衆議院

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第8号 平成16年3月23日(火曜日)

会議録本文へ
平成十六年三月二十三日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 高木 義明君

   理事 北村 誠吾君 理事 西川 京子君

   理事 松下 忠洋君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 小平 忠正君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      小野寺五典君    梶山 弘志君

      金子 恭之君    木村 太郎君

      後藤 茂之君    後藤田正純君

      佐藤  勉君    玉沢徳一郎君

      津島 恭一君    永岡 洋治君

      西村 明宏君    西村 康稔君

      野呂田芳成君    平井 卓也君

      二田 孝治君    松島みどり君

      三ッ林隆志君    岡本 充功君

      鹿野 道彦君    金田 誠一君

      岸本  健君    楠田 大蔵君

      篠原  孝君    神風 英男君

      仲野 博子君    楢崎 欣弥君

      堀込 征雄君    松木 謙公君

      漆原 良夫君    西  博義君

      高橋千鶴子君    山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       亀井 善之君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   政府参考人   

   (財務省主計局次長)   佐々木豊成君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (林野庁長官)      前田 直登君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           中嶋  誠君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            藤田 昌宏君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小島 敏郎君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     三ッ林隆志君

  金子 恭之君     松島みどり君

  田中 英夫君     平井 卓也君

  西  博義君     漆原 良夫君

同日

 辞任         補欠選任

  平井 卓也君     田中 英夫君

  松島みどり君     金子 恭之君

  三ッ林隆志君     西村 明宏君

  漆原 良夫君     西  博義君

同日

 辞任         補欠選任

  西村 明宏君     大野 松茂君



    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 森林法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、森林法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省消費・安全局長中川坦君、林野庁長官前田直登君、財務省主計局次長佐々木豊成君、経済産業省製造産業局次長中嶋誠君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長藤田昌宏君及び環境省地球環境局長小島敏郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。二回生でありますけれども、農林水産常任委員会は初めてでありますので、よろしくお願いいたしたいと思っております。

 前段で林業の現状についてただしまして、後段で、先般の予算の分科会でちょっと消化不良を起こしました補助金の問題についてただしていきたいと思っております。それから、通告に基づいて質問する予定でありますけれども、時間によって順序が逆になる場合もあるかもしれませんので、その辺、よろしくお願いいたしたいと思います。

 さて、平成十三年の六月ですか、今までの林業基本法を抜本的に見直しまして、森林・林業をめぐる情勢変化といいますか、国民の森林に対する要請の変化等に対応いたしまして、森林・林業基本法が制定されたところであります。新たな基本法の基本理念でありますけれども、「森林の有する多面的機能の発揮」及び「林業の持続的かつ健全な発展」とされたところであります。そしてまた、基本法のこの基本理念の実現に向けまして施策を総合的に推進するため、同年の十月、森林・林業基本計画が策定されております。さらに、この新基本法制定とあわせまして森林法の改正も行われたところであります。農業そして林業そして水産業と、基本的な問題をしっかりととらえて、農林水産省頑張ろうということでそれぞれ基本計画が制定された、こう私は思っております。

 質問に入る前に、大臣、山をお持ちでしょうか、所有しておりますでしょうか。

亀井国務大臣 私は山は所有しておりません。

黄川田委員 大臣は神奈川県ということで、私は岩手でありますので、四国四県に匹敵する面積の土地でありまして、山は豊富にあります。

 かつて緑のオーナー制度という言葉を記憶しておるのでありますけれども、この緑のオーナー制度というのは今でも生きておるんでしょうか。生きておるならば、ぜひとも大臣にオーナーになっていただきたいと思っているんですが、現場の目線で物事を考えるには、やっぱりそういう取り組みが大事じゃないかと思っておりますので、現状、どうですか。

亀井国務大臣 かつてその制度がありましたことは十分承知をいたしております。私の周辺、山も山岳地域もございます。その緑のオーナー制度につきましては平成十一年で今中止になっておる、このように承知をいたしております。

 神奈川県でも私のところは、農地だけでなしに森林の面積が大変多い選挙区のところに私は生まれ育ち、今日もおりますので、森林関係者の皆さんとのつき合いも十二分に持っておりまして、森林関係者のいろいろな問題につきましては、それなりに承知をいたしております。

黄川田委員 私は地方の役場職員をしておりましたので、地方官僚、立派な政策提言するわけなんでありますけれども、国は法律をつくるわけでありますけれども、その法律が現場で生かされるのか、これが最も大事だと思っておりますので。緑のオーナー制度も十一年度で休んでおるという現状でありますか。

 それから、小泉総理の施政方針演説であります。農業については三行であります。林業については一行であります。浜の話、水産業の話はほとんど触れられていないと私は思っております。これについて大臣は、どういう感想、認識を持っておられますか。

亀井国務大臣 所信につきまして、触れ方、これは限られた時間の中での問題、農林水につきまして大変総理も関心をお持ちいただきまして、御承知のとおり、総理の出身地は神奈川県の三浦半島、横須賀を中心に、水産の、三崎というマグロ等々の漁船が出航する場所でもありますし、あるいは野菜の生産地でもありますし、大変関心をお持ちいただいておるわけであります。

 限られた中での施政方針演説、そういうことで文字数は少ない一面があろうかと思いますが、再三お目にかかり、また、農林水産業に対する熱意を十二分にお持ちいただいておる、このように思っております。

黄川田委員 市町村で首長が演説するときは、施政方針演述と言うんですよ。述という言葉を使わせられるんですよ。演説という言葉は国会でしか使わない言葉みたいですね。大事な言葉なんですよね。市町村では原稿を担当官がつくるんですよね、もちろん首長の大いなる政策も披露するわけでありますけれども。

 農林水産省、世帯は大きいと思っていましたけれども、三行、四行で済ませるわけにはいかないんじゃないかと思っております。

 それでは、通告の質問に行きたいと思っております。

 私は、農業、林業、水産業、それぞれ産業があるわけなんでありますけれども、担い手不足あるいはまた安価な外材の輸入などによりまして、林業が産業として一番厳しいのではないかと思っておりますけれども、大臣の認識はいかがでしょうか。

亀井国務大臣 林業につきましては、長期にわたります木材価格の低迷、あるいは外材の問題、あるいは人件費を初めとする経営コストの増加、こういう面でその採算性は大変低下をしておるわけであります。林業就業者の減少あるいはまた高齢化が進む中で、委員からも御指摘のとおり、本当に極めて厳しい環境に置かれている、このように認識をいたしております。

 将来にわたりましてこの厳しい環境の中で林業経営が持続的に健全な発展を図っていくためには、経営規模の拡大の問題、あるいは担い手の確保の問題、育成、あるいは路網の整備、あるいは機械化等を推進する、こういう努力をしなければならない、こう思っております。

 また、制定されました森林・林業基本計画、厳しい状況下でありますけれども、これを着実に何とか実行し、そして、この厳しい状況下の森林・林業、木材、これらの問題に対応したい。今回の法改正につきましても、そのような面でのお願いを申し上げたい、このようなことで対応しておる次第でございます。

黄川田委員 林業、木材の輸入の自由化、昭和三十九年に完了したということですか、農業の、食料の自給率は四〇%を欠く、そして、林業は二割を欠いて、今は一八%という数字でありますね。大変な状況であります。

 この森林・林業基本計画によりますと、「森林整備に対する国民の理解の醸成と参画の促進」「森林の区分に応じた整備、保全及び利用の推進」「計画的かつ効率的な森林施業の確保」などが掲げられておるところであります。

 そこで、今回の森林法の改正は、森林・林業基本計画が掲げているこれら課題に対して、問題解決のためのインセンティブが働くのか、特に、厳しい林業経営の現状にどのような役割を果たすのか、そして期待されるのか、林野庁の見解を求めておきたいと思います。

前田政府参考人 森林・林業基本計画におきまして、森林の有する多面的機能の発揮、これに関します課題の一つといたしまして、「多面的な機能の発揮のための森林の管理の推進」、これを挙げまして、このために、一つには「森林整備に対する国民の理解の醸成と参画の促進」、さらには「森林の区分に応じた整備、保全及び利用の推進」、それから「計画的かつ効率的な森林施業の確保」、これが重要であるといたしております。

 今回の森林法改正でございますが、森林ボランティア活動を助長するための新たな協定制度を創設することによりまして、森林整備に対します国民の理解の醸成と参画の促進を図るとともに、森林の機能の十全な発揮を図るため、その区分に応じた適正な施業が推進されるよう、これまで講じてきました措置に加えまして、特に公益的機能の高い保安林ですとか、あるいは間伐を要する森林におきます施業確保のための措置を講じようとするものでございまして、基本計画に掲げられた課題に対応したものになっているというふうに考えている次第でございます。

 また、厳しい林業経営の現状に対処しまして、計画的、効率的な森林施業の確保のために、平成十三年の森林法改正によりまして、森林所有者以外の意欲と能力を有する者にも、施業を実施する場合、助成を行うことにしたところでありますけれども、さらに、今回の法改正によりまして、施業の委託やあるいは共同施業の推進、こういったものを通じまして、効率的な林業経営の育成にとりまして重要な課題であります経営や施業、これの集約化が一層図られることにつながるというように考えている次第でございます。

黄川田委員 それでは、加えて、個別課題となりますけれども、昨年の森林法の改正におきまして、附帯決議ですか、これがついたはずであります。中身は、「森林整備を着実に実施するため、「緑の雇用」等の雇用対策を通じて、担い手としてふさわしい基幹的な林業就業者の確保・育成に努めること」を求めておるわけであります。附帯決議でこのように求めております。

 そこで、この緑の雇用制度でありますけれども、これが一過性のものに終わるのではないかと私は危惧しておるわけであります。この緑の雇用制度、国民にどう理解され、そしてまた普及しておるのか、まず総論についてお尋ねいたします。

前田政府参考人 山村の過疎化と高齢化が進む中で、今後の森林整備を着実に推進していくためには、優秀な森林整備の担い手の確保、育成、これが大変重要であります。緊急雇用対策と連携いたしまして、平成十四年度補正予算によりまして、緑の雇用担い手育成対策事業、これを実施しているところでございますが、本事業につきましては、新聞報道等におきましても、緑を守り、あわせて新たな雇用の確保にもなる一石二鳥の事業である、あるいは、過疎化、高齢化が進む中山間地域に都会から林業に従事する人を呼び込むものであるというようなことで評価されておりまして、本事業の趣旨、効果につきましては、国民にも理解が広がっているのではないかというように考えている次第であります。

黄川田委員 具体的に、それが森林整備にどう生かされているのか、そしてまた、森林組合などの常用雇用にどう結びつくのか、その点も、実態面をお尋ねいたします。

前田政府参考人 平成十四年度補正予算によります緑の雇用育成対策事業におきましては、四十四都道府県で約二千四百人規模の研修生が、林業事業体等から最低限求められます技能の習得に取り組んできているわけでございますが、研修が終了後、森林組合などの林業事業体において本格的に林業に就業していくというように見込んでおりまして、優秀な林業就業者が確保、育成され、森林整備の着実な推進につながっていくということが期待されるところでございます。

 平成十六年度政府予算案におきましても、この緑の雇用担い手育成対策事業の重要性にかんがみまして、その実施に係る経費が計上されたところでございまして、引き続き、本事業の着実な推進によりまして、基幹的な林業就業者として地域に定着するとともに、地球温暖化防止にも資する、そういった森林整備の担い手の確保、育成に努めてまいりたいというように考えているところでございます。

黄川田委員 この緑の雇用対策の経緯としまして、たしか厚生労働省の方で緊急地域雇用創出特別交付金事業といいますか、これがまず立ち上がったわけでありますよね。雇用対策、緊急ということで、何か失対事業みたいな形で一年ぐらいでというふうな状況を心配したわけでありますけれども、その後、林野庁としてもしっかりした雇用対策に結びつけようということで、平成十五、十六年ですか、事業を実施しておるんでしょうけれども、なかなか森林組合の経営状況、厳しいわけでありまして、一人雇用するとしても森林組合は大変でありますので、せっかく習得した技術が長く生かされるような形の森林整備事業を継続的に実施していただきたいと思っております。この部分は要望であります。

 林野庁長官が答弁できるようであれば、お願いします。

前田政府参考人 確かに先生御指摘のとおりでございまして、これが線香花火に終わってもいけないということで、一つには、最初の一年度、厚生省の方の緊急雇用、そしてそれに引き続きまして、二年目にこの緑の雇用、そして三年目以降におきましては、一つには、総務省の方の地財措置でそういったものを措置されている。さらに、私どもといたしましても、森林整備事業の予算の配分、そういったものに当たりましては、この緑の雇用で実施しているというようなところに考慮しながら措置していきたいというように考えている次第でございまして、そういった面から、引き続き事業の安定的な確保が図られるように努めてまいりたいというように考える次第でございます。

黄川田委員 それでは次に、林業の経営問題を考えていきたいと思っております。同時に、森林の所有権あるいはまた所有区分など、基本的な事項もちょっと振り返ってみたいと思っております。

 まず、林業公社についてであります。各都道府県に設立されております林業公社でありますけれども、土地所有者と分収林契約を締結いたしまして、そして樹木を植栽し、将来の伐採による収益を分け合う、そういう手法によりまして森林造成を行ってきておりまして、地域の森林整備の推進にこれが重要な役割を果たしてきたということは間違いないことであります。しかしながら、現在、林業経営が厳しい環境にある中で、林業公社でありますけれども、造林事業に係る多額の債務を抱えていると私は思っております。

 そこで、木材価格が低迷しておる、まだ伐期でもないので歳入がないという中で、多額の債務を抱える林業公社の経営、この厳しい状況をどう考えるか、そしてまたその実態、全国の林業公社の実態をまずお尋ねいたします。

前田政府参考人 御案内のように、林業公社、都道府県の出資によりまして設立された公的な機関といたしまして、森林所有者にかわって、分収方式によりまして約四十三万ヘクタールの人工林を造成してきたところでございます。

 これまで林業公社が造成してきた人工林の多くは、三十五年生以下の若齢林ということで、まだ保育、間伐を必要とする段階にございますことから、当面まとまった収入が期待できない、事業運営資金のほとんどを外部資金、これは補助金ですとかあるいは借入金、こういったものに依存せざるを得ない状況となっているわけでございます。

 また、林業公社は過去に造林事業の実施に必要な経費を借入金に大きく依存してきましたこと、そういった関係から、平成十四年度末で約一兆円の長期借入金の残高を抱えておりまして、各都道府県におきましては林業公社の経営の安定化に向けた取り組みが行われているというように承知しているところでございます。

黄川田委員 全国三十六都道府県で四十法人ですか、そして長期借入金の総額が一兆円を超すというふうな、そういう現状だということでありまして、もちろん国の方でも、公社、公団、事業団、独立行政法人化とか、さまざまないろいろな意味でメスが入らなきゃいけないというところで、地方自治体もそれをどうにかしなきゃいけないという、その取り組みも現在行われておるんでしょうけれども、自助努力だけではなかなか十分に経営改善できないのではないかと思っております。

 そしてまた、長期借入金でありますけれども、造林の関係の借入金というのは、収益が上がるまで時間がかかるということで、例えば、借りても、利率は一般のものよりは低いということなんでしょうけれども、例えば、昔であれば三十年だ、十五年据え置き、十五年たてば間伐でお金が入る、それで何とか元金も償還しながら、三十年たてば何とかなるんじゃないのか。ところが、現状は四十年ぐらいじゃ物になりません。六十年とかぐらいにならないと立派な木材として売れないという現状があります。

