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第8号 平成17年4月7日(木曜日)

会議録本文へ
平成十七年四月七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山岡 賢次君

   理事 今村 雅弘君 理事 西川 京子君

   理事 二田 孝治君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 楢崎 欣弥君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      岡本 芳郎君    梶山 弘志君

      金子 恭之君    上川 陽子君

      川上 義博君    木村 太郎君

      城内  実君    北村 直人君

      後藤 茂之君    菅原 一秀君

      田中 英夫君    津島 恭一君

      西村 康稔君    原田 令嗣君

      森  英介君    一川 保夫君

      岡本 充功君    鹿野 道彦君

      梶原 康弘君    川内 博史君

      岸本  健君    楠田 大蔵君

      小平 忠正君    鮫島 宗明君

      神風 英男君    仲野 博子君

      堀込 征雄君    松木 謙公君

      大口 善徳君    高橋千鶴子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鈴木 庸一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 青山 幸恭君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           黒川 達夫君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       外口  崇君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            川村秀三郎君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           西川 孝一君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 寺田 雅昭君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月七日

 辞任         補欠選任

  後藤田正純君     菅原 一秀君

  神風 英男君     梶原 康弘君

  仲野 博子君     川内 博史君

  山内おさむ君     楠田 大蔵君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     後藤田正純君

  梶原 康弘君     神風 英男君

  川内 博史君     仲野 博子君

  楠田 大蔵君     山内おさむ君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)

 特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

山岡委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長寺田雅昭君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として農林水産省大臣官房長小林芳雄君、消費・安全局長中川坦君、生産局長白須敏朗君、経営局長須賀田菊仁君、農村振興局長川村秀三郎君、農林水産技術会議事務局長西川孝一君、内閣府食品安全委員会事務局長齊藤登君、法務省刑事局長大林宏君、外務省大臣官房審議官鈴木庸一君、財務省大臣官房審議官青山幸恭君、厚生労働省大臣官房審議官黒川達夫君、健康局長田中慶司君及び医薬食品局食品安全部長外口崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松木謙公君。

松木委員 おはようございます。民主党の松木謙公でございます。

 ちょっとうちの委員の出席が悪いようでございまして、私の方から謝っておきます。大変済みません、じき来ると思いますので。

 それでは、質問を始めさせていただきます。

 テレビ局では、番組をつくるときに、中学校二年生の秋ぐらいの、学力というんですか、学習、ぐらいのものを想定して、ニュースをつくったり番組をつくったりするということをよく言われるんですけれども、この委員会も、大切なのは、私にだけ答えていただくのではなくて、この委員会でお話をしたことが国民の皆さんに、ぱっと見たときに、ああ、なるほど、こうなっているんだなということがわかるような、そういうことに私はしていきたいなというふうに思っております。私も、なるべく簡単な内容で質問したい、そして、皆さんもなるべくわかりやすくお答えをしていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 さて、それでは、先般発表されました食料・農業・農村基本計画において、担い手について触れられているわけでありますけれども、そのことについて質問させていただきます。

 まず、この基本計画における担い手とは、また、農業経営基盤強化促進法の担い手というのもあるんですけれども、これは一体だれを指すのか、同じなのか、あるいはまた違うのか、そこら辺のお答えをいただきたいというふうに思います。

須賀田政府参考人 お答え申し上げます。

 品目横断的経営安定対策の対象となるいわゆる担い手、これは、他産業並みの所得確保を目指します効率的かつ安定的な経営を目指す経営ということでございます。

 具体的に申し上げますと、農業経営基盤強化促進法、これは、認定農家制度、市町村が認定する農家という制度があるわけでございますけれども、その認定農家と、それから経営実体を持った集落営農、この二つの経営体に一定の要件をかけまして、この品目横断的経営安定対策の対象となる経営を決めていこう、こういうことにしております。

 農業経営基盤強化法、これは、家族経営と法人経営という、いわばきちんとした個別経営を市町村が認定する、こういう手続を定めておりますけれども、地域によってばらつきがある、こういうことがございますので、一定の要件を不公平のないように定めていこうという考え方でございますし、法律の予定していない、認定農家が育っていないようなところもございますので、それはこの経営基盤強化促進法から離れまして、集落営農という概念を持ち出して、これも一定の要件を考えて、この経営安定対策の担い手として認めていこう、こういう考え方でございます。

松木委員 平成二十七年度の展望は、担い手の数というのは大体どのぐらいを見込んでいるのか、一応お答えをいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 平成二十七年を目標年次といたします「農業構造の展望」におきまして、先ほど申し上げました他産業並みの所得を得る効率的かつ安定的な農業経営体といたしまして、家族農業経営が三十三万戸から三十七万戸、集落営農経営が二万から四万経営体でございます。法人経営が一万経営、こういう程度を見込んでいるところでございます。

松木委員 個人のものが三十三万から三十七万戸でいいんですね。これは今はどのぐらいあるんですか。

須賀田政府参考人 他産業並みの所得を上げ得る経営の統計はないわけでございますけれども、私どもの推定によりますと、家族経営、法人経営合わせまして、恐らく十万から十三万というふうに推測をしております。

松木委員 農業をやっている人の数という意味では。

須賀田政府参考人 平成十六年で、いわゆる農家の数でございますが、二百九十三万戸でございまして、これが平成二十七年には、総農家数、二百十万から二百五十万になるのではないかというふうに見込んでおります。

松木委員 わかりました。

 新規の就農者はこれから年間一万二千人というのが目標としてあるようですけれども、この数というのは、なかなかそううまくいかないような予想を私はしているんです。

 ここで、新しい計画の中で、自給率の目標を四五%に上げようということにたしかなっていたと思うんですけれども、果たしてこれが、絞っていって本当にできるものなのかどうかというのが、私は非常に心配をしているところでございます。食料というのはほかに代替機能を持つわけじゃないので、食べるものというのはしっかり日本国内で賄っていくということが将来は必要じゃないかなというふうに私は思っておりますので、そこら辺が非常に気になるところでございますので、達成できるのかどうか。

 そしてもう一つ。担い手担い手といって、数を減らして集約していくということになると、我々子供のころ、よく社会か何か、世界史か何かで習ったんですけれども、コルホーズとソホーズみたいな話が昔のソビエトにあったんですけれども、そんなような感じがしてならないんです。決してソビエトという国も、国としてはうまくいかなかったわけですので、そこら辺は大変心配をするところなんですけれども、どんな感じに思われているのか、ちょっと御見解を。

須賀田政府参考人 二つ御質問でございました。

 一つは、担い手を絞り込むということで食料自給率の目標の達成が大丈夫かという御質問でございました。

 現在、国内農産物の三分の一は加工用、業務用でございまして、食品産業の方へ供給をされているわけでございます。この部門で頑張らなければ食料自給率の向上というのはないわけでございます。

 食品産業サイドからどういう要望があるかといいますと、国産の農産物というのは安心、安全の面から非常に心強い、できることなら使いたい、こういう要望があるわけでございますけれども、一方で、やはり、品質、それから量のまとまり、ロットでございますが、こういう面、あるいは安定した価格といった面から国内農産物はなかなか使い切れない、そういう批判、生産サイドへの要請と言ってもいいわけでございますけれども、そういう批判があるわけでございます。

 私ども、そういう批判にこたえて、先ほど申し上げました、効率的、安定的な経営が全部の生産の七割から八割、これを担うような農業構造が実現をいたしますれば、この食品産業サイドからの要望でございますコストの低減、品質の向上、ロットの確保、こういったものにこたえることができて、ひいては食料自給率の向上につながるのではないか、このように考えているところでございます。

 それから、コルホーズ、ソホーズというお話がございました。コルホーズ、ソホーズは、上から強制的につくられました公社でございますし、働いても働かなくてもノルマ制、こういう批判がございました。私どもの考えている集落営農はそうではなくて、集落の人に考えていただいて、集落の中で分配を考えていただくということで、まさに農家による農家のための経営体というふうに考えているところでございます。

松木委員 そのまま同じというわけじゃないんですけれども、何となくそんな気がするんですよね。

 そして、担い手から漏れた農家というのは一体どうなっていくのかなという心配があるんですけれども、そこら辺はどういうふうになりますでしょうか。

須賀田政府参考人 私ども、話し合っていただきまして、小規模な農家も兼業農家も集落営農の一員となる、こういう道は開いているわけでございます。したがって、努力して集落営農の中に入っていただければ、ちゃんと担い手として対象となる。

 そういう農家でない農家はどうするのかという話でございます。一つは、やはり自分の持っている農地を担い手の方へ貸していただいて、地代収入を得ていくという道が一つございます。それから、小さくても花卉だとか生鮮野菜だとか、そういう政府の補助に頼らない農業をみずからやる、こういう道もございます。それから、最近はやっておりますけれども、観光農園あるいは市民農園的対応、こういう道もございまして、いろいろな道を私どもは用意させていただいておるということでございます。

松木委員 もう一度、せっかくですから大臣に。四五%の目標というのは達成できますか。

島村国務大臣 我々は、当然に目標を軽々に掲げているわけではありませんで、専門的に全部御検討願って、各分野の方々が四五%を二十七年に達成という目標をお示しいただいたところであります。従前と違いますのは、我々は、今度はきちんと工程管理をしていこう、毎年毎年その経過について見守りつつ、可能な限りこの目標に近づけていく、そういう意欲に燃えているところであります。

松木委員 わかりました。

 それでは、青年就農促進法というのが去年八月に施行されたと思いますけれども、この法律は青年の担い手の増加を目的としているわけですけれども、現状の成果というんですか、そういうのが少しでもあれば教えていただきたいと思います。

大口大臣政務官 先生、青年就農について、昭和六十年、三十九歳以下が二万人台だったんですね。それが平成二年に四千三百人、平成七年は七千六百人、こういうことだったんですが、平成十二年から今度は一万一千人台になりまして、平成十五年一万一千九百人、こういうふうになってきているところでございます。

 今お話がございましたように、昨年、青年就農促進法の改正法案を国会へ提出いたしたわけでございますけれども、そこで、一に、まず新規就農者を雇用する農業法人などに対する就農支援資金の貸し付け、そしてまた、都道府県青年農業者等育成センターにおける無料職業紹介、これができるようにしていただいたわけですね。

 そして、この新たな資金については、これは昨年八月に法律が施行されたということに伴って、都道府県で推進体制を整備するとともに普及に努めてまいったところでございます。平成十六年度の実績はございませんけれども、各都道府県からのヒアリングによりますと、昨年度末で約二百八十件、四億円の貸し付けの要望が上がっておる、こういうことで、今後円滑な貸し付けに努めてまいるようにしていきたいと思います。また、無料の職業紹介につきましては、今窓口を十四県で設置しておりますけれども、これを広げていきたい、こういうふうに考えています。

 いずれにしましても、本制度改正もあって、農業法人への就農の関心は高まってきておりまして、本制度を有効に活用し、若い農業従事者を育成確保してまいる所存でございます。

松木委員 法律ができてまだすぐですので、なかなか結果というのは出てきていないのかもしれないんですけれども、やはりこれはとても大事な問題だというふうに思っておりますので、ぜひ今後ともその法律の目的を達成するように努力をしていただきたいというふうに思っておりますし、新規参入者に道を開いていることはもちろんいいんです。すごくいいことなんですけれども、それらの人たちが本当に担い手として、日本の農業の人材になって、その方が本当の農家になっていく、そしていかに定着をさせていくか、こういうことが非常に重要なわけでありまして、ぜひ積極的に推進をしていただきたいというふうに思っております。

 また、さまざまな制度の中で担い手対策がさまざまに講じられているというふうに私は思っています。そういうこととの連携をとって、ぜひ実のある担い手の育成をこれからも一生懸命やっていただきたいというふうに思っておりますけれども、そこら辺の御決意を、できたら、お答えしていないのは副大臣かな、頑張ると言ってくれればいいです。

岩永副大臣 先生御承知のとおり、私が一番心配しているのはこれからの日本の食料の問題、これは食料安全保障と言われるような状況での厳しさがあるわけですね、そういう状況の中で今回の見直しをやった。そして、見直しの中で、金も農地も、そして生産者も経済効率を上げられるようにということを本旨にしながら今回の大改革をやったわけで、この大改革は平成十七年度の日本農業の最大の課題だ、私はこのように思っているところでございます。

 そういうような状況の中で、担い手が本当に他産業並みの所得を上げられるような対応をどうしてしていくかということが最大の課題でございますので、そういうことに集中をしていきたい、このように思っております。

松木委員 わかりました。頑張ってください。

 ただ、私が思うところでは、余り担い手を四十万戸とかそういうのに絞ってやっていくのはどうなのかなという疑問も実はちょっと持っていまして、もっと広くみんなにそれぞれやっていただいたらいいんじゃないかなという気も実はしておりますけれども、これは私の意見としてここにとどめておきます。

 それでは、私の選挙区は北海道なんですけれども、ここでちょっと一つ具体的な話を取り上げたいと思います。ビートというのがあるんですけれども、このビートは北海道の畑作農家にとって大変重要な産物に実はなっているんですけれども、昭和三十年代から、それまで直播栽培であったものを、直播というのは要するにじかにまくんですね、そういうやり方だったのが、北海道の春先にやはり霜だとかいろいろなもので悩まされるものですから、移植栽培というのに変えたんです。移植栽培というのは、箱がありまして、そこに種を一つ一つ入れていくという結構手間のかかるやり方なんですけれども、私も去年の春これをやったんですけれども、これを変えていこうということが一つ今あるんですね。

 それで、基本計画において、ビートの生産目標というのは、平成十五年は四百十六万トンだったんです。確かに、これはかなり豊作だったという事実も実はあるのですけれども、平成二十七年度には三百六十六万トンで、かなり減らすという方向になっているわけなんですよね。そしてさらに、十五年度が非常に豊作だったというのがあるので、それもわからないではないんですけれども、作付面積を、六万八千ヘクタールから、二十七年には六万六千に減らすという、そういう設定もしているのですね。そして、十アール当たりの収量の減少なんかも目標になっているのですね。

 これと反対に、サトウキビというのがあるのですけれども、こちらの方はふやす方の方向に話が行っているのですけれども、何でサトウキビはふえて、こっちのビートの方は減らそうという形になってきているのか。そこら辺の説明をお願いします。

白須政府参考人 ただいまの委員の生産努力目標関係の御質問でございます。

 まず、てん菜の関係でございます。

 ただいま委員からもお話しございましたとおり、てん菜の方の平成二十七年度の生産努力目標の基準年となりました平成十五年、もう委員御案内のとおりでございまして、史上まれに見る大豊作だったというふうなことでございます。てん菜の生産量は、平成十五年は四百十六万トンということでございまして、また、てん菜糖の換算でいきましても七十四万トンというふうなことでございます。委員も御案内のとおり、通常年でございますと、てん菜糖でいいますと、大体六十万トン台の中ごろぐらいの生産量であったのでございますが、まれに見る大豊作だったというのがまず一つあるわけでございます。

 それからもう一点は、実は平成二十七年を私ども見通しているわけでございますが、当然のことながら北海道の畑作農業の経営規模、これは拡大をいたしていくわけでございます。そうなりますと、例えば十勝でいいますと、三十五ヘクタールから五十ヘクタールといったようなことで、五割増しぐらい拡大するわけでございますが、委員も御案内のとおり、やはり三月、春作業、てん菜の播種なり非常にあるわけでございますが、そのときはまた春小麦の播種とか芋の植えつけとかございまして、いわゆる春作業の競合が起こるわけでございますので、現在の技術体系では、一戸当たりの経営面積は、やはり三十ヘクタールから四十ヘクタールが限界だろうというふうに言われているわけでございます。

