衆議院

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第21号 平成16年6月9日(水曜日)

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平成十六年六月九日(水曜日)

    午前十時二十七分開議

 出席委員

   委員長 高木 義明君    

   理事 北村 誠吾君 理事 西川 京子君

   理事 松下 忠洋君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 小平 忠正君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      小野寺五典君    大野 松茂君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      木村 太郎君    後藤 茂之君

      後藤田正純君    佐藤  勉君

      玉沢徳一郎君    津島 恭一君

      永岡 洋治君    西村 康稔君

      野呂田芳成君    蓮実  進君

      平井 卓也君    福井  照君

      岡本 充功君    鹿野 道彦君

      金田 誠一君    岸本  健君

      楠田 大蔵君    小宮山泰子君

      篠原  孝君    神風 英男君

      仲野 博子君    楢崎 欣弥君

      堀込 征雄君    松木 謙公君

      西  博義君    高橋千鶴子君

      照屋 寛徳君    山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       亀井 善之君

   外務副大臣        阿部 正俊君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         梅津 準士君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       遠藤  明君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房協同組合検査部長)      船本 博昭君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            太田 信介君

   政府参考人

   (林野庁長官)      前田 直登君

   政府参考人

   (水産庁長官)      田原 文夫君

   政府参考人

   (環境省環境管理局水環境部長)          吉田 徳久君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 寺田 雅昭君

   参考人

   (有明海・八代海総合調査評価委員会委員長)    須藤 隆一君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月九日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     蓮実  進君

  二田 孝治君     福井  照君

  神風 英男君     小宮山泰子君

  山本喜代宏君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  蓮実  進君     大野 松茂君

  福井  照君     二田 孝治君

  小宮山泰子君     神風 英男君

  照屋 寛徳君     山本喜代宏君

    ―――――――――――――

六月七日

 米・凶作への万全な対策、国民の主食・お米と食の安全を守ることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三一三五号)

 食料自給率を向上させ、食の安全・安定供給を守ることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三一三六号)

同月九日

 中海の汽水環境の復元に関する請願(川上義博君紹介)(第三三九九号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第三四〇〇号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第三四〇一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長寺田雅昭君及び有明海・八代海総合調査評価委員会委員長須藤隆一君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として農林水産省大臣官房協同組合検査部長船本博昭君、消費・安全局長中川坦君、生産局長白須敏朗君、経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君、林野庁長官前田直登君、水産庁長官田原文夫君、内閣府食品安全委員会事務局長梅津準士君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長遠藤明君及び環境省環境管理局水環境部長吉田徳久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平井卓也君。

平井委員 自由民主党の平井です。

 きょうは、水産関係と農産物、あとは農地の転用等々について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、漁業災害補償法に基づく共済制度について、収穫高方式の漁獲共済、特定養殖共済と、物損方式の養殖共済が主なものであります。私の地元におきましては、魚類の養殖共済を主幹として、ノリ、カキの特定養殖共済及び漁船漁業、定置漁業の漁獲共済の加入がありますが、そのうち魚類養殖共済については、病害、逃亡、赤潮等の被害により同一原因で一定率の死亡があったときのみ共済金の支払い対象となるものであります。ほかの特定や漁獲共済のような水揚げの減少による損害については補てんがなく、近年、魚価の低迷を受け、採算原価を割るような場合があっても、物損被害がない場合は一切支払いがなく、再生産に役立つことができず、この制度の目的である中小漁業者の漁業再生産の阻害の防止及び漁業経営の安定に資することにはならない状況があります。

 そこで、魚類養殖共済についても、漁獲、特定養殖共済と同様に、収穫高保険方式または魚価が一定金額以下であった場合に幾らかでも補てんされる方式を創設して、現状の魚類養殖共済との二本立てにしてほしいという要望がかねてからありました。この点についてどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 魚類の養殖関係での共済関係のお尋ねでございますが、まず、現在、漁船漁業等のいわゆる漁獲共済、それからノリ、ワカメ等の特定養殖共済、これはただいま先生が御指摘になられましたように、自然災害などの異常な事象に対します漁獲量の減少ですとか海況の変化等に起因いたします品質の低下、こういったことに対応するということで収穫高保険方式、これが採用されているところであります。

 一方、ただいま御指摘になられました特定の魚類の養殖、給餌型の養殖と申しますかえさを与えます養殖、この関係につきましての問題点、二つございまして、一つは、出荷調整等の生産量の管理ですとか、あるいはえさの与え方によりまして品質管理ができるというふうなことで、そういった人為的な操作が可能であるということ。それから二点目は、販売経路が漁業者によって異なっておりまして、共販体制も全国的には確立されていないということでございますので、いわば、引き受けあるいは審査に当たりまして、必要な金額の精査といいますか金額の客観的な把握、こういったことが困難でございまして、客観的にチェックできない。こういったこと等から、いわゆる物損保険方式、こういったことがとられておるわけでございます。

 ただ、先生ただいま御指摘なされましたように、魚類養殖をめぐります状況、非常に厳しいという点は我々も認識しているところでございまして、こうした各県におきます魚類養殖の経営実態、こういったことを十分精査いたしまして、また生産金額の客観的な把握の可能性等の条件、こういったものが整いまして、かつまた、保険金設計をやるということになりますと、当然のことながら数年分のデータの蓄積等も必要でございます。こういったことが行われましたならば、収穫高の保険方式、こういったことも含めましてどのような対応が可能であるか、これは検討していきたい、かように考えている次第でございます。

平井委員 今のお話をお聞きいたしますと、そのような共販体制であるとか数量とか、そういうものをちゃんとチェックできるようなデータがそろえられるような体制をつくれば、この共済についても御検討いただけるということですね。もう一度お答え願えますか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたけれども、一般の特定養殖共済あるいは漁獲共済等で行われておりますような生産金額の客観的な把握の実態、こういったこと等の条件が整えば、そうしたことに踏み出せる可能性はあるということでございますので、そうしたことを整えてまいりたい、かように考えております。

平井委員 前向きな答弁、ありがとうございました。

 私は、海の近くに住んでいますから、子供のころから魚を本当に主なたんぱく源にしておりました。ところが、最近、魚を食べなくなったというのは、これは全国的にもそのように思っています。これは、BSEの発生とか牛肉の輸入禁止やまた鳥インフルエンザ等々があっても、なかなか魚類、魚介類の消費量のアップというものにつながっていかないんですね。

 魚というのは、これから我々の将来のことを考えたときに本当に非常に重要だと思うんですが、消費拡大に向けて何らかの具体的な政策及びそういう方法をとっておられるんでしたら教えていただきたいんです。

田原政府参考人 お答えいたします。

 先生ただいま御指摘されましたように、水産物の関係は、良質なたんぱく質を初めといたしまして、カルシウムですとかDHAあるいはEPA、こういった栄養素が非常に豊富に含まれているということで、我が国の国民食生活上、極めて重要であるというふうに我々も認識しておりますし、この水産物の消費拡大を図っていくということは、我々としても今後とも積極的にやらなきゃいけないというふうに思っております。

 一般的には、私ども、こうした水産物の有用性と申しますか特性と申しますか、こういったことを広く一般国民に訴え、かつ地産地消の観点から、ブランド・ニッポン戦略ということで、各地域の水産物の供給体制の確立、こういったことをやっているわけでございますが、消費拡大という観点から、若干、個別の事例になりますけれども申し上げますと、例えば、全国の小中学生ですとか一般消費者の方々、さらにはプロの部門というのも設けておりますが、シーフード料理のコンクールを行うというふうなこともやっております。それから、先生の御地元の香川県でございますけれども、お魚シャトルバスというもの、これは県漁連の方で所有していただいておりますが、中に水槽等を設けまして、魚の実態、こういったことを、小学生の方ですとか、実際に展示するというふうなこと等に対する助成、こういったことをやっております。

 いずれにいたしましても、こうした消費拡大というものは地道な努力が必要ではないか、かように考えている次第でございまして、私ども、今後とも息長く関係団体等とも連携をとりながら進めてまいりたい、かように考えている次第でございます。

平井委員 私も、魚の消費拡大というのはやればできると思っています。

 最近、私の地元で、いただきさんの食堂というのがオープンしまして、それは、いただきさんというのは、仲卸から魚を買って行商に行く、昔は届け出制だったんですけれども、そういう女性の方々が、新鮮な魚を食べさせたいということで、魚市場なんかと協力して店をあけたんですが、讃岐うどんが今ブームなんですけれども、今、そこの食堂はもっとブームになっています。なぜかというと、朝とれた魚は夜食べるよりやはり昼食べるのが一番うまい、どの魚でもうまいので、安い値段でそういうものを出すと、本当に長蛇の列ができるようになっています。こういうのも地産地消の一つの例だと思いますので、いろいろなことをこれからまた考えていただきたいというふうに思います。

 あと、漁業資源の回復の取り組みについてちょっとお聞きしたいんですが、秋田沖のハタハタを一定期間禁漁としたら資源が回復したという話を聞きました。これからは水産資源をふやすために積極的に取り組むべきだと思いますが、水産庁としての今後の取り組みをお聞きしたいんです。

 私のところは、瀬戸内海全体を一つの養殖場とみなすこともできるんです。そういう意味で、サワラとかそういうものの水産資源の回復ということも考えられるのではないかというふうに思っております。水産庁長官にちょっとお聞きしたいと思います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 我が国周辺水域は、世界でもかなり有数の好漁場と言われておりますけれども、残念ながら、各魚種にわたりまして資源水準が悪化しているということは否めない事実でございます。

 そこで、つくり育てる漁業の推進ということでのふ化放流等も行っておりますけれども、緊急に資源の回復が必要な魚種、こういったことについては、漁業者の方々にも我慢していただく、要するに休漁ですとか禁漁ですとか、こういったことをやっていただきながら、幼魚等の回復を目指していく、こういうことが重要ではないかということで、ただいま先生も、瀬戸内海につきましてサワラということでの御指摘がございましたけれども、これまで、大体、瀬戸内海のサワラ以外にも、太平洋のマサバですとか、八計画十四魚種につきまして資源回復計画、これを定めておりまして、保護区域の設定ですとか休漁期間の設定、さらには漁具の改良、要するにちっちゃい魚をとらないような漁具の改良、こういったこと等に対しますいろいろな助成を行っているという状況でございます。

 現在も日本海のベニズワイガニですとか、さらには瀬戸内から周防灘の底びき網資源、こういったこと等をひっくるめまして、十魚種程度、計画の策定に着手しているところでございまして、十六年度内には五十魚種ぐらいにはというふうに目指しながら、全体的な資源回復計画の推進、これに努めているところでございます。

平井委員 わかりました。

 それでは、沿岸漁業の保全を図って環境改善に努めることが急務だと思っているんですが、近年、テレビで見てびっくりした、発生した大型クラゲ、エチゼンクラゲというんですか、これが潮に乗って太平洋側にまで出現しているようですが、その現在の状況と、もしわかるのなら発生原因、そしてまたどのような対策を講じようとしておられるのか、お聞きしたいと思います。

木村大臣政務官 昨年、おととしとこの大型クラゲが大量発生いたしまして、その範囲というのは、日本海側のみならず、津軽海峡を横断しまして、千葉県の沿岸まで達しているところであります。私も、亀井大臣の御指示をいただきながら、秋田県と青森県、岩手県を視察させていただき、その被害の実態というものを目の当たりにしてまいりまして、現地においては漁業関係者の皆さんからいろいろ被害状況を報告いただき、また、私どもに対しての御要望等を直接聞いてまいりまして、大臣に報告し、関係担当の方に今いろいろと対策を指示しているところであります。

 この大型クラゲの出現に対しましては、昨年度、我が省として、その出現状況の把握と情報提供を行うとともに、その出現の予測あるいは利用などについて検討し、緊急調査を実施しているところであります。また、被害に実際遭われました方々に対しての対策として、例えば既貸付金の償還条件の緩和あるいは漁業共済金の早期支払い等について、関係機関に省としてもお願いしているところであります。また、本年度は、大量出現の原因の解明、出現予測技術の開発、入網回避や排除技術の開発、処理、利用技術の開発などに関して研究を実施しているところでありまして、まだその発生原因等はつかめておりませんが、これらの対策を施しながら、対策を引き続き続けてまいりたいというふうに思っております。

 なお、この大型クラゲに関しましては、我が国のみならず、お隣の韓国や中国でも大変被害が出ているということをお聞きしまして、私どもの方から呼びかけまして、日本と中国、韓国三カ国によります大型クラゲに関する国際ワークショップというものを本年二月に開催させていただきました。また、去る六月四日には、都道府県の担当者、漁業関係者を対象にしまして対策担当者会議というものを実施しているところでありまして、今後とも関係機関と連携し、情報交換をしながら対策に全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

 今平井委員おっしゃいましたが、学術的にはエチゼンクラゲということになっておりますが、我が省としても、大型クラゲという呼び方でいろいろ対策を講じているということを御理解いただきたいと思います。

 以上であります。

平井委員 ありがとうございました。よろしくお願いをいたします。

 次に、果実販売促進対策についてお聞きします。

 瀬戸内海はミカンの栽培が盛んである土地柄ですが、ところが、近年、価格の低迷による生産者の所得の伸び悩みを始め、土地基盤整備のおくれ、生産の不安定性など、ミカン産地の抱える諸問題は多くて、後継者の確保と育成など、夢のある農業をどのように後世に残していくのか。また、関係団体、関係機関等との連携協力をとりつつ、消費の拡大や販路の開拓など、所得の向上を目指して販売促進対策をなお一層積極的に展開する必要があると思いますが、この点についてどのようにお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。

白須政府参考人 果実の生産、販売の促進というお尋ねでございます。

 果樹の農業につきましては、まずは、やはり消費者ニーズ、大変多様化をいたしているわけでございます。そういった消費者ニーズにきめ細やかに対応していく。したがいまして、消費者の信頼を得られる、そういう産地を育成していくということが何より重要であるというふうに考えている次第でございます。

 そこで、まず、生産の方でございますが、生産振興につきましては、やはり高品質なもの、あるいは安定的な供給、そしてまた安全、安心、あるいはまた手ごろな価格ということで、そういった消費者ニーズに十分対応できるように、あるいはまた国産果実、品質面では優位性があるわけでございますが、やはりそれぞれの産地ならではの特色を生かしながら、ブランド・ニッポンの果実の供給体制というふうなことでございまして、機械や施設の導入でございますとかあるいは営農指導、きめ細やかな営農指導というふうなことで、ハード、ソフトの両面にわたります事業も行いまして、支援を行っているところでございます。

 それから、ただいま委員からも御指摘ございました消費の拡大、これもまた大変重要なことでございます。そういうことで、食生活の指針でございますとか、あるいは厚生省の方からも健康日本21というふうなことで、果物に含まれておりますビタミンでございますとかあるいはミネラル、こういうものを摂取することによってがんの予防でございますとかあるいは生活習慣病の予防につながる、こういう大変大きな効果があるということも示されているわけでございます。

 そこで、やはり毎日果物を摂取するということが大変重要だというふうなことで、平成十三年度から、私ども、毎日くだもの二百グラム運動というふうなことで、ミカンでございますと二つ、あるいはリンゴなら一つということで大体二百グラムでございますが、そういうものを毎日とっていただこう、そういう運動、消費者に対する啓発普及も行っているわけでございますが、さらに十五年度からは、香川県も含めまして県段階におきましても、こういった県版のくだもの二百グラム運動というふうなことで、果実の消費拡大についての運動を展開しているというふうなことでございます。

 現在、新しい、全体としての果樹農業の振興基本方針の策定に向けまして検討も開始したところでございますので、こういう検討も踏まえまして、今後とも、ただいま委員の御指摘のような果樹農業全般の振興につながるように検討を進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

平井委員 あと、次に、ちょっと農産物の輸出の規制緩和といいますか、そういうことについてお聞きしたいんです。

 私の地元に、盆栽の産地として世界的にも知られている鬼無という地域があります。ここでは全国の松の盆栽の八〇%を生産しているんですが、この地域では、生産体制や、現在農業全体として深刻化している担い手についても、珍しく二十代、三十代のすばらしい後継者が育っており、非常に全国的にも珍しい地域だと私は思うんです。

 盆栽というのは、美術品とか芸術品みたいなことでとらえていますが、実はこれは立派な農産物であります。私、スペインの王室とかそういうのが盆栽のコレクションをしていたりするので、そういうものの輸出のお手伝い等々したことがあるんですが、非常にニッチなマーケットかもわかりませんが、実は海外での需要は高いです。

 ところが、この一般盆栽の輸出というのは多くの規制がかけられています。これは、松くいの問題があるからアメリカでは松の全面輸入禁止をしておりますし、また、その他の木にしても、二年間の完全隔離とか年六回の予防消毒とか、輸出するときには土を全部取ってしまわなければいけないとか、これはもっともな面もあるんですけれども、生産者からすると、コストだけじゃなくて大変な手間暇がかかっているわけです。

 しかし一方で、これは日本の誇る、いわば農産物の一つであるわけですから、そういう壁を乗り越えて輸出を拡大していこうという方々もいらっしゃるわけであります。そういう意味で、日本の農産物の輸出というものは、これから農水省としても攻めに転じて頑張っていこうということだと思いますので、その辺のところについて御意見をお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 アジア諸国の経済発展あるいは所得の向上、こういう面で高品質な国産の農林水産物の輸出を拡大する好機が生じている、このように認識をいたしております。

 こうした中で、全国各地で農林水産物あるいは食品の輸出に向けた取り組みが本格化しております。具体的な輸出品目といたしましては、現在輸出が進められているリンゴ、ナシあるいはミカン等の果樹や、あるいは長芋等の野菜、あるいは緑茶、材木、ホタテガイ、また、今お話しの盆栽や観葉植物等についても輸出の可能性があるもの、このように考えております。

 そうしたことで、委員からも御指摘がありましたが、やはり意欲ある農業者や産地などの取り組みを支援して輸出の促進を図ってまいりたい、このように考えておりまして、私ども農水省におきましては、輸出促進室を今年度より省内に設置をいたしまして、私が本部長となりまして、国産農林水産物・食品輸出促進本部、これを発足させたわけであります。輸出先国への市場開拓ミッションの派遣ですとか、海外セミナーを活用した国産農林水産物のPR等を強化する、また、国産農林水産物の輸出を阻害する外国の制度やその運用状況、これを把握いたしまして、これを是正する取り組み等の強化を図ってまいりたい、このように考えております。

 今後とも、国産農林水産物の輸出拡大に向けまして、都道府県、関係団体と十分連携をして一層努力をしてまいりたい、このように考えております。

平井委員 さっきの検疫の問題も含めて御答弁をいただけるでしょうか。

中川政府参考人 植物検疫の問題に限って御説明申し上げたいと思います。

 それぞれ各国とも、新たな病害虫が自国に入ることを防止するために植物検疫措置というのは実施をしておりますし、特定の植物について輸入禁止措置をとることは国際植物検疫条約においても認められているわけでございます。

 それぞれの国の要求をいたします植物検疫条件に適合するように、相手国が要求をします消毒の条件ですとか栽培地検査等の検疫条件を満たすようにこれまでも努めてきたわけでございますが、相手方の要求します条件等について、いろいろ緩和をする合理的な理由があるという場合には、これは二国間等の場でもって相手方に要求するということもこれまでやってきてございます。

 そこは、現地の生産地におきましてそれぞれ輸出に向けて御努力をしているわけでありますから、そういった具体的な事例、どういう問題があるかということもお聞きして、適切な対応をしていきたいというふうに思っております。

平井委員 次に、農地転用制度について少しお聞きをしたいと思っています。

 農地法で定められた農地転用許可制度について、農地転用の手続の際、都市計画法で定められた市街化区域内の農地転用に関しては、現在は届け出制になっています。私の選挙区であります香川県では、都市計画法の改正に際して同法で定められている都市計画区域を全面廃止したので、市街化区域というものはなくなりました。つまり、線引きをすべて撤廃したというわけです。その結果、これまで届け出だけでよかった市街化区域内の農地も調整区域同様許可制に変わって、その手続に関する時間が、これまで十日前後だったものが、今は約二カ月近くかかってしまうことになります。これは、住民の方々からも大変不便になったという声がありますし、本来開発を進めるべき市街化区域において、結果として規制が強化されてしまったというような矛盾が生じています。

 この問題は、農地法の所管が農水省、都市計画法の所管が国土交通省となっており、前回の都市計画法改正に際して、なかなか事前に省庁間の協議も難しかったとは思うんです。しかし、今後、人口が減ってきて空洞化が起きる、そういう意味で、さらに都市計画に対する権限が地方に権限移譲されていくとなったときに、この問題は全国で起こる可能性があります。

 そこを考えたときに、今、二年後には農地制度見直しということらしいですが、これは単に農地法だけではなくて、農地法、農振法、都市計画法、この土地にかかわるすべての法律を全体のスキームとしてやはり見直していく時期に来ているのではないか、そう思います。その辺のところについて、どのようにお考えかお聞きしたいと思います。

太田政府参考人 委員のお話のありましたとおり、農地制度の見直しにつきまして、現在、来年三月の食料・農業・農村基本計画の見直しに向けまして、食料・農業・農村政策審議会の企画部会において議論を行っていただいております。この農地制度につきましては、担い手の減少、高齢化、耕作放棄の増加などの課題を抱えておりますので、今後、優良農地の確保と農地の効率的な利用の促進を基本にいたすわけでございますけれども、多様な土地利用のニーズにもこたえていく、そういう観点などからも検討を進めておるところでございます。

 この食料・農業・農村基本計画の見直しにつきましては、政府全体として取り組んでおる状況にございまして、国土交通省を初め関係省庁とも十分連携をとりながら検討を進めてまいりたいと考えておりまして、いずれにいたしましても、適切な土地利用が行われるように、引き続き連携をとりながら進めていきたいというふうに考えております。

平井委員 土地にかかわるいろいろな制度というのはやはり整理しなければならない時期に来ていると思いますので、御答弁は要りませんが、どうぞ大臣、またよろしくお願いをいたします。

 最後に、最近視察をしてきてちょっと驚いたことがありましたので、その件についてちょっとお聞きしたいと思います。

 北海道の農業法人が、農業の工業化、いわゆる植物生産工場という形で、環境条件の管理、農薬散布、収穫などをすべてコンピューターで管理しています。こういう法人がありまして、農業生産法人の神内ファームというんですが、あれは農業ではないという方々もいらっしゃいますが、よく考えてみると、そこでは若い人たちが働く機会もありますし、生産性は極めて高くなりますし、地球温暖化等々にも影響されないし、食料安全保障の観点からいえば、そういう最先端の技術を使った農業ということも、これはあり得るのではないだろうか、私自身、足を運んでみてそう思いました。

 このような分野について、国として今どのようなお取り組みがあり、また、こういうものを食料安全保障の位置づけの中でどのようにお考えなのか、少しお聞かせ願いたいと思います。

白須政府参考人 ただいま委員からお話がございました植物生産工場、コンピューターを駆使したような、そういういわば農産物の生産工場でございます。

 我が国におきましては、完全密閉型の施設におきまして、主としまして太陽光じゃなく人工光のもとで、養液栽培装置を用いまして、サラダ菜などの野菜を生産するいわゆる植物工場の取り組みでございまして、今委員からもございましたが、今のところ、私ども把握しておりますのは全国で約二十カ所ぐらいあるというふうに承知をいたしております。規模につきましても、小規模なものから委員が御視察をいただきました一ヘクタール近いような大規模なものまでさまざまあるわけでございます。

 ただ、これは、今委員からもまさにお話ございましたように、天候の影響を受けない、全天候型ということで、安定的な周年栽培、出荷が可能だ、あるいは均一な野菜を大量生産できる、そういうメリットがもちろんあるわけでございますが、他方には、施設の設置コストが高いとか、ランニングコストが、電気代がかかるとか、そういう高コストだというふうな問題点もあるわけでございます。

 ただ、委員からもございましたが、定時、定量、定質の農産物の供給だとか、栄養分、糖度のコントロールが可能だということで、これからの農業生産の将来像の一つだというふうなこと等も考えられるわけでございまして、コストの問題等あるわけでございますが、そういった先進的な取り組みは、まさに委員からもございました食料の安全保障であるとかあるいは自給率の向上にも資するといったようなことから、私どもとしてもやはり必要だというふうに認識をいたしている次第でございます。

 そこで、現在、こういった植物工場、そういうふうな高度な制御栽培施設、こういう導入、普及に対しましても、私どもとしても実は支援も行っております。生産性向上あるいは品質向上といった技術の高度化でございますとか多様な農業経営確立、そういうことに資する有効な生産手法の一つとして、私どもとしても今後積極的に推進してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

