衆議院

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第3号 平成16年10月5日(火曜日)

会議録本文へ
平成十六年十月五日(火曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 高木 義明君

   理事 西川 京子君 理事 松下 忠洋君

   理事 松野 博一君 理事 黄川田 徹君

   理事 小平 忠正君 理事 山田 正彦君

   理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      江崎洋一郎君    大野 松茂君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      上川 陽子君    木村 太郎君

      小坂 憲次君    後藤 茂之君

      後藤田正純君    左藤  章君

      玉沢徳一郎君    津島 恭一君

      永岡 洋治君    西村 康稔君

      野呂田芳成君    原田 令嗣君

      二田 孝治君    岡本 充功君

      金田 誠一君    岸本  健君

      楠田 大蔵君    鮫島 宗明君

      篠原  孝君    神風 英男君

      仲野 博子君    楢崎 欣弥君

      橋本 清仁君    堀込 征雄君

      松木 謙公君    大口 善徳君

      高橋千鶴子君    山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   内閣府副大臣       七条  明君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    大林 千一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中富 道隆君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       外口  崇君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            川村秀三郎君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           西川 孝一君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 寺田 雅昭君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月二十九日

 辞任         補欠選任

  西  博義君     大口 善徳君

同月三十日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     原田 義昭君

  北村 誠吾君     左藤  章君

十月一日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     上川 陽子君

  佐藤  勉君     原田 令嗣君

  原田 義昭君     小坂 憲次君

同月五日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     左藤  章君

  平井 卓也君     江崎洋一郎君

  鹿野 道彦君     橋本 清仁君

  堀込 征雄君     鮫島 宗明君

同日

 辞任         補欠選任

  江崎洋一郎君     平井 卓也君

  左藤  章君     上川 陽子君

  鮫島 宗明君     堀込 征雄君

  橋本 清仁君     鹿野 道彦君

    ―――――――――――――

八月六日

 一、牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案(鹿野道彦君外五名提出、第百五十九回国会衆法第二三号)

 二、輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案(鹿野道彦君外五名提出、第百五十九回国会衆法第二四号)

 三、農林水産関係の基本施策に関する件

 四、食料の安定供給に関する件

 五、農林水産業の発展に関する件

 六、農林漁業者の福祉に関する件

 七、農山漁村の振興に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省消費・安全局長中川坦君、生産局長白須敏朗君、経営局長須賀田菊仁君、農村振興局長川村秀三郎君、農林水産技術会議事務局長西川孝一君、内閣府食品安全委員会事務局長齊藤登君、総務省統計局長大林千一君、外務省大臣官房審議官中富道隆君、厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君及び医薬食品局食品安全部長外口崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松下忠洋君。

松下委員 自由民主党の松下忠洋でございます。

 国会の閉会中でございますけれども、委員の先生方には、委員会まで足をお運びいただきまして大変感謝をしております。小平筆頭とも相談して、近年のBSEの問題、あるいは相次いで我が国に襲来してまいりました台風の被害についての対応、その他いろいろな基本的な大事なこともあるということで、委員長にお願いして、本日の閉会中審査の委員会を開会することになりました。よろしくお願いを申し上げます。

 また、政府におかれましては、内閣改造直後で何かとお忙しい中に御出席賜り、この問題についていろいろ審議いただくことについて心から感謝を申し上げます。課題が山積しております。しっかりと新しい農林水産業の課題に取り組んでいただきますように、また、厚生労働省そのほかの関係省庁もしっかりと課題に取り組んでいただきますようにお願いを申し上げるところであります。

 きょうは閣議の定例日でございまして、大臣が出席いただいておりませんけれども、私の方は、副大臣初め皆さん方にお伺いしますので、よろしくお願いを申し上げます。

 施政方針や考え方につきましては、改めて国会が開会してからお伺いいたしますので、きょうはBSEの問題についてお伺いをいたします。

 台風災害やあるいは農業の基本計画の見直しの問題を含めて大事な課題がございますが、台風災害につきましては、その被害の地域の実情をしっかり調査されて、間違いない対応をしていただきますように冒頭お願い申し上げまして、また、基本問題につきましては、これは次の国会が開会になりましてからしっかりと議論してまいりますので、よろしくお願いをいたします。

 きょうはBSEの問題、畜産関係について、これを中心にお伺いしますので、よろしくお願いいたします。時間が限られておりますので、四十五分間ですから、答えは的確にピンポイントでお願いをいたします。

 まず、BSEでございますけれども、平成十三年九月に我が国初めてのBSEが確認されました。以来、三年が経過して、この間、国内では十三例の感染牛が確認されております。また、昨年十二月にアメリカでBSEが確認されて以来、アメリカ産の牛肉の輸入が禁止されている状況にあります。BSE問題については、消費者の食の安全、安心の確保を大前提として、消費者の理解を得ながら対応することが重要であると考えており、本日は、このBSE問題、アメリカ産の牛肉の輸入再開問題についてお聞きいたします。

 私は、安全と安心は違うと自分の中で整理をしております。安全というのは、科学的な見識、科学的な判断に基づいて、安全であるかそうでないかというその裏づけのあった判断だというふうに見ております。安心というのは、そういう安全と判断された事態であっても、いろいろな国民の不安があるかもしれないし、あるいは風評なんかもあるかもしれない、そういうものを取り除くためにどういうふうにすればいいのか、そういう安全とは違った形での判断が一方であるんだろう、こういうふうに自分の中では整理して議論してまいりますので、そこはよろしくお願いしたいと思います。安全、安心とごっちゃにひっくるめて一つのものに議論はできないと考えておりますので、そこだけは御理解いただきたいと思います。

 まず、食品安全委員会にお尋ねいたしますけれども、この委員会は、ことしに入りましてBSEの国内措置について検証を行うこととして議論を行い、先般、BSEの国内措置に係る調査審議のいわゆる中間とりまとめを公表しました。

 そもそも、現在の我が国のBSEの対策は、平成十三年にBSEの感染牛が初めて確認された際に、消費者の間で食に対する不安感が増幅されました、そして牛肉の卸売価格が大幅に落ち込むなどの大変な混乱が生じたわけでありまして、その混乱をおさめるために、世界でも例を見ない全頭検査などの国内対策を速やかに講じることとなったという経緯を持っております。当時のいろいろな報道の内容や国会審議を見てまいりますと、全政党そしてあらゆる階層の人たちがこの問題について全頭検査すべしということでございましたから、そういう観点から、ある意味では政治的な判断も入ってこれが決まってきたというふうに認識しております。

 このような現行のBSE対策の検証を行うわけですから、いろいろな議論があったであろうことは想像にかたくありません。実際、報道によりますと、中間とりまとめの作成に当たっては、BSE検査の限界などに関して議論が白熱して、取りまとめに一カ月近くかかったと聞いております。

 日本の国内措置は、先ほども述べましたとおり、世界の中でも最も厳しい規制と理解をしております。そもそも、このような国内措置について調査審議を行おうとした経緯と中間とりまとめの概要についてお聞かせいただきたい。

 私の認識は、BSEにかかっている牛でも、危険部位というものをきれいに完全に取り除けば、肉そのものは安全なのではないかというふうに、私はそう思っておりますけれども、そこに何か認識の違いがあるのかどうか。そこを含めて、安全と安心というところも含めて、あるいは安全の中身がどの辺まで確証があるものなのかどうか。ピンポイントで、私も全体読んでいますから、大事なところだけお願いしたいと思います。よろしくお願いします。事務局長、安全委員会にお聞きします。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問のありました食品安全委員会におきますBSE問題の調査の経緯でございますが、食品安全委員会そのものがBSE問題を契機として設立されたということもあり、昨年の八月の時点でプリオンの専門調査会を立ち上げまして、その時点で、我が国のBSEについて検討するということを委員の間で申し合わせたわけでございます。

 具体的には、年を明けて二月二十日以降、各専門家の意見を聞き、また、六月以降は我が国におきます対策の総合的なレビューを行い、七月十六日、まずそのたたき台となるものを提示し、三回の審議を経まして、九月六日、プリオン専門調査会としての中間とりまとめを行ったわけでございます。この中間とりまとめにつきましては、九月九日に開催されました食品安全委員会におきまして了承されまして、同日、厚生労働大臣及び農林水産大臣に通知いたしたところでございます。

 中間とりまとめの主要な内容でございますが、五点ほど挙げられるかと思います。

 一つは、人へのBSE感染リスクというのは、現在講じられているBSE対策によって効率的に排除されているという基本的な認識でございます。

 それから二つ目は、検査の関係でございますが、検査につきまして、検出限界以下の牛を検査対象から除外しても、現在の特定危険部位の除去措置を変更しなければリスクは増加しない、また、現在の検査法では二十一カ月齢以上の感染牛については発見できる可能性がある、今後の我が国のBSE対策を検討する上では、二十一、二十三カ月齢で発見された二頭のBSE感染牛における異常プリオンたんぱくの量が微量であったこと、それからまた、三百五十万頭に及ぶ検査で二十カ月齢以下のBSE感染牛を確認できなかったことは十分考慮すべきであることという、検査の関係、二点目でございます。

 それから三番目、特定危険部位の除去、これについては十分徹底していくことが必要であるという認識。

 それから四番目として、飼料規制の実効性の担保、これについても、関連の対策を含めて、これをきちんと行うことが重要であるということ。

 さらには、先ほど出ました検査の関係で、検査法につきましての研究推進、こういうことも非常に重要であるという、以上のような五つのポイントで中間とりまとめをいただいたところでございます。

 以上でございます。

松下委員 また後でいろいろお尋ねしますけれども、このいわゆる中間とりまとめを受けて、厚生労働省と農林水産省が実際のリスク管理措置を決定する、こういう手続になっていくわけですね。

 ところで、この食品安全委員会の中間とりまとめについて両省はどのように受けとめているのか、これを受けて今後どのようなふうに取り組んでいくというふうに考えているのか、副大臣にお願いをいたします。

岩永副大臣 政務官からお世話になりましたが、今度は副大臣として皆さん方にお世話になることになりました。この常任委員会でも理事として先生方と大変御懇意にしていただきまして、今後ともよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。

 松下先生には、特に党の中で農業基本政策小委員長として御活躍をいただき、これからいよいよ日本の農政の取りまとめに御厄介になるわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 今お話をいただきました、先般、食品安全委員会が発表いたしました中間とりまとめについて、現時点で利用可能な最新の科学的知見に基づいた評価結果でございまして、農林水産省としては、このことを十分尊重しながら対応していきたい、このように思っているところでございます。

 現在、九月二十一日から本日まで、全国で七カ所、厚生労働省と連携をしながら、消費者等関係者との意見交換、リスクコミュニケーションを行っているところでございます。これらの議論の結果も踏まえて国内措置の見直しを検討することといたしていきたい、このように思っておりますので、今後の成り行きを見守ってやっていただきたい、このようにお願い申し上げます。

西副大臣 厚生労働省からお答えを申し上げたいと存じます。

 先ほど、松下先生から、BSEの国内対策、九月九日に食品安全委員会がいわゆる中間とりまとめをしたということは既に御指摘がございました。その上で、BSEの対策につきましては、他の食品安全対策と同様に、科学的合理性を基本として判断すべき問題と考えておりまして、食品安全委員会が科学的見地から取りまとめた報告書を尊重して進めていくということが基本であるというふうに考えております。

 厚生労働省といたしましては、このような基本的な考え方に立ちまして、今後、農林水産省と共同して国内対策の見直し案を取りまとめた上で、改めて、両省で食品安全委員会に諮問を行い、評価を行っていただきたい、このように考えている次第でございます。

松下委員 リスク管理措置の決定に際しましては、消費者の健康保護を第一に考えて行うという観点が大事でありますし、国民、消費者の理解と納得を得て行うことが重要だと考えております。食品安全基本法にも、消費者の役割として、食品の安全性の確保に関する施策について意見を表明するよう努めることが規定されております。国民、消費者との意見交換は極めて大切であります。

 このために、農林水産省や厚生労働省は連携して、全国七カ所で国民との意見交換、いわゆるリスクコミュニケーションを重ねていると聞いております。報道では全頭検査維持の意見が多数出されているということを聞いておりますけれども、実際の意見交換会において国民や消費者からどのような意見が出ているのか、要点を両省にお聞きいたします。お願いいたします。

中川政府参考人 九月の二十一日から九月の三十日まで、既に全国六カ所でリスクコミュニケーションが行われておりますけれども、こういったリスクコミュニケーションの会場におきましては、BSEの検査、それから特定危険部位の除去、あるいはまた飼料の規制のあり方などにつきまして幅広く活発な意見交換が行われてきております。

 主な点だけその概要を申し上げますけれども、まず、BSEの検査の見直しにつきましては、賛否の意見が分かれてございます。生産者やあるいは消費者の方々は全頭検査支持の方が多いわけでありますけれども、他方、食品事業者の方あるいはまた一部の生産者、消費者の方からは、全頭検査の見直し、それよりも何よりもSRMの除去の徹底が大事なんだという御意見も出されてございます。

 また、農林水産省の所管でございますえさの規制につきましては、まず、肉骨粉以外のBSEの原因究明についてもうちょっと力を入れるべきではないかといった御意見、あるいは、飼料の製造業者の方、また牛を飼っておられる農家の方に対する監視や指導の強化をもっとしていく必要があるという御意見もございました。

 さらに、全体的なあり方としまして、しっかりと情報提供をしてもらいたいということ、あるいは、今後ともさらにこの議論を深めていくべきだという御意見も出されたところでございます。

 本日の午後、また名古屋で第七回目のリスクコミュニケーションもございますけれども、こういったリスクコミュニケーションの場で出された御意見を踏まえながら、厚生労働省と連携をいたしまして、これからのBSEの対策をきちっとやっていきたいというふうに思っております。

松下委員 今お聞きしますと、いわゆるリスクコミュニケーション、国民との意見交換会で、全頭検査の継続を希望している意見も根強くある、一方では解禁せよという意見も出てきているというふうに理解をいたしました。

 一方、食品安全委員会のこのいわゆる中間とりまとめを読みますと、科学的見地から、「二十ケ月齢以下のBSE感染牛を確認することができなかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である。」とされています。

 厚生労働省、これをどう受けとめて、今後の全頭検査を判断し見直そうとする場合にはどのように考えておるのか。特に、「BSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実」、これがどういうことなのか、ここを一つお願いしたいと思います。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 食品安全委員会の中間とりまとめにおきましては、検出限界以下の牛を検査対象から除外するとしても、全月齢の牛からのSRM除去措置を変更しなければ、それによりvCJDリスクが増加することはないとの評価結果となっております。

 また、議員御指摘のように、二十一カ月齢以上の牛については、現在の検査法でBSEプリオンの存在が確認される可能性があること、二十一、二十三カ月齢で発見された感染牛の延髄かんぬき部の異常プリオンたんぱく質の量は、他の感染牛と比較して五百分の一から千分の一と微量であったこと、我が国における約三百五十万頭に及ぶ検査により二十カ月齢以下のBSE感染牛を確認することができなかったことは、今後の我が国のBSE国内対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実であるとされております。

 厚生労働省といたしましては、食品安全委員会が科学的な見地から行った評価、検証の結果でありますこの報告書を尊重して、屠畜場におけるBSE検査を含めたBSE対策の見直し作業を現在進めているところであります。

 今後、具体的な見直し案について、改めて農林水産省と共同して食品安全委員会に諮問を行い、評価を行っていただきたいと考えております。

松下委員 食品安全委員会の方に、両省連携して諮問をする、こういうことをお伺いしました。

 報道によりますと、全頭検査について、国が全頭検査の見直しをした場合に、都道府県、特に銘柄牛を持つ岐阜県や岩手県など一部の県によっては、自主検査を行って全頭検査維持の方針を表明しているところがあります。他方、分権の流れもあって、都道府県の独自施策を認めるべきとの考えもあります。食の安全、そしてまた安心の問題であるにもかかわらず、全国一律の基準でBSE検査が行われないという問題も出てきます。私は、ここは慎重に検討していかなきゃならないと考えております。

 厚生労働省にお尋ねいたしますが、都道府県の自主検査については、国としてどう対応しようとしているのか、お聞かせいただきたい。

外口政府参考人 BSEの国内対策につきましては、食品安全委員会で取りまとめられた評価、検証結果を踏まえ、具体的な対策の見直しについて、各方面の御意見を伺いながら、現在検討を進めているところであります。

 したがいまして、地方自治体が将来的に独自の対応をとることにつきましては、検討段階の現時点で見解を述べることは適切ではないと考えておりますが、一般論として申し上げれば、食品の安全性を確保するための措置については、科学的合理性に基づいて定められるべきものと考えております。

松下委員 今後、十分その内容を検討して、私は、ここはまちまちであってはいけないんじゃないかな、きちっとした対応をしっかりとるべきだと。慎重に、それぞれの個々の対応とは別に、国としてのしっかりとした考え方を出していただきたい、それが大事だ、私はそう思っております。

 ところで、BSEの根絶のためには、BSEが牛から牛へ感染していくことを断ち切ることが一番重要であります。そのためには、いわゆる交差汚染防止などの飼料規制を徹底していくことが必要であります。

 食品安全委員会の中間とりまとめにおきましても、この飼料の規制について、「行政当局によるチェックを引き続き行うことが重要である。」と指摘されておりまして、この指摘は全く当を得たものと私は評価してよいと考えております。

 特に、八例目、九例目の若齢牛のBSE感染牛は、平成十三年に飼料規制を導入した以降、またはその直前に生まれた牛であります。いわゆる交差汚染によるBSE感染が強く疑われるところでありまして、農林水産省において確実、的確な対策を講じていく必要があります。

 そこで、農林水産省にお尋ねをいたします。

 中間とりまとめの指摘を踏まえて、今後、この飼料規制の見直しについて具体的にどのように取り組んでいく考えなのでしょうか。そこをしっかりとお答えいただきたい。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生の御指摘がありましたように、牛から牛へのBSEの蔓延を根絶するという意味では、飼料規制をきちっとしていくというのが根本対策として大変大事なものだというふうに私どもも認識をいたしております。

 先般の食品安全委員会の中間とりまとめにおきましても、この飼料規制につきまして、交差汚染による感染の可能性も踏まえて、飼料規制のチェックを引き続き行うことが重要というふうに指摘をされてございます。

 既に、平成十三年の十月にこの飼料の規制につきまして私ども措置をいたしておりますが、その具体的な内容は、すべての肉骨粉を牛などの反すう動物用の飼料として利用することを禁止いたしておりますし、また、二つ目のポイントとしまして、反すう動物由来の肉骨粉は焼却処分をしているところでございます。さらに、この交差汚染の防止を徹底いたしますために、反すう動物用の飼料をその他の飼料から分離をしまして、原料の調達の段階、製造の段階、それから流通、販売、使用、それぞれの段階で、ほかの飼料とまじらないようにライン分離の措置を推進してきたところでございます。

 今回、食品安全委員会の中間とりまとめで御指摘をいただいておりますので、こういった既にとってある措置につきまして再度チェックをいたしまして、輸入それから販売、使用の段階での強化対策をしていきたいというふうに考えております。

 具体的には、一つは、海外から入ってまいります、輸入をする際の対策でありますけれども、輸入業者の方々に飼料原材料の届け出の義務化をしたいと考えています。つまり、このえさにはどういうものが原料で使われているかということをきちっと届け出をしていただくということが一つのポイントであります。

 それから、二つ目としまして、小売業者の方々につきまして、今は届け出にはなっておりませんけれども、そこを届け出をしていただくというふうに義務化をしたいと思っております。これによりまして、どこでどういう方がえさを取り扱って農家に販売されているかということをきちっと把握をして、指導もしていきたいと思います。

 さらに、現場での農家の方々への対応でありますけれども、地方農政局あるいは都道府県などによります監視あるいは指導の面で、もう少しきちっときめ細かくやっていきたいというふうに思っております。

 いずれもリスクコミュニケーションでこういった点が大事だということも御意見をいただいておりますから、それに沿って具体化について検討してまいりたいというふうに考えております。

松下委員 国内措置については、きっちりとした手続を踏まえてやってもらいたいということをしっかりと注文しておきます。

 先般、農林水産委員会で、我々で、オーストラリアにいわゆる牛の問題で調査に行ってまいりました。大変印象的だったのは、一九六六年、オーストラリアで、たしかそうだったと思いますけれども、肉骨粉の輸入を全面的に禁止しているんです。もう四十年前です。

 なぜかといいますと、オーストラリアにとって食の安全というのは、これは国民の命だ、国家の一番大事な基本であって、ここをなくしたらやはりオーストラリアの国が成り立たないということから、肉骨粉が危ないとかどうかということを認識する、しないにかかわらず、外国から入ってくるもの、何かいろいろ自分で資料がないもの、いわゆるデータがないものについて、きちっとこれはとめているわけです。やはりきれいに中でしっかりとした対応をしている。現に、委員長がからすみを持っていきたいということで打診したんですけれども、それもストップなんですね。

 それほど、いいか悪いかはいろいろ議論がありますけれども、食の安全について、自国の健康管理、それから食品の輸出国としての大事なところというのをしっかり守っているというところに私たちは非常に感動して帰ってきたわけですけれども、そういうことがあることを踏まえて、我々のこの問題についてしっかり取り組んでもらいたい。これはお願いであります。

 ここから、米国産、アメリカ産の牛肉の輸入再開問題についてお尋ねをしてまいります。

 先般、日米首脳会談が行われました。首脳会談の場では、アメリカ産の牛肉の輸入再開問題が議題として取り上げられたと聞いております。

 報道によりますと、アメリカ産の牛肉の輸入再開問題について日米首脳会談で厳しいやりとりが行われたということで、ブッシュ大統領から総理に、輸入再開について政治決断すべきだと求めたのに対して、総理は、食の安全そして安心にかかわる問題なので、科学的知見に基づき判断する必要があると答えたと聞いております。

 この問題は、食の安全そして安心に関する問題であって、アメリカの圧力に押されて輸入再開を日本が決定したということになれば、これは食品安全行政に対する消費者の信頼を再び失うことになると考えております。総理の毅然たる対応に感服をしております。

 このようなやりとりがあったとされる一方で、首脳会談では、アメリカ産の牛肉の輸入再開問題について、早期に牛肉貿易を再開することの重要性につき意見の一致を見たとされております。食の安全そして安心を重視するという考えとは一見反するような感じに受け取る向きもあると思います。

 そこで、厚生労働省と農林水産省にお尋ねいたしますが、首脳会談を受けての今後の対応方針としてどのようなことを考えているのでしょうか。そこをお尋ねいたします。

岩永副大臣 小泉・ブッシュ会談で、BSE問題について両首脳間で大変激しい議論がされたと私も聞いております。その中で、できるだけ早期に日米間で牛肉貿易を再開することの重要性については意見の一致を見た、こういうことでございますし、また、牛肉貿易再開に係る具体的事項について両政府が速やかに協議を行うこと、このことに対する確認がされたと聞いております。

 今後、日米首脳会談の結果を踏まえて米国と協議していくこととなるわけでございますが、これまでと同様、国内措置と同等の措置が講じられることを基本にしていきたい、このことが第一義でございます。我が国の消費者の安全、安心が確保されることを大前提として米国と協議をしていく、こういうことでございます。

 なお、輸入再開条件を含む日米間の牛肉貿易再開に係る具体的な事項についてでございますが、日米の局長級会合で議論をされることになると思います。その日程については、いまだ具体的なことは決まっていない状況でございます。

西副大臣 お答え申し上げます。

 先日の日米首脳会談において、両首脳が牛肉貿易の再開に係る具体的な事項について速やかに協議を行うということを確認したということにつきましては、委員のおっしゃるとおりだというふうに認識をしております。

 さて、それを受けまして、日米首脳会談を受けまして、今後、日米の局長級、それぞれの省庁の局長級の協議を行うということになっておりますが、この米国産の牛肉の輸入再開に関しましては、先ほど農水省の方からもお話がありましたように、私どもも、我が国と同等の安全性が確保されるということがあくまでも前提だというふうに考えておりまして、日米協議においては、米国側にこの条件を満たすような具体的な措置を求めるというふうになるのではないかと考えておる次第でございます。

松下委員 日本が、アメリカ産の牛肉の輸入再開条件として、従来から、国内と同等の措置を講ずることをアメリカ側に要求しておる、これは当然だと考えます。総理もそのことは念頭に置いてやりとりがあったと私は考えておりますけれども、この考え方からすれば、現在検討されている国内措置の見直しの方向が出てからでなければ、アメリカ側と実質的な協議はできないものというふうに理解をしております。

