衆議院

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第7号 平成16年3月18日(木曜日)

会議録本文へ
平成十六年三月十八日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 高木 義明君

   理事 北村 誠吾君 理事 西川 京子君

   理事 松下 忠洋君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 小平 忠正君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      小野寺五典君    大野 松茂君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      木村 太郎君    後藤 茂之君

      後藤田正純君    佐藤  勉君

      田中 英夫君    玉沢徳一郎君

      津島 恭一君    永岡 洋治君

      西村 康稔君    野呂田芳成君

      二田 孝治君    岡本 充功君

      鹿野 道彦君    金田 誠一君

      岸本  健君    楠田 大蔵君

      篠原  孝君    神風 英男君

      仲野 博子君    楢崎 欣弥君

      堀込 征雄君    松木 謙公君

      西  博義君    高橋千鶴子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       亀井 善之君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鶴田 康則君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局疾病対策課長)         藤井  充君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         村上 秀徳君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           井出 道雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十八日

 辞任         補欠選任

  北村 直人君     田中 英夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件(畜産問題等)

 平成十六年度畜産物価格等に関する件


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官村上秀徳君、消費・安全局長中川坦君、生産局畜産部長井出道雄君、経営局長川村秀三郎君、厚生労働省大臣官房審議官鶴田康則君及び健康局疾病対策課長藤井充君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村康稔君。

西村(康)委員 自由民主党の西村康稔でございます。

 私は、兵庫県淡路島、明石の選挙区でありまして、関西圏を中心に牛乳なり牛の肉を供給する基地として、特に淡路島は位置づけられていると思うんですけれども、その酪農、畜産関係者の声も踏まえながら、畜産問題につきまして、きょう質問をさせていただければと思います。

 まず一番目に、畜産、酪農がどれだけ魅力的な産業であるのかということなんですけれども、いろいろ資料を見ますと、農業一般のデータを見ますと、新規就農者がここのところ毎年七万人とか八万人とか、新たな就農がある。特に若い人が、一万人以上の人が新たに農業に就農するということで、これはまた新たな広がりが、農業という産業の中にチャンスが広がっているんじゃないかという気がするわけですけれども、果たしてこの畜産、酪農はどんなふうになっているのか。新たに和牛の世界あるいは酪農の世界に入ってくる人、新規参入をやろうという、ビジネスチャンスと見て飛び込んでくる人たちがどのぐらいいるのか、まず、この点からお伺いをしたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 基本的には、畜産部門は、農業全体の中で見ますと後継者の確保割合が極めて高い部門でございます。現在、農業全体で後継者のいる農家は七%と言われておりますが、酪農では二六%、肉用牛では一一%、養豚では二一%と、かなりな水準になっております。

 また、新規参入者につきましても、現在、研修の充実や、あるいは離農跡地や後継者のいない農家と新規参入者を結びつけるような取り組みもやってまいりました。こういった成果もございまして、過去五年間で見ますと、畜産全体で毎年五十人から八十人程度、農外から新規参入をいたしております。

西村(康)委員 五十人から八十人が多いと見るのか少ないと見るのかあれですけれども、各県に割り振ってみれば、各県に一人か二人か、もちろん地域が集中しているわけですけれども。それから、後継者もそれなりに一般の農業に比べてあるということですけれども、地元のいろいろな声を聞いてみますと、やはり若い人たちがもっと夢を持って将来に向かって働ける産業であってほしい、あるいは新規参入がどんどん入ってくるような、活性化をするような、そんな環境であってほしい、そんな声もよく聞くわけでありまして、魅力ある産業とするために、きょう幾つか質問をさせていただければと思っております。

 まず第一番目に、ややもすると家族単位で、どうしても家族経営で小さな規模でやっているケースが多いわけですけれども、もう少しいろいろ知恵を出して、組合で役割分担をしながらとか、あるいは共同化していこう、場合によっては法人化をしていこうということで、規模を拡大していく、あるいは役割分担をして経営を効率化していくという方向もあるんだと思うんです。基本的に一般の農業と同じですけれども、やはり効率化、規模の拡大を含めて、そういう方向に誘導していくべきじゃないか。

 ややもすると、頑張った人と頑張っていない人と比べた場合に、頑張っていなくともいろいろ制度上のメリットがあるということが多いわけで、これはちょっと余談になりますけれども、私は地方交付税が全くその例だと思うんです。頑張って企業誘致すると、税収がふえるので今度交付税が減る、頑張らなくても交付税は渡るということで、頑張った人と頑張らない人と、その頑張る方向にインセンティブが働かない制度だと思うんです。

 ぜひ、頑張った人に、頑張る人に、共同化していく、役割分担していく、法人化していく、そういう努力をしていく人にメリットがあるように、そういう方向に誘導していくように政策を講じるべきだと思いますけれども、このあたり、大臣に大所高所から、日本の畜産、酪農をそういう方向にぜひ進めていただくべく、御所見をお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 今、いわゆる新規就農、このことにつきましては部長から御説明を申し上げましたが、畜産におきましては、法人経営は増加の傾向にあるわけであります。畜種別に見まして、法人経営の割合を申し上げますと、酪農は三・六%、肉用牛が三・〇、養豚は二三・四%、また養鶏は三〇・五%、このような比率での法人経営が行われておるわけであります。

 特に、今お示ししましたように、中小の家畜においてはその比率が高い、こういうようなことでございまして、また、この法人化のメリットといたしましては、やはり投資リスクの軽減ですとか、あるいは、共同作業による労働時間の削減あるいは休日の確保、また経営に対する信用力の向上、そういう中で、人材の確保ですとか資金調達の改善、こういうことが見られるわけでもあります。

 そういう中で、このような法人経営体を育成するためには、平成十四年度から、複数の個別経営の法人設立による協業経営への移行を支援する事業を実施しているところでもございます。畜産経営活性化事業、そういう中で、生産基盤再編強化対策、こういう中で、この法人の設立、そしてさらに協業経営、こういう面での支援をしておるわけでありまして、今後とも、このような取り組みを通じまして、畜産経営における法人化を推進してまいりたい、このように考えております。

西村(康)委員 ぜひ御尽力いただきまして、頑張っている、あるいは工夫をしている、努力をしている人たちにメリットがあるような形で支援をしていただいて、その結果、自立をしていき効率がよくなれば、今度はその支援も必要なく自立をしていくんだと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。

 その一環で、私の地元の淡路でも、今度、地域再生本部の方に提案をしているんですけれども、いわば組合の合併も視野に入れて、広域化、共同化していくという視点でプラントの整備などを計画しているわけですけれども、いろいろ支援策を講じようとしますと、いろいろな要件があって、細かい要件で、酪農の世界の人たちだけではなくて、一般の農家の人たちも入れた数字上のいろいろな条件があって、なかなか使いにくいという指摘もあります。

 ぜひ、広域化あるいは効率化をしていこうという人たちに対しては、できるだけ細かい条件を言わずにというか、もちろん最低限の条件はあるわけですけれども、思い切った支援をしていただければありがたいと思いますけれども、この点につきまして御答弁をいただければと思います。

川村政府参考人 ただいまの委員からお尋ねがありました地域再生構想、今年一月に兵庫県から、淡路島の生乳処理プラント整備ということで御提言があっております。これは、経営構造対策事業を活用したいということでございますが、今委員も御指摘されましたように、三つほどの要件がございます。

 一つは、市町村を超えた広域エリアも事業の対象地域としてもらえないかということ。それから二点目といたしまして認定農業者の育成の目標設定を酪農家のみで行うこと、それから三点目といたしまして担い手の農地集積、こういうものも要件になっておりますけれども、知事特認の目標設定が可能になるようにできないか、こういう三点についての御提案でございます。

 私どもの考え方といたしまして、まず一点目の対象区域、これにつきましては、地域の農家の合意形成が得られるということであれば広域エリアでも十分実施することが可能であるということで、これはまず問題がないだろうと思っております。

 それから、認定農業者の育成の目標設定でございますが、これはまさに地域全体の構造改革を進めるということで、特定の品目だけを抜き出してということは、この趣旨からしますとなかなか難しいものがあるのかなということでございます。

 それから、三点目の担い手への農地の利用集積、こういうものにつきましては、知事特認で別途の要件、別途の目標、こういうものをつくるということになっておりまして、現行制度でも提案のうちの二つはクリアが可能と思っております。

 二番目の認定農業者の関係でございますけれども、これはよく県とも御相談をさせていただきたいと思いますけれども、その地域の全体の認定農業者という観点からもこの構想が可能ではないかと思いますので、そういう工夫をしていただければ十分支援の対象になり得ると思っておりますので、よく検討してまいりたいと思っております。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 いろいろ地元でも知恵を出して、広域化、組合の合併、効率化を考えてやっておりますので、ぜひ知恵を出していただいて、工夫をしていただければありがたいなと思います。これは、地元の話だけではなくて、北海道は別だと思いますけれども、それ以外のいろいろな地域でそんな努力がなされているんだろうと思いますので、ぜひ後押しをしていただければありがたいな、そんなふうに思います。

 それから、大きな課題の一つに畜産廃棄物の処理の問題、ことしの十月末までに法律の規定により対応しなきゃいけないということになっておりますけれども、いろいろデータを見ますと、なかなかまだ十分に進んでいないところも多くありまして、リース事業その他後押しをしていただいておりますけれども、ぜひ強力な支援をお願いしたいなと思いますので、そのあたりの取り組みについてお伺いできればと思います。

木村大臣政務官 先ほど来の西村委員の、地元兵庫県に思いをしながらも、建設的な御質問をいただきまして、まずありがとうございます。また、連日党の方でも積極的に参加されまして貴重な御意見をいただいて、きょう委員会での御質疑ということで、敬意を表したいと思います。

 整備が進んでいないという御指摘でありますが、一気に全部というふうにはなかなか、これは予算も伴いますので、まだまだ期待にこたえていない面もあるかもしれませんが、ただ、農林水産省としては着実に、そして計画的に取り組んでいく努力を続けております。

 御承知のとおり、家畜排せつ物法に基づきまして、その施設の整備というのを計画的に進めておりますが、その計画をつくるに当たっても、農林水産省とJA中央会が一緒になってプロジェクトチームをつくり、その場でまとめた計画をまた大事にしながら進めている。

 現在、二万七千九百戸の整備すべき農家という数がありますが、十四年度末で約五〇%はその整備を終えたというふうに考えております。また、十五年度末においては五千八百戸、そして、今参議院で審議されております十六年度の予算案においても、七千八百戸を対象に整備を図ることを目的としておりますので、着実なる整備という姿勢にぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。

 それから、家畜ふん尿のエネルギー利用にもっともっと取り組むべきではないかということでありますが、私どももそのことは大変大事なことだと思っております。地域によってエネルギー利用の促進というものを、地域の実情を踏まえながらも、我々もさらに努力をしていきたいというふうに思っております。ことしの十一月から家畜排せつ物法に基づく管理基準というものが全面適用ということになりますので、こういうことも意識しながら、積極的に取り組んでいきたいというふうに思っております。

 特に、メタン発酵処理等のエネルギーを利用するということ、これを大事にしていきたいと思っておりまして、補助事業や融資においてその体制を整えていきたい。現在稼働中のものでも全国で四十一カ所ございまして、焼却施設においては九カ所ございます。こういう数字から見てもまだまだかもしれませんが、徐々に、我々は整備を進めながら、エネルギー利用を伴う家畜排せつ物処理の施設の充実にも努めてまいりたいというふうに思います。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 地元も含めいろいろなところでエネルギー利用を、単に処理するだけではなくて、バイオマス発電なり、電力なりエネルギーとして使っていくという構想もあるようですので、ぜひ支援をしていただければと思います。

 それから、リース事業をぜひ、使う方も多いと思いますので、枠の拡大も含めて取り組みをしていただければというふうに思います。

 それからもう一点、これは北海道の問題なんだと思いますけれども、脱脂粉乳の在庫の問題ですけれども、本日、加工原料乳の限度数量等を諮問されるというふうに伺っております。在庫が大分大きくなって、飲料用のマーケットあるいは価格形成にも相当影響を与えかねないということで、ぜひこの需要拡大、消費拡大に向けて取り組みを強化していただくよう、新商品開発などいろいろ取り組んでおられると聞いておりますけれども、この取り組みについてぜひお伺いをしたいと思います。

金田副大臣 きょう価格が決定するということで、正式にはあすでございますが、その中でも補助つきリース事業、これにつきましては、十一月が施行日でございますので急ごうということで、補助つきリース事業に二百億から約百億ふやして、三百億等の十六年度予算措置をして、大体七割ぐらいはその時点までに全部屋根つき堆肥舎が整備し終わるだろう、あと残りの三割につきましては簡易装置、ビニール等々で対応できるな、施行が実行できるなという形でもくろんでいるところでございます。

 それからバイオ発電、それから脱脂粉乳、確かに十万トン在庫がたまっておりまして、約七カ月分の在庫だ、この脱脂粉乳を処理しないとなかなか加工に回せない、脱脂粉乳が積み上がるだけだという状況にございます。そういったことで、新たな脱脂粉乳の用途の開発、それと、みそなんかにもまぜますと大分香りのいい近代的なおみそができるんだそうでございますので、それから加工乳向けの需要をどうやってふやしていくかというようなことについて、脱脂粉乳の在庫対策にもしっかりと取り組むことにしているわけでございます。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 リース事業も拡大をしていただけるということでありますし、ぜひ十月末、十一月に向けていろいろな取り組み、さらなる強化をしていただければありがたいな、そんなふうに思います。

 それから、最後に、地元もいろいろ回っておりまして、春秋、特に秋ですけれども、共進会があったりするわけですけれども、これまた北海道は別だと思うんですが、テントを張って、雨が降っている中でもやったりしておりまして、こういう施設、小さなものもあるんですけれども、比較的大きな共進会ができるような施設、場合によっては消費者とのコミュニケーションの場にも使えるんじゃないか。

 これは、最近、食の安全の問題が大変、いろいろ話題になっておりますし、敏感に消費者の方も感じている。その中で、やはりいろいろな情報提供をしながら理解を深めてもらう、そんな意味でそういう施設も必要じゃないか。各地にいろいろ整備されておられるとも聞きますけれども、何も箱物が大事なわけじゃなくて、むしろそういう場の提供が必要だと思うんですけれども、そういった消費者とのコミュニケーション施設、あるいは共進会をやったりできる場の提供、そういったものについての支援策についてお伺いをしたいと思います。

井出政府参考人 今御指摘がございましたように、食の安全、安心をめぐるさまざまな課題がある中、消費者には、安全、良質な畜産物を安心して食べていただくために、畜産物の生産方法ですとか生産履歴、そういったものについて理解を深めていただくということは非常に重要であると思っております。