平井委員 時間が来ましたので、これで質問を終わりたいと思いますが、自給率アップ、食料安全保障というのは、あらゆる可能性をやはりこれから模索していかなければならないと思いました。そういうことで、どうぞ皆さん、よろしくお願いをいたします。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、山田正彦君。

山田委員 大臣にお聞きしたいと思うんですが、今、農業者、そして農協関係を回ってみますと、非常に農協の経営は厳しくなってきている。その中で、農家が今、みずからのお金で設備等をやるんじゃなく、いわゆるリース事業、例えば畜舎とか園芸施設、イチゴとか花卉栽培とかそういったものについて、農協がそれを農家にリースして、そして営農を営む。それで、リース事業、今や非常に希望が多い。ところが、最近、そのリース事業を、そういう農家の要望にこたえて農協がやりたくても、それができなくなってきた、そういう事情が生じてきているわけですが、それについて、大臣にお聞きしたいと思うんです。

 農協法の施行令でもって、資料の一―二を見てもらえばわかるんですが、「農業協同組合の信用事業に係る経理の信用事業以外の事業に係る経理への資金の運用は、当該農業協同組合の自己資本の額を超えてはならない。」、そういう規制に施行令でもってなっているわけです。それまでは、預金量の二〇%を超えてはならないという形で、他部門の運用というのは農協に来ている預金の中からできたから、かなりリース事業等というのもどんどんやれたわけですが、それができなくなってきた。平成十五年に、このように、自己資本の範囲を超えてはならない、そういうふうに変えたわけですが、それで、一部、九州とか東北、北海道の農協では非常に困っているという事情があるわけです。

 なぜ、そういうふうに、「自己資本の額を超えてはならない。」というふうに平成十五年から施行令で決めたのか、その理由を端的にお答えいただきたいと思います。

亀井国務大臣 一つは、組合の健全経営の基盤である自己資本の範囲内にということで改正をし、貯金の保護、こういうことに配慮した、こういうことであるわけでありまして、先ほど委員からも御指摘のとおり、制度導入当初は、農協の貯金量に応じてその二〇%の範囲内、こうされておったわけでありますが、平成十五年四月に、出資金や内部留保等農協の健全運営の基盤となる自己資本の範囲内に改められ、他部門運用によるリスクが貯金の払い戻しに支障を生じないようにしたところであるわけでありまして、今申し上げましたとおり、やはり健全な経営と貯金の保護、こういう視点に配慮して、また、ペイオフ解禁を控えまして、農協系統信用事業の一層の健全性、こういうことを背景にそれらの見直しを行ったところであります。

山田委員 農協は、本来は営農を主としてやっている。そして、今や信用事業に傾いているという面は否めないわけなんですが、その中で、いろいろそういう規制をしてくるということは、各信用機関、例えば銀行とか信用組合、信用金庫と違って、農協だけにそういう規制をかけてくるということは、総合事業経営の農協としてわからないわけではないわけです。

 だから、私もそれ自体は否とは申し上げませんが、具体的運用としては、資料一―一を見ていただければいいんですが、「信用事業負債から信用事業資産を差し引いた額」となっております。実際に、個人貯金とかその他のうちからいわゆる信用事業資産として考えられるのが、現金とか預金、貸出金、有価証券等々あるわけですが、その中で、今、末端の農協というのは、信用事業、例えば田舎の農協に行きますと、窓口に預金を入れ、預金を引き出す、そして借り入れを申し込む、そういった、いわば営農の相談とか云々よりも、支所とか支店とかというのは、むしろそういう形態で信用事業を営んでいる。信用事業としての資産としての分野というのがあるわけなんです。

 資料一―三を見ていただければいいんですが、Aというのは、信用事業だけの農協の支店、これだけが三・六%。B、C2というふうに分けてみたんですが、総体的に言って、少なくとも農協の中身の三割は信用事業であって、そして、農協の支店とか支所とか、あるいは本店もそうですが、特に都市部においてはほとんど金融機関としての役割なんですが、そうなれば、農協がみずから持っている信用事業の資産として、当然そういう建物等も、支店等もこの信用事業資産に入れられるんじゃないか。それを入れれば、農協としては、いわゆる他部門運用規制の枠が広がってくる、そしてリース事業をもっともっと拡大できる、もっともっと営農に力が入れられる。

 これは当然のことではないかと思うんですが、大臣、どう思われますか。

亀井国務大臣 農協は、信用事業以外に共済、経済等の幅広い事業を行う、こういう総合事業体であるわけでありまして、そういう中でも、やはり、貯金者の信頼に十分こたえられるような安全性や健全性、こういうことが確保されることが必要なことであるわけであります。

 そういう面では、やはり出資金や内部留保内の、資本金勘定の範囲内で行われることが基本、このように、農協店舗等につきましても、経営の健全性、こういう観点から必要と考えておるわけでありまして、やはり、他部門運用規制におきます信用事業資産を、新たに店舗を追加する、こういう面の農協の店舗の投資を著しく過大にすると、収益性の低下やリスクの増大等を招き、健全性あるいは貯金者の保護、こういうことから考えて、やはり私は、そのことを十分踏まえて対応していくことが必要なことではなかろうか、こう思います。

山田委員 大臣、私は当初、農協等のそういう実態を見て、農林中金あるいは全中、そういったところの指導によってこういう厳しい規制がなされているんじゃないか、そう思って、農林中金の常務、そして全中の担当理事を呼んでいろいろお聞きしたんですが、彼らとしても、農協の実態等々を考えると、信用事業資産の中に当然、いわゆる信用事業としての、共用している分野についてはそれを正当に評価して信用事業資産として上げるのは当然であろうということは理解していただいた。ところが、農水省の指導によって我々は実態的にそういう厳しいことをやらざるを得ないんだというお話だったわけなんです。

 では、県信連等については、当然のことながら、支店等あるいは営業店等を出す場合には、いわゆる信用事業資産として規制なくやれる、他の金融機関もすべてやれる。ところが、農協自体も、いわゆる資産として、いろいろな営農のための設備等もあるわけですが、金融部門としての資産も当然あるわけです。資産としてというか、建物としての共用部分というのはあるわけです。

 これについて、僕は税理士等も呼んでみていろいろ調べてみましたが、財務会計原則からしても、この農水省の信用事業資産に対する考え方は誤っていると私は思っております。どうか実態の運用においては、これから先その点を十分勘案して、そしてもう一度再考を促したい、そう思って、この質問はこれで終わらせていただきたいと思います。

 BSEのアメリカの問題について、先般、かなり時間を割いて聞いたわけですが、補足してお聞きしたいと思っております。

 アメリカにおいて、最近、実際にいわゆるBSEのおそれのある牛が出た。ところが、それについて、この資料二―五を見ていただきたいんですが、ニューヨーク・タイムズの五月八日、「また起きた狂牛病をめぐる不祥事」、この中に、農務省は、テキサスの畜殺場、屠殺場で倒れた雌牛の検査を拒否したことが明らかになったと。というのは、狂牛病の兆候が、可能性が十分あって、検査官が検査のために脳のサンプルをとろうとしたら、同省の地域事務所がそれを阻止してそれができなかった。

 これはそのほかにも大々的に報道されたわけですが、この理由について、私も、その他ホームページ等も調べてみたんですが、かなりアメリカでは問題になりました。このことに関して、農水省としては調べておられますか。

亀井国務大臣 四月二十七日、テキサス州の屠畜場で行われたいわゆる屠殺前検査で中枢神経症状が疑われた牛が、BSE検査を受けることなくレンダリング施設に搬送され肉骨粉に加工されていたこと、あるいは、当該牛が食用に供されることなく、また、当該牛由来の肉骨粉の所在等について把握しており、適切に処理することとしていること等を発表した、これは承知をしております。

 このことにつきまして、実は、米国政府発表後、直ちに詳細な事実関係につきまして米国政府に照会をしたわけであります。五月十九日の日米のワーキンググループにおきましても、重ねてこの照会を行ったところであります。我が国としても、事実関係いかんによっては、米国におきますBSE対策の信頼性にも影響をするものと考えておりまして、米国政府の動向を注視しておるところでございまして、日米のワーキンググループにおきましても、この次の会合でまたそれにつきましての何らかの報告があろう、このようにも承知をいたしております。

山田委員 厚生労働副大臣にお聞きしたいんですが、イギリスにおいて、いわゆる人の虫垂、人の扁桃、そういった部分について一万何千例というものを検査した結果、いわゆる異常プリオン、BSEの兆候が見られたということがかなり大きく報道されております。そうすると、潜在的な可能性、潜伏期間が三十年と言われておりますが、そういった意味でかなり潜伏の可能性が、顕在化しない、いわゆる潜在的なBSEの感染者というおそれというのは、少なくとも三千八百人はいるんじゃないかということ等々も報道されておりますが、そういったもの。

 そしてまた、最近、イギリスにおいても、いろいろな新しい、BSEにおいては血液で感染するんじゃないかとか、そういう学会の報告もなされているようです。

 そういったBSEについてのいろいろな情報について、厚生労働省としてはどれだけつかんでおられるか、お聞きしたい。

森副大臣 委員御指摘のとおり、英国における研究で、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者以外の人の扁桃あるいは虫垂の組織から異常プリオンが検出されたとの報告は、私どもも承知をしております。

 この研究報告によりますと、英国人約一万二千七百人から摘出されました盲腸と扁桃腺の組織を調べたところ、三名から異常プリオンの蓄積が確認され、それが感染の指標となるならば、英国全体で、人口百万人当たり二百三十七の感染率であると推計をされているところでございます。

 しかしながら、この研究においては、異常プリオンの確認方法や、確認したプリオンと疾病の関係等に不明確な点があるということや、また、さらに新鮮な扁桃腺組織を用いた大規模な調査が必要であるということを研究者みずからが記しているところでございまして、研究に一定の限界がある現状であろうというふうに認識をしております。

 我が国としては、世界のバリアント、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の発生の九割以上を占めている英国において進められている調査研究等について、今後も積極的に情報収集を図り、また見守ってまいりたいというふうに考えております。

山田委員 それで、前回のときもちょっとホームページを紹介したんですが、厚生労働省の疫学部の出しているホームページの中にあるいわゆる集団発生、チェリーヒルの十七人のヤコブ症の集団発生はつとに有名でありますが、そのほかにも、米国各地で、ペンシルベニアとかフロリダとかオレゴン州とか、そういったところで集団発生がなされているわけですが、特にクロイツフェルト・ヤコブ病患者、そういったものでアルツハイマーの患者が、アルツハイマー病と診断された死亡患者数が、一九七九年には八百五十七例であったものが二〇〇〇年には五十倍以上にふえてきている、そして、こういったものの中にも、アメリカにおいてはいわゆるクロイツフェルト・ヤコブ症と言われるものがあるんじゃないか。

 アメリカは想像以上に情報を隠して、先ほどのニューヨーク・タイムズ紙にもあったように、あるいは先般ここで指摘したへたり牛、これについても検査しなかったり、へたり牛でなかったものを実際にはへたり牛として取り扱ったりとか、いろいろな情報操作等もあるんじゃないか。そういったことが大変心配されるわけですが、その中で、厚生労働省としては、もしも日本にこういう集団発生とかそういったものがあったような場合には、いかようにするのか。また、アメリカのそのような集団発生等について、あるいは先般のチェリーヒルの十七人の問題についても、独自に調査して、そしてその結果を国民に発表しようとする意向はあるのかないのか、その辺をお聞きできればと思います。

森副大臣 前回も当委員会において委員からお尋ねのありました、まず、ニュージャージー州の、集団発生したんじゃないかという問題についてでございますけれども、これにつきましては、五月七日に米国疾病対策センター、CDCが調査結果を発表いたしたところでございまして、これは、ニュージャージー州との共同で調査を行って、その内容については在米の日本大使館を通じて入手をいたしております。

 この報告書においては、ニュージャージー州におけるクロイツフェルト・ヤコブ病の発生数は全国的に見ても特に増加しているものではないということと、それから、BSEとの関連が疑われている患者に関し、一部で報道されておりますように、バリアントのCJDではないということの報告がなされております。この報告は、日本が行ったものではありませんけれども、アメリカの国立プリオンセンターや米国神経病理協会の検査結果に基づいたもので、またCDCも世界でも有数の疾病関係の研究機関でございますので、まず信頼に足る報告であるというふうに認識をしております。

 また、それと、日本で変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病が発生した場合の対応はどうするかということでございますけれども、これは、変異型も含め、クロイツフェルト・ヤコブ病については、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく届け出を義務づけるとともに、届け出があった場合には、厚生労働科学研究事業の遅発性ウイルス研究班による調査及びサーベイランス委員会による判定を行うことといたしておりまして、発生の迅速かつ正確な把握に努めるということにいたしております。

 万一、変異型CJDの発症が確認されました場合には、関係省庁等と連携のもと、喫食歴、BSE発生国への渡航歴、輸血歴等の詳細な調査を行いまして、感染ルートの把握と感染の拡大の防止に努めるとともに、国民の不安を解消すべく正確な情報の提供に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

山田委員 いずれにしても、アメリカにおいては、現在、機械処理、いわゆる解体処理を機械でやっているわけですが、先般説明したように、三〇%はプリオンが飛び散るということは十分指摘されており、そういったいろいろな問題があるわけです。その中で、実は、先般、五月にOIEが、すべての月齢の腸全体をいわゆる特定危険部位と決めて、そしてこれをすべて除去するように、そういうことに新たに加わったわけです。

 そういった中で、状況としては、BSEの問題というのはまだまだ非常に厳しい状況にあるわけですが、七月の二十一日に、さらにもう一回日米の合同の専門家の会議がなされるように聞いております。その中で、実は、本年夏をめどに米国産及び日本産牛肉の輸入再開につき結論を出すべくというふうに記載されておりますが、今回、参議院選挙が終わったら、夏、この参議院選挙が終わったら、いよいよアメリカからの牛肉輸入を再開するんじゃないか、そういう話がいろいろ聞かれております。

 この夏に、いわゆる専門家会議である程度の結論を出したら、それを受けて局長会議がなされるようになっています。厚生労働省の遠藤部長、きょう呼んでおりますが、この局長会議に遠藤部長も出られるということですけれども、遠藤部長としては、アメリカからの輸入再開に向けて、もうそろそろ入れていいんじゃないかと私的に発言しているやに聞いておりますが、実際に、入れようという気持ちが、入れようと思っているのか、あるいはまだまだBSE問題については未解明的なものが多く大変心配しておられるのか、どちらなのかお聞きしたい。

遠藤政府参考人 米国産牛肉の輸入再開問題につきましては、その安全性が確保されているか否かにつきまして、技術的、専門的な検討を通じて結論を得るべきと認識をしており、予断をもって対応すべきではないと考えております。

 本問題につきましては、御承知のとおり、現在日米間において協議を行っているところであり、これまでに局長級会合三回、専門家、実務担当者をメンバーとするワーキンググループの会合が一回開催されたところでございまして、今後、両国の専門家及び実務担当者が出席するワーキンググループにおける技術的、専門的観点からの検討結果を踏まえ、局長級協議において整理をし、本年夏を目途に結論を出すべく努力することとしているところでございます。

山田委員 今の発言を聞いてみると、輸入を再開するつもりなのか、再開しないのか、その辺についてはどう考えておられるのか。わからないということなのか、どちらかで答えていただきたい。再開するのか、再開しないのか、わからないのか、その三つのうちの一つでいい。

遠藤政府参考人 先ほどもお答えを申し上げましたように、安全性につきましての技術的、専門的な検討が必要であると考えておりまして、その点についての結論が得られていない状況でございますので、わからないということでございます。

山田委員 ということは、安全性がその検討委員会で担保されれば入れるということなのかどうか。

遠藤政府参考人 今後、専門家、実務担当者の出席するワーキンググループ、それから局長級協議が予定をされているわけでございますけれども、そこで得られました結論について、さらに国内的に検討しなければならないと考えております。

山田委員 どうもよくわからないんだけれども、それでは、科学技術検討委員会で安全性が大丈夫だという結論が出ればそれはもう当然入れるというふうにはならないということなのかどうか。例えば、それであってもさらに検討するというのか、それとも、その結論で安全性が確保されたら、もうそれで入れざるを得ないということなのか。どうなんでしょう。

遠藤政府参考人 安全性をどう確認するかという問題があるわけで、日米間では、この専門家及び実務担当者のワーキンググループ、それから局長級協議で議論をするわけでございますけれども、そこで得られました結論が国内的に果たして受け入れられるのかどうかということについては、さらにその後の問題であると考えています。

山田委員 農水大臣は、農水省としてどうお考えか。

亀井国務大臣 現在、日米の科学的知見等々のいわゆる認識を深める協議が行われておるわけでありますし、また、この中で、貿易再開の条件、この協議をするという点については、専門的な技術検討会ではそのようなことにつきましては対象になっていない、このように思っておりますし、基本的には、我が国の食の安全、安心、こういう視点を十分考え、先般来申し上げているような我が国と同等の基準、こういうものが確保されることが必要なこと、私はこう思っております。

山田委員 遠藤部長にもう一度お聞きしたいんですが、もし安全性が、検討委員会で安全であろう、こうであるならばということで確保されたとして、そして再開されるとしたら、その危険部位の除去については、OIEが少なくとも指摘している危険部位については、すべての月齢において除去しなければ安全だと思えないか、あるいは、三十カ月齢以上あるいは二十カ月齢以上、そういったものの除去で足りるとお考えか。どうでしょうか。

遠藤政府参考人 御指摘のような技術的、専門的な事柄につきまして、現在、両国の専門家及び実務担当者がワーキンググループでディスカッションしているわけでございますし、また、その後の局長級協議で整理をした結論というものについて、国内的にさらに検討するということになると考えております。

山田委員 遠藤部長は、巷間私的に話していると思う。それを私も間接的にお聞きしたんですが、もう輸入再開せざるを得ぬだろう、そうすれば、二十カ月齢以上、これを検査すればいいんじゃないか、そういうふうに話したやに聞いておりますが、その中で、実は私の方も調べてみたんですが、費用対効果というのをよく言われるようでして、これだけ金をかけて全頭検査しなくてもいいだろうというお話のようです。

 資料二―六、これを見てもらえばいいんですけれども、月齢別屠畜報告頭数の割合で、この検査キット経費、これがどれくらいかかるかというのを出してもらったんですが、その中で、全体で百十一万頭として、二十カ月齢以上、例えば、二十一カ月で日本は出ているわけですから、国民としては、BSE、どうしても二十カ月齢以上検査しなければ納得しない、そうした場合の経費というのは、それでも今かかっている経費の九三%。しかも、このキットというのは九十頭分が一セットですから、経費等は、これで見ますと、二十カ月齢以上やっても九三%。いわゆる全頭検査をやっても、二十カ月齢以上の検査をやっても、ほとんど変わらない。

 ということは、これは日本としては、全頭検査をそのまま続ける方が、経費的にもほとんど変わらないし、食の安全、安心という意味でも当然そうなるべきだと思うけれども、遠藤部長、どうお考えだろうか。

遠藤政府参考人 費用の問題については先生のお示しになった資料のように私ども考えているわけでございますけれども、一方、また、その効果についてはどのように考えるのかというのは、いろいろな意見があるということだろうと思います。

 厚生労働省といたしましては、現在、BSE対策の見直しを検討しておりませんけれども、今後、屠畜場におけるBSE検査を含めまして、BSEに関する国内対策について、食品安全委員会において全般的な評価が行われていると承知をしており、その評価結果を踏まえて今後のBSE対策について検討してまいる考えでございます。

山田委員 食の安全委員会の梅津局長、いろいろなところでいろいろな発言をなさっているようですが、ひとつ、食の安全委員会の事務局長じゃなくて、かつて畜産部長時代からこのBSE問題については一家言持っていることは私もよく承知であります。このBSE問題に対する梅津局長の考え方をお聞きしたい。簡単で結構です。

梅津政府参考人 この問題は、御承知のように、一九八〇年代にイギリスで発見され、その後、一九九六年に至って、英国において人の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の原因となる可能性があるという発表があって、世界的な公衆衛生上あるいは食品安全上の課題となっているものでございます。この問題を契機に、各国で食品安全行政の仕組みが改革され、我が国においても食品安全基本法及び食品安全委員会が発足したわけでございます。

 したがいまして、この問題につきましては、リスク分析という基本的な考え方に立って、昨年夏以降、BSE問題全般について議論をしているところでございます。

 以上でございます。

山田委員 御自身の考えは述べられないようですね。

 それでは、私の資料の中にあなたの論文をちょっと提起いたしました。「BSE問題の本質」、これはJAS情報の中で四月に書かれた論文ですが、この中で見ても、今のような全頭検査は今ここでひとつ見直すべきじゃないかというふうにしか私はこれは思えないんですが、あなたが今食の安全委員会事務局長として実際に食の安全委員会の皆さん方に講演させたOIE顧問小澤さん、この小澤さんの論文も私ここにつけておりますが、小澤さんはまさにはっきりと、全頭検査の必要はない、そういう言い方をされておる。それから、先般、三十カ月齢以上の危険部位の除去だけで足りると言ったスイスのキムさん。そして、あなたはイギリスのスミスさんのことを論文に書かれておる。そういったふうに見てみると、あなた自身はかなり、いわゆる全頭検査についてはもう必要ないというお考えのように見られるが、どうなんだろう。

梅津政府参考人 先生が今お触れになりましたJAS情報に掲載しましたものにつきましては、これは、リスク分析というのが私どもの食品安全基本法及び食品安全委員会の基本的な役割でございます。リスク分析というのは、人の健康に及ぼす影響、つまり、その危害の強さと起こる蓋然性を客観、中立的に評価して、その大きさに応じた対応をするというのがリスク分析の基本的な考え方でございます。それを私ども、さまざまな機会に、総論あるいは具体的な各論の形で説明したり、あるいは活字にしたりして説明しておるわけでございます。

 今お触れになりました、OIEの小澤名誉顧問、あるいはスイスの元獣医局長のキム博士、さらには英国の海綿状脳症諮問委員会のピーター・スミス委員長、いずれもBSEあるいはvCJDの世界的な権威でございます。そうした方々の科学的な知見を収集し、例えばプリオン調査会で幅広い議論に供し、議論を深め、またそれを公開で提供していくというのは、私どもの基本的な役割であるというふうに承知しております。

山田委員 事務局長としてそういった、みんな、いわゆる全頭検査は必要ない、三十カ月齢以上の危険部位の除去で足りるんじゃないかと言う人たちを次々に講演させて、非常に食の安全上全頭検査は必要じゃないかと思われるようなプルシナー博士、初めて異常プリオンを発見した、そういった人たちの講演をしようとしない。一方的に偏しているのではないのか。

 そしてまた、日経新聞三月二十二日の朝刊の中に、食の安全委員会の幹部の発言、「同委員会の幹部は「日米両政府の対立が長引けば、仲裁案を出すかもしれない」と語る。」これはあなたのことじゃないのかな。

 それからさらに、資料二―八「プリオン専門調査会 専門委員名簿」、この中の座長、これは吉川泰弘先生となっていますが、あなたのその論文の中にも吉川教授の話は出てくるし、これはあなたが事務局長として吉川さんになってもらおうとしたのじゃないかなと、どうも私はうがってしまう。これは、余りにも一方的に偏して、公正中立な安全委員会をゆがめているのではないのか。どうなんだろう。お答え願いたい。

梅津政府参考人 今お触れになりました小澤名誉顧問、あるいはキム博士、スミス博士は、いずれも国際的に評価されているBSE問題あるいはvCJD問題の専門家でございます。また、ことし二月二十一日に開催されましたシンポジウムにおきまして、例えば私ども、ジリ・サファー博士をお招きして、シンポジウムに参加いただいていますけれども、このジリ・サファー博士は、プルシナー先生の研究室の研究者でございます。さらには、私どもの座長代理をされておる金子清俊先生もプルシナー研究室で研究された方でございます。いずれにしましても、さまざま、幅広い、かつ国際的に評価されている専門家に参加いただいてプリオン専門調査会での御議論をいただいているところでございます。

 吉川先生につきましても、我が国でBSE問題が発生して以降、さまざまな形で定量性のある評価とその説明をされてきた方でございまして、そういったマクロ的な評価の観点あるいは個々の病理の観点、さまざまな分野の専門家によりましてプリオン調査会が構成されているというふうに承知しております。

山田委員 梅津局長に、本当に公正にやろうとするならば、プルシナー博士も呼んで、それなりに公正な形で委員会の講演とかその他をやっていただきたい。

 委員長にお聞きしたい。委員長、資料二―七を見ていただきたいと思う、食の安全委員長。資料二―七の3、「審議の公平さに疑念を生じさせると考えられる特別の利害関係(例えば、委員又は専門委員が、1申請資料等作成者には該当しないが、資料作成に関係していた場合、2当該申請者から研究費を受けている場合、3当該申請者の役員等に就任していた、又は就任している場合)を有する委員又は専門委員は、委員長又は専門調査会の座長に申し出るもの」とし、「この場合の審議及び議決については、1の(2)と同様とする。」と。こういった者は議決には参加させないとか、いわゆる食の安全委員会の公正さというものが十分担保されなければならない。委員長、それについてどう考えられるか。

