衆議院

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第10号 平成17年4月14日(木曜日)

会議録本文へ
平成十七年四月十四日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山岡 賢次君

   理事 今村 雅弘君 理事 西川 京子君

   理事 松野 博一君 理事 黄川田 徹君

   理事 楢崎 欣弥君 理事 山田 正彦君

   理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    宇野  治君

      大前 繁雄君    岡本 芳郎君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      上川 陽子君    川上 義博君

      木村 太郎君    城内  実君

      北村 直人君    後藤 茂之君

      後藤田正純君    近藤 基彦君

      坂本 哲志君    田中 英夫君

      谷川 弥一君    西村 康稔君

      葉梨 康弘君    原田 令嗣君

      古川 禎久君    森  英介君

      山際大志郎君    一川 保夫君

      岡本 充功君    鹿野 道彦君

      岸本  健君    小平 忠正君

      鮫島 宗明君    篠原  孝君

      神風 英男君    仲野 博子君

      堀込 征雄君    山内おさむ君

      大口 善徳君    高橋千鶴子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 高博君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           山中 伸一君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            村上 秀徳君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            川村秀三郎君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  石田 真敏君     山際大志郎君

  梶山 弘志君     近藤 基彦君

  田中 英夫君     大前 繁雄君

  津島 恭一君     坂本 哲志君

  原田 令嗣君     宇野  治君

  松木 謙公君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     谷川 弥一君

  大前 繁雄君     田中 英夫君

  近藤 基彦君     梶山 弘志君

  坂本 哲志君     古川 禎久君

  山際大志郎君     石田 真敏君

  篠原  孝君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  谷川 弥一君     葉梨 康弘君

  古川 禎久君     津島 恭一君

同日

 辞任         補欠選任

  葉梨 康弘君     原田 令嗣君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)

 特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)


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     ――――◇―――――

山岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案及び特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長村上秀徳君、消費・安全局長中川坦君、生産局長白須敏朗君、経営局長須賀田菊仁君、農村振興局長川村秀三郎君、内閣府政策統括官柴田高博君、文部科学省大臣官房審議官山中伸一君及び厚生労働省老健局長中村秀一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村太郎君。

木村(太)委員 委員長、また、大臣初め皆さん、おはようございます。きょうトップバッターで質問させていただきます自由民主党の木村太郎です。

 まず、せっかくの機会でありますので、法案についてお伺いする前に、ことしの豪雪対策についてお伺いしたいと思います。

 東京ではもう既に葉桜になっておりますが、観測史上最高の積雪を観測しました私の家の前はまだ雪がありまして、ことしは全国的な、また記録的な豪雪ということになりました。農林水産業に関してもいろいろ被害が発生しまして、私、先般の予算委員会の分科会でも農林水産省としての対策状況等を質問させていただきましたが、今、時期的には融雪期でありまして、雪解けの時期を迎えており、今度は土砂崩れやあるいは冠水の被害が大分発生して、深刻化しております。

 私の地元の例でありますけれども、去る六日の日、リンゴ園の剪定中に土砂崩れが発生しまして、一人の方が亡くなっております。そのほかにも、山沿いのリンゴ園等で土砂崩れの発生やその危険が確認されているところでありまして、ことしの記録的な豪雪による土砂崩れのあったリンゴ園が国の災害復旧事業として採択される条件を満たしている可能性があることも私なりに考えておりますけれども、この指摘した点も含め、今後の雪解け等による災害に対しての対応いかんということをまずお伺いしたいと思います。

島村国務大臣 お答え申し上げます。

 ことしの融雪による農地、農業用施設の災害は、今後雪解けが進むとさらに拡大するおそれがあると考えておりまして、道県及び市町村に対し、防災体制を一層強化するよう指導しているところであります。

 また、融雪による災害の復旧につきましては、暫定法、すなわち農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律に基づき実施されることとなりますが、本年は殊のほか豪雪でもありまして、全国二十一カ所の融雪災害状況のうち、実に十二カ所が青森県ということで報告がされておる。これは四月十二日現在であります。

 そういう意味で、これからの災害についても十分配慮しつつ、これらへの対応を進めていきたいと思いますが、御指摘のリンゴ園の土砂崩れにつきましては、青森県より融雪による農地災害として被害報告も既に受けております。農林水産省といたしましては、県、町と緊密に連絡調整を図り、青森県から災害復旧事業の申請があり次第、速やかに災害復旧が図られるように対応してまいりたい、こう考えております。

木村(太)委員 よろしくお願いします。

 それでは、農地制度に関する基本的なことについて御質問してまいりたいと思います。

 私から言うまでもありませんが、農業、農地につきましては、国土の保全あるいは生態系の保全、景観の形成など、いわゆる多面的機能を有しておりまして、その確保を図っていかなければならないわけであります。

 しかし、農地はこのような多面的機能を有しておりますけれども、本来はあくまでも農業生産の基本的基盤だと思います。農業生産を支える農地を決して壊廃させることなく、いついかなる事態が生じても、食料供給の用に供し得る形で次の世代に引き渡していくことが重要と考えておりますが、農地のいわゆる公共的性格につきまして、大臣の御認識を賜りたいと思います。

島村国務大臣 お答えいたします。

 農地は食料の基本的生産手段であり、農業生産の用に供され、食料の供給が行われてこそ初めてその効用が発揮されるものであります。また、一たん壊廃いたしますと、再生に膨大な費用を要するものでもあります。

 このような考え方のもと、農地制度は、まず第一に、農地を農地以外のものとすることを原則として禁止する、また第二には、農地の権利取得に際して、きちんと農業の用に供し得る者に取得させることとし、農地の公共財的性格を担保する制度としております。

 今般審議をお願いしている制度改正の中で、強制的要素のある耕作放棄地の解消策を提案しておりますが、私といたしましては、農地の権利を持っている方々が、その農地を農業生産活動の用に供するという、みずからに課せられている責務を自覚され、その責務を果たされることを切望する次第であります。

木村(太)委員 農家の最近の労働力不足あるいは高齢化の進展ということで、耕作放棄地が増加している状況が続いているわけでありますが、農地の利用を確保するためには、農業生産に取り組む明確な意思を持つ者であれば、農家であると否とを問わず、あるいは個人、法人を問わず、農地の利用の門戸を開き、そのかわり、適正かつ効率的な耕作が行われないときには、直ちに農地への復旧を求める制度にすべきであり、このため、事前規制である農地法に基づく許可制度から、事後規制にウエートを置いた規制に転換することが必要であるという議論が一方であると思います。

 このような流れの中でも、たとえ公共転用であっても農地区域内は転用を認めないなど厳格な制度にすべきであるという、いわゆる永久農地論が一部でまたあるとお伺いしております。このような仕組みが果たして現実的に可能なのかどうか、いささか疑問に思うこともあるわけですが、省としての考え方があればお聞かせいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 先ほど大臣から答弁申し上げましたように、農地は農業の用にきちんと使ってこそその効用が発揮をされるということでございまして、農地をきちんと農業の用に供することができる者であるかどうかということを、農地の権利取得の際チェックするという仕組みにしているわけでございます。

 先生御提案の永久農地、いわゆる出口規制の厳格化ということでございます。農地の転用とか開発行為を厳格化すれば、そういう防止措置を厳格化すればいいのではないかという議論につきましては、ただいま申し上げましたように、より積極的に農業の用に供しないと農地は効用を発揮しないわけでございますので、やはり基本的には農地の権利移動の際のチェックは必要不可欠というふうに考えております。

 また、永久農地論そのものも、我が国のように可住地面積が非常に狭いところでは、同じ土地に複数の土地需要が来ますので、農地以外には一切使わせないんだ、収用もさせないんだという土地法制をとるのは、なかなか現実的には難しいのではないかというふうに考えております。

木村(太)委員 関連してもう少し具体的に聞きますが、農地を確保、保全するためには、農地をほかの用途に転用する場合、農地法によりまして許可制度が関係してくるわけであります。

 土地利用を規制する手法としては、例えば都市計画法の開発許可制度では、開発行為を規制し、都市計画に基づく土地利用、秩序ある開発を担保しているわけであります。これに対しまして、農地法では、農地の転用行為だけではなく、農地の権利移動も規制の対象としているわけであります。この手法は、農地を確保するための規制として、単なる開発規制に比べすぐれていると私なりに考えておりますけれども、省としての考え方をお聞かせいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 都市計画法は開発行為を規制しているわけでございます。都市計画法の目的は秩序ある都市の整備でございまして、その区域の用途に沿うように土地を保全するということが主目的でございますので、だれによって取得されるかよりも、土地の現状をいかにして変質するのを防止するか、ここに主要なチェックポイントを置かれて開発行為を規制しているわけでございます。

 これに対して、農地につきましては、だれによって取得されるかということが大事でございます。農地がきちんと耕作され得るような者によって取得されるということを担保する必要があるわけでございますので、権利移動の際チェックを入れる。さらに、資材置き場のように、開発行為じゃなくても農地を農地以外にする行為、これも防止する必要があるわけでございまして、したがいまして、農地を農地以外にする行為、すなわち転用を規制しているわけでございます。

 こういうように、農地については、その目的に応じまして規制行為をとっておるということでございます。

木村(太)委員 では、今度は具体的に、農業経営基盤強化促進法の一部改正につきまして、踏み込んで御質問したいと思います。

 まず最初に、農地制度につきまして、先般の食料・農業・農村基本計画の見直しが今審議されておりますこの一部改正法案にどのように反映されているのか、お尋ねしたいと思います。

島村国務大臣 現在、担い手の育成確保などを通じまして、国内農業の食料供給力の重要な基礎となっております農地の有効利用を促進することが喫緊の課題となっております。

 この課題に対応するために、今般の食料・農業・農村基本計画の見直しにおきましては、農地制度に関し、一、担い手への農地の利用集積の促進、二、耕作放棄地の発生防止、解消のための措置の強化、三、農地の効率的利用のための新規参入の促進、四、優良農地の確保のための計画的な土地利用の推進などの施策を総合的かつ計画的に講ずることとされたところであります。

 このため、今回の法改正で、農地保有合理化事業の拡充などによる担い手への農地の利用集積の加速化、リース特区の全国展開、体系的耕作放棄地対策の整備など、新たな基本計画に示された内容を具体化するための措置を講ずることとしたところであります。

木村(太)委員 だれもが思っていることの一つに、担い手、特に土地利用型の農業の担い手を育成するためには、それらに農地を利用集積しまして規模拡大を図ることが重要と思っているところでありますが、しかし、調べてみますと、なかなかその集積が進んでいないという全国的な実態があるわけであります。これまでもいろいろな施策を展開してきたわけでありますが、なぜ流動化が進まなかったのか、どう分析しているのかお伺いしたい。

 また一方で、一部でありますけれども、担い手への利用集積が進んでいる地域の事例を調べてみますと、例えば、農業委員会が担い手への農地のあっせん活動を熱心に行っていたり、農協が農地保有合理化法人の資格を取り、貸し付けの希望がある農地を一手に引き受け、担い手に再分配するなど、その地道な活動が大変実っている例もあると聞いております。

 今後、どのように農地の流動化を加速化しようとしているのか、また、これら農業団体を初め組織の取り組みにつきまして指導、支援をどうとろうとしているのか、農林水産省の対応をお聞かせいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 担い手に対します農地の利用集積でございます。

 前回の基本計画策定時に、二十二年を目標年次といたします「農業構造の展望」を作成いたしまして、この展望では、担い手に農地利用の六割、二百八十二万ヘクタールぐらいを集積したいという展望をしたところでございますけれども、実績を見ますと、二百二十五万ヘクタール程度、全体の五割程度ということにとどまっているわけでございます。

 なぜ進まないのか、いろいろ指摘があるわけでございます。資産的な土地保有意識があるんじゃないかとか、種々の指摘があるわけでございますけれども、私どもなりに整理をいたしますと、やはり、機械化、技術の向上、こういったものを背景に、高齢者とか兼業農家が週末農業による稲作に特化して経営を行うことが可能であったということ。さらに、現実に、貸そうとしても、安心して貸し付けられる相手が見当たらないというふうな、地域によってはそういう状況があるんじゃないかということ。それから、高齢の方に多いわけでございますけれども、先祖伝来の農地を人手にゆだねるということに抵抗感があるということ。それから、基本的に、農村社会の中で定住しながら生きておりますと、自分の農地を農業の用に供しているということがその社会への帰属意識につながる、村で生きていることのあかしとして農地を自分で耕すんだということがあるということで、なかなかそういうことで全部人にゆだねるということに抵抗感がある、こういうことではないかというふうに思っております。

 また、政策面でいいますと、やはり、価格・所得政策がすべての農家を対象にしてきたということで、めり張りがついていなかったということも利用集積が進まない理由になっているんじゃないかというふうに思っております。

 こういう状況を踏まえまして、今回、個別相対、あるいは農地保有合理化法人のような仲介機関、こういうことを通ずる借地を促進していく、あるいは集落営農の組織化、法人化を推進していくというふうな、多様なルートの利用集積手法を用意するということにしております。

 それで、この手法が有効に活用されまして流動化を促進するためにも、やはり先生おっしゃられましたように、市町村において、農業委員会が掘り起こし活動あるいは受け手を見つけるとか、そういう地道な努力ということが必要でございまして、農業委員会以外にも農業関係団体が一体となって取り組み体制を整備することが必要というふうに思っておりまして、そういう方向で支援、指導をしていきたいというふうに考えているところでございます。

木村(太)委員 では、次に、集落営農についてお伺いしますが、先般見直しされました基本計画におきましても、集落営農につきましてきちっと位置づけられているわけであります。

 ここで確認したいんですが、集落とはどうきちっと位置づけられているのか、その定義というものをお聞かせいただきたいし、また、その現在の数、最近のこの増減というのはどうなっているのかお伺いしたい、こう思っております。

 今後、個別の大規模経営、このような集落営農の経営により農業を担っていくことが我が国農業の維持発展のため重要と考えておりますし、集落営農の組織化、法人化に向けた支援を一層行いまして、今後検討される品目横断的な経営安定対策の対象にぜひ結びつけていくべきものである、こう考えておりますが、お聞かせいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 まず、集落の定義でございます。これは、一般的な明確な定義はないわけでございますけれども、私どもがセンサスとして統計調査をしております。そこで調査をしておるわけでございますけれども、それによりますと、そのとおり読みますと、自然発生的な地域社会であって、家と家とが地縁的、血縁的に結びつき、各種の集団や社会関係を形成してきた社会生活の基礎的な単位、こう定義をされているわけでございます。

 私もさっぱりわかりませんので、自分が生まれ育ったところでどういうふうに定義されているかを伺いました。そうしたら、やはり私が生まれ育った、同じ水利体系で、同じような防除活動をし、同じように寄り合いを持って、共同出荷する、いわゆる実感としての集落がそのまま定義されておりましたので、昔の単位で言えば字を中心とした単位の集落がいわゆる集落ということで、実感に合う集落でございます。

 その数でございます。平成十二年時点で十三万五千百六十三、十三万五千でございます。これは、昭和五十五年が十四万二千、平成二年が十四万ちょうどぐらいでございますので、だんだん減少をしているということでございます。

 私ども、特に認定農家とか、そういう人たちのいない集落においても今後担い手を緊急に育成確保していかないといけないという意味で、こういう集落の相互扶助だとか協調だとか、そういう意識を活用いたしまして、集落営農というものを担い手に位置づけたいというふうに思っております。経理の一元化とか、法人化計画を持っているとか、そういう経営主体としての実体を有する集落営農というものを担い手として位置づけていきたいというふうに考えているところでございます。

木村(太)委員 今、局長さん、昔でいえば字とおっしゃいましたが、私は今現在でも大字、小字がつくところに住んでおりまして、まだそういうところがたくさんある。逆にそれを財産にして、今の答弁にあった方向で努力をいただきたい、こう思います。

 ここでちょっとお伺いしたいんですが、年末の税制改正のときに、我が党内の税制調査会でも時に議論に出てまいりますけれども、地元で農家の皆さんと触れ合いをしますと、よく出てくる一つの考え方として、こういうことがよく言われます。集落営農を経営体として育成していくとしても、いわゆる消費税の免税点が下がり、免税点一千万円を超えると消費税を払わなければならないということになっているわけであります。このことが集落営農の組織化への障害になるのではないかという素朴な、率直な農家の御意見を間々に聞くわけでありますが、農林水産省の考え方を確認させていただきたいと思います。

須賀田政府参考人 私どもが進めております集落営農経営は、規約がある、それから一元的に経理をするんだ、そういうような経営主体としての実体を有しているということを前提にしておるということで、今、全国的取り組みをしているわけでございます。

 その過程で、やはり、先生おっしゃられましたように、消費税の免税点が下がって消費税を支払わないといけなくなるということ、それから、みなし法人で法人税を支払わないといけないのではないかということで、この集落営農にちゅうちょされるという現実の声がございます。私ども、この問題は、よく工夫を凝らされて、地元の税務署と話し合いながら組織化を進めていただきたいというふうに御指導申し上げているところでございます。

 ただ、考えていただきたいのは、消費税も、集落営農は事業者でございますので、転嫁できるということでございますし、法人税にいたしましても、必ずしも法人税を支払うということが全体にとって、損得で言うのもなんなんですけれども、損するわけでもない。ある程度収入が上がれば、法人税を支払った方が得になる場合もあるわけでございますので、その辺のところはじっくり考えていただいて、法人化に向けた取り組みということもよく考えていただきたいというふうに思っておるわけでございます。

 いろいろメリットがあるわけでございますので、例えば、法人化すれば欠損金を七年間にわたって繰り越すことができるとか、そういう面の税制上のメリットもあるわけでございますので、その辺のところは十分考えて対応していただければというふうに考えているところでございます。

木村(太)委員 次に、農地の保有合理化事業につきましてお伺いしたいと思います。

 農業生産法人に対する農地保有合理化法人の出資は、法人が無理なく資本の増強を行い、信用力を高めるなど、農業生産法人の育成に役立つものと考えられておりますが、ただ、実績が余り多くありませんで、必ずしも活用されてきたとは言えないようであります。こういう状況の中で、今回の法改正によりまして金銭出資を新たに措置することによって法人の育成がどのように促進されていくのか、お伺いしたい。

 また、農地保有合理化事業の拡充として、農地保有合理化法人が貸付信託を行う事業を新たに措置しておりますけれども、どのような効果が期待できるのか、お伺いしたいと思います。

須賀田政府参考人 二つお尋ねでございます。

 まず、金銭出資を新たに措置することによってどのような効果があるかということでございます。農地保有合理化法人が金銭出資をいたしますと、規模拡大に伴って必要となる農業機械等の資本装備の充実を、担保だとか保証人だとかなしに実現することができる、そういうことで効率的かつ安定的な経営体としての農業生産法人の育成が期待できるという面がございます。

 また、貸付信託の事業でございます。これは、昨日も話題になっておりました。現在、不在村の人が相続によって農地を取得する、この人たちは、出身の村とのつながりも余りないということで、貸し付けの相手先というものをなかなか見出すことができないというような事情がございました。こういう人たちにとって、農地保有合理化法人に信託をして貸し付ける、それで、好きなときに返していただくということで、こういう不在村の農地相続者の農地を活用できる道があるのではないかというふうに考えているところでございます。

木村(太)委員 ちょっと関連しまして、これも現場の農家の皆さんの意見からよく出てくることなんですが、例えば、五年間農地を借りてその後買い受ける農地保有合理化事業につきまして、もう少し長い期間、例えば、十年、二十年間借りてから買い受ける制度ができないかという要望が時々私にもあります。担い手の育成のためには、このような長期の期間貸し付けた後に売り渡す事業も必要ではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。

須賀田政府参考人 私ども、安定した経営体になるにはやはり所有権を持って経営されるのが一番ということで、原則的には五年間貸し付けて、しかる後に売り渡すという仕組みにしているわけでございますが、長期貸し付けという要望もございますので、特に規模が大きくなればそういう要望がございますので、認定農業者に五年から十年、十年まで長期貸し付けした後に売り渡す長期育成タイプ事業というのを実施しております。さらに、認定農業者等が買い受ける時点において、買い入れの意思があるにもかかわらず災害等の損害を受けた、そういう事情がある場合には、一回に限りさらに五年間貸し付けを延長できるという、十年と五年で十五年まで延長できるという仕組みがあるわけでございます。

 今回、先ほど先生おっしゃられました金銭出資でございます。これは、出資分を最長十五年で農業生産法人の構成員に分割譲渡するということでございますので、出資期間は十五年間、これは実質的には長期の貸し付け機能というものを有しているということでございまして、これらを利用していただければというふうに考えているところでございます。

木村(太)委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

山岡委員長 次に、一川保夫君。

一川委員 民主党の一川保夫でございます。

 今回のこの法律案を中心に、基本的なところを確認の意味で、またいろいろな面で農村地域に住んでいる皆さん方なり農家の皆さん方も大きな不安感を抱いている点もたくさんありますので、そういったことについて御質問させていただきたい、そのように思います。

 今ほどの質問にもいろいろとありましたけれども、これからの新しい時代に向けての農政というのはどういう方向で動いていくかということについては、農村地域に住んでいる方々を初め農業に従事している方々も、私自身もこの質問をするに当たって、いろいろな農家の皆さん方に直接お聞きしたり、また市町村の担当者の皆さん方とか、あるいは農協の関係の方々にもお聞きするわけですけれども、どういう方向に進んでいくかという面では非常に皆さんいろいろと不安感を抱いているなという感じを率直に抱きました。そういうことでもございますので、そのあたりを中心にお聞きしたい。

 まず、これは大臣に、基本的なところですけれども、先ほども御質問の中に含まれておりました。先般の新しい基本計画を策定されて、そういった基本的な計画を受けてこういった法律改正につながっているというふうには思いますが、この法律そのものは、御存じのとおり、平成五年にこの法律が制定されております。その後、平成七年に一部改正、それから平成十五年にも一部改正、そして今回の改正というふうにつながってきているわけでして、恐らく、いろいろな農業、農村を取り巻く情勢がそれなりの変化の中で改正せざるを得ない、いろいろなニーズにこたえざるを得ないということになっているんだろうというふうに思いますけれども、十五年に改正して十七年、すぐに改正しなきゃならないということは、ある面ではちょっと見通しが甘かったという面も当然あるんだろうと思いますが、政策的に何かしっかりとしたものが貫かれていないんではないかなという心配もあるわけでございます。

 こういった基本計画、もう五年ごとに見直しをかけているわけですけれども、そういうものと今回の法律改正、この改正をすればしばらく、この計画は五年間あるわけだから、少なくとも五年間ぐらいはこの経営基盤強化法でしっかりと対応するんだというような決意は大臣に恐らくおありだろうと思いますけれども、そのあたりのところを、大臣の見解をお聞かせ願いたいな、そのように思います。

島村国務大臣 お答えいたします。

 国内農業の食料供給力を維持増進するためには、何といってもまず担い手の育成確保が必要でありますが、同時に、農地の有効利用を促進することもまた喫緊の課題となります。

 この課題に対応するために今般の基本計画の見直しが行われたわけでありますが、少なくも、農地制度に関しては、担い手への農地の利用集積の促進、あるいは耕作放棄地の発生防止、解消のための措置の強化、そして農地の効率的利用のための新規参入の促進、また優良農地の確保のための計画的な土地利用の推進などの施策を総合的かつ計画的に講ずることが必要と指摘されたところであります。

 五年前の平成十二年三月に策定されました前回の基本計画、これらのいろいろな反省に立ちまして、それぞれの分野の代表者の方が一年三カ月余にわたって御協議願った結果でございますから、我々は、今回の基本計画の見直しあるいはまたこの法改正で、農地保有合理化事業の拡充などによる担い手への農地の利用集積の加速化、リース特区の全国展開、あるいは体系的耕作放棄地対策の整備など、新たな基本計画に示された内容を具体化するために努力をしていきたいと現在考えております。

一川委員 そこで、要するに、担い手と称するところに農地を集積してまいりたいという一つの方向が出ているわけですけれども、この農地法のいろいろな精神等からしましても、我が国の農政の中で農地の扱いというのはいろいろと変遷をしてきているというふうに私は思います。

 昭和四十五年ごろの生産調整が始まったころに、それまではどっちかというと自作農主義というようなことが貫かれていたというふうに思いますけれども、その後、農地の借地というようなものも認めながら、耕作者主義というんですか、そういう方向に大きく流れを変えてきたという経過があるというふうに思います。

