衆議院

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第2号 平成17年2月24日(木曜日)

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平成十七年二月二十四日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 山岡 賢次君

   理事 今村 雅弘君 理事 西川 京子君

   理事 二田 孝治君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 楢崎 欣弥君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      大野 松茂君    岡本 芳郎君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      上川 陽子君    川上 義博君

      城内  実君    北村 直人君

      後藤 茂之君    後藤田正純君

      菅原 一秀君    鈴木 恒夫君

      田中 英夫君    津島 恭一君

      西村 康稔君    原田 令嗣君

      一川 保夫君    岡本 充功君

      鹿野 道彦君    岸本  健君

      小平 忠正君    鮫島 宗明君

      仲野 博子君    堀込 征雄君

      松木 謙公君    山内おさむ君

      大口 善徳君    高橋千鶴子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 青山 幸恭君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       有本 建男君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       外口  崇君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         伊藤 健一君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            村上 秀徳君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           西川 孝一君

   政府参考人

   (林野庁長官)      前田 直登君

   政府参考人

   (水産庁長官)      田原 文夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           大庭 靖雄君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 寺田 雅昭君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     菅原 一秀君

  木村 太郎君     大野 松茂君

  森  英介君     鈴木 恒夫君

同日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     木村 太郎君

  菅原 一秀君     金子 恭之君

  鈴木 恒夫君     森  英介君

    ―――――――――――――

二月二十二日

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第九号)

同月二十三日

 食料自給率の抜本的向上に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二七二号)

 同(石井郁子君紹介)(第二七三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二七四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二七五号)

 同(志位和夫君紹介)(第二七六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二七七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二七八号)

 同(山口富男君紹介)(第二七九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二八〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第九号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

山岡委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長寺田雅昭君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として農林水産省大臣官房長小林芳雄君、大臣官房総括審議官伊藤健一君、総合食料局長村上秀徳君、消費・安全局長中川坦君、生産局長白須敏朗君、経営局長須賀田菊仁君、農林水産技術会議事務局長西川孝一君、林野庁長官前田直登君、水産庁長官田原文夫君、外務省経済局長石川薫君、財務省大臣官房審議官青山幸恭君、文部科学省科学技術・学術政策局長有本建男君、厚生労働省健康局長田中慶司君、医薬食品局食品安全部長外口崇君及び国土交通省大臣官房審議官大庭靖雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鮫島宗明君。

鮫島委員 民主党の鮫島です。

 きょうから委員会での質疑が始まるわけですけれども、きょう、民主党の方は四人の質問者がいて、基本計画そのものについては、後ほど小平さん、堀込さんが質問することになっています。それから、山田正彦さんが主にBSEの問題。私は、北朝鮮のアサリの問題、食の安全の問題、備蓄の問題ということで質問させていただきますが、時間内にうまくおさまるかどうか、ちょっとわかりません。

 島村農水大臣も東京の御出身ですが、この農業問題を考えるときに、どこにでも公表されているデータですけれども、やはりタックスペイヤー、納税者の御理解を得ながら農業政策も組み立てざるを得ない。農水省の出しているデータで、農家世帯と勤労者世帯の所得というのがあって、勤労者世帯一世帯当たりの所得が六百六十一万円、それから販売農家の平均八百二万円。販売農家の平均的な農業所得は百三万円、七百万がそれ以外、合わせて八百二万円というのが販売農家の所得です。勤労者世帯が六百六十一万ですから、こういう厳然たる構造的な事実がある。

 それからもう一つ、構造的に認識しておかなければいけないのが、多分、北海道と都府県との違い。北海道は平均的な経営面積が都府県の十倍ありますし、それから、専業農家の比率が七〇%を超えている。いわば北海道ではヨーロッパ並みの本格的な農業が日本で展開されている。耕地面積の四分の一が北海道に存在し、小麦や大豆、小麦はほぼ半分が北海道でつくられていますし、大豆も三割が北海道。ですから、この北海道の農業生産地域としての特性ということも、やはり農政を考える上で考慮すべき問題だと思います。これはまくらですが。

 それで、いよいよ本題に入りますが、北朝鮮のアサリの問題から質問したいと思います。

 財務省が押さえていると思いますが、去年、おととしあたりの北朝鮮からの輸入アサリの量はどのぐらいなのか。それで、どういう状態で入っているのか。つまり、生きている状態で入っているのか、あるいは冷凍で、死んだ状態で入っているのか。わかりましたらお願いします。

青山政府参考人 委員の質問にお答え申し上げます。

 北朝鮮からのアサリの輸入量でございますが、二〇〇三年が三万一千九百五十六トン、二〇〇四年が三万一千六百九十六トンとなっております。

 御質問の、生きているかどうかということでございますが、貿易統計上ではそういうふうにはなっておりませんが、基本的には私どもは生きているものというふうに聞いております。

 以上でございます。

鮫島委員 北朝鮮のアサリが非常にマーケットで評価が高かったのは、海がきれいだから貝毒の検査をしなくていいと。生きたまま持ってきて、そのまま生鮮の流通の方に乗るので、非常にマーケットで評価が高かったと思いますが、何か去年から北朝鮮のアサリにも貝毒が発生して、貝毒検査を始めたと聞いていますが、事実関係を教えていただけますでしょうか。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮産アサリについては、平成十六年の五月、我が国の規制値を超える麻痺性貝毒が検出されたことから、我が国に輸入される北朝鮮二枚貝及びその加工品について、すべての輸入届け出に対し、麻痺性貝毒にかかわる検査命令を実施しているところであります。

鮫島委員 JAS法では、平成十二年七月からですけれども、すべての生鮮食品に原産地の表示が義務づけられている。それから、複数の産地を経由した場合、例えば、貝が輸入後、国内で蓄養する、一週間程度蓄養するという場合も、生育期間の長い場所を原産地として表示しなければいけませんと。

 したがって、三万一千トンから三万二千トン程度北朝鮮から入ってくる貝類は、たとえ国内で短期間蓄養したとしても、北朝鮮産というふうに生鮮食品としては表示されていなければいけないわけですが、北朝鮮から入ってくる三万一千トンのうち、生鮮食品用に流通するものと加熱加工用に回るものとの比率がどのぐらいかというのは農林水産省の方でおわかりでしょうか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 先ほど財務省の方から輸入数量のお話がございましたけれども、これが輸入後、生鮮と加工ということで、殻を取って流通するかどうか、こういったデータは、大変申しわけございません、私どもはとっておりませんので、その比率等々については承知いたしておりません。

鮫島委員 正確な量はわからないかもしれませんが、生きて入れたものというのは、常識的に考えれば、ほとんどが生鮮食品として流通するというのが貝の世界の常識だと思いますが、業界常識ということから照らして、大宗は生鮮の方に回っているというふうに判断していいんじゃないかと思いますが、どうですか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃられますように、確かに、殻を外す前のものは生鮮の形で流通するわけでございますので、おっしゃられますような形態が多いかとは思いますけれども、そうした裏づけとなりますデータにつきましては、残念ながらとっていないということで申し上げさせていただきたいと思います。

鮫島委員 これは、加工に回る場合は原産地表示は要らないわけですから、この比率が大事だなと思って私も随分貝類関係の流通業者に問い合わせをしたんですが、貝類だけに、なかなか口がかたいので正確なことがわからなかったんですが。

 ただ、農林水産省の方では、小売店の段階でどの程度北朝鮮産と表示されているものがあるかについては、緊急調査も含めてかなり丁寧な調査をしたと思いますが、小売り段階で北朝鮮産と表示されていたものはどの程度の比率があったんでしょうか。日本に流通しているアサリの三分の一は北朝鮮産ですから、普通に見たら三分の一は表示されているというふうに考えるのが常識なんですが、結果はいかがだったんでしょうか。

中川政府参考人 農林水産省では、全国に約二千名の表示担当の職員を配置しておりまして、生鮮食品を扱う小売店あるいは卸売業者の表示状況について調査をふだんから行っておりますけれども、先般、特にアサリにつきましては、偽装表示の報道等がございまして、急遽、一月十四日付で、業者の仕入れ伝票などを調査して表示根拠の確認を徹底するよう指示いたしました。

 その結果でございますけれども、一月の十五日から三十一日までの半月分の調査の結果といたしまして、全国の小売店舗六百五十カ所、中間流通業者七十四の事業所におきまして約九百四十の商品について調査を行ったところでございます。

 その結果でございますが、小売店舗の段階では八百二十一のサンプルがございましたが、そのうちで国産と表示されていたものが六百二十六、また、原産国として外国名が表示されていたものが百六十でございまして、この小売店別の段階では、先生お尋ねの北朝鮮のものというのはございませんでした。中国あるいは韓国という表示のものがあったということでございます。

鮫島委員 要するに、小売り段階で表示を検査したところ、北朝鮮産という表示はなかったわけですよね。

 先ほど言ったように、大量に北朝鮮から生きたアサリが入っているわけですから、大部分は生鮮食品として流通しているのが正確に把握できない。逆に言うと、ほとんどが偽装表示のはずですが、偽装表示が見破れない。食品監視の要員が二千人もいて見破れない。

 アサリはどこに行ったというふうにお考えでしょうか。どういう流れ方をしているのか。流通、何か推定できるんですか。

中川政府参考人 JAS法での表示のチェックにつきましては、まずは小売店の段階で仕入れ伝票等を確認するというところから始めております。一月の中旬から始めた調査でございますので、不適正な表示があったもの等を中心にいたしまして、それ以外の小売店につきましても、これから、小売りの段階から卸の段階、さらにはそのまた川上へというふうに、順次、伝票等の調査をしてさかのぼっていきたいというふうに思っております。

 現在そういった調査を実施しているところでございまして、まだ、現時点では具体的なことについて申し上げられる段階ではございません。鋭意調査をきちっとやっていきたいというふうに思っております。

鮫島委員 要するに、実態としては偽装表示が見破れないということだと思いますね。ですから、JAS法の監視体制に基本的な欠陥があるんだろうというふうに思います。

 三月一日から改正油濁損保が適用になって、特に北朝鮮の船は二・五%しか保険に加入していないという事前の報告がありましたが、いよいよ三月一日からこれが施行される、適用されるという状況になっていますが、現時点で、中国船籍、北朝鮮の船籍、ロシア船籍の保険加入率はそれぞれどのぐらいでしょうか。

大庭政府参考人 船舶の国籍別の保険への加入状況についてのお尋ねでございました。

 平成十五年に我が国の港に入港いたしました外国籍の船舶の保険の加入状況につきまして、国土交通省において調査をいたしましたところ、保険加入率の全体の平均は七二・八%でございますが、そのうち、お尋ねのありました中国籍の船に関しては六二・六%、ロシア籍の船につきましては一三・六%、そして北朝鮮籍の船が二・五%ということになっております。

鮫島委員 平成十五年の数字だと思うんですが、いよいよこの三月一日からそれが適用されるということになっている。要するに駆け込みの加入。直近でどんなふうになっているのか。北朝鮮が二・五、現在でも二・五、三月一日以降も二・五ということでよろしいんでしょうか。

大庭政府参考人 現時点での最新の数字が十五年に入港した船舶の保険の加入率でございます。十六年のものについては、なお現在集計中でございまして、数字を把握いたしておりません。

 三月一日から新しい法律が施行されますので、保険契約を締結している船は証明書を船に備え置いてこれから入港していただくことになるわけでございますけれども、その証明書交付の受け付けを十二月一日から開始しておりますけれども、現在、全体で八百件ほどの申請が出てきている、そういう状況になっております。

鮫島委員 今北朝鮮のことを聞いているわけだから。

 では、その八百件の申請のうちで北朝鮮からの申請は何件ぐらいあるんですか。

大庭政府参考人 ただいま申しました八百件ほどのうち、北朝鮮籍の船舶の申請案件は十六件でございます。

鮫島委員 非常に少ない数字ですから、恐らく三月一日以降も北朝鮮の船でこの改正損保に加入しているのは恐らく三%ぐらいと。したがって、三月一日からはほとんど北朝鮮の船は境港とか下関には入港できなくなる、あるいはアサリを運べなくなるというのが実態だと思います。

 そうすると、二重偽装というふうになってきて、例えば、中国の船が北朝鮮に行ってアサリを積んで日本に持ってくる、中国産というふうに申請する、それで一たん陸揚げされちゃえば、先ほどの北朝鮮アサリが小売店では一つもありませんというぐらい国内流通は追っかけられない、もう何が何だかわからないという世界になるんじゃないかと思います。

 もし三月一日以降、中国の船が北朝鮮産のアサリを持ってきて中国産というふうに申請した場合、それは実は違うんじゃないかということを見破る方法が通関当局におありでしょうか。財務省にお伺いします。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 関税法の六十七条というのがございまして、貨物を輸入しようとする方なんでございますが、税関長に対しまして輸入申告いたす、貨物につき必要な検査を経て許可を受けなければならないというふうになってございます。

 税関におきましてどうしているかということでございますが、審査の際に出されました輸入申告書あるいは仕入れ書というのがございます。さらには、運賃明細書、船荷証券等、あるいは契約書類等の関係書類に基づきまして、まず書類の審査をいたしまして、必要な場合は現品の検査を行うということで、包装等々の観点でそういうのを検査した上で原産地の確認を行うことというふうにやってございます。

 いずれにいたしましても、税関といたしまして、従来より原産地の適正なチェックということを行ってまいっているということでございます。

 以上でございます。

鮫島委員 農林水産省に聞いた方がいいのかな。何か、DNA鑑定なり、科学的な手法で中国産と北朝鮮産を見分ける技術というのはあるんでしょうか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 私も素人でございますので、むしろ、ここら辺は先生の方がお詳しいんじゃないかと思いますが、いわゆるDNA鑑定等でアサリにつきましての産地がわかるということは、これは難しいというような話で私どもも話を聞いているところでございます。

鮫島委員 私も関係者からそういうふうに聞いていて、大変難しいと。中国の船が北朝鮮に寄って北朝鮮のアサリを持ってきて、でも書類上は中国産というふうに出されちゃったら見分けがつかない。まあここは外交委員会じゃないですから、私は余り外交的な切り口からはきょうは質問していないんですが、あくまでもJAS法が十分適用されているのかどうかという観点からの質問ですが、そのぐらい貝の流通というのはわからなくなっているという事実が大変強くあると思います。

 一方で、今度、改正油濁損保が三月一日から適用された場合に、アサリの流通業者が、今三分の一北朝鮮から入ってくる部分が、一部そういう偽装輸送はあるかもしれませんが、大部分はとまるんじゃないかと。そうしますと、流通業者、下関が多いと思いますが、大分損害を受ける。

 そういう緊急に損害を受けた業者に対して支援措置、三月一日以降、北朝鮮からのアサリがとまることによって非常に経営的に大きな打撃を受ける業者に対して何らかの支援措置を今の段階で検討しているんでしょうか。

田原政府参考人 一日から改正油濁法と申しますか、こういったことによりまして、北朝鮮籍の船舶によりますアサリ輸入、こういったものが影響が出てくるという面は否定できないのではないかというふうに思います。

 ただ、現実的な対応ということで、私どももいろいろ聞いておりますと、例えば保障契約を持つ船舶に振りかえたりという動きがあったり、あるいは、場所によりましては、事故を起こした場合に賠償費用の支払いを保証するといういわゆる中間法人といいますか、そういった設立の動きがあるというふうなことで、現時点におきまして、具体的にアサリの輸入の動きがどう変わっていくか、これを定かに見通すことは困難ではないかというふうに考えております。

 いずれにしましても、我々も、今後、関係都道府県ですとかこうした業界、いろいろな動きですとか対応、そういった動きにつきまして情報収集に努めながらその対応は考えていきたい、かように考えている次第でございます。

鮫島委員 別の角度から聞きます。

 先ほどからのお話で大分はっきりしたと思いますが、アサリの生鮮流通はほとんどが偽装流通。今度、三月一日以後、どういう入り方で入ってくるかわかりませんが、やはりかなりこの北朝鮮産アサリの流通に関しては今後も偽装的なルートで動かざるを得ない。そういう業者に対して支援措置をとるというようなことはないんでしょうね。つまり、JAS法に違反している疑いがある流通業者に対して支援措置をとるというようなことになると、またあの肉の不祥事みたいな話になりますので、その辺はどういうお考えでしょうか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 もともと、この三月一日の改正油濁法の施行ということはもう既に前国会で決まった法律に基づくものでございまして、恐らく、これはアサリにとどまらず、いろいろな食品関係の輸入の業者の方々はこうしたことを中に組み込んでの対応ということをやっておられるんじゃないかというふうに思います。

 そういう意味におきまして、そういった応分の負担をしながらの対応の中で、偽装みたいなことでやっていく人たちがどういった支援を求められるかどうか、具体的な動きというのが我々のところに来ているわけではございませんけれども、そういったことについてまでやるのは、全体的な正義あるいは公平のバランスの観点から、いささか問題があるのではないか、かように考えている次第でございます。

鮫島委員 確かにおっしゃるとおりで、建前としては生鮮のアサリは流通していないことになっているわけですから、そのことによって損害を受けるというのは論理的にもあり得ないわけですから、間違って偽装流通業者に支援措置をとるようなことはしないでいただきたいと思います。輸入アサリがいつの間にか利権アサリになるようなことだけは避けていただきたい。そういうふうに、やはり海外から入ってくるものについての追跡調査なりというのは非常に難しいですよね。

 これは今、BSEでアメリカなどの牛肉の再開も問題になっていますが、食品安全基本法の中で、第四条、農林水産物の生産から食品の販売に至る一連の供給行程における各段階で安全性をチェックしなければいけませんと。これは国の内外を問わずということになっているわけです。ですから、海外の牧場、農地の状態も、この食品安全基本法の建前からいえばそれもちゃんとウオッチしなさいよということになっています。

 最近、農林水産省からいろいろ出される安心、安全というようなパンフレット類、あるいは具体的にとっている施策の解説書等々を見ても、国内の生産段階については随分きめ細かい監視体制なり指導が行われていると思いますが、海外のものについては全く監視する体制がなくて、相変わらず水際検査を強化しますという表現にとどまっているんですが、こういう行政のやり方というのは食品安全基本法に違反しているんじゃないですか。どうやって海外の生産現場の実態、つまり、農場から食卓までの、川上の段階の監視を具体的にどうしようとしているのか、前からこれはわからないんですが、大臣の方から御答弁いただければありがたいと思います。

島村国務大臣 御高承のとおり、輸入食品の安全確保につきましては、厚生労働省の検疫所において食品衛生法に基づく検査を行うなど、各般の措置を講じているというところであります。

 当省といたしましては、輸入米麦の検査や輸入農産物の残留農薬調査、あるいは海外の食品事故などに関する情報の分析、収集、あるいはこれを提供するなどの手を打っておりますし、また、輸出国における農業資材の使用実態やリスク管理政策などについての現地調査を実施しているところであります。

 輸入食品を含む食品の安全、安心の確保については、安全な食料を安定的に供給するという観点から、厚生労働省と連携を密にして取り組んでまいりたいと考えているところでありますが、踏み込んで申し上げますか。この後御質問が出ているようでございますから、一応ここで。

鮫島委員 私も毎回同じような質問をしているんですが、やはり水際の検査だとどうしても限界があって、農薬だけでも七百種類ぐらい使われているし、一部EUで問題になっているように、アメリカの牛が成長ホルモンを使われているとか、生産現場じゃないとなかなかわからない情報がたくさんある。したがって、水際検査には限界がありますよと。

 二〇〇四年十月五日の農林水産委員会で私は同様の指摘をしたところ、大臣就任直後の島村大臣は、この点については私も全く同感でありまして、もし今までその点に欠けるものがあるならば、私の在任中にきちんと改めて、可及的速やかにそういう体制をつくりたいと思いますと大変前向きな答弁をいただいたんですが、可及的速やかにどういう体制ができたんでしょうか。

島村国務大臣 私は鮫島委員のお考えに基本的に賛成でありまして、就任以来、前の委員会でお答えしたとおりに、当省内でもこのことの検討を行っておることは事実でございます。

 問題は、我々なりに、海外に特別の検査員を置いて専門的に取り組んでもらいたいという面もないではないのですが、いろいろ調べてみました結果では、少なくも、国の職員が海外で検査を行うことについては、日本国の公権力行使に当たるという意味でいろいろ問題があるようでございますし、また、産地や積み地検査には莫大なコストが必要となる、そういうことが見込まれる中で、輸送中の品質変化に対応した輸入港での検疫は引き続き行う、今の段階ではそういう状況であります。

 さはさりながら、私どもはあなたと同じ考えと申す以上、これからも輸入食品に依存する面が極めて大きいわけでありますから、これらの安全、安心に関しては十分な配慮をしていくという必要があろうかと思います。少なくも、水際措置を的確に実施するというだけでは物足りないという御指摘は、私どもも全くそういう考えを持っておりますので、この上ともに努力をしますが、少なくも、在外公館ルートを活用する等、これからはこれらについてどのような形で実現が可能であるか、こういうことを今いろいろ進めているというふうに承知をいたしております。

鮫島委員 農林水産省が行っている消費者向けのアンケートなんかでも、輸入食品の安全性に不安を感じるという人が九二・三%だったと思いますが、そのぐらい、消費者の方の心配で一番多いのが実はそこのところなんですね。輸入食品の安全性について不安をお持ちの方が大変多い。

 私ども、実は、どういう具体的な形があるかと思って、我が党は我が党なりに勉強しているんですが、確かに、インスペクターとか検査官というようなことをいうと、非常に公権力の行使で向こうの内政干渉に当たるということもあるので、もうちょっと何かソフトな形でのやり方、調査員みたいな形じゃないと無理なのかなと。いずれにせよ、多分根拠法が必要になると思いますので、我々も党内で検討した上で、輸入食品安全確保法とか何か考えたいと思っていますので、またそういうときは、ぜひ与野党協調で消費者の不安をなくすような具体的な体制づくりに取り組めればありがたいというふうに思います。

 安全性については一応以上で、次に、備蓄のことについてお伺いいたします。

 これも前、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律、いわゆる国民保護法の議論のときに、日本の備蓄制度は今米百万トンという体制がありますが、これは需給調整のための備蓄で、そういう非常事態、有事ということを想定した備蓄体制は日本にはありませんね。それは確かにない、ないけれども、国民保護法の中身を詰めていく段階で、この食料備蓄についてもどうあるべきかということを議論するというふうになっているんですが、国民保護法の中で、有事のときの食料備蓄がどうあるべきかというのは、結局どうなったんでしょうか。

村上政府参考人 お答えいたします。

 国民保護法のもとで、国それから地方公共団体、それぞれの非常時における対応について基本的な規定がなされておりますが、現在、政府全体としての基本指針、政府の方針というものの検討がなされておりまして、これを踏まえまして、都道府県、自治体における国民の保護に関する計画を策定するということになっております。緊急事態において、地方公共団体の長がそれぞれ国民の保護に関する計画を定める中で、住民の避難とあわせまして、必要な物資、資材の備蓄ということが規定されております。

 現在、基本指針を踏まえて、来年度中に各省における基本的な計画を定めるということになっておりまして、我が省としては、非常時における食料供給のためのマニュアル、食料安全保障のマニュアルというのを策定しておりまして、その際に、備蓄も含めまして、国内生産の増大、それから不測の場合のいろいろなレベルにおける対応というものを決めておるわけでございますが、その中で必要に応じて国としての対応については考えていきたいというふうに思っております。

 それから、都道府県につきましては、そういう形で、政府の基本方針に基づいた形で、各県、市町村においてそれぞれ検討がなされるというふうに考えております。

鮫島委員 ちょっと答弁がわかりにくい。

 二つあるんですよね。一つは、国民保護法の中で、自治体は国民の生活に必要な資材を準備しなければいけませんというふうに決まっていますが、食料備蓄については、災害対策基本法四十九条で定められている備蓄、これを兼用してよろしいという規定に法律上はなっているはずです。

 私が聞きたいのは二つあって、一つは、もちろん、災害対策基本法によって各自治体が備蓄していますが、実際、地震や何かが起こってみればわかるように、自治体によって備蓄のレベルに大変ばらつきがある。したがって、国として一定のバックアップとしての備蓄体制をとるべきではないかというのが一点。

 それから、先ほどちょっとお答えになった、農林水産省は既に非常時におけるマニュアルを持っておりますという、この答弁もよく出てくるんですが、国内有事を想定したマニュアルなんかありますか、農林水産省が。港湾ストがあった場合とか、何か海外で紛争があって一時的にとまった場合とかというのでレベル0、1、2というのがあることはわかっていますが、国内有事なんかを想定したマニュアルがあるんですか、農水省に。

村上政府参考人 農林水産省で作成しておりますマニュアルの中で、レベルに応じ、不測の事態の程度、国民に与える影響の程度に応じまして、レベル0、1、それからレベル2という形で想定をいたしておりますが、それぞれについては、いずれも国外的な要素による事態と、それから国内的な事態も含めて、不作になったような状態も含めて対応できるような、両方のことを想定した形で策定しているところでございます。

鮫島委員 いや、違うでしょう。国内においては、天変地異というか異常気象だけ想定しているわけで、武力攻撃事態における、我が国が武力攻撃を受けたときにどうすべきかというのが新しい話で、今局長がおっしゃっているのは古い話ですよ。そういうことが想定されないときの話で、我が国が武力攻撃を受けたときにどうするかというのは非常に新しい話で、それについてマニュアルなんかあるわけないんですよ、農林水産省が。

 だから、そういう、新たに法体系を整備して国民保護法もつくるんだから、農水省としては、今までの調整保管という備蓄じゃなくて、武力攻撃事態等を想定したときの備蓄というのを新たに考える必要があるでしょう、それを考えていますかというのが質問です。

村上政府参考人 お答えいたします。

 先ほどちょっと説明が不十分だったかと思いますけれども、現在のマニュアルは、国内における要因、それから海外における要因、いずれも一般的な形で定めておりまして、例えば国内の要因におきましても、例えば突発的な事件、事故による農業生産や流通の混乱というようなことも、一般的な形で想定をいたしております。

 御指摘のように、国民保護法に基づく対応をどういうふうに考えるか、今のマニュアルで十分なのかどうかということは当然あり得ると思いまして、その辺については、各省がそれぞれ基本計画を定めることになっておりますので、その中で十分検討したいとは思っております。

