衆議院

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第11号 平成16年4月14日(水曜日)

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平成十六年四月十四日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 高木 義明君

   理事 北村 誠吾君 理事 西川 京子君

   理事 松下 忠洋君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 小平 忠正君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      小野寺五典君    梶山 弘志君

      金子 恭之君    木村 太郎君

      後藤 茂之君    佐藤  勉君

      田中 英夫君    玉沢徳一郎君

      津島 恭一君    永岡 洋治君

      西村 康稔君    野呂田芳成君

      二田 孝治君    岡本 充功君

      鹿野 道彦君    金田 誠一君

      岸本  健君    楠田 大蔵君

      篠原  孝君    神風 英男君

      仲野 博子君    楢崎 欣弥君

      堀込 征雄君    松木 謙公君

      西  博義君    高橋千鶴子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   参考人

   (全国農業会議所専務理事)   中村  裕君

   参考人

   (福島県飯舘村農業委員会会長)   佐野ハツノ君

   参考人

   (女子栄養大学大学院客員教授)   高橋 正郎君

   参考人

   (自治労農業改良普及評議会事務局長)   須之内浩二君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)

 青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案、農業改良助長法の一部を改正する法律案及び青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 各案審査のため、本日、参考人として、全国農業会議所専務理事中村裕君、福島県飯舘村農業委員会会長佐野ハツノ君、女子栄養大学大学院客員教授高橋正郎君、自治労農業改良普及評議会事務局長須之内浩二君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考とさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、中村参考人、佐野参考人、高橋参考人、須之内参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、中村参考人にお願いいたします。

中村参考人 おはようございます。ただいま委員長から御紹介いただきました全国農業会議所の中村でございます。

 先生方には、日ごろから何かとお世話になっております。また、きょうはこういう機会をつくっていただきまして、本当にありがとうございます。私は、現在御審議をいただいております農業委員会等に関する法律の一部改正案につきまして、賛成の立場から意見を申し述べたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。

 まず初めに、今回の制度改正の基本的な視点について申し上げたいと存じます。

 農業委員会は、先生方も御案内のとおり、市町村に置かれた行政委員会といたしまして、農地法、農業経営基盤強化促進法、土地改良法などの法令に規定される業務を行う法令業務の執行機関という役割と同時に、優良農地の確保や耕作放棄地の解消、認定農業者などへの農地の利用集積などの取り組みを行う農業構造政策の推進、実施機関という二つの役割を担っております。

 農業委員会系統組織も、土地・農地と人・担い手をスローガンにいたしまして、担い手につきましては、昭和三十二年から農業経営の法人化を訴え、また認定農業者につきましても、長い間この制度の創設運動を行ってきたところでございます。

 御審議をいただいております改正法案は、地方分権だとか市町村合併などが進む中で、こうした役割をさらに発揮することができるよう、地域の実情に即した組織運営を図ることと、活動の重点化あるいは効率化を促すものというふうに認識をしているところでございます。

 また、今回の改正法案は、昨年四月に農林水産省が取りまとめました農業委員会に関する懇談会報告の指摘を受けまして、私ども農業委員会系統組織が、現場から積み上げて意見を集約いたしました基本的な考え方を踏まえているものと考えております。

 特に、農地法などの法令に基づく業務は、国の責務であります食料の安定供給の基盤となる公共財としての農地の確保に大きくかかわるところでございますし、農地の所有者等の個人財産権にも大きな影響を及ぼすものでございます。したがいまして、その処理につきましては、全国における統一性あるいは公平性、そしてまた客観性の確保が強く求められるものでございます。

 このため、農業委員会の必置規制の基本的な考え方を堅持することがまず重要だというふうに考えております。あわせまして、適正な法令業務執行の実効性を確保するという観点から、今後とも農業委員会交付金が堅持されることが不可欠であるというふうに考えているところでございます。

 このような基本的な視点に立ちまして、主な改正内容について意見を申し上げたいと存じます。

 第一点は、農業委員会の必置基準面積の算定方法の見直しに関連をいたしまして、生産緑地地区以外の市街化区域内農地を除外するという点でございます。

 当初の検討におきましては、市街化区域内農地すべてを除外するというものであったというふうに仄聞をしております。生産緑地地区は、長期営農の義務づけがございますし、農業委員会といたしましても、管理業務があるだけではなくて、都市地域にとって貴重な生産基盤でございますし、かつ緑地として、また空間として大きな意義を持つというふうに考えております。

 この点につきましては、都市地域の農業委員会からさまざまな意見が出されました。都市地域の農地と農業委員会の役割が改めて評価をされたものとここで理解をしております。今後とも、適切な国土運営の一環として、都市農業の振興をお願いしたいと存ずる次第であります。

 問題は、政令に規定されます必置基準面積でございます。農地の総量確保あるいは農地利用の管理、農地法などの法令業務の適正な執行に支障のない範囲で、その水準で決定をいただくよう特段の配慮をお願いしたいと存じます。

 第二点は、選挙委員の下限定数十名の条例への委任であります。

 この点は、現在、農業委員会の三分の一が選挙委員定数を下限の十人としている実態が踏まえられているというふうに思いますが、この下限定数の設定につきましては、地域の実情と自主性を尊重するというものであろうかと思います。

 なお、このことに関連いたしまして、選挙委員数が選任委員数を上回るということが政令で規定されると聞いておりますので、農業委員会の基本的な性格、あるいは農地法等の適正な執行に支障を与えることなく、一定のスリム化に対応できるのではなかろうかというふうに考えております。

 また、選任委員の団体推薦に土地改良区を加えるということになっております。土地改良区は、換地計画などを通じまして面的整備と担い手への農地の利用集積に取り組んでおりますので、計画段階から相互に連携を持っておくことが必要だという現場からの強い意見にこたえるものでございます。なお、土地改良区の参画に当たりましては、条例によって地域の実情に即して行うということになっております。

 第三点は、農業委員会の業務の農地と経営対策への重点化でございます。

 農業委員会法第六条二項の、地域農業に関する振興業務、いわゆる任意業務でございますが、これにつきましては、昭和三十二年の改正以来、見直しが行われてございません。今回の改正は、食料・農業・農村基本法第二十一条の、望ましい農業構造の確立、そして第二十三条の、農地の確保及び有効利用についての農業委員会の役割を明確にするものというふうに考えておりまして、今日的な視点から見直されたものというふうに考えているところでございます。

 農業委員会は、構造政策が始まって以来これまで、構造政策の推進の担い手といたしまして、農地の流動化あるいは担い手の育成と確保、農業経営の法人化の促進など、重点的にその役割を果たしてまいりましたので、業務を再整理し、明確にしたものだというふうに理解をしておるところでございます。

 以上が改正の主な事項につきましての意見でございます。

 最後に、私どものみずからの活動と組織の改革への取り組み、また組織の強化について申し上げたいと存じます。

 農業委員会系統組織は、平成十三年の一月から農業委員会系統組織の改革プログラムを策定しております。これは、二十一世紀の組織理念といたしまして、かけがえのない農地と担い手を守り、力強い農業をつくるかけ橋という理念を定め、組織運動といたしまして、地域農業再生運動を基礎にした、組織と活動の改革に取り組んでおるところでございます。

 その内容でございますが、活動の改革につきましては、一つは、農業者や地域の声を実現する取り組み、二つには、認定農業者など担い手への支援の取り組み、三つ目は、農地を守り、生かすための地域運動への取り組み、四つ目は、農と住の調和のとれた農村づくりと食と農への国民理解の促進に向けた取り組みを柱といたしまして、認定農業者との意見の交換会あるいは農地パトロール、担い手育成の視点に立った農地の利用集積などに積極的に取り組んでいるところでございます。

 このような中で、市町村合併に伴いまして、農業委員数の大幅な減少が予想されます。私どもといたしましても、農地の確保と有効利用、担い手の育成などの役割の発揮に向けまして、農業委員と農業者、あるいは農業委員と地域との結びつきが弱体化しないように、農業委員会協力員の設置などを見まして、これまでも実態的な取り組みを行ってきておるところでございますが、この改正を機に、さらなる体制整備について特段の御配慮をいただければというふうに考えております。

 組織の改革につきましては、一つは、農業委員の地区担当制の整備と徹底をしております。二つ目には、農業委員定数の適正化に向けた取り組みでございます。三つ目は、青年農業者あるいは女性の選出の推進を行っております。四つ目は、農業委員会の広域連携システムの確立に取り組んでいるところでございます。

 こうした組織運動の結果、女性の農業委員も、現在二千二百人を数えるに至っております。また、女性の農業委員会の会長さんも、本日御出席をいただいております佐野会長初め、全国で六人が誕生を見ております。認定農業者の農業委員も八千三百人を超えておりまして、成果を上げつつあるというふうに思い、今後も引き続き運動に取り組んでまいる所存でございます。

 さらに、遊休農地の解消を現場で進めていくために、インターネットを活用しました「かけがえのない農地を守り、活かす運動」、また、同じ行政委員会でございます教育委員会等とも連携をいたしまして、食農教育に取り組んでおります。こうした取り組みを通じまして、貴重な資源である農地を確保いたしまして、次の世代につなげるとともに、地域における農業や農地の大切さを訴えまして、食料・農業・農村基本法の四つの理念の実現に向けて努力を重ねてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 また、この達成のためにも、今回、経営支援三法は非常に重要な意味を持つというふうに思っております。普及事業あるいは新規就農対策は、我々農業委員会の活動とは密接不可分の関係にございます。前回の農業委員会の研究会におきましても、農業委員会は関係機関あるいは団体の扇のかなめの役割を持つというふうに指摘をされております。一層連携に努めてまいりたいと存じます。

 また、就農支援資金の対象に受け入れ側の農業法人等を追加することは、まことに時宜を得たものであり、私ども全国農業会議所の新規就農フェアなどに見えられます就農希望者を、一人前の農業者とするために重要な役割を果たすのではなかろうかというふうに理解をしているところでございます。

 以上、時間の関係から、いろいろ割愛して十分に申し上げられませんでしたけれども、以上をもって私の意見といたします。今国会での早期成立と、私ども農業委員会組織への一層の御理解と御支援をお願いいたしまして、終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

高木委員長 ありがとうございました。

 次に、佐野参考人にお願いいたします。

佐野参考人 ただいま御紹介いただきました飯舘村農業委員会の佐野と申します。

 初めに、衆議院農林水産委員会にお招きをいただきまして、ありがとうございます。意見陳述の機会を与えていただきましたことをありがたく思います。委員の皆様には、日ごろ、農業、農村の振興に格別の御尽力をいただき、心より感謝申し上げております。

 私は、こういった国会審議の場に立つのは何しろ初めてでございます。大変緊張しております。委員の皆様の中に女性の方がいらっしゃるのを拝見いたしまして少し安心いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、村を愛する思いと農業を誇りとして生きている思いをあらわして、自分の名刺に「この土に私のすべてがあります この村に私のいまがあります」と書いています。

 この飯舘村は、福島市と原町市のほぼ中間にございまして、気候や土地条件は厳しく、決して住みやすいとは言えません。標高四百ないし六百メートルの高地のため、やませの影響が大きく、五年ないし十年に一度は冷害に見舞われる地帯でありますが、基幹産業は農業です。水稲を中心に、冷害に強い農畜産物として、黒毛和牛、葉たばこ、野菜、花卉などの産地化を図っています。農家戸数はほぼ千三百戸ですが、ほとんどが兼業でございます。私の家では、私と夫、長男の三人で専業農家です。水稲九ヘクタールを中心に、葉たばこ百三十五アール、和牛三頭という複合経営を行っております。

 平成元年に、村主催の若妻の翼と称した、若い層の主婦たちの海外視察団に参加して以来、豊かな生活とは、どこに住むかではなく、どう考え、どう生きるか、どう自分で人生をつくっていくかが大切なのだと思えるようになりました。それ以後、物事に主体的に取り組むように努力しております。

 その一つとして、平成五年から、我が家の部門経営として葉たばこの経営者となり、当時六十アールの作付から、現在百三十五アールまで規模拡大してまいりました。夫は平成七年に認定農業者になっています。また、平成八年から就農している長男も、二年前から経営者となり、現在、認定農業者の申請を受けているところでございます。

 それから、先生方に大変お世話になって抜本的な改正をしていただきました農業者年金にも、家族経営協定のもとに三人が加入しております。同時に、農業委員として、地域の農業者の方々に農業者年金のよさを説明し、加入の推進を図っているところです。

