衆議院

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第15号 平成16年5月13日(木曜日)

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平成十六年五月十三日(木曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 高木 義明君

   理事 北村 誠吾君 理事 西川 京子君

   理事 松下 忠洋君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 小平 忠正君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      小野寺五典君    大野 松茂君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      木村 太郎君    後藤 茂之君

      後藤田正純君    佐藤  勉君

      玉沢徳一郎君    津島 恭一君

      永岡 洋治君    西村 康稔君

      西銘恒三郎君    平井 卓也君

      二田 孝治君    古川 禎久君

      岡本 充功君    鹿野 道彦君

      金田 誠一君    岸本  健君

      楠田 大蔵君    篠原  孝君

      仲野 博子君    楢崎 欣弥君

      堀込 征雄君    松木 謙公君

      西  博義君    高橋千鶴子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       亀井 善之君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            大久保良夫君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            太田 信介君

   政府参考人

   (環境省環境管理局水環境部長)          吉田 徳久君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十三日

 辞任         補欠選任

  野呂田芳成君     西銘恒三郎君

同日

 辞任         補欠選任

  西銘恒三郎君     古川 禎久君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 禎久君     野呂田芳成君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農業協同組合法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業協同組合法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君、金融庁総務企画局審議官大久保良夫君及び環境省環境管理局水環境部長吉田徳久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村康稔君。

西村(康)委員 おはようございます。自由民主党の西村康稔でございます。

 きょうは、農業協同組合法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案ということで、これからの我が国の農業を考えていく上で大変重要な法律、特に、強い農業、創意工夫する、自立を目指して頑張っていく農業をつくっていく大変重要な法案でありまして、そういう趣旨から何点か御質問をさせていただければと思います。

 まず一点目に、今回の法案の大きな趣旨といいますか背景ですけれども、昨年、米改革について議論を行い、本年度から新しい米政策もスタートするということで、大きな流れ、小泉改革の中で、官から民へ、できるだけ創意工夫、自主性を持ってやっていく、競争原理を働かせていくという大きな流れの中でこの米改革も行われているものだと理解をしております。食管制度のもとで半世紀以上秩序を守ってきた米でありますけれども、それぞれの農協の主体性を促しながら販売をしていく、また、競争原理も働かせながら販売をしていく仕組みを導入することになったわけであります。そのような流れの中で、生産者、それから農協、それぞれ、今まで以上に努力をする、販売努力を重ねていく、創意工夫をしていくということが大事になってくるものだと思います。

 そしてまた、生産調整につきましても、平成二十年を目標としていますけれども、将来は農業者あるいは農協が主体となって行っていくことになるわけでありまして、場合によっては、将来的には、生産枠の売買みたいな、金融取引みたいなことも想定される、そんな時代になってくるんだと思います。

 こういう時代背景の中で、今回の農協法改正は、それぞれの農協が自立をし、しっかりとした経営基盤をつくっていく、そしてまたいろいろな面で努力、創意工夫をしていく、その中で新たな事業展開を考えていく、そういう農協改革を後押しする大事な法律案だと理解をしておりますけれども、大臣にぜひ、このあたりの背景あるいは大臣のお考えをお伺いできればと思います。

亀井国務大臣 農協改革につきましては、平成十一年の食料・農業・農村基本法の制定を受けまして、平成十三年に農協法の改正をしたわけであります。その中で、信用事業の分野、これにつきましては、成果を上げておるわけであります。

 しかし、経済事業につきましては、改革がおくれている。組合員の皆さん方からも、農協を利用するメリットに乏しい、こういうような指摘があるわけでありまして、昨年十月、農協系統におきましては、第二十三回のJAの全国大会を開催されました。その中で、第一点として、安全、安心な農産物の提供と地域農業の振興、二点目に、組合員の負託にこたえる経済事業の改革、三点目に、経営の健全性、高度化への取り組み強化、四点目として、協同活動の強化による組織基盤の拡充と地域の活性化、この四点を重点事項に定められまして、農協改革に組織を挙げて取り組んでいくことを決議されたわけであります。

 何よりもまず農協改革、農協系統自身が、組合員を初め各界から寄せられております意見や要請を踏まえて、みずからが決定した改革を断行する、これが重要なことであるわけでありまして、私ども、その後押しをする、そういう面で、この支援をするために、今回の法律案におきましては、経済事業改革指針の法的位置づけの明確化と販売事業面における農協間連携の強化、共済事業の健全性、契約者保護の充実等の措置を講じていくこととしたわけであります。

 ぜひ農協、組織のための組織から、農業者、消費者に選択してもらえる農協に脱皮することが、私は農協改革の基本的なことである、このように考えております。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 みずからが率先して改革をやるべし、そしてまた、それを後押しするという御所見をお伺いいたしまして、御指摘のとおり、消費者のためでもあり、また生産者のためでもあり、農業を改革していく一つの大きな、中核的な存在として農協を改革していく、頑張っていただくということだと思います。

 今御指摘もありました事業につきまして幾つかお伺いをしたいと思うんですが、まず、販売事業であります。

 私の地元、淡路島と明石でありますが、JAあわじ島、南の方なんですね、タマネギ、レタスで有名な産地でありますけれども、いろいろ新たなシステムを構築して、このレタス、タマネギをいろいろなところへ売っていこうといろいろな試みをしております。これは例えばの話でありますけれども、大手スーパーと取引をしたい、直接取引をやるというときに、スーパーサイドからは、安定供給、あるいはロットを一定期間続けてきちんと供給できるようにということがよく言われるようでありまして、その場合に、一つの農協だけでは波があってなかなか安定供給できないケースがあるというわけであります。

 あるいは、都市部であります明石、私の地元の明石の方でも、農協が学校給食に直接納入をしていく、供給していくということもいろいろ検討しているようでありますけれども、その場合も、やはり一定程度の安定供給が必要なわけで、単協だけではなかなか実現できないケースもあるわけです。

 こういったケース、いろいろ農協は努力をして、自分たちでルートを見つけて販売事業を拡大していこうというときに、そういう制約、なかなかうまくいかないケースがあるわけですけれども、今回の法改正では、こうした農協の自主的な取り組み、特に販売事業を支援するに当たりましてどのような措置がとられているか、御意見をいただければと思います。

川村政府参考人 今回の改正におきまして、農協の販売事業を支援する仕組みが措置されておるかというお尋ねでございます。

 今御質問の中にもありましたとおり、各農協段階でいろいろな新しい取り組みが行われております。消費者ニーズも多様化しておりますし流通形態も多様化しているという中で、単協段階で農産物をより有利に販売するということで、従来の経済連でありますとか全農を通してやるというだけではなくて、直接取引あるいは地場での地産地消、そういうものに取り組まれるというようなことが非常にふえております。

 この場合、単一の農協ではなかなか、今の御質問の中にもありましたように、時期によっては必要な出荷量が、ロットが確保できないとか、いろいろ問題がございます。そういう中で、他の地域の農協と連携をされまして流通の安定化といいますか、そういうことに取り組まれている例も昨今非常にふえてきております。そういう観点からいたしました場合に、その一つの農協が他の農協の農産物を扱うということも、現在の規定では員外利用規制の対象ということで、非常に制限があるわけでございます。

 そういう意味と、最近の動きを見ますと、これは、系統全体として消費に、あるいは流通に取り組んでいくということからしますと、員外利用の規制を撤廃する、こういうことが非常に不可欠ではないか、それが円滑化に資するのではないかということで、今回の改正の中で、定款の定めるところによりまして、組合員の農産物とあわせて販売を行うことが適当であると認められる農産物を生産する他の組合の組合員等につきましては、員外利用規制の対象外とする、こういった規定を設けたところでございます。

 そういうことで、組合員が創意工夫をされまして、最大限の販売の促進、そういう努力をしていただきたいと思っておるところでございます。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 農協の自主的な取り組み、いろいろ自分たちで開拓をしていこうとするその努力を後押しする、支援するような今回の改正になっていると思いますけれども、そんなふうな形で、基盤強化していく中でいろいろな新しい事業に取り組めるように、ぜひまた引き続き取り組んでいただければと思います。

 それから、次に農地集積、担い手への集積の話ですけれども、まず最初にちょっとデータをお伺いしたいんです。最近、高齢化などいろいろな要因で耕作放棄地がふえている、一方で担い手への農地の集積率、ふえているのはふえているんですけれども、鈍化しているという傾向がよく指摘をされますけれども、具体的に耕作放棄地がどのぐらいふえ、担い手への集積がどのぐらい鈍化しているか、まずデータをお伺いしたいと思います。

川村政府参考人 担い手への農地集積の問題と耕作放棄地の問題でございます。

 担い手への集積は、かつては年間八万ヘクタールぐらいずつ集積が進んでおりましたが、最近ではその半分以下といいますか、三万ヘクタール程度の伸びということで、鈍化をしてございます。そういうことでも、ちょっと今後格段の努力が必要だと思っているところが一点でございます。

 それから、耕作放棄地につきましても、これもセンサスで調べたものでございますが、最近では二十一万ヘクタールということでございまして、十数万ヘクタールから二十一万台ということでかなり増加をしております。そういうことで、この耕作放棄地対策も非常に重要な課題というふうに考えておるところでございます。

西村(康)委員 耕作放棄地が増加をしている、他方で担い手への集積が鈍化をしてきているということで、やはり農業の構造改革、強い農業をつくっていく上で一つの大きな柱が担い手への農地の集積を進めるということだと思います。

 その集積を進めるに当たって、農協もぜひうまく活用していただければと思うのでありますが、私の地元でも、これは津名郡、淡路島の北の方にあります日の出農協というところでは、地元の自治体と連携をして、場合によっては農業生産法人を設立して、そこに集積をしていく、そのために農協がいろいろな情報を集めて、集積をしていくような仕組みを考えようと検討しておりまして、これは大変いいことだと思うんですけれども、現在、その担い手への農地集積において、農協を初めとする農業団体はそれぞれどのような役割を担っているのか、伺えればと思います。

川村政府参考人 担い手への農地集積の問題でございますが、農協も非常に大きな役割を果たしております。そのほかにも、先般の農業委員会法の御審議のときにも御議論いただきましたけれども、農業委員会それから土地改良区、農地保有合理化法人、こういった諸団体がそれぞれの立場で、農地の利用関係の調整等につきまして、それぞれ重要な役割を果たされております。特に農協につきましては、市町村に対します農用地の利用集積計画作成の申し出ということで、これは経営基盤強化法に基づく申し出でございますが、そういうイニシアチブをとっていただいておるということがございます。

 最近は、特に、数量的な集積も大事でございますけれども、質的に、集団化でありますとか、そういう農地の集積の質的な向上を図るということも生産の効率化等からは非常に重要なわけでございます。そうなりますと、やはりその地域の拠点、農業振興の推進役となっております農協、こういうことが非常に重要でございます。先ほどもお話がありました新たな米対策の中で、地域水田農業ビジョン、こういうものを集落ごとの話し合い等を通じて積み上げていって、担い手を明確にしていくということもございます。そういうことによって、非常に質の高い集積が図られる。そういう中では、農協の果たす役割というのは極めて大きいというふうに思っております。

 また、規模拡大も、所有権から利用権、それからさらには農作業の受委託、こういった形でも進展をしてきておりますが、農業機械の共同利用、こういったものをオーガナイズしていくということでは、やはり地域に根差した農協、こういうものが非常に大きな役割を果たされておるということで、今後とも、水田農業ビジョンの実践等を通じて積極的に農地の利用集積に力を発揮していただきたいと期待をしているところでございます。

西村(康)委員 担い手への農地の集積、それから、今局長お話がありました、将来は生産調整にもかかわってくるということで、農協の役割は非常に大事だと思いますし、特に、意欲的にいろいろ取り組もうとしている農協に対してはぜひ積極的な支援をお願いしたい、そんなふうに思います。

 今申し上げましたとおり、担い手にできるだけ集積をし、施策も、選択と集中という言葉がありますけれども、重点化、集中化をしていくことが強い農業をつくっていく、これは基本だと思います。一方で、そうはいいながらも、それぞれ地域の事情で、時々私も地元を回っておりますと、心配なんですよという農家の方もおられますけれども、とにかく大規模、プロ農家、こんな人だけに施策を集中し過ぎるんじゃないか、ハードルが我々にとっては高過ぎますよという、地域によっては、どうしても集約化できない、集積できないところ、あるいはお年寄り中心に家族でやっているようなところ、さまざまな形態はまだ残ると思いますので、その小さな、小規模農家が施策から切り捨てられてしまうんじゃないか、そういう懸念も持っております。

 大変悩ましい問題でありまして、基本はやはり強い農業、ある程度の規模を備え、効率化していくということは基本ではありますけれども、地域の事情に応じて、小規模の農家にももちろん配慮をしていくということが必要だと思うんです。これはWTOでも多面的機能の考え方が認められているところでありますし、ぜひ切り捨てにはならないようにお願いをしたい。

 特に、副大臣のように北海道ですと、大規模を非常にやりやすい、これまでの施策の中でも基準が都府県とは違うわけでありますけれども、地域において例えば施策の基準をつくる場合にも、これから、それぞれの地域の事情に応じて、地域がそこに参画をしていくような仕組みもぜひ考えていただきたいと思いますけれども、これは副大臣、お答えいただいてもよろしいですか。

金田副大臣 今、基本計画の見直しをしている最中でございます。

 確かに、担い手に集中して、生産額の相当部分がこういった担い手に担われるような農業を目指していくということで取り組んでいるわけでございますが、今、三百万経営体というか、家族経営があるわけでございまして、この中で担い手に集中させていくといっても、どういったものを担い手というのかということは極めて難しい問題でございます。やはりいろいろな制約の中で農業をやっているわけでございますので、規模拡大をして将来担い手になっていこうという人、あるいは、規模は小さくても、有機農業をやったり高付加価値の農業をやって意欲的に取り組んでいる農家もあるわけでございまして、こういった皆さん方を、おまえはだめだとかおまえはいいとかというような選別がなかなか難しゅうございます。

 今、国の制度の中で認定農業者制度というのがございまして、その認定農業者制度は、本人の能力や意欲、そういったものも勘案しながら、十八万人の認定農業者というのをやっております。そういった中で、地域別に国が一定程度を決めて、おまえは認定農業者だとかそういったことでなくて、地域の意欲とか能力なんかもかみ合わせながら、少しずつそういった形の担い手を、自然発生的にと申しますか、そんな形で選別していくしかないんだろうというふうに思っています。

 また、規模の小さい農業者につきましては、昨年度から集落経営体という制度も取り入れておりますので、そういった中で、しっかりとした担い手をつくり上げていきたいというふうに思っているところでございます。

 なかなか一概に、この基準だ、おまえはだめだとかおまえはいいとかということは、実態上、難しいのでないかと思っております。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 大きな流れは、担い手に集積をしていく、より高度なというか、プロ的な担い手を育てていくということだと思いますけれども、やはり小規模でも頑張っておられる農家の方もおられますし、それぞれ地域の事情もあると思います。特にその中でも、意欲的に取り組んでいる方にはぜひ積極的な支援をお願いしたいと思いますし、切り捨てにならないようにぜひお願いをしたいと思います。

 そうする中で、一方で、担い手への集積が鈍化している、あるいは担い手が不足をしているというようなことが問題となっている地域もございます。やはり農業が、魅力ある産業として新規参入者がどんどん入ってくる、特に担い手になるようなしっかりした考え方を持った人が入ってくる、そういう産業でなければいけないと思うんです。

 これも地元の農協関係者の方からアイデアとして伺ったんですけれども、担い手不足に悩む地域で、小規模の農地が幾つかあるというときに、それぞれの農地から農協が信託をすべて受けて一定の規模にする、ある一定規模になった農地を信託をして、そこで収益を上げていくわけですけれども、そのときに、例えば、最近よく話題になっておりますカゴメとかキューピーとか大手の食品メーカーとも連携をして、そこでトマトをつくってもらって収益を上げていく。これは土地自体は所有権は信託ですから移りませんけれども、その収益は還元をしていくということで、そんな取り組み、これを場合によっては県の信連で取り組みたいというようなこともアイデアとして出てきております。

 いろいろなアイデアがこれから出てくるんだろうと思いますけれども、農協がいろいろ企業とも連携をしながら担い手不足の解消に取り組んでいく、これも大変大事なことだと思います。このような事例、全国的にどんな取り組みがなされているか、ぜひお伺いをしたいと思います。

川村政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、非常に担い手不足が深刻化しているということで、農協が主体的に取り組まれまして、地元の市町村等も連携をいたしまして、みずから出資をして農業生産法人を設立するという事例は結構出てきております。今お尋ねがございました民間企業との連携、これにつきましては、まだ例はなかなか少ないわけでございますが、ないわけではございませんで、今後、非常に期待されるところでございます。

 一例を申し上げますと、ある県の村でございますけれども、村と地元のJA、それから食品会社、農業者等が出資をいたしまして農業生産法人をつくる、この農業生産法人は、その食品会社の飲料の原料でございますトマト、これを生産して出荷する、その食品会社は生産されたトマトを全量買い取りまして安定的な販売先となる、こういったことで、従業員も地元から採用する等、地域における雇用創出にも非常に貢献している、こういった事例も出てきております。また、特区を活用して、いろいろな企業も参画をして、地元の農協と連携するという動きも聞いておりますので、今後、そういう形態での発展が期待されるというふうに思っております。

西村(康)委員 農協がいろいろ取り組んでいこうとするときに、規制も恐らく問題になってくるんだろうと思います。ぜひ、担い手不足のあるような地域でそういう取り組みをしようとしている農協なり、自主的な努力をやっているところには積極的な支援をお願いしたい。

 特に、今後、いろいろな規制、今申し上げた信託は農協は受けられるわけですけれども、そういう金融的な手法もこれから活用して、やはり産業として収益を上げていく、あるいはいろいろなところと連携をしていく、あるいはいろいろなところからも資金を入れていくというような、いろいろな手法もこれから必要になってくると思いますので、そのあたりの規制の緩和も含めて、特区でいろいろ取り組まれていますけれども、ぜひ勉強していただいて、いろいろな支援をこれから積極的に行っていただければと思います。

 農協がそういう取り組みができるのも、やはり基盤がしっかりしていないと、なかなか新しいことに取り組んでいこうというのはできにくいわけでありますけれども、これまで農協の経営状況、大ざっぱに言いますと、やはり信用事業、共済事業で収益を上げて、営農あるいは経済事業の赤字を賄っていくというのが大きな構図になっているんだと思います。

 いろいろな新しい取り組みをするに当たっても、まずは経営基盤をしっかりする、それぞれの事業がしっかりと経営基盤を持って黒字で運営していくということがまずは一番根っこに大事じゃないかと思うんですけれども、最近の農協の経営状況についてお伺いをしたいと思います。特に、赤字の農協もある程度の数があると思いますけれども、そのあたりの経営状況についてお伺いをしたいと思います。

川村政府参考人 農協の経営状況でございますが、今お尋ねの中でも御指摘がございましたとおり、全般的に申し上げますと、信用事業、共済事業、この部分で黒字を出しているということでございます。しかしながら、この黒字幅は昨今の経済情勢の中で縮小傾向にある。一方、購買事業、販売事業は、総体としては赤字が多くて、かつ赤字幅が拡大傾向にあるということでございます。

 赤字農協がどの程度あるかということでございますが、これも年によってかなり変動がございまして一概には言えないんですが、また赤字のとらえ方も、経常損益ベースでやるのか、あるいは次期繰越損失金を計上したところをとらえるのかということによっても違ってきますが、十四事業年度で見ますと、経常損益ベースでいいますと百五十三組合、比率にしますと一四・六%、それから、損失処理をして次期繰り越しをしたというところが八十四組合で八%ということでございます。まだ非常に厳しいということではございますが、ただ、前年の十三年度に比べますと、やや改善をしているということでございます。

 今後、この部門別の経理内容を明らかにして、よく組合レベルで議論していただいて改善をしていただくということで、今申されたような経営基盤を健全な方向に持っていくということでの努力をしていただきたいと思っております。

 これはもちろん農協によってもいろいろ差がございますので、今全体的な数字で言いましたが、かなり工夫をされまして、各部門でも黒を出しておられるというところも非常にあるわけでございます。

西村(康)委員 赤字のところも多いようでありますけれども、やはり経営基盤をしっかりとしていくことが新しい事業にも取り組める前提だと思いますので、そのあたりの指導も含めてしっかりとしていただければと思うんです。

 特に、合併の推進ですね、これも相当進んできておるというふうに理解をしておりますけれども、今回の法改正では合併を推進するためにどんな措置を講じておられるか、お伺いしたいと思います。

川村政府参考人 合併の問題でございますが、御案内のとおり、農協系統組織におきましては、合併構想というものを各県がつくられまして、広域合併の促進に取り組んでおられます。そして、数字的に申し上げますと、平成九年度末に約二千ございましたが、十六年四月現在でございますが、九百四ということで、半分以下まで減少をしているということであります。

 ただ、合併も、県によっていろいろ事情も違いますが、非常に大きくなった農協とそれから合併に加わらなかった小規模農協、こういうものが併存しているということで、なかなか地域が一体化しないで、合併のメリットが十分に発揮されていないといったところも見受けられるわけでございます。

 そして、今回の改正におきましては、こういった非常に大きな農協と取り残された小さな農協とを合併していくということが非常に大事だということで、手続面でも工夫ができないかということでございまして、大規模の組合が存続組合となりまして、人員規模、資産規模で二十分の一以下の小規模農協、こういうものを吸収する場合には、まず、その残る方についてはさほど経営的な影響がないと思われますので、存続組合におきます総会議決を省略することができるように簡易合併手続というものを設けることによりまして、今申し上げましたような形での合併がさらに円滑に進むように措置をしたところでございます。

西村(康)委員 地域の事情もありますので、一概になかなか難しい面もあるかもしれませんけれども、ぜひ積極的に経営基盤を強化するという意味で合併も推進していただければと思います。

 最後に、農協とそれから各農業団体、先ほども農地の集積のところで土地改良の組織あるいは農業委員会等の話も出ていましたけれども、農業委員会も一部にやはり形骸化しているような面もあると思いますし、それから各団体との連携、あるいは屋上屋を重ねている面もあるんだと思います。営農指導につきましても、県の普及センターもしっかりと営農の活動をしておりまして、これは私の地元ではなかなか評判がいいんですけれども、農協も営農指導を行っているわけです。

 行政改革という視点からも、コスト削減という視点からも、ぜひ、これらの団体、統合できるところは統合、連携できるところは連携していただければと思いますけれども、その点、いかがですか。

川村政府参考人 普及センターの行います営農指導と農協の営農指導、よく連携を図って、補完的にやりながら最大限の効果を発揮していくということが重要だと思います。

 その役割分担も、先般の改良助長法でも御議論いただきましたけれども、普及の方は、より高度化されたもの、それから地域を公的な立場でコーディネートしていくといった立場に特化をしていく。それから、農協関係はまさに、一言で言えば、いかに組合員の生産物を有利に販売していくかという観点からの技術指導、いわば規格を統一したり底上げを図ったりということで機能分担ができると思っております。

 それからまた、農家の立場に立ってワンストップサービスといったような取り組みも各地でなされておりますので、よく、使う側の身になった連携が行われて、本当に効果を上げていくようにということで頑張っていただきたいと思っております。

西村(康)委員 今回の法改正で、しっかりとしたそれぞれの農協の経営基盤ができるように運用をしていただければと思いますし、それぞれの団体との連携、統合も含めて検討していただき、また、意欲ある、創意工夫している農協にはぜひ応援をしていただけるようにお願いをしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、永岡洋治君。

永岡委員 自由民主党の永岡洋治でございます。

 本日、農業協同組合法の一部改正等の法律案につきまして、大臣ほかの関係者の方々に質問をさせていただくわけでございますが、これに先立ちまして、先般、自由民主党の派遣でEUを訪問する機会がございました。大臣も今回の機会にフィシュラー農業委員等と会談をされてきたというふうに聞いておりますが、EUは、一九四六年に引かれた鉄のカーテンを取っ払いまして、二十五カ国に拡大をいたしました。それを機会に、我々も、党として言うべきことを言い、パイプを太くしようではないかということで行ってきたわけでございますが、その中で、WTO問題あるいは農業問題についても、先方の関係者と意見交換を行ってきたところであります。