 ただ、一点、先生御指摘の備蓄の問題ですけれども、これは国民に非常の事態に食料を安定的に確保するというのは国の責務であり、自治体の責務でございますが、その手法としてどういうものを使っていくかということは、必ずしも不測の事態に備蓄で対応するということがすべてではなくて、むしろその場合に、生産や流通をいかに確保するか、それから供給をどう確保するかという、備蓄と合わせた形で考えていくのが基本ではないかというふうに思います。

鮫島委員 大臣にこれはお考えいただきたいんですけれども、いつもこの話のときは農林水産省は実は答弁できないんですよね。つまり、こういう非常事態のときの備蓄の責任の主体は実はどこなんだと。確かに、農林水産省は、食料、農業、農村という世界で国内措置をとることになっていて、こういう非常事態が起こったときの、いざというときの体制の整備は総務省かもしれないので、ちょっとこの辺は縦割りの壁で難しい要素があるんですが、政治家として考えれば、当然、非常事態、緊急事態、特に武力攻撃対処というようなことを想定して国家として一定の備蓄を持っておくのはある意味では常識で、お隣の韓国も四カ月分の米の備蓄を持っていますし、ヨーロッパの国々も大体数カ月から半年ぐらいの備蓄を持っている。

 だんだん難しい国際環境になっているわけですから、一番大きいのは、これは安心なんですよね。国民に対して、心配ありませんよ、国はいろいろなことを想定して数カ月分の備蓄は持っていますということが私は大事なんだろうと思います。これは何も農林水産省の予算でやる必要はないと思いますよ。もうちょっと全体的な観点からやればいいんだと思います。

 ただ、そのときにいつも農水省が嫌がるのは、そういう形で備蓄を持つと、使わないときにそれを食用のマーケットに放出しなくちゃいけない、そうすると値崩れしたり混乱が起きる、したがって、めったにないような非常事態を想定した備蓄は余りたくさん持ちたくないという気持ちはわからないでもないんですが、二月十六日から京都議定書が発効して実は文明が変わりました。

 水と安全がただだと思っている人は今余りいないでしょうが、まだ空気はただだと思っている人が大部分なんですが、二月十六日から空気に値段がつきました。もう既にEUのマーケットでは排出枠の取引が行われていて、CO2一トン当たり今七ユーロ、千円ちょっと。それから、各事業所ごとにこれだけ年間出していいですよという枠が、今EUの政府が決めているのが一万二千の事業所で、それぞれ排出枠を与えていて、一年後に報告をするんですが、もし与えられている枠を超えると一トン当たり今五千四百円のペナルティーを払わなくちゃいけない。だけれども、EUの政府はなかなか賢くて、ペナルティーを払ってもいいし、政府から排出枠を新たに買い足してもいいですよと。当然、五千四百円より、今千円で枠を買えますから、オーバーした事業者はみんなそれを買うわけですよね。そうすると、政府は予算を一銭も使わなくて、どうやってももうかるようになっているんです。

 そういうふうに二月十六日から世の中が変わったものですから、私は、バイオマス利用というのが今までと違った付加価値を持ったんだと思います。農林水産省もバイオマス・ニッポンのかけ声のもとにバイオマス利用を進めていると思いますが、だから、今のような、備蓄米が二年たって古くなったものは食用マーケットに回さずに、せっかく二月十六日から文明が変わって新たな付加価値もつくわけですから、バイオマスとして使うことにもっと注力すべきではないかというふうに思います。

 例えば、新日鉄が、米からつくったアルコールを燃料にまぜて使いますといえば、これはそれだけ排出を削減したことにつながりますから、それはそれで十分価値を持つ。多分、マーケットが成熟してくれば、米からつくったアルコールは、アルコール本体は四十円です。しかし、CO2の排出枠として五円の価値があります。四十五円で、二種類の価値がついたような取引がしばらくたつと出てくると思います。

 しかも、後者の部分、当初は五円ぐらいでスタートするかもしれない排出枠の値段は年とともに上がる。アルコールは四十円かもしれないけれども、排出枠の方は五円から始まって、十円になり、十五円になりという、バイオの燃料とかというのはなかなか今後楽しみな素材なわけですね。ですから、その意味では、ぜひ農水省にこのバイオマス利用にこれまでと違った観点から力を入れていただきたいというふうに私は思います。

 ところが、これまでのパンフレットなんかを見ると、農林水産省が進めているバイオマス利用は、ほとんど廃棄物、畜産廃棄物とか林産廃棄物とか。農水省のバイオマスは、あれはバイオマスじゃなくてゴミノマスだと言われている。もっときれいな素材を使って、非常に良質なバイオプラスチックとか、十分ガソリンにまぜて使えるアルコールとかということに力を入れていただきたいと思います。

 最近、そういう意味では新しい試みとして、備蓄米のうち二千トンを上限として、バイオエタノールやバイオプラスチックなどとして放出することを決めたと聞いていますが、ぜひこの方向で御努力いただきたいと思いますが、この枠、二千トンというのは、今八十万トンぐらいあって、カドミウムで汚染されてちょっと食べられないぞというのが三十七万トンぐらいあると聞いておりますが、ぜひこの二千トンという枠を今後拡大していただきたいというふうに思いますが、拡大する計画はおありなんでしょうか。

村上政府参考人 お答えさせていただきます。

 現在、農林水産省としまして、政府所有の国産米のうち、長期間保有しているもので主食用としては向かないものにつきまして、約二千トンを試験的に入札販売する、今先生がおっしゃったようなバイオ、生分解プラスチック、あるいは燃料用のアルコールなどについて新しい需要があるかどうか、こういうことでアナウンスをさせていただいたところでございます。

 先生おっしゃるように、これがマーケットとして、あるいはそういう市場が成長していくかどうかというところはまだ我々も見きわめがつかないところでございまして、そういう需要が、今回の試験的なものでどういう結果が出てくるかということについてよく見ていきたいというふうに思っております。その上でまた検討していきたいと思っています。

鮫島委員 バイオプラスチックは、生分解性、自然界でも分解するというので、これは長所でもあるし欠点でもある。今、富士通がパソコンのボディーに生分解性のプラスチックを使っていますが、かなり苦労したようでして、そのままだとパソコンが腐っちゃうと。腐らないようにしなくちゃいかぬというのでかなり苦労をしたようですが、こういう分野での研究開発は農林水産技術会議の方ではどんなふうになっていますでしょうか。

西川政府参考人 今、米でん粉を使ってのバイオプラスチックというお尋ねでございますけれども、実はこの分野、私どもの研究開発は平成十六年度から新たに着手しているところでございまして、実際、今、緒についたという段階でございますけれども、このバイオプラスチックがより安価に使えるようにということで、製造コストの低減に向けた技術開発に取り組むこととしているという段階でございます。

鮫島委員 最後に大臣からひとつ、このバイオマス利用にかける意気込みをお伺いしたいんですが。

島村国務大臣 今のお答えをいたす前に一言だけ。

 先ほど御指摘になった緊急時の備蓄について、何も気象条件だけじゃないぞという御指摘、まさにごもっともだと思いますし、私は、内閣の中で、もう一度この問題をきちっと詰めて、いい方向に持っていきたいと。既にそういうことの検討がなされておることは承知いたしておりますが、内容について承知いたしておりませんので、まず申し上げます。

 また、バイオマス、まさにゴミノマスだというようなお話がちょっとありましたけれども、確かに、今までの段階では、食品廃棄物とか家畜の排せつ物など廃棄物系の利用が先行いたしておりますが、バイオマスは、これからはそういう廃棄物系だけでなくて、原料として質の高い農作物なども大いにその総合戦略の中へ組み入れていく必要がある、そういう認識を持っております。

 今後、廃棄物系や農作物なども含めまして、我が国が有するあらゆる種類のバイオマスを十分に活用していけるように、コスト削減に向けた技術開発を進めるなど、施策を充実してまいりたいと思いますし、きょう承ったことごと、大変勉強にもなっておりますから、ぜひ活用させていただきたい、こう思います。

鮫島委員 ぜひ備蓄とバイオマス利用というのをセットでお考えいただきたいと思います。ありがとうございました。

山岡委員長 次に、小平忠正君。

小平委員 おはようございます。民主党の小平忠正です。

 先般、大臣が当委員会で所信の披瀝がありました。私は、それを拝聴いたしまして、そのとおりになったらいいなと大きな期待を持ってお聞きしておりましたが、まずそうならない、そんなことが先に頭に浮かびましたので、そういう危惧の念を持ちながら、しかし、島村大臣も二回目の大臣登板です。十分な政治的な経歴、経験を背景にして、東京都出身であられますけれども、農業についての造詣も深く、頑張っていただくことをまず期待申し上げます。

 余り褒め過ぎると与党質問になってしまいますから、私は、本題に入ってまいりますが、実は先般の所信の披瀝におきまして、今後の農政推進の基本方向、これを定めるものとされた新たな食料・農業・農村基本計画の見直し、この策定方向についてのお伺いをしたいと思っております。

 大臣は、所信の中で、個別問題に入る前に、あえて、これまでに遅々として進まなかった農政改革を、時代の要請、国民の期待に速やかにこたえるためにこれまで以上に加速をする、そういう方針を明確に出されました。スピード感という言葉も言われていますね。そういうスピード感を持って各般の政策改革を推進していく、このように申されました。私は賛同です。ここまではエールを送りたいと思います。

 さてそこで、この農政改革の焦点であります担い手の明確化についてでありますが、大臣は、認定農業者制度の活用、小規模農家や兼業農家等も参加し得る集落営農の組織化、法人化の推進を掲げて、品目横断的施策、担い手の経営に着目した安定対策への政策の転換を進めるとされております。この点は、私が従来主張しております専業、兼業を峻別しながら日本の農業に見合う農政に転換していくという、そういう方向では私の持論とも一致しておりますので応援をしたいと思っております。しかしながら、大臣の所信では、基本計画の策定によって今後の政策の展開の方向を明確にすると言われながらも、その肝心かなめの具体的な担い手像については何らその姿が見えておりません。

 農水省のさきの説明によりますと、新たな経営安定対策の対象経営の規模要件や支払い単価水準などの具体的な内容は、十九年産からの導入、これに向けて予算化をしていく、そういう段階で確定をしたいというお考えだそうでありますが、政府みずから農産物貿易のグローバル化等が進む国際情勢のもとで、我が国農業の生き残りをかけた、そういう農政転換、こう大きく銘打った割には、やはりスピード感が、大臣はそうおっしゃったけれども、私はそのスピード感は全然感じられない。これは私だけでなくて委員の皆さんがそういうふうに受けとめているんではないかと思います。

 また先日、二月四日ですか、行政と農業団体が一体となって担い手となるべき農業経営の育成確保を図るとして、「平成十七年夏に向けた担い手育成の重点方針」なるものがまた公表されております。その取り組みの冒頭の項目として「地域の担い手の認定農業者への誘導」という項目がありますが、これはいまだ姿も形も見えない。急ごしらえで、やみくもに認定農業者をふやそうという、そういうことになりかねない。それではいたずらに農業者の不信をあおるだけだ、このように強く指摘をしなきゃなりません。

 国民のコンセンサスづくり、これも大事であります。しかし、さることながら、肝心の農業者の信頼を得るためには、新たな制度の対象者とはいかなるものか、明確にすることが必要であると思います。それは、基本計画骨子案にある認定農業者や経営体としての実体を有する集落営農組織であればそれでいいのか、具体的にどのような要件を設定しようとしているのか、そんなことを含めて、大臣の決意をまず冒頭にお伺いしておきます。

島村国務大臣 いわば農業に対するいろいろな取り組み全体について、スピード感が少しく乏しい、こういう御指摘もありますが、正直申して、私は、今から二十二年前に農林水産政務次官をいたしまして、平成九年からは農林大臣一期目を務め、今回またお務めということでございますが、これだけやってきてつくづく思うのは、農林水産業を取り巻く国際環境、また国内環境が極端に変わってきたと認識を持っています。

 国際的にはどう変わったかというと、もう今やボーダーレスの時代である、そして国際分業の時代だから、いわば小農業生産国は、もう農業なんかやめてしまったらどうだ、工業でもうけたらよいというような意見が結構席巻いたしておりまして、いわば我々の特殊事情に対する配慮とか同情というのがおよそ期待できないぐらい厳しい環境が一方にある。

 また国内的には、御承知のように、農業を、どれもこれもすべて一括にしていわば援助をしていくということに対する国民の理解というものがかなり後退してしまっている。例えば、先生は北海道ですし、あるいはもう一つは沖縄、例えばそういう極端に厳しい自然条件と戦っている地域の農業、あるいは我が国は四二%は中山間地域でございますし、農家戸数でも四三%を占めますが、これらの地域の農業もまた、国家のこれからを考えますと絶対に必要だという面があります。

 しからば、農業に携わる人はすべて保障され、いろいろな意味で、いろいろな国の援助等が必要かというと、それをやっていたのではやはり国民の理解が必ずしも得られない。そして同時に、国際競争力ということを頭に置いた場合、自立する農業を考えた場合にも、やはり今の状況で、今までどおりにやっていくということはもう許されない段階に来ている。

 そこで、すべての農家、農業を対象とするのでなくて、真にやる気と能力のある、新しい時代に向かって自立しようとする農業に対して重点的に援助をし、体質を強化し、そして同時に将来の展望を御自身たちにも持っていただこうというのが私たちの基本にあるわけであります。

 ただ、御承知のように、五年に一回の食料・農業・農村基本計画というのがございまして、これの検討が今いよいよ大詰めの段階に来ているわけで、三月中にはこの結論を得るわけでございます。これを待って私どもは次の新しいスタートをするわけでございますが、今までの流れその他を判断しながら、我々は新しい時代に向けた農業、農村の思い切った改革を進めようという意味において、今いろいろ先生御指摘になりましたけれども、私たちも決して内心じくじたるものも持っているわけではございません。十分とは決して申せませんし、農業の持つ特殊性というのは、御承知のように、一つの農業といっても、日本国内でもそれぞれの地域の実情というのは大きく異なるわけでございますから、一律には申せませんので、それだけに、少子高齢化等も踏まえて、簡単に結論が出て簡単にその方向に向かうという足取りはなかなか言うべくして不可能でありますけれども、しかし、私たちはあくまで前向きに将来への農業の改革を進めていきたい、こう考えているところでございます。

小平委員 確かに、我が国は島国で、国土もそう広くありませんが、しかし、農業の形態は多様であります。また、地理的条件も非常に異なっている。それは、今大臣がおっしゃるとおりであります。

 そこで、三月下旬に向かってこの見直しの策定がされるわけでありますけれども、きょうはその入り口の段階で、今まで進めてきたことが多々ありますので、それを私は含めながらお聞きしていこうと思っているんですが、基本計画が閣議決定の段階では、また改めて当委員会を開いて集中的に審議することも、委員長にも要請をしておきたいと思います。これは、理事会でまた後刻協議してください。

 そこで、今言われた中で、特に新たな経営安定対策、この対象経営要件、これをお聞きしたいのでありますが、今規模要件が基本ということについて、私もある程度理解できます。例えば、今政府が言っております水田経営についての現在の担い手経営安定対策、この規模要件であります北海道十ヘクタール、内地県四ヘクタール、それから集落営農、これは二十ヘクタールを超えたときに、そういうことでありますけれども、あの広大な地域であります北海道でさえ十ヘクタールの要件を満たすことは非常に困難な情勢が一方にありますね。

 そういう中で、政府の「農業構造の展望」等に示された理想の効率的かつ安定的な農業経営、これを前提にして現実の経営実態を無視していくならば、これはやみくもにそのハードルを上げていっていいのかという、そういうことを考えて、今真剣に規模拡大等に取り組もうとしている担い手ほど、農業に、言うならば絶望感というか見切り感というか、そういうものが植えつけられていってしまうと思うのでありますね。

 そこで、担い手増について、私は今までの論議にあるような規模要件、それのみで対象を絞るのではなく、肝心なことは、その農家の収入の基本がどこにあるか、言うならば、その農業者の収入の主体が農業収入であるならば、面積要件にこだわらずに、規模がその水準に達していなくても対象をカバーすべきじゃないか、そのように考えます。

 例えば、現在の担い手経営安定対策の規模要件を現況満たすことができないものであっても、将来の規模拡大に意欲を持って取り組んでいるならば、それぞれの地域において担い手として育成すべき農業者、農業収入がその収入の主体をなす農業者であれば、面積要件のみに頼ることはない、重ねて申し上げますけれども、そんなふうに思いますけれども、これは局長が答弁しますか。

須賀田政府参考人 新たな経営安定対策の対象経営でございます。

 私ども、この対策の目的とするところは、やはり効率的かつ安定的な農業経営、すなわち、生涯所得において他産業並みの所得を上げ得るような経営を育成して、そういう経営が相当なシェアを占めるような構造を実現していく、ここに目標があるわけでございまして、そういう経営を目指す経営を対象にしたい、抽象的に言えばこのような考え方でございます。

 やはり、他産業並みの所得を上げ得る経営を目指す経営は何を見たらいいのかということでございまして、先生言われたような収入の面もございましょう。それから、生産方式でございますとか、経営管理はどうしているのかということもございますし、将来構想、計画としてどのようなものを持っているか、やはりそこは少しチェックをさせていただきたい。一方で、現実の農家のやる気と意欲をそぐようなものであってはならない。かといって、構造改革にマイナスになるようなものであってはならない。

 いろいろなことを考えながら今検討しているわけでございまして、一つは、やはりそういうものとして認定農業者という制度がございますので、これはまず基本にしたいと。それから、集落営農につきましても、経営体としての実体を有しておりまして、将来他産業並みの所得を上げるような経営体として発展する可能性のあるもの、これについても対象としていきたいと。あと、具体的にどういう要件を課すかというのは、現在いろいろな地域の実情を見させていただいておるところでございまして、そういうものを踏まえて、具体的な条件をまたことしの夏以降議論をしていきたいと考えております。

 先生言われるように、収入の面で、過半の収入を農業で上げているという経営を担い手とすればいいではないかというお話でございます。

 一つのお考えではございますけれども、そういう条件にいたしますと、例えば高齢の農家の方で専業経営と言われる方もそういう要件に該当するわけでございまして、これを担い手と位置づけるのはちょっと難しいのではないかという問題もございますし、技術的にも、個別の経営の収入の中で農業収入がどれだけあるのかということを把握するのも非常に難しゅうございますので、それだけではなくて、やはり総合的に経営をとらえていく必要があるのではないかというふうに考えております。

小平委員 確かに、この国は、特にヨーロッパ諸国と違って、専業、二種兼、いろいろな形態が複雑に交錯していますので、局長が言われるように難しいことは私も承知しています。しかし、私が感ずることは、農水予算は今後減ることはあってもふえることはないでしょうね。では、それをどう有効に活用するか、そういう観点に立った場合、やはり政府が言うように、絞り込み、そうしなければ乏しい農水予算は有効に使えない、それは私も理解できます。しかし、それでは、全中の背景とする二種兼地帯は納得しませんよね。きのうも全中の諸君とちょっと話をしましたけれども。

 そこで、私が提案したいのは、やはり高齢者はその範疇ではないと今言われましたよね。それから、農業収入をいろいろと判別するのは難しいと言われた。そこも私は理解できます。であるならば、いわゆる時限立法的にとらえて激変緩和措置ですよ。このスタートにおいてはそういうところもカバーをしていこう、そして、将来は政府が言う方向、これに沿っていかなければ将来的には対象から外れますよ、そういうことも段階的に盛り込んでいけば、いわゆる混乱を静めながら、方向に向かっていけると思うんですね。そういうことも含めて、今その見直しに向かっての作業途上でありますから、ぜひ検討していただきたいと思います。

 それでは次に、昨年の委員会でも、例の米の稲得、それから担経、これは私は、はっきり言って政府のいわゆるチョンボだと思う。瑕疵があった。政府は、この制度は各府県に自由裁量で任せたんだからおれたちの責任じゃない、そう言われた。いろいろと主張はありましょう。しかし、実際にはその政策の欠陥によって単に生産者が打撃を受けた、これはもう事実であります。きょうは少し穏やかに話をします。余り罵倒しては立場もないでしょうから、穏やかにやりますけれども、ちょっとそれについて復習をしたいのであります。

 そういう中で、この制度に、特に全国でも加入率の高い北海道ですら不信が募って、促進どころか加入拒否の声さえも聞こえていると。また、変な話、集荷円滑化対策、これだって全休農家ほどメリットが多いでしょう。そうでしょう。まじめに取り組んでやっていこうという農家は、これは大した恩恵を受けていない。では、全部休んじゃえ、そしてほかに仕事に行ってその分もらった方がいいという、最近はこういう不況によって出稼ぎも仕事も余りない、そういう状況はいっぱいありますけれども、こんな状況ですね。

 そこで、この収入、所得の変動による影響の緩和対策の基本的考え方として、現行の担い手経営安定対策をベースに考えておりますね、政府は今。私は、そこのところが機能していないと重ねて申し上げます。

 したがって、あの指摘を受けて、今回は農水省も政府特例をつくって十七年産に対する生産者の制度加入拒否を食いとめよう、こんな努力がされておりますね。そこで前回提示されました。しかし、はっきり言って余り評価はよくありません。

 例えば、政府の特例案では、もし米の作況を一〇〇とした場合に、当年産価格は、言うなれば、あの制度の方程式に乗っていきますと、一万三千二百円で担い手経営安定対策が発動します。これは、基準収入十二万三千二百八十円、こうなりますね、過去三カ年ですから、あの特例によって。当年産収入は、一万三千二百円の段階でいいますと、七千百二十円減の十一万六千百六十円です。そうなると、これに対する補てん金はわずか二百五十円。これは、生産者の拠出金の十アール当たり千百三十円の範囲内ですよね。どこにメリットがあるのか。また、作況が少しく悪く九八とした場合、この場合には四千百四十円減になりますので、補てん金は二百七十円、これは当年産価格が一万三千八百円で発動しますけれども、二百七十円。

 結局、平年作であろうと不作であろうと、いずれの場合であっても、生産者の経営安定対策に対する期待からは遠いものである、このように言えると思います。

 今回の特例案が示された後の異常年である十四年、十五年が除かれたことは一応評価できますが、そもそも制度設計において、再生産可能な価格と収入を考慮する必要がやはりあるのではないかと私は強く感じますね。

 そこで、今までについての見解を聞きたいのでありますけれども、さらに一つお聞きしたいことは、一つの考えとしては、十六年産に対する対策が発動しなかったあの去年の経緯を反省して、十六年産に係る生産者拠出金を、今年度、十七年度の拠出金として充てることはできないかと。一つの窮余策ですね。そういうことを含めて生産者からは切実な声も聞こえておりますが、これらを含めてこの制度についてどうこれからやっていくか、答弁をいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 米の担い手経営安定対策、米の収入が一定程度下がったときに補てんする仕組みでございまして、その資金を国と農家が積み立てるということでございます。問題は、この設計上、いかなる事態に備えてどれだけのお金を積み立てておくかということだろうと思うんです。

 私どもの今の考え方は、三年の政策の期間を見通しまして、毎年度、稲作所得基盤確保対策、下の対策とあわせて基準収入の一二%の変動に対応し得るものを、通常の変動なんですけれども、これを国と生産者が三対一の割合で積み立てよう、こういう考え方でございます。これを毎年度積み立てていこうと。その年使わなかったお金は翌年に繰り越すわけでございますけれども、翌年もその割合で積み立てまして、通常以上の変動があった場合にも対応することができる、こういう考え方で設計をしているわけでございます。

 実際、昨年の経験でいきますと、大きな台風に襲われたわけでございまして、単年度で積み立てたお金でも足りなかったというようなケースもございます。一応、そういうことで積み立てて、制度設計しておりますので、そこのところは生産者の方々にも御理解を願いたいと。三年後に余りましたらお返しする、こういうことになっておるわけでございますね。

小平委員 私は、今の稲得にしても担経にしても、やはりこの制度の決め方にそもそも何ら救済的な方向が見えない、これが一般共通の見方でありますね。

 したがって、今の時代、農業というこの世界、当然消費者の強い支持と理解がなければやっていけない、これはもう言うまでもありませんけれども。しかし、実際に実践しているのか。この人たちがきちんとやっていけなければ、良質で安全な食料の提供はできないと思うんですね、これはもう釈迦に説法です。

 であるならば、あなたたちは優秀な官僚集団ですよ。まず、結論の数値を先につくって、逆算して入り口に向かっていけばその方程式も変わってくると思うんだよ。本当に痛みがわかっているのかなと。霞が関、永田町に鎮座して、本当に農業の現場の実態をわかっているのかと。表現を変えましょう。ここにうごめいてと言うのはもっと悪いね。私は、本当に現場の痛みをわかっているのかとまじめにお聞きしたいと思いますよ。また改めてこの基本計画については集中審議があると思うので、きょうはその問題、これについては次に進みます。しかし、納得していませんよ。

 さて、三位一体改革のことについてであります。これについては、この後、堀込さんが詳しく質問に立つ予定でありますので、私は一点。

 昨年の委員会での法改正があった、言うなれば、農業改良助長法ですか、このことを委員会でもやりましたが、これについては、農業改良助長法並びに農業委員会、これに対して法律の一部を改正する法律案、これは十二時間四十分にわたる質疑、参考人も招致をして、審議を尽くしましたね。これについてのことでありますけれども、農水省としても、農業委員会に関する懇談会や普及事業の在り方に関する検討会等々、関係者各位による貴重な提言を受け、存分に練り上げた上で、政府提出法案として上程されたわけですね。加えて、この委員会審議の過程を経て、両案ともに附帯決議が付され、特に農業改良助長法においては、交付金については、国の責務、国と都道府県との役割分担の重要性、これを踏まえた上で、そのあり方を検討すること、これが決議をされました。

 ところが、その後、六月四日に閣議決定された基本方針二〇〇四では、「国庫補助負担金の改革については、税源移譲に結び付く改革、地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する改革を実施する。」との方針のもとで、移譲対象補助金の内訳のトップに協同農業普及事業交付金が挙げられたのであります。

 そして、昨年十月、国と地方の協議の場においても、農水省は、まずは三兆円削減ありきという小泉流三位一体改革における本末転倒論議、地方への負担を押しつけ、改革に余り抵抗もなく、しまいには、税源移譲を行っても必要な事業が確実に実施されると判断される事業を対象としたので農林水産施策の実施には支障がない、こう言われたようでありますね。