 農業委員は、平成八年に農業委員統一選挙で初めて公選による選挙委員として当選し、現在三期目でございます。当時はまだ女性農業者が農業委員に立候補するということは珍しいことでしたが、私の村では、男女共同参画の目覚めの時期でもあり、私ともう一人の女性農業委員が誕生しました。現在は、私を含めて三人おります。平成十四年には、委員の皆さんの後押しにより、会長に選出されました。

 それでは、今回の農業委員会制度の改正法案について、先ほど全国農業会議所の中村専務さんのお話にもありましたように、私も今回の改正法案については賛成でございます。そうした立場から、現場の女性の農業委員として、また一人の農業者として意見を述べさせていただきます。

 皆様のお手元にお配り申し上げました資料をごらんいただいたことと存じますが、農業委員になって、あるとき、農業委員というのは何をやっているの、何も仕事をしていないじゃないという声を聞きましたので、私は、農業委員会で寸劇をしようと提案し、なかなか人の目に見えにくい農業委員の仕事や活動の内容、あるいは農政問題などを表現しましたところ、農家や地域の方々から、農業委員というのはいろんなことをやっているんだね、農政の問題もわかったよと評価をいただきました。また、農業委員自身の勉強にもなり、委員としての自覚も高まってまいりました。

 そういう意味から、今回の法律改正で、農業委員会の業務、特に六条二項業務を重点化し、農地の確保と有効利用、農地の利用集積、法人化等の取り組みを明確にすることの意義は大変大きいものと考えます。農業者や地域住民から、農業委員会に対してのイメージも、単なる農地制度の許認可機関だけではなく、もっと行動的な組織であることを受けとめていただけるものと思います。それだけに、私たち農業委員みずからも、これまで以上に意識改革を図って、行動する農業委員会としての積極的な活動を実施する必要があります。

 私たちが全国運動として進めております地域農業再生運動については、福島県下の九十農業委員会が、一・一・一運動と名づけて、各農業委員が月に一度は農家を訪問し、農家が抱える課題や問題などを、カードを利用しながら相談活動を行っております。飯舘村農業委員会でも、毎月の農家訪問の内容について定例会の場で農業委員が三名ずつ報告しまして、委員会で検討しております。

 また、農業委員一期のうち、一つのカップルを仲人する結婚対策や、農家の家族経営協定の締結にも取り組んでいます。家族経営協定の締結は、農業委員として模範を示そうと私が村第一号となり、現在四組できました。ことしは三組を目指しております。

 農政上の大きな課題となっている担い手への農地利用集積については、利用権設定面積が百九十九ヘクタール、設定率は七%です。山間部にある飯舘村の場合は、どんどん集積が図られるという状況ではございません。

 しかし、若い人たちの他産業就業が多くなる中で、担い手が少なく、高齢化し、農地の遊休化も心配になっています。このため、農地利用現況図をもとに、地域担当の農業委員が農地パトロールと相談活動を行い、利用権設定に結びつける活動を実施しています。しかし、地域の中にはいろいろしがらみもございます。幾ら汗をかいても実績にならない場合もございます。

 一方、今回の改正では、市町村合併の進展や地方分権の推進の中で、農業委員会の組織のスリム化や効率化を図ることになっています。新しい時代に対応するためにはこうした措置は必要と考えますが、単に農業委員会や農業委員の数を少なくすればいいというものではないと思います。

 私たち現場の農業委員会は、地区担当制により農業委員一人一人がその地域に責任を持って、農地パトロールや地域の人の相談活動を行っています。そのためには、地域の人の顔や農地の権利関係といったことに精通していなければなりません。このために、活動の範囲はおのずと限界があります。市町村合併により農業委員の数は減少しますが、一方で、農地面積は大きくなり、農業委員一人当たりの守備範囲はこれまでに比べてかなり拡大することになります。

 また、ここ数年、農業委員会交付金が削減され、その上に必置規制の廃止や一般財源化の問題も議論になっていると聞いていますが、農業委員一人当たりの報酬は平均で月額二万五千円ぐらいですが、地域の農地利用の管理や市町村農政の推進に当たって大きな役割を担っています。その農業委員会がなくなるようなことになれば、地域の農地や農政は大変なことになります。日常の農業委員活動はボランティア的であり、それだけに地域の農業、農業者にとって欠かせない存在であるということをぜひ御理解いただきたいと存じます。

 ちなみに、私は、村議会へ出席要請を受けて、定例会、臨時議会など開催中に報酬はいただいておりませんが、年間合わせて三十日ぐらいは出席して答弁を行っております。

 先ほど申し上げましたように、女性農業委員が増大して農業委員会活動に新しい風を吹き込んでいるところですが、今後、市町村合併等により農業委員の数が減少する中で、そうした動きにブレーキがかかることが心配されます。この点についても、どうか心にとめていただき、御対応をお願いできればと存じます。

 最後に、今回の改正で市町村の裁量権が大きくなるわけですが、特に食料生産の基盤である農地を守るための法令業務については、市町村によってその扱いに差があっては困ります。この点は、国としてしっかりとした対応をお願いいたします。

 以上、現場の農業委員として、また農業者として意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

高木委員長 ありがとうございました。

 次に、高橋参考人にお願いいたします。

高橋参考人 おはようございます。女子栄養大学の高橋でございます。こういう機会を与えていただいた委員長ほか皆さんに、まずは感謝したいと思います。

 さて、私、農林水産省の試験研究機関あるいは大学において、長く農業経営問題あるいは地域農業問題を研究してまいりました。特に社会科学の立場から日本農業のあり方を論じてまいった者でございます。その関係から、平成十四年の八月から昨年、十五年の三月にかけて農林水産省の経営局長のもとで開催されました普及事業の在り方に関する検討会、その座長を務めさせていただきました。

 したがいまして、本日のここでの発言は、経営支援三法のうち農業改良助長法改正案について主に意見を述べさせていただきたいと思います。時間がありましたら、残る二つの法案についても意見を述べたいと思っております。

 まず最初に指摘したいことは、現在、農林水産省あるいは国全体で、本年度末に予定されています新たな食料・農業・農村基本計画、これを樹立する、策定するために農政改革が進められております。

 その農政改革のキーワードを文書で見てみますと、一つは、消費者、生活者の視点を重視するということ、二番目は、WTO、FTA等のグローバル化への対応を考えていこう、それとあわせて、重要なキーワードでございますが、国から地方へ、あるいは官から民へというキーワードが出ております。実は、この改良助長法改正についても、この国から地方へというキーワード、農政改革の一つの理念が実現しようとしているというふうに私は考えております。

 そういう意味から、三点に絞って、今回の農業改良助長法改正案について、それの意義と評価を述べさせていただきたいと思います。賛成の立場から発言させていただきます。

 これまでの農業改良普及事業、これは国と都道府県が協同して行う協同農業普及事業で一元化されておりました。しかし、今回の改革、これは特に、この改正案の背後にあります、先ほど申しました普及事業の在り方に関する検討会の報告書、これがバックにあると私は理解しておりますが、その報告書の理念などを踏まえて申し上げますと、これからの普及事業は一定の重層的な中で展開していく必要があるだろうと。

 一つは、国と都道府県が協同して行う協同普及事業。それからもう一つは、都道府県が固有に展開する独自の都道府県の普及事業、これが二番目のランク。三番目のランクが、例えば税理士だとか社会保険労務士だとか、各種コンサルタント機能を持っている民間が、農業経営を支援する局面。この三つが重層して農業経営を支援していく方向をとることだろうというふうに理解しております。

 したがいまして、ここで論議されている農業改良助長法の改正案、これはその三つのランクのトータルを審議するのではなくて、その中の一部の協同農業普及事業について規定するということでございます。そういうふうに私は理解しております。

 そういう意味から、まず強調したいことは、この農業改良普及助長法改正案が、地域農業の実態に即して展開する第二のレベル、要するに、都道府県が独自に展開する普及事業とのかかわりにおいて、可能な限り都道府県に、あるいは地方へ自由裁量の余地を残す、あるいは譲るという改正ということが一つの大きな流れになっているというふうに解釈いたします。これは国から地方へという農政改革の理念に沿うものであるというふうに私は考えております。

 具体的な改正案の中身でございますが、地域農業改良普及センターの必置規制を廃止して普及指導センターを設けることができるというような形に改正されたというのは、結局は、都道府県に自由裁量の余地を残したものだというふうに私は評価しております。

 二番目は、そうはいいましても、国と都道府県が協同して行う協同農業普及事業、これのあり方は一体どうすべきであるのかということが当然論議になります。

 そこで、考えられるのは、ややもすれば、普及活動、普及事業が、便利屋あるいはよろず屋として、農家の要請されるもののすべてに対してこたえるような便利屋になってしまう。そこが、ややもすれば、外から見て普及事業は何をやっているのかよく見えないというような批判が聞こえてまいりました。そこで、どうにか普及事業を、国と都道府県が協同して行う協同普及事業については重点化をしていく必要があるだろうということを検討してまいりました。

 その結果、その重点項目は二つございまして、一つは、高度先進的な、専門化した技術を指導する機能、要するに、高度な技術指導ということを進めていこうじゃないかと。

 普及事業の関係者の中には、普及事業でしっかり育ってきた農業生産法人、これはもう自分たちで自立して技術開発もできるようになったから普及の対象から外していいんではないのか、あるいは普及の卒業生として考えていいんではないのかというような論議が一時あったやに聞いております。しかし、それではいけない。やはり国際的な競争力を、先進的な農業経営である農業生産法人の担い手の人たちに対しても十分サポートできるような高度な技術を普及する、その担い手であるということ、これが第一点でございます。

 第二点は、関係機関等との連携をもとに推進する地域農業のコーディネート機能でございます。

 これはいわゆる企業的な農家といいますか、いわゆる先進的な農業生産法人、これはある意味で点的な存在でございます。しかし、農業というのは面的な広がりの中でその面をカバーした形で展開する必要がございます。その面的なカバーを行うというためには、新たな普及指導員の活動領域として、今申しました関係機関との連携をもとに面的な農業を維持していく、そういう役割を果たす必要があるだろうという、これが二番目でございます。この二つの機能に重点化していくことが必要であるだろう。

 これは、一般の企業において、経営戦略の中でコアコンピタンスという概念がございます。これは、企業が多角化をしていきますといろいろなものをやってしまう。ただ多角化しただけではなくて、どこを重点的に経営資源を集中させていくのかというような、いわゆる得意分野は一体何であるのか、あるいはその企業の中で最も競争力がある部門はどこか、これを明確にしながら経営戦略を練っていこうというのが経営学で言うコアコンピタンスという概念でございます。

 普及事業も今までいろいろやっておりました。農家の要請に従ってよろず屋のように何でもやっておりましたが、その中で、本当に普及でなければできないような、あるいは市場メカニズムで対応できないような領域とは一体何であるのかということを考えて進めていこうというのがこの二つの重点的な機能でございます。そういう重点化ということが今後の改正の中で重視されております。

 専門技術員及び改良普及員を一元化するというもの、それから、農林水産省令で定めるところによる普及指導員の資格試験に合格した者その他政令で定める資格を有する者を普及指導員とすると。今までの普及員の資格試験は各都道府県でやっておりました。これを国レベルにまとめよう、あるいは今まで国がやっておりました専門技術員の試験、これを全体の普及員に広げていこうということで、普及職員のレベルアップを考えるということがこのコアコンピタンスに従う改正点ではないかというふうに考えております。

 それから、三番目の重点は普及員手当の上限の廃止の問題でございます。

 これにつきましても、都道府県がみずからの判断で地域の実態に応じて運営する都道府県独自の普及事業、あるいはそういった一元化ということは、地域の実態に合ったような形で展開していくことだということで、上限を廃止して、都道府県は条例に定めるところにより普及員手当を支給することができるということを指摘されている、改正しようという点につきましても、私は評価できるというふうに考えております。

 以上のように、今回の改正案は賛成でございますが、ただ、これを進めるに当たって、国並びに都道府県に期待したい点を、若干私の私見として述べさせていただきたいと思っております。

 繰り返して述べておりますように、この改革は、国から地方へという農政改革の方向、あるいは理念に沿うものでございますので、それを確実に進める必要があろうかと思います。

