衆議院

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第3号 平成16年2月26日(木曜日)

会議録本文へ
平成十六年二月二十六日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 高木 義明君

   理事 北村 誠吾君 理事 西川 京子君

   理事 松下 忠洋君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 小平 忠正君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    井上 信治君

      石田 真敏君    小野寺五典君

      大野 松茂君    梶山 弘志君

      金子 恭之君    木村 太郎君

      後藤 茂之君    後藤田正純君

      佐藤  勉君    玉沢徳一郎君

      津島 恭一君    永岡 洋治君

      西村 康稔君    野呂田芳成君

      二田 孝治君    岡本 充功君

      鹿野 道彦君    金田 誠一君

      菊田まきこ君    岸本  健君

      楠田 大蔵君    篠原  孝君

      神風 英男君    仲野 博子君

      楢崎 欣弥君    堀込 征雄君

      松木 謙公君    西  博義君

      高橋千鶴子君    山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       亀井 善之君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)     梅津 準士君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)          田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)   遠藤  明君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長)         小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房国際部長)      小西 孝蔵君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)        須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)       中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)          白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)          川村秀三郎君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)        太田 信介君

   政府参考人

   (林野庁長官)              前田 直登君

   政府参考人

   (水産庁長官)              田原 文夫君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)   田中 伸男君

   農林水産委員会専門員           和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  野呂田芳成君     井上 信治君

  仲野 博子君     菊田まきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     野呂田芳成君

  菊田まきこ君     仲野 博子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長小林芳雄君、大臣官房国際部長小西孝蔵君、総合食料局長須賀田菊仁君、消費・安全局長中川坦君、生産局長白須敏朗君、経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君、林野庁長官前田直登君、水産庁長官田原文夫君、内閣府食品安全委員会事務局長梅津準士君、厚生労働省健康局長田中慶司君、医薬食品局食品安全部長遠藤明君及び経済産業省通商政策局通商機構部長田中伸男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子君。

西川(京)委員 おはようございます。自由民主党、西川京子でございます。よろしくお願い申し上げます。

 新しく日本の農業の一つの大きなターニングポイントとも言える去年からことしにかけての日本の状況の中で、本当に日本の農業、食、そして農村、それをどうするかという、国の一番大きな、大事な基本である、まさに政治の基本とも思える農業の一番新しい、大げさに言えば旅立ちといえるこの時期に、本当はそこにみんな集中して頑張っていかなければいけないこの時期に、またアメリカでああいうBSEが発生いたしました。そして、それに続いてまた鳥のインフルエンザということで、本当に何か、そこの対応に追われてしまって、本来の、農政をどうするという思いにみんなの力が結集できないような状況、大変厳しい思いを持っております。

 昨年の十二月にBSEが発生してからの一連のアメリカの動き、そして国内の反応、そういうのを見ておりまして、私は、十三年の日本におけるBSE発生のときのあの大騒動、あの混乱、あのときのことを思いまして、何かちょっと隔世の感がするような今回の日本の国内の状況を感じました。

 そういう中で、今回のアメリカのBSE発生に対応して、日本政府が、そして日本の農林水産行政がどういう対応をするべきなのか。特に、食の安全、安心ということを農の基本に据えたこの日本の新しい農政の中で、どういう対応をしていくべきなのか、本当にこれからが正念場だと私は思います。

 そういう中で、アメリカの今回発生以来のいろいろな、さまざまな措置、対応に対しての明確な、アメリカ側からの毅然とした、アメリカはこうやるんだというメッセージが日本側にどうも余り伝わってこない、そういう思い、もどかしさを感じます。その中で、私は、アメリカの今までのBSE対策は一体何だったのかと。現実にはカナダとアメリカの牛がほとんど自由に往来しているような状況の中で、実は大変な事態に実際はなっているんじゃないか、そういう危機感も持っております。

 そして、実際に日本があれだけの騒動の中で、絶対に国民の信頼をかち得るためには全頭検査ということをしました。そして、このことが、二十四月齢以下あるいは三十カ月齢以下に対してそれは余り過剰な制度だろうという認識があった中で、実は日本の中で若い牛からもBSEが発見されたわけで、これは正しかったという、一つの日本の世界に誇れる制度だと私は思っているんですが、今回、アメリカのBSEに対するいろいろな、さまざまな、ダウナー牛に限って検査するとか、そういうのを聞いておりますと、本当にこれで、アメリカ国民どころか、世界に輸出しているわけですから、それの安心、安全を一体アメリカはどう考えているんだという思いがあります。

 きのう、おとといですか、米農務省長官のベネマンさんの発言もありました。日本のBSEの全頭検査は科学的に無意味だ、そういう発言まで出ている中で、一体、日本はこれからどういう主張をアメリカにきちんとして、日本の食料の、牛肉の需要にこたえていくのか、ぜひそこのあたりをお聞かせいただきたいと思います。

 そしてさらに、アメリカの今のBSEの安全検査というのはOIEの基準に合っているのかどうか、その辺も私にはよくわかりません。そのあたりのことと、そして、日本の全頭検査ということを、きちんとOIE基準に日本側としては要求していくべきじゃないかと思っておりますが、そういうことについて、どうか大臣、日本側の主張として毅然とした態度をとっていただきたいと思うのでございますけれども、一言お願い申し上げます。

亀井国務大臣 お答えいたします。

 先ほどお話しいただきましたか、私はやはり、二〇〇一年九月に我が国でBSEが発生をし、そして国民の皆さん方に大変心配、不安を与えたわけでありますし、そういうことを決して忘れることなく、国民の健康保護を第一に、食の安全、安心、このことを十分考え、そしてそのことを忘れることなく進めていかなければならない、このように考えております。

 そういう中で、御指摘の米国のBSEの検査体制、このことにつきましてでありますが、OIEのサーベイランス基準では、三十カ月齢を超える牛の飼養頭数が三千万頭なら四百二十五頭、四千万頭なら四百三十三頭のBSEと類似の臨床症状を示す牛を検査することが最低ラインとなっている、こういうことであるわけであります。

 米国からは、二〇〇三年度におきましては、歩行困難の牛を中心に約二万頭の検査を実施との説明を受けておるわけであります。検査頭数から見れば、OIEの求めております水準は超えているように見えるわけでありますが、しかし、検査の対象となった牛の実際の選び方などが明らかでないわけでありまして、二万頭全部がBSE症状の牛であるかがわからないわけでありまして、OIE基準を満たしているかどうか、これは判断することは非常に難しいわけであります。

 また、OIEに対する全頭検査の主張、これはやはり牛肉等の貿易に関する国際衛生上のルール、国際獣疫事務局、OIEが作成しておる、OIEにおきましての、輸入国、輸出国ともに納得できる新たなルールをつくられることが必要、このように考えております。そういう面で、BSEのリスク評価、リスク管理の両面にわたりまして、日本の専門家も、あるいはまた行政官も参加をしてオープンな議論を徹底的に行う必要がある、このように考えております。

 特に科学的な面ではBSEが未解明な点が多々あるわけでありまして、この新たなルールには、BSEのいわゆる定義の明確化ですとか、あるいは判定方法、判定基準の統一化であるとか、各国のステータスを的確、公正に比較できるサーベイランス基準の強化の問題、あるいは特定危険部位の範囲の検討問題、この課題があるわけであります。

 特に我が国におきましては、BSEが十例出ておりますが、ほとんど、屠畜場におきます、まさに正常牛から発見をされておるわけでありますし、非定型的なBSEや、二十三カ月齢あるいは二十一カ月齢といった若齢牛のBSE感染牛が出ておるわけでありまして、これはすべて全頭検査、こういう結果から確認されたわけでありまして、この我が国の経験を十分反映させる必要がある、このように思っております。

 実は私、昨年十二月にOIEの事務局に参りまして、今申し上げましたようなことをバラ事務局長にもいろいろと説明を申し上げ、我が国の専門家または我が国の行政官、この者がいつでも参って、また機関の会合等にも積極的に参加をしていろいろのことを申し上げる、こういうことを申し上げてきたわけでありまして、そういう面でいろいろな努力をしてまいりたい。

 また、アメリカに対しましては、屠畜場におきますBSEの全頭検査、または特定危険部位の除去、このことを再三私は申し上げておるわけでありますし、これからもその対応がなされるように努力をしてまいりたい、このように思っております。

西川(京)委員 せっかく安全、安心という制度をきちんと整備した日本、ぜひ大臣には頑張っていただいて、世界基準になるように毅然とした態度で対応をお願いしたいと思います。

 今回のアメリカのBSE騒動の中で私が感じたことは、日本の食の安全、安心、そういうものを、実は食品安全局ではなくて日本のマスコミが握っているのかな、そういう思いをちょっと持ちました。今回のこの一連のBSE騒動の中で、日本のマスコミの対応の仕方というのに非常に私は不思議な思いを持ちました。あの吉野家の牛丼一本の場面だけが、どこの各局を引いてもその問題、なくなる、最後の一杯です、みんなそこに集中して、日本人は牛丼しか食べていないのか、そういう思いも持ちましたけれども、あの対応の仕方は一体何なのかなと私は考えました。

 あの日本で発生したBSEのときのマスコミ側の対応、それに比べて余りにもずさんであり、単にやじ馬的であり、本来あの時点で、流通業界のスーパーがみんな自主判断で外国牛肉を店頭から撤去しました。それに比べて、吉野家は最後まで持っていた牛肉を使ったわけですから、最後の一杯ですと言って宣伝したわけですから、そこにおける吉野家の企業責任というんでしょうか、そういうものに対して、マスコミのどこも一言もそこの問題を指摘していなかったことに関して、私は、本当に何を考えているのかなとちょっと思った次第でございます。

 確かに、今回の厚生省の対応などでも、もう既に流通してしまっているものに対しては全部処分しろという通達は出していないという判断もあったようでございますけれども、少なくとも、あの日本のBSE騒動のときには全部処分したわけですね。そういう中で、日本がせっかくそういうことを全部、あえて過剰とも言えるぐらいの行動をしながら、日本の食の安心、安全というものを守ってつくってきたその中で、日本のマスコミであるあの人たちが、日本の制度に対して、これだけ今やっている、だったら、これはおかしいだろうと、むしろ流通業界に対しての思いを指摘しなければいけない立場が、それを、最後ですね、どうしましょうと。まして、あの「サンデープロジェクト」では、吉野家の社長を画面に呼んで、何とか早くアメリカの牛肉を入れてもらわなければ困るという発言までさせている。本当に私は、日本のマスコミ頑張れ、どうしたと言いたい思いがあります。

 その中で、むしろ私たちは今、日本の食育、食の安全、安心とともに、日本の将来の子供たちを本当に健全に育てたいという思いで食育という概念を、この農林水産の分野あるいは文部科学省あるいはいろいろな省庁で、日本に、正しい、子供たちの健全育成のためには本当に食べ物が一番大事だという思いも育てました。そのことに関しての絶好のチャンスだったと思うんですね、あの騒動は。やはり外食に頼るんじゃなくて、同じぐらいのお金で、ちょっと日本の牛肉を使って家でつくったら、家族全体で食べられるんだよというぐらいの視点がほしかった、私はそういう思いを持っておりますが、副大臣、このことに関しての御意見を一言お願いします。

金田副大臣 西川先生のお考え、全くそのとおりだというふうに、私も同じ思いでございます。

 確かに、あのアメリカのBSEが発生したときに、我が国のマスコミは重要なことは棚に上げまして、外食産業の既に輸入した在庫がいつ切れるんだろうというところに焦点を当てまして、連日新聞報道がなされたということでございます。

 基本的に、農林水産省あるいは日本政府として、牛肉をどうやって安全に国民の皆さん方に提供するかということを基本に置いていろいろやっているわけでございますが、牛肉市場の四割は国産牛でございます。残念ながら日本は汚染国でございまして、この四割をどんなに安全だという形で提供しなきゃならないということで、全頭検査の仕組みを二〇〇一年につくったわけでございます。

 外国の肉、六割が入ってきているわけでありますが、それらの六割の肉は、ニュージーランドあるいはオーストラリア、アメリカという清浄国からの輸入で賄って、国民の皆さん方に日本国内の肉は安全ですよということを基本に置いてやってきた。ところが、アメリカが汚染国になったものでございますから、二十四万トン、約三割の牛肉が輸入できないという事態になっているわけであります。

 この供給体制をどうやっていくか。ニュージーランドあるいはオーストラリアの牛肉の輸入の増がどの程度見込めるか、そういったこと等々も考えながら、あるいは、国産の肉の供給を、すぐにはできませんけれども将来的に拡大していける余地はどのぐらいあるだろう。そういったことの中で、とにかく日本の国民の皆さん方に、国内に出回っている肉は安全ですよということを基本に置いて、スーパーが正しかったか、吉野家を中心とする外食産業が正しかったかというような評価があるかと思いますが、牛肉については安全だというような考え方があるわけでございまして、どちらが正しかったとか正しくなかったということは、一概に余り言えないのかなという考え方を持っております。

西川(京)委員 報道の仕方一つで日本の食生活までがある意味では影響されてしまうという今の現実の中で、本当に、今、日本の農政がどういう問題を抱えていて、どういうことをきちんと整備していて、そしてどこに問題点があるのか、ぜひそういう建設的な、前向きな報道をしてほしいなという思いを持ちました。副大臣、本当にありがとうございました。

 続きまして、またBSEと続いてさらに今回鳥インフルエンザの発生ということで、本当に次々と、私はこの問題は一体何なのかなと。BSEに関しては自然現象ではないのかもしれませんが、鳥インフルエンザに関しては、あちこちでこういう事態になっているということは、一説には、地球の温暖化その他でシベリアの方で凍結されていたウイルスが溶解とともに出てきて、それを野生の鳥が、野鳥が運んだんじゃないかなんというあれもありますけれども、こういう状況の中で、安全な食肉を供給していくということは本当に大変なことだと思います。

 その中で、今回、鳥インフルエンザが日本でも山口県で発生して、そして今回また大分県でも二例目が見つかりました。その中で、私の今住んでおります熊本県も、その制限区域内に一部かかるということで、地元の皆さんからの大変心配した御意見もいただきました。

 今回、この鳥インフルエンザに関しての行政側の対応というのは、私は割合素早く、まあ、よく対応していただけたんではないのかなと思っております。その中で、このかかった鳥たちを処分するのにかかる費用、これはきちんと行政が見るわけですけれども、この問題に関して、やはり制限をかけるその間における被害ということが問題になってきたわけです。

 今回、山口の方では、今までその制度がなかったということで、緊急にしたわけでございますけれども、今回、熊本でも、主に被害がブロイラーが中心でございまして、制限区域にかかった中での出荷がずっと延びた中でのえさ代なりなんなり、大変過重な負担を今生産者が受けているということで、この辺の補償問題について、どうなっているかちょっとお聞きしたいと思うんです。

 実は、今たまたま小さい範囲で済んでいるからいいんですが、これがもし本当に百万羽、二百万羽という大きな養鶏場あたりがその中に入ったりしますと、これはかなりの被害になると思うんですね。そういう中で、県と国とがきちんと仕分けした、どの程度県がやって、どの程度国が責任を持って整備するのかという、その辺の補償体制あるいは措置体制の区分けというのも大事かと思うんですが、この補償の問題について、将来的にきちんとしたもの、見通しを持っていらっしゃるのかどうか、大臣、お願いいたします。

亀井国務大臣 お答えいたします。

 今回の鳥インフルエンザにつきましては、発生農家に対しましては、家畜伝染病予防法に基づきます、患畜、疑似患畜の殺処分やあるいは汚染物品の焼却、埋却等については国が手当金を支払う、こういうことであります。一方、移動制限区域内の関係の農家の損失につきましては、一時的な損失、また廃棄や処分を求めているわけではないわけでありまして、当該発生農家に対する手当金とは異なりまして、法律上、その損失を補償する仕組みは設けられていないわけであります。

 しかし、その区域内農家に対する支援措置につきましては、損失の内容、規模、発生した家畜伝染病の種類等により異なることでありますので、問題が生じる都度、必要に応じての対策を検討する、こういうことにすることが適切ではなかろうか。

 今御指摘の、今回の大分県の発生でございますが、まず、移動制限を受けた区域内の農家に対しましては、家畜疾病経営維持資金等の支援措置を講じることといたしたところであります。また、今後、防疫対応の進捗状況を見ながら、新たに問題となっておりますブロイラーへの対応を含めて、必要な措置を改めて検討してまいりたい。さらに、国並びに都道府県といろいろ、山口県の例につきましても十分連携をとってやったわけでありますが、これからも、大分県の問題等につきましても、大分県とも十分連携をし、国としての対応を考えてまいりたい、このように思っております。

西川(京)委員 一種の風評被害という問題が、今回のBSEにしても鳥インフルエンザにしても大きな要素になります。まして鳥インフルエンザのときは過剰に反応して、お寺で飼っていた八十羽の鶏がたちどころに処分されてしまった。慈悲の心を一番育てるお寺のところでそういう過剰な反応をするのもちょっといかがかなという気も正直いたしましたけれども、その中で、やはり生産者にとって一番の不安は、出荷できるのか、生産できるのかということだと思いますので、どうか、安心して安全な鶏肉あるいは卵、そういうものが出荷できるような体制、ぜひお願いしたいと思います。

 一つ、私、これは、国内の問題も含めてですが、今回の鳥インフルエンザあるいはBSEとも関連しますけれども、今最大の日本の農政の課題でありますWTOあるいはFTAの問題に移らせていただきますが、本当に亀井大臣、御苦労されていらっしゃると思います。

 私は、特にFTA交渉のときに、またもや私はマスコミの問題をちょっと申し上げたいと思うんですが、あのときに、結局うまくいかないで決裂ということに一たんなりました。そして、そのときには本当に、日本経済新聞あるいは読売でも何でも、経済界の一つの思いを代表した意見という感じで、常に農水部門が、日本の一部の農業関係者のあれで日本の国益が損なわれた、四千億円の日本の国益が損なわれたという論調をしばしば私は紙面でも読みました。

 私は、この時点で恐らく亀井大臣、いろいろ御奮闘されたと思うんですが、国益というのは一体何なのだ、四千億円の損失が国益を損なうことなのか、あるいは、本当に日本の農業、日本の安全保障、食の安全保障、食料自給率を上げる、そのためには今何としてでも日本の農政、一生懸命今構造改革をやっている中で、転換していく中で、それはのめない状況もあるわけですが、そういう主張をすることが国益を損なうことなのか。

 日本の食料安全保障を守るのが私は国益だと思うのですが、そういう、いわば経済界、経済産業省関係の方々との認識の違いというんでしょうか、私は、日本の農政を今、これから少しでもいい方向に持っていくために、農政関係者だけで物事を考えていては全く将来はないわけでして、当然、国民の理解を得なければいけない。そしてさらに、まさに貿易、世界との国際交渉の中で、常にそういう経済界との理解をうまく密にしていかなければいけない。そのことがこれからの将来、本当に大事なことだと思うのですが、大臣自身、国益とは何か、今回の、経済産業省が言ったとは思いません、経済界を含めての一つの論調の国益という問題に関しての大臣の御所見もちょっと伺わせてください。

亀井国務大臣 今御指摘の、FTAあるいはWTO等々につきましての関係、これは、我が国の多様な農業の共存、このことを基本理念といたしまして、農業の多面的機能、あるいは食料の安全保障、あるいは国土の保全、こういうことで、非貿易的関心事項、こういうことに配慮し、柔軟な、そして継続性がある、バランスのとれたルールの確立がされることが必要なわけであります。

 そういう面で、私ども、やはり、今御指摘のとおり、経済界あるいは国民の皆さん方の理解を得ることが重要なことであるわけでありまして、そういう面では、機会あるごとに消費者、経済界、農業者、マスコミ関係者、各界のいろいろの方々に、シンポジウムであるとか説明会であるとか講演会だとか、いろいろなことをして進めておるわけでありまして、やはり何といっても、我が国は一億二千七百万の国民がこの小さな国土に生活をしておるわけでありまして、そういう面で、多角的な貿易、また、我が国のこのような立地条件を考えれば、やはり貿易というのは欠かすことのできないわけであります。

 しかし、やはり我が国での食料の自給、そして食料の安全保障、また国土の保全がなされ、あるいはまた安心して食料の問題で生活していただけるような食料安定供給、このことを図ることが使命であるわけであります。そういう面で、やはり農業の役割というのは多大なものがあるわけであります。

 ぜひ、そういうことを十分得られるような対応、このことをしっかり基本に据えて交渉しなければならない。それには、いろいろな国民の皆さんの理解、また国民的な議論というものがやはり根底にないと、とかく、何か農業が足を引っ張っているとかいろいろなことを指摘を受けるところが多々、マスコミからも、あるいは経済界からもあるわけであります。現実に農業構造改革を進めて、そして、国際障壁に過度に頼らない、そういう中での農業を確立する、こういう努力も今しておるわけであります。そういう中で、安定的食料の供給、これができるような体制というものを確立していかなければならないわけでありますから、そういう点を十分認識して、FTA、WTOの交渉等に臨んでまいりたい、こう思っております。

西川(京)委員 ありがとうございます。

 FTAにおいても、また再開されて、結局、豚肉、ジュースあたりも何となく折り合いのつく範囲で今交渉中ということでございまして、むしろ工業部門での合意の方が難しいという現実が今実際にはあるようでございまして、そういうところの本当に細かい、きちんとした報道、これをぜひ私は、また重ねてマスコミ関係者には、この場で言っても仕方がないんですが、お願いしたいなと思っております。

 そして、今回、FTAの方に世界の自由貿易のあれが集中的に、個別に、WTOが大変厳しい、いろいろな発展途上国の問題その他でなかなか動かなくなってきている中で、FTAということに集中しがちでございますけれども、やはり世界の貿易のルールをつくるWTOというものを、もう一回きちんとみんなで構築していかなければいけないと思うんですが、その中で、日本の農業関係が主張している農業の多面的機能というものをいかに認めさせるか、ヨーロッパ諸国と一緒にタイアップして認めさせていくかということが一つのかぎになるわけです。

 私は、農業あるいは自然というものに対する欧米人の考え方と日本を含めたアジア人の考え方と決定的に違うと思うんですね。やはり欧米の人たちは、自然というのはある程度征服するものだ、征服できるという感覚を持っていると思います。そういう中で、日本人を含めたアジアの人たちは、私たちはやはり自然とともに生かされている、人間も自然の一員であり、自然の輪廻の中で私たちは生かされているんだという感覚が、これは何千年の歴史の中でDNAとしてインプットされていると思うんですね。

 ですから、多面的機能というものを主張するときに、非常に私たちはスムーズにその問題がぱっと頭に出ますけれども、欧米の方々にこの問題を本当の意味で理解してもらうというのは、私は、そこまで掘り下げた主張というのをしていかないと無理なような気がするんですね。やはり農業、アグリカルチャーはむしろ自然を破壊することだという感覚の方が恐らくあると思いますので、そこを私は、きちんと大臣、そういうところも踏まえた、日本の環境を守る多面的、持続可能な農業、多面的機能の大事さ、そういうものの中でお互いに限られた国土の中でお互いの国が成り立つ農業を考えよう、そういう主張の方向をぜひお願いしたいと思いますが、一言よろしくお願いします。

亀井国務大臣 委員御指摘のとおり、アジアの国々はやはり、自然条件、いわゆる食料の安全保障、国土の保全という多面的な機能、こういう面で共通するところもあるわけであります。そういういわゆる非貿易的関心事項、これが反映されるような貿易ルールが確立されるように努力をしていかなければならない。

 これには、ヨーロッパの国におきましても、いわゆる多面的機能のフレンズ諸国等々もあるわけであります、いろいろの関係国、G10あるいはEUまたG20等々、グループもあるわけでありますし、一カ国でも我が国の理解が得られるような、そういうところにも働きかけをして、今御指摘のような問題につきましてはさらなる努力をしてまいりたい、こう思っております。

西川(京)委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、永岡洋治君。

永岡委員 自由民主党の永岡洋治でございます。

 二月十八日の亀井農林水産大臣の所信に対しまして、基本的課題につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 私、一応二期目の衆議院議員となっておりますが、いまだ、まだ一年未満の新米でございまして議員としての経験も不十分でございますが、きょうはこうして農林水産大臣への質問の機会を得ましたことを心から感謝をする次第でございます。

 また、あわせまして、日本の地域の基幹産業でございます農林水産業の振興、農山漁村の発展、そして食品産業の振興を通じまして、一億二千七百万という非常に多くの日本国民に対して豊かな食生活を保障している、この実績、功績というのは非常に大きいと思います。日ごろの農林水産大臣を筆頭といたします政府関係者の御努力、そしてまた当農林水産委員会委員長を初めとする諸先輩議員の御努力にまずもって感謝を申し上げる次第でございます。

 それでは、基本的な課題から伺わせていただきたいと思います。

 農は国のもとという言葉があります。言葉そのものは帝範という漢籍にありまして、もとは、農は政のもとたり、こういうことであるようでございますが、これは、七世紀の初め、中国の唐の時代に、太宗皇帝が後継者のために国を治める者の基本的考え方として残した言葉であります。言うまでもなく、食料というのは一日も欠かすことのできない基本的な、人間の生命維持のために必要なものでありまして、これを国の基本の第一義としなければならない、こういう戒めであります。

 先ほどの西川先生のお話にもありましたが、産業でカルチャーという言葉を使っているのは農業だけでございまして、農業というものが、単なる産業活動だけではなくて、その民族や歴史や伝統や文化というものに深く根ざしたものである、こういう基本的な要素を含んでいるということであります。

 農業、農村が健全であることが都市文明が健全に発達する不可欠の要素であると私は信じているところでございまして、過去の歴史が示しておるように、都市文明が発達した地域、今自衛隊の派遣問題で揺れ動いておりますイラクあるいはエジプト、かつては緑滴る大地でありましたけれども、今は砂漠となっているわけであります。こういう都市文明は滅亡の道をたどるということを考えると、この大きな節目にいる我が国、今現在におきまして、ぜひとも現在、農林水産大臣の所信といたしまして、農業、農村についての大臣の哲学というものをまず御所見をお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 農業、またこれを支える農村、私たちが生きていく上には農産物、食料がなければならないわけでありまして、そういう面で、まさに生命のもとでもあるわけでありますし、食料の供給の大きな役割を果たしておるわけでもあります。

 また一方、国土の保全あるいは自然環境の保全、水源の涵養、また、農村地域でいろいろな文化が興り、その伝承等があるわけでありまして、まさに多面的な役割を果たしておるわけでありまして、今委員御指摘のとおり、まさに国の土台、国のもとである、こういう認識を持っております。

 そういう中で、農業と農村の健全な姿での維持発展、これは欠かすことのできないことであるわけでありまして、地域の活力の維持や、また真に豊かな安定した国民生活のもとというのは、やはり農業、農村地域が活性化し、また活力がある、こういうことがなければならないわけであります。

 そういう中で、今、農業の構造改革の立ちおくれや、また農村の高齢化の進行、あるいは地域の活力の低下、こういうことが見られるわけでありまして、消費者の食の安全、安心の確保に対する、今、BSEやあるいは鳥インフルエンザの問題等々を契機に、特にこのことにつきましては国民の認識がさらに強まっておるわけであります、そういう問題。あるいはまた、都市と農山漁村の共生、対流ということを今進めておるわけでありますが、いろいろと変化があるわけであります。

 こういうことを踏まえまして、やはり国民の期待にこたえられる農業、農村の実現に向けて農政改革を進めなければならない、このように認識をしております。何としても、次の世代に対しましてどのような姿の農業、農村を残していくべきかという大きな視点に立ちまして取り組んでまいりたい、このように考えております。

永岡委員 力強い御答弁をいただきまして、大変私もうれしく思います。

 次に、現在、十七年三月に向けまして、平成十二年に閣議決定されました食料・農業基本計画の見直しが行われようとしております。基本法で五年ごとに見直しを行う、こう書いてありますが、単に見直しを行うと書いてあるから見直しを行うということであってはならないのではないか、こう思っております。

 当然、五年もたてば農政を取り巻くさまざまな情勢の変化というものもありますし、施策の進展状況等につきましていろいろ見直す必要があるということになると思いますけれども、見直すというからには、これまでの計画の達成状況について評価というものがまずきちんとなされねばならない、かように考える次第であります。特に、二〇一〇年におきます自給率、これは基本計画の中で目標というふうに書いてあるんですね。自給率四五%というふうに明確に数字を示して目標となっております。これは、基本方針や施策ではなくて数字が出ているわけです。