 一方、我が方と同じ、同等の措置をとれということをアメリカ側に要求している、そのことの担保が、現実の問題としてアメリカ側の畜産業界でどのようなふうに今動きがあるのか、そこは私は極めて大事なことだと思っております。デスクでいろいろな議論のやりとりをしても、実際にそういうことをやれるのか。本当にやってもらわなきゃいかぬわけですから、そこのところのアメリカ側の現在の対応、どういう検査の対応をしているのか、そこも含めて、この同等の措置を講ずることをアメリカ側に要求しているということの日米の落差、どういう議論がその会議であるのか、そこをちょっと農林水産省にお聞きいたします。

中川政府参考人 日米間の協議ということで申し上げますと、この春まで局長級協議で三回行いました。ただ、大変基本的な、BSEの定義がどうかとか、あるいは、サーベイランスとしてBSE検査をするのか、それともスクリーニングとしてやるのかという検査の目的、そういった基本的なところでさまざま両国の間で見解の違いがございましたので、五月から七月にかけて、三回の専門家、実務者によりますワーキンググループを開催いたしまして、そこで議論をしてきたわけでございます。

 その結果は、七月の第三回目のワーキンググループの際に報告書として取りまとめられておりますけれども、その中でも、やはり見解の相違がそのまま残った形のものもございますし、さらに引き続いて協議をしていこうというふうなものもございます。それぞれの点、いろいろ細かくはございますけれども、やはり日本とアメリカにおいては、BSEの検査のあり方等々、大事な点で見方、見解が違っているというのが今の時点でございます。

 それから、最近は、そのワーキンググループを受けまして、まだ具体的な協議には入っておりませんので、現時点で申し上げれば、今申し上げたような点が日米間の相違ということでございます。

松下委員 今、中川局長がお話ししましたように、私は、日米間に基本のところですり合わないところがあるように見ているんですね。

 アメリカはこの検査というのを、いわゆるサーベイランス、感染牛がどのような割合で国内にいわば浸透しているというか、存在しているのか、そういう検証をする、そういうこと、それを受けて、どのような対策をすべきなのか、そういうことにやはり重きを置いてやっている。

 日本はそうではなくて、やはり食の安全ということを考えて、絶対そういうものはノーだということで検査をして、そして対応していくということで、話の持っていきどころといいますか、考えているよりどころがどうも違うように思うんですね。

 ここはこれから、やはり我が方の食の安全に対する考え方、それから国民の食の安心に対する基本的な認識、そういうものをよく説明しながら、やるとすればしっかりとした、国民が納得できる、そういう措置が必要だ、私はそう思うんですね。

 トレーサビリティーも国内できちっとやっていますから、これはやはりそういう面では、どの牛がどうなっているかということは日本の方ではきちっと説明できるわけです。そこのところを、いわば自然に放牧している、あるいはいろいろな飼育の仕方も含めて、日米での違いが相当あるようですので、ここのところをしっかりと溝を埋めていくような努力が必要だと思いますけれども、これは、中川局長、どのような努力をしておるのか、経緯も含めて御説明いただきたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 まだ具体的に、日米の牛肉貿易が再開する条件について、日米間で、局長級協議で協議をしているわけではございません。

 まず、我々としてやるべきことは、国内のBSE対策について、食品安全委員会の中間とりまとめを受けて、そして諮問をしていく、こういう国内手続をきちっとしていくことが大事だというふうに思っております。まずその土台ができたその上で日米間の協議というものを進めていきたいというふうに思っております。

松下委員 根本的なところの溝がしっかりと埋まった上での対応をそれぞれがやっていくということが大事ですから、そこはしっかりとお願いしたいと思います。

 その上で、アメリカ側と実質的な協議をしていくわけですけれども、国内措置の見直し、先ほど厚生労働省の方から、食品安全委員会へ諮問を考えているということを言われました。行政としていろいろな国民の意見を聞いて、そしてその上でどのように判断するかということを添えて諮問するということで、食品安全委員会のいわゆる対応というかお答えを聞きたいということになるんでしょうけれども、その段取り、手続、今後どのようなふうにしていかれるのか、見通しが立つんだったら教えていただきたい。お願いします。

中川政府参考人 先ほども申し上げましたが、本日を含めまして、まだ全国各地でリスクコミュニケーションを続けてきているところでございます。国内措置の見直しにつきましては、こういったリスクコミュニケーションにおきます意見などを踏まえながら、厚生労働省と農林水産省で今慎重に検討いたしているところでございます。

 現時点で申し上げますと、食品安全委員会への国内措置の諮問の時期というのはまだ決まっていないということでございます。

松下委員 国民の食に対する安全、安心、そしていわゆる国民との意見交換会、その辺を十分にしんしゃくした上で判断されたい、このようにお願いします。

 最後ですけれども、豚コレラについてお尋ねをいたします。

 私の郷里の鹿児島で、ことしになって豚コレラの疑似患畜が相次いで発見されております。このため、疑似患畜が出た農家はもちろん、この養畜密集地域のために周辺の農家にも多大な影響が生じております。

 そこで、感染ルートの究明はどうなっているのか伺いたい。また、今後の対策についてどのような方針であるのかをお伺いしたい。よろしくお願いします。

中川政府参考人 ことしの三月以降、鹿児島県におきまして豚コレラウイルスが分離された事例、発生の事例というのは五件ございます。

 最初の一例目につきましては、未承認ワクチンの接種によるものであったというふうに判断しておりますけれども、二例目以降につきましては、現時点におきまして、未承認ワクチンの接種と判断される事実は確認をされておりません。したがって、どういう形でこの二例目以降が発生をしたのかというその感染経路につきまして、今、鹿児島県におきまして引き続き調査が行われているわけでございます。

 農林水産省といたしましても、これまでに現地に職員を派遣するなどいたしまして、鹿児島県と連携をしながら対応してきているわけでございますが、今後とも、この鹿児島県の調査に対して積極的に協力をしていくことといたしております。

 また、具体的な防疫対応でありますが、専門家の方々の意見を踏まえまして、あらゆる可能性を想定して対応していくというのが基本でございますけれども、具体的には、発生農場の消毒の徹底、それからネズミなどの駆除、それから周辺農場におきまして人がむやみに立ち入らないようにという、そういった立ち入り制限などを行っているところでございまして、今後とも、徹底した防疫対応に努めていきたいというふうに思っております。

松下委員 鹿児島出身の加治屋政務官が入っておられますので、十分連携をとって対応してもらいたいと思います。終わります。

高木委員長 次に、鮫島宗明君。

鮫島委員 民主党の鮫島宗明です。

 きょうは大臣に質問するつもりで来たんですが、何か閣議がおくれてまだお見えになっていないようなので、大臣が来るまでの間、通告していない質問を幾つかさせていただきたいと思うんです。

 まず、食品安全委員会で、先ほどから話に出ていますが、BSEの検査体制について検討を始めて、九月に中間報告が出て、少なくとも二十カ月以下の牛からは検出ができなかった、したがって、このことは参考にすべきだという中間報告も出たわけですが、そもそも、食品安全委員会にこの検討を依頼した主体というのはどこなんでしょうか。これは食品安全委員会の方でお答えいただきたいんです。

 この見直しを始めたわけですが、いろいろなところから、例えば農林水産省と厚生労働省から、検査に予算がかかり過ぎる、もうちょっと合理化できないかという要請があったのか。あるいは消費者側からも、あるいは生産者側、食品産業の側から、世界基準に比べて日本の検査は厳し過ぎるんじゃないかというような声があって、それを受けてやったのかどうか。どこからの要請で検査を始めたのかをお答えいただきたいんです。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 本件、食品安全委員会におけるBSE問題の調査審議でございますが、これにつきましては、先ほどもお答えしておるわけでございますが、食品安全委員会の設立の経緯にBSEが深くかかわっておること、昨年の七月に食品安全委員会が設立された後、速やかにプリオンの専門調査会を八月に立ち上げたというか設立をいたしたわけでございます。そのときに、既にその時点でBSE問題について、食品安全委員会、とりわけ専門調査会として議論をすべきであるという、委員間で御議論をいただいておるわけでございます。

 そういうことで、これにつきましては、食品安全委員会として、設立の経緯その他を踏まえまして、独自にこれについて見直しを進めてきたということでございます。経過は繰り返しませんが、その間、特定危険部位に背根神経節を加える問題とか、その他幾つかの問題をプリオン調査会で審議をしております。

 具体的には、本年の二月以降、国際的な専門家を含め意見を聞き、それからその後、先ほど申し上げましたように、国内の体制をレビューし、たたき台を示し、中間とりまとめに至った、そういう経緯でございまして、食品安全委員会としての独自の取り組みでございます。

 以上でございます。

鮫島委員 多くの国民は、食品安全委員会が急にここに来て中間答申を急いで取りまとめているというような背景として、やはりアメリカで去年のクリスマスイブの前の日、十二月二十三日にBSEの患畜が初めて発見されて、そしてその後、アメリカからの輸入がとまっていて、大統領選挙も近いという関係の中で、アメリカからの圧力がじわじわ強まる中で食品安全委員会が検査の見直しを始めたというふうに客観的には受け取られているわけです。

 では、今の御答弁ですと、別にアメリカからの要請とかアメリカからの圧力、あるいはアメリカの圧力を受けた官邸からの要請ということでやったわけではないということだけ、もう一回確認できますね。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 委員のおっしゃるとおり、食品安全委員会独自のものとして行ったことで間違いございません。

鮫島委員 ちょっともう一つ、これも無通告なんですが、先ほど聞き捨てならない答弁があったものですから。

 厚生省の役人だと思いますが、BSEの検査の見直しを、もし厚生省、農水省が新たな省令として決めても、岐阜や岩手、その他の府県が独自に、いや、我々は全頭検査をこのまま継続する、そういうことはよろしくないというような御発言がさっきありましたが、つまり、全国統一基準でやるべきだと。

 私は、産地が、ある種の付加価値を高めるために、もっと関連情報を積み増ししてその特産品の価値をつけていくというのは、むしろ、今の新しい方向といいますか、農業、食品産業が努力している方向であって、それを全国統一じゃなくちゃいかぬというようなことだったら、では、有機農業で努力している、あるいは独自の農法を開発して、アイガモ農法なんかでやっているとか、そういうような付加価値を高めるための独自性、それから、関連情報についても、どこのだれさんがつくりましたとか、そういうことが今消費者とのコミュニケーションで大変大事になっていると思いますが、先ほどの御答弁、もう一度聞きたいんですが、BSE検査を府県によっては独自にやるということは好ましくないという御発言がありましたが、もう一度確認したいんですけれども。

外口政府参考人 国内対策の具体的な見直しの内容につきましては、現在検討を進めているところでありますので、検討段階の現時点で見解を述べることは適切ではないと申し上げて、一般論として先ほどお答え申し上げたわけでございます。

 引き続きその一般論でありますけれども、食品の安全性を確保するための措置については、科学的合理性に基づいて定められるべきものと考えております。他方で、食品の安全性確保以外の目的のものについては、これは、例えば自治体がいろいろな対応をすることについて食品衛生法上で拘束するようなことはできないと考えております。

鮫島委員 要するに、これは、例えばBSEの検査法がもし万一見直しになったとしても、これは別に義務化するわけではなくて、義務化する範囲を二十カ月以上にします、あるいは二十一カ月以上にしますということで、それ以下のものについて検査しようがしまいが、それは義務から外れますということで、自主検査にまで干渉するような内容の話ではないと思うんですが。もちろん、食品の安全の基準は全国統一というのは、それは結構ですが、さらに安全を強化したり、さらに情報を付加することについて余計な口出しをする、もう明治時代じゃないんだから、そんな役人の態度はおかしいんじゃないかと思いますけれどもね。

 だから、いいんでしょう、別に。岩手県や岐阜県が、たとえ二十一カ月以上が義務化されて義務から外れても、自主検査をすることについて、それはとやかく言う立場じゃないんじゃないですか。もう一度その点だけ、自主検査をすることについてどういう態度なのか。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 食品の安全性の確保に関するさまざまな規則というものは、これは一律であるべきだと思っております。ただし、食品の安全性確保以外の目的で行われるものについては国が拘束することはできないと考えております。

鮫島委員 まあ、いいです。まだ今閉会中審査で、これからたっぷり臨時国会の中でやり合いたいと思います。

 例えば、うちの党首にごまをするわけじゃないんですが、イオングループ、ジャスコでは、遺伝子組み換えの原料を使ったものについては、一般に決まっている基準以上に自主的に、遺伝子産物を含んでいないしょうゆとか油にまで原料に遺伝子組み換えのものを使っていますということを自主的に表示しているわけです。そういう安心、安全を深めるための自主的な措置については、むしろ厚生労働省としては、それは大変結構なことだというのが行政の正しい態度だと私は思いますが。まあ、いいです。きょうはそれ以上深入りしない。

 これはアメリカの間違いとも大変よく似ていて、私ども、山田さんと一緒にアメリカにもBSEの調査へ行ってきましたが、三つぐらいの基本的な大変な問題があって、私は、そう簡単に輸入再開はできないなと、客観的にもそう思いますが、まず、自覚がない。アメリカ自身がBSEの汚染国という自覚がない。いまだに自分で暫定清浄国と言っているわけですが、OIEはそういうような認定はしていません。EUは、アメリカについてはレベル3、ハイリスク国という扱いになっていて、アメリカだけが暫定清浄国と。カナダで生まれた牛がアメリカで発病して迷惑だというような態度で、これがある意味では原点で、アメリカの態度を大変かたくなにしている。

 それから、二つ目の問題としては、日本の消費者が望むなら、日本向けの輸出を担っている三つの業者が、では、自分たちは日本向けのものについては検査をして、それで日本に輸出をしたいと言ったら、あなたと似たような役人がUSDAにいて、そんな検査はするな、検査しちゃいかぬと言ってとめているわけですよね。

 それから、三つ目の問題としては、日本がもしある種の月齢を決めて、二十カ月以下はいいですよと言っても、アメリカの牛そのものがそんな精密な月齢管理をしていない。若い牛、大人の牛、年とった牛の三種類ぐらいしかない。

 ですから、今の日本と同等ということに意識としても対応できないし、具体的な措置としても対応できない、そういう非常に深い問題があるので、私も、島村大臣がなるべく早く輸入再開をしたいというお気持ちはわからないでもありませんが、なかなか難しい、とても壁は高いというふうに思います。

 自主検査をする三業者に対してUSDAがとめた根拠というのもまことにおかしくて、イチローが八十四年ぶりに記録を更新しましたが、一九二〇年にできたVSTAという法律、ワクチン血清試験法というその法律に基づいて三業者が自主検査をすることをとめました。つまり、素人が勝手に血清とか何かを扱ってテストしちゃいかぬという大昔の法律を探し出してきてとめたというような経緯が、今でもそれが発動しているんですが、そんな環境の中でこの委員会が行われているということをまず最初に認識しておく必要があると思います。

 大臣がお見えになったので本来の質問に戻りますが、東京新聞によると、大臣着任早々に、大統領選挙までに何とかしたい、輸入再開をしたいというような御発言が出ていますが、これは今でも変わらないんですか。前と後と聞かれたら、できるなら大統領選挙前に解決した方が後よりはるかにいいと言っていますが、これは今でもそういうお立場なんでしょうか。

島村国務大臣 まず、お許しをいただきまして、御答弁申し上げる前に、一連の台風その他によって大変な被害が出ておりまして、今の閣議でもその状況が報告されておりましたが、被災され、お亡くなりになった方、あるいはまた被災者の方々に私は心からお見舞いを申し上げたいとまず思います。

 さて、今の御質問でございますが、私は何でもかんでも大統領選挙云々と言った事実はありません。

 御承知の報道をお聞きいただけばおわかりのとおり、私自身は、あくまで食の安全、安心を大前提として取り組むことが基本ということをきちんと申し上げておりますし、いわばこれから、日米首脳会談でお互いが話し合ったように、できるだけ前向きに検討するという両首脳の話し合いに基づいて、我々はそれらについては積極的ではあるけれども、しかし、やはり大前提を外れて何をするという考えを示したわけではありません。それは各紙の報道を全部お比べいただけばおわかりのとおりでありまして、東京新聞の例が引かれましたけれども、他紙がどうであったかをごらんいただけば御理解いただけると思います。

 なお、申しおくれましたけれども、私、このたび農林水産大臣を拝命いたしました島村宜伸でございます。

 委員長を初め委員の諸先生におかれましては、日ごろから農林水産行政の推進に格段の御理解と御支援をいただき、この機会に厚く御礼を申し上げます。

 岩永、常田両副大臣、大口、加治屋両大臣政務官ともども力を尽くして農林水産行政の推進に全力を挙げてまいる考えであります。委員長を初め委員各位の御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 申しおくれまして失礼をいたしました。

 そういう意味で、米国とのいわば牛肉貿易問題につきましては、早期に解決することを目指して日米両国が努力をしてきたところでありますし、この方針についてはこれからも一貫して続けていく考えであります。

 さらにはまた、日米首脳会談のお互いの話し合いの中で、両政府が速やかに協議を行うということも確認されたところでありますから、これらの趣旨に従って我々は取り組みはいたしますけれども、やはりこちらだけが一方的に譲歩する、追随するということは全く許されないことでありますから、私は、その点については、あくまで食の安全、安心にかかわる問題である、日本の国内と同等の措置を求めるという従来の方針を変えているわけではありませんので、御理解をいただきたいと思う次第であります。

鮫島委員 済みません。閉会中審査で、これはあくまでも臨時緊急のことですので、質問にだけ答えていただきたい。今のようなごあいさつをすると、臨時国会冒頭での委員会でのごあいさつがしにくくなっちゃうんじゃないかと思いますが。

 くしくも、私も今度民主党の方の農林水産担当になりまして、与党も野党も東京出身の人が農林水産政策担当の責任者ということで、どちらかというと、余りにも消費者寄りになるんじゃないか、あるいは食品産業寄りになるんじゃないかという目で見られていることもお互い十分意識しなくちゃいけないんじゃないかと思います。

 そのことに関係して言いますと、実は、大臣御着任の直前に外食産業の代表の方と官邸の方に行かれて、早期の輸入再開を目指すべきだという陳情を官房長官になさっていた。それはどういう立場かというと、食品産業議員連盟の会長という立場でそういう行動をとられたそうですが、今でも会長なんでしょうか。

島村国務大臣 会長の席は当然に交代をいたしまして、谷津元農林水産大臣が会長の職についております。

鮫島委員 ぜひその行政の長として公正中立なお立場で行政をしていただきたいというふうに思います。

 今、BSEの防止のための措置について議論が行われているわけですが、これは二つありまして、まず国内措置の見直しという分野と、次に、もし輸入再開するとしたら、米国産牛肉の輸入再開に向けた手続の整備、この二つのことがあるわけです。

 手順をちょっと確認したいんですが、先ほど御答弁にありましたように、今、全国各地で広く国民、消費者の意見を聞きながらリスクコミュニケーションをやっていますと言っていますが、次に、厚生労働省、農林水産省としては、食品安全委員会に対して諮問をするわけですね。この諮問をするときは、今の国内措置の見直し、それから輸入再開条件の見直しと二つありますが、まず国内措置の見直しから当然やるんだと思いますが、それでいいんでしょうか。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 食品安全委員会への諮問は、まず国内措置についての見直しの方向について諮問を行いたいというふうに思っております。

鮫島委員 そうすると、多分、厚生労働省も同じなんでしょうから、あえて聞きませんが、国内措置の見直しについて食品安全委員会に諮問する、そうすると、食品安全委員会は、それを受けて、少なくとも複数回の審議をすることになると思います。つまり、検査について、ある月齢以下のものを省略する場合には、今の屠畜方法あるいは危険部位の特定、その除去方法について再検討する必要があると思いますので、少なくとも複数回の審議が必要でしょう。食品安全委員会では、ある種の結論が得られたところでパブリックコメントにかける。これは通常四週間。特に大事な問題はたっぷりその期間をとるということになっていますが、それは、大体一カ月、四週間以上をかけるという認識でいいんでしょうか。食品安全委員会の方に。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 リスク管理機関の方から国内のリスク管理措置につきまして具体的な内容を持って諮問がございますれば、専門調査会議で審議をすることになるわけでございますが、その後、従来から原則として四週間ということでパブリックコメントを行う、この間に、必要があればリスクコミュニケーションを、さらに会合を行うなどもするということで、通例四週間というふうに考えております。

鮫島委員 特に重要な問題についてはたっぷりした時間をかけるというのが合意になっていると思いますから、私もそこは、まさかその四週間を省略するような、あるいは短縮するようなことはないと思いますが。

 そこで、そのパブリックコメントが終わりましたと。それで、答申を出したら、それを受けて今度は厚生労働省なり農林水産省の、特に厚生労働省に聞きますが、BSE対策緊急措置法に基づいて一部省令改正が必要になりますね。

 だから、手順としては、まず食品安全委員会に諮問して、食品安全委員会が専門家の審議をして、その後、四週間のパブリックコメントをかけて、それで再び行政官庁の方で必要な省令の改正をするということでよろしいんですね。それで、その省令の改正をした後、もう一度食品安全委員会にそれを諮問するんでしょうか。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の中間とりまとめを受けて、諮問を食品安全委員会にして、その後、今齊藤事務局長からお話ありましたように、パブリックコメント等を経て答申が返ってくるわけでございます。それを受けまして、厚生労働省において次に省令改正するかどうかは食品安全委員会の御議論次第でございますけれども、省令改正する場合には、省令改正の検討で、その際、私どものパブリックコメントも行うことになります。それで省令改正ということになります。仮に、省令改正をするということになればでございますけれども。

鮫島委員 今のそこのところでどのぐらい時間がかかるか、ちょっとはっきりしませんが。

 でも、今お伺いしたところ、この一連の流れ、それが終わって、次に、今度は国際措置、輸入再開条件について、ある基準をお決めになって、それでまた食品安全委員会に諮問するという順番になりますか。

 つまり、国内措置についての省令改正を終わって、リスクコミュニケーションもやって、次に、では輸入再開条件について食品安全委員会に諮問するということでいいんでしょうか。

外口政府参考人 最初に、基本的に、国内措置の見直しとそれから輸入再開の問題は、これは全く別の問題であると考えております。

 それで、国内措置の見直しのプロセスについては先ほど申し上げたとおりでございます。

 輸入再開の方につきましては、これは、国の方の今の国内措置の見直しの方針が固まった後、日米協議に入っていくということになると思いますし、その中で当然食品安全委員会の方に諮問をするというプロセスも入ると思いますけれども、その詳細については、まだ協議も始まっておりませんので、まだ全く決まっておりません。

鮫島委員 何かちょっとおかしいというか、あくまでも国内と同等な措置ということが大前提になってこの議論が始まっているわけで、輸入再開条件と国内措置とは関係ありませんというような発言は、大変な誤解を生むというか、問題発言だと思いますけれども。

 ちょっと農林水産省の方に確認しますが、国内措置をまず変更するなら変更して、その後初めて輸入再開条件について食品安全委員会に諮問するというのが手順だと思いますが、それでいいんでしょうか。

中川政府参考人 日米の協議が行われるスタートの時期は、食品安全委員会に諮問をすれば、日本の国内措置の見直しについてリスク管理官庁がどういう考えを持っているかというのはそこで明らかになりますので、それをベースにして、交渉の土台にして日米で協議を始めることができるというふうに思っております。

 そこで、具体的な日米間の協議の結果について一応のまとめ、協議がまとまったその中身について、今度は食品安全委員会に諮問をするわけでありますけれども、そこの前後関係につきましては、食品安全委員会に対する答申が出ているということがまず一つのメルクマールになるかというふうに思いますが、具体的なことはまだこれからでありますので、そこについて、前後関係について、スタートの時点は、先ほど申し上げましたように、諮問をしておるということがスタートの、協議を始める条件は整っているというふうに思います。

 その後のことにつきましては、今ここで確たる前後関係を申し上げるのは差し控えたいと思います。

鮫島委員 国内措置と同等ということが大前提になりますと、国内措置が確定しないうちにアメリカと輸入再開条件の協議そのものがしにくいというかできない、原義的にはできないんだろうというふうに思います。

