衆議院

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第23号 平成17年8月4日(木曜日)

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平成十七年八月四日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山岡 賢次君

   理事 今村 雅弘君 理事 西川 京子君

   理事 二田 孝治君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 楢崎 欣弥君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      伊藤信太郎君    石田 真敏君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      上川 陽子君    木村 太郎君

      北村 直人君    後藤 茂之君

      後藤田正純君    柴山 昌彦君

      田中 英夫君    西村 康稔君

      萩生田光一君    原田 令嗣君

      古川 禎久君    保坂  武君

      御法川信英君    森  英介君

      一川 保夫君    岡本 充功君

      岸本  健君    小平 忠正君

      鮫島 宗明君    篠原  孝君

      仲野 博子君    堀込 征雄君

      松木 謙公君    山内おさむ君

      赤羽 一嘉君    大口 善徳君

      高橋千鶴子君    山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 青山 幸恭君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       外口  崇君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            村上 秀徳君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  西川 孝一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            川村秀三郎君

   政府参考人

   (水産庁長官)      小林 芳雄君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  南川 秀樹君

   参考人

   (食品安全委員会リスクコミュニケーション専門調査会座長代理)       唐木 英明君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月四日

 辞任         補欠選任

  赤城 徳彦君     伊藤信太郎君

  岡本 芳郎君     古川 禎久君

  川上 義博君     萩生田光一君

  城内  実君     御法川信英君

  津島 恭一君     保坂  武君

  西村 康稔君     柴山 昌彦君

  神風 英男君     篠原  孝君

  大口 善徳君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     赤城 徳彦君

  柴山 昌彦君     西村 康稔君

  萩生田光一君     川上 義博君

  古川 禎久君     岡本 芳郎君

  保坂  武君     津島 恭一君

  御法川信英君     城内  実君

  篠原  孝君     神風 英男君

  赤羽 一嘉君     大口 善徳君

    ―――――――――――――

八月四日

 食料自給率の抜本的向上に関する請願(津島恭一君紹介)(第三二四五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

山岡委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として食品安全委員会リスクコミュニケーション専門調査会座長代理唐木英明君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として農林水産省総合食料局長村上秀徳君、消費・安全局長中川坦君、生産局長西川孝一君、経営局長須賀田菊仁君、農村振興局長川村秀三郎君、水産庁長官小林芳雄君、内閣府食品安全委員会事務局長齊藤登君、財務省大臣官房審議官青山幸恭君、厚生労働省健康局長田中慶司君、医薬食品局食品安全部長外口崇君及び環境省自然環境局長南川秀樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村太郎君。

木村(太)委員 委員長、大臣初め皆さん、おはようございます。トップバッターで御質問させていただきたいと思います。

 まず、去る七月二十日でありますが、WTOパネルは、アメリカ産のリンゴ火傷病に係る植物検疫措置につきまして、日本側の主張を認めないという判断を出しました。七月の二十六日、私の地元でありますが、千人を上回る規模で、火傷病の侵入断固阻止という名目で大規模な大会が開催されまして、私も出席をしてまいりました。

 火傷病というのは、リンゴだけではなく、ナシなどほかの農産物、また、バラ科の花卉、庭木にも感染するという恐ろしい病害でありまして、リンゴを中心に果樹生産農家の問題のように思われがちでありますが、そればかりではないという思いで以下御質問させていただきたいと思います。

 既に始まっております二国間協議におきまして、新たな検疫措置につきましてどう構築されつつあるのか、お尋ねしたい。また、万が一侵入させないためにも、水際での国内検疫体制の強化あるいは侵入警戒調査の強化など、日本として国内においてのあらゆる対策をとるべきと思いますが、この点もお伺いしたいし、またもう一つ、試験研究の充実強化など、さらに努力をしていただきまして完全防除技術の確立などを急ぐべきと思いますが、この三つの点、あわせてお伺いしたいと思います。

中川政府参考人 三点お尋ねでございましたので、簡潔にお答え申し上げます。

 まず第一点目の、アメリカとどういう形で協議をしていくのかという点でありますけれども、WTOの再パネルの報告によりますと、成熟した火傷病の病徴のないリンゴは感染のリスクが無視できるというふうな判断がされたわけでございます。そこで、成熟して病徴のないリンゴというのをどういうふうにきちんと確認をするのかということがアメリカとの間での一番のポイントでございまして、この点は、二国間協議におきまして、一定のサンプリング調査をして、きちっとした成熟したものである、また病徴がないということを確認する、そういうシステムについてアメリカ側と協議をし、合意をしたところでございまして、これをこれからはきちっと確認をするようにいたしていきたいというふうに思っておりまして、この点につきましては、生産者の方々などにも御説明をし、またパブリックコメントも今いたしているところでありまして、八月中には、そういったものをきちっと、制度として、必要な措置をとりたいというふうに思っております。

 それから、万一それにしても侵入したときに備えてどうするのかというお尋ねでございます。

 主な港あるいは空港におきまして、あるいはまた生産地におきまして、侵入警戒調査というものをこれまでもやってきましたけれども、十七年度におきましてはそれを大幅に強化をすることといたしておりまして、早期発見、早期防除のための監視体制の強化というものを私どもとして取り組んでいきたいというふうに思っておりますし、万一そういうことの中で侵入ということが発見をされました場合には、早急にその蔓延を防止するために、植物防疫法に基づきまして緊急防除という制度がございますけれども、これを中心としたアクションプランを今作成したところでございます。

 さらに、研究についてのお尋ねがございました。

 日本では野外での試験ができませんので、海外の研究機関なり研究者と連携をしながら、先生も御指摘になりました完全な防除技術の開発等も含めまして、こういった共同研究など、必要に応じて取り組んでいきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

    〔委員長退席、黄川田委員長代理着席〕

木村(太)委員 万が一はあってはなりませんが、万が一のこともやはり考えておかなければなりません。

 そこで、既に農林水産省は、全責任をとる、こう表明しておりますが、全責任というのは、完全撲滅のための緊急対策はもとより、経営にかかわる補償、いわゆる経済的なことも含めたすべての面での全責任としてとらえていいのか、確認させていただきたいと思います。

島村国務大臣 火傷病につきましては、今、中川消費・安全局長からるる御説明したとおりでございますが、少なくも的確な侵入防止措置を行うことがまず基本であり、万が一、我が国に火傷病が侵入した場合には、発生地域が拡大する前に早急に根絶することが何よりも肝要であります。

 このため、火傷病などの重要病害が侵入した場合には、植物防疫法に基づいて、宿主植物の移動制限、あるいは消毒、除去等の緊急防除を行うこととしておるところです。

 また、その際の緊急防除に係る費用については、農家の経営に負担が生じないよう、除去した木の買い取りを含め、これまで国が責任を持って負担してきておるところです。万一、火傷病が侵入し、これに係る緊急防除が実施される場合にも、同様に対応してまいる考えでございます。

 また、委員から、お地元の方々を通じたり、いろいろ御相談があったようでありますが、我々は、これからも真摯にこれらの問題に取り組んで、可能な限りこの問題が生じないような事前の配慮をしていきたい、こう考えているところであります。

木村(太)委員 大臣の御答弁の中で、木を買い取るという言葉もありました。ということは、仮に木を買い取らなければ、しばらくその木から生産し上がる農家所得あるいは経済的な経営の姿ということも含めてというふうにとらえていいわけですね。

中川政府参考人 木を買い取る場合、算定をどうするかということでありますけれども、当然、その木の持っている価値、それは、何年間かこれから生産をしていくというものであれば、その生産の期間、将来にわたる期間というものもちゃんと考慮に入れまして、その木の価値というものを算定していきたいというふうに思っております。

    〔黄川田委員長代理退席、委員長着席〕

木村(太)委員 次に、生産者に火傷病というのはどういうものかを知っていただくことは大事なことでありますが、それだけではありませんで、消費者、あるいは先ほど冒頭言ったように、ナシなどのほかの農産物を生産する方々、造園業を営む方々あるいは種苗業を営む方々、こういった方々にも、広く国民の皆さんに火傷病というものがアメリカのリンゴにあるということを知らしめる努力も必要ではないかなと思いますが、この点いかがでしょうか。

中川政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、これまでも私ども、リンゴの生産者の方だけではなくて、ナシを初めとした果実の生産者あるいは生産者団体、それから県や市町村等の方々、関係者の方々に対しましても、海外での火傷病の被害実態ですとか新たな検疫措置の内容、それから、どうすれば未然に侵入を防止することができるかといったさまざまな対策、取り組みの内容について、説明会を開催いたしまして説明をしてきたところでございますし、また、パブリックコメントなどの措置も今実施をいたしているところでございます。

 消費者の方々も含めまして、さらにまた、造園ですとか種苗などの関係団体に対しましても、この火傷病につきまして情報提供を行うことによりまして、火傷病に対します周知を図り、きちっとした理解のもとにこういった取り組みが行われるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。

木村(太)委員 では、よろしくお願いします。

 では、火傷病につきましてはこの辺にしておきまして、ことしの冬というのは大変記録的な厳しい豪雪の冬でありました。地震のあった新潟県も含めて、私の地元なんかでは観測史上最高の積雪量を記録したという厳しい冬でありましたが、そのことによりまして春先の融雪の災害ということも深刻に発生しまして、例えばリンゴをつくっている園地なんかが土砂崩れに遭ってとうとい人命まで失われたという悲惨な災害も発生したわけであります。

 そこで、一刻も早い復旧を図るため、農林水産省がいろいろと対応してきていること、私も承知しておりまして、大変心強く思い、敬意を表したいと思いますが、先般、いろいろ今まで努力してきたことをまとめつつあるというふうに聞いておりましたので、この農地、農業用施設にかかわる対応を、今現在どうなっているのか、確認させていただきたいと思います。

大口大臣政務官 木村先生、この問題につきましても、四月の十四日に大臣に対して御質問をされております。そういう先生の御提案等も踏まえまして、今回、ことしは特に記録的な豪雪でありますので、しっかり対応してまいってきているわけでございます。

 新潟、青森、それから山形、福島、長野、富山、石川、鳥取と、全国八県で四十一億円の被害額の査定になっております。この雪解けによる災害の復旧については、暫定法、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律に基づいて国費補助の支援がなされることになります。

 農林水産省といたしましても、できる限り迅速な災害査定に努めてきたところでございまして、通常二カ月のところを一カ月ぐらいで査定を終えまして、今後も引き続き、県、被害市町村と緊密に連携、調整を図り、速やかにこの災害復旧がなされるよう対応してまいる所存でございます。

木村(太)委員 よろしくお願いします。

 最後の質問をさせていただきますが、新しい農業基本計画を見直してつくり、時間的に考えますと、平成十九年というのが大変大事な年になってくるんだと思います。それに向けて、ことし、また来年、いろいろな準備段階にもあると思いますが、例えば品目横断的直接支払い制度のスタートの年になるんだろうと思いますし、十九年以降において果樹の経営安定対策のあり方もどうするのかということが、既に議論をしているようであります。

 この経営安定対策のあり方、十九年以降どうするのか、また、これにかわるかもしれない果樹経営支援対策というものも既に議論をしているというふうに承知しておりますが、今後、いつごろまで、どのように十九年以降の施策として判断していくのかどうか、現時点でお答えいただければありがたいと思います。

西川政府参考人 十九年産以降の果樹経営安定対策の検討状況ということでございます。

 委員御指摘のように、十九年度以降、新たな経営支援対策に移行することを目指しまして、今年度中をめどに検討を進めているところでございます。ただ、この対策の具体化に当たりましては、青森県を初めとする産地の意見を十分踏まえてまいりたいというふうに考えております。

 新たな経営支援対策、どういうふうな検討を進めているのかという中身を申し上げますと、これは、産地が作成する果樹産地構造改革計画というものに基づきまして、小規模な基盤整備、優良品目への転換、園地の流動化といった前向きな産地改革に取り組もうとする担い手への支援、それと、近年充実されてきました果樹共済への加入促進といったことに重点を置いてまいりたい、そういうふうに考えているところでございます。

木村(太)委員 ありがとうございました。終わります。

山岡委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 きょうも懲りずにBSEの問題について質疑をさせていただきます。

 本日は、内閣府食品安全委員会の専門委員を務めていただいております東京大学名誉教授の唐木先生にお忙しい中おいでをいただきまして、私の主張はもう何回も申し上げているとおりでございますが、唐木先生にその御見解を問いただすという形で質問をさせていただきたいと思います。

 まず、食品の安全性に関するリスクについての考え方について整理をしておきたいというふうに思います。

 私は、食品の安全性に対するリスクというのは二つあるんではないかと。一つは、そのリスクの原因となるハザードの解明というか、その仕組み、メカニズムを解明すること。二つ目は、そのリスク、ハザードによって人が感染をして健康被害を起こす確率がどのくらいあるか。この二つをきっちり整理しないと、ややもすると、このBSEの問題についても、BSEという病理は解明されていない、解明されていないがゆえにいつまでたっても安全ではないんだ、こういった主張が強くなるわけであります。

 私は、こういったことでいきますと、このメカニズムが解明されない限り、リスクがゼロリスクにならない限り、安全な食品として人が食することができないのか、こういった議論はかなりへんぱな議論なのではないかというふうにかねがね思っておりますが、その点について、まず頭の整理として唐木先生からの御見解を賜りたいと思います。

唐木参考人 唐木でございます。

 最初に、私は食品安全委員会に所属をしておりますが、委員会としての公式な見解をお話しする立場にはございませんので、きょうは個人的な見解をお話しするということでお許しをいただきたいと思います。

 食の安全を守るシステムというのは、二年前の食品安全基本法で確立をされました。食品のリスクを下げる方法については、今の先生のお話のように二つの考え方があります。

 一つは、ゼロリスクあるいは白黒法というふうにいいまして、リスクが食品の中に少しでもあってはいけない、これをゼロにしたいという考え方であります。もちろん、これができれば望ましいんですが、現実問題としては、これは非常に難しい。

 そこで、食品安全基本法に取り入れられました考え方は、リスクをゼロにするのではなくて、科学的なリスク評価に基づいて健康被害が出ないところまで減らしていこうという、すなわち実質安全レベルを達成しようという、そういう現実論の考えでございます。この点が一般にまだ十分に理解をされていないということは先生の御指摘のとおりでございまして、食育を初めとする十分な教育の努力が必要であると私は考えております。

 次に、科学的なリスク評価、これもまた先生の御指摘のように、ハザードの研究とそれからリスクの研究の二段階で行われます。

 ハザードの研究は、その分野の研究者が行うわけですが、例えばBSEの場合はプリオンの専門の研究者が行います。彼らの役割は、自分が研究するハザードの恐ろしさを伝えるということ、それから、それを伝えることによってなるべくたくさんの研究費を獲得する、それでさらに研究を進める、そういうことでございます。一方のリスクの研究者の役割は、科学に基づいて中立公正にハザードに出会うチャンスというものを計算して、そこからリスクの大きさを推測するということでございます。

 こういうふうに、両者の目的が違うために、ハザードの研究者は危険だという主張をしやすく、リスクの研究者がそれを否定するという構図がよくございます。その辺が一つの問題でございますが、両者の協力が必要であるというふうに考えております。(発言する者あり)

赤羽委員 ちょっと静粛にしていただけますか。

 私は、食品の安全性に対するリスクというのは、今、唐木先生がおっしゃられたように、結局、実際に健康被害を起こす程度のリスクはどうなのか、私は、ここが一番重要であるというふうに、先生のおっしゃられたとおりだというふうに思っております。

 それでは、全頭検査について確認を、その限界性と必要性についての御見解を伺いたいんですが、先日の集中審議で、品川先生は、異常プリオンたんぱくは一〇〇%SRMに存在するわけではない、であるがゆえに、SRM除去だけでは安全性の担保にはならないんだ、全頭検査は必要なんだ、このように陳述をされておりました。

 しかし、今の全頭検査というのは、脳幹の部分からの検体のみを検査するのが実態でありまして、この全頭検査を実施することによって、それでは一〇〇%安全性を担保することができるのか、一〇〇%リスクを排除することができるのか、私は素人でありますけれども、それは大変疑問に思います。

 一〇〇%リスクが排除できないとするならば、全頭検査、品川先生の主張のようなことを突き詰めていくと、やはり牛肉を食べることはできないというおかしな結論に達してしまうのではないかと私は危惧をしておるんですが、唐木先生に、この全頭検査の限界性並びに必要性についての御見解を賜りたいと思います。

唐木参考人 品川教授がお話しになりました、異常プリオンたんぱくは一〇〇%SRMに存在するわけではないという陳述は科学的に真実でございます。ただし、だからSRM除去だけでは安全性の担保にならないという陳述は真実ではございません。

 異常プリオンがSRM以外にあるということは真実でございますが、その量は極めて少なく、全体の一%をはるかに下回ります。食品安全委員会では、それは〇・六%程度というふうに考えておりますが、SRMの除去により、BSE感染のリスクは九九%以上除去されます。残ったリスクは一%よりずっと下でございます。

 BSEの場合も、リスクをゼロにする、ゼロリスクを達成することが必要ではございません。SRMの除去だけで実質安全性は確保ができるということでございます。

 こういうことで、プリオン研究者はプリオンの恐怖ということを強調いたしますが、リスクの専門家は、それに出会う確率が低いこと、すなわち、リスクが極めて少ない、実質安全性は保たれているというふうに判断をしております。

 先生の御指摘のとおり、脳幹のプリオンの蓄積が遅いので若い牛のBSEを見逃すということは世界の常識でありまして、だから、日本も二十カ月齢以下の検査をやめることにしました。だからといって、検査がすべて無意味というわけではございません。三十カ月以上ではBSEの一部を見つけることができます。しかし、SRM除去で既に実質安全性は確保されておりますので、検査はそれ以上の対策、すなわち安全のための対策というふうに位置づけることができます。もちろん、安全対策というのは必要でございますが、これを実施する際には、検査は見逃しが多いので安全対策にならないということを明確に説明をすることが必要でございます。そのように考えております。