 それでは、委員会におけるあの慎重な審議を経て、あえて決議まで付して通した法改正、この成立からわずか半年、しかも、四月の改良助長法の改正の施行前にこのような決定がされるのでは、これこそまさしく猫の目農政ここにきわまれりじゃないですか。

 そこで、各自治体では、この決定を受けて、早速、人員削減の好対象として普及事業をとらえ、また、普及員手当についても、ただの調整手当ぐらいにしか考えていない、どの県でも削減されているのが現状のようであります。

 四月の施行によって、せっかく新しい資格試験も始まるというやさきに、現場職員の意気も下がる一方じゃないでしょうか。また、受験資格を得るまでの見習い期間の身分も不安定な中で、このままでは普及指導員を目指そうとする有能な人材がいなくなってしまう、そんな危惧をいたしております。

 大臣に、農林水産行政の最高責任者として、この経緯と結果については、当委員会に対して、また、農業、農村の振興のために農政の最前線、現場で奮闘されている普及指導員に対してどのように申し開きをするのか、まず大臣からちょっと簡潔にお聞きしたいと思います。

島村国務大臣 三位一体改革、これは地方分権の土台づくりといいましょうか、要するに、一歩前進の形で、これにかなり我々は鋭意取り組んだところでございますが、少なくも、御指摘の三位一体改革で税源移譲される事業については、地方自治体が適切な裁量を生かしながらも、確実に執行されるということが担保されることが大前提でございまして、我々は、そういう中にあって、都道府県の業務として定着していること、あるいは普及指導員の必置規制などにより事業の継続的な実施を担保する法制度が維持されていることなどから、いわば税源移譲して三位一体改革を進めるという形をとっているところでございまして、私ども、地方の農業の関係者に対してそれが何か御心配の種になるというようなこととは受けとめておりません。また、そういうことに対しては当然に配慮をめぐらせていくことが我々の責務でありますので、先生の御指摘に関して、私たちは同じことを考えているのかしら、こんなふうに感じています。

小平委員 今の答弁は局長が言っても、同じ原稿でしょうから、同じでしょうけれども、ただ、我々は地方分立を主張していますし、その方向には来ているんですが、しかし、問題は、政府の責任が軽くなったからといって、おらっちゃ知らぬ、端的に言って。そうじゃなくて、やはり適切な指導助言をしながらいかれることを要望しておきます。

 さて、時間も余りありませんので、食料自給率、これについてお伺いいたします。

 まず、六年前に農業基本法は改正されました。そして、食料・農業・農村基本法、こういうことになりましたね。かつての農業基本法は、この国の農業は、あの戦後の混乱期を経て、いわゆる発展していける、そういう大きな期待を背景にしてつくられましたね。しかし、三十数年たって、今、農業は非常に採算性の乏しい産業である、これは万人が認める方向になってしまいました、残念ながら。しかし、国の存立のためにはなくてはならない産業だ、この共通認識のもとに、今から六年前に法改正いたしました。

 当時、私も、当委員会の筆頭理事としてこの法案修正に参画をし、私どもは、政府案に対し欠けているところを修正させて通過させた経緯があります。

 そのポイントは、まず、政府案に欠けていた、農業生産を基本という状況でありましたので、私どもは、農業生産の増大を図ると。これは違いますよ、農業生産を基本と農業生産の増大を図るでは。その、増大を図るということを、これは第二条第二項です、修正させましたね。

 もう一点、今私がこれからお聞きします食料自給率、これも、政府の案では、自給率の目標は、国内の農業生産及び食料消費に関する指針としてという、そういう方向だったんですけれども、我々は、食料自給率の目標は、その向上を図ることを旨としと。向上を図る、ふやすことですね。それを旨としという、こういう修正が、政府はそれを受け入れて、そして三つ目は、行政が恣意的に進めるのではなくて、国会にこれを報告すると。

 そういうことも含めて修正案を通して、大事な農業の基本法を、あのときは共産党はどうでしたか、全党一致でしたね、それで、入り口は超党派でもってあれをスタートさせた経緯がありますね。

 そこを振り返ってみて、大臣、しかも政府は、今この国の自給率は四〇%と低い、これを五年後に見直す、そういうことを言われていますね。選挙もそう言われた。衆議院選挙、参議院選挙、戦った。これは公約ですよ。

 しかし、結果的には、最近何か言われていることは、さらに五年間先送りして、十年後に四五%を目指す。これでは基本法の理念から外れてしまうのではないか、そう思います。そう強く指摘をします。

 さらに、今回私が驚いたことは、こともあろうに、自給率をカロリーベースだけではなくて金額ベース、これを取り入れて併用してこれを出すと。何かその説明によると、野菜はカロリー計算すると低いから、あのように野菜農家が頑張っている、そういうこともしんしゃくしていくと、金額的には結構な額になるから、それで計算すると、何か一説では七四%ですか、そんなことをやられているようでありますね。

 官僚諸君、あなたたちは本当に悪知恵というか、そういうことについてはたけているわね。本当にその点利口だよ、たけている。でも、こんなことをやったら、ますます混乱というか、そして行き着くところは農政不信ですよ、また目くらましかと。

 やはり今までのカロリー計算でいって、カロリー計算というのは、人間が生きていくためのいわゆるカロリー計算をベースにしているんでしょう。人間、この農業、食料というのは、金額で生きているわけではないですよね。だから、カロリー計算をもとにして、どうやって上げていこうかということ、それを最大の柱にして進めていくのが農政じゃありませんか。まず、そこをお聞きしておきます。どなたが答えるんですか。

島村国務大臣 現行の基本計画、これはいわば基礎的な栄養でありますカロリーに着目したカロリーベースということでやってきているわけでありますが、その一方で、金額ベース、食料自給率の目標というものも参考としては示してきたところであります。

 しかし、カロリーベースの食料自給率は、それはそれなりに指標として非常に貴重でありますが、その一方で、今お話もありましたカロリーの低い野菜とか果実、こういったものがいわば国内の生産活動に適切に反映されていないという批判もいろいろ出たところでありまして、特に国産農産物の国内市場における経済的な価値を評価する指標として金額ベースのも必要である、こういうことが指摘されて、実は、カロリーベースだけでなくて金額ベースのものもしようということであります。

 カロリーベースをやめてしまって金額ベースというと、自給率がばかに高まったような感じがいたしますが、これは実態的に申し上げると、平成二十二年を目途に、今四五%を目指して一生懸命努力をしているんですが、なかなか思うようにいっておりません。簡単に言えば、いわば消費者の食生活がむしろ私たちの期待とは逆行しているわけでありますから、こういうことごとを含めて我々はしっかりした対応ができないと、この数値はとてもとても果たし得ないわけでありますから、私たちは将来に向かっては、あくまでカロリーベースの自給率は自給率として、一方で、金額ベースのものをつくって、生産者のいわば働きがいといいましょうか、そういうことの指標も今回新たにつくろう、こう申しているところです。これも従前からあったものでございます。

小平委員 そういう言いわけをつくられたようですけれども、それは大臣、誤解と混乱を与えますよ。私は、この自給率については少しく用意したんですけれども、時間がもう余りありませんので、次回にまた機会があれば質問しますけれども。

 大臣、自給率と言われるけれども、皆さんのお手元に参考資料が渡っていますね。ちょっとそれを見ていただきたいんですよね。二枚お渡ししました。まず、各国の食料自給率の比較、こう書いています。日本は一九七〇年六〇%が今四〇%。お手元に行っていますね。

 しかし、この自給率ということを、こんなことを言っているのは日本だけなんですよね。何か話を聞くと、韓国ではこういうことを計算しているようですね。これは、FAOの統計にのっとって、我が国政府が勝手に算出した各国の自給率でしょう。こんなことを問題にしているのは日本だけなんですよ。アメリカもヨーロッパも、いわゆるサミット七カ国ですか、こんなことは全然議論にならないんですよ、自給率なんてことは。何か、あたかもこれはほかの国も全部こういう自給率を設定して、それぞれの国会で議論しているかと思ったら、ないんですよね。この国だけなんですよ。そういう状況は、一つ確認、間違いないですね、それで。いや、これはその国からいただいた数値じゃないんでしょう。そうでしょう。時間がないから。

 それで、その次に私はもう一点、次の表をお配りした理由は、なぜこの国は自給率が低いかという問題。

 これは、自給率ということはいろいろ言われますけれども、やはり主体はその国の基幹作物です。この国は米です。欧米は小麦です。それにあわせて補完作物。日本なら小麦、大豆。また、欧米なら小麦を主体として、国によっては、米や大豆やバレイショ、あるいは粗粒穀物と言われています大麦やライ麦含めては、そういう世界ですね。それが加味されて自給率が上がっているんですよ。

 しかし、この国は、米が一〇〇、その作況によって豊作、不作がありますけれども、生産調整で抑えられている。米をつくるなと。そして、小麦や大豆が、小麦はこの国は一四%ぐらいですか、それから豆類が六%、大豆なんかは五%ですよね。このように非常に低い状況です。これがこの国の自給率を下げているんですよ。

 いいですか、ごらんになってわかるように、まず野菜は約八〇%いっていますね、八〇%。これはまあまあでしょう。果実は約半分だ、四四%。これはほかの国のもありますよね。ドイツなんかは果実は四一%だ、カナダなんかは一六%だ、輸入に頼っている。それから、幸いに卵は九六%。魚介類も五〇%。国によっては、ドイツなんかは二一%。まあドイツは魚の消費は少ないですけれども、イタリアのああいう多い国でも二八%。フランスも四〇%。こういう状況ですから、そこはまあまあいっていると私は思うんですよ。

 問題は、小麦と大豆です。この国の補完作物、小麦。それで、政府も、最近は小麦の生産も増大していると言っている。しかし、それはめん類に適用できる小麦の世界ですよね。今、豪州のASW、これはブレンド小麦ですけれども。大事なことは、今、日本人の食生活で大きな範囲を占めるパン類、パンに使える小麦、この生産が日本は弱いんですよ。

 であるならば、公金、税金を有効に使うためには、今いろいろな省庁でいろいろな不祥事が起きていますね。この我が国の優秀な技術を、さらに予算と人を投じて、このパン類に使える小麦の生産に、しかも、小麦というのは、日本のようなモンスーン地域、湿度の高い国ではなかなか不適と言われていますね。やはり小麦は乾燥地帯、ドライ、ウエットの、あの地域がそれは適していますよ。しかし、改良すればできる。そこにもっと政府は力を入れて小麦の生産をふやせば、おのずから自給率は上がってくるんですよ。そのことを指摘しておきたい。

 それからもう一点、先ほど鮫島委員からも指摘があった備蓄の問題です。これは大事な問題です。

 私どもは、今、備蓄のこの百万トンなんていう少量ではなくて、MA米が一方ではあるけれども、もっと棚上げ備蓄にして、我が党は三百万トンを主張していますけれども、米の生産調整もやめて自由につくらせる、そしてその剰余分が輸出や海外援助、あるいは古くなれば飼料に使うとか加工用とか用途を考えていくこと。

 それはなぜかというと、今私が配った資料の中で、欧米諸国は食用穀物、ごらんになってください、カナダは一八九%、フランスは一七三%、ドイツは一二〇%、アメリカに至っては一四九%でしょう。その国の消費以上に小麦をつくらせているんですよ。一方、この国はかちんと抑えちゃっている。備蓄がどうこう、あるいは倉敷がどうこう、倉庫の保管がどうこう言うけれども、国としてそこのところをしっかりしないからこうなっちゃうんですよ。

 そこで、備蓄という話を続けてします。

 実はこれは分けて聞きたかったんですけれども、私も確認しましたら、大臣、備蓄なんという言葉はないんですよね。この国だけですよね、備蓄なんて言っているの、先進諸国で。これは、農林水産省調べですから、平成十六年一月現在、備蓄の概要、米国なし、カナダなし、フランスなし、ドイツはパン用穀物を一カ月分目標、イギリスもなし、豪州もなし。なぜないか。備蓄なんかする必要ないからですよ、生産者にきちんとつくらせているから。だから、一朝有事の際に基幹作物が枯渇して国民がパニックを起こす、そんな要因なんかないんですよ、十二分につくらせているから。この国はつくらせていないから備蓄ということが起きるんですよ。

 備蓄というのは世界共通語じゃないんですよ。まあ韓国とか一部の国にはあります。スイスとかはありますよ。私が問題にしているのは、いやしくもこの国はサミットの参加国です。世界一等国を自負しているんですよ。その国が、我が国だけが備蓄なんて言っているんですよ。こんな状況を、あえて私から申し上げておきます。これは世界共通語じゃない、お粗末なこの国の農政によって起きた言葉だと。いや、大臣、首を横に振るけれども、では、アメリカは備蓄というあれはありますか。備蓄なんかないんですよ。それなりのあれをきちんとつくっているから。

 そういうことを踏まえて、生産量と備蓄を分けないで、備蓄も生産も一体にして、きちんとした生産体制をつくる、それについて国民の理解、コンセンサスを求めていくという、そういう方向にいかなければいかぬと思う。

 時間が超過しましたので、簡潔に御答弁いただきたい。

島村国務大臣 確かに、備蓄は大事ですし、我が国の特殊事情といえばそうかもしれません。

 しかし、御高承のとおり、例えば、ヨーロッパ諸国は、お互いに大農業生産国との隣り合わせもありますし、例えば、一〇〇%ない食料自給率のイタリーにしろイギリスにしろ、穀物自給率、主食用の穀物についてはそれぞれ一〇〇%を上回っている。全体的にとらまえても、お互い地続きの土地で自給率が確保できるという非常に強い立場を持っている。

 一方で、アメリカにしても、北米大陸あるいは中南米大陸、それぞれに隣接する地域あるいはそれらの関係で、かなり農業生産国は大きなものを控えている。

 一方で、日本の場合は、例えば、日本もそうですが、韓国もそうです。最近では中国ですら食料輸入国になろうとしている。となると、何かを不足しているからすぐに手に入れようとしてもなかなかできないですから、当然のことに、有事に備えて備蓄が必要だということになります。

 また、備蓄については、我々がやみくもに決めているのでなくて、消費とか生産とか流通とか、それぞれいろいろな分野の方々の代表者による備蓄運営委員会によって約一年間これが検討された結果、一つの方向が示され、それに従って備蓄を行っているということでございまして、いろいろ申し上げたいことはたくさんございますが、いわば、きょうは先生とともどもに次に送りたい、こう思います。

小平委員 簡潔に申し上げます。

 誤解なきように。私は、備蓄は必要ないと言っていませんよ。備蓄は日本には必要なんですよ。今大臣がおっしゃったように、ヨーロッパ諸国は、EUも形成して、お互いに隣国同士が補完し合っていると。そのとおりですよ。我が国はそれがない、残念ながら。我が国だけだ。だから、備蓄が必要なんだと。

 もう一点言うならば、今大臣が言われたヨーロッパは、補完し合っているけれども、協力し合っているけれども、しかし、各国とも国民の消費以上の生産をしている、お互いに。さらにそこに協力関係ができている。これは強固ですね。この国にはそれがない。この国だけだ。しかも生産量が限度ぎりぎりだ。だから備蓄が必要だ。もっとしっかり備蓄をして、そしてこんな論議はしなくてもいいように体制を整える。そのことを私は言っているのであって、おわかりでしょうね。

 終わります。

山岡委員長 次に、堀込征雄君。

堀込委員 堀込です。

 きょうは、三位一体を中心とした農林予算とあるいは基本計画について質問したいわけでありますが、ちょっとその前に鯨の問題を質問したいと思いますので、質問順序をちょっと通告とは変えますが、よろしくお願いしたいと思います。

 今、農業の国際交渉、WTOやFTAやEPAだとかいろいろ重要な国際会議があるんですが、もう一つ、鯨の問題について、この六月ですか、IWCの総会が韓国の蔚山で開かれる、こういうことになっていまして、今までの歴史を見ても、なかなか日本の主張は通りにくい状況になっています。しかも、ことしは、南氷洋の鯨類の捕獲調査、第二次の調査に移行するという大事な年でもあると思います。この会議に臨む基本的な考え方を、まあ恐らく反捕鯨国との対立がますます深まるんだろうというふうに思いますが、どういう姿勢で臨むか、最初にお伺いをしておきたいと思います。

田原政府参考人 お答え申し上げます。

 捕鯨問題につきましては、我が国は従来から国際捕鯨条約の目的に即しまして、鯨類は重要な資源であること、科学的根拠に基づきまして持続的に利用すべき、こういった基本的な考え方で捕鯨再開に向けた取り組みを展開しているところでございます。

 ことしの六月に蔚山で次期五十七回目のIWC総会が開かれますけれども、こうした我が国の主張に対します理解を示す国、こういったものは結構ふえておりまして、近年では、いわゆる持続的利用推進国と反捕鯨国、勢力はかなり似通ったような状況になっているという情勢にもなりつつあるのではないかというふうに思います。

 こうした中で、今回の委員会におきましては、私どもは、一つは、捕鯨再開に向けまして、いわゆる新しい管理方式、RMSと言っていますが、この早期完成に向けて努力する、これが一つ大事ではないかというふうに思っております。

 それからもう一つは、今先生が御指摘になりましたように、第二期の南氷洋の捕獲調査に今度から入っていくわけでございまして、科学的知見のさらなる充実を図るということで、この次期IWC会合におきましては、次期調査計画を提出いたしまして、引き続き調査を実施していきたい、かように考えている次第でございます。

堀込委員 日本の同調国がふえてきたというふうにおっしゃいましたが、私ども、毎年関心を持っているんですが、なかなか反捕鯨国の勢力というのは強くて、まあ小さな国と言っては失礼ですけれども、だんだん、だんだんふやしたり、努力は認めるんですが、どうもうまくいっていないと。

 このままではIWCの存在そのものが、科学的な、基礎的な考え方も全然なしに、感情的な論議で終わっているという経過を見ても、僕は、IWCの脱退ということも一つ視野に入れて新しい仕組みをつくらないと、何か感情的な国際的な反捕鯨団体に牛耳られた、それによって何か捕鯨の問題がすべて取り仕切られるという国際関係になっているんじゃないかと。

 そういう意味では、負担金もたしか一番多いんですよね、日本が。負担金だけ払うけれども、どうも日本の主張はさっぱり通らない。それが科学的であればいいんですけれども、私ども見る限り、非常に非科学的だという実態があるわけでありまして、この脱退ということも少し視野に入れたらどうかなと僕は思うんですが、大臣、いかがですか。

島村国務大臣 お気持ちはよくわかります。私も、ある意味で、個人としては同じ気持ちに走りたいのですが。

 ただ、私自身も、大臣に就任してすぐこの問題をちょっと聞きましたら、最近、今お話ありましたように、確かに捕鯨を再開すべきだという意見の国が大分ふえてきて、勢力がほぼ拮抗する段階までは来ていると。ただ、捕鯨再開に向けては四分の三の賛成が必要なので、その勢力にはまだ及ばないというのが一つ。

 特に私も腹立たしく思うのは、全く科学的でない。例えばミンククジラなどは、最近かなり数がふえ過ぎていて、網が大分損傷を受けている、こんなような指摘もあるところですから、我々は、これからも国際社会できちんとそのことを訴えながら、数のふえることに最善を尽くすのがとりあえずの道。どうしてもこれがらちが明かないのであれば、これは当然に脱退ということも考える必要がある。

 ただ、脱退を初めから慮外に置いているわけではございません。この点だけは、よく状況を判断しながら、これからの対応に努めたいと思います。

堀込委員 次、蔚山会議の対応を見ながら、場合によれば大きな政治的決断が要るんじゃないかという気がしますので、そのような対応をお願いしたいと思います。

 それでは、予算委員会も大詰めに来ていますが、今年度の農林予算を中心にちょっと質問をさせていただきます。

 農林予算の総額が、三兆円を割って二兆九千六百七十二億、公共が一兆三千億余り、非公共で一兆六千億余りというこの農林予算書を見ているんですけれども、どうもわかりにくいんですね、役所の予算書というのは。民間会社であれば、大体、貸借対照表とか損益計算書があって、利益が上がっているかどうかというのはわかるんですけれども、利益はともかくとして、少なくも管理費ぐらいは国民にわかるようにした方がいいんじゃないかというふうに思っているんです。

 そういう意味で、最初に、約三兆円の予算のうち、農林水産省の人件費が占める割合、あるいは管理費を含めた割合、あるいは農林水産省の職員は何人いて、どういうことになっているんでしょうか。

小林政府参考人 お尋ねの人件費、管理費でございますが、私どもの予算総額、十七年度二兆九千六百七十二億円でありまして、その中の人件費でありますが、これは、私どもの職員給与とか、それから審議会などの委員に対する手当などから成りますが、一千八百八十二億円で、全体の六・三%であります。それから、管理費は、これはいろいろな一般的な事務処理費でありまして、旅費とかあるいは物件費から成りますが、これは七百六十七億円で、予算総額の二・六%を占めているということでございます。

 いずれも、これは私どもの施策を展開していく上での基礎になります重要な予算でありまして、当然のことながら、その適正な執行に努めるということであります。

 確かに、こういった予算の説明につきまして、私ども、全体の政策体系を明らかにしてその中の方向づけた予算の内訳を示しておりますが、なかなか、こういった基礎的な予算については必ずしも明確に御説明しておりませんけれども、おっしゃいますように、いろいろな意味で、これから効率化とかそういったものが求められておりますので、また来年度以降、予算の説明の際には十分工夫をしていきたいと思っておるところでございます。(堀込委員「人の数は」と呼ぶ)失礼しました。

 私ども、今、定員三万人でございます。もちろん、特別会計、一般会計含めてでございますけれども、三万人の職員であります。

堀込委員 大体わかりました。三万人ですが、半分は現業職員といいますか、旧食糧事務所、統計事務所、林野庁という、大体そういうことになっているんだろうと思う。

 そこで、昨年の十二月二十四日に行政改革の方針が閣議決定されておりますが、とりわけ農林統計の問題について決定をされているというふうに伺っております。こういうものを含めて、今後、民間会社ならば、人件費とかあるいは管理費とか、スリム化を図るのでございますが、これに沿った、閣議決定に沿った具体策というのは今検討しているんでしょうか。

小林政府参考人 まず、昨年十二月決定の政府全体の閣議決定のポイントを申し上げますと、一つは、スリムで効率的な政府を実現するために、地方支分部局などの事務事業の抜本的見直し、あるいは情報技術の活用によりまして内部管理業務の合理化を図る、その中で、十七年度から五年間で総定員の一〇%以上を削減する、これが一つの目指す事項となっております。

 また、あわせまして、独立行政法人の組織、業務全般の見直し、行政効率化の推進、公務員制度改革、公益法人制度改革、規制改革、地方分権の推進など、各般にわたりまして各府省共通に取り組んでいく、こういったことになっているわけでございますが、この中で、私ども農林水産省といたしましては、この方針を踏まえまして、例えば農林水産統計の抜本的な見直しでありますとか、それから、情報部門のアウトソーシングの推進、こういった要請がございますので、そういったことを踏まえながら、地方支分部局の事務事業の見直しを進めていく必要があると考えております。

 また、ことしの夏には、政府全体の定員削減計画の改定というスケジュールになっておりますので、こういった政府全体の取り組みの中で適切に対応していくということを考えておるところでございます。

堀込委員 閣議決定で、今答弁のあった水産統計のお話あるいは情報のアウトソーシングの話というのはのっているわけであります。

 いよいよこの後、三位一体改革の質問に入るわけでありますが、小泉内閣の基本方針である、地方にできることは地方に、民間にできることは民間にということで、さっきの人員の話もそうなんですけれども、地方自治体の業務と農林省の地方事務所、地方支分部局の業務というのは、ある程度、人員も両方ともかなり多いんですけれども、これは、およそ県庁の農政課の職員ぐらい地方支分部局にいるんじゃないかという感じがするんですが、そういう意味では、地方分権改革を進めるに当たって、とりわけそういうところについて、もちろん雇用はちゃんとしなきゃいけないんでしょうけれども、そういう地方分権に当たっての人員の合理化とか行政の効率化とかいう点は検討する必要があると思いますが、どうでしょうか。

島村国務大臣 私どもとすれば、地方にいろいろな支分部局が多過ぎるという御指摘も、わかることはわかるんですが、私が就任して、また改めて調べてみますと、逆に、やはり地方のいろいろな細かい事情に触れるということになりますと、数が少ないと、全く上から想像して物を行うというようなことになってしまって、細やかな、いわば農業の分布に対する対応というものが現実にできなくなってしまう。だから、特に今回私はそれを痛感したんですが、昨年の例の台風とかあるいは地震とかありました際に、いわば激甚災の指定をしてほしい、地方からいろいろ声が殺到しましたけれども、この際にも、やはり地方にそういう部局があって、きちんとそれらに対する調査あるいは連絡のすべが全部できていたので、かなりこれが効率的に動いたということは指摘できると思います。

 ちなみに、今までは二カ月以上かかっていた激甚災が一カ月でできたわけでありますが、これも、ヘリコプターによる空中査察とその調査に基づく、こちらから出向いて、農政局と一体となってこれに対応したことがこれを可能にしたわけでございますので、結果的には、やはりこれは必要最小限のものなのかなと、逆に、私は認識を改めたところであります。

堀込委員 災害時の対応はあるんでしょうけれども、それでも、やはり分権をしていくということになるわけですから、とりわけ、事業を見直して、どういう事業を地方に移すかということはちゃんと検討していかないと、小泉総理の言う地方分権の姿ができていかないんじゃないかというふうに思うので、これはきょうはちょっと深入りはいたしません。

 そこで、三位一体改革の話に移ります。

 小泉総理の方針に沿って三位一体改革が行われて、税源移譲をやるもの、それから補助負担金の改革、あるいは削減とか、あるいは交付税改革が打ち出されたわけですね。小泉総理は、補助負担金約二十兆あったんですけれども、このうちの三兆円を、どの負担金を削減するか、地方六団体に丸投げしたと。地方六団体が真剣な議論を重ねて、十六年度ベースで二十・四兆円のうち、三・二兆円の十七、十八年度の削減案をまとめた、こういう経過があったわけですね。