 農水省もかつて、農用地利用増進法ですか、そういう法律をつくって、大々的に規模拡大をねらったような政策が動き出したのは昭和五十年代の半ばだと思いますけれども、それも余りうまくいかなかったということで、先ほど言いましたように、平成五年にかつての法律を抜本的に改めて今回のこの法律に移行したという経過があったと思いますけれども、当時のことを思い起こしても、あるいは最近の資料を見ておりましても、今この法律でなぜ改正しなきゃならないかといういろいろな背景なり理由、そうしたねらいを見ておりましても、余り変わっていないような気がするわけですね。ですから、何か基本的に、我が国の農業なり農村にしっかりと根づくようなそういう農地制度とか、こういう規模拡大の施策というのは、うまくいっていないんではないかなという感じを私は常に持っております。

 そこで、局長でよろしいんですけれども、こういう担い手に農地を集積していく、利用集積していくという施策が、今日まで、ポイントポイントの施策でいいわけですけれども、どういうふうな経過があったかというのを説明していただきたいと思います。

須賀田政府参考人 まず、先生もおっしゃられました、昭和三十六年に農業基本法ができまして、このときは、他産業に従事して恐らく離農するであろう、その跡地を専業農家へ所有権を移転させたい、こういう発想で、昭和三十七年に農協による農地信託、それから農業生産法人制度、こういうものの創設を図りました。

 その後、兼業化。地価が上昇をいたしまして、他産業従事者が離農せずに兼業化という形態をとった。それから、非常に地価が上がり、資産的保有傾向が高まりまして、所有権の移転が望めなくなったということで、昭和四十五年には、借地を促進しようということで、まず、貸したら戻らないんじゃないかというようなことが言われていた耕作権の保護規定を一部緩めた、それから農地保有合理化事業というのを創設した、これは仲介機能を果たさせるための事業でございます。こういうことをしたわけでございます。

 それでもなかなか進まないということがございまして、昭和五十年に、いわゆる集落機能を利用して地域ぐるみの土地利用調整を図ろうじゃないかと。時に耕作権の安定なき耕作の安定というような表現もされましたけれども、そういうことで集団的に土地利用調整を図れば実質的に耕作の安定が図れるんじゃないかということで、農用地利用増進事業を昭和五十年に創設し、五十五年にそれを充実したわけでございます。

 その後、平成五年になりますと、国際化が非常に進展をしていったということがございまして、いわゆる新政策ということで、ちゃんと将来の担い手を見つけないといけないじゃないかということがございまして、農業経営基盤強化促進法で認定農業者制度というものを導入したわけでございます。

 それから、平成十二年には、株式会社に対して余りにもかたくなな態度をとり過ぎなんじゃないか、株式会社のメリットというものも活用したらどうかというようなこともございまして、農業生産法人の一形態といたしまして株式会社を追加した、ざっとこのような農用地利用集積政策をとってまいったところでございます。

一川委員 今ほどちょっと説明がありましたけれども、基本的にはそういった政策がしっかりと、その政策のねらいどおりになかなか効果が出てこなかったというのが現実だろうと思うんです。

 我々は今、日本の、我々地元の集落の現状を見ておりましても、農村地帯の現状を見ておりましても、基本的にはもう圧倒的に兼業農家が多いわけでございますし、そういう中で、では、兼業農家も農業が嫌いかといったら、そうじゃなくて、それなりに農業が好きで農地に出て耕している人もたくさんいるわけです。そういう現実の中で我が国の農政というものをしっかりと構築をし直さないと、何ぼ理想的な、あるいはこういうふうになってほしいというような農業の構造改革の姿を描いたとしても、現実、現場としてはなかなかそのとおり動いていかないというのが今の実態ではないかなというふうに思っているわけです。

 そこで、最近取り組まれた米政策改革の中で、集落型の経営体というものを指向したのも最近ではなかったかと思うんですけれども、集落型の経営体を水田農業としてはしっかりと組織化をし推進していこうというような施策が動いていたはずなんですけれども、何かそれも余り実績が上がっていないというふうに聞いておりますけれども、それはいかがですか。

須賀田政府参考人 米政策改革のうちの、担い手経営安定対策の対象者といたしまして、特定農業団体と、今先生おっしゃられました、これに準ずる集落型経営体を創設したわけでございます。具体的には、一元経理を行って、五年以内に法人化する計画を持っているというような要件を満たす集落営農組織を対象としたわけでございます。

 その加入状況でございます。

 全国で、特定農業団体が八十三、集落型経営体が百十三ということで約二百、加入面積で三千三百ヘクタール程度でございまして、非常に小そうございます。

 私ども、これは、もともと担い手経営安定対策そのものが、稲作所得基盤の確保対策の上積み措置であるという、政策としての軽重の問題、それからやはりメリットの周知というのが十分でなかったのではないかというふうな反省がございまして、潜在的な集落型経営体の候補というのはまだまだ各地に眠っておるのではないかというふうに思っておりまして、今、農業団体と共同をいたしまして、潜在的な候補を顕在化すべく、全国運動を展開中でございます。

一川委員 これまでのそういう施策のいろいろな実績等を見ましても、今政府が取り組もうとする、担い手への農地の利用集積というこの施策も、ある面では非常に心配になるわけです。

 そこで局長に幾つかの点、確かめたいと思います。

 こういった担い手、これは、担い手と称するのは、俗に言う認定農業者にプラスして、集落営農の組織化されたものも含むという言い方をされていますよね。そういう、担い手と称する、そういった人たちというか組織化されたものも含めて、我が国の農地全体をどの程度カバーしようとしているのか、あるいは例えば集落の中で、目標としてはどれくらいのところをカバーしてほしいというふうに考えているのかということも非常に気になるわけでございますし、それからまた、認定農業者と集落営農の組織化されたものとが、ある集落で共存するということも当然起こり得るわけですけれども、認定農業者というのはその集落の中で必ずしもリーダーシップをとっているわけでもございませんし、兼業農家の皆さん方と認定農業者が本当にうまくいっているかなといったところを見ると、中にはなかなかうまくいっていないケースもたくさんあるわけです。

 そういうことを考えますと、では、集落営農がちゃんと政策的にフォローしてもらえるのであれば、これまで認定農業者に貸し出していた農地を戻してもらおうとか、いろいろなことが起こり得る可能性もあるわけだけれども、そういった担い手にそういう農地を集積していくということについて、どういった目標でやろうとしておられるのか、そのあたりの自信のほどはいかがですか。

須賀田政府参考人 経営安定対策の対象であります担い手が発展をいたしまして、他産業並みの所得を確保する経営に発展をしていくということを私どもは展望をしております。こういう他産業並みの所得を上げ得る経営が、平成二十七年時点におきまして、家族農業経営と法人経営で全体の農地面積の六割程度、これに集落営農経営、これは二万から四万経営体を育成したいとしておりますけれども、それを合わせますと、全体の七割から八割を占めたいというふうに展望をしているわけでございます。

 平成二十七年に農地面積を四百五十万ヘクタールというふうに見込むということを前提にいたしますと、約三百五十万ヘクタール程度の農地が、集落営農経営を含む他産業並みの所得を確保し得る経営によって経営をされるという展望をしているわけでございます。

 今ちょうど担い手への農地集積面積は二百二十五万ヘクタールでございますので、相当頑張らなくてはならないというふうに思っているところでございます。

 なお、集落営農経営、二万から四万経営体を見込んでおります。先ほど言いました水田が相当割合を占める集落は全国に八万集落ございます。この集落営農経営体、別に一集落に一つに限るわけではございませんで、数集落で一つでもいいわけでございますので、八万集落のうちの半分以上を占められたらなというふうに思っているわけでございます。

一川委員 今の局長のお考えは私は非常に甘いところがあると思うんですけれども。

 これは皆さん方、これから鋭意取り組まれると思いますが、私なりに注文をつけておきたいと思いますが、先ほど言いましたように、やはり農村集落の中というのは、ほとんど規模の小さい兼業農家が圧倒的に数が多いわけでございますし、そういう中で、先ほど局長が言われたように、隣の集落と合わせて営農組織的なものを構築したいというようなこともおっしゃいましたけれども、現実問題はそれは非常に難しいと思うんです。そういう一つの集落をまとめるだけでも相当のエネルギーが要るわけですから、数集落をまとめて、隣の集落も含めて営農組織をつくっていくというのはもうこれは大変なことでございます。

 現実問題、集落の中で営農の世話をしている人というのは、私たちが知っているところでは、兼業農家の方がお世話されているケースが非常に多いわけですから、認定農業者というような専業に近いような農家の方々は、自分の農業経営で精いっぱいですから、人のため地域のためというところの余力がなかなかないという現実を見れば、非常に厳しい面もございます。

 また、今政府が取り組んでおられるこういった集落営農のいろいろな要件めいたものを、この秋ごろには詰めていきたいというお話もございました。しかし一方では、政府が柱にしておられます品目横断的な経営安定対策ですか、こういう、農家の最も関心のある経済的な面あるいは所得の面、そういったことに具体的に触れないで集落営農に対する協力要請をしても、そういった経営安定の中身がはっきりしない段階では、農家の皆さん方も明確な意思表示はできないんではないかというような感じもいたします。

 農林大臣も、こういう若干のやりとりでございますけれども、この集落営農というのは、我が国の農業にとっては、あるいは農村地域にとっては、うまくいかないと致命的になってしまう危険性をはらんでおりますので、そういったところを、大臣の見解をちょっとお聞かせ願いたいと思います。

島村国務大臣 御指摘のとおり、いろいろ難しい問題が介在することは事実であります。特に我が国は四二%が中山間地域で占められている地域でもありますし、またそれぞれの地域によっては気象条件その他も大きく異なることから、やはりそれらをすべて一つのものと考えてこれに対応することにはいろいろ問題があろうかと思います。

 ただ、そうは言いながら、個々別々に自分たちでそれぞれに耕作機械を持ち、それぞれの経営に対する考え方で取り組んでいる段階はもう終わったといいましょうか時代おくれであるといいましょうか、これからの時代に即応する農業を展開するとなれば、やはり、例えば農耕作機械一つにしても、お互いに効率的にこれを使うことで負担を軽減したり、あるいは経営の問題につきましても、それぞれ専門の人たちが、いわば企業経営ではありませんが、専門的にそれに取り組むということは、いろいろな意味で英知の交換にもなりますし、集積にもなりますし、かつ効率的にいろいろなことを的確にやるためにも、私は好ましい結果が生まれるんだろうと思います。

 これを、それぞれの事情、それぞれの地域、それぞれの考え方でばらばらにやっていくという農業をやっていたのでは、最近のグローバル化に対応するためにも余り好ましくない状況になるので、やはり農業の体質強化を考えれば、当然集落化というものは考えざるを得ない一つの時代の趨勢といいましょうか、要請といいましょうか、そういうふうに我々は受けとめております。

一川委員 今はもう既に地方分権の時代に入っておりますけれども、やはりこういった農業、農村の実態というのは地域によってそれぞれ皆特色を持っておりますし、そういった面では、私は、今ほどの集落営農に対してどういう要件をかけるとか、あるいはいろいろな施策の対象範囲をどうするかということについては、それはやはりできるだけ地方に考え方をゆだねるということが非常に大事ではないかなというふうに思っております。

 そこで、時間もないので次のテーマに入ります。

 今回の法律改正の中でも、遊休農地の問題というのが出てまいっております。この遊休農地というものがこれもまただんだんだんだんふえてきているというのは非常に残念なことなんですけれども、片や優良農地はしっかりと確保したいというのはその根底に当然あるわけでございますけれども、私なりにいろいろとお聞きしているところでは、こういった遊休農地、俗に言う耕作放棄地が発生するのは、どうしてもやはり条件が不利な中山間地域だとか、あるいは担い手がなかなか出てこない地域にそういった遊休農地が非常にふえてきておるというのは、いろいろな具体的なデータにも出ておるわけだし、我々の地域でもそういうのは現実に目にもしておりますし、お話も聞いております。

 そこで、私なりに思いますのは、こういった遊休農地をこれ以上ふやさない、むしろ有効に使っていくという観点で、特に中山間地域の問題として言えますのは、個人でどうしようもないような用水施設とか排水施設とかあるいは農道といったようなものは、それぞれの個人で直そうと思っても直せないわけです。ですから、そういう共同的に使っているような施設については、しっかりと公的にそれを支えていくという基本的なところがないと、これからだんだん高齢化社会の中で過疎化していく現象の中で、中山間地域のそういう遊休農地的なところをこれからそれ以上ふやさない、あるいは有効に使っていくという面では、こういう共同的に使っている施設に対する支援策というものをしっかりと施策の中に織り込んでいかないとまずいのではないかと私は思いますけれども、そのあたりの見解をお聞かせ願いたいと思います。

川村政府参考人 耕作放棄地の関係でのお尋ねでございます。

 特に中山間について言及されたわけでございますが、おっしゃるとおり、中山間というのは非常に傾斜地が多くて、農業生産をやるには非常に不利な状況があるわけでございます。また、過疎化、高齢化、こういったものも特に進行しておりますし、今後、耕作放棄地の増加、それに伴って多面的機能の低下といったものも懸念をされるわけでございます。

 私ども、こういった実態を踏まえまして、平成十二年から中山間の直接支払い制度というものを特に実施をしております。五年間たちまして評価をしましたけれども、おっしゃったように、共同活動で守られていた農地でありますとか用水でありますとかいろいろな施設、そういったものが従来に比べて活性化をする、こういった効果も出ております。

 今回も、第二期といいますか、地域対策といたしまして、やはりそこで中山間での継続的な農業生産活動、こういったものを確保することが非常に重要であるということで、将来に向けて、組織化でありますとか、端的には耕作放棄地を防止するだけではなくて、さらに復旧していくといったことに対しても助成をしていくといったようなことでの見直しをしたところでございます。

 基盤整備等、条件をよくしていくといったようなことも非常に重要でございますし、担い手の育成、これも当然必要でございますので、そういうものと相まちまして施策を推進していきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

一川委員 ぜひそういうところを、もっといろいろな現地を調査しながら、これもやはり地域のそれぞれ特色がございますから、地方での自由裁量を生かす中で、そういうことに対応できるような制度に切りかえていくということが非常に大事ではないかなというふうに思っております。

 最後に、今回の特定農地貸付け法に関連して、市民農園という考え方もいろいろと政策的に充実していこうということが言われております。

 この市民農園の発想というのは、これはまた都市住民と農村住民とのいろいろな交流の場だとか、あるいはまた農業というものにできるだけ理解を広めていくということも言えるでしょうし、いろいろなそういう遊休的な農地を有効に使うという面での環境保全ということもあるかもしれません。

 私は、もう既に日本というのは高齢化社会に突入しておりますし、農村地帯は都市部に比べてもはるかに高齢化率が高いわけです、そういう中にあって、やはりこの市民農園という制度をこの高齢化社会の中でしっかりと生かしていくというやり方があるのではないかと。

 それは、都市住民と言ったら大げさですけれども、農村の近くに住んでいる方で農業の経験のないお年寄りもたくさんいらっしゃるわけですけれども、そういう方々に、畑に入ってお花とかいろいろな野菜を栽培していただくという中で健康を維持するというケースも非常にあるというようなことも聞いておりますし、また、農村に、もともと農家にいらっしゃるお年寄りの皆さん方も、そういう方々にいろいろなことを教えながら、自分自身も一緒になって働いていくということが、ある面ではお年寄りの非常に元気で長生きしていただけるという一つの環境にもなっているわけでございます。

 市民農園というこの制度を、こういった高齢化社会の中にあって、そういう福祉施策とのタイアップという面では、今日、いろいろな面で、介護制度とか年金なり、医療制度の中で相当のコストがかかっているわけですから、できるだけそういうコストを減らすという意味でも、この市民農園というものをしっかりと活用して、お年寄りが、余りそういう福祉施設とか病院の世話にならなくても元気で生きていけるような、そういう仕組みをしっかりと取り組んでいただきたいというふうに私は思いますけれども、農水省と厚生労働省、両方からそのお考えをお聞きしたいと思います。

岩永副大臣 お答えいたします。

 一川先生、全く同感でございまして、私どもも積極的にこの市民農園をふやしていく方策を考えていきたい、このように思っております。

 今どうなっているかということで調べましたところ、二千九百ほどあるわけでございますが、都市で二千百二十九、農村で七百七十五ということで、やはりほとんど都市に集中している。このことは大変いいことなんですね。

 そして、それの設置主体がどうなっているかということですが、やはり地方公共団体が市民農園をつくっている。区画も十五万区画あるわけでございますが、その二千九百のうち二千二百まで地方公共団体がつくっている、こういうことでございます。

 先ほど先生のおっしゃられたように、大変多くの効用を発揮するわけでございますので、今回の法律の改正によりまして、市民農園の開設者についての限定を撤廃する、そして市民農園の区画や附帯施設の整備、栽培技術指導員の育成を行う、また、農村の高齢者が市民農園を開設したり、栽培技術の指導員としての活躍ができる場を提供する、こういうようなことでこの法改正を行ったわけでございます。

 また、予算的にも、元気な地域づくり交付金の中のグリーンツーリズム、都市農園の振興で、ソフトの関係では、都道府県による体験指導者、栽培技術指導員の育成をするし、ハードの場合では、ふれあい体験交流空間型の設備、日帰り型だとか、そういう部分の補助を行うというようなことでございまして、補助も、沖縄が三分の二でございますが、他の県については二分の一を国が補助をしよう、こういうことで、この法改正並びに本年度の予算から、おっしゃるように積極的に対応をしておりまして、対応をこれからもしていきたい、このように思っております。

中村政府参考人 厚生労働省の方の取り組みを御説明させていただきます。

 委員御指摘のとおり、高齢化が進行しておりますし、私ども、平成十二年から介護保険を始めておりますが、五年間たちまして、今、見直しに直面しているわけでございますが、平成十二年には六十五歳以上の十人にお一人が要介護認定に該当されましたが、今日、四百万人を超えておりまして、六人にお一人ということで、これから超高齢社会に入っていくに当たりまして、高齢者の方が、健康で生きがいを持って、要介護にならないということが最大の課題になっております。

 今、農水省の方の御説明がございましたが、厚生労働省でも、高齢者の生きがいと健康づくり推進事業の中で、高齢者の社会活動とかさまざまなボランティア活動、取り組みを助成しているところでございますが、その中で、自治体では高齢者を対象とした農園事業が実施されている。例えば今、都市部というお話がございましたが、大阪府下では、十一の自治体でこういう高齢者を対象とした農園事業がされておったり、あるいは、地方の農協さんの方で、高齢者の方々が農園事業で生産にも従事するというようなことが行われております。

 冒頭申し上げましたように、やはり地域ぐるみで健康や生きがいが高められるような取り組みを行っていく必要がございますし、そういった意味で、現に自治体でも行われておりますので、こういった取り組みがさらに活発になることを期待しているところでございます。

一川委員 こういった高齢化社会の中で、本当に今、社会保障関係でも相当の財政負担になっているのは現実でございますし、そういうことのないように持っていくのも、農業サイドからもいろいろな面で施策をうまくタイアップしていけば、そういう面にもお互いに施策がかみ合っていけば、これからの新しい時代に向けて非常に大きな対策になり得るんではないかなというふうに思っておりますので、ぜひ充実をしていただきたい、そのように思っております。

 以上で、質問を終わらせていただきます。

山岡委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 きょうは、農業経営基盤強化促進法について質問させていただきます。

 予算委員会の席で、大臣の前でも申し上げましたけれども、いろいろな行政、難しいんですが、やはり農政は本当に難しいんじゃないかと思います。世界じゅうでうまくいっている国はほとんどない。財政事情が悪い中で補助金をどんどんつぎ込まざるを得ないというような問題があるかと思います。

 日本の農政を見た場合、いろいろな難しいところがありますけれども、私はやはり農地問題、これに絡む問題ほど難しい部分はないんじゃないかと思います。

 戦後の農政をリードされた方に東畑精一さんという方がおられます、東京大学の農業経済学の先生でしたけれども、この方とか、農林水産省の先輩ですけれども小倉武一さん、農業基本法のころ、いろいろ仕事をされた方ですけれども、見込みが狂ったと両方ともおっしゃっています。それは、地価がこんなに上がるとは思わなかった、規模拡大がこんなに進まないとは思わなかったと。ここがヨーロッパの農政と大分違うところではないかと思います。

 今回の法律改正で、株式会社に農地の賃借権を与えるといったようなこと、その利用権を設定してというのは、これは非常にいいことではないかと思います。

 それから、先ほど一川委員も御指摘になっておられましたし、副大臣もそのとおりだとおっしゃっていましたけれども、市民農園をどんどんつくって、一般市民にも農業に親しんでいただいて、農業に対する理解も深めていく、それが長寿にもつながるというようなこと、これもいいことではないかと思います。こういったことは非常に大事だと思います。

 農政上から見た場合、いろいろな問題があるかと思いますけれども、この限られた日本の国土の中で遊休農地がどんどんふえていくというのは大問題ではないかと思います。三十四万ヘクタールになっている。これは二〇〇一年の数字だったと思いますけれども、現実はもっと進んでいるのではないかと思います。四百七十万ヘクタールの一割近くに達せんとしている。しかも、耕地利用率が、かつては一三〇%を超えていたのが今は九十数%だと。限られた農地であるにもかかわらず有効活用されていないということ。

 これは大問題なので、我々の、我々というか、農政を担当されている皆さんの先輩たちが、一九九〇年にこの農業経営基盤強化促進法をつくりまして、遊休農地対策も取り組むようになっておりますね。農業委員会が指導をして、勧告をして、買い入れとかいうことをするようになっておるわけですけれども、なかなか進んでいなかったようですね。

 数字をいただきましたところ、例えば直近でいいますと、指導した案件が一万件近く、九千三十件あるということ、それから、この過去十四年間で九万件。ところが、結果はどうだったかというと、ほとんどなくて、二十ヘクタールちょっとぐらいしか買い入れとかになっていないということですね。それから、数字をいただきましたけれども、なぜかしら途中から、一九九五年あたりから急に、もう買い入れの協議とか合理化法人による買い入れ等が行われなくなっている。これじゃ動かないからということで今回の改正になったんだろうと思いますけれども、一体どういうところに問題があったんでしょうか。

大口大臣政務官 今先生御指摘がありました、遊休農地対策が機能していなかったのではないか、これはどこに問題があったのかということでございますが、耕作放棄地の面積は、先生も御指摘がありましたように、三十四万ヘクタール、いや、それ以上だということでございますけれども、東京都の一・五倍。昭和六十年の十三万ヘクタールから二十一万ヘクタール増加している。また、今後も、農業者の高齢化の進展等によって遊休農地の増加が懸念されております。限りある農地の有効活用ということから考えて、耕作放棄地対策というのは喫緊の課題である、こういうふうに考えております。

 そして、どこにその問題点があるかということでございますが、やはり現行の基盤強化法が遊休農地がそんなに多く生じるであろうということをきちっと予測していなかったのではないか。そして、農業委員会が、農業上の再利用が困難か否かという振り分けをしっかりしないで遊休農地について指導をしていた。振り分けをきちっとしていなかったのではないか。あるいは、現行の特定利用権制度は、これは農協の組合員とか農民の共同利用でなければ対象にならない、こういうふうに共同利用に限定していた、こういうようなこと。あるいは、買い入れ等の協議が調わなければ前に進まなかった。こういうようなこともありまして、農業上の再利用を行うには社会的困難と思われるものまで指導したり、共同利用要件が困難なものがあり、思うように解消が図られなかった、こういうふうに考えられます。

篠原委員 今いろいろ問題点を挙げられました。

 繰り返しますと、多過ぎて、こんなに多く耕作放棄地がふえるとは思わなかったと。それから、振り分けというのは農業委員会が、これは農地として使える、これは使えない、その振り分け、そういう意味ですか、そういう振り分けができなかった。それから、共同じゃなければいけないというのをつけていたと。それから、協議が調わないとだめだったと。

 しかし、ほとんどワークしなかったわけですけれども、今度これを直しておられるわけですね。では、大体わかります、そういった検討をされたと。

 だから、多くなり過ぎた、これはしようがないわけですけれども、振り分けるということで市町村にきちんと計画をつくってもらう、これで改善されるということですね。それから、共同じゃなくて個人でもいいというふうにはなっているんだろうと思う、そこがそういうふうになっているのかどうか。それで、協議が調わなければならないというのは、そんなことは待っていられないからというので、都道府県知事を絡ませて、都道府県知事の強制的な裁定ということを入れる、それでもって進めたいというような感じだろうと思いますけれども、今私が言ったことでよろしいんでしょうか。

 そして、これでもってどんどん遊休農地がなくなっていくという見通しが立てられるんでしょうか。

大口大臣政務官 今先生が御理解いただいているとおりであろうと思います。

 詳しく述べますと、今回の改正では、遊休農地の発生の防止、解消の強化を図ることを目的といたしまして、地域の農業の実情に通じた市町村が策定する基本構想の中で、遊休農地を農業上の利用の増進を図るものとそれから植林等の山に戻すものに振り分けるということを、市町村が基本構想を策定してやる。前者につきまして農業上の利用の指導を行い、指導に従わない場合には知事の裁定による賃借権の設定、これができるようにする、五年間の賃借権設定。その際、農民や農協の組合員の共同利用ではなく、仲介機関であります農地の保有合理化法人を通じて、個人利用や特定農業法人の利用も可能にする。あわせて、周囲の営農への支障の除去を内容とする市町村長による措置命令、こういうものを内容とする体系的な耕作放棄地対策の整備を図ることとしております。

