活用する方向で検討をしております。それから、個別のリスク評価を行う評価対象別の専門調査会につきましては、これは緊急を要するものから設置を急いでまいりたいと思っております。
 なお、今御指摘の海外情報の収集の問題でございます。これも具体的な展開はこれからでございますけれども、現在、関係行政機関との連携による内外の関連情報の一元的な収集や整理の具体的な仕組み、それから国際機関や諸外国の行政機関からのダイレクトな海外の危害発生情報や安全性に関する知見の収集の仕組み、そういったことの詰めを進めているところでございます。
 以上に加えまして、ホームページを開設したところでございますけれども、今食品安全モニターの公募をしております。それから、専用電話の相談窓口の開設を近く行いたいと思っております。さらに、消費者団体等との意見交換など、体制、枠組みの整備と並行して、具体的な活動を徐々に展開してまいりたいと思っております。
後藤(斎)委員 今事務局長がお答えになっていただいたように、多分この委員会の役割というのは、スケジュール的に言えば緊急的に案件が出てくるものと、ある意味では規格基準のようにスケジュールがきちっと年間わかるという、これをまずきちっと国民の前に明らかにしてもらう、どんな形で委員会が運営をされているかということがわかるような形にしていただくことが一番必要なのではないかなというふうに私は思っています。
 先ほどお答えの中にもありましたけれども、関係機関の連携ということで、特に農林水産省と厚生労働省、そして地方公共団体ということで、国の行政機関内、そして地方公共団体、国と地方という二つの役割があると思っております。
 きょうの日経新聞にも、最後に、国と例えば東京都の両委員会の判断が仮に分かれるような場合、混乱を招くようなことにならないように、どんな形で運営をしていくかということも指摘をされているところでもございます。
 具体的にお話をさせていただきますと、四月十六日、内閣委員会、厚生労働委員会、農水委員会の連合審査会の中で、私の方からクローン牛について指摘をさせていただきました。当時、厚生労働省の研究会では、安全だということがとりあえず出て、当時の農林事務次官の方から、出荷は引き続き停止をするということで、安全と安心を分けて議論をされております。
 当時は、谷垣大臣は、委員会がみずから対応することもあるし、農水、厚生労働省、両者から意見を聞いてきた場合、対応する、両方のケースがあるという話をされておりましたが、この点については、まず、農水省の方でこの出荷停止問題についてはこれからどんな形で取り扱っていくのか、お答えをいただきたいと思います。
中川政府参考人 お答え申し上げます。
 今先生が御指摘ありましたように、体細胞クローンの牛につきましては、平成十一年十一月でございますけれども、関係局長の通知によりまして流通の自粛を要請しております。そういう意味では、現在、市場には出回っていない状況にございます。
 こういう中で、先般、厚生労働省の研究班が最終報告書を公表いたしまして、その中で、ちょっと引用させていただきますけれども、クローン牛特有の要因によって食品としての安全性が損なわれることは考えがたいが、新しい技術であることを踏まえ、慎重な配慮が必要というふうに報告書には記されているわけでございます。
 今後の対応といたしましては、私ども、これから、厚生労働省のこの最終報告書を踏まえまして、厚生労働省とよく相談をいたしまして、食品安全委員会に諮問をし、まずは科学的に評価をしていただくことが適当ではないかというふうに考えております。
 あわせまして、国民の方々とのリスクコミュニケーションを図りまして、この取り扱いについては、消費者の方々それから関係業界の方々の意見を踏まえる必要があるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、この問題は食の安全性のほかに消費者の安心という問題でもありますので、私どもとしましては慎重な対応が必要ではないかというふうに考えております。
後藤(斎)委員 先ほども、東京都、地方公共団体との意見が違った場合ということで御指摘をさせていただきましたが、仮に食品安全委員会の中でこのクローン牛は安全性に問題ないという勧告が出された場合、安全委員会と、先ほど農水省のリスクコミュニケーションも含めて今後とも慎重だという二つの意見がある意味では対峙をした場合、食品安全委員会としてはどちらの意見を優先していくのでしょうか。政府としてということでお答えをいただきたいと思います。
梅津政府参考人 お答え申し上げます。
 クローン牛の評価についての経緯は、今局長から説明があったとおりでございますけれども、安全委員会として農水省等から体細胞クローン牛のいわゆるリスク評価について意見を求められるとすれば、これは、関係分野の専門家から成ります専門調査会において、評価の方法も含めて慎重かつ科学的な議論を進めていくことになると思います。その際、この研究班の報告書も科学的知見の一つとして参考にするということと同時に、評価そのものについても、委員会としても幅広いリスクコミュニケーションを行っていくということになろうかと思います。
 今御指摘の、例えば自治体あるいは国の見解が異なった場合という御質問でございますが、私ども、評価そのものはあくまでも科学的な知見と毒性データ等のエビデンスに基づいて主として専門家が議論する点でございますので、評価という観点からいえば大きな違いというのは出てきにくいものだろうと私は思いますけれども、最終的にそれをどのような形で判断するのか、つまり、流通の過程に乗せるのか、引き続き慎重な対応で臨むのか、それは評価の分野といいますよりは具体的な、いわゆるリスク管理と申しましょうか、国なり自治体でのリスク管理上の選択、判断の問題になろうかと思います。
後藤(斎)委員 時間もないので、これで食の安全についてはあれしますが。
 四月の十六日のときにも御指摘をしました、基本法の二十三条の勧告権というところは、フランスでは逆に勧告権を削除する法律改正をすることになっています。なぜかといえば、安全であるということが評価をする一番の基準であることが、BSEの風評被害を含めていろいろな課題になりました。要するに、安全と安心はもちろん完全に対ではないわけですが、そこを食品安全委員会がこれから勧告権というものと、リスク評価とリスク管理というものをどう組み合わせて国民のまさに信頼を得るのかというところに、余り、いや、リスク管理の部分で任せればいいんだということになると、何のために安全委員会がリスク評価を科学的にするのかと。
 これは、まさに消費者団体、消費者代表の方が委員会に入っていないかというよりも、寺田委員長のお話によると、生産者も消費者も、評価委員会、これからの専門家のいろいろな調査会には入れていくよというお話もありますので、そこをきちっと、やはり安全委員会がイエスと言えばイエスなんだという信頼を国民の皆さんから得るような御努力を関係機関とも十分に連携をしながらまず確立していただくことが、二回目、三回目の、BSEのような、三千億、四千億、そして死亡者まで出すことにならないような体制づくりだということを御指摘しておきたいと思いますので、御配慮をよろしくお願いしたいと思います。
 林業の方がちょっと半分しか時間がなくて、大変お待たせしまして申しわけございません。
 大変、今地球温暖化防止ということで、一千三百万炭素トン、三・九のシンクというものも踏まえて、また平成十三年度からの林業基本法、いろいろな基本計画ができながらいろいろな御努力を林業という中でやっていることは、私どもも支持をしたいと思っています。
 ただ、実際、いろいろな山を持っている地域の町村長の皆さんとお話をすると、いわゆる不在村地主、不在村所有者という方が大変ふえて、二年前の調査では四分の一、山を持っている方の二五%がその地域にいないということで山が荒れ放題になっているという中で、森林整備地域活動支援交付金制度というものも政府でつくりながら、地方公共団体と一体になりながら、何とか森林の有する多面的機能の下支えも含めて山を守っていくという意識があると思うんですが、なかなかその森林整備が、不在村森林所有者の方の増加と林業自体が正直言ってもうからない産業であるということの中で森林が荒れていくということが進んでいる中で、今後、林野庁としてどんな形で積極的に取り組んでいくのか。
 私は、先ほど御指摘した支援交付金というのは多面的機能を下支えする大変いい制度だというふうに思っていますが、お聞きをすると、国の予算は百十億、地方から財政支援ということで二百二十億くらいの予算規模しかないというもので、八十兆にも及ぶ多面的機能の森林を下支えされるということには、予算もこれからきちっと確保していかなきゃいけないという思いもあるのですが、その点、いかがでしょうか。
石原政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま委員の方からお話ございましたように、不在村森林所有者を初めとした森林所有者の経営意欲、非常に低下してきております。多面的機能の持続的発揮への支障、その辺がいろいろ心配されているところでございます。
 そういうことから、平成十三年十月に策定されました森林・林業基本計画、これに基づいて適切な森林整備を推進することが重要であると考えております。
 ただいま委員の方からお話ございました森林整備地域活動支援交付金制度、これもそのための一つの方途でございます。何といいましても、森林の現況調査、これをきちっとやっていくということが大事でございますけれども、それに加えまして、十三年の森林法の改正で、実際は十四年から施行になっておりますが、意欲の減退しました森林所有者にかわりまして、受託等によりまして意欲のある森林の経営者が森林施業計画の認定を受けまして造林関係事業の事業主体となることができるよう制度の改正が行われたところでございます。
 それに加えまして、御案内のとおり、林業従事者の確保というのが非常に重要でございます。この点につきまして、平成十四年度補正予算によりまして、森林整備の担い手として必要な専門的技能、技術の習得等を図る緑の雇用担い手育成対策事業、そういうものができましたので、これによりまして担い手の確保に努めているところでございます。
 今申し上げましたように、いろいろな施策を通じまして森林の適切な整備保全に努め、先生から御指摘のございましたような多面的機能の持続的発揮、これに努めていきたいと考えているところでございます。
後藤(斎)委員 ちょっと時間もないので、大臣、最後に、今長官がお答えいただいたように、私は、森林・林業基本計画、これを本当にきちっとやっていくことが、地球温暖化大綱のシンクという部分の吸収源ということで、やはり、二酸化炭素を吸収する対価として森林をきちっとこれから面倒を見なきゃいけないという流れは、七月九日、山村の町村会でつくる森林交付税創設連盟の中で、森林環境水源税(仮称)ということで、その創設を国に求めることを決議もされました。
 私も、この委員会や総務委員会の中で、森林保全税みたいなものをきちっと仕組んで、八十兆とも言われている多面的機能の対価、そして地球温暖化にも資するということで、本年度はまだ、従来であれば、森林整備の一般公共事業予算というのは通常は五千億弱のようでございますが、平成十五年度は補正がなくて、通常のベースに比べると一千六百億から七百億まだ不足をしているということは、逆に財源がないということで、森林整備に支障を来すということも逆説的に言えばあるのかなというふうには思っています。
 大臣、そんな中、これから、山村地域の活性化ということだけではなく、バイオマス・ニッポンということを、大臣もその閣僚の中の有力なメンバーとして、木材を使ったもの、畜産の廃棄物とかいろいろな使い方があるんですが、ぜひそういう中で、先ほど長官からお答えをいただいた森林整備地域活動支援交付金、これは国が半分、地方公共団体が半分ということで、その交付金も、これからある意味では地方交付税が減っていけばそれも減少してしまう。この制度自体、五年間の時限立法ですから、平成十八年には終わるということで、私は、長くそれをきちっと、地域の森林所有者、地域の皆さんが森林を守っていくという意思と、それがひいては国内だけではなく世界の地球温暖化に資していく、そういうことも含めて、安定的な財源というものを森林保全税みたいな形で仕組んでいくことがどうしても必要だと思っております。
 ぜひ大臣もその点について政府の中で御尽力いただくとともに、ぜひ大臣のこれからその保全税創設に向けての御決意をお聞かせいただきたいと思います。
亀井国務大臣 森林の整備、これにつきましては、一般財源の確保とあわせて、今御指摘の地球温暖化に対します対策税であるとか、また税財源の措置につきましては、これに取り組んでいくことは必要、このように思っております。森林整備のために、いろいろの施策を進めなければならない課題は山積をしておるわけであります。そういう面で、今御指摘のいろいろの、また地域でも税のことにつきましてもいろいろ今検討されておるわけであります。
 政府といたしましても、そのような森林の整備が図られるような税、特に地球温暖化の問題につきましては、今いろいろ、中央環境審議会税制専門委員会、こういうところでも議論をされておるわけでありまして、このような中で森林整備がなされるように、私ども、積極的な対応を図ってまいりたい、このように考えております。
後藤(斎)委員 ぜひ大臣、最大限の御努力をお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
小平委員長 次に、楢崎欣弥君。
楢崎委員 民主党の楢崎です。
 きょうも三十五分という限られた時間、そして個人的にもいろいろあって情緒不安定ですので、簡略明快な答弁をお願いしたいと思います。
 きょう、私は水産に関してお伺いいたしますけれども、まず、このところの大臣の精力的な外交活動に敬意を表しておきたいと思います。
 そこで、まずIWCに関してお伺いしますけれども、ベルリンで開催されました年次総会、代表団の方々には御苦労さまと申し上げたいと思います。しかし、結果として我が国にとっては大きく不満が残るものであったと言わざるを得ない、このように思います。
 今やIWCは、反捕鯨国が妥協することを視野に入れない主張を掲げて論争し、突っ張り合う状況がこのところ続いていると思います。このことを考えたときに、保護と同時に資源の持続的利用を考えるというIWCそのものの存在意義が問われるところまで来ているのではないかと思いますけれども、大臣はどのように認識をお持ちでしょうか。
亀井国務大臣 第五十五回のIWCにおきまして、反捕鯨国の非科学的また一方的な主張が支配する趨勢となった、こういうことは本当に極めて遺憾なこと、このように思っております。
 IWCは、本来、鯨類の適当な保存を図って捕鯨産業の秩序ある発展、これを実現することが目的であるわけでありまして、反捕鯨国が多数をもって利用を認めない行動をとっておる、鯨類の持続的利用が実現をしていないわけであります。
 しかし、近年、持続的利用を支持する国が増加しておる。今回、あのような結果になりましたが、その差が接近していることにやや期待もするわけでありまして、今後とも、持続的利用の実現に向けて支持国の増大、このことに努力をすることが必要なことではなかろうか、こう思っております。
楢崎委員 大臣、そう言われますけれども、今度、IWCの内部に反捕鯨国の主張に沿った保存委員会ができましたよね。このような調子じゃ、商業捕鯨再開なんて夢のまた夢という感じが私はするんですね。保護にだけ肩入れするような委員会設置というのはIWCの理念にも反すると思うんですけれども、このような状況の中で毎年総会が開かれても、変化はそう望めないと私は思うんですよ。いかがですか。
亀井国務大臣 委員御指摘の点、私も十分理解をするところでもございます。
 保護委員会におきまして、今後、鯨類の保護に偏った議論が行われることが懸念をされるわけでありまして、具体的にどのような形でどのような議論が行われるのか、現時点では若干不明なところもございます。
 我が国といたしましては、この保護委員会への対応につきましては、まず情報収集に努めるとともに、委員会へ出席した上で対抗策をどうするか、あるいはまた委員会自体への欠席などの選択肢を検討したい、このように考えておるわけでありまして、いわゆる同委員会から本会合に対して保護に偏った勧告が行われる場合には、持続的利用支持国と共同して強く反対をする考えでおります。
 現在、IWCは反捕鯨国が数で上回っていることでありまして、急激に情勢を好転させることは難しい、このように考えております。持続的利用支持国も増加をしておりまして、まず過半数を獲得し、持続的利用の考えを反映した決議が採択されるよう努力をいたさなければならない、このようにも考えております。
楢崎委員 努力は認めますけれども、実効ある対抗策はありますかね。ましてや、鯨は見物するものというようなあほな論理で、我が国の科学的調査とか伝統と文化、これを一顧だにしない今のIWCに加盟を続ける価値があるとお思いになりますか。
亀井国務大臣 IWCは捕鯨を管理する国際機関であるわけでありまして、鯨類の持続的利用の実現、これは今委員からも御指摘の大変困難な状況にある、このように思います。
 そこで、IWCへの今後の対応につきましては、その動向を見きわめた上でいろいろのオプション、すべてのオプションについて検討する、こういうことが必要なこと、このように思っております。
楢崎委員 動向はもうわかっているんじゃないですか。小泉総理はIWCを脱退しないという意向のようですけれども、ここまで来れば、他の捕鯨国や捕鯨支持国と、保護と捕鯨産業の秩序ある発展を図る本来のIWCの理念に沿った、あるいはしっかりとした資源管理制度が確立された新しい管理機関をつくることも視野に入れるべきではないかと思いますが、いかがですか。
亀井国務大臣 国連海洋法条約、これに基づきますれば、鯨類を含む高度回遊性魚種は、排他的水域の内外を問わずその保存を確保し、かつ最適利用の目的をも促進するための国際機関を通じての協力を行う必要もあるわけでありまして、そういう中で、今御指摘のいわゆる支持国での新たな管理機関の設立、こういうことでございますが、このことにつきましても、IWCの枠内で日本の主張が認められるよう鯨類の持続的利用を支持する国の拡大に全力を尽くす、そして、それとともに、新たな管理機関の設立につきましても、その可能性について検討を続けていきたい、このように考えております。