寺田参考人 おっしゃいましたように、私ども食品安全委員会というのは、中立で公正で科学的で独立性を持ってということで、大変神経を使って私としてはやっているつもりでございます。

 それで、今御指摘のございましたこの資料の二―七の3というところで、多分、利害関係者じゃないかという御指摘だと思いますが、これは許認可とかそういう話じゃなくて、したがいまして、ここにあります申請資料という、申請者じゃございません。

 それで、もう一つ、敷衍して言わせていただきますと、専門委員の方で、これはなかなか難しいところなんですけれども、私が個人的に言っていますのは、学者として発言する場合と、専門委員会の委員として発言する場合は区別してやってくださいよというふうに言っているんです、大変難しいところがあると思いますけれども。そうしないと、これは一つ一つ断ってくれぐらいまで言っているんです、このごろ。

山田委員 委員長は事務局長が用意したので、それで、専門委員その他についてもそのまま任命という形になったかもしれませんが、いわゆる委員長として、個人と、その場における考え方の違いをはっきりさせてほしいと言っても、そう簡単にいくものじゃない。裁判においても、最初から、予断を持った人は裁判から、裁判官から外す、それが建前なので、それはよく考えて慎重に、この問題は大変大事なことなので審議してほしい。きょうはこれ以上のことは言いませんが、次回、もしそのようなことがあれば、さらに突っ込んで聞きたいと思っております。

 次に、もっと大事な話を聞かなきゃいけないと思っていまして、亀井大臣にお聞きしたい。

 亀井大臣、実は、私ども大村において、スーパーにアメリカ産のブロッコリーが並んでいるわけです。これが、一週間も二週間もそのまましゃんとしゃんとしている。ところが、私の友人のつくった国内産のブロッコリーというのは、すぐ、店頭に並ぶと二、三日でしなびてしまう。私のところに、あれはどういう薬品を使っているんでしょうか、そういう話があって、調べてみると、アメリカ産のブロッコリーというのが物すごい量で入ってきている。

 このところ、生鮮野菜が物すごい勢いで、ロシアのカボチャとか、遠方から運ばれていて、その量というのは、九〇年代の三倍から四倍になっている、あるいは四倍から五倍とも言われています。そうすると、一割輸入がふえれば、野菜の値段が三割下がると言われています。もうこれじゃ野菜農家はやっていけない、やっていけなくなっている。

 大臣、ひとつアメリカ産のブロッコリー、これについては、実際に農薬の検査、いわゆるどういう薬品を使っているのか。例えば、私が調べた限りでは、アメリカから三週間、船のコンテナに積んで運ばれてくる。そして、いわゆる摘花されて、ブロッコリーが摘まれて、日本の店頭に並ぶのは少なくとも四週間かかっている。一体どういう薬品が使われているのか調べてほしいと事前通告しておったんですが、これは厚生労働副大臣でもいい、わかったら、どちらか答えていただきたい。

亀井国務大臣 農薬の問題、薬品の問題等につきましては厚生労働省から御答弁をいただけるかと思いますけれども、お話しのように、一般的に、野菜の鮮度は時間の経過に伴いまして劣化する、これはそのとおりだ、こう思います。

 ただ、国内の商社あるいは卸売市場関係者、小売関係者からいろいろ聞くところによれば、輸入されたネギやあるいはブロッコリーなど、一部の国産品と遜色のない鮮度の維持が図られている品目があるようでございまして、特に米国産ブロッコリーにおきましては、低温コンテナ等による氷温輸送技術の発達、こういうことで、輸送段階における鮮度の低下が小さい、このように指摘をされておるところであります。

 輸入に際しましての農薬等の検査につきましては、厚生労働省の検疫所におきましていろいろの検査が行われている、このように承知をいたしております。

山田委員 厚生労働副大臣にお聞きしたい。

 私の資料の中に添付されている資料を見ていただきたいんですが、世界に登録されている農薬、これが七百五十種類ぐらいある。そして、その中で、いわゆる腐らないブロッコリー、そして中国からの野菜についても、腐らないというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、なかなか、いつまでも鮮度が保たれると言い直していいかもしれない。そして、中国からの長ネギ、これも一緒、シイタケとかその他の野菜も一緒なんですが、そういったものは、殺虫剤の中に入る、そういったものが、調べてもらった限りでは殺菌剤として使用されているものが百二十四品目あるわけで、そして、米国では収穫後の使用も認められている。

 そうすると、かなり、そういったいわゆる殺虫剤で、コンテナで運ばれている間に殺虫剤漬けに、いわゆる防腐剤漬けになっているんじゃないか、そういうおそれがあるわけなんですが、日本の輸入検疫の中では五%しかサンプル検査はやっていないわけですけれども、その中で検査できる品目は、次の資料三―二を見ていただきたいんですが、七十五種類、これだけしか検査していない。これは大いに問題になるんじゃないか。森副大臣、どうお考えでしょうか。

森副大臣 委員御指摘のとおり、輸入時の残留農薬に関するモニタリング検査においては、通常、有機燐系農薬、有機塩素系農薬、カーバメート系農薬、ピレスロイド系農薬などのうち、主要な七十五農薬について対象としております。しかしながら、実際の分析においては、ガスクロマトグラフィーで分析いたしますけれども、この七十五農薬以外の農薬の検出が疑われました場合には、確認のための当該物質の分析も行っているということでございます。

 米国産ブロッコリーや中国産ネギについて、これまでのところは特段の問題は確認されておりません。

山田委員 まず、七十五品目しか、殺菌剤だけでも百二十四品目あるのに、いわゆる防腐剤等々のものがあるのに、残留農薬も含めて全部で七十五種類しか検査できない、この体制自体が問題なんじゃないのか。これは問題ないと思いますか、副大臣。

森副大臣 なかなか、七百数十種類を対象とした検査というのは、私もエンジニアでございますけれども、ちょっと難しいと思うんですね。ただ、七十五種類を対象としておりますけれども、分析すれば、ガスクロマトグラフィーで波形が出てきますから、それが特に顕著なものがあれば、それについては特別に調べるということで、私は、とりあえず、その七十五種類を対象とするということについては、必ずしも不適切ではないというふうに考えます。

山田委員 それでは、副大臣、森さん、アメリカは、日本からアメリカに牛肉を輸出する場合には、それは指定された四工場でかなり厳しい。私もここに資料を持ってきていますが、例えば、ホタテ、水産物にしても、指定された加工場以外のものでは日本から輸出できない、それくらい厳しく。例えばオランダの花市場に行ってきましたが、それなりに厳しい検査官がいて、かなり検査しながらやっている。

 日本においても、アメリカからのブロッコリー、中国からの長ネギ、そういったものが危ないとなったら、どういう農薬、どういう防腐剤、どういう殺虫剤を使っているか、それについて当然調べに行く必要があるんじゃないのか。そういう検査官を出したことがあるのかないのか、それだけで結構です。お答えいただきたい。

森副大臣 そういう水際での検疫というのは当然行っているわけでございますけれども、二国間協議の過程では、必要に応じて職員を輸出国に派遣して現地調査を行っております。例えば、実際には、御参考までに申し上げますと、平成十三年度にはタイに一人四十二日間派遣いたしましたし、十四年度にはやはり同じくタイに二人二十二日間、十五年度にはインドに三人十六日間というふうに、随時派遣をしているところでございます。

山田委員 中国、アメリカにやったことがあるのかないのか、私の時間もなくなったので、これで質問を終わります。中国とアメリカにやったのか、やっていないのか、それだけで結構です。これで質問を終わります。やっているのか、やっていないのか、それだけで結構。

森副大臣 アメリカについては、BSEの問題については調査に派遣をしております。また、中国については、冷凍ホウレンソウについて調査を派遣しております。

山田委員 時間がなくなったので、きょうはちょっとBSEにこだわり過ぎて大変残念なんですが、またの機会にこの問題を質問いたします。

 終わります。

高木委員長 次に、楠田大蔵君。

楠田委員 民主党・無所属クラブの楠田大蔵でございます。

 先日、衆議院を通過いたしました農協法の改正でございますが、今後気になる点もまだまだございますので、補足して質問をいたします。

 まず、特に私は銀行出身、住友銀行出身でもございますが、代表質問をさせていただいているときに、ある自民党の方のやじで、銀行出身のくせに農業のことが何でわかるんだというようなことを言われた記憶がございます。私は、この発言を聞いておりまして、代表質問の最中でございましたけれども、やはりこうした発言こそが、それこそが今の農業というものを狭い枠に閉じこめて、古い体質を残させてきた元凶ではないか、そのようにも思ったところでございます。やはり農業がきつい今こそ、さまざまな経験を積んでこられた諸先輩、多くおられますけれども、そうした若い世代の声も、新しい風を吹き込むことで農業というものがさらに発展していくんじゃないか、私は、そういう思いで今回質問をさせていただきたいと思います。

 基本的に、今までの質問の関連という形になりますが、前回の質問に対して、共済事業の運用で、国債、地方債、社債が約八割を占めるというお答えでございました。これはほかの民間会社と比べて突出して公社債に偏っており、その分、国債の暴落リスクにさらされていると言えると思います。また、それと同時に、資産と負債の管理、つまりデュレーションマッチングがうまく行われているかが重要であると考えます。

 そこで、まず、運用の管理を全共連の中でどのような部署で行っているのか、この点をお聞きいたします。

川村政府参考人 全共連の財産運用の部署でございますが、まず、資金債券部、それから市場運用部、法人金融部という運用担当部局、これがみずから定める投融資基準に基づきまして日常的な運用を行っております。

 また、これに加えまして、運用リスク管理部、ここが各運用資産全体の総合的なリスクにつきまして、各運用担当部署にリスクの上限を設定することによりましてこれをコントロールしているというふうに承知をいたしております。

楠田委員 さらに、そこでどのような人材を全共連としては求めておられるというか、採られておりますでしょうか。

川村政府参考人 人材の関係でのお尋ねでございます。

 全共連の内部職員の養成、研修体系、必ずしも全体、詳しくはございませんけれども、内部の運用担当要員育成要領等の内部規程に基づきまして、計画的、段階的また組織的に人材を養成しているということを聞いております。また、証券アナリスト検定会員等の資格取得を奨励する等、その種専門家の養成にも非常に努力をしているというふうに伺っております。

楠田委員 この運用の結果等は、だれに報告して、どのような決裁を行い、そのディスクロージャーというものはどのようになっているか。従来は、ディスクロージャー、自主規制、自主判断ということで、ほかの民間会社と比べて劣っていたところもあると思いますけれども、この点、変わった点はありますでしょうか。

川村政府参考人 この運用の手続等でございますが、これはその金額等に応じまして、内部の職務権限に基づく決裁、金額等によりましては最高の理事会決議というものもあるようでございますけれども、経て行われているというのがまず手続でございます。それから、財産運用の結果につきましては、定期的に、これもいろいろ期間の長短はございますが、理事会なり経営管理委員会に報告をしているというのが実情であるというふうに聞いております。

 また、こうした財産運用の内容につきましては、毎年度、いわゆるディスクロージャー誌の「JA共済の現状」というものを作成して公表しているということでございます。

楠田委員 毎年度ディスクロージャー誌を発行しているということでございましたが、ちょっと通告していなかった部分でもありますが、これはいつごろからディスクロージャー誌を発行されているのか、また、総合農協というのは九百以上あると思いますが、こうしたすべての部分で徹底が図られるような何か指導を、実質的に、教えていただければと思います。

川村政府参考人 手元の資料を見ましたところ、平成八年度からやっているようでございます。

楠田委員 私も銀行に勤めておりましたが、ディスクローズ、経営の観点で大変重要である、お客様にどのようにお知らせするか。

 やはり農協というものも、総合農協も九百以上、全国に大変広がっているものでもございますので、これを在庫の面で確実に確保する、しかも、それをわかりやすく説明するということは大変重要だと思います。これからまた現場の養成等もお聞きしますが、後に譲りたいと思います。

 ちょっと一つ飛ばしまして、後に持っていきまして、今、公社債に偏っているという指摘をさせていただきましたが、残存期間別の債券残高というもの、これはどのようになっているか、教えていただければと思います。

    〔委員長退席、山田委員長代理着席〕

川村政府参考人 長期運用資産の平均残存期間でございますが、全共連が公表している数字を申し上げます。

 三年以下が一八%、三年から五年が一五%、五年から七年が二二%、七年から十年が二一%、十年超が二一%、こういう数字になっております。

楠田委員 それでは、今の部分が資産ということになりますが、負債、保険契約という意味で、保険商品の大体の平均年数、これはどのようになっていますでしょうか。

川村政府参考人 お尋ねの点でございますが、この点については、公表されていないということで御了解いただきたいと思います。

楠田委員 公表されていないということでありましたが、民間の保険会社であれば、ほぼ、自分たちの商品の年数がどのぐらいの偏りがあるか、主力商品がどういうものであるかということは当然わかると思うんですけれども、ちょっと、具体的な数がないにしても、長期的なものが多いのか、短期的なものもかなりあるのか、その大体の割合ぐらいでいいので教えていただければと思います。

川村政府参考人 お尋ねの点でございますけれども、責任準備金の対応債券のデュレーションで計算をいたしますと七・五年ということになっております。

楠田委員 ということでございましたが、債券の残存期間というのが、大体全体的に、民間の保険会社のを調べましたけれども、会社によって、長目のものが多かったり短期的なものが多かったり、いろいろ戦略的に違うと思いますが、今お聞きしていますと、全共連の方は、長期的なものが、五年超のものが六割ということでちょっと多目だと思いますが、全体的になだらかかな、そういう気がしております。

 商品自体の平均も七年ちょっとということで、そうしますと、このデュレーションマッチング、資産と負債の管理というのは、マッチングはうまくいっていると言えますでしょうか。

川村政府参考人 まさに商品としまして長期のものがあるわけでございますので、会計上、責任準備金対応債券に区分するという必要があるわけでございます。

 既に委員も御案内のとおり、この債券に区分するためには一定の基準がございます。一つは、リスク管理を適切に行うための管理、資産運用の方針等が決定されているかどうか、それから、いわゆるデュレーションマッチング、期間対応の有効性の判定と定期的な検証が行われているかということでございまして、この要件を満たして全共連も実施をいたしておりますので、適切に管理されているものというふうに承知をしております。

楠田委員 ということは、今のが、ガイドラインがあるということでよろしいでしょうか。

川村政府参考人 ガイドラインがあるかというお尋ねでございます。

 この点につきまして、農林省として定めているわけではございません。ただ、全共連がみずから対応しておりますが、一つは、責任準備金の対応債券に関します会計上の取り扱いというものにつきましては、公認会計士協会が定める要件がございます。これに従っているというのがまず一点でございます。

 それから、これを受けまして、全共連は、これを管理するための内部規則としまして、責任準備金対応債券規則それから責任準備金のデュレーション算出要領というものを定めて、それに従って実施をしているということでございます。

楠田委員 ちょっと細かくなりますけれども、公社債では、金利が上がるとその時点で価格が下がり、時価評価すれば含み損になるということになると思いますが、このような金利変動リスクに対する措置等会計上の工夫、ちょっと言われたかもしれませんが、まず、金利変動リスクに対する措置というものがあるとすれば教えていただけますでしょうか。

川村政府参考人 全共連の財産運用、これもこれまでにもお尋ねがありましてお答えしておりますけれども、将来の共済金の支払いに備えるものということで、特に三十年に及ぶような長期な支払いを約束しているという特性がございます。そういうことで、この特性に応じまして、共済事業を行う組合については、保険会社もこれは同様でございますが、金融商品の時価会計の導入につきましては、責任準備金対応債券という区分で特別の対応が認められているわけでございます。

 そして、この責任準備金対応債券に区分しました債券につきましては、満期保有目的有価証券と同様に、決算時には時価評価はしないで原価によることが認められるということでございますので、この含み損益等は決算には影響を及ぼさないということでございます。

 こういう会計制度を活用いたしまして、このもとで、全共連は、負債の特性に応じまして長期的な観点に立って行うということで対応しておりますし、それから、資産と負債の期間対応を一定の範囲内で一致をさせるいわゆるデュレーションマッチング、これを実施いたしまして金利変動リスクを回避しているというふうに承知しております。

楠田委員 それでは、コストカットということで前にちょっとお聞きしたこともあるかもしれませんが、金利がどれぐらいになったときに損切りをするというか売却をするというような取り決めというのはありますでしょうか。

川村政府参考人 こういった責任準備金対応債券になるものについては、その時々に売却するということではなくて長期保有ということでございますので、そういったルールはございませんが、短期のものにつきましては、一定の限度額を定める等、ルールをつくって対応しているということでございます。

楠田委員 ありがとうございました。

 先ほどの話で、保険業法に基づく、会計基準に関しても公認会計士協会の運用に基づく取り決めを導入されているという話でございましたので安心もいたしましたけれども、これからもこのような適正な運用がなされるように指示、監督をいたしていただきたいと思います。

 次に、さきの農協法の改正で、共済の点でのもう一つ重要な点として、クーリングオフを初めとする契約者保護に資する保険業法の規定がようやく盛り込まれた。これにおきまして、逆に言えば、これを徹底させるという農林水産省の責任がより強まったとも言えると私は考えております。

 自主的に契約者保護に資するような運営をするということは重要と思いますが、この点に関しまして、まず、共済加入事業においてたしか平成六年ごろから、共済推進専任職員、ライフアドバイザー、LAというものの推進が行われていると聞いております。これはどのような資格制度で、試験制度になっているのか、これをお伺いしたいと思います。

川村政府参考人 共済の専任推進員としまして、LA、ライフアドバイザーと称しておりますが、この制度を全共連として設けております。

 これは、農協の共済事業でございますので、基本的には農協の職員によって行われているわけでございます。共済の加入推進についてもそういうことでございますが、ただ、昨今は非常に組合員のニーズも多様化しておりますし、共済商品も多様化、複雑化しているという状況がございます。系統内部におきましても、共済の商品内容につきまして専門的な知識を持った職員がやはり必要だということで、その取り組みを強化しているところでございます。

 そして、自主的な資格制度ではございますが、全共連の実施をいたします共済商品の内容あるいはコンプライアンスの研修を受講したということがまず一つの要件、そして全共連に登録をしたという者をライフアドバイザーとして呼んでいるところでございます。

楠田委員 民間の保険会社なり銀行での、保険を売れるようになってきていますので、その資格制度というのを、資格を登録する、試験を受けて登録するという形になっております。

 先ほどの話で、ちょっと聞き漏らしたかもしれませんが、試験というのはおありで、どのぐらいの割合で合格されるのか、それもお聞きしてよろしいでしょうか。

川村政府参考人 ライフアドバイザーにつきましては、試験は実施しておりませんが、今お答えいたしましたとおり、一定の研修を受講してそれを修了した者というものをその要件にしてございます。

 ちなみに、十四年度で、毎年度のはあれですが、一万九千人強のLAの方がいらっしゃるということでございます。

楠田委員 ということであれば、農協の中で一定の研修を行われて、それを時間的にこなせば、すべての方がライフアドバイザーとして認められ、販売をする、そのように考えてよろしいでしょうか。

川村政府参考人 ライフアドバイザーでございますけれども、今も申し上げましたように、特別の試験制度となってはおりませんけれども、行います研修の内容は、共済事業の意義でありますとか必要性、それからJA共済が取り扱っている商品の内容や引受事務、共済金の支払い事務、もう一つは、JAで定めております金融商品の勧誘方針や説明すべき重要事項等コンプライアンスの遵守に関する事項、それから組合員の共済ニーズの把握やニーズに適しました共済商品の選定等の方法、それからまた、フォローアップも行っておりまして、LAの資格を取得した後も、公的年金等社会保険制度あるいは税務に関する専門研修というのを引き続き実施をしているということで、資質の向上を図っているというふうに伺っております。

楠田委員 もちろん、各民間の金融機関でも、私も受けたこともありますけれども、完全であると言いがたいというのが実質であると思います。それぞれの社員、職員の努力次第であるということもありまして、それによって客がとれるかどうか変わってくるということ、実質的にはそういうことにはなっていますけれども、それでも、私が調べたところによりますと、民間でこの資格を取るには、資格試験というものがあって、八割の合格だと。八割が合格ということで、ほとんど通るといえばそうなんですが、やはり勉強しないと通らないということが私は言えると思います。

 また、そうしますと、ライフアドバイザー、今、数字も一万九千人強と言われましたけれども、では、実際に共済商品を売られる際に、ライフアドバイザーの方が売られる量と、あと、全職員一斉推進というのがいまだに行われていると聞いておりますけれども、この割合はどれぐらいになりますでしょうか。

    〔山田委員長代理退席、委員長着席〕

川村政府参考人 十四年度の実績で申し上げますと、LAによります推進が四九%、それからその他の一斉推進等によりますものが五一・〇%ということでございます。

 これは、今そういうことで約半々ということでございますが、平成十年度の実績、四年前の実績でございますが、これですと、LAの推進が三三・六%、一斉推進が六六・四%ということで、おおよそ三分の一であったということでございますので、LAによる推進がかなり増加をしている傾向にあるということを御理解いただきたいと思います。

楠田委員 もちろん、四年前のデータに比べればふえているというのは数でわかりますが、私からすれば、皆さんからしてもそうだと思いますが、わざわざライフアドバイザーという資格を導入したのに半分以下の人しか売っていないというのは、ちょっと僕はびっくりするところなんです。

 LA以外の人が売っても、これは別に問題がないというお考えでしょうか。

川村政府参考人 全共連自体、今後、LAによる契約というものをまたさらに大幅に増加をさせるという目標を持っておられます。三年間で三分の二はLAでということを目標にされておりますけれども、LA以外の職員に対しましても、全くこの内容についてノータッチということではなくて、当然、保障設計の考え方あるいは共済事務の内容、推進担当者の法令遵守、こういった基礎的なもの等につきましては、必要に応じて指導を必ずやるようにしておりますので、その点は問題はないというふうに思っております。

楠田委員 私は大いに問題だと思っておりまして、民間の保険会社であれば、資格がない方が売るとすれば、これは登録外販売ということになりまして、保険業法の三百十七条の二、一年以下の懲役もしくは罰金ということになっているわけでございます。共済といえどもかなり商品性は多様化してきており、今まで情実だったからよかった、その裏返しのように思えますが、LA以外の人が売るということは、私はどうも、本当に適正に販売がされているのかなという危惧を強くいたしております。この点、今回、ちょっと指摘にとどめます。

 そうしますと、農業者の人がほとんど顧客だと思いますが、苦情というのは実際ないんでしょうか。また、それに対して処理もどのように行っているか。

川村政府参考人 苦情の問題でございます。

 農協あるいは全共連、ここでは、契約内容の照会、相談もやっておるわけでございますが、あわせて苦情を受け付ける窓口を設置いたしておりまして、事故処理時の対応あるいは支払い査定等に係ります苦情申し立てがあるというふうに聞いております。

 また、この処理をどういうふうに行っているかというお尋ねでございます。基本的には、当事者同士といいますか、契約者と農協との間で解決するということがまず第一義だと思います。そして、例えば支所でのトラブルはその支所で判断をしてやるというのがまず原則でございますけれども、本所の担当に報告する等、またその指示も得ながら対応する。しかし、中には、こういった当事者間では解決できない案件もあるように聞いておりまして、例えば農協の支所との間で生じたトラブルを農協本所で直接対応するということもやっておるようでございますし、また、全共連の県本部とも十分相談、協議を行うということで、適正に処理をしているというふうに聞いております。

 また、苦情の申し立てでございますけれども、これは御案内のとおり全体を正す非常に貴重な情報でもあるわけでございまして、将来の苦情の発生を防止するあるいは契約者のニーズを把握するという意味で、その都度記録をして蓄積をし、定期的に取りまとめ担当者に周知、また事業運営の改善にもつなげているというふうに活用をしていると聞いております。

楠田委員 そのようなお話でございましたが、これは検査をする際に苦情処理がしっかり行われているかというような観点で、今お話をお聞きしていましたら農協本体で処理をすることもあるということでしたが、同じ上部組織で対応するということになっても何か黙らせられるだけじゃないかという気もするので、この観点から、何か検査でマニュアルというものはありますでしょうか。

船本政府参考人 検査マニュアルに関するお尋ねでございますけれども、共済事業の適正な実施を確保するためには、共済事業の事業実施主体が苦情等に対して的確に対応することが重要であると考えております。このため、全共連、全国共済農業協同組合連合会でございますが、この検査に当たりましては、農林水産省の方で策定いたしました系統共済検査マニュアルに基づきまして苦情等に対処する体制が整備されているかどうかというのを検証することとしております。