 そういう意味で、国の支援策は何かないのでしょうか、例えば、ほとんど借りているところは農林漁業金融公庫ですか、借りかえとかいろいろなことが考えられると思うのでありますけれども。

前田政府参考人 先生御指摘のように、林業公社は地域の森林整備の推進に大変重要な役割を果たしているところでございまして、林野庁といたしましても、この林業公社が行います森林整備及び経営の安定化に資するために、一つには森林整備事業、これはいわゆる造林関係補助事業でございますが、ここにおきましては高率の助成水準の適用、実質上恐らく補助率も八割から九割になっているはずだと思いますが、そういった高率の補助事業。それから、補助残につきましては、農林漁業金融公庫によります低利融資の融通と無利子資金でございます森林整備活性化資金のあわせ貸し、これを入れますと実質金利が今〇・五七%以下というような状況にあると思います。こういった優遇措置を講じております。

 それから、御指摘のありました、これまでの造林地につきまして林業公社が分収林の伐期を延長する場合に、既往の公庫資金、これはかつての金利でございますので主に三・五から六・五%といったような金利だと思いますが、これを借りかえるための低利資金、これの融通もやっております。これですと、長伐期等に転換いたしまして施業転換する、そういった施業転換資金と、森林整備活性化資金、これはゼロでございますが、これのあわせ貸しで実質金利が〇・六八%以下になるというような、そういう措置も行っているところでございます。

 また、都道府県が行います林業公社の管理費等につきましては、普通交付税措置が講じられているというような状況でございます。

 なお、平成十六年度予算案におきましても、公庫資金につきまして施業転換資金の貸し付け要件の緩和、これは今まで認定時の林齢が三十五年生だったんですが、これを四十五年まで上げて借りかえしやすくしよう、あるいは、林業公社が協定等によりまして私有林を整備するための経費につきまして都道府県が助成を行う、そういったものに対しましては特別交付税、こういったものを措置されたところでございます。

 今後とも、都道府県と連携をとりながら林業公社の円滑な事業運営に努めてまいるようにしたい、支援してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

黄川田委員 三十年ぐらい前の借り入れとか二十年ぐらい前の借り入れは、高金利の時代でありましたから、六・五%でもほかのものよりはたしか利率は安かったということだと思うわけでありますが、現状の金利を見ますと、とてもじゃないけれども金利負担で大変だということ、まあ、収益が上がれば返済できるということなんでありますけれども。

 それから、自分も土曜、日曜、地元に戻りまして、森林公社だけじゃなくて、いろいろなところで造林して借金をしている、長期借り入れをしている、その借りかえの仕方がなかなか厳しくて、今長官からの話によりますと、大分緩和しながら取り進めておるということでありますけれども、例えば延滞なんかしている人たちは、当然新たな計画をつくってくれとか、いろいろなことがあるんでしょうけれども、厳しい中で収入が上がらない中での経営でありますので、特段の配慮をよろしくお願いいたしたいと思っております。

 次に、身近な山といいますか、全国各地に、地域住民が戦後まきを山からとってくるなど、昔からのしきたり、慣習といいますか、そういう形で使用している入会林野という山林があるわけであります。この入会権でありますけれども、民法二百六十三条に規定されている慣習権でありまして、その利用に当たっては入会権者全員の合意が必要となるため、林業の政策上、あるいはまた積極的に活用されていないのではないのかと危惧するところであります。入会林野は里山に多くあるような気がしますし、林業上の利用の点を生かす上でも重要と思っておりますので、この入会林野の林業上の利用の推進、これに対して林野庁はどういう具体的な対策、対応をとっておられるでしょうか。

前田政府参考人 今お話にございました入会林野でございますが、これは、地域の人々が旧来の慣習によりまして使用収益している山林原野であるわけでございますが、具体的には、燃料用のまきですとか農業用肥料としての落ち葉、生活資材としてのカヤ等の採取等の目的で活用されてきたものでございます。

 入会林野におきましては、その利用が旧来の慣習に制約されるとともに、複雑または不明確な権利関係が残っていることから、十分な林業投資が行われない、林業上、十分に活用されているとは言いがたいというような状況にあったところでございます。

 このために、昭和四十一年に制定されました入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律、これに基づきまして、入会林野の農林業上の利用を増進するために、入会権を消滅させまして、入会林野に係る権利関係の整備を進めてきているところでございます。これまで約五十六万ヘクタールの入会林野につきまして整備したところでございます。これらの整備されました森林所有権の個人への移転または使用収益権の設定が行われた後に、生産森林組合による協業経営への移行などによりまして林業経営に供されているというようなところでございます。

 今後も、未整備の入会林野につきましては、入会権を有する地域住民の意向を尊重しつつ、入会林野の整備のための協議会費やあるいはコンサルタント経費等に対しまして助成を行うとともに、入会林野の整備に直接かかわります都道府県の担当者との密接な情報交換、こういったものを行いながら、その整備を進めてまいりたいというように考えている次第でございます。

黄川田委員 今、長官からいろいろお話いただきましたけれども、昭和四十一年ですか、入会林野の近代化法ですか、これに基づいて生産森林組合というものがつくられたりしておりまして、この生産森林組合もこれまた大変な状況にあると思うのでありますけれども、組合の数といいますか、全国の中でどういう推移をたどっておるのか、ちょっとお聞きいたしたいと思います。そしてまた、その活動の現状はどうであるのか、さらには、森林組合法上どのように位置づけられておるのか、お尋ねいたしたいと思います。

前田政府参考人 生産森林組合は、組合員の出資と労働の提供によってみずから森林を経営するものとして森林組合法に位置づけられております林業者の協同組合でございまして、組合員の森林経営の一部を共同化しております森林組合とは異なるものでございます。

 数でございますけれども、昭和二十六年の制度創設後の昭和二十八年には九十八組合でございました。これが、昭和四十一年に制定されました先ほどの入会林野近代化法に基づきまして、従来の入会林野が整備された後の当該林野の経営形態の一つとして、生産森林組合の活用の促進が図られたことから、昭和五十年には約二千三百組合、昭和六十年には約三千三百組合まで増加いたしまして、現在は約三千四百組合となっております。

 この活動状況といたしましては、平成十三年度におきまして、森林の保育を実施した組合は全体の約四割、木材等の販売等で収入があったものが約三割、うち利益を計上したものは約一割、全体比でございますが、という状況にございます。

 この生産森林組合につきましては、その所有森林の大部分がまだ育成過程にありますことから、厳しい経営状況にあるわけでありますが、立地によりましては、森林レクリエーション利用ですとか、あるいは森林ボランティア等へのフィールドの提供、こういった事業展開も有益ではないかなというふうに考えられるところでございます。

 また、保育、間伐等の森林整備につきましては、森林整備事業等によります助成、さらには森林整備地域活動支援交付金、いわゆる直接払いでありますが、こういったものも通じました支援に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

黄川田委員 林野庁長官とだけやりとりしておりますと大臣も寂しいでしょうから、ちょっと通告しておりませんけれども質問していきたいと思います。別に難しい話ではありません。

 私は、総務委員会でもこの後また質問しなきゃいけないので、三位一体改革ということで、地方交付税、そして補助金、そして税財源の移譲、これでもってしっかりとした地方分権を進めるんだという小泉総理の進め方でありますけれども、これについては、前の植物防疫法でも三位一体改革どうなんだということを話されましたけれども、私は、この三位の部分で、実は農業と林業と水産業、これこそ三位一体の改革をしてしっかりとしたスタートを切らなきゃいけないと思っているのであります。最初言ったとおり、それぞれの基本法はできたんだけれども、それに対して、大臣としてどうなんだというところなんですね。

 私の地元のところでは、浜の人間が、特にカキの養殖をしている人たちなんでありますけれども、もう二十年近くになります、山に行って植林しておるのが。山があって川があって、川があるということは田んぼがあるわけですね。畑があるわけなんですね。行き着くところは海であります。やはり、この農業、林業、水産業一体とした取り組みだと思うんですが、いかがですか。

亀井国務大臣 農業、林業、水産業、森は海の恋人、こういうふうに御地元を中心としていろいろやっていただいておるところも承知をいたしております。そういう面で、やはり山、土、海、植物、生物、いろいろなものが一体になった形で、農業、林業、水産業、こういうものがはぐくんでいかれるわけであります。そういう面で、やはり国、地方合わせて、地域なりその地域の特性が生かされた形で農林水が活性化するためのいろいろな努力は必要なこと、このように思っております。

 そういう面では、その部分ごとに限らず、今申し上げましたとおり、山も土もあるいは海も一体になった形でぜひいろいろな振興がなされることを、そのためにこの三位一体の改革、また地方に税源がということが確保されて、いろいろ目に見えた形、また地元の特性が生かされた形でそれが振興されることは大切なこと、このように承知をしております。

黄川田委員 今、大臣から森は海の恋人という話が出ましたけれども、まさに私の選挙区はそこでありまして、海岸で宮城県と接しています。宮城県の唐桑町の室根というところがありまして、畠山さんという人がお話をされたものでありまして、当時私は、地元の陸前高田市の市役所の商工観光課の職員をしておりまして、そういう話をしておりました。地元には室根山という山がありまして、立派な山なんでありますけれども、そこに植林をして、海、川、そして山、一体となって頑張っておるところであります。

 林野庁の方あるいはまた経済産業省にも、ちょっと木質バイオマスの関係で質問する予定でありますけれども、後段の部分でちょっと議論しなきゃいけないので、時間があったらそっちを話すということで、補助金について、予算の分科会でお互い話の中でなかなか取りまとまらなかったところの部分を質問させていただきます。

 先般の予算委員会の分科会でも取り上げたわけでありますけれども、国庫補助金の運用にかかわる国と地方の基本課題、再度絞ってお尋ねいたしたいと思います。

 環境に優しい商品への国民の購買意欲はますます高まっております。事実であります。そして、最近、間伐材等を利用した食品のトレー市場が着目されまして、私の地元岩手県でも、いわて森のトレーと称しまして商品化が試みられました。そしてまた、森林保全上からも、間伐材の新規活用は、林業の活性化、あるいはまた雇用の場の確保、そしてまた木材加工業の振興に、これは期待が本当に大きかったわけであります。

 そこで、平成十年度、当時、景気対策のために三次の補正予算が組まれました。林構事業であります。森のトレーの商品化のために、岩手県では補助金の総額が十二億八千万円、そして総事業費二十七億円の三カ年の事業計画を国に認められたところであります。しかしながら、事業化は失敗し、今現在、岩手県は、国から補助金全額、十二億八千万円の返還命令を受けておるところであります。

 農水委員会では初めてでありますので、ちょっと中身をお話しさせていただきたいと思います。

 まず、この森のトレーという商品の概要でありますけれども、その開発経緯を簡単に説明しておきたいと思います。

 間伐材を薄くスライスしまして、三枚を圧着して約一ミリの厚さに単板を成形しまして、そしてプレス加工することで食品トレー等の商品開発を目指すものであります。スーパーなどで発泡スチロールのトレーがありますね、あれを木でつくりたいということなのであります。

 この研究の原点は、福岡県の工業技術センターにあります。同センターでは平成八年から基礎研究を開始し、そこを拠点として、木材加工機械メーカーの庄内鉄工、前田機工と商社の三社で食品トレーの加工について共同研究を開始したものであります。同センターの研究員によりますと、平成十年当時、岩手県が補助金を申請したころは、共同研究の成果として、前田機工は、単品打ち抜きの試作機、プロトタイプを完成させておりましたが、当時はまだ量産化のめどは立っていなかったわけであります。

 そしてまた、福岡県の取り組みは、その後、前田機工が主体になりまして、大分県の上津江村に引き継がれております。平成十二年、十三年、月産十万から二十万枚程度を量産いたしましたけれども、その後、最近は月に二千枚程度の生産となっておるようであります。それと並行しまして、高知県馬路村でも、能代市の庄内鉄工が主体となって検討されまして、現在月産二十万枚ペースで量産されておりますけれども、この販売に今苦労しておるというのも実態であるようであります。

 また一方、この庄内鉄工でありますけれども、平成九年度に共同研究から離れまして、岩手県の久慈市の製材業の岩手林材株式会社と新たに共同研究を開始し、平成十年当時、単品加工での試作品ができつつありまして、それが現在林野庁にもあると思いますけれども、まず、林野庁にありますか。

前田政府参考人 当時、試作品としていただいたものがございます。

黄川田委員 最初に、この事業規模についてお尋ねいたしたいと思います。岩手県にとって、林構事業で、一つの事業で二十七億、三十億近くというのは本当に大きいものでありますので、お尋ねいたします。

 事業化に失敗した岩手県久慈市の事業規模は、平成十年から十二年度、補正等ありましたから実質二年だと思っておりますけれども、その規模は約二十七億円であります。土地代を含めると三十億円強でありますけれども、事業化に成功しつつある大分県上津江村は、平成十二年度で一億五千二百万円、高知県馬路村は、平成十二年、十三年度の二カ年でありますけれども、五億一千四百万円の事業規模であります。いずれも補助率二分の一の林構事業を主体としておりますけれども、同じような事業にもかかわらず、この岩手県の久慈市のケースが突出して金額、規模が多いのはなぜでしょうか。

前田政府参考人 御質問の市の関係でありますけれども、補助事業の規模につきましては、たとえ同種の事業でありましても、個々の事業実施主体が確保しております、例えば製品の販路の規模、そういったものはそれぞれの前提条件が異なるというようなことから、規模の大小を一概には比較できないというふうに考えておるところでございます。

 今回の久慈市におきますいわゆる森のトレー事業につきましては、事業実施主体が生産コスト、販路等を勘案しまして必要とした事業規模である旨、当時、私どもとしては、岩手県から説明を受けまして、審査の結果、その説明に特に問題点は認められないということから、岩手県による認定、岩手県がその事業主体の事業計画を認定するわけでありますが、その認定に当たって異存がない旨通知したものでございます。

黄川田委員 もちろん、事業の規模の大小は、それぞれの一つ一つの事業でやれるのであればやるということで、とりたてた問題はないということなんでしょうけれども。

 平成十年当時、まだこの森のトレーというものは試作段階でありまして、岩手、大分、高知県、この三県にその技術の進展は大差がないわけであります。そして、今現在つくっている量でありますけれども、月産二十万枚程度で、月産ですよ、二十万枚程度でも販売に苦労しているというのが現実であります。岩手の生産計画、いいですか、日産、一日ですよ、五十万枚ですよ。日産五十万枚ということでは、一年やったら億の単位ですよ。稼働率にもよりますけれども、月一千万枚、五十倍と多いわけなのであります。つくれる、販売先もきちっとしているから認めたということでありますけれども、極めて不自然な、ずさんな計画だと私は思っております。

 それでは、先般の質疑でちょっとお聞きしましたけれども、重ねてお尋ねいたします。平成十年の計画申請のときの部分であります。

 分科会で、平成十年当時の岩手県の事業化申請に対する認可基準でありますけれども、大臣は他県で生産事例のある実用技術であると答弁しておりますけれども、改めてその理由を伺います。