楢崎委員 どうもはっきりしないんですけれども、脱退は選択肢にないということですか。それとも、今後の動きを見きわめるといいますか、そういう中で、状況いかんによっては選択肢の一つにもなり得るということですか。もう一度お答えください。
亀井国務大臣 すべてのオプションと先ほど申し上げましたとおり、そのような中で検討してまいりたい、このように考えております。
楢崎委員 では、選択肢として除外しないというふうに受けとめましたけれども、今のは政治的にも大変大きな発言だと思いますよ。もう答弁はいいですけれどもね。
 ですから、今や反捕鯨国に成り下がっていますので、また捕鯨再開の科学的正当性というものをもっともっと声高に訴えていただきたい、そして脱退も選択肢の一つに入れるべきである、このように申し述べておきたいと思います。
 次に、有明海再生問題についてお伺いをいたします。
 韓国版諫早湾干拓と言われるセマングム干拓事業について、韓国の司法は自然環境の保全に重きを置いた決定を下したようですけれども、諫早干拓訴訟においても、我が国司法の良識ある決定を期待したいと思うところです。
 そこで、私は、四月十五日の当委員会において、ノリ漁業被害者の救済問題を取り上げたわけです。有明海特措法二十一条、二十二条に基づく漁民救済策を早急に検討すべきだと申し上げましたけれども、それに対しまして、当時の木下水産庁長官は、まさに有明海特措法二十一条の趣旨を体して幾つかの対策を講じているところでございますと答弁されておられます。
 これまで、具体的にどのような措置をとってこられましたか。
田原政府参考人 お答え申し上げます。
 前長官が当委員会でお答えしました具体的な中身ということでございますけれども、まず一つは、融資面ということでございます。この融資面につきましては、沿岸漁業経営安定資金等のいわゆる低利融資制度の活用、あるいは十二年度に貸し付けられました既貸付金等の償還猶予、こういったこと等につきまして、農林公庫でございますとか融資機関につきまして、四月十日付で依頼を行っております。
 それから、漁業共済の関係でございますけれども、十四年度漁期のノリ不作に伴います共済金の支払い、これをできるだけ早期に行うということでございまして、有明四県合計でございますが、過去最高の約三十二億円の共済金、このほとんどは五月末までに支払い済み、かような状況になっております。
楢崎委員 そう言われるのはわかっていますけれども、今言われたことが徹底していないという面もあって、実効ある救済措置を求めるものですけれどもね。
 私は、以前から、有明海異変による被害というのはノリだけではない、実は底生生物が大打撃を受けている、当然関係漁業者も被害者であるということを訴えてきたわけです。その被害者の方々も、原因は諫干工事に起因すると今訴えておられるところですけれども、政府の方は、因果関係がはっきりしないということで突っぱねておられるわけですね。しかし、生活疲弊から自殺未遂者まで出ているという現状を見たときに、やはり、二十一条、二十二条もさることながら、実効ある救済を図る必要があると私は思うんですよ。もう一度お答えください。
田原政府参考人 お答えいたします。
 いわゆる有明特措法二十一条、二十二条に基づく措置の関係でございますけれども、二十一条では、有明海あるいは八代海の海域において赤潮等による漁業被害が発生した場合云々ということで、必要な資金確保等の措置のこと等が触れられておりますけれども、私どもといたしましては、こうした赤潮等によります漁業被害の発生という場合におきましては、必要な資金の確保、融通のあっせんに努めたいということで、具体的にでございますけれども、貝類を採捕しますような漁業者の方々に対しましても、災害によります被害につきましての沿岸漁業経営安定資金の低利の融資制度の活用でございますとか、あるいは、歴年の漁業不振ということで漁業経営の維持が困難である場合は、いわゆる負債整理資金でありますと漁業経営維持安定資金、こういったもののあっせん等、こういったことに努めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
楢崎委員 どうもおもしろくない答弁ですね。
 それで、関係者の方々が、何度か水産庁、農村振興局に対して、非常に苦しい状況を訴えておられる。そこで、現時点で対応可能なすべての救済策、また将来に展望が見出せるような救済策を早急に講じていただきたいと思うんですよ。そこで、大臣の所見をお伺いしておきたいと思います。
亀井国務大臣 今、長官からも答弁申し上げましたが、この特措に関する法律、赤潮等による漁業被害が発生した場合においては、必要に応じて融資の円滑化やあるいは既貸付金の償還の猶予、あるいは低利融資制度の利用等により漁業者の救済に努めてまいりたい、このように思っております。
楢崎委員 一辺倒の答弁ですけれども。漁民の救済要請に対して誠意を持って対応していただくことを要望しておきたいと思います。
 次に、短期開門調査に伴う被害補償の問題ですけれども、私は、同じく四月十五日の質問で、締め切ったことによる被害の因果関係は認めないで、あけたことによる因果関係は認める、そういう、認めたいときと認めたくないときの、そういう農水省のダブルスタンダードといいますかを批判すると同時に、開門反対派の漁協を懐柔するような支出を認めるわけにはいかないと私は申し上げました。
 その上で、被害が出たという因果関係を示す資料の提供を求めましたけれども、六月五日の日にやっとその資料の提供を受けました。それがこれですね。「開門調査に伴う魚介類の漁獲高減少に係る因果関係」とあります。この調査の委託先を聞きますと、福岡市にある九州環境管理協会ということでしたので、地元でもありますし、私、行きましたよ、六月十三日に。ここは福岡県の機関なんですけれども、環境調査の先駆け的な企業でして、現在は県の天下りもいない。そういう意味では、調査研究一筋のまじめな企業だという印象を受けました。
 私は、この因果関係を示す資料をもとに聞き取りをしたわけですけれども、問題が多岐にわたったものですから、回答は後日ということになりました。そのときに企業上の守秘義務があるということも言っておられましたけれども、六月十七日にその回答書が届きました。それがこれです。案の定、ほぼゼロ回答でした。
 しかし、やはり行ってみるものですね。おもしろいことに、二通りのゼロ回答があったんですよ。一つは、「委託契約の報告内容に関わることであり、秘守義務により当方から直接回答することは差し控えさせていただきます。」そして、もう一つは、「委託契約の業務範囲外のことであり、当方は全く関知しないことから回答できません。」これは何を物語るんですかね。私はこの資料をもとに質問をしている。つまり、私が提供を受けたこの因果関係を示す資料の中には、九州環境管理協会の調査結果に基づかない、つまり農水省の作文が入っているということを物語っているんではありませんか。思い当たる節、ありませんか。
太田政府参考人 お答え申し上げます。
 現在の補償の問題につきましての検討でございますけれども、当然のことながら、専門的な見地からの調査業務を発注して、その中で検討すべきもの、それから当方として主体的に取り組むべきもの、そういったものを総合的な形で対応策を検討していることでございまして、その中ですべて書かれておらないことをもってどういう関係にあるかという形の答えにはならない、すなわち、委託しておりますのは全体の対策のもちろん部分でありますので、その点を委員には御理解賜りたいというふうに思います。
楢崎委員 理解できないから質問しますけれどもね。では、具体的にこの中身についてお伺いしたいと思います。
 まず、開門による濁りの拡散ですけれども、資料によれば、「排水門を中心として、海域の表層を広がっており、その範囲は湾奥に限られ、湾央までは及んでいない。」それなのに、最も遠い小長井が、小長井町の漁協が被害の対象になっている。調査と矛盾するんじゃないですか。
太田政府参考人 先ごろ公表いたしました短期開門調査の報告書によりますと、海水導入中の濁りの拡散につきましては、北部排水門及び南部排水門を中心として、湾口方向を長軸に楕円状に拡散しておるという状況になっておりまして、その範囲は湾央にまでは及んでおりません。湾央といいますのは、距離の問題というよりは、むしろ位置、要するに岸からの中央という意味合いを指しております。
 また、海水導入前の諫早湾内の濁度は、表層でおおむね十というあたりの数字で推移しておりましたけれども、海水導入中には、濁度が湾奥部でピーク値五百から九百程度まで上昇いたしております。
 浮遊物質量につきましては、海水導入前は二から十三ミリグラム・パー・リッターでございましたが……(楢崎委員「濁度は次に聞きます。今は濁りの拡散を聞いているんです」と呼ぶ)はい。
楢崎委員 九大の経塚先生、この方の調査によれば、今局長言われましたように、南部排水門から出た排水は、沿岸沿いから島原半島の方に行くんですね。北部、潮受け堤防に向かって右側、北側ですね、北部から出たものは、なぜか小長井を避けるように湾央に流れるんですよ。とにかく、そのことを指摘しておきますけれども。
 今言われました濁度の問題。資料では、今言われましたことが書いてありますよ。「海水導入前の濁度は、概ね十で推移していたが、海水導入の開始から上昇し、そのピーク値は、五百以上九百程度まで上昇した。」と書いてあります。私、びっくりしたんですよ。たしか、当時農政局が毎日速報していたと思うんですが、それによる短期開門調査結果データは、調整池内でさえ最大値は四百程度ですよ。しかも、急速に減少していっている。海域ではせいぜい二十台だったと私は記憶しているんですけれども、この五百以上九百という数値は、いつどこで観測されたんですか。
太田政府参考人 現在その数値そのものをちょっと手持ちございませんので、必要であれば後ほど御説明をしたいと思います。
楢崎委員 後で結構ですけれども、要するに、五百以上九百という数値自体もアバウトでしょう。正確な数値もそのときに出してくださいね。
 次に、アサリの生息状況の事前・事後調査ですけれども、へい死率は「明らかな差が認められた。」とありますね。具体的な数値が示されていません。根拠となる数値を示さないで因果関係があるとはならないんじゃないですか。データとも言えない。これも、明らかな差があるとの根拠になった数値を、今答えられるんなら今述べてください。
太田政府参考人 まことに恐縮でございますが、へい死率そのものの数字については、補償額の算定に直接絡む関係から、明らかにすることが現時点でちょっと難しいことを御理解賜りたいと思います。
 海水導入前の四月におけます現地での生息状況の調査、それから海水導入後六月と九月におけます現地での生息状況調査、これにおきましてアサリのへい死率に明らかな差があって、このへい死率の上昇部分が短期開門調査によるアサリへの影響と判断したものでございます。
楢崎委員 国費投入するのに、その根拠となる数値を示せないとか、そういう答弁、ここで通るわけないですよ。それは数値を出してください。出された数値についてもこっちはチェックしますからね。
 次に、アサリの漁獲高についてですよ。漁獲量について、「過去三ケ年平均と平成十四年の漁獲量を比較した結果、漁獲量の減少が見られた。」こうありますね。これはまさに被害を受けたということの根拠になっているんじゃないですか。だから補償しろというんじゃないですか。九州環境管理協会は、この件に関しても、当方は全く関知しないことから回答できないと言ってきているんですね。どのくらい漁獲量、減ったんですか。数値で示してください。
太田政府参考人 この点につきましても、補償額の算定因子となる数字でございますので、明らかにすることは困難な状況にございます。
 私どもといたしましては、農林水産統計資料、それから漁協からの聞き取りによります調査を行い、魚類におけます平成十四年の漁獲量は、直近三年の平均と比較して明らかな減少が見られたというふうに判断したものでございます。
楢崎委員 そういう数値を出せないという答弁は、はい、わかりましたというわけにいかぬですよ。数値を出してください。
 それから、だれが聞き取りしたんですか。農水省が聞き取りしたんでしょう。大体、湾内の開門反対派漁協の漁民からの聞き取りであれば、答えはもうわかっているじゃないですか。とてもじゃないが、これも科学的データとは言えませんね。
 そこで、ここに開門調査報告書(概要版)があります。これはことしの五月に農林水産省が配付したものですから、お持ちの委員の方々もおられると思います。ここに、「この調査は、開門総合調査運営会議(座長 塚原博九州大学名誉教授)の指導・助言を得て、とりまとめたものです。」とありますね。このもとになったデータは、いわゆる九州環境管理協会に委託した調査なんでしょう。どうですか。
太田政府参考人 委託した調査そのもの、すべてが委託した調査の結果ということではなくて、その後の検討、当方で行ったさまざまな調査、そういったものを総合的にまとめていただいたものでございます。
楢崎委員 まあ同じでしょうが、要するに、現地調査期間もどちらも平成十四年の四月一日から十二月十日になっていますし、海水導入量も六千六百万立米となっております。まあいいでしょう。
 この調査報告書によれば、こうあります。「海域の水生生物は、海水導入前後の変化はほとんどみられませんでした。」この調査報告書ですよ、概要版。おかしいでしょう。どこにも影響があったなんて書いてないんですよ。これをもとに突っぱねればいいじゃないですか。いかがですか。
太田政府参考人 短期開門調査でございますけれども、調整池に海水を導入することによりまして、調整池や海域における流動、水質、生物などの環境にどのような変化が生じるのかを現地で観測し、開門総合調査の一環であります現存干潟での現地調査を踏まえた干潟浄化機能調査や、コンピューター解析によります流動解析等調査の結果とあわせて、有明海の環境への影響をできるだけ量的に推定することを目的といたしております。
 このために、短期開門調査におけます現地観測では、調整池への海水導入によります海域での環境変化についても科学的知見を得る観点から、環境変化の範囲を把握することができるよう観測地点を設定いたしますとともに、調査対象となる水生生物につきましても、生物環境への影響を把握することができますよう、プランクトン、魚卵、稚仔魚、底生生物などを対象として調査を実施したところでございますが、漁業におけます漁獲対象となる魚介類につきましては、各漁場におけます生息状況を網羅的に調査するようなことまでは実施をいたしておりません。
 一方、短期開門調査に先立って実施いたしました水質、潮流などの影響予測調査によりますと、開門調査による水質などへの影響は諫早湾内にとどまるが、排水による濁りなどが拡散し、アサリ漁場などへ浮遊物質の堆積などによるアサリのへい死などの可能性が考えられましたことから、アサリ養殖場を中心に、短期開門調査としての現地観測とは別に、開門調査前後のアサリなどの生息状況調査、漁場監視を実施したほか、魚介類の漁獲量調査などを行ったところでございます。
 この結果、開門調査によると見られますアサリのへい死などで漁獲高の減少が見られたために、その損失について補償を行うこととしたものでございます。
楢崎委員 それは水生生物の中身はわかっていますよ。その中に底生生物も入っているわけですからね。しかし、ここに書いてあるでしょう、海水導入前後の変化はほとんど見られぬと。これをもとに突っ張ればいいじゃないですか。
 いいですか。その補償の対象となるのは、小長井、瑞穂、国見の各町の四漁協ですね。小長井町と隣接する佐賀県太良町の大浦漁協、ここは小長井町の漁協とほぼ漁場が一緒なんですよ。にもかかわらず、補償の対象から外れている。どうも、漁民の間に温度差をつくるという、私からすれば嫌らしいやり方ですね。やはり、開門反対派漁協に対する、対するというか、約束していたと思われる懐柔策、また、中長期開門調査を求める漁民との間に分断を図る政治的な措置というふうに私は思いますし、そういう支出を認めるわけにはいかない、このことを再度申し述べておきます。
 それから、今言われました浮遊物のことですけれども、四月末から発生しました、いわゆるなぞの浮遊物と言われるものですけれども、これは半透明から白色に近い粘質状の物質で、これが漁網に付着して漁ができない被害が出たわけですけれども、発生原因、その正体はわかりましたか。
田原政府参考人 お答えいたします。
 いわゆるなぞの浮遊物と言われているもの、五月二十日前後には終息したというふうに言われておりますけれども、この原因につきましては、私どもの独立行政法人水産総合研究センターの西海区水産研究所ですとか、長崎県、熊本県、こういった水産試験場が参加いたしまして、五月と、きのう、七月二十二日、二回にわたって開催されております。
 その結果によりますと、有明海において発見された粘質状浮遊物は、底生生物等の生殖活動等に伴って海水中に放出された粘質物が変質しながら海底上や海水中を浮遊する間に底泥や動物、植物プランクトンが付着したものと考えられる、こういうふうなことをきのうの検討会議では出しているということでございます。
楢崎委員 この浮遊物というのは、まず諫早湾で発見されて、続いて島原半島の方で確認されているんですね。干拓事務所の説明によると、諫干工事では、土壌改良剤として、今年度までに一万五千トンの生石灰が使用されているとのことです。
 そこで、ノリ養殖技術の確立者であります太田扶桑男さんという方の調査によれば、浮遊物には石灰粒子が付着した海藻が多数混在していて、その石灰粒子によって海藻の細胞内粘質物が溶かされて、それが浮泥に付着して浮遊物になったと考えられるとしておられるんですね。
 その発生直前の四月二十七日から四月三十日までの四日間で、調整池から、これはちょっと単位があれですけれども、千八百万トンの排水が行われていると聞いているんです。ですから、太田さんによれば、石灰粒子がまじった腐水が排出されたことが原因だと指摘されておられるわけですけれども、この意見についてはどうお考えでしょうか。これを最後にいたします。
太田政府参考人 御指摘のような御意見があることはお聞きしておりますが、その詳細は承知しておりませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、石灰の影響そのもの、これは、因果関係とは別に、我々としても適切な対応をして、影響の生じないような工事を実施している状況にございます。