 具体的に申しますと、苦情等を手続に沿って速やかに処理しているか、あるいは苦情等、利用者の申し出事項の記載簿を整備しているか。それから、先ほどのお尋ねでございますが、未解決あるいは支所の段階で解決しないものについてコンプライアンス担当部門等に報告するというような形も行っておりますので、コンプライアンス担当部門が適切にその状態を把握して苦情等の事後確認を実施しているかといったこともチェックをすることにしておるところでございます。

 今後とも、的確な検査の実施を行ってまいりたいと考えております。

楠田委員 済みません、時間もほとんどありませんので。

 今のお話でありまして、ちょっとわかりにくい点もありましたが、金融庁では、教育指導不十分ということがあれば、適切に対応していないということがあれば改善を求める制度というものはありますので、やはり競争がなかなかないと、いたいけな農業者の方々が、今までの話を聞いていますと、説明を本当に適切に受けてほかの民間の会社と比べて入っているのかどうかというのは甚だ疑問だと私は感じます。

 その実態として、解約率というのはどれぐらいになっていますでしょうか、ちょっと飛ばしてしまった部分ですけれども。

川村政府参考人 共済契約の解約失効率でございます。平成十四年度の保障共済の金額ベースで申し上げますと、四・四七%というふうになっていると聞いております。

楠田委員 済みません、もう時間が過ぎていますが、民間では八%以上あるという中で大変低いということは、本当に納得されているのか、もしくはほかに選択肢がないのかというのはちょっとわかりませんが、最後に、大臣、今までの議論をお聞きになられまして、これは、世界では金融庁が一元的に協同組織、組合も管理をする。今までの話でも、保険業法の趣旨は受け入れてやっているわけですから、この点に関して、海外との違い、日本でこのまま認めていくのかどうか、また、本当に農業者の方々が適切な判断ですべて加入されて、納得されて、これだけ解約も低いとお考えか。ちょっとその点、私見でも結構です。

亀井国務大臣 この共済制度、組合員の相互扶助、こういう視点に立ちまして組合員の皆さん方が加入されている。私も、地域がそういう地域でありますので、関係者が、先ほどのLAあるいはまた一般推進、こういうようなことでいろいろ努力をされ、組合長やあるいは理事の皆さん方が大変共済のことにつきましていろいろ意を注いでおられることを承知いたしております。そういう面で、その使命が果たされるようなことが一番必要なことではなかろうか、こう思います。

 なお、諸外国の例、一元的な監督が行われているかどうか、外国の例につきましては承知をいたしておりませんが、それぞれ、いわゆる歴史的な背景、共済事業、そういうものもあろうかと思いますが、それぞれの主務官庁、そういう監督のもとに事業が、その目的が達成されるように私どもも十分注意をして対応してまいりたい、このように思っております。

高木委員長 もう時間ですから。いいですね。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

高木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。楢崎欣弥君。

楢崎委員 きょう、私は有明海問題について質問いたしますけれども、冒頭、IWC関連、そしてハンナン事件について数点お伺いします。

 まず、七月にイタリアのソレントで第五十六回IWC総会が開催されますけれども、今日の状況も含めて、我が国はどう対応されるのか、それをまずお聞かせいただきたいと思います。

亀井国務大臣 七月にイタリアのソレントでIWCの年次総会が開催をされます。我が国は、鯨類資源は重要な食料資源であり、持続的に利用されるべき、また、食習慣、食文化について相互尊重の精神が重要である、こういう基本認識に立ちまして、捕鯨の再開を目指しておるところでもございます。

 現在のIWCの状況、反捕鯨勢力に対して持続的捕鯨支持勢力がますます拮抗してきておりまして、持続的利用の原則が徐々に浸透してきている、このようにも考えております。

 したがって、七月のソレントでの年次総会におきましては、我が国の主張を国際社会に明確に訴えまして、捕鯨再開を目指して全力を上げてまいりたい、このように考えております。

楢崎委員 鯨は見物するものだというようなばかな論理で設置されました保存委員会、これも開催されますけれども、我が国は出席するんですか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 昨年の五十五回ベルリン会合におきまして、御指摘の保護委員会、我が国を初め二十カ国が反対したわけでございますけれども、少数差ということで可決されまして、この設立が行われているわけでございますけれども、ただ、IWCというのは、あくまでも鯨類を有効に利用するということで設けられた国際条約でございます。こういった保護に偏ったような委員会を設けるということは、そもそもIWCの精神に反するのではないかというのが私どもの基本的な立場でございまして、例えば、鯨の持続的利用の概念を含めるというふうなことで、中身が目に見える格好で見直しが行われれば別でございますが、現在の形では参加すべきではないというのが基本的な我々の立場でございます。

楢崎委員 ここに自由民主党捕鯨連盟の声明文の案があります。その中に、「科学的根拠のない南氷洋サンクチュアリを廃止するとともに、同様に科学的根拠のない海洋保護区域新設などいかなる保護の動きにも断固反対すること。」とあります。私ども民主党捕鯨連盟も全く賛成であります。

 そこで、私は、昨年七月、当委員会で、資源の持続的利用を考えるというIWCの存在意義が問われるところまで来ているのではないかと申しました。ソレント総会に対する日本政府の対応を私たちも支援していきますし、その総会を迎えるに当たっての政府の決意というものをお聞かせいただきたいと思います。

亀井国務大臣 今委員からも御支援をちょうだいし、ぜひ我々もそのような中で対応してまいりたい、このように考えております。

 本年の年次総会、捕鯨再開の前提となります改訂管理制度の実現、さらには北西太平洋鯨類捕獲調査の見直し、さらには非科学的な南氷洋サンクチュアリーの見直し、これら重要な課題を抱えた会合であるわけであります。

 我が国は、鯨類資源を持続的に利用すべき基本的な立場に立ちまして、捕鯨再開を目指して全力で取り組んでまいりたい、このように考えておりますので、ぜひ御支援をよろしくお願いいたします。

楢崎委員 御奮闘を期待していますし、私たちも支援をしていきたいと考えています。

 次に、ハンナン事件について伺いますけれども、このところ、元ハンナン会長と農林水産省との癒着を示す報道がなされていまして、不愉快な思いをしている者の一人なんですけれども、大体、この元ハンナン会長が関与した不正受給総額は幾らになるんですか。

白須政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から御指摘がございました浅田容疑者が詐欺罪等で逮捕、起訴された事件に係りますいわゆる不正受給額につきましては、捜査当局によります捜査に基づくものでございまして、私ども農林水産省といたしまして、ただいまのこの犯罪事実の対象となりました金額を具体的に申し上げるということは差し控えさせていただきたいというふうに考えている次第でございます。

楢崎委員 そう言われるのであればやむを得ないでしょうけれども、莫大な金額になることは間違いがない。

 それで、牛肉買い取り事業、これの委託制度がわざわざ設けられたことによって、元ハンナン会長が専務理事を務める全同食、これが実質的な実施主体となって、そこから不正受給がエスカレートしていくわけですけれども、この委託制度、これは元ハンナン会長の要請に基づいて設置されたんですか。

白須政府参考人 ただいまの委員のお話でございますが、この事業実施主体の選定に当たりましては、まず全国的な食肉の生産者の団体、加工業者の団体、それから流通業者の団体ということで、国産牛肉の流通の大宗を担うというふうにしておったわけでございまして、したがいまして、事業実施主体といたしましては、全肉連を含みます六団体、これを事業実施主体にしておったわけでございます。

 しかしながら、これら団体に所属しない事業者は事業に参加できないということになりますと、この事業の目的といたしまして、できる限り多くの対象牛肉を市場から隔離する、こういう事業目的が達成できなくなるということでございますので、これら団体の会員以外からも効率的に対象牛肉を買い上げるということで、当初からこの委託制度は予定をいたしておりまして、全肉連といたしましては、全同連、ただいま委員からお話がございました全同連を含む三団体、全同連だけではございませんで、ほかに、東京食肉市場卸商協同組合あるいは日本食肉流通センター卸売事業協同組合、全同連を含みますこの三団体に委託をして行うというふうにしたわけでございます。

 したがいまして、ただいまお話しの、要請によりましてこの委託制度を設けたということではないということでひとつ御理解を賜りたいと思う次第でございます。

楢崎委員 しかし、元畜産部長が、全同食を買い取り側にするために事業の委託制度を設けたと明らかにしているんじゃないですか。

白須政府参考人 ただいま私が申し上げましたとおり、まず全国的な生産者団体あるいは加工業者の団体、それから流通業者の団体というのが原則的なこの事業の実施主体でございまして、しかしながら、これだけに限定するということになりますと、この団体に所属しておらない会員以外の牛肉というものが取り扱えないというふうなことでございましたので、極めて短期間のうちに可能な限り多くの在庫牛肉を隔離する必要ということもございまして、したがいまして、全同連ほか三団体につきまして委託という形で肉を保管する事業の形をとりまして、そういう形で委託を行うということでこの事業を推進しようというふうにした次第でございます。

楢崎委員 高木委員長にお願いがあります。元畜産部長の発言もありますし、この元畜産部長を当委員会に参考人として招致していただくように理事会でお諮りを願いたいと思います。

高木委員長 理事会で協議をいたします。

楢崎委員 農林水産省とこの元ハンナン会長を含むいわゆるハンナングループとの間に介在した国会議員はおりませんか。

白須政府参考人 特段、承知をいたしておりません。

楢崎委員 農林水産省は一方の当事者ですから、他人事みたいな答弁しないでくださいね。

 いずれにしても、捜査にかかわることでもあるでしょうし、私ども自身にも漏れ聞こえてくる部分があるんですよ。これは参議院選挙が終わったらいずれ明らかになっていくと思います。

 この問題は次の機会に回しまして、本論に入らせていただきます。

 私は、先日の委員会で、大臣が中長期開門調査の見送りを決定されたことに抗議の意も含めて質問をしたつもりです。その後、私は議事録を読み返しました。やはり、大臣、大臣の答弁はおかしいですよ。つまり、筋が通っていない。つまり、漁民の不安を払拭しなくてはいけないと言いながら、その漁民が強く求めている中長期の開門調査はやらないと言う。

 大臣は、先日、私の質問に対して、「漁業者の皆さん方が期待をされております再生への道筋を明らかにするために、今何をなすべきか、こういうことを検討し、十一日の日に発表したようなことでございます。」と答弁しております。多くの漁業者の方が求めておられるのは開門調査なんですよね。論理矛盾じゃありませんか。

亀井国務大臣 私は、有明海の再生、この道筋を明らかにしたい、こういう点、これは漁業関係者の方々とも同じ思いではなかろうか、このように思い、そして中長期の開門調査につきましては、真剣に考え、総合的に判断をして、先般申し上げたようなことを申し上げたわけであります。

楢崎委員 前半はいいけれども、後半が間違ってきているんですよ。

 結局、ノリ対策第三者委員会の提言、それから福岡、佐賀、熊本、三県県議会の提言、そして多数の沿岸市町村の調査要求も無視された形になっているわけですね。環境省に設置された評価委員会の存在も無視されている。大臣がどのように言われようと、今日の時点でその調査見送りを決定されたことは、やはり大臣がいろいろな意見を聞き、調査を参考にして結論を出すと言ってこられたことと相反するんですよ、結果的に。

 諫早湾の隣に、佐賀県の太良町というところがあります。ここの四十七歳の漁師さん、この方も、それこそ祈る思いで開門調査を求めてこられた方です。市川副大臣が調査見送り方針を関係漁連に伝えられた二日後の四月二十四日、この方はみずから命を絶たれた。もちろん原因は定かではありませんけれども、調査見送りにショックを受けられたことは事実だと思うんですよ。悲惨な出来事だと私は思います。

 そこで、金田副大臣にお伺いします。

 副大臣が筆頭理事をされておられるときに、ともに現地を視察して、現場の苦悩といいますか、それを目にし、耳にしてきたわけですけれども、金田副大臣は、今度の調査見送り決定についてどのように受けとめておられますのか。今は政府側の立場におられますけれども、人間金田としてお答えをいただきたいと思います。

金田副大臣 お答えさせていただきます。

 楢崎委員とは、いろいろとこの問題について現地に何度か足を一緒に運んだ仲でございます。そしてまた、大不作の年、十二年のときは、私、農林水産省の政務官をやっておりましたし、その後、この委員会での有明海の再生の議員立法については、委員とともに新しい議員立法の成立のために一緒に汗をかかせていただいた仲でございます。

 私の基本的な考え方としては、あの争いの海、抗争の海を平和の海にしなければならない、そして、しかる後に豊かな海を再生しなければならないというような基本的な考え方に立っているわけでございまして、漁業者の方々ともいろいろな対応をさせていただいた経験がございますが、このたびの五月十一日の亀井大臣の御判断というのは、まさに現実に即した、冷静沈着な、まさに適切な御判断だというふうに思っている次第でございます。

楢崎委員 どこが現実に即しているんですか。それが視察をともにした金田先生のお言葉とは、本当に悲しく思いますね。

 きょうは、有明海特措法によって環境省に設置されました有明海・八代海総合調査評価委員会の須藤隆一委員長においでいただいておりますので、若干お聞きしたいと思います。

 須藤先生、きょうはわざわざ仙台からおいでいただきまして、ありがとうございました。

 評価委員会は、委員長みずからが言われますように一流の頭脳が結集された委員会ですから、漁民の方の期待も大きいわけですね。今、有明海異変の主因ではないかと疑われている諫干事業、これについても、もう御案内のとおりです。

 そこで、須藤委員長は、この評価委員会が設置されたときに、諫早湾も含め、あらゆる問題を取り出してこそ、再生への課題が絞られる、その上で科学的な総合評価を下したいと発言されていますが、今回の農林水産省の開門調査見送り、どのように受けとめられましたでしょうか。

須藤参考人 委員長をお預かりしております須藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 お答えをさせていただきます。

 評価委員会の任務は、国及び関係県の総合的な調査の結果を踏まえ、再生に係る評価を行うことにございます。そこで、評価委員会におきましては、さまざまな幅広い調査結果の報告を受ける必要があるものと考えております。

 今回、農林水産省において中長期開門調査を実施しないという判断に至ったわけでございますが、重要なことは、それによって再生に係る評価に支障がないようにしなければいけない、こういうふうに考えているわけでございます。したがいまして、中長期開門調査を行わないとするならば、それ以外にどのような調査を行うのか、それによってどのようなデータが得られるのかということについて検討する必要があると考えております。

 以上でございます。

楢崎委員 どのような調査が評価委員会として求められるのか、これから検討していかれるんでしょうけれども、五月十九日に開催されました評価委員会では案の定、農林水産省に対する批判が相次いだと聞いております。委員長も、開門調査を見送った科学的根拠、判断の経緯、再生方策のいずれもが不明確だ、詳しい説明をいただかないと納得できないという発言をしておられますけれども、納得するような説明、農林水産省から受けられましたか。

須藤参考人 お答えをいたします。

 五月十九日に行われました第九回評価委員会におきましては、農水省から、中長期開門調査を実施しないという検討結果と中長期開門調査とは別の調査を行うということについて、まず説明を受けました。これに対して委員からは、ただいまの御指摘のように、今までの意見が農水省の判断にどのように反映されたのかがわかりにくいなどの意見が述べられました。それに対しても農水省からのお答えがございました。しかしながら、すべてについて十分な説明がなされたわけでなく、私からは、今後具体的な調査結果が決まった時点で、評価委員会の場で改めて御説明をいただくようお願いしたところでございます。

 したがいまして、今後の評価委員会において、中長期開門調査にかえて行う調査等の具体的な計画や実施状況について適宜報告を受けまして、評価委員会での議論に反映させていきたいと考えております。

 以上でございます。

楢崎委員 農林水産省が言うところの別の調査のその欺瞞性についてはこれから明らかにしていきますけれども、こうすれば再生につながるという答えを出すのが評価委員会の使命ですね。だから関係者の期待も高いのですけれども、ちょっと作業が遅いのではないでしょうか。

須藤参考人 お答えをさせていただきます。

 有明海・八代海総合調査評価委員会は、昨年の二月に開始いたしまして、現在まで九回開催をいたしております。別に小委員会を三回開催させていただいております。

 有明海の再生に関しては、関連する要素が非常に多く、複雑な課題でありますため、広範な知見の収集、整理をすることが必要と考えております。このため、評価委員会では、委員を含む研究者からさまざまな報告を受けまして、国及び関係者からの調査結果の報告を受けてまいりました。国が六省にわたります。県は六県にわたります。さらに、現地視察や現地の漁業関係者等からのヒアリング、大学における研究成果等の取りまとめも行ってまいりました。

 今までこのようなことを行ってきておりまして、決して進捗がおくれているというふうに思っておりませんが、その結果をもとにいたしまして、環境の異変や先ほどの御指摘の再生の道筋等の問題点に関する情報についておおむね収集できたと考えておりますので、そろそろこれについては整理し、その道筋をつけていきたいと考えております。

 以上です。

楢崎委員 私どもは、その評価委員会の中間報告に注目するわけですけれども、その時期を早めるという考えはありませんか。中間報告はいつごろの予定になるでしょうか。

須藤参考人 先ほどお話し申し上げましたように、今まで九回にわたる評価委員会の議論がございまして、現時点での情報や知見はかなりの程度収集できたものと考えております。

 そこで、評価委員会といたしましては、今までの作業の集約を行った上で今後の課題の整理を行い、いわば中間的な取りまとめ、整理、こういうものを行う段階に入ってきております。六月二十三日、次回でございますが、これに予定している委員会におきましてその整理の作業に着手したいと考えており、そこでの議論を踏まえまして、私といたしましてはできるだけ早い時期に取りまとめ、委員の御指摘でしたら、中間取りまとめとおっしゃいましたが、それがそれに該当するかどうかは別でございますけれども、私としては、とにかく整理した段階で取りまとめたいと考えております。

 以上でございます。

楢崎委員 常識的で良心のある、また見送り決定を覆すような評価委員会の結論が出ることを期待したいと思います。きょうはありがとうございました。

 いわゆる中長期の開門調査を見送られたその理由についてこれまで言われてきたこと、それから報道されたこと、また九州農政局が言われたことも含めて、これからお伺いしたいと思いますけれども、まず、開門調査をやれば新たな被害が出ると言われるわけですね。しかし、今は閉め切ったことによる被害が言われているんですよ。本末転倒ではないかと私は思うんですよ。大体、干潟を殺しておいて、潮流、潮汐も変えてしまっておいて、有明海の自然のバランスも壊してしまっておいて、何が新たな被害ですか。また、ここ東京の地で机の前に座っている人たちが、有明海の何がわかりますか。冗談じゃないですよ、本当に。

 開門すれば、調整池の汚濁水が有明海に流出して、新たな漁業被害が起こると言われている。これは、四月二十三日に公共事業チェック議員の会の立ち会いの農林水産省との交渉が行われた席上でも、担当者の方が濁りの拡散が懸念されるという発言をしておられるんです。この濁りの問題にしたって、もうはっきりしているでしょう、今まで何度も言ってきたでしょうが。短期開門時に九百ミリグラムという高い数値が出たのは、海水を導入した三日後ですね。それも北部排水門の真ん前なんです。漁場とは遠く離れているんですよ。しかも、一週間でその数値は急減している。

 言われるところの短期開門によるアサリの被害に六千万円支払われていますけれども、これはいつ被害が起こっているんですか。アサリのへい死率も明らかにしないでしょう。それから、減ったという漁獲量も、これは交渉に影響があるからといって明らかにしない。小長井漁場周辺の濁度は二・四から十七・二ミリグラムという平常値しか観測されていないんですね。これは九州農政局のホームページでも明らかにされていますよ。要するに、開門調査に伴う漁業被害を誇大宣伝しているとしか私には思えないんですよ。ためにする話ですね。

 それで、短期開門中の一日の排水量は最高でも九百四十万立米、これは二〇〇二年の七月二十日に記録されているわけです。締め切り後の九九年六月二十五日の豪雨時、大雨のとき、このときはこの三倍の二千七百九十万立米が排出された記録が残っているわけですね。では、このときに漁場に被害が出たかといえば、そんな話聞いたことない。このとき被害が出たんですか、アサリの被害ですよ。

太田政府参考人 ただいま委員から御指摘のありました中長期開門調査を行うことによる被害の問題でございますけれども、まず、調整池の汚濁水が出るという説明は、私ども説明はしておりませんで、要するに、これまで中から外に出るだけの排水が、水門をあけることによって外からも入ってき、それが調整池の中の潟土を巻き上げ、そしてまた出るときにそれを一緒に伴ってさらに汚濁水が広がっていくという状況をお話ししたものでありまして、委員の御指摘の点とは想定が違っておるというふうに理解しております。

楢崎委員 つまり、この大量の排出がなされたときに、アサリの被害の話なんてこれっぽっちも出なかったんですよ。だから、何度も言うように、短期開門に反対する漁協を懐柔するための開門手当、これを漁業被害という、漁業補償という名にかえて払った。つまり、一昨年四月十五日の、私が何度も言う深夜の密談、ここで話し合われたのではないかと疑っているんです、私は。このとき、短期開門のとき一週間でその濁りが減少したのは、これは海水中の塩素イオン、これが凝集反応を起こしたからなんですね。ですから、この作用を利用すれば解決策はあるんですよ、要するに。

 それと、大事なことは、漁民の皆さんが海の再生力を信じて、そういう開門後の被害、これを既に覚悟してあるということなんですね。被害が出ることを承知の上で開門調査を求めてあるんですよ。さらに、農林水産省は、調査を実施した場合新たに防災対策が必要だとか、それから第三の被害が心配だとか言ってありますけれども、心配していただくのは結構ですけれども、どういう被害が出るんですか。

 実は、共産党の皆さんが先月五月十四日に九州農政局に見送り撤回の申し入れをしてあるんですけれども、その中の一つ「干拓事業の防災効果の過大宣伝をやめ、干拓に頼らない防災事業に転換すること。」という申し入れに対して、五月二十一日付の九州農政局の回答は、「平成十一年七月二十三日の集中豪雨や台風十八号が接近した平成十一年九月二十四日の被害状況からみましても、その防災効果が調整池周辺の低平地において着実に発揮されたことが実証されて」いると。「諫早湾干拓事業は、常に、高潮、洪水、常時排水不良等の被害にさらされている諫早湾内の低平地におきましては、重要な事業となっているものと考えております。」このように回答してある。この期に及んでもまだこんなうそ、幼稚な言いわけをしてある。(発言する者あり)だから、今から言うから。

 まず、洪水についてですけれども、今言われた方、あなた、この諫干の歴史を知ってあると思いますけれども、南部総合開発、これが打ち切られてもなぜ諫干事業が生き残ったのか。まさに防災名目を大きなよりどころにしたんですよ。これはあの五百三十九人の犠牲者を出した諫早大水害、この大水害級も防げると強調されているんですね。つまり、潮の干満差が五、六メートルになる諫早湾では、満潮時になると潮が逆流して、大雨が降ると逆流して、本明川の水が流下しにくくなる。ゆえに、潮受け堤防で湾を締め切れば諫早市街地の洪水はなくなるという論理ですね。

 ところがそれは、専門家の検証で、どんな豪雨時でも逆流するのは一・五キロから二キロメートル上流までしかいかない。これは諫早水害史にも載っているはずです。載っていますよ、記載されている。だから、四、五キロ上流の諫早市街地には影響を与えないんですね。それを物語るように、締め切った後の九九年七月の豪雨、これは今九州農政局が言うところの七月二十三日の豪雨ですよ、このとき市街地は浸水したじゃないですか。諫早市民は怒りましたよ、何だ、潮受け堤防は防災の役目を果たしていないと。農林水産省は慌てたんじゃないですか。

 太田局長、あなたは私のその一昨年十月の質問に対して、「そういったことを受けて、本明川ではしゅんせつ作業が着々と進んでおりまして、そういった意味では、流下能力が格段に向上」と答弁しておられる。つまり、みお筋のしゅんせつとか排水ポンプの増設、やるべき防災対策をやれば、排水門の開放というのはできるんですよ。

 それから、よく塩害という言葉を使われる。どうして塩害が起こるのかわからぬです、私は。あなた方は、農林水産省は、調整池に海水が入れば豪雨時に逆流をして、これは背後地というんですか後背地というんですか、塩害が起こると。私に言わせれば、殊さらにそれを宣伝している感じを受けるんですね。先ほども言いましたように、大量排水の実績もあるんですよ。ですから、言いかえれば、常時開放しても、緊急のときにはゲート操作ができるんですよ。だから、この塩害ということも、私はための話としか思えないわけですね。