 本法案が成立しました際には、関係者に対策の趣旨を周知徹底し、円滑な実施に努めてまいりたいと考えておりますが、さらに平成十七年度の予算におきまして、地域の耕作放棄地の実態等の調査をやる、活用方針を検討する、インターネット等によって耕作放棄地等の農地情報の集積、公開をしていく、それから農業委員会による濃密な指導を実施していきまして、そういうような事業を講ずることによって、制度的措置とあわせてこうした取り組みを促進することによって、実効ある耕作放棄地対策を推進してまいりたい、こういうふうに考えております。

篠原委員 今伺っていると、非常にまた理想的なことを考えている。私はこれが本当に働いたらいいと思っているんですが、ちょっと質問通告はしていないんですけれども、多分おわかりいただいているのでお答えいただきたいと思います。

 この問題について農業委員会が深くかかわってきたわけですね。いろいろ指導したけれども、うまく進まなかったという悩みは、一番農業委員会の関係者が抱えていると思うんです。市民農園もそうですけれども、特区でやってうまくいっているから全国展開を図ろうと。株式会社の参入も同じです。やはり現場の声というのを聞き入れて、それを反映して制度化していくのはいいんだと思うんですけれども、市町村の農業委員会から今のような要望が寄せられたりして、それを集積した結果こうなったんでしょうか。

 それで、特に、私どもが考えるには、これは民主党の農業再生プランのところでも同じようなことを考えたわけですけれども、まあそういう点では一緒なわけです。市町村長さんの方が現場をわかっているから、市町村長さんに今の裁定なんかの権限を与えた方がいいんじゃないかというふうにまとめていたんですが、それは動けば都道府県知事でも大臣でも市町村長でもいいと私は思うんですが、なぜ都道府県知事にしたのかというのを、それも農業委員会の現場の要求で、もっと上の方が権限があっていいんだというようなことがあったんでしょうか。

大口大臣政務官 市町村長さんの場合は、現場にもう密着している、こういうことであることが、逆にこういう裁定のような強制的な措置に対して、これをやっていくに当たっては、働きにくくなる、この可能性がある。

 ですから、市町村長さんについては、こういうプランをつくっていただいて、そして買い入れ等の協議について調停をしていただいたり通知をしていただいたりするわけですが、最終的には、やはり裁定ということになりますと、ちょっと離れた知事さんにやってもらう、こういうふうに考えています。

篠原委員 多分、今前半の方のはお答えいただけませんでしたけれども、農業委員会の声を反映して、現場の声を聞いてやっておられるということだろうと思います。

 農地問題について、ちょっと私もいろいろ考えるところがあるわけですけれども、本当に難しいと思います。

 農地は、これは外国のところのと比べるとよくわかるわけですけれども、万人のものなんですよね。所有者のものではないということになっているんだそうです。ですから、外国、欧米諸国に行きますと、遊休農地というのは余りないんです。なぜないかというと、耕作できなくなったりしたら、ほぼ自動的にやる人のところに農地が渡る仕組みになっているわけですね。どうしてかというと、農地というのはパブリックグッズ、公共財だと。私的所有権の、思いのままにさせるべきじゃないんだという考え方があるわけですね。

 日本の場合は、これが私的財産権が強過ぎて、これはおれのものだと。これは農地だけじゃなくて、都会でもそうなわけですけれども、駅前で再開発しなくちゃいけないのに、一軒長屋が出ないということで再開発ができない、そういったことが起きているんだろうと思います。

 これは非常に難しいことで、一農林水産省で解決できるわけではないわけですけれども、農地についていいますと、イギリスなんかはクラウンランド、王様の土地ということになっていて、これは、江戸時代はお殿様の土地で、五公五民とか四公六民となっていたわけですけれども、明治時代に新政府になったときに、地租改正で絶対的所有権を認めてという。その後、農政もそうなんですが、ほかの分野も、ヨーロッパ諸国は公的規制というか公的なものを相当認めてきたのにもかかわらず、日本は公的なものを認めてこなかったんだろうと思います。

 そういう意味では、今回、今政務官お答えになったように、都道府県知事に利用権の設定について裁定権を与える。非常におくればせながら公的な部分が農地について関与し始めたということで、これは憲法上もいろいろ多分疑義があったりするんだろうと思いますが、僕は構わないんだろうと思います。農地は耕してこそ農地であって、耕さない人からは、極端なことを言えば、取り上げても、ヨーロッパの場合はそうなっているはずなんです。日本の場合は、所有権までは、というと大ごとになりますけれども、耕していない農地は利用していくという農政当局の姿勢は、私は非常に真っ当だと思っております。

 ただ、この後どうやって本当に農政に役立たせていくかというと、これは問題が多いんじゃないかと思います。

 農地の利用の集積、現場を見てもそのお声が聞かれます。それは、稲作なんかもちろんですけれども、リンゴとか野菜だって、やはり近くに農地があった方がいい。それを、日本はなぜかしら分散錯圃になっている。あちこちに田んぼや畑が散らばっている。これも、災害や何かの危険防止で、一つのところで災害全部なったらその農家は生きていけないから、あっちが水が出ても、こっちが大丈夫だというようなことでなっていたと学者は言っているわけですけれども。ヨーロッパ諸国は、一軒の農家の周りに自分の農地がずっと固まっているわけですね。日本は結構違うわけですね。だから、そこのところは何かいろいろ難しいところがあるわけです。

 農地制度はそれでうまくなったとしても、次、今度は集積する相手のことを一体どうお考えになっているのかということですけれども、例えば、中山間地域で一番遊休農地が多い、その一番多いところで集積すべき後継者がいない。例えば、主業農家が一人もいない集落が相当あるということ。やはり、この相手の対策なんかもしていかなければいけないんだと思いますけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。

大口大臣政務官 先生の御地元も、中山間地、たくさんある。私も、静岡県ですからたくさんあります。そういう点で、実情をよくわかっていらっしゃると思うわけでございますけれども。

 農業で他産業並みの所得を上げる経営体、これを目指す経営を担い手とし、これらの経営が農業生産の相当部分を担う、こういう強靱な農業構造を構築することが我が国の農政の喫緊の課題であるということでございます。したがって、今回の法改正では、農地保有合理化事業の拡充などを通じて、担い手への農地の利用集積を加速化していくということにしておるわけでございます。

 中山間地などの、過疎化や高齢化が進展し、担い手が見つけられないような地域では、小規模農家や兼業農家が参加して集落ぐるみで農業を行う集落営農を、経営主体としての実態を有する担い手として発展させていくため、農用地利用改善事業を拡充し、集落内の役割分担や利用集積目標を明確化する。集落における合意形成を推進するリーダーの育成などの取り組みを支援する。また、行政、関係団体が一体となって、集落営農経営の組織化、法人化の促進を強力に推進する、こういうことにしておるわけでございます。

 特に、リーダーの育成が大事でございます。また、リーダーということは、例えば行政のOBとかJAのOBとか普及員のOBとかも含めまして、これから団塊の世代、非常に重要な役割を担っていくんじゃないか、こう考えております。

篠原委員 私が申し上げたいのは、政務官のおっしゃることもわかるんですが、耕作放棄地が増加している理由として、一番どういうことが挙げられるかということですね。

 農業会議所が調査したところによりますと、労働力不足だ、高齢化が進んでいる、これが一番。これが八八%ですか。その半分ぐらいが、価格の低迷。それから、一番最初のと同じなんですが、こういう分類していた、農地の受け手がいないというのが三番目になっているんです。

 つまり、幾ら規模拡大して農地の利用の集積をしていこうにも、受け手がいないというのが現実です。平地の条件のいいところ、副大臣のところの滋賀県の東側の方のところなんかは平らで便利で、山手の方に行ったら、いない。両方で、湖西と湖東とで全然条件が違うというのでおわかりいただけるだろうと思いますけれども。

 ですから、私も、規模を拡大して農地の利用の集積というのは理想なんですが、これは、農林水産省がずっと戦後、理想といいますか、追い求めてきた夢でして、見果てぬ夢なんと言っては悪いんですけれども、なかなかうまくいかないわけです。ですから、現実を見て、もうちょっとそこのポイントをついていかなくちゃいけないんじゃないかという気がするんです。

 政務官のお答えの中にもありました、普及員だとか、農協の人たちとか、団塊の世代でOBになって云々というのは、その人たちがリーダーということですね。これは、私は非常に大事なポイントじゃないかと思います。農業の活性化というときに、規模拡大を担う人たち、これは絶対です。これが重要じゃないとは私は申し上げません。

 これは絶対重要ですけれども、その人たちが現実にいない。だったら、現実を踏まえてどうするかというと、やはり兼業農家も巻き込む。それだけじゃないんです。退職者も巻き込む。これは、一番ちゃんと私のこういう考え方をお聞きいただいたのは、予算委員会のときに大臣の前で申し上げたと思います。団塊の世代です。

 我々の団塊の世代というのは、高度経済成長を担ってきたんだろうと思います。しこしこ勉強して、東京へ出たりというのをして。ところが、気がついてみたら、会社は左前になってきている。奥さんはさっぱり面倒見てくれない、これは人によって違いますけれども。それで、これは総じてですけれども、子供は親の面倒なんか見る気はなくて、勝手にやっている。そうすると、都会でぽつんと暮らしていかなくちゃいけない。隣近所に友達はない。会社勤めばかりしていて、よく社畜とか言われています。農林水産省の皆さんなんか、夜中まで国会答弁書かされたりして、地域社会との接触なんて全然ないはずですよ。かわいそうですよね、退職した後。

 それで、そういう人たちは、やはり行くところがある人ですよ。それは、ない人は困りますけれども、結構行くところがあると思う。団塊の世代の六十にならんとしている人たちに世論調査をしますとびっくり仰天するんですけれども、田舎を持っている人たち、六五%が、冷たい都会になど老後は住めない、田舎に帰りたいと答えるわけです。大半が農家の次男坊、三男坊あるいは長男でもあるわけです。もっと聞くと、できることならやりたいと。

 先ほど大阪の話で、十一自治体が市民農園で高齢者にやっていただいてというのがありました。いきなり市民農園で余生を送るというんじゃなくて、やはりその人たちも立派な労働力じゃないかと私は思うんです。これは、現地でやっているところがあるんです。いつも島根県の例を出して悪いんですが、田舎の代表ということでしようがないんだろうと思いますけれども、過疎地の代表というところで。島根県は、そういう現実を踏まえて、今も続けているかどうかわかりませんけれども、二、三年前のものなんですが、五十歳以上の定年帰農者、あるいは島根県でいろいろな企業に勤めている人たちも含めてなんですが、それの農業技術研修や制度を仕組んでいるわけです。

 今まで、青年就業者の促進という法律は国にもあります。いつも理想を掲げて青年のところへかけている。若手、担い手。しかし、それ一辺倒では農村は成り立たない。先ほど一川委員のお話にもありましたが、これはほかの面もあると思いますけれども、専業農家はなかなか忙しくて村の役をやっていないというのは、石川県ではそうかもしれませんが、長野県では、やはり農家が、役害と称されるほど、毎日いる農家のところに役が行って忙しくて仕事をしていられない。それで、サラリーマンたちは全然、何も地域社会活動というか集落活動に参加しないで、農家ばかりで集落を持っている、こういう実態になっています。

 これは場所によっていろいろ違うので、だから農政も難しくなるわけですけれども、こういった姿勢というのは絶対必要なんじゃないかと思いますけれども、農林水産省の政策の中に、定年帰農者に農地をというような考えは全くないんでしょうか。

大口大臣政務官 今先生おっしゃいましたように、離職就農者あるいは高齢の農業者について、他産業での就業や長い人生経験によって培われた知識、人脈、豊富な経験に裏打ちされた農業技術、これを有している方もいらっしゃるわけでございます。そこで、離職就農者などの農業に関する知識が乏しい人でも円滑に就農ができるように、就農相談、技術、経営研修の実施、就農支援資金の貸し付けなどを実施しておるわけでございます。

 意欲と経験に応じて、生きがいを持って活動ができるよう、集落営農などの重要な一員として、軽作業への従事、地域問題についての相談役、まとめ役や、みずからの経験を生かした経理、渉外活動、また都市住民との交流など、地域の活性化の推進役を果たすなどの活動に対する支援に取り組んでいるところでございます。

 いずれにしましても、今、市民農園も、お話もございました、東京にも市民農園、体験農園がございます。そこで農業を勉強して、それで田舎に帰ってやるという人もいらっしゃるようでございます。そういう点で、特に農業技術のない方についてはステップを踏むことも大事ではないかと思っています。

 以上です。

篠原委員 なぜこういうことを申し上げているかというと、農林水産省が最近盛んに、プロ農家とか、また前から言っています中核的農家、自立経営農家、主業農家、認定農業者、ここを重点的に、重点的にということばかり言っているからなんですよ。これは大事なことです、ですけれども、ほかのところにも目を配らなければいけないということを申し上げたいので、これを言っているわけですよ。

 例えば、どういうところで農地の利用集積が進んでいるかというと、農林水産省なり、みんな、いつも受け手の方をバックアップしてということを考えるんです。しかし、出しやすい条件をつくってやる、出し手の方をバックアップするようなことにするとうまくいくんです。

 例えば、よく優良事例として出てくるんですが、千葉県の市川市ですか、あのあたり、印旛沼のあたりで大規模な水田経営をやっている方がおられます。兼坂さんという年配の元気のいい人ですけれども、なぜ千葉県でそんなところができるかというと、稲作です、真っ平らです、幾らでも規模拡大ができます。兼業の機会は幾らでもある。だから、農業なんかやっていなくて貸せるというふうになるわけです。

 私の長野県でも、どういうところで農地の利用集積が進んでいるかというと、リンゴだ、桃だ、ブドウだ、エノキダケだ、これは十アール当たりの収益が、ブドウなんか温室栽培をして、百五十万ぐらい粗収入でなる。これは余りよくないやり方ですが。普通に露地栽培だって百万ぐらいになる。そうしたら、ばからしくて、十アール当たり十俵お米をつくって、今や価格が下がって十三万円ぐらいの粗収入にしかならないという、これはやらないですよ。だから、この田んぼはだれかに貸しましょうと。ですから、兼業機会の、ほかの農業を振興させれば、土地利用型農業の利用集積が進んでいくわけです。

 それからもう一つ、高齢者、二人だけの夫婦になってしまっている、あるいは一人だけの人たちもいる。この人たちが畑をぼうぼうにして、田んぼをぼうぼうにして、なぜ貸せないか。みんな、一生懸命、働ける限りは耕しているんです。これはまじめです。ところが、どうしようもなくなって、やらなくなる。そうすると、周りはみんな見ているんです。さっき、市町村長さんだと情け心が働くという、集落の人なんかもっと情け心が働くんですよ。あんなに働いてきたのに、できの悪い息子はどこかへ行って、できの悪いと言うとまたちょっと表現は悪いんですが、どこかへ行っちゃって帰ってこない、かわいそうでならない、病気がちだ、無理ないなということになるわけです。だから、無理ないなというこれを助けてやる、そうすると安心を与える。

 例えばどういうことかというと、畑が向こうの方に遠くにある、それに対して、一反歩当たりの家庭菜園の農地は確保してあげますよ、そのかわり、あっちの田んぼや畑はだれかに貸してくださいと。だから、貸してくださいということばかりを言うわけです。自分はもっとやりたいという部分を確保してくれない。そうすると、一反歩ばかりの野菜を家の近くでつくるのを確保されて、これは人の畑です、それを借りる。そのかわりに、あっちの遠くの田んぼや畑を、本当に農業をやっている人に貸すということ。貸す方のお年寄りの方を考えて、周りに全部一反歩の野菜畑をつくるというようなことをやったら、もっと進むんだろうと思います。

 これはもうお答えいただく必要はありませんけれども、こういうことを考えていただきたいということなんです。だから、人の問題です。

 次、二番目は、では、一体何をつくるのかという問題になるわけです。また調査したのをちゃんと利用していただかなくてはいけないんですが、この部分の問題になるのは、価格が低迷しているという問題があります、それが四三・四%ですか。それから、つくろうと思っても基幹作物がない、これが一八・九%。土地条件が悪いというのが二二%、基盤整備が進んでいないというのが続くわけです。つまり、規模拡大しようと思っても人がいない。だから、人がいないので、私が申し上げたように、もっといろいろな人を総動員するんだ、株式会社も動員する、市民農園で消費者も動員する、定年退職者も動員するというので、人の方はもっと柔軟に考えていただきたい。今、専業農家、主業農家、五ヘクタール、十ヘクタールの農家だけなんてけちなことは言わない、総動員してやるというのが一つです。

 次に、作物のこともやはりやらなくてはいけない。これは縦割りで、経営局とか農村振興局がやるけれども、つくる方は生産局だ、何をつくるかというのは生産局で考えろという形になっているんです、私も中にいましたから、そこそこわかるんですけれども。連動性がないわけですよ。一体何をつくるのか。せっかく集積しても、何をつくってもらおうと考えておられるんでしょうか。米は余っている、ほかのものは価格が低迷している、つくるものがなくて困っているんです。何をお考えでしょうか。

岩永副大臣 平成二年に一〇二%だった土地の利用率が、昨年度で実は九四%に減っているわけですね。それを今度一〇五%に上げていこうということの中で、今先生のおっしゃるように、では、何をつくっていくんだ、そしてどれだけの生産をきちっと上げていくんだ、こういうことなんですが、今回の見直しの中で、食料自給率の向上というのが、先生方のところでもうちでも相当検討されたわけですね。そして最終的に、四五%を確保していこう、こういうことに決めたわけでございますけれども。

 その中で、やはり御議論にあったように、反省点もたくさんありますし、では今まで何をしていたんだというような議論もあるわけでございますので、これからはやはり、きちっとした検証と、そして具体的な段階というものを、平成二十七年度までに持ち続けなきゃだめだというようなことでございますので、それぞれの品目別に努力目標というのをきちっとつくっていこうということで、主なものの、取り組むべきそれぞれの作物に対する課題というものを、実はつくり上げたわけでございます。それに沿って、きちっとした、自給率を高める、そして継続的にやっていく、こういうことでございます。

 それと、遊休地だとか耕作放棄地なんかも、実は私、先般、畜産の自給率向上のプロジェクトチームをつくりまして、座長になったわけでございますが、例えば、今粗飼料なんかでも七〇%で、あと三〇%、中国からわらを輸入しているというような状況なんですね。しかし、それだけの遊休地だとか放棄地のところに牛を連れていって、粗飼料は一〇〇%そんなのを使おう、そして、なおかつ、食べ残しだとか、コンビニだとか、ああいうところの食べ物の廃棄されたものも、もう一回濃厚飼料にすることはできないかというようなことで、かなり具体的に、つくっているものについては計画を持って臨んでいきたい、このように思っておりますので、御理解をお願いします。

篠原委員 副大臣、お答えいただきましたけれども、具体的な作物名で出てきたのは粗飼料ですね。それは飼料作物。これだけは、食料・農業・農村基本計画の中にも自給率をふやすので入っているんです。しかし、これだけで自給率も向上しませんし、畑も埋まらないんですね。

 一体、具体的にどういう作物、作物を挙げていただきたいんです。

岩永副大臣 米は当然でございますね。そして、小麦、大麦、裸麦、カンショ、バレイショ、大豆、それも、うち食用、それから野菜、果実、畜産物、生乳、それから牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、砂糖、茶、飼料作物。これは全部、平成十五年から二十七年度までにどれだけの目標を持つかというようなこと、努力目標を言いましょうか。(篠原委員「いやいや、いいです」と呼ぶ)

 言うんだったら、それぞれ、十五年から二十七年に対してどういうように努力目標を設定するか、それもきちっと今回の見直しの中に入れてありますし、それから、積極的に取り組むべき課題も、それぞれの品目に応じて、どういう課題があって、何を解消していかなきゃならぬかというようなこともきちっとあります。

 ただ、ちょっと例として、粗飼料の場合なんかは新たにプロジェクトチームをつくって、もう具体的に動いておりますので、そのことをお話し申し上げたわけです。

篠原委員 今副大臣がお答えいただいたのは、食料・農業・農村基本計画の二十七ページのところにあります生産努力目標のところを見ながらおっしゃっているのはわかりますけれども、これは、日本でつくっている作物、主な作物全部になっちゃいますね。それは全部といえば全部なんでしょうけれども、やはり中山間地域でつくりやすいものということで、我々の、民主党の農業再生プランが絶対と言っているわけじゃないんですけれども、そこで考えましたのは、つくりやすい、それで自給率が下がっているもの、小麦、大豆、飼料作物、菜種、雑穀、こういったものに重点的にやっていきましょうと。そして問題は、つくっても金の足しにもならない、安過ぎる、こんなんじゃやっていられない、やはりそういったことには農地を集積する、やってもらうと。

 やはり、多面的な機能というのが農業にありますけれども、多面的にバックアップしなければいけません。農地制度をいじくって、知事に強制的に利用権設定云々といったって、つくる人がいない。人の方はまあ解決つくとして、今申し上げました、いろいろな人を動員しろと。次に作物です。最初は初度的経費という感じで、直接支払いをしたりしてやっていくべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

岩永副大臣 私は、ともかく今回の見直しの中で、過去の反省に立ちながら、やはり自給率を高めていく、そして世界的な人口がどんどんどんどんふえていく過程の中で、本当に日本は次の世代に食料を供給できるのかどうかというようなことをやはり基本に考えながら今回の見直しをやったわけでございますので、今まで言われているばらまきだとか、それから減反だとか、休耕田をつくるとか、いろいろな反省点は率直に反省点として我々認めた上で、新たに次の対策としてどうしていくかというようなことで、今回の新たな改定をやったわけでございます。

 そういうことで、直接支払い等については、一律に対象とせざるを得ないことなどから、規模拡大など経営の発展を直接意図したものではないし、そして品質など需要に応じた生産の誘導といった機能も十分に発揮されない面がある、我が国農業に明るい展望が開けずに、耕作放棄地が増加するというようなおそれも大きいのではないか。このために、先ほど言ったような意欲と能力のある担い手を育成していこうというようなことでございまして、これにより、地域農業を将来にわたってその核として支える担い手を中心としてやっていくことが大変大事ではないかというようなことでございますので、先生のおっしゃる直接支払いについてはそういう考え方を持っております。

篠原委員 ですけれども、作物についてもちゃんとバックアップしなければ、なかなか遊休農地は埋まらないということだけは指摘しておきたいと思います。

 それから、私は、都道府県知事に裁定をさせて遊休農地をなくすという仕組み、先ほどの延長線上の話ですけれども、私的財産権を余りにも認め過ぎているという点からもともと問題だったので、それに踏み込むというのは非常にいい仕組みだと思います。

 しかし、この仕組みをぜひ導入していただきたいのが森林です。森林の方が目に見えないんです。それも放置されて、そのままになっています。そして、不在村地主が山ほどいまして、所有者もわからない。それで、山林の方はずっと冷遇されているわけですね。長期営農継続制度というのもないですから、都市近郊ではがばっと税金がかかって、それが産廃業者に渡って、所沢で産廃銀座ができたりするわけです。そういうのがあるわけです。

 ですから、いつも農地制度が先で森林は置いてきぼり。いまだもって平地林の相続の問題なんか解決していません。ですけれども、今これは、民有林でほったらかしになって、めちゃくちゃになって、がけ崩れ、先ほど木村委員もがけ崩れ云々と言っていられましたけれども、そちらでいっぱい生じているわけです。ですから、森林についてこそ、放置山林について、勧告を出してきちんと整備しなかったら、取り上げるとまでは言いません、それで管理をすると。

 これは、今小泉政権は官から民へと。これはいいことだと思います、いろいろなビジネスの世界では。しかし、環境とかこういったもの、さっき言いましたパブリックグッズです。国が金を出すべきなんです。三・九%のCO2の吸収も森林でやらなくちゃいけない。それが放置されている。それはでたらめに管理している人には勧告をして、そしてこれを地方自治体なり、もっと言えば国有林に編入したっていいんじゃないかと思います。こういうことをやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

岩永副大臣 先生、その制度はあるんですよね。だから、市町村長が要間伐森林制度という形の中で勧告できるという制度があります。特に保安林については、都道府県知事が指定をして、市町村への施業の委託などが勧告できる特定保安林制度というのも実はあるわけです。