 したがいまして、そういう中では、委員も今お触れになりましたが、やはり何と言っても、現在お話しのポット内で行っております栽培体系をいわゆる直播ということに、やはり導入していかないと、省力化、そういう形でやっていかないと、なかなか、農家の作業体系から見ても無理があるだろう。ただ、委員も御案内のとおりで、やはり直播になりますと、単収が下がるとか当然そういうデメリットもあるわけでございますが、他方、非常にコスト低減、移植にかかる作業が省けるとか、あるいは労働時間が短縮できる。

 これについて委員が冒頭お話しになりましたように、確かにかつてはいろいろなデメリット、技術的な問題があったわけでございますが、このところ、例えば狭畦栽培というふうなことで、一種の密植栽培でございますが、そういうことになりますと、そんなに低減もなくて単収の向上もできるというふうな技術開発も行われているわけでございます。

 したがいまして、そういった意味では、直播を入れましても、農家所得の確保ということは十分可能であろうというふうに考えているわけでございます。したがいまして、私どもとしては、今回の生産努力目標の策定に当たりまして、全体として、農地の減少傾向なりあるいは直播栽培の普及状況を見込みまして、ただいまのてん菜の生産量三百六十六万トン、てん菜糖換算で六十四万トンというふうに算定をしたわけでございます。

 一方、今委員から、てん菜の方は今私が申し上げましたように、十五年と比較しますと確かに減っておりますが、キビの方はどうかということでございます。

 これは、実はもう委員も御案内のとおりで、私ども、ただいま申し上げましたようないろいろな、それぞれの品目ごとの事情を勘案いたしまして、それぞれ将来の、二十七年を見通したときの農地の状況、あるいは経営の状況等々を見通した上での生産努力目標でございますので、キビにはキビの事情があって、そういう設定をいたしたわけでございまして、トータルとして、砂糖というものが需要に応じた生産ということで、その消費に応じた生産という中での一つの仕分けというふうに御理解をいただきたいというふうに考える次第でございます。

松木委員 はい、わかりました。

 しかし、キビにはキビの問題があるのだろうけれども、ビートにはビートの問題もあると思いますので。目標の数字を下げるというのは、どう考えてもつくる人たちのモチベーションがやはり下がると思うのですよね。そういうことがなるべくないように実はやってもらいたいな、こういうふうに思っておるわけです。

 そして、てん菜というのは北海道の農業全体に与える影響も結構大きいと思いますので、そこら辺はこれからもしっかりととらまえて、お考えをいただきたいというふうに思います。どうです、そこら辺、考えてくれますか。簡単でいいですよ。

白須政府参考人 委員もお話しのとおりで、この生産努力目標は、今モチベーションの話も出ましたが、平成二十七年度における目標でございます。したがいまして、そういった意味で、農家所得も申し上げましたように考慮しまして、望ましい生産規模という意味でございまして、決して生産自体を規制したり、あるいは縮小するというふうなことではございません。

 そういった意味で、私どもとしては、やはり農家の生産意欲に悪影響を与えるものでもないし、今後ともしっかりとてん菜の生産ということについてやってまいりたいというふうに考えている次第でございます。

松木委員 と言いながら、でも、作付面積は減るんだよね。やはりちょっと気になるところなんですけれども。これはこのぐらいにしておきます。

 それでは、次は、ちょっとBSE関係のことを聞きたいなと思うのです。

 献血もその一環のことで、いろいろとあるようですけれども、献血の規制強化について、一九八〇年から九六年にかけて、イギリスやフランスに一日以上滞在した人からの献血を行わないという、そういう措置をとっていると思いますけれども、これはもちろん事実ということでよろしいですね。済みません、いつから始まるのか教えてください。

黒川政府参考人 まず、ちょっと経緯を少し述べさせていただきたいと思うのですけれども、ことしの三月七日に、クロイツフェルト・ヤコブ病等委員会で、バリアント・クロイツフェルト・ヤコブ病患者の英国滞在歴が二十四日であったこと、それからフランス滞在歴が三日程度であったことが報告されております。

 このバリアントCJDについては、輸血による感染の可能性、それから、短期でも、危険部位の高濃度暴露で感染する可能性が否定できないこと、三つ目に、人の血液における病原体の検査法が確立されていないということがございます。これを踏まえまして、先生お話しのとおり、予防的に、九六年以前に英仏におのおの一日以上滞在した場合は献血制限を行う措置を当面、暫定的に講ずる方針としたわけであります。

 これについて、今後のことも含みますが、献血の減少による血液製剤の安定供給に対する影響も調査し、専門家の意見をお聞きした結果、当面、英国滞在者に対して先行実施することとしておるわけでございます。

松木委員 はい、わかりました。

 それでは、これはかなり厳しい措置をとったのだと思うのですよね。厳しい措置に踏み切った理由というのは、一番最大の理由というのは、変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病で日本人が亡くなられたということが原因なんですね。オーケー、そうですね。そうであれば、日本で発症したケースというのは、これはイギリス、フランスで感染したことを厚生労働省がある程度認定したというか、そういうことになるのですかね。そして、例えば、これは本当にそう断定できるのか。日本で日本の牛を食べて感染したということは考えられないのか、これをちょっと答えてください。

田中政府参考人 感染経路の問題でございますけれども、今回の調査でございますけれども、国内それから英国を含む海外における食生活の状況、それから当時のBSEの発生、それから各国の対策の状況、そういうことから総合的に判断して、英国滞在時のBSE牛の経口摂取によって感染した可能性が有力だというふうに結論を出したものでございます。

 ただ、ほかの感染を完全に否定するものではない。ただ、最も可能性が高いのは英国滞在時の感染であろう、そういうことでございます。

松木委員 はい、わかりました。ということは、確実にそこだからということじゃなくて、これは将来のことも考えて、厳しく厳しく、こういう献血をやめようということにしたということだと思うんですよね。

 そうしたら、もう時間がちょっとなくなってきたので早口になって申しわけないんですけれども、献血の規制強化ということは、人の血液から変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病に感染する可能性というのはあるということなんですね。そして、献血を制限する人としない人の区別、これはどのように行っていくのか、ちょっとお聞きしたいと思います。そして、自己申告制なのか、それとも別の方法をとっているのか、これもお聞きしたい。

 そしてさらに、一九八〇年から九六年の間で一日以上の渡航者は、いわゆる変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病を発症する可能性があるということなんでしょうか、それも聞きたい。

 そして、一日以上ということですので私はセーフかなと思うんですけれども、一九八四年に私は新婚旅行でヒースロー空港に大体四時間ぐらいいたような気がするんですけれども、これはとりあえず献血をしていいのかどうかということもあわせて聞きたいんです。お願いします。(発言する者あり)肉、食ったような気がします。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、献血制限に関する事項でございますけれども、当初、このバリアントCJDの患者さんの英国滞在歴は一カ月程度ということでございまして、一カ月以上英国に滞在した人の献血を制限する措置を予防的に講じたところでございまして、先生最後におっしゃられました、現在考えております一日以上滞在歴があるというのは、これは二十四時間を目安として考えております。したがって、例えばトランジット等で数時間ということは、直ちにそれによって御遠慮いただくということには該当しないというように考えておるわけであります。

 それから、滞在歴の確認でございますけれども、これは、これまで同様、献血時の問診の中で献血者から聞き取ること、これが中心になりますけれども、さらに、例えば問診の内容についての印刷物等をつくりまして、その中で確認をし、あるいは、献血した後で思い出されるような場合には、また御連絡をいただいて、適切な対応をとってまいりたいというように考えているわけであります。

 それから、リスクについての御指摘、御質問だと思いますけれども、これは、英国の現在の人口が約六千万おられるわけでございますけれども、その中で発症した方の数、約百五十名と承知しておりますが、そういったものを用いまして、英国の潜在的に感染している人の数字をそういった方々から得まして、約一万分の一ということになります。それで、三百五十万人前後の、十七年間の日本から英国に行かれた方の人数に献血に来られる方、おおよそ人口の五%を掛けまして、それから、これは専門誌等で行われているものを踏まえまして、〇・〇〇〇五あるいは最大では一人というようなことで年間の発症数を考えております。

松木委員 あと五分しかないので、ちょっと早目に行きます。

 一九八〇年から九六年までイギリスかフランスに行った方というのはかなりの数がいると思うので、できれば厚生労働省の方で新聞広告か何か出して、一度広く国民の方々にこのことについて説明をするということをぜひ私はやっていただきたいというふうに思っておりますので、それをぜひやっていただきたいなというふうに思います。

 それと、今回の献血に関しての規制強化というのは私は非常にいいことだというふうに思うんですね。疑わしきは使わず、こういうことだと思います。厚生労働省さんは昔のこともあって、非常にいい英断をされたんじゃないかなと私は思っております。

 ただ、そこで私にはどうしてもよくわからないのは、このぐらい献血の規制を強化するわけですよね。それが完全にそうであるということがわかっているところまではいっていないわけですよね、そこの中でも規制を強化していく、これはいいことなんです。しかし一方で、BSE牛の経口摂取による感染の可能性があるというにもかかわらず、二十カ月齢以下の牛の検査の方はもう規制を緩和していく、そういう方向なわけですよね。要するに、片方は強化していく、片方は緩和していく、これはちょっと何となく矛盾しているような感じもするんですけれども、このような政策決定というのは結局最後にだれがやるのか。同じ政府でやっていることが、一つが強化で一つが緩和というのはどうしても納得ができない。そこら辺のお答えをお願いします。簡単にお願いします。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 血液対策につきましては、vCJD感染の有無をスクリーニング検査できないことや、異常プリオンたんぱくを輸血用血液から効果的に除去する技術が確立されていないという状況も踏まえた対応と理解しておりますが、既に一定のリスク軽減技術等が確立したBSEの場合では、これは、昨年九月に食品安全委員会が取りまとめた国内BSE対策の評価、検証の結果において、検出限界以下の牛を検査対象から除外するとしても、全月齢の牛からのSRM除去措置を変更しなければ、それによりvCJDリスクが増加することはないとされております。

 また、この評価、検証結果においては、BSE国内対策を検討する上で十分考慮に入れるべき事実として、二十一カ月以上の牛については、現在の検査法でBSEプリオンの存在が確認される可能性がある等とされております。

 厚生労働省といたしましては、これらのことを踏まえまして、食品安全委員会に諮問を行ったものでありまして、同委員会からの答申に基づき対応してまいりたいと考えております。(発言する者あり)

松木委員 はい、わかりました。

 この中には、今、鮫島委員も言ったんですけれども、ピッシングについてのことなんかもあるんですけれども、これもなるべく早くやめるようにということをやっていただきたい。

 そして、三月三日にアメリカの下院で四十人以上の下院議員が日本への経済制裁を求める決議を提出しているんですね、この肉の輸出入のことに関して。同じ日に上院では、カナダの生体牛の輸出入の問題で、輸入再開をする政府案を阻止する決議案というのを出しているんです、アメリカというのは。まず自分勝手な国がアメリカだという感じを否めないわけなんですけれども。まあよく考えてみたら、例えば一九八五年のエイズのときの話がありますよね、血液製剤の問題。これも、自分の国では、これはやばいということで、もう使うのをやめようということにしているにもかかわらず、日本にはそのまま出していた、こういう国なんですよね。

 こういう国といろいろと交渉するときはやはり、もう時間がなくなったのではしょりますけれども、かなりタフにやってもらわなきゃ我々国民の生命とか財産を守れないんじゃないかと私は思うわけですよね。ぜひこれは、我々政治家もそうなんですけれども、もちろん、官僚の皆さん、あなた方の肩にもかかっているわけですよ。ですから、六十年前に戦争に負けちゃった国が、我々戦って負けましたからね、だから、勝ったやつに強いことを言うというのはなかなか厳しいというのはよくわかりますよ。わかっているけれども、しかし、それをいつまでも続けていてはしようがないですよ。自民党という党だって、自主独立ということを言っているんですから。

 これは、特に食の安心、安全、一人一人の国民の命にもかかわることだし、そしてまた、直接、武器がどうのこうのという話でもないわけだから、結構突っ張ることができる内容な気が僕はするんですよ。ぜひ頑張って、しっかりと外交交渉ができる、そういう国に僕はなってもらいたいというふうに思っておりますので、そこら辺の御答弁をお願いして、私の質問を終わりたいというふうに思います。

島村国務大臣 米国産牛肉の輸入再開問題については、米国の下院で、今御指摘がありましたように、三月三日に経済制裁をとるべきだという決議案が提出されたことは、承知をいたしております。

 早期の問題解決を求める声があることは十分承知をいたしておりますが、今委員が御指摘になりましたような御心配は無用でありまして、私は、一切卑屈な話し合いをいたしておりません。我々の言うべきことはきちっと言って、我々の措置に従ってもらうこともきちんと求めて、彼らもそれに同調してきているということでありまして、裏でも、別に圧力めいたことや失礼な向こうの申し出というものは私の方には一切届いておりません。

 そういう意味で、一方で、上院ではカナダの生体牛の輸入再開に対して反対の決議がなされたわけでありますから、随分都合がいいといえば確かに都合のいいあれですし、いろいろな意味で論理矛盾があるようには思いますが、いずれにいたしましても、これは米国議会の中のことでありますので、我々がコメントすることだけは差し控えたいと思っております。

 しかし、米国産牛肉の輸入再開に当たっては、従前から再三申し上げているように、あくまで科学的知見に基づいて、消費者のいわば食の安全、安心の確保を大前提に、手順を踏んでこれからもきちんと進めていく。

 先般、外務大臣がライス長官と会ったときにも、我が国のルールというものをきちんと説明するべく私はアドバイスをし、彼はそのことをしたら非常に理解を得たということでありますので、これからもきちんとやりたいと思っております。

松木委員 最後に、私、ある新聞記者から言われたんですよ。大臣が前に大臣をやっているときの話なんでしょうかね。ある政治家から農林水産省に非常に圧力がかかった、それはなかなか力のある政治家だった。普通であればくしゃっとなってしまうところを、島村先生が大臣をやっているそのときに、おれに任せろ、おれがちゃんとやる、こういうことをあの大臣は言ったぞということを私はある新聞記者から聞きました。ぜひ、アメリカとの交渉でもその気持ちで頑張ってください。

 以上です。

山岡委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。連日、質問に立たせていただく栄誉を大変光栄に思っております。

 さて、本日は一般質疑でございますので、諸般にわたる農林水産政策に関する質問をさせていただきたいと思います。

 まずは最初に、昨年法改正をされまして、今、農業の現場において農家の方が頼りとしている普及員制度、普及職員がどのような現地活動を行っているか。特に今、農家の方、いろいろな情報を求めてみえる中で、実際に情報をいただく重要なソースの一つとして、普及員の方を頼りにされています。こういった現状の中で、今後、どのように農家の方に情報提供をしていき、そして普及員の方の活動をどのように高めていく御所存か、お伺いをいたしたいと思います。

須賀田政府参考人 農業生産、食料供給力の三要素の農地、水、人とともに、技術というのがございまして、この技術、新技術と農家を結ぶ仲介機能を普及員が果たしているということでございます。

 ただ最近、行政組織のスリム化、効率化、最近では三位一体、こういうことが求められまして、私どもとしては大変厳しい状況に置かれているわけでございますけれども、依然、試験場と農家の現場を結ぶ普及活動の機能というのは重要な役割があるというふうに私どもは思っておりまして、この普及指導のスペシャリストとしての機能を質的に向上させたいということで、二つの点に重点的に取り組みたいというふうに思っております。一つは、最先端の革新的技術を普及員に身につけていただきたい。それから、やはり現場での指導能力というんでしょうか現場経験というものを非常に大事にしてほしい。この二点を通じまして、普及員の現場での技術指導能力の向上というものを図るべく支援をしていきたいと思っております。