 それから、高潮。これは、以前、潮受け堤防が高潮を防ぐとも言われました。確かにそうだと思います。しかし、高潮というのは前兆があるでしょう。事前に予知が可能なんですよ。だから、それは開門中であれば閉じればいいし、常の予防のためには河川堤防を高くすればいい。これも、だから理由にならないんですよ。

 それから、大臣はコンピューターによるシミュレーションの結果もよりどころと発言してありますけれども、これはやはり実績データと異なっているでしょう、このシミュレーション。農林水産省は、シミュレーションによって、堤防の影響は諫早湾周辺海域にとどまるとしていましたよね。ところが、湾外で潮流が最大三三%遅くなった。これは科学的に実証されたんですね。

 これは有明海異変のために調査したんじゃなくて、実は長崎大学と九州大学の研究グループが、あの雲仙・普賢岳の噴火で有明海に流れ出た土石流の影響調査、このために、堤防締め切り前の九三年十月から十一月にかけて有明町沖で三十二日間、潮の流速を測定したんですね。そして、十年後の昨年、同時期、同場所で三十四日間調査した、その結果なんですね。

 だから、これは三割の減速というのは大きいですよ。やはり流れが遅くなると、川からの栄養塩が滞留して赤潮の発生になる、そして海水の攪拌率も弱くなる、これがまた二枚貝を死滅させることになる。

 要するに、開門調査をすることによって、真実、それが明らかになることが怖いんじゃないですか。そのお答えを聞いて、終わります。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、防災効果についてのお尋ねがございました。

 諫早湾干拓事業は、高潮、洪水及び常時の排水不良に対する防災機能の強化、これはもちろんでございますけれども、平たんな農地に乏しい長崎県における大規模な優良農地の造成を目的といたしております。

 高潮でございますけれども、締め切り前の昭和六十年八月に発生いたしました台風十三号によりまして、諫早湾周辺の水稲千三百ヘクタール、ハウス七十三棟に被害がございましたけれども、平成十一年九月、これは熊本県の不知火海沿岸で高潮によりまして十二人が死亡された台風十八号、このときでございますけれども、諫早湾におきましては、潮受け堤防の設置によりまして、高潮の被害は全く生じておりません。

 また、洪水におきましては、締め切り前の昭和五十七年七月に最大時間雨量九十九ミリメートルの豪雨時には、農地崩壊が百ヘクタール、床上浸水被害が九百三十戸に及びましたが、締め切り後、これとほぼ匹敵する最大時間雨量百一ミリメートルを記録いたしました平成十一年七月の豪雨の際には、床上浸水は全くなく、低平地の水田で一時的に湛水したものの、農産物被害は三百万円にとどまったという状況でございます。

 先ほどのしゅんせつの話につきましても、要するに、調整池の水位をマイナス一メーターに維持することによりまして、潮汐の変化がなくなって、潟土が運ばれてくるということがなくなりました。そのために、いわゆる本明川本線のしゅんせつも可能になったということを御説明申し上げたわけでありまして、当然のことながら、諫早湾干拓事業と河川のさまざまな工事、あるいは背後地における排水対策と一体となってその排水効果が発現されるというふうに理解をいたしております。

 それから、予期し得ない被害につきまして、さまざまございましたけれども、要するに、確かに洪水のときにはかなり大量の排水が調整池から出ておりますが、今回の調査に伴う排水といいますものは、人工的にそういうものを毎日二回引き起こすという意味合いがございます。そのボリュームにいたしましても、潮受け堤防完成後に発生いたしました最大の洪水の排水量の約二倍にも及ぶという状況から、さまざまな被害が想定されるということで、もちろん、それに対してどのような対策をするかということも含めて検討したものでございます。

 ちなみに、流速が低下したという御指摘もございましたけれども、これは前後で確かにそのような流速が観測はされておると思います。漁業者の実感もそういうふうに言われております。しかし、私ども、シミュレーションを使って……(楢崎委員「シミュレーションが何だ」と呼ぶ)いわゆる堤防がある、ないということを比較する上では、この方法は科学的にも認知されております。

 そうした中で、その感度、どれぐらいの影響があるかという感度を調べた中では、その範囲は、これでいいますと大浦地点の例えば潮位の差におきましても約七センチ程度、それから流速にいたしましても五%程度というようなことが最大でも出ておる、そういう結果でございまして、私どもは、そういう調査の結果も、三割の減速ということについても、これは諫早湾の影響だけではなくて、さまざまな影響が恐らく複合されたものだというふうに考えておりまして、そういった点につきましても、引き続き調査も含めて検証していかなきゃならないというふうに考えております。

楢崎委員 これで終わりますけれども、流速の調査はまた今新たにやっていますから、それから、代替案まできょう行けませんでしたけれども、代替案で有明海の再生はできないと漁民の皆さんが言っていることを紹介して、終わります。

高木委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 こんにちは。私がこの委員会で質問に立たせていただいて、この模様をビデオで撮っていただいて、そのビデオを今度は地元に帰って皆さんに見ていただいて、非常に大臣の答弁がハートがあると言われているんですね。そういった意味で、私は、きょうまた真心を込めてぜひとも前向きにお答えいただきたいなと冒頭申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。

 今厳しい状況に置かれている地元の漁業者の声を踏まえ、きょうは、三十分という時間でありますけれども、水産問題について質問させていただきたいと思います。

 我が国の水産業は、もう御承知のとおり、資源状態の悪化、輸入水産物の増大とこれに伴う自給率の低下と、あるいは魚価の低迷、担い手の減少、高齢化等の進行など、極めて厳しい状況にあります。このため、漁業経営の状況が悪化し、さらには漁村地域の活力が低下するなど、多くの問題を抱えております。

 国は、こうした状況に対処するため、平成十三年六月に水産基本法を制定し、翌年三月には水産基本計画を策定し、これに基づいて水産施策を展開しているわけでございます。さらなる施策の充実が求められているところであります。

 ところが、今国会において小泉内閣総理大臣の施政方針演説では、この水産業に関する施策については、残念なことに、水産のスの字もない、漁業のギョの字も一言も触れていなかったのは、これはどういうわけでございますでしょうか。多くの漁業者、関連する水産団体の方たちからは、嘆きに近い声が私のところに寄せられております。

 まず、このことに対して大臣はどのようにお考えになっているのか、お尋ねをいたします。

亀井国務大臣 今、委員からも御指摘のとおり、我が国の水産業、周辺水域の資源の状況、あるいは遠洋漁場の国際規制の強化、こういう問題、あるいは御指摘の輸入の増加や魚価の低迷、そういう面で漁業経営が大変厳しい状況にある、このことは私も認識しておるところでもございます。

 そういう中で、水産業、私たち国民にとりましては、本当に、水産物の安定供給、これは大変重要なことでありますし、また、地域経済にとりましても大変重要なことであるわけであります。そういう面で、国民生活にとりましては、国民経済の基盤を支えるものでありまして、重要な役割を担っております。

 そこで、御指摘の十三年の水産基本法、この理念に基づきまして、水産物の安定供給の確保、さらには水産業の健全な発展、こういうことを図ることを基本的な考え方として今進めておるわけでありますが、総理の所信表明に水産業という、あるいはそれがなかったがと。農林水産全体のこととして取り上げるというような立場での御発言もあり、総理も、神奈川県の三浦半島、その地域でありますから、水産のことにつきましては大変関心をお持ちになっておりますし、マグロの遠洋への基地でもあるわけであります。そういう面で認識は十分お持ちになっておると思います。

 そこで、具体的に申し上げれば、海の恵みを持続的に利用する、あるいは収益性の高い魅力ある漁業の確立をしなければならない、また、消費者の求める水産物の生産確保、さらには、豊かで活力ある浜づくり、こういう面で生産から流通、消費に至る各般の施策を遂行いたしまして、全力を挙げて先ほど御指摘の厳しい状況下を克服してまいりたい、このように考えております。

仲野委員 大臣が今お答えをいただいたんですけれども、これは大臣、とても大臣も責任あるんですね。総理のこの施政方針、一緒に大臣も参画してつくられたんじゃないでしょうか。これは本当に大事な問題でありますので、私はあえて冒頭触れさせていただいたのであります。

 今、食料の安全、安心という、こういった中で、我が国の水産行政をどう執行していくのかということで、農業もしかり、漁業もしかり、林業もしかりでありますけれども、我が国にとって、そして国民にとって、食料供給という観点に立った場合には、これは一月十九日の初日の、国民の多くの方たちが見ている開かれた場でしっかりと言うことではなかったのかなということで、非常に私は残念だったな、そのように思っております。来年、こういったことがないように、しっかりと言っていただきたい、そのように思っているわけでございます。

 そこで、この水産基本法でありますけれども、おおむねこれは五年ごとに見直しをされるということになっておりますが、農業においても現在、食料・農業・農村基本計画の見直しが行われているところでありますけれども、水産については、この基本計画の策定から二年が経過をし、言ってみれば折り返し地点になっているわけでございます。

 そこで、今後の水産施策を一層実効あるものとするためには、今言われていることは、一生懸命事務方で本当に日夜努力されて策定された水産基本計画に私は文句をつけるわけじゃないんですけれども、多くの団体の方たちからは、魂が入っていない計画であるとも言われているわけでございます。そういった意味では、この基本計画を本当に理念と決意を持って今後どのように取り組まれるのか、具体的に改めてお答えをいただきたいと思います。

亀井国務大臣 今御指摘の十四年の閣議決定、この水産基本計画、これを十年程度を見通して水産物の自給率の目標設定、こういうようなことで各般の施策を進めております。

 二年を経過した、こういう点で、全体の評価を行う、こういうところまではまだ時期尚早、こういうことでありますが、例えば、これまで減少を続けておりました漁業、養殖業の生産量が、平成十五年には対前年比二・七%増の六百三万八千トン、このような動きになっておるわけでありまして、引き続き、この水産基本計画に沿って、私ども、今委員からもお話しのように、国民生活にとって大変貴重な、また重要なことであるわけであります。水産の健全な発展、あるいは水産物の安定供給、こういう面に努力をしてまいりたい、このように考えております。

仲野委員 二年たって、時期尚早と言われているかもしれませんけれども、大臣、一カ月一カ月、刻々と時間の中で本当に大きく状況が変化をしているわけでございます。そういった変化に即対応をし、アンテナを張って、本当に今水産が厳しい状況に置かれているということをしっかりと認識をしていただいて、基本計画が本当に多くの方たちからいいものだと言われるようにしっかりと努力をしていただきたい、そのように思うわけでございます。

 次の質問に入らせていただきますが、今、私の地元であります釧路、根室、日ロサケ・マス漁業交渉で交渉が難航し、また、暗礁に乗り上げたとメディアを通じて報道されているわけでございます。今、このことが地域にとって死活問題とも言える状況にまで来ているわけでございます。

 そこで聞いておきますけれども、ロシアと隣接する北海道根室市を含む近隣の水産地域では、昨年、交渉が難航し出漁がおくれ、やむを得なく休漁せざるを得ない船があったことで、漁業生産者だけでなくて、水産加工から運輸あるいは資材、燃料に至るまで影響が波及し、釧路、厚岸圏で二十八億円、根室圏で何と五十四億円の経済損失が発生するなど、町の経済に大きな打撃を与えているわけです。

 ことしも、昨年に引き続き交渉が難航している。五月二十八日にようやく合意がなされ、議定書にも署名がなされましたが、ロシア側は新たな五つの魚種別の漁獲枠配分導入を主張してきました。これは、一魚種でもその枠に達したら操業が打ち切られるというもので、極めて厳しい内容であります。

 しかも、その後、ロシア側は、議定書で定めたキロ当たり二百八十円の入漁料を契約段階で十二円五十一銭高い二百九十二円五十一銭に引き上げるよう要求を行い、日本側は議定書どおりの入漁料を主張し契約書に調印せず、交渉は事実上暗礁に乗り上げているという、そういう状態に陥っているわけでございます。

 日ロの漁業関係については、長期的かつ安定的な漁業の継続と維持発展が重要な課題であり、今後の対ロ漁業交渉においては、積極的な漁業外交による支援が不可欠であると私は考えております。現在行われているような民間交渉で今後果たして漁業経営が存続できるのかどうなのか、大変懸念するところであります。

 今、根室圏が経済の八割を水産業に依存するなど、釧路、根室地域の水産業に対する経済依存度は極めて高く、これらの地域の経済が昨年以上の打撃を受けることは間違いないんです。政府として、現在の釧路、根室の経済の窮状についてどのように認識をされているのか。

 そこで、この契約書の段階で約束をほごにしている、これは信用も損なうし、きょうかきょうかと船は出漁の準備を既に済ませているわけであります、仕込みを終えて。これだけでも相当な経費がかかっているわけでございます。一方的なロシア側のこの理不尽なことに対して、現行、民間交渉として行われていますけれども、水産庁としてどのような支援をしていくのか、お答えをいただきたいと思います。

田原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの日ロサケ・マス民間交渉のお話でございますけれども、先生がただいまおっしゃられましたように、一たん五月二十八日に操業条件の合意に達しまして、議定書に署名をした。その後、いわゆる支払い条件と申しますか、キロ単価幾らにするか、そういった詰めの契約書の締結交渉が行われていた。ところが、先週末になりまして、一たん合意しておりました、ことしの場合は入漁料一キロ当たり二百八十円ということでこの議定書の署名が行われたわけでございますけれども、それに上乗せしまして二百九十二円五十一銭というふうなことを持ち出してきたということで、率直なところを申し上げまして、モスクワに行っておられます我が方の民間交渉団の方々は非常にこういった姿勢に反発を示しておられますし、我々も、こういう話を聞きますと、国際商慣習上も、また信義上も極めて問題であるということで、遺憾に思っている次第でございます。

 私ども、こうした情勢を受けまして、今週初めでございますけれども、すぐ日本の外務省を通しまして、在モスクワの日本大使館に、しかるべきレベルからこういったことに対する対処方、民間交渉団に任せるのではなく政府レベルでしっかりした対応をするようにというふうなことですとか、それから、在京のモスクワ大使館、ちょっと大使がなかなか都合が悪いということだったものですから、文書でもって私の方から出しまして、それを本省の外務省につないでくれるというふうなことをやっているところでございます。

 ただ、そういった許可証の発給に至るようなことの働きかけはやっておりますけれども、遺憾ながら、今の時点において、それが動いたという報告にまだ接しておりません。

 引き続き、我々といたしましては、外務省とも連携をとりながらこうした働きかけに努めてまいりたい、かように考えている次第でございます。

仲野委員 この民間交渉のあり方なんでありますけれども、ロシア側は農水省がバックにおり、そして日本政府は、従来、交渉をあくまでも民間レベルのものとして、直接の介入を控えてきている。これは、本来でありますと、例えば水産基本法では、この十八条に、排他的経済水域等以外の水域における漁場の維持及び開発において、国は、操業に関する外国との協議、水産資源の探査ほか必要な施策を講ずるものとすると規定しております。

 このときに、このようなことがうたわれている中で、民間交渉の位置づけは、では、どのように位置づけをされているのか。そのことについてお尋ねいたします。

田原政府参考人 お答えいたします。

 ロシアとのこのサケ・マス漁業交渉、これは長い歴史がございます。いわゆる日ソサケ・マス漁業交渉の昔からいろいろな歴史がございますし、途中で申し上げますと、昭和五十二年に始まりました、現在の国連海洋法条約を採択するための国連海洋法会議の動き、こういった経緯等々、さまざまな経緯がございます。

 特に大きい動きといたしましては、昭和六十三年、もう十数年前のことでございますけれども、当時の日ソの漁業合同委員会、当時は当然のことながら二百海里、これが設定されておりますし、サケ・マス等の遡河性魚種については、特に母川国の権利、こういったことが認められている時代でございますけれども、この日ソ漁業合同委員会におきまして、ソ連が、自国のサケ・マスにつきましては、合弁企業に自国が漁獲枠を与えるということで、操業条件等は民間協議にゆだねるというふうなことで決定したということで、当時から、我が方といたしましては、こうしたサケ・マスの協議につきまして政府間協議を求めたわけでございますが、ソ連側から、政府間で話し合う用意はないというふうなことで、民間協議等の動きがあったという等の経緯がございます。

 したがいまして、そうした中で、どういう形で我が国のサケ・マス漁業がロシア海域に入っていくかということが、民間協議でなければ入れないというふうに先方のあれでなっている以上、現実的な問題としては、民間協議主体でということでやってきているという経緯でございます。

 なお、水産基本法の第十八条との関係ということで先生お触れになられましたけれども、そういう意味におきましては、現在も、日ロ漁業協力協定におきまして、サケ・マスのTAC枠、これにつきましての、ロシア側からのサケ・マスの漁獲枠につきましては、この日ロ漁業合同委員会において、日本側の要請も受けながらロシア側が漁獲枠を設定しているということもございますし、そういう意味において、全く民間に任せっ放しにしておいて政府は関与していないということではないのではないかという点につきましては先生の御理解を賜りたい、かように考えている次第でございます。

仲野委員 私がやはり心配していることは、昨年も民間交渉で非常に交渉が難航し、経済に大きな影響を及ぼした。ことしは昨年よりさらにひどい状況になった。そして、先ほど支援策をお尋ねしたところ、今ロシアに行っている日本の民間団体も反発をしている、水産庁も怒りを持っている。

 私はやはり、この交渉の過程、あり方において、ロシアの民間には農水省という政府がバックについている、非常にそういった意味では日本としては立場が弱いわけです。そういった意味で、私は、これはもうこのままの民間のレベルの交渉でいいのかと。やはりここは、確かにロシアという海域の中で魚をとる、これはもう積極的な外交を今後進めていかなければならない。さまざまな領土問題もその中には入ってくるわけなんですけれども、そういった意味では、やはり水産庁、外務省、しっかりと連携をとって行っていくとも先ほどお答えをいただいたんですが、これはやはり私は、このことによって本当に地域の経済に影響を及ぼすという意味では大事な問題であると。そういった意味では、このままの民間交渉でいいのか。やはりここは思い切って発想を変えて、政府間同士で行っていく、そういった方法もこれから視野に入れていくべきでないのかなと。

 過去にさまざまな経緯がおありだったと思いますけれども、私は、そういった意味では、大臣はどのようにお考えになっているのかなと。ちょっと大臣に一言。

亀井国務大臣 先ほど長官からもお話し申し上げましたとおり、また、私ども、外務省、外交ルートを通じていろいろの支援を、要請を行っておるところでございます。今までの経緯もあるわけでありますし、当面その努力を重ねてまいりたい、このように考えております。

仲野委員 とにかく、長官、この見通しはいつでしょうか。本当に、きょう、釧路、根室の関係の方たち、インターネットでこの状況を見ております。お答えいただきたいと思います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 まず、民間交渉、政府間交渉の、ちょっと私の言葉足らずだったかもしれませんけれども、要は、今の海洋法条約上、二百海里水域についての排他的権利は沿岸国が有しているわけでございまして、それを政府間交渉にゆだねるかどうかという点につきましては、交渉によって幾ら申し上げても、最終的には沿岸国の判断、これが優先する枠組みが国際法上成っているという点は、これは御理解いただきたいというふうに思います。

 それからもう一つは、先ほどの民間協議がなかなか調わないものですから、今、花咲港ですとか根室港ですとか、待機しておられる船々がなかなか出港できないという問題、これは我々も今週初めから大変苦慮しているところでございます。

 先ほど申しましたように、いろいろな手づるを通しまして、外務省、それから、先生が先ほどちょっと申されましたように、実はロシア国内におけるこの問題の担当省自体も、前の国家漁業管理委員会から農林省ですか、そういったところに移るとか、あるいは担当部署がいろいろ変わるというふうなことで、なかなか交渉自体が始まらなかったという経緯もございまして、私ども、そういった中でも、特に政治的なあれが必要であるという観点から、主としてロシア外務省、こういったところを中心に働きかけを外務省を通して行っている、こういう段階であることを御理解賜りたいというふうに思っております。

仲野委員 もう時間がないんですけれども、長官、大臣、本当に一日も早く出漁ができるように、もう常にロシアとの連絡を密にしながら積極的に行っていただきたい、そのように思うわけであります。

 最後になりますけれども、操業規制ライン問題についてちょっとお尋ねをしておきたいと思います。

 今、規制ラインと想定中間ラインとの間に操業可能な海域があるとして、見直しの要望が水産団体から出されている。これは、北海道の海面漁業調整規則第三十二条の二に基づくものでありまして、それで、これは去年の七月十五日に高橋知事がお答えになっているのでありますけれども、規制ライン見直しについては、人命と領土問題にかかわる難しい問題でもあり、日ロ双方が同様の認識を持った中で進めていくことが必要であることから、道としては、これまで、安全に操業できる海域の正確な把握に努めているところである、今後とも、地元漁業団体の意見を十分に踏まえ、引き続き、ロシア側の情報の把握に努めるとともに、国など関係機関との協議を進めて、この問題の解決に粘り強く努めていくとお答えになっております。

 国としてどのように道とこれから協議を進めていくのか、お答えいただきたいと思います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 まず、北海道海面漁業調整規則の問題でございますけれども、漁業法上は、北海道知事がこの漁業調整規則を定める、それにつきましての有効性を担保するということで農林水産大臣がその漁業調整規則の認可を行う、こういう関係でございます。

 したがいまして、この北方四島周辺水域における安全操業確保のために、まず北海道におきましてどういう判断をされるかということがあろうかと思います。それを受けまして、我が方がその調整規則を認可するかどうかということにつきましては、過去からこの北方四島問題は、非常に安全操業ということで、拿捕の歴史がございます。こういった点、安全第一という観点から、それから最近の情勢の変化、こういったことを踏まえながらどう判断していくべきかということを相談したい、かように考えている次第でございます。

仲野委員 もう時間がなくなりましたのですけれども、この規制ラインの問題でありますけれども、今、道が本当に多くの水産関係団体の意を受けて、積極的にその見直しに努めている。それで、国とも十分に協議を進めていきたいと申しておりますので、そのときにはぜひ道の、十分に協議を進めて、バックアップをしていただくようにしていただくことを要望して、私の質問を終わらせていただきます。

高木委員長 次に、松木謙公君。

松木委員 皆さん、どうも御苦労さまでございます。今国会、多分最後の委員会になるのかなというふうに思っております。

 私も今回六回目になります。おかげさまで随分多くやらせていただいたなと思って感謝をしておりますけれども、きょうはBSEのことをもう一度。私、政治家になってからだんだん性格がしつこくなったようでございまして、また同じことを聞きたい。そして、この間は競馬法のことを聞きました。これはもちろん、六月三日に民主党も賛成ということで通ってはいるんですけれども、しかし、生産者のいろいろな要望もありますので、そのことを中心にお話を聞かせていただこう、こう思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、BSEのことなんですけれども、これはこの間のときも私は言ったんですけれども、七月十一日に日本では参議院選挙がある。そして、一応の政治日程はそこで終わるわけです。そして、アメリカの方では大統領選挙があるわけでございまして、かなり圧力が増してくるのではなかろうか、そういう話をさせていただいて、そのときに大臣、そして副大臣、政務官、お三方とも、いや、そんな圧力には屈しないぞ、こういう力強いお言葉をいただいたわけです。

 しかし、どうもいろいろなここのところの新聞の記事なんかを見ますと、何か食品安全委員会は全頭検査はナンセンスだみたいな、そんなような発言があったりして、それでは今まで何のためにやってきたんだと。ただじゃないわけですからね、今までも金をかけてこれはやってきたことですから、全頭検査というのは。

 そういうことを見ていると、どうもアメリカが介在してきたらこうなるのかいなという気がちょっとしているんですけれども。もう一度お聞きをしておきますけれども、全頭検査あるいはそれに準ずるといいましょうか、同等といいましょうか、同様のことがなければ、牛肉の輸入のアメリカとの再開というんですか、そういうものはしないということでよろしいですね。

亀井国務大臣 もうかねてから何回か私申し上げておりますが、何といっても国民の食の安全、安心、これはもう大変重要なことであるわけでありますから、牛肉の輸入問題、このことを基本に、そして我が国と同等の措置、このことが基本であるわけでありますので、これを貫いてまいりたい、このように考えております。

松木委員 ぜひ副大臣と政務官も、しばらく会えないので一言お話しをしておいてくれれば。

金田副大臣 松木委員には先日もお答えさせていただきました。農林水産大臣の御判断のとおりでございます。そして、こういった問題は国民の健康にいたくかかわる問題でございますので、政治的なそういった思惑に左右されてはならないんだというふうに思っております。

木村大臣政務官 前回の御質問で、うわさを聞くということでしたから、私はその後もそのうわさというのは、私自身聞いたことがありません。ですので、どういう状況であろうとも、今大臣がおっしゃった安全、安心というその大臣の思いに私たちは一緒していきたい、こう思っております。