 率直に申し上げまして、私ども、今本当に山は悲鳴を上げている、山は泣いていると思っています。だから、かつてのように、きれいに整備された山というのはほとんどなくなってきて、もうもうと雑木が、山に太陽の光線すら入れない、そのことのために災害を来す、なおかつ山の木が優良材として育たない。実は多くの課題を抱えているわけですね。そして、今おっしゃったように、三・九%のCO2の削減を山に課せられてきているというような状況の中で、我々は、じゃ、今まで山の経済性を無視した状況の中で山が放置されておって、今度は、CO2の京都議定書の要請があるので林家にそれを持て、そして、少なくても二〇%、山を整備しようと思うと林家が持たなきゃならぬ、こういうふうな状況の中で、本当に日本の山はこれから森ができるのかどうか。

 私は、そういうものをもう一度再点検すべきではないかというようなことを実は考えており、今回、環境税の問題が議論されている、そして、山を本当に三・九%の分を吸収していこうと思うと年間二千億、今の金に上積みして必要となってくるというようなことを考えると、本当にその予算措置ができるのか等々、我々は、国に対して、政府に対して予算の面だとか環境税の面で要請していかなきゃならない点が大変大きなものがある、このように思って、農林水産省、大臣以下、皆一致団結して頑張っているところでございます。

 ただ一つだけ、特別交付税で地方財政措置というのが年間二十億つくられたわけですね。これは、林家が持つ分を市町村と契約したら、それで林家の分を補っていけるという制度を実は我々はつくっていただきましたので、この交付税をどんとふやしながら林家の分を自治体が持っていく、国が持っていくというような形で山を守っていく一つのきっかけにしたい、このように思っているところです。

篠原委員 今お答えいただきましたけれども、要するに、農業委員会の指導と同じように、余りワークしていないんです、新農政も。大臣、ですから、もう一回考え直して、どこが問題かというのでやっていただきたい。それから、森林についてはもっと、今環境税の話がありましたけれども、環境税をここにぶち込んだっていいわけですよ。そうやって森林を守っていただきたいというふうに思います。

 それから、最後に大臣に、今まで申し上げてまいりましたけれども、大臣の標語、最近の農政の標語、守りの農政から攻めの農政、これは昭和四十九年、安倍晋太郎農林水産大臣のときにこういう標語があったわけです。ですけれども、なかなか守り切れなかった。攻めていかなくちゃならない、そういうことはわかるんですけれども、余り攻めの要素が見当たらないんですが、大臣の御所見を最後に、攻め、どういう部分を具体的にお考えになっているかということをお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

島村国務大臣 御質問でございますが、従前の農政は、御承知のように、輸入農産物からいかに国内農業を保護するかとか、あるいはまた、どのように輸入を抑制するかといった守りにむしろ重点の置かれた農政であったように思います。しかし、今後の農政の展開に当たっては、やはり創意工夫に満ちた意欲的な、いわば新たな動きを積極的に受けとめて、こうした取り組みを積極的に後押しする攻めの農政にする必要があるんだろうと思います。

 近年、構造改革の立ちおくれ、グローバル化の進展といった内外の大きな情勢変化に対応するために、我々は今その取り組みをしようとしているところですが、具体的には、単に輸出促進を図るというだけでなくて、やる気と能力のある農業経営者への支援の集中化、重点化とか、あるいは農業外からの新規参入、バイオマスなど地域資源の積極的活用等々、生産者や地域の創意工夫に基づく意欲的な取り組みを後押ししようとする考え方に立っております。

 こうした攻めの農政を展開することは、生産性の高い農業経営による農地の有効活用や、食の安全、安心の確保、消費者や食品産業のニーズに対応した農産物の供給にもつながるわけでありまして、我々は、それら全体をとらえて、食料の自給率も含めて新しい農政への取り組みをしたい、こう考えているところであります。

篠原委員 どうもありがとうございました。

山岡委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 民主党の仲野博子でございます。

 農地関連法案にかかわって何点か質問させていただきたいと思います。

 今、我が国は、平らな土地が極めて少ない中で、農地面積自体も国土の約一割強でありますが、また、都市部に人口の八割が集中し、一方で、国土面積の七割近くを占める中山間地域に農地と農家の四割が分散をしております。この人口の密集化と過疎化の問題は、高度経済成長期には労働力の移動という形で加速化し、低成長期にある現在も若年人口の都市への流出という形で進んでおります。

 私は一九五九年生まれでありますが、そのころと現在の数字を比較して驚いたのでありますが、農業従事者の数で四分の一、農家戸数が半分に激減をし、食料自給率も同様に半分となっているわけであります。本委員会に農地関連法案が付託されましたが、農地問題は、単にどう土地を利用するのかという土地利用の問題ではなくて、さまざまな地域社会やあるいは自然環境の問題、そして食料の安全保障など、多角的な視点から検討していかなければならないという課題だと思います。

 私の地元は大規模な酪農専業地帯でありますが、後継者問題や少子高齢化問題など大変深刻であり、この先十年、二十年後、果たして自分たちの住む地域が、もうその地域自体がもつのだろうかという不安の声も聞かれているわけでございます。生産者や地域の自治体の皆さんの声を代弁させていただく気持ちでこれより質問をさせていただきたいと思いますので、限りある時間でありますが、御答弁をよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 初めに、新たな食料・農業・農村基本計画と本案との関係について質問いたします。

 先月二十五日に、新たな食料・農業・農村基本計画が閣議決定をされ、本国会に提出されました。この新たな基本計画の策定に当たっては、経営安定対策、担い手、農地制度の改革、農業環境、資源保全施策、いわゆる旧計画からの宿題でもあった主要三課題について多くの時間をかけて議論されたと聞いております。

 基本的な問題としてお伺いいたしますが、今回の法案は、この新たな基本計画においてどのような位置づけ、ウエートを占めているのか、簡潔に大臣にお答えをいただきたいと思います。

島村国務大臣 現在、担い手の育成確保などを通じて、国内農業の食料供給力の重要な基盤となっております農地の有効利用を促進するべく努力をしているところであります。

 この課題に対応するために、今般の基本計画の見直しにおきましては、農地制度に関し、担い手への農地の利用集積の促進、耕作放棄地の発生防止、解消のための措置の強化、あるいは農地の効率的利用のための新規参入の促進、さらには優良農地の確保のための計画的な土地利用の推進等々、総合的かつ計画的にこの施策を講ずることとしているところであります。

 このため、今回の法改正で、農地保有合理化事業の拡充などによる担い手への農地の利用集積の加速化、リース特区の全国展開、あるいは体系的耕作放棄地対策の整備など、新たな基本計画に示された内容を具体化するための措置を講ずることとしたところであります。

仲野委員 それぞれ今出された新たな施策を具体的に進めていくというお答えでありましたけれども、しかし、大臣、主要三課題のうちのこの経営安定対策の部分に係る関連施策については、平成十九年度に向けての検討を進めているとお聞きいたしております。今後、検討されるこの経営安定対策において新たに求められる農地制度の改革というものもあるのではないかと思いますが、考え方を経営局長にお尋ねをいたします。

須賀田政府参考人 経営安定対策のねらいは、従来、すべての農業者を対象にして講じてまいりました価格、所得対策を、将来、効率的、安定的な農業経営を目指す担い手に絞りまして、その担い手に農地等の資源が集積するようにする、これがねらいでございます。我々は、この経営安定対策の担い手を、認定農業者とそれから経営主体としての実態を有する集落営農というものを中心に考えていくということにしたわけでございます。

 そして、今般の、制度改正の御議論をお願いをしている経営基盤強化促進法等におきまして、この集落営農というものを組織化していく方途、それから認定農業者に農地を集積していく方途、それからそれに付随をいたしまして、耕作放棄地というものも有効利用をしようじゃないかという方途、こういうものを盛り込みましてお出しをしているわけでございまして、経営安定対策との関係は、そのように密接不可分なものというふうに理解をしております。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

仲野委員 今の局長のお答えを聞いていますと、どうされていくのかという、平成十九年度にこの制度の運用開始になるわけでありますけれども、これは大変大事な問題であると思います。

 私が求めたかったのは、農地は農地、経営は経営ということではなくて、もっと総合的、多角的な視点から検討がされた中で、これから必要な農地制度改革を進めてもらいたい。それには、現場の声だとかがどう組み込まれていこうとするのか、その作業をどうしていくのか、そのタイムスケジュールをもっと具体的にお尋ねしてまいりたいと思います。

須賀田政府参考人 経営安定対策、十九年産から導入をしていくということでございまして、基本計画においては、抽象的に認定農業者あるいは集落営農を基本として、その要件をこれから具体化していくということをお書きしているわけでございます。そして、地域の実情を十分勘案して要件は決めろということもまた書いているわけでございます。

 現在、農業団体と私どもで、地域の実態を踏まえた担い手の育成確保運動、全国運動でございます、北海道でも説明会を開きますけれども、そういう全国運動を展開しているわけでございまして、こうした場を通じて農業の現場の声をお聞きいたしまして、夏過ぎから再び議論を再開いたしまして、ことしの秋には、できる限り具体化した、仕組みでございますとか対象者の要件でございますとかを決めたい、そして、明年には、関連する制度をまとめまして国会にお出しをしたいというふうに考えているところでございます。

仲野委員 なぜ私がここで主要三課題の経営安定対策にかかわってお尋ねをしたかと申しますと、今回、食料・農業・農村基本計画が見直しをされて、事務方が夜を徹して、本当に御努力いただいて策定をされたと思います。これができたときに、ざっと読ませていただいたときに、本来でありますと、この農業経営基盤強化にかかわって、これからの日本の農業の将来のあり方をどうやっていくんだろうかということであると思うんです。

 農業にもさまざまありまして、水田、畑作、あるいは果樹の問題、こう見たときに、私が北海道だからというのではなくて、酪農業、畜産、そこに余りウエートが置かれていないような、ちょっと寂しいような、本当にその活字が五、六行しかない、しかも本当に一事。これは、酪農をやっている方たちに余りにも不親切ではないのかなということを申し上げたかったのであります。

 ちょっとこれを指摘させていただいて、これからきちんと、北海道、酪農は九州もあります、本当にやっていただかなければだめではないのかなということを指摘をさせていただいて、局長、御答弁ありますか。

須賀田政府参考人 先生御指摘の酪農につきましては、品目横断ではなくて、品目別対策の見直しのところに、畜産等における品目別対策についても、「これまでの施策の目的と効果を踏まえ、対象経営を明確化し、経営の安定性を向上させることを基本に速やかに見直しを行う。」というふうに、品目横断対策と同じようにお書きをしております。

仲野委員 速やかに行うということですので、速やかに対応していただきたい、そのように思うわけであります。

 時間もなくなってきましたので、次の質問に入らせていただきますが、次は、農地の有する多面的機能について伺ってまいりたいと思います。

 農地は、農業生産やあるいは農業経営に必要不可欠な資本であり、一たん壊廃すると再生まで多大な時間とお金がかかります。また、農地は食料の供給だけではなくて、国土の保全、良好な景観の保全、水源の涵養、自然環境の保全、文化の伝承など、まさに多面的機能がそこにあるわけであります。

 これらの多面的機能は、それぞれの地域で農業生産活動が持続的に行われることによって発揮されるものであり、市場において金銭的に評価されるものではないと私は思います。そして、その効用は、直接的な計測が困難な種類の効果、すなわち外部経済効果として、国民のだれもが直接の対価を支払うことなくそれを享受できるという公共財的な性格を有しているわけであります。したがって、農業政策が他の産業の政策と一線を画するのは、まさにこの多面的機能の発揮によるものだと私は思っております。

 そこで、質問いたします。農地の有効で適正な利用を通じて発揮されるこの農地の多面的機能について、大臣の基本的な認識、考え方をお聞かせいただきたいと思います。

島村国務大臣 ただいま農業が持つ多面的機能について委員からもお触れがございました。しかし、私はそのほかにもいろいろな機能を果たしていると思うんです。

 基本的には、まず、農業しか営めない地域というのはやはりあるわけですよね。飛行機で飛んで下を見ますと、山また山でどうしようもないところでも、山間地域をうまく利用して農業を営んでいる人たちもいないではない。こうして皆さんがいろいろな苦労をしながら、専業、兼業を問わず、農業を営んでいただいて、そこに人が住んでいるということは、この国のためには大変重要な意味合いを持っている、私はいつもそう思っているんです。

 それは、当然にその地域における社会資本の維持にもつながりますし、住んでいない家というのは傷みが早いと言いますが、やはり人が住んで、そこに定着していただいていること自体が、地域を守るために非常に大きな意味合いがあるんだろう、私はそんなふうに考えています。

 そういう意味から、農業が持つ多面的機能というのは、単に食料生産だけの目的でなくて、極めて重要であるし、特に我が国のような特異性を持つ国においては不可欠のものだと言えると私は思っています。

 そういう中で、我々は、農業がそれぞれの地域で定着して頑張っていただけるための環境づくり、これに努めなきゃいけないわけでありますが、そういう意味では、意欲と能力のある担い手の育成確保、あるいは農地の利用集積の促進など、強靱な農業構造を確立していく必要があるんだろうと思います。また、農地や農業用水などの資源の保全管理も必要でありますし、中山間地域における直接支払い制度、あるいは都市と農村の交流による地域の活性化など、いろいろな施策を講じているところでありますが、引き続き、これらの取り組みを通じて、農業の多面的機能の一層の発揮に努めてまいりたいと思いますし、農業者にも自分たちが担っている役割がいかに国家のために不可欠のものであるかということをよく知っていただいて、自信と誇りを持ち続けていただきたい、こんなふうに思っているところです。

仲野委員 大臣も多面的機能の発揮の重要性については十分認識をされているとお答えいただきました。

 本当に、里山では、川の上流域としての水の供給や、希少生物や渡り鳥などの生息や中継地として、生産農地が日々その役割を果たしております。これらの農地の多面的機能の発揮の重要性に応じた法的な位置づけについて、やはりきちんと改めて検討をしていただかなければならないのではないかな、強くこのことを要請しておきたいと思います。

 次に、高齢農業者あるいは中高年離職就農者の位置づけとその支援策について伺ってまいりたいと思います。

 先ほど来、高齢者における農業者のさまざまな支援施策ということで質疑があったわけでありますが、最近、四十歳以上の離職就農者が大幅に増加をしておりまして、平成十五年度では六万八千三百人、そして定年帰農の動きも注目をされ、先ほど篠原委員からも指摘をされていたところでありますが。六十五歳以上の離職就農者は二万一千八百人と、新規就農青年の一・八倍に上っているというデータも、これは明らかであります。一つには、こうした離職就農者を、人材の育成確保という面から明確に位置づけを行い、きめ細かな支援策を立てていく必要があるというのではないのかなと思っております。

 そういったことで、このことに対して、経営局長からの御答弁を求めたいと思います。

須賀田政府参考人 最近、離職就農される方、あるいは御高齢になってもお元気に農業にいそしむ方、おられまして、私ども、いろいろな面で活用をしていきたいというふうに考えております。特に、他産業でいろいろな経験をされた方、経理だとか、そういう方は、例えば集落営農等を行う場合でありましても非常に貴重な人材というふうに考えております。

 具体的に、今我々の傘下にあります普及の方で、例えば大分県の豊後高田市、これは定年帰農者を対象とした園芸講座というのを年四回開催をするというような形で支援をしております。そして、高齢者の場合は、具体的に滋賀県に、集落営農経営で、水口町に酒人ふぁ〜む、これは農事組合法人になっていますけれども、ございまして、そこでちゃんと高齢者グループを三つに分けまして、五十六歳から六十四歳までの、高齢者と言うのはお気の毒なぐらいお元気な方々でございますけれども、なごやかグループということで、これは補助的農作業にしっかり取り組んでいただく。それから、六十四歳より上、八十歳ぐらいまでは、すこやかグループということで、水管理とか雑草だとか畦畔の管理に取り組んでいただく。さらに、八十歳以上の方は、やすらぎグループということで、これは雑草取りのほか、仕事はおしゃべりという、生きがいのためのグループとしてちゃんと集落営農の中に位置づける。

 こういうような取り組みも具体的にございまして、そういうことを参考にしながら、全国の高齢者の方あるいは離職就農者の方にお元気に営農に取り組んでいただくことを考えていきたいというふうに思っております。

仲野委員 ただいま大分県、滋賀県の例を出されてお話しされましたけれども、いずれにいたしましても、本当に今高齢者の方たちが元気で地域で生活をしている、その方たちに対して本当に生きがいを持たせて、つくる喜び、育てる喜びを与えながら、やはり自分たちの育てたものが多くの消費者に食べていただけるような、そういったところまで持っていけるような、やはり高齢者の方たちに対する農業の支援施策をはっきりと制度の中で位置づけをしていく。

 では、そのときに、国として一体どういったことを具体的に支援をしていくのかとか、ただ口は出してもお金は出さないというんじゃなくて、やはり最後は都道府県、市町村にその裁量云々ということがよくこの委員会等でも言われるのでありますが、やはり日本全体の福祉というものを考えたときに、そういった高齢者福祉をその中でどう展開していくのかということも、農地制度の中で私はやはり非常に大事なことでないのかなということを強く申し上げておきたいと思っております。

 時間もなくなってまいりましたので、また次の質問に入るのでありますが、関連して、主業農家が大半を占める北海道において後継者不足が大変深刻な問題であり、農家が離農する理由のトップが後継者問題であるとも言われております。法案による措置は、後継者、人材が育成確保されることによって初めて実効あるものとなっているわけであります。青年後継者の育成と確保のための政策の展開について、局長の見解を求めたいと思います。

須賀田政府参考人 私ども、平成二十七年を目標年次とする「農業構造の展望」というのをつくっております。この前提が、毎年毎年三十九歳以下の新規就農者が一万二千人程度入るということが前提になっております。私ども、そのために、例えば新規学卒就農者用には道府県に農業大学校あるいは先進農家で研修をしていただく、親の経営から独立したい場合には無利子資金を融通する、その他、普及組織等が就農相談等に応ずる、こういう多様なルートで支援をしていくということとしているところでございます。

仲野委員 私、先般、ある三十歳の新規就農されている酪農の青年の方とちょっとお話をさせていただいたんですが、話を聞く中で、もう本当に北海道の酪農業を守り育てていきたいんだと。お話を聞いておりますと、本当にまじめで、農業に従事するに当たっても大変意欲のあるということをすごく感心をいたしました。

 そこで、このようなことをちょっとお話をされていたんですが、新規就農に対して、今局長からそれなりの資金を融通するとかと言われたんですが、例えばJAによって、力があるJAでありますとそれなりの資金面での融通あるいはいろいろな制度があると言っていたんですが、なかなか力のないところではそのことがままならない。

 いずれにいたしましても、新規で参入をしてやるということは、もう一からの出発であります。そういったことでは、本当にそれを軌道に乗せていくまでは相当な経費がかかっていくわけであります。今後、そういった意欲のある農業を目指している方たちには、将来にわたって夢と希望の持てる、そういった農業経営ができるような支援策を本当にもっともっとこれから具体的に、だから、よくこの委員会等で言われることは、現場の声を聞く、あるいはきちんと生産者の声を聞いていくだとか、そういったことを指摘されるのはやはりそういったことだと思うんですね。そういった方もいるということを、ぜひこの機会に大臣を初め多くの皆さんに理解をしていただきたいと思っているわけであります。

 本当に、そうした意味では、この後継者対策については今大変重要な問題、課題になっているわけでありますので、しっかりとそういったことを考えていただきながら、本当にこの制度を実効あるものとしていくために、やはりきちんとその意を酌んでいただきたいなと思っております。

 局長、いかがでしょうか。

須賀田政府参考人 農業経営というものを考えました場合に、まず新規に就農をされる、なれていかれまして認定農家になる、そうしてさらに発展をしていきまして、他産業並みの所得を上げるような効率的、安定的な農業経営になる、そういうふうに段階的に発展をしていくわけでございます。

 新規就農に際して必要な相談でございますとかあるいは研修でございますとか、こういうものはもろもろの補助事業、あるいは、当人に対しては就農支援資金の貸し付けといったようなもので支援をいたしますし、それが発展をいたしまして認定農家になりましたら、スーパーLでございますとかあるいは経営構造対策といった補助事業の受益者になるでございますとかをして、さらに発展をしていって、経営安定対策といったものを講じまして効率的、安定的農業経営になるというふうに、段階に応じて、ステージに応じて、もろもろの施策を用意させていただきたいというふうに思っております。

仲野委員 次に、農地制度の特例措置について伺っていきたいんですが、この農地法の特例を直ちに全国で実施することに懸念がある生産者もおられるのは事実でありますが、構造改革特区の仕組みを活用して、特区で弊害が生じなければ全国展開をするという手法もあります。また、すべて全国一律を目指す必要があるのかどうか、地域の実情に応じて柔軟な特例措置を講ずることも検討してよいのではないかと思いますが、局長の見解を求めたいと思います。

須賀田政府参考人 リース特区制度、私どもが最初懸念をしておりましたのは、地域に企業が入っていきますと土地とか水利用に混乱を生じるのではないか、あるいは、もうからないと言って途中で営農を中止して、また耕作放棄地が大きく生ずるのではないか、それから、現実に担い手用の土地をとってしまうんじゃないか、こういう混乱が生ずるのではないかというふうに思っておりましたけれども、そういう弊害もないということでございましたので、今般、私どもの経営基盤強化法の中にその仕組みを取り込みまして、市町村が主体的に基本構想をつくり、参入区域を決めて対応していくというシステムにしたいというわけでございます。

 まだ発足して二年でございますので、確かに参入企業の農業経営というのは安定しておりません。さらに少しく状況を見る必要があろうかと思います。

 そして、先生おっしゃいますように、地域によって事情は違います。北海道と都府県では違います。そういうことがありまして、要はこれは運用の問題でございますので、この制度を受けとめる市町村長さんがその地域の実情に応じた運用をしていただければ、その地域に即した特例措置の活用といったような効果が自然に生まれてくるのではないかというふうに考えております。

仲野委員 市町村が主体的にということで、今、北海道と都府県に、その構造に大きな違いがあると言われたのでありますが、本当に大きく違いがあるんですね。これは、農業所得が主で、六十五歳未満の農業専従者がいる主業農家は、都府県の二四・三%を大幅に上回る七三%であり、また、農家経済が農業所得に依存している割合、いわゆる農業依存度は、都府県一七・一%を大幅に上回る七〇・六%になっております。北海道においてこの農地法の特例を大幅に認めるといった思い切った規制改革についても、今後検討すべきではないのかなと思うわけであります。

 政府として、今、道州制特区の検討をされておりますので、道庁やあるいは道内の関係機関からの意見も参考にされて、ぜひこのことについて検討をお願いしたいと思いますが、局長、御所見を求めます。

須賀田政府参考人 私どもが聞いております北海道の農業でございます。これは、大規模経営が広範に育っている、我が国でも一大食料基地ということでございまして、今後とも農業主体の基地として機能をしていただきたいというふうに思っております。

 その中で、特徴としては、先生もおっしゃられましたように、専業的経営がほとんど、他産業への就業機会が乏しい。それから、農地の価格が低廉。これは、私どもがいただいている資料によりますと、十アール、田で三十万円、畑で十五万円弱ということで、たしか都府県は田が百六十万円以上、畑でも百十万円以上だと思いまして、都府県に比べますと非常に価格水準が低い。それから、集落意識とか家産という家の意識が希薄でありまして、農地の貸し借りとか売買が純粋経済的観点から行われるという、農業にとっては非常に好ましい特徴があるというふうに思っております。

 ただ、一方で、離農となりますと、集落に定住しながらの離農ではなくて離村してしまうという、こういう問題も生じておりまして、先生言われておりますのは、恐らく、離農、離村した跡地の受け手が見当たらないので、だれでもいいから農業に参入してほしいということだろうと思います。実際に北海道からそのような希望を聞いておりまして、まさに今回、先ほど申し上げました特区制度の全国展開ということで、市町村が参入区域を設定すれば企業の参入が可能となるという制度を今度設けましたので、それを活用していただければというふうに思っているわけでございます。

仲野委員 今、北海道を食料基地として位置づけていくという局長からのお話をいただきました。それにかかわって、また次にこういった機会があったときに、そのところをもっと詳しく質疑をさせていただきたいと思いますが、最後に、食料の備蓄、安全保障、自給率という観点から、国内の農地を確保する必要があると思います。今政府が目的としている農地面積の目標を大臣にお聞かせいただきたいと思います。

島村国務大臣 食料自給率の向上や農業の多面的機能の発揮のためには、農業生産の重要な基礎となっております農地の確保が重要であります。

 このため、新たな基本計画におきましては、これまでの趨勢を踏まえ、また、耕作放棄の抑制などの施策効果を織り込んで、平成二十七年の農地面積について四百五十万ヘクタールと見込むとともに、その確保と有効利用を促進するための措置を講ずることとしております。