岡本(充)委員 普及技術の向上というか、その技術を伝えるだけじゃなくて、情報を伝えるという意味においては、ある程度の頻度をもってやはり普及員の方に現場に足を運んでもらわなければいけない。人数を減らしていくのであれば、より効率的に回っていただかなきゃいけないわけですね。

 農林水産省としていろいろ政策を立てられる、こういった中で、現場で実際に農業に携わられるこういった方とともに、農作業をどのくらい省庁の皆さん方がやってみえるのか、私は常々疑問に思っておるわけです。

 きょうここには、小林官房長、中川消費・安全局長、須賀田経営局長、まあ、技術系の方は行かれているでしょうけれども、このお三方は、最近、農業を実際にやられたことがあるか、それぞれお答えをいただきたいと思います。

小林政府参考人 私、長野県の農家の出身でございまして、高校までは農作業をやっておりました。それ以降はなかなかチャンスがございませんが、ただ、今先生御指摘のように、我々は、常日ごろ、農村の現場、農家の作業状況、やはりこれをきちんと身につけた形で施策の推進に努めた方が望ましいわけで、若い職員、こういった人たちには、例えば二年目に、農村派遣研修と称して、サラリーマンの子供であっても農家で現実に働いてもらうというようなこともしながらやっています。

 それから、我々は、出張等で現場に赴きまして、できるだけ現場の農家の皆さんの声も聞きたいと思っていますが、私は今、官房長という仕事柄、余りできないので、できるだけいろいろなことを耳にしたいと思っているところでございます。

中川政府参考人 私の個人的な体験としましては、もともと和歌山県の有田郡という農村地帯の生まれでございますし、小さいときにはみずから手で田植えをした、そういう経験もございます。

 先ほど官房長からお答えのありましたように、農林水産省に入省しましてから二年目でありますけれども、一カ月間農家に、農村派遣研修ということで実際の作業体験もいたしたところでございます。

 最近ではなかなか直接農業体験をするという機会はありませんけれども、食の安全、安心の政策を遂行するに当たりましても、やはり、生産現場の実態をよく知っているということは大変大事な点だというふうに日ごろから思っているところでございます。

須賀田政府参考人 私も、愛媛の出身でございますけれども、高校を卒業するまでは、小さいですけれども田んぼがございましたので農作業をしておりました。農地も大分売りましたけれども、今は出し手になっております。

 ただ、農林省に入りまして以降、出張等で見ますに、技術が格段に進歩いたしまして、とても現時点では自分で農作業などはできないような技術の発展でございますので、できるだけ内容を把握して、指導に遺憾なきを期したいというふうに思っているところでございます。

岡本(充)委員 三人の中枢にかかわる方にそれぞれ御答弁いただいたわけでございますけれども、それぞれ皆様方、大分長らく農業から離れてみえるような現状でございました。

 ぜひ、農家の方からの声としては、いろいろ意見交換もしてみたい、中央にいる方ともお話ができる機会、例えば局長さんとまでは言わなくても、課長さんや課長補佐さんに現地に出向いていただいて実際に作業してほしい、そういった思いを持ってみえるようでございます。ぜひそういった取り組みも考えていただきたい、そのようにお願いをさせていただきます。

 さて、次からは、いただきましたこの資料、「「食料・農業・農村基本計画」関係資料」等を調査室からいただいたんですが、こちらの方、もちろん農林水産省が出どころになっておりますので、この内容について少し御質問させていただきたいと思います。

 この中には、十年先の農業のビジョンが書いてあります。十年先はこういったビジョンで農業はなるんだ、こういうことを書かれていますが、人間の寿命は十年よりもはるかに長いわけでございまして、もっと先の、日本の将来の農業像、日本の農家の方はどういうふうな将来像なのか、日本の国民の食生活はどういうふうな食生活となって、したがいまして、日本の農業のイメージですね、細かな数字までは決められないにしても、そういったものをぜひ書き示していただきたかったなというふうにも思っております。

 二十年先、三十年先についてどのように今農業政策、ビジョンを持っておられるのか、お聞かせをいただけますでしょうか。

小林政府参考人 先生御指摘の長期ビジョンといいますか、十年先を含めた農政の方向、あり方、私ども、これはまさに平成十一年に制定されました現在の食料・農業・農村基本法、この内容そのものが一つの大きなビジョンであろうということになっておりまして、それまでの基本法はかつての農業基本法でございました。

 今のは、まさに四つの理念がございまして、食料の安定供給の確保、それから多面的機能の発揮、こういった新しい観点が入っていますし、それから農業の持続的な発展とか農村の振興、この四つの理念が基本でございまして、それぞれについて各条文に施策の方向が書いてございます。二十年先か三十年先かということは別にいたしまして、これがとにかくこれからの食料・農業・農村政策を進めていく上で基本だというふうに位置づけております。

 その中で、今般策定いたしました基本計画ですが、これはいわばそういった施策の方向なり具体的な施策の実施プログラム的な性格があるものですから、そういう意味で典型的なのが食料自給率目標でございますけれども、十年というところで一つの目標を立てて、それに必要な、今回は基本計画以外にも工程表をつくりましたけれども、そういうものを積み重ねてそれを目指していく、そういった役割分担になっているというふうに理解しておりまして、私ども、基本は、まさに基本法の理念、施策方向、それを頭に置きながら、この基本計画に根ざして具体的な政策を推進していきたいというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 次に、個別のことを伺いたいと思います。

 日本の食料自給率の話題になるわけでございますが、日本の食料自給率がなかなか上がってこない中で、幾つか要因が言われております。日本人の食生活が変わったからだとか、それから、例えば小麦に関して言えば、ニーズに合った品種の小麦の改良がなかなかできないんだ、こういうような話が出ています。五年前に出された同様のプランでもこの技術開発の問題が出ていたわけでございまして、本日は農林水産技術会議の事務局長さんにも来ていただいておりますので、この小麦について、時間がないので、ちょっと聞きたいです、今後何年をめどに私は日本産のスパゲッティが食べられるのでしょうか。ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

西川政府参考人 スパゲッティがいつ食べられるかという御質問でございますけれども、日本国の麦というのは通常、めん用ということが主体でございます。スパゲッティというのは、これは非常にたんぱく含量の極めて高い、世界的に見ても限られた地域でしかつくれない、そういうものでございます。

 ただ、私ども、小麦の品種開発におきましても、パン用の小麦、これはたんぱく含量が高いわけでございまして、これについては、従来、北海道の春まき小麦ということで、一部でしかつくれなかったものを、北海道から九州まで、それもなおかつ、春に植えますものですから非常に気象災害を受けて単収が低い、そういう欠点をなくすために、秋にまいて、夏、秋に、九州では梅雨前に刈りますけれども、そういう麦も開発したということで、高プロテイン化というのを着実に進めております。

 また、ここ二年ほど前に、遺伝子マーカーということで、製パンに関するマーカーなども発見しておりまして、これを使えば、さらに強力にその辺のところは進むんだろうというふうに考えています。

 研究者と話しておりますと、最終的には国産スパゲッティができる小麦開発をするんだという意識を持っておりますが、現在の十年後の計画の中ではそこまではいっていないけれども、パン用についてはしっかりとやっていけると。一部は、スパゲッティ、加工技術でできるんじゃないかという気はいたしておりますけれども、現在、十年後に必ず食べさせろというと、わかりましたという段階にはないということでございます。

岡本(充)委員 技術開発の進歩で、難しいと言われていたことがかなり乗り越えられてきております。パンについても、私も一部出回っておるのをいただいたことがありますが、確かに国産以外の小麦でつくったパンとはまだ残念ながら差があるのも事実です。

 十年後に、一部、スパゲッティが食べられるんじゃないか、もしくは十年後にはパンが国産小麦でつくれるようになっている、ある程度安定供給ができるんだ、こういうような解釈で理解させていただいてよろしいわけですね。うなずいていただければいいです。うなずいていただきましたので、そのように期待をさせていただきたいと思います。

 そして、この技術開発、これは大臣、ぜひ農林水産省としても力を入れていただきたい。いろいろな意味合いで言うのもなんですけれども、日本は概して理系の方は非常に黙々と黙って研究をされています。そして、それに対しての評価というのは、結果で求められるのですけれども、非常に厳しい世界で頑張ってみえます。農林水産省には技官の方もたくさんみえる。そして、そういうことをよくよく理解をされている方が多いと思いますけれども、そういった技術開発の分野にも光を当てていただいて、そしてさらなる技術革新に向けて御決意をいただきたいと思います。

島村国務大臣 これからの時代に向かって、日本の国の新しい前進、発展を図っていくとなれば、当然、技術革新がその前提となるところでありまして、今、お認めを願ったと思いますが、イネゲノムの研究にしてもあるいはバイオマスの研究にしても、私たちの想像を超える研究についての前進が着々と築かれているように思います。

 当然のことに、そのことは国の運命にもかかわることでありますから、ぜひ委員皆さんの御理解も御協力も得ながら、可能な限りこれらを進めるために私たちは努力をしていきたい、こう思います。

岡本(充)委員 ありがとうございます。

 さて、続いて、十年後の食生活のあり方について少しお伺いをしたいと思います。

 きょうは厚生労働省の方にも来ていただいておりますけれども、今、食料自給率が下がってきた要因の一つに、日本の食生活が変わってきたということを指摘させていただきました。肉食がふえてきた、その結果、食料自給率も減ってきた、それに合わせて、今は生活習慣病と名前を変えましたが、残念ながら今の日本の病気の実態も変わってきている、こういう現状があります。

 そういった中で、今回の食料・農業・農村基本計画の中で示されている十年後の日本の食生活のプランについて、厚生労働省としては農林水産省とどういった打ち合わせをされ、そして、特に肉に関して言えば、今後とも消費を伸ばしていくということについては、厚生労働省の考えている野菜をいっぱい食べよう、こういった考え方と相矛盾するのではないか、こう思うわけなんですけれども、それについてはどのように御理解をされているのでしょうか。

田中政府参考人 まず、結論から申しますと、この基本計画を定めるに当たりまして、私ども、健康日本21の情報を提供する、あるいは策定のプロセスで事前協議もいただいているところでございます。

 委員御指摘の健康日本21でございますけれども、栄養食生活というのが大きな柱の一つになっております。具体的には、一日当たり、野菜の摂取量を三百五十グラムにふやせ、あるいは脂肪エネルギー比率を二五%以下に減少させる等、二〇一〇年に向けた目標値が定められているところでございます。この計画の「望ましい食料消費の姿」、こういうところを見てみますと、私どもの生活習慣病対策の観点から推進しております健康日本21の数値を参考にした目標設定がされているというふうに理解しているところでございます。

岡本(充)委員 いや、健康日本21というのは私も拝見させていただきましたけれども、その中では、今言われたように、野菜の消費、そして当然トータルのカロリー摂取の問題も指摘をされているわけですけれども、そういった意味で考えると、これは将来的にはできれば昔の日本の食生活を取り戻したいというビジョンなのかなと私は理解したわけなんですよ、かつての日本の食生活を。

 そういうふうに理解をしていたにもかかわらず、農林水産省の出されたこの食料自給率の計算のもとになっておるのは、残念ながら、現状追認の中でどのように食料自給率を高めるかということになっているということは、私は矛盾しているのではないかというふうにも思っているわけなんです。これは、ちょっと時間の関係上、指摘にとどめさせていただきまして、続いて今度は担い手の問題を取り上げたいと思います。

 強い担い手を育てるんだ、プロ農家だ、こういう話でございますけれども、担い手を強くしていくためには、一つ、農地の利用集積があります。

 利用集積という言葉は、聞こえはいいんですけれども、非常に難しい側面を持っております。地形的に難しい、こういったところはなかなか利用集積が進まないと思います。私の地元なんかでも、農地を集積したいと思っても、既に構造物ができていたり、そしてまた、残念ながら、地理的に川が流れていたり用水路が流れていたりして、難しいような地域も多うございます。農林水産省は、農地がある程度集積した、規模要件による新しい補助金を考えているやにも聞いておりますけれども、こういった規模要件一つだけを要因にすると、漏れてしまう農家がたくさん出る。利用集積の難しい地域、法人化をするんだといっても、残念ながら、そう簡単に進められるものではありません。そういった意味で、これは時間の関係上、指摘にさせていただきますけれども、農家の方にもぜひ配慮をしていただいた今後の農業所得のあり方、ビジョンを私は示していただきたいと思います。

 そして、ここからは質問させていただきたいんですが、利用集積を進めていく。そして、今の話で、先ほど松木先生の質問にもありましたけれども、今農家の方が百九十三万戸、そして二十七年には二百十から二百五十万戸にする。逆にふえるぐらいの話なんですが。その一方で、強い農家、プロ農家は、家族だと三十三から三十七万戸だ、そして、二万経営体だと、こういった数字を示されました。他産業並みの所得が得られる方がそのくらいになるんだ、こういう話をされました。

 利用集積を図っていくという話と、農家の数がふえてくるという話とでは、結論として何か矛盾するようにも私には聞こえるんですが、これは、農地を集積していくにもかかわらず、新しい農家がどんどんふえるというふうに考えるんですか、百九十三万から二百十から二百五十万戸になるという話をされていたのは。どういうことなんでしょうか。

須賀田政府参考人 総農家数でいきますと、平成十六年は二百九十三万戸です。

岡本(充)委員 済みません。私が聞き間違えました。やはりそうですよね。三百万戸だと思っていたのに、今百九十三万戸と聞こえたものですから、聞かせていただきました。

 では、ここから私の昨日通告した質問になるわけですが、二百九十三万戸から二百十万戸まで減る。残りの農家、この方々はどういった形で所得を得ていくのか、それはどういうところで雇用を吸収するのか、私はお示しをいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 農家を分けますと、主業農家、それから、副業とか準主業があるんですけれども、その他の、販売農家、自給的農家、土地持ち非農家、こういうふうに分かれるわけでございます。

 総農家数でいきまして、二百九十三万戸が二百十万から二百五十万になる。その差はどこに生じてくるかというと、やはり土地持ち非農家です。要するに、土地は、農地は持っておりますけれども、それを全部人に貸して、自分は他の職業につくといわれる方がふえていくのではないかというふうに見通しているわけでございます。

 これは過去の趨勢等から見通したわけでございまして、他産業に従事する、あるいは生きがい的に、高齢農家として生きがい的な農業をちょっとやる、こういう方々がふえていくというふうに見通しております。

岡本(充)委員 局長、二百九十三万戸から二百五十万戸でも、残りは四十三万戸。残りの五十万戸近い世帯がすべてが土地持ち非農家になるんですか。そうじゃないですよね。先ほど局長が、自分も出し手になっちゃったという話をされましたが、そういう方もふえる。局長のように大出世をされる方もいらっしゃるかもしれませんが。

 そういった意味で、私は、土地持ち非農家だけではなくて、出し手になった方、農地を売ってしまった方の就業先というのをある程度見通していただかないといけないんじゃないかという指摘なんです。簡潔でいいから、答えていただけませんか。

須賀田政府参考人 私どもは、現在の農家の方が、他産業のどういう職業につかれて、どういう所得を得られるかというところまではなかなか見通すことはできないわけでございまして、そこのところはやはり過去からの趨勢、総農家数がだんだん減っていって、その構成の中で自給的農家だとかあるいは土地持ち非農家だとかがふえている、そういう過去の趨勢を見ながら展望していくという方途をたどったわけでございます。