 農林水産省関係では、公共で二千三百億円余り、非公共で七百五十五億円ですか、合計三千億を超える負担金廃止が地方六団体の案にある。これに対して、農水省は省を挙げて反論といいますか、いろいろな動きを見せるわけですね。

 大臣、この地方案に対する、どういう見解を持っておいででしょうか。

島村国務大臣 御高承のとおり、農林水産施策は、食料の安定供給の確保とか、あるいはまさに国土と環境の保全など重要な役割を果たしておりまして、その効果は、いわば食料の生産地や森林のある上流域のみならず、広く消費地や下流域にも及んでいることはお認め願えると思います。

 そこで、農林水産施策について、広域的な観点から国が責任を持って推進することが必要でありまして、地方六団体の提案に従って全面的な税源移譲を行うことには、私たちは適当でないという判断をいたしました。

 一方で、農林水産業は地域の自然条件等に左右されることから、施策の実施に当たっては、地域の自主性、裁量性、全く千差万別でございまして、これに十分対応することが必要でありますので、それらをフォローする仕組みにと、我々、心組みでおります。

 このため、今回の改革では、国として必要な施策の実施を確保しつつ、地域の実情に即した施策の推進が可能となるよう、補助事業について省庁間の連携強化や統合、交付金化などを行ったところでありまして、地方の裁量権が大幅に拡大したという意味で、今回の改革は十分生きていると考えております。

堀込委員 地方の裁量、ふえたかどうか、それはちょっと後でまた質問しますけれども。

 まず、スタートのところで小泉内閣が方針を出して、地方六団体が削減案をまとめた。それに対して省を挙げて反論するんですね。林野庁長官もいますけれども、林野庁なんかは反対決議の案文までつくって地方へやって、地方決議をやらせた。大臣はそれを承知していたんですか。

島村国務大臣 承知いたしておりません。

堀込委員 これは林野庁長官が勝手にやったということになるのかな。これは内閣の方針でありますから、そういう意味では真摯な対応が必要だろうというふうに思います。

 それでは、ちょっと具体的な中身を質問させてもらいます。

 三位一体改革で、十七、十八年度、予算全体としては二兆八千億余りの補助金改革を行って、税源移譲に伴うものが一兆七千七百億円ですか、十七年度分は一兆一千二百三十億。スリム化の改革が四千七百億だとか、交付金化の改革、三つあわせてやるわけですが。ただ、政府案はその後、義務教育だ、国保の国庫負担だとか、地方案になかったものを持ち出してきたものだから、今いろいろ議論のあるところでありますが、これは農水省の予算書を見てもよくわからないので、国民にわかるように御説明をいただきたいんですが、私が見る限り、地方から公共で二千三百三十四億、非公共で七百五億の税源移譲、補助負担金の改革要請があったけれども、十七年度は公共で千百八十四億円、非公共で十七年度は、税源移譲は五十四億を応じただけと。値切りに値切ってそうなったというふうに読んでいいんですか、予算書は。

小林政府参考人 今回の三位一体改革に当たりまして、地方六団体の皆さんとはいろいろな意見交換、議論をさせていただきました。大臣自身でいろいろな会議にも大分参加されていたわけですが、結局、私どもの考え方は、先ほど大臣お答えいたしましたように、結局、国の立場で広域的見地からどうやって全体の施策を推進していくかということと、地方の自主性をどうやって生かしてもらうか、この調和点をどう探るかということだったと思います。

 そういう意味で、その辺のところを十分議論しながら、この十七年度、それから一部また十八年度に向けてのものもございますが取りまとめたということでございまして、その内容でございますが、農林水産関係の補助金につきましては、今申しました趣旨から、税源移譲に結びつく改革のほかに、スリム化の改革でありますとか、それから交付金化でございます。これは公共、非公共を含めまして。こういったことで、今申し上げました地方の裁量性を高める改革をあわせ進めたということでございます。

 十七年度の予算ベースで申し上げますと、融資関係と森林管理関係で、先生の御指摘ありました五十四億円の税源移譲、それから非公共事業につきましては七つの交付金化をする、それから公共事業についても省庁間の連携強化を図る交付金の新設、こういったことを盛り込んだところでございます。

堀込委員 さっき、小平議員が官僚諸君という話があったんですが、なかなか省益を守るのはうまくて。これからちょっと質問しますよ。

 交付金化の改革も、これは地方の裁量がふえたということで数字に入っているんですよね。例えば、省庁連携分で三百十億円というのがありますね。道路と農道、林道含めたものを国土交通省と一緒にやるとか、集落排水と公共下水道を一緒にして、これが百十五億ですか、道路が百七十億、漁港等で二十五億円、合わせて三百十億円を省庁連携分として交付金化の改革と称しているわけですね。

 この予算額は、ちょっと最初に数字を聞きたいんですが、集落排水の全体額は幾らなんですか。道路は全体額が幾らで、例えば集落排水でいえば百十五億は省庁連携分になっているけれども、残りはどのぐらいあるんですか。

小林政府参考人 数字の関係でございますが、例えば、農業集落排水、百億円を来年の交付金にしておりますが、十七年度の予算額では農業集落排水事業費補助、これは四百二十二億円が全体額でございます。それから、漁業集落排水が十五億円で、こちらは百六十四億円、これが全体の予算額、こういった状況になっていまして、大体、全体を丸めて言いますと、それぞれ一割ないし二割ぐらいのバランスで連携交付金の方に計上されている、そういった感じだと思います。

 ちょっと申し上げますと、今回初年度ということがありますし、それから、この交付金の趣旨は、要するに、一定の地域で省庁をまたがる事業をいかに効率的にやっていくかという意味合いもございますので、そういった事業の特徴を生かせるところ、そこに当然配分していくわけですし、それから、こういった事業はやはり継続地区も多うございますので、そういった中での一、二割という数字でございますので、これは、私どもとしては妥当な水準かなというふうに考えるところでございます。

堀込委員 それで、さっき、大変地方にとって使いやすくなったとおっしゃったんですが、そういう改革をしたと言ったんですが、省庁連携分に盛ったものは使いやすくなりました、残りは使いにくい、こういうことなんですか。これは通らないと思うんですね。やるなら全部やればいいんだし、使いやすくするなら。どうなんですか、それは。

小林政府参考人 この交付金の趣旨の関係でございますので、若干繰り返しになりますけれども、今回の省庁連携強化、地域再生基盤強化交付金をつくったわけでありますが、一定の地域で省庁をまたがる、こういった複数の事業を総合的かつ効率的にやったらどうかという趣旨でありまして、この目的に沿うんじゃないかということで、汚水処理とか道路、農道、林道、それから漁港、港湾について交付金化をしております。

 それで、このメリットですが、結局、ではそのねらいによってどうなるのかということですけれども、計画を一括して提出することができます。これは相当程度の事務手続が簡素化されるわけでして、非常に負担の軽減につながると思っています。それから、事業間、年度間の進度調整、これは継続地区なんかをやっていくときに結構大変なんですが、それが可能となりまして、地方の裁量の幅がふえますので、これは相当地方の実情に応じた事業執行に資するものということで考えてやっているところでございます。

堀込委員 それで、この事業は、内閣府が受け付けることになっているんですね。これはどうなんですか。財布は国土交通省なり農水省が握っている。窓口だけ内閣府になって、内閣府でこれはどういう権限か、あれを持つんでしょうか。結局、農水省の権限は変わっていないわけでしょう。これは多分、積算根拠も農水省が出していると思いますし、そういう意味では、国土交通省や農水省が知恵を出し合って、うまい案を考えたものだなという評価が民間でも高いわけでございますが、これは地方分権に、果たして数字の中に入れていいものかどうか、僕らは大変疑問に思うんですけれども。実際、どうなんでしょうか。内閣府がどういう役割を果たして、私どもは、権限も裁量権も農水省に残っている、こういうふうに思うんですが、そこはどうなんですか。

小林政府参考人 関係府省の役割分担の関係でございますけれども、この交付金の配分は、これはあくまでも内閣府が決定いたします。私ども農水省とか、あるいは国交省もそうですが、では、どういった立場でそれに参加するかといいますと、その配分決定に当たりまして、例えば施設の構造とかありますが、それがその基準に合っているかとか、いろいろな技術的な見地から、やはりこういった形で協議、調整する必要があるわけでございまして、そういった切り口での協議、調整ですから、あくまで決定、配分というものは内閣府の権限、立場で行われるということでございます。

 それから、繰り返しになりますが、こういった省庁間のところで、内閣府とでまとまってやるということとあわせまして、この交付金は今までの補助金と違いまして、先ほども申しました、具体的に申請が一本だとか、それから事業間、年度間の進度調整、こういうのは各自治体の判断でできるとか、こういうことを加味しまして、とにかく相当従来とは違った、裁量のある交付金だというふうに言えると思っております。

堀込委員 内閣府に裁量権が移っていなくて、やはり財布は旧省庁、各省庁が握っているんだろうと。あるいは権限も、実際は内閣府でやるんでしょうが、例えば内閣府へ農水省の職員が出向してやるとか、そういうことでないとわからないでしょう、実際は。まあ、それはそれでいいです。

 次に、非公共の話について伺いますが、税源移譲、これは二百五十億円、来年含めて。ことしは五十四億しかやりませんが、そういうことになっている、地方への税源移譲は。これはさっき小平先生が言った、農業委員会だとか普及事業だとか、融資でやると。

 問題は、交付金の改革を、百七十五事業を七つの交付金に統合した。おとといの本会議でも、小泉さんは、とても地方が使いやすくなっていると。大臣もさっきそういうふうにおっしゃったけれども、私から見れば、何かこれを見ると、事業名を見ると、各局ごとの予算にしただけじゃないか、ちょっと局がダブっているところもあるけれども、七つというのは各局ごとにしただけじゃないかという感じがするんですよね。

 食の安全、安心確保対策、消費・安全局。強い農業づくり、これは生産局と経営局ぐらいが担当するんですか。あとは、農村振興局は、元気な地域づくりというものになっている。これは地方分権だから使いやすくなったんですか。これは、私どもが見て、ただくくっただけじゃないかという感じがするんですが。大きな声で小泉総理もおととい、とても使いやすくなりましたよ、こう言っているんですが、私どもから見れば、くくっただけで変わっていないんじゃないか、こういうふうに思いますが、どうですか。

小林政府参考人 非公共の交付金化の関係でございます。

 この交付金は、単に補助金を束ねたということではございませんで、今まで、私どもの補助金につきましては、結構数が多いものですから、率直なところ、いろいろな意見がございました。事業の数が細かく分かれていまして、現場へ行って、これはなかなか融通がきかないと。それから、あるいは、内容の細部にわたるまで国の審査となるものですから、そういった意味でのいろいろな手続が大変だ、こういうことがあったわけでありますが、今回の交付金化は、そういったことも踏まえまして、百七十五事業を七つにしました。

 これはどういう効果をねらったかといいますと、単なる統合とは違いまして、一つは、メニュー間と地区間の配分、融通は、これは地方でやっていただきます。したがって、地域の取り組みの自由度は格段に拡大するわけでありますし、それから、事業ごとの細かな事前審査を簡素化いたしますので、事務手続の大幅な軽減ということにつながるわけであります。

 また、いずれにしましても、私ども、農政のあれを地方、現場で一生懸命進めていただくときに、やはり一つの政策の方向といいますか、それは必要でありまして、例えば食の安全、これに応じた例えばトレーサビリティーだとかこういうことをやってほしい、そういうときに、ただ、実際に取り組む場面では、その地域によっての特徴もあるでしょうし、うちは畜産だとかうちは野菜だとかありますので、そういったところ、国の方の全体の政策体系と地方との実質のバランスをとるという意味で、この七つの大ぐくり化の交付金ということにしたわけでございますので、その辺をよろしく御理解をいただきたいと思います。

堀込委員 答弁はよくわかるんですが、それは行政の合理化という話であって、地方分権改革にこの数字を入れるという話は僕はちょっと違うんじゃないかという感じを受けるんですね。では、なぜ、七つじゃなくて一つか二つにしなかったか。もっと地方がやりやすくなるんじゃないですか。

 その話はともかくとして、十七、十八年度は一応これで決着ということになったわけでありますが、大臣、いよいよ、小泉総理も本会議で言っていますが、十九年度から地獄の時代といいますか、つまり交付金改革、あるいは所得税を住民税に移管して、住民税をフラット化するというところまで総理は発言しているわけでありまして、そういう意味で、非常に本格的な地方分権時代が始まる。こういう今みたいな、くくりだとかなんかの手法は通じなくなる時代に僕は農水省としてなるんじゃないかと思っているんです。どういう対応を今考えているでしょうか。決意のほどを。

島村国務大臣 私どもとしては、これは大変思い切ったことを実はやったと考えています。言いかえれば、小泉さんに言ったんですが、あなたはしゃかりきにこれをおやりになった、大変我々は余計な負担を負ったけれども、しかし、結果的にあなたのそのしゃかりきに押されてこれだけのことができたことはやはり評価すべきだと思うと。

 それはやはり地方にすれば、今までは細かくいろいろ計画書を出して、それを今度一々一々細かく報告して、細部の修正をやるためにも一々了解をとらなきゃいけない。今度は都道府県知事にお預けしますと、都道府県知事は自分の裁量の中でこれをやっていくことができる。今度は市町村長にそれが流れると、市町村長が独自にそれができる。こういう意味では、大分その自主性を大きく拡大したと言って決して言い過ぎでないと思います。このことがもし本当に私たちの期待どおりの成功につながれば、これがまたさらに推進される形になることは容易に想像できるところであります。

堀込委員 またこの議論は別な機会に深めさせていただきたいと思っております。

 もう一つだけ予算で、去年も聞いておりますので、林野の予算について。

 林野庁、十六年九月に国有林野事業の決算概要というのを出しているんですね。報告しているんですよ。ここでは、「新規借入金の大幅な圧縮など収支が改善し、抜本的改革の着実な推進が図られている。」と。これは、僕はどう見てもそう思えないんですね。つまり、今の国有林野の会計というのは、要するに、二兆八千億を国鉄債務と同じく債務の方へ流して、残る一兆円を五十年かけて事業で返しなさいよ、こういうスキームをつくったんですね。十一年から十五年までの集中改革期間というのがあって、ここも、うまくいくかと思っておったんだけれども、新しい五百億円の借金がふえた。二千五百億になったんですよね、新規借金も。

 この収支報告を見ると、三千二百億円が収入で三千二百億円が支出なんだけれども、支出の方は利子償還金が千八百億なんですよね。約六割。人件費と事業費が千三百七十億ですか。収入の方は、事業収入というのは四百七十二億しかないですね。あとは一般会計受け入れと借入金なんです。これは、収支改善されたんじゃなくて、相変わらず、木材価格も低迷を続けているんでしょうけれども、一般会計の繰り入れがふえて、つまり、国民負担をふやして辛うじてこの決算ができた、こういうふうに表現すべきじゃないでしょうか。林野庁長官、どうですか。

前田政府参考人 確かに先生御指摘のように、国有林野事業、平成十年に抜本改革をいたしました。それで、当時の累積債務三兆八千億のうちの二兆八千億を一般会計に移しまして、残りの一兆を抱え込んで将来的に返していく。ただ、そういった中で、十一年から十五年まで集中改革期間ということで、また、この間につきましては、どうしても収穫量が相当ダウンしてしまっていた。それともう一方では、要員の調整の過程にあるということで、収支差ギャップが出るということから、その部分につきまして、新規借り入れということで暫定的に借り入れを行ってきた、そんな状況でございます。そういった中で、今先生御指摘ございましたけれども、確かに、私どもが予想した以上に材価が相当落ち込んだという関係から、新規借入金につきまして若干ふえたということは事実でございます。

 ただ、一方では、そういった中で、必死に私どもも、言葉はよくないですけれども、要員調整あるいは組織の合理化等々も図って、支出の方の削減、こういったことに努めまして、当初予定いたしました、何とか平成十六年度で、新たなる借入金を行わないで国有林の運営をやっていくということで必死に努力してまいりまして、何とか十六年度におきまして、新規借入金なし、いわゆる自己収入と一般会計、それでもって支出のすべてを賄うという形にたどり着いた。確かに、道としては大変厳しい、先生の御指摘のとおりだと思っています。ただ、そういった中でも、私どもは必死の努力をこれからも続けていきたい、そういうふうに考えている次第であります。

堀込委員 大臣、つまり国民負担で棚上げしたのが二兆八千億あって、それはいろいろ国家の債務にのっている。残る一兆円を五十年かけて返そうとしたけれども、ここ数年を見る限りどんどんどんどん実は膨らんでいるんですよ、赤字が。それは事業収入が減っているからなんです。

 ただ、林野庁の職員、長官以下、私が見る限り経費の節減は大変努力されている。人でももう半分以下ですね。この間もう五千人ぐらいにしちゃって、かつては一万二千人も三千人もいたのを。そういう経費の節減とかいろいろな努力をしているけれども、これは、国有林野会計というのは、僕はちょっとこの努力だけでは不可能だと思うし、これから五十年かけて返していくという計画は、平均すると、大体毎年一千億ぐらいの事業収入、林産物収入があるはずなんですよね、計画としては。ただ、今二百二十億しかないんです。

 これは、早く措置して、例えば環境政策とかいろいろな含みを持たせながら会計上の処理をして、新しい林野行政といいますか、そういうことに組み立て直さないと、僕は、現場の苦労はもう限界に来ていると思うんです。そういう意味で、森林整備計画とかいろいろあるわけですから、そういう組み立てが必要だなというふうに思っていますが、もし見解があったら。

島村国務大臣 国有林野事業の特別会計につきましては、今いろいろ委員からお話がありましたように、この改正をしましたが、その際も、実は、自分が所管大臣としてこの切りかえをやりました。あのままほっておくと第二の国鉄ということで、そういう展望が全く開けないということから御理解を願ったところでありますが、その後、お認め願ったように、林野行政、極端なまでに、いわばいろいろ人員の削減その他を進めまして、事業所も統合いたしましたし、これからもこれをさらに進める傾向の中にあるわけであります。

 そういう意味では、平成十六年度にようやく新規借入金依存体質から脱却できるというような見込みが立つ。これについては、私も委員と同じように、本当なのかと聞きましたが、樹木も大分育ってきて、いわばこれが売れるものに変わりつつあるというようなことから、先行きはそんなに展望は暗くございませんという説明があったので、私も一応了としたところであります。

 ただ、聞くところによると、立ち木で、杉の木や何か五十年物で三千円でヒノキが四千二百円などと聞きますと、本当に改善できるのかなという私も疑問を持っておりますので。私より詳しい堀込先生のお話ですから、よくまたそれを参考にして、さらに詰めていきたいと思います。

堀込委員 ぜひそのように、日本の大事な森林政策でございますから、取り組みをお願いしたいと思います。

 それでは、基本計画の話をさせてもらいます。

 さっき小平委員からいろいろ質問があったんですが、これは、いろいろ新聞を読んだけれども、わからないんですよ。ましてや農民はよくわかっていない。食料自給率を向上しようとかいろいろありますが、経営安定対策は、簡単に言うと、日本農業の将来を担い手中心のものにする、そこへ品目横断政策を集中する、あるいは農地制度の改革はそこへ集中する、こういうことでいいんですか、簡単に言えば。

小林政府参考人 食料・農業・農村基本計画、五年ごとの見直しを定められておりまして、今その作業をやっております。今回の見直しのポイントは、今先生御指摘の点が一つの大きなポイントでございますが、全体として五点ぐらいあろうかと思っておるので、ちょっとそれを御紹介させていただきたいと思います。

 食料自給率につきましては、これは横ばいで推移しておりますが、この中で、これまでの取り組みの検証を行った上で、新たな目標の設定を行い、その向上に取り組む。それから、BSEなどを契機にいたしまして、食の安全に対する国民の信頼が揺らいでおります。こういった中で、食の安全と消費者の信頼を確保すること。さらには、土地利用型農業を中心に構造改革が立ちおくれている中で、担い手の経営に着目した経営安定対策への転換や担い手への農地の利用集積の促進などにより、望ましい農業構造の確立に取り組む、これは今先生御指摘の点であります。

 それから、環境保全を重視した施策の一層の推進や農地、農業用水などの資源の保全のための施策を確立すること。さらには、高品質な農産物の輸出やバイオマスの積極的な活用のような意欲的な取り組みを後押しするなど、攻めの農政を展開すること。こういったところをポイントとして、今後の政策につきまして、改革の方向をつくるようなことがポイントだというふうに考えて進めておるところでございます。

堀込委員 そこで、先ほど小平議員も質問いたしました。担い手の要件というのは、効率的かつ安定的な農業経営、抽象的でわからないんですが、これは、所得という概念や面積という概念、さっきの答弁もちょっとよくわからないんですが、どういう要件を限定的に考えているんですか、担い手とは。

須賀田政府参考人 担い手の要件でございます。

 先ほど申し上げましたのは、まず、担い手という場合に、将来にわたって農業を持続的に担っていただく農業者でございますので、チェックポイントは、まず生産方式、どのぐらいの規模を持っているのか、どんな機械を持っているのか、どういう技術を持っているのか。それから、経営管理をきちっとやっているのか。それから、法人の場合には、従事者に対して、休日とかそういう農業従事への対応をきちっとしているのかどうか。そういうところをチェックさせていただきます。そういうチェックの仕組みとして認定農業者制度があるわけでございます。それとは別に、同じような経営体の実態を持った集落営農というのを位置づけていきたい、抽象的にはこう考えておりまして、具体的に、水稲と麦と大豆ではどの程度の規模でどのような要件を今この経営安定対策の担い手としていくかというのは、ちょっと実態をしばらく見させていただいて、夏以降議論して明確化したいというスケジュールを持っているということでございます。

堀込委員 さっきちょっと小平委員の質問のときに言ったんですが、例えば、年齢が七十歳で水稲十町歩もやって、非常によくやっている、こういう人はどうなんでしょうか。年齢とか、あるいは、とても大きな経営をしているんだけれども、集落の中ではつまはじきというか、余り品行方正じゃなくて、つき合いは悪いとか、そういう人はどうなんですか。これはどういう要件が要るんですか。

須賀田政府参考人 先ほど申し上げました認定農家制度の中に、市町村が基本構想をつくります。こういうのに該当している方を認定したいというのをつくります。その中に、やはり将来にわたって持続的にということで、年齢のこともございます。ただ、その経営に後継者がいるかどうかなども勘案がされます。それから、今所得をどのくらい上げているか、将来どういう計画を持っているか、そういうところでチェックをされます。先生が今言われたような高齢の方だと、恐らく、集落営農の中に入っていただいて、所要の役割分担をしながらやっていただくのが最も現実的なのではないかというふうに私どもとしては考えております。

堀込委員 余りよくわからないんですが、集落営農ですが、今現実に、日本の各町村の集落というのはほとんど農家組合みたいなものがあるんですよね。隣組組織であって、農業共済なんかも集金したりとか、いろいろやっているんですよ。この集落組織もある程度預金通帳なんかを持って、ある程度の経営は持っているという実態がある。こういうのはだめだと。

 つまり、共通経理というのはどのぐらいを持っていくのか。さっきも経営管理という話があった。担い手だって、これは家計簿じゃだめで、どこがいいのか。そっちはいいんだけれども、集落営農の基準というのはどのぐらいを考えているんですか。

須賀田政府参考人 集落営農は、実質的に経営体の実体を持っていただきたいということで、その集落の過半の農地を受託し得る能力があって、ちゃんと規約が決まっていて、経理もきちんとしている、それから主たる従事者がいる、役割分担が決まっている、経営体の実体を持った組織を考えております。

 今、いわゆる集落組織と言われるもの、全国に一万ございますけれども、そういう一元経理をしているような組織体だとそのうちの千程度でございまして、あとは、栽培協定を結ぶとか機械の共同利用をするとかいう集落組織でございますので、私どもとしては、そういう組織が今の経営体を持ったような、そういう組織体になっていただきたいということで、団体とともに全国運動を展開することにしているわけでございます。

堀込委員 まだよくわからない。要するに、集落で、須賀田局長のお目にかなわないとちょっと対象にならないような感じの答弁なんで。

 それはいいんだけれども、これは、担い手なり、ここは集落営農組織だよ、あなたは効率的かつ安定的な経営者だよと認められると、これはどうなんですか。つまり、この人たちはとりあえず今の麦の経営安定対策や大豆の交付金制度の対象に組みかえて、品目横断政策の対象になりますよということですか。うなずいているからそうだと思うんです。大豆や麦をつくっているそれ以外の農家はどうなるんですか。

須賀田政府参考人 ありていに申し上げますと、個別経営、法人経営で対象経営になる方、あるいは集落営農として対象経営になる方以外の方は、この経営安定対策の対象とはならないわけでございます。

 そういう方々の方向としては、一つは、その担い手の方に農地を出していただく、地代収入を得ることができる道がございます。それからもう一つは、みずから工夫されて別の生き方へ、有機だとかそういう高付加価値でみずから自立的に生きていただく、こういう道が残されておりまして、基本計画にもそのような方向で記述をするということにしております。

堀込委員 それでいきますと、大豆と麦のように、現在、例えば小麦でいえば、八十三万トン、面積で二十万ヘクタールぐらいあるわけですね。大豆でいってもそうだ。これはなかなかあれでしょう、この対象になる農家というのは限られる。須賀田局長が認めない農家は、では、麦、大豆をつくれと言ったって、もう八千円も、交付金とかいろいろな世界ですから、二千円や三千円や四千円で麦や大豆をつくれっこないですよね。そうすると、当然、この人たちは米に回帰するという現象は水田作の場合はあらわれるというふうに思うんですね。

 そういう意味では、担い手以外の農家が米に回帰する、米の流通がめちゃくちゃになる、そういう心配をするわけであります。時間がありませんから、どうですか、そういう懸念を持っていませんか。

村上政府参考人 経営安定対策を導入した場合の米の流通あるいは需給調整の御質問かと思います。

 現在、御承知のとおり、米政策改革で、需要に応じた生産ということで、早ければ十九年度に、生産者、農業団体が主体になった需要に応じた生産を行う姿を構築するということで、現在、その準備段階という中で、政府と農業者が共同した形で体制づくりに取り組んでいるわけでございます。