 でも、その達成に向けまして、それが難しいというような話が漏れ伝わってくるわけでありますけれども、なぜ難しいのか、それをどう改善していったらいいのか、そういうことをきちんと踏まえた上でなければ、次の目標をどのようなものに設定してもそれが生きてこないのではないか、こう考えているわけであります。これは、サプライサイドといいますか生産者の側のみならず、消費者である国民のサイドにきちんと説明をして理解してもらうことが必要だと考えるわけでありますけれども、この点について、農林水産省当局のお考えをお聞きしたいと思います。

金田副大臣 確かに、今、食料自給率四五%の目標に向けて頑張っているわけでございますが、情勢の中ではなかなか難しいという状況にございます。先生御指摘のとおり、これは生産面だけでなくて消費面からの対策も必要だというふうに考えております。

 四五%の達成は極めて難しい状況になっておりますが、昭和四十年度当時は、日本の食料自給率というのは七三%ぐらいあったわけでございまして、その後ずっと下がってきているわけでございます。主として消費面での変化が大きいわけでございます。当時は国民一人当たり二俵ぐらい、百十八キロぐらいのお米を食べていたわけでございますが、近年はもう一俵ぐらい、六十三キロぐらいのお米しか食べなくなった。自給率が高い米からの米離れという現象がございます。また、当時は二千三百キロカロリーぐらいしかとっていなかったのですが、近ごろは二千六百キロカロリーをとるようになった。

 それから、食の外部化の問題だとか、そういった問題があるものですから、各面の、消費面あるいは生産面から、いろいろと生産構造改革も進めながら、あと自給率の向上のためになお一層努力しなければならないというふうに考えております。

永岡委員 自給率の問題というのはわかりやすい問題でございますので、ぜひとも積極的に今後とも取り組んでいただきたいと思います。

 そこで、自給率というものを今頭に置きながら、今後のWTO交渉の見通しと対処方針について次にお伺いをしたいというふうに思います。

 昨年九月、カンクンで閣僚会議が決裂しました。これは農業問題で決裂したわけではないのでありまして、シンガポール・イシューを初めとして先進国対途上国という座標軸が改めて浮き彫りになった、このように理解をしております。そして、アメリカあるいはEUの働きかけによりまして、この三月二十二日からジュネーブで農業委員会特別会合が始まる、こういう段取りになってきております。前回のガット・ウルグアイ・ラウンド交渉を振り返ってみましても、米、EUのブレアハウス合意というのが急遽なされて一気に交渉が加速したということもありますので、常に我々は交渉の推移に注目をしながら万全の対応をしていかなければならないと思います。

 そこで、WTO交渉の中で、我が国が、政府が特に多様な農業の共存そして農業の多面的機能、こういったものを強く主張してきておりまして、EUを初め、私は多くの国の理解を得られたものと期待をしております。しかし、現実は、なかなか交渉の場でその考え方が具体的に反映されるようになっているのかどうか、このことが実は大事なわけであります。そこで私は、交渉の足場、日本としてこれ以上譲れないという足場としてこの多様な農業の共存や農業の多面的機能というものをもっと明確な理念、哲学として打ち立てて主張していくべきではないか、こう思っております。

 先ほどの議論にもありますけれども、今、消費者は国内における食料の自給という問題に非常に敏感になっております。もう御案内のとおり、四〇%にわたるカロリー自給しかできない、逆に言えば、六〇%の日本国民のカロリーは海外に依存している。千二百万ヘクタールの海外の農地に、日本国内には四百七十万ヘクタール強、海外に一千二百万ヘクタールも依存している、こういう寂しい状況でありまして、今、直近の新聞のアンケートによりますと、国民の九割が我が国の食料の供給に不安を感じている、こういうふうに言われております。

 そこで、私は、次のようなことをぜひとも御検討いただき、提案を申し上げたいと思います。

 それは、我が国のように食料自給率と言うと非常に国際的に理解がしにくいんですね、海外から見ますと。自給をすると言うと、じゃ、おまえたちの国は自分たちの国だけですべて供給して物を買わないと言うのか、こういう誤解を与えます。それで、あえて私は、食料の海外への依存率ということを申し上げますが、海外への食料依存率が高い国につきましては、食料、農業政策の国内政策に一定の裁量権を認めるべきだという主張を国際交渉の場ですべきではないか。もっと具体的に言葉をかえて言いますと、国家の生存権、これは国民の生存権にもつながりますけれども、国家国民の生存権として位置づけた上で、これ以上譲れないという裁量の余地が、幅があるんだということを主張すべきではないかと思うわけであります。

 その裏づけとなることを、具体的な主張を御紹介したいと思うんですが、二つ御紹介をします。

 一つは、ブッシュ・アメリカ大統領が二〇〇一年七月二十七日ホワイトハウスで行った演説の内容であります。短いので引用させていただきます。

 二十一世紀に向けて、アメリカ農業をどうやって確実に繁栄させることができるだろうか。つまり、これは国家安全保障の問題である。国家が国民を養うのに必要な食料を生産することは大切なことである。

 問題はその次なんです。みずからの国民を養うのに十分な食料を生産できない国を想像できるであろうか、そのような国があるとすれば、国際的な圧力に従属する国、危機に瀕している国であると言っています。だから、アメリカ農業について語るとき、我々は国家安全保障そのものについて語っていることになるのだと。これは、とりもなおさず、アメリカの最高責任者であるブッシュ大統領がそう語っております。

 そして、ドイツの経済学者、この方は自由貿易論者でありますけれども、この自由貿易論者であるヴィルヘルム・ヘンリックスマイヤーという学者、まだ存命であると理解しておりますけれども、この方が、EUの農業政策について、貿易問題についてこう言っています。自給率がかなり低く、例えば平時において、普通のときにおいてですね、自給率が七〇%以下というようなことであれば、国内生産を増加させる措置は正当化し得ると。その根拠は、恐らく国の安全保障なり生存権ということがベースになっていると思います。

 私は、この考え方を、別に日本はもう六〇%も海外に依存しているんですから農産物貿易について閉鎖的な国であるはずがありません。その点もあわせて主張しながら、国家としての生存権を踏まえた、貿易の論理を超えた、国として譲れない部分が国内政策としてあるんだということをWTO交渉、そして、時間があれば後で触れたいと思いますが、FTA交渉の我が国の基本的な交渉の理念、哲学として訴えていくべきだと思いますが、この点について、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 今、いろいろ御指摘をいただきました。

 実は、私、昨年四月に大臣に就任して以降、昨年のWTO関係のいろいろな会議に出席をし、またバイ会談等何回も行ったわけでもございます。そういう中で、御指摘のとおり、我が国が食料純輸入国である、そして食料の自給率が四〇%、このことはまず私はまくら言葉のようにいろいろな関係者に申し上げ、またWTOのミニ閣僚会議等々につきましてもこのことを常に申し上げて、我が国の立場を主張しておるわけであります。

 そういう中で、食料の安全保障と国土の保全など、いわゆる非貿易的関心事項を強く主張いたしまして、多様な農業の共存、このことを基本理念といたしまして交渉に臨んできておるわけであります。またこれからもこのことは主張しなければなりませんし、そういう中で、柔軟で継続性がありバランスのとれた、特にやはり輸出国、輸入国その双方、特に輸入国の立場というものも十分反映されなければならないわけでありまして、その中でルールの確立がされることが必要、このことは十分踏まえて対応してまいりたい、こう思っておるわけであります。

 御承知のとおり、昨年九月のメキシコ・カンクンでの会議があのような形で決裂をいたしました。そして、本年になりまして、いろいろ今動きがあるわけであります。そういう中で、やはりいろいろの対応、この一年を失われた一年にさせない、こういう努力は今なされておるわけでもございます。そういう点では、今委員御指摘の、ある面では生存権というお考えの御指摘でありますが、デルベス議長案を議論の出発点として本年の早期に枠組み合意を目指すという議論が今いろいろなされておるわけであります。

 そういう点で、やはり私は、引き続きこのことは申し上げるわけでありますが、現実としてなかなかこの主張が難しいところに来ておる、このようにも感じます。それは、やはり上限関税の問題がデルベス議長ペーパーに出ておるわけでありまして、我々は、この上限関税につきましては、括弧つきながら非貿易的関心事項の観点から例外品目を認めるよう、いろいろ、いわゆるセンシティブな非貿易的関心事項への配慮、こういうような視点で努力をしてきております。そういうことで、これらの問題等も十分考えていかなければならない今の状況にあるわけであります。基本は、先ほど委員御指摘のような問題、十分我が国の立場は主張をいたすわけでありますが、現実に今そういう状況下。

 これから、やはり食料輸入国を主体として構成されております我々G10の諸国なども関心を共有するわけでありますので、これらの国々と連携しながら、米国、EUあるいはまた途上国に働きかけをいたしまして、我が国の提案が反映されるようにさらなる努力をしてまいりたい、こう思っております。

永岡委員 ありがとうございます。

 ぜひとも日本の国内農業あるいは食料の安定供給ということ、特に農業というのは、言うまでもなく移動不能な産業でありまして、その土地において行われるという産業活動であります。各国ともそのためにいろいろな政策を講じて、工夫と苦労を重ねてやっているのが、これはアメリカでもEUでも現実ではないかと思います。そういうことを踏まえまして、日本も憶することなく、やはり正しいものは正しいということをきちんと、大臣の今の力強い答弁に基づきまして主張していっていただきたい、かように考える次第でございます。

 そこで、もうちょっと中に踏み込んだ議論をしたいと思うんですが、私は、WTO交渉において、いろいろ技術的な問題、困難な問題があろうかと思います。日本にとっては貿易アクセスの関税の問題と国内政策の問題というものが直接的な問題になり、もちろん輸出補助金の問題というのは攻める側としての最大の課題となっているわけでありますけれども、どうも、これまでの交渉の経過を見ますと、アメリカとEUが、あるいはデルベス議長テキストというような格好で土俵をつくられた後に、その土俵の上で勝負しなくちゃいけないという非常に難しい対応を迫られてきているというのが現実だろうと思うんです。

 私は、これはガット・ウルグアイ・ラウンドのときの反省も大いにしなければならないと思うんですけれども、国内政策が非常に重要だと思うんですね。赤の政策、黄色の政策、緑の政策、青の政策、こういう分類になっていて、日本の国内政策をどれに分類していったらいいのかという後追いで我々は一生懸命やって、AMSの削減という国際規律に適合する努力を重ねてきた。これは現実だと思うんです。しかし、アメリカ、EUは何をやっているかというと、ブレアハウス合意にも見られるように、国内政策をつくった上で、それを国際的な協定の上で認めろ、こうくるわけですね。

 私は、日本のこれからの農業の将来を考えるときに、ぜひとも農林水産大臣の強力なリーダーシップのもとで、日本としてはこういう政策をやる必要があるということを腹固めした上で、それを削減の対象とならない政策、緑の政策ということになりますけれども、そういうものに位置づけていってほしい、こういうふうに考えるわけであります。

 そこで、品目的にはたくさんありますけれども、一番重要な米の問題につきまして、これはWTO交渉というよりも国内政策の問題になりますけれども、米の生産調整、そして今後の政策の推進の方向につきましてお尋ねを申し上げたいと思います。

 米の政策改革大綱が、農林水産省、そしてまた関係議員の大変な御苦労の末に、画期的な大綱ができました。その大綱の基本的考え方は、減反を上からの押しつけではなくて自主的な減反に変えていく、しかも農協が主体的に関与していくというような方向にしていくという画期的なものであると理解をしておりますし、大変な大きな第一歩あるいは第二歩といいますか、踏み出したものと考えております。

 それはそれとしまして、中長期的な課題を頭に入れた場合に、では、日本の米の将来展望、日本の米づくりをしている農家に明るい展望を持ってやってくれというような状況に本当になっているんだろうか。ここが私の基本的な問題意識であります。

 国内需要を見ますと、海外から物が入ってくる、米のミニマムアクセス、今は関税化しましたからカレントアクセスというんですか、それが入ってくる。国内では少子高齢化で需要が減退をしていく。そうすると、どう見ても国内需要は先細りであります。そこに合わせるようにして四〇%の減反をやっていく。そういう中で、本当に魅力とやりがいと夢のある農業経営を水田農業経営にやっていけと言っても、なかなか構造政策も遅々として進まない面もございまして、御努力いただいていることは高く評価するんですけれども、将来展望が開けない。

 そこで、私は、今回の米改革大綱の行く末に見えるものとして、国内ですべて需給調整を完結させるという物の考え方を変えていく必要があるのではないか。ということは、貿易で国際的な需給調整をしながら、国内の稲作農業経営の振興、発展を考えていく、こういうふうに発想の転換をすべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。

 その観点は、簡単に言えば二つございまして、一つは、できるだけ規制を緩和して、稲作経営の自由度を増していく。やりがいを与えてやる。それは、価格が下がったり、自己責任もふえると思います。しかし、自由度を増すということは非常に重要なことではないか。

 もう一方に、世界で八億五千万の人たちが食料不足、栄養不足に悩んでいる。二十五万人近くの乳幼児が毎週亡くなっているというような数字があります。そういった中で、日本は、海外からお金に飽かせて買うものはたくさん買います。しかも、四割にも及ぶきれいに整備された水田をアイドリングさせていくという政策をあわせてとっている。これはある意味では、海外から見ると、非常に日本は気まま勝手な国ではないかという誤解を受ける面もあるわけであります。国際貢献という意味からも、私は、日本の優秀なこの水田という生産装置を生産手段として、あるいは環境保全の手段として、多様な農業の展開をするその礎として使っていくべきではないか。

 その二つの視点から、米の生産調整を、言葉を簡単に言うと非常に刺激的でありますけれども、簡単に言えば撤廃をしていくという課題を将来に向けて検討していくべきではないか、このように考える次第でございます。

 そのときに、撤廃すりゃ済む話ではないというのは、これはもう関係者の皆さんがよく御存じのところなんで、二つ御提案を申し上げたいと思うんですが、一つは、余った米をどうするんだということであります。確かに、減反をやめれば、米は過剰になります。

 そこで、私の提案は、一つは、生産調整廃止に伴う余剰米について、国際備蓄をまず第一義的に考える。国際的な備蓄を第一義的に考えて、一定の量、ことしは何万トン、来年は何万トンと変動させるんではなくて、一定量をコンスタントに、世界の飢餓状況の改善、解決のために、途上国に向けて、あるいは食料不足国に向けて提供をする、さらに、それでまだ余剰がある分については飼料用その他の用途を考えていく、そしてこのことによって、国際貢献ということと、それから国内の、先ほど来議論をしている自給率向上ということにつなげていく、こういう考え方がなされないか。

 そしてもう一つは、生産調整をやめるということは、実は価格が下がるということにつながります。それは、農家の所得が減少していく。今いろいろ政府内部においても御検討なのかもしれませんけれども、この際、やはり稲作農業、あるいは品目横断的なものとなるのかもしれませんが、農業の多面的機能にも着目をした直接所得補償をぜひとも検討して導入していっていただきたい。その際に、今のWTOの枠組みでは、先ほどの議論に戻るんですけれども、生産を刺激する直接所得補償は削減の対象になっています。ですから、これは安定的な制度と言えないんですね、導入しても。

 しかし、幸いにして、アメリカ、EUも参加したOECDの最近出されました、これは去年出ておりますが、レポートで、食料の安全保障や水資源涵養などの多面的機能を認めて、その機能を発揮させる政策については、それが生産を刺激するものであってもグリーンボックスに入れるべきだ、こういう主張があります。私は、これは非常に国際的に見ても権威のある報告だと思います。

 日本がこれから、今申し上げたような方向で、夢とやりがいと展望の持てる農業経営、稲作経営をやっていくというためには、直接所得補償の導入というのは避けて通れない道だと思いますので、しかも、それが生産に直結してもいいんだ、刺激してもやむを得ないという枠組みをまずつくることの前提というのも必要だ、こういうふうに考えております。

 以上の点につきまして、副大臣、御所見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

金田副大臣 永岡先生とは、農林水産部会等の部会等々で貴重な御意見を常々賜っております。ブッシュ大統領のお話もありました。それから、ドイツの学者のお話もありました。今、先生のいろいろな貴重な意見をいただきました。

 備蓄構想もありました。備蓄構想については、今現在、タイと日本との間で、備蓄構想を早々に立ち上げるべく交渉もしておりますし、またその予算化もさせていただいているところであります。

 ただ、ちょっと疑問なのは、米の生産をもっともっと奨励してもいいんだという、今の八百五十七万トンの生産目標数量、これ以上につくってもいいんだということになりますと、過剰米が発生することになりまして、過剰米をつくるということは、むしろ要らないものをつくるという意味で、自給率の低下を招くことに相なるんだろうというふうに思っております。

 貴重な、基本的な議論でございますので、これから先生の御指導も賜りながら、部会等々で基本計画の見直しの段階の中でしっかりとお互いに議論し合わせていただきたいというふうに思っております。ありがとうございます。

永岡委員 大変力強い御回答をいただきまして、まことにありがとうございました。

 時間が参りました。FTA交渉の問題、あるいは林業、水産業の問題についても実は御質問をしたいと思ったんですが、時間が参りましたので、後日に譲らせていただきます。

 私は、農林水産業、あるいは食料の供給安定問題というのは、与野党においてそれほど大きな差のある分野ではないと思っております。先ほど来申し上げているように、国の安全保障、あるいは生存権にかかわる問題、あるいは地域の基幹産業としての問題、これは重要な課題でありまして、真剣に取り組んでいかなければならない分野であると信じておるところでございます。

 そういう観点から、今後とも、亀井農林水産大臣を中心といたしまして政府関係者の皆様に、国内政策、それから海外との交渉に積極的に当たっていただきたいと思いますとともに、立法府と行政府の間のチェック・アンド・バランスという機能を十分に生かしながら、国会の側も提案を具体的にいたしまして、それを政府の政策に反映させていただいて、そしてまた後押しができるような、そういう関係の中で今後とも議論を深めさせていただければありがたいというふうに存ずる次第でございます。

 本日は、大変貴重な時間に質問させていただきまして、心から感謝をする次第でございます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、鹿野道彦君。

鹿野委員 私は、私自身の議員生活を振り返ってみますと、このところ農について語られる機会が非常に少なくなってきたのではないか、農林水産委員会は別でございますけれども。

 そこで、今日、BSE問題とかあるいは鳥インフルエンザが発生するとかというようなこと等々で非常に国民の間にも食と農に対して関心が高まってきておる、こういうときに、やはり農というものを国民全体で考えてみる必要があるんじゃないか。

 このことを考えたときに、政策責任者であるところの亀井農林大臣、農というものに対してどういう思いを、国政の中にどう位置づけをしていくか、このことをまずお聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたが、農業、これは生命をはぐくみ、また自然環境を保全する、あるいはまた地域の文化を伝承する、こういう面で極めて重要な役割を果たしておるわけでありまして、まさに国の土台、こう申し上げてよろしいわけであります。そしてさらに、国の繁栄とまた地域の繁栄、これは、やはりそういう中で農業、農村が健全な姿であるということが必要なことでありまして、豊かな安定した生活、そのような国民生活を実現する、そういう面でもまさに基本的なことであるわけであります。

 今委員御指摘のとおり、昨今のBSEあるいは鳥インフルエンザの問題、そういう面で、先般も、実は十二月に調査をした時点でも、大変、食料の自給率の問題ですとか、非常に消費者の皆さん方が関心が薄い、こういう点で驚いたところもあるわけであります。

 実は、私も昨年四月に農水大臣を拝命し、またそれ以前から、私の生まれた地域、私の住んでおりますところは、今でこそ都市化をしておりますが、やはりそういう中で私自身もいろいろ農業を、兄が農業をやったり、またかつては、子供の時代、学生時代までは、土曜、日曜、母を中心として農業をやってきた、そういういろいろの経験を積んでおるわけでもございます。

 そういう中で、やはり国民全体が農業また農政につきましての理解をしていく、こういうことは大変重要なことでありますし、私ども、今タウンミーティング等々、いろいろのことをいたしまして、また、消費者に農政を、農業を知っていただく、こういう努力をいたしておるわけでもございます。

 そういう面で、いろいろの問題、特に今日、農業者の高齢化の問題あるいはまた遊休農地の発生、こういう問題でいろいろの課題を持っておるわけでありまして、そういう面で、食料・農業・農村基本計画、これに基づきいろいろのことを進めておりますが、この見直しをし、将来に向かって、先ほども申し上げました、次世代に対してどのような農業を、農村を残していくか、このことをしっかり考えていかなければならない、このように思っております。

鹿野委員 農政についてのいろいろなことをおっしゃられましたけれども、私がお聞きしたかったのは、農というものについてどんな思いか、ここなんですね。

 私は、非常に書生っぽい言い方になりますけれども、我々の祖先が、一万年くらい前でしょうか、いわゆる新人類の時代に農を起こしたわけですね。それまでは、毎日毎日の生活というのは、食べること、それを求めて、食料を求めての生活であった。しかし、それが一定の場所で食料をつくるというふうな農を起こしたことによって、その時間、エネルギーを別のところに費やすことができるようになった。これが今日の科学の発展、そしてこのような生活もできるようになってきた。そのことを考えたときに、まさしく農の重要性、農の基本というふうなものを忘れてはならない、この思いを私は大臣にも、もちろんお持ちかもしれませんけれども、改めて認識をしてもらわなきゃならないな、こんな思いで申し上げたわけなんです。農というものを軽視してはならない、軽んじてはならない、ここがやはり農の、農業政策を推進する上においての原点ではないか、こんな思いからお聞きをしたということであります。

 そこで、今日のBSE問題あるいは鳥インフルエンザの発生の問題、この問題を大臣としてどうとらえておるか、お互い政治家同士ですから、政治家としてどういうふうなとらえ方をしているか、こういうことをお聞きしたい、こう思います。

亀井国務大臣 一面、専門的な問題と申しますか対照的な問題、BSE、鳥インフルエンザの問題、これは食料の安全、安心、こういうことを十分確保するということはもう当然のことでありますけれども、今回のこの問題につきまして、やはり食料の自給率の問題、牛肉につきましては国内の自給が四〇%、また鳥インフルエンザにつきましても、このような侵入、感染というのがこれだけ国民生活に大変不安を与えている。こういういろいろの問題、現象と同時に、農政全体、農業全体、食料全体に対して国民が大変関心を強く持たれるような状況になったわけでありますから、そういう面で、農政全体、農業全体をしっかり考えていかなければならない、こう思っております。

鹿野委員 私は、この問題は、この問題というのはBSEの問題あるいは鳥インフルエンザの発生の問題等々は、いわば日本の国民生活、食料生活、そういうものを海外にすべて、極端な言い方ですけれども依存していいのか、もう一度考えて見たらどうか、昭和四十年代に、国際分業論というふうなものも盛んに言われたときもありましたけれども、果たしてそういうことでいいのかということに対する警鐘ではないか、こんな思いをいたしておるわけなんです。そういう思いでお聞きをしたということであります。

 そこで、一つ具体的にお聞きをしますけれども、平成十四年に、BSE問題等々からその検討していただいた報告書の中に、まさしく農政の失敗だというふうなことから、改めて、武部大臣のときにいわゆるプランが出されたわけでありますけれども、その後、その進捗状況なり、また、どうなっているかということについて、簡潔に大臣にお聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 いわゆる食と農の再生プランの問題だと思います。これを契機に、BSEの問題や食の表示の問題等、食と農に関するさまざまな問題が顕在化したわけでありまして、いわゆる食料・農業・農村基本法を基礎に、食の安全、安心、これを確保するための政策の改革を進めると強い決意で発表したわけであります。

 その具体的な取り組みスケジュールにつきましては、工程表を発表しまして、いろいろ進めてきておるわけであります。

 一つは、食の安全・安心の確保のための政策大綱、この策定で、トレーサビリティーシステムの導入あるいは行政組織の再編など、食の安全、安心の確保をいたしました。また、米政策の抜本的な改革、農業経営の法人化の推進など農業の構造改革の加速化、あるいは都市と農山漁村の共生、対流の推進、バイオマス・ニッポンの総合戦略、こういうプランに基づく改革を着実に今進めてきておるわけでありますが、今回のBSEの問題あるいは鳥インフルエンザ、コイヘルペスの問題も生じまして、消費者の食の安全、安心の確保に向けた関心が、先ほど来御指摘のとおり一層高まっておるわけであります。

 いろいろ、この問題と同時に、農業の構造改革の立ちおくれやWTOにおける国際規律の強化の検討などへの対応も必要になってきておるわけでありまして、そういう面で、今この基本計画の見直しをいたしまして、国民の期待にこたえられるような基本計画を策定して、スピード感を持って対応してまいりたい、このように考えているわけであります。

鹿野委員 大臣からいろいろ、ちょっと歯切れの悪いようなお話でございましたが、基本的には、スピード感を持ってやっていかなきゃならないというふうなことは、進んでいない、思うようにいっていないというふうな意味でもあるわけですね。

 それから、輸入牛肉に対するトレーサビリティー制度というふうなものもまだ確立されておらない。これから本当に、今大臣が言われたように、もっと速く加速化して、そして間違いない農政を推進していかなきゃならないというときに、大事なことは、食と農の間に溝があってはならない。すなわち、消費者の人たちと生産者の人たちと、分けることがどうであるかということは別にして、そこに考え方の違いなりあるいは認識の違いがあるということになってくると、なかなか農政が進みにくい。武部前大臣は、消費者に軸を置く、こういうふうなことの考え方も示されたわけでありますけれども、この溝をどう埋めていくかというふうなことは非常に大事なことだと思うんですね。

 小泉総理大臣が、昨年の選挙の際、農業鎖国問題の発言がありました。これは、えらい反発を受けて、当時の自民党の幹事長が、いや、このような発言されちゃ困ると言って、ちょっと発言を言い直されたというようなこともあったようでありますけれども、すなわち、総理大臣すら本当に世界一の純農産輸入国だというふうな認識を持っていない。こういうふうなことでは、やはり真っ当な農政、推進できませんよ。

 だから、大臣がリーダーシップを発揮して、本当に日本の国の農政というのは、もちろん消費者の人たちがどう考えているかというふうなことが非常に大事です、しかし同時に、日本の国の、この急峻な国、あるいは場所を変えることができない、あるいは常に自然と共生をしていかなきゃならない中で、経済効率というふうなものだけではかることのできないものが農業なんだよ、こういうふうなことをもお互いに理解をしていただきながらやはり農政を進めていく必要がある、こういうふうな認識を持っておりますけれども、大臣の考えをお聞きします。

亀井国務大臣 総理の御発言と。私、就任以来、WTOの問題等々で、我が国が食料の純輸入国、世界第一位の輸入国である、こういうことは再三申し上げておるわけでありまして、そのことも十分承知をされておるわけでありますが、いろいろ問題で、国際障壁に過度に依存する、こういうようなことでの発言であったのではなかろうか、こう思います。

 近年、食の外部化、こういうことが進んでおりまして、食料の生産の現場と、あるいは消費者の関心や知識の低下、こう言ったら表現は悪いかとは思いますけれども、いわゆる食と農の距離が拡大をしてきている。そういう面でいろいろ私ども、消費者とあるいはまた生産者との顔の見える関係、こういうものをしっかり構築をしていかなければならないのではなかろうか。

 今、私ども農水省のタウンミーティング等々も、先般も岡山で私は、消費者と生産者の顔の見える関係づくり、こういうようなこと、あるいはまた、いろいろ消費者と農業関係者等も本省に御出席をいただきまして、定期的に消費者と生産者の顔の見える関係づくり、こういうようなこともいたしておるわけでありまして、そういう面で、地産地消の問題であるとか、あるいはまた郷土料理の体験をしていただくとか、あるいは新鮮な地域産物の販売を直売所だとかいろいろなところでやっていただいております。

 あるいはまた、農山漁村と都市との共生、対流、グリーンツーリズムの問題であるとか、あるいは食育の問題、いろいろの取り組みがあるわけでありまして、こういうことを通じて、消費者とそして生産者と食品事業者との懇談会、こういうものも催しておるわけでありまして、今の問題、いわゆる農と食の距離が広がってきている、そういうものを、やはり生産者と消費者の顔の見える関係づくり、こういうようなものを通じていろいろ努力をしていくことが必要ではなかろうか、こう思っております。

鹿野委員 農林水産大臣、亀井大臣はもちろん責任者でありますから十分認識をなされているということでありますけれども、内閣全体として、今大臣が言われたようなことを、先ほど私が申し上げたようなことをきちっと認識した中で農政を推進していかないと、間違ってしまいますよというふうなことを申し上げるわけであります。

 そこで、今日、国民の人たちも非常に不安に思っておるのが、食料自給率、カロリーベースで四〇%、果たしてこんな状況でいいのか、こういうことであります。不安感を持っております。