仲野委員 平成二十二年度に四百七十万ヘクタールとしていたものを二十七年度には見込みで四百五十万ヘクタールと、二十万ヘクタールも下回る見込みを設定しております。

 私はやはり、先ほどもお話をいたしましたけれども、農地の多面的機能の発揮の重要性を改めて御認識いただいて、この多面的機能の評価額が六兆八千八百億円で、これは農業の純生産額の五兆二千百億円を上回るといっております。そういった意味では、ヨーロッパ、EUでは徐々に自給率を上げてきている。逆に日本は下がっているわけであります。こういったできる限りの食料自給率の向上が大切になっており、そのためにも農地面積の確保は重要課題だと思っております。

 今回の法案も、耕作放棄地を抑制し、担い手を中心に優良農地をどう確保するかということがその趣旨であったはずだと思います。また、農地面積が、単なる見込みではなくて、自給率同様に目標にすべきと考えますが、最後に大臣からお答えを聞いて終わりたいと思います。

島村国務大臣 おっしゃることはごもっともだと思います。

 私どもも同様に考えますが、御承知のように、我が国は急速に高齢化が進んでおりまして、農業の担い手が減少傾向にあるということが一つありますし、もともと、いわゆる農地面積の四二%が中山間地域、先ほど冒頭御指摘になったように、平たんな農地であればなと、だれしもそう思うんですが、農業を行う上においてはある意味では不向き、ある意味では非常に難渋な自然条件の中に農地が展開されているわけでありますから、高齢化と相まって農業の担い手が大きく減少していくことも、また農地面積が減少することも、これはある意味では自然の成り行きといいましょうか、あります。

 しかし、それで我々はあきらめてしまうわけにはいかないわけでございますので、耕作放棄地が拡大しないように、そしてまた、農業に対してどうしても担い手が、後継者がいないというような場合には、株式会社その他の本当に意欲のあるところに振り向ける等々、あらゆる角度から農地の確保に努めていくところでありますが、現実の問題として四百七十万ヘクタールが四百五十万ヘクタールになったということは、ある意味では今までの経過上やむを得なかった、こう思っております。

仲野委員 時間になりましたので、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

西川(京)委員長代理 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 リース特区の全国展開について中心的に伺いたいと思います。

 平成十六年十月一日の調査で、営農を開始した法人が六十八あるということでございます。食育ですとか、環境ですとか、地産地消ですとか、さまざまな目的、計画を自治体が持って始めたわけでありますけれども、まず最初に、この特区において自治体独自の支援策をやったのがどのくらいあって、その支援策にはどのようなものがあったのか、伺いたいと思います。

須賀田政府参考人 リース特区、昨年の十月で三十五特区、六十八法人の企業が参入をしております。私どもが調べたところによりますと、この参入法人に対しまして、十三の特区で、施策数にいたしまして二十一施策の都道府県単独あるいは市町村単独の支援策が活用をされております。

 その内訳、いろいろでございますけれども、機械施設の整備に対する助成というのが最も多うございます。それから、遊休農地の復旧に要する経費の助成、あるいは鳥獣害防止施設、種子とか苗代の助成、こういうものが行われておるわけでございます。

 これは、内容は、特区の参入法人に限定したという支援ではなくて、既存の農業振興のための支援策を活用したものになっているようでございます。

高橋委員 限定したというものではないという今の説明でございましたけれども、それはさまざまあるかと思うんですね。自治体の振興策、例えば雇用対策とか、そういうものの中で位置づけたとか、あるかと思うんですけれども、そういうものもきちんとまず見る必要があるだろう、どのようになっているのか。

 なぜそう言うのかといいますと、この自治体の支援策については、私が資料を求めた時点では一切農水省として把握をしておりませんでしたので、それから今こうした数字が出てきましたので、そのことをまず指摘をしておきたいと思います、次につながる問題でありますので。

 それで、骨太の方針のこともありまして、評価のための委員会で特段の問題が生じていないと判断されたものについては速やかに全国規模の展開をするんだということで、一年でリース特区の全国展開ということが今方針として出されたわけであります。

 ただ、昨日の参考人の質疑の中でも、土地の開墾から始めて、実際にそれを収支が出るようなところまで持っていくのには五年でも厳しいということがあったり、また、一年で評価をするというのは非常に難しいのではないかという率直な指摘があったと思うんですね。

 やはり、そうしたことを踏まえれば、わずか一年で評価するには早計過ぎるのではないかということが一つと、実際、評価に足る結果が出ているのか、このことを伺いたいと思います。

須賀田政府参考人 私どもの調査によりますと、六十八法人が参入していると申し上げましたけれども、このうち農作物の収穫を行いましたのは四十二法人でございます。その四十二法人も、経営的にちゃんと成り立っているのかといいますと、なかなかそこは難しいところでございます。ただ、このリース特区の参入法人、弊害があったかといいますと、そういう現場での混乱等はありませんでした。

 それから、地元の市町村の評価としてどうかといいますと、先ほど先生言われましたけれども、雇用の機会がふえたとか、あるいは耕作放棄地の解消とか発生防止が行われたとか、あるいはNPO法人が来ていただいて都市農村交流を図られたとか、いわゆるプラスの評価がございました。

 ただ、そういうことで、今般、我々の法律、経営基盤強化促進法の中に取り込んだ、これを全国展開というふうに称していますけれども、現行の仕組みと同じようなものを取り込みまして、そして、いま少しその状況を見たいというふうなことで今回法案にお出しをしているわけでございます。

 やはり、私ども気になりますのは、この制度が、耕作放棄地の解消策のための緊急措置である、それから、市町村と協定を締結して適正な耕作の担保がなされているんだということ、そこが適正に働くかどうか、すなわち、農業経営としてうまく軌道に乗るかどうかをいま少し見る必要があるというふうに、正直思っているところでございます。

高橋委員 弊害がありませんでしたと断定なさったのも、なさるほどではないかなとは思いますけれども。

 まず、雇用や遊休農地、雇用が一定ふえたとか遊休農地が解消されたというのは当然なわけですよね、初動なわけですから。始まって全く雇用がなかったなどということがあってはならないわけですから、それは、初動では当然そういう評価が出てくるだろうと。

 ただ、それは逆に言うと、五年間で遊休農地を幾ら幾ら解消しますというふうな計画がございます。それは五年見ないとやはりわかりませんよね。あるいは、規制がきちっと働くだろうか、協定を結んだけれどもちゃんと成るだろうかとか。産廃をまさか一年目でいきなりつくるところはないでしょうし、そうした意味では、弊害というのはなかなかそれは今一年で見ることはできないだろうと。

 ですから、局長も今、一定見る必要があるとおっしゃったと思いますけれども、しかし、全国展開はもう進めるということですよね。その点、いかがですか。

須賀田政府参考人 このリース特区制度の農地制度の中における位置づけをちょっと考えていただきたいわけでございます。

 私ども、農地制度の基本は、やはり、きちんと農業経営をするんだということをチェックいたしまして、それなりの人に入っていただく、そして農地の転用は原則として禁止するんだ、こういうことで農地制度の根幹ができているわけでございます。

 それがうまく機能しておれば、こういうリース特区制度とか、そういう話も出てこないわけでございますけれども、そういう基本的な考え方で進んだあげく、耕作放棄地というものが出てきましたので、この耕作放棄地というのを解消するためには余りきれいごとは言っておれないということで、緊急の措置として、協定による条件といういわば逆櫓をつけながら農業生産法人以外の企業の参入を認めていく、こういう位置づけなわけです。そうすると、弊害がなければその目的は達成しているのではないかと。ただ、プラスの面で見る、農業経営がうまくいっているかどうかというのはまだわかりせん、その評価は。

 そういうことで、一回そのままの仕組みを経営基盤強化の中に移して、農業団体の意見も聞くようにいたしますし、担い手へ集積するか企業へ集積するかもちゃんと市町村段階で調整するようにして、いま少し様子を見たい、こういうことでございます。

高橋委員 今、きちんと、農業とかあるいは転用は禁止だとか、農地制度の根本をしっかり守るということをおっしゃったなと思ったら、それがうまくいっていないからリース特区を推す、全国展開とおっしゃったので、逆に言うと、この全国展開が失敗したときは戻るところがあるのかなと大変不安を感じました。それは指摘にしておきます。

 そこで、時間がないので一言で答えていただきたいんですけれども、耕作放棄地やあるいは耕作放棄地になりそうな農地等が相当程度存在する地域を市町村が参入区域として設定するわけですが、その範囲ですね。参入区域には限度がありませんね、いわゆる市町村丸ごととか県の大部分とか。今合併も進んでおりますが、そういうことになりますね。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

須賀田政府参考人 区域のとり方は市町村にお任せをするということでございます。

 といいますのは、受け手がいるかどうかというのは地域によって違うわけです。その社会的条件でございます。耕作放棄地がどの程度あるかというのもまた地域によって違うわけでございますけれども、その市町村長さんが判断をして、受け手がいないなというときには耕作放棄地面積が少なくても結構広く参入区域をとってもいいと。一方で、そういう参入区域をとるときには農業団体の意見も聞くわけでございますので、その調整のシステムもできているということでございます。

 そういうことで、市町村長さんの裁量にお任せしてもいいだろうということでここの制度をつくったわけでございます。

高橋委員 いろいろ言うけれども、範囲には限度がないということだと思うんですね。今の特区もかなり市町村をまたいでいたりしまして、半島全体が特区になっているじゃないかとか、そうなっているわけですけれども、突き詰めていくと、日本全国ほとんどのところが参入可能ということもこれあり、あくまでも市町村長が判断した場合ですよ、そういうことなんだろうなということが整理をされたと思います。

 その上で、確認をしたいと思うんですけれども、さっき、十三特区、二十一の施策に対して自治体が支援をしているというお話があったんですけれども、自治体には目的がございますので、雇用だとか地域振興だとか、それに結びつけているということで、例えば、ここではホウレンソウなんだとか、ここではシイタケなんだとか、そういう作物をつくるところにお金を出しているわけですよね、施設の補助金だとか。そうやって限定している、特区にテーマを決めている、そのことが特区の魅力でもあり、そこに参入した企業のPRにもなるだろうということは一つ言えると思うんですね。

 ただ、やはり企業の立場からいうと、その他の規制緩和はそのままだ、土地をリースできるというそのことだけで全国展開という点では、全国展開になっちゃったときには余り魅力はないのではないかと。つまり、その先を企業は望んでいるだろうということ。それをどう見るかということと、逆に言うと、自治体にとっては、今は範囲がないんだと。そうしたら、今全国にある売れ残りの工業団地のように、遊休農地をみずからがならし、そしてたくさんの特典をつけて企業誘致をせざるを得ないということに追い込まれざるを得ないこともこれありと。一言でお願いします。

須賀田政府参考人 余り悪意の目で見てほしくないんですけれども、行って見ていただいたらわかると思いますけれども、ああ、これならほかの企業が参入してもしようがないなという地区でやはり行われております。農業のリース特区に限っては手続は簡素化するわけでございますので、その意味で参入企業のプラスにもなるというふうに思っております。

高橋委員 大臣に最後に伺いたいと思うんです。

 まだ言い尽くせないことがあるんですけれども、これはやはり通過点だろうと。農地法の根本に触れるということではないのかなと思うんですね。やはり、戦後の農地改革の成果として農地を解放した、そのことを生かして、生産者を守ると同時に、耕作する者だけが土地を持てる、そしてそのことによって生産力をしっかりと維持するんだ、それが国民の食料を賄うことになるんだという耕作者主義、このことを変えるつもりはないということで大臣の決意を伺いたいと思うんですが。

島村国務大臣 農業は、通常、土地から得られる利益が他産業に比べ小さいために、耕作に従事する者が農地に関する権利を取得して、そこから得られる利益を享受する形態が、農業を営むのに最もふさわしいものと私どもは考えております。

 具体的には、農地法第三条で、農地の権利取得に際しては、農地のすべてを耕作すること、必要な農作業に常時従事すること、農地を効率的に耕作することができることなどを条件としており、これを耕作者主義と呼んでおります。

 このように、農地は、これをきちんと農業の用に供し得る者が取得すべきであるとの考えは、これからも踏襲していく考えであります。

高橋委員 終わります。ありがとうございました。

山岡委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本です。

 まず最初に、BSEの問題についてお伺いをします。

 昨日の新聞の夕刊でありますが、アメリカ農務省の元食肉検査官、この方が、カナダ下院の公聴会での証言で、アメリカの農務省が米国内で新たなBSEの牛を見つけながら秘匿していることを九九・九%確信しているというふうに証言をしたということが報道されておりますが、この件についてどのように政府として認識、把握しているのか、あるいは今後の対応についてどうなさろうとしているのか、お伺いします。

中川政府参考人 アメリカ農務省の元食肉検査官が、四月の十二日にカナダ議会で、米国のBSE問題に関連し、発言したことは承知をいたしておりまして、現在、その発言内容を含めました事実関係につきまして、カナダ及び米国側に照会をいたしております。

 ただ、私ども、現時点で得ている情報によりますと、この元検査官が証言した発言の内容は、米国にBSE感染牛が存在すると九九・九%確信をしているという発言内容であったというふうに承知をしております。

山本(喜)委員 ただ、カナダの下院での発言ですから、極めて重い内容だとは思うんです。

 アメリカの農務省の方から、七月までには解禁されるだろうというふうなお話も盛んにマスコミでなされておりますが、大臣はこの間、十二日の記者会見の中で、私たちが七月とかまでになんとか、そういう内々のお話とか、そういうものは一切ありません、一国の事情をこちらに持ち込まれることは一切受け入れられないということをきちんと申し上げておりますというふうに記者会見しておりましたが、その点についての確認をもう一度しておきたいと思います。

島村国務大臣 前回御答弁申し上げたとおりで、変化はありません。

山本(喜)委員 次に、この法案について質問をさせていただきます。

 この農業経営基盤強化促進法等の一部改正案でございますが、これは、今後の日本の農業の歩みにとって非常に大きな意味を持ってくる、とりわけ農業分野における土地所有の位置づけ、あるいは農業の多面的機能の維持発展を図る施策と、企業の農地所有あるいは企業の農業参入ということからすれば、かなり大きな論点を含んでいるんじゃないかというふうに思います。

 そこでまず大臣に、農地耕作者主義というものの今日的意義について、改めて確認をしておきたいと思います。

島村国務大臣 農地法第一条は、耕作者の農地の取得を促進する旨を定めておりますが、これは、農業は通常、土地から得られる利益が他産業に比べて小さいため、耕作に従事する者が農地に関する権利を取得して、そこから得られる利益を享受する形態が、農業を営むに最もふさわしいと考えられるゆえんであります。なかんずく、みずから農地を所有する形態が地代負担もなく最も望ましいと考えられるところであります。

 具体的には、農地法第三条で、農地の権利取得に際しては、農地のすべてを耕作すること、必要な農作業に常時従事すること、農地を効率的に耕作することができること等を条件としており、これは耕作者主義と俗に言われているところであります。

 この耕作者の地位の安定が図られてこそ、持続的、安定的な農業経営が可能になるわけでありまして、農業生産力の増進が図られる一番の基礎になる、そう考えております。

山本(喜)委員 耕作者主義の今日的意義ということで大臣にお話をいただきましたが、大臣は参議院の方であるようですから結構でございますので、ありがとうございました。

 この農地法ですが、昭和三十七年に改正をされて、そのときに農業生産法人の制度が加わりました。合名会社、合資会社あるいは有限会社というものが加わったわけでございます。そして、昭和四十五年に効率的な利用ということが加えられて、いわゆるこれまでの自作農主義から耕作者主義というのに変わったわけでございます。このときも大きな転換でございました。しかし、そのときも株式会社による参入ということは認められなかったわけでございます。株式会社の農業生産法人の要件を欠く危険性が高いという懸念があったと思うのでありますが、果たしてこの懸念が今あるのかどうか、お伺いします。

須賀田政府参考人 経緯的に申し上げますと、農業生産法人制度は昭和三十七年に創設をしております。先生もおっしゃいましたように、当初は、耕作者とか家族経営の延長線上にある農家の共同体といったものを農業生産法人として認めるということで、人的結合体とか非公開型の会社ということで、合名、合資、有限、農事組合法人、こういうものに限ったわけでございます。

 当時、株式会社については、株式が自由に譲渡されますので、農外資本がその法人の経営を支配するおそれがあるということで、効率的な農地利用が図れない懸念があるということで農地取得を認めませんでした。その懸念がその後どうなったのかということでございます。

 株式会社も実際は非公開型が多いということで、昭和四十一年に商法改正をされまして、株式譲渡制限制度、これが導入をされました。そして、株式会社のメリットといいますか、いい点、機動的な経営が可能、経営管理の面ですぐれている、対外信用力がある、こういうメリットを活用するのと、株式の自由譲渡に伴う懸念を払拭できるという仕組みとして、平成十二年に、株式譲渡制限のある株式会社について、農業生産法人の一形態として農業参入を認めた、こういう経緯をたどったわけでございます。

山本(喜)委員 株式会社のメリットあるいは株式の譲渡制限というようなことでお話がありました。

 今、財界などには、この際、農地所有についても認めるべきだというふうな声とか、あるいは農地制度を利用者優位に転換をしていくべきだというふうな声もございますが、こうした点について農水省はどのようにお考えでしょうか。

須賀田政府参考人 これは二つの点があると思います。

 まず一つは、リース特区の制度の中で所有権まで認めてはどうかという話がございます。私ども、安定性についてまだ懸念がございます。それに、停止条件つきで所有権移転を認めますという、要するに耕作放棄なんかしたら買い戻しますよというような条件つきというのが考えられるんですけれども、この条件というのは、民法上、十年しか効力がないということでございますので、今度も検討してみたんですけれども、まだ所有権移転を認めるのは時期尚早ではないかという話でございます。

 それから、一般的に、もっと企業の参入を認めたらどうかという点に関しまして、私ども、やはり農地というのは、農業の用に供されて初めてその効用を発揮するんだ、そういう資産だということでございますので、やはり農業をきちんと継続的にすることが可能かどうかというスクリーンに通して、この問題は見たいというふうに思っております。

山本(喜)委員 やはり農地は農業のために供されるということがあくまでも基本だということですね。

 時間がないので、単収の件についてお伺いをいたします。

 基本計画でありますが、旧基本計画の単収だと、平成九年の小麦が三百七十六キログラム、平成十年が三百七十五キログラム、平成二十二年には四百三十六キログラムというふうに見込んでおります。今度の新しい計画だと、実際には十五年が三百七十キログラムですね。伸びていない。しかし、平成二十七年の収量は四百五十キロというふうに見込んでいるわけです。これは、農地の面積も全体で四百七十万から新しい計画では四百五十万ヘクタールに減っているわけです。

 ですから、これは自給率四五%を見込んだ上での無理な単収でつくっているのではないかというふうな疑問があるわけでございますが、この数字の根拠はどうなっているんでしょうか。

白須政府参考人 小麦の単収についての見込みの関係でございます。

 ただいまの委員のお話のとおり、小麦につきましては、前の基本計画では、全国平均単収四百三十六キロということで、十八万ヘクタールの作付を見通したわけでございますが、新基本計画では、単収を四百五十キロといたしまして、約十九万ヘクタールの作付を見通しているわけでございます。

 この手法につきましては、実は、これは前回の平成二十二年度の目標設定時の考え方と基本的には同じでございまして、一つには、これまでの趨勢を基本といたしまして、これに、今後における新品種でございますとかあるいは新技術の普及を見込んで目標を設定したわけでございます。

 小麦につきましては、ただいまお話ございましたが、私ども、申し上げましたように、これまでの実単収の推移から、趨勢としての単収水準を推計いたしました。単収も、このところ相当程度伸びてきているわけでございます。

 さらに、これに加えまして、小麦につきましては、収量性のすぐれました新品種「きぬの波」でございますとか、そういった新品種がたくさん出てきておりますので、そういったものへの作付転換でございますとか、あるいは早まきが可能な品種、そういったものの導入によります作柄の安定化技術の普及でございますとか、あるいは小麦の作付不適地におけます、大麦でございますとかあるいは裸麦への作付転換といった今後の生産の動向の見通しも勘案をいたしまして、二十七年の単収を見通しておるわけでございます。

 そこのところは手法も基本的に同様でございますし、私どもとしては、十分可能な目標であるというふうに考えている次第でございます。

山本(喜)委員 時間になりましたので、終わります。

 ありがとうございました。

山岡委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三分開議

山岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小平忠正君。

小平委員 民主党の小平忠正です。質問しますので、よろしくお願いいたします。

 本日は、農業経営基盤強化促進法の改正、これを中心にした審議でありますが、私は、今回の改正は、先日閣議決定をされました新しい食料・農業・農村基本計画、これに沿って、将来にわたる食料の安定供給並びに農業の持続的な発展、これらを図るという観点に立った改正案だろう、このように思います。

 私はあわせて、今国会で、過般の委員会で、大臣の所信を受けまして、食料・農業・農村基本計画について質問いたしました。その折にも申し上げましたが、食料の安定供給という観点からいって、新農業基本法における国内農業生産の増大と自給率の向上に向けての各般の施策がなぜ有効に機能しなかったか、そのことを改めて、この五年間の施策の評価を検証して次の施策に生かしていく、こういかなければ、基本法の理念からも外れてしまう。また、なぜ私がそういうことを申し上げるかということは、今回の法改正のもとにあるのが基本計画の見直しですから、やはりそこをどうしても政府にお聞きしなければいかぬと思って、これから質問しようと思っております。

 さらに、先般政府は自給率のことで云々ありましたが、この目標にカロリーベースを従来用いてきたことは、食料が国民の生命と健康の維持に不可欠の要件であり、その基礎的な栄養であるエネルギーを国産の食料で確保することが国の責務である、その限りであるからは、その主体はやはりその国の基幹作物であり、我が国では米である、また欧米では小麦であろうと思います。それに加えて、我が国においては、補完作物としての小麦、大豆で、これが言われております。そういうことを改めて御認識いただきたいと思います。

 さらに私は、前回の質問でも、小麦の生産、低さを思いまして、国内に適する、モンスーン地域の我が国に適する小麦の技術改良、この重要性をお訴えしました。特に今、転作水田において小麦の生産が奨励をされておりますね。そんなこともあって、そのことを申し上げましたが、しかしその後、当委員会で我が党の同僚議員の質問に対して、これは大臣でしたか政府でしたか、どなたかが、十年後ぐらいには技術改良もし、国産小麦によっていわゆるパンやスパゲッティ、これらに使えるような小麦の生産ができる、そんな答弁があったようですが、そんなのんきなことを言っていていいのかと。

 今政府は、金額ベース、こういうものまで持ち出して自給率を云々していますよね。そこまで焦っていらっしゃるなら、十年後にこの国の基幹作物を補完する大事な小麦の生産について、そういう御答弁でいいのかと。特に、大臣が所信で言われました、スピード感を持ってやるということをわざわざ入れましたよね、スピード感ね。そういうことまで言われて、明記されて言われました。そこを強調するのであるならば、このお考えはいかがなものかと思います。私は、基本法が改正されて、この五年間の反省を含めて、集中的に、人的あるいは技術的、さらには資金的にも力を入れて改善、改良方を進めていくのが本筋と思います。

 また、私の前回の質問に対して大臣は、同じように、自給率について、これが上がらない理由として、自給率が上がらない理由として、こう答えられました。「簡単に言えば、いわば消費者の食生活がむしろ私たちの期待とは逆行しているわけでありますから、こういうことごとを含めて我々はしっかりした対応ができないと、この数値はとてもとても果たし得ない」こうおっしゃられた。私は、これは全く逆だと思うんですね。消費者の食生活に対する期待に農水省がこたえていかなかったことによって、これが結果として自給率の低迷につながっていった、こう思うんです。

 こう申し上げたのは、今回の法改正の大きな柱は、言うならば、今、例のリース契約も含めて、新しくいわゆる遊休農地の利用とかを含めて考えていらっしゃるわけでしょう。それは、言うならば生産を考えての改正ですよね。そうなると、自給率ということに対して、今申し上げたことを含めて、大臣に冒頭、基本的なことを重ねて、改めてお伺いしたいと思うんですが、お答えください。

島村国務大臣 御質問が多岐にわたったので、これは余り丁重にお答えをいたしますと少しく長くなりますので、まず分けて申し上げたいと思います。

 まず、今回の食料・農業・農村基本計画の見直しと農業経営基盤強化促進法の一部改正法がどのように影響しているのかという御質問と、自給率問題と分けてお答えしたいと思いますが、よろしゅうございますか。(小平委員「どうぞ、どうぞ」と呼ぶ)