 品目横断的な経営安定対策が導入される場合ですが、十九年からの導入に向けて具体的な仕組みの検討を行うということになりますけれども、今、須賀田経営局長からお話し申し上げましたように、担い手が育成され、集落営農の中に入っていく、あるいは農地が集積されていくという中で、かなり需要に応じた主体的な、市場の判断、市場の状況をよく見て生産していくという状況がつくられていくのではないかというふうに思うわけでございます。

 いずれにしましても、品目横断的な経営安定対策が導入された後であっても、需要に応じた売れる米づくりを農業者、農業者団体が主体的に判断によって行う姿を実現して、需給の安定、流通の安定を図っていくということが重要だというふうに思っております。

堀込委員 終わります。

山岡委員長 次に、山田正彦君。

山田委員 私ども、食の安全の問題をずっとやってまいりましたが、大変不幸なことに、この二月の四日、日本で初めてBSEによる変異型のヤコブ症で死亡するという事態が発生した。これは、大変ゆゆしき、そして、国民にとって、食の安全にとっては、これから大変大事な問題なんです。

 そこで、厚生労働省の発表だと、一九八九年ごろ一月ぐらい英国に滞在していたという情報だと、非常にあいまいなことで片づけようとしている嫌いがある。私はその点について、この十八日に、厚生労働省において、個人のプライバシーといっても、プライバシーは名前とか云々とかということであって、実際にその人が英国に滞在しておったかどうかというのはいわゆる出入国管理名簿で調べればすぐにわかるはずだ。だから、それを調べた上で、きょう明確な答弁をいただきたい、そういう通告を既に十八日にしておったので、十分な時間があり、それについてきょうは明確な答弁をいただきたい。

西副大臣 お答えを申し上げます。

 我が国で初めて発生をいたしました変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病の患者さんの英国渡航歴についてのお尋ねでございます。

 この御指摘の渡航歴の情報につきましては、まず初めに、患者さんを診断いたしました主治医の先生が必要な情報としてこれを確認いたしております。続きまして、この患者さんがvCJDであるということから、専門家から構成されておりますCJDのサーベイランス委員会においてその情報を聴取しております。その結果を私ども厚生省として報告していただいているものでございまして、この英国渡航の事実につきましては、患者本人のパスポートの記録により確認をしているということの上で、一九八九年ごろということでただいま公表させていただいているところでございます。本人のプライバシーということの関係もあり、先生には十分御理解をちょうだいしたい、このように思っております。

山田委員 一九八九年ごろとパスポートで確認したとなったら、例えば、一九八九年の十一月には、イギリスにおいては危険部位はもう食べられないようになっている。だから、いつからいつまで行っておったか、パスポートで確認した内容、これについては当然明らかにしてほしい。

西副大臣 確かに、先生御指摘のように、一九八九年十一月時点で新しい英国側の規制がかかった。完全ではないというふうには承知をしておりますが、そのことにつきましても念頭に入れながら、委員会等で十分、その後の追跡、また疫学的な調査も含めて、開始をしているところでございます。

山田委員 これは非常に大事なことであって、このことは国民にとっても重大な関心事であり、きょう明確に答弁していただきたいと、いつからいつまで英国に滞在しておったか、そしてまた、発症を確認されてから二十日たっているわけですから、当然のことながら食習慣等々についてもしかるべき説明をきょういただきたいと、そういうふうにしておったんですが、今の、パスポートで確認した、確認したけれども、それ以上のことはプライバシーだとか、そんなあいまいなことでは、これはこれ以上質問できない。必ずはっきり、何月何日から何日まで英国にいたかということを答弁すべきだと言っているのです。

西副大臣 先ほどもるる申し上げましたとおり、今、我々はCJDのサーベイランス委員会と連携を図りながら調査を進めている最中でございます。御指摘のこの事項につきましても、可能な限り、周辺情報を含めて、ただいま情報を集めているところでございまして、まだ調査分析結果がまとまってございません。そういう意味で、現段階での答弁はできないことをぜひとも御理解いただきたいと思います。

 感染ルートについて、今、鋭意調査を進めておりまして、この結果がまとまり次第、患者本人の特定につながらない部分については、速やかに公表させていただくことをお約束申し上げたいと思います。

山田委員 この件については、ぜひ理事会において、いつからいつまで渡航しており、どういう食習慣があったか、それを速やかに調査、報告をするように求めておきます。

 次の質問に移らせていただきます。

 私がなぜこんなにヤコブ症のことについて言うかといいますと、フライデーの二月二十五日号、「アメリカ牛肉を食べたらヤコブ病で死ぬ!」、こういう記事が載っておりますが、まさに今アメリカから牛肉輸入を再開しようとしている。この七月にはもう再開できるのではないかと、農水大臣、そういう新聞報道もなされている中、実は昨年の十月十四日、アメリカ、ニューヨーク・タイムズにおいて、ニューヨーク州のアルスター郡クラスターという町、十七万七千人の人口のところで、孤発型のヤコブ症というのは百万人に一人と言われているんですが、四人が死亡したという報道がなされています。これは四十代、五十代だと言われております。

 そして、そのほかにも、昨年は、もちろんカリフォルニア州、それからオクラホマ、ミネソタ、ウィスコンシン州、ミシガン、ニュージャージー州、テキサスと、あらゆるところで集団発生が表ざた、表面化をアメリカはしております。

 実際に、最近は、スイスにおいてもクロイツフェルト・ヤコブ症が急増しているという報告がなされておりますし、私自身、昨年夏、アメリカにBSE調査団長として赴きまして、実際にCDC、そして、いわゆるチェリーヒルの十七人の集団発生、これについて、当事者というか、ジャネットさんと、随分時間をかけていろいろ調査した経緯もあります。

 アメリカでは、この十年間に五十万人、いわゆるアルツハイマー症が急増しているという事情もあり、このアメリカのヤコブ症の発生等を見ていると、非常に危ないのではないか。そういうことから、アメリカからの牛肉輸入の問題もさることながら、日本でも当然それに対する監視体制を図るべきだ、そう考えております。

 私の出した資料を見ていただきたい。

 資料の中の、日本における若年でのヤコブ症の発症、三十代から四十代、これが二十人おります。そして、二十人のうち、若年者というのは非常に、孤発型は普通は老齢者に出るものですから、百万人に一人です。これが、実際に十一人死亡して、そのうち四例だけが解剖されて、そして、あと七例、前回のヤコブ症として発症した例はこの中に含まれておりません。ヤコブ症として確認した例はこの中には含まれておりません。その中で、今申し上げましたように、解剖されていないけれども、二例については、これはBSEによる変異型のヤコブ症とは言っていませんが、疑い例が残っている。

 そういう中で、実は私は京都大学の福島雅典教授と直接話しましたが、いわゆるヤコブ症について、若年については、硬膜の手術によるもの以外は絶対にこれを監視して、そして確認をすべきである、そういう話を伺っておりますが、これから先、日本にとって食の安全というのは大変大事になってくる、その意味でも、当然そういった措置をやるべきだと思うが、西厚生副大臣、どう思われるか、お聞きしたい。

西副大臣 委員御指摘のように、日本における食の安全というのは大変大事なものだというふうに考えております。それだけに、私どもに課せられた役割も同様に大変責任が重いというふうに感じております。

 先ほど御指摘になりました、日本で二十例の若年の孤発型クロイツフェルト・ヤコブ病、三十から四十九歳までの合計の数字を挙げられました。この問題につきましては、専門家から成るCJDサーベイランス委員会及びヤコブ病委員会において適切な判断を個々にされているというふうに聞いておるところでございます。

 また、判断が困難な事例もあると思います。今回の初のvCJDのケースも、若干そういうふうな事態も一時あったかのように聞いておりますが、必要に応じて、今回のこの変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の事例と同様に、英国の専門家等と十分に相談する体制をとって、そして、それらについて的確な判断を行うというようにしているところでございます。

 先生御指摘のように、最終的には、vCJDであるかという確認は、解剖による病理診断、これが確定的なものだということは十分承知をしておりますが、御家族、また御本人の意思等によりできないケースもある、その数字が先ほどお話のありました七名ということでございます。

 その意味におきまして、この鑑別診断につきましては、病理診断ということが望ましいということは当然のことでございますが、その病気の症状それから脳波検査、さらにはMRIというような手法によって得られた所見により、確定的にほぼ判断が孤発性というふうにできるものもありまして、すべての症状において鑑別診断のために病理検査を行わなければならないというものでもないというふうに思っております。

 ただ、いずれにいたしましても、このケースにつきましては、十分一人一人の病状を見守っていく、また、不明確な部分につきましては諸外国の専門家とも連携をとりながらきちっと対応していくということの措置をとらせていただいているところでございます。

山田委員 これについては非常に大事な問題であって、これからも十分透明に、そして明らかにしていく必要があり、さらにまた、私のつけた資料の中にありますけれども、国内の医療機関において脳神経外科手術を受けた患者が、手術後に孤発性クロイツフェルト・ヤコブ症であることが判明した事例がある。国内においては、アルツハイマーの若年性についても、本当に十分な検査が必要であるということを指摘して、次の質問に移りたいと思います。

 かほどにアメリカから牛肉が輸入される。アメリカで集団発生しているヤコブ症等々のことから考えても、非常に危険である。例えばアメリカで、私も調査に行ったときに、プルシュナー教授のもとの助教授セーファーさんは、アメリカでは子供にもう一切牛肉は食べさせない、日本の牛肉は食べる。プルシュナー教授も、昨年の暮れにお会いいたしましたが、私はアメリカでは一切子供に牛肉は食べさせないとはっきり言っておられましたが、まさにそういう意味では十分な注意が必要である。

 特に一つ、きょうは、皆さん方に資料として出しておりますが、大臣にお伺いしたいのは、アメリカの牛肉の検査、いわゆるパッカーでの検査というのは、BSEの検査も、私に言わせればまさに実際でたらめな検査方法、いわゆるBSEが出ないような検査しかしていないとしか思えないと思っておりますが。

 アメリカの全米食肉検査官、これは公務員です。食肉を検査している現場の委員長、評議会の議長と言っていいんでしょうか、ペインターさん、この方から実はアメリカの農務長官あてに抗議書が出た。この資料をつけた部分ですが、これについて仮訳が出ております。その中を詳しく読んでいただければわかるんですが、私からここで言いますと、大臣、よくお聞きいただきたい。

 食肉加工場では、従業員は、すべての動物の頭数と三十カ月以上の動物の死骸については正確に識別を行っていない。それはどういうことかというと、その結果、その先の工程では、従業員や政府の担当官は、多数の部位がSRM、危険部位として取り除かれるべきことを知ることができない。いわゆる、末端の工場内においてはSRMを除去するべきだということを知らないんだ、そして高度に危険なSRMそのものが中に入ってきている。これらの高リスク部位が食品供給に入っていますと断定しているわけです。そして、アメリカはメキシコとの間に三十カ月齢以上の牛を輸出することが協定で結ばれておりますが、三十カ月齢以上の家畜由来の内臓等々については、これはメキシコでも今禁止されています。ところが、それについても、この仮訳ですが、ライン上の検査官は、メキシコ向けの加工工場において、定期的にプラント従業員が三十カ月齢以上の内臓を若い牛と同じシュートに送るのを目撃しています。ところが、検査官はこれについていわゆる異議を申すことはできない、これが実態だ。

 大臣、どう思われますか。

島村国務大臣 全米食肉検査官合同評議会から、昨年十二月、米国農務省に対し、食肉処理施設における特定危険部位の除去が確実に行われていないことなどを警告する内容の書簡が送られたことは承知しております。

 このことについて我が国から照会を行ったところ、米国農務省食品安全検査局から、米国の食肉処理施設ではBSE規制が効果的に守られており、書簡については調査中である旨の回答があったところであります。

山田委員 大臣、それは間違っています。

 山内教授の先ほどのフライデーに書いた中にありますが、驚くべきことに米国の農務省にはBSE専門の科学者がいない、日米の専門家会議にも米国側は科学者が入っておらず、行政上のやりとりしかありませんでしたと。

 いいですか、この中に検査のことも書いておりますが、二万何千頭か検査したと言いながら、問い詰めたところ、これはでたらめだった、米国側が実際に危ない牛を調べたのは六百頭以下にすぎなかった、そういうことをはっきりと、食品安全委員会の委員である山内教授は言っているわけであります。

 そういうことからすれば、アメリカ農務省の言うことだけを信じて、そうですかと言うだけでは、大臣、だめではないのか。当然大臣みずから、こちら日本農水省として調査団を派遣して、向こうも検査官は公務員ですから、そういう検査官の意向も聞きながら実態を調べるという必要があるのではないのか、大臣。明確にお答えいただきたい。

島村国務大臣 昨年、日米の専門家間で行ったBSEに関するワーキンググループで検査頭数の内訳についてただしたところ、BSEが疑われる中枢神経症状を示した牛は六百頭弱であり、ほかに農場での死亡牛や起立不能牛がほとんど占めているとの説明があった。サーベイランスにおいては中枢神経症状牛を中心に行うことが重要ではあるが、死亡牛や起立不能牛の検査も重要な指標となり得ることから、米国のサーベイランスも一定の評価ができると考えている、こういう考え方に立っています。

山田委員 私も調査団と行ってみて、米国農務省の言い分とは実態が全く異なるということを実感してきた。ここに鮫島ネクスト大臣もおられますが、同じような感じを受けたと思っております。

 大臣としては、私が今聞いたのは、農水省として調査団をアメリカにこのことに関して派遣する気がないのかということなんです。お答えいただきたい。あるかないか、それだけで結構です。

島村国務大臣 御承知のように、農林水産省にも厚生労働省にも属さない、食品安全委員会という、いわば権威ある中立の機関に今御検討いただいているところでありまして、私どもとすれば、必要とあらばその動きをいたしますけれども、個々ばらばらにこういうことをやることは今の時点では考えておりません。

山田委員 個々ばらばらでない、それは本当に、先ほどおっしゃったように、食の安全という見地からはぜひ必要なことだけれども、これ以上大臣に言ってもしようがない。しようがないというか、時間がもったいないので、次の質問に行きます。

 実は私はきのう、東京港の食肉の検疫を見に行ってきました。いわゆるメキシコから日本に来ている牛肉。

 ちょっと私の示した資料を見ていただきたい。

 メキシコからの牛肉、くず肉の調製品の輸入量というのがあります。この中に、平成十五年は、全部でわずか百三十七トンしか入っていなかったのが、平成十六年、かなり入ってきております。その中で、生鮮等もそうですが、注目すべきなのは、大腸、小腸とか、いわゆる内臓関係が入ってきている。大腸、小腸というのは、これは小腸の回腸部分というのは危険部位ですが、四百十五・九トンも入ってきている。

 今は我々ホルモン屋で焼き肉を食べていますが、ほとんどは日本の全頭検査をした安心なホルモンだと思っておる。ところが、実際には、先ほどのペインター食肉検査官組合の委員長の報告にあるように、メキシコ向けに三十カ月齢以上のいわゆる危険部位、内臓もどんどん出している。そして、メキシコから日本にこれだけのものが入ってきている。

 メキシコは、国内ではもう内臓等については危険部位として食べないようにしている。ところが、実際には日本向けにどんどん入ってきている。韓国は、当然のことながら、メキシコからアメリカ産の牛肉がまじっていたということで輸入を禁止している、メキシコからの輸入を。日本は、それが、いまだにそのまま野放しになっている。これは、私が昨年経済産業委員会でも指摘したとおり。大臣、これはどう思われるか。

島村国務大臣 我が国は、牛肉などの畜産物の輸入に当たっては、あらかじめ二国間で取り決めた輸入条件に基づき、動物検疫を実施しているところであります。

 メキシコから輸入される牛肉については、従来から、家畜伝染病予防法に基づく輸入検査の際の現物検査により、特定危険部位が含まれていないということを確認いたしております。

 さらに、本年一月からは、輸入に当たっての家畜衛生条件として、特定危険部位の除去を求めており、我が国に特定危険部位が輸入されることがないよう措置している、こういうふうに考えております。

山田委員 大臣、それは間違っているんじゃないですか。いわゆる特定危険部位の除去についてことしの一月からと言っていますよ、一月二十四日にメキシコ政府から、わかりましたという答弁が来ているだけで、実務上はまだ動いていない。これは、いまだにそういうものは入ってきている。

 大臣、私はきのう検疫所まで行って調べてきたんだ。そして、大臣、ちょっと聞いていただきたい、メモはいいから、大臣の言葉で答えてもらえばいいんで。

 いいですか、大臣。私がきのう見に行ってきたら、ショートプレートというのがメキシコから入っていました、かなりの量です。そのショートプレートというのは、通称吉野家カットといって、牛丼になる部分です、これは。そこに何と書かれておったかというと、糖みつ飼育の若姫牛と書かれておった。糖みつ飼育の若姫牛。

 糖みつ飼育というのは、大臣わからないかもしれない。これは、鶏ふんを牛に食べさせる。アメリカで行われているんです。そのときに、鶏ふんを牛がなかなか食べないから、もう臭いし、おいしくないし。どうして食べさせるかというと、糖みつをかけて食べさせているんです。これはアメリカで行われています。

 そして、私は、この牛肉は、ショートプレート、いわゆる牛丼に使う分は、アメリカの牛肉がメキシコに来て、メキシコから入ってきたんじゃないかと疑った。

 メキシコから入ってきたショートプレートというのは、僕は脂肪の厚さから肉の質まで全部この目で見させてもらった。これはどうもメキシコの云々というか、やせた牛の云々じゃあり得ないと思って、穀物を食べさせた、私もかつて牛を飼って肉屋もやりましたから、牛丼屋もやりましたから、わかっているつもりですが、これはおかしいと。そこで、獣医である検疫官に聞いてみた。そうしたら、検疫官が答えたのは、いわゆるアメリカからのショートプレートとメキシコからのショートプレートは、私の見た目には違いはありませんと。

 大臣、どう考えられますか。これで本当にメキシコから安全なものだけを輸入した、そう思っているのかどうか。

島村国務大臣 カナダでBSEが発生した平成十五年五月以降、輸入業者が自主的にSRMが含まれていない旨の証明書を添付するということになっておりますし、平成十六年八月以降、全件現物検査を実施しているところでありますし、また平成十七年一月、家畜衛生条件にSRMの除去を追加することについてメキシコ政府と正式合意ができているところであります。

山田委員 大臣、もう官僚の書いたものを読み上げるのをやめてください。大臣の頭で考えて答えてほしい、いいですか大臣。

 私は、きのう見に行ってきて、これはアメリカからのショートプレートがメキシコ経由で来ているんじゃないかと実感したんですよ。検査官も、変わりませんと言ったんだ。いいですか。

 ところで、その原産地表示、輸入のものにその輸入証明書というのがあります。この中に、いわゆるメキシコ産のものだと書かれております。しかし、それはまさに輸入するときにその輸入証明書にメキシコ産と書くだけであって、大臣いいですか、これがアメリカ産のものであるかメキシコ産のものであるか、どういうチェックができるか、大臣御存じですか。お答えいただきたい。チェックはできるのか、できないのか。

島村国務大臣 メキシコからの輸入につきましては原産地証明をつけておりまして、これは米国産ではないと私たちは認識しております。

 ただ、山田議員に一言申し上げるが、あなたは人の意見を間違いであるとよく言われるけれども、あなたは根本を間違えていると私は思っています。

 あなたは、きのうの夜になって、十問、私に質問をぶつけてきて、すべてを私に答えろと言うけれども、もし、質問を本当にして、内容の確かなものを知りたいならば、それぞれ専門に取り組んでいる人間もここに来ているわけですから、その人間も含めて質問をなさったらいかがですか。

 私は、国会を得てから二十八年目になりますが、今まであらゆる委員会その他にかかずらわってきましたけれども、大臣以外には答えを許さないというのは、私の知る限りではゼロであります。しかもそれが、間際に質問を寄せて、それでメモも何も読まずに答えろ。しかし、議事録は残って、その議事録の責任をまた問われる。これは人間として無理なことであります。それは間違っていると私は思う。

山田委員 私はメキシコからの牛肉の輸入について聞いているわけだから、それは大臣としては当然それなりのレクを受けて、それなりに答えてもらうのが大臣の責任である。大事な話だ、それは。

 それで、大臣にさらに。大臣は専門的なことでわからないとしたら、私の方からお話ししたいと思う。

 大臣がさっき言ったように、原産地証明というのは、確かにメキシコ産と書いてあった、きのうのそのショートプレートに対しても。ところが、大臣、原産地表示について、じゃ、日本政府がチェックできるかというと、メキシコとのFTA契約においては、ビジット、疑問があったらただそこを訪問できるとしかないんです。普通の条約には必ず、この原産地が本当にメキシコのものか、あるいはアメリカのものかというのをチェックするか、あるいはそういう検査、そういったものができるような条約になっていると思うんですが、それがないわけなんです。

 そういう意味では、大臣、危ない牛肉が今日本に入りつつあるということで、ぜひ、これから先、そういった問題については、十分大臣として、そういう危ないことを避けるべき措置をとっていただきたい。

 それで、次の質問に移ります。

 実は先般、二月八日でしたか、牛の月齢判別について、肉質で判断できる、若い牛、A40であったらという結論を出した。そのことについて質問したい、そのために、私は、沖谷明紘座長、いわゆる検討委員会の座長等にきょうの委員会に出席を求めた。ところが、教授会のために出席できないと。では、教授会は何時からあるのかと聞いたら、二時からだということだった。本来なら、きょうここに来て、さっき大臣が言ったように、私は、少し詳しく専門家に聞こうと思って、きょう呼んでおった。ところが、沖谷教授は教授会のため出席できず、九郎丸さん、柴田さん、中井さん、広津さんという専門家の、多分教授だと思うんですが、皆さん他用のため出席できず、そして、吉田さんという、やはり大学の教授だと思われますが、研究所評価委員会のため出席できずと。

 大臣、だれも専門家が来ない。そうなると、これは私の主義でもあり、我が党の主義でもあるわけですが、我々は、委員会においては、役人に答えさせるんじゃない、政治家同士で論議する、これが委員会である、だから、どうしてもそういう方々が出席できないのであれば僕は大臣に質問したいので、大臣によくレクをしておいてくれと、そう言って、きょうは肉質判定について、大臣にお聞きする。

 これは、大臣に専門的なことの答弁を求めるつもりはないが、常識で答えていただければいい、大臣としての。

 いわゆる月齢判別について、成熟度で決めるというわけです。

 大臣、資料二を見ていただきたい。このA40、マーカーをつけているので、見ていただければわかると思う。A40というのは十二カ月から十七カ月齢の牛だと言われています。A40において、「上部が部分的に骨化」している、A50は「上部がほぼ骨化」となっています。そして、資料二を見ていただきたい。実際の頭数、A40において、今までアメリカがやったのは百九十六例しかない、三千二百万頭をつぶしているアメリカにおいて。これを出してきた専門家というのは、七人の委員のうち、五人は農務省の役人、あと二人はコロンビア大学の教授だけれども、アメリカ側の一方的な資料。これに対して、大臣、常識で考えて、これで本当に合理的な月齢の判断ができると思われますか。思われるか思われないで結構です。

島村国務大臣 私は思っております。

山田委員 これで判別できるとは神様みたいなものだと思うけれども、大臣はできるという御答弁だ。

 では、もう一つお聞きします。

 アメリカ側の一方的な資料だけで、そして日本独自にそれを調査に行って確認しようともしないで、月齢判別が可能であるとし、しかもこの委員は皆さん何かの用事でこの委員会に出席できないと言っている、逃げている。それで大臣は大丈夫だと、日本の畜産農家、あるいは食の安全を考えている消費者に責任を持って、そう思う、これでいいと思うと言えますか。

島村国務大臣 少なくとも、解剖学とか統計学とか、我が国の権威者にお願いをして、食品安全委員会でいろいろ御検討いただいている、それを素人の私が云々するのは、むしろナンセンスであります。かと言って、アメリカへ行って私が全頭検査をやるわけにもいかない。

 ちなみに、例えばA40が適当であるかどうか、中には二十一も含まれるんじゃないかという人もおられるが、それならば、なぜEUは三十カ月なんですか、フランスはなぜ昨年の七月に二十四カ月から三十カ月に改めたんですか。どこの国も、国民のいわば健康と将来に責任を持っているわけですから、それがもし危険だと思ったら、ヨーロッパでもアメリカでも、これは洋の東西を問わずに、当然にその範囲は狭まるはずですよ。日本の場合はもっと厳しいことを判断して、お願いしているわけですから、これも危険と言ったら、私たちは世界を歩いたときに何を食べるんですか。

 私は、やはりその辺は常識的に物を考える必要があるし、ついでに申し上げるようだけれども、二人のために世界はあるのという歌はあるけれども、あなたは御自身のために世界があるようなことをよくおっしゃるけれども、専門家といって、権威ある人になればなるほど、それぞれ皆さん御予定を持っているのは当然じゃないですか。あなたはいつから申し込まれたか知らないけれども、今、みんな逃げたとか、そういう言葉は慎むべきだと私は思う。

山田委員 フランスやイギリス等々においてのことは、私も当然調べておりますし、わかっている。しかし、日本においては、日本の食の安全のためにどういう手続をとるかというのは、まさに日本が独自に判断すべきであり、それは島村農水大臣も前から言っているように、食の安全のためにはあらゆることをしたいと言っている建前だから、フランスがそうだから、スイスがそうだからということは当たらないと私は思う。

 ただ、教授会のために出席できずとか、他用のために出席できずとか、専門家の皆さん方が言ったことに対して逃げたと言うことは、ちょっと失礼かもしれない。それは私もおわびしたいと思う。

 ただ、これだけ大事なことをやるときに、だれでも一人専門家の方に来てもらって、そしてこの委員会の、国会の場でその論議をするということは大事なことだと私は思っている。

 同時に、もう一つ大事なことは、これは専門的な知識じゃないんだけれども、大臣、アメリカ側からの一方的な資料であることには間違いない。それについて、こちらから、例えば牛の月齢にしても、トレーサビリティーができた牛でやっているわけではない。これはここで生まれた、この牧場で生まれた大体二カ月ぐらいの誤差のある牛、で計算していると言われております。そういった具体的な事実関係についても、私は当然調査団をアメリカに派遣して、本当に実際にそれが事実に基づいた資料なのかどうかということ、そして、それに基づいてのいわゆる検証というのが必要じゃないかと思うけれども、それはどうだろうか、大臣。