 国は、今回の改良助長法の改正に合わせて、関連する政令、省令の改正、それから運営指針やガイドライン等が国によって策定されることになろうと思います。その際も、可能な限り権限や意思決定を地方に移譲し、都道府県の自由裁量の領域をより多く残す方向で改正していく必要があろうかと。これは、繰り返し申し上げますように、農政改革の国から地方へという理念の成果を高めることにつながろうかと思います。

 他方、都道府県に対しましては、農業普及指導事業には、この改良助長法が規定する協同農業普及事業だけではなくて、もう一つ、都道府県が固有に展開する独自の普及事業というものが存在するということを十分理解した上で、それぞれの地域に応じた、例えばA県ならA県の農業改良普及指導大綱のようなものをそれぞれ県レベルでつくっていただきたい。私は、若いころから、自治体農政という一つの概念を提起しまして、国の農政と違う自治体農政の必要性を論じてまいりました。同じように、ここで自治体固有の普及事業の展開を強く期待するものでございます。

 さて、時間がほぼ参りましたが、残る二法案について簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、農業委員会法改正案につきましても、これも先ほど申しました農政改革の理念である、国から地方へ、地方の裁量権を多くしようというような流れ、それから重点化、コアコンピタンスを明確にしようということで、例えば、委員会の必置基準面積の見直しだとか、あるいは選挙委員の下限定数の条例への委任、あるいは部会設置の弾力化等はできるだけ市町村に権限を移譲したというふうに私は理解し、賛成でございます。

 それから、コアコンピタンスとして、例えば、農業改良あるいは病虫害の防除などの機能もかつての農業委員会法には書いてございましたが、そういうものをやめて、法令に基づく業務以外には、農地の確保、効率的利用、それから法人等の農業経営の合理化というふうに重点化したということは評価できることだと思います。

 青年等就農促進法の改正につきましても、これは担い手育成のために非常に重要であり、しかもその若い担い手が農業法人、農業生産法人に就農する者がふえてきた、そういう点から、この法律の中に農業生産法人も含めるという点で意義あるものだというふうに評価させていただきたい。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

高木委員長 ありがとうございました。

 次に、須之内参考人にお願いいたします。

須之内参考人 おはようございます。自治労の須之内と申します。

 私自身、二十一年間、現場で改良普及員をしてきたということもありまして、きょうは現場の普及員の代表という形で意見を述べさせていただきたいと思っております。

 今回、三つの法律があわせて御審議されているということでございますけれども、私自身は、普及員ということで、農業改良助長法にかかわっての意見を述べさせていただきたいと思いますけれども、担い手育成につきましても、また農地に関係する部分につきましても、私どもに深くかかわってくることでございますので、冒頭、簡単に担い手育成あるいは農業委員会のことに関しまして意見を述べさせていただいた上で、農業改良助長法に関する意見を中心にお話をさせていただきたいと思います。

 まず、現在の農業について、担い手の育成あるいは優良農地を確保するということについては、非常に重要なことであるというのは全く異論のないところであると思います。このような状況のもとでこの法改正がなされるということにつきまして、簡単に意見を述べさせていただきます。

 まず、担い手育成という中での一つの法人の役割というものを我々も非常に期待をしているところでございますけれども、普及事業としましても、後継者育成という部分については三本柱の非常に重要な一本ということで、これまでずっと取り組んできたところでございます。

 ただ、ここに来まして、やはり一つの役割分担という中で、例えば、指導農業士というような農村のリーダー的な方々に対して、担い手育成の一翼を担っていただこうというようなことで、具体的にそのような取り組みがされているわけですけれども、いかんせん、すべてがボランティアという形で行われておりますので、やはりそこには限界があるでしょうということを感じております。

 そういう点でいきますと、法人という経営の中で一つの後継者育成というものがなされていくということは、一定のリスクはございますけれども、非常に有効な形ではないかというように考えます。そして、今回の法改正によって、その一定のリスクという部分についても改善されるということであれば、我々も、今後の後継者育成、担い手育成の一つの形として非常に期待をしているところでございます。

 また、農業委員会のあり方ということにつきましては、なかなか私どもも深い部分については理解をいたしていないところではございますけれども、一定の仲間内での議論の中で感じることは、今回の農業委員会の関係する法律の改正につきまして、やはり普及事業と同様に、一つには補助金の問題、それから人数の問題、このスリム化ということが一つ前面に出ての議論が進められているという感がありまして、やはり十分に、農業委員会がどうあるべきか、これからの農地の管理、活用についてどうあるべきかというところの深い議論がもっとなされてしかるべきではないかなというようなことを感じているところでございます。

 そういう中で、我々仲間内の議論は、むしろ農業委員会の権限というものを強化して、しっかりと、地域の農地の管理にとどまらず、活用の部分も含めて地域のセンター的な役割を担ってもらうべきじゃないかというようなことが一つの意見として出てきております。

 今後、多様な担い手を求めるという中で、例えば株式会社の参入ということについて議論がございます。その参入についての是非は別にしましても、今後の農家あるいは農業経営の内容として、株式会社的にやはり利潤が上がらなければすぐに撤退というような、そういう感覚での経営というものが出てくることは明らかであろうというように感じているところです。そういうところへの対応としましても、やはり農業委員会にしっかりとしたそういう農地管理なり利活用なりという部分について権限を付与して、活躍をしていただくことがいいのではないかというようなことを感じているところです。

 優良な農地を確保していくということについては、都市部であれあるいは農村部であれ、非常に重要なことであるというように考えます。

 例えば、農村部であれば、優良な農地の確保、利活用というものが維持されることによって、農村社会そのものもしっかりと維持されていくというような側面もございます。また、都市部におきましても、身近な消費者と生産者の接点の場ということもありますし、また、農への理解を深めていただくというようなこと、それに対応して生産者サイドからもしっかりと安全な農産物、食料を提供していく、そういう関係が生まれてくるということが期待されております。

 そういうもろもろの面から考えましても、農業委員会というものが一定の広がりを持ってしっかりと確保されるということがやはり重要であるというように考えております。

 続きまして、基本的に農業改良助長法にかかわる部分でございますけれども、その前提としまして、考えなければならないことは、一つには、農業政策における国と地方の役割ということについてです。

 農業をめぐる課題というものは、単純に生産現場のみのものではなくて、例えば国内の食料需給の問題であるとか、あるいは国民に対する食料の確保というものであるとか、そして国土、環境の保全云々、多面的な機能という表現もされておりますけれども、そういったさまざまな課題が非常に幅広く存在しているということがございます。

 最近の事件性を中心に取り上げられている食の安全、安心という部分につきましては、例えばBSEの問題あるいは鳥インフルエンザの問題、こういう問題につきましても、やはり事件性というものがどうしてもクローズアップされますけれども、その裏に隠されている、隠れている本質的な問題についてしっかり目を向けていかなきゃならないんじゃないかというように考えています。今回の問題、背景には、例えば食料流通のグローバル化であるとか、あるいは農畜産物の生産の工場化であるとか、そういった問題が本質的にあるものと考えています。

 また、これについては、やはり消費者の責任ということも一つには見逃せないものであろうと思います。価格に目を奪われて本質的な部分を見てこなかったという部分では、やはり消費者もしっかり考えていただかなければならないことであろうというように考えています。食料の、食べるものの安全ということについて考えれば、基本的には自分でつくって自分で食べるということになろうかと思いますけれども、それができなければ、隣のうちから譲ってもらう。そして、その延長に、例えば地産地消という取り組みであるとか、国内の自給というものが存在するであろうというように考えています。そういう視点から、やはり消費者にも、みずからの食に対するしっかりとした目を持っていただく必要があるというように考えています。

 このように、食料、一つには量をどういうふうに確保していくか、その上でまた質をどういうふうに確保していくのかという問題につきましては、これは一義的に国の重要な責任であろうというようにやはり考えられます。一方で、そのように国から示された一つの方針あるいは仕組みという中で、実際に地域にあってその目的を達成していくのにはどうしたらいいのかという部分、手法の部分につきましては、やはり地方として、その地方の特性に応じて地方が考え、そして実践をしていくという点で、非常に重要な地方の、都道府県の役割であろうというように考えています。

 このように、農政、農業政策については、重要な国の責任というものもありますけれども、同時にまた身近な生活課題でもあるということから考えまして、やはり国と地方の役割分担のもとでしっかりと今後も実行されていかなければならないというように考えています。

 そのような基本的な考え方に立ちまして、普及事業としてもどのように進んでいくべきかというところを整理いたしております。国と地方の役割分担ということに関しましては、やはり農業改良助長法の根本でもあるということでございます。協同農業普及事業という形でこれまで実施されてきました、その国と地方の役割分担というもとでの事業の性格というものは、今後もやはり維持されていくべきであろうというように私どもは考えております。

 私たち現場の普及員としましては、余り大きくこの助長法改正の中で制度が変わってほしくないという思いがある一方で、やはり時代の要請に合った普及事業にしていかなきゃならないという考えも持っております。そういう中ではありますけれども、やはりこれから考えていく上で、変わらなければならない部分と変わってはいけない部分と一般的にも言われますけれども、やはり変わってはいけない部分というのも貴重な基本の部分であるというように考えています。

 その部分について若干整理したものが、きょうお手元に配付させていただいております資料です。簡単な資料で大変恐縮なんですけれども、その資料に基づいてこの後のお話を若干させていただきます。

 資料の中にも表現しておりますとおり、重要なのは、やはり国の責任を明らかにしつつも地方の自主性を確保して進めていくということだろうというように思っております。

 これまでの国の責任のあらわし方ということで、一つには、普及事業交付金というような財源の部分、それから、施設なり人の、職員の設置という部分に関する必置規制、こういったものが一つの表現として出されてきています。

 まず、財源としての交付金については、ここ数年大幅に減っているという中で、財源としての性格というのは非常に厳しいものはあるんですけれども、国の責任を表現する形としての、国の責任の象徴としての交付金というものについては、今なお重要な位置を占めているというように考えています。

 ただ、国の責任の表現の仕方として、この普及事業交付金というものがベストなのかどうかということについては、我々もこれから研究をしなければならないというように考えておりますけれども、少なくとも現段階にあって、やはりこれをおいてほかにはないというようなことを考えておりますので、そういう観点から、普及現場の職員の大きな不安を払拭していただくためにも、制度の維持とあわせて、大幅な交付金の削減という現在の状況に対して、どこかで一定の歯どめをかけていただきたいということでございます。その上で、一定の安定した制度のもとで現場の職員が働けるようにしていただきたいというのが願いでございます。

 それから、必置規制の部分につきまして、今回の法改正の中で廃止なり緩和というような形で大きく取り上げられてきているところでございます。

 この必置規制の部分で、特に普及センターの必置規制の部分で、最近、普及の現場で、農家からの見方としまして、一つの大きな不安が出されてきています。一つに、普及員がどこにいるのかわからないというような大きな課題がございます。かつては、合同庁舎の上の方にあって長靴で上っていけないというようなことで不満を言われましたけれども、今は、合同庁舎に入ったけれども、普及がどこにあるのか、普及員がどこにいるのかわからないというような状況が出てきています。

 そういった、サービスを受ける立場の農家の人たちからの、サービスを受けにくいような状況が出てきておりますので、それについて、やはり法案の中で、あるいはこれから県におろす中でしっかりと普及の存在というものがわかるような形にしていただきたいというのが希望でございます。

 どうしても組織が、今、農政事務所等々の中に普及が組み込まれるというような形になっておりますので、一つの行政が事業を下におろしていくという流れは非常にスムーズになっていくんですけれども、現場のニーズあるいは意見を上に上げていく、あるいは現場の課題を把握するという部分では非常に困った状況になってきております。そういうことに対して、改善をできるような形でお願いをしたいということでございます。

 時間を超過してしまいましたので、簡単に。

 今後、資料を見ていただけるとわかりますように、ちょっとほかの一般行政の職員とは違った形で仕事をしているという部分をひとつ念頭に置いていただきまして議論をいただきたいということでございます。また、これから普及の高度化等々の議論がされておりますので、そういう中に合った処遇がされるようにということを最後に希望として述べさせていただきまして、私の意見を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

高木委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子恭之君。

金子(恭)委員 自由民主党の金子恭之でございます。

 参考人の皆さん方におかれましては、御多忙の中、御出席をいただき、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。限られた時間でございますので、私は、農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案に絞って、中村、佐野両参考人に御質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど両参考人の方から、農業委員会の皆さん方が日ごろから地域農業の再生に向けて熱心に活動されている、また主体的に取り組んでいただいているということでございまして、心より敬意を表するものでございます。