 世界の国のいわゆる代表的な自給率、大臣、ちょっと言ってください。そして、イギリス。イギリスにおいては自給率が低かったんですよ。しかし、それがかなり上がって七〇%ぐらいになりましたでしょうか。その辺の数字を、各国も全体として自給率は上がっているようですから、この辺のところ、ちょっと数字を示してください、本当に代表的な国で。

亀井国務大臣 イギリスにつきましては、一九七〇年から二〇〇〇年までの間に、三十年間で穀物自給率が五九%から一一二%になった。これは穀物自給率です。カロリーベースでは四六%から七四%に向上している、こういうことでありますし、フランスも、あるいはまたドイツ、アメリカ等、一二〇であるとか一〇〇を超える、一〇〇に近い数字であります。これはカロリーベースです。

鹿野委員 カロリーベースの自給率、今言われましたけれども、アメリカもフランスも一〇〇%を超え、ドイツが九九、イギリスが四六から七四に上がった。なぜ自給率向上がなされたんでしょうか。

亀井国務大臣 このイギリスの自給率向上の大きな要因は、消費面と生産面、この両面での認識があると思います。

 消費面におきましては、まず大きな食生活の変化が、我が国と異なりまして、我が国は食の外部化また多様化と食生活が大変変わってきておりますが、イギリスにおきましては、三十年にわたりまして、国内で生産可能な小麦、あるいはまた畜産物を中心とした食生活に大きな変化がなかったということが挙げられると思います。

 また、生産面でも、EU域内で相対的に経営規模が大きく競争力が高い中で、一九七三年当時のEC加盟に伴いまして、共通農業政策の中で比較的手厚い保護を受けることが挙げられる、こうも思います。

 また、規模の問題。農業経営の規模拡大につきましても、効率的な農業生産が進み、一農家当たりの農用地面積が一九七〇年の五十七ヘクタールから、二〇〇〇年には六十八ヘクタールまで拡大した。あるいはまた、小麦の単収が七〇年から二〇〇一年の間に一・七倍に著しく増加した。こういうように、小麦を初めとする穀物生産が大幅に拡大をした。

 こういう面で、消費の面、生産の面、それぞれ情勢の変化が自給率の向上に寄与したもの、このように考えます。

鹿野委員 いわゆる消費構造は変わらないというふうなことも自給率が上がった一つの大きな要因だと思うんですけれども、やはり何といっても、EU全体の政策、統一政策、いわゆるCAPですね、その可変課徴金なりあるいは輸出補助金というふうなもの、これがやはり現実として自給率を上げてきたということだと思うんですね、いいか悪いかは、その評価というのはまた別でございますけれども。

 すなわち、国際相場と国内相場というふうなもの、それに変化があったときには課徴金を取るとかつけるとか、あるいは輸出補助金、余ったときには補助金を出して輸出する、こういうふうな政策をやってきたわけですね。ですから、価格というものがある程度保持された、ゆえに農家の人たちも意欲を持って取り組むことができた、こういうふうなことがやはり大きなポイントだと思うんです。

 また、アメリカにおいては、御承知のとおりに、八六年に廃止したものを、二〇〇二年に今度改めて固定払いに不足払いを上乗せするというような、これを恒久法にする、こんな思い切った政策をやっているわけです。

 すなわち、日本の国は、余ったものをどうするかというときには国内調整する。EUの国々は、それは外に出す。こういうような政策の違いもありまして、この辺のところは、日本の国も、自給率というふうな問題がこれだけ関心事になっておるときに、思い切った自給率を上げる政策というふうなことを考えたときに、やはり新たな政策転換というものをしていかなきゃならぬじゃないか、こう思いますけれども、大臣の見解をお聞きします。

亀井国務大臣 今イギリスの例でいろいろ申し上げましたが、やはり我が国との違いもいろいろ指摘があるわけであります。

 そういう面で、我が国の食料の自給率は四〇%、こういう現状にあるわけであります。この自給率というのは一国の農政を映す一つの鏡、こう申し上げることもできるようなことであるわけでありまして、ぜひそういう面で、やはり我が国におきましては、消費の面、生産の面、あるいは、先ほども申し上げましたが、いわゆる食品産業、この三位一体というような中でいろいろなことを進めていかなければならないのではなかろうか、こう思います。

 特に、消費の面での食の外部化や洋風化の問題、やはり自給率が今日四〇%になっておりますのは、昭和三十七年ごろ、米の消費が百十八キロ、今日六十二キロ、こういうようなことでありますので、いわゆる穀物の、米の消費がこのように減少した、こういうことが自給率の低下に大きくかかわっておるわけであります。

 そういう面でのことと、あるいはまた生産の面におきましても、担い手の減少であるとか高齢化、耕地利用率の低下、こういうことが見られるわけでありまして、そういう面で、先ほど来申し上げますとおり、いわゆる食料自給率を上げるために、消費者、生産者、食品事業者、関係者が一体になった形で、そして消費、生産両面にわたる課題の解決に取り組む必要がある、このように思いますし、そういう中で、今、食料・農業・農村基本計画の見直しを考える中でこの自給率の問題も十分考えて対応してまいりたい、こう思っております。

鹿野委員 今、日本の国は四〇%、カロリーベースでの自給率だ。大臣の考え方からすると、それを二〇一〇年には四五%ぐらいにしたいよと。しかし、どうも今日の議論の中では、それをもう十年、あるいは十五年ぐらい四五%にするのを延ばさなきゃならぬ、こういうようなことの議論もなされておるようでありますが、これだけ国民の食と農に対して関心なり、また基本的に諸外国というふうなものも、今申し上げたように思い切った食料安全保障の政策を推進しておる中で、少なくとも我が国も、国民の人たちの不安をなくすという意味においても、できるだけ早く、半分以上は、五〇%以上はやはり自給をしていくんだ、こういうような体制をつくり上げていかなきゃならぬじゃないか。

 大変難しいということも、私も認識をしております。ただ、今までのやり方でいけば、なかなかそれは絵をかいた形だけに終わってしまうということでありますけれども、ここで消費者の人たちに米をもっと食べてくださいと強制するわけにもいきませんから、やはり自給率を上げていくには、麦と大豆、飼料、これをどういう国内生産の体制をつくり上げていくかということであると思うんです。とりわけ、麦と大豆ですよ。食料のこれからの状況というものを考えたときに、思い切って、麦と大豆を生産してもらうんだというふうな、そういう農政を考えていく必要があるものと、私の考え方だけは、まず基本的な考え方を申し上げておきたいと思います。

 そこで、もう一点は、基本計画の見直し問題について、ちょっと大臣も触れられましたけれども、望ましい農業構造の実現というふうなものが書かれておるんですけれども、農業構造の実現、とりわけ農地の改革というふうなものについて、具体的にどうもわからぬところがあるんですよ。すなわち、担い手・農地制度の基本的な改革を行っていくというふうなことについての、これも簡潔に、大臣、どういうことをやろうとしているのか、お聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 その前に、麦、大豆の問題。自給率の問題につきましては、麦、大豆につきましては生産が進んでおるわけでありますが、穀物消費の減少、こういうことで相殺をして自給率が四〇%を推移しておるわけでありまして、また麦、大豆等につきましての生産振興というのは、やはり十分考えていかなければならない、こう思っております。

 なお、いわゆる望ましい農業構造、土地利用を実現する、こういう面では、意欲と能力のある担い手の育成、確保、それとあわせて経営を発展させる、そういう面で優良農地を確保し、そしてその有効利用を促進するということが重要なわけであります。その辺、やはり地域の実情を踏まえた担い手の明確化や多様な担い手の育成また確保、この支援ということが必要でありますし、農地の取得要件の参入規制の見直しによる担い手の確保、こういうことも必要であります。また、多様なニーズに対応する農地、土地利用規制の見直しの問題等、これらを重点的に、いろいろ食料・農業・農村基本計画の企画部会におきまして十分御議論をいただきたい、このように考えております。

鹿野委員 どうも大臣のおっしゃることが私はわからないんですけれども、何を言わんとしているか。

 基本的に、優良農地を確保していくんだといっても、今かなり耕作放棄の土地、農地も出てきているわけですね。そういう限られた日本の国の土地利用、農地利用というものをどう考えていくかということを、あるいは思い切って見直す必要があるんじゃないか。すなわち、その基本的な考え方は、農地問題については、農業をやりたい、こういう人たちにその利用を預ける、こういうようなことが大事なところではないかなと私は思っているんですよ。

 そこで、市町村においても、なかなか町づくり、地域づくりというふうなことも、今いろいろと迷っている点もあるんじゃないか。そうすると、いわゆる農村計画というふうなものを打ち立てていく。そして基本的には、農地というふうなものは農業以外には使わない、あくまでも農業だけに利用するんだ。そして、農業をやっている以外の人には売らない、こういう一つの原則というふうなものをきちっと打ち立てて、極端な言い方ですけれども一世でも二世でも、農業をやりたいという人がたくさん出ているわけですから、そういう人にもやってもらう。あるいは、農業の生産に思い切って取り組んでいきたい、場合によっては加工も一緒に、農産物の生産から加工まで一貫性の中で取り組んでいきたいというふうな人たちもおるわけですから、そういう人たちが、やはり農というふうなものを、土地利用をできるような仕組みというものを考えていかなきゃならぬじゃないか。

 そのことが、すなわち、地域の合意というふうなものによってやっていく、こういうふうな考え方で、やはり、もう相当、今までの農地に対する認識も、特区という中で今やっておられますけれども、農地制度の根本的な考え方というものを改めていく、そんな認識が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

亀井国務大臣 やはり、農地の取得と同時に農地の利用の問題、賃貸借の問題等々、本当に農業を実際やる、そういう面で、農業者の高齢化の問題もありますし、相続の問題もいろいろあるわけでありまして、そういう面で、集落経営体の問題等を含めて、地域での、今回の米政策の転換、そういう中での水田農業ビジョンづくり、こういう問題を地域でいろいろ議論していただく中で、それらのいわゆるニーズと申しますか、それに対応するような農地制度を考えていかなければならない、このように思っております。

鹿野委員 市町村がきちっと計画を打ち立てて、そしてその農地をだれが使うのか、どう使うのかを明確にしていくということは、やはり地域の雇用の場創造というふうなものにもつながりますし、地域全体の活性化ということにも結びつくわけでありますから、ぜひ具体的な形で、農地改革というふうなものにできるだけ早く取り組んでいくべきだということを申し上げたいと思います。

 そこで、米政策についてお聞きします。

 いよいよ、三年の移行期間の段階に入りました。ところが、今、地域水田農業ビジョンの策定作業中、こういうことでありますけれども、お聞きしますとまだ六割程度だ、こんなようなことにもなっておりますけれども、生産現場での戸惑い等々も含めてどうなっているのか、どういう基本姿勢で取り組んでいくのか、大臣の見解をお聞きします。

亀井国務大臣 地域水田農業ビジョンの策定状況でありますけれども、二月上旬に行った調査によれば、約八割の市町村、二千三百六十九がビジョンの案を作成した、このような回答を受けておるわけであります。

 この点につきましては、実は、本年一月、国会が始まる前に、本省の局長、次長を各地方農政局に出しまして、そしてその徹底がなされるように努力をさせたところでもございます。また二月には、さらにビジョン策定に向けましての、都道府県を通じて指導もしてきております。ビジョン策定がおくれております地域向けに、地域段階での合意形成に資するよう、交付金の望ましい活用方法や担い手の明確化を含む話し合いのポイント等の情報提供も行っておるわけであります。

 現在、各地域におきまして、ビジョンづくりに向けた集落座談会の開催、これがピークに来ておる、このように承知をしておりまして、今後とも地方農政事務所等を活用し、農水省一丸となって、ビジョンづくりの早期策定に努力をしておるところであります。この件につきましては、農業団体あるいは各市町村も大変熱心にいろいろ努力をしていただいております。

 そういう面で、我が省の関係者がなお、さらにそれらの関係者の皆さん方の御努力に上回る努力をするように督励をしているところでもあります。

鹿野委員 政策の浸透のおくれというものは否めない点もありますので、今大臣言われたとおり、さらに理解を得る、そういう努力をやはりやっていくべきだということを申し上げておきたいと思います。

 そこで、米政策の中でいわゆる担い手を育成していく、そのためには経営安定対策だ、こういうふうなところに重点を置かれておる、こういうことですけれども、対象はどう考えておられるんですか、大臣。その担い手というものをどう育成していくかというふうなことにおいて、経営安定対策というふうなものの対象、これをどう考えておられるか。

金田副大臣 農業構造のあり方、将来展望ということでございますけれども、主業的農家、農業所得にその経営をほとんど依存するという担い手、いろいろ考えておりますが、四十万経営体、家族経営も含めて、そして法人も含めて四十万経営体というのが、ほとんどの農産物の約六割以上を生産できるという体制を理想としてございます。そういった担い手に農政を集中させてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 そのほかにまた、中規模農家等々についても、所要の施策というのは基本計画の見直しの中でも検討してまいりたいと思っております。

鹿野委員 いわゆる主業的農家を軸にして、そこを対象にして、こういうふうな考え方である。

 プロ農家という言葉が使われているんですけれども、プロ農家育成というふうなことですか。

金田副大臣 プロ農家とか主業的農家、認定農家等々、いろいろな言葉の使い分けがあるわけでございます。

 今三百万農家がおるわけでございますけれども、その大宗が二種兼業農家でございます。そういったところで生産活動にいそしんでいただいておりますけれども、そういったことでなくて、主として四十万経営体、主としてほとんど大規模経営農家、それから、大規模でなくても中規模でも結構、野菜、果樹あるいは園芸作物等々について十分な所得が上げられるような農家というのも支援してまいらなければならないと思っておりますが、主として四十万経営体、プロ農家というものに施策を集中する。特に内外価格差の大きい稲作それから畑作物について、ここのコスト削減をやって内外価格差を縮めていかなきゃならないというふうに考えておりますので、そういったプロ農家に対する支援というのは集中的に行う必要があると思っております。

鹿野委員 プロ農家というふうなものはどういう農家なのか、どうも基準がはっきりしないというふうな中で、おおよそ主業的な農家、それをプロ農家と言っているのかな、こんな思いです。

 そこで、私ども民主党の考え方というのは、昨年マニフェストにも打ち出しましたけれども、やはり、今までの価格政策から、農業者が意欲を持って取り組んでもらうというふうなことを考えたときには、所得政策という方向に切りかえていかなきゃならぬじゃないか、こういうふうなことで、直接支払い制度というものをやりますと民主党は提案をいたしております。

 その際、四段階だ。小さな農業をやっていただいている人たちも対象とする、そして四ヘクタール以上あるいは集落営農では十ヘクタール以上、そういう人たちを二階建て、三階建てはいわゆる有機農業なり循環型農業をやっている人たちを対象にする、四階の方はいわゆる中山間地の人たち、こういう四階建てに対しての直接支払い制度というふうなものを我々は提案して、そして、そのことによってやはり、国際交渉においてもこれは認められておる制度でありますから、思い切って意欲を持って取り組んでもらうことができるようにする。

 今金田副大臣が言われたその経営安定対策というものの対象がプロ農家というようなところに軸を置いて果たして本当にいいのか。兼業農家というふうな人たちに対して、日本の場合非常に二種兼農業、三種兼農業が多いわけでありますから、その人たちにも引き続いてやはり農業をやっていただくというふうなことも、これも大事なところがあるわけです。ゆえに、私どもの民主党は、やはりそういう点も配意をしながら農政を進めていかなきゃならぬ、こういうふうな考え方を持っておりますということを申し上げたいと思います。

 そこで、WTOとFTAのことについて、基本的な考え方についてお聞きをしたいと思います。

 いわゆるWTOについては、二〇〇五年の一月一日スタートしたい、こういうふうなことでありますけれども、なかなか、発展途上国との間の対立もあって、幾分このスタートが怪しくなってきておる、こういうふうなことであります。そういう中で今度は、多国間交渉がうまくいかない、しかし二国間交渉はやらなきゃいかぬ、こういうことでFTA交渉というふうなものがそれぞれの国と具体的に今いろいろと交渉に入っておる、そんな段階であると思います。

 今後、このWTO、FTA交渉、これに対する大臣の基本的な姿勢、これについてお聞きします。

亀井国務大臣 今御指摘のとおり、本年末が期限ということであるわけでありますが、多様な農業の共存、これを基本理念にいたしまして、農業の多面的な機能や食料の安全保障、国土保全等非貿易的関心事項、このことに十分配慮いたしまして、バランスのとれた、また柔軟で継続性のある貿易ルールが確立されるということを基本に交渉に臨んでまいりたい、このように考えております。

 現実に、先般、カンクンでのデルベス議長のペーパー、そういう中で上限関税の問題が出たわけでありまして、これらの問題につきましても、この是正の問題、このことは十分考えていかなければならないわけであります。

 また、FTAにつきましては、あくまでもWTOを補完するもの、こういうことで取り組んでまいりたい、このように考えております。メキシコも今政府間交渉を進めておりますし、また、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ等につきましても交渉が開始をされたわけでもあります。

 これらの問題、農林水産業の多面的機能への配慮とともに、我が国の食料の安全保障の確保や農林水産業において進めております構造改革の進展ぐあいを十分留意して、その対応に取り組んでまいりたい、このように思っております。

鹿野委員 国内におけるところの農業構造を進めようとする段階でありますから、まだそれが進めようとする段階という中でもう次から次へと妥協をしていくというふうなことは果たしていかがなものか、こんな思いを持っておるわけであります。

 基本的に私は、外交というふうなものについての考え方を申し上げたいと思うんですけれども、日本の場合、農業政策については、国際交渉での合意というふうなもので、それを軸にして国内政策をやっていくという傾向がある。諸外国は、まさしくそのそれぞれの国の国内農業政策をどうするかということをきちっと決めて、どういう変革を打ち出していくのかということをその土台にしながら、その線に沿って国際交渉をしていく、こういうふうなことの違いがあるように思うんですね。だから、日本の農業の分野における外交というものは、交渉というふうなものはどうも諸外国に振り回されてしまうというような、そんな感じを持っておりますけれども、大臣の認識、お考えをお聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 私も、昨年四月に就任をいたしまして、WTO関係のいろいろの会議やバイ会談等にすぐ対応する、そういう面で、今委員御指摘のとおり、我が国の置かれております農業の実態、こういうことを考えますときに、本当に守りの姿勢、こういう面での非常に複雑な思いを持っておるわけであります。

 そういうことから、一つは、八月に基本計画の見直しを指示いたしましたのも、そういう視点、あくまでも基本計画の見直しというのは、今現状、我が国の農業の実態、こういうものをも考えた中でありますけれども、やはりこれからの国際化社会での対応、こういうものを考えますときに、この基本計画の見直しをし、それを進めていくということが必要なこと、こういう認識のもとで指示をしたわけでありまして、そのようなことを確立し、国際交渉に臨むことのできるように努力をしてまいりたい、こう思っております。

鹿野委員 重ねて申し上げますけれども、日本の国内農業政策というものをしっかりと打ち立てて、そして、内閣一体となって、国一体となって外交に当たらなきゃだめだ。

 何となく、日本の場合は、農業問題、農業分野になると、外務省の考え方、経済産業省の考え方、農林水産省の考え方がばらばら。これはばらばらでは外交になりませんよ。だから、大臣がリーダーシップをとって、外務大臣ときちっと話をして、そして経済産業大臣と話をして、総理大臣とも話して、日本の国はこういう線で行きます、こういうことをちゃんと打ち出してWTOなりFTA交渉に臨むべきだということを、大臣、やはりこれは政治家でなきゃできませんから、だから私も、大臣を政治家と認めて申し上げておるということを御理解してもらいたいと思います。

 次に、牛肉の国内におけるところのトレーサビリティーというものは確立されているんですけれども、アメリカからのことについてはまだ確立されておりません。そこで、私どもは、基本的に、輸入牛肉に対してのトレーサビリティー法案というものを昨年も出しました。すなわち、生産、流通というふうなものの履歴を追跡する仕組みというものをやはり輸入牛肉についても確立しなきゃならない、こういう考えです。今回も用意をしております。そういうふうなことについて、大臣、どう思いますか。

亀井国務大臣 今委員御指摘の、御用意されておりますその法案の詳細につきましては存じ上げないわけでありますが、先般、要するに、昨年の国会におきまして、BSE未発生国にまでトレーサビリティーを要求することは国際協定に抵触する、こういうことが高いのではなかろうか、このように申し上げてまいりました。輸入牛肉のトレーサビリティー法案につきましてはいろいろ慎重に検討をする必要がある、このように思っております。

鹿野委員 何でもかんでも慎重に慎重にというのでは何にも進まないんですよ。もう今までの現状維持体制から、農林大臣も政治家として、副大臣も二人おるけれども、やはり切りかえなきゃいかぬですよね。

 すなわち、安全であるということをきちっと説明させる、そして、証明されたもの以外は受け入れない、こういう考え方をやはり確立しておかなきゃならないということを申し上げて、アメリカとの間のBSEの、輸入問題、これは全頭検査、危険部位除去をやらない限りはだめだ、これは間違いありませんね。

亀井国務大臣 私は、ベネマン農務長官にも、電話での話でありますけれども、いわゆる屠畜場におきます全頭のBSE検査、さらには特定危険部位の除去、このことを基本に我が国でやっておりますこと、このことを再三申し上げ、そういう中でなければ輸入再開ということは困難、このことを再三申し上げておるわけであります。

鹿野委員 新聞報道では、まあ新聞がどうこうじゃないですけれども、妥協を探るなんというふうな活字が躍ると、またぞろ言われると妥協しちゃうのかなんというふうな、そんな不安感も出てくるわけであります。

 かつても、牛肉・オレンジは絶対に輸入しないなんて言ったのも輸入を決めてしまう、何カ月後に決めてしまうなんというふうなことで農政不信に陥ったときのことを振り返りながら、大臣が今申されたようなことを終始言われているわけでありますけれども、基本的な食の安全、安心というふうなことの根本、基本的な大事なところでありますので、その考え方を私としまして確認をさせていただいたということであります。

 そこで、もう時間がございませんので、一つお聞きするんですけれども、私どもの山形の地元の問題でありますけれども、これは、地元の問題というだけではなしに、農薬問題なんですよ。だから、農薬問題の取り組みということについての基本的な考え方というふうなものについて、私の山形におけるところの事例を申し上げながら、その見解をただしていきたいと思います。

 昨年、キュウリの残留農薬問題というのが山形県においても大変関心事になりました。大きな問題であると私は思っております。すなわち、山形県においては、食品衛生法上、ドリン系の農薬については〇・〇二ppm以上検出されてはならない、こういうことになっておるわけです。過去の調査の結果、十年間で九件のそれを超えるというような事例があったものですから、改めて土壌検査をやった。

 ところが、その土壌検査をやるときには、国の基準というものがないものですから、山形県独自の考え方を打ち出したんです。参考にしたのが、ある県のその調査のデータというふうなものを参考にした。そのデータには、三〇%以上は吸収しない、だから三〇%が最大吸収率、こういうふうな調査の結果であった。それで、それを参考にして、〇・〇二でありますから、そうすると、〇・〇六七ppm以下ならばそれは大丈夫だな、こういうことで作付を認めた。

 ところが、作付をしてみたら結局出てしまった。それが十七カ所、何百カ所を対象にして調査をしたわけでありますけれども、十七カ所出てしまった。そうすると、その十七カ所の農家の人たちはもう出荷停止、こういうことです。ですから、当然、これは所得にも影響するわけです。それで、実質的に、山形市が三分の一を補てんするという政策をとりました。県と国はゼロ、こういうふうなことであります。ましてや、土壌検査の結果、全くシロですよというところからもエンドリンが検出された、こういうふうなところが二カ所あったわけです。

 農家の人たちからすれば、三十年前まではオーケーになっておった農薬でありますから、それが突然それはだめですよと言われてしまった。だから、使わないできた。ところが、実質的に、こうやって、それぞれの指導に基づいてやっているのに、具体的なその検出がなされてしまって、農家の人たちの所得にも影響し、やる気にも影響を及ぼしておる。農家の責任じゃないんですよ。農家の責任じゃないんです。農家は落ち度がないんですよ。それならば、当然国が、本当にこれからの農業政策を推進する上において農薬問題にどう取り組んでいくかというふうなことについて、根本的にやはり考え方を示していかなきゃならぬじゃないか。

 その一つは、やはり今までほっておいたんですよ。ドリン系というふうなものはだめ、農薬はだめと言ってほっておいた。ところが、結果として、そのほっておいたものが出る。こういうふうなことを考えたときに、やはり土壌の分解技術、まだ農薬が残っておるというふうなものの分解ができる、分解するような、そういう技術を確立しなきゃならぬじゃないか、これが一点。

 それからもう一つは、これは重ねて申し上げますけれども、国の基準がないものですから、山形県独自の基準を設けたわけですけれども、やはりこれは一律でなきゃならぬと思うんです、一律で。ですから、全国の農家の人たちがいろいろな農産物をつくる上において、安心して農産物を生産することができるような基準をつくるべきではないか。これが二点。

 それからもう一つは、出荷停止になったときにやはり農家の人たちは困ってしまうわけです。だから、それに対して補償があれば、また引き続いて安心して生産に励むことができる。山形市がキュウリの共助制度というふうなものをつくりました。国もこの施策を、参加をして関与しながら、やはり国も何らかの形で、今申し上げたような状況になったときには補償というふうなものに取り組んでいくという姿勢が必要じゃないか。

 この三点について、考え方を申し上げ、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 今最初に御指摘のドリン系農薬、この問題につきましては、昭和五十年には登録が失効されて現在は使用されていない、こういうことでありまして、土壌中に相当長期に残留する性質を有しておるというようなことは承知をしております。

 そういうことで、この圃場への客土等の助成、こういうことは行っておるわけでありますが、この製品、キュウリ等への補償は行わない、こういうことにいたしておるわけであります。

 また、この農薬の使用規制の問題あるいはまた残留農薬基準の設定の問題、これらは十分厚生労働省と、この適正な基準値の設定等農薬の迅速な新規登録、これに向けた努力を私どもしてまいりたい。また、この使用の問題等につきましても、十分厚生労働省等関係省庁と、国内農産物の安全性の一層の確保に努めてまいりたい、こう思っておるところであります。

鹿野委員 大臣のその答弁は、何を言っているかちょっとわからないんですけれども、まあ基本的に、農産物の安全性確保の強化のために予算をつけたよ、これを言いたいんじゃないかと思うんですけれども、これだけじゃないんですよね、私が言っているのは。

 全国の農家の人たちがいろいろな農産物の生産に励む場合に一律した基準が必要じゃないか。それからもう一つは、万が一そうやって農家の人たちが何の落ち度もない中で出荷停止になったときには、国もその補償に対してできるだけのことをやるべきじゃないかというふうなことを私は申し上げているわけでありまして、やはり大臣、政治家なんだから、農業をやっている人たちにもっと愛情を示さなきゃいけませんよ。そうでなければ、いつまでもこの農薬問題は解決しません。そのことを申し上げておきます。

 それから、これからBSEの問題も含めて、鳥のインフルエンザ、それからコイヘルペスウイルス病、こういうふうなものも、実は、四月五月が心配だと。すなわち、寒くもなく暖かくもなくというような状況になったときに出てこないかな、発生しないかな、こういう心配もあるんだ、こういう声があります。

 この際、思い切って、そういう状況になったときには国がその補償あるいはその他のいろいろな施策に対してきちっとやりますというふうなことだけは、やはり関係者の人たちに安心して取り組んでいただくというふうな意味においても大事なことではないかなと思いますけれども、大臣の見解をお聞きします。

亀井国務大臣 この問題、大変、温度の問題、気候の問題等々も十分心配されることでありまして、今、防疫マニュアルに従いまして、さらに各都道府県にいろいろと指導をしておるところでもございます。

 万全な体制をしき、また、個別にいろいろな問題が生ずるわけであります。それらの問題につきましては、今までの例に準じてその対応をしっかりやってまいりたい、こう思っております。

鹿野委員 やはり農家の人たちから不安を取り除く、こういうふうな意味において、蔓延及び侵入防止策とかあるいは防疫体制の強化とか、経営の安定に対するところの総合的な施策、所得補償も含めて、やはりしっかりとやるべきだということを強く要望いたしておきたいと思います。

 そこで、時間が参りましたので、最後に、やはり今忘れられておることは、物をつくる、生産をするということに対する感動というふうなものが何か失われておるんじゃないか。やはりそういう感動があってこそ、よし、これからこういうふうな生産に励んでいこう、こういうことになるわけです。そうすると、やはり農業の世界においても、生産に励むということと同時に、励んでいただくということと同時に、そういう人をどうやってつくっていくか、農業というふうなものにかかわっていただく、担っていただく人をどうつくっていくかというふうなことが本当に大事なところに来ているのではないか。