前田政府参考人 国内におきます木製トレーの生産技術につきましては、先ほど先生がお話にございましたように、一つには、福岡県の工業技術センターと民間企業が共同開発しまして、平成十年十月には、別の木材加工機械メーカーでございますが、こちらの方が生産ラインを整備していた。それから、平成十年春ごろから、秋田県の民間企業と木材業者で共同開発を行いまして、同年秋には岩手県内で行われたイベントに木製トレーの製品を見本として出品していた。それからさらに、岩手県から、先ほどお話し申し上げましたが、林野庁に木製トレーの見本が示されていたというようなことから、木製トレーの生産技術は実用技術となっていたというふうに考えたものでございます。

黄川田委員 技術が確立されていたにもかかわらず、なぜに失敗したんでしょうか。

前田政府参考人 端的に申し上げれば、当時岩手の方で、事業計画を変更いたしまして、そういった変更した仕様に即したきちっとした機械の製作が最終的に確認されなかった、できなかったということが、この事業が失敗した一番の大きな原因であろうというふうに考えております。

黄川田委員 当初申請で補助事業、第一回目で林野庁がさまざま精査しておれば、この段階で本当は外れたような気がするわけなんでありますけれども、あるいはまた、今、平成十年度当時で実用化されている部分の中で計画が継続しておったなら、会計検査院からの十二億八千万円の返還命令等はなかったと思うわけでありますけれども、どうも実用技術であったというところの、私と長官あるいは大臣との認識の違いが物すごくあるわけであります。

 重ねて申しますけれども、平成十年当時、国内では、大分県の上津江村、前田機工が単品打ち抜きの試作機を完成しつつある段階であって、生産段階には至っていなかったわけであります。その後、いろいろ工夫しながら十二年度、十三年度で何とか形づくられるものが出てきたということでありまして、そしてまた、岩手県久慈市では、庄内鉄工が類似の単品打ち抜きで試作品を提供している段階であったわけであります。そして、庄内鉄工の現物は林野庁にあるということであります。

 先ほど、販売計画の関係で、しっかりしたものがあるということなんでありますが、販売計画については、大手二社との七〇%を含め四社と一〇〇%の販路を確保していると答弁しておりますけれども、物すごい量ですよね、年間一億を超す量でありますよね。この販路の確保に関して、それはどことどのような契約内容を意味していたのか。契約内容をちょっとお聞きいたします、販路の契約内容を。

前田政府参考人 当時、岩手県の事業計画の説明に際しましては、生産されましたトレーの販売先につきまして、予定の生産量のすべてを、今お話にございましたように大手企業を含む四社に販売する、そういうこととしておりまして、うち二社につきましては、生産量の七〇%を引き取る旨の契約を結んでいるとの説明を当時受けたところでございます。

 この説明の内容につきましては、私企業間の契約の内容でございますので、企業名等の詳細につきましては説明は差し控えさせていただきますけれども、ほかの二社につきましては、当時もう商談が進んでいたという状況でございますが、結果として契約の締結までには至らなかったというように県から聞いているところでございます。

黄川田委員 実は、今まで林野庁に販売契約書の写しを再三請求してきたわけであります。二社の契約書がここにあるわけなんでありますけれども、お話しのとおり、民間レベルの話なのでということなわけであります。それで、別ルートで私も入手しましたが、兼松日産農林さん及びオージーさん、両者の契約書であります。

 この契約書の内容でありますけれども、幾つかの疑問点があるわけなのであります。

 まず第一に、契約日が、事業計画が定かでない。おのおの、平成十年十月十二日及び十二月二日であること。また、契約者が岩手林材さん、個人の会社の代表者になっておるわけでありまして、事業主体の組合の理事長としての契約ではないわけであります。

 第二に、オージー社との販売契約書では、製造予定数量を、当初から一日五十万個とされております。県から正式に提出されているこの事業化申請の製造方法でありますけれども、これは庄内鉄工方式だと思うわけでありまして、一日五十万個の生産は不可能でありまして、たとえ、三シフト二十四時間運転、それ自体難しいと思うわけでありますけれども、そうしても、その半分程度しかできるわけがないと思っているわけであります。

 どうも、計画申請時、そのときから、後で計画変更で変わった会社でありますけれども、トリニティ社にこれは予定していた、もう最初から決まっていたんじゃないか、こう思うわけであります。どうもそういうふうにしか私には思えないのでありますけれども、再度長官の説明をお願いいたします。

前田政府参考人 少なくとも、当時ヒアリングをしまして、その時点で県の方から聞いていた段階では、先ほど申し上げましたように、四社の方で生産量を全部引き受けてもらおう、そのうちの、生産しますうちの七割につきましては、民間ベースでありますが、既に契約書もできて、そういった形で販売先も確実でありますということで私どもも報告を受けたわけでありまして、それならば、販売先が確保されているなら大丈夫であろうということで、私どもとしては了解したということでございます。

黄川田委員 県の申請した事業を尊重し、そしてまた、立派な計画だから干渉しないで、それでいいだろうということのようでありますけれども、岩手県の取りまとめ役といいますか、農林水産部の取りまとめ役は、農林水産省からの出向者であります。事実であります。出向者でありますよね。取りまとめ役になっているかどうかは別にして、農水省から県の農林水産部に出向しておりますよね、確認だけで結構ですので。

前田政府参考人 確かに、当時、林野庁の方から岩手県の林務水産部、当時は林務水産部だったと思いますが、林務水産部長に出向していたという事実はございます。ただ、その人間が実質これの問題の取りまとめをやっていたかどうかにつきましては、私どももそこまでは詳細には承知しておりません。

黄川田委員 それでは引き続き、やりとりがかみ合わないところはありますけれども、さらにお聞きいたします。

 平成十一年の計画変更についてただしてみたいと思います。

 先般の分科会で、大臣は、生産技術自体は既に実用化されておりまして、量産化に適したものに生産工程の一部を変更するため、計画の一部変更であると、私からすれば強弁と思われるのでありますけれども、答弁しておりますけれども、どのような理由で一部変更とみなすのか、その理由、やはり前回の分科会では納得しかねましたので、改めて答弁をお願いいたします。

前田政府参考人 前回も大臣の方からお答え申し上げたかと思いますが、本件補助事業の目的といたしましては、間伐材を使用した木製トレーの生産、平成十一年六月の事業計画の変更につきましては、この間伐材を使用した木製トレーの生産という事業の基本的な部分を変更するものではございませんで、生産工程を改善するために行うものであるということで、岩手県から林野庁に対して説明があったところでございます。

 今申し上げましたように、変更の内容は、より量産化に適した施設に整備するための生産工程の一部を変更しようというものでございまして、これらは計画の一部変更に当たるということで了解したというように承知している次第でございます。

黄川田委員 基本的な部分では変わらない、間伐材の利用、活用だということでありますよね。

 実は、使われた材が、普通は地元材、地元雇用、県産材ということになりますけれども、北海道の松が使われたんじゃないのか、そうしたら、国産材だからいいんじゃないのか、道産材も国産材だと。ところが、加えてロシアからの松も使われたんじゃないかというような、そういう話もあるわけなんであります。これは質問じゃないですから、述べるだけにしておきますけれども。

 平成十年十二月十一日の計画申請時でありますけれども、岩手林材と庄内鉄工で共同研究中でありました、この計画申請時に。しかしながら、申請後わずか半年後、庄内鉄工を切り捨て、木質トレーには全く未経験の、金物板金を得意とするトヨタ自動車系列のトリニティ工業に突如切りかえてあります。量産化ですか、生産量の増大を図る名目で、半年後の平成十一年六月二十五日に計画変更がされておるわけなのでありますけれども、やっぱり生産工程の核心部分を改めて説明しておきたいと思います。

 計画申請は、庄内鉄工が研究開発し、特許出願済みの方式に準拠しております、当初申請計画は。円形の枠に雌の金型が十枚設置されたものを二十ユニット計画しておりました。観覧車が順次回転するたびに雄の金型で一枚一枚プレスする、着実な方式でありました。ですから、現物も林野庁にあるわけであります。

 技術の継承を断ち切りまして、短期間で新たな研究開発などできないのではないか。私は、ベンチャーの部分だと思っておるわけでありますけれども、計画変更されております。

 変更の主体でありますけれども、一・一メートル四方の単板、そんな大きな面積の製造も困難を伴うわけでありますけれども、その単板から同時に十六枚も打ち抜く方式が四ラインという計画でありました。確かに、一見生産性は向上するように見えるわけでありますけれども、専門家から見れば、アイデアにすぎないのではないかと言われるわけであります。全く未経験の量産化技術に完全に切りかえられておるわけであります。

 木に竹を接ぐような、そういう変更じゃないのかと思っておるわけでありまして、私は、林野庁の補助の通達がありまして、前にも聞きましたが、また重ねて聞きますけれども、研究開発中のものや実績のないものは林構補助事業の対象としないとの長官通達、これに反しているんじゃないのかと聞きましたら、いや、そうではないという前回の答弁でありましたが、再度伺います。

前田政府参考人 事業計画の変更でございますが、これにつきましては、当該計画を変更する必要があり、かつ、変更後における施設整備の内容が当該補助目的をより効果的に達成するというものであれば、基本的には認められるものと考えておりまして、本事業計画の変更につきましても、岩手県からは、生産工程を改善するものであるということで当時説明を受けたわけでございます。

 間伐材を利用した木製トレーにつきましては、先ほどもお話し申し上げましたように、実用技術としては開発済みであったというものでございまして、また、間伐材を使用した木製トレーの生産という基本部分、これは変わっていないことから、事業実施主体の申し出に係ります計画変更の内容につきましては、長官通達の趣旨には反していないというように考えているところでございます。

黄川田委員 長官、見てほしいんですよね、変更申請書を。金額は変わっていないんですよ。事業の中身ががらりと変わっているんですよ。数字だけ見れば変わっていないんですよ。私、素人ですけれども、これは本当にできるのかというのは、身震いがするぐらいの変更申請書でありますよ。

 庄内鉄工の試作品は林野庁にあるということで、何度も言いました。一応、平成十三年度にトリニティ方式で生産されたとされております。計画の一・五%、それでも百六十万枚の製品であります。私、その実物は見ていないわけでありますけれども、どこに行けばその実物を見ることができるんでしょうか。

前田政府参考人 私どもの方で岩手県に問い合わせしたわけでございますけれども、岩手県から聞いたところでは、生産されたものの一部は販売された、しかしながら、販売されていないものがどこにあるかということについては承知していないということでございました。

黄川田委員 これで質疑ができますか。百六十万枚ですよ。皆さんに五万枚ぐらい、一人一人配れますよ。大臣、どうなんですか。大臣、見たことないんですか。

亀井国務大臣 私、トレーは拝見したことがございます。

黄川田委員 現職大臣を責めてもあれですが、当時の大臣はだれだったかと私も思うわけであります。

 私も一回生議員と同じですから、農林水産はよくわからない人間でありますので、民主党では勉強会を開いております。先般は、「林業の現状と課題」ということで勉強させてもらいました。その一番後ろに「地域材利用の推進」と書いております。その中で森林・林業基本計画、基本計画ですね、基本法ですよね、「国から実施機関までが一体的な考え方の下で地域材利用を推進」すると書いてあります。

 国から実施機関までということは、国、県、市町村、そして森のトレーのような協同組合一体となってやるということでしょう。そうしたら、補助事業の申請で、私は、国の責任も幾らかあるんじゃないのかと聞きました。事が起きると、わしゃ知らぬ、会計検査院も、みずからの命を保つために、悪いのは県だ、市町村だ、その協同組合だ、その一点張りなんですよね。

 そういう中で、本来的な森林施策、国民に受け入れられて、立派なものができますか。「先づ隗より始めよ」と、農林水産省みずからがより一層の木材利用の拡大に取り組む行動計画、農林水産省木材利用拡大行動計画、平成十五年八月策定であります。この「先づ隗より始めよ」の隗というのはだれですか。

亀井国務大臣 農水省が行うこと、このように認識をいたしております。

黄川田委員 木製でできた、林業振興によってできた木質トレーがあって、そして農業の振興によってうまい米ができて、握り飯があって、それに浜の振興、水産業を振興していいノリができて、一番じゃないですか。国会の食堂に木のトレーがあって、握り飯があって、その握り飯にノリが巻いてある。農林水産業一体とした振興じゃないですか。

 だれがやるんです。隗より始めよ、農林水産省。百六十万もつくって、どこにもない。こういうことで、日本の農業、林業、水産業、とても将来があるとは私は思えません。環境に優しい、そして時代が求めていた、いい事業なんですよ。事業自体に私は反対しているわけじゃないです。そういう立派な事業だからこそ、これを実現させて、むしろ大臣が、こういう立派なのができたんだということで世に問うぐらいの、そして雇用の場も確保された、間伐も促進される。だから私は言ったんです。私は役場の一職員でありましたが、計画は立派なものはつくります、現場でそれがどう生かされているんだ、そこが一番大事だと私は思っておるのであります。

 この件については、三月三日、久慈市のいわて森のトレー生産協同組合は、木製トレー生産中断問題で、生産機械メーカー、トリニティ工業を相手に、機械代金と国から返還を命じられている補助金分を合わせ、総額約二十五億五千万円を求める訴訟を盛岡地裁に起こしております。

 十二億八千万の返還金というと、返還命令が出てから延滞金がかかるわけなんであります。たしか一〇・何%の延滞金でありますかね、一日四十万か六十万ぐらいの延滞金がつくわけなのであります。黙っていると、一年で一億の金をさらに出さなきゃいけないというような状況にあるわけなんであります。

 そこで、財務省にお尋ねいたしたいと思います。

 残念ながら、会計検査院から補助金全額返還だということの中で、今、県も、そして地元の久慈市も、当事者は森のトレー生産協同組合なのでありますけれども、そこに支援をしながら、訴訟を起こしております。県議会でもその訴訟費用が計上されました。そして、変な話でありますけれども、十二億八千万円を全部返還するのは、県としてやはりおかしい、国にも責任があるんじゃないのかということで、三分の一の返還だけは我々にも責任があるんだということで、県議会で県予算、補正予算が通過いたしました。

 そういう中で、財務省にお尋ねをいたします。こういう係争中の場合、補助金適正化法十九条の延滞金に係る第三項の免除規定ですか、これがどのように適用されるのか。少なくとも、裁判の結果が判明するまで算定期間は除外されるべきではないかと私は思っておりますけれども、見解を求めておきたいと思います。

佐々木政府参考人 延滞金の免除に関するお尋ねでございますが、補助金適正化法第十九条第三項の規定による延滞金の免除規定は、御存じのとおり、各省各庁の長は、やむを得ない事情があると認めるときは、延滞金の全部または一部を免除することができると定めておりまして、一義的には、補助金を交付した農林水産省において十分な検討がなされ、やむを得ない事情があると判断をされた場合に、財務省に協議をするという仕組みになっております。

 仮に農林水産省から協議がありましたら、その段階において、やむを得ない事情があるかどうかの検討する、私どもにおいて検討するということになりますけれども、現時点におきましては、先ほどお話がありましたように、提訴等によりまして、補助事業者等において返還のための努力が行われていると聞いておりまして、当方として、現段階においてコメントすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

 なお、延滞金の算定につきましては、第十九条第二項の規定におきまして、納期日の翌日から起算をされるということでございますので、現に発生をいたしております。

黄川田委員 財務省では、協議を受けたら協議しますということなんですが、農水省はどうですか、協議する気はありますか。

亀井国務大臣 この補助事業につきましては、補助事業者であります岩手県が申請してきた補助事業につきまして、岩手県におきましては、施設が完全に整備をされるよう十分な完了確認調査等をみずから実施する、これが一つ責務ではなかろうかと思います。