 したがって、今の御答弁も、もちろんある種の話し合いはできるでしょう、あるいは、今日本でどういうことが問題になっているとかという協議はできると思いますが、実際の輸入再開条件の具体的な内容についての議論は、少なくとも省令の改正も終わり、リスクコミュニケーションも終わって国内措置が確定しないと輸入条件の詰めというのは行われないので、その流れというか輸入再開、まあ今僕は百歩譲って輸入再開の方の道筋を想定しながら質問しているんですが、百歩譲って輸入再開の方にいくとしても、国内措置が確定して、パブリックコメントも終わって、そこで初めて具体的な輸入再開条件を決めて、それで食品安全委員会に、そこは食品安全委員会に諮問する必要があるという御認識なのかどうなのか、その輸入再開条件を変更した場合に。

中川政府参考人 アメリカとの間の輸入再開条件については、食品安全委員会への法定諮問事項ではないと考えておりますけれども、輸入されるものの安全性については、食品安全委員会に、厚生労働省及び農林水産省、あわせて諮問するのが望ましいというふうに思っております。法律上は法定諮問事項ではございませんが、諮問をして、その安全性について評価を得たいというふうに思っております。

鮫島委員 私は最初、三点の問題点、アメリカ、認識の問題を含めて言いましたが、多分それは輸入再開条件を変更するにしても、月齢審査やなんかで本当に永久歯の生え方でいけるのかというようなこともあって、やはり専門家の見解がもう一度そこで要ると思いますから、そこは、輸入再開条件を変更した場合、食品安全委員会にどういう諮問に近い形の、実質的諮問ですね、それをやはりするということをお約束していただきたいんだけれども、それはできませんか。

中川政府参考人 具体的な条件が日米間で整った際、その中身については食品安全委員会に諮問をしたいというふうに思っております。

鮫島委員 そうすると、今私が言いました一連の手続、まだ最初の諮問もしていないわけですが、まず最初に、食品安全委員会に国内措置の変更について諮問して、専門家が検討して、パブリックコメントを四週間やって、その次に、今度は輸入再開条件の変更について再び食品安全委員会に諮問して、それでその答申を得てやっとその再開の環境が整うわけですが、これはどう急いでも、まだ最初の諮問も動いていないわけですから、三カ月ぐらいは今の話だとかかるんだと思いますが、島村大臣はできれば大統領選挙の前が望ましいとおっしゃったそうですが、アメリカの大統領選挙というのはいつなんでしょうか。

島村国務大臣 十一月の二日と心得ております。

鮫島委員 そうすると、もう一カ月切っているわけですから、大臣のフライングなのかもしれませんが、東京新聞の発言はこの段階で意味がなくなったというふうに受け取らせていただきます。

 それから次に、二十一カ月、先ほども中間報告について食品安全委員会の齊藤さんの方から内容の紹介がありましたが、これはどこを読むかによって大分印象が違いまして、食品安全委員会のこの中間報告の例えば一部分には、SRM、特定危険部位を指定した根拠となった感染試験における検出限界の問題やBSEの感染メカニズムが完全に解明されていないことなどの不確実性から、SRMの、特定危険部位の範囲を現時点において正確に判断することはできないというようなコメントもありますし、それから、屠畜のときに、スタンガンだけだと息を吹き返して暴れて、その作業員がけがをするというようなことがあるものですが、ピッシングといって、細い針金を突っ込んで気絶から回復することを禁止する措置がありますが、このピッシングについて、EUでは二〇〇〇年から、特定危険部位、つまり脳の組織の一部が飛び散るからこれはしちゃいかぬというのが二〇〇〇年に決まっているけれども、日本ではまだそんな措置もとられていないとか、大分気をつけなさいよという警告もたくさんこの中間報告の中には入っているわけです。

 私、何人かの先生から直接聞きましたが、あくまでもこの報告が何か二十カ月以下のものは検査は不要なんだと言っているように受け取られていることに、一部の先生たちからは大変危惧の念、危惧の意識が発せられています。自分たちはそう言ったわけじゃない、今まで三百五十万頭やってきたけれども、一番若かったのが二十一カ月で、それ以下のものからは出ていないという事実を述べたのであって、だからそれ以下は必要じゃないとか、そんなことは専門家たちは少なくとも言っていない、自分たちが言ったように受け取られるのは迷惑だという話を私は複数の委員から聞いています。

 このBSEの検査については三年前からいろいろな議論があって、実は初め我々野党の側からは、日本でBSEが発生したときに、当時ドイツで二十六、二十九カ月というのが知られていたものですから、国際基準に従って二十四カ月以上でいいんじゃないかというのが最初の野党提案だったんですね。そうしたら自民党の先生方から、いや、この際もう徹底的にやろうと。特に武部さんはああいう性格の方ですから、全部やるんだということで始めて、我々は、随分大胆で、余り科学的根拠はないなと思っていたら、不思議なことに日本で二十三カ月、二十一カ月というのが出て、私はその自民党の先見の明の深さに驚いたわけですが、やはり素人は怖いなという、ちょっと失礼ですが、とにかく世界記録が日本で出たわけですね。

 したがって、今まで三百五十万頭やって、二十カ月以下は出ていないといっても、従来の自民党の先見の明からいえば、わからないぞ、十八で出るかもしれない、十七で出るかもしれないというのが私は自民党の本来のお立場でないかと思うんですが、何か突然その辺が急速に変わりつつあるようで、まだ専門家もそう言っているわけじゃないし、BSEというのが一体どんな病気なのかと。今、特定危険部位にたまることはわかっているけれども、その間の組織にどんなタイミングでどう移行して異常プリオンがふえたりしているのかということがわかっていないことが一番このBSEの問題だというのが、私は専門家の統一した意識だというふうに思います。

 そういう意味でいうと、一部で、日本で発見された八例目、九例目である二十一カ月齢とか二十三カ月齢のものが、あれはBSEじゃなかったんだ、特にアメリカからもそういう声が出ていますが、それについて、厚生労働省の方では、つまり、あれはまだBSEと確定していなくて追加テストが必要なのか、それともあれはBSEというふうに確定しているという認識なのか、それはいかがなんでしょうか。

外口政府参考人 我が国において発見されました二十一カ月及び二十三カ月齢のBSE感染牛につきましては、免疫組織化学検査は陰性でありましたが、ウエスタンブロット法による検査の結果、異常プリオンたんぱくが検出されたことをもってBSEと診断したものであります。確定したものと考えております。

鮫島委員 今の二十一、二十三カ月は私も科学的に確定しているというふうに思いますので、それを前提に話を進めたいと思いますが、二番目の、アメリカの牛の月齢判定というのが可能なのかどうか。

 今、きょう、あすですか、専門家がアメリカに行っているようですが、あれはまさか輸入再開条件についての事務レベル協議とか、そういうことで行っているわけじゃないんでしょうね。まだその前の段階の調査ということで行っているんだと思いますが、今アメリカに行っている調査団の性格、どういう使命を帯びて行っているのかというのは、どなたか説明できますか。

外口政府参考人 現在米国に派遣しております専門家チームでございますけれども、これまでのBSEに関する日米ワーキンググループでの議論や食品安全委員会の報告を踏まえた意見交換と実態調査を行うために派遣をすることとしたものであり、輸入再開の協議を行うために派遣したものではございません。

鮫島委員 今、食品安全委員会の方で把握している、あるいは専門家の方でどういう協議になっているかわかりませんが、アメリカの牛の月齢判定というのはどのぐらい正確にできるというふうに今見積もっているんでしょうか。どなたか、農水省でもいいんですが、厚生労働省かな。

外口政府参考人 これまでの日米の専門家によりますワーキンググループでの米国側からの説明及び調査結果によりますと、米国側からは、歯列により三十カ月齢以上の牛が判別できるとの説明を受けております。しかしながら、これまでに米国側から提出された資料を見ますと、歯列によって三十カ月齢以外の区分で牛を判別できるとすることは難しいのではないかと私どもは考えております。

 そのほかの月齢鑑別の方法等については、現在まだ詳しい情報を持ち合わせておりません。

鮫島委員 アメリカの畜産といいますか、牛の育て方は群れ管理なものですから、一頭一頭の月齢管理が全然できていない。しかも、する気もないというのが、私はこの前調査に行って大変印象的だったんです。

 そういう意味ではオーストラリアと非常に正反対で、オーストラリアは来年度中に、これはもう連邦法で義務づけて、牛が生まれた途端に自動的な発信器のついたピアスを全部耳に打つ。そうすると、ゲートをくぐっただけでその番号が記録されて、私は競り市場も行きましたが、ゲートをくぐって次々入ってくるだけで、その体重と番号がずっと飛行機の出発パネルみたいにだだだっと打ち出されるというぐらい一頭一頭の管理が精密にできているのがオーストラリアの特徴です。

 私は、島村大臣にぜひ、ここは多分共通の感覚だと思いますけれども、オーストラリアの最大手のパッカーに行ったときに、幸いオーストラリアの肉は各国で評判がよくていろいろな国へ買ってもらっています、フィリピンからも年に一回食肉処理場のチェックに来るし、インドネシアからも来るし、韓国からも来る、来ていないのは日本だけですというふうに言われました。

 今度、アメリカの畜産の実態あるいは月齢の審査なんかについても、どこの国だってバイヤーの方が実はしっかりした権利を持っていて、向こうが、いや、二十カ月以下です、こういう、あるいは独自の判定の仕方をしていても、実は日本のインスペクターが定期的に行くということが私は大変大事だと思いますよ。

 これまでの五十年間の自民党の農林水産行政は、六割の食材を海外から輸入していながら、全く見ていない。海外の生産現場でどんなつくられ方をしているのか、日本に出てくるまでにどういう流通のプロセスを経て入ってきているのか。これは世界的にも大変珍しい。国内の検査官は八千人ぐらいいて、海外は、バンコクの熱帯果樹とかオランダのチューリップとか、点のように十数名しかインスペクターが出ていない。

 そうすると、世界的にどう見られているかというと、日本はどうも国内の農業を信用していないらしい、したがって、八千人の定点観測網をつくって非常に精密なインスペクションをやっている、それに対して海外の農業のことは頭から信用していて全然検査もしない、非常に不思議な民族だと言われているわけです。

 こういう、今やWTO体制の中であらゆる食材が世界を飛び回る、日本も、日本人の食材を得るために、国内農地の三倍、千二百万ヘクタールの農地を世界じゅうで借りていると言われていますが、どういう農業が行われているのか、それから、生産の不安定要因がどういうことにあるのか、そういうのをちゃんと把握しながらやるのが私は食品行政の大原則だと思いますが、その辺、大臣はそういう感覚、自民党の中では一番強くお持ちだと私は思いますが、いかがでしょうか。

島村国務大臣 この点は全く同感でありまして、もし今までその点に欠けるものがあるならば、私の在任中にきちんと改めて、可及的速やかにそういう体制をつくりたいと思います。

鮫島委員 その意味では、今行っている専門家の調査団なんかは、私は歓迎すべき調査だと思います。もっともっと頻繁にいろいろな方が行っていいと思います。

 時間もなくなりましたので、もう一度最後にまとめますと、やはり牛肉の輸入再開というのは、アメリカのまだ意識のずれもあり、具体的な月齢判定も難しい。

 多くの国民の方々、先ほども松下さんからちょっと紹介ありましたが、毎日新聞の世論調査では、六五%の方が不安を感じているというか、輸入再開をする必要がないというふうに言っている。

 それから、直近のテレビ東京の調査、これも千人に対する電話の聞き取り調査ですが、「アメリカ牛肉の輸入再開についてどう思いますか?」との質問に対し、「早期に再開すべき」という人は一五%で、「再開は慎重にすべき」という人が八〇%。これはテレビ東京の調査です。八〇%の人が再開は慎重にすべきだと思っている。

 私は、余りここで前のめりに乱暴な再開をすると、せっかく回復して安定した牛肉食の世界が再び混乱に陥って、次に不信が広がると回復が大変難しくなるというふうに思いますので、これは、全体の牛食文化の維持のためにも、乱暴な手続はしないで、やはり先ほど確認したような手順をしっかりと踏んで、いついつまでに入れるんだとか、そういうことは言わずに、これは本当は、私は、国内措置を優先させてしばらく消費者の反応を見る、十分みんなに納得してもらった段階で輸入条件の議論に入るというのが丁寧なやり方だと思いますが、ぜひ、今、全体の流れについて、拙速にはやらないという大臣からの直接の御発言をいただきたいんですが。

島村国務大臣 昔から、せいては事をし損ずるという言葉もありますように、私どもは、そういう、あくまで国内措置と同等のものを求めるという基本のもと、これからも食の安全、安心のいわば管理を徹底していきたい、こう考えますので、今回、この交渉に当たりましても、それらの趣旨を十分踏まえた動きをしたい、こう考えます。

鮫島委員 ちょっと時間がなくなりましたが、本当は、きょうのこの閉会中審査、台風のこともあったと思いますが、今わかっているだけで、台風十八号までで四千二百二十一億円の被害、これに台風二十一号の被害が、調査が進んで乗っかってくると五千億近い被害が出て、大変な災害だと私は思いますので、ぜひこの辺も大臣の特段の御配慮をお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 本日は、BSE関連の質問に特化して、特に私、医師でもありまして、ちょっと科学的な分野でこの安全の問題についてお伺いをしていきたいと思っております。

 今、冒頭で一番最初に質問に立たれました松下委員が御発言されましたとおり、安心と安全という言葉は確かに違うかもしれませんけれども、安心ができる過程の中には安全がなければいけません。安全がなくして安心だけつくるということは、これは砂上の楼閣というか、まさに国民を欺くことでありますから、安全がしっかり確保されているということを今回保証できるのか、私は、その部分をちょっと科学的に、数字を交えてお話を伺いたいと思っております。

 その前に、今、鮫島委員の方からも質問がありましたけれども、私も報道を見ておりますと、大臣の御発言の中に、食の安全、安心と自己責任についてインタビューに答えられていたのをちらっと拝見したんですけれども、そちらについて大臣の御見解、まずお聞かせいただけますでしょうか。

島村国務大臣 私は、再三申し上げているように、食の安全、安心というものが私たちの行政に取り組む基本的姿勢である、これから逸脱する気持ちは毛頭ございません。

 ただ問題は、世上、いろいろな食品や何かが、私たちの口を通るものが出ておりますけれども、水にしてもあるいは野菜類にしても、すべて安全と思って食しているものの中にも、必ずしも安全と言いがたいものもある。要するに、食べても食べ過ぎなければ全く問題はないけれども、食べ過ぎれば体に害のあるものもある、そういうことごとも含めて、やはりこれは総合的に検討すべきだということを申したのでありまして、自己責任というのはそういう意味合いのほんの一部分を指していることですから、その言葉だけを取り上げると、いかにも個人が自分で責任を持って食べろ、こういうふうに聞こえますけれども、そういう趣旨とは全く異なるものであります。

岡本(充)委員 最後にその話はしようと思いましたけれども、それを言い出すと、たばこなんかどうなるのかという話になるわけですね。たばこはまさに自己責任で吸われる方は吸ってみえる。たばこの箱には書いてあるんですよ。アメリカの方ではもっとでかく書いてある。何と書いてあるか。たばこはあなたを殺しますと書いてあるんです。同じことを牛肉のラベルに書くのかという話になってくるのは、まあそれは後で聞くとしまして、ちょっと私、本日は幾つかの話をさせていただこうと思っております。

 まず最初に、これまで三百五十万頭、食肉処理をされる中で、全頭検査をされてきました。その検査に当たられた方、大変だったと思います。この方々が検査をしてきた結果が、今回、食品安全委員会の中間報告の中に述べられています。二十カ月以下の牛についてはBSE感染牛が確認されなかった。

 これは、確認されなかったというのはどういうふうに解釈するべきか。確認されなかったのは、本当にいなかったのか、それとも確認できなかっただけなのか、この部分を私は問いたいと思っています。

 まず、ちょっと難しい話になって申しわけありませんが、そういった観点で、ひとつ、確率の考え方を取り入れて、本日は皆様方にちょっと考えていただこうと思っております。

 本日は統計局の局長さんにもいらっしゃっていただいておりまして、私なりに、今回、この三百五十万頭の牛を、二十カ月以上だった三百万頭の牛、そして、まあ大ざっぱですけれども、五十万頭が恐らく二十カ月齢以下の牛だったのではないかと私は考えて、二群に分けて検討してみました。

 農林水産大臣にお伺いしたいんですけれども、今、現状で、日本でどのくらいの牛が二十カ月齢以下で食肉処理をされているか御存じでしょうか。

島村国務大臣 たしか一割ぐらいだったと思います。

岡本(充)委員 そうだと思います。私も一割ぐらいだと聞いております。

 ということで、三百万頭と五十万頭の二群に分けて、今お配りしておりますこのお手持ちの紙をごらんください。一番最初の紙、Aのところ、三百万、Bのところに五十万と書いてあります。Aのところが二十カ月齢より上の牛ですね。Bの方が二十カ月齢以下の牛、こちらの方をこういうふうに分けました。そして、その隣の欄、十二と書いてあるのは、BSE陽性、そのうち、見つかった牛が十二頭いた。そしてBの欄、二十カ月齢以下の牛ではゼロであった、こういうふうに四欄に分けております。

 この右の方を見ていただきますと、さらに小さな字でa、b、c、dと書いてある部分がありますが、aの部分が三百万、bの部分が十二、cの部分が五十万、dの部分がゼロ、こういうふうな分け方で、果たしてA群とB群の間に有意差があるのかということを私なりに考えさせていただきました。

 ここで、有意差ということについて、ちょっと統計局の局長さんから伺いたいんですけれども、有意差というのはどのように考えればよろしいでしょうか。

大林政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御提示の例についてでございますけれども、あくまで統計学上の一般理論としてということでございますけれども、フィッシャーの直接確率計算法というのがございまして、それによりまして有意性ということで検定させていただきますと、御提示の場合の出現確率が〇・一五七となっております。この表に〇・一五七二六という数字が出ておりますけれども、〇・一五七という数字が出ております。

 それで、通常、有意水準ということで九五%の有意水準を設定するのが多いと思いますけれども、これは、九五%、二十回中十九回は判断が間違わないようにしたというふうに確率を設定したとして、そのような仮定のもとで、先ほどのこの表にあらわれた数字をどう解釈するかということでございますけれども、その九五%の有意水準ということでございますと、有意とは言えないという計算結果が出るところでございます。

岡本(充)委員 ちょっと聞こえが悪かったんですけれども、ちょっと御説明させていただきますと、今の局長さんのお話もそうですけれども、統計上、有意差というのは、ある二つの群において、本当にその二つの群は差があるのか、それとも単なる偶然であったのかを確かめる、こういった確認方法であるということでよろしかったでしょうか。――今うなずいていただきました。

 ということで、私、計算をさせていただいた。これはいろいろ計算の仕方がありますが、この三百万と五十万、十二とゼロという非常に極端な数字の場合の検定方法は幾つかありますが、今回、フィッシャーの直接確率の計算という計算式を用いさせていただいて確率計算をしました。

 今、局長さんが言われたとおり、この計算は、この下にPイコールと書いていますけれども、階乗計算をいたしまして、最終的に〇・一五七二六七九一八、こういった数字が出ております。これは、この計算方式としては正しいということでよろしかったですか。――うなずいていただいています。

 ということで、時間の関係上、やらせていただきますと、今、この差はどういうことを意味しているかというと、この二つの群の間には実は差がないということを今統計局の局長さんから言われたということになるわけなんです。

 具体的に、もっと簡単にわかりやすく言いますと、さいころを振って、さいころをたった五回振って、五が出なかった。では、このさいころには五の目がないのかというと、本当に五の目がないと思う人はほとんどいないと思います。そういう意味で、さいころと同じ確率の話になってくるわけで、本当にこれが意味を持って差が出てくるのか、差が出てこないのか、これはしっかりと検討する必要があると私は思っています。

 では、これをさらに数をふやしていったらどうなるのか。次のページをごらんください。

 次のページは、今まで三百五十万頭やっていただきましたけれども、さらにこの倍、kが二となっておりますけれども、もし七百万頭の全頭検査をして、今と同じ割合でBSE感染牛が確認されてきた場合、どのようになってくるかということを見ました。そうすると、これはPの値が〇・〇二四七三三一九一、同じ計算式ですけれども、なってきます。これで初めて統計学的な差が若干出てくるということになります。さらに医学の世界ではもっと厳しい統計水準をとっていますから、もっと厳しい統計水準、一%の有意水準を出そうと思うと、一番最後、kが四、今の四倍の頭数を調べないとこの有意性を出すことができないという計算式になってくるということの証明であるのです。

 つまり、今お話しさせていただきましたとおり、さいころの目を振って、まだ五回しか振っていない段階で本当にこのさいころが目として正しいのか、それを判断するのはまだ時期尚早じゃないかということを私は今展開させていただいたわけですけれども、大臣、いかがお感じでしょうか。

島村国務大臣 なるほど、そういう見方、考え方もあるんだなということを学ばせていただいたと。

岡本(充)委員 いや、学んでいただいたのならぜひ実行していただかなければならないわけで、学んでいただいて大変私も若輩ながらありがたいですけれども、こうやって見ていただいたとおり、まだまだ全頭検査の数で、本当にこのB群の方でゼロが続くのか、A群とB群、つまり、二十カ月齢以上と二十カ月齢未満との間に統計学的に差ができるのかどうかはわからない段階だという現状をお示しさせていただいたんです。

 極論を言えば、まだまだ検査頭数が少ないわけですから、これはもっともっと検査頭数をふやして、本当に差があるのかどうかを確認しなければならない。本来であれば、食品安全委員会でも科学者の方ですとこの議論が出てもしかるべきだと私は思うんですけれども、こういった議論は出なかったのでしょうか。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のような形で、統計的な議論というものを直接に行ったという経過はございません。

 ただ、ここにございますように、食品安全委員会のプリオン専門調査会の議論の中では、二十一カ月齢と二十三カ月齢、三百五十万頭のうち、発見された若齢牛については検出された異常プリオンたんぱくの量が通例のものからおおむね五百分の一とか千分の一というふうに低いと推定されている、そういうことを一つの考慮の要因としている。

 その事実関係としては、三百五十万頭ということにつきまして委員の御指摘が今ございましたけれども、その三百五十万頭の検査の中で、発見されたその若齢牛の異常プリオンたんぱく量が非常に少なかったということ、このことを踏まえて、こういう結論というか、こういう書き方となっておるわけでございます。

 もちろん、また検査方法の改良その他についても指摘されているところでございます。

岡本(充)委員 時間の関係上、統計の話ばかりしていてもしようがないので、今言われたその検査方法の話も、私、やらせていただきたい。

 私も、実は大学院に行っていたとき、これと同じような検査、ELISA法もやっていましたし、ウエスタンブロットもさんざんやってきました。実際にこれでどういうふうな結果が出るのか、どういう手順でやっているのかも私はよく知っていますが、このある種のたんぱくを見つける検査がさまざまある中で、ELISA法そしてその確認検査としてのウエスタンブロット法を採用されている。これは平成十三年からずっとこの方式なんだろうと思いますけれども、当初よりこの方式だったと思うんですけれども、これについての見直しというのは行われてこなかったんでしょうか。

外口政府参考人 現在使われておりますスクリーニング検査方法、それから確認検査方法がございますけれども、特に最初のスクリーニング検査方法の感度というものが大変重要であると思います。それは、議員の御質問の御趣旨もそうだと思います。

 今の検査方法、EU等で国際的に評価され、採用されている検査方法の中で、そして実用化されているものの中で高性能のものを選んで使用しているわけでございます。

 この検査方法の評価についてでございますけれども、食品安全委員会のプリオン専門調査会で国内対策の評価、検証を行っているわけですが、その調査審議の際にも、この我が国のBSE検査体制について議論がなされておりまして、CDI法とかそういった方法についても議論がされておりますが、検査方法の見直しについては特に指摘はないものと考えております。

岡本(充)委員 実際のところ、検査限界がどういった水準かというと、今行われているELISA法を経てのこの確認検査の過程で、今の検出限界は、脳一グラム当たり、マウスのMですね、二M・i・c・ID五〇、これはどういう意味かというと、この一M・i・c・ID五〇というのは、マウスの脳内に接種したら五〇%感染する、このたんぱく量、かなり多い異常プリオンだと思います。マウスがほぼ半数感染してしまうほどの量の倍量なければ今の検出技術では検出できない、これが事実である。それは間違いないわけですよね。