 そういう意味では、大臣初め、副大臣も並んでおりますけれども、今私は、限られた時間ですけれども、できるだけ政治家同士で議論しようというふうなことを言ったのは、やはり政治というふうなものには情と夢、これが常にあらなきゃならない、そこが官僚政治との違いなんです。

 どうぞ、そういう意味で、大臣も副大臣も、政治家として、農政に対しては不退転の決意で、しっかりと基本理念を持ってやっていくんだというふうな姿勢をとっていくべきではないか、とってもらいたいというふうなことを強く要望して、質問を終わります。

高木委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

高木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。堀込征雄君。

堀込委員 私、きょうは基本計画の見直しなり、今年度の予算について中心的には伺いたいわけでありますが、その前に、BSEあり、WTOあり、そしてまた捕鯨問題など、国際関係にかかわる問題が幾つかあるわけでありまして、前段、その話をさせていただいて、答弁をいただきたいと思っています。

 私も、日米関係は日本の国にとって極めて大事だろうというふうに思いますし、だからこそ、やみくもにアメリカに追随するという政策をとるのではなくて、やはり主張すべきは主張するという、対等、かつ、これからの日米関係を考えた日本の政策が大事だろうというふうに思っています。とりわけ、ここでイラク問題が起こった。小泉内閣、最も親米的な内閣とも言われているわけでありますし、あるいは、円高を避ける意味で今大量のドルの買い支えもやっているのではないかというような言われ方もしているわけでありまして、そういう意味では、ブッシュ大統領も秋に再選期を迎えるということで、日米関係は非常にセンシティブになっているんだろうというふうに思います。

 しかし、食の安全にかかわるBSEの問題だとかWTO交渉だとか、日本の伝統的食生活にかかわる捕鯨問題等、やはりきちんと日本の主張を貫いてほしい、こういう立場から一、二点申し上げたいのでございます。

 一つはWTOの問題でありますが、私も昨秋、大臣、金田副大臣のお供をさせていただきながら、メキシコ・カンクンへ行って、それぞれ大臣の御苦労も目の当たりにしているわけであります。

 最近、アメリカ主導で行き詰まっているWTO交渉を再開しよう、立て直そう、こういう動きが目立っているわけであります。そして、ゼーリック・アメリカ通商代表部代表が来日をして亀井大臣とも会談をされた、川口外務大臣とも会談をされた、こういうことがあるわけでありますが、この報道が、実は日本の国内の新聞によって、二つの報道がなされているんです。一つは、WTO農業交渉の打開に向けて、大臣が今までどおり農産物の上限関税の撤廃をゼーリック通商代表にしっかりと言ったよという報道があって、ある新聞では、米などの一部品目を除外して、そういうことを条件にしながら、上限関税のある種容認するような発言をしたのではないかという報道も一部ある。

 そういう意味で、私としては、これから非常にセンシティブな交渉を迎えるに当たっていろいろな報道がなされるということは、なかなか、我が国の国益にとって余りよろしくないことだろう、こういうふうに思いますが、この辺の真意を含めて、いよいよ再開しようとするWTO交渉に臨む大臣の所見を伺っておきます。

亀井国務大臣 委員今御指摘のとおり、二月の十一日にゼーリック通商代表が日本にお越しになりまして、委員も御一緒いたしましたか、メキシコ・カンクンでのあのような状況、そういうことで、ゼーリック通商代表も、本年一年を失われた一年にしたくない、こういうことで、日本を皮切りに各国を回る、こういうようなことで日本にお越しになったわけであります。

 そういう中で、私は、もう我が国の立場、上限関税の問題等があるわけでありまして、そして非貿易的関心事項、このことを十分加味しなければならない。今までの多様な農業の共存、このことを繰り返し申し上げ、特にデルベス議長のペーパー、上限関税問題につきましてはこの是正がされることが必要だ、こういうことを申し上げたわけでありまして、ゼーリック代表からは、各国が抱えるセンシティブな問題に配慮する必要性については理解する、こういう発言がありました。

 具体的な品目についてどうこう議論する、こういうことはないわけでありまして、引き続き、今ジュネーブにおきましても一般理事会に大島議長が就任をされる等々、いろいろ動きがありますけれども、やはり我が国の立場というものをしっかりわきまえて対応してまいる、その考えは変わっておりません。

堀込委員 ぜひそのように対応いただきたいと思います。

 もう一点、水産関係。捕鯨問題について、前段、伺っておきます。

 大臣所信表明において、海の恵みの持続的利用のために、科学的知見に基づく資源管理を徹底していく、こういうことをおっしゃられました。捕鯨問題でいいますと、我が国は現在、北西太平洋、それから南氷洋で鯨類の捕獲調査をやっている。特に、北西太平洋の調査捕鯨では、沿岸域のミンククジラによる捕食が沿岸漁業に与える影響なんかが取りざたされて、大変、これはもう少ししっかりした調査が必要だというふうにお聞きをしておりますし、沖合域のイワシクジラについても、サケ・マスとの件をどうするか、これも調査を早急にしっかりする必要があるのではないかというふうに、私が関係者の皆様からお聞きをするとそういうことを言われるわけでありまして、そういう意味では、サンプル数を増加させたりしながら、調査捕鯨の拡充を図る必要があるのではないか。

 この捕鯨問題というのは、反捕鯨国からかなり非科学的で、しかも感情的で、しかも政治的な圧力がずっとかかってきているわけでありまして、我が国の一部でもこれらに迎合する動きがなしとはしないわけでありまして、そういう意味では、科学的かつ客観的な事実に基づいて、毅然とした態度でこの問題に対処することが必要だろう、こういうふうに思うんです。

 前回のIWC、国際捕鯨委員会の年次会合では、保護委員会の設立が採択をされている。これは我が国にとっては大変なことであって、私どもとしては、我が国としては、保護委員会への不参加、あるいはIWCの脱退、あるいは分担金の支払い停止、こういうようなことも念頭に置いた対応が必要だろうというふうに私は思っておるんですが、今後、調査捕鯨の拡充を初め、どのように対応するか、政府の基本的な考え方を伺っておきます。

亀井国務大臣 まず我が国は、鯨類は、他の生物資源と同様、最良の科学的事実に基づき、そして持続的に利用されるべき、こう主張しておるわけでありまして、引き続き、調査捕鯨により、科学的知見、この充実強化を図る考え方であります。

 また、お話しの保護委員会のことにつきましても、保護委員会の目的、これが鯨類の持続的利用の概念を含めるなど、根本的な変更がなされない限り、これは参加できないわけでありまして、このことにつきまして、引き続き我が国の立場を主張してまいりたい。

 また、分担金の問題につきましては、今支払いを停止いたしております。ただ、この分担金の支払い停止、それがIWCでの投票権を失う、こういうことになるわけでありまして、IWCでの持続的利用支持国と反捕鯨国の勢力が拮抗している現状、こういうこともございます。しかし、本年度の分担金につきましては、今保護委員会の活動資金に充てないということを求める書簡を出しておるわけでありまして、その上で支払いというようなことは考えてまいりたい、このように思っております。

堀込委員 金田副大臣、特に強調したいこと、さっき手を挙げておられましたが、捕鯨問題でありましたら、どうぞ。

金田副大臣 大臣の答弁に尽きるわけでございますが、日本の姿勢をしっかりと確保、保持しながら、調査捕鯨をしっかりやれるように、そういった中でIWCの中で頑張ってまいりたいと思います。

堀込委員 ぜひそのようにお願いします。

 それでは、大臣に対する一般質疑ですから、基本計画を中心にしばらくの間質問をさせていただきます。

 食料・農業・農村基本法ができて五年がたとうとしている。基本計画はその法律に基づいてあるわけでありますが、この見直し論議が今進められている。そして、審議会の方向で、論議の方向もある程度明らかになりつつあるわけでありますが、大臣は所信表明で、価格政策から直接支払いを含む品目横断的政策へ、二点目に担い手・農地制度の改革、三点目に、環境保全型農業といいますか、農地、水等を大事にしながら日本農業の将来像を描いていこう、こういう三点を強調されました。

 もう一度、なぜ見直しをしなければならないのか、なぜ今基本計画の見直しが必要なのか、この問題意識について所見を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 これまで、食料・農業・農村基本法、この基本法の理念を具体化した農政の指針である食料・農業・農村基本計画に即した政策の推進に取り組んできておるわけでありますが、その一環として、食の安全、安心の確保のための取り組みの強化や、あるいは米政策改革の推進など、各般の農政改革を進めてきたわけでもございます。

 しかしながら、現在、先ほど申し上げました、食の安全、安心の確保に関する関心が一層高まっている一方、構造改革の立ちおくれ、あるいは農村地域の高齢化の問題、あるいはまたWTOなど国際規律の強化などを踏まえて、農業の競争力の強化など、国民の期待にこたえる農業、農村の実現に向けた農政全般にわたる改革が求められている、このように認識をいたしております。

 こういう状況の中で、基本法においては、おおむね五年ごとに見直しをする、このようにされておるわけでありまして、現在の基本計画が平成十二年三月に閣議決定をされたわけでもあります。平成十七年三月に新たな基本計画を策定すべく、昨年八月に現行の基本計画の見直し作業に着手をさせまして、そして一月の三十日、食料・農業・農村政策審議会の企画部会におきまして、先ほど委員からも御指摘がございました三点を主として、具体的な議論をしていただくようにスタートしたわけでもございます。

 この企画部会におきまして、国民から開かれた透明性のある議論が進められて、そして、今申し上げましたような、十七年三月の新たな基本計画の策定、このことを目途にしておりますが、できるものであれば、本年七月ころに論点整理、中間見直しと申しますか、中間での論点をおまとめいただければ、やはりスピード感を持って対応しなければならないわけでありますので、平成十七年度の概算要求に制度改正を含めて対応ができないか、このように考えております。

堀込委員 少し具体論に入ります。

 基本法の十五条の二項で、基本計画に定めなければならない事項が規定をされているわけであります。午前中も議論があったようでありますが、そこに、食料自給率の目標を定める、こういうことになっているわけですね。今の計画では、たしか二〇一〇年に四五%、こういうことにされておるはずでありますが、この自給率の達成状況はどうでございますか。

須賀田政府参考人 平成二十二年度のカロリー自給率の目標四五%に対しまして、現状は四〇%ということで、停滞をしております。

堀込委員 それで、平成二十二年、四五%という目標は、この計画では変えないんですか、変えるんですか。

須賀田政府参考人 カロリー食料自給率の、四五%と見込みましたその内容でございますけれども、我々のカロリーの約四分の一は米から得ているわけでございます。この米の消費を、平成九年度が六十六キロであって、それが維持されるであろうというふうに、国民一人年間六十六キロが維持されるであろうというふうに見込んでおったわけでございますけれども、残念ながら、平成十四年度で六十二・七キロまで減少をしておる。

 そのほかの品目も、麦とか大豆とか砂糖とかいったものを除きまして、生産が、水産を含めまして減少をしておるということがございまして、残る期間、生産面、消費面、できる限りの努力をしたいと思っておりますけれども、こういう趨勢が続きますと、率直に言いまして、四五%の達成というのは困難になるというふうに認識をしております。現在、目標と生産、消費の状況について点検、検証に着手をしておりまして、その結果に基づきまして、見直すべきは見直すというふうに考えているところでございます。

堀込委員 いろいろくどくど答弁があったけれども、要するに、達成できないから計画の見直しをしようということなんですよね。達成できなかった責任というのはどうなるんでしょうか。

 つまり、これは、四五%、二〇〇〇年三月に閣議決定されて、国会でも重要な論点の一つだったわけですね。そうした経過や重みというのがあるにもかかわらず、何か私に言わせると事もなげに踏み倒して、新しい計画をやるんですよ、もう無理だからやるんですよというふうに見えてしようがないんですよね。

 なぜできなかったのか、それにはどういう政策の欠点があったのか、反省点がないんですよ。どうですか、それ。

金田副大臣 確かに、今局長が申しましたとおり、平成二十二年度四五%の自給率達成は極めて難しい状態にございます。

 しかし、その原因は、一に生産面だけでございませんで、消費面で、米の需要、米の消費が相当程度落ち込んできた、予想に反して、こんなに落ちるとはというような予測違いがあったという事実もあるわけでございます。毎年三十万トンほどの米の消費が減っております。そしてまた、食生活が大分、米離れから、脂肪を余計とるというような食生活に変わってきておる。そしてまた、家庭での食事というよりも、食の外食化が進んでいる。外食産業は相当量、国内の農産物を使わないで、輸入農産物を使っている傾向が強うございますので、そういった種々の情勢の変化から達成が極めて難しいということでございます。

 しかし、行政的に、消費の、日本型食生活の復帰とか、それからいろいろな学校給食を通じての地産地消の問題、それから食育の問題、そういった問題に取り組みながら、何とか四五%、これから基本計画の見直しの中でどの程度できるのかということも含めて検討してまいりますけれども、何としても、自給率について国民の関心が極めて高うございますので、消費、自給率の向上のために懸命に取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

堀込委員 いろいろ説明はあったんですが、観点を変えますと、現行計画の見通しは政府として甘かった、あるいは現行計画は失敗だったか、どっちかなんですね、今の言い方は。状況の変化はいろいろあったけれども、そういうことは見通せなかった、見通しが誤っていた、こういう答弁になるというふうに思うんです。

 政策的な反省点はなかったんですか。この基本法をつくってから政策的なミスもあって自給率を達成できなかったとか、そういう反省点はないんですか。

金田副大臣 日本型食生活の指針等々で、国民の皆さん方の消費面、今、大分油分を余計とり過ぎて生活習慣病等が問題になってきております。そういった食生活の改善も啓蒙していかなければならないというふうに思っております。反省点といえば、そういう消費の急激な変化、そういったものを見通せなかったことについては反省しなきゃならないとは思いますけれども、やはり自給率の向上のために懸命に取り組むことが必要だ。

 生産面でもいろいろと、今、小麦の自給率の向上、大豆の自給率の向上、そういったことに懸命に取り組んでおります。食生活が御飯からパンあるいはラーメン等々に大分多様化してきております。そういった中で、小麦の自給率、四、五年前までは八%だった自給率が、現在一三%に向上してございます。そういった努力を積み重ねる中で自給率の向上に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

堀込委員 だんだん政策的なことをこれから質問していきますが、この間、私のところへ質問取りに来た人たちもそうなんですけれども、五年に一度この計画を見直すことになっているからやるんだよみたいな意識じゃなくて、この五年間何だったのか、それは状況の変化もあったでしょう、だけれども、政策的にもこういった点は不十分だった、だから見直すんだ、あるいは、政策的な実行力がこういう点で不足していた、だから見直すんだという問題意識がぜひとも必要だと思うんですね。そこが、やはり私は、この計画は単に機械的に五年に一度の見直しで見直すんだみたいなやり方になっているのではないかという点が見えるわけで、そこはきちんと今までの計画の総括、反省をして新しいところに進む、こういうことが大事だろうと思っているんです。

 そこで、この基本計画の見直しをなぜやるかという農林省の説明資料を見ますと、実は五年前と、四年前ですか、状況変化があるんだと。状況変化を見直すというのは、食料自給率が低迷しています、食の安全、安心への関心が高まっています、農業構造改革も立ちおくれています、農村地域への期待が高まっています、こういう説明をしているんですよ。

 食の安全、安心への高まりは、確かに四年前よりはあるでしょう。でも、ほかの説明資料は四年前とそう変わっていないですよ、五年前の計画をつくるときと。やはりこれ、状況変化で説明するのはちょっと僕は無理があると思うし、むしろ、農水省の政策の実行力、そういうことを含めた中で、新基本法が目指した農業構造の改革あるいは食料自給率の向上がうまくいかなかったんだよ。やはり反省しながら進んでほしい、こういうふうに思うんですね。

 そこで、一点、具体的な話をします。例えば構造改革はなぜ進まなかったか、いろいろな議論があるんですよね。ぜひ反省をしてもらいたい点が私はあるんです。

 ウルグアイ・ラウンド農業交渉でミニマムアクセスを受け入れたわけです。したがって、あのときに、日本の米の国際的な競争力を高めよう、構造改革進めようということで、あれからたしか六年間で六兆百億円ですか、膨大な事業費を投入したわけです。この膨大な金を使って実は日本の米の生産性は向上するはずだった、あるいは、構造改革はこの六兆円を使ってできるはずだった。ところが、できなかった。これだけの巨費を投じながら、日本の農業の構造改革は進められなかった。この六兆円の大部分が実は公共事業に使われてきた、あるいは非公共も一部あったけれども。これだけの巨費をしても、なおかつ日本農業の改革、あるいは特に米の生産性の向上が図られなかった。これはどう反省していますか、政府は。

金田副大臣 反省がない、六兆百億でやれるのにやれなかったという御指摘でございますけれども、六兆百億、御指摘のとおり、土地改良事業等々に投入させていただきました。その投入しただけの生産のコストダウンというのは、着実に進んでいるというふうに理解させていただいております。

 そういった構造改革を進める中で、やはり構造改革は進んでおりません。そういった構造改革をどうしても進めなきゃならないという形で、十六年度から米政策の改革大綱を見直しして新しい政策に入っていくわけでございます。何としても、特に内外価格差の大きい米、麦、大豆等々について、やはりこれは土地利用型、多くの土地を使用して生産されるものでございますので、規模の拡大、そして担い手の育成、そういったものに主力を置きながら構造改革を強力に進めていく、そのことによって御指摘のような問題が達成できるものだと考えてございます。

堀込委員 後半の方はともかく、前段の方、六兆百億円がそれなりに生産性向上に寄与したという評価でございますが、これはいつの機会か検証したいと思っているんですよ。では、六兆円も使ってやってきたのになぜまた新しい基本計画でやらなきゃならないかという点を含めて、引き続いて議論をしたいというふうに思っています。

 そこで、この基本計画を樹立するに当たって、先日も民主党の私どもの農水部会に来て、お役所の皆さんが、国会の意見どう聞くんだと言ったら、インターネットのホームページに出すから、意見寄せてくれみたいなことを言った課長もいたけれども、これは平成十一年と十二年に国会論議をずっとやって、基本法から計画までやって、時の中川昭一農林大臣、玉沢徳一郎大臣、政府の責任でしっかり国会と論議をしながらやっていこう、もし達成できなきゃこれは政府の責任ですということもはっきり言っているんですね。自民党の松岡利勝先生を中心にしながら修正案をつくって、わざわざ、国内農業生産の増大を図ることを基本とする、そして食料自給率の目標はその向上を図ることを旨とする、国会報告の政府の責務、こういうことを修正して成立をしたわけですね、基本法。

 これ、基本計画は、今企画部会か何かで、審議会の方でやっているようでありますが、この国会論議の経過と絡んで、国民の意見もくみ取るという意味で、国会との論議を並行しながらといいますか、国会論議も、国会の意見も取り入れながらどう基本計画を樹立していくつもりでございますか。

小林政府参考人 御指摘の、基本法の制定の際に、国会に対する報告ということで報告されました。その際の審議にいろいろな御議論があり、また私ども、答弁した趣旨を踏まえてきちんと国会にも御説明し、報告していきたいと思っています。

 いずれにしましても、今回の見直しでございますが、今も御議論がありますように農政全般にわたる改革でございまして、そういう意味で、私ども常に、先ほどいろいろなホームページとか言われましたけれども、国民の皆さんにとにかく広く、常々この検討状況をわかってもらうということが必要ですし、またこの委員会の場でも、本当に農政全般にわたる御議論を日々いただいていることを十分踏まえながら、頭に入れてやっていきたいというふうに考えているものでございます。

 また、委員会の扱いにつきましては、これは委員会としてまた御議論いただくことですけれども、私どもとしては、そういった趣旨で十分対応していきたいと思っています。

堀込委員 それでは、経過と総括と運び方はそのぐらいにしまして、具体的な中身の質問をさせていただきます。

 これから農政の一番大きな柱として、いわば価格政策から所得政策へ、こういうことを大臣、所信表明でもおっしゃいました。今、品目別に行っている価格・経営安定対策から、諸外国で行っている直接支払いも視野に入れつつ、意欲と能力のある担い手の経営体を支援する横断的な政策へ移行する、こう大臣所信では言われているわけですね。私どもも基本的には賛成であります。前からそのように思っていました。つまり、価格政策から所得政策中心に転換をしていく。

 確認でございますが、今、米、麦、大豆、砂糖、でん粉、野菜、果樹、牛乳、牛肉といいますか肉類、こういう価格支持政策の今の予算を直接所得方式に大きく振りかえていく、こういう基本的な考え方でいいかどうか。つまり、今の品目別の政策から、農業経営全体を視野に入れながら、あるいは農業経営全体の経営体を視野に入れながら政策を展開していく、こういうことでいいのか。また、それはなぜなのか、所見を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 今度、個別ごとの価格支持政策から、担い手に対する品目横断的な政策へ移行することを含めて、施策を担い手に集中する、こういうことを基本的なこととして検討を行っていただいておるところでもございます。

 そういう面で、やはり構造改革の強力な推進、需要に応じた生産が図られる、こういうことをも十分考えなければならないわけでありますし、また、経営全体に着目した経営の安定を図る施策がやはり必要なわけでありますし、さらに対外的にも国際規律の強化、こういう面への対応の政策体系を考えなければならないわけであります。

 そういう面で、ぜひ諸外国の直接支払いの制度も視野に入れて、競争力の強化が図られるような農政の展開、これを考えていきたい、そういうように今考えておるわけであります。

 ただ、そこで一つ注目しなければならないのは、一律的な所得補償、こういうことではやはり農家の経営努力を阻害しかねないわけでありますので、現状の農業構造を固定する、その改革に支障を来すおそれのある、こういう面では一律的な所得補償というものは考えなければならない、このように考えておるわけであります。

堀込委員 これから詰まるんでしょうが、基本的な考え方は、私どももそう行くべきだろうと思っています。つまり、品目別の対策から品目横断的な経営対策に切りかえていく。

 しかし、私はそこでなおかつ一つ心配になることは、従来の品目別対策の限界は、限界としてあることはあるというふうに思うんです。しかし一方で、品目別対策は、品目ごとの需給調整や価格対策の機能も果たしていたことも事実なんです。この機能をどうするのか。

 アメリカあたりでも、直接固定支払いがあって、最低価格支持政策みたいな政策があったり、あるいは価格変動型の支払い制度など、結構総合的にやっているというふうにお聞きもしているんです。ヨーロッパもいろいろな政策を組み合わせてやっているというふうに聞いていまして、そういう意味では、品目横断的な経営対策に切りかえる、それはそういうことなんでしょうけれども、今までの品目別対策が果たしてきた価格安定の機能だとか需給調整の機能だとか、こういうのはどういうところで措置していくのか、考え方があったら聞かせてください。

小林政府参考人 今の御議論がありましたとおり、品目横断的な対策と個別対策、従来の品目政策は個別品目の生産量の確保というようなことのメリットがありますし、何といいましても、需給調整、そういったことに対するいろいろな気配りがあったわけでございます。

 ただ一方で、ただいまありましたように、需要との関係で、経営という形でとにかく内需を強化していくというときに、これは基本計画をつくったときから一つの宿題でございまして、それを今具体化しているという時期になっているわけであります。

 したがって、今先生からも御指摘がございました、基本としてこの横断対策というのをつくったわけでございますが、その際には、従来ありましたいろいろな需給調整とか、それから需給価格の動向、これをどうするかというのが大きな論でございまして、私どもも十分それを認識しております。

 したがって、そういった基本は、新しい方へ転換する、その次にまた、品目ごとの状況とか、それから地域の動向とか、それをどういうふうに新しい仕組みの中で影響が緩和できるような方法を考えていくかということも、これからの企画部会等の中で十分議論していきたいというふうに考えているところでございます。

堀込委員 そこで、こういう基本計画を見直しながらそういう政策に切りかえる、やはり問題は財源なんですね。私は、これを思い切ってやるには、やはりちまちました予算じゃだめだろう、思い切った所得対策を財源的にも講じるべきだと思っていますが、それには、今の国の予算状況からして、三兆円の農林省の予算を大幅に上積みするというのはなかなか難しいわけであります。三兆円の農水省予算を大幅に組み替える、こういう発想がどうしても必要なんだろうと思うんですね。

 大体三兆円のうち、公共事業、最近少しずつ減らしていますが、今までは農村と林野と漁港なんかの公共事業で大体半分使ってきたわけですね、農林省予算というのは歴史的に。ですから、この予算を大胆に組み替える。省庁の縦割りだとか、農水省でも局縦割りみたいな予算はやめて、今までの予算を大幅に組み替えるというような腹の決め方が私はどうしても大事だというふうに思っています。

 端的に言って、今、公共事業、減らされていますけれども、先にやはり農水省内部で、例えば農村振興局の管轄の公共事業をあらかじめ所得補償に組み入れちゃう、一部を。一部というか、大幅に組み入れるとか、そういう今までの局縦型の予算の領域というのを打ち破ってやはりこの財源措置をすべきではないか、こういうふうに私は思いますが、そういう決意はおありですか。

金田副大臣 堀込先生の御指摘でございます。ただ、一概にそうもなかなか言えない面がありまして、確かに公共事業費、平成八、九年度には一兆二千億からあった公共事業費が、今現在、十六年度では八千三百億程度に大幅に引っ込んでいるわけでございます。

 この土地改良事業については各地域から相当の申請がございまして、やはり土地改良事業をやることによって生産コストが相当、半分以下に下がるんだとか、あるいは、大型な構造改革を進めていく上で土地改良事業が大型圃場をつくるとか、そういった中で、農村整備等々、環境整備の面でも土地改良事業が果たす役割は極めて大きいという面もございますので、一概に土地改良事業を全部所得補償に組み替えるという乱暴な議論にはなかなかならないんだろうというふうに考えております。

堀込委員 別に全部、全額すぐやれと言っているんじゃなくて、今まで局縦型で、あの局の予算に手をつけるなみたいな風土があるでしょう、今でも。そういうことは取っ払って、こういう所得補償政策を重点にするような、そういう決意が必要なんでしょう、そういう仕組みが必要なんでしょう、こういうふうに言っているんです。もう一度答弁してくださいよ。

金田副大臣 所得補償政策に踏み込んでいく、個別作物で価格支持政策等を中心とするような農政から作物横断的な所得補償に切りかえていくような政策として、大きな流れとして、EUあるいはアメリカ等々の所得補償を踏まえながら、そういう方向に切りかえていくことは必要だというふうに思っております。

 では、農林水産省、三兆一千億ぐらいのお金をどういうふうな組み替えをするかという御指摘でございますけれども、やはり、土地改良事業には土地改良事業の必要性というのも厳然としてあるわけでございまして、そういったのを総合的に見渡す中で財源を確保して、既存、個別にやっていた所得政策等々の支援策、そういったものもあるわけでございますので、そういったのをどう組み合わせながら、廃止すべきものは廃止し、やるべきことはやるというような総合的な観点から、御指摘の所得補償への財源を見出していくべきだというふうに考えております。

堀込委員 やっと最後のところで、金田副大臣、小泉内閣の副大臣になったんですけれども、やはり一生懸命改革しようとしているんですから、そういう意味では、今一番後段に言われたように、それは今までの事業もあるでしょうし、地域からの要望もあると思うけれども、大胆にここは、農政を転換させるという意味では、そういう局縦型というか、ひどいところへいくと何か課ごとに予算があるみたいな、既得権みたいな話は、ぜひリーダーシップをとってやってくださいよ。

 そこで、もう一つ、論理的な話なんですが、政策の整合性、一貫性という意味で、農水省は、例えば米については担い手中心の施策を展開しようとしている。今の、土地改良の話になると、一方では、土地改良事業というものは、小規模の生産者まで含めて、全員の参加を求めて事業を実施しているわけですね。ある種、将来は国の支援も受けられないだろう、こういう農家も含めて土地改良事業が行われているわけですね。中小零細農家の参加を求めて、土地改良負担金も負担をしてもらって、今までと変わらない事業推進をやっている。

 しかし、一方では、これから所得政策に切りかえながら、米の生産の大宗を担い手に移そうとしている。あるいは、農業共済なんかもあるけれども、あれは、中小零細農家は当然加入というようなことで、全員の参加を求めた仕組みになっている。つまり、将来、米づくりをしないか、あるいは政府から見れば期待もされない農家も、今、土地改良や農業共済に参加をして、ぜひやってくださいよという政策矛盾があるわけですね。そういう現象が起きていると思うんです。