赤羽委員 今先生、多分、安全対策というのは、安心対策ですね。そういうことですね。

 私も、全頭検査については、日本で行われた全頭検査というのは、あの日本で初めてBSEを発生したパニックを静めるといった意味での行政措置として、私は正しかったというふうに思っております。また、四百万頭に近い検査をしたといったことによって知見が蓄積をされたという意味で、これもまた、やった意味はあったというふうに思っております。

 だからこそ、私はこの前の委員会でも主張いたしましたが、これはグローバルスタンダードに今こそ合わせてもいいのではないかということが私の主張でありますし、今の唐木先生の御答弁もそうであったというふうに思っております。

 今言われた先生の主張が国際水準ではどうなのかと。前回も、今、世界で何か日本とアメリカだけBSEが発生しているかのようなあれですが、毎年、ヨーロッパ各国初め、世界で二十五カ国のところでBSEが発生をしておりますが、BSEの発生国で全頭検査をしているのは日本だけでございますし、また、牛肉は危険だから食べないなんという国は一国もないわけであります。

 こういったことについて、ではヨーロッパの危険対策、リスク対策はどうかというと、ほとんどの国が三十カ月以上の検査またはそれ以下であるわけでございまして、この点について、では、BSE先進国と言われているヨーロッパ各国のリスク対策は、日本に比べて危険性が高いと言えるのかどうかということについて、御回答をいただきたいというふうに思います。

唐木参考人 日本を初め先進国はすべて、先ほどお話ししましたようなリスク評価を行い、それに基づくリスク管理を行っております。

 世界に共通するBSEのリスク管理というのは、SRMの除去と肉骨粉の禁止、この二点でございます。これで実質的な安全は達成されておりますので、それ以上の措置、すなわち、食用牛の全頭検査や、例えば英国の三十カ月以上の牛を全部焼却するというような処分は安心対策であるというふうに言えます。実際に、SRMの除去によって英国での新型ヤコブ病の新規発生はとまったというふうに推測をされております。

 このように、どこの国においても、リスク評価に基づく実質的な安全、すなわち、国民に健康被害がないレベルの対策が実施されておりますので、BSE発生が最も多い英国でも、それに続くヨーロッパ諸国でも、BSE発生が少ないカナダ、米国あるいは日本でも、牛肉の安全性は同程度であるというふうにリスクの専門家は考えております。

 ただ、日本の問題点は、全頭検査が牛肉の安全を守るという誤解が広まった点というふうに考えております。

 以上です。

赤羽委員 ですから、確かにBSEは解明されていない、だからゼロリスクというのはとることはできない。しかしながら、無視しても健康に何ら害を及ぼさない、そういった意味での分別、それはSRM除去と肉骨粉の使用禁止ということで基本的には担保されている、これがグローバルスタンダードだというお答えであったと思います。

 また、食品安全委員会の報告でも、今回の日本のBSE対策をとる前のリスクでも一億二千万分の〇・一人から〇・九人、BSE対策をとった今は〇・〇〇一人から〇・〇〇九人、唐木先生の論文では二百兆分の一以下のリスクというようなことも言われておると。

 こういったことについて、やはりこういったことも極めて冷静に考えるべきであると私は思っておるし、主張もしておるんですが、専門家の唐木先生の御意見を賜りたいと思います。

唐木参考人 御存じのように、毎年、二万人から三万人の人が自殺をし、一万人近い人が交通事故で亡くなっております。食品関係だけでも、O157やノロウイルスのために毎年二万、三万人の食中毒の患者が発生して、数人から十数人が亡くなっております。

 これに比べて、SRMさえ除去すれば日本でも世界でもBSEに感染する人はいなくなるということは、先生の御指摘のとおりでございます。さらに、肉骨粉の禁止により、世界でも日本でもBSEの数は激減をしております。

 このように、肉骨粉の禁止とSRMの除去により、実質安全性は確保されております。BSEにそれ以上の対策費をかけることはむだであるというふうにリスクの専門家は考えております。限られた対策費を有効に使うことが国民の要望であり、食品安全委員会が不要であると判定した二十カ月以下の検査に費やすような国費は、食中毒とか自殺とか交通事故とかアスベストのような、本当に大きいリスクの低減に使うべきである、そんなふうに考えております。

赤羽委員 二十一カ月と二十三カ月の若肉牛のカ齢でプリオンが検出されたといったことについても、この前、参考人質疑でも言及がありましたが、この点について、唐木先生の御見解があれば手短にお願いしたいと思います。

唐木参考人 それでは、簡単に申し上げます。

 若牛二頭は、通常の検査方法ではマイナスでしたが、特別の方法を使って材料を五百倍から千倍濃縮するというふうなことで出てきたということでございまして、それがたとえBSEであってもリスクは非常に小さいというふうに考えられております。

 現在、その若牛二頭が本当にBSEだったのか、マウスを使って感染実験が農水省で行われておりますが、まだ結果はマイナスということでございまして、BSEでない可能性が非常に高いというふうに考えております。

赤羽委員 最後に大臣にお答えをいただきたいんですが、先週の参考人質疑の中で、食品安全委員会の報告が、専門家の意見を無視した、行政の介入により恣意的な結論になったといった御主張をされた委員が何名かいらっしゃいましたが、私は、これは看過できないものだというふうに私個人も思っておりますし、行政の長として、その点も踏まえて、今の十五分間のやりとりも踏まえて、大臣からの御所見をいただいて私の質問を終わらせていただきたいと思います。

島村国務大臣 ただいまの唐木先生の御答弁を伺っておりまして、専門家としては実にきちんと御自分の所見を述べられたということに敬意を覚えた次第であります。

 また、いわば食品安全委員会に対して行政の介入云々という言葉がございますが、私も、礼儀を知っておりますし、人間関係が大切なことはだれよりもよく承知している人間のつもりなんですが、食品安全委員会の先生方には電話一本したことございません。それは、そういうつもりでなくても、仮に、電話をしたり、ごあいさつをしたり、あるいはその方と何か別の機会にお会いするようなことをすれば、これこそ行政の介入と誤解を受けてもいけないので、そういうことを一切慎んで委託したところでありまして、例えば寺田委員長も、何度もここではお目にかかりますが、それ以外の場ではお会いしたことございません。電話もありません。

 事ほどさように、我々の側からそういう介入めいたことは一切いたしておりませんので、そういうことはあくまで誤解でありますので、はっきり申し上げておきたいと思います。

赤羽委員 本日は、大変お忙しい中、唐木先生、御足労をいただきまして、ありがとうございました。

 私は、日本の食育において正しい食育が行われ、一日も早く安心して牛肉を食べられる日が来ることを強く期待して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山岡委員長 次に、鮫島宗明君。

鮫島委員 どうも、クールビズで、気楽な格好でやっていますが、こういう格好をしていると、どこに議員バッジをつけていいかわからない。何か、変なところにつけている人もいますが。少し小型のバッジをつくって、オーストラリアの牛のように、耳にピアスのようにしてはめるのもいいのかなと思いますが。

 ちょっと、BSEの問題、個体認証の問題も含めて何点かお伺いしたいと思います。

 唐木先生が今変なことを言っていましたが。日本で見つかった二十一カ月と二十三カ月のBSE感染牛、これが、今、唐木先生は、どうもBSEではないという可能性も高いという言い方をしていましたが、そういうことを言う専門家がいて、この二十一、二十三カ月の牛が本当にBSE感染牛というふうに認知されているのかどうか。

 私も先々週、カナダ、アメリカへ行ってきましたが、いろいろな国に行ってもこれを聞かれるし、あるいは、日本にいる大使館の方や牛肉関係のビジネスに携わっている方々からも聞かれるし、どうも二十一、二十三の牛が本当にBSE感染牛かどうかというのが、世界的にはちゃんと把握されていないと何となく思うんですが、厚生労働省はこの二頭の牛についてはどういう判断をされているのでしょうか。

外口政府参考人 我が国において発見されました二十一カ月及び二十三カ月齢のBSE感染牛につきましては、免疫組織化学検査は陰性でありましたが、ウエスタンブロット法による検査の結果、異常プリオンたんぱくが検出されたことをもって、厚生労働省にて設置した牛海綿状脳症の検査に係る専門家会議においてBSEと診断したものであります。

 これらの事例につきましては、二〇〇三年十二月に開催されたOIEのリファレンスラボラトリーの会合におきましても、牛海綿状脳症の検査に係る専門家会議の委員から情報提供を行いましたが、外国の専門家から診断についての異論はなかったと報告を受けております。

 また、二十三カ月齢の事例については、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・インフェクシャス・ディジーズに掲載し、英文による学術情報の提供を国際的に行っております。

 なお、米国に対しても、専門家によるワーキンググループの会合や局長級協議の際にこの考え方を繰り返し説明しているところであります。

鮫島委員 では、今のその繰り返しの説明で、アメリカの専門家も十分それで納得されているというふうにお考えでしょうか。

 ちょっと別の言い方をしますと、今ウエスタンブロット法でやっているのは、立体構造が変化して、たんぱくの分解酵素のプロテアーゼKという酵素で処理しても分解されなくなったたんぱく質、分解されなくなったプリオン、これを抗体で検出するというのがウエスタンブロット法で、科学の世界もある種説得力の世界ですから、そのことでちゃんとシグナルが出たのは確かですねということは認知されていると思います。

 したがって、必要条件は満たされているわけですが、立体構造が変化してシグナルが出たこの異常プリオン、つまり、正常のものとは明らかに立体構造の違うプリオンが本当に発病性のものなのかどうか、これについては接種試験をやってマウスでの結果を見ないと本当は十分条件とは言えない。だから、必要条件のことはわかったけれども、十分条件とは言えないのではないかということは普通に考えても言われる、別に専門家じゃなくても、論理の必然としてあると思うんですが、ここを突っ込まれるわけですよね。

 私も、NIHの人の伝達性の脳症の専門の先生方から、日本ではそんな結果が、接種試験の結果がちゃんと出たのかと。それがもし出ないと、ウエスタンブロットではポジティブに出るけれども、だから、ある種の立体構造が変化したプリオンであることは認めるけれども、それが本当に病原性のものかはわからない。したがって、二十一、二十三が真性のBSEかどうかは疑わしいということが残りますよという指摘をされました。

 それはそれで、確かにそう言われると、それを超える証明というのは難しいんじゃないかと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

外口政府参考人 ただいまの議員御指摘のところは、まさに論点のところでございます。

 もちろん、今、感染実験というか、増幅試験を行っているところでもありますけれども、私ども、専門家によるワーキンググループ会合の際には、この議論が行われた際に、もちろん向こう側の専門家にもウエスタンブロットのパターンを見せて、これがアーティファクトとかいうものではないということはもちろん理解されているわけでございますけれども、もう一つ加えて申し上げれば、異常プリオンたんぱくのパターンをウエスタンブロット法で示したときに、それがプリオン病以外の状況で出ることが過去あったでしょうかと、こういったことも我々は申し上げているところでございます。

 そういった点で、もちろんそれについては向こう側の答えはないわけでございますけれども、こういったことを含めて、私どもの見解は、この二十一カ月、二十三カ月というのはウエスタンブロットのパターンが出ているわけでございますので、これはBSEである、こういう見解でございます。

鮫島委員 わかるんですけれども、まず、やはり、海外へ実際に行くと、専門家の方も含めて、十分条件ではないということがたびたび聞かれるわけです。それから、先ほどの唐木先生のように、どうもあれは違うんじゃないかというようなことを言う専門家もいる。私は、プリオン調査会のメンバーで、あれは断定できないと言っている方をほかにも知っています。ですから、そういう専門家の中でも結構発信がぶれているものですから、二十一、二十三については、ここが実は新たな突破口にされる危険性があると私は思っているものですから、もうちょっと、日本の獣医学会なり、ある種の権威ある日本の専門家集団がきちっと世界に向けて発信する必要があるんじゃないか。

 先ほど、前例との関係でちょっと部長がおっしゃっていましたけれども、日本でスクリーニングをやって三百七十万頭近く、全頭やりましたというのはなかなかおもしろい実験でして、実は、新しいことが幾つか見つかっているかもしれないんですよね。この二十一、二十三というのも、イギリスで二十で腸の中で一部というのはありましたが、日本で二十一、二十三の延髄で見つかったというのは非常にめずらしいことですし、もしかしたらこれまでのプリオンと違う可能性も否定できない。

 それから、海外の人も驚くのが、やはり、イギリスの先進事例にならって、アメリカでもカナダでも、ハイリスク牛、ハイリスク集団だけを対象にしていればBSEの発生状況は把握できる。つまり、サーベイランスの対象にハイリスク集団だけをアメリカでもカナダでも対象としていますが、ハイリスク集団というのは、死亡牛及び病徴を示している牛、ダウナー牛とか神経症状を示している牛、これがハイリスク牛として、ほとんど農場からの申告によって実際やっているようですけれども、これだけを対象とすればよろしいというのがアングロサクソンの常識だったわけですが、日本が三百七十万頭をやってみたら、二十頭のうちの四頭は死亡牛から、七頭は何らかの病状を示していた牛から、九頭は健康牛の集団から出てきました。つまり、大体半分がハイリスク集団、半分がローリスク集団。このことは海外の専門家も割合新鮮な驚きを持って受けとめているというふうに思います。

 私はNIHの方々とも話してきたら、そこが一番日本の実験結果のおもしろい点だ、ユニークな結果だと。今まではハイリスク牛だけ見ていればサーベイランスとして十分だと言われていたけれども、この日本の結果は考慮に値するというコメントもいただきました。

 その意味では、これは農水省の方かもしれませんが、アメリカやカナダについて、もしあなた方もサーベイランスに説得力を持たせるなら、ハイリスク牛集団だけじゃなくて、ローリスク牛も対象にしないと公平なサーベイランスとはいえないということを主張すべきだと思いますが、そういうことは農水省の方はアメリカに言っているんでしょうか。

中川政府参考人 昨年の五月、六月、七月と三カ月かけまして、三回の日米の専門家によりますBSEに関しますワーキンググループがございまして、その中でアメリカとの間でいろいろな議論がされましたけれども、その一つとしてサーベイランスのあり方というのがありました。その際に日本側から、アメリカがやっている今のハイリスク牛を対象としたサーベイランスのあり方について、問題という形で指摘をしたところでございます。

鮫島委員 ちょっと厚生労働省に、質問が締まっていないので、もう一回聞きますが。

 世界に向けて、二十一、二十三カ月の牛がBSE感染牛と日本としては判定している、これは専門家の間でも意見のそごはないんだというような、何らかの外に向けた発表を新たにするおつもりはありますか。

外口政府参考人 先ほども申し上げましたように、既に英文誌には掲載して、検出の方法等を含めて学術情報の提供を国際的に行っているところでございますけれども、現在進行中のマウスへの脳内接種試験の結果も、もうかなり時間もたってきておりますので、また、そういうことをまとめる段階も含めて、よく御理解を深めるための努力をしていきたいと思っております。

 私どもは、ウエスタンブロット法で異常プリオンたんぱくが検出されているということについては、これは専門家の間では十分理解されていると考えております。

鮫島委員 最初のところに戻っているわけで。もちろん、ウエスタンブロットでポジティブというシグナルが出たことについては、それは客観的に明らかなことですが、それは必要条件であって十分条件ではない。そのことについてのもうちょっと詰めとか海外に対する説得をしないと、ここのところは私は明らかに評価がまだぶれていると思いますよ。ですから、厚生労働省が主宰してシンポジウムみたいなことをやったり、ここのところ、何かある種の固める作業が必要というふうになっていると私は思います。

 もちろん、特定の専門のジャーナルに投稿して受け入れられて、それがあるからというのはあっても、やはり獣医学会なりある種の権威ある集団が裏打ちで認定していかないとここは固まらない点ですから、ひとつそこは十分御配慮いただきたいというふうに思います。

 農水省にお伺いしますが、今牛肉の輸入再開問題で二十カ月齢以下というのが対象になっていて、ちょっと実情についてお伺いしたいんですが、アメリカとカナダで、どのぐらい月齢管理が行われて、輸入再開といった場合に、どのぐらいの集団はちゃんとした月齢に基づいて判定され、あるいは、月齢がわからないものについてはA40という肉質を月齢判定のかわりに使うということになっているようですが、どのぐらいがその肉質に基づく二十カ月以下という判定で、どのぐらいがちゃんと誕生月に基づくものか。この比率が、カナダ、アメリカ、それぞれどのぐらいになるか、わかりますでしょうか。

中川政府参考人 今先生おっしゃいましたように、月齢の判別は、書面による、生産記録による場合と、それから、アメリカの場合に限ってでありますけれども、成熟度によって判定をする、二つの方法がございます。

 生産記録によります判別方法にどれぐらいのパーセンテージがつかめるのかということでありますが、これはアメリカ、カナダ共通ですけれども、具体的な、統計的に積み上げたデータというのはございません。

 他方、成熟度によりますパーセンテージにつきましては、これまで月齢判別検討会におきましてアメリカ側からデータが出されておりまして、それによりますと、アメリカで屠畜される牛肉の八%程度が、いわゆるA40以下に格付される割合、すなわち二十カ月以下と確認できるパーセントということになってございます。

 他方で、ことしの四月でありますが、アメリカの政府関係者が来日しました際に、成熟度によるものとそれから生産記録によるものを合わせると、全体の三五%ぐらいは二十五カ月齢以下と判別できるというふうな発言もしておりますけれども、これにつきましては、具体的な統計的バックデータ等につきまして、私ども確認できておりません。

鮫島委員 ちょっとよくわからないんですが。

 カナダについてはお答えがなかったようですが、私の方から言いますと、カナダでは九七・七%の牛の集団が生産記録があって、月齢管理ができています。したがって、カナダはA40という肉質判定は使わない。答弁はいいです。使わないというのがもう明らかになっていますから、それはいいんですが。