島村国務大臣 例えて申し上げると、当初、私、大臣就任当時に、アメリカ側から私の方に、公式、非公式にいろいろお話がありました。正直言って、多少たかをくくって、大統領選挙への配慮があるようなことを期待した向きもないではなかった。私は厳しく申し上げて、我が国には郷に入っては郷に従えということわざがあるが、やはりこの国に来る以上はこの国の国内措置と同等のものを求める、これが私の姿勢。そして同時に、食の安全、安心というのは我が国の、我々の仕事の一番重要なことであるし、総理からも強くそのことについての要請を受けている。したがって、姿勢を改め、我が国と同等の判断の中で、これは絶対に安全だという意識に至ったものを持ち込む、こういう礼儀はわきまえてほしいと強く申し入れたところ、最近はすっかりその態度を変えましたよ、相手は。やはり私は、申し上げることはきちっと申し上げてきている。

 きょうも、あなたはどなたも見えていないようなことをおっしゃるけれども、寺田委員長は先ほどからずっと、お忙しい時間、ここに座っておられるじゃないですか。国立がんセンターの名誉総長、我々も尊敬する我が国の権威ですよ。それが一人も来ないで逃げたなんて、ちょっと暴言も度が過ぎる。

山田委員 寺田委員長には今から聞く予定にしている。私が言っているのは、いわゆる月齢識別委員会の座長、委員のことを言っているので。ちょっと、時間がなくなるから。

 今大臣が国内と同等の基準と言われたけれども、私の資料を見ていただきたい。日米における飼料原料の給与規制対象品目、これのマーカーをしているところを見ていただきたいんだけれども。

 アメリカにおいては、飼料規制、例えば牛の肉骨粉については、これを豚や鶏にやっている。豚や鶏にやると、これを仮に肉骨粉にするとプリオンが残る。それを牛が食べて、連鎖は断ち切れない。そして、血漿、血粉、これについては、アメリカはそのまま使用をまだ認めている。そして、私の情報だと、いわゆる東海岸においてはまだ肉骨粉を乳牛にやっている。

 そういった飼料関係というのは、これは感染を防ぐ上で非常に重大なことであって、大臣、これについても、当然のことながら、先ほど言ったように国内と同等の基準を求めていくということには変わりありませんか。

島村国務大臣 確かに私も当初、日本とアメリカの差の中で、要するに豚や鶏には肉骨粉が禁じられていない、これは本当に危険がないのかということは関係者に問うたところであります。しかし、米国の肉骨粉規制が御指摘の点で不十分であることについては、昨年七月の日米専門家ワーキンググループなどでも米国に対して指摘をしているところであります。

 しかしながら、飼料規制については、BSEの病原体が牛から牛へ伝播することを防止するための措置であって、牛肉そのものの安全性を直接確保するものではない、このため、米国産牛肉の輸入再開の条件として飼料規制までは求めていない、私どもはそういうふうに報告を受けております。

山田委員 先ほど言った飼料規制はBSE対策ではないんですか。BSE対策として同じものの基準を求めると先ほど言ったのは違うんですか。大臣、お答えいただきたい。

島村国務大臣 肉の安全性に直接かかわることがないといういわば説明を受けたので、私はそれを了としております。

山田委員 当然のことながら、肉の安全に直接といっても、BSE対策としてはこれは大事なことであって、今言ったように、今のはBSE対策に当たらないのかどうか。BSE対策としたら同じ基準を求めるのではないのかどうか、そこはどうですか。

島村国務大臣 御答弁したつもりだったんですが、要は、私たちは、少なくとも、飼料規制はBSEの病原体が牛から牛へ伝播することを防止するための措置ではないので、牛肉そのものの安全性を直接確保するものではない、このため、米国産牛肉の輸入再開の条件として――ごめんなさい、ちょっと言い違えたようです。牛へ伝播することを防止するための措置であり、牛肉そのものの安全性を直接確保するものではない、このため、米国産牛肉の輸入再開の条件として飼料規制までは求めていない、こういう報告を受けておりまして、私はそれを、確信を持って、そういう報告があったので了としたところであります。

山田委員 大臣、それは大変重大な発言であって、これからさらに問題にしてきたいと思っておりますが、きょうは食品安全委員会の委員長に来ていただいております。ちょっと時間も迫ってしまいましたが、委員長に一言だけお聞きしたいと思います。

 きょうはかなり委員長に聞こうと思っておったんですが、今報道では、委員長は多数意見と少数意見と付して書かれている、きょう三時から七時までプリオン調査会があるようですが、そういうことが言われております。ところが、実際にそのプリオン調査会で、二十一カ月齢以上の検査でいいかどうかということについて、今十四人の委員さん方で、それでいいと、いわば積極的に発言しておられる方は、今までのプリオン調査会の議事録その他少し読ませていただきましたが、いないと私は思っております、積極的にそれでいいという方は。

 ところが、積極的にそれではいけないという委員の先生方は何人か聞いております、委員長も御承知だと思いますが。そして、積極的に、これでは危ないんじゃないか、いわゆる二十一カ月齢以上の検査ということではなくて、従来どおり全頭検査を継続すべきだ、そういう先生方というのはいらっしゃるわけですが、その先生方はプリオンの専門家だ。そういった……

山岡委員長 山田君、簡潔に意見をまとめてください。

山田委員 意見を大事にして結論を出してもらいたい。私もきょうからの会議をつぶさに聞いておきたいと思いますので、その点についてだけ、委員長、答えていただきたい。

寺田参考人 先生も御存じのとおり、私どもの委員会、建前、本質的にも中立公正、科学的に話を進めていくことで、多数決で物を決めるなどということはあり得ないことです。

 それから、きょう三時からあります会議も、今までどおり、これまでの意見を集約していく方向には進んでいっていただきたいと思いますけれども、時間を切るとか結論をこうするとか、そういう予断は全く持っておりませんので、御承知をお願いします。

山田委員 終わります。

山岡委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 食料・農業・農村基本法に基づく基本計画の五年ごとの見直しが今年度末を目途に取り組まれております。大臣はこれまで、所信表明や委員会質疑における答弁などで、食の安全、安心ということを強調されてきました。また、たった今の答弁の中でも、食の安全、安心を中心にということがあったかと思っております。

 そこで、最初にお聞きしたいのは、新基本計画の策定に当たっても食の安全、安心は中心に据えられるべきと思いますが、この点をまず確認させていただきたいと思います。

島村国務大臣 お答え申し上げます。

 食の安全を確保するとともに、消費者の信頼を獲得することを通じて、消費者が安心できる食生活を実現することが私たちの責務であると認識しております。

 今回の基本計画の見直しにおきましては、食品行政について、より具体的でわかりやすい施策展開を心がけるという観点から、食の安全及び消費者の信頼の確保の項目を新しい基本計画に位置づける考えであります。

    〔委員長退席、楢崎委員長代理着席〕

高橋委員 安全、安心とはっきりおっしゃってくださらなかったのが正直言って残念なんですが。

 今の答弁の中にあったように、食の安全と消費者の信頼の確保、こういう言葉が先日発表された新基本計画の骨子案に載っておりました。このことに気がついて、驚いたんですけれども、局長に伺います、安心という言葉が消えたのはなぜでしょうか。

島村国務大臣 私が安全、安心の安心を避けたようにおっしゃいますけれども、私、そういうつもりはないので。安全、安心ということよりは、やはり消費者から本当の意味で信頼されるということを、要するに、こちらがボールを投げたら向こうでそれを受けていただけるということを基本に、一歩踏み込んで、安全、安心を盛り込んだつもりでありますので、誤解のないようにしていただきたい。

高橋委員 ありがとうございます。

 一歩踏み込んでとおっしゃっていただきました。それなのに、なぜ、新しい骨子案では食の安全と消費者の信頼の確保という言葉に置きかえられたのか、そのことについて伺いたいのです。

中川政府参考人 今回の基本計画の見直しに当たりまして、食の安全・安心のための政策大綱の考え方に沿った施策を基本計画の中に盛り込むことといたしております。

 これの記述に当たりまして、二つ理由がございますが、一つは、リスク分析の考え方に基づいて食の安全を確保するということは、やはり食料供給の必須の条件でございますし、また、食の安全が確保された上で、食品表示や情報提供を通じまして、食品に対する消費者の方々の信頼を確保する施策を通じまして、結果として消費者の方々が安心を得ることができる、こういうふうに我々も考えたわけでございまして、こういった具体的な施策の方向を食の安全と消費者の信頼の確保という形で表現したものでございます。食の安全と消費者の信頼を確保する施策を通じまして消費者の方々が安心できる食生活の実現を目指すという、この施策の方向が変更されたものでないのはもとよりでございます。

高橋委員 施策の変更ではないということ、それから、結果として安心が得られるものである、そのための施策であるということが今のお話にはあったと思うんです。

 私は、そうであれば、何も変える必要はないのになと思うわけです。なぜかというと、この安全、安心という言葉を繰り返し強調してきたのにはやはり深い意味があったのではないか。平成十四年四月に発表された食と農の再生プランでは、食の安全と安心の確保に向けた改革に真剣に取り組むということがうたわれました。その趣旨は、「BSE問題や食品の虚偽表示問題等に関連して、「食」と「農」に関する様々な課題が顕在化している中で、農林水産政策を大胆に見直し改革することにより、「食」と「農」を再生し、国民の信頼を回復することが急務」と強調されておりました。その後、それを具体化するための食の安全・安心のための政策大綱という名前ですね、これをつくり、農水省の政策の中心に据えたということを承知しております。

 中川局長にお尋ねしたいのですが、消費・安全局を初めとする行政組織の再編、それがその具体化だったと思いますが、この消費・安全局その他の役割といいますか意義といいますか、改めて確認をしたいと思います。

中川政府参考人 平成十三年のBSE問題などを契機といたしまして、政府におきましては、食品安全行政にリスク分析の手法を導入することといたしまして、平成十五年の七月には、食品安全基本法のもとに食品安全行政の基本理念を定めるということ、それから食品安全委員会の設置など、食品安全行政の全体の体制が整備されたところでございます。

 これを受けまして、農林水産省におきましても、リスク管理のための施策や組織を総合的に見直しをいたしまして、産業振興部門から独立した食品分野における消費者行政と、それから、リスク管理を一元的に担う消費・安全局を設置いたしますなど、リスク管理体制の整備をしたということでございます。

 こうした体制のもとで、国民の健康保護を第一に食品の安全性の確保を図るために、国民の方々、消費者の方々への情報提供に努めながら、また意見交換を行いながら、平成十五年に決定をいたしましたこの政策大綱に沿って、消費者に信頼される食料の安定供給の体制の確立に取り組んでいるところでございます。

高橋委員 食の安全と安心の確保、これを中心とした政策大綱、その中心となって消費・安全局その他の体制ができたということで確認してよろしいですか。

中川政府参考人 基本的な考え方は、食の安全・安心の政策大綱に沿って、それの政策をより具体的なもの、実効性のあるものにつくり上げていくというのが私どもの消費・安全局の任務だと思っております。

高橋委員 食の安全、安心の確保を目指す政策大綱に沿ってやられてきたこと、また、今回の骨子案の言葉が、安心という言葉が取れたとしても、基本は変わらないというふうなことが今るる説明されたと思うんですね。意味が余り変わらないんじゃないかとおっしゃる方もいるかもしれないんですね。ただ、私があえてこのことを伺ったのは、このことをあいまいにすれば農政の基本方向の明確な変更につながりかねないのではないか。なぜなら、この問題がどこから出てきたのかということに起因しております。

 昨年三月五日の企画部会で、専門委員の中からこれについての具体的な発言がありました。そのまま読みます。「まず、お願いしたいことは、資料の中の、「安全と安心」という言葉がいつも一緒に使われているので、「安心」は削って「安全」だけにしていただきたいのです。」この発言をされた方は、日本経団連の理事も歴任されている食品業界の代表の方でありますが、いわゆる影響力の大きい方の発言一つで変わったと言われかねないこともあるかと思います。

 大臣、このような、安心という言葉は削ってという議論が昨年からされていたことを御承知でしょうか。

島村国務大臣 仄聞いたしております。

 ただ、私たちは、別にそれらを聞いて、食の安心というものをどこかへそっとどかしたと、そんなイメージは全く持っておりません。また、そんな考えがあるくらいならば、歴史のある食糧庁をやめて消費・安全局をつくったりはいたしません。

高橋委員 ですから、消費・安全局をつくって以降のお話なんですね。本当に最近なわけです。つまり、私は今、三月五日の企画部会の紹介をしましたが、その後に中間論点整理も出されておりますし、この発言があったからといって、直後に何か変化があったわけではありません。

 ところが、そのことを含めて集中的に議論されたのが昨年十月八日の企画部会でありました。初めに、政府側、消費・安全局審議官の方から、食の安全、安心の確保について説明がされております。この言葉は、その後議事録に何度も出てきておりますので、十月の時点では安全、安心という言葉が政策に据えられていたと理解してよろしいかと思います。討論の中で、先ほどの食品業界の方が発言をされています。「安全と安心と言いますが、安心というのは我々が議論をするべきではなくて、消費者が感じ取ることです。ですから、この会でやるべきことは、何が安全で何が危険かを明確にすることではないのか」と述べておられます。この発言を具体的な問題とリンクさせると、ぐっと意味を持つのではないか。

 同じ方が昨年三月一日付の西日本新聞のインタビューでこう答えています。消費者の安心を得るために全頭検査は必要との指摘もあるが、安心の基準は人によって異なり一様ではないことも考えないといけないとして、二十カ月齢未満の牛については、特定危険部位を除去することで安全性は確保できる、そのあたりが日米協議の落としどころだと強調しています。

 私は、きょう、BSEの質問をしているのではありません。ただ、安心という言葉を取りなさいと言った方が同じ角度でこういう発言をしている。このことが結びついて、発言の意図がこうであったとなれば、重大な問題であります。

 十月の企画部会で、この方と別の委員の方も同様の発言をしております。安心ということは、安全が決まってくれば、あとはもう安心ということは信頼をするということだと思いますので、そこはもうおいておいて、安全のことに関しては慎重にやって、自分も消費者もきちんとやれ、自分の基準を決めるというふうになれば、大分違ってくるのではないかという発言であります。

 つまり、こういう視点を貫いていくと、国が安全だという基準を決めたら、あるいは専門家が言って、これでよしという評価をすれば、あとは個人の問題だと。添加物がどうか、原料、原産地はどうか、そこを心配するかしないかは個人の問題だから、それを表示する必要はない、そういうことに解釈もできることになります。

 この企画部会では、むしろ安全、安心を施策の基本理念として中心に据えるべきだという意見も出ておりました。また、説明する政府側も、しきりに安全、安心の確保ということを発言しておられました。

 局長、十月の時点ではそういうふうに説明をされていましたので、いつ言葉が変わったのか、もう一度伺います。

中川政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、安心という言葉を基本計画の中で用いておりませんのは、食の安全と、それから消費者の信頼を確保する、そういった政策を通じまして、消費者の方々が安心できる食生活の実現を目指すという考え方を施策の内容に即して表現をしていく、そういう考え方に基づくものでございます。先ほども申し上げましたけれども、食の安全が確保された上で、食品表示や情報提供を通じて消費者の方々の食品に対する信頼を確保する、そういう施策を実施していきますと、結果として、消費者の方々に安心していただけるというふうに考えております。

 それから、いつということでありますけれども、こういった食の安全と、それから関係者の間の信頼を醸成していくということは、三月以前から、関係者の方々に集まっていただいて、顔の見える関係づくりといった検討会も行ってまいりました。そういった検討会の中でも、この信頼の醸成ということは一つの大きな目標として議論していただいていたところでございます。

高橋委員 安心と信頼の確保ということで今まで言われてきたと思うんですね。それが信頼の確保というだけになったということに、特段、安心を軽視したわけではないという説明だったかなと思うんですけれども、やはり私は、ここまで安全、安心を強調するまでになった成り立ちがあるからこそ、ここにこだわりを持つ必要があるかなと思っているわけです。

 この問題を考える上で参考にしたいと思って、きょうは文部科学省においでをいただいております。科学技術・学術政策局長の私的懇談会である安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会が、昨年四月に報告書を出しました。食品行政を含む多様な課題について、安全、安心の確保について考察をされております。

 そこで、この懇談会においては、安全と安心の関係について、また安全、安心と食品行政とのかかわりについてどのように報告をされていられるでしょうか、御紹介をお願いいたします。

有本政府参考人 お答えいたします。

 この懇談会でございますけれども、問題意識としましては、近年の感染症、あるいは犯罪、テロ、大規模災害、こういった脅威の増大、あるいは技術の高度化、複雑化によります社会システムの弱点の顕在化、こういったものを受けまして、国民の方々の中に不安が高まっているということで、こういったものに対して科学技術政策上どう扱うべきかという観点から、この御指摘の懇談会を開催したわけでございます。

 この懇談会は、科学技術の専門家のみならず、防災、あるいは環境、医療、心理学、政治学、こういった非常に多分野の産学官の有識者の方々で御議論を非常に多様にしていただきまして、昨年の四月に報告書を取りまとめていただいております。その中では、いろいろ、目指すべき安全、安心な社会というものはどういうものであるかということ、あるいはこの課題に対応する科学技術の研究開発課題はどういうものであるか。例えば、地震とか津波、あるいは感染症、あるいはセンサー技術、あるいはこれ全体をいろいろな解析をいたしますシミュレーション技術、こういった課題の抽出をしたわけでございます。

 こういった研究開発課題を最終的に世の中のニーズに合わせて解決策を提示するという場合のいろいろな政策の方向性というものについても御議論をいただき、報告書の中に書き込まれておりますけれども、例えば、技術シーズと求められる安全確保のニーズを結びつけるための体制の整備でありますとか、あるいは未知の危険に対応するための多様な専門家を常に知的なネットワークとして構築しておく必要があるだろうということがございます。

 先生の御質問のことでございますけれども、安全を安心として実感するための取り組みもしっかりしておくべきであろうということがございます。

 なお、食品に関しましては、こういった安全を安心につなげるための重点課題といたしまして、食品へのトレーサビリティーの導入というものも重要な課題ということで取り上げられているところでございます。

 以上でございます。

高橋委員 今、最後の方で御紹介になった、安全を安心として実感するための取り組み、この考え方について御紹介いただけますか。

有本政府参考人 これは、今申し上げましたように、食品に関しましてはトレーサビリティーということがあろうかと思いますし、それから、例えば先ほど申しましたような地震、津波あるいは感染症等々、いろいろな脅威がございますけれども、こういったものの脅威について、どういう被害予測がされるかということを事前にシミュレーションし、それを可視化しておいて、一般の国民の方々にそういうものを十分周知するということ、最終的には、こういった技術というものが、いざとなった場合に、国民の方々の課題解決ということにしっかり対応してくれるということについての信頼というものを得るということが大事になろうかというふうに考えてございます。

高橋委員 何か最後に信頼という言葉を言ったので、どうも、最初に書いていることと違うのかしらと思いましたけれども、きょうは別に科学技術の方にどうこうと言うつもりはございませんので、報告書を読ませていただきます。

 安全を安心として実感するための取り組み

  安心は安全の確保に関わる組織への信頼や個人の主観的な判断に大きく依存することから、たとえ、安全が確保されていても、個々人が安心として実感できないのであれば、なぜそのような事態が生じているのか原因を検討し、原因を明らかにした上で、安心をもたらすためには、何をすべきなのかについての研究が必要である。また、確保されている安全を個々人が安心として実感できることが社会的なゴールであり、安全を安心として実感するため手法の研究が必要である。

とおっしゃっております。

 私は、非常にこれは大事なことだなと思っているのです。

 前段に言った、個々人の主観的な判断、実はこの主観的な判断だということが企画部会で盛んに言われたわけです。安全だということは科学者なり政府が判断するけれども、安心できるかどうか、それは個々人が受け取る判断、主観的なものなんだ、だからそれをあえて施策の目標にしても無理なんじゃないか、そういう議論があったということを踏まえて安心という言葉が取られたとすれば、その後の政策に当然影響がするというふうに受けとめているわけです。

 幾ら科学者が安全ですとお墨つきを与えても、なぜ国民が安心できないのか。情報の出し方や手続に国民が納得できない、信頼できないものがあるからではないでしょうか。例えば、科学者がリスク評価をしているその瞬間に、同時並行で日米協議をやっているという、そういう姿勢に対して、信頼できないと国民が言っているのです。BSE国内発生の最大の教訓もそこにあったのではなかったでしょうか。国内発生でも、そのことが痛烈に反省されて、食の安全・安心政策大綱ができたのではなかったでしょうか。国民の九割が輸入食品に不安を感じている。八割が国産の食料を食べたいと言っている。こうした消費者の意識に軸足を置いて、農政もしっかり展開していこうと決めたのではなかったでしょうか。そうした議論を踏まえて、安全・安心の確保、この基本について、新しい基本計画の骨子に、基本計画の中に明記するべきと思いますが、大臣の所見を伺いたいと思います。

島村国務大臣 たとえ文字は消えても、消費者に安心して召し上がっていただく、またそうであってほしい、そういう私たちの基本的な気持ちは全く消えておらないわけであります。これからも国産が食べたい。それは、一つは国産のものは物がよい、おいしい面もあると思いますし、また同時に、安心感、信頼感、これもあるのだろうと思います。そういうことも含めて、私たちはそれらに十分配慮しながら、これからの仕事に取り組んでいきたいと思います。

高橋委員 文字は消えても気持ちは消えておらない、非常に心のこもった答弁かなと思いますが、ただ、気持ちが消えておらなくても、そこまでして文字を消さなければいけない理由がまたあるのかなということを、非常に理解できずにおりました。

 きょうは時間が参りましたので、先ほど紹介した議論があって、この安心の確保ということが取れたということを、やはり大臣もよく見ていただいて、その議論が何で起きてきたのか、よくわかるように、消費者に本当に軸足を置いてということが貫かれていれば、それは構わないのでありますが、そうでない思いの人たちがそういう発言をしているわけですから、そこをしっかり見ていただいて、軸足がぶれることがないように、そのことを強く要望して、終わりたいと思います。

楢崎委員長代理 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党の山本です。

 まず最初に、BSEの問題についてお伺いをいたします。

 私、大臣にだけ答弁を求めませんので、よろしくお願いします。

 二月八日の農林水産省と厚労省の専門家による牛の月齢判別に関する検討会という中で結論が出たわけですが、A40の評価決定ポイントは高い精度で判別が可能だ、牛枝肉の生理学的成熟度を客観的に判別する基準として適当であるというふうな最終報告であったわけでございますが、その報告書の中で、A40を基準として採用し得るか否かの判断に当たっては、米国産牛肉のBSE感染リスクの程度を考慮する必要があるというふうにあります。これは具体的にはどのようなことを指すのでしょうか、お伺いします。

中川政府参考人 二月八日に取りまとめられました牛の月齢判別に関する検討会報告書では、A40という格付の基準を用いまして、二十一カ月以上の牛を排除する基準として使った場合に、二十一カ月齢以上の牛がA40以下に評価される可能性というのは、一定の統計学的な試算をいたしますと、一・九%以下といったような数字が出るわけでございます。この数字自体は、それ自体、その数字でもってA40を基準として採用するか否かを結論づけるということができるものではなくて、つまり、この数字が小さいか大きいかということ、その数字だけで結論できるものではなくて、その判断はアメリカ産牛肉のBSE感染リスクの評価結果とあわせて判断することで初めて意味を持つものであるというのがこの検討会の委員の方々の意見でございまして、そのことが今回、先生の引用されたような文言で報告書に記載されたというものでございます。

 ですから、A40を基準として採用するか否かは、今後、食品安全委員会に、アメリカから牛肉を輸入する際のさまざまな条件とともに諮問いたします。BSEのリスクというものを食品安全委員会に諮問いたしますけれども、そのリスク評価の結果を踏まえて判断をしていきたいというように考えております。

山本(喜)委員 要するに、アメリカにおける発生のリスクですね、そういうことだというふうに理解していいですか。

中川政府参考人 報告書には、米国産牛肉のBSE感染リスクの程度を重視する必要があるということですから、アメリカにおけるBSEそのものの発生リスク、それから牛肉のBSEに感染しているということのリスクと、両方だというふうに思います。

山本(喜)委員 肉の安全並びに発生のリスク、両方というふうなことが今答弁ありましたけれども、発生リスクということであれば、飼料規制というのが極めて重要になっていくのではないか。牛から牛への伝播、蔓延を防止するということで、肉骨粉の規制は極めて重要なわけでございます。

 EUの食品安全リスク評価機関である欧州食品安全庁、これが昨年、アメリカのリスクですね、評価、レベル二からレベル三に上げたわけです。EUの食品安全庁の米国の地理的BSEリスクの評価に関する作業グループ報告ということによりますと、人間食料についてのSRM禁止は導入された、しかし、飼料連鎖のSRM禁止はない、SRMは他の屠畜副産物と一緒にレンダリングされ、独立レンダラーの場合には死亡牛も一緒にレンダリングされる、欧州の方ではそういうふうに評価しているわけです。

 こうした結果に基づいて、アメリカに対する国際的な評価は下がっているというふうなことになるわけですよ。そういうふうなEUの評価というものを日本ではどのように考えているのでしょうか。

中川政府参考人 昨年であったと思いますけれども、EUの方でGBR、BSEの地理的リスクの評価見直しが行われまして、アメリカのGBRのレベルが二から三に上がったというのは承知をいたしております。

 また、昨年の五月、六月、七月と、日米の専門家によりますワーキンググループで議論がされました際にも、アメリカの飼料規制の状況について、日本から見て必ずしも十分ではない点があるんではないかというふうなことは専門家からも指摘をしたところでございます。

山本(喜)委員 そこで、前の予算委員会でも質問しました。日本の国内の対策ということでは、昨年の十月に、厚労大臣と農水大臣の連名で、食品安全委員会に、飼料規制の実効性の確保の強化ということをわざわざ諮問しているわけですね。これが、予算委員会のときにはどういう答弁があったかというと、飼料規制の実効性確保を一層強化することが大事だ、さらに強化すべき点について諮問したというふうに答弁されておりました。

 先ほどの米国産牛肉のリスク評価、これについても、アメリカでの発生リスクということも含めるというようなことが言われているわけです。そうしますと、やはり飼料規制というのが極めて重要になっていくわけでございまして、内外同一ということであれば、なぜアメリカに飼料規制を求めないのか、これについて、私、ちょっと納得がいかないので、答弁をお願いします。