 そのためには、今お話がございましたように、消費者と畜産農家が直接に触れ合ってコミュニケーションを図る、特に、牧場のような豊かな自然の中で育っている家畜と触れ合ったり、牧場の作業を実際に体験していただいたり、そういった中で消費者の理解を深めていただくということは非常に重要だと思っております。

 具体的には、今、例えば、全国の畜産農家の方がみずからの牧場を提供しまして、酪農体験実習などをします教育ファームという制度がございまして、全国では既に百六十七カ所取り組まれております。こういったものについても、国としても一定の支援を行っているところでございますし、また、各地には公共牧場というものが存在をいたしますが、ここでは、消費者との触れ合いが可能な展示施設ですとか手づくりの加工品をみずからつくっていただく、そういったチーズづくりとかバターづくりをしていただくというような施設も整備いたしまして、消費者とのコミュニケーション活動の拠点として役割を持っております。これは全国に今百七十一カ所ございます。

 こういうものについても、国としましても、一定の補助事業等で支援をしているところでございますので、今後とも消費者とのコミュニケーションを図る取り組みについて、積極的に支援をしてまいりたいと思っております。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 食の安全あるいは廃棄物問題についても、消費者の理解を得ながら、酪農、畜産の産業が魅力あるものとなって、いろいろ頑張っておられる、頑張っていろいろやっていこうという人に対して、ぜひ応援をしていただいて、魅力ある産業となりますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 おはようございます。民主党の仲野博子でございます。

 私の選挙区は、北海道の東側、釧路、根室地域ということで、もう皆さんも既に御案内のとおり、農業的には水稲の作付面積がゼロということに象徴されるように、大変厳しい自然条件であります。

 本日、私がこの委員会で質問をさせていただく機会を与えていただきまして、地元の農業関係団体の方たちから、ぜひ私たちの声を、あの最近鳥インフルエンザ等でテレビによく出られております亀井農林水産大臣にしっかりと訴えていただきたい、そのように私、言づかってまいってまいりました。何か最近、テレビで見ていますと、大臣もお疲れでしょうかと大変心配をされておりましたので、そのこともつけ加えさせていただきたいと思います。

 きょう、前向きな答弁をいただきたい、そのように思うわけでございます。

 そういった中で、戦後の緊急入植に始まり、パイロット事業、そして新酪農村建設など、国策として酪農業の導入と経営規模の拡大が行われ、現在は、乳用牛約三十一万頭、生乳の生産量は百三十二万トンで、国内の生乳生産八百三十八万トンの実に一五%強の量を供給する地域になっているわけでございます。

 しかし、本委員会における大臣の所信表明に触れられていたとおり、消費者の食の安全、安心の確保に対する関心が一層高まっている一方で、農業、農村の現状は、高齢化あるいは耕作放棄地の増加が進むなど、畜産物を安定供給する食料基地としての役割を自負するこの地域が、今大変大きく揺れているという現状であります。また、WTOやFTA交渉の行方についても、大規模な酪農専業地帯であるだけに、将来の経営に及ぼす影響に対する不安の声も募らせているというわけでございます。

 これらの情勢の中で、生産者自身が将来に向かって意欲を持って営農に携われる、そして消費者にとっても安全、安心な食料の供給が確保される、そのための酪農、畜産にかかわる課題について、私の方から何点か質問させていただきたいと思います。

 初めに、乳価の問題にかかわる点でございます。

 本日、乳価の諮問が出されると聞いております。不足払い制度から現在の補給金制度に移行したのが平成十三年度からと聞いておりますが、安心で安全な生乳の品質を確保するという努力はもちろん、BSE対策後のトレーサビリティーへの準備、期限が迫った家畜ふん尿処理などの環境対策など、現場の生産者は今大変な苦労をされております。また、ヘルパー制度への国の助成はあるものの、実際、三百六十五日のほとんど休日をとれない状況の中、年間一人三千時間余りと言われている長時間労働が続いているわけでございます。

 先日、地元の生産者の代表の方々と意見交換を持たせていただきましたけれども、このような生産者の努力、政府の方針に対応した努力に対して、加工原料乳の生産者補給金の単価がきちんと積算をされているのかという、そういった現場の経営者の声がありました。

 再生産費の確保という視点、そしてこれらの政策対応に要した労働時間やあるいは設備投資に対する生産費をどう積算されようとされているのか、見解を求めたいと思います。

井出政府参考人 加工原料乳生産者補給金単価の算定の基礎となります生産費調査がございますが、その生産費調査におきまして、酪農の家族労働時間につきましては家族労働費として、設備投資につきましては建物費とか農機具費として、それぞれ計上されております。

 近年、酪農家の一人当たりの労働時間は、年間二千五、六百時間前後で安定的に推移しておりますが、規模拡大の着実な進展によりまして、一頭当たりの労働時間はむしろ減少傾向にございます。また一方、設備投資の増大に伴いまして、一頭当たりの建物費や農機具費は、近年、増大傾向にございます。

 現在の制度では、加工原料乳の生産者補給金単価につきましては、過去三カ年の生産費の移動平均の変動率をもとに算定することとされておりますので、労働時間や設備投資の動向につきましては、この生産費調査の結果を通じまして、このルールに基づきまして適切に補給金単価に反映をさせていただいているところでございます。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

仲野委員 今実際、例えば、ペットボトルで市販されている水よりも安い価格で乳価が決定をされている。今、るる井出畜産部長からお話がありましたけれども、逆に言えば、幾ら生産努力をしても、国民のために栄養価の高い食料を安定的に供給しております、そういう認識に立って、この補給金の単価の設定でありますけれども、年々引き下げられているという状況にあるわけでございます。そういった意味で、この単価の設定について、大臣の見解を求めたいと思います。

亀井国務大臣 加工原料乳の生産者補給金単価、これは、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法、この法律に基づきまして、牛乳の生産費そのほかの生産条件を考慮いたしまして、加工原料乳地域における生乳の再生産を確保する、こういうことを旨といたしまして、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞きまして決定をいたすこととなっておるわけであります。

 今回の補給金の単価の決定に当たりましては、制度の趣旨を踏まえまして、算定ルールに基づきまして、過去三カ年の生産費の移動平均の変動率をもとに適切に設定していきたい、このように考えております。

仲野委員 今、生乳は、他の農産物と違って、市場に直接出荷をしてそれを小売に出すという仕組みにはなっておりません。市乳の場合は必ず滅菌と密封をした上で販売されておりますし、地元で市乳としての需要が少なく、処理できない場合は、脱脂粉乳やバター、生クリームやチーズなどに加工されて、それが消費に回っております。したがって、今本当に農家が相当の努力をして生乳を生産しても、需要がだぶつきぎみの傾向にあるときは、メーカーと生産者団体の乳価交渉も、今のこの市場原理の中で、ここ数年の結果にあるように、本当に乳価の価格が極めて低目の状況となっているわけでございます。

 そして、先日も農業に従事している女性の方たちとお話をさせていただく中で、毎年乳価が変動する状況の中で、子供を今ちょうど学校で教育をしている、しかしなかなか、本当に将来どうなっていくのだろうか、安定して酪農経営ができるんだろうか、そういう不安を持って生活をしているというのが実態でございます。そういったことを御認識されているのかどうなのか。今、酪農者が、女性の方たちがそういった悩みを抱えながら生活をしている、そういう声を大臣は聞かれているのかどうなのか。改めてお聞きをしたいと思います。

亀井国務大臣 今北海道の例でお話をされましたが、実は私の地元も、神奈川県でございますけれども、大変酪農が盛んで、北海道に研修に行ったりして、北海道でいろいろ技術的な勉強をして、若い青年が地域の中でも私は比較的熱心にやってくれておると思います。

 そういう面で、こういう例を出してよろしいかどうかわかりませんけれども、実はBSEが私の住んでいる周辺で二頭、十一頭発生しておる中で二頭出ておるような地域でありまして、その地域の関係者の方々といろいろ話をする機会もありますし、いろいろ大変な中で、特にこれらを家族経営、こういう中でやっております関係者の話は十分私も承知をし、またその人たちのことも十分理解もしておるわけであります。

仲野委員 今、大臣も神奈川で、地域が酪農経営をされている、そして十分話を伺っているということでありますけれども、日本のこれからの農業のあり方を考えたときに、確かに本州の農業と北海道の農業、もう風土、気象条件等、さまざまあるわけでございます。

 そういった意味で、きょうたくさんの、大臣の後ろ姿を見て日々事務方で大変苦労されている役所の方たちも、こうして来られているわけでございます。私は、やはり本当に、日本全国津々浦々の営農されている方たちのこういった声をしっかりと受けとめていく、その姿勢をしっかりと持たなければならない。そういった意味では、職員の皆さんを、例えば北海道に出すだとか、あるいは青森に出すだとか、秋田に出すだとか、そういった皆さんの声をしっかりと聞いていただく、そういったこともやはり考えていくべきでないのかなと思います。そのことをしっかりと大臣が、いや、北海道の農業はどうだった、青森の農業はどうだった、そうやって聞いて、その声をやはりこれから、ことしはその食料・農業・農村基本計画、五年に一回の見直しということであります、そういった声をしっかりとその計画の中に反映をしていくべきだ、私はそのように思っておりますけれども、大臣、もう一度お聞かせいただきたいと思います。

亀井国務大臣 我が省の職員も、酪農の地域に研修ということで二年くらいの研修に行っておる者もおりますし、あるいはまた、地方農政局におきましても、できるだけ職員が現場の声を伺う、そしていろいろの政策を進める。机の上でいろいろの施策を決めても、実際これ、現実に農家やあるいは酪農家の皆さん方、関係者の本当に身につくことをいたさなければ何の政策にもならない、こういうことを口酸っぱく私は言っておるわけであります。

 そういう面で、少しでも、これは一〇〇%これを反映するということは非常に難しいことであります。極力、いろいろのお話を承って、いろいろの仕事を進めていくということを常々申して、その対応に努力をしておるところであります。

仲野委員 今大臣から、もう机上ではだめだ、本当に現場の声をしっかりといただいて努力をしていく、そういった決意を述べていただきましたので、ぜひその姿勢、大臣の今言われたことを、本当に後退することのないように、前向きに農業行政にしっかりと取り組んでいただきたい。

亀井国務大臣 委員長、ちょっと追加をさせてください。

 今、私、二年と申し上げましたが、入省しまして二年目に農村研修を一カ月間、それぞれ入省の職員を一カ月間、いろいろなところの現場に出しているということでございますので、ちょっと訂正させていただきます。

仲野委員 大臣、大変御親切に、どうも大変ありがとうございます。ぜひそうやって前向きに、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 次の質問に入らせていただきたいと思いますけれども、今、限度数量の設定がありますけれども、現状の、またちょっと話があれですけれども、乳価自体が低価格であることから、個々の農家が生産努力をして一頭当たりの乳量をふやし、同時に設備投資をして飼養規模を拡大しましたが、この結果がトータルとしては乳価を下げる方向に向いてしまっているということでもあります。また、生産規模に比例してふん尿の量が多くなって、その対策にまた設備投資が必要となる。これらの設備投資の資金を回収しようとしても、価格が抑えられている。そういった、本当に今難しいという現状でございます。

 本当に酪農専業農家がぎりぎりの状態にあるということでありますので、大臣から今、そういった生産現場の声をしっかりと受けとめてさまざまな施策に反映をしていきたいとお答えをいただいたので、本当にしっかりと受けとめていただきたい、そのように思っているわけでございます。

 ちなみに、酪農情報センターの報告によりますと、この十五年度末の脱脂粉乳の在庫が約十万トンに達するとの需給見通しが出されております。とりわけ本年度は、夏場の都府県消費地での天候不順などによって生乳の消費が落ち込んだことに乳製品への仕向けが増加した大きな原因があると言われているわけです。生産者とメーカーが今必死になってその在庫対策の取り組みを進めております。

 政府に対して生産者団体やあるいはその関係する自治体などから要望が届いているはずでありますけれども、この液状乳製品の生産拡大事業の継続を含めて、どのような対策が講じられようとされているのか、明らかにされたいと思います。

井出政府参考人 脱脂粉乳の過剰在庫の解消の関係でございますが、今委員御指摘のとおり、十五年度末には約十万トン、七カ月分の在庫が積み上がると言われております。これは、適正在庫水準が約三カ月と言っておりますので、大変な問題でございます。

 こういった脱脂粉乳の過剰在庫を根本的に解決するためには、一つは、生産者のサイドにおきまして、需要に見合った計画生産数量の設定と、その着実な実施をしていただくことが必要でございますし、一方では、乳業者のサイドにおきまして、国産脱脂粉乳の需要拡大を生産者団体に一体となって取り組んでいただくことが必要であると考えております。

 農林水産省としましても、従来から、生クリーム等の液状の乳製品ですとかチーズ等の生産拡大のための助成をしておりますけれども、さらに、こういった国産脱脂粉乳を利用した新商品の開発の推進、その他各般の施策を総合的に実施してきております。

 今年度は、先ほど委員から御指摘のございましたように、生産者団体と乳業メーカーが連携をいたしまして、現在、輸入物の粉乳調製品を使っている部分について、国産の脱脂粉乳で置きかえていく。これには、ある程度生乳価格を値引いたり、あるいは、乳業メーカーの方もある程度の出費を覚悟しながら粉乳調製品と競争していくということが必要でございますが、そういった業界の自主的な対応が行われようといたしておりますので、そのことについても確実な成果を上げるよう注視し、かつ支援をしてまいりたいと思っております。

 また、もう一つ、これは北海道だけではなくて都府県でも問題になっておりますが、季節別乳価の導入ということがございます。

 牛の生理からしまして、実は、夏場の需要期に牛が疲れまして生産が落ちる、冬場の余り需要のないときに生産がふえまして、この部分が余剰となってまた脱脂粉乳になってしまう。こういう悪循環がございますので、こういった夏場の需要期生産を拡大して冬場の余乳の発生を抑制する、こういったことを目的にして、季節別乳価というものを実施しようとしております。これについても、今回、行政としても新たに支援をしていこうとしているところでございます。

仲野委員 今、この脱脂粉乳の在庫があって、本当に農家が困っている。輸入から国産にかえて、国として新しい商品の開発等にも力を入れて、農水省としてさまざまな支援をしていくと言われましたけれども、実際に、今年度、例えばこの支援の方法のあり方なんでありますけれども、具体的にどういった実績、支援をしてきたその実績等があるのか、お伺いをしたいと思います。

井出政府参考人 昔は、脱脂粉乳というよりも、バターの過剰が非常に問題になったことが何度もございます。これはやはり、牛乳の需要というものが天候に左右されるということもございまして思ったようにならないというのが、お天気任せというところもございますので、必ず加工が出てしまう、それがまた乳価の足を引っ張るということでございますので、従来はバターが余るということで始めましたのが、今から二十年ほど前に、チーズの増産対策でございまして、生産者がチーズ向けにある程度安い乳価で供出するけれども、それについて国も一定の支援をしてほしいということで、チーズ基金というのができました。