 これは、やはり、直接支払い、仮に導入するとすれば、仮にというか、導入するんでしょうけれども、価格支持政策のほかに、間接所得支持政策ともいうんでしょうか、こういう公共事業とかいろいろなものが、全農家を対象にしたものがあるわけですけれども、ここに膨大な予算が使われているわけであります。こうした事業を、所得政策を導入するに当たって、どういうふうに位置づけて、どういうふうに対応するつもりでしょうか。つまり、政策の矛盾が一方にあるわけであります。

太田政府参考人 我が国の農業の振興を図るために、いろいろな資源があるというふうに考えております。そうした中で、農地や農業用水がきちっとまず確保、保全される、その上で、プロ農家等を含めたしっかりした経営者が農業を展開していただくという意味で、その基盤となる部分を整備しておりますのが農業農村整備事業であります。

 その意味で、これは農家、プロ農家のみというよりも、その地域といいましょうか、水の資源あるいは農地の資源、そういったものに働きかけをする仕事でありますので、非常に狭い国土条件のもとで限られた農地を対象に、小規模な農業経営が大半を占めるこの国の状況を考えたときに、足腰の強い農業実現のためにその整備は不可欠だというふうに考えております。

 実態としては、圃場整備事業の例を申し上げますと、事業を契機といたしまして、農地の流動化が進み、経営体の育成による効率的な営農が実現されておりますし、また水の点でいいますと、基幹水利施設だけでも四万五千キロに及ぶ水利施設の整備、更新を進めておりまして、そういったことによって、適切な用水あるいは排水の管理が行われるという基礎的な役割を果たしておる状況にございます。

 なお、その効果を若干付言いたしますと、圃場整備事業について見ますと、UR対策が行われた期間も含みました平成八年から十三年度に完了した四百二十地区におきまして、区画整理等のハード対策とソフト施策との一体的な実施を進めまして、農地の流動化が進んで、担い手の経営規模は約二・二倍に増加するといったこと。あるいは、区画の拡大などによりまして、十アール当たり五十二時間かかっておりました稲作労働時間が、約六割短縮され、二十一時間までに減少するなどの効果も見られておりまして、こういった対応につきましては、引き続きしっかり行っていかなければならないというふうに考えております。

堀込委員 それはそれでいいんでしょうけれども、私が申し上げたいのは、これからプロ農家中心の政策に転換しますよ、こう言っているけれども、土地改良事業もそうだけれども、中小零細農家全部含めて、負担金を求めながらやる。農業共済なんかもそうですね。全部、当然加入で、掛金もらいながらやる。この仕組みの論理の整合性というのはやはりちゃんとしておかないと、片っ方だけ重点にやりますよ、しかし負担金だけは片っ方で求めますよという政策でいいのかどうか。農家が納得するかどうかということ、やはり総合的にはちゃんとしておく必要があるんじゃないかということを実は申し上げたいわけであります。

 今、プロ農家という話が出たので、私が出したんですけれども、ちょっと言葉を聞いておきます。

 担い手中心の農業政策ということで、今までは全生産者を対象とした農業政策で、これはちょっと失敗でした、あるいは間違いでした、農水省はこう言っているんですね。ですから、これからはプロ農業経営に支援を集中して、競争力のある日本農業を整備していく、これが大臣所信にあった基本的な考え方だというふうに私は思います。

 言葉遊びみたいに見えて仕方がないんですけれども、言葉の話を先に聞いておきます。自立経営農家、今まで言ってきました。中核的農家、言ってきました。プロ農業経営者、これは違うんですか。

小林政府参考人 今回の私どもの改革の検討の際の一つのキーワードとして、プロ農業経営という形でお示ししております。こういった考え方は、要するに、これからの農業経営、足腰の強い経営をつくるにはどういう形に持っていくかということをあらわしているわけですが、私ども、今先生のお触れの中で御指摘ございましたが、やはり今までの農政、どちらかといいますと全国一律で物事を決めていく、そういうスタンスが結構ありました。

 そういう中で、やはり地域とか品目、こういったものに応じた形もつくっていかなくちゃいけないということ、それから、これから国民に対して、私どもの政策の位置づけなり意義というものをやはり明確に示していかなくちゃいけない。それは、やはり経営という形で、きちんとした経営をつくっていく政策は政策、地域の環境とか水資源を守る政策はそういう政策という形で、わかりやすく組み立てていこうかなという思いがありまして、まずそういう前提でいろいろな議論をしているということであります。

 その中で、プロ農業経営につきましては、確かに、おっしゃるとおり、これまでいろいろな概念がございます。自立経営農家、これは昭和三十六年の基本法でありまして、この当時は、御承知のように、家族農業経営を中心として、その中でのいろいろな能率性を求めていたという流れでございますし、それからその後の中核農家、これは昭和五十五年でありますが、打ち出しました。こちらは、そういった自立農業経営の流れの中ですけれども、より技術とか経営能力に着目して、経営というところを重点にしていた。それからさらには、先般の食料・農業・農村基本法での効率的かつ安定的な農業経営ということでございます。

 いずれも、私どもは、その時々の要請といいますか、いろんな状況に応じて求められている農業経営、そのときは家族経営が中心であったこともありますし、今はいろんな法人化を含めた多様な経営が求められていますけれども、そういうことに応じて施策の方向を出していきたいというふうに考えておるところでございます。

 したがいまして、強い農業をつくる、強い農業経営をつくる、そういう意味では哲学が必要だと思いますけれども、その対象とする考え方、そういうところを明確にしているというふうな気持ちでおります。

堀込委員 よくわからないんだが、ノンプロがあってプロがあるんでしょう、きっと。

 今言葉遊びしましたから、もう一個、これは金田副大臣にちょっと聞きましょうかね、予算書の説明の中にあったんですが。

 今度、来年度予算案で、風格ある農山漁村をつくるということで六百六十二億円組んでいますよね。これはどういう事業かよくわからないんですが、その前に、風格ある農村、風格のない農村とか、これは何か珍しい言葉が予算書に出ているなと思って僕見たんですが、どういう農村ですか。

金田副大臣 国民の皆さん方の理解を得るためにいろんな言葉が使われているのは、先ほどの担い手の表現等々にもあるわけでございまして、風格ある農村をつくりたいというのは、我々農林水産省の願望でございます。どうしてもこれを実現したいという思いがその表現に込められているわけでございます。

 その中で、生産の現場であるとともに、やはりそこにプロ農家もいるでしょうけれども、そのプロ農家以外の農家、安定的に効率的に生産をやっていけない農家というのもあるわけでございまして、そういった人たちにもしっかりと農村に住まっていただかなければならない。また、棚田等々の傾斜地で条件不利なところにでも、農家の皆さん方にしっかりとそこで農業を営んでいただかなきゃならない。

 そういった中で、新しい、そういったすべての、今までの四百七十万ヘクタールの耕作地がしっかりと回転し、そして効率のいい農業ができるような、そういったことをしていかなきゃならない。そのためには、農地も必要でございますけれども、人、あるいはそこに住まう人々の意欲、そういったものも総合的に環境にマッチした農村をつくりたい、そういう思いで、風格ある農村をつくりたい。風格のない農村というのはないと思いますけれども、とにかく、我々の思いを込めてそういう表現にさせていただいているところでございます。

堀込委員 よくわからないですね、風格ある農村。

 そこで、今、金田副大臣から答弁がありました。私も、日本農業でプロ農業を大事にするというのもいいんでしょうし、所得政策もいいんですけれども、農村社会というのは、言うまでもなく、一本の水路、一本の農道を通じながら共同体社会が営まれている。春は、水路の水引きをして、春祭りをやって豊作を祈願する。秋には、農道を整備して、収穫のできる農道をつくって、秋祭りをして豊作に感謝する。いわば日本文化の、家族のきずなだとか集落のきずなみたいなのが共同体社会として厳然として農村社会にはあって、しかも、そこから共同して勤労をたっとぶ文化みたいなのがやはり日本文化の源泉としてあるんだろうというふうに思っています。最近の犯罪の多発だとか教育の荒廃を見ますと、やはりこうした社会の崩壊が結構起因しているのではないかという気がしてなりません。

 そういう意味では、集落社会へのサポートというのは、今もちょっとありましたけれども、かなり重視をして考える必要があるのではないか。別にプロ農家でなくも、定年後、農村に帰って、そんなに農林業の収入を当てにしなくも、いわば人生観的に農村社会で住んで、生きていきたいよという人もたくさん出ているわけであります。そうした意味で、プロ農家支援ですが、そうしたものを切り捨てるんじゃなくて、やはりサポートしていくということが大切だと思うし、それが多面的機能を発揮する大きな力にもなるだろう、こういうふうに思っています。

 中山間地だとか里山だとか、いろんなところがあるわけであります。そういう意味では、そういうことを大事にしながら、例えばせっかく、これも平成十二年でしたか、中山間地直接支払いができたのは。あれなんかも随分議論してつくってきたわけでありますから、ああいうものは、そういう意味で、集落営農、あるいは、営農でなくも、集落、農村地域を大事にする意味で継続、重視をしていくべきではないか、こういうふうに私は思っていますが、感想ございますか。

金田副大臣 堀込先生の御指摘のとおりでございます。農村、農山漁村は、我々日本人の土台でございます。日本人が日本人であるがためには、あの農村があってこそだというふうに感じてございます。

 今我々、農村のそういったいやしとか風土、そういったのが日本人の源泉だ、原風景だと思っておりまして、都市と農村の共生、対流ということを積極的に進める中で、日本人の原風景を取り戻さなきゃならないというふうに思っているところでございます。

堀込委員 中山間地直接支払いはどうでしょうか。

金田副大臣 中山間地の直接支払い、やらせていただいて、五年間の暫定措置ということでやってきたわけでございますが、これは基本的な哲学として、やはり、EU等々の条件不利地域への直接支払いというのを何か考えて、日本でもそういった条件不利地域があるではないかという形で進めさせていただいたものでございます。

 そういった性格から、所得補償のはしりとして導入したものでございますので、この計画期間が終了した後においても、さらに引き続きこの中山間地の直接支払いはやらなければならないものだろうというふうに思っているところでございます。

堀込委員 ありがとうございました。

 そこで、この基本計画の農地制度の考え方について一点、私の意見も申し上げ、伺っておきたいわけであります。

 今日の農地制度の基本は、いわばこれは入り口規制みたいになっているんですね。そもそも、農地を取得して農業を始めたい人たちもできません、農地を買えないとか。あるいは、農業生産法人の農地権利を取得するにも、結構いろいろな要件、規制があるわけであります。

 私は、こういう入り口の規制を緩めるあるいは撤廃するというようなことをしながら、むしろ事後的な監視と規制、あるいは転用規制とか、そういう仕組みに法体系をしながら、意欲ある農業者や生産法人を育成すべきではないか、日本農業の活性化のために。

 複雑ですから一概に言えませんが、基本的には日本人は、やはり日本の農家、当然ですが、先祖伝来の土地だとか、あるいは財産的に持っている人とか、いろいろいますけれども、私は農地制度の基本は、やはり今までの仕組みから、入り口規制から出口規制といいますか転用規制といいますか、そういう仕掛けに大枠としては視点を変えるべきではないかというふうに思っていますが、これはどうですか。

川村政府参考人 農地制度についてのお尋ねでございます。

 農地は、まさに生産に当たりましての基本的な財でございまして、さまざまな御意見も要望もございます。私どもも、この農地の有効な利用、それから優良な農地を確保していくといういろんな課題がございますし、特に昨今、担い手不足あるいは耕作放棄地の増大等から、農外からの新規参入を含めて、多様な担い手の確保も重要な課題となっているところでございます。

 そこで、我々の観点といたしまして、大きくは、一つは、やはり意欲と能力のある担い手を育成、確保しまして、その経営発展を後押しするために、土地の集積等がいかに円滑にできるかという視点が一つ。それから、優良農地の確保及び農地の有効利用の促進ということが、どういうことでさらに改善ができるかということ。この二つの観点を最重点といたしまして、検討を進めていきたいというふうに思っているところでございます。

 御指摘のような入り口での規制をやめてといったような御意見も十分承知しておりますが、今申し上げましたような二つの論点から、農業生産法人あるいは農地の権利取得の要件を含めまして、全般的な見直しというものを視野に入れて検討してみたいと思っておるところでございます。

堀込委員 また、この農地制度の議論はさせていただきたいと思っております。

 続いて、平成十六年度の予算を、ちょっとはしょりながら質問させていただきます。

 政府予算案の全体予算の仕組みの特徴は、結構社会保障関係の予算を抑えながら、公共投資関係を初めとする主要経費を切り詰めた、あるいは地方交付税の削減、こういうことをやっているわけであります。

 私は、これから予算の問題を二、三点質問したいんですけれども、私の問題意識は、いよいよことしから三位一体の改革で、交付税の切り下げやいろいろなことをやって切り込んでいく。これから、地方の時代だ、地方分権時代になるわけでありますが、農林省としてどういうふうに対処しようとしているのか。こういう時代にどういう農林漁業の仕組みをつくろうとしているのかという私自身の問題意識もありまして、以下、具体的にちょっと二、三点質問させていただきたいわけであります。

 農林予算で、政策評価の反映、モデル事業の取り組み、政策群への取り組み、特色を出そうとしていることはよくわかります。ちょっと具体的なことを一、二質問しておきたいわけでありますが、まず、統合補助金化推進事業ですね。美しいむらづくり総合整備とか、地域用水環境整備だとか、田園自然環境整備ですか、こんなようなもの、これは、地方から見て使いやすくするんだ、使い勝手をよくするんだという趣旨だろうと思います。

 これは、事業の限定とか、地方から見たら、当初予算とかを立てる場合にどういうことになるんでしょうか。簡潔にしてください。

小林政府参考人 統合補助事業のねらいは大きく二つあろうかと思います。一つは、地方での裁量の拡大、あわせて事務負担の軽減でございますが、具体的な仕組みとしましては、各年度の地区ごとの事業費の配分の決定につきまして、普通の事業ですと、これは国が行っておりますけれども、それを都道府県にやっていただく。あわせまして、事業内容の変更があった場合の承認手続なども都道府県が行うことになります。

 したがいまして、こういった地方の裁量の拡大と事務負担の軽減が進められておりますが、農林水産省は、十二年度からこういったものの創設に取り組んでまいりまして、十六年度の予算におきましても、四本の統合補助事業の新設、また一本の拡大というような形で、地方の裁量の拡大に取り組んでいるところでございます。

堀込委員 むらづくり交付金というのが百億円新設されているわけであります。これは、国土交通省が公共事業関係費の予算で、実は四千五百億円削減をして、まちづくり交付金を千三百三十億円、国土交通省の予算でもふえて、新設したものに連動しているんだろうというふうに思うんですが、これが具体的にどう実行されるのか、どういう市町村への配賦をするのかというのを一つ伺っておきたいということ。

 ちょっと時間がありませんから、質問予告のもう一点だけ絡めて質問します。

 もう一つ、ことしの予算でコスト削減という話をしていますけれども、これもそもそも国土交通省発なんですね。中部国際空港の建設事業費が、例のトヨタ出身の社長さんが行ったら、当初予定の七千六百八十億より一五%も安いことがわかって、ショックの国土交通省が五年間で一五%コスト削減しますよと打ち出した。当然、政府全体として一五%のコスト削減を打ち出した、こういうことになっているんですが、農水省で一五%コスト縮減を今回打ち出しているわけでありますが、これは、単純にどこでコスト削減するんでしょうか。それを受けて、今までのコストが高かったからできるのかという疑問を持つわけでありますが、考え方を説明してください。

太田政府参考人 二つの御質問に対しましてお答えいたします。

 まず、むらづくり交付金でございますけれども、地域が主体となった個性ある村づくりを推進するために、事業の進め方やその内容につきまして国の関与を減らして、市町村の裁量を拡大した制度となっております。中身といたしましては、農業生産基盤と、農村生活環境の総合的な整備を実施するものであります。

 その特色といたしましては、まず、採択の際に、国は、市町村が設定されました事業の目標、指標、これと事業計画の整合性を審査するということをいたします。そして、完了時には、国は、目標、指標の達成状況を評価し、公表する。さらに、助成対象には、国が定めるメニューに加えまして、市町村が独自に取り組む事業内容も含めることができるといった仕組みを導入するものでございます。従前のような事前審査よりも事後審査を重視することによりまして、個性ある村づくりへの取り組みを有効に支援することができる制度ということで、創設を目指しておるものでございます。

 コスト縮減についてでございますが、農林水産省におきましては、平成九年度から、公共工事コスト縮減対策に関する行動指針に基づきまして、この縮減に取り組んでまいっております。そして、十五年度からは、新たにコスト縮減の数値目標を設定いたしますとともに、事業の調査、設計段階から施工、管理に至るすべてのプロセスを例外なく見直すコスト構造改革プログラムに、各省連携して取り組むことといたしたわけであります。

 そのプログラムにおきましては、これまでの工事コストの縮減のみではなくて、事業便益の早期発現に相当しますコスト縮減、あるいは将来の維持管理費の縮減も加えた総合コスト縮減率という指標を用いまして、五年間で一五%の縮減を目指すことといたしたものであります。

 例えば、農業農村整備事業の直轄事業におきましては、事業効果の早期発現のための工事箇所の集中化、重点化、あるいは既存水利ストックの適正な管理によります長寿命化、あるいは農家や地域住民の参加によります直営施工方式の実施など弾力的な整備手法の導入、さらには、多様な入札契約方式の拡大や電子入札の導入などを進めているところでありまして、こういったものを通じてコスト縮減を図り、効率的な予算執行に努めてまいりたいというふうに考えております。

堀込委員 それでは次に、ちょっと質問通告を少し飛ばします。

 国庫補助金の削減でございますが、農業委員会と普及事業につきましては、後で法案が出るようでありますから、その際に伺うことにさせていただきまして、国全体として二十兆四千百億円ある補助金を平成十八年までに四兆円削減する。この平成十六年度で一兆三百十三億円縮減する、こういうことになっております。

 農水省も四百四十億円の縮減を実行することになって、公共事業で三百十六億、植防で五億、農業共済で四十二億、中山間地で五十一億ですか、森林漁業で二十六億減らす、こういうことになっているはずであります。なぜこの事業が特定されたんでしょうか。

小林政府参考人 この三位一体の改革の一環としまして、今御指摘の私どもの国庫補助負担金の廃止、縮減を行っております。この考え方を整理する際に、まず、基本的な考え方といたしまして、一つは、私どもの国の責務、国の仕事をきちんとやっていく上でのそれに必要な事業の実施をどういうふうにやっていけるか、そういう観点が当然前提ですし、それとあわせまして、その中で、地方の裁量の拡大ということをどういうふうにしていけばいいのかということをベースにしたわけでございます。

 もちろん、その際に、予算の減額を伴うものですから、実際問題として、各事業について、この予算の縮減の後、各地方レベルできちんとした業務運営をやってもらうかどうかということも含めて検討したところでございます。

 例えて言いますれば、公共事業等の補助金でございますが、こちらは、今も議論のありましたコスト縮減等なんかも踏まえながら、現場での仕事はきちんとしていきたいとか、それから、普及、農委の方の関係でございますれば、そちらの方も、いわば全体の改革、コストを縮減するという中で、それに見合った形の予算の縮減をしていく、そういったような方向で取り組んだところでございます。

堀込委員 不思議なんだけれども、今の話を聞いていると、減らしても余り影響ないということですよね。

 そこで、交付税の縮減だ、補助金の削減だと、地方自治体が今悲鳴を上げているわけであります。

 問題は、これからさらに小泉総理は、平成十八年までに、基幹税、つまり所得税を地方税に移管する、こういうふうに言っているわけであります。一方、地方からも、例えば、これは小泉さんが言っているんだけれども、北海道を道州制のモデルにしたらどうかとか、静岡県からは政令県の提案なんかがなされているわけです。やはりこの動きはずっと続くんだろうというふうに思います。これを受けて、農水省は、これからの予算なり、仕組みなり、機構なり、人員なりをどういうふうにしていくのかということを検討しなきゃいけないというふうに私は思うわけであります。

 そういう意味では、今予算は三兆一千億ばかりですし、農水省全体の人員も三万一千人ぐらいですかね、多分。人件費が二千億弱ぐらいだと思うんです。しかし、農水省の場合は、御存じのように、戦中戦後の米不足の時代に地方組織がありましたから、この三万一千人のうち半分ぐらいは食糧事務所とか統計事務所とか、そういう現場を持っているわけで、今度、去年の設置法で少しずつ変えていこうという話になった。だけれども、このスピードは、平成十八年までに結構本格的に地方税に移管するよという時代に対応できるかどうか。直接関係ないかもしれないけれども、しかし、そういう地方分権の時代に向けた組織なり、機構なり、人員の見直しをしながら、地方にできることは地方に、民間にできることは民間にというふうに総理が言っているわけでありますから、自身の機構組織の改革も含めながら、この間ずっと対応していく必要があると思いますが、見解はありますか。

金田副大臣 堀込先生の御指摘、そのとおりでございまして、農林水産省とて時代の流れ、そういったものにしっかりと即応していかなけりゃならないと思っております。

 道州制の問題等々もございます。そうしますと、北海道の農政関係の事務所のあり方、そして土地改良事業を担当している北海道開発局のあり方等々も問題になってくるんだろうと思いますけれども、しっかりと取り組まなきゃならない。一生懸命に改革にこれ努めておりまして、食糧庁も廃止させていただきました。また、林野庁の合理化等々も、営林局の縮減あるいは営林署等々の統廃合等々を進めて、改革をこれ進めているところでございます。

 時代に即応してしっかりと、食の安全もしっかりとやらなきゃならないということで、新たにまた、減るばかりでございませんで、消費・安全局というような、時代の要請に合うような改革も進めさせていただいているところでございます。

堀込委員 ぜひそういうことで進めていただきたいと思います。

 先にちょっと林野のお話を質問させていただきます。

 予算と関係があるわけでありますが、国有林野特別会計について、私は、前回も質問しまして、非常に心配をしております。企業特会として発足した会計でありますが、平成十年の法改正で、二兆八千億を国民の負担で返す、国鉄債務と同じように債務の処理をしたわけですね。残る一兆円を五十年かけてこの国有林野事業勘定で返す、こういうスキームを使った。これは元本だけでいいわけですね。それで、平成十一年から十五年の間を集中改革期間ということで、返済のための改革を進めて、いよいよ来年から本格的に新規借入金ゼロの世界に入る、こういうふうに林野庁も言っているわけで、そういうことなんだろうというふうに思います。

 そこで、この間、二十四日の日に国会に債務処理の報告があったわけであります。集中改革期間の見通しと実績について、簡潔に答えてもらえますか。自己収入千四百八十億というふうに予定していましたが、年度平均で約百十億、千三百七十億に減りましたが、これはどういう要因ですか。

前田政府参考人 端的に申し上げますと、材価が相当、当初予想したものよりは低目に推移してしまったということが主たる原因でございます。

堀込委員 林産物収入が平成十年に四百四十六億ありました。平成十四年、二百二十四億、半分になっていますね。どういう理由、要因ですか。

前田政府参考人 もう少し正確に言いますと、一つは、材価が低迷しましたことが第一。それともう一つは、いわゆる主伐と間伐、これの割合が相当間伐の方がふえてきてしまっているという形の中で、全体としましては、今御指摘のありましたような形で林産物収入が大幅にダウンしたということでございます。

堀込委員 平成十一年から十五年を集中改革期間として、再建のための条件整備をやろう、こういうことで、林野庁の皆さん、僕は、努力してきていると認めるんですよ。なぜかというと、人件費も減っていますし、経費が五百億ぐらい減っているんですね、この間。ですから、そういう努力は大いに認めるんです。

 しかし、そもそもこの五年間で、当初の計画よりも、二千百億円の累積赤字がふえて、当初計画より五百億円ぐらい赤字を上乗せしているんですね。なっちゃっているんですよ、結果として。どういう要因だと思っていますか。後、大丈夫ですか、これ。

前田政府参考人 確かに、御案内のように、この集中改革期間におきましては、まだいわゆる要員調整の過程にある、あるいはその収穫量も底をついているというようなことでは、収支差、ギャップがどうしても出るということで、暫定的に足りない部分を新規借り入れという形でやってまいったわけでございます。

 それが、今申し上げましたように、材価が予想以上にダウンする。あるいは、収穫量につきましても、まだ資源育成途上にあるということで、伐採量を伸ばすということもなかなか難しい、そういった中で、林産物収入が大幅にダウンしてくる。あるいは、林野、土地売りにつきましても、土地需要の低迷等々もございましてダウンした。そういった形の中で、新規借り入れが当初予想していたよりは、お話ございましたように、五百億ほどふえ込んでしまったというような状況でございます。

 ただ、これにつきましては、先ほどお話がございましたように、十六年度にこの新規借り入れ金につきましてはゼロにさせていただきました。そういった中で、今後、伐採量につきましては、まだ収穫量が相当ふえていくという状況が見込まれるわけでございますし、一方で、支出の方につきましても、まだ要員調整が若干進んでいくという形の中で、収支両面にわたります努力、これを行いながら、健全な経営に向けてさらに努力してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

堀込委員 苦労していることは認めるんですが、うまくいっていないんですよね、計画を立てたけれども。

 それで、ちょっと質問しますよ。来年からいよいよ新規借入金ゼロの世界に入るわけです。十六年から二十年の五年計画、それから二十一年から二十五年の五年計画を林野庁、出しましたね。この計画の自己収入千六百五十億円の内訳は、林産物収入が幾らで、一般会計受け入れ幾ら予定しているんですか。

前田政府参考人 今お話がございましたように、十六年から二十年度までの管理経営基本計画の中での自己収入の見通し、一千六百五十億円としているところでございます。この収入の主な内訳といたしましては、林産物収入等が三百五十億円程度、林野等売り払い収入が二百八十億円程度、それと一般会計繰り入れにつきましては八百億円程度、そういうように見通しているところでございます。

堀込委員 平成十四年、二百二十四億円しかなかった林野収入。大丈夫ですか、これ、三百五十億も来年から。見通し、大丈夫ですか。長官、どうですか。

前田政府参考人 確かに、御指摘のように、安易な道ではないというふうに理解いたしております。

 ただ、お話ございましたように、平成十四年度の収入、確かにお話のような額でございますけれども、収穫量の方につきまして今後のこの五年間約一・四倍にふえていく、これは資源構成の方からそうなってくるわけでございますが、そういった形で相当ふえていきますのと、その中でも主伐がふえていくというようなことで、今後、市場の動向、そういったものを踏まえながら、なお一層効果的な販売努力を行っていくという中で、確保に向けて努力してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

堀込委員 これはかなり無理があるんですよ。五十年の返済計画を林野庁は出しているんですが、ざっと言うと、五十年間で林産物収入が五兆円入るだろうと。一年に一千億入るという計算になっているんですよ。もっとも、林野庁も利口だから、平成二十五年か三十年ごろからどんとふえるようにつくってあるんだよね。そんなのわからないでしょう。いずれにしても、そういうので六兆円ぐらい入って、一般会計から二兆七千億ぐらい入って、大体八兆七千億ぐらい五十年間で収入がありますと。支出の方は七兆六千億ぐらいで、一兆円浮くから一兆円返せますよという計画をつくってあるんだよね。

 ところが、この十六年から二十年の五年計画で借入金ゼロにするという世界は、もうちょっと五年おくれになっているんでしょう。例えば、五年おくれの計画を、何かうまくいかなかったから先に来ている。つまり、借りかえ借入金が四百二十億から六百十億円になっている、この五年間の計画で。あるいは、事業関係費は千三百五十億になるはずだけれども、これも二百億ふえちゃっている、利子償還金もふえちゃっているという現実があって、当初立てた五十年計画というのは、この間出した十年計画は大分違っていますよね、もう既に。認めますね。うなずいているからそうなんですよ。計画がそもそも相当の無理があるんです。

 私は、そういう意味で努力をしていることを認めるし、日本の国有林は日本国民として、みんなで守らなきゃいけないし大事にしなきゃいけないというふうに思っておるんです。ただし、国民に理解できるような説明をちゃんとして、そもそも僕は、企業特会というのは平成十年に見直したばかりだけれども、もう一度理解して、林野庁の皆さんも、もっと胸張って仕事ができるような、別に恥じることないんだから、ちゃんとしたそういう財政措置を講じながらちゃんとする仕組みにすべきではないか、こういうふうに思っています。