 私は、欧州委員会のジョン・スミス農業総局長と会いまして、我が国の食料の海外依存率が六〇%という異常に高い水準になっている、これは今、日本国内でいえば、自給率四〇%ということでありますけれども、こういう状況を見ると、日本の農産物市場というものが大変外に開かれた市場であることを改めて認識してもらいたいということを申し上げてきたわけであります。その中で、マーケットアクセスの問題あるいは国内政策の問題につきまして、こういう開かれた市場を持っている日本に対しては、生存権ともいうべきものを前提にして、もうちょっと理解をしてもらいたいということを強く促してきたわけでございます。

 これから自給率の向上につきましても、食料・農業・農村基本計画の中で、政府としても力強い取り組みをしていただいているところでもありますし、そしてまた、その先には日本型直接支払いというようなことも御検討をされていると聞いております。この際、現下の非常に高い、六〇%という海外への食料依存率の改善、あるいは自給率の向上ということにつきまして、改めて、大臣の決意と政府の基本方針を確認の上でお聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 委員が議員外交という面で、我が国の問題、今御指摘の食料自給率の問題あるいはWTOの問題、多様な農業の共存、こういう面でいろいろの活動をしていただいておりますことに感謝を申し上げる次第でございます。

 今御指摘の我が国の食料自給率、カロリーベースで四〇%、このように低下をしている現状、これは、食の外部化、洋風化ということ、また、米の消費が減少する一方で、畜産物あるいはまた油脂類の消費が増加をしている、こういうことで、食生活の変化が大きな要因となっておるわけでもございます。

 この食料自給率の問題は、いわゆる国内生産のみならず、国民の食料消費のあり方、こういう面にいろいろ左右されるわけでありまして、平成二十二年度までに消費及び生産における課題が解決される、こういう面で、四五%、このようなことを目標にしておるわけであります。しかし、この自給率の目標の実現のためには、私は、消費者、生産者、あるいはまた食品産業の事業者が一体となった形でそれぞれの課題に取り組むことが不可欠、このように思っております。

 特に、これらの取り組みを推進するために、政府といたしましては、消費面では、食生活の変化に伴い食料自給率の低下に加え、栄養バランスの崩れから生活習慣病の増加などが社会問題化していることも考慮いたしまして、食生活の大切さを教える面での食育の推進、これを進めてまいらなければならない。また一方、生産の面におきましても、米政策改革の着実な推進を初めといたしまして、農地や意欲と能力のある担い手の確保とか、あるいは技術の開発、さらには普及等を図りつつ農業の構造改革を進めまして、消費者の需要に即した国内生産の増大を図る、こういうことが必要、このように考えておるわけでありまして、消費、生産、そして食品産業等事業者が一体となった形で自給率の問題に対応してまいりたい、このように考えております。

永岡委員 ありがとうございます。

 自給率の問題は、供給面だけではなくて需要面の問題が非常に大きな要素を占めているということであろうかと思いますので、需要、供給、両面におきまして政府の強力な政策の展開というものをお願いする次第でございます。

 では、きょうの本題でございます農業協同組合法等の一部を改正する法律案につきましてお尋ねを申し上げたいと思います。

 農業協同組合自体は、その発足以来、半世紀以上の歴史を有しているわけでございます。農協が、法律の目的であります農業者の社会的、経済的地位の向上に貢献をし、我が国農業の発展に深くかかわってきたということは、これは事実であります、評価をすることであろうかと思います。つまり、農協は、経済主体としての存在と、そしてまた地域における地域住民の生活に直結した主体としての側面、この二つの役割を担って生きてきた、こういうことであろうと思います。

 個別問題に入る前に私の基本的立場を明確にしておきますと、私は、将来にわたってもこれまで農協が担ってきた重要な役割というものが存在意義を失うものではない、まず、そのことを明確にした上で個別の質問に入らせていただきたいと思うわけであります。まさしくその役割をさらに強く発揮していただく、そのためにどうしたらいいかということを期待する立場から、少々きょうは突っ込んだ質問もさせていただきますが、その点、よろしく御理解のほどをお願いしたいと思う次第でございます。

 近年、農協のあり方がいろいろ問われておりまして、例えば組織体制や、今までの旧来の事業運営にあぐらをかいて経営をしているのではないか、あるいは時代や環境の変化に即応していない状況で経営をしているのではないかとか、本来、農協は農業者にメリットを与える組織であるにもかかわらず、必ずしも農業者の側に十分なメリットが出ていない面もあるのではないか、さらには、消費者に対して、消費者ニーズにこたえるような農産物の供給を初めとして、食の安全、安心に貢献をするといったようなことも農協の職責ではないか、いろいろな批判があるわけであります。こういう苦言も、実は、私自身は、農協が持つその存在理由に対する、あるいは存在そのものに対する強い期待があってこそ出てくる苦言ではないかと思っております。

 今回の法律改正はとりわけ経済事業の改革を中心としての法律改正だ、こういうふうに理解をしておるものでございまして、もちろん、改革の推進のためには、政府のみならず農協自身の改革に対する真摯な努力も必要不可欠であることは事実であります。後でまた議論が出てくるわけでありますけれども、その中で、大規模農家などの農協離れというものが一つ大きな問題としてあろうかと思います。いずれにいたしましても、新しい酒は新しい革袋に入れなければならない、こういう格言にありますとおり、情勢の変化に対応した体制を整備していかなければならない。

 そこで、基本的なことでございますので大臣にお尋ねするわけでございますが、こうした農協の存在意義を踏まえまして、これからの農協のあるべき方向というものについてどういうお考えをお持ちであるのか、お尋ねを申し上げたいと思います。

亀井国務大臣 今委員からの御指摘のように、農協が、本当に今の社会経済情勢がいろいろ大きく変化をする中で果たしてそれに順応しているかどうか、この情勢の変化に対応しているかどうか、こういう点では大変、私自身もそのような認識を持っております。

 組合員、とりわけ担い手にとりましては、農協利用のメリットがあるのかどうか、メリットが乏しいんじゃなかろうか、あるいはまた消費者からも、消費者のニーズに合った生産あるいは販売システムが確立していないのではなかろうか、こういう指摘ができる、こういう点は私も全く同じ認識を持つわけであります。

 そういうような中で、農協は、農業者の協同組織としての原点に立ち返りまして、担い手を初めとする農業者の意向を踏まえた地域農業ビジョンを明らかにするとともに、これに基づく生産、販売活動を行うことによりまして、地域農業の司令塔としての役割を担っていくことが重要、私はこのように考えております。農業者あるいは消費者から信頼をされる、そして選択をされる組織となるべく、営農指導やあるいは農産物の有利な販売、あるいは生産資材のコストの低減等を通じまして農業者の所得の増大が図られるようなこと、あるいはまた、消費者に対しましても、信頼される安全、安心な農産物を適切な価格で安定的に提供する、こういった活動に徹することが基本的なことではなかろうか、私はこのように思っております。

永岡委員 ありがとうございます。ぜひとも、そうした基本的考え方で今後とも農協のあり方について御指導を賜りたいと思うわけでございます。

 そこで、今回の法改正におきまして、全国農業協同組合中央会、つまり全中に関する規定が多く設けられているわけでありますけれども、指導事業に関する基本方針の策定でありますとか、あるいは中央会の監査の全中への集約化などの改正規定があるわけであります。中央会のリーダーシップの発揮というものを期待したものだというふうに理解しておりますけれども、今回、この全中の権限を強めることで農協改革を進めようとする理由が何であるのかという点につきまして、改めてここでひとつ明らかにしておいていただきたいというふうに思うわけであります。

 農協系統において中央会の果たす役割あるいは存在意義といったことも含めまして、ひとつ御答弁いただければありがたいと思います。

金田副大臣 委員御指摘のとおり、今回の法改正の重要な眼目の一つであります中央会の指導性、リーダーシップを制度面からも強化するということは、今回の改正の大眼目の一つでございます。

 確かに、農協につきましては厳しい御批判や指摘がございます。そういった中で、やはり農政を改革していくためには、農協みずからが、昨年の大会でみずから自己改革をするんだというふうに宣言しております。そういった自己改革の流れを加速していく上でも、中央会のリーダーシップを強化して制度面の裏打ちをさせるということが必要だというふうに考えております。

 さまざまな農協についての批判というのは、農協の自己改革を通じて実現していかなきゃならないというふうに思っているところでございます。みずからが掲げた改革を断行していただくために、中央会のそういったリーダーシップを強化するということを制度面からも裏打ちさせていただいているところでございます。

永岡委員 ありがとうございます。農協中央会の権限の強化等が農協の自己改革を推進するための基盤となるように、私としても大変期待をしているところでございまして、ぜひともよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 さてそこで、これは法律改正そのものと絡む問題ではありませんけれども、今後の農協のあり方につきまして、特に、農業生産法人と農協との関係についてお尋ねを申し上げたいというふうに思います。

 実は、食料・農業・農村基本法におきましても、農業の法人化という問題は大きな柱として掲げられておりまして、担い手不足が叫ばれる中で、法人化というものを進めていくべきだということに期待がかけられているところであります。ただ、地元の実態、いろいろな事情を聞いてみますと、農協は、どうも農業法人というものとうまくタイアップしてやっていくことがやや苦手ではないかと思われるケースがあちこちで見られるわけでございまして、このことをどうとらえ、どう改善していくかということが、実は今後の農協のあり方を問う問題に直結するのではないか、こういうふうな問題意識を持っております。

 農協は、農業の法人化というものを、単に組合員数が減少することが問題であるとか、あるいは農協離れの要因であるかのような発想でとらえることは、私は、ちょっと問題があるのではないか、むしろ、そういったものを含めた上での農協のこれからの役割の拡大、あるいはこういう生産法人を有力な構成員として取り入れていくという努力をしていくべきではないかと思います。

 「農協改革の基本方向」ということで、農林水産省が平成十五年に研究会を持ちました。その研究会の中で優良な事例がいろいろ報告をされているわけでありますけれども、新潟県の、現在統合されましてJA越後さんとうという農協がございます。この農協は非常に先進的な農協でございまして、集落営農の発展、経営の形態の一つとして、法人化をみずから進めている、こういうことをやっている農協でございます。このような先進的な農協、すべてこれに倣えというわけにはいきませんけれども、これを優良事例としてこの研究会でも取り上げているわけでありますから、ぜひとも農業経営の法人化というものに農協がもう少し積極的に取り組んでいっていただけないものか。

 政府の農業法人の政策との関係で、農協の農業法人への取り組みをこれから強化し、今後どのように指導していかれるのか、この点につきまして、当局の御答弁をお願いしたいと思います。

川村政府参考人 農協と法人についてのお尋ねでございます。

 今、委員の御質問の中でも触れられましたように、これまで農協といいますと、なかなか、法人との関係、つき合い方におきまして、必ずしも円滑な関係でなかったということは事実としてあったと思います。これは、委員も御案内のとおり、法人化ということが今後、新基本法でも正面から取り上げられまして重要な施策となりましたし、また実態も進んでいるということで、平成十三年の農協法の改正におきましては、法人も正組合員資格を有するという改正を既に行わせていただいております。

 さらに、この法人化の取り組みの中で、昨年のJA大会、これにおきましても、地域におきます担い手の育成の確保、支援対策の実施としまして、法人化ということを一つの大きな柱として取り上げております。具体的に申し上げますと、今も触れられました越後さんとうの例も念頭にあると思いますが、一つは、集落営農の育成と段階的な法人化をするんだ、それから二点目といたしまして、JAによりますコンサル機能強化とパートナーシップの形成による支援、それからまた三点目といたしまして、担い手不足地域におきますJAみずからの法人設立に取り組むということを決議しております。既にこの三点目のJAみずからの法人設立、これも最近は急増しておりまして、非常な伸びを示しているというのが実態でございます。

 こういうことで、我々としても、農協系統、この法人化の問題を真剣に、さらに発展させていただきたいと思っているところでございます。

永岡委員 前向きの答弁をいただきまして、大変私も安心をし、かつ、さらにその方向で政府の指導を進めていっていただきたい、こう強く期待をするところでございます。

 そこで、法人化の問題も含めてでございますけれども、これまで農水省なり政府としては、安定的、効率的な経営体を日本国内につくり上げて、農業生産の構造をより安定化、あるいは健全な、強固なものとしていこう、こういう方針で臨んでこられているわけでございます。ということは、効率的、安定的な経営体をつくるということは、土地利用型農業でいきますと、非常に規模の大きな農家をつくっていく。そのために、従来から、農地流動化の奨励政策でありますとか、あるいは農用地利用増進法でありますとか、各種の政策を講じ、そして、先ほども副大臣の答弁にもありましたが、認定農業者制度などを導入いたしまして、政策の集中化も図ってきている。その一つの大きな柱として農業の法人化ということが含まれている、こういうふうになっているわけであります。

 そこで、農協のこれからの、大規模農家あるいは法人経営体との関係というものを円滑にしながら、しかも、地域の農業の安定的発展のためにお互いに協力する関係をつくっていく、これが、先ほど来申し上げているように、非常に重要な問題であると私は認識をしているわけであります。

 もちろん、今さら申すまでもありませんが、農協の基本的理念というのは、一人は万人のために、そして万人は一人のために、これが基本理念であります。この理念は大変崇高な理念でございまして、だれも否定することはできないわけでありまして、私も当然ながら賛成をする一人であります。しかし、その延長線上に何があるかというと、農協の最高の決議機関というのは総会になるわけでありますけれども、総会は、文字どおり、組合員全員に平等に、一人一票の議決権を与えるというのが原則になっております。まさしくこれが農協の協同組合としての根幹を形づくる基本理念に通ずるということを理解した上で、次のことを御質問させていただきたいと思うわけであります。

 つまり、規模が大きな農家や法人組織も、そしてまた、別に否定的に物を申すわけではありませんけれども、規模の小さな、あるいは兼業農家も、それぞれ一票の議決権を持つということがある意味で実質的な平等というものを阻害している、こういう面があるのではないかという心配をしているわけであります。組合員は例えば出資額あるいは事業利用の多寡にかかわらず平等であるというふうに考えるのも一つの考え方ではありますけれども、規模の大きな農家あるいは法人経営体等が有する意見を農協の運営に反映させていくということも非常に重要なことではないかと考える次第でございます。

 農水省としてあるいは政府として、効率的、安定的な農業経営体を農業の主たる担い手として位置づけていくという方向を明確に打ち出しているわけでありますから、その点と、これからの農協の意思決定のあり方というものについて、時代の流れに沿った方向にしていくために、例えば、農協の意思決定の方式に関しまして、一人一票制という従来の考え方を一歩進めまして、この進め方はいろいろな考え方があると思います、過激なことを余り申し上げるつもりはありませんけれども、一歩進めて、あるいは半歩進めて、実質的な公平というものを実現して、農協の運営にできるだけ多くの地域の農業経営者の、特に意欲のある農業者の意見を十分に反映させていく。

 中長期的なビジョンでも結構でございますが、今後こういう体制を導入することについてどういう基本的なお考えをお持ちなのか、大臣にお尋ねをしたいと思います。

亀井国務大臣 農協は農業者の相互扶助を基本理念としておるわけでありまして、そういう組織であるわけでありまして、組合員の議決権、出資口数に応じましてというようなことでなしに、出資口数に関係なく、協同組合の一般原則であります一人一票主義、これはいわゆる一個、こういうようなことであるわけであります。これは、株式会社が株式数に応じました議決権を株主に与えている、これと根本的に異なるわけでありまして、そういう面での、やはり農協が協同組合組織という性格上、一人一票制度を見直すということは困難である、こう申し上げるわけであります。

 しかし、例えば、生産資材のコストにつきまして、大規模経営あるいは法人経営等、あるいはまた担い手の大量取引につきましては大量取引割引を行う、こういうようなことのメリットを与える、こういう面で、農業者の階層分化が進んでおります現在、やはり形式的な平等から実質的な公平、こういうような事業運営に転換をしていく必要がある、このように考えております。

 この一人一票制を見直すということになりますと、現在農協に認められております独占禁止法の適用除外の対象外、こういうことにもつながるわけでありますので、この問題につきましては、一人一票制、この見直しは困難である、このように申し上げるわけであります。

永岡委員 基本原則を守りながら、実態の農業の地域社会の経営体の構成に配慮していく、こういうことでの、これからの政府側の、あるいは今の大臣の答弁にもありましたけれども工夫というものをぜひお願いをしたいと思う次第でございます。

 あと、幾つか細かい点になりますが質問をさせていただきたいと思いますけれども、一つは、ことしから、四月一日から改正食糧法が施行となりました。この改正食糧法におきます農協の役割というのは、従来にも増して非常に大きなものがあると思っております。

 農協等が主体的に需給調整機能を発揮していくということが期待をされているわけでありまして、ただ、心配いたしますのは、個々の農協の能力の差あるいは地域の実情、いろいろありまして、農協すべてにこれを期待するといっても、実際のところなかなかいろいろな問題があるのではないかと思います。うまくやった地域は大変、米の生産の拡大あるいは所得の増大につながると思いますし、そこがうまくいきませんと、地域の将来の農業ビジョンが見えてこない、こういうことになろうかと思います。

 農協の果たすべき役割は、そういう意味で、今回の米の需給調整における役割の強化に伴いまして重要性を増していくと考えるところでありますが、農水省といたしまして、これから農協にどのような指導をしていかれるのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。

金田副大臣 永岡先生の御指摘のとおりでございまして、ことしから米改革大綱ということで、生産者と生産団体が平成二十年度に向けまして、需給調整について主体的な役割を果たしていただきたいという形での改正がなされたところでございます。二十年度までに、十八年度には一回検証をするということになっているわけでございまして、こういった意味で、農協の果たすべき役割というのはこれからますます大きくなっていくんだろう。

 しかし、ともあれ、今の米の集荷率というのは、農協は半分程度におさまっている実態がございます。そういった中で、やはり地域の農業の司令塔として、農協さんがしっかりと需給調整機能を主体的に、自主的に果たしていけるような、そういった力を地域で得ていっていただきたいというふうに期待しているところでございます。

永岡委員 まさしく農協の努力いかんに地域農業の振興、発展のかぎが隠されているわけでありますので、これは、政府の問題というのは私は半分ぐらいかなと思います。やはり農協を経営する側が、みずからその自覚をもう一回新たにして、その与えられた任務をきちんと遂行していくという自覚が何よりも求められるのではないか、こう思っております。

 最後になりますが、質問というよりも全般的な農協に対する期待と要望を述べさせていただきます。

 農協は、共同購入、共同販売ということで、零細規模の多数の農家が集まって大きな資本なり買い手に対して対抗していく、こういうことでそもそもつくられた組織であります。したがいまして、より安い生産資材を供給し、そして付加価値の高い、農家の所得を増大するような販売を行っていくというのが、これは当然農家も期待するところでありますし、農協に期待される本来の役割であります。

 一説に、いろいろな数字はありますけれども、我々が末端で消費する小売価格のうち、農家の手取り価格というのは、これは数字のとり方はいろいろあると思いますけれども、約三割ぐらいだろう、こういうふうに言われている数字がございます。この中間におけるマージンあるいは中間におけるコストというものを下げていく、そのことが大変重要でありまして、その点に農協が関与をしているということも、これも事実であります。

 特に、今後の農協のあり方として、需要者のニーズというものが非常に多様化してまいります。つくったものを右から左に大量に流せばいいという時代は既に終わっておりまして、有機農業でありますとか、あるいは顔の見える農業でありますとか、実際上、付加価値の高いものを流通ルートを確保して売っていくという時代にもう入っております。そのために、農協に期待されるところは非常に大きなものがあると考えております。

 栽培技術の普及面、こういうことは農協の専門分野としてこれまでもやってまいったわけでありますけれども、市場のリサーチあるいは消費者ニーズの把握、その内容について、情報について、できるだけ的確に即座に農家にフィードバックしてくるということにつきまして、さらに組織体制の整備あるいは人的体制の整備を、政府を含めまして、これから力を入れていっていただきたいと思うわけでございます。

 冒頭にも申し上げましたけれども、農協のあり方につきまして、これから規模の大きな農家あるいは法人経営というものが増大をしていく中にありまして、農協の実質的平等を確保するための運営というものがさらに重要になってくるということを改めて申し上げたいと思うわけでありますけれども、あくまでも、やはりこれまで農協が担ってきた地域農業における経営面の役割が一つ、それから、地域社会の、農業者を含みます地域住民に対する、生活に直結したいわば社会政策としての一面を持つ農協の役割、この二つを今後とも十分にこの農協法改正を通じて発揮していただきますように、政府の十全なる御指導を心からお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 まことにありがとうございました。

高木委員長 次に、堀込征雄君。

堀込委員 民主党の堀込征雄です。

 農協のあり方をどうするか、とりわけ日本農業の中でどう位置づけるかということで今度の法案が出されたわけであります。農水省では、農協のあり方研究会が設置されて「基本方向」という報告書をまとめておられます。この農協の流れ、戦前から農業会があり、そして戦後、農業協同組合に継承されてきた。いわば、戦中戦後の食糧不足に対応する強制供出の組織であったり、あるいは配給組織であったり、そういう流れをくんできた。あるいは戦時中は、農協資金を吸収しながら戦費へ投入するというような国家目標に沿った農業会組織みたいなものを引き継いできている。そういう意味では、その後の時代の変遷とともにいろいろな改革がなされてきたというふうに私は思っております。

 今回、この法案が提出をされているわけでありますが、大臣、一体農協改革とは今なぜ必要なのか、なぜ行政が後押しをしながら農協改革を進めなきゃならぬのか、その点についていかがでしょうか。

亀井国務大臣 今委員からも御指摘のとおり、戦前の農業会あるいはその後の農業協同組合、時代の趨勢、それに呼応していろいろな対応をしてまいった歴史があるわけであります。そういう中で、今日、平成十一年に食料・農業・農村基本法の制定、そういうことで十三年に農協法の改正をいたしまして、信用事業分野につきましては一定の成果を上げてきておるわけでありますが、今日、さらに時代の変化と、この状況が変わってきておるわけでありまして、そういう中で、農協の組合員の皆さん方、経済事業につきましての改革、農協を利用してのメリットに乏しい、商人系の皆さん方の、また創意工夫、いろいろな活動もなされるわけでありまして、そういう面でのメリットが乏しい、こういう指摘があるわけであります。

 こうした指摘を踏まえまして、あり方研究会、あるいはまた農協系統におきましても、昨年十月のJAの全国大会、こういう中でいろいろ議論をされまして、先ほども申し上げましたが、いわゆる重点四項目、安全、安心な農産物の提供と地域農業の振興、あるいは組合員の負託にこたえる経済事業改革、経営の健全性、高度化への取り組みの強化、協同活動の強化による組織基盤の拡充と地域の活性化、この改革につきましての四項目、組織を挙げて取り組んでいくという決議を昨年されたわけであります。

 農水省といたしましても、農協系統のこうした取り組みを支援するために、農協法の見直しを行い、今回、経済事業改革指針の法的位置づけの明確化、販売事業面における農協間連携の強化、共済事業の健全化、契約者保護の充実等の措置を講じていくこととしたわけであります。我が国農業、農村を取り巻く情勢を踏まえまして、そして、組合員や消費者のニーズにより的確に対応するために農協系統が行う各種の事業について必要な措置を講ずる、それを内容としておるわけでありまして、待ったなしの農協改革の断行を促すとともに農業の構造改革を加速化させてまいりたい、このような考え方のもとに提案をしておるところでございます。

堀込委員 私は、戦中から戦後にかけて、日本は農業国家といいますか、農業主体で国家の行政が行われてきたというふうに思っています。その農業を支えたのが、よく言われますように、食管法であり、農地法であり、この農協法、これがいわば基幹三法というようなことを言われ続けてきたわけであります。そういう意味で、昨年、例えば農水省自身の改革としては、末端の食糧事務所や統計事務所の改革をしたり、この国会で農業委員会の改革をしたり、あるいは、昨年でしたか、農業共済の改革をしたり、いろいろ来ているんですが、私は、戦中戦後のシステムの改革としてはまだ非常に不十分ではないか、こういう気がしているのでございます。