 それから、その後、十年ぐらいたちまして、さらに生産を伸ばそうとしてもなかなか消費が伸びないということで、今度は生クリーム等のいわゆる液状乳製品、バターや脱脂粉乳ですといわゆる保管性がございますので、外国からのものがどんどん入ってまいりますが、液状の乳製品は日もちがしないので、国内の需要は国内生産で賄うということができるだろうということで、生クリームの増産を図るというようなことも、これについても一定の助成を現在も継続いたしてきております。

 そういったことで、今回の生産者団体あるいはメーカーの取り組みにつきましても、これがしっかりと定着しますように支援をしてまいりたいと思っております。

仲野委員 今一番問題になっているのがこの脱脂粉乳の在庫の問題でありまして、その問題になっている、そこで本当に安定した経営ができていない、そういったところにこそやはりしっかりと支援をしていくと、今、井出部長から言われましたので、本当にぜひ、資金の面でもさまざまな技術の面でも、しっかりと支援をしていただきたいと思います。

 これについて、また大臣の方からもお答えがあれば、いただきたいと思います。

亀井国務大臣 先ほども申し上げましたが、このルールに従いまして、そして、いろいろの生産条件等々を十分加味してその算定をしておるわけでありまして、現下のいろいろの問題がそういうファクターとして算定できるような対応をやってまいりたい、このように考えております。

仲野委員 次の質問に入らせていただきたいと思います。

 きょうの、乳価の決定に当たりまして、この間、本当に、それぞれ農水省の方に全国のあちこちから、営農されている方たち、団体の方たちが、こうした要請書を持って陳情に来られていると思います。本当に、この要請書を目を通させていただきますと、それぞれの営農をされている方たちの切実な思いや声がしっかりとこの中に入っているわけでございます。私は、そういった意味で、本当に前向きに農業を、行政として本当にそういったことに前向きにおこたえをしていただきたい、そのように思っているわけでございます。

 そういった意味で、次の質問に入らせていただきますけれども、この乳価の問題、あるいはまた、先ほども西村委員の方からも質疑がございましたけれども、畜産環境対策について伺ってまいりたいと思っているわけでございます。

 家畜排せつ物法の管理基準の適用が、ことし十一月に迫っている。しかし、主産地である北海道においてさえ、三千戸余りの対象農家が十六年度末をもって家畜排せつ物処理施設の整備が大変厳しい状況にある。これらの農業をされている方たちは、防水シートなどで応急的な対応をせざるを得ない、そういう状況にあります。このことにかかわって、何点か質問をさせていただきたいと思います。

 その一つ目は、高齢者、その農家の方たちが高齢であって後継者がいない場合、または、整備に要する費用の捻出や整備後の減価償却がどうしても困難な農家などについては、今回の管理基準の適用を機会に離農せざるを得ない、そういう状況にあります。

 このことについて、どのように政府として認識をされ、今後、これらの農家の方たちに対して具体的にどう対応されようとお考えになっているのか、お示しいただきたいと思います。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

金田副大臣 仲野先生の選挙区は、日本が誇る酪農生産地帯でございます。根釧地帯、新酪農村に相当の国費を投じまして、本当にヨーロッパ以上の生産地でございます。そこの酪農家の皆さん方が一生懸命に搾乳等々に励んでおられること、そして労働時間が長いこと等については、我々、十分に理解しながら対策を講じているところでございます。

 それから、今先生からお話がありました家畜ふん尿処理対策でございます。十一年から一生懸命にこの整備を急いでまいりました。ところが、経営状態によってその投資がなかなかできないという方々がおるわけでございまして、何としても整備していただきたいということで、半額の補助金をつけて、あとの半額については十二年間かかってリースという形のまさに画期的な制度をつくらせて、堆肥盤の整備を急いでいるわけでございます。

 相当の酪農家の皆さん方が多大な借金を抱えてやってきたんですけれども、近ごろは根釧地域においても経営状態が相当よくて、返済を相当やって、生活も大分、ほかの農業者と申しますか、畑作や稲作経営に比べて、酪農は将来展望がしっかりと見えた形でやられているなという感じを強くしておるところでございます。

 一生懸命にこれからも、堆肥盤、簡易対応ということでございますが、そういった人方にも整備を引き続きやっていけるような、そういった予算措置を講じていくことにしております。

仲野委員 金田副大臣も北海道の御出身であります。私の地域の農業事情もよく御承知であると思います。

 今のお答えを聞いておりますと、大規模酪農家は畑作農家に比較をして相当将来展望が見えていると言われました。私は、申しわけないんですけれども、非常に言葉はきついかもしれませんけれども、金田副大臣、余りよく理解をしていないのではないのかなと思っているんです。

 どれくらいの所得で酪農経営が裕福だとか言われているのか、お聞きをしたいと思います。

金田副大臣 私の選挙区も酪農家がたくさんおりまして、二十万頭の牛を私の小選挙区で抱えているわけでございます。十四万頭が搾乳用の牛でございまして、六万頭が肉牛でございますが、本当に、私のところは畑も田んぼもございまして、酪農家、具体的に言えば、国内の牛乳の消費というのは、生乳は外国から入ってきておりませんので、国内需要は酪農家の皆さん方が責任を持って供給していただかなきゃならない体制でございます。

 先ほども申し上げたとおり、補給金単価で加工乳の部分については補てんしております。これは、農家のコスト等々を一定の計算式の中で補給しておるわけでございまして、過重な労働、朝早くから夜遅くまで大変な家族労働を強いられていることは知っておりますけれども、酪農経営自体は、だんだん生活向上というか、所得水準は一般サラリーマン農家等から見て決して遜色のないものになっている。後で、よろしければ数字もお示ししてもよろしいんですが、そういう形になっていると理解しております。

仲野委員 補給金単価で補てんしている、家族労働である、水準は遜色がないと。本当に、家族労働、例えば一家五人で労働して年収は大体どれくらいになっているんですか、後で数字を具体的にお示ししていただくというふうに言われたんですけれども。

金田副大臣 平均にならざるを得ないわけでございますが、酪農経営における所得の推移を見させていただきますと、一戸当たりで北海道が一千百万円の所得でございます。都府県が七百万円であり、他の作物と比べて高水準で安定的に推移しているというふうに調査しております。

仲野委員 一戸当たり一千百万、一千万、これは本当に、農家にとっては畑作農家とかに比べたら大変な高い収入である、そうおっしゃりたいと思うんですよね。

 よく考えていただきたいんですけれども、私が先ほど申し上げました、一家五人、六人で農業に従事をされている、そういった中で、一人当たりに計算するとこの金額は決して高いものじゃないんですね。この中から、例えば農機具の更新だとか、そういったこともあるわけでございます。そしてまた、本当に、こうして生き物を飼っていると、休むこともできない、冠婚葬祭に出るにしてもヘルパーを雇う、それにもお金を出していかなきゃならない。そういったもろもろのことを考えると、決して高い収入ではないと私は思っております。

 先日も、多くの生産者の方たちとひざを突き合わせて私は懇談をさせていただきました。役所は、こうして必ず、一千万以上だから、何もあれでしょう、十分でしょう、こう言う。こういう言われ方をされたら本当にやっていられない、このように嘆いておりました。大臣、これについてあなたはどのようにお考えでしょうか。

亀井国務大臣 先ほど金田副大臣からお答えいたしましたが、北海道で一千百万、また都府県で七百万、これは、他の農業、畑作に比較をいたしますれば高い水準、そして安定的な数字、こう申し上げることができると思いますし、あと、今御指摘の家族経営、一人当たり労働量、こういうことでのお話も今ありましたけれども、農業全体を考えたときに、私は、やはり安定的な数字、ほかの農業に比較をしてそういう水準にあるのではなかろうか、このように思っております。

 それは、いろいろ個々の問題はあろうかと思いますが、この数字というのはそのような安定的な数字、こう申し上げてよろしいと思います。

仲野委員 安定的な水準である、そのように大臣からもお答えがあったんですけれども、私が先ほど質問させていただきました、私の釧根地域の酪農をされている方たちが、この家畜廃棄物処理施設、まだ二五%の方たちがこの施設の整備ができない状況である。そういった方たちはどういった方たちかと申しますと、大規模経営ではなくて、小規模経営で、本当に高齢者、御夫妻で経営をして後継者がいない、そういった方たちに対して具体的にどう対応されていくのか。

 それと、このリース事業でありますけれども、十六年度予算枠も前年度に比較して大きく計上させていただいた。要請書にもありますけれども、このリース事業については十七年度以降も継続されるのかどうかということをお聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 今御指摘のように、本年十月が猶予期限の到来でございまして、十六年度の予算につきましては最大限の確保を図ったところでありまして、この補助つきリース事業につきましては、大幅な増額をいたしたわけでありますので、十七年度以降につきましては、やはり今後の情勢等を踏まえて検討してまいりたい、このように考えております。

仲野委員 これはすごく大事なことだと思うんですよね。情勢等を勘案しながら考えていきたいというお答えですけれども、もう一度、この法律が導入されたときの法律の目的をちょっと言っていただきたいんです。

金田副大臣 家畜排せつ物法でございますが、今の酪農経営の中で、ふん尿が野積み、素掘りという状態の中で処理されている実態を、何とか環境を守るためにも対策を講じていかなきゃならない、そういった堆肥盤をつくったりあるいはメタン発酵での発電等をしたりというような形の中で、ふん尿処理を円滑に進めていくための対策として講じているものでございます。

仲野委員 この制度の導入の趣旨は、野積み、素掘りの対策に応じて制度を導入した、大きくは環境を守るという観点で導入されたわけでありますよね。やはりそういった大きな視点に立って、しっかりと前向きにこたえていただきたいな、私はそのように思いますけれども、いかがですか。

金田副大臣 先ほど大臣も答弁されたように、今後の、十七年度以降のことについてはこれから検討してまいりたいというふうに大臣から答弁されているとおりでございます。我々も、簡易対応をしているものをいつまでも放置はできないなという問題意識は持っているところでございます。

仲野委員 私の地域は、例えば別海は日本で一番広い面積を有する町であるんですけれども、あの地域は半農半漁、沿岸地帯のところで酪農をされている。そういった場合に、本当にここをあいまいにしておけば、今でさえも、ふん尿が川から海に流れて漁業団体からクレームが来ている。例えば、昨年は異常にヒトデが発生をした、もしかしたらそういう酪農家のふん尿ではないのかなということも指摘をされているわけでございます。

 そういった声も大臣はお聞きになっているのかどうなのかお尋ねしたいと思います、そういったこともありますよということで。

亀井国務大臣 昨日も、北海道の関係者からいろいろお話は承りました。

仲野委員 昨日も北海道の方からお話が出たと。ということは、では、しっかりと大臣も副大臣も受けとめて、十七年度以降についてもしっかりとこたえて検討をしていただけると私は理解をしてもよろしいでしょうか。

亀井国務大臣 十六年度予算につきましても思い切った対応をしておるわけでありますので、環境の問題のことでもありますし、やはりそれらの制度の中で御協力をいただきましてぜひ実施をしていただくように、私どももその努力はしておりますので、また御協力をよろしくお願いしたいと思います。

仲野委員 このハード事業の補助金にかかわってでありますけれども、北海道の農業は、隣の農家までの距離がもう千メートル以上も離れているところであるわけでございます。現在、共同利用方式による整備方法では、例えばふん尿の運搬や、とりわけ積雪、冬期間の対応に課題が多い、そういった生産者の声もあります。

 規格そのものについても、例えば現行百八十メートルの屋根つきでは、完熟堆肥を生産しようにも、例えばスペースが狭い、キャパがない、そういった意味では対応し切れないから、また簡易でそういったものをつくっていく、二重の投資をされているわけでございます。そういった、せっかく施設を整備しても一〇〇%のものでないんだ、そういう補助金の縛りがあるんだ、そういった声も今実際にあるわけでございます。

 そうした、本当に、一戸に対しての個別補助事業ができないということも現在の大規模経営の実態からそぐわない基準だと思いますし、飼養規模に応じた規格づけや寒冷地ゆえの堆肥化の困難性というものを十分に考慮した事業に今後すべきと思いますけれども、見解を求めたいと思います。

井出政府参考人 補助つきリース事業につきましては、まさにそういう北海道、道東のような特殊性にかんがみまして、本来、個人施設に対する助成というものは政府としては行わない、こういう不文律があるわけでありますけれども、緊急に五カ年間でこの大変な素掘り、野積みの解消をしなければならないという状況にかんがみまして、特例として認められたものでございます。

 その運用につきましては、二百十億円を五年間という約束でかなりな投資をしてまいりましたが、その設備をつくりますときの経営規模に応じて投資あるいは助成をするというのが基本でございまして、そのため、その後、例えば増頭をされまして規模拡大をされるというような見込みがあると言われましても、その見込み分について助成をするということはできないという事情もございまして、北海道の生産者の方々からは、せっかく二分の一補助つきリース事業をもらっても自分の生産規模に合わないという声も聞いております。

 ただ、これは二百十億円というお金の中で、全国の多数の農家にある程度、北海道だけでなくて、南九州その他でも個人施設でないと対応できないという方もたくさんおられますので、そういった中での運用であったということは御理解をいただきたいと思います。

 一応、ことし法律適用期限が参りまして、最終年度ということでございまして、先ほど来大臣、副大臣も申し上げておりますように、百億という大幅な増額をいたしましたので、その限りにおいてしっかりと期待にこたえていきたいと思っております。

仲野委員 今、井出部長の方からしっかりと期待にこたえていきたいということですので、ぜひそのように取り組んでいただきたいと思います。

 次の質問に入らせていただきますけれども、自給飼料を主体とした経営の支援が長期的な家畜排せつ物対策としても最も有効な手段の一つである、そのためにも、今現在の土地利用型酪農推進事業について、その継続、引き続きその拡充が肝要と考えますが、見解をお聞かせいただきたいと思います。

金田副大臣 土地利用型、自給飼料を拡大していこうということで、一頭当たりの草地面積が高いものから低いものまで、AからDランクにまで分けまして、一頭当たりの草地面積の大きい農家の皆さん方には高額のというような形で、自給飼料を拡大していくための対策として講じているものでございますが、残念ながら、この制度を始めてから、自給率、自給飼料というものの成果が上がっていないという実態がこれまたありまして、そういったことについて若干の制度の見直しが必要かというふうにも思っているところでございます。

仲野委員 今、国は、食料・農業・農村基本計画において、牛乳、乳製品の食料自給率目標は平成二十二年度に七五%、輸入品を含めた消費の姿として千三百十八万トン、その上で、生乳の国内生産については、生産努力目標として九百九十三万トンとしているわけでございます。

 濃厚飼料の輸入分などを差し引いた、牛乳、乳製品に限ってのオリジナルカロリーベースの自給率の目標はどうなっているのか。これは、食料の安全保障という観点からも、この土地利用型酪農の推進は自立した国として大切なことだと私は思うんですが、所見を求めたいと思います。