 今のアメリカの話ですが、アメリカで屠畜される牛全体の約八%がA40以下の肉質ということがあるそうですが、一方で、生産記録のあるものが三〇%近くあると。

 私が聞いたのは、実際に、再開がいつになるかわかりませんが、秋から冬にかけてぐらいの時期を想定した場合、アメリカから入る牛の何%ぐらいが生産記録に基づくもので、何%ぐらいが肉質判定に基づくものか、この比率を聞いているわけなんです。

中川政府参考人 アメリカとの間で月齢判別の方法については認識の一致がありますけれども、今先生が端的におっしゃった、何%と何%だ、成熟度によるものと生産記録によるものがどういう比率になるのかというのは、実際にこれは取引が再開されてみませんと、そこのところは端的に申し上げられません。

 といいますのは、アメリカの国内でのそのパーセンテージが仮にわかったとしても、実際に貿易取引がされて日本に入ってくる場合に、いわばアメリカ国内の母集団と同じ構成比で入ってくるかどうかということも含めまして、現時点でお答えすることは困難でございます。

鮫島委員 政府は政府でアメリカといろいろな情報のやりとりをしていると思いますが、我が党が把握している内容からいうと、今おっしゃったように、約八%がA40以下の肉質ということは共通した認識ですが、生産記録についてですけれども、私どもが聞いているのは、なるべく早い時期に牛集団全体の二五%についての生産記録を到達したい、つまり、個体識別制度がなるべく早い時期に集団全体の二五%に行き渡ることを第一目標にしているというUSDAの答えでしたが、このうちの二二%は、実は乳牛の記録なんですね。

 乳牛は生まれ日も全部わかっているから、そこのところは進んでいるんですが、実は肉牛の生産記録なり月齢管理、個体識別というところは大変おくれていて、恐らく輸入が再開されても、当初は、こういう記録がそろっていないから、ほとんど一〇〇%肉質判定に基づくものしか入ってこない。

 そうすると、先ほどこれは八%という話でしたけれども、このうち、日本向け輸出を扱っている業者の取扱量は、そのうちの、全体ではないわけですから、およそ何頭ぐらいの牛がA40以下ということで、輸入が再開された場合、年間にどのぐらい入ってくるというふうに想定しているんでしょうか。

中川政府参考人 これは大変ラフな見込み計算をするしかないんでありますけれども、先ほど申し上げました八%という割合を用いた場合で申し上げますと、一年間のアメリカの屠畜頭数は三千四百万頭程度でありますけれども、そのうち、中には経産牛ですとか種牛みたいなものもありますので、通常、貿易に回される、もとになる屠畜頭数というのは年間二千八百万頭程度あるものと考えられます。これを母数としまして今の八%を掛けますと、年間約二百万頭程度ではないかというふうに思います。

 また、先ほど申し上げました三五%程度、この中には先ほどの八%というものも含まれた数字でありますが、この三五%ということで仮に試算をいたしますと、年間一千万頭程度というふうに試算がされます。

鮫島委員 今の三五%という数字は、私は現実的な数字ではないんじゃないか。つまり、ここは、多分、USDAは、農水省に対しても私ども民主党に対しても、一度もはっきりした数字を言ったこともないし、その根拠も示したことがない。むしろ、定性的な聞き取りだと、肉牛の若牛についてはほとんど生産記録がとれていないという、その情報の方が多いと思います。

 それで、今八%とすると二百万頭ですが、このうち、日本への輸出を扱っている業者というのは全体ではありませんから、私は、大ざっぱに言ったらさらにこの半分で、百万頭ぐらいしか入ってこないんじゃないか。

 今日本は、BSEの発生前、アメリカからタンだけで二千六百から二千七百万本。タンだけで。それから、牛丼に使うばら肉だけで千六百万頭分、このぐらいの頭数分の部分肉をアメリカから入れていたわけで、それはよく需給管理をされている農水省なら御存じでしょうが。

 そうすると、今の、タンが足りなくて大変だという話になっていますが、二千七百万頭分日本のマーケットとしては要求していますが、せいぜいそれが百万本しか入りませんよ。それから、牛丼にしても、千六百万頭分のばら肉が欲しいんだけれども、それも百万頭分ぐらいしか入りませんと。いろいろ大騒ぎして、そして、かなり消費者に不安を与えてまで大騒ぎする割には、マーケットが望む量とほど遠い量しか確保できない。

 こんなことのために、なぜ慌てて、騒いで、輸入再開を急ぐのか。この辺の、輸入再開にかける時間と経費とその効果とのバランスが余りにも悪いんではないかと思うんですが、大臣はその辺はどうお考えでしょうか。

島村国務大臣 米国産牛肉の輸入をストップしてからかなりの期間がたつわけでありまして、数量の問題についてのいろいろ御指摘がございましたけれども、なるほど、私たちもそういうものは数字の上でいろいろな角度から今検討しているところです。

 さはさりながら、米国側はあくまで米国産牛肉というものの再開、これは両者のお互いの貿易を盛んにしていこうという、その基本に立つ姿勢に反するということから、当初は何か我が国があらぬ難癖をつけて云々というような感じであったわけですが、その後我々はあくまで真摯に、科学的な解明を行って、我が国と同等の安全性が確保された上で輸入をするという姿勢を貫いたところから、最近では理解が深まって、お互いに可能な限りその検討を終えた段階でまた再開をしたいということで、その際に数量がどうこうということはむしろ二の次であって、あくまでお互いに輸出入の道を開こうという方にあるわけであります。

 しかし、当然のことに、再三申し上げてきましたように、我々は、あくまで科学的知見に基づいて、国民の食の安全、安心の確保を大前提としてこの問題の判断をしているところでございますので、アメリカ側にも強くその姿勢を訴え、先般私は大連でジョハンズ農務長官と初めて会談を行いましたが、その際にも、むしろ一方的にこちらから言い募る形で我々の考え方を向こうに主張し、結果的には了承を得たところでございます。

 そういう意味では、輸入が再開された後に、どういう数量のものが確保できるかできないかということでなくて、我々が今輸入を阻止しているということについてアメリカ側は早く再開を求めているということの方にあるわけでありまして、我々は、あくまで安全、安心のアメリカ産の牛肉というものの確認の上で輸入を再開するということが、両者の求めている共通の考え方ということの中で、今いろいろな検討を行っているところであります。

鮫島委員 とにかく小さな穴でもいいからこじあけて、そこから後は二次的、三次的にじわじわ広げていこうというのがアメリカの戦略だと思いますが。私は、BSEが発生して、それが日本でもアメリカでもカナダでもという、こういう状況になっている中で、もうちょっと国際的に、同じような姿勢でこの問題に取り組んでいくということが大事だと思いますよ。

 アメリカでいえば、とにかく全然月齢管理しないわけですから。今やカナダもオーストラリアも日本も、ほぼ一〇〇%個体識別をやっていくという世界の趨勢の中で、アメリカだけがそっぽ向いて、おくれているわけです。こういうことについては歩調を合わせてもらわないと困る。それから、サーベイランスについてもローリスク牛も対象にしてくれと。そういう共通の土俵で話を進めていかないと、今大臣がおっしゃったような形で行くと、多分まずこじあけられます。

 次に、私がさっき言ったような、日本で発生した二十一カ月、二十三カ月の牛は、あれはBSE牛だということが検証されてないというところからこじあけられて、あっという間に二十四まで行きますよ。

 そういう形でなし崩し的にこじあけられていくということでは、私は、また新たな不安を生んだりしかねない。むしろアメリカにも共通の土俵に乗ってくれと。

 それから、日本についても大いに反省すべき点があって、私は、これは唐木さんは専門家らしからぬ見解を述べていると思いますが、この輸出再開の問題は双方向の再開ですから、アメリカからの二十カ月以下の輸出がかなうというのは日本からアメリカへの輸出も再開されるということ。ところが、日本からアメリカへの輸出の際に、日本の牛肉の八割はアメリカに輸出できない。それは当たり前で、ピッシングをやっているから。

 ですから、日本は日本で、そう言う一方で、世界の常識から外れた弱点を持っているわけです。これも一刻も早く克服しないと。同じ共通の土俵で貿易のルールをBSE発生後の状況を受けた新たな貿易のルールをつくるためには、いろいろな基礎条件を各国で共通にしておく必要があるというふうに思うんですが。

 日本の場合、最大の課題は、私はピッシングの廃止だと思います。今EUでもアメリカでも禁止されている。脳神経組織を破壊して攪乱する操作ということで大変危険視されているわけです。三年間は各都道府県の自主検査を認めて、それに対して一〇〇%予算措置するということですが、それは同時に、三年以内にピッシングを行わなくてもいいような体制をつくっていくという意思のあらわれだと思いますが、現場の屠畜場の関係者の話によると、確かにその方向は了承します、しかし具体的にどうやるかというと、やはり安全性確保のためには設備のかなり大幅な更新もしなくちゃいけないんで、これはやはり立法措置をとって、しっかりした予算の裏づけをやってくれないと、つまり八割の牛がピッシングされているという、この現実を三年以内に変えるのはなかなか難しいですよというのが現場の声としてあると思いますが、その辺、厚生労働省は、どういう具体的なシナリオで、世界の非常識と言われているこのピッシングをやめることを実現しようとしているんでしょうか。

外口政府参考人 ピッシングにつきましては、食肉の安全性の確保と従事者の安全確保の両立に配慮しつつ、廃止に向けて取り組んでいるところであります。

 本年四月十九日には、ピッシングを中止した屠畜場の事例を整理して都道府県に情報提供を行い、いまだ中止されていない屠畜場に対して、今後三年間の屠畜場ごとの対応方針の作成を要請したところであります。また、予算措置につきましても、これは農林水産省とも連携して、今年度からピッシングの中止に必要な屠畜場の設備についての国庫補助により財政支援を行うこととしたところであります。

 厚生労働省としては、BSE検査、SRM管理のいずれも重要なBSE対策と認識しており、食品安全委員会の審議の経過も踏まえて、ピッシングの廃止を含めたSRM管理の徹底について、今後とも適切に対応してまいりたいと考えております。

鮫島委員 プリオン専門調査会からも、このピッシングの廃止の問題については非常に強い指摘があったというふうに私は思っています。ぜひ部長も現場をよく見ていただきたいと思います。

 設備について、確かに五割補助の措置がとられている。電気ショックでしびれさせて、もっと完全に気絶させてということがあるようですが。

 それは世界の先端工場へ行ってみれば明らかなように、スタンガンで撃った途端に、普通は片足つるして持ち上げて、ぶら下げた状態で放血している。ぶら下げちゃえば、気絶後も動くのは後ろの足だけで、前足とか首は余り動かないから危険がない、そういうことも知られているわけで、むしろ、設備よりもラインを、放血ラインを新設して、いかに延長するかというのが本当は決め手だというふうに思うんですが。

 今の補助だと、設備に対する補助しかなくて、新たに工場の敷地を広げたり、建屋を建てたり、ラインを延長するというところがどうも対象になっていないようですが、それも対象にしていくおつもりはあるんでしょうか、補助の対象に。建屋そのものを広げる。それで、前半のラインですね、スタンガンをやってからすぐ放血して、初期の段階に、背割りするまでの、そこのラインを長くする必要があると思うんですが。

外口政府参考人 先ほど申し上げましたように、屠畜場の設備についての国庫補助、財政支援というのを決めたわけでございますけれども、スペースを広げることについては、スペースだけという制度は現在はございません。では、放血ラインをつけるときに合わせてそういった補助が可能なのかどうなのか、こういった応用問題がどこまで可能かということも含めて、そこは、どんな工夫ができるか、関係省庁ともよく相談をさせていただきたいと思います。

鮫島委員 これ以上言いませんが、数年後に気がついたら、日本が一番おくれていたというようなことで、日本の肉だけはどこにも出せませんということになったら、これは厚生労働省の責任ですから、そこだけはしっかり自覚しておいていただきたいというふうに思います。

 BSEについては幾つか懸念がありますが、一応以上で。

 時間が余りないんですが、経営安定対策との関係で、農地の問題なんですが。

 最近の経営安定対策あるいは今後十年間の見通しについても、主業農家とか法人化を見越して今後しっかりやりますというところは余り問題ないんですが、土地持ち非農家とか自給的農家といった世界はどうするんだという問題があって、これは与野党問わず、長年の農政の課題だと思います。やる気のあるところにはいろいろな応援措置をするんですけれども、どうも崩れた世界については余り手を出せなくて、やる気のあるところに農地を集積しようと思っても、資産的保有をしているところに手がつかないと、なかなか農地も集積できない。

 これはずっと課題になっていて、強権とまでは言わないけれども、資産的保有で生産の用に供していない農地をある種の強制力でやる気のあるところに集めていくという点が私はずっと弱いんだろうと思います。これは確かに政治的にはやりにくい、選挙的には不利だと思いますが、ここのところが、やはり苦しくても私は取り組む必要があるんだろうというふうに思います。

 その意味では、現在、これは言葉自身も変な言葉ですが、土地持ち非農家の持っている農地というのは、戸数でいうと百五万戸ぐらいあるようですが、農地全体のどのぐらいか。本当は、正確には農地持ち非農家だと思いますが。土地持ち非農家はおれのことかと社長言いというのがあるんですが、中小企業の社長が東村山に一戸建ての家を買って、おれも土地持ち非農家だというのがあるんです。どのぐらいの面積なんでしょうか。

須賀田政府参考人 土地持ち非農家の所有する農地面積、これは耕地もありますし耕作放棄地もあるわけでございますけれども、十二年センサスで約四十七万ヘクタールでございます。

鮫島委員 その四十七万ヘクタールのうち、耕作放棄地が占める割合はどの程度でしょうか。

須賀田政府参考人 四十七万ヘクタールのうち、耕作放棄地が十三万ヘクタール、約二八%でございます。

鮫島委員 一つ、この耕作放棄地発生の背景として、不在村の非農家。つまり相続の場合は農地の権利移動制限がかからない。規制がかからなくて自然承継になるものですから、農業をやる気があるないにかかわらず子供に相続されていく。そのことが不在地主の発生を生み、二次的に耕作放棄の発生も生むということがあるんじゃないかと思いますが、その辺は農水省はどういう御認識でしょうか。

須賀田政府参考人 平成十四年に全国農業会議所が耕作放棄地の要因というのを調査しております。一番大きかった要因として、高齢化・労働力不足というのが八八%を占めておりまして、あと、農産物価格の低迷とか、受け手がいないとか、こういうのが続いております。

 私ども、この高齢化・労働力不足、これらの要因の中の背景として、やはり相続による不在村の農地所有者が増加しているということがあるのではないかというふうに認識をしております。

鮫島委員 多分、そういう調査のときに行われた調査の一環で、遺産相続の手続が終わっていないという比率もかなり高いんじゃないかと思いますが、それはどのくらいのことですか。あるいは、きれいに遺産相続の手続が終わっているのは対象になった農地のどのぐらいか。五一%という数字が出ていましたよ、農水省の調査で。遺産相続の手続が完了している農地の比率。この土地持ち非農家の土地のうちで五一%は相続が終わっている。まあいいです。

 それから、子供は都会に出て働いているけれども、農地を相続しちゃいましたと。自分でやらないわけですから、当然、使う人いませんかといって、小作者にやってもらうということになります。都会に住んで、長野でも群馬でもいいんですが、そういうところの農地を持って、人に貸す。これは昔の典型的な不在地主と同じなんですが、これは農地法六条に違反しているんじゃないですか。

須賀田政府参考人 条文の適条関係からいきますと、そういう方は不在村の地主でございます。小作地所有制限に違反している地主さんでございます。

 条文上は国家買収という規定になっているわけでございますけれども、ただ、現時点におきまして、戦後農地改革を行ったときのような、地主が小作人に対しまして現物で、できたお米の半分あるいは六割を小作料で取り上げるとかそういう状況にないものですから、現時点では国家買収というような強権的な権限の発動というのは控えておるという状況にございます。

鮫島委員 強権的な権限の発動をしろと言っているわけではなくて、つまり農地法の精神を尊重して、それが実態として生かされるように、相続のところについてもある種の新たな措置がもしかしたら必要なのかなという気がします。

 それは、多分昭和一けた世代がこれから農地の所有者としてもあるいは耕作者としてもそういう場面から引退していって、農地の相続が今後十年間で非常にふえていくと私は思います。そういう中で、今のように、承継取得だからということで、後継ぎの農業に対する関心なり熱意を一切問わずに、自動的にただ権利だけを移動させていく、これは農地法三条の権利移動規制の対象外です、これは民法の規定です、あるいは憲法にも抵触しますからということだけを言い続けていいのか。

 やはり本来、農地というのはもともと私権がある種制限されているために、農地法で民法の特例になっている。相続についても、そこはある程度やはり、ちゃんと農地を農地として使う人というようなことがないと、農水省の経営安定基盤強化の意図とは別に、どんどん壊廃していくのではないかという懸念をするものですから。これから十年が私は大変大事なタイミングだと思いますので、これまでの議論は議論として、少し新たなあり方も考えるべきではないかということを指摘しておきます。これはぜひ大臣を初め与党の先生方にもこの点はお考えいただきたいという私の希望を述べて、質問を終わります。ありがとうございました。

山岡委員長 次に、小平忠正君。

小平委員 民主党の小平忠正です。

 私は、今郵政問題で国会、参議院を中心に騒然としていますけれども、私どもは、郵政改革は喫緊の課題じゃない、もっともっとやるべき大事なことがある、そのように考えています。

 事農業の世界においても、外にあってはWTOのこれからの交渉の推移ですね、また、国内にあっては今政府が目指している十九年度からの新しい経営安定対策の導入等々、私は重要課題が目の前に迫っていると思います。