外口政府参考人 検出の感度につきましては、専門家の指摘しているとおりであると思います。

岡本(充)委員 その中で、今回のこの日本におけるBSE対策についての中間とりまとめの中でも述べられていると思うんですけれども、「現在の検査法では、技術的な限界から潜伏期間にあるBSE感染牛を全て摘発、排除することができると断定することはできない。」と書いています。

 そういったことを専門家が知っていながらこの検査方法についての議論がなかったということは多分ないと思うんですけれども、どうですか。

外口政府参考人 先ほども申し上げましたように、食品安全委員会の国内対策の見直しの審議の中で、検査方法についても議論がなされているところでございます。

岡本(充)委員 そういったことで、今回、私、御披露させていただくのは、実は、この方法がいい、やってくださいと言っているわけではないんですよ。ただ、こういった方法を他国は評価しているんだと。

 その一つが、プルシナーさんといってカリフォルニア州立大学の助教授が提唱されていますCDI法という検査方法です。このプルシナーさんというのは、ことしの七月にもこういったBSE感染のペーパーを書いてみえますし、また、ことし、これだけの分厚い「プリオン・バイオロジー・アンド・ディジージズ」という本を編集もされています。各専門家が書いている。これは私も読みました。

 この中でどういうことを述べられているかということをちょっと御披露させていただくと、結局、今までの検査方法では、すべてのたんぱくを溶かす、これまでのたんぱくを溶かす、プロテアーゼを使った検査をしている。CDI法は、例えば、今までの切り口と違って、プロテアーゼを使って全部溶かして検査をするという方法ではなく、同じ一次検査として、ELISA法とは違った切り口で検出できるのではないか。

 そして、実はこの七月の「マッドカウ」という論文の中では、この症例では、二十三カ月の牛が、今までの日本の基準ではボーダーラインだったものが、CDI法ではディテクトできる、こういうふうに書いている。これはぜひ見ていただきたいんですけれども。何なら場所をお教えしますが。読みましょうか。これは八ページの最初のパラグラフの真ん中辺の「イン ザ ケース オブ ザ トゥエンティーサード マンス オールド カウ」というところから始まるところですね。「ツー コマーシャリー アベイラブル テスツ フォー PrPSc」と書いています。ここの部分に書いてある。そして、さらにこの先生はどう言っているかというと、この中で、CDI法はヨーロッパでも評価をされている、そして、イギリスでも採用の動きがあるか、もしくは採用されている、このように書いていますけれども、これについて日本はどのように認識をしているんでしょうか。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 プルシナー博士のグループが開発しましたCDIの方法ですけれども、これは、議員御指摘のように、従来の方法と異なった独創的な方法であると認識しております。すなわち、正常プリオンのたんぱくのエピトープのところを単に認識するだけじゃなくて……(岡本(充)委員「詳細はいいです」と呼ぶ)はい、わかりました。

 これについては、先ほど申し上げましたように、BSE国内対策の評価、検証の調査審議の際にも議論はされております。

 一方、CDI法の実用化されたタイプについての評価でございますけれども、これは、EUにおいてBSEのスクリーニング検査キットの評価を行っておりまして、この評価の結果では、既に実用化されているタイプのこのCDIについては我が国でも使用している他の検査キットと同等の性能である、このように認識をしております。

 それで、先生御指摘のそのペーパー、「サイエンティフィックアメリカン」ではないかと思いますけれども、そのところに、二十一カ月と二十三カ月のところはCDIで検査したような英文の指摘がございますけれども、実はこれは事実誤認であると思います。それは、CDI法ではなくて、燐タングステン酸処理をしたというところは共通しているということでございまして、実際にはCDI法で発見されたわけではないと、これは日本語版の方のところに注釈がついておりました。

岡本(充)委員 今のお話は、恐らく、これは要するに、レトロスペクティブに後追いで見て、それで発見された牛が、果たして、これまでの既存の二法の、ELISA法とコマーシャルベースに乗っているこの第一段階のキット、プラテリアBSEとダイナボットのエンファーBSEというものですか、これと比べて、恐らく――そこは書いていないです、何と比べたかは書いていないけれども、既存の、もう既にコマーシャルベースに乗っているものと比べてという比較で出ています。

 今部長が言われたように、違う切り口の検査方法があって、これは十三年にもう既にEUで評価をされていて、そして日本はそれ以降評価をしていない。EUの対応待ちだということでずっと待っている。何年待ったかといったら二年半待っているわけでして、もうそろそろこの評価、違う切り口で、ある方法で陽性じゃなくても違う方法で陽性になることはあるわけですから、これはひとつ採用に向けて動いてもいいんじゃないか。これが、まさにこれは我が国の第十二回のプリオン専門調査会で出ていた。

 この「検査の展望」の中でこう書いてある。米国のプルシナーらのグループが開発したBSE検査法のCDIは、検出感度にすぐれ、生前検査への応用が期待されている、こう書いてあったのが、とりまとめの段階になると、これは十四回、だから第十二回から二回経たら、この文章が削除されてあいまいな表現になっています。「BSE迅速検査法の改良・開発に関する研究は、欧州諸国、米国、日本などで進められており、より検出感度の高い迅速検査法が利用可能となることが期待されている。」こういうふうな表現に変わっている。

 これは私は別にプルシナーさんの肩を持つわけじゃない、これをやれと言っているわけじゃない。でも、いろいろな検査方法があるのならば、この検査方法を採用する、ほかの検査方法をやった、だけれども出ないんだという話であれば、それは一つの手かもしれないけれども、他国の大学の先生から、いや、日本の二十三カ月の牛はうちのこの検査キットなら出たんですよ、こういうふうに指摘されるのでは、私は恥ずかしい限りだと思っています。

 そういった意味で、ぜひいろいろな検査方法を試していただいた上で、先ほどの確率統計の話じゃないですけれども、本当にゼロなのか、ただ単に出ないように見えていて、本当はいるんだけれども検出できないだけなのか。私は恐らく後者だと思っています。

 本当は異常プリオンを持っていながら検出できていないのが今の検査体制であって、これを果たしてゼロと言っていいのか。もし検出がすべてできていてゼロだということがわかっていたとしても、すべて、百歩譲って今の検査体制で一〇〇%の異常プリオンが検出できるような状態にあったとしても、今お話ししたとおり、確率統計論からいえば、まだまだこれが安全であるという数字には至っていない。三百五十万のトータルの検査数では、本当に差があるか、有意差があるかどうかは出ないというのが私は科学的な見解だと思うんですね。これについて、食品安全委員会を統括されている事務局長さんから、何かお答えがありますでしょうか。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 中間とりまとめをまとめる段階で委員の間にいろいろな議論があった、先ほど御指摘のあったような、最初の、七月に示しましたたたき台から九月の中間とりまとめに至る間にいろいろ変更があったということは事実でございます。

 ただ、私どもとしては、この中で日本のプリオンの専門家、一番の専門家の皆さん方が集まって現時点での最善の知見ということで御努力いただいた、その結果のとりまとめだというふうに考えております。

 もちろん、今後とも、プリオンの関係、BSEの関係につきまして食品安全委員会として議論を続けていかなければいけないということにつきましては、御指摘のとおりでございます。

岡本(充)委員 時間の関係上、最後に指摘だけしておきますけれども、このプルシナーさんは、この同じ「サイエンティフィックアメリカン」の中で、同じ八ページの下段の方ですけれども、日本の全頭検査について評価をされ、これが、最善のというか、ただ一つのBSE感染の広がりを抑える道だというふうにも訴えてみえます。信じる、「アイ ビリーブ」で始まっていますから、断定はしていませんけれども、そういうふうに書いている。そのことだけを御指摘させていただいて、続いて、日本の、BSEではなくて、ちょっと話はずれますけれども、バリアントCJD、変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病の、病院、実際の臨床現場で、今どういった調査報告体制になっているか、それについてお伺いしたいと思っております。

 私の手元には、ちょっと時間の関係でささっと話をさせていただきますと、こういったプリオン病に関する研究班、こちらの方から、サーベイランス委員会が出しているこのサーベイランス調査票というのをいただいて見させていただきました。この中で、脳病理の添付資料、こういうふうになっておりますけれども、実際に、脳病理はCJDだ、もしくはバリアントCJDだと指摘された患者さんで、今、どのくらい蓄積を日本として持っているんでしょうか。

岡島政府参考人 現在、プリオン病及び遅発性ウイルス研究班におきまして調査研究を行っております。剖検によりましてクロイツフェルト・ヤコブ病であることの診断が確実となった者は、全体の一五%ということが現状でございます。

岡本(充)委員 私が実際に病院で働いていて思うんですけれども、このクロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなられた後に、では、病理解剖をするか、剖検するかというと、やはり解剖するときに、一つは、脳を切るということで、結構御遺族の抵抗が強い、そしてもう一つは、やはり解剖することで髄液が飛び散ることに病理解剖医も非常にヘジテートするということで、なかなかこの病理解剖が進んでいない現状があるんですね。

 それで、実際のところ、今ここに書いてありますけれども、では、どういったたんぱくのどういったプリオンが人間に対して発病をするのか、どういったプリオンが、どういった遺伝子がこの発病の機序に関与しているのかが、なかなか日本として蓄積ができていない現状があると思います。私は、そういった部分をぜひ改善していただきたいというのが一つと、もう一つ、そういった中で最近非常によくわかってきたのが、プリオンを支配する遺伝子の中で百二十九番目の遺伝子がメチオニン・メチオニンのパターンの方が非常に多いというか、これまでバリアントCJDだと言われた、世界で診断された方の、その中でさらに解析された方の中では一〇〇%がこのメチオニン・メチオニンタイプだったということが指摘されています。

 そして、欧米では、実はこのメチオニン・メチオニンタイプの方はおよそ人口の四割、それで残りの六割の方はこのタイプではないんですけれども、先ほどの確率統計論を出して恐縮ですが、同じようにこういう表をつくってみますと、A群のところは二百二十五、そしてaが二百二十五、そしてbがゼロ、そしてメチオニン・メチオニンタイプをB群としますと、cの部分がゼロ、dの部分が百五十という表ができるわけです。これは明らかにだれが見ても有意差のある統計学的差になると思うんですけれども、いかがでしょう、統計局長。

高木委員長 大林統計局長、少し大きな声で。

大林政府参考人 お答えを申し上げます。

 実際のデータに基づいて実際に計算してみないとなかなかその辺は出ないところでございますので、なかなか直観的なお答えはしかねるところかと思います。

岡本(充)委員 何を言いたいかというと、要するに、このメチオニン・メチオニングループというのは、今の段階では、バリアントCJD、人間のクロイツフェルト・ヤコブ病を非常に発症しやすいということが想定されるわけです。欧米では四割の方がこのメチオニン・メチオニンタイプだと。日本人はどうかというと、日本人は遺伝学的にかなり均一性が高いところがあって、実は九三%ぐらいがこのメチオニン・メチオニンタイプなんです。ということはどうかというと、欧米よりももしかしたら日本人はより感染しやすいのかもしれない。特に、イギリスで発症しているよりももっと容易に感染する可能性が、ここにキーが潜んでいるかもしれないと私は考えています。

 そういった意味で、今の日本のこの厳しい全頭検査の体制、これが今言った統計学的な部分からも、そして、実際の今の検査体制からも、そして、臨床の現場での現状も踏まえて、私は、現時点では最善の道であると信じてやまないわけでありまして、ぜひこういった今の観点、議論を整理していただいて、大臣の今後の政策決定に当たっていただきたいと思っております。日本の農林水産大臣であってアメリカの農務省長官ではありませんから、ぜひその点を配慮していただいて、日本の国益を第一に考えて対処していただきたいと思っております。

 本日は、ありがとうございました。

高木委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

高木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 ただいま参考人として食品安全委員会委員長寺田雅昭君が出席をされております。

 質疑を続行いたします。山田正彦君。

山田委員 食品安全委員会の寺田委員長にお聞きしたいんですが、日米協議、今コロラド州でやられているようですが、その日米協議と国内BSE対策は何の関係もないとリスコミ、リスクコミュニケーションで言っているようですが、そのとおりでしょうか。

寺田参考人 おっしゃるとおり、そういうふうに言っておりますけれども、そのときには必ず、直接関係はないと。御存じのとおり、今食品安全委員会で中間まとめをやりましたのは、日本におけると、必ずそのことを言わないと日米交渉に誤解を招くということで、そういうふうに言っております。

山田委員 六月の二十八日と三十日に日米の専門家会議がなされたようですが、その中で、若い牛の検査に限界があると。七月の二十二日に、若い牛の検査に限界があるということで日米間で協議が調った、これも事実でしょうか。イエス、ノーで結構ですから。

寺田参考人 そのとおりでございます。

山田委員 それで、お聞きしたいんですが、資料一を見ていただきたいんですが、このいわゆるBSEの資料の七月分と八月分、資料一と資料二、これは食品安全委員会の事務局がつくられたんでしょうか。事務局長、イエス、ノーで結構ですから。

齊藤政府参考人 資料一、資料二でございますが、これにつきましては食品安全委員会事務局と専門調査会の座長と相談してつくりました。

山田委員 この資料一、二、島村大臣、見ていただきたいんですが、この資料一でいくと、赤でマークをつけております、二枚目ですが、それが何カ月齢の牛に相当するか、現在の知見で明らかでないと。同じく、資料二、八月分の取りまとめでも、それが何カ月齢の牛に相当するか、現在の知見では明らかでないと。当時、私ども、食品安全委員会の動きというのは大変気になっておったんです、日米協議で若い牛に限界があるという合意が成立した後ですから。ところが、それについての月齢については明らかにされていなかったということなんです。

 ところが、資料三、これは九月六日、食品安全委員会プリオン専門調査会ですが、見ていただきたいんです。この中に、二十ページですが、二枚目ですけれども、「二十ケ月齢以下の感染牛を現在の検出感度の検査法によって発見することは困難であると考えられる。」と、ここでいきなり二十カ月齢という数字が出てくるわけです。これは、寺田委員長、どういうことでこういうふうになったんでしょうか。簡単でいいですから。

寺田参考人 これは、今まで三百五十万頭やった牛の全頭検査の結果をそのまま述べたわけでございまして、二十一カ月以上のものでは見つかった、二十カ月以下では見つけることは困難であったと。ですから、記載のみでございます。

山田委員 それまでは、それまでの資料一、二でわかるとおり、月齢についての知見はできない、月齢について区切ることはできない、そう言っておった。ところが、このときの報告でこうなったということは、それまでそう書いておって、なぜここで二十カ月齢ということを入れたかということを聞いているので、今までと違う、ここはどうしてなんですか。

寺田参考人 アメリカの交渉との直接の関係はございません。ただ、二十一カ月以上は見つかった、そういう書き方をしていますと、正直なことを申し上げましてはっきりしない。私はもうそれは自明だと思ったんですが、そういうことでこれを入れたんだろうと思いますし、議論もそういうことだと思います。

 ただ、先生も御存じのとおり、結論のところではそれを入れると誤解を招くからと、結論のところでは除いたという経過がございます。

山田委員 どうもはっきり理由について私に明確に答えたとは言えないんですが、私が調べたところによりますと、九月の三日、これは九月の六日なんですが、食品安全委員会の事務局の方から有力な専門委員のところに夕方電話があって、訪ねていった。そして、実際に、この二十カ月齢で線を引きたい、それについて了承いただきたい、そういう話が出された。その事実についてはどうですか。

寺田参考人 そのような事実に関しては、全く私は知りません。

山田委員 知らないということですね。

 事務局長、そういう事実はあったかなかったか。わからないならわからないで結構です。

齊藤政府参考人 私も知りません。承知しておりません。

山田委員 なかったではなく、わからない、どちらも知らないということで、なかったという事実じゃないようですが、それでは、私の資料四を見ていただきたい。

 これは九月六日、このたたき台をもとにした専門調査会のやりとりです。この中の佐多委員、今マークをつけておりますが、二十カ月齢を入れるのは誤解が生まれる、きれいにすぱっと切れるものにはならない、二十を抜けばいい、こういう見解があります。その後、山内教授の、二十一で見つかったということは言えるが、それ以下について触れる根拠はないですね、事実をはっきり書くのがいい。その次に金子先生の、過去三年のデータを検証しているのであって、過去形のことは言えても、将来どうなるということは言えるわけがない、こういう話になって、以下、以上のやりとりがあった後、吉川座長に一任ということで専門調査会は終わった。

 寺田委員長、この事実は間違いありませんか。

寺田参考人 間違いございません。

 ただ、一つ、これに加えまして、最後のところで、座長、副座長預かり、事務局と相談して最終案をつくるという言葉が、これが全体としてどういうことかはわかりませんけれども、そういう言葉があったのは確かでございます。

山田委員 事務局と相談してという言葉があったんですか。もう一回確認したい。

寺田参考人 申しわけありません。事務局と相談してという言葉があったかどうかは確かではございません。

山田委員 委員長、しっかりしてください。食品安全委員会の委員長ですからね。

 その後、記者会見で、二十カ月以下の検出は困難であると考えられるという部分は結論部分から削除するのか、本文からも削除するのかとの記者団の質問に対して、吉川座長は、本文からも結論部分からも削除するとはっきり答えている。これについては、寺田委員長、いかがですか。

寺田参考人 この部分に関しましては、私は共同記者会見に出ておりませんので、どういうやりとりがあったかわかりませんが、そういうふうな話は聞いております。

山田委員 聞いておるということで、まあ、事実だ、そうとらせていただきます。

 その場で、記者会見の中でもう一つ吉川座長に、これについては政府から、いわゆる官邸もしくは農水省、厚労省からそういう依頼があったのではないのか、そういう話がなされて、吉川座長は十秒ぐらい答え切れなかった。そして、それを受けて、事務局のだれか、これは事務局長であったかだれかわかりませんが、そんなことはありませんと答えた。そういう事実があったやに聞いているか、それは知らないか、それをお答えいただきたい。

寺田参考人 そのことは全然聞いておりませんし、知りません。

山田委員 私も、複数の方々からいろいろ聞いて調べたので、間違いない事実だ、そう思っております。

 その後、九月九日に、さらにそれを受けたとりまとめが出された。大臣、副大臣、見ていただきたい。二十一ページですが、この中に、「二十ケ月齢以下のBSE感染牛を確認することができなかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である。」と。本文から削除されていないし、結論部分からも削除されていない。寺田委員長、これはどうしてでしょう。

寺田参考人 本文の方からは削除されておりません。結論の部分は、その前のときと比較していただければ、検出できないという文章は削除されて、この文章にかわっております。

山田委員 本文の方は、ちょっと私も今のは間違いでした。この結論部分のところの「二十ケ月齢以下の」というところは、記者会見では吉川座長は、削除する、数字を切るということは、何カ月かということを切るということは削除するとはっきり言っている。しかも、寺田委員長、前の資料三の「二十ケ月齢以下の感染牛を現在の検出感度の検査法によって発見することは困難であると考えられる。」それより実は一歩前進してというか進めて、「BSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である。」と、より積極的な記載になっている。

 いかがですか。吉川座長が言ったこと、プリオン調査会で皆さん、専門家の委員の意見と全く異なる記載がここでなされている。これについて、寺田委員長、責任はないのか。

寺田参考人 このことに関しましては、ここに資料の四で記者会見の内容として出されましたように、吉川座長は本文からも結論からも削除すると。そこの文章は「困難であると考えられる。」という部分を削除するということであります。

 それからもう一つ、お許しいただければ、つけ加えたいのは、私もこの専門調査会、すべて出ておりますが、九月六日の専門調査会では、最後の結論のところにそれを出すと、御存じのように、月によって、感染の濃度とかサーベイランスとかそんなこと全然なしに、何日だったらディテクトできるとか何日だったら検出できないとか、そういう誤解を与えるから、それはやめた方がいい、本文中の方は、その事実を書くんだから構わないだろうという結論だったと思います。

 これはその前にもありまして、それも委員御存じのことだと思いますけれども、日本の中でバリアントのCJDの可能性は一億二千万人のうちの一人以下であると、それを結論に書くのはやはりおかしいと……(山田委員「そういうことを聞いているわけじゃない。委員長」と呼ぶ)いや、結論と本文の間の説明をいたしました。

山田委員 だからこそ、資料四でもってプリオン専門調査会のやりとりを詳しく私が資料で出して、寺田委員長は認めた、このとおりだったと。このとおりの中に、二十という数字を削除すべきじゃないか、そういう意見が委員の先生方から出ている、何人かから。そして、吉川座長も削除すると言っている。ところが、削除されなかった。さらに、この二十カ月齢以下は検知できなかったということを対策上十分考慮に入れるべきだというとりまとめをまとめたということはおかしいんじゃないかと言っているんです。

 大臣、今お話を聞いていて、それをおかしいと思わないか。当然だと思いますか。

島村国務大臣 私は、当時の経過はよく存じませんが、少なくも、すべてオープンで開かれている委員会のことでもございますし、それぞれの専門の方がそれぞれの専門の責任においていわば判断をされたということですから、今時点まではそう受けとめているところであります。

 なお、具体的にこういう点に疑問があるという御指摘があれば、責任者として当然に調べて、また後ほど御返事をしたいと思います。

山田委員 大臣、私が調べたところでは、事務局が関与してこういう記載になったと。そのことについて各専門委員の先生は非常に不満である、恐らく寺田委員長も不本意であったろうと思う、こういう記載に変わったという、これは。なぜこういう意図的な記載をせざるを得なかったか、大臣、それについて詳しく調べて、この委員会に御報告いただきたいと思いますが、いかがですか。

島村国務大臣 こういう専門的な検討の委員会の結果について、恣意的に何か、いわば事実を歪曲したり、あるいはむしろ不透明なものにするということですと、かえって権威を損ねますから、私はそういうことがないと信じますけれども、今御要請のとおり、調べて、また御返事したい、こう思います。

山田委員 その背景なんですが、きのう付の朝日新聞を資料六で用意させていただいた。きのう付の朝日です。いわゆる二十一日の日米首脳会談がなされる前です。そのなされる前の話ですね。この中で、いわゆる十一月の大統領選を控え、オハイオ、ウィスコンシン両州など激戦区の畜産票を固めたいとの思惑から、大統領としては政治決断を迫った、これは間違いない事実で、会談後、「両首脳は、できるだけ早期に牛肉貿易を再開する重要性で一致」、そうなっております。

 これは事実だと思われますが、ところで、島村農水大臣、島村農水大臣は、先ほど午前中のうちの鮫島ネクスト大臣の質問に答えられて、そして総理官邸に行かれた、陳情に行かれたというお話をされましたが、それはたしか九月の二十日ころですかね、だれと行かれましたか。

島村国務大臣 食品産業振興議員連盟で、私、会長を務めておりますが、いわばその食品産業界の代表の横川会長と一緒に行きました。

山田委員 総理官邸に行って、どういう話をなさいましたか。

島村国務大臣 立場上、業界側が、現実に危険性が指摘される範囲とそうでないのと、いわばいささか過剰反応をして、そのことが国民の中に広く定着し、いわば正常な仕事が阻害されているという趣旨の話がありましたけれども、私、その道の専門家ではありませんから、それならばじかにお話をいただいたらどうですかというので、官房長官のところへ出向きまして、それで横川会長からいろいろな説明をいたしました。

山田委員 大臣は、その業界も大変困っているから、アメリカからの牛肉の輸入をできるだけ早くしてほしいということの陳情に行かれたわけではなかった。どうですか。

島村国務大臣 私からの陳情ではございません。

 ただ、問題は、やはり、そういうことごとについていわば責任ある衝に当たっている方が、事実を知ってほしい、それで私にいろいろ説明しますから、私、いきなりそういう説明をされてもよくわかりにくいから、それならじかに話す機会をつくりましょうかというので、陳情の申し入れをして、いたしました。

山田委員 どうも意味不明なんですが、業界の人はどういうことで行かれて、そのために、島村大臣が何のためについていかれたのか。その辺は事実ですから、はっきりお答えになられた方がいいかと思います。

島村国務大臣 今こうして立って御答弁申し上げていて、全くやましいものはありません。それから、意図的に何か事実を隠ぺいすることもありません。

 ただ、問題は、いわばいろいろなマスコミその他の報道の中で、消費者の中で相当必要以上に過敏な反応をして、もうアメリカの肉は絶対だめだ、こう言っているけれども、世界のいろいろな実情に照らして正直言っていささか過剰である、ついては云々という説明に対して、それならば御要望どおり取り次ぐことをしましょうというので、私はいわば陳情の場づくりの方に協力をしたということで、私からの陳情ではありません。