岡本(充)委員 明確なプランがないとおっしゃっていただければいいわけなんですけれども。

 私は、この五十万戸の農家、今は農家で二十七年には農林水産省が農家になっていないという、この五十万戸の世帯についてもぜひ配慮をしていただきたい。そして、ビジョンをお示しいただければ、なお一層ありがたいと思います。

 さて、ここからはまた話を変えまして、牛の月齢判別に関する検討会の結果について、少し御質問をさせていただきたいと思います。

 アメリカから出されました資料、いろいろあるわけですけれども、その中で、今回、牛の月齢判別に関しましては、ファイナル・レポート・ツー・ザ・ガバメント・オブ・ジャパン、二〇〇五年一月十九日の日付になっております、この資料をもとに検討会で討議もされております。

 まず、そもそもなぜこのレポートを食品安全委員会にかけることなく、新たな検討会を設置して、そこでの討議としたのか、私は知りたいと思います。簡潔にお答えください。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 やや経緯にわたりますので、簡潔にという御要望でありますけれども、少し丁寧にお話ししないとかえって誤解を招くことになりますので、お許しをいただきたいというふうに思います。

 アメリカから輸入を再開いたします際の牛肉の条件でありますけれども、これは、何よりも安全性を確保するために、我が国と同等の措置を要求するという基本方針で協議に臨んできたところでございます。

 そして、具体的な要素としては、特定危険部位を全月齢のものから取るということと、それから二十カ月以下の牛からつくられるといいますか、由来する牛肉であるという、二つのことをきちっと担保していくということで、アメリカと基本的な大枠について意見の、といいますか、認識の一致を見た、これが十月の局長級協議の概要でございます。

 その際に、二十カ月をどう確認するかということでありますけれども、一つは、生産記録などの書面によって確認する。これは、私どももそういう方法はあり得ると思いました。もう一つは、アメリカから強く要求をされましたのが、枝肉の成熟度によって月齢がわかるんだということであります。この点については、私ども、その時点で十分な知見がありませんでした。アメリカ側は、その都度特別研究をしてその結果を出すということを向こうが言ったわけであります。私どももそうした特別研究の結果についてきちっと判断をする必要がございますが、その時点では十分な知見が日本側にありません。

 そこで、日本の専門家の、解剖学ですとか肉の格付ですとか、あるいは統計の専門家、そういう方々に集まっていただいて検討会を立ち上げて、それでアメリカから出されるいろいろなデータについて、こういった専門家の方々に検討していただく。これは、いわば二十カ月をどう見るか、どういうふうに判別をするかという技術的なことでございますので、今申し上げたような、日本の専門家の方々に集まっていただいて、検討したというのが経緯でございます。

岡本(充)委員 局長、なぜ食品安全委員会ではだめなのかということについてはお答えいただいていないと思うんですけれども。

 これは食の安全にかかわることでもありますし、もしこれを採択するというのであれば、これがすなわち、今後の輸入牛肉の判別材料の一つになるわけですから、当然これは食品安全委員会への諮問に付されるということと理解してよろしいのか。簡潔に。

中川政府参考人 食品安全委員会に諮問いたします際の具体的内容は今検討中でございますけれども、ポイントは、アメリカから入ってくる牛肉の安全性について食品安全委員会で審議をいただく、諮問をするということでございます。

 その際に、当然、今議論になっております二十カ月齢をどう判断するか、そういった問題へのアメリカ側の検討の結果、それから日本の専門家によります月齢判別検討会の取りまとめの結果、こういったものは食品安全委員会で審議をされます際の資料として提出をいたしたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 これも検討に付されるということでございますので、その内容についてはきょういろいろ聞こうと思いましたけれども、時間がありませんので。

 この中で、科学的に考えて、私は幾つか矛盾点があると思っています。局長には質問通告で多分届いていると思いますけれども、こういった、矛盾点、そしてまた、残念ながら科学的なデータと認めるに難しい点については、そういったことを踏まえていただいて、ぜひ考えていただきたいと思っています。内容の詳細は、また機会を改めて質問させていただきます。

 さて、大臣、先日、アメリカから、二〇〇五年度版の外国貿易障壁報告書というのが出ました。もう恐らくお読みになられたんだろうと思いますけれども。新聞報道では、この中でアメリカは物すごいプレッシャーを日本にかけてきているんだというようなニュアンスの報道がなされておりましたけれども、実体をこうやって見させていただくと、実は、牛肉についてはわずか半ページなんですよね、かなりの分厚さがあるものの中で。その一方で、大臣、読まれましたか、日本郵政公社の部分。読まれましたですか。

島村国務大臣 存じません。

岡本(充)委員 そこは四ページぐらいにわたって、もう個別に細かく、具体的に記載が載っています。それに比べて、ビーフはわずかに半ページ。そしてその中でも、実はそれほど強い表現ではなくて、確かに継続的にプレスをかけていくという話は載っていますけれども、それほど子細な表現にはなっていないということを指摘させていただきたいと思います。

 広く国民の皆様方は、これが通商問題になるのではないかということを危惧されている向きがあるやに聞いておりますけれども、そのような認識ではないということでよろしいわけですよね。

島村国務大臣 御指摘のとおり、三月末に公表されました米国の外国貿易障壁報告書では、米国産牛肉の対日輸出問題を最重要課題と位置づけるとともに、米政府は輸入再開まであらゆるレベルを通じて圧力をかけていくと強調されておりますものの、私たちが一番恐れている、恐れているといえば言葉はおかしいんですけれども、やはりこういうものを通商問題その他に発展させては余りよくない、やはり我々は、誠意ある検討をしているということを向こうによく知ってもらう必要がある。私はそのことに努めてきたつもりでありますが、少しく、そういう意思が向こうに伝わっているのかな、そんなふうに思っているところであります。

 いずれにいたしましても、私たちは、米国産牛肉の輸入再開については、再三申し上げたように、科学に基づき、食の安全、安心の確保を大前提に消費者の理解を得ながら進めていく、これを基本といたしております。

 このため、米国産牛肉の輸入については、国内措置の見直しについての食品安全委員会の答申を受けた後に消費者の方々などと意見交換を行いまして、その上で同委員会に改めてその安全性について諮問する等々、決められたルールをきちんと踏んで結論に至る、こういう考え方に立っておりますので、御理解をいただきたいと思います。

岡本(充)委員 そういった中で、国内の安全対策、いろいろとられています。きょうは、松木委員からも質問がありました、輸血の話を少しさせていただきたいと思います。

 幾つか質問通告はさせていただいたんですが、既に厚生労働省さんの方から、日本で二月に亡くなられた変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者さんはイギリスで感染したのが有力だとはいいながら、日本で感染したわけではないとはいえないという意味の答弁をいただいております。それは私も事実だと思います。

 そういった中で、今回、実はきのうの毎日新聞の夕刊一面に「輸血血液 大幅不足 「A」「O」は特に深刻」、こういうふうに大々的に出ました。私は読ませていただいておって、献血事業に対して誤解を生じたり、また、実際に混乱を生じるようなこれまでの報道、報道だけじゃないですね、結局プレスリリースがあるわけですから、そういう情報の流れがあったのではないかと思っております。

 具体的には献血制限ですね。献血制限のあり方について、先にアドバルーンをぼんと上げて、英仏一日でも行ったら、皆さん、献血できませんよなんということを言って、日本は安全策をとったかのような話をしておきながら、実は献血は今でもできる、これはすごく誤解を与えました。

 実際に、これまでもいろいろな制限があったわけです。もちろん、問診票の裏をごらんになられたことがあると思いますけれども、献血をするドナーさんの問診票の裏にはいろいろな質問項目が載っています。この項目の中に、もちろん、ヨーロッパへの渡航の長さによっては、場合によってはできないという旨のこと、六カ月以上という記載ですけれども、書いてあります。この国とこの国とこの国はだめだよと書いてある。その中で、今度から一日以上という話が出たんだと思えば、ほとんどの献血者の方はこれはだめだと思うに決まっているわけなんですね、こういう話が新聞に出れば。そして、必然的に今、献血をする方が減っているというんですね。

 こういった、英仏一日以上行った人献血はできないよという、今回のこういう情報の流し方というのは、残念ながら、ちょっと先走ったのではないかというふうにも思うんですけれども、これについてはどのように考えていますか。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 去る三月七日のクロイツフェルト・ヤコブ病等委員会において、国内初のvCJD患者の発生原因といたしまして、短期間の英国滞在時の暴露の可能性が最も高い説明力を有するけれども、例えばフランスにおける暴露の可能性を完全に否定するものではないというような報告を受けております。

 この報告を踏まえまして、同日開催された薬事・食品衛生審議会血液事業部会運営委員会において、予防的観点から、一九八〇年から一九九六年の間に英国またはフランスに一日以上滞在していた方々の献血を、当面、暫定的に制限する方針が示され、これとともに、日本赤十字社において、血液製剤の安定供給に与える影響調査を進めること、こうなったわけであります。

 その後、日本赤十字社の調査を受けまして、三月三十一日の運営委員会等において、この方針どおり実施すれば五・五%の献血者数の減少が予想され、血液製剤の供給に影響を及ぼしかねないと判断されたところでございまして、このため、英国、フランスに対する当初の方針は維持しつつ、フランスについては新たな献血推進策による在庫水準の状況を見ながら慎重に検討してまいりたいと、実施していくことになったわけであります。

 なお、献血につきましては、四月一日でございますけれども、厚生労働大臣を本部長とする献血推進本部を設置いたしまして、新たな献血推進策を強力に進めていくこととしておりまして、今後、献血者の確保に向けて、国民に広く呼びかけていく中で、今回の方針についても御理解をいただくよう配慮してまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 黒川審議官はきのうのこの毎日新聞の夕刊、読まれました。そうしたら、読まれて御存じだと思いますけれども、ここに書いてあるような、大幅不足ということは本当に事実なんですか。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 献血につきましては、例えば季節的な要因、それから、型によって、例えば、新聞にも記載がございましたけれども、不足の程度あるいは余裕の程度が違うわけでありまして、三月三十一日現在の在庫を見ますと、適正在庫、これは安定的に供給ができる在庫数で、三日分でございますけれども、その七三%でございます。これは、例えば仮に大規模災害が発生し、大量出血者が多数見られた場合などでは供給に支障が出るおそれがある、そういった水準ではございますが、一応、三日の水準ということで、それに対して七三%ということになっておるわけであります。

 今後、英国滞在者に対して新たに制限をした場合、三・六%さらに減少するということでございますが、一層厳しい状況となるわけでございますけれども、推進本部を設置いたしまして、献血御理解等を今後進めていきたいと思っています。

岡本(充)委員 もう時間が来ちゃったので深く聞けないのが残念ですけれども。

 結局、最初は一日でも行っちゃだめだ、一日でも行っている人はもう献血できないんだといって大きく減らしておいて、今度は大変足りないんだなどと、こういう新聞のプレスリリースをすると、献血者の方はどっちなんだというふうな形になってくる。

 この中に書いてある話は日赤の方からの情報だというふうになっているけれども、この中には、冷静に、客観的に考えた場合には事実と異なるのではないかと思われるところが僕はあると思うんです。例えば、O型の血液はほかの血液型に今使われているというような記載がある。これはほとんど使われていないですよね。O型の血液をA型の人に入れるなどということは、今ほとんど行われていない。それが書かれていたり、私は、いろいろ、献血される方にきちっとした情報を提供して、冷静な対応をしていただいて、安定的な供給、これを目指していただきたいと思います。

 最後になりましたので、私、この質問をして終わりますけれども、適正な献血を、そして安定的な供給を今後とも行っていただきたい、それを申し添えて、私の質問を終わりたいと思います。

山岡委員長 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。民主党の川内でございます。

 昨年の十一月の月末、全農問題で質疑をさせていただきました。そのとき以来、発言の機会を、委員長や与野党の理事の先生方にお許しをいただいて発言をさせていただきます。心から感謝を申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 きょうは、実は戦艦大和が徳之島沖で沈んだ日でありまして、千鳥ケ淵の桜も満開でありました。そういう四月七日というきょうのこの日に、私はBSE問題を取り上げさせていただきたい。

 それはどういう観点からかと申し上げますと、大臣とは、全農改革では恐らく意識を一致させていけるのではないかというふうに思っておりますが、このBSE問題というか、米国からの輸入を再開するか否かということに関しては、若干意見を異にするのかなと。しかし、冷静な議論によって溝を埋めていきたいというふうに考えております。

 そこで、まず大臣に、農林水産大臣としてではなく、議員として、個人として、米国からの輸入再開、あるいは今回食品安全委員会が答申を出しました全頭検査は必要ないのではないかという意見に関して、どのように思われるかという、個人としての思いをまずお聞かせいただきたいというふうに思います。

島村国務大臣 冒頭、戦艦大和のお話が出ましたが、あの設計者の一人は私どもの親戚でございまして、きょうの日にちを聞いて、改めて感慨を覚えます。

 今のBSEの問題でありますが、私どもはやはり、こういう問題について、全頭検査というのは、前々から申し上げているように、あれを行った時点では何の実績もなく、いろいろなデータも不足しておりまして、その一方で、国民の衝撃というのは大変なものでございました。それを反映する一番わかりやすいのが肉屋さんのウインドーケースの中でありまして、ほとんどの肉が、牛肉、牛とつく字は全部消えるくらい、一番のもうけ頭が消えてしまって、まさに放心状態といったような肉屋さんたちと何遍もお会いしました。

 そういう時期でございましたから、武部大臣がいろいろ苦慮した結果、いろいろな意見を踏まえて、あえて全頭検査に踏み切ってこれを実施した、しかもこれはサーベイランスの意味合いも含めて、いわば監視をきちんとして、その上で調査を進めるということで、いわばその考えに出たことは、私、大賛成。当時、私的にもおつき合いがありますので、私はむしろ賛成をしたという人間であります。このことは非常に意味があったと思います。

 ただ、その後三年が経過しまして、昨年の九月に、いろいろな結果を踏まえて、実にその時点で三百五十万頭、その後を入れますと四百二十万頭と聞いておりますが、これだけの牛の検査を実際にやったわけでありますから、それらの結果を踏まえて、食品安全委員会の皆さんがつい先般、二十カ月以下については、検査をしてもいろいろなことが把握しにくいこともあるし、また、今までの検査の結果において危険度はない、ゼロとは科学者はおっしゃいませんが、まずそういう認識を示されたということは、私は意味のあることなんだろうと思います。

 また、同時にお考えいただきたいのは、世界じゅうの、いわばこういう食に関する責任者は当然に、安全、安心をみんな考えていることであります。そういう意味で、世界の各国のいろいろな実情を見ましても、いわば、我が国が今諮問しております二十カ月以下というのは極めて厳しい条件であって、EUの三十カ月を見るまでもなく、最近のOIEの三十カ月以下でいいのではないかというような意見も見るまでもなく、やはりそういう意味合いから考えれば、私どもは、検査を、十分その結果を生かして、今回、全頭検査でなくて、二十カ月以下については検査をやめるということについては、私どもが今いろいろな私見を交えて言うのは危険でありますけれども、私は、そういう一つの必然的な成り行きがあったのかなと今思っているところであります。

川内委員 私は、大臣、全頭検査、今だからこそ続けるべきではないかというふうに思っておりまして、それはなぜかというと、もちろん日本を一日も早く、BSEの清浄国として、世界一、安心、安全、さらに、おいしい牛肉を生産できる国にする。そのためには、屠畜場での全頭検査はもとより、今、死亡牛は二十四カ月齢以上ということになっておりますが、死亡牛もこれは全頭検査をして、BSEの感染源、感染経路を解明する。これは国会の意思として、BSE特別措置法に基づいて策定をされた基本計画にも、感染源、感染経路を解明するという基本方針が、政府の方針、農林水産大臣、厚生労働大臣の方針として示されているわけであります。