井出政府参考人 お尋ねの牛乳、乳製品のカロリーベースでの自給率でございますが、平成十三年度で二九%、十四年度で三〇%となっております。これに対して、目標数値は四四%でございます。

仲野委員 まだまだやはりこの目標数値も上がっていかないという状況であるのですけれども、今、例えばBSEの問題等で、こうして多くの国民、あるいは酪農者、消費者は、原因がわからないままに不安を抱いている。そういった意味からも、この土地利用型酪農推進事業は、やはりしっかりとした理念を持って取り組んでいただくべき事業ではないのかなと私は思っているわけでございます。

 次の質問に入らせていただきます。

 BSE問題でありますけれども、先般、私の選挙区であります標茶町で死亡牛のBSEが発生をしたということで、先日、日曜日に、農業関係団体の方たちとちょっと意見交換をさせていただいたわけでありますけれども、そのときに、本当に今この風評被害で大変地元の方たちが不安を持って生活をしている、そういった意味で、このようなことを言っていた方がおられます。国からの事故の報告が時間がかかるために、中央から発表がある前にマスコミの情報が先行して、そのことが風評被害につながっている。したがいまして、国として、マスコミに対してしっかりと的確な情報をやはり届けていただきたいと。すぐに、マスコミ対応がなっていないということで、相当私も言われてまいりました。

 そのことについて、今後どのように対応されていくのか、お尋ねします。

金田副大臣 残念ながら、十一頭目、仲野先生の選挙区で死亡牛から出てきたわけでございます。

 マスコミ対応ということでございますが、十一件もの対応を過去経験してございます。最初は大変な騒ぎでございまして、酪農家の庭先まで報道記者が訪ねてくるということで、大変な騒ぎで、そういうことは自粛していただきたいとか、記者クラブへの御要請等々もいたしてきたわけでございますけれども、口蹄疫だとかそれからインフルエンザなんかの対応と違いまして、一定のところ、被災農家まで侵入してくる報道機関がございます。

 そういったことについて、一定の対応をしてやっているわけでございますけれども、いかんせん、記者を拘束するわけに、当クラブとしてもできないというような対応もございますので、一定程度のやるべきことはやっているつもりでございますが、残念ながらそういった風評被害、確かに私の選挙区の猿払村というところでもBSEが発生いたしまして、そうしたらホタテも売れなくなったというような、全く関係のないことで経済的な被害が出てくるというようなことも実際にあるわけでございます。この風評被害がないように、一生懸命にこれからもできるだけのことをしてまいりたいというふうに思っております。

仲野委員 鳥インフルエンザもそうなんですけれども、本当に風評被害というものが多くの方たちに打撃を与えているということでありますので、しっかりと国として的確なそういった対応を迅速にやっていただきたい、そのように思います。

 来月から、北海道では、BSE、運搬だとかさまざまそういう対応をしていかなきゃならないんですけれども、個々の農家に対するそういった支援措置をどのように、これはちょっとお考えをいただきたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 死亡牛の全頭検査、これは、牛海綿状脳症対策特別措置法に基づきましてことしの四月から全都道府県で実施をしていただく、そういう体制がいよいよ整うわけでございます。

 その際に、一つは、国の方から、こういった死亡牛の、牛の検体を採材するための費用ですとか、あるいは検査のための費用といったものは支援をする、助成をすることになっております。また、生産者の方々に対します支援措置といたしましても、農場から採材する場所までの輸送の費用、それからそこでの処理、それからまた、最終的に化製場までこれを運ぶわけでありますけれども、そういったところの輸送費等につきまして、農畜産業振興機構の方から一定の助成をこれまでもしてきておりますし、十六年度におきましてもこういった助成措置を講ずることといたしておりまして、このような助成措置によりまして、二十四カ月齢以上の死亡牛の全頭検査を実施していく上で必要な、個々の生産者の方々に対します一定の支援措置も、引き続き続けていきたいというふうに思っております。

仲野委員 いずれにいたしましても、このBSE問題、今、食の安全、安心の観点からも、今後のアメリカとの協議において、特定危険部位の除去及び全頭検査と同等の措置を引き続き求めていくのか。政府の基本方針を改めて確認をしたいと思います。

亀井国務大臣 アメリカとの問題、この輸入再開につきまして、お互いに、長期化するというのは、これは大変問題のあることであります。

 しかし、何といっても、我が国の国民の健康保護、食の安全、安心、こういう視点に立ちまして、我が国でとっておりますと同等、いわゆる屠畜場におきます全頭検査、さらには特定危険部位の除去、このことは基本的なことでありますので、アメリカの関係者がお見えになったりいたしましても、私はそのことを再三再四説明を申し上げ、また、我が国の消費者が安心してお買い求めいただくような、そういうものでなければならないことでありますので、かねがね申し上げておりますとおり、我が国と同等の考え方、こういうものでの対応ということをアメリカにも十分話をいたしておるところであります。

仲野委員 これは、十六日の日経新聞の夕刊で報道されていたんですけれども、アメリカで最大で年四十六万頭にBSE検査をということで、牛肉の輸出再開をねらうという見出しで報道されておりました。

 大臣、現段階で、アメリカが一日も早く牛肉を出したい、そういうふうな記事なんですけれども、改めて確認をしたいんですけれども、この記事について、大臣として、コメントを出されているようですけれども、きょう、この公的場で聞かせていただきたいと思います。

亀井国務大臣 米国農務省が発表された、こういう具体的なことまでは私も承知をしておりませんけれども、発表されたことは承知をいたしております。

 しかし、このことでは、我が国の、私が申し上げていることに合わないわけでありますので、私は我が国の考え方というものを再三申し上げておるわけでありますから、我が国と同等、このことでなければ受け入れることのできないことであるわけであります。

仲野委員 最後になりますけれども、しっかりとこの日本の農業行政を、本当に安心した基幹産業、農業を確立させていく、そういった行政にしっかりと取り組んでいきたいと思うのですが、今、我が党でトレーサビリティーの法案、トレーサビリティー制度でありますけれども、これは大臣として、輸入してくるものに対してでもこの制度をやはり適用できないのか適用できるのか、もしお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。

亀井国務大臣 この件につきましては、かねがねお話もちょうだいしております。

 外国でのトレーサビリティーのシステムを要求する、こういう面につきましては、国際協定との問題があるわけでありまして、この見直しにつきましては慎重に対応していかなければならない、このように考えております。

仲野委員 時間がもうなくなりましたので、国際協調と今言われましたけれども、疑わしきものは使用せず、そういった精神に立って、しっかりと輸入してくるものに対してもその制度を適用していただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

高木委員長 次に、松木謙公君。

松木委員 大臣、どうも御苦労さまでございます。

 三月になって、いよいよ何か春になってきたなという感じなんですけれども、私の北海道ではまだ雪が多くて全然春という感じじゃないんです。まあ、それは駄弁でございますけれども、金田副大臣だったらよくわかると思います。皆さん、季節の変わり目ですので、政務官もおられます、役人の方々も、本当にこのごろインフルエンザだとかそういうことで忙しいので、ぜひお風邪などを召されないように体に気をつけて、一生懸命寝ないで働いていただきたいなと思っております。

 それでは、週刊文春という本を皆さん、大臣は御存じですか。知っていますよね、当然。実は、私はちょっとミーハー的な感覚で、きのう、植防法の質問をするというので、結構自分はどこに行っても太っ腹にいられるぞなんて思っていたら、意外とちょっとびびりまして朝六時前ぐらいから起きてしまいまして、そうしたら、テレビで、何か某先生の記事があってそれを差しとめなきゃいけないという珍しい報道がされていたんですね。それで、早速やじ馬的根性でその本を買いに行ったんです。結局その記事はいまだに読んでいないんですけれども、その前に、ニューヨークでBSEが蔓延しているんじゃないかというような、そういう記事が実は出ていたんです。

 これについて、まず、その週刊文春の記事を読まれたかどうか、お答えをいただきたいと思います。大臣、副大臣、政務官。

亀井国務大臣 私は、見出しだけは読みました。中身までは読んでおりません。

金田副大臣 今見ているところでございます。

木村大臣政務官 今から見るところです。

松木委員 こういう記事というか、情報ですので、やはりなるべく早く手に入れて知っていただきたいなと思うんですけれども、こういう農林水産に関係のある記事、いわゆる新聞の記事とか週刊誌の記事だとか、そういうのを、例えば朝大臣室に行く、そうするとある程度切り抜きになって置いてあるということはないんですか。

亀井国務大臣 いろいろな報道、それはコピーをしてそれぞれのところに配付をしております。

松木委員 では、今回のこの文春の記事は大した記事じゃないということで、大臣のところにはちょっとまだ行っていなかったという感じでよろしいんですか。

亀井国務大臣 実は、私のところにもあったわけですが、きのうも委員会でずっとそれに出ておりましたので、私も見出しで見まして関心は持っておったわけでありますけれども、全部まで読むということでなかったわけであります。

松木委員 わかりました。お忙しいですからそれはしようがないことだと思いますので、ぜひ読んでいただきたいと思います。

 昔、薬害エイズというのがあったんですけれども、やはりこれも初め週刊誌の小さな記事だったと思うんです。そして、週刊誌というのはある意味で新聞が書けないところをちょこっと書いていくみたいなところもあって、意外と後に結構大きな話に発展していくということも間々あるんですね。

 ただ、あくまで週刊誌ですから、それが全部真実かどうかというのはもちろんわからないんですけれども、しかし、やはりこれからの時代というのは情報をしっかり押さえるというのは大切なことじゃないかなというふうに思っておりますし、きょうは酪農関係の質問の日ですので、ちょっとこの記事をもとに触れさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 この記事を読んでみますと、ジャネット・スターベックさんの二十九歳友人女性が二〇〇〇年二月孤発型クロイツフェルト・ヤコブ病で死んだ、そして三年後の二〇〇三年の五月に母親の友人の女性がまた同じ病気で亡くなったという記述があります。そして、この二人には共通点がある。現在は閉まっている地元のガーデン・ステイト競馬場というところに勤めていた、そしていつもそのレストランで昼食をとっていた。

 さらに、このジャネットさんが調べたところによりますと、一九九五年から二〇〇四年の間に、一万一千人しか住んでいないチェリーヒルという地域らしいんですけれども、ここで十人が孤発型クロイツフェルト・ヤコブ病で死亡していた。しかも、全員が競馬場のレストランで人気ランチメニュー、これは特大サイズのリブステーキでポテトもついて五ドル九十九セントというから、結構日本から見ると安いんでしょうね、そういう牛肉を食べていたことがわかったと書いてあります。

 百万人に一人しかならない、そう言われているこの病気なんですけれども、これが多発しているわけです。何となく普通じゃないなという、何か危ないというか、ちょっと背筋が寒くなるような、そんなものを私は感じたんですけれども、大臣、副大臣、政務官、今多分読まれていたと思うんですけれども、少し読んだ気持ちというのをお聞かせ願いたいと思います。

亀井国務大臣 その前に、実は、私、先月ゼーリック通商代表と会いましたときに、日本にお越しになって会ったときにも、日本の文芸春秋が、これは月刊誌の方で、アメリカのプルシナーというノーベル賞受賞者がこのBSEの問題につきましていろいろおっしゃっていることを、私は彼に、こういう日本の代表的な月刊誌にこういう記事をアメリカの方がお書きになっておる、お読みになっておるのか、ぜひこれをひとつよく読んで対応していただきたい、こういうことも申し上げ、いろいろこういう記事につきましてはそのような認識を持って対応しておるわけであります。

 今委員からの御発言、非常に驚くと申しますか、本当に深刻に考えなければならない、こういう認識を持っております。

金田副大臣 松木先生御指摘のように、BSEが発生する、ヨーロッパで大流行した時期があるわけですが、イギリスでもクロイツフェルト・ヤコブ病というような形で死人が百人以上出ている。

 果たしてこれがBSEに関連するものなのかどうかというようなことは科学的にまだはっきりしていないんですけれども、BSEと関係があるのではないか。特にイギリスでは、牛の危険部位であります脳だとかそういったところをハンバーグにまぜたらソフトな味になっておいしいとかという形で、そういった危険部位を食べる風習があったというふうにも聞いてございます。

 今、日本での牛肉は、完全に全頭検査もしておりますし、そういった危険部位を取り除けば安心だ、肉は大丈夫だというようなことで、OIE基準、国際獣疫事務局でそういうことにもなっておりますので、死者が出るんでないかとか人間にうつるんでないかとかということは、このBSEが発生当時、日本でも大変な騒ぎになりましたけれども、そういったことはないのだぞと、風評被害が出ないようにこれからも努めていかなきゃならないなというふうに思っております。

松木委員 政務官もよければちょっと。まだ読んでいるんだったら後でもいいです。

木村大臣政務官 済みません、まだ読んでいる途中でありましたので。

 委員もおっしゃいましたが、たまたまこの記事を目にされたということで御質問されましたので、そういう点でも、我々もいろいろ情報収集ということは大事だと思っております。しっかり読みまして、ただ、国民の皆さんに食の安心、安全をPRするという意味でも、科学的な根拠ということは、やはりこれは大事にしなければならない、その中でいろいろ対応すべきことだと思っております。

松木委員 それぞれありがとうございました。

 それでは、ちょっとこれに関して質問するわけですけれども、ここからはもう役所の方で結構ですので、まず、狂牛病の正式な名称というんですか、これは要するに肉を食べて狂牛病になっちゃったみたいな話なんでしょうけれども、これが正式には何という名前なのか、そして、いわゆるヤコブ病というのと症状はやはり非常に似ているのかどうかということを教えてください。

藤井政府参考人 私も週刊誌を読ませていただきまして、BSE、狂牛病というふうに書かれておりますが、中身を拝見させていただきますと、恐らく変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病のことだろうというふうに思っております。いわゆるクロイツフェルト・ヤコブ病というのは、先生も御案内のようにいろいろな種類がございまして、大きく分けますと、特発性のものと、それから今、比較対象という意味では変異型ということになろうかと思います。

 病状でありますとか検査所見というのがかなり違っておりまして、主な点だけを申し上げますと、特発性といいますか孤発型のクロイツフェルト・ヤコブ病の場合は、比較的高齢の方に多い。そして、進行が非常に急速であって、痴呆症状というのがかなり全面に出てくるということがございます。また、脳波に特有な所見が出るというようなこともございます。

 それに比べまして、変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病と申しますのは、かなり若い年齢の方、三十前後でありますとか、そういう若い年齢の方が比較的多い。そして、症状が孤発型に比べてゆっくりと進行をする。痴呆という症状は最後の末期の方には出てまいりますが、最初の方には精神障害でありますとか感覚障害というものが主体になっているというようなこと。それから、MRIという検査がございますが、それで非常に特徴的な所見がある。