 まず前者から申し上げますと、現在、担い手の育成あるいは確保などを通じまして、国内農業の食料供給力の重要な基盤となっている農地の有効利用を促進することについて、我々は今精力的に取り組もうとしているところです。

 この課題に対応するため、今般の基本計画の見直しにおきましては、農地制度に関して申しますと、担い手への農地の利用集積の促進、あるいは耕作放棄地の発生防止、解消の措置の強化、あるいはまた農地の効率的利用のための新規参入の促進、そして優良農地の確保のための計画的な土地利用の推進等々、いろいろな角度からこの施策を総合的かつ計画的に講じようとしているところであります。

 このため、今回の法改正で、農地保有合理化事業の拡充など、これらによります担い手への農地の利用集積の加速化、リース特区の全国展開、あるいは体系的耕作放棄地対策の整備など、新たな基本計画に示された内容を具体化するための措置としてこれらを講ずるというのが私どものお答えであります。

 なお、自給率問題について、前の発言を逐一記憶しているわけではございませんが、正直言って、平成十二年三月に策定されました食料・農業・農村基本計画に予定いたしました、自給率四五%を平成二十二年までに達成する、こういう目標は、私ども結果的には果たし得ずに終わろうとしているところです。そこで、先般三月に策定を見ました新たな食料・農業・農村基本計画によりますと、平成二十七年には予定の四五%を実現しようと。

 しからば、なぜ五年間おくれてしまったのか。これについてはいろいろな反省もあるところですが、あのとき、平成九年の米の消費というものが、たしか六十六・七キログラムだったと思いますが、この年間六十六・七キログラムをとらえまして、その後の推移からして、米の消費は大体六十六キログラム前後で行くのではないか、これらを基本として自給率を策定したところであります。その一方で、むしろ食の洋風化に対する反省から、国内で補充ができません飼料その他、肉とか油脂に関する食に対する伸び率を、あれほどに見込まなかったわけでありますが、結果的にはこれが予定以上に伸びた。この両者が相まって、自給率は大きく下回るという結果になったわけであります。

 少なくも私たちの反省の中で具体化しようとしているのは、一つには、国民の食生活というものがいかにあるべきか、これについて、先進国が皆それぞれに実施をいたしておりますように、フードガイドを作成して、これを国民の皆様に広くお伝えをし、御協力を願うというのが一つ。

 いま一つは、やはり工程管理をきちっとして、一たん計画を立てて五年後にその結果を見るというのでなくて、これからは年々それらについてのきちんとした経過を全部見守りつつ、平成二十七年には先送りがないようにできるだけの努力をするということが一方にあります。

 もう一方では、農業の集落営農その他を前進させて農業の効率化を図り、生産性を高めて自給率を高めていこう、こういう事々をいろいろな角度から、今度は自給率を平成二十七年度四五%実現という形に持ち込もうとしているのが、現状、我々が今お答えする段階のお話であります。

小平委員 大臣、前段の御答弁は政府が用意したこの改正の趣旨を開陳になりましたね。後段の自給率の点では大臣のお考えも入っていたようにお見受けいたしましたが。

 特に国民の食生活の変化云々というお話もされましたけれども、大臣、ちょっとこれは話が横に飛ぶかもしれませんけれども申し上げたいんですが。

 先般、内閣委員会で食育基本法がありましたね。あれは、一つは中身に問題があると同時に、出すときのタイミングがちょっとまずかった。はっきり言って、選挙の直前で。たとえいいとしても、やり方がまずければ熱くなりますわね。

 それはそれとして、そのことをやられるときに、ちょっと話が横になるんですけれども、先日の委員会の参考人招致の中で、うちの鮫島議員が質問した中でイタリアの話が出ましたね。実は、私も若いころ、青年時代、二年ばかりイタリアにおったことがあったんですが、そのとき、酒のときだったんですが、話に花が咲いて、人生の目的を三つなんという話になったんですよ、何だということで。我々日本人というのは、今はわかりませんけれども、あの時代、我々が若いころは、やはり青年というのは、大志を抱いて郷関を出たなら、まず名声とか、あるいは富とか権力、これが男の目標だったですね。私もそれをオウム返しに、名声、富、権力と、こう言いましたら、オウム返しにイタリア人から、おまえ、そんなかわいそうな人生を目標にするのかと、こう言われましたよね。では何だと言い返しましたら、それは決まっているだろう、まずいわゆるマンジャーレだ、そしてアモーレ、カンターレだとこう来るんですね。アモーレ、マンジャーレ、カンターレ。おわかりでしょう。ツーイートなりツーシングなりツーラブですね、これを言われた。これがイタリア式人生を謳歌する三つの大きな柱だと。何か目からうろこが落ちた感じがしましたけれどもね。今でも覚えています。それはそれでその国の国民性ですけれども。

 ですから、食べることは大事な要素ですよ。しかし、これはちょっと極端な言い方だけれども、食育基本法、食べることに対してこういうふうにしなさいと国が統制したら、だれかも言いましたよね、どなただったか、住まいについてもこれから統制かけていくのかという、何か怖い話が昨日あったですよね。

 私、もう一つ思うことは、イタリア式にアモーレでいいますと、では、日本人よ、国民よ、子供はこれから何人つくりなさい、何回セックスしなさいと。ですから、性育基本法ですよ。それまで統制する。極端なことですよ。カンターレでいうと、かつてこの国は、戦中、戦前を含めて、変な歌を歌うと、この非国民ということで、官憲からそういうあれが国民に対して、抑えがありましたよね。

 ですから、本来これは自由であるべきものなんですね。でも、そういうことで、今何とか国民の食生活の改善、向上を目指してやりたいという政府・与党のそういうお考えでこの法律は通ったようです。

 しかし、そこで話が戻りますけれども、私はあえて言いたいことは、食育基本法をつくり、それを国民に課すんだったら、政府はその前に、当時与党だった皆さんも含めて、やはり反省、総括が先じゃないか。

 それは、例えばの話、大臣はもう御年配ですから御記憶あるでしょう、キッチンカーというのがありましたよね。戦争直後だ。この国の政府は、アメリカの圧に屈して、アメリカの小麦戦略に乗って、日本国内をキッチンカーを走らせましたよね、車を改造して。そして、全国津々浦々に行って、そのときに言ったことは、日本の女性の皆さんよ、パンを食べれば肌が白くなりますよ、足が長くなりますよ、美人になりますと。これが、言うなればアメリカの戦後の我が国に向かっての小麦の輸出攻勢の一歩だったわけでしょう。食生活の変化とかいろいろなことがありますよ。確かに豊かになって、たんぱく質源やいろいろなことに変わったものがあるけれども、根本はそこから始まったわけですよ。

 そして、それにあわせて、一方、政府は、戦中戦前のあの食料の不足を危惧して、戦後、米の増産、食料増産、これを奨励しましたよね。そこで土地改良にも着手し、そして新田の開発もして、あの歴史がありますね。でも一方、そういうことをされたわけですよ、キッチンカーという。

 そういうことの反省もなしに、今こうなったから、単に食生活が変化したから、ではそれをもとに戻しましょう、日本型の正しい食生活に戻りましょう、それは食育基本法だと。これは勝手過ぎる。まずその前に、しっかり政府がそこのところを総括して、間違っていましたと、そこから始まるのが筋じゃないですかということを、私は今大臣のお答えを聞いて、思いましたので、申し上げました。

 何かもう一言ありますか。私の言ったことは、そういった歴史をちょっと申し上げたんですけれども。

島村国務大臣 戦争直後を今も生々しく思い出しますが、あの当時、私はまだ子供でしたけれども、みんなやせ衰えて骨と皮でしたよ。当時の夢は、一年に一遍でいいから御飯を腹いっぱい食べたい、一年に一遍でいいからお砂糖の入ったお汁粉が食べたい、そんなような経過でしたね。そのときに連合軍が進駐してきまして、見る人見る人、もともと大きい体がよりたくましく見えた。

 そんな中で、やはり、日本人はすっかり自信も誇りも失っていましたから、アメリカを初めとする外国にあこがれて、そういう中で生まれたのが、言うならば、外国のような食事をすれば、あのように彫りの深い、色の白い、そして立派な体格になる、こういうようでした。

 そういう幻想の中で日本型食生活が大きく侵されていったことも事実ですし、また、いろいろ援助物資その他の中には選択の自由を許さないという厳しいものも背景にありましたから、ああなったのはわかりますけれども、ただ、それはそれとして、いろいろな戦後の経過をひもときましても、日本型の食生活というのは、結果において、健康にもいい、そして長寿をきわめるためにもいい、すべてに好ましいということが現実に科学的にもわかっていることですから、このことをきちんと知らしめる食育というのは、これはやはり政治の務めだろうと思っています。

 ですから、ごめんなさいと言う前に、私たちは、それらを、その反省の中に新しい前進を加えていくことが、ある意味では、この国自身のいろいろな意味の環境を前進させることにつながるだろうと私は思います。

小平委員 大臣の今おっしゃるとおりなんですよね。正しい日本型の食生活と今言われましたね。そうなんですよ。でも、それに反する行為を政府が奨励したんですよ。キッチンカーを全国津々浦々を走らせて、女性の皆さんよ、パンを食べれば肌が白くなります、足が長くなります、それをやっておいて、その反省なくして、そこが私はおかしいんじゃないですかと言っているんです。この話はもういいです。

 そういうことで、基本的に、本来自由であるべきものを統制するのはよくない。私は食育基本法ができましたこと自体反対です、これは。

 次に、同時に、この法案改正にちょっと関係がありますので、備蓄について質問します、備蓄について。

 備蓄については、やはりこれも前に大臣が御答弁で、備蓄に対しては、我々がやみくもに決めているのではなくて云々、そして、備蓄運営委員会、これは研究会の間違いの答弁になっている、まあいいですよ、備蓄運営委員会が示した方向に従っている、こういう御答弁でした。

 このいわゆる備蓄運営研究会たるもの、私もその資料をここに持っているんですが、備蓄運営研究会、食糧庁が出した報告ですね、これを持っているんですが、これによりますと、これは平成十二年から一年間で七回ほど開かれたようですが、平成十三年の十二月に報告書をまとめた後は開かれていない、これでよろしいですね、間違いないですね。

 そこで、この報告書で述べているのは、米の需給調整を主眼とした備蓄運営のあり方であり、運営の効率化による財政負担の軽減策、これしかないわけですよ。いいですか。このことは私、通告していませんので、何も微に入り細のことはいきませんで、基本的な精神の話ですからね、精神論の。もう一回言いますと、米の需給調整を主眼とした備蓄運営のあり方なんです。運営の効率化による財政負担の軽減策、これしかないんですよ、これを繰って見てみますと。問題はそこなんですよね。そこには一朝有事の際の視点は何ら明記がないんですよ、一朝有事の際は。

 しかし、食糧庁が出した備蓄運営研究会。一方、この三月二十五日に閣議決定された国民保護法制、この基本指針では、備蓄について次のように記されていますね。それも私、資料を入手したんですが、それによれば、国民の保護に関する基本指針、閣議決定、そこにはこう書いてありますね。「備蓄」のところで、「国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、国民保護措置のための備蓄と防災のための備蓄とを相互に兼ねることができるよう、防災のための備蓄の品目、備蓄量、備蓄場所、物資及び資材の供給要請先等の確実な把握等に努めるものとする。」こうなっています。

 ですから、備蓄というのは、食に限らず、医薬品ですとか、もろもろありますよ。食料だけじゃないですよ。でも、そこでも大きな要素は食料ですね。人間は生き物ですからね。つまり、緊急事態、一朝有事の際の備蓄と一般的な防災上の備蓄は同じです、この保護法制の閣議決定はそう言っているんですよ。いいですか、一朝有事の際の備蓄と一般的な防災の備蓄は同じですと。ところが、この食料備蓄については、こういうことを農水省が出している。

 そこで、きょう、内閣府にも来てもらっていますが、実は、これについて内閣府防災担当にお聞きしましたんです、この食料備蓄の状況について。そうしたら、こういう政府の答弁なんですよ、国については農水省だ、地方については総務省で聞いてくださいと。これが、この国の防災のばらばらな体制なんですね。

 実は、午前中、隣の部屋で災特委員会をやっていたものですから、私は向こうの筆頭理事をやっていますので、行ったり来たりで常時おれなかったので、午前中どんな質問があったか、私全部は聞いていませんでしたけれども、実は隣の委員会では、例の福岡の地震を受けての報告と質疑応答、政府とのあれがありましたね。大事な委員会でありました。

 こういうことを考えると、危機管理の問題は非常に、備蓄というのは、単に政府は百万トンとか言っている、あなたは三百万トンと言っていますけれども、こういう状況を考えると、きちんと形ができていない、そこを私は危惧しています。

 そこで、例えば、もうちょっと細かく言いますと、農水省に国の災害対策用の食料備蓄はどうなっているかと聞きましたら、これも回答がありました。東京に一食当たり百グラムの乾パンが五万食、愛知にも五万食、そして乾燥米飯、これが大阪と福岡にそれぞれ一万五千食あるという返事が来ました。これだけです。

 同時に、消防庁に聞きましたら、さすが、消防庁は各地域の自治体とも連携があるようで、都道府県別の備蓄量の現状について答えがありました。でもこれは白書にのっとっての返事ですから、細かいところは私もまだまだだと思いますけれども、一応そういうことは消防庁は把握をしておるようでありますが、どうも内閣府、そこのところ、柴田さん、ちゃんと持っているのかな。そこがちょっと。

 そこで、私は、先ほど申し上げましたように、大臣が先般の委員会で私の質問に対し、備蓄については備蓄運営研究会が示した方向に沿って決めている、こう言われましたけれども、この研究報告は、重ねて言いますけれども、生産調整を前提にした需給調整のための備蓄についてまとめた報告しかないんじゃないですか。どうですか、そこのところ。

村上政府参考人 委員御質問の、米の備蓄の運営研究会での検討対象といいますか、検討の前提といいますか、基本的に、国内の米の生産が需要を上回る需給ギャップが存在するという中におきまして、過去において百五十万トンプラスマイナス五十万トンという備蓄の運営をしましたけれども、実際には非常に過剰な在庫を抱えて、それから、その在庫そのものが財政負担と価格の下落要因にもなったというようなことを踏まえまして、過剰基調にある中で、端境期において、不作による端境における供給ということを前提にして議論をし、百万トン前後を適正な備蓄ということで結論をいただいた。それに基づいて現在運営をしているという状況でございます。

小平委員 村上局長、政府が今やっておることの説明があっただけなんだ。そんなことはとうに百も承知ですよ。私はそんなこと言っていないんだよね。こういうことでいいんですかということなんです。

 それで、これは、私は前段に質問通告で細かく言っていませんので、それはなかなか答弁しづらいでしょう。

 そこで、統括官、私は、先般は福岡、その前は新潟でああいうような大地震があった、あるいは水害もあった。そうなると、これはもう一気に救援物資が集まりますよ。実際入ってみたら、もう食料は大した問題ないんですよね。どっちかといったら環境の方が被災者にとっては切実な問題なんですよ。あの狭い公民館に押し込められていて、まず安眠できない。風邪が蔓延する。トイレの問題あるいはおむつの問題とか。どっちかといったら、食料なんというのはもうあり余っているんですよね。あちこちから救援物資が届いて、毛布も来ている。災害常襲国の我が国としても、これが今の実態なんですよ。

 でも、私が危惧しているのは、今起きた福岡にしても新潟にしても、あるいは先般の阪神・淡路にしても、局所的な被害だった。でも、今言われているのはトラフですね、東海トラフ。スマトラではあのような大地震があった。これは直下型ではなくてトラフの入り込みでしょう、はね上がりとか。もしこれが、広範囲に地震が起きた場合に、あるいは大東京がやられた場合は、そのときはもうそんな、環境をどうよくするかとか、被災者の環境とか、トイレをどうするかということじゃなくて、生物としての人間が生きていくためには食料なんですよ。

 これがこんなようなお粗末な状況では、私は国民の生命と財産を守るのは国の大きな責務ですね。それを考えると、今のあり方では私はいかぬと思うんで、きょうは農水省の問題なんですけれども、来ていただいたのは、そこに絡んでちょっとお考えを聞きたいんで来ていただきましたけれども、ちょっとお考えお聞かせください。

柴田政府参考人 食料の備蓄は非常に重要なことでございまして、災害対策基本法の四十九条でも、国、地方公共団体が備蓄に努めていくということを定めておりますし、これにつきましては、中央防災会議の防災基本計画の中でも、地方公共団体の役割、国の役割をそれぞれ定めて、適切な備蓄体制が整うように行っているところでございます。

 また、御指摘がございましたけれども、食料につきまして、国レベルでは農林水産省におきまして、食料の調達可能量を毎年調査をしていただいております。またさらに、地方公共団体レベルでございますが、これは消防庁が毎年調査し、把握するというようなことにいたしているところでございます。

 それで、新潟県中越地震のケースを申し上げますと、こういうような体制ができておりまして、二日目、三日目、四日目ぐらいになると食料が出てきたんですけれども、発災翌日に十万人ぐらい被災者が出てこられました。それで、当日の夕飯とその翌日の朝食が足りなくなるということで、大変だ、食料と水を緊急に出してくれということを新潟県あるいは市の方から支援要請を受けました。直ちに非常災害対策本部を開きまして調整をしまして、当日、農林水産省さんに大変お世話になりまして、備蓄されております乾パン、乾燥米飯九万二千食と、それから自衛隊の方の保有食料四万食を直ちに輸送いたしまして、対応ができたということがございました。

 今、御指摘のように、東海地震等の大規模地震につきましてどうするかと、非常に我々も憂慮いたしてございまして、平成十五年十二月の東海地震の応急対策活動要領というのに基づきまして、具体的な食料の支援の体制、供給の体制なんかも定めてございます。関係都道府県の外の地方公共団体からの備蓄物資の融通だとか、政府の備蓄米等の供給、民間流通物資の確保、こういう物資の調達量を事細かく定めてございます。どこからどこの地点へ何をどれだけ送るかということを被害想定に基づきあらかじめ決めております。

 さらに、東南海・南海地震についても同様の対策の検討を進めておりますし、二月に被害想定を出しました首都直下地震につきましても、同様の検討を行っていきたいというように考えてございます。

 内閣府といたしましては、今後とも、関係省庁と連携いたしまして、備蓄の問題を含めまして、災害時に必要な物資が迅速かつ適切に調達、供給されますように努めてまいります。

小平委員 担当官としては、そういうことをやっています、こういうふうに農水省からも協力がありましたと、その答弁の域を脱しないんでしょうね。

 私は、くどいようだけれども、このことを申し上げているのは、今回の法改正は、今、農地の集積あるいはリース特区の問題あるいは担い手のあり方、これの改正でしょう。これは結局、これの行き着くところ、突き詰めるところは何かといったら、言うならば、どうやってこの国の安定的な食料生産に取り組んでいくかということが根底にあるわけでしょう。だから、その前段として、大きな柱なので私は言っているんですよ。

 ちなみに、大臣、今私は自給率、備蓄ということを言いましたけれども、こんな言葉があるのはこの国だけなんですよね。少なくとも、欧米先進国、発展途上国は別にして、韓国なんかも別にして、いわゆる世界の一等国と言われている欧米諸国、先進国で、備蓄とか自給率なんという言葉があるのは日本だけなんですよ。

 今自給率のことをカロリーベース四〇%ということを言っていますよね。これだってFAOの資料をもとにして政府が算出した数値でしょう。例えば、イギリスだって、一九七〇年には自給率が四六%しかなかった、これが二〇〇二年には七四%に上がった、欧米でも一番低いイギリスですら。これも政府がつくった資料なんですよね。

 だから、アメリカにしてもEUにしても、こんな議論がないんですよ、自給率をどうこうしようなんという話は。あるいは、備蓄をどうこうなんという、そんな話はないんです、備蓄なんということは。なぜかというと、当然だから。備蓄なんという言葉があるのは、ちなみに、私も、これも政府に確認しましたら、主な先進国の食料の備蓄数量、備蓄の概要。米国なし、カナダなし、フランスなし、イギリスなし、豪州なし、ドイツ、パン用穀物等一カ月分が目標。なぜそうかというと、先進国においては、政府は、一朝有事の際に国民にそういうパニックですとか混乱を与えないために、自給率の充足、備蓄の安定量、これは当然のことなんですよ。だから、こんな議論がない。やっているのは日本だけ。その証拠に、欧米諸国は、小麦は完全に、一〇〇%以上つくっていますよ。国内の需要以上につくっていますよ。余ったものは、輸出あるいは援助、古くなれば飼料や肥料に回している。しかし、この国は、米は一〇〇%押さえている、作況が一〇〇超えたら豊作だ、減ったら、九八になったら不作だ。そうすると、稲得とか、担い手経営安定対策がどうかということを騒いでいる。小麦や大豆は惨たんたる状況。これが我が国の実態です。大臣、反論はないでしょう、その実態については。

 こんなことを議論しているのは我が国だけなんですよ。農業問題はどこの国でも難しいですよ。WTOでも、アメリカを初め、みんな自国の権益のためにいろいろな主張をぶつけ合っている。特に今の階層方式、スイス・フォーミュラにしても、日本も絶対受け入れられない。日本はミニマムアクセス、あるいは高関税のあの四九〇%をどうするか、このせめぎ合いが今始まっていますよね。十二月には香港での閣僚会議が控えている。どこの国でも難しい、農業問題については。しかし、少なくとも、国民の生活を保障する、生命を保障する自給率と備蓄についてはきちんと充足している。

 これは通告していないので、もう答弁はいいです。反論があったら、次の委員会でまた言ってください。次に本題のリースについてちょっとお聞きしますので、大臣、この実態をよく、御認識を新たにしていただきたいと思います。

 次に、リース特区の問題なんですが、今回の改正の柱ですよね。

 そこで、私は、今回のリース特区の全国展開は、あくまでも農地賃貸による株式会社の農業経営参入であり、株式会社の農地取得を目指したものではない、こういうことはもう回答をいただいていますね。しかし、問題は中身ですね。

 同じく、今回の改正の大きなねらいは、担い手への農地の利用集積の加速化や、新たな耕作放棄地対策と、農地の権利移動制限の緩和、これらでありますが、これらはいずれも、農業の持続的発展に向けた方策のはずです。

 確かに、リース特区の全国展開を初め、今回の法改正の内容は理解はできると申し上げたいが、先ほど、自給率の向上についての質問で私が指摘したとおり、十年後には五%上がると言われましたけれども、今のような状況では、この状況でいくんなら、逆に下方修正が絶対出てくると私は思うんですよ。

 問題は、現状の農業経営の現場において、これまで国の施策に沿って経営規模の拡大、農用地の改良等に取り組んできた結果、こういう農業経営にかかわる負債が大きくなってしまって、償還が無理、これが現状ですね。そこを含めて対策を講じることが肝要なんですけれども、今回は単にリース特区という展開をして、こういう形で、これは売り与えるのではない、貸すんだと、端的に言ってですよ、こういうことを言われています。確かに、耕作放棄地、遊休農地、この有効利用ということで、一つの方便かもしれません。しかし、私は、これは本当にうまくいくのかという危惧があるんですよ。

 私は前に、当委員会に、農業経営再建特別措置法、こういう法案を出したんです、議員立法で。しかし、数の力で、与党の抵抗に遭って、これは廃案の憂き目を見ました。

 現行のあれでは、農地保有合理化法人、これが買い受けて、それを有効的に貸し出す、そういう方策を打っていますね。しかし、それじゃなくて、その法案の骨子は、農政の失政の影響を受けて、その犠牲になって経営困難に陥った農家がその農地を手放す際には、そんな農地保有合理化法人というものじゃなくて、国がそれを肩がわって、それを譲り受けて、しかも、その農地は、それを手放した農家に貸してあげる。そして、意欲ある担い手農家には、その再出発に向かっての応援をしてあげる。農家は営農意欲は十二分にあるんですよ。あるんだけれども、負債が重なって、償還もままならず、いや応なしに農地を手放さざるを得ない。そこを一時的にそういう形をとって救済してやれば、農家がまた立ち上がれる機会を与えてあげられる。

 これが、この国の大事な農業の生産力の源泉であり、同時に、今政府が苦慮している遊休農地、荒廃農地の有効利用にもつながる、そういうことで申し上げたんだけれども。この機会に、このリース特区の展開に含めて、このことをさらに検討して、この対象を広げるという考えはないですか。

須賀田政府参考人 先生が御提案になりました、国が負債農家から農地を取得して当該農家に貸し付ける関係の法律、たしか、前回経営局長をしていたときの法案でございますが、よく覚えております。内容が、負債整理資金の貸し付けと、土地改良負担金の軽減と、あと、農地を国が買い入れて、当該農業者に対して貸し付けを行う。私、精神において大変賛同をしておりました。たしかあのとき、土地改良負担軽減を含めて負債整理資金を措置し、国がというわけにはいきませんので、農地保有合理化法人が経営資源を買い上げて、それを担い手の方へ渡し、その買い上げられた人が雇用労働になるというような道を開いたという、施策を講じたという、覚えがございます。