 そういう中で、まずWTOに関するものから質問をさせていただきたいと思うのでありますが、大臣、よろしいですか。

 少し話は古くなりますが、大臣、ジュネーブ、また大連ですか、等々を含めて、WTOの交渉、大変御苦労さんでありました。これについては御労苦を多といたします。

 そこで、私もその時期に合わせてジュネーブに衆議院から議会の運営会議へ議会人として、WTO交渉は政府間交渉ですけれども、議会人としてどうこれに寄与できるかということについて、各国から集まって、議論が展開されました。私も当時自民党の松岡さんとともに、衆議院を代表してその会議に参加をして、議論を交えてきました。その足で私は、アメリカ・ワシントンに飛んで農務省のペン次官にも会談を申し込んで意見交換をしてまいりましたが、私は、その後の交渉の状況、まさしく踊り場的な状況を見るにつけて、いよいよ本年末、十二月の香港での閣僚会議へ向けての動向が大変気になっております。

 先週、例のグローサー議長の第二次状況報告ペーパーですか、これにおいても、交渉は行き詰まっている、こういうことを認めながらも、政治的な取引点が幾点か明らかになりつつあり、政治的な決断によって、十二月に向かって、成功裏に進めていける、そういう期待も一方あるようです。まさに、その中において、今我が国の農水省、外務省を中心にした外交能力が問われております。

 私もこれまで幾たびかWTO交渉、多国間交渉における合意形成の困難性については実感をしてまいりました。さらに、九九年ですか、シアトルで例のWTOの会議がありまして、これは大変な混乱のうちに終わりましたが、あのときに、前のウルグアイ・ラウンドとは違って、いわゆる発展途上国あるいはNGO、NPO、こういう新しい、言うならば新興勢力の台頭によって交渉のさま変わりを目の当たりにしてきたことも記憶に新しいところであります。

 また、つい先日、日米通商関係においては新しい局面が出ました。それは、WTOでルール違反としてとらえております米国の反ダンピング関税分配法、いわゆるバード法ですね。これは、対抗措置として、EUやカナダに次いで、我が国もついにやっと米国に対する初の報復関税、この発動を決めたところでありますね。いわゆるこのバード法、山分け法とも言われるこの法律で、米国はもう既に十億ドルを超える関税収入を得て、それを業界に分け与えております。我が国の製品からの収入、これも四億ドルですか、そこまでいっている、こういう状況にあります。

 米国は、二〇〇三年一月にWTOの裁定が出てからこれまで、国際貿易ルール違反を承知でバード法廃止の要請を拒否してまいりましたが、各国が相次いで報復関税を発動する事態にどう対応するのかは、私は今後の政府の毅然たる姿勢を注視したいと思います。

 ただ、このことがWTOを含めてこの農業交渉にどう影響があるのか、これらの点と、先ほど前段にお聞きしました言うならばモダリティーの方向を含めて、大臣の御見解、御所見をまず冒頭にお伺いしたいと思います。

島村国務大臣 御質問が多岐にわたっておりますので、場合によって少しく話がずれるかもしれませんが、まずWTOの農業交渉についての現状について御報告申しますと、国内にあってお考えいただくよりもはるかに厳しい環境下でいろいろな議論が進められている、まさにWTO体制の推進といいましょうか具現化といいましょうか、については、各国ともにそれぞれの国の実情を踏まえて相当露骨なまでに、その交渉についてはお互いにきばをむき出しての議論ということでありますから、相当激しい議論が実は行われているところであります。

 そういう意味で、委員御承知のように、我々はさきの平成十三年、二〇〇一年十一月のWTOのドーハ閣僚宣言で、市場アクセスの実質的な改善、すべての形態の輸出補助の段階的撤廃を目指した削減及び貿易歪曲的な国内支持の実質的な削減を目的とした包括的な交渉を約束するという宣言が出されているところであります。

 これらに基づきまして、我が国にとって一番大きな関心は、何といっても市場アクセスの実質的な改善ということで、米を初めといたしますいろいろな輸入品目について、国内の農業を守るために、大変高い関税の制度を実施して国内農業を守っているところでありますが、これらについても、市場アクセスを改善するために関税の影響を思い切って引き下げろというような動きが非常に強いわけでありまして、我々からすれば、センシティブな品目については、やはり国内農業を最低限度守るためにどうしても必要という強い主張をしているところでありますが、目下平行線でいろいろな議論が行われているというところです。

 その一方で、御承知の、昨年七月に枠組みについてはおおむね合意を見ているところでありまして、これについては、市場アクセスの実質的な改善はすべての品目に対して達成されるということになっているわけでありますから、それらについてこれから具体的にどのように進めるのか。そういう意味で、この七月末にグローサー農業担当議長から第一次案が示される予定になっておりました。

 しかしながら、何といっても各国間の利害が対立してなかなか議論が収れんされないということと、いま一つは、グローサー氏自身がニュージーランド政界へ進出を考えて、議長職をかわらざるを得ないというようなことも生じたために、結果的には彼の現状報告が示されるというにとどまったところであります。そういう意味で、これから十二月の香港の閣僚会議に向けて、短期間での議論の収れんを図ることになったため、九月以降の交渉は相当厳しい局面を迎えるという認識を持っているところであります。

 そういう意味で、我々は、先般、大連での交渉の際にもそうでありますが、その後ジュネーブでG10閣僚と現状の分析を行って、今後とも結束して交渉に臨んでいくことを申し合わせたところでありますが、このG10と申しましても、それぞれその国の抱える問題は必ずしも一致したものではありませんので、これからの交渉は大変に難しいものになる……(小平委員「大臣、外側の説明はいいですから。外側の説明はもうわかっていますから」と呼ぶ)いいですか、ああ、そうですか。もうすべておわかりの方でありますから、それだけに少しく念を入れたつもりなんですが。

 さはさりながら、先般、米国のバード修正条項によりまして、我が国は鉄鋼業界などにも被害が出ておりますし、またEUやカナダなどの各国でも被害が出ておりますことから、我が国は、これらの国々とともにWTO協定違反である同条項の撤廃を米国に強く求めてきているところです。もうすべて御高承のとおりでありますが、米国政府もこれについてはよく理解をしているところでありますが、米国の議会の側がこれに対してノーでありまして、これらを、これから我々の強い主張の中でやはり米国に反省を求め、軌道を本来の形にしていくというのが私たちの考えであります。

小平委員 質問者の時間を短くするために、政府の方は大臣に長々の答弁資料をつくるようですけれども、そこはこれからも注意していただきたいと思います。

 質問と答弁が前後しまして、私がこれからお聞きしようとすることを、先にちょっと大臣が触れました。市場アクセスですね。

 概略をお話しでございましたが、今回のこの交渉、俗に大きな三分野と言われていますね。その中でも、特にこの市場アクセス、これは各国の利害調整が非常に難しい分野だ、こう理解してはおります。特に今回、今後の我が国農業の方向を左右する方式、例の定率削減方式、リニアカット方式ですか、これがG20から提案されましたですね。これは、我が国にとっては、政府も同じ見解でしょうけれども、上限関税はもってのほかであり、特に輸出国側による極端な関税削減、そういう圧力に対しては、輸入国の日本としては断固反対を貫く覚悟で臨む、これはもう言うまでもないことだと思います。

 また同時に、我が国の主要な基幹作物でありますいわゆる重要品目、特に米や乳製品、でん粉、これらについては大きな論点でありまして、品目横断的施策に向けて今政府は大きな農政転換をしようとしている、このことに私はリンクしていると思うんですね。ですから、特に今政府が進めようとしておりますこれからの経営安定対策、これらを勘案すると、どうしてもこれについては避けて通れない道だと思います。したがって、しっかりと外交能力を結集して、国益のために頑張る責任があると思います。

 一方で、特に今FTAですか、先般タイともそういう交渉をかけ合われました。FTA、バイですね。これはこれで必要だと思いますけれども、どうもこのところを見ると、日本はFTAの、あるいはEPAの交渉を通じて、どうも農業の分野がばらばらに切り刻まれていくような感じを、私は心配しているんですね。したがって、WTOは国際社会における包括的ないわゆる方向、ルールですから、大事なことなので、このルールはまずしっかりつくっていかなければ、これからのFTAにも影響が出てくると思いますので、そこのところを含めてしっかり取り組んでいっていただきたいと思います。

 細かい説明は結構ですから、今私が指摘した点について、大臣に簡潔に御答弁いただきたいと思います。できたら官僚作文は別にして、お願いします。

島村国務大臣 WTO交渉についての一番の我々の関心事は、何といっても市場アクセス問題。その一方で、WTOの中身でいいますと、アメリカには国内支持の問題がありますし、またEUには輸出補助の問題等もありましたけれども、幸いと申しますか、アメリカとEUがお互いに議論が対立するようなことが生まれましたために、今回、こちらが大変厳しい状況にあったところから、急に矛先が変わってしまったという現実があったわけです。

 そういう中ではございますが、今御指摘がありましたように、国内的には、将来に向かって我が国農業が立ち行くために、一つには、国内的に他産業にも匹敵し得るような収益の期待できる体質の強い農業を確立するということ、その一方では、国外の農業に対して、これに十分対抗し得るような体質の強い農業にしていこうという判断のもとに、今国内の農政改革を進めようとしているところであります。

 また、WTO対策としては、彼らは相当露骨に一気呵成にやろうとする動きがないではないのでございますが、少なくも将来に向かっての我が国の農政の展望を切り開くというのは、言うべくしてなかなか大変なことでございます。

 そういう意味で、私たちはこの十二月に向けて、WTOの交渉がどういう形で終結を見るのか、これからも慎重に、世界の情報に耳を傾けつつ、対応を進めてまいります。また一方で、我が国農業の体質の改善、強化、これらについても相当思い切った、踏み込んだ農政の改革を進めていかなきゃならない、そう考えているところでございます。

小平委員 それでは、一点、今政府が進めようとしております国内の施策についてお伺いします。

 今大臣がいみじくも言われたように、そこのところがポイントだと思います。お言葉のとおり、こういう厳しい国際環境のもとでいかにして我が国農業の生き残りを図って進めていくか、そこにあるわけですね。

 大臣は、この問題について、今もその決意を述べられましたけれども、たしか私過般、二月でしたか、当委員会で各般の政策改革、これをお聞きしたときに、大臣は、所信表明ですか、あれにもあったと思うんですが、スピード感を持ってやる、こう言明されましたね、スピード感を。そう言われた。期待しておったんですよ、スピード感を。しかし、あれからもう半年過ぎましたけれども、そのスピード感というのはどこにあるのか。全然見えないんですね。

 したがって、これは官僚諸君にも言いたいんですが、大臣がそれを言えるように皆さんが支えているんだから、その大臣の決意どおり、早くやらなきゃだめですよ。ずるずるやったのでは。

 みんな農民は待っています、あるいは農業関係者は待っています、政府はどういう方向でつくっているのかと。そこのところが非常にテンポがのろいと思う、遅いと思う。これは強く指摘しておきます。

 そこで、具体的に、政府は十九年度からの制度実施を前提にした工程表を今されていますが、その中で、行政、農業団体が一体となって認定農業者、集落営農をふやして、担い手経営安定対策への加入促進を図る、こうされていますね。農水省幹部諸君も今全国各地を行脚して、飛び回って、現場が納得できるような説明がそこででき得たかというと、どうもそういうことは聞こえてきません。精力的に各地を説明に回っているようですけれども、どうも肝心の担い手像が見えてこない。しかし、政府の言では、これに乗りおくれると置いていかれますよと。こんな、やみくもに追い立てるような、そういう姿勢も見えている。これまでの農政、いわゆる猫の目農政だ。この連続によって、これでは生産者の不安やあるいは不信を募るだけで進展がない、私はこう感じるんですよ。

 そういう状況をまず申し上げておいて、政府は、いわゆる担い手像、これを絞り込んでいくという方向において、いろいろな位置づけをしていますよね。その中で、一昨日大臣は記者会見で、新たに受託組織も担い手として位置づけをし、その対象、要件を検討している、こう言われていますね。その場合、経営実体については、何をどのように要件化するか、それをどのように把握し、だれが認定するか、このことは非常に大事だと思うんですよ。そこのところをあいまいにしておきますと、なし崩し的なばらまき、そういう施策にまたなる。そんな可能性、危険性もあると思います。

 私は、今回のこの大臣の記者会見、うがって言いますと、どうも小泉さんが解散しそうだ、自民党農政に批判が強い、総選挙に向けて、それを意識したばらまきのパフォーマンスに見えなくもないんですよ。須賀田局長、そこはしっかり聞いていただきたい。そう受け取られても仕方ないような、いわゆる農村の不信感が漂っているんですよ。そのことを感じましたので、あえて申し上げておきたいと思うんです。大臣、局長、答弁する。簡潔にね。

須賀田政府参考人 基本計画の中で、私どもは担い手として、認定農業者のほかに、集落を基礎とした営農組織で経営主体としての実体を有する集落営農経営も対象とするんだ、これを明らかにしております。実際に見ますと、麦とか大豆の受託組織がございます。その受託組織も三十年間の生産調整の中で大変立派な営農を行っておりまして、こういう受託組織も、経営主体としての実体を有しておれば、集落営農としての要件その他の要件を満たせば担い手となり得るのではないかということを大臣が記者会見で御答弁申し上げたわけでございます。

 私ども、この経営の主体としての実体を有するメルクマールをどこに置くかというと、三点考えております。第一点は、みずから経営の主宰権を有しているかどうか、それから第二点目は、収穫物の収入の帰属先になっているかどうか、第三点目は、そのリスク、事業の収益のリスクを負っていること。この三点を満たしておれば経営主体として認定していいのではないか、そのほかの要件を満たせば担い手になるという道があるのではないかというふうに考えております。

小平委員 今の答弁で、では具体的に今回のこの新しいアイデア、これがきちんと理解されたかというと、まだあいまいもことしているというのが、私が今聞いていまして、そう感じ取られるんですね。

 ですから、いわゆる受託組織ですか、これをきちんとしようということの方向は私はいいと思いますよ。問題は、そこのきちんとした定義づけ、それが大事なので、大臣が、最高指揮者がそう言われた以上は、そこは早く方向づけをきちんとしないとさらに混乱を来すだけですから、しっかり取り組んでいただきたい。

 そこでもう一点、これは私、昨年からも何度か指摘した点なんですが、いわゆる米政策改革ですね。これはもう何度も指摘いたしましたが、農政の改革が進まない中において、もう既に離農をやむなくされている農家が続出いたしております。農家の不安、不満はもう頂点に達している、そういうことを、私が言うまでもなく、皆さんも感じていらっしゃると思う。

 そこで、具体的に申し上げますけれども、例の集荷円滑化対策、この加入率は六八%。地域間格差が大きくて、加入者にとっては、生産調整参加メリットより不平等感の方が大きい、これが加入率がここまでしかいかない理由ですよね。また、集荷円滑化対策の加入者に対する収入補てん策として仕組まれた稲得の加入率は四七%、担い手経営安定対策に至っては一〇%にすぎない。この制度が生産者にとって実質的メリットが少ないことはもう当初から指摘されておりましたけれども、昨年それが物の見事に当たってしまった。しかし、それでも生産者は、これにすがるしかない、こういう人たちもおりまして、淡い期待を抱いて加入したけれども、実際、今申し上げたように、昨年起こったあの事例というのは、制度上の不備が重なり、さらに運用上の明らかなミス、これもダブルパンチで重なりまして、稲得、担経ともに機能不全となりました。

 そこで、私は、政府はお盆明けにその方向を出すのか、今作業を展開している途中でありますけれども、十九年度からのですね。しかし、その前に現行のこの制度がしっかり機能しなければ、幾ら新しい制度の導入を図ったって、それはうまくつながっていかないんですよね。したがって、この稲得、担い手経営安定対策についても、昨年の私の強い指摘を受けて、この春、ある程度改善したと言われました。確かにそれはある程度されましたよ。しかし、皆さんも感じているように、まだまだ不十分です。これをさらにきちんと機能できるように再調整すべきだと思いますが、この点についてはいかがですか。

須賀田政府参考人 米政策改革は、十六、十七、十八と三カ年実施をいたしまして、それで次のステップ、その三年一期の対策の実績の状況を踏まえまして次のステップへ行く、こういうことで取り組んでまいりました。ただ、今度の品目横断経営安定対策、秋口からいろいろな仕組み、対象者の要件等の議論が始まるわけでございます。

 農家にとりましては、そういう経営安定対策があり、それからこの米政策改革があり、さらには新たな政策として資源保全だとか環境保全の対策があるわけでございまして、それらの考え方がすべてきちんと示されないとなかなか経営としてどう対応していいのかわからないという強い声が寄せられているわけでございまして、私ども、この米政策改革の状況につきましても、ちゃんと今の実施状況を検証いたしまして、十九年からはどのような考え方でいったらいいのかということを、品目横断経営安定対策とともにできる限りの議論をしていきたいというふうに考えております。

小平委員 この点、重ねてお伺いしますけれども、今そういうお話でしたが、品目横断。品目別単価と過去の作付実績に基づいて、こう言われていますが、何をその指標とするのか。それから、その指標にどれだけの弾力性を持たせるのかといった疑問が当然出ていますよね。

 そこで、きつく言うと、農政転換といいながらも、しょせん現行の予算内での名義の書きかえにすぎないんだ、そんな突き放した白けた意見も、副大臣、あるんですよ。これは、実際、農家現場、プロの世界ではそういう見方が現にあります。あなた方は机上でもそう言っていらっしゃるけれども、実際に実践している農業世界においては、そういう白けた意見もあるのも事実です。私はそれを現場から声を聞いていますから。

 そこで、今、特に稲作農家、いわゆる基幹作物の世界にあっては、最大の不安は、収入・所得変動緩和対策が、単に価格低下に対する緩和策であって、今やっていただきたい所得補償ではないということ、そういうとらえ方がされているようです。米価の低落傾向が連綿と続く中で、収入・所得変動緩和対策と銘打ちながら、実態的には価格低下の緩和策でしかない。こういうことに主業農家は落胆し、将来の営農に対し、自信を失いかけているどころかもう失ってしまっている、このように私は断言せざるを得ないと思います。