 そういういろいろな検査所見と臨床症状をあわせまして鑑別診断、診断等が現状ではなされている状況でございます。

松木委員 ありがとうございました。

 ここでいうところの変異型のものの方なんですけれども、潜伏期間というのは大体平均して何年ぐらいというふうに言われているか、教えていただきたいと思います。

藤井政府参考人 お尋ねの変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病の潜伏期間ということでございますが、現在変異型ということで診断をされて、わかっておりますのが、全世界で百五十例余りでございます。そして、いつその感染原因となったものをその方が食べたか、ほかの原因もあるかもわかりませんが、知ったかというのがなかなかわからないという状況もございます。

 そういう意味で、潜伏期間を一概に何年と言うのは非常に難しゅうございますが、一番多く発生をしておりますイギリスのいろいろな例から考えますと、専門家の間では約十年程度ではないかということが言われております。

松木委員 この病気というのは、発病したら最後、脳がスポンジ状に変異して死に至る病気であるということで間違いありませんか。

藤井政府参考人 先生の御指摘のとおり、特に病理学的にいいますと、異常プリオンというものが沈着するある特定の部位が非常にスポンジ状になる。そして、効果的な治療法がないものですから、死に至る病気であるということでございます。

松木委員 孤発型クロイツフェルト・ヤコブ病、これは百万人に一人の頻度で発症する難病で、先ほどもお話があったんですけれども、患者は六十歳を超える高年齢層に多いということ、これは認識は正しいですか。そうすると、私あたりがなると、ちょっと何か違う病気かなということになるのか。

藤井政府参考人 先生の御指摘のとおりでございまして、厚生労働省の研究班の報告によりますと、やはり、有病率というのは百万人に一人ぐらい、そして発病は五十から七十代ぐらいが多いということでございます。

松木委員 日本には患者の方というのは大体どのぐらいおられるのか。そして、今言った、先ほどの変異というんですか、そちらの、ひょっとしたら牛と関係のある方の病気になった人というのは、今までこの日本で、この人はそうだという方が特定されたことはあるんでしょうか。

藤井政府参考人 我が国では、厚生労働省の方でサーベイランス事業という形で疾患の把握をできる限りする体制になっておりまして、その統計から申し上げますと、累積患者になりますが、現在のところ約千四百人、人といいますか例の患者さんがございます。しかしながら、その中でいわゆる変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病と診断された方はおられません。

松木委員 この記事によりますと、このチェリーヒルで立て続けの発症例は、孤発型クロイツフェルト・ヤコブ病と違い、亡くなっている人のうち、その半数が二十代から五十代の比較的若い年齢層であるとあります。

 これは、一応は孤発型のヤコブ病ということになっているんでしょうけれども、ひょっとしたら新型の方というふうに考えられるのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

藤井政府参考人 確かに、週刊誌の記事では、比較的若い方が多いということが出ておりました。しかしながら、専門家の方にお聞きをしますと、やはり年齢だけでその病型を判断するということはかなり難しい。先ほども申し上げましたように、臨床症状でありますとか検査所見もあわせて総合的に判断すべきだろうということで、現時点では、この情報では、私どもとしてはいかんとも判断しがたいというふうに思っております。

松木委員 しかし、百万人に一人で、ほとんどが六十歳を超える方ということなので、二十代から五十代の方が半数以上ということを考えれば、まあそんなに、追及するとかそういう気持ちじゃないのですが、いや、これはやはりおかしいぞ、私はそういう気が何かするんですよ。そこら辺、ちょっと、もう一度、余りかたくならないで言ってください。

藤井政府参考人 御指摘ではございますが、先ほど申し上げましたように、専門家に聞きましても、年齢だけでそれを判断するというのはなかなか難しいということでございますので、そこは御理解をいただきたいと思います。

松木委員 それはわかっているんだけれども、しかし、これだけあれば、ちょっと普通じゃないなというふうに、ちょっと言いづらいんでしょうからそこまでは言いませんけれども、そんなような気がします。やはりちょっと普通の病気ではないのじゃないかなというふうに、私はちょっとこの記事を見て感じましたので、つけ加えておきます。

 それで、この原因なんですけれども、これも記事によりますと、原因はこの競馬場のレストランの牛肉のリブステーキであると考えることもできると思います、これを読みますと。これについては、これも言いづらいことなんですけれども、読んだら何となくそんな感じもするわけですよね。ぜひ、ちょっとお答えをしてください。

藤井政府参考人 リブステーキを同じレストランで食べていたというふうに、確かに記事には書いてございます。

 しかしながら、これにつきましても、この記事の内容からだけでは、明らかな科学的根拠があるというふうには判断しかねると思っております。

松木委員 役所の方はしようがないのかもしれないんですけれども、私みたいな凡人がああいう記事を読みますと、やはりこれは、この肉が怪しいぞというふうに思うんですよ。物事というのは、もちろん科学的なものというのは非常に大切であってもらわなきゃいけないんですけれども、やはりもうちょっと、文学的に考えるわけじゃないですけれども、少し全体を見て、ぜひ、これは何かあるなということでも皆さんが気づいていただいて、それをまたどこかで皆さんが調べていただくということになると、いろいろな意味で防止策ということに将来つながるような気が私はするものですから、それでちょっとしつこく聞いたんです。申しわけないですね、いじめたわけじゃないので、許してください。

 チェリーヒル以外に、孤発型のクロイツフェルト・ヤコブ病の集団発生が、この記事によると五カ所で起きているんですね。一九八六年から九〇年、ペンシルバニアのレイアレン地区で十八人、八九年から九二年、ペンシルバニアのアレンタウン地区で十五人、九六年から九七年、フロリダのタンパ地区で十八人、九九年から二〇〇〇年、ニューヨーク州のナッソー地区で十二人、二〇〇一年から二〇〇二年、オレゴン州全体で十四人。

 こういうふうに、ヤコブ病というのは、どちらかといえば集団発生するような病気じゃないというふうに思うんですけれども、これは、どちらかといえば余りあり得ない、珍しいことというふうに私は考えているわけです、これが事実とするならば。その辺についてどう思われますか。

藤井政府参考人 また同じような考えを述べさせていただきまして恐縮でございますが、やはり私どもとしましては、この記事の範囲だけから考えますと、既に科学的にきちんと、バックデータ等もございませんので、いかんとも判断しがたいというふうに思っております。

松木委員 しようがないと思いますけれども、課長さん、きょう記事も読まれると思いますけれども、やはりこれはちょっと調べてみようかなという、そんな気は持っておられますか。

藤井政府参考人 特に、御指摘がありました、ある地域にクロイツフェルト・ヤコブ病が多く発生をしているのではないかという点については、米国の国内の問題でありますから、私どもの方から調べるということは難しいかと思いますが、情報収集についてはきちんとやっていきたいというふうに思っております。

松木委員 アメリカのことであるのでやりづらいということなんですけれども、確かにそうだと思うんですけれども、そこら辺は、日本というのはどうも情報戦で負けることが多いので、別に公式にいかなくったっていいわけですよね、どこかでちょっと、陰の方からいくことだってできるわけです。これはやはり日本人の、いずれまた牛肉というのは多分入ってくると私は思うんですよ。そのこともあるので、どこかで調べるというんですか、表の顔だけじゃなくていいと思うんですよ、それは裏から調べていくという手もありますので、ぜひそういうことも含めて考えていっていただきたいというふうに思っておりますので、ぜひ厚生省の方は頑張っていただきたいというふうに思っております。いかがでしょうか。

藤井政府参考人 この週刊誌の記事全体につきまして、私どもの方も読ませていただきました。

 ただ、私どもの方としては、海外の変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病の発生状況については、常時監視体制という形で、例えば国際感染症学会の情報というのは毎日来ることになっておりますが、そういうものを通して把握をするように努力をしておりました。その中では上がってこなかったものですから、大変こういう記事を見て驚いたということでございますが、先生御指摘のように、きちんといろいろな意味で情報収集をしていくことが大変重要なことだと思っておりますので、現在も在米の日本大使館等を通じまして情報収集に努めているところでございます。

松木委員 厚生省の方ばかりではなく農水省の方々も、やはり食の安全に全く関係ないわけじゃないと思いますので、ぜひ、こういうことに対しても敏感にやはり反応するということを、これから努めて努力をしていただきたいと思いますけれども、できたら御答弁を。

中川政府参考人 海外のさまざまな情報につきまして常に意識を高めて、アンテナを高くして情報収集に努めるということは基本的に大事なことだというふうに思っております。

松木委員 と思いますじゃなくて、ぜひそういうふうに、局長さん、頑張ってやっていただきたいというふうに思っております。

 記事の中に、アメリカでは、アルツハイマー病あるいは痴呆症と診断される人が年間四百万人いるそうなんです。複数の研究機関の合同研究によると、このうち三から一三%が実際はヤコブ病であったことが判明しております。少なく見積もっても十二万人はヤコブ病の公式統計に含まれていない可能性がある。私は既にBSEが蔓延していて、死者が多発しているのを必死に隠していると思いますというこの女性からのコメントが記事に出ているんですけれども、これについてもどんな感想があるか、お聞かせをいただきたいと思います。

藤井政府参考人 先生御指摘の点、私も雑誌を読みまして大変驚いたわけでございますけれども、やはりこれも専門家に私ども聞いてみました。そうしますと、クロイツフェルト・ヤコブ病、特に変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病といいますのは、かなり特徴的な臨床症状をとって、最近は検査手段というものも発達をしてきておりますので、現時点ではアルツハイマー病等の痴呆とはかなり容易に鑑別ができるようになっているということでございました。

 そういうことでございましたけれども、この記事自体に関しましては、それ以上のことがこの記事の中では書いてございませんので、なかなか私どもは判断をしかねるという状況でございます。

松木委員 わかりました。また違う記事をちょっと読みます。

 アメリカの食肉加工業者の中には、消費者の声を受けて、自分の解体場で処理する牛に関して全頭検査をしていこうという動きがある、こういうくだりがあるんですけれども、公式、非公式を問わずこういう話というのは農水省の方に何となく入ってきているような、そういう話はありますでしょうか。

中川政府参考人 アメリカの民間業者の間で自主的な検査を行う動きがあるということにつきましては、報道等で私ども承知をいたしております。

松木委員 こういう動きというのは結構大切な動きだというふうに私は思っておりますので、ぜひこれからも注視をしていただきたい、こういうふうに思っております。

 アメリカの中小企業の精肉加工業者の六割が全頭検査を望んでおり、日本がもしも民間の第三者機関を通した検査でも認めてくれ、輸入を再開してくれたら、多くの精肉加工業者は農務省の指導を無視して自主的に牛を検査に回すことになる、検査に反対しているのは農務省を意のままに動かしている巨大な精肉加工業者であるという記事があるんです。これが事実であれば非常に大変なことだというふうに私は思っているんです。不確定な話も多いんですけれども、これに関してはどう思われますか。

中川政府参考人 今先生が引用されました記事の具体的な事実関係につきましては、私は今それについてコメントする材料を持ち合わせておりませんので、そのことについてはこれ以上申し上げられませんけれども、民間の企業が自主的な検査をするということと、それから日米間の牛肉貿易の再開との関連で申し上げますと、やはり、牛肉の再開問題といいますのは検疫に関する問題でありますので、これは両国の政府間の問題でございます。

 ですから、民間の業者の方々が自主的に何かそういった全頭検査をされるというそのことだけをもって、日本とアメリカとの間で貿易が再開するという条件が整ったというものではございません。やはりここは、政府間できちっとした枠組みをつくっていくということが大事だというふうに思います。

松木委員 それはわかりました。

 平成十六年の三月十六日付の読売新聞、これを見ますと、アメリカは、BSE検査対象とする牛の頭数を、今後一年半の暫定措置として、年間四万頭から一気に十倍の四十六万六千頭に拡大すると発表しております。先ほど仲野先生も聞いたことなんですけれども、このことは仲野先生の話以外で聞いたことというのはございますか。

中川政府参考人 去る十五日でございますか、アメリカ農務省は一時的なサーベイランスプログラムの強化を発表したということは承知をいたしております。ただ、その具体的な内容について、十分詳しくはまだ明らかにされておらないわけでございます。

松木委員 それでは、アメリカの方からこれに関して何か接触だとか、ちょっと話を聞いてもらいたいとか、そういうこともまだ一切ないということですね。

中川政府参考人 この件に関しまして、米国農務省の方から何らの接触もございません。

松木委員 言いづらいかもしれないですけれども、水面下で、非公式でも、ちょこっと、内容はいいんです、話がちょこっと来つつあるような話でもあるのなら聞かせていただきたい。

中川政府参考人 このサーベイランスプログラムの強化策というのを私どもが承知しましたのは、USDA、アメリカ農務省のホームページでございまして、何らそれ以外の情報あるいはチャネルというものはございません。

松木委員 アメリカの国内で処理されている牛というのは年間三千五百万頭、それに比べると、四十六万六千頭というこの数字は全体の一%強にしかすぎないわけなんですけれども、BSEの対策としては十分だというふうに思われますか。

中川政府参考人 今回アメリカが公表いたしましたこのサーベイランスプログラムの強化、これは、もう先生御承知のことと思いますけれども、サーベイランスといいますのは、アメリカならアメリカでBSEがどれぐらい浸潤しているか、あるいはアメリカのBSEに対します対策がどの程度効果があるかということを調べるために一定の抽出をいたしまして検査をする、これがサーベイランスでございます。

 したがいまして、従来、年間二万頭程度やっていたものを今回数の上で相当ふやすということは、このサーベイランスという視点から一定の充実をしていくというふうには理解がされますけれども、日本がアメリカに対しまして現在輸入を禁止している、それを再開に向けて申し上げているのは、全頭検査と特定危険部位の除去、こういう食の安全、安心の確保のためのいわば条件として私どもとしてはアメリカ側に伝えているところでありまして、サーベイランスの強化ということとは異質の問題だというふうに思っております。

松木委員 ちょっとしつこい話になるんですけれども、私は、この検査を十倍にするからぜひ輸入再開していただきたいという話が何かアメリカから来るような気がしてしようがないんですね。それはどう思いますか。

中川政府参考人 具体的にそういう接触は何もありませんけれども、私どもの基本的スタンスは、先般、日本の調査団あるいは国際調査団の報告書にもありますように、アメリカにおきましては、今後、二頭目、三頭目のBSEの牛が発生する可能性もあるということは言われているわけでありまして、そういった事態が仮に生じても、仮にアメリカから輸入が再開されるということであれば、そういったことが起こっても安定的に安心して日本の消費者が輸入牛肉について対応できるように、消費できるように、そういう条件をつくるということが大事だというふうに思っております。

 そういうことからいたしますと、やはり、十倍にふやしたとかということではなくて、再開の条件というのは、これまで繰り返し日本がアメリカに伝えている二つの条件が満たされることが大事だというふうに考えております。