 農水省自身も、BSE事件を契機にしながら産業振興官庁からの脱皮というようなことを言い出して、今改革を進めているんだろうというふうに思いますが、私は、そういう意味で、戦後システムの農政全体の改革、そういう流れの中でこの農協改革があるんじゃないかというふうに認識をしておるんですが、大臣、どのような位置づけになるんでしょうか。

亀井国務大臣 今委員からの御指摘のとおり、時代の変化、これは大変大きな変化があるわけでありますし、また、とりわけ農業、農村を取り巻く情勢も変化をしておるわけであります。

 そういう面、特に食の安全、安心の確保、こういう関心というのは大変強いわけでありますし、あるいは農村地域の高齢化の問題であるとか、耕作放棄地の問題であるとか、あるいはグローバル化、こういう進展が著しいわけでありまして、こういう中でやはり大きく変化をしている。そして、農業の構造改革を一層加速しなければならない、こういう視点に立ちましてのこの改革、農協の役割というものを十二分に発揮していただくような体制というものをしっかり確立するということは必要、このように思っております。

堀込委員 そこで、一点だけ、もう一つ前段に確認をしておきたいんですが、あり方研究会でもそうですし、全中の大会方針もそうなんですけれども、上部構造の問題は触れられているんだけれども、末端の農家組織をどうするかというあたりの問題意識がどうも触れられていないんじゃないか。

 つまり、日本の行政、今、末端の場合は自治会組織がある。農家の場合も農家組合組織みたいなものがあって、農協が、実際にはいろいろな事業が支えられているという実態があると思うんですね。つまり、集落の農家組織があって、その下にまた隣組みたいな組織があって、そういうものが農政遂行の基礎になっている、あるいは今の農協事業の基盤になっているというふうに思っておるんです。

 ところが、農水省は、今度、基本計画の見直しでは、プロ農家を重点的に相手にしていきますよ、こう言い出したわけです。私は、法はそれはそれでいいんでしょうけれども、大規模化する、農地を担い手に集中する、プロ農家中心の支援策をやりますよ、それで国際競争のある農業をつくっていくんだ、こう言うんだけれども、この日本社会を支えてきた末端の農家組織をどうするか。この辺についてはほとんど、本当は農協経営の基盤であるはずなのに、あり方研究会でも、あるいは全中の議論の中でも、私はすっぽり抜け落ちているんじゃないかという気がしますが、どうですか。

川村政府参考人 基本計画の見直しの中で、いわゆるプロ農家的な農家に施策を集中していく、重点化していく、こういった方向での検討をしているところでございます。これは、新基本法のもとでも構造展望を出しまして、効率的、安定的な農業経営が生産構造の相当部分を占めるような生産構造というものを目指しているということの一環でございます。その場合に、もちろん、中心となっていく効率的、安定的な農業経営、こういうものを中核として育てるわけでございますが、その周辺といいますか、その予備的な農家というもの、そういう層も当然あるわけでございます。そういう層も集落農業という形で担い手として位置づけられるということもあるわけでございます。

 構造がそういうふうに重構造になっているという中でどういう対応をしていくかということでございまして、特に農協の場合は、地域の農業を支える地域農業の振興の拠点という位置づけもございますので、農協改革というものが合わさって行われることがまさに農業構造改革を進めていく上での重要な、不可欠な要素だというふうに考えているところでございます。

堀込委員 時間があったらちょっと議論したいんですが、次へ行きます。

 私は農協改革の成否はやはり人だというふうに思っているんですね。一つは、農協の役職員が本当に農家のためになる農協をつくり上げていく、そのために心の底から情熱を燃やしながら農協運動をやっていくんだ、あるいは農協事業に取り組んでいくんだ、こういう風土や企業倫理をどういうふうにつくり上げていくかが極めて大事だと思っているんです。私自身、全中だとか県中だとか、あるいはたくさん優秀な農協職員の皆さん、友人や仲間がおるわけでありますが、こうした皆さんが本当に力を発揮すれば、いい農協をつくっていけるんだろうというふうに思っています。

 しかし、今、単協や事業連からは、中央会というのは金食い虫だよとか、事業をやっていないから口で勝負しているよとか、そういう風潮はあるんですよ、実際として。そういう陰口を言われながらやっているような農協ではうまくいかない。中央会のリーダーシップをどういうふうにとるか。これは、法律整備じゃなくて、中央会も事業連も単協も力を合わせて農協改革をやっていくんだ、こういう体制をつくらなきゃならない。そのために前提となるのは、私は中央会改革だと思っているんです。しかし、この法律は、何か中央会支援法みたいになっているんですね、よく見ると。だから、そこは、私はこの法律としては決定的に不足をしているというふうに思っています。

 一つ一つ議論していきますけれども、一つは、中央会というのは実は単協と連合会の賦課金で成り立っているんですね。つまり、指導する方が財布を握られて、そして指導し、監査する。これは、私は本質的な問題として、実際に指導や監査を財布を握られる相手にできっこない、こういうふうに思うんですが、どうですか。

川村政府参考人 中央会の運営でございますけれども、今委員が御指摘ございましたように、昭和二十九年に中央会の制度ができたわけでございますが、その組合に対します指導、監査、こういった業務を賄うのは、まさに今申されたとおり、会員からの賦課金ということで運営されておりまして、これまでそういう形で組合の発展に大きな貢献をしてきたというふうに考えております。

 ただ、一方、昨今、農協の合併、また連合会の統合等が進みまして、中央会の賦課金の集約化が進んでいるということで、大口の賦課金を拠出する組合の圧力等によって、この指導機能、監査機能等が十分発揮できないのではないかという懸念の声も聞かれることは事実でございます。

 ただ、賦課金と監査との関係について特に申し上げますと、直接の対価関係にあるわけではございませんし、中央会が仮に特定の組合の求めに応じまして監査を歪曲するというようなことがありましても、当然これは農協法の規定に基づきまして行政の検査ということが行われるわけでございますし、そこでのチェックを当然行うということで、もしそういった歪曲された、ゆがんだ形での監査が行われると、これはまた中央会自体の存在意義、信頼を損なうものになるだろうということでございます。また、法的なペナルティーといたしましても、監査報告書等に虚偽記載、こういうものがあって組合に損害が発生したような場合には、中央会に損害賠償責任が生ずるといった意味での制度面での牽制といったようなことも働く仕組みになっているということでございますので、現時点で、いろいろな声はございますが、賦課金で運営されているということで監査あるいは指導の機能不全、そういった事態はないものというふうに思っております。

堀込委員 ないんでしょうが、実際に指導や監督、監査をきちんとできるかという話をしているんです。

 例えば、全中の一般会計、これは九〇%以上は賦課金でございまして、都道府県と中央団体の賦課金が、都道府県から十億ちょっと、それから中央団体から二十五億、大体三十五億ぐらいの賦課金ですね。県段階と中央会合わせますと、大体四百五十億ぐらいの賦課金になっています。農協の総事業利益というのは、単協の総事業利益というのはここ数年大体六百七十か六百五十億ぐらい、全農の事業利益というのは大体二十八億ぐらいだけれども、中央会への賦課金が六億とか七億という水準になっているんですよ。これではまさに、事業として、事業連もそうですし、単協も大変なんですね。

 私は、そういう意味で、本当に中央会にリーダーシップを発揮させるためには、賦課金の集め方を、農家から直接集めるとか、仕組みをやはり変えてやらなきゃいけないんじゃないか、こういう気がしますが、どうですか。

川村政府参考人 会費の徴収のあり方のお尋ねですけれども、既に御存じのとおり、中央会の運営経費は応益負担という考え方で、まさに中央会の会員の方々が賦課をするということになっております。そしてまた、中央会の総会の議決権は、この賦課金の大小に関係なく、一会員一票という形でございますので、特定の会員による運営のコントロールということはないものというふうに思います。

 そういうことで、これまでの経緯、それから問題の有無という観点からいたしますと、現在のようなやり方で特段の問題はないのではないかというのが現在の認識でございます。

堀込委員 特段問題があるかないかは、後でも触れますが、今までも中央会があって、指導機関としてあったのに、何で農協改革が進んでこなかったんだ、何で今度の法律で進むんだよということになるのか。特段問題があったから農協改革をやっているんじゃないですか、局長、それは違う。だから、私は、そういう意味では本質的な問題として、賦課金で成り立っている中央会に指導権限、監査権限、そういうふうに与えても、やはり株主のところに行って指導をやるわけですよね、これはなかなか本質的な矛盾を持っているんじゃないかというふうに思っています。

 次に、中央会の問題として、やはりリーダーシップをどういうふうに発揮できるかという問題なんですね。つまり、全中、県中の会長、この人たちが本当にリーダーシップを持ってやらないと日本の農業はうまくいかないし、農協経営はうまくいかないんだろう。ところが、例えば日産のゴーンさんが出てあの日産の改革をしたように、やはりそういうスピードある改革というのがリーダーシップによって実行されることが求められているんですけれども、この役員選出の仕組みはそうなっていないんですね。

 つまり、さっき言ったように、協同組合民主主義みたいな歴史と伝統があって、集落を基礎とする代議制民主主義、隣組からまず農協の総代を選んで、その総代が理事を選んで、理事が理事長を選んで、そして単協の組合長が集まって県中の中央会長を選ぶ。それで、中央会長が集まって全中の会長を選ぶ。全中の会長はちょっと今度は規定が少し変わったんですかね。そういう古い仕組みがそのまま行われている。

 私は、少なくも全中あるいは県中の会長は、直接選挙を入れるとか、そういう仕組み、本当にリーダーシップがある指導者が生まれてくるような、何かそういう仕組みに変えるべきじゃないかというふうに思いますが、どうですか。

川村政府参考人 中央会の役員の選出のあり方、これにつきましては、単協の場合と異なりまして、中央会につきましては、できるだけ広く人材を求めるということで、単協にあるような制限、例えば理事の三分の二は正組合員でなければならないといったような規定は置かれておらないわけでございます。そういう意味で、規定面ではただいま申されたようなことに支障はないわけでございます。ただ、実態は、今申されたとおり、中央会の会長、副会長、こういった方々は組織の代表である必要はないんですけれども、事実上はそういう選任をされているという実態にあるということでございます。

 今般、監査機能の一元化等を制度的にも図ってまいりますけれども、これまで監査事業の専任理事として監査の専門家であります公認会計士を選任した、こういった実績もございます。今後とも必要に応じまして、系統外の人材を大いに活用して、中央会が、まさに人ということはおっしゃるとおりだと思いますので、そういう人材を活用して中央会機能がさらなる充実強化を図られるということは、我々としても期待をしたいと思っておるところでございます。

堀込委員 いろいろ議論したいんですが、ちょっと次に行きます。

 現行法上、県中央会と全国農協中央会の合併は可能ですか。

川村政府参考人 中央会制度でございますけれども、そもそも発足は、先ほども申し上げましたとおり、昭和二十九年の改正で創設されておりまして、戦後のいろいろな経済的変動の中で農協の経営不振等も多々見られたということを背景に、組合の指導を総合的に行う機関として設置されたものでございます。(堀込委員「可能かどうかだけで結構です」と呼ぶ)わかりました。

 それで、今の規定では、中央会はそれぞれ都道府県の段階にあっても一つ、全国中央会にあっても一に限りということになっておりますので、そういった限定があるということから、合併規定を設けるということは制度上も矛盾があるということで置かれておりません。

堀込委員 つまり、全中と県中央会は合併できない。

 ところが、私、順序が逆だと思うんですね。今まで農協改革、合併推進ということで、経済連は全農に統合しながら、今三十七、八統合しているんですか、二段階にしてきた。あるいは、JAバンクということで金融機関も相当合理化した。共済事業も全共連に二段階にしてきた。本当は管理部門を先にやるべきなんですね。僕は、順序が逆だ、中央会の二段階を先にやるべきだというふうに思っているんです。

 それはさておきまして、今できないと言ったけれども、どう思っていますか。全中と県中の合併は必要だと思っていますか、必要でないと思っていますか。

川村政府参考人 この中央会制度が創設されました二十九年当時、これは非常に……(堀込委員「必要かどうかだけ」と呼ぶ)はい。

 現在その合併が非常に進みまして、当時と比べますと農協系統を取り巻く状況はかなり変わってきていると思います。特に、一県一農協的なところも出てきておりますので、系統内部からも中央会制を見直すべきではないかという御意見があることも承知しております。

 ただ、我々としましても、当面、やはり中央会の機能をできるだけ、例えば監査でありますとか経営指導あるいは教育研修、そういうものの機能統合ということをまずはやるべきだというふうに思っております。直ちに、全国中央会、全中と都道府県の中央会との統合といった規定は、まだ現時点では置くことは必要ないのではないかと思っております。

堀込委員 好ましくないということですか、今の段階で好ましくないということですか、全中と県中の合併は。

川村政府参考人 そういうことを推進する状況にはまだないというふうに思っております。

堀込委員 なぜですか、言ってください。

川村政府参考人 合併等が進みましてかなり状況は変わってきておりますが、まず各県の中央会がそれぞれの都道府県を地域の実情に応じて指導していくという体制が現時点ではまだ必要であろう、こういうことでございます。

堀込委員 平成十三年の農協法改正で、単協の組合の全中への直接加盟の修正がなされましたよね。これはなぜやったんですか、今の理由でいうと。

川村政府参考人 先ほどの改正についての御指摘でございますが、その改正の趣旨は、全国連の方々が県の組織に加入できるという規定を改正したということでございまして、全中への直接加入ということではございません。

堀込委員 もう一回ちょっと聞きますが、当時の七十三条の十二、今七十三条の二十八、今の解釈でいいのかな、本当に。平成十三年に、都道府県の区域を地区とする組合というのを、わざわざ組合というふうに変えているんですよ。

川村政府参考人 県の中央会の正会員たる組合というのは、これは単協も入るわけですが、それは七十三条の二十八の四項に書いてあるとおり、前回の改正ということではなくて、従来から入れたということでございます。

堀込委員 四項の三号を変えたんでしょう、当時。ちょっと正確に言ってください。いや、いいですよ、後で調べて言ってください。

 つまり、一県一農協、奈良県みたいなものができてきているわけです。そういうことも展望して、中央会も、全中と合併するところができてもいいんじゃないかということで、平成十三年の法改正でもうやってきているんですよ。その手がかりをやってきたのに、何で今度の法改正に入れないかということを僕は言いたいんですよ。これは、農水省、一貫性がないんです。

 もう一つ聞きますよ。七十三条の四十八、中央会の解散規定がありますよね。中央会が解散できる場合は、総会の議決と破産しかないんですよね。なぜ、これは破産があって合併がないんですか。法の欠陥じゃないでしょうか、一般法からいっても。

川村政府参考人 この点につきましては、もうしばらく調べて正確にお答えしたいと思いますが、今の思っている感じでは、県中が一つということになっておりますので、その規定との関係でそういう規定は置かれておらないと。

堀込委員 僕は法律論でこの七十三条を言っているんです。総会の議決で解散できる、破産規定まであるんですよ。これは農協法の欠陥じゃないかな、合併規定がないんですよ。

 だから、私は、実態からいっても、あるいは法律的にいっても、これはやはりちゃんと中央会同士が合併できる仕組みを入れるべきだ、こういうふうに思うんですが、これはちょっと細かいやりとりはまたやりますから、大臣、いかがでしょうか、今の議論を聞いて。

亀井国務大臣 今局長からも答弁しておりますが、一つは都道府県の中央会、これは都道府県の農政の推進上の役割、こういうものもあるわけでありまして、現実に、現在いわゆる農協系統内のコンセンサス、こういう問題もあろうかと思います。

 しかし、今後の、今も御指摘のとおり、農協系統の組織やあるいは事業等の今後の状況、こういう面では検討していくべき課題、このように認識をいたします。

堀込委員 ありがとうございました。ぜひこれは検討をいただきたいと思います。

 次に、監査の問題に入ります。

 農協監査は、これは中央会という、監査法人にすれば一社独占の体制になっているんですよね。公認会計士もしくは監査法人監査よりも中央会監査の方が望ましい理由は何ですか。

川村政府参考人 公認会計士によります、いわゆる専門家におきます監査というものも非常にそれは有意義な面があると思います。ただ、農協法の世界では、農協関係、非常にいろいろな農協特有の事情もございます。そういう事情を十分知悉した上で監査を行うということが、少なくとも現時点におきましては非常に効率的で有効ではないかということでございます。

堀込委員 監査には、僕は特異な事情に余り知悉していない方がいいと思っておるんですが、そのことはさておいて、外部監査、公認会計士監査もしくは監査法人監査を排除している理由、法律は排除しているんですよね、これはなぜですか。

川村政府参考人 この監査の制度、農協関係でございますけれども、昭和二十九年に先ほど申し上げました中央会が発足をしました。外部ではございません、系統内ではありますけれども、単協とは別の、そういう意味では部外の、単協とは別の中央会ということでの監査が行われておりまして、そのノウハウが蓄積されておるということでございます。ただ、そういった専任的な知識を活用するという意味で、公認会計士を中央会にも設置を義務づけまして、実態上は公認会計士の関与する監査というふうになっているわけでございます。

 農協系統全体の健全性を確保していくという上では、外部の公認会計士あるいは監査法人に任せるよりも、中央会がこれまで培ってきたノウハウ、それから指導と監査、これを連携させまして機能を発揮していくことが効率的であるということで考えているところでございます。

堀込委員 よく質問を聞いていてください。もう一度聞きますよ。中央会監査でなければ農協の場合絶対だめだというふうに法律に書いてあるんですよ。外部監査では絶対だめだ、認めない、こういうふうに書いてあるんですが、その理由を端的に言ってください。

川村政府参考人 現時点におきまして、中央会というものが設置されている実情を踏まえまして、中央会の監査、それを専ら行ってもらうということで規定を置いているということでございます。

堀込委員 そうするとあれですか、中央会が存在するからやるので、決算監査とかいろいろ、理由は、存在するだけなんですか。公認会計士監査でも監査法人監査でも構わないと思っているんだけれども、中央会が存在するからしようがないよ、そういう言い方、そういうことですか。

川村政府参考人 まさに、外部の公認会計士なり監査法人と匹敵するような監査が現在でも行えるということで、公認会計士なりあるいは監査法人の監査を導入する必要はないということでございます。

堀込委員 それでは、全中に監査委員会があるが、公認会計士の森田さんという方が今委員長ですけれども、なぜ専門家を入れているんですか、あるいは公認会計士帯同の監査をやっているんですか、今の理屈でいえば。

川村政府参考人 監査のより高度化、そういうことで、まず中央会の監査機能を全中に集約化する、こういう形にしたわけでございます。そのときに、専門家、そういう者も、外部の専門家も当然入れることによって、中央会監査、これもJA監査機構をつくっておりますが、内部組織ということでございますが、これを置くことによって、そういう公認会計士の資格のある方も中に入れて、より中央会監査の完璧を期しているということでございます。

堀込委員 前の前の私の質問に対して、あなたは、中央会は心配のないレベルに達している、こう言ったんでしょう。レベルに達していない、あるいはどこかやはり中央会監査では不安があるから、監査委員長に公認会計士の方になってもらう、あるいは監査に公認会計士を帯同している、そうしているんじゃないんですか。おかしいじゃないですか、それは。

川村政府参考人 お答えいたします。

 今、農協を取り巻く環境も、従来の環境から、非常に経済社会がグローバル化しておりますし、競争的な環境になっているということで、農業以外の知見ということも次第に必要になってきたということで、一般の企業等の監査のノウハウというものも活用しながら中央会機能を全うしていくということが必要だという認識のもとに、そういう改善が行われているということでございます。

堀込委員 ちょっと確認しますが、農業以外の知見が必要だから監査委員長に公認会計士を頼んでいる、公認会計士を帯同している、そういうことですか。では、それだけの理由でやっているんですか。

川村政府参考人 中央会のこれまで行ってきた長い歴史、それからそのノウハウ、そういうものがやはり現在においても中心、大宗を占める形で実施することが現時点では非常に効率的で適正を期し得るということで、今のような体制になっています。

堀込委員 僕は答弁に大分矛盾があると思うんですよね。

 中央会が存在してノウハウもあるから、中央会監査も活用してもいいんでしょうけれども、やはり法律上禁止する必要はないんじゃないですかね。希望のある農協が、私どもは公認会計士や監査法人監査をやりますということを法律で禁止する必要はさっぱりないんじゃないですか。どうなんですか、局長。

川村政府参考人 御指摘のような仕組みが今後とも全く必要ないかということにつきまして、現時点で予断を持って言うことはできないわけでございますが、少なくとも現状においては、これまでの連続の中で改善を加えながら、現在の形が一番望ましいというふうに考えております。

堀込委員 なぜ望ましいかと聞いているんだけれども、さっぱりそれがわからない。中央会の歴史があるからと。中央会が存在するからだけだと言っているんですよ、さっきから。

 それで大臣、農協の金融、住専事件もあったり、いろいろ世の中に問題も起こしてきた経過もあるわけです。つまり、農協の金融なり農協の事業というのは特別の世界のもので、マイノリティーの世界のものだということであれば、今の局長のように、まあマイノリティーの世界だから中央会監査だけでもいいよというのは成り立つと思うんですね。しかし、今、七十兆を超えるような預金量があって、そういう世界で、金融の世界の中でやはりちゃんと農協金融もやっていく、これが大事だと思うんです。世間的に見て、仕組みも監査も、市中銀行や金融システムの中で負けない、ちゃんと世間に認められる仕組みでやっている、こういう農協にしなきゃならない、こういうふうに思っておるわけでありまして、マイノリティーの世界だから、監査も中央会でいいよとか、そういうことでは農協の事業がちゃんと世間に認められていかない、こういうふうに思うんです。

 大臣、今の議論をお聞きになって、ぜひともこれは、中央会監査でもいいんでしょうけれども、あってもいいけれども、少なくとも公認会計士や監査法人監査も選択できるというぐらいの規定に改めるべきじゃないかと私は思っているんですが、いかがでしょうか。

亀井国務大臣 監査の問題、農協の性格といわゆる株式会社、一般の会社と異なる点は、もう委員御承知のとおり、営農、信用やあるいは共済、経済等、各種の事業を行っておるところがあるわけであります。

 そういう面で、中央会におきましては、先ほど来局長も言っておりますとおり、公認会計士のノウハウを活用して全国中央会がその監査、こういう面で、公認会計士のノウハウ、まず監査委員長も選任されて、そのようなことで農協として全国同一レベルの基準、公認会計士のノウハウ等を活用されている、そういうことをやっておられるわけでありまして、平成十四年に全国中央会が一元化をして監査がスタートしたわけでありまして、現状、そういう状況にありますので、選択制につきましては、これを導入するということにつきましては、私は難しいだろうと。

 しかし、先ほど来の話、合併の問題等も含めましていろいろ情勢は変化をするわけでありますので、そういう面でのことを十分考えて状況を見きわめる必要がある。いずれ将来の問題として、検討課題という認識を持っております。

堀込委員 ありがとうございました。

 それでは、監査に関連して、中央会の監査士制度について質問させていただきます。

 監査規程は農協法七十三条の二十六に決められております。監査士は同じ三十八に決められている。この規定で、あと監査士の内部の話は中央会監査規程という内部規定にゆだねられているわけですね。ここでは、「監査士は、農林水産省令で定める資格を有する者のうちから選任」する。この省令では十五条で、全中の資格試験に合格すること、合格後、一年以上実務経験をやること、監査士を二年以上補助すること、こういうことがあるんですね。

 これは、そもそも、試験にだれを受けさせるか、どんな出題をするか、どんな点で合格者を決めるか、すべて中央会任せになっているんです。省令では、全中が農水大臣の承認を得て決める、こういうふうになっていますが、実態はどうなっていますか。

川村政府参考人 農業協同組合の監査士の資格試験につきましては、試験規程というものを全中がつくっておりまして、それは大臣承認に係らしめております。そして、その試験の内容でありますとか、あるいは受験の資格、問題の作成、採点者の選任、そういうものも含めまして、資格委員会というものをつくって審査をしてございます。

 基本的に、こういった仕組みは、公認会計士の例に倣いまして、それと同様の規定をこの試験規程の中に設けているということでございます。

堀込委員 今の資格委員会というのは、どこの組織ですか。農水省ですか、全中ですか。

川村政府参考人 これは、全中の組織でございます。

堀込委員 つまり、内部で全部監査士の試験をやっているんですよね。

 金融庁、お見えでしょうか。

 公認会計士法では、公認会計士試験を公認会計士審査会がやることになっているわけです。これは、公正さやレベルを客観的に評価するためだと思いますが、なぜわざわざ独立した審査会でやるようになっているんでしょうか。