 しかし、いまだにこの感染源、感染経路というのは解明をされていない。BSEの発生のメカニズム、異常プリオン、あるいは変異型クロイツフェルト・ヤコブ病とのかかわり、これらの科学的解明の先頭に日本が立っていくべきであるというふうに私は考えております。そのために全頭検査が必要なんだ、今こそそれを主張すべきであるという立場で議論を進めさせていただきたいと思います。

 そこで、まず幾つか事実の確認をさせていただきたいというふうに思いますが、BSEの感染と発症は違うということをちょっと事務の方から確認をいただきたいというふうに思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 牛がBSEに感染をして、それがBSE特有の症状を出す、それには一定の時間的ずれがあると思います。早い場合二年、それから八年ぐらい、平均して五年ぐらいでそういう症状が出るということでございます。

 原因が異常プリオンということでございますから、感染をどの時点でどうとらえるかというのは技術的に大変難しいかと思いますけれども、まずは経口摂取をして、そしてそれが腸管から体内に取り込まれる、そのところが感染をするということだと思います。

    〔委員長退席、白保委員長代理着席〕

川内委員 それでは、BSEに感染をするのは、生まれた直後が最も感受性が高いというふうに言われているということを確認させていただきたいと思います。

中川政府参考人 一九九八年のOIEの報告によりますと、英国等におきます発生状況等を踏まえた疫学調査の結果といたしまして、BSEを発症した牛の大半は、若いときにBSEの病原体を摂取していたことが判明している。この事実から、若いときにそういった感染が起こるというふうに考えていいかと思っております。

川内委員 それでは、BSEに感染をした牛の異常プリオンを検出できる技術というのが、今、二十カ月齢ぐらいまでの牛であれば検出できるけれども、二十カ月齢より若い牛であれば、感染していたとしてもその異常プリオンを検出することができないということでよろしいでしょうか。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の検査を今まで続けてきた結果の中で、二十一カ月齢の牛と二十三カ月齢の牛で感染を確認しております。そのことから考えれば、二十一カ月以上の牛については感染を確認できるだろうというような、これは一つ事実としてあるわけでございます。

 それから、他方、二十一カ月と二十三カ月の牛の異常プリオンたんぱくの量が非常に微量であった、五百分の一とか千分の一であった、これも一つ事実であります。それから、その異常プリオンたんぱくの増幅の度合いが直線的にふえていくんじゃなくて、むしろ、ある程度これは指数関数に近いような形でふえていく、そういった検討もあるわけでございます。

 そういったことも含めて、それから今までの発症の実態等を含めると、二十一カ月以上は検出できる可能性があるだろう、それ未満についてはこれはなかなか難しいんじゃないかというのが事実関係だと思いますので、その辺から専門家がいろいろ判断されていると思います。

川内委員 要するに、二十カ月齢以下の牛が安全ではない、安全を保障するものではない、異常プリオンが検出できなかったからといって、二十カ月齢以下の牛が安全だということではないということをちょっと確認させてください。

外口政府参考人 検出限界以下の牛であれば、それは陰性になっても異常プリオンたんぱくというものは含まれているわけですから、その意味においては、絶対安全ということは言えないと思いますが、SRMの除去ということをやっておりまして、たとえ確認できなくても、脳とか脊髄とか回腸遠位部とか、たまりやすい部分をきれいに取るようにしておりまして、それで安全な牛肉が流通できるようにということをしておるところでございます。

川内委員 SRMを取り除いたとしても、体内のどの部分に異常プリオンたんぱくが蓄積をされ、あるいは体内をどのように移動し、あるいは体内でどのように増幅をするかは、いまだにそのメカニズムは解明をされていないということを確認させてください。

外口政府参考人 食品安全委員会の方からお答えいただいた方がより専門的かと思いますけれども、私の知っている範囲でお答え申し上げますれば、どういう経路でそれが、例えば異常プリオンたんぱくが経口摂取されて、例えば腸管のパイエル板のところを通じて体内に吸収されて、どういった経路で最後に脳とか脊髄のところへ行くかということの詳細については、これはいろいろな動物実験等で今研究が進んでおりますけれども、まだ詳細についてはわかっておりません。

 ただ、イギリスでかなり詳細な臓器別の感染力の実験を調べておりまして、その意味では、あらゆる臓器また可能性のあるところを調べたところでは、脳とか脊髄とか、今のSRMというところに主にたまる、それを取ればかなり安全であるということは確認された事実であります。

川内委員 だから、私が申し上げているのは、かなり安全であるということは確認されたということでありますが、しかし、それにしてもリスクは残っているということを確認させていただいたわけでありまして、安全ではない。いや、これは、日本の消費者の皆さんに誤解を与えてはいけませんから、二十カ月齢以下は安全だという思い込みを与えてはいけないというふうに思うんです。二十カ月齢以下の牛は検査できない、あるいは異常プリオンを検出する技術を持っていないというだけであって、決して安心とか安全とかいうことではない、リスクは残っているということを確認したかったわけであります。

 それについては何か反論がございますか。ちょっと時間がないので手短にしてくださいね。反論があるなら反論があると一言でいいですから。

外口政府参考人 検出限界以下の牛が安全でない、安全でないということが、今議論しておりますけれども、こういうことだけが伝わると私は非常に誤解を招くと思いますので……(川内委員「いや、リスクがある、リスクは残っているということを僕は言っているんです」と呼ぶ)検査ということに関してのリスクは残っておりますけれども、SRM除去等を組み合わせることによって、安全な牛肉を流通させようということをしておるわけでございます。

 それから、重ねて申し上げますけれども、そのリスクについては、これは定性的なイエスかノーかではなくて、これは定量的に判断していくということもあわせて意見として言わせていただきたいと思います。

川内委員 今、図らずも、事務の方が検査についてのリスクが残っているんだというふうにおっしゃられました。

 そこで、二〇〇四年の二月の二十三日の石原農水省事務次官の記者会見で、こんなことをおっしゃっていらっしゃいます。検査技術は進展していると。事務次官みずからが、検査技術は進展している、発達しているんだ、だから全頭検査をやる意味は十分にあると。これから検査の技術が進歩していけば、若い二十カ月齢未満の牛であっても異常プリオンを検出できるようになるであろうということを示唆されているものだというふうに思うんですね。

 サーベイランスという観点から言えば、検査技術はどんどんどんどん進歩している。そして、生まれた直後の牛であっても、もしかしたら検出できる技術を我々はあしたにでも得るかもしれないし、あるいは技術が進歩しなくても、異常プリオンのたんぱくの増殖の仕方によっては、現在の検査技術であっても、若齢牛からそのまま異常プリオンたんぱくが検出できるようになるかもしれない、そういう増殖の仕方もあるのかもしれない。大体、増殖の仕方そのものがわからないわけですからね。

 であれば、私は全頭検査を維持すべきであると。素人ですから、私も一生懸命いろいろ読んで、リスクは残っておるなと。それであれば、全頭検査を維持しつつ検査技術を向上させて、すべての牛を検査した上で、感染源、感染経路の解明に努めて、消費者の皆さんに安心、安全を確信していただく方がいいのではないかという立場に立つわけです。

 しかし、どう考えても、いろいろ資料を読んでわからないのは、食品安全委員会が昨年の九月に中間とりまとめというものを出されたわけであります。食品安全委員会というのは食品安全基本法に基づいて設置をされた委員会でありますが、この食品安全基本法のどこを読んでも、中間とりまとめというものを出せるというような言葉は出てこないわけです。

 この中間とりまとめというものの法的な根拠あるいはステータスというものをちょっと説明していただきたいというふうに思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 食品安全委員会は、国の内外における科学的知見及び食品の安全性の確保に関する情報の収集、分析、それからまた、国民からの意見等に基づき、必要とされる場合には、食品安全基本法の第二十三条の第一項第二号に基づきまして、みずからの判断による食品健康影響評価を行うことができる、こういうことになっておるわけです。

 中間とりまとめにつきましては、先ほど、国内でBSEが発生して以来三年間、そういう節目に出したものであるという御発言もありましたけれども、これは、国内でBSEの感染牛が確認されて三年間たったわけでございます。その時点での蓄積されたデータとか科学的な知見を収集、整理して、それにつきまして、牛から人へBSEのプリオンの感染リスクの低減効果を検証する、そういう目的で、委員会みずからの判断によりましてBSEの対策について評価を行った、そういう経緯でございます。

川内委員 食品安全基本法の二十三条の二号に「自ら食品健康影響評価を行うこと。」と書いてありますが、では、中間とりまとめは、今御答弁ありましたが、この食品健康影響評価をみずから行ったんだということでよろしいですか。

 うんとうなずいていただいたので、であれば、この食品健康影響評価というのは、二十三条の三号で「前号の規定により行った食品健康影響評価の結果に基づき、食品の安全性の確保のため講ずべき施策について内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告すること。」と書いてありますね。食品健康影響評価を行ったのであるならば内閣総理大臣を通じて勧告しなければならないんですが、この中間とりまとめは食品健康影響評価であるというなら、なぜそういう手続をとらなかったんでしょうか。

 先ほどから農水大臣も、あるいはきのう党首討論で小泉総理も、手続にのっとって進めると、手続、手続、手続とおっしゃる。ところが、この中間とりまとめだけは、なぜか突如としてあらわれる。その法的根拠を聞くと、実にあいまいですよね。食品健康影響評価を行ったんだとおっしゃられる。しかし、法律の定めでは、法律の手続では、食品健康影響評価を行ったのであれば内閣総理大臣を通じて勧告しなければならないんです。なぜそれをされなかったんですか。

齊藤政府参考人 委員御指摘のように、食品安全基本法二十三条第一項第三号の規定には、みずから食品健康影響評価を行った結果、食品の安全性の確保のため講ずべき施策があれば、必要に応じて、その当該施策について内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告することとされておる、そのような条文があることはそのとおりでございます。

 しかしながら、一方、食品安全基本法の第二十三条二項におきましては、まず、通知をすると。厚生労働大臣及び農林水産大臣に対して……(川内委員「どこですか。ちょっと聞こえなかったです」と呼ぶ)二十三条の第二項をちょっとごらんいただけますでしょうか。そのとおり読ませていただきますと「委員会は、前項第二号の規定に基づき食品健康影響評価を行ったときは、遅滞なく、関係各大臣に対して、その食品健康影響評価の結果を通知しなければならない。」こういう規定がございまして、まず通知するというのがこの法でもって予定されている事柄と私どもとしては理解しています。

川内委員 それでは、中間とりまとめという名前をなぜ使われたんですか。食品健康影響評価となぜみずから銘打たなかったんですか。

 そして、私が事前にこの中間とりまとめの法的なステータスを教えてくださいというふうに申し上げたときには、今御説明のあられた通知しなければならないということは、その法的根拠の中には示されていませんでした。内閣府食品安全委員会事務局、平成十七年四月五日付の私にいただいた文書では、食品健康影響評価を行ったということと、我が国におけるBSE対策について評価を行ったものであると二つ書いてあって、ちょっと二番目はわけがわからないんですが、二十三条の二項については全く事前に説明がなかった。それは食品健康影響評価であると言い切れないからじゃないんですか。

 なぜ、中間とりまとめなどと言わずに食品健康影響評価と言わないんですか。法的な手続をとるわけでしょう。

齊藤政府参考人 この中間とりまとめにつきましては、食品安全委員会としてみずから行ったものであり、このものの性格上、先ほど申し上げましたように、我が国でBSEが発生してから三カ年たった時点におけるその状況、それからその施策の効果その他について評価を行った、そういう観点で、三カ年の、この時点での取りまとめたものであるという意味で、これはそういう意味での最終的な報告という事柄とは若干意味づけが異なるということで、これは、専門調査会の方で、中間とりまとめとすることが適当だということで、中間とりまとめという形の御報告をいただいたということでございます。

川内委員 この中間とりまとめが出て以降は、大臣、非常に法にのっとった手続が粛々と進められていると思うんですね。農水省、厚生労働省から諮問をし、それに対する答申案が出て、今パブリックコメントに付されていると。そして最終的に答申が決定をして、答申されるということになるんでしょうけれども、この中間とりまとめだけは非常に政治的ですね。

 例えば、食品安全委員会のプリオン専門調査会の第四回会合で、吉川座長が、食品安全委員会の寺田委員長からリスク評価をやるようにという指示を受けましたというふうに言っているんです。

 ところが、その前提となる食品安全委員会では寺田委員長は何とおっしゃっているかというと、このようにおっしゃっていらっしゃいます。「プリオンの専門調査会においても、米国における正確な状況の把握など、基本的な勉強を始めてはいかがか」と。「基本的な勉強を始めてはいかがか」と。リスク評価を行うなんということは寺田委員長はおっしゃっていないんです。これは平成十六年一月二十九日の第三十回食品安全委員会会合での寺田委員長の発言であります。

 ところが、この一月二十九日の会合を受けて、プリオン専門調査会、平成十六年二月三日の第四回会合で吉川座長が何とおっしゃっているかというと、先週の食品安全委員会で、「この問題に関してリスク評価を本格的に始める準備をしてくれというようなことを寺田委員長の方から私に、」言われたと。非常に、微妙に言葉をすりかえていらっしゃるんですね。

 そこからこの中間とりまとめがスタートをするわけでありますが、それでは、食品安全委員会におけるBSE問題のリスク評価が始まったのはいつですか。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 簡単に申し上げますと、プリオン専門調査会そのものが平成十五年の八月の時点で、十五年の七月の委員会設立直後に設置されたわけでございます。その第一回の会合の時点から専門調査会の委員の皆さんはそういう問題意識を持っておられて、いろいろ研究したいということがそもそもの中間とりまとめを始めた経緯と私どもとしては認識しております。

    〔白保委員長代理退席、委員長着席〕

川内委員 済みません。時間が過ぎておりますが、ここでまた食品安全委員会がごまかしをおっしゃるので、一つ最後に指摘をしておきたいと思います。

 「食品安全委員会におけるBSE問題の調査審議の経緯」という、これは食品安全委員会から以前にいただいた紙であります。(参考)と括弧がついていますが、「食品安全委員会におけるBSE問題の調査審議の経緯」というこの紙には、二月二十日から始まったと書いてあります。二月二十日から、第五回会合からこの調査審議が始まっているというふうにみずから書面で出していらっしゃいます。

 今の御答弁と矛盾するんですよ。やはりこの中間とりまとめを始めた段階というのが非常に政治的なにおいがぷんぷんする。

 きのう小泉総理は、政治的な判断でやるんじゃない、科学的知見に基づくんだ、手続に基づくんだというふうにおっしゃっていらっしゃる。しかし、では、この中間とりまとめを一体だれが指示したのか、どういう経緯で始まったのかということは今後しっかりと詰めさせていただくということを、大臣、きょうはもうとりあえず軽いジャブで終わらせていただきますが、宣言をさせていただきまして、終わらせていただきたいというふうに思います。

 以上です。

山岡委員長 次に、梶原康弘君。

梶原委員 民主党の梶原康弘です。

 私は農水委員ではないんですが、チャンスをいただきましたので、質問させていただきたいと思います。

 まず、鳥インフルエンザの問題について伺いたいと思いますが、これはいずれも、何問かありますが、簡単に答えていただければありがたいと思います。

 私の出身地は兵庫県の丹波篠山というところでありまして、昨年、京都府の浅田農産で発生しましたインフルエンザ、市内はすっぽりと移動制限区域におさまってしまいました。大変な被害をもたらしたわけでありますが、今でも養鶏農家はいずれも不安な毎日を送っていると言ってもいいと思います。