 先ほど参考人の方から、農業委員会は何をやっているのと、一般的に考えればこういう意見の方が多いと思います。活動が非常に見えにくいという中で、でも、先ほどお話がありましたように、主体的にそれぞれの地域に合わせた活動をしていただいているということでございました。

 私の地元の熊本県におきましても、平成十四年度から、熊本県農業会議が熊本三シップ運動を提唱いたしまして、県下の農業委員会が一丸となって地域農業者の信頼と評価につながる活動を行っております。三シップというのは、まずリーダーシップ、農業委員会長などが指導力を発揮していただく、続きましてマネジャーシップ、農業委員の地域での世話役的な活動、それから最後にパートナーシップ、消費者と生産者の共生促進、女性、青年、認定農業者等の登用によります農業委員会の活動の活性化、このことを三シップと申します。その中で、認定農業者との意見交換会の開催とか、農地パトロール、農地利用集積のための意向調査の実施、さらには農業委員みずからによる耕作放棄地の解消などに積極的に取り組んでおられます。

 身近なところにおきましては、私の地元におきましても、例えば、人吉市の農業委員会におきましては、食と農の再生をテーマに、認定農業者や消費者、また農業団体等の意見交換会を開いております。そこで出てきました意見を農業委員会の活動や政策提案に結びつけておられます。また、その人吉市と近隣の五町村の農業委員会が連携をしまして、農地パトロールを実施いたしまして、町村間の出入り作に伴うトラブルなどの調整をしたり、耕作放棄地や無断転用の是正のための指導を行っております。

 また、東陽村というところでは、会長もおられますけれども、女性農業委員と教育委員会が連携をすることによりまして、食農教育の一環として、小学校の総合学習におきまして、村の特産、ショウガなんですけれども、ショウガをテーマにして、歴史とか効能とか、料理についての調査を行った上で、「生姜(ショウガ)ブック」というのを作成いたしまして、村民に配付しております。

 さらに、田浦町というところは日本一のアマナツミカンの産地なんですけれども、認定農業者との意見交換会とか遊休農地のパトロール等を行いまして、特産でありますアマナツミカンの樹園地の流動化やデコポンへの転換などに取り組むとともに、町の農業振興施策についての町長への提言も行っています。

 このように、先ほどお話がありましたように、農業委員会が何をやっているんだろうというようにわかりにくい状況の中でありますけれども、私が実感しているのは、農業委員会というのは、農地の移動とか転用の許認可だけではなくて、まさに農業、農村の振興のための大事な仕事をされていると思いますが、先ほど参考人のお話がありましたように、集落での話し合いとか個別の相談など、ソフト的な活動が中心であるという理由から、なかなか活動の姿とか実績とかが、我々とか地域の人の目に見えないということがあると思います。そのことが、先ほどお話にもありましたように、農業委員会は何をやっているのかわからないとか、活動が総花的だとかという批判につながっているのではないかと思います。

 しかし、よくよく考えてみますと、農業委員会の活動というのは、地域の農地の管理とか利用調整の取り組みはもちろんでありますけれども、農業、農村の振興とか個々の農業者の経営の問題まで、地域に密着した形で汗をかいて対応されていることがわかります。まさに地域農業の振興にとっては欠かせない存在と言っても過言ではないと思います。

 そこで、中村、佐野両参考人にお聞きしたいと思います。今大きな農政課題になっております遊休・耕作放棄地の問題につきまして、農業委員会も現場で大変御苦労をされ、また御努力をされていると思います。この解消に向けて、どのような支援また対策というのが必要であるか、お考えされているか、お聞かせをいただきたいと思います。

中村参考人 お答え申し上げます。

 耕作放棄地の解消問題、今先生の事例にもございましたように、私ども、先ほどから申し上げましたように「かけがえのない農地を守り、活かす運動」をやっておりまして、その中では、農地パトロール月間を設けたり、それから一斉耕起の日をつくったりして、それぞれの委員が対応しているところでございます。いろいろな、不法投棄の問題なんかもそれに対応しております。

 今、事例等もインターネットで見られるようになっておりますので、ぜひ一回、全国農業会議所のインターネットを開いていただきたい、こういうふうに思っております。

 それから、特に不在地主の問題もございまして、島嶼部の農業委員会等がわざわざ都市に向かって、そういう方を集めて、どうするかというような相談もして、非常に難しい問題でありますが、そんなことにも対応しておりますので、さらに一層の、我々もきめの細かい対応をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

佐野参考人 ただいま先生には大変御理解をいただきまして、ありがとうございます。私、個人ばかりじゃなくて、農業委員全体としてお礼申し上げます。

 御多分に漏れず、飯舘村も遊休農地が散在しております。そんなところで、農業委員会としましてどうしたらいいかと考えておりましたところ、まず復旧しなければいけない、そのためにはバックホーを使ってしなくてはいけないんですが、そうなりますと、多大な費用と労力がかかります。飯舘村は貧しい村でございまして、農民はなかなかそこまで手が出ません。

 それで、どうしようかとなりまして、農業委員会で、それではできるものからということで、バックホーの三トン未満の資格試験を受けましょうと提案させていただきました。農業委員会、賛同しまして、ことしの二月にその資格試験を、まずは縁遠い飯舘村に出張試験していただきました。二日間やりました。

 そのとき、農業委員会では、もう既に半数くらいは資格を持っております。それで、残りの半数は全員参加したわけですが、それだけではもったいないということで一般住民五十名に絞って募りましたところ、すぐに満員になってしまいまして、見事、私も含めて資格を受けまして、今それぞれに資格を持った人たちが率先して動いているところでございます。

 よろしいでしょうか。

金子(恭)委員 もう一つの問題として、今全国で市町村合併というのが行われているわけでありますけれども、参考人のお話にもございましたけれども、農業委員会の活動エリアというのがかなり拡大することになりますけれども、それによって、農業委員会の地域に密着した活動に支障が出るようなことがあっては困ると思うんですね。

 そのために、農業委員会の組織体制や集落との連携の強化というのが必要だと考えておりますけれども、このことについて御意見があれば、よろしくお願いします。

中村参考人 先生のお話のとおり、この改正によりまして農業委員会の活動が弱体化するということがあってはならないと思っています。法律の中でも、六条二項の集約化の問題だとか、あるいは農地部会の複数設置等がございますけれども、我々としましては、今の地区担当制をもっと強化して、申し上げましたように、農業者との、あるいは集落との密着性を高めてまいりたいということでございます。

 これは例でございますけれども、先般、さいたま市が合併しまして、六十七名の農業委員が三十名になっております。そこで、農業委員協力員というのを三百名置いて対応する、こういう事態もございますので、意見陳述で申し上げましたけれども、そういうふうなことについても今後御指導いただければというふうに考えております。

佐野参考人 お答えいたします。

 これまで以上に農業委員会の地区担当制の整備を徹底する必要があると思います。市町村合併によって必然的に担当地区のエリアが拡大しますので、農業委員会だよりなどの広報や部落座談会の定期的開催によって担当地区の農業委員さんの顔も知ってもらい、気軽に相談できるような体制をつくっていただくことが大切かと思います。

金子(恭)委員 済みません、時間が参りましたので終わらせていただきますが、この改正を機に、より一層主体的に取り組んでいただきまして、地域再生の中心になって頑張っていただきますようにお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、松野博一君。

松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。参考人の皆様、御苦労さまでございます。

 私は、青年等の就農促進の問題と、農業普及事業の国から地方への流れ、この二点に関して質問させていただきたいと思います。

 まず、中村参考人に、特に青年層の就農促進の問題についてお伺いをさせていただきたいというふうに思いますが、まさにこの担い手の問題というのが日本農業が抱える最大の問題であります。この担い手の問題の中にあって特に重要なポイントというのが、新規営農者の参入が少ないということであります。

 新規の農業への参入が少ないという大きな原因として、今までの時代の流れの中にあって農業が非常に厳しかった、これは収入面もありますし、若者層のライフスタイルや志向と農業がなかなか合致をしてこなかったという点もあると思います。

 これは非常に大きい問題であると思いますが、一方で、農業に従事したくても農業従事者になれない、こういう壁があったこともやはり事実であろうというふうに思います。いわば、農家に生まれなければ農家になれない、家族産業、世襲産業になってしまっていたという側面も否定できないというふうに思いますけれども、これは、戦前の農村や農業へのトラウマから、農地の所有形態についてですとか、自作農主義といいますか、農業経営の方針に関しても相当神経質な政策運営がとられてきたということもあるというふうに思います。

 今、若者の意識変化の中で、農業に関する意気込みは非常に上がってきていますし、営農希望者もふえているというふうにお聞きをしていますけれども、まだまだ、十八歳の時点ですとかまた二十代の若い時点で職業選択をするときに、ほかの職業と同等に農業を考えるというまでの環境には至っておりません。もしも職業としての農業選択が他の産業と同様の意識の中で若者の中から選択をされるようになってくれば、現在の担い手不足の問題というのは相当解決をされるのであろうというふうに思います。そういった一環もあって、農業法人等の取り組みも行われているわけであります。

 今回、法案改正の中で、新たに就農支援資金の対象を農業法人まで広げるという改正がございました。このことが新規の就農者の促進に関してどの程度のどのような影響を与えるのか、また、農地を取り囲んでいる就農への壁というべきものに関して、また取り除くためのさまざまな施策に関して、お考えがあればお聞きをしたいというふうに思います。

中村参考人 お答えを申し上げます。

 私ども全国農業会議所は、十五年ほど前から新規参入者の相談を受けておりますが、先ほど先生が御指摘になりましたように、意識が大分変わってまいりまして、一般の職業選択と同様に農業を選択してくるというふうに変わってきていると思っております。

 いずれにしましても、ただ資金や金を持って入れないという問題がございまして、とりあえず収入を得ながら農業法人への就業をしたいという希望者が非常に多くなってきております。一方、農業法人の方もそういう方たちを受け入れていきたいという、今両方のニーズが一緒になっているということだろうというふうに理解しておりまして、うちの調査によりますと、平成九年から十三年度までに、五百四の法人で千二百七十名が就業をいたしております。

 大変注目をされておりますが、ただ、農業生産法人も体力の強い法人だけではございませんでして、経営者の意見を聞いておりますと、農業経営者を育てるのは飛行機のパイロットを育てるのと同じように時間と金がかかるというふうに表現をしておりまして、また我々もそういうふうに理解をしておるところでございます。

 したがいまして、今回の追加措置につきましては、大変いい方法ではなかろうかというふうに理解をしているところでございます。

松野(博)委員 佐野参考人にお聞きをしたいと思いますが、先ほど、農業従事者になるためには農家に生まれるしかないという話をしましたけれども、実はもう一つ方法がありまして、農家に嫁に行くという方法もあるわけでありますけれども、これも非常に難しい問題でありまして、私の同級生で農業をやっている人間の最大の悩みは、嫁がいない、嫁が来ないということであります。

 女性の場合は、農業従事者としての大変さもあると思いますし、佐野さんの資料の中にもありましたとおり、農村の中で若い女性が溶け込んで生きていくというようなライフスタイルの問題等々もあると思います。

 特に女性層に農業に関する意識を高めていただく、また就農への希望を持っていただくために、どういった施策が考えられるか、お話をいただければというふうに思います。

佐野参考人 先生にお答えいたします。

 これまでに、農業委員会組織として、女性の農業委員の登用について、申し合わせとかそれから農業者への啓蒙活動などの運動を展開してまいりました。特に、議会推薦の農業委員については、市町村長や議会に女性農業者の推薦を働きかけてまいりました。その結果、統一選挙のたびに女性の農業委員が大幅にふえております。こうした運動展開による環境づくりを、まず現在の農業委員会が先頭に立って推進していくことが大事だと思っております。特に、公選による選挙委員としての立候補を促していきたいと考えております。

 それからもう一方は、議会推薦の選任委員については、先ほど申し上げましたように、市町村合併等でブレーキがかかるのじゃないかと心配しております。農業委員会、女性農業委員は、最低二人以上を数値目標と定めるという思い切った施策も必要かと思います。

 それから、役割については、女性だからどうかということではなく、男性と同様に、農地行政とか執行を初めとしてしっかりとした仕事をしなければなりません。ただ、今日の課題となっている食の安全とか安心、食農教育は女性として感性や行動が大いに発揮できますので、この辺も検討をお願いしたいと思います。