山田委員 陳情の窓口に総理官邸まで行かれて、その陳情の内容は輸入牛肉の再開であった、それは事実ですね。もうイエスかノーだけで結構ですから。

島村国務大臣 そうお答えしたいんですが、この種のものはイエスかノーで答えると、えてして話が、事実がかえってゆがんでしまう場合もありますので申し上げますが、横川さんは非常に理を尽くして話をしていたように思いました。当時私は正直言って農林水産大臣になるなんてまるっきり考えておりませんでしたから、そういう意図で何かしたわけではありません。

山田委員 前回のサミットのときからいろいろうわさされてきました。いわゆる小泉総理とブッシュさんとの間でアメリカの輸入牛肉再開に向けて話し合いがなされ、どうもブッシュさんから頼まれて、そして小泉さんはブッシュ支援のために約束したんじゃないか、そういううわさは広く流れてきたわけです。

 その中で、では、外務省はどうであったかというので、きょう外務省の審議官を呼んでおります。

 外務省は早い時期からいわゆる日米交渉の窓口として、輸入再開に向けて具体的な話を進めておったという事実はありますか、ありませんか。

中富政府参考人 お答えいたします。

 さきの日米首脳会談におきましても、両首脳間で、できるだけ早期に日米間で牛肉貿易を再開することの重要性につき意見が一致し、両政府が牛肉貿易再開に係る具体的事項につき速やかに鋭意協議を行うことが確認をされております。また、春以来いろいろなワーキンググループ等の動きもございまして、その中での議論の蓄積もございます。

 現在、食品安全委員会や関係省庁が国内措置の見直しの検討を行っておられますが、その動きを見まして、これまで同様関係省庁と連携をしながら日米協議を行いまして、日米双方にとり満足のいく解決が早急に得られるようにということで検討を続けているところでございます。

山田委員 午前中の鮫島委員の質問に答えて、中川消費・安全局長、農水省から食品安全委員会にいわゆる諮問があったら日米協議を始めることができると言ったかに聞こえたんですが、そのとおりですか。

 それともう一人、厚生労働省、外口さんにもお聞きしたいが、いわゆる日米交渉再開、先ほど寺田委員長は一番最初に、二十カ月齢以下で切る、切らないの話は日米交渉とは全く関係がないとはっきり言っておられた、これは。それでいて、日米交渉の始まりについて了承の、さきの鮫島委員との話と、外務省が既にいろいろ交渉を始めておるということとは違うと思われるんだが、どうですか。

中川政府参考人 午前中お答え申し上げましたのは、一月以降四月まで日米で局長級協議をやってきて、三回にわたってやりましたけれども、そこにおいて進展がなかった、むしろ基本的なところで意見の相違があった。そういうことで、ワーキンググループを三回開いて、専門的な知見からの整理をして報告書として取りまとめられたところでございます。

 そういう状況に今あるわけで、その上に立ってさらにこれから協議をしていくとなると、これまでも、日本の国内と同じ、同等の措置をアメリカに要求してきておりますので、新たな展開ということになります。それは、日本の国内措置がどうなるかという、そこのところがはっきりしませんと協議に入れませんので、そういう意味で、食品安全委員会に国内措置の見直しについて諮問をしたその後で協議を行う、土俵ができるという表現で私はお答え申し上げました。

山田委員 ということは、国内措置で諮問がなされない限り、一切日米交渉の話には入れないということでとっていいわけですね。まあ、うなずいたようだから、それでいいですね。

 外口さん、どうですか。

外口政府参考人 ただいまの中川局長の答弁と同じでございます。

山田委員 それでは、日本の外交というのは、島村農水大臣、いわゆる農水省の意向、そういった意向とか厚生労働省の意向に関係なく、アメリカと具体的な交渉に入るということは可能なんですか。それは、していいことなんですか。

島村国務大臣 今局長からも御説明したとおり、国内措置と同等の対応をこちらはアメリカ側に要求していることでして、そういうことを逸脱して、我々に話し合いに入れということはできません。私たちは、引き受けるとすればその範囲で動くしかないわけでありますから、その意味では、別に脱線をしたというふうには私は思いません。

山田委員 外務省審議官にお聞きしたい。

 資料七、これは八月の三十一日、外務省が向こうの農務省にやった文書です。間違いありませんか。わからないならわからないでいい。これは私が調べた限りで間違いないと思う。

中富政府参考人 お答えいたします。

 資料を先ほどいただきまして、今初めて目にするものでございまして、この資料の性格、それから出どころ等、確認できません。恐縮でございます。

山田委員 判断できないということは、そうでないということではないわけですね。いかがか。

 午前中に、もう九時ぐらいには渡っているはずだから、十分その間に調べられたはずで、お答え願いたい。

中富政府参考人 繰り返しになりまして恐縮でございます。少なくとも私、この資料、今初めて見ましたので、申しわけございませんが、この資料の性格、出どころ、それからだれが書いたのか等、確認できません。

山田委員 確認できない、確認できないということのようですが、もう一度資料、朝日新聞。きのうの朝日新聞の中に、「会談直前まで日本国内の調整は難航した。原因のひとつは、外務省が甘い見通しを米側に伝えたことだった。複数の関係者によると、外務省幹部はホワイトハウス高官に「二十カ月齢以下の除外で政治決着は可能」と伝えていた。大統領が会談直前の九月十日、オハイオ州で「市場を再び開くよう日本を説得することは我々の利益になる」」と述べた、そう言っています。

 私も、先月の、八月の二十二日から二十九日まで、民主党の調査団長としてアメリカに行って、農務省のペン次官ともいろいろお話しした。それで、向こうの食肉関係団体三団体ともいろいろな交渉をした。その中で、向こうが言うのに、政府間交渉を続けているんだ、そういう中身だった。だから近く日本に対する輸入牛肉の再開はなされると言っておった。大臣、よく聞いておいてくださいね。

 そして、この今の私が示した資料なんですが、外務省と向こうのやりとりの資料、その中では、もし二十四カ月齢を受け入れるなら、なぜ二十カ月齢は受け入れないのかという交渉をしている、外務省は。これは八月の三十一日の時点なんです。農水省も厚生労働省もこれを知らなかったのかどうか。大臣、いかがでしょう。

島村国務大臣 外交交渉ということでありますから、当然に、公式なものでなくても、下話というのはいろいろな意味であるし、ある意味では自由濶達な議論がその間にはあると思いますが、それらが一々仮に私ども農林水産省の方に照会があって、それで方向づけがされるとすれば、当然に制約がされると思いますから、これは我々は知らなかったと私は理解いたします。

山田委員 大臣は、そういう交渉がされておる、そういう中身で日米間で大統領選挙前に何とか輸入牛肉再開に向けてある程度の方針を打ち出したいということ、そのことについて就任するときに総理から何も言われなかったのか。いかがですか。

島村国務大臣 率直に申し上げて、二十七日に総理からいきなり私は農林大臣を引き受けてほしいとお話をいただきました。それから今日まで約九日あるわけですが、その間、全く私に対して何らこの話はありません。別の話や会っての話はいろいろしておりますから、その時間がなかったということではありませんので、一切ございません。

山田委員 大臣、資料八を見ていただきたい。きのうの東京新聞。上を赤でマークしているところを、大臣、見ていただきたい。

 私がかわりに読み上げましょう。大臣の言葉だ。「大統領選を意識して取り組む気はないが、できることなら大統領選の前の方が、後よりはるかにいい。国内も(外食、食肉関係者が)あれだけ耐えている。「いやあ、これでひと息つけるようになった」という声を聞きたい。」大臣、そう言ったんじゃないですか。

島村国務大臣 最近の新聞社の報道というのは、私たちもそれはそれなりに参考にはさせていただきますが、すべてが正しい報道ということにはなりません。この報道がどういう意図で書かれているのかはわかりませんが、少なくも私自身は、しゃにむに、何でもかんでも、先にいわば妥結ありきという判断でいたしておりませんので、くどいようでありますが、まさに我が国の国内の考えと同等の対応を求めてこれからもやっていくということであります。

山田委員 大臣はこれを言ったのか言っていないのか、それだけはっきり答えていただきたい。

島村国務大臣 この問題につきましては、早期に解決することを目指していわば日米両国は努力をしていきたいというのは首脳会談で意見が一致したところでありまして、そのことは私、重々承知をいたしておりますし、これは各紙の報道が一致しているところでありますが、少なくも、早期の貿易再開の重要性と両国政府が速やかに協議を行うことが確認されたということでありまして、この状況を踏まえて、私は早期解決が必要と考えたものであります。

山田委員 大臣、私があなたに聞いているのは、この「後よりはるかにいい。」と、大統領選の前、牛肉再開について、そう記者会見で言ったか言っていないのか。僕は複数の記者から聞いている。それをはっきり答えていただきたい。

島村国務大臣 それでは、ちょっと読ませていただきますが、よろしいですか。

 アメリカにすれば、御承知のように、いわゆる大統領選挙が十一月にあるわけですから、その前に何らかのはっきりした解決を見たという結果が欲しいんだろうと思います。ただ、これは政治的な問題ではなく、やっぱりもっと大事な科学的な、立証といいましょうか、確信の持てる解決が基本になければいけない、中間略しますが、可能な限りこれを早く解決したいと思っております。今度はその担当大臣でありますから、従前のような部外者の関心というもので片づけられませんから、十分これから、この問題、もっと突っ込んでですね、なるほどかわりばえがしたと言っていただけるように努力はしたい。

 これが速記録そのままであります。

山田委員 これは同じ内容で実は日本農業新聞にも載っている。では、日本農業新聞も東京新聞も、今大臣が言っていることと違うことを書いたことになる。

 では、これはこの記事の方が間違いだということでいいんですか、大臣。

島村国務大臣 同様に今の件で申し上げますが、私も政治家ですし、ブッシュというのはそんなに嫌いな男ではないから、まあ個人的ですよ、やはり彼だって、この問題、解決ができたらうれしいだろうなと思いますよ。だけれども、僕は大統領選を意識してこの問題に取り組む気は毛頭ないですよ。ただ、やはり、できることなら、それは大統領選の前の方が後よりはるかにありがたいですよ。それで、全く私的なあれだけれども、アメリカ人や何かの発想で言えば、要するに、何でそんなに神経をとがらすのという意識はあるでしょう。しかし、彼らは我々よりはるかに食べる人たちですから、なくちゃならないものかもしれませんけれども云々と。

 要するに、記事がありまして、これらを記事に向こうが書いたということだと思います。

山田委員 ということは、大臣はそう言ったということだ。この記事のとおり、間違いないということですね。

 それで、大臣、いいですか、今、朝からずっとこの集中審議をしているわけです。先ほど、直前の大臣の答弁では、総理からもそういうところからも何の話もなかった、いわゆる食肉業界で陳情の窓口はしたけれども、私はよくわからなかったので、ただ窓口でつないだだけだ、そう言っていた。それと今の記者会見の内容は全く矛盾するじゃありませんか。矛盾しませんか。いかがですか、答えてください。

島村国務大臣 さっきの陳情への取り次ぎについては、私は当時、全く農林水産大臣に再任するとは思ってもいません。入閣すら考えておりませんでした。そういう意味からすれば、私自身は、全くの一政治家として、食品産業振興議員連盟の会長として、いわばその筋の責任者を案内したということでありますし、また、後者の問題についても、別に私は、総理から何か一言でもそういうことを言われて、例えば就任の際に、こういう問題を抱えているのでしかるべくとかよろしくとか仮にあれば、それはそれなりに責任を感じるでしょうが、私独自の判断と責任において事に当たってほしいという、いわば委任をされた意識でおりますので、別に矛盾した行動をしているとは思いません。

山田委員 大臣は本当は、大臣に就任するときに小泉総理から、牛肉輸入の再開を急いでやってほしい、そういって頼まれて、それが頭にあって、そしてこういう記者会見をし、大臣が言っていたいわゆる国内の食の安全、安心というよりも、アメリカに対してできるだけのことをしてやろうという思い、そういうことから記者会見でそう述べてしまった、そうじゃないんですか。

島村国務大臣 何かどこかの新聞記者に問われているような感じがしますが、うっかりこれをイエスと言うと、私自身の考えがゆがんでしまうので、イエスと申し上げるわけにはいきません。私は、別に、日本の政治家ですし、だれにも負けない日本人だと思っているつもりなので、国を売って外国にこびるなんということは最も恥と考えておりますので、そういう発想は持っておりません。

山田委員 外務省に再びお聞きしたい。

 外務省、この朝日新聞が言っている、「「二十カ月齢以下の除外で政治決着は可能」と伝えていた。」こういう記事は、では、外務省としては、違うのか本当なのか、そういう事実があったのかなかったのか、お答えいただきたい。知らないでは困る。

中富政府参考人 御指摘の記事の件でございますが、一般的に、首脳会談等我が国の政府首脳が外国の政府要人と会談を行う際には、事前準備の一環として、両国の事務レベルで当然調整を行っております。今回の日米首脳会談においても、米国政府との間でさまざまな事務的な調整を行っておりましたことは事実でございますが、その具体的なやりとりについては、相手国政府との関係もあり、明らかにすることは差し控えさせていただきます。

 しかしながら、いずれにいたしましても、今回の日米首脳会談の事前準備の段階で、外務省幹部が二十カ月齢以下の除外で政治決着は可能といった見通しを伝えたという事実はございません。

山田委員 それでは、この朝日新聞の記事はうそで、であったら、朝日新聞を偽造記事だということで告訴する気はあるのか、そこまで考えているのかどうか、お答え願いたい。

中富政府参考人 お答えいたします。

 外務省幹部が事前に二十カ月齢以下の除外で政治決着は可能といった見通しを伝えたという事実はございません。それは繰り返させていただきます。

 新聞の記事につきまして、今、告訴するのかというお話がございましたが、新聞にはいろいろなことを書いてございますので、一々対応するということでもないかと思います。

山田委員 農水省と厚労省にお聞きしたいんですが、今、コロラド州のフォートコリンズですか、ここでいわゆる実務者、専門家の実務者会議がなされている。この中で、資料九を見ていただきたい。共同通信のきのうの夕方の五時四十八分の記事なんですけれども、これによると、輸入再開に向けて、米国の牛が生後何カ月かの把握と、生後月数の正確さを米政府が保証する制度の有効性を確認できるかどうかが焦点となっての話し合いをしているとなっている。

 先ほどの話だと、農水大臣も、農水省も厚労省も、そういう国内と同等の措置がとられていないうちにこんな話し合いがなされるということはあり得ない、いわゆる諮問がなされない限り日米交渉に入れないとはっきり言っている。ところが、実際に日米専門家会議には農水省も厚労省も行っている。これはどういうことなんですか。

中川政府参考人 十月の四日と五日、コロラドに我が国の専門家チームを派遣しておりますその目的でございますけれども、これは、五月から七月にかけて三回行いました専門家によりますワーキングチームの、そこの報告書の延長線上としてのいろいろな事実関係を確認するために行っているというのが一つの目的、もう一つは、食品安全委員会の中間とりまとめの内容について相手方にも説明をする、そういう形で行っているものでございます。

 繰り返し申し上げますけれども、今回行っております専門家は、日米の間で何かの具体的なことを協議するために行っているものではございません。

山田委員 何も、今国内措置を食品安全委員会でこういうふうにしているとかという説明をただするんだったら、米コロラド州のそこまで行って、現地まで行って専門家のワーキングチームが会議する必要なんてないじゃないですか、それは。情報を聞くんだったら、今まだ国内の措置もとれていないのに、向こうから来て説明を受けるのが筋じゃないですか。何で農水省も厚労省もいわゆる専門家を向こうにやって、こういう月齢のことの具体的な話し合いをしているのか。おかしいじゃありませんか。どうですか。

中川政府参考人 七月までの専門家によりますワーキンググループの報告書の中にも記載されているわけでありますけれども、サーベイランスのあり方ですとかあるいはさまざまなアメリカの措置について引き続き協議をしていく、そういう文言がございます。そういった、現地に行ってやはり確認をする事柄もありますので、今回、コロラドの方に行って先方と話し合いをし、また実際の現場も見ているということでございます。

山田委員 現地で何の確認をするわけですか。

中川政府参考人 例えばの例で申し上げますけれども、AMSの品質制度証明プログラムを利用することによって、いろいろなアメリカ側の規制について日本側から要求される条件を満たすことを証明することができるというふうなことが七月の報告書の中に書かれております。そういったことにつきまして、現地の実態も調べるという意味で現地に行っているということでございます。

山田委員 岩永副大臣、前から農水の理事でずっと一緒でしたが、今お話をずっとお聞きになっていたと思いますけれども、農水省として、今BSEの問題は非常に大事な時期を迎えているわけですが、副大臣自身としては、アメリカからの輸入牛肉の再開についてはどういうお考えですか、簡単に一言お答えいただければ。

岩永副大臣 大臣もお答えになっておられますように、国内の安全委員会の措置をきちっとやはり確立する、そして、その措置がはっきり決まったら国内と同じレベルでのアメリカの措置を求める、こういうことでございますので、早く安全委員会の結論を出していきたい、こういうように私は思っております。そして、日本と同じレベルでの対応がアメリカにおいてもされたい、こういうように思っております。

山田委員 大臣、島村大臣にちょっと別の質問なんですが、私の用意した資料の十、それから十二を見ていただきたい。

 いわゆる月齢別で、二十カ月齢で切った場合と切っていない場合の費用です、コスト。コストは、日本は三十億かかるうちのわずかに二億しか変わらない。ところが、二十カ月齢以下で切ると、アメリカの牛の二十カ月齢、若齢肥育ですから、私もアメリカに行って見てきましたが、ほとんどが十八カ月から十九カ月です、もちろん個体識別もできない、それで入ってくるわけですね。そうなると、日本では何もここでわずかこれだけの費用の節約のためにやる必要はない。

 むしろ、屠場関係者に、私、屠場に行っていろいろ聞いたら、今全部をやっているから、二十カ月齢以下を分けてやるとなれば、ソフトも組みかえなきゃいけないし、別の仕分け場所を設けなきゃいけない、そういう意味では、日本の場合かえってコストがかかる、屠場関係者はそう言っている。

 しかも、各都道府県で国がそうしても従うのはわずか七府県。私の出身地の長崎県は、国に従うだろう、そういうふうに言っているわけですが、事実は、実際には、つい二十八日に県の農政連が、全頭検査を幾ら国が何と言おうと続けるべきだ、そして知事も、先ほど、県議会で、長崎県は全頭検査を続ける、そうはっきり表明している。各都道府県、かなりそういう声が高い。これをよく考えて、二十カ月齢以下で切るか切らないか。もしこれで切るとしたら、恐らく、全頭検査をやめてやるとしたら、これは大変なことに、いわゆるアメリカの輸入牛肉再開のためにそうなるんだ、そうとられざるを得ないということ、これをよく考えていただきたい、そう思います。

 さらに、私はアメリカに実際調査団として行ってきたのですが、僕はペン次官にはっきり言ったんです。アメリカのBSE検査はなってないじゃないか、ルーズじゃないか、ほとんど検査がなされていないじゃないか、これで準清浄国だと、とんでもないと。かなり激しい言い合いになったんです。

 この資料十三を見ていただきたい。これでいくと、米は危険牛の七六%は未検査。UPIのスティーブ・ミッチェル記者とか、いろいろな話を聞きましたら、実際に検査した二〇〇三年、二〇〇二年の二万頭のうちの五百頭については結果が記載されていなかった、そんな話もあります。そしてさらに、米施設のBSE検査頭数、これはつい最近、二〇〇四年の七月二十一日ですが、七週で二百八十八頭のみ。ペン次官は、これから二十七万頭、今検査しているとか言っていましたが、とんでもない話です。事実に反する。

 そして、アメリカのタイソンという、いわゆるパッカー、日本に食肉を輸出するパッカー、そこのパスコ工場、ここの工場は、ペン次官から私は幾ら電話してもらっても、私ども調査団に見せてくれなかった。このパッカーそのものが、吸引もしないで背割りをし、HACCPがなされていないと、そこの委員長が日本の農水省に来て記者会見している。

 いわゆる検査機関、チェック機関もない。もちろん歯並びで、六カ月の誤差があるのに二十カ月齢か二十一カ月齢か切れるわけもないし、本当に危険部位を除去するかどうか、パッカーを信用するしかない。検査機関もない。日本の農水省がきちんと検査官を派遣して、そしてこれは安全だ、検査しているという食肉以外は絶対に輸入してはいけないということ、これが食の安全であり安心であるということを、私、もう時間が来ましたので大臣に申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、楢崎欣弥君。

楢崎委員 民主党最後のバッター、楢崎です。

 島村大臣におかれましては、再度にわたる農林水産大臣御就任ということで、まずはお祝いを申し上げます。大臣は、農林水産政策に精通しておられる方ですから、でき得る限り自分のお考えを、つまり生の声を聞かせていただくことを期待申し上げます。

 期待はしますけれども、早速大臣は言わずもがなの発言をされておられるようですね。大臣は就任記者会見で、我が党のマニフェストについて、政権をとれるという環境もないのにマニフェストと言うのは、まず、おこがましいと思っていたと。何ですか、これは。マニフェストというのは、政権をとればこういう政策を実現しますという政権公約であって、責任ある政党として政権公約を国民に示すことは当然ではないですか。何がおこがましいのですか。

島村国務大臣 まずもって、お祝いをいただきまして、感謝申し上げます。

 私自身が申したのは、やはり、政権を担うとなれば、当然に、議会制民主主義ですから、国会内のいわば数の背景を持たなければ円滑な政治が行えません。そういう意味では、現有の勢力では、少しくマニフェストと言うにはほど遠いのではないか、そういう意味が一つありました。

 いま一つは、かつて私は、民主党の方に、社会党や共産党とも一緒になって政権をつくるんですかと伺った際に、とんでもないと、大変な声で否定をされたわけですが、その後またこれが、視野に入れるというようなお話も実はございました。

 そういうことごとがあるので、やはり政権構想等もしっかりしない段階で、いわばマニフェストと言うのはおこがましい、そういう意味で言ったので、いささか言葉足らずだったかもしれませんが、私の率直な感想を述べたということでございます。

楢崎委員 大臣のような発言をされる方がおられる限り、次期総選挙において政権交代の環境がますます醸成されていく、そのことを申し述べておきます。

 きょうは、まず台風関連についてお伺いいたします。

 昨日二十二号が発生をいたしました。上陸数も過去の記録を上回るものになっています。亡くなられました方々には、改めまして御冥福をお祈り申し上げたいと思います。また、けがをされた方々、被災に遭われた方々には、心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 先週上陸しました二十一号、この被害については今調査中だと思いますけれども、これまで、最新で結構ですので、わかる範囲内での農林水産業関連の被害状況、被害総額を教えていただけますか。

須賀田政府参考人 本年七月中旬に、梅雨前線の豪雨がございました。引き続きまして、台風の上陸が相次ぎました。農林水産業は大きな被害を受けているわけでございます。

 農作物被害、ことしは水稲の潮風害というような特徴のある被害もございました。それから、農地、農業用施設の被害、林地、林道、漁港への被害、昨日現在で、合わせまして四千三百二十九億という状況になっているところでございます。

楢崎委員 これは、例年に比較すればどういう状況ですか。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

須賀田政府参考人 先ほど先生も申されました、まず台風の上陸個数でございます。これまでは、観測史上最高が六個、六つでございました、平成二年と平成五年でございますけれども。現時点で既に八つの上陸を見ておるわけでございます。過去最高でございます。

 そして、先ほど申し上げました台風被害だけでも約四千億、梅雨前線豪雨を除きました台風被害でも約四千億でございます。これは、近年では平成三年の、物すごい風台風でございましたが、台風十九号というのがございました。あのときの被害が六千八百億円程度でございまして、それに次ぐ被害でございます。

楢崎委員 被害補償といいますか、被害補償対応についてはどのようにお考えでしょうか。

須賀田政府参考人 被害を受けた方々への補償のための制度といたしまして、農業災害補償制度、いわゆる農業共済がございます。水稲、果樹、畑作物、園芸施設、家畜と、農業共済の対象になっているわけでございまして、現在、被害圃場で損害評価というものを実施しているわけでございます。私どもとしては、できるだけ迅速に損害評価をいたしまして、共済金の早期支払いが可能となるよう指導をしているところでございます。