 特に、先月、北朝鮮で大量発生したと言われる鳥インフルエンザ、これについて情報を得ておられるのかどうか、その辺のところを確認をしたいと思います。

 報道によれば十数万羽焼却処分にしたということでありますし、またそれに対してどういうふうに対処されるのか、伺いたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 先月の十五日でございますけれども、北朝鮮におきまして高病原性鳥インフルエンザの発生を疑う事例があったという情報は入手をいたしております。

 その後、OIEですとかFAO等国際機関を通じまして情報収集を行っております。また、あわせて北朝鮮側にも照会しておりますけれども、まだ北朝鮮からは具体的な情報は得ておりません。

 先ほど入りました情報では、FAO日本事務所を通じまして、FAOの方では北朝鮮での発生を確認したというふうなことはとりあえず入ってございます。

 私どもといたしましては、何よりも日本の国内で、日本国としての防疫対応をきちっととるということが一番肝心なことでございますから、第一報を受けましてすぐに北朝鮮からの家禽、家禽肉の輸入は停止をいたしました。

 もっとも、北朝鮮との間でそう交易があるわけではございません。過去の実績としましても、十四年に五トン入ったという記録がある程度でございますから。そうではありますけれども、とにかくとめたということでございます。

 それからもう一つ、北朝鮮から入国をする方がいらっしゃれば、靴底消毒などの対応もしたいというふうに思っております。

梶原委員 昨年もありましたけれども、都道府県をリードするような国の危機管理体制というか、そうした意識徹底をぜひお願いしたいというふうに思います。

 それに関連してなんですが、昨年の教訓で創設された家畜防疫互助基金、これについて今の状況を教えていただきたいと思います。

中川政府参考人 高病原性鳥インフルエンザが万一発生をいたしました場合に、発生時の経済的損失を生産者の方々相互に補償し合う互助基金の対象に、従来は鳥インフルエンザは入っておりませんでしたが、昨年の暮れにこれを対象とすることといたしました。

 その結果でございますけれども、この三カ月間で、養鶏農家の方々の加入状況、これは羽数でいきますと全体の八五%が加入をされたということで、短期間のうちに多くの方が入っていただいたということで、この制度についての評価をしていただいているというふうに思っております。

梶原委員 大変な高率だと思いますが、それだけ養鶏農家の危機感というか、強いのだろうと思います。

 これはまた関連して、昨年二月に発生した鳥インフルエンザで風評被害を受けて、その後、十月に台風二十三号の影響で養鶏場が水没をして一万羽水死をしたという養鶏農家があった。ダブルパンチで大変なことだったんですけれども、自然災害に対しては一切こういった基金なり助成がないということなんですけれども、その辺についても対象にし得るのかどうか、お伺いしたいと思います。

白須政府参考人 ただいまの自然災害によりまして被害を受けた養鶏農家に対する対策というお話でございます。

 大雨など、こういった自然災害によりまして被害を受けました畜産農家、これは養鶏のみならずでございまして、畜産農家全般に対しましては、引き続きまして経営が継続できますように、農林漁業金融公庫におきまして、畜舎とか鶏舎とか、そういった施設の復旧を図りますための農林漁業施設資金というのがございます。その中の災害復旧資金というのがございまして、これは、低利で償還期限二十年以内という長期の制度資金。

 それからもう一つは、えさでございますが、そういった生産資材の購入といった経営の再開に必要な資金といたしまして、農業経営維持安定資金、これの中に災害等資金というのがございまして、こういった長期、低利の制度資金を用意しておるということで対応をさせていただいているところでございます。

梶原委員 昨年の鳥インフルエンザのときにもよく言われた話なんですけれども、発生農場なり移動制限区域の養鶏場についてはそれなりの手だてがあるわけですけれども、食鳥処理センターであるとかGPセンターであるとか、あるいは卵を専門に運んでいる運送業者であるとか、大きな影響があったわけでありまして、この辺についての措置というか、それについてはいかがでしょうか。

白須政府参考人 委員のお話のとおり、鳥インフルエンザの発生によりまして経済的な影響を受けるおそれが当然あったわけでございまして、ただいまおっしゃったような、そういう処理場でございますとかGPセンター、そういった関係事業者の経営の安定を図りますために、昨年の発生時におきましては、経済産業省に働きかけをいたしまして、政府系の中小企業金融機関におけますセーフティーネット貸し付け、こういった措置も講じられたわけでございます。また、あわせまして、中小企業者の運転資金の貸し付けの円滑化ということから、私どもの調査に基づきまして、セーフティーネットの保証も発動されたというふうなことがあったわけでございます。

 なお、今委員からもお話ございましたが、防疫措置の面におきましては、このインフルエンザが発生しました際には、発生農場の周辺については鶏やあるいは鶏卵の移動に制限がかけられることになるわけでございますが、ただいまお話のあったような関係事業者への影響を必要最小限にとどめるということで、昨年の発生後には、一定の検査を受けまして陰性と判断された養鶏場の鶏卵等につきましては移動を可能とする、そういった配慮も行われているわけでございます。

 私どもとしても、今後とも、もちろんのことながら、この鳥インフルエンザの発生には万全を尽くしてまいりたいと思っておりますし、また、万が一発生をいたしました場合には、関係省庁とも連携をいたしまして、ただいま委員からお話がございましたような、そういう養鶏関係の事業者の経営の安定に向けまして適切に処理してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

梶原委員 続いてBSEの問題、ひとつ触れさせていただきたいと思います。

 二月のことでありましたけれども、予算委員会分科会で私は質問に立たせていただいたんですが、その前に赤羽議員が質問をされていました。私も途中からだったんですが、聞きますと、赤羽委員は、消費者のサイドに立った視点でということで発言をされたわけであります。ちょっと解せないなという思いはあったわけですが、それに対して大臣は、全頭検査は日本の常識、世界の非常識、こう発言をされたわけであります。私もそのときに抑えられない思いで少し発言をさせていただいたかと思うんですが、きょう改めて触れさせていただきたい。

 私の極めて近い友人が平成五年にクロイツフェルト・ヤコブ病で死にました。医者の話では孤発型ということですから、BSEとの関連が言われる変異型ではないわけでありますけれども、それが私がBSEを考える原点になっておりまして、改めて申し上げたい。少し長くなって恐縮なんですが、そのときの状況を聞いていただきたいというふうに思っています。

 私が彼の異変に気がついたのは、会議の中で彼から手渡されたメモでした。本当に下手な字というか、幼稚園児が書くような、そんな字で、下手な字で書いているなというふうに思ったわけです。翌日、彼がいすに座っているわけですが、体がローリングしているんですよね。変だなと。その翌週でした。月曜日、もう既に彼はいすに座っていられない状態になって、運転手をつけて家に帰したわけです。その週末、見舞いに行きましたら、彼はもうほとんど立てない状況、立とうとしてもひっくり返ってしまうという状況でした。

 それから二週間余りだったと思いますけれども、病名がわからないで、私たちは、多分脳の血管が詰まっているんじゃないかな、こんな思いをしていたんですが、二週間余りで、二つ目の病院で、クロイツフェルト・ヤコブ病ということがわかった。

 それから数日して病院へ行きました。すると、彼は、薄暗い病室の中で手足をベッドに縛りつけられておりました。脳が刺激されているからだと思いますが、全身がけいれん状態、二十四時間それはおさまりません。日々ひどくなるわけですが、ひどくなると、ベッドの音というんですか、もううるさいぐらいにがたがたと全身がけいれんしている。そして、部屋をあけて入る、薄暗い部屋ですから光が入る、その光なり音には反応しました、初めのうちは。彼は僕の方を見るわけですが、これは何とも表現のしようがないぐらいおびえた表情で私の方を見ている。私もいたたまれませんから十分ぐらいしかいなかったけれども、彼はおびえた表情でずっと自分の方を見ている、そんな経験があります。

 それからしばらくすると、三週間ぐらいすると植物状態になって、それから三週間で彼は亡くなったわけであります。

 私は感情的にというか情緒的に言っているのかもしれませんが、私は科学的なことはわかりません。しかし、科学が研究を重ねても、未知のことはあるだろうし、解明できないこともあるかもしれない。ただ、今わかっていること、あるいは安全を高めていくこと、わかっていることは最大限やらなければいけない、私はそう思っています。外圧に屈してなんということが仮にもあってはいけない。

 これまでも、振り返ってみると、いろいろな失敗を繰り返してきた。HIVにしても、先月、厚生省の松村課長に二審でも有罪判決がおりました。肉骨粉にしても、使用禁止を農水省が言いながら、輸入を認めていた、輸入してきたということがあった。今回の輸入再開については、本当に科学的な根拠に基づいて慎重にやっていただきたい、このように思っているわけですが、国民の食の安全、生命を守る、その決断でありますから、政治家としても本当に大きな責任があることではないか。そういう意味で、大臣のお考えをお伺いをしたいと思います。

島村国務大臣 私は、国民に対する食の供給という大事な分野を担当する所管大臣でありますから、食の安全、安心ということに対しては、最善を尽くして、あくまで科学的知見に基づいてこれを確認しつつ、これらを大前提にこれからも取り組むべきという基本姿勢に立っているわけです。

 そういう意味で、外圧は確かにないわけではありませんが、性格的に私はそういうものに屈するのが嫌いな人間ですから、今までもそういう筋の人たちともいろいろ話し合いを持つ機会はありましたけれども、あくまで国内の措置に従っていただくときちんと申してきたところでありまして、理解を得たせいでしょうか、最近は全くそういうものは聞かれなくなっているわけです。

 我々は、かなり時間はかかってはおりますけれども、あくまでルールにのっとって、最終まで確認をして、その上での判断をするというふうに立っているわけでありますから、御理解をいただきたいと思います。

梶原委員 あと、厚生労働省の方、お願いします。

外口政府参考人 BSE問題につきましては、他の食品安全問題と同様、科学的知見に基づき対処することが基本であると考えております。

 去る三月三十日にも、この委員会で、米国産牛肉の輸入再開問題に関する件についての御決議もいただいたところであります。

 米国産牛肉の輸入再開の問題に当たっては、我が国と同等の安全性が確保されていることが必要と考えております。今後、米国側措置の詳細を検討の上で、我が国に輸出される牛肉の安全性について食品安全委員会に諮問して、科学的に評価を行っていただく予定でありますが、リスク管理機関である厚生労働省といたしましては、変異型CJDの発症の防止に向けて、この科学的な評価結果に基づいて適切に対処していきたいと考えております。

梶原委員 どうしても機械的なというか、そういう話になろうかと思いますけれども、本当に国民の生命、私は、特にそういった悲惨な現場を見てきただけに、その責任を負う強い決意で臨んでいただきたい、このように思っております。

 続いて、食料・農業・農村基本計画について少し伺いたいと思います。

 私は、農業は本当に素人でありまして、大変僣越なんですが、この計画を見ていて、本当に都合のいいところだけ勝手に取り出してきてつくったような計画に思えてなりません。私は、実は小さな会社を経営する者なんですが、経営というのはこんな簡単にいくものじゃないと思います。ちなみに、私が今経営上一番大切にしているのは、いろいろな経営資源ありますけれども、人の、社員のやる気とその熱意、そういったところを一番大切にしていきたいと思っているわけですが、そういう意味では、この計画で唯一抜け落ちているのがその部分ではないかなというふうに思っています。

 大体物事は、いいところだけつまみ食いしても、結果として決してよくはない、むしろ非効率なところ、難しいところに目を当ててこそ成功するのではないかというふうに思っているわけですが、時間がちょっと限られていますので、一つ、人の問題について申し上げたいと思います。

 私が住む地域というのは、その集落で二十町ぐらいの田んぼがあって、三十二軒の農家があります。若い後継者は一人もおりません。中年の人がみんな元気を出してやっているわけですが、皆が兼業農家ということになります。そういった地域で仮に農地を集約していく。三十二軒のうち三十一軒が離農するのかというような話にもなってくるんではないか。若い人もいないわけでありますし、集落営農といっても、この集落営農、篠山市でももう既に百六十の集落を単位にした生産組合がある。しかし、ほとんどなかなか、その成果が出ているところが少ないんですよ。私は、集落営農、これは本当にちょっとごまかしじゃないかなと。生産性はそんなに極端にそこで上がるはずがないと僕は思っています。

 そういったところで、人の問題からいっても、大規模農家あるいは集落営農、会社にする、そういった枠をはめて、果たして、後継者なり人の確保というか、これがきちっとできるのかどうかということを大変疑問に思います。

 先ほど申し上げたみたいに、これまでの農業というのは、自分の土地を大切にしようという農業者の熱意で支えられてきたんですよね。それを無視して、果たしてこの計画が成り立つのかどうか、まず、人の問題についてお伺いしたいと思います。

須賀田政府参考人 先生の御指摘のように、農村社会、伝統的に個々の方々が農地をお持ちになって生産をする、そういう形でその農村社会へ帰属しているんだという帰属意識があらわれている、そういうことで、助け合い自治とか平等とかという協調精神に属しながらも、そういう自主独立の、個々が独立に経営をしていく、こういう精神にあふれているところでございまして、その中から担い手というものを育成していく、これは大変だというふうに思っております。

 ただ、そのまま続けますと、先生まさに高齢化が進んでいるとおっしゃいました、その地域の農業そのものが近い将来だめになっていくんじゃないかと。そういうことで、集落で話し合っていただきまして、機械を効率化する、これだけでもコストダウンになります。個々の農家が機械を持って上げる収益よりも、効率化をした配分額の方が大きくなるということが実証的にあらわれておりますので、中で話し合っていただいて、主たる従事者となる方を決めていただきまして、どのような形態でその地域の農業をシステム的に持続をしていくかということをよく話して、経営体を育成してほしい、これが集落営農でございます。そう簡単にいかないと思っています。

 私どもも、これから、ことしと来年かけて、何とか集落の方に自分のところの農業が持続する道というのを探っていただきたいということをお願いをして、その障害を乗り越えるような支援もしていきたいというふうに思っている次第でございます。

梶原委員 続いて農地の問題なんですけれども、基本計画を見ていると、優良な農地という言葉がよく出てくるんですが、果たして何が優良で優良でないかというのがよくわからないんですが、もし、優良な農地というのが日本にどれぐらいあって、優良でない農地がどれぐらいあるのかというのは、教えていただければありがたいと思います。

 まず、農業という業を成り立たせるために生産性を上げる、そういった資源を集約するというのは確かにわかるんですが、果たしてどれぐらい集まるのか。少なくとも、うちの方でいえば、一番いい農地というのはもう既にスーパーやパチンコ屋になっちゃいました。その次のいい農地は確かに耕作していますけれども、ちょっと悪いところになると、頼んでもどこも請け負ってくれない。山田とかそういったところが全部残っているわけですよね。大体日本の農家というのは、田んぼの中に集落が点在する。水当てとかなんとかすごく難しいわけですよね。先ほどの人の問題にもつながりますけれども、草刈りにしても水当てにしても、たくさんの人間の手をかりなかったらできないわけです。今、請け負っている会社が、うちの方では平米十五円で草刈りを請け負うんですよ。それを地主が負担しなかったら、草ぼうぼうですよ。もうこんな状況になっている。

 私は、そう簡単に、人の問題、それから農地の集約なんということはできやしないと思っている。先ほどから言うように、これまで農業を支えてきたのは、本当に農業者の熱意なんですよね。そこから奪って、あとは機械的に効率よくこうしますよということが果たしてできるのかどうか。