松野(博)委員 ぜひ、女性の農業委員会での活躍が拡大をしながら、女性全般の農業に対する意識の拡大に結びついていただきたいというふうに思います。

 高橋参考人にお聞きをしたいと思います。

 参考人のお話の中で、農政改革の大きな流れというのは国から地方への農政改革ということなんだというお話がありました。

 今回、農業改良助長法の一部を改正する法律案という中で、地方に普及事業の自由裁量権を拡大していく、そういう大きなポイントがあります。行政上考えれば、国から地方へ移管する、自由裁量権を拡大するということはメリットがわかりやすいわけでありますけれども、これが、利用者、農業普及事業を利用する立場から、国から地方へ自由裁量権が拡大をしていくことでどういうベネフィットがあるのか、そのことをお話しいただきたいと思います。

高橋参考人 お答えいたします。

 国の施策を、例えば普及職員、指導員を通じて農家に伝達するというような意味から、一定の協同普及事業の仕事があろうかと思います。しかし、現実に地域の農業を動かしているのは、国の農政だけではなくて、都道府県の固有の農政、しっかりした市町村の場合には市町村固有の農政がかなり有効に機能していると思います。そういう意味で、国の農政を伝達するという意味では協同普及事業の対象になるけれども、都道府県農政あるいは市町村農政の伝達は、そういった都道府県固有の農政の中で展開するというふうに理解しております。

松野(博)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

高木委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 まずもって、参考人の皆様方には、本当に御多忙の中、当委員会にお越しいただきまして、心から感謝申し上げます。それからまた、ただいま賜りました御意見でありますが、大いに参考にさせていただきたいと思います。

 そこで、私からも幾つか質問させていただきますけれども、初めに、須之内参考人に三点ほどお尋ねいたしたいと思います。

 この農業改良助長法でありますけれども、現行の専門技術員と改良普及員の事務を整理しまして、普及指導員の事務として一元化を図る、こういう改正案であります。

 この助長法の改正の背景といたしまして、普及員に対するさまざまな指摘があると私も思っております。例えば、農業経営の高度化あるいはまた法人化が進展する中で、農業者の高度で多様な技術のニーズに普及員が十分に対応できているのか、そういう指摘、あるいはまた、普及員の現場での活動時間が短くなっておるのではないか等々あるわけでありますが、現場の実態を改めてお聞きしたいと思います。

須之内参考人 お答えをいたします。

 現場の実態というものは、先ほど私の申し上げた中にも一部触れたところでございますけれども、現場に行っていなければならない業務以外のものでさまざまな業務が、例えば行政の事業をおろすような場合の側面での支援であるとか、そういった本来の普及業務以外のものが大分入ってきているというようなところで、普及員個々の能力云々という以前に、現場課題を解決するための時間をとれないという面で非常に厳しい状態に、現場としてはなってきているというようなことがございます。

 そういうところで、いわゆる技術的な要望も高度化しているという部分もございますけれども、なかなか、技術を習得するというようなことに関して時間を割いて行うことが実際にはできなくなってきつつあるというような実態がございます。

黄川田委員 私も市町村職員をしておりましたので、平成五年の大冷害、私、岩手でありますので、米が全然とれなかったところ、皆無のところもありました。去年も、ちょっと、北海道あるいはまた青森、岩手ではやませ等がありまして冷害でありましたけれども、現場で仕事ができないような状況が本当にあるんだなと、私も、普及員の皆さんにむしろ御同情申し上げるといいますか、逆に言うと、しっかり国、県、市町村、連携をとって、農家のために汗をかかなきゃいけないんだな、そう思っているわけであります。

 そこで、今回の改正案でありますけれども、都道府県に裁量を拡大するということでありますけれども、しっかりとした税財源の移譲があるならば、これはまた望ましいものと私も考えております。しかしながら、組織体制の中で普及センターの長の要件が廃止されまして、裁量権の中でありますかね、都道府県の中で普及の資格のない一般行政職の方がセンター長になるという可能性もあるのではないかと思っております。

 お話しのとおり、普及の仕事は本当に、新しい技術を学んで、そして農業者との信頼関係を築いていかなきゃなりません。そしてまた、そういう特殊性の中で一生懸命頑張るには、やはり頑張れる何らかのインセンティブが必要だと思うのでありますけれども、この点、現場では皆さん、どうお話しになっていますか。

須之内参考人 ただいま、そういう状況の中でも頑張れるインセンティブという面に関しましては、私どもは、一つに、技術屋というようなことで、実際にそれによって改良普及員としての手当等も支給されているわけでございますけれども、実際に、厳しい状況の中でも頑張れる誇りといいますか、それは、やはり直接農家と接して、しかもその中でいろいろな解決がされて、農家の人たちに信頼され、喜ばれるという部分、直接農家の人たちとのやりとりがあるということが一つの、一番の力になっているということがございますので、そういう現場に立つ時間がなくなってくるということになりますと、非常に、これから我々が複雑な仕事をしなきゃならぬというような部分では心配をしているところでございます。

黄川田委員 第三点目でありますが、今お話しされましたけれども、普及手当についてお尋ねいたしたいと思います。

 現行の普及手当は、専門技術員が八%、それから改良普及員一二%ということで上限規定が設けられておりましたが、改正案では、この上限規定を廃止して、都道府県が自主的に支給できる、こういうふうになったわけでありますけれども、これについて、能力に応じた処遇といいますか、その部分の不安等を感じることはないでしょうか。

須之内参考人 先生が御指摘のとおり、非常に大きな不安を感じております。

 それはなぜかと申しますと、地方組織、あるいは国でもそうですけれども、いわゆる行財政改革の中で、そういう手当というような部分が、さまざまほかの職種にもついておりますけれども、やはり財政状況が厳しい中で、日に日に削られてきているということがございます。

 そういう中で、我々としては、当然、普及手当制度発足当時、しっかりと客観的な調査に基づいて設定をされた手当でございますけれども、なかなか、ほかの職種との比較の中で矢面に立たされるような状況が全国的に見ますと非常に出てきているということがございます。これが具体的に普及員の行っている仕事に対して支給されているという厳然とした後ろ盾はあるんですけれども、実際にほかとの比較というような部分で厳しい状況がございますので、そういう面では現場の普及員は非常に不安を募らせているところでございます。

黄川田委員 国家財政の再建のために予算の削減が初めにありきというようなことであってはならない、私もこう思っておりますので、その点、引き続き一生懸命、そういうことのないような形の中で法案が審査されると思いますので、頑張っていただきたいと思います。

 それで次に、高橋参考人にお尋ねいたしたいと思っております。

 高橋先生には、御意見の中で何度も、農政改革の理念は国から地方へという話であります。国から地方へということで、県や市町村に権限の移譲の一括法が数年前にあったわけなんです。確かに権限は移譲されましたけれども、十分な財源が確保されていないということで、現在も議論の真っただ中であります。

 改良普及センターの必置規制の廃止について、ちょっとお尋ねいたしたいと思います。

 改正案では、普及指導センターに名前が変わりまして、「設けることができる。」となっております。逆に言うと、四十七都道府県、さまざまな考え方があると思うんですが、万が一にこの普及指導センターを設置しない都道府県があったとすれば、協同農業普及事業の形というものはどんな形になるわけでしょうか。先生の考えていることで構いませんので、よろしくお願いいたします。

高橋参考人 普及指導センターというものが置かれるかどうかということについては、都道府県に任せるということでございます。都道府県に任せるということで、どのような判断をするかというのは、むしろ都道府県の関係者、そこには普及職員もおりますし、それから議会で議論するとすれば農村出身の都道府県の議員もおられると思います。そこでの判断ということは、私はやはり尊重すべきことではないかと思っております。

 そういった場合に、協同普及事業がだめになるのではないのかという御質問でございますが、私は、重点化をした二つの機能についてはどうにかカバーしてもらう。そのために普及指導センターが不可欠であるというふうには私は考えておりません。多様な形で対応できるというふうに考えております。むしろ、最も適したような形をそれぞれの地域で選択していただく、これが今度の法改正の精神ではないかというふうに考えております。

黄川田委員 普及事業が後退しないように、先生からも、さまざまな形態があるんだということも含めてさまざまな場で御発言をしていただきたいと思います。

 次に、佐野参考人にお尋ねいたしたいと思います。

 私も、市町村役場職員でありましたから、気楽にお願いいたします、緊張していますので。私も本当は緊張しているのであります。

 佐野さんの住んでおられる飯舘村、なまっていいんですかね、イイダテ村、イイタテ村、どっちなんですか。(佐野参考人「イイタテです」と呼ぶ)役所は、普通我々は東北人ですからイイダテとなまった方がいいんですよね、でも、正式名称はイイタテ村ですので、そういう場合もあるわけなんですよね。

 それはさておきまして、近隣の四市町村での市町村合併が進められておりますか。今現在動いていますか。そういう中で、市町村合併を行った場合、農業委員一人当たりの活動エリアといいますか、これは広くなりますよね。そういう中で、地域の農業者との結びつき、これが疎遠になるのではないかと私は心配しているんですよ。やはり農業委員は、さまざまな委員がありますけれども、最も住民、農家に顔が広いといいますか、顔が見える仕事なのであります。

 そこで、そういう合併の中で、農業委員会、大変なわけでありますが、そういう中でもしっかりとできるような体制というのはどんなふうに形づくっていったらいいのか、佐野さんの御意見で構いませんので、よろしくお願いいたします。

佐野参考人 それでは、先生にお答えいたします。

 まず、農業委員のよりきめ細かな情報提供とか、それから地域の農地や農家の実情がよくわかるように相談活動とか、適切に行えるようにしたいと思います。

 それで、これは全く私の考えでございますけれども、今、合併推進に向けて、飯舘は四市町村で合併する予定でございますが、その四市町村のうち、飯舘村だけが特殊な地域でございます、残り三カ所は平たん地でございますので。そんなところで、まず、農村の環境整備が必要だと思います。そして、よその地域よりは、農地の集約とか、そういう流動化がなかなか進んでおりません。

 そこで、今すぐに、一年ではできないと思いますが、何年か後、二年ないし三年を目指して、まず、私が日ごろ思っていますボトムアップの体制で、住民から盛り上げるという体制で、農業委員会を核としまして、村はもちろん、そして教育委員会とか、それから現場としまして農業者の青年層、女性層あるいは認定農業者、そしてもちろん改良普及センターの先生、それから地域ぐるみということで商工会、そういう人たちを集めて、それで懇談会を開いていきたいと思います。

 それは一度や二度ではとても目的に達せないので、ことし一年間は何回か懇談会を開いていって、そして二年、三年後に向けてしっかりとした土壌をつくって、合併しても飯舘村の農業振興がへこたれないように努力していきたいと思います。

 よろしいでしょうか。

黄川田委員 ぜひとも、中山間地の農業が元気が出るように頑張っていただきたいと思います。

 それでは最後に、中村参考人にお尋ねいたしたいと思います。

 農業委員会のこの改正によりまして、組織のスリム化、これについてお尋ねいたしたいと思います。

 組織がスリム化する中で、農業委員会に期待されている活動、本当に支障がないのでしょうか。後段、中村参考人には、そのためにもさまざまなことを考えているんだ、市町村合併がある中でも頑張っているんだ、例えば農業委員協力員の活用など、さまざま考えておるという話でありますけれども、この農業委員会の活動の質を低下させないための方策といいますか、改めてお尋ねいたしたいと思います。

中村参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、この改正で活動なり組織の弱体化、劣化があってはいかぬということを我々も身にしみて感じておりまして、今までやっております地域再生運動を通じまして、地区担当制の強化だとか、それから特に、我々としては、協力員制度というようなものを自己運動的にも設置をしていきながら対応をしてまいりたいというふうに考えています。

 特に、今我々も、認定農業者なり法人農家の意見の積み上げを重点的にやってまいりたいということでございますので、農業委員が何人かの仲間づくりをしながら対応したいということでございますが、いずれにしても、この協力員につきましては、事業的にも支援をいただくことが必要ではないのかというふうに考えているところでございます。

黄川田委員 国会は法律をつくるところでありまして、私は現場にいた者であります。法律の執行は、県、市町村、あるいはまたそこに住んでいる社会が執行する現場であります。ですから、幾ら立派な法律をつくっても、それが生かされなければ何にもならないと思っております。

 きょうは、本当にいい話をいただきました。これで質問を終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、白保台一君。

