衆議院

メインへスキップ



第10号 平成16年4月13日(火曜日)

会議録本文へ
平成十六年四月十三日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 高木 義明君

   理事 北村 誠吾君 理事 西川 京子君

   理事 松下 忠洋君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 小平 忠正君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    伊藤信太郎君

      小野寺五典君    大野 松茂君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      木村 太郎君    木村  勉君

      後藤 茂之君    後藤田正純君

      近藤 基彦君    佐藤  勉君

      田中 英夫君    谷本 龍哉君

      玉沢徳一郎君    津島 恭一君

      永岡 洋治君    西村 康稔君

      野呂田芳成君    三ッ林隆志君

      岡本 充功君    鹿野 道彦君

      金田 誠一君    岸本  健君

      楠田 大蔵君    篠原  孝君

      神風 英男君    仲野 博子君

      楢崎 欣弥君    堀込 征雄君

      松木 謙公君    西  博義君

      高橋千鶴子君    山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       亀井 善之君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           金森 越哉君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       遠藤  明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            太田 信介君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  石田 真敏君     木村  勉君

  後藤田正純君     谷本 龍哉君

  二田 孝治君     近藤 基彦君

同日

 辞任         補欠選任

  木村  勉君     三ッ林隆志君

  近藤 基彦君     二田 孝治君

  谷本 龍哉君     後藤田正純君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ林隆志君     伊藤信太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     石田 真敏君

    ―――――――――――――

四月八日

 高病原性鳥インフルエンザ対策緊急措置法案(菅直人君外六名提出、衆法第二五号)

 農業協同組合法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)

 家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)

 青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案、農業改良助長法の一部を改正する法律案及び青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省消費・安全局長中川坦君、経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君、総務省自治財政局長瀧野欣彌君、文部科学省大臣官房審議官金森越哉君及び厚生労働省医薬食品局食品安全部長遠藤明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。梶山弘志君。

梶山委員 自由民主党の梶山弘志でございます。

 今回の農業経営支援三法の改正は、我が国の抱える喫緊の課題であります食料自給率の向上、そしてそのための農地の確保に向けて大変重要な改正であります。ここまでのこの法律につきましては、時代の背景また社会の要請があって、それなりの役割を果たしてきた法律であります。これまでの総括、現状の認識、そして今回の改正による将来の方向性等につきまして質問をさせていただきます。

 まず、農業委員会等に関する法律、これは昭和二十六年に農業委員会法として制定をされまして、農業委員会が設置をされ、以来、数度の改正を経て今日に至っているわけでありますけれども、先ほど申しましたように、制定のとき、そして改正のときには、それぞれの社会の要請、そして時代の背景というものがあったかと思っております。

 これまで果たしてきた農業委員会の役割、現状の認識、そしてこの改正による将来の方向性というものを農林水産省としてどのように考えておられるか、大臣に御所見をお伺いいたします。

亀井国務大臣 お答えいたします。

 今委員からも御指摘がございましたが、昭和二十六年に農業委員会が創設をされました。そして、農地施策の執行、推進機関としての役割、当時、私も子供のころでございますけれども、農地解放後のときでありまして、その農地解放の成果の維持あるいは権利移動の統制等の役割を担っておった、このように思います。しかし、今日では、国際化の進展、さらには優良農地の確保や耕作放棄地の解消あるいは担い手への農地の利用集積、こういう問題、あるいは農業経営の法人化の問題、いわゆる構造政策上の役割が高まってきておるわけでもございます。

 そういう中で、農地に係る構造政策を推進する、こういう面で、農家の農地へのこだわり、あるいはまた農村社会の特質を考えますときに、やはり、農地の権利調整、また効果的な利用の推進、これは国、市町村が直接担うことは人員の面ですとか実態面の困難が伴うわけでありまして、そういう面で、農業者主体の合議体という中で、農業者の信任のもとに組織化され、公平、そして客観的に農地施策を遂行できる仕組み、こういう面では農業委員会の使命は重要な意義を持っておる、このように考えております。

 御案内の今回の改正におきましては、農業委員会に関する懇談会の報告書、また、いわゆる基本方針二〇〇三に即しまして、農業委員会の設置に係る市町村の裁量を拡大する、そして、農業委員会が構造政策の遂行上その役割を十分発揮できるように、農業委員会の組織のスリム化あるいは効率化、農業委員会活動の重点化、こういうことを進めてまいりたい。

 今日までの戦後の農地解放後の農地の問題等々につきまして、農業者の組織としてその役割を果たしてきたわけでありますし、これからいろいろの構造政策を進める上におきましても、その考え方の延長線のもとに、農業者主体、こういう立場でそれらの使命が果たされるよう、また私どもも支援をしてまいりたい、こう思っております。

梶山委員 農業改良助長法、昭和二十三年に制定をされまして、これによりまして協同農業普及事業の制度が発足したわけでありますけれども、先ほどの質問と同様に、この法律、そしてこの制度に関しまして、これまでの総括、そして現状どうあるかという認識、また今回の改正による将来の方向性というものを簡潔にお聞かせいただきたいと思います。

亀井国務大臣 協同農業普及事業につきましては、委員からも御指摘のとおり、昭和二十三年に制度発足して今日まで来ておるわけであります。

 そういう中で、やはり農業関係者と試験研究機関、これの橋渡し役、普及事業、普及員等々の方々がそういうような農業の研究機関として直接農業者と連携をし、試験研究機関におきまして開発をされましたいろいろな技術指導、なかなか農業の技術進歩、農家を考えますときに、親子の関係、お子さんが農業を継続される、そういう面では、なかなかいろいろ技術の問題も、親から子に引き継ぐ場合に、やはり試験研究機関、専門的な技術、こういう面で普及員の皆さん方がその橋渡し役をされるという面では大変効果を持ったことではなかろうか、このように思います。

 これから、農業構造改革、これのさらなるものを進めるにつきましても、やはり重要な問題、このように認識をいたしておるわけでありまして、今後とも、普及事業につきましては、担い手への技術指導、こういう面でも十分その役割があるわけであります。

 さらには、地方分権改革推進会議の議論を受けましても、地方分権の推進、国と地方のあり方の見直し、こういうことも時代の流れでもあるわけでありまして、普及事業の高度化あるいは効率化を進める上におきましては、都道府県の自主性、こういうものが拡大をされて、農業者の高度なニーズに対応できるような普及事業の展開を図るために今回の農業改良助長法の改正を提出した次第でございますので、ぜひ御理解と御協力をちょうだいし、この法案の改正をいたしまして、その実というものを上げてまいりたい、こう思っております。

梶山委員 現在の農業委員会の制度は、今大臣からお話がありましたように、地方分権推進会議、そして経済財政諮問会議等において制度の見直しの必要性が指摘をされているところであります。

 地方分権の推進につきましては異論のないところでありますが、国と地方の仕事を整理していったときに、基本的に国の仕事というものは、外交、教育、安全保障という分野に限られてくると私は考えております。

 中でも安全保障につきましては、国防、エネルギー、食料、この三つの安全保障の確立が必要であります。特に食料安全保障は、食料自給率の向上を目指して、国家として取り組むべきものであり、また、そのためにも農地面積四百七十万ヘクタールの確保ということが命題となっているわけでありますが、最近の新聞等の報道によりますと、この四百七十万ヘクタールの確保というのもなかなか難しい状況であるというような報道もされているわけであります。

 今回の改正で、国と地方の縦の連携をどのようにとっていくのか、食料安全保障という観点から縦の連携をどうとるのか、そして、現場段階で、これまでも仕事が重複するように見られております農業委員会と県、市町村、JA、そして土地改良区の横の連携をどのようにとらえていくのか、御所見をお伺いしたいと思います。

川村政府参考人 お答えいたします。

 農業委員会の関係での国と地方の関係でございます。

 これはまさに、委員が御指摘のとおり、農地の問題は国民に対します食料の安定供給の基盤ということで非常に重要でございます。その確保と効率的利用、こういう意味で、農業委員会を市町村の必置の機関としております。この必置の考え方は、今般の改正案におきましても何ら変更はございません。

 ただ、地方分権の推進の観点から農業委員会の必置基準面積の算定方法の見直しをいたしまして、必置基準の面積の算定に当たりましては、生産緑地以外の市街化区域内の農地を除外するとか、あるいは、農地施策を推進する観点から農業委員会の業務を見直しをいたしまして、農地に関する業務に重点化するといったことを目的としております。

 また、現場段階での連携でございます。

 これまでも、農協なりあるいは農業共済組合の理事というものにつきましては、農業委員として参画をしていただくということで、連携の強化を図ってきたところでございますけれども、今般の改正におきましても、土地改良区の役割というのが非常に高まっておりますので、推薦委員がございますが、その推薦母体といたしまして土地改良区を追加するということもしたところでございます。

 また、県との関係では、農地転用に関します意見具申等の業務を通じまして連携を図っておりますし、市町村自体は農業委員会の事務局を務めること等によってしっかり連携をしていくということで、今後とも頑張っていきたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

梶山委員 農業委員会に関してでありますが、今回の改正で必置基準面積の算定から生産緑地以外の市街化区域内の農地面積を除外することとしておりますけれども、現在、全国的に、平成の大合併ということで、市町村の合併が行われているわけでありますが、そのことによって一つの自治体の農地面積が増大する傾向にあります。

 必置基準の面積につきましては、政令によるものでありますけれども、その引き上げを検討しているやに聞いておりますけれども、政府として具体的な数値の想定はあるのかどうか、現時点でお答えできる範囲で結構ですから、回答をお願いいたします。

川村政府参考人 委員お尋ねの、必置基準の具体的な面積でございます。これは、政令にゆだねられておりまして、今後政令の段階で改定を予定しておるところでございます。ただ、この基準面積につきましては、昨年の六月の閣議決定の基本方針二〇〇三に基づきまして、大幅な引き上げを行うということが決定をされております。

 今委員御指摘のとおり、市町村合併が非常に急速に進展をしてございます。その農業委員会の区域内の農地の面積がどのように今後推移するのかという見通し、それからまた効率性とか市町村の負担を考えまして、規模別の業務量等、こういうものを十分勘案いたしまして、客観的にそういう数字を参考にしながら具体的な数字を定めたいと思っているところでございます。

梶山委員 次に、農業委員会の活動につきましてお伺いをいたします。

 今回の改正で、法令業務以外で行う業務につきまして、農地に関する業務及び農業経営の合理化に関する業務に重点化を図るということにしておりますけれども、いわゆる任意業務の見直しによる今後の方向性をどのように考えておられるか。また、農業委員会における任意業務の各地での取り組み状況を確認した上で、任意業務についてももう少し、総花的ではなくて詳細に、明確にすべきと私は考えておりますけれども、その辺についての御意見をお伺いしたいと思います。

川村政府参考人 農業委員会の業務でございますが、今、農業委員会は、農地法に基づきます権利移動の許可でありますとか、法令業務をこなしております。そのほかに、農地の流動化あるいは経営の法人化、こういった構造政策にも大きな役割を果たしておるわけでございます。ただ、現在の規定では、これ以外にも、任意の業務といたしまして、例えば農業技術の改良でありますとかあるいは農作物の病虫害の防除など、かなり幅広い業務を行うことができるということになっております。このことが逆に、非常に活動が総花的で、姿が、活動の成果が見えがたいという御指摘もあることは事実でございます。

 そういうことで、先ほど大臣が申し上げましたように、構造改革のスピードアップ、これが非常に急務になっている中で、本来農業委員会が中心的な役割を果たします農地関係の業務、特に担い手に対します農地の利用集積、それから耕作放棄地の解消、法人化の推進、こういった項目の農地対策あるいは経営対策に重点化を図っていきたいということでございます。

梶山委員 今回、選挙委員の下限定数につきましては、廃止をして、それぞれ市町村の条例にゆだねることとなっておりますけれども、上限定数については措置がとられておりません。合併特例法によって一時的には定数が超過することも認められておりますけれども、市町村合併が急速に展開をし、市町村区域内の農地面積が増大することが見込まれる中で、農業委員の定数のあり方についてどのようなお考えをお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。

川村政府参考人 市町村合併が急速に進んでおりまして、農業委員会の農地面積の区域が非常に拡大するということが想定されておるわけでございます。先ほども申し上げました昨年六月の閣議決定におきましては、農業委員会については組織のスリム化ということで盛り込まれているところでございます。

 今回、この考え方を受けまして組織のスリム化に取り組むわけでございますけれども、その業務を農地に関する業務それから経営の合理化に関する業務に重点化するということもございます。それから、広域化する中で、大事な許可業務等を機動的に処理する必要があるということで、現在部会制がしかれておりますが、かなり硬直的でございますので、現在の改正法の中で、市町村の区域を分けて複数の部会を設置できるような規定も置いております。

 そういうことで、今議員御指摘のとおり、下限の十名という定数は撤廃をしますが、上限はスリム化等を考えまして引き上げを行わない、こういうことでございます。

 なお、かなり面積が広大になります場合、例えば区域面積で市町村全体が二万四千ヘクタール、あるいはその区域内の農地が七千ヘクタールといったような非常に大きな場合には、現行制度におきまして、複数の農業委員会を置けるということにもなっております。非常に区域が広大な、かなり広大なという場合は、これを活用していただいて、適正な業務運営ができるように努力していただきたいと思っているところでございます。

梶山委員 平成十五年の骨太の方針におきまして、農業委員会、農業改良普及事業等のスリム化を進めて、これに沿って、効率化を進め、交付金縮減を行うことを検討しているわけであります。しかしながら、農業委員会の活動の基盤的経費の底支え機能を有する交付金には、依然として大きな期待があるわけであります。

 一般的には、交付金等の縮減というものは、農業委員会の機能を弱め、農地にかかわる業務の適正な執行ができなくなる懸念があるのではないかと思うわけですが、業務の執行に支障がないのかどうか。三位一体と絡んでいろいろな問題があるわけでありますけれども、この件についての御見解をお聞かせいただきたいと思います。

川村政府参考人 農業委員会の交付金ということで、国の助成をしているところでございます。この交付金につきましては、今後三年間で計画的に二割程度の縮減を行うということを決定しております。

 この削減でございますが、これは、今も議題にあります市町村の合併、これが今後かなり進むことによりまして、農業委員会の数自体がかなり大幅に減るだろうということ、それから、今回の改正でいろいろな、重点化とか定数の下限を撤廃するというような改正が盛り込まれておりまして、これによりまして業務の減少が見込まれること等、スリム化というものを前提といたしまして縮減を行うということで、財源の確保はまた非常に重要でございますが、スリム化に見合った形での縮減ということでございますので、基本的には業務執行には支障がないように措置できるものと考えております。

梶山委員 まだまだ質問を予定していたんですが、時間がなくなってきましたので、最後の一問ということで、少し飛ばしてお聞きしたいと思うんです。

 農業改良助長法の方なんですけれども、新しくできる普及指導員はスペシャリストとアドバイザーという二つの機能をあわせて担うことになるわけでありますが、その業務の中で、新規就農者への指導も考えておられるのか。また、協同農業普及事業と農協の営農指導事業とは相互に重複する部分も多くありまして、一体的に進めることが望ましいと考えておりますが、政府として何らかの対応は考えているのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

川村政府参考人 まず、普及指導員と新規就農者との関係でございます。

 農業改良普及センターにおきましては、これまでも新規就農者につきまして、就農相談活動でありますとか、あるいは、技術の習得というものが非常にキーポイントになりますので、その習得の技術指導を濃密的に実施してきたところでございます。専門家集団ということになりますが、やはり今後担い手となり得べき新規就農者、そういうことでございますので、今後とも、関係の機関、いろいろございますけれども、そういうところと連携をしながら、これは力強く取り組んでいく必要があると思っております。

 それから、普及と農協の営農指導の関係でございます。

 これは、まさに両方が相まって効果を上げていくべきものと基本的には考えております。普及センターの行います普及事業、こういうものは、どちらかというと試験場で開発されました非常に高度な技術といったようなものを担いますし、それから農協の方は、どちらかというと販売あるいは資材の購入というものをベースにしておりますので、できるだけ有利に販売なり購買が進むというような観点から、既に確立された技術を徹底して、水準の高度化を図っていくといったようなものが主体になると考えております。そういうふうに、お互いが機能分担をしながら、今後より効果を上げていくということが必要だと思っています。

 また、農協系統の方でも、この営農指導の重要性ということにかんがみまして、現在、検討委員会を設けて検討されております。六月をめどに取りまとめられるということを聞いておりますが、この中でも、普及事業との連携、それから役割分担ということをしっかり調整してまいりたいと思っております。

梶山委員 質問を終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、後藤田正純君。

後藤田委員 自民党の後藤田正純でございます。

 このたびの三法につきましては、それぞれ、農業委員会につきましては農地法の問題としての改正、そして農業改良助長法につきましては、ソフトにおきます普及事業の前向きな改正、そして青年等の就農促進のための資金の貸付け等の特別措置法につきましては、いわゆる就農支援に対しての前向きな改正として、私は一定の評価をしたいと思っております。

 ただ、今までの日本の農政におきましては、こうしたハードだとかソフトの対策をとっていながら、また多額のお金を使っていながら、担い手の方々にとって本当にいいといいますか、担い手本位の対策になっていたかという、ここが私は日本の農政の大きな反省点だと思っています。

 例えば、米問題につきましても、三十数年間にわたりまして減反政策ということをやってきた、そして毎年数千億円という生産調整のお金、また土地改良区のいわゆる農業土木のお金を使ってまいったわけでございますが、米の消費につきましては、昭和三十年に比べると半減をしている。そして、加えて、価格はどうかといったら、なかなか上がっていかない。それぞれ、お金を出して、ハードもソフトもやってきたんですが、前向きにいっていないという状況でございます。

 一方で、農業から、またほかの農産物に転換するような施策もとっていながら、なかなかそれも進んでいなかった。そういうことを考えますと、やはり今回の法律も、担い手に対してきちっとした対応をさらにとる必要があるということを、改めて法律を見ていて感じたわけでございます。

 きょうは、まず冒頭に、担い手という観点から、実は私の地元で残留農薬問題が発生いたしました。これにつきまして、やはり担い手がこれから農業をやろうといったときに、残留農薬の問題なども、就農意欲ということについて大変関係が深いものだと私は考えております。

 先般起こった我が県のスダチの残留農薬問題というのは、基準値を超える残留農薬が出たということは、これは問題だと思っています。これについて、先日、それに対しての対策をとりまして、再出荷をすることになりました。ここまではいいと思うんです。しかし、ちょっと中身を見ていますと、検証しますと、あれっと思ったことがありました。この問題につきまして、御質問をさせていただきたいと思います。

 この問題について、農林水産省安全局の方で御認識があるか、まず冒頭、質問させてください。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 徳島県におきまして残留農薬基準を超える事例が出たということは、もちろん承知をいたしております。

 農薬につきましては、一定の使用基準が、これは農薬についてはすべてございますけれども、この農薬につきましては、開花期に三回まで使用することができるということになっておりますが、今回、こういった基準を超える事例が出た。その原因がどこにあるかというのは、今急いで県を通じまして調査中でございます。

 使用基準が守られていれば残留農薬基準を超えることはないということが一般的に言えますけれども、具体的に、今回どういうことが原因であるかということを至急調べまして、必要に応じまして、農薬の使用方法あるいは栽培方法等について、必要な、きちっとした指導をしてまいりたいというふうに思っております。

後藤田委員 使用基準を超えたというのは問題だと思っております。

 それで、その中で残留農薬の基準値の設定という問題についてなんですが、これはそもそも人体への影響を重視したものなのか、それとも、農薬を使用したことによって土壌汚染等の、環境保全を重視したものなのかどうか、この点が、国民の皆さんも、恐らく立法府におきましても、実はあいまいなのではないかと思っているわけなんですね。

 私は、当然、残留農薬というのは、農薬のついた農産物を食べる、人体に影響するというのが、国民的にも非常にわかりやすくて、一番心配する部分だと思っています。もちろん、環境汚染等についても問題が生じるのであれば、それは大きな改善すべき点だと思っておりますが、その点について、きょうは厚生労働省さんにお越しをいただいているようでございますので、お答えいただきたいと思います。

遠藤政府参考人 農産物中に残留する農薬につきまして、食品衛生法に基づく食品の成分に係る規格として、残留農薬基準を設定しているところでございます。

 この残留基準値を超えて農薬が残留している農産物に対しましては、国民の健康の保護を図る見地から、販売禁止等の措置がとられるというふうなことでございまして、環境中の環境影響というふうなものに関しては、食品としては特に考慮していないというようなことでございます。

後藤田委員 そこで、スダチというのは、皆さん御承知のとおり、かんきつ類の王様と勝手に、地元ですから、申し上げたいと思いますけれども、高級料亭でよく使われるんですよ。ミカンみたいに皮をむいて食べるものではない。半分に割って中の汁を出すわけですね。

 そのスダチが、実は残留農薬基準が〇・五ppm以下なんですね。一方、イチゴは一〇ppm以下になっているんですよ。イチゴというのはできたものをそのまま食べられますね。穴もぶつぶつあいています。あそこにしみ込んでいますね。水で洗っても、洗ったら汚くなるので、洗い方も簡単になりますね、イチゴは。イチゴとスダチを比べると、スダチの方が二十倍も厳しいんですよ。

 この現状について、厚生省さん、もう一度見解を聞かせていただきたい。今の人体への安全というお話からすると、この問題は大変矛盾が生じるのではないかと思っていますので、それを確認させていただきたいんです。

遠藤政府参考人 まず、農産物の残留農薬基準の設定方法の考え方について御説明をさせていただきたいと思います。

 残留農薬基準の設定に当たりましては、食品安全委員会の行う食品健康影響評価の結果を踏まえまして、薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて厚生労働大臣が定めているところでございます。基準の設定に当たりましては、各農産物の一日当たりの摂取量及び基準値案をもとに設定される農薬の摂取量の合計を許容一日摂取量の範囲内におさめることを基本的な考え方としつつ、農薬をそれぞれの農産物に適正に使用した場合の残留試験結果、あるいはコーデックス委員会が定める国際基準などを参考として基準値案を設定しているというふうなところでございます。

 スダチにつきましては、プロシミドンが使用された場合の残留につきまして、農業試験場等における試験結果から〇・〇三ppmというふうな成績をいただき、それをもとに〇・五ppmというふうな基準値を設定したところでございまして、一方、イチゴにつきましては、コーデックス委員会の定める国際基準値を参考として一〇ppmという数値を設定したものでございます。

 いずれにおきましても、先ほど述べましたような残留農薬基準値の設定の基本的な考え方に基づきまして、プロシミドンが使用される農産物からの摂取量を合計しても許容一日摂取量を超えないというふうなことを確認した上で基準を設定しているところでございます。

後藤田委員 今、食品安全委員会の設定方法がそうだから別に問題ないんだというようなお話ですが、それは机上の話でありまして、今の議論を聞いていまして、大臣、いかがでございますか。今の厚生省のお話、または食品安全委員会の設定方法の問題、単純に一日摂取量等々人体に与える影響ということでございましたが、イチゴと皮の厚いスダチ、そして中の汁だけを使う、これが二十倍もスダチの方が厳しいというこの現状について、農林水産の振興も含めて、ぜひこれを食品安全委員会に、おかしいと思ったら大臣からきちっと諮問をされて、これを改革するというか改正していく方向は考えがあるか、教えていただきたい。

亀井国務大臣 スダチとイチゴの例でお話しいただきますと、スダチの果汁と申しますか、それが使われる、いろいろ食品の使い方があろうかと思います。しかし、私、今のお話を承っている限りにおきましては、やはり見直しを考えなければならない点があるのではなかろうか。

 私どもは、食品安全委員会、その中での健康影響評価、こういうものに基づきましてのリスク管理またリスクコミュニケーションを実施するわけであります。そういう面で、今の御指摘の点、技術的な問題でもございますので、専門的に十分その点を検討してまいりたい、このように考えております。

後藤田委員 以上、ポジショントークは終わります。

 これからは本題に入りますけれども、私は、かねてから団体統合という考え方を持っております。つまり、私も地元に行って農業者と話をしておりますと、もちろん農業委員会でも、いいところ、悪いところがある。農協さんでも、いいところ、悪いところがいっぱいある。また普及事業にしましても、いい普及事業をやっているところと悪いところがある。また土地改良区も、単なる農業土木ばかり地域のゼネコンと結託をしてやっているようなところもある。そして、市町村には産業課というのがあって、そこが農業を担当されております。つまり、農協、農業委員会、土地改良区、県の普及事業、そして市町村の産業課、この五つが何かばらばらに今までやってきたのではないかという問題意識を常々持っているんですね。それは一つに統合してしまえ、私は過激なそういう考え方なんですよ。