 私は、米価が過去の経緯を踏まえて市場経済に投げ出された今日、農家が安定した経営を維持していくためには、米価下落に対して、担い手の収入が実質的に補てんされる、実効性の高い経営安定対策が必要である、こういうことを事あるごとに主張してまいりました。

 政府は、今回、地域の担い手を明確化して、施策の集中化、重点化を目指すとしております。これは、私が今まで一律農政から、一貫主張してまいりました専業農業、それから兼業農業、それぞれに見合った農政に転換を図るべきだと。これには、ある意味では基本的な方向は一致していますので、そこは評価できる点もあります。

 しかしながら、今回のこの品目横断、これもさることながら、現行の産地づくり、それから稲得、担い手経営安定対策、これらを含めた一体的な議論がされなければならない。これが、私が今言った、重ねて問いたいことの、最大の質問のポイントですよね。そうしなければ、地域の担い手として経営判断、こんなのできないんじゃないか、こう思うんですが、そこのところを重ねて問いたいと思います。どうですか。

須賀田政府参考人 米政策改革の実施の際に議論が集中した点でございます。

 この米政策改革の前提といたしまして、市場原理を導入した価格をもとにして、市場価格が幾ら下がっても一定の水準までは補てんするんだということではモラルハザードが起きてしまう。生産者が市場のニーズを酌み取って生産を変えていくという努力をしないんではないか、こういう議論がございまして、その補てんの基準となる価格も、過去の一定年間の市場価格を平均した価格にしよう、こういう仕組みで米政策改革が導入されたわけでございます。

 私、今後の農業を考える場合に、やはり生産者の方も、市場で自分の農産物、特にお米がどのような評価をされているか、品質面、価格面、そういうところでどういう評価をされているかということをちゃんと酌み取って、そして生産量なり品種なりを変えていく努力、これがなければ、この政策全体に公的資金をつぎ込むことについての国民の理解が得られないのではないかというふうに考えておりまして、その点に関しましては、何とぞ御理解を得たいというふうに考えております。

小平委員 政府は今、「げた」と「ならし」、こういう表現を使ってやっていますよね。確かに、今言われたモラルハザード、このこともあります。それをしっかり精査することも大事ですよね。それは政府は今やっていますよね。しかも、これはWTOの緑の政策にもつながっていく問題だ。それはありますが、私が何度も言っていることは、そういう方向をやる前に、現行の不完全な、不備な施策、特に産地づくり、稲得、担い手経営安定対策、これをしっかり再調整しなければ、幾ら新しい、いい方向をつくっていっても、つながっていかないということを言っているんですよ。そこに対して明確な答弁をいただいておらないと私は思います。

 これは、あなた方がこれをしっかりやるまで、私はいつまでもそれを言いますからね。これは、ある意味では、いわゆる政府の無責任さですよ。そこのところを指摘して、これはまた次の機会に譲りますが、納得しません、私は。

 そこで、次の点について、資源保全、環境施策、これについて質問いたします。

 私も実は、この資源保全施策ですか、この間まで知らなかったんですよ。川村局長、どうも政府は事を秘密裏に進めている傾向がありますね。しかも、これのモデル地区となった四百地区ですか、四百カ所、そこの首長ですら知らないんだな。そして、政府に言われて、聞いて、びっくらこいている、これが実態ですよ。

 だから、こういうことをやるには、それは最初に話すと妨害に遭って進めていけないから、秘密裏にプランを練ろうというのは、そこはわかるよ。わかるけれども、実際に実行に移すときには、まずそのことを少なくとも我々農水委員会の関係にはちゃんと知らせなさいよ。それをまず最初に指摘しておきます。だって、今ここにおる皆さんみんな、知っている人いますか、このことについて。資源保全施策、みんな知っていますか、このこと。各委員の皆さん、このこと聞いていますか。これが実態ですよ。

 しかも、このことは、ある意味では、中山間のいわゆる条件不利地域、この所得補償という、規模の違う、大きな、転換でしょう。そこをまず最初に指摘しながら、一応用意しましたので、順次お聞きしていきたいと思っています。

 私は、今申し上げたように、このことは、政府は、六月に行われた第一回の農地・農業用水等の資源保全施策検討会の議事録、これを拝見しますと、川村農村振興局長は、この四百地区が地域の広報拠点だと言っておられるようですね。しかし、この事業、この議事録を見る限り、水土里ネットという言葉自体、地域に知られていない現状で、来年ももう一回このモデル地区をやるわけでしょう。しかも予算は、約十億近い予算を投下するわけでしょう、調査費だって。そういうことで、果たして十九年度に向かってこれを導入していくという方向になるかということを、疑問に思うんですね。

 私は、これを思うときに感じることは、この事業をするに際して最大のネック、最大の障壁は、やはり地方自治体の財政事情ですよ。今、小泉政権下で交付税の問題、あるいは削減、あるいは三位一体等々やる中で、もうあの手この手でもって地方財政が圧迫されているわけでしょう。そういう中で、現行の中山間直接支払い制度も、自治体の財政の窮状から取り組み自体をあきらめる、そういう自治体も、あるいは、今回の延長を境に取り組み拡大を検討している地域に対し、あからさまなブレーキをかけるような、そういうような自治体も一部出てきていますよね。そういう中で言えることは、今このような地方財政が危機的な状況の中で、この制度が新しい負担に耐えていけるかということが問題だと思うんですよ。

 私は、これをやるとしたら、地方に財政負担を求めない、あるいはその使途に極力縛りをかけないで、ある程度その地域の自主性と、実態に対応する事業内容、いわゆる自由裁量、これを認めることも必要だと思うんですね。

 こんなことを思うんですが、まず、この制度について、私、今全部のみ切れておりませんけれども、局長、それはどう答弁されますか。

川村政府参考人 ただいまお尋ねの、農地あるいは農業用水等の資源保全施策の関係でございます。

 こういった資源は、もう改めて私が申し上げるまでもなく、農業者の生産基盤ということはもちろんございますけれども、国土保全でありますとか環境、こういったものの多面的な機能、こういうことで、非常に重要な基盤であり、役割を果たしておるわけでございます。そういう意味で、これはもう国民共通の、共有の財産、資本であるというふうに認識をしております。

 そして、こういったものは、今までは集落等の取り組みで何とか維持管理をしてこられたわけでございますけれども、最近の調査等によりますと、非常に集落機能が低下をしておる。これは、過疎化、少子高齢化、混住化等いろいろあるわけでございますが、将来ともこれが健全な形で維持管理されて次世代に続けていけるかというと、現在取り組んでいらっしゃる方の八割が非常に不安を持っておられるということがございますので、我々としても、これは貴重な国民共通の資産ということもございますので、何らかの新たな施策を打つ必要があるだろうということで、新しい基本計画の中にもこれが盛り込まれたところでございます。

 そして、これをどういうふうに仕組んでいくかということでございますが、これは確かに国土保全とか国民全体が裨益する面ももちろんあるわけでございますけれども、やはり地域の維持とか振興、こういうものにも密接につながっております。その意味からしますと、もちろん生産手段ということでもございますから、国なり地方自治体、農業者、こういうものが適切な役割分担をしながら、これを守り、そしてまた向上し、後代に伝えていく、こういった取り組みが必要だろうということでございます。

 そういう意味で、私どもは今、これはもう先生御指摘のとおり、各地、自然条件も違いますし、これまでの社会的な取り組み、そういったものも、構造もいろいろ違うところがございますので、よく実態を踏まえて、その地域に合ったような形での支援というものが必要であろうということで、この十七年度と十八年度、四百カ所を選びまして、営農形態でありますとか地理的条件であるとかそういうものを踏まえて選んで、実態調査と、そして適切な支援方策は何かということの検討をしたいということでやっております。

 まだ今後そういった中身を詰めますけれども、今おっしゃったように、地域の特性がございますので、仕組み自体はかなりメニュー等につきまして地域の取り組みを反映するような柔軟性は非常に確保していく必要があるだろうということは思っております。

小平委員 私は、今の局長の答弁の中で、土地改良事業、これはかつてはダムから始まって基幹水路あるいは基盤整備、いろいろな点でその時代を経てきましたよね。今やそれが、これからどうその施設を有効に農業のために活用するかという点において、維持管理が必要ですよね。それについては、維持管理にきちんとした予算をつけるということ、これは私は必要と思っています。そこのところは大事ですよね。

 土地改良というものは、今この事業が農業土木と言われている世界でもってむだに使われているということもありますけれども、基本的にはこれは農業のいわゆる骨格をなす事業ですから、ここのところは私も理解しているんです。

 しかし、それにかけ合わせて、今言われた地域の言うならば実情、あなたが言うのは多分高齢層とか離農とかを言っているんでしょう、管理が十分できないと。でも、そんなことは私は余り理由にならないと思うんだ。現に農民は、自分たちで自主的に用排水路の草刈りや汚泥の除去なんかをやっていますよ。私もその一人ですよ。私は今、出られないという場合には、罰金を払って、ほかの人にやってもらっていますよ。

 そういうことで、確かにそれをやれば、今度それを受託するグループがまたできて、あるいは土地改良区もそういうことで潤うかもしれない。でも、このやり方は、その場しのぎの方向だと私は思うんですね。

 これでは、まず大きな点は、これを百歩譲って是としても、この予算を国と地方がどう配分するのか。特によく言うのは、国と県と地方自治体ですね。肝心の地方自治体がどれだけの負担率なのか、しかもその責任がどこにあるのか、自治体なのか改良区なのか、改良区の利権の温床にならないか、そういうことのあれも全然見えてきていない。だから、実行する前にきちんとそのことを報告していただきたい。

 私は、これに含めて申し上げたい点は、これはある意味では中山間事業を超えるとも言われる財政規模がこれから出てくると思うんですね。一体このことを今の状況の中で財政当局が了とするかどうか。これは、大いにこれからの半年大変な作業でしょう、財政当局に向かって。

 私は、今中山間の見直しも含めて、あるいは、いろいろな点であなたたちがこの作業をやったときには随分財務省とやり合った経緯がありますよね。でも、一応あのとき緒についた。でも、それはほんの一部でしかない、条件不利地域。目指す方向は、所得補償というものをきちんとやっていくためには、このような場当たり的な、予算措置ではなくてきちんと法律根拠を持った形にしていかなければ、将来に向かってその施策を展開することはできないと私は思うんですよ。そこのところを指摘します。

 多分、答えられないでしょう、このことは。次の質問に行きたいから簡潔に言ってください、もう一点質問したいので。

川村政府参考人 今四百カ所の実態調査、また、必要であればさらに補足的な調査もしたいと思っております。

 ただ、現時点では、何らかの、強制的に権利を制限するとか、あるいは強制的に義務を課すとかということは考えておりませんので、直ちに法律が要るかどうかということは今あれですけれども、そういった実態調査等をよく勉強しながら、そういう視点も踏まえて、さらに検討したいと思っております。

小平委員 それでは、時間も余りないので、最後に。

 これはちょっと地域的な問題なのでお許しいただきたいんですが、小林水産庁長官、御就任後初めての答弁ですね、よろしく、しっかりと期待できる答弁をいただきたいんですが。

 実はトド対策なんです。

 地域の問題で恐縮なんですが、御案内のように、北海道は、ロシアを拠点とするトドの集団、これが回遊して、我が北海道に、オホーツク海や日本海に回遊してきているんですよ。これが漁業に与える被害は甚大なんですね。したがって、これについて、今水産庁、道も、私も大分尻をひっぱたきました。道や水産庁も、この強化網の開発やあるいは実証試験、これも現にやっております。しかし、なかなかこれは効果が出ていない。そういうのが実態ですね。

 そういう中で、これについて取り組み方を私は要請したいんです。

 いろいろな方法があるんですよね。トドは確かにワシントン条約、希少動物で、絶滅が危惧されている動物です。したがって、乱獲は許されません。そのトドのいわゆる保護を守っていく、これはもう言うまでもないことですね。しかし同時に、一定の割合でこれを調整捕獲することも国際条約で認められている。この捕獲に対し、政府はどうそれについて協力をしているのか、どういう方向でやっているのかということ、これについても含めて、長官、御答弁いただきたいと思います。

小林政府参考人 トドの被害でございます。十六年度でも、道庁の報告によりますと十三億円という形で被害が続いておりまして、これに対する対策といたしまして、水産庁で、今お話ございましたけれども、百十六頭毎年とっていまして、その捕獲に対する経費の助成とか、それから強化網。強化網は定置網に加えまして刺し網の方もことしから助成対象とする、こういったいろいろな取り組みの強化をしております。

 それから一方で、やはりトドの来遊の状況とか、それから新しい技術開発とか、そういう基礎的なところも必要なものですから、これも十六年度から取り組みを始めたという形で、いろいろな努力はしておるんですが、なかなか被害がとどまらないということもございまして、私どもこれからも、どういった効果的な対策があるか、これについて、まさに現場の北海道の皆さん方ともよく相談しながら、いい効果のものがあればさらに取り入れる、それからさっきの基礎的なことを続けるといった方向で進めていきたいと思っています。

小平委員 時間が来たんですが、最後に一点。

 これが、いわゆる漁法転換ということも含めながら、今答弁あったようにしっかりこれについての対応策をやっていただきたいと思います。

 そこで、私は一点、こんなことを考えています。

 かつて北海道においては、自衛隊が日高や釧路の方で、いわゆる艦砲射撃の逆だ、陸からトドが根城とするところに向かって射撃をしてトドをけ散らしたわけだ。しかし、これはその後のいわゆる状況変化によってできなくなりましたよね、いわゆる希少動物ということで。それはもう当然わかります、理解できます。しかし、威嚇して駆逐すること、これはできると思うんですよ。逆に、優秀な自衛隊諸君が、その技術をもってわざとトドに当たらないようにして、わざと外すわけだ。威嚇射撃だ、それでけ散らすという。あるいは、一定の捕獲内の頭数だったら、ねらって捕獲をしてほかのトドに脅威を与える、こういうことも一つの方法としてあると思うんだ。これはいろいろな難しい点があると思いますよ。したがって、ここで自衛隊に云々ということはまだ時期尚早ですけれども。

 ただ、あなた方は、こういうことを含めて、言うなればワシントン条約で求められている我が国のあり方、そして一方、漁業に与える被害、この両方をにらみながら、でき得る限りのいろいろな対策を講じてもらいたい。このことを申し上げて、時間も来ましたので、もう御異論ないですね、検討してください。それで、質問を終わります。ありがとうございました。

山岡委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 民主党の仲野博子でございます。

 去る七月十四日、北海道の知床が世界自然遺産として登録をされました。地元の一人として、改めて政府及び関係者の皆様のこれまでの御努力に敬意を表したいと思います。

 今回、世界自然遺産地域として登録された知床の範囲は、沖合三キロまでの海域を含む約七万一千ヘクタールもの地域であり、国内では初めて漁業海域までも含むものであります。また、知床は、漁業や観光産業、そしてこれらの関連産業が地域を支えており、世界遺産の対象地域が、住民の生活圏、そして生産拠点になっているという点においても大きな特色を持っております。世界自然遺産への登録は非常に誇らしいものであり、地域の方々を初めとする関係各位の高い意識と地道な取り組みによるものであります。しかし、世界遺産の登録が最終の目的ではありません。登録からが大きなスタートであると思っております。その地域の住民や地方自治体、そして世界遺産条約を批准した条約国としての政府に重い責任が課せられたことになります。

 知床にも幾つかの大きな課題が残されており、その一つが漁業と自然保護の両立ということであります。知床に生息する、絶滅の危機にある、先ほど同僚の小平委員からもお話がありましたトドが、今スケトウダラをえさにしており、漁業者にとっては、網を破るなどとして、これまで駆除の対象ともなっていたものであります。しかし、知床の世界自然遺産としての適否を事前に審査した国際自然保護連合は、このトドのえさとなるスケトウダラの漁獲量の減少に強い懸念を示し、トドを保護するため、スケトウダラの漁獲規制を求めました。我が国は、このため、漁業と自然保護の両立を目指す海域管理計画を三年以内に策定することを約束し、世界自然遺産の登録に至ったわけであります。

 そこで、質問をさせていただきたいと思います。知床沖のスケトウダラの漁獲量は年々激減をしており、一九九〇年には約十一万トンあった漁獲量が、昨年はその十分の一にまで落ち込んでおります。こうした中、漁業者は、資源保護のため、一九九七年から産卵海域に禁漁区を設け、稚魚や産卵期の漁獲規制、減船を行うなど自主規制を続けてまいりました。しかし、なかなか資源が回復してこないというのが現状であります。

 このスケトウダラの漁獲量激減の大きな原因の一つに、根室海峡で操業するロシアのトロール船による乱獲が挙げられております。この海域は北方領土を目前に控えていますが、海の生態系に境界はありません。ロシアの三千トン級の巨大トロール船の操業を規制しなければ、知床の漁業がだめになるだけではなくて、知床全体の生態系を保全していくこともできません。日ロの国交樹立百五十年の節目でもあることしじゅうにはプーチン大統領の訪日も予定されております。政府の責任として、こうしたトロール船の操業自粛を強くロシア側に働きかける必要があると考えますが、水産長官の見解を求めたいと思います。

小林政府参考人 羅臼沖のロシアのトロール漁船の操業問題でございます。

 御指摘ございましたように、漁業資源への悪影響の懸念と、また、このほか日本漁船の漁具被害の生じることもございまして、そういった問題に対しましては、従来から私ども、さまざまな日ロ間の政府間交渉の場などございますが、そういった機会を通じまして、ロシア側に対し、操業自粛など、そういったいろいろな対応を強く申し入れているところでございます。もちろんこれは、こういった状況でございますので、こういった措置が実現するように、引き続き、さまざまな機会をとらえて働きかけを行っていきたいというふうに水産庁としても考えているところでございます。