 それに従いまして、岩手県からは、林野庁が特別に指導しなければならないような補助事業遂行上の大きな問題がある、このような報告を受けておらないわけでありまして、いろいろ責任の問題はございますけれども、やはり、この補助事業、いろいろなことを行う段につきましても、私ども、岩手県からの補助の申請等を受けまして、そしてそれを認可したわけであります。そういう面で、いろいろな事業がございますけれども、都道府県、事業者、補助事業者たる岩手県が、やはりそれなりのまた責務というものもぜひ御認識をいただきたいと思います。

黄川田委員 岩手県の責任はないとは私は全然申しておりません。岩手県でも責任はあるけれども、何でおれたちだけ責任があるんだという意味での三分の一の県議会の予算措置じゃないんですか。(発言する者あり)岩手県の人から岩手の話を言うなと言われましたけれども、私は事業自体に反対しているのではないです。必要な事業はしっかりやらなきゃいけないということ、これはよくわかっておるわけであります。必要な事業は、それこそこれも三位一体であります国、県、市町村、しっかりやらなきゃいけないという話なのであります。

 この事業はこの事業として、やはり是は是、非は非の中で、新しい事業も岩手でもやりたいということの中ではしっかりと面倒を見て、林業県岩手の発展のためにも、そして、国産材の時代がしっかりと日本に来るように頑張っていただくことを要望いたしまして、終わります。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、松木謙公君。

松木委員 おはようございます。大臣、副大臣、政務官、どうも御苦労さまでございます。そして、役人の皆さんもお疲れさまでございます。

 この間、長崎の五島列島の方にちょっと行ってきまして、あと、佐賀県なんかもずっと視察をさせていただきました。私は北海道出身なものですから、初めて行ってきました。やはり地域に行くといろいろな実情が本当によくわかるんだなということを改めて実感した次第でございます。

 大臣方はもちろんよくそういうところには出かけておられるとは思いますけれども、地域の声を永田町に長くいちゃうと忘れてしまうような、そんな気がしますので、お忙しいでしょうけれども、ぜひこれからも努めて地域を回っていただいて、そういうところのお声を吸い上げていただきたいなというふうに思っております。

 それでは、まず初めに、この間BSEの質問をしたんですけれども、三月十八日に私が質問したことに関して新聞に新たな展開があったものですから、そのことについて少しお聞きをしたいと思っております。

 三月十八日に自分が質問した中で、アメリカの食肉加工業者の中には、消費者の声を受け、自分の解体場で処理する牛に関して全頭検査をしていこうという働きがあるということが書かれていました、そして、公式、非公式を問わずそういうことを聞いたことがありますかという質問だとか、あと、いわゆる民間の業者から日本と相対で何かすることができるのかというような質問を私はしたんですけれども、そのときに、BSE問題は国と国との交渉事で、アメリカの精肉加工業者が自主的に全頭検査をしてもそれは意味のないことであるという答えがたしかあったと思うんです。

 三月二十一日の朝日新聞の朝刊に、アメリカ政府はBSE発生後に追加政策を何度か発表しているが、最大輸出国である日本などの牛肉禁輸解除に結びついていない、アメリカ国内では牛肉のだぶつきで価格が下落するおそれもあり、アメリカ政府は、民間自主検査の活用も含めて輸出再開に向けた有効な妥協案を真剣に模索し始めたと見られるという話が載っていたんですけれども、ここでちょっとお聞きしたいことが幾つかあります。

 まず一つ、日本の方には、アメリカからこういった内容でちょっと相談に乗ってくれよというような話が少しでも今来ているんでしょうか。

金田副大臣 自主的なBSE検査を業界の中で行うということは新聞等々の報道を通じて承知しておりますけれども、具体的に、アメリカで、日本に対する具体的な提案というものはまだございませんし、また、この問題は国と国との検疫上の問題でありまして、民間が自主的にやるといっても、アメリカ政府がどの程度関与してくれるかというようなことも踏まえなければならないというふうに思っております。

松木委員 全く非公式にもないということでいいんですか。

金田副大臣 具体的にそういった申し出はありません。非公式、公式を問わず、ありません。

松木委員 もう一度確認しておきたいんですけれども、アメリカからの牛肉の輸入解禁の要件には、いわゆる民間の方が自分でやっても、決してその要件にはならないということで間違いないということでいいんですね。

金田副大臣 民間業者の中で全頭検査をしようというような動きがあるということ、そういった報道が事実だとしたならば、アメリカ側が我が国の消費者の意向を踏まえて、これらに対応すべく動き始めたというようなことではないかというふうに考えております。具体的に、アメリカがそういった動きを踏まえて、日本国政府にそういう具体的な対応はまだないところでございます。

松木委員 それはわかったんですけれども、要するに、業界の方が自主的にやる全頭検査というんですか、それはいわゆる輸入再開の要件には絶対にならないかどうかということなんですよ、私が聞いているのは。もう一度ちょっと、済みません。

金田副大臣 輸入される牛肉が全頭検査された牛肉だというようなことになれば、国民の期待にはこたえられる内容ではございますし、そういったことがあれば一歩前進だとは踏まえますが、アメリカ政府として、両国の検疫間の問題でございますので、そういったさらなる措置が必要なんだろうというふうに思います。

松木委員 前回私が質問したときは、それは要件になりませんよという答えがたしか役所の方からあったような僕は気がしているんですよね。ですからこれをちょっとしつこく聞いているんです。

 それと、あと、いわゆるアメリカ政府がしっかりと関与して、そして本当にこれは大丈夫だということであればそれはいいのかなという気は私もするんですけれども、しかし、週刊誌の記事で物を言うわけじゃないんですけれども、意外と過去にも、ちょっとした週刊誌の記事が後々大きくなるということも結構あるんですよ。そういうことを考えたときに、自分の頭もプリオンになりたくないですから、やはり気をつけてもらいたい、本当にどこまでも慎重にやってもらいたいというふうに私は思っているんです。もう一度お願いします。

亀井国務大臣 基本的には、私、かねがね申し上げておりますとおり、屠畜場におきます全頭検査、そして特定危険部位の除去、このことが基本で、我が国と同等ということでございます。また、今のお話、正式に受けていないわけで、報道等のことでありますけれども、これは民間でそういう今私が申し上げましたような検査をするという報道、それには何といってもやはりアメリカ政府が関与する、認証と申しますか、そういうものが確実に行われる、こういうような話になった場合には、これまた我が国の食品安全委員会あるいは厚生労働省と十分協議をして対応していかなければならない、このように考えております。

松木委員 何となく圧力に屈しそうな気もするんですけれども、大丈夫ですか。

 この記事の中に、専門家の意見ということで、全頭検査は余り意味がないんだというようなことを言っている、政府の関係者というんですかね、その方の記事が出ていたんですけれども、しかし、今まで一生懸命、日本の酪農家の皆さんは、そこの中で厳しい思いをして闘ってきたわけですから、こういうのが新聞に出ているというのは、何か民主党が民主党の悪口を言っているような、そんな雰囲気があるんで、厳に慎んでもらいたいなという気がするんですよ。

 それと、やはりもう一つ、私も結構牛丼なんというのは学生時代からずっと食べていまして、今でも食べたいなとは思うんですけれども、ここまで来ると、やはりちょっとそれも我慢しなきゃいけないなという感じがしているんです。そして、しっかりとやはりアメリカと対峙をしていくということをしていかないと、どうも何か私は不安な気持ちがぬぐい切れないんですよね。ぜひ、そういうことを踏まえて、これからは一生懸命頑張っていただきたいと思うんですけれども、ではお願いします。

亀井国務大臣 再三申し上げておりますとおり、私の考えは一向変わっておりません。まず国民の健康保護、そして食の安全、安心、これを達成しなければならないわけでありますし、さらには、我が国でBSEが発生した時点での国民の皆さん方のあの思い、あのことを私は忘れることなく対応しなければならない、こう思っております。

松木委員 ぜひ、屈するという感じでないようなことを、これからも頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは、森林法の方の質問に移らさせていただきます。大体、私は、温暖化のことを中心に質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 地球温暖化問題は、我々人類の生存基盤にかかわる極めて重要な環境問題であり、これに対応するために、国際的には気候変動に関する国際連合枠組条約、これは一九九四年に発効しております。先進国の温室効果ガスの削減を約束する京都議定書、これは九七年十二月に採択をしております。

 まずここでお聞きしたいんですけれども、京都議定書は、採択はされましたけれども、いまだに発効はされていませんということで間違いはございませんか。

小島政府参考人 京都議定書でございますけれども、これは二つの発効要件がございまして、一つは、五十五カ国以上の国が締結をすること、二つ目は、締約国の一九九〇年の二酸化炭素の排出量が気候変動枠組み条約の附属書1国、先進国でございますが、その全体の合計の排出量の五五%以上を満たすこと、この二つでございます。

 平成十六年三月十七日現在で、百二十カ国と欧州共同体が議定書を締結しておりますので、五十五カ国要件は満たされておりますけれども、五五%要件の方は、四四・二%ということで満たされておりません。発効には、一七・四%のロシアまたは三六・一%のアメリカのいずれかの国の締結が必要である、こういう状況でございます。

松木委員 我が国は、この京都議定書において、平成二十年から平成二十四年まで、その間に温室効果ガスの排出量を、基準年である平成二年、これは一九九〇年ですけれども、その水準と比べて六%を削減することを約束したとあります。

 それではお聞きしたいんですけれども、ここにある温室効果ガスとはどのようなものか、そしてまた、これはどのようなところから主に多く排出されるのか、具体的に教えていただきたいと思います。

小島政府参考人 京都議定書では、排出を削減すべき温室効果ガスとして六種類のガスを定めております。二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六弗化硫黄、この六つでございます。

 これらの六種類のガスというのは、温室効果をもたらす程度が異なります。例えば、メタンは、二酸化炭素の二十一倍の温室効果があるというふうに言われております。したがいまして、これらを二酸化炭素の温室効果ガスに換算して、京都議定書における温室効果ガスの排出量というものを計算しております。

 我が国において排出される温室効果ガスの九割以上は二酸化炭素でございます。したがいまして、その大宗は、石炭や石油あるいは天然ガスなどの化石燃料の消費に伴って排出をされているというのが状況でございます。

松木委員 それでは、その排出によって、今まで世界や日本でどのような影響があったのか、あるいは将来どのようなことが起きるというようなことが予想できるか、こういうことを教えていただきたいと思います。

小島政府参考人 お答えいたします。

 まず、温室効果ガスの排出によってこれまでどのような影響があったかということでございますけれども、気候変動に関する政府間パネル、いわゆるIPCCという、世界の第一線の科学者によって取りまとめられました報告書によりますと、これまでの人間活動に伴う二酸化炭素の排出量の増加によって、大気中の濃度は、産業革命以前には約二八〇ppmであったものが、二〇〇二年現在で三七四ppmまで増加をしておりますが、地球の平均気温が二十世紀中に約〇・六度上昇、海面は十センチないし二十センチ上昇したと指摘されております。

 その影響でございますけれども、近年では、南極での巨大な棚氷の崩壊、あるいはヒマラヤにおきます氷河が解けるという状況が報告されておりますし、生態系に関しても、サンゴ礁が減少あるいは動植物の生息域の変化というものが確認されております。我が国におきましても、気象庁の観測によりまして、近年、夏季の異常高温、あるいは冷夏などの現象が頻発しておりまして、その原因の一つとして地球温暖化の影響があると指摘をされております。

 それで、今後どのようなことになるかということでございますが、これは、我々人類の活動が環境に優しいものになるかあるいは野方図なものになるかということによって違ってまいりますけれども、地球の平均気温は今世紀中に一・四度から五・八度の幅で上昇する、その結果、海面は、九センチから八十八センチの間でございますけれども、上昇するということが予測をされております。また、洪水や干ばつなどの異常気象というものが世界各地で増加をしてくるということでございます。我が国においても、熱中症による高齢者の死亡率の増加、多くの農作物生産の減少、さらには熱帯地域に多いマラリア等の感染症が温帯地域まで上ってくるというような影響が指摘されております。

 温暖化が人間の健康、農業、生態系等にさまざまな悪影響を及ぼすということが指摘をされております。

松木委員 これをほっておくと、人類の存亡そのものが非常に危ぶまれるというふうに考えてよろしいんでしょうか。

小島政府参考人 今申し上げましたIPCCの将来予測、まさに人類の存亡にかかわるという問題だと認識しております。

松木委員 人間の営みがこれから環境に優しいものになるかあるいは野方図なものになるかというところで、いろいろと分かれ目があるんでしょうけれども、ある意味、人類の命運を左右するかもしれない、これが地球温暖化問題、そういうふうに考えていいと思うんです。今回の森林法の一部を改正する法律案というのは、そういう意味では同じようにかなり重いものだなというふうに私は思っているんですけれども、そういう考えでよろしいのかどうか、ぜひ、これ、大臣と副大臣と政務官さん、皆さんにちょっとお気持ちを聞きたいなと思います。

亀井国務大臣 今御答弁ありましたとおり、地球温暖化、大変重要なと申しますか、もう本当に、今の数字を伺いますと、非常に厳しい、こういう状況にあるわけであります。

 そういう中で、私ども、森林を林野の面で、この地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策、そして三・九%、このことが指摘をされておるわけであります、それを達成できるような諸般の努力をしてまいりたい、このように考えております。

金田副大臣 地球温暖化問題につきましては、本当に我々のライフスタイルにかかわってくる重要な問題だと思っております。人類挙げて、また日本を挙げてこの対策に取り組まなきゃならない、特に林野庁を所管しております農林水産省としては、三・九%の実現について懸命に取り組ませていただきたいと思っております。

木村大臣政務官 大臣、副大臣の答弁のとおりだと思いますが、やはり三・九%というこの数値は、農林水産省、林野庁を中心に意識しながら、何ができるかということで、努力しなければならないと思っています。

松木委員 三・九%についてはまた後で聞かせていただきます。ぜひ、役所挙げて頑張っていただきたいというふうに思います。

 それと、政府としてはこの六%削減を目標としてこれからずっと一生懸命努力されていくわけですけれども、温室効果ガスの六%削減というのがあるんです。これは、よく何炭素トンなんという言葉がこのごろ使われるんですけれども、これでいうと、この六%というのは全体で何炭素トンになるのか、そしてまた、その炭素トンという単位について、ぜひ具体的に、わかりやすく説明をいただきたいと思います。

前田政府参考人 御質問の件でございますけれども、御案内のように、樹木は光合成によりまして大気中の二酸化炭素を吸収、固定しているわけでございますけれども、後でまた申し上げますが、森林吸収量の単位として用いております炭素トン、これは樹木が光合成によりまして吸収、固定した炭素の重さを示したものでございます。

 ちなみに、我が国の森林の吸収量につきましては千三百万炭素トン、これを目標にしているわけでございますが、これを二酸化炭素の重さであらわしますと四千七百七十万二酸化炭素トン。これは、Cの原子量が十二で、Oが十六で、それでC対CO2の比が十二対四十四になるということから逆算しますと、科学的に出てくるということでございます。

 それで、今お話にございました六%でございますが、これは炭素トンベースでいきますと、総排出量は我が国三億三千五百万トンございまして、そのうちの六%、約二千万トン、二千万炭素トン。二酸化炭素の方で申し上げますと、総排出量が十二億二千九百万トンでございまして、そのうちの七千四百万二酸化炭素トンということになっております。