 いろいろな御陳情、御要望をいただきますと、中身はほとんど一緒ですよ、農業委員会さんの御陳情、農協さんの御陳情、土地改良区の御陳情。これからの担い手確保のために頑張りますなんという話をしております。だったら、一つにまとめて、先ほど冒頭に申し上げたとおり、これからの農業政策というのは担い手重視なわけですよ。幾らいい政策をして幾ら金を使って圃場整備したって、担い手がいなかったら農業は成り立たない、そう考えたときに、担い手重視、いわゆる農業をやる方を重視する。

 この黄色い資料にも、つまり、国、都道府県、市町村、農業団体で、技術、資金、農地、住居、これを考えながら、相談、研修、就農ということをやっていきますよと書いてありましたが、問題を指摘していましたよ。総合的な支援体制をしなきゃいけないというのがこれからの課題であると。つまり、支援の総合化、支援主体の総合化という問題点もここに書いておりました。全く私の考え方と一緒であります。

 そういう点からしますと、今回の改正はいいとしましても、将来的な農業団体または都道府県、市町村のそういった農業関連部局の統合というものは、どのようにお考えになっているか、まず冒頭、大臣にお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 今委員からも御指摘のとおり、大変各種の団体がございます。そういう中で、農業経営に必要な技術や経営ノウハウ、これは私はますます高度化する、こう思います。そういう中で、今、いろいろその役割を重点化し連携を図る、こういうことで、担い手の要請にこたえることをいたしておるわけであります。

 そういう中で、私は、やはり将来的にその方向というのは大変重要なこと、こう思っております。そして、平成十七年度末に、いわゆる都道府県段階におきましては、農業会議、農業開発公社あるいはまた青年農業者等育成センター、これの事務局の一元化を今推進しておるところでもございます。

 また、ある面では、本当に担い手が、技術やあるいはまた経営面での支援を一カ所で、ワンストップ窓口と申しますか、そういうところでいろいろなことが行われることは私は大変必要なこと、このようにも思っておりまして、各種の支援機関の役割、重点化もあわせて、相互の連携が図られるように努めてまいりたい、こう思っております。

後藤田委員 今、大変改革派の亀井大臣の御答弁のとおり、これから団体統合について前向きにお考えをいただく。

 本当に、今おっしゃったように、ワンストップ化というのが私は大変重要なテーマだと思います。農業をやりたいといっても、農業委員会に行かなきゃいけない、農協に行かなきゃいけない、県に行かなきゃいけない、市町村に行かなきゃいけない、これが現状ですよ。これで農業をやりなさいと言ったって、金を貸しますよ、無利子ですよと言ったって、だれもやらないですよね。だから、この点についてはぜひ、今回の改正が終わりではなくて、これから早急にやっていっていただきたいと思います。

 そんな中で、最初に私はちょっと結論から申し上げましたが、都道府県に青年農業者等育成センターというのがありますね。そして、市町村にも普及センターというのがある。そこの相談窓口での就農相談件数という資料がありましたけれども、平成十一年度がピークで減少していたんですよ。これについて、今の農林省さんの考え方を受けて改正したのか、今回の改正でそれが前に進んでいくのか、ふえるのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。

川村政府参考人 今、新規就農者を支援するということで、都道府県に青年農業者等育成センターというのが置かれております。

 それで、今委員の御指摘にありました数字については、ちょっと手元に見当たらないんですが、このセンターの活動自体は順次拡大をしておりまして、例えば相談件数にいたしましても上がってきておりますし、また貸し付けも年を追うごとに増加しているという状況にございます。

 確かに、おっしゃるとおり、それを担う、指導する側が一元化していく、あるいは総合化していくというのは非常に大事だと我々も思っておりまして、特に新規就農に関しましては、就農センターが中核になりまして、事前相談から最後の、就農した後の定着のアフターケア、そこまで含めてやっております。

 それから、今までは就農の具体的なあっせんができなくてちょっと困っていたところがあるんですが、今回、業務の中に無料の職業紹介事業も追加をいたしまして、さらに一貫した指導ができるように手当てしたところでございます。

後藤田委員 ありがとうございました。

 最後に、これはもう答えなくていいんですが、二〇二〇年までに基幹的農業従事者は半減、そしてその三分の二が六十五歳以上という現状。また、二〇〇〇年の農業センサスを見ますと、男子の基幹的農業従事者の七割が六十五歳以上、八割超えは十三県にも至っています。そして、耕作放棄地も経営耕作面積比率で九%、耕作放棄地二割超えがもう五つの県になっていますね。

 この現状を考えて、先ほどの私が申し上げました団体統合ということをきちっとやって、効率的な管理とそしてコスト削減、そのお金を、担い手にもっと直接お金を使う、そういう農政をぜひ亀井大臣のもと、お願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 本日は、農業経営三法が案件であります。我が党はそれぞれ担当者を決めておりまして、私の担当は農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案であります。私の持ち時間は七十分ということでありますので、農業委員会等だけで七十分というのも大変でありますので、その前に、通告しておりませんけれども、ちょっと大臣の感想をいただきたいと思っております。いい番組が放送されましたので、紹介しながら、その感想をいただきたいと思っております。

 先週の四月四日、日曜日であります。NHKの総合放送、深夜の番組ですか、十一時十分から放送がありましたNHKのアーカイブスであります。かつてのいい番組の再放送であります。二本ありまして、ちょうど私の地元の岩手に関した放送でありました。

 題名の一つは「マサヨばあちゃんの天地」、一九九一年の放送であります。岩手は、中山間地、山の県でありますが、岩手山という山があって、その次に高い山が早池峰山という山であります。その山のふもとに入植された方の人生であります。もう一つは、題名が「ある人生「出かせぎの歌」」一九六八年放送のNHKスペシャルであります。同じく岩手の江刺に開拓に入植された方の出稼ぎ人生であります。

 新しい食料・農業・農村基本計画も見直しをされるということでありますので、やはり、かつての農業といいますか、そこで汗をかいてきた人たちのことをしっかりと見据えてから新しいものをつくらないといけないと思いますので、まず最初に大臣に、この開拓地の入植について、過去の現状、今ある姿、感想をいただきたいと思うのであります。

亀井国務大臣 私も世代的に、開拓地に入植された方々、子供のころ、私の地域でも、あるいは満州だとかあの辺の地域からお帰りになって開拓を、農業をされた方々のことも目に浮かぶわけであります。

 実はこの間、私、遠野に参りまして、岩手県の開拓をされた江川さんのお宅に民宿をいたしまして、一晩、三世代でその開拓をされたお父さんから昔のいろいろなお話を伺いました。本当に何にもない、山だけのところを開墾して、そして今日、酪農あるいは炭あるいはシイタケ、あるいはイワナの養殖等々をしておる。ここまでいろいろの事業を進めるに、クマが出てくる、イノシシが出てくる、もう本当に大変、せっかくつくって、しようと思うと、そういう動物にいろいろなものを食べてしまわれたというようなことで、しかし、ようやくここまで来ることができた。その戦後入植をされて以来の本当に御苦労話を伺ってまいりました。

 いかに農業をおやりになる、また特に開拓の方々が大変なこと、時には途中で、もうこんなこと、こう思うこともあったけれども、しかし、これをやり通さなければと。また、幸い、息子さんが後を継いでくれる、こういうようなことで、今日、農家民宿というようなことでいろいろなことをし、そして、地域の皆さんの協力を得て今日あるというようなお話も伺いました。

 本当に、そういう面で開拓の地域に入植をされておられたその汗の結晶、こういうものは、私ども共通の認識と思って、農業の振興のためにもやはりとうといものとして受けとめていかなければならない、こう常々私も思っておるところであります。

黄川田委員 マサヨおばあちゃんの方は二〇〇二年に亡くなられたわけなんでありますけれども、昭和六十三年に電気が通ったということであります。その電気も、バンガローができたから引いてもらったということであります。そして、その地域は、マサヨおばあちゃんが亡くなったということの中で、集落はだれも住んでおりません。

 そしてまた、もう一方の「ある人生「出かせぎの歌」」でありますけれども、出稼ぎしながら短歌をつくった方でありまして、「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢつと手を見る」、これは石川啄木の歌なんでありますが、私の学校の大先輩であります。

 そういう中で、いろいろな岩手県人があるんですが、大臣は神奈川県でありますので、出稼ぎ者という言葉というかその実態といいますか、感想はどうですか。

亀井国務大臣 岩手やあるいは青森等々から、農作業が済んだ後、あるいはまた雪等々そういう自然的な状況下で農業ができない、こういうときに、特に神奈川ですと、建設関係のお仕事にお越しになっておられる方々、時にはお目にかかっていろいろお話ししたこともありますけれども、本当に、家庭を、家族を残してこの地域にお越しになって建設の作業に従事をされた。しかし、現実にはなかなか厳しいことであるわけでありますし、家族のことを常に思い、そしてこうして帰るんだというようなお話。

 あるいは、私は商売の中で、横浜で米の仕事をしておりまして、年末、もちつきに東北から来ていただきまして、そしてその人たちと、今はもう機械でやっておりますけれども、当時はそれぞれの人手を要するような作業の中で約一週間くらい一緒に仕事をした経験も持っておりまして、家庭を置いて出稼ぎにお出になるというのは本当に大変な苦労だ。このことを、私も、十分の一か百分の一かわかりませんけれども、その皆さん方といろいろお話をする中で承知をいたしております。

黄川田委員 私も市の職員をしておりまして、出稼ぎ担当をさせていただきました。神奈川の事業所にも事業所訪問ということで何度か訪れたことがあります。バブルがはじける前でありまして、ちょうど新宿の周辺には高層ビルがどんどん建っているということで、あの高層ビルを建てたのがだれかといえば、全国から集まった型枠大工さんじゃないかと思っております。

 その建てた中の指導者として知事さんがおられるんでしょうけれども、東京におられる方、さまざまな政策の中で何か地方に対する思いが薄れてきているような気がしまして、卑近な例を話しますと、東京には地方から用事があって来るわけなんですよね。泊まっていかなきゃいけない。宿泊に対して、一万円のところには百円の税金、二万円のところには二百円の税金といいますか、その税金でもって国際社会の大都市東京が立派な観光政策をやっていくんだという財源にするという話なんでありますけれども、世界に目を向ける前に、まだまだ地方、地方で本当に厳しい中で生きているというところをわかっていただきたい、こう思うわけであります。

 それから、開拓の話をしましたけれども、また、

当時、意気込んで農業で暮らしを立てようということで頑張ったというところだと思います。青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案も出ております。新規就農ということで新たな政策も出ておりますので、それが本当に生かされるような政策になればと思っております。

 それでは、通告に従い、順次質問していきたいと思っております。

 まず、最近の農林水産業を取り巻く環境でありますけれども、米国のBSE問題あるいはまた先般の鳥インフルエンザ問題等々、消費者の食の安全、安心、これの確保について本当にその対応が求められております。また一方で、農業あるいは農村の現状は、高齢化、そしてまた耕作放棄地の増大、本当に厳しい状況にあると思っております。

 これを踏まえて、政府は、食料・農業・農村基本計画の見直しに着手していると思っておりますけれども、地方からいえば、国はいつもすばらしい理念で計画を立てておるわけなんでありますけれども、それでは、計画を立てたものが実際に生かされたのか、その実態はどうであったのかということをさまざま思い起こすわけであります。

 これまでの補助金行政で、農村、農業者の活性化、これはどこまでつながったのだろうか、あるいはまた、私は現実をわきまえていないと思っておるわけでありますけれども、三位一体改革ですか、改革と言いながら十分な税源移譲が地方にされないままでの改革という名前でありますので、何とかかんとか平成十六年度、自治体は予算編成しましたけれども、引き続き本当に大変な状況であります。

 そこで、まず大臣にお尋ねいたしたいと思っております。

 こういう状況でありますので、国の予算規模も縮小されていく。そういう中にあって、農林水産業の補助金行政、これはどうあるべきなのか、そしてまた、補助金の役割、これまでどうであったのか。それから、スリム化、スリム化という話でありますよね。引き潮傾向の農林水産行政にしても、どうなっていくのか、組織機能はどうなっていくのか、現状でいいのか、新たな発想はないのか、その点も含めてお尋ねいたします。

亀井国務大臣 政府全体の歳出改革、これが進められております中で、私ども農林水産予算につきましても、近年その予算規模が縮小傾向にある。平成十二年は三兆四千億からあったわけでありますが、十六年度では三兆五百億というようなことで縮小されております。そういう中で、やはり補助対象につきましても重点化やあるいはコストの縮減、また関係府省との連携を図ること等によりまして、補助事業の重点化や効率化を進めながら、農林水産施策の諸課題に対処できるように今努めておるところでもございます。

 そういう中で、一つは、農業構造改革の加速化であるとか、あるいはまた食の安全、安心の確保、さらには都市と農山漁村との共生・対流、こういうことなどにつきまして引き続き施策を進めてまいるわけであります。やはり、先ほど委員からも御指摘いただきましたが、基本計画の見直し、農政全般にわたります改革を行う必要があるわけでありまして、重要課題に対しましては、今後とも補助事業につきましても必要なわけでありますし、さらには、歳出全体の徹底的な見直し、こういうことを実施し、そして重点化、効率化、こういうものを図って厳しい財政状況下で農業の問題に対応してまいりたい、こう思っております。

 なお、組織の問題等につきましては、もう御承知のとおり、昨年七月、食糧庁を廃止いたしまして消費・安全局をスタートいたしまして、そして食品分野におきます消費者行政とリスク管理あるいはリスクコミュニケーション等々、これは本省の消費・安全局とあわせて、地方農政局におきましてもそのような部署を持ちまして、食糧事務所等の人員配置等をそのようなところに重点化をいたしまして効率的な努力をしております。

 またさらには、本年四月には、輸出促進室、いわゆる農林水産物の輸出、このことを本格的に進めてまいるような組織も今設置をしたところでございまして、いろいろの問題につきまして、農水省の限られた財政、予算の中で、そして職員の諸君にも、今までと発想を転換して、そして効率的に、重点化して、農政の今求められております状況を把握して、それぞれの分野で仕事に努力をしてほしい、このように申しておるところであります。

黄川田委員 補助金に関しては、私の認識は、これまでがそうだったからそう思っているのかもしれませんけれども、農林水産省、本当に数が多いわけであります。メニューがたくさんあります。ただ、いつも、三年ごとに名前が変わって中身は同じ、私はこういう気がしておりました。お店屋さんでいえば、いろいろなもの、品ぞろえはいいんだけれども、では、そのお店屋さんで何か買いたいものがあるかというとなかなか見当たらない、そういう感じがしたときもあります。

 いずれ、厳しい中で、この農林水産省、本当に生き残る気があるのか、大臣が筆頭になって、この組織が国民のために何をなすべきか、本当にしっかりととらまえていただきたいと思います。そしてまた、その反省に立って新しい農業を展開していくことが大事だと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、農業委員会の方に移っていきたいと思います。

 この制度は、昭和二十九年に第一次の抜本改正が行われたところであります。当時の背景として、占領政策の再検討という一般風潮とともに、農業団体の内部要因の見直しがあると思っております。すなわち、農業協同組合の急速な経営の悪化のほか、農業委員会においても、食糧事情の緩和、自作農創設事務の終了による事務量の減少などがあり、そしてまた、新たに加えられた農業総合計画に関する事務が効率的に行われていなかったこと等々があると思っております。そこで、それらを改めるために、農業委員会、都道府県農業会議、そしてまた全国農業会議所、これを新たに設立されまして、三層の構成といいますか、整ったと思っております。

 今回の改正でも、この都道府県農業会議及び全国農業会議所は、農業委員会の任意業務に対し、今までは単に協力にとどまっておったわけでありますけれども、新たに助言ができることとされまして、この三者間の連携の緊密化、これが期待されると思っておりますけれども、その前にやはり過去の仕事の総括といいますか、それが大事だと思っております。

 昭和二十九年のこの改正からちょうど五十年でありまして、農業会議にあっては、私の地元の岩手でも記念行事が行われたところでありますけれども、都道府県の農業会議の役割に関して、農水省、どのように総括しておるのか、お尋ねいたします。

亀井国務大臣 今委員からも御指摘のとおり、都道府県農業会議、昭和二十九年にスタート、いわゆる都道府県の農業委員会を改組して、農業及び農民の利益代表機関、こういうことで都道府県の農業会議が設立をされたわけでありまして、自来、いわゆる諮問機関としての役割と地域の農業者の抱える諸問題の解決をするための役割を担ってきていただいております。地域農業や農業者の抱えるさまざまな課題に対しましての調査あるいは建議等を行う役割を担っておられるわけであります。

 五十年、こういう中で、先ほど来お話し申し上げておりますとおり、農業の構造改革、国際化あるいは高齢化、こういう中での時代の変遷、こういう面で五十年をお迎えになったわけでありまして、ぜひ、今回、この五十年をまた一つの大きな礎にしていただきまして、都道府県の農業会議がその使命を、農業者に対する諸問題の解決をする、そういう場で今日までの経験を十分生かしていただきまして、一層貢献をしていただきたい、このように考えておりますし、私どももその指導をしてまいりたい、このように考えております。

黄川田委員 次に、市町村の農業委員会制度についてでありますけれども、先ほど来お話しのとおり、市町村合併の進展や国や地方の事務事業のあり方あるいはまた地方組織のスリム化の観点等から、地方分権推進会議あるいは経済財政諮問会議等において制度見直しの必要性がたびたび指摘されておるところであります。

 そこで、今般の改正でありますけれども、このような農業委員会について、組織のスリム化を早急に進め、より効率的な業務運営が行われるよう、その改革に向けた一層の取り組みを図るためのものであるべきとされておりますけれども、大臣、現在の農業委員会、実態面でどのように機能していると思っておられますか、大臣の認識をお聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 それぞれの地域で、農業委員の皆さんが農業者の立場でいろいろ、いわゆる不耕作地の問題、やはりそれは行政ではなかなか見出すことのできない、農業者の主体的な組織であります農業委員会、農業委員の皆さん方がそのような問題できめ細かくいろいろされておりますことを承知いたしております。

 しかし、まだまだそういう面で努力の足らないところもあるわけでありますが、ぜひ、今回の改正、スリム化、重点化、こういうようなことで、さらにそれらが機能することを期待いたしたいと思っております。

黄川田委員 農業委員の皆さんの実態といいますか、農業委員の選挙で投票の実施率は大体一割程度であります。多くの場合、地域での自薦あるいはまた他薦の立候補のもとで無投票当選になっておるわけでありますけれども、大臣、この部分についてはどのような認識をお持ちでしょうか。

亀井国務大臣 選挙が一割以下というようなこと、また、それぞれの地域で関係の皆さん方が、農業関係のリーダーの皆さんと申しますか、農協の理事さんですとかあるいは地域の地区長さんたちがいろいろ御相談をされて、しかるべき方を農業委員に御推薦されておる。私の地元周辺ではそういう形で農業委員が選任をされたときに、各地域、バランスのとれた農業者の代表の方が委員に参画をされて、時には女性の方も入っておられるというようなことで、いろいろ農業者が主体になって知恵をお出しになってやっておられる、こう思います。

 私は、必ずしも選挙がベストとは思いません。そういう中で、それぞれ、比較的、地域の皆さん方が御推薦をされるような形で農業委員を選任されている、このように思っております。

黄川田委員 公選制と任命制については後で触れてみたいと思います。

 それでは、実務的に引き続き聞いていきたいと思います。

 まず、この法律案では、農業委員会の任意業務の第三に、法人化その他農業経営に関する事項が掲げられております。そしてまた、基本法においては、専ら農業を営む者等の経営発展を支援するため、各般の施策を講じていくとともに、農業経営の法人化を推進していくという施策の方向性が明らかにされております。しかしながら、法の目的、第一条でありますけれども、「農民の地位の向上」のため云々とありまして、「農民」の表現が改められておらないわけであります。法人参加など主体者が変わりつつある中で、農業者あるいはまた農業従事者などに改めるという考えはなかったのでしょうか。

川村政府参考人 委員御指摘のとおり、今、法人化の推進ということで政策の大きな柱にしておりますし、実態も、かなり法人化というものが進みつつございます。

 ただ、今回の改正に当たりましても、そういうことも考慮しつつ検討はいたしたわけでございますが、農業委員会の基本的な性格、つまり農地の権利移動の調整等を地域の合意形成でやるということで、選挙委員の選挙権あるいは被選挙権につきましては、実質的に地域農業を担う個々の耕作者ということに着目をして構成されております。現在既に、農業生産法人につきましても、法人自体についてではなくて、その法人の構成員の自然人というものに対して、選挙委員の選挙権、被選挙権を付与しているということでございます。

 この基本的な考え方あるいはその性格からしますと、法人を正面から位置づけて農業委員会にするというところまではまだ至っていないのではないかということで、この考え方を変えませんので、農民という文言は現行のままということでございます。

黄川田委員 お話しのとおり、選挙権の問題でありますか、公選制の問題、さまざまあるわけで、自然人ということなんでしょうけれども、やはりこれからの農業を引っ張っていく者がだれかというところの中で、個人の農業者というだけじゃない中で、農業委員会の法律にうまく取り込めるような仕組みなり、根幹の部分も変えていくというふうな考え方、前向きに検討していただきたいと私は思っております。これは要望であります。

 それでは次に、農林水産省では、食料・農業・農村基本計画の見直し、これを進めております。農業の構造改革に関して、担い手・農地制度の改革を進めていくための議論もしていると伺っておりますが、基本計画を見直す方針の中で、農業委員会の果たすべき機能、これをどのように位置づけられておるんでありましょうか。本改正案との関係ではどう整理されておるのか。これは副大臣ですか、よろしくお願いいたします。

金田副大臣 黄川田委員からの御指摘でございます。

 これからの農業委員会が、今回の農業構造改革に取り組んでいく中で積極的な働きをしていただきたいというふうに考えているところでございます。

 現在、基本計画の見直し、来年の三月まで鋭意取り組んでいるところでございますが、この中でも、農業構造だとか望ましい土地利用を実現するために、地域の合意形成、地域の代表で農民の代表であるこの農業委員会の皆さん方が、具体的に集落の農地の集団化をどのように進めていくか、そういったことを民主的な形の中で、農業委員会が活躍する中で、農業の近代化、構造改革を進めてまいるために重要な役割を果たしていただけるものだというふうに考えております。

 それから、今までの農業委員会は総花的でございましたけれども、いろいろな業務をやっておりましたけれども、特に農地の利用集積、構造改革の推進、こういった本来担うべき業務に重点化を図ってまいりたいというふうに今回の改正でも考えております。

 そういった基本計画の見直しに合わせた中で、農業委員会にしっかりとした構造改革を、民主的な形の中で改革できる基幹的な働きをしていただけるものだというふうに理解しております。

黄川田委員 しっかりした農業委員会の実現をお願いいたしたいと思っております。

 次に、農業委員会でありますけれども、地域の農業者の代表として、そしてまた担い手への農地の利用集積の促進やあるいは農地の保全、さらには遊休・耕作放棄地の解消のための活動、そういうことばかりではなくて、地域の世話役といいますか、そういうきめ細かい活動も行っておるわけであります。

 しかしながら、先ほどもお話がありましたけれども、現場では、市町村の農政、行政、あるいはまた農協、農業共済組合であるとか、あるいはまた普及センターであるとか、農業、農政に取り組んでいる機関がさまざま存在しているわけであります。そこで、農業者の立場に立てば、このような機関との連携、これは大変大事なことだと思っております。

 そこで、この行政窓口のワンストップサービス、これが求められていると思っておりますので、農業委員会と農政推進機関の連携を深めるべく、窓口の一元化、この取り組み状況はどうなっておるのでしょうか。

川村政府参考人 今の委員の御指摘のような考え方のもとで、既に地域段階ではいろいろな取り組みが行われております。

 一つの例を言いますと、JAの支店の中に関係機関が入ってまいりまして、市の産業課でありますとか農業委員会の事務局あるいはJAの営農課等、そういったものが集まってワンストップ化を目指している。それで、農済でありますとか普及センターも決まった日にそこに集結をいたしまして、農業者の方々の利便ということで努力をされているというのが既に入っております。