松木委員 もし今アメリカが、こういうことをやったから輸入を再開ということで迫ってきたら、農林水産省、当然ほかの役所とのいろいろなこともあるんですけれども、きっぱりとだめだということをぜひ言っていただきたいんですけれども、それは大丈夫ですね。

亀井国務大臣 かねがね申し上げておりますとおり、考え方は一向に変わっておりませんので、我が国と同等、このことを基本に対応するということであります。

松木委員 これはもうぜひ負けないでもらいたいというふうに思っております。何かの取引材料にされちゃ、とてもじゃないですけれどもたまらないので、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 日本の酪農家は、日々国際競争の激化の中で一生懸命牛を育てて、世界で一番安心な、そして安全な牛肉を供給していると考えております。これに関して、大臣、どうですか、絶対これは日本は一番だぞとお思いになりますか。

亀井国務大臣 酪農経営に大変な努力をしていただいておりますこと、これは十分承知をいたしております。ぜひ、それらの酪農経営の支援、特に、そういう面では、非常に構造改革の面でも進んできておるわけであります、担い手への生産の集中、こういう面でも非常に顕著になってきておりますので、その支援をしてまいりたい、こう思っております。

松木委員 私は当選したばかりなんですけれども、この農林水産委員会に入らせていただいたときに、うちの理事の山田先生などのお話をずっと聞いていまして、初めは私、本当に思ったんですよ、BSEで人がいっぱい死んだという話を私聞いたことないので、先生方、何でこんなに厳しいことをするんだろうというふうに、私ちょっと不信を実は持っていたんです。そして、今度、アメリカの方から入れるのも厳しくするぞということで、民主党は今法案をつくっているわけです。

 例えば交通事故で、これは内容が全然違うんですけれども、交通事故で亡くなる方というのは大体年間一万人ぐらいの方がおられるわけです。ところが、では車はもう禁止だ、使うのはだめだというふうな話にはもちろんならないわけですよね。そして、そんな中で、BSEで大変なことになったというのをほとんど聞かない中でこれだけ厳しいというのは、どうもいわゆる費用対効果みたいなことを考える、そして金を一体幾ら使っているんだろうなという非常な不信感というのが私は実はありました。

 ところが、たまたまこういう週刊誌の記事で、ではおまえの気持ちが変わったのかと言われたら、随分軽い話になっちゃうんですけれども、しかし、やはり不確定な、まだどんなものかよくわからないというものの怖さを何となく私、今回いろいろな意味で実感をしたような、そんな気がするんです。

 ぜひこれからは世界で、先ほど大臣が言ったとおり、日本の酪農というのは世界でも僕は有数だというふうに思っております。吉野家の牛丼も食べたい、しかし安心、安全なことをまずやる。そして、これから大切なことというのは、この日本の中でもっともっと自給、日本のものが食べられるようにするということがやはり一番だと思うんですね。

 テレビとか見ていると、この間日本でBSEになったとき、みんな肉を食べなかったのに、今度は、吉野家の牛丼というのはアメリカの肉だというのがわかっているのに、みんなこれが最後の一杯ですなんと言って食べているんですから、よほど病気になりたいのかな、何かそんな気もするぐらい、ちょっと申しわけないんですけれども、私には理解ができないんです。まあ、それは日本の国民がどうのこうのと私が文句言う筋合いではありません。

 しかし、日本の酪農というのは世界に冠たる酪農、外で何があろうとも、いやいや、日本はしっかりした牛肉でも生乳でもあるぞ、それは外は大変だねと言って、笑うわけにはいきませんけれども、そのぐらいになるというのが、僕は何よりもやはり大切だなというふうに思っておるんです。

 ぜひその方向で、酪農だとか農業もそうですし、やはり食べるというのはとにかく基本中の基本だと思うんですよね。車がないのも困りますよ。困るけれども、車がなければとりあえず走るという手もあります。しかし、食べるものはちょっと代替がきかないわけですので、そういう意味で、農林水産大臣、農林水産省というのは大変に、これからは、もう二十一世紀の政治では一番大切なところというふうに私は思っていますので、ぜひそういうことで御努力をいただきたいんですけれども、どうですか、もっと酪農をどんどん何とかしようというこの意見に関して、ちょっと御答弁を。

亀井国務大臣 委員、まさに同意見でありまして、農林水産業、まさに私たちの命、これをはぐくむもとでもあるわけであります。そういう面では、農林水産物というのは大変重要な役割を果たしておるわけであります。そういう面で、国民の健康保護、また食の安全、安心、こういう視点というのは大変重要なことであるわけであります。そういう面で、我が国の農林水産業が振興するような施策をいろいろ進めてまいりたい、こう思っております。

松木委員 ぜひこれからも努力をしていただきたいというふうに思っております。このことに関しての質問は終わらせていただきます。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 私の選挙区は、オホーツクに沿って宗谷管内から北見管内の知床までの、全国で一番広い選挙区でございまして、宗谷管内というのは、実は金田副大臣の方から、私、引き継ぎをさせていただいた選挙区なんですね。それが票的にどうなっているかというのはよくわからないのですけれども、それはこれからじっくり金田副大臣にもお願いをしようと思っております。

 例えば北見管内の酪農家を例にとりますと、昭和五十年を基準としますと昨年までに、農家の戸数というのが四千九百戸、昭和五十年の段階ではあったわけですね、これが今千四百九十戸と、随分、率にして七割も減少しているんです。一方、全体の生乳の生産量というのは約二・三倍に拡大しています。また、一戸当たりでは、飼養の、飼っている牛の頭数で約四倍、生産量で約八倍になり、現在、平均で四百トン台にまでなっております。欧米に比べて急速に規模拡大が行われ、生産性を飛躍的に向上させてきたところなんですね。これは全道的に同じ状況であるということだというふうに思っております。金田副大臣のところもそうだろうし、そして、先ほどの仲野先生のところもそういうことだというふうに思っております。

 その中で、多頭化に伴うふん尿処理や労働過重、累積負債、後継者不足など、多くの課題が山積しておるのが実態であるわけですね。現在の酪農経営を頑張っている方は、言うなれば、きょう答弁に立っていただいている官僚の皆さんと同じく、その世界では超がつくエリートというふうにも考えることができると思うんです。そういう中で、限界をかなり超えて、もう経営が継続できないような状況にまでなっている方もいるんですね。これはどうしてかというと、限界を超えて、やはり規模拡大してきているんですね。そして、もし奥さんなんかが病気になって倒れたらこれは大変だ、こういうようなことで、酪農家というのは非常に厳しい努力を今続けている、このような状況にあるわけなんです。

 そこで、農業政策の中でも構造改革のことがよく言われるところなんですが、私としては、酪農については、EUなど欧米と比べても遜色のないところまで構造改革が既に進んでいると考えているわけですけれども、農水省としての酪農の構造改革についての考えというんですか、あるいは私の意見に対してどういうふうにお考えか、ぜひお答えをお願いいたします。これは大臣でなくても結構です。

金田副大臣 酪農の生産性の向上ということに向けて、一生懸命に農政を進めているわけでございます。

 今先生御指摘のとおり、酪農あるいは畜産農家については相当の規模拡大が進んできておりまして、ヨーロッパ等に比べても決して引けをとらないような状況が北海道ではあるのだろうというふうに思っております。

 ただ、それに伴う負債が大分あるとか、あるいはいろいろな、ふん尿対策がまだ完全に進んでいないとか、そういう課題に積極的に取り組みながら、酪農王国の実現を目指して、北海道の集中的なところについては引き続き努力してまいりたいというふうに思っております。

松木委員 きのうの植防法のとき、私、同じことを言ったんですけれども、私は選挙区を転勤命令で北海道二区から十二区に三百キロ以上も直線で移った人間なんですけれども、都市部で選挙をやっているときというのは、酪農地帯なんというのはさっぱりわからなかった。そして、例えば牛が生まれるところなんかも当然見たことなかったし、搾乳の時間なんというのも知らなかったし、十二区というところに移って全部それを勉強させていただきまして、やはりかなり大変なんですね。重労働であることは間違いない。しかし、子牛が生まれるときの感動というのは、私、初めて味わったんですけれども、これはすごくいいものだったなというふうに思います。

 いずれにしても、酪農家の皆さんが非常に頑張ってやってきたということは、今の副大臣のお話でもしっかり認めていただけたのかなというふうに思っております。今後ともいろいろな、諸政策というんですか、やはり食を預かる人たちというのは、ちょっと違う人たちと、また同じでなくていいと私は思うんですよね。ですから、そういうことを踏まえながら、これからもぜひ農水の政策を頑張ってください。

 ことし二月から、食料・農業・農村政策審議会生産分科会畜産企画部会で、新たな酪肉近代化基本方針の来年三月策定に向け検討に入ったところであります。近年、北海道の酪農は規模の格差が大きくなってきており、北海道における年間の生乳出荷千トン超のメガファーム、これの戸数が全道の受託戸数の四・六%、そして出荷乳量の一六・一%を占めるまでになったところであります。

 これまでの農政の流れの中で、際限のない規模拡大政策がとられてきたところですが、行き着くところまで一部では拡大がなされたということですが、ただ、このメガファームが私は究極の目的だとは考えていないんです。メガファームや府県の酪農家への後継牛を実質的に供給している北海道の家族経営が維持できなければ、近い将来、生産資材である後継牛の確保は困難になってくる状況も懸念されているわけであります。したがいまして、我が国の酪農の健全な発展に向け、基本的には、夫婦二人で労働的に経営ができる規模においても経営が維持発展できる農政の展開が必要だと考えております。

 また、メガファームばかりできても、地域の集落、そういうものがやはり崩壊して維持できなくなってくるわけでございます。したがって、酪肉近代化基本方針での論議、さらには基本計画における酪農の位置づけにも絡みますが、どの経営タイプを一番の基本に置くかということについては、持続が可能な家族経営を主体とした酪農、畜産経営、これに置くべきであると私は考えておりますが、いかがでございましょうか。

井出政府参考人 酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針でございますが、これは平成十二年に策定されております。その中ではっきりと、ゆとりある生産性の高い酪農経営の実現に向けて、家族経営を基本として、こううたっております。また一方では、土地条件に恵まれた地域では、複数戸が協業化をして法人経営になっていく、そういう形態もあり得る、そういうことで、地域の条件や経営実態に応じて多様な経営が展開し、生産が増大していくことを図っていこう、こういう趣旨を述べておるところでございます。

 現在、この基本方針の見直しを一年かけてしようということで、緒についたところでございますが、いずれにしましても、北海道を初め主要酪農地域の酪農家の皆さんが明るい将来展望を持って酪農業にいそしめるよう検討してまいりたいと思っております。

松木委員 もう一つお聞きします。

 直接支払いの先進地であるEUの一戸当たり生産規模はどのようになっているのかをお聞きしたいと思います。

井出政府参考人 EUの経営規模でございますが、平成十三年のEUにおける一戸当たりの経産牛の飼養頭数は二十九・四頭でございます。一方、我が国では、同年の経産牛の飼養頭数は三十四・九頭、北海道では五十・七頭、都府県では二十八・三頭でございますから、北海道は優にEUを上回っており、都府県でもEUとほぼ同程度の水準でございます。

松木委員 EU等と遜色のないほど規模拡大をしてきた我が国の酪農でありますが、WTO農業交渉、そしてFTA交渉の決着次第では壊滅的な状況になってしまうということも危惧しているところなんですね。

 アメリカ、EU等は、WTO農業交渉に当たり、価格政策から所得政策に農業予算を増額させて、所得補償や直接支払い政策に移行し、効率優先から環境保全への農政転換を進めるなど、足場を固めて挑んできているところです。これまで我が国は多面的機能への配慮、多様な農業の共存、こういうことを言葉に挙げて交渉をしているわけですけれども、日本の提案を裏づける具体的な国内政策がない中での交渉となってしまっておりまして、関係各国に対しても交渉が弱くなっているということですね。また、交渉担当者においても苦労されているのではないかなというふうに思っております。

 このような中で、政府は、WTO農業交渉後の農政方向の検討に向けて、新たな食料・農業・農村基本計画の見直しの中で、欧米の直接支払いを視野に置きながら、本年一月から、食料・農業・農村政策審議会の中に企画部会を設置して検討をスタートさせたところでございます。このような中で、同基本計画の見直しに伴う品目横断的な政策論議は、まず畑作づくりから論議に入り、来年度国費予算概算要求までに大枠が決まる模様でありますが、現行価格制度の見直しも視野に、大規模畑作における仕組みとその対象などが論点とされております。

 このような中で、酪農についてはどのような方向をお考えなのかをお聞きしたいんですが、現行の補助金制度、そしてならし事業等だけで我が国の酪農の経営を守ることができると考えているのかどうか。もしそうお考えであるのであれば、私は、取り返しがつかなくなるというふうに考えております。

 したがいまして、酪農においても欧米の直接支払いを視野に入れながら、WTO及びFTA対策に向けて、国内生産が維持されるよう、消費者のための政策として、生産に対する直接所得政策、環境等直接支払い政策の具体化、この二つが急がれると考えておりますが、いかがでしょうか。

井出政府参考人 酪農経営に対しても直接支払いをというお話でございます。

 今委員からお話がありましたように、畑作経営とか水田作経営といった経営体につきましては、同一の農業経営内におきまして複数の作物を生産しております。従来、品目ごとに価格政策が行われてきたわけでございますが、こういった品目ごとの政策が必ずしもうまく連携、機能しないといったことの反省からも、今般、基本計画の見直しに際しまして、担い手に集中をした品目横断的な政策への移行が検討されているところでございます。

 一方、酪農経営につきましては、先ほど来御論議が出ておりますように、基本的には専業単一経営が大宗を占めておりまして、品目横断的に施策を展開する意味は、畑作経営等に比べて少ないと考えております。酪農経営の安定を図るためには、やはり酪農経営の収入の大宗を占めております生乳について、需給、価格の安定を図ることが基本ではないかと考えております。

 現行の加工原料乳生産者補給金制度につきましては、飲用向け、加工向けの生乳の用途別の需給の安定を図るとともに、酪農経営の安定を図る制度として、今後とも根幹となるものと考えておりますけれども、いずれにしましても、審議会における基本計画の見直しの検討と連携をしながら、現行制度について所要の検証も行いまして、必要があれば見直しを行っていくことになるものと考えております。

松木委員 時間が来たようでございますので終了させていただきますが、いずれにしましても、食というのは、我々はどこからでも切り離すことが絶対できないものだというふうに思っております。ですから、しっかりと、今、効率だとかいろいろなことを言われて、なるべくお金をかけないで何でもやっていこうよという話というのが横行しているわけなんですけれども、これはこれで僕はいいことだと思います。しかし、事食に関して、農林水産業に関してというのは、そうでなくて、やはりしっかり我々のものということをもう一度認識してしっかりこれを守っていく、これが何より僕は大切だというふうに思っております。