中川政府参考人 飼料規制をきちっとしていくということは、牛から牛へのBSEの伝播を防止するという意味で大変大事な点だというのはもう先生御指摘のとおりであります。

 ただ、申し上げますけれども、日本がアメリカから輸入するのは牛肉であります。その牛肉の安全性の確保の措置として日本の国内と同じものを要求するというのは、これまでずっと貫いてきた私どもの基本的な立場でございます。

 そこで、先ほども申し上げましたけれども、飼料規制というのは、BSEの病原体が牛から牛に伝播するところを防止するという意味では、極めて大事な、また、それぞれの国で牛のBSEを根絶するという意味でも大変大事な措置ではありますけれども、牛肉そのものの安全性を直接確保する措置ではないということで、アメリカに対して要求をします際の基本的な条件というのは、特定危険部位をすべての月齢から除去するということ、それから、BSEの検査ということからいけば、日本が二十カ月以下の牛についてのBSEの検査を義務づけないという条件のもとで、二十カ月齢以下ときちっと判断された、証明された牛由来の肉に限る、この二つの条件をこれまでも主張してきたところでございます。

 以上でございます。

山本(喜)委員 いや、わかりますよ。ただ、日本は、BSEをこれ以上蔓延させてはならないということで肉骨粉禁止ということをやっているわけですね。日米のワーキンググループの中では、アメリカの肉骨粉規制が不十分だと。去年の日本の政府の調査団の中でも、今後もアメリカでは発生し得るというふうに判断しましたよね。そうした場合、もし仮にですよ、もし仮にアメリカで今後BSEが発生した場合においても、肉は安全だということで、これは肉が入ってくるということになるんですか。

中川政府参考人 アメリカから一定の条件で輸入が再開されるというふうになる場合の、その条件のもとでのアメリカ産牛肉の安全性については、食品安全委員会に、これは国内の措置についての答申をいただいた後になりますけれども、食品安全委員会でBSEのリスクについて評価をしていただくということは、これまでもずっと申し上げてきたところでございます。

 ですから、入ってくる肉の安全性については、食品安全委員会の御判断を待って、最終的にアメリカとの間での輸入条件というものが決まるということでございます。

山本(喜)委員 そうすると、食品安全委員会にげたを預けたということになるわけですね。

中川政府参考人 平成十五年七月からの政府の食品の安全性確保のための組織体制としまして、食品のリスクについての評価は食品安全委員会、それから厚生労働省と農林水産省はリスク管理を担う組織として位置づけられております。ですから、リスクの評価というものは食品安全委員会において行っていただくことになります。

山本(喜)委員 こればかりやりとりしてもしようがないので。

 このA40と言われる牛枝肉の生理学的成熟度、これに影響をもたらす要因というものはどのようなものがあるのか、あるいはその差異はどのようにあらわれるのか、お伺いします。

中川政府参考人 牛の月齢判別に関する検討会の報告書によりますと、生物学的観点からの検証の結果といたしまして、生理学的成熟度というのは、性別、雄か雌かということ、あるいは品種等の遺伝的な要因、それから育成なり肥育方法等の環境要因により影響を受けるというふうにされております。

 こういう一定の差というものは出てくるという前提のもとで、成熟度を、基準となるA40と判断するか、あるいはA50と判別するかという、そこのところは、腰椎の棘突起の先端、突起部の上部の骨化の程度でもってこれは明瞭にわかるというのが専門家の方々の判断でございまして、牛枝肉の生理学的成熟度を、特定の部分の骨化の程度等を用いまして客観的に判別できるということで、客観的な判断の指標たり得るというのが月齢判別に関する検討会の専門家の方々の御意見ということでございます。

山本(喜)委員 今答弁いただきましたように、品種なり飼料なり、飼育方法によっても差は出てくるというふうな専門家の見解なわけですね。二月八日の専門家会議の中でも、品種やえさによって肉質は変わる、四、五カ月の誤差は避けられないというふうな意見を述べられた学者の方もおるわけでございます。今、中川局長からも、これはさまざまな環境によって差異があるというのを述べられたわけでございます。

 そうしたことを勘案した場合、このA40というシステム、これはアメリカの独自のシステムであって、肉の品質をはかるための尺度であって、月齢を決めるための尺度ということで始まったわけではないわけですね。ですから、アメリカが示したものを今日本の学者の方々が評価をしているというふうな状況だと思うわけです。

 そこで、二月八日の検討会の結果の中に、仮にA40という基準を採用する場合ということで、(1)、(2)の前提条件というのがつけられているわけですよ。この条件というのはなぜつけ加えられたのか、お伺いします。

中川政府参考人 仮にA40を基準として採用する場合として、先生今二つ御指摘なさいましたけれども、専門家のこの報告書の中にも記載をされております。

 一つは、評価決定ポイントの明確化、格付検査官への周知徹底、評価結果の記録と保存というふうなことでありまして、これは、先ほども申しましたけれども、A40というものとA50というところの区分けをする、ちゃんと判別をするのはどの部分のどういう状態かというふうなことをきちっと検査官の間に周知徹底をするというふうな趣旨でございまして、また、そういった判別をした記録というのは、当然のことながら記録として残していくということも後々の検証のためにも必要だということで、こういう趣旨のことが留意事項として指摘をされているわけであります。

 それから、さらに二点目といたしまして、基準としての有効性を確認するための追加的検証または実施後のフォローアップが必要だということでありますが、これは、今回のアメリカが行いました特別研究について、その判別の精度等については一定の成果が出ているわけでありますけれども、さらに、当検討会におきます統計学的な観点からの検証の結果、より精度の高い結論を導き出すために、今申し上げたような事前的な追加的検証、または実際にものが動き出した後の、実施後のフォローアップが必要だということが指摘をされているということでございます。

山本(喜)委員 要するに、アメリカが示したデータでは、余りにもサンプルが少な過ぎるということと検査官の主観に基づくということで、これは信用度が低いということじゃないですか。

中川政府参考人 A40というものを使うに当たってのその判断の基準は明瞭だというのは、報告書の中に明記をされております。ただ、一定のサンプル数のもとで得られた結論というもの、先ほども申し上げましたが、A40を用いた場合に二十一カ月齢以上の牛が入ってくる可能性というのは、統計的に処理をすれば一定のパーセンテージが出てくるわけでありますけれども、そういったものを踏まえた採用するかどうかの最終的な判断は、米国産牛肉のBSE感染リスクと合わせて判断をするのが適当だというのが専門家の方々の判断でございます。

 ですから、これは、信用できるかできないかということではなくて、今回の検討、特別研究の結果、一定のサンプル数のもとで専門家の方々が判断をされたというものでありまして、この後はアメリカ産牛肉のBSE感染リスクと合わせて判断するものというのがこの結論でございます。

山本(喜)委員 具体的なことをお伺いするんですが、この(2)の「追加的検証又は実施後のフォローアップが必要」、これは「又は」というふうにあるんですが、これは、どっち側をやるということか、それとも両方やるというのか、というのは具体的にどのように進めようとしているのか、お伺いします。

中川政府参考人 今回のその米国側の研究に加えまして、さらに同じような追加的検証を事前に行うのか、あるいは措置を実施した後において同じような研究の成果を再確認する、いわゆるフォローアップをするのかというのは、「又は」ということでございますから、少なくともどちらかは必要だろうというのが専門家の方々の意見でございます。

 それで、そういった御指摘がございますので、現在、アメリカとこの具体的な実施の方法等について協議をいたしているところでございます。

山本(喜)委員 昨年十月の日本政府とアメリカ政府との共同記者発表というのがございました。この中に「BEVプログラムの検証」というのがございまして、ことしの七月をめどに修正のための検証が行われるというようにございますけれども、これはどういうことでしょうか。もう七月ころには輸入が始まっているという前提だったんでしょうか。

中川政府参考人 昨年十月の局長級協議での議論の中身は、まず二つございます。一つは、先ほど申し上げましたが、アメリカから輸入する際の具体的な主要なポイント、一つは特定危険部位の除去、それからもう一つは月齢を二十カ月以下のものにするということでありますけれども、こういった条件で作業をしようということで共通の認識を得られたわけでございます。

 その共同記者発表の中に、ことしの七月をめどに修正のための検証が行われるという記述がございますけれども、これは、ことしの七月までの間に、一つは、五月に予定をされておりますOIE、国際獣疫事務局におきまして、BSEの基準の見直しが議論される予定になっております。それからもう一つは、アメリカで、昨年の六月から、サーベイランスを強化するということで二十万頭規模以上の、拡大したBSEの検査が行われております。この結果も、そのころまでには、一定、出てくるだろう。こういった新たな科学的知見の追加が見込まれますので、これらの新たな知見を踏まえて検証するということにいたしたものでございます。

山本(喜)委員 中川局長さんからずっとお伺いしておりましたけれども、大臣に、次にお伺いしたいんです。

 専門家会議で、結論はA40ということで出したようですけれども、専門家の中でもかなりの意見の隔たりというのが指摘されているわけでございます。私自身が思うには、科学的知見と言いつつも、やはり熟練の技術者の目視に頼るしかないような今のアメリカの制度ですね。それに対して、日本の国内の場合は全頭検査、これは、政府が補助して向こう三年間実施が続くという自治体が出てくるわけです。さらには、肉骨粉の規制とかあるいは生産履歴というものもきちんとつけられている、そういう極めて国際的にも厳格なこのBSE対策の国内措置。もし仮に、これが、アメリカから、目視だけに頼るような、こういう牛肉が入ってくるというふうになった場合、国内の生産者あるいは消費者の理解が得られるというふうに考えているかどうか、これをまずお伺いしたいと思います。

島村国務大臣 あなたも大変御心配なさっているようですが、実は私も、いろいろ話すときには笑顔でしゃべったりはいたしますけれども、決して安心し切っているわけではありません。例えば、コンピューターか何かで簡単な検知ができて、完全に科学的知見であると胸を張れるものが出ればこんなにありがたいことはないわけですけれども、仕方がないので、私どもは、専門家が今熱心に御討議いただいて、もう四カ月たちますが、その結論を今か今かと素直な気持ちで待っている、これが私の実感であります。

    〔楢崎委員長代理退席、委員長着席〕

山本(喜)委員 ありがとうございました。これで終わります。

山岡委員長 次に、白保台一君。

白保委員 大臣に、所信の中から伺います。

 まず、昨年は、地震、台風、大雪など多くの自然災害が発生しました、農林水産業が自然を相手にして営まれ、自然の力から大きな影響を受ける産業であることを改めて痛感させられました、こういうふうに大臣は所信の冒頭で述べられております。二〇〇四年の農林水産被害というのは一兆五億円、こういうふうに言われておりまして、一九九三年の大冷害の年以来、十一年ぶりに一兆円を超えた、こういうふうに報道等もなされております。

 私のところももう台風常襲地ですから、農林水産業の皆さん方がそういう台風被害だとか自然災害で悩んでいることはもう常に見ていることでありますけれども、被害が出てちゃんと補償されるまでの間が、結局、補正予算だとかそういったことで、非常に長い。農地などは、これは後でじっくりと聞きますけれども、例えばビニールハウスだとか、そういうところなどは、もう常に張りかえたり、去年などは、十七号が間にあって、十六号、十八号があって、十六と十八を一緒にすると物すごく大きなものになるんですけれども、気象庁が非常に厳密にやって、十六は十六、十八は十八、こういうふうにやりますと、被害も非常に大きくなる。しかも、短い間に来る、張りかえたらまた来る、こういうことで、農家の皆さん方は大変御苦労をなさっているわけでございまして、そういった資材関係の問題等は、これは特認のような形でもってさっとやれるようなそういうシステムも必要なんじゃないかな、こんなふうに思っているわけでありまして、大臣、まず、そういうものに対する対応をどのようにお考えなのか。大変自然から学ぶものは大きいわけですから、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

島村国務大臣 我が国は世界でも六十番目の狭い国土で、これが寒帯から亜熱帯に細長く伸びて、それで真ん中を急峻な山に占められて、あげくが、地震を起こす火山帯が七つもあって、かてて加えて台風の常襲地帯。台風シーズンになりますと、先生のお地元の沖縄に私たちは思いをはせて、大変だなといつもそう思います。

 もっとも、農林水産行政もそういう点をおもんぱかって、一般の国際価格より十倍も高いサトウキビを生産していただいて、農民の士気に少しでもプラスになろうという努力をしているところでございまして、我々はいろいろな配慮をしているところですが、昨年は特に、御承知の、今御指摘もありましたけれども、十に及ぶ大きな台風の上陸もありまして、この被害は膨大でありまして、ついに一兆円を超えた、史上三番目と承知をいたしております。

 こういう際にいろいろ機敏に対応し、その被害を受けた方々がすぐ立ち直りを決意できるような環境づくりへの配慮、こういう御指摘だろうと思います。ビニールハウスもその周りも全部でございますが。私たちは、そういうことについては、考えは全く同じでありまして、そういう際にもすぐ対応できるような平素からの用意をしておくということは非常に大事なことだろうと思います。

 実は、昨年、台風や地震が起きました。その際に、私は、例えば地震でいいますと十月二十三日にあったわけですが、すぐ、降雪の時期はいつごろから始まるのか調べたら、ちょうど十一月の二十四、五日、約一カ月を残すのみでした。そこで幹部を集めて、まずその本部を設置し、副大臣に本部長をやってもらうと同時に、その一方で、激甚災の指定を一番急いだらどれだけでできるのかと。そうしたら、今まで一番早くて二カ月少しかかりますと。なぜそんなにかかるのかと言ったら、災害の調査に入る段階で、国民の大事な税金を使うんですから、そのために実は調査を十分にした上であれすると。ただ、その後の手続を調べてみると、地方農政局がこれを全部チェックして、今度は本省でチェックしてと。そんなばかなことを言いなさんなと。そこで、防衛庁と協議をして、ヘリを飛ばして空中で撮影をしたもので査定をし、しかもこちらから、本省からも出向いて、農政局と一緒になってやった結果、とうとう一カ月でできたわけですね。やはりこういうことは非常に大事なことなんだろうと思います。

 そういう意味で、今先生御指摘のことも非常に大事なことですから、これからに向かっていろいろ対応しなきゃいけないところですが、今までにもビニールハウスの被害その他はあったわけでございまして、従前から配慮することの努力はいたしておりますが、今までも農業生産資材などに対しては支援を行っているという実績もこれあり、これからも、強風に耐え得る低コスト耐候性ハウス、耐気候性ですね、天候に対する耐久性のある、導入への支援などを行っており、これらを通じて災害に強い農業づくりを進めてまいりたい、こういうふうに考えているところです。

 これからも、台風がないという保証は全くないわけですから、有事に備える、これこそ我々の責務である、こう考えております。

白保委員 大臣が非常に機敏な対応をされて、その結果として先ほどの御答弁のような形になったんだろう、こう思います。

 ただ、異常気象、去年など十個も台風が上陸するなどということは考えられないような状況。したがって、これまでの対応というのは、これまでの気象状況の中で、あるいはそういったことで判断がされて、今のシステムができたと思うんです。しかし、もうそのシステムでは対応できないから、大臣が先ほど言われたような、急遽やるということで、一カ月ぐらいでやる。こういったものをやはりシステム化しないと、新しい、異常気象のような時代の中にあって、今までどおりのことをやっていると、やはり長くかかるんですよ。ですから、そういった面のシステムづくりというものも、これからの時代に即応できるものも考えておく必要があるんじゃないかな、こう思っておるんです。

 もう一度だけ、大臣、この辺のことはいかがしょうか。

島村国務大臣 私も長く農政にかかずらってまいりましたので、全国のいろいろな事件等の現地を拝見いたしました。

 しからばではこういうふうにしたらいいというのは鉄筋コンクリートでつくるしかないような環境もこれあり、費用その他の面でなかなか思うようにいきません。したがいまして、まず迅速に対応できることと、やはり安全に対する配慮、これも二つ目に必要だと思うし、さらには予算措置その他も、そのときになって一々建議するのではなくて、何かそれらについては対応できるような、多少懐に余裕のある、そういうようなものも配慮することが必要なのかな、こう思いますが、従前のいろいろな経験に立ちまして、これからも御指摘の点、努力をしたいと思います。

白保委員 では次に、大臣、御専門だと思いますが、都市農業についてお伺いしたいと思います。

 実は、都市農業に入る前に、さきに私ども、党の神崎代表を先頭に全国でずっと農政フォーラムを行ってまいりました。その結果を取りまとめて、去年の四月に農水省に、我が党の政策提言として提案をしたわけですね。

 今、食料・農業・農村基本計画が改定の時期を迎えて、ずっと作業が行われていますが、そういった中で僕らもこうやって、我が方の提案はどうなっているかなということ等も含めて精査をしておりまして、大変それが反映をされつつあるな、こういうふうな思いもあるんです。

 一方で、今度は都市農業です。都市農業についても、これはたしか十一年成立の基本法においては、都市農業振興というのは国の責任であるというふうに定めているわけですね。そういった中でも、結構、都市農業の中からいろいろな声も聞こえてまいります。したがって、私たちもここのところ、都内の数カ所を視察しながら声を聞いてまいっております。そういう意味で、都市農業の果たす役割というのは非常に大きいんですね。

 大臣のところのコマツナも全国に出ております。コマツナというので、コマツナって何かなと調べてみたら、吉宗以来のいろいろな話がありまして。これは余談ですけれども。

 そういうことがあって、非常に立派な農業を都市の中でされていることも事実です。しかしながら、都市計画法や生産緑地法、あるいは租税特別措置法などの関係法令が、都市農業をきちっとやっていけるような考え方とは合致していないような部分もこれあり、私たちは、こういった都市空間やあるいは景観を残していく意味からも、また果たす役割からいっても、ぜひこの都市農業をしっかりと位置づけていかなきゃならない、こういうふうに思っておるわけでございまして、大臣のお考えをお聞きしたいな、こう思っています。

島村国務大臣 大変御理解ある御意見を伺って、大変うれしく思います。

 例えば私どもも、御指摘いただいたように、日本橋を起点としまして八キロから十五キロにおさまる大変至近な距離にある東京なんでございますが、都市農業が結構ございまして、都内第二番目でございます。その中で、今御指摘のコマツナは我が地域が原産地でありますけれども、コマツナに限らず、セロリ日本一もおりますし、その他の野菜も朝になると山に積んでお届けをいただくというような非常に恵まれた環境があります。

 実は、私は、前回の食料・農業・農村基本計画が決定する直前に、都市農業の位置づけがなかったものですから、これをあえて入れてもらった人間であります。そういう意味で、私は、今都市農業というのは、土地が暴騰するときには、何か農業は仮の職業で土地の値上がりを果実として期待しているのではないか、こんな冷たい意見もありましたし、周辺の農業地域からは、我々に農産物は任せりゃいいんだ、何も東京でつくることはない、同じ農業者でも意見の違うものも聞かされたわけでありますが、結果的に現在考えますと、やはり都市農業の存在はよかったな、こんなふうに思っています。

 特に、新鮮で安全な農産物が都心にいながらすぐ供給ができる、農業体験の場の提供ができる、あるいは災害に備えたオープンスペース、これもいろんな災害時に、かなり消防当局などからも聞かされましたが、効果が高い。あるいは、最近は市民農園が非常にふえてきまして、農業に対するいわばトレーニングができる。こんなようなことを本当に考えますと、これは、非常に都市農業の存在は大きいんだろうと思います。

 さはさりながら、例えば、カキの木やクリの木をぱらぱらと植えて都市農業でござい、私はそういうものまでかばえませんよ、私の利害にかかわらず、そういうことだけは排除していかなきゃ農業の存在というものをきちっと訴えられないんだ、そこまで踏み込んで申し上げているところでございます。

白保委員 では、大臣、もう一点だけ申し上げておきたいと思います。

 生産緑地を軸にして、都市農業に関連をした農地保全だとか後継者育成だとかあるいは農業振興、こういった、先ほどの、後段の方の話じゃなくして、まさに都市農業の振興のための首尾一貫した施策を展開できる部署を明確にする必要があるんではないのかな、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

島村国務大臣 通産省がありましたころ、もう長々と中小企業省をつくれ、その片棒を担げ担げと随分やられたことがありますが、ある意味では、私たちもこの必要性というのは十分認識をいたしております。

 そういう意味で、都市農業については、現在農村振興局地域振興課に専門の班を置きまして、それでその事務を担当させているところであります。また、都市農業につきましては、農林水産省の他の部局にまたがる行政課題も多いものですから、そういう意味では、関係部局の十分な連携、調整を図りながら、これからも都市農業を守る、何も私が東京出身でなくとも、このことはかなり着実に認められる努力をされていることを認識しております。

白保委員 では、次の問題に移りたいと思います。

 フードガイド策定、これについてお伺いをしたいと思います。

 食料自給率向上に向けて日本版のフードガイドの策定、活用によって食生活の改善に取り組む、こういうふうに言っているわけですね。確かに、食料自給率を抑えている原因というのは、日本の消費者の食生活、ライフスタイルの変化によるもの、こういうふうにも言われています。世界のあらゆる食材を取り寄せていて、おいしい食事をして、また食べ残しもかなり多くあるわけです。ですから、世界の困窮をしているところから考えると、こういう状況というのは非常に胸の痛む状況であるな、こういうふうに思うわけであります。

 そういった中で、フードガイド策定、こういうことが進められているわけでございますが、それについて、アメリカのファイブ・ア・デー・プログラムということでもって大きな成功をおさめておりますけれども、これは、厚生労働省や、あるいは文部科学省、そしてまた農水省、一体となって、こういうカードを皆さん持っていらっしゃるんですね。これを読んでいますと、十項目ぐらいありますけれども、一々そのとおりだなと、こんなような感じを受けて、反省することしきりでございますけれども。そういったものがきちっとなされていく。このフードガイドの策定のそのねらいと効果、それについてお伺いしたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 国民の方々一人一人がみずからの食について考える習慣を身につけていただく、それによりまして健全な食生活を実現していただく、これまでも食生活指針の普及啓発に努めてきたところでございます。ただ、この食生活指針、先生も今おっしゃいましたが、十項目から成っておりますけれども、これをより具体的な行動に結びつけるものとして、フードガイドを現在厚生労働省と連携をして策定いたしている最中でございます。

 このフードガイドですけれども、実際に消費者の方々が食品選択の場面で活用されることによりまして、御飯などの穀類を中心に野菜、果物あるいは牛乳・乳製品さらには魚といったものが適切に組み合わされた日本型の食生活が実現をされ、食料自給率の向上と国民の健康づくり、生活習慣病の予防に寄与するもの、そういうものをねらってやっていきたいというふうに思っております。

白保委員 効果ですね、あれは何年やりましたかね、こういった運動を始めまして、このカードをもってやりましてから。そして、それによる効果というものがわかりましたら。精神的な効果はかなり私どもも受けておりますけれども。

中川政府参考人 この食生活指針が策定をされましたのは平成十二年の三月でございます。基本計画の策定と同時期であったと記憶いたしております。

 この食生活指針、どの程度定着したのか、あるいは、よく知られることになったのか、一定のアンケート調査もいたしまして、認知度としては二五%程度だというふうに思っております。

 ただ、なお一層、知っているだけではなくて、日々の食生活の中できちっと実践に結びつけるというのがやはりこれからの課題だというふうに思っておりまして、そうだといたしますと、この食生活指針をさらに視覚的にもわかりやすいものにしていく必要があるということで、フードガイドの策定を今急いでいるところでございます。

白保委員 ぜひこれは進めていく必要があるな、こういうふうに思っております。

 次に、遺伝資源の収集についてお伺いをしたいなと思っています。

 実は、私、沖縄県会議員を務めたわけですけれども、その際にもいつもこういった話をしていました。我が方は亜熱帯と、こういうふうに言っていました。温帯の南限、熱帯の北限、ならばいろんな種子を保存して、国に貢献できる、そういうことをやったらどうだということを幾度も提言したりなどしてきたわけでありますが。

 少子高齢社会で人口は減っていくから、食料は大丈夫かななんというふうに、簡単に考えているとえらいことで、恐らくは、南の方では人口爆発ということも起こり得る。そういった中で、やはり遺伝資源を確保しておくということは極めて重要なことだな、こういうふうに思って、私自身の持論でありますが。先輩の方が向こうの方に、経験者が座っていらっしゃいますけれども、OBの方がいらっしゃるんですが。そこで、環境問題や食料資源の開発、そういったことで、持続可能な農業を展開していくためにはバイオテクノロジー、こういったところに活用していく、利用していく、そして、その利用することによって品種改良に取り組むことが非常に大事だ、こういうふうに思います。

 現在栽培されている有用植物は、すべて歴史的に選抜されてきた品種群ですから、そして、遺伝形質が固定されているので、遺伝的変異に乏しく新しい形質を選抜することは非常に難しい、こういうふうに言われている。したがって、原種だとか原原種が非常に大事だというようなことが言われるわけでありまして、遺伝的変異、すなわち個体変異が大きいものほど資源的価値が高くて、遺伝資源として原種に近い古い品種群が大変重要にこれからはなってくる。長期的に見ると、遺伝資源を広く数多く収集をして研究開発を進めることは、社会環境や自然環境の悪化に対抗する品種開発や、市場競争力に強く、これはまた商売にもなるというふうに思うわけであります。

 幾つかの地方自治体でも、遺伝資源の問題については研究開発に熱心に取り組んでいるわけでありますが、本来、遺伝資源収集とか基礎研究というのは国が取り組むべき問題ですから、こういったことで、ここに農業生物資源ジーンバンクというのがあって、OBの方が向こうに座っておられますけれども、そういうことであって、したがって、農業生物資源ジーンバンクの役割というのは非常に大きい、重要である。

 今後の農政展開において、遺伝資源の収集及び研究は非常に大事ですが、どのように位置づけられておるのか、このことについてお伺いをしたいと思います。

西川政府参考人 お答えします。

 今先生御指摘のとおり、遺伝資源というのは、これからさまざまな場面に活用できるということで大変重要な問題だろうというふうに思っております。特に、作物育種の素材としての利用ばかりでなくて、バイオテクノロジーの進歩により遺伝子の機能解析の素材など多様な用途への利用の重要性が高まっているというふうに考えております。野生種を含めまして、遺伝資源の収集、保存、これは我が国農業、食品産業の今後の発展にとって必要不可欠であるというふうに考えております。