仲野委員 小林長官、きょうが小林長官の初めての出番ということでありまして、これから期待をさせていただきたいと思うんですが。

 ただ、今お答えいただきました、さまざまな場を通じて操業自粛を求めていきたいと。やはり、毎回毎回同じような手法でもってロシア側に対して自粛を求めていくという方法では、何らの前進もないと思うんです。こういった世界自然遺産登録、これはもう環境省だけではなくて政府挙げて取り組んでまいりまして、日本では三番目の世界自然遺産として登録に至ったわけであります。そういった意味からも、やはり今まで以上に、今本当に地元の漁業者にとっては、このトロール船の操業によって、もう本当に乱獲で、死活問題である、そういった切実な声が寄せられているわけであります。

 きのうも、担当者とレクをさせていただいたときに、来ていただいた方が地元の方へ足を運んでいただいたと。やはりそのときにも、漁業者を含む関係者と懇談をさせていただく中で、本当に大変である、何とか漁業者に対してしっかりと遜色のないようにやっていかなければならないということをきのう言っていたわけであります。したがいまして、長官からもぜひそのことについて強く求めていただければな、そのように思います。

 それで、現在、専門家から成る科学委員会の海域ワーキンググループにおいて、漁業と生態系保全の両立を目指す海域管理計画の策定に向けた検討が行われております。この海域について、まだ解明されていないことも多く、海域管理計画の策定に当たっては海域の魚類資源やトドなどの科学的調査が必要不可欠であります。

 こうした科学的調査について、知床と北方領土の自然は一体であることから、両国共通の課題として、ロシア側に協力を求めることが必要と考えますが、環境省の南川自然環境局長、そしてまた水産庁長官からも、お二方から御答弁いただきたいと思います。

南川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、私ども、漁業関係者とも連絡をとっております。その中で、主要魚種であるスケトウダラあるいはホッケ、トドの生息状況についてももちろんでございますが、ロシアのトロール船の問題も大きく指摘をされております。これにつきましては、私ども、水産庁と連絡をとりながら、また国際機関とも連携しながら、しっかりと働きかけていきたいというふうに考えております。

小林政府参考人 海域管理計画の作成はこれから始まります。まさに知床の自然遺産、これを守るためにどうするかという意味で、資源状況など、さまざまな科学的データが必要でありますので、水産庁としても、これから環境省とよく協力して、データの提供等を一生懸命やっていきたいと思っておりますが、具体的な内容はこれからの検討でございますので、現時点ではございません。

 ただ、御承知のように、水産庁としては我が国水域内の主要魚種については毎年資源評価をやっておりまして、その中で、例えば知床半島の近海ですね、そこでのスケトウダラとかマダラ、ホッケ、こういったものは知見がございます。

 ただ、先ほどのトドの話でいきますと、現在は被害の多い北海道の日本海側の方の調査が重点になっていますけれども、こういったところをどうするかというようなことを含めて、これからよく環境省とも連携をとりながら方法を考えていきたいと思っているところでございます。

仲野委員 要は、先ほども申し上げました漁業と自然保護の両立が私としてはやはり今回大きなテーマであるなと。漁業者にとってはトドは天敵である、しかしながら自然保護委員会ではトドは世界の希少動物であると。どう両立させていくかということでは、やはり私は、これからの水産行政を考えた上では、お互いにどう資源を回復していくか、どう資源を増大させていくか、そういったこともしっかりとやっていかなければならない課題の一つではないのかな、そのように思っております。

 そういった意味では、やはり環境省も、今水産庁の長官もお答えいただきました、何とか連携をとってやっていきたいと。やはり私は、これからいろいろな水産資源の回復に向けた具体的な科学的調査研究、実証試験の実施などについてさまざまなデータを把握しなければならない、取り組んでいかなければならない。そうなれば、やはり省庁の枠を超えた体制が必要であると考えます。

 そういった意味では、今後、環境省、水産庁はその体制になるわけでありますけれども、そのほかにどういった方たちが、この海域管理計画を策定するに当たってそのチームの中に入っていくのかということをもう少し詳しく教えていただくと同時に、十八年度の概算要求も八月末で締め切りになります。そういった意味では、この知床自然遺産に関する予算の要求も財務省にしっかりと訴えていかなければならない、そしてまた、地元羅臼町、自治体に対しても、今本当に三位一体改革の中で非常に厳しい状況であります。何かとさまざまな予算が必要となります。そういった意味で、どのようにお考えになっているのかをお尋ねしたいと思います。

南川政府参考人 御指摘のとおり、私ども、知床の基幹産業でございます漁業、それから自然遺産というものを両立させていく、共存させていくことは極めて重要だと考えます。また、実際に現地に行って伺いますと、地元の漁業関係の方も、マスコミからマイクを突きつけられて自然か漁業かと聞かれると、どぎまぎして、思わず漁業と言ってしまうけれども、要は、地元の自然についても漁民の方も非常に深い思い入れと愛着を持っている、何とか共存したいというのが本音だというふうに伺っております。

 したがって、私ども、これから作業してまいります中で、北海道庁、水産庁はもちろんでございますけれども、地元の斜里町、羅臼町、また漁業関係者の方と十分合意形成を図りながら、その中で漁業と海域生態系の保全ということが両立ができるような、知床ならではの計画をつくっていきたいと思います。また、必要な予算要求もしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

仲野委員 環境省の局長からは本当に前向きな御発言をいただきました。

 いずれにいたしましても、人類共有の財産として知床の自然を次世代にしっかりと引き継いでいく必要があると思います。政府の皆様にも今後ますますぜひ頑張っていただきたいことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います、時間が非常に短いので、簡単ですが。

山岡委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 私も幾つか質問したいことがありますが、時間が短い関係で、簡潔に御答弁をいただきたいと思っておりますので、よろしく御協力のほどお願いいたします。

 さて、まず冒頭、六月の種苗法の改正の中で、副大臣よりいろいろ御答弁をいただいた中に、DNAが、加熱する、すりつぶすことで消えてなくなってしまう、探せないんだ、こういうような話をされたときに、私は、それで探せないわけじゃないんだ、要するに、DNAというのは、それだけではなくて、設定するプライマーをどこに設定するのか、そういうことが重要なんだという技術的な話をさせていただきました。最後に副大臣から、しかしながら、DNA鑑定の問題だが、技術会議で調べたら、先ほどの私の答弁で間違いない、こういうような一言が加えられたんですが、行き違いというか、私は、それは申しわけありませんけれども、副大臣、誤解をされている部分があると思っておりますので、技術会議の、もしくは技術系の方からきちっと話を聞かせていただきたいと思います。

西川政府参考人 加熱等によってDNAが断片化するということがあるわけでございますけれども、議員御指摘のとおり、理論的にはDNAが断片化されてもDNA分析は可能でございます。

 ただし、現在用いられている手法では、加熱等の処理が行われた加工品については、品種識別が可能なものが限られているというのが実態でございます。このため、農林水産省所管の独立行政法人などにおきまして、識別を可能とする新たなプライマーを設計するなどの研究を現在精力的に進めているところでございまして、今後とも、DNA品種識別技術の研究開発を推進いたしまして、品種識別の可能な加工品の範囲の拡大に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 副大臣、何か御答弁があれば。

岩永副大臣 今答えられたとおりでございます。

 理論的には、DNAが断片化されてもDNA分析は可能だ、このように思っております。今の手法では加工品についての部分というのが限られておりますので、今後、研究をさらに進めていく必要がある、このように思っております。

 それから、先生、恐らく次の御質問になろうと思うんですが、結局、前回の副大臣の答弁を修正するかどうかということでございましょうけれども、先ほどの話のように、今後とも研究開発が大事である、こういうことを私は申し上げたつもりでございますので、理論的に、DNAが断片化されてもDNA分析は可能であるという議員の御指摘について、見解を異にするものではございません。

 それで、今後とも実用化のための研究開発が重要であるとの認識を持っているということでございますので、御了解いただきたいと思います。

岡本(充)委員 副大臣、確かにその技術の部分は、私は理系出身でありますし、大臣はどちらかというと文系御出身でありますから、それは細かな部分で私が正しいだどうだと言っているつもりはないんです。ただ、最後に一言言われた、私が正しくてというところに、私は、ちょっとそれは問題があったんじゃないかというふうに指摘をさせていただきました。

 この問題はこの辺までにしておいて、きょうはBSEの話、時間は短いんですけれども、少しだけ話をさせていただきたいと思っております。

 きょうは、厚生労働省から健康局長さんにもお越しいただいておりますので、確認をしたいんですけれども、ことしの二月に話が出ておりました変異型クロイツフェルト・ヤコブ病、国内で感染例が一例確認されていた、あの話以来、この話は当委員会でも余り話題に上っておりませんが、現時点で、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者さん、厚生労働省で確認をしている人、もしくは確認中、疑わしき例を含めてどのように把握をしてみえるのか、御答弁をいただきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月に亡くなられました患者さんについて、ことしの二月四日に変異性クロイツフェルト・ヤコブ病というふうに確定をしたところでございます。我が国では、変異型も含めましてクロイツフェルト・ヤコブ病につきましては、感染症法に基づきまして、患者発生の際の届け出を義務づけております。

 また、それと同時に、これはダブルトラックで厚生科学研究事業の遅発性ウイルス研究班による調査というものもしておりまして、この二つのデータをもとにしてCJDサーベイランス委員会によって判定をしているということでございます。実態の正確な把握ができていると私ども考えております。

 結論でございますけれども、このような監視体制のもとにおきまして、二例目のvCJD患者の発生は確認されておりません。

岡本(充)委員 確認をされていないのは、今そのとおりサーベイランス委員会での確認ですから、その以前の段階として確認中もしくは疑わしい症例というものは把握されているのかどうか、その点については御答弁いただけますか。

田中政府参考人 現段階で、今そういうふうな報告は聞いておりません。

岡本(充)委員 この点についてはもう一つ指摘をさせていただきたいんですが、どういう症例をvCJD、いわゆる変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病だというふうに認識をされるか。最初は、その患者さんが病院に来るに至った原病歴なり、それからまた、もちろん過去のそういう暴露の可能性についてなり、また脳波の所見なり、こういったものを参考にして疑わしき症例をピックアップされているんだと私は聞いております。

 しかしながら、確定診断に至る過程には、最終的には剖検をして、やはりその患者さんがどういう異常プリオンを持っているのか、この部分を見ることも欠かせないのも事実だと思うんですね。しかしながら、日本では剖検をする症例が大変少ないのも事実です。特に、脳の剖検については余り行われていない現実を局長も御存じだと思います。

 そういった意味で言いますと、これから何らかの対策を打っていかなきゃいけないのではないかというふうに思うんですが、局長の御見解をいただきたいと思います。

田中政府参考人 委員も御承知だと思いますけれども、vCJDとスポラディックのCJDはかなり臨床的にも幾つかの特徴ある、例えば脳波上あるいはCT上違いがございますので、臨床的にある程度鑑別がつくのではないかというふうに考えているところでございます。

 ただ、確かに、確定診断という意味では剖検は非常に重要でございますので、今後、どういうふうに支援ができるか、研究班による支援体制の整備とか、あるいはガイドラインをつくりまして、ぜひ剖検を徹底するようにというような普及啓発活動等をこれからやっていきたいというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 普及啓発活動と言われましたけれども、これには亡くなられた方の御遺族の方の御了承が必要なわけですし、そういった意味では、単に普及活動といっても非常に難しい面があると思うものですから、制度を改めていくような必要性もあるというふうに指摘をさせていただいて、私は、今回、この話はここまでにさせていただきたいと思います。

 さて、今度は内閣府の食品安全委員会の件について、少しお話を伺わせていただきたいと思います。

 こちらの内閣府の食品安全委員会の事務局に、厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長さん、そして農林水産省消費・安全局衛生管理課長さんから、「食品健康影響評価に係る資料の提出について」ということで、平成十七年七月二十九日付の資料をいただきました。

 この中で、アメリカで見つかった二頭目のBSEに関する資料、食品安全委員会のプリオン専門調査会に提出をされる資料を添付されたと聞いておりますが、この中で非公開のものがございます。これは、当然のことながら重要なデータが含まれているわけですね。

 例えば、昨年十一月に実施した一次検査のELISAの値、一回目、二回目。二つ目が、昨年十一月、一次検査陽性と確認した以降に実施した検査の内容とその結果。これも重要です。三番目が、六月の再検査時にUSDAで実施した検査について、検査法のプロトコール、使用抗体の種類、各検査の評価、この画像を含む。そしてまた、英国で実施した検査法について、検査法のプロトコール、使用抗体の種類、各検査法の結果、これも画像を含む。さらには、五番目として、USDAが通常実施しているIHCの、そしてまたウエスタンブロットのプロトコール、この中で、OIEの手法と異なる部分、使用抗体の種類等。こういったところが非公開とされていると聞いております。

 こういったものが非公開だ、アメリカ側から公開しないでくれと言われた。その公開しないでくれと言われた理由は、アメリカ国内でも公開していないから日本国内でも非公開だ、こういう理由が入っていたと聞いておりますが、本来であれば、極めて重要なアメリカの今の検査体制を示す資料でありまして、これについては、しっかりと、本来であれば、なぜ非公開か、公開をしなきゃいけないんだということを強く求めなければいけません。期限を区切って、いつまでにそれを公開できるようにしていくのか、その答弁を求めたいと思います。

外口政府参考人 食品安全委員会におけるリスク評価に用いられる資料につきましては、検討過程の透明性を確保する観点から、原則として公開されることが重要であると考えております。

 先日、米国より提出された資料のうち、非公開とされたものにつきましては、先生御指摘のような、米国における二頭目のBSE感染牛に関する検査の生データや方法、あるいは米国で実施しているサーベイランスの現在までの結果に関する資料等でございます。これらにつきましては、政府内限りの取り扱いという前提で先方より提出を受けたため、先日は、委員限りの資料として、プリオン専門調査会に農林水産省とともに提出をいたしました。

 BSE強化サーベイランスの結果に関する資料につきましては、米国政府からは、これらの情報は食品安全委員会の審議に供するためのみに作成したものであって、今後、サーベイランスが終了してデータの分析を行った上で公開する予定であることから、現時点でのデータは非公開としているとの説明を受けました。

 また、検査の生データなどそのほかの資料についても、米国内はもとより、日本以外の国には提供していない資料であると米国政府より聞いているところでございますが、厚生労働省といたしましては、これは農林水産省も同様と思いますが、よく連携して、引き続き米国政府に対して、これは日本国民の信頼ということにもつながることにもなりますので、公開することができないか、こういったことを要請していきたいと考えております。

岡本(充)委員 中川局長にぜひお答えいただきたい。いつごろまでにその回答をいただくのか、次のプリオン専門調査会のころまでには公開できるように対応をとるというふうなお約束をしていただけるか、お願いをいたしたい。

中川政府参考人 食品のリスク管理に関連した情報についての基本的な考え方は、今厚生労働省からお答えしたのと全く私ども同様でありまして、できる限りオープンな形で関係者に情報提供していき、また意見交換をしていくということが大事だというふうに思っております。

 今、いつまでにということでありますけれども、これは、食品安全委員会の方でこれから審議をさらに続けられ、答申を取りまとめられる、そういう作業があるわけでありまして、こういうところでも当然、具体的なアメリカ側の数字の取り扱いが問題になってくると思います。そういうことも含めまして、アメリカ側には情報の公開について私どもは要求していきたいというふうに思っております。具体的な期限ということではなくて、食品安全委員会の委員の方々も公表すべきだというふうに言っておられますので、それを踏まえましてアメリカ側には要求していきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 時間が来ましたので、最後に、今お話をさせていただいた五点の資料と、そして、アメリカのサーベイランスを実施した牛の年齢分布、カテゴリー別、乳肉別、地域別等の結果、そして、自国産牛でBSEが確認されたことを受けた、BSE清浄国に対するアメリカの考え方、さらに、カナダにおけるBSE感染牛の診断、サーベイランスの年齢分布等、こういった資料を、国民の皆様方の代表であるこの農林水産委員会の場にもぜひ提供をしてもらって、この場で議論に付せるような、そういった形としたいと思いますので、どうか委員長、理事会の方で、この資料の提出について御検討の方をお願いいたしたいと思います。

 最後にそれだけ申し上げて、終わりたいと思います。

山岡委員長 理事さんに申し入れて、理事さんから提案してください。

岡本(充)委員 以上で終わります。

山岡委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、三つのテーマでお話をしたいと思うので、答弁の方、よろしくお願いいたします。

 最初に、輸入豚肉の差額関税制度の問題で、これまで二回、私はこれを取り上げてまいりました。その後も、生産者団体あるいは加工業界、それぞれからいろいろな御意見をいただいております。中には、我々業界は、ほとんどの企業が豚肉の輸入ができなくて、ブローカーから脱税豚肉を購入し企業活動しなければならない、このように、脱税豚肉を買っていることをみずから明らかにした上で、差額関税制度の改定を求めるある会社の陳情もいただきました。農水省にも同様のものが届いているはずであります。

 私は、まず、制度の持つ意義や役割が正しく評価されるチャンスがないままに違法行為が常態化してしまったことを非常に残念に思います。財務省には重ねて全容の解明を求めたいと思うんです。

 そこで伺いますが、この数年間で輸入豚肉の通関数量、通関金額がどのくらいで、そのうち差額関税が適用された割合が何%になるのか教えてください。また、この間、チェック体制で改善を図ってきたことがあれば、それを教えてください。

    〔委員長退席、山田委員長代理着席〕

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 通関の数字でございますが、私ども、いわゆる四・三%といいますか、差額関税じゃない部分でございますが、これが適用されたものと、差額関税が適用されたものというのに分けて申し上げますと、二〇〇四年度が約四千億、四千四億五千八百万です。二〇〇三年度が三千六百三十二億八千万、二〇〇二年度が三千七百七億円というふうになってございます。