 特に、水稲の共済金は年末までにいろいろな決済にも使われるというような実態を考慮いたしまして、できるだけ年内にお支払いができるようにしたいというふうに思っているところでございます。

楢崎委員 共済対応ということでしょうけれども、被害を受けた各自治体も、これだけ続けて被害を受けますと当初予算では処理できませんから、当然、補正を組まざるを得ない厳しい財政状況になっているわけですね。

 そこで、天災融資法等の実効ある適用が被害自治体から要請されておるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

須賀田政府参考人 台風が相次いで上陸をいたしまして被害が重なってきたという状況がございまして、多くの自治体から天災融資法の発動についての要請を受けているところでございます。

楢崎委員 財政的なものを含むしっかりした支援体制を組んでいただいて、迅速に処理していただきますよう強く要請をしておきます。

 次に、有明海関連についてお伺いしますけれども、御案内のように、八月二十六日、国営諫早湾土地改良事業、いわゆる諫早湾干拓事業ですね、この大規模公共事業を裁判所の仮処分命令で差しとめるという我が国初めての判断が示されました。一度始めたらとまらない公共事業の典型と言われ、また国が威信をかけて進めてきた大型公共事業に、完成間近でも待ったをかけるという画期的な決定であると同時に、このことはまさに農林水産省が、みずから設置したノリ対策第三者委員会の提言を無視し、さらには、被害を訴え、開門調査を求める漁民の声をも無視する形で工事を強行してきた、そういう、私に言わせれば背信的な姿勢が厳しく断罪されたことにほかならないと思うんですね。

 まず、大臣はそういう認識をお持ちですか。

島村国務大臣 農林水産省といたしましては、かつて私は六年前に農林水産大臣の責務を負っておりましたが、その当時から、いわば県、市町村あるいは漁連など関係の者に説明をかなり徹底したつもりでありますし、現在もそれが行われております。その間、知事やあるいは市長やその他のいわば公的な機関から何遍も感謝状を受け取っておるわけでありまして、このこと自身が県民あるいは国全体の立場から見て本当に好ましくない、あるいは疑義を持つものであるならば、当然に中止をしてきたところであります。

 私も、これは野党の方からも御指摘があったので随分うるさく何遍もこのことのチェックをした経験がありますが、依然として、このことはやはり必要であるという判断がどうも常識的なように伺っております。

 そういう意味で、平成十二年にはノリの不作の問題が起きて、これが諫早湾の干拓の影響ではないか、こんな御指摘がありましたが、このときにもノリ不作等第三者委員会を設置して、その見解を踏まえて、平成十四年から短期開門調査を含む開門総合調査あるいは関係省庁と連携した各種の調査を実施したところであります。

 中長期開門調査につきましては、開門総合調査の結果やあるいは中・長期開門調査検討会議の報告、専門家や漁業関係者の意見などを総合的に検討し、中長期開門調査にかわる新たな取り組みによって有明海の再生への道を明らかにするとの判断を本年五月に行ったところでありまして、これらの姿勢からして、私は、決して不誠実な、あるいは地域住民や関係の方々の意思を全く無視した、ためにする、あるいは一度始めたからやめない、こういう高圧的な、不遜な姿勢でこういうことを行うという考えは持っておりません。

楢崎委員 なぜ私がそういうことを言うかということはこれから申し述べていきますけれども、やはり国の手法そのものにこの決定は猛省を促しているんですね。そのことをまず認識していただきたい、このように思います。

 亀井前大臣は常々、漁民の不安を払拭しなくてはいけない、漁業者が期待している再生への道筋を明らかにするために何をすべきかと言ってこられたんですね。ここまではいいんですよ、そのとおりなんですよ。ところが、その答えは、漁業者の期待に反する、開門調査はやらないという見送り決定だったんですね。しかし、そこのところも佐賀地裁は、ノリ対策委員会の見解を評価する中で、そういう前大臣の見送り決定に批判的な決定を出したんですよ。

 島村大臣は、九月二十八日、インタビューに対して、この開門調査に関しては亀井さんの判断でいいと発言されているようですけれども、やはり、この決定を真摯に受けとめて、もう少し慎重に発言されるべきではないんですか。

島村国務大臣 六年間、私は、ある意味では多少部外者の立場にあったわけでありますが、しかし、その間にも、諫早干拓となると、自分自身が大臣在任中に手がけたことでもありますから、新聞その他の報道については、かなり気をとめて、関心を持ってまいりました。そういうことからして、なるほど佐賀地裁より仮処分の決定がなされたわけでありますけれども、国としてこれは認めがたいという内容であるために、異議申し立てを行っていることは御存じのとおりであります。

 なお、その理由を具体的に申し上げますと、差しとめられた工事でありますが、債権者らの漁業行使権に何らの影響も与えないこと、第二に、漁業被害と事業の因果関係を認める科学的根拠が存在しないこと、三、同種事件において福岡地方裁判所の決定は国の主張を全面的に認め、同決定は確定していることなどがあるわけであります。

 なお、少しく踏み込んでよろしいですか。

 平成十二年のノリ不作を契機として、有明海の漁業者の方々が漁業環境の変化に大きな不安を抱いておられることを承知しておりますので、有明海の豊かな海としての再生に取り組むことが喫緊の課題である、我々は、このことにはかなり神経を使っておるところです。

 このために、平成十四年度に施行された有明海・八代海特措法に基づきまして、その趣旨に沿って有明海再生のための新たな取り組みに今全力を尽くしているところでありますので、御理解をいただきたいと思います。

楢崎委員 今発言されましたことについては、後ほど反論させていただきます。

 では、大臣は、諫早干拓事業にかかわる長崎県関係者以外の他の三県、熊本、佐賀、福岡、それに各界各層、またマスコミも含めて、今回の佐賀地裁の決定というのは意外と高く評価されているんですね。そういう事実はどう受けとめておられますか。

島村国務大臣 その趣旨に非常に喜んでおられる向きもあるやには聞いておりますが、一方では、これは間違いであるという判断をしている方たちもおられるわけでありまして、いわば国として異議申し立てを行うというのは、十分その論理的な背景を持って行っていることでありますから、御理解をいただきたいと思います。

 なお、開門調査を受けないというのは、それを行うことによって急激な潮の流れが起きて、いわば海底がめくられるように攪拌されたり何かして、そのための被害、全く予測できないような被害の方がかえっていろいろ憂慮されるというようなことごとも我々は確認をした上で、これに対してお受けしていないということであります。

楢崎委員 そのことも後で反論させていただきます。

 それで、大方の皆さんは喜んでおられるんですね、今度の決定を。やはり開門調査によって、大臣、干潟を含む有明海の生態系が回復するのかどうか、また潮流、潮汐がどう変化するのか、はっきりするじゃないですか。その上で因果関係がないとはっきりすれば、堂々と干拓工事を完成させればいいんじゃないですか。なぜ、開門調査をやらないと今大臣は言い切れるんですか。

島村国務大臣 いわば差しとめられた工事につきましてですが、債権者らの漁業行使権に何ら影響も与えないということが第一点。それから、漁業被害と事業の因果関係を認める科学的根拠が存在しない、これは先ほど申し上げたとおりであります。また第三に、同種事件において福岡地方裁判所は全く異なる判断をしているということ等を考えまして、我々は決して、惰性でこのことに取り組んでいる考えは毛頭ございません。

楢崎委員 私は先日も言いましたように、先ほど大臣は開門後のことを言われましたけれども、何よりも漁民の皆さんは、海の再生力、これを信じて、開門後四、五年に及ぶ被害を既に覚悟してあるんですね。それを承知の上で皆さんは開門調査を求めておられるんですよ。

 実は、開門調査をやればその間工事をストップしなくてはいけない、そのことのためだけに開門調査をやらないんじゃないですか。

川村政府参考人 お答え申し上げます。

 中長期開門調査の関係でございますが、この関係につきましては、ただいま大臣もお答えしたとおりでございますけれども、私どもとして、中・長期開門調査検討会議での検討を踏まえまして検討したわけでございますが、一つは、周辺への影響を検討し、被害防止対策を行うということがございまして、この調査にはかなり長い年月を必要とするということがまず一点ございます。

 それから、短期の開門調査をやったわけでございますし、それとあわせて補足調査をやっております。これを総合しまして開門総合調査と言っておりますけれども、この開門総合調査によりますと、影響はほぼ諫早湾内にとどまっているという結果もございます。そして、この中長期開門調査を行ったとしても、どのような成果が得られるか必ずしも明らかでないということが二点目でございます。

 そして、三点目といたしましては、十分な対策を仮に講じたとしても、予期せぬ被害が生じるという可能性を否定できない。

 こういうことがございまして、むしろ、こういった中長期開門をやるよりも、平成十六年度から取り組んでおりますけれども、有明海の環境変化のさらなる解明のための調査、これが一つございます。それから、できるだけ早期に効果が発現できるような現地での実証事業等ができないかというのが二点目でございます。それから、漁民の方々が問題にされております調整池からの排水、これにつきましても抜本的な改善をする、以上三点で有明海再生への道筋を明らかにしていく方が適切であるということの判断を五月にしたところでございます。

楢崎委員 そうじゃないんじゃないですか。

 農林水産省が、〇六年度の工事完成のために、今まで聞く耳を持たずで工事を強行されてきた。それは、事業再評価、いわゆる時のアセスとの絡みがあるからじゃないかと私は思うんですね。つまり、二〇〇七年三月末までに工事を完了させる見込みが立たない場合は、二〇〇六年四月から作業が開始される再評価対象事業に含まれるのではないか。つまり、時のアセスによって工事が中止もしくは休止に追い込まれることを恐れたから開門調査をやらないんじゃないですか。

川村政府参考人 この諫早湾の干拓事業につきましては、既に平成十三年度に事業の再評価を行っておりまして、平成十四年度に計画変更をしたところでございます。その際、効果の早期発現ということで、事業の目的でございます防災機能の十全の発揮、それから、既に造成が進んでおります農地の早期の利用を図るということで、工事の工程をつぶさに検討いたしまして、平成十八年度に事業完了になるということで計画変更をし、現在はこの計画に基づいて事業の実施をしてきた、こういうことでございます。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

楢崎委員 私はずっと以前に、もう費用対効果が一を切っていると指摘しました。農林水産省は、今言われるように、事業開始後の規模を修正したためで、事業自体に問題はないと言われますけれども、〇・八三という数値が物語るように、これはやはり土地改良事業法違反ともいうべき欠陥事業である、私はそのことを改めて強く指摘しておきたいと思います。

 それから、農林水産省は、八月三十一日に、佐賀地裁にこの決定に対する異議申し立てをされましたね。そのときの書面に理由は記載されていなくて、被害漁民のことよりも役所のメンツを重んじた場当たり的な行為と私の目には映ったんですけれども、同日、亀井前大臣は記者会見で、その理由として、今島村大臣が言われたようなことを言われたんですね、もう改めて言いませんけれども。川村局長も同様の発言をされておる。改めて島村大臣は、就任記者会見でも、福岡ではまた別の判断が示されているというようなことも言われております。九月二十四日になって初めてその異議の理由書が提出されたわけですけれども、専門用語が羅列されていますけれども、精神的には同じものですね。

 そこで、島村大臣も福岡裁判のことを言われておられますから言っておきますけれども、農林水産省は、その福岡地裁の決定をわざわざ佐賀地裁に証拠として挙げて、るる論陣を張ってこられたんですよ。佐賀地裁の決定というのは、そういう福岡での判決をも踏まえた上での決定なんですよ。

 それから、完了間近の工事をとめても漁業権に何ら影響を与えないと言われますけれども、まず、すべてを無視して今日まで工事を強行してきた、その手法が決定書で批判をされている。仮処分の審尋の中でも農林水産省は主張に時間をかけられて、二年間という長い時間がかかったんですよ。それで、その間も工事は強行されてきたわけですね。ですから、そういうあなたたちに、完了間近とか言って、進捗率云々のことを言ってほしくないですね、私は。

 保全の必要性がないということについても、この決定書は、諫干工事が漁業被害と関連している、つまり、漁業権を奪ったと判断した上で、漁業被害は深刻であり、完成した部分も含めて事業全体をさまざまな点から精緻に再検討し、その必要性に応じた修正を施すことが肝要と明快に指摘されておるわけですよ。

 次に、漁業被害と諫早干拓工事の因果関係についても、佐賀地裁の決定は、漁民の多くが潮の流れが弱まったと実感しており、事業後、諫早湾外の有明海潮流に変化が見られるとの実測データも得られているとして、やはり一定の因果関係を認めている。さらに、農林水産省が設置されました先ほどのノリ対策委員会の指摘、つまり、事業は有明海の潮流に変化を与え、諫早湾の締め切りによる干潟喪失は湾奥部での環境悪化の進展と無関係ではないという見解、これを農林水産省が無視していることを指摘した上で、法的因果関係の疎明はあるとしているんですね。

 これからが川村局長に対する質問なんですが、さらに大事なことは、審尋の中で国が、干拓工事が異変をもたらしたと断定する証拠はないと主張したのに対して、裁判長から、消極的根拠ではなく積極的根拠を示してほしいと要求されたのではないですか。つまり、因果関係の立証を国側に求めているんですね。立証責任を今、国は負わされているんですよ。だから、決定書ではノリ対策委員会の提言を無視したことが批判されているのではないですか。このことについて、川村局長はどのようにお考えですか。

川村政府参考人 この仮処分で工事の差しとめがなされたわけでございますが、この工事と仮処分の債権者らの漁業の関係の被害、この関係での判断は、この仮処分命令の中で一切なされておりません。そういうことでも、そういう意味での、我が方として認めがたい点もあるわけでございます。

 そして、今御指摘の有明海の環境の変化と諫早湾干拓事業との因果関係でございます。私ども農林省といたしましては、ノリ不作等第三者委員会の見解も踏まえまして、既に短期開門調査を含む開門総合調査を実施いたしまして、これも先ほど申し上げましたけれども、干拓事業による影響はほぼ諫早湾内にとどまっているという結果がその後、この有明ノリ対策委員会の後に出ているわけでございます。佐賀地裁のこの仮処分決定におきましては、これらのその後の科学的な調査結果について、何ら吟味することなく、排斥をしておられるわけでございまして、この点、我が方として極めて承服しがたいということが一つあるわけでございます。

 ただ、この有明海のいろいろな事象、異変というものがございますので、この原因究明ということで我々も最大限の努力をしたいということで、五月の大臣判断のときにも示したように、環境変化の仕組みのさらなる解明のために全力で取り組むということでございます。

 具体的には、関係省庁と連携をいたしまして、貧酸素現象に関する調査でありますとか、それから漁業者の実感ということも漁業者の方が言われておりますので、漁業者の協力を得て行います底質の環境調査、それからまた漁業者の方々が特に問題にされております調整池からの排水、これの拡散の調査、それからまた干潟の問題もございますが、干潟の水質浄化の機能調査、それから海域状況のモニタリング調査ということを今後精力的に行うということにしておりまして、これらの科学的な調査によりまして、有明海の環境変化がどういう要因で起こったのかということを明らかにするよう努めていきたいということでございます。

楢崎委員 今の再生に関する件については、きょうは時間がありませんから、私、次の機会にゆっくりやらせていただきますけれども、この因果関係については、私は、公害等調整委員会の裁定によって、いずれ最後の引導が皆さん方に渡されるということを申し述べておきます。

 そこで、農林水産省は、この異議申し立ての理由書と同時に、仮処分執行停止申し立て書を提出してありますね。この中で、事業の完成が〇六年度から一年間おくれた場合の農業生産で四十五億円の経済損失が発生するとしておられるようですけれども、この四十五億円の算出根拠、後で結構ですから、私にペーパーとして渡していただけますか。うなずくだけで結構です。いいですね。

 時間がありませんので、きょうは佐賀地裁の工事差しとめ仮処分決定に関連して伺いましたけれども、やはり今回の決定というのは、損害の賠償よりも損害の抑止に重点を置いた決定だと私は思うんですね。近いうちに今言いました公害等調整委員会の裁定も下されましょうし、国は、今回の決定をやはり誠実に受けとめて、速やかに開門調査を実施されますことを強く要請しておきます。

 次に、BSE問題について、私も二、三点お伺いしたいと思います。

 きょうは主にBSE関連についての質疑が重点的に行われました。やはり、科学的な安全性と消費者の安全性をどう調整するかということだろうと思うんですね。先ほど山田委員の質問にもありましたように、あえて二十カ月という月齢がなぜあの中間とりまとめの中に出てきたのか。先ほどの山田委員との質疑のやりとりを聞いても、やはり日米交渉を念頭に置いた他の省庁から圧力が食品安全委員会の中にかかったのではないかという疑念を私は捨て切れないということをまず申し述べておきます。

 そこで、消費者心理といいますか、そういうことを念頭に置いてお伺いしますけれども、我が国では、一番若いもので二十一カ月、感染牛が発見されていたわけですね。青山学院大学の福岡伸一さんという教授は、二十一カ月で検出された牛は仮に十九カ月のときに検査していても陽性だったはずと疑問符を投げかけておられるわけですけれども、こういう考え方についてはどうとらえておられますでしょうか。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 二十一カ月齢の若齢のBSE感染牛でございますが、これはウエスタンブロット法で調べた結果、延髄のかんぬき部に含まれる異常プリオンたんぱく質の量というのが、再三申し上げておるわけでございますが、我が国で確認されましたその他のBSE感染例に比べますと少なくて、五百分の一なり千分の一の程度の量であった、そういうふうに推定されておるわけでございます。したがいまして、これは要するに、検出の感度からいたしますとかなり難しいものを見つけているということになろうかと思うわけでございます。

 そういうこともございまして、このBSEの感染牛が十九カ月齢の時点で検査で陽性になるかどうかということについては、これは検査をやっていないわけですから、これについて確定的なことを申し上げることは難しいわけですけれども、中間とりまとめの議論の中におきましても、二十カ月齢以下の感染牛を現在の検出感度の検査法で発見することは困難である、そういう議論がされているということでございます。

楢崎委員 総体的に若い牛は異常プリオンの蓄積量が少なくて、たとえ感染していても確認できないということでしょうけれども、それでは、全頭検査をやめれば、たとえSRMの処置はされていても感染牛であったかもしれない肉が市場に出ることは否定できないのではないか。これは、私と同じ考えを持つ消費者、つまり、そういう消費者心理が新たな肉離れにつながっていくのではないかと心配しますから、あえて申し述べておきます。

 今、食品安全委員会が注目される中で、消費者の皆さんが不信感を持っておられるのは、純粋なBSE対策見直し問題が、いつの間にかアメリカとの輸入再開問題にすりかわっているのではないかということなんですね。ですから、このような不信感を払拭するためにも、日米交渉の主導権はあくまでも我が方にあるという姿勢を示し続けていただきたいと思います。

 最後に、高木委員長におかれましては、この委員会が最後の委員会に、お務めになるのではないかと思いますけれども、長い間どうも御苦労さまでした。

 では、終わります。

高木委員長 次に、白保台一君。

白保委員 きょうは、新たに就任をされました島村大臣、そしてまた岩永副大臣、大口大臣政務官、早々に委員会での答弁をなされております。我が国農政、大変大きな転換点、ただいま議論をされておりますBSEの問題、そしてまた食料・農業・農村基本計画の見直しの問題等、そしてまた三位一体論で補助金削減の問題とか、さまざまに課題を抱えておる、そういう状況の中での御就任でございますが、ぜひしっかりと取り組みをされて、安定した農政を築くために頑張っていただきたい、まず期待を申し上げて、質問に入りたいと思います。

 さて、大臣は、就任に当たって総理からの指示は、一番目には農業の構造改革や規制緩和、そして二番目は食の安全確保だ、こういうことを言われたというふうに伺っております。よろしいでしょうか。

島村国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

白保委員 今のお答えにもありましたように、きょう議論されておりますBSEへの対応というのは、まさに国民の食の安全、安心という大きなテーマであって、この二番目に当たる問題であろう、こういうふうに思います。

 大臣は、国内対策、検査基準の早期見直し、朝からずっとそのことが議論なされておりますが、あるいは、その決着時期の先延ばしは政治の怠慢であり、可能な限り早く結論を出したいという発言をされていらっしゃるようです。このことについて、米国産牛肉の輸入再開を積極的に図られるというふうにこれは受けとめられているわけですけれども、このような発言については、どうしてそんな発言になったのかな、こう思っておるんですが、御答弁をいただけますか。

島村国務大臣 さきの日米首脳会談でできるだけ早期にこの見通しを立てるというお互いの話し合いがあったことも当然あるわけでありますが、私は、先ほど来再三申し上げておりますように、アメリカに追随したり、アメリカに迎合してこちらの安全性を放棄する、こういうばかなことは全く考えておりません。そういう意味では、国内措置の見直しにつきましても、食品安全委員会の中間とりまとめ、九月九日に出していただきましたが、これらを参考にしながら、消費者等関係者の御意見もよく承って、厚生労働省とも検討の上、一つの見直しをしたいと考えているところです。

 また、米国産の牛肉の輸入再開について、私は、何が何でもとか、やみくもにどうこうなんというのは毛頭考えておりません。御指摘がありましたように、まさに可能な範囲においてやるということですから、すべてのことを凌駕した上でこれを通したいと思っております。

 ただ、この種のことは、一切合財危険に近づかない、こういう感覚であることが果たしていかがなものかと。それは、危険を冒すという意味ではございませんで、要は、私たちは可能な限り科学的、専門的な解明を行う中にいわばこの隘路を打開していくというのが我々のとるべき道なのではないか、こう考えます。私は、その意味で、消費者の食の安全、安心、これは総理が何遍も口にされていることでもありますから、よくその点は踏まえて、当然に農林水産省の責任者として厚生労働省ともよく連携をとっていきたい、こう考えております。

白保委員 BSEの発生以来、私たちは、要するに消費者重視、農政も生産者重視から消費者重視、こういうふうにぐっとスタンスを変えてきた。それは、消費者を重視して、消費者が安全だと確信して、安心してこれを消費できるから初めて生産者も一層よくなるわけで、そういった面では、消費者の考えていることは非常に大事なことなんです。そういうふうにまた農政もこういった方向に今してきているわけでありまして、そういう面ではぜひ、今、八日あたりに国内基準の見直しということがあるんじゃないかという報道がなされたりなどしますと、国民の中からは、生産者、消費者双方から既に、安全ということを軽視しないでほしい、そしてまた根強く全頭検査継続を望むといった声が相次いでおりますよ。ですから、消費者重視、国内生産者重視でしっかりとした対応をしていかなきゃならない、こういうふうに思っているわけであります。

 大臣の御発言の背景には、先ほどもお話がございましたが、先日の日米首脳会談での総理とブッシュ大統領のやりとりが念頭にあるんじゃないか、こういうふうにも思います。確かに、今回、米国産牛肉輸入の早期再開を目指すということで合意した、こういうことが言われてはいますけれども、現時点では、この問題に日米両国首脳が言及するとなればこのような表現しかとれなかったのかなというようなことも思います。

 ところで、日米首脳会談に向けて、我が国の食品安全委員会がBSE全頭検査から転換し、生後二十カ月以下の若い牛を検査対象から外すことを事実上容認する報告をまとめ、米側も歩み寄る形を示した、こういうようなことを報じられたわけであります。しかし、米国が、生後二十カ月以下の牛を特定する手段として肉質、これで判断するというので、日本側は拒否をして、そして交渉が暗礁に乗り上げてしまった。それは日本の消費者の安全に対する意識からすれば耐えられない話ですから。米国も、日本とはけた違いの頭数を抱えて、出荷の九割は国内向けということで、新たな負担がかさむ日本の輸入条件というものについては容易に従えない、こういう事情があるのも事実だと思います。

 こういった中で、牛の個体識別が、要するに向こうの方が整わなければ、月齢も客観的に判断できない、こういうわけですから、そういう面で事態がいつ打開されるのかわからない難しい現状は承知しておりますけれども、今後の日米交渉、こういったものをどういうふうに進めていくのか、先ほども出ておりましたが、改めてその御所見を伺っていきたい、こういうふうに思います。

島村国務大臣 先生も私も同じことを考えているわけなんです。要は、牛肉の輸入は早期にしたいけれども、我々が最も念頭に置かなきゃいけないのは食の安全、安心、この歴史を築いて、信頼を土台に置いた、いわばこの理念の利用がまず行われなきゃいけない。これをもし、先ほどせいては事をし損ずると申しましたけれども、いっときの行為で道を開いたら、今度米国産におかしなものが出たということになったら米国の牛肉関係は壊滅状態になるし、国際的な信用は一気に失いますし、また国内的には、私たち自身もまた、これは本当に目に見えないものだけに、無責任なことをやれば責任のとりようがないということになるわけでございますから、それらについては十分考えてやっていくことは事実でございます。