 今後とも、この問題につきましては、重要課題として引き続き遺伝資源の収集と的確な保存、活用ということについて努めてまいりたいと考えております。

白保委員 ところで、そうやって一生懸命努力をされるわけですが、言われているところによると、アメリカなんかはもう相当な量のものを確保しているんじゃないか。私どもも県議のころは、本土に行っても同じようなものはないから台湾へ行こうというので、台湾へ行ったりなんかして、これを見てくる。ただ、それを保存するというのが非常にコストがかかって、今すぐもうかるわけでも何でもないわけで、大変な作業だ、こういうふうに思います。

 そこで、現在の収集の状況と、世界的にどれぐらいのランクに我が国はあるのか、その辺についてお答えをいただきたいと思います。

大口大臣政務官 今、白保議員から大変重要なる御指摘があったわけでございますけれども、まず、我が国におきますジーンバンクにつきましては、これは二十三万点でございます。そして、FAO、国連食糧農業機関の調査によりますと、全世界で約六百万点の植物遺伝資源が保存されている、こういうことでございます。そして、ランキングにつきましては、委員御指摘のとおり、アメリカが一番でございまして五十五万点、中国が三十五万点、インドが三十四万二千点、ロシアが三十三万三千点、フランスが二十四万九千点でございまして、日本は二十三万点で六位、こういうようになっておるわけでございます。やはり国の責任として、遺伝資源の収集と、それから的確な保存、活用をしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 以上です。

白保委員 非常にいい答弁がありましたけれども、まさにこれは国の責任として、きっちりと遺伝資源というものは確保していく。これは、戦略的な問題としても国の安全保障の問題としても非常に重要なことですから、ぜひ今後ともやっていただきたい、こういうふうに思います。

 最後になりますが、BSEの対策の見直しについて、きょう三時から委員会が開かれるようですけれども、それについて申し上げたいな、こう思っております。

 BSE対策の見直しについては、食品安全委員会のプリオン専門調査会が答申に向けたたたき台をまとめて、三月にも答申案が作成されるんじゃないか、こういうふうに言われているわけですね。ただ、農水、厚生労働両省は、輸入再開条件の前提となる国内対策見直しと日米両政府間で決める輸入再開条件の二つのテーマを食品安全委員会に諮問しているわけですが、同委員会が判断を回避する可能性等も指摘されているわけであります。

 確かに、BSE問題を通して科学的な食品安全行政を確立したい安全委員会としては、役所にお墨つきを渡すような判断をすることは委員会のあり方そのものにとって影響を残すおそれがあるんじゃないかな、こういうことも思うわけです。

 消費者は、低価格の牛肉が安定供給されることは望みますけれども、安全、安心を犠牲にする気持ちはないだろう。あるいは、日本の消費者は、リスクの伴う輸入再開を望んでいるとは簡単には思えない。

 いずれにしても、全国五十カ所、延べ五千六百人が参加したリスクコミュニケーションに貴重な生の意見がいっぱい寄せられた、また集約されてきた。しかし、そういった中で、意見を集めて終わりではなくして、国民がどう考えているかということも、しっかりとわかりやすい形で、新聞広告等でも公表していただきたい、こういうふうな声も消費団体の中にはあります。

 消費者を説得していくというのではなくして、検討過程の透明性、これをきちんとした形でもって情報を提供していく、このことが消費者が納得するBSEの本来の対策である、こういうふうに思います。

 そこで、今後の検討の流れと政府の取り組み方針について伺いたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年九月に食品安全委員会の方から、それまで約三年にわたります国内のBSE対策の検証結果を踏まえて、中間とりまとめが出されました。その中間とりまとめの後、今先生もおっしゃいましたが、リスクコミュニケーションも行いながら、私ども農林水産省と厚生労働省は十月の十五日にBSE対策の見直し措置について食品安全委員会に諮問したわけでございます。

 現在、その諮問の中身につきまして食品安全委員会のプリオン専門調査会で審議が行われているところでございまして、私どもリスク管理サイドといたしましては、この食品安全委員会におきます議論の帰趨を注視しているところでございます。

 この食品安全委員会で現在審議されておりますのは、国内のBSE対策措置でございます。この審議結果が答申という形で取りまとめられ、私どもの方に示された後におきまして、アメリカとの間で、昨年の十月の二十三日の局長級協議の結果を踏まえて、実務的に細部の詰めをやってきておりますけれども、このアメリカの輸入の条件につきまして、改めて食品安全委員会の方に諮問をしたいというふうに思っております。観点としましては、国内の牛肉と、それから一定の条件のもとで入ってくるアメリカからの牛肉とで、リスクにおいて差がないかどうかということをきちっと評価していただくということでございます。これが、これから先の国内措置についての答申を得られた後の手続でございます。

白保委員 終わります。

山岡委員長 次に、岡本芳郎君。

岡本(芳)委員 自由民主党の岡本芳郎でございます。

 本日は、質問の時間をいただきまして、大変ありがとうございます。

 まず最初に、鳥獣害対策についてお伺いしたいと思います。

 昨年は、随分クマが出てまいりまして、日本じゅうでいろいろ話題になったわけでございますが、最近、野生鳥獣の農作物被害というのが非常に多くなっておるような感じがしております。特に、中山間地域のみならず、平地まであらわれてまいりまして、我が地元等では相当深刻な問題になっております。

 この原因としては、いわゆる野生鳥獣が最近随分ふえたというのが第一点。それに、山の中に野生動物のためのえさがなくなってきた、これは森林等の問題もあろうかと思います。それから、最近、人が動物を大事にいたしますから、野生動物が人間を恐れなくなってきている、どんどん平地に出てきても怖くない、そして、おいしいものがいっぱいある、それを食べて癖になっているようなところもあるんじゃないかと思っております。

 いろいろ農林省の方からデータ等をいただいたわけでございますが、全国的には、イノシシ、シカ、猿、カラス、こういったものが多いようでございます。特殊なところでは、イノシシ、猿、カラス、さらに、それに加えましてカモとかハクビシン、こういったものも随分出てきております。

 最近、癖の悪いのは、猿とかハクビシンがビニール温室まで破って中へ入ってきて、イチゴとか全部食っちゃうんです。大変なことになっておりまして、こういう対策にも困っておるところでございます。さらに、カモ。カモが川の近くとか湖の近く等では随分いるわけですけれども、それが野菜の芽を食ってしまう。ブロッコリーなんかが全滅するというようなことが今起こっております。大体、被害に遭わない農作物というのはゴボウだけだそうでございまして、それ以外は全部やられておるような状況でございます。

 川の中まで大変なことになっておりまして、カワウというのが今物すごく繁殖しております。それで、小川とかせせらぎに魚がいなくなっちゃった、そんなことも出ておるわけでございます。

 これをどう退治するかというか、被害を防止するにはどうすればいいか、これは大変難しい問題で、昔から農林省も困っておるわけでございます。現在も鳥獣保護法等での狩猟でやっているとも聞きますが、これもなかなか、時期だとかあるいは頭数とか制限が出てくるようでありますし、猿なんかは非常にとりにくいというような点もあります。そんなことから、これは大変な問題ですので、農林省として真剣に取り組んでいただきたいところだと思います。

 これは本当に、実ったときに、ばっと、一晩でやられちゃうんですね。カラスなんか、真っ黒になっちゃうんですね、それで一斉にやってしまう。非常に悔しいというか情けない話なんです。

 そういうことによって、また耕作放棄地もだんだんふえていくということでございますので、この対策を、やはり環境省、あるいは自然保護団体、あるいは動物愛護団体ですか、そういったものとも十分協議して、その対策をぜひお願いしたいということでございます。よろしくお願いします。何か、答弁をひとつ。

白須政府参考人 ただいまの野生鳥獣の関係でございます。委員の御指摘のとおり、イノシシでございますとかあるいは猿、そういった野生鳥獣によります農作物の被害、大変に大きいものがございまして、平成十五年度では、金額約二百億円というふうに上がっているわけでございます。面積では約十三万ヘクタール。このうち、イノシシが西日本を中心といたしましてやはり一番大きゅうございまして、イノシシの関係が約五十億円。猿は、これは全国各地で発生をいたしておりまして、約十五億円というふうになっているわけでございます。

 そこで、私ども、被害の防止という観点から真剣に取り組んでいるわけでございますが、一つには、ただいまのお話の、やはりイノシシとか猿とか、そういった野生鳥獣がどういうふうに行動するのか、それによってこの被害がどういう形で発生してくるのかといった、被害の発生要因の解明というものがまず必要になってくるわけでございます。

 それから、特に野生鳥獣のそういった行動様式、あるいはそれによります被害発生に基づきまして、やはりそれに対応した形での効果的なあるいは効率的な技術の開発ということが必要になってくるわけでございます。

 例えば、具体的に申し上げますと、この技術の開発といたしましては、GPSというシステムがございまして、これによりまして常時監視が可能でございますので、そういうGPSを活用しまして、例えば、猿を捕獲しまして、猿にそのGPSの端末をつけて、猿は群れで行動いたしますので、そういう形で猿の所在を確認する、それに対応した形での被害の対策を行っていく。あるいはまた、そういうシステムを開発するといったようなことも実は行われているわけでございます。

 それから、もう一点は、今度は具体的に現場のレベルでございますが、現場のレベルにおきましては、やはり一番端的に申し上げますと、侵入防止さくでございますとか、そういった被害の防止施設、これは当然整備をしていかぬといかぬわけでございます。

 また、住民の方々に、やはりその鳥獣の生態でございますとか、どういうときに出てくるとか、先ほど先生からもございましたえづけの問題とか、いろいろあるわけでございますので、そういう被害防止に必要な知識というものをしっかりと皆さん方に御理解をいただくということ。

 それからまた、もう一点は、追い払いというふうなことで、やはり自衛的なそういう活動、先ほど猟友会のお話もございましたが、そういった猟友会の方にも協力をいただいて、空砲であってもそれを撃つとか、あるいは拍子木みたいなもので追い払い活動を行うといったような、そういう具体的な被害防止への取り組みに対しましても、私どもとしても支援を実施しているわけでございます。

 また、御案内のとおり、十七年度からは農林水産関係の補助金を統合なり大ぐくり化をいたしたわけでございまして、そういった点からいきますと、都道府県の御判断で、先ほど私が申し上げました被害金額につきましても県によってまちまちでございまして、先生おっしゃるとおり、県によっては大変な被害を受けておられる県もございまして、そういう県の御判断で、県の裁量で、そういった重点的な配分ということも可能になる交付金制度もでき上がっているわけでございますので、こういう中で、鳥獣害対策も柔軟に対応できるのではないかというふうに考えているわけでございます。

 また、関係省庁とのお話もございました。私どもも、関係省庁の連絡体制を整備する、大変重要なことでございます。また、都道府県の情報交換を密にするということも大変必要でございますので、中央レベルでの連絡体制、環境省、林野庁を加えました、そういう連絡体制はもちろんでございますが、さらに地域ブロック単位での連絡体制を整備していくという観点からも、その体制の整備を進めておりまして、そういう形で、関係者一体となって鳥獣害対策に取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。

岡本(芳)委員 農林省の調査によると、何か、最近、鳥獣被害が減っているようなデータが出ておるんですが、これはやはりちょっとおかしいんじゃないかと私は思っております。もっと正確な調査をして、対策を講じられたいと思うところであります。

 猿なんて、五百頭ぐらい、そのちっちゃな山におるんですよ。それがばっと出てきたら、もうどうしようもないんですよ。そういう実態もよく調査していただきたいと思います。

 それから、次に、農村の女性の地位向上についてお伺いしたいと思います。

 農村地域で最近やはり、本当に、働いている、生産あるいは出荷、あるいは生活面、いろいろな面において、実質的には女性が非常に上位にあるんではないかというふうに思っておるところでございます。しかしながら、農村の女性の社会的地位というのが余りにも冷遇されているのではないかと思っております。

 これも農水省の調査でございますが、例えば、農業委員では三・八六%、農協の役員では一・〇二、指導農業士で一一・三、青年農業士で二・〇。えらい少ないんですよね。女性がこういうものになりたいと手を挙げますと、あの女は出しゃばりだといって、大分いじめられるわけですね。そんなこともあってなかなかなれない。これは大変な問題でございますので、やはり、こういうしっかりした、女性には肩書きをちゃんとつけてあげることによって、より一層活躍していただけるんじゃないかと思います。

 そこで、やはり、審議会ではございませんが、女性の枠というのをはっきり設けてやっていけば、これは、出しゃばりじゃなくて、逆に、それを選考する方から、ぜひなってくれということで頼みに行くわけでございます。そういうことも考えられますので、ぜひ、こういった社会的役割のあるところには女性枠というのを検討していただきたいと思いますが、その御意見をお伺いしたいと思います。

須賀田政府参考人 農業就業人口の約六割が女性でございます。特に、三十代は約七割が女性ということでございます。家事、育児、介護とともに、農作業をするというのも大変な重労働だというふうに思っておりまして、まずは、その労働を正しく評価する、これが大事だというふうに思っております。そして、先生言われますように、これだけのシェアを占めておりますので、女性の意見とか意向が地域の方針決定に反映される、しかも形にあらわれるようにする、これは非常に重要だというふうに思っております。

 今、農業委員あるいは農協の理事のお話がございました。これは選挙で選ばれますので、枠とかなかなか難しゅうございますけれども、今、例えば農業委員会だと、一農業委員会当たり複数の女性を、あるいは農協でございますと、一合併農協当たり二名以上の女性理事をという目標を持って取り組んでおりますし、また、県によっては女性農業士といった認定制度を設けております。

 そういう取り組みをしているんですけれども、先生おっしゃるように、まだまだその内容は少のうございますし、低うございます。非常に私ども重要な課題というふうに思っておりまして、現在、議論を願っております基本計画の中にもこの問題をきちっと位置づけまして、あらゆる機会をとらえて、関係方面に女性の社会参画の目標の設定、その達成に向けた普及啓発、これに取り組んでいきたいというふうに考えております。

岡本(芳)委員 けさ、新聞を見ておりましたら、日産のゴーン社長は、女性管理職を三年で三倍にふやすというふうに宣言したそうでございます。日産のゴーンさんというのは、必ず数値目標を示して、それを達成するのが社長の仕事だというふうに聞いております。大変結構なことでございます。農林省もぜひ見習って、数値目標をつくっていただきたく要望しておきます。

 次に、食料・農業・農村基本計画の関係でございますが、平成十一年に新しい基本法ができまして、それに基づいた計画が十二年にできて、五年たったわけでございます。あの新しい農業基本法のときには、やはり、いろいろな発想を組み入れて、新しいものもいろいろ入れました。食料の安定供給の確保だとか、多面的機能の発揮あるいは農業の持続的な発展、農村の振興といった、大きな目標を四つほど基本理念として決めたわけでございます。

 ところが、残念ながら、あれから五年たったわけでございますが、依然として日本の農業は何ら変化していないのではないかと思われます。例えば、耕地面積にしてもどんどん減っております。担い手はどんどん高齢化しております。自給率は四〇%で低迷しております。要するに、この新しい計画なりで本当に成果があったんだろうかというふうに思うわけでございます。

 そこで、副大臣、農林省としての成果と評価をお聞きしたいんですが、よろしくお願いします。

岩永副大臣 その前に、鳥獣被害、これは、私も山村で生活しております。家の軒まで猿が来て、この間も、家内ががらっと家をあけると、中から猿が出てきたというようなところに住んでおりますので、地域の人から大変対策を強く要望されております。

 そんなことでございますので、これは、私も、もう一度、担当部局、各省庁と連携を深めながら、何とかするようにひとつ努力していきたいと思いますし、また、女性参画についても、これも、私のところで対策本部を持っておりますので、このことについてひとつ積極的に対応していきたい、このように思います。

 今、平成十二年の三月に食料・農業・農村の基本計画が策定された、成果が上がっているのか、こういうことでございまして、大変頭の痛い御質問でございます。

 食品表示の適正化のために、加工食品の原料原産地表示の義務づけをしたり、また、生産の情報公表JAS規格を導入したりいたしました。また、品目別の価格・経営安定対策については、農産物の価格が需給事情や品質評価を適切に反映するように、大豆、砂糖、でん粉などについての制度改正も行ったところでございますし、特にまた、中山間地域等については、多面的機能を確保する点から、直接支払い制度を導入した等々の評価はあるわけでございます。

 特に、この間大きく世論を動かしたのは、やはりBSEによる食の安全に対する信頼が揺らいできたということで、国内的大課題になったわけですね。逆に、そのことが、今度は、安全、安心を求める国民世論というものがうまく吸収されて、そして、世界一の安全、安心国家に移行しつつあるんではないかというようなことも、逆の面からいい成果が出てきたということも言えます。

 ただ、自給率については、先ほど大臣がおっしゃっておられますように、食生活と供給のバランスがうまくいかず、四〇%で推移しているというようなこと、そして、土地利用型農業を中心に農業の生産構造の脆弱化というのがやはり進んでいる。そこへ、過疎、それから高齢化、混住化の進展で、集落の機能や農村の活力が低下しているという問題も抱えているわけでございまして、これらに対する的確な政策が求められていることも事実でございます。

 だから、今、この三月を目途に新たな基本計画を策定してひとつ頑張っていこうじゃないかということで、夜を徹して、実は、この策定に今努力をしているというところでございまして、評価がどうかと言われますと、いかんせん、すばらしい御答弁ができないことを大変残念に思っております。

岡本(芳)委員 まあ、残念なことでございます。

 今度新しく、五カ年じゃなくて、もっと長い計画ができるそうでございますが、ぜひ、誇りが持てるような結果を出していただきたく、期待しております。

 そこで、食料自給率でございますが、前回は二十二年目標で四五%ということになっておったわけでございますが、今回は、どうも、基本計画骨子案では、二十七年の計画期間内に目標を定めるというふうになっておるようでございます。なぜ五年延びるのか、あるいは二十二年目標の四五というのはどうなるのか、ちょっと教えていただきたいと思います。そして、あわせまして、自給率向上のために、今度はどのような実効性のある具体的な方策があるのか、また考えているのか、お教えいただきたいと思います。

島村国務大臣 中座をいたしておりまして、恐縮でございました。

 ただいまの御質問ですが、御承知のように、食料・農業・農村基本計画では、平成二十二年を目途に四五%に上げる、こういう目標を掲げたわけでございますが、いかんせん、今のところずっと四〇%で六年間推移しているわけでございます。

 ただ、結局、この一番大きな原因は御承知のように食の洋風化にあるわけでございまして、日本が一〇〇%の自給率を持てるお米を食べていただく量が、むしろどんどん減っていってしまう。例えば平成九年、あの当時、前回の計画を組んだときの基準は、一番新しい数字が平成九年の数字があったわけですが、その当時、お米の消費が一人当たり一年間六十六・七キログラムだったものが、現在は六十一・九キログラム、何と四・八キログラムも落ちているわけです。その一方では、日本の自給率の低い肉とか油脂とか、今度はこちらの方の食の面が非常にふえているわけでございまして、その結果、全く数字が上がらない。

 しかしながら、御承知のように、昭和三十五年当時は、我が国も七九%も自給率を持っていた実績があります。五年後の四十年で七三、その後五年刻みで六三、あるいは五四、五四、五三というふうにおっこってきて、それで現在は四〇%、そういうことでございます。

 何よりかによりわかりやすいのは、お米の消費と全くイコールでずっと数字が動いているわけでございますので、何としても、日本の食生活、まさにこれは美容にも健康にも大変好ましいし、世界一の長寿国になったのもこれにゆえなしとしないわけでありますから、ぜひ国民の皆さんに御理解をいただき、いわば日本型食生活をもっと採用していただくように、世界的にはブームでありますが、国内的にはむしろ減少傾向、これは非常に残念なことだと思っておりますので、食育を盛んにしてこれをしっかりしたいと思います。

 その一方では、担い手への農地の利用集積を進めまして、やはり効率ある農業、先行き国際競争力が持てるような農業にだんだんに成長していただきたいということで、ここで思い切った農政改革をいたしますが、そういうことをもって、やはり地産地消の基本に立った農政が展開されることも一つの道かな、こう考えているところであります。

岡本(芳)委員 食料自給率といいますと、カロリーベース、金額ベースあるいは耕地面積ベース、いろいろ言われるわけでございますが、新しい発想でバーチャルウオーターという考え方があるわけでございます。水ですね、日本語に訳すと仮想水という訳だそうでございますが、水量ベースで自給率がどうなるのかという発想がございます。

 前の世界銀行の副総裁イスマイル・セラゲルディンという人が、二十一世紀は水をめぐる争いの世紀になるだろうと言ったそうでございます。地球の温暖化あるいは異常気象、こういったもので、今世界の水不足というのが非常に懸念されております。

 そこで、今日本が輸入している食料品あるいは工業製品、こういったものを水に換算するとどのぐらいになるのかというのを計算した例がございます。全体で六百四十億トンだそうでございます。このうち工業製品は十四億トンで、いわゆる農業関係、農畜産物だけで六百二十六億トンにもなる。今、日本の農業用水使用量というのは五百六十八億トンでございます。したがって、日本で使っている農業用水の量よりも多い水を輸入しているわけでございます。日本はアジアモンスーンで結構雨が降るわけでございますが、世界では大変なことになっておるんです。ということは、日本は非常に世界に迷惑をかけている。そういう認識のもとに、やはり日本としても、ODA等を通じて世界の水に対して貢献していくことが必要なんじゃないかとも私は思っておるわけでございますが、これは答弁は結構でございます。

 ちなみに、畑作物を一トン生産するためには一千トンの水が要るそうでございます。千倍の水が要るんです。これは大変なことなんです。米の場合は二、三千倍要る。これだけ水を食っているわけでございますので、これはやはり我々としても認識していなければならないものだと思っております。

 時間も大分過ぎてまいりました。最後にどうしても言いたいことを一つ申し上げたいと思います。

 先ほど、農地の集積ということが大きな課題だということでございますが、こういった農地の集積には何が一番重要かといいますと、私は生産基盤の整備ではないかと思っております。最近、ややもすると経営安定対策等々が脚光を浴びるわけでございますが、やはり基盤整備がちゃんとできておかなければ農業はだめでございます。そういう観点から、ぜひ推進していただきたいと思っております。

 例えば、農地集積面積の四割は、圃場整備を契機として担い手に集積されております。さらに、担い手の経営規模も圃場整備によって二・二倍にふえております。労働時間については六割ほど短縮されます。さらに、汎用化によって麦とか大豆も入るようになってきております。また、耕作放棄地で見ますと、圃場整備をしたところはたった〇・二%しか放棄されておりません。こういったように大変な効果があるわけでございますので、さらなる推進をぜひお願いしたいと思います。

 また、水関係でございますが、農業農村整備事業が実施されて蓄えられた農業用水資産というのが、現在、農業用水路の延長で四十万キロメーターございます。基幹的水路で約四万五千キロメーターでございます。ダム等の基幹施設でも七千カ所あります。その基幹的な部分だけをお金に換算いたしますと、約二十五兆円のストックでございます。これだけあるわけでございますが、これを更新していく時期が今来ておるわけでございます。二十五兆円を、耐用年数三十年としましても、毎年八千億円ぐらい使わないとこれは更新できないわけでございます。

 そのぐらい金が要る話でございますが、どうもいろいろな国会の討論等を聞いておりましても、そんな金があれば、公共事業の金があれば経営安定対策に回すべきだ、直接支払いやれというような意見も随分出ております。けしからぬ話といいますか、これは農業を全く理解していないんです。そういう基盤なくして、金だけ配って何で農業ができますか。そういう議論が国会でされるということは非常に情けないというふうに思っておるところでございます。

 そういう認識のもとに頑張るわけでございますが、ぜひ大臣の決意のほどをお伺いしたいと思います。

島村国務大臣 農林水産省の構造改善局に岡本あり、私はその昔聞かされた言葉を今思い出したわけですが、さすがに先頭に立たれた方だけあって、むしろ私が答弁を受けている気分で、勉強をさせていただきました。

 しかし、私、全く同感であることは、我々、俗に農業土木といって、しかられるかもしれませんが、いろいろな不可能を可能にするという事業を進めていただいたおかげで、どれだけ今農村が潤っているか。それは全国を歩いてみるとわかります。構造改善局に対する評価と信頼と感謝というのは、これは膨大なものがありまして、私は、その意味で、あなたがおっしゃること一つ一つを自分の体験に照らして、今実感を持って伺いました。

 日本人の悪い癖で、最近はどうも、公共事業とか、要するに土木事業というと、何か悪の根源みたいなことで、全くむだなことをやっているみたいな印象を持たれますが、やはりふだんからそういう地ならしからきちっとやって、圃場を整備して、それで不可能を可能にする中に日本の農業が成り立っていることは、これは今までの歴史が物語るわけでありますし、ぜひあなたが慨嘆なさらないような農政を展開して、いわば御期待にこたえたい、こう思います。

岡本(芳)委員 大変心強い御意見、ありがとうございました。

 さらに、三位一体とか中山間地対策で大臣には大変お世話になりました。ありがとうございました。きょうもどうもありがとうございました。

 終わります。

     ――――◇―――――

山岡委員長 次に、内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣島村宜伸君。

    ―――――――――――――

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

島村国務大臣 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 農業及び漁業に関する制度金融は、経営改善に必要な資金等を円滑に融通することにより、効率的かつ安定的な経営の育成を図るものであり、国と地方が適切に役割分担しつつ、円滑に実施することが重要であります。

 一方、政府においては、地方の権限と責任を拡大し、歳入歳出両面での地方の自由度を高めることで、真に住民に必要な行政サービスを地方がみずからの責任で自主的、効率的に選択できる幅を拡大するとともに、国、地方を通じた簡素で効率的な行財政システムの構築を図ることとする平成十七年度予算編成の基本方針を閣議決定したところであります。

 この法律案は、このような政府の方針を受け、農業近代化資金、漁業近代化資金及び漁業経営維持安定資金について、都道府県が行う利子補給に係る政府の助成を廃止し、これに伴う関係規定の整備を行うものであります。

 なお、このことに伴う地方財源の手当てについては、所要の財源措置が講じられることとされております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

山岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十二分散会


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