白保委員 公明党の白保台一でございます。

 きょうは、参考人の皆さん方には、当委員会に御出席いただいて、大変感謝しております。ありがとうございます。

 黄川田先生は須之内さんの方から聞かれまして、私は前の方から順番に聞いていきたいと思います。

 中村参考人にまずお伺いしたいと思いますが、限られた時間ですので、農業委員会法や改良助長法についても伺いたいのですが、この機会に、新規就農者の相談に長い間取り組んでこられた経験がおありでございますので、御意見をお伺いしたいと思います。

 まず、農業経験のない方が就農をするのに何が最も困難な問題となっている、このようにお考えでしょうか。

中村参考人 我々もいろいろな調査をしておりますけれども、十三年に千五百三十八人の新規就農者に対しました調査で見ますと、資金の確保が五一%、農地の確保が四七%、住宅の確保が三二%、技術の習得が二七%となっておりまして、我々、これを四点セット、難しい四点セット、こう呼んでおりますが、新規就農者の悩みはこういうところにあるかと思います。

白保委員 若い人の就農、そうした若い人が就農、農業につくためにということできのうも若干議論をいたしましたが、その際に、若い人が農業につくために一番動機づけといいますか、そういうものは何だというふうに考えられますか。

中村参考人 大変難しい御質問だろうと思います。

 我々が新規就農者の方と接触しております感じから申し上げますと、職業選択につきましての意識が相当変わってきているのではないかと思います。農業法人が集まりまして就農相談会も開きますが、ほとんど大卒で、しかも農学ではない方が多くなっておりまして、そういう意味では、やはり農業が職業として見直されてきているということが一番大きな原因ではなかろうかと思います。

白保委員 今、失業率が五%でずっと来ているわけですね。同時にまた、フリーターというのがいっぱいいたりなんかしまして、こういう人たちが本当に農業の持つ大きな意味合いをよくわかって就農をしてくれると、二つの意味で解決になるんですね。農業の未来の問題と、それから失業率を落とすことができるという二つの社会的な問題を解決することができるものですから、農業に対して若い人たちに関心を持ってもらいたいな、こんなような思いできのうも議論をしたところです。

 それで、きのうも言ったんですが、ヨーロッパの方では、山間地域へ夫婦二人で新規就農した場合には年間六百万円程度の助成があって、これが五年間農業を続けていけば返還は免除するというような、奨学金制度のような直接支払い制度があるんだそうです。就農の促進にはこういった水準というものが必要になってくるのじゃないか、こういうふうに私自身は考えているんですが、中村参考人、いかがでしょうか。

中村参考人 調査によりますと、年齢の高い方は趣味的に農業につくというのが多いわけでありますが、若い方は農業経営としてつきたいという意識が非常に強くなってきております。

 ただ、これも先ほど申し上げました同じ調査でございますけれども、就農して経営なり生活が成り立つかというと、やはりなかなか成り立たないという調査結果が出ております。どうしても、生活を含めますと、年間に一千万ぐらいの所得がないと成り立たない。非常に難しい問題でございます。もちろん、それまでの蓄積などを食いながら対応はしているわけでありますけれども、一般的にめどがつくということになりますと三年なり五年の経過が必要だというふうに調査では出てきております。したがいまして、給料がもらえる農業法人へまずついて、そこで蓄積をしながらという方法も今あって、そっちの選択が多くなっているのではなかろうかというふうに思います。

 いずれにしましても、そういうことでございますので、ヨーロッパにそういう制度があるならば、我々もよく研究をいたしまして、団体として必要ならば、また、政府に要望もしてまいるようなこともしなきゃいかぬのかなというふうに思っております。

白保委員 どうもありがとうございます。

 では、佐野参考人にお伺いしたいと思いますが、農業就業人口、この六割は女性の方が担っていらっしゃる。きのうも、我が国農業における女性の位置づけについて大臣にも質問したところであります。

 そこで、農業委員会における女性の役割について、先ほどもお話があったかと思いますが、どのような考えかということについて、まず、せっかく女性ですから、お伺いしたいと思います。

佐野参考人 お答え申し上げます。

 今、社会の視点が変化をしつつあります。変わっております。価値観が違います、変わっています。まず、農業は農村に移行している、考え方が農村に移行している。そして、生産は暮らしに移行している。集団から個に移行。そして、行政から民間に、他力から自力、ハードからソフト、そしてファストフードからスローフード、もろもろのことが移行しております。

 前者は男性がお考えになる施策であります。後者は女性が必要とする考えでございます。つまり、女性の力が必要になっております。そのためには、ぜひ女性の農業委員をたくさんふやして、燃える心をしっかりとつかんでお使いになっていただきたいなと思います。よろしく、お世話さまになります。

白保委員 非常にすばらしい御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 私自身も、党のある地域の責任者をやっていて、なぜ女性議員を出すかということで、女性が一番生活に密着していますからね。男は働きに出たりなんかすると意外ともろもろの周りのことはよくわからない、いわゆるソフト的なものはよくわからない部分があります。ところが、それが女性が政策参加をしますと非常に、今おっしゃるような両面のバランスのとれたものができるということで、女性議員をいっぱい我々としては応援して出しているんですよ。だから、非常にいいお話を伺いまして、ありがとうございます。

 ところで、佐野参考人は、農家のお嫁さんになられて、農村のネガティブなイメージを払拭するために御自身の意識改革を相当なされてきたんじゃないのかな、こう思うわけです。

 ある大学の先生が、日本の農業は、今や、いやしや安らぎなど、精神的価値を提供する第三次産業だと言っておられる方もいるわけですね。先ほどもお話がございましたように、時代とともに世の中は変わっていきますから、農村に対する社会の意識も大変変わってきた今日、農業や農村がどのような社会的位置づけにあるか、こういうふうにお聞きしたいんですけれども、いかがでしょうか。

佐野参考人 お答えいたします。

 私が平成八年に農業委員に立候補しますときに、夫はやれと言ってくれました。しかし、幾ら男女共同参画が進んでいる飯舘村でさえ、夫の親戚には、嫁である私が出るとは何事だと大変たたかれました。しかし、家族の理解があって今に至ったわけでありますけれども、そういう土壌がまだまだ封建的な農村にはたくさんあるということでございます。それを、私もそれまではとってもいい嫁でありましたからなかなか言えなかったんですけれども、これは自分がまず打たれなくてはならないな、だれかが後ろ指を指されなくてはいけないなと思いまして、まあ、悪口なり批判は、かなり抵抗はありましたけれども、そういうものに負けずに努力してきたつもりでございます。

 そうなりますと、村の中がそちこちでそういう理解者がふえてきまして、全体に、今、村としてはその推進を図っているところでありますけれども、まあ、なかなか先に出るというのは難しいものでございます。これから続いていただきたいという願望であります。

白保委員 すばらしいメッセージをいただきました。最後にメッセージを伺おうと思いましたが、もうすばらしいメッセージになりましたので、ありがとうございます。

 高橋参考人にお伺いいたしたいと思います。

 きのうの委員会で質問したことと重複するんですが、日本の農業はゾーニング制度がうまく機能してこなかったというふうに思います。というのは、農業委員会なりが厳格に農地区画を行ってゾーニングがきっちりとできていれば、他の用途に転売することができないわけでありまして、株式会社が参入しても耕作地を放棄する心配がなくなってくるんじゃないか、そうすれば農業の大規模化が進んでいくんじゃないか、こんなふうに考えるんですが、御所見を伺いたいと思います。

高橋参考人 日本の農業が今日のように非常に厳しい状況にあるのは、ゾーニングが必ずしもうまくいかなかったのではないのかという御発言でございます。

 どうも、私の専門とする領域ではないので十分お答えにならないんですが、それなりのゾーニングは日本では制度としては確立しているというふうに私は理解しております。

 ただ、その中で、土地所有についての私的所有と国有と、その間に共有といいますか、そういった、集団で維持するという意識がかつての農村にはあったんですが、例えば集落をもとにしてそれを確保していたわけですが、それがだんだん薄れてきたということが今日かなり疲弊を生んでいることではないのか。

 そういう意味で、現在、集落型法人ですか、経営体というものを進めていこう、あるいは特定農業団体のようなものを育てていこうというようなことで、集落における集団的土地利用機能といいますか、これを再構築するということが非常に重要な要素ではないかというふうに考えます。

白保委員 法案と若干外れますが、高橋先生、有機農法とか減農薬、無農薬農法、これは消費者には歓迎されているのではありますが、余り進んでいないんじゃないか、こういうふうに実感をしております。

 コストや労力がかかるとか、あるいは技術的に難しいとかいう問題があると思うわけでありますけれども、あるいはまた、サイズや品質で規格外の商品をつくる、そのために加工や流通になじまない、こういうことなんだろうか。進まない理由はどういうことなのかと考えているんですけれども、御意見がございましたら、教えてください。

高橋参考人 有機農産物に対する需要というのは、市場でいえば、ニッチ市場という特定の小さな市場であって、特定のグループの方々がそれを望んでおられる。そこへどういうふうに生産者から流通機能を通じて商品を提供するかというシステムが、従来の卸売市場を中心とした流通体系の中ではどうもなじまない。そういう意味で、有機農産物をつくっているようなグループが全国ネットワークをつくって、そして例えば生協だとかあるいは特定のスーパーマーケットで差別化したような商品チャネルをつくっている。そういうふうな形で、今、別でも審議されておりますが、卸売市場における野菜の流通の多様化ということに対応することではないかというふうに考えます。

白保委員 大変ありがとうございました。

 最後に、須之内参考人にお伺いをしたいと思います。

 農業の三要素として、土地、労働力、資本ということが言われてきたわけでありますが、ある外国の研究者は、これからの日本の農業には、加えて知力という要素が必要じゃないか、こういうふうなことを言っている方もいるわけでございます。

 WTOの交渉や環境問題等に迫られている日本農業にとっては、まさに皆さんのように各地域において農業の知的な戦略の後押しをしていく、そういう存在が大変重要な存在だ、こういうふうに思うわけでありますが、改めて、我が国農業における皆さん方の位置づけ、このことについてお伺いをしたいと思います。

須之内参考人 私ども、普及員、普及事業がある意味という部分だろうというように考えます。

 一つには、我々はどうしても、表には出ない立場ですけれども、いわゆる行政、そしてサービスを受ける現場の農家の方々、その間に立って、もちろん我々は行政組織の一員でもありますから、行政施策についてしっかりと現場におろしていかなきゃならぬということが一つございます。これは、今まで十分に我々も果たしてきたというように考えております。

 また反対に、現場にある課題を吸い上げて行政施策化するという役割が大きくございます。これについては、我々もしっかりと現場にあってやってきたつもりではございますけれども、やはりどちらかというと、おろそかになってきた部分ではないかなというようにも反省をしているところでございます。

 ですから、これからの普及のあり方、役割ということを考えますと、やはり間にあって、一つの、通訳ではないですけれども、言語の違う者をそれぞれ意思疎通ができるような形にするというのが一つの大きな役割だろうというように考えています。

 そういう中で、しかも、先ほど先生、知力ということをおっしゃいましたけれども、農家の方々が知力が劣っているとかそういうことでは全くないんですけれども、やはりどうしても我々、サービスをする立場でありますと、要請に対して直接こたえてしまうということが多々ございます。そうしますと、やはり農家の方々も、そこでしっかりと考えて次のステップを踏むというようなことが本当は必要なんですが、直接サービスを返してしまうとそこで完結をしてしまうということがございますので、そういうことを、知的な部分の蓄積を農家の方たちにもしっかりとしていただくようなお手伝いを我々の役割としてやっていくべきではないかというようなことは考えております。

 以上です。

白保委員 時間が来てしまいましたが、最後に一点だけ。

 茨城県で農業総合センターを設置して、そのもとに地域センターを位置づけているそうですけれども、普及活動の効果的、効率的な運営という面でどういうふうな評価をなされておりますか。

須之内参考人 茨城県の農業総合センターという組織は平成四年から設置をされているんですけれども、実質、農業総合センターの傘下に、試験場それから農業大学校そして普及組織、三位一体という表現をしておりますけれども、こういう三つの組織が、一体化しているということではなくて、農業総合センターの傘下に入ることで連携をより強くとれるようにしようというような目的で実施しているものでございますので、そういう中で、試験研究の課題が現場に通りやすくなった、あるいは現場の課題が試験研究に通りやすくなったというような利点は十分出てきております。