 大変苦労していることを、長官、認めるんだよ。だけれども、計画の数字を余りくるくる変えて、できなかったから、はいといって前倒しをしてやるようなやり方は僕はよくないと言っているんで、ぜひ、我々も応援しますから、もっとあからさまに出して、国有林の実態を国民に理解してもらいながら新しい行政を展開すべきではないか、こういうふうに思っています。御意見ございますか。

金田副大臣 前回の見直しの際に、林野特会で抱えている三兆八千億のお金、一般会計の方に繰り入れさせていただきました。林野庁としても、何とか内部合理化等々で努力してまいって、一兆円の負債をなるべくしっかりと返していきたい、返さなければならないものだと思っております。

 林野特会の計画については、先生の御指摘を踏まえまして、さらに完全なものにしてまいりたいと思っております。

堀込委員 時間が来たから終わりますが、ぜひそういう趣旨で、恐れずにやはり僕は見直したらいいと思うんです。そのことを申し上げて終わります。

高木委員長 次に、神風英男君。

神風委員 今回、初めて農林水産委員会におきまして質問をさせていただきます民主党の神風英男でございます。名前が大変変わっておりますが、本名でございますので、よろしくお願いを申し上げます。

 これまでの質疑の中で既に言及されていた部分もあるかとは存じますが、確認の意味も含めましてお聞きをしたいと思っております。

 まず、私は、先般大臣からお話しをいただきました所信表明に関しまして、特にその前半部分で述べられておりました食料・農業・農村基本計画について御質問をさせていただきたいと思います。

 それは、まさにこの計画の成否がこれからの日本の農業の明暗を分けるものであり、中でも、大臣が述べておられますとおり、現在の日本の農業、農村の現状は、構造改革が立ちおくれ、高齢化、耕作放棄地の増加が進むといった、大変疲弊した状況にあるからでございます。今後、農業の構造改革を加速化し、望ましい農業構造を確立することこそがまさにポイントになると思われます。

 しかしながら、こうした目標というのは、既に昭和三十六年に制定をされました旧農業基本法におきましても、農業の生産性を向上し、他産業並みの所得を確保するということで、当時の構造政策の目的とされていたと理解をしております。

 このような現況にかんがみますときに、旧農業基本法から約四十年を経て、平成十一年に新しく食料・農業・農村基本計画が施行されたわけですが、旧農業基本法制定からこれまでの間、日本の農業政策というのは成功ではなかったと考えざるを得ないわけですが、大臣はその点についてどのようなお考えなのか。また、旧農業基本法につきまして、現況にかんがみてどのような評価をされているのか。大臣の御所見を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 農業基本法、先ほどお話しの昭和三十六年に制定されたこの基本法におきまして、農業と他産業との間の生産性、そして生活水準の格差の是正を図ることを目標にいたしまして、生産政策、価格政策、流通政策及び構造政策の三本柱により、その後の農業施策の方向づけをしてきたわけであります。

 生産政策につきましては、生産基盤の整備、あるいは、技術の高度化による生産性の向上や生産物の選択的な拡大が図られ、米、麦中心の農業生産から、畜産物、果実、野菜等広がりのある生産が行われるようになったわけであります。

 また、価格・流通政策につきましては、農業経営の安定に効果を上げたものの、消費者のニーズが農業者に的確に伝わらず、国産農産物の需要の減少を招いた面があります。

 また、構造政策につきましては、施設利用型農業について一定の規模拡大が図られたものの、土地利用型農業については、北海道を除いて経営規模の拡大がおくれた、このように考えております。

 このような評価で、旧基本法制定時には想定できなかった食料自給率の大幅な低下や高齢化の急速な進展、このような情勢の厳しい変化を踏まえまして、平成十一年に新たな食料・農業・農村基本法が制定をされ、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的発展、農村振興という四つの基本理念を明確に位置づけ、政策を再構築したところでもございます。

 これらの経緯を踏まえて、先ほど来委員の方々からお話がございます、今も申し上げました四点等も踏まえまして、基本計画の見直しを実現してまいりたい、こう思っております。

神風委員 日本の食料自給率につきましては、カロリーベースで、昭和三十五年に七九%であったものが平成十四年には四〇%、穀物自給率では、八二%であったものが二八%に減少をしております。また、農家戸数におきましても、昭和三十五年に六百六万戸あったものが、平成十五年には二百九十八万戸に減少。農地面積につきましても、昭和三十五年に六百七万ヘクタールであったものが、平成十五年には四百七十三万ヘクタールへと減少しております。

 その一方で、まさに旧農業基本法が目指しておりました構造改革の推移を見ますと、農家一戸当たりの平均経営面積、規模では、昭和三十五年に〇・八ヘクタールであったものが平成十四年に一・二ヘクタール。また、農家世帯と勤労者世帯の所得比較を計算してみますと、昭和三十三年当時が、農家世帯が勤労者世帯の六四・三%であったものが、平成十二年では六九・四%というデータになっておりまして、いずれもほぼ横ばいという状況にあるわけでございます。

 こうした推移を見る限り、旧農業基本法が目指したような構造改革は余り前進は見られなかったというのが私の評価でございまして、こうした各種のデータの推移についてどのようにお考えになっているのか。また、これから十年後あるいは二十年後の日本の農業というのがどういう姿になっているとのイメージを大臣がされているのか。そこら辺の御所見を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 先ほども申し上げましたが、基本法、昭和三十六年、いろいろの施策を進めてまいったわけでありますが、なかなか思うようにいっていない。このことは、現実の問題として、またこの時代の変遷、こういう中での対応をしっかりしていかなければならないわけであります。

 やはり、何といっても農業、これは本当に私たちの生命をはぐくむものを生産するわけでありますし、環境を保全する、国土保全、さらには地域の文化を形成また伝承する、本当に国の土台であるわけであります。そういう中で、やはり安心、そして安全でおいしい食料を合理的な価格で安定的に国民に供給することを考えなければならないわけでありまして、そういう中でいろいろの施策を進めなければならない、このように考えております。

 そういう中で、十年、二十年後の農業、大変難しいことでありますけれども、しかし、やはり私は、意欲と能力のある担い手が何とか大宗を担いつつ、いわゆる多様な担い手が、消費者のニーズに合う、また市場を重視した考え方のもとに生産に取り組む、こういうものができるような形というものはつくっていかなければならないのではなかろうか。

 さらには、やはり今年度の予算でも計上しておるわけでありますが、アジアを中心として所得が向上する、こういう中では、やはり我が国の農産物というのは大変高品質のものがあるわけであります。ぜひ、そういう面で農産物の輸出ができるような体制、比較的WTO、FTAの問題等々につきましてはまさにもう守り、すべて何かというと農業が、こういうことになるわけでありまして、やはり少し攻めの農政、輸出というものを十分考えられるような、そういう農政への転換も図ってまいりたい、このように考えておるわけであります。

 ぜひそういう面で、今回の基本計画の見直しの中で、十年、二十年後にもそれらが、我が国の農業がたえることのできるような農業、また若い次の世代がそれをしっかりつくり上げていただけるような基本計画の見直しをして、その人たちが対応できるような農業というものを確立してまいりたい、こう思っております。

神風委員 この基本計画の中の前書きの部分で「今後十年程度を見通して定めるものとする」と書かれてあり、またこの計画自体が平成十二年に閣議決定をされて、各般の施策がもう既に実施をされていると伺っております。

 同時に、農林水産省から「農業構造の展望」が発表されておりまして、それを拝見しますと、平成十一年には三百二十四万であった総農家数が、今から六年後の平成二十二年には二百三十万戸から二百七十万戸に減少する、またその一方で、平成十一年に四十八万戸あった主業農家が、平成二十二年には効率的かつ安定的な農業経営として家族農業経営が三十三万から三十七万戸、また法人・生産組織として三万から四万戸になるという展望が描かれております。

 特に、水田作におきましては、平成十一年に主業農家九・七万戸、経営規模四・六ヘクタールであったものが、平成二十二年には経営規模十四ヘクタール程度となり、経営耕地面積の約六割を効率的かつ安定的な家族農業経営に集積されるとの展望が書かれているわけですが、この「農業構造の展望」について、この数字、私自身全く信用ができないんですが、現時点でのこの進捗状況をお伺いしたいと思います。

 それに加えまして、この効率的かつ安定的な農業経営の定義として、「主たる従事者の年間労働時間が他産業従事者と同等であり、主たる従事者一人当たりの生涯所得が他産業従事者と遜色ない水準を確保し得る生産性の高い営農を行う経営」となっておりますが、この定義についても、所得については、年間所得の比較ということではなくて、生涯所得が他産業従事者と遜色のない水準となっているわけでございまして、これを読みますと農家は死ぬまで働けという意味にもとれるわけですが、その点いかがなのかということも含めまして、お伺いをしたいと思います。

金田副大臣 「農業構造の展望」ということで、十二年の三月に策定させていただきました。新しい農業・農村基本法の目指す姿ということで、構造がどうなっているかという面について、これを閣議決定させていただいたものでございます。

 平成二十二年における望ましい姿というのはこうだよということを記載させていただいているのでございます。家族経営で三十三万から三十七万の経営体をつくりましょう、そして法人経営で三万ないし四万で、合わせて四十万程度の経営体が育成されることが望ましい。今、いわゆるプロ農家、これからの基本計画で検討する部隊でございますが、これがやられる、そのプロ農家四十万経営体が農地利用、日本全体で約六割程度の面積を占有し、効率的かつ安定的な経営を営んでいけるような集積を目指しているところでございます。

 しかし、この構造改革が残念ながら計画どおりにはいっていないということでございまして、十三年度末でございますが、目標の約七七%程度にとどまっております。この構造改革の立ちおくれあるいは鈍化傾向について、これから基本計画を見直すことによってこの構造改革の立ちおくれている現状をもう少しスピードアップさせていかなければならないというふうに考えているところでございます。

神風委員 先ほどの、生涯所得の問題については。

金田副大臣 主業農家と申しますか、効率的で安定的な農業経営体というのは他産業に比べて遜色のない所得が確保できる経営体なんだということで、約一・八兆から二・二兆ぐらいの生涯所得を確保できる、そういった経営体を想定しているところでございます。――失礼しました。ちょっと記憶が間違っておりまして、生涯所得として二・二億から二・八億円ということを想定してございます。済みません。

神風委員 これはなぜ年間所得の比較ではなくて生涯所得の比較になっているのかということをちょっと伺ったので、その点をもう一度お答えいただければと思います。

金田副大臣 民間のサラリーマンと経営形態が大分違っておりまして、経営形態が移譲されるという時期が違いますので、年々の年間所得で計算することはなかなか都合が悪いということで、生涯所得ということで試算させていただいているところでございます。

神風委員 経営形態が違うのはよくわかるんですが、こうしたデータでは公平な、公正な比較にはならないのではないかなと思います。

 「農業経営の展望」に書かれてあります営農類型ごとの展望の概況を見ましても、水田作の試算として、家族経営では十から二十ヘクタール程度、あるいは生産組織では三十五から五十ヘクタール程度となっておりまして、その生産組織のモデルとして、主たる従事者が千九百時間の労働時間、三人で、主たる従事者一人当たりの所得が九百万円というモデルが書かれているわけでございまして、恐らくこの数字を今日本の農家の人で信じられる人はほとんどいらっしゃらないのではないかなと思っております。

 そういう意味で、こうした現場を余りにも無視するような形で空想にも似た計画をつくっているのが、私自身は官僚制度の弊害ではないかと強く思っているわけですが、その点、政治家として大臣はどのようにお考えなのか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 大変難しい数字でありますけれども、この間も私、地方に参りまして、あるいはまた施設園芸、農業者大学校の卒業生の皆さん、それぞれいろいろお話を伺う中で、この数字につきまして、全般的に申し上げればなかなか理解できない数字かとも思いますけれども、しかし、現実に先進的な農業をおやりになっている方々はこれ以上の収入を上げてやっておられる、こういう努力をされておられる姿も見て、また聞いてきたわけであります。

 これらの数字等につきましては、やはりきめ細かくいろいろのところから調査をし、また情報を得て対応する必要があると思います。

神風委員 私自身も今から十八年前に、全国の大規模な稲作経営者のところを訪ね歩いたことがございます。

 岡山県の有限会社の国定農産であるとか、あるいはこの農水省の資料にも出てまいります富山県のサカタニ農産、あるいは印旛沼、千葉県ですけれども、土地改良をやられておりました兼坂祐さんというようなところを初めとしまして、北海道から九州まで、結構大規模にやられている米農家のところを訪ね歩いたことがあるんですが、当時国定さんは、自作地十ヘクタールあるいは借地二十ヘクタールで、合計三十ヘクタールを家族四人で耕作をされていると。ただ、規模が大きいために乾田直播を採用しているような状況でございました。

 また、サカタニ農産は、当時の酒谷実代表がまだ御壮健であられまして、当時従業員十五名ほどで百五十ヘクタールの農地を管理しておりまして、約二億五千万円くらいの売り上げを上げていた、まさにサラリーマン化した農家でございます。

 また、兼坂さんにおきましては、千葉県の印旛沼の方で土地改良を行っている方でございまして、一枚の圃場が最大のもので七・五ヘクタール、当時二・五ヘクタールの新しい圃場をつくって、そこに米の作付があってマスコミが随分取材に来ておったわけですが、そういった方々であります。

 そういった方々は今でもまさに先端的な日本の農業経営者であるわけですが、ただ、その背景にはいろいろな要素が絡んでいるなというのは、私自身、そういった方々と話をする中で痛切に感じたことがございます。

 特に、酒谷さんのところは富山県という地域で、一巻というような言い方で当時お話をされていましたけれども、親族、一族集まって最初企業経営がスタートできた、そういったことがございました。

 また、印旛沼の土地改良にしても、しゅんせつした土によって土地改良を行ったわけですが、その土が非常にpHが強酸性で、雑草さえも生えないというような状況の中で、当時五十八戸あった農家が、もう使い物にならないからということでいわば投げ出してしまったような農地でございます。そういった農地であったから、同じようにまとまって一枚の田んぼに区画整理というか、基盤整備ができたようなわけでございまして、そういった背景がいろいろなところであるなと。

 そのほかにも、一般論として申し上げても、その地域に兼業の機会があるかどうか、兼業の機会が豊富にあるかどうかであるとか、あるいは一番重要なのが、リーダーの人間性であるとか、その地域における信頼がどの程度あるかというのが非常に大きいなということを痛感するわけでございます。

 土地を、農地を貸す、貸さないにおきましても、Aさんには貸すけれどもBさんには絶対に貸したくないとか、あるいは、隣の町の人であれば構わないけれども隣の家の人には絶対に貸さないというのが結構農家の心理としてあるわけでございます。

 あるいは、規模拡大をしていく過程におきましても、規模拡大すればするほど単収が減っていってしまう。そういったことから、あるいはその規模拡大のコストが重くのしかかってくる、借地料が重くのしかかってきて、規模拡大はしても農家としての収入的には非常に減収に、マイナスになってしまうというようなことがありまして、なかなかそれが進まないというのが現状でございます。

 その証拠に、今回こういう形で質問に立たせていただくに当たりまして、当時お世話になった方々と随分久しぶりにお電話で話をしましたが、結局、いまだに規模拡大、構造改革が進んでいないなというのが大規模経営者の皆さん方の一致した意見でございました。

 これに関して大臣、何かございましたらお願いしたいと思います。

亀井国務大臣 今お話しのように、それぞれ大変先進的な農業をおやりになる、水田の問題、特に土地の問題、土地集積の問題、土地の賃貸借の問題等々、いろいろ御苦労をされておるのではなかろうか、このように思います。

 今のような、まさにリーダー的な存在の農家の方々の御苦労、こういうものも十分私どもわきまえて、そのことも今回の基本計画等の見直しの中で、今企画部会やあるいは国民の皆さん方の御意見、あるいはまた、いろいろ代表者の皆さん方の意見、お考えを聞く機会を持っておるわけでありまして、そういう面にさらに十分対応いたしまして、今の委員御指摘のようなことへの対応ができるように努力をしてまいりたい、こう思っております。

神風委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 当時、そうした大規模稲作経営者の方々と話をする中で、いかにそうした方々が地域でいわば肩身の狭い思いをしながら規模拡大を図っているかというような苦労話を随分聞いたことがございます。

 生前、酒谷代表からは、よく郵便でかみそりを送られたような話も伺いましたし、あるいは、ほかの大規模稲作経営者の方からは、粗大ごみであるとかあるいは産業廃棄物のようなものを自分の田んぼに投げ入れられた、捨てられたような話を聞いたことがございます。

 本当に、なぜこうしたやる気のある農家が、この日本で自分の思うような形で農業をできないのか。それをできるように実現させるのが政治の役割ではないかというのが私自身が政治家になった動機の一つでもございまして、ぜひその点、これから頑張って取り組んでいきたいとは思いますが、こうした農業構造の加速化の問題というのは、いわば農地問題といいますか、土地問題と言ってももはや過言ではないのかなという気が私自身はしておりまして、結局、いかに規模拡大を図っていくかという視点よりも、いかに安心をして農地を提供していただくかというような視点からこの十七年の新しい基本計画の見直しというものを進めていただきたいなと思うところでございます。

 この質疑に立つに当たりまして、十数年ぶりに本当にお話をした山形県の農業会議の方は、これまでもう何十年と土地の問題を扱ってきたわけですが、最終的に行き着いた自分の結論としては、金銭的な問題ではなくて、農家の田んぼに対する郷愁であるというような言い方をされておりました。

 そういう意味を含めますと、結局、現在の自作小農家から新しい担い手へ農業構造改革を進めるためには、いわば第三次農地改革と呼べるような新しい農地制度をつくっていく必要があるのではないかな。つまり、農地が社会的な適正利用が保障されるべき公共財であるという視点に立ちまして、所有権絶対から利用権優先の公共秩序を形成していかなければならないのではないかなと思っております。

 そうした観点から、遊休農地を分散、改廃させないためには、公的機関がいわば農地をプール、集積をして管理、保全をするような体制をつくる必要があるのではないか。農業者がさまざまな理由で耕作できなくなった農地について、適格な第三者の耕作にゆだねるか、あるいは公的機関に所有権や利用権をゆだねるかのどちらかとして、違反した遊休農地については重課税を課すような、そういった政策もこれからは検討されてしかるべきではないかなと思うわけでございます。特に、これまで農業政策が投入された農地について適格な第三者を見出せない場合には、こうした機関への預託を義務づける必要があるのではないかと考えております。

 つまり、そうした社会的ないわば責任を果たせなくなった農地について、公的機関が権利を預かって新しい適格な担い手につないでいくことに最大の政策的な優先順位があるのではないかと考えるわけですが、あるいは逆に言えば、こうした点に配慮しない限り、この基本計画というものも成功はおぼつかないのではないかと私自身は考えておりまして、この点どのようにお考えなのか、御所見を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 現在の食料・農業・農村基本計画の中にも、この農地政策につきまして、「効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農地の利用の集積」、このことは記されておるわけであります。

 農地保有合理化法人の問題等々いろいろなことをやっておりますけれども、今委員御指摘のとおり、担い手の不足やあるいは耕作放棄地の増大、これは深刻な問題であるわけでありまして、あるいは農外からの新規の就農、こういう中での問題、あるいは多様な担い手を確保しつつ、本当に担い手の方々が農地の利用を集積していくことが、委員からも御指摘のように重要な問題、このように、私、重く受けとめておるわけであります。

 そういう面で、今度の基本計画の見直しの中でも、三項目の中に農地制度の見直し、このことを入れて幅広く御議論をいただきまして、十分な、担い手あるいは農地制度について本格的な検討をぜひお願いしたい、こう思って、また、私自身も、やはり、今、土地制度の問題、取得からある面では利用というような時代に来ておるわけでありますから、それらのことも十分踏まえた中でこの対応をしてまいりたい、こう思っております。

神風委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、ことしから本格的にスタートする米政策の改革についてお伺いをしたいと思います。

 所信の中で、担い手の明確化、育成などを支援し、水田農業の構造改革を推進する、あるいは、米政策の改革にとどまらず、意欲と能力のある担い手が大宗を担う農業構造の確立に取り組むと大臣が述べられておりましたが、この担い手とは一体だれを指しているのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

金田副大臣 担い手を育成していかなきゃならない、その担い手とは、効率的、安定的な農業経営を行う者で、我が国の農産物の六割を占めていくような農家だということでございます。

 米改革大綱の中でも、本州については四町歩以上を耕していただける方が担い手になりますよ、北海道では十ヘクタールですよ、集落経営体では二十町歩を確保してくださいねというようなことで基準をお示ししながら、やはり、何といっても、具体的にはいろいろな地域地域の特色があるわけでございまして、その集落あるいはその町村でしっかりと農家同士がお話し合いをして、先ほど神風委員からもお話があったように、隣のうちと折り合いが悪いんだとか、なかなか経営規模の拡大ができないんだとか、そういった現場現場の意見が相当大きな問題になってくるわけでございますので、現場でひざを突き合わせしながら、農家同士が話し合う中で、新しいビジョンの方向に集落全体としてつくっていくということが必要なんだろうというふうに思っております。

 担い手につきましては、先ほども申し上げたとおり、家族経営とかあるいは法人経営等々で約四十万経営体ということを考えておるところでございます。

神風委員 ちょっと今の点で確認ですが、それは認定農業者と集落営農ということと理解してよろしいんでしょうか。

金田副大臣 家族経営のもの、そして法人経営のもの、そして集落経営体も含めて四十万の経営体を担い手として、これから農政の光を当てていかなければならない生産コストの縮減に努めていける農家ということで考えております。

神風委員 米政策改革大綱では、自己責任でリスクをとることを前提に、生産調整に参加しない判断も認められ、独自販路を開拓していくような意欲的な農業経営者は、生産調整を実施していなくても、いわば担い手となれるはずであったわけですが、しかし、実際には、その生産調整に参加しない者は担い手としては扱われず、さらに認定農業者にもなれないという話を伺うことがよくございます。それが事実かどうか。

 あるいは、もしそれが事実であるとするならば、その意欲と能力のある農業者を育成するという認定農業者制度の趣旨からしても非常におかしいと思わざるを得ませんが、その点どのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

金田副大臣 米の食管制度のいろいろな変遷の中で、いろいろなことがありました。しかし、十六年度からの新しい米改革大綱におきましては、新しい生産調整の仕組みといたしまして、全国で生産目標数量というのを決めさせていただいております。全国で八百五十七万トンのお米を生産していただきたい、そして、その数を各都道府県に割り振りさせていただきました。それがまた市町村に割り振られていくわけでございます。

 これは、現場現場でのお話し合いの中でその生産目標数量をどうするか、今まで商系と申しまして、農協に米を納めないで自由につくっていた農家もあることも事実でありますが、このお話し合いの中に入っていただきまして、その各町村ごとの生産目標数量のもとに、いろいろな話し合いの中で目標数量の配分等々が進んでいくものだというふうに思っているところでございます。

神風委員 今のお話では、集落営農もいわば担い手ということのようですけれども、ここに一つの大きな矛盾を私自身は感じるわけでございまして、集落営農自体は、その担い手がいない地域で農地を管理するという有効な手段ではあると思いますが、それがこの担い手経営安定対策の助成対象として認められているために、助成金を受けるためには集落営農をつくらなければならない。いわば本末転倒したような形で、集落営農の本来の目的を逸脱した論理が結構働いているようでございます。

 特に、一部の地域では、集落営農をつくるために、大規模経営者がせっかく苦労して設定をした利用権の解除を求められるという事態が発生しているということも聞くわけでございますが、これでは本来の農業構造改革の趣旨に沿わないのではないかと考えるわけですけれども、その点どのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

金田副大臣 各生産現場においてビジョンづくりが進んでおります。そういったビジョンづくりの話し合いの中で、旧来のいろいろな伝統みたいなやり方みたいなのが話し合いの中で改革されていっているんだろうというふうに思っております。

 確かに、一生懸命やろうとして、生産目標数量をオーバーしてもつくれるんだという、そういった制度が過去改革の前にはあったわけでございますけれども、自主流通米だとか計画外流通米とかいうような、そういった一時期を越えまして、これから新しい生産体制の中で、あらゆる農家の皆さん方が、集落の生産目標を通じてどういう生産体制をとったらいいのか、そして担い手をどのように集約していったらいいのかという話し合いの中で、生産現場が納得した形で改革に取り組んでいただけるものだというふうに思っております。

神風委員 ぜひ、そこら辺の矛盾を解決した形で、これからの見直しを進めていただきたいと思うわけですが、基本的には、米改革の基本的な考え方の中に、需給調整に協力した人が報われる仕組み、あと一方で、農業で頑張っている人が報われる仕組みというのが併存して書かれているわけでして、ここら辺がもう矛盾の原因ではないかなという気がしております。そこら辺のところを、これから矛盾がないような形でぜひ進めていただきたいなと思うところでございます。

 また、平成十六年度産から、生産調整につきまして、米をつくらない面積からいわばつくる数量を配分するような方式へ転換するということでございますけれども、実際には、つくる数量といっても、農家の方々もよくわからないということで、結局、「農業者に対しては、併せて作付目標面積を配分し、確認は面積により行う。」と、米政策大綱には書かれております。

 ただしかし、こうなりますと、いわば無農薬栽培とか有機栽培で米づくりをしている方々にとりましては、当然のことながら通常の米づくりから比べて単収がかなり落ちるわけですから、かなりな不利益をこうむってしまう。こういった点に関してどういう対応を考えられているのか、お答えいただければと思います。

金田副大臣 生産現場におきまして、私は無農薬農法で米をつくりたいんだとかというようなことになれば、基準のとその地域地域の単収を掛けて生産水田を決めていくわけでございますけれども、有機でやるからもう少し面積をふやさないとそれだけの生産目標数量は達成できないというようなことがあろうと思います。一定の面積に換算して配分しているところも、現場ではやっているんですが、それについては、話し合いの中で調整ができるんだろうというふうに思っております。

神風委員 今回いろいろ現場の方々とお話をすると、相当現場の方は混乱している面がございますので、そこら辺のところをきちんと整理した形で、計画の見直しを進めていただきたいなと思うところでございます。

 本当はもう少し質問したいこともあったんですけれども、時間が中途半端になってしまいますので、また次の機会にそれは譲りたいと思いますが、私自身は、本当に、先ほども申し上げましたけれども、日本で農業を思い切りやりたい人がやれるような農業をぜひ実現していただきたい。日本が嫌になって飛び出して、カリフォルニアに行って米づくりをしている友人もおります。ただ、そうではなくて、ぜひこの日本で、豊かになれる農家、豊かになれる農業者というものを目指す中で、新しい、夢のある農業を実現していただけるように農水省ともどもいろいろな面で御検討いただきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 質問を終わらせていただきます。

高木委員長 次に、白保台一君。

白保委員 公明党の白保でございます。

 大臣の所信表明に関する質問を行いますが、大臣の所信表明でも冒頭に触れられておられましたように、まず、残念ながら、昨年は低温と日照不足で、米は十年ぶりの不作ということになったわけであります。政府備蓄米の四十万トンの放出もあって、供給量の問題はなかったわけでございますが、米作関係者は非常に御苦労をなされた、大変厳しい事態であった、深刻な事態であった、このように思います。そういった中でも、また非常に奮闘して頑張られた方もおられまして、非常に感謝をしたいな、こう思うわけでございます。

 古来、日本は、白米は命なり、こういうふうに言われるように、心を込めてつくったその白米というのは、まさに命そのものであるわけであります。ことしは国連が定めた国際コメ年でもあり、我が国の食と、そして農の英知を重ねてきたわけですから、そういったまた農をやってきた哲学があるわけですから、そういったものを世界に知らしめる一番いい機会だな、こういうふうに思っています。

 米は地球上の半分以上の人々にとって主食であるけれども、その生産は深刻な制約に直面していると国連食糧農業機関のジャック事務総長が言うように、稲作農業というのは常に厳しい立場に立たされているということも事実であります。米を主食とする我が国は、国内生産を守り、水田を失わないように頑張っていかなきゃならない、こういうふうに思うわけであります。

 そこで、米の消費量の問題、消費拡大の問題です。これは、日本では、御飯であったりおせんべいであったり、お酒であったりおもちであったり、いろいろ工夫して消費されてきたわけですが、また、我が党も、最近では、米粉の消費拡大のプロジェクトチームをつくって一生懸命活動しているわけですけれども、そういった中で一番肝心なのは、要するに、米の消費量が減り続けていく、そこが一番危機的な状態なんであって、それをどう拡大していくか、このことが一番重要なポイントだろうと思います。そういう面で大臣の所見を伺いたい。