楢崎委員 まだ原因もはっきりしていないと言っているんですから、だからこれは違うということも言えないはずですから、これはまた改めてやります。
 終わります。
小平委員長 次に、江田康幸君。
    〔委員長退席、鮫島委員長代理着席〕
江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。きょうは、三十分間、短い時間でございますが、質問をさせていただきます。
 質問内容は、WTOの農業交渉関係について若干、そしてきょうは、以前より取り上げたいテーマでございました林業政策について質問をさせていただきたいと思っております。
 まず、WTOの農業交渉関係についてでございますが、私も、本年三月に、衆議院の訪欧派遣団としまして、松岡団長を初めとして超党派でジュネーブに、またフランスに行ってまいりました。その際、ハービンソン議長ともお会いしまして、それで厳しい、激しい交渉を行ってまいりましたが、アメリカ、ケアンズとの隔たりは非常に大きいものがありまして、依然厳しい状況が続いていると認識しております。
 この訪欧の中で、フランスのランベール補佐官と我々会いました。そのときの指摘でございますが、今後の交渉においては、開発途上国の期待にこたえて、開発途上国と組むことが重要であるという指摘を彼はしておりました。
 このWTO農業交渉というのは、もちろん開発途上国が一つの主要な勢力となっておりまして、我が国の主張を反映させるためには、この途上国の理解を得ることが重要なのではないか、重要な戦略ではないかと考えております。アメリカ、ケアンズが主張しています大幅で一律的な関税削減になりますと、アメリカ、ケアンズの輸出国のみを利するだけでありまして、開発途上国のためには一切何にもならない、そういう議論をもっと展開して、EUと連携して開発途上国を味方につけるべきであると考えます。
 そこで、このような途上国への対策を初めとしまして、今後のWTO農業交渉における我が国とEUの戦略をどのように考えておられるか、私、この点にきょうは集中しまして、焦点を当てまして、大臣にお聞きしたいと思っております。よろしくお願いします。
亀井国務大臣 今御指摘のように、WTO加盟国百四十六カ国の中で約百カ国が途上国であるわけでありまして、この存在は重要なわけであります。我が国といたしましても、EUなどと連携して働きかけを強めているところでもございます。また、それぞれ議員外交等々を通じましていろいろ御尽力をちょうだいしておりますことに感謝申し上げる次第でございます。
 また、この農業交渉の重要な項目の一つであります関税引き下げ方式につきましては、日本、EUはいわゆるUR、ウルグアイ・ラウンド方式を主張しておるわけでありまして、米国、ケアンズ諸国などはハーモナイゼーションを主張しておるわけであります。途上国に対しましては、ハーモナイゼーションの考え方でまいりますれば、一部の先進輸出国を利するのみでありまして、途上国の利益につながらないわけであります。
 我が国といたしましては、途上国向けに一般特恵措置の拡充、後発途上国に対する無税、無枠措置を行ったなど、現在いろいろ説明をし、ウルグアイ・ラウンド方式に過半数である七十七カ国の支持が集まっておるわけでありまして、今後とも、EUなどフレンズ諸国との連携を軸に、途上国に対しましても積極的に働きかけを行い、過大な要求を行っている米国、ケアンズ諸国に対しまして現実的な対応を求めることによりまして、我が国の主張が反映された交渉の結果が得られるよう全力で尽くしてまいりたい、こう思っておるところであります。
江田(康)委員 ともかく、WTO農業交渉に関しましては、アメリカ、ケアンズの主張等を通せば、それは日本の農業は壊滅的打撃を受けるということはもう目に見えて明らかでございますので、いかに味方をつけて日本の主張、ウルグアイ・ラウンド方式を基本とする関税引き下げ、そういうところに戦略的に議論を持っていっていただきたい。まずはカンクンへ向けてということでございますので、全力でそれに取り組んでいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 WTOの農業交渉関係についてはこれで終えまして、以前より取り上げたいテーマでございました林業施策について、私の方から質問をさせていただきます。
 私、九州の比例区の衆議院議員でございます。九州山地、熊本、大分、福岡、そして宮崎、あらゆる県が林業また森林を有するところでございまして、非常に重要な政策のテーマでございます。
 まず、私、いろいろな考えをきょうは述べたいと思っておりますが、我が国のこの林業危機というものは、これはもう叫ばれて久しいものがございます。そして、とかくその危機はどうしようもないというものと思われがちでございますけれども、しかし、日本人の多くは、木材の製品に親しんで、日本の風土になじむ国産材を使いたい、この国産材を使いたいという願望を皆持っております。一方、後で申し上げますけれども、これまで考えてもみなかった木材輸出も、輸出ですよ、これも、日本からの中国への輸出が現実のものとなろうとしている、こういう動きがございます。
 したがって、私は、政策誘導いかんによっては国産材の時代が到来し得る、そういう確信を、またそういう方向に持っていかなくてはならないと強く思うものでございます。
 以下、こうした観点から質問をさせていただきます。
 一般的には、国内市場は価格の安い外材に押されて、我が国林業はとても太刀打ちできない、そういうふうに思われがちでございました。昭和三十年代、外材輸入が本格化した当初は、確かに外材は大変安くてシェアを伸ばしてきました。しかし、その後、外材と国産材との価格差は縮まってまいりました。それにもかかわらず、外材のシェアは縮むどころか逆に伸びてしまった。このような動きを踏まえて、現在、外材と国産材との価格の関係をどのように政府は見ておられますか。
石原政府参考人 お答え申し上げます。
 近年の木材価格は、住宅需要の低迷等によりまして、国産材、外材とも下落傾向で推移しております。
 ただいま委員の方からお話ございました価格でございます。私、十八年ぶりに林野庁へ戻ってまいりましたけれども、まさしく委員の方からお話ありましたように価格が逆転しているということでございます。
 国産材につきましては杉、それから外材につきましては米ツガ、これをとりまして比較してみますと、丸太価格、これは長さと太さが異なりますので単純な価格の比較は困難でございますけれども、一立方メートル当たりで比較しますと、平成四年以降、杉が米ツガを下回って推移しております。最近の時点、すなわち平成十五年の六月時点をとりますと、杉が一万四千百円、それから米ツガが二万一千三百円となっております。
 また、製材品につきまして同じく杉と米ツガで比較しますと、平成九年以降、杉が米ツガを下回って推移している。これもことしの六月時点の数字でございますけれども、一立方メートル当たり杉が四万一千九百円、それから米ツガが五万三百円と、丸太と同様に杉の方が安くなっているというような状況でございます。
江田(康)委員 今石原長官から答弁していただきましたように、外材は国産材の価格よりも高いわけですね。国産材が安いんです。ここが基本的な認識としてまだ多くの方々、また行政の方々にもよく、林業が経営も非常に厳しい、疲弊し切っている、その原因は外材が安いからだ、どんどん外国から安い外材が入ってくるからだというようなことを久しく言われてきました。しかし、今の答弁にもありましたように、外材は国産材の価格よりも高いわけです。国産材は安いんです。それにもかかわらず、今なおシェアの八割以上は外国産、外材に支配されているわけです。
 ということは、国産材と外材との市場競争というのは価格だけじゃない。価格は勝っているというか、国産材が安いわけですから、競争には問題ない。そのほかの原因があるのではないかと。
 国産材の製品の寸法とかが規定どおり正確なのか、よく乾燥されているかといった、こういう品質面がどうも劣っている。乾燥率も外材は非常に乾燥がよくて、反りもなく、曲がりもなく、狂いもない、そういうものがニーズに合っているんだ、そういうこと。それから、注文に応じて均質な製品を大量に、また安定的に供給できるか、こういうところも外材がまさっている。品質面、それから安定供給面、こういうようなところで、価格ではなくて、そこで国産材は負けているんだということがどうもその本質であるかのように考えます。この考えについてどうでしょうか。
石原政府参考人 ただいま委員の方からお話があったとおりでございます。
 平成十二年に住宅の品質確保の促進等に関する法律が施行されました。これによりまして、住宅の品質それから性能に対する消費者及び住宅生産者の関心が高まってきたということでございまして、このため、木材についても、寸法精度や含水率等の品質、性能の安定した乾燥材や集成材等の供給が重要となっているということでございます。
 これに国産材が対応できているかということになりますと、国産材は、乾燥材の生産が製材品全体の約一割程度と非常に少ないということ、これに加えまして、集成材、合板等の高次加工された製品への利用も少ないという状況にございます。そして、これも今委員の方から御指摘があったとおりでございますけれども、小規模な流通加工業者を通じた供給が多いということもございまして、供給ロットが小さくて安定的な供給が確保されにくい、そういう状況にございます。
 このように、国産材は、品質、性能の確保及び安定的な供給といった面におきまして、一般的に外材に比べて競争力が低い、そういうふうに認識いたしております。
江田(康)委員 私の考えに対して、そのとおりであると長官も申されました。すなわち、国産材が外材にシェアを奪われて国内林業が不振にあえいでいることのその根本的な原因は、実は価格ではなくて価格以外の側面での競争力が欠如しているということにある、このように考えるわけであります。そのことは長官も正しいと申されました。
 このことを通して痛感いたしますのは、結局これまでの林業政策は、木を植えて立派な森林に育てることを重視している、そのこと自体は立派に目的を果たしてきたと、これは高く評価できると思います。しかし、そこで育った木とか木材を、消費者のニーズに合わせてどのように立派な製品、商品として仕立てて、外材との市場競争に勝っていくかという川下対策が弱かったのではないかと思うわけでございます。
 そこで提案でございますが、住宅建築におきましては、大規模需要者のニーズにもこたえられるように、品質、性能が確かな集成材の製品を大量かつ安定的に供給する必要があり、国産材も新たに集成材や合板等に使用していくことが重要であると思っております。
 近年、住宅の柱などに使われる構造用の集成材の需要が伸びているんですね。これに伴って、集成材の原料となるラミナと呼ばれる板への需要もふえている。また、内装材、床板、そういう板材の需要も非常に顕著になってきている。この木材需要というのは、一般製材品の角類から板類へと、その需要、ニーズはシフトしている、このように認識しております。
 このように、そういう集成材、そして合板、板材、これに積極的に取り組む製材業者等に対して一定の支援措置を講ずるとか、国産材需要拡大のための積極的な誘導策を私は展開すべきであると考えます。そうすれば、国産材時代、また国内の林業がよみがえってくる、そのように考えるわけでございますが、林野庁はこうした課題についてどのように取り組んでいく考えなのか、お伺いしたいと思います。
石原政府参考人 確かに、これまでの林業政策、どうしても川上の方に重点が当たっておりまして、川下対策が不十分であったという御指摘はそのとおりであろうかと思っています。
 しかし、林野庁といたしましても、森林・林業基本計画に掲げる木材の利用目標を実現するために、平成十四年二月に、地域材利用の推進方向及び木材産業体制整備の基本方針というのを策定いたしまして、木材産業の構造改革に今取り組んでいるところでございます。
 特に、木材需要を拡大する上で重要な分野でございます住宅建築、何といいましても、基本はこの住宅建築、これに対応するというのが大事でございます、それに地域材を利用していただくということが大事でございますので、大手住宅メーカー等の大規模需要者のニーズに応じた、品質、性能の確かな製品を低コストで安定的に供給する体制づくりが必要であると考えております。
 これまではどうしても柱中心で、地域の大工さんあるいは工務店に目が向けられていたわけでございますけれども、木材の需要拡大を図るという意味では、大手住宅メーカー、これは何といいましても大量の消費が行われるわけでございますので、こういう方面に目を向けて、これから川下対策を進めていくことが重要であるというふうに考えております。
 こういうこともございまして、林野庁といたしましては、本年の三月二十七日に、国産材新流通・加工システム検討委員会というのを立ち上げました。この検討委員会におきまして、地域材を使用した集成材や合板等を大手住宅メーカー等の大規模需要者に供給するための方策等について今検討を進めているところでございます。本検討会の報告を踏まえて、必要な施策の展開に努めてまいりたいということでございますけれども、集成材とか合板、こういうものにうまく向けられますと、質の劣ったものが柱の方へ行くことがないということで、柱材の価格の方にもプラス要因として働くと考えております。我々、こういう努力を努めていきたいというふうに考えております。
江田(康)委員 今、宮崎県とか熊本県では、そういう積極的な流通加工業者が頑張っておられます。それこそ、流通コストを下げるために、山から切った木を市場を経ずに製材工場に直接出していく、そういう直送体制。さらには、いろいろな技術を使って、曲がった木でも、通常だったら、もう二束三文で、角材にしていくのにはなかなか使用できない、そういうような板も、ツインバンドソー、私も余り詳しくはないんですけれども、全国でも非常に珍しい新技術を使って、カービングソーとも言われる機械を使って、曲がった製材でも板にきちんと切っていく。何枚もとれる。それをラミナ用の製材に使っていく。そういうふうに、我が熊本県のあるところなんかも努力しているわけです。
 こういうような努力している流通加工業者を、そういう業界を伸ばしていくということは、もう今なかなか木が赤字で、要するに切れないと、山も困っている、それから製材加工業者も売れなくて困っている、こういうところが一気によみがえってくるわけでございまして、そういう、国産材時代を確かなものにするためにも、新たな流通加工システムをつくり上げる、またそれを政策的に誘導していく、そういうのが非常に重要であると思っております。
 今長官も申されましたように、林野庁におかれては国産材新流通・加工システム検討委員会、これを三月に発足されたとお聞きしております。検討が開始された、これは非常にいいことだと思います。七月下旬には中間報告が出るのではないかと楽しみにしております。
 我々、党としても、概算要求に向けて、必要な施策、本当にそういう産業を支援できるような支援措置、そういうようなものも含めて応援していきたいと思いますので、ぜひとも頑張って立派な施策をつくり上げていただきたいと思います。当面、トップグループ、大手ハウスメーカーを対象とした、輸入品と互角に競争できるところ、そういうところの系列を支えるような施策になるかと思いますけれども、しっかりこれに取り組んでいっていただきたいと思うわけでございます。
 次に、木材輸出の環境整備についてお聞きいたします。
 今までは、それこそ国産の木材が輸出できるなんてだれも思わなかった。しかし、宮崎県では、いよいよ本年の九月から本格的な木材の輸出が始まろうとしております。それは、宮崎県に本部を置くみどりのコンビナート研究所、私もよく会っておりますが、村尾元愛媛大学教授が主宰をされているこのみどりのコンビナート研究所と、中島代表がやられている相互造林株式会社、この連携で中国への木材輸出が企画され、実現されようとしておるわけでございます。
 中国は今、大水害で、天然林の伐採禁止を強化したわけでございまして、したがって、今日の中国の木材消費量は年間一億四千万立米、これに対して生産量は年間九千六百万立米となっている。その差、需要はあるんだけれども生産はできない、こういうところを、このみどりのコンビナート、相互造林の連携で中国輸出が決まったわけでございます。これに対して日中双方から高く評価されているわけでございます。
 そこで、お聞きしたいと思っております。
 このような動きは、これまで守りの立場に立たされてきた我が国林業を、攻勢、攻めの立場に転じさせて、国産材時代の到来を確かなものにする画期的な契機になるのではないかと大いに期待をしております。しかし、カナダとかロシア、ヨーロッパ、こういう諸外国からの輸出攻勢もすさまじいものがあるようでございます。
 その意味で、我が国も重要な局面を迎えていると考えますけれども、木材輸出に関して林野庁はどのような支援を行っていく考えか、お聞きしたいと思います。
石原政府参考人 木材輸出の問題でございますけれども、我が国の森林の有する多面的な機能の発揮のためには、杉などの増大する人工林資源、これの有効利用が極めて重要な課題でございます。
 このため、これまでも、木材利用の意義等につきまして国民への普及啓発、こういうのを図るとともに、住宅や公共施設等への地域材の利用、あるいはバイオマスエネルギーとしての利用、そういうものの促進に努めてきたところでございますけれども、近年、我が国の木材需要量が減少している、そういう中で、経済開発によりまして活発に今住宅建設が行われている中国、これをターゲットといたしまして木材輸出の取り組みを行うことは非常に大事なことだと思っております。この点につきましては、今委員の方からお話がございましたように、宮崎県において取り組みが行われておりまして、我々、国産材の新たな需要先として重要と考えているところでございます。
 ただ、実は、今お名前が一緒だったので、私、業界紙を見ておりましたらまさしくその記事が出ておったわけでございますけれども、宮崎県の方で、ある企業がこの九月から杉の間伐材約三千立米を中国に輸出するという記事が出ておりました。こういうものを積極的にやっていただく必要がございますけれども、価格的に見ますと、我が国から輸出するものはどうしても向こうへ持っていきますと一立米二万円程度かかる。他方、これまでロシア等からは一立米当たり一万円ぐらいで入るということで、この差がなかなか埋められなかったということがあるようでございます。