松木委員 これをちょっと国民にわかりやすく、この一炭素トンというのをもうちょっと、例えば、一人の人間が一年にこれだけのものを出して、それを吸収するには木が何本要るよと、そんなような話は何かありませんですか。

前田政府参考人 ただいま一人当たりという話が出ましたので、ちなみに、森林の吸収目標でございます一千三百万炭素トン、これを人間の呼吸量で置きかえてみますと、一人当たりの一年間の呼吸で排出されます二酸化炭素の量が三百二十キロ程度でございます。これは、炭素の量では〇・〇八七炭素トン程度でございますから、約一億五千万人分の呼吸量に相当するということでございます。

 ちなみに、自動車で見ますと約二千百万台分の排出量に相当する。これは我が国の乗用車全体の四割に当たるということで、相当大きなものであるというふうに御理解いただければありがたいと思います。

松木委員 よくわかりました。

 こうした国際的な約束の達成に向けた取り組みを推進するため、平成十四年三月十九日、地球温暖化対策推進本部が新たな地球温暖化対策推進大綱を定めました。この中で、京都議定書の六%削減約束のうち、三・九%に相当する千三百万炭素トン程度を森林の吸収により確保することが目標とされております。

 また、大綱の中で、現状程度の水準で森林整備、木材供給、利用等が推移した場合、確保できる吸収量は大幅に下回るおそれがある、そういうふうに明記してありますけれども、大体どのぐらいこれは下回るというふうに見ているんでしょうか。

前田政府参考人 平成十四年に決定されました地球温暖化対策推進大綱に明記されておりますように、平成十年から十二年度の水準で森林整備、木材供給、利用、こういったものが推移した場合には、森林吸収によりまして確保できます二酸化炭素の量、これが約三千五百五十万二酸化炭素トン、炭素トンに換算しますと九百六十八万炭素トンでございます。

 これは、基準年、一九九〇年の総排出量比に対しまして約二・九%に相当いたしておりまして、このまま推移いたしますと、目標でございます三・九%、これは四千七百六十七万二酸化炭素トン、炭素トンでいきますと、先生御指摘のように、千三百万炭素トンを大幅に下回るおそれがあるというように見ておるところでございます。

松木委員 国際的な約束なんですけれども、何でこんなに下回っちゃうのかなというふうに素朴に思うんですけれども、いかがでしょうか。

前田政府参考人 もともとはこの三・九%というのが、日本の現在の森林整備あるいはそれに基づいて算出されたというよりは、国際間の協定の中で日本の場合に上限として三・九%まで森林吸収でやることを認めようと。ちなみに、ヨーロッパ等でございますと〇・数%しか認められないとか、カナダですと相当高い水準で認めるとか、それぞれ各国の事情によって違うわけでございますが、そういうことで、私どもとすればその国際協定の中で上限として認められました三・九%、これに何とかぎりぎり近づけていきたいということで、努力しているところでございます。

松木委員 認められたというか、やらなきゃいけないことなんでしょうけれども、要するに、ちょっと予算が足りないなということ、まあ長官の方からそういう言い方はちょっとしづらいでしょうけれども、予算が足りないということじゃないかなというふうに私は推察するわけです。答えづらかったら結構ですけれども、まあそうだなと言っていただけるんならちょっとお答えをお願いしたいと思います。

前田政府参考人 実は私ども、この森林整備の関係では林野公共事業で対応しておるわけでございますが、この関係では、予算的には、相当今のレベルからいきますときついという状況でございます。そういう意味では、先ほど申し上げておりますように、新たな税財源も含めまして財源を確保していきたいという思いを持っております。

松木委員 はい、わかりました。

 ところで、林野庁のこの十年間の予算の推移なんですけれども、森を守るために、やっぱりしっかりした予算が今までとれてきたのか、そこら辺をちょっと、短くて結構ですからお示しいただきたいなと思います。

前田政府参考人 林野公共予算でございますけれども、過去十年間の推移を見ますと、平成九年度四千二百九十六億円をピークにいたしまして、その後、政府全体の財政健全化に向けた流れの中で減少してきているというような実情にございます。そういう意味では、まだまだ予算をふやして森林整備に積極的に取り組んでいかなきゃいけないというように考えている次第でございます。

松木委員 やはり人類存亡のことにかかわる問題ですので、予算を削って何とかやっていても、息吸えなくなっちゃったら生きていけないわけですから、ぜひ、これは一番重い課題だと私は思うので、大臣、できたらこれをもっと予算的に何とかならぬのかなという気がするんですが、ちょっと御所見を。

亀井国務大臣 先ほど来の三・九%、これを何としても達成する、そういう面では、森林の整備等々、植栽等々、いろいろあるわけであります。そういう面で、一般財源の確保とあわせて、いわゆる地球温暖化税、こういう問題につきましても、私ども省内におきましてもいろいろ今勉強させておるところでございまして、我が省だけでなしに環境省ともこれはいろいろ連携をとらなければならないことでありますし、国民の皆さん方のまた御理解もちょうだいできなければならないわけであります。財源を何とか確保して、その目的が達成できるように努力をしてまいりたい、こう思っております。

松木委員 農林水産省は、平成十四年の十二月二十六日、地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策を策定しました。これは、森林・林業基本計画の目的達成に必要な森林整備、木材供給、木材の有効利用等の取り組みを着実かつ総合的に実施することにより、森林による吸収量一千三百万炭素トンの確保を目指したものであるわけです。

 これは私が独自に調べた資料なんですけれども、温暖化防止森林吸収源十カ年対策を着実に進めるためには大体このぐらいの予算が必要だなというのをちょっとお示しさせていただきます。森林整備で三千四百億、木材利用で百億、林業労働者で三百五十億。これは、おのおの平成十六年でいえば、森林整備には千八百二十四億、木材利用で二十億程度、林業労働者で七十億程度ということに大体なっているんです。現在の予算では全く足りないわけですけれども、私が今言った額についても、ぜひちょっと評価をしていただきたいなと思います。

前田政府参考人 確かに、今の現状レベルの事業量あるいはその予算では足りないということは事実なんでありますけれども、じゃ、幾ら足りないのかという話になりますと、実は、いろいろ施策を効果的にどういう組み合わせをやっていくんだとか、じゃ、生産性をどのくらいで見ていくのか、あるいはコストの縮減をどのくらい見込んでいくのか等々、いろいろな複雑な問題がございまして、そういったいわば不確定な要因が多いことから、事業費を断定的に、確定的に示すということは非常に難しいというふうに考えております。

 ただ、事業量的に、例えば植栽で見ていきますと、平成十年度から十二年度まで実は四万ヘクタールぐらいなんですが、これを七万ヘクタールぐらいにふやさなきゃいけないとか、あるいは間伐を三十二万から三十八万にふやす必要があるとか、そういったことで、事業量としては相当まだ低いというような状況にはございます。

松木委員 ぜひこれからも頑張っていただきたいと思います。

 財源のことをちょっとお聞きしたいなと思うんですけれども、十カ年対策において、地球温暖化対策の推進は政府全体としての取り組むべき課題である、将来の安定的な財源の確保に向け、温暖化対策税等、新たな税財源措置を含めたさまざまな角度からの検討が必要と考えられているようでございます。

 中央環境審議会総合政策・地球環境合同部会地球温暖化対策税制専門委員会、すごい長い話なんですけれども、そこでは平成十五年八月二十九日に「温暖化対策税制の具体的な制度の案」を取りまとめています。この中で、CO2削減約束の達成とその後の長期にわたる大幅な排出減の取り組みを進めるために、従来の施策のみならず、温暖化対策へのインセンティブを与えて、合理的な対策をなし得る温暖化対策税が有効であるという認識を示しているわけですけれども、その上で、課税要件のイメージとしてのCO2または化石燃料を対象とした課税とする考え方、また、温暖化対策を積極的に行った人や企業に対しての税負担の軽減の考え方、そういうのを示しているわけです。税収については、その中でいろいろと述べられているんですけれども、これはちょっと長くなるので今はカットします。

 以上のことというのは、皆さん、大臣の方はどのように、大臣じゃなくても結構ですけれども、どのように評価されているか。

小島政府参考人 まず、環境省の方からお答えさせていただきますけれども、先生御指摘のとおりの報告書でございます。現在、中央環境審議会、さらにそれをベースにいたしまして、地球温暖化対策推進大綱の評価、見直しをやっております。見直しの結果、さらなる対策が必要であるというふうに評価された場合に備えまして、温暖化対策税の検討を進めているわけでございますが、インセンティブ効果と同時に、その収入を排出抑制あるいは吸収源対策に使うという提案もさせていただいております。それを、さらに国民の理解が得られるような審議を深めているというところでございます。

金田副大臣 温暖化対策の税制というのを環境省を中心に我々も一生懸命に勉強していかなきゃならないわけですけれども、国民の皆さん方のコンセンサスをどうやって得ていくか。地方税でも各都道府県で大分実施している都道府県がございまして、環境税というような形で、地方レベルでも相当検討が進んでいるというふうに承知しております。国としても、これから環境省とともに一生懸命に取り組んでまいりたいというふうに思います。

松木委員 地球存亡の問題であるということを考えれば、これは私の個人的な意見なんですけれども、特定財源ということにしていって、いろいろと特定財源になったら問題もあるとか、いろいろな話もあるんですけれども、しかし、ぜひここは特定財源にしていったらいかがかなというふうに私は考えているわけでございます。

 ちょっと、ほんのちょっとで結構です、御所見をお願いいたします。

小島政府参考人 得られました財源をどのような形にするかということを含めまして、現在検討中でございます。

松木委員 ぜひ、いい結果が出るように望んでおります。

 大体時間も来てしまいましたので、あと、普及指導員だとか保安施設事業に関することだとか、聞きたいことはいっぱいあったのですけれども、これはちょっともう時間がないので割愛をさせていただきます。いずれにしましても、この森林法というのはこれから、未来永劫とは言いませんけれども、人類がより長く存在するためには大変重要なことだというふうに私は思っているんです。森林法の一部を改正する法律案というのはそこにしっかり絡んでくるわけですから、何よりもやはり優先されるものだというふうに私は理解しているわけですね。

 三月二十一日付の読売新聞に、樹木伐採後三年以上造林されず放置された民有林が、四年前に比べて一二%、二万五千ヘクタールに増加し、森林の荒廃が明らかに進んでいるという記事が掲載されていました。中には、民家近くの傾斜地にある民有林もあって、大雨が降れば土砂崩れが起こったり人に被害が及ぶ可能性もあるというふうに書いてありました。

 国にお金がないというのはよくわかるんですけれども、新しい税だとかそういうものもなかなか取りづらいというのもわかるんですけれども、しかし、そういったことをしっかり乗り越えて、新しい政策をつくっていくということが私は本当に大変重要なことだというふうに思っておりますので、どんなことがあっても、森林がこれ以上荒廃したりなくなったりするということは決して許されるべきことではないというふうに思っております。ぜひ一番重要な、重大な政策としてお考えいただきたいと思いますし、林業関係のところを実際に回ってみますと、昔はここに三百人もいたんだけれども、今は五十人しかいないんだよとかという、そういう話というのは随分多いんですよね。それを考えると、やはり幾らお金を残したって、幾ら立派な道路をつくったって、幾ら立派な箱物をつくったって、結局、人間が住めるような環境じゃなくなってしまったら何にもならないと思うんですよね。

 そういうこともありますので、このことというのは、特に地球温暖化のことをぜひ農林水産大臣も頑張っていただいて、財務省からがっちりとお金をふんだくっていただいて、頑張っていただきたいというふうに思っております。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

高木委員長 次に、岸本健君。

岸本委員 民主党の岸本でございます。私のふるさとの和歌山県、これは木材の産地として大変有名な地域でございます。私も何とか林業が活性化してほしいと望んでいる一人でございます。

 そこで、森林法の一部を改正する法律案について、幾つかお尋ねしたいと思います。

 この法案の目的とするところは、健全な森林の整備、保安林の適切な管理保全に努め、地球温暖化などの環境保全という観点からも、国民参加の森林づくり、これを目的とするという趣旨があります。一過性の対処法にならないように、恒久的な視野に立ち、財源的な裏づけもしっかりとしていただいて臨んでいただきたい、そのように思います。

 それでは、まず最初に、森林の荒廃が国有林、民有林を問わず指摘されております。特に民有林の手入れ不足が昨今指摘されております。その理由として、林業に携わる方々、林家の方々のモチベーションが下がっているのがその最大の理由ではないかというふうに思っております。林家の林業所得の推移を見ましても、平成五年度七十三万六千円という金額から毎年下がってまいりまして、平成十三年度には二十一万三千円、そこまで下がっております。

 そこでお尋ねをいたしますが、林業粗収益から林業経営費を引いた額、これが所得でございますが、この急激な所得の下がり方、この背景とその理由について、林野庁はどこに主たる原因があると考えているのか、また今後のお見通しなど、お尋ねしたいと思います。

前田政府参考人 私どもの方で、林家一戸当たりの林業所得につきまして、保有山林面積二十ヘクタール以上五百ヘクタール未満のいわゆる中・大規模層、これを対象にいたしまして毎年調査を行っております。

 先生お話にございましたように、近年におきます林業所得の変化を見ますと、平成八年度までは七十万円程度で推移していたわけでございますが、その後は急激に低下しておりまして、平成十三年度には、お話にございましたような二十一万円になっているというような状況でございます。

 この林業所得の低下でございますが、これは我が国の景気の長期低迷等に伴います木材需要の減少、木材価格の低下、それとこれに伴います林家の伐採意欲の低下、こういったものが重なって、林業粗収益が急激に低下する一方で、労賃単価ですとかあるいは苗木代、こういったものの上昇等もございまして、林業経営費の方はそれほど下がらないというようなことが主な原因と考えております。

 木材需要あるいは木材価格につきましては、依然として低迷しておりまして、今後も林業所得の低迷が懸念されるところでございます。このため、木材需要の拡大を図りますとともに、路網の整備、高性能林業機械の導入等によりまして、造林、保育、素材生産、各段階を通じた施業コストの低減に努めるというふうなことで、林業の持続的、安定的な発展を図っていくことが重要ではないかというように考えている次第でございます。

岸本委員 本当に木材価格も下がっておりますし、私も、二週間ばかり前ですか、林業を営む方とお会いしまして、いろいろお話を聞いてまいりました。もうからないから本当に後継者も育たない、こういう悲しい状況でございます。何とか国の方で指導をしていただいて、いろいろ取り組まれているのはわかっておるんですが、指導していただいて、山が生き生きと育つような、そんな御指導をいただきたい、そのためにも木材価格の安定というのを何とかしていただきたい、そんなふうに思います。

 次に、健全な森林を育成するためには、先ほど言われましたけれども、間伐、これはもう欠くことのできない作業でございます。大変な労力を伴う作業ですが、要間伐森林の指定に当たって間伐等の施業が適正に行われていないとする判断、客観的な基準とは何か。そして、森林所有者が勧告に応じない場合、権利移転等や施業委託などについて協議すべき旨を勧告するとありますが、ここで言うところの勧告の法的な重みといいますか拘束力といいますか、過去に一度も勧告された例がないということですが、市町村長が勧告したにもかかわらずそれに従わなかった場合の措置について、また、民法上、私有財産権との関係はどうなるのか、あくまでも森林保有者の協力に期待するだけの内容なのか、勧告の意義と法的効果についてお伺いいたします。