 守っていけば発展もするだろうし、何せ日本というのは耕地面積も狭いわけですから、いろいろな意味で不利な部分はあるわけです。しかし、そういうものをしっかり踏まえながら、やはり酪農経営の皆さんなども、私も現地に随分行きましたけれども、大変御苦労されています。ぜひ農水省が先頭となって、我々も一緒になって、発展をするためのいろいろなことを考えていきたいと思っております。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

高木委員長 次に、白保台一君。

白保委員 連日、大変御苦労さまでございます。

 日本人の食に対する考え方というのが非常に多様化をしてまいりました。食の安全、安心というのが大変な大きな関心事というふうになってきたわけでございます。その中で、日本の農業、畜産業を取り巻く状況というのは、BSEや鳥インフルエンザなどの問題、またFTAの自由貿易交渉などの問題等があって予断を許さない状況にある、こういうふうに思います。

 このような状況の中で、国内での畜産物の安定供給というものは、その役割というものが今改めて重要となってきていることは間違いないと思います。自給率の向上や安全、安心という観点を踏まえた上で、生産者が意欲を持って取り組める畜産、酪農の基本政策を確立していかなければいけない、そういう時期だろうと思います。

 今回、審議に当たりまして、十分な審議を尽くしていかなきゃなりませんが、何せ時間がありませんので、その限られた時間の中で伺っていきたいと思います。

 先ほどからBSEの問題で非常に議論がなされました。私たちは、ここ二、三年の間に、BSEという大変な大きな問題を抱えて、特に食に対する不信というものが大きな問題になってきた。したがって、昨年も一昨年もみんなで工夫をし研究をし、与野党一緒になって、このBSEの問題等を含めて、しっかりとしたシステムをつくっていかなかったならば食に対する不信というものは払拭することができない、そういうことで、昨年等もみんなで努力をして現在の形というものをつくり上げた、そして食に対する信頼というものを回復するために頑張ってきたわけであります。

 ところが、今回、アメリカとの問題を見たときに、やはりこれは大きな、我々が立法府として立法をしてきた、そういう立場からいっても、しっかりとした対応をしていかなければいけないだろう。

 先ほどから議論を聞いておりますと、いろいろなことの議論がなされました。ただ、私は横から見ていて、どうもよく見えない。アメリカとの関係が今どういう状況にあるのか、何か膠着状態にあるのかな、ちゃんと何かあるのかな、やっているのかなと。しかし、そうはいっても、ここから言っておるところの条件というもの、これはやはり踏まえていかなければならない。特定危険部位の除去だとかあるいは全頭検査という問題については、これは譲ることのできない問題ですから、そういうことを踏まえて、今の状況についてお答えをいただきたい、こう思っております。

亀井国務大臣 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおり、安全、安心、畜産物の供給主、これは大変重要なことであるわけでありまして、特に、我が国におきましては、BSE後、消費が三割、それが今日九割を確保しておる、そして昨今、BSEの発生、こういうこともありましたが、そのことは、消費者の皆さんに、やはり我が国がやっております屠畜場におきます全頭検査、そして特定危険部位の除去、このことを理解していただき、消費の減退というのはないわけであります。

 アメリカとの関係につきましては、ベネマン農務長官、あるいはゼーリック通商代表、そして最近、三月十五日にボーカス上院議員がお越しになりまして、私は会談をいたしました。先方からも、我が国のことにつきまして、科学的知見等々のことにつきましても御指摘がありましたが、私は、先般来御答弁申し上げておりますとおり、我が国と同じような、基本的に同一のことが必要である、このことを再三申し上げておるわけでありまして、今日までアメリカから具体的なことというものはないわけであります。

 今、私は、アメリカが適切な提案をされることを期待しておるわけでありますし、我が国といたしましては、先ほど来申し上げておりますとおり、基本的な我が国の考え方をさらに求めてまいりたい、こう思っております。

白保委員 議論したいことはいっぱいあります。今回の課題の中でも、畜産、酪農の今後の基本的な方向性の問題だとか、あるいは財源の問題だとか、あるいはまた畜産の環境対策の問題だとか、その他もろもろにあるわけでございますが、私、一つ絞ってお聞きしたいと思います。

 先ほどは、金田副大臣を初めとする酪農王国北海道からの声がいっぱいありましたけれども、実は、それに比ぶべくもないわけですけれども、私どもは島嶼県ですから、小さい島々がいっぱいあります。そういった島々というのは、キビ価格の問題でまた大変にお世話になるわけですが、これまではサトウキビを植えて生活をしていた人たちも、今畜産農家に変わりつつあるわけですね。

 例えば、私の出身地の八重山群島というのがありますが、石垣島なんかでもそうですけれども、黒島というのがその近くにありますが、この島なんか、人口二百人、牛二千頭、こういったことでもって一生懸命やっている。しかも、今竹富町長をやっている方が県の畜産公社の専務理事をやっていて、ダニの撲滅について一生懸命取り組んで、ここ数年前にダニ撲滅が成功した。そういったこともあって、畜産に対する意欲というものが大きく伸びてきています。

 そして、子牛が非常によく売れておりまして、そういう面では畜産に対する大きな意欲が出てきているという状況の中でBSEの問題が出てきて、毎月毎月子牛を連れていって、行くたびに暴落していく、こういうことで、本当に農家が大変な、意欲を持って取り組み始めたにもかかわらず、こういう状況になってしまったということで、非常に農家が落胆をしておりました。

 私も、現地を何度も激励に行ったり、対応策を一緒になって考えようということをやったり、やってまいりましたが、そういうことの中で、今回の価格決定の中にあって、制度の安定的な運営と、そしてまたこの運営を確保するためのきっちりとしたあり方というものを一層確立していかなきゃならないんじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございますが、御答弁をお願いしたいと思います。

井出政府参考人 今先生からお話がありましたBSE発生時におきましても、肉用牛肥育経営安定対策事業、俗称マル緊、あるいは、それで足りませんで、BSEマル緊というものをつくったわけでございますが、これらの事業は肥育農家の経営安定に大変な働きをしてまいりました。今般、十五年度で一応の終期を迎えることになっておりましたが、こういった肥育農家の経営安定対策としての重要性にかんがみまして、十六年度も同様の仕組みで継続して実施することといたしております。

 こういう制度をしっかりと持ち続けることによりまして、沖縄を初め、南九州の肥育地帯の生産の維持拡大に努力してまいりたいと思っております。

白保委員 それから、先ほども環境問題等に関連して質問がございました。先ほど何項目か申し上げましたけれども、そういった一つ一つをしっかりと確立することによって、冒頭に申し上げましたように周辺諸国とのいろいろな問題もありますし、そういった面ではしっかりと確立をしてもらいたいということを申し上げて、時間が参りましたので、終わります。

高木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 BSE問題や鳥インフルエンザなど相次ぐ問題に、畜産、酪農関係者は重大な影響を受けていると思います。

 しかし、こんなにも国民が食の安全あるいは食料の供給体制について考えさせられたということはないと思うんですね。こんなにも日本の食料が輸入に頼っているのか、一度事件が起きると全く供給そのものが危うい状態になるのか、そうした点を考えさせられている今、これはまさにチャンスでもあると言えると思うんですね。

 死亡牛からもBSEが発生した。現場においてはこれが風評被害であっては絶対にならないわけですけれども、しかし、これは、この間の国会の論戦があって、努力があって、死亡牛の検査もしっかりやる、そこから出てきた結果でありますので、日本の検査体制がいかに万全であるのか、ですから、もうこれから先、日本で市場に出回るものは安心して食べていいんだということのまさに証明であると思うんですね。

 そのことを本当に生かして、日本の生産者が胸を張って頑張っていける、そういう農政にしていけたらいいな、そういう期待を込めて質問に入っていきたいと思うんですけれども、そういう点で、日本共産党としては、二〇〇四年度の畜産、酪農対策の決定に当たって、BSE対策や鳥インフルエンザ対策とあわせて、四点、三月十一日に大臣に申し入れをいたしました。

 そのうちの二点について、一つは価格の問題でありますが、酪農、畜産物の国内生産を拡大するために、再生産が確保できるよう、加工原料乳補給金単価、肉用子牛保証基準価格は引き上げること、二つ、新たな酪農肉用牛近代化計画に当たっては、競争力強化や規模拡大ではなく、実情に合った適正規模で牛の生理を大切にする経営などに具体的な支援策をするべきだと求めておりますが、この二点についての回答を求めたいと思います。

井出政府参考人 まず、加工原料乳の補給金の単価及び肉用子牛保証基準価格の算定でございますが、こうした畜産物価格等につきましては、現行の法律の規定に基づきまして、生産条件と需給事情その他の経済事情を考慮いたしまして、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞いて決定されることになっております。

 このため、平成十六年度の加工原料乳の補給金の単価及び肉用子牛保証基準価格につきましても、ルールに従い算定をいたしまして、本日、審議会に諮問し、御審議をいただいているところでございます。

 なお、算定ルールに基づき算定した諮問値につきましては、加工原料乳の補給金単価はキログラム当たり十円五十二銭でございまして、昨年に比べて二十二銭の下げ、肉用子牛の保証基準価格につきましては、乳用種で十二万九千円、これが二千円の下げ、その他の品種は据え置きでございます。

 それから、もう一つのお尋ねでございます、酪農肉用牛近代化計画の策定に当たっての配慮事項ということだと思います。

 御指摘がありましたように、我が国の畜産は、国民生活に欠かせない安全な食肉や牛乳・乳製品等の安定供給という基本的使命に加えまして、農業総産出額の約四分の一を占め、地域の雇用や経済を支える、それとともに、自給飼料生産を通じまして、自然環境の保全等重要な役割も果たしております。

 しかしながら、現在の我が国の酪農、畜産の現状を見ますと、担い手の確保でありますとか、ゆとりある経営のための労働負担の軽減といった課題もございますし、自給率向上のためには、輸入飼料に依存した畜産から自給飼料に立脚した酪農、畜産経営へ転換していかなければならないという課題も抱えてございます。さらに、先ほど委員から御指摘ありましたように、海外でのBSEの発生や高病原性鳥インフルエンザの流行によりまして、安全、安心な国産畜産物の供給の重要性が増してきている、こういった新たな課題も出てきております。

 こうした諸課題に対処するため、現在、食料・農業・農村政策審議会の畜産企画部会におきまして議論を始めていただいたところでありますが、ゆとりある生産性の高い酪農、畜産経営を実現する、あるいは、日本型放牧の普及など自給飼料基盤に立脚した資源循環型の大家畜畜産を実現する、安全・安心で良質な畜産物の安定的な供給を図る、こういったことを主要課題として検討をお願いしているところでございまして、酪農、肉用牛生産の安定的な発展に資するため、新たな酪肉近を一年かけてしっかりと策定してまいりたい、こう考えております。

高橋委員 ルールはよくわかるんですけれども、そういう中で、農協関係者の皆さんが全国から国会においでになって陳情運動もしているわけですが、せめて現状価格の維持ということを求めていらっしゃるわけで、そういうルールにのっとって、少なくとも維持というふうなことを言っているのかなと私たちは思うのですけれども、引き続いて、こうした声を踏まえて維持以上の対応をしてくださるよう、これは要望にさせていただきたいと思います。

 二つ目に、関連して続けていきますけれども、先ほど来取り上げられている家畜排せつ物法に基づく処理施設の問題であります。

 猶予期間がことし十一月に迫っているという関係でありますが、昨年の三月に農水省とJA全中、全農との共同による畜産環境整備促進プロジェクトが取り組まれて、十五年度末で六割まで進んだということでありますが、問題は残りを十六年度中に全部やるという計画であります。

 内訳を見ますと、施設整備が六千百九十七戸で、七三・三%の進捗、簡易対応が千八百四十六戸で、二九・四%。これを全部やるとなると、簡易の方は千三百十三戸、十五年度の約三倍を一気にやる、施設整備では二千六百六十戸、十二年から十四年度で整備した分を超えるだけの量を一気にやるという、法で決めてしまったからという計画になりますけれども、実際やれる見通しがあるのかどうか、伺います。

井出政府参考人 家畜排せつ物の処理の関係でございますが、御指摘のとおり、家畜排せつ物法に基づきます管理基準がことしの十一月から全面的に適用されることになることから、こうした処理施設の整備を計画的に推進してまいりました。

 御指摘のように、今、十五年度では、全体で五千八百戸の施設整備を予定しております。これについては大体予定どおり進んでおりますが、十六年度は七千八百戸の要望がございます。このため、十六年度予算案におきましても、公共事業、非公共事業とも前年を上回る額を確保したところでありますが、酪農、畜産農家からの非常に希望の多い二分の一補助つきリース事業につきまして、このたび、厳しい財政事情の中ではございますが、十五年度まで毎年二百十億円だったものを十六年度は三百一億円ということで、ほぼ五割増ということで、大幅に増額をいたしているところでございます。

 こうした各種の支援措置によりまして、十月末までには計画どおりの施設整備が完成するよう努力をしてまいりたいと思っております。

高橋委員 私のいる東北は、この全国の整備率よりさらに平均で一〇ポイント整備がおくれており、十六年度で四千戸の整備をしなければならないという大変深刻な状況にあります。

 ある県の農協の幹部にこの窮状を訴えられたときですけれども、素堀り、野積みが悪いというのはもう十分わかっていると。そこに至る過程が、環境の問題、重大な問題があってのことであったので、十分わかっているわけです。ただ、農家にそれを負担しろというのは、もうとても無理なんだということをお話しされました。

 また、堆肥センターなどを先進的にやっている町もあります。岩手県の紫波町というところに行ったときに、町ぐるみで非常に清潔な形でのセンターがつくられて、また町のイチゴなどの農産物に活用されている、そういう受け皿もしっかりしているという取り組みがあって、うまくいっているところもあるよと紹介もしたんですけれども、しかし、実際に、コストが高い肥料の受け皿がないというのも現実にあるということもまた言われたわけであります。

 そういう現場の声にこたえてぜひ伺いたいと思うんですが、一つは、罰則規定の問題がある。この適用に当たっては、やはり延期も含めて、一律に、期限が来たから適用するよということがないように考えていただきたいと思いますけれども、いかがか。次に、全体の三分の一が簡易施設である。防水シートあるいはビニールハウスで対応でもとりあえずはいいよということになっておりますけれども、長期に耐え得るものではない、これをどう考えていくのかということをまず伺いたいと思います。

井出政府参考人 管理基準の適用猶予期限を延長すべきではないかという御意見ではないかと承りましたが、これにつきましては、ほぼ五年前から、酪農、畜産農家、今お話のありました厳しい状況の中ではありますが、やはり環境問題をクリアしないでこの狭い我が国で畜産を続けていくことは難しい、そういう認識に立って、協力しよう、やろうということになったわけでございまして、既に整備を率先してやられた農家もたくさんおられますので、そういったことで、一方的に延長するということは公平性に欠けるのではないかというふうにも考えられます。もともと、この法律がつくられましたのは、家畜排せつ物の不適切な処理が深刻な水質汚濁等の原因の一つであり、漁業等への影響もはかり知れないということもありまして、かつ、人の健康にも影響を与える可能性もあるということでございますから、その是正を社会的に厳しく求められておるということを考慮いたしますと、猶予期限を延長することは適切ではないと思っておるところでございます。