 もう時間がありませんのでちょっと次に行きますけれども、私はこの部分で、確かに効率を追求していって、業として成り立つ部分というのは幾らかあるんだろうと思います。あるけれども、あと残された部分というのは、農村というすごく非効率な、ただ、非効率でありながら、これまで農村は地方を支えてきた、そして文化とかコミュニティーとか景観とか歴史とか、いろいろなものを支えてきたものが農村にあるわけですよね。そこから効率的な、いいところだけひょっと抜き出して、あとの部分は全部農村に押しつけるということになってしまうのではないかというふうに思います。

 それについて最後にお尋ねをして、質問を終わります。

川村政府参考人 農地の問題についてお答えを申し上げます。

 優良農地、これは基本的には、二十ヘクタール以上のまとまりのある団地、また、農業農村整備事業等を実施しまして条件が非常に整っておる農地等を指しておりまして、農振地域の農地でありますとか、あるいは市街化調整区域でも甲種あるいは第一種に該当するようなところでございます。

 また、確かにこういったところだけで、食料生産、あるいはまた重要な多面的な機能、こういうものも十全に発揮をしなくちゃいけないということでございます。

 特に中山間地域は、傾斜地が多く、まとまりが少ないといったようなところがあるわけですが、やはり平場地域とかあるいは下流域に対しまして、国土保全とか防災とかそういった面での機能もございます。

 私ども、こういったところで適切な農業生産活動が継続をされまして、そういった機能が守られるということも重要だと考えておりまして、平成十二年から中山間地域の直接支払い制度を実施いたしておりますし、十七年度からはさらにこれに改善を加えまして、次期対策として実施をするといったことで取り組んでおるところでございます。

梶原委員 ありがとうございました。

山岡委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、豚肉の輸入差額関税制度を悪用しての脱税疑惑問題について質問をさせていただきます。

 昨年一月、食肉加工最大手の日本ハムの子会社、南日本ハムが冷凍豚肉を輸入する際、輸入価格を税関に虚偽申告をして関税を免れた疑いで強制捜査をされ、その後逮捕、現在係争中となっております。

 皆様のお手元に資料を一枚、今言った輸入差額関税制度というのがどのようなものかイメージできるものを、農水省からいただいた資料をお配りしています。現在はこうなっているそうで、枝肉ベースでありますけれども、キロ三百九十三円という基準価格がありまして、それ以降は四・三%の税額でありますけれども、この基準価格より安い肉に関しては、その差額を関税として払うという制度になっております。ですから、今回のやり方は、例えば三百円の値段であれば百十円を払わなければいけない計算になるわけですけれども、四百円のものだというふうな形で実際の値段より高く申告をして、結局その差額の利益を得ていた、こういう仕組みになっているわけであります。

 この差額関税制度を利用して二百二十五万円を脱税したというのが兵庫県警と神戸税関の発表でございます。当時の新聞各紙が一斉に報道しておりますが、〇一年六月から十一月だけを見ても、一億一千万円の脱税額に上ると報道がされております。

 同社は、二〇〇二年十二月には、鹿児島県産豚肉使用と明示をしたレトルト食品などに米国産や他県産の豚肉を使用していた産地偽装問題で、農水省からJAS法違反での改善の指示をされております。また、同社のみならず日ハムグループがBSE対策の国産牛肉買い取り制度を利用した偽装事件で社会的に大きく問題とされたことは、もう周知の事実であるかと思います。

 コンプライアンスということが叫ばれていながら、またもこうした問題が繰り返されていることに非常に腹立たしく感じております。

 問題は、食肉業界のトップがこのような悪質な脱税をやっているということは、実は業界全体に広がっているのではないかという指摘があることであります。実際、東京税関が伊藤ハムの子会社の捜索に入ったということも既に一部で報道されております。昨年一月二十二日の産経新聞では「「裏ポーク」出回る」「業界では公然の秘密」このように報じられました。裏ポークが業界内では広く認識されていたことを関係者の話として紹介をされております。

 このようなことを御承知でしょうか、大臣にまず伺います。

島村国務大臣 お答えいたします。

 豚肉の差額関税制度を悪用した脱税行為があったことについては私も承知しております。まことに遺憾である、こう考えております。

 今後は、本制度を適正に運用するため、従来より関税法令を所管する財務省関税当局により取り締まりが行われているところでありますが、私どもは、私が就任以来、一切の利権その他の行為にかかわることについては厳しくこれを糾弾する、したがって、そういう誤解を受けることもできるだけ避けて、それで、この伝統ある役所の信頼をきちんと維持していくようにと、厳しく指示しているところでございまして、こういう行為に対して私は、皆さん厳しいでしょうが、殊さらに厳しく対応する人間だというふうに自負しております。

高橋委員 厳しくということで大臣のきっぱりとした御答弁をいただきましたので、ありがとうございます。

 ただ、私どものところにも告発文書が届いております。業界関係者及び日本ハム元社員らによると、日本に輸入されている冷凍豚肉の八〇%以上はこうした不正輸入であると指摘をしております。もし事実であれば、大変驚くべき数字であります。同時に、それを知りながら黙認してきた農水省の責任を厳しく指摘をしていられます。大臣には、最後に、この所管官庁としての所見をもう一度伺いたいと思います。

 そこで、この輸入差額関税制度は、国内の畜産農家を守るために、七一年、豚肉の輸入自由化の際に導入されたものでありますが、食肉業界はこの撤廃を求めております。平成十五年七月二十二日、日本ハム・ソーセージ工業協同組合名で、白須生産局長あて、差額関税制度の廃止を求めております。日本の畜産農家を守るための制度の撤廃を求める一方で、この制度を利用して悪質な脱税行為を繰り返す、全く許しがたいことだと思います。

 この制度は申告制度であり、輸入者が契約仕入れ書を添付して申告をすれば輸入がされる。ですから、それが仕入れ書にあるとおりの額で、本当にそうだったのかとか正しく申告されたかどうかというのは、事後の税務調査しかないというのが実情でございます。輸入豚肉は年間八十万トン輸入されており、月約三千件の申告と聞きます。実際に税関を通るのは豚肉だけではございませんので、膨大な量だ、事後調査が追いつかないのが実際ではないか、大手を振って脱税が行われる事態となっているのではないか、このように思われます。

 税関としては、既に過去五回告発をしております。その告発内容と対策を明かしていただきたいと思います。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおりでございますが、豚肉に係ります関税逋脱事件でございますが、平成十一年以降、五件の事件を告発しているところでございます。十一年に一件、十五年に二件、十六年に二件というところでございます。

 これらの事件でございますけれども、カナダ、韓国等輸出国は異なるわけでございますけれども、いずれも、輸入申告の際に、その課税価格を明らかにいたしますインボイスといっております仕入れ書、これを偽装するということをやった上で、不正に高価な申告を行っておるということで差額関税を免れたものというやり方でございます。偽りその他の不正な行為ということになるものですから、関税法百十条で、私どもといたしましても関税逋脱犯ということで告発しているというところでございます。

 お尋ねの、ではこれからどういうふうな対策を講じていくのかという議論でございますけれども、豚肉の差額関税を悪用したような逋脱事件というものにつきましては、今後とも、取引を非常に複雑に偽装するということで、悪質巧妙化しているというふうに認識しているところでございます。

 そういうところで、税関といたしましてどうするかというところでございますが、まずは通関時点におきます審査、検査の徹底というのが一つでございます。二番目は、通関後におきます、先生がおっしゃられましたような事後調査でございますが、これを適正に、的確に行うというところでございまして、契約書類等、輸入者のところに立ち入っていろいろ調べさせていただくというところでございますが、しかも、これで逋脱犯ということで立件すべきはきちっと立件するというやり方をとろうということで従来からやってきているところでございます。

 こういう事案に対しまして、これまでも海外におきます取引実態あるいは取引の関連の資料の徹底した収集、分析に努めておりまして、厳正な処理を行っているというところでございます。

 なお、今国会におきまして、三月末でございますが、十七年度関税改正の中におきまして、隠蔽または仮装に対します重加算税制度の導入を盛り込んでおります。私ども財務省、税関といたしましても、悪質事案に対しまして徹底した取り締まりの強化とあわせまして、引き続き適正な関税の賦課徴収に努めてまいりたい、かように考えております。

 以上でございます。

高橋委員 申告に当たってインボイスを偽装している悪質巧妙なものであるということが明らかにされた、また新たな手続に沿って今後の対策に対してもやっていくという決意が述べられたかと思われます。非常にありがたいと思います。

 ただ問題は、毎年のように脱税行為が繰り返されて、一向にそれが是正されていないという問題であります。

 先ほどお話しした膨大な量だということも確かにあるわけですけれども、問題は、今言ったように、八割がそうだよという指摘がある。ゆゆしき事態でありまして、そうなると個々の企業の問題ではないだろう。ですから、個々の企業が、海外の会社等、いろいろな経路をたどってくるわけですが、その間にいろいろなダミー会社を使っているんじゃないかとか、さまざまな指摘があるわけです。

 つまり、相手があることですので、一社では、単独ではできないわけですよね。だから、総合的なやり方を当然しているわけだという意味で、そういう抜本的に広範な調査が必要だ、そして、二度とこのような脱税行為は繰り返されない、そういう立場で臨むべきだと思いますが、もう一度伺いたいと思います。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの繰り返しになるようでございますが、税関当局といたしましても、御指摘のような事態に対しましては、海外におきます取引実態あるいは取引関連の資料の収集等々、あわせまして事後調査部門の増員措置等を図ります。そのような中できちっとやっていくということを従来からやっておりますが、これらの話を含めまして、先ほど申し上げましたように、重加算税制度の導入というのをこの十月から実施いたします。これにつきましても適正、的確にやっていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

高橋委員 よろしくお願いいたします。

 きょうは法務省の刑事局長にもおいでをいただいておりますので、あわせて、この問題について、当然、税関が告発をすれば地検としても捜査をされていると思われますけれども、どのような対応をされてきたのか、また、関心をこの問題についてお持ちなのか伺いたいと思います。

大林政府参考人 いわゆる関税逋脱事案につきましては、今委員御指摘のとおり、税関当局の告発が訴訟条件とされているものと承知しておりますけれども、あくまで一般論として申し上げれば、検察当局におきましては、この種事案につきましても、必要に応じ税関当局と連携し、適切に対処しているものと承知しております。

高橋委員 地検に関しては、多分これ以上のことは捜査上のどうのということで話が進まないかなと思われますけれども、要望をしておきたいと思います。

 告発がされれば当然対応される、税関の方では告発するまでに当然調べをしているので起訴が当然なものだ、そういう態度で臨まれていると思いますし、厳しくこの問題については対応していただきたい。

 同時に、先ほど来お話ししているように、構造的なものなんだ、大手の関係会社全体に、業界全体にわたるものなんだという指摘がある。そして、同時にそれが、関係会社だけではないだろう、当然政官の問題があるだろう、そうしたことも雑誌などにも指摘をされております。そういう点では、そういう意味での関係をしっかりと捜査をしていただきたい。これはその後の捜査がいずれ進むでしょうから、十分にお願いをしていきたいと思っております。

 そこで、先ほど大臣は、まことに遺憾であるとおっしゃいましたし、取り締まりがされているということも十分承知をされている、またその後に対して厳しく対応するということをお話しされたと思うんですが、今の農水省の立場というのは、当然所管官庁でありますので指導する立場にあるかと思うんですね。

 さっき紹介したように、平成十五年、二〇〇三年には差額関税廃止を生産局長に対して申し入れをしている。ただ、同時に、養豚協会、生産者の側の要望もございますので、生産者の側は二〇〇四年の六月十日に財務大臣や日本食肉輸出入協会に対して、この差額関税制度の悪用防止の申し入れを、強く望むというふうな申し入れをしております。これに対しては、農水省は口頭で指導はしたという話は漏れ聞こえておりますが。

 要するに、生産者の側と業者の側、それぞれの側から要望を受ける立場に農水省はいる。そして、例えば三月一日の食肉通信などを見ますと、養豚協会の協議会が二月二十一日に開かれて、農水省も全農も食肉輸出入協会も、ハム・ソーセージ工業協同組合も、そして消費者の側から日生協なども参加をして意見交換をされている。そういう場がこれまでも随分あったと思うんですね。この場でも、日本ハム・ソーセージ工業協同組合は、差額関税の廃止を行政に求めておりますということを意見交換の場で述べていらっしゃる。

 ですから、そういう両方の側から、意見を求められるというんでしょうか、協力を求められる側にいて、またその意見を交換する場にもいる農水省がどんな態度をとってきたのかということが本当に問われるわけですね。ですから、もちろん知らないということは当然ないわけでございますし、毅然として臨むということは、そういう点で、まず農水省の中でどのようなやりとりが実際されてきているのか、例えば要望を受けてどういうやりとりをしてきたのかという調査、そして関係業者に対してはコンプライアンスの徹底という意味での指導、両方求められておりますが、大臣、どのように臨むのか、もう一度伺います。

島村国務大臣 御指摘の豚肉の差額関税制度の問題ですが、安価な豚肉の大量輸入による国内需給の混乱を防止することを目的としたものであることは御高承のとおりです。国内の需給及び価格の安定に寄与してきたところでもあります。

 しかし、不正輸入の再発を防止し、本制度を円滑に運営するため、食肉関係企業に対し関税法令などの遵守の徹底を厳正に指導してまいりたい、こう考えております。

 また、関税当局による取り締まりが徹底されるよう、関税法令違反の疑いがある事案については、速やかに関税当局へ情報提供を行うなど連携強化に努めておるところであります。

 いずれにいたしましても、何かこういう不正行為をやり得というような環境に置くことは、かえってこういう犯罪行為を誘発しますので、厳正な態度でこれに臨んで、やはりこういうことが起きないように、むしろ、やったら大変な損をこうむるということを知っていただくことも必要だということを省内で訓示をしているところであります。

高橋委員 訓示をしておるではなくて、直接に、担当している部局がどのようにされているのか調査も必要だと思いますが、いかがですか。

島村国務大臣 当然であります。

高橋委員 ありがとうございます。

 食の安全、安心の問題で、安心という言葉が欠けたのではないかということをせんだって基本計画の問題で質問をしたわけでありますけれども、この間、さまざまな形で、安心という言葉はなかなか言いがたいものだということで、なくてもいいんじゃないかということが業界からも出てくる。そのことに、気持ちは変わっていないよと言うけれども、やはりこういう問題が起きると不安になるということが問われてくるわけです。本当に監督官庁の姿勢が問われる。

 今お話しいただいた毅然とした態度を今後も貫いていただくように注目をし、お願いをして終わりたいと思います。ありがとうございました。

山岡委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党の山本でございます。

 果樹農業振興基本方針についてお伺いをいたします。

 先月、食料・農業・農村政策審議会果樹部会は、二〇一五年度を目標年次とする果樹農業振興基本方針を島村大臣に答申をいたしました。それによりますと、「果樹農業の振興に関する基本的な事項」の冒頭に「国際化の進展に対応した産地構造の改革」とあります。

 これは、果樹農業の分野でも国際競争力の強化ということだと思うんですが、これまでのグローバル化の中で果樹農業にどのような具体的な影響が与えられたのか、あるいは、今後どのように影響があるのか、その点についてお伺いいたします。

大口大臣政務官 我が国の果樹農業は、果汁を中心とする加工品の輸入増加やあるいは果樹農家の高齢化の進展などに伴い、生産量が減少する傾向にあります。一方、アジア各国の経済発展に伴い、我が国の高品質な果実を輸出する機会も出てきております。例えば、リンゴが二千円で上海で売られるとか、ナシが輸出されるとか、そういう機会もこれからどんどん出てくるわけでございます。

 このような状況を踏まえ、農林水産省においては、先月、果樹農業振興基本方針を策定し、産地みずからが、担い手の明確化などを内容とする産地計画を策定すること、産地計画に即して、基盤整備、品種転換を支援することなどの施策の方向を示したところでございます。