前田政府参考人 要間伐森林には、市町村森林整備計画に定めます間伐を実施すべき標準的な林齢、これを相当期間経過しているにもかかわらず、特段の理由もなく間伐が実施されていない森林、これを指定することにいたしております。

 また、勧告でございますが、それが尊重されることを前提とはしておりますけれども、法律上相手方を拘束する意味は持っておらず、財産権に直接制約を加えるものではないということでございます。

 こうした勧告を制度化しておりますのは、森林施業は本来森林所有者が経済活動の一環として行うべきものでありますが、これを行わせる担保措置としては、直ちには災害等に結びつかないような場合、公益上の必要と私権制限とのバランスにかんがみまして、一種の指導的な措置でございます勧告とすることが適当であると考えられることによるものでございますが、勧告によっても施業が行われず、かつ権利移転等の協議勧告による協議が不調である場合には、その後の措置として調停、裁定が講じられることとなっております。

 裁定は、災害の発生のおそれがあるといったような公益上の必要性が極めて高い場合に行われるものでございまして、これによって分収育林契約の締結がなされたものとみなされ、育林者による施業代行がなされることになるものでございます。

岸本委員 しっかりと指導していただいて、私有財産、こんなものを侵すことのないようによろしくお願いいたします。

 次に、都道府県知事の調停に応じない場合の措置である分収育林契約についてお尋ねいたします。

 今回の措置とは別の制度ではありますが、国有林では、昭和五十九年に、緑のオーナー制度、これができた。延べ八万六千人の緑のオーナーが参加いたしまして、約十万口の契約が結ばれた、その森林面積は約二万六千ヘクタールに上っておると伺っております。実は、私もこの緑のオーナーになっております。木材価格の動向には一喜一憂しておる一人でありますが、最近は専ら憂える一方なのです。

 そこで、お尋ねいたしますが、権利移転等の協議を経て分収育林締結に係る裁定制度の発動要件緩和とありますが、分収育林の将来像が全く見えてこない。国有林における個人を対象とした制度と、民間林の要間伐森林において都道府県の知事が発動する制度との違いは理解しておりますが、このように林業採算性が悪化する中で、その中での、分収育林契約に係る裁定の発動要件を緩和するその意義と効果についてお聞かせください。それから、休止状態である緑のオーナー制度への今後の取り組みについても、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

前田政府参考人 要間伐森林制度のうち、強制力を持ちます裁定制度につきましては、私権制限を伴うものでございますことから、都道府県知事の方は、間伐、保育が実施されておらず、かつ、諸事情を考慮して引き続き間伐、保育が実施されないことが確実であると見込まれること、そして、引き続き間伐、保育が実施されないときは当該森林及びその周辺地域におきます土砂の流出、崩壊その他の災害を発生させるおそれがある、こういったすべての要件に該当する場合に限り裁定することができるものということにされております。

 しかしながら、間伐、保育が行われないことに起因する外部的な影響、これは周辺の災害発生だけにとどまらないで、水源涵養効果の低下ですとか、その他森林の有します環境保全等々公益的機能全般にかかわるものでございまして、近年の情勢を見ましても、これらの機能の確保、これが一層重要性が高まっているということから、今般、水害、渇水、環境保全の観点から、支障が生じる場合にまで含めて裁定ができるようにして、適切な施業を確保しようというものでございます。

 なお、確かに、御指摘のように、林業採算性が悪化しているところでございますけれども、この分収育林契約に係る裁定によりまして、公的機関が分収育林の施業を行う場合、高率の助成水準、これは国、県合わせますと実質九〇%になるわけでありますが、そういった助成が適用できることにいたしているところでございます。

 それと、国有林の分収育林、いわゆる緑のオーナーの関係でございますが、これにつきましては、確かに現在休止いたしているところでございます。これは、お話にございましたように、今までに相当程度の面積を実施してきていますこと、それから、十年に国有林、実は抜本改革をいたしまして、木材生産から公益機能の発揮に、施業方針といいますか運営方針を大きく転換いたしております。そういった中で、バブル崩壊後の経済不況の中で、募集に対しましても応募の状況が極めて低くなってきているというようなことで、休止いたしているわけでございますけれども、これにつきましても、私どもも、できるだけ高く売れるようにということで努力していきたいというふうに考えている次第でございます。

岸本委員 頑張っていただきたい。私も、この緑のオーナーというのは、私は実際は興味がなかったのですが、亡くなった父親が、国のため、そしてまた自分のためにもなるんだということで、今になったらだまされたのかなと思いながら、自分のない貯金を払って入ったんですが、こういう人間は私だけじゃなくて、たくさんおられると思います。いろいろと御努力いただいて、やっていただきたいと思います。

 次に、施業実施協定制度の拡充に関連してお尋ねをいたします。

 森林ボランティア団体が急増し、活動場所の確保と条件整備が法案の中身であります。それはそれで推進していただきたいと思いますが、既に森林所有者でない方で山の仕事に従事している方との連携や、素人が山仕事をすることについてかなりの危険性がある。これを周知徹底し、十分な指導や訓練が行われるよう配慮をしていただきたい、そのように思います。これは要望ですので、答弁は結構です。

 そこで、森林ボランティアの方々は、山主さんの許可を受けて山仕事を手伝うわけですが、私どものところでは、ほとんどの場合が、民有林が活動の対象だと思います。しかし、最近では国有林においてもフィールドの提供に努めているとも聞いております。例えば、さがみの森であったり、また、和歌山の龍神村というところで、ある山主さんがみずからの山を、たしか小学校だと思うんですが、小学校のすぐ裏手の山をみずから開放されて、学遊林と名づけて子供たちに開放して、その山に親しんでもらうというふうな取り組みもしています。さがみの森については国有林でございますが、開かれた森づくりというスローガンのもと、森林ボランティアの方々にもっと積極的に開放すべきだと考えています。

 国有林に森林ボランティアを受け入れる場合、林野庁の立ち会いなどが必要になると思います。例えば、林野庁の職員OBの方を有効に活用できるような方策はないのか、雇用拡大の観点から御見解をお聞かせください。

前田政府参考人 先生今お話にございましたように、国有林につきましては、開かれた国民の森林ということで、国民参加の森林づくりを推進していくことが大変重要な課題であるというように考えておるところでございます。

 このため、国有林におきましては、森林ボランティア団体等に対しまして森林づくり活動のフィールドを提供いたしますふれあいの森、これは全国の各森林管理署ごとに一カ所以上ずつつくって、ボランティアの方々がそういったところで森林体験、林業体験ができるようにというようなことでやっているわけでございますが、そういった設定を推進しますとともに、現地の案内ですとかあるいは技術指導、道具類の貸し付け、こういったものを行いまして、活動を支援しているところでございます。

 また、こうした取り組み事例の中には、林野庁職員のOBが森林インストラクターといったような形で森との触れ合い体験活動を支援している例ですとか、あるいは、みずから森林ボランティアとして森林づくりに参加しているというような例も見られます。

 なかなか国有林だからといってOBだけを優遇というわけにはいかないと思いますが、今後とも、こうした森林ボランティア団体に対しては、活動の場を提供いたしますとともに、森林・林業に知見を有します林野庁職員OB、森林インストラクター等として活用するなど、国民参加の森林づくりを積極的に進めてまいりたいというように考えている次第でございます。

岸本委員 続いて、関連してお尋ねしたいと思います。

 ちょっときつい言い方かもわかりませんけれども、林野庁の職員は国の無能無策な林業政策の犠牲にされたというふうに思っております。三兆八千億円という莫大な赤字の穴埋めのために、全国に点在していた営林署、これが統廃合されました。それから、多くの職員の方が整理合理化の対象となってきた。山のメンテナンスのプロである営林署の元職員の方々が、森林ボランティアの方々と連携して、より効果的な活動ができるような仕組みをぜひ考えていただきたい。先ほども、お話の中に、職員ばかり優遇というふうな話でありましたけれども、こういうしんどい目、きつい目に今遭わされておると思うんですね。やはりこの人たちの活動の場というものをつくっていただきたいと思います。緑の雇用の拡大にもこれもまたつながってくると考えておりますので、これをぜひお願いしたい、要望でございます。

 さて、森林ボランティアの数が急激にふえた背景には、山の仕事を通じて森林の持つ機能や役割を学んで、環境保全に寄与したいという側面、さらには少子高齢化社会の現代を反映するように、山を継ぐ後継者不足が深刻で、このままでは山が死んでしまうのではないかという危機感が一番大きな要因であろうと思います。六〇年代には二十年杉二本で一人の労賃が賄えたようですが、現在の国産材価格と相続税などを考えると、山主さんの意欲はだんだん下がっていくというんですか、その一方だと思います。

 そこで、お尋ねします。NPOの方々と森林所有者の間を仲介し、協定を市町村長が認可とありますが、具体的な協定の内容とは何か、また、その協定によってどのような活動が展開できるのかをお教えください。

前田政府参考人 新たな施業実施協定制度は、ボランティア活動を行う方にとっての活動の場の確保の問題、それから森林所有者側のボランティア活動受け入れに当たっての適切な施業の確保に関する懸念という、双方が有する課題を調整する仕組みとして創設するものでございます。

 お話にございましたこの協定には、一つには、ボランティア活動を行う森林の区域を明らかにした上で、NPO等が行います植栽、枝打ち、間伐等の森林施業の種類、実施方法、時期、さらには作業路網等の必要な施設の設置ですとか維持運営に関する事項、それから、協定の有効期間、これは十年以内ということで考えておりますが、それと協定に違反した場合の措置、これは、例えば復旧するんだとかそういったことでございますが、そういったものを定めることにいたしております。

 この協定制度によりまして、NPO等におきましては、長期間にわたって安定的に活動の場が確保されるということになるわけでございますし、またかつ、植栽ですとか保育、間伐、こういった一連の森林施業の体験、あるいは森林施業技術の向上を図ることができる。そして、これらの活動を通じまして、森林・林業に関する国民的な理解、これの増進が一層図られるのではないかなということを期待しているところでございます。

岸本委員 よろしくお願いします。

 ちょっと急ぎます。少し横道にそれるんですが、鳥インフルエンザ、京都府丹波町の鳥インフルエンザの事後処理の関連についてお尋ねいたします。

 約二十五万羽という大量殺処分された鶏が埋設処理されたわけですが、この埋設処分をした場所は地元の生産森林組合の所有する山林であったということですが、環境に与える影響や衛生面などを考えますと、安易に山を、木を切ってこういうふうな埋設をすべきではないと思います。農水省は今後も同様の処理を考えているのか、埋設場所として適当であったと考えるのか、今後地中で起こる変化の過程についてどう想定されているのかをお尋ねいたします。

中川政府参考人 鳥インフルエンザの患畜あるいは疑似患畜の死体、それからさまざまな汚染物質の処理につきましては、家畜伝染病予防法それから鳥インフルエンザの防疫マニュアルに基づきまして、焼却をするかあるいは埋却をするかというふうなことを判断する、そのいずれかの方法で処理をするということになっているわけでございます。

 今回の場合の具体的なその処理の方法につきましては、発生の状況ですとか周辺の環境あるいは焼却処理施設の所在状況といったものを考慮いたしまして、できるだけ早く処理をする。それから、汚染のもとになりますこういった病原体の散逸をできるだけ防ぐその方法としてはどうしたらいいかということを総合的に勘案をいたしまして、今回の場合は、近隣には余り大きな量の処理をする焼却施設がないというふうなこと、それから、今先生もおっしゃいましたように、二十五万羽に上るという大量の鶏の処分をしなきゃいけないというふうなことから、近くの森林組合が所有されているところに埋却処理をするというふうなことで決まったわけでございます。

 当然、京都府及び地元の丹波町におかれましては、この埋却処理をするに当たりまして、地質ですとか地下水、あるいは水源との関係などにつきまして、環境部局との事前の協議もされておりますし、また、環境への観点から、周囲への漏出を防ぐための万全の措置をとられたというふうに思っております。あわせまして、近隣の住民の方々への説明もされ、そういう御理解を得た上で行われたものというふうに理解をいたしております。

岸本委員 先ほど言われました家畜伝染病予防法ですか、これに基づいて緊急的な処理に迫られたというのはある程度仕方のないことかなとも思いますけれども、木を伐採して穴を掘る、よく、山の中、和歌山なんかでもいろいろなものを山の中へ捨てに行ったりとか、何か山がそういう場所になっていくのかなというのがちょっと不安になってくるわけですけれども、この自然の山が廃棄処分処理場になったということも、私はこれは事実だと思います。

 山の中に大きな穴を掘りまして、ビニールシートを敷いて、そして鶏の死骸が中に入ったビニールを積み上げる、さらにその上にビニールシートで覆う、そして四隅を閉じて最後に土を盛るという方法だ。地中が今後どのように変化していくのか、これも想像したくないほど無残な状況になってくるのではないかなというふうにも思います。動物の死骸というのは土に返る、これで土壌の汚染にはならない、こういうわけですが、密封された状態で、このビニールの中でどういうふうになっていくのか。

 そこでちょっと教えていただきたいんですが、三年間、これ入れたまま埋設した後、土壌の汚染の状況について、それはちゃんとできるように考えているのでしょうけれども、例えば土壌溶液の採取器などを使って検査をされるのかどうか。埋設し、腐らないビニールの処理、これは将来どうなるのか、お教えください。

中川政府参考人 鶏の死体あるいは汚染された物品の処理につきましては、二つの点を考慮しなければいけないと思います。

 まず第一は、こういった汚染された病原体の周囲への散逸を防ぐという点、そういった観点からどう処分をするのが一番適当なのかということでございます。二点目は、その後、今度は、埋却した後の状態がどうなのか、先生が今おっしゃった点かというふうに思います。

 それで、第一の点につきましては、先生も今おっしゃいましたけれども、きちっと埋却するに当たりまして、消毒液をまき、それからビニールシートで囲ってというふうなことを行いまして、しかもその上に覆土として二メートル以上の土をかぶせたということでございますので、こういった土の中ではビニールは安定的な状態を保つということでもありますし、三年間は掘り返しが禁止をされているということで、ウイルスは生きた細胞の中でしか増殖をいたしませんから、この間に十分分解酵素のもとで感染力を失うというふうに考えられております。

 したがいまして、埋却したこういった鶏の死体のウイルスが長期にわたって感染性を有したり、あるいは環境を汚染するというふうなことはないものというふうに考えております。

 他方で、二つ目の点でありますけれども、地中に埋められたビニール自体がどうなのかというふうな観点、あるいはその他環境への影響はどうかというお尋ねでございますけれども、こういった水質汚染や土壌汚染の可能性がなくなった段階で、つまり、三年たってからということでございますけれども、ビニールシートなどをどういうふうに扱うのかという点、これは確かに一つの課題でございます。私ども、今後、専門家の方々の意見も聞き、また、地元の府県あるいは地方公共団体の方々とも協議をして、この扱いについては考えていきたいというふうに思っております。

岸本委員 よろしくお願いします。

 専門家の御意見も聞いてということですけれども、本当によく研究していただいてやっていただきたい。

 これも余談ですけれども、ごみ袋も、ビニール袋ですか、これも進化しているようです。埋設後、バクテリアの働きによって半年ほどで堆肥化するもの、これはもう市販化されているようで、今度のケースでもそういったものが使われたのかな、そんなふうにも思ったんですが、よく研究していただいてやっていただきたい。少なくとも、環境に配慮した方法について、その場しのぎと言われないように、各省庁間の連携を図って、知恵を出し合いながら取り組んでいただきたいと要望しておきます。