 それから、簡易対応でことしの十一月末はやっていこうという農家につきましても、数年後に恒久的な施設に変えるという方もあろうかと思いますが、現在でも、公共事業、非公共事業の環境対策というのは今後も続くわけでございますので、そういった事業を活用していただくことも可能なのではないかと考えております。

高橋委員 社会的に厳しくというお話でありましたけれども、この点について、二つ関連して伺います。

 個人の農家の、そういう負担がとてもできない、これでは離農せざるを得ないという声に対してしっかりこたえて、農家の負担がなるべく少なくなるような対応をしていただきたいということ。もう一つは、逆に、規模が拡大しているところこそその処理が大変であるということは、もう明確であるわけですね。

 社団法人中央酪農会議の平成十二年度の全国基礎調査で見ましても、北海道はまだしも、都府県に至りますと、飼養規模別に見た家畜排せつ物の処理状況について、十九頭以下のところは六〇・四%が飼養の範囲、経営の範囲内で処理ができているのに対して、八十頭以上の農家は二四・八%にとどまっている。耕地還元をしても、内や外で使っても処理できないのが八・六%残っているということが指摘をされておりまして、改めて、規模が大きい農家ほど処理が困難である。

 小規模だった時代には自前で農地や草地に還元してきたという背景もあるわけですね。そういう中で規模拡大を進めてきたことも、この国の責任を考えるならば、そこにしっかり、社会的責任を果たすためにも、やはり国の責任も明確にしていかなければならないと思いますけれども、その点で大臣の決意を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 この制度につきましては、期限を決めていろいろやっておるわけでありまして、また、今回大幅な増額もいたしまして対応しておるわけでありまして、いろいろ厳しい状況下にあろうかと思いますが、ぜひそれらに沿ってこの使命を果たしていっていただきたいとお願いを申し上げる次第であります。

高橋委員 時間になりましたので、非常に残念ですけれども、先ほど、最後にお話しした堆肥の利用の問題で、耕種農業の中で堆肥利用が減っている、そういう背景もありますので、この点での連携などに支援をしていただきたいことを要望して、終わりたいと思います。

 以上です。

高木委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党の山本でございます。

 今回は、メキシコとの自由貿易協定についてお伺いしたいというふうに思います。

 一年四カ月に及ぶ交渉、あるいは農業分野で難航と言われる中で、合意に達したというふうに言われておりますけれども、この今回の合意で、豚肉、あるいは牛肉、鶏肉といったものの関税、低関税枠ということでありますが、これで日本にどれくらいのものが入ってくるというふうに見通しがあるのか、お伺いします。

村上政府参考人 お答えいたします。

 メキシコとの交渉に当たりましては、全体的な考え方といたしまして、農林水産業の多面的機能に配慮する、あるいは、我が国の食料安全保障の確保、農林水産業における構造改革努力に悪影響を与えないというようなことに十分留意して、交渉に取り組んでまいったわけでございます。

 今回、メキシコとのFTA交渉の大筋合意におきまして、品目ごとの国内農業における重要性などを勘案いたしまして、必要に応じまして例外品目あるいは関税割り当てを設定する、それから、関税撤廃につきましても一定の経過期間を設定するというようなことで、国内農業への影響を極力回避するということに留意したところでございます。

 また、万が一の場合には、関税の引き下げ、撤廃によって輸入が急増したというような場合に、国内で影響が生じたときに発動できる二国間セーフガードも確保したところでございます。

 輸入量の増加につきましては、為替レートの動向とか、それから、他の国との競争条件などを勘案することが必要でございまして、個別品目が具体的にどれくらい増加するかということについては、見通すのはなかなか困難であるというふうに思っております。

 いずれにしましても、今申し上げましたような配慮をしながら大筋合意をしたということでございまして、メキシコからの農産物、畜産物の輸入が急増するというふうには考えていないところでございます。

山本(喜)委員 今、個別の品目については見通しは立っていないというふうなお答えだったようでありますが、見通しが立っていない中でどうして国内の農業には影響がないという判断ができるのか、見通しがあって判断したのではないかというふうに思うんですが。

 新聞に載っていたわけですけれども、経済産業研究所というところの試算によると、豚肉を初めとする肉類の輸入が五倍に拡大するのではないかというふうに言われているわけですよ。民間の機関でそれだけ見通しがあるのに、日本政府として、見通しがない中でどうして影響ないというふうに言われるのか、もう一回確認をお願いします。

村上政府参考人 例えば、関税割り当てを設定した場合などのように、豚肉の場合は従価税を半分にするということで、差額関税制度の根幹を維持したところでございます。その枠の設定も、それを輸入するというふうに義務的な輸入ではなくて、それは、ほかの輸出国と競争する中において、メキシコが日本に輸出を実際に実現できるかということにかかっておるわけでございまして、そういう中で、為替レートの動向とか他の輸出国の関係もございますので、個別品目一つ一つについて定量的に分析するのはなかなか難しいわけでございます。

 ただ、そういう中で、我々としては、それぞれの品目の関税率の水準とか国内の需給状況、あるいは国内関係農家の構造改革の状況、さらにはメキシコの当該品目についての輸出競争力、輸出余力、それから品質などを十分勘案して、先ほど申しましたような適切な経過期間の設定とか、関税割り当て枠の設定などを行いまして、国内農業には極力影響が及ばないように努めて交渉に当たったところでございます。

山本(喜)委員 確かに、三月十一日の石原次官の会見でも、国内農業には影響がないようにやってきたというふうには言われておりますが、しかし、全国養豚協会という方から、極めて経営的に厳しくなるというようなことも言われておるわけです。そして、大臣の十二日の記者会見でも、この国内対策というものについては、細部についてはもう少し考える必要があるというふうにも発言をしているわけですね。

 こうした点について、対策というものをやはり考えておられるのかどうか、詳しくお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 今、村上審議官から御答弁申し上げたようなわけでありますが、特に、我が国の今回の対応につきまして、豚につきましても差額関税制度の根幹を維持したわけでありますし、その他の品目につきましても、品目ごとの国内農業における重要性、このことも十分勘案をいたしまして、必要に応じて例外品目、あるいはまた関税割り当て、さらには経過期間、こういうものを設定して、あるいは二国間のセーフガードを確保する、こういうことで国内農業への影響は極力回避できたものと考えております。

 しかし、これはこれからの推移ということもあるわけでありますので、そういう面で私は、今申し上げましたようなことで、今回の交渉に当たりましては、十分国内農業への影響を回避するということで対応したわけであります。

 しかし、今後、いろいろの状況というものが出てくるということは考える面もあるわけでありますので、そういう点で、長期にどう対応するかというようなことでは考えていく面が必要、こう申し上げたようなわけでありまして、今日、メキシコの問題につきましては、一年四カ月にわたりますいろいろの交渉と、そして産学官での、農業団体も含めましての研究会等も重ねてきたわけでありますので、そういう面では十分対応できる、このように考えております。

山本(喜)委員 今回のメキシコとの合意を受けて、これからアジアの諸国とも交渉を加速化させていくという政府の方針でありますけれども、その場合の農林水産省のスタンスというものについてお伺いをしたいわけです。

 今回、メキシコの場合は農業のGDPに占める比率は四・四%。ところが、タイになると一一・二%、フィリピンでは一七・四%ということで、メキシコ以上に手ごわい相手になるというふうに言われているわけです。今回のメキシコとの協定は、農産物の市場拡大ということを初めて決めた協定でありますが、今後、アジア諸国と展開していく場合に、今回のメキシコとの取り組みの仕方がひな形になっていくというふうに考えていいのかどうか、お伺いします。

亀井国務大臣 基本的には、先ほど申し上げましたとおり、ASEAN諸国とのFTAの交渉、これに当たっては、メキシコとの交渉の経験を生かす必要があると思います。これは、それぞれの国々、いろいろ事情が違うわけでありますから、また考え方も違うわけでありますから、交渉の面での経験、これは生かしていかなければならないわけであります。

 なお、農林水産業の多面的な機能、これに配慮する。あわせて、我が国の食料の安全保障の確保や、農林水産業におきまして今進めております構造改革の進展ぐあい、このことも十分留意をしながら進めなければならないわけでありまして、何といっても各国の抱える諸事情というものはそれぞれ違うわけでありますので、できる限り情報の収集、あるいは分析、こういうものを行った上で、個別品目の事情にも応じて、そして関税撤廃の例外品目を設けたり、あるいは関税割り当て制度や長期の経過期間を設ける、こういうこと等につきまして十分考え、また、それぞれの国の事情があるわけでありますから、戦略的にそれぞれの国と対応していくということであります。

山本(喜)委員 メキシコとの交渉は一年四カ月かかりましたけれども、アジア諸国、個別に、タイなりフィリピン、なっていくわけですが、スパンはどういうふうに、日程的にはどういうふうになっていますか。

村上政府参考人 お答えいたします。

 韓国とのFTA交渉につきましては、昨年の秋の両国の首脳の会談におきましてその交渉入りを決めた際に、ほぼ二年後に大筋合意することを目標にするということを確認いたしております。

 それから、ASEANの各国につきましては、特段の期限は設けておりませんが、できるだけそのモメンタムを失わないように、早期の合意を目指すというような趣旨の了解になっているところでございます。

山本(喜)委員 韓国の場合は二年以内。ただ、今の日本の基本計画、食料・農業・農村基本計画があります。今、これが見直しに入っている段階ですね。果たして、その構造改革というものとFTAの交渉ということの両立が図られるのかどうか。構造改革が間に合わないうちにどんどん交渉だけが進んでいくということになると、これまた、日本の農業の多面的機能ということにも大変大きな影響を与えるのではないかというふうに思うわけです。

 特に、この間のメキシコでも、経済産業省の方は、これによって工業製品を含めて四千億円を超える貿易がふえるというふうに言われているわけです。この間の日本の農業の状況を見ますと、やはり工業中心ということで、農業がどんどん切り捨てられてきたということがこの間のずっとパターンなわけです。

 そうした意味で、この日本の構造改革を進めるということとFTA交渉、この両立といいますか、これについての展望がどうなっているのか、お伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 このFTAの交渉を進めるに当たりましては、まず、やはり必要に応じまして関税撤廃の例外品目を設ける、あるいは関税割り当て制度や長期の経過期間を設ける、こういうことでいわゆる輸入が増大をして、そして国内の生産にそのまま置きかわるということのないようにこれを考えていかなければならないわけであります。

 そういう面で、中長期的に構造改革を進めて、国際競争力を強化する必要があるわけでありますし、また、やはり構造改革の円滑な推進、こういう面も十分留意をしてこのFTAの交渉に対応していかなければならない、このように思っております。

山本(喜)委員 以上、時間が来ましたので、これで質問を終わるわけでございますが、再三大臣から言われているとおり、日本の農業の多面的機能の維持、そして食料安保の確保という立場をきちっと確立をして、頑張っていただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。

     ――――◇―――――

高木委員長 この際、北村誠吾君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による平成十六年度畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。北村誠吾君。

北村(誠)委員 自由民主党の北村誠吾でございます。

 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、平成十六年度畜産物価格等に関する件の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読します。

    平成十六年度畜産物価格等に関する件(案)

  牛海綿状脳症(BSE)及び高病原性鳥インフルエンザの発生、WTO農業交渉及び自由貿易協定(FTA)交渉の本格化など、我が国の畜産・酪農を取り巻く情勢は、極めて厳しいものがある。

  よって政府は、平成十六年度畜産物価格等の決定に当たっては、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 国際的な家畜伝染病の拡がりやWTO農業交渉・FTA交渉の進展、食料・農業・農村基本計画の見直し等を踏まえ、自給率の向上と安全・安心な畜産物の安定供給を目指した生産者が意欲を持って勤しめる畜産・酪農基本政策を確立すること。

 二 BSEに係る食の安全・安心の確保とその発生予防・まん延防止を図るため、輸入牛肉について、我が国と同等の安全対策を確保するとともに、国際的な家畜衛生基準の見直しに積極的に取り組むこと。

   また、牛せき柱の利用が規制されることに伴い、コスト低減のための取組みを含め、関係事業者等が一体となった適切な分別体制が整備されるよう必要な支援を行うこと。

 三 高病原性鳥インフルエンザの発生予防・まん延防止を図るため、感染経路の早期究明に努めるとともに、早期通報体制の確立、生産者・関連事業者等に対する経営安定対策の拡充、風評被害防止対策の推進等を図ること。

   また、移動制限区域内の生産者に対する救済措置等について、家畜伝染病予防法の改正も含め、万全なる対策を早急に講ずること。

 四 加工原料乳生産者補給金単価については、生産者の努力が報われ、意欲を持って営農に取り組めるよう、再生産の確保を図ることを旨として適正に決定すること。また、加工原料乳限度数量については、生乳の生産事情、牛乳・乳製品の需給動向を踏まえて適正に決定すること。

   さらに、生乳の需給安定を図るため、需給情報の迅速な提供、脱脂粉乳の新規用途の開拓、液状乳製品・チーズ等の消費拡大に努めること。また、土地利用型酪農推進事業については、畜産環境問題に適切に対応し得る飼料基盤に立脚した酪農経営の確立に資するよう見直し、継続すること。

 五 牛肉・豚肉の安定価格及び肉用子牛の保証基準価格等については、再生産の確保を図ることを旨として、畜産農家の経営の安定に資するよう適正に決定すること。なお、肉用子牛生産者補給金制度については、持続的かつ安定的な制度運用が確保されるよう、乳用種の保証基準価格の水準の在り方について十分な検討を行うこと。

   また、肉用牛農家及び養豚農家の経営安定対策を継続するとともに、地域における多様な取組み等を通じ生産コストの低減を図ること。

 六 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律の完全施行を控え、地域の実態等に応じ処理施設が整備されるよう、施設整備を行うための事業の予算確保など支援策を充実強化するとともに、耕種農業との連携による良質なたい肥の利用の促進や有機性資源のバイオマス利活用の推進を図ること。

 七 WTO農業交渉及びFTA交渉に当たっては、食料安全保障、農業の多面的機能を確保するよう、今後とも確固たる決意をもって臨むとともに、国内農業への影響等を分析し適切な措置を講ずること。

  右決議する。

 以上の決議案の趣旨につきましては、質疑の過程を通じまして委員各位の御承知のところと存じますので、説明は省略させていただきます。

 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。終わります。ありがとうございます。(拍手)

高木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。亀井農林水産大臣。

亀井国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に従いまして、最近の畜産をめぐる情勢を踏まえつつ、十分検討してまいる所存でございます。

高木委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十三日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十二分散会


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