 我々も、今後の方向といたしましては、こういう担い手の利便性ということが非常に重要なことであろうと思っておりまして、市町村段階におきます担い手の支援窓口のワンフロア化ということを早急に支援をしてまいりたいということで努力してまいりたいと思います。

黄川田委員 それでは次に、農業委員会の必置基準面積の見直しの考え方についてお尋ねいたしたいと思っております。

 市町村には農業委員会を置くのが原則であります。この法律案では、この必置基準面積について、市街化区域内の法令業務の執行の状況等を踏まえまして、この算定から生産緑地以外の市街化区域内農地面積を除外することとされておりまして、そしてまた具体的な面積、数値は政令に委任されておるということであります。

 そこで、この必置基準面積の見直しの経緯と、そして今回、基準引き上げ、見直しに向けての基本的な考え方、特に、政令事項でありますので、行政の裁量権の乱用にならないようにどんなチェック体制等が考慮されているのか、あわせてお尋ねいたします。

金田副大臣 今回、必置基準面積の引き上げを考えているところでございます。

 前回の平成十年の政令改正の際に、農業委員会の必置基準面積を三倍に引き上げて、現在、都道府県では九十ヘクタール、北海道では三百六十ヘクタール、これ以上のものについては必置しなさいよというふうにやっているところでございますけれども、これを今回スリム化というようなこと、それから、市街化区域内の農地を外す、そういったことなどからやはり一定程度のスリム化も行わなければならない。今、全国で五万八千人ほどの農業委員がいるわけでございまして、こういったもののスリム化というのも社会的な要請でもあると思っております。

 そういった中でスリム化を進めてまいりたいと思っておりますけれども、基本的に、そういったチェック体制がきくのかどうかという御懸念でございます。しかし、現在、必置基準面積以下の市町村のうち、農業委員会そのものを、ほとんど、九割弱が任意設置してございまして、市町村の裁量の中で、我が町にも置こうとかというようなこと、そういった市町村で任意設置が九割弱進められているところでもございますので、市町村のそういった裁量に大きくゆだねていけるものだというふうに考えております。

黄川田委員 市町村が農業委員会を設置しようと思えるぐらいの国策もしっかりお願いいたしたいと思います。

 それで、政令に委任されておるわけでありますけれども、面積的にどのような考え方があるのか、もし具体の数字がお答えできるのであればと思っております。

金田副大臣 これから政令で定めるべく検討してまいるわけでございますけれども、今後の市町村合併に伴う区域の見直しについては、規模別の業務量の客観的な数値等をこれから勘案しまして決めていきたい。今現在の必置基準面積がどの程度のものになるのか、どの程度拡大していくことになるのかということについては、これらの検討を踏まえて検討してまいることになると思います。

黄川田委員 いずれ、三千二百の市町村がとりあえず千までみたいな形の中でどんどん合併が進むのではないか、こう予想されておるところでありまして、任意合併協議会あるいはまた法定の合併協議会、どんどんできておりますので、それらを見据えてということでしょう。しかしながら、よりよい地方行政が推進できるような、そういう面積をしっかりと政令で書いていただきたいと思っております。

 それでは、設置基準面積以下の市町村の小規模農業委員会の設置、廃止は任意でありますけれども、そのあり方をどうとらえるか。特に、廃止したとき、市町村の既存の関連行政事務の役割との関連がありますので、その関連のあり方をどのようにとらえておるか、お尋ねいたします。

川村政府参考人 今回の改正を受けまして、必置面積の基準を引き上げようということで検討しておるところでございます。その場合、基準以下のところが、自主的な判断によりまして設置される場合もありますし、それを受けて廃止されるという場合もあります。仮に、市町村の判断によりまして廃止となった場合でございますが、市町村部局が、農業委員会がこれまで行っていた業務を農政の一環として遂行することになるわけでございます。

 先ほど金田副大臣の方からも申し上げましたとおり、平成十年にもこの基準の引き上げをしております。そのときも、農業委員会を廃止した市町村に対しましては、農業委員会が行っていました農地法その他の法令に基づく業務が市町村部局に適切に引き継がれるような指導というものを行っておりますので、今回、引き上げを行う場合に当たりましても、同様に指導してまいりたいと思っております。

黄川田委員 それでは、残り時間もあと半分ぐらいになりましたので、続けて質問させていただきたいと思っております。選挙委員定数の今般の見直しの考え方について、引き続き質問していきたいと思っております。

 この農業委員会の制度創設の基本的な考え方は、農地制度の運用及び農業全般にわたる問題を農業者の創意と自主的な協力によりまして総合的に解決していくために、民主的な農民代表機関を地方自治体の組織として、行政委員会として設置しようというものでありました。

 農業委員会の委員は、農民の選挙によって選出される選挙委員と、それから市町村長によって選任される選任委員から成りますけれども、こうした農業委員会制度の創設当時の考え方からいたしまして、選挙委員の位置づけは制度の根幹をなすものと私は思っております。

 そこで、公選制と任命制の本質的な役割をどこまで掘り下げた議論の上での今般の委員数の改正であるのか、そしてまた、双方の委員数のバランスを考慮した本質改正であるべきと思っておりますが、どうなんでしょうか。

金田副大臣 今回の農業委員会法の改正でございますけれども、下限定数を十人というふうにしているのを取っ払うわけでございまして、十人以下の委員というようなことも実質出てくるわけでございます。

 十人以下にしたいというようなアンケート結果等々も大分ございますので、そういった場合に、公選制と任命制の委員がどうなるのかということが問題になってくるわけでございますけれども、農業委員会そのものが農家の皆さん方から民主的に選任された合議機関であるよというような、こういった性格からして、農業委員会は任命制の委員よりは公選の委員の方が根幹をなさなければならないものだという考え方は基本的に持っているところでございます。

 そういったことで、これから政令で定めることになってまいりますけれども、そういった農業委員会の制度そのものの根幹をしっかりと守るような形の中で政令で定めさせていただこうというふうに思っております。

黄川田委員 農業委員会の活動の重点化、これが叫ばれておりますし、そしてまた農業委員定数のスリム化、これも叫ばれております。平成十三年一月の全国農業会議所が策定した農業委員会系統組織の改革プログラムにおきます選挙委員定数の見直し推移を踏まえて、農業委員会のスリム化が書かれております。そしてまた、反面、農業委員会の活動の重点化も叫ばれているということであります。

 スリム化の基本方針でありますけれども、スリム化は基本的にどうあるべきということなのでしょうか。

川村政府参考人 農業委員会のスリム化につきましては、基本方針二〇〇三の中でその方向が出されております。そして、このスリム化でございますけれども、基本的には三つの要素を考えております。

 一つは、市町村合併の急速な進展、これがございます。これによりまして、農業委員会の数、また委員数といったものの変動もございます。

 それから二つ目でございますが、今回は、総花的と言われておりました業務を、担い手への農地の利用集積それから農業経営の法人化、まさに構造政策の推進の中心となります業務に重点化をする、これが二つ目の要素でございます。

 それから三つ目といたしましては、これはトレンドでございますけれども、農地面積なり農家戸数というものが減少しておる。

 こういった要素を勘案いたしまして、今後、三年間で二割程度のスリム化が進むものというふうに考えておるところでございます。

黄川田委員 次に、今回、委員のリコールが、委員一括から委員個人が可能なように改正されておりますけれども、リコールの具体的手続はどのようになっておるのでしょうか。

川村政府参考人 リコールの手続でございます。

 選挙委員に対しますリコールを行おうという方は、有権者全体の二分の一以上の同意を得まして選挙管理委員会に請求するというのが要件でございます。そして、当該委員が選挙区から選出されている場合には、委員会の中で選挙区を設定しているところがございますが、そういう選挙区から選出されている場合は、当該選挙区の有権者の二分の一以上の同意ということが要件でございます。

 そして、選挙管理委員会は、今申し上げました請求を受けた場合には、遅滞なくその旨を公示するということになります。公示をするとともに、都道府県知事なり市町村長、それから農業委員会の会長にこれを通告するという手続が踏まれます。そして、効力としては、当該告示があった日に、請求に係ります委員は失職、こういう段取りでございます。

黄川田委員 長い農業委員会の歴史の中で、委員一括のリコール請求みたいなことはあったのでしょうか。

川村政府参考人 ちょっと手元に詳細なあれがございませんが、記憶では実績はございません。そして、こういう一括が行われた趣旨は、当時、農地解放の後に地主側の意向とかなんかがありまして、そういうリコール請求が乱発されて混乱するという事態が予想されたもので、こういう規定を置いて円滑化を図ったということのようでございます。

黄川田委員 戦後の地主の皆さんが、リコールだみたいな形の中で、さまざまあるといけないということで、一括にすれば、皆それぞれやめなきゃいけないということになる中での一括ということだったんでしょうけれども、いずれ、事例は過去においては見られないという形でありますね。

 それでは、市町村合併に関連しましてちょっとお尋ねするわけなんであります。

 市町村の新設合併の場合においては、合併関係市町村の法人格が消滅いたしますので、合併関係市町村の農業委員会の選挙による委員及び選任による委員であった者は、当然、その身分を失うことになります。このため、新たな市町村の設置後五十日以内に農業委員の選挙を実施することが原則であるとなっております。

 さて、市町村合併特例法の、これは市町村議会議員でありますが、議員の在任特例に見るとおり、合併後の新市町村の選挙委員数でも激変緩和措置がとられております。また、合併特例法において農業委員会は、新設の場合八十人まで、一年以内、吸収合併の場合四十人まで、吸収する農業委員会の任期までとなっております。

 そこで、委員会の活動実績にかんがみ、この任期延長に関する同様な議論がいろいろ言われております。在任特例でありますが、世間にどれだけ通用すると考えておるのか、市町村の議員の在任特例、最近、何かいろいろと騒がせておりますので、それらも含めてお尋ねいたしたいと思います。

川村政府参考人 今、議員が御指摘ございましたとおり、農業委員の任期につきましては、合併特例法に基づきまして、その任期に関する特例がございます。そしてまた、これも御指摘のとおり、新設合併の場合と吸収合併の場合では多少異なっておりますが、新設の場合は合併後一年の範囲で定める期間、また編入合併の場合は残任の期間ということになっております。

 こういう合併に伴いまして、農地の業務等を、まさに地域の代表として円滑に処理していくということからかんがみますと、この在任特例を活用されて円滑な移行を図っていくということは、私どもとしては、非常に自然なことではないかというふうに考えております。

黄川田委員 この部分についてはいろいろ議論がありますけれども、農水省とすれば自然な形だというお話でありますね。

 次に、委員会活動の重点化に関してお尋ねいたしたいと思います。

 何度もお話し申し上げますけれども、この農業委員会の今日的な政策的課題でありますが、農地法等の改正、あるいはまた的確な業務執行による優良農地の確保それからその有効利用、これに尽きると思うわけであります。しかしながら、その一方で、農地面積の推移を見ますと、昭和三十六年をピークに年々減少しておりまして、平成十五年には四百七十四万ヘクタールとなっております。そこで、農業委員会の任意業務の第一に「農地等として利用すべき土地の農業上の利用の確保」が挙げられております。そしてまた、改革プログラムにおいても同様の趣旨が掲げられております。

 そこで、農業委員会系統組織におきますその取り組み状況は、まずもってどのようなものであるのか。そしてまた、減少しつつある耕地面積の現実を踏まえまして、米政策の改革の完了年度であります平成二十二年、農地面積四百七十万ヘクタールの確保も危ぶまれるのではないかと私は思っております。この状況を踏まえまして、必要な農地面積を見定めていく中で、農業委員会がどのような役割を担うことが期待されるのか、あわせてお尋ねいたします。

亀井国務大臣 農業委員会は、耕作放棄地の発生状況等に向けた農地パトロールや所有者に対する指導助言、あるいは認定農業者への農地の利用集積等を実施しておるわけでありまして、所有者に対する指導助言、これは農業経営基盤強化促進法に基づきまして所有者等への指導実績を見ますと、平成十四年に八千五十七件、面積で千百六十四ヘクタール、このようになっておるようであります。また、認定農業者に対する農地の利用集積の促進、農業委員会の要請に基づきます農用地利用集積計画が作成され権利移動が行われた面積は、平成十四年で五万八千ヘクタール、利用集積計画によります権利移動全体十二万二千ヘクタールの約四七%、こういうことで、優良農地の確保と農地の利用集積に向けた活動を行っております。

 このように、今回の法案で、農業委員会の活動をこのような農地に関する業務等の重点化、あるいは農業委員会が優良農地の確保と農地の利用集積の推進に総力を挙げて取り組むことを期待しておるわけでありまして、全国農業会議所におきましても、その自主的な取り組みに、耕作放棄地の解消と、そして優良農地の確保に向けた運動を展開しております。全国各地の農業委員会におきましても、この運動の取り組み状況、こういうものをホームページ等で発信されまして、積極的な取り組みを行っておられるわけでありまして、そのような中でこの農地の問題につきましての使命を果たすような活動、これは大変重要なこと、こう思っております。

黄川田委員 大臣お話しのとおり、認定農業者あるいはまた担い手へ農地の利用集積がしっかりなるように取り組んでいただきたいと思います。

 次に、食料・農業・農村基本法では、我が国農業の主流である家族農業経営を活性化するとともに、農業経営の法人化を推進していくという施策の方向性が明らかにされております。そこで、この基本法制定以降には、農業生産法人制度の見直しであるとかあるいはまた構造改革特区制度の創設、これらに伴いまして新たな法令業務が追加されておる状況にあります。

 そこで、この法人化の今後の動向いかんでは、新たな制度に対応した農業委員会の法令業務が位置づけられるのみではなくて、農業経営の合理化を図る観点から、任意業務の積極的な推進が求められるのではないかと思っておりますが、実態面での対応状況はいかがでしょうか。

川村政府参考人 農業委員会系統組織におかれましては、まさにこの法人化の推進ということを事業の一つの柱として取り組んでおられます。具体的には、農業委員会が青色申告でありますとか簿記記帳等の研修会、こういうものを開催されるのが一つございますし、また、既に法人となられた方がさらにその経営を発展させるための経営相談会、そういったものを開催されるなど、地域において地道に農業者の経営管理能力の向上に向けた取り組みを実施されておるところでございます。

 今回の法律改正におきましても、こういった活動の実態を踏まえまして、まさに法人化、経営の合理化、こういうものを重点化の一つの柱として位置づけをしたところでございまして、今後一層の活動を期待しているところでございます。

黄川田委員 次に、選任委員の選出方法の見直しについてちょっとお尋ねいたしたいと思っております。

 御案内のとおり、土地改良区でありますけれども、農業水利施設の建設、管理、農地の整備など、いわゆる土地改良事業を実施することを目的として、土地改良法に基づいて設立される農業者の組織でありまして、土地改良事業の中核的な実施団体として位置づけられておるところであります。

 そこで、この土地改良区の代表者を団体推薦枠にあえて追加する必要性、意義はまずもってどこにあるのか。そしてまた、条例化を図り、運用で対処できるよう、地方の独自性を発揮しやすい、そういう仕組みに法改正を図ってもよかったのではないかと思っておるわけでありますけれども、いかがなものか。さらに、その際、実際に土地改良区の代表者を推薦する場合の基準等も整備すべきではないかと思っておりますけれども、お尋ねいたします。

川村政府参考人 今回、土地改良区の代表者を団体推薦枠の中に追加するということでございます。これは、土地改良区の役割を考えますと、現在、いわゆる土地改良整備事業の中で、担い手への農地の集積を要件とする事業とまさにセットで農地の流動化が行われておりまして、そういう事業がかなりの成果を上げております。これは単に面積だけではなくて、質的にも集団化というものが図られまして、非常に効果を上げているということがございます。

 それからまた、規模拡大を実施いたします農業者、こういう者は、規模拡大をするけれども、その維持管理というものに非常に労力をそがれる、それによって本来の生産活動のところがなかなか力が入れられないので、規模拡大をちゅうちょするということがございますが、そういう者については土地改良区がかわって管理をするといったような連携のもとに構造改革が進んでいるという実態がございます。

 そういう実態を踏まえまして、より質的な規模拡大の向上を図るという意味も含めまして、今回、推薦母体に土地改良区を追加したということで、これによりまして農業委員会の体制の強化を図りたいということでございます。

 そしてまた、御指摘のように、土地改良区と一言に言っても、地域によってかなり実態が区々でございまして、これをすべて代表というわけにはなかなかいかないと思います。これは、具体的には省令の中で要件を規定していかなければいけないと思いますが、その地域におきまして一定規模を有するとか、そういう推薦の資格を得るような客観的な要件というものがやはり必要であろうということでございます。

 そして、その地域での活動の実態、そういうものを踏まえまして、本当に農業委員会のメンバーとなって活動されることがふさわしい団体ということを市町村が推薦していただくような仕組みにしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

黄川田委員 いずれ、土地改良区というのが、今般できたものじゃないですし、歴史があるものでありますので、本当に生かされる仕組みにしていただきたいと思っております。

 次に、農業委員会系統組織の改革プログラムにおいてでありますけれども、地域の世話役や構造政策の積極的な推進に資するよう、女性、青年農業者及び認定農業者の選挙委員への立候補の促進、あるいはまた選任委員への登用の促進を掲げておるところであります。

 そこで、議会推薦委員につきまして、地域に密着した活動を推進すべく、女性、青年農業者や認定農業者の登用、これを図る工夫がもっと大事だと思っておりますが、どういう状況でしょうか。ちなみに、女性の農業委員さんの現状と、あるいはまた若い人たちの現状もお話ししていただければと思っています。

木村大臣政務官 黄川田委員おっしゃること、大変大事だと我々も認識をいたしております。

 そして、これまでもいろいろ農業委員会系統組織を通じても努力してまいりました。例えば、絶対数はまだ少ないわけでありますけれども、昨年七月に行われました農業委員統一選挙と、その前、平成十一年に行われました選挙の結果を見た場合にも、女性の農業委員の数というものが倍以上の数値をあらわしております。平成十一年のときには女性の委員が九百七十七人いましたが、昨年においては二千二百六十一人と倍増しているところでもあります。

 また、例えば、いわゆる認定農業者の比率というものも、現在、全体から見て、まだ少ないわけですけれども、一五・四%まで伸ばしてきておりまして、委員御指摘のように、女性の農業委員会における活躍の場あるいはリーダー的な認定農業者の活躍の場、その登用を図るべく、我々も組織系統とも連携しながら、今後とも努力してまいりたいと思います。

黄川田委員 今、地方にあって、地域にあって一番元気な方々はだれかというと女性の方々であります。安全、安心の農業に最も関心が高いのも女性の方々であります。そしてまた、地産地消、産直の関係ですね、一番汗をかいております。国土交通省がやってまいりました道の駅ですか、道の駅にあわせてさまざまな物産館なんかも出ておりますけれども、そこで一生懸命働いているのも女性の方々でありますので、それが農業行政というだけじゃなくて、やはり農村社会を支えるのは私は女性の方だと思っておりますので、登用方、よろしくお願いいたしたいと思っております。

 それでは次に、交付金制度のあり方についてお尋ねいたしたいと思います。

 経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三では、「農業委員会の組織のスリム化、効率化を進め、これに沿った交付金の縮減を行う。」こと及び「改革の進展状況を踏まえつつ、平成十八年度までに、地方の自主性の拡大の観点に立って、交付金について一般財源化等その在り方等について所要の検討を行い、結論を得る。」ことを決定しておるところであります。

 そこで、農業委員会に今交付金としてお金が来ておるわけなんでありますけれども、この農業委員会に関する財源でありますけれども、これまでどんな形で農業委員会に財政的な支援がされてきたのか、ちょっと経過をお尋ねいたしたいと思います。初めから交付金であったのでしょうか。

川村政府参考人 交付金についてのお尋ねでございます。

 これは現在でこそ交付金という形をとっておりますが、その前は補助金という形をとっておりまして、財政見直しの中で、たしか昭和六十年に振りかわっております。そういう経過をたどってきております。

黄川田委員 初めから交付金じゃなかったということでありますね、補助金であったと。何で補助金が交付金になったんでしょうか。その経緯をお話しいただきたいと思います。

川村政府参考人 補助金となりますと、補助対象経費、そしてそれに対する補助割合、こういうことで行われるわけでございます。できるだけ、地方の自主性なりを考えますと、財政状況も厳しいこともありまして、有効活用といいますか、その地域のあれに従って活用していただくということで、一定の積算はございますが、対象経費とそれを明示する形での、より自由度の高い交付金というものの仕組みがとられたというふうに理解しております。

黄川田委員 中央官僚の方々の言葉はすごくすばらしいわけですね。自由度というと市町村が裁量によって何でもできるみたいな勘違いがあるわけなんでありますけれども、それはきちっとした財源移譲があっての、財源があっての仕事なわけでありますね。

 そういう中で、実はこれは私の質問の部分じゃないのでありますけれども、農業改良普及員さんの方々、あるいはまた林業もそうです、水産業もそうなんですが、そういう普及にかかわる方の部分についても、交付金の部分も、自治体に自由度だと。普及員さんであれば都道府県職員でありますか、その自由度、裁量権だけ言われて、本質的な財源移譲がなされていないだけで、我々の、国から追っ払った、追っ払ったという言い方はちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、やはり、仕事はむしろしっかりやっていかなきゃならないという行政環境にありますので、その裏打ちの財源もしっかりと方向性をつくってやらなきゃこれは片手落ちだと私は思っておるわけなんであります。

 そこで、農業委員会の交付金の縮減でありますけれども、委員会組織等のスリム化に対応するものでありますけれども、仮に一般財源化を図るとすると、市町村の農地関連業務の適正な業務執行が阻害され、逆に農業委員会の独立性が弱められる懸念もあると私は思っているんですよ。地方への税財源の移譲が図られる方向の中、この交付金制度の将来展望といいますか、今後どうあるべきか、お尋ねいたします。

亀井国務大臣 農業委員会の交付金につきましては、やはり市町村から独立した独自の財政基盤、これを確保して、そして農業委員会の業務が全国的に公平性、統一性、あるいは客観性を確保する、こういうことが必要なことでありまして、国からの財政的な措置としての交付金ということは、これは必要なことであります。

 今後のことにつきましては、基本方針二〇〇三、これにいろいろ指摘をされておるわけでありまして、今回のスリム化、これの縮減を図りまして、そして、平成十八年度までにそのあり方を十分検討してまいりたい、このように考えております。

黄川田委員 戦後、多分アメリカからの考え方なんですか、自治体があって、行政委員会というものがつくられた。そして、市町村であれば教育委員会、そしてまた農業委員会と、どちらも時代の波にもまれまして、そのあり方が問われているわけですよね。その部分はその部分で大いに議論しなきゃいけないけれども、やはり仕事をやるためにはその裏づけとなる財源が大事なんでありまして、先ほども言いましたけれども、市町村の予算編成、基金を取り崩して、来年はもう基金も枯渇しているというふうな状況なわけなのであります。なおかつ、それぞれ、農水だろうが国土交通だろうが文部科学だろうが、しっかりとした国策、あるいはまた地方行政をしていかなきゃいけないということ、やはりめり張りをつける中で、しっかりと、財務省と亀井大臣もけんかするぐらいの形でやってもらわなきゃいけないと思っております。

 残り時間も三分三十秒でありますので、私も参考人質疑でまた聞くこともあると思いますので、これから仲野さんに普及の関係は聞いてもらうんですが、私からも総括だけちょっと聞いておきたいと思います。

 協同農業普及事業でありますけれども、昭和二十三年に制度が発足しました。それ以来、都道府県において農業現場での技術の普及活動が行われてきたと思っております。そこで、この普及活動でありますけれども、これまで果たしてきた普及の歴史的役割といいますか、その辺をお聞きいたしたいと思います。最後であります。

亀井国務大臣 いわゆる協同普及事業につきましては、委員御指摘の二十三年以降、いろいろな分野で活躍をしていただいておると思います。農業の生産性向上あるいは農業の経営の発展、絶え間ない技術革新というものが必要であるわけであります。そういう面で、試験研究機関と農業者の橋渡し、こういう点での技術の問題につきまして、普及関係者の努力というものは私は大変高く評価をしておるわけであります。

 特に、いろいろな地域に参りましても、若い担い手の皆さん方がいろいろ仕事をされている。正直、親子、おやじさんから息子に、息子がこういう仕事をしたいというと、なかなかおやじさん、それをうんと言ってくれないわけでありますけれども、そういう面で普及員の皆さん方が技術的な問題、またそれをいろいろ説明される中に、お父さんの御理解を得て、こういうことをやった、そしてこういうような仕事が今できている、そういうような喜ばしいお話も伺うこともできるわけであります。