 しかし、さはさりながら、それでは危ないものは一切合財どうのこうのということで逃げておったら、今、牛肉の値段も現に高どまりしておりますし、いろいろな問題がありますから、我々はあくまで専門的、科学的にこの問題を調査して、どういうことならいいのか、その上で結論を出す。ただ、要するに、重心が後ろにあるのか、前にあるのかといえば、私は性格的には前にある人間かもしれませんけれども、そこつな判断をしようとは決して思っていませんので、御理解をいただきたいと思います。

白保委員 アメリカのBSEの検査について伺っていきたいと思います。

 アメリカは、BSEの暫定清浄国、こういうふうに自認をしているわけです。これは、本来はBSE検査体制自体に問題があるということが指摘されています。アメリカのベネマン農務長官は、二〇〇三年にOIEが求める検査頭数の四十七倍に当たる二万五百四十三頭を調べたことで米国の監視体制に自信を見せている、こういうふうに言われています。

 しかしながら、米国が検査した牛はほとんどへたり牛で、OIEの求める検査頭数の最低限しか調べていないといったことになっています。へたり牛は、ほとんどが関節炎や病気、事故が原因で、感染牛が見つかる確率は疑わしい牛の百分の一だというふうにされています。米国は、OIE基準を大幅に上回る検査で自国産の感染牛が見つからないことは、暫定清浄国の根拠とは言えないんじゃないか、こういうふうに私どもは思うわけであります。

 また、大量の牛を流れ作業で屠畜する体制にも、食肉処理場で疑わしい牛を見つけられないんじゃないかという指摘もあるわけであります。アメリカのBSE検査のあり方に問題があったことを七月に行われた日米協議専門家会合で米国側が認めたというふうにも言われています。

 アメリカがどこまで検査体制を改善し対策強化を図っているのか、これを確認されているのかということを私は伺いたいと思うんです。確認されているかどうかという問題。また、交渉において検査体制について踏み込んだ話し合いをしてもらいたいと思うんですけれども、その辺の御所見。確認の問題と御所見を伺いたいと思います。

中川政府参考人 七月の二十二日に取りまとめられました第三回の日米ワーキンググループ会合での報告書によりますと、その中で、アメリカが現在行っておりますサーベイランスのあり方についても引き続き協議をしていく、検討していくということが述べられております。

 現実、これまでアメリカは年間二万頭程度でありましたけれども、昨年の十二月にBSEが一頭発見されまして、それ以後、ことしの六月から、一年ないし一年半の間に二十万から二十七万頭の規模で検査を行うというふうに、数字を見ますと、前年に比べますと相当の強化をしているというのは一面事実でありますけれども、こういった二十ないし二十七万頭の牛をどういう形で選んでくるのか。高リスク牛を中心にということでありますけれども、そういったものが農場段階でどういうふうな形で、きちっとサンプリング理論に基づいて行われているのかどうかというふうなあたりは、まだまだいろいろと確認をし、またアメリカ側にその事実関係をきちっと解明するよう要求していく必要があるというふうに思っております。

 そういうことで、このサーベイランスのあり方、それから、アメリカ自身、暫定清浄国というふうに言っておりますけれども、そのことも、既にことしの一月に日本が派遣をしました調査団、あるいはアメリカが招聘をしました国際調査団におきましても、カナダとアメリカのBSEの汚染の状況は同じ程度であるというふうなことも言っておりますし、アメリカが言うように暫定清浄国と確認できる状況にはないというふうに思っております。

白保委員 ですから、しっかりとした確認がなされていない、そしてまた検査体制の問題についても踏み込んだ話し合いをしてしっかりとしていかなければ、これは我が国国内の消費者は安心できない、こういうことを強く申し上げて、しっかりとその取り組みをしていただきたい、こういうふうに思います。

 そこで、EUの諸国が、ここにまいりまして、出荷する健康牛について三十カ月齢以上の検査で足並みをそろえ始めたと言われています。フランスは検査見直しを七月から三十カ月齢以上に引き上げ、ドイツも来年一月の追随を検討している、こういうふうに言われているわけです。EU諸国で見つかった四十八カ月齢以下のBSE感染牛のうち最も若い牛が二十八カ月齢だったことを理由に、フランスは二十四カ月齢以上の検査対象を三十カ月齢以上、そしてまた検査対象頭数は、二〇〇一年が八百五十一万頭、二年が千四十二万頭の健康牛、ただし感染が疑わしい牛などはほとんどの国が二十四カ月齢以上を調べている。

 このような流れの中で、アメリカも、三十カ月齢を基本にしつつ、二十四カ月齢の線引きを非公式に日本側に打診をしていると聞いております。仮にこのような線引きを受け入れるようなことがあったならば、二十カ月齢で線引きした食品安全委員会は何だったのかということになるわけでありますから、我が国の食品安全行政そのものが信頼を失墜することになってしまいます。

 我が国は国内と同一基準の規制が輸入再開の条件としているわけですが、もしそれを変えるということになると、これは大変なことです。ですから、それは消費者の声というのが一番大事で、もう一つはまた科学的な知見というものが大事で、そして米国が本当に保証ができるという、こういったことがない限りは、これは条件は変えられない、こういうふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

中川政府参考人 BSEに関します国内措置の見直しにつきましては、先ほどからお答え申し上げておりますけれども、食品安全委員会の中間とりまとめを受けて、これをベースにリスクコミュニケーションしながら、厚生労働省と私ども農林水産省で今慎重に見直しの検討をしているところでございます。

 アメリカあるいはEUのいろいろな動きがございますけれども、日本におきましては、これは食品安全委員会が昨年七月に設立されまして、ここで科学的な知見に基づいてきちっとしたリスク評価を行うという新しい食品安全行政の一つの仕組みができたわけでございます。食品安全委員会でのリスク評価の結果を受けて、我々リスク管理官庁とすれば、きちっとした対応を行っていく、この基本的考え方をきちっと守ってやっていきたいと思っております。

白保委員 私たちがここまで積み上げてきた過程の中で、BSE発生以来、畜産農家も大変な思いをして、一たんは大変な、価格が暴落したり、いろいろなことがあって、それをどう食の信頼を回復していくのかということでやっとの思いでここまで積み上げてきた、こういう状況でありますから、我が国食品行政が、やはり国内の消費者が安心して、これは安全だということを信頼を得て、安心してやっていける、そういう形というものをこれからもしっかりと守っていく必要がある、このことを強く申し上げて、次の質問に入りたいと思います。

 さて、ことしは大変台風が多くて、特に私のところは沖縄県ですから、台風の銀座でございまして、ことしは台風と知恵比べをやっていまして、これにぶつかったら飛行機に乗れないとか、これは私のことですけれども、農家は台風が来るたびに、どうやって作物を守るのか、本当に苦労して今日まで来ているわけですね。

 そういった中で、先月末の台風二十一号、これで、私どもの方でいきますと、速報値で、農作物被害は、本島中南部、宮古地域で合わせて八千二百万、基幹作物のサトウキビの被害は全体の四九%、半分に相当する約四千万円がサトウキビです。野菜が一千七百万、花卉が二千百万円となっています。ことしの台風は、私どもの方で被害を受けた分が四号、六号、十三号、十七号、十八号、昨日は十号、十一号の激甚災の指定がありましたけれども、そういった形でもって被害は甚大であります。これを合計しますと、ああいう小さな県で、しかも離島がいっぱいある、島々がある、そういう中で、合計すると四十一億円、こういう損失になっています。

 被災者のみならず地方財政の負担も大変重いものがあって、激甚災害制度などの適用のみならず、法律の枠組みを超えた総合的な対応がなければ対処ができないのではないかというふうに考えるわけです。そして、十号、十一号もありましたし、また十六、十八というのが後に続いておりまして、大変な状況でございますが、せっかく政務官がおいでですから、政務官の地元の方でも被災に遭われましたけれども、地元だけの話じゃなくて、全体の台風、農作物の被害についての対応についてお答えいただきたいと思います。

大口大臣政務官 台風の常襲地域であります、白保議員の災害に対する危機感、特にことしの一連の台風等について非常に危惧されている面、本当に私どもも共有してまいりたいと思うわけでございます。

 そういう中で、一連の台風等によりお亡くなりになった方々が、二十四名の外国の方を含めて百十一名の方がお亡くなりになられた。衷心より哀悼の意を表したいと思います。また、被災された方には、心よりお見舞い申し上げたいと思います。

 七月以降、梅雨前線による豪雨や相次ぐ台風の来襲、計八個ですか、上陸があったところであります。農林水産業関係の被害、農作物、農地、農業用施設、林地、林道、漁港等への被害は、現在把握しているだけで約四千三百億円、こうなっておるわけでございます。

 農林水産省においても、被災された農林漁業者の方々の経営の再建が一刻も早く円滑に図られるよう、関係各県と十分連携を図りつつ、一、災害復旧事業の早期実施、二、共済金の早期支払い、三、低利資金の円滑な融通、四、被害拡大防止のための技術指導等により、災害対策に万全を期してまいりたい所存でございますので、よろしくお願いしたいと思います。

白保委員 ぜひ、今お答えになりました対策を、円滑にというお話がございますが、まさに円滑に運用していただいて、早く結論を出していただきたい。

 昨日は十号、十一号の指定がありましたけれども、その後、十六号、十八号がありまして、その後に二十一号があります。もうそれぞれに皆さん、被災をされて、大変な御苦労をされています。特に十六号、十八号は、十六号で被災された、ビニールハウスなんか全部飛んでしまう、農家の人はみんなまじめですし、また作物を守らなくちゃいけないから、ぱっと張りかえたら、一週間もしないところへ十八号が来て、またはがれていく。これを、十六は十六、十八は十八、こういうふうな形になって、別々にすると小さくなってしまうんです。合わせてしっかりとした、合計をすれば一つの農家でも大きなものになるわけですから。

 その辺のことも早急に御判断をいただいているというふうに思っているんですが、実は、これは県や市町村から上がってこないことには判断できないということで、最終的な被害がどれぐらいあるのかということを今待っているんだというお話もありますが、督励をしていただいて、問題は農家のためにやらなきゃいけない話ですから、そういう面で早く結論が出るように御努力いただきたい、このことを申し上げたいと思います。

 次に入りますが、台風による雨や風が非常に強い、また、ことしは特に上陸する台風が多い、こういうことでありまして、近年の気候変動によるところの傾向にあるんじゃないかというふうに分析する学者もいるわけでありますが、台風というのは毎年来るものとして対策を講じるのが人間の知恵であります。我が沖縄県でも、農水省の野菜産地構造改革の目玉として、パイプを太くして、ワイヤで補強した、そういう低コストの強化型ビニールハウスが、台風に結構威力を発揮しています。産地の体質強化と安全で安心できる国産野菜を安定供給するための輸入急増農作物対応特別対策費等で取り入れたんだというふうに聞いているわけであります。

 私は、このように産地にとって重要な事業、作物を守るための事業は、三位一体で大変な厳しい状況の中にあるわけですけれども、そういう重要な事業については、来年度以降もしっかりと継続をしていく、こういうふうにしていかなければ、また台風に遭って厳しい状況になるのではないか。先ほど申し上げたように、農水省の応援でしっかりとしたビニールハウス等もできれば、その分、きっちりとしたものができ上がるわけですから、守れるわけですから、台風に強い農業づくりも考えていかなきゃいけないんだろう、こういうふうに思っています。

 台風の被害を最小限に抑える技術を活用することは、農作物の安定供給にとって死活問題であって、コスト面で取り入れられない農家があるとすれば、行政が積極的に応援をしていく。このことがまた、外国産との競争に打ちかつことができるわけですから、災害に強い農業施設や技術が導入できるよう、農水省の努力をお願いしたいと思いますが、これについての御所見を伺いたいと思います。

白須政府参考人 ただいまの委員の御指摘でございます。

 お話しのとおり、国産農産物の安定供給というためには、やはり災害に強い農業づくりということが大変重要なことかというふうに考えている次第でございます。

 特に、沖縄は亜熱帯という地域特性があるわけでございまして、サヤインゲンでございますとかあるいはゴーヤー、そういった野菜でございますとか、あるいは菊を中心とした花ということで、大変特色ある農業が展開されておるわけでございますが、お話しのとおり、台風が常襲するというふうなことで、生産環境が非常に不安定でございます。

 あるいはまた、これを五十メートル以上に耐える鉄骨ハウスにしようといたしますと大変コストもかかるということでございますので、私どもといたしましては、例えば沖縄県では、ただいまもお話がございましたが、防風ネットを張りましたいわゆる平張りハウスと言っておりますが、これですと、コストが鉄骨ハウスに比べますと五分の一ぐらいでできるというふうなこともございます。あるいはまた、相当な強風にも耐えることができる。そういった、従来の鉄骨ハウスに比べると価格が安くできる低コスト耐候性ハウスというものの導入も全国的には支援をしてきているわけでございます。

 また、こういった、ただいま申し上げました施設につきましては、今回の台風に対しましてもその性能が発揮されまして、台風にも耐えるというふうなことを報告を受けているわけでございます。

 今後とも、ただいま委員の御指摘もございますが、こういった施設整備を進めまして産地の体質強化を支援するということで、災害に強い農業づくりをしっかりと推進してまいりたいというふうに考えております。

白保委員 最後になりますが、先日、畑作物の価格が決定をいたしました。私どもは、鹿児島県と一緒にサトウキビ価格の決定について取り組んでまいったわけでございますが、年々、生産者価格が下がっていく。そういった中で、助成によって一定の価格を形成して、ことしも何とか再生産可能な、現行どおりの形でもって決定をしたわけであります。

 ただ、私たちも、単に価格を現行どおりにしてもらいたいとそればかりを言っているわけじゃなくて、農家そのものにも、努力をしてコストを下げる、そしてまた大いに努力をして糖度も上げる、そういう努力もしなければならないということもしっかりと督励をしながら、こういう問題も取り組んでいるわけであります。

 それは、実は南西諸島へ行きますと、奄美大島から南の方は、それぞれの島々が、ほかの作物ではなくて、やはり台風だとかあるいはつくりやすいとか、そういった面でサトウキビが最大の基幹作物になっているわけですね。この作物がなくなってしまったならば、その島からみんな出て行ってしまって、農家はいなくなってしまう。そういう面では、島を守っていく、そしてまた国土を保全していく、そういう面からもこの作物というものは守っていかなきゃならない、こういうふうなことを我々は考えているわけでありまして、地理的条件、そしてまた気候の問題、そういった面から、作物の価格決定というのは非常に大事なことだというふうに思っています。

 そこで、最後に大臣に、この南西諸島の今の作物についてのお考え、その位置づけ、こういうことをしっかりとしていかなきゃならないと思いますが、御所見を伺いたいと思います。

島村国務大臣 ことしは台風の当たり年でございまして、各地、被害が非常に大きく出ておりますが、特に沖縄地域は毎回玄関口になっておるわけで、さこそとお察しをしているところであります。特に、営々としてその地で耕作した作物が台風のために一気にやられてしまう、そういう意味では、十分我々は、この厳しい自然条件に打ちかつ作物の一つとして、まさに基幹の作物としてこれをいわば保護していかなきゃいけない、こう考えています。

 先生も御存じのとおり、私、六年前に在任中はたしか七倍ぐらいでしたけれども、現在は八倍から十倍ぐらい国際価格より割高であります。しかし、それを承知で国が何の抵抗もなくこういうことをしていることにも御理解をいただきたいところですが、これからも、今おっしゃったように糖度のより高い、また特に自然環境にさらに強い、いわば優良なサトウキビの生産が可能になるように、その点では、機能性にすぐれたハーベスターの導入とかスプリンクラーの装備などなど、いろいろなものをこれからより強化して、沖縄のその仕事に携わる方々が安んじて仕事ができるような環境づくりをするために、この所管の責任者として頑張っていきたい、こう思っております。どうぞまたよろしくお願いいたします。

白保委員 終わります。

高木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、台風被害についてお伺いをいたします。

 先ほど来、この間の連続した台風被害が四千三百億を超えるということが御報告をされております。まさに、十五号、十六号、十八号と、間隔を置かずに同じようなルートをたどって列島を駆け抜けた、そうした特徴もあったために被害も本当に大きくなっております。秋田、山形、青森と歩き、また、先日の委員派遣では熊本の農業被害も一部見させていただきました。本当に農家の皆さんの御苦労が忍ばれます。

 水稲作付面積の七割で被害を受けた山形県庄内地方の農協の方がこのような言い方をしております。被災農家はこれまで経験したことのない大きな不安に駆られており、離農農家の発生や営農意欲の低下を招くとともに、農業経営、ひいては地域経済に重大な影響を及ぼす深刻なものだと。まさにこの言葉に集約されるのではないかなと思っております。農協の役員さん、市役所の部長さんからこもごも、営農意欲を失わないように支援が欲しいということが訴えられました。農家の皆さんがまず農業をあきらめてしまわないように、国の強い決意がいただきたいと思います。

 そこで、最初の質問です。この間、具体的に各県の皆さんと申し入れをしてきたわけでありますが、天災融資法の発動についてですが、指摘がありましたように、十五、十六、十八などと単独に見るのではなく、個々には被害額が小さくても、災害が連続したために全体としては大きな被害になっている、こういうものをまとめて考えて天災融資法の発動などを検討すべきと思いますが、見解を伺います。

岩永副大臣 先生のところも十八号は大変厳しゅうございました。今回の台風の被害に遭われた方、亡くなられた方々に、私の立場からもお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々に対し、心からお見舞い申し上げる次第でございます。

 天災融資法の発動は、御承知のとおり、農林水産業の被害が著しく、かつ国民経済に及ぼす影響が大であると認められる天災に対して行われるわけでございますが、具体的には、農作物の被害額や被害面積等の被害の広がりのぐあいが第一、そして、被災された農林漁業者の融資需要の総額、これが幾らかということを総合して勘案して、発動の可否を決定しているところでございます。

 本年八月の中旬から九月の上旬に来襲した台風十五号から十八号につきまして、記録的な暴風雨を伴って短期間に次々に来襲したばかりでなく、その被害が連続的に発生していることなどから、天災融資法を発動できるかどうか、前向きで積極的に今検討しているところでございます。

 このため、被害等の広がり状況や被害を受けた資金需要について調査を今現在行っておりますし、その発動については、調査結果を踏まえて対応していきたいということでございますが、御期待に沿えるように頑張ってまいりたい、このように思っております。

高橋委員 ありがとうございます。前向き、積極的という御回答をいただきましたので、ぜひよろしくお願いいたします。

 それで、今回は、今まで余りなじみのなかった塩害という被害が広がりました。例年なら刈り取りが終わった後に来ていた台風が非常に早かったために、刈り取り直前に潮風をかぶる形で枯れるような状況が、水稲では大きな被害がありました。その後、雨が降らなかったということもあって、これまでの経験になかったという声が上がっています。また、ナシなどの果樹が花芽が一気に咲いてしまって、来年あるいはその次の年など、続けて影響があるのではないかという心配もされています。

 こうした被害について、やはり市町村レベルではなかなか対応ができないということで、技術的な対策について指導すること、同時に、今後の災害予防技術についても独自の研究が求められていると思いますけれども、国のお考えを伺いたいと思います。

白須政府参考人 ただいま委員の御指摘の塩害の関係でございます。お話しのとおり、特に水稲なり、あるいはまた海岸に近いところの果樹というふうなところで、現在の台風の襲来によりまして大きな被害が発生しておるということでございます。

 特に果樹につきましては、塩害によりまして樹体への影響が大変大きいということでございまして、過去にも平成三年の台風の際に大きな被害が発生したところでございます。そこで、私ども、実は、平成三年の台風によります被害発生の際に、そういった果樹の風害あるいは潮風害対策の手引というふうなことを取りまとめまして、それ以降、毎年三月には、この手引を踏まえまして、技術指導の通知によりまして指導を行ってまいっているわけでございます。

 また、特に今回、一連の台風によりまして大変大きな塩害が生じておりますことを踏まえまして、実は、台風十六号、これが八月二十九日から三十一日にかけまして襲ってまいったわけでございますが、その直後の八月三十一日に事後指導ということで、北海道及び地方農政局に対しまして技術指導の徹底を図っておるわけでございます。

 と申しますのも、塩害というのは、もう委員も御案内かと思いますが、七日から十日かかって発生をいたしますので、できるだけ速やかに、被害を受けてもすぐに除塩、水をかけまして、まず塩分を取り除くというのが何よりも大事でございます。また、程度に応じましては、日やけ防止剤、これは果樹でございますが、そういうものを樹体に塗布するといったことが必要でございますので、そういった技術指導も行っているわけでございます。

 そういったようなことをやっているわけでございますが、さらに関係都道府県との連携、あるいは改良センター、普及員の方々とも連携を密にいたしまして、生産現場に対する技術指導の周知徹底というものを図ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。

高橋委員 今後はこの塩害が珍しいことではなくなることも十分予想されますので、これが本当に市町村レベルまで徹底されるように要望したいと思います。

 次に、共済の問題なんですけれども、早期支払いと適切な査定をぜひお願いしたいということです。

 特に、今お話があったように、塩害は、最初の瞬間から徐々に被害が広がっていくので、どこで査定をするか、タイミングが非常に難しいということがあります。ただ、タイミングを見計らっていればどんどん査定がおくれて支払いもおくれるということになるわけですから、そういう点では、再査定も含めて、急ぐ、適切にするということをあわせてやっていく必要があると思うが、いかがか。

 それから、もう一つ、あわせてですけれども、例えば、米は二割とれたというけれども、その二割は実際には売り物になりませんよという場合、リンゴが樹上に残っているけれども、傷がついて、だんだんその傷が大きくなっていきますよ、それは樹上損傷という言葉があるんだけれども、実際にはそれは共済で見てくれないということが現地の一番の大きな問題なんですね。その点も正確に、やはり損失として共済の対象にすべきと思いますが、その点の指導についてどうお考えか、伺います。

須賀田政府参考人 水稲の共済金、できるだけ早期に支払うようにしたいというふうに考えております。

 先生御指摘の再評価の件でございます。

 おっしゃられますように、一回台風が来まして共済組合等による損害評価が終了した後また被害が拡大するといった場合には、農業共済組合は再評価をするということになっております。損害評価の契機となりますのは農家の方々からの損害通知でございますので、こういう場合にはちゃんと共済組合あるいは共済組合連合会に対して通知するよう、農家の方々に対する指導を行っていきたいというふうに考えております。

 それから、木の上になったまま傷がついて売り物にならない果実の被害扱いの問題でございます。

 制度上は、おっしゃいますように、木になったままの果実でありましても、風で枝と果実がすれて傷が生じた、規格外になったといったものは被害の対象として扱うということになってございます。ただ、現地の一部に、木になっておるのならば被害じゃないんじゃないかというような誤解もあるようでございますので、そういう誤解を与えることのないよう、共済組合等を通じまして指導を徹底していきたいというふうに考えております。

高橋委員 一部の誤解とおっしゃいましたけれども、これが長い間、全体にわたってそういう状態だったというのが現地の実態でありますので、本当に制度上あるのであれば、しっかり適用されるように御指導をお願いしたいと思います。

 共済制度については、本当に、青森のリンゴでいいますと三割の加入率ですし、その他のミカンや桃、ナシなどを見ても三割以下というのが実態であります。ですから、この加入率がもっともっと上がって実効あるものにするように、入りやすい、そして入った以上は成果がある、そういう制度に改善していくことを今後も要望していきたいと思います。

 次に、BSE問題に移りたいと思います。

 先ほど来議論がされていて、私もきのうの東京新聞のインタビューについてはぜひお聞きしたいと思ったんですが、どうも大臣が、後ろよりは前に若干軸足がというお話もされましたので、早く再開をと願っているのは事実かなと思うんですね。

 そこで、きのうの毎日新聞の世論調査でも輸入再開に反対が六五%と、消費者の声は依然として全頭検査を支持しているわけです。また、この間、食品安全委員会が各地で開いた意見交換会でも、同様な意見が非常に多かったのではないか。あるいは地方自治体からも、千葉県、宮崎県などを先頭に十市町村などからも意見書が出ている、こういう背景もあるかと思いますが、そういう国民の意見を大臣はどう受けとめているのか、まず伺いたいと思います。