松木委員 ところで、我が国の全頭検査と同じようなものというのは、これは具体的に言うとどんなことになるのかなというのをちょっとお答えをいただきたいなと。例えばの例でいいですよ。

中川政府参考人 我が国でBSEが発生をいたしました。アメリカでもBSEが発生をしたわけであります。そのBSEの発生国であるアメリカからの輸入再開の条件としてということでございますから、日本がとっている措置ということをとっていただくというのが基本になるかというふうに思います。

 それで、その際の、それと同等の措置という今の言葉でありますけれども、具体的にこれこれということをあらかじめ想定しているわけではありません。むしろ、これはアメリカ側から具体的な提案があれば、その段階で我が国とこれが同等かどうか、そういうものを判断していくべきものだというふうに思っております。

松木委員 えらく玉虫色の話ですけれども、まあ圧力に屈さないように最後まで、我々も含めて頑張りますので、ぜひ大臣、頑張ってください。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 競馬法の一部を改正する法律案について、前回、私質問させていただいて、余りしつこいものですから局長さんにかなり嫌な顔をされてしまって、申しわけなかったような気もするんですけれども、どうも、さっき言ったとおり、政治家になってから性格がしつこくなりまして、また聞きたいな、こう思っております。

 大体、この間も話したんですけれども、軽種馬の需要が大体千五百頭から二千頭ぐらい減るんですよね。それの対策のことをかなり僕は聞いたわけですけれども、それは軽種馬生産対策をJRAの特別振興資金を使ってできる限り実施するとのことだったと思うんですよね。この特別振興資金というのが幾らぐらいあるのか、教えていただきたいと思います。

白須政府参考人 特別振興資金につきましてのお尋ねでございます。

 日本中央競馬会の特別振興資金、中央競馬会法にまさに規定がございまして、競馬の健全な発展を図るために必要な業務とそれから畜産振興事業を行うために設けられた資金ということでございます。現在の残高でございますが、平成十五年末現在におきまして、約三百三十億円、それのものがございます。

松木委員 三百三十億円。そうすると、今回要らなくなる馬が大体千五百頭ぐらいあるんですよね、千五百頭から二千頭。そして繁殖牝馬で大体二千から二千五百頭要らなくなるという話があります。これを、四年間にわたってかかるお金なんですけれども、まずサラブレッドからいえば、百二十億なんですね、一年にかかるのが。それは大体一頭六百万という計算なんですけれども、四年間で四百八十億。そして繁殖牝馬、これは一年で終わるわけですけれども、これは二百五十億、二千から二千五百頭ですね。そうすると、全部で七百三十億。特別振興資金、それを全部活用しても十分な生産体制ができないことも考えられるんじゃないでしょうか。

白須政府参考人 ただいま私申し上げましたように、今回の競馬法改正におきまして、いわゆる軽種馬生産対策につきまして、新たなスキームということで、ただいまの特別振興資金を活用するということで対応をしてまいりたいというふうに考えているわけでございますが、さらに、これに加えまして、実は軽種馬の生産対策につきましては、JRAの売り上げの一部を原資といたしまして、従来からJRAそのものが、中央競馬会そのものが、さまざまな軽種馬の生産対策も実施しておるわけでございます。

 したがいまして、今回の競馬法改正によりまして新たにお認めをいただきました特別振興資金のスキームとあわせまして、従来から実施をいたしております中央競馬会の売り上げの一部を原資といたしました生産対策をあわせまして活用いたすことによりまして、ただいま委員からもございましたが、軽種馬を取り巻く非常に厳しい状況というのは私どもも十分認識をいたしておりますので、そういったことに、これらをあわせて充てることによりまして対応ができるのではないかというふうに考えている次第でございます。

松木委員 はっきりした答えではないんですけれども、まあしようがないですね。余りしつこく聞くとちょっと怒られちゃいますのであれなんですけれども、とにかく生産者をやはり助けてもらいたいんですよね。

 そして、例えば、平成十五年のJRAの売り上げというのは三兆円あるんですね。そして、このうち第一次国庫納付金というのが三千十億円、そして二次国庫が百六十九億円、これだけあります。これは間違いない数字だと思いますけれども、その合計のうち、これが一度、国の一般会計の中に入るわけですよね。そして、畜産振興事業等のために必要な経費ということで、これの四分の三を使っていいですよということになっていると思いますけれども、これはこれで間違いありませんか。

白須政府参考人 御指摘のとおりでございます。

松木委員 それではこのお金を使ってもいいのではなかろうかなという気が私はしておるわけです。これは確かにハードルが高いというのはよくわかっていますし、私のところに役所の方も来て、余りそれを聞くなという話もあったんですけれども、しかし、これだけ国に貢献をしているわけですから、何とか、まあ今どうのこうのというのはそれは無理なのかもしれないけれども、これは、国庫納付金もぜひ生産者の対策に活用すべきじゃないかな、私はこういうふうに思っておるのでございますけれども、局長さん、どうでしょう。

白須政府参考人 御指摘のとおり、国庫納付金、それは一般会計に入るわけでございまして、それのうちの四分の三を、畜産振興事業等のために必要な経費ということで、毎年予算化をいたしまして充てているわけでございます。

 国といたしましても、まさにその中から、競走馬の生産対策ということで、例えば、馬の伝染性の貧血症の防止といったそういう衛生対策でございますとか、あるいは金融対策というふうな制度資金の融通等々の対策、軽種馬の生産対策に当たるような、そういう制度資金の対策も実施をいたしているわけでございます。

 ただ、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、軽種馬の生産事業というものは、生産者の方々がすぐれた馬の生産をされまして、それを馬主の方が購入する、そして賞金を獲得されて、その賞金がまた競走馬の購入資金に回る、こういうことで、そういうことによりましてこれまで発展を遂げてきたというふうなことから考えてみますと、やはり、こういった軽種馬生産の振興対策というものは、基本的には、競馬の健全な発展を通じまして維持されるべきものであるというふうに考えているわけでございます。

 したがいまして、先ほども申し上げましたが、この軽種馬の生産対策につきましては、基本的にはJRAの売り上げの一部を原資としまして、これまでもJRAの対策としてさまざまな対策をやっておるわけでございますが、それに加えまして、今回、競馬法の改正をお認めいただきまして、新たに特別振興資金を活用した軽種馬の生産対策というものを、軽種馬の大変厳しい状況、あるいはまた、今回の地方の主催者の対策、連携対策等々を行います場合に、より軽種馬の需給が厳しくなるというふうなことに伴いまして新たなスキームを設けたわけでございますので、先ほど申し上げておりますような、そういうJRAの売り上げの一部を財源とした対策とあわせた今回の対策を、しっかりと、地元の御意見もよくお伺いをいたすことによりまして講ずることによって、効果的で、かつまた地元にも使いやすい、そういう軽種馬対策となるように、私どもとしても検討を早急に詰めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

松木委員 わかりました。いろいろなことを今局長さんが言ったんですけれども、それで、全部で足りるのかなという気がしております。

 例えば、平成三年の四月二十五日に農林水産委員会で、細谷さんという方が質問をしたその答えに、これは当時の国務大臣の近藤元次さんですね、この方が「競馬から出てくる益金については当然のことながら馬の改良、増殖には第一義的に努めていかなきゃならないことでありますし、」ということが実は出ているんですよね。

 そうであれば、何といったって、今生産者が困っている、しかも、もう未来永劫ずっとこの対策をやってくれということじゃない、この四年間ぐらいの話だと思うんですよね。ですから、どういう形で最後にどのぐらいお金が出てくるのかわからないですけれども、いずれにしても、やはりこれは助けなきゃいけないですよね。そうしないと、せっかく今までこれは一次国庫に三千億から入っているんですから、毎年。毎年三千億も入っているわけですよね。そうしたら、これはやはり生産者がだめになっていったら競馬界全体も僕はやはり落ちていくという可能性があると思うんですよね。

 そういうふうに考えたときに、ぜひ、こういう近藤大臣の発言もありますので、生産者に対することというのは、本当に今回、これはもう緊急措置なんですよ、そういう気持ちで手厚くやっていただきたいというふうに思っておりますけれども、いかがでしょうか。

白須政府参考人 ただいま委員からも御指摘ございました平成三年の議論も、まさに競馬から出てくる益金と申しますのはいわゆる剰余金ということでございまして、それによりまして、当時、特別振興資金という制度を設けたわけでございます。まさに、そこに御議論、ただいまも委員から御指摘ありましたように、馬の改良増殖、第一義的に努めていかなきゃならないというふうなことでございます。

 今回の特別振興資金を活用したスキームというものも、まさにこの趣旨に大変沿った制度だろうというふうに私は考えているわけでございます。

 それに加えまして、もともとJRAの事業そのものとしても、軽種馬の生産振興ということにも充てるわけでございますので、そこが両々相まちまして、軽種馬の生産振興対策というものが、私どもとしては、これは今回の措置によりまして大変充実してくるのであろうというふうに考えている次第でございます。

松木委員 サラブレッド、お馬さんです。このサラブレッドというのは、用途は何でしょうか。

白須政府参考人 競走馬のためだろうというふうに考えております。

松木委員 済みません。ここはちょっと質問通告していなかったですね。

 局長の言うとおりです。これは走るため、要するに競馬のためのものですよね。

 ということは、代替機能というか、例えば、その馬を今さら農業に使うとかあるいは通勤に使うとかというのも、前も言いましたけれども、車は環境に悪いから今度から馬で議員会館に通おうという人はいないわけですよ。これはここにしか使えない。それを考えたら、本当に緊急事態ですね、生産者にとっては。四年前から仕込みは終わっているんですから。

 ですから、産地の声をよく聞いて、改正競馬法に基づいて新たに特別振興資金を使った生産対策に万全を尽くしていただきたいというふうに私は思っているわけでございますけれども、いかがでしょうか。

白須政府参考人 今回の競馬法の改正によりまして特別振興資金を活用いたしました軽種馬の生産対策が新たに措置をされたところでございます。

 ただいま委員からも御指摘ございましたように、本制度を最大限に活用いたしまして、また生産地の御意見、地元の御意見もよく聞くことによりましてこの軽種馬生産対策に万全を期してまいりたいというふうに考えております。

松木委員 そろそろ時間ですのでやめますけれども、ぜひやはり地元の声を聞いてください。そして局長、できたら担当者の方をやはりその地元に出張させて、そしてそこでお話を聞いてきていただきたいというふうに思っております。

 今度何か質問するときは、ぜひ局長の笑顔を見られるような質問をしたいというふうに思っておりますので。

 質問を終わります。一応答えてください、これは。

白須政府参考人 これまでにも軽種馬の生産対策、実効あるあるいは効果的な対策を講じるというふうなことで、担当者はもちろんそれぞれ北海道の軽種馬生産産地にも出張させていただいておりますし、現地でもそれぞれ生産者の方々、皆さん方とも、それぞれこの対策あるいは内容等につきましても議論をさせていただいているところでございますので、今後とも、さらに現地の実情を十分お伺いをいたしまして、実効ある対策にしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

松木委員 では、最後の最後にもう一言だけ。

 今JRAはある程度もうかっていると思うんですけれども、地方競馬だとかそういうところをないがしろにしていったら、いずれJRAもだめになります。ですから、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 以上です。

高木委員長 次に、白保台一君。

白保委員 最近の家畜の感染症や、あるいはまた食品の管理形態や偽装表示、そしてまた残留農薬などさまざまな問題が発生しまして、国民の食の安全、安心に対する関心は非常に高まっているのが現状です。そういった中で、有機農法とか減農薬栽培などの環境保全型農業への期待も非常に高まっています。

 農業は自然の営みを利用して、そして私たちはその恩恵を受けているわけでありますけれども、農薬や化学肥料を使ったり土地を耕したりすることそのものが環境に対する負荷を生じないわけではないわけでありまして、長い年月に農地に使った農薬や化学肥料は土の中へ深くしみ込んで土の性質を変えていくかもしれないわけであります。繰り返し繰り返し土を耕して水を注いでいく、そういった過程で土そのものも失われていく。しかし、土というのは、一センチ積もっていくのに二百年、三百年かかるぞ、こういうふうにも言われているわけでありまして、そういうことを踏まえて、我が党は、有機栽培、減農薬、減化学肥料栽培など環境負荷の小さい農業の普及促進を進めていかなきゃいけないということを言っているわけであります。

 国の特別栽培農産物表示ガイドラインが四月から大幅に改正されました。基本的に無農薬、減農薬、減化学肥料などの表示はできなくなったわけであります。これは、従来、減農薬・無化学肥料栽培、無農薬・減化学肥料栽培などさまざまな表示が可能であったために、消費者から非常に定義があいまいでわかりづらい、こういった指摘があったために改正に至ったわけであります。

 改正については、消費者サイドからもおおむね前進であるという評価もありますし、私どもとしても、ガイドラインに生産の原則が導入された、環境保全型農業を進める考え方が入っていることを評価していきたい、こういうふうに思っています。

 この改正は、減農薬とか減化学という農産物を高く売るためだけの言葉を使うことよりも、正確な情報と環境保全型農業という方向へ向けられたためか、スーパーなどの食品流通業者は、新たな差別化を図るために、新しい方向として自社基準の農産品、プライベートブランドに力を入れていることもまた事実です。そのために、産地に対する囲い込みが非常に活発化しているというふうに言われております。

 また、地方自治体が認証し、節減割合を示したものは減農薬栽培という表示も可能だ、こういうふうに言われておりますし、生産者をこのような乱立ぎみの基準に、ガイドラインを改正したといっても、こういったことが幾つもできるということになると乱立ぎみですから、非常に産地、農家はこうした事態にちょっと混乱しているんじゃないか、生産意欲をそがれてはいけない、こういうふうに思うわけであります。

 したがって、すべての農産物をトレーサビリティーというシステムにしてしまった方がもっとわかりやすいんじゃないか、こういうことも考えます。生産者サイドが減農薬や減化学肥料栽培の農産物流通で混乱するようでは、本来、消費者からの信頼を得なきゃいけないということでやっているわけですから、信頼が得られるのかどうかということだって言えるわけでありまして、信頼が得られにくいんじゃないのかな、こういうようなことも考えます。

 したがって、どのようなフォロー、指導をこの改正によってなされているのか、まずは消費者の信頼を回復することが一番大事ですから、そういった意味で、当局の取り組みについて伺いたい、このように思います。

中川政府参考人 最近、消費者の方々、国民の方々の食の安全、安心に対します関心の高まり、それを踏まえまして、民間の企業におきましても独自の基準によります、いわゆるプライベートブランドの商品開発、そういった取り組みが行われているわけでございます。

 こういった民間ベースの取り組みにつきましては、そこで使用されている基準あるいは表示の根拠というものが消費者にわかりやすく公表されている限り、これは結構なことだというふうに思いますし、有機ですとかあるいは特別栽培農産物の表示ガイドラインに矛盾をしていない、この辺、大変大事なことでありますけれども、そういったことが守られている限りにおきましては、民間のいわば創意工夫、独自の工夫ということで評価をすべきものだというふうに考えております。

 ただ、先生がおっしゃいましたように、従来やりました私どもの特別栽培農産物のガイドラインにつきましても、わかりにくいというふうなお声があったということを踏まえまして、この四月に改正をいたしたわけでございまして、何よりも、正確な情報がきちっと消費者に伝わるという視点から、この新しいガイドラインにつきましても、昨年の夏以降、さまざまな機会をとらえまして、改正の中身についての説明会あるいはシンポジウムを開く、それから、パンフレットもたしか三十万部程度発行して、そういった消費者の方々の理解が十分得られるようにということで努力をしてきたところでございます。

 この点につきまして、私どもとしてはそういった理解が得られますように、引き続き十分努力をしていきたいというふうに思っております。

白保委員 局長、これは、プライベートブランド、あるでしょう。地方が認定すると言うでしょう。これはガイドラインの中に含まれているんです。乱立ぎみ、こんなような言い方をされるわけだけれども、その辺はどうなんですか、よくわからないんですけれども。

 その辺について、もう一回ちょっときちんと教えてください。

中川政府参考人 特別農産物のガイドラインから超えたものにつきましても、民間の独自のプライベートブランドということで一定の基準をつくって、そのことを一つのセールスポイントにするということであれば、そのこと自体は排除すべきものではないというふうに思っております。

 ただ、問題は、有機の表示基準でありますとか、あるいは特別表示ガイドラインと矛盾しないということ、そこのところが大事でありまして、その点が守られている限りにおいては、行政が何か制限を加えたり、指導をしたりということはすべきではないものというふうに思っております。

白保委員 要は、安心を、信頼を回復する、これが一番の基本ですから、ここのところ、食に対する不信というものがずっとここ二、三年ある。したがって、去年も大幅な改正をやって、いろいろな新しい食の安全、安心に対する法律をつくっていったわけですから、そういった面で考えれば、基本は要するに信頼の回復ですから、信頼回復という中にあって、これは一つの基準があって、超えた部分というのがよくわかりにくいんだけれども、要は、このガイドラインの中で、もっと安全だ、安心だという、こういう部分でしょう、超えた部分というのは、というふうに理解しておきたいと思いますけれども。

 こればかりやっていたのでは時間がなくなりますから、次のことについて伺いますが、要は、信頼を確保する、取り戻す、回復する、これが一番大事ですので、ぜひまたしっかりと、せっかくのガイドラインですから前へ進めていただきたい、こういうふうに申し上げておきます。

 次に、農地の流動化、遊休農地解消というのが農業構造改革の前提となる課題であろう、こう思います。

 最近の調査では、不在地主の農地や相続未登記農地がこれらの阻害要因になっているとの指摘もあります。どちらも、多くは相続によって発生してくる問題のようであるわけであります。不在地主農地は、これは都市地域に多い、資産評価が高いために、サラリーマンなどの相続人が分割相続するケースなどであると。そしてまた、相続未登記農地は資産価値の低い中山間地域の農地に多くて、相続時の所有権移転に当たって登記費用を負担することを嫌って所有権移転登記を行わないケースが多いということであるようです。

 このような農地というのは耕作放棄地になりやすく、ごみの不法投棄や病害虫の温床となったり、また不在地主を把握するコスト、これは役所が大変なんです。こういうコストが非常にかかるなど、数々の問題があるわけであります。

 農業者の六割近くが六十五歳以上の高齢者化している現状では、これらの問題について何らかの対策を講ずる必要があると思いますが、全国においてこのような農地がどれぐらいあるのか、把握されているのか、あるいは未登記農地等の利用権設定手続の簡素化、こういったことも含めて、その対策をどのようになされているのか、検討しているか、これを伺いたいと思います。

川村政府参考人 不在地主の所有する農地の問題の提起でございます。

 不在地主という形でストレートに調査したデータはないわけでございますが、農業センサスにおきまして、不在地主が相当部分を占めると考えられます土地持ち非農家、これは定義といたしまして、農家以外で耕地及び耕作放棄地を合わせて五アール以上所有している世帯、こういうデータでございます。これによりますと、これも近年増加傾向でございまして、戸数にして百九万七千戸、それから所有面積で四十七万四千ヘクタール、こういうことになっております。

 そして、今委員がお尋ねございましたように、この土地持ち非農家のその土地が耕作放棄地化するという問題が非常に大きな問題ととらえております。それがこの四十七万四千ヘクタールのうち十三万三千ヘクタールということでございまして、比率にいたしますと二八・一%ということでございますので、やはりこの面での対策が非常に重要になっているということは、私どもも十分認識をしております。

 この解消に向けていろいろなことをしなくちゃいけないわけでございますが、一つは、やはり、今般も農業委員会法の改正をお認めいただいたところでございますけれども、そういうところを農業委員会がパトロールをされまして、耕作放棄地の解消の可能性があるようなところについて重点的に取り組むというところも、優良事例といいますか、そういうところがございます。

 また、私どもも、やはりその担い手へこういった土地を集めていくことが重要だということで、特に基盤強化促進法の利用権の設定、これに基づいて申し出等あるいは指導等を行うことによってできるだけ農業委員会が利用調整を行えるようにということで、その促進を図っていかなくちゃいけないと思っておりますが、現実にはなかなか、地域差もありますが、進んでいないというのも実態でございます。

白保委員 大変重要な問題で、構造改革していく中でそういったところがあるというのは非常に問題が多いわけでありまして、そしてまた、地域の自治体も、これを調査したりあるいは何らかの手を打とうとすると大変コストがかかって困っている問題でありますから、そういう面もしっかりと勘案をして、対策をしっかりと打っていただきたいな、こういうふうに思います。

 それで、関係してきますが、次の問題として、耕作放棄地と鳥獣被害の拡大の問題であります。

 実は、耕作放棄地がふえる、そうすると、イノシシが出たり、シカが出たり、猿が出たり、野生動物が格好のすみかとしているわけですね。まさに耕作放棄地、こういった野生動物のすみかを提供しているような形になっているわけであります。

 農作物の被害が大変深刻化しているわけであります。ことしの四月に島根県へ行ったときにも、何に困っていますか、こういうふうにお聞きしましたら、鳥獣被害、これを挙げられた方が何人かおられまして、大変びっくりしたわけであります。自治体が、おりの仕掛けをやったり、あるいはまた電気牧さくというんですか、そうしたものをつくって、補助金を出していろいろと対応しているわけでありますが、完全な防止策になるには非常に難しい。こういう状況にあることも事実です。

 二〇〇〇年の耕作放棄地は全国で二十一万ヘクタールというふうに聞いておりますが、これは琵琶湖の三つ分だそうです。特に中山間地域で農地の減少が耕作放棄地の増加につながっていく、そういう状況もありますし、荒廃した土地周辺の耕作地に鳥獣被害が増加している、こういう実態であります。

 耕作放棄地を出さない対策が重要であることは、先ほども申し上げましたが、当然のことですが、現実に起きているこの鳥獣被害、これについて国はどういうような対策をあるいは取り組みをなされているのか、これを伺いたい、こういうふうに思います。

白須政府参考人 鳥獣被害についてのお尋ねでございます。

 猿なりイノシシなり、ただいま委員からも御指摘のとおり、耕作放棄地あるいはまたそういう中山間地域を中心に大変発生をいたしておりまして、全国的に見ましても、平成十四年度で、全国で被害面積約十四万ヘクタール、被害金額約二百十三億円というふうになっているわけでございます。

 そこで、こういった被害を防止いたしますために、私どもとしましても、まずその発生原因の究明、それから対策技術の開発、そういった試験研究のところをもしっかりとやっているわけでございます。

 他方また、それぞれの自治体におきまして、ただいま委員からもお話ありますようなそういう侵入防止さく、そういった被害防止施設を整備いたしますとか、あるいは住民の方々にそれぞれ鳥獣の生態あるいは被害防止に必要な知識、そういう普及啓発も進めているわけでございます。また、生産者の皆さんが集まって、追い払い活動、そういう防除活動もやっておられる。そういう自衛体制、そういったことの整備についても支援を、そういった具体的な被害防止への取り組みにつきまして支援を実施しているところでございます。

 さらに、実はこの十六年度からは、なかなかこの被害がやはり広域的だということで、ただいまも委員お話しございましたが、効果的な被害防止対策は何かないかということで、GPSという、いわばカーナビのそういった原理を応用いたしまして、猿なりイノシシを捕獲いたしまして、そういう電波を発するチップみたいなのを取りつけましてそれをもう一回放しますと、それがまた群れに戻ってまいりまして、そうすると、その群れが今どこにいるかというのがわかるような、そういういわば自動追跡調査、技術といったようなことも、実はそういうGPSのような先進的な技術を活用しました調査、あるいはまたそういうことによります接近警戒システムといったようなことも新たにこの支援対象というふうにいたしております。

 そういったもろもろの対策を含めましてこの鳥獣被害防止対策の強化を図っているところでございますので、今後ともしっかりとこの対策の推進に努めてまいりたいと考えている次第でございます。

白保委員 これはなかなか容易じゃないんですよ。私のところも、これは今、島根県の話をしたんだけれども、イノシシがサトウキビ畑に出てくるものですから、山の入り口に、出てこないようにさくをつくって、もうこれで大丈夫だといったら、しばらくしたら出てくるから、どうしたのかと思ったら、ちゃんとさくの下に穴を掘ってそこから出てくるという。なかなか対策が難しい。中には、イノシシを捕まえて、豚とかけ合わせてイノブタをつくって商売しているやつもいますけれども、それは被害じゃなくて、もうけているやつもいるんですが、それはそれとして、やはり鳥獣被害というのは非常に厳しいものがありますので、この対策についてもしっかりとやっていただきたい。

 次に、今年度で実施期間が終わる中山間地域等の直接支払い制度の継続について、これは財務省あたりは、非常に厳しい、廃止を含む抜本見直しなどという、そんなことを言っているようですが、これについてお伺いしますけれども、財務省あたりは、政策目的が不明瞭、ばらまき政策であることは否定できず、単純に事業を継続すべきではないなどということを言っているようですが、どうもよくわかっていないなというふうに思うんです。