 そういう面で、今日まで試験研究機関と農業者の大きな橋渡し役、特に技術面での努力というのは大変私は高く評価をしておるわけでありまして、これからもこの普及事業につきましては、そういう面で、時代の状況、この要請にこたえる中でその使命を発揮していただきたい、このように期待をしているものであります。

黄川田委員 大臣も農業改良普及員の皆さんの活動を高く評価されておるということでありますので、その高い評価のもとにこの法案も生かせると私は思っておりますので、その高い評価のもとによろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

高木委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 民主党の仲野博子でございます。

 本日、この委員会で私二回目の質問をさせていただきます。

 先般、酪農、畜産にかかわって大臣に質問させていただきました。そして、今、ITの進む中で、ほとんどの方がインターネットで衆議院にアクセスしますとこの委員会の状況がよくわかる、そういった意味で、私が質問を終わって、私のメールにも多くの農業者の方たちからさまざまな視点で御意見等をいただきました。そのときに、亀井大臣、本当にこれからの日本の農業のあり方について、多分きょうも私の質問にしっかりとお答えをいただけるのではないか、そういう期待があります。そういった意味で、よろしくお願いをしたいと思います。

 本日は、農業改良助長法の改正にかかわって、幾つか政府案の問題点などを含め質問させていただきたいと思います。

 初めに、我が国における農業技術の普及にかかわる課題からお聞きをしたいと思います。

 昨年、国内の農作物、とりわけ水稲栽培が、作況指数が九〇という十年ぶりの冷害に見舞われました。十年前の今ごろは、冷害による米不足から、国民全体が大変な苦労をした記憶を持っております。冷害の具体例でありますけれども、私ごとでありますが、私が生まれて育ったところは青森県でございます。その青森県で作況指数が県平均で五三の著しい不良となり、南部、下北では一四という平成五年に次ぐ史上二番目に近い低い結果となりました。

 地元では、十年前の経験を生かし、耐冷性品種の作付をふやしたり、あるいは出穂前の低温の影響を抑えるために水田の水を深目にとる深水管理なども行われたとお聞きをいたしました。病害虫の発生対策やきめ細かな水の管理ができなかったこと、土づくりの不十分さなどが指摘をされました。しかし、青森県内にあります六戸町のある篤農家の方は、土づくりと水の管理によって、通常の稲よりも相当長い根を張らせるという独自の農法で、地域の平均単収の七十八キロに対し、単収、十アール当たり四百数十キロの収穫があったということも報道されておりました。

 なぜこのような例を冒頭お話しさせていただいたのかと申しますと、我が国の近代から現代にかけてのいわゆる農業技術の普及は、このような農業生産に研究熱心な篤農家や、農業に従事することを誇りに思い、農業改良などを進んでする精農家と呼ばれる方々、明治に入ってからは国や都道府県の試験場の研究員、そして戦後からは地域の農業改良普及員など、本当に多くの農業関係者の自己犠牲的とも言える地道な、そして献身的な努力の積み重ねによって成立してきたということを申し上げたかったからであります。そして、この農業技術の基本的部分は、日本の農業経営のほとんどが家族経営を主体としていることから、親から子へと伝承され、引き継がれていくと考えられます。

 ところが、現在、三百万戸を割った農家戸数の中で、実際に農業に従事されている方の六割弱が六十五歳以上の高齢者だという政府統計の報告があります。そうなると、長い年月をかけて地域の中で普及し、せっかく確立されたこの農業技術が、後継者が不足し、生産者の高齢化が進んでいることから、実は今、将来に向け大変深刻な状態に陥ろうとしているわけでございます。

 初めに、この農業、農村における高齢化の進行と、親から子へという農業技術の伝承の危機という問題について、国としてどのような現状認識に立たれているのか、また、その中で協同農業普及事業がこれから果たしていかなければならない課題と役割について、大臣の考えをお聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 委員から今いろいろ御指摘をいただきました。

 特に、農業は多種多様な技術やノウハウで成り立っている、こういう産業だと思います。

 昨年、御指摘の冷害、そういう中でいろいろ、耐冷品種の問題あるいは深水管理の問題、あるいは農村の基盤整備事業、そういう中で基盤整備が行われて、深水管理ができる地域におきましては十分それが徹底をした、こういうことで、地域によりましては、いろいろ厳しい状況下で生産性を上げておられる。あるいはまた、土地の土壌改良の問題の努力だとか、地域によってそれぞれ本当に皆さん方が地域の実情に合わせた農業技術を取得されまして、農業経営が継承されておりますことは、大変重要なことであるわけであります。

 そういう中で、やはり時代に合った農業を展開する、また生産性や品質の向上、経営発展を図る、また世代間で伝えられた技術、こういうものに、そのままの形でなく、農業改良普及員、試験研究機関あるいは科学技術等々を導入した中で、それらが加味されて、その地域の技術が継承されていくことはやはり大変必要なことでありますし、そういう面で普及員の役割というのは大変大きなものがあるわけでありまして、私どもはぜひそれを支援してまいりたい、このように考えております。

仲野委員 今大臣から、普及員の役割は本当に大きいと御答弁がありました。そういった意味で、今後の農政推進の主要な柱としてこの協同農業普及事業が果たす役割が大きいという認識に立ちまして、法案の具体的中身について質問をさせていただきます。

 さて、今回のこの農業改良助長法の一部改正の説明の中では、農業者の高度で多様なニーズに対応できる普及事業の展開を図るために、普及職員を一元化することや、都道府県が自主性を発揮できるよう、普及センターの必置規制を廃止すると述べられておりました。普及事業の対象である農業、農村の現状から考えると、幾つもの大きな問題があると思っております。

 例えば、中山間地域は国土面積の約七割を占め、総人口の約一四%が居住し、耕地面積や農業就業人口、農業粗生産額で全国の約四割、農業集落数の約五割を占めるなど、国内農業において大きな役割を果たしております。

 今、政府の案が、現行の専門技術員と農業改良普及員を一元化し、政策課題に対応した高度かつ多様な技術、知識を持った新たな普及指導員を置くとされておりますが、農業集落の半数を占める中山間地域において求められている高度かつ多様な技術、知識とは具体的にどういうものを指しているのか、明らかにしていただきたいと思います。

川村政府参考人 中山間地域についてのお尋ねでございます。

 中山間地域は、国土のかなりの部分を占めるということで、農業生産上も、また環境、多面的な機能の点からも重要な機能を持っております。また、この地域の農業振興を図っていくということは非常に大事なことでございます。そして、平地に比べますと、いろいろな土地条件あるいは自然条件があるわけでございます。これを活用した、生かした形での生産、農業振興というものが求められていると思います。

 例えば、地域によりましては、平場と比べまして冷涼な気候あるいは土壌条件等が特色があるということで、そういう中山間地に合った新規作目、こういうものを導入していく、あるいは付加価値の高い作目を導入していくといったものもございますし、また、都市部との交流というものを核といたしまして、地域の特産物の加工、そういうものでもかなり特色を出した取り組みというのが全国各地で先進的に行われております。

 そういう中山間地の振興を行う場合に、やはり裏づけとなりますのは技術なりノウハウでございまして、そのためのまさに手助けをいたしておりますのが普及であろうと思っております。

 試験研究機関が開発をいたしましたような高度な、地域の特性を生かしたような技術、そういうものを現場に合った形で普及してもらうということで、まさに平場地域とはまた異なった意味での普及員の高度な知識、役割というものが必要になっていると思っております。

仲野委員 今局長から御答弁いただきましたけれども、高度化だとか専門化、あるいは広域担当など、一見、何か先進的な普及事業が展開されていくように聞こえるのであります。実は、それと同時に、本当に、現場を担当する普及員の数が減らされている、国や都道府県行政からの調査依頼に忙殺されている、そんな状況の中で現場は今大変な苦労をされているという実態にあるわけでございます。

 先進的な技術指導、地域づくり、後継者育成、先ほどお話しした後継者や新規就農者に対する基本的な農業技術の伝承、普及員に求められているのは多くあると思います。一方で、広域に分散している中山間地域で、そこに住み、働き続ける高齢化した農業者の姿もあるということを御認識していただきたいと思います。

 一戸一戸の農業者に対する対面指導、あるいは、農家の庭先で、普及員と農家の方と、農業者の経営面や技術面での悩みに的確に答えることができる非常にベーシックな形の普及事業、巡回指導というものも今望まれているのではないのかな、そのように思います。これについてのお答えをお願いいたします。

川村政府参考人 普及事業の役割は、今委員が申されたような中に尽きておると思います。

 ただ、今後、非常に急テンポでいろいろな技術も進みますし、農業情勢も変わっていく。その中で的確に対応していくということになりますと、やはり高度な技術の裏づけが必要でございます。

 そしてまた、普及員の特質というのは、今申されましたように、これは改良助長法の中にも書いてございますけれども、「農業者に接して、」という文言がございます。まさにそこが特質でございまして、普及事業は人によって成り立っておりますし、また、現場、これによって成り立っておるわけでございます。そこを基本に据えて普及を考えないと、普及に求められているまさに役割、機能、こういうものが十分に果たせないと思っておりまして、我々としましても、人の質を高めることと、そして現場に適応する能力、そういうものを重点化しまして今後の対応を図っていくというのが基本的な考え方でございます。

仲野委員 高度な農業技術に的確に対応できるためにそういった普及員の高度性も求められるという局長のお答えでありました。

 確かに今、農業技術も農業者の方たちも、求めていることが多様化しているわけでございます。私は、やはり農業を普及するに当たっては、営農されている方と普及員との本当に信頼関係、そういった高度なことよりも、感性というんでしょうか、ハートでそういった活動が進められていくべきでないのかな、そのように思っております。それについて、大臣、どのように大臣はお考えになっておりますか。

亀井国務大臣 委員のお話は、私も十分わかります。

 私も、認定農業者あるいは農業青年のお宅を訪問いたしまして、そしてその人たちが、トマト、あるいは水耕栽培、あるいはバラ、カーネーション、あるいはシクラメン、これらのことをずっとやっておりますのをこの目で見てまいりまして、大変すぐれたことをしております姿、これはやはり、いろいろ伺いますと、いわゆる改良普及員の皆さん方が、本当に、今委員からも御指摘のとおり、家族の一員というような、また兄弟のような、そういうつき合いをされて、そして信頼をされて仕事をしておる、そういうところからああいう結果が得られている、このようにも感じたわけであります。

 その人たちと一緒に酒を飲んで、本当に心が完全に、信頼関係と申しますか、一つになっているような、そういう姿、またこれは大変ほほ笑ましいことでありますし、私はそういう若い農家の、若いといってももう四十から五十になってきておりますけれども、かつての古い、十五年か二十年前の話でありますけれども、今もって私自身もそういう方々とのつき合いを持っておりますので、今委員からのお話というのは、十分私もよく承知をしております。

仲野委員 大臣の御答弁が、非常によく現場を理解されていると、私は今認識をさせていただきました。本当に、大臣のお答えになりますと、何か素朴さが伝わってきて、私自身、今非常に心を打たれました。本当にまたよろしくお願いいたします。

 この協同農業普及事業を担う普及員のあり方について、大臣は今すごく御認識を持っていただいたんですけれども、次に、普及員の新たな資格制度について、政府はどのような内容にするお考えをお持ちなのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

川村政府参考人 今回、専門技術員とそれから普及員の一元化を図りまして、新たな改良普及指導員という仕組みを採用したいと思っております。これはまさに、今の仕組みが専技と普及員に分かれまして、機能分担をし、かなり役割分担が固定化しているということもあります。今後は、まさに普及組織が一丸となって現場のニーズに対応していかなくちゃいけない、こういうときに、その垣根を取り払いまして、より効率的に現場への対応ができるようにするという意味での一元化を考えております。

 その資格の制度につきましても、より高度な方にそろえるということで、普及員のレベルをいわゆる専技レベルを目指して一本化していくということが一つございます。

 そして、その試験制度につきましても、まさに委員が先ほど言われましたように、現場にいかに的確に対応できて、柔軟性を持って現場に溶け込んで、まさに現場を変えていく力になり得るかということから考えますと、やはり向き不向きというものもございますので、そこの最初の段階で、県に採用された段階から実務を経験していただいて、それを十分踏まえて、自分としては、普及で、まさに専門性を生かして、現場を変えていきたい、そういうエネルギーと意欲と能力のある方を採用していく、そういう仕組みを基本的な考え方としては採用していきたいと思っているところでございます。

仲野委員 私がちょっと理解できなかったことは、受験資格として、一定の学歴に加えて農業等に関する実務経験を課すこととしているが、農業関係職の中で、なぜこの普及員のみにこのような制度を導入しなければならないのかということを、いま一度お聞かせいただきたいと思います。

川村政府参考人 普及員につきましては、いろいろ、もちろんこれを非常に高く評価する一方、最近では、行政に埋没してしまって、なかなかその姿が見えない、まさに補助金の申請書を書くだけではないかみたいなとらえ方もされております。これでは普及員の本旨ではないわけでございまして、まさに技術をベースにして現場の農業を変えていく、そういう力にならなくてはいけないということでございます。

 そういうことからしますと、まさにデスクワークに向く人とフィールドワークに向く人とがやはりあるわけでございますので、フィールドワークに向くような人をできるだけ普及員に向けていくということで、そういう実務経験を、県に採用された後になりますけれども、積んでいただきまして、そして、そういう方々に試験を受けていただいて、普及指導員をやっていただく、こういうことを考えているわけでございます。

仲野委員 普通は、大学在学中に資格制度を取らせてから、大抵のそういう職種はそうでありますけれども、今回普及員がこういった新しい制度を導入したということで、非常に私は危惧するところが多々あるんです。それは後ほどちょっと質問させていただきます。

 高度な専門知識を有する普及職員も一定の割合で必要かと思いますけれども、果たして全員がそうでなければ今後の普及事業が展開できないと考えておられるのか、これも疑問であります。もう一度、政府の見解をお聞きしたいと思います。

川村政府参考人 知識の伝搬だけではなくて、それを現場で実際の生産に生かし、農業現場を変えていくということになりますと、まさに、まず農家の信頼を得ることが非常に重要でございます。

 普及員が信頼を得るベースとなりますのは、やはり技術でございます。その技術がベースにありまして、変えていけるということでございますので、まずその技術、高度な知識だけがすべてではございませんが、それがまずベースになるということ、出発点になるということがあります。そして、先生が言われたような、プラス、フィールドワークの能力ということだと思います。

仲野委員 局長、これは私の先輩の改良普及員の方からちょっと聞いたお話なんですけれども、普及を学校教育に例えて教えてくれたんです。先生に幾ら立派な知識があっても、生徒みずからのやる気を起こさせなければ、その先生は未熟と言われる、普及だって同じであると。農業者からの信頼を得て、その農家の経営や農業技術が改善されなければ意味がない、日々動いている自然があっての農業だから、場合によっては農家の方と一緒に悩んで、苦しんで、勉強して初めて、これからどうしようという知恵や工夫が生まれてくると話していただきました。

 今回の法案では、そんな普及員がもしかしたら資格試験から外されてしまうのではないかと思いますけれども、ここを危惧するところなんですけれども、いかがでしょうか。

川村政府参考人 いかなる人を普及指導員にしていくかというのは、これは非常に重要な話でございまして、今回の制度改正が大体固まりました段階で、この新たな仕組みの中でいかに優秀な普及員を確保していくかという資格制度、これについても、専門の、詳しい方々にお集まりいただきまして、資格試験制度に関する研究会、こういうものを開催させていただいております。

 その中でいろいろ検討していただいておりますが、もちろん、高度な技術なり知識、そういうものをまずベースにした上で、かつ、現場での諸課題、これにどういうふうに対応できていくかというものもあわせて、単なる知識ではなくて、そういうものも、例えば論文形式なりそういうことで、課題の解決にどういう取り組みがその方はできるのかというところもしっかり見るような仕組みが必要だというような中間的な取りまとめになっております。知識偏重ということではなくて、まさに普及員の存在意義は現場を変えていくことでございますので、そこの能力が本当にあるのかどうかということがまさに重要なポイントだというふうに思っております。

仲野委員 あわせてお伺いをしておきたいんですけれども、普及センターの長についてであります。

 この普及センター長にも新たな資格試験を受けさせるのかどうなのかということと、また、現在の専門技術員試験の合格率は二〇%を切っているわけでございます。この新たな普及指導員の資格制度について、現職の普及員には三年間の経過措置をとられるようですけれども、北海道を含む、他の都府県、四十近くが普及員だけの選考試験を実施していると聞いておりますが、実務経験を持った受験資格者そのものがあと何年か出てこない、したがって多くの欠員を抱えるケースも強く懸念されるんですね。

 この二点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

川村政府参考人 今回、今置いております地域の改良普及センター、これの必置規制は廃止をすることにしております。これは、今のセンターが都道府県を地区割りにいたしまして、そしてその守備範囲だけで活動するといったように非常に硬直的になっておりますので、普及の目的等に照らしまして、あるいは試験場なり農業大学校との連携、あるいは課題、そういうものを踏まえまして、機動的に、かつ柔軟に組織のあり方を設置できるようにしたいということが趣旨でございます。

 その場合のセンター長、そういうものにつきまして、これまでは必置義務ということでセンター長を義務づけておりましたが、今回はセンターの設置自体が柔軟になりますので、その義務づけということはそぐわないと考えております。

 ただ、普及組織というのは、先ほども議論をいただいておりますとおり、非常に現場を重視して、またその知識にたけた者が活動するということでなければなかなか務まらないというふうに思っておりますから、センター長になられる方は、特に要件を課しませんけれども、基本的にはそういう普及指導の資格を持たれる方がつかれるのではないかというふうには想定をしております。

 また、今後の新しい仕組みの中で、普及の組織のあり方というものもまた、ビジョン検討ということで、関係の方々に入ってもらっております。その関係の方々というのは、県の試験研究でありますとかあるいは農業の教育関係者の方、あるいは北海道を初めといたしまして全国の普及職員の方にも入っていただきまして、けんけんがくがくの議論をした中で、望ましいあり方、そういうもののビジョンづくりを今まさにやっていただいているところでございます。その中で、こういうセンターのあり方あるいはセンター長のあり方といったものも当然議論されまして、その結果を示していきたいというふうに思っております。

仲野委員 確認させていただきますけれども、普及センター長は普及指導の資格を持った方でもその長になれるということで、これは今までどおりやろうと思えばできるということになるということでよろしいですね。

 それと、あと、先ほどの欠員を抱えるケースのことも、懸念をするということでのお話でありましたけれども、御答弁は、そういった都道府県の関係者の方もいろいろな、例えば普及員であるだとかそういった方たちと十分な意見交換をさせていただくということでよろしいでしょうか。

川村政府参考人 ちょっとお答えが漏れたところがございます。

 経過措置として、まず現在の普及員の方は、この法律の施行後、新たな普及指導員としてみなし規定がございますので円滑に移行していただきます。この三年間の間に試験を受けていただくということだと思います。そして、今の専技の試験の合格率、ある意味では非常に厳しいわけですが、それをどの程度の水準にするかということは、今後さらに具体的には詰めないといけないと思いますので、専技レベルをそのまま平行移動ということでは必ずしもないと思います。

 それから、御確認をいただきましたセンター長、組織を置かれて、センターの長を置かれる場合に、それは普及組織の、普及員の資格を持った方がなられるというのは当然あり得るし、むしろそれが自然だろうというふうに私は思っております。

仲野委員 それと、今回この資格問題が、普及職員を一元化するということもその要因となっていると思います。政府は、政策課題に対応した高度で多様な技術、知識をより的確に農業現場に普及していくために一元化が必要と言われておりますが、現行の専門技術員、そして改良普及員という二種類の職員の配置がこの協同農業普及事業の展開にどのような支障を来しているのか、先ほど別な質問の中でもお答えをいただいてはおりますけれども、改めてお聞きをしたいと思います。

川村政府参考人 現在、専門技術員と普及員という二段階になっております。専門技術員は調査研究とそれから普及員の指導という役割になっておりまして、それに支障がない限り現場で指導を行うということになっていまして、普及員は現場の指導という二本立て、二段階になっております。

 今後、かなりいろいろな高度化が進み、またテンポも速まる中で、そういう固定的な機能分担、まさに専技的な機能というのは今後も私は必要だろうと思います。やはりヘッドクオーター的に現場を指導していくという人は機能的には必要だと思いますが、制度としてこれをきちんと固定化してやるということは、まさに少数精鋭化していく中ではかえって機動的でないのではないかということで、より効率的に現場に対応できるようにという趣旨で、かつ高度化していくということでの一本化を図ったということでございます。

仲野委員 私は、逆にこの一元化案によってむしろ後退していくのではないのかと思っているんですよね。それは、一元化をしなくても、十分、今の普及指導員の業務が、調査研究や農業者への直接指導もできますし、指導員が直接生産者への対面指導など、それも実際できるわけでございます。普及職員の一元化による高度の技術支援という新たな仕組みによって、普及対象者の農業が逆に絞り込まれて、先進的農業者以外の多くの農業者へのきめ細かな指導が切り捨てられていくのではないかなと、非常にここを懸念するものですからお聞きいたしたところでございます。いかがでしょうか。

川村政府参考人 今回の普及事業で重点化は二つございます。今まで私はどちらかというと高度な技術革新ということをやや強調したと思いますが、もう一つは、やはり関係機関、普及員は県の職員でございますので、いろいろな、例えば農協でありますとか市町村でありますとか土地改良区でありますとか農業委員会、こういう関係の方々のまさに中核になっていろいろな施策なりをコーディネートしていくという役割が現に果たされておりますし、今後も非常に重要になると思っております。そういう意味で、この重点化は二点ございます。

 特に、地域農業をコーディネートしていくという観点からは、地域の多くの農業者、こういう方々が大きな一翼を担っていらっしゃるわけでございますので、まさにそういう総合力、結集力を高めるという機能、そういうこともこれは非常に重要な二本の柱のうちの一つだということで位置づけているところでございます。

仲野委員 やはり基本的に私と局長の考え方がちょっと根本から違うものですから、なかなか一つにならない。

 いずれにいたしましても、私が申し上げたいのは、生産現場に対応できる幅広い人材の確保という視点と、採用した人材を国と都道府県がともに責任を持って育成していく仕組みをしっかりとつくっていただきたい、そこを要請していきたいと思っております。

 次に、普及手当についてでありますけれども、普及の仕事は、言うまでもなく通常の公務員の場合と違って、時間から時間までの決められた仕事では、自然や生き物を相手にする生産者のニーズにこたえることができません。したがって、一定の手当が必要であることは法案にも明記をされております。

 しかし、今回の改正案では、これまで全国一律の割合にあったものを各都道府県の判断に任せることになっております。現在、国が都道府県に対して交付している普及事業交付金について、その実に九割が人件費として使われているわけでございます。しかも、普及手当の根拠は、業務の複雑困難性にかんがみ助長法で国が定めているわけですから、逆に、高度化に見合った処遇と優秀な人材を確保できるよう、国としての水準の指標や目安なりを何らかの形で示すべきと考えますけれども、御見解を求めます。

川村政府参考人 普及手当の関係での御質問でございます。

 今、委員御指摘のとおり、普及職員の職務の特殊性ということで、高度な専門能力を有します普及職員がその職務に精励し得るということ、それから優秀な人材確保という意味で、現在、都道府県が条例で定めるところによって手当を支給できるという規定になっております。かつ、御指摘のとおり、支給に当たりましては、専門技術員の給料は八%が上限、改良普及員につきましては月額の一二%の範囲内ということになっておるわけでございます。

 ただ、現実を申し上げますと、現状においては、今申し上げました上限があるがゆえに、この水準でほぼすべての都道府県が張りついている状況にございます。私ども、こういう状況を見まして、また、今回の法改正の趣旨ができるだけ都道府県みずからの判断で柔軟に対応できる形をとるということで、支給のあり方については都道府県の判断にゆだねるということにしております。

 そういう趣旨からしますと、まさに都道府県の裁量を縛るといったような形での水準を示すということは、なかなか今回の改正の趣旨に照らしまして適当ではないと思います。

 ただ、全般的な、やはりそういう普及手当の趣旨でありますとか必要性、またそれを必要とする根拠等は十分都道府県のいろいろな方々とも情報交換はしていきたいと思いますし、先ほど申し上げましたビジョンの検討会の中でもこの問題についてはいろいろ御意見が出ております。そういうものを踏まえて、それをしっかり、全国的な議論の経過、あるいは結論的なものが出ますとそういうものを十分示していきますし、関係者との意見交換も今後ともやってまいりたいというふうに思っておるところでございます。