大久保政府参考人 お答え申し上げます。

 公認会計士試験は、内閣府設置法第五十四条に基づきまして、公認会計士法第三十五条第一項に定めるところによりまして金融庁に置かれます合議制の機関でございます公認会計士・監査審査会において実施されることになっております。

 公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において財務諸表その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資家及び債権者の保護等を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与するということを使命としておりますので、その資格の付与におきましては、厳正かつ公正に行われるということが求められております。

 具体的には、試験を行うことにつきまして、必要な学識経験を有する専門家のうちから、審査会の推薦に基づきまして内閣総理大臣が任命いたします試験委員が試験の問題を作成いたしまして採点を行い、審査会が合格の判定を行うことによりまして、厳正かつ公正な試験を実施しているところでございます。

堀込委員 ということなんですよね。

 全中は、自分で監査士の試験をやって、公正さやレベルの問題も全部全中に任されているんです。これはどこで担保されるんでしょうかね。

 次に、公認会計士法では、利害関係の明示、信用失墜行為禁止、守秘義務、または、虚偽または不当な証明についての懲戒が法定されています。農協監査士は、どこに懲戒は規定されていますか。

川村政府参考人 農業協同組合監査士につきましては、農協法におきまして服務の内容が、具体的には規定はされておりませんけれども、農協法七十三条の二十六第二項におきまして、農業協同組合監査士の服務については必ず監査規程に記載すべきことということが書いてございます。それから、この監査規程の変更等は、主務大臣の承認を受けるということで、その具体的な中身自体は農協法に書いてございませんが、大臣の承認に係らしめる監査規程、この中で、今申されましたような信用失墜行為の禁止、秘密を守る義務、それから懲戒、そういったものについて規定をしております。

堀込委員 答弁のとおり、中央会監査規程に規定されているんですよね。

 金融庁にもう一つお尋ねいたします。

 公認会計士法では、こうした懲戒は、今申し上げましたような信用失墜行為だとか虚偽、不当な証明について確定されれば、処分は内閣総理大臣が行うことになっております。そうでしょうか。

大久保政府参考人 公認会計士の懲戒につきましては、公認会計士・監査審査会の意見を聞いた上で、内閣総理大臣が、この場合には金融庁長官に委任されておりますけれども、行うという法律上の規定になっております。

堀込委員 そうなんですよね。「内閣総理大臣は、」と言っている。

 中央会の監査士がこういう虚偽、不当な証明を仮にやって、懲戒がある、やるかやらないかは中央会長に一任されているんですよね。これでは社会的な公正さとか、これは公認会計士法と比べてもさっき遜色ないと言ったんだけれども、これだけでも、やはり法律上、僕は大変な問題があるんじゃないかと。監査を行うのは中央会だから、監査に虚偽や錯誤の行為があった場合は責任は中央会長にあって、中央会長が処分されるんじゃないんですか、局長、どうですか。

川村政府参考人 処分につきましては、この監査規程上、中央会の会長になっております。

堀込委員 監査するのが中央会で、本当は中央会長が処分されるべきものを、中央会長が監査士を処分する、こういう格好になっているんですね。だから、これはぜひ、法律上、もう少し監査士の規定それからその責任、こういうものをちゃんと定めるべきだ。

 つまり、今監査士の制度で申し上げましたとおり、中央会監査というのは内部監査的なものを色濃く持っているんですね。さっき言いましたように、監査士試験の採用、募集、実施は中央会任せ、虚偽、錯誤等いろいろな監査があった場合の処分も中央会長任せ。これは社会通念上理解される仕組みになっていないんですよ。

 もう一つ聞きます。

 昨年、アメリカでもエンロン事件等を踏まえて会計士の交代を五年という法律ができて、我が日本でも公認会計士法を改正して七年の交代を義務づけたわけです。これは、金融庁、意味するところはどういうところでしょうか。

大久保政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の公認会計士法の改正におきまして、公認会計士等の独立性の強化という観点から、監査法人の内部において同一の公認会計士が一定期間以上同一企業を担当するということを禁止する交代制の導入などの改正が行われておりまして、本年四月一日から施行されているところでございます。

 具体的には、監査法人の社員が同一の大会社等を七会計期間継続的に監査した場合には交代を義務づけるということとするとともに、交代後、二会計期間は当該会社の監査に復帰することを禁止いたしております。これは公認会計士法の第三十四条の十一の三と、それに基づく政令によって決まっておるところでございます。

堀込委員 ということでございまして、同一監査人による監査を長年続けることの弊害を避けるために、昨年公認会計士法が改正されているんです。今度のこの農協法の改正に、これは農水省は去年の公認会計士法の改正を御存じだったと思うんですね、なぜこの規定を入れなかったんですか。

川村政府参考人 監査士につきましては、農協法に細かな規定は置いてございませんで、服務規定等を定めて大臣の承認を得るという規定が置いてあるということでございまして、具体的な内容につきましては、中央会が定めます監査規程、この中に規定してございます。

 現時点でこの中央会の監査規程には、今金融庁の方から説明されました公認会計士類似の規定はございません。ただ、実態上、本年度から、そういった趣旨を踏まえまして、他県の監査士を入れた監査チームをつくりまして監査を実施する、それから監査の責任者は他県の農業協同組合監査士が当たる等、実質的にこの仕組みが担保されるようにということをしておりますが、今後、この監査規程を改正いたしまして、公認会計士法と同様の規定を定めるという方向で検討しております。

 そういうことで、監査規程の中で規定をしていくという方向でございましたので、今回の法律のレベルでの改正には盛り込んでおらないということでございます。

堀込委員 気がついていたけれどもと。これは、日本の金融の大事な一環になっている農協ですから、やはりちゃんと入れるべきだと思うんですよね。これはちょっと、どうも中央会監査、あるいは合併規定も、何というか、非常に監査を甘く見ているというか、やはり農協もちゃんとした方が事業もちゃんとできるし、日本の競争の激しい金融社会の中で農協の金融もちゃんと生きてくるということになると思うんです。

 これは通告がなくて恐縮ですが、局長、農水省はやはり監査というのを非常に軽視しているんですよ。きょうから議論しているんですが、もう一つの農業信用保証保険法という法律があるんです。この四十二条で、公認会計士や監査法人の監査を今度改めて義務づけたんですよね。ところが、商法特例法でいきますと、会計監査人は総会で選任するということが義務づけられているんです。これはなぜかというと、やはり特定の監査人との結びつきを排除したり、いろいろなことがあると思うんです、あるいは公にするとか。これは今度は、何で信用保証保険法に、外部監査だけ義務づけたけれども、総会で選出する義務を入れなかったんですか。

川村政府参考人 今回の法改正によりまして、農業信用基金協会につきましては会計監査人による監査を義務づけるということをしていることは御指摘のとおりでございます。

 ただ、この農業信用基金協会でございますが、その性格を申し上げますと、地域の農業者等が自主的に設立をし、業務運営も会員であります農業者等の自主的な意思にゆだねられるという法人の性格を有しております。したがいまして、法律上この選任の手続は総会の決議が要るといったような規定は置いておりませんけれども、会員の意思によりまして、今回導入しますその会計監査人の選任等の手続が定められるということを期待しているところでございます。

堀込委員 また午後議論させてもらいます。

 金融庁、結構です。ありがとうございました。

 そろそろ時間が来ますので、最後に、大臣、今私が議論していまして、お聞きになっていらっしゃったと思いますが、結局、この法律は中央会によるリーダーシップを期待しながら改革を期待しているんですけれども、やはり、私もいろいろなおつき合いがあるんですけれども、全中初め中金にも全農にも全共にも、あるいは各県連や単協にも、優秀で有能な人材がたくさんいるわけです。だけれども、組織というのはよどみが生じる。こうしたよどみが生じないように改革をサポートしていく、これが私は大事だと思っています。

 そうした意味で、平成十三年に農協改革二法が成立して、十四年の一月から施行になっています。この中で、いろいろな問題点については五年後見直しをしようじゃないかという規定が入ったわけでございまして、私が今申し上げましたような、例えば全中と県中の合併規定の問題、さっきもちょっと答弁、検討するといただきました。ぜひ監査も、さっきも答弁をいただいたわけですけれども、二百億以上の単協であれば選択できるというぐらいの規定は入れて、ちゃんとした仕組みにすべきではないか、こういうふうに思っておりますが、重ねてで恐縮ですが、御見解をお願いします。

亀井国務大臣 平成十三年の農協法の改正案、この中での修正決議、組合の役員に関する制度のあり方、組合の事業運営のあり方等についての検討を加える、こういうようなことになっておるわけであります。

 先ほど来御議論をいただいておりますこの問題につきましては、先ほども御答弁申し上げましたが、今後の状況、こういうものを見きわめつつ検討をしていくべき問題、このように先ほど来の御質疑を伺って感じておるわけでありまして、そのことを今後の検討していくべき問題、このように認識をいたした次第であります。

堀込委員 ありがとうございました。では、午前中はこれで終わらせてもらいます。

高木委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

高木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。堀込征雄君。

堀込委員 引き続いて質問をさせていただきます。午後は、経済事業を中心、あるいは共済事業を中心に質問させてもらいます。

 この法案、全中に基本方針を定めることを義務づけているわけでありまして、中央会の機能と権限を強化して、改革の推進力として中央会の役割を期待しているわけであります。

 実は、なぜ今回特別そうなのか。つまり、今までも全中、県中は指導機関として存在があったわけでありまして、改革のリーダーシップを発揮できたはずであります。今回いろいろな問題があって、さらに農協の改革が必要だから改めて全中のリーダーシップを強めるという結びに、実はあり方研究会の文章を読んでみても、あるいはこの報告書でもそうなんですけれども、農協の問題点というのをずっと羅列して、いきなり、だから全中のリーダーシップによる改革を、こうつなげてきているわけです。このところは、私は、論理がどうつながっているのか、よく読んでみてもわからない。今までも全中が、あるいは中央会が指導機関としてあってうまくいかなかったのに、今度法定することによってなぜうまくいくというふうに想定しているんですか。

川村政府参考人 お答えしたいと思います。ただ、今の御質問にお答えする前に、午前中、ちょっと私の答弁で足らない部分がございましたので、訂正も兼ねまして、整理をさせていただきます。

 全国農協中央会の会員資格、これにつきましては、平成八年と平成十三年に改正が行われております。

 平成八年の改正におきましては、それまでは全中の会員資格は、県中央会の正会員たる組合、こういうことになっておりましたが、組合を単独で入れるということに改正でしております。これは、当時、既に奈良県におきまして一県一JAという動きが本格化して、予定になっておりましたので、県中が解散をした場合には奈良県は全中に加入できないという事態が想定されたということで、単独で組合が加入できる道を開いたというのが平成八年の改正でございます。

 平成十三年にも改正をしておりますが、これはJAバンクの円滑な運営のためということで、農林中金に全中の正会員資格を付与する、こういう趣旨で、四号に農林中央金庫を平成十三年改正で入れております。

 それからもう一点、解散の規定のところに合併という項が上がっていないということにつきましては、中央会、これは必置ということではないんですが、もし必要でなくなれば、これは合併ではなくて解散すればいいということで、合併を想定しておらないので合併が入っておらないということでございますので、確認的に申し上げさせていただきます。

 ただいまの御質問でございます。改めて中央会の基本方針等を盛り込むことが今後の進展にプラスになるのかというお話でございます。

 もとより、中央会の権能といたしまして、指導の権能というのはあるわけでございます。ただ、経済事業の場合は、経済活動でございますので、法律等でいろいろ縛って、あるいは方向を出して指導していくということではなくて、やはり自主的に取り組んでいただくということが大事でございます。

 経済事業の場合、それぞれの県の事情がありますので、これをまさに一律的な規定はなかなかできないわけでございます。その場合、例えば資材の引き下げでございますとか、あるいは部門別の財務、こういったものの収支均衡を図るといったような事業目標あるいは財務目標、こういうものをより明確に中央会が定めることによりまして、それに従って具体的な数値目標それから進行管理、こういうものが具体的に経済の状況に応じてとれるということをより明確にすることによって、これまで取り組んでおります経済事業の改革をより一層加速してもらいたい、こういうことでの規定を置いたということでございます。

堀込委員 今、前段の、午前中の答弁の話、もうしっかり議論したし、大臣からも前向きな答弁をいただいたのでいいんですが、いいですか、奈良県などが一県一農協になって中央会が要らなくなるということを想定して平成八年改正をやったということですから、これは全中と県中の合併規定を入れないと、やはり矛盾が出るわけですよね。そういうことを想定して平成八年改正をやっているわけですから、今度の改正にやはり入れなきゃおかしいんですよ。

 当時、農水省農業協同組合課、平成八年の解説書でも、ちゃんとそういうことを書いてあるんですね。農水省が監修している解説書でも、一県一JA構想を推進している県においては、実行されると県中央会の存在意義は全くなくなる、だからこの規定を入れたんだと、農水省自身が監修した農協改革研究会の書物にもそういうことを明文で書いてあるわけでありまして、それは、午前中大臣の答弁をいただきましたからこれ以上言いませんが、そういう趣旨だということをぜひ理解してほしいし、確認をしながら、やはり今度の法改正に入れるべきじゃないか。

 今の二点目の話もやはり、想定していないから規定がないんだというのはおかしいので、では、なぜ破産があるのと。破産があって合併がないというのはおかしいんですよ、この規定。だから僕は、農協法はやはりそういう意味ではいろいろな面で見直す必要があるのではないか、こういうふうに思っています。答弁は要りません。

 それでは、経済事業なんですけれども、実は今度、事業区分ごとの損益状況の総会提出義務あるいは業務報告書の提出義務を法定しているわけであります。この事業区分ごとの提出義務の法定というのは、何か意味があるんですか。情報公開以上の意味はあるんでしょうか、どうでしょうか。

川村政府参考人 部門別損益の状況の開示でございます。

 現在は、信用事業を行う農業協同組合、これにつきましては、事業の区分ごとに損益の状況を明らかにした書類を作成いたしまして、これを通常総会に提出するということが規定をされております。

 ただ、先ほど来、委員、農協の経営状況等の議論もございましたとおり、今後、農協経営の健全化を図っていくということからいたしますと、やはり部門別の損益、この状況をよく構成員に開示をしまして、そして事業活動あるいは財務内容の是正を促していくという必要があると思います。現在、信用事業を行う農協についてはこの義務がかかっておりますが、全農でありますとか経済連、こういうものにつきましては、部門別の損益の状況を明らかにした資料の作成、あるいは総会への提出ということがありませんので、今回、これを義務づけて広く組合員、会員にこれを周知した上で、経営改善に向けて透明性のもとに改革を進めていっていただきたいということでこの義務づけを行うということでございます。

堀込委員 そこで、私は、事業区分ごとにというのは経済事業の場合、やはりある程度問題が生ずるおそれがあるのではないかと思っております。つまり、経済事業、特に販売事業なんかは、今各県によって、あるいは各地方によって、産地間競争が米でもあるいは果樹でも野菜でも行われているわけであります。全農全体で見れば、多分、肥料とか農薬とか燃料とか、こういうものが黒字で販売部門が赤字だという傾向があるというふうに思うんですね。

 そうした意味では、販売なんかは産地間競争をやりながら、よい品物を生産して流通させて消費者に届ける、こういうことがあるわけです。結構いい競争をやっているんですけれども、競争は残念ながら全農一社の中で行われる、そういう矛盾も実はあるわけですね。そういう意味では、私は、基本が営農指導であって、販売事業があって、したがって、貯金もやったり共済もやったり購買も売れたりする、こういう農協経営の多様性とかあるいは地域性とか、そういうものがあると思うんです。そういう意味では、必ずしもこれは、全農によって、経済事業の場合、画一的な縦割りの事業部門ごとにやるという事業のやり方は、やはり非常に問題があるのではないか、こういう気がするんですが、どうですか。

川村政府参考人 部門ごとの状況を明らかにするということは、部門ごとに収支を均衡させろということを意味しているわけでは決してございません。全部が安易に特定の分野に依存をすることによって全体としての改革が進まないということでは困るということで、もちろん、まさに総合事業としてやっているわけですから、お互いに補完をし、それは常にということではなくて、その時々に補てんをし合うということも当然それは総合事業体としてあり得るわけでございます。ただ、それをいつもどんぶり勘定の中でやるということは、本当に経営の改善に役立たないということで、その状況を明らかにしつつ、組合員、会員の理解のもとに改善を進めていってもらうという趣旨でございます。

堀込委員 全農についてちょっと伺っておきたいんですが、平成十四年度を見ると、事業量が約六兆円、事業利益が約千四百億だけれども事業管理費も大体千四百億で事業利益が少し、二、三十億、二十五、六億ぐらい赤字を出している。ただし、賃貸料その他収入があって、当期利益が、平成十四年度の場合で二十八億出している。従業員が約一万二千名、子会社が約二百四十社、こういうマンモス集団であるわけであります。

 この全農が、チキンフーズの虚偽表示だとか、全農滋賀による原産地の表示の違反事件だとか、全農福岡のお茶の産地偽装事件、その都度いろいろな事件がありまして、業務改善命令が繰り返し出されてきた、こういう経過があるわけであります。

 これは、その後、こうした状況に対して業務改善命令に沿って全農の取り組み、そして農水省がどういう指導をやっているのかという点について、ちょっと伺っておきたいと思います。

川村政府参考人 ただいまお尋ねのございました全農とその子会社の関連で、これまで不正表示等のたび重なる不祥事を引き起こしているということは事実でございます。これは、全農ないしその子会社の役職員の法令遵守に対する意識の欠如、あるいは体制の未整備、そういったものが原因をなしているというふうに思っております。

 そして、その都度、全農に対しましては業務改善命令を発出してきたところでございます。そして、業務改善の状況を四半期ごとに報告するように求めておりまして、これまで、一つは経営管理委員会を発足させまして役員体制を一新する。二点目といたしまして、事業の総点検を実施する、法令遵守、それから担当部署への不祥事の報告義務、こういったものの体制を整える。三点目といたしまして、常日ごろからの法令遵守の指導をするということと、全農の外部から第三者の参画を得て業務監査も実施をする。それから、食品を扱う全部署で毎年二回表示の点検、検証を実施するといったような取り組みの報告を受けているところでございます。

 今後も、改善が見届けられるまで当分の間、私どもはこの業務改善命令の中で四半期ごとの報告を求めるという形にしておりまして、全農の改革が真に実現をしますように厳正に見守っていきたい、こういうふうに思っているところでございます。

堀込委員 この法案は、農協自体の改革、とりわけ経済事業改革ということを目玉に出されているわけでありまして、今説明がありましたようなさまざまな取り組みを含めて、この法案で全農のコンプライアンスは確立できるのかどうか、この辺は大臣、いかがでしょうか。

亀井国務大臣 全農はこれまで、たび重なる不祥事、そういうことで四回にわたりまして農協法に基づく業務改善命令を受けたわけであります。

 今回の法改正におきましては、直接コンプライアンス、法令遵守、こういうことのための措置を規定するものではないわけでありますが、いわゆる法的に位置づけが明確化される全中の策定する基本方針、これにおきまして、この法令遵守ということが確保され規定されるわけでありますので、そういう面で、全農を含めました系統全体の取り組みというものが一層強化をされるということを期待するものでありまして、何としても、生産者、消費者双方から信頼される全農の改革が実現するよう、私ども、厳正に対処してまいりたい、このように考えております。

堀込委員 全農、二百四十社に及ぶ子会社があります。この効率化を進めているというふうに聞いています。あわせて、連結決算がどういう状況で進んでいるか。これは簡潔で結構ですから、ちょっと説明してください。

川村政府参考人 二点お尋ねがございました。

 まず一つは子会社の関係でございます。これもスリム化をするということで、平成十七年度に向けまして子会社を半数程度にするということでございます。開始以降、四十一社の再編を行っております。ただ、全農はこの後も、県本部を、県の経済連を合併してふえた分もございますので、四十一社が純減はしておりませんが、足し引きはございますが、減らしたのは四十一社ということでございます。

 それから、連結決算の関係でございます。これにつきましては、先ほど申し上げましたように、業務改善命令の中でも連結決算の導入を命じております。そして、全農は、経理部内に連結管理課というものをまず設置したのが一点、それから子会社等を対象に連結決算に向けた説明会等の実施をしておりまして、全農の連結決算の導入は十五年度決算からということを予定しております。

堀込委員 もう一つお尋ねしておきます。減損会計、平成十七年四月以降、上場会社にすべて導入されますが、これはJAの、農協への導入スケジュールはどうなっておりますか。

川村政府参考人 農協の会計につきましても、基本的には企業会計と同様の歩調をとってやっていくべきというふうに考えております。そういうことで、スケジュール的にも、今申し上げましたような十七年四月以降開始する事業年度から実施をするということで検討しております。

 ただ、この減損会計につきましては、それをストレートに、全く他の企業会計と同様にということにいたしますと、やはり農協、例えばカントリーエレベーターとか育苗施設、こういう共同施設は、農協の事業施設というよりも、農協が農家にかわって所有しているという性格もございますので、その実態を踏まえて、急激な変動が生じないように適正な評価ができるような形にしていきたいと思っております。

堀込委員 そこで、農協の場合、補助事業で取得した財産が結構多いというふうに言われています。ところが、これは補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律で、もし他に転用する場合、これは補助金の返還義務が生ずるわけですね。

 去年の十一月の農業新聞では、二十二県の三百一JAの調査で遊休施設が七百三十六施設あるというふうに報じられていますが、実態調査は、農水省、やっているんでしょうか。

川村政府参考人 農水省としてはやっておりませんが、今引用されました、JA自体が、三百一、二十二県でございますけれども、共同利用施設の利用状況という調査をされておりますので、それを参考にさせていただいております。

堀込委員 そこで、この補助金の返還義務というものについて、JAの経営に大きく影響するだろうというふうに言われていまして、今、たしか、政府は小泉総理を本部長とする地域再生本部を設立して、自治体からの要望を集約して、再生計画を六月に決めるというふうに聞いているわけです。地方自治体からの要望に農協の遊休施設が入り込まないと検討対象にならないということになると思うんですが、この辺は、今、何か対応をしているんですか。

川村政府参考人 先ほど申し上げましたアンケートといいますか実態調査、それから農協系統から、それを踏まえまして、遊休施設の処分を補助金なしで行えるように要望がございました。それを踏まえまして、二月に、地域再生推進のためのプログラム、こういうところで、この問題につきましても、農協だけに限らず、国の他の補助事業、これはほかの省庁がやっているものもありまして、一定の要件を満たす場合には補助対象施設の補助金返還を求めずに弾力的に転用できるように措置をされておりまして、現在、内閣府におきまして、この地域再生計画の認定申請を受け付けているところでございます。

 我々も、この趣旨をよく徹底いたしまして、第一弾として今現在この認定がございますし、また第二弾もあると思いますけれども、間に合うものはその第一弾の申請に盛り込めるように地方公共団体等に周知徹底を図っているところでございます。

堀込委員 補助金というのはやはり結構根が深くて、今三位一体改革で地方財政の改革をやっているわけですけれども、一昔前までは、地方にどんどん物をつくれよ、あとは交付税で面倒見るからとか補助金で面倒見るからとやらせてきた責任というのは結構中央政府にもあるわけです、それはつくった方がいけなくて、農協にも責任があるんでしょうけれども。そういう意味では、バブル時代からずっと続いた、金が余っている時代に地方にどんどん事業をやらせるというようなことがあるわけで、ある種これは政府にも責任がある、こういうふうに思っております。私は、別に農水省だけ言うわけじゃありません。他省庁含めて、この問題で、減損会計が入って何だかんだと、農協経営が危機に陥らないように、他省庁とも協力、共同して善処すべきだと思いますが、局長、見解はありますか。

川村政府参考人 この問題は、せっかくつくった施設が眠ったままというのはある意味では非常にもったいない話でございます。ほかの施設に有効活用できるのであれば、これは非常に地域の活性化にもつながるし、本来の補助事業の趣旨も生かされるということでございますので、我々としても、農林省独自でもそういう緩和ができないかということを十六年度中に検討することにしておりますし、関係する省庁が、もちろんあるわけでございますが、そういうところとも十分連携をとりながら進めていきたいと思っております。