    〔委員長退席、山田委員長代理着席〕

亀井国務大臣 まさに栄養的にも全くすぐれた米の消費拡大、これは大変重要なことであるわけでありまして、バランスのとれた食生活、健康増進、これにも大変重要なファクターでもあるわけであります。また、一面、自給率の問題、自給率の向上の問題、あるいは水田の有効利用なども、いろいろな面で米の消費拡大というのは極めて重要なことであります。

 また、今も委員御指摘がございましたが、公明党では米粉消費拡大プロジェクトチームを設置されまして、そして真剣に取り組んでいただいておりますことには、本当に感謝と敬意を表する次第であります。米粉も、パンやめんなどの幅広い利用が可能であるわけでありまして、新たな需要の開発、こういう面で大きな期待も寄せておるわけでありまして、それぞれ、私ども、農政局も、いろいろPR活動、各農政局で米粉の普及等々につきましても今努力はしておるところでもございます。

 何としてもこれは、平成十六年度におきましては、国民から米の消費拡大の知恵を公募するということがひとつよろしいんじゃなかろうかと、提案の支援、あるいは売れる米づくり等の推進に向けました生産者団体の主体的な取り組みとして、消費拡大運動の展開であるとか、あるいはテレビ等の有効活用によりまして、御飯食健康増進の問題、あるいは米粉などのいわゆる米の粉体化利用を初めとする多様な加工用途、このことの利活用の促進、あわせて、NPOや教育、医療機関等におきまして、十分これらの機関と連携をとりまして、広範な国民運動を展開してまいりたい、このように考えております。

白保委員 けさもといいますか、きょうも議論がありましたBSEの問題に関連して伺いたいと思いますが、実は、新聞を見ておりましたら、私の方の地元のことが書いてありまして、よく見ていますと、実は、私のところは、復帰前からオーストラリアやニュージーランドから牛肉を輸入して、沖縄に行けば安くておいしいステーキが食べられるよ。これはまた観光の一つの目玉にもなっておりまして、そういう事態の中で、そういうことが続いてきた中で、実は、オーストラリア産の牛肉が高騰し始めたんじゃないかということで、私ども、地元の焼き肉店なんかも、先月は、二月、二、三割売り上げが減った、客が減った、こういうふうに言われているわけでありまして、今回の事態の中で、価格が、今後この影響というものはどういうふうになっていくのか、今後の見通しについてお伺いしたいと思います。

白須政府参考人 ただいまの白保委員のお尋ねでございます。

 焼き肉店ということでございますれば、やはり卸売価格であろうというふうに考えているわけでございます。そこで、輸入牛肉、特に豪州産の国内卸売価格、米国からの牛肉の輸入停止、御案内のとおり十二月二十四日ということだったわけでございますが、その後、やはり品薄感というふうなこともございまして、お話しのとおり、一月前半にはやはり相当程度、六割程度まで実は一番高いときは卸売価格が上がったというふうなことであったわけでございます。しかしながら、その後、徐々に落ちついてまいりまして、先週の調査結果を見ますと、卸売価格、豪州産の輸入牛肉で大体一割程度の上昇というふうに聞いているわけでございます。

 そこで、ただいまの、今後の、どうなんだという見通しということでございます。なかなか、ここにつきましては、やはり全体としての小売店あるいは外食産業といったところがどういうふうな形で豪州産への切りかえを行っていくか、あるいは国産へ切りかえていくのか、あるいはまた、牛肉以外への品目のこのまた代替というふうなこともございまして、なかなか、率直なところ、私どもとして予断を持って申し上げるのは難しいわけでございます。ただ、いずれにしても、御案内のとおり、三割を占める米国産牛肉の輸入停止ということでございますので、その停止がどの程度継続するのか、御案内のとおりで、まだ今の段階では不透明な状況だということでございます。

 今後とも、私どもとしては、牛肉はもちろんのこと、豚肉、鶏肉、そういったものを含めまして、価格動向の調査、あるいはまた便乗値上げの防止といったようなこともしっかりと監視しながら、その価格動向を注視してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

白保委員 ぜひ、末端の業者の皆さん方が困らないように、きちっとした対策を講じていただきたい、こういうふうに思います。

 それから、同じようにBSEの関連で、昨日の新聞でも一部報道されておりましたが、食品安全委員会のBSE対策専門委員が試算した結果、全頭検査よりも特定危険部位の除去や再利用禁止の方が効果が大きい、こういうふうなことを試算している。確かに、一部の学者からは、ゼロリスクを目指す全頭検査実施より、本質的なリスク対策は特定部位、危険部位の除去だ、こんなふうなことを言われているというふうに読むわけでございますけれども、そのことについて、いかがですか、お聞きしたいと思います。

梅津政府参考人 昨日の新聞報道の件でございますけれども、食品安全委員会では、米国でBSEが発生して以降、二回にわたってプリオン専門調査会を開催しまして、収集された情報に基づいてアメリカのBSE発生に関する議論を行ってきたところでありますけれども、そのリスクについて具体的な評価とか取りまとめを行っているという状況にはございません。したがいまして、昨日の報道については、東京大学の吉川教授が国際シンポジウムの場で、我が国のBSE対策の効果について個人的に試算した結果に基づくものでございまして、プリオン調査会としての結論ではないということでございます。

 なお、委員御承知のように、一般論として申し上げれば、特定危険部位を除去することによる高いリスク低減効果というのは、国際的にも共通の認識になっているということでございます。

白保委員 ただ、そのことによって、報道が、対米交渉に影響が出るんじゃないかなどという予測記事を書かれたりなどするわけですね。大臣、しっかりしてもらわなきゃいけませんが、どうでしょうか。

亀井国務大臣 私どもは、かねがね申し上げておりますとおり、消費者の安全、安心の確保を第一義に考えまして、そして、屠畜場におきますBSEの全頭検査、特定危険部位の除去、このことを終始一貫米国に説明しておるわけでありまして、今回、専門委員の個人的な試算、こういうことのようでありまして、これらが対米交渉に影響を与えるということはない、このように考えております。

白保委員 ここ一、二年の私たち、この日本の中における食の安全、安心、そういったことに対する取り組みというものは非常に大きなものがあったわけでございますし、そういった面では、ぜひしっかりとした、毅然とした態度で今後も臨んでいただきたい、そのことを申し上げて、次に移ります。

 実は、農水省が昨年の十一月に実施をして今月四日に公表した食料自給率目標に関する調査結果、これを見ていますと、九割の消費者、農業者が将来の食料供給に不安を感じていることが明らかになっております。実際、家庭の冷蔵庫をあければ、国産の食材は圧倒的に少ない。

 また、ある調査では、学校給食のパンの原料小麦に国産だけを使う学校は一割、そして輸入小麦だけを使う学校は五割、国産と輸入のブレンドは四割と、実に九割の学校が輸入小麦を使っているというのが実態です。日本の小麦の自給率からいえば当然の姿かもしれませんが、当然とはいっても、食育の最前線にもあります学校現場で、国産農作物をもっと取り入れられるように努力をしていかなきゃならないんじゃないか、中長期的には世界の食料需給はもう逼迫するだろう、こういうふうに思いますので、ぜひこの辺のことも考えていかなきゃならない。

 世界人口の四分の一を占める隣国の中国も、穀物生産の自給体制がもう整ったと言われる九〇年代の後半には四億五千万トンあった生産量が、工業化のためにだんだんに減っています、年々減っています。既に四億トンを割っているというふうな実態であります。

 そういうわけで、国は、自給率を高めるための具体的なビジョンの問題、このことについては、しっかりとした形で、国民にそうした不安を与えないような形をとるべきじゃないかな、こう思います。

 実は、私は党内でFTAのプロジェクトチームを立ち上げて、みんなで勉強しておりますが、どうも政府内でも、農水省の言っている自給率の問題について、余り意思が一緒になっていないなというような感じを受けるようなことをおっしゃる方もおられますし、そういった面で、やはりこの食料自給率の問題についてはしっかりとしたビジョンを示すことが一番大事だと思いますが、いかがでしょうか。

金田副大臣 白保先生の御指摘でございます。いろいろと御指摘がございました。

 まず、国産物の学校給食への拡大ということでございます。

 週休二日になっておりまして、今五日学校に通っている中で、御飯食というのが二・九ぐらいとか二・八ぐらいのところまで、大分御飯食が進んできております。子供の時代からやはり国産のものを食べるという癖をつけることが、これからの将来にとって大切だというふうに思っております。

 また、食の教育、食育なんかも、先生方の御尽力でいろいろと取り組ませていただいております。それから、栄養教諭の制度が十六年度から新たにでき上がるというようなことで、小さい時分からの食生活の教育ということを学校現場でしっかりととっていくことが必要だというふうに思っております。

 また、自給率の問題が御指摘がありました。しっかりと自給率の向上、今、二十二年度、四五という数字を掲げさせていただいておりますけれども、いろいろな周囲の事情、食生活の変化、そういったことを踏まえて、できるだけ自給率の向上のために努めていきたいというふうに思っております。

 それから、FTAのことについて、農林水産省の考え方が何か統一されていないかのような御指摘がありましたけれども、そんなことはございませんで、何としても四百七十万ヘクタールの優良農地を確保して、それをフル回転させる中で、しっかりと日本の農山漁村を守っていくという基本姿勢に揺らぎはございませんので、御指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

白保委員 私の言い方が悪かったのかもしれませんが、農水省の中はきちっとしていますよ。政府部内で、ほかの省庁の方でそんなことを言う人たちもいますねという話を私はしたわけでございまして、農水省がしっかりしているということはわかります。考え方は一致しているんだろうと思います。

 さて、そんな関係で、やはりもう一つは、地産地消というのが、こういうふうに言われます。ホームページなんかを見ますと、地産地消、こういうのがきれいに出ておりまして、地産地消、一番安心、安全である、そして新鮮でおいしいよ、こういうようなことでホームページなんかも出ています。それで、イタリアなんかもスローフード運動、韓国においては身土不二などという、世界的にも既に地産地消的な、通じているような、そんな考えがずっと今広まっていっています。

 ただ、問題は、これがどれぐらい今皆さんの方で、国内で地産地消というのが進んでおるかという、この辺については掌握されたことはありますか。

白須政府参考人 今の委員の御指摘でございます。

 地産地消はどの程度進んでおるのかというふうなお尋ねでございますが、私ども、それぞれ地域地域でいろいろな取り組み事例を実は承知をいたしておりまして、それぞれの地域で、これはまさに全国、全県にもまたがっているわけでございます。

 そういった中で、今委員の御指摘のとおり、顔の見える関係、一番安全、安心だというふうなことで、恐縮でございますが、委員の御地元の沖縄県でも地産地消推進県民会議といったようなことも行われておりまして、大変にそういった意味ではもう全国を挙げて、まさに今そういった運動の広がりが起きておるのではないかというふうに承知をしている次第でございます。

白保委員 それと同時に、この支援策、支援をどういうふうにしていくか。明確な支援策を、一層進めていく支援策が必要なんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

白須政府参考人 支援策につきましては、私ども、それぞれ、ただいま申し上げましたような、いろいろな形での直接的な生産者と消費者の対話あるいは交流活動、そういったソフト経費もございますし、あるいはまた、具体的に、サポーターというふうなことで消費者の方々に会員としまして募集あるいは登録をさせていただきまして、そういう方々を通じまして地場の農産物に関するいろいろな情報の提供、実は、そういうことにつきましても、具体的に私どもの生産総合対策というふうな事業もございまして、生産総合対策の中で、消費者による農産物の地産地消推進運動といったようなことで、あるいはまたその産地の特色を生かした施設整備、あるいは高品質化、低コスト化といったようなそういう整備のための事業ということについても助成もさせていただいているわけでございまして、そういったことを通じて支援をしてまいっている次第でございます。

白保委員 だんだん時間がなくなってまいりますので、まとめて質問いたしますが、減農薬、無農薬などによってつくられた農作物の名称を特別栽培農産物に統一する新ガイドライン、これは周知期間を終えて本年四月から本格的に施行されます。消費者に対するPRがどうなっているかということが一つ。

 それから、このような農業に取り組む農家というのは非常に研究熱心な方が多いわけでありまして、有機農業に取り組む農家から、しかし、そうはいっても、この三年間、認証制度について農水省は監視を強めているだけであって、食の安全を実践する有機農家への視線はちょっと冷たいんじゃないか、こういう声も聞かれます。これが二つ目。

 そして、三つ目に、生産振興総合対策事業のメニューの一つとして有機・特別栽培農産物の供給体制の確立という取り組みをされているというわけでありますが、このような農家が一層増加するような明確な施策による支援はどうなっているのか。この三つをまとめて聞きたいと思います。

中川政府参考人 それでは、私の方からは、特別栽培農産物の新ガイドラインのPRの状況について、御説明申し上げたいというふうに思います。

 本年の四月一日から新しいガイドラインが施行することになっておりますけれども、新しいガイドラインの表示の事項ですとか表示方法について、何よりも、生産者、流通業者だけではなくて、実際にこの表示を見てお買いいただく消費者の方々によくわかっていただくということが大事でございます。そういうことから、昨年の七月以来でございますけれども、農政局あるいは各県の農政事務所を中心にいたしまして、新しいガイドラインの内容につきまして説明会を行いますとか、あるいは生産者の方と消費者の方々の相互理解を深めるためのシンポジウムを開催する、さらにまたこういった新しいガイドラインの内容についてパンフレットを作成いたしまして配布もいたしております。

 何よりも、よくこういった内容について周知徹底されることが大事でございますので、これからもまた引き続きそのPRに努めてまいりたいというふうに考えております。

白須政府参考人 ただいま委員の御指摘の二点目、三点目でございます。

 一つは、ただいまお話ございましたが、なかなか有機農産物、定義といいますか、条件も大変難しい条件もあるわけでございます。ただ、お話のとおり、消費者あるいは実需者、大変なニーズもあるわけでございます。しかしながら、なかなか病害虫、日本の、我が国の高温多湿といったようなことから、率直に申しますと技術的な困難もあるわけでございます。

 しかしながら、お話のとおり、やはり消費者ニーズに対応した生産あるいはまた環境との調和というふうなことで、私どもとしても、有機農業を初めといたしました環境保全を重視した農業振興ということはぜひとも推進していきたいというふうなことでございまして、ただいま委員から具体的な事業名もお話あったわけでございますが、そういった生産総合対策というふうな中で、有機栽培技術などの現地実証、あるいはまたそういう消費者との情報交換の場づくりといったようなことへの支援も行っております。

 あるいはまた、土づくりということにつきましては、もう御案内のとおり、排せつ物を活用しました堆肥による土づくり、あるいはまたこういうものを総合的にセットで、土づくりと化学農薬の低減といったものを一体的に取り組む農業者、これはエコファーマーというふうなことで私ども認証制度もしておりますが、そういったことに対します金融なり税制上の措置といったようなことも行っているところでございます。

 そういったことを通じまして、ただいま委員のお話ございました有機農業、そういったものを含む全体としての環境保全型農業といったことの推進に努めているところでございます。

白保委員 続いて、私もそういったことに遭遇したことがありますが、農作業の事故、これはこの間も発表になっておりますけれども、高齢者の、七十歳以上の方の農作業の事故が非常に多いんです。これが、今、日本の農業を支えている人というのは非常に高齢化しておりますし、そういった面でぜひ配慮していかなきゃならないことは、農機の改良や農場の整備だとか、あるいは農道の隅切り等そういった細かいことも全部含めて、農作業の事故がないような形のインフラをしっかりとしていかなきゃいけないと思いますが、安全対策、このことについて取り組みをお聞きしたいと思います。

白須政府参考人 農作業事故の点につきましての委員の御指摘でございます。

 お話のとおりで、近年、大体年間四百件程度の事故が農作業中に起きているわけでございます。そこで、実は、やはり六十五歳以上の高齢者の方の事故というものがそのうち七割を占めておるといったようなことでございまして、また、特に乗用型トラクターから例えば転落をされるあるいは転倒する、そういった機械作業中の死亡事故というものが全体の約七割を占めておるといったようなことになっておるわけでございます。

 これはやはり、何といいましても、高齢化によります体の機能の低下といったようなことが大きいのではないか、あるいはまた、全体としての安全知識が不足しておるのではないかというふうなこともございまして、私どもとしてもやはり、生産現場で農業者の方々を指導するしっかりとした統一的な指針、ガイドラインを策定いたしまして、これをもってそれぞれ、県なり市町村あるいは農協、普及センター、そういったところに普及浸透を図っているところでございます。

 具体的に申し上げますと、やはり何といっても、一番多いのがトラクターからの転落なり転倒でございますので、安全キャブあるいは安全フレーム、これをきっちりと装着していただく、またあわせてシートベルトの装着も当然ございます。あるいはまた、農業機械を出します、開発普及します場合に、農機具のそういったところがしっかり安全が守られておるかといったような型式の検査あるいは安全鑑定の実施、さらには、地域ぐるみでやはりそういう安全意識を啓発する農作業の事故ゼロの日の運動とか、そういったようなことを通じまして、委員の御指摘のとおり、そういう農作業中の事故が発生しないように、そういうことに努めてまいっている次第でございます。

白保委員 最後の質問になりますが、漁港整備の問題でございます。

 漁業の安全操業と漁船の保護とか、流通の効率化、地域活性化、そういったことも含めて漁港整備というのは非常に大事なことです。

 大変個別の例で恐縮でございますが、私ども沖縄の糸満漁港というのは、他府県からもいっぱい入ってくる、非常に古い、漁業先進地としての漁港でございますが、ただこれは、入ってくる人たちが港の構造をよく知らないものですから、座礁事故をよく起こしております。入港する際に事故をよく起こしております。こういった安全性の高い、安心した漁港の整備について喫緊の課題だと思いますが、今後の対策についてお聞きしたいと思います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 先生今御指摘になりました糸満漁港、沖縄県におきます拠点漁港、漁業根拠地と申しますか、県内の水産物の集出荷はもとより、マグロ漁場に出漁いたします他県船も多く利用されるということで、非常に重要な港であるという認識を我々も持っている次第でございます。

 このため、現在の漁港漁場整備計画、十四年度からスタートしております現在の長期計画に基づきましても、特定漁港漁場整備事業ということで、係留施設でございますとかあるいは用地等の整備、こういったことを鋭意進めさせていただいているところでございます。

 私どもは、そういった糸満漁港の重要性ということで、今後とも、漁業の動向でございますとか、地元の関係者の方々の御意向、こういったことを十分踏まえまして、また、事業の主体であります沖縄県当局の御意向等も十分尊重しながら、この着実な整備に向けまして最善の努力を払ってまいりたい、かように考えている次第でございます。

白保委員 終わります。

山田委員長代理 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 ことしは、国連が決めた国際コメ年であります。米が世界の半数の人々の主食であることを認識し、貧困及び栄養不良の解消における米の役割について一般認識を高める必要性をうたっていることは、大変注目すべきだと思います。

 FAOは九六年、世界食料サミットを開催、世界食料安全保障に関するローマ宣言を採択しています。二〇一五年までに世界の栄養不足人口を半減させることを宣言し、二〇〇二年六月の世界食料サミット五年後会合では、この目標達成には途上国の農業、農村開発に毎年二百四十億ドルの投資が必要だと宣言をしています。

 先進国でありながら、食料自給率が四割と最低レベルの日本が果たすべき役割は大きいのではないでしょうか。国際コメ年を単に一年限りのイベントとするのではなく、本格的に自給率向上へ向けてのスタートにするべきです。稲作を振興させ、ましてや、米自給率の一〇〇%を割ることは避けるべきと考えますが、見解を伺います。

亀井国務大臣 本年は国際コメ年、日本におきましても、木村先生に会長をお務めいただきまして、いろいろの催しをいたしておるわけでもございます。

 そういう中で、我が国の食料自給率、カロリーベースで四〇%というようなことであるわけであります。その中でも米につきましては、自給可能な唯一の品目であるわけでありまして、総供給熱量の四分の一を占めるわけでありまして、国民生活の重要な品目であるわけであります。食料自給率の向上を図るには、何といっても米の需要回復への取り組みが重要、このように考えております。

 本年、この国際コメ年、こういう年をフルに活用いたしまして、国民の皆さんが米を消費していただく、その努力をすることが大変重要なこと、このように考えております。

高橋委員 一〇〇%を割ることは避けるべきという質問には直接お答えをされていなかったと思います。それは、一〇〇%を割ることはやむを得ないというお考えなのか。これは後の方に関連しますので、後のお答えにあわせて答えてくださればいいかと思います。

 先ほど来お話があっている米改革の問題ですが、これまで全国一律だった転作助成金が廃止され、新たに産地づくり推進交付金が設けられ、その交付の要件として求められているのが地域水田農業ビジョンの策定であります。

 農水省が今月上旬に行った調査では、市町村段階における地域水田農業ビジョンづくりの進捗状況は、たたき台を作成し、農業者への説明を行い、ほぼ合意を得ているのは七%にとどまり、説明を行っている、あるいはたたき台までは作成したというところまで合わせると、それでも五九%であります。また、残り二%、五十三の市町村が取り組みを行っていないと聞いておりますが、この状況をどのように受けとめていますか。また、取り組めないでいる市町村の理由について伺います。

白須政府参考人 今の水田農業ビジョンの進捗状況というお尋ねでございます。

 委員から御指摘ありました、ちょっと一点あれなのは、農業者等への説明を行い、ほぼ合意を得ているのは七%、お話のとおりでございますが、農業者等への説明を行っている、あるいはビジョンのたたき台または案を作成しておりますのは、合わせますと七五%でございまして、ほぼ合意を得ているのと合わせますと八割、八二%の市町村が一応そういった意味でビジョンのたたき台、案を作成しておるといったようなことで、それなりに進捗をしつつあるのではないかというふうに考えておる次第でございます。

 そこで、まだ行っておらないのが確かにお話しのとおり若干、取り組みを全く行っておりませんのは、私どもがアンケートをとりました全体の市町村の中の二%ということでございます。これは取り組みが全く行われておらないということでございまして、そういったところはやはりなかなか、地域における、これは話し合いを行うというところにも一つの大変大きな意味があるわけでございまして、委員のお話しのとおり、これまでの全国一律の要件、単価による米の生産調整の助成体系から転換して、地域におけるそれぞれ自由な発想と戦略に基づいて策定される産地づくりということでございますので、やはりその地域の関係者が一体となって議論をしていただくというところが一番大事なのではないか。

 そういう中で、作物戦略なり、水田の利活用、担い手の育成といったようなところをみんなでしっかりと議論していただく、それによってビジョンをつくっていただく。そういう議論をしていただくというところが一番重要なところではないかというふうに考えている次第でございます。

    〔山田委員長代理退席、委員長着席〕

高橋委員 それなりにではちょっと済まない問題だと思うんですね。二月のもう末の段階で合意が得られていない。議論は大いに結構と、それはいいですけれども、ビジョンができなければ交付金は得られない、それあっての、ビジョンあっての交付金だということは農水省も説明会で言っているわけですから、それで無理やり、無理やりと言えば失礼ですが、四月から施行を始めるんですか。

白須政府参考人 いずれにいたしましても、お話しのとおり、やはりビジョンを作成しなければ交付金はもちろん交付されないということなんでございますが、そこは、今申し上げましたように、八割のところは大体案もできてあれでございまして、二%のところが全くまだ手がついておらないということでございます。

 私どもも省を挙げまして、大臣からも御指示をいただきまして、それぞれ各局長が地方農政局の現場にまで行きまして、それでまさに農業者の皆さん方とも、それぞれ座談会なり研修会なり、そういったような場も開いておりますし、そういったことを通じまして、しっかりと、とにかく省を挙げて、このビジョンの作成につきましては地域の創意を盛り上げていきたいというふうに考えている次第でございます。

高橋委員 では、具体的に伺いますので、簡潔にお答えをお願いいたします。

 先日、集落営農を基本とした水田農業ビジョンづくりが全国的に見ても進んでいる岩手県の花巻市に行ってまいりました。一市三町で広域ビジョンを設定するとしておりますが、花巻市だけで六十八の集落、管内では百五十五の集落があり、一千人の担い手をリストアップしております。交付金の使途や水準は地域の創意工夫で決める仕組みになっておりますが、ここでは十アール当たりのポイント制を導入し、一ポイントは千円以内、団地加算や担い手加算、転作作物の種類に応じて最高四十ポイントまで加算される仕組みであります。幾つかの集落や、つまり農家組合ですね、ビジョンそのものも拝見いたしました。

 そこで伺いますが、一つは、担い手を明確するに当たっては、必ずしも認定農業者ではなくても、地域の合意に基づけば担い手として位置づけができると農水省は説明しておりますが、この集落は、では、みんなが担い手になりたいという、それは認めることがあり得るのか。

 二つは、専業農家が少ないところでは、必然的に担い手を専業農家に頼らざるを得なくなります。花巻市で水稲五ヘクタール、飼料作物九町歩などをやっている認定農業者の方に実際伺いましたが、この方の農家組合は、専業農家が自分を入れて二戸しかない、兼業農家は四十戸、必然的にあなたが担い手よと言われることになるだろうけれども、とてもしょい込むのは大変だ、自分は一人でもやっていきたいと言っているんです、集落営農には入らないと。つまり、やれる人は自分でもやれる。

 そうすると、結局は零細な農家あるいは兼業農家が脱落していかざるを得ないのではないか、こういうふうに考えますが、伺います。

川村政府参考人 水田農業ビジョンにおきます担い手の位置づけの問題でございます。

 まさに今回のビジョンのキーポイントとなりますのが、この担い手の明確化でございます。そのためにも、地域で十分御議論をいただきまして、将来その地域を担うべき者、これは現時点での認定農業者に限らないわけでございますが、将来とも農業で生計を立てていくといったような方に担い手としてなっていただくというのが一番望ましいわけでございます。また、地域によってはいろいろな状況がございますので、集落型経営体といったものも、これまでの水田農業で行われている土地利用、水利用、そういうものも踏まえまして、担い手として位置づけ得るということの道を開いたところでございます。

 先生がお尋ねのように、それぞれ、小さな方が、小規模の方がすべてというようなことは、そういった考え方からしますと、現実的にはなかなか難しいというふうに思います。ぜひ、さらに話し合いをしていただいて、将来方向というものをしっかり出していただきたいと思います。

 また、専業農家が数少ないというような事例、そういうのは確かにあると思いますが、まさに今回の水田ビジョンの意図が、これまで自然体でいたのではなかなか進まなかった規模拡大等も、あるいは農地の集団化等も、これを契機にやっていただきたいということでございますので、やはり粘り強い努力をお願いしたい、こういうふうに思います。

高橋委員 粘り強い努力でどこを目指すかという問題ですね。

 交付金をもらうためには、とりあえず担い手を決める、五年後には法人化を目指す、ビジョンには描くことになるかもしれません。しかし、では計画どおりにいかない場合、交付金の返還などが求められる可能性があるのか、この心配についてお答えをお願いします。

 もう一つ、農業者年金とのかかわりなんですが、経営移譲年金、後継者に農地の権利を移譲して農業経営を廃止した場合受け取れる年金でありますが、当該農地を集積の対象とした場合、経営移譲年金の受給資格を失うことになるのでは困ると声が上がっておりますが、どのようになるでしょうか、伺います。

白須政府参考人 委員のお尋ねの、前段の交付金の関係を私の方からお答えをさせていただきます。

 ビジョンが実現できないと交付金を返還しないといけないのかというふうなお問い合わせでございます。この交付金はビジョンの実現を支援する手段でございまして、万が一このビジョンが実現できなかったからといって、直ちにこの交付金を返還していただくものではないというふうに考えておりますが、いずれにしても、まずはこのビジョンの実現に向けまして、地域で全力で取り組んでいただきたいというふうに考えております。

 また、このビジョンの実践状況につきましては、地域で毎年点検することというふうにいたしておりまして、やはりこの交付金が有効に使われる、生きた交付金として使われるようになりますように、交付金の使い道につきましても、状況に応じて見直しが行われるように指導してまいりたいというふうに考えております。

川村政府参考人 農業者年金の関係でのお尋ねがございました。

 農業者年金制度は、御案内のとおり、平成十三年に大幅な改正をしておりまして、現在はかなり仕組みが変わっておりますが、御指摘の事案は、平成十三年改正前の、既に受給をされた方のお話だと思います。

 この農業者年金制度は、農業経営の若返りとそれから農家の規模拡大、細分化防止ということを目的としておりまして、経営に供した農地を他の農業者に移譲することを要件として経営移譲年金を支給する。ただ、農業経営を再開した場合、あるいはその移譲した農地がまた返還されたといったような場合には、経営移譲年金を支給停止とするという仕組みとなっておりました。