 差額関税が適用された数字でございますが、二〇〇四年度千九十四億五千二百万、それから二〇〇三年度でございますが、一千一億五千六百万、二〇〇二年度でございますが、七百九十二億六千万というような数字になってございます。

 四月、五月の当委員会にも申し上げたわけでございますが、豚肉の差額関税を悪用しました不正輸入に対しましては、これまでも厳重な取り締まりに努めてきたところでございまして、引き続き、通関、事後調査、各段階におきまして厳重な審査、調査をやっておるところでございます。

 さらに、通関時の審査あるいは事後調査の中で関税逋脱の嫌疑が発見されれば、関税法違反嫌疑事件といたしまして、その事実を解明するために犯則調査をやっているわけでございまして、検察当局ともよく連絡いたしまして、協力して事実の解明に努めたところでございます。

 前回、五月以降でございますが、五月三十一日でございますが、フジチク、それから六月三十日でございますが、成幸という、伊藤ハムの関連でございますが、それぞれ告発させていただいているというところでございます。

 さらに、農水省さんにおきましても、最近の状況を踏まえまして、食肉関係企業に対しまして法令遵守の徹底の指導ということに努めてきておられるというふうに伺っておりまして、私どもといたしましても、農水省との連携もより一層強化しながら、引き続き本制度の厳正な執行に努めてまいるということでございます。

 以上でございます。

高橋委員 今、割合を聞いたんですけれども、ちょっと答えがなくて、大体計算しますと、ここ数年でいわゆる差額関税を使っている、つまり、きちんと申告をして払っているだろうという割合は、一五%からよくて二〇%にとどまっているわけですよね。残りが全部というふうには言いませんけれども、しかし、残りの従価税を払っている価格を見ると、数量で金額を割ると平均が出ますから、二〇〇二年度からいって、五百九十四円、五百八十四円、五百八十円という形で、分岐点価格に極めて近い価格で集中されて取引されている。本来ならいろいろな価格があるはずなのに、ほとんどがその分岐点価格に集中して、明らかに作為的にされているということが十分わかるわけですね。

 ですから、割合の問題、あるいは価格が固定しているという問題、そして、では市場価格は、実際現地ではどうなのということを比べれば、本来ならば容易に実態はわかる。ですから、いわゆる現場で、事後調査ではなく、会社の調査も含めて、もっと事前にチェックできる体制は可能かと思うんですが、その点について一言だけお願いします。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 どの程度とかいう議論でございますが、いずれにいたしましても、私ども、通関段階、事後調査段階におきまして徹底した審査、調査をやっているところでございます。海外につきましても、いろいろな価格情報等を収集する等々を含めまして、いろいろやらせていただいているというところでございますし、輸入通関段階におきましても、仕入れ書価格の妥当性をチェックするということで、現場はもちろん出かけていきますし、それから、仕入れ書と契約書の価格対査を行うということを鋭意やらせていただいているわけでございます。

 そういうことで、たまたま、いろいろなことがございますが、昨今、この場での御議論以降、二件告発させていただいているというところでございます。

高橋委員 農水省に伺います。

 業界団体などは、分岐点価格に合わせた仕入れをするために、本来不必要な肉もセットにして入れてきたと主張しているわけですね。私は、そのこと自体が非常に不正常だと思うんです。つまり、不必要だと言っていながらそれを入れなきゃいけない、そのことが及ぼす影響というものもあるわけですよね。長期に冷蔵保存しなくちゃいけないんだとか、国内産業への影響だとか、さまざまあるわけですね。だから、そのこと自体、つまり、部位がどうであろうとワンセットで同じ値段だ、そのこと自体も見直ししなければいけないと私は思います。

 それで、関税を免れて入った安い豚肉が市場に出回って国産価格に影響しているという指摘があります。まず、これについてどう考えるか。それから、六月二十四日の記者会見で、大臣は、この制度を見直すと明言しております。どのように考えているか、伺います。

西川政府参考人 今、国内の養豚農家に対しての悪影響というお話が一点あったと思います。

 委員御案内のとおりでございますけれども、豚肉の差額関税制度は、安価な豚肉の大量輸入による国内需給の混乱を防止するということによりまして、価格安定制度と相まって、国内の需給及び価格安定に寄与してきたものでございまして、国内の養豚農家の保護に一定の効果を発揮してきたものというふうに考えております。

 国内の豚肉の枝肉卸売価格を見ますと、季節的な変動を繰り返しておりますけれども、価格安定制度で定められている価格安定帯の幅の中でこれもおおむね推移しているということでございます。

 ただ、豚肉の差額関税制度を悪用いたしまして、不正に低価格の豚肉が輸入されるということは、制度の趣旨に反するものでございまして、国内の豚肉価格への影響が否定できないものがあるわけでございますけれども、これを定量的に把握するのはちょっとやはり困難であるというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、不正申告による脱税行為は許しがたい反社会的行為でございまして、今後とも適正に対処していく必要があるというふうに考えているところでございます。

 それと、いろいろなこの制度に関するあり方について、これは大臣から御指示をいただきまして、本来、この差額関税制度の取り扱いというものは、WTO交渉の中で議論されるべきものではございますけれども、多様な意見があるということで、島村大臣の御指示によりまして、生産者、関係事業者からのさまざまな意見を聴取するために、まず七月十二日、一回目でございますけれども、養豚問題懇談会を皮切りに、関係団体との意見交換を行う、そういうことを今しているというところでございます。

高橋委員 この点は、私、きょうは指摘にとどめたいと思います、次の質問がありますので。

 やはり、違法行為がやめられないから制度をやめるということには決着をしてほしくないと思っているんですね。まず違法行為はきちんとやめさせる、その上で、制度がいかがなものかということをしっかり検討されるべきだと思っているんです。私は、本当の意味で、生産者がどうあるべきかということで出されたこの制度が、さっきお話ししたように、評価されるチャンスがなかったということを非常に残念に思っているわけです。

 養豚経営は、一戸当たりの飼養頭数は大変拡大しておりますが、農家戸数は昨年度が八千八百八十戸、前年比五・八%減と減少し続けています。FTAの拡大で三割しか養豚農家は残らないんじゃないかという指摘もございます。ですから、単に生産者を守るというだけではなく、本来、農水省が掲げた自給率七三%という目標もあるはずですので、その点から見て、消費者も本来は納得できる制度なんだと胸を張って言えるようにしっかり対応していただきたい、そして、生産者のもともとの意義を本当に発揮できるように対応していただきたいということを、きょうは指摘にとどめたいと思います。

 次に、火傷病の問題で、先ほど木村委員の方からも詳しくお話があったんですけれども、私も先般、弘前市で一千名の生産者、行政、関係団体が結集した集会に参加をして、改めて侵入阻止という思いを深めているところであります。

 それで、地元関係者の中には、検疫措置は実質ゼロに等しい、丸裸で入ってくることになるんだ、そういうふうな指摘がございます。これでは報復関税を受け入れてでも現行措置を維持した方がいいのではないか、こういう意見さえ出ています。これについてまずどう考えているのか、伺いたいと思います。

中川政府参考人 先般行いました生産者の方々への説明会あるいはパブリックコメントの中で、今先生が御指摘になりましたような意見があったことは私どもも承知をしておりますが、WTOの再パネルの議論の中で、これは専門家によります議論の中で、成熟した病徴のないリンゴ果実であれば火傷病を伝搬するリスクは無視できるという、そういう専門の学者の知見に基づいて今回判定がなされたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、我が国の国境措置、植物防疫措置につきましては、基本的には、やはり国際ルールに基づいてSPS協定に整合した措置に改める必要があるというふうに思っております。

 もちろん、その中で、日本に入ってくる火傷病のリスクというものを高めることがあってはいけないわけでありますので、そこは、病徴のない成熟したリンゴということをきちっと確認をする、その手法を担保するということで、私どもはこういったリスクがふえないようにやっていきたいというふうに思っております。

高橋委員 ルールに沿ってというお答えでしたので、関税を受け入れるのではなく、検疫措置を改定するという意味だと思うんですね。

 私はもちろん、前にも指摘をしましたが、この百五十五億という関税は全く不当な根拠のないものであり、受け入れられない、まずこのこと自体を争うべきだと思っているわけですけれども、しかし、受け入れられないからといって、検疫措置が丸裸では、結局、その犠牲が生産者であり、関連業者にかかってくるわけですよね。これは本当に承服できないと。

 私はやはり、もともと、SPS協定自体が輸出国の論理が優先される大変不合理な制度だと思っています。未発生の国がそもそも発生のリスクを証明するにはおのずと限界があって、発生国でこそリスクは無視できるんだということを科学的に証明しなければならないわけですよね。そういう点では非常に不合理ではないか。あるいは、この後、牛の話もしますけれども、この決着が、ほかの産業にも非常に影響してくる最悪の決着ではないか。まず、こういうSPS協定のあり方、輸出国の論理が優先されるあり方について、そういう認識をお持ちですか、伺います。

中川政府参考人 私は、それぞれの動物にしろ植物にしろ、日本の国内にさまざまな病害虫あるいは疾病が入ってくることを防止する、そういった措置というのは、科学的な知見に基づいて必要にして十分な措置をきちっととっていくということが大事でありまして、この点につきましては、SPS協定においてもそういったことを主張する権利は認められているというふうに思っております。

 したがって、今回のことについて申し上げますと、専門家が議論した結果、成熟した病徴のないリンゴというものは火傷病の伝搬のリスクは無視できる程度であるというふうに判断された以上、そのことにつきましては、そこを踏まえた上で、かつまた、そうだからといって、日本の国内に火傷病が入ってくるリスクを高めない方法でもってこの問題をきちっと解決するというのが私どもとしてとるべき道ではないかというふうに思います。

 報復関税の話がありましたけれども、まずは、日本がとっているさまざまな措置というのは、やはりSPS協定上も整合したものであるということをきちっと担保していくということが、それ以外のことに対する諸外国の信頼を確保する上でも大事な点であるというふうに思っております。

高橋委員 私は、その認識自体が非常に問題だと思うんですね。それだけの十分な措置を、日本はこれまで何度もやりとりはしてきたけれども、しかし、十分なデータが得られないという条件のもとでのアメリカとの協議をしてきたわけですから、そういう点でやはり不十分だと言うべきではないかと。そうでなければ今後も負け続けるわけですよ。そういうことを指摘したいし、協定の改定を求める姿勢をぜひ要望したいと思います。

 それを視野に入れつつ、現時点でまず、ではどうするのかということが問われてくるわけですから、初動防除も含め、国の責任は確実に果たしてもらえるかどうか、これをもう一度確認をさせてください。

 それから、侵入警戒調査においては、園地や港のみならず、樹園地帯ですとか、樹木地帯というんですか、街路樹ですか、そういうところなども含めてポイントをもっとふやすこと、そして何よりも水際対策を飛躍的に拡大するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

中川政府参考人 万が一にも日本の国内に火傷病が侵入しないように、先生も今具体的におっしゃいましたが、主要な港あるいは空港、さらにはまた生産地におきまして、これまでも定点観測的にやっております箇所を大幅にふやしまして、侵入警戒調査をきちっとやっていきたい、そういう監視体制を強化していきたいというふうに思っております。

 その上でさらに、万が一にも侵入した場合には、できるだけ早くそれを見つけて、かつ蔓延をしないように、きちっとした撲滅のための緊急防除をやっていくと。当然、その緊急防除に必要な経費、それからまた、場合によっては生産者の方々の樹木等の伐採それから焼却ということも必要になりますが、そういった場合のさまざまな経費についての支援、そういったものは、先ほど大臣からも御答弁いたしましたけれども、国の方できちっと責任を持ってやっていきたいというふうに思っております。

高橋委員 何とかこれはしっかりとお願いいたします。

 次に、BSEの問題で引き続いて局長にお伺いをいたしますけれども、先ほど岡本委員から、今回の食安委員会の資料の非公開の問題が出されました。私も非常にこれを不満に思っております。座長自身が資料の公開をすべきだと主張していることもありますので、速やかにこれは公開をするべきだと。

 一点確認しますけれども、この問題に関しては、アメリカの方から非公開にしてくれと言われたのではなくて、日本から、公開してもいいですかと対応を伺ったことに対して、アメリカが、だったら非公開にしてくれというふうなやりとりだったというふうに聞いておりますが、事実でしょうか。

中川政府参考人 事実ではありません。むしろ、食品安全委員会で、提出資料につきましては、これはもう審議自体が原則公開でもありますし、提出をいたします資料につきましても基本的に公開ということでやってきたわけでございます。

 今回、八月一日に提出をいたしました資料につきまして、事前にこういう資料が欲しいということをアメリカ側に要求いたしました際に、これは東京で在京の大使館と担当者が打ち合わせをしたわけでありますけれども、こういう項目についての資料が欲しいということをアメリカ側に伝えました際に、そういう項目の中には、本国に照会をしてみるけれども、公表、いわゆる一般公表は難しいものもあるかもしれないというふうなことを担当官が言い、いずれにしても本国に照会をするということでありました。

 そして、現実に資料が参りました際に、幾つかの資料については、まだ国内でも公表していないとか、また食品安全委員会に提出するために特別に集計をしている等々の、先ほども答弁をいたしました、そういう理由によりまして公開にしないでもらいたいという、アメリカ側からそういう意向の表明があったということでございます。

高橋委員 これは、それ以上やりとりすると仮定の議論になりますので。しかし、食品安全委員会が今後非公開になるんじゃないかとか、そういう懸念が逆に深まるわけですよね。そういうことがないように対応をお願いしたいと。

 それから、委員長も、山田委員も同席されていたので御存じだと思いますが、アメリカの農務省と我々調査団とのやりとりの中で、今回非公開とされた資料のうち、アメリカのサーベイランスを実施した牛の年齢分布、カテゴリー別、乳肉別、地域別、この内訳の詳細な資料を欲しいということをその場で求めているんですね。だから、食品安全委員会だけではなく、我々が国会として行った調査の中で求めている資料さえも非公開にされた、これはどういうことなのかということが本当に問われてくるわけですね。その点を強く主張して、今後の議論に当然必要な資料ですので、出していただきたいと思っております。

 そこで、今回出された資料の中で、クリフォード米国首席獣医官が七月十一日付の書簡で、疫学的な調査により米国で二例目のBSEが確認され、米国で実施されているサーベイランスシステムはBSEを見つけ出すために十分なもの、こういう認識をされているんですね。

 私は、そもそも日本とアメリカの検査の出発点が、スクリーニングとサーベイランスという違いがあるということでの、なかなか抜きがたいギャップというのを非常に感じていますけれども、しかし、少なくとも、そのサーベイランスが十分なものであるか、合理的に評価できるものであるかということに疑いをまず持っているんです。

 それで、まず局長に確認しますけれども、出発点に違いはあっても、サーベイランスが正しく効果を発揮しているかどうか、この点はアメリカ牛肉のリスク評価においては検証されなければならない重要な問題だと思いますが、どうですか。

中川政府参考人 日本に輸入される牛肉の安全性という点について申し上げますと、サーベイランスかどうか、BSEテストについて日本とアメリカ側で見解の違いのあるのは一応横に置いた上でのお話でありますけれども、アメリカから輸入される牛肉の安全性については、現在、アメリカがとっているサーベイランスの状況、あるいはその他さまざまなBSE対策の現在とられている状況、そういったものを踏まえて、その上で上乗せ措置を加えて輸入されるものが日本の国内で流通しているものと同等かどうか、BSEリスクの点において同等かどうかということを聞いているのであります。

 サーベイランスについての見解はいろいろあるかと思いますけれども、食品安全委員会に現在私どもが諮問をいたしておりますのは、その上で安全の程度はどうか、リスクの程度はどうかということを聞いているという、事柄は二つのことであるという点については御理解をいただきたいというふうに思います。

高橋委員 簡単な確認ですけれども、今アメリカで三例目の感染が疑われている、まだ確定はしていませんけれども、これについてはアメリカの強化サーベイランスとは別枠で発見されたということですが、それでよろしいですね。

中川政府参考人 昨日、アメリカ側で、今回の三例目のものについては、さらに詳細にイギリスの研究所にも検体を送って調査した結果、陰性であったというふうに発表されました。

高橋委員 陰性、わかりました。だけれども、私が聞いたのは、強化サーベイランスと別枠ですねということです。

中川政府参考人 済みません。

 その点につきましては、アメリカ側の発表によりますと、ボランタリーにやったものであった、獣医師が任意でやったものであったというふうに聞いております。

高橋委員 厚労省に伺いますけれども、アメリカの検査について、二例目ですね、IHCの検査が一たん陰性になったのがウエスタンブロットで陽性になったじゃないかという指摘、それから、英国に送ったときはIHCでも陽性だったんじゃないかと。ですから、アメリカの検査の信頼性というのが問題にされていると思いますが、その点について見解を伺います。

外口政府参考人 アメリカの従来までのやり方は、確認検査はIHCだけで、その点では、日本が行っているIHCとウエスタンブロット法による確認検査の方が十分な検査だと認識しております。

 それでは、強化サーベイランスがどの程度不十分なのか、あるいは十分と言えるのかということにもつながると思うんですけれども、本年六月に、米国農務省監査局の勧告によりまして、今まで強化サーベイランスの中でELISA法で疑陽性とされた三例すべての検体についてウエスタンブロット法で追加検査を行って、一例陽性、二例陰性という判定になっているわけでございます。それで、今後ウエスタンブロットもやっていくことになっているわけでございます。

 それで、強化サーベイランスの結果がどうだったかということを振り返ってみますと、ELISA法は一通りやっておりまして、後づけではありますけれども、ウエスタンブロット法の確認もしておりますので、強化サーベイランスでELISA法を経たものについてのデータについては、今後、ウエスタンブロット法をやるときと、精度、感度面では変わりはないというふうに認識しております。