仲野委員 協同普及事業の名前のとおり、国と都道府県が共通の認識に立って、しっかりと支障を来さないように意見交換を、このプロセス、過程を十分大事にしていただきたいということを要請したいと思います。

 次に、普及センターの必置規制の廃止についてでありますけれども、農業改良助長法は、第一条に法の目的、第二条以下では農業に関する試験研究の助長、第十三条以下では都道府県が農林水産省と協同して行う農業に関する普及事業の助長についてうたわれているわけでございます。

 今回の改正案では、その普及事業の活動拠点である地域農業改良普及センターを普及指導センターに名称変更し、これまでの「設けるものとする。」から「設けることができる。」に変えようとしているわけでございます。

 既に、近年、普及事業に対する都道府県の考え方にばらつきが生じてしまっているとの指摘があります。協同事業者であり、また自給率の向上や安全、安心の食料の生産などの基本的な農政を進める立場にある国として、この普及センターの必置規制の廃止は普及事業そのものの全国的な展開を困難にしていく危惧が生じると考えますが、政府の見解を求めたいと思います。

川村政府参考人 普及センターの必置規制の問題でございます。

 これは、先ほどもちょっと触れましたが、現在の規定というのは、かなり硬直的といいますか厳しいものでございまして、各県におかれましては、その管轄区域を分担いたします地域農業改良普及センターというものを設置するということになっております。それぞれの地域担当ということで組織ができております。

 ただ、昨今のいろいろな農政課題あるいはその地域におきます農政課題、そういうものに機動的に、かつ弾力的に対応していくということでは、そういう地区割りではなくて、むしろ、例えば試験場との連携をより強固にしたようなあり方でありますとか、あるいは産地形成等に焦点を絞ったようなセンターのあり方、こういったものも十分今後考えられるわけでございまして、そういう普及の拠点としてのセンターを県の自主性を発揮していただいて設置して、その普及の効果を、より効果的に発揮をしていただくということを目指しておるわけでございます。

 これにつきましても、今委員が御指摘ございますとおり、現状でも、県の組織のあり方というのは地区割りにしている中でもいろいろなスタイルがあります。そういうことを現在、これまでのところを総括といいますか検証しつつ、今後、新しい制度の枠組みの中でどういうあり方が一番効果的であるのか、これは地域性もありますので全国一律的なやり方というのはなかなか難しいと思いますけれども、その組織のあり方についての基本的な考え方あるいは効果、そういうものは過去の経験も踏まえて今そのビジョンの中で検討も行われております。そういうものをやはり各県にもまた参考として示すことによって、より的確な組織のあり方というものがそれぞれの都道府県において採用されるものというふうに期待をし、考えております。

仲野委員 時間も余りなくなってきたんですけれども、本当に事実少なくない数の普及センターで、補助奨励や基盤整備組織などとの統合で、普及における専門性の維持や対応技術の高度化に赤信号がともっている、この必置規制の廃止はその流れに拍車をかけるという現場普及員の声をいただきました。

 また、ある農業者は、県を境に隣の農村では普及事業に熱心でも、ここの県では普及の拠点すら近くに全くなくなる、そういう懸念も訴えておりました。特に北海道のような広大な地域になれば、普及センターの必置規制が廃止され、普及組織の統廃合が進展することになれば、農業者はどこに技術指導を求めればいいのか、これは国としての本当に責任の放棄につながらないのかということ、改めてその見解を求めたいと思います。

川村政府参考人 普及というのは、先ほど来申しておりますけれども、やはり現場が非常に大事でございまして、現場に対しましていかにその技術を普及し、現場に合った形で組み立てていくかということからいたしますと、当然、現場から余りにも距離が離れるということは、私どもとしても一般論としては非常に望ましくないと思っております。

 そういう地域の特色もございますが、現場を踏まえた形で、どういうあり方が一番普及の機能を十分に発揮していく上で適切なのかということを、十分関係者の意見交換を通じて取りまとめをしていきたいと思っておるところでございます。

仲野委員 あと時間が五分となりましたけれども、これは大事なことですので、質問をさせていただきたいと思います。

 国と都道府県の協同事業交付金制度の維持についてということでありますけれども、今回、分権改革の名のもとに交付金や補助金の一般財源化が進められております。実は、地方交付税を含めて、トータルでは都道府県の財政は逆に悪化しているのが現状でございます。税源移譲も新たな税の導入も、中山間地域を多く抱えていたり広域分散型での過疎化の進むところでは、税の客体の絶対数が少ないためその効果を得られない状況にあるわけでございます。

 このような中で、協同普及事業の交付金が減額され、一方では、普及事業の効果的な展開に向けた必要経費は都道府県の責任で賄わなければならない。これはまさに地方いじめ、地域の農業いじめにほかならないのではないのか。まず、地方財政、地方交付税を所管する総務省の政府委員に、これらに必要な経費の確保ということについてどのように考えているのか、瀧野総務省自治財政局長、お尋ねをいたしたいと思います。

瀧野政府参考人 お答えいたします。

 都道府県が行います協同農業改良事業につきましては、従来からの国からの交付金とあわせまして、交付税によりまして地方財政措置を講じてきたところでございます。

 御指摘のように、今年度につきましては、三位一体改革に伴います国庫補助負担金の見直しということの結果、交付金事業につきましても組織のスリム化に伴います交付金の縮減が行われるということになったわけでございますが、こういったものを除きまして、地方公共団体が引き続き事業を行うことで必要とされるものにつきましては、その所要額に対しまして交付税によりまして地方財政措置を講じてまいりたいというふうに考えているところでございます。

仲野委員 協同普及事業の交付金が減額されたとしても、税源やそのほかの財源が不足している都道府県について、この協同普及事業に必要な経費が地方交付税の中で算定されると考えてよろしいのかどうなのか。これは大切な問題なので、このことについては、農林水産省と総務省の統一見解を求めたいと思います。

瀧野政府参考人 ただいまお答えいたしましたとおり、協同農業改良事業につきましては、交付金と交付税によりまして財源措置をしてきたわけでございます。その中で、全体として地方公共団体の交付税が削減をされてきているわけでございますけれども、これは、地方財政上、一部分、交付税で考えております計画額と地方団体の実際の決算とが地方単独事業という別の部門で乖離が生じてきております。そういったところを見直した結果交付税の縮減が行われてきているわけでございます。

 ただいま御指摘のございますこの協同農業改良事業につきましては、一部のスリム化というものは当然必要ではございますけれども、その結果必要となる部分につきましては、きちんと交付税に所要額を算定いたしまして、地方公共団体の必要な事業ができますように措置してまいりたいというふうに考えているところでございますし、この点につきましては、農林水産省の御意見をよく聞いて対応していきたいというふうに考えております。

仲野委員 大臣、これは政策判断ですから、お答えをお願いいたします。

亀井国務大臣 協同農業普及事業の交付金、このことにつきましては、国と都道府県が協同して行う普及事業でありまして、そういう面で、必要最低限の水準を維持しなければならないわけでありまして、国内の全域にわたります食料の生産、そういう面では、国の責務の果たす役割があるわけでありまして、国からの財政措置として重要、このように認識をいたしております。

仲野委員 最後に、今後の協同普及事業の展開において、しっかりと国としての責務を十分に果たすことを強く要請して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

高木委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時二十三分開議

高木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岸本健君。

岸本委員 民主党の岸本健でございます。

 就農促進法の一部改正案について、大臣を初め関係各位にお尋ねをさせていただきます。

 食料自給率、カロリーベースで四〇%という我が国の農業の実情をかんがみれば、自給率を高め、安心、安全な食料の安定供給を図ることが緊急の課題である。そのためには、やはり農業の担い手の育成こそが緊要な課題であると考えております。これはもう与野党を含め、この委員会に所属する先生方共通の認識であると思っております。この法案には大いに期待するとともに、ぜひとも目に見える効果を上げていただきたい、そう願っております。

 さて、大臣にお伺いをいたしますが、我が国の農業の未来に関する基本理念、農をなりわいといたします産業を今後どうしていくのか。日本の消費者には、やはり根強い国産プレミアムといいましょうか、そういうものがあると感じます。国産農産物の復活に向けて、大臣の率直なお考えをお聞かせいただきたいと思います。

亀井国務大臣 我が国の農業施策は、何といっても生命の源であります食料の安定供給を図ること、また、農業生産活動を通じまして、国土また環境の保全、こういう面で多面的な機能を適切、十分に発揮することが必要であるわけであります。

 そういう面で、今、食料・農業・農村基本計画、基本法に基づきまして、食料の安定供給の確保と多面的機能の発揮、その基盤となる農業の持続的な発展あるいは農村の振興、この四つの理念を明確に位置づけまして、今その実現に取り組んでおるところでございまして、現在、この基本法に基づきまして、そのような中での施策の展開を図っておるところでございますし、これを進めてまいりたい、こう思っております。

岸本委員 大臣の強力なリーダーシップでそのようになるように、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、担い手不足、それから後継者難という言葉がよく日本の農業を語られる上で当たり前のように出てきます。危険、危ないとか厳しい、いわゆる三Kの代表のように農業を伝えていたときもあるように感じます。

 しかし、社会の情勢が変化してきまして、都会の喧騒から逃れて田舎でゆっくりとしたい、物にあふれた社会から脱出して、いやしの地を求めるというんでしょうか、大自然とともに生きる生活を選択する人が確実にふえてきているのではないかと私は思います。テレビでの農業体験番組の視聴率が高くなってきたりとかは、田舎暮らしなどの書籍が売れるであるとかは、そのような証左であると思います。今こそ、農業に対するイメージを変えていくには絶好の機会ではないかと思います。

 国民の食を支える基幹産業である農業が衰退した原因、要因とは何であったと思われますか。大臣の分析なり御所見をぜひお聞かせください。

亀井国務大臣 我が国の農業につきまして衰退をした、こうとらえることが適当かどうか、こういう面では、私も衰退ということは適当ではないんじゃなかろうかと。しかし、現実に高齢化が進んでおることは事実であります。あるいは、構造改革が立ちおくれている。また、御指摘もありましたとおり、食料自給率の問題、食料自給率の低迷、またWTOを初めといたします国際規律の強化と、厳しい状況にあることは強く認識をいたしております。

 そういう中で、この状況の背景は、高度経済成長という中で、地方から大都市への人口の集中とか、あるいはまた農地の資産保有の意識等によります農地の流動化のおくれですとか、米の消費量の減少、あるいは国民の食生活の変化、また農産物の自由化の進展など、さまざまな要因が重なっているもの、このように認識をいたします。

 そういう中で、将来にわたりまして安全な食料を安定的に国民に供給できる足腰の強い農業を確立していく、これが必要なわけでありまして、このために、農政全般にわたりまして改革に全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。

岸本委員 まだまだ農業は伸びる産業だと私は思いますので、ぜひお力を入れていただきまして、衰退という言葉が出ないような、そんなふうな農業にしていきたい、またそうしなければならない、そんなふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 農業を語るときに、先ほどから出ていますけれども、自給率が問題になってきます。今問われているのは自給力であるとも言われております。自給力の基礎は農地の維持と多様な担い手の確保であります。

 そこでお尋ねいたしますが、農業をより身近な存在にし、新規就農を促進するためには、やはりまず農業所得が問題になってくると思います。新規就農者の就農当初の所得目標をどの程度見込まれているのかをお示しいただきたいと思います。

川村政府参考人 農業を職業とする場合に、所得目標というのが一つの大きな目標でもございますし、メルクマールになると思います。新規就農につきましては、就農当時の所得、これは全国一律の目標というものは設定をしておりませんけれども、この青年等就農法に基づきまして、都道府県知事が就農促進方針というものをそれぞれ県の状況に応じましてつくられることになっております。

 そして、策定の状況でございますが、これもまた県によってさまざまでございまして、県によっては絶対額で、例えば二百万でありますとか二百五十万、三百万、そういった形で示されているところもございますし、認定農業者の制度、これは完全に効率的、安定的な農業経営を目指すということでの目標でございますけれども、その認定農業者を基準にして、例えば、低いところでは二〇%程度あるいは三〇%、高いところでは七割程度を目標とするといったような所得目標を定められているところもございます。

 いずれにしましても、その基本的な考え方は、その地域の実情に応じまして、大体、同世代の他産業の従事者と遜色のない年間所得を確保するということを目的に設定をされているというふうに承知しております。

岸本委員 できたら、具体的な数字なんか、どこの都道府県でも結構です、今わかればちょっと教えていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。

川村政府参考人 例えば、和歌山県を例示に挙げますと、県の基盤強化方針の四〇%ということで設定をされております。これは、市町村によって、その地域、地域で所得目標を定めておられますので、それの四割だということでございます。

岸本委員 金額はわからないということですね、パーセンテージだけで。

川村政府参考人 和歌山県では、一般的な認定農業者の方針としては所得一千万円を掲げておられます。したがいまして、それの四〇%ということは四百万ということになるかと思います。

岸本委員 ありがとうございます。ちょっと、これを見ていても、具体的な数字を聞きませんとぴんとこないといいましょうか、どんなふうにやっているのかわかりにくいものですから。

 次に、農林水産省は新規就農を促進するために今までもさまざまな取り組みをされてきたこと、これはもう承知しておりますが、青年等就農促進法のこれまでの成果と新規就農者の定着率についてお聞かせください。

川村政府参考人 青年就農促進法のこれまでの成果とそれから定着率ということでのお尋ねでございます。

 青年等就農促進法につきましては、都道府県に青年農業者等育成センターというものを設置いたしまして、新たに就農しようとする青年等に対しまして、就農支援資金の貸し付けや就農相談等、各種の支援を講じているところでございます。

 この法律に基づきます施策の実施状況でございますが、まず、就農支援資金の貸付対象となります認定就農者の認定実績、これは毎年大体千名といったようなことで、この水準で堅調に推移をしてきております。それから、実際の資金の貸付実績でございますが、平成七年度におきましては六百四十八件、総額約六億円でございましたけれども、最近時点のデータの平成十四年におきましては、これが千三百五十六件、トータル、金額といたしまして約三十億円へと増加をしてございます。それから、就農相談もやっておるわけでございますが、この相談件数、これが、平成八年度におきまして五千八百二十五件でございましたが、平成十四年度におきましては一万一千七十七件ということで、これもかなり大幅に増加をしてございます。

 そして、この結果ということで我々思っておりますけれども、三十九歳以下の新規就農青年の数でございますが、これは平成七年の制度の施行当時約七千六百名でございましたが、平成十四年には一万一千九百人、一万二千人弱ということで、着実に増加をしてございます。この法律に基づく効果が上がったものと考えておるところでございます。

 また、定着率の問題でございます。これにつきましては、農林省で新規就業者等調査というものをやっております。これは必ずしも全数調査ではないわけでございますが、平成八年から十年までの調査対象となりました新規就農者数が約一万四千百名程度ございます。これに対しまして、離農者が二千百名余でございまして、これで計算をいたしますと、おおむね八五%程度ということでの試算になるわけでございます。

 また、実際、この就農資金を借りられまして農業を始められました認定就農者につきましては、平成十一年度に就農した経営者がその後、五年後でどうなったかという平成十五年十二月の定着率で見ますと、約九四%ということでございます。かなりの成果ではないかということで思っておるところでございます。

岸本委員 私も、このお金を実際借りて、Iターンで和歌山へ来て、今一生懸命、ミズナスビでありますとか花であるとか、つくられている人がおられまして、その話も聞いてきました。二人ほど聞いたんですけれども、一人は順調にいっていると。もちろん、Iターンで来られた方も定着しています。

 ただ、お金を借りたときに、和歌山というのは非常に台風が多いところです。花だったかな、つくろうとしてハウスを建てました。すごいお金がかかります。そうしたら、たまたま来た台風でその建てたばかりのハウスが全損に遭った。こういう場合どうなるのかというのが一点知りたいんですね。仮に、結婚して、そこでだんなさんが新規就農のお金を借りた。ハウスが壊れてしまいましたら、これは借金だけ残るんでしょう。そうしたら、これはまたお金が必要や、そんなときに奥さんでお金を借りることはできるのか。それを、できたら教えていただきたいと思います。

川村政府参考人 災害等の状況が起こった場合のケースでお尋ねでございます。

 確かに、農業というのは非常に、自然を相手にしておりまして、災害等に見舞われるリスクというものがあるわけでございます。災害等に遭われた場合には、災害自作農維持資金といったような災害資金を活用することも可能でございます。また、これは施設によっては非常に限定されますけれども、共済制度に入って共済金の支払いを受けるということも物によっては可能でございます。

 それから、奥様が借りられるかどうかということに関しましては、やはり、農業を営んでおられる、経営主体であるということを要件にしておりますので、家族経営協定等で、共同経営者等で経営者として認められれば借りられますけれども、そういう場合でないケースは基本的には経営主の方しか借りられないというのが現在の制度の仕組みでございます。

岸本委員 やはり、せっかく農業に携わりたい、そして、その制度を取り入れてやっていきたいというのがありますから、先ほど言われましたけれども、農業というのは本当に、工場で物をつくるのと違いますから、自然災害、自然を相手にしてつくっていますから、やはりそういうところで幅を持たせていただいて、もっと定着していくような、そういうふうに幅を持っていただけたらまたありがたい、そんなことを思います。

 次ですけれども、新規就農者には、農業法人を選択するケースと、初めから独立を前提としまして実務研修に参加するケースがあるようですが、どちらを選択するにせよ、おおむね二年間ですか、取り組んで、研修が必要とされておる。農業法人を実際に経営されている方から、研修費用、これがちょっと上がってきている、法人側の負担が経営に深刻な影響を与えているということでした。

 岡山県のニューファーマーズ実務研修に参加され、ブドウの栽培を始められた新規就農者の方、この人のお話ですけれども、二年間の実務研修期間中に、月額十五万円が支給されたそうです。大変助かったと。内訳は、県から五万円、市から五万円、それからJAから五万円ということでした。

 そこでお尋ねいたしますけれども、新規就農者に欠くことのできない実務研修期間中の費用負担について、どのような取り組みを考えられておるのか。自治体また農協、さらには農業法人に丸投げしてしまうのか。新規就農を促進するための一番肝心な実務研修に対するケアが、やはり定着してもらうためには大切であると思うんですが、これに対する取り組みについてお聞かせください。

川村政府参考人 農業を新たに始めようという方にとりまして、幾つかハードルがございます。その一つが、やはり技術等をいかに習得していくかということでございます。その場合、幾つか、私ども、この就農法に基づきましても資金を用意してございまして、まず、これは無利子の資金でございますが、みずからが借りられて、その研修期間中の費用を支弁するということが一つあろうかと思います。

 それから、今回この改正でお願いをしておりますのは、農業法人等に就職をされまして、その法人のもとでいろいろな研修を積まれるというケースも最近はふえておりますので、その雇い主側の農業法人等に就農資金をお貸しするということを、今回改正しましてお願いしようということでございます。そういう方法でございます。

 それからまた、厚生労働省さんとも相談をいたしまして、新規就農・就業キャリア形成プログラムという推進事業がございまして、その中で、その職務を通じましたOJT研修、こういうものをされるところの受け入れの経費について助成をしているという制度もございます。

 こういったものを活用していただいて、その最初のハードルである技術の習得、こういうものに臨んでいただきたいと考えているところでございます。

岸本委員 やはり受け入れる側も、初めは素人ですから、法人はやはり利益を目的にやっていると思いますから、素人を雇って何のメリットもない、そう言われてしまえばあれですから、やはりその負担を軽減するような形をぜひとっていただきたい。それで、話は全然違いますけれども、自衛隊というのは自衛のプロでございます。農家、これは日本の農家は自給率の問題でも何にせよ農業のプロを育てていただきたい、そのために、同様までいかなくても、それぐらいの予算をつけていただきたい、そんなふうに思います。

 次に、新規就農者の実情について、何点かお尋ねいたします。

 第一点は、新規就農者の中で、成功した方と挫折した方の営農形態として具体的な事例があったら教えていただきたい。それから第二点、新規就農者の営農類型の割合について、第三点、自営で始める者と法人等に就農する者の割合、第四点、新規就農者に占める女性の割合についてお教えください。

川村政府参考人 新規就農者の実情でございます。

 まず、就農の成功例ということで、どういうものがあるかというお尋ねがございました。

 これは最近では非常に数多く新規就農の事例がございますが、その中でも幾つか例を申し上げますと、一つは非農家の出身の方でございますけれども、平成十一年にイチゴ栽培を始められた方がございまして、これが初年度の収入が百十万円にすぎなかったわけでございますが、四年目には五百二十万円まで農業粗収入を伸ばしたといった方もございます。これは非農家の方でございますが、非常にそういう工夫をかなりされまして、今申し上げましたような技術も格段に進歩をされまして、成功されたという事例もございます。

 また、もう一つの例でいいますと、平成八年に有機野菜の栽培を始められまして、特に販売の方で工夫をされまして、生協等への契約出荷ということで安定的な粗収入九百万円を上げておられるという方がおられます。

 またもう一つは、一部、おじいさんから農地を譲り受けられまして、それに自分で農地造成をしました農地を加えましてブドウ栽培を始められて、現在では八百万近い農業粗収入を得るまでに発展された離職就農者という方もございます。

 一方、経営継続を断念された方々もいらっしゃいます。アンケートをした結果がございますが、それに幾つか理由があります。

 一つは、収益がなかなか上げられず十分な収入が得られなかった、やめられた方の約三七%がそういうことでございます。それから、農業以外の仕事をするということで、農業を始めたんだけれどもほかの仕事の口があったということで三二%の方がやめられております。それからまた、病気とかあるいは家族の方が健康を害されたといったようなことで、自分の体力的に続かないといったような方が二六%というふうなことで、やはり目指した収入であるとか思いがけないこういうことによりまして断念せざるを得なかったというのがその理由として挙がっておるところでございます。

 それから、具体的な営農が、独立されて始まるのか、それとも就職で始まる、雇用で始まるのかというお尋ねでございます。これにつきましては、これも、トータルでいいますと、通常、就業先では基本的には九〇%の方が農家の方に行かれておりまして、約一〇%の方が農業法人ということになっております。

 そして、その農家に就農された方の内訳でございますが、最初から経営の責任者として参画されるという方は二七%、三割弱でございます。それから、家族の一員といいますか世帯員として入られるという方が七二%ということですから、これが大部分でございます。あと、農家で雇われる、先進農家等に雇われるという方が二%ということでございます。

 農業法人の場合は、これがまたかなり様相を異にいたしまして、経営の責任者として、パートナーとして入られるというのは二%にすぎませんし、構成員としても一四%、大半、八四%の方は雇用形態で農業に従事をされているというのがその就農のあり方についてのパーセンテージでございます。

 それからもう一点、営農類型のお尋ねがあったわけでございます。

 新規就農者が主に従事している部門といたしましては、一番多いのは施設野菜でございます。これが二〇%ということで最も多い割合になっております。続きまして、水稲が一四%、それから露地野菜が一四%ということでございます。これは新規就農者全般でございます。

 特に、青年就農法に基づきまして認定を受けた方で見ますと、この比率が、野菜が三七%ということで、これが四割近くなっておりますし、続きまして、酪農が一五%、花卉が一三%、こういうふうになっております。

 最後に、女性の割合でございます。

 三十九歳以下の新規就農青年の数は、平成二年の四千三百人、これがバブルのときでもございまして一番底、ボトムでございましたが、その後次第に増加傾向になっておりまして、これも先ほど申し上げましたが、平成十四年には一万二千人程度になっております。このうちの女性の数、これは全体の伸びを上回って増加をしておりまして、平成二年は四百人でありましたけれども、平成十四年には三千百人となっております。したがいまして、この割合は、女性の方が新規就農青年全体の約四分の一ということになっております。これが今、新規就農青年でございます。

 それから、四十歳以上六十四歳以下の中高年の新規就農者という方も同様に増加をしているわけでございますが、この中での女性の割合を見ますと、平成十四年のこういった中高年の新規就農者の総数は四万五千人でございました。このうち女性の数は一万五千人でございます。したがいまして、中高年では、その割合といたしましては全体の約三分の一が女性となっております。

 以上でございます。

岸本委員 初めの、第一にお伺いしました成功例、いろいろあると思うんですが、やはり後継者といいますか、もともと土地があったであるとか何かの足がかりがある方、こういう人の方が多いんでしょうか。