白保委員 ありがとうございました。

高木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、大変お忙しい中、本委員会に参加をいただき、また貴重な御意見をいただきまして、参考人の皆様には心からお礼を申し上げたいと思います。

 初めに、中村参考人にぜひ都市農業の問題でお伺いをしたいと思うんです。

 平成十一年制定の食料・農業・農村基本法にも都市農業がしっかりと位置づけられたわけでありますが、今回の農業委員会法の改正の中で、市街化区域内の農地が必置基準面積から除外される、生産緑地を除いて除外されるということがありまして、例えば、先般お会いした大阪の農業会議の方などからは、非常にこのことを心配しているというお話がありましたし、東京の農業会議などでは、先日、皆さんのところにも行っているかと思うんですが、四月六日付で、「都市農業軽視の農業委員会法改正を糾弾する」という形での決議が上がっているというふうなことも拝見をしております。

 非常にその点で心配をしているわけですけれども、まず、具体的に全国農業会議所として把握していることを伺いたいと思うんですが、今回の法改正になれば必置基準面積から外れる、対象にならないだろうという農業委員会、こういうところがどの程度になるものなのか、もし把握していたらお伺いしたいと思うんです。

中村参考人 お答えを申し上げます。

 今、前半で先生が御指摘になりましたように、市街化区域の農地につきましては、組織としても大変な議論を積み重ねてまいったところでございます。そこでも申し上げましたけれども、さまざまな意見がございました。

 議論の結果、生産緑地につきましては三十年という長期の義務づけがございますし、もう一つ、農地に返すためには、線引きのし直しで市街化区域をまた戻すという方法もございます。それを除きますと、いずれにしても、これはいつ転用するかわからないという農地でございますので、ここを除くのはやむを得ないではないか、あるいは当然じゃないかということで、組織としての決定は除くというようなことで決定をしたところでございます。

 その結果、それではどのぐらいの農業委員会が除かれるだろうかという試算をしてみますと、東京、愛知、大阪等都市部を中心に二十三市区町村ぐらいではなかろうかという数字が出ております。

 これは議論の過程で議論もしたわけでありますが、現在の基準面積以下でも農業委員会を置いております市町村は八七%に及んでおりまして、必要な市町村は必置基準以下でもほぼ置いておるという実態もございますので、そこで対応もできるのではなかろうかというふうに理解をいたしまして、組織としてはこういう改正案に賛成をする、こういうことでございます。

高橋委員 必置基準面積以下であっても農業委員会を引き続き設置をして頑張っていくという決意だろうなというふうに受けとめさせていただいたんですけれども、私、その中で、やはり都会で農地があり、そこで農業委員会が働いているということの意義というんですか、都市農業ならではの役割、必要なんだということで、どんなことがあるのかというのを少し紹介していただければと思うんですが、中村さん、お願いします。

中村参考人 都市地域の農業につきましては、これは農水省もそうでありますけれども、基本法でも新たに位置づけをしておりますし、また、都市計画部局におきましても、新しい都市計画の中で、農業あるいは農地のある町づくりというようなスローガンのもとに都市計画が進められるというふうにも聞いております。

 したがいまして、現在農業委員会といたしましては、仕事は、一つは、農地転用の届け出の受理と現地確認、あるいは生産緑地の管理協力、そして農地の相続税納税猶予にかかわります証明事務など、法令等に基づいた業務もございますが、今申し上げましたようなこともございまして、また我々も、市民農園あるいは体験農園とか、そういうものの取り組みも積極的に運動論的にやっておりますけれども、今後ますますそういう需要も多くなってくると思いますので、それらにつきましても農業委員会としての対応をしてまいりたいし、また、対応をしていくべきではなかろうかというふうに考えているところでございます。

高橋委員 今御紹介いただいた、例えば納税業務の問題ですとか、全体の面積が小さくてもその分さまざま散在している中で、やはり一番土地をわかっているのが農業委員会であって、その中で重要な役割を果たしていることや、やはり都会の中での市民農園の活動など、そうしたことも大きな役割になっているのかなと思っております。

 心配されている声が随分下からも上がっておりますので、これをぜひ農業委員会としては頑張っていただきたいし、また同時に、国の方にはそれを支援する形で頑張っていくように求めていきたいと思っております。

 ぜひ佐野参考人にも伺いたいと思うんですが、先ほど来、同じ東北の女性として、本当に生き生きと頑張っていらっしゃる様子をうかがってうれしく思っておりますけれども、女性の農業委員が出る上でも大きな役割を果たしている選挙で選ばれる農業委員、今回、下限定数が撤廃されるということになったり、あるいは推薦団体の中に土地改良区がふえたりとか、私は、選挙で選ばれる委員の数がどうなるんだろうというのを非常に心配しました。

 ただ実際は、推薦される委員よりはふやすということで、枠は確保されるんだという説明だったと思うんですが、改めて、やはり選挙で選ばれる委員と推薦される委員とのバランスというんですか、要するに、選ばれてくる委員の大事さということをぜひ現場のお立場からお話しいただきたい。

 あわせて、やはりいろいろな御意見をふだんお話ししてくださっているんだろうなと思うんですが、農業委員会が小さくなったり廃止になったりする中で、市町村の農政部局で対応すればいいじゃないかという議論もありますね。でも、そういう中で、やはり農政部局ではできない農業委員会の役割、あるいは農業委員会が農政部局とうまく連携をとって、意見を出し合ったりして活動が進んでいく、そういうことで何か紹介できることがあったら、お話しいただきたいんです。

佐野参考人 お答えさせていただきます。

 片や、農村は煩わしいと若い人たちから言われます。でも、その反面、コミュニケーションがとれています。それで、私たちも一言言えばすぐに村じゅうに広がります。もちろん聞こえてもまいります。それをうまく利用すれば、もう鬼に金棒でございます。

 それで、私の考えとしましては、本来ならば公選で選ばれた農業委員が本当はふさわしいと思います。なぜなら農業者の代表であるからです。でも、先ほどもちょっとお答えいたしましたけれども、封建的で封鎖的な農村では、まだまだ男性社会であります。その中で女性が登用されるというのは大変難しい現況の中で、やはりこれは各市町村から頑張っている女性を推薦していただくというのが一番賢明なやり方ではないかと考えております。理想としましては、環境を整備しまして公選にだんだんなっていただきたいと考えます。そのためには、先ほど申し上げましたように、農村環境の整備が大変必要とされております。そんなところで、先生にもぜひ御配慮いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

高橋委員 市町村の農政部局との連携について、何かありますか。

佐野参考人 先ほど答弁で申し上げましたけれども、一応議会の方には農業委員会の会長として出席しておりますので、一部始終、村の情勢は存じ上げておりますので、農政部局ともかかわりは強いと思っております。

 よろしいでしょうか。

高橋委員 ありがとうございます。大いに発言をして、農家の代表として頑張っていただきたいと思っております。

 次に、普及事業の問題で、須之内参考人に伺いたいと思います。

 今農業委員のときにお話ししたことともちょっと関連するわけなんですが、行政と普及事業の独立というんですか、私はそのことがやはり非常に大事なことなのではないのかなと思っております。

 先ほど、前の方の答弁の中で、いろいろな業務があって、現場に行くのがなかなか大変なんだというお話をされたと思うんですが、今、センターの必置規制の撤廃ということが案にはなっているんですが、既に都道府県の改良普及センターなどはかなり統合が進んでいますよね、実際のところは。平成七年度から見ると百一カ所、地域農業改良普及センターがもう既に減っております。そういう中で普及員の数も減っておりますから、実際もう現場が遠くなっているんじゃないのかなと思うんです。だから、都道府県によっていろいろバランスはありますけれども、実際統合が進んでいる中で起こっている現場の状況など、ありましたら、教えていただきたいと思います。

須之内参考人 実際に統廃合等が非常に急速に進んできておりまして、そういう中で絶対的な普及員の人数も減ってきているということがございますので、我々の努力云々ということ以前に、もう物理的に現場に足を運べないような状況になっているというのは、先ほど申し上げたとおりです。

 具体的には、例えば、以前ですと、電話で一つ要請があれば、すぐに現場に駆けつけて、その現場の状況を確認しながら、いろいろな助言指導をしてきたわけですけれども、やはり電話があっても、現場まで一時間、二時間という話になりますと、電話だけで対応をせざるを得なくなる。また、現地に赴くにしても、翌日なり翌々日なりというようなことでタイムリーな対応ができないというようなことが具体的に出てきております。

 そういうこともございまして、実際には合同庁舎の中などに我々どうしても入ってくるわけですけれども、我々が足を運べない、農家の人たちが普及センターに来られないというような状況は非常に顕著になってきておりますので、そういう面ではいわゆる普及活動の効果が非常に出にくくなってきている、言いかえればサービスを受けにくくなっているということだろうと思いますけれども、そういう実態がございます。

高橋委員 今具体的にお伺いして、やはりそうだなというふうに思ったんですけれども、極端な話、普及員がどこにいるのよと聞いたら、県庁の中にいますというところもあって、現場に行くにも、一日の出張時間のほとんどが移動で、全然効率が悪いじゃないかということだとか、あるいは、対応する農家も兼業農家がふえているわけなので、夜討ち朝駆けですよね、通常の時間ではとてもできない。そういう中で苦労されて、少しでも現場に入って指導したいというふうなことを心がけているということを、私も普及員の方にお話を聞いたことがあるわけですけれども、そういう特殊な性格というのをやはりしっかりと維持しなくちゃいけないんじゃないのかなと私は思っているんです。

 それで、ちょっと先に高橋参考人にお伺いしますが、先生は、検討会の中で、普及事業の見直しということでいろいろ御意見を出されているんですけれども、例えば、できるところは民でもいいんじゃないかなどということも御意見としてあったかに思っておりますけれども、その点で、私自身は、やはりこれは事業そのものをしっかり、協同事業だから国と県の責任で維持をし、またセンターは必置するべきだというふうに考えているんですけれども、そういう役割と、民でもいいんじゃないかというふうな考えについて、先生はどのように、もう一度お願いします。

高橋参考人 先ほどの発言の中で、普及事業が三つの層で運営されるというお話をいたしました。それで、一番最後に述べたのが、民の農業経営の支援事業で、例えば税理士だとかあるいはマーケティングの専門家だとか、農業経営の役割というのは非常に幅広くなってまいりました。そして、普及員が固有に対応する領域以外の注文も出てまいりました。例えば、ある農産加工をやっているところでは、パッケージをどうするか、そこまで普及員が全部やっていたのでは、とても対応できません。それは専門家に任すべきだというふうに考えております。

 ですから、民に任せた方が有効なところは民に任す。しかし、民に任せられないところが必ず残る、それが少なくとも二つの領域であるということで、高度な技術指導とそれから地域の農業のコーディネート機能だ。地域の農業のコーディネート機能が普及センターでなければいけないのか。これは確かに地域に在住した方がいいわけです。役場あるいは農協の指導部のところに机を借りて置くことだって、私はそれは可能だろうと思います。それから、高度な技術指導の場合には、技術開発とタイアップしていかなきゃいけないので、どちらかといえば、試験場だとかあるいはその支所みたいなところで共同に開発をしていくというようなところも考えられるのではないかというふうに思います。

高橋委員 それでは、高橋参考人と須之内参考人にそれぞれお伺いしたいんですけれども、専門家に任せられるところはあっても、必ず普及事業として残るところがあるというお話だったんですけれども、確かに、高度な技術を絶えず研究するというところは残す、そしてそれを農家に還元できればいいと思うんですけれども、検討会の報告書の中には、知見の集約という言葉になっていますよね。

 ですから、技術を研究し、だけれども、実際にはそれは研究してそこを還元するところまでいかないんじゃないのか。というのは、さっき言ったように、現場が遠くなっている、足を運ぶ余裕がなくなっているということで、そこはちょっとどうなのかなというのがまず心配していることなんです。その点について、一つ伺いたい。

 それから、普及事業は、当初は食料増産ということで始まったわけでありますが、今は時代が変わって、求められる中身というのも変わってきているのは確かだと思うんですね。ただ、そういう中で、逆に、化学肥料の問題ですとか、多様な今ならではの課題があって、そういうことを、確かに現場に行って農家の指導に当たる、援助に当たる普及員の役割というのはますます今求められてきているのではないのか。