堀込委員 時間がありませんので、共済関係をちょっと聞いておきます。

 いろいろ質問通告してあるんですが、先に予定利率の変更の話をさせてもらいます。

 これは多分、保険業法の横並びの改正だというふうに思いますし、財務金融委員会で相当議論も行われてきたんですね。共済業務の継続が困難となる蓋然性のある場合、予定利率の変更が可能だ、こういうことになっているんですけれども、農協の場合は、農協から全共連にすべてが、保険契約が来るわけであります。全共連はソルベンシーマージン比率も七五〇とか、物すごくいいというふうに聞いておるわけでありまして、そういう状況下でなぜ今これを入れなきゃならぬということなんでしょうか。

川村政府参考人 予定利率の変更の問題でございます。

 現在、全共連のもとで農協共済をやっておりますが、今、御質問の中でも御指摘がございましたとおり、責任準備金等を適正に積み立てをしておりまして、当面、健全性に問題はないというふうに考えております。ただ、今後いろいろな、事業の継続が困難な状況というものが生じないとも、もちろん断言はできないわけでございますが、そういった場合に、万が一、事業の継続が困難となった場合に予定利率の引き下げができないといたしますと、破綻しかなくなるということで、かえって共済契約者の利益をより損なってしまうということがある。

 それから、横並びということもございまして、保険会社が一斉に予定利率を引き下げたといったような場合に、農協共済としても同様の対応を迫られる可能性があるということを考慮いたしまして、これも保険業法の規定が既に置かれておりますので、その例に倣いまして、経営の選択肢、こういうものを確保するという意味で、契約条件変更手続を法的にも整備をしたということでございます。

堀込委員 横並びで、しようがない、書いたという法律らしいんですけれども、継続が困難となる蓋然性、これは財金でもいろいろ議論されていますが、全共連の場合どういうことが想定されますか。

川村政府参考人 継続が困難となる蓋然性、これは、将来の業務なり財産の状況の予測、こういうものを行うのが前提でございますが、一つは、責任準備金の十分な検証のために現在行っている今後十年間将来の収支分析の業務がどうなるか、それからまた、金利、新契約高についてどういう前提を置くか、それから、事業費の削減、業務内容の見直し等、こういった改善方策、そういうものを盛り込んだとしても、なかなかこの継続が難しいという事態があった場合にということでございます。

 具体的にどういう状況というのは、経済全体が非常に大きな、例えば大地震とかそういうのがあって、全体的に見直しが迫られるとか、そういうこともあろうかと思いますが、こういった客観的なデータ、予測のもとに考慮していくということになろうと思っております。

堀込委員 そういうことなんですよね。結局、経済の大変動、恐慌に近いようなものがなきゃ全共連の破綻なんてちょっと想定できないけれども、保険業法を改正したからちょっと横並びでやっておくわということで、これは、必要ない法律だけれども横並びでやった、今の答弁を聞いていてそういうふうに思うんですね。全共連という大規模な保険会社が契約条件の変更を申請するなんということは、これはもう本当に日本経済の危機的な状況下でしか想定できないわけでありまして、私は、そういう意味では、この法律は、別に保険業法の横並びでやらなくてもいいんじゃないかという気はしているんですけれども、やられたのはそういうことであろう、こういうふうに思っています。

 時間がありませんから、共済問題はいろいろ聞きたいんですが、あとは次回にさせていただきまして、農業信用保証保険法について一点だけ聞いておきます。

 改めてこの法律を変えるということは、基金協会の保証債務の弁済能力について不安を感じている、あるいは、そういうことが予測されるということでこれは法案を提出していますか、どうなんでしょうか。

川村政府参考人 今回の改正を提案しておりますが、これは、農業信用基金協会の経営状況が非常に悪いということではございません。概括的に申し上げますと、保証料等から代位弁済をした金額を除いたいわゆる保証収支、これは全国で合計プラスになって、総じて安定をしております。ただ、運用益、これが低金利の中で非常に減少しておりまして、人件費等の事務コストが運用益を上回る状況も見られるということで、そういう意味での若干の懸念材料はございますが、全くその全体としての収支に問題はない。

 それからまた、財務内容につきましても、基金が二千五百九十九億ございますし、代位弁済の発生あるいは求償権の状況等から見ましても、この保証機能に支障はない、こういうふうに考えております。

 ただ、今後、こういう基金をそれぞれかなり積んでおりますし、保証機能を的確に発揮していくという意味では、やはり万が一の場合も考えた上で、こういった安全性確保に向けた規定の整備をしていくことが非常に重要であろうということで、提案をさせていただいております。

堀込委員 時間が来たので終わります。

高木委員長 次に、楢崎欣弥君。

楢崎委員 楢崎です。

 きょう、午前から午後にかけて、堀込委員より、この法案の本質にかかわる質問がなされました。私は、若干視点を変えまして質問をさせていただきますが、実は一昨日、私ども民主党また関係漁民の方が強く求めておりました諫早湾潮受け堤防排水門の中長期開門調査について、それはもうやらないという重大な決定が行われましたので、大変恐縮ですが、若干時間を拝借しまして、まず有明海問題について質問をさせていただきたいと思います。

 そこで、大臣は同日、「有明海の漁業関係者の皆様へ」というメッセージを発せられて、「有明海の豊かな海としての再生に早急に取り組み、皆様の不安を解消することが喫緊の課題であると考えております。」と述べられております。これは、要するに、有明海で生きる漁民の皆さんの不安を払拭しなくてはいけないという思いは共有できますよね。

亀井国務大臣 私は、昨年四月就任以来、その当時から、この有明海の問題につきましては問題があり、また、いろいろ議論もなされてきたところでもございます。そういうようなことで、現地にも視察に参りましたし、またいろいろの機会に関係の皆さん方、漁業者の皆さん方のお話も伺う、こういうことをいたしてまいりました。

 そういう面で、私は、有明海、豊かな海、この再生、こういうこと、漁業者の皆さん方がいろいろ御心配をいただいている、そういう中で、それらが解消されるような、そして豊かな海としての再生ができるように、こういう気持ちというものは漁業者の皆さん方と同じ認識を持っております。

楢崎委員 いわゆる有明海異変と言われるものの原因はまだ解明されていませんね。それで、諫早干拓事業が有明海の環境を破壊しているのかどうかもわからない。そういう不明のままで、漁民の不安はまだ払拭できていないのではないですか。

亀井国務大臣 その点につきましては、この開門調査に関するノリ不作等第三者委員会の見解を踏まえまして、短期の開門調査と、これを補うため、さまざまな調査や、関係省庁と連携した各種の調査、こういうものを実施し、中長期開門調査の取り扱いにつきましてのいわゆる検討会議、その論点整理がなされたわけであります。

 私も、先ほど申し上げましたとおり、現地に参りましていろいろお話を伺う、あるいはまたさまざまな機会に関係の皆さん方の御意見を伺う、あるいは、実は五月七日の日にも、三県漁連の会長さんあるいは県会議員、県議会の方々から、直接、中長期開門調査が有明海の再生への第一歩であり、漁業者の不安に対して納得ができるようにしていただきたい、こういうお話もちょうだいをしたわけであります。

 先ほども申し上げましたが、一日も早く有明海の再生を図ることが最も重要な課題、私はこう考えておりまして、これらの調査結果や意見を踏まえまして、漁業者の皆さん方が期待をされております再生への道筋を明らかにするために、今何をなすべきか、こういうことを検討し、十一日の日に発表したようなことでございます。

楢崎委員 大臣は、これまでも、いろいろな意見を聞き、また調査をもとに結論を出したいと言ってこられましたけれども、正しい意見を聞き、また正しい調査結果をこれまでに得られたと思いますか。得られた上でのそういう決定ですか。

亀井国務大臣 いろいろのお考え、御意見はございます。あるいは、検討会議の報告書も拝見をいたしまして、そういう中でもいろいろな意見があるわけでありまして、それぞれ考え方、立場、こういう点での考え方は多種多様のところもございます。

 そういう中で、先ほども申し上げましたとおり、有明の再生、その道筋をという観点に立ちまして、総合的に判断をしたところであります。

楢崎委員 有明海特措法によって環境省に評価委員会が設置されたわけですけれども、この評価委員会の報告もまだ出されていませんよ。これは無視するんですか。

亀井国務大臣 私は、今日までのそれぞれの方々のお話やら、先ほども申し上げましたとおり、これら第三者委員会、検討会議の報告、そして、私ども農水省としても、今日までのいろいろの経緯、こういうものを総合的に判断して決めたわけであります。

楢崎委員 検討会議のことについては後ほども述べますが、福岡、佐賀、熊本の県知事、そして県議会、さらには、多数の沿岸市町村が調査を求めていたわけですね。これは、関係地元の大きな意思表示だと思うんです。まず、それをどう受けとめておられるのか。

 それから、農林水産省がみずから設置せざるを得なかったノリ対策第三者委員会の提言ともあわせて、これらをすべて無視するという形になるんですよ。

亀井国務大臣 先ほど来お話し申し上げておりますとおり、私は、関係者やいろいろの皆さん方、そしてさらに専門家、技術検討会の報告、こういうものを総合的に判断し、そして有明の再生、またこのためにはどうすべきかというようなことを総合的に判断したところであります。

楢崎委員 これから言っていきますけれども、今大臣が言われましたこと、それぞれに問題があります。

 それから、諫干事業と有明海異変の関係について、関係者が起こしました工事差しとめ請求仮処分の申請の可否が、今月中にも佐賀地裁で決定される予定です。それから、因果関係の裁定を求めている国の公害等調整委員会の審問も始まって、これも裁定が下される。

 そういう状況の中で、この時点で実施をしないということを決めるのは、やはり今まで大臣が言ってこられたことと反するんじゃないですか。

亀井国務大臣 私は、先ほども申し上げましたが、この有明の再生の道筋を明らかにしようという点で、漁業関係者の方々と同じ思いであるわけでありますが、中長期の開門調査を実施することによりまして、どのような成果が期待でき、どのような影響を生じ、またそれに対してどのような対策が必要となるかを総合的に検討してきたところであります。

 開門調査につきまして、排水門をあけることによって被害が生ずることのないような被害防止対策を講じつつ、調査の結論を出す必要があるわけでありまして、これにやはり相当長い歳月をかけることになることでありますし、また、このような形で調査を行ったとしても、なお予期し得ない被害、こういうものが発生するおそれもあるわけでありまして、さらに、その成果については必ずしも明らかでない。そして、何としても、有明海の再生への道筋を明らかにすること自体はぜひとも必要である、このように考えておるわけであります。

 今申し上げましたような事情から、中長期開門調査を実施するのではなく、これにかわる方策として、調査やあるいはまた現地実証及び調整池の水質対策を進めていくということの判断を行ったものであります。

楢崎委員 これから聞こうと思うことを今答えられましたので、大臣、これは亀井大臣が就任以前から、これは私なりの言い方で言わせていただければ、大変失礼な言い方になりますけれども、私は、やはり農林水産省の独善的な暴走が続いている、結局、諫干事業の進捗に都合の悪い意見は何とかへ理屈をつけてでも無視する、そんな感じを受けているんですよ。

 それで、どういう理由で中長期開門調査をやらないのか、また現実的でないのかということについては、今大臣が申し述べられました。新聞報道ともあわせまして、調査をしない理由というものがいろいろ紹介されています。今の大臣の答弁ともあわせましてお伺いしますけれども、まず、その前に、きょう、環境省の方においでいただいておりますので、先にちょっとお伺いします。

 吉田部長、きょうはありがとうございました。それで、本来なら、環境省に設けられました評価委員会の須藤委員長においでいただこうかと思っていたんですけれども、きょうは時間的な問題もありましたし、それは後日に回したいと思います。

 先ほども言いましたように、環境省に評価委員会が設置されたのは、有明海特措法に基づいてなんですね。今回、環境省は、この農林水産省の中長期開門調査見送り決定をどう受けとめておられますか。

吉田政府参考人 中長期開門調査の実施に関しましては、潮受け堤防の安全性の確保それから周辺環境への悪影響の発生等を含めまして、技術的な検討が必要でございます。そうした意味で、事業主体であり、管理責任を有しておられます農水省において、実施の可否についてるる検討が行われてきたものというふうに考えております。その結果、中長期開門調査は実施が困難であるという結論に至ったというふうに理解しておりますが、農水省におかれましては、有明海の再生につながる他の調査や対策を実施していく方針でもあるというふうに伺っております。

 したがって、環境省といたしましては、それらの調査や対策が有明海の再生に向けて真に有効に実施されることとなりますよう期待し、それを評価委員会を通じて誘導していきたいと思っております。

楢崎委員 何かあなた、農林水産省の代弁をやっているみたいですね。

 では、聞きますけれども、農林水産省に設置された検討会議が、昨年十二月、報告書を出しましたね。ことしの一月二十六日に評価委員会が開催されて、その中で、その評価委員の発言というのは、調査が不十分、もっと異なった方向からの解析が必要だとか、それから多くの科学者らが参加する公開討論の場で幅広く検討することが重要だというような意見が出されているんですね。

 では、環境省は、そういう意見に対してはどういう受けとめ方をしているんですか。

吉田政府参考人 今先生御指摘のとおり、一月二十六日の第七回の評価委員会、それからさらには、三月二十二日に開催をいたしました第八回の評価委員会におきまして、農水省が実施をしてまいりました開門総合調査それから中長期開門調査の検討会の報告について、御報告に基づき審議がなされております。

 委員の方々からは、調査で用いられた有明海の環境を予測するシミュレーションモデル、その調査結果の解析方法などについて、るる御質問あるいは意見が出されました。それらをすべて含めまして、須藤委員長からは、農林水産省に対しまして、評価委員会での議論を踏まえて、有明海の環境改善のための調査をさらに十分に検討した上で進めていただきたいという発言があったところでございます。

 したがって、環境省といたしましても、農林水産省においては評価委員会での委員の意見を踏まえて対応をしていただけるものというふうに考えております。

楢崎委員 一方、その会合に出席された農林水産省の担当者の方は、そういう委員の方々の御意見を聞かれて、検討したいと答えてありますね。検討したんですか、検討した上で今回のような決定が出されたんですか。

太田政府参考人 私どもは、評価委員会に対しては、積極的にといいますか、説明責任をきちっと果たしていく、あるいは、さまざまな御意見を賜り、それを私どもの実施する調査に生かしていくという姿勢でおりますので、そういった観点から、検討したいという発言をいたしたところでございます。

楢崎委員 今の太田局長の御意見についても後ほどまた申し上げますけれども、要するに、やはり環境省の立場からも私は何らかのコメントを出してほしかった、こういう思いを今持っておるんです。

 今度、環境省は、何か農林水産省と合同で有明海における貧酸素水塊の発生状況の調査をするということですけれども、なぜ環境省独自にやらないんですか。

吉田政府参考人 御指摘の貧酸素水塊に関する環境省の調査でございますが、これは今年度から貧酸素水塊の発生状況を把握するための調査を行うということで予算を確保しております。一方で、農水省におかれましても、水産庁あるいは農村振興局の方で、もともと有明海の貧酸素水塊に関する調査を行う予定でございました。両者を一体的に実施することによって、関係省庁協力のもとに、効率的にスケールメリットを生かして実施をしようということで予定いたしております。

 広い有明海でございます。貧酸素水塊の発生状況を的確に把握するために、できるだけ測定ポイントをふやす必要がございます。しかも、夏季に連続をして行うということが必要になってまいります。こうした意味で、関係省庁が協力することは非常に有効であるというふうに私ども考えております。

楢崎委員 縦割り行政を超えた対策ということは評価をしますけれども、また聞こえもいいですけれども、要するに、この有明海の貧酸素水塊発生については諫干事業との因果関係が指摘されているんですよね。つまり、本来、干満の差が大きい有明海では見られなかったんですよ、今まで。それが、潮受け堤防が締め切られた九七年、そして九九年、その後も続きますけれども、観測されているんですね。

 一つは、締め切られたことによって潮流、潮汐が変化し攪拌力が弱められた、さらには、有機物を除去する干潟が消失した等々言われているわけですけれども、そういう中で、この諫早干拓事業の実施主体となっている農村振興局との合同調査となれば、これまた信頼という点について私は疑義を感じざるを得ないんですよ。独自に調査すべきじゃないですか。

吉田政府参考人 重ねてお答えを申し上げますが、先ほど申し上げましたように、各省協力で、できるだけ濃密な調査をしようということで企画をいたしております。

 それから、先生御指摘のございますとすれば、そのお答えとして申し上げておきたいと私ども思っておりますのは、調査のプロセス、それから調査の結果、あるいは調査の結果についての評価委員会における評価、これらを公平に、しかも透明性を持って行うということが重要であると思っています。

 いずれにしても、御指摘を踏まえまして、今後の調査の実施に当たりましては、公平、透明性を確保しながら進めていきたいと思っております。

楢崎委員 先ほども申しましたように、本当に、次の機会には評価委員会の須藤委員長をお招きして御意見をまたお聞きしたいと思いますけれども、この有明海問題については環境省の存在感が見えないという心配がちょっとあったものですから、お聞きしました。

 吉田部長、これで結構でございます。ありがとうございました。

 本件に戻りますけれども、先ほど言いましたように、調査を打ち切る、やらない、この理由に関してお伺いしますけれども、まず、農林水産省は、今期、ノリの生産状況が各沿岸によって異なっている、そのことが諫干による環境悪化の原因とは言えないと判断されているようですけれども、生産状況が各沿岸で異なることが、なぜ諫早干拓事業は、工事は関係がないということになるんですか。

太田政府参考人 確かに、生産状況は、各県、あるいは各県の中でもその地域によって違っております。例えば、河口域では比較的栄養塩が補給されやすいからその生産量は高うございますけれども、そこから離れたところについてはそうでないといった実態もございます。

 しかし、これは諫早湾干拓の直接の因果関係というのは必ずしも認められないという認識のもとに、その結果が出ておるというように考えておりますが、現実的には、漁業者の皆さんからは、いわゆる栽培管理といいましょうか、丁寧な管理をやっているからそういうことになっているんだということも言われております。

 そういった意味で、さまざまなことが重層的に重なって、そういったいわゆるばらつきといいましょうか、差といいましょうか、そういうものが出ているというふうに承知しております。

楢崎委員 局長、潮受け堤防が締め切られて、それ以降、毎年十月から十二月にかけて赤潮が頻発したことは事実ですよね。その発生場所も異なることも当然じゃないでしょうか。ですから、こちらがとれて、こちらはとれなかったということじゃなくて、全体としてノリ不作が続いていることが問題じゃないんですか。

太田政府参考人 ノリ不作のありました十二年十二月当時の大きな色落ちのときから比べますと、翌年は、ある意味ではノリ生産にとっていろいろな好ましい状況があったということでしょうけれども、未曾有のといいましょうか、非常な豊作であった。翌年は若干厳しい状況でしたが、また今期も、最初のうちは赤腐れといった病気も出ましたが、冷凍網が好調だったということで、年々その状況については変化しておりまして、全体として生産が厳しいという状況にはないというふうに理解しております。

楢崎委員 では、大打撃を受けているタイラギ、そういう魚介類の異変についてはどういう説明をされるんですか。

太田政府参考人 タイラギの漁獲の減少も、諫早湾干拓事業に先立つ時点からそういう現象が出てきておるという実態もございますし、先ほどの先生の御指摘に触れますと、例えばそういうものの一つの要因でないかと言われております貧酸素の問題、これにつきましては、平成九年の締め切り以降ということではなくて、それまでにもさまざまなところにそういうものが発生していたという事実があるというふうに認識しております。

楢崎委員 もう開き直りにしか聞こえないですよ。結局、原因はわからないんでしょう。それなら調査すべきでしょう。

太田政府参考人 まさに先生の御指摘のとおりでありまして、特に赤潮の問題、これも今回の対策の中にそういうものを追跡して観測するようなこと、つまり、これまでの調査の点数、ボリュームが非常に少なかったことですから、そういうものをきちっとやりたい。しかも、やることについては、大臣からの御指示もありまして、漁業者の皆さん方の参加といいましょうか、そういうものも呼びかけながら一緒にやっていくということで、有明海再生の道筋を見つけ出していきたいというふうに考えております。

楢崎委員 だから開門調査をやらないという答えにはなっていない、そのことを申し述べておきます。

 そこで、大臣、昨年検討会議が出された報告書というものもこの見送り決定に大きな影響を与えていると思われるんですね。というのは、大臣は四月二十七日の記者会見で、諫干事業が有明海の環境悪化に及ぼす影響を検討することは困難という検討会議の見解というものをそのときは引き合いに出してあります。

 私、昨年四月の委員会でも言ったはずなんですよ。要するに、ノリ対策第三者委員会が提言された中長期の開門調査というものを、わざわざ官僚OBでつくる検討会議を設けてこれを否定させる。このようなメンバーで構成する検討会議が設置された時点でもう答えは決まっているようなものじゃないか、見え見えじゃないですかと私は言ったはずなんですけれども、案の定、この検討会議においては実測データというものが無視されていますね。一つ例をとれば、短期開門調査で閉門時と異なる潮目が確認されているんですよ。これは潮流に関係するわけですからね。これに全く触れられていない。

 要するに、言いかえれば、何の説得力、それから、私に言わせれば権威もない、そういう報告書なんですよ。そのことは、学識者の皆さんからも実は農林水産省は指摘されているんじゃないですか。

亀井国務大臣 検討委員会の先生方、さらにはそのもとに専門委員会が設けられて、そして地域の専門的な方々からのお考え、こういうものもいろいろ聴取をされ、そういう中で検討委員会の報告がなされた、このように認識をいたしております。そういう点で、幅広い角度からの検討というものがなされたもの、このように認識をしております。

楢崎委員 検討会議の皆さんが言われる、調査は締め切りの影響を明らかにできない、これは、報告書というのは、私に言わせれば調査をしないための詭弁としか聞こえないんですね。ノリ対策第三者委員会の清水元委員長、この方が、この報告書が出た後も、そして大臣が開門調査はやらないという決定を出された後も、第三者委員会の見解は今も何も変わらないと言われてあるんですよ。

 大臣はこうも言ってある。前々から二〇〇六年度の工事完成で合意されており、それに向かって進んでいくんだと明言されておられますけれども、前々からとはいつですか。

太田政府参考人 平成十四年四月、これは、ノリの委員会がその前の年の十二月に見解を出され、それについて調査をどうしていくかというときに、短期開門調査を実施すると申し上げたときに、工事についても十八年の完成に向けてやるということについて理解を求め、そのような経過があったということを申し上げたわけでございます。

楢崎委員 例のあの四月十五日のことを言ってあるんですか。何が合意ですか。合意文書はありますか、覚書はありますか。

太田政府参考人 そのことにつきましては、記者会見も申し上げ、皆さん方にそのことをお知らせいたしております。

楢崎委員 何もないんですよ。要するに、私に言わせれば深夜の密談ですよ。そこで〇六年度における工事完成が確認されたと言われていますけれども、その会合の権威も重みもないから、その後激しい抗議行動が続いた、これが事実ではないですか。

 大変失礼をいたしました。きょうは農協法ですので、この後のことについては、ちょっと今御注意をお受けしましたので、農協法の方に入っていきますけれども、後日これはやらせていただきますので、関係者の方には、きょうはありがとうございました。

 そこで、先ほど言いましたように、堀込委員の方からこの法案の本質にかかわる質問が先ほどなされました。

 そこで、私は別視点と申しましたけれども、三年前、農協改革関連二法が審議をされたわけですね。今回は、この法案がそれまでに系統が抱えてきた課題というものが克服された上で出てきた法案なのか、やはりその検証が必要だと私は思うわけですね。ですから、それを踏まえながら質問をさせていただきたいと思います。

 まず大臣、大臣は、昨年八月二十九日、「新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けて」という談話を発表されたわけですけれども、この基本計画の見直しと農協改革との関係をどのように受けとめればいいのでしょうか。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

亀井国務大臣 今後の農政の推進に当たりましては、やる気と能力のある農家の経営や地域の取り組みを後押しする、消費者、そして生活者の視点を重視した農林水産政策を目指してスピード感を持って各種の農政改革を進めることが重要、こういう認識を持っておるわけであります。