高橋委員 今、技術的な面でELISAがあるからというお話をされたと思うんですけれども、私が今この二つのことを聞いたのは、かなりの偶然が重なって二例目が発見され、そして三例目が陰性だったとなっていますけれども、ウエスタンブロットが結局検査できないわけですから、今回の三例目に関しては。それは本当にそれでよかったかどうかはわからないわけです。

 それに、仮に陽性だとしても、この強化サーベイランスの外で発見されたものだと。ボランタリーによる発見だったということを考えると、本当にアメリカが言うようにサーベイランスとしては十分なものなのか、信頼性が置けるものなのかということにみんなが疑問を持っているんですよ、国民が。そのことを言いたかったわけですね。

 逆に言うと、ボランタリーで検査をしたいと言っている米国の中の企業だとかそういうのに対しても、抑制するような、過去されてきたわけですよね。あるいは、検査のピックアップの仕方が問題があるんじゃないかという指摘もされてきているわけですよね。

 だから、そういうのに対して真剣にこたえてもらわなければ、やはりリスク評価はできないということを指摘せざるを得ないんです。委員の中からも、リスク評価の、輸入再開に向けた諮問を取り下げるべきという指摘さえも出てきていると思います。

 大変残念ですが、時間がなくなってしまいましたので。

 今回、二例目が発生しても貿易の再開には支障がないとペン農務次官がおっしゃいました。その前提に、やはり昨年の十月二十三日の日米の合意があると。そこが結局決め手になっちゃって、日本の姿勢、アメリカの姿勢を決めているんだということに強い憤りを持ちますし、そうした点で、日本の政府の対応が改めて問われているということを大臣にぜひきょう聞きたかったんですが、時間になりましたので、そういう立場で臨んでいただきたいと指摘をして、終わりたいと思います。

 以上です。

山田委員長代理 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党の山本であります。

 きょうは、秋田県の大潟村の問題ですね。いろいろと全農の米の不正取引問題などでお騒がせいたしておりまして大変恐縮でございますが、二田先生がおられないので残念ですけれども、秋田県の大潟村における畑作地の水田転用問題ということでございます。

 オーガニック・ファーム・大潟という農業法人、これが、二〇〇二年に大豆を初めとする畑作営農を行うという経営改善資金計画というのを出しまして、これが承認をされて、スーパーL資金、これは農業経営基盤強化資金であります、十二億六千百万円を借りて、百四十八ヘクタールの農地を購入、一昨年、昨年と大豆を作付しましたが、ことしになって突然、水田に転用したわけでございます。

 確かに昨年は台風等の影響で塩害がございました。なかなかうまくいかなかったということはありますが、突然、加工用米として認定してほしいという申請があって、この間、スーパーL資金、国、県、村が利子補給をしてきたわけでございます。県は過去二年で千八百四十六万円の利子補給、ことしも一千万円の助成を予定していたわけでございます。

 この問題、生産調整の仕組み、あるいは農業経営基盤強化促進法など、国の制度の根幹を揺るがす極めて重要な問題ではないかというふうに思います。これについて県内でも県議会で決議が上げられました。加工用米に突然転用して、突然、加工用米で何とかしてほしいというようなことでありますが、この加工用米という制度そのものは、既存田の生産調整の一方策として設けられたものだというふうに理解しておりますけれども、この間の経緯について、国としてはどのように考えているのか、まずお伺いしたいと思います。

村上政府参考人 オーガニック・ファーム・大潟に関するお尋ねでございます。

 基本的な問題といたしまして、米については、潜在的に生産可能量が需要量を大幅に上回る需給ギャップがあるという中で生産調整を行ってきているわけでございますので、その中で引き続き新たな開田は極力控えるべきだというふうに思っております。

 本件につきましての加工用米の関係でございますけれども、これについては、生産者ごとの生産目標数量を超える生産について、一定の手続を経て加工用等に向けられることを農政事務所が認定した場合につきましては、生産調整の対象として扱うということが可能になるわけでございますけれども、本件オーガニック・ファーム・大潟の件については、これに該当しないということで、生産調整の対象というふうに扱うことはできないということで、産地づくり対策などの生産調整メリット措置というものは受けられないということになるわけでございます。

山本(喜)委員 今回の件というと、今年度に限ってということなのかということですね。新規開田は抑制されるべきだという国の方針は今でも生きていると思うんですが、それにかかわって、この新規開田をして加工用米にするということが果たしていいのかどうか、これについてお伺いします。

村上政府参考人 オーガニック・ファーム・大潟の方からは、加工用米についての取り扱いができないかという話があるわけでございますけれども、その場合に、既存の田んぼを対象にするべきで、新規開田については対象にすべきではないのではないかというお話かと思いますけれども、加工用米については、今申し上げましたように、主食用等では対応しがたい低価格帯の加工用途に供給するということが確認される場合については、生産調整の目標数量の枠外ということで可能ということでございます。

 そういう意味で、仮に加工用米の作付が既に水田であったもの以外で行われた場合でありましても、この手続を経て、その需要者との結びつきがあらかじめきちっと確認できるということであれば、排除することは難しいというふうに思っているところでございます。

山本(喜)委員 そうすると、国の新規開田を抑制するという方針は変わったということでいいんですか。

村上政府参考人 新規開田を抑制するということにつきましては、米についての潜在的な需給ギャップが依然として大きいという中で、その方針自身は変わっておりませんし、昭和四十四年の事務次官通達そのものもちゃんと生きているわけでございますけれども、生産調整の考え方といたしまして、十六年以降の需給調整の仕組みといたしまして、いわゆる市場の需要動向を敏感に感じ取って、売れる米づくりをするという中で、生産調整目標面積を配分するという方式から、ポジ方式ということに、生産目標数量を配分するという方式に変えたわけでございます。

 そういう意味で、今までの対策におけます対象水田という考え方がなくなっておるわけでございまして、農業者ごとに配分された生産目標数量の範囲内で生産を実施すれば、どこで作付されるかについては問われないということになるわけでございまして、今回のものについては、新規開田について抑制するという基本的な考え方は変わらないわけでございますし、現状で、ことしの場合、加工用米として認められないわけですけれども、その場合には、産地づくり交付金などのメリット措置を受けられないということで、それなりの抑制を図っているというふうに御理解いただきたいと思います。

山本(喜)委員 十六年以降、ポジ方式に変わったということで、国の新規開田抑制の方針は変わっていないけれども、そういうふうな制度として認められれば、これはあり得るということの説明ですが、しかし、確かに大潟村の場合、夢の食料基地ということで、琵琶湖に次ぐ大変広い面積を干拓して、全国から入植者が応募してきたわけでございます。その間、国の農業政策の変転によって、大きな犠牲といいますか、かなり苦労してやってきているわけでございます。しかしながら、多くの自治体を含めて、産地づくり、水田農業ビジョン、努力して転作をしている中で、それぞれ勝手にやっていくということになれば、一生懸命転作に協力して頑張ってきた農家に対する影響がかなり危惧をされるわけです。

 そうした点を踏まえて、秋田県では、この七月一日に県議会で決議を上げているわけですね。「県は国と連携して、オーガニック・ファーム・大潟の構成農業者に対して、経営改善資金計画に沿った畑作営農の実施を、引き続き、強力に指導、助言すること。」というふうに決議を上げているわけです。そうした県の取り組みということに対して、国としても、引き続き援助しながら、この問題について対策を講じていただきたいということですが、この点についてはいかがでしょうか。

村上政府参考人 この件の生産調整に与える影響ということについての懸念は我々も共有しているわけでございますが、この十六年産からの需給調整につきまして、地域の関係者が主体的に策定いたします地域水田農業ビジョンというもとで、地域ごとにその作付の方針などを定めて、水田農業についてのあり方を定めている中で生産調整が実施されているわけでございまして、そういう意味で、この件につきましては、その水田農業ビジョンにそぐわない形での米の作付ということだというふうに受け取っておるわけでございまして、地域における生産調整の円滑な実施に対する支障が懸念されるということで、地域段階で、関係者におけるさらなる調整、話し合いというのがやはり基本的には重要ではないかというふうに思っております。

 もちろん、先ほど申しましたように、新規開田につきましては、四十四年の通達以来、都道府県、市町村等において新規開田の極力な抑制ということを通達しておりますし、それから、そういう意味で、大潟村における地域水田農業ビジョンのもとで、秋田県、大潟村を初め地域段階で十分調整が行われる必要があるというふうに考えておりまして、このような観点から、国としても、引き続き、必要に応じて助言、指導をしていきたいというふうに考えております。

山本(喜)委員 そこで、米の需給システムの問題についてお伺いをしたいわけですけれども、政府の七月二十六日付の食料・農業・農村政策審議会食糧部会に内容が出されましたけれども、二〇〇七年から、生産者、生産者団体が裁量権を持って需給システムを行う方向に移行していくということのようでございますが、しかし、平成十五年に決定された米政策改革基本要綱という中では、平成二十年度の移行を目指して取り組んでいくということだったと思うわけです。

 今、米の政策改革が十六年度産から始まって、まだ二年目でありますね。この間、激変緩和措置というのがとられているわけでございます。需要見通しということで、市場の動向、これは、十六年産は五〇%を見ている、十七年産は六割を見ている、そのほかに過去の実績を加味してと。ですから、市場の動向は少し薄まって激変緩和措置ということになってやってきたわけです。ところが、この基本指針を見ますと、十八年産は、市場の需要見通しというものを限りなく十割に近づけるというふうな方針になっているようですが、そうした場合、急激な地域の作付の移動、変更ということが伴うわけで、余りにも性急に過ぎないかという生産現場の不安があるわけですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

    〔山田委員長代理退席、委員長着席〕

村上政府参考人 米政策改革につきましては、十六年度から本格的に実施しているわけですけれども、これは遅くとも平成二十年度からということで、早ければ平成十九年度に、農業者、農業者団体が主役となる需給調整システムに移行するということで、改革の当初から、十九年度に新たなシステムに移行することも視野に入れて、生産者団体と協力しながら推進してきているわけであります。

 そのために、円滑な移行を図るために、先生が今おっしゃいましたように、客観的な需要実績というものをできるだけ重視するという形で、その円滑な移行のために、生産目標数量の配分において、できるだけ客観的な需要実績のウエートを高めてきているということでございまして、そういう意味で、営農の継続性にも配慮し、かつ円滑に移行できるようにということでございまして、できれば十九年度から主役システムに移行するということで、十八年度においては、できる限り、円滑な移行のためにも、需要実績をできるだけ多く反映するという形で持っていくことによって円滑な移行が図られるのではないかというふうに思っているところでございまして、当然、継続性ということにも配慮しながら、そこは対応していくということでございます。

山本(喜)委員 米の市場動向、これは尊重しなきゃならないわけですが、今まで五割、六割ということでだんだんやってきたものを、突然、来年度から限りなく十割に近づけるということで、かなり生産現場には混乱が起きるというふうに私は危惧するわけですね。

 同時に、今、これから品目横断に支援を移していくということでもありますが、この品目横断政策に対して、何か一緒にあわせてやっていくということがこのねらいではないのかというふうに思うんですが、この点、この整合性の関係はどのようになっているんでしょうか。

村上政府参考人 米政策改革につきましては、今申し上げましたように、遅くとも二十年、早ければ十九年ということで、十九年度から実施することも念頭に置いて実施を進めてきておったわけでございますし、我々としては、十九年度からの実施を目指すという方針であるわけでございます。

 当然、その際、品目横断的経営安定対策との関係がございます。現在の対策が、米については十六年から十八年までということでございますので、いずれにしても十九年度以降の対策を検討する必要があるわけでございまして、その際、品目横断対策を十九年度から導入するということになりますれば、それとの整合性ということを当然検討していく必要があるというふうに考えております。

山本(喜)委員 品目横断的経営安定対策と米の需給システム、これを整合させていくという方針のようでありますが、その際、この品目横断的経営安定対策というのは、担い手を中心に考えているわけだと思うんです。

 そうすると、一定規模以上の担い手に入らない人たち、この人たちを、生産調整のシステムに誘導していくための方策、担い手だけでなく、それから漏れる多くの生産者、これらも含めて需給システムに誘導していくという方策がなければならないと思うんですが、そうした点についてはどのように考えているのか。

村上政府参考人 品目横断的経営安定対策の大きな理念として、担い手を育て、それに施策を集中していくという考え方があるわけでございます。米の改革におきましても、できるだけ担い手を育成していくという考え方が当然入っているわけでございますが、他方で、生産調整を実効あるものとしてやっていく必要があるという要請も当然あるわけでございまして、その辺、十分踏まえながら検討していく必要があるというふうに思っております。

山本(喜)委員 今までの生産者に対する支援、これは、産地づくり交付金を含めて、あるいは稲得とか担経、そういう形でやってきましたね。これは、生産調整を誘導するメリット的な意味がかなりあったわけでございます。特に、稲得の場合は、加入者が百万人ということですね。そして、この面積も四百七万トンの量に相当するということで、これから目標とするところの担い手だけでなく、多くの生産者が加入していくということでは、この稲得という制度は、これからも非常に大事な仕組みになっていくんじゃないかというふうに思うわけです。

 担い手だけに政策を集中して、その人たちだけで米の値段が決まっていくというわけではございませんから、一定規模以上だけに集中するということではなくて、やはり多くの米生産者が参加し得るような、稲得のような制度を今後どのように考えていくのか、お願いします。

村上政府参考人 生産調整のメリットという意味での稲得なりの扱いということでございますけれども、稲得それから担い手経営安定対策につきまして、仮に十九年度から収入変動を緩和するための品目横断的な経営安定対策が導入されるという場合には、基本的には、こういう収入変動などの緩和の対策というのは、これに移行することが基本ではあるわけでございます。

 そのうち、稲作所得基盤確保対策につきましては、今先生も御指摘のような、生産調整の適切な実施ということで支障がないかどうかということと、他方で、担い手でなくても一定の助成がある場合に、かえって担い手への集積をおくらせることになるのではないかというようなことも十分論点としてあり得ると思いますので、そういったことも踏まえまして検討を行っていく必要があるというふうに思っております。

山本(喜)委員 ということは、政府が言うところの担い手以外にもそういう政策を考えていくということで理解していいんですか。

村上政府参考人 収入変動については、経営安定対策、新たな品目横断に移行するというのが基本であるけれども、その生産調整に支障が生じないか、あるいは担い手への集積という意味でそれに支障が生じないかというようなことを十分踏まえて検討したい、こういうことでございます。

山本(喜)委員 いわゆる担い手だけではなく、やはり、より多くの生産者が参加できるような、そういう需給システムが確立されないと、担い手の収入という面でも、これはかなり厳しくなっていくんじゃないかというふうに思うわけです。ですから、国として、この生産調整のシステムをどのようにこれから考えていくのかということが大変重要になっているというふうに思うんです。

 この七月に出された基本指針によりますと、新しいシステムのイメージということで書かれてありますが、「十六年産米からの客観的な需要予測に基づく生産の目標数量の設定の仕組みが定着することにより、あえて国が配分行為を行わなくとも、第三者機関的組織において、生産出荷団体等が客観的データの提出を行い、透明性のある手続きの中で需要予測の分析・検討が行われていることを通じ、地域ごとの需要に見合った生産量が判明していく」というふうに、かなりのうてんきなような書き方であります。

 果たしてこれで、生産者、生産者団体が主役の生産調整が成り立ち得るのかどうか、極めて疑問だと私は思うわけです。この間、地域水田農業ビジョンで、地域ごとの販売戦略をつくるとか、あるいは担い手づくりをするとか、あるいは産地づくり交付金の活用とか、多くの自治体で話し合いが行われてきたわけですが、これをいきなり需要見通し十割ということで出されてきて、果たしてこれで、地域に任せ、政府がもう手を引いて生産者にすっかり任せていくんだというふうなことで果たして成り立ち得るのかどうか疑問だということ。

 先ほど、冒頭言いました大潟村の例がございます。政府の政策の外であれば何をつくってもいいし、自分で販売ルートがあればどうやってもいいというのが、今の新しい米改革ですね。そうした状況を見たときに、これを放置すると、やはり米価の下落とかあるいは生産調整がきちっと行われないという危惧があるわけでございまして、そうした意味で、何らかのルール、需給システムについて国が関与していくということがやはり必要ではないかと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

村上政府参考人 米政策改革は、やはり需要に応じた生産をやっていこう、それで、今までのように、国が一律にがちがちの形で生産調整の面積を配分するというような形でやるのではなくて、それぞれの地域で、地域協議会の中で話し合いをして、どういうものをつくっていってどういう売り方をするかということをやっていこうという、そういう趣旨だと思うんです。国が何もやらないかといいますと、そういうことではなくて、ちゃんと需要の見通し、それから県別の需要情報などを提供して、地域レベルで、それをもとに、それぞれの地域における生産の目標を定めていただくということになるわけです。

 現在やっております、十六年からやっております生産目標数量の配分では、需要実績をかなりウエートを置いた形でやってきておりまして、それを透明性のある形でやってきておりますので、これはある意味で、どんな人が計算しても同じような数字が出るという形で、それに、県、市町村、地域の生産者の皆さん方が、どんどんこれになれてきておりまして、そういう意味で、十九年度に客観的な需要見通しという形でやっていくことによって、生産調整が実効ある形で実施されると。メリット措置などの生産調整の対策についてどうあるべきかということについては、当然、それも実効性の確保という観点も踏まえて、これから検討していくということになると思います。

山本(喜)委員 私は、先ほど冒頭出した大潟村の例をとったのは、国の一定の関与、ルール、そうしたものがないと、やはり手っ取り早く新規開田をしたり、そういう形で、もう水田をどんどんつくっていくということにもなりかねない状況が現在起きているわけでございます。

 市場の動向も当然ありますけれども、やはり一定の国の関与ということをしていかないと、担い手が一生懸命頑張っても、米価がどんどん下がっていくというふうなことになった場合、今後、日本の耕作放棄地の問題を含めて非常に重要になってくるということを申し上げまして、時間が来ましたので終わっていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

山岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十二分散会


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