 あるいは、今お話しになった経理の問題にしても、最終的には専門家に任せるにしても、農家には先立つものがないという事情もありますし、まずそこで普及員がそばにいるということが大事なんじゃないのかなと思うんですよね。その点で、ごめんなさい、時間がなくなりましたが、一言ずつお願いします。それで終わります。

高橋参考人 今まで、普及員の方々は、非常に程度の低い農家を指導するということが今までの考え方だったと思います。これからはそうじゃなくて、非常にすぐれた人たちと一緒に技術開発をし、あるいは地域の農業を維持していこうというふうに変わってきたということが私は一番重要ではないかと思います。

須之内参考人 基本的には、農家の方にとってどういう方法で進めていったらいいのかということ、あるいは農家にとって何がいいのかということでございますので、それが民間の技術、民間の企業がよいということであれば、そういう形もいいと思います。

 ただ、我々、農業技術を媒体にして、いろいろな技術、知識を普及していくというところでは、そういう専門的なところと農家との仲立ちという役割はぜひ必要だろうというように考えておりますので、それが今後とも普及としても、だれが具体的に役割を果たすかという部分をつなげていくようなことは、まだ重要な役割として残るんじゃないかというように考えております。

高橋委員 終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党の山本でございます。

 参考人の皆さんには、お忙しいところ御出席をいただきまして、心から敬意を表します。

 私はライスセンターをやっておりまして、去年冷害がございまして、深水管理とか、あるいはいもち病も発生しました。カメムシの被害もありますので、薬剤散布とか、あるいは、薬だけかけるわけにいかないわけでありますから、適期な防除ということで、普及センターの皆さんには大変お世話になっているところでございます。そういう中で、今回の法律の改正、必置規制をなくしていくということとかあるいは交付金を削減していくということで、大変心配しているわけでございます。

 そこで、須之内参考人にお伺いしますけれども、先ほど来のお話の中で、現状も、行革の流れの中でどんどん人員が削減をされて統廃合になっていますね。実際、サービスが大きく低下をしてきているということが現実にあるわけでございます。そういう中で、さらに必置規制あるいは交付金の削減という流れの中で、技術屋さんとして、今後の心配といいますか、そういう現場の心配というものはどうなっているのか、まずお伺いしたいと思います。

須之内参考人 私どもも、予算が無尽蔵にあるというようなことは考えておりませんので、一定のスリム化という部分については、私どもの分野ばかりではありませんので、やはりそういう中でも仕事ができるような仕組みというものは考えていかなきゃならないというふうには考えておりますけれども、実際には、そういう平均的なスリム化というもの以上にかなり急速にスリム化が進められているというようなことがございますので、そういう中で、私どもがこれからの普及事業をどうしたらいいかということを考えていく速度と非常にそごがあるといいますか、それ以上にどんどん条件が悪くなってきている、そういうことがございます。

 そういう意味で、現場の普及員というのは、どういうふうにやっていったらいいのか、これだけ統廃合が進んで農家が離れていって、そこでどういうふうにしたらいいのかということを考える間もなく、制度が、あるいはそういう資金的なものが悪化してきているということがございますので、その辺は、アイデアを出すまでもなく、現場が今混乱をしつつあるということでございます。

山本(喜)委員 現場が混乱しているというふうな大変率直な状況が出されたと思うんですけれども、もう一つは普及手当の関係です。それから、経過措置ですね。

 当初、普及事業というのが研究職あるいは教育職ということで、特別な配慮、人材確保ということで手当があったはずであります。それが、今回上限が廃止をされるというふうな状況。

 それから、普及員から普及指導員というものに移行するに当たって、試験がありますね。現状の専門技術員の試験も、二割に満たない大変難しい試験であります。経過措置はありますけれども、これで果たして人材の確保、やはりきちっとした処遇というのがあるから難しい試験も受けて農家のために頑張ろうというふうなこともあると思いますし、あるいは、経過措置の中で、試験に合格しない人がかなり出たら、現場の今の人材確保ということにもかなり影響するんじゃないのかというふうに思うんですが、そうした点についての不安とか、そういうのはございますか。

須之内参考人 先生の御指摘のとおりでして、今現場の普及員の最大の関心事というのはやはり直接私どもにかかわる処遇の面でございまして、ですから、手当の問題についても、また資格制度の問題についても、非常に現場の不安が大きくなっております。

 これに関しましては、私どもも労働組合の立場で農林水産省の担当課の方々とも密に意見交換をさせていただいているところなんですけれども、少なくとも経過措置というものの中では、現場の不安をなくすことを最大限考えていくということは回答としていただいておりますので、それはしっかりと確認をしていただかなければならないというふうには考えております。

 ただ、今後の人材確保という部分につきまして、これだけ難しい試験をということになりますと、当然処遇という部分もありますけれども、これから、例えば新しい資格試験制度、大学院を出て実務経験二年を経てというようなことが出されておりますけれども、そこまでしてわざわざ普及員になろうという者がどれだけ出てくるんだという不安が当然ございますので、やはり資格試験制度、資格制度の運用につきましては、十分にその辺の現実的な対応について配慮をしていただかないと、これから新しく入ってくる職員があるかどうかというところの不安がやはり残ると思っております。

山本(喜)委員 もう一点だけお伺いします。

 先ほど、農家の方に喜ばれることが大きな励みであるというふうなことも話されたと思いますが、むしろ仕事が、普及センターの仕事だけでなくて、行政職というのも今はどんどん兼務が進んでいるわけでございます。そういう中で、普及センターの長が普及職員でなくてもいいということになるようですが、その場合に、現場にきちんと密接に対応していくという仕事が第一でありますけれども、その長が、そういう資格がない人になった場合の弊害というものはどういうふうなものが考えられるか、お伺いします。

須之内参考人 弊害の第一に、常々私どもが議論しておりますのは、やはり普及の手法というものが特殊であるがために、その辺がなかなか、行政の中で、つまり、事業を現場におろしていくという一方通行の作業をされている方々にはなかなか、実際農家の方々と話し合いをしながら信頼関係の中で事業を進めていくという、その仕組みが理解をしていただけないということが多々あります。

 ですから、普及員でない方が長になった場合、その辺の手法に対する理解が得られませんと、現場で、なかなかすぐに結果が出るようなことではございませんので、そういう中ですぐに結果を求められるようなことになってしまうということが心配されておりますし、現実にそういう傾向がだんだん出てきておりますので、その辺が一番大きなことではないかというふうに考えております。

山本(喜)委員 ありがとうございました。

 次に、中村参考人にお伺いします。

 きのうも農水委員会で耕作放棄地の問題を取り上げたわけですが、現状、毎年二万から三万ヘクタールの耕作放棄地が出ているわけでございます。これから農業委員会制度を見直すわけでございますが、耕作放棄地の対策というものについて、農業委員会としての取り組みといいますか、方針などがございましたらお伺いします。

中村参考人 耕作放棄地の問題は、我々にとっても大変重要な問題でございます。今、地域再生運動を行っておりますが、まずはそれぞれの地域で耕作放棄地等を把握いたしまして、これがどう活用できるかというようなことを含めて農業委員会としても対応しているところでございます。

 特にその中でやはり問題になってきますのが、放棄地の性格をどういうふうに見るかというようなことが一つあろうかと思います。これは、これから我々の仕事でもありますけれども、平地農村におきましても、面積が小さかったり、あるいは未整備であったりしますと放棄地になっておりますし、それから、不在地主で指導のしようも連絡のしようもないというようなことがありますので、そういう仕組みを今どうつくるかというようなことを考えております。

 それから、山間に行きますと、当然これはもう森林に戻した方がいいということで、京都議定書に合うような植種、樹種を含めて、植林事業みたいなものを起こしていくような視点もあるのではないかというような議論もしておるところでございまして、その放棄地の性格、性格をつかみながらやはり対策を打っていくべきではなかろうかというような議論をしている最中でございます。

山本(喜)委員 もう一点お伺いします。

 平成十三年に農地法が改正されたときに、産廃業者からの問い合わせがかなりあったというふうに聞いております。農業委員会の役割ということで、農業生産法人の要件適合性ということをチェックしていく仕事も大きな課題だと思うんですが、農地転用の際のそうしたチェック機能、不法投棄ということに対する農業委員会の役割、仕事といいますか、そういうのは今どうなっているでしょうか。

中村参考人 先生の御指摘のとおり、前の農地法の改正等によりまして、農業生産法人としての株式会社導入もされております。これは、我々も議論をしてまいりまして、いわゆる農業生産法人としての株式会社、こういうことでございます。

 これにつきましては、農業委員会にチェック機能が付与されておりまして、その中で今対応をしております。多くはないのでありますが、中には、条件が若干合わないようなものを是正指導等もやっているような事例が出てきております。

 それから、今、不法投棄、産廃問題等についてのお尋ねがございました。これは事例でございますけれども、関東のある農業会議にこの導入が可能になってからかなり多くの相談が持ち込まれておりまして、それをずっと精査していきますと、どうも産廃業者であるのではないかということから、いろいろな疑問を呈しまして、対応してまいったところ、最近は、今度はNPOについてそういう相談が来ているということで、大変心配をしているところでございます。

 現在も、基本計画の見直しの中でいろいろ農地制度等の問題がございまして、事前規制から事後規制へというようなことも言われておりますけれども、果たして、そういうことになりますと、今のようなことが事前チェックができるかどうかということもございますので、そういう動きに合わせて、変えるべきところは変えるべきものもあると思いますけれども、強化するところはやはりきちっと強化しないと、農地の確保もできませんので、そのあたりが今問題になっておるのではなかろうかというふうに考えております。

山本(喜)委員 次に、高橋参考人にお伺いします。

 今回の助長法の改正ということで、検討会でずっと議論されてきましたね。その中で、担い手の育成とか、そういうことについてもかなり議論があったと思うんですが、今まで認定農業者ということでやってきたわけでございますが、これが今うまくいっていないんじゃないかと私は思うんですよ。というのは、この基本計画の中で、プロ農家ということで今呼び方が変わってきているんですが、担い手を育成するということに当たって、どう政策の展開があるべきか、先生の御所見をお願いしたいと思います。

高橋参考人 先ほど来の議論の中で、若手農業者がどのような生きがいを持って農業に参入していくのか、あるいは既存の農業者が何に喜びを感じていくのか、私は、自己実現だと思っております。とにかく、何か自分の夢をそこで実現できるということが農業者の最大の喜びだろう。

 そこで重要なことは、農業経営にとっていろいろな規制があって、あれはやっちゃいかぬ、これはやっちゃいかぬ、これはやりなさいというような規制の中で育つということではなくて、できるだけ規制緩和をして自由度、農業者の自由選択の幅を広げることが最大のポイントであろうというふうに考えております。

 そういう意味で、担い手というのは、そういう自由度をつくるような条件のところであれば、私は地域参入者も含めていろいろな層から担い手は入ってくるだろうと。国が認定農業者ということだけで規定することではない。そういう規制だけではなくて、いろいろな多様な担い手が出てくることを期待しております。

山本(喜)委員 最後に、佐野参考人にお伺いしますけれども、農水省の調査によりますと、新規就農者のケースですが、世帯員として就農するケースというのがかなり多いわけですよ。そうした場合、女性の参画も関係しますけれども、家族経営協定というのがやはり、若い世帯、後継者、これを農家の跡取りにしていくというためにも大変重要だと思うんですね。

 そこで、佐野さんの経験とか、あるいは地域での取り組みなんかをお伺いしておきたいと思います。

佐野参考人 お答え申し上げます。

 家族経営協定の普及、浸透については、農業改良普及センターとの連携のもとに行っております。家族経営協定がどのようなものかは農家のほとんどがわかっていると思います。

 農林水産省の調査では、全国の家族経営協定の締結農家数は、平成十五年で二万五千百五十一戸となっております。私の村では、先ほど申し上げましたが、認定農業者が現在六十六名おります。将来的にはその約半数の三十戸ぐらいは協定に締結していきたいという方針を持っております。

 なお、私は、この協定は、農家の皆さんに、農家の幸せのために協定を結ぶんだよという推進を行っております。ということは、家族経営協定は、目的ではなく手段でございます。つまり、目的は農業、農村の安定のために生活環境の整備を行うためでありまして、それが農業振興につながるということでございますので、ぜひこの活動を力を入れてやっていきたいと考えております。

山本(喜)委員 どうもありがとうございました。私の質問を終わります。

高木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼のごあいさつを申し上げます。

 本日は、貴重な時間をいただき、御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げまして、ごあいさつといたします。ありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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