 今回も、主業農家等が負債で困っている場合には、予算措置ではございますけれども、経営再生委員会、これは公認会計士とか弁護士さんを入れております、そこで経営診断をしていただいて、再建可能、再生可能という場合には、負債整理資金を講じまして再生を図っていく、しかし、再生が不可能という判断が下りましたら、農地保有合理化法人がその経営資源を買い上げまして、担い手の方へ持っていくという措置を体系的に講ずるという措置をとっておりますので、私ども、先生の趣旨は生かしておるつもりでございます。

 このリース特区は、耕作放棄地の発生原因を見てみますと、高齢化とか労働力不足が主要な要因になっておりまして、そもそも、生産活動の担い手が見当たらないというところで生じている場合に、外から企業が参入をしてきて農地を管理していこう、こういう発想でございますので、違う問題であるというふうに御理解を願いたいと思います。

小平委員 局長はこの法案準備をしたので理路整然と答弁されましたが、確かに、細かく言ったら違いますよ。

 では、次の質問の、農地法の改正問題に絡めて、また質問します。

 確かに、今言われたことは、遊んでいる農地をいたずらに放置すれば、その地域とか環境によくない、また農業の再生産にも利することにならない、したがって、その有効利用を図るためにリース特区の展開をしようということでしょう。今、異業種に進出するということもありますので、それを企業にも提供してという、そこは言わなくてもわかっていますよ。ところが、私は、基本的に、まず農業に従事した人たちがなぜこうなったかということ、これは一にかかって政府の失政ですよ。

 いや、首を横に振るけれども、ちょっと時間があったら後でやりますけれども、昭和四十六年に生産調整が始まってから今日まで、何の対策、何の対策のって、これを全部あなた覚えているか、全部を見ないで言えますか。猫の目農政の最たるものだ。短いものは二年、三年、長くても五年。例えば、水田利用再編対策とか、水田農業経営確立対策とか、最近は経営所得安定対策か。そういうことをやらかしてきて、その都度その都度農政に振り回されて。今度こういう政策が出た、これでやっていこうと。ところが、今まさしく日進月歩の時代にあっても、農業なんというのは、そんなに、毎年毎年変えるものじゃないですよ。やっとこういう方向でやろうと思ったら、三年たったらまた変わっちゃう。常に翻弄されてきた。一時期なんかは、四十ヘクタールの規模拡大を目指してやれと言ったんでしょう。それに合わせて農地を購入して、機械も購入して、どんと借金したら、今こんな状況だと。反論ないでしょう、副大臣。そういうことだから、私はまず前段に、そこのところをちゃんと加味して、この機会にリース特区に含めてどうですかと話したんですよ。違うというんで反論しました。広く言えば同じことです。

 それで、ここに関係あるので農業委員会のことについてちょっとお聞きしたいんですけれども。

 今回、先般の農業委員会法の改正によって必置基準面積が大きくなりましたね。これは町村合併もあり、あるいは農業委員会数のカットというか、今、交付税も減らされる、こういう非常に厳しい運営状況の中で政府はその方向を示しましたよね。必置基準面積も大きくなった。さて、そうなると、今回のいわゆる強化促進法改正の趣旨は、今まで国がいろいろとやっていましたことを、今度は市町村に権限移譲するわけですね、この判断基準とか指導要綱を。そうでしょう、須賀田局長、市町村ですね。そうなると、市町村ということは、まさしく市町村ですよ。だれがやるか。こんなもの、実際に市長なんかがやるわけないんだから。だれがやるんですか。当然、やるのは、このことに精通した農業委員会でしょう。土地問題について、このことをわかっているのは。農地法でもって、例えば三条問題、五条問題、いろいろありますわね。ほかの分野がやったってわからないわけでしょう。市町村ということは、農業関係の人がやるわけでしょう。

 さあ、そこでそうなると、このように、一方では時代の要請で削減していく、しかし市町村にこういう権限が回っていく、そこでうまく機能するのかなという心配があるんですけれども、そこは大丈夫ですか。

須賀田政府参考人 昨年の農業委員会法の改正で必置基準面積を引き上げました。また、同じように、業務内容を重点化しております。恐らく、市町村合併というようなことを考慮しますと、農業委員会の数は今の数の半分近くになるのではないかというふうに推定をしております。

 先生おっしゃるとおり、今回の改正内容は農地の利用集積あるいは耕作放棄地対策で、市町村の役割が大きくなります。おっしゃるように、市町村における農地管理主体というのは農業委員会でございまして、耕作放棄地のパトロールとか指導、利用集積のあっせん、これは全部農業委員会の仕事でございます。私ども、この農業委員会の活動がこういう法律改正の中で低下しないように、質の向上あるいはインターネット等の活用、そういうありとあらゆる手段を講じて農業委員会の活動が低下しないように支援をしていきたいというふうに思っております。

 なお、必置基準面積を下回る市町村のうちでも八割ぐらいは任意に農業委員会を置くという状況でございます。総体として、農業委員会の活動が低下しないようにしたいというふうに思っております。

小平委員 そんな状況で、現に幾つかの市町村、例えば岐阜市ですとか、あるいはさいたま市ですとか、宇都宮市とか、農政推進委員なんというものをつくって、行政もあるいは民間も含めて協力をいただいて、指導なり運動を展開しているところもありますので、そういうものも含めてやっていかないと、この新しい方向が逆に農地の虫食いにつながったのではまずいと思うので、私からも一言申し上げておきます。

 これは、政府が今回つくった基本計画の見直し、これによれば、言うならば、主業農家は家族農業経営あるいは集落営農、これに向かっていった場合に、逆に、土地持ち非農家というのはこの方向、これは政府の資料ですよ、この間出した基本計画のポイントのものですね。これだって、土地持ち非農家は逆に百十六万から、百五十万から百八十万にふえちゃうわけですよ。これはもう簡単な話。戦後の我が国の食料増産に貢献した昭和一けたのいわゆる二種兼農家ですね、彼らが三ちゃん農家と言われながら、平日は工場に働きに行き、週末に農業に従事し、この国の食料の増産に努めたというあの世代ですよ。そこが今高齢化して後継者にかわった場合に、もう後継者は農業をやっていない。しかし、相続だからそれを受け入れる。これが土地持ち非農家の増大につながるわけですね。だから、こういうことをして集落営農を奨励する。一方では、リース特区をつくり、非農家が持っている土地が、使えるところだったらそれを有効に使おうという、市町村が指導をして、あるいは、この法改正で、これを強制的に、提供せいということも今度はできるわけですね、今度の法改正ができれば。そうでしょう。いい農地については、土地持ち非農家が持っている農地でも、それが有効利用されていない場合には、提供せいということも強制的にできる、そういう方向になるわけでしょう。

 ですから、こういうことがありますので、一つの方向ではあるけれども、そこをしっかりやらないと。今農地法はざる法という見方もありますよ。しかし、大筋としては農地法によって、特に三条、五条ですよ、この大きな縛りがあって農地が守られてきましたよね。しかし、いわゆる後継者の農業離れによって土地持ち非農家が多くなって、こういう問題があったと。だから、その方向は理解できるけれども、そこをしっかりやっていかないと、単に遊休農地、荒廃農地以上に虫食いの心配が出てくる、そう思いますので申し上げました。

 もう時間がありませんので、用意した質問がまだあったんですけれども、できませんが、最後に一つ、これはさっきちょっとお話ししたので、もう少し言っておきます。

 昭和四十六年からこの国が生産調整に入りましたね。米が、戦後、最初は不足が続いたけれども、充足し、過剰ぎみになって、そして生産調整に入った。最初は単純休耕でも補償金が入った。それを、昭和五十二年から、今度は、それをさらに転作農地として有効利用しなければ補償はない、そういう方向が来て、最後は、食糧法の改正どころか、廃止まで行ってしまって、自主流通米という方向に行きましたよね。今、最後は、米政策改革ですか、ここまで来ている。

 この間、最初は稲作転換対策から始まって、水田利用再編対策から、もうずうっと来て、さっき申し上げたように、三年から五年、こういうスパンで、まさしく猫の目農政ですよ。大臣もこれは全部御承知ないでしょう、こういう変化というのは。これに翻弄されてきたんですよ。

 現在は稲得ですね、それから担経、担い手経営安定対策だ。昨年ああいう状況があって、私も、村上、須賀田両局長、両君には、この場でもって、私、顔色が変わるまで叱責しましたよね、政府の責任はどこにあるんだと。年度途中にやればモラルハザードが起きる、したがって、十七年度は必ずやります、こう言って、それで、十四年、十五年はこれを外す、それを出された。でも、それでも十分ではないですね。

 しかも、これは北海道のみならず、北陸あるいは米のいわゆる主産地と言われている地域も、コシヒカリですら今低迷しているわけでしょう。そういうところで今経営的な破綻が起きている。あのとき石原事務次官は、豊作県においてはこの制度があるから問題ないということを言われたね。新聞にそれが出ましたら、新聞はちょっと書き過ぎだと、新聞の報道は。新聞はちょっと書き過ぎた。しかし、私はそのときの記者会見の経緯を、クエスチョン、アンサー、これを入手しましたら、確かに新聞はちょっと行き過ぎたかもしれぬけれども、言っていることの意味は、大体、大枠そういう方向なんですよ。ということは、豊作県だから大丈夫だろうということは、やはりちょっと言い過ぎだと思うんですね。

 今回の価格の低落傾向というのは、やはりきちんとやっていかなきゃまずいと思うんですよ。先般参議院でもこのことについて強い叱責があったと聞いていますけれども、昨年私がこの口火を切りましたね。今回少しく是正されたけれども、まだまだ不十分ですよ。しっかり対策を持って、安定して、安心してできる、そういう農政に持っていくように政府の責任としてやってもらいたい、このことを申し上げて、時間が来ましたので終わります。

 ありがとうございました。

山岡委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 通告に従い、順次質問していきたいと思いますけれども、持ち時間に限りがありますので、そしてまた、質疑項目がちょっと多かったものですから、飛ばしていくかもしれませんので、御了承いただきたいと思っております。

 最初に、食料・農業・農村基本計画であります。

 今回の基本計画では、「土地利用型農業を中心に農業経営の規模拡大の動きは遅く、農業の生産構造のぜい弱化が進行している。」とし、構造改革の立ちおくれを指摘し、そして、「従来の取組のままでは、食料の安定供給の確保や多面的機能の発揮、地域の経済社会の維持・発展に支障が生じるおそれがある。」としております。しかしながら、これは「支障が生じるおそれがある。」としていいのでしょうか。我が国の農業は、もう既に重大な危機に陥っておるのではないでしょうか。このまま進めば将来さらなる大破局が到来する、私はそう思っております。

 我が国の農業の構造的問題の根本要因でありますけれども、戦後の農地改革以降の自作小農制が、既に社会的にも、あるいはまた経済的にも存立基盤を失いつつあり、そして、新しい担い手の形成、これに対する力がおくれているのではないか、そういう気がしております。

 そこで、基本政策について一つ大臣にお伺いいたしたいと思っております。

 大臣は二度の農林水産大臣でありますので、戦後六十年を振り返り、この日本農業の構造改革のおくれ、そしてまた国際競争力の低下、この本質的な原因をどのように認識しておりますでしょうか。

    〔委員長退席、松野(博)委員長代理着席〕

島村国務大臣 昭和三十六年に制定された農業基本法では、構造政策として、高度経済成長に伴い他産業へ就業した離農者の農地を専業農家へ集積する、また、価格政策として、生産コストを償い、製造業並みの労賃を確保できる方式を採用する、その二つの点が指向されました。構造政策により生産性が向上すれば、農産物価格が低下し、その分を消費者に還元できると考えられたところであります。

 しかし、その後は、他産業への就業が、離農ではなく、兼業化の形で進展したため、規模拡大が進まず、生産性が向上しない一方で、例えば米価が高い製造業の労賃水準を反映して決定されたことから、農産物価格の内外価格差が拡大したところであります。

 また、この高い米価と機械化、技術向上により週末農業が可能となったため、これが農地流動化の阻害の一因となったという悪循環に至りました。

 このような経緯を踏まえ、借地や集落を基礎とした土地利用調整などを重点とした農地流動化策を講じるとともに、価格政策について、所得を確保するための価格支持型から、市場価格を基礎として所得を安定させるための直接支払い型に切りかえるなどの農政の転換を今進めているところであります。

黄川田委員 大臣から具体的にお話しいただきましたけれども、戦後の農政で、私は三つの大きなゆがみがあると思っております。一つは減反政策、そして農地政策、加えて農協政策だと私は思っております。

 先ほど須賀田局長が流暢に農業委員会の話をされましたけれども、昨年、農業委員に関する農業委員会法の一部改正、そしてまた農業改良普及員に関する法律の一部改正等々がありました。改良普及員の関係は都道府県関係だと思いますけれども、平成十七年度の農林水産予算を見ますと、どの県も削減であります。そしてまた、農業委員の関係は、これは市町村だと思いますけれども、これまた同じような状況であります。

 もちろん、それぞれ自治体が自立して頑張らなきゃいけない、それは当然のことでありますけれども、法律をつくっていくと、枠組みとか仕組みとか制度は変わっていくわけなのでありますけれども、現場は遅々として変わっていない。だから、十年前の答弁も今の答弁も、もしかすると十年後の答弁も同じかもしれないというふうな気がしておるわけであります。

 せっかく基本計画を見直したわけでありますので、ぜひとも軸足の変わらない、十年後も大きく言葉で言えるような政策になってほしいと思うわけでありますけれども、大臣、見直ししたこの基本計画、十年後に未来ある日本農業になっておるか、自信を持って提案されておりますか、所感をお願いいたします。

島村国務大臣 率直に申し上げます。十年後も変わらざる姿勢で確固たるものが我々は考え得るかということですが、現実の問題としては、それは正直言って難しいと思います。

 国際環境一つとっても極端に変わってきまして、従前のように関税障壁その他によって国内農業を守るということもなかなか許されにくくなってきておりますし、また同時に、大農業生産国は、もう国際分業の時代じゃないか、いつまで国内の農業を守ろうとするのかという、極めて冷ややか、かつ結束して、これに対して食料の自給率などを無視してかかろうとしている、こんな動きも実はございます。

 また国内的には、例えば今高齢化が急速に進んでおりますが、この間、農業従事者の六十五歳以上を調べてみましたら、大体五七%ぐらい、約六割であります。これも、もう一年たち二年たてばもう六割を超えるというような状況でありますから、こういうことごとを加えますと、先行き農業の後継者は獲得できるのか、そしてまた同時に、現在農業を営んでくださっている農業従事者の方々がいつまで第一線で働くことができるのか、そういう問題もございます。

 そしてまた、中山間地域のように、恵まれない環境にある農業、こういうものが将来に向かって大きな希望が持てないときに、若い人たちがそこに定着することが果たして可能であるかどうか。考えれば考えるほど難しい問題がたくさんあるわけでございますから、我々はそれに屈せずに、真っ正面からこれに取り組んで、問題点を一つ一つ拾い上げて、これに対する対策を進めていく、これに尽きるわけでありまして、将来これしかないと言えるほどのビジョンを今ここで示せと言っても現実には不可能であると。しかし、我々はあきらめているわけではありません。あくまで前向きに、今までの経験に立って、また、今までの反省に立って新しい農政を展開しよう。

 そういう意味で、今回、三月に策定をいたしました食料・農業基本計画、これは私どもにとって非常に大きな変化がありましたけれども、それはそれなりに、さすがにそれぞれの分野を代表する方が、長い期間、二十九回に及びますが、その会合を持って御検討いただいた結果だな、そんなふうに受けとめているところであります。

黄川田委員 大きく変わる時代であります。ただ、その変わる時代にあって、変えるものを、都道府県とか市町村の先端だけ変えるんじゃなくて、農林水産省みずからが変わらないと。

 多分戦後の農水の官僚は汗をかいた部分が結果として出たと思うんですよ。今の官僚の皆さんも、答弁は流暢なんでありますけれども、果たして汗をかいた部分が、ふろに入って、よかったなというような、そういうものになっていただきたいと思っております。

 具体的な質問に入っていきたいと思います。担い手の育成と担い手への農地集積についてお尋ねいたしていきたいと思います。

 これは、十年後の、「農業構造の展望」では、平成十六年の総農家数二百九十三万戸から平成二十七年では二百十から二百五十万戸と予測しております。何か政策展開に自信がないのか、非常に幅の広い予測であるようであります。そしてまた、今の主業農家四十三万戸から、十年後に効率的かつ安定的な農業経営を営む者として、家族経営三十三から三十七万戸、法人経営一万戸、集落営農経営二万から四万戸を見込んでおるようであります。しかしながら、農業構造の改善だけで達成が可能であるか、いささか疑問でありまして、いかに新規就農者の開拓に努めるか、それがかぎだと思っております。

 そこで、農地政策とともに、将来効率的かつ安定的な農業経営に発展すると見込まれている者を担い手として位置づけておりますけれども、人材の供給源でありますけれども、これをどこにどのように求めておるのか、お尋ねいたします。

岩永副大臣 先生のおっしゃるとおり、やる気と能力のある担い手、これが農政の喫緊の課題であると私は思いますし、いろいろ問題がある中で、彼らが日本農業を救出してくれるんではないか、このぐらいの気持ちで担い手を育成していかなきゃならないし、また、担い手を求めていかなきゃならぬ、このように思っております。

 しかし、そのことのために、担い手が他産業以上の収益を上げて、そして、農業を魅力あるものに感じてもらわなきゃならぬわけでございますので、そのために、予算と金融、税制、そういうような各種施策というものをやはり担い手に集中的、重点的に実施していかなきゃならぬ、我々このように思っております。これは、農林水産省だけではなしに、農業団体とも連携を持ちながら、全国的な運動を展開していかなきゃならぬと思っております。

 その中で、では、どういう対象者がいるのか。文科省と私どもの話し合いを今しようと思っておるわけでございますが、全国に農業高校があるわけですね。年間約二万五千人の卒業者が出る。そういう方々を中心に、やはり、農業に参入してくれるような、単に文科省だけに任せておかないで、農水省がいかにその農業高校に人を入れて、そして、お手伝いをしながら農業の魅力というものを普及していくか、こういうような施策が大事でございますので、新規学卒就農者に対する手当てというものを考えていかなきゃならない。

 次に、離職者に対してどういうような手を打つか。それから、建設業者等の他産業からの農業参入など、農業にチャレンジしていきたいという方々をどう迎えていくかということでございます。

 高校あたり、また、農業大学校あたりには、就農相談やら就農支援資金の貸し付け、そして、指導農業士による経営定着までのきちっとしたサポートをやはり実施していかなきゃならぬ、このように思っておりますし、企業等から中途退職した方で農業に就農する、こういう方々のためには、やはり農業の技術を習得できるような就農準備校の開設をしていかなきゃならぬ、そして、農業法人の求人情報の提供というものもやはりきちっとしていかなきゃならぬ、このように思っております。

 それから、建設業者等に対しましても、担い手を目指す農業サービス事業体に対して、農作業受託に必要な機械の購入のための借入金の利子補給なんかもしていかなきゃならぬと思いますし、多様な就農ルートに応じた、きめ細かな対応を考えていかなきゃならぬ、このように思っております。

 それで、そういうことを含めて、平成十八年度の予算でも、いろいろな分野で対応をしているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

黄川田委員 就農に対する入り口を広くするということでしょうから、時節柄といいますか、四月になりましたので来年の募集ということで、自衛官とか、あるいはまた警察官とか、募集のポスターなんかが見られるわけでありますけれども、新規の就農者に対しても、何か国民運動的にPRの工夫もする必要があるかと思うのであります。

 巷間では、フリーターやニートなどの最近の風潮とかさまざまあるわけでありますけれども、さまざまな分野で自分たちは生きていけるんだという部分とか、もっと農業をきっちりとアピールする必要があるんじゃないかと思っております。農協頼りといいますか、農協だけに頼って、丸投げみたいな人材の育成だけではならぬと思うんですが、これに関して、副大臣、どうお考えですか。

岩永副大臣 私、統計を調べてきましたら、平成二年が一万五千七百人であったのが、平成十五年には八万二百人に、ずうっと毎年毎年新規就農者というのはふえてきているわけですね。

 ただ、農業の魅力というのは、やはり実地体験をしていただくとか、その現場へ行っていただくとか、そして、農協の職員、それから県の職員、市町村の職員、普及員等々、たくさんいるわけですね。また、うちの方も農政局、農政事務所があるわけですね。そういう方々が一斉に、応募された方々の手をとって、そして就農を促進するような形のものをつくっていかなきゃならない。

 今度、情報部も、大きな情報メディアを使いながら、農業についてのPRというものを、これはテレビ、新聞、いろいろなところで、国は国の段階、県は県の段階、市町村は市町村の段階でPRしていこうというようなことで、情報収集に対しても、情報発信に対しても改革をしていって、今先生がおっしゃっておられるような魅力ある農業へのPRをしていく、そして具体的な個々の指導をしていくというようなことで、両者一体になってやっていきたい、このように思っております。

黄川田委員 それでは、ここで、農業高校あるいは農業大学校において、一番大事な経営感覚を修得するための教育がどの程度行われておるか、ちょっと具体的に事例を紹介してみたいと思っております。

 まず、農業高校については、学習指導要領に農業経営という科目がありまして、この例で見ると、私の地元、岩手でありますけれども、県立の千厩高校の生産技術科では、専門教育に関する科目の単位数三十六から三十八単位のうち、農業経営が四単位となっております。他県の例として、愛知県立安城農林高校では、四十四単位のうち二から六単位となっており、いずれも全体の一割前後となっておるようであります。

 そしてまた、高校卒業後に引き続いて農業について学ぶ農業大学校については、私の地元の県立農業大学校の農産経営科では、二年間の総履修時間二千四百六十二時間のうち、農業経営について学ぶ講義、演習が百三十五時間、先進農家に派遣して経営感覚を身につける実習が百八十時間で、合計して三百十五時間であり、全体の一三%となっております。また、卒業後に経営感覚の養成について専門的に学ぶ一年間のコースが設けられておるようであります。

 他県の例では、愛知県立農業大学校の農産園芸課程においては、二千四百時間のうち、経営の講義が百二十時間、派遣実習が三百十五時間で、合計して四百三十五時間で、これまた全体の一八%となっております。

 そこで、この経営感覚というところが一番大事だと思っておるわけなのであります。単に親が農業で、高齢化で、やむを得ず引き継ぐということではなくて、本当の担い手が育つためには、この経営感覚を磨いてやらなきゃいけないと思っておるわけでありますけれども、このやる気のある農業高校あるいはまた農業大学校等の卒業生の育成、これは長期的視点で強化すべきであると思うんでありますけれども、どうでしょうか。

須賀田政府参考人 先生おっしゃられましたように、現在の農業は、もうかつてのような、食料不足の中で、ともかく量さえつくればいいという時代ではございませんで、やはり外食だとかあるいは食品製造業だとか、そういうところからのニーズにきちっと対応していく必要があろうかというふうに思っています。

 そうなりますと、先ほどいろいろ教科の例をお聞きしましたけれども、単なる技術だけではなくて、マーケティングだとか、財務管理、販売管理、いわゆる企業的な経営感覚を身につける、こういう必要があろうかというふうに思っております。

 こういう観点から、私ども後継者育成のための道府県立の農業大学校におきまして、これは農業高校との連携が大事だと思いますけれども、教育内容というものもそういう方向にシフトするように努めていきたいというふうに思っております。

黄川田委員 新聞によりますと、新規就農者を確実に確保しようということで、認定就農者に農業高校生を認定するケースが最近ふえてきておるようであります。宮城県とか、あるいはまた鹿児島県なんかがいい例なのかもしれませんが、実践的な営農計画を作成し、目標が明確になりますし、そしてまた資金の支援もしっかりしてやれば、日本の農業を支える一員として頑張れるんだなという、そういうことが出てくるのではないかと思っております。

 それでは、農業高校について、文部科学省の方にちょっとお尋ねいたしたいと思います。

 今言ったような形で、農業に関する、あるいはまた専門高校と言ってもいいかもしれませんが、この農業高校等での担い手の育成強化の文部科学省から見た見解をお尋ねいたしたいと思います。

山中政府参考人 文部科学省審議官の山中でございます。

 お答え申し上げます。

 例えば、全国農業高校長会というところがございますけれども、この協会の調査では、平成十六年三月の農業高校の卒業生はおよそ三万八千人ございますけれども、このうち、農業系の大学、短大、こういうところへ進学した方が四千二百人程度、一一%、また、農業の自営に進まれた方が三百八十五人ということで、一%でございまして、農業関係への進学、就職がおよそ二一%ということでございます。