 もう一つ加えて、我が国の木というのは針葉樹でございまして、かつ中国の方には広葉樹、できるだけかたくて、それから黒っぽい色のついたもの、そういう無垢材が歓迎されるということで、どうしても我が国は中国への輸出につきましてはおくれをとっていたということでございます。
 要するに、しかして我が国のそういう針葉樹材なら針葉樹材のよさというものが必ずしも中国の人に理解されなかったということでございますので、何といいましても、日本産木材のよさを積極的にPRして、杉材等を認知していただくことが重要であろうと考えております。
 こういうこともございまして、十五年度、本年度におきましては新たに木材の輸出可能性調査事業を実施いたしております。中国における住宅等への木材の使用実態と今後の見通し等の調査、それから木材に対するニーズの把握、こういうものを行うとともに、中国での展示会への出展などによる日本産木材の普及宣伝を行うことにしております。こういうものにつきまして、関係する県あるいは団体とも連携をとりながら進めていきたいと考えております。
 他方、ジェトロの方でも、これはもちろん木材だけではありません、農産物もあわせてでございますけれども、こういう輸出の取り組みを努められるということでございますので、我々、こういう動きとも連携いたしまして、輸出について努力してまいりたいと考えているところでございます。
    〔鮫島委員長代理退席、委員長着席〕
江田(康)委員 今長官が言っていただきましたように、輸出による需要創出というのは非常に有意義である、国内の木材需要が頭打ちになっておりますから、そのような中で輸出というのは非常に重要な意義がある。国として、今申されましたように、輸出先におけるニーズの把握とか普及宣伝、これを行う調査事業を平成十五年は実施していこうということでございますが、今まで民間の方でも日本材が中国の住宅にもいいということはいろいろと調査もして、企画もしてきて今回の実現に至っているところもございます。
 ですから、その先、こういう輸出を確固としたものにしていく、そういうチャンスが今来ているわけでございますから、あらゆる手を使ってやはりそういうところを伸ばすような施策を、支援措置をまたしていっていただきたいと思います。具体的にはこれからでございましょうから、いろいろお話をまた聞かせていただくといいと思っております。
 石原長官は、食糧庁で食の安全等々を確立して出てこられた長官でございます。今度は、日本の林業がもう疲弊し切った、この中で長官になられた方でございますので……(発言する者あり)はい、期待が。私たち、本当にこの日本林業を再生させる、そういうお役目を果たしていただける方だと思いますので、この輸出面、それから流通加工、川下対策、こういうところに焦点を当てて、焦点をずらさないでそういう施策を打っていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。私どももしっかりと応援してまいりますので、頑張っていただきたいと思います。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
小平委員長 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 WTOの交渉について大臣にいろいろ御意見を伺いたい、そう考えております。
 先般、谷津先生について米国とWTOの交渉を、いろいろ伺って交渉してまいりましたが、アメリカはかなり強硬であって、そのとおりいくと日本の米も農産物もかなりのところだめになってしまう、そういう状況だと思います。
 アメリカは、大臣、米においても目標価格を設定して、そして、いわゆる市場価格、まあ市場価格は半分ぐらいのようですが、その不足払いを国の税金でもって行っている。大臣、そうして農家を保護してやっているわけですね。EUでも同じように、今イタリアとかフランスにおいて米をつくっておりますが、支持価格制度を設けて、そして、それより下がった場合には買い支えしている。そうして保護しているわけですが、それでいて、日本にケアンズ・グループはさらに米の関税の大幅引き下げを求めてきている。御承知のとおりですね。
 大臣、アメリカのそういう一方的なやり方。一方では国内の米を保護しながら、一方ではもう安くなったものを幾らでも輸出しようというのは、これはけしからぬのじゃないか。まず大臣、一言で、どう思われるか。
亀井国務大臣 今委員御指摘のように、私も先般、ゼーリック通商代表あるいはベネマン農務長官といろいろ話をしてまいりました。そういう中でも我が国の主張をしてきたわけであります。
 今お話しのような支持価格の問題と目標価格に対するその輸出補助の問題等々、アメリカの新農業保護法、こういうものを見ますときに、やはり非常にそういう面で不公平なものを感ずるわけであります。
山田(正)委員 それであれば、日本としても、いわゆる米農家に対して、目標価格、ローンレートでも結構ですが、六十キロ当たり一万四千円ぐらいで設定して、下がるに市場は任せて、下がったものはアメリカに、逆に三千円になろうと四千円になろうとうまい日本の米をアメリカに輸出する、アメリカは同じことをやっているわけですから。大臣、そう考えられませんか。
亀井国務大臣 いろいろ全体としてのことを考えますときに、そのような考え方というのはなかなかこれはなじまない問題ではなかろうか。理屈と申しますか、紙の上でのいろいろのことにつきましてはそういうことも成り立とうかと思いますけれども、現実問題としては難しい問題、このように考えております。
山田(正)委員 なぜ難しいんですか。
亀井国務大臣 いろいろ、米の需要の問題も、我が国の米の状況、こういうことを考えたときに、これは莫大な費用もかかるわけでありまして、現在我が国におきましては、我が国の水田農業、この需要に対応した生産体制の構築あるいは規模拡大等々の加速化が今必要なことであるわけでありまして、このような中で、この農業者の所得を補償する、直接補償するというような考え方になるわけでございます。
 そのようなことで、需給事情やあるいはまた品質評価や農業経営、こういうことを考えますときに、やはり主体的な経営努力を阻害するこの所得補償があるわけでありまして、あるいは構造改革に支障を来すおそれもあるわけでありまして、現在、産地づくり推進交付金であるとか、あるいは担い手経営安定対策、あるいは過剰米の短期融資制度、これを一つの政策として、パッケージとしていろいろ米政策を進めておるわけでありまして、まずこのことを進めることが私は必要なこと、こう思っております。
山田(正)委員 今度の食糧法は、逆に米の流通を自由化し、そして多分市場価格になるとどんどん下がってくるであろう、それでいて転作奨励金等々はさらに五百億減らす、こういうことでやったら、ますますもって農家はやっていけなくなる。ところが、アメリカやEUやカナダは、まあカナダは米農家はありませんが、それぞれの米農家を税金で所得補償、不足払いしていっている。日本は何もほとんどそんなことをせずに、そしてアメリカの言いなりになっている。
 大臣、アメリカのそういう不合理性というか、今の不足払い制度等について、日本もそれでは同じようなことをやって逆にアメリカに輸出しようじゃないか、それくらいのことを今まで交渉してきたことがあるのかどうか。大臣、アメリカの不合理をどこまで徹底的に追及したのか、いかがですか。
亀井国務大臣 輸出補助金の問題ですとかいわゆる輸出信用の問題、こういう面ではやはりいろいろ問題があることを指摘しておるわけでありまして、我が国の米の輸出、こういうことにつきましては、やはりいろいろ需要の問題等々もあるわけでありますので、そういう面での、全体的なWTO農業交渉、そういう中での主張、輸出の問題、輸出信用の問題等々につきましての発言は繰り返し申しておるところであります。
山田(正)委員 アメリカが、アメリカの農家を、市場価格の倍ぐらいの価格で不足払いして所得補償しているということについて、ついているのかついていないのかと私は今聞いているんですけれども、それについては今返事はなかったようです。
 大臣、いいですか。ちょっと待ってください。
 日本政府、農水省もそうですが、アメリカやそしてヨーロッパ、イタリア、フランスがどのように米農家を、所得不足払いし、支持価格制度をとり保護しているかということを、一般に、例えばいろいろな農水省のパンフレット等々においてそういったことを国民に、消費者に、農家に広く宣伝したことがあるのかどうか。イエスかノーだけで答えていただければ。
亀井国務大臣 農水省のホームページであるとか、あるいは農業白書等々におきまして、そのようなことは説明をいたしております。ある面では、もっとわかりやすく説明する必要があろうか、こう思いますけれども、それらの説明はいたしております。
山田(正)委員 それは農水省のホームページを開いても膨大な量がある。そうじゃなくて、いわゆる農家も、私が接触した農家というのはみんな知らない。これは一般消費者も全く知らない。その中で、農水省は、まさに農業、食糧というものは工業産品とは別なんだ、そういうものに対して堂々と国民に対して主張がなさ過ぎる。大臣、そこは十分考えていただきたい、そう思います。
 次に、先ほど午前中、ミニマムアクセスについて聞いておりましたが、いわゆるミニマムアクセスの米輸入量、これは前から共産党の中林議員がいろいろ聞いていて、輸入の義務ではない、輸入の機会であるということで答弁がなされておりますが、義務でなくて機会であれば、当然、七%も入れる必要はない。大臣、いかがですか。
亀井国務大臣 このミニマムアクセスにつきましては、ウルグアイ・ラウンド交渉のパッケージの一つとして、従来輸入がほとんどなかった品目に最小限の市場参入機会を与える観点から、各加盟国の合意のもとに導入をされたわけでありまして、やはりそういう中での輸入機会、そしてそれを国家貿易として輸入をしておるわけでありまして、輸入の義務、こういうことになるのではなかろうか。
 このことにつきましては、法的性格につきましては、平成六年五月二十七日の衆議院の予算委員会におきまして政府統一見解が出されておるわけでありまして、その内容、これにつきましては、WTO農業協定においてミニマムアクセス機会を設定する場合については、我が国が負う法的義務は、米の国内消費量の一定割合の数量について輸入機会を提供することである、ただし、我が国は、米を国家貿易品目として国みずから輸入を行う立場にあることから、ミニマムアクセスについて輸入機会を提供すれば、通常の場合、当該数量の輸入を行うべきものと考えている、こういう見解があります。
山田(正)委員 見解は見解で結構なんですが、義務でない、単なる輸入の機会であるということは、大臣としては、しっかりと今の見解からしても確認できる。いかがですか。
亀井国務大臣 やはり国家貿易としての形でやるわけでありまして、それは、そのようなWTOの合意の中で、今申し上げたようなことで行っておる、こういうことでございますので、やはりそのようなことは守っていくことが必要なことだ、このように思っております。
山田(正)委員 大臣、その答弁がはっきりしないんですが、いいですか、イエスかノーで答えていただきたいんですが、輸入の義務ではなくて機会であるということははっきりと大臣もここで認められる。イエスかノーで結構です、国家貿易等はその後の質問で私がしますから。
亀井国務大臣 いわゆる輸入の機会、こういうことになっておるわけでありますが、米につきましては、やはり合意、ウルグアイ・ラウンド合意、こういうことでありますから、約束ということになると思います。
山田(正)委員 大臣、法的には義務ではなく機会である、だから、ミニマムアクセスで決められた量を入れなくてよろしいということになる。
 アメリカの場合に、バター、これでミニマムアクセスの量が四万百トンですが、実際に入れているのは五千八十九トンしかない。アメリカが。大臣、御承知だと思う。そうしたら、日本は、七十何万トンの枠、七十六万トンだったか幾らだったか忘れましたが、その二十万トンかそこらを入れればアメリカからいろいろ言われる必要はない、外国から言われる必要はない。そうなりませんか、大臣。どうですか。
亀井国務大臣 いわゆるアメリカにおきますバターであるとかチーズであるとか落花生、こういうものは、やはりウルグアイ・ラウンド農業合意に基づきましてミニマムアクセスの機会を設定しておるわけでありまして、その輸入状況、これは今、バターにつきましては、その数量、二〇〇一年で、六千九百七十七トンに対しまして輸入数量が六千八百四十トン……(山田(正)委員「バターについて聞いていない。日本について今聞いているので、質問と離れています」と呼ぶ)
 そのような数字の差があるわけでありますけれども、ウルグアイ・ラウンド合意に基づくミニマムアクセスの機会の設定につきましては、民間貿易の場合には、関税割り当て等により民間業者に輸入機会を提供することで義務を果たしたこと、こういうことになりまして、実際にミニマムアクセス数量分が実績として輸入される必要はないもの、このように承知をしております。
山田(正)委員 日本も、民間に米を輸入させるのであれば七十万トンも入れる必要はないという見解か。明らかにしていただきたい。
亀井国務大臣 いや、それはやはりウルグアイ・ラウンド合意に基づきます輸入の機会。しかし、我が国におきましては、いろいろの点から、国家貿易、このようなことで米につきましては行っておるわけでありますので、民間貿易、こういうことにはならないわけであります。
山田(正)委員 大臣、おかしいと思う。では、国家貿易ならなぜ全量入れなきゃいけないんですか。どういう法的根拠があるんですか。
亀井国務大臣 やはり、これはウルグアイ・ラウンドの合意に基づきました国際的な合意でもありますし、先ほども申し上げましたとおり、民間の場合につきましては、輸入機会を提供する、そういう中でいろいろの義務を果たす、こういうことになっておるわけでありまして、やはりそれは、アメリカにおきましてもいろいろの数字が若干、乳製品であるとか落花生等につきましても、ほとんどその数量に近い形のものが輸入をされておるわけであります。
山田(正)委員 そうではない。チーズにおいては、三万四千四百七十五トンのミニマムアクセス量がある、ところが輸入量は二万八千トンにすぎない。バターにおいては、まさに十分の一しか入れていない。
 大臣、そのことを僕は聞いているんじゃないんです。僕が大臣に聞いているのは、国家貿易。国家貿易だから全量入れなきゃいけない、ウルグアイの合意を尊重しなきゃいけない。ウルグアイの合意そのものは輸入の機会を与えるということですから、それが何で国家としてそれだけのことを輸入しなきゃいけないという義務づけになるのか、何か国際法上、国内法上の根拠があるのかどうか。法的根拠を明らかにしてもらいたい。
亀井国務大臣 法的な根拠、こういうことにつきましては、それは、先ほど申し上げましたとおり政府の見解としてお示しをしているわけでありまして、我が国は米を国家貿易品目として国みずからが輸入を行う立場にあるわけでありまして、このミニマムアクセスにつきましての輸入の機会を提供すれば、通常の場合、当該数量を輸入を行うべきもの、このように考えております。
山田(正)委員 大臣、いいですか。日本は今、米が余っている、生産過剰である、そして農家は泣くような思いで減反に協力してきた。そうすると、国家貿易だからこそ、国が直接貿易に携わることができるからこそ、輸入数量、いわゆるミニマムアクセスの数量を、ぐんと、輸入の機会だから、十万トンか二十万トンに抑えることだって、国家貿易だからこそ、農水大臣の判断でできるからこそ、それがやれるんじゃありませんか。いかがですか。
亀井国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、WTOの農業交渉、あるいはウルグアイ・ラウンドの合意、こういう国際的な問題があるわけでありまして、そういう中にあのミニマムアクセス、こういうことが設定をされて、そしてその中でやっておるわけであります。
山田(正)委員 答えになっていない、大臣。考えてください。
 いわゆる国家貿易だから全量入れなきゃいけないということは、法的根拠は全くない。国際法上の取り決めもない。それについては、大臣、お認めになるかならないか。
亀井国務大臣 やはりこれは国際的な問題でありますので、そのミニマムアクセス、こういうことに合意を、ウルグアイ・ラウンドで合意をしておるわけでありますから、これをやはり、いろいろ厳しい条件があるわけでありますけれども、守っていくことが総合的に必要なことじゃなかろうか、こう思っております。
山田(正)委員 農家を犠牲にしてでも、ウルグアイ・ラウンドの合意は単にいわゆる輸入の機会を与えるという合意にすぎない、その合意を尊重して、そして農家の立場を考えればこそ、ミニマムアクセス、これは単なる輸入の機会で、アメリカだってバターでは十分の一も入れていないんだから、当然のことながら、農水大臣としては大臣の判断でこの七十何万トンの輸入量を十万トンに減らすことは容易にできるじゃありませんか。なぜできないんですか。
亀井国務大臣 今度の農業交渉におきましても、このミニマムアクセスの問題等につきましても日本の立場を主張しておるわけでありますが、この数字を、やはり国際的にそれぞれの国々が農業に関しましての合意をしておるわけでありまして、米だけでなしにいろいろな産物もあるわけでありまして、そのようなことを考えて農業全体として考えていかなければならないことであるわけでありまして、政府の見解、先ほど申し上げましたような中でこれを進めていくということが必要なこと、こう思います。
山田(正)委員 大臣は、さっきから言っているけれども、答えになっていない。むしろ、大臣が、なお全量輸入しなきゃいけないとか七十何万トン輸入しなきゃいけないと言うことは、まさに農民に対する、大臣は十万トンしか輸入しなくても国際法上十分にウルグアイ・ラウンドの合意からしてもできるのに、それを裏切っている、農民の。いわば農民は、減反減反で、強制的に厳しい減反政策を強いられている。ところが実際には、このミニマムアクセスの米が、七十何万トンの輸入が十万トンにでもなればどれだけ農家は泣く思いをしないで済むかどうか、大臣、よく考えていただきたい。