 先生から御指摘ございましたとおり、この支給停止が農地の流動化の妨げになっているのではないかという御意見もありましたので、これらの御意見も踏まえまして、現在は、一たん経営移譲した農地が返還された場合にも、改めて、再度若い専業的農家等に権利設定をする場合には支給停止とならないように措置したところでございます。

高橋委員 今の年金の関係については、関係者の皆さんが非常に心配をされているところでありますので、周知徹底をお願いしたいと思います。

 非常に印象に残ったのは、担い手といっても必ずしも若い方ではなく、高齢者がやむなく担い手となって、五年先、十年先、後継者がいるんだろうか、そういう不安の声が聞かれておりました。法人化を目指すとうたったものの、経理の一元化など課題は多く、赤字経営になった場合だれが責任を持つのか、そういう不安材料も出されました。

 農水省としては、農地の集積を進め、担い手経営安定対策の要件を満たす、そういう一握りの農業者あるいは法人化への支援に集約をしようと目指しているとは思いますが、これが本当にあるべき農業の姿と言えるのかな、いま一度立ちどまり、見直しをするべきではないかなと思われますが、大臣の見解を伺います。

亀井国務大臣 先ほども局長から答弁しておりましたが、私ども、省の幹部も現地に赴きまして、そしていろいろ説明をし、十分御理解いただき、また農業者あるいは地方団体、JA等々、十分お話し合いをしていただき、ビジョンづくりに努力をしていただきたい。また、そういう面での理解が足らないというようなところも多々あるようにも思っておりますので、さらにその辺の周知徹底を進めて、ぜひこのビジョンづくりの目的が達成できるようなものにしてまいりたい、こう思っております。

高橋委員 この問題については、今後も引き続いて、進みぐあいだとか問題点などがいろいろ出てくると思いますので、またそのときにお願いしたいと思います。

 次に、ミニマムアクセスの問題で伺いたいと思うんですが、これまでも先輩議員が議論してきたところでありますが、国は、関税化特例措置に伴う加重されたミニマムアクセス機会について、輸入義務であるとして、一〇〇%これまでは輸入してきました。九九年四月一日に通常の関税措置に切りかえた後も、着実に実施をしてきたところであります。

 平成五年十二月十七日の閣議了解では、「米のミニマム・アクセス導入に伴う転作の強化は行わないこととし、引き続き、安定的な国内生産が可能となり、国民への安定供給を確保できるよう、」と言っておるわけですが、それにあわせて、ミニマムアクセス米の存在そのものが、生産、需給、価格面で影響しないはずがないと、意見も示されております。まさにそういう事態になっているのではないかと思っております。

 ミニマムアクセスはあくまで機会であって義務ではないということを、もう一度確認をしたいと思います。

亀井国務大臣 ミニマムアクセスは、ウルグアイ・ラウンド交渉の全体のパッケージの一つとして、従来輸入がほとんどなかった品目について最小限の市場参入機会を与える観点から、全加盟国の合意のもとに導入されたものでありまして、我が国が負う法的義務の内容は、米の国内消費量の一定割合の数量について輸入機会を提供するということであります。

 他方、平成六年五月二十七日の衆議院予算委員会において示された政府統一見解によれば、我が国は、米を国家貿易として国みずからが輸入を行う立場にあることから、ミニマムアクセスについては、輸入機会を提供すれば、通常の場合は、当該数量の輸入を行うべきものと考えている、こういうことであります。

高橋委員 ですから、今政府見解のお話をされましたけれども、あくまでも政府見解であって、協定上の義務ではない、国際ルールではないということになると思いますが、もう一度それは確認したいと思います。次の質問とあわせてお答えをお願いします。

 皆さんにお配りした資料をちょっと見ていただきたいと思うんですが、これまでも国は国家貿易だからということでお話をしてきたわけですよね。この資料は農水省の方からいただきました。「WTO加盟国のうち国家貿易で食料輸入を行っている国名と輸入品目及びそのアクセス数量と実際の輸入量」ということで、例えば韓国農林部のところ、「コメ」を見ていただくとおわかりのように、アクセス数量二十万五千二百二十八トンに比べて実際の輸入量は八万五千五百十二トン、四割くらいですよね。では、下の方の、後者の方の「大豆」はどうか。これは三十二万三千九百五十八トン、三一・三%であります。「馬鈴薯」、下の方を見てください、二万七百八トンに対して四千八百六十九トン。「オレンジ」などもそうであります。

 あと、めくっていただきますと、バルバドスというところでは「実績は未通報」、約束数量は示されているけれども未通報というふうなところもあるわけですよね。

 そうすると、国貿として取り組んでいる国であっても、数量に対して達成しているところはないように思われます。そういう意味では、国貿だから輸入する、義務であるなどというルールはないというふうに思いますが、もう一度確認します。

亀井国務大臣 ミニマムアクセスの機会の提供を行った品目については、国家貿易企業以外に輸入する者が存在しない場合には、一般に国が総輸入量を決定し得る唯一の者であるわけであります。したがって、このような場合には、国は通常の場合の当該数量の輸入を行うべきものと考えております。

 それから、今韓国の例をお示しがございましたが、この数字、米につきましては八万五千ですか、これはいわゆる九五年から〇四年までの数字が五万一千三百七から二十万五千二百二十八、こういうアクセス数量ということで、これは九七年はその中間というようなことで八万五千、その数字を輸入されておるのではなかろうか、このように思います。

 それぞれ大豆、バレイショ等につきましては数字が満たしていないところがあるようでありますけれども、それはどういう状況下にあったのか、その辺は、いろいろ相手先、輸出国の凶作の問題等があれば、また輸出余力がないというような、客観的に輸入が困難な状況というようなこともあるのか。その辺、すべて私も承知をしておるわけではないわけでありますが、やはり、まさに国が総輸入量を決定し得る唯一の国家貿易、こういうことであるわけでありますので、当該数量の輸入を行うべきという考え方であるわけであります。

高橋委員 さまざまな事情があるだろうけれども承知していないという部分があるのであれば、きちんと調べて、日本だけがなぜ一〇〇%約束数量を達成する必要があるのか、ではミニマムアクセス米の需要が国内にあるのかということを見たら、全然それは違うのではないか、義務ではなかったらそれはやめるという選択肢もあると思うんですね。いつまでもそれは承知していないという話ではないんですよ。だって、平成十一年の三月の委員会でも中林委員が、この前の資料で同じ問題を、アクセス量、ちゃんとやっているところないよという話もしております。

 ですから、わからないなと思ったら調べて、何で日本だけが受け入れるのかなという立場に立つべきじゃないんですか、もう一度。

亀井国務大臣 それと同時に、一般論で申し上げれば、国家貿易企業の独占輸入ではない、民間企業によって輸入が行われている場合も多いわけでありますが、このような場合には、国が総輸入量を決定し得るわけではないわけでありますので、必ずしもミニマムアクセス数量を満たす輸入を行っておらないわけでありまして、アクセス機会の提供にとどまる場合もあり得る、このようにも考えられます。

高橋委員 全然お答えになっていないと思うんですね。全部が民間なわけでもありませんし、さまざまあるわけですから、やはりそこをしっかりと承知をして問題点を言っていただかないと答えにならないと思うんです。

 続けて言いますけれども、アクセス数量については一〇〇%守りながら、一方では国内助成についてはどうか、そう考えた場合、助成合計額、AMSの六年間で二〇%削減という約束がありますよね。日本がWTOに通報した九八年度のAMSは七千六百五十五億円となっております。この基準期間に対する約束水準でいくと、二〇〇〇年度は三兆九千七百二十九億円となりますが、実際には九六年で三三%も削減し、九八年度にはもう二〇〇〇年度の水準も超えて、八割以上も削減しているんです。米に至っては、九八年度からゼロであります。

 つまり、輸入の方は国貿だからと約束どおり入れる、一方では、国内助成は約束よりも何倍も早く削減していく、こういう食料政策はあるだろうか。もう一遍、もし見解があったら伺います。

須賀田政府参考人 AMSといいますのは、削減すべき補助金で計算するわけでございます。米に関する私どもの補助は、生産調整関係が、WTO協定上は緑の政策、それから米の関係が青の政策で生産調整をやっております。そういうことで、AMSに入らない助成体系に変えたということでそういう数字になっておるということでございまして、必要なものは支援するという姿勢には変わりないわけでございます。

高橋委員 ですから、そういう対象にならないような制度にしてきた、国が関与をする仕組みを欠いてきた、そのことに問題があると私は思っておりますので、そこはもう指摘にとどめて、改めて、輸入規制と価格補償、所得補償を中心にした農政に切りかえることを強く求めていきたいと思っております。

 先ほどのアクセス数量の問題は、改めて調べていただいて、伺う機会を持ちたいと思います。

 残された時間で鳥インフルエンザの問題について伺いたいんですが、大分県に行ってまいりました。大変な混乱でありました。また、憤りもありました。全く事情がわからず、ニュースを見て、自分は三十キロ圏内に入っているんだと自覚をして出荷を自粛している、そういう農家の皆さんがおりました。中には鳥を独断で処分してしまったとか、処分したらいいんだろうかという声すら聞こえて、大変な状態であったと思います。そういう声をお伝えしながら、具体的な問題で伺います。

 まず、補償の問題でありますが、今月二十三日の家きん疾病小委員会において、搬出制限区域を縮小する、これはマニュアルに基づいて五キロということが、可能性を探っているというお話がありました。地元の強い要望でもあります。

 ただ、縮小されて制限から外れた、それはよかったけれども、補償も外れるというのでは困ります。きのう発表しています。大分県では一億二百万円、三十キロ圏内の補償を県として決めております。したがって、三十キロ圏内は対象にするということを確認したいと思います。

 また、この地域は採卵鶏だけでなくてブロイラーも多く存在しておりますので、ブロイラーに対する損失補償、これも考えを伺いたいと思います。

 それから、大分は山口と比べて小規模な養鶏農家が大変多いと思います。九重町は統計上は養鶏農家はいないんです、小規模なために。実際は、町が調べたところ、三百六十四戸、五千四百七十六羽もありました。このように、周辺のところも含めて心配されているのは、零細な業者が支援の対象から外れるのではないかということでありますので、心配ないよと言っていただきたい。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の大分県の事例でございますけれども、まず何より、今回、移動制限の区域に入っている農家の方々の実際の状況を把握することが大事だというふうに思っております。今後の防疫対応の進捗状況も見ながら、必要な措置につきまして改めて検討させていただきたいというふうに思います。

高橋委員 あわせて、通常でいくと二十八日間が移動制限解除になるわけだけれども、例えばひなの導入を契約していた農家が、移動制限のために狂いが生じて、結局、一月解除した分が例えば二月分の計画に狂いが生じる。そういう制限の期間を超えての被害の問題。

 それから、えさ代が非常に高いんですね。十一万羽飼っているというところで一日トン八万円もかかる、そういう実態もあって、えさ代への補助も当然考えなければならないと思うんですが、この点について伺います。

中川政府参考人 まず、移動制限区域あるいは搬出制限区域内の具体的な農家の方々の影響というものをまず調べませんと、具体的な対応について議論はできません。そこの点は御了解いただきたいというふうに思います。私どもは、まずは、現時点におきましては、実態を把握するということに精力を注いでまいりたいというふうに思います。

高橋委員 では、実態に合わせてしっかりと補償してくださいますようよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

高木委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本でございます。

 最後ですので、かなりダブる部分もありますけれども、確認の意味も含めて質問させていただきます。

 まず最初に、鳥インフルエンザについてでございますけれども、感染ルートの解明それから防疫体制の確立ということについてお伺いをいたします。

 山口県において終息宣言が出されました。関係者の皆さんの御努力に敬意を表したいというふうに思います。しかしながら、大分での発生ということで、感染ルートが解明されていない中で対策は大変難しいというふうに思いますけれども、疾病予防と食の安心、安全のために、感染ルートの解明それから防疫体制の確立ということは、大変重要な課題であると思います。

 この鳥インフルエンザ、渡り鳥が原因としますと、全国どこでも発生する可能性があるわけでございます。山口、大分の例からも、初動態勢の確立あるいは迅速な対応ということが大変大事になるわけでございますが、養鶏業者だけでなくて、ペット業者あるいは一般のペットを飼っている方々に対する啓蒙作業ということも大変重要になると思います。

 三重県の神社ではインフルエンザにかかっていない鳥を焼却処分するとか、あるいは、一般の人が自分が飼っているものを心配だからといって放してしまう、そうした過剰反応が起きています。もちろん、診療所の獣医さんも大変忙しくなっているわけでございます。そうしたインフルエンザの監視体制、防疫体制、過剰反応防止、動物愛護という観点で大変大きな課題があるわけですが、そうした対策について、政府の対応をお伺いしたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、何よりも、関係者の方々にきちっとした情報提供をしながら、万一発生をした場合にあっては、初動態勢をきちっととっていただくということが何よりも大事だというふうに思っております。

 そういう意味で、これまでも、鳥インフルエンザにつきましては、防疫マニュアルというものを各県にもお配りしてございますし、周知徹底を図ってきたところでございます。そういったマニュアルに沿いまして、現場での対応をきちっとお願いするということに尽きるかというふうに思っております。

山本(喜)委員 マニュアルに沿ってということでありますけれども、例えば家畜防疫対策要綱、これによりますと、集団発生などにより多数の死体が生じる場合を想定して、速やかに措置が講じられるよう、あらかじめ死体などの処理要領、処理する場所の選定などを定めておく必要があるというふうにされていますけれども、今回の山口のケースではたまたま隣が町有地で助かったというふうなこともあるわけです。

 九月にマニュアルを作成して、十二月に韓国で発生したことを受けて、症例を含めて全国に注意を呼びかけたというふうにされていますが、山口のケースは、七十五年ぶりということもありますが、鳥インフルエンザと判明するまで二週間かかりました。それから、大分の例でも、ウイルスの型を特定するのに必要なアヒルも一緒に処分してしまったというふうな経過があるわけです。ですから、地方で対応にそごを来さないように、マニュアルの徹底、指導、点検、把握というのが、今の状況を見ると徹底していないんじゃないというふうに思うんですが、この点、いかがですか。

中川政府参考人 まず、鳥インフルエンザに限りませんで、平成十三年の九月に、家畜防疫を総合的に推進するための指針というものを出してございます。これによりまして、国としましては、主要な伝染性の疾病の防疫指針を策定するということで、これはその後、逐次、口蹄疫ですとかBSEですとか、今回のような鳥インフルエンザ等、既に七つの疾病につきまして防疫マニュアルを作成し、各都道府県に周知徹底を図っているということでございます。

 さらに、この十三年九月の指針によりまして、各都道府県におきましては、必要に応じて、国の定める要領を基本として、さらに地域の実情を踏まえた県の防疫要領を策定するというふうなことになってございます。

 各都道府県におきましては、先ほど申し上げました国が定めたマニュアルを基本としながら、都道府県で独自のマニュアルをつくっていただいている、そういう県もございます。これは、県によって多少ばらつきがあるかというふうに思いますけれども、それぞれのところで、先ほど先生がおっしゃいました、具体的な、多数の死体あるいは汚染物質が生じた場合を想定して処理体制の整備に努める、こういうことも現にこの指針に書かれているところでございますので、さらに周知徹底も図ってまいりたいというふうに思っております。

山本(喜)委員 都道府県が防疫の主体を担うということでございますけれども、三十キロ圏内というと、今回のように、大分だけでなくて熊本も入るわけですね。ですから、各県ごとということではなくて、やはり県を越えた国の指導というのが大変重要になっているわけです。

 そうした国の援助、あるいは、新聞によりますと、緩和していく、二十八日をだんだん緩和していくとか移動制限距離を緩和していくというようなことも出ていますけれども、これはどうした経過でこうなっているのか。

金田副大臣 家きん小委員会におきまして、今回、三十キロ制限という形で移動制限措置を講じさせていただいておりますけれども、今回の規模が極めて小さいというようなこともありまして、三十キロというと、他府県にわたるような相当大きな移動制限ということに相なりますので、専門家にお諮りしましたところ、この移動制限というのは、第一次清浄化検査をやって、移動制限から搬出制限区域に切りかえる、そして、それを半径三十キロから五キロ程度でいいというような御検討もいただきましたので、そのような対応をして、この問題の影響をなるべく小さくしてまいりたいというふうに検討しているところでございます。

 また、隣の県との、県と県との協力関係が本当に必要でございますので、そういったことについては、マニュアルに従いまして両県が連携を密にして対策を講じていかなければならないと思っているところでございます。

山本(喜)委員 対策をきちっととっていただきたいということでございますが、今回のインフルエンザの被害に遭われた業者に対する補償についてでございますけれども、今回は、山口の場合、県も含めて大変な御努力をいただいたわけですが、これから、渡り鳥説によるとかなりのところで発生する可能性もあるわけでございますが、補償がきちんとされていないということになると、被害を隠すという事例もこれは出てくるのではないかと思います。ですから、感染を防止、広げないという意味からも補償をきちっとしていくということが大事になっていると思うんですが、これについてはどうでしょうか。

中川政府参考人 今回の鳥インフルエンザに関連をいたします農家の方へのいろいろな対策ということでございますけれども、移動制限等に伴います農家の方々の損失につきましては、基本的な考え方としまして、実際に殺処分などをする発生農家と違いまして、移動制限にしろ、あるいは搬出制限にしろ、一時的な制限でございます。飼っておられる農家の鶏などの廃棄や処分を求めるわけではございませんので、いわゆる法律に基づきます手当金といった制度はございません。

 ただ、この移動制限区域内の農家に対します支援措置としましては、実際の損失の内容あるいは規模といったものが、そのときそのときでやはり相当違ってくるだろうということで、あらかじめ何か制度として決めておくということではなくて、問題が生じたその都度、必要に応じて対策を打っていくということが基本的な考え方でございます。

 今回の第二例目の例につきましても、先ほど申し上げましたが、今日、今ただいまの時点におきましては、そういった農家の方々の被害状況等の把握をこれからしていく、まだ現在、発生から間もないということもありまして状況をよくわかっておりませんので、まずはそういった実態把握に努めてまいりたいというふうに思います。そういった上で具体的な必要な対策を措置してまいりたいというふうに思います。

山本(喜)委員 今の局長のお話によりますと、やはり補償を前提に考えているということで確認していいですか。

中川政府参考人 そこを予断を持って申し上げているわけではございません。実態、今回の場合は、一例目と違いまして、移動制限あるいは搬出制限につきまして前回よりも発生の規模が非常に最初のところは小さかったということで、新たな対応をしているわけでございます。そういったことも踏まえて、実際、現実、どういう被害が出ているのか出ていないのかということをきちっと把握することがまず議論の大前提になるということでございます。

山本(喜)委員 もう一つ、風評被害についてであります。

 インターネット調査会社のアンケートによりますと、成人女性の七割が産地を気にして鶏肉を購入しているというふうなアンケート結果が出ているようでございます。卵とか鶏肉を食っても、これはインフルエンザとは関係ないわけですから、そうした点についての風評被害を防止するという対策が必要ではないかというふうに思います。

 また、今回のインフルエンザ、国内では大きな、人が感染というふうなことは起きていませんけれども、ベトナム、タイ等での、塩基配列が違うかもしれませんが、H5N1型というふうに言われております。トラとか猫も死んでいるというふうなタイの報告。ですから、豚の監視も今しているようでございますが、人、動物への感染防止という観点、あるいは、防除している作業にかかわった作業員に対する防除体制といいますか、そういった点についてお伺いします。

田中(慶)政府参考人 高病原性鳥インフルエンザと人インフルエンザに同時に感染しますと、感染者の体内において人から人への強い感染力を有します新型インフルエンザに変異するおそれがございますので、健康被害の防止に向けた取り組みが非常に重要であるというふうに考えております。

 厚生労働省では、発生状況等に関します情報収集、流行が確認されている地域への渡航者に対する注意喚起などを行いますとともに、鶏の処分に従事する者に対するインフルエンザワクチンの接種、それから感染防御対策、さらには健康監視、これを徹底することとしております。また、高病原性鳥インフルエンザにかかった疑いのある者を診察した医療機関から直ちに報告を求めまして、当該患者に速やかに抗インフルエンザウイルス薬を投与する等の体制を確保すること、このようなことを自治体にも指導しているところでございます。

 さらに、今御指摘の、新型インフルエンザの発生を監視するために、平成十一年度から豚の血清を用いまして鳥インフルエンザウイルスに対する抗体調査を実施してきたところでございまして、これまでの調査では、調査対象としたすべての豚について陰性であるということが確認されているところでございます。

 今後とも、関係機関と密接な連携を図りながら、人への感染防止対策に全力で取り組んでまいりたいと思っております。

山本(喜)委員 次に、BSE対策についてお伺いをします。

 一つは、ピッシングということについてですけれども、牛の解体作業のときに牛が暴れて職員がけがをしないように、失神させた牛の脳にワイヤーのような器具を差し込む措置をいうわけでございますけれども、これによって脳や脊髄が漏れて肉を汚染する可能性が指摘されているわけでございます。このピッシングによる汚染の危険性をどの程度に把握しておられるのか、お伺いします。

遠藤政府参考人 御質問のピッシングによる食肉の汚染のリスクでございますけれども、屠殺された牛の中枢神経組織が一つは器具に付着するということ、それから漏れ出て表皮などを汚染するなどの可能性があるというふうに承知をしております。

 施設数で申し上げますと……(山本(喜)委員「施設数だけじゃなく感染割合ですね、感染する可能性、危険性」と呼ぶ)可能性は、今のように、漏れ出たものが他の部位に、食肉などに付着するかどうかというふうな可能性ということでございまして、現実にどの程度かというふうなことを調べるというのは難しいわけでございまして、施設数では、現在、百六十二施設中の百十四施設でいまだにピッシングが実施をされているというふうな状況になっております。なお、このうち五施設では近々中止を予定しているという報告でございます。

 このような特定部位による汚染リスクを防止するという観点から、既に、平成十三年十月十八日の全頭検査開始時に、全国の屠畜場に対しましてピッシングを中止するよう指導をしてまいりました。しかしながら、作業員の安全の観点からピッシングを中止できない場合には、処理の過程で脳などの組織が付着した表皮などを特定部位と同様に除去、保管をし、屠畜検査員が確認の上焼却をするようにというふうなことで、ピッシングによる中枢神経組織による他の部位の汚染といったものを防ぐという、防止を図っているというふうなことでございます。

山本(喜)委員 ですから、リスクが高いということだと思いますけれども、実際その中止を求めているということですから。これを今後どういうふうにしていくのか。このまま、ただ任せておくのか、農水省として規制を加えていく方向にあるのかどうか、お伺いいたします。――済みません、厚労省。

遠藤政府参考人 先ほど申し上げましたように、牛の屠殺時に牛の足の反射運動によって従事者が負傷することがあるというふうなことでピッシングが行われているところがあるということで、これまでに、全頭検査を始めるときに、中止をするようにというふうなことを指導したわけでございますが、なかなか中止できないところが多いわけでございますけれども、少しずつ減ってきてはいる状況であるということでございます。

 なお、今後、現在ピッシングが中止できない屠畜場につきまして、なぜその中止ができないかというふうな阻害要因を調査するというふうなことによって、ピッシングの中止を促進していきたいというふうに考えております。

山本(喜)委員 次に、国内の全頭検査の費用負担、国と地方の費用負担の割合がどうなっているのか。今、検査キットは国で負担していただいているようでございますけれども、それ以外にも、地方からは消耗品について国の負担でやってほしいというふうな要望が来ていると思いますが、そうした点についてお伺いします。

遠藤政府参考人 屠畜検査全般につきましては自治事務とされておりますことから、原則として検査手数料によってその費用を賄うということになっております。

 BSE検査に関しましては、特例として、全頭検査に必要な検査キットの部分につきまして十分の十の補助率で費用を国が負担をしているということでございまして、また、BSE検査に必要な検査機器の整備について三分の一の補助を行っております。逆に言えば、三分の二が都道府県の負担になっているというふうな状況にございます。

山本(喜)委員 それから、二十四カ月齢以上の死亡牛の処理費用ですけれども、全頭検査が行われるようになってから、国、自治体の助成はありますけれども、保冷施設までの運搬費、あるいは保冷施設から化製処理場までの運搬費、そして化製処理費というように、農家の負担は着実に増大しているわけです。

 安心、安全な食の提供ということは国の政策でありますから、安心、安全が農家の負担によって実現していくというのはやはり問題があると思いますので、この二十四カ月齢以上の牛の処理あるいはBSEの負担も含めて、国の負担割合をふやしていただきたいというのが農家の要望でございますが、これについてお伺いします。

金田副大臣 二十四カ月齢以上の死亡牛については全頭についてその死亡牛を検査するという法律の建前になっておりまして、今現在実行しておりますが、一部都道府県おくれておりましたが、ことしの四月から全都道府県で実施できる体制が整うということになります。

 それから、牛の死亡牛の輸送だとか処理だとか検査に費用がかかるわけでありますけれども、生産者負担の軽減が図られますように、輸送とか検査については定額補助、処理につきましては二分の一の補助をさせていただいております。

 従来から、この死亡牛につきましては、生産者、排出者が、俗に言う葬儀代と称して、七千円から一万円ぐらいの負担が死亡した場合についてかかっているわけでございまして、そういった軽減が図られるようにこのような補助で措置させていただいているところでございます。

山本(喜)委員 輸送費は全額の補助ですか。

金田副大臣 輸送費については定額補助ということで、一頭につき四千円の補助、定額の補助をさせていただいております。

山本(喜)委員 定額ですと、地理的に非常にその不利益をこうむるところがあるわけですよ。処理場まで遠いところは、定額ですとどうしても負担が大きいわけですよ。そういう意味で、定額でなく、もっとその距離のことも勘案した補助というものを考えていただきたいんですが。

金田副大臣 輸送は酪農家がどこにおるかということで大分違ってまいります。相当何百キロも運ぶような地帯もあります。そういったこともありますので、個々で上限を定めさせて、その四千円の定額補助ということにさせていただいているところでございます。

山本(喜)委員 時間がないんですけれども、もう一つ、先ほど公明党の委員の方から質問がありましたけれども、昨日の新聞の記事であります。プリオン専門委員会の座長さんのことですけれども、これは個人的なものだというふうに言われますが、座長さんの会見ですから極めて影響が大きいわけでございます。これを見て、いや、いよいよアメリカから入れる準備に入ったのかなというふうにも受けとめたりもするわけでございますよ。この点、もう一度確認したいんですが。

梅津政府参考人 今御指摘のとおり、今般の報道は、二月二十一日に開催されました国際シンポジウム、動物プリオン病の診断と疫学というシンポジウムの中で、東京大学の吉川教授が、個人的に試算し、それを講演されたものでございまして、これはプリオン専門調査会の結論ではございません。

 安全委員会では、BSE発生以降二回にわたってプリオン調査会でBSEについて議論を行ってきておりますけれども、そのリスクについて具体的な評価や取りまとめは行っておりません。

 一般論としては、特定危険部位を除去することによる高いリスク低減効果というものは国際的にも共通の認識となっているところでございます。

山本(喜)委員 まとめはしていないということですけれども、計算式とかこういったものは安全委員会で統一しているのか、あるいは、この式自体確認した上での吉川座長の研究なのか、そういったのはどうなっているんですか。

梅津政府参考人 吉川先生はかねてから、二〇〇一年の秋の我が国の初発例の発生以来、定量的な手法でBSEあるいはvCJDのリスクを計算されておられます。今般も、この国際シンポジウムの中で、これまでの先生の御知見を活用されて、あくまでも吉川教授個人の私見のもとで一定の前提を置いて試算されたもの、そのように理解しております。

山本(喜)委員 としますと、今後、これに基づいて安全委員会の中で議論していくということに、この新聞に出された結論で、安全委員会で討議されていくということではないんですか。

梅津政府参考人 プリオン調査会においてどのような議論が行われるかは、座長及び各専門委員の専門的知見に基づくわけでございまして、どのようなデータや知見が収集できるか、あるいは、それらに基づいてどういった例えば計算なり評価ができるかということによるものでございまして、現時点で、この一つの試算がどのような扱いになるかということにつきましては、まだ何とも申し上げられる状況にはございません。

山本(喜)委員 最後に、大臣の方から、この新聞の記事が日米の交渉に影響を与えるものではないということを再度確認をいただいて、質問を終わっていきたいと思います。

亀井国務大臣 私は、かねがね申し上げておりますとおり、国民の健康保護、そして食の安全、安心、こういう視点、屠畜場におきます全頭BSE検査、特定危険部位の除去、我が国で行っておりますことが基本的なことでありますので、このことをあくまでも基本として、アメリカとの問題につきましてはそれを主張し、それを貫いていくことが一番大切なことだ、こう思っております。

高木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十一分散会


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