 農業をめぐるいろいろの諸情勢、変化をしておるわけでありまして、そういう中で、食料・農業・農村審議会に、新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けて、担い手の経営に着目した品目横断的な政策への転換、あるいは担い手・農地制度等につきましての御議論をいただいているところでございます。

 このような農政改革は、農業の担い手を明確にして、集落営農のあり方を含めまして地域農業の再構築を図るわけでありまして、地域農業の拠点、そういう意味で、地域農業の振興に重要な役割を担っておりますのは農協でありますし、農協の改革なくしてはその実現は困難である、このように認識をいたしております。

 農政改革の一環として農協改革に取り組む、そして農業の構造改革を加速化して、意欲ある経営体、それらが躍進するいろいろな諸条件をつくり出すということが必要なことじゃなかろうか、こう思っております。

楢崎委員 では、これから具体的に聞いていきますけれども、今も思い出すんですけれども、三年前の審議では、まさに住専に踊らされた不良債権の問題がクローズアップされたわけです。当時、系統の抱える不良債権、これが十一事業年度末で二兆八千五百一億円、そのときに不良債権が総資産に占める割合が、農協が一・四%、信連、農林中金が一・七%ということですので、全国の銀行が総資産に占める割合が三・九%だから、これよりは低い水準と答えておられたんです。問題は、その比率じゃなくて中身なんですね。

 この不良債権は、その後どう改善されましたか。

川村政府参考人 不良債権の状況でございます。

 平成十一年は、今委員が数字を挙げられましたように、リスク管理債権といたしまして、二兆八千五百一億円であったわけでございますが、十四事業年度末の数字は二兆五千百六十億円ということで、三千三百四十一億円ほど減少いたしております。貸出金に対する不良債権の比率は〇・三ポイント減少しておりまして、現時点でも他の業態、銀行等に比較しましても低いものとなっております。

楢崎委員 今の二兆五千何がしというのは、何年度の数字ですか。

川村政府参考人 十四事業年度末で、三年後の姿でございます。

楢崎委員 そう改善されたとは思えませんね。その主因といいますか、原因は何ですか。

川村政府参考人 このリスク管理債権でございますが、単協レベル、信連、農林中金、こういう各段階がございます。農林中金なり信連、このところにおきましては、不良債権の売却等を進めたということによりまして、かなり大幅な減少をしております。ただ、現場に張りついております農協、こういうところにおきましては、地域経済が依然として低迷をしておるということ、それから、組合員への貸し付けが主体ということで、最終処分というよりも引き当てによりまして当面処理していくというようなことがあったんだというふうに理解をしております。

楢崎委員 では、その改善にどういう対応をされるわけですか。その二兆五千何がしかがまだあるわけでしょう。どういう対応をされるんですか。

川村政府参考人 農協二法の改正におきまして、JAバンクシステムというものができ上がったところでございます。これによりまして、できるだけ早期発見、早期是正ということでやっておりまして、不良債権につきましても、債権管理の徹底、それから債務者に対する経営指導、こういうものを充実するということで債権の健全化を図るということがまず第一点でございますけれども、それによってもなかなか図り得ないという場合は、債権の売却など、最終的な処理を促進していくということをしておりますし、農林省としても、よくこの状況を見きわめ、指導もしていきたいと思っております。

楢崎委員 大臣、今日において、今、不良債権の中身も若干変質してきているようですけれども、では、バブル期からの決別はもうできたということは言えますか。

亀井国務大臣 農協系統、バブル経済の影響は他の業態に比べて大きくなかった、こういうことは認識をいたしております。組合員向けの貸し付けが中心、いわゆる住専問題があったわけでありますが、結果的には、他の金融機関に比べて不良債権による傷はそれほど大きくなかった、こう言ってもよろしいか、こう思います。

 その後、十三年の農協改革法に基づきます農林中金のJAバンクシステム、こういう形の確立、そういう面でいろいろ努力をしておるところでもございます。現在、このシステムのもとで合併等、組織再編の強化を進めまして、自己資本比率が四%未満の農協の解消、不良債権につきましても、総資産に占める比率が他の業態と比べまして低くなっている状況にあります。

 こうした農協系統の積極的な取り組みを促すとともに、今後とも系統機関の一層の健全性を確保されるように適切に指導してまいりたい、このように考えております。

楢崎委員 系統金融のセーフティーネットには、今言われましたJAバンクシステムの中の支援基金、貯金保険機構とがあるわけですけれども、まず貯金保険機構の責任準備金、これは十二事業年度末では千九百八十六億円だったわけですね。現在は幾らでしょうか、十四事業年度末で結構です。

川村政府参考人 貯金保険機構の責任準備金の状況でございます。

 十五年三月末現在でございますが、これが千八百五十二億円ということで、若干減少してございますが、これは、ペイオフ解禁を控えまして、十三年度及び十四年度におきまして農協等の破綻処理が集中して、この処理を行ったものということでございます。

楢崎委員 百三十四億円減っているということですね。

 そのJAバンク支援基金ですけれども、これが十四事業年度末、基金残高が五百五十五億円。ところが、来年三月にはこれを千二百億円規模に増額したいということですけれども、この意味するところを教えていただけませんか。

川村政府参考人 今委員の御指摘の中にありましたとおり、JAバンクの関係ではセーフティーネットとして二段階になっておりまして、まず第一段階としまして、まさにJAバンクの相互支援の基金、ここがございまして、ここでも基金を積み立てて、必要に応じて補てんをしておるところでございます。そして、今申されました、平成十五年三月末のJAバンク支援基金の残高は、五百五十五億円でございます。

 そして、今後いろいろな、ペイオフ全面解禁という問題もございますので、このJA支援基金の基金も充実する、拡充しておく必要があるだろうということで、農協系統の負担料率、これまであったものを引き上げをいたしまして、さらに積み上げを図る。それからまた、農林中金におきましても特別の拠出を行う、この両方、負担料の料率の引き上げと中金の特別拠出、この二つが相まちましてその増強を図っていくということで、十六年度において特段の補てんがなければ、予定されている拠出や負担金の金額を合計いたしますと、千二百億円程度に来年三月末になるのではないかということでございます。

楢崎委員 固有名詞を挙げて恐縮なんですけれども、不良債権処理等で赤字決算となったJAの千葉信連に対してはどういう対策がとられたんですか。

川村政府参考人 今お尋ねのありました千葉県信連の問題でございます。

 この千葉県信連におきましては、昨年、大幅な地価の下落、それから地域経済の低迷が続いているということで、平成十七年四月、来年の四月にペイオフの全面解禁が控えておるわけでございますが、厳格な資産精査を行う、それから経営健全化に向けた取り組みをやるということで、千葉県信連はこういった取り組みの一環といたしまして、千葉県下の各農協から二百十五億円の増資等を受けまして、そして自己資本比率の維持、保全を図っているということでございます。

楢崎委員 こういう地域事情とか経済事情とか、どこでも同じですよね。こういう場合、経営陣の、経営的立場におられる方の責任問題というのは出てこないんですか。

川村政府参考人 これは、当然責任をしっかりとって、新たな役員体制ということが必要だということでございまして、千葉県におきましても、本年三月に経営管理委員会会長等旧役員が退任をいたしまして、現在新たな役員体制のもとで一層の経営改善に取り組んでいるという状況でございます。

楢崎委員 改革の第一歩はそういう責任を明確にするところから始まると思います。

 それから、やはり厳格な不良債権処理を迫ればさらに経営悪化が表面化する農協というのが出てくる状況にありますか。

川村政府参考人 今後とも、農協系統金融機関の健全性、これをしっかり確保していく必要があるということで、まさに他の金融機関と同様な基準に基づきまして、資産の査定をしっかりやるとか、それから不良債権の処理をしっかりやっていくといったものが非常に重要でございます。その自己査定あるいは処理等につきましても、私ども、行政検査あるいは全中監査、こういうものを通じて今後とも厳しくチェックしていきたいと思っております。

 今後、そういった四%を割る、あるいは自主ルールで目安にしております八%とか六%、それぞれの各段階に応じて早期発見、早期是正というものをやっていかなくちゃいけないというふうに思っております。

楢崎委員 確認しておきますけれども、今日において、自己資本比率四%未満の農協はありませんね。

川村政府参考人 平成十四年四月からペイオフの部分解禁、これが行われておりまして、これに向けまして四%未満の農協の解消に取り組みまして、その四月のスタートには四%未満はございません。その後もJAバンクの自主ルールのもとで取り組んでおりまして、現時点でも四%未満組合は存在しておりません。

楢崎委員 私は、本来なら十四年四月から施行される予定だったペイオフの解禁、これが延期されたことは、系統にとっても恵みの雨だったと思うんですね。

 しかし、もう待ったなしの、解禁まであと一年ですから、大臣、総体的に考えてペイオフに対応できる体力というものはできたとお考えですか。

亀井国務大臣 先ほども申し上げました十三年の農協改革二法、これに基づきます農林中金が中心となりますJAバンク基本方針、これを策定いたしまして、農協等を指導するJAバンクシステムの確立、こういう中で、先ほども局長から答弁しておりますとおり、自己資本比率が四%未満の農協が解消している、問題農協の早期発見、早期是正を強力に進めてきたところであります。

 そういう点から、十七年四月のペイオフ全面解禁後においても、貯金者等から安心して利用される金融機関になるよう、JAバンクシステムに基づきまして、不良債権の一層強力な処理、あるいはまた合併や信用事業譲渡等によります事業強化、こういう面で財務や経営の面での一層の健全化に取り組んでいるところでございまして、今後とも都道府県や農林中金を初めとする農協系統と十分連携をとりつつ適切に指導してまいりたい、このように考えております。

楢崎委員 そのためにも、やはりうみを隠すことなく出し切る経営健全化が求められている、そのことを申し述べておきます。

 次に、昨年開催されました二十三回JAの全国大会で、経済事業改革が決議されたわけですね。本年度はその初年度に当たるわけですけれども、実は三年前の農協改革法でも経済事業の改善が言われているんですよ。余りにも対応が遅いのではないかと思うんですが、どういう指導をされておられるんですか。

川村政府参考人 農協の事業なり組織の改革ということでは、今御指摘がございましたとおり、平成十三年の農協改革二法その他を初めとする諸施策を推進してきたことは事実でございます。ただ、その後経済情勢も相変わらず不況が続いておったり、いろいろの状況もございますが、やはり営農なり経済事業改革というのは、率直に申し上げまして非常におくれているというのが事実だと思います。

 こういう実態を踏まえまして、一昨年の九月には農林水産省として研究会を設置いたしまして、経済事業に重点を置いた検討を行ったわけでございます。そして、昨年三月に、農協は本来民間の経済主体であるけれども、真剣な経営努力を行って農業者や消費者に選択される存在となるべきといったことを内容といたします報告書を取りまとめていただいた。我々行政といたしましても、この研究会の報告に沿って指導は行ってきたわけでございます。

 それからまた、こういった研究会の報告も踏まえて、JAみずからも、昨年十月の二十三回JA全国大会におきまして、組合員の負託にこたえる経済事業改革ということを四本柱の一つの重点実施項目として決議をされて、これに数値目標あるいは財務目標、そういうものも含めて具体的に、またスケジュール管理をしながら取り組んでいくということをされておりますし、今回私どももこの法案等も提出させていただきまして、これを支援していきたいということでございます。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

楢崎委員 何か法案が審議される前年にテンションを上げるというような、見え見えの姿勢がちょっと感じられるんですけれども、具体的に聞きます。

 購買事業の取扱品で、生産資材、これは年々減少傾向にあって、取扱高も十一事業年度のときは二兆七千百三億円、ちょっと数字は確認できませんけれども、これは現在も減少傾向にあるわけですか。

川村政府参考人 購買事業の関係でございます。

 今お尋ねがございました平成十一年が二兆七千百億円程度でございました。その後も年々減っておりまして、対前年比で申し上げますと、平成十二年度が九九・三%、十三年度が九六・六%、十四年度が九五・七%ということで、十四年度現在では二兆四千九百億ということで減少が続いているということでございます。

楢崎委員 当時、大規模農家が農協を利用しないで商系を利用していることが報告されていたんですね。その反省といいますか、そういうものに立った資材価格の引き下げとか、それから大口割引の問題とか、そういうのは改善されてきているんですか。その上でのこの二兆四千億という数字ですか。

川村政府参考人 生産資材の取扱高が減少しているのはいろいろな要因があるかと思います。農産物価格が、特にこの数年は経済状況等も反映しまして低迷をしておりまして、農家の投資意欲等が減少しているということもありまして、反映しているのではないかということも原因として考えられます。

 今お尋ねの、大口の割引等の状況でございます。前回調査をいたしました平成十一年、それと比べますと、平成十四年におきまして、肥料におきましては七三%の農協が大口割引を実施しておりますし、農薬につきましても六三%が実施しております。これは十一年に比べますとそれぞれ一〇ポイント伸びております。

 その後、昨年のJA大会でも、この資材価格の引き下げ等につきましてはやはり重点的な項目とされておりまして、四点ほど取り組みが決議をされております。一つは、競合店に対抗できます弾力的な価格の設定、それから大規模農家、法人への大口割引価格の設定、地域実態に応じた弾力的な仕入れの実施、JA域を超えた広域の拠点整備によります物流の合理化、こういう四本柱でこの資材問題に取り組むということが決議されておりますので、我々としてはこの取り組みを、実効を上げるようにしっかり取り組んでもらいたいということで監視をし、支援をしてまいりたいということでございます。

楢崎委員 どことは言いませんけれども、ある農協で補助金が値下げの原資にされたという話も聞いておりますので、これはルール違反ですので、努力の仕方を間違えないように指導してくださいね。

 購買事業未収金に対する証書貸し付け、つまり融資に切りかえる方法ですけれども、これは今日でもやっているんですか。

川村政府参考人 購買未収金を貸し付けに振りかえるということでございますが、現状におきましてもこのことは行われておるというふうに承知をしております。

楢崎委員 三年前に審議されたときに、この証書貸し付けによる返済不能という状況、これが生まれないように営農指導をやると言っておられたことを忘れられないようにしていただきたいと思います。

 営農関係についてはまたやりますけれども、大臣にお伺いしますけれども、この経済事業そのものが慢性的な赤字ですね、生活関連事業も含めて。基本的な改善策というのですか、どういう指導が適切だと思われますか。

亀井国務大臣 多くの農協では、経済事業等の赤字を信用事業あるいは共済事業の収益で補てんしている、こういう状況にあると私も認識をしております。そういう面で、信用や共済事業がなくとも成り立つような経済事業等を早急に確立するということが必要なわけでありまして、信用、共済、経済等の部門別の収支等のデータをより明確にして、これを踏まえて役職員、組合員が議論して、赤字部門の改善方策を決定していくことが重要、このように考えております。

 こういう中で、昨年十月のJAの全国大会で、経済事業の収支均衡を図る、このようなことが決議をされたわけでありますし、昨年十二月にこれを受けまして経済事業改革指針を策定し、経済事業改革の事業目標、財務目標を定めまして、経済事業改革等の実現に向けて取り組んでおります。

 このように、農協系統におきます経済事業改革への取り組みにつきまして、着実にそれが実践されるように私ども適切に指導してまいりたい、このように考えております。

楢崎委員 そこで、全農の十四事業年度決算についてちょっと伺っておきますけれども、事業利益がマイナスで出ていますね、十四億二千万ですね。これは、原因は何だか報告を受けておられますか。

川村政府参考人 今お尋ねのとおり、十四億二千万、事業利益が赤字となっております。

 その要因は、私ども聞き取りましたところ、生産資材、生活用品の需要の低迷、それから低価格商品の普及が進んだということで取扱高総額が減少したというのが一点でございます。それからまた、退職金給付の会計を導入いたしまして事業管理費自体が膨らんだということで、この差し引きで十四億円の赤字を計上することになったというふうに報告を受けております。

楢崎委員 少し経営体質を変えなくちゃいけないと私は思いますよ。

 それで、それでも配当を出したというような話を漏れ聞いたんですけれども、これは事実でしょうか。

川村政府参考人 配当の関係でございますが、これは委員も御案内かもしれませんが、配当には二種類ございまして、事業利用高、事業の扱いに応じました配当、それからもう一つは出資に応じた配当、この二本立てになっております。

 事業利用配当につきましては、事業利益が赤字でございましたので、これについては当然実施をしなかったということでございますが、経常利益におきましては黒字が出たということで出資配当については実施をした、こういうことのようでございます。

楢崎委員 では、出資配当の原資はこの中から出したということですか、経常利益の中から。――そうですか。それでいいです。

 ただ、事実でなかったら事実でないと言っていただきたいんですが、全農と経済連との統合に反対する単協懐柔のために、配当を出すことを約束していたという話が漏れ聞こえてきたんですけれども、そういう事実はありませんか。

川村政府参考人 少なくとも、私どもにはそういう事情は伝わってきておりません。

楢崎委員 わからないということですけれども、言われるところのうわさの、その配当の原資、これは繰り延べ税金資産三十三億七千万円を充てたのではないかと思われているわけですね。これはやはり会計法上も問題がありますので、調査をしてくださいね。よろしいでしょうか。

川村政府参考人 今の御指摘の点につきましては、調査をしたいと思います。

楢崎委員 結果がわかったら報告をしてください。要するに、農林水産省はこの決算書にオーケーを出しているんですね。ですから、正確に調査をされるようにお願いをいたします。

川村政府参考人 農林省としてオーケーを出しているかというお話でございますが、これは法律上も農林省への提出等は義務づけられておりませんし、承認事項にもなっておりませんので、事実上承知をしたということでございます。

楢崎委員 ちょっと今私の言い方が誤解を生みました。報告は受けているということでよろしいですね。(川村政府参考人「事実上」と呼ぶ)はい。

 それで、これは大きな問題ですので、もし事実であればそのときにまた理事会で検討させていただくことになるかもわかりませんので、次に進みます。

 経常利益で大きな黒字が出ていますね。雑収入の百十億円、これは大きいですけれども、中身は何ですか。

川村政府参考人 雑収入は百十億余あるわけでございますが、その内訳といいますか、その主な要因を聞き取っておりますが、一つは、損害保険金受け入れ、協同会社のシステム処理などの事務受託料受け入れ、それから早期退職に備えて積み立てていた未払い金の取り崩し益といったものが主なものということの報告を受けております。

楢崎委員 今お話をお聞きしましても時価会計で黒字を出しているような感じで、やはり農協としての危機的状況は変わらないんじゃないかという感じがいたします。

 次に、共済事業についてお伺いします。

 共済加入というのは、基本的には組合員しか入れない。だけれども、農協法によって保有契約者の二割までが非組合員でも入れる、加入ができるということになっています。そのほかに、出資金を払うか農協に口座を持つことで准組合員になれば共済加入は可能になるわけですね。

 そこで、現在それを構成している員外、組合員以外の構成比率というのはどの程度になっているんですか。

川村政府参考人 共済契約者におきます員外利用率でございますが、全国ベースでございますが、組合員利用に対しまして約一割というふうになっております。

楢崎委員 そこでうなずいていただくだけで結構ですが、それはふえていますか、減っていますか。(川村政府参考人「年によって変動します」と呼ぶ)

 でも、組合員にしても兼業農家が多いと思います。そもそも農業人口が減少している上に高齢者の方も多くなっているわけですね。こういうことを考え合わせますと、今、山あり谷ありと言われるようなしぐさをされましたけれども、契約者全体としてやはり減少傾向にある可能性があるわけでして、どういう対策というか指導をしておられますか。

川村政府参考人 共済事業も農協の事業運営の一環でございますので、基本的には農協系統みずからがいろいろ創意工夫をされまして実行していくべきものと考えておりますが、農協の共済事業、これは農家の営農それから生活の維持、安定、そういう意味でのセーフティーネットとしてやはり十全な機能を発揮していただく必要があると思っております。

 そういう意味では、やはり契約者が減少していくという事態につきましては非常に懸念すべきことでございますので、農協が各事業を通じて培った情報、ノウハウを生かしまして、できるだけ農業者のニーズに即した商品を開発して提供していく、それからまた、事業コストといいますか、事業、組織の不断の見直しによりましてできるだけ効率化を図っていく、それからまた、万一のときに備えた内部留保等の支払い余力を充実していくといったようなことが必要で、これをよくPRしていくこともまた必要だというふうに私どもは考えております。

楢崎委員 今回の法改正では、先ほど堀込委員の質問でも出ましたけれども、ソルベンシーマージンの比率基準を定める。

 三年前の法改正のときには、十一事業年度末におけるマージン比率というのは七二七%で、他の保険会社に比べても遜色はないし、健全性は大丈夫と言っておられたわけですね。十四事業年度末ではこれが七五三%ということで、数字だけ見れば、比率だけ見れば、パーセントだけ見れば十分な支払い余力をあらわしていると思うんですけれども、これは分母となるリスクの見方が甘いということはありませんか。

川村政府参考人 ソルベンシーマージン比率は、分母といたしまして通常の予測を超えるリスクの合計額の二分の一、そして分子といたしましてソルベンシーマージンの総額ということで、資本金でありますとか利益準備金、責任準備金、価格変動準備金、こういうものが分子になります。それで分母は、先ほど言いましたように予測を超えるリスクということの合計額でございますので、共済事故リスク相当額だとか巨大災害リスク相当額、予定利率のリスク、資産運用のリスク、経営管理のリスク、それぞれの具体的なリスクに即しましてきちんとやっておりますので、その点は心配ないというふうに思っております。

楢崎委員 まあ大丈夫だということですのでそれでいいですけれども、JA共済でも高い予定利率時代の契約が満期を迎えているころではないかと思われるんですね。いわゆる逆ざやが大きくなっているのではないですか。現状ではどうでしょうか。

川村政府参考人 この予定利率の関係でございまして、御指摘のとおり逆ざやが拡大をいたしております。

 これは、基礎利益には三利源と、これも御案内のとおりでございますが、費差利益、利差損失、危険差利益とありますが、その中の利差損失でございますが、平成十四年度におきまして五千九百三十億ということで、前年よりもこれが増大しております。ただ、残りの三利源の二つの、費差利益が千九百七十八億、危険差損益が八千五百九十八億ありまして、トータルでは基礎利益として四千六百四十億を確保いたしておりまして、この基礎利益については前年とほぼ同額となっております。

楢崎委員 三年前は、逆ざやの処置というんですか、補てんというんですか、他の事業剰余でやっているという報告を受けたんですけれども、今回はどういう補てんがどういう形で補てんされているのか、報告を受けておられますか。

川村政府参考人 補てんの関係でございます。

 毎年そういう意味で逆ざやは拡大しておりますが、当該年度の他の事業剰余、これは具体的には、先ほど申し上げました費差益、コストの差でございます、見込んだコストよりもコストが少なくて済んだ、それから危険差益ということで、事故率を高く見ていた、高くというか、実際は低くて済んだということでの利益というものがありまして、それを補てんすることによりまして、先ほど申し上げました十四年度は四千六百四十億という基礎利益ということになっております。

楢崎委員 この逆ざやの解消手段として、民間生保では、昨年の保険業法改正で予定利率の引き下げが可能となったんですね。今農協法がそれに続こうとしているんですけれども、我が党の楠田委員が本会議で質問しましたように、農業者に対するしわ寄せも心配されるわけです。

 この予定利率が引き下げられた場合には、契約者に対するデメリットというのはどのように考えておられますか。

川村政府参考人 現時点で予定利率の引き下げを想定しているわけではございませんが、もちろん、これが万が一現実化いたしまして、予定利率を引き下げるような事態になりましたら、この予定利率の引き下げということで、それ以後の金利の部分の運用、そういうものはその利率で想定されるわけでございますので、その分減額されるということのデメリットはあるわけでございます。

 一方、こういうことをやらないことによりまして事業の継続が図れないという事態になりますと、さらなる、それ以上の損失をこうむる可能性もあるということで、事前に、最終的な破綻に至らないように、こういった措置も選択肢として設けていただきたいということでございます。

楢崎委員 次に、全国共済連の財産運用の構成についてお伺いしますけれども、これは、十四事業年度末の数値を見てみますと、運用資産合計が三十九兆七千九十七億円、この中で公社債の占める割合が、これは大きいですね、三十一兆七千二百九十九億円ですか、約八割。これは、三年前は六割だったんですね。まさにますます国と運命をともにするという気持ちが伝わって、それはそれで結構なんですけれども、これによって、長期安定的な利息の配当収益を上げるという目的は達成されておりますか。