川村政府参考人 数字的なデータとしては足がかりがあったかはちょっととっておらないんですが、事例的に申し上げますと、やはり何らかの形で、受け入れ先あるいは受け入れ先の市町村、こういったところの援助が得やすかったということでございます。

 基本的に、新規就農を受け入れるために、最初の、非常に難しい農地の取得でありますとかあるいは住居、住まい、こういうものを積極的に地元としてあっせんをされる、また技術指導につきましても市町村挙げて取り組んでおられる、それからまた市町村単独でいろいろ就農を支援するような助成事業をされておるようなところ、そういうところでの成功、定着率といいますか、そういうものが事例としては多いというふうに私は感じております。

岸本委員 よくIターンの人にも聞いたんですけれども、田舎の方が土地が安いし、いっぱいあるから、土地もすぐ手に入れられるだろうと思って来た。でも、なかなか田舎の方が手に入りにくいんですね。先祖代々の土地であるからと手放さない。だから、安易な気持ちで行くとそうなるし、ちゃんとしたシステムが整っていかないと結局成功していないということじゃないかなと思うんですね。だから、そういう土地とかももっと手に入りやすいというんですか、与えてあげやすいようにしていただきたい、そういうふうに思います。とにかく、それがなかったらできないのだったら、結局、新しくやりたいという本当に意欲を持って来ている人たちが定着できないということですから、ぜひお願いしたいと思います。

 あと、女性がふえているということでありましたけれども、やはり女性が農業を一生懸命していただくというのには、女性独特の感性でありますとか、絶対に農業にとっては必要である、そんなふうに思います。だから、農村であるとか農業においての女性の地位、これを確立していってほしいと思います。やはり女性が、女の人が元気だと町やふるさとは活性しますし、またネットワークづくりというのも非常に大切じゃないかなと思いますので、その辺もお願いしたいと思います。

 そして、何か調べたところ、先ほどからのお話もありましたけれども、成功した方というのは、割合、野菜とか花卉であるとか園芸農業、こっちに就農される方が多いように感じます。恐らく単価が高いから、利益を得られるからというのが原因なのかなと思うんですが、ほかにも何かその理由、原因等があれば教えていただきたい。

 また逆に、先ほど土地云々の話をしましたけれども、土地利用型農業へ新規就農が少ないようにも感じます。その理由と、当該部門への就農を促進するための何か施策について、例えば農地の権利の移動の推進など、どのようなことを考えられておるのか、お尋ねいたします。

川村政府参考人 新規就農者の多くの方が園芸農家を選択されるという理由と、それから土地利用型農業への就農を促進するためにいかなる方策があるのかというお尋ねでございます。

 先ほどもデータで申し上げましたとおり、園芸農業等の割合が非常に高くなっております。これは、委員も今御指摘があったことがかなりの原因を占めると思います。まさに、土地利用型に比べますと必要となる農地面積が少なくて済みますし、そういう意味では、先ほど委員も御指摘になりましたように、農地の取得が新規就農者にとっては非常に大きなハードルになっているということで、これは非常に取り組みやすい経営部門ということが一つあると思います。

 それからまた、例えば花でありますとかいろいろな施設園芸というのは、施設に対する投資額も大きいことは事実でございますけれども、生産される生産物の単価、これがそれなりに非常に高うございます。そういう意味では、投資額に比べて高い収益が見込まれるということもその一つの原因であろうと思います。また、露地野菜につきましても、余り高価な施設、機械を使用しなくても営農が可能ということで、露地の場合は逆に今度は投資額を抑えるということで、資金の手当てが少なくても開始が可能といったようなことで新規就農が多いものと考えております。

 一方、それでは土地利用型の農業をより進めるためにどうしたらいいかということでございますが、何といいましても、土地の取得、これは農村地域特有の農地のいろいろなこだわりとかもございますし、また地域になれ親しんでいない人にはなかなか貸さないということもございます。そういうことの障害を乗り越えまして、円滑にという意味では、就農相談センターにおきます農地情報、あるいは農業委員会が間に立ちまして権利調整活動を主体的に、積極的にやっていただくということもまず非常に重要であろうと思っています。

 それから、各県また市町村の段階、農協等も行っておりますけれども、農地保有合理化法人というのもございます。ここが農地の貸し付け、売り渡し等の支援を講じています。ここも、いきなり媒介に立って農地を売り渡すのではなくて、ある程度リースして、そしてリース期間が過ぎた後、軌道に乗ったら売り渡しをするといったような仕組みもございますので、まずこういった仕組みを、十分に活用が図られるように、その環境を整備していくということも必要だと思っております。

 また、農地法上の問題といたしまして、土地利用型の場合は一定の規模を最初から要求されているということで、原則は五十アールということになっております。これは都道府県知事の特例もありまして、ある程度下げられるわけでございますけれども、そういった特例を活用する、あるいは、基盤強化法に基づきまして土地利用集積計画というものをつくりますと、この下限面積の適用がなくても土地が入手できるという仕組みもございますので、こういうことを使いましてやっていただくということが必要だろうということで、我々もこういった取り組みをバックアップするような施策を講じていく必要があろうというふうに考えております。

 何といいましても、技術、農地それから資金といったものが就農者の大きな最初のハードルでございますので、それをできるだけ緩和し、円滑に対応ができるような形での取り組みをさらに強化していきたいということでございます。

岸本委員 ぜひお願いします。先ほど言われましたけれども、土地がなかったら何にもできませんからね。やはりたくさんつくりたいという人もあるでしょうから、ぜひ進めていただきたい、そのように思います。

 次に、ソフトの面から何点かお尋ねいたします。

 農業を職業として選択するには、先ほどから言っていますけれども、通常の会社に就職することとはあれなんですけれども、天候、それこそ本当に自然を相手に行っている厳しい側面があります。つまり、安易な気持ちで、農業をしよう、いやされるから田舎へ行こう、農業をしようということでやりますと、決して長続きしない、そんなふうに考えます。

 そこで、必要となるのは、独立までの支援の中で、さっきから土地の話とかがありましたけれども、技術指導以外に、心のケア、相談相手が必要だと思います。隣のおじさんでもいい、教えてくれる人でも。また、いろいろな悩みがあると思います。田舎は案外近所づき合いが難しかったりします。相談相手、そのための体制というのはどうなっているのか。また、受け入れる側の人たちとの人間関係なども十分な配慮が求められると思います。地域に溶け込むためにどのようなアドバイスをしているのか、また、技術指導について、普及組織とのかかわりについてはどのような指導を行っているのか、お尋ねいたします。

川村政府参考人 おっしゃるとおり、まさに就農した場合はいろいろな不安等がおありになると思います。技術的にもまだ未熟でございますし、収入が安定して得られないという状況の中で、また、地域におきます、なれ親しみといいますか、その地域に円滑に受け入れられるかどうかということも非常に必要でございます。そのあたりのケアは、先生が御指摘のとおり、非常に重要なことだろうと思っております。

 私どもも、この青年等就農法の中で、各都道府県に青年農業者等育成センターというものを設けまして、これは就農の事前段階から相談をいたしまして、就農の準備段階、それから就農して直後、それからまた就農してしばらくたって定着といったところ、一貫してケアをするという体制にしております。この体制も、全国段階では全国新規就農相談センターというのもございますし、都道府県でもそういうのがございますし、また市町村段階でも、いろいろそういう窓口を設けられているところにそういう体制を整えていくということで対応しているところでございます。

 特にまた、きめ細かい現場での指導という意味ではまさに普及員の役割も非常に大きいわけでございます。新規就農につきましては、まさに、先ほど言いました青年農業者等育成センターとも十分に連携をした就農相談活動を普及センターもやっておりますし、それから、やはり技術が非常に問題でございますから、技術につきまして、新規就農された方には普及員の方が重点的に、また濃密に指導を行っておられるということもございます。

 それから、いろいろな機関といたしまして、農業大学校もございますし、県の機関等もございますので、そことの連携も当然行いながらやっていくということがございます。

 また、市町村によりましては受け入れに非常に気を使っておられるところもございまして、やはり一人で就農するとなかなか大変なので、何人かまとめて新規就農者向けの農場、技術習得農場といったものを設置されるとか、また新規就農者向けの住宅、こういうものも町なりで用意をされるとか、そういう周辺の環境を含めて対応をとっておられる。

 成功事例といいますか、そういう非常にうまく新規就農が定着している事例もお聞きしておりますので、全国的にも、やはりこれは、新規就農者が地域に入ってこられるということは地域の永続的な活性化にも非常につながりますので、市町村、県、そういう連携、また国としても、そういう取り組みをぜひ督励していきたいというふうに思っておるところでございます。

岸本委員 取り組まれているということですけれども、恐らく、カウンセリング等、相談員の方とするんだろうけれども、その相手というのは、その地域によって違うんでしょうけれども、やはり就農者というか、それとも経験者とかそういう人になるんでしょうか。お願いします。

川村政府参考人 そういうセンターにおきまして、専門の就農相談員というものを配置しているというのがまず一点ございます。

 それから、青年の農業者でありますと、やはり仲間づくりというものも非常に大事でございまして、例えば普及の事業として取り組んでおります四Hクラブというのがございます。そういう中にメンバーとして入っていただくということもやっております。

 それからもう一つは、篤農家というようなことで、各県が指導農業士というものを登録されております。そういうところは、まさにボランティアといいますか、ある意味では誠心誠意、そういう若い人を育てるということに生きがいを持って取り組んでいらっしゃる方もいらっしゃいます。そういう方々が親身になって相談に乗ってやるということもまた、同じ目線で対応できるということで、単に専門の相談員だけでなくて、いろいろなそういう組み合わせによってケアしていくことが大事だろうというふうに思っております。

岸本委員 そういうふうなボランティア精神で本当に若い人を育ててやろうという人、私の知り合いも四Hに入っていますけれども、やはりいろいろな近所のおじさん的な人が来て教えてくれるのでありがたい、そんなふうなことも言っておりました。

 私は、そういう機械的な相談員という方よりも、やはり地域の、本当に思ってくれている、まあ皆さん思っているでしょうけれども、おじさんとかそういう方の方がいいんじゃないか、そんなふうに思います。そういう人たちにもやはりそういう場を与えていく、そういうふうにして指導をしていただけたらいいな、そんなふうに思います。

 次に、農業法人の方に先日お会いしたときに、三時間か四時間、お話を伺いました。そうしたら、その人たちの使命は、ある程度の利益を上げる、そして利益を上げながら農業というものを次世代に継いでいきたい、その方はまだ四十になっていないと思うんですけれども、若い方ですけれども、そういうことを言われていました。何と立派なことを言われるんだと、もう本当に感心して聞いておったんですけれども、やはり利益を上げるためには、先ほどから土地であるとかケアであるとかというのを言ってきましたけれども、次に販路ですね。つくったけれども売れなかったら利益が上がらないということで、就農後の販路の確保、これが重要な課題である。販路の確保に関する支援策についてどのように考えておられるのか。

 もちろん、本人さんの努力も大切です。その方は、ホームページを開いたり、ホームページで見ていただいて、ミズナスはどんなのですかと言われたので、ちょっと都道府県は忘れましたけれども、関東まで自分でミズナスを担いで一箱持っていって、これですといって、約束をして見ていただいて、そして、もうそこまでしてくれるんだったら、じゃ、買いましょうということで、自分だけ売ったらあれだから友人にも紹介してあげて、みんなで売っている。とてもすばらしいなと、まあ努力された結果だと思うんですけれども。現実問題、いつもそううまくはいかないと思いますし、もっと厳しい実態であると思います。

 販路の確保の取り組みについて何か支援の方法でも考えておられるのだったら、お教えいただきたいと思います。

川村政府参考人 委員御指摘のとおり、農産物につきましては、まさに売れる物づくりということが今後は大きな要素になります。これはもう新規就農に限らないわけでございますけれども、ただ、新規就農の場合は、とにかく農産物、自分のつくった産物を、いかに販路を確保していくかということが差し迫っての大きな課題になるわけでございます。そのためにも、これは非常に重要なポイントだと思っておりますので、特に、加工なり流通業者、こういう方々との交流活動を促進する、あるいはマッチングを行う、また、最近は直販とかそういうものもかなり大きなウエートになっておりますので、消費者との交流活動を促進するといったような活動を支援しております。

 特に、先ほどの成功事例でも申し上げましたけれども、生協とかそういう消費者グループとのつながりによって安定的な販路を確保しているという事例もございますし、また、最近は地産地消ということで、地元の保育園でありますとか、そういうある程度たくさん使われるところに売り込みをされるというところで、かなり地場に密着した販路を確保しているという方々もおられます。

 こういった取り組みなり、そういうものを紹介するなり、またマッチングということでもお手伝いをするということでの取り組みをしているところであります。

岸本委員 地産地消もいいんですけれども、なかなかそれも難しいんですね、聞きましたら。JAへ卸したらと聞いたら、それがまた安いんだと言って、ほかのところ、あそこの選果場に卸したらと、これもまた安いんだ、自分でやる方がええんやと言うているんですけれども、ある程度光が見える方が、やはりもっと意欲的になれると思うんです。どこへ持っていっても安いし、金にならぬ、それだったら本当にもっと大変だと思うので、何とか販路、支援策というんですか、どこかアドバイスをいただけるところというのをつくっていただきたい、応援していただきたい。本当に、先ほど言いましたけれども、農業のプロを育てるために、徹底して予算なりなんなりを組んであげてほしいな、そんなふうに思います。お願いします。

 時間もだんだんなくなっているので、急ぎます。

 先日、パソコンで、全国の新規就農センターのホームページから、農業法人の都道府県別求人・研修情報のページを見てみました。都道府県によって法人の募集に随分と差があることに気がつきました。

 北海道、群馬、長野、岡山、島根、香川、熊本、これらの県は農業法人の活動が非常に活発である。それに対して、東京と宮崎がゼロなんですね。大阪が二件です。東京とか大阪といいますと、首都圏とか都市部というイメージなんですけれども、町やから仕方ないかなと思ったりもしたんですけれども、宮崎県で農業法人の数が、求人がゼロというのは、何となく不思議な気がします。

 これは、地域的にも都道府県の取り組みによっても違うでしょうから、温度差があってもしようがないのかな、またそういうふうにも思うんですけれども、ぜひとも新規就農の窓口、これを広くしていただきたい、自治体に農業法人の展開を働きかけていただきたい、そんなふうに思います。自分で独立して初めからするのは大変だから、農業法人で給与として給料をもらって、技術を習得していった方がいいかなという、ちょっと安易かもわかりませんけれども、安易でもないんですけれども、こういうふうに考えても当然だと思います。

 そこで、大臣、副大臣にお尋ねしたいんですけれども、私は、大臣の任期中に新規就農者が大幅に増加したという成果を残していただきたいと思います。ちなみに、神奈川県も法人の求人がゼロなんです。大臣の選挙区でしょうか、伊勢原市、九千七百八十三人の農業人口がある、調べたところによりますと。ですから、ぜひ促進していただきたいと思うのと、金田副大臣の出身は北海道でありますけれども、調べたところ、北海道は新規就農が非常にふえている、取り組みがよいというふうに出てまいりまして、大臣、副大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 農業の内外からチャレンジ精神を持った新規就農者を確保していくということが不可欠でありますが、特に法人への就農を促進するためにも、新規就農者を受け入れる法人の育成の取り組み、そしてさらに就農を希望する者に対する取り組みの双方が重要でありまして、これがうまくマッチングすることが必要なことではなかろうか。そういう中で、円滑な法人等への就農というものが図られるわけでありまして、法人の育成につきましては、農業法人総合支援事業によりまして、都道府県あるいはまた市町村を通じまして、法人化の普及啓発や独立指導、こういうことも行っております。

 さらに、農業法人等への就農を希望する者につきましては、御承知のとおり、厚生労働省と連携をいたしまして、「農林業をやってみよう」、こういうプログラムを踏まえまして、主要都市でニューファーマーズフェア、農業法人合同就職説明会の開催ですとか、ハローワークと新規就農相談センターが連携をいたしまして、情報の提供あるいは相談、こういうことをいたしております。

 やはり、今回の青年等就農促進法の一部改正案によりまして、就農支援資金の貸付対象を拡充するとか、あるいは、現行の自営形態での就農に加えまして、農業法人等への就農も貸し付けの対象とすることによりまして、地方公共団体における取り組みを支援して、この法人並びに新規就農者を確保してまいりたい、このように考えております。

金田副大臣 岸本委員の御心配、もっともでございまして、私の選挙区北海道でも、高齢化が大分進んでおります。何としても新しい血をこの北海道に入れなきゃならないということで、大変な努力を各市町村やっております。

 私も、五年ぐらい前になりますけれども、これでは我が選挙区が疲弊してしまうなということで、パンフレットをつくりました。北海道で牧場主をやってみませんか、北海道で農場主になってみませんかということで、パンフレットをつくって、そういう希望のある人は、いついつ、ここにお集まりくださいというような形で、あと、私がアルバイトを雇いまして、大学生を十人ぐらい雇いまして、新宿、そして渋谷、池袋で、街頭で広報車を借りましてやりました。そうしたら、意外なことに、会場には二百人からの人たちがそのパンフレットを持ってやってきておりまして、北海道の就農支援センターの協力も仰ぎまして、そういったチャンネルをつないでおるんですが、本当に北海道で農業をやってみたいな、自然とともに自分の人生を、自然にはぐくまれてやってみたいなという需要は相当多いというふうに感じております。

 各市町村も、新規就農者の受け入れをしなきゃならないということで、いろいろな取り組みをしているわけでございますが、例えば、新得町というところでは、レディースファームということで、十二、三人の農業をやりたい女性を募集しております。そうすると、大体二倍から三倍の応募がありまして、一年間研修するわけでございますが、そういった女性の人たちが、OLをやめたり、看護婦さんをやめたり、私はやはりこんな生活よりも農業でやってみたい、そういった希望者が結構おりまして、そういった女性たちが、合宿しながら研修をする。

 そうしますと、町が活気が出てくると申しますか、卒業していくと、自分で五十頭の牛を飼って自立した、離農情報なんかを手に入れてそういったところに入っていっているという女性がいまして、もう私一人じゃだめだから、お婿さんを募集しなきゃならぬ、そういうぐあいでございまして、いろいろなやり方があります。

 私の選挙区の富良野というところでも、相当広大な畑作地帯でございまして、到底家族経営ではやっていけないというようなことで、ヘルパー寮というのをつくりまして、二百四十人ぐらいの定員のヘルパーを募集するわけですが、農協が中心になって募集しますと、それの定員はすぐいっぱいになるというような状態でございます。ですから、ササキさんのうちに今度はカボチャの栽培だとかタマネギの作業があるからというような形で農協が割り振りしまして運んでいく、そういった形の中で農業に親しんでいくというようなことなんだろうと思います。

 いろいろな課題があります。課題がありますけれども、やはり、ファーマーズスクールというんですか、気軽に農業の体験をしてみよう、そして、何か人のうちに下宿するみたいになりますとなかなか難しいわけでございますけれども、やはりそういった寮だとか、引き受ける、プライバシーがしっかり守れるようなそういった施設などを充実して、農業に親しむという機会をこれからもふやしていくことが大変必要なことだろうということでございます。

 新規就農体制については私も随分と関心を持っておりまして、ファーマーズスクールみたいなものを町営で、あるいは道の支援を得たりなんかしながらやっていきたい。そのことが、いろいろな多様な選択があるわけで、どんな入り方でもできるというような、そういった方向を目指していかなきゃならないのかなというふうに思っている次第でございます。

岸本委員 大臣、副大臣、特に副大臣など、みずから率先してされているということです。

 僕も調べたんですね。美瑛町ですか、そこではかなりIターンであるとかUターンであるとかがすごくふえているということで、やはり取り組まれているところは本当に取り組まれているんだなと。僕は、農業法人であれ農家であれ、日本の農業を支える人がふえる、また生産量やら何やらふえるということは本当にすばらしいことだ、そんなふうに考えている一人でありますので、ぜひ大臣、副大臣、政務官、力を合わせて取り組んでいただきたい、そんなふうに思います。

 時間がないということなんですけれども、最後に一つだけお聞きしたい。

 最後ですけれども、この法律案が青年等の就農の促進につながり、雇用の創出にも貢献できるような運用に努めていただきたいと願っております。しかし、あくまでも認定を受けた農業法人等に対して支援資金を無利子で貸し付けるという制度であり、償還期間も、据置期間を延長したとしても、魅力的な制度には何かが足りないというふうなもどかしさも感じます。

 自治体によっては、二年間の実務研修支援措置として生活保障月額十五万円、これを支給しております。こういう取り組みをしている自治体に集まるのは当然の流れでしょうし、ほかの自治体にも波及していくことになる。国は無利子で貸し付けるだけで、一番肝心な実務研修の費用は自治体任せということで、本当に実効あらしめる法律案と言えるのか。

 日本の農業の衰退に歯どめをかけて食料自給率を高めるために、人材育成への投資を国が率先して行うべきであると思います。しっかりとした就農計画にのっとり、農業のプロを目指す若者に対して一層の財政支援を講じるべきと考えます。最後のこの点について大臣に御所見をお伺いして、私の質問を終わります。

亀井国務大臣 いわゆる就農を希望する者にとりましての技術等の習得、これを円滑にすること、これは大変重要な課題でありまして、このような技術、営農手法、これを身につけ、そして農業法人等のいわゆる先進経営体における生産現場での研修、これは極めて重要な、また有効なことでありますので、そのための支援、これをぜひやってまいりたい、このように考えております。

岸本委員 ありがとうございました。

高木委員長 次に、白保台一君。

白保委員 農業経営支援三法の審議でありますが、限られた時間でございますので、基本的なことをお伺いしていきたい、こういうふうに思っております。

 その前に、新聞の報道で、「農水省は十日までに、農業以外での利用を原則的に禁じている優良農地について、場当たり的な転用の防止を促す通知を都道府県などに出した。」こういうような報道がありました。「農業振興地域整備計画の変更は五年ごとの調査などに基づいて計画的に行うように――というのが柱。」また、「農地制度が転用規制の役割を果たしていないという批判に応えたもの。三月に閣議決定した「規制改革推進三カ年計画」にも、制度の適正な運用が盛り込まれている。」こういう報道がありましたけれども、このことについてお伺いしたいと思います。

川村政府参考人 農振法の運用につきましては農村振興局が担当いたしておりまして、ちょっと申しわけございませんが、私、責任を持って答えられないものですから、御容赦をいただきたいと思います。

白保委員 それでは、また後で教えてください。

 最初に、農地の確保と農業委員会の役割についてお伺いしたいと思います。

 我が国は、食料自給率が極めて厳しい水準にあるにもかかわらず、耕地は減少している、耕作放棄地は増大するという、食料安全保障の観点から見れば危機的な状況にあることは事実です。また、環境や景観保全の観点からいっても、各地域での農地資源を確保しようという意識を持った取り組みが重要となってくるのではないかと思います。そこで、その働きが期待されるのが農業委員会じゃないかな、こう思います。

 ところで、日本のように限られた土地で農業を行うヨーロッパは、各国もゾーニング制度を定めて、住宅地域や農業地域を明確に区分けしていると言われています。そのためか、町並みも田園風景も大変美しい、こういうふうに言われているわけであります。日本は、都市計画法や農振法があっても、過去四十年間に二百四十万ヘクタールに及ぶ農地が失われて、その半分は宅地や工業用地に転用されて、あと半分は耕作放棄地、こういうふうになっています。法律があっても運用が緩い。特に私的所有権が強いために十分に機能をしなかったのじゃないか。その結果として、田んぼの真ん中に家が建ったりマンションが建ったりスーパーが出てきたり、そういった光景が日本ではよく見受けられる。しかし、ヨーロッパのように厳格なゾーニング制度に支えられて、農地の変更にあっては国や農業委員会と協議を必要とするようであれば、農地が簡単に失われるようなことは防げたんじゃないのかな、こういうふうに考えるわけであります。

 そこで、我が国も農業委員会による農地の確保、保全業務の的確な執行を期待しておりますけれども、今回の改正でどのような役割を位置づけられようとしているのか、このことについてまずお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 望ましい農業構造を確立する、そのためには農地の利用集積、優良農地の確保が重要であるわけでありまして、そういう面で、農業委員会が積極的に関与することが必要、このように考えております。

 今回の改正におきましては、農業委員会の業務の重点化を図りまして、その積極的な取り組みを促進する、このように考えております。総花的であったこれまでの農業委員会の業務を見直しをいたしまして、担い手への農地の利用集積や耕作放棄地の解消など構造政策の推進、こういう面で、農地に関する業務、これを重点的に積極的に取り組んでいくというような方向にぜひ持っていきたい。