 本件の法律案とは直接関係ないのですが、私のふるさとである和歌山県の高野、熊野、吉野・大峯の霊場ということで、これらに至る参詣する道が、紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産への登録を目指しております。順調にいけば、ことしの六月、中国で、世界遺産委員会で決定されるのではないかという見通しになっておりますが、この世界遺産に登録されましたら、国内はもちろんのこと、海外からの観光誘致に県を挙げて、観光客がたくさん来てくれるんではないかという期待をしているところでございます。

 文化庁の方に、世界遺産に登録された後の問題として、世界遺産にふさわしい景観の維持、それが実は、一番大変な作業であり、難しい問題であるということをお伺いしました。つまり、県民の協力によってごみの問題、それから不要な看板の撤去、道路から見える山の整備、これなどが大事であるということでした。特に、山の整備は大きな問題であります。本法律案が広く周知されまして、多くの森林ボランティアの方が自治体と連携をして山の景観維持に携わっていただけたら、こんなにすばらしいことはない。ぜひとも、本案の仕組みをわかりやすく宣伝していただきますことをお願い申し上げます。

 具体的な広報活動の進め方と、NPO関係の専用窓口を林野庁に開設する用意があるのかどうかということをお尋ねいたします。

前田政府参考人 最近、森林ボランティア団体は大変増加しているわけでございます。最近ですと、森林ボランティアだけでも一千団体を超える、そういった状況にあるわけでございますけれども、このような森林ボランティアの活動の一層の促進を図っていくためには、やはり本法案で拡充しようとしております施業実施協定制度の仕組み、内容等について、積極的な広報に努めていくということが大事だろうというように考えております。

 このため、林野庁といたしましては、各種の会議等を通じまして、都道府県、市町村への説明を徹底いたしますとともに、各種の広報誌あるいは林野庁のホームページへの掲載、NPOの主催しますイベントでの周知、こういった幅広い広報活動を行っていくことにいたしております。

 なお、林野庁におきましては、実は、昨年八月、森林ボランティア団体等との意見交換を持ったわけですけれども、それを踏まえまして、森林ボランティア支援のための窓口、これは本庁に開設したところでございます。ここにおきましては、具体的には、森林ボランティア活動に関しますアンケート等、情報の収集ですとか支援措置等の情報発信、あるいは活動フィールドに対します相談、問い合わせへの対応といったような活動を行っているところでございます。

 また、国有林サイドにおきましても、全国の森林管理局、森林管理署等、こういったところに設置いたします相談窓口におきまして、森林ボランティアを含めました幅広い相談に対応しているところでございます。

 今後とも、森林ボランティアの期待にこたえるように、支援を行っていきたいというふうに考えている次第でございます。

岸本委員 よろしくお願いいたします。

 本当に山は大切ですから、このボランティアの方がやる気があってもどうしたらいいのかわからない、どういうところに相談したらいいのかわからない、そんなことはもったいないですから、御指導していただきたいと思います。

 次に、森林の整備、これらの保全を進めていくためには、先ほどからいろいろ出てきますけれども、この森林ボランティア活動が非常に大切である。また、これが国民的な参加につながってくる、これは重要である。それと、林業のプロである林業従事者を確保すること、これが山を守る基本であると思います。

 とりわけ、今の状態でありますと、林業就業者の方の減少、それから高齢化が進んでおるという状況で、有能な若い就業者を確保することが非常に重要になってくる。

 和歌山県では、全国に先駆けまして、都会の失業者などを中山間部に呼び込み、森林整備に従事してもらう。雇用対策、それから過疎の解消、それに環境保全ということで、一石数鳥をねらった緑の雇用事業というのを提唱しておる。ことしで三年目を迎えております。もちろん、喜んでくださる方もおりますし、地元の方でちょっと不満に思っている方もおられます。

 この取り組みは、当初、緊急雇用対策を活用したものでしたが、平成十四年度、国の補正予算で緑の雇用担い手育成対策事業を実施していただきまして、和歌山県だけでなく、全国的な取り組みとして広がっておる。この間、和歌山県には、県外から多くのIターン者が移住し、これまで都会に人を送り出すだけだった和歌山県が、都会から人を呼び込む流れが確立できつつあるというふうに思います。

 今回の法改正を踏まえ、健全な森林の整備等を実施し、地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策を着実に推進していくためには、新規就業者の定着が必要であると思います。林業の現場は非常に厳しいものがあり、数年たつと林業の現場を去る人も少なくないという残念な現実もありますし、また、地元の方はそれを不安に思っている方というのもおられます。したがって、緑の雇用事業により林業を職業とすることを選択した方々が安心して将来まで林業に携わっていけるよう、林業の就労環境を整備していただくことが大事であると考えます。これについてのお考えをお聞かせください。

亀井国務大臣 林業就業者の減少と、また高齢化の進む中で今後の森林整備を着実に推進していくためには、何といっても、優秀な森林整備の担い手の確保と育成が重要なことであります。

 先ほどもお話しのとおり、平成十四年度の補正予算によりまして、緑の雇用担い手育成対策事業を実施したところでもございます。このような緑の雇用担い手育成対策によりまして、林業に就業された方々が将来まで林業に携わっていける環境を整備するということは、大変重要なことであります。

 このために、就労環境の整備といたしまして、各都道府県の林業労働力確保支援センター、これによりまして、就業者に対する高度な技能の研修や林業事業体への高性能の林業機械の貸与、あるいはまた、道府県ごとに造成されている森林整備担い手対策基金によります社会保険の掛金への助成や、労働安全衛生器具の整備への助成、こういうような支援措置を講じておるわけであります。

 平成十六年度の政府予算案におきましても、この林業就労環境整備の重要性にかんがみまして、その実施に係る経費が計上されているところでもございまして、引き続きこれらの対策の着実な推進によりまして、基幹的な林業の就業者の地域への定着に努めてまいりたい、このように考えております。

岸本委員 とにかく、この緑の雇用事業、正直私も、地元の方に聞きましたら賛否両論がありました。Iターンで来てくれる、全体的に見たときに、担い手としてなっていただくのはありがたいんだけれども、森林組合に仕事が来ますので、森林組合から配分されます。そのときに、今まで山は持っていないんだけれども、山の仕事をしてきた人、この人たちの仕事が実際減っている。そういう面では、確かにIターンで来た人たち、この人たちにとってはいいかもわからないけれども、今までやってきた人の仕事が減る。大体、山で仕事をしている人は、雨の日は休みですから、日当でもらっていたら晴れた日しか仕事しないんですね。そうしたら、その分しかお金が入らない。非常に不安定な収入になりますし、意欲もそがれてくると思います。とにかく、林業が盛んになりますように御指導をいただきたい。

 あと、その方に言われました。農水委員会とか農水大臣とか……(発言する者あり)ちょっと待ってください。一般の方が、林を抜いてよく発言されるのを聞く、そういう話です。ですから、そういうふうな短縮というんですか、縮めることはやめてくださいと。私もそう思いました。先ほど御意見ありましたけれども、農林水産委員会であるとか農林水産大臣と、林を大切にしていただきたい、そのことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 森林の有する多面的機能の持続的発展や地球温暖化防止対策としての森林の役割などが重視をされ、森林・林業基本法の制定や森林・林業基本計画策定、あるいは昨年の森林法の改正など、各般の取り組みがされてきたことを承知しております。そういう立場では、前に進める立場でぜひ応援もしていきたいと思っておるわけであります。

 最初に、林業就業者数の減少、高齢化率が他産業に比べても進んでいる問題でありますが、平成二年から十二年の比較で、全産業の高齢化率が六%から八%になっているのに対し、林業においては一一%から二四%という倍以上の伸びになっております。改正案で重視されている間伐などが適正に行われていくためにも、労働力の確保が重要であります。

 そこで、先ほど来お話になっている緑の雇用の問題でありますが、就業環境の整備について、先ほど大臣、前の岸本委員に対してお答えになりました。同時に、この受け皿である森林組合などの整備、援助の問題でありますけれども、意欲があって緑の雇用に参加をしたいという方に対して、なかなかこれを受け入れる側も厳しい条件があります。大変なハードな労働でありますし、技術を習得させるための体制なども成らなければならないし、給与の面でも当然しっかりとした体制を森林組合としてもフォローしていかなければならないわけですね。

 そういう点で、これが十七年度までの一応の予算でありますが、一たんやってみたけれどもこれでというふうにしないで、まず、その受け皿がうまくいっているのかということを十分に点検もし、また森林組合への援助も強化をして、制度の拡充をにらんでいく必要があるなと思っておりますが、まず、この点についての見解を伺いたいと思います。

前田政府参考人 先ほどからいろいろ出ておりますけれども、山村の過疎化と高齢化が進む中で、今後の森林整備を着実に推進していくということのためには、やはり優秀な森林整備の担い手の確保、育成、これが重要でございまして、緊急雇用対策と連携いたしまして、平成十四年度補正予算におきまして、緑の雇用担い手育成対策事業、これを実施しているわけでございます。

 本事業におきましては、四十四都道府県で約二千四百名規模の研修生が林業事業体等から最低限求められます技能の習得に取り組んでいるところでございます。

 本事業によります研修生につきましては、現在まだ研修中、いわゆる十四年の補正なんですが、実際は十五年に実施いたしておりますので、まだ研修中でありますことから、定着の実績、これについては未確定でございますけれども、研修が終了後、森林組合などの林業事業体において本格的に林業に就業していくというように見込んでいるところでございます。

 また、本事業の実施によりまして、優秀な林業就業者の確保、育成あるいは森林整備の着実な推進という効果が期待できますほか、都市部からの人の地域への定住促進によります山村地域の活性化も期待されるところでございまして、地域によっては都会から若い夫婦が子供と一緒に住みついて森林作業に取り組んでいるというような事例も見られるところでございます。

 ちなみに、和歌山県あたりですと、今現在、約二百五十名、緑の研修生として行っておられるわけでございますが、そのうち体力的な問題によりますリタイアを除きましては、ほぼ全員、八割以上の方が定着していくというような状況にあるというふうに聞いているところでございます。

 十六年度予算では当初予算に入っておりますので、引き続き頑張っていきたいというように思います。

高橋委員 私が質問したのは、受け皿の森林組合などに対する支援をどうしていくのかということですので、そのことについてのお答えを、次の質問とあわせてもう一度お答えをお願いします。

 林業専門技術員と林業改良指導員の資格が一元化をされるという内容でありますけれども、仕事内容からいって、一元化そのものには余り矛盾がないという話であります。ただ、この背景にあるのが、三位一体の改革に基づいて林業普及指導事業のスリム化を図るんだということ、農水省は交付金を今後三年間で二割程度縮減するとし、来年度予算案はそのうち七%の縮減となっているものであります。

 林業専門技術員が兼務している割合は七四%、改良指導員は八二%にもなっており、実際にはほとんど一般行政職をやっているというのが実態であります。一元化によって、兼務状況も含め、期待される専門的な役割が十分果たされるのかについて伺います。

前田政府参考人 先ほどの緑の雇用の関係でございますけれども、一つは、緑の雇用自体が定額補助ということで、それ自体は国から補助金が出ますので、森林組合にとりましても、そのことによりまして持ち出しになって負担がふえるというものではないというのは、理解いたしております。また、そういった森林組合につきましては、各種の森林整備事業等々の助成措置あるいは活動交付金、こういったものを通じまして支援いたしておりまして、そういった中で受け皿の確保ということにも努めていきたいというように考えている次第でございます。

 また、林業普及指導職員、いろいろな形で今現場でいろいろな役割を担っているわけでございますけれども、そういった研究と普及と一体の中で円滑な普及の実施に努めていきたいというように考えている次第でございます。

高橋委員 持ち出しという言い方はしないかもしれませんけれども、実際に、先日説明をいただいた中では、一人当たり大体九万円の給料を保障するに当たって、森林組合としても一定、二十万程度の給料の水準になるようにやっているのが平均的だというお話でありましたので、やはりこれを次に続けていくためには、持ち出しというか、森林組合で雇用するわけですよね。そうなると、それが、次も頑張ってやっていきたい、次も雇用できるというだけのやっぱり応援の体制が必要だという意味でお話をしましたので、ここはぜひ検討していただきたいということであります。

 その一元化の問題でありますけれども、やはり次がまた二割まで向かってもうレールが敷かれているのかなということは非常に懸念するわけですけれども、実際にこれはやってみて、本当にこれから、今までるるお話しされてきたように、森林の整備や管理やいろいろなことが必要になってくるわけで、そういう中で本当に十分できるのかということは見きわめて、必置規制は維持する、交付金、補助金の水準は維持するという立場に立つべきと思いますが、もう一度伺います。

前田政府参考人 現在のところ、普及指導員につきましては、先ほど申し上げましたような形の中で当面やっていきたいということで考えているところでございます。

 ただ、予算の方につきましては、全体の改革の流れ等の中で若干この数年間ダウンしてきておりますし、今後も若干またダウンしていくというような面があるわけでございますけれども、それはいろいろ普及事業の重点化を図っていく、あるいは弾力的に、専門技術員と指導員とが一体化するわけでございますので、そういった中で柔軟な対応を図っていく、そういった形の中で普及活動が停滞しないように努力していきたいというように考えている次第でございます。

高橋委員 森林法全体は賛成できるけれども、この点では承服できないということは言っておきたいと思います。

 次に、労働力の問題や整備が進まない背景に材価の問題があるということ、先ほど来指摘されているところでありますが、秋田県、青森県の主要木材である杉の価格でいいますと、昭和五十六年をピークに、平成元年は二万二千円だったものが、平成十四年は八千四百円にまで落ち込んでいる。売れば売るほどこれでは赤字だ、意欲も当然わかないという声が上がっているわけであります。

 この材価の低迷について、その原因をどう考えているのか、伺います。

前田政府参考人 材価の低迷自体は、いわゆる需要が低迷している、そういった形の中で、材価につきましても低迷してきているということでございますけれども、需給の関係全体、ちょっと申し上げますと、全体は一億、大体我が国の木材需給量は一億オーダーで推移してきていたわけでありますけれども、最近はこれがだんだん減少してきているということで、現在は八千八百万立方ということで、ダウンしてきております。そういった中で、その八割が外材に依存というような状況になっております。

 そういった形の中で、木材価格につきましては、大変厳しい状況にあるというような状況にございます。

高橋委員 一億オーダーだったものが八千八百万水準に落ちているというのは事実でありますが、しかし、もちろん、その需給量が一定上がったとしても、自給率そのものがやはり上がらないという、ここをやはり変えていかなければならないと思うんですね。

 五年間の需給量の推移の資料をいただきましたけれども、五年間で一番需給量が多かった十二年、九千九百万何がしの立米でありましても一八・二%、十四年では八千八百十三万立米で一八・二%、高くても少なくても自給率はこの程度で推移してきた。ここを根本的に変える立場に立たなければ、やはり材価の問題も解決はしないというふうに思うんですけれども、その点、伺いたいと思います。

前田政府参考人 先ほど答弁で、若干漏れ落としたんですが、ただ、十五年の需給量を見ますと、実は木造の新設住宅着工戸数、これが前年を若干上回る水準で推移しました関係から、外材につきましては前年並み、国産材の方につきましては前年を若干上回る水準というような状況と見通しているところでございます。