川村政府参考人 まさに全共連の資産運用は、それを原資といたしまして共済金の支払いに備えるという意味合いがございます。そして、全共連の行っておりますこの共済は、非常に生命共済等長期のものがございまして、長期間の支払いを約束しているというのが共済の特性といってもいいと思います。

 そういう意味で、より長期的に安定的な利息配当収益を確保するという意味では、現状におきましては、今委員が御指摘ございましたとおり、より安全度の高い国債、地方債、社債というものの運用に重点が移っておりまして、約八割のウエートになっているということでございます。

楢崎委員 貸付金が四兆一千二百八十六億円ですね、大きいですね、これは構成比率の一〇%。この中で、不良債権は発生していませんか。

川村政府参考人 共済の財産運用につきましては、御指摘のとおり貸付金による運用も行っておりますが、その額は、今御指摘ございましたとおりでございまして、資産額の約一〇%ということでございます。

 この貸付金のうちのリスク管理債権の総額、これは平成十四年度末で三百七十一億というふうになっております。総資産に占める割合は〇・一%ということで、経営全体に占める影響は非常に少ないというふうに考えております、小さいと思っております。

楢崎委員 これは戦後間もなく、五一年ですか、民間の保険を農村にも整備する、そういう必要から生まれた共済事業というものなんですね。今や共済という名の生損保とまで言われるように大きくなっているわけですね。それだけに、健全性の確保といいますか、同時に社会的な責任も大きくなっている、そのように思いますし、その自覚を持つ指導をこれからもやっていっていただきたいと思います。

 次に、営農指導事業について伺います。

 これは、農協の合併が進んで大型化してきたわけですね。広域にわたる農協が誕生してきた。その結果、経営のウエートが収益性の高い信用事業と共済事業に傾いて、農協の本来業務である営農指導の弱体が言われてきたわけですね。だから、三年前の農協法の改正では、十条の一項によって、やはり営農指導が大事だ、だからそういうのを一番目に位置づけた経緯があるわけですよ。

 今日においても、この営農指導事業の重要性についてどのように考えておられるのか、また、農協の存在意義の主眼であるこの営農指導というのが適切に行われているのかどうか。どのようにお考えでしょうか。

亀井国務大臣 今委員からも御指摘のとおり、平成十三年の農協法の改正、その中で、営農指導事業を農協の事業の第一番目の位置づけにされたわけでありまして、このことによりまして、組合員の営農活動、この支援がJAの協同組織としての本来の使命であることが明確化されたわけであります。農協系統におきましても、この法改正後、JAにおきます地域農業戦略の策定であるとか、販売企画専任者など人材の確保、育成、これら営農指導に関する取り組みを行ってきておるところであります。

 また、昨年十月にJA大会が開催されまして、営農指導につきまして、すべてのJAで、販売力強化に向けて、マーケティングを志向した販売戦略に基づく生産、供給体制の確立に取り組むことが決議をされておるわけでありまして、全国段階、県段階におきまして経済事業改革本部を設置し、JAを個別指導することによる支援をすることとしておるわけであります。

 このように、十三年の法改正以後、農協系統におきます営農指導の取り組みが強化されていると承知をしております。

楢崎委員 この営農指導員数ですが、平成十一事業年度では一万六千四百十四人だったんですが、これは、今は何人でしょうか、ついでに減っているか、ふえているかも。

川村政府参考人 平成十四事業年度末におきます農協の営農指導員数、これは一万五千五百七十九人でございまして、十一年の一万六千人に比べますと減少をいたしております。

楢崎委員 徐々にではあっても減る傾向にありますし、その営農指導に対する姿勢というものもこれでわかるわけですから、やはり対応方をしっかりお願いしたいと思います。

 先般成立しました改正農業助長法では、普及員活動のよりどころとなってきた普及センター必置規制の廃止や普及事業交付金の削減がその本体でうたわれていたんですね。三年前の審議においては、営農指導事業と普及事業との連携の重要性というのが言われたんですよ。だから、ちょっと法案は違いますけれども、改正農業助長法で言うところの姿勢と矛盾するんじゃないですか。

川村政府参考人 農家への営農指導、これはまさに農協の営農指導員と普及員、この連携が非常に大切であるというふうに思っております。

 先般、改良助長法の改正を御議論いただいたわけでございますが、その中で、確かに、普及センターの必置は廃止をいたしました。しかし、これは、置かなくてもいいという、任意にはなったわけですが、むしろ都道府県の実情に応じて普及の拠点を自由に設定してほしいということでございます。

 これまで各地でもいろいろな取り組みがなされておりまして、それこそ農協と普及が一カ所に事務所を構えまして、そこでワンストップ的なサービスが農家に対してできるといったような取り組みも事実上は始まっておりますので、そういった連携を密にしていただくことが本当に効率的な農業技術の振興というものに私どもはつながるものというふうに考えております。

楢崎委員 了解です。

 法案が違いますので話をもとへ戻しますけれども、大規模農家あたりでは業者やメーカーからいろいろな情報を得ていることが多いわけですね。ですから、結局は、そういう指導員の方々が、農家のニーズにこたえられるだけの実力を持ってあるか、資質の問題ですけれども、そういう問題もあるのではないかと思うんですが、今後、そういう営農指導員も含めた営農指導事業をどのように改善していかれることになるんでしょうか。

川村政府参考人 農協の営農指導員の資質の問題でございます。

 これは改良普及員にも共通するような批判もあるわけでございまして、技術指導の水準が低くてなかなか担い手のレベルには及ばないとか、また、特に最近は、商品情報、マーケット情報、こういうものが非常に重要になっているわけでございますが、農家の知りたい情報がなかなか得られないといったような御批判もあることは事実でございます。

 昨年の農協大会において、まさに販売力の強化に向けた営農指導体制の整備に全JAで取り組むということが決議されております。そしてまた、全中も、この決議を具体化すべく、本年二月に営農指導事業検討委員会というのを設置されておりまして、来月には営農指導事業の強化に向けた今後の方向を取りまとめるということの段取りになっております。私ども農林省もこれにオブザーバー的な参加をいたしまして、協調のもとに、しっかりした営農指導体制ができるように適切に指導してまいりたいと思っております。

楢崎委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、大臣、三年前の改正とあわせて、この法律でJA改革ができると自信を持ってお答えになれるでしょうか、お伺いします。

亀井国務大臣 今御指摘いただいたとおり、三年前の信用事業改革、そしてさらに今回の改革、これは、先ほど来何回か申し上げておりますとおり、昨年十月、JAの全国大会で経済事業改革の断行を決議されたわけであります。そういう面で、農協改革は、法改正だけでなく、みずからが決定した改革、これを実践していくことが基本、私はこのように考えております。

 ぜひそういう面で、前回の改正とあわせて、今回の改正によりまして農協の改革が進むことを大きく期待しておる次第であります。

楢崎委員 終わります。

高木委員長 次に、白保台一君。

白保委員 さまざまな御意見があり、また非常に大事な指摘等もございました。私は、大変時間が限られておりますので、基本的なことを幾つかポイントを絞ってお聞きしていきたい、こういうふうに思っています。

 まず一点目は、農協改革の基本的な考え方、これについてお伺いしたいと思います。

 制度が発足して五十数年が経過した今日、社会のあり方、そしてまた農業をめぐる状況も非常に変わってまいりました。そういった中で、ここ数年というのは、さまざまな事案があって、WTOやFTAとかさまざまなことがあって、また、国民の食に対する安全だとか安心だとか、そういう要求からも見られるように、我が国の農業の直面する課題というのは非常に大きなものがあり、また問われているんだろう、こういうふうに思います。

 そしてまた国民、すなわちまた消費者の目線、これを尊重したこれまでの議論の中でも、消費者の立場に立った議論というものを相当多くなされてまいりましたから、そういう新たな視点での農政の展開の中で、小規模の農家というのがついていくのも非常に大変なそういう時代でもあるのではないかな、こういうふうに思います。

 しかし、こういった農家をつないできたのが、その存在が農協であったことも事実であります。しかし、収益力を誇ってきたような信用事業、共済事業にも陰りが目立ち始めて、農協の系統全体の収支構造が非常に厳しくなってきている、こういう状況が事実であります。それで、経済事業の改革によるそういう収支改善を求める声も当然あります。これはしかし、民間の経済活動そのものであって、本来、主体的に取り組んでいかなきゃならない、そういった問題なんだろうと思います。

 そこで、今回の改正において経済事業の諸改革を盛り込んでおりますが、そういう問題を、農協改革の基本理念と農政、行政とのかかわり、これについて大臣はどのような御所見をお持ちなのか、まずそのことについてお伺いをしておきたいと思います。

亀井国務大臣 農協改革、これは、先ほど来申し上げておりますとおり、平成十一年の食料・農業・農村基本計画の制定を受けまして、十三年の農協法の一部改正、信用事業の分野におきます一定の成果を上げておるわけでもあります。

 しかし、経済事業につきましての改革がおくれている、組合員からも、農協を利用するメリットに乏しい、こういう指摘を受けておるわけでありまして、こうした指摘を踏まえまして、昨年十月の二十三回JA全国大会、その中で、安全、安心な農産物の提供と地域農業の振興、組合員の負託にこたえる経済事業改革、経営の健全性あるいは高度化への取り組みの強化、また、協同活動の強化による組織基盤の拡充と地域の活性化、この四点を重点事項として、農協改革に組織を挙げて取り組んでいくことを決議されたわけであります。

 委員からも御指摘のとおり、我が国農業、農村を取り巻く情勢というのは大変変化をしておるわけであります。その中で、食の安全、安心の確保に対する関心の高まり、あるいは農村地域の高齢化の問題、あるいは耕作放棄地の増加、あるいはグローバル化の進展等、大きく変化をしておるわけでありまして、農業構造の改革は一層加速化が求められておるわけであります。

 そういう中で、我が省といたしましても、構造転換支援施策の重点化、集中化、米政策の改革、食の安全、安心への取り組みの強化、あるいは農政全般の改革に取り組んでいるところであります。

 そういう面で、農協系統の組織におきまして、やはり地域農業の司令塔として、これらの課題に対しまして主体的に取り組むことが農協系統組織に期待をされるわけでありまして、農協改革を進めることが、食料の自給率の向上や農業の体質の強化、あるいは豊かな農村の形成、こういうものに資するわけであります。

 この農業の構造改革を加速化し、そして意欲ある経営体が躍進する環境条件、これをつくり出すために実行すべき施策の一つとして、この農協法の改正を位置づけているところであります。

白保委員 確かに、改革というのは農政においても決して避けて通れる問題ではありませんし、また、今、食料・農業・農村基本計画の見直し、来年の三月までの中で大きな改革が迫られている。しかし、競争力をつけて自立をしていかなきゃならない、こういったことも非常に大きな課題でありますし、我々も、そのことについてはしっかりと取り組んでいかなきゃならない課題であるな、こういうふうに考えているところであります。

 そして、次にお伺いしたいのは、正組合員資格の問題であります。

 JAの総組合員戸数は七百七十万戸、そのうち正組合員が四百四十九万五千九百二十二戸である、こういうふうに平成十四年度現在の数字が出ています。日本の農家戸数は、平成十四年で三百三万戸ということでありまして、およそ百四十万戸の差がある。

 これは、農業経営基盤強化促進法などで、離農した後も正組合員資格を保障される場合や、JAの定款に定める農家と定義が違うなどのそれぞれの理由によるのかもしれませんが、この百四十五万というのは決して小さな数字ではない。出資者であったり利用者であり運営者である正組合員、すなわち本来の農業者の声がこういう形の中で反映されていくのかどうか、こういうことが思われます。

 離農した場合に正組合員としての資格を喪失するのは、JA組織の根幹をなす正組合員のルールであることから当然のことなんですが、正組合員としてのメリットを享受するために違反状態のケースが多々あるんではないか、こういうふうなことも言われています。

 そこで、農業者の相互扶助という基本に忠実な運営を確保するためにも、この点を精査し、改めるべきではないかという声がありますが、所見を伺いたい。

川村政府参考人 今委員のお尋ねにありました農家戸数、これは農業構造動態調査の結果と農協の正組合員の戸数が大幅に異なるという御指摘でございまして、またその原因も、御指摘いただきましたとおり、農家の定義が組合員資格と構造動態調査で異なること、それから、基盤強化法におきまして、引き続き正会員資格を特例として認めているといったような事態が原因になっているのでございます。

 確かに、正組合員というのは、組合の管理運営に参画する権利を有する者でございまして、役員の選挙権でありますとか総会の議決権、こういうものを持っているわけでございますので、農協のまさに健全な運営を確保していくという上からは、この点は的確に対応していく必要があるということだというふうに我々も認識しております。

 この点に関しまして、事務ガイドラインを出して、これで指導しておりますが、一年に一回以上は定期的に確認をし、適切な加入がなされるようということでの指導をいたしているところでございまして、この点のチェックは十分に行われるべきものというふうに考えているところでございます。

白保委員 危惧することはないということなんだろうと思いますが、そういう声があるということはしっかりと受けとめて運営をしていかなきゃならないんではないかな、こういうふうに思います。

 そこで、次の問題は、員外利用規制について伺います。

 農協の事業は、組合員への最大奉仕を基本とするものであり、本来、組合員に限って利用が認められるべきであり、その上での特例を設けている。したがって、農協法で、組合員以外の利用を原則事業量の二〇%、あるいは貸し付けや預金、手形割引は二五%以内、こういうふうにしていることは当然のことであろうと思います。今回の改正では、販売事業に関しては員外規制の例外を設ける手続を定めております。直売事業への効果があるのではないかという期待をしているところであります。

 ところで、員外利用規制を遵守させるためにどのような対策をとっているのか、この点をお伺いしたいと思います。

川村政府参考人 員外利用規制の関係でございます。

 農協におきまして員外利用規制に違反している事例がある場合には、一義的には都道府県知事が指導を行うという仕組みになっております。農林水産省といたしましても、この員外利用の状況を常に正確に把握するとともに、これを適正に管理する必要があるということで、平成十五年三月三十一日付で、この指導のガイドラインとなっております事務ガイドライン、この一部改正を行ったわけでございまして、員外利用状況の把握、それから、制限の遵守につきまして指導の徹底ということを行っております。

 農協系統自身におきましても、JAの事業は、御指摘もございましたとおり、基本的には組合員のためのものでございます。員外利用の把握と規制の遵守は当然に行われるべきものと認識をして、そして、正確に員外利用状況を把握できるような電算システム、こういったものの開発、それから本人確認の取り組み、員外利用の割合の適正把握、制限厳守の徹底に向けた取り組みを始めたところでございます。

 農林省といたしましても、こういった農協系統の自主的な取り組みを加速させまして、員外利用状況の適切な把握、それから遵守につきまして、指導の徹底をさらに行ってまいりたいと思っております。

白保委員 ちょっと関連しまして、把握という話ですが、これまでの結果として、何かきっちりとした把握したものがあるんですか。

川村政府参考人 率直に申し上げまして、これまでなかなかすべてが把握できる体制にはなっておらなかったわけでございますが、総合規制改革会議等でもいろいろ御議論があったので、農水省でサンプル調査等をした経緯はございます。

白保委員 次の問題についてお伺いしたいのは、准組合員制度について、その准組合員数の比率が高まる傾向にあります。准組合員には員外利用規制は適用されずに、法人、個人を問わず、准組合員になることは比較的容易である。その上、一昨年の改正で、住所要件が緩和されてまいりました。しかし、第三次答申では、「正組合員のメリットの最大化につながらない制度運用がなされる可能性がある」との指摘がありますが、准組合員数が増加している中で、今後の准組合員制度の方向性についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

川村政府参考人 准組合員制度でございます。

 これは、農村に居住している農家でない個人あるいは農民の団体が農協の准組合員になれるということになっておりまして、こういう方々が准組合員になれませんと、員外利用で認められる範囲でしか組合の事業を利用できない、こういうことになりまして、これはそういう本人にとっても非常に不便でありますし、農協は地域の経済主体という側面も持っておりますし、特に農村部、純農村部になればなるほどそういう色合いが強いわけでございますので、この事業運営を安定させる見地からも、できるだけ事業分量を増大するということで、これらの方々につきまして、組合の事業を組合員として利用できるような道を開こうという趣旨から設けられております。

 近年、この准組合員の割合が徐々に大きくなってきている状況にございます。これは、農家数が減少する、それに伴いまして正組合員が減少しますけれども、各農協がその地域住民の准組合員加入を促進するという動きがあるということを反映しているというふうに考えております。

 ただ、農協の組合員のその趣旨を考えますと、組合員の主体は基本的にはやはり農業者ということでございますので、むやみに准組合員をふやすということは必ずしも好ましいことではないと考えておりますので、そういった准組合員のある程度の確保ということは当然必要ではございますけれども、正組合員のメリットが損なわれることのないような指導というのはしてまいりたいというふうに思っております。

白保委員 次に、農協の協同会社の規制の問題について伺います。

 現行法の規定では、農協が協同会社をつくることは、金融業を除き比較的容易にできる。この協同会社は員外利用規制はありません。どのような会社を設立するかといえば、信用事業に関連をした電算センターや共済事業関連の調査会社など、専門化するパターンと、合理化、効率化を図るため、赤字のガソリンスタンドとか販売業務、生活関連の店舗を会社組織にするパターンに大別されているようであります。

 これらの協同会社の経営実態を農協はきちんと把握し、農協との適正なつながりを維持しなければならないと思いますし、それができなければ農協本体の理念を不健全な形に陥れるんじゃないかと思います。農協改革において、不採算部門の分社化を安易に行うことはできないと思いますけれども、御所見を伺いたいと思います。

川村政府参考人 協同会社の問題でございます。

 協同会社は、各JAの事業活動の合理化等を図るという観点から、JA本体の補完的業務を行うという観点で運営をされております。その設立につきましては、協同会社としての設立の必要性、それから、健全な経営が可能かどうかを十分協議してもらって、その結果として、JAの総会等において設立承認が得られるという手続になっているところでございます。

 基本的には、この協同会社につきましては行政は関与しておりませんが、ただ、信用事業等におきましては、やはり規制の脱法的なしり抜け等が行われないようにという観点から、設立認可、届け出、そういうものがございます。

 この協同会社、今申し上げましたような適正な手続によってされるべきでございますが、御指摘のように、安易に赤字のツケ回し的な会社を設立するといったようなことでは、当然これはだめなわけでございますので、やはりこれは、そういうJA本体の経営をしっかり補佐していくといいますか、補完していく、そういう観点から適正な運営管理、こういうものが行われるように、JA自身もそういう意識で取り組んでもらいたいと思っておりますし、我々もそういう観点から指導監督を行っていきたいと思っております。

白保委員 なかなか厳しいものがあるわけですから、そういう面で私は質問いたしました。

 最後に、非JA型農協の促進について伺いますが、平成十三年の法改正によって、一定要件のもと、一地域に複数の農協が存在することが可能になりました。重複して設立した事例は余りないそうでありますけれども、地区を重複して複数の農協が設立されることは、相互の競争原理があって組合員のサービス向上が期待できるということで、またいいことだと思います。また、組合員にとっても、利用の選択肢が広がるメリットがあるはずであります。最終的には農協の健全な発展につながれば一番いい、こういうふうに思います。

 そういう観点からすれば、農協法六十条の、重複する場合の認可に当たっては、行政庁は関係市町村及び関係農業協同組合中央会と協議しなければならないとの規定は、これは見直してもいいのではないかというふうにも考えます。

 JAの重複や非JA型農協設立は、さらに周知、促進されるべきだと思いますが、どのようなメリット、デメリットがあるのか、お考えを伺いたいと思います。

川村政府参考人 非JA型農協、いわゆる専門農協、それからゾーニングといいますか、地区が重複する農協、そういう設立は、現行規定上可能になっておるところでございます。こういう農協ができるということによりまして、委員もくしくも質問の中で御指摘がございましたように、組合相互間の適正な競争によりますサービスの質の向上、それから、隣接組合が異なります共同利用施設を所有している場合には、隣接地区の農民が当該施設の組合員として利用ができるといった等のメリットもあるわけでございます。この関係につきましては、これも委員の御質問の中にありました、関係市町村あるいは中央会の協議ということが義務づけられております。

 この点を見直すべきではないかという御質問でございますが、この規定は平成十四年から施行されて、まだ間もないということもございます。それから、JAの規模や事業内容が既存のJAとの併存から見て組合員にメリットがあるかどうかを判断する上では重要な手段となっておりまして、現時点で判断いたしますと、この協議の義務づけは、当面ちょっと見直すことは必ずしも適切ではないんじゃないかというふうに思っているところでございます。

白保委員 終わります。

高木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、農協法の質疑に先駆けまして、お許しをいただきまして、今月十一日に亀井農水大臣が表明した諫早干拓の中長期開門調査を実施しないという発言に関しまして質問させていただきたいと思います。

 よみがえれ!有明海訴訟弁護団が、同日のうちに「今回の農水省の対応は言語道断であり、強い憤りを覚えざるをえない。」と抗議声明を出しておりますが、この問題を一貫して取り上げてきた日本共産党として、断固抗議をしたいと思うものであります。

 御承知のように、中長期開門調査については、二〇〇一年、ノリ不作等第三者委員会が、「諫早湾干拓事業は重要な環境要因である流動および負荷を変化させ、諫早湾のみならず有明海全体の環境に影響を与えていると想定され、また、開門調査はその影響の検証に役立つと考えられる。現実的な第一段階として二カ月程度、次の段階として半年程度、さらにそれらの結果の検討をふまえての数年の、開門調査が望まれる。」と提言をしました。これを受け、熊本、福岡、佐賀の県議会では開門調査を求める意見書が決議をされ、その後の周辺自治体は、私が把握しているだけでも三十四の市町村から意見書が上がっております。

 当日の西日本新聞の夕刊には「官僚のシナリオ通り 憤る地元漁業者」という見出しが躍っておりまして、「十分な説明がなく、判断したのは誠に残念」という佐賀県知事や、「漁業者に誠意をもって説明していただきたい」という熊本県知事、「突然の発表に驚いている」という福岡県の副知事のコメントなどを報道しております。しかも、大臣自身が先ほど楢崎委員に述べたとおり、発表の直前には、福岡、熊本、佐賀の県議会、そして県の漁連の代表者が上京し、開門調査の実施を求めたばかりというではありませんか。

 大臣は、こうした地元の声をどう受けとめているのか、伺いたいと思います。

亀井国務大臣 今回の判断につきましては、今までの経緯、そして私自身も、有明の再生、これをどうするか、これは漁業者の皆さん方、地域の皆さん方と同じ気持ちであるわけでありまして、一日も早い有明の再生、この道筋をどうするか、こういう視点、そして技術検討会議、その報告書、あるいはまた、私も現地に参りましたし、あるいはまた、いろいろの団体の皆さん方からもお話を承り、我が省の関係者にもいろいろの指示をし、意見も聞き、そして総合的に判断をし、一日も早い有明の再生、そういう面での道筋をぜひ、地元の皆さん方の、今回お示しをしておりますような調査、あるいはまた一緒にいろいろ話し合いをする場、そういう中で有明の再生ができるように、私はこのように考えております。

高橋委員 一日も早い有明の再生と、思いは同じだという大臣のお話ですけれども、そのために漁業者の皆さんが望んでいるのは何なのか、それにこたえる政府の方針なのかということが問われていると思うんですね。

 実は私、ことしの二月に、ノリ漁の最盛期とも言えるころだと思いますが、諫早湾に行ってまいりました。佐賀から船に乗せてもらいまして、ノリの漁場も見てまいりました。まだこの辺はいいところだというところと二カ所行ったんですけれども、全然違いがわかって、素人目から見ても色落ちしているのがわかりました。

 案内してくださった漁師の方は入札の台帳を直接持参をして、この数字を見せてくださって、全く値がつかない、ここも、ここもという形で示してくださいました。一枚二十円ないと採算がとれないところが、調子のよいときは三十円のときもあった、でも今は三円から十二円程度だ、そういうことが訴えられたわけです。