 そしてさらに、農業委員会系統組織みずからの取り組みと相まって構造政策を推進する上に、やはり農業委員会が果たす役割が期待をされるわけでありますので、平成十三年一月に策定いたしました農業委員会系統組織の改革プログラムの見直しも行う。そういう中で、この農業委員会の役割が期待をされるわけでありますので、そのような責務が全うされるような方向というものをぜひ支援してまいりたい、このように思っております。

白保委員 次に、農業委員会の必置基準面積の算定の見直しについてお伺いしたいと思います。

 農業委員会を市町村に置かない例外というのは、区域内に農地がない場合、あるいは農地面積が著しく小さい場合、北海道は三百六十ヘクタール、都府県九十ヘクタール以下とされております。現行制度では、農地面積算定に当たって、市街化区域内の農地も算入することになっております。改正案では、生産緑地以外の市街化区域内の農地面積を除外するというふうにしておるわけであります。すなわち、必置基準面積の引き上げ等の見直しを図るということですね。

 確かに、農地が少なく、農業委員会としての業務が少ない区域では委員会設置の必要性がない。また、今後、市町村合併が進めば、ますます実態に即した選択が望まれるであろうから、改正案については一応、一応ですよ、理解するところであります。

 そこで、何点か確認をしておきたい、こう思います。

 まず、現行制度では、市街化区域内の農地の転用または転用目的での農地取得は許可が不要とされています。農業委員会への届け出でよいとされておるわけであります。だから、農地の所有者や不動産のディベロッパーは、農地が市街化区域の線引きにかかる、このことを期待して、市街化区域にひっかかった農地はいとも簡単に現金化されていく、こういうことが促進されてきた。

 しかし、農業の多面的な機能とか、特に都市近郊の農業の多面的機能を考えると、非常に憂慮すべきことが多くあったのではないか。例えば、都心におけるところのヒートアイランド、こういった現象は年々に度合いが増してきております。特に、夏場にクーラーがなかったら生活ができないというヒートアイランド現象とか、もうこういうようなことになってしまって、悪循環が続いているわけであります。

 このような都市生活に、農地の緑と土が環境を保全する機能を持つことは言うまでもありませんが、また、都市住民やその子供たちが都市農園や体験農園などで農業に触れることは非常に大事なことです。食と農の関係性理解を促進する、そういう場となっていることも間違いありません。

 食料・農業・農村基本法及び基本計画においても、都市農業に一定の位置づけを与え振興するとしているところでありますけれども、必置基準面積の引き上げによって政策的な整合性が問われるのではないかな、こういうふうに思うわけであります。

 そこで、市街化区域内農地の農政上の位置づけと農業委員会との関係について、御所見を伺いたいと思います。

川村政府参考人 委員がお尋ねにありましたとおり、今回の改正におきまして、農業委員会の必置基準面積の算定のやり方につきまして、市街化区域内の農地は生産緑地を除きましてこの算定にカウントしないという形で御提案をしているところでございます。

 これは、今委員がるる御指摘ございましたとおり、市街化区域におきます農地の重要性、これを軽視するものではございません。まさに都市住民に対しまして、御指摘ございましたとおり、生鮮野菜など新鮮な農産物の提供、また緑地空間などとしての安らぎの場、また防災面での機能等、多面的な役割を市街化区域内の農地は果たしておるということは事実でございまして、この点、いささかも評価を変えるものではございません。

 今回の見直しは、農業委員会の業務という観点からできるだけスリム化を図り、また必置基準につきましてもその仕事の中身との兼ね合いで考えていこう、こういうことでございます。

 そういうことで、農業委員会の業務という面から見ましたときに、今、委員も例示として挙げられました、例えば転用許可が市街化区域の農地の場合は届け出で済むといったようなこと。また、市街化区域内の農地につきましては、今回重点化を図ろうとしております担い手への農地の集積でありますとか、それから耕作放棄地の防止といったような業務というものが、基本的にはこの市街化区域内の農地では行っておらないわけでございます。

 そういう業務量に着目したときに、どういうカウントで必置基準面積を算定すべきかということで検討した結果、生産緑地は今後とも永続的に農地として利用し、また、農業委員会としても、証明事務等を含め、また市町村に対する協力事務等いろいろございますので、その業務量という点からこれは非常に重要であるという点で、生産緑地以外の市街化区域はカウントから除外をする、こういう形で提案したところでございます。

白保委員 では、農業の持つ多面的機能の問題、それからまた都市近郊の農業の問題等、今後の農業振興、そしてまた自給率の問題等も含めて、やはり、みずからが、子供たちが農業体験をするとかさまざまな経験をしていく、そういう場合にあって、やはり都市近郊の農地とかそういったものは、今後の食育ということを考える、その面からいっても非常に重要な問題であるということもあって、あえて私は今の問いをさせてもらったわけであります。

 次に、生産緑地制度と農業委員会についてお伺いしたいと思います。

 市街化区域内の農地は、宅地化されるか、また農地として市街化調整区域へ編入、逆線引きされるか、そして生産緑地の指定を受けるか、いずれかの方向にあるわけです。

 この生産緑地制度は、都市の良好な生活環境を確保するために立法されたわけでありますが、この指定を受けるのにさまざまなハードルがあって、また、指定を受けた後、三十年は農業を行わなければならないという縛りもあります。最大の特典は、税制上、市街化区域内農地であって、でも宅地並み課税を免れることで、また、終生営農の場合は相続税も猶予の対象となります。

 農業委員会は、生産緑地地区指定の際の農地等の認定、それから生産緑地の管理、あっせん、三十年経過後の買い取り申し出の際の農業従事者の認定などについて市町村長に協力することになっている、こういうことになっています。

 ところで、農地所有者が生産緑地の指定を受けようとするのには、この不安定な時代に三十年間営農を続ける見通しが必要です。見通しが立たなければあきらめる以外の方法はない。また、生産緑地地区の指定は、都市計画審議会で決定された都市計画の一環であって、都市の長期的な緑地計画として吟味されています。したがって、新規指定などという一たん行った指定に追加するようなことは、都市計画の変更を余儀なくするものであるから極めて困難であると言われています。このような指摘を考えると、生産緑地制度はその目的に沿った運用がされることはなかなか難しいのではないか。

 そこで、生産緑地制度の運用における農業委員会の役割、それについて伺いたいと思います。

川村政府参考人 生産緑地制度の運用におきます農業委員会の役割についてのお尋ねでございます。

 生産緑地地区、これはもうまさに今委員が御説明いただきましたように、市街化区域内にあります農地につきまして、その農業生産活動を行うことを通じまして、良好な都市環境の形成、そういうものを図ることを目的として指定されております。

 そして、この生産緑地地区におきまして、市町村長がいろいろな役割を担います。一つは、生産緑地を農地として管理するために必要な助言、これが一つ。それから、営農を実施される方に対しまして土地の交換、いろいろな土地利用等がありますので、土地の交換のあっせんをするということ。それから、就農希望者に対します生産緑地の取得のあっせん等の業務を市町村長として持っております。

 そして、農業委員会は、こういう市町村長の取り組みを行う業務に対しまして協力を行うということを任務としております。それからまた、委員が例示で挙げられました税制の関係、この関係でも特例措置等がありますので、それに必要な適格者証明あるいは定期的な現地確認、こういうことでの事務を担っているというところでございます。

白保委員 先ほど大臣からもお話がございましたが、次は、農業委員会の任意業務見直しについてお伺いしたいと思います。

 改正案では、農業委員会の法令業務以外の業務については、農地に関する業務及び農業経営合理化に関する業務に重点化を図るとしています。

 ところで、農業委員会の活動については、地域から見えにくいとの指摘が少なからず、活動内容が見えにくい、懇談会でもそういうようなことが指摘されているようでありますが、一般的には、農業委員といえば農業者のリーダーで、その地域の農業に関する情報はすべて把握し、地域農業振興に専心しているというイメージがあるんじゃないかと思います。これというのも、農業委員が、法令業務では、農地法に基づく権利移動の許可、農地の利用関係等の調整などを実施してきた、いわば農地を基本とする業務と、それに付随して、人や農村生活についても情報を集約し得る立場にあったはずだからだ、このように思います。

 そこでお伺いしますが、農業委員会のように、任意業務の取り組み状況に対し、どのような評価をなされているのか。あわせて、任意業務見直しの内容について、どういう検討がなされて今日このような改正という形になったのか。その件についてお伺いをしたいと思います。

川村政府参考人 農業委員会の業務でございますが、大きくは二つございまして、一つは、農地法等に基づきます権利移動の許可等の、法令で権限を付与された業務を執行するということが一つございます。それから、主として行っております、農地の流動化あるいは担い手の育成その他、農業に関しまして幅広い活動が可能ということになっております。

 最近の活動状況、農業委員会によっていろいろな差はあるわけでございます。ただ、必ずしもその活動の状況が見えないという御指摘もありまして、農業委員会に関する懇談会というものを開催いたしまして、その中で、この業務についてはいろいろ御議論をいただいたわけでございます。

 そうしますと、その中ではやはり、現在入っております任意業務の中に、例えば農業技術の改良でありますとか農作物の病虫害の防除といった業務も明記をされておりまして、これは、地域農業改良普及センターでありますとか農協等が主体的に担うべきものでございます。こういうことが入っているということが、実際、農業委員会が何をやっているかということにもつながっているという反省もありまして、やはり、現に今重点化をしております、実際力を入れていただいておりますけれども、この農地をめぐる担い手等に関する業務、つまり流動化と法人化、経営の合理化、この二点に基本的には絞り込んで業務を行って、そこに構造政策、構造改革を強力に進めていく、こういう農業委員会が本来果たすべき役割に重点化しよう、こういうのが今回の趣旨でございます。

白保委員 それでは次に、普及事業の改正について、基本的な問題ですが、教えてください。

 戦後の日本の農業は、集約型農業と言われて、単位面積当たりの収穫を高め、農業生産性を向上させてきたのは、試験研究機関と農業者の橋渡しを役割としてきた普及事業に負うところが大きかったんだな、こういうふうに思います。欧米諸国でも、農業普及事業は国の重要施策であって、WTO農業協定でも、普及及び助言に関する役務は削減対象とならない緑の施策というふうにされています。

 今回の改正では、普及職員の一元化、普及センターの必置規制の廃止、普及手当の弾力化等が盛り込まれておりますが、農政の新たな展開に即した取り組みとなるように注視すべきだ、このように考えております。

 その中でも、普及職員の一元化は大きな変化でありますが、従来の専門技術員と改良普及員の二種類の普及職員を普及指導員として、資質を向上させ、高度な技術支援を目指し一元化する、こういうふうにしております。

 普及職員の一元化によって、まずどのような効果が期待されるのか、そしてまた、普及指導員という名称にしたその理由についてもよくわからないというところがあります。非常に基本的な問題ですけれども、このことについて伺っておきたいと思います。

川村政府参考人 今回の改良助長法におきまして、今お尋ねがありました普及職員の一元化というものを一つの柱にしておるところでございます。これは、今の専門技術員と改良普及員とが二本立てになっておりまして、機能分担という形でやっておるわけでございます。すなわち、専門技術員につきましては、調査研究と改良普及員の指導という形になっております。そして、改良普及員が、現場で普及の直接的な活動に従事する。こういう二本立てになっております。

 今後、非常に技術革新のスピードも高くなっておりますし、現場を重視していくという形からいたしますと、そういうふうに限られた人数の中で機能分担を厳格にしていくというよりは、むしろ、これを一本化いたしまして現場中心で対応できるような、そういうキャリアシステムにした方がいいということで今回の一元化を図るわけでございます。それは、当然、ただ一つにするというだけではなくて、資格試験も、この趣旨に沿いまして、より高度化した、また現場で活動がより円滑に、あるいはそういう能力と意欲を持たれる方が普及指導員になられる、なることが期待される、そういうシステム、キャリアシステムを含めましてやるということによって、少数精鋭化する中で、普及をより柔軟かつ効率的に実行していこうということでございます。

 それから、この名称でございます。

 普及指導員という形にしておりますが、まず、普及という言葉とか普及という事業、これは、もう委員も御質問の中で御指摘ありましたとおり、先進諸国でも、農政におきます非常に重要な行政手法となっております。この普及というのは、まさにそういう根幹をなす言葉であるということ、それから、今回、一元化をし、プロ農業者の育成でありますとか構造改革を推進するということでは、普及員が行ういろいろな業務の中で、指導というのがやはり象徴的な言葉であろうということで、この普及と指導を含む普及指導員という名称を採用したというところでございます。

白保委員 時間がもうほとんどなくなってまいりましたので、はしょっていきたいと思いますが、青年の就農促進ということで、新規就農の青年数は増加傾向にあるようであります。ただ、農業就業人口は全体としてまた減少しているという非常に残念な形があります。

 それは、担い手としての新規就農者は期待される存在でありますけれども、資金面や農地確保、技術習得など、支援プロセスが確立していなくて、総合支援が求められているんです。これについて簡潔にお答えいただきたいということと、それから、新規就農者の農地の確保問題。これで、農地を持たない者は耕作できない、非常に厳しいものがありますが、この際、農地取得の規制は廃止もしくは適用除外をしていくべきじゃないのかな、こういうふうに思いますが、簡潔にお答えをお願いします。

川村政府参考人 現在、食料・農業・農村基本計画の改定を行うべく、その見直しを進めております。その中で、この土地利用のための農地制度、こういったものについても本格的な検討をしたいということで、今御指摘の面積要件等につきましては、これが現時点で本当に必要なのかどうかということを含めまして、より多様な参入を促進するという見地から検討してまいりたいと思っております。

白保委員 もう一つは担い手対策、特に若年層の雇用についてお伺いしたいと思います。

 我が国は、失業率が五%前後の数字で推移をしておりますが、三百五十万人以上の失業者が存在する。こういう中で、特に若年層、低年齢の若年層の失業あるいは無業状態というのがあります。彼らはフリーターとして生きていこうとしているわけですが、日本全体ということを考えた場合に、これは将来的には大変懸念される大きな問題であることは間違いありません。

 そういうことで、やはり彼らのような層の者が農林業体験を通して農林業を支える人材になっていけば、二つの社会的問題が一気に解決するということを考えるわけでありまして、そのために、農林業体験やインターンシップ制の実施だとか、遊休農地の活用や、グリーンツーリズムに関連して観光立村を推進するなど、ある学者が言うように、農業は第一次産業としての地位だけではなく、今や、いやしや安らぎなど精神的価値を提供する第三次産業としての確固とした地位を持ち始めた、こういうことも言われるぐらいでありますので、私は賛成ですけれども。

 また、それと同時に、昨年四月に農水省が厚労省と連携して取り組んだ「農林業をやってみよう」、このプロジェクトは非常に興味深く思います。現在までの成果を知りたいところであります。

 同時に、五年間農業を続ければ返還は免除されるという奨学金のような直接支払い制度もヨーロッパではあると聞いておりますし、新しい基本計画でも新規就農者の確保、育成は明確化されることと思いますけれども、特に若年層の就農について、雇用をしていくという観点からどのようなビジョンをお持ちか、お伺いをしたいと思います。

亀井国務大臣 今現在、三十歳未満の若年層の新規就農者が増加傾向にあることは大変喜ばしいことであります。また、農業法人等の採用もふえておるわけであります。

 そういう面で、今委員からも御指摘のとおり、農業を目指す若者に対しましての就農相談、あるいはまた就農支援資金の貸し付けや農業者大学校等における研修教育、また大学生等に対する農業法人でのインターンシップの問題、あるいは厚労省と今連携をしてやっております「農林業をやってみよう」プログラムに基づく就農、農業法人の求人情報の提供、いろいろ実施をしておるわけでありまして、これをさらに充実させる。

 あわせて、今基本計画の見直しを進めております。そういう中で、青年就農対策につきましても、さらにこの中でも検討してまいりたい、このように考えております。

白保委員 では、最後に大臣にお伺いしたいと思いますが、女性農業者の位置づけについてお伺いしたいと思います。

 先般も大田市場を見学させてもらったんですが、女性がいっぱい働いていらっしゃるところで、見学してまいりました。今後の農業構造政策の展開においても、女性の果たす役割は適切に評価し、生かすことが重要でありますけれども、この位置づけについて、今も農業就業人口の約六割近くは女性だ、こういうふうにも言われておりますし、責任を持って担当している部門がある農家は七割だ、こういうふうにも言われております。今後の果たす役割についてどのように位置づけていらっしゃるか、お伺いいたします。

亀井国務大臣 本当に、女性は農業就業人口の約六割を占めておるわけでもございます。農業や地域の活性化、これにつきまして大変重要な役割を果たしていただいております。

 そういう面で、やはり一つは、食と農、これを考えますときに、女性の方は生産者であると同時に消費者でもあるわけでありますので、そういう感覚、これは大変重要なものでありまして、女性農業者がますます重要になってくるわけであります。

 そういう面で、女性農業者もパートナーとして認定農業者になることが可能となるように、昨年六月に認定農業者制度の運用改善を図ったところでございます。

 さらには、女性農業者につきまして、農業経営における役割を適正に評価するとともに、担い手として明確な位置づけが行われまして、意欲と能力を発揮していただいて一層活躍をしていただくような各種の施策を進めてまいりたい、このように考えております。

白保委員 終わります。

高木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 限られた時間ですので、初めに農業委員会法について伺います。

 一市二町の合併を控えたある市の農業委員会の会長さんが、今いる農業委員の数を足すと四十三名になるんですが、十七年度以降は二十人にする予定だと言われました。大変驚きました。もちろん、会長さんですから、上限が削減されたとかそうじゃないことは十分承知なわけです。そこに深い事情があると思うんですけれども、確認ですが、理屈からいえば、このようなケースの場合は四十人まで認められる、在任特例で四十三も一定期間は認められることになると思いますが、その点、伺います。

川村政府参考人 合併の特例によりまして、新規合併の場合と吸収合併の場合とは異なりますが、委員の定数も、新規の場合は八十名まで、それから、吸収の場合は吸収される方の合計が四十を上回るときは四十で切られますけれども、そこまでは可能でございますし、任期についても特例があるということでございます。

高橋委員 まず、ここは確認させていただきます。

 この事例が、何でわかっているのにいきなり二十人、半分も減らす、それは町でいうと十一人くらいいた委員が四名くらいになるという算定なわけですね。大変なことなんですけれども、背景には事務費などの削減を懸念してのことだと思われます。

 既に、交付金については三年間で二割減という農水省の目標が示されているわけで、来年度は六・九%減ですから、これではとても、予算は最初から減らされているので困る、もう削るところは委員の数しかないという論法にならざるを得ないわけですね。

 よく、市町村合併をして行政サービスも効率化を図るという言い方をするわけですが、しかし、農地が効率化というわけではない、基本的にはあるわけですから。農地あっての農業委員である、そういうことを考えれば、合併によって農業委員会の機能低下になってはならないなと思うわけですけれども、これに対する歯どめ策について、どう考えていらっしゃるのか、伺います。

川村政府参考人 今後三年間でおおむね二割程度のスリム化を図るということにしております。それに応じて交付金についても縮減をしていくということでございます。

 これは、今後、市町村合併も大幅に進みますし、また今回の改正によりまして業務の重点化を図るということもございます。そういうスリム化が行われるという見通しの中での削減でございます。そういうことで、業務に支障がないような形で対応をしていただくということを期待しております。

高橋委員 もう既に、市町村合併で廃止になった農業委員会が、平成八年度から五十六も廃止になっていると聞いています。農家戸数や耕地面積も、先ほど来お話にあるように、年々減少しているわけですね。だから、自然淘汰といいましょうか、スリム化を図るとうたわなくても、減っていく部分がある。それから、当然そこでは、予算はそれに合わせてスリムになっていくかもわからないけれども、今あるところ、今頑張っているところは基本的に維持をするというふうに考えてよろしいですか。

川村政府参考人 市町村合併なり、今後、この改正によります業務の重点化、それから農地面積なり農家戸数、こういったものもトレンドとしては減少傾向にあるということでございます。

 そういうことを踏まえまして、その業務の実態に合わせて各農業委員会でスリム化を努力していただくということが一般的な原則だと思っております。

高橋委員 ですから、一律に削減などということはないとお答えいただけますか。

川村政府参考人 地域によって、今申し上げましたような合併の状況なり農地の減少というものは地域差がありますので、画一的なものではないと思いますが、方向としては、重点化なりスリム化ということで努力をしていただきたいと思っております。

高橋委員 今の画一的なものではないというところを確認したいと思うんです。

 このスリム化の問題を、市町村の裁量でできることだというふうな説明をよくされるわけですけれども、先ほど来お話があるように、裁量と言われても、そこに財源がついてこない中でそう言われると、やはりそれはもう減らすしかないんだということになるわけで、基本的に必要なところには、やはり一律ではないということをまず確認したいと思うんですね。

 次に、さっきの理由の中でもう一つおっしゃった重点化の問題ですけれども、昨年の四月に出された農業委員会に関する懇談会報告書では、「任意業務は、地域の多様性に配慮しつつも、基本的には個々の農業委員会が置かれた農地をめぐる担い手及び地域の課題に絞り込んだ重点化を図ることが重要である。」として、第六条二項、農業技術の改良、病虫害防除、農業・農村振興計画の樹立を初めとする任意業務全般について見直す必要があると提言をしています。「あくまで活動は「農地」の利用及び管理との明確な関連性を持つ分野において行われる必要がある」と、そこまで踏み込んだ提言をしておるわけです。

 しかし、全国農業会議所が昨年十月に行ったアンケートを見ても、この任意業務について、今後とも必要と答えた分野が、農地等の利用関係についてのあっせん及び争議の防止など、これらの業務がトップで九〇%であります。農業・農村振興計画にかかわる事業も八五%、農業生産、農業経営及び農民生活に関する調査・研究の業務が七八%など、基本的にこれまでの任意業務に関して必要という立場をとっておりますけれども、あえて今回ここまで重点化に踏み込んだ理由について伺います。

川村政府参考人 農業委員会の機能の充実といいますか、強化を図るという意味では、農業委員会が本来担うべき業務に重点化するというのが趣旨でございます。今例示に挙げられました農業技術の改良でありますとかあるいは農作物の病虫害の防除、こういったものは他の専門機関がございまして、主体的にはそちらで担うべきものというふうに考えております。

 また、農業振興計画等も、農業委員会の方がいろいろな審議会のメンバーになられたり、あるいは諮問を受けられたり、あるいは建議という形で参画は今後ともできるわけでございますが、みずから主体的になってやるような業務ではないということで、先ほど言いました農地関係の業務ということに重点化をして、より構造政策というものを推進していこうという趣旨で、今回の改正を提案する次第になったところでございます。

高橋委員 そこで、本来担うべき業務ということで、少し具体的に考えてみたいと思うんですが、秋田市で農業委員を九期務めていらっしゃる方にこの間お会いしました。専業農家でありますが、日常的に農家の相談相手になり、手がけた活動は本当に広範なものであります。

 例えば、高速道路の発電機から水田への油漏れ事故が起きた、このことですぐ現地調査を行い、道路公団に補償させて、油取りマットを入れさせた。あるいは、一級河川が雪解け水で増水したときに、田んぼがダムの役割を果たして水をせきとめたわけですけれども、この後処理を、農業委員会として要望書を出して建設省に申し入れ、きちんとやらせたこと。あるいは、リンゴの木が伐採された後の園地を医療廃棄物の捨て場にしようとする計画が持ち上がり、農業委員会として無断転用をやめさせるという形でストップをかけた。こうした大変豊富な実績を持っております。

 また、この方が一番忘れられないということは、九四年のWTO交渉問題のときに、県の農業委員の大会でガット・ウルグアイ・ラウンドの批准阻止に関する決議を上げ、これは緊急動議だったわけですが、最初はぱらぱらという起立だったのが、最後はどっと立ち上がって、みんなが賛成してくれた。農民の気持ちを本当に代弁しているということが伝わってきましたし、そのときの参加者が十一名、大挙して東京に上京して抗議をした。その後の米改革のときもそういう取り組みがあったという紹介があったんです。

 やはり、土地に絡んでの農業委員だと思うんですけれども、土地があるからこそ農家の生活があり、さまざまな仕事が出てくるわけですよね。文字どおり、土地にまつわってさまざまな農家の相談相手として活動している。そういう仕事は今後するなということではないですよね。確認したいと思います。