島村国務大臣 かつては、川の水が汚れている、海が汚れているということで、いわば水産物が汚れて、それが身体にいろいろな大きな影響をもたらしたことがございましたが、最近は、特にこの狂牛病の問題を初めとして、食の安全、安心にかかわる食品の話題が急浮上しているわけでありますから、消費者がまず食の安全、安心に強い関心を持ち、そのことを求めるのは当然の成り行きだと思っています。私たちは、それを守る、いわば安心して食をとっていただけるような環境をつくっていくのが我々の仕事でありますから、十分そのことを強く認識し、これに対応していきたいと思います。

 私が前向きの云々というのは、すべてに前向きという意味ですから、御理解をいただきたいと思います。

高橋委員 ちょっとよくわからない。すべてに前向きだということなので、では、ちょっと個々に聞いていきたいと思うんです。

 まず、単純な確認であります。先ほど来お話しになっている中間とりまとめの問題ですが、二十カ月齢未満のBSE検査を省略しても感染のリスクが高まることはない、こういう中間とりまとめの内容は、プリオン専門調査会委員の山内名誉教授がけさの新聞で言っているように、線引きに対する見解は示していない、線引きではないんだということを言っていますよね。

 何も、リスクが高まることではない、あるいは検出が困難だったという事実は述べているけれども、二十カ月未満の検査はしなくてもいいというところまで踏み込んだ結論ではなかったと確認したいんですが、よろしいですか。厚生労働省、お願いします。

外口政府参考人 食品安全委員会の中間とりまとめでございますけれども、これは、平成十三年から約三年間が経過した我が国の国内のBSE対策について評価、検証した結果でございまして、その間の科学的知見や規制等の状況も踏まえた上で、中立的、科学的立場から取りまとめられたものと認識しております。

 御指摘の検査のところでございますけれども、これについては、検出限界以下の牛を検査対象から除外するとしても、全月齢の牛からのSRM除去措置を変更しなければ、それによりvCJDリスクが増加することはない、あるいは、二十一カ月齢以上の牛については、現在の検査法でBSEプリオンの存在が確認される可能性がある、そして、二十一、二十三カ月齢で発見された感染牛の延髄かんぬき部の異常プリオンたんぱく質の量が、他の感染牛と比較して五百から千分の一と微量であった等と記載されているわけでございます。

 私どもといたしましては、この食品安全委員会の出しました報告書を科学的合理性に基づくものという観点から判断して検討をしているところでございます。

高橋委員 端的に答えていただきたいんですね。

 線引きに対する見解は示していない。ちょっと読みますけれども、けさの日本農業新聞で、「プリオン病専門調査会では、線引きに対する見解は示していない。これまでの検査結果から、現在の検査技術なら感染牛が見つかっている二十一カ月齢での検出は可能とみなした。しかし、検出できない月齢判断は科学的にはできないと判断した。」というふうに言っていますよね。

 ですから、今読み上げたところで、それをもって線引きしたとは言えないんですよねということを確認したいんです。

外口政府参考人 月齢の線引き見直しについてどうかという御指摘でございますけれども、中間とりまとめの中では、結論の部分で、「二十ケ月齢以下のBSE感染牛を確認することができなかったことは、今後の我が国のBSE対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実である。」という記載もございます。こういったことも踏まえまして、よく関係者の意見も聞きながら、関係省庁と連携して検討を進めてまいりたいと思っております。

高橋委員 では、今のは、重要であると言っただけで線引きではないというふうに私は思っております。

 続けますけれども、同じく、アメリカの牛肉が二十カ月未満なら入ってもいいということとイコールではありませんよね。これは単純な確認であります。

 それから、先ほど鮫島委員に答えたように、アメリカの牛肉が入ってくる場合は、まず食品安全委員会としてリスク評価をするということで確認してよろしいでしょうか。

外口政府参考人 米国産牛肉の輸入再開については、我が国と同等の安全性が確保されているということ、これが前提であります。

 それから、米国側から具体的な措置について提案があった場合には、食品安全委員会に諮問することになると考えております。

高橋委員 同等の安全性ということは、二十カ月未満というだけでは同等ではないということですね。

 それから、リスク評価をするということでいいんですね。もう一回。

外口政府参考人 BSEの対策につきまして、特に食品の安全性についてでございますけれども、SRMが適切に除去されているか等、種々重要なポイントがあります。それらを含めて安全性が我が国と同等に確保されているかということが一つございます。

 それで、具体的な提案がアメリカからあった場合には、リスク評価機関である食品安全委員会に諮問することになります。

高橋委員 よくわかりました。続けます。

 中間とりまとめには、「常にSRM除去が確実に行われていると考えるのは現実的ではない」と指摘をしています。これは日本の対策のことですね。具体的な数字が出ています。全国七カ所、食肉衛生検査所で調査をした数字、これによると、脊髄の除去率で、吸引方式をとっている五カ所では八〇・六%プラマイ一七・一%、つまりは五二・五%から九九・一%の割合だと。押出方式では二カ所平均七五%とあるんですね。いかにもこれは深刻な数字ではないかと思われます。つまりは、SRMの除去が確実にやられていればという前提そのものが現実では成り立っていないということではないかと思うんですね。

 全頭検査があり、SRMの除去があり、あるいは飼料規制の問題などがさまざまにセットになってこそ、日本の安全、安心が成り立っているということではないのですか。確認をしたいと思います。

外口政府参考人 御指摘のように、SRMの除去というのは大変重要な手段でございます。

 それで、脊髄の除去についてでございますけれども、確かに、現在各屠畜場で行っておりますSRMの吸引除去方式、これで一〇〇%完全に脊髄を吸引除去するということはなかなか難しゅうございます。実際には、吸引除去した後で、丁寧にあと手作業で取ったり、それから高圧洗浄によって、その先のプロセスとしてSRMがきれいに取れているようにというプロセスを行っておるところでございます。

高橋委員 手作業で大変な苦労をされていると思うんですが、一〇〇%完全ではないということを今お認めになったと思うんですね。日本の検査でさえそういう状況なんだと。だから、さっき言ったように、やはり全頭検査とセットになってこそではないのかなと思うんですね。

 もう一つ、この中間とりまとめのSRM除去の内容の中には、プリオンを蓄積する組織がSRMと言われる組織外でも全くないということは「現時点において判断することはできない。」と述べておりますよね。この点も考慮する必要があるかと思います。

 さて、先ほど来問題になっている二十カ月齢未満の問題ですけれども、プリオンの検出が不可能ということについては、「ある組織について感染性が検出されなかったとしても、検出限界以下の感染性が存在していた可能性は否定できない」、このようにとりまとめでも行っている。つまりは、現在の検出限界では不可能だけれども、だからといって感染性がないとは言えないということを言っているわけですよね。

 四月十五日の食品安全委員会でも、OIEの名誉顧問である小澤氏は、生体牛検査が可能になれば、全頭検査が世界的標準になるだろうと述べております。また、先ほど来出ているノーベル賞学者でありますプルシナー氏も、「一見健康な動物でも病原型プリオンタンパク質を持っている可能性があることを考えれば、全頭検査こそが唯一の合理的な政策だ」と述べて、ことし十月号の日経サイエンスの中でも、「迅速で高感度な検査方法が出現すれば、全頭検査が標準となるかもしれない」、こういうふうに言っていますね。

 ですから、感染の可能性を否定できないということ、また、検出限界がどんどん下がっていって、いずれは全頭検査が標準になるかもしれない、これだけの指摘がされているときに、これを、今検査体制を変えるのでいいのか、今そういう成果があるのであれば、それを待って、検査体制を続けることこそが消費者やあるいは国内生産者の願いにこたえる道ではないかなと思うんですけれども、大臣に伺いたいと思います。

外口政府参考人 新しい検査法の開発については、日本も含めて、世界じゅうでいろいろな研究が行われております。プルシナー博士のCDI法もその一つでありましょうし、それから、生体というか、生きているうちに検査する方法として、例えば牛の血清の赤外線スペクトルは使えないかとか、いろいろな研究が進んでいると思います。ただし、現在、現時点で、画期的なそういった方法が確立されて、早期に実用化される見通しであるというような情報まではまだございません。引き続き、BSE検査に関する情報を収集するとともに、高感度迅速診断法の研究開発にも意を用いてまいりたいと考えております。

高橋委員 大臣、さっき御指名したんですけれどもお答えがなくて、もしよかったら一言。

 私は、このまま、まだ未知のものであるのに、可能性があるかもしれないのに、今日本がハードルを下げるということは、結局アメリカの要求に屈服したことにしかならないと思うんですね。消費者がみんな支持していることを、多くの消費者が支持していることを引き下げるというのはどうか。そういう意味で、やはり大臣の姿勢が問われていると思っています。

島村国務大臣 失礼をいたしました。

 私自身は、全頭検査という緊急避難的な手段をとったときに、随分思い切ったことをやるな、こう思いました。それは、あのときにすぐ世界のいろいろな実情を調べてみたときに、例えばヨーロッパは御承知のように三十カ月以上ですし、豪州は、これは清浄国ですからほとんどやっていないに等しいぐらい数が少ない。アメリカ自身は、いわばかなりずさんといえばずさんかもしれませんが、日本とは比較にならない。そういう中で、せめて二十カ月なら二十カ月というところで切ってもよかったのかなと当時思ったものですが、全頭検査ということが今現実になっている。これがある意味でいわば国民の安心につながっているということは事実でありますから、これらについてはよく納得の得られる環境が確保される中で見直されるべきだ、こう考えます。

高橋委員 よろしくお願いします。

 終わります。

高木委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本であります。

 島村大臣、岩永副大臣、就任おめでとうございます。

 農業政策につきましては、今のBSEの問題はもちろんですけれども、食料・農業・農村基本計画の見直し、あるいは食料自給率の向上というふうな形で、大変重要な問題が山積しているわけでございます。農村やあるいは農業の振興ということを十分に考えてこの課題に取り組んでいただきたいということを強く望んでいきたいというふうに思います。

 そこで、まず最初に、台風の被害について質問いたします。

 ことしは大変台風の上陸が多くて、私の地元の秋田県、大変な被害を受けているわけでございます。水稲の作況指数が全国で一〇一という数字でございますが、秋田県は全国で最低の八六という状況でございまして、それだけ被害が大きかったわけでございます。

 私も八月の三十一日に、あのなまはげで有名な男鹿市を調査に行きました。農家の方からいろいろ要望を受けたわけでございますが、共通して言われていたことは、天災融資法の発動、それから激甚災害の指定、そして農業共済金の早期支払いということであったわけでございます。

 先ほど来の答弁の中で、水稲については年内の支払いに向けて頑張っていただくというふうな答弁でございましたが、果樹の場合、特にリンゴなんかは、例年ですと年をまたぐという状況がございます。これについては仮払いというような措置もあるやに聞いておりますが、そうした、地元からあるいは農家の方々から多く出されている天災融資法あるいは激甚災害の指定、そして農業共済金の関係、こうしたことについての政府の対応についてお伺いしたいと思います。

須賀田政府参考人 三点お尋ねがございました。

 一連の被害に対します、まず激甚災害指定でございます。

 七月の梅雨前線豪雨は九月三日に政令指定、台風十号、十一号については本日の閣議で指定政令が決定をされたという状況でございます。

 この激甚災害の指定は、先生も御承知のとおり、災害復旧の査定見込み額と農業所得推定額との比較ということに指定水準がなっておりまして、今後どうなるかということを、確たることを現時点で申し上げることはできませんけれども、被害状況というものをできるだけ早く把握するということに努めていきたいというふうに考えております。

 それから、天災融資法の発動でございます。

 先ほど岩永副大臣から御答弁申し上げました。私どもとしては、一つ一つの災害ではなくて、台風十五号から十八号までについて、現在、被害等の広がりぐあい、あるいは資金需要について調査をしているところでございまして、その結果を踏まえまして適切に対応をしたいというふうに考えております。

 それから、農業共済の支払いでございます。

 私ども、共済金についてはできるだけ早くお支払いをしたいというふうに考えておりますけれども、果樹共済の場合は、全相殺といいますか、全体の収穫量が確定してから、そのうち被害がどうであったかという、現時点ではそういう方式をとっておりますので、全体の支払いの確定というのは、あるいは少しおくれることが考えられます。

 そこで、仮渡しの問題でございまして、農業共済組合が自主的に判断をいたしまして、被害が甚大だ、早く支払う必要があるというふうに共済組合が判断した場合には、連合会の同意を得まして、仮の損害評価をして、その範囲内で仮渡しをするということができます。これは、後で正確な損害評価をした上で精算をするということになろうかと思っております。

 私どもとしては、果樹の共済金も含めまして、できるだけ全額が早く支払われるように努めていきたいと考えております。

山本(喜)委員 果樹の共済も含めてできるだけ早くということでお話をいただきました。大変ありがとうございます。

 そこで、先ほど高橋委員の方からお話があって、果樹の場合、規格外であっても支払いの対象になるんだ、今まで一部誤解があったというふうなお話がございました。私も去年まで果樹の評価委員をやっておりまして、やはり、木についているものは収穫量としてみなさなきゃならないというふうなことだったんですよ。農家の方々からは、なっていても売り物にはならないんだよ、どうしてこれが被害に入らないのかということで、大変不満を言われました。今、一部誤解があったということでございますが、もう一度確認してよろしいでしょうか。

須賀田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、木の上になっている果実でございましても、風によりまして枝と果実がすれて、いわゆる売り物にならない、規格外といったものは被害にカウントできるというふうになっております。

 先生もおっしゃられましたように、現場では、木の上になっているのは被害じゃないんじゃないか、落ちたものだけが被害じゃないかというふうな誤解もございますので、その点は、十分、共済組合を通じまして指導を徹底していきたいと考えております。

山本(喜)委員 農家の方々、大変困っているわけでございますので、十分指導をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 この台風の被害に関連して潮風害、私は初めて、塩の被害、米でありますが、普通八月の末にもなると黄色くなってきて大体穂が垂れているという状況でございますが、あの塩害というものは白いススキのようになって立っているという状況でございました。大変すさまじい被害だったわけでございます。

 それから、大豆とかナシなんかも茶色く変色している。果樹農家の方々は、果樹の葉っぱがすっかり枯れてしまったという中で、来年の樹体がどうなるのかというようなことも心配しておったわけでございます。

 そうした意味で、今、根からの塩の吸収の関係についてはいろいろと対策が品種改良を含めてあるようでございますが、塩をかぶった場合の対策、こうしたものに対する技術指導といいますか、そうしたものは現状、今どうなっているのか、お伺いしたいと思います。

西川政府参考人 先生御案内のとおり、作物は塩には非常に弱いというところがございます。それで、塩をかぶった稲ということになりますと、これは現状においては対応の仕方がないというのが現状でございます。

 一つありますのは、そういうものに対して遺伝的に強いものをつくるということがあろうかと思いますが、これにつきましては、現在までのところ、そういう品種は育成されておりません。ただ、将来の地球規模での食料、環境問題に対応した研究の一環として、植物の耐塩性に関する基礎的な研究が行われておりまして、その研究の中で耐塩性を高める遺伝子が最近発見されております。その発見いたしました遺伝子を用いまして、塩害に強い稲の開発というものには現在取り組んでおりますが、ただ、これが実用というふうになりますと、これからなお一層の研究が必要だ、そういう段階にあるということでございます。

山本(喜)委員 これは遺伝子組み換えということではないですよね。

西川政府参考人 現在、耐塩性を有する遺伝子は、稲からではなくて稲以外の作物において発見されているということでございまして、将来の対応として現在そういう研究開発にも取り組んでいるということでございます。

山本(喜)委員 わかりました。

 次に、BSE対策についてお伺いいたします。

 この大臣の記者会見、これは東京新聞ではございません。就任後の会見で、BSE問題は日米首脳会談で意見の一致を見たが、大事なのは消費者が安心して牛肉を食べられる環境づくりだというようなことを大臣が発言しておられますが、この安心して牛肉を食べられる環境ということについては、先ほど来の質疑の中で、やはり多くの国民は全頭検査の継続を望んでいる、そして何よりも食の安心ということが非常に重要ではないかというふうに言われているわけでございます。

 そうした観点に立った場合、これまでの政府見解は、全頭検査、特定危険部位の除去、日本と同等の措置ということであったわけでございます。大臣の言う、安心して牛肉を食べられる環境というのは、これまでの全頭検査あるいは特定危険部位の除去、日本と同等の措置ということで理解していいのかどうか、お伺いしたいと思います。

島村国務大臣 私自身は、食の安全、安心を大前提としてやはりこれに対応するということを基本に置いておりますが、正直言って、例えばEUの皆さんにしても、アメリカや豪州の人たちにしても、みんなだれしも、健康であり、命は惜しいわけでありますから、当然にそれらについては、それぞれの国の科学者あるいは食に携わる専門家たちが、鋭意そのことに対して、これに対する取り組みをしているところだと思います。

 そういう中で、我が国は、御承知のように、三年前にBSE問題が発生しまして、時の武部大臣のときに国民が大きく動揺を来している折から、要するに、安心をかち取るためにはどうしたらいいか、それで全頭検査という話になったわけです。

 御承知のように、先ほど申したように、ヨーロッパでは三十カ月以上でありますし、豪州ではいわゆる草を食べて育つという意味で肉骨粉と関係がないこともありまして、清浄な国ということから、ほとんど、頭数は極めて少ない数でありますし、アメリカだけが少しく私たちの常識を超える、多少ずさんなといいましょうか、扱いをしてきた。

 問題は、そのアメリカから日本は輸入するということですから、私たちが国内で要求している措置に準じたといいましょうか、それと同じ考え方に立った環境を整備してもらうということは当然のことでありまして、そういうことについて今我々は鋭意向こうとの交渉を行っている、これが今の状況だと思います。

 そういう意味からすれば、それらのことごとを確認しつつ、確かに可及的速やかに両国首脳の合意が結果に結びつくように努力をしていく、これが私どものとるべき考えである、そう考えております。

山本(喜)委員 要するに、日本と同等の環境を整備してもらうということでございますね。

 そこで、この中間とりまとめについてお伺いしますけれども、先ほど来の質疑の中で、プリオン調査会の目的は我が国のBSEの調査ということで答弁があったと思うんですが、それで理解していいんでしょうか。

齊藤政府参考人 中間とりまとめの件でございますが、これは、日本における牛海綿状脳症についての中間とりまとめということで、日本における対策ということで間違いございません。

山本(喜)委員 このプリオン調査会というのは、第三回の会合が十一月二十七日に行われておりまして、その後、二月三日に行われているわけですよ。その前の一月二十九日だかの食品安全委員会では、プリオンの専門調査会において、米国における正確な状況の把握など基本的な勉強を始めなきゃならないというふうなことで、そして二月三日の議事録には、食品安全委員会からアメリカのBSEの問題で指摘をされて、リスク評価を本格的に始める準備をしてくれというふうに言われたということで始まった経緯が、今回、急遽招集したという形で議事録に残っているわけですね。

 この経過を見ますと、やはりこれは、アメリカのBSEの発生ということを受けて、全頭検査をどう見直していくのかということで始まったようにこの議事録を見ると思えるわけですよ。この点についていかがでしょうか。

齊藤政府参考人 委員御指摘の点でございますが、御承知のように、BSE問題自体が食品安全委員会発足の経緯になったものでございまして、さかのぼりまして、発足直後の昨年の八月の第一回のプリオン専門調査会で、日本のBSE問題全体について議論することが重要であるということで、まず最初に委員間ではそういうことで合意がされておるわけでございます。

 それで、その後、昨年の秋の時点では、牛の脊柱の背根神経節の、要するに特定危険部位としての取り扱いの問題であるとか、豚の肉骨粉の問題その他、厚生労働省及び農林水産省の方から意見を求められた案件を処理してきたわけでございます。

 それで、その後、本年二月からということに結果的になってしまったわけでございますが、その時点までは、実はそういう個別の案件をやっていたというのが実態でございます。

 アメリカでのBSEの発生ということ、このことが重大なものだということ、それについては異論はございませんけれども、プリオン調査会としては昨年八月の発足時点からこの問題を取り扱うという、そういう考え方でおったわけでございます。

 具体的に、二月以降は、おっしゃるように、まず二月二十日のときに、米国のBSE対策ということで、米国の状況について、これは国際調査団長から聞いております。これは米国のみならず、引き続きその後、英国の状況を聞き、さらにOIEの小澤名誉顧問からの意見を聞くとか、そういう形でそれぞれ諸外国の状況その他を聞きながら審議を進めて、六月の時点になりまして我が国におけるBSE対策についての検討を具体的に進め、第十二回でございますけれども、七月の十六日にBSE対策のたたき台をお示しし、七月十六日から八月六日、九月六日という三回の議論を経て中間とりまとめに至った、そういう経緯でございます。

山本(喜)委員 経緯はわかりましたけれども、この中間とりまとめですが、この記述内容、全般的に貫かれているのは、いまだ解明されていない部分が多いとか、あるいはいまだに明らかになっていないという表現が大変多いわけです。そして、きょうの農業新聞にも、山内専門委員、この方も極めて不明なことが多いから全頭検査をあと数年続けるべきだろうというようなことも言っているわけですね。

 科学的にまだまだ解明不十分なものが多々あるのにもかかわらず、アメリカ大統領選挙の前に急いで取りまとめに至った経過が、非常に疑念を払拭し切れないわけですが、この点についてはどうなんでしょうか。

齊藤政府参考人 ただいま御説明申し上げましたとおり、昨年の八月以来、作業としては、食品安全委員会とりわけプリオン調査会の作業として我が国の状況については実施しなければいけないもの、そういう問題意識のもとに、実は非常に優先的なものであって、それはきちんとできる限り早くやらなければいけないという、そういう問題意識は持っておって今日に至ったわけでございます。

 したがいまして、それは他の事柄ということではなくて、我が国の国内の状況、既に九月の時点、結果的に中間とりまとめを出すまでには三年間ということになったわけでございますが、この状況をやはり一度ここで総括しておく必要がある、そういう認識で行ったものでございまして、特段諸外国の状況とかそういうことを意識して行ったものではない、国内の問題として行ったものでございます。

山本(喜)委員 次に、リスクコミュニケーションについてお伺いします。

 食品安全基本法の第十三条に、食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たって、当該施策の策定に国民の意見を反映し、その過程の公正性、透明性の確保というくだりがございますが、今、各地でリスクコミュニケーションが行われているわけでございますけれども、これは施策に国民の意見を反映させるのが目的なのか、それとも単なるガス抜きの場なのか、この位置づけをお伺いします。

齊藤政府参考人 食品安全委員会といたしまして、我が国におけるBSE対策、これをレビューしてきておるわけでございますが、この状況について国民の皆様に十分理解をしていただくことが重要であるとともに、それから関係者の意見を交換するということから、この中間とりまとめにつきましても議論をしてきておるところでございます。

 中間とりまとめをまとめる前の段階で、東京、大阪でリスクコミュニケーションの機会を持ち、また、その取りまとめ後、九月の十六日以降、東京、大阪、名古屋、岡山、それから今週は福岡、札幌というようなことで意見交換会を実施するということにいたしておるわけでございます。

 意見交換会の中では、全頭検査の継続を求める意見とか、またそれから、国際基準を採用すべき、そういうような意見とかがあったわけでございますけれども、これらにつきましては、取りまとめに至る段階までのものにつきましては、プリオン専門調査会でその状況について御説明し、審議に反映を図る。それからさらに、とりまとめの内容について非常に専門的な内容でわかりにくいというような御指摘も受けておりますので、これについては、できるだけわかりやすいものにするように、また、わかりやすい解説のものを用意するようにというようなことで、この反映に努めておるというところでございます。

山本(喜)委員 時間が来ましたので、最後に一点だけ。

 先ほど、高橋委員の質問に対して、アメリカの牛肉が入るときにリスク評価をするのかということについては、リスク評価機関を持っている安全委員会に諮問するという、何かそういうふうな答弁だったんですが、要するにアメリカの牛肉のリスク評価をするのかどうか、この確認をお願いします。

外口政府参考人 先ほどの答弁でございますけれども、リスク評価機関である食品安全委員会に諮問すると申し上げました。もちろん、リスク評価をしていただくわけでございます。

山本(喜)委員 わかりました。ありがとうございます。

高木委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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