 また、会場を移して福岡で漁業者の皆さんと懇談したときは、ノリ漁場一小間につき七十万から八十万必要だけれども、ことしは五十万だ、もう網は引き揚げてしまった、以前は風が吹いてもよかったけれども、諫早からのプランクトンのせいで色落ちがするんだ、もう漁業をやめざるを得ない、そういうせっぱ詰まった声がこもごも聞かれ、中長期の開門調査こそが有明再生の道だと訴えられているわけです。

 そこで、きのう、大臣の、漁業者の皆さんへというコメントが寄せられておりますが、それを見ますと、有明海のノリ漁を含めた漁業環境に影響を及ぼす可能性があることがわかったとして、調査を行うことにより新たな被害を生じるような事態は避けたい、それが一番の理由に上っているわけですね。

 漁業被害が最大の理由になっている。漁業者がやってくれと言っているのに、それが理由になっている。これは一体どういうことなのか、具体的にその被害の中身、お願いいたします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 諫早湾の湾奥部でございますが、潮の満ち引きの差が大きくて、約六メーターにも及びます。約七キロメーターの幅で、以前はゆったりと潮の満ち引きが行われておりましたが、潮受け堤防が設置され、その二カ所に二百五十メーターの排水門、これを備えた現在の状況でこれを常時開放いたしますと、鳴門の渦潮に匹敵する速い流れをこの排水門の周辺近くに毎日二回起こすことになります。

 短期の開門調査では、すぐにでも調査にかかれるように排水門の開く幅を調整いたしまして、この速い流れが起きないように調査いたしましたけれども、ノリ不作等第三者委員会では、開門はできるだけ長く大きいことが望ましいと言われておりますし、また四月三十日にいただいた漁業者からの要望でも、調査に当たっては大きな水位変動を伴うようにすることとあることから、中長期開門調査では常時大きく水門をあけることとなり、必然的に極めて速い流れが生じるわけであります。

 そういたしますと、この強い流れによりまして、まず排水門をあけた際に水を調整池の中に入れるわけですけれども、この強い勢いで流れ込む海水によりまして調整池の中の潟土がえぐられ、この潟土が調整池内に広がります。次に、干潮になりますと、この大量の潟土がまざった水が逆に調整池から諫早湾に向かって強い勢いで流れ出し、排水門の外側の潟土をえぐりながら湾内に広がっていく。これを繰り返しながら諫早湾外にまで広がり、三十日後には熊本沖にまで接近するという結果が得られております。これによって、私どもは、有明海の漁業等に大きな影響を及ぼすことを懸念いたしておるわけでございます。

 このために、海底の潟土がえぐられやすい範囲の海底にブロックなどを敷き詰めるということで対応することを検討いたしましたが、それでも排水門を出入りする水の流れの速さそのものは遅くなるわけではなくて、漁業環境に予期し得ない影響を及ぼすおそれがあるということでございます。

 ちなみに、潮受け堤防を締め切る前でございますけれども、北部、南部排水門の幅二百五十メーターの五倍近い千二百メーターの幅から海水が出入りしていた時期がございました。そのとき、中長期開門調査で行う速さの半分以下の流速にもかかわらず、諫早湾沿岸部のアサリ漁場に被害があったという過去の事実を考えれば、常時開門によります諫早湾内の潮流の大きな変化は、安定してまいりました諫早湾内、ひいては有明海の漁業環境に予期し得ない影響を及ぼすおそれがあるというふうに考えたところでございます。

高橋委員 その鳴門の渦潮よりも速い潮の流れの問題は、そもそも潮受け堤防七千メートルの中で排水門が二百五十メートルという幅だ、だからその中で一気にそこに流れ込むということで速くなるという説明なわけでしょう。それは、それをつくってしまった側の論理であって、だから、その潮受け堤防に対して意見を上げていて、そういう被害があったとしてもやってみてくれという漁業者の声にどうこたえるのかということが言いたいわけなんですよ。

 それで、短期開門調査を始めるときに、農水省は「皆様の疑問や懸念にお答えします」という冊子をつくって説明をしております。例えば、海水導入が進むにつれて海水による希釈や塩分による凝集効果で排水による影響は小さくなる、そうやって説明をしているわけですね。

 それについて、元中央水産研究所室長の佐々木克之氏が、「実際に短期開門調査を実施した結果、観測値は、浮泥の濃度を示す値が開門直後に高く、一週間もすると低くなっており、農水省予測は正確だった」と評価をしており、影響も小さいことが農水省の観測結果からも明らかにされているわけですね。

 だから、農水省は、最小限に食いとめる、そういう調査をすることが実際にはできるし、短期調査でも一たんそういうことができたわけですよね。その中での一定の効果があったと思うわけですね。だから、そうしたことを最小限に食いとめながら、中長期の開門調査をやるということも検討できるのではないか、ここをお伺いします。

太田政府参考人 短期開門調査当時の関係者への説明は、ともかく、先ほど申しました、流速を最低限に抑えて、そっと入れてそっと出す、そういう方法をとったわけでございます。

 今回の調査については、最初、いかにそっとあけたとしても、ある時期にその最大流速に到達するわけでございますので、そういった意味で、この流速そのものを抑えるということは、調査の方法としてできないということを高橋先生には御理解を賜りたいというふうに思います。

高橋委員 ですから、そっと入れるのを少しずつやって、中長期にやったらどうだと。それから、コンピューターによるシミュレーションではなくて、実測データと比較してこそ本当の意味の調査じゃないのかということが科学者からも指摘をされているわけですよね。そのことは今指摘をしておきます、時間がないので。

 次に、一方、中長期開門調査には十年もかかる、成果が必ずしも明らかでないということが言われているわけですよね。これは先ほど楢崎委員も指摘したように、第三者委員会の後、これを解散させて、農水省と旧建設省のOB七名でつくった中・長期開門調査検討会議が報告を出して、席上、開門調査するには六百三十億かかるという試算を示した。金もかかるし時間もかかると。もう最初から、だったらできないと。いいだけ開発を進めて、約二千五百億も使って開発を進めておいて、調査にはお金がかかると。そういうのはおかしいわけですよね。

 ただ、その指摘が生きたんですか。今回の大臣の報告には数字は出てきませんけれども、今でも六百三十億と思っているんですか。

太田政府参考人 調査を実施すれば幾らかかるか、六百三十億という話でございますけれども、この試算でございますけれども、排水門を全開した状態につきまして概算した結果でございます。

 ノリ不作等第三者委員会の見解では、できるだけ大きく長い開門が望ましいとされ、また、先ほど申しましたように、漁業関係者からも、大きな水位変動を伴うようにと要望されております。

 この場合、排水門を小さくあけて穏やかな流れで行った短期の開門調査とは異なりまして、非常に速い流れで海底の潟土がえぐられ、漁業等に影響を及ぼすことが懸念されますので、潟土がえぐられやすくなる流速、約一・六メーターと言われておりますので、毎秒一・六メートルを超える範囲、つまり、百五十万平方メートルの範囲の水中に大きなコンクリートブロックや石の塊を敷き詰めるという工事を行うために必要な費用を算定いたしまして、まず四百二十億円と見積もったわけでございます。

 また、諫早湾などの背後地の排水につきまして、現在、調整池の水位をマイナス一メートルに管理しております。この現状と同じ安全性を確保するために必要な排水ポンプの規模、これを排水量で毎秒、合計で百五十五立方メートルとなりまして、これは費用を十四施設を合計して約二百億円と見積もったわけでございます。その他若干の費用を加えまして、六百三十億となっております。

 なお、事前の環境影響評価や設計につきましてはこの費用に含めておりませんし、また、さらには、調整池内の塩水化のように、代替水源の確保ができず有効な対策を講ずることができないようなものも同様に費用に含めておらない事情にございます。

高橋委員 では、今のお答えですと、六百三十億は生きているということですね。この根拠についてはまだ不明であるし、そんなにかかるはずはないという意見があるということをまず指摘しておきます。きょうは、そこは言わないけれども。

 ただ、仮に中長期にお金がかかったとしても、しかし、これからずっとかかっていく漁業の被害、これまでに生じた被害に比べたらそれは小さいものじゃないか、漁業者の立場に立ったら、そういうことが言えるんじゃないですか。

 では、代替策をやると発表しましたよね。例えば、環境変化の仕組みのさらなる解明を行う調査と言っていますね。貧酸素現象の一斉観測だとか赤潮の観測だとか、あるいは改善のために湧昇流施設を設けるだとか、これが、予算は三年ですけれども、では、一体どのくらい代替策にお金がかかるんですか。

 それから、これはあくまでも現地実証であって、これから先の本当の再生に向かったら三年じゃないですよね。一体何年かかるんですか。具体的に答えてください。――大臣に聞いています。済みません、これは通告してありますので、大臣にお願いします。

亀井国務大臣 有明海の再生への道筋を明らかにすること自体、これは必要と考えております。中長期開門調査にかわる方策として、有明海の環境変化の仕組みのさらなる解明のための調査、有明海の環境改善のための現地実証及び調整池の水質対策を進めていくとの判断をこの間行ったわけであります。これらの取り組みにつきまして、今年度直ちに取り組むことができるものを中心に調査の内容などを示しており、来月にもその取り組みを開始することと考えております。

 なお、今回示した内容は、農水省の方からの提案と考えておりますとおり、今後、漁業者の皆さんの意見などを踏まえまして、平成十七年度の概算要求においてその内容の充実を積極的に図ってまいりたい。また、これらの方策の期間は、今年度から三年間を目途と考えておるわけでありまして、現時点でその規模などを固定的にとらえるということは適当ではないと考えております。

 しかし、漁業者の皆様の思いをできるだけ受けた方策となりますよう、いわゆる新たな話し合いの場を早急に設置する。そして、漁業者側の皆さん方からのいろいろのお考え、こういうものも話し合いの場でいろいろ伺って、そしてその対応を図ってまいりたい、このように考えております。

高橋委員 一切お答えがないわけですね。

 それは十七年度の要求だというお話ですけれども、しかし、一方では、中長期には六百三十億かかるという数字がひとり歩きして、一方では一切わからないと。漁業者と話し合いをすると言ったって、話し合いになりませんよ。全然具体的じゃないじゃないですか。それはもっと明確にして、その上で判断をするようにしてください。

 それで、私、あわせてどうしてもこれは聞いておきたいんですけれども、今回の調査の中身、代替策の調査の中身で、水質や赤潮や貧酸素現象の一斉観測、例えば有明海全域を七十ブロックに区切って漁船を使って一斉観測するなど、幾つかの観測をやると言っていますね、底質も調べるなど。その中で、もしも、やはりこれは干拓事業と何らかの関係があるよという結論が出たときは、工事を中止することはありますか。

亀井国務大臣 今、前段のお話の、いろいろの調査、それはそれぞれいろいろ調査手法等々もあるわけでありまして、それらに基づきましてその予算措置も変わってくるわけであります。

 この調査によって、私どもは、この環境の変化のさらなる解明のための調査を新たに行っても、諫早湾干拓事業が有明海の環境に大きな影響を与えることになるとは考えておらないわけであります。これまでの調査では、潮受け堤防による締め切りの影響は、諫早湾周辺海域にとどまっているとの結果を得ておりまして、環境の変化のさらなる解明のための調査を新たに行っても、先ほども申し上げましたとおり、諫早湾干拓事業が有明海の環境に大きな影響を与えることになるとは考えておりませんので、先ほどの、中止をする、こういうようなことでの御質問でありますけれども、今回のこのような考え方のもとに、有明海の再生への道筋を明らかにしてまいりたい、このように考えております。

高橋委員 済みません、時間になりました。

 調査をやる前に影響がないとわかっている、結果がわかっている調査、そういうのは調査と呼ばないと思います。漁業者が納得できるはずがない。納得できるような調査をし話し合いをし、再検討をしてくださることを求めます。

 きょう、農協法の問題で通告をしておりましたが、時間の関係でできなくなってしまいました。申しわけありません。来週、必ず質問したいと思います。終わります。

高木委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本であります。私も農協の正組合員でありますので、農協法の一部改正案について質問いたします。

 今、基本計画の見直しということが進められていますけれども、農業を取り巻く環境というのは大変厳しくなっておるわけでございます。先ほどから言われておりますように、WTOあるいはFTAの国際的な問題、さらには、国内においても、後継者不足あるいは高齢化、そして耕作放棄地の増大というふうな状況であります。

 こういった深刻な状態の中で農家の経営環境が厳しくなっているわけでありますから、これを相手にする農協の経営環境というのも、これは厳しくなるのは当然なことではないのか。食管制度があったころは、米の流通ということにおいても農協の占める位置は極めて高かったわけでございます。ところが、今の米政策改革ということで、今の米の生産量、半分が計画外流通米ということで、農協の占める位置というのも大きく低下をしてきているというふうに思います。

 それから、農協の組合員、多くが小規模の農家ということだったわけですが、今度の基本計画の見直しという中で、プロ農家の育成でありますとか、あるいは担い手への集積ということで進めていく方向でございますが、大規模農家の場合は、農協に対する依存度というのは低い傾向にあります。

 ですから、今後、農業の構造改革を進めていくということの中にあって、農協のあり方というものをどういうふうに考えているのか、お伺いします。

亀井国務大臣 今後の農政の改革の推進、それには、やる気と能力のある農家の経営や地域の取り組みを後押しし、消費者あるいはまた生活者の視点を重視した農林水産政策を目指し、スピード感を持って各種の農政改革を進めることが重要、このように認識をいたしております。

 そういう中で、農業をめぐる情勢の変化を踏まえまして、食料・農業・農村政策審議会におきまして、担い手の経営に着目をした品目横断的な政策への移行等について今議論をしていただいておるところでもございます。

 農政改革、これはやはり地域農業の拠点としての重要な役割を担っている農協の改革なくしては実現が困難であるわけであります。そういうような意味合いにおきましても、農政改革の一環として、今回の農協改革に取り組むことによりまして、農業の構造改革が加速化され、そして意欲ある経営体が展望する環境条件、こういうものをつくり出すことになるもの、このように認識をいたしております。

山本(喜)委員 農業全体の底上げをどう図っていくのかということがないとやはり農協自身の経営もうまくいかないというのは、これは当然のことだと思いますので、そういう意味での農業全体の底上げということを図る政策の展開を、この基本計画の見直しの中でもぜひ進めていただきたいというふうに思います。

 それから、農協のあり方についての研究会報告、この中で、行政運営における農協系統とそれ以外の生産者団体とのイコールフッティングの確立、あるいは農協系統の行政代行的業務の見直し、それから、補助金等の施策面での公正の確保というようなことが言われていますが、今日まで農政の遂行に果たしてきた農協の役割ということについてはどのように考えているのか、お伺いします。

金田副大臣 生産者の協同団体であります農協さん、そして農林水産省、そして国、立法府、そういった関係の中で農政を今まで展開してまいりました。その成果というのは一定程度あったわけでございますが、逆に、こういった体系の中で、農協自身に対する批判、そういったもの、あるいは自己努力が欠けていたのではないのかといったようなことがあったわけでございまして、そういった自主的な努力だとか、いろいろな改革に対する取り組みを妨げてきたというような反省点がございます。

 やはり農協本来の目的というのは、農協の組合員の所得の確保、それから経済的な自立と申しますか、所得の確保についての農協本来の努力、そういったものが意外と、もっとしっかりやっていただきたいというようなことでございます。

 そういった中で、農協自身が、みずからの改革としてそういったことを、昨年、二十三回の全国大会で決議いたしまして、みずからそういった改革を断行していくという決意を示しておりますので、一緒になって農政の展開にしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えております。

山本(喜)委員 このあり方研究会の報告で言っている中身、具体的なことでお伺いしたいんですけれども、行政代行的業務の見直しということであれば、どんなことが今考えられているのか。具体的なイメージについて、大体こういう方向でいくということであればお聞かせ願いたいと思います。

川村政府参考人 一例を申し上げますと、補助事業の補助対象としまして、農協のみを対象にしているような事業もこれまではあったところでございます。つまり、農協の事業実施に全面的に依存をしているというような状況がございました。

 そういったこともございまして、広く、農協と行政の関係もそうでございますが、農協と他の事業主体との関係もやはりイコールフッティングをする必要があるということで、昨年度、補助事業全般の見直しをいたしまして、十六年度、今年度からは、補助事業につきまして、農協のみを事業主体とするような補助事業はやめたということで、機会としては他の事業者も参加できるような、一つ具体例を言えば、米対策、かつては全農がいろいろな事業主体になっておりましたけれども、これを改めまして、いろいろな関係団体が入った協議会といったものをつくってもらって、それが事業実施主体になるといったようなことも始めているということでございます。

山本(喜)委員 次に、農協の合併の件でありますけれども、現在、かなり広域合併が進んでおりまして、農協の数が九百四というふうな状況になっております。しかしながら、合併自体は経営基盤の強化ということで、これはこれで結構なことだと思うんですが、その一方で弊害も指摘されているわけです。組織が大きくなり過ぎたということでの組織運営の難しさとか、あるいは農協が遠い存在になったというような、組合員の農協離れということも指摘されているわけですが、今後の改革の中で、合併に伴う弊害をどういうふうに克服していこうとしているのか、その考え方をお伺いします。

川村政府参考人 御指摘のとおり、農協の広域合併が進行してございまして、この合併によりまして、事業基盤の強化でありますとか人材の確保、あるいは施設の統廃合によりましてコストの引き下げ、いろいろメリットもあるわけでございます。一方、御指摘ございましたとおり、広域合併が進展することによって、農協と組合員との結びつきが希薄化をする、あるいは営農指導体制が弱体化しているといったような御指摘があることもまた事実でございます。

 こういったデメリット的な側面、こういうものを解消していかなくてはならないわけでございまして、例えば、農協系統におきまして、適切な支所の配置、また組合員の日常活動に対応した支所機能の充実ということで相談機能の充実をする、また、多様な組合員ニーズが把握できますように、共通の意識を持った組合員が集まった組織を育成強化する、端的に言いますと、作物別の生産部会といったもの、あるいは青年部、女性部、こういったものもあろうかと思いますが、そういう活動の単位となるような組織を強力に養成していくといったようなことによりまして、非常に機動的な組織、意見の反映をしていく体制というものが、工夫はできるだろうというふうに思っているところでございます。

 そういう取り組みを、今後、行政としての指導をしてまいりたいと思っております。

山本(喜)委員 この合併が進む中で、単協当たりの営農指導員の数というのはふえているというふうな状況もあるんですが、しかし、広域化していますから、組合員当たりの営農指導というのはやはり減っていく傾向にあるわけですよ。

 営農指導というのは農協の原点というふうに言われておるわけですが、総体的に営農指導が減っているという状況。今の営農指導というのは、生産指導だけじゃなくて、市場にも出向いて、消費者の動向を、あるいはニーズというのをつかみながら、それをさらに生産指導に生かしていくというふうなやり方になっているわけですね。そうした意味での営農活動の一層の強化ということが必要ですし、あるいは、これから新規農業者の育成ということもあるわけです。

 そうした意味で、今後の営農指導のあり方ということについて、政府の側からの支援策というものがあるのかどうか、お伺いします。

川村政府参考人 農協の営農指導の関係でございます。

 この問題は、あり方研究会の報告の中にも、営農指導の重要性ということで取りまとめが行われておりまして、営農指導というのは、まさに他の販売事業あるいは購買事業の先行投資として位置づけるべきであって、営農指導のみを単独で収支均衡といったようなものを図るべきではないといった考え方が示されております。

 営農指導の重要性、これは、昨年のJA大会にもしっかりこれが盛り込まれたということでも、その意気込みは感じられるわけでございますし、現時点で、この営農事業の検討会を全中自体がつくられております。そして六月には、来月には、新しい状況のもとでの営農指導のあり方というものを、強化のあり方ということの方向を出されるというふうに聞いております。

 我々もこれにも参画をさせていただきますし、また、行政として支援、こういった適切な営農指導、また普及との連携もございますので、これを適切に、相乗効果といいますか、そういうことによって、より効果的な農家にとっての営農指導が確保できるというような体制に向けて、普及の事業とも相まって、我々としても努力をしていきたいと思っています。

山本(喜)委員 この間の普及事業の見直しということでも、実態的には普及活動が、行政の側からすれば弱まっていく傾向にあるわけですよ。農協の関係も含めて、どういうふうに農家自身を支援していくかということが非常に大事になっているというふうに思うので、そこら辺、有機的な関係でぜひ営農指導を強化していただきたいというふうに思います。

 それから、全中の強力なリーダーシップということでございますけれども、これが、かえって組織の中央集権化あるいは硬直化ということをもたらす懸念はないのかということでお伺いしたいんです。

 小泉総理も、国から地方へということを言っているわけでございます。やはり分権自治というのが基本であるべきですし、それから、市場を重視した企業戦略ということからも、市場に近いところに権限を与えていけというのが普通の今の市場の流れではないのかというふうに思います。それから、顔の見える関係づくり懇談会というものの報告でも、消費者と生産者、事業者との連携強化ということがうたわれているわけでございます。

 そうした意味から、単協の自主性、創意工夫というのをより高めていくことが必要ではないかというふうに思うんですが、中央集権ということではなく、単協の自主性ということを高めていくための方策というものをお伺いします。

川村政府参考人 今回の農協法改正の中身といたしまして、全国中央会が指導事業に関します基本方針を策定、公表する、これに即しまして都道府県中央会が指導を行う、こういう仕組みといいますか、規定を整備したわけでございます。

 まさに委員から御指摘のあったとおり、こういう経済事業というのは、地域の実情に即した創意工夫、こういうものがまさに基本にあるべきでございます。ただ、これまでの経済改革がなかなか進まなかったということもございまして、それぞれが工夫を凝らすことは当然でございますが、共通の目標というものを持って系統として進んでいくべきではないかということでございます。

 実際の事業目標として、いろいろな数値目標も含めてやっていくというようなことも、これをより強力に進めていく上では必要ではないかということでございまして、例えば、既に経済改革指針というものを昨年の暮れに全中理事会で決定しておりますが、その中では、消費者接近のための販売戦略の見直しということで、JAブランドの確立のための直販所の設置、あるいは生産履歴記帳等を実施するとか、実需者への直接販売を拡大するとか、あるいは生産者にとって実感をされます生産資材の引き下げ、こういうものについて共通の目標をつくるということでございます。

 それからまた、財務目標につきましても、経済事業の部門損益を原則として三年以内に収支均衡をしようではないか、こういう財務目標もつくりまして、これをベースに、各県がそれぞれの地域の実情に即して、さらに具体化をしていくということを期待しているところでございます。

 そういう意味で、必ずしも中央集権ということではなくて、農協系統が一丸となってそれぞれの工夫を生かしながらやる、その手法としてこういう基本方針なり都道府県の対応というものを規定したというものでございます。

山本(喜)委員 時間がありませんので多分最後になると思うんですが、最後に厚生連の活動についてお伺いします。

 農村における健康の増進あるいは医療の充実ということで、大変重要な仕事だと思うわけでございますが、過疎化が進む中で地域医療をどう守るのかということが非常に重要になっているわけでございます。

 そういう点で、厚生連の地域医療に果たしてきた役割ということをどういうふうに評価しているのか、そして今後、どういうふうに充実していくのか、お伺いします。

川村政府参考人 厚生連の問題等でございます。

 厚生連は、今御指摘ございましたが、受診機会に恵まれない農村におきます地域医療を担うことを目的に設立をされたわけでございまして、その後、医療法におきます公的医療機関として、僻地の医療、緊急医療、それから不採算地区医療等、民間医療が行いにくい医療を積極的に担うなど、農村地域の保健、医療、介護に非常に重要な役割を担っているというふうに認識しております。

 一方、この医療環境、病院経営をめぐるいろいろな状況がございます。これも非常に留意をすべき点でございます。これもJA大会の中で、病院、施設経営基盤の確立と経営健全化の取り組み強化ということが決議をされております。

 農水省としましては、この病院経営を取り巻く環境は、全般的に申し上げると非常に厳しい状況でございますから、適正な投資、それから内部留保の充実、こういったことは不可欠な課題でございますし、農協系統がそういうことをしっかり守りながら、地域の医療なり福祉、そういうものに重要な役割を引き続き果たしていただけるよう指導監督をしてまいりたいと思っています。

山本(喜)委員 どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

高木委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る十八日火曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十八日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会


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