川村政府参考人 農業委員会の役割は、今委員が例示に挙げられましたいろいろな活動がこれまであったわけでございます。農業委員会の存在意義というのは、まさに農地についての非常に推進的な、中心的な機関であるということでございますので、その農地の業務の絡みでのいろいろな周辺的な業務というのは当然あり得ると思いますが、そういうものを離れて、まさに検討会の懇談会でも討議になりましたように、余りにも総花的になって焦点がぼけるということでは困るというふうに私は思っております。

高橋委員 総花的というのは、いろいろな活動があるでしょうから、さっきから指摘されている、姿が見えないだとか、あるかもしれません。しかし、それが農民にとってやはり必要とされている。ちょっと私、相談書を見せていただきましたけれども、この方は今でも農家の相談を日常的に受けているんですね。だから、必要とされている以上はそれは当然阻むものではないということで、やはり農業委員の役割ということを確認したいんですけれども、いかがですか。

川村政府参考人 個別具体的にどういう活動かというのは、なかなか一律には申し上げがたいわけでございますが、今後は、基本的には、農地の流動化、それから法人化を初めとします経営の合理化、こういうところに力点を置き、ここを基本に考えて活動を考えていただくということが中心になろうと思っております。

高橋委員 そうすると、その今後が、予算はだんだん削られる、活動は重点化だ、基準面積は引き上げられる。そうなると、当然、本来やれる仕事もなかなかできなくなる、農業委員の役割が発揮できなくなる。そこでまた、何か余り見えないんじゃないかなどということになっていくんじゃないか、そこでこの役割が否定されることになるんじゃないか、そのことを私は大変恐れているわけです。国は、売れる米づくりとか、担い手への農地の集積、このことを重ねて強調しますけれども、それすらも今困難な状況ではないのかと思うんです。

 札幌市の農業委員会がことし三月に営農実態意向調査というのをまとめたのをいただきました。これからの農業経営について、今後農地面積を拡大したいと答えたのはわずか一・八%です。現状維持が五九・八%、農業をやめたいが二四%もありました。たった五年後、自分たちの家族で農業を専門にやっている人が何人いるかという問いに対して、三割も減っているという状態であります。また、新規就農を受け入れる用意があるかという質問に対して、ないが八八%であります。あると答えた人でも、何で協力できるかといえば、農地を売るか貸すか、それくらいのことでしかないという答えでありました。

 担い手という言葉がキーワードになっておりますけれども、今の実態は一代限りの担い手、これは私が言ったんじゃないんですよね、実は農業委員会の方がおっしゃったんですけれども。それが今の現実じゃないか。大臣の認識を伺います。

亀井国務大臣 今、北海道の札幌というようなことで調査のお話を伺いました。しかし、やはり我が国の農業をしっかり守っていかなければなりませんし、また、農業の構造改革、これを進めなければならないわけでありまして、そういう面で、担い手、そしてそれぞれの農地を集積し、効率的な農業を確立する、その努力をしておるわけであります。地域によりますいろいろの状況はあろうかと思いますが、将来的には、我が国の食料の自給率の問題等々含めまして農業の基本的な考え方、我が国の農業、安定的な食料の供給、また国土の保全等々の問題に対応する、多様な農業の共存、こういう面での農業をしっかりしていかなければならないわけでありますので、そういう面での担い手あるいは農地の集積等を確保し、農業の構造改革を進めてまいりたい、このように考えておるわけであります。

 いろいろ個々の事情はあろうかと思いますけれども、やはり地域としての合意を形成し、そして農業を守る体制というものをつくってまいりたい、こう思っております。

高橋委員 個々の事情じゃないんですよね。農水省からいただいた資料でまとめてみたんですけれども、認定農業者が五年たって再認定を受けていない、その割合を見ますと、二〇〇〇年三月では東北六県で四・一%、全国では三・五%でした。これが、たった三年、二〇〇三年九月には東北六県で一四・三%、全国では一三・五%。再認定を受けない割合がそれぞれ一〇ポイントもふえております。

 政府は認定農業者をふやす方向でやってきたけれども、実際、それで名乗りを上げた人たちが再認定を受けたくない、そういう状況になっていることをどう考えられますか。

川村政府参考人 認定農業者制度につきましては、五年を一つのタームとして制度を運営しております。委員が御指摘のように、昨今の農業情勢を反映いたしまして、投資意欲といいますか、規模拡大意欲というものが非常に鈍化していることは事実でございます。これは、ここ数年来、農産物価格がかなり低迷をしておりますし、経済全般もかなり冷え込んでいるということも影響しているんではないかというふうに考えております。今後の認定農業者制度につきましては、一つは、やはり認定農業者となることのメリット、こういうものを、よりめり張りをつけて出していくということも必要だろうと思っております。

 今般、基本計画の見直しの総合的な検討の中で、いろいろな所得対策等も含めましていろいろ検討しておりますし、こういう担い手、特にこれは認定農業者がベースとなっていろいろな仕組みができ上がっていくというふうに考えておりますけれども、そういう認定農業者にとって本当にメリットが実感できるような政策体系にしていかなければならないというふうに思っているところでございます。

高橋委員 やはり規模拡大だけではやっていけない、むしろ、そのことによって大変な思いをしているというのが現状にあるのではないか。やはりそこをしっかり見ていただいて、もともとの、自給率向上や、あるいは再生産を保障する、価格の点で国が責任を持つという方向に行ってほしいなと強く思うんですね。これは後の質問にも関連するので、続けてお話ししますけれども。

 新規就農の法改正も今回提案されているわけです。平成七年に就農支援資金が創設されて、今回は農業法人も対象にする、都道府県青年農業者等育成センターの機能強化をするという内容であります。

 そこでまず伺いたいのは、就農支援資金を受けたけれども離農したという実態などはどうなっているのか、定着状況はどうなっているのか、それを国として把握されているのかどうか、伺いたいと思います。

川村政府参考人 就農支援資金の貸付対象となりました認定就農者、この方々につきまして調査をしたものがございます。平成十一年度に就農をされた認定農業者の経営開始後五年目となります平成十五年十二月の定着率、これを計算いたしますと、九四%ということになっております。したがいまして、何らかの理由で営農を継続されなかった方は六%ということでございます。

高橋委員 今、九四%とおっしゃいましたよね。悪くない数字かなとは思うんです。ただ、今の数字の出し方は、平成七年から始まった制度なので、大体、就農するまで準備期間というのがあって、一番多いのは五年ですよね。それ以外は一年未満くらいで離農しちゃう人が多い。だから、そこまで、五年頑張った人が今就農して、一定定着しているということですよね。だから、やはりその前後はずっと見ていって、実際定着していくのかというところはフォローしてもらわなければ困るんですよね。その点については確認だけですので、まず伺います。

川村政府参考人 ただいま申し上げました数字は、平成十一年度に新たに認定を受けた方、これが母数としてありまして、その方がその後五年間たって農業を続けていらっしゃるかどうかということですので、もちろん、そういう、平成十年に就農した方がその五年後にどうなったかというデータがあればいいんですけれども、このアンケートは、たまたま平成十一年に就農された方の五年後という形でやっておりますので。

高橋委員 せっかくフォローしたつもりなのに。

 要するに、その前後が調査されていないということですよね、今回伺ったのでこうした数字が出てきたけれども。だから、その前後を今後調べてくださいと聞いているんです。

 この支援センターが新規就農者の就農実態に関する調査というのをまとめておりますので、その中でもかなりの様子はわかるわけですけれども、それに基づいて少しお話ししていきたいと思うんです。

 まず、確かに、新規就農者の数だけを見ると、ふえています。平成二年、一万五千七百人から、平成十四年、七万九千八百人になった。ただ、学卒の青年などでいうと、平成二年は千八百人、それが今二千二百人という点で、余り多くはないですよね。それから、三十九歳以下の離職した就農者は、平成二年、二千五百人から、平成十四年、九千七百人にもふえている。青年の離職者がふえているということがわかります。

 そういう中での支援資金なんですけれども、確かに貸付件数はふえていますよ。でも、千三百五十六件でしょう、全体の数からいうと、あるいは、目標とする新規就農者の獲得からいくと。余りにも寂しい実績じゃないかなと思いますけれども、いかがですか。

川村政府参考人 新規就農される方はさまざまございます。今申し上げましたように、学卒ですぐ就農される方、それから、一たん他産業等に就業されまして戻ってこられる方、その中で資金需要を持っておられる方がどの程度あるかというのはないわけでございますが、少なくとも、この就農資金を活用していただいた方というのは、先ほど言いましたように、かなり定着率も高いわけでございますし、一定の効果を果たしてきて、この新規就農者の定着に効果を発揮しているというふうに思っております。

高橋委員 定着に効果はあると。現時点ではそうですよね。もしそうであれば、もっと利用がふえるように工夫する考えはないですか。ハードルが高過ぎるんじゃないですか。担保や保証人の問題など、もっと見直しする必要があるんではないですか。

川村政府参考人 用意いたしました資金制度が使いにくいとか、いろいろなクレームといいますか、そういう御要望、そういうものは真摯に受けとめまして、改善すべき点は今後とも改善をしながら活用を図っていきたいと思っております。

高橋委員 私は、実は平成十一年、五年前に県会議員を青森でやっていたときに、青森型の新規就農事業というのが県で採用されて、そのときに就農支援資金を活用して、九年就農すれば返還免除、九年はちょっと長いなと思ったんですけれども、そういう取り組みをしている都道府県が二十数県ありますよね。それは大いに賛成だと。

 ただ、やはり農家の後継ぎの子供さんが対象にならない。新規参入というのが条件なわけですから。そこがどうして対象にならないのかなということを随分お話をしたことがあって、今でもそのことがずっと気になっているわけなんですね。さっきお話ししたハードルの話。今紹介した就農相談センターのアンケートも、アンケートを全国の農業委員会から集めてみたら、百人は対象外だった、農家の息子だったというので対象外だったということなんですね。これ、何か惜しいな、そこでも頑張っているのになという気がいたします。

 この間、実は、それこそ秋田で、二十代の後継青年二人とちょうど四十歳の青年に会いました。一人は、先ほど金田副大臣が紹介した北海道で酪農をやろう、そのキャンペーンに動かされまして、北海道の大学に行って、研修を受けて、酪農を目指したんですね。ところが、残念なことに家庭の事情でおうちに戻って、今は米、十三ヘクタールやっている。これはもう本当に立派な後継青年だと思うんですけれども。もう一人の青年は、野菜で産直などをやって頑張っている。もう一人の四十歳の青年は、兼業農家で、この方は逆に九州で肥育農家で修業をして、今は林業などもやっているというふうなことで、この方たちに共通しているのは、みんな最初は農業が嫌いで、うちでやっているのを見て自分はやりたくないと思っていたんだけれども、家庭の事情やあるいはリストラで参入せざるを得ない、農業をやらざるを得ないというところが出発点。だけれども、やってみて、消費者の皆さんに喜んでもらえるとか、そういうことを通して、農業というのはおもしろいなということで今頑張っているということだったんですね。だから、その中の一人には、国の今紹介している就農支援資金のリーフレットを差し上げてきたんですよ。対象になるかなとちょっと思ったんですけれども。

 ですから、最初のきっかけはいろいろあると。だけれども、あくまでもそこで頑張って、担い手として頑張っている希望ある青年たちに、やはり励ますような取り組みをもう少し考えてもいいんじゃないのか、そういう人たちも対象にしてもいいんじゃないのかなと私は思うんですけれども、どうでしょうか、伺います。

川村政府参考人 私どもの就農資金でございますけれども、農家の後継者の方でも、例えば、独立した分野を自分でやるとか、親をそのまま手伝うのではなくて一つの経営主体としてやる場合には対象になります。

 そういうことで、いろいろなケースを想定しながら、今後とも改善すべき点があれば改善をしていきたいというふうに思っております。

高橋委員 あと、時間ですので要望です。

 各市町村、都道府県でも、本当に独自の就農支援制度を持っていて、それが大いに活用されております。国としても、そういう状態をよく調査して、どこが一番青年の希望に即しているのか、そういうのを把握して改善を図っていくことを要望して、終わりたいと思います。

 以上です。

高木委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本であります。

 まず最初に、新たな食料・農業・農村基本計画の検討における農業委員会の役割についてお伺いをしていきたいと思います。

 現在、その基本計画の見直し作業が行われています。昨年八月の大臣の談話の中で、新たな基本計画の策定に当たって三つの課題について検討する、いわゆる主要三課題ということであります。

 一つは、直接支払いも視野に入れた、地域農業の担い手の経営を支援する品目横断的な政策への移行、二つ目は、担い手・農地制度の改革、三つ目が、食料安全保障や多面的機能発揮のために不可欠な農地、水等の地域資源の保全のための政策の確立ということでありますが、この三課題について検討しながら、この基本計画の見直し作業を、七月の中間論点整理ということで、三月に答申をするということの予定でありますが、この中で指摘されている担い手・農地制度の改革あるいは農地、水等の地域資源の保全のための政策という点は、農業委員会の役割と深く関係していくのではないかというふうに思います。

 そこで、この新たな基本計画の検討の中で農業委員会はどのように位置づけられていくのか、そして、今回のこの改正案との関連はどうなっていくのかということについて、大臣からお伺いします。

亀井国務大臣 今御指摘の来年三月を目途に、食料・農業・農村基本計画の見直しの一環として、担い手・農地制度の見直し、この検討をお願いしておるところでもございます。その際、望ましい農業構造、土地利用を実現するために、地域の合意形成を基本といたしまして、農地の集団化が一層図られるような農地の流動化施策、これの見直しを行うこととしておるわけであります。

 そういう中で、今回の農業委員会法の改正、これにおきましては、先ほど来いろいろ申し上げておりますとおり、総花的であったこれまでの農業委員会の業務の見直しを行いまして、担い手への農地の利用集積など構造政策の推進、こういう本来担うべき業務に重点化を図り、その積極的な取り組みを促進すること、このように考えておるわけでありまして、今回の農業委員会法の改正によります農業委員会の業務の見直しは、今後の食料・農業・農村基本計画の見直しの方向に合わせて担い手への農地の利用集積を促進するもの、こういうことで考えておるわけであります。

山本(喜)委員 担い手への農地の集積ということのための重点化ということでございますけれども、確かに農業委員会の任意業務ということでは優良農地の確保あるいは農地の有効利用ということも挙げられています。しかしながら、耕地面積、昭和三十六年のピーク、六百九万ヘクタール、これが平成十五年には四百七十四万ヘクタールに減っているわけでございます。

 その一方で、食料自給率は二〇一〇年に四五%にしていくという目標は持っているわけですが、この目標を達成するためにはどの程度の農地が必要なのか、お願いします。

金田副大臣 平成二十二年までの食料自給率四五%という目標を掲げて、我々、政策を推進させていただいているところでございます。

 確かに、耕地面積四百七十四というお話ありましたけれども、耕地面積減っておりますけれども、平成二十二年の目標では四百七十万ヘクタールという形で見込ませていただいているところでございます。

 これと食料自給率との関連でございますけれども、決して耕作面積だけで自給率が上がっていくというふうには我々考えておりませんで、ほとんどこんなにまで、四〇%までに自給率が落ち込んでしまったということは、極めて食生活の変化、昭和三十年代では八十何%の自給率があったわけでございまして、その大きな変化というのは、当時は米二俵ぐらい食っていたのが、今は米を一俵しか食わなくなった、一俵弱だというような食生活の変化に負うところが多いわけでございます。また、パン食に子供たちが変化した、そばやラーメンを食べるようになったというような食生活の変化が、この自給率、高度化というのもあるでしょう、肉食が相当多くなった、そういったこともございまして、四百七十万ヘクタールの耕地面積をしっかりと確保しながら、この四五%の達成に向けて、いろいろな消費面あるいは生産面、作目を何をつくるかということでも自給率は大きく変化してまいりますので、そういったことを踏まえながら、しっかりとやってまいりたいというふうに思っています。

山本(喜)委員 今、副大臣の方から四百七十万ヘクタールを見込んでいるというふうにありましたが、しかし、これは農業新聞のデータでありますが、今の予測ではこの見通しにはいかないというふうに書かれているんですね。危機信号がともっていると。この分析はどうなっているんですか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十五年におきます我が国の農地面積でございますけれども、先生お話しされましたように、四百七十四万ヘクタールという状況でございます。農地面積の減少のペースは鈍化している状況にありますけれども、最近年におきましても、年間約三万ヘクタール程度の減少という状況になっております。

 農業新聞に出たというお話でございますけれども、これは、仮に今後とも現在時点の趨勢、そのまま推移いたしました場合の農地面積を試算した結果でございまして、二つのケースでその試算をいたしております。

 ケース一番目といたしましては、平成十二年から十五年までの三年間の減少面積、これが平均約三万ヘクタールでございますので、これと同程度の面積が今後毎年減少するという見込みをした場合、そしてもう一つは、最近の農地面積の減少のペース、これが鈍化してきておりますので、それが、毎年の減少幅が三千ヘクタールずつ減少していくということを見込んだ数字として、それぞれ四百五十二万ヘクタールあるいは四百六十五万ヘクタールという数字を出させていただいたものでございます。

山本(喜)委員 今、減少のペースが鈍化してきていると言うけれども、年間三万ヘクタールという数字まで出ているわけです。そうした中で、四百七十万ヘクタールといっても、これは全く机上の空論といいますか、現実と合わないような見込みじゃないのかというふうに思うわけです。

 実際、耕作放棄地が農業新聞でも年間二万ヘクタールふえているという分析なんですよね。なぜこういうふうになっているのかという分析はどうなっているんですか。

太田政府参考人 耕作放棄地の発生の要因、さまざまございますけれども、私どもとしては、いずれにいたしましても、これを利用集積し、担い手をしっかり確保していくということがございますし、またその生産基盤の条件が不十分であることによってなかなか効率的な農業が行えないということから、それに対しましての基盤整備事業の実施、あるいは特に中山間地域においては条件がより厳しいということから、耕作放棄の可能性が高いということでございます。

 これに対しましては、中山間地域におきます農業の生産性の条件の不利性を補てんしていこうという直接支払い等をしていくということでございまして、今対応しておりますこととその原因とはそれぞれ関連した状況になってございます。

山本(喜)委員 確かに中山間地、直接支払い等はやっていますけれども、現状、高齢化がどんどん進行しているということとか、後継者不足という問題は何ら解決していないわけなんですよ。

 九三年度から認定農業者制度ということも取り組んできているわけですね。しかし、この認定農業者に対する農地の集積というのも今進んでいないという現状にあります。これが今度の計画の見直しで、プロ農家の育成、認定農業者からプロ農家という、名前を、看板を変えても、結局同じことの繰り返しになるんじゃないか、そういう心配があるんですが、その抜本的な対策というのをどういうふうに考えていくのか、その点についてお伺いします。

川村政府参考人 優良農地の確保とその有効利用というものが非常に課題でございます。そして、担い手への土地の集積というものも非常に重要な課題となっております。

 一つは、遊休農地の解消に向けまして、さきの国会におきまして基盤法改正をいたしまして、遊休農地の解消に向けた計画制度、そういったものも出ておりまして、またここで農業委員会が重要な役割を果たしてもらいたいというのが一つございます。

 それから、今地域の水田農業ビジョンづくりという中で、各地域において担い手を明確化するという作業をしております。今まで地域の合意に基づいた担い手像というものがなかなかなくて、土地の集積が思うように進まない、仮に集積が進んでも、質的には非常にたくさんの田んぼなりに分散をしておりまして、非常に効率が悪い、その質の向上を図らなくちゃいけない、こういう課題がありまして、それに対応するには、土地改良事業等とセットとなった集積なり、あるいはそういった今各地で行われております担い手を明確化することによって地域合意のもとに一挙に集積を進めていくといったような施策も必要でございます。

 さらに進めるための施策が考えられないかということで、今の基本計画の見直しの中でも、さらなる充実がないかということでの検討をしているところでございます。

山本(喜)委員 優良農地の確保、そして担い手に対する集積ということで、そのために農業委員会の役割というのは大変重要になるわけだと思います。

 しかしながら、今回の改正案、非常にスリム化ということでございまして、国のかかわりがどんどん減って、市町村の裁量に任せるということになっているわけですが、今やらなきゃならない優良農地の確保と担い手への集積というのが、この法律で国の関与をどんどん外していって、しかしながら、その一方で、今いろいろ重点化とか言っていますけれども、この整合性がどうもよくわからないんですよね。スリム化というと、何か、要するに予算を減らしていって仕事を減らしていくというふうな感じに受け取れるわけですし、実際これから二割も交付金を減らしていくわけでしょう。そうした中で、どうしてこの農業委員会制度を重点化して優良農地を確保していくのか、そういうことが実際担保されるのかどうか、これは全くよくわからないんですけれども、説明をお願いします。

川村政府参考人 今回の改正におきまして、一つは、業務を重点化するということも一つでございますし、また、体制を整備する、連携を強化するという意味では、土地改良区を推薦母体に加えるということもしてございます。

 それから、昨今急速に進んでおります市町村の広域合併、これに対応いたしまして、一定規模以上の農業委員会については農地部会を複数設置するということで機動力を高めるといったようなことでの対応もしております。

 それから、今後の農業委員会の業務を非常に効率化していく上では、最近IT技術等も非常に進んでおりまして、地図情報、こういうものの活用も非常に有効であります。この活動の広域化や業務量の増加に対応するための有効な手段ということで、十六年度におきましても、農地の調整円滑化対策事業等、予算措置も講じておるところでございます。

 そういうことで、組織のスリム化等は進めますが、業務の重点化なり効率化、先ほど言いましたようないろいろなIT技術等の活用、そういうものも通じまして、これまで以上の業務の遂行は十分確保できるというふうに考えております。

山本(喜)委員 今の答弁をいただきましたけれども、もう一度確認したいんですけれども、農業委員会の選挙委員定数を、下限をなくして市町村の裁量にゆだねるということでございますけれども、例えばこれぐらいの農地面積には、あるいは農家数のところには何人ぐらいの農業委員という形での目安はあるんですよね。その目安に基づいて、国としては移譲の指導はしていくということでいいんですよね。

川村政府参考人 現在の規定では、選挙委員の定数は十名から四十名となっておりますが、この中の区分といたしまして、区域内の農地面積、それから農業者数に応じまして政令で定数の上限を定めております。

 例えば、農地面積が五千ヘクタールを超えるとか、かつ基準の農業者数が六千人を超えるような場合については四十名ということが上限になりますし、それ以下のところは三十名、あとは二十名というふうに基準をつくっております。これは存続をいたします。

山本(喜)委員 その基準が存続するということでありますから、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 それと、大臣の談話で出されました、環境保全、農地、水等の地域資源の保全のための政策についてという点についてでございますけれども、これは、農業の構造改革が進んでプロ農業経営が大宗を占めたときに、集落ぐるみで維持してきた農業水利の維持管理をどうするのかということに関連すると思うんですが、大臣が言っているその環境保全、地域資源の保全という検討課題、これがどういうことを意味しているのか、お伺いします。

亀井国務大臣 農地また水等の地域資源、これは我が国の水田農業を中心とした農業の営みの中で形づくられておるわけでありまして、私は、まさにこれは地域の共同活動により守られている、こういう認識でおりまして、食料の安全保障、あるいは国土の保全、多面的機能の発揮、こういう面では不可欠なものである、このような考えを持っております。まさに社会共通の資本である、こう申し上げてもよろしいかと思います。

 こうした地域資源、これは一たん崩壊してしまうと復元に多大な時間や経費がかかるわけでありまして、近年、農村の高齢化や混住化、こういうような進展の中で、適切な維持保全が困難になっているわけであります。

 そういう面で、今回の基本計画の見直しの中で、企画部会で今いろいろ御議論をいただいておりますが、農地と水の資源保全、あるいは増進させる施策、そういう面で、品目横断的な政策、あるいは担い手、農地制度の改革とあわせて検討をしていただいておるところでもございまして、この検討状況を踏まえまして、基本計画の策定、そういう中で、農地、水等の資源につきまして具体的な施策に反映してまいりたい、私はこのように考えております。

山本(喜)委員 今、大臣から集落の果たしてきた役割というのを話されました。

 ですから、これから、担い手への集中ももちろん大事ですけれども、やはり集落というものをどういうふうに維持していくのか。これは、兼業農家、あるいは高齢者も含めて、集落全体で維持してきた大事な財産ですから、これが維持できるようにということでの農業政策の展開というものをよろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

高木委員長 次回は、明十四日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.