 これは、食料・農業・農村計画、そういったことも考えて、多面的な機能等も含めて考え、これからの日本の農業ということをしっかり考えたときに、この問題について、簡単なコメントを出したりなんかして財務省あたりはやっていますが、こういったことについてはしっかりと取り組んでいかなきゃならない。そういう面では、農水省、きちんとその政策効果を説明しているのかなということを私自身は思います。

 したがって、改めて、本制度をどのように農水省自身が評価をして、位置づけて、そして今後どのように取り組んでいくのかということが非常に大事な時期じゃないのかな、こう思いますので、これについての見解をお聞きしたい。

太田政府参考人 中山間地域等直接支払い制度についてのお尋ねでございます。

 多面的機能の低下が特に懸念されております中山間地域等におきまして農業生産活動等が継続されるように、農業生産条件の不利を補正するための支援として行っているものでございます。この支援は、食料・農業・農村基本法に、国が行う基本的施策の手段として位置づけられておるわけでございます。

 この制度の評価でございますけれども、十五年度までの見込みによりますと、千九百六十の市町村におきまして三万四千の協定が締結され、対象農用地の八五%に当たります六十六万ヘクタールの農用地におきまして、農業生産活動等の継続によりまして耕作放棄が防止され、多面的機能が確保されているという状況がございます。

 各地域におけます取り組みでございますけれども、集落協定の締結を契機といたしまして、集落におけます話し合いの活発化、農業機械や施設の共同利用、共同作業の増加など、将来にわたります農業生産活動等の継続に向けた動きのほか、集落の共同活動などによりまして耕作放棄地を積極的に復旧するような動きなど、多様な集落活動が活発に行われるようになってきてまいっております。

 本制度、十二年度に、十六年度までの五年間の対策として発足いたしました。その当時から、五年後に制度の検証及び課題の整理を行うこととされておりまして、現在、中立的な第三者機関でございます中山間地域等総合対策検討会におきまして、現行制度の詳細な検証等を行っておる状況にございます。

 農林水産省といたしましては、地方公共団体等から出されておりますこの制度の継続等についても多数の要望がございまして、そういった要望も聞きながら、検討会における検証を踏まえて検討を進め、そして来るべき十七年度予算に向けまして、整理をしたもので対応していきたいというふうに考えております。

白保委員 それでは、時間もだんだん迫ってきていますから、次の問題に移ります。

 WTOの農業交渉について大臣にもお伺いしたいと思いますが、関税の引き下げ方式など、枠組み交渉の正念場を迎えるWTO交渉でありますが、食料輸入国である我が国は、貿易自由化の拡大という大義を掲げるWTOにこたえながらも、国内農業の保護をするためには、国内農業をきちっと育てていくためにも、ウルグアイ・ラウンド方式、もしくはそれと同等の効果がある方式を今日まで主張してきた。

 七月末の枠組み合意期限までもう近いわけですが、日本の重要品目への十分な配慮がされる合意を形成しなければならない、こういう状況に変わりはありません。十分な配慮のない関税大幅引き下げが現実化すれば、競争力の弱い食料輸入国である我が国の農業は崩壊してしまうほど深刻であります。

 したがって、政府は、G20、ケアンズ・グループなどに全力を挙げて積極的に働きかけて、食料輸入国への理解を取りつけていかなければなりませんし、日本抜きの合意を模索しているようなアメリカやEU、ブラジル、インド、あるいはオーストラリアなどのG5にも日本の意思を十分に伝えるなど、最大限の取り組みをしていかなきゃならないと思いますが、今後の展望についていろいろとさまざまに時々報告を受けたり説明を受けておりますが、今後の取り組みについて大臣のお話を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 WTO農業交渉につきましては、我が国は、多様な農業の共存、これを基本理念といたしまして臨んでおるところでもございます。交渉結果に輸入国の立場が反映されるべき、こういうことで、スイス、ノルウェー、韓国等G10、このような国で、先般、共同のペーパーを提出したところでもございます。

 ここのところ、六月に入りまして、六月の二日から四日、特別会合、あるいは六月の二十三日―二十五日、特別会合が開催をされる、また七月の半ば、こういうようなことで、七月末に向かって大枠の合意、こういうことでいろいろの展開がなされております。

 そういう中で、御指摘のG5、アメリカ、EU、あるいはインド、ブラジル、オーストラリア、こういう国々がやはりいろいろの会合を持ったりしている。それぞれの間にもさまざまな立場の違いがございます。そういうことから、必ずしもその国々が共同の主張を行っているわけでもないわけでありまして、我が国としては、いわゆる国内支持、輸出補助金、こういう面でG10と一緒に一つのペーパーを、そしてさらに、一番の問題は市場アクセスの問題であるわけでありまして、この柔軟性の確保が当然必要なわけでありまして、これらのことにつきまして、G5の国々やあるいはG20ともいろいろ接触をいたしまして、今努力をしておるところでもございます。

 さきのジュネーブの特別会合、これはグローサー議長主宰の少数国の会合が開催をされ、我が国を初め、G10の一部や、あるいはG5を含む十カ国から二十カ国の集中的な議論が行われているところでもありまして、これから、今月下旬の会合に向かってジュネーブでさらに密度の高い交渉が行われることが予測もされるわけでありまして、私ども、引き続きG10と十分連携をし、そして関係国、二カ国間の協議等も議長が主宰する会合等もあるわけでありまして、それらを通じまして我が国の主張が反映されるように一層の努力をしてまいりたい、このように考えております。

白保委員 余り時間がありませんので、次の問題に行きます。

 BSE問題で、アメリカの輸入の問題ですが、これについて、輸入再開問題が期待感を持って語られたりなどする場合があって、我々も非常に憂慮するわけですが、消費者が行政不信にならないように今後も一貫した態度で交渉に臨んでほしいと思いますが、これは大臣にもお願いいたします。また同時に、今後の見通しとスケジュールについてもあわせて伺っておきたいと思います。

亀井国務大臣 四月の日米の局長レベルの協議で、日米の専門家あるいは実務担当者によりますワーキンググループが設置をされまして、BSEの専門的、技術的事項につきましての協議を進める、そして本年夏をめどに日米双方が米国産牛肉及び日本産牛肉の輸入再開について結論を出すべく努力をする、こういうことが合意をされたわけであります。

 この合意を受けまして、第一回のワーキンググループの協議が五月の十八日、十九日に東京で開催をされまして、日米のBSE対策について双方から説明を行ったわけでありますし、BSEの定義、検査方法につきましての質疑の応答が行われました。第二回の会合は本六月二十八日から三十日に今度は米国で行われ、そして第三回が七月の二十一日から二十二日に東京で行われる、こういうことになっております。第一回の協議の結果を踏まえまして、さらに科学的、専門的な見地からの議論を行うことになると考えられます。

 この会合、これは、科学的知見等に基づいた共通の認識を得る、こういうことを目的としておるわけでありまして、米国産及び日本産牛肉の貿易再開に向けた協議、これは具体的な条件について協議を行うというものではない、このように承知をしておりまして、我が国は、やはり消費者の食の安全、安心、この確保が大前提でありますので、そのことを踏まえて十分協議をしてまいりたい、このように考えております。

白保委員 時間が参りましたが、最後に一点だけお聞きをしておきたいと思います。

 農業者の家族協定締結、これが非常に進んでおりまして、いい効果を上げているわけです。これで農業者の意欲が増進するなど、メリットが大きい。一層締結が進むように取り組みをお願いしたいと思います。

 最後に、簡潔に御答弁をお願いします。

川村政府参考人 家族経営協定でございます。

 これは、毎年堅調に増加をいたしておりまして、平成十一年の一万二千戸から十五年には二万五千戸と、倍増をいたしております。ただ、そのパーセンテージといいますか、これはまだ必ずしも高くないので、今後、委員御指摘のとおり、締結人をふやすということで頑張っていきたいと思います。

 また、ちょっと付言をいたしますと、この家族経営協定によりまして共同経営者ということになりますと、女性や後継者も認定農業者として位置づけるという道も開きましたので、そういうメリットも出しましたので、ますます取り組んでいきたいと思っております。

白保委員 終わります。

高木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、ハンナン牛肉偽装事件についてお伺いをいたします。

 この問題は、平成十三年、国内でのBSE発生に伴い実施された牛肉在庫緊急保管対策事業を利用して五十億円にも上る補助金をだまし取るという前代未聞の事件であります。このような事件がやすやすと引き起こされた原因には、浅田ハンナン元会長と畜産部局、そして政治家との癒着、いわゆる政官財の癒着問題があったことはだれの目から見ても明らかであります。それは、事件の全容解明のためにも、再発防止のためにも、徹底的に解明されなければならない極めて重大な問題だと思われます。その点、農林水産大臣は、みずからこの問題を解明するという決意がおありかどうか、まず明らかにされたいと思います。

亀井国務大臣 消費者の不安を払拭する、こういうことから、牛肉在庫の保管、処分事業が悪用され、そして、行政、食肉業界に対する国民の信頼感を揺るがす、こういうことになったことはまことに遺憾に思っております。

 今回の事件、現在、捜査当局によりまして捜査が進められておるわけでありまして、私ども農水省といたしましては、この真相解明のためにこの捜査に全面的に協力をするところであります。いずれ、今、捜査当局におきまして、捜査の状況を見きわめてまいりたい、このように考えております。

 さらには、農水省といたしましては、国民の信頼を回復する、そういう面で、昨年七月、消費・安全局を設置いたしまして、そして組織改正や職員の意識改革、このことを強く徹底させておるところでありまして、消費者重視の政策決定システム、この構築や適正な食肉行政の推進に全力を挙げて取り組んでまいりたい、このように考えております。

高橋委員 捜査の行方を見守るということだったと思うんですけれども、同時に、国民の安全、安心の信頼をかち取ると。

 ただ、今回の事業は国の補助事業によって引き起こされた事件でありますので、農林水産省の幹部がどのように関与をしていたのか、その認識があって関与をしていたのか、その程度によって、やはり罪の重さが大きくかかわってくる。それは、捜査に任せるという水準ではなくて、農水省自身の問題として内部から明らかにしなければならない問題、こういうことが私は問われていると思うんですね。

 例えば、四月二十三日の日本経済新聞では、府肉連への輸入肉持ち込みは「農水省職員が紹介」という大きな見出しがついていて、その中で、「同省食肉鶏卵課は「買い取り事業は国産牛肉を対象としており、担当者は国産牛肉の話だと思って取り次いだ。問い合わせがあった業者には、すべて同様の対応をしており、問題はなかったと考える」」こうコメントを寄せていますね。ほかの新聞にもこのコメントが載っております。

 あるいは、二十六日付の毎日新聞。逮捕された平成フーズの田尻容疑者も「農水省や国会議員事務所に押しかけ、農水省は、肉の買い取りを浅田容疑者に依頼。関係者によると、田尻容疑者は農水省に「輸入肉も買い上げろ」と迫り、肉の大半が輸入肉ということは浅田容疑者も知っていたという。田尻容疑者は「輸入肉だと言った」と供述しており、取引対象が輸入肉だと農水省が認識していた可能性もある。」このように述べております。

 ですから、ここで国産牛だと思っていたかどうか、輸入肉という認識があったかどうか、ここが非常に大きなかぎになるわけですけれども、この点について、国産牛だという認識に変わりはないのか、あるいは、だとすればその根拠、なぜそう思ったのか、伺います。

白須政府参考人 当時の我が国の食肉流通、大変に混乱をしておったわけでございます。そこで、BSE全頭検査前の国産牛肉の市場隔離を行う牛肉在庫保管事業につきまして、いわゆる組織に入っておらない業者の方々から、事業に参画できない、そういった問い合わせが殺到をしておりまして、これらの問い合わせに対しまして、それぞれ担当課が個々に対応しておったわけでございます。なお、当然、この保管事業につきましては、国産牛肉が対象であったということは十分周知をされておったというふうに考えております。

 そこで、ただいま委員からも御指摘ございました一連の報道事実に関しまして、当時の担当者に真偽のほどを確認いたしましたところ、ただいま委員からもお話ございました平成フーズもこういった組織未加入の業者ということでございまして、当時問い合わせを行ってきた業者の一人であったということで、国産牛肉であることを前提といたしまして、その事業対象として、ステーキ肉でございますとかそういう小売用の肉が対象にならないかどうか、そういったやりとりを行いました上で、浅田被告に保管事業の対象となる国産牛肉の買い上げを要請した、そういう事実はあるということでございますが、この保管事業の対象になり得ない輸入牛肉の受け入れを検討してほしい、そういった要請を行った事実はないというふうに聞いているわけでございます。

 そこで、それをどうやって確認したのかという、根拠はというお尋ねでございますが、この事業は、まさにこのBSEの発生によりまして全頭検査が開始をされました十三年十月十八日より前に屠畜解体されました国産牛肉を市場から隔離するということが目的でございまして、それで、実施要領におきましても対象牛肉は国産牛肉だというふうに明記をされておりまして、輸入牛肉が対象となり得ないということは一般的に明らかであったというふうに考えているわけでございます。

 また、当時の担当者に確認をしましたところ、平成フーズから、事業対象として贈答用のステーキ肉等を対象にできないかといった問い合わせがあり、担当者から、通常、冷凍保管の対象とならない小売用の肉、スライスでございますとかミンチとか、そういった肉は対象とならない旨を説明するなど、国産牛肉であることを前提として事業対象としての限界事例についてのやりとりを行っていたということでございます。

 したがいまして、私どもとしても、平成フーズからの問い合わせの対象となった牛肉につきまして、当時の担当者が輸入牛肉であるというふうに認識していたとは考えておりません。

高橋委員 今のお話ですと、実施要綱に国産牛だということが明記をされている、それだけですよね。だから、実際に確認されたわけではないんです。今ステーキ肉とおっしゃいましたけれども、実際はさいころステーキですよね。国産牛は二五%しか入っておりません。輸入肉は対象にならない、ならないことをわかっているから頼んだんでしょう。

 六月六日付の赤旗新聞でこのような報道があります。

 平成フーズ社長の田尻正司、田尻被告が五日までに取材に応じ、二〇〇一年十一月に農水省を訪れ、助成対象外と断った上で在庫牛肉の買い上げを求めたと話しました。同省が、食肉大手ハンナン元会長の浅田容疑者、補助金適正化法違反容疑で再逮捕、に田尻被告の肉買い取りを要請したことが既に判明していますということで、言い分は食い違っていますということなんですけれども、具体的にその部分を言いますね。

 「二〇〇一年十一月の二回、農水省食肉鶏卵課を訪れ、国産肉二五%のサイコロステーキ用牛肉の買い上げを要請」した。「加工牛肉は助成対象外でしたが「二五%でもBSE感染の危険があり、(一〇〇%)国産牛肉と同様に買い上げてほしい」と陳情しました。 二回目の同月十五日、田尻被告は「国会前でサイコロステーキ十トンをばらまく」などと応対した担当者に詰め寄りました。同課の奥の席にいた別の幹部が「会長すいません。何とかお願いできますか」と浅田容疑者に電話」をして、「その後、担当者から「農水省では対象外なので、浅田さんのところに行ってほしい」と話された」というふうにあります。

 全くお話ししていることと事実が違うんじゃないですか。いかがですか。

白須政府参考人 当時の担当者に確認をいたしましたところ、ただいま委員からお話がございましたような、輸入牛肉であるということを前提にしたそういうやりとりがあったということは確認をいたしておりません。

高橋委員 当時の担当者が、参議院でも指摘されたように、十月の中旬、都内の高級料亭で浅田容疑者の接待を受けたこととか、そういう問題があるわけですよね、永村元畜産部長及び大野元食肉調整官。ですから、そういう方たちが、もう受託収賄罪の可能性が高い接待を受けている、そういうことが明らかになっている人たちが、わかっていてやりましたと言うわけがないんですね。でも、これはもう捜査の手に入っているわけですから、事実が明らかにいずれなるわけですよ。そのときに、農水省は認めなかった、みずから明らかにしなかったということでは大変な罪が問われると思いますよ。そういう点では、大臣、再調査をする考えはありませんか。伺います。

亀井国務大臣 いや、これは先ほども私申し上げましたが、やはり捜査当局によります事実解明の取り組みに農水省といたしましては全面的に協力をして真相解明がなされるということが私は必要なこと、このように思っております。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

高橋委員 いずれ真相は解明されるかもしれません。そのときにやはり農水省の対応が問われるという点では、やはりみずからの努力で、もちろん、外部の調査、警察の捜査、さまざまやる、それに協力もする、しかし内部的な調査ももっと徹底して国民の前に明らかにするということが今求められていると思います。そのことは指摘をしておきたいと思います。

 次に、BSE問題に移りたいと思います。

 五月十八日、十九日に日米両国の専門家及び実務者が米国産及び日本産牛肉の輸入再開問題等におけるBSE措置等に関する会合を行いました。これは、四月二十四日の第三回日米BSE協議に基づき、本年夏を目途に米国産及び日本産牛肉の輸入再開につき結論を出そうという全体的枠組みの中で設置されたワーキンググループであり、毎月一回会議を行うと聞いております。

 そこでまず、単純に確認であります。

 ワーキンググループが第一回の会合で確認した点は何か、これにより判明した日米双方のBSE対策における決定的な違いについてまず伺いたいと思います。

中川政府参考人 第一回目のワーキンググループ会合で議論された点についてでございますけれども、まず、日本及び米国がそれぞれ講じておりますBSE対策につきまして、それぞれから説明を行う、それから、この説明に対して技術的、専門的見地から意見交換を行うということで取り進められたところでございます。

 具体的に日米間で見解の相違があったという点、幾つかありますけれども、主な点だけ申し上げますが、一つはBSEの検査についてでございます。日本としては、このBSEの検査というのは食肉の安全確保の観点から行っているというふうにしているのに対しまして、アメリカは、BSEの蔓延状況等を把握するためのサーベイランスとして行っているという、この位置づけが違うということが一つでございます。

 それから、特定危険部位の定義等でございますけれども、日米ともに英国のデータを参考としているわけでありますが、日本は、この科学的なイギリスでのデータだけでは十分でないということから、全月齢の牛を対象にして特定危険部位の除去を行っているというのに対しまして、アメリカでは、英国のデータでは三十カ月齢未満の牛についてはBSEの発生リスクも低いということで、三十カ月齢以上を対象にしているというふうな違いがございます。

 また、サーベイランスにつきましても、日本は屠畜場において健康牛も含めてすべて対象にしておりますが、アメリカでは経済性の観点等からリスク牛のみを対象とした検査を行っている。

 ほかにもございますけれども、主な点、見解が違っている点というのは以上のようなことかというふうに思います。

高橋委員 今までも考え方の違いということは指摘をされてきたわけですけれども、改めてワーキンググループでこの点を確認された、日本は食肉の安全確保という点で全頭検査をやっているけれども、アメリカは蔓延状況の把握という、あくまでもサーベイランスという考え方なんだと。そうすると、全く違うわけですよね。ここで、八月に向けて、八月というか夏に向けてどう歩み寄りをしていくのかな、基本的には全く違うなということを思うわけですね。日本が、日本から歩み寄るようなことはないだろうなということで、皆さんがるる心配をされて、御発言もされてきたと思うんですね。

 私はやはり、何度かこれまでも紹介をされてきたと思うんですけれども、二月十日の共同通信の世論調査で、輸入解禁の条件として、国民の八七%、九割近い方が全頭検査を必要だと答えている。こうした各種の世論調査があることや、また、これまではどちらかというと外食産業の意見などは随分紹介をされてきておりますけれども、例えば、四月五日に、六百四十八社を管轄する日本スーパーマーケット協会が「米国産牛肉の輸入再開に関する意見書」というものを発表して、「肉骨粉の使用禁止、全頭検査の実施、トレーサビリティの導入など、多大な経済的負担があるにもかかわらず、再発防止と不安の解消に向けた対策をとり、食品の安全・安心の確保に努めてきたという背景があります。」と言って、「決して妥協することなく、政府の毅然とした断固たる姿勢を示し、消費者が納得できる食品の安全・安心の確保を最優先に、国内同一基準で米国に対応することを強く要求します。」こういう意見書を上げていると思うんですね。

 同じく日本チェーンストア協会なども意見を上げていますが、五月十九日の朝日新聞で、チェーンストア協会会長の川島さんが「農水省が米国に同じ水準の体制を求めて一歩も譲らないことも評価する。」「安全・安心のために必要なことはコストをかけてもやるべきだ」というふうなことで激励をしているわけですよね。

 同じころの日本農業新聞などでも紹介されていますが、米国の消費者も、コンシューマーユニオンという全米調査があって、五八%の国民が、屠畜するすべての牛肉についてBSE検査を求めている。七一%が、安全性を調べる検査のための費用は国民が負担することに賛成だと声を上げている。米国の中でもそういう動きがあるわけですよね。

 ですから、まさに国民が支持をしている、そういう立場で、全く違う見解だけれども、日本は揺るぎない立場で臨むということで確認をしてよろしいでしょうか。

亀井国務大臣 このことにつきましては、終始、私は、消費者の食の安全、安心、この確保が大前提でありますし、国産牛肉と同等のことが行われる、こういうことがまた基本であるわけでありまして、そのような考え方のもとにこれからも進めてまいりたい、こう思っております。

高橋委員 大臣が繰り返し言ってくださる、それは確認いたしました。それで、何でこうした不安が消えないんだろうと。

 その中の一つに、国内での動向がやはり注目をされているわけですよね。食品安全委員会が、二十四日の日米協議を前にして十五日に安全委員会を開いておりますけれども、その前後の新聞各紙の報道が、「全頭検査見直し着手決定」これは日経新聞、「BSE全頭検査十五日から見直し」朝日新聞、食品安全委員会がBSE対策検証という形で、いずれも、食品安全委員会が見直し作業を始めたという立場の報道をしているわけですね。だから不安が消えない。

 この点について、改めて、安全委員会が今まで、そうでないという意見があったように思いますけれども、確認をしたいと思います。

梅津政府参考人 食品安全委員会では、昨年の発足以来、牛の脊柱の背根神経節の問題、あるいは豚の肉骨粉の問題等、両省からの評価の要請に応じてリスク評価を行ってまいりました。

 また同時に、昨年八月の第一回プリオン調査会でも、日本のBSE問題全般について議論することが重要であるというふうにされまして、本年二月から、BSE問題全般について科学的な議論を開始し、これまでに種々の情報収集に努めるとともに、海外の専門家からも意見を聴取するなどをして議論を行ってきたところでございます。

 また、BSEへの対応につきましては、国際機関であるOIEが従来から中心的な役割を果たしてきておりまして、このOIEの内容などについて理解を深めるため、この分野の専門家である小澤名誉顧問をお招きしてお話を伺うというようなこともあったわけでございます。

 その後、四月二十二日の第八回プリオン専門調査会では、我が国で最初にBSEが発生したときの経緯などについて、さらに五月十四日には、EUの科学委員会の知見や我が国におけるBSE発生予測について、さらに六月一日には、我が国におけるvCJDのリスク、我が国のBSE対策について議論を行ってきたところでございます。

 このように、今後ともBSE問題全体について客観的、中立的に議論を継続してまいりたいと考えております。

高橋委員 一言で答えていただきたいと思います。今の全般的に検討しているというお答えでありましたけれども、全頭検査について見直しを着手したという報道のあり方、そういう認識は間違いですか。

梅津政府参考人 今申しましたように、ことしの二月からさまざまな情報収集とあわせて、BSE問題全般について議論をしてまいりました。今議員お尋ねの、いわゆる月齢を問わない検査につきましては、厚生労働省において行っているわけでございまして、この見直しにつきましては、基本的には厚生労働省の所管に係る問題であるというふうに理解しております。

高橋委員 基本的には厚生労働省と。後で厚生労働省にも聞きますので。

 はっきりおっしゃらなかったので、見直しという言い方をされちゃ困るという所見なのかなと思いますね。ただ、なぜそういうふうに言われるのか。もしそれが公式でないというのであれば、公式でないところでそういう話し合いがあるのかなと、逆にそう思わざるを得ないわけです。

 今、二月にその全般的な検討を始めたとおっしゃいましたけれども、二月三日、食品安全委員会プリオン専門調査会第四回会合議事録です。この中で、吉川座長が何ておっしゃっているかというと、「先週一月二十八日の食品安全委員会で、この問題に関してリスク評価を本格的に始める準備をしてくれというようなことを寺田委員長の方から私に、そのような旨の指示がありました。」これは、その数行上に「全頭検査の必要性の有無等については、いろいろな議論がいろいろな場所で混ぜ合わされるというようなことになっております。」ですから、座長は、寺田委員長からリスク評価、これは結果としてどうなるかは別として、見直しを考えてくれと言われた、そういう認識を持っているんじゃないですか。