 それからもう一つ。これはこの委員会でも取り上げられておりますが、ミニマムアクセスの枠組みを、EUでは肉類を一つのセクターとして一括枠しているわけです。これを、米と穀類、麦、そういったものを一括枠すれば、十分、いわゆる米の輸入をゼロ近くまですることはできるんではないか。大臣、その検討をしたことがあるかないか、それだけで結構です。
亀井国務大臣 ウルグアイ・ラウンドの農業合意に基づきまして、米につきましてはミニマムアクセス、あるいは麦につきましてはカレントアクセス、こういうことであるわけでありまして、これらの問題、このアクセス機会の提供を義務づけられる、また我が国の、WTO上譲許したという経緯がありまして、その約束を抜本的に変更するような交渉を行うことは、やはり関心国すべての合意を得る必要があるわけでありまして、非常に困難な問題である、このように思います。
山田(正)委員 やる気が、交渉する気があるかだけ聞いているので、そういう交渉をする気があるかないかだけ答えていただきたいと思います。
亀井国務大臣 大変交渉は難しいことだ、こう私は思っています。
山田(正)委員 難しいこととは、そういう交渉をしないということと解していいかどうか。
亀井国務大臣 どうお考えになりますか、ただ、これは、いろいろ、交渉というようなことになりますと、いろいろ影響がさらに出てくるんじゃなかろうか。むしろ、米についても、輸出国からの、輸出の拡大、こういうこともいろいろなところから要求も出てくるようなことにもつながるんではなかろうか、こういうことも考えられますし、交渉は大変難しいこと、こう思っております。
山田(正)委員 ということは、交渉する気がない、その件では、ということととってよろしいわけですね。イエスかノーで答えていただければいいんです。
亀井国務大臣 交渉にはいろいろのことがございますから、それは、現場でいろいろな状況が出てこようかと思います。そういう面で、現状なかなか難しい、こう申し上げておきます。
山田(正)委員 では、どうやらそういう気はない、農水大臣というのは本当に農民のことを考えていない、そう思わざるを得ない。
 ところで、WTOの交渉の中で、いわゆるEU案に日本は同意しているわけですが、EU案に同意すると、いわゆる後発途上国、ミャンマーとかネパールとかあるいはバングラデシュ、そういうところからは、EU案ですと米がそのまま無税で入ってくる。そうすると恐らく日本の商社は、ミャンマーに、どこに、日本のコシヒカリ、そういったものをつくらせて、どっと入れてくる。そうすると、EU案では日本は大変なことになる。
 大臣、なぜそういうEU案に賛成したんですか。なぜ日本の独自案を出さなかったんですか。
亀井国務大臣 我が国とEU、これは、関税削減あるいは国内支持、輸出規律に係る基本的な数字につきましては同一の提案を行っておるわけであります。しかしいろいろ、基本的な部分につきましては連携して主張しておるわけでありますが、必ずしも細部につきましては意見を同じくするものではないわけでありまして、途上国に対する対策については我が国とEUの提案は異なっておるわけであります。
 今御指摘の途上国、EUは途上国からの全農産物輸入の五〇%以上を無税にする、この主張を行っておるわけでありますが、他方、我が国は、途上国に対する配慮といたしまして、LDCに対する削減約束の免除といった提案を行っているわけでありまして、このWTO農業交渉におきまして、米の取り扱い等については、米や稲作の重要性にかんがみ、これを踏まえまして、米の需給と価格の安定に支障を及ぼさないように、現在の国家貿易の体制における総合的な国境措置や輸入管理体制を維持することを基本として交渉に臨んでおるわけでありまして、我が国の主張が最大限に反映されるようこれからも力強く頑張ってまいりたい、こう思っております。
山田(正)委員 大臣、先ほどから私の質問には答えていただけていない。
 大臣、私が言っているのは、EU案だと、今言うように、後発途上国、そこは無税で入ってくるし、発展途上国、中国。中国はやはり日本のコシヒカリをつくっている。そういったものが五〇%は無税で入ってくるというEU案です。これだと日本は大変なことになってしまう。
 そういうEU案に同調しないで――この部分は同調する、この部分は云々とかとばかなこと言ったって、日本は既に各国間の交渉においてはEU案に同意しているということになっているわけですから、今都合よく、その部分は同意はしていませんとか、そんなことは許されない。それであれば最初からなぜ、日本案を出して、そしてその上でEUと協調するところを協調する、そういう外交姿勢がとれなかったのか、なぜとらないのか。大臣、それをお答えいただきたい。
亀井国務大臣 EUと連携する部分、あるいはまた今基本的な問題、日本は日本の考え方、そういうものを出しておるわけでありますから、いろいろこれ、交渉の問題、それはやはり百四十六からの国家の問題でございますし、いろいろ日本の置かれております立場というものを基本的にしっかり踏まえて交渉するというのが交渉事であるわけでありまして、日本のそのような問題、これを十分踏まえて交渉してまいる所存でありまして、EUとのそれらの問題、やはりこれ、フレンズ諸国との共通の問題、こういうものは共通の問題として連携をし、さらに、細部の問題につきましてはさらなる日本の立場を主張し、それが実現できるように交渉するというのがこの交渉の役目ではなかろうか、こう思います。
山田(正)委員 大臣の話、先ほどから聞いていて、何を言っているかわからないし、心もとない。そういう姿勢で本当に日本の外交の主張ができるのかどうか、日本の農水外交はまさに弱腰である、アメリカに対しても。今の大臣の答弁等々を聞いてみても、強固たる、こうして日本の国益を守り、日本の農家を守るんだという姿勢はちっとも感じられない、これは。残念である。
 それで、ひとつ次に私の持ち時間もなくなるので質問を変えて、実はトラフグのホルマリンの問題が今長崎県とか九州の業者で問題になっておりますが、調べてみたら、今、中国から千七百トン、養殖のトラフグが入っている。このトラフグ、中国ではまさにホルマリン漬けである。これのいわゆる残留農薬、ホルマリンの検査、検疫を今までしたことがあるのかないのか。
 これは厚生労働副大臣になりますか、お答えいただきたい。
木村副大臣 山田委員の御質問にお答えを申し上げます。
 厚生労働省では、養殖トラフグに寄生虫駆除の目的でホルマリンが使用されているという情報を得まして、平成九年に調査を実施したところ、天然トラフグとホルマリンを使用した養殖トラフグの可食部のホルマリン濃度には差がなく、ともに安全性に問題のないレベルであったわけでございます。
 このように、養殖トラフグに対しまして、寄生虫駆除の目的でホルマリンを使用している場合においては、養殖時のホルマリン使用と可食部のホルマリン濃度の間に明確な関係が見られず、食品衛生上の問題は生じていないと認識しておるところでございまして、輸入時検査の対象項目とはしていないところでございます。
山田(正)委員 国内で今トラフグの養殖業者は大変なことになっている。そのために、長崎県でも、焼却するとしたら何十億という損失が生ずる。そういう状況の中で、お隣の中国からどんどんホルマリン漬けのトラフグが入ってきている。それに対して、かつて前に検査したことがあって、可食部分の差がなかったから、今、ここのところずっと検査は何にもしておりません、それで通ると思われるのかどうか。
木村副大臣 先生が今御指摘の長崎県におけるトラフグの件に関しましても、厚生労働省といたしましては、食品衛生上の問題はないという見解を出しているところでございます。
山田(正)委員 それでは、農水大臣、どう考えられるか。
亀井国務大臣 お答えする前に、先ほどいろいろお話しになりましたけれども、私も政治家としてWTO農業交渉に日本の国益をしっかり踏まえて頑張る決意でおりますので、先ほどのお話はぜひ撤回をしていただきたいと思います。(山田(正)委員「撤回する気は全くありません」と呼ぶ)
小平委員長 ちょっとお待ちなさい。
亀井国務大臣 それでは、このホルマリンの問題につきまして、今、食品衛生上に対して厚生労働省からのお話がございました。
 今回、この問題につきましては、水産庁におきましては、再三にわたりまして、使用禁止、業界によるホルマリンの不使用の決議及び使用していない旨の報告等を受けておったわけであります。
 養殖業者がホルマリンを使用していたことによりまして、今回、国民の養殖業あるいは水産業に対する信頼と安心が大きく損なわれたことが問題になっております。私は、食品衛生上の問題のみでない、このように考えておりまして、国民に対して、養殖業への信頼と養殖水産物の安心を回復させるためには、やはり、この問題につきましての養殖業者による自主的な厳しい措置が必要ではなかろうか、こう考えております。
山田(正)委員 ちょっといろいろ聞きたかったんですが、時間がなくなりつつあるので。
 ウナギについては、エンロフロキサシンとかいう、いわゆる抗生物質、合成抗菌剤等々が使われていることが明らかになってきたようですが、それについて、輸入食品に対する検査が、実は、輸入しますという届け出の五%、二十回に一回の届け出分しかモニタリング検査がなされていない。ということは、入ってくる水産物あるいは野菜、農水産物について、ほとんど検査がなされていない。しかも、実態において、モニタリング検査でわかった分については、検査委員がいないものだから、輸入する商社に検査を委託するということまで行われている。
 今、全国三十一カ所で二百八十三名しか食品衛生検査官がいない。大臣、ところが、農水省には米の検査をする検査官がいまだに千四百三十七人もいる。食の安全と安心というのは、まさに今国内では六割が輸入の食品である。それなのに、米の検査官が千四百三十七人もいながら、この大事な食品の検査官が、全国で三十一カ所、二百八十三名しかいない。こんなことで食の安全と安心が守られるのか。
 これからWTO厳しくなって、漁業も農業もさらに関税が引き下げになってくる。そんなときに、この水際での食の安全と安心で、大々的に、いわゆる食品衛生検査官というのを何千名何万人規模で、あらゆる食品について検査をし、そしてそれについてきちんとした対応をしていくことこそがWTOに対する一つの対応策ではないのか。大臣、どう考えるのか。
 その質問を聞いて、私の質問を終わらせていただきます。
亀井国務大臣 食品衛生監視員の二百八十三名の問題は、厚生労働省の関係のことと思います。
 今委員御指摘の米の検査、このことにつきましては、現在、千四百三十七名。また、米の検査につきましてはその必要性、しかし平成十七年度末までに民営化、こういうことになるわけでありまして、全般的に、食の安全、安心、水際での検疫等々の食品の衛生監視、こういう面では、やはり十分その努力はしていかなければならない、こう思っております。
木村副大臣 先ほど、委員御指摘の中に、輸入ウナギに関しましてのモニタリング検査で、全量検査してないんじゃないかというお話がありましたけれども……(山田(正)委員「いや、もうそれはいいです。モニタリング検査はいいです」と呼ぶ)それはよろしいですか。命令検査はしておりますので。
小平委員長 山田正彦君、いいですか。質問時間終わりましたので。
山田(正)委員 はい。終わります。
小平委員長 速記をちょっととめてください。
    〔速記中止〕
小平委員長 速記を起こしてください。
 今ほど山田委員の発言に少し不穏当な発言があったとの……(山田(正)委員「不穏当じゃないですよ」と呼ぶ)まあ、お聞きなさい。不穏当な発言、行き過ぎ発言があったという、そういう指摘が与党理事からございまして、これについて、私も委員長として、聞いていまして、そこのところは少々感じるところがございました。しかし、これはこの後理事会で速記録を精査しながら検討、処置したいと思っていますので、理事会にお預けいただきたいと思います。
 それでよろしいですか。各党理事、よろしいですね。
 そういうことにしまして、後刻理事会でこれについては検討します。
 それでは次に、中林よし子君。
中林委員 WTO協定問題での質疑なんですけれども、先ほどから山田議員と大臣のやりとりを聞いて、私も、ミニマムアクセスについてのWTO農業協定上の正確な意味、それと、それを受けての我が政府の統一見解、これは全然性質が違う。最低輸入の機会を与えるというのがWTO農業協定上の意味合いなんですよ。日本は国家貿易の方法をとって特例措置をやったので、だから予算委員会での答弁で政府の統一見解として、義務輸入量、こういうふうにいたしましたと、こうなっているわけですよ。
 私は、この問題をこれまで再三、予算委員会でも当委員会でも、外務省並びに農水省、すべて確認をとり続けてまいりました。みんな、最低輸入の機会であって、義務輸入というのはないということはもう周知の事実ですよ。それをまた大臣がここで蒸し返されるというのはいかがなものかというふうに思います。
 だから、今農水省のさまざまな文章でも、ミニマムアクセス(最低輸入の機会)というふうに、正確な訳語がちゃんとついています。それ以前は義務輸入というふうになっておりましたけれども、すべてそういうふうに正しい訳語に変わっております。だから、この点は私は答弁をあえて求めませんけれども、指摘をしておき、進みたいと思います。
 九月、メキシコの閣僚会議がいわばこの交渉の大きな山場になることは、だれの目にも明らかになっております。しかし、その間もさまざまな交渉事が次々と行われております。農民だとか消費者だとか、国民に、今この問題で政府が一体どういう考えでどこまで進んでいるのか、あるいは何がネックになっているのか、そういうことは余り知られていないというのが現状ではないのか、伝わっていないというふうに思います。
 少なくともウルグアイ・ラウンドのときは、国会で一粒たりともお米を輸入しないと三度も決議がされるなど、非常に迫力ある、国民を巻き込んだ、やはり日本の農業を守っていこう、食料を守っていこう、そういう気迫が感じられておりましたけれども、今回は全くそれが感じられない。国民とともに本当に日本の農業を守っていこう、どうか国民も世論を興していただきたい、こういう政府のメッセージは国民サイドには伝わっておりませんけれども、大臣、私のこの指摘をどのように受けとめておられますか。
亀井国務大臣 このWTO農業交渉におきまして、日本の立場、そして、私ども農水省といたしましても、経済界の方々であるとかあるいはまた農業団体の方々であるとか、あるいはまた地方に出向きましてタウンミーティング等々、日本の農業またこれらのことにつきましてはそれぞれ機会あるごとに説明をし、努力をしておるところであります。
 ただ、交渉がどうか、これは九月に向かっての問題でありまして、今いろいろ各国ごとにバイの会談であるとか、我が国の主張というものを今主張しておるところでありまして、国民全体としてのそういう面が欠けておる、こういう御指摘はあるかとも思いますけれども、それぞれの立場で今努力をしているところであります。
中林委員 農業団体とというのは確かにあるというふうに私も見ております。しかし、最近、タウンミーティングがそんなに頻繁に行われているとは感じられません。だから、確かに全中、大臣の言われる農業団体とは全中のことだろう、こういうふうに思います。ところが、農業団体はさまざまありますし、全中すべてが農業団体、農業者を代表しているものではないということは明らかなんですよ。
 だから、そこへだけ説明しているから国民には説明しているんだというふうに思われたら、私は、本当に国民こぞって今食料自給率を上げ、日本の農業を大切にしようという方向に行かないんじゃないかというふうに思います。
 具体的事例を挙げたいと思います。
 消費者に軸足を置くということを随分この間おっしゃって、そういう政策への転換も図っているんだと。法律もできました。しかし、大阪の全大阪消団連、この団体が農水省のホームページにWTO交渉の現段階の説明を求めたんだけれども、ナシのつぶて、回答がない、こういうことでした。
 本当に農水省は国民、農民、消費者一緒になってWTO農業交渉を、私たちは日本の提案すべてがいいとは思いませんけれども、少なくとも政府がやっていこうとするそれへ理解を求める努力はされていないじゃないですか。どうですか。
    〔委員長退席、楢崎委員長代理着席〕
亀井国務大臣 その回答がなかった、こういう御指摘でございますけれども、それぞれのところでいろいろ申し上げ、あるいは新聞報道、また私も地方に参りましても、あるいはまた、私は都市部でありますけれども、都市部の人たちも、我が国の食料の自給率、そういう中でWTO農業交渉に関心をお持ちになりまして、いろいろ質問をされる方もあるわけであります。
 いろいろな立場で、欠けているところもあろうかと思いますが、我が国にとりましては大変重要な問題でありますので、機会あるごとに十分説明をする努力を重ねてまいりたい、こう思っております。
中林委員 私どもも、ウルグアイ・ラウンド交渉のときは、そのときは浪人中でございましたので国会の方では頑張ることはできなかったんですけれども、それでも、政府の熱意だとか、国を挙げて何とかやはりこのウルグアイ・ラウンド交渉で日本のお米を守っていこう、そういう熱意は本当に感じられたんですよ。
 でも今、質問でも私は取り上げましたけれども、二月、三月、全国調査をやったときにも、ほとんど中身について政府が知らせた様子は見えなかったということなんですよ。だから、本当に団体ともと言うんだったら、末端に至るところまで知らせていかなければ成功はしないというふうに思います。
 そこで大臣、農業を守るんだ、その気概でやっていくんだ、こういう決意も最後少し興奮ぎみにおっしゃいましたけれども、日本政府としてのスタンスを確認しておきたいと思うんです。
 日本提案しています。しかし、それは非常に漠としたスタンスなんですよ。そこで、これ以上市場開放はしない、国内農業へのマイナス影響は与えない、こういうスタンスで臨んでいるのかどうか、確認したいと思います。
亀井国務大臣 先ほどの質問、御意見に関係するわけでありますが、一つ、国民合意のプロセス、こういうようなことで、約一年間で農林水産省本省だけで九十七回、あるいはまた地方農政局を含めまして地方で四百七十七回、こういうように、消費者団体あるいは経済団体、農業団体、マスコミ、各県の市町村であるとかまたそのほかの団体等にそのような説明会等をいたしておりますので、ちょっと加えさせていただきます。