 ただ、外材に比べまして、国産材につきましては、一定の求められる品質のものを求められる時期に的確に供給していくという、そういったところになかなか難しい面がございまして、そういったところからどうしても自給率が上がっていかないというような面を有しているということが言えるのではないかと考えております。

高橋委員 今紹介がありました国産材の活用については、この間随分論議もされて、例えば学校などの公共建築に国産材を活用するという問題や、あるいは住宅品確法の対応での乾燥に対する支援だとか、そういう取り組みがるるされてきたことは承知をしていますし、この路線はやはり大いに進めていただきたいと思うんです。

 ただ、自給率を上げるという点では、やはりもっと踏み込んだことがどうしても必要だろうと思うんですね。森林・林業基本法には、「林産物の輸入に関する措置」として、輸入国側の森林の多面的機能に配慮した適正な輸入を確保するための国際的な連携を求めて、関税措置などのことを言っているわけですよね。

 平成十四年の林業白書によれば、世界の森林が、平成十二年までの十年間で、我が国国土の二・五倍に当たる九千四百万ヘクタールが減少し、その九六%がアフリカや南米の熱帯林であると。途上国の荒廃や水不足などの大きな問題を生み出しているという側面があります。同時に、中国などの経済発展に伴う需要が高まっているということでの木材消費の増加もまた言われているわけですよね。

 そういうことを踏まえて、林業白書では、世界有数の木材輸入国である我が国が、世界の持続可能な森林経営を推進する観点から、国内の森林を資源として十分に利用していくことが国際社会の一員としての責務である、これは資源循環型社会を構築していく上でも避けて通れない課題であるとおっしゃっていますので、この立場で、やはり国内資源をしっかり守るんだ、自給率を高めていくという立場に立っていくんだという大臣の決意を一言お願いします。

亀井国務大臣 木材の需要拡大、このためには、木材のよさ、あるいは普及啓発、あるいは住宅や公共施設等への地域材の利用の促進、また木質バイオマスエネルギーなど新たな需要の確保、これら、いろいろ努めておるわけであります。農水省といたしましても、農水省木材利用拡大行動計画を昨年八月に策定いたしまして、省を挙げて木材利用の拡大に取り組んでおるわけでありまして、また、十六年度の予算におきましても、大規模需要、これのニーズに対応する地域材の新しい流通・加工システムの構築等につきましても取り組んでおりますし、さらには、関係省庁あるいは地方公共団体と一層の連携を図りまして、木材、とりわけ国産材の需要の拡大に努めてまいりたい、こう思っております。

高橋委員 終わります。よろしくお願いします。

高木委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本であります。

 きのうの新聞に、二酸化炭素の大気中濃度が一年間で大幅上昇という記事がありました。ハワイの観測所の調査で、一年間で三ppm増加した、過去十年間の平均数値、年一・八増に比べて大幅な増加というふうな内容でございました。

 そこで、最初に京都議定書の件についてお伺いしますが、地球温暖化対策ということで、森林における二酸化炭素の吸収目標三・九%の達成に向けた取り組みということについては、大臣から再三にわたって所見をお伺いしてきたところでございます。それによりますと、現状のままでは達成が大変厳しい、そこで、十カ年対策ということで、ステップ・バイ・ステップ、それから温暖化対策税というものを検討していくということだったわけでございますが、京都議定書の議長国ということでありますから、この国際公約の達成に向けて、人も金も使って頑張らなきゃならないということだと思います。そのためには、国民の理解あるいは国民の参加というのがどうしても必要になると思いますが、その点についての政府の政策といいますか、展開の方向というものをお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 地球温暖化防止のため、森林吸収源十カ年対策を策定し、森林整備の着実な推進を図るわけであります。そういう面で、先ほどもお話ございましたが、また私どもも申し上げましたが、温暖化対策税、こういうものが導入をされた場合、その税収が何とか森林整備等に導入される、活用されるように積極的に対応してまいりたい、こう思っております。やはり、この吸収源対策、そういう面での森林整備の必要性、こういう面では国民の皆さんの御理解また御支援が必要なわけでありまして、私ども、地方に出まして、この説明会を各県におきまして実施いたしております。いろいろの機関を通じまして国民の理解を得、そしてまたパンフレットを作成するなど、この三・九%の達成に向けて努力をしてまいりたい、このように思っております。

山本(喜)委員 私の地元の秋田県は、世界遺産の白神山地があります。それから、秋田杉も三大美林ということで大変有名でありますし、大館曲げわっぱという杉を使った民芸製品もあるわけでございます。林業ということで、大変大きな産業の一つだったわけでございますが、この間の材価の低迷ということで、産業的に大変厳しい状況になっているわけでございます。山林の所有者も、一ヘクタール未満の所有者が五二%ということで、大変小規模な地主が多うございます。

 そうした中で、手入れということですが、間伐をすればするほど赤字というふうな状況がありますから、そうした小さな地主は山林に対する興味というものを失っているというような状況があります。そうした中で温暖化対策といっても大変難しいのではないか、そうした点、山林所有者の意欲というものをどういうふうに引き出していくのかというふうな課題があります。

 それから、間伐ですね。間伐材の有効利用あるいは活用の拡大ということがなければ、なかなか整備も進まないわけでございます。そうした点で、政府の方針をお伺いします。

前田政府参考人 御案内のように、我が国の森林・林業をめぐります状況は大変厳しいわけでございます。木材価格の低迷等々に代表されますように、厳しい環境に置かれているわけでございますけれども、一方で、やはり森林というのは、国土の保全ですとか環境の保全、そういった意味では大変重要な役割を果たしている。そういった中で、何としてもやはり林業の活性化を図っていくということが重要ではないかというように考えている次第でございます。

 このために、十三年には三十八年ぶりに林業基本法が改定されまして、新たなる森林・林業基本法、そしてそれに基づきます森林・林業基本計画を策定しているわけでございますが、これに基づきまして、いわゆる効率的、安定的な林業経営を担える者の育成、確保、そして、そういった経営体に施業の集約化、こういったものを促進していく。あるいは、林道、作業道も含めまして路網の整備、高性能林業機械の開発普及、あるいは、そういったことを通じての経営コストの削減、さらには、バイオマスとしての新たな需要、地域材の利用促進、こういったものを総合的に進めながら、林業経営者の意欲を引き出しながら、林業の活性化を積極的に図っていくということに努めておるところでございます。

 なお、間伐材の関係で、今お話ございましたように、確かに、木材の需要拡大を進めていくことが喫緊の課題でございますので、私どもも、先ほど申し上げましたように、隗より始めよということで、農林省関係ではそういった木材の需要拡大に取り組んでいるところでございますし、わけても間伐材の利用拡大、これにつきましても、いろいろな形で工夫しながら、その積極的な需要拡大に努めていきたいというふうに考えている次第でございます。

山本(喜)委員 次に、間伐計画についてお伺いしますけれども、平成十二年度から、民有林で百五十万ヘクタールの緊急間伐対策というのが取り組まれています。今回の改正で要間伐森林制度の改善というものが出されてきているわけですが、これとの関連で、今後の間伐計画、十七年度以降の計画というものをきちんと立てながら、目標を立てながら推進していく必要があると思いますが、その点、いかがでしょうか。

前田政府参考人 確かに、お話ございましたように、実は平成十二年、緊急に間伐を進めていこうということで、当時目されました全国百五十万ヘクタールを五カ年で緊急に実施するんだということで、毎年三十万ヘクタールの計画を立てまして、ほぼ順調に、実績としましても計画どおり進めてきているところでございます。

 ただ、これは、お話ございましたように、十六年度でこの緊急間伐五カ年計画が終了するわけでございまして、先ほどお話し申し上げています森林法改正に伴います要間伐森林、そういったものも含めまして、十七年度以降、具体的にどのような形で、さらにそれをどうやって前進させていくのか、そういったものにつきまして、今までの成果、こういったものも分析、評価しながら幅広く検討していきたいというように考えている次第でございます。

山本(喜)委員 次に、要間伐森林制度についてお伺いしますけれども、総務省の行政評価局によりますと、平成十五年の森林の保全・管理等に関する行政評価・監視結果というもので、要間伐森林の指定が適切に行われていない、公有林のみを指定している、あるいは、所有者の間伐実施の意向が確認できたものについてのみ指定をしているというふうに指摘されていますが、これについての政府の評価はどうでしょうか。

前田政府参考人 昨年五月、総務省から農林水産省に対して行われました行政評価・監視結果に基づく勧告の中では、今お話ございましたように、一つには、森林所有者の間伐実施の意向が確認できたものだけ指定している例ですとか、あるいは、私有林についてはなかなか行われず、公有林のみを指定している例があったとか、そういった等々の例が指摘されているわけでございます。

 そういった意味で、適切な指定あるいは手続を行うように市町村に対し助言することということで指摘を受けたところでございまして、私どもといたしましては、この総務省の勧告後直ちに、都道府県を通じまして、要間伐森林の指定のあり方につきまして、改めて市町村へ文書をもって指示いたしますと同時に、都道府県担当者会議におきましてその周知徹底を図ったところでございます。

 今後とも、都道府県等を通じながら、適切な要間伐森林の指定及び施業の実施が図られるように、指導の徹底に努めていきたいというように考えている次第でございます。

山本(喜)委員 今答弁がありましたけれども、今後適切に行われるようにというふうなことでありますが、しかし、実態を見たときに、これは市町村の林業に携わる職員の数が限られているというような指摘があるわけです。そして、市町村の行政機関が、所有権の制限を伴うような指定、これについてはやはり消極的にならざるを得ないのではないかというふうなことも言われているわけです。

 今後、広域合併がどんどん進んでいくわけです。そうすると、対象の森林面積も大変ふえていきますが、その一方で地方財政が大変厳しくなるわけであります。地方行政組織がスリム化をされるという中にあって、この森林整備に取り組む市町村の体制をやはり確立していくということが大変重要な課題になると思うんですが、この点について、政府の見通しといいますか、地方に対する助成といいますか、そうしたものについてお伺いします。

前田政府参考人 お話ございましたように、確かに、要間伐森林制度、これを適切に運用しまして、森林の有しますそういったいろいろな機能、これを持続的に発揮させていくためには、やはり、何といいましても、地域に密着した行政機関であります市町村の役割、これが大変重要であるというように認識している次第でございます。

 私どもといたしましても、こういった中で市町村森林整備計画の達成を目指しまして、森林整備事業、造林補助事業、そういったものを初めとします支援措置を講じますとともに、地方財政措置の方におきましても、森林整備促進のための経費につきまして特別交付税で、さらには、今回の森林法改正にあわせまして、市町村が行います要間伐森林の施業の促進のための事務費等につきまして、普通交付税でそういった措置がなされることとなっておる次第でございます。

 また、いろいろな技術面等々も含めまして、市町村におきます要間伐森林の指定、あるいは勧告等に関します事務手続、あるいは技術的知見等につきまして、具体的に解説、あるいは研修、あるいは指導の充実、こういったものに努めまして、市町村におきまして制度の適切な運用が図られるように努力してまいりたいというように考えている次第でございます。

山本(喜)委員 最後に、特定保安林制度についてですけれども、今までこれは時限立法であったわけですね。これは、いついつまでにどれぐらいちゃんと整備しますというような目標をちゃんと明示して計画を立ててきたと思うんですが、今回、それを恒久化するということでございますけれども、やはり、これもきちんと目標、計画を立てながらやっていくということが大事だと思うわけでございます。

 そこで、要整備森林というものですが、指定すべき森林面積というのはどの程度あって、これを今後どういうふうにやっていくのかというふうなこと、それから、それとあわせて国有林の整備についてもお伺いします。

 十四年度末で国有林面積の五七%、これが保安林に指定されていますが、これは、我が国の保安林の四七%を占めるわけです。ですから、国有林の整備というのも大変重要だと思うんですが、この点についても政府のお考えをお伺いします。

前田政府参考人 お話ございましたように、特定保安林につきましては、昭和二十九年から臨時措置法でもって計画的にその指定を進めてきたわけでございます。その時代時代の要請に対応いたしまして、災害防止ですとか、あるいは水源涵養、あるいは環境保全というようなことで、大体計画したものにつきましては計画どおり指定してきた。そういった中で、今日、約一千万ヘクタールの保安林が指定されまして、おおむねいい水準にまで来ているのかなというような状況にございます。

 それで、今後は、基本的には、森林法に基づきます全国森林計画、こちらの方で計画的に保安林指定の計画を持って、それで対応していこうということで考えておるところでございますが、そういった中で、今お話にございました要整備森林、これにつきましては、実は早急に整備を行うべき保安林を約二十八万ヘクタール見込んでおります。このうち、森林所有者等による整備が期待されるいわゆる要整備森林、これに相当するものの面積は、現時点で約八万ヘクタール程度というように見込んでおるところでございまして、これにつきましては、今後、順次指定を進め、計画的に整備を進めていくということで考えておるところでございます。

 なお、お話にございました国有林におきます特定保安林等の整備でございますが、まさにこれは国みずからやっているわけでございますので、その他、従来からも内部通達等によりましてきちっとその整備を図ってきているところでございますが、今後とも、特に国有林、平成十年、公益機能に方針を大きく変えたわけでございますので、そういった観点も踏まえまして、きちっとした整備を進めていきたいというように考えている次第でございます。

山本(喜)委員 ありがとうございました。以上で終わります。

高木委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、森林法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、西川京子君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。西川京子君。

西川(京)委員 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、森林法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    森林法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  林業の採算性の悪化等により適正な施業が行われていない森林が増加する中、健全な森林の整備、保安林の適切な管理・保全、国民参加の森林づくり等を推進することは、地球温暖化防止のための森林吸収源を確保する上でも極めて重要な課題となっている。

  よって政府は、本法の施行に当たり、森林の有する多面的機能が一層持続的に発揮されるよう、左記事項の実現に努めるべきである。

      記

 一 要間伐森林制度の運用に当たっては、間伐等の施業の円滑かつ適正な実施が確保されるよう指導・助言を行うとともに、緊急かつ計画的な間伐の実施に向けた新たな施策を構築すること。また、間伐の採算性確保に向け、コストの縮減、間伐材の用途拡大等の取組を一層強化すること。

 二 特定保安林制度の恒久化に当たっては、機能が低下した保安林における森林所有者等の施業実施を助長する措置を講ずるとともに、施業が行われない場合にあっては、保安施設事業の機動的な実施により、特定保安林の機能回復を図ること。

 三 施業実施協定制度の拡充に当たっては、国民参加の森林づくりの取組を一層推進するため、森林ボランティア活動を行う団体等と森林所有者等との連携構築に向けた条件整備に努めること。

 四 普及指導職員の一元化に当たっては、新たに置かれる林業普及指導員の資質の向上を図るとともに、森林・林業をめぐる課題に的確に対応した林業普及指導事業を推進すること。

 五 地球温暖化対策としての森林吸収源対策を着実に推進するため、森林の整備・保全の効率的・効果的実施や木材利用の推進を図るとともに、温暖化対策税等新たな税財源措置を含め、安定的な財源の確保に向けた検討を加速すること。

  右決議する。

 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。

 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

高木委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

高木委員長 速記を起こして。

 ただいま、西川京子君の発言の一部に、既に理事会で協議決定しております以外のことがございましたので、これについては、議事録から削除をさせていただきます。そのとおりでいいでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣亀井善之君。

亀井国務大臣 ただいまは法案を御可決いただき、ありがとうございました。

 附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。

    ―――――――――――――

高木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

高木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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