 今後、これらを通じて、輸入果実に対抗し得る競争力の強い果樹農業を振興するとともに、高品質である我が国の果実の特性を踏まえ、輸出促進にも力を入れてまいりたい、こういうふうに思っています。五年間で倍増という目標も立てておるわけで、しっかりやってまいりたいと思います。

山本(喜)委員 「果樹産地構造改革計画の策定」ということについてお伺いしますが、基本方針では、「産地自らが、具体的な目標とそれを実現するための戦略を内容とする「果樹産地構造改革計画」を策定する必要がある。」というふうに述べておりますが、いわゆる産地計画を立てるところの産地というのは、具体的にはどういうふうな単位を考えているのか。

 さらに、基本方針では、平成十九年度以降の経営支援対策について「産地計画に即して行う」というふうに述べておりますけれども、これは、産地計画ができない地区については支援の対象とはならないということなのかどうか、お伺いします。

白須政府参考人 まず、ただいまの委員の、果樹の産地計画の策定主体となる産地の範囲のお尋ねでございます。

 もう委員も御案内のとおりでございますけれども、果樹農業におきましては、やはり選果場、そういった集出荷施設を中心に産地を形成しているということが一般的であるわけでございます。

 したがいまして、今後、ただいまお話しの果樹産地の構造改革計画の策定を進めていくわけでございますが、その策定主体といたしましては、一つ目はやはり農協等の生産出荷団体はもちろんなのでございますが、ただ、それ以外に、市町村でございますとか、あるいは生産者の代表者、あるいは普及指導センター、あるいは農業委員会、そういったそれぞれ関係者によりまして産地協議会をつくるということで、この協議会によりまして地域の自主性を重んじて定める、そういった広い範囲を包含するということが適切ではないかというふうに考えているわけでございます。

 また、ただいまの、産地計画を策定しない産地が経営支援対策の対象になるのかどうかというお話でございますが、この基本計画の中で、平成十九年度以降、現行の経営安定対策につきましては、果樹産地の構造改革計画に即して行います小規模な基盤整備あるいは改植といった担い手の経営基盤を強化するための対策、こういうものへ移行を目指すこととしているわけでございます。

 その際の支援対象となります産地といたしましては、ただいま委員からお話しの低コスト化であるとか、あるいは高品質な果実の生産を目指すという果樹の産地構造改革計画を策定しておるということが必要であるというふうに考えているわけでございます。ただ、この支援策は、やはりそれぞれ内容が異なるわけでございますので、今後、その内容については検討してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

山本(喜)委員 産地計画の中身でございます。

 この基本方針によりますと、「量販店との契約による低コストかつ安定的な果実の生産、高品質化の追求による高価格販売の推進、観光果樹園や直販による農村都市交流等、多様な戦略の選択肢の中から目指すべき産地の姿を明確に位置づける。」というふうにありますね。まさに多様なわけでございます。

 集出荷施設を単位とするということであれば、いわゆるJAの単位ということになりますが、その中でも、JAだけに出荷しているわけではなくて、その中でもちゃんとグループをつくって、あるいはそのグループの中でブランド化を進めているところもあるわけですし、それを一くくりにやっていくというふうなことなのか、もしそうだとすると、極めてハードルが高過ぎないのかと。通告と内容は違いますけれども、この点、お願いします。

白須政府参考人 ただいまの委員のお話でございます。私どもも、決して農協の範囲といったようなことに限定するというような趣旨ではございませんで、先ほどちょっと申し上げましたが、広い意味での、もっと広域で、いろいろな形で、生産者あるいは市町村、出荷団体はもちろんでございますが、さらに普及指導センターであるとか農業委員会等による産地協議会、そういった広い意味での、農協以外の広域にわたる産地の範囲というのも当然あり得るわけでございますので、それは、産地産地のそれぞれの実態に応じた形で、産地計画の策定をそれぞれの地域で進めていただければよろしいのではないかというふうに考えている次第でございます。

山本(喜)委員 この産地計画に基づいて国の支援が行われるわけでございますが、一定期間後に産地計画の評価を受けなければならない、あるいは、達成できない場合の原因についても評価をするというふうなことのようでございますが、この場合、その評価をする客観的指標というものが必要になってくると思うし、それから、産地計画の対象期間が原則五年というふうにありますが、果樹は四、五年では結果は出てこないわけでございます。そうしたことについて、どのようにお考えでしょうか。

白須政府参考人 まず、前段の産地計画の評価の関係でございます。

 お話しのとおりで、やはりそこは、一つには客観的、具体的なそういう指標でございますね、それはそれぞれの産地がみずからお決めになるわけでございます。

 一つには、例えば、担い手の規模拡大の目標でありますとか、あるいは既存の品種から優良品種への改植といった点についての目標、こういったものは客観的あるいは具体的な数値というものをそれぞれ定められるわけでございますので、そういった点について、まず一つは、それぞれを産地みずからが評価をされるということが私どもとしても望ましいというふうに考えているわけでございます。

 また、加えまして、ただいまの産地計画につきましては、産地計画に即した取り組みにつきまして、それぞれ国による支援が行われるわけでございますが、これについては、その産地みずからが評価をもちろん行うわけでございますが、加えまして、国なり県なり、そういったところによる評価を行うことにいたしたいというふうに考えているわけでございます。

 また、計画期間についてのお尋ねもあったわけでございますが、お話しのとおり、私どもとしても、この計画期間につきましては、実現性ということを考えるといたしますれば、やはり五年程度が適切であるというふうに考えているわけでございますが、そこは、委員から今御指摘がありましたように、その果樹の特性、リンゴの場合ですと、もう委員は御案内のとおりでございますが、改植して実際に収穫できるようになりますまでには少なくとも三年かかるとか、そういったそれぞれ果樹の特殊性、こういったものもやはり考慮することが必要であろうというふうに考えておりますので、産地がそれぞれ計画を策定される段階で、長期を展望して期間を設定されるということが必要であるというふうに考えている次第でございます。

山本(喜)委員 次に、担い手についてお伺いしますけれども、担い手を特定し、そこに施策を集中するという発想だけで、果たして果樹農業が守れるのかどうかということについてであります。

 基本方針では、産地計画を定める内容としてこの担い手の問題が出てくるわけですが、計画主体である農協、市町村等が、各集落の担い手を絞り込むことが果たして可能かどうかということでございます。

 果樹農業における認定農業者の割合が、主業農家でも一八%、これは平成十二年度の数字ですが、こういう状況の中で、担い手を固有名詞まで挙げていくということは極めて困難だと思うんですが、この点について考え方をお伺いします。

白須政府参考人 ただいまの担い手の関係でございますが、やはり果樹農業につきましても、先ほど来お話がありますように、今後とも果実の国内生産を確保していく、あるいは競争力のある産地を構築していくというためには、基本としては、やはり担い手を中心とした効率的な生産体制の構築ということが何よりも必要であるというふうに考えているわけでございます。

 したがいまして、このためには、産地がみずから育成すべき担い手を明確にしていただく、そこで必要な生産基盤の強化、規模拡大あるいは優良品種への改植、そういった施策の集中を図っていくということが必要であるというふうに考えているわけでございます。

 ただ、その際の担い手といたしまして、やはり果樹の場合には、ここで考えておりますのは、農業所得が主で、主に農業に従事している六十代までの方が存在する農家ということが基本でございますが、これに加えまして、新規参入者など、今後とも継続して果樹農業を担っていくような、そういう多様な経営体につきましても担い手に位置づけるように、そういう配慮が必要であるというふうに考えているわけでございます。

 また、ただいま委員からお話ございました、個々の担い手の名前まで記載しておくことが必要であるかどうかという点でございますが、その個々の担い手の氏名まで記載していくということが必要であるというふうには考えておらないわけでございますが、委員も御案内のとおり、現状におきましても、今後とも果樹経営を続ける意欲のある方とあるいはそうでない方というのが、ある程度産地においては明確になりつつあるというふうに私ども考えているわけでございますので、産地計画の中には、地域の担い手の考え方あるいは人数ということは明確にしていただくということが必要ではないかというふうに考えているわけでございます。

山本(喜)委員 この担い手ということで、六十代までということと、新規参入というふうに言われましたが、平成十二年度の「年齢別果樹農業経営者のシェア」、これを見ますと、六十から六十九歳までが三二%、七十から七十四歳が一五%、七十五歳以上一一%ということで、六十歳以上が五八%に上るわけでございます。こういう現状を見ますと、六十代という世代を抜きに果樹農業は語れないわけでございまするが、六十代といっても、十年たつと七十を超えるわけでございます。

 こうしたときに、主業農家あるいは認定農家というふうな枠だけをはめていいのか。今日まで農業を支えてきたのはやはり兼業農家でございますから、この兼業農家をどういうふうに支えていくのか。あるいは兼業農家の後継者ということでもこれは必要になってくるんじゃないかというふうに思うんですね。そうした意味での担い手ということについても考えなければ、とても果樹農業というのは振興できないんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

白須政府参考人 ただいまの担い手と兼業農家の関係でございます。

 まず一つには、ただいま委員からもお話ございました、六十代だけではなかなか全部担い切れないのではないかというふうなお話があったわけでございます。

 確かに、現在六十代までは果樹農業の中核になって生産を担っておるというのが、委員からもお話ありましたように、実態であるわけでございますが、他方、果樹生産、もう御案内のとおり、大変重労働であるというふうなことでございますので、なかなか、七十歳以上ということになりますと、やはり重労働ということを考えますと、規模を縮小したりあるいはリタイアする、そういう実態にあるというふうに私どもも認識をしているわけでございます。

 そこで、担い手については、農業所得が主で、主に農業に従事している六十代までの方が存在する農家を中心にするということが必要と考えているわけでございますが、ただ、今委員からもお話ありましたように、私どもとしても、その農家の中には、当然、兼業農家も含まれておるというふうに考えているわけでございまして、決して兼業農家というものを私どもがこの中から排除をするというふうなことは考えていないわけでございます。

 ただ、いずれにしても、御指摘のとおり、なかなかこの現状のままでは産地の維持も危ういというふうな状況にあるわけでございますので、やはりそれぞれの産地の実情を踏まえながら、産地の皆さん方が十分な合意をされて、担い手の育成確保を図るための体制を整えていただきたいというふうに考えている次第でございます。

山本(喜)委員 経営安定対策についてでございますが、この中で、果樹共済への加入拡大ということによっての経営安定対策ということも触れられておりますが、この一層の「加入を促進する」というふうにありますけれども、現場では、一定面積以上でなければ加入できないという問題があります。

 この加入率の拡大に向けた考え方、あるいは、気象災害で品質低下した場合の収入減に対して、この果樹共済がセーフティーネットになっていくのかという点についてもお伺いします。

須賀田政府参考人 果樹共済、全国平均で十六年産は二四%程度と非常に低うございます。これは、秋田県でも、リンゴが四六・六、ナシが五三・九、ブドウが一〇・八ということで、大変低うございます。

 これはなぜ低いかということでございます。一つは、掛金が高い。十アール当たり水稲地と比べますと四倍ぐらいするということ。それから二つ目に、被害を受けた農家と受けない農家、要するに、防災対策をした農家としない農家でばらつきがあって非常に不公平だという話。それから三つ目に、てん補水準が低い。

 こういう不満が農家の方にあったわけでございまして、私ども、共済金をできるだけ安くしたいということで、被害を特定して、台風なら台風だけ、ひょうの害ならひょうの害だけ、凍霜害なら凍霜害だけ、そういう被害を特定した方式で掛金を安くする方法、それから、防風ネットなどの防災施設を用いた農家には掛金率を割り引くという、こういうものの導入、それから、災害収入共済方式のてん補割合を七割から八割に引き上げる、こういう対応をしてきたわけでございます。

 それから、先生言われました、減収だけじゃなくて価格の低下による収入減に対応できるようになるのかと。

 これは、おととし、十五年に制度改正いたしまして、資料によって収穫量が適正に把握できれば、全相殺方式あるいは災害収入共済方式に加入できるようにしたわけでございまして、特に、去年、日本海沿岸で台風による果樹被害が起きたわけでございまして、関心が高まっておりますので、そのことを徹底的にPRしたいというふうに思っております。

山本(喜)委員 時間になりましたので、終わります。

     ――――◇―――――

山岡委員長 次に、内閣提出、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案及び特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣島村宜伸君。

    ―――――――――――――

 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案

 特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

島村国務大臣 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 将来にわたる食料の安定供給と農業の持続的発展を図るためには、効率的かつ安定的な農業経営を育成するとともに、このような農業経営を営む者に対する農地の利用集積を図ることが重要であります。特に、水田農業を初めとする土地利用型農業においては農地の利用集積のおくれが大きく、地域での話し合いを促進し、集落合意に基づく農地の利用集積を推進していくことが喫緊の課題となっております。

 また、農業従事者の主力を担ってきた昭和一けた世代の引退が本格化する中、遊休農地が増大しており、担い手への農地の利用集積の妨げとなる事態も生じていることから、その解消を図ることが強く求められております。

 政府といたしましては、このような課題に対応するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、農地保有合理化事業の拡充であります。

 農地保有合理化事業に、農業生産法人への金銭出資及び農用地等の貸付信託の事業を追加し、農地の仲介機能の強化を図ることとしております。

 第二に、農用地利用改善事業の見直しであります。

 集落における総合的な農地利用の準則である農用地利用規程の規定事項を見直し、集落での話し合いを通じ集落営農の役割分担や担い手に対する農地の利用集積目標の明確化等が図られることとなるよう措置することとしております。

 第三に、遊休農地対策の充実であります。

 都道府県、市町村に対し遊休農地の解消、防止に関する基本的な構想の作成を求めるとともに、都道府県知事の裁定による賃借権の設定、市町村長による遊休農地所有者等に対する措置命令等の措置を講じ、体系的な遊休農地対策の整備を図ることとしております。

 第四に、農業生産法人以外の法人に対する農地の貸付事業の創設であります。

 構造改革特区制度の全国展開として、遊休農地が相当程度存在する区域において、市町村等が農業生産法人以外の法人に農用地を貸し付ける事業を創設し、遊休農地の利用の増進を図ることとしております。

 第五に、農業振興地域整備計画の策定手続の見直しであります。

 地域全体の合意に基づく計画的な土地利用を進めるため、農業振興地域整備計画の策定、変更に際し、市町村の住民による意見提出の機会を付与すること等としております。

 続きまして、特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 市民農園は、都市住民等のレクリエーションに資するとともに、農業、農村に対する理解と関心を深めるものであり、農林水産省といたしましても、地方公共団体や農業協同組合による特定農地貸付けを農地法の特例とし、市民農園の開設を促進してきたところであります。

 こうした中で、現在、構造改革特別区域内において、地方公共団体及び農業協同組合以外の者も、特定農地貸付けの実施により市民農園を開設できることとする特例を措置しておりますが、多様な農地利用の需要に適切に対応するため、この内容を全国において実施することとし、この法律案を提出することとした次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、特定農地貸付けの定義の見直しであります。

 地方公共団体または農業協同組合のみが特定農地貸付けを実施できるとする限定を撤廃し、これら以外の者も特定農地貸付けを実施できることとしております。

 第二に、特定農地貸付けの実施方法であります。

 地方公共団体及び農業協同組合以外の者が特定農地貸付けを実施する場合には、市町村等との間で農地の適切な利用を確保するための協定を締結することを要すること等としております。

 以上が、これら二法案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

山岡委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る十三日水曜日午前十時、参考人として秋田県北秋田市農業委員会会長後藤久美君、株式会社ワタミファーム代表取締役社長・COO武内智君及び大建工業有限会社代表取締役社長遠藤広君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十二日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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