 また、今の問題、交渉でございまして、具体的に今いろいろ進めておるわけでありまして、個別にどうと。しかし、日本の国益を守り、日本の農業が成り立っていくような、そういう考え方を根底にこの交渉に当たる決意でございますので、どれをどう、こういうことにつきましては、今、日本の提案、こういう中でいろいろの各国との交渉を進めていくという考え方で進めてまいりたいと思っております。
中林委員 大臣は国益を守るというふうにおっしゃるわけですけれども、とても広い意味があります。
 これまでも、国益論で、農業が犠牲になって輸出産業の利益が優先された、こういう歴史的な事実があります。だから、それをもって国益とは、とても私たちは言えない。食料自給率が四割しかない異常な日本になっているという状況から考えると、これ以上輸入農産物をふやさない、これ以上市場開放は許されないんだと、ここはしっかり踏まえた交渉を進めなければならない。これが日本政府のスタンスでなければならないというふうに思うんですけれども、市場開放の面ではいかがですか。
亀井国務大臣 御指摘のとおり、日本の食料自給率、これを四五%に上げていこう、こういういろいろの施策。また今、当面は米の問題をいろいろ御議論いただき、そしてそのことに御協力をちょうだいしておるわけでありまして、そういう中で、これからの交渉。
 ウルグアイ・ラウンド合意以降、農政改革を順次やってきたわけでありまして、それらがこういう形で米の改革にもつながってきておるわけでありまして、このことも、我が国は、農政改革、こういうことにつきまして、先般もアメリカに行きましてもまずそのことを強く申し上げておるわけでありまして、これから交渉に向かって、本当に、それらの農業経営者、そういう方々が心配のないような形でその改革、平成二十二年のこの展望に向かって進むことができるような農業というものを確立するために、このWTO交渉に臨んでまいりたい、こう思っております。
中林委員 この質問をすると、大臣は必ず、国内対策で切り抜けよう、こういうことしかおっしゃらないわけですよ。つまり、市場開放、これは避けられないというふうに大臣はお考えになっているんじゃないですか。
 それで、EUと一緒にやっていくんだと。関税引き下げ、EU提案ありますよね、最低一五%、平均三六%。この提案、この数字には乗っていくんだというふうにおっしゃっているわけですけれども、この数字で日本の農業への悪影響は出てきませんか。ちゃんと日本農業が守られるという、その保証は何でしょうか。
亀井国務大臣 交渉におきましては、いわゆる我が国の農業、そういう面で、WTO農業協定第二十条によります保護、助成の実質的な削減が約束事項とされており、また、ドーハ閣僚宣言においても同じ文章が、また各国、コミットをされているわけであります。
 我が国やEUの提案、これは、関税引き下げにつきまして、ウルグアイ・ラウンド方式、国内改革の進捗状況に合わせて漸進的な関税の引き下げが可能となるとともに品目別の事情に応じた柔軟な対応が可能となる現実的な方式である、このように考えておりまして、我が国とEUが、ウルグアイ・ラウンド方式によりまして、平均三六%、そして品目別最低一五%の関税引き下げを提案しているところでありまして、この水準であれば国内生産に特段の悪影響を及ぼすものではないのではなかろうか、このような考えを持っておりまして、この主張を通すべく格段の努力をしてまいりたい、こう思っております。
中林委員 最低一五%引き下げ、平均三六%の関税引き下げ提案で、日本農業に特段の影響は出ないと明言をされました。じゃ、それを保証するものは何ですか。
亀井国務大臣 これらは、これからいろいろの農業改革等、あるいは米の場合につきましてもセットでいろいろなことを進めておるわけでありまして、このように、農業経営が可能なようないろいろの交渉、こういうことに基づきますその結果どういう対応ということになりますか、これらにつきまして、農業が、先ほど申し上げますとおり平成二十二年の四五%、こういう目標に向かって、それらが達成できるようないろいろの施策を進めてまいりたい、こう思っております。
中林委員 国内での対策ということをおっしゃった。つまり、EU提案の平均三六%、品目別最低一五%という、この引き下げ提案というのは市場開放につながるということはお認めになりますね。
亀井国務大臣 我が国にとりまして、重要品目につきまして見た場合、この数値を適用しても、輸入が大幅に増加する可能性は現行と同様ほとんどないもの、このように考えております。
中林委員 私は、大島大臣のときからこれは議論してきて、ずっと計算してきたんですよ。それで、お米は、一五%引き下げになった場合、十キロ当たり三千二百六十円だと。この間も委員会でずっと視察に行きました。スーパーのお米売場を見たら、大体四千円前後で非常に高いのが売れているわけですよ。そうなると、それはもちろん、日本のお米の方が高くて外国の方が安くて――失礼しました、反対で、関税で高くなって入らないものも当然あるでしょう。しかし、平均でいくともっと安いものが出てくるということになるわけですよ。だから、お米で、入ってまいりますよ、それでどうやって影響がないなんということが言えますか。
 さらに、ほかのものは平均三六%。ですから、高いものも出てきます。仮に平均三六%で生鮮オレンジを計算すると、現在六月から十一月は一六%の関税が一三・六%になって、日本のミカン農業はどうなりますか。牛肉だって、今でも低いところが、さらに引き下がって、現在、牛肉三八・五%が三二・七%へ下がるんですよ。そうなったら、主要な産物で国内への影響がないなんということはとても言えない、そう思いますよ。
 私たちは、あなた方がなかなか計算しないから、この指し示された中で計算して、これはとんでもない、お米も影響が出るけれども、ほかの主要作物、全部出てくる。全部引き下げになっていくんですから、これは当然悪影響があるというふうに思います。大臣の先ほどの答弁、そのままやっておられると、とんでもない間違いになるということを指摘しておきたいというふうに思います。
 そこで、国内対策でお米を守っていくんだ、だから米政策改革大綱をやったんだと。それの具体化として主要食糧法も成立いたしましたけれども、もうこれは審議の過程で、ほとんどの農家はやっていけない状況が出てくるということは明らかだし、参議院の参考人質疑の中では四人のうち三人までが大変な悪影響が出るということを言ったわけです。しかも、米政策改革大綱の目的は、予算削減が目的ですよ、はっきりと。思い切った削減が可能になるような施策なんだ、これが米政策改革大綱の目的ですよ。
 私は、今でも農業に対する生産を維持し経営を守るための予算というのは余りにも少な過ぎるというふうに思っているわけですけれども、こういう国内対策で対応できるなどということは絶対あり得ない。国内対策で本当に日本の生産者を守り抜くことができると、何をもって、自信を持って言えますか。
亀井国務大臣 今回の米政策の問題、今いろいろ御議論もいただいておるわけでありまして、また、やはり担い手の問題、あるいは産地づくり、あるいは水田農業ビジョン、いろいろセットで進めていこう、こういうことでありますし、特に土地の集積、担い手の問題、これら等々を後押しをしていくことによって、日本の水田の経営、こういうものが、いろいろの創意工夫がなされ、また消費者のニーズに合う米づくり、こういうものに進んでまいりますときにそれらのものが可能になるのではなかろうか、このように思っております。
中林委員 もう、市場開放につながるのかどうかということも明言を避けて、いや、国内対策でいくと。では、国内対策をやれば日本の農業者は守られるのかというと、いろいろなものを組み合わせてやっていくようにしたいと言う。何も具体的なものはない。予算をふやすとも言っていない。そんなことで国内の農業者が守られるわけがない。
 一方では市場開放、一方では農林水産予算そのものが削減をされるということが明確になっている中で、農業が守られるわけがないですよ。市場原理に流せば、どんどん安い方に流れていくのは当たり前のことじゃないですか。それで農業経営ができるんだったら、大臣に私はやってもらいたい、本当に黒字を出す農業をあなた自身でやっていただきたい、そう思います。
 そこで、次の質問へ移りたいと思いますけれども、仮に、今日本政府が一緒にやっていこうとしているEUは、これでやったとしますね。ところが、ではその先はどうなのかということがまた問題になりますよ。
 何年か先にはまたWTO協定の見直しをしなきゃならなくなる。そうなった場合、また関税引き下げが提案されることになりはしませんか。そうなったら、今でもぎりぎり、ぎりぎり、こういうふうにおっしゃっているのが、またずるずるずるっと引き下がっていく。つまり、WTO協定というのはもう関税引き下げが前提なんですよ。だから、それがどの程度引き下がるかだけが問題になって、坂道の角度が急になるのかゆっくりなのか、転げ落ちていくのは間違いない。
 ここで方向転換、歯どめをかけなかったら、日本の農業は守れませんよ。大臣、どうですか。
亀井国務大臣 農業経営につきまして、私も東北やあるいは北陸に参りまして、農業者の皆さん方とお目にかかり、また、いわゆる土地改良等々を進められて、あるいは兼業の農家の人たちが四十五人集まって、そして土地の集積をして、また大規模な土地改良をいたしまして、直まきをするとか、そういうことで三分の一コストを削減する、こういうような農業の姿を拝見してまいりました。
 そのように、いろいろの努力を若い人たちがしておられる姿、やはりこういう農業というのはぜひ後押しをしてまいらなければならない。そういうようなことが実現する、そしていろいろの改革が進む、こういう中で、足腰の強い、そしてコストがダウンできるような農業経営というものが行われる、こういうことになりますれば、このWTOの問題、関税の引き下げの問題、将来的なことはどういう状況になるか、これはまたわからないわけでありますが、そういうものに、やはり足腰の強い、対応できる農業というものをぜひ後押しをし、つくってまいりたい、こう思っております。
    〔楢崎委員長代理退席、委員長着席〕
中林委員 もうこれは、私は、大臣がいつまで大臣を続けられるか、それはわかりませんけれども、しかし、もう関税引き下げのところの歯どめはかけないということなんですよ、大臣の答弁は。だから、国内でどう国際競争力をつけていくのか、もうここにしかあなたの考え、答弁は至っていない。そんなことできますか、日本で。そんなものは絵にかいたもちだというのは現場が一番よく知っていますよ。大臣がお会いになった、たまたまそういう方もあったでしょう。しかし、それは本当にごくごく一部だ。
 私たちも歩きましたよ。大臣よりより一層歩いています。その中で、今日本の食料の四〇%、自給率をちゃんと維持しているのは、小さい農家であれ、兼業農家であれ、生産をやっているそういう人たちがやっと支えて四〇%を維持しているんでしょう。それなのに、そういう人たちに向かって、大規模化、コスト削減、どんどんやって外国と競争せよと。こういうような状況でどうやって、日本のような地形の中で、日本の風土、農業の歴史、その中で農業を守れますか。
 そうじゃなくて、やはりWTO農業協定の中で、関税引き下げというのが原則なんだけれども、私は、少なくとも日本のように異常な自給率の国が、自給率向上のためにはちゃんと農業保護政策をとっていく、あるいは一定の輸入規制ができる、そういう提案を積極的にWTO協定の改定のときにやるべきだというふうに思いますよ。日本は最低五〇%は食料を維持しなきゃいけない。いや、かつては六〇%も七〇%も自給率はあったわけですから、そこを各国とも維持できるように力を合わせてやろうじゃないか、そういう提案がなぜできないんですか。
亀井国務大臣 交渉の問題につきまして、農業の多面的な機能であるとか、我が国の食料の自給率の問題、また我が国の農政改革、こういういろいろなことをそれぞれのところで主張しておるところでございまして、これからこの交渉に向かって、日本の農業、これの立場が十二分に主張されるようにあらゆる努力をしてまいりたい、こう思っております。
中林委員 そういうふうに、あれもこれもやって、交渉事ですからということで、何が詰まって、何が日本の農民のために、日本の国民のためにならないことなのかということが全然具体的に言われないものですから、何か議論がかみ合わないで、あなたはやはり農民のことを思っていないと、こう結論づけざるを得ないような雰囲気を与えられちゃうんですよ。だから私だってそう言いたいんですよ。
 そこで、では具体的に聞きますよ。これは答えてください。
 例えば、EU提案で、関税引き下げは一緒にやっていくと言われました。先ほど自由党の山田議員の方から、途上国条項はどうなんだということを質問されましたね。途上国条項は、先進途上国と言われるところとそれから後発途上国と二つの提案をEUはしておりますよね。一般に言う途上国の場合は輸入量の五〇%以上無税で提供、後発途上国はすべて無税、無枠で提供ということになっております。
 これは私はもう予算委員会などで議論しているので具体的には聞きませんけれども、それならば、EUと共同してアメリカやケアンズ・グループと渡り合っていくときに、日本はあなた方が提案されているこの途上国条項は一緒にやりませんとEUに伝えてありますか。伝えてあるならば、EUはそれについてどのように答えていますか。
亀井国務大臣 基本的なことにつきましては話をし、また、個別の問題につきましても日本の立場をEUにも話をしております。
中林委員 EUはどう言っているんですか。
村上政府参考人 補足して説明させていただきます。
 EU提案の中で日本提案と合わないところはいろいろございます。そういうところにつきましてはEU側とも話をして、そういうところは支持できませんということで言っております。特に、この途上国の輸入の五〇%を無税にする、あるいは後発開発途上国のものについて……(中林委員「だから、中身は知っていますから、EUがどう言っているのか聞きたいんです」と呼ぶ)
 それで、これについては、いわゆる最恵国待遇という形で、各国はどういう約束ができるかという技術的な問題があるということを、我々は、実質的にできないというところも申し上げておりますが、そういう技術的な問題も指摘しておりまして、その点に関しまして、やはり、WTOの交渉の最終の結果の各国の約束の中でどういう位置づけをするかということについては先方も問題意識を持っておりまして、これは各国が今後途上国対策をやっていく中で議論していこうということになっております。
中林委員 わかりにくい答弁だったと思うんですね。要するに、最終的な判断だというようなことだと思うんですね。
 そこで、私は、こういう問題が実は全然末端に伝わっていませんよ。全中などと一緒に、農業団体とも一緒にやっていくんだ、何回も何回も説明をしているんだと大臣はさっき回数を言われましたけれども、途上国条項なんかの扱いについては本当に言っていないですよ。私たちが歩いて、こういう問題がありますよと言うと、びっくりされます。
 先般、参考人の質疑のときに、全漁連から、非農産物の交渉でも、途上国の関税撤廃提案を受け入れたならば日本の漁業が壊滅的打撃を受けるんだ、だからそれを拒否する運動に全力を挙げていると言っているわけですね。これは農水省も支援しているわけですよ、全漁連がそういう運動をしているということを。それなのに、農産物については、この途上国問題は農家の皆さんにもほとんど知らせていないということになっているわけですけれども、これはどうしてですか。
亀井国務大臣 このWTO農業交渉の問題、その説明資料の中にも、その問題は入っておるように承知をしております。
中林委員 どういう説明文があるのか、私、知りませんけれども、一般的にはそんなものは全く出回っておりません。それは明らかですよ。私たちは多くの農協とも懇談しているわけですけれども、農協に行っても、そんなものを見せていただいた覚えは今までのところありません。
 私たちは実は途上国と対決しろなどと言っているわけでは決してありません。途上国にも十分配慮をした交渉でなければならないというふうに思っております。ただ、大臣に、私は、政府、日本政府として考えていただきたい点がございます。
 それは、途上国の要求というのは、エイズ問題など、このエイズの医薬品を安く買いたいと。これが最も強い要求ですよね。しかし、知的所有権の問題は、途上国が要求しているんだけれども、先進国は知的所有権があるんだということを盾に、農産物で譲歩をして、こっちはしっかり守っていこう、そういう方向になっているんじゃないかというふうに思うんですね。
 だから、途上国の真の要求がどこにあるのか、ここを真剣に考えていただいて、日本農業もしっかり守れ、そうして、途上国がWTOの加盟国の百カ国ぐらいを占めるわけですから、そちらを日本政府が、あなた方の要求にしっかりとこたえると、先進国のリーダー的な役割をして、そして日本の農業をしっかりと守る、こういうバランス的なやり方というのを進められないのかというふうに思うんですけれども、この点、いかがですか。
亀井国務大臣 関係各国への働きかけ、もう既に三十六カ国に、ここ二年ぐらいの間に、ミッションを派遣したり、あるいは書簡であるとか、日本大使館を通じての働きかけ、そういう中でいろいろの意見交換をしておるわけでありまして、そのような話も十分加味して総合的に、いろいろの途上国への働きかけとそして支援、こういう努力をさらに積み重ねてまいりたい、こう思っております。
中林委員 関税引き下げというのがWTO協定の共通のベースになっているということですね。だから、今の関税引き下げの流れの中に入れば必ず市場開放への道に走っていく、これはもう当たり前の理なんですよ。
 それで、先に行っているのが林産物であり海産物ですよ。これは非農産物になっているんだけれども、しかし、この間、全漁連の方だとか森林の方だとかがお話しになりましたけれども、日本のように七割近い山林を抱えているところでも自給率は二割を割る。四方八方を海に囲まれている日本でありながら、海産物の自給率、これは五割をほんのちょっと超えているだけ。こういうところにまでなってきているわけですよ。
 だから、さっき言ったように、私は、日本の政府が、第一次産業、農業も漁業も林業もしっかり守っていくという、この大切なことをやはり主張できる、そういうWTO農業交渉における日本政府の声を別の角度で上げていただきたい。
 それは、先般も紹介しましたけれども、フロリダ大学の名誉教授のジェームス・R・シンプソンさんが「これでいいのか日本の食料」という本を書いておられるんだけれども、やはり、WTO農業交渉で日本政府は、異常な食料自給率の低さ、ここを各国に訴えて、最低これだけは自給率を確保、それはお互いに認めていこうじゃないかと。それは多くの途上国も要望していることなんですよ。だから、そちらの方で一緒になって進めていかれることを心から願います。