 私ども、農業高校の中で、しっかりと実験あるいは実習といったことを重視した教育、あるいは今先生の御指摘にございましたけれども、農業経営といった実際に農業をやっていくという経営感覚を身につける科目、あるいは、学校によりましては、ただ単に机の上で学ぶだけでなくて、じゃ、自分でこの野菜を生産して、販売して、それでどのぐらい利益が得られるんだろうかといった農業経営のシミュレーションといった授業を選択科目で行っているというふうな取り組みもあるところでございます。

 先日、私は宮崎県の高鍋農業高校というところに参りましたが、ここは全寮制で三年間農業教育をやっておりまして、卒業生の五割ぐらいが四年以内に農業につくというような取り組みをしている学校もございます。

 ぜひ、農業高校におきまして、将来の農業を継いでいくような立派な後継者となるような、そういう子供たちの教育に努めてまいりたいというふうに考えております。

黄川田委員 今答弁いただきましたけれども、実は、これは全国どこでもだと思うんですが、少子化の関係で高校の再編が行われておるようであります。

 普通高校の再編ということは、まあそれなりになるんでしょうけれども、専門高校といいますか、農業に限らず、商業とか工業とか、こういう学校のあり方、そしてまた、特にその際の統廃合のあり方といいますか、各県さまざまでしょうけれども、その流れに関して、文科省の御意見なり認識なり、ちょっとお尋ねいたしたいと思います。

山中政府参考人 農業高校を含めました専門高校の学校の数あるいは生徒の数の問題でございますけれども、農業高校の現状について見ますと、ここ十年余り生徒総数はおよそ十万人程度ということでございます。

 子供の数が減っております。そういうこともございまして、各県でそれに対応して高校の統合等が行われておりますけれども、例えば、今行われていますのは、農業高校だけでなくて、工業高校とか普通高校とかを一緒にいたしまして、子供がいろんな科目を選べるような総合科というようなことを行っております。その場合でも、農業高校が総合高校になる場合ですと、農業に関する科目、学科、これは残した形で統合していくということが多い状況でございまして、ここ十年ぐらい、農業高校で見ますと生徒総数は約十万人程度の人数ということになっております。

 ただ、例えばある農業高校でございますと、八年前、入学の志願率が約〇・七倍、つまり定員を割っているというような高校もございました。ただ、ここは一生懸命、それぞれの、農業高校でも魅力を高めて、中学校の卒業生が自分の高校に来てもらえるようにということで、一生懸命充実した教育を行うということをやった結果、去年ですと一・六倍ぐらいの志願率になったというふうな高校もございます。

 文部科学省といたしましても、専門高校の特色ある取り組みを支えたいということで、平成十六年から、今現在、目指せスペシャリストという形で、三年間、二千万円でございますけれども、特別にそういう資金を提供いたしまして、例えば農業高校の中でバイオマスを使った形で、地域の農業者あるいは農協と連携した形での取り組みをやる、そういう特色ある農業あるいは工業高校に対して資金の支援をいたしまして、その特色をもっと伸ばしていただこうということもやっているところでございます。平成十七年度では、これを二十八校、全国で二億二千万と、非常にまだまだ少ない予算でございますけれども、こういう形で、一生懸命特色を出そうとして取り組んでおります専門高校をなるたけ支援して、各学校で地域と連携しながら、特色ある、子供たちに夢を持たせるような、将来の職業につながるような、そういう教育が行われるように支援してまいりたいということを考えております。

黄川田委員 少子化の関係、あるいはまた、普通学科といいますか普通高校への進学が高まっているということで、専門高校の位置づけは大変なんでありますけれども、ただ、デパート型といいますか、何でも学べるということで、農業も工業も商業も、それぞれ専門高校だと、総合学科ということでメニューが多ければ選択肢がふえるということになるんですけれども、何のためにその学校に入ってきたんだと。やはり、日本一の農業をつくろうとか、日本一の物づくりのために工業に入ろうとか、その原点を忘れたんじゃ、これまでの農業政策と同じですから、メニューはたくさんあるけれども使い勝手のいいのはあるかなというか、そういうことにもなりますので。

 そして、やはり一番大事な部分といいますか、先ほど御答弁の中で、専門学校もしっかり支えていくという話なんでありますけれども、普通高校と違ってお金がかかる部分があるわけですよね。そうすると、削減される部分の中では、間々出てくるわけであります。やはり、物づくりといいますか、原点を忘れずに、我々は資源がない国でありますから、サービス業だけでは生きていけませんので、そういう部分にもしっかりと力を出してください。農林水産省としっかりと連携をとってください。

 終わります。

松野(博)委員長代理 次に、山内おさむ君。

山内委員 民主党の山内おさむでございます。

 このたび、食料・農業・農村基本計画が策定されまして、その内容の中にも、そして本法の中にも、担い手として認定農業者、そして集落営農、特定農業団体というのがしっかりと位置づけられたということなんですが、この内容を見まして、まず、これは今までの農政を転換するものなのかという点を最初にお聞きしたいと思います。

島村国務大臣 お答えいたします。

 農業従事者の減少、高齢化、あるいは耕作放棄地の増大など、農業の生産構造の脆弱化が進行する中で、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う強靱な農業構造を構築することが現下の農政の喫緊の課題であると認識いたしております。

 このような観点から、農業の構造改革を進めるためには、これまでの、幅広い農業者を一律的に対象とする施策体系を見直しまして、地域における農業の担い手を明確化した上で、これらの従事者を対象として、農業経営に関する各種施策を集中的、重点的に実施していく農政の方向性は避けて通れないと認識いたしております。

 このため、今回の基本計画におきましては、このような改革の方向づけを明確にしたところであり、これに基づき農政改革を進めてまいる所存であります。

山内委員 私もそうすべきだとは思うんですけれども、今までの農業政策を見ていますと、多面的機能ということを重視する立場だったとは思うんですけれども、産業政策としての農業振興政策と、それから、地域をどう生かしていくかという地域政策としての農村振興政策と、両論を同じように重視してきて、それは確かに大事なことなんでしょうけれども、実際はちょっとどっちつかずの農政だったのではないか、そういう点はひとつここで反省をして、新しい改革を進めるべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。

    〔松野(博)委員長代理退席、委員長着席〕

岩永副大臣 産業政策としての農業政策は、意欲と能力のある農業経営者に直接働きかけていって、そして経営の発展を積極的に後押しする、そういうような政策ですね。そして、地域政策というのは、御承知のとおり、地域全体を農業集落ととらまえて、そういう状況の中で、集落の維持やら安定その他の活性化を図るというようなものなんですね。だから、私は、先生がおっしゃるように、ではどっちが大事かと言われると、どっちも大事だ、このように思うわけです。

 これからのやはり政策展開としては、価格支持政策などの幅広い農業者を一律的に対象としてきたことから、今度は意欲と能力のある農業経営を集中的、重点的に応援していくような産業政策の意味合いというものをやはり強く持っていかなきゃならぬのではないか、こういうように思います。

 だから、一つの政策手段で複数の異なる政策目標を追求することは大変わかりにくいものがございますけれども、産業として、どう農業を他産業に匹敵する産業としていくか。地域政策は、やはり住む地域としての課題解決だというようなことでございますので、どちらも大事だ、このように思っております。

山内委員 今の副大臣の話から受け取れるのは、ちょっとめり張りのついた農政をやっていこうじゃないか、特に集中化ということですね、重点的に農家を育てていこう、そういう政策が必要ではないかと思うというような話だったんですけれども、一つ私が心配しているのは、西日本の農業を心配するんですね。西日本というのは、意欲はあっても、大きな田畑というか、能力がない。そういうところに、これから省として目が向いていくのかということを心配しますし、それから、シイタケとかイグサとかネギ、三年前でしたか、セーフガードが二百日間発効されたときに、やはりその主産地は西日本だったんです。つまり、輸入農産物にも押される条件不利地域、特にそれが点在しているような西日本の農業についてすごく心配な点があるんですが、例えば、適宜適切なセーフガードは発効して、そういう農業が成り立たなくなるような施策はとらないというようなことを、ひとつこれからも西日本方面ではそういう政策もきちんととっていきますというようなことをここで述べていただけるでしょうか。

大口大臣政務官 セーフガードについて、今先生から御指摘がございました。特に、ネギのセーフガードについて、先生の御地元は白ネギの産地でもございますから、御心配のことだと思うんですね。

 かつて、平成十三年度においてセーフガードの暫定発動を行った際には、その前の時期にネギの輸入が急増しまして、そして国内価格が大幅に低下した、そういう状況があったわけですね。それで、大体、前年に比べて六七%に大幅に価格が低下した、それから前年に比べて一七六%輸入量が多くなった、こういうこともあって、平成十三年、セーフガードを発動したわけでございます。ただ、その後、輸入ネギは加工ですとかあるいは業務用に、国産の方は一般家庭用にというすみ分けができて、安定的に推移をしていたところでございます。

 昨年、平成十六年においては、ネギの輸入量は年間七万トン、これは過去最高となったところでございます。これは前年比一五五%なんですが、これは御案内のとおり、高温、干ばつ、それから十月の台風等の被害によって国産の供給が著しく減少したということによって輸入量がふえたわけでございますけれども、では、国産品の価格はどうかといいますと、これは高い水準で推移をしている。例えば、平成十六年度キロ当たり二百六十八円ということで、前年比で一一一%というような水準で推移している、こういう状況ですので、セーフガードを今発動しなければならないような、そういう状況ではない、こういうふうに考えております。セーフガードについてはそういうことでございます。

山内委員 昨年の年末は確かに特殊な要因もほかにございましたので、輸入のネギが多かったけれども、日本のネギは値崩れしなかったというふうな事情は私も把握しております。

 しかし、昨年のなべのシーズンに向かって物すごく、前年同期比とか先月末比と比べても二倍とか、たくさん入ってきたものですから、それは生産者の皆さんはやはり驚かれたこともございます。適宜適切なセーフガードの対応等も、これからまたお願いすることがあろうかと思います。

 それから、認定農業者の問題とそれから集落営農の問題で、それぞれ、若干お話を伺いたいんですけれども。

 まず、認定農業者、これは選定過程がちょっと不透明だなとかあるんですね。あの人が選ばれて、あの人は選ばれなかったとか。それから、私も自分の出身市町村と近郊の町村しか例は知らないんですけれども、何か同じようなレベルの人たちが選ばれていないんじゃないか、選定にばらつきもあるんじゃないかということも言われています。

 毎年一万人ぐらいずつ認定されているようなんですけれども、実際にはやめていく人もおられるんですね。その人たちに聞くと、認定農業者になっていても何にもいいことがないと言われるんですね。やめた人はそう言ってやめていくんでしょう。何でですかと聞くと、例えば、金利が多少安いからといったって、やはり宅地や農地は全部抵当に出さないとお金は貸してくれないとか、保証人は何人もつけてくれというような話で、本当にスーパーLも使いにくいというようなことも言われます。

 ですから、今回そうやって、農政の転換ということで、認定農業者を日本の農業の政策としてふやしていこうという心づもりであるならば、やはりこれからどうフォローアップしていくかということが必要だと思うんですけれども、その辺の施策はあるんでしょうか。

島村国務大臣 ただいま委員が御指摘になった点は私どもにも耳に入っておりまして、これは非常に問題なんだろうと思っておりますが、私どもも拱手傍観しているわけではございません。少なくとも認定農業制度は、市町村が地域の実情に即して、農業経営者の意欲と能力を尊重して認定する仕組みである。これが本来であるにもかかわらず、今御指摘があったように、同一の農協でよく似た経営を営む組合員であっても、住む市町村が異なった場合、ある者は認定され、ある者は認定されないなど、市町村の認定の仕方にばらつきがある、こういう指摘をいただいております。

 それで、認定後の経営改善状況の把握がまだ十分に行われていないなどの問題点の指摘を受けておりますので、このため、実は、平成十五年の六月に有識者から成る第三者機関の意見を聞くことなどにより、認定手続の透明性の確保と認定のばらつきの解消を行うこと、それから経営改善計画の達成に向けた指導助言により定期的に取り組み状況を把握することなどを内容とする運用改善のための通知を発したところであります。

 まだ経過的な段階かもしれませんが、今後ともこれらの運用改善の状況を的確に把握し助言を行うなど本制度のさらなる的確な運用に努めながら、担い手の育成確保を図ってまいりたい、こう考えております。

 御指摘の点は、私も全く同感であります。

山内委員 それから、集落営農の関係についてお聞きしますと、集落営農は、基本計画を読んでみますと、どうも特定農業団体になっていってほしいという方向で考えておられるようなんですね。つまり、組織的にもそれから会計の面でも、しっかりとした団体にこれからの日本の農政を任せていこう、そういう思いで基本計画は語っておられると思うんですが、しかし、こういうことはないんでしょうか。

 例えば、集落の中に大きな圃場がなくて、しかも大きな圃場があったとしても、農機、大型の農機を運転する人はほかの集落にいる。ですから、特定農業団体に特化していくという政策も確かに必要でしょうが、いろいろな人がいろいろな地域にいて農地も点在していて、やはりもうちょっと、集落営農として不十分だけれども集落営農として成り立つような施策というのも必要だと思うんですね。その点は、何かお考えございますか。

須賀田政府参考人 確かに、先生言われるように、集落によってはその集落にはオペレーターがいない、隣の集落から来ていただいている、あるいは農地が出作入り作等の関係もあって、ほかの集落にも行っている、こういう例があるというふうに私どもも受けとめています。ただ、担い手として今後集落営農を位置づける場合には、別に特定農業団体云々と切り離してみましても、やはり経営体の実体を有してほしい、それには、やはり規約があって、一元的に経理をして、将来、効率的、安定的な農業経営に発展してもらいたい、これは最低限要求をしていきたいというふうに思っています。

 その上で、今農業団体と一緒に、全国的な集落営農の組織化、法人化の取り組み運動をやっておりまして、全国の実情を踏まえさせていただきまして、それをどういう要件にするかというのはまた夏過ぎに議論をして決めていきたい。地域の実情は十分勘案させていただきたいというふうに思っています。(発言する者あり)

山内委員 先送りの話というのは、後で、耕作放棄地の面積が確定していないということでもお聞きしたいと思うんですけれども。

 集落営農としてできない、あるいは認定農業者も多くない地区というのは、多分どこでもあると思いますので、そういうところが規模拡大を努力していこうというような意欲がなくなってしまう、つまり、もうあなた農業見込みないよ、やめてしまってもいいんじゃないのというようなムードにだけはならないように、慎重な施策の推進がやはり必要じゃないかなと思います。

 もう一つお伺いしますけれども、農村女性というのは約六割ぐらいおられるそうなんですが、農協の女性役員が全国でも約三百人、女性農業委員は二千人ちょっとというんですね。そうすると、一%とか二%とかという数字でしかないんですけれども、男女共同参画社会が叫ばれて久しい今日、パーセンテージを作成して段階を踏んでふやしていこうとか、何かそういうような、女性の力をもっと使っていこうというような施策はないんでしょうか。

岩永副大臣 確かに女性の農業就業人口は、先生、平成二年で六割でございましたので、今はちょっと減っていまして、五五%に平成十六年はなっているわけですね。それにしても過半数以上を女性が占めているということで、大変重要な役割をお果たしいただいているということで、我々、女性に対する施策というものは重点的に考えていかなきゃならぬ、このように思っております。

 先日も、実は女性の起業者の代表者に全国から来ていただきました。そして、女性としての悩み、こうあってほしいという農水省に対するいろいろな要望を聞きました。

 例えば、こういう話があるわけですね。うちの家もそして田畑も、財産全部お父さんのものになっていますよと。だから、私が何か企業を起こそうと思って銀行に金を借りに行くと、あなたの担保何もないじゃないですかというようなことで、女性としてそういう点の差別があるんだ、こういうような話でございますので、私も早速帰りまして、女性だけに優先的に、企業を起こす場合、借りられるようなものはないのかというようなことで、今それぞれの金融を洗い直しているわけでございますが、そういうような問題がある。

 また、ここまで会社をやっているんですが、経営者として、後、自分の退職金が来ないというようなことがあって、やはり将来に対して不安を感じていると。だから、中小企業庁長官にすぐ電話しまして、農業法人にはそういうものは適用されないので、農業法人にもそれが適用されるようにしてくれと言いましたら、ことしの四月から適用されるようになったわけです。

 事かようなように、きめ細かに、女性の皆さん方が企業を起こせる、そして参画できるようにするというようなことで頑張っていかなきゃならない。

 今先生のおっしゃったような農協の女性役員、そして女性農業委員の参画目標なんかをきちっと設定して、そこへどういうように上げるかということを、やはりこれは行政の力でもやっていかなきゃならない。そして、家族経営協定というのをきちっと結ばせて、女性の皆さん方がどれだけ休みがとれるか、どれだけ給料が取れるかというのも拡大していかなきゃならない。また、集落営農で女性の働きというものはどういう部分があるかということで、きちっとその位置づけをしながら、女性の皆さん方が本当に、働いていても単に男性の補助的な役割じゃなしに、中心になるようなことをしなきゃならぬ、いろいろ考えていかなきゃならぬと思っております。

 きょうも調べてみましたら、農山漁村女性・生活活動支援協会というのがございまして、これは女性の皆さん方だけで、女性の地位を確立して、農業の中で中心的な役割を果たそう、こういうようなことがありますので、これなんかももっと国が応援して、全国で大きなものにして、そして女性の力を浮上さすような形のことにしていきたいというようなことでございます。女性の参画のための環境づくりの推進で、能力向上に向けた研修、それから女性のネットワークづくりの推進、それから子育て等の負担軽減を支援するような情報提供等の推進等々を頑張って、ひとつ施策としてやっていきたい。平成十七年度も、強い農業づくりの交付金だとか、それから農業・農村男女共同参画チャレンジ総合推進事業なんかで、予算的にもそういうものに特化して組んでおります。

山内委員 きのう通告して、副大臣にそうやって勉強してもらって、うれしく思っています。

 先ほど生産局長のお話のときに言ったんですけれども、何というんですかね、ちょっとこの法案が拙速に映るかなという議論をするときに、やはりもう一つの論点である耕作放棄地の問題なんですね。平成の七年、平成の十二年と五年ごとにセンサスをとって、それで二十四万ヘクタールの放棄地が三十四万ヘクタールまで多くなっていった。有効農地の一割近くまで数値が伸びていった。大変なことだなと思っているわけですよ。若手の官僚の皆さんに、では、平成十七年の時点から五年先、十年先には耕作放棄地をどれほど減らすのかと質問したら、彼らいわく十七年度の数値はとっていないと言うでしょう。そうすると、幾ら十年先の食料自給率だ、十年先の認定農業者の数をこれだけふやす、農業特定団体を二万とかですか、そういうふうにふやしていこう、そういう数値目標をとっても、事耕作放棄値の減少については、今の平成十七年の数値がとられていないのに、どうやって五年先、十年先を見通すんですか。

須賀田政府参考人 耕作放棄地、平成十二年で三十四万ヘクタール、十七年の数値は出ていない、これはもう事実でございます。ただ、実感として、耕作放棄地は増加しているということは強く推察されるわけでございます。耕作放棄地になりますと農地面積の外の数になりますので、耕作放棄地をできるだけ少なくしていく努力、これは必要であろうというふうに思っています。

 そこで、私ども今回は、今までどうやっても耕作放棄地が減らなかった、その一つの原因に、無理に農業の方へ引っ張ろうとしたことがあるんじゃないか。やはり、そこにだれも受け手がいないようなところは、もう山林の方へ戻す、そして受け手がおるようなものは農業上の再利用を図っていく、そういう政策をこの際導入して、市町村長さんに頑張っていただくというのが現実的な路線ではないかということで、そういう制度を用意したということでございまして、今回はそういう制度の用意をさせていただいたということで受けとめていただければと思います。

山内委員 もう一つ、あれっ、どうかなと思う施策の一つに、都道府県知事が指導、勧告をするというようなことが規定されるんですけれども、これは、私も鳥取県だけですけれども、聞いてみました。そうしたら、農地の担当者がこういうことを言うんですね、農振法にも同じような規定があります、しかし機能していませんと。今回の法案が通ることによってそれが機能し始めるんでしょうか、疑問に思いますというのが県の職員の答えでした。また、知り合いの認定農業者の方に聞くと、受託してくれ、買ってくれ、借りてくれとたくさん来て、さばき切れないとも言うんですね。

 つまり、もう既に認定農業者の人でたくさんの耕作をしている人たちにとっては、そういうふうに県知事さんや市町村長さんが例えば頼みに来ても、もう手いっぱいですよね。つまり、一部の元気のいい認定農業者の皆さんにそういう施策がわっと行って、そしてその認定農業者の皆さんも困る、それに関連して市町村の担当者も県知事さんも困るというような構図にこの施策がならないかどうかを聞きたいと思います。

須賀田政府参考人 現在の農振法の特定利用権制度は、昭和五十年に措置をされました。そのときに、憲法問題との関連もございまして、要件として、農協または市町村がその住民または組合員の共同利用に供しないといけない、それについてもめたときに最終的に都道府県知事が裁定を下す、こういう法律制度にしたわけでございます。

 その後、これは動きませんでした。いいところまで行ったものもございましたけれども、動きませんでした、最終的には。一つは、都道府県の部局が、やはり憲法問題ということで腰を引いたというところがございます。それからもう一つは、やはり農協、市町村の住民あるいは組合員の共同利用、この要件が厳しい、こういうことがあったというふうに私どもは認識をしております。

 そこで、今回は、所有権絶対というような考え方はもう大分薄れてきたということもございまして、それから共同利用の方も、特定農業法人だとか農地保有合理化法人も賃借権の設定をできる者に加えて、それを通じて個別利用もできるようにした。あとはもう都道府県の姿勢の問題、こういうことで、これだけ耕作放棄地がふえているんですから、別に裁定まで持っていかなくても、伝家の宝刀というのは抜かないところに意味があるともいいますので、ぜひ耕作放棄地の解消に向けて前向きに取り組んでほしいというふうに、法律が通ればお願いをするということでございます。

山内委員 生産局長が涙ながらにお願いされるわけですから、それはもう全国の都道府県知事に本当にこのテレビ中継をぜひ見ていただきたかったなと思っております。

 最後の質問になりますけれども、私も五年前に議員にならせていただいて、しばらくして、農水委員にも何年か前になりました。そのころには既に耕作放棄地問題というのは大変深刻な問題となっていたんです。ところが、これも若手の省の官僚の皆さんにお聞きすると、耕作放棄地についての基本方針を定めている都道府県は、四十七ある中の十しかないというんですね。こんなに農地転用でどんどん宅地化をしていく、あるいは高齢者が農業の後継者もなく農業を畳んでしまうということが強く深刻な問題として訴えられていたのにもかかわらず、十県しか基本方針を定めていない。

 つまり、これはもう既に国がどう言おうと、あるいは県知事や市町村長がどう思おうと、農地の需要がもうなくなっている、労働力が不足している。だからこういう十都道府県しか策定していない。もう少し違う施策が必要なのではないか、そう思うんですが、どうでしょうか。

須賀田政府参考人 私ども、耕作放棄地問題というのはもう重層的に対応したい。担い手が近くにおれば、まず担い手にあっせんして使ってもらう。そこまで担い手、受け手がいないというのを先ほど私は申し上げましたけれども、最終的には裁定という強制的な方法があるよということで、市町村なり農協なり、農地保有合理化法人なり特定農業法人、こういったところに管理を兼ねて賃借権を設定してもらいたい。それでもだめな場合は、周りに迷惑をかけないように、せめてきちっとした管理、これは市町村長が命令します。もう周りに迷惑かけるな、草刈りぐらいはしろという命令をかけていきたい。それでもだめな場合は、特区に指定をいたしまして、他産業から入ってきてもらう。重層的な措置を用意いたしまして、これでもだめならとなれば、もうしようがない、植林で山林に戻す。どうあっても、農地あるいは林地が有する公益的機能、多面的機能の発揮に遺憾のないようにしたいというふうに思っているわけでございます。

山岡委員長 山内君、時間です。

山内委員 局長の話、もう少し聞いていたかったんですけれども、時間がなくなりましたのでこれで終わります。確かに、プロ農家を育てるということは大事なことだと思います。しかし、意欲があっても、本当に大きな圃場もない、実績も十分にうかがえなかった、そういう地域があるのも間違いないと思います。そういうところに、自給率の問題にしても、その実効性がある施策を推進する上でも、やはり直接支払いということを念頭に置いて、これからの農政を考えていただきたいという点を最後に指摘させていただきまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山岡委員長 次回は、来る十九日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時七分散会


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