 ところが、ちょっとその後に評価調整官のコメントがありまして、「先ほど座長からありましたように、一月三十日の第二十九回食品安全委員会でBSEに関する一月二十三日の日米会合の状況を事務局から報告するとともに、委員長からプリオン専門調査会で基本的な議論を始めるようにという指示があったところでございます。」だから、評価調整官の表現は、基本的な論議ということで、事務局長のお答えに近いのかなと思うんですけれども。

 私が聞きたいのは、座長は委員長から指示があったと言っている、ところが、一月二十八日というのは安全委員会を開いていませんね。開いていないはずです、公式には何にもありません。それで、調整官が言っている一月三十日というのもありません。一月三十日の第二十九回安全委員会というのもありません。あるのは、一月二十九日の第三十回安全委員会。どうなっているんでしょうね。何か議事録にない世界で会合が開かれているんでしょうか。いかがですか。

梅津政府参考人 今委員御指摘の点につきましては、この安全委員会の議事録にちょっと間違いがございまして、一月三十日の第二十九回食品安全委員会ではなくて、一月二十九日の第三十回食品安全委員会ということで、二十九と三十の位置がちょっと逆になっているということでございます。申しわけございません。

高橋委員 一月二十八日の食品安全委員会は存在していますか。

梅津政府参考人 今の御指摘の点も、私ども、毎週木曜日が定例の委員会でございまして、この一月二十八日も、二十九日の第三十回の食品安全委員会のことでございまして、二十九日の間違いでございます。

高橋委員 そうですよね。一月二十九日の第三十回の議事録がここにございます。このときに、委員長がどう言っていますかといいますと、「プリオンの専門調査会においても、米国における正確な状況の把握など、基本的な勉強を始めてはいかがかなというふうに思っておりますが、どうでしょう。」ということしか言っていないんですね。

 だから、座長がひとり合点をして指示をされた、これで指示をされたというふうに思っているのかなということを非常に疑問に思うわけです。だから、そういうことが内々にあるのかなと思わざるを得ない。

 続けますけれども、四月十五日の、OIE、国際獣疫事務局の名誉顧問の小澤先生の講演を聞いた食品安全委員会、これは非常におもしろい中身になっておりまして、例えば、浅田農産のようなところで牛を飼っていたとすれば、この症状は違うと言えば検査の対象に入れないというようなことが起こるわけで、実際にそういう問題がかなりあるんじゃないかと。だから、まじめにやっているところがなかなかリスクが高くなるというふうな話をされて、しかし、最後に、小澤さんはこう言っているんですね。EUは迅速検査の目的は安全のためにやるということはどこにも書いていない、OIEの基準にも安全のためにやる基準というのは実際にどこにも書いていない、だから、今日、日本の全頭検査の目的が問われているわけですということを提言しているんですね。

 ですから、私は、この方、実は一番最初に、私はOIEの名誉顧問だけれども、きょうは個人的な意見を言うので誤解のないようにとおっしゃっています。でも、そういう肩書がある人を連れてきて、そして個人的な見解などということで委員会がやられて、しかも重要な発言をされている、これでいいのかということを私は指摘をしておきたいと思うんです。

 それで、最後に、厚生労働省に伺いたいと思うんですけれども、きょう実は委員会にお配りしたかった資料があるんですが、ちょっと理事会で許可をいただけませんでしたので、私の手元にあるんですが、十五年十二月二十四日、局長級会議の概要について。日時、十二月二十四日一時半になっております。食品安全委員会の委員会室で、食品安全委員会と厚労省と農林水産省がそれぞれ出席をしております。

 これが何で配れなかったのかなと思いますと、読後廃棄と書いておられる。だから、存在してはいけない文書になっているわけですね。私は、ここを見て、安全委員会と政府との関係というのかな、非常にどうなのかと思うわけです。

 「例えば「今までホルモンを食べていたが大丈夫か」と言った消費者からの問い合わせにはどのように対応するのか。」などと、評価をするべき委員会が政府に質問していて、それに対する厚労省の答えは、「米国においても一定のサーベイランスは実施しており、EUのように爆発的に汚染が広がることはない。」「人への影響はほとんどない」「全頭検査はサーベイランス以上の意味を持っていない」こういうことを厚労省は言っております。

 ですから、この時点で、もう既に全頭検査は、そこまでしがみつかなくていいよという認識を持っていたんじゃないですか。この会議の有無も含めて、お答えいただきたいと思います。

遠藤政府参考人 ただいまお話しの会議、はっきりとは記憶をしておりませんが、食品安全委員会において、アメリカのBSE発生以降、時に行われてきた会議の一つ、その最初ということになるのではないかと思います。

 今お話しのその発言が実際にどのように行われたのかというのは、その記録自身恐らく正式なものではないと思われますし、私も見てはいないわけですけれども、全頭検査に関して申し上げればといいますか、BSEの検査の意義ということを考えますと、アメリカにおいてさえ、検査を行った牛に関しては市場に流通するのをとめる。もちろん、その結果、陽性になった場合には廃棄をするというふうなことにして、それは最初のアメリカのBSE発見の際の不手際といいますかがあったために、アメリカもそのようにしているわけです。

 一方、日本の検査がもちろん安全性の確保に資するものであることは確かでありますけれども、一方また、サーベイランスとしての意義も、例えば二十一カ月齢、二十三カ月齢の感染牛を発見したというふうな意義もあるわけで、いずれにいたしましても、厚生労働省として、現在、このことについて厚生労働省の中で検討しているということはなくて、今後、日米交渉あるいは食品安全委員会の御検討などを見て考えていきたいということでございます。

高橋委員 先ほど安全委員会は、厚労省が最終判断するとおっしゃったんですから、もう時間がないので指摘だけにしますけれども、先ほど大臣が松木委員の質問に対して、同等の検査を求めていくとおっしゃいましたよね。だから、同等のという言葉が生きていると、国内環境が変わると、同等の中身は変わってくるんです。だから、何度も何度も聞いているんですね。だから、ここをしっかりと受けとめていただきたいと思います。

 委員長に要望しますが、今、遠藤部長が議事録その他自分が把握していないとおっしゃいましたので、調査の上、委員会に提出してくださることを要望します。

小平委員長代理 ただいま委員長不在ですが、その代理として、今ほど遠藤部長の答弁で、その書類の信憑性についての云々がありましたので、これについてのことですね。

 その書類については、後刻理事会で、私からも委員長に報告をし、その場で検討をしようと思っていますので、それでよろしいですか。今の発言をとらえてですね。

高橋委員 はい、お願いします。

小平委員長代理 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本であります。

 まず最初に、林業における労働災害というものについてお伺いしていきたいと思います。

 先ごろ、地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策の進捗状況というのが発表されました。その中で、第一ステップの主な取り組みと成果、そして今後の取り組むべき課題ということがその中には書かれておりまして、健全な森林の整備ということについては、現状、間伐対象地の奥地化と相まって、採算性の悪化や所有者の意欲の低下などから、依然、間伐の必要な森林が多く存在しているというふうに指摘しているわけです。

 ですから、この林業政策というものは極めて重要なわけでございますが、しかしながら、林業職場における労働災害というのはほかの産業に比べて著しく高くなっています。全産業で百万時間当たりの発生頻度が三・五一ということに対して林業職場では五三・〇七と、十五倍も危険な職場だというふうなことが現実に起きているということでございます。こうした現状をどのように認識をして対策を立てているのか、お伺いします。

前田政府参考人 先生御指摘のように、確かに林業の労働災害発生頻度、林業の作業環境が天候に大変左右されやすい、また傾斜地での作業が多いといったことから、依然として他産業に比べまして高い水準にございます。特に、平成十五年の林業におきます重大災害につきましては、前年の発生件数を大幅に上回る、そういった増加となっておりまして、林野庁といたしましても、この事態を重く受けとめているところでございます。

 このために、昨年九月から、林業・木材製造業労働災害防止協会等と連携いたしまして、林材業におきます死亡災害急増に伴う緊急対策、これを実施いたし、木材伐出作業等におきます類似災害の防止、新規就労者等への安全衛生教育の徹底、こういったことを重点といたした取り組みを行っているところでございます。

 また、伐木作業等におきます労働災害の防止を図るため、森林・林業雇用総合対策事業によりまして、各都道府県において、一つには林業事業体に対します安全巡回指導の実施、あるいは事業主に対する労働安全衛生改善セミナーの開催、現場作業者等を対象とした実践的な安全作業技術現地研修会の開催、安全管理及び安全意識向上教育の手法を実践的に指導いたします安全管理指導専門家の養成、こういった各種安全対策に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、関係機関と連携しながら、林業事業体におきます安全活動を促進し、労働災害の防止に努めてまいりたい、かように考えている次第でございます。

山本(喜)委員 さまざまな対策はとられていることでありますが、災害発生の状況は、従事年数一年未満の死亡災害というのが二十二件起きているわけでございます。ですから、林業労働は極めて熟練を要する仕事ではないのかというふうに思うわけでございますが、これは、一般的に一人前になるのにどのぐらいの経験年数が必要なんでしょうか。

前田政府参考人 今お話ありましたように、林業労働につきましては労働災害の発生状況が他産業に比較して高い状況にございます。そういった中で、作業を安全に行うための技能、技術の習得が必要というふうに考えているわけでございますが、このため、緑の雇用担い手育成対策事業、これにおきましては、約一年間にわたりまして、チェーンソーの操作等、労働安全衛生法に基づく特別教育、こういったものなどを行います集合研修ですとか、受け入れ先の林業事業体におきます実地研修、こういったことを実施していくこととしております。

 確かに、技術あるいは技能の習得には個人差もございまして、期間について一概には断定しがたい面もございますが、この一連の研修によりまして、安全面を含め、林業事業体等から最低限求められます技能は習得されるものと考えられ、こうした研修が終了した時点で、これら研修生が林業に本格的に就業できるようになるものというふうに考えている次第でございます。

山本(喜)委員 今おっしゃられた内容だと、一年間ということでございますね。しかしながら、いろいろな林業関係の人から聞くと、やはり個人差があるということで、一概に言えないが三年から五年は必要だというふうなお話も承っているわけでございます。ですから、緊急雇用対策並びに緑の雇用、これで一年間で現場に出て、果たしてどうなのか。現実、一年未満の死亡災害が二十二件という現実の数字があるわけですよ。ですから、この一年間で果たして十分なのかということでは、これは言えないというのが結果としてあらわれていると思うんですが、この点、どうなんですか。

前田政府参考人 確かに、おっしゃいますように、パーフェクトあるいは完全にということになるとなかなか難しい面があろうかと思いますが、この一年間の緑の担い手研修で求められますのは安全を含めまして最低限必要な技能、こういったものは一年ぐらいで習得できるんではないかというようなことで考えている次第でございまして、あとは、当然、仕事をやりながら、そういった中でもまたいろいろと日々向上していく、そういった性格のものではないかというふうに考える次第でございます。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

山本(喜)委員 一年間やっただけでは即戦力ということにはならないということで、仕事をやりながら技能を習得していくということで、いわゆるOJTの方法というのが緑の担い手でもたしか使われてきているというふうに理解をしていますが、実際その現場に、森林組合などに配属をされていく、定着化をしていくということにこれからしていかなきゃならないと思うんですよね。この十カ年対策の進捗状況という中にも研修生等の定着化が必要だということが書かれていますから、そうした意味で、死亡災害が多過ぎるということでは、なかなかこれは定着が難しいと思うわけです。

 そういう意味で、研修後の、実際現場に出て、OJTを使った取り組みというのを事業体に義務づけ化させていく、あるいは奨励していくということが必要ではないかと思うんですが、このOJTの導入の場合、非常に能率が上がらないということで事業主が敬遠する傾向があるというふうに聞いています。そうした点で、このOJT方式の採用についての国としての奨励並びに援助ということについてはどのようにお考えでしょうか。

前田政府参考人 林業の場合に、林業就業者の技術の向上のための研修につきましては、都道府県の林業労働力確保支援センター、こういったところにおきまして、それぞれの技能あるいは技術、こういったもののレベルに応じました多様な研修を実施しているところでございます。とりわけ、今お話にありますように、新たに林業に就業された方を基幹的な就労者として定着させるためには、何といいましても、やはり実際の現場で実地の作業を通じた研修を行っていくということが重要と考えている次第でございます。

 このため、先ほども申し上げましたけれども、緑の雇用担い手育成対策事業におきまして、森林整備の担い手としての専門的な技能あるいは技術、これを習得させるために、いわばOJTとして職場内における長期間の実地研修ということで実施しているところでございます。また、緑の雇用担い手育成対策につきましては、国庫補助事業以外にも、地方財政措置によりまして同様の支援措置が講じられているところでございます。

 定着の話がございましたけれども、十四年度の補正予算によりまして実際に研修を受けられました方、このうちの九割近くの方が現に定着しているというような状況でもございまして、今後とも、これらの施策等を通じまして、新規就労者が専門的な技術あるいは技能、これを習得して、定着が図られるように努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

山本(喜)委員 林業職場の災害は、伐木作業とかそういうものだけでなくて、ハチ刺されによる死亡事故というのも大変多く発生しているわけでございます。この補助治療薬のエピネフリン注射液自己注射キット、これが昨年八月から認可をされたということで、日本林業調査会の業界誌、林政ニュースのニュースの昨年度のランク、これは第四番目に入っているんですよ。第五位がバイオマス・ニッポン戦略閣議決定、これよりも大変注目度の高い薬の認可ということでございます。

 ですから、山で働く人たちにとっては非常に待ちに待った薬の認可ということだと思うんですが、これは非常に高価な薬のようでございまして、一本一万五千円、そして、まだ七百本ぐらいしか森林組合等事業体には購入されていないというふうな数字があるわけでございます。ですから、この七百本という数字を見ると、期待が高い割には現場に十分行き渡っていないのではないかというふうに思うんです。ですから、このキットの普及のために、その支援策というものについて検討していただきたいんですが、この点についていかがでしょうか。

前田政府参考人 先生御案内のように、このエピネフリン注射液自己注射キット製剤、これは実は平成七年度ぐらいから国有林野事業におきまして、平成六年に死亡災害が起こったこともございまして、試行的に導入し治験を行ってきたわけでございます。

 そして、今お話ございましたように、昨年の八月に輸入それから販売が承認されたところでございますけれども、輸入、販売が開始されましてからまだ期間も浅い、また、ちょうど使う時期が夏にかけてですので、今夏が初めて使用時期になってくるというようなこともございまして、私どもの方でお聞きしているところでは、現場への普及につきましては、六月現在で約千五百本程度ではないかというようなことを推計いたしているところでございます。

 確かに、これは保険がきかないというようなこともございますし、薬事法に基づくいわゆる医薬品でございますので、その使用方法につきましても慎重に対応していく必要があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、この製剤キット、これにつきましては、そういった医師の処方のもとできちっとやっていく、そういうことの中で、特に事業主の方ですとか、あるいは現場の作業者の方々、そういった方々にハチ毒の恐ろしさあるいは危険性、こういったものを認識させますとともに、医薬品としての適正使用について普及していくということがまずもって必要ではないかというように考えております。

 このため、平成十六年度におきまして、ハチ毒に精通いたしました日本アレルギー学会に所属いたしております医師を講師にいたしまして、ハチ毒及びこの製剤に関します普及講習会、これを実施することとしているところでございます。

 また、各都道府県におきましては、現在、それぞれ、森林整備担い手対策基金、これは地財措置でございますが、こういった基金を設けております。そして、ハチによります被害の大きい県などにおきましては、ハチ毒アレルギー検査ですとかあるいは自動注射器の購入、こういったものに係る経費に対しまして、これから支援措置が行われているわけでございまして、今後ともこういった基金等によります支援、これが進められますように都道府県に対して要請してまいりたいというように考えている次第でございます。

山本(喜)委員 森林・林業をこれから発展させていくということは、地球温暖化の対策についても大変重要だと思うんです。そういう意味で、労働力を確保していく、担い手を育成していくということのためにも、その労働環境、職場環境を改善していくということのためにも、労働災害撲滅のためにぜひこれからも全力を挙げていただきたいというふうに思います。

 それから、大臣にお伺いしますけれども、森林吸収源十カ年対策の進捗状況という中では、緑の雇用対策などにより担い手の確保、育成を図るというふうにこの中にあるわけですが、今後の緑の雇用対策ということについてどのようにお考えでしょうか。

亀井国務大臣 林業就業者の減少また高齢化が進む中で今後の森林整備を着実に進めていく、そういう面で、優秀な森林整備の担い手が必要なことであります。また、この育成が必要なことであります。

 御承知のとおり、緑の雇用担い手育成対策事業につきましては、平成十四年度の補正予算から実施をしたわけでありまして、本年四月には、この事業の研修を終了した者のうち九割、約二千人が林業就業者として本格雇用になっておるわけでありまして、本年度の予算におきましても予算を確保し、二千四百人規模の研修生を対象に実地研修を行う予定でありまして、今後ともこの事業は着実に進めて、地域への定着に努力をしてまいりたい、このように考えております。

山本(喜)委員 次に、十五年度の農業白書についてお伺いします。

 今度別な、プロ農家、担い手の育成ということでございますが、この白書によりますと、「農業構造の展望」では、平成二十二年に作業受託を含めて全国の農地面積の六割程度を効率的かつ安定的な農業経営に集積すると見込んでいるというふうに書かれています。そこで、白書の中では、農業所得が一割以上増加した経営体を発展型経営、それから、一割以上減少させた経営体を下降型経営というふうに定義しています。それから、水田経営については、水田面積が増加した経営体を規模拡大型経営、縮小した経営体を縮小型経営というふうに分類しているわけです。

 そこで、この発展型経営体と下降型経営体、この数、これらが調査対象経営体の何割を占めていて、そして耕地面積ではどのぐらい耕作しているのか。それから、もう一つの規模拡大型あるいは規模縮小型というのでは、それは全体の何割、そして耕地面積ではそれぞれ何割を占めているのか、お伺いします。

川村政府参考人 十五年度の白書に関しまして御質問でございます。

 十五年度の食料・農業・農村白書におきまして、農業所得を増加させている経営、また規模拡大を図る経営の特徴を明らかにするという観点から分析を行ったわけでございます。

 具体的には、今御質問の中にありましたとおり、平成九年から平成十四年の間に農業所得を一〇%以上増加させた農家を発展型経営、農業所得を一〇%以上減少させた農家を下降型経営といたしましたし、また、平成七年から平成十二年の間に水田の経営耕地面積を一定程度拡大した農家を規模拡大型経営、一定程度縮小した農家を規模縮小型経営として、それぞれの経営の特徴を明らかにしたところであります。

 これらの分析に用いたデータでございますけれども、農業経営統計の調査あるいは農林業センサスの対象農家のうちの一定の要件に該当するものを標本として抽出した組みかえ集計の結果でございまして、そういうことからいたしますと、これらの経営体が全体の農家戸数あるいは面積のうちの何割程度を占めているかということを導くことはできないわけでございます。

 ただ、標本的にどの程度のシェアを占めるかということはわかりますので、それをお答え申し上げますと、発展型経営体、下降型のこの分析におきます標本は千四百九十六戸ございます。このうち、発展型の経営は三百九十八戸で二七%、下降型は九百四十一戸で六三%でございました。

 また一方、規模拡大型と規模縮小型につきましては、七万五千百九十二戸がサンプルの対象でございまして、このうち拡大型は一万六千四百十戸で二二%、縮小型は一万八千六百二戸で二五%、こういった状況になってございます。

 この分析を通じまして、今非常に厳しい経営環境のもとでございますけれども、適正な投資あるいは経営の多角化等に取り組むことによって所得確保を図っておられる経営があるんだということが分析できたということでございます。

山本(喜)委員 ですから、この分析は、全体的な状況を導くものにはならないということですね。厳しい経営環境の中でも頑張っている農家はこれだけあるという数字であって、日本の農家全体が、こういうふうに分類して、今は上がっているということではないというふうに言えるわけですよ。まず、それが一つですね。

 そして、この担い手の関係ですが、最初に担い手を意識的に位置づけたというふうなものは、認定農業者の制度、これが最初の担い手だったと思うんです。ですから、この認定農業者の制度の一定の総括というのも必要ではないのかと。

 ですから、この認定農業者の計画と実績、そして現状の耕作面積の割合、そうしたものについての一定の総括があるのかどうか、お伺いします。

川村政府参考人 認定農業者制度でございますけれども、規模拡大あるいは経営の多角化等によりまして経営改善を行おう、こういう農業者が策定しました経営改善計画につきまして、市町村が基本構想に照らして認定するという仕組みでございます。

 今申し上げましたように、個々の認定農業者が目指す経営改善の内容というのは、単に規模拡大だけでなくて、経営の多角化も含めて多様なものでございます。認定時点も、同時期に全国一斉に行うというものではございませんので、なかなか全体的な割合というのは算出できないわけでございます。

 ただ、平成十五年三月までに認定されました認定農業者約八万経営体を、これもサンプル的に調査したものでございますが、認定申請時の平均経営規模が六・三ヘクタール、五年後を目標にしておりますけれども、この目標が八ヘクタールということになっておるわけでございます。二〇〇〇年のセンサスと比べますと、実際の経営規模、主業農家は四ヘクタールでございますけれども、認定農業者は六・五ということで、実際、経営規模も拡大しているという状況はうかがえるわけでございます。

山本(喜)委員 次に、もう一つ、今、地域水田農業ビジョンというのが策定をされて、取り組まれています。担い手を明確にするということで、担い手のリストを添付するということになっているわけですが、この地域水田農業ビジョンの作成に基づく担い手の決定に当たっての議論、あるいは地域での議論ですね、それから、そこで示された担い手像というものがどういうふうなものなのか、お伺いします。

金田副大臣 今回、水田農業ビジョンを作成していただいているわけでございますけれども、この担い手の位置づけについては、地域の実態、さまざまな地域がございまして、担い手の人的資源だとか土地の情勢、いろいろと違うわけでございまして、この米改革大綱の趣旨を理解していただいて、現場段階での話し合いを通じまして、合意形成を図っていただきたいというようなことで、合意形成で明確にしていきたいということでございます。

 具体的には、集落段階で、地域の水田農業はどうあるべきかについて話し合いを重ねていただきまして、その話し合いの中から、個別経営のところに農地利用を集約していくとか、あるいは担い手が存在しないなというようなことで、集落営農形態でみんなでやっていこうというような場合もあるわけでございまして、地域の実態に根差した担い手像の形成をお願いしたところでございます。

山本(喜)委員 今、認定農家から始まって、担い手に対する集中ということでの試行錯誤のようなものが行われているんじゃないかというふうに思うんですね。発展型経営あるいは規模拡大型というふうな事業体ですね。しかし、この全体を示すもの、これが日本の農業を将来的に担っていくんだというふうな数字というものははっきり出てこないということが今言われたと思います。

 ですから、農業白書の中でも、大規模稲作経営において収益性、安定性等が低下しているというふうな分析もありますし、それから、近年、比較的規模が大きな農家層においても販売額が高い農家の割合が低下している、大規模経営の農家戸数の増加のテンポが鈍化している、大規模経営の農地借入面積や認定農業者等への農地の利用集積の伸びが低下しているというふうな分析もこの白書の中であるわけですね。ですから、そういう意味で、今後、プロ農家を育成ということに当たって、やはり、頑張れるところは頑張れ、頑張っているところは成績を上げているというだけの分析なわけですよ、白書は。

 ですから、そういう意味で、大規模経営自体が非常に息切れをしているという現状もあるわけですから、今後の担い手育成ということに当たっては、やはり農家全体を底上げしていくという立場での農業政策というのが求められているんじゃないかというふうに思うんです。

 そうした点で大臣のお考えを聞いて、質問を終わっていきたいと思います。

亀井国務大臣 すべての農家に対する一律的な直接所得補償、こういうこと、いわゆる兼業農家を含めた中での問題、これにつきましては、現状の農業構造を固定化し、その改革に支障を来すおそれ、このことがあるわけでありまして、食料・農業・農村基本計画の見直しの中で、やはり施策の担い手への集中を基本といたしまして、今後の農政の展開方向を見定めていくということを考えておるわけであります。

 例えば零細の小規模な農家、こういう面につきましても、集落経営体への構成員としての参画をするとか、あるいはまたプロ農家経営からの賃料収入の確保であるとか、あるいは自給的生きがい農業を選択されるとか、農業者の意向に即したさまざまな選択肢が存在するわけでありますが、これらの農家が農業環境あるいは資源保全に果たす役割、位置づけ、これは必要なことでありまして、この辺を明確にしつつ、所要の政策体系、こういうものを整備していく必要があるんではなかろうか、このように思っております。

山本(喜)委員 ありがとうございました。終わります。

高木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十一分散会


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