 具体的には、交渉事だからということで余り述べられませんでしたけれども、ぜひともこの主張を取り入れてやっていただくよう要求をいたしまして、私の質問を終わります。
小平委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 私は、きょう、WTO交渉、そして国際捕鯨委員会の総会の結果を受けてということと、もう一つ、ワシントン条約締結国会議の三点について質問をさせていただきたいと思うんです。
 というのは、すべてこれは国際機関の国際的な交渉事項である、そしてその交渉事項はすべて日本政府が押し切られているという状況がここに存在しているんですね。そういう意味では、第一次産業をめぐって日本の外交がどうあるべきかということがこの三点に象徴されているんではないのかなという思いが私はいたしております。
 最初にWTO交渉についてお聞きしますけれども、今の日本の第一次産業、特に食料である米について、大臣、先ほどから中林委員も議論していますけれども、昨年の十二月に米政策改革大綱なるものが打ち出されました。それ以降、この通常国会で多くの議論がなされて、食糧法の改正ということがなされました。
 そして、今、現場では何が問題になっているのか。この米政策改革大綱に対しても、物すごい将来に対する不安というものが農業者の中に広まっています。それに追い打ちをかけるように、WTO交渉の行方という形で、今、見守っているという状況だというふうに思っています。
 政府は、日本提案を掲げて、今多くの議論がなされました、今後も二〇〇五年一月に向けて交渉を積み重ねていくんだろうと思うんですが、本当に日本の食料、農業を守るという立場に立って、どう日本提案を実現していくのか。そして、今後、その取り組みをどう行っていこうとしているのか。これは、大臣の決意というものをお聞かせ願いたいと思うんです。
亀井国務大臣 WTO農業交渉に関しましては、九月の第五回の閣僚会議、これに向けて今いろいろ、ミニ閣僚会議であるとか、あるいは事務的な、あるいは技術的な会合等々が行われておるわけでありまして、米国、ケアンズ諸国と我が国やEUなどフレンズ諸国、この対立の溝というものはまだ埋まっていないわけでありまして、本年三月までにそのモダリティーが確立できなかったわけであります。
 その後、先ほど来御質疑も、またいろいろ御意見もちょうだいいたしました、我が国、EU、連携して途上国に対しましての働きかけ、こういういろいろの努力をしておるわけでありまして、先般も私、アメリカに参りましても、今御指摘の、日本は米政策の大改革、このことを農業者団体あるいは農業者、そして地方、いろいろ御理解をいただいて大きな転換を今図っておる、こういうことも再三申し上げ、あるいはウルグアイ・ラウンド合意後のいろいろの農政改革、このことも強く申し上げてきておるわけでもございます。
 これから九月に向かってさらにいろいろ努力をして、今いろいろの改革、我が国の農政改革、こういうものがやはり進展をするように、それにはこのWTO農業交渉におきまして、いろいろ厳しい環境の中でありますけれども、農業者の皆さん方にいろいろと御理解をいただくような、またそれをお認めいただくような努力をさらに積み重ねなければならない、こう思っておりまして、引き続き、我が国の主張、多様な農業の共存、このことを基本理念にいたしまして、いわゆるEUあるいはフレンズ諸国等と連携をしながら、我が国の提案が入れられるよう、さらなる努力をしてまいりたい、全力を挙げて努力をしてまいりたい、こう思っております。
菅野委員 農業分野では、ハービンソン議長提案をめぐって今交渉が展開されていると理解しているんです。ただ、この議長提案なるものがそのまま本当に採択されていく、進んでいくならば、壊滅的な打撃を受けるというのは、これはみんな周知の事実だというふうに思っています。そして、大臣が今言ったように、まだ溝が埋まっていない。そして、これからもこの溝を埋める努力はしていくけれども、私は非常に厳しいものがあると思うのです。
 そうしたときに、それでは、このまま手をこまねいていいのか。政府全体あるいは国民世論をどう喚起していって、そして交渉に臨むのか。そして、私は政府全体と言いました。このことは農林水産省の問題じゃないと思うのです。政府全体挙げてどう取り組んでいくのか、そしてそのためにどういう方策をとっていくのか。
 私は、先ほど中林委員もおっしゃっていましたけれども、まだまだ国民世論の喚起というものが不足しているんだと言わなければならないと思うのです。関係者は必死の思いでやっています。JAを中心として今盛んに地方においてやっています。それは、関係者のみの集まり、集会と言わざるを得ないと思います。
 国民全体に、そして、後でも申し上げますけれども、消費者も巻き込んで、そして日本の第一次産業、食の安全、安心という立場から日本の食料を守るという観点を国民全体としてどう取り組んでいくのか、これは政府に課せられた大きな課題だと思うのです。このことをなし遂げないで、外交交渉だけでやっていこうというところに私は無理があると思うのですね。この方途をどうとっていかれるのか、ここを明確にしていただきたいというふうに思うんですが、いかがですか。
亀井国務大臣 今、交渉、ハービンソン議長のペーパー、しかし、これにつきましては、これを土台とするということは受け入れられない、こういうことで、そのたびに強く申しておるわけであります。引き続き我が国の主張を主張してまいりたい、こう思っております。
 そこで、今御指摘のWTO農業交渉、農業者だけでなしに、あるいは関係者だけでなしに、消費者やあるいは産業界、マスコミ等々に、関係者にいろいろやはり周知する、理解をしていただく、このことの努力が足らない、こういう御指摘でもありますし、現実に、私どもも経済界や産業界あるいはマスコミの方々にお話をいたしましても、本当に残念なほど、我が国の食料自給率が四〇%というようなことにつきまして御存じない方もあるわけでありまして、そういう方に、またそういう機会に会いますと、なおさらいろいろな努力をしなければならない、こう思っておるわけでもございます。
 これら、いろいろ先ほども申し上げましたが、農林水産省あるいは地方農政局、これを通じていろいろな会合をしておりますが、さらにいろいろの努力をしてまいりたい。
 あるいはまた、農林水産省のホームページであるとか、これらは時期を見て、交渉でありますから、九月に向けての、また、今各国はそれぞれ、今日それぞれの国の主張を続けておるわけでありまして、これから、交渉の状況、こういうものにつきましても広くやはり情報を提供して国民の理解を得るようなさらなる努力をしなければなりませんし、政府を挙げて、我が農林水産省だけでなしに、政府一体になってその対応をしていかなければならない、その努力をいたしてまいりたい、こう思っております。
菅野委員 努力をしていきたいということなんですが、なかなか具体的にこういう方法というのが出てこないんですね。農業者や農業団体を中心としながら理解を深めようとしているんですが、そこから一歩広がっていかないんですね。
 そして、今大臣がおっしゃるように、農林水産省のホームページとか使ってやっていくと。実際にインターネットでホームページを見る人が、国民の何%の人が見ているか。ましてや、本当に毎日額に汗している人が、本当にインターネットを開く機会なんというのはほとんどないと思います。
 そういう意味で、私は、政府挙げて、今あらゆる手段、私は大量の教宣物を使ったって構わないと思うのです。それくらいの状況に今なっていると思うのですね。
 実際に、ハービンソン議長提案を日本政府はけっています。交渉に乗らないということもお話しされました。実際にハービンソン議長提案なるものを国民の何割の人が知っているか。知らないですよ。私も、統一自治体選挙のときにずっと回ってこのことを言い続けました。初めて聞いた人たちばかりなんです。そういう意味で、今WTO農業交渉がこういう状況に追い込まれていますよというのを、やはり政府機関の広報を使って国民の中に知らしめるべきだと思うのです。
 そして、マスコミ等も、農業新聞では書くんですが、一般の商業紙ではほとんど書いていないというのが実情じゃないですか。農業者や農業者団体の問題になっていること、このことが私は問題だと思うのです。
 大臣、私は、努力しますじゃなくて、本当に政府挙げてこういう方向で検討しますというくらいのことを具体的に述べていただきたいと思うんです。
亀井国務大臣 今、交渉が、九月に向かっていろいろなことを進めておるわけでありまして、御指摘のような点、十分心して、国民にわかるPRなり、理解ができるような対応をしてまいりたい、こう思っています。
菅野委員 次に、この六月に、IWC総会、国際捕鯨委員会の総会が終わりました。結果については新聞報道等でこれも報道されています。日本にとって今後の捕鯨をめぐる状況というのは非常に厳しい状況に陥ったなという、率直な状況だというふうに思っております。
 これについては具体的には申しませんが、この国際捕鯨委員会の総会の結果を受けて、今後のIWCに臨む日本政府としての基本的な考え方をお聞きしておきたいというふうに思っています。
田原政府参考人 お答え申し上げます。
 先月の十六日から十九日にかけまして、ベルリンで第五十五回のIWCの年次会合が開かれたわけでございます。
 その結果でございますが、南太平洋それから南大西洋におきますサンクチュアリーの提案は阻止できたわけでございますが、新聞等で報じられておりますように、保護委員会の設立決議の採択でございますとか、あるいは、我が国が要求しておりました、我が国周辺水域での鯨類捕獲枠要求提案の否決、こういった結果になっておりまして、票数的にはそう大きく離れているという票数ではないのではないかと思いますが、いわゆる反捕鯨国が非科学的なあるいは一方的な主張で支配するような、こういう情勢になったということは極めて遺憾であるというふうに私どもは思っております。
 IWC自体は、本来、鯨類を適当に保存を図りながら捕鯨産業の秩序ある発展を目指すという組織のはずでございますけれども、現在、いわゆる反捕鯨国が多数をもって捕鯨の利用を認めないような行動をとっているということで、大変残念でございますけれども、現時点において鯨類の持続的利用が実現していない、かような状況でございます。
 私どもといたしましては、今後のIWCへの対応ということでございますが、まず、持続的利用国といいますか友好国といいますか、そういった国との連携の強化、あるいは国内での啓発活動等を通じまして国内世論を喚起していくということ、さらには支持基盤の充実というふうなことで、およそ考えられるようなあらゆるオプション、こういったことは検討していった上で、できるものはできるだけ実行していくという観点から、捕鯨の再開に向けて、また来年の年次会合に向けまして、あらゆる努力を払ってまいりたい、かように考えている次第でございます。
菅野委員 水産庁長官、今大臣にも話したんですけれども、このIWC総会、これも関係者は非常に危機感を持っているんです。ただ、国民的にどれくらいの盛り上がりがあるのかといったときに、IWC総会の結果を受けても、国民的な関心事項にはほとんどなっていっていないんですね。
 私もクジラの食文化を守る会に入って、幹事役として世論喚起に努めてまいりました。一時期は、国内においても反捕鯨という機運は自然保護という観点からの考え方は根強かったと思うんですが、今日に至ればその国内的な声も下火になってきている状況だというふうに思うんです。逆に、水産業全体に与える影響、鯨が全世界の人たちが食べる量の三倍から四倍もの魚を食べているという実情もわかってきているんですね。
 私は、そういう意味では、鯨についても、どう国民世論を喚起していくのか。後でも触れますけれども、鯨を水産たんぱく質として位置づけたときに、世界の食料に果たす鯨の役割というのは非常に大きいと思うんです。そして、それを持続的に捕鯨できるような体制というものもとっていくべきだと私は思うんです。
 これは、日本として科学的に当たり前のことを言っているんです。それが国際機関では、この当たり前のことが受け入れられないという状況になっているんですね。これはなぜなんですか、この総括の上に立たなきゃいけないと思うんですね。それはやはり、国際世論の喚起と国内世論というものが全然高まっていない、そのことに起因しているんだと私は思うんですね。
 長官、そういう立場から今後の方向をどう考えていくのか、答弁していただきたいと思うんです。
田原政府参考人 お答え申し上げます。
 IWCへの対応の基本的な方向、この点につきましては、ただいま菅野先生が御指摘のとおりというふうに私どもも思っている次第でございます。
 具体的には、一つは、やはり対外的にどういうふうにやっていくかということ。もう一つは、国内を固めるということが、すなわち国際の場におきます私どもの主張を強めるというふうなことでございますので、先生も御指摘になられましたように、国内の世論をどういうふうに喚起していくか、こういうふうに分かれるのではないかと思っている次第でございます。
 具体的には、国際的な働きかけということでございますが、やはり、いわゆる商業捕鯨のモラトリアム以降、十数年を経過しているわけでございますけれども、これまでの間、我々なりにそれなりの働きかけを行ってきたわけでございますが、これまでの働きかけの検証、分析と申しますか、そういったことを行いながら、残されている道、どういった点が欠けていたのか、こういった点は十分に検証させてもらいながら、来年の年次会合等に向けましていろいろな手だてをやっていくということで、いろいろな国際会議の場、二国間協議等を通じまして、そうした恒常的な働きかけ、そういったことをやっていきたいというふうに思っております。
 また、国会議員の先生方の中で捕鯨議員連盟もございますし、それから、SUPUといいますか、持続的利用派の国際議員連盟というのもございます。こういった方々にもいろいろと働きかけをお願いしながら、いわゆる国際世論の形成ということで、私ども、これから地道に努力を続けていきたいというふうに思っております。
 他方、国内の世論の喚起の点でございますけれども、ともすればIWCの会合のときだけが国内の関心が集まりがちであるという御批判、それは御指摘のとおりであると思いますけれども、私ども、パンフレットとか各種広報資料の作成はもとよりでございますが、マスコミの方々との意見交換でございますとか、あるいはマスコミへのいろいろな投稿、さらにはシンポジウムでございますとか、IWCの説明会ですとか、いろいろなことを続けながら国内の世論を固め、少なくとも日本国内としては捕鯨の再開に向けて国内を一致した考えのもとに持っていきながら国際的な働きかけを行っていきたい、かように考えている次第でございまして、また先生方の御指導、御支援等を賜りたい、かように考えている次第でございます。
菅野委員 この鯨の問題というのは水産業全体にかかわってきたというふうに私は思うんです。科学的にはまだまだ調査しなければならないんですが、イワシがほとんどとれなくなっていっているという状況ですね。私は、そういうふうに考えたときに、最終的には商業捕鯨までこぎつけるというのは大変だと思うんですけれども、そこを目指しながらも現状の調査捕鯨を継続させていく、そういう危機的な、そこもできなくなるという危機的な状況だということを政府全体で考えていってほしいというふうに私は思っています。
 なかなか世論喚起というものは一朝一夕にできるわけではございません。地道な努力を積み重ねていかなければならないと思いますけれども、ぜひ取り組んでいただきたいというふうに思っています。
 そしてもう一つ、これまた危機的な状況にあるんですが、ワシントン条約締結国会議なるものが昨年の十一月、チリで行われました。私は、この会議の終了後、この委員会でも取り上げました、大変な状況だということで。
 というのは、私の地元の新聞なんですが、「マグロ漁業の灯 絶やすな きのうサメシンポ 規制拡大阻止訴える」、そして「気仙沼宣言を採択 「資源の持続的利用を」」と。なぜサメの問題がマグロなのやという状況がみんなにわかっていないんですね。わかっていないんです。そして、昨年の十一月、チリでの締結国会議で、ウバザメ、ジンベイザメがワシントン条約附属書の2に取り上げられました。そして、将来的には、サメ類全体が附属書2に取り上げられていく。附属書2に取り上げられるということは、輸出入に非常に制約を加えられるんですね。それで、この規制拡大という方向に、規制が強化されていく方向に国際世論が向かっているんです。
 なぜマグロなのかというと、マグロはえ縄漁業というので、はえ縄漁業にかかってくるのがサメなんですね。そのかかったサメをとることができないとなれば、マグロはえ縄漁業ができなくなってしまうんです。そういう危機的な状況にあるというふうに思うんです。そういう意味では、来年の十月、タイでまた会議が開かれます。その状況は私は予断を許さないと思うんですが、このサメの問題をどう日本政府として今後しっかりとした外交交渉の中で取り上げていくのか、その点についてお聞きしておきたいと思います。
田原政府参考人 お答え申し上げます。
 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、いわゆるワシントン条約の問題でございます。
 先生ただいま御指摘になられましたように、昨年の十一月でございますか、チリのサンティアゴで会議が行われまして、ジンベイザメですとかウバザメ、こういったサメ類がいわゆる附属書2の分野に挙げられまして規制が加えられているというような状況でございまして、このワシントン条約の場におきましては、今後、サメ類を初めといたしまして、商業的に利用されます海産種の国際取引を規制しようとする動き、これがさらに強まるのではないかと我々も大変懸念をしている次第でございます。
 来年十月にタイでこのワシントン条約の締約国会議が開かれるわけでございまして、こうしたサメの国際取引の規制強化、こういったことが議論されるのではないかというふうに私ども懸念しているわけでございますけれども、まずは、これも先ほど先生が御指摘になりましたように、国内におきますいろいろ問題意識の共有化と申しますか、情報のオープン化、こういったことが必要ではないかと思います。先々週の金曜日でございますか、十一日でございますけれども、気仙沼におきましてシンポジウムを開催させてもらいまして、このサメの問題ということで、科学者を初めいろいろな関係者の方々がお集まりいただきまして、いろいろと議論をしていただいたという経緯もございます。
 私どもも、ただ単にこうした条約締約国会議があるときだけではなくて、こういったとき等々をとらえまして、こうした問題が、先ほど先生が御指摘になられましたように、サメの規制の問題はすなわちマグロはえ縄漁業で混獲規制ということで、マグロ漁業にも影響していくという問題は重々認識しておりまして、こうした点は我々も注意しながら、今後、特に来年十月のタイで行われますワシントン条約締約国会議等に向けまして、科学的な根拠に基づかないままにいたずらに附属書等が修正されることのないよう、国内の世論喚起と同時に国際的な働きかけ、こういったことを通じまして、私どもとしては、そういったことが行われないよう精いっぱい努力してまいりたい、かように考えている次第でございます。
菅野委員 先ほど鯨の問題も取り上げました。南氷洋にはミンククジラが七十六万頭生息しているという科学的調査が行われています。そして、ウバザメやジンベイザメというものは世界にまだそんなに大量に流通していないから、それでも国内にまだ影響が生じないところで推移しているんですが、ヨシキリザメなどにこの規制がかかったらば、これは国内産業にとって大打撃を受けるというふうに思うんですね。
 そして、もう一つ重大なのは、アメリカやEUが、サメのひれだけとって、あと本体は捨てるということに対しては規制をかけたんですね。そして、そのことが国際的にどんどん規制という形で広がっていくという状況にもなっています。日本の漁業者もそういう意味では反省の上に立っていかなきゃならないということで、水産庁の増殖推進部漁場資源課長の小松正之さんが警鐘を鳴らしているというのも時宜を得ているというふうに思うんです。
 そういう意味で、まだまだこのワシントン条約締約国会議で議論されていることが国民に広く知れ渡っていません。一部の関係者でしかこのことは議論されていません。この農水委員会の中でこのことをわかっている人がどれだけいるのかな、こんなことを言っては失礼なんですが、それくらいベールに包まれたところで議論されているんです。日本の国内の水産業に多大な影響を及ぼすであろうということが国民に知れ渡っていないというところに私は問題があるというふうに思っています。
 日本のサメの水揚げの八割から九割が気仙沼港に入港されていって、気仙沼という一部の地域の問題だというふうにとらえがちですが、日本の水産食料、水産たんぱく源という観点から考えれば、私は、全国民的な課題にどう水産庁を中心として農林水産省が持ち上げていくのか。このWTO交渉、そしてIWCの問題、ワシントン条約締約国会議の問題、これらに共通していることは、一部の人でしか議論されていない。これを国民全体に、どうこの議論を知らしめていって、危機的な状況なんだということを政府がどう広げていくのかというのは、今問われている大きな課題だと思っております。
 大臣、通告していなかったんですが、この三つに共通する部分、私は、大臣としてしっかりと、国内、消費者も含めて知らしめていくという体制をどうとっていくのか、大臣の決意をお聞かせ願いたいと思います。
亀井国務大臣 実はこの間、私は、全然知らない若い青年から、IWCの問題、ぜひ頑張ってほしい、こういうことを言われたわけでありまして、こういう青年が、私、存じ上げない人でございますけれども、道ですれ違ったらそういう話が出てまいりまして、今お話しの、やはりそういうことを感じている国民がおられると同時に、今御指摘のように、WTOの問題、あるいはIWC、またこのサメの問題等々、まだまだ国民の理解、またどういうことが問題になっているかなかなか行き届いていないところは私ども反省しなければならない、こう思っております。
 これからも、それぞれの場でこのPR、また理解を深める努力を省を挙げて頑張ってまいりたいと思っております。
菅野委員 終わります。
小平委員長 次に、佐藤敬夫君。
佐藤(敬)委員 ストッパーの役割というのは大変大事なわけでありまして、何分経過して受け継いでも、きちんと所定の時間に終わるというのがどうも私の役割のようでありまして、前回も五分しか実は質問できなかったわけであります。
 実は、大変な政策の大転換をしているわけでありまして、米政策については、恐らくこれまでの間にいろいろな御質問があったかもしれません。しかし、五月二十一日、私が当委員会で御質問申し上げて、大臣、当時ありました食糧庁長官、そして須賀田局長から、これまでと違ってしっかりとした、八月中での概算要求の枠組みについては、農家の皆さんは安心して、地域水田農業ビジョンにかかわるメリット対策にきちんとした方向が示せるような努力をしますよとお約束をいただいたわけであります。
 まず第一に、その五月の時点から、今盛んに関係者からこの枠組みについて交渉が出てきております。具体的に言えば三千億だと言われます。しかし、ことしの米の予算そのものは二千四百億、これをさらにどういうふうに処理をしていくのか、こういう問題が毎日毎日新聞をにぎわしているわけであります。
 須賀田局長にまずお伺いしたいんですが、生産調整の実施者へのメリット対策の内容は五月の時点に比べてどの程度検討が進展したのか、具体的に伺いたいと思いますが、お答えください。
須賀田政府参考人 米政策改革の大綱が昨年決まりました。それに基づきます法律が、当委員会で御審議の上、成立を見ました。現在、まさにそれに基づきまして最後の仕上げ、すなわち所要の額をどのように考えて積算したらいいのかという最終局面でございます。
 内容は、産地づくり対策、それから米価の下落を支える対策といたしまして、名前がちょっときょうから変わりましたけれども米価の下落影響緩和とか、担い手の経営安定対策、そして豊作による過剰が出たときの対応、この四本柱の中身を詰めているところでございまして、まさに単価をどうするか、需給調整規模をどうするかという議論が本日始まりました。まだ具体的な金額がどうのこうのという段階には至っておりませんけれども、近々、最終的な所要額というものを詰めていきたいというふうに考えております。
佐藤(敬)委員 それじゃ、五月からきょうまでどう変わったかということが何にもわからないじゃないですか。もう一回答弁してください。
小平委員長 須賀田総合食料局長、簡潔に明確に答弁をね。
須賀田政府参考人 例えば、現在の水田農業経営確立助成対策、その単価でございます。飼料作物、麦、大豆、これは一番下の基本単価といたしまして共補償込みで二万円、政府助成では一万円、その上に基本助成四万円、地区達成が三千円ありまして、一番上に高度利用一万円と、政府支援ベースでは六万三千円ということになっているわけでございます。米と麦、大豆の収益性格差が約四万、三万八千円でございますので、そういうレベルにすべきか、あるいは従来の継続として最高水準のものについては従来と同様なものを確保すべきか、そういう議論でございます。
 米価下落につきましても、政府と農業者の拠出割合をどうしていくか、担い手経営安定対策も同じような問題がございまして、豊作による過剰に対する融資の単価もどうするか、これは我々の見解と農業団体の見解が違っておりまして、最終的にどのように落ちつかせるか、一両日中にもという状況でございます。
 私の方からはそれ以上ちょっと言えませんので、お許しをお願いしたいと思うわけでございます。
佐藤(敬)委員 言えませんのでというのは困るんですが。
 しかし、これだけの大きな政策の転換ですよね、混乱が起きるのが当たり前なんです。その混乱を、どう安心して農業経営を営むように導くかというのが基本計画じゃないんですか。
 だから、今、国家の予算というのは大変ですよ。それは恐らく、これからシーリングやったって、またことしから来年は何%引きだなんということを今総理が言っているわけですから、大変だと思いますよ。だけれども、これは米に農業予算を全部使うわけにいかないわけでしょう。ですから、今言っているのは、例えば重点化、集中化も必要だとすれば、米政策の具体的に必要な予算の確保について、産地づくり対策、米の価格の下落影響緩和対策、担い手経営安定対策のいずれの施策に重点を置くのか。難しいかもしれませんけれども、そうじゃなかったら、全部やりますよと言うことはできないということが今答えられないということなんでしょう。
 あなたとしたら、どこに重点的に力を入れて行うことが農家の安心、安全に導くことができるのか、そのことに考えがあったら聞かせてください。
須賀田政府参考人 新しい食糧法ができまして、市場原理に基づいて米価が形成されるということは、見方を変えれば、生産調整をきちんと行えば米価が維持できるという体制ができたということでございます。
 いろいろな御意見の中に、主としてそういう基本的に産地づくり対策等の生産調整をきちんとすべき、やはりその方向に重点化すべきではないかという御意見の方が私としては多いというふうに感じております。
 一方で、先生もそうでございましょうけれども、米の主産地の方々からは、やはり米価下落を支えるような対策、従来からの政策の継続ということもあり、早場米地帯に比べまして売れる時期が不利であるというようなこともありまして、米価下落対策の方にも意を用いてほしいという御意見もこれまたございまして、その辺をどのようにして考えていくか。
 一方においては予算が厳しい、構造改革を進めなくてはいけないという要請がある、一方では、生産現場からは、これまでの政策の継続というのをぶちっと切ってしまうということについての非常な不安というものも寄せられているということで、政策というものをどのようにしてまとめていったらいいのか悩みながら週末まで行きたいというふうに考えております。
佐藤(敬)委員 何か総合食料局長になった瞬間に切れ味悪い答弁ばかりですが。前回は、予算なんか見せて、そんなことあれしたら農家が甘えるからだめだみたいに言って私にしかられたんだけれども。
 例えば、これまでの商品経済社会というのは、商取引の前提というのは質量と価格でしょう。だから、価格さえ安ければ何ぼでも増産をしたりなんかした。しかし、どう考えても、二十一世紀の時代というのは、安心とか健康とか環境というコストを正当に評価できる、こういう商品経済の時代がやがてやってくるんだろうと思うんですよ。
 とすると、米をつくるという生産コストだけじゃなくて、最後の消費者の手に渡る部分のところに、アメリカの米と日本の米とがどのぐらい安心、健康、環境というものにコストを払っているのか。それは生産コストじゃないかもしれません、流通コストの中に入るのかもしれません。しかし、これを消費者にきちんと分析して評価をさせるということを、そのために食品安全委員会というのはつくったんじゃないんですか。そしてあれだけの学者やあれだけの分析できる人たちをずらっと高給でそろえたんでしょう。
 だったら、そういう環境コストというものが日本の米づくりとアメリカの米づくりにどれだけの違いがあるのか、こういうものをしっかりと流通の場面まで含めたところで生産者の手に、これは農林水産省の予算じゃなくて、流通コスト全体も含めた一貫した流れの中で、農業経営者、生産者、安心しなさいというような物の考え方ができる時代になっているんじゃないか。
 これは質問を提示してありませんが、こういう考え方が、食品安全委員会というものができて、消費者と生産者の中にそういう枠組みができたら、安心と健康と環境に対するコストというものをきちんと我々も負担しようというのなら、そういう商品経済の流れの時代がやってくる。だったら、農林水産省はそのためにどういう役割を果たすかということを考えるのが当たり前の話じゃありませんか、どうですか。
須賀田政府参考人 大変難しい御指摘でございます。
 米政策改革の御議論の中にも確かに、先生言われますように、顔の見える米づくり、作物づくりということで、安心、安全を日本の消費者に与えることができる、そういうものを推進していくべきである、そういうことを初めといたしまして、よく言われることでございますけれども、特に水田はいろいろな多面的な機能を有している、特に条件の悪い中山間地帯等で耕作放棄等が起こりますと、その機能が一挙に崩れていく、だから、そこへある程度コストをかけて水田農業を維持すべきではないか、こういう御議論が基本的にございます。
 ただ、そのために幾らお金をかけてもいいのかという御議論もございまして、やはり去年以来の御議論、市場重視、そして構造改革を推進する。やはり私どもとしては、そういう構造改革を推進いたしまして、担い手が十分育成をされて、その担い手の生産活動によってそれらの機能が保全される、あるいは安心、安全を与える、これを基本に据えて去年以来議論を進めてきたわけでございますので、担い手の経営安定対策にいたしましても、産地づくりにいたしましても、担い手を育成していくということを基本に据えて御議論を賜っているところでございます。
佐藤(敬)委員 かみ合わない討論になるかもしれません。
 全部農林水産省でコストや何かを予算の中で負担しろというのではなくて、そういう分析、安心、健康、環境というコストはこういうことになっているんだ、こういう違いをきちんと消費者に対して分析し、明快な理解を求めていくというようなことをきちんと食品安全委員会や何かのところでやはり続けていくことが、私は、これからの大きな課題ですよと。
 そうなってくることによって、そのコストを、消費者が安心と健康と環境のコストというのを私が負担していくんだという気持ちになる、そういうことがこれから成熟した国民性というものを培っていくということになっていくんじゃないかということを申し上げたわけです。
 大臣、五月に御答弁いただきました、八月の概算要求に向かって、やはりしっかりとした対応をし、全体に安心、安全をつくり上げていっていただかなきゃならない。これまでの議論も聞いていただいて、ちょっと食糧庁長官はもう違うお立場になっているのかな、ですから、大臣にひとつ決意をお聞かせいただきたい。
亀井国務大臣 今、来年度の予算に向けまして、局長からもお話し申し上げましたが、いろいろ団体や関係のところからお話を承っておりまして、またその経過も私も承知をしておるわけであります。
 そういう中で、今お話しの産地づくり、また消費者のニーズに合う米、それは安心、安全の問題、あるいはその地域の環境を保全する、こういうような役割も加味しなければならないわけでありまして、そういう面で来年度の予算要求、概算要求に向けて、いろいろの御意見を踏まえた中で、限られた数字になるわけでありますが、農水省の予算を創意工夫して知恵を出して、その対応を図ってまいりたい、こう思っております。
佐藤(敬)委員 農林水産大臣は、全体のお立場ですから、ここだけというわけにはいかないでしょうが、しかし、どう見たって政策の大転換だ。大転換をやはり緩やかに、安心して、生産者に対してきちっとした、あるいは流通に対してもきちんとした判断をして、少しでもお互いが妥協できるというか、合意できるところを目指して頑張っていただきたいというふうに思います。
 それから、済みません、きょうはたくさんの政府参考人をいただいたんですが、ストッパーはあと五分しかありませんから、中山間の地域対策について、平成十二年度から中山間地域等の直接支払い制度というのがあったんですが、これが平成十六年で終了することになっていますよね。この扱いは今後どうされるんですか。続けるんですか、それとも――私は続けてほしいと思うんですが、このことについて担当の局長から。
太田政府参考人 中山間地域等直接支払いでございますけれども、中山間地域は国土面積の約七割、耕地面積及び総農家数の約四割を占めており、食料の供給とともに、国土の保全、水源の涵養、さらには豊かな伝統文化や自然生態系の保全、都市住民に対する保健休養の場の提供など、多様な役割を果たしております。
 そうした中で、中山間等直接支払いは、他の政策と相まって、多面的機能の発揮という観点から、営農の継続をベースに直接に農家に交付金を交付するという制度でございます。御指摘のとおり十六年までの対策となっておりますが、スタートの段階で、十六年度、五年後に見直すということを書いております。見直すということは、直ちにそれでそれを廃止するということではなくて、まさに実施状況を踏まえて対応していくという考え方でございますので、現在も中間の見直しをしたりさまざまなことをやっておりますが、さらにその実績をしっかりとらえて、あるいは第三者委員会の意見も聞きながら検討してまいるというような姿勢でおる状況でございます。
佐藤(敬)委員 今御答弁ありましたように、担い手経営安定対策の規模の要件というのが、ここは非常に大事になってくると思うんですね。中山間地域にとって、集落とか地域を維持できるかどうかの極めて深刻な問題になっているわけです。そこで、その担い手経営安定対策の規模要件について、地域の実態を踏まえて、要件緩和をどういうふうに考えているのかどうか、もう一度御答弁ください。
川村政府参考人 お尋ねの担い手経営安定対策の規模要件でございます。
 これにつきましては、構造展望を踏まえまして、おおむねその二分の一ということで、集落型経営体については二十ヘクタールということで打ち出しをしております。この点につきましてはいろいろ御意見がございます。やはり構造改革を目指してこの基本はちゃんと維持すべきだという御意見もございますが、今委員の御指摘のように、特に中山間地域について、なかなか物理的にそういう面積がないといったようなところもあるので、その地域の実態をちゃんと踏まえてほしいという御意見もございます。
 我々としても、経営体として十分将来ともにやっていけるようなものであれば考慮する可能性があると思いますが、今そういう点を踏まえましてしっかり検討しているところでございます。近日中に結論を出したいと思います。
佐藤(敬)委員 これから私の答弁のときには、語尾をしっかり、こうしますとか、できませんとかという答え方をしてください。
 与えられました時間が、この古い方の締めでいくと十四時三十分までと書いてありますので、ストッパーの役割を三十秒余して終わらせたいと思います。どうもありがとうございました。
小平委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時二十九分散会


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